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[5293] 今朝夢で見たものを元になんとかSSを書いてみます(ネタ)
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/06/02 22:43
題名の通りです。

今朝見た夢がやけにリアルだったから寝起きのテンションでとりあえずプロローグ部分を書きました。

後々多重クロスもどき?になる予定です。

TSとか好きです。

設定が違う、こんなキャラじゃない、と思ったら感想ついでにどうぞ。

前世で仲間でした、ムーの戦士だった記憶を思い出せ、と思ったら精神科にどうぞ。








「何故だ!何故投稿した!テンションがおかしくなる深夜、早朝のSS書きはせぬとあの日誓ったではないか!」

「…………………」

「我等を謀ったと言うなら儂は許さぬぞ!!答えろ!作者!」

「新作投稿…と」

「解せぬ!何故貴公は読み手になった!黒歴史を繰り返さないためではないのか!?理性を保つためではないのか!?貴公の理性は何処へ消えて失せた!!」

「他者のSSに触発され、そして妄想を元にSSを投稿する。それこそが私の理性だ。感想全レス完了…と」

「作者ァーーーーー!!!!!!」


そんな話になるといいなぁ。



メモ
(2008/12/15 08:51)  リアルな夢を見たので思わず第1話投稿
(2008/12/15 20:47)  帰って即第2話投稿
(2008/12/17 20:42)  様子を見つつ第3話投稿
(2008/12/18 18:15)  ようやく本編開始のめどが立ったので話数調整&第4話投稿
(2008/12/19 20:18)  一段落ついたので第5話投稿
(2008/12/20 20:57)  なんとなく嘘予告投稿&誤字等修正
(2008/12/21 17:04)  規約変更に基づきタイトルを「書いてみるテスト→書いてみます(ネタ)」に変更
(2008/12/25 07:40)  遅れつつも第6話投稿
(2008/12/31 13:06)  大掃除の合間に第7話投稿
(2009/01/03 23:59)  明日は寝通そうと思いながら第8話投稿
(2009/01/06 23:39)  寒さに打ち震える第9話投稿&修正開始
(2009/01/11 22:18)  カブにまみれながら第10話投稿
(2009/01/13 19:51)  金剛花を育てながら第11話投稿
(2009/01/17 21:38)  コンゴトモヨロシク第12話投稿
(2009/01/18 10:09)  誤字修正&入れ忘れてた次回予告追加
(2009/01/18 22:05)  調子に乗って第13話投稿
(2009/01/21 19:45)  通常ペースで第14話投稿&ちまちま修正開始
(2009/01/26 20:50)  感想100超えの第15話投稿
(2009/02/01 21:25)  2ページ目から復帰の第16話投稿&修正開始
(2009/02/04 23:17)  ササッと第17話投稿&誤字修正開始
(2009/02/08 00:25)  妖精さんのお陰で番外編1投稿&修正開始
(2009/02/19 21:50)  3ページ目から復帰の第18話投稿&修正開始
(2009/02/22 20:29)  チラ裏の流れの速さに驚く第19話投稿
(2009/03/29 19:23)  1月ぶりでとうとう第20話投稿
(2009/04/12 19:27)  チラ裏の盛況ぶりに驚き6ページ目から帰還の番外編2投稿&修正開始
(2009/05/18 23:11)  アルフDVD化に驚愕の第21話投稿
(2009/05/19 19:57)  誤字報告されてたのに修正忘れてたので慌てて修正
(2009/06/02 22:41)  そこそこ早め?第22話投稿



[5293] 第1話「なんと初回はお読みしやすいように文字数少なめに!」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/01/06 23:48
「オギャア!オギャア!」

─── さて参った。

「オギャア!オギャア!」

─── いや、何が参ったかというとね。

「オギャア!オギャア!」

─── どうやら生まれ変わってしまったらしいのよ。

「オギャア!オギャア!」









dream -5.   『The Beginning of Dream』










さてここは病院なワケだ、もちろん今俺を抱いてニコニコしてるのは母親だよねぇ、なにやらエライ美人で困る。ロングヘアー最高。


「はーいユウちゃ~んお父さんですよ~アハハハハハ~」


で、こっちの俺を見て全身から喜びのオーラを発してるメガネのハンサムさんが父親、と。
惚れ惚れするほどの美男美女じゃないか、嫉妬を通り越してもうお金払って少し離れたところから眺めていたいレベ…ル…だ…
ってあ、急に、眠、気が……。





ん?ここはどこだ…もしかして夢の中って奴かな?なんか青いもやもやした変な世界に今いるっぽい。
凄いな…流石転生、こんな夢も見れたりするのかー、もうなんでもアリだな。
ちょうどいいや、一度情報を整理しておきますか、夢ってそんな感じの機能を持ってるって聞いた覚えがあるしね。


俺は田中真二、某有名国立大生の22歳、おひつじ座のAB型、名前を縦に書くと左右対象になってるのが自慢だ。
で、何故こんなことになっているかというとまぁ理由は分かってる。




朝、玄関開けて2分で死んだ。




あ、ありのまま今起こったことを話……あーいやこのネタはいいや、要は通学途中トラックが突っ込んできた。
すっごい速度で突っ込んできた。
今でもっていうか体感時間的にはさっきなんだけど凄い痛かったの覚えてるし間違いなくアレが原因だろう。

そして今に至る。




さてここで問題発生。おそらく今は俺が死んだ時からそこまで時間は経っていない……と思う。
なら俺が死んでショックを受けているだろう旧・両親にこの状況を説明するかどうかだ。
十中八九信じてはもらえない、もしくは逆にかわいそうな子扱いされかね…………いや、ウチの旧・両親は割とSF脳を持っている。
共にSF小説、漫画、映画やフィクションの類が大好きで母親に至っては腐女子の疑いがある程だ。
仮に「ゴメン、俺転生した」なんて言った日には「ドリーム(笑)」とか言われる可能性すらあるな。



………………んーまあ今は動けないし、お前の子供の中身は二十歳過ぎだとか言って新・両親を悲しませるのもなんだかねー。
しばらくは様子見かな、そもそも今が何年でここが何処かもわかんないし。
分かってるのは、奇しくもこちらの俺の誕生日が前世と同じ4月17日ということだけだ。














そして8年が過ぎた







いやいやいやいや、最終回に良くあるやつじゃないけどさー。
あの後いくら母親とは言えど面識の無い美人さんがおっぱをたゆんと出してさー。
「はーいおっぱいの時間ですよー」とか言われて戸惑いパラダイスとかそういう話してもしょうがないでしょーおっぱ。


それとね、結果としてはね。



ここ異世界だわ。



アハハハッハハッハハハッハハハハハ!!!!!!!!ゲッホゲホオエッ!!!ごめっ!むせた!


いやねー嫌な予感はしてたのよ。病院にいた頃から白いもやもやしてたのが視えてたし。
まぁトドメはアレだ、俺のいた病院の名前がね。



空座総合病院



ブリィィィィィィィィィィィィィィィィィチ!!!!!!!!

どう考えてもコレBLEACHですよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

「空座」って「ネギま!」で言うところの「麻帆良」だよねぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
「Fate」で言う「冬木」!
「なのは」で言う「海鳴」!

間違いないね!トリップ確定!




それにさー!!今も俺の目の前には霊が視えてますしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!




スイマセン取り乱しました。
で、今のところ分かってるのは、まだ本編前で、俺はトリップ主人公でお約束の原作知識その他の能力持ち。

「おーい!」

能力云々についてはまぁ後で説明するとして。

「おーい!」

見た目はと言うと髪の色はエメラルドグリーンっぽい、そして目は金。銀髪オッドアイじゃなかっただけマシ……と思いたい。

「おーい!おーい!」

それとコレ結構重要なんですけど。

「おーい!!優姫ぃーーーーーー!!!」

「ああ、おはよう一護クン」

TSした上に一護クンの幼馴染ですわ自分。










『あとがきゴールデン』


とまぁこんな感じで始まるんですけどどうですか?

「なんだよクソつまんねェ。時間無駄にしたじゃねえか」と思ったあなたはブラウザの「戻る」を2回クリックして下さい。
人生無駄の積み重ねです。

「ふぅ~ん、まぁまぁ?今のトコ可も不可もなく?」と思ったあなたは次の話に進んでみたり次の話はまだかなと待ってみたりして下さい。
本当に進んでいいのか!?戻るべきではないのか!?もうここで切るべきでは!?そんなギャンブル感覚が味わえるでしょう。

「こんなのよりストライクウィッチーズのSS書けよ」と思ったあなたはこのSSをブックマークして笑いながら頑張ったとメチャクチャ褒めて下さい。
そして代わりに書いて下さい。むしろ書け。エイラとサーニャで書け。

その他のあなたは感想を書いたりすると作者が喜ぶかもしれません。



[5293] 第2話「設定、一人語り過多なので読むのが面倒になったらあとがきを読んで下さい」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/01/06 23:47
どうも、嬉し恥ずかし異世界転生初体験の田中真二改め糸井優姫(8)です。
今は学校も終わって自室でのんびりしてます。


あーさて、暇なので前回カットした能力云々とかここ数年の話とかでもしましょうかねー。


先ずはブリーチ世界と判明して焦った焦った。
もしこれが萌え4コマとか女の子の日常系とかスポーツものの世界ならチート知能を生かしつつステキな日常を送れたでしょうね。
むしろ今からでもそっちに行きたい。

それ4コマの意味あるの?ってくらい平凡な会話をしたりカワイイ先輩後輩たちに囲まれたい。
ロザリオ渡されて「お姉さま…」「優姫…」キャッキャウフフとかしたい。
ストパニでもいい。いっそ危険を承知でストパンでもいい、百合百合キャッキャウフフしたかった。

………………………………………

チクショオォォォォォォォォォ!!!!!
なんで百合ワールドじゃないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
サーニャァァァァァァァァァァ!!!!!



少女錯乱中…………

少女錯乱中…………



でもね、ブリーチって言ったら一般人には不可視のホロウやら死神やらが現世で大暴れな少年漫画ですよ。(何事もなかったように)
普通に過ごしてても何かしらの被害に合うこと間違いなし。トリップオリ主的な意味で。
俺の読んだとこまでだと空座町とか正にピンポイントで大ピンチ。


「私のターン!空座町を生贄に王鍵を召喚!」
とかあのヨン様モドキが言いだしかねない。いや最終的にはどうなるのか知らんけど。


仮に他県に引っ越したとしても結局の所ホロウはあちこちにいるので危険度としてはSがA(元世界基準)になる程度。
………なんて生きづらい世界なんだ。
仕事しろ死神。


それでこれまた困るのが年を追うごとに増してゆく霊能力。
なんか他人の霊圧とかも感じ取れる。H×Hのオーラみたい。
前世ではこんな力なかったのになぁ、流石異世界トリップ。
いやー霊が視える視える。ブルー霊高画質で視える。


…ゴメン、自分で言ってて死にたくなってきた。


まぁ幸いどこぞの四月一日みたく付きまとわれることはないのですよ。
俺のスルースキルは掲示板荒らしを無言でスルーできるくらい高いのです。
あいつら視えてない(と思ってる)相手には何もしませんし、そもそも一護クンとは違って霊力漏らしてませんし。
ホロウに目をつけられて襲われるとかマジ勘弁。


でもさー、ほら、グロちっくなやつとか視界に入るだけで不快MAXなのがネックなわけ。
それに小さな子供の霊とかになると可哀想で視てらんないわけですよー。
そりゃ一護クンも花を供えたりしますよ。誰だってそうする。俺だってそうする。
仕事しろ死神。
マジで。





後はトリップお約束の強くてニューゲームな知性を両親限定でバラしました。
具体的に言うと俺がノートに思い出した原作知識をちょこちょこ書き残してるところを見られた。テヘッ☆

そうだね、バレたとも言うね、うっかりだね。

物心ついたばかりのような幼児が漢字や英語を普通に使ってたからなー。
微妙に隠語や暗号使ってたから原作キャラ名とか詳しい内容は分からなかっただろうけど。

どうなるかなーとドキドキすること数秒

「ウチの娘は天才だぁぁぁぁぁぁ!!!」と大喜び。
喜んでいただけて俺も嬉しいです。






で、当初は原作キャラとはなるべく関わらないように、と思ってたのですよ。
原作自体俺がいなくてもちゃんと話進んでるもん。

一部容認できない展開もあるのだけど今の俺には霊視程度の力しかない。
ヘタを打って死ぬのは避けたい。


でもさ…後から気づいたけど無理だよね。
同じ町内な上にオレンジヘッドとグリーンヘッドの天然モノがいるとなるとどう考えても知り合っちゃうよね。





───────── 4年前、一護


カラテのかえりみち、おかあさんがいきなりとまる。

「あら?」

おかあさんがむこうのほうをみてそういった。
くさ?き?なんだろう、あれ?
どんどんちかづいてくる。


「もしかしてアナタが優姫ちゃん?」

「はい、私が優姫です…が?」


それはみどりのかみをしたおんなのこだった。


「ウチの一護以外に変わった髪の子がいるって聞いてたのよ、初めまして」

「ハハハ……狭い町内なのに4年目にして初、ですね」


ふしぎなかんじのおんなのこだった。


「こっちのオレンジの髪をしたのがウチの一護ね。一護?ごあいさつは?」

「あ、はじめまして、くろさきいちごです」

「あー……うん、初めまして、私は糸井優姫、よろしくね一護クン。ああ、私のことは優姫でいいよ」


きれいなめをしたおんなのこだった。



ぼくはおんなのこのめのなかに、ほしをみた。








dream -4.   『Shooting Star and Strawberry』








───────── 4年前、優姫


いやはや、こっちの世界に来て4年経つけど未だに原作キャラには会わないよ。
もしかしてこのまま行けば平穏な人生を過ごせるんじゃないの?ウフフ。
やーしかしこっちはまだポテチの量が多いねぇ、俺が死んだ頃は袋の中身スッカスカだったのに。
しかもコレ一時期しかなかった限定もの。
帰って食べるのが楽しみだ。
思わずビニール袋を見てニヤニヤしてしまう。


「もしかしてアナタが優姫ちゃん?」


んー誰だー?また髪の色珍しさで声をかけられたかー?


「はい、私が優姫です…が?」


あれ?この目の前におわすオレンジ頭はまさか………。


「ウチの一護以外に変わった髪の子がいるって聞いてたのよ、初めまして」


ジーザス!間違いないよね!?主人公だぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
やばぁぁぁぁぁぁい!!!!!


「ハハハ……狭い町内なのに4年目にして初、ですね」


短い4年間だったなチクショウ!


ああ!何か知らないけど一護クンのそのピュアな視線が俺の心を締め付ける!


「こっちのオレンジの髪をしたのがウチの一護ね。一護?ごあいさつは?」

「あ、はじめまして、くろさきいちごです」


クソァ!どうやら一護クンの脳内には俺がバッチリ認識されたっぽい!
こうなりゃもうトコトン行くしかねぇ!


「あー……うん、初めまして、私は糸井優姫、よろしくね一護クン。ああ、私のことは優姫でいいよ」


俺は黒崎一護に、運命(死亡フラグ)を見た。


















そう、あれから4年だ。

何だかんだ言って知り合ってしまったものは仕方ない。

基本的に俺は他人が何処でどうなろうが知ったことではないんだけど流石に知人相手だとなぁ…。

一護クンのお母さんである真咲さんは死ぬ。原作では一護クンが小学生の頃にホロウに喰われるのだ

優しいわ美人だわでこんな人があの腐れホロウに喰われるのは非常にイラッとくる。

ちなみにまだ俺はホロウ及び死神との遭遇は無い。

できれば一生お近づきになりたくない。



さて、真咲さんの死亡は、確か一護クンが霊と人の区別がついてなかったがために、
ホロウの体の一部であるオカッパ少女(のように見える触覚?)を助けようとした一護クンをホロウが殺そうとして、
真咲さんが一護クンを庇って…って話だったハズだ。
そこで俺は以下のように行動した。




「一護クン、一護クン、実は私も霊が視えるんだよー」

「え!?そうなの!?ほんとうにみえるの!?」

「そうそう、ちなみに一護クンは霊と人の区別つく?」

「え、ううん…」

「そっかーそれじゃ私が区別の仕方を教えてあげるよ」

「ほんとうに!?できるの!?」

「アハハ、落ち着いて落ち着いて、本当だから」





霊が視えるのをバラしたときの一護クンの喜びようといったら凄まじかったね。
もう年の離れた弟がいたらこんな感じかなと言わんばかりに懐く懐く。
今まで理解してくれる『他人』がいなかった世界の共有が出来るとなればそりゃ喜ぶよねぇ。
アハハ、かわいいぞこのショタっ子め。



一護クンは完璧に霊が見える。

そう、ハッキリ見えすぎてるが為に幼い一護クンには生きてる人と区別がつかないのだ。

原作の時点でもダサメガネこと滅却師<クインシー>石田雨竜の力を感知出来なかったことで定評のある一護クンだ。相当に鈍いのだろう。

死神の力に目覚めてからは霊絡?とかいう霊気を長い白布という形で視覚化する高ランクな能力を会得するみたいだけど。





















っていう設定らしいんだけどおかしくない!?

因果の鎖あるじゃん!霊の胸から生えてる鎖!

あれ視れば霊か人かモロ分かりじゃん!

視えないの!?マジで!?

あれ?原作も序盤は鎖描かれてなかったっんだっけ?後付設定?

ナニコレ!?原作力か!世界の修正力か!?

オサレ先生カンベンして下さい!!!

正直、足が定番の幽霊スタイルだったり普通だったり、パッと見、あからさまな死人だったりでマジ意味不明っス!マジパネェっス!!!



ちなみに区別の方法だが霊視スキルMAXなクセに現段階では鎖が見えない一護クンには感覚と見た目の怪しさで掴んでもらった。
要は、見分けがつかないなら生者には無い『違和感』等を感じ取ってもらうしかない。
鎖が視える視えないにしろ、今回大事なのはホロウの疑似餌を見抜く事なのだ。






「一護クン一護クン、あれは?」

「ん~~~、れい?」

「ブー、あれは生きてるヤンキーです」

「やんきー?」

「そうそう、ああなっちゃダメだよー」

「う、うん」

「じゃあアレは?」

「ん~~~、……れい?」

「せーかぁーい、あれは死んでるヤクザです」

「やったぁ!ってやくざ?」

「そうそう、ああなっちゃダメだよー」

「うん」





といった具合だ。
最初はこの方法で大丈夫かなー?と思ってたが意外なことに一月もしないうちに感覚を掴んでしまった。
すごいや主人公。今では完全に霊と人の区別がついてる。

それとあのホロウの釣り餌であるオカッパの絵を描いてコイツには絶対近寄らないように、と念を押しておいた。



ここで問題なのだがいかんせんかなり前の事なので序盤の原作知識が微妙なのよ。

あれが小学生の頃で雨の日なのは覚えているが、何歳の時で何月何日なのかなんてのになるともう無理。


ていうかブリーチと言えば何故か1対1な戦闘を何ヶ月も繰り返してるイメージしかないので、導入編ともいえる序盤の展開はもうあやふや。
コミックス買って読み直したりしてない限り詳しく覚えてる読者いないよね?ちなみに俺は立ち読みメイン。
もう何週間GJJJさんと戦ってたんだよと言いたい。




まぁ後は一護クンが真咲さん死亡イベントを上手くスルー出来るか否かだ。

なんだなけどなぁ…。

最初は俺の原作知識という手札の中にジョーカーがあったのよ。

そう!黒埼一心こと一護パパだ!

突如、ホロウと死神の力を手にした破面<アランカル>の前に立ちふさがり、圧倒的な力で一刀両断してくれた一護パパだ!


「隊長クラスは斬魄刀のサイズをコントロールしてんだよ」
「斬魄刀のデカさじゃ相手の力量は計れねえ」と言い放ち、
『斬魄刀のサイズって霊力に比例するんじゃないの?隊長の刀小さくない?』という序盤の設定&不思議も一刀両断してくれた一護パパだ!
序盤で一護クンの斬魄刀見てビビってた死神ズが可哀想に思えてくる。


そんな後付設定の申し子とも言える一護パパだ!
護廷十三隊の元隊長格、下手すりゃ元王族特務零番隊っぽい一護パパだ!







───────── 4年前、優姫


「こんにちはー」

「おおお!!こんにちは優姫ちゃーーん!!!元気ーーーー!?おじさん超元気ーー!!!」

「アハハ元気ですよー、おじさんは相変わらず元気あり余ってますねー」

「おうよー!ところで一護か?一護なら真咲と買物行ってるけど」


それを知った上で来てるんですけどね。


「あー違うんですよ。今日はおじさんに話がありまして」

「おう、どうした?」


さて、ここからだ、一護クンに霊視の授業をしてはいるけどここまで原作に介入するのは初めてだね。
トリップお約束の先の見えない原作崩壊すら起こりえる。
やばい、ドキドキしてきた。心臓がバクバクいってる。次の言葉が中々出てこない。


「ん?大丈夫か優姫ちゃん?ハッ!?もしかして一護か!一護が何かしたか!?スマン!ここは親である俺が土下座を!」

「え!?ちがいますよ!あのですね、えっと、その」


ええいここまで来たんだ!言ってやる!!


「少なくとも一護クンが小学生の間に一護クンとおばさんがホロウに襲われる可能性があります。死神は間に合いません。どうにかできませんか」


言ったーーーーーーーー!!!!!!!噛まずに言えたーーーー!!!!!
って黒崎パパンの目が変わった!めっちゃ怪しまれてるーーー!?


「どういうことだ優姫ちゃん」


うわっ、いつものおちゃらけた雰囲気が無い。
まぁそりゃそうか、息子の友達の女の子がいきなりホロウとか死神とか言い出したらな。


「はい、ご存知の通り私にも霊が視えるんですが、実はたまに予知夢も視えたりするんです。ホロウや死神はそれで知りました」

「予知夢…か、それで?」

「アッサリ信じますね…。で、さらに遠い未来でおじさんが死神と同じ服を着て凄く大きいホロウを倒すのも視えたんです」

「ホロウ、なんて単語を知ってるんだ。それに優姫ちゃんが嘘をつく必要も無いだろ」

「ハハ、ありがとうございます」

「いいって。あー、つーことはだ、俺が元死神だってことも分かってるのか」

「ええ、それもそこいらの死神じゃ比べ物にならないほどに強いことも」

「嬉しいこと言ってくれるねぇ。でも、今の俺じゃダメだ」


何!?どういうことだ!


「詳しくは言えんが、今の俺は完全に人間の力しかない。でもまぁ一応こっちでも手は打ってみる」


マージーでー!?いや、1話であっさり雑魚ホロウにやられてたのもそれが原因か!


「そうですか…」

「せっかく教えてくれたのにゴメンな優姫ちゃん」

「いえ、何か事情がありそうですし仕方ないです」

「そういえば最近一護に霊の見分け方教えてるのもそのためか?」

「あー、知ってましたか。アハハハハその通りです」

「ホントに…ありがとな」

「いえいえ、好きでやってることですし」

「そしてゆくゆくは一護の嫁さんとしてウチに」

「きません」








「そうだ、ホントは教えるのはまずいんだが浦原商店ってのがあってな、っと地図描くから」

「はぁ」


おお、やっぱあるのか浦原商店、まだ見たこと無いや。


「で、何か困ったことがあったらここに相談しに行ってみてくれ。俺の名前言えば分かるから」

「わかりました」


うらはらしょうてんのちずをてにいれた!


「あ、それと今日の話は秘密にしてもらえませんか?」

「ん?ああ、わかった。そのかわりおじさんのこともナイショな☆」

「はーい、わかりましたー」


ウインクが微妙に嫌だぞ一護パパ。


「しっかし優姫ちゃんホントに4歳か?さっきの会話とかどう考えても4歳児のじゃないぞ」

「やだなーおじさん、アゴヒゲ抜きますよ?」

「サラッと辛辣!?」


まぁ22+4歳だから仕方ないだろ。
っていうか緊張しすぎて若干素に戻った。


















なーんてことがあったわけですよ。
浦原商店?まだ行ってませんよ?
だってなんか弄られそうじゃないですか。
弄られる被害者は未来の一護クンとアニメ版恋次だけで十分です。
それに何か利用されそうでイヤ。


にしてもなーせっかくのトリップなんだから俺も斬魄刀とか使えないのかなー…。


ぶっちゃけ
『力が欲しいか…』
と言われたら答えはYESだ、死にたくはない。即ジャバウォック。


力があればホロウに絡まれても死なずにすむだろうし、真咲さんを助けることも出来るだろう。
『グヘヘ喰ってやるぜガキィ…』なーんて三下セリフ言われた日には即卍解、即抹殺といきたい。
今の所ルキアさん(だと思う)はホロウ狩りには熱心なようでそんなイベントは無いが、本編開始となるとヤヴァイ。



第1回!湧く湧くホロウ祭り!!はっじまーるよー!!!



って感じのホロウラッシュが待ってるのだ。
下手すると現段階でも一護クンの前に俺のところにホロウが来かねない。


もう何やってんだよ尸魂界<ソウル・ソサエティ>で最も美しい斬魄刀(笑)所有者の朽木ルキアさん。
ホロウの集合体である十刃<エスパーダ>、アーロニーロ・アルルエリ相手に勝てるんだから通常ホロウ如きに遅れを取らないでくださいよォー!!!!
お得意の袖白雪で何とかして下さいよォォォォォォォ!!!!!!!!
ぐちゃあ
って感じになりかねん。


って今よくアーロニーロ・アルルエリってさらっと出たな俺。
序盤のホロウ名はサッパリなのに。
冥界の使者が使う言語みたいな名前だよねアレ。ムヒョロジ的な。

にしても破面編とかマジ勘弁だわ。あいつら直で空座町に来るもんなぁ…引き篭もっとけば大丈夫かな?
シャナでいう封絶みたいな隔離結界張ったりしてたし。



まぁそんな先のことは今考えても仕方ないよね。
今のトコは真咲さんの件優先で行くとしますか。



















『あとがきゴールデン』


黒崎ファミリーと出会い、真咲生存の道を探ることになった主人公。
一護に介入し、さらに一心にホロウ襲来を告げるが返事はあまり良くない。
はたして主人公は黒崎家を守ることができるのか!?


3行。
自分にしては割と長く書けたと思ってちょっとまとめてみたら今回の内容3行。
皆よくあんなにさらさら面白い長文書けるなぁ。


「長い、3行で書け」と思ったあなたは少し上の3行をお読みの後、星新一氏のショートショートで口直しして下さい。

「あーこんな感じなの?ふーん」と思ったあなたは3話で後悔して下さい。

「そんなことよりダブルオーのアニューってあにゅ~って書くとかわいくね?」と思ったあなたは万死に値する!


もっと酷くなる予定の次回、ヒロイン登場。



[5293] 第3話「なんかもう既に書いてて胃が痛い」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/01/06 23:49
<<…ター>>

「んうー?」

<<…スター>>

なんだー?誰だ?

<<マスター>>

ますたーって何だよ?

<<マスター!!!>>

「ヒャアイ!」


起きるとそこは草原だった。
何だ!草原!?ここどこだ!?ってもしかして夢世界か!8年ぶりだなオイ


<<マスター>>

「うわっ!」


誰だ!?目の前には誰もいないぞ!?


<<こっちです、マスター>>


あわてて後ろを振り向く。




そこには、蒼銀の長い髪を風になびかせ、
某祝福の風が着てたような感じの白い衣装に身を包んだえらいスタイルのいいお姉さんがいた。



ぶっちゃけ某邪神の元ネタに似てる。例の猫耳ヘッドギアつけてるし。
さらにぶっちゃけるとめちゃくちゃ好みだ。
結婚して欲しい。
掲示板に『お姉さんは俺の嫁』とか書きこみたい。
衣装も元ネタ通りだったら良かったのに。露出度合い的な意味で。







「えっと…誰でしょうか貴女は?」

<<“誰でしょうか”?何を言ってるんですかマスター、私です■■■です>>




…………………?

聞こえない。



<<そうですか、まだ私の名は聞こえませんか>>


いやそんな事言われましても。


<<悲しいことです。マスター以上に私のことを知る者などこの世の何処にも居はしないのに>>


マジか!そんな深い関係だったのか俺とこのKOS-MOS似のお姉さんは!
ってアレ?このセリフは何処かで聞いたことあるぞ…。


いや、これはもう間違いないだろう。


「もしかして、俺の斬魄刀?」

<<ようやく私の声が届きましたね。初めましてマスター>>

「おお!8年目にしてついに戦力ゲット!?」

<<いえ、それには私の名前を呼んで頂く必要があります。そして厳密には私は斬魄刀ではありません>>

「あれ?そうなの?」


俺は思わず首をかしげる。


<<はい、そのようです>>


お姉さんも俺を真似て首をかしげる。
チクショウ可愛すぎる。
なんだこの可愛い生き物は。
抱きしめたいなぁ!お姉さん!!


「あれ?でも普通始解前の状態とかあるよね?あれは無いの?いきなり名前イベント?」

<<先ほども申したとおり私は厳密には斬魄刀ではありません。この世界における立ち位置が斬魄刀のそれに近いだけですので>>

「え?じゃあ一体何なの?」

<<今の語彙で分かりやすく言うならばリリカルなデバ「OKもういい」…わかりました。ちなみにマスターの霊力及び霊圧ですが>>

「ん?」

<<こちらも厳密には『霊力のようなもの』と『霊圧のようなもの』です>>

「マジで!?じゃあ死神とかに感知されるとまずくない?コイツおかしいぞ!って感じで」

<<はい、ですがマスターは日常的に、これもまた分かりやすく言うなら『絶』のような状態ですので一般人と変わりないかと>>

「ああ、ホロウに狙われませんように目立ちませんようにと思ってずっと抑えてたけど『絶』レベルの効果出てたのか。ナイスチキン、俺」

<<ですが感情の昂りなどによっては漏れ出すこともありますのでお気をつけ下さい>>

「それはまた難しいな…。えーと、あと名前云々ってどういうことなのさ」

<<…やはりマスターは私のことを忘れているのですね>>


うっ、声のテンションが下がった。凄い罪悪感だ。
やはり見た目どおり無表情系キャラらしく、顔が少しうつむいた位で表情には変化は無い。
なのに凄く残念といった感じが伝わってくるあたりが素晴らしい。


しかしどういうことだ?そりゃ彼女は見た感じこそゼノサーガで御馴染みのKOS-MOSだ。
だからこそこんな美人の知り合いなんかいないと断言できる。
にもかかわらず彼女は俺が『忘れている』という。


こんな2Dからディメンションチェンジしたような美人を俺が忘れるとは到底思えない。
何だ?俺は何を『忘れている』?この心の奥で渦巻くものは何だ?
愛か!?
違うか。


「えっと、それじゃ俺は君の名前を思い出して呼ばないといけない、と?」

<<そうです>>

「それまでは今までどおり俺は無力だと」

<<その通りです>>


う~ん、コレは困った。
名前をを聞くのではなく思い出さねばならないとは。
しかし先ほどから俺の中ではさらに何かが渦巻いてる。
この気持ちまさしく愛だ!!
違うか。



いや、しかしだ、俺は彼女を『知っている』のだ。
これはもう確信に近いと言っていいだろう。
にもかかわらず俺の心は『思い出すな』といっている。
何だ?俺は何を『忘れようとしている』?


そんな感じでもにゅもにゅしてると彼女が近づいてくる。
それが視界には入っているが相変わらず俺は思考に埋没中。

すると突然甘い香りと柔らかな暖かさに包まれた。

あれ!?抱きしめられてる!?
凄いです!凄くやわらかいですシャーリーさん!うわぁはぁ!


<<今日はお会い出来ただけでも私は満足です。それにそろそろお目覚めの時間です。またお会いしましょうマスター>>

「あはぁ…ってえ!?ちょっと早くない?まだ思い出してないのにさ」


この体勢にも驚きつつも言葉を返す。
もう脳がフットーしちゃいそうだよぅ!


<<では次にお会いするまでには思い出して頂けますか?>>

「ぜ、善処します」


そして思考は暗転する。






PiPiPiPiPiPiPiPiPiPi
パチン





「…思い出さないとなぁ」

田中真二改め糸井優姫(8)
さらにトリップ主人公らしさに一歩近づいた11月7日、朝のことだった。







dream -3.   『Come From Past Memory』









「おう、おはよう優姫」

「おはよう優姫ー」

「おはよう一護クン、たつきちゃん」


小学校への道は大抵この3人だ、
本当は今更小学生なんてかったるくてやってらんねーですよって話なんだけど頑張って上手く溶け込んでる(ハズ)。


俺の東大一直線な賢さを知ってる両親は、「飛び級とかしなくていいの?優姫ちゃん」とか言ってくれたのだが、
ここでリアルちよちゃんをする度胸が無い辺り俺のチキン具合がよく分かる。


あと俺みたいなルックス的に中二病を刺激するかわいさ255なロリっ娘が中学や高校にいったら即18歳未満お断りな世界になりそうで怖い。
夢のお姉さんじゃないが正直俺も二次元から抜け出たような生き物だ、俗に言う大きなお友達には常に気をつけてる。
(21)(21)ハンターズなんかには一生関わるつもりは無いのだ。



「それでホラー映画見てたら遊子と夏梨が泣き出してさ」

「相変わらずあの2人泣き虫だねぇ」

「怖いなら見なきゃいいのによ」

「そういうアンタだって怖かったんじゃないのー?」

「バッカ、オレが今更あんなの怖がるかよ」

「ホントかねぇ?ねえ優姫?」

「え?ゴメンたつきちゃん聞いてなかった」

「もー優姫は相変わらずボケーっとしてるんだから」

「あはは、ゴメンってば」


そういえばいつの間にやら一護クンの一人称は「オレ」になっていった。
その内「俺」になるのだろう。空手効果だろうか。
まったく「ぼく」なんて言ってた頃が懐かしくなるね。って親戚のおばちゃんか俺は。


「ほらまた!」

「あ、アハハハ、ゴメンゴメン」

「こないだテレビでそういうの天然って言うってやってたな」

「もぅ、一護クンまでそういうこと言うー」

「ハハハ、悪ぃ」

「テレビって言えばさ、一護、昨日のニュース見た?」

「あーお前のことだからまたどっかの暴力団が潰れたってアレか?」

「そうそう!それそれ!あれさぁ!」




とまぁまだこんな日常会話を送ることができる日々だ。平凡万歳。
ちなみに、ふとした拍子に物思いにふける俺は周りに若干天然と思われてるらしい。


というかたつきちゃん、その年で暴力団云々を嬉々として語らないで下さい。



さて、そろそろ学校に着く。
今日の授業はお姉さんの名前を思い出す時間になりそうだ。













そしてもう下校なのだがサッパリ思い出せなかった。
ちなみにたつきちゃんに遊びに誘われていたがお断りしておいた。
心苦しいが流石にあんな夢を見た後では遊ぶ気にはなれない。
いや、思い出せないというか、段々思い出そうとすると心が悲鳴を上げるようになってきた。
思い出したら世界が滅ぶ系の名前なのだろうか、ふんぐるい むぐるうなふ ふたぐん、いあいあ。

ん~、取りあえず宿題でも片付けておきますか。






なーんてやってる間に2週間過ぎた。
どんどん時間がとぶね。
早いトコ思い出さないと死亡イベントに間に合わないかもしれない。


内心割と焦りつつ原作ノートをペラペラめくる。




<小学生時>
真咲、ホロウに殺害される。理由:一護が霊と人の区別つかずホロウの疑似餌に釣られた一護を庇った為。
石田祖父もこの頃死亡?原因はマユリが実験体捕獲のため死神を遅らせたから。

<高校1年>
原作開始。ルキア、一護に死神の力を託す。
改造魂魄コンが偽魂丸?に紛れ込む。
墓参り、仇のホロウに勝利。
ドン観音寺、病院でボハハハハー。
石田にホロウ退治の勝負を挑まれる。チャド、織姫が覚醒。
ルキアが尸魂界に補足され夜に抜け出す→恋次vs石田(負け)、恋次vs一護(白哉にやられて死神の力を失う)




ルキアが帰るまでを簡単に書くとこんな感じ。
うん、なんかもう色々足りない。
原作コミックス買って読み直しておけばよかったよチクショウ。
ちなみに俺はカラブリしか持ってなかった。


しかしこのまま名前を思い出せない限り、高校に入るまではマジですること無いな。
せっかくノートゲットして思い出しては書き、思い出しては修正しを繰り返してきたのになぁ。











…………………ノート?














あれ?今何か凄く開けちゃいけない扉が見えたゾ?






















────── HPは99999



嫌だ。



────── 光と闇の力を



やめろ。



────── 神族と魔族の混血で



やめてくれ。



────── 銀髪のオッドアイ



もう『忘れた』はずだ。



────── 背中からは天使と悪魔の翼が



あの日燃やしたはずだ。



────── 神剣と魔剣は女の子に




やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!






「ッツ!?ッハァ!ハァ!ハァ!」






そうなのか?


『そう』なのか!?


もし『そう』だとするならば。


彼女の名前は。


彼女の名前を思い出すということは!









「ぬあうあむううううううううああああああ!!」

思わず床を転がってしまった。

これは予想の斜め上を行くキツイ作業になりそうだ。






















『あとがきゴールデン』


前回同様話は薄いです。
これからもっと酷くなる予定です。いろんな意味で。
早く本編に入りたいのに話数のマイナス値を増やすことになりそうです。(増やしました)
皆さんお気づきの通りメインヒロインはたつきちゃんです。








最後のは嘘です。
と、作者はお茶目に振舞ってみます。

あとアホらしいことを微妙にマジメっぽく書いていくことになるかもしれないです。
読み手、書き手共にもっと胃が痛くなったり恥ずかしくなったりな内容にする予定です。


「こんなSS読んでられるか!俺は一人で別のSSを読ませてもらうぜ!」と思ったあなたはフラグが立ってるので一人にならないで下さい。

「まさか彼女の正体は…いえ、確信が持てるまでは…」と思ったあなたはルークに謝って下さいこの子安め。

「おいおい…いいのかい?やっちゃうのかい?」と思ったあなたは感想の最後に『くっ…こんなときに邪眼が疼きやがる…』とお書き下さい。


次回、エセおフランス人登場。



[5293] 第4話「毎回書いてるときに変な声が出そうになります」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/02/08 00:28
「ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」


ああ、どうも。
絶賛絶叫&大回転中の田中真二改め糸井優姫(10)です。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


未来から刺客がやってくるってのは良く聞きますが、まさか前世からこんな刺客がこようとは…。


「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


ちなみにお姉さんの正体は前回分かったので、今は夢世界で絶叫しつつ思い出し作業に入ってます。









<<マスター…なんてかわいらしい…>>


なんかお姉さんが呟いてるけどキコエナーイ。
うん、ちなみに今はあれから月日は流れ4月28日、冒頭のとおり10歳になりました。
要するに1年半かけても思い出せてない。
ダメすぎる。


それと夢世界を自由に出入りできる感じになりました。
もうお姉さんと会うのも100回近い。


しっかしここはいいね。
まだ現実で思い出し作業してた頃は「ぬぅあぅ!」とか「ふぅあっふ!」とか変な叫び声が部屋から漏れないか心配だったけど、
ここは夢の中なのでどれだけ転げまわろうがどれだけ叫ぼうがOKなのです。


え?何で叫んだり転がったりするか分からない?
ああ、そういう人もいるのか。羨ましい。死んでください。羨ましい。
わかんないかなぁ…ほら、今考えると恥ずかしい昔の事とかやっちゃったZe☆な事を突然思い出すと変な声が出る感じ。アレだよ。殺せよ。


それを意識的に引き起こそうとしてるからこんなことになってるわけで。
いや、こういうことを考えてる時点で精神的にも悲鳴を上げてるというか逃避したがってるのを理解して欲しい。





<<そろそろお時間ですマスター>>

「んうー…」


その言葉と共に転がるのをやめた俺は、フラフラとお姉さんの方に歩きだす。
そして膝の上にライドオン。

ストン
むにゅ

後頭部がちょうやーらかい。

そしてお姉さんの腕が俺を抱きしめる。

まさに夢のような状態が今ここに!
これは悪魔の兵器ですよ音速丸さん!抜け出せません!
うおおおおおお!!!燃え上がれ俺の小宇宙!!!!!


<<お疲れ様ですマスター>>

「んーでもまだ思い出せないよ…」

<<気にしないで下さい>>

「うう、すまないねぇ」

<<それは言わない約束ですよマスター>>


うん、1年半の間で大分砕けてきたなお姉さん。
今では表情も変わるし冗談にも乗ってくれる。
無表情キャラに表情がついてくる様を間近で見ることが出来た事だけでも生まれ変わった価値があった気がする。


無表情は無表情でいいものがあるのだが。



<<こうして毎晩会えるようになっただけでも嬉しいことです>>


うう、癒される。後頭部を中心に。
疲労していた心がギュンギュン回復していくよ。
シン・ベルワン・バオウ・ザケルガが撃てそうな程に。

そして次第に眠くなってくる。
夢の中で寝るってどうよと思うが最近の終り方は大体こんな感じだ。


<<それではまた夜に>>


ああ、それじゃまた夜に───








dream -2.   『Calling of Strength』











またもや時間はとんで夕方過ぎ。
俺はミッション(お使い)の帰還途中である。
卵と豆腐ということは今日はすき焼きかもしれない。自然と足が速くなる。
そしてそこの角を華麗に─── って


ドムッ
ズシャァ
ガシャ
ブゥーン
グシャ


うん、見事な一連の流れ。


曲がり角でぶつかって。
俺が後ろに倒れて。
ビニール袋が落ちて。
車が来て。
全部グチャグチャになった。




「うわぁ…」


落ちる程度ならどうにかなったものを車に轢かれるとかマジですか。
車に轢かれるのは前世の従兄弟、ヒロキ君(11)のPSPだけで十分だ。
いやーあの時の彼の慌てっぷりは動画サイトに投稿できるレベルだった。
最終的に『泣く』ではなく『慟哭』と言っていいレベルだったもん。
もう恋人と死に別れたような泣きっぷりだったね。
「ピーコォォォォォォォォォォォ!!!」ってPSPの名前なんだろうけどオカマとしか思えなかった。腹痛い。
お年玉で買ったPSPが大事だったのは分かるがそれならそんな大事な物を駐車場の地べたに置いとくなと言いたい。もう言えないが。



「あー…怪我ァないか?大丈夫か?堪忍な嬢ちゃん。弁償するから許したってぇな」


ん?ああ、ぶつかった人か。どっちかっていうと俺の運が悪かっただけでこの人は悪くないんだけどな。これも美少女効果か?


「いえ、悪いのは急いでた私ですから…」


ってありり?この人どっかで見たことあるよ?

このやや横に裂けたような口に、ベレー帽被ったらいかにもなエセおフランス人になりそうな金髪オカッパはどっかで見たことあるよ!?























…………………………平子真子じゃね?











ヴァイザァァァァァァァァァァァァァァァァァド!!!!

いるのかなーとは思ってたけどやっぱこの時点で既に空座町に根城構えてるのか!?あの倉庫にいるのか!?


「いやいや、ここで引いては男が廃るっちゅうもんや。ほなサクサクいこか」


と、俺の手を引っ張ってどんどん進んでいく平子さん。
原作通り強引な人ですネ!!




ガーーーーーッ


買い物も終ってスーパーから出ると平子さんがまた話しかけてきた。
というか道中からスーパーの中までまーよく喋る人だ。


「いやーホンマ悪かったな嬢ちゃん。しゃーけど嬢ちゃんも気をつけなアカンで?オレやったから良かったものの」

「あぅ…スイマセン」

「そないな顔しィなや。まぁ怪我ァなくて良かったわ。お使い、卵と豆腐でよかったか?」

「ハイ、わざわざありがとうございました」

「気にせんでええ、お礼なら嬢ちゃんが大人になったらチューでもしてくれや」

「ええっ!?ちゅ、チューですか!?」

「ハハ、冗談や。ほならオレはこの後用事あるさかい。またなー嬢ちゃん」

「ええ、『またお会いしましょう』、おにーさん」





こうして突然の死神(今は仮面の軍勢<ヴァイザード>だが)との遭遇は終った。
でもさ、いきなりな上に元護廷十三隊隊長で現仮面の軍勢は大物過ぎやしませんか?
原作であの人が出てくるの尸魂界編の後じゃん。フライングにも程がある。
このまま原作通り行けば7年後くらいにマジで『また』会うことになるんだよなぁ…。しかも見た目年取らずにあのままの姿で。
リアクションどうしよう…。


っていうかめちゃくちゃビビッた。もうくちゃくちゃビビッた。くちゃくちゃだ。
こんなにビビッたのは前世の友人である成宮君(当時17)がお化け屋敷で絶叫&腰抜かしたのを見たとき以来だ。
というか何で俺男同士でお化け屋敷行かなきゃいけなかったんだろう。
思い出さなけりゃよかった。なんか泣きそう。











───────── 平子真子


なんやエライ可愛い嬢ちゃんやったな。
ありゃ間違いなく将来ドエロイ…やなくてドエライべっぴんさんになるで。


でもそれ以上に気になったのは、嬢ちゃんがオレを見た時ほんのわずかに感じた霊圧や。


あれは人のモンやない。
かといって死神のモンでもなければ虚のモンでもなかった。


気になってしばらく観察してみたけど、アレからは全く霊圧の漏れは感じひんかった。
オレの勘違いやったかと思える程に。



それに


ジャーラーラジャッチャー♪
ピッ

「はーい平子ですけどー?」

「おいコラ!!ハゲェ!!!何弁当買うのにチンタラしとんじゃあ!!!!!」

「ぎゃーぎゃーやかましいのォ…、可愛い嬢ちゃんとちょっとお話しとっただけやボケ」

「ボケ言うなハゲェ!つーか弁当買わずにナンパかハゲェ!!!」

「何度もハゲハゲ言うなやボケ、お前のだけのり弁にするど」

「うっさい!!こっちは腹へっとるんじゃ!!さっさと買ってこい!!!」

ピッ




あー…何やったかな…。何考えとったか忘れてもうたわアホひよ里が。

あー、せやせや。

嬢ちゃんが最後に言った

『ええ、またお会いしましょう、おにーさん』

は何や含みを感じるモンがあったな。


思わず笑いが漏れる。


「ックック…ホンマ、将来が楽しみな嬢ちゃんやで。『また』、な、嬢ちゃん」

























さて、平子さんと別れて今度は前方に気をつけつつ家路を急いでいると、今度は黒崎母子に会った。


「おう、優姫」

「あら、優姫ちゃんこんばんわ。もしかしてお使い?偉いわねぇ」

「こんばんわ、今夜はすき焼きみたいなので卵と豆腐のお使いを」

「すき焼きかぁ、いいなぁ」

「あら、じゃあ今日はウチもすき焼きにしようかしら」

「ホントか!母ちゃん!」


相変わらず仲がいいな。
出来ればこの光景を守りたい。
前世で両親と死に別れたせいだろうか、2人を見てるとその思いが強まるのを感じる。代償行為と言えるかもしれんが。


「それじゃ私、こっちですから」

「それじゃあね、優姫ちゃん」

「また明日な、優姫」

「また明日、一護クン」





夕食は思った通りすき焼きだった。
だが思ってたより食は進まない。
先ほどの光景を思い出すと胸が締め付けられるようだ。


「ごめん、ちょっと気分が悪いから先に寝るね」

「あら大丈夫?優姫」

「優姫ちゃん風邪でもひいたかい?」

「大丈夫、寝れば治るよ」

「そう?薬とかいらない?」

「大丈夫大丈夫、それじゃおやすみなさい」



正直今の両親には感謝してもしきれない。
日々の生活の端々から感じる程に俺を愛してくれてるし、俺のとっぴな行動にも触れないでいてくれる。
以前までは俺が本物の糸井優姫でないことに罪悪感はあったが、お姉さんの <<初めから糸井優姫の魂は存在していません>> 発言で吹っ切れた。
ならば俺は糸井優姫でいいのだろう、ならば俺はあの人たちの愛情に恥じない生き方をしよう。
そう、あの日誓った。
そうだ、なのに今まで俺は何をしてたんだろう。



部屋に着く。

ベッドに潜る。

「今日こそ呼んでやる」

その思いと共に。








<<こんばんわ、マスター>>

「こんばんわ、お姉さん。そして今日こそお姉さんの名前を呼んでみせる!!」


いきなり俺がそう言うと、お姉さんは少し驚いたような表情をして次の瞬間わずかに微笑む。


<<分かりました、マスター>>

「ん!」



今日は立ったまま集中する。

思い出せ。

思い出せ。

俺は一体どんな名前をつけた。


「んんんんんんんんんんんん!!!!!」


そうだ、お姉さんは間違いなくアレだ。
アレなのだ。


「んんんんんんんんんんんん!!!!!」


ぼんやりと黒いものが見えて来る。
それと同時に今までに無いほど心が悲鳴を上げる。
このまま気を失ってしまいたいくらいだ。



「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!」



それでも集中を解かない。
今日呼んでみせると決めた。

そうだ、ノートだ、これは黒いノートだ。
そしてこれをめくる、めくる、めくる、めくる。
その度に痛みが押し寄せてくる。



「んがああああああああああああっつ!!!!!!くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」



頭が真っ白になりそうだ。
それでもめくる。


思い出すのがつらい。
それでもめくる。


なみだがでてくる。
それでもめくる。


めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる







気が狂いそうだ。尋常じゃない痛みが絶え間なく俺を襲う。
それでも名前が思い出せない。
名前が出てこない。

それでも。

それでも俺は────────────










「男の子にはよぉ!意地があるんだよ!!!」









それでも俺は思い出す!


















「万難悉く打ち砕け!!!」




















「祈星<スピカ>!!!!!!!」




























そして世界は光に満ちた。



[5293] 第5話「消されるなこの思い 忘れるな我が痛み」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/01/21 19:49
「ッツ!?」

あれ?暗い?あ、ここは俺の部屋か。

え?
つまり何?
夢オチ?

マジで!?


あれだけ頑張ったのに夢オチ!?

なーめーてーんーのーかー!







「はぁ…」


思わずため息が出る…。
んん?


「あーあー」


おろ?


「アイガアイヲー」


思わずよろめきながらも起き上がり、明かりをつけて姿見の前に立つ。


「ジーザス…」


純白の衣装に包まれたすらりと伸びた身体にしなやかながらも肉付きのいい肢体。
流れるようなエメラルドグリーンのロングヘアー。
星の瞬きを思わせる輝きを放つ黄金の眼。
誰もが見惚れる様な美女がそこにいた。



うん、多分将来の俺だね、二十歳くらい?
ていうか何自分ベタ褒めしてんだ俺はナルシスか。
起きたら声が変わってるし体の動きも違和感あるしでお兄さんビックリだ☆


あ!てことはアレ夢じゃなかったんだ!いや、夢は夢なんだけど。
やった!夢オチじゃなかったんだ!!!
ボクヤッタヨー。





<<お目覚めになりましたか?>>

「おお!スピカか!(小声)」

<<はいっ、スピカですマスター>>


お姉さんも…じゃないや、スピカも嬉しそうで何よりだ。


「ところでコレってユニゾン効果なの?」

<<いえ、これはただイメージが形をなしただけかと>>

「イメージ?」

<<はい、魔法少女は大人に変身して当然というマスターのイメージです>>

「なるほどなー。それと斬魄刀見当らないんだけどどういうこと?っていうかスピカはどこ?」

<<上ですマスター>>


わーお、現実で会うの初めてじゃないか。
いや!それよりこの流れなら刀剣化してないみたいだから人型だよね!?
ドキドキを抑えることなく上を見上げる俺!
ひょっとしたら偶然に何かが見えちゃうかもね!アハハァ!




ふわりふわり



んー?



ふわりふわり




「あのースピカさん?」

<<はい?なんでしょうか?>>







「ノートですよね?」

<<ノートですが?>>



ノート浮いてるー!!!



いや、そんな「当然ですが何か?」みたいな言い方されましても。
返せ!返せよう!スピカの柔らかな体と癒し効果大の微笑を返せよう!!!




「えっとこれはどういうことでせうか」

<<落ち着いてくださいマスター>>

「あ、うん」

<<今のノートの姿はいわば始解前なのです>>

「ん?」

<<私の力と姿を解放するには解号と名前を呼ぶ必要があると言うことです。夢では呼んで頂きましたが所詮は夢の中の話ですので>>


あーそういうことか。


「ていうかスピカってやっぱり昔俺が考えたオリジナル斬魄刀&創作ノートだよね?死んでいい?」

<<いきなり死なないで下さい。それと実はマスターの無意識下でひっそりと内容が更新され続けてきたのでかなり異なりますね>>

「無駄に凄いな俺の無意識!!(でも小声)」


っていうかアレか、なんでもアリで俺TUEEE!!な中二病からヒネて変な拘りが出る高二病とかにシフトしてたのか。
だよなぁ…だったら初めから■■■の■■■■(自主規制)とかそんな感じの力でこの世界即終了してるもんな。


<<ちなみに今回のイベントでマスターは常時、スキルが使えるようになりました>>

「スキル!?(やっぱり小声)」


パラパラパラとスピカがめくれていく。
そこには以下の文字が。








<常時使用可能スキル一覧>

・変身<ヘンシン>
・飛行<フライ>
・探知<トラッキング>
・霊化<スピリット>
・障壁<シールド>
・結界<アイソレイト>





「フフフ…まぁまずはこんなもんだよね」


うん、まだ軽いジャブだ。まだ全然軽い。死にたい。
何かのキャラシートみたいなのに書いた記憶があるのが出てきた。
だって俺何か色々設定『だけ』は考えてたもんね。

しかし危なかった…。
もしこれがドイツ語だったら間違いなく死んでた。
響きがカッコイイってだけで意味も無くドイツ語使ってなくてよかった。良くやった昔の俺。

何で人は設定『だけ』やたら凝ってるくせにストーリーはほぼ白紙ってのが多いんだろうね。(設定も大概酷い)
しかもやたら名前には…アレ?イマナニヲカンガエテタンダロウ?
おかしいなぁもやしたはずなのになぁおかしいなぁ。

なんかやたら簡素なのは高二病バージョンだな。
凝ったトリッキーな能力よりシンプルこそがカッコイイとか考えてた頃か。
ますます死にたくなってくる。



でも何故に変身だけそのままなんだ。
教えて妖精さん。



<<ですが、私を呼び出してない場合は能力に制限がかかりますのでお気をつけ下さい>>

「なるほど、つまり今の状態でも術のサポートとかしてくれるのか。だからデバイスだと」

<<その通りです>>

「でさ、この結界って具体的にはどんな効果?」

<<マスターの場合、音や力の漏れを防ぐ、カムフラージュ、周りの意識から逸らす等の隠蔽的な役割が大きいですね>>

「ああ、ハッチのアレみたいなのか。使い勝手がいいから割と最近のバージョンだな」

<<そのような感じです。ちなみに霊化や結界を使えば小声で話す必要もないかと>>

「マジか」



とりあえず、と言うか早速使ってみたかったので結界張っておいた。
そして現実での初始解。



「苦節10年!ついに!ついにこの時が来た!!」

<<ではお願いしますマスター>>


ぶっちゃけ設定だけだと死にたくなってたけど、いざ現実に出来ると思うと興奮してきた。オトコノ娘、じゃねえ男の子だもん。
興奮と言えば高2の修学旅行の時、高橋君が空港のロビーで金髪幼女相手に「警察呼ぼうかな」と思わせる程色めきたってたのを思い出す。
「やべぇ…天使がいる…背中に羽根が見えるもん…」と呟いた高橋君の藤田和日郎的な笑みは今でも忘れられない。
気持ちは分からんでもないが口に出すな。
彼が二次元で満足してくれていることを祈る。


<<マスター?>>

「ん?ああ、ゴメン」


さて、気を取り直して、と。
ノート(スピカ)を手に取り、思いのままに「ぼくのかんがえたカッコイイポーズ」をとる。
そして。



「万難悉く打ち砕け!『祈星』!!!」















そして約1ヶ月半が過ぎた。
あ、石投げないで。
イタイイタイ。


いや、だって基本修行修行っスよ?
始解するだけでも長引いたのに修行編突入とかいらないでしょ?
いきなりピンチ時に『ギア2!』とか言い出したほうが早くていいじゃない!



一応簡単に修行ダイジェスト



<<デバイスですのでマルチタスクによる脳内での戦闘訓練可能です>>

「マジか」

<<負荷つきで結界張って霊力上げる修行しましょう>>

「マジか」

<<十分間息を吸って、その後十分間息を吐き続けてください>>

「マジか」

<<十分間抱きしめますので、その後十分間抱きしめてください>>

「マジか」

<<町の中に微弱な波長を発する猫を放っておいたので1時間以内に全部捕まえてきてください>>

「マジか」

<<ふふっ、マスターのここ…こんなふうになってるんですね…>>

「んあっ…」


うんスマン、修行のダイジェストっていったがありゃあ嘘だった。
でも大体はあってる。スピカさん容赦せん!






そして今日は6月17日、雨。
連日の雨による増水に気をつけるようにと学校でも言われている。
そして一護クンは空手の日だ。
今日か?今日なのか?
ちなみに雨が降る空手の日は毎回黒崎母子を上空からステルスモードで監視している。
緊張しすぎて毎回何か漏れそうになる。悲しいけど俺、元一般人なのよね。
緊張と言えば思い出すなぁ…中1の時のクラスメイトの──────







───────── 一護


雨の日はキライだ。



優姫が昔からオレに言ってた。

「雨の日の空手の帰り道にはオカッパの幽霊が出てくる」

「その幽霊に近づくとおおきなバケモノに食べられてしまう」

優姫は昔からオレにそう言っていた。




優姫は誕生日が3ヶ月しかちがわないのによくオレを年下扱いする。

と言うか変に心配するところがある。雨の日のバケモノの話が正にそれだ。つーか空手限定かよ。

でも優姫は霊のことならまちがいなくオレよりすごい。

オレに霊と人の見分け方を教えてくれたのは優姫だ、おかげでオレは昔みたいにイヤな思いをすることもなくなった。

だからバケモノのことも本当なんだと思う。



だからオレは雨の日がキライだ。


ああ、でも最近の優姫はバケモノの話の後に付け加えるようになったな。

『でもね一護クン──────






「っつ!?」


前の方に人影が見える。
いや、あれは霊だ。
髪型は…オカッパ!?
まずい!あれが優姫の言ってたバケモノだ!

繋いでる母ちゃんの手を思わずにぎりしめる。


「あらあら、どうしたの一護?」

「母ちゃん…そこの角を曲がって帰ろう…」

「突然どうしたの?寄り道はダーメ、早く帰らないと遊子と夏梨がスネるわよ?」

「母ちゃん…ッ!お願いだからッ…!」

「!? わかったわ…そこの角を曲がればいいのね?」


さすが母ちゃん!気づいてくれた!
よし!これで後は見えないフリをして逃げきれば!






『小僧、お前わしの姿が見えてるな?』


しまった!!思わず振り返る!


『ひひひひひっ、ほぅれ声も聞こえてるではないか』


「あ…!」


バカかオレは!今のは聞こえないフリをしてなきゃいけなかったのに!!!
さらにオカッパの後ろに毛むくじゃらのでかいバケモノが現れた!


「母ちゃん!!逃げて!!!」

「一護!?」


『ひひひひひひひひ!逃がさんよ小僧ォ!母子共々喰ろうてやるわ!!』


バケモノが襲い掛かる!


ダメだ!間に合わない!


ダメなのか!?オレはこのまま何も守れないで死ぬのか!?


『グェベッ!!』


突然バケモノが何かに当たって動きが止まる。


いや、良く見るとガラスケースみたいなので囲まれてる!?


『なんじゃこれは!?何をした小僧ォ!!!』


そうバケモノが叫ぶと突然雲が割れた。





『イ!ナ!ズ!マ!キィィィィィィィィィィィィィィック!!!!』






そんな叫び声と同時に月の光をバックに『何か』がバケモノの上に落ちてくる!


ズドォン!!!


『ガァァァァァァァァァア!!!!!』


それは空から降ってきて、バケモノを一撃で倒した『ヒト』だった。


『フゥ…間に合ったか』


それは仮面を被った『ヒト』だった。


『大丈夫か少年?』


星のように輝く眼をしている『ヒト』だった。


俺はその仮面の奥で輝く、星のような目に見惚れていた。






─── でもね一護クン、そんなときは『ヒーロー』が助けに来てくれるかもしれないよ?
















dream -1.   『Sparkling Star and Strawberry』


















───────── ちょっと前、優姫




─── にしても何で安藤君は


<<マスター!ホロウです!>>

『え!?あ!しまった!』


回想時に来るとは何て卑怯なホロウだ!絶対に許さん!
思わずRXみたいな言い方になった。

即座に能力を発動!


『結!』

<<Inconspicuous>>


ホロウが二重の結界で閉じ込められるのを確認!


そして足に霊圧を凝縮させて~~~~~くらえ!


『イ!ナ!ズ!マ!キィィィィィィィィィィィィィィック!!!!』


ズドォン!!!


『ガァァァァァァァァァア!!!!!』


あっぶなー!空想癖も大概にしないとな…。


『フゥ…間に合ったか』


そう一護クンに話しかける。


『大丈夫か少年?』


あれ?なんか凄くキラキラした眼で見られてる。
オーガンダムを見たときの刹っちゃんみたいだ。
なんか凄く俺の心の汚い部分が痛む。
クッ…!ヒーロー設定を強め過ぎたかッ!
というか昔似たような出来事があった気がする。

でもまぁバレないでしょ。
身体は大人だし、仮面被ってるし、声は変えてるし、髪型変えて色も変更済みだし。


<<マスター!ホロウが逃げます!!>>


何!?仕留めたはずじゃあ!?


『ヒィィィィィィィィィィィィ!!!!!』


オカッパが物凄い速度で遠ざかっていく。

しまった!アイツ両方倒さないとダメなタイプだったか!

だが逃げられた以上もうすることはない。
少なくとも回復には長い時を必要とするだろうし、その前に死神に狩られるかもね。


『それじゃあな、少年』


「あ!待っ」


一護クンの声を背後に霊圧を足に集中し跳躍。
さーて一応一回りしてから帰るか。


















「ちょっと待ってくれませんかねぇそこの破面サン」




あ゛











『あとがきゴールデン』


ヒーロー設定を強めすぎました。
ティエリア子かわいい!

無事ホロウを撃退できた優姫!
しかし突然現れた謎の男!
一体何者なのか!?
そしてその目的とは!?



「つーまーんーなーいー!ウジュジュジュー」と思ったあなたは今までお付き合い下さりありがとうございました。
音速ウサギと末永く幸せにお暮らし下さい。そしてたまにお邪魔させて下さい。じゃがいも持って行きますから。

「男の正体は何者なの!?またオリキャラ?それとももしかして!」と思ったあなたは…フフフ!
次回をお楽しみに!

「ライダーごっこはいい加減卒業しろよ」と思ったあなたは事あるごとに「なぜならば!」と叫んでみて下さい。
心の中のバスターマシンを見つけることができるかもしれません。



次回、その他大勢登場。




あ、それと「致死量なので1話の分量減らして」とか「読みづらい(涙で)」とか
「ここの意味が分からない(過去に目を逸らしつつ)」等のご意見、アドバイスありましたら遠慮なくどうぞ。
チラシの裏ですので。


PVが1ゼーガ超えててビックリ。



[5293] 嘘予告「だって1回はやってみたいじゃないですか」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/01/21 19:55
始まりは、一人の死神だった。

デデッ デッデーデ

「貴様が………死神になるのだ!」



始まりは、一人の滅却師だった。

デデッ デッデーデ

「僕は死神を憎む」




始まりは、一人の介入者だった。

デデッ デッデーデデッ!

「私は糸井優姫、よろしくね一護クン」







「俺は護ってみせる!そのためのこの力だ!」



        ド         ン!






(悲しげなピアノソロ)



「私を…追ってなど来てみろ…私はお前を絶対に許さぬ」


さらわれたルキア。


「俺はまだ…守られてばかりだ…」


失意の一護。


「ダメじゃないですか…そんなウソついちゃあ…」


壊れゆく日常。


「お前もか浮竹ぇ!」


そして予期せぬ裏切り。









「卍ッ!!!   解ッ!!!!」
(一護卍解&ここからなんかOPっぽい主題歌スタート)


キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!ギィン!!!
(斬りあう一護達と隊長格達、最後はつば迫り合い)


「こりゃあ…マズイな」
(回転カメラワークで大勢の破面に囲まれる一護達)



徐々に流れを異としていく世界!
はたして一護達の!そして優姫の運命は!?



妄想版BLEACH
流れ行く星々の在り方~LIKE A SWEET DREAM~


20009年冬、公開。













「悪い…遅くなった」

「遅すぎません?」

「敵は多いな…」

「何…大した事じゃないさ」

「そうだな」

「今夜は」

「俺と」

「私で」





「「ダブルヴァイザードだ!!!!」」

   ド        ン!









『あとがきゴールデン スペシャル』


ウソ予告って良くあるじゃないですか。
次から原作1話に突入なのでやってみました。
でも普通に書くの難しかったのでこうなりました。
痛すぎる。
皆さんの脳内メディアプレイヤーでお楽しみ下さい。



それと、一応夢の断片は原作に追いつきそうな程あちこちロングパスされています。
あとはその夢の断片というあちらこちらに点在する小島を妄想という名の橋で上手く繋げるだけです。
まるでグランドラインですね。
既に海の藻屑になりそうです。





次回から本編開始ですよー!
でもしばらく内容普通でーす!



[5293] 第6話「ようやく本編開始時期になります」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/01/06 23:55
「さて、アナタ…一体何者ッスか?」


うおおおおおおおおおおおお…。
やっちまったズラ…。



浦原喜助登場!



敵サイドで(雰囲気的に)



そういえばステルスモードにするの忘れてた。
死にたい。
残心ってやつだっけ?終ったからって気を抜いちゃダメだね。


「まだ破面はアナタみたいなのを生み出す程完成度は高くなかったはずだ」


ですよねー。
だって俺破面じゃないし。
っていうか逃げたい。アズスーンアズポッシブル。


「だんまりですか?それじゃあ、あの親子を助けた理由は何スか?」


いやだってそれ目的で来たんだし。


「まぁアタシも彼らを守るために来たんスけど、アナタのコトはあの攻撃の瞬間まで全く気づきませんでした」


あ!もしかして一護パパの『手を打ってみる』って浦原さんのことか!
しまった!俺来なくてよかったんじゃん!

は、ハズカシイ!ヒーローちっくに決めてた自分が凄く恥ずかしくなってきた!消えてしまいたい!
『フゥ…間に合ったか』 『大丈夫か少年?』
ああああん!思い出すだけで変な声が出そうになる!
大丈夫か聞くべきなのは俺のアタマの方だよ!
ってそうだ!今からステルスにして逃げればいいんだ!


「どうやら…答えてくれる気は無さそうですねぇ…」

「『結界』」

<<Isorate>>

「ッツ!?」


結界を体周辺に張ってステルス完成。
しっかしこのスキルはチート過ぎるなぁ。
さて、消えた俺に驚いてるようだし今のうちにさっさと逃げるか。






───────── 浦原喜助


さてさて、一心サンに頼まれて以来行ってた真咲サンと一護クンの周りの虚監視。
センサーに引っかかったからきてみれば…。
まさかこんなことになるとは予想外っスよ一心サン…。


全く霊圧を感知させること無く現れ虚を倒した破面。
いや、もしかするとあれは虚化した死神?
しかし虚化したなんて話は平子サン達以来聞いてはいない、愛染の子飼か?
でもそれならば2人を助ける理由が分からない。
やはり破面だろうか。
それでも何故助けた?
やれやれ、分からない事だらけだ。


そして何か聞き出そうとしてみれば目の前で突然消えるときたもんだ。
警戒させすぎましたかねぇ…。



「っていうか結局何も聞き出せなかったっスねぇ…」


さて、ジン太や雨が待ってるだろうしこっちも帰るとしますか。


「ハァ…」


思わずため息が出る。
あー…幸せが逃げていく感じがするっス。












dream 1.   『BLEACH START UP』











「それじゃ行ってきまーす」

「いってらっしゃーい」

「後でパパたちも入学式行くからねー!」



そう、今日は空座第一高等学校の入学式。

田中真二改め糸井優姫(15)、この春、高校生になりました。ちなみにもうすぐ(16)です。

まぁ言いたいことは多々あるだろうがそこをあえてスルーするのが紳士のたしなみだと思う。



「おはよー!優姫ちゃん!」

「お早う、織姫ちゃん」


あ、織姫ちゃんとはもう友達なのよ。
中学からの親友なんだよね、羨ましかろう。
相変わらずかーわいーいーな~。


「優姫ちゃん、たつきちゃんは?」

「あーたつきちゃんなら朝一で行ってそう」


そんな事を言いながら歩いてると前方にオレンジ頭発見。


「お早う、一護クン」

「おう、優姫か。っとそれに井上も」

「おはよう、黒崎くん」

「入学早々両手に花だね。羨ましいぞ一護クン」

「バッ!お前いきなり何!」

「ハハハ、いいじゃない。ほら、皆から早速注目の的だねぇ」

「2人とも特徴ありすぎだよぅ…」

「大丈夫、織姫ちゃんは抜群に可愛いから十分目立つ!」

「えっ!?そんな…」


おーおー赤くなっちゃってまぁ。




そんな感じで校門に着くとチャドくん発見。


「よう、チャド」

「お早う、チャドくん」

「おはよう、茶渡くん」

「ム…おはよう」


相変わらずでかいな。
2m近いぞ。


「それじゃ俺とチャドはここで別れるわ」

「ん、OK。私らは先にクラス分け見に行ってる」

「え?どういうこと?」


2人が歩いていくのを見送る。
織姫ちゃんは頭の上に「?」が浮かんでるみたいだ。


「ああいうこと」


俺が指を指すと2人の元にヤンキーな面々が集まっていく。
そしてケンカに発展。


「うわ…大変だね…2人とも大丈夫かな?」

「あの程度でやられる2人じゃないよ」




軽く笑いつつクラス分けを見に行く。













「あ、おはよーたつきちゃーん!」

「お早う、たつきちゃん」

「ああ、織姫と優姫か、おはよー」

「それでお楽しみのクラス分けの方はどーうーかーなーっと」

「アタシらみんな1-3だよ」

「たつきちゃん酷い…まるで鬼のようだよ…悪鬼羅刹も裸足で逃げ出すんじゃない?」

「そこまで言われんといかんのかアタシは」


と軽口を叩いてると、掲示板を見て織姫ちゃんが言った。


「あ、黒崎くんたちも同じだね」

「マジか」

「マジマジ、賑やかなクラスになりそうだよ」

「うるさいと言わないだけたつきちゃんは優しいと思う」

「あはははは…でも優姫ちゃん、面白いねコレ」

「ああ…凄いねコレ」





1 有沢竜貴
2 糸井優姫
3 井上織姫





女子は上から名前順でコレだよ。
素敵すぎる。
今年は前にたつきちゃん、後ろに織姫ちゃんと良い感じに挟まれる素晴らしいスタートになりそうだ。



「さて、それじゃクラスの方に行こうか」

「了解っ」

「はーい」


トコトコ歩いてるとさっきまでいたクラス分けの所から叫び声がする。
あ、あれは…!




誰だっけ。


片方は覚えてるのよ、「ハローハロー」水色だ。
そしてもう片方のうるさいのは…あ、掲示板が割れてヤンキーが飛び出してきた。
あの2人のケンカで吹き飛ばされたか、ご愁傷様。


「チャ…チャドと黒崎だーーーーーーー!!??」


チッ。誰?って言ったら「ご存じないのですか!?(以下略」とか言おうと思ったのに。
そうです。君らの目の前にいるのが馬芝中で最も有名だったチャド&黒崎です。
あ、巻き込まれた。かわいそうに。
さて、先を急ぐか。


「優姫、訂正。やっぱうるさいクラスになりそう」

「でしょ?」

「あはははは…」







クラスについた。
席は…男子列女子列交互の名前順か。
席に座ろうと思ったけど織姫ちゃんの左隣にはもう男子がきていてご挨拶がスタートしておられる。


「初めましてー。井上織姫です。よろしくお願いします」

「ん?ああ、僕は石田雨竜だ。こちらこそ宜しく」




石田さん発見。




実は初めて見た。
始解後初期に探してみたけど見つからなくてさ。
途中で「あ、死神に監視されてたんだっけ…今マユリ様に見つかるのはヤバイな…」と思って諦めたけど。
おじいちゃん見捨ててゴメン、でもそうしないと色々問題も出てくるんだ。本当にごめん。


「それでこっちの2人が有沢たつきちゃんと糸井優姫ちゃん!」

「有沢たつき、名前はひらがなでヨロシク!」

「初めまして、私は糸井優姫。よろしくね。ちなみに髪の色は天然」

「!? ああ…こちらこそよろしく」


うむ、やっぱ髪がエメラルドグリーンとか驚くよね。
マンガやアニメでしか見ねえよこんな髪色。






遅れて一護クン達が入ってきたので紹介しあう。
一護クンの霊圧に反応してるなぁ。だだ漏れだもんね。
ちなみにさっきの名前忘れてた人は「浅野啓吾」でした。たつきちゃんの左隣。
俺と織姫ちゃんを見て目の色が変わってたので視線で黙らせておいた。
ハローハローはたつきちゃんの右隣。
俺の周りメイン&サブキャラ多いな。
ちなみに一護クンは離れて左後ろの端っこ。
ああ、隣の女の子が怯えてる。






「ム…よろしく」

「よろしくねー」


そんでもってチャドくん俺の右隣。
すげえ存在感。


さーて、ついに高校生活の始まりだ。


ちなみに黒崎家と我が家の両親が式でやけに目立ってしまい、
お互い恥ずかしい思いをしたのは早く忘れたい。
あと真咲さんが今この場にいるって事を考えてちょっと泣きそうになったのは内緒だ。








翌日、遊子ちゃん、夏梨ちゃんに会うついでに一護パパにこっそり予告。


「もう暫くするとホロウとそれを追う死神がきます」

「突然ながらなんとも嫌な話が…。てか優姫ちゃんの予言久々だな」

「あースイマセン…それで一護クンが死神化して退治します」

「いやいや、礼を言いたいくらいだ。にしてもそうか…一護がか…」

「はい、それで皆さんも怪我をすると思うので、今回は万が一に備えて私も気をつけておきます」

「いいのか?連中は危ないぞ?もし優姫ちゃんに何かあった日にゃおじさんがセキニン取っちゃうぞ?」

「セキニン言うな」

ドムスッ!

「目が痛い!?」


軽く目を潰しておいた。


「で!ですね」

「ハイ…」


めそめそするな一護パパ


「とにかく今回怪我や怖い思いはすると思いますが死にはしません。あと最後は記憶も怪我も消されるみたいです」

「ああ、分かった。それで優姫ちゃん」


何だ?急に目が真剣になったな。


「ハイ?」

「いつ一護の嫁に「きません」ハイ…」






そうこうしてると真咲さんが来た。

「あらあら、こんにちは優姫ちゃん」

「こんにちは真咲さん」


わーホント年とらねえなこの人。永遠の17歳か。
どうでも良いが声優って何か思い出すな。
確かラジオか何かで『合言葉は


「おねーちゃーん!」

「Beeeeeeeeeeeee!!!!!!!」


遊子ちゃんのロケットハグが鳩尾にめり込んだ!
元気だね!
おっと何考えてたか忘れたが命拾いした気がする。





この後夏梨ちゃん交えて楽しく遊んだ。キャッキャウフフ。




















それからしばらく経った5月半ばのとある金曜日。




<<マスター、黒崎家に>>

『ああ』







ついに






物語は幕を開けた。














『あとがきゴールデン』


いよいよ本編開始です。
今回少し挟んだ小ネタですが作者すら対象ではありません。
もしダメージを受けた方がいらっしゃったらその方は相当の猛者ですね。




「普通だ…」と思ったあなたはしばらくこんなSS忘れて下さい。
その方が人生有意義に使えるでしょう。

「スピカの能力はー?」と思ったあなたはもうしばらくお待ち下さい。
でも余り期待しない方がいいでしょう。

「むしろ織姫に挟まれたい」と思ったあなたはちょっと体育館の裏に来て下さい。
お話があります。



次回、最も美しい(笑)登場。



[5293] 第7話「NHKラジオ聞いてたら<わたしにできること>が流れて大笑い」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/01/06 23:58
俺が何をしたって言うんだ。


確かに俺は昔から霊が見える。


1回だけだが「ヒーロー」も見たことがある。


だからと言ってなぁ…。






「私は死神だと言っておるだろうがたわけ!」


これはねぇよ。













dream 2.   『Death and Strawberry and Star』













いきなり俺の部屋に上がりこんできた黒い侍らしき着物を着た女。
自称死神。



「ありえねぇ…」

「貴様まだ信じぬか!」

「だからホロウを退治しにソウルソサエティから来た死神だってんだろ?」

「そうだ!」

「信じられるかボケェ!!」




なんてやり取りをしてたらおふくろに心配されるわ親父はでしゃばるわで俺は疲れていた。


「あー分かったからとっとと出てけクソガキ」


そう言った途端体は動かなくされるわ俺に憑いてたおっさんは成仏させられるわで俺はさらに疲れることになった。

そしてこの死神とやらの説明によると、
とにかくそのホロウとか言う悪霊を退治しにきたらしい。


「だったらこんなトコいねぇでさっさとソイツ片付けてこいよ!」

「いや…それがこの辺に来てから気配を感じなくなってな…」

「はぁ?」


ウオオオオオオオオンン!!!!!


「おい!今の声!」

「何か大きな力に感覚を阻害されているような…」

「おい!死神!」

「何だ?」

「今の声だよ!」

「何?」


オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!


(コレは間違いなく虚の声!しかしまだどこか聞こえづらい…なのにこいつは私より早く気づいた!?)


「きゃぁ!」

「遊子の声…!?」

「貴様はここで待ってろ!」

「バカ野郎!襲われてるのは俺の家族だぞ!」


まだ体が動かねぇ!それでも力を込める!


「うおおおおおおおおお!!!!!」


バキィン!

体を縛っていた何かが壊れた!よし!


「何!?バカな!人間に出来るわけが!」


ドアを開けると廊下に夏梨が倒れていた、額を怪我してる!!


「一兄ィ……」

「大丈夫か夏梨!」

「壁が壊れて…お父さんが…背中から血を流して…何かでっかい…のが…」


気を失った夏梨を寝かせて1階に急ぐ!

クソッ!何が起きてやがる!


「待て!貴様!」





壊れたテーブル、
気を失ってるおふくろ、
おふくろを抱えながら血を流して倒れている親父、
そして。


「あのとき見た奴…か?」


いや違う、何処となく似てはいるが見た目は殆ど違う。


「そうか、お前らがホロウなのか…」


間違いねぇ、こいつはあの日俺たちを襲った奴の仲間だ。

ふと目線を横にすると右手に遊子を握っているのが見える。


「テメェ…!遊子を放しやがれ!!」

「オオオオオオオオ!!!!!」

ドスゥ!!!

「グゥッ!ッカハッ!ゲホッ!ッハァ!」


バットを手に殴りかかるが逆に殴られて吹き飛ぶ!クソッ!


「何をやっている阿呆が!」


死神がホロウの腕を斬り、遊子がその拍子で放り投げられた!

それを受け止める!


「遊子!大丈夫か!?」

「狼狽えるな小僧!まだ誰一人魂を喰われてはおらん!」

「まてよ!ホロウは魂を喰いに来てんだろ!?じゃあ何でウチの!」

「霊的濃度の高い魂を求め彷徨う際に、無関係の人間を襲うのは間々あることだ」

「ってことは…」

「そうだ、死神が見え、鬼道を破る。貴様程霊的濃度の高い人間は初めて見た」

「じゃあ…」

「そうだ…奴の狙いは貴様だ!」

「俺…なのか?俺のせいで親父が血だらけになって、おふくろは倒れてて、遊子と夏梨は…」

「待て!私はそんなつもりで言ったわけでは」


ゴドォン!

ホロウに死神が吹き飛ばされる!

畜生!何なんだこのふざけた状況は!


「っざけんなよ…テメェ…いい加減にしやがれ!俺が喰いたいなら俺とサシで勝負しろ!」

「莫迦者がッ!」


ホロウが俺に襲い掛かる!

ふざけるな!このまま素直に喰われてたまるかよ!


だが、次の瞬間俺が見たものは───


バギン!


「ガハァッ!」


俺を庇ってホロウに噛まれる死神だった。


「くうっ!」


ザシュ!

なんとか死神が一太刀入れてホロウが引き下がる。


「莫迦…者め…貴様が勝てんことは分かっていただろうが…自分が喰われれば済む話と思ったか…たわけが」

「わ、悪ィ…俺はただ…」

「気にするな…だがもう私は戦えぬ…このままでは皆喰われるだろう…」


その言葉に思わず拳を握る手に力がこもる。


「また…俺は何もできねぇのか…」

「家族を助けたいか」

「出来るのか!?」

「ああ…もうこれしかない…」

「どうすればいい!」

「貴様が……死神になるのだ!!」

「わかった!でもどうやって!?」

「即決だな…気持ちは分からんでもないが。まぁいい…とにかくこの斬魄刀を胸に突き立て私の力の半分を注ぎ込む」

「それで戦えるんだな!?」

「ああ…だが覚悟は良いか?下手をすれば…」

「覚悟なんざもう6年前から出来てるんだよ!」


そうだ、俺はとうにあの日からそんな覚悟は決めていた。
今回『ヒーロー』は来ない。
なら俺が遊子や夏梨の『ヒーロー』になってやるさ。
それに俺がここで喰われたらコイツは間違いなく次にアイツを狙う。
それは絶対にさせねぇ!

死神を立ち上がらせ、刀を胸に当てさせる。


「全くおかしな奴だ。普通躊躇するところだろうに」

「いいから早くやれよ死神、アレがいつまで待ってくれるか分かんねえぞ」

「“死神”ではない“朽木ルキア”だ」

「そうか、俺は黒崎一護だ」


お互い刀を掴む。

俺の胸の中心に刀を当てる。

そして。


「いくぞ」

「…ああ」


貫いた。












───────── 優姫


長ッ!

何チンタラしてんだよ!と素でハラハラした。

よくオリ主が原作に沿ってイベントを見守るだけの展開ってあるけど、
実際自分の立場になるとキツイなコレ!

っていうか斬魄刀解放しろよルッキーニ!
いや、されても話の流れが変わるから困るんだけどさ。

ホロウと死神の霊圧を感知してからステルスモード最大速度で飛んできたんだけどさー。

いやー手が出せないってすげーやきもきする。
黒崎夫妻がやられた瞬間マジで出て行きそうになった。
っていうかイベント戦じゃなければ速攻俺がブチ殺しに行ってる。

まぁ放っておくのも気分悪いので、こっそり窓から入って皆ある程度治しておいたんだけどね。
このぐらいなら問題無いだろう。
わったーしにーでーきることー♪

皆、致命傷の類は無かったので一安心。
もしかして真咲さんここで修正されちゃうんじゃね?とハラハラしてたけどナイス一護パパ。


そうこうしてるうちに死神化した一護クンがホロウブチ殺し。

背中に  ド    ン  って見えそう。

いやーようやく原作1話ラストだね。
実に長かった。
本当に長いのはここからとも言えるけど。

今頃ルキアさん
「莫迦な!死神の斬魄刀があのような大きさになるだと!?」
とかビビってるんだろうなぁ。
アレ中身スッカスカですよ?



それと一護クンの漏れてる霊圧って大きすぎて周りの感覚鈍らせる効果あったのね。
もう慣れっこだからよくわからないや。
そして多分コレ以降使われない設定だね。


「スピカ、そのへんどうなの?」

<<おそらくマスターの場合既にあの霊圧に順応しているのかと>>


あー、それじゃあ一護クンが霊圧抑えられるようになっても感知能力のパワーアップは無しか。
重りを外したロック・リーみたいなことにならないかなぁと思ったんだが残念。


<<それよりも、そろそろ来ます>>


おっと、そういえばこの後浦原さんが来るんだっけ。
逃ーげよ。
今はまだバレたくない。







翌日、朝早く登校。
何故かって?ルキアさん学校初日だからだよ。
一護クンのリアクション含め色んな意味で楽しみ。


「おはよー!優姫ちゃん!」

「お早う、織姫ちゃん」

「もー!今朝はどうしたの!?」

「ゴメンゴメン、なんかやけに早く目が覚めちゃって」

「あたしだったら二度寝かゆっくりするかだよ?」

「ゴメンってば、って織姫ちゃん?その手は?」

「あ、これ?昨日ケガしちゃって…」

「ハァ…後でね」

「う、うん…」


そんな日常会話をエンジョイしてるとHRになった。


「お前ら喜べー。転入生だぞー」


来た来た。


「優姫ちゃん!転入生だって!」

「こんな中途半端な時期に不思議だねぇ」


いや、ホントに不思議だ。
一体どうやって手続きとかしてるんだろ。


「おっかしいなぁ…あたし今日パンくわえて来たけどぶつからなかったよ?」

「ん~ちょっと待って?織姫ちゃん今日遅刻とかは…」

「全然、余裕で間に合いました!」

「だよねぇ…じゃあ何でパンを?」

「昨日ご飯は外で食べると美味しいってテレビで」

「ああ…そういうことね…ちなみにパンをくわえるのは転入生の方だよ…」

「なーんだ。だからかぁ」

「たつきちゃん見てないで助けて」

「無理」

「薄情者め」


そんな天然さんを相手にしてるとルキアさん登場。


「朽木ルキアです。皆さんどうかよろしくお願いします」


なんか笑顔でキラァァァァ!ってオーラ出してやがる。
素を知ってるだけに噴出しそうだ!
美少女設定を強めすぎたか!


「オホォォォォォ!」


浅野くんが異常に興奮しておられる。
落ち着け、中身は年齢的にババァどころじゃないぞ。
200近いかもしれん。

しっかしアレが浦原製の特別義骸か、
それにルキアさんにはもうアレが埋め込まれてるんだよなぁ…頭が痛い。


ちなみに席替えして今は壁際、前に織姫ちゃん、後ろにモブ男子、隣に石田くんという配置だ。
毎日罪悪感で胸が痛い。


ルキアさんは…っと一護クンの隣か。
いやー、一護クンが来るのが楽しみだ。



そして二限目が終った休み時間。
一護クン登校。


「うーす」

「遅かったね、トラック突っ込んだらしいけど大丈夫?」

「おう、全員無傷だ」

「えっ!?黒崎くん家トラック突っ込んだの!?」

「みたいよー」

「アタシも今知ったよ…」

「いやー遊子ちゃんや夏梨ちゃんに何もなくて良かった♪」

「ああ…そうだな」


そして一護クン着席。

さ あ は じ ま り だ



「貴様…あなたが黒崎くん?」

「ん?」

「よろしく!」


ブフゥー!
もうおなか痛い!
すげえビックリしてるよ!
もう汗ダラダラだよ一護クン!
こらえろ!こらえろ俺!


「あ、彼女転入生の朽木さん」

「なっ…なんでてめぇ…」

「黒崎くん私まだ教科書とかないの。貴さ…あなたのを一緒に見せてもらってよろしいかしら?」


そう言って手を差し出すルキアさん。


「ね!」


見えた!手に「さわいだら殺す。」って書いてある!
「ね!」じゃねえよ!「ね!」じゃ!
面白すぎる!


そうしてルキアさんを連れて出て行く一護クン。
残念一護クン、もう少し周りの目を考えましょう。
転入生(女子)をいきなり連れ出すだなんておにーさん悲しいです。
騒ぎ出すクラスメイト、「ホゲェェェェ!!」と奇声を発する浅野くん。
実に面白い。


そういえばこの流れは、死神の力を失ったとか尸魂界に帰れないとかその辺の話かな?
あ、この感じは死神化したみたいだねぇ。
これから死神代行か。ご苦労様です。



その後、魂の抜けた一護クンの体は保健室行き。
昼休みに戻ってきた一護クン達を見つめていると「ハッ!」とした顔になったので「いい笑顔」を見せておいた。
一護クンの顔が青ざめていたような気がする。
失礼な奴だ。








『あとがきゴールデン』


ようやく死神化しました。
さーこっからがたいへんだ(浦原風に)


「前半いらねぇ」と思ったあなたは作者もわりと同感ですのでお気になさらず。
今回も話薄くてスイマセン。

「ねぇねぇ、ハリベルさんは出ないの?」と思ったあなたは本誌で出ておりますのでそっちでお楽しみ下さい。
作者の嫁のハリベルさんが頑張っております。

「ルッキーニ?」と思ったあなたは目ざといですね。
作者脳内でのルキアさんの別名です。特にロマーニャの縞パン娘とは関係ありません。

次回、お話…しよっか…発動。



[5293] 第8話「新年一発目がこんな話でごめんなさい」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/01/06 23:40
いきなりだが一護クン転入生をいきなり連れ出して昼休みに戻ってくるの巻より学校も終わって下校中。
織姫ちゃんたちに別れを告げてからわき目も振らずに歩き続ける俺。目的地はもう近い。
ちなみに学校からずっと後ろについてくる一護クンが何か言い訳をしてるようだが今はガン無視。
ストーカーは犯罪です。
しかし俺は全く気にすることなくサクサク歩く。
さーこれから弄るぞー。
弄るよー。


そして着いたのは黒崎家。
中に一心さん発見。即行動。
勢いよくドアを開けて中に駆け込む。


「オジサン!大変!一護クンが転入生の美少女を突然校外に連れ出してとても口ではいえないことを!」

「何ィィィィィィィィィィィィィィィ!!??」


おお、ガシャァとイスから転げ落ち絶叫という思った以上の反応。
頭に何故かペンが刺さってるというマンガ的な表現が使われている辺り流石だ。


「そうなんです!今日一護クンが転入生の子と話をし始めたと思ったら突然!突然一護クンが…」


驚き慌てる一心さんに答えつつもさり気に泣きまねを入れる。
一護クンはもう既に物言わぬオブジェと化しているようだ。
この糸井優姫容赦せん!


「な…何をしてやがる一護ォォォォォォ!」

「ヘブウッ!」

オジサンが一護クンに駆け寄り、勢いを乗せた右ストレートが炸裂!
おー予想外の展開に呆然としてた一護クンが華麗に吹っ飛んだ。
森崎くんかお前は。


「一護ォ!お前は優姫ちゃんというスーパーな幼馴染がいながら転入生の子に何をしたんだ!」

「バカ!違ェよ糞オヤジ!つーか優姫も俺の話を聞けぇ!」


まるでバサラのようなセリフを言い始めたな。
争いなんて下らないぜ!
だが一心さんはまだまだヒートアップ。


「何だ!幼馴染の次は転入生で両手に花か!?たつきちゃんと織姫ちゃんも入れて両手足か!?クソゥ!俺だってな!」

「あらあら」

「ゴフゥッ!」


いつの間にか笑顔の真咲さんが一心さんに後ろからチョップ喰らわしてた。
ワーオ…真咲さんマジ強い。
黒崎家の中心は伊達じゃないね。

そして倒れ付してビクンビクンしてる一心さんと未だ地べたに座り込んでる一護クンの前でほのぼの挨拶。


「お、おふくろ…」

「こんにちは優姫ちゃん」

「こんにちは真咲さん」

「あの…」

「ごめんなさいね~ウチの主人がうるさくって」

「いえいえ~ノリが良くて助かります」

「あ…」

「それより一護が何かしたみたいだけど」

「ああ、そうでした」


グルンッ!

俺が急に首だけ振り返ると「ヒィ!」と一護クンの声が漏れた。
こんな美少女を捕まえて失礼じゃないカナ?カナ?


「ちょっと一護クン借りますね」

「丈夫だから好きにしちゃっていいわよ」

「ちょ!おふくろ!」


さぁ真咲さんからお許しも出たし一応昨日のことを聞いておくか。
それと素のルキアさんとも会っておかないとね。
後から迂闊に単語とか漏らして怪しまれるのはかんべんなのよー。

ガシッと一護クンの頭を掴む。


「お話…しよっか…」

「ハイ…」









dream 3.   『Please Tell Me』










場所は一護クンの部屋。
相変わらずどっかで見たような部屋だ。
いやまあジャンプで見たのだろうが。


そしてベッドに座ってニコニコ顔で尋問中の俺と気まずそうな顔でクッションに正座中の一護クン。
ぱっと見リリカルなアニメで見たことあるような構図だなぁなんて思いつつ、知ってる事なんだけれども一応尋問スタート。


「でぇ、一護クンは結局朽木さんと何があったのかなぁ?」
「あー、いや、その…」
「おやおやどうしたのかなぁ、まるで本当に人には言えないことをしていたみたいな態度だねぇ」
「いや!そういうわけじゃねぇ!」
「それじゃぁなにをしてたのかなぁ?」
「あー…じゃあ言うぞ?いいか?」
「うん」
「死神…って信じるか」
「一護クンとうとう頭を…」
「いや!待て!マジにいるんだよ!」
「大変だわ…これは黄色い方の救急車かしら…」
「だから朽木ルキアは死神なんだって!」
「ああ、やっぱり?」
「は!?」
「だって普通の人とは感じるものが違うじゃない彼女、気づかなかったの?」
「そんなの分かるのか!?つーか最初から気づいてたなお前!!」
「アハハ、あったりまえじゃない。元々人と霊の見分けがついてた私よ?あ、オジサンとのあれはその方が面白かったから、以上」
「お前な…」
「いきなり転入生連れ出して昼休みに2人で戻ってくるってのは実際のところ客観的に見てどうかと思うけど?」
「ウッ…た、確かに…」
「下手したら明日からいろんな噂が立つかもねー、いやもう立ってるかな?」
「マジか…面倒なことになったな…」
「まぁその辺は何とか頑張りなさい。ねぇ?」


とおもむろに窓の方に話しかける。
すると。


ガラガラガラ


「気づいていたか」

「まぁね。そのくらいは気づくよ」


窓からルキアさん登場。
実は今さっき気づいたのだがどうやらずっと窓の外で待ってたようだ。
いや、まぁある程度お約束っぽくはあるのだけど通行人達から見られたらどう思われるかとか少しは考えて欲しい。
やはりこいつ…天然か…たいした奴だ…。


「うおっ!何時から居やがった!」


突然現れるルキアさんに驚く一護クン。
気持ちは分かる。俺も窓からいきなり人に入ってこられたら思わず斬り殺すかもしれん。


「フン、貴様もこれから私の代わりをするのだからこのぐらい気づけんでどうする、たわけが」

「あーそっちが素なのね」

「ああ、そういうことだ。私は朽木ルキア、今そやつが言っていたとおり死神だ」


というか疑問なんだがいつからスタンバってたのだろうかルキアさんは。
もし今の季節が冬で雪なんか降っちゃってる日に頭が雪で軽くホワイトデコレーションされたルキアさんが震えて鼻水すすりながら
「き、き、気づいてクシュン気づいていたか」とか言いながら入ってきたら俺は余りのバカ可愛さに思わず抱きしめてしまうことだろう。
今が5月で命拾いしたなルキアさん!
勝手にキャラ付けした俺は脳内以外ではルキアさんをルキアちゃんと呼ぶことに決定。特に意味は無い。


「それでルキアちゃんの代わりにってのはどういうこと?」

「ルキアちゃ……。実はだな…昨日ホロ…悪霊退治の際に…」


以下説明
要するにホロウ退治に失敗して一般人の黒崎家を巻き込んだ上に死神の力を全て一護クンに吸い取られてしまい、
力が戻るまで尸魂界にも帰れないので力が戻るまでは代行をさせるとのこと。
ちゃんと原作どおりに進んでるようで何よりだ。
まぁ昨日一部始終は見ていたんだけどね。
にしても物語導入のためとはいえヘタレすぎるぞルキアさん。


「で、説明してくれたってことは私に記憶置換はしないって事でいいの?」

「ああ、どうやら糸井は「ストップ」ん?」

「優姫でいいよ」

「いやしかし」

「嫌ならルッキーニって呼ぶ」

「それでだな優姫」


そんなにルッキーニが嫌か。
いや、恥ずかしいのか?
ちゃん付けの時点で恥ずかしそうだったしな。


「とにかく初めから私のことに気がついてたようだしな。今更記憶をどうにかしたところでまた気づかれては意味が無かろう」

「なるほどね。まぁ私もそれなりにお手伝いできることもあるかもしれないから何かあったら言ってよ」

「そうなのか?」

「最低限自分の身は守れると思うし、他にも色々出来たりするしね」

「お前そこまで出来るようになってんのか!?」


またもや驚く一護クン。
彼の中での俺の力は霊が見えて治癒能力が使える程度なのだろうね、治癒能力は結構早い段階で習得できたし使えるので速攻バラした。
知ってるのは黒崎家とたつきちゃん織姫ちゃんだけだったけど今日からルキアさん←New。

俺の黒歴史は少し特別でな…
・治癒<ヒーリング>
ってやつだ。

ちなみに今朝織姫ちゃんに「後でね」と言ったのは「後で(たっぷり可愛がってあげるから)ね」ではなく「後で(そのケガ治してあげるから)ね」という意味だ。
ついでに説明だけどこの世界にはジャンプはあるがその他の作品、雑誌、ゲームなどは殆どといって良いくらい前世と同じものが無い。
覚えた当時、一護クンに「ホイミ覚えたよ」と言ったら「ホイミって何だ?」と言われたときのショックは大きかった。
何と言っても仮面ライダーの代わりに見たことの無いロボット系ヒーローを日曜朝に放送してるような世界だ。
そしてこのことが俺の人生に大きく響く事になったのだが今は置いておく。
しかし今まで隠してきたとはいえ彼の人生で昨日今日は驚きの連続だろうな。
人生とは驚きの連続だよ一護クン。


「フム…全くそのような感じは無いのだがな。いや、長年こやつといるのならば不思議ではないか」

「この霊圧だからねー、嫌でも勝手に霊的な方面で色々鍛えられるよ」

「そうなのか!?」

「「当然(だ)」」

「お前らほぼ初対面なのに息合ってるな…ん?待てよ、じゃあ遊子とかたつきたちはどうなんだ?」

「んー私に元々素質があったってのが大きいだろうからその辺は何とも」


俺の原作知識でも良く分からないしねぇ。
日常キャラが殆ど戦闘要員になるってのもどうかと思うし。
ブリーチは戦闘系キャラばっかりなんだからもうお腹いっぱいよー。


「あ~そんなもんか。つーか俺そんなに力漏れてるのか?」

「「だだ漏れだ(ね)」」

「そうか…」


シンクロ率90%な俺たちの回答に若干落ち込み気味な一護クン。
そなたは強く生きろ。




その後も少しお話をして色々単語や状況を聞きだしておいた。
これなら俺が護廷十三隊とかのことをポロッと言っても大丈夫だろう。
今回俺がバラしたのは
ホロウ、死神が見える
霊圧集中による攻守の強化
治癒能力、シールドの補助系スキル
くらいだ、今の状況であまり能力をバラすのは避けたい。頼りにされても困るしな。
そしてあらかた話も終ったのでそろそろ帰ることにする。


「さて、それじゃ色々聞けたし私そろそろ帰るね」

「おう、分かった」

「それでは私も必要なものを仕入れに行くとするか」

「ん?そんなモンがあんのか?」

「まぁな、貴様が気にすることではない。貴様はその無駄に有り余った力の使い方でも考えておけ」

「わかったよ、クソッ、好きで有り余らしてんじゃねえよ」

「ハハハ、まぁ実際無駄に漏れてるからねぇ。抑えれるようにするか、何かアイテムに余る力を流してみるとか試してみたら?」

「むぅ…」


ガラガラガラ


「それでは私は行くぞ」

「ああ、ちょっと待って。行けるトコまで一緒に行こうよルキアちゃん」

「わ、わかった…」


ハハハ、恥ずかしがるなこやつめ。
少し顔を赤らめつつ窓から出るルキアさんは可愛いなぁ。


「それじゃまた明日」

「じゃあな」


何やら考え中の一護クンに別れを告げて部屋を出る。
途中、真咲さんに「どうやら勘違いだったみたいです」とのフォローも忘れない。
それとこれからお宅にはドラえもんみたいなのが住み着きますがお願いします。
こっちの方は言わないけど。


「お待たせ」

「うむ、それでは行くか」


2人でトコトコ歩き出す。
普通に歩くだけってのもなんなのでちょっと弄っておこう。


「ねぇ、ルキアちゃんさ、これから何処で寝泊りするの?」

「そ、それはだな…」

「まさか便利だからって一護クンの部屋の押入れとかにコッソリ住み着くとかしないよねぇ」

「うっ!」

「どうしたのルキアちゃん?ちゃんと尸魂界の方で用意した家とかあるんだよね?」

「え、あ、いや、そのだな」

「まさか尸魂界ともあろうものがその程度の施設すら用意できないとかありえないもんねー」

「う、うむ!その通りだ!尸魂界の護廷十三隊なのだぞ!?そのくらい造作も無い!」


すげぇ。
言い切りやがった。
明らかに顔色悪いし目もキョロキョロ落ち着かないのに言い切りやがった。
死神って面白ッ!
でも実際の話、各地域担当死神って寝泊りどうしてるんだろ。
いちいち尸魂界から毎回出向いてくるのかね。

てかそろそろ可哀想になってきたのでやめておくか。


「あーでも素人の一護クンに素早く情報を知らせたりアドバイスするにはやっぱり近くに住んだほうがいいかなぁ」

「む!?そ、そうか!?」


今まで挙動不審だったルキアさんがぱっと顔を上げる。
まるで蜘蛛の糸が垂らされた地獄の住人のようだね。
よし、ならばもう一押しだ。


「ホントはちゃんとした家が用意されてるんだろうけどこの町の安全を考えるとねぇ、ああでもルキアちゃんの負担になっちゃうかー」

「いや!仕方ないな!私も本来は嫌なのだがあやつの家に隠れ住むしかないようだな!」

「わぁ凄い!ルキアちゃん死神の鑑だね!」

「うむ!仕方ないからな!仕方ない!はっはっはっはっは!」


ルキアさんのテンションの上がり具合マジ面白い。
過酷な状況では人はこうも容易く狂うのか。
俺のせいなんだけど。
いやーでもこのぐらい遊んでおかないとこの先頑張れる気がしないよマジで。


「それじゃウチにきてよ。私の服とかで良ければ貸すよ?」

「おお、それは有難い、是非頼む」

「それじゃ私の家こっちだよ」


実は我が家で飼いた…匿いたいのだがなるべく本編に沿って行きたいので我慢しておく。
いいなぁ美少女ドラえもん。
俺のトコにも空から美少女が振ってきたりしないかなぁ。
どこかの研究所から逃げ出してきた美幼女と偶然出会うってのも可。
にしても何で俺ブリーチなんだろ。
普通ならネギま!でチート魔力な俺TUEEE!主人公でヒーロー見参!皆は僕が守る!くらえステキビーム!キャーカッコイイ!パクティオー!とかで女生徒となし崩し的にハーレム作成しちゃったり、
ゼロ魔で現代知識とか活かして貴方はトリステインの宝ですわ!フフフ!子猫ちゃんたちが僕の使い魔になっちゃうのかな?レモンちゃん恥ずかしい!とかで女性陣メロメロにしてハーレム作成とかじゃないの?
リリなので小さい頃からSクラス並の力を身につけて事件に介入して心の隙間につけこんだ説教かまして女性陣に懐かれちゃってなのフェはやてに夜天&管理局チーム加えたハーレム作成するんじゃないの!?
何で俺はTSな上に野郎溢るるブリーチ世界なの?バケモノいっぱいだし住んでる町サクリファイスされそうになるしで俺を転生させた神様見つけたらブチ殺してやりたい。
俺がもし崩玉手に入れたら速攻破面ハーレム作るわチクショウあの偽ヨン様め。
ていうか死神の貴族に生まれて隊長になって可愛い副官とイチャイチャするとか戦いの中で芽生える感情!可愛い隊員達となし崩し的にハーレムできちゃった!とかな展開になるべきだったんじゃないの!?
諸君はこれより隠密機動のさらに裏となる零番隊だ!うおおおおお!!!合衆国ニッポーン!!!!な感じで裏から尸魂界を弄るとかさぁ!
立場微妙な上によりにもよって俺の力の源は黒歴史だよドチクショウ!スピカが可愛いからいいけどさ!


「どうした優姫?突然立ち止まって」

「あ、えっとゴメン。たまに考え事するとこうなっちゃって」

「そうなのか、だが気をつけねば危険だぞ、聡そうなお前のことだからこの先の事など考えていたのであろうがな」

「ハハハ、買いかぶりすぎだよ」


スイマセン本当にめちゃくちゃどうでも良いこと考えてました。




そして我が家に着き、ルキアさんお泊りセット(仮)を渡しておいた。
服については俺のお下がりだ。
それでも若干胸やお尻周りが緩すぎないかちと心配、ルキアさんちっこい上に細いんだもん。
ちなみに俺はかなり良い感じに成長していたり、というか性徴していたりする。
下着の方は新品のをあらかじめ用意しておいたのでこっちは大丈夫だろう。
サイズは想像で選んだ、でも実際ルキアさん見た感じバッチリあってるっぽい。
俺キモイ。

あと当たり前なんだけどもう下着や服を買う事とかに関して羞恥心等というものはもはや全く無い。
最初は凄く挙動不審だったと思う。しかも試着してみると似合っちゃうからこれまた困った。
当時の俺は色んな意味で危険な存在だったと思う。
今では開き直って二人ファッションショー(スピカ含む)やっては楽しんでる俺がいる。
俺超キモイ。


あーそれにしてもルキアさん来たって事はそろそろあのイベントか…鬱になりそうだが頑張ろう。





『あとがきゴールデン』

新年一発目ですがこんな話です。終盤は特に酷いですね(作者の頭が)
実は会話とかで行が多くなったのを前回今回の2つに分けただけと巷で噂になってますがそのような事実は御座いません。
あと今更ながら知ったことがあって若干先の展開の反応が不安ですが突っ込まれるの覚悟で行きます。


「つまんねー」と思ったあなたは作者はこの程度の文才だと思って諦めて下さい。
面白く出来るなら初めからそうしてます。

「話進まねー」と思ったあなたはきっと気のせいです。
1話から7話までで16年も経ったのだから今までが早すぎたのだと考えられなくもありません。

「ルッキーニ飼いたい!」と思ったあなたは千本桜の露となって下さい。
関係有りませんが黒歴史関連は前書いたとおり暫く出ません。多分。


次回、チャドの霊圧が…?



[5293] 第9話「ネットは時間ドロボウすぎると思います」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/01/21 19:56
「ラッリッホーラッリッホー♪ラッリィラッリィラッリッホー♪」


やあやあ初っ端からゴキゲンな田中真二改め糸井優姫(16)ですよー。
別にクスリがキマっている訳ではないのでご安心を。
実は今日、織姫ちゃん家にて、たつきちゃんも一緒に3人でお泊り会ザマス。ヒャッホウ。
TSしてて良かった!と思う瞬間の1つだ!


そんな訳でお泊りセット持って織姫ちゃんのアパートに向かっているんだけど、公園を見たら頭が痛くなる光景が広がっていた。


「たわけ!貴様はこれが何の特訓か分かっているのか!?」

「だからこんなのの見分けがつくわけねえだろ!」

「ム…2人とも落ち着け…」


夕方の公園で言い争いをしているバットを持った高校生と本を持った死神と仲裁を試みる巨人。
文字だけだと何か大事件や冒険の旅が始まるとも思える光景が今まさに俺の目の前に!
こんなスペクタクルいらねえ。
そういえばあんな特訓やってた気がするなぁ。っていうかあのピッチングマシーンみたいなおもちゃはやっぱり浦原商店から持ってきたのだろうか。
とりあえず行ってみるとしますかねー。


「おーい何やってるのー?」









dream 4.   『Be Good Brother』










行ってみるとやはり特訓だったようだ。
ボールに体の部位の絵を描いて、打ち出されるボールの内、頭のボールだけを狙ってバットで打つという特訓。
スゲェ、意味が分からねぇ。
ホロウの頭を狙うのと頭を描いたボールをのみを狙うのは別次元の話だろルキアさん。
どっからその発想が出てきたんだろうか、ルキア脳を一度じっくり調べてみたい。やはり天然なのか。


「ちなみにチャドくんは何を?」

「一護に特訓に付き合ってくれと呼ばれて来た…」

「あー、それで来てみたらこの状態だったと」


チャドくんお疲れ様。
あれ?ホロウの事はもうバラしたのか!?早くないか!?
原作だともう知ってたっけ?チクショウ思いだせん。


「(安心しろ、死神関連のことは一切話してはいない)」


俺の心を読んだかのようにルキアさんが小声で俺に報告。えらいねるきあさん!
でもチャドくんに素がばれてるよ!


「やっぱり実際やらねぇとダメだろ、チャド、頼むわ」

「ム…分かった」


そう言ってバットからスポンジ刀?に持ち替えた一護クンがチャドくんと向かい合って試合開始。
攻撃をかいくぐり頭をスポンジ刀で叩くという訓練らしい。
先ほどのボールよりは良いかもしれないな。にしても事情を詳しく教えられなくとも付き合ってくれるチャドくんマジ優しき巨人。
そして訓練の様子を見守ってると息が上がってきて一時休憩のご様子。


「はぁ…はぁ…やっぱ…こういうのじゃねえと…強くなれる気がしねえな…」

「何かあったのか一護…」


肩で息をしてる一護クンに対し悠然と佇むチャドくん。
ああ、こりゃ「チャドが負ける姿が浮かばねぇ」とか絶大な信頼を寄せられるわけだ。
強いねぇ、おたく全く強いねぇ。


「そういえば最近…朽木との事が噂になってるが…それ関連か?」

「あ!?いやそういうことじゃねえけどよ…」

「何でも朽木の親とタイマンを張るとか…既に子供がいるとか」

「あらやだ茶渡君ったら」


ドスゥ!


「ムゥ…」


ドォォォォォォォン!










……チャドの霊圧が……消えた…?











はええええええええええ!!!!!!そのイベントはええええええええええ!!!!!!
噂の内容に軽く切れたんだろうけど、霊圧込めたパンチを鳩尾に入れるのは酷いよルキアさん!
しかもチャドくん悪くないし!今もうつぶせに倒れたままだし!
ほら!一護クン滅茶苦茶ビックリしてるじゃん!信頼を寄せていた相手がワンパンで沈んだよ!
尸魂界前に『チャドが負ける姿』が目に焼き付いちゃったよォォォォォォォォォ!!!!!


「オイ!大丈夫かチャド!」

「問題…無い…」


駆け寄る一護クンに言葉を返す死に掛けのチャドくん。
見てるこっちが切ないわ。こんなの原作じゃ無かったよ絶対。
もうチャドくんはダメだ…でも今の霊圧パンチでもあんな威力あるのか…対人戦で使うの怖ェ…。
それにしてもこの惨状どうしよう…なーんて思っていたら後ろから声が。


「優姫ちゃーん!何してるのー?って朽木さんに黒崎くん…と茶渡くん!?」


織姫ちゃん来ちゃった、夕暮れのカオスな公園へようこそ。






とりあえず挨拶済ませた後に、今の状況はケンカの特訓中に良い一撃が入って倒れただけだと説明しておいた。
まさか140cmちょいで華奢な少女の一撃で沈みましたじゃかわいそ過ぎる。
そしてそれをアッサリ信じる織姫ちゃん。説明が簡単で助かる。
追記として、ルキアさんの織姫ちゃんに対する、お嬢さまキャラでの挨拶は腹筋に悪かったと言っておこう。


「あ、優姫ちゃん、もうたつきちゃんウチに来て待ってるよ」

「流石に早いねぇたつきちゃん」

「ところで井上、それなんだ?」


織姫ちゃんのもつ袋に疑問を投げかける一護クン。
あ、何か思い出すぞこのシーン。
ネギを片手にお泊り会の食材なんだ~、と嬉しそうに説明する織姫ちゃん。
あー、何かこう、電波が!電波が!
ンパ♪ンパ♪ンパ♪ンパ♪ンパ♪ンパパ♪


「ァヤッツァッツァーヤリビダリリッパラリッパンリンデンデンランドー(以下略」

「いきなりどうした!優姫!」

「何だその珍妙な唄は!怖いぞ!」


うん、俺もいきなりこんな歌を歌い始めたら怖いと思う。
でも前世の記憶が蘇えっちゃったからには歌わずにはいられなかったのよ。
あーPCの前で無駄に時間が過ぎていく感覚を思い出すわー。
まぁ原曲じゃなくて初音ミクの方なんだけど。

歌は良いね、リリンの生み出した文化の極みだよ。長いこと聞かなくともふとした拍子に思い出せる。
ネットはたまに魔物を生み出すから怖い。昔フリーゲームで何十時間も時間ドロボウされたのも連鎖的に思い出した。
コワイコワイ。


「えー、私は良い曲だと思うなー」


若干涙目のルキアさんに反論する織姫ちゃん。
そうだね、織姫ちゃんとは相性が良いかもね、色んな意味で。


「ってあれ?織姫ちゃん腕のケガもだけどその足酷くない?」

「あ!?これはその…ね?」

「その痣…ちょっと見ていい?」

「うん、別に良いよ。昨日何かにぶつかってできたんだと思うけど…」


険しい顔で織姫ちゃんの足の痣を見るルキアさん。
それをさらに険しい顔で見る俺。
あの痣は間違いないなぁ…今日かな…そういえば原作でも現場にたつきちゃんいたっぽいしなぁ…。






そう、実は織姫ちゃんの兄は既に死んでる。
そもそもが純粋に事故での死亡だったらしく、織姫ちゃん関連のイベントをすっかり忘れていた俺は当然そこまでカバーできなかった。
さらに俺は織姫ちゃんが同じ中学にいたことすら最初は気づかなかった。
女子として初の思春期まっさかりゾーンに踏み込むことで周りが見えずいっぱいいっぱいの俺は、
結局織姫ちゃんの兄が死んだ後に、イジメにあってる場面を見かけるときまで気づかなかったのだ。

もちろんそれからはイジメブチ殺すと言わんばかりにイジメ主犯の先輩方に対して『説得』を開始、たつきちゃんを巻き込んで織姫ちゃんの心のケアにも力を入れた。
織姫ちゃんのロングヘアーを切ったことも分かって『説得』をやや頑張りすぎた気もするがまぁ良いだろう。気持ち的にはビッゴー!ショータイム!って感じになったけど。
それからはこの世の終わりとばかりに暗く鬱状態だった織姫ちゃんも、羽化するかのごとく今の天然さんにワープ進化することができました。
めでたしめでたし。










じゃー終らないのよねー。

今まではどっかで隠れて見てたみたいだけど、ホロウ化して今日襲いに来るよねー井上兄。
きっついなー。
とにかく今日は死神ズが来るまで2人を守るとするかー。


「それじゃ私たちはそろそろ行こうか織姫ちゃん」

「うん、あ!笑点始まっちゃう!」

「あ、ちょい待ち」


そう言って『治癒』をかける。チャドくん死んだままだし今のうちにサクッと治しておこう。


「ありがと優姫ちゃん!」

「変に気使わなくて良いから怪我したら言いなさいっての」


即デコピン


「あうっ」

「(それが優姫の治癒能力か)」

「(まぁこんな感じ)」


とルキアさんとナイショ話もしておいた。この後もっと頑張らなきゃいけなくなるから早く来てくださいよー。


「よし、行こうか、それじゃ3人ともまた明日」

「また明日ね」

「おう、んじゃ明日な」

「それでは御機嫌よう」

「ム…」


ルキアさん俺の腹筋を虐めるのはやめてください、大笑いしたくなるのをガマンするのは辛いんです。
チャドくんは死力を振り絞ってまで挨拶しなくていいから早くダメージ回復してください。




んでもって織姫宅到着。中ではたつきちゃんが寝転がりながら笑点見てた。何と言うリラックスぶり。














そして織姫ちゃん特製「なんだか良く分からないけど美味しいもの」を頂いた。
いや、ホント良く分からないけど美味しかった、材料が不明すぎてそこが面白い領域に入りつつある。
そして雑談開始。最近のテレビやら服やら小説やら学校のことやらを話してると、ついに感じたくない気配を感じてしまった。


<<マスター、近いです>>

<<みたいだねぇ>>


あーあ、もう来ちゃうかーやだなぁ…。ちなみに今の会話は俺とスピカにしか聞こえていない。念話とかそんな感じ。
部屋に飾られてたクマのぬいぐるみが倒れる、そしてそれを織姫ちゃんが拾い上げる…が、ぬいぐるみに怪我はない!?
あれ?まず死神を狙うんじゃなかったっけ?おかしいな、記憶違いか?

とか考えてたらクマからホロウの手が飛び出して織姫ちゃんの魂が抜かれた!
しまった!今は考えごとなんてしてる場合じゃなかったってのに!


「織姫ちゃん!」


倒れる織姫ちゃんの体、そしてそれを見て、慌てて織姫ちゃんの体に近寄るたつきちゃん。


「ダメ!たつきちゃん!逃げて!」

「え?」


ドガァ!とたつきちゃんを手で押さえ込むホロウ。
体は下半身が蛇のようなタイプか。つくづくバケモノじみた姿だ。


『たつきちゃん!』


チクショウ後手後手だな俺!とにかくその手をどけてもらおうか!
この場にいるのがただの人間だけだと思い込んで油断してるホロウに霊圧パンチを叩き込む!


<<スピカ!リミッターは!?>>

<<かかっています>>


OK、それなら周りにばれる心配も無いかな?


「その手を離せェ!」


たつきちゃんを抑える腕を殴り飛ばして、ホロウの体がグラついた隙にたつきちゃんと織姫ちゃんの体を回収!
織姫ちゃんの魂は…ホロウの後ろか、今はこっちが睨まれてるから大丈夫かな…。
まだ俺の能力を知られるのは避けたい。
これから先には織姫ちゃん覚醒イベントが待ってるからな。
あークソッ、今使えるのはルキアさんに話した程度か。
早く来い死神ズ。


『貴様…どこまでも俺の邪魔をするのか…』

「どこまでもって…何のことかさっぱりなんだけどねぇ、バケモノさん」

『お前さえ…お前さえいなければ織姫は…』

『優姫ちゃん!たつきちゃんを連れて逃げて!』

「優…姫…何が…」


おいおい、何で俺そんな恨まれてるの?あと織姫ちゃん、それ無理。
にしてもたつきちゃんが一撃でやられたか…やっぱそれなりに強いなぁ。


「ごめんたつきちゃん、今はちょっと静かにしてて」

『2人に何するのこのバケモノ!』

『織姫…とうとう俺のことを忘れてしまったのかい…?』

『え…?』

『俺は!ずっとお前のことを!忘れたことはなかったと言うのに!』


ホロウの鋭い爪が織姫ちゃんを襲う!切れるの早いぞ!井上兄!


「『障壁』!」


ギィィィィン!
俺がとっさに張った桃色の障壁が織姫ちゃんをホロウから守る。
見た目はそれっぽく分かりやすい魔法陣スタイルだ。


『邪魔を…!邪魔をするな糸井優姫ィィィィィィィ!!!!!!』


うおっヤッバイ!こっちに来たか!
背後にたつきちゃんと織姫ちゃんの体があるから避けるわけにはいかない、それにシールドは織姫ちゃんに張ってるしなぁ…。
両腕を霊圧で固める。防ぎきれるかな?


『死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!』


さぁこい!
いや、出来ることならばこないでいただきたい!


<<来ます!黒崎一護です!>>

『させねぇよ!』


ガキィン!


「一護クン!ナイスタイミング!」


今まさに受け止めんとした瞬間、死神化した一護クンが現れて斬魄刀でホロウの攻撃を防ぐ!
正直な話ちょっと怖かったので有難い。
タイミング的にも主人公っぽいぞ!


『黒崎くん!?』

『今度は死神かぁ!』

「え?一護がいるの?優姫?」


三者三様のリアクションだねぇ。
やっぱりたつきちゃんには見えないか。
っと!今のうちに織姫ちゃんの方に移動!移動!


「何をしている一護!早く虚の仮面を斬れ!」

『わかってる!』

『ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』

『うおッ!』


仮面を叩き斬ろうとした一護クンを豪快なスイングで吹き飛ばすホロウ。
壁に穴あけて吹っ飛んでいく霊体ってどうなんだろう。よくわからん。
だが一護クンも負けたものではない、一撃を喰らう前に仮面の上半分を斬り飛ばしていった。


「優姫!?壁に穴が!」

「ごめんねたつきちゃん、ちょっと今お取り込み中なんだ…バケモノ倒すまでもう少し待っててね」


たつきちゃんと織姫ちゃんの体を抱えてシールド裏到着。
霊力で体を強化しても力を抑えたノーマル状態だとやっぱ疲れる。


『優姫ちゃん!たつきちゃんは大丈夫!?』

「大丈夫、でもちょっと頭を打ったみたい」


さーて一護クンが戻ってくるまで2人を守りきるとしますか。
と思ったら井上兄が織姫ちゃんに向かって話し始めた。一部仮面が剥がれて理性が多少戻ったか?
時間稼ぎにもなるし好きに喋らせておこう。


『織姫…本当に忘れてしまったのかい…俺だよ織姫…』
『お兄…ちゃん…!?』
『ああ、そうだよ織姫』
『本当に…お兄ちゃんなの…?』
『本当だとも』
『それじゃぁ何で優姫ちゃんやたつきちゃんや黒崎くんに酷いことするの!?』
『何故かって?こいつらは俺とお前の仲を引き裂こうとしたからさ!』
『えっ?』
『俺が死んでからお前はずっと俺のために祈ってくれていたね…。俺はそれが凄く嬉しかったんだ…。』
『それじゃあどうし…て』
『でもお前はそれからしばらくしてこの糸井優姫に出合った。そして次第に祈る回数は減っていき…
 この女に様々な人間と引き合わされてからというもの、それは目に見えて減っていった!
 そして今はどうだ!多くの人間に囲まれたお前は俺のために祈ること自体をを止めてしまった!
 俺はこの女が憎い!この女さえいなければお前は…!俺のことを忘れていくお前を見るたびに俺は淋しさの余りお前を何度も殺…』


良くもまぁここまで恨み言を…ん!?一護クンが戻ってきたか!
そしてヒートアップしている井上兄の後ろから奇襲をかけようとする一護クン!
いいぞ!やってしまえ!


『邪魔だといっただろうが死神ィ!』


だがしかし尻尾で壁に叩きつけられる!あー!惜しい!
つーか俺そこまで恨まれてたのかよ!怖いぞ井上兄!道理で真っ先にこっちに来るわけだ。
思わず織姫ちゃんの手を握る。俺なら霊体にも触れるしな。


『さぁ…一緒に行こう…あの頃のように2人で暮らそう…』

『どうして…淋しかったなら言ってくれれば良かったのに…あたしのお兄ちゃんはこんなことする人じゃなかったのに…!』

『何を言う!俺をこんなにしたのは誰だと思ってるんだ!お前だろうが織姫!殺してやる!殺してやるぞぉ!』


ブチ切れて俺のシールドを力任せに殴りつける井上兄。
ガギィン!ガギィン!ガギィン!ガギィン!ガギィン!ガギィン!ガギィン!
ガギィン!ガギィン!ガギィン!ガギィン!ガギィン!ガギィン!ガギィン!
うおっ!透けて見えるから迫力凄いな。
恐怖のためか握っている織姫ちゃんの手に力がこもる。


「大丈夫、私がシールド張ってるから攻撃は届かない」

『う、うん!』

<<ですが、シールドの損傷率が高いです>>


スピカの言うとおり、今、外部に俺の霊圧を悟られるのはマズイからそこまで力を込めておらず本来の強度は無い。
クソッ!段々辛くなってきたな!もうバレるの覚悟で倒すか!?


『バカか手前ェはぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!』


と思ったら一護クンが先に切れた。
瞬時に尻尾や腕を斬魄刀でバラバラに斬り刻む!
おお!怒りで霊圧が上がってるし!主人公過ぎるぞ!


『兄貴ってのはなぁ!弟や妹を守るために産まれてくるんだよ!その兄貴が妹に向かって“殺してやる”だなんて死んでも言うんじゃねェよ!!!』


カッコイイっス一護さん!マジ一生ついていくっス!
斬魄刀突きつけてかっこいいセリフ言うと決まるね!
そして俺一気に緊張感失せた!アハハ!


『黒崎くん…』

『何故だ!なぜ邪魔をする!織姫は俺が18の時からあの最低な両親から引き離し育て続けてきた!
 二人きりでずっと生きてきた!貴様らなどに渡すものか!織姫は俺のものだ!』


そう叫び一護クンを噛み殺そうと大きく口を開け飛び掛る井上兄。
しかしもはや死に体だ、斬魄刀でガッチリ受け止められる。


『ふざけんなよ…井上は誰の物とかそういうことじゃねえだろうが!』

『俺のものだ!俺は織姫のために生きた!だが織姫は俺のために生きてはくれない!ならばせめて…俺のために死ぬべきだ!!!』

「黙れゲス野郎!誰がお前のために織姫ちゃんを殺させるものか!クズが!恥じて死ね!」

<<マスター!?>>

『優姫!?』

『優姫ちゃん!?』

『なんだと!?お前がそれを言うか糸井優姫ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!』


おっと、あまりの言い草に俺が切れてしまった。何やってんだ俺。
勢いよく反転してこちらに飛び掛る井上兄。怖ッ!
つーかこんな良い妹キャラを冒涜するんじゃねえよ!いい加減こっちもふざけた物言いにイラついてたところだ、一撃喰らわせてやるわ!
シールドを抜けて右手を霊圧で固める!


『優姫!』

『優姫ちゃん!』

「少しは織姫ちゃんの話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」


顔面に向けて思いっきり、今のリミットかけた状態では全力の一撃を叩き込む。
飛び掛るホロウの巨体の勢いすら殺したそれは、硬質の仮面を粉々に打ち砕いた。


「織姫ちゃんが本当にお前のことを忘れきったと思うのか!それこそ兄失格だな!お前は今まで織姫ちゃんの何を見ていた!
 織姫ちゃんがどれだけお前のことで悲しんできたのか分からないのか!お前の妹はそんな薄情な妹なのか!ふざけているのはお前のほうだ!」


最悪だ。
勢いに任せて思いっきり殴りつけた挙句、説教までしてしまった。恥ずかしい。これじゃまるでオリ主みたいじゃないか。
至急誰か俺を殴ってください。むしろこのことを忘れさせてください。かずいー記憶を消してーかずいー。


<<流石ですマスター!今のシーン、高画質モードで保存完了です>>


何してんだスピカァァァァァ!!!!!!
そういうのやめてって言ったでしょお!?
最近分かったけどスピカも若干天然のケがあるな!
チクショウ!これが世界の選択だと言うのか!


『優姫の言うとおりだ、井上がつけてるヘアピン、お兄ちゃんが初めてくれたプレゼントだから毎日つけてるって言ってたぜ』

『そうか…まだ持っていてくれたのか織姫…いや、俺だって本当は分かっていたんだ…お前が俺を心配させないために祈るのをやめたことは…』

『ゴメンねお兄ちゃん…悲しんでるところばかり見せちゃダメだってあたし思ってた。だから、あたしは幸せだよ!だから心配しないで!って見せたかったの』

『ああ…分かっていた…分かっていたんだ…これは俺のワガママだったんだ…』


仮面が砕けて理性を取り戻した井上兄。それに抱きつき思いをぶつける織姫ちゃん。
何だかんだで理想的な結果になったようだ。これで織姫ちゃんの気持ちも晴れてくれるかな?


『でも…それがお兄ちゃんを淋しくさせていただなんて思いもしなかった…』

『かまわないさ…死んだ人間に対してなんて、たまに思いだしてくれるくらいでちょうど良い』

『うん…ありがとう…大好きお兄ちゃん…』


あーやばい。今のセリフ録音しておきたかった。大好きお兄ちゃんだってさ!っていうかこういうシーンを保存してよスピカ。
にしても雰囲気台無しすぎるな俺。
決して泣きそうなのを誤魔化してるわけではないぞ。


<<ハンカチで拭いてはいかがですか?>>


違うよ!泣いてなんかねぇよ!心の汗だよクソッ!こういう場面はずるいぞ!


『すまなかった、糸井優姫、黒崎一護、そして俺の声は聞こえないだろうが有沢たつき』

「終りよければ全て善しってね、織姫ちゃんのことは私に任せなさい」

『まぁ気にすんな…仕事だしな』

『ああ、頼むよ。それでは黒崎一護、俺はまた正気を失う前に、この気持ちを失う前に消えておきたい』

『お兄ちゃん、もうさよならなんだね…』

『ああ、今度こそさよならだ。幸せにな、織姫』

『うん…。それじゃあ黒崎くんお願いします』

『いや待てよ!なにもそんな消えなくっても!』


井上兄が消えることに対して反対の一護クン。
気持ちは分かるがそれはそれでダメだろう。


「いいや、そいつの判断は正しい」

「ルキアちゃん!?」


ビックリした。
今まで何処にいたんだルキアさん。
影が薄すぎて全然気づかなかった。自然に絶状態になるのは俺だけにして欲しい。


「一度虚になったものは元に戻れぬ。そのまま消えさせてやれ」

『でもよ!』

「案ずるな。虚を斬ることは殺すことではない。罪を洗い流すということだ。そして尸魂界に行ける様にするのが我々死神の仕事なのだ」

『そう…だったのか…分かった。じゃあいくぞ、井上の兄貴』


あれ?もしかして説明不足ですかルキアさん。
そんな基本事項を今、初めて説明したねルッキーニ。


『それじゃあ…さよならだ織姫…』










───────── 織姫


あたしは、ずっと言いたかった言葉がある。

あの頃は学校で先輩にイジメにあって間もなくて、あの日お兄ちゃんが買ってきた花のヘアピンがなぜだか無性に気に入らなくて。

どうしようもなくストレスが溜まっていたあたしは、お兄ちゃんと生まれて初めてケンカをした。

初めて一言も話さずご飯を食べて初めて壁を向いて眠り。

そして、あたしより早く仕事に出かけるお兄ちゃんを初めて何も言わず送り出した。

何故あの日だったんだろう。何故あの日でなくちゃいけなかったんだろう。

その夜お兄ちゃんは事故にあった。

嫌な予感がして飛び出したあたしが見たのは血まみれで倒れているお兄ちゃんだった。

そしてお兄ちゃんを背負って近くの病院、黒崎医院に連れて行った。今思えばあの時が黒崎くんと初めて会ったときだったな。

けれども設備が足りないらしくて、大きな病院を手配してる間にお兄ちゃんは息を引き取った。

でも決して黒崎くんのお家は悪くない。あの頃のあたしがバカだっただけだ。

そして、言っていればどうにかなったわけじゃないけど、それ以来、あたしは言わなかったことをずっと後悔し続けてきた。




黒崎くんにあの世に送り出されるお兄ちゃん。

死んでもなおあたしのことを考えていてくれたお兄ちゃん。

次第に体が消えていくお兄ちゃん。

今が本当に最後なんだ。

これがあの時言えなかった言葉を伝える、最後のチャンス。

だからあたしは笑顔で言う。あの時言えなかった、伝えることが出来なかったいつもの言葉を。










『お兄ちゃん……いってらっしゃい……』

『ああ…いってくるよ。織姫』





そう言ってお兄ちゃんは笑顔で消えていった。

バイバイ、大好きなお兄ちゃん。



[5293] 第10話「現世のまま20話超えそう」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/01/13 19:54
無事に井上兄を尸魂界に送ることが出来て一安心の俺達。
織姫ちゃんとの事もあってまるで感動系の映画を1本見終わったかのような爽やかな気持ちだ。
このスッキリした気分のまま布団に入って即就寝といきたいね。


「ちょ!ちょっと優姫!一体何が起こってるのか説明してよ!」


あー…ゴメン、すっかり忘れてた…。
完全に一般ピーポーのたつきちゃんのガマンがリミットブレイクを迎えてしまったご様子。
さて、どう説明したものか。
確か原作じゃ気絶してたんだっけ…?


ボムッ!


「きゅう」


いつの間にか目前に現れた、ルキアさんの持つライターのような装置の爆発を見てたつきちゃんが倒れる。
いや、きゅうって、この平成の世にきゅうって、たつきちゃん。
いささか表現が古くないですかたつきちゃん。

そしてこっちを見て嬉しそうに親指を立てるルキアさん。


「ルキアちゃんナイス!」

「うむ!」


ビシィッ!とサムズアップする俺達。
そうだね、記憶置換装置があったね。
いやーいろいろありすぎて俺も脳がパンクしそうだわ。


『え?え?朽木さん一体たつきちゃんに何をし』


ボムッ!


『きゅう』


お前もかぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
記憶置換の際にはきゅうって言う決まりなのか!?人間はそういう風に出来てるのか!?


「まぁ何にせよこれで一件落着かな?」

「ああ、そうだな」

『いや、ダメだろ…』


そう言って壁に開いた大穴を見る一護クン。


「あーこれは流石に無理だねぇ」

「むぅ…こればかりは今はどうにもならんな…」

「ちなみに代わりの記憶って何が入ったの?」

「いや、ランダムで分からんのだ。明日まで待つしかないな」

『アバウトな装置だな…』


俺もそう思う。
もう少しどうにか出来んのか技術開発局よ。
と言ってもトップがマユリ様だしなぁ…まともなものを求めること自体が間違いなのかね。


『味はりんご味だヨ!』


幻聴が聞こえた。忘れよう。




「それじゃあ後はビニールか何かで穴塞いでから私も寝るかな」

「それが最善だな」

『じゃあそれ手伝ってから戻るか』

「そうだな」

『つーか…素手でホロウを殴り倒すってお前どんだけ凄ぇんだよ…』

「確かに…素手で仮面を叩き割る人間など私は見たことも聞いたことも無い…」

「ん~それじゃあ何かな?つまり君達は私をゴリラ女呼ばわりするつもりなのカナ?カナ?」

「『滅相も御座いません』」


なんて素早い動き。
二人とも土下座が綺麗に決まってるなぁ。
お見事にて御座りまする。
そこまでビビらんでもいいだろうに。


「でも一護クンだってナイスタイミングな登場とか攻撃だったじゃない。まるで主人公とかヒーローみたいだったよ?」

『そ、そうか?いやぁ、俺もちょっとかっこつけすぎた気がするけどな』


なんかえらい嬉しそうだな。
ま、異能の力に目覚めてそういうのをしたいってのは男の子の基本だよね。
俺もさっきやっちゃったし…ハァ…。かずいー記憶を消してー。


<<素敵でしたマスター>>


カンベンしてください。


とそんな感じで織姫ちゃんの魂を戻した後は簡単に壁の穴を塞いで死神組は撤収。
俺は2人を布団に寝かせた後に就寝。
さーてどんな記憶に摩り替わっていることやら。










「それで朽木さんらしき人影がいたような夢だったわけ」

「あ!あたしもその夢見たよ!」


おいルッキーニ、ばっちり覚えてるじゃねえか。















dream 5.   『HOLE』
















ちなみにアレから疲れていた俺は熟睡。
翌朝、織姫ちゃんに起こされた俺たちは壁の大穴に驚きつつも制服に着替えて朝のファミレスで朝食。
毎度の事ながら織姫ちゃんの注文振りに驚きつつも俺は内心いつ昨日の話題が出るかドキドキ。






だったんだけど、たつきちゃんが語り始めた内容はおぼろげながら昨日の事そのまんま。
影の薄かったルキアさんを見た事とか、何だか良く分からないけど痛かった事とか話し始めるもんだからたまらない。
置換されてねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!

しかも織姫ちゃんにいたっては俺のほうをチラチラ見ながらたつきちゃんに話を合わせている。
覚えてるよー!絶対この子覚えてるよー!調子に乗って始解とかしないで良かったぁぁぁぁぁ!!!!


「私もそういう夢を見たよ」

「優姫も!?やっぱり何かあったのかな…」

「でも流石にさ、昨日織姫ちゃんのアパートに大穴開けた?とか聞けないでしょ?」

「確かに…言ったが最後、病院行きだわ…」

「あのさ!あのさ!」


織姫ちゃんが黙ってくれているのを良いことに嘘八百な俺。
そして困ってる(フリをしている)俺に織姫ちゃんが「良い考えがありますぜダンナ」と言わんばかりに話しかけてくる。
どうれ、お兄さんが聞いてしんぜよう。


「実際穴は開いちゃってるんだよね」

「そうだねぇ」

「じゃあ何か理由が必要だよね」

「うん」

「部屋に横綱が来てテッポウで穴が開いたことにしようよ!」

「たつきちゃん」

「無理」

「薄情者め」


どうしよう…予想外だよぅ…。
分かっていたけどやっぱりこの子ド天然だわ…。原作じゃもう全然見れなかったド天然ぶりだよ…。
いくらなんでも、「夜遅くにどこからともなく横綱が現れてテッポウで壁に穴あけていきました」とか言ったら即救急車呼ばれちゃうよ…。
いっそ織姫ちゃんを黄色いのに乗せるべきじゃなかろうか…。


「えっと…いきなり衝撃が走って気絶した。起きたら壁に穴が開いていた。気絶していたので詳細は分からない。ってのが良いと思う」

「織姫、優姫の言うとおりにしときな」

「ええ!?だって横綱だよ!?」


ごめん。そこを強調される意味が分からない。
織姫ちゃんの魂のステージは高すぎて、俺みたいな下層の住人には理解しかねる。


「とにかく大家さんにはそう言っておきなさいっての!」

「はぁい…」


よく言ったたつきちゃん。
そしてションボリしながらもドリアやパスタやハンバーグを平らげていく織姫ちゃん。
何処にあれだけの量が入るのだろうか、不思議でならない。
さー俺もちゃっちゃと食べて学校に遅れないようにしないとね。











「というわけで朝起きたら壁に穴が開いてたの」

「ヒメ!?それでヒメに怪我は無かったの!?」


織姫ちゃんの説明を聞いて、今現在大興奮中の子は初登場の本匠千鶴ちゃん(レズ)だ。
まぁこの先も殆ど出番は無いから気にしないで良い。他にも3人いるが名前ありのモブキャラなので説明は省く。


「ああん!そっちの姫が私のことをないがしろにした気がする!」

「気のせいよ」


ちなみに俺は対象外らしい。たまに師匠と呼ばれるのが良く分からない。分かりたくない。
ニコポ、ナデポとかオリ主特有の不可思議スキルまで持ち合わせた覚えは無い。
おそらく対象が男になるであろうと思われるのでいらないけど。

そうしてるとモブ1ことマハナちゃんが俺に話しかけてきた。
織姫ちゃんの話をイマイチ信じきれてないようだ。


「で、本当に穴開いちゃったの?」

「うん、私たちが起きた時にはぽっかりと穴が」

「優姫まで言うって事は本当か…」

「残念ながらね」


そこでたつきちゃんから補足が入る。


「それであんなトコで寝泊りするわけには行かないから、今日から織姫は優姫の家に」

「嫁入り!?嫁入りなのヒメ!?…まさか師匠…このために壁に穴を!?」

「開けるか」

「イダイ!」


たつきちゃんの話をさえぎるほどに興奮した千鶴ちゃんをチョップで鎮める。
思わず突っ込んでしまったぞ暴走乙女め。っていうか師匠言うな。
確かに男には興味ないがな。


「あたしは野宿とかホテルでも良いって言ったんだけど…」

「ダメ、どうせ部屋余ってるんだから暫く泊まっていきなさい」


全くこの子は変に遠慮するから困る。
さっきの話じゃないけどもうウチに嫁ぐ勢いでくれば良いのに。娘が増えたって喜ぶぞ我が家の両親は。
実際、織姫ちゃんを納得させて連絡入れてみたら滅茶苦茶はしゃいでた。今日は歓迎パーティーでご馳走らしい。
スゥシー、スキヤキー、テンプゥラー。






そして放課後は織姫ちゃんのアパートから荷物を父さんの車で運び出して俺の家へ。
パパったら始終ニコニコしててキモいわ。殴ろうかしら。
美形だから許されるけどね。





というわけで織姫ちゃんの部屋の準備も完了し終えた。
さて、織姫ちゃんの部屋も整ったし今なら2人っきりなので聞いておくか。


「えっと織姫ちゃん。昨日のことどのくらい覚えてる?」

「んーと…お兄ちゃんがオバケになってて、たつきちゃんが潰されそうになって、優姫ちゃんが助けてくれて、黒崎くんと朽木さんが現れて…」


オーケー。かんっぺきに覚えてるね。
おいどういうことだマユリ様。滅茶苦茶不具合起きてるぞ、とっととパッチ開発しろ。
思わずこめかみを押さえてしまう。


『味はりんご味だヨ!』


それはもういい。


「やっぱりアレは本当のことだったの…?」

「うん、織姫ちゃんのお兄さんはもう成仏出来たよ」

「そっか…お兄ちゃん…ちゃんと成仏できたんだ…良かった…」


涙ぐむ織姫ちゃん。
そりゃ肉親がバケモノになって襲われたとかなぁ、悪い夢であって欲しかったよね…。
思わず抱きしめる。


「あの…それじゃ昨日のことはナイショにしておいたほうがいい…?」

「うん…一護クンはほら、正義のヒーローだから正体が知られるのはねー」

「あ!やっぱりそうなんだ!」


信じた!?大体あってるからいいけど。
織姫ちゃんの可愛らしさは現世に響き渡るね!


「というわけだから私のバリアやパンチもナイショの方向で」

「うん!わかった!ところで朽木さんはどういう繋がりなの?」

「えっと…マスコット?」

「マスコット?」

「マスコット」


マスコット…だよね?















『あとがきゴールデン』


と言うわけで前回の続きです。
あとルキアさんはマスコットポジションだと思います。

前回の残り部分なだけなのに投稿が遅れたのはアレですよ。
ホラ、もうとっくに社会人の皆さんはお仕事始まってるじゃないですか。
作者もミストさんに監視されながらカブを植えたり育てたりする、ルーンでファクトリーなフロンティア生活してました。
1日24時間って短すぎますよね。




「尸魂界!尸魂界!」と思ったあなたは今しばらくお待ち下さい。
序盤からちまちま進んで行こうなんて考えたのがアホらしく思えてきました。

「そういえば兄貴なんていたね(笑)」と思ったあなたは作者も忘れていましたので大丈夫です。
本気で忘れていたので兄がいたのか!と驚きました。

「りんご味の意味が分からん」と思ったあなたはカラブリを読むかマユリ様の実験体になれば良いと思います。
今なら食事も経口で与えるヨ!


次回、初めてのお客様登場。



[5293] 第11話「喫茶店でも開かないとマスターなんて呼ばれそうにないです」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/01/13 19:51
「はー…お茶とケーキが美味い…」

<<お気に召していただけたようで何よりです>>




さて、いきなりだが久しぶりに夢世界からこんばんわ、
あなたの夜のネオン街、田中真二改め糸井優姫(16)です。
特に意味は無い。


場所は白亜の館、テラス部分。
庭には綺麗に手入れされた様々な花が色とりどりに咲き乱れ、実に美しい風景となっている。
最初の頃と比べてどんどんグレードアップされていくね。素晴らしい進歩だ、文化の光が見える。
そしてテーブルの上には紅茶とケーキ、対面にはスピカ、何と言うリラックス空間でしょう、匠の技が光ります。
たまに夢なのが疑わしくなるほどだが、よく考えたらここは昔から何でもアリっぽいのでよしとする。





「そしてようやく最後のピースが完成っと…」

<<最後のは短くて助かりましたね>>


俺の手に光るのはたった今モノクロームからカラーに変化した一枚のカード、そしてそれをスピカに渡す。
これでようやく愛染攻略の準備が整った。
そう、今更な話だが、俺の目的は愛染をブチ殺す、もしくは崩玉の奪取だ。
とりあえずアイツさえいなければ俺の人生はバラ色ライダーズだ。イエス!ハンサム!
にしても約6年間の準備期間を考えると結構ギリギリだったかもしれない。
最初にはしゃいで遊びすぎたなぁ…危ない危ない。


「つーぎーはー…んー必要最低限な分はもうこれで集まったし、次はアレいってみよっと」

<<アレ…ですか?>>

「まぁ久しぶりのちょっとした息抜きと言うかお遊び?」


一度やってみたかった、というかスピカの能力的にも何となく『アレ』は欲しい。
別に戦闘に使えるわけじゃないんだけどね~と言うわけで『アレ』れっつらごー。
俺の手に再びモノクロのカードが生まれる。アレ?意外と時間かかるなこれ。
そんなやり取りをしながらケーキに舌鼓を打っているとスピカが訊ねてきた。


<<そういえば井上織姫の身請けですがよろしかったのですか?>>

「身請けって…まぁ残るは能力覚醒だけだし…と言っても嫌~なイベント戦だけど、
 なんだったらもうウチにこのまま住んでもらっても問題ないくらいでしょ」

<<なるほど、確かに井上兄の魂葬も終わりましたし、特に問題はありませんね>>

「でも問題はイベント戦だよねぇ…たつきちゃんも結構ケガしてた気がするし、
 学校の皆を巻き込むのもなぁ…それに織姫ちゃんを追い詰めるのも余りやりたくはないし…」

<<それならば私に考えがあります>>

「どんな?」

<<このような>>


そう言ってパチンとスピカが指を鳴らすと同時に突然扉が現れ、
驚く俺を無視するかのごとく扉は音も無くすべるように開き、そして中から人が現れた。










「えーと…こんばんわ?優姫ちゃん」


あ、あるェー!?

















dream 6.   『Hello My Master』

















「いやいやスピカさん!?これどういうことですか!?」

<<落ち着いて下さいマスター>>

「もしかして…きちゃダメだった?」

「え!?あ!ゴメン織姫ちゃん、ちょっと待って!」


驚きつつも俺はスピカの腕を取って庭の方に連れ出した。
えー!ナニコレ!何で織姫ちゃんいるの!?
井上の一族が我が夢の世界に入門してくるだとォ!?
思わずDIO様になる程に焦りながら小声で問いただす。


「スピカ、説明!」
<<彼女も寝ていたようですので、ちょうど良いと思い連れてきました>>
「そんな事出来たのか…で、目的は?」
<<能力覚醒を私の方でお手伝いしようかと>>
「出来るの!?」
<<はい、今までに貯まったオリ主ポイントを使えば余裕です>>
「どうしましょうスピカ…私たまにスピカの言うことが良く分からないわ」
<<ああ…マスターが衝撃の余り素で女性の口調に…REC、REC>>
「ちょっと待ちなさい、いや、録画もなんだけど、何?今の人生に大きく関わりそうな単語は」
<<ジョークです、小粋なガリアンジョークです>>
「ホント!?今更知らないシステムとか出てこられても困るよ!?」
<<嘘は申しません>>
「信じたぞ!?その言葉信じたからな!?」
<<ご安心下さい>>
「あ、それと今更な話なんだけどちょうど良い機会だからマスターじゃなく名前で呼びなさい。変な趣味と思われたら困るわ」
<<了解しました、ユウキ>>


う~む…まぁとにかく覚醒できるなら良いのかな?
この先の大きなイベントは石田くんの湧く湧くホロウランドと、死神ズ登場でルキアさん里帰りの巻だもんな。
特に先の展開が大きくずれる様な事は無いはずだ。
にしてもマスターと呼ばれるのに違和感無く慣れすぎてたな俺。
なんだ?運命に出会った夜的な話か?あ、単に名前で呼ばれるのが恥ずかしかっただけなのかもしれん。現に今頬が熱を帯びてるし。
くそう、なんか今更スピカに名前呼ばれるのは恥ずかしいぞ…っと、そんなことより向こうで不安そうにしてる織姫ちゃんに現状を説明しないと。


スピカと共に再びテラスへ。




「ゴメンねー織姫ちゃん、お客様を待たせちゃって」

「え?ううん!あたしやっぱり帰った方が良い?」

「いやいや、ゆっくりしていってよ。スピカ、お茶お願い」

<<かしこまりました>>


織姫ちゃんを席に着かせて、スピカがティーポット片手に奥へ入っていった。
さて、戻ってくるまでには説明しておくか。


「えーと、何となーく分かるかもしれないけど、ここは夢の世界、OK?」

「お、おーけー」

「で、さっきのは私の」

<<妻のスピカです>>


戻ってくるの早いな!
織姫ちゃんの分の紅茶とケーキをテーブルに並べつつ、スピカが俺の代わりにそう答える。


「つ!妻!?優姫ちゃん!どういうこと!?」


フフフ、ビックリしてるなぁ織姫ちゃん。まぁいきなりこんな事言われたらビックリするよねぇ。
でも残念、この世界じゃあ二番目だ。









一番ビックリしてるの俺だもん。
なに真顔でサラッと嘘ついてるのさスピカさん。

しかもいつの間にメイド服!?ヴィクトリアンで由緒正しそうなデザインですね!
ああもう!初期のスピカさんに戻って!
俺のせいか!?俺のせいなのか!?俺のダメ人間としての性質が影響を及ぼしてるのか!?




そんな苦悩はおくびにも出さず織姫ちゃんにフォローする俺。


「場を和ませる軽いジョークだから落ち着いて織姫ちゃん、あとスピカはその服着替えてきなさい」

「あ、アハハ…だよねぇ」

<<スオムスジョークです>>


ウソダナ


「それで、今回織姫ちゃんを呼んだ件なんだけどね、昨日の事件で分かったと思うけど、
 実は見えないだけで、世の中にはオバケがうようよしてるわけよ」

「あ、うん。実は今朝からぼやーっともやみたいなのが見えるの」

「ああ、やっぱり昨日ので霊力が上がり始めてるみたいね」

「そうなの?」

「だから今日呼んだのは、こっちのスピカ、えーと…私の能力なんだけど、
 身の安全のためにも彼女に織姫ちゃんの力を引き出してもらおうと思うの」

「能力?能力ってどういう…」

<<それは貴女ご自身の能力をご覧になればお分かりになられると思います>>


スピカが立ち上がり、織姫ちゃんの前に立つ。
そして右手を織姫ちゃんの額に当てる。


<<目を閉じて集中してください>>

「は、はい」

<<自分の中に在る声が聞こえませんか?力のうねりを感じませんか?>>


スピカの体から透き通るような青いオーラが立ち上り、それと同時に蒼銀の髪もふわりと広がっていく。
元ネタ的にはこのままお腹が開いてビームでも打ち出しかねん勢いだな…。
さらにスピカのオーラが織姫ちゃんを包んでいく。
その光景を俺はただ見守るのみ。


「あ、分かります…急に声が大きくなったみたい…」

<<では呼んであげてください、『彼ら』の名前を>>

「はい…おいで…『盾舜六花』」


織姫ちゃんが名前を呼ぶ。
魂の奥から引き出された自らの力を。
守り、癒し、引き裂く、全てを拒絶する力を。
瞬間、風が織姫ちゃんを中心に巻き起こり、庭の花々が周りを舞う。
そして花の意匠をあしらった、兄から貰ったと言う肌身離さずつけているヘアピンが輝き、弾ける。



パキィン!



「うわぁ!な、何!?」


おお、これが覚醒の瞬間か。
実際イベント戦じゃじっくり見れなかっただろうからラッキーかもしれん。
かっこよくホロウに立ち向かう織姫ちゃんも見たかったのだけれども。


「やぁ、始めまして織姫さん。僕らが『盾舜六花』。キミの魂から生まれてきた、キミの力さ!」


織姫ちゃんの周りを舞っていた6つのうち1つが織姫ちゃんの肩に止まり挨拶をする。
へー、マジで小人サイズだな。
織姫ちゃんは目をぱちくりさせている、そりゃ驚くわ、おお、気を取り直してそれをぐにぐに弄る弄る。
そしてその様子を尻目に六花それぞれの自己紹介が始まった。
まとめるとこうだ。



中国ファンタジーの若い役人なんかでいそうな感じの着物を着たリーダー格の男「舜桜」
腰より下に届く大きな頭巾を被った大人しそうな女の子「あやめ」
スキンヘッドで尖った耳や鼻を持つ悪魔めいた容姿のオカマ「火無菊」
がっしりした体型で肩と顔の下半分を鎧で覆ったオッサン「梅厳」
お団子髪、バイザー、競泳水着のような衣装のギャルといった感じ満載の「リリィ」
黒いライダースーツ?に身を包み、口元をマフラーで隠し、顔の傷が特徴の不良っぽいツンデレ候補生「椿鬼」



これが将来的に神の領域すら侵すことになる織姫ちゃんの能力『盾舜六花』のメンバーか。
やべぇ。舜桜、あやめ、リリィはまだ分かるけど、残りのメンバーは織姫ちゃんからは想像もつかんビジュアルだ。


「ありがとう!本当ならもう暫く時間が掛かると思ったけど、お姉さん達のお陰でこんなに早く織姫さんと会えたよ」

「気にしない、気にしない。織姫ちゃんの身の安全のためですもの」

<<ユウキの為にした事ですので、謝辞は必要ありません>>

「ありゃりゃ。それじゃ早速僕らの使い方を織姫さんに教えたほうが良いのかな?」

「そうしてくれると助かるわ。いい?織姫ちゃん」


「え?うん、お願いします」


ペコリと頭を下げる織姫ちゃん。ちなみに手は舜桜を人形のように弄ったままだ。
実は今の会話の間、大興奮の織姫ちゃんは物珍しげにずーっと舜桜を弄っていた。
好奇心旺盛で良いね!


その後俺とスピカはこの後の計画を詰めつつ、織姫ちゃん達の練習を眺めていた。
さーて、コン捕獲とボハハハハー観覧は特にすること無いから、当面残るは石田くん関連のイベントによるチャドくん覚醒か。




そして暫くすると流石に疲れたらしく織姫ちゃん帰還。
スピカ初登場時は俺もすぐ夢から覚めることになったし、それを考えると織姫ちゃんは優秀なのかな?


「はぁ…はぁ……結構…疲れる…ね…」

「ハハハ、まぁ初めてにしては上手くいきすぎてるくらいだよ。スピカさんのお陰かな?」

「そうなんですか?」

<<はい、能力を引き出した際の私の力がまだ残っているのでしょう>>


あーなるほど。霊力の譲渡とか供給ってやつか。
そういうことも出来るんだねぇ。
ふと横を見ると、既に用意されている『盾舜六花』用のティーセットで大喜びの六花達。



「うわぁ!このケーキとっても美味しい!」

「本当だね。ああ…こっちの紅茶も美味しい…いやぁ生まれてきてよかったよ」

「んまぁ!そんなにがっついて!リリィさん、乙女がはしたないんじゃありません!?」

「うるさいわねオカマ!生まれて初めての食事なんだから好きに食べさせなさいよ!」

「あの…ケンカは…」

「ったくうるせぇ奴らだ…」

「ハッハッハ、元気でよいことだ」



原作じゃほぼ出番の無いこいつらだけど活躍する日は来るのだろうか。
まぁこちらの世界でもこの先、まともな出番があるかどうかは不明だが。
ワイワイ騒いでいるのを微笑ましく見守りつつ、この先の尸魂界での戦いで、いかに能力を上手く使うかを考える。
その活躍シーンを思い浮かべて思わず顔がにやけてしまうのは罪ではないだろう。
なんだか忘れたい思い出が増えそうな気がするけどこの際無視しておく、今は良い気分でいたいの。


「優姫ちゃんどうしたの?なんか嬉しそうだけど」

「フッフッフ、秘密~♪そのうち分かると思うからそのときをお楽しみに♪」

<<そうですね>>

「あー!二人だけの秘密ってやつだー!」

<<私とユウキは一心同体ですので>>


むぅ…ユウキと呼ばれるとまだムズムズするな…慣れねぇ…。
ま、能力に関してはホントは分からないまま過ごせるのがベストなんだけどなぁ。
世の中ままならないわ、あの腐れエセ眼鏡め。
待ってろよ…生まれてきたことを後悔させてやる…。
私が天に立つ!フハハハハハハハハ!!!!!


俺が怒りに燃えていると、スピカが懐中時計を取り出して別れの時を告げた。


<<そろそろ時間です、ユウキ>>

「ああ、もうそんな時間?」

「え?」

「もう朝だって事」

「ど、どうしよう!私ちゃんと寝てないよ!?」

<<その点ならご安心を。この世界で過ごしてもきちんと睡眠は取れた状態になっておりますので>>

「凄ぉい!凄いね優姫ちゃん!」

「いいでしょー」

「もしかしてずっとこんな感じだったの!?優姫ちゃんだけずるいよぉ!」


ぷぅとむくれる織姫ちゃん。HAHAHA!そんな顔をしてもかわいいだけデース。


「はっはっは、羨ましいだろー。っとそれじゃ起きましょうか」

<<今日はお疲れ様でした。またご招待させていただきます>>

「あ、はい。今日はどうもありがとうございました」

「六花を代表して礼を言うよ。ありがとう、優姫さん、スピカさん」

「どういたしまして。織姫ちゃんはすぐ顔洗って朝食ね。で、六花はまた夜にでもね」

<<お待ちしております>>







PiPiPiPiPiPiPiPiPi
パチン


「ふぁ~よく寝た…」


寝てるんだか寝てないんだか良く分からないけど、
とにかくすっきり目覚められるから本当に不思議だ、夢世界。







と、新しく織姫ちゃんと六花を迎え、賑やかになった夢世界を堪能し始めて数日が経った。


「あれ?今日は茶渡くん遅いね」

「ホントだ、どうしたんだろ」


チャドくんいっつも授業開始前には席にいるのにな。
ああ見えて成績は優等生なのよねチャド&一護。


「ム…おはよう…」

「おはようチャドくん遅かったね、ってその鳥は?」


あちこちバンドエイドを貼ったチャドくん登校。
またケンカでもしたのかね?にしては怪我が多いけど。
それより俺が気になるのは肩にかけられた鳥かごだ。中には…インコかこれ。


<<ユウキ>>

<<どうやら中に人の魂魄が入ってるみたいね>>


なんだ?俺が介入したせいで何か新イベント発生か?
そういうのは勘弁して欲しいんだけどなぁ…。
実は原作の世界じゃなく、原作を基にした二次創作の世界でしたとかはホントやめて欲しい世界だ。


「ム…ひろった…」

「今めんどくさいから適当に言ったね?」

「て…適当じゃない」


おい、そういうのは俺の眼を見てから言いなさいよ。
明らかにその怪我絡みじゃねえか。
ってあれー?そういえばこんな話原作でもあった気がするぞ。
たしか…。


「ねぇねぇ茶渡くん、この鳥さんの名前は?」

「コンニチハ!ボクノナマエハ シバタユウイチ!」


ですよねー。





















『あとがきゴールデン』


スピカさん、無理やり能力引き出すの巻。
割とスピカさんやりたい放題です。
この先もっとやりたい放題しかねません。

それと、流石に現世編が長いかなぁ…と少し気にしてるんですけど、
ここまでお付き合い下さってる希少な皆様方としてはどうなんでしょうか?
さっさと兄様出さんかい!このパッキャマラオが!ブリーチSSで十三隊出さんとか正気かコラ!?なんて思われてたりしないでしょうか?
このままダラダラ続けても良いのだろうか?実はこのSS、10人くらいしか読んでないのではないだろうか?とたまに不安になります。




「俺も夢世界いきてぇ…」と思ったあなたは今すぐ布団に入ってみて下さい。
もしかしたら行けるかもしれません。戻ってこれなくなるかもしれませんが。
ちなみにこのSS書き始めてから良くブリーチの夢見るんですけど、今年の初夢が酷すぎて何処にも利用できません。

「クックック…俺のオリジナル『能力』が知りたいか…?」と思ったあなたは今すぐ感想の最後に詳細を書き込んでみて下さい。
どうでもいいですが以前夢の中で見た作者のスタンドは接着面固定の能力でした。地味にエグい。



次回、ボハハハハーッ!炸裂。



[5293] 第12話「タイトルはだいたい響きや雰囲気優先ですのであまり気にしない方向で」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/02/19 21:55
さて、原作にもシバタというインコがいたことは思い出したものの、どんな事件だったかはサッパリ思い出せない。
歳だな。いや、気分と肉体は若いんだけど前世含めるともう40近いんだ。見た目美少女だけど中身は年齢的にオッサンなのよね。
まぁそれ言ったら死神なんてジジイとババァしかいないので気にしない方向でいくけど。
いや、そんなことは置いといてだ、とりあえず一護クンの方をチェックしてみるとするか。


「一護クン、あのインコ…」

「ああ…どうやら霊が入ってるみてぇだから今夜辺り魂葬する予定だ」

「ん、了解」


5秒で終了。ふむ、一応その辺は理解してるか。なら今回は問題なく解決できるのかな?
あーでも何かワケありのインコだったはずだよなシバタ…。
ん~ダメだ、出てこねー、とりあえず今のところは様子見だな。
わぁ、先が見えないから凄くハラハラしてきた。
















dream 7.   『The Parakeet Brings The Unknown』
















そして放課後。
今日の織姫ちゃんは裁縫部、たつきちゃんは空手部なので、清く正しい帰宅部の俺は本屋に寄って帰ることにした。
確か今日は新刊が出てたはずだ。
気持ち早足になってしまうネ!
ハラハラしてたんじゃないかって?知るか!今は本屋が先だ!





それからばっちり1時間ほど本屋で過ごしてしまった。
いや、新タイトルのラノベが気になりまして…。結局買ったんですけど。
やっぱり突然ワケありの不思議な力を持った女の子が舞い込んでくるってのは何処の世界でも同じだね。
王道ですよ。




早く帰って読ーもう、と思って家路を急いでいると、黒崎家近くの十字路がゴタゴタしてた。
なんでも事故があったらしい。

急いで黒崎医院へ向かう。
ここで事故があったなら、あそこに行って聞くのが手っ取り早いからな。


到着!黒崎医院のドアを開ける。



「おじさん、そこで事故あったらしいけど大丈夫ですか?」

「おお、優姫ちゃんか!結構怪我人が多くてな…重症の患者は空座総合病院の方に搬送したんだけどよ…」

「あー石田くんのトコですか。ってそこの隅っこで体育座りしてるのは何ですか?」

「あれか?あれはウチの役立たずだな。スマンなぁ、あんな役立たずが幼馴染で…」

「なるほど、役立たずですか…。役立たずなら仕方ないですね…」

「役立たず役立たずうるせえよ!」


深刻なムードを演出してたら一護クン怒っちゃった。相変わらず気が短いなぁ。
何もマンガチックな半泣き表現で反論せんでもいいよ一護クン。一護クン医療系のスキルとか無いもんね。
そんな一護クンがこちらに目で合図してきた。フム、やっぱり何かあったようだな。
ルキアさんもいるであろう一護ルームについて行ってみることにする。


バタン


扉を閉める音が部屋に響く。
部屋の中のベッドの上にはルキアさんがちょこんと座っていた。
かーいぃなぁ、このまま抱き枕にして一緒にベッドインしたいなぁ。


「さっきの事故なんだけどよ、チャドも巻き込まれちまって今ウチの病室で寝てんだよ」

「更に言えば、今回の事故は虚が関係していると思われる」

「その理由は?」

「奴の背中の怪我から虚の匂いがした」


犬か。
犬なのかルッキーニ。
参ったな…ならぺリ犬と呼称を改めるべきなのだろうか…。
キャラ的にもまだ近いしな…いや、そもそもルッキーニは名前が似ているというところから来たのであって…。
ああ、どうしたものか…。ここは発想を変えて別の───


「優姫、そう悩むことは無い。虚が害を為すと言うのなら、何時もの通りただ倒すだけだ」

「つってもやるのは俺なんだけどな。まぁお前が気にすることじゃねえさ」


あ、いや、スイマセン。
ホントどうでもいいことばかり考えて生きててスイマセン。
今すぐ穴掘って埋まりたいです。
二人の優しさが今は辛い。


「ん~それじゃとりあえずチャドくんの治療でもしておきますか。一護クン、病室は?」

「いや、いきなり治るとチャドが怪しまねぇか?」

「まぁチャドくん脅威の回復力ってことで。それにチャドくんなら別にバレてもかまわないし、完全に治るとは限らないからねぇ…」

「お前がそう言うならいいけどよ、それじゃこっちだ」





と言うわけで病室に行って寝ているチャドくんをある程度治しておいた。
やろうと思えば全快できなくも無いけどな。

さーて、次はシバタに事情でも聞いたほうが良いんだろうか。
いや、前回の織姫ちゃんの事件の介入は、中学時代織姫ちゃんに気づけなかった贖罪のようなものでもあったが、今回の事件は俺に関するものではない。
更に言えば、一護クンには今後もイロイロと頑張ってもらわないといけないので、
あまり俺が手を出しすぎて経験値奪うのも問題か…イベント戦でレベル足りなくて詰むとか嫌だもんな。
それに、2人の手前チャドくんに治癒は施したが、手を入れすぎて流れが変わるなんてのは極力避けたい。
何せ今回は流れを把握してないのだ、少々不安だが迂闊に動いてかき回すのもマズイな…何がフラグになるか分からんしな…。
と言う事で今日のところは退散決定。


「じゃあもう出来そうなことは無いから帰る。ルキアちゃんにはよろしく言っといて」

「おう、わかった」


病室を出て俺たちは玄関まで歩き出す。
ふむ、どうやら今日は見送りまでしてくれるらしいな。


「ああ、そうだった」

「何だ?」


くるりと振り返る。
そういえばコレ言うの忘れてたんだった。
さっき本屋でラノベ流し読みしてたときに言ってやろうと思ったのよね。














「一護クン、くれぐれも、ルキアちゃんとは『仲良く』ね?」


恐らく今の俺の顔ほどニヤリという言葉が似合う顔も無いだろう。
一護クンはまるで母親に「エロスは程々にな?」と言われた思春期男性のような顔をしていらっしゃる。
いやー実に分かりやすくてよろしい。いつまでも純粋なキミでいて。
っていうか男子高校生がある日現れた美少女死神と同棲とかシチュ的に羨ましすぎる!それ何てラノベ?って話だよ!
俺が高校時代に東京タワー行った時ですら異世界への扉は開かれなかったというのに!


「それじゃねー」

「いやちょっと待て!いつから知ってた!」

「アハハハハハハ!おねーさんは応援してるぞ!」


笑いながらダッシュで黒崎家を後にする俺。無論周りに人がいないことは確認済みだ!
「誰もいないと思って歩きながら歌ってたら実は後ろに人がいた」みたいな事はゴメンだぜ!
ああ!忘れたい!一万年と二千年前からわ!す!れ!た!い!








帰宅すると織姫ちゃんは既に帰ってきていたようで母さんとキッチンで料理中。
いいねぇ…実に良い…帰ってきたらエプロン姿で料理してる織姫ちゃん…サイッコー…。

一護クンにはああ言ったが、俺も現在、クラスメイトの巨乳美少女と期間限定とはいえ同居中という何そのエロゲ展開だ。
しかしこうなると、俺が元の姿じゃないから可能な展開とはいえ、何で俺男じゃないんだろうねという贅沢な悩みも出てくる。
俺が周りから高感度バツグンの美少年として転生してて、ある日父親が、住むところが無くなったという俺に好意を持ってるクラスメイトの美少女を偶然連れて帰ってきたとかさ、
そういう展開になってしかるべきじゃないの?ほら、そうすれば何故か強力な死神の力持ってて恋愛に鈍感で俺Tueeeeeeeee!!!なオリ主が女生徒や女死神を助けたりしてハーレム作れてたよきっと。
そんでもって愛染とか東仙に勢いに任せたそれっぽい説教したり、死神ヘイトとか適当にしちゃったりしてわーっしょい!わーっしょい!オリ主万歳!ばんざぁぁぁぁぁぁい!!アモール!とか出来てたって!
「フフフ…彼にはかなわないね」とか、「全く、とんでもない有望株が現れたものだな」とか、隊長格にもやたら褒められてたはずだって!
なんて妄想は一切顔に出すことなく帰りを告げる俺。


「ただいまー」

「あら、お帰り優姫」

「あ、お帰り優姫ちゃん!今日はあたしも作るからね!」


うう…織姫ちゃん連れてきて良かった…俺は三国一の幸せ者だ。
笑顔で料理中の織姫ちゃんを見てると今なら空どころか宇宙まで飛べそうだわ。








そして父さんも帰宅してお待ちかねの夕食も先ほど終った。
感想としては最高に美味しかったと言っておく。
いやさ…もうYOU嫁に来ちゃいなよってくらいだ。普通の料理作っても美味しいから凄いや。
それとパパったら肉親でなければ蹴倒したいほどに興奮しててキモかったわ。今度アレやったら虚閃<セロ>でも打ち込もうかしら。

まぁ確かに俺料理したこと無いからなぁ…初の娘の手料理的なものに興奮したか。
いや、本当は出来るけど面倒だからしないだけなんだけどね。どこぞの正義の味方とは違って作ってもらう方が好きなのさ。
ところでなんか今のって本当はSだけど面倒だからBみたいに聞こえるな…いや、この場合Bだけど面倒だからDだな。
うん、大丈夫、何が大丈夫なのかは知らんが。





んで、今は織姫ちゃんとTV見てるの。
どうでもいいけど語尾に「の」ってつけるだけで少しなのは気分になれるの。
皆も人前でうっかり喋って死にたくなれば良いと思うの。
ぶっちゃけ野郎がなのは喋りしてもキモいだけなの。


「あ!もうそろそろ『ぶら霊』だ、ねぇ優姫ちゃんch変えていい?」

「あードン・観音寺のアレね、織姫ちゃん好きだもんねーどうぞどうぞ」


突然だが説明しよう、当たり前だがこっちの世界にはあの『ぶら霊』こと『ぶらり霊場突撃の旅!』が放送されているのだ。
実は俺も始まって以来、空座町に来る日をチェックするために毎週見ている。
一護クンはというと「霊関係の番組は嫌いだ」ということらしい。まぁ俺らは昔から霊なんて日常的なものだったからな、気持ちは分かる。
でも俺は観音寺のキャラが好きなので、イベントの件抜きでも普通に毎週見てる。早く空座に来ないかなぁ。
ちなみに先週はお金持ちの蔵にある古物の除霊をしていた。金に執着する人間は醜いねぇ。


「ボハハハハーッ!」


うおっ!ビックリした!
織姫ちゃんが胸の前で両手をクロスさせてぶら霊お決まりの高笑いを上げ始めた。ああもうかわいいなぁ。
にしてもなんだ……織姫ちゃんがそのポーズをとると…。
フフ…下品な話なんですが…その……胸が強調されてしまいましてね…。
分かりやすく言うとおっぱいが両腕でぎゅーっと寄せあげられて非常にエロい。
この神々の谷間は万金を払われてもお見せできない。
当然俺もこのポーズをとるとエロい…じゃなくて男衆の視線がエライことになるので自重してる。
男から注目されても邪魔なだけなんだよね。


「ねぇ、観音寺さんもあたし達みたいに見えてるんだよね?」

「ん?ああ、そうだね…結構、霊力は強いと思う」

<<人として自然に身につけられる力ではかなりの上位ですね>>

「そうなんだ!?すごいなぁ…観音寺さん」


スピカが会話に参加してきたがもちろんSOUND ONLY、俺と織姫ちゃんにしか聞こえないようになってる。
それとマジな話、本当に観音寺の力はすごいと思う。
ホロウや死神が見える上に、確かエネルギー弾みたいなの出せたはずだし、多分。
俺や一護クンはチート性能だから別として、織姫ちゃん達は一護クンの力で無理やり霊力の底上げをされたようなものだしな。
それを考えると観音寺の力は正直、驚きのレベルだ。テレビ見てるとたまにワイヤーアクションみたいな動きしてるし。


「今日は事故が頻繁に起こるオバケトンネル特集だって!」

「やっぱりああいうトコには居るんだろうねぇ、ユ-レイ」


俺は霊そっちのけでいつも通り観音寺節にニヤニヤしてると、番組は終わりに差し掛かかり、観音寺はいつもの〆に入った。


“それではグッナイベイビー!!ボハハハハーーーーッ!!”

「ボハハハハーッ!!」


ああムニュムニュしてる。






ピーンポーン


ああ、そろそろルキアさんの来る頃か。
いや、流石に寝床は確保したとはいえ、着替え(洗濯)、食事、風呂等は別だからね。
食事は普段黒崎家の余りを頂戴してるらしいけど、着替えと風呂はウチで済ませてるのよ。
隠れ居候生活はつらいね。
玄関に出向きドアを開けると、そこにはいつもどおりルキアさんの姿が。


「ルキアちゃんいらっしゃーい」

「うむ、いつもスマンな」

「気にしない気にしない」


ルキアさんを伴って玄関からリビングへ戻る。
ちなみにこの事はウチの両親も承諾しており、ルキアさんは一人暮らしで、現在風呂周りが壊れてしまい困っていたという設定になっている。
その際、「ならしばらくウチに住みなよ!」と、何!?三姉妹なの!?三姉妹になっちゃうの!?と言わんばかりに興奮してたので、
「父さんシャラップ」と一撃入れて黙らせたのは良い思い出だ。


「朽木さんこんばんは」

「あら、井上さんもこんばんは」

「着替えはもうお風呂の方に置いてあるからゆっくりどうぞ。(ごはん余ってるけど食べてく?)」

「何時も有難う御座います(いや、何故か毎回料理が多めに作られていて食事には困らんのだ)」


あーこれは真咲さん気づいちゃってるなー…あの人も霊力あるもんな、黒崎家の中心は伊達じゃないねぇ。
あ!ということは、だ。後々、真咲さんも含めた一護クン弄りが楽しめるということではないかネ!コレは実に楽しみだヨ!



「うおっ!」

「どうしたのお兄ちゃん?」

「いや…何か知らねぇけど悪寒が…」



という会話が黒崎家であったかどうかはまた別の話。









翌日、遅刻間際に一護クン焦った様子で登校。


「チャドは!チャドは来てるか!?」


と思いきや凄い剣幕でハローハローの肩を掴み問いかける。
ん?何かあったのか?


「いや…見てないけど…」

「そういやまだ来てねぇみたいだな。めずらしいな、あいついつも始業10分前には席についてんのに…」


浅野君がハローの後にそう続けると、やってきた担任の先生に「腹痛っス!」と言い残し、急いで教室を去る一護クン。
てっきり昨日の流れだとチャドくん1日くらい病室で寝てるのかなー?と思ってたけど違うのか?
ルキアさんが来ないところを見ると、チャドくんが昨夜あたりに抜け出して現在2人で捜索中と考えていいだろう。
何故?わざわざ抜け出してまで黒崎家を去る理由…インコ…ホロウ………ああ!そうかしまった!
チャドくんはインコを襲う存在がいることを知って、黒崎家に迷惑をかけないために抜け出したって話か!


<<私も同意見です>>

<<いきなり心を読まないでくれる?>>

<<いえ、何となくそう感じたもので>>


まぁスピカのイタリアマフィア十代目もビックリな超直感は置いといてだ、今回はこのまま傍観に徹するのがベストなのかな?
となると霊絡を感知できるようになるのも今回か…あのインコは人と鳥の魂が交じり合ってる微妙な存在だもんな。
それを探し出すにはアレしかないだろう。
一応、念のためと思い「インコの霊気を感じ取れ」とメールを送っておく。
霊絡が見えないと『あの世界』から帰ってこれないからな、頑張って習得してくれよー一護クン。









───────── 一護

畜生!ドコに行ったんだ!?
今朝起きたらチャドはインコと一緒にいなくなってるし、夏梨はインコの記憶に当てられちまったらしくて今日は家で寝込んでる!
何でもあのインコの中の霊は、目の前で母親を殺されたらしい…クソッ!胸クソ悪ィ話だ!
ああ、分かってる…あのインコはきっと『ヒーロー』の来なかった『あの日の俺』だ…。
昨日のチャドの怪我から見てもホロウに狙われているのは間違いねぇ…俺の周りでこれ以上何か起こさせてたまるかよ!
けど未だに肝心のチャドは見つからねぇときた!優姫に相談しとけばよかったか!?


ジャラッジャラッチャラララ~♪


携帯?この音はメールか。
一体誰から…優姫?あー…いきなり教室から抜け出したのはマズかったな…。
どうせ怒りのメールなんだろうがとりあえず見てみるか…。
走りながらメールを開く。
そこにはただ一文。



『インコの霊気を感じ取れ』



思わず笑いが漏れそうになる。
ハハッ!何だよ全部お見通しか!相談するまでもなかったな。流石優姫だ、全く…アイツにはかなわねぇな。
にしても俺にそんなこと出来るのか?ん?下にも続きが…。


『出来るか出来ないかじゃない、やれ』


か…言ってくれるぜアイツは。
……いやちょっと待てよ…つぅことはだ…これは俺の考えることまで読んだ上でのメールなのか。

………………昨日の様に得意げにニヤリと笑うアイツの顔が浮かんだが今は忘れよう。そうした方が良い気がする。
長年付き合ってきた幼馴染に薄ら寒いものを感じながらも、とりあえずそのアドバイスに従うことにした。


「一護!茶渡はいたか!?」


曲がり角からルキアの奴が飛び出してきやがった。
この様子だとあっちの方にもいなかったようだな。


「いや、学校にもいなかった、今のところ手がかりはねぇ」

「そうか…虚が茶渡を襲うにしても現世に出てこない限りレーダーは役に立たんしな…」

「ああ、だから今からインコの霊の気配を辿る」

「莫迦な!そんなこと出来るはずが…」

「『出来るか出来ないかじゃねぇ!やるんだよ!』」

「な!?」


目を閉じて意識を研ぎ澄ます。
世界の隅々にまで意識を張り巡らせるイメージ。
よく映画とかマンガであるけどこんな感じだろうか。


キィ………ン


まだだ…もっと集中しろ、もっと、もっと感覚を研ぎ澄ませ!


キィィィィィィィィィン


感じる、周りの霊の気配を、俺の意識が澄んでいくのを!
そのとき確かに昨日のインコの気配を掴んだ!これだ!


「ってうぉぉぉぉぉぉ!?何だこの布の山は!?」


目を開けると周りがふわふわと揺らめく白い布まみれになってやがる!
これが優姫の言ってた霊気ってやつなのか!?
ルキアに聞こうと横を見ると、驚いた表情でルキアは固まっていた。


「一護…お前には驚かされてばかりだな…」

「あ?どういう事だ?」

「今お前が見ているものは霊絡<れいらく>と言う物で、上位の死神にしか見ることの出来ない視覚化された霊気だ」

「そ、そうなのか…?夢中でやったから良く分かんねぇけどよ…」

「まぁその話は後だな。今お前の見つけた方向に茶渡はいるはずだ。急ぐぞ一護!」

「おう!」


そして俺たちは駆け出す。
無事でいてくれよ!チャド!シバタ!












『あとがきゴールデン』


何だかんだ言って一護にはしっかり「たいした奴だ…やはり天才…」な扱いをされてる優姫でしたというお話。
でもホントに観音寺の力は何なんでしょうね。伏線とかだったら笑うんですけど。
乱戦の中突然現れ、強力な力を使ってブリーチ無双する観音寺…良い!


「騙された!ボハハハハーッって言ってたのに!」と思ったあなたは次回予告なんて所詮予告でしかない事を学んで下さい。
剣心がとある村で病気にかかりそこに盗賊が…!何て予告があった気がするがそんな事は無かったぜ!

「そういえば一護も大概な設定だよな…」と思ったあなたはそれ以上考えてはダメです。命に関わります。
凄くない設定の主人公なんてそうそういません…要はキャラクターですよね。


次回、魂を司る第二階位の獣登場。







前回の不安に満ちた疑問にお答えしてくださった皆さんありがとうございました。
正直あんなに反応が返って来るとは思ってなかったのでビックリです。

大丈夫かな…自分から振っといて無反応だったらどうしよう…いや!感想常連さんもいてくれるみたいだし5人はかたいよ!
…あ!3人!3人も感想書いてくれる人がいれば御の字だよね!………1人でも反応してくれればいいや…うん…自惚れるな自分…。

といった具合で感想欄見るのが怖くなりまして、先ほど恐る恐るクリックしたら何と驚きの14人!そして放出される黒歴史の数々!死ぬ!
皆様本当にありがとうございました。これからも夢と妄想で出来た意外と長い現世編をお楽しみ下さい。



[5293] 第13話「あの世界は不思議アイテムが多すぎる」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/01/21 19:47
今は1時間目も終って休み時間。
う~む…。とりあえずメールは送ったものの心配でしょうがない。
普段のホロウ相手のフリーバトルは問題ないが今回はチャドくん含めたイベント戦だからなぁ…。
正直、原作通り進んでいるのかも今の俺には分からない。
一護クンは大丈夫だろうか…ちゃんと霊絡見えただろうか…ルキアさんと合流出来ているだろうか…。
うん、年の離れた弟を心配する気持ちだなこれは。もしくは我が子を受験に送り出すような気持ち。


「優姫、大丈夫?」

「ん?何が?」

「いや、今日は何かそわそわしてるからさ。一護のこと?」

「あー、まぁそうなんだけど、また面倒なことに関わってそうだからねぇ…」

「アンタは昔っから変なところで心配性なんだから…」

「うっ…まぁその辺は自覚してる」

「大丈夫だよ優姫ちゃん!だって黒崎くんだよ!」

「織姫ちゃんのその自信がたまに羨ましくなるわ」

「(だって黒崎くんは『正義のヒーロー』なんでしょ?)」


ハァ…それを言われると弱いな。
ま、今は待つしかないし、信じてみますか。
あの日、一護クンが俺に言った『いつかおれが正義のヒーローになってやる!』って言葉を。















dream 8.   『Accident Is So Suddenly』















───────── ルキア


─── じゃあその舌、俺が貰うぜ!』


思えばこの町に来てからは驚きの連続だった。
私の感覚を乱す程の霊圧を発し、鬼道を破り、死神の力をものにした黒崎一護。
人間とは思えぬ霊力と能力を持ち、それを全く私に気づかせなかった糸井優姫。

前者はこうして私の前で更なる力を身につけ、飛び方を知らなかった鷹が羽ばたく方法をようやく知ったかのように成長していく。
後者は死神の力が無いにもかかわらず、死神を見、虚を退け、また、未だにその底は見えぬままだ。一護に霊絡を見るよう助言したのも優姫だと言っていたな。
どちらも本当に人間なのか疑わしくなるほどの心と力の持ち主と言えよう。



そして先程、見えないはずの虚に怯むことなく殴りかかり、飛び上がった虚を、折った電柱で叩き落した茶渡泰虎。
以前から一護の特訓に付き合っていたこやつだが、恐怖と言うものが無いのだろうか。
普通、存在を感じることの出来ないものに立ち向かうなど容易く出来るものではない。


『ゴァァァァァァァァッツ!!!!!』


今、一護が舌を引きちぎり、足を斬り落としたのが今回の犯人である虚、狡猾で過去死神を2人喰らっている。
元は連続殺人犯で、シバタの母親を殺した際に足を滑らせ、ベランダから落ち死んだと言っていたな…。
そしてその鬱憤を、シバタの魂をインコに入れ、追い回すことで晴らしていたとも…。「三ヶ月逃げ切れば母親を生き返らせてやる」と言って…。
度し難い程の屑だ、反吐が出る。


『どうした!少しは味わえてるか!殺される側の気分ってやつを!!』


だがそれも終わりだな。体から出る小型の虚を起爆させるための舌は既に無く、足も無い。
精々地獄で己の罪を悔いるがいい。


『ヒィィィィィィィィィィ!!!!!』


む、それでも翼があったか、正に死に物狂いというやつだな、まだ逃げるか往生際の悪い。
しかし一護も跳躍してすぐさま射程距離に入る。
通常、死神となって間もないのならば、足元に霊子を固定してあの高さまで上っていくのだが…。
あのたわけは苦も無くあの高さまで一気に飛び上がるな…。


『忘れんなよ…その恐怖を頭の芯に叩き込んだまま消えろ!!!』


よし!仮面を斬魄刀で斬った!
悲鳴を上げる虚に呼応するかの如く、おぞましい音を立てて虚の背後に地獄門が現れる。


『オゴァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!』


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!


『おいルキア!アレは一体何だ!?』

「あれは地獄門…。以前斬魄刀で罪を洗い流すと言ったな。あれは虚となってからの罪なのだ」

『つうことは…』

「ああ、生前に犯した罪はその限りではない。そしてそういった奴らは地獄の連中に引き渡す契約となっている。
 そら!地獄の門が開くぞ!!」


身震いするような音を立てて門が開き、その奥から現れた巨大な刃が虚を貫く。
一護の斬魄刀も大きくはあるのだが、地獄の鬼の刀はそもそもの大きさからして違う。
腕の時点で民家を叩き潰せるような大きさだからな、その得物の大きさも推して知るべしだ。


『ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!』

『ヴヴ…ルル…フフ…フフ…フハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!』


ゴオオオオオオオオオオオオンッ

バキッ バキッ ガシャァァァァァン!


門の奥に垣間見えた高笑いを上げる地獄の鬼、その腕が再び刃を虚ごと門の内側に引き戻したと同時に門は閉じた。
そして地獄門は砕け散り、そこには何事も無かったかのような普段の景色が戻ってくる。
しかし何と言う禍々しい霊圧だっただろうか…出来ることならば奴等とは余り関わり合いにはなりたくないものだな…。







───────── 一護


正直ビビった。なんだありゃあ。
アレ見たらどんな悪人でも今すぐボランティアとかやり始めると思うぞ。
あんなのがいるなら別に俺いらねぇんじゃねえのか?とも思うがそれより今はチャドだな。


『ルキア、チャドはやっぱり俺のことは』

「見えておらんし聞こえてもおらん」

『やっぱそうか、それにしちゃあ凄かったな』


見えてないはずなのに最初空中から攻撃しようとしたホロウを電柱で殴り落とすし、
地面にいるときは当てずっぽうでボコスカ殴ってたからな。
スゲェ奴だと思ってはいたが勘もここまで鋭いとは思ってもなかったぜ。


「ああ、だがやはり傷を負ってしまったな…」


シバタをかばって小型ホロウの爆発をモロに喰らっちまったからな…。
今は気絶してる様だが、治療とかその辺の事はルキアに任せるしかねぇか。
あれ?昨日もだけど俺マジで攻撃しか出来ることねぇんじゃ…。
い、いや、大丈夫!ホロウ退治は出来るしな!役立たずじゃねぇぞ!畜生!


「ホロウ退治お疲れ様ー。何?楽勝ムード?」

『おう。いや、チャドに怪我させちまったからな…まだまだだ』

「その通り、一般人に怪我させるようじゃまだまだだね」

『分かってるよ、ったく…』

「ルキアちゃん、私も治療手伝うよ」

「ああ、スマンな」

「気にしない気にしない」


ルキアのやつ、まだ力が戻ってないとか言ってたからな、助かったぜ。


『っておおおおおおおおおい!!!!!!いつの間に居やがったテメェ!』

「来ちゃった♪」

『来ちゃった♪じゃねぇ!何時から見てたんだよ!?』

「優姫!?自然すぎて気づかなかったぞ!?」

「あールキアちゃんはいいんだよー、力戻ってないみたいだしねー」

『無視か!』


ぜ…全然気づかなかった…。心臓がバクバクしやがる…。
マジでいつの間にいたんだ!?いや、それよりもだ!


『お前、授業どうした!?』

「4限目は自習、プリントは10分で済ました」


そう言って時計を見せると共に治療も終ったのかしたり顔でこちらを振り向く優姫。
そういや今日は、数学の高村は他校に行ってて居ないとか言ってたな…。


『いや!それでも学校からここまでかなり距離あるだろ!?まだ4限始まって20分じゃねぇか!』

「フッ」


は、鼻で笑いやがったコイツ!やたら悔しくなるから嫌なんだよコレ!
世の中には色んな美人がいるだろうが、それが人を嘲る際にここまで効果的に発揮される奴はそういねぇよ!


「まさか…瞬歩まで使えるのか…?」


ん?ルキアがまた驚いた顔で呟いてやがる。
驚きたいのはこっちもなんだけどな。


『なぁ、その瞬歩って』

「はいはい、早く魂葬しないと6限目のテストに間に合わないよー」

『あ!今日は古文の谷原、テストか!』

「結構期末の得点にプラスされるって話だから一護クンもチャドくんも間に合ったほうが良いでしょ?」

「ふむ、とにかく茶渡を起こすか」


そっからはチャドを起こしてシバタを説得&別れの挨拶済ませて魂葬、記憶置換して急いで学校へ戻り、授業には間に合いテストも無事終了。
たつきに色々と聞かれたが、チャドの「インコの親捜しをしていたら喧嘩に巻き込まれた」という俺としては非常に微妙な発言で納得したらしい。
井上には「優姫ちゃんを心配させたらダメだよ?」と言われた。軽く凹む。












「それじゃ今日はお疲れ様」

「おう、んじゃ明日」

「黒崎くんバイバーイ」


何となく一緒に帰ってきたけどそういえば井上、今は優姫ん家に住んでるんだったな…。
あの大穴、実は俺が吹っ飛ばされた時に開いたんだよな…優姫には「結果オーライ!」と満面の笑みで言われたけどよ。
ルキアは今日も何か仕入れに行ったらしいが死神の道具とかでパッと直せたり出来ねぇのか?
















「と言うわけでこれを買ってきた!」

「わーパチパチ」

「いや、急に連れてこられて突然『と言うわけで』じゃ意味分かんねぇよ」


さて、何のことだかサッパリだろうが今はインコ事件の翌日。
そんでもって話は簡単。
昨日の件で気づいたらしく、分かれて行動してる際にホロウに襲われた場合、
ルキアさんのグローブ無しでは死神になれない一護クンの為に義魂丸を買ってきてくれたわけだ。
そして俺達は休み時間に突然ルキアさんに拉致された。織姫ちゃんが「あたし仲間はずれ…?」と言う子犬のような目をしていたのが非常に辛い。
まぁとにかく代わりの魂を入れることにより、死神体である一護クンの魂を自由に引き出せるって寸法だね。
と言うことはついにコン登場だよ。ルキアさんが来てからはイベント三昧だからここ1月が実に濃い。


─── と言う訳だ」

「ああ、そう言う事かよ。つーかまずそれを言えよ」

「今説明したから良いであろうたわけが」


あ、もう説明終ったのか。おーSOUL*CANDYってちゃんと書いてある。


「なんだこのソウル*キャンディってのは…」

「義魂丸では可愛くないと女性死神協会からクレームがついてな…3年前に改名されたのだ」

「女性死神協会あるの!?」

「うむ、優姫が死神になったなら加入してみると良い」


カラブリ好きとしては嬉しい話だ。アレはお遊び的な要素が強すぎて、If扱いされててもおかしくなかったからな。
やべぇ…ということは本部は朽木邸にあるんだよな…ちょっと尸魂界行くのが楽しみになってきた。


「で、なんでアヒルなんだ?」


一護クンが呆れた様な雰囲気で問いかける。
まぁそりゃあ死神の使う魂関連のアイテムがこんな緊張感皆無なアメリカンお菓子っぽかったらそうなるか。
マユリ様は頭のネジが吹っ飛んでるからなぁ。いや…これはやちるとかその辺の意思を感じるな…確か会長だったはずだし…。
いや、待てよ!?ならばゴツイ死神連中も「こりゃあソウル*キャンディの出番じゃのぅ…」とか言ってこのファンシーアイテムを懐から出したりするのか!
死神って面白ッ!


「う…うるさいな!それは支給品だから好みのデザインは選べぬのだ!
 私だって一番人気のうさぎのチャッピーが欲しかったわ!!」

「…そうか……うさぎが欲しかったのかお前…」

「はぁ…ルキアちゃんちょおかわいい…マジお持ち帰りィ…」

「な!何だ二人してその眼は!侮辱する気かぁ!」


いやー照れる余り逆上して渡り廊下の手すりをバンバン叩くルキアさんの愛らしさといったらそりゃあもう。
これはあの兄様もシスコンになるワケだ。かわいいかわいい。あ、一護クンが踏まれた。俺も踏んで欲しい。


「…さっきの説明じゃイマイチ分かんなかったんスけど…」

「飲め!1回飲めばすぐ分かる!」

「あー何か面白そうな雰囲気漂うアイテムだねぇ」

「それじゃお前飲んでみろよ」

「は?」


俺が振り向くと目の前にはアヒルの頭をぎゅっと押す一護クン。
対して俺の口は「は?」のままぽかんと開いてる。
あ、アヒルの口からキャンディが飛び出してきた。


あれ?


これマズくね?


一瞬がまるでコマ送りのように認識される。


これが達人とかが達する剣が止まって見えるとかいう感覚なのかー。


って口閉じないとダメじゃん。あー無理だ、間にあわねぇ。


口に入る。


反射的に飲み込む。


ゴックン。









あのさ、多少のアクシデントは覚悟してたけどさ。


これはねぇよ。




















『あとがきゴールデン』


感想を見て調子に乗ったので2日連続更新です。
一護クン生涯最初で最後のお茶目しちゃったんじゃない?な展開です。
とりあえず最後は読者の気を引くような展開にしろってばっちゃがいってた!


「チャド…」と思ったあなたは正常ですので原作の方で活躍する日を心待ちにして下さい。
書いてて出番少なすぎるな…とは思いました。でも反省はしません。

「シバタ…」と思ったあなたは若干希少です。ちょっとした脇キャラとか目立たないキャラが好きな変わり者として生きて下さい。
作者はモブキャラインコに割く感情は持ち合わせておりません。もちろん反省はしません。

「優姫、心配しすぎじゃないの?」と思ったあなたは一護死神化のときのことを思い出して下さい。
原作的にも別に手出す必要は無いのについついステルス監視しちゃうようなチキンなのです優姫は。


次回、King Of New York登場。



[5293] 第14話「でちゃった♪」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/02/19 21:56
そこはおよそ人が踏み込める限界を容易く超えた世界。

正気が狂気へと変わり、空間が悲鳴を上げ、全ての生あるものを死の淵へ追い込む名状し難い世界。

全てを殺しつくさんとするその殺気渦巻く世界で、矮小なる人の子であった少年は己が存在を確立せんとひたすら歯を喰いしばっていた。





「まだあやつは見つからぬのか…」

「どうやら連中は命がいらねぇみたいですね…1月経ったっつうのに見つけられねぇなんて無能以外の何者でもないですからねぇ…」

「全くだな…やはりここは私自ら現世に赴いて…」

「隊長、水臭いですよ。この阿散井恋次、どこまでもお供しますぜ!」

「フッ…言うようになったな恋次…」





ここは尸魂界、瀞霊廷内。護廷十三隊六番隊隊長朽木白哉率いる六番隊の隊主室。

その隊長である朽木白哉と副隊長である阿散井恋次。

別名ムッツリシスコン兄様と幼馴染に上手く接することの出来ないヘタレゴーグル。

彼らはその思いの対象である朽木ルキア失踪から1月余り経った現在、

未だルキアを発見できない技術開発局への怒りと、ルキアに対し募る思いにより発される霊圧で、隊舎に悲鳴を上げさせていた。

そんな2人の霊圧を受けて気を失いそうになってる一人、六番隊の新人隊士である理吉。

たまたまお茶を運びにきたらこの有様だ、実に不運と言えよう。だが彼が気を失うことはない。

六番隊の隊長と副隊長が、わざわざ十三番隊の平隊士の為に2人揃って現世に行くなどどう考えても有り得ない、あってはならない。

その思いがただただ利吉を世界に留めて続けていた。そう、彼は実に真面目で実に普通の隊士だったのだ。



「あっ!あの!お二人とも!」

「あぁん!?」

「何だ!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」



頑張れ理吉、負けるな理吉。割と六番隊の運命は君にかかっている。




















dream 9.   『FREEDOM!』



















うおおおおおおおおおお!!!!!!!やべえええええええええ!!!!
何一護クンお茶目かましてくれますかねえええええええええ!!!!!!

やばい!俺の魂自体はどんな姿をしてるか未確認のままだ!
・霊化<スピリット>はあくまで現世を構成する器子を霊子に変換するスキルであって魂を出すものじゃない!
このままでは魔法少女な俺か前世の田中真二が出る可能性がある!
しかもスピカは出る!間違いなく出る!一護クンが死神化する際に斬魄刀が出るのと同じ理屈だ!やべええええええ!!!


<<ユウキ!ノートの姿で出ますので背中に隠してください!>>

<<オッケースピカ!ナイス判断!>>


よし!スピカはこれで大丈夫!あとは俺の姿をどう誤魔化すかだ!
ってアレがあったじゃん!スピカが表に出るならアレでいける!
よっしゃあああああああ!!!!この間ジャストコンマ2秒!多分!








『変身!』

「うおっ!」


勢いよくゴボォ!と魂が出されようとした瞬間!俺のスキル
・変身<ヘンシン>
を発動!このスキルの効果により俺は望む姿に変身することが出来る!
そしてここで俺のターン終了!


『あービックリした…』

「いや俺もビックリしたんだが…変身ってお前…」

『いや、お約束ってやつじゃないの?』

「ま、待て!それより優姫!」

「え?どうかした?」


やべっ、何かミスったか!?
いや、今の姿はさっきと変わらず糸井優姫(16)花も恥らう制服姿のはずだ!
何も問題は無い!かかって来い朽木ルキア!


「鎖だ!因果の鎖が無いぞ!?」

「そうだ!お前鎖無いじゃねぇか!」

『はぁ!?』


あ!マジだ!鎖がねぇ!やっぱ俺も天然死神体質なのか!?
と言う事はあのままだったら死神の正装、死覇装<しはくしょう>を着た俺の登場だったのか!危ねぇー!


「あー…でもまぁ優姫だしな…」

「そうだな…優姫ならばおかしくはないか…」

『ええー…』


この2人における俺の認識ってどうなってるんだろう…ちょっぴり凹む。
とりあえず今回の事は心のメモ帳にしっかり記入しておこう。どうも俺は忘れっぽくてな…借りを返す時に必要だろ?
なぁ一護クン…クックックック…。


「うおおおおお!!!」

「今度はお前か一護!」

「いや、なんか背中に氷を突っ込まれたみてぇな感覚が…」

『ハハハ、面白いなぁ一護クンは』


全く無駄に敏感だな。
やっぱ勘とかそういうのが普通の人より鋭いのか?


「あのー…それで私はどうすればよろしいのでしょうか…」


あ、そうだ、次はこっちをどうにかしないといけないのか。
















───────── 名も無き義魂丸(コン)


シャァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!
てっきりあのままオレンジ野郎の中に入るモンとばかり思ってたが、
まさかこんな素敵な展開になろうとはお釈迦様だろうと見通せねぇはずだ!
ィやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!特盛巨乳美少女ォォォォォォォォ!!!!!!!
神様は俺を見捨ててなかったぜ!ヒャッホゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!

っと何やら向こうはもめてるみてーだが今は大人しく従ってた方が得策なのか?
流石に今の状態で死神2人相手に逃げ切れるとは思わねぇ…今はまだ従う時!そう!今は伏して機会を待つのだ!
そうと決まったらポイント稼ぎだ!うほっ!歩くだけで揺れるこの感触!たまんねぇ!


「あのーそれで私はどうすればよろしいのでしょうか…」

「おお、そうだったな」


なんかちっこい黒髪の死神が俺の方に歩いてきた。
おおお…こっちの方もメチャかわいいじゃねぇか…この2人を侍らしてるオレンジ頭に殺意が湧いきやがったぜ……。


「てい」

「あ」


死神の掌が俺の後頭部をポコンと叩くと、その拍子に俺の本体がポロッと口から吐き出された。

しまったぁぁぁぁ!!!あのまま逃げときゃよかったのか!?畜生!先が見通せねぇぇぇぇぇ!!!!!!
だが待ってろよ!俺は再びこの特盛巨乳美少女の体に戻ってくるぜ!アイルビーバーーーーーック!!!!!








───────── 優姫


あー焦った。あのまま逃げられてたら危なかったわ。
ていうか俺の体を一時的とはいえ使用したことは万死に値するな。


<<握り潰しますか?>>

<<魅力的な提案だけど一応主要キャラだからやめようね>>


既に体に戻った俺の手には先ほどの義魂丸がある。
俺の唾液まみれだ。ヒデェ。
しかし俺は容赦しない。ここからずっと俺のターン!


グルンッ!


以前のように首だけ一護クンの方を向くとこれまた以前のように「ヒィッ!」と怯える一護クン。
やだなぁ…そんなに怯える必要は無いじゃないかネ……。
ゆっくりと一護クンの方に歩を進めるとルキアさんは既に傍観体制に入ったようだ。生き残る術を心得てるねルキアさんは。


「スマン優姫!お、俺が悪かった!だから!な!?」

「ん~、一護クンが何を謝ってるのか私には良く分からないなぁー」

「いや!だから!」

「私はね、一護クン。ただこのアイテムを本来の使い方に則って使用したいだけなんだよー」

「待て!それならまだこっちにも残りはあるからよ!」

「いやぁーこれはルキアちゃんのお金で買ったものだもん。無駄使いはいけないねー。リサイクルリサイクル♪」

「ルキア!何とか言ってく…」


ざーんねんでしたぁー!(CV.白鳥というかロイドさん)
ルキアさんは既にあのケータイっぽいアイテムを弄ってこちらを無視する気マンマンなのよねー。
サディスティックな微笑を浮かべてじわりじわりと迫る俺。怯えてへたり込んだ体勢のままずるりずるりと後ずさる一護クン。


「さ、死神である一護クンにもちゃんと効くのか試してみようねー。苦くないから大丈夫でちゅよー」

「いや!せめて洗うか拭いてからに!」


純情だねぇ赤くなっちゃって。だがこの糸井優姫容赦せん!
その純潔をこの場で穢してやるわ!フハハハハ!
泣け!喚け!それが我が血となり肉となるのだぁ!

魔王ちっくな感じでマウントポジションに移行、無理やり口をこじ開ける。
そして抵抗むなしく義魂丸を飲み込むことになった一護クン。顔真っ赤だね。
そんな俺達の事情はお構い無しにゴボォ!と死神体が出てきた。よし成功、即離脱。
今の体勢のままだと奴が調子に乗るからな。


「おー成功成功。バッチリだね」

『お前なぁ…ちったぁ恥じらいとかよ…』

「あーあー聞こえなーい」

「む、そちらは成功したようだな」

「はい!初めまして!私の名前は黒崎一護!好きな言葉は『早寝早起き』です!」

『……あ?』

「ふむ、言い忘れていたが仮の魂の人格は、死神学者100人がハジき出した理想の性格が採用されているのだ」

『すっ……スゴかねぇよ!何だありゃ!?アレのどこが俺なんだよ!オイ優姫!何か言って…いねぇ!?』

「ああ、優姫ならホレ」



織姫ちゃんに呼ばれた気がするので先に戻ります
                              優姫



『置手紙とは芸が細かいなアイツは!?』

「それよりもさっき虚がレーダーにかかってな、後はこやつに任せて行こう」

『バッ…!バカかてめぇは!?』

「文句を言うな!急ぐぞ!」

『ダメだって!絶対バレるって!コラ!聞いてんのかテメェ!』

「大丈夫、万が一何かあっても優姫がどうにかしてくれる」


ズルズルズルズル!


『ひっぱんな!それにアイツは逆に喜んで事態を悪化させる方だろうが!あークソッ!とにかく大人しく授業に出とけよ俺!』

「ハハハハハ、お任せ下さいご主人様ー!」







「………ごゆっくり」













───────── 浦原喜助


「フンフンフーン♪」


いやぁ最近は朽木サンのお陰で商品がよく売れてたまりませんねぇ。
思わず鼻歌なんて歌っちゃうってモンっス。

まぁ…ホントならこっちは全てを賭けて彼女には償いをしないといけない方なんスけどね…。

すいません朽木サン……アレが奴等に渡るのはどうしても避けなきゃいけないんです…。

全てが終ったら、そのときはどんな事でもさせてもらいます…。


「……おや?」


あれ?たしかここにあった箱は粗悪品で廃棄用だったはず。なのに開いているってことは…。
急いで中を確認、ここにあった商品は確か…あちゃー1個なくなってる。
コレを最近買ったのは………朽木サンしかいないっスよねぇ…。
とりあえず雨<ウルル>に聞いてみますかぁ。








───────── 優姫


キーンコーンカーンコーン


「ィやっほーい!おっべんとだぁー!」


うむ、織姫ちゃんはいつも元気でよろしい。見てて楽しくなるね。
ちなみに今はさっきの凄惨な事件から40分ほど経った昼休み開始時刻。
コンが校内でウォーミングアップがてらぴょんぴょん暴れてるのは感知済みだ。


「まーたこの子は…今どきお昼でそんなにハシャげる女子高生はアンタくらいだよ」

「そんなことないよ!健全な女子高生たるもの学校にはおべんと食べに来てるようなものですぞ!?」


フフ…ポーズまでとっちゃってかわいいなぁ…何で原作だとあんなことになっちゃったんだろう織姫ちゃん…。
思わず鼻血が出そうだ。マンガ表現的に。


「とりあえず席くっつけようか」

「はーい!」

「はいよー」


ちなみに一護クンは虚退治から戻ってきてない。
意外と時間が掛かってるなぁ。
まぁ今のルキアちゃんは普通の女の子程度の速度しか出ないから仕方ないか。


「おー、今日もまた母さん張り切ったなぁ」

「わぁ!凄いね!」

「織姫の分の量もね」


そう、当然のことながら俺と織姫ちゃんは今現在同居中なので、お弁当の中身も一緒なのだ。
「娘が増えたみたいで嬉しいわ」と母さんも大喜びで、弁当が普段の1.2倍は輝いている。

織姫ちゃんほっとくと食パン一斤にあんこ塗って自家製アンパンとか言い出すからな。
遠慮する織姫ちゃんを説得して、ちゃんと弁当持たせるようにした母さんの判断は正しい。


「クッ…!同棲の次はペア弁当とは…ッ!流石師匠!どこまでも隙が無いわ!」


と、箸を伸ばそうとしたところで千鶴ちゃんの嘆きの声が耳に入る。
だから師匠言うなというに。
あと同棲じゃなくて同居だ。


「珍しいね千鶴ちゃん。いつもは女テニの部室でハーレムしてるのに」

「たまにはヒメと食べようと思ったらこのザマよ!滑稽よね!まるでピエロじゃない!笑うがいいわ!」

「アハハハハハハハ!」

「あんたが笑うんじゃないわよたつき!」


いやー今日も無駄に元気だねレズ娘。でも織姫ちゃんはお構いなしにパクパク食べてるぞ。
ちなみに織姫ちゃんの弁当は俺の2倍あるというドカベンサイズ。この栄養が全て脳と胸に行くのか…ゴクリ…。

それとさ、俺思うんだけどさ、普通ヒロインと仲良くしてると、クラスメイトの『男子』から妬まれるのがオリ主の常なんじゃないの?
俺が女で、相手も女で、嫉妬するのも女って何これ。ストライクウィッチーズか。シムーンか。テンプスパティウムもビックリだ。


「この変質者が!始末してくれる!」

「ホホホホホホホホホホ」


お、外から先生の声と一護クン(中身コン)の声がしてきた。
つーことはそろそろコッチに来るってことかなー。
さーてどうしてくれよう。







───────── 名も無き義魂丸(コン)


「ハハハハハハハハハ!メッチャ楽しーーー!!!!」


最高の気分だ!生まれて初めてちゃんと手に入れた体がオレンジ頭だってのが残念だが、
体を動かせるってのはこんなに気持ちが良いのか!特に俺は脚力強化タイプだからな!
移動もラクラクだし、ジャンプすれば皆ビックリするしで楽しいったらねぇぜ!


「っと、そういやオレンジのクラスは…1-3だよな。よし行ってみるか!」


こいつのクラスならギャラリーの驚きも凄いだろうしな!校舎に向かってジャンプ!確かあそこで合ってるハズだ!
開いた窓に着地成功!おっ、皆俺に気づいたみたいだな。一斉にクラス中の視線が注がれるこの感覚!たまんねぇなぁ~!


「いっ!一護!ああああんた今どうやって上がってきたのよッ!?」


おっ黒髪ショートの女が俺に話しかけてきた。
勿論答えは決まってる。


「今見てたろ?跳んで上がってきたんだよ。ビックリしたろ?」


俺の言葉を機にクラスがざわめきだした。
フフフ、この感覚は気持ち良いぜ~!


「何だ?」
「黒崎が窓から飛び込んできたんだよ」
「マジで?」
「お前見たのかよ?」
「隣のクラスの窓伝いにきたんじゃねぇの?」
「下から跳び上がってきたんだよ!」
「いや、俺は見てねぇけどよ」
「バカ、ここ三階だぜ?」
「いや、だって今黒崎が」
「なんなのアイツ?」
「だから下から跳び上がってきたって絶対」


くぅ~~~~!!視線は皆俺に釘付け!話題は俺一色!
皆、俺のことスゲー!って思ってんだろうなぁ~~!
たまんねぇ!

しっかしこのクラスは女子のレベル高ぇな~どいつもこいつも並以上じゃねえか…。
長いこと閉じ込められてたからな~~女にも飢えてんだよなァ~~。
誰でもいいから一人……。

ん?さっきの黒髪ショートが背中に庇ってる子は…。


ド            ン


肌白ッ!


ド            ン


メチャ美少女!


ド            ン


そして特盛ィーーーーーーーーー!!!!!!!






うおおおおおおお!!!!!!!
さっきオレンジといた娘とはまた違ったベクトルの美少女じゃねぇか!
何だ!?この学校はアイドル養成所かっつぅの!しかも胸デケェ!!!
今行きますお嬢さーーーーーん!!!そーれ届け俺の愛の跳躍ゥゥゥゥ!!
華麗に机の上に着地成功!俺カッコイイ!!


ああ…驚いてる顔も可愛いなァ…それではお手を拝借…。


「初めまして美しいお嬢さん…ボクにお名前を───


ガッ!


痛ッ!誰だ俺の手首を掴んだ奴は!
俺の邪魔をするようだったら容赦はしねぇぞ!?


「はぁいそこまでー♪」


ってさっきオレンジ頭と一緒に居た特盛巨乳美少女!?
ヤベェェェェェェ!!!!!同じクラスだったのかよ!!!!
どうすれば良いんだ!?先が見通せねぇぇぇぇぇぇ!!!!













『あとがきゴールデン』


結構肩透かしだったでしょうか?
単に間接キスに照れる一護を書きたかっただけでしたヴェハハハハーッ!

スケベキャラは書くの難しいネー。しかもまたちょと長くなたネー。
でも一護にキャンディ飲ませるまでのシーンが書きたかたのヨー。

優姫「ずっと俺のターン」、そんな話。
あと兄様たち初登場。




「よっしゃ!兄様きたぁ!」と思ったあなたはよくここまで我慢して下さいました。
でも本登場まではまだまだ長いです。何となく書きたくなっただけですので。

「むしろ俺にその義魂丸飲ませてくれ!いや、舐めさせろ!」と思ったあなたは自分の欲望に忠実ですね。
捕まらない程度に頑張って生きて下さい。

「シムーン!?シムーンなのかい!?」と思ったあなたはシムラークルム宮国で作者と握手。
未だシムーンの話が出来る知人がおりません。美しければそれでいい。



次回、シン・アスカ咆哮。



[5293] 第15話「まさか3話もかかるとは…」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/04/12 19:31
「まっ…待て一護…!何をそんなに慌てておるのだ…!」

『どうも嫌な予感がしてな!心配なんだよ!あいつが上手くやってるか!』


いや、間違いなく何かしらの問題は起きてるだろうな…。
何だよあのいかにもな好青年じみた俺は!絶対ェあやしいだろうが!
頼むから誰も構ってくれるなよ!一発で変と思われるだろうからな!
あーこんなに教室にいきてぇと思ったのは初めてだぜ!


ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!

キャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!


「ッ!?」

『チッ!』

「やるな一護!大正解のようだぞ!」

『嬉しくねぇよ!チクショウ!』


ルキアがクラスへ向かう、ここは挟み撃ちの形がいいな。


「そこまでだ!」


一気にクラスの窓まで跳び上がる。
そしてそこで俺の見たものは!







「ギブ!ギブギブギブギブ!折れる!折れます!骨も心も折れますってば!!!」

「折れた骨はまた繋げればいい」

「アンタって人はぁー!!!って心は!?心はフォローなし!?」

「ヒュー!流石師匠!そのバカに更なる裁きを!!」

「いいよ優姫!もっとやってやりな!」

「優姫ちゃん強ーい!!」

「織姫ちゃんの手にキスをしようとするなんて七つの大罪を八つに増やす気なの?ほーねーがぴょんと鳴ーるっと」


メキメキメキメキッ


「ちょっ!それぴょんどころじゃギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」





優姫に関節技を決められ悲鳴を上げる俺と盛り上がるクラスメイト、

そして勢いよく入ったはいいが、予想外の事態に呆然としてるルキアの姿だった…。



















dream 10.   『Angry Queen's Manner Lesson』



















───────── ちょっと前、優姫


「はぁいそこまでー♪」


あっぶなー…コイツ織姫ちゃんの手にキスしようとしたなコノヤロウ。
まぁちょうどいい…さっきのことも含めて今この場で教えてやろう。
誰が頂点たる存在であるかをな!


手を掴んだ次の瞬間、対象を絞り限定的に霊圧を飛ばす!これなら大丈夫だろう。


「!?」


フッ…怯えて声も出ぬか。
まぁそれも仕方なかろう、ここまで高濃度で敵意を含んだ霊圧を浴びるなんて初めてであろうからな。
だがまだ始まったばかりだぞ!?魂の奥に刻み付けてくれる!絶対的な力の恐怖というものをなぁ!


ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!

キャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!


あ!やっばーい!余波でガラスが砕け散っちゃった。
隣の織姫ちゃんは口をぽかーんとあけてビックリしてるし。俺もビックリしてるし。
あ、この野郎気絶しやがった。ま、アレをモロに浴びたんだからそうなるか。

だが俺は容赦しない。
まだまだ俺のターン!速攻、関節技に持ち込む!
一護クンの体なのが申し訳ないけど腕が千切れても戻せるから大丈夫!いや、そんなスプラッタはゴメンだけどね。










そして冒頭。


「ゆ、優姫?」

「あ、ルキアちゃんお疲れ様ー。そっちはどうだった?」

「あ、いや、無事済んだがコレは一体どういう?」

「っと、もういいか。あーコレはお痛しちゃったから教育的指導ってやつかな?」

「ん…そうか…。ッ!?一護!そっちに逃げたぞ!」

「うおおおおおお!!!!こんなトコで死にたくねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

『おう!オラッ!もう逃げ場は無ぇ…ぞ!?』


一護クンもまさかこの高さで窓から飛び出すとは思うまい。
奴は足を強化した改造魂魄だからな。
この程度の高さから飛び降りることなんか何の問題にもならないよねー。


『待てコラァ!誰の体だと思って…!?』


着地成功、か。まぁ人造死神が護廷十三隊の副隊長になれるこの世の中だしな。
金と時間を掛ければ相当強靭なのが造り出せるのだろう。浦原商店のウルルだって確か…。


『一体どうなってんだあいつ……』

「間違いない…奴は──── 改造魂魄だ…!」


改造魂魄──────────────────
────────────────── それはつまり。

あ、今のに意味は無いのよ?
なんかこうしただけでアレっぽくなるかなーと思いまして。
フフフ…文体が線だらけになっていた、モロにアレの影響を受けてたあの時代…忘れたいなぁ…。


<<少年、斗神 紡はその左目に神殺しの魔眼を持ち───── >>


やめてぇ!?悪気無く俺の傷口に煮えたぎった塩水をかけるようなマネはやめてスピカさん!!!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!迂闊に思い出すとロクなことがねぇ!かずいぃぃぃぃぃぃ!助けてかずいぃぃぃぃぃ!!!!
名前に神が入ってる辺り今の俺にこうかはばつぐんだ!ネタじゃなくマジでやれてたあの頃が恨めしい!斗神の斗は闘の意味もあったりなんかしてうぎゃぁぁぁぁ!!!!


「優姫ちゃん?顔色悪いけど大丈夫?」

「あ、ああ…大丈夫…ちょっと昔を……ね……」

「うん…」


ああん、心配そうにしょんぼりしてるこの織姫ちゃんのわんこっぷりといったらもう。
垂れた耳としっぽが見えるね俺の腐れアイには。ホント死ねばいいのに。


「あれ?ところでルキアちゃん達は?」

「あの人を追いかけて2人とも行っちゃった」

「あの人と2人って1人多くない織姫?っていうかあの人って?」

「えっ!?あ、そうだった!うっかりしちゃった。アハハ」

「まったくあんたは…まぁあんな事があれば仕方ないか」


ふむ、やっぱり織姫ちゃんは修行の効果が出てるみたいね。
一護クンの体とルキアちゃんだけでなく、死神体の一護クンもバッチリ見えてるみたいだし中身が違うことも分かってるようだ。
逆に他のみんなは死神体が見えてない…と。
まぁ間違いなく見える石田くんはどっかでお昼食べてるみたいだし、チャドくんは学食みたいだからまだその辺は分からないなぁ。


<<ところで単に霊圧発するだけであんなガラス割れるような物理的効果って出たっけ?>>

<<まぁ『霊圧のようなもの』ですし>>

<<だよねー。凝縮すれば地面切れるしまぁそんなものなのかな?>>


こんど竹やぶで剣心ごっこしてみよう、なんて思いつつ念話もどきしてたら廊下がザワザワしてきた。
さっきの騒ぎを聞きつけて先生が来たな。
面倒だけど変質者が云々言ってこの場を誤魔化せればいいか。
どうせ後で記憶置換すれば良いだろうしいざとなったら俺にも手はあるしね。


そっから先生が来てさっさと誤魔化して帰ってもらった。
優等生ズの証言力は強いのだ。







と思ったら。







「ハイハーイ♪ここは黒崎サンのクラスでよろしいですかー?」







ゲタ帽子スタイルの浦原喜助登場!何で!?


「ちょっと部外者の立ち入りは!」


ボムッ!


「きゅう」


ああ!!
なーるほーどねー!欠陥品売ったから後始末とか回収とかその辺をしに来たって話なのね!
即織姫ちゃんとアイコンタクト!織姫ちゃんから「『きゅう』だね!」と答えが返ってきた!気がする!

あれ?つーことは何?俺も『きゅう』しないといけないって事?
うわぁ、恥ずかしい。何その羞恥プレイ。

恐らくアレは一般人用だから当時霊力の芽生え状態だった織姫ちゃんには若干効いたけど、今の織姫ちゃんや俺には全く効果なし。
もう物理無効化の敵に直接打撃するくらい無駄。1ターン無駄に使ってしまい死ぬほど後悔。ああ少し脱線した。
ようはですねーじぶんで『きゅう』っていって、きぜつのふりをするひつようがあるんですねー。
はーずーかーしーいー。『きゅう』はねぇよマユリ様。畜生、絶対石田くんにボコボコにさせてやる。モテモテ王国のファーザーみたいな耳しやがってクソッ。




とか思ってたらコッチにも来やがった。


ボムッ!


「きゅう」


わー織姫ちゃん上手い。


ボムッ!


「きゅう」


わーたつきちゃんマジ一般人。


ボムッ!


「きゅう」


わー俺超恥ずかしい。死にたい。




「っと、これで全員っスね。さて、次はアッチの回収に行きますか」


ヒュッ



よし、浦原の他3人が離れていったのを感じる。それじゃそろそろ起きますか。
と思って目を開けたら織姫ちゃんすっごくニコニコしてるの。もうニヘラニヘラって感じ。何がそんなに嬉しいのかね?
ってさっきのか!さっきのなのか!?もうバッチリ『きゅう』聞かれちゃったのかー!!


「ま、まぁとにかくバレずにすんだね」

「うん、そうだね♪」


ああんもぅ!嬉しそうだね織姫ちゃん!俺は凄く恥ずかしいです!


<<デリカシーがありませんね>>


貴女もね!!っていうか話の流れ的にまた録画してたな!?
俺の味方はいないのかドチクショウ!







───────── 一護


「あっ!朽木サン!ダメっスよそれ取っちゃ!」

「何だ浦原?貴様は客に売った商品を金を払わずに奪い取るのか?」

「そ、それじゃ仕方ない…代金のほうはお返ししますんで…」

「必要ない、こちらはこの商品で満足している」


あー…何だ?とりあえず今までをまとめると。

改造魂魄を追う→ホロウがレーダーに引っかかる→とりあえずホロウ優先で退治に向かう
→そこにはホロウと戦う俺(改造魂魄)の姿が→2人でホロウを倒す→このゲタ帽子が来て俺の体から改造魂魄を抜く
→それを回収して帰ろうとしたゲタ帽子からルキアが取り返した

って所か…。ルキアが出張ってきたのは意外だったな、改造魂魄は破棄するのが掟だーとか言ってたクセに。
まぁ俺としても生まれた時点で殺される日が決まってた、なんて話をされたりしたからありがたかったけどよ。
勝手に生み出して勝手に殺すだなんてのはいい気がしねぇからな……。
にしてもあんな雑魚ホロウにやられそうになるようじゃ、どっちにしろ改造魂魄の計画とやらはダメだったんじゃねぇのか?言わねぇけど。


「……知りませんよ?面倒なことになったらアタシら姿くらましますからね」

「好きにしろ。最近は面倒にも慣れた。ほれ、お前が持っておけ、帰るぞ」

『お、おう……ありがとな、コイツ捨てないでくれて…』

「フン、礼ならもう聞いた。」

『あ?』


何のことかはよく分かんねぇけど、とにかくこれはめでたしめでたしってトコか。
あーでも俺の制服、肩の所とか破れちまってんな……またおふくろに怒られそうだ……。
とりあえず学校に戻って優姫に肩の怪我治してもらうとするか……。













「はいこれでOK」

「おう、悪ィな」

「ほう…やはり凄いな、今すぐにでも四番隊に入れるのではないか?」

「ハハハ、まぁどっちにしろまだ六、七十年位は先の話だけどね。まだ死ぬ気は無いよ」

「フッ、それもそうだな」

「おっ、流石。肩回しても違和感ねぇな」

「あ、ところでその改造魂魄とやらはすぐ捕まえたの?」

「いや、しばらく見失ってな」

「途中でホロウも出たしな」

「フム、それじゃある程度覚悟しといた方が良いかもね」

「あ?」

「む?」


















“今日午後一時ごろ、空座町で空を跳ぶ少年が───


「一兄、アタシは信じてるからね」

「私たちの学校の近くでもお兄ちゃんに良く似た人がぴょんぴょん跳ねてたけど…ち、違うよねお兄ちゃん?」

「あら?これ一護なの?ダメよ?授業サボっちゃ」

「ハハハ!父さんの息子としてはまだまだだな一護ォ!!父さんが若い頃といったらそりゃあもう!!!」


夏梨、その言葉と裏腹に諦めたような視線を止めろ、肩に手を置くな。
遊子、スマンそれ俺だ。中身は俺じゃねぇけど。
おふくろ、そういう問題じゃねぇ。
親父、死ね。


「なんか知らんが父さん涙出そう……」


知るか。
























一護が明日からのことを悩み、改造魂魄を手で転がしながら困り果て、

ルキアが今後の改造魂魄の取り扱いをどうするか思いにふける、そんな騒動が終わった後ののんびりとした夜。

一つの事件が無事解決と終わった、次の戦いまでの間の穏やかな休息。

その空座町の夜空があたかも牙を剥くかの如くその巨大な顎を開いた。






異界から現れたのは、全身を陶器のような色彩の外殻で覆われ蟹にも似た巨躯の異形。

その大きさはゆうに二階建ての家屋を超え、その霊圧は抑えられているにも関わらず一護の遭遇した虚のどれをも凌いでいた。

そう、正にこの段階では破格の化物が空座町に姿を現したのだ。







『フゥゥゥゥゥゥ……久々に来たがやっぱり虚圏<ウェコムンド>と比べると現世は霊子が薄くてかなわねぇな…』


夜だというのに灯りの絶えない町並み、星よりも眩く輝く遠くの夜景、闇を恐れることなく出歩く多くの人間。

世界の全てが異形の記憶とは様変わりしていた。

異形は久方ぶりの現世の変わりようを見て物珍しそうに世界を眺める。

だがそれも長くは続かない。

異形は求めていた。

獣としての本能が。

虚としての性質が。

無くした筈の心の渇きが。


『さぁて、何処だ…俺の獲物は。俺を更に強くしてくれる愛しい獲物は』


異形は知覚する。

四方数kmに渡り存在する獲物の霊圧を。

己を更なる高みへと導く獲物の気配を。


『この霊圧は……死神か…こいつも久々だな、そこそこの大きさはあるようだしまぁ前菜にはちょうど良いか』


異形は求める。

最上大虚<ヴァストローデ>に至る道を。

望むままに生きることの出来る力を。


『そうだ、手当たり次第ここの人間を殺し尽くしてみるか。そうすりゃ死神も来るだろうし、ついでにちょうど良い宣伝になるかもしれねぇ』


だがそれが叶う事は無い。

光と影が対になる様に、コインに表と裏がある様に。

世界には悪に対するモノもまた存在しているからだ。









『残念ながら殺し尽くされるのはお前の方だ、中級大虚<アジューカス>』









かくして物語は、本来辿るべき筋道には存在しえない未知なる闘劇の開幕を告げた。
































『あとがきゴールデン』


と言うわけでコン編終了。3話にまたがった話になりました。
ぶっちゃけますとあれ?この後どうなるの!?って引きと、間接キッスに照れる一護と、優姫に恐怖を叩き込まれるコンを書きたかっただけです。
なのでインコ同様、このSS的にはあんまり必要ないなぁと思った部分はカットしました。




「アンタって人はぁー!!!」と思ったあなたは良いツッコミありがとうございます。
元ネタはまた花を植えれば良いとか言ってましたが内容的には元ネタの方が外道臭い事言ってる気がするのは気のせいでしょうか。

「型月───────── だと……?」と思ったあなたは作者の事は放って置いて下さい。
作者は既に心が十七分割されそうです。実際にプレイした事は無いのに設定だけは……というのがさらに拍車をかけます。

「俺のフィギュアに義魂丸を……ッ!」と思ったあなたは相当な変態の可能性があります。
ちなみに作者は相当な変態です。プライズの20cmくらいある承太郎とDIOのフィギュアは未だ動く気配はありません。



次回、舞い散る花の名は『千本桜』。



[5293] 第16話「深夜のテンションで書き終わった翌日ビクビクしながら推敲した回」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/03/29 19:23
『面白いこと言うじゃねぇか死神、だが死ぬのは手前ェの方だ』



名をベルギルと言われているその中級大虚<アジューカス>は、突如現れた存在に戸惑いを感じる事無くそう言い放つ。

ベルギルには虚圏<ウェコムンド>、人間の住む現世とも死神や魂魄の住む尸魂界とも異なる虚達の住む世界で生き延びてきた自負があった。

間違っても目の前の死神に負けるような事は無い、長きに渡る死に塗れた記憶がそう確信させていたのだ。



『そうか、残念なことだ。余程力量の差と言うものを弁えておらぬ様だな』



そんな自分の前に現れ、更に虚言とも取れる言葉を言い続ける目の前の死神にベルギルは怒りと共に落胆を覚えていた。

目の前の、自信に溢れながらもどこか冷めた表情をし、頭には割れた筒のような奇妙な髪留め、首には白い襟巻、そして死覇装の上に白い羽織を着た死神。

だが見た目に反して、その死神からは驚くほど霊圧を感じなかったからだ。

自分と比べると無いにも等しいとすら言える。これでは面白くも何も無い、叩き潰してさっさと終わりにしよう。

そう思い、自身の巨大な岩石のような右の鋏を目の前の脆弱な死神に叩きつけた。

だが終らせるはずだった一撃はあっさりと死神の斬魄刀に止められる。流石に手を抜きすぎたか?ベルギルがそう思った瞬間、死神が口を開いた。



『済まなかったな。先程の言葉は取り消させてもらおう』

『ほぅ、何だ、ようやく身の程を知ったか死神ィ』

『いや、アジューカスとばかり思っていたが、どうやら買いかぶり過ぎていた様だな。下級大虚<ギリアン>だったか』

『何だと手前ェ!!!』



右の鋏が振り上げられ、その表面の棘が数瞬前と同じ物とは思えない程に凶悪な、

見る者に恐怖を与える禍々しいフォルムに変わり、それだけでは止まらず更に高濃度の霊圧を纏い始める。

そして次の瞬間、あたかも暴虐という言葉を具現化したかのような鋏が再度死神に向けて振り下ろされた。

今度は間違いなく本気の一撃。下級大虚呼ばわりされた事はベルギルのプライドを傷つけるには十分過ぎた。

あんな愚鈍なデカブツと同じだと!?俺が下級大虚だと!?ふざけるな!!ベルギルの心はその姿に相応しく、醜悪な烈火として燃え上がっていたのだ。

だが今度もまた、軽々と斬魄刀に防がれる。依然、死神は現れた時の霊子を固めた足場から一歩たりとも動いてはいない。

何故この程度の霊圧しかない死神が自分の一撃を押さえきることが出来るのか。そもそも何故この程度の奴が1人で現れたのか。こいつは一体何なのだ。

様々な疑問がベルギルの心の内に生じるが、今は自身のプライドを傷つけられた怒りが勝った。

防がれたならばこのまま押しつぶすまでよと振り下ろされた鋏に更に力が入り、硬質の不協和音が辺りに響く。



『成程、矢張り先のは手を抜いていたか』

『当たり前だ!手前ェ程度の雑魚にハナっから一々本気で相手してたら力の無駄だろうが!』

『そう言う事か。其れは済まなかった』

『あぁ?』

『ならばこれで良いか?』



そう告げた途端に死神から発される霊圧が先程とは比べ物にならないほど強大なものとなる。正にその態度に相応しいと言える圧倒的な霊圧がベルギルに叩きつけられたのだ。

何だこれは!?何故こんな奴が現世にいた!?ベルギルの不安と恐怖は瞬間、既に極限に達していた。これではまるで────




『あ゛!あああああああああ!!!!!!!!』




見た目からは想像もつかない素早さで瞬時に距離を取ったベルギルが放つのは、勢いよく突撃し体重を乗せた両腕の鋏を使っての時間差による攻撃。

大振りな右を避けたところに霊圧で固めた目にも留まらぬ瞬速の左を打ち付けるベルギル得意の一撃。

その巨体と豪腕を活かし、かつて多くの同胞を屠ってきたその単純ながら最大の一撃だった。



『鈍いな、鈍重極まる』



だがその一撃は掠る事すら出来なかった。振り向けば背後に悠然と立つ死神の姿。

全く動きが掴めなかった。しかし己が瞬速の左を嘲笑うが如き速度で背後を取った死神がその隙を突くような動きは無い。

馬鹿め!今、俺に攻撃を仕掛けなかった事を後悔させてやる!そう思ったベルギルが振り向きざまに追撃を掛けようとしたその時。

死神は初めから変わることの無い、まるでつまらない物を見るかのような表情でベルギルに向けて告げた。



『だがある程度お前達の力量は把握出来た。さらばだ、アジューカス』

『うおおおおお!!!!!俺を舐めんじゃねえ死神風情が!俺はいずれ最上大虚<ヴァストローデ>になるベルギル様だぁ!!!』



ベルギルは死神の圧倒的な霊圧に気圧されながらも決して引く気は無かった。

素早いのならそれが関係ないほどの広範囲の攻撃をすればいい。そう考えたベルギルの霊圧が急速に高まっていく。

全ての大虚<メノスグランデ>が持つ技の一つ、己が膨大な力を更に高め、圧縮し、体の一部から光線として発する虚閃<セロ>。

普通の死神であればまず生きて帰ることは許されない破壊の閃光。だが、それが放たれることは無かった。



『散れ、『千本桜』』



死神の持つ斬魄刀の刃が消え失せた。しかしその周りには月光を受けて煌めく無数の花びらの群れが現れる。

一見花びらに見えるそれの実態は無数に分かれた刃の群れ。軌道上のものを無慈悲に斬り裂く、目に見えぬ程に分かれた千の刃。

満開の花が散りゆくかのような幻想的な光景。それがベルギルの見た最後の世界だった。

クソッタレ、どうせならもっと現世の夜景でも見とけば良かったぜ。ベルギルの最期はそうして訪れ、終わりを迎えた。



















dream 11.   『Monster Hunter』



















『あーもー!滅茶苦茶ビビったわ!!何で俺があんな怪獣と空中大決戦しないといけないの!?』

<<しかし直に中級大虚の力を計れた良い機会だったのでは?>>

『いやそうだったけどね?いくら修行してたからってさ、最初が真咲さんの仇のホロウで次がこないだの織姫ちゃんのお兄さんじゃない?』

<<そうですね>>

『そのどっちもノーマルホロウだったのにいきなりアジューカスが出てくるって何事なの!?』

<<確かに原作でもありませんでしたね>>

『いやいや、ランク違いすぎでしょ。序盤の町でスライムに紛れてデビルアーマーが出てきたかのようなあの場違い感は何?』

<<ですがこの先のことを考えれば、ユウキの力ならノーマルの中級大虚くらい倒せて当然です>>

『あー、いや、まぁそうなんだけどね……はぁ…愛染マジウザい…そして俺マジチート…』

<<とりあえず『結界』と『変身』を解いてはいかがですか?>>

『そうね、っとその前に自分にステルスかけないと…あー今日最後にこんなイベントが待ってるとは思いもしなかった……』

<<突然でしたからね>>


あー疲れた。ベッドでラノベ読んでごろごろしてたらいきなり今まで感じたこと無いレベルの霊圧を感じるんだもん。
瞬時に大体の位置に大型の『結界』張って駆けつけたわ。
某超能力と魔法ラノベじゃこういうのは脳内で演算が云々言ってた気がするけど俺の場合スピカがやってくれてる。俺が使うのは霊力だけ。超楽。

ついでに良い機会だから言わせて貰うと、いくら6年間修行していたとはいえ俺は基本的にビビりなのよ。
原作じゃ一護クンが死神相手に大立ち回り演じてるけど俺にそれが出来るとは全然思わない。
俺の基本スタンスは絶対安全圏から遠距離攻撃で『ハハハ!踊れ踊れ!そして死ねぇ!』と言うような感じなのだ。

そんな俺が何故アジューカスなんてバケモノ相手に飛び出してきたかというと理由は以下の3点。

1.今の段階で尸魂界に動かれるとマズい。
2.一護クンの霊圧と比べて明らかに格上過ぎるので一護クンが殺されかねない。
3.俺ってどのくらい強いのか知っておきたい。

まぁ3番目はスピカにアジューカスのサンプルデータが欲しいと言われたから、実際に攻撃を受けたり避けたりするハメになったけど。
何だかんだ言っても俺の持つ強さのものさしは、一護クンと真咲さんの時のアイツと井上兄だけなのだ。死神の隊長クラス、ましてや愛染の強さの程度なんかサッパリ。
でも今考えるとノーマルのアジューカスが強さランク的にどの辺か細かくは分からないのがなぁ……アジューカスと言っても原作見る限りピンキリなのよねー。
それに割とこの世界は雰囲気で強さ変動するし。ワンピの懸賞金並みに当てにならない…。

ていうかあのレベルのホロウを相手にするのは初めてだったから正直かなり怖かったんですけど。
そのせいで殺すのがちょっと早くなりすぎた。もう少しデータ取ってからでも良かったかもしれない。
まぁ根がチキンだからあれでも良く持ったほうだよね、うん。変に焦らせて必殺技とか出されても困るしね!
ていうかあんなの殺せる攻撃力が出せたことに我ながら驚く。

原作なら裏で浦原ファミリー辺りが退治してくれてたのかな?それとも俺の存在がバタフライ効果?
あーもーやだやだ。オリ主ものにありがちなオリ敵とかオリボスとかはマジやめて欲しい。
でも今の一護クンじゃ絶対勝てないレベルだったし……なんか町のみんなを皆殺し的なことも言ってたしなぁ…。
とっさに『結界』張っちゃったからあの状況では浦原組は来ない。だったら俺がやるしかないじゃない。一護クンのレベルアップ速度は原作と何ら変わってないもの。

あーでもひょっとしたらやりようによっては幼い頃に一護クン自身の死神の力に目覚めさせて、
原作開始時点で既にヴァイザード他を仲間にしてホロウ化マスター済みのルートもあったんだろうか。
上手いこと愛染の悪事を明るみにしちゃって楽に始末完了、俺凄く幸せルートとかさ。それだったら裏でコソコソする事無く暮らせただろうに。
………………いや、無いな。オリ主的に有り得ない気がする。


『はぁー、辛い…おててが痛い…もうおうち帰る……』

<<そういえば朽木白哉のマネは中々お上手でしたね>>

『ホントに?フフフ…やっぱりマネるならトコトンいかないとね…あはははははは………ハァ……死にたい』


いや、痛いと思うだろうけどあんなバケモノを相手にするのって凄く大変なのよ?
何か自分に暗示をかけるというか、こう……『強い』ガワを被らないと、とてもじゃないけどやってられない。
今思えば一護クンと真咲さんを助けた時に『ヒーロー』を演出したのは自分を奮い立たせる意味もあったのかもしれないな。


<<ですが「お前」ではなく「貴様」の方がより『らしい』と思います>>

『至ってまともなご指摘有難う。まぁそれは別としても早くニーサマに会ってみたいわ。面白いことになりそうだし』


さーてそれじゃ久々の大型クエスト、アジューカス討伐も終ったし帰るとしますか。
つーか俺はモンスターのハンターじゃねぇっつーの。
あージャイアンとか懐かしいなぁ…ドラえもんマジ懐かしい……まーた前世シックだよチクショウ。










その夜、俺は夢世界に入ることは無かった。
実は流石に毎日の使用は精神やら何やらに良くないと考え、週2日程度は通常の眠りに当てている。
今回の場合は単純に力を使いすぎたというのも原因の一つかな。普通に寝たほうが回復速度は速いし。
あんなに大きな『結界』張り続けた上に『変身』使ってしかも最後にアレだったからなぁ。心労もプラスでホント疲れた。
それにしても、一体何だったんだろうアイツは…。

















翌日マンガを買いに駅前の本屋に行く途中、道路をじーっと眺めている一護クンとルキアさんを見かけた。
道端にしゃがみこんで何しとるんじゃろかあの2人は。
もっと人目を考えろと言いたい。







「道路を眺めるだけのデートなんて前代未聞過ぎるわ」

「うおっ!」

「ひゃぁ!」


あら叫ぶ瞬間もお揃いで。
おほほほほ。って近所のおばちゃんか俺は。


「だから気配を殺して後ろに立つなって言ってんだろ!それにデートじゃねぇ!」

「で、何してるのルキアちゃん?」

「無視か!」


うむ、良い反応だ。やっぱこれでないとね一護クンは。弄りがいがあっていいわ。
ていうかアレか、昨日の今日で早速コンをどうするかって話か。


「うむ、昨日の改造魂魄をとりあえず何かに入れてみようと言う話になってな」

「それで車にひかれたノラネコでもいないかってな」

「その発想は無いわ…」

「な、なにぃ!?」


ルキアさんそこで驚かれても…。
そもそも発想が怖いわ。死体探しって。


「いや、まぁそこに至るまでのプロセスは何となく分かるけど、死にたての死体なんてそうそう無いよ?」

「あー…まぁな…」

「それに引かれた小動物って結構グロかったりするし」

「う…うぅ……確かに…」

「極めつけは、死体を捜すと言う発想の怖さと言うか業の深さ?」

「はうっ!」


わールキアさん撃沈。
でも実際道路ウォッチングしながら動物の死体探しってとってもデンジャラスな気がするの。
生きた動物に入れるのは人道上有り得ない事は分かるけど、そこで死体探しに町に繰り出すのは少しおかしいと思うの。


「と言うわけで拾ってきましたこのライオンのぬいぐるみ」

「ぬいぐるみ?」

「其れをどうしようと言うのだ?」

「いや、最低人っぽい形の『何か』ならいけるんじゃないかと」


うん、何でお前が持ってるの?って思うだろうが俺もビックリした。この2人の方に向かおうと歩いてたら落ちてたんだもんコンボディ。
俺が来なければ場所移動の際に見つけてたんだろうけど、別にフラグは無さそうなので俺が拾ってきた。
さーさっさといれちゃおうねー。


「けどよ、ぬいぐるみってアリなのかよルキア」

「う…うむむ…今まで人以外に入れたことは無いから分からんな……」

「男は度胸、何でも試してみるものさ」

「いや…私は女なのだが…」

「いやいや、ルキアちゃんのぷりちーさは余人の知るところ。愛嬌たっぷりだから大丈夫よ。
 さぁそれじゃそこの度胸の男の子、存分にぬいぐるむがいい!」

「お、おう…」


勢い良くぎゅむっと押し付けられたぬいぐるみを受け取った一護クンは、いまいち納得してないような表情で改造魂魄を取り出す。
さぁぬいぐるめ!ぬいぐるむのだ一護クン!
一護クンがぽかんと開いたぬいぐるみの口に改造魂魄を押し込むと、そのとき不思議なことが起こった。


「このエロゲー主人公がぁ!」

「へぶぅ!」


なんとぬいぐるみが突然喋りだし一護クンの顔を叩いたのです。
まぁ初めから分かってたことだけどね。
にしてものっけから元気だなコイツ。エロゲーってお前。
あ、コンはもうどうでもいいや。ちょうどルキアさんに会ったしお誘いしてみるか。


「ねぇねぇルキアちゃん。駅前のル・ヴェールってお店で新しいケーキ出たみたいなんだけど一緒に行かない?」

「中々に興味をそそられる話だが…その……持ち合わせがなくてな…」


あーあー申し訳なさそうな顔しちゃってもう。俺の目は犬耳や尻尾が見えるのがデフォなのだろうか。すっごいションボリ耳が見える。
だがご安心めされよ!この糸井優姫、それぐらいの事は既にお見通しさぁ!
財布の中から数枚のチケットを取り出し、笑顔と共にルキアちゃんの前にかざしてみる。


「ふふふ~これなーんだ」

「それはル・ヴェールの無料券!?」

「父さんが貰ってきてね、ルキアちゃんも一緒にどう?」


ハハハ、持ち歩いてて良かったー。ちなみにル・ヴェールは所謂洋菓子店でショコラがめちゃ美味しいのよ。
まだそんなに現世慣れしてないルキアちゃんを何時誘おうかと思ってたけどこんな早くにチャンスが訪れるとは思わなかったわ。
このルキアちゃんのキラキラした目といったらそりゃあもう一番星も裸足で逃げ出すね。かーいいかーいい。


「フフッ、目は口ほどにものを言うみたいだね。さぁさぁそれじゃいきますぞー」

「待て優姫、一護は誘わぬのか?」

「ルキアちゃんは優しいなぁ。でも今の一護クンは腹話術を用いてぬいぐるみと一人芝居してるちょっと変わった人だから放っておこうねー」


ルキアさんもそれに気づいたようだ。ジーッと一護クンを見つめていたが、だんだん可哀想な人を見るような目になってきた。
ていうかこっちで会話してるのに気づかずまだ何か喋ってるし。ホラ、向こうの道路の親子連れが怪訝な顔してるぞー。
一護クンはいい加減、周りから自分がどう見られるのか客観的に考えてから行動するようになって欲しい。届け私の親心。

実際ジョジョでも一般人からスタンドバトル見たらかなり意味不明な状況になってると思うんだよね。
そして今の一護クンはどう見てもぬいぐるみ相手にドツキ漫才を道端で行う変な人……。
現世で死神代行として頑張る以上これはいけない。彼には是非とも痛みから学んで欲しい。俺は黒歴史から学んだ。気がする。


「…………行こう、優姫」

「了解」


絶賛放置プレイ続行中の一護クンだが、まぁ黒崎家へのお土産にショコラ系のを入れとけば大丈夫だろう。
ああ見えてチョコレート大好きなんだぜ一護クン。ル・ヴェールのショコラ渡せばどんな気分でも即ゴキゲンよ。
でもカッコつけたがるから人前では喜ばず、自室に帰ってからニヤニヤしてショコラに舌鼓を打つんだろうなぁ。
本人は気づかれてないと思ってるだろうけどバレバレなのよね。

織姫ちゃんへのお土産は…チーズケーキかな。
母さんはピーチタルトでしょー。父さんはー……ショートケーキで良いや。
残りの黒崎家の皆さんには適当に4種類詰めておこう。そうすれば好きなの取るよね。


「ハハ、なんだか何にするか考えてたら楽しくなってきた」

「うむ!」


ルキアさんもテンション上がってきたねー。お互い少し早足になってきた。
よーし!パパ、ショコラセット頼んじゃうぞー!








その夜、織姫ちゃんの美術の宿題の批評をすることになった。
下書きのほうをちょいと拝見。うん、ありえねぇ。
原作でも見た気がするが、『未来の私』とかいうお題でガンタンクみたいな兵器と化した自分を描く織姫ちゃんはファンタジスタ過ぎる。
なんかもう光速のビジョン過ぎてついていけない。


「無い」
<<無いですね>>
『これは…ちょっと……』
『なんとも……たくましい体じゃのう…』
『織姫あんた……』
『エレガントさに欠けますわね』
『馬鹿が』
『あ、あははは……描き直そうか……織姫さん…』
「ええー!?」


俺、スピカ、あやめ、梅厳、リリィ、火無菊、椿鬼、瞬桜の順だが満場一致で否決。
少し涙目の織姫ちゃんちょうかわいい。



アーサーモーヨールー♪

ピッ


おっと自作の着うたがなった。
前世の音楽はこちらでは存在しないのが多いから自作のCDやら何やらに録ってあるんだ。
俺の脳内のぐぐる先生が「自分ラジオ」とかいう死亡必須な関連ワードを出してきたが華麗に無視する。

自分でも美声とはいえやってることが痛いのは分かるし前世を引きずってる感は否めないが、ふとした拍子に思い出せなくなったときとか非常に役に立つのだ。
あと出来ることならこれで印税生活とかしてみたい。金には一切困ってないけど。


ピッ


ん?一護クンからのメールでムービーが添付されてるな。
なんじゃらほい。


ピッ


“ン~ン~ン~♪ン~ン~ン~♪”

“ガタッ あっ”

“ン~♪ ってあ!ルキア手前ェ!何撮ってんだよ!?”

“ハハハ!気にするな!”

“ふざけんな!消せ!今すぐ消せ!つーか俺の携帯返しやがれ!”

“ガタガタッ ハッハッハ!”


今日のショコラケーキを鼻歌交じりで満喫してる一護クンの隠し撮りムービーだった。
これは面白い、PCにも保存しておこう。


「なに?今の」

「ああ、これ」


“ン~ン~ン~♪ン~ン~ン~♪”


「ブフー!黒崎くんかわいい!」


織姫ちゃんは噴き出すほど気に入ったようだ。
ルキアさんにはボーナスとして布袋屋の白玉あんみつでも奢ってあげねばなるまい。この辺ではあそこのが一番美味しいからな。
にしても一護クンはルキアさんを隠す気があるのだろうか。こんなにうるさくしてたら遊子ちゃんや夏梨ちゃんが気づいてもよさそうなのに。
つってもルキアさん隠れる気あるのか分からない程にノリノリだし、肝心の両親にはとっくにバレてるんですけどね。























『あとがきゴールデン』


うあーオサレバトルエミュレートが難しいです。
そしてつっこまれる前に自分で言っちゃおうと思います。

ヒュッ
カメンライドォ
キュウンキュウン
ガシャ
ビャクヤァ!
ジャキィン

ヒュッ
アタックライドォ
キュウンキュウン
ガシャ
センボンザクラ
ビュゥン

酷いだろ……これ、最初から書くことが決まってたんだぜ……。
かなり皆さんの反応が気になる回です。うわぁぁぁぁ。
それにしても感想掲示板での皆さんの予想具合は中々面白いです。作者も大盛り上がりでした。


「兄様じゃねぇのかよ!」と思ったあなたは素直に引っかかって下さって有難う御座います。
ずっとそのままのピュアな貴方でいて下さい。

「カメンライド(笑)」と思ったあなたは今すぐベルトを買いに行って「あ…プレゼント用に包んでください……」とか言えばいいと思います。
作者は動画サイトで見て凄く欲しくなりました。

「チィィィィィィィト!!!!」と思ったあなたはブリーチを読み直してみて下さい。
一護に至っては開始から尸魂界編までの約3ヶ月でアレです。ダイの大冒険か。世の人生やり直し系SS主人公の強さも納得ですね。


次回、一護テンション急上昇。



[5293] 第17話「とくに何もない話」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/02/08 00:27
本日は6月16日。
美術の宿題の提出日である。
というわけでHR前にアンパンを咀嚼している食いしん坊織姫ちゃんを眺めつつたつきちゃんとお話中。
ちゃんと朝食も食べたのにこの食欲は何事なのだろう。そのうち魔界から魔人が出てきて一緒に探偵業でも開くのだろうか。


「今日の宿題たつきちゃん何描いてきた?」(アンパン2個めを取り出す様を眺めつつ)

「ん?見る?」(なんだかみつしりとアンパンの詰まった袋を眺めつつ)

「見る見る。あ、それじゃ見せっこといこうじゃない」(2個めが綺麗に胃の中に納まる様を眺めつつ)

「あ、優姫!私も見せて!」(織姫ちゃんの机の上のアンパン箱に驚きつつ)

「いいよいいよー」(3個めに取り掛かる織姫ちゃんを眺めつつ)

「みちるは何描いたの?」(箱からは目をそらしつつ)

「えっ…私は…その…」(あのパンの栄養が胸に行くのかと織姫ちゃんを凝視しつつ)

「わふぁひふぉふぉふぃふ?」(3個めのアンパンを咀嚼しつつ)

「はいはい、織姫ちゃんはそのアンパンを飲み込んでからね」(4個めにもいくのだろうかと興味深そうに残りのパンを眺めつつ)

「もぐもぐっくん。うわーっ!たつきちゃんうまーい!」(パン袋をしまいつつ)

「おー、これは実にバーリトゥード。夢は世界チャンピオンですか」(3個で済んだ事に一応の納得をしつつ)

「いいなぁ…やっぱりあたしの下手クソで見せられないよぉ……」(1.5個分のカロリーがあの片方ずつにいくのかと計算しつつ)

「で、織姫は何描いたの?優姫がチェックしてくれたとは思うけど」(まだ詰まってるなぁ…とパン袋を気にしつつ)




「ふふふ、よくぞ聞いてくれました!ジャン!」




やけに元気いっぱいな織姫ちゃん渾身の一作が俺達の前に明かされる。
まぁ俺はもう見たんだけどね。


「ホッ……」

「良かった普通だ……」

「2人とも私を褒めると良いよ」

「あれ?皆反応おかしくない?」


さもありなん。リテイク前はいかにもなロボじみたデザインだったからな。
昔は居残りでちゃんと…じゃない……一般人でも理解できるレベルのを描かされてたから、そのことを聞かされてたみちるちゃんも安心したようだ。
リテイク後は町のケーキ屋さんと言う実に女の子女の子したファンシー極まる未来の織姫ちゃんの絵だ。もう俺に永久就職すれば良いのに。
作ったケーキの大半が自身の胃袋に納まりそうで怖いけどね。


「ううん。織姫ちゃんは可愛い可愛いって話だから大丈夫」

「え?そ、そうなの?えへへ」

「(ところで優姫がダメだしする前は何だった?)」

「(足がキャタピラ、胸からミサイル、全身が機械の未来兵器ORI-HiME)」

「(優姫グッジョブ)」

「(優姫も大変なんだね…)」

「(楽しいからいいけどね)」


そんな天然タイムを過ごしていると一護クン登校。


「おはよう!黒崎くん!」

「おはよう一護クン」

「遅いぞ一護」

「お…おはよう黒崎くん…」


織姫ちゃんを先頭に挨拶をしていく俺達。
まぁいつもならむっつりしたやや不機嫌フェイスで返事をするところだがこの時期は違うんだよなぁ……。


「おう!オハヨ!」


うわぁ爽やか。
花マル笑顔で元気いっぱいデスネ。



















dream 11.   『Extraordinary June』



















一護クンテンション急上昇事件の原因は分かってる。

そう、この俺だ。

俺があの日一護クンと真咲さんを助けた際の『ヒーロー』ぶりが、ダブルオーの刹那で言うところのオーガンダムの如く焼きついてしまったのだ。アイガアイヲー。

お陰であの日の翌日は「優姫の言ったとおりヒーローが来てくれた」だの「もう一回会いたいなぁ」だの「お礼が言いたい」だのとキラキラした目で言われ死ぬ思いをした。
原作と違い俺が裏でコソコソした結果、俺が出張らなくても浦原さんが来てくれていた&俺の微妙なヒーローセリフの恥ずかしさで俺は悶えていたのに追い討ちかよと。
出来れば忘れて欲しかったのだが、あの日の記憶は「いつかオレが『ヒーロー』になってやる」等と言う言葉の通り一護クンを構成する要素の1つになってるっぽい。
とはいっても今のところ記憶が確かなら原作と比べて一護クンに大きな変更点は無し。至ってまともに原作通り成長している……ハズ。

まぁ原作と比べて大きく違うところと言えば俺の存在、織姫ちゃん既に覚醒してるの巻、真咲さん生存ルート、仇となるはずだったのホロウの生死不明、この辺りか。
本来なら6年前の明日に真咲さん死亡、そして今年、命日となっていたはずの明日、黒崎家は墓参りに行ってそこで一護クンが仇のホロウに一矢報いる、となるはずだったんだけどね。
正直あの頃は真咲さん助けるのにいっぱいいっぱいで、これからどうなるか考えてなかったんだよねー。
今回のイベントどうなるのかしら。ていうか明日平日じゃん。原作じゃ学校休んでたのかね?


<<もしかして今回のイベント起きないんじゃないかな?>>

<<その可能性もあります。しばらく静観する以外ないかと>>

<<ですよねー>>


何か動きがないとこっちもやりようが無いからもうどうにでもなーれ☆って感じですよ。
するとみちるちゃんが珍獣でも見たかのような目で俺に問いかけてくる。
まぁ常に眉間にシワがよってる奴がいきなりあんなテンションになってたらそう思うわな。


「ね、ねぇ!黒崎くん今日ヤケに機嫌良くない!?」

「あー…そう…ね……」

「ん?まぁ…あいつ毎年この時期はこうだから…」

「なんかすっごく嬉しそうだけどどうかしたのかな?」

「うーん、一護クンは数年前の6月17日に凄く良いことがあったらしくて、毎年それが近づくとああなるんだよね」

「へー…何があったんだろ」

「なんだろうねぇ」

「なんだろな」


もちろん俺とたつきちゃんは知ってる。
当時の一護クンが何回『ヒーロー』と言う単語を口にしたかはもう考えたくない。
イコール俺の心がダメージを負った回数だからな。
でも今更「ヒーローに会ったんだよ」だなんて死んでも口に出来ない。言ったが最後、可哀想な人を見る目がデフォになりそうだから。
しかしそんな事情を知るよしも無く、まだ興奮冷めやらぬみちるちゃん。
一方織姫ちゃんは何か考えてるようだ。嫌な予感がするのは気のせいだろうか。



その日、ずっとクスリでもキメたかの如くゴキゲンなオーラを振りまいていた一護クンの変わりように問い詰められる幼馴染の俺とたつきちゃん。
朝のみちるちゃん同様「何か良いことあったらしーよ」と私たちも良く知りまセーン的な対応をしておいた。一護クンには今度何か奢らせよう。

織姫ちゃんはとりあえず放課後たつきちゃんの家に行かせることにした。
その間に俺は自室でルキアさんにちょっと踏み込んだ解説をすることに。




「で、一体何なのだあやつは?朝から気色悪いことこの上なかったぞ?」

「んーそれなんだけどね。実は一護クン6年前お母さんと一緒にホロウに殺されるところだったのよ」

「何!?」

「一緒に死神業をやるルキアちゃんだから言っておくけどね。一護クンの霊圧凄いんでしょ?」

「ああ……あそこまで霊的資質の高い人間は見たことが無い」

「そう、だから一護クンは一般人よりホロウを呼び寄せやすい」

「確かに……ホロウが人を襲う際の例として高い霊力をもつ人間、並びにその周りの人間は頻度が多い」

「と言っても何故か一護クンが死神化する前はその1体しか遭遇はしてないらしいけどね。ちなみに私は織姫ちゃんのお兄さんが初めて」

「う…それは私の力の至らなさが……」

「あ、いやいやそういうことじゃなくてね……。ん?ちょっと聞きたいんだけどルキアちゃんここに来てどのくらい経つ?」

「いや…恥ずかしながらまだ2ヶ月程しか経っておらぬのだ。本来は1月の短期駐在だったのだがな」

「え!そうなの!?」

「ああ、だがそれがどうかしたのか?」

「じゃあその前に人はいた?」

「居たぞ。引継ぎの際に日誌を見たが殆ど交戦記録が無かったのを覚えている。実際はご覧の有様だが」


何?どういうことだ?確か空座町は重霊地とかいうパワースポット的な場所じゃなかったのか?
今までホロウを殆ど見たことが無かった&本編開始と共にやたら出てくるのはルキアさんが負傷してホロウ退治の効率が落ちたからだとばかり思っていたのに。

てっきり本編開始前まではルキアさんが袖白雪使いまくってホロウをガンガン倒していたのだと思っていた。道理で一度も氷柱を見かけないわけだ。
いや、前任者がいたのはいい。問題はそいつに交戦記録が殆ど無いと言うこと。
これだけホロウラッシュが起きる空座町でホロウを殆ど倒してない?
じゃあ何故今まで全くと言って良いほどホロウに会わなかった?





いや、もう分かっている。





答えは一つ。





『誰か』が隠れてホロウを倒していた。





可能性として高いのは石田くんか。つーかあのメガネしかいないな。
いや、待てよ?でも生まれてこの方ずっとの話だぞ?見習いクインシーな石田くんがホロウを倒せるか?
じゃあお爺ちゃんが生きてる?だが俺は何もしていない、というか見つけられなかったのに?
空座総合病院が石田パパの病院だと知ったのも最近だもんな俺。

んん~わけわからん。
そもそも原作でも一護クンあのときから本編まで襲われてなかったみたいだしな。
それじゃホロウラッシュは本当に本編開始からなのか?
原作設定の穴とか微妙に世界力的なものが働いてるっぽいもんなー。誰か助けてヘルペスミー。
今しがた確信を得たかのような表現をしたばっかりなのにもう自信がなくなってきた。


「優姫?大丈夫か?」

「ん?大丈夫大丈夫、ちょっとね」

「それで話をしたのは私ばかりで、肝心の一護の原因をまだ聞いていないようなのだが…」


ああそうでした。ゴメンねルキアさん。
そんな拗ねた目で見ないで下さい。思わず抱きしめちゃうじゃないですか。


「アハハ…ごめんねー何か途中から逆になっちゃったみたいで」

「フッ、聞くつもりが聞き出されることになるとはな。話術も巧みなのだな優姫は」


めちゃ気のせいで御座います。
世の勘違い系主人公たちはこうしてドツボに嵌っていくのだなぁ。なーんて。


「ホントにたまたまなんだけどなぁ。まぁそれは置いといて一護クンの話だったね」

「ああ、先程言っていた襲われたときのことに関係しているのか?」

「ご明察。ちょうどその時助けが来たの」

「ほう、前任者か?」


ああ、そうか、話がそれたのはここから先の解説をしたくないという俺の深層心理の働きによるものだったのかもしれない。
ワタクシ、武勇伝(笑)を嬉々として語れる程強い心は持ち合わせてはおりません。
むしろ自画自賛に近いものがあるのが辛い。死にたい。


「えっとね……その……」

「なんだ、もったいぶるな優姫。気になるではないか」


ああもうルキアさんったらワクワクしちゃってもう。
その目が辛いんだよ!くそぅ!


「あのね…仮面を被った『ヒーロー』が助けに来てくれたんだって……」

「仮面?死覇装を着ていたのではないのか?」

「着ていたのは白い衣装で、口元はマフラーで覆われてたんだって……」


そして俺は昔のことを思い出して死にたくなってるんだって……。


「ふむ…死神ではないのに虚を倒したと……霊能力者とか言われている者の類か?」

「うーんどうなんだろうね。とにかくそれ以来6月17日が近づくとテンションが上がるのよ一護クン」

「成程、事情は良く分かった。ここ数日のあやつは変に高揚しておるようでな…自室でも奇怪な格好をした者や怪物を倒す映像ばかり見ておるのだ」


あー、それ特撮モノっスわ。
一護クンDVDとか買ってるもんね。原作一護クンからの変更点の1つだ。あの幼い心に響いたものは色褪せる事は無かったんだね。それが彼の響鬼。
一護クンが特撮好きになったのは間違いなく俺のせいです。まぁ面白いから良いけどね。たまに貸してもらうし。

こっちの世界は前世とは違うのばかり放送してるから新鮮なんだよね。
だってウルトラマンも無いんですものこっち。すげぇ新鮮なシリーズばっかり。アニメもラノベもマンガも然り。
逆行モノの主人公は先の展開が分かる代わりに読みたかったところまで進むのが大変だなぁとか思ってたからこれは嬉しい。

まぁ俺は前世で見てたものの続きを見ることはもう無いわけだが。
ああ…あの作品の続きはどうなってたんだろう……あのゲームの続編はどんなのが出たんだろう……いやいや、これはいけない。
未知のものを楽しむ気概で生きねばなるまい。俺は今ここで生きているのだ。
さて前向きになったところでいよいよ本題といくか。


「あと数日のガマンだから頑張って。それよりルキアちゃん」

「なんだ?」

「ちょっと話しておきたいことが─────────








───────── 織姫


「でさ、あいつそのころヒョロヒョロしててスッゲー弱っちかったんだよね」


昔は黒崎くんそんな感じだったんだ。
思わず頬が緩む。人の昔話を聞いたりアルバムを見せてもらうのは好き。
自分の知らないその人を知ることが出来るから。


「で、6年前のあの日。まぁ日付は明日なんだけど、その日からかなあいつの目が特に変わったの」

「目が?」

「何て言うかこう…目に光るものがあったんだよね。それからかな、あいつが強くなり始めたのは」


そんな黒崎くんが変わったその日。
何が起きたかあたしは聞かずにはいられない。


「それで!それで!?」

「はいはいはしゃがないの。それで気になって聞いたんだ。そしたら何て言ったと思う?」


思わず首を振る。
人がそんなに変わる理由なんてあたしには想像もつかない。


「『ヒーロー』に会ったんだって」

「へ?」


思わず声が出る。ヒーロー?
それはよくデパートの屋上でやってるアレなのかな?


「なんかね、あいつ今じゃ言わないけど霊が見えるらしいんだわ。それでそのときバケモノみたいなのに襲われてたんだけど何も出来なくて。
 そして食べられそうになったら、突然『ヒーロー』が空から降ってきてそのバケモノを退治してくれたんだって」

「え?ええ!?」

「で、いつか何かあったとき、誰かを助けられるように強くなるって言い切ったのよ。まぁこれにはオチがあってね。
 中学に上がって目に付いた不良退治してたあいつは、それを繰り返すうちに『ヒーロー』どころか不良呼ばわりされるハメになった…と」

「ふええ…あ、でもそんな話聞いちゃって良かったのかな?」

「あー大丈夫大丈夫。優姫があたしに聞けって言ったんでしょ?なら織姫は聞いても大丈夫って判断したってことよ。あたしもそう思うし」

「そっ…か…」

「そういうこと。その証拠に今の話聞いても織姫アイツを見る目は変わらないでしょ?」

「うん、もちろん」


私の顔は笑顔になっていると思う。
そっか、優姫ちゃんは私のことを分かってくれてるんだ。そしてたつきちゃんも良く分かってくれている。
そのことを考えると胸が温かくなってきた。
私は1人じゃないって、そう思えるから。





たつきちゃんの家を出た帰り道。
さっきの話を思い出して思わず空を見上げる。


「空から…か……」


あのとっぴょうしもない話、だけどそれが冗談だなんて思わなかった。
黒崎くんは空から降ってきた『ヒーロー』に会って変わったんだと確信できる。

だってあたしも優姫ちゃんとたつきちゃんに会って変わることが出来たから。

黒崎くんに勝手に感じていた、一方的なシンパシーの理由が分かった気がする。



「黒崎くんも『誰かに助けられて変わった』んだね……」



そしてその話をわざわざたつきちゃんに聞くように言った優姫ちゃん。

本人は気づいてないかもしれないけど優姫ちゃんはとっても恥ずかしがりやだから。

もしかしたら、もしかして、『そう』なのかな優姫ちゃん。だからなのかな優姫ちゃん。



「黒崎くんを助けた『ヒーロー』は優姫ちゃん……なの?」



空は静かに在るだけで、何も答えを返してはくれなかった。



















「明日はピクニックに行きます」

「やったー!」

「ぴ、ぴくにっく?」


さて、本日はあれから数日経った土曜の夜、俺の部屋。
いつも通りお風呂に入りに来たルキアちゃんの髪を乾かしながらのおしゃべり中。
ああ…ルキアさんの髪の毛マジつやつやしてる…カラスの濡れ羽色ってこれだよね。
ハァ……黒髪ヒロイン分が補給されていくわ……たまりません。

それは置いといて。
話は少し遡り、ルキアちゃんが話を切り出したところから始まる。






「どうも一護は明日、家族で出かけるようでな。着いて行って良いものだろうか」

「そっかぁ、確か17日前後の日曜日は家族で出かけたりするんだよね黒崎家」

「へー何処に出かけるのかな?」


あ、ちなみにもうめんどくさいので織姫ちゃんが霊能力に目覚めたこととかルキアさんには一切バラしちゃった。
正直に言えばネコを被ったお嬢さまトークがもう限界だったのよね。これ以上は俺の腹筋が割れかねない。
無論他の人には黙ってるように言っておいたけどまぁ時期的にももうすぐ全バレするんだろうなー。
俺の本当の力に関しては未だ話してないけど。


「近くの山に出かけると言っていたな」

「ということはあそこだよね優姫ちゃん」

「まぁあの山だろうねぇ。今年は山で行楽と言うわけか」

「で、だ。仮に着いていくとしてもどうすればよいかと思ってな」

「ならば私に考えが─────








そして話は冒頭に戻ると言うわけだ。
あのイベントが起こらなかったとはいえ家族で山にお出かけ。
これは少年漫画の主人公的にも何か起こるからねと言ってるようにしか思えない。フォローは必須だ。
まぁ起きなかったら起きなかったでいいんだ。俺が2人と楽しく日曜日を過ごすだけだもん。

すげぇ、隙の無いこの策に我ながら戦慄せざるを得ない。
じゃーんじゃーん!げぇっ孔明!って感じだ。


「フフフフフフフ…」

「わぁ優姫ちゃん悪役っぽーい」

「怖いぞその笑い方は…」

「ジュルリ、おっと失礼」

「な、何だ今の舌なめずりは!?」


さー今夜はお弁当の仕込みをして明日は早起きして弁当作りだ。ワクワクしてきたぜ。
おっとその前に一心さんに細かい予定を聞いておかないとね。
いざ登って待ってたら違う山でしたとかそんな初歩的なミスはいらんからな。













『あとがきゴールデン』


まぁフツーの話です。一応前任者とかはオリ設定です。
他には特に語ることは無いと思います。

なのでさらりとフツーの次回予告。



次回、ピクニックに行こう。



[5293] 番外編1「起きたら書きあがっていたものを見てこれは酷いと作者は思った」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/02/08 00:25
ピピピピピピピピピピピ

パチン



「ふぁぁぁぁ……」



もう朝か…昨日は夜中も魂葬やホロウ退治で思うように眠れなかったな…。

ルキアは…もう出たのか?早いな。



「ふぁぁぁぁぁ……」



にしても結構辛いぜ死神代行ってやつは。

社会人になってからこんな事させられてたら俺の生活がヤバかったかもしれねぇ。






階段を下りてリビングに行くと、遊子がおふくろと一緒に料理をしていた。

相変わらず料理が好きだなアイツ。夏梨も見習えば良いのによ。



「おはよう」

「あら一護おはよう」

「おはようお兄ちゃん」

「おう」



遊子がトテトテと朝食をテーブルに運んでくる。

ご飯に味噌汁、そして玉子焼きと…おっ、今日の鮭は脂のノリが良いな。思わず腹が鳴る。



「もうお兄ちゃんったら」



そう言って遊子がキッチンに戻っていく。

味噌の香りも食欲をそそる。さて、やっぱり最初はこの鮭から……。


「って遊子お前その格好なんだ!?」

「へ?どうかしたの?」


いやいや待て、その反応は同考えてもおかしいだろ。
前から見たらエプロンで分からなかったけど後ろから見たら下はパンツだけってのは間違いなくおかしい。
てかなんつーカッコしてんだコイツ!


「オイ!おふくろも何か言ってくれよ」

「あら、どうしたの一護?」

「おふくろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


アンタもかぁぁぁぁ!!!
何だ?何時から我が家はパンツ丸出しが基本ルールになった!
これは新手のイジメなのか?俺はもう家出するべきなのか?


「うるせぇな一護……いい年して朝からギャアギャア喚くんじゃねぇよ……」


親父ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!
そういうテメェもパンツ丸出しじゃねぇか!!!
朝からこれは何が起こってんだよ!


「やだ!ちゃんと下はいてきてよお父さん!」

「お、スマンスマン。寝た時の格好のまんまだった」

「もう…遊子の前なんだからしっかりして下さいね、あなた」


そっちには突っ込むのかよ!!!
いやそうじゃなくて!言うぞ?言うぞ!?やっぱツッコミどころなのかこれは?
畜生…俺に安息の時はないのか…。


「じゃあ何でおふくろと遊子はパンツ丸出しなんだよ…………」

「は?」

「え?」

「へ?」




「「「ちゃんとズボンはいてるだろうが(じゃない)」」」


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???











どり~む1.   『すとらいくぶりーちーず』











家族から怪訝な目で見られることと視界に広がる光景に耐えられなかった俺は朝食を途中で切り上げ学校に向かうことにした。
一体俺の家に何が起こった?新手のドッキリか?
いや、親父だけならまだしも遊子とおふくろまであんな事をするとは思えねぇ。
なら俺の目がおかしくなったのか?だがそんなのはゴメンだ。
とりあえず俺一人じゃ何がなんだかサッパリ分かんねぇ。この手の類なら優姫とルキアに相談してみなきゃ始まらねぇか。
と考えていると背後から聞き馴染みのある声が。


「あれ?一護クン今朝は早いね」

「おひゃよふふろふぁふぃふん」

「はいはい登校中のパン食は慎もうね織姫ちゃん」


おお!神は俺を見捨ててなかったか!
背に腹は変えられねぇ。恥を晒すようだが早速今朝のことを……。


「ってお前らもかぁ!!!!!!」

「は?」

「ふぇ?」


思わず向きを180度回転。
クソッ!顔が熱い!なんなんだコレは!
もしかして俺の目がおかしくなったってことなのか!?


「突然どうしたのさ一護クン」

「回り込むな!」

「???」


優姫が頭の上に疑問符が浮かんだような表情で俺の周りをくるくる回る、そしてそれに対応して向きをくるくる変える俺。
畜生こいつらもパンツ丸出しじゃねぇか!ダ、ダメだ……もしバレたら2度と俺の目に光は映らない。確実に目が潰される。
「お前らがパンツ丸出しに見える」なんて言ったら「そうか、それじゃあ死にたまえ」とかサラッと挨拶のように目を潰しにくる。

とはいえこのままぐるぐる回り続けても意味は無いな…。
視線を下からは外しつつ話す事にするか…。


「ん、いや、その、なんでもねぇよ」

「おっと、急に止まらないでくれる?」

「それでどうしたの黒崎くん?」


い、言わなきゃダメなのか!?朝起きたら全女性のパンツが丸出しに見えるとか言わなきゃダメなのか!?
無理だ!その瞬間俺の社会的地位はピラミッド最底辺どころか地下まで落ちる!
しかし今は何か言わなければますます怪しまれる!ど、どうすればいい!


「あーいや、その……ズボン…がな……」

「ズボン?」


アホか俺は!もっと別の逸らし方があっただろうが!


「ほぅ……ズボンか……」


ヤベェェェェェェェェェェ!!!優姫がニヤリと目を細めた…これは獲物を捕らえたときの目つき!
俺今日死ぬんじゃねぇのか?さらば俺の眼球。


「良いところに気づいたね一護クン」

「へ?」

「このズボンは有名ブランドの品でね、昨日やっと届いたから嬉しくてはいてきたんだよ」

「可愛いよねーコレ。優姫ちゃんすっごいオシャレ!」

「やだなぁ織姫ちゃんったらもっと褒めて良いよ。でも一護クンにしては良く気づいたね。正直意外だったな」

「お?ああ……まぁな…………」

「材質が良いから伸縮性も良くてねー」


パチン


「やめろぉ!!!」

「はい?」


何とか九死に一生を得たのは嬉しいが、その両サイドを引っ張ってパチンと鳴らすのを止めろ!!
つーかもしかして、これは俺の目が狂ったんじゃなくて世界の方が狂ったのか!?
でもなんで女だけパンツ丸出しなんだよ!そしてそれをズボンと言うな!


「なんでもねぇ……それより早く行こうぜ」

「ん?うん。あと織姫ちゃん、流石にパンはもうその辺にしとこうか」

「はぁい…」







着いた学校は正にパンツ祭りだった。
もう自分でも何を言ってるのか分からねぇ。
俺もおかしくなり始めてきたのかもしれない。


「どうした一護、もう虚退治でへばったか」

「やっぱりお前もか……もうどうでもいい…………」


ルキアまでこれかよ、ホントもうどうでもいい。
誰かこのパンツ世界から俺を助け出してくれ。


しかしその時学校中にサイレンが響き渡る。火事か?
いや、火事の時はベルだよな…これ以上何が起こるっていうんだ…。


“空座町北部にホロウの接近確認、直ちに迎撃せよ”


「ハァ!?」

「行こう優姫ちゃん!」

「了解織姫ちゃん!」

「2人とも頑張って!」

「私たちもすぐ行くから!」

「ハァァァァ!?」


何でこいつらが?っていうか校内放送でホロウっつったぞ!?
どういうことだ?何で他のクラスメイトも普通に対応してんだよ!

























「う…うう……」

「ねぇルキアちゃん。この子どうしたの?めずらしく居眠りしちゃって」

「うむ、昨夜魂葬と虚退治をこなしたのでな。睡眠不足といったところだろう」

「それにしてはヤケにうなされてるような……」

「普通関わらないことをさせてしまっているからな…心苦しいことだ……」

「大丈夫、一護クンがやるって言い出した事だしやると決めたことはちゃんとやるよ一護クンは」

「そうか…フフッ、そうだな」

「パ…パンツ……」

「……今の聞こえた?」

「む?何がだ?」

(パンツ……いや、まさかね……)

「その格好で飛ぶな!!…ってここは!?」

「おはよう」

「お、おう…」

「どうした、何故上を向く」

「いや…ズボンがだな……」

「何言ってんの一護クン」

「何でもねぇ……良かった…夢か……ゆめ…………うおおおおおお!!!!」

「どうした一護!壁に頭をぶつけるのは止めろ!」

「止めるなルキア!俺は自分が許せねぇんだ!!!」

「ルキアちゃん、今は好きにさせてあげよう」

「し、しかし居眠りくらいで」

「ルキアちゃん」

「うむ……わかった。あやつは己に厳しいのだな」

「そうだね」
(いや違うな、「パンツ」、「飛ぶ」、「ズボン」……まさかとは思うがこれは記憶消去を施す必要があるか……)

「うおおおおおおおおおおお!!!」



鳥が舞い、風の緩やかな、陽気に包まれたある日の午後。

空座第一高校の空に頭突きの音がこだまする。










『あとがきゴールデン』


気がついたら出来上がってた話。我々の業界(どこかは定かではない)で言うところの『妖精さんの仕業』ってやつです。

本編で描写カットされたり、雰囲気的に中々描けない設定や話は気が向いたらこのシリーズでいけたらと思います。

それにしても酷い話だ。作者以外の皆さんはきっとドン引きですねこれ。





ところでこのSS、第1話で
「何となく読んでみたらブリーチかよ!しかもご丁寧にオリ主転生TSかよ!」
とか思ってもらえるかなぁ、そんなに続かないだろうし一発ネタ感覚でいいや。
そんなふわふわした感じでタイトルつけたんですけど、
皆さんのお陰で記事数20まで続けることが出来ましたし(現実→BLEACH、TS)みたいなのをつけた方が良いですかね?


「読んだ時ビックリするから(ネタ)のままでいいよ」と言うなら「そ!そうですか!?」と調子に乗ってこのままいきますし、
「別にそんな期待されるほど驚かなかった」と言うのならば「ですよねー」と大人しく元ネタ表記等する気なんですけど。


「もう本編もパンツでいいんじゃない?」や
「どうせなら(現実→BLEACH+なのは+ネギま!+マブラヴ+GS+ゼロ魔)くらいつけると集客効果高いよ!死ぬよ!」や
「カイジ思うの…サプライズ…そして海…サイッコー……」等の感想、ご意見もお待ちしております。



[5293] 第18話「あんな奴…投稿しなくても寂しくなんかないんだからねっ!とか言って欲しい」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/02/19 21:50
「もしもし、おじさんですか?」

「おお、優姫ちゃんどうしたこんな時間に」

「明日の日程を教えていただこうかと思いまして」

「いいけど何かあったのか?」

「なんとなくなんですけど、明日もしかしたら何か起こるかも知れないのでフォローに回れるように先回りしておこうかと」

「…また虚か?」

「まぁ今回は予知じゃなくて勘なので、一応です一応」

「いつも悪いな、俺も動けたら良いんだが……」

「もう6年前とは違ってこっちもそこそこ力は身につけましたから大丈夫ですよ。それに今回はこっちも3人でピクニックですし」

「それなら良いんだが…。しっかしあれからもう6年か……一護の言う『ヒーロー』ってのは結局何者なんだろうなぁ」

「え゛? いやぁー何なんでしょうねぇ」

「浦原は得体が知れないとか言ってたけど、俺からすれば優姫ちゃんと同じく真咲と一護の命の恩人だから一度礼を言っておきてぇんだがなぁ」

「ん~その辺は私も関わりの無いところですから何とも言えませんね。あの手のものは正体不明と相場が決まってますし」

「そうかぁ、それじゃ明日の日程はファックスで送っておくわ。頼むな、優姫ちゃん」

「はいはい了解です」

「それで「きません」……はい」



しばらくするとファックスで32ページにわたる『黒崎家ピクニック祭り ~ポロリもあるよ~ 蛙飛び込むラッシュアワーの音 in Summer』が送られてきた
おじさんは一度脳の検査に行っておいたほうが良いと思う。



















dream 12.   『Hints On Hero』



















いやー夢の国ってここじゃないの?
織姫ちゃんとルキアさん連れてピクニックとか前世からすると考えられない日曜日だよ。
夢の国を探す俺の名を誰もが心に刻むと良いさ!アレのアニメのOPは良かった。スープー乗りたい。


「黒崎家も楽しそうで何よりだね」

「うむ、虚の出る気配もないようだし今日は何事もなく休日を過ごさせてやれそうだ」

「遊子ちゃん達もはしゃいでるね。いいなぁ、あたしも混ざりたいなぁ」

「ダメよ織姫ちゃん。一応私たちが来てるのはナイショなんだから」

「はぁい…あ、このから揚げ美味しい!」

「フフフ…私もやればこのくらいは作れるのさ」

「こちらのエビフライと言うのも中々…天ぷらとはまた違う美味さが」

「あーやっぱり和食専門だったりするの?」

「うむ、大体そのような感じだ。おお、この玉子焼きも美味い」

「あ、それあたしが作ったの」

「中がトロッとしてて美味しいねこの玉子焼き」

「えへへ、そう?」


時間は昼。
朝から先回りして、少しはなれた地点から黒崎家を見守りつつの昼食。
ほのぼのとした穏やかな流れの中、春の陽気も手伝ってやや眠くなってくる。
あー、このまま何も起きずに無事帰れますように。






なんて思ったのがいけなかったのだろうか。
500m程離れた地点にホロウが現れたらしく、ホロウ特有の嫌な霊圧を感じてしまった。
なんて空気の読めないやつだろうか。俺が直接始末しておきたいくらいだ。


<<来たねー>>

<<来てしまいましたね>>


一護クンには悪いがコレも経験値稼ぎだと思って我慢してもらおう。
持ってたおにぎりを一気に食べてルキアちゃんの方を向く。


「ルキアちゃん、あっちの方角500mくらいにホロウが出た」

「何?」


ルキアちゃんが懐から伝令神機?とかいうケータイを取り出しカチカチ弄り始める。


「いや、指令は来ていないようだが」

「うーん、それほど強く霊圧を発してはいないようだから捕捉が遅れてるのかな?」

「あちゃー…黒崎くんせっかく家族でお出かけだったのに……ねぇ優姫ちゃん私たちじゃ…」

「織姫ちゃんの優しさに私が泣きそう。とりあえずちょっと様子見てくるからルキアちゃんは一護クンに電話ヨロシク」

「何!?危険だ優姫!」

「アディオス」


何か言われる前に即瞬歩。
あっさり使ってるみたいだけど実は結構苦労したのよ?
自転車乗りたての子供みたいにガスガス転んで怪我しては治癒。またガスガス転んではの繰り返しだったもん。

さーて今日のホロウさんはっと。あ、いた。


「スピカ」

<<はい>>

右手にスピカを顕現。勿論ノートモード。

「『結界』」


ステルスを張って観察開始ー。
チート過ぎてもはや笑える段階だなこのスキルは、便利すぎる。




さてさて今回のホロウは……ホロウ?
顔を見るとマーダーピエロもどきって感じで、あとはマント羽織ったへんな衣装のハゲなんだけどこれマジでホロウなの?
サイズも5,6mくらいでやたらでかい人型だし、仮面も下半分しかないよ?
でも一応胸に穴開いてるからホロウなんだよな……。
何でホロウ穴って大体胸に開いてるんだろう…あ、心が乾くとか満たされないって表現か。
にしてもこんなやつ原作にいたか?




んー…………あ!いた!こいついた!
確かあの仇のホロウが一護クンに負けた後、どっかで手術したときの第二段階っぽい!

ジャンプ読んでた頃はてっきりあの後ホロウとの戦いが熾烈になるかと思ったのにそのまま出番がなく尸魂界編。
インフレが加速して通常ホロウなんて忘れた頃に破面化(第三段階)して再登場したと思ったら一護パパにあっさり斬り殺されたやつだ!

俺が6年前に一度ボロボロにしたからこの時点で第二段階の登場なんだ…大丈夫かな一護クン……。
先日アジューカスを斬殺した俺からすればノーマルが仮面はがしたところでスライムがスライムベスになった程度なんだけど、
今の一護クンからすればちょっと苦戦度合いが上がるかなーって感じなんだよね。まいったなぁ。

一応やれるところまでやらせてみるか?
原作で苦戦したのは真咲さんの仇ということで頭に血が上ったからだった感じだし。
それにもう暫く後のイベントでメノスグランデ斬るもんな一護クン。このくらいの奴なら霊圧的には現状でも勝ってる。
……ピンチになったら手を出せば良いか。今の力を計るにはちょうど良いイベントになりそうだ。
よし、方針も決まったしルキアさん心配してるだろうから帰るか。












ピピピピピピピッ


「む、ようやく指令が来たな。全く遅いわたわけめ。方角、距離共に優姫の言ったとおりだな……私も先程気づいたと言うのに鋭い奴だ」

「やっぱり優姫ちゃんって凄いの?朽木さん」

「いや、もはや凄いとかそういう段階では…。先程のも間違いなく瞬歩だろうし」

「お褒めに預かり光栄の至り」

「……ここまで気配を殺して私の背後に回れる人間はそうおらん」


突如現れた俺に対してルキアさんから呆れにも似た視線を感じる。
やだなぁ、股座がいきり立つじゃない。いきり立つものはもう無いけど。


「ホロウ確認してきたよ。それより一護クンは?」

『ここだ』


草むらを掻き分けて一護クン登場。
既に死神化しているようだ。早くて助かる。


「おお、早かったね」

『つーかお前いくらなんでも一人でホロウ見に行くってのはどうかと思うぞ』

「お優しいねぇ一護クンは。で、実際見てきたんだけど今回のはちょっと手強いかもよ。雰囲気が違う」

「具体的には?」


ルキアさんの顔が険しくなる。休日出勤な一護クンに申し訳なさを感じているところにさらにドン!だからな。
良い子だ…。


「おっきい人型で仮面が上半分外れてた」

『いつもと霊圧が違う感じがしたのはそのせいか…』


まるで料理の説明を受けた人みたいなセリフだな。
そのうちソムリエじみた霊圧の微細な違いの解説とか出来るようになるんじゃなかろうか。


「流石、数をこなしてると言うことが違うね。危なくなったら私らがフォローに回るから気にせずやると良いよ」

『いや、それなんだけど何でお前と井上がいるんだ?ルキアがいそうなのは何となく予想してたけどよ。それに井上にも俺が見えてるみてぇだし』

「えへへー」


織姫ちゃんの太陽スマイルがさくれつ!俺の心が癒されていく!


『いやえへへじゃなくてだな…』


ざんねん!一護クンにはつうじない!
本当に♂ついてるのか一護クン。


「その話は後々ねー。今はとにかくホロウを倒してらっしゃいな」

「まぁ釈然としないものを感じるがとにかく行って来らァ!」


ザッと一護クンが駆けて行く。
そしてそれについていく俺達。


「今回織姫ちゃんは一護クンの戦い方やホロウがどんなものかよく見ててね」

「う、うん」

「六花は一応いつでも出せるようにね」

「六花と言うのは例の井上の能力か?」

「そ、この何時もつけてるヘアピンが斬魄刀の代わりって感じかな」

「ほう…それはまた珍しい」

「っともう着いたか」


場所は開けた原っぱ。
待ち受けるは本来仇となるはずだったホロウ。
そして飛び出していく一護クン。
さぁ戦いの始まりだ。



















一護が茂みを抜けた先には優姫の説明通り、今までの虚とは異なる人に近い姿、されど明らかに人とは異なる姿の虚がいた。
その後姿から発されているどこか異質な霊圧に臆することなく、一護はその巨大な斬魄刀を肩に乗せ歩み寄っていく。
すると虚がその口を開いた。嘲笑するかのような不快な声が辺りに響きわたる。


『ほぅ、死神か』

『デケェなお前、マジでホロウか?』

『ひ?ひひひひひひひひひひっ!!!』


振り返り一護の姿を見て突然、虚が笑い声を上げる。
だが一護にはその理由が分からずその眉間にさらにシワが寄るのみ。
何がおかしいのか問おうとした瞬間、虚の口が更に言葉を吐き出した。


『これは面白い!奴に借りを返しに来たのだが、その髪の色はお前あの時の餓鬼か!?』

『はぁ!?何言ってんだテメェ』

『ああ、もう姿が違うから分からぬか。ほれ、あの雨の日、貴様等母子を喰おうとしたワシを忘れたか』

『ッ!?』


その瞬間一護は理解する。
何故これ程までに自分の姿を見た虚が笑い声を上げたのかを。
コイツはあの日のホロウなのだ、あの日本体を潰され逃げ落ちたホロウなのだと。
そして『戦う力』を手にした自分の前に再び立ちはだかったのだと。


『ひひひひひひ!思い出したか小僧!何と言う幸運!あの時喰らい損ねた餓鬼が美味そうに肥えて再びワシの前に出てくるとはな!』

『ついてるな』

『ああ!全くだ!奴を殺して喰らう前にお前を喰ろうてやろうぞ!そして次はあの女だ!ひひひひっ!』

『いいや、ついてるのは俺の方だ!』


一閃。
瞬きをするより早く、虚の前に飛び上がった一護の斬魄刀が左肩から右腰にかけて体を切り裂く。
喜びに我を忘れていた虚は、反応が遅れたのか反応しきれなかったのか、刃をただただその身に受けるのみ。
激昂した虚は先程までの余裕が嘘のように声を荒げ、叫ぶ。


『こ!この餓鬼がぁぁぁぁぁぁ!!!殺す!殺してやる!!』

『ああ、かかってこいよ。全くついてるぜ俺は、これでまた一歩『あの人』に近づけるんだからな!』


一護は歓喜していた。これはまるで『ヒーロー』が自分に貸した課題であるかのように感じられたのだ。
もちろんそんな事は無くただの偶然だと言うことも分かっている。それでも嬉しかった。
あの日の遺恨を断つ事と、『ヒーロー』の強さに近づくことが同時に出来るのだから。

そう、この時一護は死神と自覚して以来初めて自分の為に戦うのだった。










───────── 優姫


おー、一護クン飛ばしてるねぇ。
最初はどうなるかと思ったけど意外と良い感じにスタートしたじゃないの。
特にピンチにでもならない限り俺達はこの離れた茂みから戦いぶりを観察させてもらおう。


「グランドフィッシャー。中の上といったところか…中々手強いぞ一護……」

「あれ?そのケータイ、プリントアウト機能までついてるの?」


ルキアさんのケータイの上部分からジジジジジと情報が印刷された紙が出てきてる。
便利だねーそれ。何気に変なところはハイスペックだったりするんだよね尸魂界。
ていうかそう言えばあいつグランドフィッシャーとか言う名前がついてたなぁ。
すっかり忘れてた。


「うむ、調べたところ本来は頭部から生えた疑似餌で喰らう人間を選別していたようだが……」

「無いね」

「無いよね」


ルキアさんの動きがぴたりと止まる。
いや、だってあれどう見てもハゲじゃないですか。一応後ろに何か生えてはいるけど。


「……無いな、先程の会話から察するに恐らく奴が例の6年前の虚なのだろう。その時の負傷で消えた能力なのかも知れぬな」

「あれが…黒崎くんの……」

「私が聞いたときは四速歩行で毛むくじゃらのバケモノだったはずなんだけどね…何あの超進化、ダーウィン馬鹿にしてるの?」


本編の破面勢とかになるとグリムジョーさんなんか色々して面を取るだけで豹から人間になってるくらいだからなぁ。
いくらなんでも反則でしょアレ。


「あ、今モロに殴られた。大丈夫かなー…一護クン」

「やはりこちらで援護するべきか!」


我慢できなくなったのかルキアさんが茂みから飛び出したその時だった。


『来るなルキア!』

「な!何を言っておるのだたわけが!いいか!?奴は50年以上も死神を退けて」

『頼む!』

「ッ!?」

『頼む、手ェ出さないでくれ!これは、俺の戦いなんだ!』


一護クンが己の心情を吐露する。
そうか、何だかんだで結局こいつあの日のホロウだもんね。
原作では真咲さんの仇だからってのがあったけどこの世界でもやっぱり思うところはあったか。
……それなら仕方ないな。


「一護クン!」

『何だよ!』

「『分かってるだろうな』!?」


俺がニヤリと笑うと一護クンも視線はグランドフィッシャーに向けたままニヤリと笑みを返す。


『当然だ!『死んでも勝つなんて言わねぇ!戦って倒して、それでも生きて帰って初めて俺の勝ち』だ!!』


それを聞いて思わず俺の笑みが濃くなる。
分かってるならそれで良い。
左手を腰に、そして右手は横にビシッと薙ぎ最後に言いたいことを伝える。


「よろしい!ならば勝て!怪我ならいくらでも治してやる!」

『おう!』


ちなみに今のはこちらの昔の特撮での名ゼリフの一つだ。好きだねぇ一護クン。俺もだけど。
『ヒーロー』を目指すのは結構だけどそれで死なれたら他の皆はどうするんだって話だからな。
最期に「お前はなるべく生きろ」とか辛すぎるって話だよ。
マジ最終回手前にして泣きそうになったもん俺。ありがちと言われようがハッピーエンドが一番なのよー。


『ひひひっ!そっちにもおるのか!』


あ、やば。
俺達のやり取りでグランド…GFでいいや。
GFが俺達のほうに文字通り手を伸ばす。ルフィかお前は。


『危ねぇ!』


しかし一護クンはGFに牽制され間に合わない!
迫るGFの魔の手!俺達ピンチ!


「しまった!……なぁんて言うと思ったか」


GFの手は突如現れた壁に阻まれる。
火無菊、梅厳、リリィで『外部の拒絶』という特性を持つ三角形の盾を形成する『三天結盾』だ。要するにシールド。
ぐしゃあと突き指したような音がしたが気にしないでおこう。


「ナイス織姫ちゃん!」

「うん!」

「これが井上の力か!」

『はぁ!?』

『女ぁぁぁぁぁあ!!!』


ははは!見たか!既に織姫ちゃんは言霊が無くとも六花を使えるのだ!
織姫ちゃん情報皆無な一護クンのビックリフェイスが非常に心地良いね。
GFなんて怒り狂ってやがる。超楽しい。ゲェハハハハ!!


「そしてこれはお返しだ。『障壁』!」


GFの腕、その上空に円盤状の桃色魔方陣な障壁が展開される。
そしてそれをどうするかというとだ、頭上に掲げた俺の手を勢い良く下に振り下ろす!


「落ちろ!」


俺の手の動きにあわせて勢い良く落下した障壁は見事にGFの腕を切り落とした。
まぁアレだ、イメージとしてはギロチンみたいな感じ。
さっき出しておいたスピカノートを背中に隠して補助してもらっているのでかなりの硬度があり、腕がバターみたいにすっぱり斬れた。
魔法世界広しと言えど、この手のバリアを攻撃用に用いたのってそうそう無い気がする。


『ぎゃぁぁぁ!!!!』

『エグッ!』

「う!うるさいな!突っ込むヒマがあったら早く倒しなさい!ちなみに今のは正当防衛だ!」


どうしてみんなこうも緊張感を保てないのだろうか。不思議でならない。
俺はこんなにも真剣だと言うのに。恥ずかしい。
ルキアさんと織姫ちゃんなんかぽかーんとしてるぞ。その開いた口に指でも突っ込みたいくらいだ。
あ、ゴメンどっちかと言うと入れて欲しい、むしろしゃぶりつきたい。


「す、凄いな……」

「凄いね……」

「あれ?何その反応?」


まるで俺が馬鹿みたいじゃない、やめてよね。
いや、今考えていたことは馬鹿丸出しだけどさ。


「いや、ああいうのは普通、防御用だとばかり思っていたのでな…」

「椿鬼くんもビックリしてるよ…」

「えー…」


いいじゃない、手持ちのカードで応用効かして戦うっていいじゃない。
派手さが無くなって地味になるかもだけどそういうの好きなんだよね。
ギロチンはいささか絵的にどうかとは思ったけど。


<<……ユウキには拷問趣味が?>>

<<ありません>>


メイデン様は好きだけどね。

とかやってる間にも戦いは激しさを増していく。
あの図体でそこそこ素早い動きをするからズルイよなぁ。走る回る後ろを取る斬る防ぐ殴る避けるでもう大変。
もっとヘアッ!デュワッ!って感じのゆっくりした動きなら倒すのも楽なのに獣じみた速さなんだよねGF。
いや、でも一護クンもかなりのスピード出せてる……ってあれ瞬歩モドキ?


「ねぇルキアちゃん、一護クンのあの動きは」

「うむ、この前のインコのとき優姫が普通とは思えない速さで現れただろう?あの日、瞬歩の事を一護に聞かれたのだ。
 それで一応教えてはみたのだが全く使い物にならなくてな。実践でようやく少しずつ使えるようになってきたのはあやつらしいと言うべきか」

「瞬歩?それってさっき朽木さんが言ってたやつ?」

「うむ、死神が使う歩法で疲れはするが高速での移動が可能になるのだ。優姫が使った時は流石に驚いたぞ」

「へー瞬歩って言うんだ。慣れれば移動楽じゃないアレ」

「いや…そうも軽く習得された上、人の身でありながら容易く使われても困るのだが……ムッ!?」

「あちゃー…また喰らっちゃったね……」


やばー、最初はいけるかと思ってたけど今の段階でGF2の相手は厳しかったかなぁ…。
出血も多くなってきたしこれはもう手を出す必要があるか?
やっぱり今の段階じゃサポートしたほうがいのかなーと思ったその時だった。不意に一護クンが斬魄刀を高く掲げたのだ。


「む!?あの構えは!」

「知ってるの朽木さん!?」

「うむ!あれは「ブフー!」……どうした優姫」

「い、いや!なんでもない!ごめん!」


お腹痛い!まさかこっちの世界で「知っているのか雷電!」が聞けるとは思わなかった!
ナチュラルにやり始めるもんだからこれは不意打ちだよマジで!どんなミラクルだ!
最高のタイミングで横合いから殴りつけられるってこういう感じか!牛乳を口に含んでたら大惨事だったね!


『喰らいやがれ!『マイザァァァァァスラァァァァッシュ』!』


ギャァァァァァァス!!!
やりやがった一護クン!
あれは一昨年のヒーロー番組「超戦士 マイザージェード」で使われてた必殺技の1つだ!
素でやるなよ!死ぬだろうが!俺が!くやしい!でもかっこいい!


「なんと!斬魄刀に霊圧を纏わせ振り下ろすことでそれを飛ばすとは!」


そして再度解説役のルキアさんで痛恨の3コンボ!もうダメだ!主に俺の腹筋が!
チクショウ!皆して俺をはめようとしてるんじゃないだろうか!


『グギャァァァァ!!!!』


そしてそれを受けて大ダメージなGF。とっさにガードした腕が斬り飛ばされた。
すげぇ、もうノリが完全に特撮だよね。ピンチ状態から逆転の必殺技とか一護クン張り切りすぎじゃないの?


『コレで終わりだ!』


一護クンのハイテンションはそれだけに止まらず、斬魄刀に再び力を…って!斬魄刀が巨大化し始めた!!
当社比3倍くらいのサイズになってる!でかっ!更に刀身が銀色に輝き始めた!?
っていうかこれはアレか!もしかして「マイザージェード」終盤での必殺技!!


『うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!『ファイナルドミネイト』!』

『ゴバァァァァァァァァ!!!!!!!!』


先の攻撃で怯んでいたGFに立ち直る隙も与えず、その巨大な斬魄刀で頭から真っ二つにする一護クン。
もう変な笑いが出てきそうだ。どうしよう…こんな形で原作解離起こすとは思ってなかったよ……。
「!」どれだけ使ったか考えたくない、驚きすぎた。


『お、おのれぇぇぇ……』


ドゴォォォォォォォン!


爆発したー!?
いやいや!普通はホロウって倒すとサァァァって消えていくんじゃないの!?何このノリの良さは!?
ていうかあの一護クンのやり遂げたって感じの爽やかな笑みは何!?


「ふぇぇぇぇ…凄かったね黒崎くん」

「まるでテレビで見るかのような決着だな」

「そうだね」

「ゆ、優姫ちゃん?目から光が消えてるよ!?」

「そうだね」

「まぁ…今回のようなケースは私も初めてだ…気にするな」

「そうだね」


微妙に先行きが不安になってきた初夏の午後でした。















『あとがきゴールデン』


皆…聞いて欲しい事があるんだ。
今回の投稿の遅れ、そして一護の壊れ具合、恐らく皆は作者のせいだと思ってるかもしれない。
だがそれは違うんだ。良く考えて欲しい…皆も思い当たるところがあるんじゃないかな……。
そう、今回の事件の真犯人、それは乾巧という男なんだよ!

と、ややカイザっぽく言いましたがもちろんそんな事は無く単純に時間が無かったとか中々上手く書けなかったとかそういう理由です。

一護に関してはやりすぎた気もしますが皆さんもH×H世界に行って具現化系の念を習得したらスタンドとか使いたくなると思います。そういうことです。
あーでも特撮関連のエピソードを過去話のどこかに入れておくべきでした。失敗。
ついでに次回からは一護も元に戻ると思います。


「そういえばコンはどうしたの?」と思ったあなた、良いところに気づきましたね。
実は初めから義魂丸状態で一護のポケットに入っていて、連絡を受けたら速攻入れ替わってきたと言う設定です。さっき書き忘れに気づきました。

「そういえばあの第二段階はなんだったんだろう」と思ったあなたは全くの同感です。
尸魂界編終わったあとに出てこられてもなぁ…と思ってたら見事なかませ犬でしたね。

「一護…お前…」と思ったあなたは自分の過去を振り返ってみて下さい。
かめはめ波や波動拳の練習したことある人いるんじゃないですか?


次回、降臨、満を持して。



[5293] 第19話「ひとまずこれでお別れです」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/02/22 20:29
『勝ったぞ!』


そう言って一護クンが心なしか嬉しそうに、いつものように眉間にシワ顔でのしのし歩いてくる。
怪我もしてるのに元気だこと。


「お疲れ様」

「凄かったね!黒崎くん!」

「あんな技を隠し持っていたのか貴様」

「ファイナルドミネイト(笑)」

『試しにやってみたら出来たんだよ!いいじゃねぇか!』


一護クンも戦いが終ってクールダウンしたのかようやく照れが出てきたらしい。
皆が見てるのに大声で技名披露してたからな。
しかもヒーロー番組の。高校生にもなって。いや?高校生だからか?


「まぁ気持ちは痛いほど分かるから良いよ。私もやるだろうし」

『だろ!?』

「うん、あれはやらずにはいられないだろうね」


誰だってそうする、俺だってそうする。
なぁ、あんた達だってそうだろう!?(ギャキィ


『つーわけで怪我のほう頼むわ、早く戻らねぇとコンがいつヘマするかわかんねぇしな』

「コン?」

「ああ、一護クンの相棒兼ペット。まぁその辺も今度纏めて説明するね」

『井上のこともな』


そういえば俺もいろいろ説明してないことが多いよな…。
あんまり秘密にするのとか苦手なんだよねぇ…。


「あ、ちょうどいいから織姫ちゃんやってみなよ。いい機会だし」

「へ?あたし?」

『井上も出来るのか?』

「織姫ちゃんの能力は基本的にサポートタイプだから」


原作じゃメチャクチャやられてた上にGF逃していたと思うけど、こっちの一護クンは原作より強いのかそこまで怪我は多くない。必殺技使ったし…。
これなら尸魂界編でも原作より上手くやれるかな?
あまり強すぎてもルキアさん逮捕イベントで困ったことになるんだけどね。

というわけで六花お披露目&治癒開始。
流石に元々そっち方面の能力なせいもあるのか結構なスピードだね。
こりゃ楽だ。

さーてもうホロウは出ないだろうし後はピクニック再開してお家帰るとしますか。



















dream 13.   『Bad Spirits』



















“ボハハハハーッ!”

「ボハハハハーッ!」


今日は水曜日、そう、みんな(一護クン除く)大好き『ぶら霊』の時間だ。
俺が大好きムニュムニュマシュマロタイムだ!鼻血が出そう。
TVに集中するべきか織姫ちゃんに集中するべきか、そんな理性と煩悩の狭間で俺が揺れているとその時はついに訪れた。


“次週は緊急生放送スペシャル!東京・空座町の廃病院に突・撃!”

“それではグッナイベイビー!ボハハハハーッ!”

「ボハハ…って!ねぇ!優姫ちゃん今の聞いた!?」


織姫ちゃん大興奮。ガバァ!って感じで俺の方を振り返る。ちなみにテレビを見るときは同じソファーに座ってるんだ。ひゃっほう。
そりゃ今をときめく大人気番組がこんな町にやって来るんだからそりゃテンションも上がりますよねー。
視聴率毎回25%超えてるんだって。クレイジー。


「へぇ、観音寺さんあそこの病院にくるのね」

「おばさんも行きます?」

「ふふ、私はテレビで見てるわ。人が多そうだし」


母さんは落ち着いてるなぁ。
普段から物静かな人だから予想はしてたけど。


「優姫ちゃんは?」

「お供させていただきます、お姫様」

「やった!」


とうとうこの日が来るか~。
これが終れば次は石田くんプロデュース、湧く湧くホロウランドとルキアさん強制送還イベント、そして尸魂界編の始まりだ…。
こっちの世界に来てから16年、スピカと出会って力に目覚めてからは6年、意外と早かったな。
よし!最後のぬるーいイベントだ。存分に楽しませてもらおうか!










「というわけでたつきちゃんも行こうね」

「ああ、やっぱ行くんだ優姫」


翌日早朝、HR前の教室でたつきちゃんをお誘い。
織姫ちゃんのお目付け役は多いほうが良いからな。


「織姫ちゃんも超乗り気だしね。それにせっかくこんな町に来るんだから行かなきゃ損でしょ」

「浅野達も朝からテンション高いからねぇ、一護の奴も遊子ちゃん達が連れてくるだろうし賑やかになりそう」

「はは、違いない」


遊子ちゃんは見えない人だから霊関係の番組大好きだもんねぇ。夏梨ちゃんは一護クンと同じでそうでもないんだけど。
ん?そういえば確かくぎみーボイスこと夏梨ちゃんってもうこの時点で既にホロウとか見えてるんじゃなかったっけ?
あれ?てことは死神状態の一護クンも見えてるわけで……やばっ!こないだのピクニックのとき一護クン大丈夫だったのかな!?


「あ、たつきちゃん!来週の」

「はいはい行きますよ」

「やったね!」


織姫ちゃんのテンションはとどまるところを知らないね。
夏梨ちゃんのことは今考えても仕方ないか。見えてしまう以上どうせいつかはバレる事だ。
原作でも一護クンを問い詰めるシーンがあった気がするし。


「ホーラ朽木さん。ボハハハハーッ!」

「いやだ…はずかしくてできないわ…」


窓側では浅野くんとルキアさんがコントやってるな…。
猫被り姫は今日も絶好調だ。お腹痛い。
ていうか無駄に芸風の幅が広がっていきそうだなルキアさん。
そして一護クンは普段より二割り増しでムスッとしてる。
クラスの話題がぶら霊一色だからねー。ぶら霊嫌いな一護クンとしては不機嫌にもなるか。


「ねぇ、そういえば黒崎くんはこないのかな」

「「来る」」

「ふぇ?」


ふとした疑問を速攻シンクロ否定され驚く織姫ちゃん。
一護クンは家族命の漢なのでぶら霊大好きなおじさんと遊子ちゃんに誘われると断れないのだ。比重としては1:9で遊子ちゃんだろうが。
それに真咲さんや夏梨ちゃんもどうせ一緒に来るんだから断る道はどこにも存在し得ない。


「明日になれば分かるよ」

「そうそう」

「???」









そして翌週水曜日の午後7時半。

浅野、水色、茶渡の男トリオと朽木、井上、有沢、糸井(俺)の女子カルテット、
そして黒崎家フルメンバーの総勢12人が廃病院前に集った。


「おっ、来たね」

「まぁな…」


予想通り嫌そうな顔してるなぁ、そんな嫌なら来なければ良いのにそれでも家族優先しちゃう辺りが一護クンたる所以だよね。


「あっ!本当に来たんだ黒崎くん」

「おう……」

「一護来てんじゃん!」

「うっせぇ黙れ殺すぞ」


うむうむ、良い感じに弄られてるな。
そしてちょっかい出して威嚇に怯える浅野水色ペア。
そして俺は黒崎家のほうへフラフラと行ってしまうのだった。


「優姉ぇこんばんは」

「こんばんはお姉ちゃん」

「夏梨ちゃんも遊子ちゃんもこんばんは」

「おじさんもいるぞー!」

「こんばんは優姫ちゃん」

「おじさんもおばさんもこんばんはー」


そういえば黒崎家フルメンバーと外で会うのも珍しいな、こないだは結局会わずに山を下りたし。
つーかおじさんの私服相変わらず凄いセンスだ。
絶叫と大きく書かれたTシャツにハート柄のジーパンとかとてもじゃないけど真似出来ない。ハイセンスすぎて死ねる。


「あ、優姫ちゃんこっちにいたんだ」

「ああごめんね織姫ちゃん」

「たつきちゃん達も来てたんだ」

「こんばんは夏梨ちゃん」

「あらあら華やかね」

「ボハハハハーッ!」

「ボハハハハーッ!」


織姫ちゃんと遊子ちゃんが共鳴し始めた。
なにこの空間。
そして何気に俺達視線集めてねぇかコレ。


「おい…緑姫いるぜ」
「マジかよ…マジだ…」
「隣の子もかわいくねぇ?」
「うおっ空座の姫が来てるよ」
「やべぇ!俺はじめて見た!」
「すげぇ…マジで髪の色緑じゃん」
「え?染めてるんだろ?」
「ちげぇよマジで天然でアレなんだよ」
「キレーイ、モデルみたい」
「あの親父すげぇセンスだな」
「あっちにはオレンジ頭もいるぜ」
「祭りの気配が!」


……主に俺のせいか。
そういえば俺この髪の色と美貌で空座町じゃ有名なんだよな…ぬかったわ。
しかも今回は外からも人が来てるし俺の髪とかコスプレめいてて珍しいんだろうなぁ。伊達に2.5次元人してません。


「あんたも大変だねぇ」

「あちこちから人が来るって事をすっかり忘れてた」

「なぁに悪漢どもからはおじさんが守ってやるさ!」

「ういういお願いします」

「優姉ぇご愁傷様」

「夏梨ちゃんの優しさが今はつらい」


チクショウ早く来い観音寺。
お前が来ればこの視線もそっちに行くはずだ。







───────── 一護


「にしてもどいつもこいつもワラワラ集まりやがって……」

浅野達がうるせぇし、優姫がいると目立つから離れてみたけど見渡す限り人人人だ。
そんなあの番組が好きなのかコイツら?
優姫はあの胡散臭い感じがたまらなく面白いとか言ってたけどよ。


「どうした!暗いぞ一護!」

「あぁ?」

「ボハハハハーッ!」


野っ郎ォ…!
ノリノリじゃねぇかルキアさんよぉ…。


「つーかそもそもお前コレが何の集まりか分かってんのか?」

「うむ、既に優姫から調査済みだ。なにやら有名な霊能者の類が来るのであろう」

「分かってんのかよ……」


あー…アイツならその辺吹き込んでてもおかしくねぇな…。


「ん?待てよ、お前等みたく死神なんてのがいるならこんな所に霊なんて残ってるのか?」

「ふむ、何故だ」

「センサーで見つけていっつも魂葬してんじゃねぇか。だったら霊がいたらとっくに成仏させてんじゃねぇの?」

「そうとも言えん。こういう場所にいる地縛霊などは普段、土地と同化していているため我々のセンサーにはめったに引っかからぬのだ」

「ほー、死神もそこまで万能じゃねぇって事か」


意外だな。その辺も上手くいつもの不思議アイテムで何とかしてるとばかり思ってたのによ。


「まぁな……そして地縛霊が姿を現す条件は1つ」


そのときちょうど撮影スタッフの一人が病院のそばにライトを設置しようと敷地内に足を踏み入れた。


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!


「自分の領域に人間が入り込んだ時だけだ…!」

「ああそうかよ……」


畜生、楽しい心霊番組になりそうじゃねぇか…。
頼むから暴れるんじゃねぇぞ地縛霊。









───────── 優姫


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!


うへぇ五月蝿いなぁ。
もう少し静かにしてろっての。そんなに2度目の死を迎えたいのかこいつは。
せっかく観音寺ショー見に来たのに盛り下がるだろうが。


「あー…やっぱり来なきゃ良かったかも…」

「夏梨ちゃん大丈夫?」

「優姉ぇはコレ聞いてもなんともないの?」

「ああ、私はこの程度じゃあね。これでもお姉さんですので」


夏梨ちゃんはまだ耐性が無いのか響いてるみたいだな、とりあえず手を握ってあげよう。にぎにぎ。
ついでに霊力でフィールドを張ってあげればそれで凌げるはず。
ハンターで言うところの『纏』だな。便利すぎるぜ不思議パワー。


「お?おおっ、流石一兄の師匠。急に体が楽になった」

「ふふん」

「あれ?夏梨ちゃんどうかしたの?」

「(優姉ぇ、織姫ちゃんはどうなの?)」

「(実は最近バリバリ見えるようになりました)」

「(マジで!?)」

「(マジで)」


なんかさ、こうビックリした表情とかその瞬間とか良いね。
イタズラ大成功な感じがしてワクワクするのよ。
夏梨ちゃんのビックリ顔って中々見れないからたまりません。


「んもぅ、2人で何話してるの?」

「ん、夏梨ちゃん霊感あるからちょっとね」

「あ…この声?」

「え?織姫も聞こえるの?」

「あれ?たつきちゃん聞こえてるの?」

「優姫も?え?何?もしかして皆聞こえてるの?それにしちゃ周りの人無反応なんだけど」


もうたつきちゃんも霊の声とか聞こえる段階だったかー。
あれー、原作でもこんな感じだったっけ?
あまり本編に絡まないから良く分からないんだよねたつきちゃん。霊力上がってるのは分かるんだけど。


「普通の人は聞こえてないみたいだけど私の知り合いは結構聞こえる率高し」

「何これ。優姉ぇ効果?」

「ええ!?私聞こえないんだけど!?」

「あー…遊子ちゃんは聞こえてたら泣いちゃうかもしれないからそのままでいて欲しいかも」

「同感、優姉ぇのお陰で立ってられるけどあたし結構辛かった」

「そんなぁ…」

「あらあら」

「真咲さんは大丈夫ですか?」

「ええ、ちょっとうるさいって程度ね」

「いいなぁ、夏梨ちゃんやお兄ちゃんはお母さん似で」


いやぁ…だってこんなオオオオオオオって地獄の底から響くような不気味な声聞こえたら遊子ちゃん泣いちゃうって。
夏梨ちゃんだってさっき具合悪そうだったのに。


「みんななんか聞こえてるのか?おじさんにはサッパリだぞ」

「(マジですか)」

「(スマン、おじさんまだ完全に力が戻ってないんだなこれが)」

「(それじゃ建物の破片とかが飛んできた際に肉バリアーお願いします)」

「(うう…おじさん頑張る……)」

「お父さんは仲間だよね!」

「おう!お父さんも仲間だぞ!」

「わぁい!」


頑張れ遊子ちゃん。君のお父さんは本来霊が見えるどころか死神そのものだ。
そしておじさん、うっすらと冷や汗かいてるのを俺は見逃さない。
バレたらそこらの思春期の娘を持つ父親より嫌われかねないぞ。フハハハハ。


「なんだか撮影開始前にもう驚き疲れそう」

「たつきちゃんガンバ!」

「あいよー」


たつきちゃんはたつきちゃんで人生観塗り替えられてるなぁ。
ようこそあなたの知らない世界へ。


“みなさんお静かに願います!”

「おっ、ついに始まるね」

「おおー!」


スタッフのアナウンスが流れ会場が静まり返る。
おお…この雰囲気いいねぇ。


“これより撮影を開始します!5秒前!”

「はっ!はじまるぞ!」

「お父さん静かに!」

“4!”

“3!”

“2!”

“………”


カメラの前のレポーターが喋り始める。
いよいよぶら霊こと観音寺イベントの始まりだ。


“…こんばんは皆さん…今夜のぶら霊は────


あれ?そういえば観音寺来てないけどこの後どうするんだっけ?
記憶が定かでないからノートにも書いてなかったけど……。


“それでは登場していただきましょう!新世紀のカリスマ霊媒師!地獄のメッセンジャー!”

“ミスタァァ~~ドン!観音寺ィィ~~!!!”

「とう!!」


そうか!上か!


「ごきげんいかがかなベイビーたち!」


上空のヘリからダイブしやがった!何て登場の仕方だこの野郎!


「スピリッツ・アー!オールウェイズ!!ウィズ!!!」

「「「「「「「おおおおおおおおお!!!!」」」」」」」

「ィィユ~~~~ーーーー!!!!!!」

「「「「「「「キャァァァァァァァァ!!!!!」」」」」」」


すっごい歓声だ。流石観音寺。っていうかあの高度からでパラシュート大丈夫なのか?
あ、開いた。


「ボハハハハーッ!」

「「「ボハハハハーッ!」」」


おお、こちらの遊子姫一心トリオも負けちゃいない。
さらに会場の皆のボハハも重なって霊の叫び声もかき消す勢いだ。
っていうかもうあまりの展開に叫び声が消えてしまった。恐るべし観音寺。
そして見事に着地。そして立ち上がって人差し指を立てた右手を上に掲げる。


「降臨、満を持して!」

「「「「「「うおおおおおおおお!!!!!」」」」」」


やー凄い盛り上がり。
もう織姫ちゃん達もテンション最高潮だしね。ほわぁぁぁっ!ほわぁぁぁ!!とか叫びだしそう
さて、この後は観音寺がホロウ知識の足りなさゆえに病院でうめいてるヤンキーな地縛霊をホロウにしてしまい、一護クンがそれを退治って話だったはずだ。
観客視点で見るのもまた新鮮だな。マンガでは基本一護クン視点だったハズだし。

あ、観音寺が挨拶もそこそこに除霊タイムに入るらしい。
たしかここでミスして一護クン乱入の流れだったよね。
霊の前に移動した観音寺が会話を始める。


「ベイビー、君がこの病院を思う気持ちは分かる。だがしかし君は既にこの世の者ではないのだ…」


あれ?思いのほかマジメに説得しだしたぞ?
原作じゃ問答無用でスティックで突いてホロウ穴広げてたと思うんだけど。


『ふざけるなぁぁぁ!!!この病院は俺が譲り受けて!それで儲けた金で車買ってマンション買ってぐえええええええええええ!!!!!!』

「ど!どうしたベイビー!?くっ!まさか虚化に間に合わなかったか!?」

“おっとどうした事でしょう!観音寺氏の説得中、突然霊に何かが起きたようです!”

「(優姫ちゃんあの人大丈夫なの!?)」

「(んー…どうやらホロウになる手前だったみたい。これはもうダメかも)」


いや、それ以前に観音寺の原作との違いが気になってそれどころじゃないんですよねワタクシ。
何サラッとホロウ化とか言っちゃってんの?普通そういうの知らないはずじゃない?
俺がどんなバタフライ効果起こせば観音寺に死神知識が付与されるわけ?
あれー?













『あとがきゴールデン』


とうとう出ましたみんな大好きブリーチの最色物人類観音寺。
原作より上手く書ける気がしないので非常に中途半端になりそうな気がします。

そして感想欄のツンデレタイムぶりに吹きました。

あんなサブタイ本気にするなんてアンタ達揃いも揃ってバカだらけじゃないの?
ホントに…バカなんだから…私が一生付いていないと危なっかしくて見てられないじゃない……。



「そのマシュマロタイムについて詳しく」と思ったあなたは過去話をお読み下さい。
まったくオサレ先生のおっぱ好きは大したものだ…。やはり天才…。

「緑姫?」と思ったあなたは少し考えてみて下さい。
天然グリーン頭の美少女とくれば町内で知られてないほうが逆におかしいと。そして分かりやすい呼び名がついてるだろうと。

「どうした観音寺!?」と思ったあなたは次回を楽しみにしたりしなかったりすれば良いと思います。
まぁある程度は予想がついてるかもしれませんが。


次回、ユーと私でダブルヒーローだ!





P.S.

ちょっと腕に封じていた魔物が暴走しそうなので、
続きをお待ちの皆さんには申し訳ないのですが再封印のため別に妄想SS書くことにしました。

こっちはまた遅れることになりそうなので暇でしょうがないとお嘆きのあなたはそちらも宜しくお願いします。

くっ…落ち着けっていってるだろうがこの野郎!今すぐ好きなだけSS書かせてやるからよォ!



[5293] 第20話「ついスルーしがちだけど痛かったりします」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/03/29 19:23
あらすじ的なもの

ブリーチ世界にTS転生なテンプレオリ主の糸井優姫は、良く分からん内に黒崎家と関わりを持ってしまい、止むを得ず原作の流れに介入。
しかしオリ主らしく霊力に目覚めていたが戦う術を持たないが為、苦肉の策として一護に霊関係の師匠として干渉し、虚と出会わない未来を作ろうとする。
そんなある日、自分の黒歴史「僕の考えた斬魄刀」と「創作ノート(設定ばっかり)」の融合した不思議存在『スピカ』と出会い、力を手に入れることに成功。

これにより虚を退け一護の母、真咲の生存ルートへ入り、一護にヒーロー好きと言う属性を植えつけることとなり悶絶する優姫。
やってしまったものは仕方ないとその後も原作キャラと関わりを持ちつつ打倒愛染を目標に日々を過ごすが、
原作開始後、織姫兄戦にオリ主らしく介入するハメとなり、うっかりキレて説教したりしてしまい再び悶絶。
記憶置換が働かず霊力がバレたついでに織姫にも介入して強化したり、一護が特撮っぽく必殺技出してキメるのに呆然としたり。
ルキアをマスコット扱いして可愛がったり、一護をひたすらからかって遊んでみたり。

そんな感じでブリーチライフを送っていると、ついにお楽しみ観音寺イベントへ突入。
しかし当の観音寺が、何故か虚についての知識を持っていることがここで発覚する。
一体何が起きているのか、誰が観音寺にその知識を与えたのか、答えは未だ謎のまま……。

以下そんなこんなで1月以上放置されてた本編再開








説得を行い霊を鎮めようとする観音寺だったが、その思いも虚しく地縛霊はリミットを迎え虚へと変化を起こす。
呻き苦しむ地縛霊を、尚も人のままに留めようと焦る観音寺の姿を見て舌打ちをするのは一護とルキア。
説得で済みそうなら出番はないと思ったが、ホロウになるってんじゃ観音寺に任せるのは危険だ!
そう思った一護は観音寺を霊から引き剥がそうと、スタッフが張ったロープを飛び越える。


「何している!」

「ちょっと君!待ちなさい!」

「警備!何してんだ!早く捕まえろ」

「おわぁっ!」


だが警備の人間及びスタッフが素早く集まり、一護が観音寺に近づかないよう即座に捕らえる。
霊が見えない一般人からすれば熱狂した一ファンの行動にしか見えないのだから当然と言えよう。
普段は霊関係で白い目を向けられないように一般人視点の事を忘れない一護だったが、観音寺や観客の安全を優先する余り今回はそこまで気が回らなかったのだ。
動機や行動は主人公に相応しいと言えるのだが、一般人からすれば完全に痛さ極まりない高校生でしかない。
主人公補正なんてものはこの場には存在し得なかったのだ。


「ゲフゥ!」

「黒崎くん……って優姫ちゃん大丈夫!?」

「あの馬鹿…!」

「何してるのお兄ちゃん!?」


それを見た優姫、織姫、たつき、遊子のリアクションはご覧の様子。
優姫に至っては「自称霊が見える異能の持ち主(笑)が妄想と現実の区別がつかずトチ狂った行動を起こしたの図」に見えた為、痛さ倍増でよろめいていた。
というか実際体を痛みが襲っていたのだから堪らない。コレは一体!?と辺りを見回すが敵の気配は無い。にもかかわらず絶え間なく襲う痛みが優姫の体を蹂躙する。
ああ、そういえば前世のクラスメイトで何も無いところ(空中)を見て「チッ…奴等見てやがる…」が口癖だった磯島君はどうしてるかなぁ…と前世を思い出すほどに。
しかし一護の勢いはそれで治まるはずもなく尚も足掻き続ける。


「はなせよ!でないと大変なことになんだぞ!!」

「こらっ!静かにしないか!」

「ガハァ!」

「優姉ぇ?優姉ぇ!?」

「どうしよう!?優姫ちゃんが白目に!」

「お、おねえちゃんが死んじゃう!霊の祟りなの!?」


一護のセリフが追い討ちとなり、よろめいていた優姫の体を更なる痛みが襲いついに倒れ付す。
今のは痛い。状況は分かっているのだが痛いものは痛いのだ。色んな意味で。
そして突然の状況の変化に混乱する一堂。もうめちゃくちゃである。


「一護!こっちへ来い!死神化するぞ!」

「ルキア!」

「痛い痛い痛いぃぃ…」

「優姫ちゃぁぁぁん!」


公衆の面前で死神化とか言うのやめてぇぇぇぇ!!!と心の中で絶叫する優姫だが誰もそんな事には気づかない。気づいて欲しくない。
変にそういう知識や心理が理解できる下地があるばかりに、無駄に大ダメージを受ける優姫だった。





一方一護は警備員に拘束され未だ身動きがとれずにいた。
このままでは虚と化した霊が、観音寺だけではなく観客を襲う危険もあるので、それを知る一護の焦りは募る。
しかしその時一護の背後から突如杖が伸び、一護の魂魄を体から押し出した。スポンと抜けた一護の魂魄はゴロゴロと地面を転がり体勢を整える。
晴れて一護は死神化し、観音寺の元へ向かうことが出来るようになったのだ。


『だ、誰だ!?』

「貴様は!」

「はいどうもー♡」


一護が振り返るとそこにいたのはゲタ帽子こと浦原喜助、後ろに控えるのは三つ編みエプロンのメガネ筋肉ヒゲと言う奇怪極まりない男、テッサイ。
コンの時以来に出会う、見た目的にツッコミどころが多すぎる浦原商店の店長と店員であった。


「あんた…どうしてここに…!」

「ほらほら早く行かないと危ないですよん黒崎サン」

『そうだ!とにかくサンキューな!』

「はいはーい♡」


聞きたいことはあったが今はそれどころではないと気づき、観音寺の元へ駆ける一護、それを見てニコニコと手を振る浦原。
一見全てがうまくいっているように思える光景だが、ルキアにはこの事が偶然とは思えなかった。見た目以上に怪しいのがこの浦原喜助という男なのだから。


「浦原、この前の事といい今回のことといい、何を企んでおるのだ?」

「いえいえ、今回はホント偶然、たまたまですよぉ朽木サン」


ルキアの問いを受け、普段どおりの笑みを浮かべる浦原が体を少しずらす。
すると浦原の背後から、2人の金髪を立てた活発そうな少年と、触覚のような前髪をした黒髪の大人しそうな少女が現れる。
普段浦原商店の手伝いをしている2人の子供。店長店員同様、この2人もまた謎が多い子供達だった。


「この子達が番組のファンなもんで保護者として、ね。そしたらビックリ、朽木さんの悲鳴が」

「誰も悲鳴など上げておらぬだろうが、下駄にガムつけるぞ」

「地味な嫌がらせっスねぇ…」

「あーキミ、キミ」

「はい?」

「この2人の知り合いかね?」


浦原に話しかけてきた屈強かつコワモテな警備員が指を指す。
その方向にいるのは間違いなく今話している朽木ルキアと、魂魄を抜かれ死体と化している黒崎一護の体。


「そうなんだね?それなら少しあっちで話を…」

「え…。いや…。えーっと……。」


親指を背後にピッとやり「こっちこいや」の意を示す警備員。
面倒な事態に巻き込まれるのを好まない浦原は冷や汗ダラダラものである。
だが今更関係ないと言って信じてもらえるほど世の中は甘くなく、かといってこの状況から逃げれるほど上手い言い訳も浮かばない。
ならば浦原に残された選択肢はただ1つ。


ボ ン ッ !


「さぁ逃げますよ朽木サン!テッサイは黒崎サンの体ヨロシク!」

「承知!」

「馬鹿者!尸魂界の道具をホイホイ使うでないわ!」

「だって面倒なの嫌いなんですもん!」

「あーもう!どいつもこいつもこのたわけがぁぁぁぁ!!!」


記憶置換装置、『置換神機』による記憶置換&気絶の隙を狙っての逃走だった。
それにしても実に便利な装置である。



















dream 14.   『Are You Hero?』



















「気をしっかり持つのだベイビー!己に飲まれてはいけない!」

『グゲェェェェェェェェェェェェェェ!』

『やめろ!』


うずくまる様に体を丸め、周囲に怨み、怒り、恐れといった負の感情の篭る命の残滓を撒き散らす霊体。
それを目の当たりにしても諦める事無く話しかけ続ける観音寺だったが、漸く死神と化した一護が辿り着く。
肩を掴み、今すぐ早くここから離れろ、と続けようとした一護だったが、次の観音寺の言葉に動きを止めざるを得なかった。


「その姿!ユーは死神だな!?」

『知ってんのか!?』


流石霊能者と言うべきか、いざとなったらとりあえず引っつかんで安全地帯まで投げ飛ばそうと考えていた一護は、
死神を見ることが出来るだけではなく、その存在も知っていた観音寺に驚きを隠せない。
そして観音寺は目線を地縛霊から逸らす事無く話を続ける。


「ユーならその斬魄刀で彼を送ることが出来るだろう。さぁ虚になってしまう前に早く!」


そこまで知ってるのか。と、一護はこの観音寺という男にやや興味を覚えるが、確かに今は時間が全て。
地縛霊がホロウになる前に柄頭を押し付け、速やかに魂葬を行おうとしたその時だった。


『オ゛ア゛ァァァァァァァァァァァァァァァアアアアア!!!!!!』


叫び声と共に地縛霊は大きな音を立てて爆発、消失。
そこはあたかも初めから霊などいなかったように、ただ廃病院が佇むのみ。
何が起きたのか理解し得ない一護がポツリと言葉を漏らす。


『消えた……のか?』


だがそれを否定するべく観音寺が重々しく告げる。


「いや…違う……」


“ドン・観音寺が霊を説得していましたが、その雰囲気が変わったと思いきや突然の爆音…観音寺氏と霊の間に何が起こったと言うのでしょうか?”


会場にマイクの音声が響き、先程の爆発で粉塵が舞う中、観音寺の顔色は優れない。
まるでこれからが本番だと言わんばかりの緊迫した雰囲気が一護と観音寺の周囲を覆い、一護の焦りを助長する。
その只ならぬ雰囲気に一護が耐えかね、どういうことか事情を聞きただそうとすると、
先程、浦原と共に逃走したはずのルキアがいつの間にかロープ間際に戻っており、叫んだ。


「上だ一護!上を見ろ!」


未だに何が起きたのか、何が起きるのかを理解出来ていない一護は反射的に病院の屋上を見上げ、
観音寺は諦めと悲しみの混じる表情でゆっくりと屋上を見上げる。その目は何かを覚悟している目であった。
そして煙が消えて周りの視界が戻り、蚊帳の外だった観客が観音寺の無事を確認し歓声を上げ、司会者が解説に入る。


“おお~っ!!無事です!観音寺氏全くの無傷!無事除霊も完了したのでしょうか!?”


すると先程までの決意を秘めた顔つきからはガラリと変わり、エンターテイナー観音寺としての顔が表に出てきた。
ドン・観音寺、カメラの前ではあくまで新世紀のカリスマ霊媒師としての姿勢を崩すことは無いのだ。


「オオッ…!何と言うことだ!既に彼はバッド・スピリッツとしての本能に目覚めてしまった……!ならば私の為すべき事は1つ!」


ステッキを振り回しビシィッとポーズを決めた観音寺の姿に期待の色を濃くする観客。
一護は先程のマジメな表情との差異に口をあんぐり。
優姫がその場に居たら思わず手ごろな石を詰め込みそうなほど見事な開きっぷりだった。


「この超スピリッツ・ステッキで一気に片付けてみせようではないか!」

「「「「「「「ウオオオオオ!!!カーンオーンジ!カーンオーンジ!」」」」」」」


そうしてる間にも屋上に弾け飛んだ魂魄が再構成され始める。
人の姿とは程遠い、獣のようなその姿。
1人の霊がこの世から消え、1匹の虚が今ここに誕生したのだ。


「くっ!奴は屋上か!首を洗って待っているがいい!バッド・スピリッツ!!」


その姿を視認するや否や、入り口のガラスを蹴破り廃病院内へ駆け込む観音寺。
一護も漸く状況の変化に追いついたのか、ハッとしてその背中を追いかける。


『待てよ!アンタ一人で勝てるのか!?』

「HAHAHA!安心したまえボーイ!これでも伊達にカリスマ霊媒師と呼ばれてはいないのだよ!」

『とはいえこっちも仕事でな!手ェ出させてもらうぜ!』

「オフコース!一人より二人だ!より確実に安全に済ませられるのならばそこに異論は無い!」


観客に被害が出ないように病院内に素早く駆け込んだことといい、
突然現れた自分の協力を拒まないことといい、この時点で一護の観音寺評価は当初のものよりだいぶ上がっていた。
これなら少しは見ておけばよかったかもな「ぶら霊」、と思わせる程に。
すると突然上層から壁を壊すような破壊音が響き渡る。


『ようやくお出ましのようだな』

「ふむ、油断するなよボーイ」

『アンタこそな』


ニヤリと互いの顔を見て笑みを浮かべる2人だったが、天井を破り落ちてきた虚の登場に思考を切り替える。
上から大穴を開けて降り立つその姿は、正しく怪物足る威容に相応しい在り方だった。


『さぁ!いく「ず、ずるいぞ!その登場は美味しすぎるじゃないか!」…ぜ?』


かに思えたが観音寺の空気を読まない発言が緊迫した雰囲気を粉々に打ち砕く。


『おい』

「おのれ!この私を差し置いてそのような登場シーンを演出するとは!」

『こら』

「かくなる上は爆薬か!カラフルな爆発しか私に対抗手段は無いのか!」

『聞いてんのか』

「いや!考えろ観音寺!何も派手さだけが演出の全てではない!」


ドゴォ!


『聞いてるか?』

「はい…聞いてます……」


とうとう我慢できなくなった一護がその側頭部を力の限りどつく。
シュウウウ……とマンガ的に煙を上げ倒れる観音寺の側頭部を、血管浮かべてにこやかに凝視する一護。
ほんの数秒前の風景が嘘のように感じられるそのコントぶりに空気を読んだのか、虚も冷や汗をかいて微動だにしない有様だ。


『その豹変ぶりは何なんですかねぇ観音寺さんよォ……』

「ああっ!痛い痛い!草鞋で頬をゴリゴリするのは止めてくれたまえボーイ!摩擦係数が高くて凄く痛いぞ!」


思わず顔面を足でぐりぐりしてしまう一護、それを受け観音寺が痛みでジタバタするがお構い無しにノンストップ。
ホギャァァァァァァァ!!!と観音寺の悲鳴が廃病院内に轟く。


『で、だ』

「はい……」

『何か言うことはあるか?』

「これから戦闘開始だというところに演出面での話をしてしまい真に申し訳ありませんでした……」


土下座、イッツ土下座だった。
もはや威厳もへったくれも無いその姿に、虚も一護の背後でおすわり状態のまま動けずにいる。
そういやこのホロウもどうしたもんかな…と頭を悩ませる一護だったが、
不意に顔を上げた観音寺が何かを語り始めた為、今のところ害は無いだろうと放置することに決定。


「だが聞いて欲しいボーイ」

『何だ?』

「やはり『ヒーロー』たるもの、演出にも拘りを持たねばならないと私は思うのだ……」

『ほぅ?』


ピクリと一護の頬が動く。
もちろん観音寺の『ヒーロー』発言によるものだ。


『なら聞かせてもらおうじゃねぇか』


正座状態の観音寺の前にへの字口でドッとあぐらをかいて座り込み、話を聞く体勢に入る一護。
その姿に何か己に近いものを感じたのか、キラリと目が光る観音寺。
完全に無視されるも動くに動けない雰囲気の虚。
何かもういろいろとぐだぐだだった。

それから始まるのは観音寺のヒーロー論。
自分の番組の視聴率は25%でその多くは子供であること、
子供たちは悪霊に立ち向かう自分の姿を見て勇気の何たるかを学ぶということ、
そしてその対象である『ヒーロー』の自分は、動き、アイテム、セリフなど、演出の1つ1つに拘りをを持たねばならないということ。

アホらしいと思いつつも納得いく内容だったので一護もつい頷きを返す。というか良く分かる。
ちなみに虚は番組上動きが無いのは問題だと言うことで一護に命じられ病院を適度に壊していた。
斬魄刀と言う刃物をちらつかせた一護はかなり怖かったのだ。

それから数分を経て一通り話は終わり、ある程度壁などを壊して戻ってきた虚と合流。
この流れで2人と1匹の間に残る問題はただ一つ。


『よし!お前らやるぞ!』

「オフコース!任せたまえボーイ!」

『ヴァァァァァァァ!!!』





───────── 一護病院突入後、優姫


「うう……ここは…」

「優姫ちゃん大丈夫!?」

「おねえちゃん大丈夫!?」


いつの間にか失神していたらしい。
まさかこれは俺の能力による副作用的な奴だろうか。
初めてスピカ解放した時のアレに近いものがあるのがすっごいイヤな感じなんだけど…。
ってあはっ、織姫ちゃんの膝枕ちょうやーらかい。何このパラダイス。思わず頬が緩んじゃう。


<<無事ですかユウキ>>

<<ああ、スピカ。コレは一体どういうこと?>>

<<恐らく気づいているとは思いますが…>>

<<あー……>>

<<精神的ダメージが影響を及ぼすようになったとしか考えられません>>

<<やっぱりねー!あーもーマジで!?>>


まさかまさかの展開、黒歴史に悶えるだけではなく痛々しい行動とかにもダメージ受けなきゃいかんのか俺は。
前代未聞過ぎる。何て嫌なデメリット。

いや、まぁそれはいい、それより今はどういう状況だ?


「織姫ちゃん、会場ざわついてるけど何が起きた?」

「うん…黒崎くんと朽木さんが突然敷地内に入ろうとして」

「そんでもって警備員に取り押さえられたと思ったら変な格好の人達に連れて行かれた」

「おお、たつきちゃん」

「ていうか大丈夫なの優姫?」

「やー、申し訳ないデス」


変な格好ってのは浦原一味か、ということはもう地縛霊はホロウになって一護クンらは病院に…と。
にしても観音寺が謎過ぎる。マジで何が起きてるんだ?
ところで夏梨ちゃんがなんか呆然としてるんだけど何かあったのかな?
……あるよな。見えてるんだよね夏梨ちゃん。お兄ちゃんのヒミツをバッチリみちゃったわけデスね!きゃっほう!


「あのー夏梨ちゃん?」

「え……あ、優姉ぇ…体大丈夫なの?」

「夏梨ちゃんもね」

「あ…うん……」

「まぁそのことは後にしましょうか」


ホギャァァァァァァァァァァァ!!!!


「今の声観音寺さん!?」

「何かめんどくさいことになってそうだなぁ……」


やっぱ今のは観音寺の叫び声だよねー、一護クンちゃんとやれてるのかなぁ。
予想外の展開の連続でこちらもフォローしきれんですよ?




それからしばらくすると壁を壊す音がし始めて会場がざわざわしはじめた。
何と言っても観音寺が病院に入って以降姿を見せない状態でコレだからな。
中で何が起きてるのか気になりすぎる。

俺も抜け出して様子見に行きたいんだけど手を握って離さないゆずかりコンビや、
やたら心配してくる黒崎ピアレンツ達を振り切るのはどう考えても無理。これを振り払うのは人として無理。
慕われるのは嬉しいけどまさか枷になろうとは!クッ!これもまた試練だというのか神よ!ならば俺はってギャァァァァス!痛い!痛い!
分かっててやったみたけどやっぱりダメか。辛いなこれ…。


「(頑張れよー一護クン)」


そんな俺のできることといえばボソッと応援を呟くくらい。
俺Tueeeeeee!!したいようなしたくないような微妙な気分なのよー。

とか思ってたら壁を壊すような音が止んだな。
もしかして倒せた?原作じゃ屋上でしとめてたような気がするけどこっちじゃ院内でフィニッシュ?
なんだ今回も無事終了かーと思ったら病院の壁面が爆発しやがったチクショウ。戦いで穴開いたなありゃ。


“おーっと!先程から病院内で破壊音がしてましたがとうとう外壁が破壊されました!壮絶な戦いが行われている模様です!”


ここでレポーターのコメントが入る。展開的にはホント壮絶だわ。何が起きてるのかマジで分かんないし。
ていうか中はどうなってるか早く映せ!一護クンは無事か!観音寺はどうなった!
ああもう早く煙はれろボケェ!

おじさんが持ってたポータブルTVで生放送を見て、俺が苛立ちを抑えきれずにいると、爆煙の中から観音寺が現れた。
しかしホロウと一護クンの姿は無い。
さっきの爆発で外壁をつたって逃げたか?
ていうかあの穴ってここの上じゃないか!実際見たほうが早いよ!
ガバッと病院を見上げると屋上にはホロウと黒い死覇装を着た一護クンの姿が。


「何だ…無事じゃない」

「あ、ホントだねピンピンしてる」

「またアンタらは……」


上を見てお互いコメントを交わす俺と織姫ちゃん、それを見てため息にも似たセリフをこぼすたつきちゃん。
たつきちゃんはまだちゃんと見える段階じゃないんだよなー。
見えるようになったらどう説明すればよいのやら。
既に軽く開き直ってはいるんだけどね。


“観音寺氏です!爆煙の中から観音寺氏が姿を現しました!”


「おのれバッド・スピリッツめ!屋上に逃げたか!……CM!」


そういうとピューとまた病院内に戻る観音寺。階段の方に行ったのかな?
しかし屋上の一護クンたちに動きが無いのが気になる。
マジで何が起きてるんだ?














『あとがきゴールデン』

向こうを連載しつつちまちま書いてたのが出来上がったので投稿してみます。
優姫の痛み設定が突然なかったことになっても気にしないで下さい。ジョジョ的に。


「一月待ったよ!遅いよ!」と思ったあなたはお久しぶりです。
と言ってもまだまだあっちの方メインで書くのでこっちは遅くなりそうです。

「一護が痛い!」と思ったあなたはテンションを上げてノリで読んでみて下さい。
冷静に考えると「あれ?これ面白いか?」となるのは良くある事ですので、この作品を読む際は宝くじ1等が当たったくらいのテンションでお願いします。

「何で観音寺が虚知ってるの?」と思ったあなたは色々妄想するのも良いかもしれませんね。
そんな大した理由ではないので期待されすぎても困りますが。


次回、ショウタイム!



[5293] 番外編2「持っていかれた…ッ!」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/05/19 19:57
PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi

パチン

「ふぁぁぁ……」


未だ春の陽気を残す日曜の早朝。
聞くものがいれば誰もがその愛らしさに頬を緩めるであろう欠伸から糸井優姫の一日は始まった。
目覚まし時計を止めた後のそりと上半身を起こし、そのままボーッと何も無いところを見つめるネコのように停止。
というか焦点が合っていない。


「ふぁぁぁぁぁぁ……」


要するにまだ寝ぼけていた。

普段は夢世界から現実への復帰を辿っているため分かりづらいが、本来、糸井優姫と言う生き物は寝起きが悪く、
普通に睡眠をとり目覚めた場合はこのように脳の覚醒までにしばしの時間を要する。
その姿勢のまま数分が経ち、ようやくベッドから降りてぽてぽてとドアに向かって歩き出す、が、ここで優姫は違和感に気づく。


「あれ?……ドアノブってこんな高い位置にあったっけ?」


いつもなら腰の辺りの高さにあるドアノブが顔の前にあるのだ。
しかも服がやけにだぼだぼしていて明らかにサイズが合ってない。
これには流石に寝ぼけていた頭も動き出す。


「なんだ……まだ夢か」


と思いきや余りに有り得ない事態の前にして、即座にこれを夢と判断した優姫。
この異常事態をごくありふれた日常のように受け入れ、何でもないようにそのまま階段へ。


「階段もおっきぃような…」


いつもならトットットッと軽やかに降りることの出来る階段も段差が高いように感じ、慎重に一歩一歩階段を踏みしめて降りる。
未だに夢の中と勘違い続行中である。

そのまま手すりに掴まり一歩一歩階段を降りた優姫の足はバスルームへと向く。
自称2.5次元人と言うだけはあって、肌や髪の手入れを然程必要としないその体だが、朝はやっぱり歯磨き、洗顔と一通りこなさないとしっくりこない為、
無意識に足はバスルームに隣接した洗面台へと動くのだ。
未だ出てくる欠伸をかみ殺しつつなんとか洗面台までたどり着くことの出来た優姫だったが、ここでもやはりいつもとの違いが出てくる。


「高い…」


そう、普段は腰を曲げて洗顔などをするはずなのに、今日の洗面台は顔より少し低い位置にあり、
手を伸ばしてようやく水を出すことが出来ると言ったところ。


「まぁいいか」


しかしまだ夢の中と勘違い続行中の優姫は、幼稚園時代に使用していた台を使ってこの事態を軽やかに解決。
一通りの事をやり終えタオルで顔を拭き、台を元の位置に戻して再び自室へ向かう。
いつもより大きく感じるドアを開けて部屋に入り、ドアを閉めて鍵を掛け、そしてベッドにぼふんとダイブした優姫は、




<<小さくなってるじゃねーーーーーーーかぁぁぁぁぁ!!!!!!>>




思いっきり念話で叫んだ。

ようやく本当に目が覚めたらしい。









どり~む2.   『ちいさいってことは 前編』









<<で、スピカ、原因は何か分かる?>>

<<恐らく霊力切れではないかと思います>>

<<えぇぇぇ…マジで?>>

<<はい、この前の『千本桜』で予想以上に消費した反動が来たのかと>>


いや、確かにあれはかなり力を込めたけど、今更遅れて反動が来るとかさぁ…年取ってからの筋肉痛じゃあるまいし……。
と、念話を行って優姫はがくりと肩を落とすが、スピカの恐らく今日中には戻るとの回答に一安心し、文字通り胸を撫で下ろした。


<<…ん?>>

<<他になにか異常でも?>>

<<いや、体が小さくなったのもアレだけどさ、胸に重りが無いのに違和感が…>>

<<ユウキもすっかり女性ですね>>

<<…………>>


そう、今の優姫の姿は幼稚園か小学校低学年のもの。
中学、高校とめきめき成長した姿とは異なり、体が非常に軽いのだ。

二次性徴を迎えた頃は、次第にふくらみを増していくその胸に何とも言えない感情を抱き、最初は「すげぇ…」とむにゅむにゅ弄っていたが、
次第に「もう大きくならなくて良いよ…重いし揺れるし…千早に分けてあげたい…」、「やっぱり他人のものでこそだ、そうだろ宮藤」等と変遷を辿り、
「まぁある分にはいいか、エロイし」と変な着地を見せていたその胸、納得をしたとはいえ数年に渡る束縛を逃れた感覚は久しぶりのものだった。
無駄にぴょんぴょん跳ねてみたり、部屋をちょっとダッシュしてみたり、うつぶせに寝てみたりと様々な動きを試し、
つるぺたはありだよ千早!72センチばっちこいだよ千早!と実に無意味にテンション上げる優姫だったが、ここであることに気づく。


「やばっ、始まっちゃう」


日曜朝からのスーパーお子様タイムの時間帯が迫っていたのだ。
今日はこのまま自室に篭っていても良いが、万が一両親に見られるとマズイ。
そう判断した優姫は、素早く携帯を手に取りカカカッとボタンを操作。
呼び出し音が耳元で数コール鳴り続ける。


「………………あ、起きた?おはよう一護クン。あのさ、ちょっと窓開けててもらえる?いや、いいから開けといて。
 開けた?うん、じゃそのまま開けといて。うん?うん、うん。ああ、理由は後で話すから、うん、それじゃまた後で」


電話を切ってからの動きは素早いもので、急いで昔の服と靴を引っ張り出し、着替え、
「ちょっと出かけてきます」と書置きを残して窓から跳躍。
その顔は正にこれから誰かにイタズラを仕掛けようとする子供のもので、実に楽しそうな笑顔だった。


「よっと」


少量の霊力もどきを用いた身体強化により、無事に1階屋根部分からの着地を終えた優姫は、そのまま人通りの無い、新鮮な朝の空気に満ちた空座の町を走る。
何と言っても体が縮んでいるのだから当然歩幅も短くなり、いつもの道のりはその小さな体には長く感じられた。
しかし、日曜朝という魔の時間帯は優姫に大いなる力を与え、ひたすらに前へ前へ足を進めさせたのだ。


「やっとついた…時間は…よし、ばっちり」


瞬間的に力を高め黒崎家二階、一護部屋、窓の前に跳躍。
そのまま「おはー」と軽い挨拶と共に靴を脱ぎ、窓からヒラリと入室に成功するが、その部屋の主である一護は目を点にして微動だにしない。
律儀に窓を開け、腕を組みながらいつも通り眉間にしわを寄せ、首をかしげて頭上に?マーク浮かべていた一護は、
突然優姫に電話で指示され開けた窓から我が物顔で自然に入ってきた少女に困惑していたのだ。


(これだよこれ!いやぁ良い硬直具合だ!)


ゾクゾクッと湧き上がる喜びに打ち震える優姫、その顔が実に『良い表情』をしていたのは言うまでも無い。
一方一護はその少女が持つ、明るく鮮やかな色彩を誇るエメラルドグリーンの長い髪、幼い頃より記憶に深く刻まれている『良い表情』、そして先程の電話の内容を総合し、
考えたくは無い、しかしそうとしか思えない、極めて非常識ながら簡潔な答えを導き出す。


「ゆ…優姫……か?」

「YES正解」


この答えに口をパクパクさせて言葉が出ない一護の姿を堪能し、一応の満足を得た優姫は部屋に備え付けのテレビをつける。
もちろん音量は小さめに。
そのままリモコンを持って一護のベッドに背を預け、ばっちり視聴の体勢に入る優姫だったが、ここで一護がやっと動きを取り戻した。


「いや、つーか何でお前縮んでんだよ……」

「霊力使いすぎたみたい」

「ハァ!?」


優姫の答えに目を見開いて驚く一護、そこでふと思いついたように押入れをガラッと開け、中のルキアを起こしにかかる。


「おい、ルキア、起きろ、ルキア」

「むぅ…白玉はもう食えぬと言ってお…いや、まだいくらか入るから持って来てくれ…」

「プッ!」


このテンプレートぎみな寝言に噴出す優姫。
まさかこのご時世にこんなセリフが聞けるとは思ってもいなかったようで、口元を手で押さえプルプル震え始める。
一護はと言うと、この手の寝言に慣れているのか、呆れた顔でルキアの顔を一瞥し、笑い声を漏らす優姫の方を振り返る。


「ツックックックックッ……」

「いや、怖ェからそれ」


振り返った先でその幼い姿に見合わぬ細まった目と深い笑いと言う予想外の一撃を受け、冷や汗流してツッコミを入れる一護だったが、
ルキアはまだ起きる気配が無く、寝言は更に続く。


「ほわぁっ!ほわぁぁぁ!」
「うおっ!一体なんだよコイツ!」
「…なんの夢見てるんだろうねルキアちゃん」

「…………いえ…お客様…どうのつるぎは120円です…」
「どんだけデフレ起こしてんだこいつの世界」
「チョイスが分からない…しかも円?」

「マホ~…、もう甘味は食べられないカモ~」
「また食い物かよ…つーかこのクネクネした動き怖ェな…」
(あれ?ルキアさん何気に今、姫子ボイス出した?)


この後も続く謎のルキアワールドに頭を悩ます一護と優姫だったが、いい加減我慢の限界なのか一護が頬をぺしぺしと叩く。


「おーい、ルキアさんよぉー」

「うむ…うむむぅ……なんだ…一護?」

「いいからちょっと起きてくれよ」

「むぅ…何事だ一体…おお、おはよう優姫」

「おはようルキアちゃん」

「いや待て…優姫のその姿は何だ!?」

「お、気づいたか」

「思ったより早かったねぇ」


数十分前の優姫のように寝ぼけ眼を擦っていたルキアだったが、優姫の不自然なサイズに気づき、スイッチが切り替わったような反応を見せる。
しかし、驚きの元であり当事者である優姫が涼しげな表情でいるため、その勢いもすぐに沈静化。
一護も一護で「まぁ優姫だしな」と結構落ち着いている辺り、一護の優姫に対する認識が窺える。
そしてCMに入ったのを機に説明に入る優姫と、それを聞き、あっけに取られるルキア。もちろん何に霊力を使ったかは嘘八百。


「はぁ…霊力の使いすぎで縮んだ……と」

「まぁねー」

「いや、反応軽ィなお前」

「今日中には治るみたいだし」


テレビを見ながらサラッと事情を説明する優姫をまじまじと見つめるルキアだったが、ここで一つの答えへと達するに至った。


(まぁ優姫だしな)


死神コンビからの優姫に対する認識の一致が窺えるシーンである。
一方そんな事を思われているとは露知らず、早朝のアニメに見入る優姫。


(パンツ見えた!いや、影か!)


ステキにダメ人間思考だった。

ルキアの話によると、通常霊力が無くなった場合の症状は体の不調や激しい空腹といった程度で、体が縮むのはありえないとのことだったが、
そもそも人の身でありながら今までミラクル捲き起こしてた優姫を基準にするのはどうかと言う事と、
本人が何かしらの確信を持って大丈夫と太鼓判を押しているということでこの場は一応の治まりをつけた。

そして時間はスゥッパァァァ!!ヒィィィィルォォタァァァァイム!!!!に突入。
ベッドの上で胡坐をかいて真剣にテレビに見入る一護と、机に付属の椅子に前後逆に座り、背もたれにあごを乗せてやはり真剣に見入る優姫。
普段、糸井、黒崎両家でコレを見るのは2人のみなのだが今はここに新たに一人の戦士が加わる。


「いけっ!そこだっ!ああっ!何故勘違いするのだ!敵はガルデロンだというのに!」


朽木ルキア、洗脳完了。
番組終了後しばらくは、3人で今回の批評や問題点を挙げ、次週への引きが云々、アバンが云々。
「あそこのシーン、シェハウザー覚醒シーンのオマージュだよね」とか、「いい加減勘違いで仲たがいするの飽きたな」「同感」等と感想を言い合っていた。
その姿は見事なまでに「おおきなおともだち」と言う言葉を髣髴とさせる。


「ところでお前、そんなナリで今日どうするんだ?」


と、ここでようやく一護が優姫の異変に関して質問をぶつけた。
今までスルーしていたとはいえ流石に気になりだしてきたらしく、その表情には心配の色を窺わせる。


「取り敢えず元に戻るまで家に帰るのはマズいからー…、それまで外をぶらぶらするしかないかなぁ?」

「でもその髪の色だと外歩いててバレねぇか?ここらでそんな髪してるのお前しかいねぇだろ?」

「ははは、いちごくんはじつにばかだなぁ。そもそも一般人は人が縮むと言う発想に至らん」

「なん…だと…!?」

(言った!なん…だと…って言った!)


ブリーチお約束の驚きの表現に内心息を荒くする優姫、こんな状況でもすかさずネタに食いつくその姿勢は流石と言える。
そして一護は、知らず知らずのうち自分が非常識な思考にドップリ染まっていたことに落胆の色を隠せないようで、頭を抱えて唸り始めた。
しかし、そもそも実は血筋的に半分死神な上に、現在死神少女と同居中なので常識もクソも無い状況なのだがそれに気づいた日にはどうなるのか。
優姫は全バレの日をワクワクしながら今日も待っている。


「ふぁぁぁぁぁ…」

「テレビ終ったらもう欠伸かよ…」

「いや、縮んだら体の機能も子供になってるのか、何かおねむの時間なのよ」

「だからと言って俺のベッドにもぐりこむのはどうかと思うのですが優姫さん」

「じゃあ押入れで寝る…」


一護のベッドに上がり、枕と毛布で巣を作ろうとしていた優姫だったが、一護の言葉に目を光らす。
仕方ないなぁと言わんばかりに押入れの中に異様な速さでもぞもぞ入り込む優姫はゴッドスピードラブ。
高速のビジョンについてこれる者はいなかったのである。


「ちょ!ちょっとまて優姫!」

「あったけー…ルキアちゃんの布団あったけー…Zzz...」

「寝たな」

「凄まじい速度だな…本当に寝てるのか…?」

「ホラ、あれだろ、寝たら体力回復みたいな感じで、体が睡眠を欲しているとか言うやつじゃねぇの?」


ハッと一護を見、お前意外と頭良いな!というルキアの視線にテメェ今朝はメシいらねぇらしいなという一護の視線。
お互い見事にアイコンタクトが成立したが、ルキアの
「仕方ない、少女誘拐の件で貴様の親御殿に報告せねばなるまいか…」
という言葉に
「スイマセンでした」
と美しい日本の心、土下座を披露した一護は、今日もルキアに朝食を運ぶ仕事に従事するのであった。
黒崎一護、15歳。家族に秘密の多いお年頃である。




「しかしこの優姫は恐ろしく可愛らしいな……何だこれは?」

「何だこれはと言われても困るんだけどよ…」


食事を終え、自分の布団で未だに寝息を立てている優姫の寝顔を覗くルキアだが、その天使のような愛らしい寝顔にほぅ…とため息が漏れる。
何しろ元の姿が反則なまでの美しさを誇ると言うのに、この幼い姿はその可愛らしさが際立っているのだ。
肌理の細かい白磁のような肌に、上質な絹糸もかくやと言ったさらさらと流れる緑柱石の色をした髪、
時折聞こえる寝言は玉を転がすような声で紡がれ、あたかも天上の音色を奏でるようであった。


「くたばれ…じごくでざんげしろ……」


些か内容は不適切だったが。

ともかく可愛いことは可愛いのでこのままでもある意味アリなのだが、万が一のことを考え、ルキアは浦原の所へ一応過去の症例等を調べに行くことにした。
その手の記述や情報は無いとは思うが、無いとは言い切れないのもまた浦原商店なのだ。

一方、部屋に残された一護はこのまま外出する訳にも行かず、結局日曜の午前中を勉学に費やすことに決め、机へ向かう。
黒崎一護、見た目に反し成績の面ではだいたい学年30位には入っているという、極めて優等生な少年である。
そして時計の針は12時を指し、そろそろ一息入れようと一護が机から離れたときのことだった。


グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…


「おなかすいた」


空腹を知らせる音色と共に優姫起床。
ようやく目が覚めたらしく、ぐしぐしと目を擦り起き上がる。
半分寝ぼけたまま欠伸と共にぽりぽりと体をかく様は、その容姿からは想像するには余りに過酷。
ルキアがこの場にいないことを少しホッとする一護だった。


「やっと起きたか」

「んん…あれ?ルキアちゃんは?」

「過去の症例を探すとか言ってどっか出てったぞ。昼は向こうで食うとかなんとか」

「あー、それはまた…後でお礼言っとかないと。ていうかお腹すいた、どっか食べに行こうか」

「待て、それは俺について来いと言うことか?」

「いやぁ、まさかこんな幼子に対し一人で行ってこいなんて言わないよねぇ?」


この時点で、ヤバイこれはヤバイぞと一護の脳に警鐘が鳴る。
ルキアがいればまだ何とかなったかもしれないが、この優姫と2人で出歩くと、非常に面倒な事態に巻き込まれる可能性が高いことに気づいたのだ。


(待てよ、そういやいつも食事の余りをルキアに横流ししてるし、今回もその手でいけるんじゃ!?)


そんな考えが天啓のように閃く一護だが、目の前の厭らしい笑みを浮かべる自称幼子はそれを知った上で言っていることに気づく。
目は口ほどにものを言うと言われる通り、室内で燦然と輝くその双眸は、明らかにこの状況が愉快でたまらないと言っていたのだから。

ここで一つ言っておくと、実は一護は優姫が持つこの金色の眼に弱い。
幼い頃からこの眼に逆らってはいけないという一種の服従にも似た感情が刷り込まれており、言わばこの眼を見てしまった時点で殆ど負けが確定。
これは優姫が霊方面だけではなく、あらゆる面で教育を施し続けた結果であり、この世界の一護の手綱を握る最強の方法の一つとも言える。
もっとも、当の一護は単に少し苦手くらいにしか意識しておらず、優姫に至っては全く気づいてはいないことではあるのだが。


「分かったよ…行きゃあいいんだろ…」

「ヒュー!流石一護さん話せるぅ!」


だから一護が特に文句を言わず従ってしまうのは仕方がない、仕方がないことなのだ。


「それじゃ外で待ってるから」

「おう」


あたかもそうであるのが当然と言うように、窓からヒラリと飛び降りる優姫と、それを見て本当に人間かコイツ、と疑わしげな目をする一護だが、
客観的に見ればどっちも人外の代物であることにはまだ気づかない。
黒崎一護、15歳。色々なことに気づく日はまだ遠い。

着替えを済ませて外へ出ようとする一護、ちょうどその前に一心が現れたので出かける旨を伝えようと声をかける。


「親父、出かけてくる。昼は外で食うからいらねぇつっといてくれ」

「なんだ一護、何処行くんだ?」

「ちょっとな」

「デートか?」


思わぬ一心の発言に内心頭を抱える一護。その間にも一心は鼻をフンフン鳴らし距離をつめ、顔を近づけるというウザさを見せる。
それは無い、それはあってはならない。あの状態の優姫相手にデートと言う発想は間違いなく犯罪だ。
そもそも何故デートと思うんだクソ親父が、と昼間からイライラが急激に高まり、眉間にしわがますます寄り始める。


「ちげぇよクソ親父…!」

「誰だ!?やっぱ優姫ちゃんか!?」

「人の話聞いてんのかヒゲダルマ!」

「なになに?どうしたのお兄ちゃん?」

「ああもう!とにかく行ってくるからな!ちゃんと言っとけよ!」


声を聞きつけ寄ってきた遊子を見て、このままではさらに面倒なことになると判断し、駆け足で家を出る一護だったが、
肝心の優姫の姿は外に無く、何処に行ったのかと辺りを見回すがやはり見当らない。
流石に帰った可能性は無いだろうが、このままでは優姫を探し回ることになるのではないか、と少し嫌な未来予想図が頭に広がる。


「何かあったの?遅かったね」

「だから何でお前はそんな完璧に気配が消せるんだよ…」


が、気づかない内に背後にいた優姫に、思わず驚きと呆れの混じった声が口から漏れた。
優姫お得意の『絶もどき』。
もう慣れたとはいえ、ここまで気配を殺せる人間は一護の知る限り優姫しかおらず、もしかして忍者ではないかというのは一護が幼い頃よりの疑問の一つ。
無論そんな一護の思考が分かるはずも無く、キョトンとその金色に輝く眼を開き、上目遣いに見てくる優姫はその手の人種が見たらお持ち帰り一直線。
ちなみに今日の優姫の格好は、一部チェック模様が入った黒のシックなワンピースにレギンスと簡素な装い。
しかし、本人の持つオーラがそれをあたかも高級な品のように錯覚させる辺り、2.5次元人の煌めきぶりは異常と言える。
加えて言えば、この格好は一護にとって幼少期のある出来事を思い出させる思い出深いものだった。


(そういや懐かしいなこの格好…ってそういやコンの奴今日一度も見てねぇな…。何処行ったんだアイツ?)

「はいはい、ボーッとしてないで適当にファミレスにでも行くよー」

「分かったから押すな押すな」






その頃黒崎家二階、一護の部屋ではこのような光景が繰り広げられていた。


「あのヤロぉぉぉぉぉぉぉ!!!今日はチビ魔王とデートかクルァァァァァァ!!!!!」


コン、魂の咆哮。両手を大きく広げ顔を天に向け、何かに覚醒した格闘ゲームのキャラのようなポーズを決めての咆哮だった。
とても先程までベッドの下でガクガクブルブルと震えながら
(魔王が来るよ魔王が来るよ俺の腕を折りに魔王がくるよ小さい魔王を差し向けて俺を捕らえるつもりなんだ畜生このままやられてたまるかいえやっぱり無理です殺されるあの異常な霊圧に勝てるわけねぇだろ落ち着け俺そうだ奴は俺がまさかベッドの下にいるとは思うまいそうだこのまま静かにやり過ごし再起の時を待つのだそう俺は怯え隠れているのではない勝機を見出したその時こそ俺の華麗で勇猛な英雄記が始まるのだハイルコン!ハイル俺!今正に俺は輝いている!俺は百獣の王コン様だイィヤッホウ!)
と怯え、自分を鼓舞していたとは思えない叫びっぷりである。


「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!普段からオンナ侍らしといて今度はロリ相手かあの色情魔が!おまわりさーん!ロリコンです!ロリコンがいまーす!性犯罪犯す前に死刑にして下さぁぁぁぁい!!」


誰もいないのを良いことに言いたい放題のコンがジタバタと一護の部屋を暴れていると、ガチャリと音を立てドアが開いた。
反射的に背筋がビクリと動き、先程までの威勢の良さが嘘のように狼狽する。


「あれー?何か声が聞こえてきたと思ったんだけどなー?」


掃除機を持った遊子がコンの声を聞きつけ部屋に入ってきた。
しかし、既にコンは一護のベッドの上でぬいぐるみモードへと入り微動だにしない為、遊子が声の主に気づくことは無い。
部屋の中を見回し誰もいないのを確認した遊子は、そのまま掃除機を持ったまま入室し、掃除機のスイッチを入れる。
そのまま一護の部屋を一回りし、掃除をし終えた遊子の目がピタッと止まった。そう、この部屋で唯一の違和感を出し続けているライオンのぬいぐるみ、コンだ。


「わ、わぁぁぁ…お兄ちゃんこんなぬいぐるみ持ってたんだ…」


興味深そうにフンフンと鼻息荒くコンに近寄る遊子、体を硬直させながら内心冷や汗を流すコン。
ガシッと目の高さまで持ち上げられたコンを見つめるのは正に熱視線。遊子のある意味特殊と言える感性にバッチリストライクしてしまったようだ。
掃除機を放り出し、部屋を出て階下にどたばたと下りていく。


「おかーさーん!ぬいぐるみ洗濯するねー!」

「はーい、ちゃんと乾かすのよー?」

「うん!」

(お前が魔王の刺客か!刺客なのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!)


コンのトラウマがまた増えるか増えないか。
それは今後の遊子の行動にかかっている。





「へくちっ」

「どうした、そんな寒いわけでもねぇのに」

「いや、これは誰かが勘違いで私の噂でもした感じかな」

「それが分かるお前がスゲェよ…」

「冗談に決まってるじゃない」

「ああそうですか…」


黒崎家を出た2人はあれから何事も無く中心街へと到着。
特に人口が多いとは言えない空座町だが、休日の昼ともなればやはり人通りは多く賑やかなものになり、がやがやと街は騒がしい様子を見せる。
うっかり誰かに出くわさないだろうかと気が気でない一護は、そわそわと落ち着かないことこの上ない様子で目の動きが忙しない。
一方優姫はのんきなもので、誰かに会えばそれはそれで面白いし、会わなければ会わなかったで特に問題は無いのでスタスタと歩を進めていた。


「心配性だなぁ…」


瞳でピンボールをしているかのような一護の挙動不審ぶりは、優姫から見ても非常に怪しく、事情を知らねばクスリが良い感じにキマったデンジャーな人のよう。
この落ち着かなさを見れば、誰もがはふぅとため息をつく優姫の気持ちを理解できることだろう。


「お前が堂々としすぎなんだよ…」

「いいじゃないの、どっちにしろこの組み合わせと言う時点で人目につくんだし。ホラ、通行人もチラチラみてるだろう?」

「うっ…やっぱ来なきゃ良かったぜ……」


両手を広げて街の人々を示す優姫の指摘を受け、一護の眉間のしわが1本増える。
オレンジとグリーンが歩いてる姿はやはり人目を引くもので、先程から背中に感じる視線でムズムズしていたのだ。


(とは言いつつちゃんとついて来てくれる辺りやっぱ良い奴だよなぁ一護クン)


横目で一護の顔を見てニヤニヤと猫のような笑みを浮かべる優姫。
一護がその様子を見て不思議そうな顔をして訊ねる。


「どうした?何か面白いことでもあったか?」

「いいやー、別にぃー」


しかし優姫のニヤニヤした顔は止まず、一護はますます分からないと言った表情になる。





この時、二人は前を向きつつも目が見ているのは互いの顔。


無論、視界に移るのは互いの顔とその背景。


だから、前から歩いてくる人物が誰であるか、どんな顔をしているか、そんなことにも気づかなかった。


気づかなくても仕方の無いことだった。












「済まんが、この辺りにおもちゃの斉藤と言う店は無かったか?」


声に反応した優姫が見たものは新雪のように煌めく銀の髪、背丈は小学校高学年ほどで優姫と同じく黒を基調としたコーディネイト、
目的の店を見つけられなかったせいかやや疲れた顔をして、声には少し焦りと苛立ちが混じる。
優姫がその姿を視界に納めた瞬間『パーフェクッ!』と脳内SEが鳴り、その人物が持つオーラに思わず声にならない声を上げそうになるが、
何とかその衝動を心の声に変換して己の内に押さえ込む。







(ニーサンじゃねーかぁぁぁぁぁぁぁ!!!)







かくして物語は、本来辿るべき筋道には存在しえない未知なる喜劇の開幕を告げた。












『あとがきゴールデン』


ちまちま書いてた番外編が長くなったのでキリの良いとこで投稿。
大体アジューカス襲撃~観音寺間の話です。
観音寺編ラストはもう少々お待ちを。



[5293] 第21話「いとも容易く行われるありえない行為」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/05/19 19:58
破壊された病院の外壁、もうもうと立ち昇る瓦礫の煙、久方振りに姿を現し再び消えた観音寺。
本来の予定に無い展開に(どんな予定があったかは定かではないが)スタッフ達からも緊張の色が見て取れる。
番組と最も関わりが深いスタッフがこうなのだから、もちろん観客が状況を全て把握出来ている訳も無く、
ざわざわと困惑したどよめきが耳につく。


「それにしてもホントに何が起きているのやら…」

「あたしも何と言って良いか……」


屋上でホロウと一緒にこちらを見下ろしている一護クンに少々呆れつつも事態の進展を待つ俺。
右手側の夏梨ちゃんも勿論『視えている』為、「何やってんだあのバカ兄貴」と言わんばかりに目からハイライトが消えている。
ごめんねぇ。お兄ちゃん今ちょっと中二病患いかけてるんだ。


「ね、ねぇ!二人で納得してないであたしにも教えてよぅ!」


ハイ、左手側の遊子ちゃんがむくれております。
かわいいねぇ。愛玩動物みたい。
この後はデンジャラスな命がけイベント目いっぱいなので今のうちに癒されておこう。


「ええと……優姉ぇ…ヨロシク」


しかし、遊子ちゃんの視線を受けてスッと目を逸らした夏梨ちゃんから俺にキラーパス。酷い。
だがその気持ちは分からないでもない。
私たちの兄は黒い着物に身を包み、屋上からバケモノとこちらを見下ろしています。とか冷静に状況説明できるような奴がいたら驚きだ。
どんなリーサルウェポンだ。


「あのねぇ、今、黒さ「織姫ちゃんストーップ!」ふわぁ!?」


チクショウ!
このリーサルウェポンめ!
遊子ちゃんの左で先程までじーっと屋上を見てた織姫ちゃんが恐ろしく気軽に発言しそうになってたのをなんとか制することが出来た。
今ニコニコした顔で躊躇い無く真実を明るみに出そうとしてたよねこのド天然さん。
怖い、天然って怖い。


「え、だって黒さ「えっと!観音寺が今追ってる悪霊が屋上にいるの!うん!それだけ!それだけだから遊子ちゃん!」あわわっ!」


気づいて!?気づいて織姫ちゃん!
こないだナイショだって言ったばかりよ!?
届けこの思い!


「そうなの?織姫」

「え!?あ、うん!そう!そうなのたつきちゃん!」


届いたこの思い!!
マンガ的表現ならば横線のような目から滝のような涙を流さんばかりの俺の様子にようやく合点がいったのか、
織姫ちゃんがたつきちゃんを誤魔化しにかかった。
両手を顔の横でグッと握り締めて力強くアピールする様はちょっとアホの子のようで実に可愛い。


「ふぅん…屋上に…か……」

「お、屋上にいるんだ…ドキドキしてきちゃった」


腕を組み、未だ半信半疑な表情で屋上を見つめるたつきちゃんに、
空いた左手で服の裾をぎゅっと握り締め、キラキラした表情で屋上を見やる遊子ちゃん。
両者の対比がそれぞれの霊に対するスタンスを思わせて面白い。

いや、実際は面白くもなんとも無い。むしろ一護クンらの状況が碌に掴めず非常にドキドキしてる。
我ながらなんとアドリブに弱いことか。

それにしてもこの場で驚くべきはたつきちゃんだ。
普通、「不可視かつ強力な化物が世の中には昔からうようよしていて、お前は段々それが視えるようになってるけど対抗手段はありません」
なんて言われたらSAN値チェック失敗するだろうに。
精神的にも強靭過ぎるぞたつきちゃん。いあいあ。
俺が完全に“見えるだけ”の人間だったらマジで毎日胃を酷使していたところだ。穴が開くわ。


“さぁ!とうとう観音寺氏が屋上に姿を現しました!これから一体何が!何が起きるのでしょうか!?”


ヘリから屋上を見下ろしているレポーターのコメントを聞きつけ、今は遊子ちゃんの手にあるポータブルTVに皆の目が向く。
既に一護クン達はこの位置から見える場所には居らず、霊が映らない、完璧に一般人視点の番組放送でしか状況は分からない。
さぁ何が起きている、何が起きようとしている。
出来ることなら楽しいショウを、見るもの全てが楽しまずにはいられない最高のショウを、
生放送、本物の悪霊が相手である極上のショウを見せてくれよ、一護クン。















dream 15.   『THE HEROES』















「待たせたなバッドスピリッツ!」


場所は病院の屋上。
ドアを開けて観音寺が屋上に現れた。
その手には観音寺の固有武装『超スピリッツ・ステッキ』が力強く握られており、既に彼が戦闘体勢に入っていることが分かる。


「さぁ!最早逃げ道は無いぞ!大人しく観念するが良い!」


そう言い放ってステッキを振りかざし、屋上入り口の反対側、誰もいないはずのフェンス付近にステッキを突きつけた。
すると観音寺が指した場所、その床が抉れ、勢い良く破片を後方に撒き散らす。
まるで居ない筈の何かが自分の存在を主張するかの如く刻まれた跡は、その方向を観音寺へと向けて飛び飛びに刻まれていくのだった。


「ぬぅ!諦めの悪い!ならば良いだろう!こちらも行くぞ!」


観音寺が腰を低く落とし疾風のように駆ける。
自分に向かってくる何かに対抗するように、強大な何かに立ち向かうように。
一瞬の刹那に全てを賭けるように。


「オオオォォォォォォォォォォオオオオオ!!!」


雄雄しく吼えた観音寺は勢いをそのままにステッキを横薙ぎに一閃。
ステッキに激しい速度で何かがぶつかったかのような痺れが走り、その痺れに比例する大きな金属音が病院屋上に響いた。
観音寺のマントはいつの間にか引き裂かれており、開いた裾をはためかせている。


「浅いか!ぬっ!?むおおおおお!!」


振り返った観音寺が即座にステッキを両手で横に持ち替え、上から振ってくる何かを受け止めたように腰が落ちた。
いや、確かに何かを受け止めているのだろう、その足元は明らかに荷重がかかっているように軋み、ひびが入り始めているのだから。


「むぅぅ…中々のパワーのようだが……甘いわぁ!でぇぇい!!」


迫り来る何かを左に受け流し、即座に横をすり抜けるように回転して跳び上がり、その勢いを利用して再びステッキで斬り付けた観音寺。
再び金属音が屋上に響き、ほんの数瞬までいた所には見れば誰もが大型の獣を連想するであろう爪痕が深く刻まれ、相手の巨大さを十分に思わせた。


「手ごたえあり!」


笑みを浮かべながらも油断を感じさせない様子で爪跡の方を振り返った観音寺。
フェンスを背中にしていた彼は次の瞬間右に跳び、強大な力で無理やり引き裂かれた様に形状を変えたフェンスの方を見て、再び杖を構える。
反応がほんの少しでも遅れれば自身も引き裂かれていたことを感じ取ったのか、その横顔には汗が一筋流れていた。


「……スピードとタフネスも中々の様だなバッド・スピリッツ。しかし!これならばどうかな!?」


それは通常の物理法則からすれば有り得ない動き。
空中を蹴って縦横無尽に、何かを囲むように跳ね続ける観音寺の速度はさながら獲物を追い詰める鷹の如し。
三次元を十分に生かしたその非常識極まりない軌道は、金属音を激しく響かせながら次第に速度を増していく。


「これぞ観音寺エアリアルスラッシュ!この速度には最早付いてこれまオボゥア!!!」


だがここで観音寺がセリフの途中で吹き飛ぶ。顔面を殴られたように勢い良く吹き飛ぶ。
地面を数回バウンドして屋上を転がった観音寺は、先程壊されたフェンスの位置まで吹き飛び体を横たえた。
サングラスが地味に割れていて実に痛々しい。


「フ…フフ……適当に腕を振り回して私に当てるとは何とラッキーな……。だがっ!まだ負けてはいないっ!」


そして観音寺は再びステッキを構え、戦いを再開した。








観音寺が派手に吹き飛んだその時。


『おいコラ!今のは力入りすぎだろ!』


思いのほか、それこそ見てて気持ち良いほどの吹っ飛びっぷりを魅せた観音寺を見て一護が叫んだ。
しかし残念ながら微妙に意思疎通が出来てないのか、叫ぶ一護に当の虚は親指をグッと立ててのサムズアップ。
「見てました!?今のスゴいっしょ!?」と言わんばかりの虚の得意そうな顔に思わず一護も眉間を押さえる。


『いや…流石に今のはマズくねぇか?いくら何でも今のは怪我ぐらい…』

「フ…フフ……適当に腕を振り回して私に当てるとは何とラッキーな……。だがっ!まだ負けてはいないっ!」

『あー、今の訂正な、続きやるぞ』

『ヴォオオオオ!』










(うん、結構いいセンいってたんじゃねぇかコレ)


それから数分経って、一護は腕を組んで自画自賛に近いものを感じていた。

ネタをばらせば話は簡単。
今まで観音寺のステッキを受けていたのは全て一護であり、観音寺に攻撃を仕掛けていたのは全て虚だったのだ。無論本気ではない。
ちなみに観音寺が空中を蹴って移動していたのは、一護の霊子固定化による足場作りの練習の賜物。
地道に瞬歩や足場固定の特訓していた一護は存分にその力を発揮していた。

途中、虚が力をセーブしきれずに無駄に勢いよく吹き飛ぶシーンもあったが、
ゴキブリのような観音寺の生命力には然して影響は無かったようで、その後も順調に殺陣を続行。

そして今は終盤、残るはピンチから逆転した観音寺が必殺技とやらを何もいないところに放って、
コレにて一件落着→エンディングへ、そして放送後に虚を浄化。というのが当初の予定だった。
段階は締めのシーンに入り、既に殺陣を終えた一護と虚は屋上入り口を背にしての観客モードに入る。


『あとは必殺技だな、自信満々に「見ていたまえボーイ」とか言ってたけど何が出るやら』

『ヴァー』

「喰らえバッド・スピリッツ!観音寺流最終奥義!!!」


と、観音寺が右手を掲げたその時だった。
誰も予想だにしない出来事が起きた。

夜空にひびが入ったのだ。

夜空を割り、更に深い深淵の常夜から顔を覗かせたのは、黒衣を身に纏った巨大な仮面の怪物、大虚<メノス・グランデ>。
まるで怪獣映画のような非現実的な空気を纏う巨大なそれは、口元から高濃度の霊気を垂れ流し、圧倒的な禍々しさを持って現世に顕現。
これを見た一護は思わず息を呑み、虚は仰ぐように空を見上げた。
一護たちの視線を受けてか、辺りを見回しメノスが吼える。
それは新たな戦いの始まりを告げる汚泥にも似た不吉な音色であり、世界の終わりを告げる管楽器の音色のようであった。


「馬鹿な……あれは……メノス!?」

『おい!観音寺!あれはヤベェ!今すぐ観客を避難させろ!』


一護の反応は素早かった。
何事かを呟いた観音寺に詰め寄り即座に観客の避難を促す。
山のように巨大な虚を見てまず考えたのは、己の危険や勝ち負けの話ではなく、人々の安全だった。
それを感じたのか、観音寺は驚きの表情から再びヒーローの顔を取り戻す。そしてヒーローは拳を握り、叫んだ。


「何と言うことだバッド・スピリッツめ!よもや自分の負けを悟って親玉を呼び出すとは!」

『馬鹿野郎!そんなことしてる場合じゃねぇだろうが!あれと戦うにしても被害が出る!まずは避難が先だ!』


一護の言うことは正しかった。
一護たち程の霊感を備える者がいない一般の観客の中にも、既にメノスの圧倒的な霊圧を感じて体調の不良を訴え、
意識を失いかけてるものも出始めており、現場は少なくとも安全とは言えない状況に陥っていたのだから。
もし、現役の医者であり一護の父親である一心が先陣を切って指揮を取っていなければ、廃病院付近は更に混乱に陥っていたことだろう。


「確かにアレは強い……しかし手はある!」

『何?』


しかし観音寺が示したのは勝利への鍵。
既にメノスはその足を廃病院方向へと向けており、もはや時間は無い。
メノスの速度を見て、もう避難が間に合わないのを悟った一護は頭を切り替え、観音寺に問いただす。


『被害を出さずにアレを倒す方法があるんだな?』

「普通に戦えば被害が出ることは必至!だがこれならば!私が蓄え続けた力を放つコレならば一撃で決められる!」


観音寺はステッキを握り締め、あくまで誰も居ない事を前提に、セリフを装って一護に答え続ける。
ヒーローとして。
ドン・観音寺として。
子供たちの憧れとして。


『分かった。俺に出来ることはあるか』

「しかしこの奥義は発動に時間が…!1分、それが勝負だ!」


そう観音寺が告げた時だった。


『ヴァァァァァァァァアアアア!!!!!!』

『おい!どうした!』


突如、虚がメノスに向かって飛翔。
そもそも飛べたことに驚く一護だが、虚の覚悟を決めた顔に戸惑わざるを得なかった。


『まさかアイツ…自分がおとりに!?』

「しかしやるしかない!マスターお許し下さい…今こそ封印を解く時!」


虚の行動を理解して驚く一護を視界に入れながらも、観音寺は既にステッキに霊力を込め始めていた。
一見魔法のステッキめいたその杖は、観音寺の霊力に呼応するかの如く紫電と共に外装をパージ。
内部より眩い光を放ちながら次第に元の形を取り戻していく。


『何だ…それ……』

「これぞ我が超スピリッツ・ステッキの真の姿」


一護が驚くのも無理は無かった。

それは一本の矢。
表面に複雑な紋様、記号が幾重にも細かく刻まれ、月光を受けて煌めく銀色の矢。
観音寺がこれまで温存していた本当の切り札。

観音寺の掌から数センチ浮かんでその身を煌めかせる銀の矢は、一護の知るどんな武器よりも神聖にして強力に見えた。


『って待てよ!そんなの撃ったらアイツごと!』

「コレを放てば最後。この矢を妨げるものはどんなバッド・スピリッツであろうと全て無へと帰すだろう」


この時、観音寺の視線が一瞬だけ、ほんの一瞬だけ一護の視線と交わった。
今までセリフとして『本来この場に居ない』一護と会話をし続けた観音寺が何故今更視線を交わしたのか、その意味を正しく理解した一護は瞬時に空を駆ける。


『なら撃つ前にアイツを退けろってことか!』


これも地道に訓練を重ねていた空中に霊子を固定しての瞬歩。
虚の速度も中々のものだったがほんの僅かな時を持って追いつく。


『いいか!お前はちゃんと俺が尸魂界に送ってやるから最後まで死ぬなよ!…いや、つってももう死んでるんだけどよ』

『ヴァァァァア!!』


自分で言っておきながら首を捻る一護に虚が答えた。
そしてそれを肯定と受け取った一護は、目標をメノスへ定めて斬魄刀を構える。


『それじゃ最後の大仕事だ!あのデカブツの足止めといこうぜ!』

『ヴァァァァァァァアアア!!!』











一護と虚がメノスの足止めを行い始めたとき、観音寺は次の段階に入っていた。
封印より解放された銀矢を背に収め、左腕を天に掲げつつ霊力を凝縮。


「はぁぁぁぁぁ!!!」


まず現れたのはブレスレットのような光の輪。
次に現れたのは光の輪から生えた天使の如き光の翼。
そして最後にそれぞれの翼の頂点から線が伸びて互いを繋ぎとめた。
そう、それはまさしく、銀の矢に対応して神聖な輝きを放つ、光の弓だった。


「さぁ、今夜はこれでお開きだベイビー。今この時を持ってこの病院を悪夢から解放しよう!」


左腕に光の弓を顕現させた観音寺は、力強くその標的をメノスへ定めた。
すると花が開くように光の弓はその翼を広げ始めていく。
それによって弓の長さはもはや背丈を超え、3メートル超の長弓へと姿を変えていた。


「YEAHHHHHHHH!!!キルキルアウナンアウマクキルナン!!!」


お得意の浄霊リリックと共に輝きを増していく光の弓、それに共鳴するように震える銀の矢を番えた観音寺。
ある程度の霊感を持つものであれば誰もが分かるレベルの膨大な霊力が銀の矢へと集まっていく。
観音寺の足元はその霊圧に耐えかねているのか軋みを上げ、割れた破片が中空を舞い始めている程だ。
そして───────


「カンオンジ!アルティメットシューティング!!!」


銀矢は夜空を突き破るように放たれた。















『あとがきゴールデン』


まさかまた一月経つとは。
こんなSSを読みに来て下さっているエンジェルな方々すいません。
次で観音寺編も終わりです。
色んな意味でアウト感が拭えませんが、観音寺だしまあいいかということでお願いします。



「何やってんの観音寺!?」と思ったあなたは作者的にも驚きの展開なのでもっと驚いていて下さい。
観音寺無双、はっじまーるよー。嘘ですけど。

「あれ?優姫、いらない子じゃない?」と思ったあなたは極めて正解に近いので安心して下さい。
これから黒歴史関連絡めていじっていけたらいいなぁと思います。

「KANONJIの時代が来ましたね」と思ったあなたは今すぐ観音寺が主人公のSSを書いて下さい。
絶対こんなSSより面白くなりますって。あとKANON JIじゃありません。念のため。



次回、一護の戦いはこれからだ!



[5293] 第22話「動き出した新たな勢力」
Name: どり~む◆39e52559 ID:12833398
Date: 2009/06/02 22:41
「カンオンジアルティメットシューティング!」

「はぁ!?」


観音寺の叫びが聞こえる中、俺は余りの出来事にマヌケにも口をぽかんと開けて呆然としていた。
百歩譲ってホロウと屋上で接戦を繰り広げる?観音寺まではまぁ良いとしよう。凄い動きしてたし。
だが、突然のギリアン襲来は、流石にこれ以降原作知識に頼り切るのに危険を感じるレベルのアクシデントと言って良いだろう。
ちなみに、本来今日起きるはずだった出来事を順番に挙げていくと、

観音寺が浄霊に失敗し、霊がホロウになる → 一護クン乱入 → 病院内でちょっとバトル → 屋上で一護クンがホロウ仕留める
→ 観音寺が霊=化け物(ホロウ)と知る → 落ち込む観音寺を慰める一護クン → 一護クン何故か観音寺の弟子扱いに

とまぁ大体こんな感じでめでたしめでたし、家に帰って録画でも見てグッスリ寝よう。となる筈だった。
ところがぎっちょん。
一護クンはホロウと一緒に屋上から仲良くこっち見下ろすわ、観音寺はJACどころじゃないアクションこなすわ、ギリアン出るわで怒涛の予想外3連続。
ただでさえ一護クンがBボタン連打したくなるような斜め上の進化し始めたり、原作未登場のアジューカスが来たり、謎の第三勢力みたいなのが浮上してきたと言うのに。
一体何処まで俺の胃に負担をかけるのだろうかこの世界は。

そんな感じで俺が世界に対し軽く苛立ちを覚え始めていた間に、観音寺の矢はギリアンに向けて放たれた。
放たれてしまった。

ここで正直に言うならば、最初は観音寺の必殺技の威力にはあまり期待はしていなかった。
いくらなんでもサブキャラの範疇は超えていないだろうし、むしろあれだけ光れば浦原ファミリーもどさくさに紛れてギリアン退治しやすいだろう。
そんなズレた期待をしていたくらいだ。

しかし、この場にいた全員の視界を埋め尽くしたのは光の奔流。
形容するならばそうとしか言い様が無い程の激しい光の渦。
観音寺の弓から放たれた銀矢は眩く辺りを照らしてメノスへと突き進み、夜空を翔けた。
この時既にメノスも危険と判断していたのか、一護クンとホロウにちょっかい出されながらも準備していたのであろう虚閃<セロ>を放つが、
相殺どころか速度を落とす事すら叶わず、銀矢はメノスの黒衣へと食い込み、瞬間的に膨大な霊力を解放。
その威力たるや吹き荒れる暴風と共にメノスの体を貫通し、今やメノスの上半身と下半身を繋げているのは皮一枚と言っても問題ないレベル。


「はぁぁぁぁぁぁ!?」

「スゲェェェェェェ!!!!!!」

「ええええええええ!?」


当然俺、夏梨ちゃん、織姫ちゃんは余りの威力にビックリして叫ぶ。というかアレを視てビビらない方がおかしい。
今のメノスはHP残り1ケタでステータスが赤表示状態と言っても良い上に、
いかにカリスマ霊媒師といってもこの出力が出せるとは露とも思っていなかったのだから驚きも倍以上だ。
更に言えば、突然の体調不良者続出に困惑していた観客達も、
夜空を照らす不思議エフェクトに空を見上げて歓声を上げているのだから凄い。


『よっしゃあ!これでトドメだ!』

「あ、もしかしてまたアレかな?優姫ちゃん」

「多分アレだねぇ。あ、おっきくなった」

「……………………………」


ここからも聞こえるほどに意気揚々と叫ぶ一護クン、その姿を見て呆然とした姿から豆電球光らせた織姫ちゃんはアレを期待してるらしいが、
実の妹である夏梨ちゃんはもうそれどころではないらしい。
兄が刀持って空中飛びながら暴れるだけには止まらず、その刀が光りながら巨大化しだすのだから何このファンタジーって気分だろう。
こんな眩しい夜は去年のお祭り以来だ。
しかし何時までも真実に目を背けていてはダメだと思った俺は、夏梨ちゃんの耳元でポツリと呟くことにした。


「夏梨ちゃん、大変かもしれないけど現実を見ないと。あれは紛れも無くヤツさ」

「……………………………」

『ファイナルドミネイトォォォォ!!!』

『ゴオアアアアアアアアアアオ!!!!!』

「おお~」

「……………………………」


皮一枚で上半身と下半身がくっついていたような瀕死のメノスを、巨大化した斬魄刀で一刀両断。もちろんメノスは跡形も無く消滅。
メノス退治には少し時期が早まった気がするが大丈夫なのだろうかこれ。既に原作とかなりのズレが起きている以上、俺も動きを早めざるを得ないかもしれない。
織姫ちゃんがぱちぱち手を叩いて感嘆の声を上げる中、夏梨ちゃんの目はやはり死んでいた。瞳孔開いてるようにも見えて怖い。
ああ…この前の俺もこんな目をしていたのか……。


「YEAHHHHHHHHHHH!!!!!ミッションコンプリィィィィィィツ!!!!」

『死ぬかと思っただろうがこの野郎!』

『ヴァァァァ!』


メノスの消失を確認し、ガッツポーズを取って雄叫びを上げる観音寺の元に一護クンと虚が帰還したらしい。
流石にTVには映らないが、屋上から一護クンのナイスキレっぷりが聞こえる。


「この廃病院のバッド・スピリッツは滅びた!これから怪奇が起こることもなくなるだろう!」


しかし、観音寺は一護クンらの苦情を無視して、空中のカメラヘリにビシッと決めポーズをとる。番組的にも締めに入ってるようだ。
これに気づいた一護クンたちは空気を読んでかグッと黙ったらしい、つーかホロウも黙るって何だこれ。


「それではそろそろ時間だ!次に私が向かうのは君の町かもしれないぞ!?」


とここで観音寺が胸の前で両腕をクロス。
おなじみのあのポーズだ。


「ボハハハハーッ!」

「「「「「「「「「「「ボハハハハーッ!!!!!」」」」」」」」」」」


観音寺のお決まりのセリフに、観衆は勿論、ちょっと離れたところで倒れた人たちの相手をしているおじさん、そして遊子ちゃん織姫ちゃんが腕をクロスして応える。
本来はここで織姫ちゃんもボハハハハーッ!と叫んでいるところなのだが、俺と夏梨ちゃん含めて未だ口はぽかんと開いてメノスのいた地点を見上げたまま。
どうやら腕の動きは無意識によるものらしい。凄いな織姫ちゃん。

とはいえそれも当然だろう。
原作を知る俺ですら今回の事態は全くの想像外。銀河系を飛び出しても未だ辿り着けないほどの外。
観音寺がホロウや死神のことを知り、あまつさえ観音寺アルティメットなんちゃらと叫んで必殺技を放つのだからどこの二次創作だ。
しかもその威力たるやギリアンを一撃で瀕死に追い込むという狂った性能。
ないないない、幾らなんでもこれはありえない。
原作知識で知る限り観音寺はそんなポジションではない。せいぜいコミックスの白紙ページ、別名本編でコンみたく暴れる程度だったはずだ。
それが何だこの強キャラぶりは、クインシーも真っ青だ。絶対今の石田君より強いだろお前。


<<スピカさんや、これはどういったことかね>>

<<あのスタイルから察するに滅却師の流れを汲んでいるものかと>>

<<それしか考えられない…か……何かしらバタフライ的なもので観音寺がクインシーに接触したって線が濃厚?>>

<<現状ではそれが妥当かと>>


スピカの意見に同意するが、今の情報ではそれしか考えようがないと言うのも事実。
ブリーチで弓矢といえばクインシー、これはコーラを飲んだらゲップが出るくらい確実と言って良い。
むしろ観音寺が自己流であれならば、山で鍛えたら鬼にでもなれるだろう。
だが疑問が一つ、この手の話でバタフライ効果とはよく言うが、俺が生まれてそこそこ普通に過ごしてきた程度でここまで変わるものだろうか。
正直これは幾らなんでも原作と離れすぎている。
何か、何かがおかしい……。何か俺の知らない要素が働いている気がする……。


「ねぇ優姫ちゃん…観音寺さんって……」


と、ここで織姫ちゃんがようやく我に帰ったのか、目をまん丸にして顔をこちらに向けてきた。血色の良い健康的な右頬に冷や汗が伝っているのが見える。
織姫ちゃんの気持ち、この糸井、分からないでもありませぬ。あんなものを見れば分かる人は誰しも驚くだろう。しかもそれがあの威力なのだから尚更だ。
出来ることならば俺だって驚いてるだけで済む側に居たい。無理だけど。


「予想以上に凄かった。そういう事」

「凄かったよね観音寺さん!」


いきなりの遊子ちゃん大興奮。兎のようにぴょんぴょん跳ねてて可愛い可愛い。
どうやら観音寺の攻撃エフェクトや弓矢は普通にカメラでも捉えられるものらしく、
同じくポータブルTVを見ていた遊子ちゃんはテンションが止まる所を知らない。俺の困惑ぶりも止まる所を知らない。
一方夏梨ちゃんはと言うと、一護クン死神化から観音寺超必殺技&一護クン必殺技と、
一気に脳に多量の情報が詰め込まれたせいかオーバーヒートを起こしているらしい。
おそらく脳内では砂時計マークがカリカリいってるはずだ。目が虚ろ過ぎる。


「あ~~~~~…………」


今度は腕を組んで屋上を眺めていたたつきちゃんの口から呻きが漏れた。次から次へと皆リアクションに忙しい。
今日は色々あってこちらはお疲れ状態なのだが、たつきちゃんも相当お疲れらしい。
とはいえ今のところ出来ることは無いので肩を叩いて励ますのが精一杯。
ルパンなら国旗の連なったアレをスルスル出すところだ。


「たつきちゃんドンマイ!」

「うん…えーと……明日じっくり聞かせて……」

「ドンマイ!」


たつきちゃんは何と言うか、「あれ?いつの間にフルマラソン3周したの?」と言いたくなるような顔になっている。
見るからにお疲れの様子で、体中から溢れ出る負のオーラが凄い。空手の稽古後でもこんな顔のたつきちゃん見たこと無い。
ドンマイ。たつきちゃんドンマイ。
煤けた背中を見てるとちょっと泣けてきた。


「おお!そっちは大丈夫だったか!?」

「あ!お父さん!そっちはもう良かったの?」

「一時的な貧血だったみたいだからもう大丈夫よ」


たつきちゃんの煤けた背中を見ていると、おじさんと真咲さんが戻ってきた。
ギリアンの霊圧はやはり一般の方々には厳しいものがあったらしく、ふらりふらりと倒れる人が出ていたからこれまた大変。
あの状況に颯爽と駆けつけたおじさんは改めて医者なんだなぁとしみじみ思ったり思わなかったり。


「いやぁ、さっき知った顔を見つけたんだけど、そいつ空見上げながら大口開けてマヌケな顔してるもんだから大爆笑!」


プフー!と思い出し笑いをするおじさん。どうやら知り合いがいたらしい。
そりゃ突然あんな神々しさ溢れる光をみたらぽかんとするだろうさ。俺達だってぽかんとしてたよ。
あれで驚かない方がどうかと思うのだが、同じくマヌケな顔をしていた俺としては少し意趣返しがしたい。


「こんな感じですか?」


そう思った俺は未だフリーズ状態の夏梨ちゃんを指差した。


「そうそう!今の夏梨みたいな面白フェイ…ス……なん…てことは…ないんだぞ?」


夏梨ちゃんの顔が錆びついたブリキ人形のようにギリギリとおじさんに向けられ、一歩一歩近づいていく。
その目に映っているであろうおじさんの顔は、夏にはまだ少し早いというのに汗がダラダラ流れている。
蝦蟇の油でもここまでは流れまい。


「あっ!あの!夏梨ちゃん?いや、ホント、ゴメンなサヴァリス!!!」


夏梨ちゃんの!
右足が!!
おじさんの股間にシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!!!!!
男を殺す必殺の一撃を喰らわせた夏梨ちゃんがこめかみに血管を浮かながらこちらに戻ってくる。
流石に一護クンの妹なだけある。怒った顔がそっくりだ。

そしておじさんは、ゴメンなさいを最後まで言い切る事無く、股間を押さえて崩れ落ちた。
もう無くして久しいはずなのに、感触も忘れたはずなのに、分かりすぎるほどにおじさんの痛みが分かる俺は元男。
自分が原因とはいえ、心の中でファイト!と言わざるを得なかった。

それにしてもこの光景をニコニコと静かに見守る真咲さんの何と言う母性の溢れっぷりよ。
この優姫、恐れ入りますぞぉぉぉぉぉぉ!!














dream 16.   『After the Carnival. After the Bygone』














「おう!皆大丈夫だったか?」

「突然観客の方々が倒れるものだからビックリしましたわ」


それからさらに数分経って一護・ルキア(猫被り)組も合流。
一心とほぼ同じことを言う一護は、ああ、こいつら親子だなぁと生暖かい視線を受けての帰還だった。
当然そんなことに気づく由も無く、一同の無事な姿を確認して一先ずの安堵を得る一護だったが、本当の戦いはこれからだということにはまだ気づいていなかった。


「いーちごクン♪」

「何だよ優姫、気持ち悪い声だし…て……」


完全余所行きモードの優姫の笑顔、通称『姫スマイル』が発動。
そこらのアイドルが裸足で逃げ出し、凍て付いた心をも溶かすと言われた陽だまりの様な微笑み。
事実、優姫をチラチラ見ていた観衆が、この笑顔を発動した途端に頬を赤く染めて物言わぬ人形と成り、一部カップルがこの後ギスギスしたりしなかったり。
本来であればこの笑顔を独り占め状態の男は、自慢げに誇ったり優越感に浸るのが普通なのだろうが、残念ながら2人の関係性の前ではそのような解は導き出されない。
導き出されないのだ。


「何してたの?」

「は!?いや!その!」

「ねぇ、何してたの?」


アドリブに弱い上に元来心配性な優姫は、今回の件についてほんの少し、
ほんの少しだけ許容量をオーバーしていたらしく、帰ってきた一護に微笑を携えて詰め寄る。
『姫スマイル』、本来素晴らしいものであるはずのそれは、一護にとっては死ぬよりも恐ろしいものであった。

一護の後ろのルキアもこの優姫の笑顔に一瞬頬を染めていたが、一護のうろたえ様(怯え様)を見てこれがどういうモノであるかを理解する。
人間本当に怒った時やどうしようもない時は笑うしかないという話を思い出したのだ。

そしてさらに後ろにルキアと言う美少女を従え、優姫と言う超が付く美少女に詰め寄られている一護は、
一見浮気をした彼氏と浮気相手、そして彼女の三角関係のよう。
このオレンジがぁぁぁ!!と、一部観衆からのドス黒いオーラ、負の感情を一身に受けることとなった。

もちろん馴染みの深い黒崎ファミリー+αは既に危険を感じて距離を置いており、一護を守るものは誰一人としていない。
黒崎一護、流石は原作主人公。ある意味恵まれた環境の持ち主と言えよう。


「さーそれじゃあ何があったのかきりきり吐こうねぇ」


優姫の右手が一護の後ろ襟をガシッと掴み、ずるずると引きずっていく。
誰かがドナドナを口ずさんでいるのは気のせいだろうか。


「わ、わかったから!ちゃんと話すから止めてくれ!」

「いやぁ、最初はどうしようかなぁ。先ずは左手の小指からいこうか」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「ハハハこやつめ。誰がショッカーだ」


やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!
ハッハッハッハッハッハッハ


そんな悲鳴と笑い声が木霊して消えていった廃病院前。
誰もが空気を読んでか何事も無かったように元の雰囲気を取り戻す。


「それじゃそろそろ帰るかな」


たつきが優姫たちの消えた方向、黒崎家の方角を見てため息とともにそう呟いた。
未だ納得のいかないこともあったし、約16年、長くも無いが短くも無い人生、
その中で積み上げられてきた常識が砂の城のようにあっけなく崩れていく感覚に戸惑っていないと言えば嘘になる。
それを察した織姫が心配そうに視線を送るが、笑ってそれに答えられたのは、これまで優姫と共に織姫を守ってきた自信とプライドの為せる業だろうか。


「暗いけどたつきちゃん大丈夫か?おじさん送るぞ?」

「大丈夫ですって、そこらの男なら左手一本でも倒せますから」

「あらあら」


私は大丈夫だと力こぶを作ってたつきが笑う。
しかし、今のたつきの表情は普段のそれとは未だ遠く、織姫が何か声をかけようとするが、それを制して真咲がたつきに歩み寄った。


「たつきちゃん。今はまだちょっと大変かもしれないけど大丈夫。この町にはいろんな人がいるから、困ったことがあったらきっとその人たちが助けてくれるわ」

「えっ?」

「だから安心して、たつきちゃん。それに、この町にはヒーローがいるのよ?10年も前から、ね」


真咲の言葉に織姫が僅かながら反応し、たつきはかつてのあの日、一護が興奮と共に語った雨の日の出来事を思い出してた。
それは信じるには余りにも荒唐無稽な子供の夢物語。
たつきも幼かったとは言え、勿論全てを鵜呑みにしたわけではなかった。せいぜい悪人に絡まれたのを通りがかりの人に助けられた程度だろうと。
しかし、今ならそれが誇張されたものではないことが分かる。真実、子供が夢物語のように語る正義の味方とやらが存在することが分かる。
なぜならたつきも、既に夢物語のような世界に半歩足を踏み入れているのだから。


「そうか…そういうことだったのか……」

「ふふ、もう大丈夫みたいね」


優姫とはまた異なる真咲の微笑みに、たつきは頷きで返した。
そして、振り返り様に心配そうに見ていた織姫の目をじっと見る。


「織姫、あたしはもう大丈夫だから」

「う、うん!」


ようやく元気を取り戻したたつきと笑顔でそれに答える織姫。
その様子を見て、黒崎家の父娘がニカッと笑う。


「それじゃ今日は本当にお疲れ様でした!」

「おう!車には気をつけてな!」

「たつきちゃんまた明日!」


そうしてたつきと別れた織姫は、黒崎ファミリーと共に優姫を迎えに行くべく黒崎家へ向かうこととなった。










「で、結局のところ、本当に何があったわけ?」


一方場所も雰囲気も異なる黒崎家。
一護を待っていたのは優姫による尋問めいた質問だった。
その構図は、いつかのようにベッドに脚を組んで腰掛ける優姫、そしてクッションを座布団代わりに正座する一護と、実に力関係の分かりやすいもの。
とは言え、廃病院から黒崎家に着くまでの間に優姫もいくらか落ち着いたらしく、表情も普段のものに戻っているので一護も心の中でホッと胸を撫で下ろす。
だが、それでも隠しきれていない優姫の不機嫌オーラは、じわじわと部屋の雰囲気を重くしてた。
何だかんだで今回蚊帳の外だったのを気にしているのかもしれない。


「それに、私も聞きたい事があるのだがな」


ルキアも優姫の横に同じく腰を掛けてため息をつく。


「つってもなぁ…」

「大体貴様は今回出てきたあの虚がどんなものか分かっているのか!?」


頭をポリポリと掻いて、煮え切らない態度の一護にルキアが叫んだ。
それを受け、言って良いものかどうか迷ったように一護が言葉を返す。


「いや、つーかそもそもお前から説明とか聞いたことって殆どねぇぞ」

「そういえばルキアちゃん、織姫ちゃんの時もだけど割と説明義務怠ってるよね」

「ふぐぅ!」


予期せぬツッコミと、予想外の友軍からの背後射撃にルキアがベッドに倒れこむ。
ここでルキアは初めて気づいたのだが、今までにルキアが話したのはそれこそ本当に基本的な単語や知識、
例えば、人が死ぬと霊になり、そこからさらに虚になることや、それを浄化するのが仕事であること、
後は、死神は普段尸魂界と言う世界に住んでおり、護廷十三隊と言う死神の組織によって魂のバランスは守られているといったレベル。
今回のように、虚にも種類や階級が存在する等、少し踏み込んだ所は何一つ説明していなかったのだ。
また、余り突っ込みすぎるとこれからの展開の妨げになると思い、細かいところはスルーしていたのを気にしてか、優姫も無闇に追い討ちをかけることは無かった。


「フフ…ならば今夜は寝かせはせんぞ……」


幽鬼のようにゆらりと立ち上がったルキアは、シチュエーションが合っていればドキドキするような台詞を残し、スケッチブックを手に机に向かった。
どうすればいい。知らん、今夜は存分に説明を受けると良い。マジか。マジだ。畜生。
そんなアイコンタクトが一護と優姫の間に成立していたのは全くの余談。


「で、結局観音寺と何があったの?こっちはポータブルTVでしか屋上の様子は分からなかったんだけど」

「ああ、それがな─────────

「えっと…お邪魔しまーす……」


と、一護が今日あったことを話しかけた時、ドアがキィ…と音を立てて開き、織姫が顔を覗かせた。
後ろには夏梨や一心達の姿も見える。


「おいおい一護ォ!今日は何だ!?ハーレム曜日かこの野郎!父さん羨ましいゾルバ!!!」

「うるせぇから黙ってろ」


テンションを急上昇させる一心の顔面に一護のクッション手裏剣が見事命中。
またも不思議な語尾(叫び)を残して一心は後ろにグラつき、壁に後頭部を撃ちつけ、廊下に倒れこんだ。
流れるような3コンボだった。


「お父さん!?」

「うう…遊子ぅ~一護が苛めるよぅ~~」


(キメェぞ親父)
(キメェなおじさん)
(キモイぞ親父)
(おじさん面白ッ!)


一部を除いてキモイ扱いの一心。
後頭部にたんこぶを作って娘に泣き付くその姿は正にダメ親父の鑑。
コレで強いんだから反則だよなぁ…と優姫は心の中で愚痴っていた。


「それじゃ遊子ちゃん。おじさんヨロシクね」

「はぁい…」


少々不満げながらも一心の手当てと言う名目で追い出された遊子。
部屋に残ったのは一護、優姫、織姫、夏梨。
最後に一心不乱にスケッチブックに筆を走らせるルキアの5人。
そこで、夏梨に一瞬視線を移した一護が優姫に目配せした。
夏梨がいるし今は話せない。そう言いたいのだろうが現実は非情である。
夏梨は一護の腕を掴み、まっすぐに目を見て今日のことを話し始めたのだから。


「一兄、あたし視えてるから」

「な…何がだよ」

「あ、ゴメン一護クン、夏梨ちゃん完璧に視えてるみたいだからちゃんと話してあげてね」


夏梨を誤魔化そうと視線を彷徨わせながら言い訳を考えていた一護だったが、優姫のあっさりとした言葉に目を手で覆う。
薄々は感じていたが、夏梨も母親に似て霊感はある方なのでこういうこともあるかもしれない、とは思っていた。
まさかこんなに早いことになるというのは些か予想外だったが。


「……いつからだ」

「今日が初めて」

「全部視えてるのか」

「変なバケモノと黒い着物着てデカい刀持った一兄」

「ファイナルドミネイト、とヒーローショーばりに必殺技を叫ぶ一兄」

「お前は無駄に俺を追い込もうとするな!?」


優姫のちょっかいに律儀にツッコミを入れるも、当の本人はそれをスルー。
口下手気味な一護に代わり、説明を始めた。


「夏梨ちゃん、今机で一心不乱に筆を走らせている娘がいるでしょ?」

「え?うん、一兄のクラスメイトだっけ?」


ここで即座に一護と優姫の2人が再びアイコンタクトを取る。
先程と異なるのは、優姫はじと目で、一護は飼い主に叱られる寸前の犬のような目をしているという事だろう。


(こらー一護クン、何で夏梨ちゃんがルキアちゃんのこと知ってるかー)

(スマン…こないだ近所うろついてる時見つかった…)

(迂闊だなー…)

(スイマセン…)

「あーうん。まぁそうなんだけど……えーと…実は彼女は政府の特務機関から出向している霊能少女だ」

「マジか!?」

「そうだったの朽木さん!?」

「なんで一護クンと織姫ちゃんが食いつくの!?」

「知らなかった…私は政府の犬だったのか……!?」

「チクショウ!バカがアウトブレイク起こしてやがる!」

「あ、そういや今思い出したけど、明日の夕方、観音寺が来るって言ってたぞ」

「「「「はぁぁぁぁぁぁ!?」」」」











一護のビックリ発言から暫く経って、優姫達がルキア謹製のスケッチで虚に関するレッスンを受けていた頃。
廃病院で撮影を終えたスタッフ達は、機材等を片付け始めるなどの撤収作業に入っていた。


「それじゃ観音寺さん今日もお疲れ様でした!」

「うむ!今日もグッドな撮影だったな!ボハハハハーッ!」


無事生放送をやり終えた充足感から笑顔の明るいスタッフ達と挨拶を交わした後、
事務所の者が回しておいた車の方へ向かう観音寺。
その歩みが人の気配を感じて止まった。車の前に人影があったのだ。
場所は人通りの無い薄暗い駐車場跡、既に御付の者も離れており、そこには二人以外誰もいない。


「お久しぶりですね美幸雄<みさお>さん」

「ぬぅっ!貴様は……!?何故だ!何故ここにいる!」


突如自分の本名を呼ぶ声を聞いた観音寺は、車にもたれかかるように腕を組んで立つ影を見て、驚き、声を荒げた。
ほんの数秒前とは異なり、表情は険しく、その目はあたかも仇を睨みつけるような目つきへと変貌。
そんな観音寺の変化を見た影は、愉悦に満ちた雰囲気を纏いながら右腕を横に広げ、笑みを深くして言葉を返した。


「何故?それこそが何故ですよ美幸雄さん。ここは空座、僕がこの町の何処にいたとしても不思議ではないでしょう?」


闇夜を照らす街灯が、瞬きをするかのように、強く、弱く点滅し、次第に光を弱めていく。
ちょうど木の影に隠れた相手の顔はその上半分を闇へと溶かし、
三日月のような口から余裕たっぷりに放たれた台詞に緊張感を強めた観音寺は、絞るように声を吐き出した。


「生きていたのか……雨竜…ッ!」


諦め、後悔、悲しみ、そういった感情を押し固めたような声だった。













『あとがきゴールデン』


とりあえず廃病院と観音寺シリーズはこれでおしまいです。
次回から尸魂界と観音寺シリーズが始まります。

嘘です。




「もう観音寺が主人公でいいんじゃね?」と思ったあなたは次回から普通に戻るので忘れて下さい。
残念ながらこれオリ主ものなんですよね。

「どんどん一護がバカになってるな」と思ったあなたは諦めて下さい。
作者より賢い登場人物なんていません。

「うりゅー!うりゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」と思ったあなたはうりゅー関連に期待して下さい。
もちろん嘘です。ますます作者の胃が締め付けられていくようです。


次回、隠された過去、明かされる空白。


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