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[41069] 【習作】機動戦士ガンダム~魔女戦記【ファースト※TS転生】第一部完結 第二部開始
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/18 14:34
ドンッ!

ああ、こりゃ死んだな。

俺は暴走トラックから幼い女の子を庇って撥ねられた。

次に目を覚ますと赤ん坊になっていた。転生ですか? ええ、ファンタジー小説とかでよくある転生ですね。
前世の記憶持ちでチート万歳で俺TUEEEEの転生ですね。神さま本当にありがとうございました。



そう思っていた時期もありました。

ここはサイド3、んで現在は宇宙世紀0072。俺も5歳になりました。俺というか私で・・・

ガンダムの世界にTS転生ですよ奥さま! しかも、あと7年でジオンは連邦に戦争ふっかけて負ける未来が待っているなんて、
これではダメだ。なんとか連邦との戦争を最悪でも引き分けに持ち込まないと私の未来はお先真っ暗じゃん!

幸いにも私にはザビ家にコネがあるから、上手くやれば生き残ることができるはずだ。
まあ、下手したら連座して処刑される運命が待っているんですけどね。トホホ・・・

んで、コネというのは昨年生まれた甥っ子、名前はグレミー。 生まれて直ぐにトト家と養子縁組したんだけど、
母が私の姉のセシリア・アイリーンで父がギレン・ザビ。私は一応ザビ家の外縁にあたるわけです。

あ、申し遅れました。私の名前はマリア・アイリーン。姉セシリアと年が16も離れていますけどれっきとした姉妹です。
お父さんお母さん頑張りましたね。

というか、いろいろと言いたいことがある・・・ グレミーって試験管ベビーかギレンのクローンじゃなかったの?
あと、姉のセシリアってもっと若かった気がするんだけども、なんでギレンの秘書兼愛人?内縁の妻なんかやってグレミーまで生んでるの?

まあ、そのへんは私のガンダムの記憶もいい加減だから考えても無駄なのかもしれないけど。

なんにせよ、ファーストの時代で良かった。これがSEEDとかAGEとか∀とかだったら全く内容を知らないから詰んでたし。

ジオンやスペースノイドの独立なんて崇高な志は私にはないんだ。連邦から蹂躙されることがなければ、それでいいのだ。
その為には、なにをすればいいのか? MSの高性能化? それとも「戦いは数だよ!兄貴!」この言葉通り数を揃える? うーむ・・・

なにが正解なのか分からん。それに私はまだ花も羨む5歳の幼女なのだ。なにもできないよ。



UC 0077

キンクリして、あれから5年が過ぎました。私も今年で10歳です。ティーンですよティーン! あれもこないだきました。

あれとはなにか? とは聞くな。 日系ではないので、お赤飯でのお祝いはありませんでした。


今日はギレン総帥とお姉ちゃんと一緒にジオニック社の工場に来ています。MS-06CザクⅡロールアウトの記念式典です。
式典とはいっても、関係者以外立ち入り禁止ですが。ドズルさんとキシリアさんの姿も見えます。ちなみにガルマはお留守番みたいです。ざまぁ。

なぜ子供の私が記念式典に呼ばれているのかって? ふふ、姉がギレン総帥の秘書なのをいいことにMSに脱出ポッドを取り入れさせたのが私なのだ!

えへん。

MS-05旧ザクでは装備されてなかったこの機構があれば、パイロットの生存性が飛躍的に高まるのだ。水と携帯食料と酸素が10日分あるから、
その間に救助されれば助かるって寸法。まあ、その期間をすぎれば南無なわけですけど・・・
救難信号と簡易スラスターも付いてるから、コロニーや月の方角に流されるように調整できるから助かると信じたい。

この提案をしたご褒美に呼ばれて出席しているのです。それで私の最大のお目当ては、MSシミュレーター。やっぱ、ガンダムの世界に生まれたのなら
モビルスーツは操縦したいよね! やっぱりMSには漢のロマンが詰まってるよ! まあ、今世の私は女なんですけどね・・・

ジオニックの技術者から説明を聞いて、シートに浅く座って更に15cmかさ上げしたロンドンブーツを履いて、いざチャレンジです。


まず最初はデブリを回避しつつ馴らし運転。それからバーニアを吹かして高速でのデブリ回避。最後に大きめのデブリを右脚で蹴って再加速させようとして、


「ビィビィー!」


右脚が小破判定。なんかデブリに衝突したと勘違いされたみたい。

デブリを抜けたら連邦のトリアーエズもどきが見えたので、これを105mmマシンガンをセミオートで一発撃って撃墜。

あれ? なんで私はこんなにも簡単にMSを操縦できて、こんなにも簡単に戦闘機を撃墜できるんだろ?

まあいっか。迎撃に向かってくるトリアーエズとセイバーフィッシュの群れを難なく排除して、マゼランもどきとサラミスもどきの対空機銃が火を噴く。
対空機銃の死角から取り付いてマゼランの艦橋に向かってザクマシンガンを連射。それから艦後方上部からエンジン部分にも一撃。これでマゼランは中破判定。

うーん・・・ やはり105mmでは火力不足は否めないみたい。

返す刀でサラミスの艦橋にも一撃をお見舞いして艦橋を左脚で蹴って、もう一隻のサラミスに向かおうとしたら、


「ビィビィー!」


おーのー、またもや衝突判定で左脚が中破しました。このシミュレーターには蹴るって行動がインプットされてないのね。
仕方ないので、サラミスの主砲に向かってマシンガンを連射連射。誘爆するまで連射。こんなに撃ってジャムらないのか心配です。
誘爆した爆風を利用して加速しようとしたけれども反応は無し。赤い彗星ごっこが出来ないのでフラストレーションが溜まってきますね。

残りのサラミスから撃沈させて、中破したマゼランと大破したサラミスに止めを刺して帰還の途につきました。帰るまでが遠足はお約束ですよね。

迎撃機を上げてきたコロンブス輸送艦は見逃してあげちゃいました。無抵抗な敵を撃つのは趣味じゃないのです。私は淑女ですから!

トリガーハッピーして弾切れしちゃったともいいますけど・・・


帰還したらシミュレーターが終了して筐体の扉を開けると、周囲の大人達の表情が私を奇妙な生き物でも見るような目に変わってました。

もしかしてやり過ぎちゃった? でもMSパイロットならこれくらいは普通だよね? これくらい出来ないと連邦には勝てないでしょ?

まあ、私はパイロットじゃないけど。


「な、7分で3隻撃沈とは・・・」

「それもセイバーフィッシュとかを含めての7分だ・・・」

「しかも旧型のMS-05での数字だ」


なんだか周囲の大人達がワイワイガヤガヤと騒がしいです。


「いままでの最短は何分だ?」

「ガイア少尉の8分35秒です。それも新型のMS-06でのタイムです」


おー、ガイアといえば黒い三連星のガイアかな?


「MS-05での最短は?」

「旧型ですと、アズナブル准尉の9分47秒がいままでのベストタイムですね」


アズナブル? シャアか! というか私より遅いタイムって・・・ それでいいのか? 赤い彗星よ。


「いままでのタイムより3分近くの時間短縮でクリアとは信じられん・・・」

「それもあんなブーツを履いてだぞ?」


10歳の少女より弱いジオン軍なんて・・・ こんなんでは、ジオンの将来が心配です。


「マリアお疲れさま」


そう言って姉のセシリアがパックのオレンジジュースをくれたので受け取った。


「お姉ちゃんありがとう」

「ところで、マリアがモビルスーツを動かすのは今日が初めてよね?」

「うんそうだよ。いつも護衛のシーマ大尉と一緒なんだから、勝手に出歩くことなんてできないのはお姉ちゃんも知ってるでしょ?」

「そうよね・・・」


私はオレンジジュースを飲みながら答えたけど、お姉ちゃんは顎に手を当てて考え込んでしまった。 やっぱり調子に乗ってやり過ぎちゃった?


「くくくっ ジオンのエースと言われる連中も形無しだな。セシリア、お前の妹はとんでもない掘り出し物だぞ」

「変わった子だとは思っていましたけど、まさかマリアにこんな才能があるとは思いませんでした」


私にもこんな才能があるとは私自身が知らなかったけど、ちょっとギレン総帥もお姉ちゃんもヒドくない? 人を物とか変人とかさ。

声に出しては言わないけど。

ギレン総帥は愉快そうに笑ってるけど、ギレンってこんなにも饒舌な人だったっけ? お姉ちゃんは困ったように眉が下がってるし。
前世の記憶持ちだから、ある意味では変人は正解なんだけどね。

ちなみにシーマ大尉とは、あのシーマ様です。私がセシリアの妹、一応ギレンの義妹ってことなので私が小さい頃から護衛が付いているのだ。
それで、偶然にも護衛として派遣されたのがシーマ様だったということ。なんでも護衛対象が小さな女の子だから、護衛も女性の方が良いだろうって
ことだったみたい。それで、腕っぷしの良いシーマ様と出会えたわけ。本当にただの偶然。もしかしなくても私の存在自体で歴史が変わってる?

ちなみにシーマ様の歳はお姉ちゃんより少し上かな? 三十路間近です。この前、「シーマさんってアラサーだよね?」って言ったら、
拳骨でこめかみグリグリされて痛かったです。でも、シーマ様を助けられて良かった。偶然だけど。

私が「シーマさんの仕事がやりやすいようにしてあげて」ってお姉ちゃんにお願いしてシーマ様繋がりで、他のマハルの連中も多少は親衛隊に入れたしね。

偽善とは分かっているけど、やらない善よりやる偽善ってことで。知っている人が不幸になるのは、やっぱり目覚めが悪いじゃん。変わりに知らない
誰かがサイド2に毒ガスを撒くのかも知れないけれども、私にはそれを止める力なんて無いし・・・ いくらお姉ちゃんがギレンの内縁の妻でもね。

私にできることなんてたかが知れてるけど、できるだけ明るい未来を目指そう。せめてお父さんとお母さんとお姉ちゃんとグレミーだけでも助けられた
らいいな。グレミーといえば、プルとかの試験管ベビーってどうなってるんだろ? ZZから逆算するなら、今年ぐらいには生まれているのかな?

私がそんなことを考えているとドズルさんが話しかけてきた。ごつくて怖いです。でも本当は優しいってことを私は知ってますよ~。
毎年クリスマスと誕生日にはプレゼントくれる優しいおじさんです。ザビ家のみんなくれるんですけどね。ちなみに私の誕生日はエイプリルフール。


「初めてモビルスーツを操縦したのが本当なら、なぜそんなにも動かせられるのだ?」

「うーん、『なぜ?』って聞かれると私も困るんですけど、イメージというかイマジネーションが大切なんじゃないですかね?」


こればっかりは私にも説明が付かないしね。転生チートってヤツなのかな? それとも私ってニュータイプ?


「なるほど、子供の柔軟な発想がモビルスーツを自由に動かせるということか」

「しかし、キシリア。子供をパイロットにして戦場に送るなんてことは外道中の外道だぞ!」

「ドズル兄さんは先走りすぎです。早漏は嫌われますよ? 誰もそんなことは言ってません。しかし、研究だけはしてみる価値はあると思います」

「ニュータイプとかいうヤツか?」

「ええ、あくまでも、可能性ですが」


サラッと毒を吐いてるキシリア姉さんマジパネェっす・・・ ドズルさんとキシリアさんが言い合ってるけど、ここはスルーですよね。
スルースキルは世の中を上手く渡る処世術です。紫ババア怖いですしおすし。


「お嬢さん、ちょっとよろしいですかな?」

「あ、はい」

「私は、このモビルスーツザクの技術主任をしているエリオット・レムと申します」

「マリア・アイリーンです」


微笑みながら髭を蓄えたダンディーなおじさまが私に声を掛けてきた。この人の名前は覚えてるよ! 高機動型ザクを開発した人だったはず。


「先ほどお嬢さんは」

「マリアでかまいませんよ」

「では、マリアさんで。先ほどマリアさんはザクの脚でデブリや戦艦の艦橋を蹴ってましたよね? なぜですか?」

「反動を利用して加速させようとしたんですけど、シミュレーターには入ってなかったみたいでザクを壊しちゃいました」


私は無意味だった蹴りが恥ずかしかったので、俯き気味にモジモジしながら答えた。


「なるほど、確かに理にかなっている」

「モビルスーツの脚は飾りじゃないんです。使えるものは利用しないと」


言えない。シャアの真似をして赤い彗星ごっこがしたかったなんて、口が裂けても言えない。


「ふむふむ、強度的には問題はないですからシミュレーターのバージョンアップ時にでも取り入れましょう」

「それでしたら、爆風の反動も入れて下さい」

「爆風?」

「はい。サラミスの主砲を誘爆させた時の爆風で後方に加速しようとしたんですけど、反応がありませんでした」

「なんと! そこまで計算して操縦していたとは・・・ システム主任、爆風の演算は可能ですか?」


レム主任が同僚の眼鏡を掛けたオタクっぽい人に声を掛けた。うん、人を見かけで判断しちゃダメだね。
でも、太っていて暑くもないのに汗掻いてるし、おまけにフゥフゥ言ってるし。うん、この人はオタクだ。


「簡易でよければ可能ですけど、完全に再現するのであれば今のCPUだと処理が追いつかなくて、間違いなくラグりますね」

「設定できるのであれば簡易でもかまいません。モビルスーツは、こんなこともできるんだよって理解させることが重要ですから」

「であるのならば、爆発のエネルギーの拡散が・・・ モビルスーツの抵抗が、えーと・・・」


うん、ブツブツ言ってて解らん。オタクさん自分の世界に入っちゃったよ。けど、頭は良いんだろうな。



「マリア、一言言っておくけど、マシンガンを撃つ時に『ヒャッハー! 汚物は消毒だー!』これは下品だからやめなさい」

「き、気を付けます・・・」


お姉ちゃんに小言を言われて落ち込みました。まさか外に声が漏れていたとは。周囲の目が奇妙だったのはこれが原因だったのか。トホホ・・・


後日、バージョンアップされたシミュレーターでタイムアタックしたら6分05秒でした。6分切れなかったのは残念!



[41069] 2話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/21 23:47
UC 0078


「こ、これは!?」

「どうです? 気に入っていただけましたか?」


お元気ですか? ジオン公国の自称アイドルことマリア・アイリーンです。今年は姪っ子のマリーダが生まれたよ! マリーダって誰? 原作では聞いた
ことないからオリジナルなのかな? 私のガンダムの歴史は逆シャアで終わっているのです。正確にいえば、ポケットの中の戦争と08小隊とシーマ様まで
ですけど。そこから新たに派生したガンダムは知らないのです。

ん? 前世の私の歳がバレるって? シーマ様と親衛隊を呼びますよ? あ、イグルーはファースト繋がりで多少は知ってます。
ヅダは歴史通りに爆散して果ててました。南無三。

あとは、ギレンの野望を少々プレイしましたね。やっぱりガンダムといえばファーストの系譜でしょ! 私個人としてはTV版のZが一番好きですね。

その時代までジオンが生き残っていたら、どうなるんだろ? 私個人の力なんてたかが知れてるけど、生き残るために頑張ろう!

ちなみにマリーダは安全を考えてクルス家に養子に出されました。ギレン総帥は敵が多いなぁ。ダイクン派とかキシリアさんとかさ。
みんなもうちょっと仲良くすればいいのに。まあ、怖いから本人の前では言わないけどね。敵が多いからギレン総帥とお姉ちゃんの関係は秘密みたいです。

上層部にはバレバレなんですけどね。



私はというと、この間にキシリアさんに呼ばれていろいろな検査をさせられたりもしました。

たくさんのコードが付いてるヘルメットを被って、トランプのカードを当てるゲームとかをしました。これってニュータイプ適正の検査ですよね。

もちろん、普通にポーカーやセブンブリッジとかで遊びもしました。けど、勝敗は・・・ 聞くな。

私のこの結果にキシリアさんは首を捻って残念がっていました。どうやら私にはニュータイプ適正は無いみたいです。でも、それなら何故いとも簡単にMSを
操縦できたのか? これの証明ができないのですが、それは仕方ありませんね。できるものはできるとしか言いようがありませんので。

まあ、私もファンネルは使ってみたかったので、ちょっぴり残念ですけど。




そして現在の私は、またジオニック社の工場にいます。そして見上げています。


「凄く大きいです」

「ゴホン。ええ、18メートル近くありますからね」


レム技術少佐は真面目だね。ネタに乗ってこないんだもん。まあ、私も元ネタは知らないんだけどね。


「でも、なんで薄紫色というかコスモス色? 菫色? ピンクパープルみたいな色なんですか?」


そう、いま私が見上げているザクの塗装はガザCみたいな色なのだ。 ハマーン専用機と量産機の中間の色って感じかな?


「それはもちろんマリア特務少尉専用機ですから、専用塗装をさせていただきました」


そう、現在の私の肩書はジオン公国親衛隊特務少尉なのです。士官ですよ士官! 特務少尉とは通常の少尉とは違うのだよ! 総統府と親衛隊以外では
二階級上の権限が与えられるのだ。大尉相当ってヤツです。まあ、部下なんていなんですけどね!
11歳のジオン公国最年少の士官、こんなんでジオンは大丈夫なんでしょうか? 心配です。
所属も総統府なのか親衛隊なのか自分でもちゃんと分かってないんですけどね。テヘッ 

軍服はお姉ちゃんと同じで、赤系統の軍服を支給してくれました。
自分でいうのもなんですけど、似合ってます。馬子にも衣裳ってヤツですね。言ってて虚しくなってきましたグスン。

なんで私みたいな、いたいけな少女が軍人なのか軍属なのか知らないけど、こんな肩書になってるかというと・・・


なんてことでしょう! 私よりもMSの操縦が上手いパイロットがジオン公国には居ないのです!


こんな現状で連邦に戦争を吹っ掛けようとしている我がジオンの未来が心配で心配で、なし崩し的にMS指導教官とかいう地位におさまちゃった訳でして、
教官を育てる教官なんてことをやっております。

それで、教導大隊の連中とかをシゴいたんです。主にシャアとか黒い三連星とかランバ・ラルとかを。その甲斐あってか、月の雨の海とかスミス海とか
いう場所で旧ザク等5機で連邦のMSガンキャノン12機相手の戦闘で圧勝!

みんな「教官殿の教えのおかげで勝てました」なんて言って、私に感謝してくるんです。

11歳の小娘に頭を下げる大人って、それってどうなのよ? まあ、みんな無事に帰ってきてくれて嬉しかったけどさ。


この教官をやったおかげで、原作で名前を知ってる人とも交流できて楽しかったです。以下、主だった人達の阿鼻叫喚をば。


MSの性能の差がry いや、私の乗っているの旧ザクで、あんたの乗っているのザクⅡだから。それで負けるなよシャア・・・

ザクとは違うのだよザクとは! そうですね。それMS-04ですね。ラルさん、そのMSなんていう名前なんですか? ヅダでもないし、オリジン準拠?

オルテガ、マッシュry 同機種での3対1で敗北するなよ黒い三連星の名が泣くぞ。

ソロモンの悪夢と呼ばれるには、まだまだ未熟なガトー。

MS性能を活かせないまま、竦んで私に敗北するノリス。

功績を焦ってスキをみせて撃墜されるヴィッシュ。

騎士であるこの私に挑むとは、と言って返り討ちにあうニムバス。

戦場を駆ける真紅の稲妻、そう! オレがジョニー・ライデンだ! あんたまだその呼び名で言われてないでしょ? って自称してたのか・・・

マツナガの家名にかけて、この戦い負けるわけにはいかない! マツナガさんごめんなさい。

派手にドンパチ楽しむ前に一瞬で落とされる、私が勝手に歳の離れた友達と思っている女性。


などなど、私の教え子には未来に二つ名が付けられるエース候補が、みんな仲良く揃って敗れ去って私の前には死屍累々の山ができました。

ちなみに敗れ去ったのは無名のパイロットの方が圧倒的多数ですが。みんな私を見る目が畏怖というか、怯えてる人が多いのが玉に瑕ですけど。

私はこんなにも可愛い乙女なのに失礼しちゃうわね。

もちろん、ちゃんと各々の技量に合わせて操縦技術の向上にも励みましたよ。
もしかして、私が居なかったらルウムとかでの被害が倍増してたとか?
うん。もしかしなくても、間違いなく地球降下作戦に支障が出るレベルで損害が出ていたね。

私の存在がジオンに有利に働いてくれてたら良いな。

そんなこんなで、最近ちょっと天狗になっているのを自覚している今日この頃の私です。




それはさておき、


「私の専用機でしたか・・・ なんとなくそうなんだろうとは思いましたけど、派手じゃないですか?」


色それ自体は嫌いじゃないけど、これが私のパーソナルカラーになるのが、ちょっぴり恥ずかしいのだ。


「最初はド派手なピンクの予定でしたけど、セシリア殿に却下されまして。それで控えめにしました」

「はあ、これで控えめなんですね・・・ 分かりました。それでスペックはどんな感じなんですか?」


お姉ちゃんがストップしてくれなかったらド派手なピンクだったのか。お姉さまGJです! この色で妥協しましょう。


「ジェネレーター出力は変わりませんが、推力は量産機の30%増しです。それに伴い背部にプロペラントタンクを増設、これで推力が増しても稼働時間は
量産機と同等の時間を確保しました。このタンクは脱着式ですので補給の際には直ぐに予備のタンクと交換できます。それとコクピット周りにはチタン合金を
採用しています。ブレードアンテナも装備して通信力とセンサーを強化してあります。索敵範囲は量産機の倍の範囲はあります。当然、駆動系も強化しました。
武装は試作品ですが従来よりも貫通力の高いMMP-80マシンガンをメイン武器に近接戦闘用のヒートサーベルがあります。これは従来のヒートホークよりも
3倍の長さがありますので格闘戦で有利に働くかと思います。あとオプションとしてシュツルムファウストやクラッカーがあります。
バズーカは現行のままの280mmバズーカです。なにか質問はありますか?」


長いです。三行でおk。技術肌の人に喋らすと止まらないってのは前世も今世も同じなんだね。レムさん活き活きしてるもん。
増設プロペラントタンク。これはシーマ様の所のゲルググマリーネが付けていたヤツに似ているな。ザクだからザクマリーネ?

んで、納得いかないのがマシンガン。


「90mmなのに80とはこれいかに」

「えー・・・ それは上が決めた型番なので私にも詳しくは分かりません。私の本分はモビルスーツ本体ですから」


苦笑いで答えてくれるレム主任。渋いですね。


「そうですか。それはそうと、角があるとやっぱカッコイイですね!」

「そうですね。一度、角付きを目にしてしまうと丸坊主は味気ないですね」

「シュツルムファウストやクラッカーの代わりに、予備の弾倉は増やせますか?」


私が一番気になる点をレム主任に聞いてみた。そう、弾は多ければ多いに越したことはないのだから。
サブウェポンよりメインウェポンが王道だと思うのです。戦場で弾切れを起こして補給の為に撤退なんかして、わざわざ敵を逃がす愚はできるだけ避けたい。


「2つ増やせますね。この場合だとマシンガンに付いてるのを合わせて500発撃てます」

「なるほど。では、私の装備はサブウェポンは装備しないで、マシンガンとヒートサーベルで行きたいと思います」

「そうですね。このMS-06CSとマリア特務少尉ほどの腕なら、予備弾倉を増やした方が効果的かも知れませんね」


正式な型式番号は、MS-06CSというらしい。ん? ザクにCSなんて型番なかったはずだよね? うーん、これがバタフライ効果ってヤツなのか?
耐核防備の指揮官機ってことで"CS"なんだろうな。F型の指揮官機の"FS"みたいなモノと考えればいいのか。

ガルマのFSは頭部にバルカンが付いていたけど、通常のザクの頭の中はスッカラカンってことなのかな? うーん謎だ・・・

いかんいかん、私の頭も明後日に飛んでしまってスッカラカンになっていたみたいだ。


「ふふ、おだてても何も出ませんよ? でも、ありがとうございます」

「いえ、誰もあなたに模擬戦で勝てないのは事実ですから」

レム主任は技術者の割には社交性もあるみたいですね。

オタクのシステム主任さんは社交性なさそうですけど。まあ、あの人も悪い人ではないんですよ?

なんだか勝手にマリア親衛隊なる私設応援団みたいなモノを作って、副隊長なんてやってますけどね! ロリコンでも悪い人ではないんですよ。多分・・・。

「マリアタソハァハァ」なんて言いながら、隠し撮りした私の写真にケファアを掛けてないことを祈ろう。

自意識過剰ではないですよ? こうみえても私は美少女なんです。お姉ちゃんを見れば分かる人は分かるんです!

あれでも彼は有能だから、万が一に性癖がアレでも豚箱には入れれないんですよね・・・ 暴走しないでシコシコしている分には、個人の自由ともいいますし。
まあ、全て私の想像上でのシステム主任さんのイメージではあるんですけど、おおよそは当たっているはずです。

yesロリータnoタッチを信じよう。うん。



[41069] 3話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/22 00:00
UC 0079.01.03


ついに、この日が来てしまった。あの有名なナレーションが頭の中でリフレインしているマリア・アイリーンです。

それで、私がいま居る所はといいますと、ズムシティの親衛隊本部でシーマさんと一緒に仲良くまったりとお茶を飲みながら、大型モニターを見て
いたりするわけなんですよ。

不謹慎ですけど、ズムシティは平和です。宇宙で戦争が始まっただなんて信じられないくらい平和です。

結局、サイド1,2,4の運命は私では変えられなかったのは残念だけど、こればかりは仕方ないよね。うん、私は悪くない。ちゃんとお姉ちゃんには

「各サイドは中立を宣言させた方が、ジオンの得になるんじゃないの?」そう言ってみたもん。

それに、お姉ちゃんも各サイドに一応は伝えたって言ってたしね。まあ、私の意見で伝えた訳ではないと思うけど。私の意見で国が動いたら、それは
それでギレン総帥の頭の中を疑わないといけなくなるしね。一応、エクスキューズの為におざなりに伝えた気もするけど、それはそれってことで。

大方は伝えたけどジオンが連邦に勝てる訳がないって無視されたんだろうな。

うん、私の精神衛生上そう結論付けよう。

いまもモニターには、核ミサイルを撃たれたコロニーが爆発する映像が映し出されている。あの汚い花火が一つ上がるたびに数百万から一千万の人の命が
消えているのに、実感は湧かない。 私は薄情な人間なのかもしれない。けど、これは悲しいけど戦争なんだよね。戦争は綺麗事では無いんだから。

でも、非武装の民間人を大量に虐殺するのはどうなのよ? そう思える自分もいて、少し安堵したりする自分がいる。なんだか頭の中がグチャグチャな気分だ。

考えるのは止めよう。考えても答えなんて出ないんだし。

それに言い訳になるかも知れないけど、私的には政治家ギレン・ザビの評価は、選民思想や大量虐殺で難しい評価しづらいけど、ギレン個人はそこそこ好きだし。

あの鉄仮面のギレンが想像以上に良く笑うんですよ? それも少し目尻を下げて! とっつきにくいのは確かだけどね。
前世のイメージとか他人の評価なんて、あまり当てにならないって感じたよ。

まあ、あのヒトラーでさえ子供と女性には優しかったともいうから、公人と私人で使い分けてるみたいだけども。一応、お姉ちゃんの旦那だし、グレミーと
マリーダのお父さんでもあるんだから、やっぱり嫌いになんか、なれないんだよね。もう、この甥っ子と姪っ子が可愛くて可愛くてさ、これだけでも
見知らぬ他人より、可愛い身内ですよ!

まあ、グレミーは最近ちょっと生意気なんだけどね。この前なんか私にむかって、


「マリアちゃんってボクの叔母だから、おばさんだよね!」


なんて、いい笑顔で言いやがったもんですから、拳骨をお見舞いしたら、私もお姉ちゃんに拳骨を喰らって涙目になりましたグスン。

確かに血統的には、私はグレミーの叔母だけどさぁ。グレミーだけにグレちゃったのか? うん、上手いこと言ったよ私。

これはあれか? タラちゃんが、ワカメちゃんに対して「おばさん」って言って、ワカメがタラを殴ったら、サザエさんが出てきてワカメが殴られたという構図
が、そのまま当てはまるってことだよね? それだと、私のお父さんとお母さんはフネと、えー・・・ お父さんの名前が出てこないや。。。

そんなこんなで、グレミーの将来が少し不安です・・・


なんだかんだと言い訳したけど、身内を守る為に戦う。これだけで十分な気がする。



そういえば、シーマさんってまだ一度もセリフがない気がしますね。メタですけど。ちゃんと私の隣に居ますよ?

サイド2には行ってないので、シーマ様に叱られ隊のドMな紳士諸君も安心して下さいね!


「さっきからマリアは、なにをブツブツ言ってるんだい? まあ、いつもの妄想だとは思うけどさ」

「うん、ちょっといろいろと考えてた。この戦争の行方とか、みんなのこととか」

「マリアは大丈夫だと思うけど、戦場では余計な事を考えるんじゃ無いよ? 迷った者から殺されて行くのが戦場だよ!」

「うん、ありがとう。シーマさんは優しいね。お母さんみたい」


私はシーマ様の言葉にウルっときて思わず抱き着いちゃいました。シーマ様のおっぱい気持ちいいです。役得ですね!

ちなみに、最低でも週に一回は一緒にお風呂も入ってますよ? ぐへへへへ。 まあ、ちょっと垂れ掛かってはきてますけど。


「あたしゃ、こんなに大きな子供を生んだ覚えはないよ! せめて、お姉さんでしょ! お、ね、え、さ、ん!」

「イタタタッ シーマさんグリグリ痛いってば! ギブ!ギブ!」


シーマ様からの愛のグリグリが痛気持ちいいです。三日に一回はグリグリされている気がするけど。まあ、スキンシップです。


「ギブ!ギブ!って、もっとして欲しいってか? うりうり」

「日系英語ではギブアップの略なんだってば!」

「アンタは、どっからどう見てもゲルマンかアングロサクソンだろーが!」

「宇宙世紀に入ってもう80年、差別イクナイ! それに日系は地球圏みんなの誇りだよ! 彼らが居なかったら人類はとっくの昔に滅んでいたはず!」


前世が日本人の私としては、宇宙世紀の歴史は誇らしい歴史でもあるんだよね! 内容は長くなるので割愛するけど、変態国家ニッポン、パネェっす。
まあ、なんとなく内容は分かるよね? こんなこともあろうかと×300くらい危機を救いましたから。NASA涙目プギャーでしたよ。マジパネェっす!


「まあ、あの変態民族のおかげで、安心して宇宙に住めているのは確かだね」

「うん! HENTAI万歳! だから私もHENTAI!」

「こら! どさくさにまぎれて乳を揉むな乳を! ほっぺにチューするな! 化粧が落ちるだろーが!」

「シーマ、大好き!」


シーマ様に会えて本当に良かった。神さまありがとう! シーマ様大好き! まあ、ちょっと目尻に小皺が出てきてますけどね。それも含めて大好き!

きっとシーマ様は私が守ってみせる! って傲慢かな? でも、傲慢でもいい。この気概で今度の戦争を生き抜くんだ!


「まったくこんな、おばさんのどこがいいんだい? それに、あたしゃそっちの気はないって言ってるだろーが!」


シーマ様が良いんです! シーマ様じゃなきゃダメなんです! おばさんでもシーマ様が良いんです! 


「アンタ、いま失礼なことを考えてなかったかい?」

「ソ、ソンナコトナイデスヨ? シーマサンノキノセイデスヨ?」

「片言の棒読みになってるよ・・・」

「やだなー、私はおばさんなんて一言も言ってませんってば」

「いま言った」


シーマ様、青筋なんて立てたら皺が増えますよ! 口が裂けても言葉には出しませんけど。


「そ、それはシーマさんが先に自分で言ったからであって、私は無実だってばー」

「ご、ゴホン・・・」

「こ、コッセル中尉、たすkじゃなくて風邪ですか? 龍角散あげましょうか?」


おおっ! 普段は恋敵で憎っき相手のコッセルが、こんなにも頼もしく見えるなんて! 後光を差したコッセルが現れた!
私は感謝の気持ちスマイル0円で、龍角散と言いつつ、落雁をデトローフ・コッセルに渡した。
ふふふっ、コッセルよ、私とシーマ様の愛のプレリュードを邪魔した報いを落雁で喰らうがよい!


「なんだい、デフいたのかい?」

「姐さんとマリア様がイチャイチャしていたので、声を掛けるのを遠慮してましたが、一向に終わりそうないので、つい・・・」

「それで、どこから聞いていたんだい?」

「マリア様が姐さんのことを、お母さんみたいって言った辺りからですかね?」

「ほとんど全部かい!」


ペチンと音が聞こえた。うん、シーマ様が愛用している扇子が閉じた状態で、コッセル中尉の頭を叩いた音なんだ。コッセルざまぁ!

まあ、でも、これもシーマ様の愛情表現なんですけどね。

だって、この二人デキてるんだもん・・・ く、悔しくなんて・・・ ぐ、ぐやじいよー!!

そりゃあ、コッセルの方がシーマ様との付き合いは長いけどさー。具体的には四半世紀ゲフンゲフン・・・ 「デフ」なんて愛称で呼ばれてるけどさー。

私だって人がいない時には「マリア」って呼び捨てで呼んでもらえるまでの仲なんだし! 呼んでくれるまでが長かったけど。

それに、コッセルが親衛隊に入れたのは私のおかげでもあるんだしさー。

でも・・・

なんだかモヤモヤするな。なんだかNTR感が半端ないんですけど・・・ やっぱり、どんなに頑張っても男には勝てないのかな・・・

グスン。

これが愛ってヤツですか? これが嫉妬って感情ですか? 神さま答えて下さい!

でも、私は子供で、しかも今世の性別は女だから、そこはしょうがないと諦めて、シーマ様が幸せになるならと思って、コッセルのことを一応は認めているけど。

一応だけれどもね。

でも、嫉妬するぐらいは良いよね。私がコッセルに対して上から目線になるくらいは許されるよね?

ふふっ、でも、私は知っているのだ。シーマ様も私とのじゃれあいは満更でもないってことを! 私の愛撫でシーマ様が感じているのを知っているのだ!

でも、プチ百合百合したあとの欲求不満をコッセルとのメイクラヴで解消しているのも知っているのです・・・

ラブじゃないんですよ。より進化したラヴなんですよ。なんだか自分で言ってて虚しくなってきました。

私は二人が盛り上がる為のスパイスの役目みたいで辛いのです。あれ目から汁が・・・

何億もの人が死んでるのに、不謹慎にもイチャコラしていた罰が当たったのかな? でも、おふざけもここまで。コッセルが来たからには軍務の話だろう。



「それで、準備は整ったのかい?」

「ハッ 滞りなく。日付が変わって明日の深夜0:00に出航の予定は変わりありません」


うん、一転して真面目な顔をしてコッセルに尋ねるシーマ様カッコイイです。それに答えるコッセルも悔しいけど、渋くてカッコイイ。みんな軍人の顔だね。


「では、交代で半舷上陸の許可を出しな。なかには、これでサイド3の土を踏むのも最後になる者も出てくるのだからね、手隙の者は全員だよ!」

「ヤボールヤカロイ!」

「もう大尉ではなくて少佐だよ!」

「失礼しました。長い間の癖でつい」

「デフ、ワザとやってるだろ?」

「ヤボールヤコベトンカピティン!」

「遊んでんじゃないよ! さっさとお行き!」

「ハッ!」

「ふぅ、まったくデフのヤツめ、昔はあんなんじゃなかったのに、どうしてこうなった?」


前言撤回。コッセルは真面目な顔して馬鹿をやるタイプだったみたいです。サイレントハンターごっこだったのか?

はっ!? まさか、コッセル中尉は酸素欠乏症に掛かっているのでは?

しかし、デフか。なんか車とかのドライブシャフトの受けが、そんな名前だったような? ほら、縦軸と横軸が交わる所のワニスで黒く塗られている丸い鍋か釜の
ような形をしている所。シーマ様が縦軸で部下たちが横軸で、その中で歯車を回しているのが副長のデフ。うーん、人間関係も機械に例えれるとは勉強になるよね。

デフだけに役回りもデフって、うぷぷ、ツボった。もし、名称が間違っていたら死ぬほど恥ずかしいけど。

それはさておき、

シーマ様は昨秋に昇進して親衛隊少佐になってます。コッセルは見送りです。ざまぁ。
昇進に合わせて司令になったのか、司令になる為に昇進したのかは分かりませんが、シーマ様の現在の肩書は、

ジオン公国親衛隊第一独立遊撃艦隊司令 です。

なんだか格好良い響きですね! この艦隊の隊長がシーマ様なのです。隊長って言ったら一気にショボく感じるのは私だけだろうか? 小隊長も隊長だし陸軍で
言ったら、分隊長でも隊長様だからね。司令の方がイイね! けど、司令もコントロール、空域管制官という下士官でもなれる"指令"という罠があるんだけどね・・・

これは"しれい"違いでしたね。

ちなみに頭に第一と付いてますけど、まだ、第二はありません。艦隊の編成ですけど、11月の終わりに編成されたのが、↓こちら。


旗艦
ザンジバル級巡洋艦 リリー・マルレーン 艦隊司令直卒
MS 常用6機 予備3機 計9機

司令 シーマ・ガラハウ少佐 (親衛隊第十三独立遊撃MS増強中隊長兼任)
艦長 デトローフ・コッセル中尉 (艦隊副司令兼任)


ムサイ級軽巡洋艦親衛隊仕様 タンホイザー ニーベンルグ マイスタージンガー ローエングリン 計4隻
MS 常用3機 予備1機 計4機×4 合計16機

パプア級補給艦 197補給艦 198補給艦 計2隻

艦隊搭載MS

MS-06CS 指揮官機シーマ・ガラハウ搭乗機×1 マリア・アイリーン専用機×1 予備×1

MS-06C  ×16 予備×6

MS合計 常用18機 予備7機 計25機

親衛隊第十三独立遊撃MS増強中隊

中隊長  シーマ・ガラハウ少佐 (第一小隊長兼任)
副中隊長 マリア・アイリーン特務少尉 (第二小隊長兼任)

01小隊 シーマ・ガラハウ少佐 リリア・フローベール准尉 ククルス・ドアン曹長
02小隊 マリア・アイリーン特務少尉 レイチェル・ランサム准尉 クレア・ヒースロー准尉
03小隊 クルト少尉 メッサー軍曹 シュミット伍長
04小隊 マサヤ・ナカガワ少尉 ムタグチ軍曹 ツジ伍長
05小隊 メルダース少尉 ルーデル准尉 マルセイユ軍曹
06小隊 クスコ・アル少尉 エリス・クロード准尉 サキ・グラハム軍曹

MS整備主任 メイ・カーウィン技術少尉


私の小隊はレイチェルって子とクレアって子が一緒か、ふむふむ。親衛隊の独立遊撃隊に配属になるんだから腕はあるんだろう。

03小隊は二人合わせてメッサーシュミットって、タンク繋がりならばフォッケだろ常識的に考えて。

05小隊のメルダースとルーデルとマルセイユは、名前からして期待してもいいのかな?

原作の人はクスコ・アルしか居ないのかな? けど、彼女はニュータイプだから期待できるから大丈夫だろう。
あ、ククルス・ドアンがいるな。彼は格闘が強いイメージだな。原作では脱走兵のククルス・ドアンと親衛隊が結びつかないけど、なんでここにいるんだろ?
まあ、考えても詮無きことか。

あとは、なぜだか子供がいます。私も子供だけど。レム主任から役に立つからって押し付けられました。リリー・マルレーンのMS整備主任でジオニック社から
派遣された技術少尉のメイ・カーウィン14歳。うん。私の方が年下だけど、彼女は幼く見えるね。けど、彼女の経歴を見たらこれが凄いんです!
彼女はレム主任と一緒に、MS-06ザクⅡを開発しちゃった天才少女でした。そんな天才を戦場に送り出すなんて総統府とジオニック社は何を考えているのやら。
万が一にも彼女が戦死でもしたなら、ジオンの損失は計り知れないってことは、当然分かっているはずなのに・・・

うーん、偉い人の考えることは、私には分からないですね。



結局、私は、私のMS操縦技術を埋もれさすのは惜しいってことで、なし崩し的に実働部隊に配属されることになりました。
まあ、私より上手くMSを操縦できる人がいませんので、遊ばせておく理由も無いということでしょうか?

子供が戦場に出るなんて、開戦前から総力戦、末期戦の臭いが漂っていますけど。

あと、04小隊から死亡フラグ臭がプンプンしてるんですけど・・・ 辻とか牟田口ってなんの冗談ですか? ネタですかね?



[41069] 4話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/22 22:17
UC 0079.01.04


予定通りに0:00丁度に抜錨して出航。本当に錨を上げた訳ではないですよ? 例えですよ例え。

目標はサイド2と地球の中間よりは、地球側の宙域です。

ちなみに、サイド2での毒ガス作戦は別の人が実行したみたいです。確か、トミノとかいう少佐の部隊らしいですけど、詳細は不明です。

私たち親衛隊第一独立遊撃艦隊の今回の作戦は、サイド2の8バンチコロニー、通称アイランド・イフィッシュ、このコロニーをジャブローに落とすのを
邪魔してくるであろう連邦軍の側面を叩くことです。

敵の側面を叩くって、独立遊撃艦隊にはピッタリの仕事の気がしますね!

コロニーが大気圏突入時に崩壊しないように、外壁を補強工事している部隊を間接的に援護するのです。当然、連邦軍が邪魔してくるはずですので、
その連邦軍を排除してコロニーを守るのが、私たちの役目なのです。

叩くとか排除といっても、こちらは僅かに5隻の小艦隊、かたや相手はハンドレットを超える大艦隊のはずだから、精々頑張っても嫌がらせくらいしか
できないかも知れませんが。

コロニー落としって戦犯になんないよね? ジオンが負けた場合を考えると心配です・・・

私はただの遊撃部隊、ただのMS部隊の小隊長です。うん、多分大丈夫なはずだ。

コールサインは管制がマグダラ、MS隊がローレライで、01小隊のシーマ様から順にローレライ01、私がローレライ04、最後の06小隊のサキ軍曹がローレライ18、
これが今次作戦のコールサインです。コールサインは作戦ごとに変更する場合もあるし、継続して使う場合もあるみたい。よく分かりません。

連邦に対して少しでも欺瞞できればと思って、カモフラージュの為にコールサインを使っているのかな? もっとも切羽詰った時には名前で呼んじゃいそうだけど。



UC 0079.01.08


「リュックサックを背負ったザクって、なんか素朴な感じがして可愛いよね」

「リュックサックって、確かにリュックサックに見えなくもないけど、あれは冷却材の入ったタンクだよ」


最大望遠でコロニーの外壁に取り付いて作業しているザクを見て漏らした感想が、「リュックサックを背負ったザク」だって、カワイイんだもん。

現在、私が居る場所はリリー・マルレーンの艦橋です。ちなみに、ホワイトタイガーの毛皮なんてありませんよ?
暗黒面に墜ちなかったシーマ様は、上品な淑女なのです。


「冷却材ってことは、モビルスーツの稼働時間を延長させる為ですかね?」

「そうだろうね。母艦に帰って冷却する時間すら惜しいんだろう。それに、パプアでは冷却できないのも理由だろうね」

「でも、コロニーの外壁補修ならコロニー公社の作業用ポッドを使えば、その分ザクを前線に回せるのにね」


そう、素朴な疑問を感じたのだ。ボールもどきの作業ポッドを使って作業すれば、その分ザクを前線に回せる。戦力の集中、これは戦争の大前提のはず
なのに、戦いは数と知っているドズルが、戦力になるはずのザクを工兵に使って、遊兵というか自分から無力化しているのが腑に落ちないのだ。


「そういうことは、ギレン総帥かドズル閣下に言っておくれよ。マリアが言うのなら、お偉いさんも少しは耳を傾けてくれるんじゃないのかい?」

「私はただの子供ですよ」

「ただの子供はモビルスーツなんか操縦しないよ。それも腕はジオンで一番だなんて、SF小説もビックリだよ」

「腕が一番なのは認めますよ。えへん」


努力もしないで転生チートでごめんなさい。でも、私は私にできることをするだけです。ジオンが負けない為に。

多分、その為に私はこの世界に転生したんだから。そう思わなければ、既に二十億からの人が死んでる、こんなクソったれな戦争なんかやってられないし。


「自分で認めちゃったよこの子は。まあ、謙虚も度が過ぎれば嫌味になるっていうし、それでいいのかもね。さて、そろそろ時間だよ。準備しな!」

「うん、格納庫で待機してるね」

「ああ、私も直ぐに行く。コッセル、あとを頼む」

「了解、マリア様も姐さんも気を付けて、御武運を!」



今回出撃するMSの武装は、戦術核弾頭搭載のバズーカ装備のザクが12機。マシンガン装備のザクが6機の編成だ。バズーカ装備のザクの護衛に
各小隊に1機マシンガン装備のザクを配備しているのだ。私はもちろんマシンガン装備です。
敵のセイバーフィッシュを馬鹿にするのは危険だ。一流のパイロットが相手なら、ザクでも不覚を取るのはシミュレーターでも実証済みなのだから。

戦術核弾頭は一撃でマゼランを撃沈できる威力だ。しかし、ここで疑問が残る。
サイサリスに乗ったガトーが『ソロモンよ、私は帰ってきた!』といって、連邦艦隊を壊滅させたけど、戦術核には、そこまでの威力は無いのです。
いくら核兵器が強力といっても、宇宙では大気圏内みたいな威力は望めないのだ。

だとしたら、ガトーがコンペイトウで使用したのは、戦略核だったのかな? うーん、謎ですね。

そんなことを考えていたら、連邦艦隊との交戦距離が近づいてきた。敵はコロニーの落下を阻止するのに夢中で、こちらには気が付いてない。
ミノフスキー粒子という不思議な粒子のおかげで、レーダーが無効化されているのが大きいみたい。

敵の左側面、時計でいったら7時から8時の方向、やや後方の下から接近する。馬鹿正直に敵と同じ高度で接近するのは馬鹿がすることです。

なんの為の宇宙空間なのかと、問いたい。小一時間、問い詰めたい。

人は宇宙に上がっても、後ろと下と上は死角なのです。

副中隊長の私が任せれているのは、私の02小隊と05,06小隊の合計9機です。シーマ様の01小隊と03,04小隊は上から接近しています。
上と下から挟み撃ちの予定です。上の方が多少危険度が高いのかな?


哨戒のセイバーフィッシュがウロチョロしていたので、サクッと墜とします。哨戒だけで迎撃がないのは油断しているのかな?

油断してくれてるなら好都合。迎撃がくる前にやりましょう。殺られる前に殺る。これ、戦争では当たり前のこと。


「レイcじゃなかった、05と06は手前のサラミスを殺って! 私は魚が出てくる前にコロンブスを殺ります!」

「「了解!」」

「近づき過ぎて爆発に巻き込まれないように注意しなさい! 自分の撃った核の爆発で死ぬなんて、マヌケなことは許しませんから!」

「「はいっ!」」

「対空機銃なんてそうそう当たるもんじゃないから、訓練通りにやりなさい!」

「「了解しました!」」


うん、二人とも素直で良い子だね。子供の私の言うことを、ちゃんと聞いてくれるんだもんね。


「ローレライ04より、ローレライ13と16へ、敵はよりどりみどりだ。指揮下と共に吶喊せよ! ただし、冷静にです!」


ミノフスキー粒子のおかげで雑音が入るけど、この距離なら通信は可能だ。


「ローレライ13了解!」

「おなじく、ローレライ16了解しました」


うん、メルダース少尉もクスコ・アル少尉も、あとは指示しなくでも大丈夫でしょう。伊達では小隊長は務まらないもんね。

さて、私はちゃっちゃとコロンブスを屠りますかね。魚がウヨウヨと出てきたら面倒だし。

どうやらシーマ様の方も取り付いたみたいだね。って一機爆散したけど、あれは、つじーん機か。あれでは脱出ポッドがあっても助からないよね。南無。

MSも万能ではないってことが、初戦で判明したのは僥倖なのかも。つじーん、君の死は無駄では無いのだよ。多分。


そんなこんなで、私は敵艦隊の陣形の中に入り込んで輸送艦か補給艦か知らないけど、コロンブス級を沈めまくりました。陣形の中に入って分かったんだけど
も、敵の陣の中って思っていたよりも危険度が低いのね。ちょっと考えてみれば分かったことなんだけど、敵は同士討ちを避ける為に私に向かって発砲できない
のです! まあ、同士討ちなんて関係ねぇ! そんなキチガイがいたなら、また話は違っていたでしょうけど。

そんな私の戦果は、ジャジャーン! コロンブス級 撃沈8隻 大破12隻 大戦果です!

そこ、弱いもの虐めって言うな。

撃沈できた艦は、腹の中に魚が入っていて誘爆させれたのが大きいのかな? 魚がコロニーの方に出払っていた艦は大破止まりだったみたいだしね。
あのコロンブス級って無駄にダメージコントロールに優れているみたいだから、こればっかりは仕方ないよね。無駄にデカいともいうけど。

え? 戦闘描写が無いって? はははっ、ナイスジョーク。ターキーシュートなんて、恥ずかしくてお見せできませんってば!

け、けして中の人が手を抜いたとか、戦闘描写が苦手って訳じゃないんだからね!」


「さっきからマリアは、なにをブツブツ言ってるんだい? また、いつもの病気かい」

「へへへー 思い出し笑い?」

「なにゆえ疑問系なのさ」

「えへっ、それよりも、みんなの戦果は出揃ったよね」


私たちは無事に帰還して、現在はリリー・マルレーンの艦橋にいます。


「ああ、それも、とんでもないオマケ付きでな」


シーマ様は意味深な笑みを浮かべましたけど、なんだろう? それで、みんなの戦果はこちらですよ!


撃沈のみ抜粋

シーマ、サラミス×3 リリア、サラミス×2 マリア、コロンブス×8 レイチェル、サラミス×2 クレア、マゼラン×1 クルト、サラミス×1 

メッサー、サラミス×1 ナカガワ、サラミス×2 メルダース、サラミス×2 ルーデル、マゼラン×1、サラミス×2

マルセイユ、サラミス×1、コロンブス×1 クスコ、マゼラン×1、サラミス×2 エリス、サラミス×2 サキ、コロンブス×1

計 マゼラン×3 サラミス×20 コロンブス×10 合計33隻、撃沈確実 他にも25隻の艦を中破または大破

非撃墜×2 ムタグチ(救助、軽傷) ツジ(戦死)



「凄い数字ですね・・・」

「ああ、撃沈の四分の一近くは、マリア一人の数字だけどね」

「まあ、コロンブス級だけですけどね」

「それでも一人で出せる数字じゃないさ。私の予想では、良くてこの数字の半分と予想していたのだけどね。非撃墜も最低でも倍は覚悟していたよ」

「良い意味で、予想が外れたと」

「流石に実戦だと、シミュレーターの様には行かないと思っていたのだが、連邦軍がマヌケだったのか、我々が上手くやったのか判断に迷うね」

「確かに判断しづらいですね。それで、オマケってなんです?」

「ティアンムの旗艦をクレア准尉が沈めた。轟沈だから、まず間違いなく戦死は確実だろうね」


ニヤリと笑ったシーマ様が、ティアンムの旗艦が沈んたと言いました。あれ? 原作では、ティアンムってルナツーに逃げれたんじゃなかったっけ?

もう、原作の筋書きで考えるのは止めた方がいいみたいですね。そうじゃないと、思わぬところで足元をすくわれかねませんし。

原作回帰への揺り戻しは・・・ うん、それを考えるのは止そう。それは無いと信じなければ、こんな世界、やってられないし。


「あれ? でも、ティアンムの旗艦っていったら艦隊中央に陣取っているんじゃないの?」


そう、私たちはティアンム艦隊の左側面から攻撃したのだ。当然、艦隊中央に居るはずのティアンムの旗艦を撃沈させるには、艦隊の奥深くまで侵入しな
ければ届かないはずなんだけど?


「サラミスを狙ったクレア准尉の核バズーカは、運が良いのか悪いのかサラミスを外れて、ティアンムのマゼランに届いたって訳さ」

「外れた流れ弾でしたか・・・ しかし、よく届きましたね」

「クレア准尉のザクは、三枚目まで深入りしていたからね。マリアが艦隊の奥深くまで突っ込んで暴れていただろ? 多分、それに引きずられたんだろうね」


えーと、もしかして半分は私の所為だったりして? けど、撃沈はクレアの実力だよね? うん、運も実力のうちって格言もあるしね。そう考えよう。

しかし、クレアは危なっかしいなぁ。少しでも安全策を取る為に手前のサラミスを殺れって命令したのに、三枚目まで深入りするとは。今度、特訓でもしますか! 

私? 私は一応、周りが見えているつもりですから、オホホホ。

今度からもう少し周りを見ることにしよう。私も初めての実戦で周りが見えてなかったみたいです。


「えーと、こういうのを、持っているって言うのかな?」

「持っている?」

「はい、旧世紀の日本の格言みたいです。運が良いとか、そんな感じのニュアンスですかね?」

「なるほど。サラミスを狙った外れ弾が、たまたまティアンムの乗った艦を撃沈させるには運も必要だな。クレア准尉は、その運を持っているということか」



そんなこんなで、私たち親衛隊第一独立遊撃艦隊の初陣は、ティアンム艦隊の三割以上の艦に打撃を与えて終わりました。この結果が、コロニー落としに
どう影響するのかは、まだ誰にも分かりません。

もう既に私の知っている歴史とは、違う歴史を歩みはじめているのだから。

それにしても、脱出ポッドは役に立ったね。むっちー軽傷で生き残ってるもん。つじーんは功を焦って先走って自爆しちゃったけどね!
護衛のマシンガン持ちが何もしないで、突っ込んで行って死んでどうするのよ?
これが、つじーんとむっちーの器の違いなのかも知れない。まあ、そんな器いらないですけど。彼は台所の某G並にこれからも生き残る気がする。

うん、この予感は、なぜか当たりそうな気がする。もしかして、これがニュータイプの予感ってヤツなのかも知れない。

こんなんがニュータイプなら、私はオールドタイプでいいですけどね! 適正が無くて良かったのかも?

今回の戦闘では、地味ながら護衛という自分の仕事を果たしたククルス・ドアン曹長とシュミット伍長には拍手を送ります。

パチパチパチ。

本当は彼らも敵艦を撃沈したかったはずなのです。でも、自分の任務はバズーカ持ちの護衛って、割り切れるのは軍人の鏡だと思います!

彼らとおなじく、マシンガンを持っていた私が言えた義理ではないのかも知れませんが。

けど、私は良いのだ! セイバーフィッシュが出る前にコロンブスを叩いているんだから、それも護衛になっているのだ!
それに私が中隊の半分の指揮官だったしね。私の方の部隊は全機無事に帰還できたから良しとしよう。

うん、反省終わり。サイド3に着くまで惰眠を貪ることにしよう、そうしよう。

それでは、おやすみなさい。



[41069] 5話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/23 08:03
UC 0079.01.11


お元気ですか? ジオン公国のみんなのアイドルことマリア・アイリーンです。

メガ粒子やらビームが亜光速じゃなくて良かったと、実戦を経験して思える今日この頃です。ミノフスキー粒子さまさまですね。

結果から言ってしまえば、コロニー落としは失敗に終わりました。

帰る母艦を私たちによって沈められた敵のセイバーフィッシュの群れが、死にもの狂いで特攻を仕掛けてきて、コロニーとリュックサックを背負った
可愛いザクに損害を与えたらしいのです。

ちなみに、私たちの部隊からは遠くて援護には間に合わないのと、敵を追いかける形になるので、味方の弾が当たるとの理由で、戦闘参加は断念せ
ざるを得ませんでした。

というのは建前で、本当はコロニーの状況がそこまで酷いとは分かっていませんでした。

だって、あれだけの打撃を与えたんだから普通は大丈夫だと思うでしょ? ミノフスキー粒子のおかげで救援の通信が届いた時には、私たちは
既に戦場から離脱していましたしね。敵味方関係なく遮断しますから、ミノフスキー粒子も万能ではないということです。

他の部隊もちゃんと仕事しろよ。そう私が思っても悪くはないはず。サボっていた訳ではないのは分かりますけど。もうちょっと、ねぇ?

うん。私たちは悪くない。ちゃんと一番仕事したって結果を出してるもん。よって、自己弁護終了。

こういう時には、独立遊撃艦隊って肩書はとても便利です。なんといっても、指揮系統が独立していますからね!
私たちに命令できるのは、ギレン総帥とデラーズのハゲ親父だけなんですよ。あと、なぜだか私のお姉ちゃんも命令できるらしいですけど。なぜ?

そして、歴史通りにオーストラリアのシドニー近郊に、コロニーの前半分は落下しました。これが歴史の修正力なのか?


しかし、ここからが歴史と違っていました。

崩壊したコロニーの一部がアンデスの山を抉って、昔でいうところのホリビアとかパラグアイの辺りに落ちました。
私の記憶が正しければ、ジャブローはマナウスやギアナ高地の辺りだったはずですから、ジャブローからは微妙に外れてしまいましたね。

残念無念。

でも、アマゾンは地球の酸素の二割か三割を供給していたはずなので、アマゾンの森林を破壊しなくて結果的には良かったのかな?
衝撃波で多少は破壊しましたけど、落下した部分が小さかったのと、アンデス山脈が防波堤になったみたいで、それ以上の被害は防げたみたいです。

いまさらですけど、自分が地球を破壊するのに手を貸していたんだと実感しました。でも、罪悪感は不思議とありません。

ガンダムの歴史って結構適当だから、私が知らなかっただけで、史実の南米にもコロニーの一部は落ちていたのかな?


それはともかく、

今度はルウムに向かって明日にでも出航です。せっかくサイド3に帰ってきたのに、直ぐにトンボ返りで宇宙に逆戻りですよ。
え? ここも宇宙って突っ込みは無しの方向でお願いします。私たちスペースノイドにとっては、コロニーが母なる大地なのですから。

まあ、ルウム戦役が十中八九起こるのは分かっていましたけど。軍人を含めた知識人は全員といってもいいほど、次の戦場はルウムになるって
分かっていたと思いますよ?
元々サイド5は反ジオン親連邦の気風でしたしね。サイド1とサイド4を潰したのは、私としては残念な気持ちになりますけど、ギレンがアホなことを
したと思っておこう。思うだけはタダなんだし。

もうルウムのことは、どうでもいいや。


今度の作戦は、前回とは比べ物にならないくらいの激戦が予想されます。前回の作戦は、ほぼ完全に近い形で側面からの奇襲みたいなモノでしたしね。

私たちの親衛隊第一独立遊撃艦隊も、長ったらしいから、これからはシーマ艦隊と呼ぼう。おおっ! シーマ艦隊! 良い響きです。パチパチパチ。

私たちのシーマ艦隊も、前回の戦死者はつじーん一人でしたけど、今回は相当数の被害を覚悟しなくてはいけないのかも知れません。

MS隊の何割かは撃墜されるでしょうし、その中には私が含まれる可能性も当然あります。まあ、私自身は多分、大丈夫な気はしますけど。
前回はかすり傷一つ負わなかった艦隊も、撃沈される艦が出る可能性は十二分にあります。しかし、戦艦のメガ粒子砲を避けるのは容易ではありません。

誰かが言っていましたけど、当たらなければ、どうとでもないんですけどね。ええ、当たらなければ、ですけども。艦船は避けるのが難しいだけです。

前回の作戦で積んだ功績での昇進は見送りです。前回も今回も含めて『ブリティッシュ作戦』みたいですので。バタバタしていて、昇進を判断している
暇はないというのが本当のところだと思いますけど。

失敗した作戦を糊塗する為に、継続した作戦って言ってるように聞こえるのは、私だけですかね?


部隊の変更で言えば、つじーんことツジ伍長の戦死により、予備機のトミナガ伍長が繰り上がりで04小隊の三番機のパイロットになったくらいですかね。

またぞろ、つじーん臭がする名前ですね・・・


オマケでサイド6が中立を宣言しました。私は、てっきり開戦と同時に中立になっていたと勘違いしてました。どうでもいいことでしたね。



UC 0079.01.12


そんなこんなで、サイド3を出航して一路サイド5ルウム宙域へ。

今回の作戦での私たちの役目は、連邦艦隊の後方へと回り込んで背後から奇襲するのが、シーマ艦隊に与えられた役割だ。

ギレン総帥から与えられた言葉は、


「高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応するのが貴官らに求められる役割である」


なんていう、とても、とても素晴らしい、ありがたい、お言葉を賜りまして、喜びで涙が溢れんばかりであります。

よりによって、こんな時に死亡フラグビンビンな言葉を言わなくてもって、クレアに八つ当たりした私は悪くないはず。

ギレンのおっさん絶対に知ってて言っただろ、その言葉を! 死んでこいってか? 死んで欲しいなら死んでやるよ! こんちくしょーめ!!

いや、死んでなんか絶対に死んでもしてあげないけどさ! もう支離滅裂です! もうギレンなんて総帥でも義兄でもない! もう知りません!


なんて発狂したけれども、少し冷静になって考えてみると、あの名言だか迷言だか知らないけど、あの言葉って、みんながケチョンケチョンに馬鹿にするほど
悪い台詞でも無いと思うんだよね。それほど悪いことを言っている訳でもないのですよ。アンドリューさんは。

行き当たりばったりなのは認めますけど、戦場なんて予定通りに事が運ぶ方が稀の気がするし。なんせ相手は機械じゃなくて人間なんだから、最初から最後
まで、自分の思い通りに敵が動くなんて絶対にありえないと思う。そりゃあ、自分の都合の良いように相手を動かして、自分に有利な状況を作るのは戦の初歩
だけども、相手も同じことを仕掛けてくる訳なので、結局の所は手詰まりというか、膠着したりもするわけですよね?

そこで、その現状を打破させる為に、必要な事はといえば、


「高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応する」


これ、この言葉なんです! 名言、至言、金言とは、この言葉の為にあったのだと私は今日、確信しましたとも!

真面目な話、遊撃が役割のシーマ艦隊には、ピッタリの言葉だと思うのですよ。遊撃の役割って、臨機応変に柔軟に対応する事ですから。

なんで、この言葉が行き当たりばったりの無為無策って馬鹿にされ続けているのか? 私には、いま一つ理解できないんですよね。
言葉だけが悪い方向に独り歩きしていると思うのは私だけかな?

あれか? ボロ負けしたからなのか? どんなに優れた言葉や作戦でも勝たなければ、絵に描いた餅、机上の空論、砂上の楼閣ってことなのか?

バルバロッサやブラウとかミッドウェーもインパールもまた然り。

うーん・・・ 実際のところ、私は原作を見てないから、この言葉を最初に聞いた時に感銘したのは、内緒です。

最初に、要するに行き当たりばったりと看破した人は天才ですね。軍師、参謀の才能があると思います。

なにが言いたいのか私にも分かんなくなってきちゃったから、この話はヤメヤメ。

最後に言わせてもらうならば、ギレン、おまえも最前線に出て戦え! こんちくしょーめ!!


「さっきからマリアは、なにをウンウン唸って百面相やってるんだい? また例の病気みたいだね」

「あははっ 今回の作戦について考えてました」

「作戦もなにも、要するに行き当たりばったりで対応しろってことだろう? 作戦もクソもありゃしないよ」

「あはははは、それもそうですね・・・」


私は頬を引き攣らせて、乾いた笑みを浮かべることしかできませんでした。

シーマ様マジパネェっす! あなたがネ申か! あなたに一生付いて行きます!



[41069] 6話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/23 19:17
UC 0079.01.15


「派手なドンパチが始まったみたいだねぇ」

「司令、意見具申よろしいでしょうか?」


最大望遠で僅かに見えるメガ粒子の光に、私は眼差しを細めてシーマ様に向き合った。今度の戦闘は前回のようにはいかない。だから私は最善を尽くす。
前回も手を抜いていたわけではないですけど、今回は五割増しで真面目です。

だから、軍人言葉を無理矢理喋ってみます。この方が真剣味が増して、耳を傾けてくれる気がしますので。


「どうしたんだい? らしくなく真面目な顔で。よろしい、許可する」

「はい、今回の出撃では、バズーカ6機にマシンガン12機の編成が無難かと思われます」

「魚がウヨウヨと出しゃばってるからかい?」


そうなのです。既にルウム宙域には連邦艦隊が布陣していて、魚ことセイバーフィッシュも展開が完了しているのです。
べつに我が部隊が出遅れたわけではなくて、元々が今回の作戦は、戦端が開いてから相手の様子を見つつ後方から叩くのが任務なのだ。
魚が泳いでいるので、奇襲できる可能性は限りなく低いと見積もらなければならない。よって強襲になり、前回と同様の戦果は初めから期待できないのです。


「はい。我が艦隊は、あくまでも遊撃が主任務です。魚は単体では、それほど脅威には成り得ませんが、数が厄介です」

「戦果拡大を望むか、被害を最小限に止めるかの二択ってわけかい」


バズーカ装備のザクでは、魚が相手では不利なのです。マシンガン装備のザクで弾幕を張らないと魚は撃ち落とせません。


「はい、それと今回は予備機もCSを除いた6機は艦隊防衛に出すべきかと」

「特務少尉、6機の予備機で帰る場所を守れると思うか?」

「はっきりと言えば不安です。倍の12機は欲しいですね」


前回の戦闘では、敵がコロニーに集中していたから、私たちの艦隊は安全圏からMS隊を出撃させて、牽制射撃のみで一旦後方に下がっていたのです。
その時に艦隊防衛に出した予備機は3機でしたが、今回は出し惜しみするのは危険です。自殺行為とも言います。万が一にでも母艦が沈めば敵中を突破
して味方の艦隊まで辿り着かなければいけなくなるのです。敵のド真ん中で撃墜されるか、下手したら届かない可能性もあり得るのです。

はっきり言って艦隊全滅は死亡と同義なんですよ。

宇宙って怖いです・・・ まあ、漂流しても10日以内なら、誰かが助けてくれる可能性は高いんですけどね。

けど、その場合は連邦の捕虜かも知れませんし。いたいけな少女が連邦の憲兵に、あんなことやこんなことの辱めを受けるだなんて、ブルブル。

薄い本を想像したヤツは、ちょっと前に出ろ。宇宙放出の刑です。ザンスカールかなんかで、そんな刑があったよね?

いかんいかん、ちょっと頭のネジが飛んでしまった。


「コッセル、どう思う?」

「そりゃ護衛は多い方が安心できます。マリア様の意見に賛成です。魚が同時に20や30も向かってきたら、確実に喰われますぜ」

「ふむ、帰る場所を沈められたら元も子もないな。よし、03小隊と04小隊と予備機の6機を艦隊護衛に回す。遊撃部隊の各小隊のバズーカは1機づつだ」


どうやら、遊撃部隊はバズーカ4機にマシンガン8機の編成で決まりみたいです。今回は敵艦撃沈が主目的じゃないから、これで良かった。

部下の意見に耳を傾けるシーマ様は上官の鏡です。一生付いて行きますよシーマ様!


あと、まだ問題というか懸念というか母艦の安全を高める難題が残っているのだけど、こればかりは正解が分からないです。


「それと、これは私も判断に迷うのですが」

「構わん、言ってみろ」

「では、艦隊の中心から50km程度の圏内のミノフスキー粒子の濃度を下げてみてはいかがですか? もちろん、圏外は濃く散布しますが」

「その理由は?」

「敵の魚はミノフスキー粒子が濃かろうが薄かろうが、目視でミサイルを撃てますけど、こちらの対空機銃は目視で当てることは困難です」


そう、私が考えた艦隊防衛は手動で対空機銃が当てれないなら、だったら昔みたいにレーダーに任せちゃえばいいのでは? って単純な発想です。
もちろん敵もレーダーが使えればミサイルを艦に当てやすくなりますけど、逆にこちらも敵のミサイルも本体の魚も撃墜しやすくなるのです。

ミノフスキー粒子下でレーダーが使えない場合は、目視の手動では難易度が跳ね上がるのです。
相手の的(まと)は小さい戦闘機と更に小さなミサイル。こっちは、大きな的で動きの鈍い戦艦。

小学生でも答えが分かる簡単な計算ですよね? まあ、私も小学生なんですけどね。えへっ


「なるほど、どうせ魚相手にウドの大木が不利なら、せめてレーダー追尾で撃ち落とそうってことか?」

「はい、レーダーが、どこまで機能するかが未知数ですけど、目視よりはマシだと思います」

「機能しない場合に備えて、直ぐに手動でも迎撃できるように手配しておけば気休めにはなるか・・・」

「機能すれば、いままで通りのレーダー戦。機能しなければ、旧世紀の第二次世界大戦と同様の戦いということです」


なにが言いたいのかというと、ミノフスキー粒子下では、艦隊防御の方が攻撃側に比べたら圧倒的に不利なんです。

まあ、だからジオンは攻撃兵器にMSなんて機動兵器を作ったんでしょうけど。

防御を考えたらミノフスキー粒子は良し悪しですね。

でも、直接に戦艦と戦艦の殴り合いなら数が多い連邦が圧勝しますから、ミノフスキー粒子は必要ですし。

うーん、ジレンマってヤツですか?

私が、あまり賢くない頭で考えて言えることは、戦争って馬鹿らしいから、やらない方が利口って結論にしか辿り着けませんでした。


「しかし、マリアは一つ見落としていないかい?」

「見落としですか?」

「その作戦の場合だと、艦隊が移動しないのが前提じゃなのかい?」

「基本的に艦隊は動かさない予定で意見しました。50kmあれば艦隊の回避行動には十分ですよね?」


うん? なんで艦隊を移動させる必要があるんだろう? まあ、敵艦隊が特攻でも仕掛けてくるのなら移動して逃げないといけないけどさ。

単純に防御するだけなら、回避するだけの宙域があれば良いのでは? 一定の宙域に止まっているのがダメってことは無いよね? なにか見落としてたかな?


「デフ!」


ありゃシーマ様が興奮して、他人行儀な真面目な仮面が剥がれちゃった。でも、シーマ艦隊はこうでなくっちゃね。


「姐さん、これは案外いけるかもしれやせんぜ。マリア様の考えは定石には無い、一見素人の考えだが、艦隊が動かないのがダメって理由は別に無いんだ」

「艦隊は動くのが当たり前って、考え方の盲点かねぇ」

「ああ、玄人は艦隊は動かすもんだって考えが染みついていやがる。その場で回避のみに専念するって発想は、玄人では絶対に出てこない発想だな」

「瓢箪から駒ってヤツかい」


シーマ様、結果が出てはじめて、瓢箪から駒って言った気がしましたよ? まあ、意味は通じるし、あながち誤用とまでもいえないから、
指摘するのは止めておこう。

けして、シーマ様が怖くて指摘しないわけではないですよ? 私は空気が読める女を目指しているのです!

それよりも、コッセル艦長が私の提案に乗り気です。本職の人に認められるというのは、なかなか嬉しいものがありますね。

今度お礼に落雁一袋あげよう。うん、そうしよう。


「最悪の場合は後退すれば、安全圏は確保できるか。デフ、やれそうか?」

「常に逃げ場を確保しながらの戦闘は得意ですぜ!」

「よし! それならデフに任せる。私とマリアは、モビルスーツデッキに行くから、あとは頼んだよ!」

「了解しやした!」


うん、これなら今回も大丈夫そうだ。でも、油断は禁物です。誰かが言ってたけど、戦いは臆病なくらいが丁度良いのだ。

考えて、考えて、考え抜いても不安が無くなることがないのが戦争だ。慢心は身を滅ぼす元なのだから。

戦争って嫌ですね。でも、私は戦うのをやめません。戦争は負ければ意味がないのですから。でも、この戦争がジオンにとって厳しいことを私は歴史で
知っている。いかに連邦に勝利するかではなく、いかに負けないで戦争を終わらすか? これを考えなくてはいけない気がする。

まあ、考えるのはギレン総帥とか偉い人たちなんですけどね。ちゃんと考えて戦争を始めたんだよね? 考えてなかったら、ギレンの頭はたいてやる!

戦争は始めるのは簡単だけど、終わらすのは難しいって歴史が証明しているしね。

あー! 戦争って本当に嫌だわー! 戦争は当事者になり初めて分かる虚しさよ 川柳にもなりゃしない。 あ~戦争ってクソだわ~

いかんいかん、思考が完全に敗北主義者に乗っ取られていました。戦場では余計な思考はいらないのです。戦場は悩んだり迷ったりした者から死神は鎌を
振り下ろして、冥界に引きずり込むのです。
自分を完全に戦争マシーン、機械の歯車の一部分ととらえて、殺戮兵器にならないといけません。

では、連邦のウジ虫どもを血祭りに上げる為にも出撃しますか!



[41069] 7話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/24 06:33
「汚物は消毒です!」

「04突然どうしたんだい?」

「04よりローレライ01へ。怪電波を受信してました」

「いつもの病気ね。あいあい、01了解」


ブリティッシュ作戦が作戦継続の為に、コールサインも継続です。どうやら独り言が漏れていたみたいですね。恥ずかしいです。
っと、どうやら魚の哨戒機に見つかったみたいですね。敵さんは慌てて逃げ出しました。


「04より01、魚がこちらに気づきました。強襲になります!」

「こちらも確認した。01より各機、バズーカ持ちは艦隊外周部からで構わない。敵の尻にぶっといのをお見舞いしてあげな! 護衛は臨機応変に対応!」

「04了解! 突っ込みます!」

「13(メルダース)了解!」

「16(クスコ・アル)了解しました」


各小隊ごとに纏まって散開しながら敵艦隊の後方下部から、私たちは襲い掛かる。
艦隊後方を守る魚は20数機。しかし、先ほどの哨戒機からエマジェンシーが届いたのだろう。コロンブスの腹の中から魚が出てきそうだ。
更に二枚目から反転して迎撃に向かってくる魚の数が、これが想像以上に多い。

これは、バズーカ持ちは取り付くまでに喰われるかも知れない。それを阻止するのが護衛の役目なのだが。うん、厳しそうだ。私以外の他の小隊が。


「04より05、06へ。私が魚を排除するからあとに続いて! 06は05の援護!」

「05了解! クレア頼んだわよ!」

「06了解ー! レイチェルは泥舟に乗ったつもりで安心してね!」


それ、安心できませんから。素で言ってんの? それともブラックジョーク? 判断に迷うな・・・

はっ! 私の判断を迷わせるとは、クレアは獅子身中の虫だったのか!? そうなのか? それならば、


「ひっ! いま、隊長から殺気が感じられました・・・ 私なにかしましたか?」

「あははは、ごめんごめん、クレア准尉が泥舟なんてアホなことを言ったから、悩んでしまって、つい漏れてしまったのかな?」

「戦場で隊長を悩ますことを言うクレアが悪い」

「私なにも悪いこと言ってませんよー」

「お喋りはここまでです! 魚が来るわよ!」



sideレイチェル


隊長が私を通り越して更に後ろのクレアに向かって殺気を放っただと!? 

ティアンム艦隊との戦闘での縦横無尽の活躍といい、ジオン軍で一番の操縦技術でMSの指導教官を務めていた事といい、

本当に隊長は何者なのだろう?

ザビ家の親戚という噂は聞いたことがあるけど、本当に11歳の女の子なの? 信じられないね。まるで、少女の外見をした熟練したなにか。
そう、操縦している中身が実は中年のおっさん、ベテランのパイロットと言われても信じてしまいそうになる、なにかが、副中隊長殿のマリア隊長にはある。

纏っているオーラが違うのだ。まるで、中世ヨーロッパの死神の鎌を持った魔女?

現にいまも、セイバーフィッシュの群れを鎧袖一触で屠っているのだから。MSがまるで自分の手足のように動いているし、敵があらかじめそこに来るのが
分かっているかのように、なにも無い空間に銃弾を放つと、敵は吸い寄せられるように自ら銃弾に突っ込んで行くのだ。完全に人間技では無い気がする。

予測射撃とか見越し射撃は教わったし、一応は私も出来るけど、隊長の射撃はそれ以上だ。

それに、いくらチューンアップしているCS型に乗っているとはいえ、あの動きは変態すぎる。私がCSに乗って同じ動きが出来るかといえば、答えはノーだ。
私には隊長のような動きは無理だ。

蝶のように舞い蜂のように刺す。まるで、宇宙空間で華麗なダンスを踊っているみたいだ。そう、宙に舞う菫色の蝶。

まあ、連邦からしてみれば、蝶なんて優雅なものには見えないでしょうけど。毒蛾とか死神? それとも魔女が正解かな?

隊長のMS一機で完全に戦場を支配している。あるいは、戦場を操っている。こっちが正解なのかも知れない。これがエースと言われる人なのか?
いや、普通のエースでは、ここまでの事は出来ないだろう。エース以上、まさしく隊長はジョーカー!

さて、私は隊長が空けた穴から、おこぼれを貰いに行きますか!



sideマリア


「くしゅん! むむ、誰かマリアさんは可愛いって私の噂をしているわね」


あれから私は30mmバルカンとミサイルの雨の中に突っ込んで行った。しかし、遅いのです! 私には銃弾もミサイルもスローモーションに見えるのです。
こんなんでは、アドレナリンも出ませんよ。私には自機に当たる予定の弾が何故だか分かるので、その弾だけ避けるようにMSを軽く動かすのです。
傍から見ていると、弾が私を避けているように見えるのかも知れませんね。

ニュータイプ能力は落第だったのに、ニュータイプと同じようなことができるなんて不思議です。

ヤザンみたいな野生の感とも、また違うみたいだし。私は本当に戦争機械なのかも知れないですね・・・

それでも、お腹は空くし眠たくもなりますし排泄だってありますから、人間を止めているわけではありませんよ?

なんだか、シューティングゲームの超イージーモードで遊んでいるみたいな感覚で、現実感も緊張感もありません。本当は多分、これではダメなんですけどね。
モニターがリアルじゃなくて、ある程度アニメチックにデフォルメされているのが影響しているのかも知れません。

リアルの描写だと宇宙空間では人間の精神が持たないみたいで、モニターの描写がデフォルメされているみたいです。

そんなこんなで、私にとってセイバーフィッシュは鴨同然なんです。鴨が葱を背負って、さらに鍋とガスコンロに調味料まで持っているのですから、
美味しすぎますよね。
もう既に何十機の敵機を撃墜したのか分からない、数えるのが面倒なくらいの数の敵を墜としてます。

戦闘開始前の杞憂も、どこかに行ってしまいました。私って、やっぱりトリガーパッピーというか、どこか壊れているのかも知れませんね。



「05より04へ。バズーカ全弾撃ち終わりました」

「04より05へ。戦果は?」

「サラミス1隻撃沈確実とコロンブス2隻です」

「上出来よ! 04より01へ。任務完了。これより味方の援護に入ります」

「01了解! 01より各小隊長機へ、被害状況を知らせよ」

「04、こちら被害なし」

「こちら13、15が被弾小破。戦闘には支障ありません」

「16、おなじく18が被弾中破。退避行動に入らせてます」

「01了解した。01より各機、04の小隊は16の援護に入れ。任務完了しだい順次後退。 帰るまでが遠足だよ。気を抜くんじゃないよ!」

「04了解!」

「13了解!」

「16了解しました」


ふぅ、いまのところ被弾している機はあっても、撃墜された機がないのは良いことですね。さて、私はクスコ少尉の援護に回りますか!


「04より05、06へ。18と合流して後退しろ。私は16、17の援護に入る」

「05了解!」

「06了解ー!」



クスコ少尉は私が援護に入ってから動きが良くなって、マゼランを二隻も沈めやがりましたよ!


「半分は特務少尉のおかげです」


なんてクスコ少尉は謙遜しちゃってるけど、私には分かる。私が援護に入らなくても、最低でもマゼラン一隻は撃沈できていたことを。

やっぱりニュータイプは違うわ。

途中から、なぜか敵機がこちらに向かってこなくなったので、撤退はスムーズに運びました。

私が動くと敵が射程圏外に逃げるんですよね。

オープンチャンネルで、

『ば、化け物だー』とか、『ま、魔女だー』とか、『死神だ逃げろ!』とか、酷くないですか?

魔女って私が女性ってよく分かりましたよね? 機体の色ですかそうですか。量産機の緑に塗り直してもらおうかしら?

ムカついたので撃ち墜としたかったのですが、さすがに射程圏外の敵は私でも撃墜できません。まあ、残りの弾も少なかったのですけどね。


それから母艦に帰ってみると、こちらの方が私たちよりも被害が大きかったのです。

ニーベンルグが中破していますし、04小隊の三番機が敵の流れ弾の直撃で撃墜されていました。三番機のパイロットの名前はトミナガ伍長でしたっけ?
名前からしたら、盲腸にでもなって後方に搬送されるのかとも思いましたけど、なにもしないうちに戦死しちゃいましたね。

変な行動をされて味方の被害が増えるよりも、戦死してくれて良かったのかな? 台詞の一つもなしに死んでしまって、彼は何しに出てきたんだろう?
モブだから仕方がないのかな? あまり登場人物が増えると中の人の処理能力が追い付かなくてパンクするみたいだから、台詞が無かったのかな?

メタでしたね。

同じMS中隊の同僚に対して薄情なのかもとは思いはしますけど、無能な働き者は味方を殺すともいうしね。

ちなみに、むっちーの乗機も中破していました。04小隊は損害率が高いですね。まるで、なにかに呪われているみたいです。

それでも、今回の戦闘でのMSの非撃墜はトミナガ伍長の一機のみ。想定していた被害よりも、ずっと少ない被害で済んで良かったと思います。
ニーベンルグの乗員も二十名ほど戦死していますが。

だけども、これは戦争なんだから仕方ないと、割り切らないといけません。

さて、私たちの役割も果たしましたし、サイド3に帰還しますか!

休暇も貰えるだろうし、積み置きしていた小説でも読んで、妄想の世界に入り浸るのも悪くはないですね!

サイド3に着くまで惰眠を貪ることにしよう、そうしよう。

それでは、おやすみなさい。



[41069] 8話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/25 06:16
UC 0079.06


お元気ですか? ジオン公国のスーパーアイドルことマリア・アイリーンです。

私は現在、宇宙空間にいます。

なにをしているのかって?

MSのテストをしているんですよ。新型ですよ新型!


「ザクとは違うのだよ! ザクとは!」

「いや、特務大尉。一応それザクですから」


まあ、ザクなんですけどね。てへっ

いま私が乗ってテストしている機体は、MS-06R-2S、という機体です。


ルウムの戦いから5か月。いまは6月です。あれから、いろいろなことがありました。


まずは、ティアンム艦隊を壊滅させたのとルウム戦役での功績により、私は二階級特進して特務大尉になりました。

もちろん、シーマ艦隊のみんなも昇進していますよ。残念ながらシーマ様は二階級特進ならず中佐です。その前の少佐への昇進から、そんなに日が
経ってなかったのが影響したみたいですね。

もっとも、シーマ様自身はそれで納得しているみたいなので、私がとやかく言える問題でもないのですけどね。
ほかに、コッセルは大尉に昇進。

えー、面倒なので二階級特進した人だけ抜粋すると、

クレア・ヒースロー中尉 ティアンムの旗艦撃沈のご褒美ですね。

ルーデル中尉 二回の戦闘でマゼラン×2 サラミス×3の戦果で特進。

クスコ・アル大尉 おなじくマゼラン×3 サラミス×3の戦果で特進。

この三名が特進組です。この三人に共通する事は、マゼラン撃沈です。やっぱり、マゼランのネームバリューは大きいみたいですね。
クスコ・アルは流石ニュータイプってヤツですかね? ルーデルも名前負けしてませんし。というか、ルーデルって中身も、あの魔王ルーデルの
生まれ変わりだったりして? モブのはずなのに、ニュータイプと戦績がほぼ互角だなんて信じられません。まさかね?

クレア中尉と仲が良い06小隊のエリス・クロード少尉なんかは、


「ルウムの時に私もバズーカ持っていれば、特進できたのに」


なんて言って悔しがってました。まあ、確かにそうかも知れませんけど、エリス少尉の所属する06小隊では、クスコ大尉の方が腕が良いので、
こればかりは仕方ありませんよね。

それに、この特進組の共通点は、もう一つあります。一週間戦争の時点で、既にマゼランを撃沈していた点です。

参謀本部なのか人事局なのか知りませんけど、恐らくルウムよりも、ティアンム艦隊を壊滅させた時の戦功を重く受け止めたみたいな気がします。

だから、ルウムでバズーカを持っていても、エリス少尉の特進は無かったのかも知れません。彼女は一週間戦争では、サラミス二隻でしたから。
まあ、マゼランを二隻撃沈すれば、話は別かも知れませんけど。タラレバですよね。

私の特進はなんでかだって? ジオンは独裁国家だから、ほら、身内贔屓みたいなモノじゃないかな? 

ちなみに、ルウムでの私の戦績はコロンブス撃沈×3とセイバーフィッシュ等×38みたいです。腹の中の魚は別ですよ?

そりゃ、敵も危険を感じて私から逃げる訳だわ。

それにしても、タラのレバーは不味そうです・・・


あと、私だけ即席教育で士官の勉強をさせられたりもしています。これはいまも、絶賛継続中なんですよね。頭がパンクしそうです。
私の頭の容量は128Mしかないのですから、詰め込んでもフリーズしますから!

その合い間には、士官学校の生徒たちにMSの操縦を指導したり、参謀本部で戦術面からの意見を言わされたり、教導大隊に出向いて八つ当たりしたり、
ジオニック社とツィマッド社の技術者と意見交換したり、パーティーに出席して引き攣った愛想笑い浮かべたり、グレミーにスカートを捲られたり、

再度、教導大隊に出向いて八つ当たりしたり。

その合い間に、本業の小学校に行っている私って、多分、いや、世界で一番忙しい小学生だと自負しています。嬉しくともなんともありませんが。

どうしてこうなった?

全部、戦争が悪いんや! ギレンのバカー!


それ以外にも、レビルがお約束通りに脱走したりもしましたね。一応、お姉ちゃんにはそれとなく注意するように言ったんだけどなぁ。
まさか、連邦の特殊工作員が一度失敗したのに、二度目を仕掛けてくるとまでは予想してませんでした。

一度撃退したって聞いた時には、これでレビルの「ジオンに兵なし」演説を潰せたと喜んだのが、ぬか喜びになるとは。これが修正力なのか?
それとも、一度目は囮で、安心した所で二度目の仕掛けという、初めから二段構えの作戦だったのかな?

原作なのかifなのか知らないけど、デキン公王が関与しているって説もあるけど、案外本当なのかも知れない。

というか、ガンダムの世界はパラレルワールドが多すぎて、なにを参考にすれば良いのか迷うんだよね。ここも、そのパラレルワールドみたいだし。

前に、ティアンムが戦死した時に原作の筋書きで考えるのは止めた方がいいって決めたのに、いまだに私は原作に引きずられているなぁ。
原作を知っているのは便利な半面、邪魔な気もする。現にレビルは脱走するって知っていたのに防げなかったんだし。原作に頼っちゃうのは悪い癖ですね。

私が子供じゃなくて権力のある大人だったなら、レビルは捕虜にしないで殺したんだけどね。
ルウムで独断専行してアナンケを沈めとけばよかったと後悔しちゃいます。

タラレバばかり出てきちゃうよ。はぁ・・・

こんな調子では、そのうち手痛いしっぺ返しがきそうで、下手に中途半端に知識があるのって、思わぬところで足元をすくわれかねなくて怖いです。
もう、レビルの件で足元をすくわれてるのかも知れないけど。

ええい! 私は、神(原作)なんかには負けない!


そして、クソったれな戦争屋のレビルのちっぽけなプライドの為に戦争は継続することになって、南極条約も多分史実と同じ内容で締結されて、
我がジオン公国は地球侵攻作戦を発動して、オデッサを中心とした東欧や中欧とかを占領。北米にも降下してキャルフォルニアやニューヤークを占領。

その他の地域も多分史実通りに占領した感じかな?

そこで問題が発生。補給線が伸びきって兵站がカツカツになって、これ以上は占領地を広げられなくて戦線は膠着って・・・

もしかしなくても、これも史実通りなのか? なんだか、史実のドイツ軍や日本軍みたいになっているんですけど。
勝っているのに、まるで勝っている気がしないです。


それで、レビルのクソったれの所為で戦争が長期するのが確定したので、宇宙での戦力強化の為にMS-06Rの開発を始めたのです。

まあ、プランは元々あったみたいですけど。兵器でも機械でもそうですけど、一度開発に成功したら次はもっと性能の良い物を作ろうってなりますから。

技術は日進月歩です。それに現在は戦争中ですから、平時の数倍から数十倍の速さで技術革新が進みます。誰も負ける為に戦争をする人はいませんしね。
勝つ為に技術者も必死なんです。本当に彼らに足を向けて寝られません。

レム主任とメイ技術中尉に今度お礼に落雁一袋あげよう。うん、そうしよう。 脳を使うと甘い物が欲しくなるっていうしね。


そして、いま私が乗っている機体、MS-06R-2S、正式名称は、"高機動型ザクⅡ後期型マリア・アイリーン専用機"なのです!

ワンオフですよワンオフ!

まあ、こんな高性能のワンオフ機を作るなら、リックドムを10機でも余分に作れとも言いたくもなりますけど、ってリックドムはツィマッドだから関係ないのか?

それに連邦の白い悪魔が出てきたら、リックドム12機が3分で全滅するんだっけ? ニュータイプとワンオフ機の組み合わせって凶悪を通り越して鬼畜だ。

そう考えたら、ワンオフ機も捨てたものでもないってことだね。当然パイロットの腕も必要だけど、私ならジムが10機出てきても勝てるでしょ? 多分だけども。

ガンダムが出てきたらどうするのかって? 乗っているのがアムロなら当然逃げますよ?

敵前逃亡だって? ふふ、昔の人は良い言葉を残してくれてるのです!


「当初の目的をほぼ達成せり、よって戦略的に転進する」


どやっ!

これを戦場に当てはめると、


「当初の任務をほぼ完了。よって戦術的に転進する」


こうなります。

まあ、ここは正直に「戦術的に後退する」と言っても大丈夫です。敵前逃亡にはなりません。
ここでミソなのは、「当初の任務を"ほぼ"完了」これの、"ほぼ"なのです。
いや~ファジーな表現って素敵ですね。大本営は良いことを言いましたね!

ガンダムに乗ったアムロなんて、推進剤が切れるまで無視するのが一番だと思うのです。先にこっちが切れたらシャレになんないけど・・・

っと、話が逸れましたね。

開発主任のエリオット・レム技術中佐が嬉々として、ながーくお喋り (本当に長かったのでレム主任の台詞は粛清されました) して教えてくれた、
MS-06R-2S、この機体のスペックはというと、

ジェネレーター出力が従来から約4割増しの1390kw  ビームライフルは一応は試作品が使えるみたいですけど、小型化待ちですね。あんな大きいのはいらん。

推力は、なんでか知らないけど、1割ちょっとの微増で57,700kg  スラスターの数を増やさないと、推力を増やすのは現時点では技術的に厳しいのかな?

スペック厨にとってはカタログスペックは大事なのです! うん、良いことを言ったな私は。

増設プロペラントタンクは4基  これで稼働時間の短さも解消です。

それに、私専用にチューンアップしてあるから運動性は抜群です。これは外観はザクですけど、ザクの皮を被った別のMSみたいですね。

「ザクの皮を被ったゲルググ」とは、上手く言ったものですね。この言葉って、このMS-06R-2のことを言ったんだっけ?

ぐふふ、このMSならアムロのガンダム以外には無双できそうですね! はっきし言って、Z時代のハイザックよりも優秀な気がします。

我がジオンの技術は宇宙いちぃぃぃ!!」

ごほん、失礼しました。

私以外の親衛隊第13独立遊撃MS増強中隊のみんなも新型に乗り換えです。

MS-06R-2 シーマ・ガラハウ中佐 クスコ・アル大尉 ルーデル中尉

MS-06R-1A 他のみなさん。


MS-06R-1Aを優先的に回してくれたのは、、嬉しい誤算でしたね。まあ、親衛隊の権力なんでしょうけど。
みんな乗りこなせるかな? 訓練をすれば大丈夫っぽいけど、約数名は不安になりますね。誰とは言いませんけど、誰とは。

史実では、MS-06R-2は数えるほどしか生産されなかったはずですけど、私たちの部隊だけでも、私の専用機が1機と普通のR-2が予備機を入れて4機あります。

確かコンペでリックドムに負けたんだよね? 値段が高いのと整備性が悪いのとか、その他諸々の理由だったような?
コンペは来月の予定みたいですけど、コンペでは史実通りに負けるんでしょうね。だって、これ量産機の枠に収まらない機体でしょ?

そのまだ試作機のはずのMS-06R-2が5機もあるのは、なぜでしょう? まあ、高性能機が部隊に配備されるのは嬉しいですけど、謎ですね。

もしかしたら、ゲルググの為のデータ取りも兼ねているのかも知れませんね。
外観は全然違いますけど、ゲルググってこの機体から派生したというか、この機体が元になったはずですから。

ちなみに、シーマ様たちが乗る方のMS-06R-2はビームライフルは使えません。MS-06R-2Sの私の機体だけが使えるんですよ。えへん。

でも、ビームライムルが小型化できるのは早くても秋頃みたいだし、その頃にはゲルググが完成しているから、この子は、お役ごめんなのかなぁ。

というか、いくらジオンのMS技術が連邦より10年進んでいるとか言われてても、MSの開発生産スピードが速すぎる気がするのは私だけかな?

第二次世界大戦での戦闘機の開発の歴史をみても、今年の残り半年に予定されるジオンの開発速度は異常だ。
まあ、時代が違うからスーパーコンピューターを使ったシミュレーションで、検証実験が簡素化できているのかも知れないけど。

グルググとかの高性能機なんて2年も3年も前から研究してないと完成させれない気がするなぁ。基礎がしっかりしているってことなのかな?
あとは、亡国の危機だからか・・・ ナチスドイツや大日本帝国の終盤戦での兵器開発も異常だったか。

うん、考えても埒が明かないから、考えるのはやめよう。いまは、羊の皮を被ったこの子のテスト中だったのです。


「特務大尉、確かに我がジオンの技術は宇宙一だとは思いますけど、興奮しすぎですよ」

「こ、声に出てましたか?」

「ええ、ワンオフ、ワンオフって喜びの声もばっちりと」


なんてことだ、これは機体から降りたら恥ずかしいから速攻で逃げなければ。

すたこらさっさです!



[41069] 9話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/25 18:40


「どうしたんだい、これ?」

「その毛皮ですか? それは、シーマさんの熱烈なファンの人からの贈り物ですよ」

「私のファン? マリアのファンじゃなくて?」

「はい、テダさんという方がシーマさんのインタビューを見て贈ってくれました」

「ここで受けたインタビューのヤツかい。しかし、これは本物の虎かい?」

「はい。ホワイトタイガーというみたいです。私も初めて見ました」

「この毛皮だけで楽に高級車が買える値段だろうに、なんでまた、こんなに高い物を贈ってくるのやら・・・」

「彼は、シーマ様に叱られ隊のメンバーですので、下僕としてシーマ様の司令の椅子が質素すぎるのが許せなかったのでしょう」

「叱られ隊・・・ 頭が痛くなってきたわ」

「派生で、シーマ様に罵られ隊というのもあるそうです」


ちなみに私は、シーマ様の乳揉み隊、私限定の隊の隊長です。内緒ですけどね。


「本気でジオンの将来が心配になるねぇ」

「彼らは特殊な性癖があるだけで、普段は一般人よりも有能な公国民ですよ? では、シーマ様、彼にお言葉を掛けてあげて下さい」


携帯端末をシーマ様に向けて、さん、にい、いち、きゅ~


「はぇ~、仕方ないねぇ」

「もう録画してますよ」

「こんな高いモン買う銭があるなら、ビームライフルの小型化に日夜懸命に励んでいる技術者に、差し入れの一つでもしておやり!」

「ありがとうございました。これで彼はあと10年は無償で働けるでしょう」

「今度またインタビューがあったとしても、恥ずかしくて此処では受けれないねぇ」


そう言ってホワイトタイガーの毛皮を撫でながら、ため息を吐くシーマ様も素敵ですね!





UC 0079.07


「降伏しろ! 降伏するならば、南極条約に則り捕虜としての待遇を保障する」


私は現在マゼランの艦橋にいます? 艦橋を脅していますが正解かな?

なんでこんな物騒なことをしているのかというと、ここはジオンの庭先なんですよね。
サイド3宙域の入口に、連邦軍の強行偵察部隊がやってきたというわけです。

それで、たまたま付近の宙域で訓練していた私たちシーマ艦隊が現場に急行して、サラミス二隻と魚の群れを屠って、
旗艦のマゼランを丸裸にしてお話しをしているのです。


『こ、子供だと!? 魔女は魔女っ子だったのか・・・』


銃を突き付けられているのに、ずいぶんと余裕ですね。すぐに魔女っ子って反応できるあたり、連邦の司令はロリコンの気がありそうですね。

このまま撃沈しちゃおっかな?


というか、魔女って私か? 魔女とはなんだ! 魔女とは!


「うん、ギルティ。アディオス」

『ちょっおまっうぇ』


軽い司令だな~。こいつ、絶対にネット掲示板中毒者だな。うん、私には分かります。


『司令、落ち着いて下さい。確かに"コスモスの魔女"は女の子みたいですけど、そんなことを言っている場合ではありませんよ。彼女怒っちゃいましたよ』

「聞こえていますよ? 魔女とは失礼しちゃいますね! こう見えてもジオンでは、"コスモスの蝶"って呼ばれているのです!」


私の愛機、MS-06R-2S高機動型ザクⅡ後期型マリア専用機は、パーソナルカラーが薄紫のコスモス色なので、ジオン国民からは"コスモスの蝶"の愛称を
付けられているのです。

私の戦闘シーンが、宇宙を優雅に舞う蝶のように、見えるところから付けられた二つ名ですね。華麗なる私にピッタリな愛称を、連邦の連中は、あろう
ことか、"コスモスの魔女"なんて名前を付けるだなんて、無礼千万です。ぷんぷん!

他に二つ名が付いてる人はというと、原作で付いていた人は、当たり前ですけど原作通りの二つ名が付いてますね。

面白いところでは、

まぐれ当たりの一発屋 クレア・ヒースロー  戦績はティアンム旗艦だけです。汚名挽回ですよ? 挽回!

突貫小僧 ルーデル  魔王と呼ばれるには、まだ戦績が足らないみたいですね。

宇宙(そら)のセイレーン クスコ・アル  みんな『ラ、ラ』とか聞こえるのかな? 私には聞こえないですけどね。
クスコだから『ク、ク』だったら、締まりがない気がするけど。セイレーンは、そのうちコールサインなる予感。


ちなみに、コスモスは、花のコスモスと宇宙を掛けている言葉遊びですね。綴りはどちらも同じcosmosみたいですよ? ここまで0.2秒。


『それは失礼した。それで、コスモスの蝶さん。降伏するのを協議するので時間が欲しいのだが?』

「30秒だけ待ってあげる。1秒でも越えたら撃沈します。それだけあればメインエンジンを止めれるでしょ?」


司令がドモリだから、副官が表に出てきたわけね。


『短すぎだ! 考える時間が欲しい!』

「ダメよ。時間をあげたらレーザー通信でデータを送るとか、反撃するとか、逃げる算段を付けるとかするでしょ? あと18秒ですよ」

『むむむ・・・』


なにがry


「じゅ~う、きゅ~う・・・ ご~ぉ~、よ~ん」

『わ、分かった降伏する! 南極条約に則った処遇を要求する』

「了解した。直ぐに監視要員を送るので、指示に従って無駄な抵抗はしないように。抵抗した場合と少しでもおかしな行動をした場合には、無条件で撃沈する」

『了解した。せめて水くらいはサービスさせてもらうよ』

「メードインジャパンのでしたら、私もいただきたいわん」

『残念ながら、アマゾン産だよ、お嬢さま』

「あら、それは残念でした」


これでマゼラン一隻ゲットです! 貧乏なジオンにとっては大きい戦果ですね。これでお小遣い増えるかなー?

ちなみに私の給料は、諸々の手当を入れてここ最近の手取りは、月平均で7500ジオン$です。前世の感覚でいえば約75万円ってところですかね?

開戦して昇進して3倍以上に増えました! これが多いのか少ないのかの判断は微妙なところですが。まあ、給料が増えた分以上に危険と隣り合わせなんですけどね。

平時の特務少尉の時代は、月に2000$もなかったのですから、戦争万歳です!

けど、平時に戻れば手当は激減して、また薄給に逆戻りですグスン。それでも、子供には大金なんですけどね。ザビ家の親戚でも給料に特別扱いはないみたいです。

独裁国家のクセに変なところで清廉潔白にならなくてもいいのに!
自分たちは贅沢をしているのにね。あれの源泉は裏金なのか? 賄賂なのか? そうなのか? うん、そうに違いない!

むむ、ブルジョワめ! 革命の準備は整った。立てよ国民! 僻みを怒りに変えて立てよ国民!

いかんいかん、被害妄想に憑りつかれるところでした。

それはそうと、私の財布はお姉ちゃんに握られています。こんな時代ですから、お小遣いを除いた給料の半分を、せっせとプラチナやゴールドに変えている
みたいですよ。もう半分はジオニック社やツィマッド社の株を買っているみたいです。

お姉ちゃんはしっかりしていますね! けど、ギレン総帥の第一秘書兼内縁の妻が自国の通貨を信用していないって、そこんとこどうなのよ?

これは、あれかな? お姉ちゃん自身はザビ家の母になる人だけれども、私はあくまでも外縁だから、万が一の時の為に保険を掛けてくれてるのかな?
そう考えると、お姉ちゃんのバランス感覚は凄いのかも知れない。禿げのデラーズみたいに盲信してないしね。

そういえば、暫定主力機選定のコンペは予想通りに、MS-09Rリックドムに決まったそうですよ。
まあ、あの値段では仕方ないよね? リックドムが2機は買えちゃう値段でしたから。戦いは数を揃えるのが基本ですし、一般兵では性能を持て余しますしね。

さて、私はお小遣いを増やす為に、これからも連邦の偵察部隊を狩るのに精を出しますか!



[41069] 10話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/26 03:20
UC 0079.09


・・・なかなか接敵しませんね。というか、あれからサイド3周辺に敵が来てくれません!

お小遣いは増えませんでした。グスン。

グラナダ宙域やサイド6宙域には、たまに連邦も嫌がらせの為にウロチョロしているのですけど、私たちシーマ艦隊は本国でお留守番だったのです。

まあ、その分の空いた時間で訓練、訓練、また訓練の猛特訓をして、地球の部隊を除いての練度は恐らく、ジオン軍の中で一番だと自負できる腕まえを
誇っているのですけど。

そうそう、ドズルさんのお嫁さんのゼナさんが、可愛い女の赤ちゃんを産みましたよ! 名前はもちもん、ミネバです。
まだ、お猿さんと変わらない容姿なのは内緒ですけどね。

それにしても、ミネバはお父さんに似なくて良かったでちゅね。あんなゴリラに似たらと思うと、ね?

あんなゴリラのクセしてゼナさんだけでなくて、ハマーンのお姉ちゃんまで愛人にしているなんて許せん、モゲてしまえ!

というか、ドズルよ。女子供をソロモンに連れて行くなよ? 絶対だぞ? 私は反対しますからね!

ハマーンといえば確か私と同世代だよね? 離れていても1歳か2歳上くらいのはずだけど、彼女は現在どこにいるんだっけ?
サイド6にあるフラナガン機関かアクシズに行く途中かな? それとも既にアクシズにいるのかも知れないけど、なんか気になるね。

いままで気にも留めてなかったけど、一度気にしたら気になるなぁ。べつに会ったからといって取って食おうとか、どうこうする訳でもないんだけどね。

ただ、氷の女になる前の少女のハマーンを見てみたいって、野次馬根性丸出しなだけなんですけどね!

彼女が、ああなったのは全部シャアが悪いんだ。うん、そうだ。そう思おう。今度、手合わせすることがあったらボコろう。


それはそうと、いよいよ今月はXデーがある月のはずです。詳しい日時までは知らないけど、これは、ほぼ間違いないだろう。そうでないと連邦の反攻作戦が
遅れてしまいますしね。

地球上では、ちらほらと連邦のMSの目撃情報が入ってきていますし、既に交戦もしたみたいです。つまり、サイド7に潜入したジーンが乗るザクとガンダムとの
交戦が、史上初めてのMS同士の戦闘というのは間違いだったのです。

宇宙では、まだMS同士の戦闘はありませんけどね。

そもそも、ガンキャノンみたいなのとは、一年前に月の雨の海で交戦していますけれども、それはそれってことで。


前置きが長くなりましたけど、私たちシーマ艦隊は現在ルナツーに向かっています。べつにルナツーを攻略するわけではないですよ?
ただ、嫌がらせをしに行くだけですから。威力偵察ってヤツです。

地球降下作戦の前にルナツーを攻略すれば良かったのに。そう、思わなくもないのですけど、ザビ家三兄弟と参謀本部の考えは、地球降下作戦を優先させる。
これが答えでした。ルナツーごときいつでも落とせる。という甘い考えの元にルナツーを放置していたら、要塞が強固になっていましたとさ。

自分たちもソロモンとアバオアクーを要塞化しているんだから、当然相手もルナツーを要塞化するって分かるでしょ?


なんだか、ジオンの戦争遂行目的というのか戦略が見えてこないんだよね。あれもこれもの中途半端というのか、泥縄式っていうのかさぁ・・・
本当にギレンはIQが240もある天才なのか? 疑問に思う今日この頃です。

主義主張に凝り固まって、視野狭窄になっている気がしますね。連邦に勝つには宇宙VS地球の構図に持って行くのがベストだったと思うんですけどね。
まあ、過ぎたことを今更グチグチ言っても時間は戻ってきませんけど。

っと、話が逸れた。

本当はルウムで受けた傷が想像以上に大きくて、「ルナツーごときいつでも落とせる」なんて言ってたけど、大言壮語に聞こえる。

こんなホラを言った人は誰ですか?

それで、傷を回復するのに時間が掛かってしまったのと、相手がルナツー引き籠もっている為に、正攻法からの攻略では損害が馬鹿にならないので、いまでは
迂闊にはルナツーに手が出せない状態なのです。

それでも少しでも、敵の数を減らそうと挑発をしたり、ルナツー周辺宙域をパトロールしている小艦隊を襲ったりという、涙ぐましい努力をしてチマチマとした
作戦を繰り返しているのです。

そりゃ、ルナツーを落とそうと思えば、落とせるとは思いますよ? またルウムの時以上に艦隊の再建には時間が掛かりますけど。でも、その間に連邦の物量に
押されて負け続ける可能性が極めて高いってだけで。



UC 0079.09.15


「ジャブローから上がってきた連邦の単独艦を捕捉しました。これが最大望遠です」


そう言ってオペレーターがスクリーンに捉えた敵艦を映し出した。


「ほう? これは見たことがない艦だねぇ」

「木馬? それともスフィンクスかな?」


ついにきました。V作戦でガンダムを回収する為にホワイトベースが宇宙に上がってきました! それで、私が生ホワイトベースを見た感想が、スフィンクスでした。
木馬にも見えないこともないけど、どっちかというと、エジプトに座っているアノのイメージですね。


「私には、折り紙の鶴の出来損ないに見えるねぇ」


シーマ様には、ホワイトベースは折り鶴の出来損ないに見えたらしいです。確かに、そう見えなくもないかな? というか、折り紙を知っていたんだ!
子供の頃のシーマ様が、折り紙で鶴を折っている姿を想像したら、ニヤニヤしてきました。うぷぷ。


「ふむ、双胴艦タイプの新型艦か。補給艦にしては少し違う気がするな」

「艦長、あれは強襲揚陸艦に近い感じがします。それも、モビールスーツ搭載型の」


コッセル大尉は鋭いですね。さすがは船乗りの感ってヤツですか? だから、私も見た感じの初見を言ってみる。
まあ、初めから答えを知っているんですけどね。


「マリアの言う強襲揚陸艦ってのが本当だとすると、あの双胴はモビルスーツデッキってことかい?」

「そうなりますね。たとえ補給艦であったとしても、あそこにモビルスーツも入りますけど」

「って事は、連中もいよいよモビルスーツを実戦投入してきたってぇのか!」

「今回は、あの中には恐らくモビルスーツは入っていない気がしますね。積んでいてもルナツー向けの消耗品とかじゃないでしょうか」


コッセル、シーマ様を見習って落ち着け。どうどうどぅ


「マリア、どうしてモビルスーツを積んでないと言い切れるんだい?」

「ジャブローから上がってきたから、単純に宇宙用のモビルスーツは積んでないって思っただけです」


ごめんなさい、インチキ使いました。サイド7にガンダムを迎えに行って回収するのが任務です。とは、口が裂けても言えませんけれども。
なんで、そんなに詳しく知っているんだって突っ込まれたら、言い訳できませんし。
それに、まだこの時期の連邦は宇宙でのモビルスーツのノウハウがないのを分かっているから、言い切れました。


「それで、ルナツーは常時監視していますよね? ルナツー周辺宙域では連邦のモビルスーツは確認されてません」

「なるほど。例えジャブローで生産されたモビルスーツを搭載していたとしても、宇宙用のテストは地球では出来ないってことか」

「はい。我々の監視の目を掻い潜って、ルナルーの後方宙域でテストでもされていたら、話は違ってきますけど」


サイド7でテストしているのは知っているんですけどね。知っていて見逃していたわけではありませんよ?
私はちゃんとお姉ちゃん経由で、「サイド7が怪しい」って意見は言ったもん。
連邦が宇宙でMSのテストをする場合の宙域は、サイド7宙域しかないのは上層部も分かっていたはずなのに、どうしてこうなった?

答えは、連邦のMS開発の進捗状況を甘くみていた。これが多分正解だと思います。

私の意見は重く受け止めてはもらえませんでした。まあ、子供の意見だし、私には裏付けを取った正確な情報なんて取れないから、仕方ないよね。

「私は未来を予知できるのです! だから私の言うことを聞きなさい!」なんて言って、誰が信じるのですか?

信じれば救われるだなんて、どんなインチキ宗教ですか?

つまり、軍や官僚機構のような巨大な組織というのは、私のような子供の意見というか戯言では動かせないし、動いてはいけないのです。

それがまた歯痒いのですが。こればかりは、私にはどうにもできません。

私がファンタジー小説の主人公で、チートができるのなら、影の宰相としてギレンを裏から操って色々とできるのかも知れませんが。
まあ、それができたのなら、そもそも戦争なんか起こさせませんでしたけどね。残念ながら、ここは現実なのです。

っと、話が逸れましたね。最近、妄想が酷くて困ります。



「ルナツー後方宙域? 建設中のサイド7宙域か? 確かに、あそこなら連邦がテストするにはうってつけだが・・・」

「たとえ、あの艦にモビルスーツがいたとしても、敵はまだ宇宙でのモビルスーツ戦のノウハウが不足しています。叩くのなら早い方が良いかと思います」


木馬を撃沈するか拿捕できれば、取り敢えずガンダムの回収を遅らせれる。その間に、こっちはゲルググの数を揃えられれば、多少は有利になるはず。
試作機のYMS-14は既に完成しているのだから、史実よりは少し早くゲルググを配備できると思います。完成時期なんて知らないから、思いたいだけなのかも。


「マリア様だけれど、現在の我々はルナルー襲撃作戦の支援任務中ですぜ?」


コッセルの言う通り、シーマ艦隊はルナツーに嫌がらせをする途中なのです。その作戦のおかげで、たまたま木馬を発見できただけなのです。


「ルナツー支援任務と連邦の新型艦どちらが重要か? か。悩ましいね・・・ 通信士官、デラーズ閣下に通信を繋げ」


シーマ様の命令で通信士が本国の親衛隊本部との回線を繋いだ。



「シーマ中佐どうした、貴官はルナツー襲撃作戦の支援任務中であろう?」

「ハッ、その途中で連邦の新型艦をキャッチしましたので、報告及び閣下に判断を仰ぐ為に通信しました。詳細はこちらになります」


うん、デラーズ准将は相変わらずテカってるね。今度、油取り紙をプレゼントしてあげよう。喜んでくれるかな?

いくら指揮系統が独立している親衛隊の独立遊撃艦隊といえども、一度決められた作戦とは別の行動をするのは憚られるのです。
今回の作戦でいうと、ドズルの宇宙攻撃軍がルナツーに嫌がらせをする、その側面支援の為にシーマ艦隊は動いているわけですから、
いくら木馬がルナツーかサイド7に行くことが分かっていても、現時点での木馬の位置に、こちらから接近するとなると戦場離脱と判断されかねないのです。

わざわざドズル中将が親衛隊に頭を下げてまでして頼み込んで、本国で暇をしていたシーマ艦隊を支援任務に組み込んでいるのだから、今回の場合は、
独自指揮権を盾にした独断専行は特に憚られてしまうのです。

宇宙攻撃軍ってルナツー攻撃に戦力を割けないくらいに忙しいとも思えないんだけど。

それで、シーマ様はドズル中将の顔を潰さない為にも、わざわざデラーズ親衛隊隊長閣下にお伺いを立てているわけです。
司令官にまで出世すると、政治的なことまで考えないといけないだなんて大変ですね。

ギレン派の親衛隊、ドズル派の宇宙攻撃軍、キシリア派の突撃機動軍と地球方面軍。指揮系統が分かれているのです。
だから、階級が二つも上のドズル中将が一々デラーズ准将に頼んでいるわけです。

作戦毎に一々協定を結んでいた、どこぞの帝国陸海軍の姿とダブるのは気のせいですかね?



「そうか、ご苦労であった。ふむ、ドズル閣下の顔を潰す訳にもいかんしのぅ。貴官はそのまま連邦の新型艦を監視せよ。ドズル中将には儂から伝える」

「ハッ! 了解であります」


それから、デラーズ閣下より通信が入ってきて、木馬の行き先はルナツーなので、木馬の監視は一度解除して支援任務を継続せよとの命令がきました。
まあ、ルナツーとサイド7しか木馬の行く場所はないから監視する必要もないしね。

これで、史実通りにシャアが木馬の追跡をすることになるのかな?

でも、いま私がここにいる意味は?

ジオンが負けない為に戦っているのに、わざわざジオンのエースを数多く屠ることになる、強大な敵になるまで見過ごすなんて謂れはないよね。

アムロには、ほんのちょっぴり悪い気もするけどさ。

アムロが覚醒するのはマチルダさんが死んだ後だったはずだ。覚醒する前なら私でも勝てるか・・・ 殺っちゃう?


機動戦士ガンダム 1話 ガンダム大地に立てなかった ~完~


うん、これが一番ベストな方法だね! どうせ原作のガンダムも視聴率が悪くて打ち切りになったんだから、一話で打ち切りでもいいよね!



[41069] 11話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/26 11:39
UC 0079.09.18


機動戦士ガンダム 1話 ガンダム大地に立てなかった ~完~


そう思っていた時期が私にもありました。

どうしてこうなった?


あ、ありのまま、いま起こっていることを話すぜ! 私たちは木馬を追い詰めていたと思ったら、いつの間にか追い詰められていた。

な、なにを言っているのか分からないと思うが、私もなんでこうなったのか分からないわ・・・

頭がどうにかなりそうだよ・・・ 催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃ断じてない。

もっと恐ろしいものの片鱗を現在進行形で味わっているぜ・・・


なんで、ルナツーから艦隊が出てくるのよー! 史実では、あんたたち引き籠もっていたじゃないの!


現在、私たちリリー・マルレーンは支援任務終了後に補給を受けて、シーマ艦隊から分離して単独で先行してサイド7宙域にきています。
ちなみに、補給の関係でムサイは連れてこれませんでした。みんな真面目に支援任務しすぎです。

本命はサイド7だったのにとは、ボロが出そうなので言えませんけど。

そして、ルナツーから出てきたホワイトベース救援の艦隊から攻撃を受けています。





遡ること30分前~



sideホワイトベース


「また攻撃のようです」

「オペレーター、敵は?」

「接近する物体が二つあります。モビルスーツのようです」

「なんだ、ザクか?」

「一機のザクは通常よりも三割増しのスピードで接近します」

「シャ、シャアだ、あ、赤い彗星だ」

「は? 艦長、何か?」

「ルウム戦役で五隻の戦艦がシャア一人の為に撃破された。に、逃げろ」

「つ、続いて右後方からも多数接近してきます! こちらは、さらに速いです! 最大望遠出ます!」

「薄紫色のザクだと?」

「う、宇宙の魔女だ! ティアンム提督の艦隊がヤツの小隊だけで壊滅した。ルウムでも撹乱された後方は半壊した。に、逃げろー!」

「さらに多数の艦艇らしき物体も確認! こ、これは援軍です! ルナツーからの援軍です!」

「ガンダムを呼び戻せ!」

「無理です! ザクと戦闘中です!」



sideマリア


「ふっ、見せてもらおうか、連邦のモビルスーツの性能とやらを」

「教官殿には、私の独り言が聞こえていたのですか?」

「あら、久しぶりですね。シャア少佐殿。立派に出世して私も指導した甲斐がありましたね」

「お戯れを。教官殿こそ、特務大尉殿ではありませんか」

「ふふ、独り言は聞こえてないけど、やっぱりシャア少佐も言ったんだ。誰だって気になるでしょ、連邦の新型の性能は」

「誰もが気になるのは確かですね。てっきり、独り言が聞こえていたのかと焦りました」


独り言が聞こえてないのは確かですよ。独り言はね。でも、ちゃんとトレースしているんだ。ちょっと感動かも。


「独り言をオープンチャンネルで聞かれたら恥ずかしいよね」

「それは確かに。教官殿、敵はザクマシンガンの直撃にも耐える装甲と、戦艦並のビーム砲を使いますので、気をつけて下さい」

「ザクが爆散したところを見ていたよ。でも、撃てる回数が限られているのは、我が軍の試作ビームライフルと同じはずでしょ?」


我がジオンも連邦に遅れること2か月、この前ようやくエネルギーCAP技術を確立して、ビーム兵器の小型化に成功したのです。
まだ、不具合が出ているみたいで、量産化は来月以降にずれ込む予定ですが。

それで、ガンダム大地に立つ。これには間に合わなくて、既にジーンとデニムのザクは殺られていて、先ほどスレンダーのザクもガンダムのビームライフル
に貫かれて撃墜された。一足遅れてしまいましたけど、私たちも支援任務から継続しての行動だから補給が必要だったので、こればかりは仕方ありません。
リリー・マルレーンだけでも間に合って良かったと思いましょう。


「なるほど」

「私は連邦の新型とじゃれてみるけど、シャア少佐あなたはどうする? 一度後退しても文句は言わないわよ」

「では、マシンガンの残弾が僅かですので後退させてもらいます」

「貸してあげようか? あー、ごめん、そっちは120mmだったね。小口径でも90mmの方が性能いいのに、まだそのオンボロ使ってるんだ」


性能の良い装備は親衛隊に優先配備されて、まだ、MMP-80は一般の軍にはあまり回ってないみたいですね。縦割り組織の弊害なのかも知れないけど。


「そういうことです。お気持ちだけ頂いておきます。ジオンは貧乏ですから仕方ありませんが、教官殿からも一言言ってやって下さい」

「多分無理でしょ、私は親衛隊であなたは宇宙攻撃軍。所属も違うし子供の戯言と一蹴されるのがオチだわ」

「正しい意見に大人も子供も所属も関係と思いたいものですな。それでは御武運を!」


そう言ってシャアは、へんちくりん頭のファルメルに後退して行った。あれ? 史実でもそうだったっけ? もう既に昔のこと過ぎて記憶が曖昧だなぁ。

でも、もう史実は関係ない。私がガンダムだ! 私が、私の歴史を作るのです! アムロよさらば!


「04より05と06へ。敵は木馬に後退しようとしているが逃がすな! 05は魚もどきを殺れ! 06は援護を!」

「05了解!」

「06了解ー!」


ちなみに、シーマ様たちは木馬に向かっています。できれば拿捕したいですね。セイラさんクンカクンカしてみたいし。


「ふふ、モビルスーツの性能の差が戦力の決定的な差ではないということを、教えてあげます!」


遠目からシャアとの戦闘をチラっと見れたけど、動きがド素人だよアムロ君。まあ、この時点では素人で当たり前なのだけどね。
これから僅か1か月か2か月の短期間で、連邦の白い悪魔なんて呼ばれるようになるとは、信じられないくらいのド素人振りです。

逆にいえば、僅かな期間でエースパイロット以上の化け物になるともいうのだが。ニュータイプって怖いです。

さて、私の腕とこの子の性能で殺れるかな?

まずは、逃げに入るガンダムに対して私はバーニアをフルに加速させて接近する。どうやら、加速性能はMS-06R-2Sの方が上みたいです。この子って案外凄いのかも。
んで、ガンダムの後退先に牽制の射撃を加えて、逃げ道を塞いで誘導して、さらに接近する。

ふふふ、いまのアムロなら怖くはないですね。鴨ですよ!

あ、コアファイターが墜ちた。乗っていたのはリュウだったっけ? 南無三。

でも、死ぬのが1か月くらい早まっただけだから、べつにいいよね? 彼には思い入れなかったし、敵なんだし。

不謹慎でごめんなさい。


「05から04へ。魚の排除完了」

「04了解。できれば敵の新型を捕まえたい。新型と木馬との間を遮断しろ。木馬からのビーム砲に注意しろ」


まあ、木馬からビームはこないと思うけどね。あっちはあっちでシーマ様にボコられる寸前だし。


「05了解」

『リュ、リュウさん!』


ほう? コアファイターが墜ちたのが目に入ったか。素人のこの時点ですら視野が広かったんだ。というか、アムロ君、オープンチャンネルになってるよ。

ガンダムからビームライフルが飛んできたけど、二発で打ち止めだったみたい。シャアとの戦闘で撃ち過ぎたのね。

そして、私はガンダム目掛けてMMP-80、90mmマシンガンを連射した。

が、さすがにルナチタニウムなのかガンダリウム合金なのか知らないけれど、硬いです。表面が多少は凹みましたけど、それだけです。
120mmよりは効いてる感じですけども。まあ、メインカメラは壊しましたので、それで良しとしましょうかね。壊れたよね?

アムロが怯んだ隙に最接近してチャンバラゾーンに入る。

私はヒートサーベルを振り下ろしながら、


「怯えろ! 竦め! モビルスーツの性能を活かせぬまま死んでゆけ!」

『く、くるな、くるな、くるなー!』


本当に殺しはしませんよ? 捕まえる予定ですから。

振り下ろしたヒートサーベルがガンダムの右腕を間接から切断する。


『ひぃ!』

「脆い脆すぎる。鎧袖一触とはこのことか」


いくらガンダムとはいえ、ヒートサーベルで間接を狙ったら一刀両断できるのね。
本当の意味での返す刀で、今度は下から上へとヒートサーベルを振り上げて左腕も切断。

これでガンダムはあっけなく無力化した。

チョロかった。あっけなさすぎました。覚醒する前のアムロだったのが大きいのかも知れないけど。

ガンダムのネームバリューに気後れしすぎていたのかしら?

うーん、なんだか欲求不満です。もっと、こうなんていうのかな、ゾクゾクすると思っていたんだけどなぁ。
まあ、楽に倒せたんだから、良しとしますか! わざわざ苦労して倒すよりはマシだしね。


「04から05、06へ。敵の新型を無力化した。これより捕獲して連行する。05は切断した新型の腕を回収してちょうだい。06はビームライフルをお願い」

「05了解しました」

「06了解ー!」

「っ! 散開しろ!」

「きゃあ!」


私はゾワっとした感じがして咄嗟に散開を命じた。その直後にクレア機が寸前までいた場所を戦艦のメガ粒子砲が通り過ぎて行った。

艦砲だと? サイド7近辺に他の連邦大型艦がいたのか? いや、これは、


「リリー・マルレーンから撤退信号です。敵の援軍がきました! ルナツーからです!」

「ルナツーからだと!」


そして、冒頭の叫びとなったわけなんです。



「01から04へ。コッセルから撤退信号だ。ルナツーから敵の増援だ! 撤退するよ!」

「こちら04、こっちでも確認しました! 05、06撤退を優先する! 06機体の損傷は?」


シーマ様から撤退命令が出ました。幸いにもクレア機は外見上は五体満足に見えます。表面は焼かれている部分があるから、パーツ交換は必要かな。


「なんとか大丈夫です!」

「こちら05、敵のライフルだけ回収できました」

「レイチェル上出来よ! 連邦のパイロット聞こえているか? 聞こえていたなら返事をしろ!」


私は両腕が損傷したガンダムに後ろから抱き付いて、羽交い絞めにして"お肌の触れ合い会話"で、ガンダムのパイロットに話しかけた。


『こ、子供の声? 女の子?』

「声からしたら自分も似たようなものでしょ! 味方のビームで死にたくなかったら暴れるんじゃないよ!」

『あ、ああ、わかった・・・』


脅したらあっさりと大人しくなったあたりは、まだまだ未熟ってことだね。まあ、数時間前まではただの民間人の少年だしね。というか、いまも民間人か?

私はガンダムを抱えたまま、艦砲射撃の中を掻い潜りながら、リリー・マルレーン目指して駆け抜ける。
リリー・マルレーンは回避行動中で無事だ。さすがはコッセル、落ち着いているね。

これでガイドビーコンさえ出さなければ大丈夫だろう。


「04より05と06へ。メガ粒子砲も当たらなければ、どうということはない。慌てずに落ち着いて対処しなさい」

「05了解!」

「06了解しましたけど、怖いです」

「クレア中尉、装甲越しコクピット越しに、宇宙を、敵意を感じるんだ」

「な、なんとかやってみます」

「大丈夫、クレアならできるわ」

「おだてないで下さい」


ん? 似たようなやり取りを、どっかで前に耳にしたような。デジャヴ感が・・・


『凄い、これがエースといわれるパイロットの技量なのか。流石は宇宙の魔女だ』

「ずいぶん余裕があるのね? 技量もなにも、ただ飛んでるだけでしょ。それと、魔女とは失礼ね。こうみえても宇宙の蝶って呼ばれているのに」


ただ飛んでいるだけなのに、なぜだか尊敬されてしまったみたいです。死にたくないから直撃コースのは避けたけどさ。


『余裕はないけど、抱かかえられてるだけだし。蝶っていうより連邦では魔女以外には、アンタは毒蛾とか死神とかの呼び名もあったぜ』

「そう、酷い言われようね。あなた名前は? 私はマリア・アイリーン。それと、オープンチャンネル切りなさい。全部周りに聞こえていたわよ」

「うん? スイッチはこれか?」

「そそ、これで外には漏れないね。あなたの叫び声は丸聞こえだったのよ? それで名前はなんていうのかな?」


これで、お肌の触れ合い会話、接触回線で話している私とアムロ以外には会話は聞かれない。さて、二人だけの時間に、いろいろと聞いてみようかな?


「情けない声が漏れていたのか・・・ ああ、名前ね」


まあ、名前は聞かなくても知っているんですけどね。







































「カイ、カイ・シデンだ」



[41069] 12話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/26 20:19
今話はテストケースといいますか、会話文が9割以上を占める文章です。二人の会話をお楽しみ下さい?







『カイ、カイ・シデンだ』

「ぶぅー!」


あるぇ? なんでカイがガンダムに乗っているのよ!? アムロは? アムロはどこに行ったのよ?

どうしてこうなった?



「ブーはないだろ、ブーは。一応、日本の由緒ある名前みたいなんだぜ」

「アムロじゃないの?」

「アムロ? ああ、アイツなら多分ガンキャノンに乗っていたはずだぜ。君はアムロを知っているのかい?」

「君なんて他人行儀じゃなくて、マリアでいいわよ。知っているといえば知ってるのかな? サイド7で機械いじりが好きで有名じゃないの?」

「ジオンのスパイが入ってたのか。確かにその筋では有名かもね。それとガンダムに乗っていたのを結び付けるのは短絡的じゃないの? アイツも俺も民間人だぜ?」


スパイは私自身の記憶だけれどもね。それは秘密です。


「ほら、我が軍の攻撃で正規兵は壊滅して木馬に民間人が多数乗船したのは把握してたしね。動きが素人丸出しだし、操縦しているなら機械に強いアムロかなって?」

「なるほど、確かに最初はアイツがこれ、ガンダムって名前だけど、これを操縦していたのは正解だぜ。コロニー内でザクを二機倒したのもアイツだしな」

「その新型はガンダムっていうのね。それで、なんでカイが操縦してたの?」


ガンダム知ってますとも、ええ。


「アムロがブライトってヤツと喧嘩して、アムロの代わりに作業用ポッドの免許を持っていた俺が乗せられたってわけさ。それで、このざまだ」

「ふふ、カイあなたは運が良かったのかも知れないわね」

「まあ、君に殺されなかったのは運が良かったのかもね。死に掛けたけどさ」

「はじめから殺しはしない予定だったのよ? ガンダムだっけ? この新型を捕獲するのが目的なんだから」

「そっか、それで、これから俺はどうなるんだ?」

「あなた民間人よね?」

「ああ、そうだけど?」

「ふふふ、民間人にはね、戦時条約が適用されないのよ」

「もっと分かりやすく説明してくれよ」

「軍に所属する兵士は捕虜になっても、その立場が保障されるの。だけども民間人には、その保障が適用されないから、あんなことやこんなこととか、ね?」

「マジかよ!」

「ふふ、冗談よ。カイは私に捕まって本当に良かったと思うわよ? 私じゃなかったら、本当に拷問された可能性もあるのよ。冗談じゃなくてね」

「ジオンはそこまでするのかよ・・・」

「あら、私が連邦に捕まったのなら、私に兵士の立場があっても、犯されると思うわよ?」

「連邦軍がそこまですると思うのか?」

「こんなに可愛い乙女を見て、それが敵なら襲わない方がどうかしているわよ。まあ、それはともかく、ジオンは少しばかりやり過ぎたしね」

「自分で言っちゃたよ・・・ それに少しばかりじゃなくて、ジオンはやり過ぎだ!」

「条約なんて、ただの紙切れにすぎないのよ。それに、やり過ぎは自覚しているわよ? でもね、連邦が宇宙移民を虐めた結果がこれなのも事実なのよ」

「それは言い訳だろ!」

「ええ、言い訳ですよ。人はエクスキューズをしないで生きれるほど強くはないと思いますし。あなたは言い訳をしないで、いままで生きてこられたの?」

「それは詭弁だ」

「ええ、詭弁だと思いますよ。ところで、フラウ・ボゥはちゃんと木馬に乗れたの?」

「木馬? ああ、ホワイトベースの事か。ちゃんと乗ってるよ」

「そう、良かったわ」

「でも、なんでフラウ・ボゥの事まで知っているんだ、君は?」

「あら、あなたのお隣さんでしょ?」

「それはそうだけど・・・ って!?」































「嘘を吐くのは良くないわよ。アムロ・レイ?」











「な、なんで分かったんだ?」

「いま、アムロが自分でバラしたようなものでしょ? 危うく騙されるとこだったよアムロ君」


スレンダーのザクをカイが簡単に墜とせるとは思わなかったので、カマを掛けてみたけど、ものの見事に引っ掛かってくれましたね!

まあ、ガンダムから降りて顔を見れば分かるんだけどね。赤毛の天然パーマだったら、カイのわけないしね。


「誘導尋問に引っ掛かったのか、僕は・・・」

「自分がアムロなのは否定しないのね」

「もう君には僕の事バレているじゃん!」

「一人称が"僕"の方がアムロには相応しいわね」

「子供のクセに僕を馬鹿にして!」

「馬鹿にはしてないわよ。背伸びしてない等身大のアムロの"僕"って私は好きだけどな」

「からかわないで下さいよ、マリアさん」

「ふふ、初めて名前で呼んでくれたね。あなたとならジオンも連邦も関係なく友達になれそうだわ」


アムロを籠絡して飼い馴らさないと、こっちが将来的にヤバいですからね! でも、もう捕虜みたいなもんだから、飼い殺しでもいいのかな?


「ジオンも連邦も関係なく・・・?」

「そうでしょ? こんなクソったれな戦争は続いても精々あと一年程度で終わると思うの。そしたら、」

「そしたら?」

「ううん、戦争が終わるっていっても、ジオンの勝利で終わる未来が見えなくてね・・・」

「ジオンが負ける? いま宇宙を支配しているのがジオンなのに?」

「いくら宇宙の大半を支配してもダメなのよ」

「それは、また、なんで?」

「ジオンの人口は精々5億しかいないのよ」

「あ・・・」

「ふふ、分かった? アムロは賢いね」

「また僕を子供扱いした! 君だって子供のクセに・・・」

「ごめんごめん、そうじゃなくて、ジオンの人口を言っただけで、理解できたのは単純に凄いって褒めているのよ」

「そりゃあ、普通分かるだろ。国力の問題だろ?」

「それが分からない人が戦争を始めたと言ったらどうする? いや、分かってはいたけど戦争をせざるを得なかったが正解かな?」

「分かっていたけど戦争を始めるなんて、なんて無謀なんだ」

「それは多分ね、ジオン共和国そしてジオン公国の生い立ちからして問題があったのかも知れないね」

「国の生い立ち?」

「そうよ、話せば長くなるわね。それはそうと、私の母艦に着くわよ。アムロ、リリー・マルレーンへようこそ!」










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


読者のみなさんを騙したつもりはないんですよ? 感想がくる前に書き終えていたから、ビクビクして投稿しました(汗)

怒らないで下さい><





[41069] 13話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/27 05:33
「ずんぐりむっくりしてる艦だな」

「私は曲線が可愛いと思うけどな。セイレーン04よりルシファー01へ。着艦許可を願う」

「こちらルシファー01、着艦を許可します。マリア様お帰りなさい、大手柄ですね!」

「マリア様?」

「べつに、お姫様ってわけじゃないわよ? あとでまた、いろいろとお話ししましょ?」



ふぅー、無事に帰還できて、リリー・マルレーンも戦場離脱できたし、ガンダムも捕獲できて良かった良かった。

ククルス・ドアン准尉のザクが、メガ粒子砲で膝から下を吹き飛ばされて大破したけど、本人はピンピンしているから大丈夫でしょう。間一髪だったけどね。


というか、これで完全に原作から脱線したってことだ。私のアドバンテージは無くなってしまったけどね。


だけれど、それを差し引いてもガンダムを捕獲したのと、アムロを捕らえたのは大きいと思いたい。少なくとも連邦の白い悪魔と呼ばれるパイロットの誕生は
防げたのだから。

ガンダム一機の働きで戦争に勝てるというほど甘いものではないって、誰かがいってたけど、連邦のMSの性能はガンダム延いてはアムロの活躍って大きかった
と、私は思うんだよね。ガンダムの戦闘データをフィードバックした学習型OSの存在がなければ、ジムの動きは洗練されなかったんだから。

あの、殺られ役で雑魚のジムの動きが洗練されていたとは思えないけどさ。本当に、あの動きでガンダムの戦闘データをインストールしているのか?
疑問ではあるけど、あれでもインストールしてあったんだろうね。

逆に考えれば、アムロwithガンダムのデータをインストールされないジムの動きは、更に緩慢になるということです。

連邦の他のエースパイロットと言われる面々がガンダムを操縦しても、アムロ以上に乗りこなすことは無理でしょ?
学習型OSが学習不足になるのは、ジオンにとって有利になるね。

新兵や戦闘機からの機種転換訓練の時間も延びてくれるかな? それに、学習型OSのアシストが減るから、その分、操縦者自身の技量が問われるのです。

それでも、連邦の物量が脅威なのには変わりないのだけどね。こっちがザク一機作る間に、連邦はジムを最低でも五機は作れそうだもんね。

ギレン曰く国力比は、一対三十だからジム三十機か? さすがにそれはないと信じたいけど、物量チート怖いです。

うん、まさに戦いは数だね! 自分で言ってて虚しくなってきた・・・


それはさておき、

リリー・マルレーンのMSデッキに着艦して、ガンダムから降りてきたアムロとご対面。

うん、ほぼ想像通りの感じかな。


「初めまして、アムロ・レイ。マリア・アイリーンよ」

「き、君がマリア・・・」

「うん? もしかして想像していた私と違ったかな?」


アムロ君、ボーっとしてますよ? 顔が赤いですよ。もしかして私に惚れたとか? アンタにはフラウ・ボゥがいるでしょ? セイラさんはやらん!

フラウは良い子やでぇ。彼女は健気で尽くすタイプだよね。ちゃんと一本筋が通っているし。でも、彼女は顔に似合わず薄幸そうなんだよね・・・
いや、原作のイメージだけで見たことはないけどさ。
アムロには振り向いてもらえないし、ハヤトで妥協したらハヤトは死んじゃうし、養子にしたバカはデブリに突っ込むし。

イメージだけなら、セイラさんの方が薄幸そうなんだけどね。美人薄命? 違った、これじゃ短命でセイラさんが死んじゃう。


「ああ、僕と同じくらいか、僕より1つか2つ年上だと思ってたよ」

「私は67年生まれの12歳だよ。女の子はおませさんだから、声だけでは間違えても無理はないのかもね」


まあ、前世を含めたら既に40後半に入るしね。アムロが年上と間違えるのも仕方ないか。
それに、アムロの年頃の男の子は年上の女性に憧れる子が多いしね。マチルダさんマチルダさんって慟哭してたもんね。

あと、金髪さんか・・・ アムロ、モゲろ。

それに、その歳で小学生の女の子が好きとかだったら、病気だしね。いや、もっと大人になってからでも病気だけどさ。

シャアとかクワトロとかキャスバルとかさ。

そう考えればアムロは十分健全な中学生か高校生の男の子だね。ちょっとマザコンは入ってるみたいだけど、男はみんなマザコンともいうしね。
母性本能をくすぐるタイプなのかなぁ。アムロが頼りなく見えて女がほっておかないわけだ。フラウ・ボゥにセイラさんでしょ、ベルトーチカにチェーン・・・

ミライさんだって、アムロは恋愛では対象外だったみたいだけど世話は焼いてたみたいだし。
ハモンさんも、敵と分かっていながらアムロみたいな子がほしいなんていってたもんね。その夜はハッスルして、ラルは搾り取られたのかな?

あ! クスコ、クスコ・アルもそうだった! 彼女には、このリア充を会わさないようにしなければ!

そうなるとララァもか? まあ、彼女はどこにいるのか分からないけど。インドか? それとも、もう既にシャアが身請けしているのかな?

うん、埒が明かないから考えるのは止めよう。

それにしても、コイツ女が途切れたことないんじゃね? 爆発してしまえ!


それはそうと、

この身体に生まれて精神年齢が下がった気がするなぁ。これが、肉体に魂が引っ張られるってヤツなのか?

もともとの精神年齢が低いとか、子供っぽいとかは言わせない! がるるる。


「うん、マリアさんは落ち着いてみえるから、僕より3つ下には見えないよ」

「"さん"は、いらないわよ。それで、いろいろと質問されると思うけど、聞かれたことには素直に答えなさい。嘘を吐いたら殴られるわよ?」

「やっぱり殴るんだ。親父にも打たれたことないのに!」


ありゃ、ここでその台詞がくるんだ。ちょっと新鮮かも。


「素直に話せば殴られないわよ。ううん、私もできるだけ立ち会うから、私が殴らせないわ」

「マリアが僕を庇ってくれるってことなのか?」

「こうみえても、アムロを庇うくらいは私にでもできますから。でも、正直に話せばだからね? 嘘を吐いたら庇いきれないわよ」

「嘘か嘘じゃないかなんて、どう判断するんだよ?」

「その道のプロに掛かれば、簡単に分かるみたいよ。アムロは民間人なんだし、軍事機密なんて知らないのだから、心配しなくても大丈夫よ」


まあ、ガンダム自体が軍事機密の塊ではあるんだけどね。そのガンダムを操縦していたのが、民間人の少年。諜報部はどう判断するのかな?
アムロにニュータイプの素質があるって見抜かれる可能性は極めて高いか? でも、キシリアの手に渡すのは可哀想だな。

捕らえたのが私だから、私からお姉ちゃんに手を回してもらって、親衛隊預かりにしてもらうのがベストかな?
捕まえて、あとは知りません、諜報部に任せますでは、さすがに薄情だしね。

アムロの恨みを買うわけには行かないのは、私しか知らない秘密。その計算を抜きにしても、リア充のアムロを守ってあげないと私が人間として終わる気がする。

もう既に終わっている気がしないでもないけど。

でも、私の立場では民間人の少年一人すら、お姉ちゃんに頼らないと保護できないんだよね。私が保護される立場の人間だからなんだけども。

その、保護される立場の幼気な少女の割には、扱き使われている気がしないでもないのは、なぜですかね?


「それはそうと、アムロはハロを持っていたよね?」

「持っていたけど、ホワイトベースに置いてきぼりだよ」

「それなら、私のハロ一つあげるから、私のハロも改造してくれるかな?」

「マリアはハロを二つ持っているの?」

「三つ持っているよ。布教用と観賞用と実用とね!」

「そ、そう。布教用と観賞用の意味がいまいち分かんないけど、僕に出来る事だから、部品とPCを手配してくれれば改造は出来るよ」

「それは良かった。サイド3に着いたら、お願いするね」


アムロみたいな子は、自分の好きなことに没頭させた方が精神の安定には良いはずだしね! それに、アムロの組んだプログラムは応用できるはずなのです。

天才少年でニュータイプって、アムロはどんだけチートなのやら。天才的な頭脳は、さすがにガンダムを開発したテム・レイの息子ってことかしら?


「マリアちゃん、この人が連邦の新型のパイロットですか?」

「ええ、そうよ。アムロ・レイ君。アムロ、こちらは整備主任のメイ・カーウィン技術中尉よ。ふふ、あなたたちは多分、話が合うはずだよ」

「よ、よろしくお願いします?」

「こ、こちらこそ?」


二人とも、なぜゆえ疑問系なのですか?


「マリア特務大尉殿、まだ尋問も終わっていませんので、敵と仲良くするのは如何なものかと?」

「ごめんなさい。でも、もう彼は敵じゃないわよ」


士官の一人に窘められてしまった。正論だから反論しづらいではないか。この、しゃちほこばった杓子定規な士官には、あとで落雁をプレゼントしてあげた。

うん、良いことをしたあとは気分もいいね! 一日一善、昔の人は良いことを言いましたね。



[41069] 14話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/28 06:19
UC 0079.10


無事にサイド3に戻ってきてますよ。


木馬ことホワイトベースは、無事にジャブローに到着してしまったみたいです。

私がガンダムを捕まえちゃったから、シャアも追いかける必要がなくなっちゃったし仕方ないよね。

でも、アムロのいないホワイトベースをシャアが追っていたら撃沈されていた可能性もあったわけだから、これで良かったのかも知れない。
シャアもセイラさんを殺さずにすんだんだしね。フラウ・ボゥもミライさんも助かったし、これで良しとしよう。

男たちはどうでもいいや。

でも、連邦の最重要機密のホワイトベースに乗ったんだから、最悪の場合は、戦争が終わるまでは軟禁か監禁されるのかなぁ。


結局、アムロは保護観察処分に落ち着きました。本当は収容所送りだったんだよ。アムロ君、私に感謝したまへ。えへん。
まあ、連邦の新型MSガンダムを捕らえたのが私だったのも大いに影響したと思います。

普段は大人しい私が珍しく強引にアムロを庇ったのが功を奏したのかな? ザビ家三兄弟とお姉ちゃんにデラーズも、私の剣幕に引いていましたね。
ドズルさんなんて、


「マ、マリア、お、落ち着け。お、おまえの言い分は分かった」


おまえが落ち着けよって感じでしたし。
あとで、嫌がらせとかないよね? 特にキシリアさん、あなたですよ?

それで、アムロの身元引受人は私の父親が、後見人はセシリア・アイリーン、お姉ちゃんがなりました。未成年でアムロより年下の私じゃなれないしね。

お父さんモブでごめんなさい。

私がガンダムを捕縛奪取した戦功は、アムロの身柄保護と引き換えに相殺されてしまって、昇進は見送りです。トホホ。

正直なところ子供の私が、これ以上の昇進するのは立場上というか、組織全体を考えると非常に都合が悪いみたいですね。だって、考えてもみて下さい。
マリア特務大尉、12歳。通常の軍なら中佐同等の階級です。残りの上の階級って、大佐、准将、少将、中将、大将これしかないんですよ? これは異常です。

まだ若いとはいえシャアなら、大佐になったのも納得できなくもない年齢なのですが。それでも若すぎるけど。彼は一応は大人だしね。ロリコンだけども。
というか、この世界ではシャアの昇進は遅れそうかな? 主に私の所為だけどさ。

つまり、私の昇進は当分の間は望めそうにありません。グスン。
昇進したとしても、特務の肩書が付くのは尉官までなので、特務大尉→少佐だと、通常の軍での権限は降級と同じ気がしないでもないです。

まあ、いままで一度も他の部隊に越権で命令したことなんてないから実害はないんですけどね。

それに、士官学校を卒業または卒業と同等の成績を修めないと、佐官以上には基本的に昇進できない不文律があるのです。あと、戦功著しい人ですかね。

いくらジオンが実力至上主義とはいっても、ここらへんは旧世紀の各国軍隊と似ていますね。エリートは士官学校出に限る。
確かに無教養で無能な上官なんて敵よりも恐ろしいですしね。ましてや、その上官が自分は有能と勘違いした働き者なら、後ろから撃っても罰は当たらないと思います。

もちろん、士官学校を優秀な成績を修めて卒業した人が、すべからく優秀な軍人とは限りませんが。机上では優秀でも、前線では無能な人はたくさんいますしね。

逆に叩き上げで優秀な軍人が多数いるのも事実です。こういう人たちは前線指揮官にはピッタリです。あの名言、


「高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応する」


これができるのは、杓子定規な秀才君ではなくて、野生の勘を持った軍人なのですから。

しかし、学歴というのは篩にはなるのです。いかにボンクラを少なくするのか? これの答えが学歴なのです。


そんな私は中学一年生になりました。けど、学校に行く暇がありません! 制服を着てキャピキャピする私の青春は、どこに行ったんでしょうかね?
勉強はリリー・マルレーンの仲間や、親衛隊の士官が教えてくれて大丈夫なんですけどね。

小学生の分数の時点で躓いた時には、ショックでしたし恥ずかしかったですが。

分数なんて、前世は大人になってからなんて使わなかったもん! 本当に理数系の人には頭が下がります。

文系? 文系は十把一絡げでナンボじゃね?
そりゃ、もちろん文系の人はいないと困りますよ。でも、いすぎても生産性が落ちるんです。毎日残業6時間の兵器工場で頑張って下さい。
残業も生産性が落ちるってのは内緒です。

話が逸れた。


それで、件のアムロ君。彼は私の実家で同居しています。同棲じゃないですよ? 同居です。取り敢えずは戦争が終わるまでは、私の実家で生活します。

いくら彼がMSの操縦知識が乏しい中で、ザクを三機も撃墜している優秀なパイロットの卵でも、元敵性国民ですので、直ぐにジオン軍の兵士にするわけにはいきません。
まあ、万が一にも誘われても、本人が断ると思いますが。それに徴兵されることも無いでしょうけどね。

そんなニートで私のヒモのアムロ君はというと、現在、脱ニート宣言をしたのであります! パチパチパチ。

そう、ハロの改造プログラムが学習型OSの雛形なのです!

それで、ジオン公国軍、技術開発局システム部の臨時職員として、システム開発に半ば無理矢理、連れて行かれて働かされているのです。

ガンダムのプログラムの解析と併せて作業しています。ジオンの技術者もビックリするくらいの知識を彼は披露しています。

マジですか? というのか、いままでのジオン技術者がヘッポコだったのか?
もちろん、ちゃんとお給料も出てますよ? かなりの高給取りです。私以上かも? く、悔しくなんかないもん。

まあ、本人も楽しそうで、結果これで良かったのかも知れませんね。これにて、連邦の白い悪魔が誕生する目は完全に潰れたのであります。

アムロの息抜きがてら、仕事兼趣味のプログラムのテストにシミュレーターでMSの操縦はさせていますけどね。私からみれば、まだまだ未熟です。
シーマ艦隊でいうと、クレア中尉にも及びません。むっちークラスならばアムロの方が上ですけど。

あれでも、むっちーは親衛隊MS選抜に残って配属されているんだから、ネタモブの割には腕はベテランの域なんです。

何百回の訓練より一度の実戦ということなんでしょうかね? 彼は死線を掻い潜って強くなったのですから、シミュレーターでは、こんなもんなのかなぁ。
それでも、アムロの成長スピードは異常ですけどね。


それで、アムロの変わりといってはなんですけど、ジオンの薄紫の魔女として、私がガンダムを動かしています。

ゲルググの腕を付けたガンダムです。誰かさんが腕を切り落としちゃいましたからね。

模擬戦をやった結果は、


勝者左側


ガンダム(マリア) 対 MS-06R-2(シーマ)

MS-06R-2S(マリア) 対 ガンダム(シーマ)

MS-06R-2S(マリア) 対 ゲルググ(シーマ)

ゲルググ(マリア) 対 ガンダム(クスコ)

ガンダム(マリア) 対 ゲルググ(クスコ)


うん、二人ともイジけちゃいました。ごめんなさい。私では模擬戦の意味がないってレム主任や技官の人にも怒られてしまいました。
ゲルググは、YMS-14を使いました。

私だけには、


「モビルスーツの性能の差が戦力の決定的な差ではない」


これが当て嵌まるみたいです。これをオリジナルでいった人は負け続けたんですけどね。誰とはいいませんけど、誰とは。


結論を先にいえば、私にはガンダムは合いませんでした。なんていうのでしょうか? しっくりこないんですよね。

ジオンのMSに慣れているせいでもあるんでしょうけど、それ以上にフィーリングが合わないのです。
コクピットのモニターを一つ取ってもジオンの方が優れていますしね。それが慣れといわれればそうなんですが。

もちろん、ガンダムの装甲は丈夫なのは認めますけど、それだけです。

やっぱり、覚醒アムロwihtガンダムじゃないと120%の性能は引き出せないみたいですね。
マグネットコーティングが施されていないからもあるのかな? でも、それをいったら、ザクもゲルググもだしね。うーん・・・

まあ、学習させる為に私がブン乗り回してはいるのですが。あまり実戦では乗りたいとは思いません。

私の所見では、性能はゲルググとほぼ同等か、ややガンダムが上で、装甲はガンダムの圧勝。機動性と運動性はMS-06R-2Sが一番。こんな感じですかね?
ってことは、ザクを乗り続けた方がいいってことになるのか? あの子は特別にビームライフルも使えるしね。

そう、ビームライフルが遂に回ってきましたよ! ビームサーベルも装備できました! 本当に数年後のハイザックが霞んでみえますね。

予備弾倉が二つ減るけど、腰部のラックにマジンガンを引っ掛けて、ビームライフルとの二丁使いをする予定です。さすがに同時には使いませんけど。

来月には私以外のMS増強中隊の人は、ゲルググに乗り換えるみたいです。本来ならば私もなんだけれどもね。私はMS-06R-2Sでいいや。Fsかイェーガーなら欲しいけど。

キシリアさんのところのキマイラ隊には先月に配備されているのにね。まあ、あれはYMS-14だけどって、量産機よりも性能いいじゃん!
あれ、実質的にMS-14Sだもんね。

量産型のMS-14Aゲルググは、はっきりいって、MS-06R-2をデチューンしちゃっている気がします。ただ、ビームライフルとビームナギナタかサーベルを使えるだけ
の気がしますね。もちろん量産機ですから、整備性は格段に良くなっていますが。それでも、量産機ゆえの悲しさかな、MS-06R-2の良いところが半分以上スポイル
されています。それに目を瞑るだけの価値がビームライフルにあるかの? これは好みの問題なのかなぁ。

まあ、グルググMやJなら、またべつの話なんだけどさ。

私のMS-06R-2Sと比べるから、しょぼく感じるだけで、MS-14Aは量産機としては破格ではあるんですけどね。

ゲルググの配備が1か月早ければ戦争の結果は違ったものになっていた。なんて史実では言われてたしね。配備は早まっているよね?
もっとも、史実と違う結果といっても、殴り殴られの泥試合の展開が目に浮かぶのですが。

ガンダムは、どうしよう? シーマ様かクスコ大尉かルーデル中尉、もしくはロリコンに乗ってもらおう。

それで、ガンダムの装甲材のルナチタリウムですけど、ジオンで同じモノを作るには最低でも、半年から一年は掛かるそうです。
まず、治金技術が未熟なのと、生産設備が既存の設備を使えないとのことです。

それなら、多少強度は落ちますけど、いま既に生産中のチタンセラミック複合材を生産した方が効率が良いというのを、レム技術中佐から教えてもらいました。



「そういえば、諜報部から面白いネタが入ってきたぞ」


いまはシーマ様と一緒にティータイムなのです。コロニー産の茶葉だけれども、私の舌では地球産もコロニー産もたいして変わりがありません。
貧乏舌ではないですよ? なんでも美味しく食べれる最強の舌なんです。

ただし、セロリ、てめーはダメだ!

それに貧乏舌の本当の意味はアホって意味ですから。


「面白いネタですか?」


なんだろう? 私たちの間では、ただ単に諜報部というのは親衛隊諜報部のことです。いろいろな組織が独自で諜報部を持っていて、しかも情報の共有なんて
大切なことを知っているはずの、情報のプロが敢えて情報の共有をしていないという、性質の悪い部署が各諜報部なのだ。

おまえらは一体全体、誰と戦っているのかと問い詰めたい気分にさせられます。彼らの頭の中では連邦は二の次なんだろうなぁ。はぁ~。


「マリアはフラナガン博士を知っているよな?」

「はい、キシリアさん、キシリア少将のところで何度か実験に付き合わされました。デラーズ閣下を太らせた感じの人ですよね。シーマさんも一緒に行きましたよね?」


フラナガン博士、色の浅黒いハゲで太ったちょっと不気味なおじさん。あの人、肝硬変じゃないの? ってくらいに顔色が悪いです。地黒?


「そそ、そのデラーじゃなかった、フラナガン博士の研究所がサイド6にあるんだが、そこの博士が連邦に逃げ出してねぇ」

「連邦に亡命ですか?」


うん? なんか引っ掛かるな・・・?


「なんだか胡散臭い研究をしていたみたいで、キシリア閣下の配下が隠蔽工作に必死で右往左往していて、みっともないったらありゃしないさね」

「その博士の名前ってもしかして、クルスト・・・」

「なんだ知ってたのかい? そう、クルスト・モーゼスとかいったね」

「EXAM・・・!? 忘れてたー!」


やっぱりー! 忘れてた! マリオンだ! 彼女が犠牲になってしまった! 完全にド忘れてしてたー!
味方のニュータイプを一人潰してしまった。

マリオン救えなくて、ごめん・・・

私の記憶も、だいぶ薄れてきているみたいです。けど、私だって完璧チートでもなんでもないんだから、全部が全部救えるって思うのは傲慢なのかも知れない。
いや、"しれない"じゃなくて完全に傲慢だな。

私の手は、そこまで大きくない。手からこぼれるモノの方が圧倒的に多いのです。それに、知っていたとしても私になにができた? 相手はキシリアの管轄の
特殊研究機関だ。私では、マリオンをあの施設から出すことすらできなかっただろう。

うん、自己弁護終了。


「どうしたんだい? 急に大声を出して。お茶も零しちゃってるよ」

「いや、どっちみち連邦に逃げたのなら、もう手遅れですね・・・」

「もう一週間以上経っているから、研究したデータは、連邦に渡っているとみて間違いないだろうね。裏でコソコソするから鼠も入り込むのかねぇ」


でも、最終的にマリオンの意識って戻ったって話だったよね? それなら結果オーライ? 詳しく知らないから、これ以上首を突っ込むのは止そう。

私は神でも仏でもないのだから。



[41069] 15話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/29 10:53
UC 0079.11


宇宙でもチラホラとMS同士の戦闘が始まりました。作業用ポッドを改造した棺桶ことボールも大量に報告されています。

一機一機の性能は低くても、数は力になります。

地上では、いよいよ連邦の反攻作戦、オデッサの奪還作戦が始まろうとしています。

その対応の為にキシリアさんは、黒い三連星を含むドム2個大隊をオデッサに追加で配備したそうです。
ウクライナ南部は平地が多いのでドムは活躍できそうですね! 山とか森林が多い場所では、グフの方が取り回しが良さそうですが。

しかし、地上での戦闘では宇宙ほどMSのアドバンテージはありませんので、2個大隊程度の増援では史実通りに苦戦するんだろうなぁ。

私たち親衛隊第一独立遊撃艦隊はサイド3で、お留守番です。今世では、まだ一度も地球に降りていないので、いつかは行ってみたいですね。
恐らく、私がこの戦争中に地球に行くことはないでしょうけどね。

サイド3から、苦戦が確実な地球戦線を見ているだけなのも歯痒いのですが、仕方ありません。宇宙でも、連邦の反撃が始まっているのだから。

ここで、ジオン軍のMSの編成をば、


小隊→3機

中隊→小隊×4=12機

大隊→中隊×4=48機

師団→大隊×4=192機


基本は、これなんですけど、定員割れでも師団ですし、シーマ艦隊のように18機でも中隊だったりします。増強中隊って呼ばれているのはご存知の通りですよね。

キシリアさんが言った台詞で、


「黒い三連星だけで一個師団に相当する」


こんなのがありましたけど、そんなことは、ありえませんよね?

3VS192、これで勝てるのならジオンは既に連邦に勝利して戦争は終わっていますね。キシリアさんは酸素欠乏症に掛かってしまったのかな?

言葉の綾だとは思いますけど。

まあ、通常戦力の一個師団なのかも知れないけど。通常戦力ってなんだろ? ミサイルとか戦車とかかな?


ちなみに、連隊はありません。あえて連隊と呼ぶなら、2個大隊くらいの規模に纏まったのを連隊、3個大隊で旅団とか呼ぶんでしょうかね?

あと、MSの運用ですけど、師団単位での運用をすることは稀ですね。今回のオデッサの場合は、防衛戦で場所もオデッサ近辺と限定的です。
この場合の補給はオデッサがベースになりますので、基本的に補給の心配がないので、多数のMSを纏めて運用できるわけです。

これが、侵攻戦だと補給の関係で師団単位での運用は難しくなります。

当然、これは宇宙でも同じです。宇宙の方が厳しいともいいます。母艦の数が限られているわけですから。宇宙でMSを師団単位で運用しようと思ったら、
予備機を含めた場合はムサイ64隻、予備機も無しの全力出撃の場合でも48隻のムサイが必要になるのです。

いかにMSを師団単位で運用するのが難しいのかが、分かったかと思います。


それはさておき、

私たちシーマ艦隊所属のMS増強中隊はMSの更新です。新型に更新して、どうなったかといいますと、


MS-14Fs  シーマ、クスコ、ルーデル  シーマ様専用ゲルググってワンオフ機じゃなかったのね。

MS-14F  他のみなさん。


MS-14F、ゲルググ・シュッズスタフェル? 略してゲルググSS。ゲルググ親衛隊仕様って意味ですか? 外見はマリーネみたいな感じですけど。

スペックはといいますと、


MS-14Fs、ゲルググ・シュッズスタフェル指揮官機

ジェネレーター出力 1490kw 推力 89,500kg

武装は、MRB-110ビームライフル、腕部110mm速射砲×2、ビームサーベル、40mm頭部バルカン。臀部に予備でMMP-80マシンガン、大型シールド

増設プロペラントタンクは4基装備


もう、一年戦争では、ほぼ最強に近いMSといっても過言ではないですね!


MS-14F、ゲルググ・シュッズスタフェル量産機

ジェネレーター出力 1440kw 推力 69,000kg

武装は、ビームライフル、腕部110mm速射砲×2、ビームサーベル、臀部に予備でMMP-80マシンガン、大型シールド

増設プロペラントタンクは2基装備


うん、量産機としては、この機体も一年戦争では最強かも知れない。


オマケ

MS-06R-2S マリア・アイリーン  私の愛馬は凶暴です。じゃなくて、私の愛機は変わりません。MS-14Fsだったら欲しかったなぁ。グスン。


ゲルググは盾も標準装備になって、安心感が増しましたね。予備にお尻にマシンガンも取り付けてあって、ビームライフルの弾が切れても安心です。
てっきり、MS-14Aが回ってくるとばかり思っていたので、嬉しい誤算ですね!

それと、Fs機にはパーソナルカラーが設定されましたよ!

シーマ様は、紫色の胴体とカーキ色の四肢で、膝から下のカバーは紫色  多分、史実とおなじ配色みたいな感じ。

クスコ・アルは、ピンク。全身ピンク!  ピンクでもパーツによって色の濃淡はありますよ? 

ルーデルは、灰色と黒のツートン  ルーデルやったね! 脱モブだよ! まだ、台詞はないけどさ。

二人とも配色の構図はシーマ様とおなじ。

一般機は灰色がメインの塗装です。クスコ大尉のピンクのゲルググが目立ち過ぎます。

なぜ、ピンクにした・・・




UC 0079.11.10


いま私たちがいる場所は、地球静止衛星軌道にほど近い宙域です。

武運拙くオデッサでの戦闘は、ほぼ史実通りにジオンは負けてオデッサを放棄することで終わりました。もっとも、連邦軍も相応の出血は強いられましたが。

増援に送ったドム2個大隊が縦横無尽の活躍をしたみたいです。史実よりは善戦したのかな?

しかし、当然ですけど、こちらも無傷では済みません。

黒い三連星の一人、オルデガは戦死。ドム2個大隊も半数近くが撃破されて、残った部隊のうちオデッサから宇宙に脱出できたのは、僅かに12機のみでした。
残りのドムは、アフリカやアジアのジオン支配地域へと逃げ込んだみたいです。

まあ、ザンジバルやHLVの数が限られているから、全部のMSを宇宙に逃がすことなんて不可能だしね。ドムを宇宙に戻してリックドムに改修するよりも
地上で使用した方がメリットもあるから、アフリカとかで頑張って下さいとしか言えません。

既にゲルググの配備が始まっているからリックドムすら陳腐化するんだけどね。

私はドム系は、あまり好きじゃないですね。テストで乗ったけど、重く感じるんですよドムの動きって。
やっぱり地上用のドムを急遽宇宙用に改造しただけなのかなぁ。まあ、地上でのホバーは別かも知れませんけど。

所詮、リックドムはゲルググまでの繋ぎだしね。

ちなみに、ガイアとマッシュは宇宙に戻れた組みたいです。ジェットストリームアッタクは、どうするんだろ? 二人でやるとマヌケだよね?


それで、オデッサを脱出してきた艦艇の救出の為に、私たちも派遣されたわけです。

マ・クベが、


「ジオンは、あと10年は戦える」


とかいった、オデッサからの資源輸送船団の最終便の護衛と、イグルーで溺れていたMSの救助と回収が作戦目的です。

作戦目標が二つあります。この場合、どちらを優先すればいいのでしょうか? 参謀本部が下した答えは、


「どちらも救出しろ」


でした。おまえらいっぺん死んでこい!

二兎追うものは一兎も得ず。

小学生でも知ってる格言ですよ?

一石二鳥ですかそうですか。一挙両得、濡れ手で粟を狙いますか。弘法も筆の誤り、これは違うか。

とにかく、虻蜂取らずにならなければいいのですけど。

どうもジオン軍上層部は、旧日本軍臭がプンプンするんですよね・・・

それで、この場合の正解は、MSの回収を優先するが正解です。正確には、実戦を経験している熟練兵の回収です。優秀なパイロットは一朝一夕にはできないのです。
いくらシミュレーターで訓練できて、実機での訓練時間が短縮できるとはいっても、シミュレーターは所詮シミュレーターでしかないのです。

実戦に勝る訓練はなし。

MSは資源と部品と設備があれば簡単に作れますけど、兵を一から作るのには20年は掛かります。これは人間を作る場合か。
兵を養成して実戦で使い物にするにも数年は掛かります。
MSは破壊されれば、また作ればいいけど、熟練兵が死ねば補充は容易ではありません。

資源の回収よりも、人的資源の回収です。

まあ、余裕があれば資源輸送船団も救出しましょうかね。それに私たちの艦隊だけが出向いているわけじゃないんだし。
それなら、各々に明確な目標を与えた方が確実なのに、参謀本部ときたら・・・ 机上の空論に強くても、ね?

攻撃は馬鹿でもできるけど、防衛は馬鹿には務まらないのです。

グチグチいっても始まらないので、さっさと味方を助けに行きますか!


「ケルベロス04より05と06へ。浮いているHLVから脱出してきたモビルスーツをワイヤーに捕まらせろ。周囲の警戒は私がやる」


今回のコールサインは三つ首のわんこ、地獄の門番です。ブラックジョークにしても、溺れている彼らにとっては笑えないジョークだ。

それに、パーソナルカラーの機体が四機もいたらコールサインの意味もない気がするのだけど。


「05了解」

「06了解ー」


溺れている地上用のザクやグフやドムを、レイチェル機とクレア機が捕まえてワイヤーに誘導する。
ワイヤーで曳航するのは各小隊の予備機のコ・パイたちです。


「た、助かった。ありがとう!」

「安心するのは、まだ早いですけど、安心して下さい」

「どっちなんだい、宇宙の蝶さんよ?」

「私たちシーマ艦隊にお任せ下さいってことです! ちゃんとパゾクまで送りますから」

「親衛隊の精鋭なら、安心だわな」

「はい、添乗員付きで、サイド6、月経由のサイド3行きですよ」


私は地球から上がってきたモブABCと、それぞれに軽口を言い合う。あ、モブAは軽口じゃないか。

なんていうのかな、保育園の引率の保母さんと園児の関係? それとも、ドナドナされてる牛かな?

そんな光景があちこちで繰り広げられるなか、


「腐肉漁りがおいでなすったか、04から01へ。棺桶がきました。排除します」

「こちら01、確認した。護衛の各機はヤツらを本当の棺桶に入れてあげな!」

「04了解! でも、棺桶に入れれる死体は木端微塵になりますね」

「それじゃあ、あれがヤツらの棺桶そのものってヤツだねぇ」

「07了解! 敵さんは棺桶に入ったまま、お陀仏させましょうや」


おー、ヴァルヴァロに殺られる予定のクルトさんが喋りましたよ。そういや、彼ってビグロにも乗っていたんだっけ?

史実ではシーマ艦隊にビグロが配備されてたのか? ビグロなんか乗せたらリリー・マルレーンの予備機のスペース全部なくなるよ。
予備機が身動き取れないだけで、搭載自体はそのままでも可能か? MSって普段は格納庫の隅に立っているだけだしね。

ザンジバルにコバンザメビグロはできないのかな?


「クルトは仏教に宗旨変えしたのかい?」

「こちら10了解。01、俺が話した事があって07が興味を持ったみたいですね」

「そういえば、ナカガワは日本人だったな」

「04から護衛各機、おしゃべりもここまでです!」


まあ、お喋りしていても、みんなちゃんと行動しているんだけどね。


「14(ルーデル)了解! ヤツらをヴァルハラへ案内してやります!」

「16(クスコ)了解しました。それでは、私は敵の死体を岩に、暗礁に変えましょう」

「みんな今日は饒舌だねぇ」


05小隊からの護衛はメルダースじゃなくてルーデルです。専用機ですしね。ルーデルやったね! ついに台詞が付いたよ。モブ卒業だよ!

そうじゃなくて、私は、わらわらと湧き出た棺桶の群れの中に突撃したのです。少数ですけどジムもいます。


「味方は、やらせないよ!」


バーニアを加速させて、棺桶に接近してビームライフルを一撃。さらに接近して、


「ボールだけにボールのように蹴ってあげる! くらえ、オーバードライブシュート!」


ボールだけにボールのように、蹴り飛ばして、ピンボールかビリヤードのように他のボールに激突して、もろとも粉砕。
うん、駄洒落も冴えてるね! と自画自賛です。


「用途は正しく使わなきゃ!」

「特務大尉殿、それ、サッカボールと違いますよ?」


ルーデル中尉に突っ込まれてしまった。なぜ?

ビームライフルを節約する為に、マシンガンに持ち替えてセミオートで連射。機動性、運動性が最悪な棺桶相手には、


「目を瞑っていても当てれます!」

「いや、それ、普通は無理でしょ? できるのはマリアだけだよ」

「私には、オーバードライブシュートの意味が分かりませんでした」

「あはは、言葉の綾ですってば」


回線が開いているから、シーマ様たちに私の戯言が聞こえてたみたいです。ちょっと恥ずかしかったですね。クスコ・アルって突っ込み持ちだったの?


「04から01へ。雑魚は私が引き受けますので母艦とサラミスをお願いします!」

「あいよ、任された! 07と10は付いてきな! 14と16は04と共に棺桶を蹂躙しろ!」

「「「「了解!」」」」


こうして一方的な殺戮が始まりました。



[41069] 16話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/29 10:54
「まるでバスケットボールのスコアですね。ボールを棺桶とは、よく言ったものです」


実際にバスケットボールみたいに、90点とか入っているわけじゃありませんけどね。バスケなら相手も85点とか取れちゃいますし。
そんな戦闘があったのなら、両軍の戦力がすぐに枯渇してしまいますよ。

それで、国力に劣っているジオンが回復できないで終了です。


「ムロフシ投げまーす!」


ボールのキャノン砲を掴んでハンマー投げの要領で、ボールを振り回して投擲する。あそこまで、ブンブン振り回したわけではないですけど。


『ひ、ひぃー、目がー!』


クルクルと回りながら後方にいたジムに当たって、ジムもろとも爆散しました。


「ムロフシ金メダル確定です!」


これは戦場のストレス解消には丁度いいですね!


「マリア特務大尉、遊んでばかりいないで、ちゃんと仕事して下さい」

「ちゃんと仕事はしていますってば! ちょっと、ふざけただけです」


クスコ大尉に窘められてしまった。今度、彼女にも落雁をプレゼントしよう。うん、そうしよう。ニュータイプは脳を酷使しそうだからね。


「特務大尉殿の、おふざけで殺られる敵に同情します」

「それは私もルーデル中尉に同感ですね」

「二人ともヒドい!」


クスコ大尉とルーデル中尉に呆れられてしまいました。私は、真面目にふざけただけなのに。

というか、これでも一応は真剣に周囲を見てやっているんですよ? ただ、ムロフシごっこができるくらいに、連邦が素人すぎるのが悪いのです!
弾の節約にもなって一石二鳥の優れた戦術だと思うんだけどなぁ。周囲の目には遊んでいるようにしか見えなみたいで残念です。トホホ。

まあ、こんな戦い方は教本にも載っていませんし、仕方ないのかも知れませんけど。

それで、冗談で棺桶っていっているんじゃなくて、本当に棺桶に入ったままお陀仏にしかなってませんから。はっきしいって、ボールよりもセイバーフィッシュ
の方が危険度でいったら上の気がしますね。

連邦は、なんでボールを量産したんだろう? あれか? 中距離からの一方的な射撃が目的ってことか?
そのコンセプトなら、理解したくないけど棺桶でも十分に役に立つことは立つ。本当に理解したくはないけどね。

つまり、敵に接近されたら悪いけど死ぬ確率が非常に高いけど、ごめんね。てへっ というヤツだ。運が良ければ助かるだろうレベルの代物なのです。

作業用ポッドの生産ラインを流用できて生産性が高いから、取り敢えず作ってみました。これが、正解なのかも知れない。
その取り敢えず作った棺桶で、取り敢えず死んでこいだなんて、連邦兵に同情してしまいそうになります。

それでも、アウトレンジから一方的に攻撃できるメリットは大きい。数さえ揃えればだけれど。
その数を揃えれるのが連邦ということだから、理に適っているのか? 兵の人命を軽視さえすれば。

ボールを粗方片づけたら、ジムが出張ってきました。連携も戦術もお粗末すぎますね。
というか、ボールを後ろから督戦していた鉄のおじさんの国の政治将校に見えなくもない。その政治将校ことジムがようやく撃ってきましたよ。

お、あれがジムのビームスプレーガンか。

あれでは、ビームコーティングしている機体にはダメージ与えられそうにないな。
まあ、この子にはビームコーティングなんて高級な塗装は施してませんけどね。

ゲルググにはバイタルエリアと盾に、ビームコーティングが施されています。史実では、盾だけだったような? ジオンは人命尊重主義なのです。


人命重視のジオン軍に、あなたも就職しませんか? 笑顔が溢れるアットホームな職場です!

昇給年一回、賞与年二回、各種手当あり、戦功に応じて昇進あり、戦功に応じて臨時賞与あり、各種福利厚生あり、退職金あり、有給休暇取得あり。

アットホームな職場って美味しいんですかね? もっと他にアピールするところはないんですか?

それはさておき、


「04から14、16へ。敵のモビルスーツは威力は弱いがビームを使うから注意しろ!」

「14了解! ガンダムに似ていますけど、顔が違いますね」

「16了解。数もそこそこいますし、ガンダムの量産機じゃないですか?」

「ガンダムの劣化バージョンだろうね。でも、油断は禁物です!」


劣化も劣化、姿を消していたアイドルやタレントを数年ぶりにテレビで見たよりも劣化していますよ。あれはあれで、恐ろしいモノをみた恐怖を感じますけどね。
特に二十代後半から三十代に入る前後の劣化は酷いです。

まあ、テレビはスポーツとニュース以外は、ほとんどみないんですが。

は! 今世の私は白人だ。白人の劣化は凄まじいのです・・・ でも、お姉ちゃんをみていると大丈夫そうですけど。

けど、用心のために、これからはヒアルロン酸とコラーゲンでお手入れしようかな? プラセンタも有効かな?

イザベル・アジャーニみたいなのは、神の祝福を受けている以外のなにものでもないですね!

そうじゃなくて、


『薄紫のザク? 宇宙の魔女だ!』

『ば、化け物だ!』

『くるなくるなくるなー』


私はビームライフルを撃って、立て続けに5機のジムを墜とした。

ターキーシュート美味しいです。


「遅い、遅すぎる。しょせんは劣化ガンダムか」


ジムという名前はまだ判明してないから、ポロっと口を滑らさないようにするのに苦労しますね。

遅いというか、完全に棒立ちです。独立戦争記を彷彿させるくらいの棒立ちでした。宇宙なのに直立不動する意味が分かりません。
みなさん揃って、地球のN極を上にして立っています。
まあ、宇宙だから足下はないんですけどね。宇宙では地球の大地みたいにはいかないのです。逆さでも斜めでも構わないのですよ?

柔軟な思考でMSを操らないと死は直ぐにでも訪れてきます。


『鶏冠の付いた新型だ、こんなの聞いてないぞ!』

『ママ、助けて!』

『ジーザス』

『ア、アメリアー!』


ん? 変なのが混ざってないかい?

最後の台詞は、大気圏で燃えてしまった若ハゲの人か? いまはまだ学生じゃなかったっけ? 別人のアメリアさんを呼んだ別人だったのかな?

ルーデル中尉もクスコ大尉も、それぞれ2機を撃墜している。残りのジムは2機のみ。

MS-14Fs、ゲルググ・シュッズスタフェル、カッコイイです! いいなー、私も欲しいなー。でも、イェーガーやケンプファーも捨てがたいんですよね。
まあ、この子はこの子で扱いやすくて良い機体なんですけどね!

やっぱり、ジオンのMSには漢の浪漫が詰まっているよね! 連邦のMSなんて、敢えていうならカスですよカス。


「動きがまるで素人だ」

「そうですね。宇宙での操縦に慣れていないみたいです。04どうします、敵の新型を捕獲しますか?」


アムロwithガンダムの戦闘データをフィードバックした学習型OSを搭載していないから、ジムの動きが素人でも仕方ないよね。こちらには好都合ですけど。

それでも、スペック的にはMS-06Fよりは、性能的には上のはずなんだけどね。
もう既にMS-06Fも主力の座からは降りていて、ザクⅡF2、ザクⅡ改、リックドム、ゲルググとかが主力になっているから、いまさら感は否めませんが。

この程度の機体なら捕獲する意味もなさそうだし、残りの2機も血祭りにあげましょうかね。


「こちら04、我々の任務は友軍の救出だから、残りの敵も捕獲せずに撃破するよ」

「16了解しました。敵を撃破します」


残りのジムはクスコ大尉とルーデル中尉に譲って、私は周囲の警戒でもしますか。

どうやらシーマ様の方も終わったみたいですね。汚い花火だ。

たまやー





side クスコ・アル


不思議で不気味な子。

私が最初にマリア・アイリーン特務大尉(当時は特務少尉)に感じた感想だ。わずか11歳でジオンで一番のMSの乗り手だと言われた時には、
まさかと思って鼻で笑ったのでした。幼い見た目からは信じられないのは当然だった。

その甘い幻想は、模擬戦で木端微塵に吹き飛ばされてしまった。何度となく挑戦しても彼女には勝てないのです。これでも私のMSの腕は上から
数えた方が早い、正確に言えばジオンでトップ10に入ると自負していたのですが、そのプライドも11歳の少女によって砕かれてしまった。

彼女曰く、


「シャアよりも見込みはあるわね」


でした。

シャア・アズナブル中尉は、既に雨の海海戦でも活躍したジオンでも一二の腕を争うパイロットだ。その彼よりも見込みがあると言われて、あっけに取られる
やら、それでも嬉しいやら複雑な感情を抱いたものです。

開戦後の彼女の活躍は実力通りに言うまでもなく、当たり前のように、他のMSパイロットの何人分もの戦果を一人で上げてしまいました。

私には、他人の感情を少し感じることができる不思議な力があります。これが、ジオン・ダイクンの言っていたニュータイプなのかも知れません。
この力は、戦場で一番役に立ちました。敵の動きが読めるからです。もちろん味方の動きもです。

しかし、彼女の動きだけは読めないのです。普段、MSに乗っていない時の彼女の感情は、ある程度は読めるのですが、これは普通に、みんなも相手の表情を
見て出来るともいいますが。
彼女がMSに乗ってしまうと読めなくなります。他の人の場合は装甲越しにでも感情を読めるのに不思議です。まあ、私の力も不思議なのですが。

まるで、機械そのものみたいに感情の流れが見えない、感じられないのです。もちろん、回線を繋いで会話をしている時は読めるのですけど。

これが敵だったらと思った時には、背筋に冷たいものが走りました。

それでいて、彼女自身は敵の動きを完全に読めているのですから、はっきりいってズルいですよね。私の力なんて、ちっぽけなモノだと思い知らされます。

敵として戦場では絶対に出会いたくはありません。味方で良かったです。

何が言いたいのか纏まりませんけれども、

たまに、しょっちゅうかな? 可笑しな事を言ったりする不思議な子。今では不気味と思っていた感情は消え失せてしまいました。不思議ですよね。

そんな彼女は、今でも私の大事な同僚です。





side マリア


「04から01へ。敵の排除を完了しました」

「01了解。こっちも終わったから帰還する」


私たちの受け持ちの範囲での友軍の損害はHLV一隻のみ。他の宙域でも7割は友軍を救出できているみたいです。
これで、あとは資源輸送船団を護衛して帰るだけです。

帰るまでが遠足ですから、気を引き締め直していきましょう。



[41069] 17話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/29 21:20
「シャア少佐、あなた下げチンなの?」

「さ、下げチンとは・・・?」

「ちょっと小耳に挟んだんだけどね、一部の兵たちには、そう噂されているみたいよ。女を不幸にするのが下げチン野郎なんですって」

「それはまた、誰がそんな根も葉もない噂を。教官殿も真に受けないで下さい」

「女を不幸にするなら、あなたとの付き合い方も考えないとね。ほら、私も一応は女なんだしさ」

「私は、いままで女を不幸にしたことなんてありませんよ。それで、誰が言ったのか分かりますか?」

「私はポ・ギャン少尉から聞いたわ」

「彼ですか。ふむ、今度お礼をしておこう。ふふふっ、フレンチ系にはカエルと蝸牛が丁度良いか」


ポ・ギャン逃げたほうがいいみたいだよ? アステロイドベルトまで逃げるんだ!

あ、ギャンは置いていって、ポだけで逃げてね。ギャンはガルバルディに必要ですからって違うか。


「ところで、シャア少佐」

「なんでしょうか?」

「下げチンってなんですか?」


上げマン下げマンの男バージョンですかね? 知ってて聞いている私も性質が悪いのは自覚していますよ?


「教官殿には、まだ早いかと・・・」



UC 0079.12


お元気ですか? ジオン公国のメガアイドルことマリア・アイリーンです。

先月末には、ジオン北米方面軍がジャブローを攻撃して、連邦軍ジャブロー基地の半分近くを破壊しました。

我が軍も半数近くのMSが撃破されて撤退を余儀なくされ、最終的にはジャブロー攻略は失敗に終わりました。

アムロwithガンダムがいないのに、ここまで史実をトレースしなくてもいいのに。そう思うのですけど・・・

しかし、ジャブロー地下にあるMS生産工場を半壊させたので、連邦のMS生産能力も多少は落ちたことでしょう。
これは、史実にはなかったことのはずです。アカハナには拍手を送りたいですね! パチパチパチ。

まあ、数か月で元通りの水準まで、いや、それ以上の水準にまで復活するのでしょうけど。
1ヶ月や2ヶ月の生産の遅れなんて、連邦にとっては誤差の範囲なんでしょうね。

本当に、国力の差が実感できると嫌になりますよね。

それで、ジャブローを発進した連邦艦隊はルナツーに集結して、連邦の次の攻撃目標がソロモンの可能性が極めて高いことが判明しました。

宇宙艦隊400隻とか、バカなのアホなの? これだから物量チートってヤツは・・・

まあ、我がジオンも200隻を揃えたんですけどね。
戦時国債乱発してハイパーインフレが発生しないんでしょうか? 心配です。統制経済なら大丈夫なんですかね?

シャハトさんに期待しましょうか? というか、そんな人はいなかった!

まあ、ギレン総帥がなんとかするんでしょうけど。彼のIQは240らしいですから。

戦力比は単純に、1対2だと思ったそこのあなた、あまいです。ホットケーキにメイプルシロップを掛けて、その上からさらに、
チョコレートを溶かしたのと練乳を掛けたくらいに甘いですよ!

そんなホートケーキは、食べたくはありませんけど。

ジオンは、ソロモン、ア・バオア・クー、グラナダ、サイド3に戦力を分散させて配置しなけらばならないのです。
それを考えれば戦力比は、1対8になってしまいます。単純計算ですけどね。

いくら、連邦の攻撃目標がソロモンと分かっていたとしても、他の場所に陽動がないとは言い切れません。そこに戦力を置いてなければ、敵に落とされてしまい
かねません。ですので、精々グラナダと本国から2割か3割程度の増援をソロモンに送ることしかできないのです。

私が大将なら7割は増援に送っちゃいますけど。

まあ、連邦もソロモンに全戦力を送ることはないでしょうから、戦力比は、1対3か1対4ぐらいなのかも知れませんが。
これなら案外いける? いけそうに思えなくもないですね。


そんなこんなで、

我がジオンは現在、MSのOSを書き換えしている最中です。ガンダムの学習型OSにフィードバックしたデータを他のMSに移植しているのです。
MS一機づつに独自に学習型OSを搭載しているわけではありませんが。これは、下手な動きで上書きするのを防止する為ですかね?
マリア・アイリーンwithガンダムが、ブン乗り回した記憶をインストールしているのです。

これで、新兵でも自動である程度はベテランの動きができるのです!

私って、なにげに凄くね? 私=ジオンのMSの基本戦闘行動ですよ!
これはもう、ボーナスで1000万$ぐらい貰ってもいい気がしてきました。くれないかな~? くれないだろうな・・・ しょぼん。

これが、MS-06R-2Sの戦闘データだったのなら、さらに優秀な結果が出たんですけれども、それは言わぬが花ですかね?


それはさておき、

私にも遂に新型が回ってきましたよ!

MS-14JGs、ゲルググ・イェーガー マリア・アイリーン専用機です!

ガンダムの学習型OSをコピーしたOSを搭載しています。これで、私の実戦データをフィードバックして戦力の底上げができますね!

次に一般兵が乗る機体のOSの更新は、このイェーガーでのデータを更新に使えますね。
多少、モルモット気分なのは秘密ですけど。

ガンダムはお役御免です。というか、乗りたい人もいないのです。まあ、鹵獲機ですし、ジオンと操縦系統が違いますし、予備の部品もありませんしね。
データ取りの犠牲になったのだ、ガンダム君は。

当初は私が乗る機体は、MS-18E、ケンプファーの予定だったのですが、増設プロペラントタンクを設置する場合の塩梅が悪いらしくて、イェーガーになったそうです。
まあ、ケンプファーは強襲型の特殊な局地戦用の機体みたいだし、稼働時間がネックになるから、仕方ないのかな。

でも、ケンプファーも乗ってみたかったなぁ。ゲルググが騎士としたら、ケンプファーはまさしく闘士そのもののフォルム、厳しい武人。
あれ? 騎士はギャンだったっけ? そしたら、ゲルググは何になるんだろ? 紳士? 変態?

まあ、この子はイェーガー、狩人ですけどね。ふふふ、何人たりとも私の得物からは逃げきれない獲物なのだ!

ちなみに、イェーガーのプログラムはアムロ君が頑張ってくれました! 数字とアルファベットの羅列をイジッているだけなので、ジオンに協力しているって
実感が湧かないのがミソですね!

彼曰く、


「夜に寝るときに目を瞑っても、瞼の裏で数字が動いているんですよ。ハロにも『アムロ、ノウハレベル、ミダレテル』って言われてしまいました」


だそうです。うん、アムロは頑張ったね。今度、彼にはご褒美をあげないといけませんね。

落雁じゃ可哀想かな~? うーん、ご褒美は、わ・た・し?

うん、想像したけど、いまは無理。それにまだ私は子供だしね。TS転生の弊害を思い知らされました。

身体は女で、心は? 心はどっちなんだろう・・・?

そのまえに、私は硬派なガンダムの主役を目指して、この戦争を戦っていたはずなのだ。硬派なTS戦記とはなんぞ? という突っ込みは受け付けないです。

うん、この問題は戦争が終わるまで先送りにしましょうかね!

そんな、MS-14JGs、ゲルググ・イェーガーのスペックはというと、


ジェネレーター出力 1490kw 推力 178,500kg

武装は、ビームマシンガン、腕部ビームスポットガン×2、ビームサーベル、40mm頭部バルカン、臀部に予備でMMP-80マシンガン

増設プロペラントタンクは4基装備

姿勢制御バーニアも24基付いてます。


盾は? 大型シールドはないんですか? 機動性が落ちてもいいので、盾を下さい! 盾は安心感の保険なんですよ!
ほら、こんな幼気な少女を酷使しているんだから、盾ぐらい装備させてもらっても罰は当たりませんよ? ジオンのスーパーアイドルを危険な目に遭わせるんですか?
いざという時には、盾を放棄すれば機動性も戻りますし。

私が必死に訴えた結果、

大型シールド

オプション装備を勝ち取りました! パチパチパチ。

それにしても、ジェネレーター出力と推力の相関関係は謎です。私の頭では分かりません。まあ、機動性と運動性が良くなったから良しとしましょう!

ビームマシンガン、これは、ビームライフルをズキュンと一発撃った時のビームの長さを、20分割したと考えて下さい。ビームライフルが15発撃てるとしたら、
20倍ですよ。20倍! まあ、これはセミオートで一発一発チマチマと撃った場合ですけどね。それでも、一連射5発でもビームライフルの4倍の60発は撃てる
計算になります。その分、威力は低くなりますけど、ビームライフルのビーム自体がオーバーキルでしたので、一連射でも十分に威力はあります。

MS-14F系の110mm速射砲の代わりに、ビームスポットガンが腕部に装備されています。これは接近戦の時にズドンってできそうですね。うふふ。

残念ながらガンダムを参考にしたフィールドモーター駆動は、MS-17ガルバルディまで持ち越しです。
まあ、イェーガーもゲルググだしね。仕方ないよね。

マグネットコーティングはMS-11アクトザクですかね? もう既に少数だけれども、この二種類のMSはグラナダには配備され始めているみたいですね。

MS-17ガルバルディ、別名は国民モビルスーツ。なんだか、壮大な負けフラグ臭のする愛称なんですけど・・・

He162ザラマンダー、別名は国民戦闘機フォルクスイェーガー。ナチスドイツの末期戦とおなじ愛称の付け方なんてギャグでも笑えないよ。

でも、ガルバルディは一般兵向けの量産機の割には、既存のMSの性能をほぼ全ての面で凌駕している高性能の機体に仕上がっているという噂です。
私もまだ乗ったことがありませんので、なんともいえませんけど。そのガルバルディが、これからのジオンの主力になることは間違いなさそうですね。

イェーガーに乗り換えたばかりなのに、さらに新しいMSに目がいっちゃうなんて、私は浮気性なんでしょうかね?
いえ、MSは浪漫なんですよ。浪漫。

しかし、この子、MS-14JGs、ゲルググ・イェーガーは良い機体ですね。宇宙空間に特化した機体に仕上げれば、ここまで動けるんですね。
マグネットコーティングなにそれ? 美味しいの食べれるの? こんな感じですよ。

ガンダムよりも装甲以外の面では全てにおいて、この子の性能の方が上ですよ。もはや、ガンダムなんて恐るるに足らず!

うふ、うふふふふ。


「地球連邦軍に如何ほどの戦力が残っていようと、それは既に形骸である。敢えて言おう、カスであると!」


いまなら、ギレン総帥の演説の大言壮語も理解しちゃいますよ。このレベルのMSは連邦では、5年後でも作れないでしょうね。


「マリア特務大尉、また独り言が漏れていますよ」

「げ! レム主任、聞かなかったことにして下さい」


どうやら、また回線が開いたままの状態で興奮して、独り言をしゃべってしまったようです。


「そう言われましても、既にお姉さんの、セシリア殿の額に青筋が・・・」

「マリア! あとで総統府まで出頭しなさい!」

「なんで、お姉ちゃんが聞いてるのよー!」


なんで、出頭しなくちゃいけないんですか、お姉さま!


「たまには私も視察しますよ」

「ふむ、その台詞は使えるな。今度、演説する時にでも借用させてもらおう」

「げぇ!」


いや、その台詞はあなたがオリジナルですから! とは口が裂けても言えませんよね・・・
というのか、なんでギレンまでいるのよー! 秘書のお姉ちゃんがいれば、ギレンがいるのは当然かぁ。


「マリア、総帥に向かって『げぇ!』はないでしょ! 『げぇ!』は!」

「モビルスーツのテスト中の回線に割り込んでくる、お姉ちゃんたちが悪いんでしょー!」

「ふむ、それもそうだな。マリアは操縦すると人格が変わるみたいだしな」

「私は戦闘狂ではありませんよ。多分だけど・・・」


ギレンも失礼なヤツだな~。さすがはグレミーの父親ってことだね!

その後に、お姉ちゃんの小言をグチグチと聞かされたのは言うまでもありません。主に、淑女の嗜みは~うんたらかんたらと小一時間。

今月のお小遣いもカットされてしまいました。なぜです!?




[41069] 18話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/30 16:27


バリバリバリッ!


「くぅ、こうも数が多いと間に合わない!」


いま、私がなにをしているのかというと、大型シールドを前面に押し出して鏡を割っています。そう、ソーラーシステムのミラーパネルです。
このミラーをできるだけ数多く割らないと。ソロモンの被害が増えてしまうのです。

なんで、こんな事態になっているかというと、



UC 0079.12.22


「ソーラーシステム?」

「そうだ。サイド1の暗礁宙域の手前に設置して、ソロモンを焼くつもりらしい」


シーマ様の話を聞いている私は、遠い昔の前世で見たアニメの映像を、記憶を底から手繰り寄せる作業をしています。

やってしまった・・・

ソロモンはビグザムのイメージが強すぎて、ソーラーシステムのことが頭から抜け落ちてた。私の中ではソーラーといえば、ソーラレイだったし。


「太陽の光を集約して虫メガネみたいにですか?」

「反射させる点が違うけど、似たようなモノだな」

「ミラーの数を揃えれば、核兵器より性質が悪そうですね」

「一応は南極条約には抵触しないからねぇ」


皮肉げな笑みを浮かべながら、シーマ様が言うことは正論ではあるのです。そう、条約違反ではない。違反ではないのだが、ルールの網の目を掻い潜った
みたいな兵器の使用ではあると思う。

けれども、


「戦争なんて、ルールがあってないようなものですからね」


戦争にルールがあること、それ自体が馬鹿らしいと思うのです。なにをやってもいいのが戦争です。ルールを作って戦争なんてするなら、はじめから戦争なんて
しなければいいんです。勝つ為には、なにをやっても許される。これが戦争なんです。

もちろん、負けた場合には戦争中の行為に対して、行為の正当さいかんに拘らず報復措置は取られますけど。
歴史は勝者が作るのだから。敗者には、その権利すら与えられないのが戦争です。

まったくもって、度し難い愚かな行為だとは思いますけど。


「既に、そのミラーを輸送する船団を何度か襲撃しているのだが、輸送船の数が多いうえに護衛も大量に付いているから、」

「戦果が芳しくなかったと?」


情報の共有ができてないから、今頃になって、ようやく私たちの耳に入るのだ。

陸海軍相争い余力をもって米英と戦う。

本当に、これと似たシチュエーションがジオンでも起こり得るとは・・・ 本当に笑えない冗談ですよ。
宇宙攻撃軍も突撃機動軍も、一体全体なにやってんだか。メンツの為にジオンが負けてたら意味ないでしょーが!


「そういうことだ。それでも二割は沈めたらしいがな」

「それで、我々はソーラーシステムの照射を妨害するのが、任務ということですね」

「うむ、全部を破壊するのは無理でも部分的にでも破壊出来れば、その分ソロモンの被害は減るからね」


それで、私たちシーマ艦隊は宇宙攻撃軍と共同で、サイド1宙域のソーラーシステムの破壊任務に繰り出したわけなのです。



UC 0079.12.24


持ってて良かった大型シールド。ミラーが多い日でも安心。

『ミラーを割らせるかよ!』

「邪魔をするな!」


ソーラーシステムを警護しているジムが無謀にも邪魔をしてきたので、私はジムに向けてビームマシンガンを一連射した。
その行動をしつつも、ミラーを割るのは止めない。

直撃を受けて爆散するジム。

勇敢と無謀を履き違えた愚か者めが。
まあ、心意気だけは認めてあげなくもないけれども。でも、自分の命が大切なら、臆病さがないと生き残れないのです。

その点について私はどうなんだろう? 自問自答しても答えは出そうにありません。細心の注意は払っているつもりではありますけど。
"つもり"なだけかも知れませんし。死にたくはありませんが、戦争をしているのですから、命に対しての絶対の保障はありません。

命が惜しければ戦争なんかに出ないで、サイド3で大人しく少女として過ごしているのが、正解だったのかも知れませんけれども。

まあ、考えるのは止めましょう。それよりも、目の前の戦場を生き残ることに集中しなければ。


「そこ、どこを向いている!」


他のMSに気を取られていたジムを撃ち抜く。爆風とジムの残骸で周囲のミラーが割れる。案外と効率は良いかも知れない。

雑魚ども、もっと掛かってこい。

連邦も熱量兵器とは姑息な真似を、といいたいですが、我がジオンは、それ以上の熱量兵器ソーラ・レイ、コロニーレーザーを準備中ですので、文句はいえません。
既に、シーマ様の出身コロニーのマハルでは強制疎開が始まっているみたいです。


『鶏冠付きの薄紫だと!? 宇宙の魔女の新型だ、逃げろー!』

「私から逃げるのは正解だけど、ちょっと遅かったみたいだね」


私に背を向けて逃げるジムに向けて一連射をかます。逃げる敵を撃つのは趣味じゃないけど、その逃げた敵は、また別の場所で味方に銃を向けるのだ。
だから私は、躊躇なく引き鉄を弾く。


「16から04へ。ミラーが微調整を始めました!」

「コントロール艦を殺って! コロンブスの中のどれかよ!」


最初からミラーを割らずに、コントロール艦のみに狙いを絞れば良かったのか? いや、コロンブスの数も多すぎて撃ち漏らす可能性が高いか。
コントロール艦は区画ごとにいるはずだ。


「16了解しました。しかし、コロンブスも数が多いです」

「クスコ大尉ならできるでしょ! 感じるのよ!」


私にはクスコ・アル大尉みたいなニュータイプ能力がないから、こういう時は不便だ。私も、なんとなく勘で分かるけど、それは、あくまでも勘だ。
ニュータイプのように人の感情までは読めないのだから。


「ご存知でしたか。分かりました、やってみます」

「下卑た笑みを浮かべているヤツが本命のはずよ!」


間に合え。


「16から04へ。ビンゴみたいでした」

「04了解と、いいたいけど、まだ制御されているね。潰せたのは一部分のみか? ・・・あれもか!」


間に合え、間に合え。

私はバーニアをフル加速させてコロンブスに接近する。Gがベルト越しに肩へと掛かる。地上では完全に失神モノのGだ。178,500kgの推力は伊達ではないのだ。


「墜ちろ!」


チュドンッ! ビームマシンガンの連射で、コントロール艦と思しきコロンブスは撃沈した。


「ミラーが!」


間に合え、間に合え、間に合えー!

私はビームマシンガンを腰のスカートに引っ掛け、瞬時にビームサーベルに持ち替え、迎撃にくるジムに向かって、


「私の邪魔をするなぁー!」


横一線、ビームサーベルを振りぬいた。

あっけなく爆散するジム。その場には私は既にいない、通り過ぎたあとなのだ。
遅い、遅すぎる。ジムの改良型とはいえ、所詮はジムでしかなかったみたいですね。あれが、ジムコマンドだったのかしら?


『ば、化け物だ! 相手にするな逃げろ!』

「逃げるなら、はじめから出てくるな!」


立て続けに6機のジムを撫で斬りにして残骸に変えて、コントロール艦に接近する。再度ビームマシンガンに持ち替え連射して、コロンブスは轟沈する。

この子はイェーガーなのだから、中距離から狙撃しても良かったのかも? そう、思わないこともないが。

私が、さらにもう一隻のコントロール艦を沈めた時に、ミラーが白い熱を帯び始めた。


「01から各機へ。時間切れだ! ミラーの裏に退避しつつ後退せよ!」

「くっ、連邦のウジ虫どもめ・・・」


私は、ソロモンがソーラーシステムの照射で焼かれていくのを見ながら、この戦争が始まってから初めて無力感を覚えた。
アムロがいようといまいと、連邦の物量の恐ろしさの一旦を目の前で見せつけられているのだから。

私一人の力なんて、たかが知れていると。

あの言葉を言ったのは誰だったかな? マチルダさんの婚約者の人だったかな? 生きているのだろうか・・・ って!
いまもソロモンで味方が蒸発しているのに、敵に同情するなんて私は馬鹿だ。

もう、史実やら原作の登場人物やらを考えるのはヤメだ。そんな考えでは、死んでいった味方の兵が浮かばれないし、失礼だ。

セイラさんもミライさんもフラウ・ボゥも敵として会ったのならば、それ即ち敵だ。


「ソ、ソロモンが!」

「ソロモンが焼かれていく・・・」

「とんだクリスマス・イヴになっちまったねぇ。 各機、周囲の警戒を怠るな!」


周囲の警戒をしつつも、私はソロモンが焼かれていく光景を目に焼き付けていた。




[41069] 19話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/03/31 14:36


ソーラーシステム破壊任務での戦闘で、04小隊の三番機のゲンダ伍長が戦死しました。いまのところ、私たちのMS増強中隊での戦死者は04小隊ばかりから出ている
から、04小隊は被害担当小隊とも揶揄されています。

だけども、これからの戦闘で他の小隊から犠牲者が出ないとは、言い切れないのが戦争だ。


「ドズルさん、こんなトコでなにしてるんですか! エネルギー切れのビグザムなんて、ただの大きい的ですよ!」

「マリアか? いや、推進剤が切れてな?」

「だったら援護しますから、そこら辺にいるムサイにでも曳航してもらいなさい! 死にますよ!」

「お、おう」


サイド1宙域から大急ぎでソロモン宙域に戻ってきてみれば、ソロモンでは激戦が繰り広げられていたのです。

私たちが善戦したおかげで、ソーラーシステムの照射能力が低下したみたいで、ソロモン内部までは被害が及ばなかったらしく、
史実みたいにソロモンの放棄をする必要がなかったみたいです。

しかし、連邦のMSがソロモン周辺とソロモン本体に取り付いて、そこらじゅうでMS同士の戦闘が起こっています。
こんな乱戦では、中隊単位でのMSの指揮系統は成り立ちませんので、各小隊ごとに近くにいる敵を殴るだけです。

そんな中で、ドズル中将のビグザムが戦場で突っ立っていましたので、駆け寄って叱ったところです。
エネルギーと推進剤が切れるまで戦うアホだったとは・・・ 猪突猛進は顔だけにして下さい。


「そこのムサイ! マグネットワイヤーを射出してビグザムをソロモン内部まで曳航して下さい!」

「こちらクワメル。了解した!」

「貴艦の援護は私がします!」

「コスモスの蝶の援護なら心強いですな」

「こんな激戦では気休めですけどね! 04から05、06へ。周囲の警戒を怠るな! 近寄る敵は排除せよ!」

「05了解!」

「06了解ー!」


こうして、ビグザムを曳航したムサイと共に一時ソロモン内部へと撤退を始めたとき、


「クワメル! 取り舵10°上げ5°はやく!」

「え? は、はい! 取り舵10°上げ5°よーそろー」


よーそろーじゃねえよ! さっさとやれ!

私が毒付いた直後に、ムサイの艦首真下をメガ粒子砲が通っていった。ふぅ、ギリギリセーフ。


「こちらクワメル。助かった、感謝する!」

「対空監視もっとしっかりなさい!」


クワメルの危機は、一番の原因はドズルだな。アイツに首輪を付けないと、多くの部下が巻き添えになって戦死しちゃいますね。


「ソロモン管制、聞こえますか? こちら、親衛隊第一独立遊撃艦隊所属、マリア・アイリーン特務大尉です」

「こちらソロモン管制。特務大尉殿、どうぞ」

「ラッコク大佐に繋いでちょうだい」

「少々お待ち下さい」


「ラコックだ。マリア殿、どうしたのかね?」

「あのバ、じゃなくて、ドズル中将に首輪を付けて司令室で指揮を執らせて下さい」

「私も出撃は止めたのだがね・・・」

「アレが戦場に出ると、」

「マリア聞こえているぞ! バカって言おうとしただろ!」


誰だ? 気を回してドズルに転送した馬鹿は。まあ、この際だからはっきりといってしまえばいいか。


「聞こえていたのでしたら丁度いいです、ビグザムから降りたら、今度はザクにでも乗って出撃しようだなんて、考えてませんよね? 閣下?」

「そのつもりだったが、なぜ分かった?」

「06! 7時の下! ・・・閣下が戦場に出る必要はないでしょ? 指揮所で戦場全体の指揮を執って下さい」


クレア機の下方から接近するジムがいたので、危険と判断して伝える。連邦軍も多少は宇宙でのMSの使い方を覚えてきたみたいだ。
さすがに歴戦のクレア中尉でも、この戦場は激戦で厳しいみたいですね。


「しかしだなマリア、兵の士気を上げる為にも俺が前線に出る意味も、」

『こちら06、隊長、助かりましたー!』

「06、気を付けて! ・・・しかしも、かかしもないです! はっきりといいますけど、ドズルさん、あなたが戦場に出ると護衛の部下が巻き添えで多く失われます!」

「む、むう・・・」

「あなたが一兵卒なら勝手に死ぬのは止めませんけど、大将が前線で戦死でもしたなら、それこそ士気はガタ落ちになりますよ? そこんトコを考えなさい!」

「わ、分かったから、そう怒るな」

「怒ってません、叱っているのです。ドズルさんが死ねば、ゼナさんとミネバも悲しみますから、大人しくしていて下さい」


止めの一撃は、ゼナさんとミネバちゃんです。愛妻家のドズルには、この言葉は効果覿面でしょう。愛妻家のわりには、ハマーンのお姉ちゃんも囲っているんです
けどね! モゲなさい。


「りょ、了解した・・・」

「分かればよろしいです。分かれば」


まあ、前線に出て士気を上げるのは有効ではあるんですけどね。でも、それも時と場合によりますし。


「マリア殿、感謝します。助かりました」

「ふふ、ラッコク大佐も、大きな子供のお守りは大変ですね」

「はぁ、返答に窮しますな・・・」


彼の立場では、答えられない難問でしたかね? お詫びに、今度彼にも落雁をプレゼントしよう。

というか、私は特務大尉の立場で中将閣下に命令しちゃった? これって不味くないですかね・・・?

あー、これは義理の身内が身内に話したことにしておきますか! 私とドズルの関係って、なにになるんだろ? ギレンは義兄でしょ。義兄の弟だから義弟?
お姉ちゃんからすれば、ドズルは義弟だけれども・・・ もしかして、私とドズルは他人ですかね? もしかしなくても、血も繋がってないし他人ですか?

ややこしいです!


そんなこんなで、

無事にビグザムをソロモンに送り届けて、ドズル中将閣下は、ラコック大佐の部下にドナドナされて司令室に直行です。
私たちのゲルググも補給を受けて、ソロモンの防衛戦闘に再出撃です!


「ローレライ04よりローレライ01、聞こえますか? 戦線に復帰しました!」


コールサインは、一週間戦争とルウム戦役で使ったコールサインの使いまわしで、ローレライです。そんなに名前なんて浮かばないしね。


「こちらローレライ01。NフィールドのSWに回ってくれ! 敵の数が多いから選り取り見取りだ!」

「ローレライ04了解。NフィールドのSWに向かいます!」

「マリアが来てくれたら、私たちの小隊は補給に戻らせてもらうよ」


04と呼ばないあたり相当、戦闘に神経を使ってたんだろうなぁ。シーマ様いま行きますからね!


「01、お任せ下さい! 05、06行くわよ!」

「「了解!」」


NフィールドのSWポイントに辿り着くまでに、5機のジムをサクっと片づけながら現場に急行した。うん、乱戦です。


「よりどりみどり、派手にドンパチ楽しもうじゃないか、掛かってきな!」

「その言葉は、私が小一時間前に此処で言った台詞だけど、マリアにも聞こえてたのかい?」


あちゃー・・・ シーマ様の台詞だったんだっけ?


「アハハハハ、アドレナリンが出ると、みんな似たような思考になるのです」

「ふーん、それもそうかもねぇ。私たちは、一旦下がらせてもらうよ」

「はい、お気を付け!? あぶない!」


私は咄嗟に、シーマ様の機体の前に立ちふさがってシールドを構えた。刹那、ビームライフルの衝撃がシールドから伝わる。が、ビームコーティングが施してある
ゲルググの大型シールドは破壊するまでには、いたらない。コーティングは剥がれちゃったかも知れないけど。

どうやら私のバカな台詞で、シーマさんも気が抜けてしまっていたようだ。これは、私の所為ですよね?

危なかった。でも、結果オーライなのです。持ってて良かった大型シールド。


「ふぅ、助かったよ。油断大敵だねぇ」

「大丈夫ですか? シーマさんは補給に行って下さい」

「01了解した。マリアも油断しないように!」

「04了解です!」


そう、この淡い灰色の機体はガンダムだ。それも、恐らくはマグネットコーティングを施された、G-3といわれる機体だ。

乗っているのは誰だ? いくら油断してたとはいえ、シーマさんに直撃コースの射撃の腕は確かだ。


「05から04へ。あのガンダムは捕獲したガンダムよりも動きが速いです! 三割はスピードが増してます!」

「アクト・ザクに使っている、マグネットコーティングってヤツと、同じ原理なんだろうね」


セミ・モノコックにフィールドモーターにマグネットコーティング。ジオンが苦労した技術が連邦にはあったのに、なぜ、ジムみたいなカスを量産したのか謎ですね。


「05、06はコイツに構うな、コイツはエースだ! コイツは私の獲物だ!」

「05了解! 周囲の敵を排除してきます」

「06了解ー! 隊長の邪魔はしませんよ!」


二人とも、いい子ですね。彼女たちでもコイツを倒せるだろうけど、時間が掛かる。私なら時間を掛けずに一気に殺れるのです。

なぜなら、おじいさんにキャンディーを貰えた私は、特別な存在なのです!


「さあ、ラウンドツーです。見せてもらおうか、改良したガンダムの性能とやらを!」




[41069] 20話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/01 12:58


「そこっ!」


私は一気に片を付けるべく、灰色のガンダムに向けてビームマシンガンを三連射した。しかし、マグネットコーティングが施されたG-3ガンダムは
ギリギリだが、私の射撃を回避した。一連射は掠ったみたいだけど。


「少しはやるみたいですね」


でも、これは牽制射撃です。ガンダムが回避行動を取っている間に、私はバーニアを加速させてガンダムとの距離を詰める。


「回避の動きが大きいですよ!」


ビームサーベルに持ち替えた愛機の右腕をガンダム目掛けて、相手の左肩から斜めに袈裟斬りに振り下ろした。
しかしこれも、間一髪のところで相手がシールドを繰り出して、私のビームサーベルを受け止めた。


「やるー!」


が、ガンダムのシールドは斜めに両断されて、その役目を終えた。


「そうこなくっちゃ!」

『子供の声だと!? 宇宙の魔女が子供ってのは本当だったのか!』

「子供じゃダメなの?」


その隙にガンダムは頭部バルカンで牽制しつつ、距離を取ろうとする。


『戦場に子供が出るのは不自然だ!』

「それは正論かも知れないね」

『大人たちに無理矢理に戦わされているのか?』

「あら? 自分の意思よ。周りに流された面も否定はしませんけど。それと、距離は取らせないよ!」


単純にMSを動かしてみたかったのも否定はしないけれども、ジオンの、私の明るい未来を築く為に、いや、守る為かな?
その為に私の力が必要とされるのならば、私は私の力を振るうのに躊躇はしない。

私はバルカンを最小の動作で避けつつ、今度はビームサーベルを斜め下から上へと振り上げた。


『ちぃっ!』

「ほぅ、これを受け止めたの?」


ガンダムのビームサーベルと逆袈裟を繰り出した私のビームサーベルとが、ぶつかり合ってスパークする。

私は、この戦争が始まってから初めて高揚した気分になっていると思う。いままで私の射撃を避けれた相手はいなかったのです。
ビームサーベルを受け止めた相手も、もちろんいませんでした。

もしかしたら、ちょっと濡れているかも。
というか、戦闘に性的興奮を感じている? あいやー、これではまるで、私が戦闘狂みたいじゃないですか、やだー。


『子供がなぜ戦うのだ!』

「戦うのに理由がいるのかしら」

『子供は戦場に出るべきではない!』


子供、子供って、そりゃ私は子供かも知れないけれど、その子供の私を相手に戦っているアンタは何様のつもりですかね?
凶器を振り回しながら中身の無い御託を並べられても、誰が言うことを聞くんですか? って話ですよ。

戦場で、そんな正論を大上段に振り構えて言われても、こっちは困るんですよ。私には私の都合があるのですから。
鬱陶しくなってきたから、そろそろ終わりにしましょうか?


「そんなに御託を言いたいのなら、出家して哲学者か宗教家を相手にでもしてちょうだい。それで、こういうのはどうかしら?」


ビームサーベルを滑らせるようにして、相手のビームサーベルを絡め取ってガンダムの体勢を崩させる。こんな剣道やフェンシングのような動きは、
マニュアルにはないのです。

そして、私はビームサーベルから手を放して、刹那。


『な、なんだと!?』

「楽しかったわ。でも、これでお仕舞いです。バイバイ」


ズドン!


腕部に装備しているビームスポットガンを一撃、ガンダムのコクピットに直撃させたのです。

うん、これがやってみたかったのですけど、上手く行きましたね。
誰も自分から、虎の子のビームサーベルを手放すなんて考えもしませんから、完全に虚をつかれるのは仕方がないのかも知れませんね。


「もの足りない」


確かに、いままでの相手と比べたら骨はあったけど、もの足りなさを感じるのです。
私にとってはG-3ガンダムでも、ジムが1/4スロー再生とするならば、精々1/3スロー再生になった程度にしかすぎないのです。

大層なお言葉を頂戴しましたけど、結局のところガンダムのパイロットは誰だったのかしら? でも、G-3ガンダムを任されるくらいだから、
相手がエースだったのには変わりはないはずなんだけども。まあ、誰でもいいか、敵なんだし。

ビームスポットガンの出力を低く抑えて撃ったから、爆散するまでには至らなかったみたいですね。ガンダムの装甲のおかげでもあるのかな?
コクピットの主をなくして沈黙して漂うガンダムを見ながら、私は欲求不満を感じているのを自覚してしまったのです。

もっと強い相手はいないの? と。


「もの足りないから、今度から旧ザクかF型で出撃してみようかしら?」


さすがに、そんなバカな行為は止められてしまうのでしょうけど。それに、シーマ艦隊にはザクは置いてないしね。
こんな不純な動機で戦闘していたら、カミーユに怒られそうですけどね。まあ、アイツはアイツで、かなりぶっ飛んだキチなんだけれどもさ。


「お見事でした隊長。といいますか、なにを馬鹿な事を言ってるのです。それよりも、そのガンダムはどうしますか?」

「流石は隊長です! でも、そこに痺れもしませんし、憧れもしませんけど。旧式のザクⅠだなんて、私は死んでも嫌ですよ」


げぇ! レイチェル少尉とクレア中尉に聞こえてたのか!

ん? 丁度いいのがいるではないですか、被弾して後退しようとしている味方が。
ネタモブにも出番を与えてあげないとね! 私って、なんて優しいんだろうかしら。


「ローレライ04よりローレライ11、ムタグチ曹長」

「こちらローレライ11。特務大尉殿なんでしょうか?」

「このガンダムを一緒に持って後退してちょうだい。護衛には09、シュミット軍曹が付いて行きなさい」

「11了解であります!」


もう既に、我がジオンでもマグネットコーティングの技術は確立しているから、G-3ガンダムも見るべき価値はないのかも知れないけど、せっかく良い状態で
ガンダムを倒せているんだから、お土産に持って帰ってもいいよね。

私って、そのうち連邦からガンダム強盗って呼ばれる日が近いのかも知れませんね。


「それから、09は11を送り届けたら私の予備のビームマシンガンを持って、戻ってきてちょうだい」

「09了解です!」

「さあ、05、06。私たちは残りの雑魚を血祭りに上げるわよ!」

「「了解!」」


私たち第13独立遊撃MS増強中隊の02小隊の三機は、ソロモン頭頂部のNフィールドと呼ばれている中の、さらに南西の区域を縦横無尽に暴れまわるのです。

しかし、自分の所属する増強中隊の正式な名前を良く覚えていたと、自分を褒めてあげたい心境であります。普段は所属する艦隊名しか呼ばないしね。


「オートにばかり頼っているから」


戦場で信じられる、頼れるのは自分の腕のみなはずのに、オートに頼るのは理解しかねますね。


「躱せなくて墜とされるのです」


オートマティックは便利なのかも知れませんけれども、その分オートマティックな動きは予測しやすいのです。
機械的な行動の弊害とでもいうべきなのでしょうか?

私はクルクルと動き回りながらも、着実に敵を撃破してスコアを稼いでいきます。クレア中尉もレイチェル少尉も、私には劣りますけど、着実にスコアを積み上げて
稼いでますね。この二人も確実にジオンのトップエースの仲間入りですよ!
トップ50くらいだけれども。

私はどうなんだといいますと、私は現時点では15番目くらいじゃないですかね? シーマ艦隊は常に最前線で戦っているわけではありませんので。
セイバーフィッシュや、地球での61戦車とかを入れた数字では変動すると思いますので、これはMSの撃墜数だけの話ですよ?

あらかた敵を排除、敵のMSが逃げて行ったともいいますけど・・・ 敵を排除し終えたところで、隣の区域で暴れている赤いゲルググが目に入った。

あれ? なんで赤い彗星のシャアがソロモンにいるんでしょうかね? この時代の彼は、ララァと行動を一緒にしているはずじゃなかったっけ?
敵も近くにいないし、シャア少佐の助太刀をする為にも隣の区域に飛んで行くことにしますか。


「なんで、シャア少佐がソロモンにいるんですか?」

「なんでとは? 私は宇宙攻撃軍の所属ですから当たり前ではありませんか」

「あ! そういえばそうだったね」


私が歴史を変えてしまったから、ガルマが死なないでシャアもドズルに罷免されなかったから、キシリアの突撃機動軍に移籍してないということか。
そうなると、ララァはどうなってるんだろ?


「それはそうと、誰かさんが暴れたおかげで、こちらに敵が入り込んで混戦になっていますので、教官殿も手伝って下さい」

「あははは、りょうかいりょうかい、手伝いますよ~」

「といいますか、増えた敵は教官殿から逃げ出した連中ですので、教官殿の責任ですな」


オーマイガー! なんということでしょうか。私が暴れたおかげで、敵はこっちに逃げ込んでしまってたみたいです。


「でも、なんで敵はこっちに逃げたのかしら?」

「こっちの区域の方が、相手をするのに容易いと踏んだのでしょう」

「そっか、赤い彗星もなめられたものね」


シャアと軽口を叩きながらも、私は雑魚を血祭りに上げる作業を続けていく。


「教官殿が相手なら、誰だって逃げたくもなります」

「それなら、私がここに着たから、敵はまた隣に逃げちゃうってことだね」

「そうなりますな」

「なんだか、敵からゴキブリとおなじ扱いをされてるみたいに感じるわ」

「殺虫剤を持ってスプレーを噴射しているのが、教官殿の間違いでは?」

「そうとも言うのかな? ビームマシンガンも殺虫剤も、たいして変わりはありませんよっと!」

私は敵の放ったビームを躱しながらも、お返しのビームマシンガンを一連射してあげた。
うん、敵がビームマシンガンから逃げるゴキブリで正解みたいだね。

私からは逃げられないけどね!




[41069] 21話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/02 19:18


「特務大尉殿、お待たせしました」

「ありがとう。シュミット軍曹、あなたはクルト中尉の指揮下に戻って下さい」

「了解しました。ご武運を!」

「軍曹も気を付けて」


私は換わりのビームマシンガンをシュミット軍曹から受け取ると、次の獲物を探して辺りを見回すまでもなく、深緑色のジムに狙いを定めた。


「ダークグリーンのジム? スナイパー型か」


あれもヤバいけど、あれの新型はもっとヤバい。幸いにも、まだ戦場に出ている数が少ないのが救いといえば救いか。
そう考えながらも既に私は、機械的に引き鉄を弾いていた。

他の普通のジムよりも一回り大きめの花火が宇宙に咲いた。


「重武装も直撃を喰らったら、汚い花火にしかならないのです」

「05より04へ。周囲の敵は粗方排除しました。隣の区域に向かいますか?」

「こちら04。あなたたち残弾は大丈夫なの?」


そう、私はシュミット軍曹にビームマシンガンの換えを持ってきてもらったけど、この二人の予備は無いのだ。


「こちら05。少し心許ないです」

「06、ビームライフルは、あと4発です」

「了解した。05と06は一度後退して補給してきなさい」


ビームライフルは弾数が少ないのが弱点なのです。18発しか撃てないのは、いくら威力が強くても欠陥装備といえなくもない気がしますね。
当たらなければ無駄弾になるのですから。安心感と信頼度では、まだまだマシンガンには及ばないみたいですね。

まだエネルギーパックの開発には時間が掛かるみたいです。その弱点を補うために予備に、MMP-80マシンガンを装備しているのが現状なのだから。
そう考えると、私の装備しているビームマシンガンは一応60連射できるのだから、ビームライフルよりは優れものかも知れませんね。


「「了解!」」


クレア中尉とレイチェル少尉を見送って、私はまだ戦闘が継続している区域に飛んで行った。ちなみに、シャア少佐も補給の為に下がってます。

このころになると、Nフィールドに侵攻してきた敵は半包囲されつつあり、敵は追い詰められています。
敵の逃げ道は、攻撃発起点でもある母艦まで戻るルートだけです。


「しかし敵の数が多すぎる。倒しても次から次へと、きりがない」


私は着実に敵を排除しながらも、数の多さに辟易として愚痴がこぼれる。

そのころ、他のフィールドでは多少のエリアが互角の展開であっても、全体的に見たならば味方が押し込まれているエリアの方が多かった。
一戦線で勝ってはいても、戦場全体でみて負けたなら意味がないのです。


「このままでは不味いな」


そう、私が独り言ちたとき、


「撤退信号だと!?」


私が見上げた先にあったのは、ソロモン上空に上がった明るく大きな光の玉。無情にもソロモンからの総撤退の合図だった。

なぜだ? まだ我が軍は負けてはない! どうしてソロモンを放棄して撤退をしなければならないんだ? ドズルが臆病風に吹かれたのか?
いや、アイツはそんなタマではないと信じたい。が、解せん・・・


「ローレライ01より中隊各機へ。撤退信号だ。周囲を警戒しつつ後退する!」

「こちら04。なぜ撤退なんですか? 我々はまだ戦えます! グラナダからの援軍だって、」

「マリア! 特務大尉、これはドズル閣下の命令だ! 気持ちは分かるがな・・・」

「04了解しました・・・」


珍しく強い口調でシーマ様に窘められてしまいました。きっと、シーマ様も歯痒いのだと思います。命令を無視すれば組織は成り立ちませんので、
それが不本意な命令であろうとも従うしかありません。基本的に軍隊での上官命令は絶対です。


「こちらローレライ16。04は先に後退して下さい。殿軍は私が引き受けます」

「クスコ大尉?」


私に弾薬の余裕があるときは、このMS増強中隊の殿は私が務めるのが暗黙の了解になっているのだ。つまり、いまの私には弾薬の余裕はあっても、心の余裕がないと
クスコ大尉に判断されたみたいだ。確かに、撤退と聞いて興奮していたのかも知れない。


「ふふ、子供らしい感情を見れて新鮮でしたので、殿軍はサービスですよ。たまには、お姉さんに任せなさい」

「・・・では、お願いします」


あんな感じでお姉さん風を吹かすクスコ大尉も珍しいですね。ここは、お言葉に甘えさせていただきましょうか。


私が意気消沈しながら、リリー・マルレーンに帰還する途中で見たものは、エメラルドグリーン色をした、とんがり帽子みたいな形のモビルアーマーでした。


「あれがエルメスか、誰が乗っているんだろ?」


というか、エルメスがこの戦場にいるということは、グラナダからの増援が到着したってことか? あと一時間、いえ、あと30分でも早く来てくれてたのなら、
ソロモンは持ち堪えられたはずだったのに!
これじゃあ、撤退支援に来たようなものじゃないの・・・ まるで計ったようなタイミングだし。いや、まさか、ね?

私が脳内で愚痴ってる間に、とんがり帽子のエルメスは瞬く間に数隻のマゼランとサラミスを沈めていた。


「さすがはニュータイプってヤツかしら」


エルメスのビットからのビーム攻撃が正体不明みたいで、連邦の艦隊の陣形が大きく乱れているみたいです。

誰だって、どこから攻撃されたのか分からなかったら、慌てふためきますよね。ましてや、無人遠隔操作なんて頭の片隅にもないはずですから。
そう考えると、エルメスのビットを撃ち落とせたアムロの凄さが際立ちますね。

私がアムロとおなじように、ビットを撃ち落とせるのかと聞かれれば疑問だ。ビットから発射されたビームぐらいは躱せるとは思うけど、ビット本体を撃墜できる
かは怪しいですね。
私は、敵が私に向けてくる敵意を感じることができないのだから。私に感じることができるのは、私を害する感覚だけですので。
ビット自体は機械ですから、敵意も害意もない気がしますし。

まあ、連邦がビットやファンネルやらの類いを開発するのは、十年以上は先の話ですから大丈夫だと思いたいですね。

ダークグリーンの胴にブルーの頭と四肢のゲルググ? アナベル・ガトーが乗っているんだっけ? そのゲルググも撤退支援の為に、暴れているのが目に入りました。
彼はこの活躍で、ソロモンの悪夢って呼ばれるようになるんだよね。

みんな頑張っているのに、私は母艦に帰還しなければならないのが悔しくもあります。でも、命令は命令だ。いまは素直に帰還しよう。




「ローレライ04からマグダラ01へ。着艦許可を求める」

「マグダラ01了解。第二デッキに04の着艦を許可します」


リリー・マルレーンに戻ってきました。幸いにもシーマ艦隊はニーベンルグが小破したのみで、落伍した艦は出なかったので良かったです。
MS隊も撃墜された機はいませんでした。やっぱり、MS-14Fゲルググ・シュッズスタフェルの性能とパイロットたちの練度のおかげでしょうか。

そう考えると、先のソーラーシステム破壊時での04小隊のゲンダ伍長はツイてなかったみたいですね。
やはり、ニーベンルグと04小隊はシーマ艦隊の被害担当なのかも知れません。


「上は、なにを考えているのでしょうか?」

「戦力の温存と戦力の集結だろうね」


私はリリー・マルレーンの艦橋で、シーマ様に撤退した理由を尋ねてみた。はじめからソロモンの放棄は決定していたという事みたいです。
ソロモンは捨て石でしたか。でも、史実よりは被害を少なくして撤退できる可能性が高いので、これはこれで良かったのかも。

どうやら私は、目の前の戦場に囚われていて広い宇宙の戦局を見落としていたようです。私には将としての才能はないみたいですね。
精々MSの小隊長が分相応なのでしょう。そのくらいが楽で丁度いいしね!


「ア・バオア・クーに戦力を集結させて決戦ですか」

「そうだろうね。戦力の集結が戦いの終結になってくれれば良いんだけどねぇ」


えーと、ダジャレですか? 駄洒落ですよね? ここは突っ込んだほうがいいのかな?


「姐さん上手いこと言ったつもりですかい? ビルドアップとクローズじゃあ、なんの関連性もありゃしませんぜ」

「デフ、お黙り!」


コッセル艦長が突っ込みどころか、揚げ足まで取りましたよ! 私にはそんな恐ろしい事はできません。オマケで扇子チョップを貰ってましたが。

もしや、コッセルはシーマ様から扇子チョップのご褒美を貰いたくて・・・?


「ああ、それとアレだな」

「アレといいますと、まさか?」

「そう、私の出身コロニーのマハルを改造して作ったレーザーを、連邦艦隊にお見舞いするつもりなんだろうねぇ」

「その為には、味方の艦隊が近くにいると邪魔になるということですね」

「そういうことだ」

「それなら、このソロモンの戦いの前にでも撃てなかったんですかね?」

「発射角度の問題と、まだ改造作業が終わってなかったんだろねぇ」

「なるほど」


つまり、このままの予定で行ったのならば、恐らくはグレートデギン諸共ゲルドルバ照準で発射するってことですよね? このままだとグレートデギンは宇宙の塵ですか。
べつにデギン公王には思い入れはないけど、その後が問題なんです。キシリアにギレンが暗殺される可能性が極めて高いんです。

この暗殺の余波で、ア・バオア・クーの防衛網が一時的に機能不全に陥って、その綻びからア・バオア・クーは陥落する破目になるのですから。

そう考えると、キシリアの暴挙は防がないといけません。


それから、私たちシーマ艦隊はソロモン撤退の援護をしつつ、ア・バオア・クーに後退した。

連邦に倍近くの損害を与えて、ソロモン駐留の艦艇の7割とMSの半数は撤退できたみたいです。
キルレシオからいったら、ソロモンで踏ん張っていても良かったような気がするのですけど、やっぱり上層部の考えていることは分かりません。

史実よりは多くの戦力をア・バオア・クーに集結させる事ができて、連邦をア・バオア・クーに誘引させて決戦に持ち込めるけど、
見方を変えれば、ジオンはソロモンを失陥して追い詰められているということだ。

もう後がない背水の陣。ア・バオア・クーを抜かれれば、ジオン本国のサイド3まで一直線だ。この作戦が吉と出るのか凶と出るのかは、神のみぞ知るところです。

私は拳を握りしめて、艦橋から宇宙の闇を眺めながら、


「腐ったブタ野郎ども、掛かってこい! 相手になってやる!」

「その言葉は、セシリア殿には聞かせられないねぇ。私が監督不行き届きで減俸させられるよ」


あははは・・・ 下品でスミマセン。




[41069] 22話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/03 19:29

※この作品はTS小説です※










「くしゅん!」

「どうしたセシリア、風邪でも引いたか?」

「いえ、どうせマリアが私の愚痴でも言ったのでしょう」

「ふむ、私はこれからア・バオア・クーで直接指揮を執る為に出掛けるが、留守は頼んだぞ」

「総帥、お任せ下さい」

「うむ。グレミーとマリーダの事もよろしく頼む」

「はい。気を付けていってらっしゃい、あなた」



UC 0079.12.29


「アムロ、決心はついたようね」

「決心もなにも、こうするしか道はないのだろう」

「そうね。私があなたを捕まえてしまったばかりに、あなたには苦労をさせる事になって悪いと思ってるわ」

「それは仕方ないさ。あの時に死ぬのと比べたら、ずっとマシなんだから」

「ありがとう。そう言ってもらうと気が楽になるわ」

「ああ、だから」

「ふふ、その言葉の続きは戦争が終わってからよ」


さて、アムロがなんの決心をしたかといいますと、話は今月の初旬に戻ります。



UC 0079.12


「アムロお疲れさま」

「ん、ああ、ありがとう」


私は、ゲルググ・イェーガー、マリア・アイリーン専用機の、プログラムの最終調整を行っていたアムロにドリンクを差し入れた。


「調整はどんな感じかな?」

「ザクでのマリアの動きも取り入れてみたけど、動きがピーキーすぎて、これをそのままフィードバックして一般機に入れるには問題が残るね」


私がこれまで乗っていた愛機、MS-06R-2Sのデータをイェーガーに移植しているのです。


「というと?」

「モビルスーツ自体は、マリアの動きをほぼ真似できるけど、今度は一般兵の視神経が追い付かないってことだよ」

「なるほど」


スポーツドリンクがアムロの喉仏を通過する動きが色っぽいですね。って私はなにを考えているんだ。いかんいかん!


「だから一般機に入れる場合は、かなり動きを低下させないと使えないって事で、このままでは宝の持ち腐れになりそうだね」

「なるほど、なるほど」


なんということでしょうか、私の動きをトレースしても中身の人が付いて行けないとは。学習型OSにも欠点があったのか・・・


「もちろん、エースパイロットと呼ばれる人達は対応できると思うけどね」

「いくら技術が進歩しても、結局のところ人頼みってわけね」

「人が乗って操縦する機械は、最終的には人の資質に依存せざるを得ないって事だね」


そう、それが無人機でもない限りは人が操るのだから、最後は人間の性能に依存するのだ。


「ちなみに、アムロはどうだったの?」

「僕はデバックがてら、遊びで何十回も試したからマリアの動きに付いて行けたけど、それでも最初は苦労したよ」


ほー、さすがはアムロってことだね! 私がいない間にもシミュレーションでは、ちゃんと成長しているんだもんね。これなら・・・


「それでね、話は変わるけど真面目な話なんだけれど、ちょっといいかな」

「ああ、コイツの調整もほぼ終わったからいいよ。で、話って何かな?」

「非常に言い難いことなんだけどさ、アムロ、あなたの立場が微妙なのは自分でも分かっているよね?」

「元連邦市民でジオンに敵対したしね」

「それについては、もうジオンではアムロに対してお咎めはないのよ」

「じゃあ、何が問題なんだい? こうして、マリアが乗るモビルスーツのプログラムもして協力している訳だし」


おう、一応は協力している自覚はあったのね。


「ええ、それは感謝してるわ。でも、問題は連邦なのよ」

「連邦? 地球連邦が僕に・・・ ってガンダム!?」


うん、飲み込みと頭の回転が速くて助かります。


「そう、ジオンが負けた場合のみだけど、アムロの立場は非常に不味くなるの」

「民間人の僕がガンダムを操縦して、ジオンと戦ってガンダムごと捕虜になった事か・・・」

「最悪の場合は、あることないこと罪を着せられるわね。ガンダムを奪ってジオンに投降したとか、ね」


連邦なら本当にやりかねないから怖いです。連邦って民主主義で人権擁護を標榜しているんじゃなかったのかと、問い詰めたい気持ちで一杯です。
まあ、スペースノイドの弾圧なんて平気でするのを、デモクラシーとヒューマンライツというのならばですけれども。

前世の記憶的に、アメリカと日本や西欧諸国の民主主義国家が中心になって成立した連邦が、こんな強権的な国家になるなんて想像できなかったですね。
あれかな? 19世紀の帝国主義的植民地政策に回帰したってことだったのかな? 宇宙植民地っていうくらいだしね。

っと、妄想している場合じゃなかった。


「そ、そんな馬鹿!」

「自分のミスを他人に擦り付けるなんて古今東西、日常茶飯事でしょ? 損害の多さのスケープゴートにされる可能性もあるわね」


そう、ガンダムを奪われさえしなければ、ここまでの被害はなかった云々。


「確かに最初は勝手にガンダムを操縦したけど、マリアと戦った時には、ちゃんとパオロ艦長やブライトって見習士官の許可で出撃したんだ!」

「そうね。確かにガンダムのログは保管してあるから、それは証明できるわね。でも、真実がすべて正しいわけじゃないのよ?」


重い話をして、会話を誘導して選択肢を狭めて相手の退路を塞いでいく。


「真実が正しいとは限らない・・・か。では、僕はどうすれば・・・」

「もう既にイェーガーのプログラムでジオンに協力しちゃってるんだから、このままジオン国民になっちゃえば?」


今度は、一転して軽めに話題を振ってみせます。


「別にジオンに協力していたつもりはないよ」


あれ? さっきは協力しているのを自覚していたのに。


「でも、結果的には協力していた事になるわよね?」

「それはマリアに頼まれたから!」


私の所為ですか? うーん、アムロを巻き込んだ私が悪いんですね。毒を食らわば皿までともいうし、ここは、


「じゃあ、ジオンに協力するのが嫌なら、私に協力してちょうだい。それが結果的にはアムロ、あなた自身を助けることにもなるのよ」

「僕自身を助ける?」

「そう、初めて会った時というか、戦ったあとで私がガンダムを抱えて帰還する時に言ったよね? ジオンの勝利が浮かばないって」

「そういえば、そう言ってたね」

「ジオンが負けない、いいえ、私の為にもアムロの力が必要なの。それがアムロの為にもなるのだから」


アムロのニュータイプの力が、そのうちきっと私には必要になるのだから。まだ覚醒前だけれども、戦場で強引に覚醒させてやる。

きっと私は利己的でズルくて酷い人間なんだろう。もし、死後の世界に地獄というのがあるとするならば、私はきっと地獄に堕ちるんだろうなぁ。
まあ、その前に散々と人を殺しているから、地獄行きは確定事項みたいですけど。


「僕の為・・・ 確かに連邦が勝利したなら、僕の立場は苦しくなるよな・・・」

「そう、私ならばアムロと一緒にいられるわ」


私はアムロの指に私の指を絡めてアムロにもたれ掛かった。ちゃんと猫を被れてるかな? 女の武器を使うだなんて、最低ですね。

自分で言っておいて自己嫌悪になりそうです。でも、少しでも確率を良くする為には悪魔にだって魂を売ってやる。利用できるモノは利用してやる。
人は聖人君子になんて成れないのだから。
それに言い訳じみているけど、アムロの立場が不味いのは本当のことなんだし。


「マリアと一緒?」

「ええ、アムロが私と共に戦ってくれるのなら、私の人生の半分をアムロにあげる」


うん、女は度胸。もうそろそろ覚悟を決めて、女として生きることを肯定しよう。


「全部じゃないのかい?」

「あら、全部あげたら、それは奴隷って言わなくて?」


女は打算的でもあります。
アムロの人生を左右させる掛けの、賞品の価値が私にはあるのかと問われれば自信はない。ないけど、私は既に自分をチップにしてアムロにベットしたのだから。
私の人生の保険はアムロ。やけに分の悪そうな掛け、保険料が高そうなのは秘密です。


「それもそうか」

「今はまだ決めなくてもいいわよ。でも、クリスマスまでには考えておいてね」

「ああ、分かったよ」

「うん、じゃあこれは少しだけれど、先払いであげる」


そう言って、私はアムロに口づけをした。 ごめん、フラウ・ボゥ。

女は計算高い生き物なんですから。
なんだか、純粋な女性からも男性からも反感を買いそうで怖いです。私ってきっと嫌なタイプの人種なんだろうね。
私は所詮まがい物ですから、ステレオタイプな行動しかできないのです。うん、キモイかも知れない。

でも、これが私なんだから。



UC 0079.12.31


ジオン公国と地球連邦の雌雄を決する戦いが始まった。





[41069] 23話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/09 15:53

UC 0079.12.30


「第08哨戒艇より通信。レビルが率いる本体の位置が判明しました。詳細を回します」


「うむ、ア・バオア・クーのギレン・ザビである。ソーラ・システム最終目標を伝える。照射方位角、ゲルドルバ照準にて発射せよ。ソーラ・レイ、スタンバイ」

「了解。ソーラ・レイ、スタンバイ」



~~~~~~~~~~



「メドゥーサ04から06へ。アムロ、その機体、ガルバルディの調子はどう?」

「こちら06。操縦しやすくて良い機体だよ。量産機の割には性能が良すぎる気もするけど」


私たちシーマ艦隊は、受け持ち予定区域のア・バオア・クー、Sフィールドの近くで哨戒名目での最後の訓練と調整をしています。

今度の作戦では、私の小隊の三番機はアムロ・レイ特務曹長です。私が半ば無理矢理に戦場に引っ張り出したんだから、ちゃんと面倒をみないとね。
丁度いいタイミングで、MA敵性のあった03小隊のクルト中尉がMAビグロに乗ることになって、代わりの小隊長を私の隊からクレア中尉を出して、
その穴埋めに、アムロを入れたわけです。

クレア中尉よりレイチェル少尉の方が小隊長向きなのは内緒ですけど、軍隊ってヤツは階級優先なんですよ。

といいますか、ぶっつけ本番でビグロに乗るクルト中尉は大丈夫なんですかね? まともな訓練って昨日と今日だけですよ?

っと話が逸れた。


「カスタマイズしてあるから、余計にそう感じるのかもね」

「マリアのゲルググ・イェーガーさまさまだよ」


そう、私の愛機に搭載している学習型OSをフィードバックしたのを、アムロが乗っているガルバルディには劣化させずにインストールしているのです。
それに合わせてアムロの機体も調整してあるので、一般兵が乗るガルバルディよりも三割近くは性能が上がっているのだ。


「ふふ、おだててもなにも出ないわよ?」

「からかうなよ」


MS-17Aガルバルディ。アムロの腕と最新鋭の機体、これなら実質的に初陣に近いアムロでも大丈夫でしょう。
さらに、すぐ弾切れを起こすビームライフルではなくて、私とおなじビームマシンガンを装備させてます。MS相手ならビームマシンガンの一連射でも十分なのだ。
威力絶大な18発よりも、威力は小さめだけど連射できる60発。経戦能力の安心感が違います。予備にMMP-80マシンガンもお尻に装備していますしね。
私は安堵して大きく息を吐き出した。

うん、きっと大丈夫だ。生き残れる。



~~~~~~~~~~





「ソーラ・レイ、発射!」





~~~~~~~~~~



私がアムロの動きに満足して一安心した直後に、大きな光の筋を、ソーラ・レイの発射を見たのでした。
それは宇宙に一筋の長い光の帯が走って、とても綺麗に感じましたが、この数秒後には死者の怨嗟の声が聞こえてくるはずなのです。

私は咄嗟の判断で叫んでいました。


「メドゥーサ04よりメドゥーサ各機へ。意識を強く持て! 死者の声を拒絶しろ! 引きずられるな!」


ついにソーラ・レイが発射されました。私自身は死者の声なんて聞こえないんですけど、それでも纏わりつく嫌悪感みたいなのは感じましたので、
ニュータイプ能力がある人は、この感覚が増幅して感じられるなら厳しいかも知れないですね。

ちなみに、グレートデギンはゲルドルバ照準、ソーラ・レイの照射範囲にはいませんでした。大人しくサイド3でフジツボを取る作業をしています。
ガルマもドズルも死んでないからデギン公王もボケなかったみたいですね。私の杞憂で終わって良かったのかな。


「こちらメドゥーサ01。04、マリア特務大尉なにがあったんだ?」

「シーマさん、あとで説明します!」


いまはシーマ様に詳しく説明しているよりも、味方の精神的ダメージの確認が先決だ。


「これが戦場の感覚・・・」

「メドゥーサ06、アムロ大丈夫?」

「ああ、なんだか不快感はあるけど、大丈夫だよ」

「そう、良かったわ」


まだアムロは覚醒する前だから、そこまで精神的なダメージを受けなかったのかな?


「07(クレア)です。こっちは良くありませんよ! マリア隊長これはキツイですよー! 精神攻撃の新兵器みたいなこれは、なんなんですか!」

「こちら05(レイチェル)。おなじく不愉快な気配が纏わりついて気持ち悪いです」

「17、エリスです。叫び声みたいなのが聞こえてきて、私も気分が悪いです」


ありゃ? クレア中尉もニュータイプ適正あったのね。ティアンム旗艦撃沈も、その適正のおかげもあったのかな?
レイチェル少尉とエリス少尉も感じてしまったか。

ダメージ的には、クレア>>エリス>レイチェル=アムロ>私って感じみたいですね。

というか、クレア中尉あなたも既に私とおなじ小隊長なんですよ? まだまだ自覚がないみたいですけど。


「メドゥ-サ16よりメドゥーサ07、クレア中尉! 口唇を噛みなさい! 聞こえてくる声を無視するのよ!」

「07了解。な、なんとかやってみます」

「04から16へ。クスコ大尉、あなたは大丈夫だったの?」

「こちら16。私はシャットダウンさせましたから大丈夫でした。気遣ってくれてありがとうございます」


ふーん、そんな裏ワザがあったのね。精神コントロールというのか、意思の強さなのかも知れませんね。


「こちらメドゥーサ10(ナカガワ)だ。みんなどうしたってんだ?」

「なんだなんだ、なにが起こってるんだ?」

「メドゥーサ01より各機へ。みんな落ち着け! 訓練は中止する! 各機帰投せよ!」


この混乱した状況では訓練の中止も止むを得ないです。私たちはSフィールドにある基地へと帰投する事にしました。



「それでマリア、さっきの事をちゃんと説明してくれるんだろうね」

「はい。感受性が豊かといいますか、感受性が強い人は他者の思念を感じ取れるみたいなのです」


ところ変わって、Sフィールドに駐留しているリリー・マルレーンのシーマ様の自室でお茶を飲んでいます。さすがに艦隊司令の部屋は広いですね。
畳でいえば20畳ほどはあるでしょうか? 装飾もシンプルで落ち着ける感じがしてグッドです。この応接間の他に寝室とシャワートイレが別にあります。
うん、艦隊司令の特権だね! その分、責任も重大なんですけどね。

ちなみに、私の部屋は8畳ほどです。戦闘艦ですので8畳でも広いんですけどね。


「エスパーみたいなものか? いや、ジオン・ダイクンが言っていたニュータイプってヤツか?」

「はい。多分、ニュータイプで正解だと思います」

「なるほど、それで先ほどのソーラ・レイの発射で死んだ大量の連邦軍人たちの声を聴いてしまったって訳か。私は鈍感で助かったって事だねぇ」

「私もニュータイプではありませんので、なんとなくしか感じませんでしたけど、ヤバそうな気がして警告しました」


ヤバいとまでは感じなかったんだけどね。原作でアムロが死者の怨念みたいなことを言ってたから、気になっていただなんて言えないし。
本当はアムロとクスコ大尉に対して注意を促したつもりだったんだけど、まさかのクレア中尉でした。


「しかし疑問なんだが、いままでだって大勢の人間が戦場では死んでいるのに、なんでまた今回に限ってこうなったんだ?」

「多分ですけど、一度に大量の人間が死んだことが理由ではないでしょうか?」

「感受性の容量を、キャパを超えてしまったという事か」

「恐らく。レイチェル少尉とエリス少尉もそうですけど、特にクレア中尉はキツそうですね」


花粉症などのアレルギーとおなじく、抗体が異物を跳ね除けられる絶対数は決まっていると考えるのが妥当なのかも知れない。通常の戦場では一度に聴く死者の声は
数十から多くて数百。これがソーラ・レイで一度に数万以上の死者の声が聴こえたのならばパンクしてもおかしくはない。
ニュータイプも万能ではないって事ですね。

開戦当初のコロニー潰しの時の方が、ソーラ・レイよりも数百倍も怨嗟の声が聴こえていそうですけど、現場にいた人たちは大丈夫だったんですかね?

そう考えると、クスコ大尉の精神の強さには頭が下がる思いです。


「そういえば、彼女は悲鳴を上げてたな。そう考えるとクレア中尉はニュータイプって事になるのか」

「いままで私も気が付きませんでしたけど、死者の声といいますか他者の思考を読み取れるのですから、ほぼ確定でしょうね」

「ティアンム撃沈も運だけじゃなかったって事になるのかねぇ」


いや、あれはマグレの気がしないでもないんですが。でも、彼女は逃げの戦闘は上手いのです。天下一品といっても過言ではありません。
模擬戦でも逃げるだけなら誰よりも上手くて、私からも逃げおおせた事があるくらいですから。


「クレア中尉の過去の戦闘では、自機の生存本能には目を見張るものがありましたので、それがニュータイプ能力と考えるならば、合点がいきます」

「生存本能で手っ取り早く艦隊司令を潰した・・・か」


なるほど、そういう受け取り方もできるか。でも、あれは流れ弾だったような・・・? まあ、どっちでもいいか。


「それはそうと、明日は決戦だ。それまではマリアも体を休めておけ」

「はい、分かりました。お茶が終わりましたら下がらせてもらいます」


それから、私はシーマ様と他愛もないお喋りをしてお茶を楽しんでから、シーマ様の部屋を後にした。

そして、自分の部屋に戻ってみたら、アムロが私の部屋の前の通路の壁にもたれて暇そうにしているのが目に入った。


「あら、アムロどうしたの? いまは第三種警戒態勢中よ」

「マリア、ちょっといいかい?」

『マリア、チョットイイカイ?』

「ええ、通路ではなんだから私の部屋で良かったらどうぞ。あと、ハロは真似しないの!」


私はそういってアムロとハロを部屋に入れた。

しかし、ハロがいると和むね。ハロはセラピストの才能があるのかも?




[41069] 24話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/05 21:05


※ この物語はTS小説です ※










UC 0079.12.31


「あちゃー、あれは確実に昨夜ヤッたねぇ・・・」

「へ? 姐さん何を殺ったんですかい?」

「ほれ、マリアの歩き方を見てみろ」

「がに股? ・・・ってまさか!? 相手は!」

「あのアムロって坊やだろうよ」

「アイツか! 取っちめてヤル!」

「デフ! 無粋な真似は止めておきな。子供のおままごとみたいな恋愛ごっこ、 ・・・でも無さそうだねぇ。ありゃ完全に女の顔をしているわ」

「ジーザス・・・ なんという事だ! 我らがシーマ艦隊の女神の純潔が、何処の馬の骨とも知らない餓鬼に奪われるだなんて!」

「マリアとの付き合いも10年近くだけど、娘が巣立つってのはこんな感じなのかねぇ。嬉しいのか寂しいのか複雑な心境だよ。まったく」

「娘か・・・」

「シーマさんシーマさんってベタベタ纏わりついていた娘が、男に身を委ねる日が来るだなんてね。てっきり百合系の子だとばかり思っていたんだけどねぇ」

「マリア様はバイってヤツじゃないですかい?」

「バイセクシャルか。昔から変なところで男の子っぽいところもあったし、あの子ならそれもアリなのかも知れんね」

「姐さん寂しいのなら、マリア様の代わりに俺と子供作りやせんか?」

「馬鹿を言ってるんじゃないよ! 今は戦争中だよ! で、でも、せ、戦争が終わってからなら、か、考えてあげなくもないわ・・・」

「いや、今すぐとは誰も言ってないっスよ。戦争が終わってから・・・ え゛ー! も、もう一度お願いしやす!」

「馬鹿! おなじ事を二度も言わすな!」

「うへへへへ」

「ニヤけた顔がキモイよ!」





うん、歩き難いです。

どうしてこうなった?
昨日の私は、アムロが話があるというから部屋に招き入れただけなのに、どうしてこうなった?

アムロの悶々としているリビドーは、全部を纏めて連邦に押し付けてギッタンギッタンに伸してもらう予定だったのに!
予定は未定とは、よく言ったものですね・・・


お元気ですか? 乙女の純潔を散らしてしまったジオン公国のギガアイドルことマリア・アイリーンです。

なにやら、シーマ様とコッセル艦長がイチャイチャしているみたいですけど、いまの私には二人の仲を邪魔する権利はありません。

うん、舐めていたわ。健全な高校生の性欲ってヤツを。 がっつきすぎです。
13回。13回ですよ! ふつう13回もヤルか? ゴム、ダースで足らないんだよ? こっちは、まだ成長途上の未熟な身体だっちゅーの!
まあ、ゴムなんて無粋なモノは使ってないんですけどね。

それに、回数を数えれた私も大概だとは思いますけど。まあ、8回を超えたあたりからの記憶は曖昧なんですけどね。多分、13回で正解です。

いくら性欲が旺盛とはいっても、少しは私の身体のことも考えて下さいな。おサルさんじゃないんだからさ。
というか、昨日のアムロはマジでサルと変わんなかったけどね! 毎回、昨日とおなじ性欲だったのなら私一人では、全部受け止める自信がありませんので!

まあ、途中からは私も気持ち良かったんですけどね。

そのおかげで、いまでも股にぶっ太い"すりこぎ"でも突っ込んでいる感覚があります。
えーと、これからジオンと連邦の決戦ですよね? でも、私はその前に既に男と女の決戦をして疲れ果てているのですけど、こんな状態で大丈夫なんですかね?
自分の事ながらも、これはさすがに心配になります。

初陣の新兵には、13会戦はキツかったのであります!

んで、件のアムロ君はといいますと、なんで憑き物が落ちたみたいにスッキリ爽やかな顔してんのさ! 普通そこは、ゲッソリするところじゃないのかな?
うん、健全な男子高校生は恐ろしいです。

戦場での死の恐怖が見させたラブロマンスの欲望の発露だと思いたいです。そうだよねアムロ?
毎度毎度こうだったなら、私の身体が持ちませんので愛人を作っても許しますので。


そうじゃなくて、なんでこんな事になったかというと、



UC 0079.12.30


「それで、話ってなにかな?」


私は紅茶を作るために、マグネットの付いたポットからお湯をカップに注ぎながらも、アムロに話を振って先を促した。まあ、おおよその予想はついているけどね。
ちなみに、紅茶はインスタントですよ。シーマ様のところでも飲んできたから、これ以上飲んだらお腹がタプンタプンになっちゃいそうです。


「怖いんだ・・・」

「最初は誰でも怖いものよ。でも、アムロは既にサイド7で実戦を経験してザクも撃破しているじゃない」


やっぱり、戦いに赴く前に戦うことに対する恐怖の胸の内を、誰かに聞いてもらいたかったのね。
誰でも怖いとは言ったけど、それは嘘。私は最初から恐怖を感じてなどないのだから。

だから言葉は悪いかも知れないけれど、シューティングゲームの延長線上でMSを操縦しているのが私。命を掛けて戦っている相手には失礼だとは思いますけど、
こればっかりは感覚なので、仕方がないと割り切ってます。

それに、私も命を掛けているのは敵と変わりはないのだから。直撃を受けたら私でも死にますしね。


「あの時は無我夢中だったんだ! 冷静になってみれば、なんであんな事が出来たのが自分でも不思議だよ」

「それはアムロ、あなたの才能よ」

「才能?」

「そうよ。いくらアムロに多少の予備知識があったとしても、普通は民間人の少年が訓練もなしに、いきなりモビルスーツを操縦する事なんてできないわよ?」


私は紅茶の入ったカップをアムロの前に置いて、自分もソファに腰を下ろしながら優しく諭すようにアムロに話し掛けた。


「確かに、それはそうかも知れないけど」

「アムロはニュータイプって言葉を知っていて?」

「ニュータイプ? ジオン・ダイクンが提唱した概念だっけ?」

「そう、人類が宇宙に進出してから人の進化の云々ってお伽話よ」


ニュータイプ議論ってヤツは、突き詰めていくとキチガイ理論と同義だと私には思えるのだ。人は言葉を介して人と分かり合える生き物だと私は思うのです。
それが、人の心にダイレクトに通じ合えるだなんて、人の心に土足で踏み入る暴挙と同じ事なのではないでしょうか?

人は誰でも、他人には触れて欲しくない領域というのがあるはずです。それにダイレクトで触れられたのなら、あとに残るのは不快感や疑念とかの負の感情で
しかありません。ニュータイプ同士は分かり合えるというのならば、これからの宇宙世紀の歴史で延々と戦争が繰り返される訳がないのですから。

私も詳しくは知らないし、知ろうとも思わないけどね。まあ、そのニュータイプとやらが、極少数なのが問題なのかも知れませんが。


『ならば、今すぐ愚民ども全てに叡智を授けてみせろ!』


十数年経っても、こんな事をいって戦争を続けているお馬鹿さんがニュータイプにいましたよね? 誰とは言いませんけど、誰とは。

なんだかんだと御託を並べましたけど、ニュータイプの世を作るという思想も一種の選民思想だと思いますね。
その選民思想の権化たる、ザビ家の外戚の私が言えた義理ではないのかも知れませんが。

っと話が逸れた。ニュータイプ議論はどうでも良いのだ。


「そのニュータイプが僕と、どういう関係が?」

「ジオンでは、そこそこニュータイプの研究が進んでいるのよ。だから、いきなりガンダムを操縦できたアムロも、恐らくはそのニュータイプだと私は思うの」


ごめんなさい。初めからアムロはニュータイプだと分かってはいるんだけどね。話を持って行く性質上、どうしてもね。
それと、研究は主に軍事利用の方面がメインなんだけどね。戦争は科学技術を大幅に進歩させるという面においてのみ、評価されても良い気がします。


「僕がニュータイプ・・・?」

「ええ、でもニュータイプだからと言って、自分が特別な存在なんだと自惚れたりしたらダメよ? 人は自分と違う異質なモノに恐怖を感じる生き物だからね」


そう考えると、私も十二分に異質なんだよね・・・ それに私は、どこか自分が特別な存在だと勘違いしているのを自覚もしているし。
自覚しているから、なおさら性質が悪いんですけどね。

アムロを窘める資格なんてないですよね。 あははは、乾いた笑いしか出てこないわ・・・


「ああ、学校のイジメの延長線上が社会の構図って事で、社会の縮図が学校のイジメって訳だね」

「その通りね。アムロは賢いね」


私はアムロの頭をナデナデしてあげた。うん、この天然パーマを撫でるのは癖になりそう。


「マリアの方が年下のクセに・・・」

「ふふ、それで話が脱線したけど、アムロが怖い思う感情はとても大切な事なのよ? 戦場では慣れが一番の敵とも言うしね」


そう、戦場では初陣か慣れた頃が一番危ないのだ。油断大敵です。無能の上官も同程度に危ないのだけども、それはまた別の話ということで。


「マリアでも怖いと感じるの?」

「そうね、私でもメガ粒子の雨は怖いわ。その怖いと思う感情を持ちながらも、怖さ恐怖を乗り越え克服するのよ。それができなければ、」


すみません、また嘘を吐きました。怖くないです。でも、恐怖を感じない自分には恐怖を感じます。適度に恐怖を感じる事は戦場では必要だと思うのです。


「それができなければ・・・」

「できなければ、死ぬわ。もっとも、アムロは私が守ってあげるから心配しないでも大丈夫よ」

「マリアっ!」


私がアムロを守ってあげる、心配しないでも大丈夫って言った途端、アムロに抱き付かれていました。もしかして、いまの私の言葉がアムロの琴線に触れちゃった?
そりゃ、いままでずっと身内もいない敵地みたいなサイド3で心細かったよね。連邦にも帰れないし、積極的にジオンに協力する事への葛藤とか色々あったのかもね。
私だったら鬱になる自信ありますもん。

なんだかキュンときちゃったではないか。これが所謂、母性本能というヤツなのか? そうなのか?
まあ、私のは紛い物みたいだけどさ。しかし、この子は天然ジゴロですか? アムロ、君にはジゴロの才能あるよ。

そんなこんなで、冒頭に戻るわけなんですよ。


さて、そろそろ決戦の時は近いですね。もう一踏ん張りしますか!


その前に・・・ あぅー、ヒリヒリするからフェミニーナ塗っとかないと。




[41069] 25話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/06 22:37


「思っていたよりも、侵攻してくる連邦軍の数が少ないですね」

「ソーラ・レイで三割か四割の連邦艦隊を潰せたのが大きいねぇ」

「これなら、敵を追い返すことも可能ですね」

「追い返せなかったら、ジオンの負けだよ」

「それもそうですね」

「さて、我らが総帥の、ありがたいお言葉でも拝聴するとしますかねぇ」





『我が忠勇なるジオン軍兵士達よ。今や地球連邦軍艦隊の半数が我がソーラ・レイによって宇宙に消えた。
この輝きこそ我らジオンの正義の証である。
決定的打撃を受けた地球連邦軍にいかほどの戦力が残っていようと、それはすでに形骸である。
あえて言おう、カスであると。
それら軟弱の集団がこのア・バオア・クーを抜くことはできないと私は断言する。
人類は、我ら選ばれた優良種たるジオン国国民に管理、運営されてはじめて永久に生き延びることができる。
これ以上戦いつづけては、人類そのものの危機である。地球連邦の無能なる者どもに思い知らせてやらねばならん。
今こそ人類は、明日の未来に向かって立たねばならぬ時である!』



うん、やっぱギレンにはカリスマがあるわ。扇動者としては、ヒトラーの尻尾の面目躍如だね!
おなじ事を私が言ったとしても、さまにならないのが良く分かる演説だわ。

うん、軟弱な連邦がア・バオア・クーを抜くことなど不可能であると、私は断言するのであります。

というか、私がこの前パクった台詞を本家のギレンがパクリなおして、本当にカスって演説に入れたのね・・・





「メドゥーサ04より06へ。アムロ心配しないで私の後ろから付いてこれば大丈夫だからね」

「こちら06、了解!」

「マリア隊長。ちょっとその新入りに過保護がすぎませんか」

「ふふ、レイチェル少尉が心配するのも分かるけど、アムロ特務曹長は私の動きに付いてこれる実力があるって意味なのよ」


物は言いようなのです。確かに指摘されたように過保護なのかも知れませんね。でも、アムロは久々の実戦なんだし、連邦が相手は初めてだからね。


「は、はぁ。確かに悔しいですけど、私では隊長の全力には付いて行けないのは事実ですけど・・・」

「ちゃんと小隊単位で行動するから、レイチェル少尉も心配しないでも大丈夫よ」

「行動してくれないと私が困りますよ」


小隊や中隊単位で行動をする時の私は、実力の半分程度の機体操作に抑えて行動しているのだ。そうしないと私だけが突出してしまうのです。
まあ、突出して敵中に孤立してしまっても、大抵の場合は私一人でも切り抜けられるんですけどね。


「僕もレイチェル少尉に迷惑を掛けないように頑張ります!」

「新入り君、頼みましたよ!」

「アムロはそう気張らなくてもいいのよ。まずは実戦の空気を感じることが大切なんだから」

「空気を感じる・・・か」

「やっぱり、マリア特務大尉殿は甘やかしてますね」


なんだか、レイチェル少尉の言葉に棘を感じるのは気のせいかな? 普段の彼女は特務大尉殿なんて言わないもんね。うーん、わからん。


「多少の自覚はありますよっと、05、06。無駄なお喋りはここまでよ! 敵がくるわよ!」

「「了解!」」



私たちはクレア中尉と組んでいた時とおなじように、着実に順調に敵を屠って敵戦力を削っていく。アムロが違和感なく小隊と行動できているのは、凄いとしか
いいようがありません。これがアムロの資質ってことなのね。さすがはニュータイプですね。


「水色のジム、新型のスナイパーか!」

「05から04へ。データ照合、サイド6でサイクロプス隊が交戦した新型です」

「04了解した。アイツはヤバそうだから早めに墜としておくよ! アムロ、付いてこれるわね!」

「06、アムロ行けます!」


そこは、『アムロ行きまーす!』じゃないの?

私は邪なことを考えながらも、ビームマシンガンの引き鉄を弾いていた。その直後に一機の水色のジムスナイパーⅡが爆散した。周囲で見える範囲の水色は残り7機。
ガンキャノンの量産型も4機います。おっと、水色のジムが6機に減ったか。あれを殺ったのはシーマ様みたいですね。さすがです!


「こちらメドゥーサ05。メドゥーサ12、フクドメ軍曹の信号ロスト!」

「ちぃ! さすがにこっちも無傷とは行かないってことね。そこっ!」


視界の隅で見えた友軍機の爆発がそうだったみたいです。相変わらず04小隊の損害は多いですね。ちゃんとお祓いしたのかな?
しかし、混戦でもレイチェル少尉は冷静ですね。やっぱり彼女は指揮官向きですね。今度、小隊長変わってもらおうかしら?


「僕だって、僕だってやれるとこを見せるんだ!」

「アムロ落ち着きなさい。あなたならできるわ」


ちょっと気負っていますけど、こればかりは場慣れが必要なことだから、私がどうこうできる問題でもありませんね。アムロ、頑張って。
って、おう、命中! さすがはアムロです。


「さすがは隊長が無理矢理にでも、捻じ込んできただけの事はありましたね。アムロ特務曹長、親衛隊第一独立遊撃艦隊へようこそ!」

「あ、ありがとうございます?」

「あはは、アムロそこは、よろしくお願いしますじゃないのかな?」


レイチェル少尉もアムロがジムスナイパーⅡを撃墜したのを見て、我々の仲間って認めてくれたみたいだね。
さて、それでは私もアムロに負けないように、いっちょ頑張って敵機を墜としますかね!



「いくら新型だろうが、」


私は残りのジムスナイパーⅡに優先的に狙いを付けて、ビームマシンガンを一連射していく。


「中の人間が扱い切れなければ、」


慣熟訓練も済ませずに出撃してくるから、


「ただのジムと変わりはありません!」


ただの的に成り果てて撃墜されるのです。


「す、凄い。これが宇宙の魔女の実力・・・」

「アムロ、そこはせめて宇宙の蝶って言って欲しかったなぁ」


まあ、最近では宇宙の魔女って二つ名も案外と気に入っちゃってるのは内緒です。これで、残りのジムスナⅡは一機のみ。
っと、レイチェル少尉が墜としました。これで、目下の脅威はかなり減少した感じですね。


『そ、そんな、新型のジムスナイパーⅡが何も出来ないで鴨打ちされるだなんて・・・』

『俺たちは最悪なフィ-ルドに回されたようだな・・・』

『ど、どういう事だってばよ!』

『あの薄紫色の機体は宇宙の魔女に違いない! 味方のいるフィールドに逃げ込むぞ!』


動揺してオープンチャンネルで喋ってますよ? 恥ずかしいですから私も気を付けないといけませんね。
それと、甘いです。私が目を付けたのならば、私からは逃れられないという事を教えて差しあげます。


「残りの赤いキャノン付きを殺ったら、隣の区域に移動するよ!」

「06、了解!」

「05、了解しました」


「戦場で敵に背を向けて逃げ出すなど、」


私たちは、逃げるガンキャノンに向けて照準を合わせて発砲した。


「殺してくれって言ってるようなものです!」


うん、サクっと敵の撃墜して任務完了。アムロとレイチェル少尉もそれぞれ一機づつ仕留めたね。

その時、近くにいたリックドムが爆散したのが目に入った。


「どこだ!」


瞬時に発砲してきたビームライフルの方向を見定めて、私は目を見開いた。


「いた! 斜め上2時の方向! 05、06予定を変更する。あの二機を殺るよ!」


量産化されていたのか? いや、試作機の少数のうちの二機だと信じたい。


「あの機体は!」

「サイド7以外でも作っていたんだ」

「私は運がいい」


この場合は運が悪いのかな? もちろん、運が悪いのは私と出会ってしまったガンダムさんですけどね!
白と赤のツートンのガンダムと、白と青のツートンのガンダム。4号機と5号機だったかしら? まあ、試作機だろうと量産機だろうと、私の目の前に立ち塞がる
のならば、


「敵は排除するのみ!」


私は二機のガンダムに向かってバーニアを吹かして突貫する。とりあえず、アムロとレイチェル少尉には様子見をしてもらいましょうかね。


「相手の実力が未知数だから、二人は援護に徹してちょうだい」

「05了解!」

「マリア一人で、あのガンダム二機を相手にするのか?」

「アムロ特務曹長、マリア隊長を信じなさい。ああ見えても彼女は強いのですから大丈夫でしょう」


ああ見えてもって、普段の私がどう見えているのか気になりますね。深窓の令嬢でしょうか? 一応は、お嬢さまには分類されているみたいですけど。
私の感覚では、お嬢さまという実感は湧きませんね。


「アムロ、レイチェル少尉の言う通りよ。私を信じなさい」

「わ、分かったじゃなくて、06了解しました!」


アムロは、もうちょっと反発するかと思ったけど以外と素直ですね。ふふ、素直な子は好きですよ。

さあ、まずは小手調べと行きますか。

って!?


「あふぅ」

「04、隊長どうしましたか?」

「垂れてきちゃった」

「た、たれるとは?」

「昨夜のアムロの残りが中から垂れてきちゃったの・・・」


うん、これはこれで、残り香を感じられていいかも知れませんね。

というか、オムツをしている時で良かった。これが、ノーマルスーツを着用してない時だったら大惨事になっていたかも?
そう、煌びやかなMS戦を格好良く繰り広げている連中の大半は、オムツを穿いて戦っているのです。

あの憧れのエースパイロットたちもオムツを穿いているのです!

驚いたでしょ? でも、人間は作戦行動中でも尿意は感じるものなのです。我慢なんかしたら判断力が鈍りますしね。
そこで、オムツにシャーですよ。これでスッキリして戦えるのです。


「アムロ特務曹長、短い付き合いだったわね」


そう言って、レイチェル少尉がアムロのガルバルディに銃口を向けた。


「ちょ、ちょっとレイチェル少尉、冗談でも味方に銃口を向けるのは禁止ですよ!」

「あら、私としましたことが、つい。オホホホホ」

「ビ、ビックリしましたよ。まあ、殺意は感じられませんでしたから良いですけど」

「アムロ特務曹長は帰還したら、私と一緒に腕立て、腹筋、スクワット、各千回づつの刑で許します」


うん、レイチェル少尉を怒らすのは止めておこう。一つ勉強になりました。

アムロ、頑張って生きるんだ!




[41069] 26話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/07 18:17


「マゼランタイプの撃沈を確認。敵のモビルスーツ部隊が発進したようです」

「うむ。さてドロス、うまくやれよ」

「キシリア様が戻られました」


「遅かったな」

「申し訳ありません。グレートデギン、どこに配備されたのです? ズム・シティですか?」

「ああ、港でフジツボ掃除でもして無卿を託っているのだろう。それがどうした?」

「いえ、言わなければならない気がしましたので・・・」

「そうか、私も悪寒がしたのだが、なにか良からぬ事でも考えてはおるまいな? キシリア」

「お戯れを。ジオングを使います」

「あの未完成品をか?」

「少しでもニュータイプと思える者をぶつける以外、連邦は倒せません」

「あまりニュータイプにこだわり過ぎるな。マリアでさえニュータイプ適性はなかったのだろう?」

「はい、あの子は不思議な子です。既存の範疇では納まる器ではありません」

「では、そういうことだ。フフフフフッ、圧倒的じゃないか、我が軍は」



~~~~~~~~~~



「さて、見せてもらおうか、赤いガンダムと青いガンダムの性能とやらを」


こっちに注意を引きつける為の牽制射撃を一連射する。本当は無駄な弾なんだけどね。でも、これで敵は罠に掛かるのだから人間の心理って単純ですよね。
戦場とは謀が多い方が勝ち、謀が少ない方が負けるって孫子か誰かが言っていましたけど、これは宇宙世紀でも不変みたいです。


『あのゲルググは魔女か?』

『いくら宇宙の魔女だろうと、ガンダムの性能さえあれば!』

『おい、フォルド待て!』


ふーん、この私に反航戦を挑んでくるとはね。だが、甘いです。パイロットとは熱くなりながらも常に冷静でなければならないのです。
私は被弾面積を少なくする為に頭から突っ込む形でクルクルと回りながら、赤いガンダムの放つガトリングガンを避けながら赤いガンダムに接近する。


『な、なぜ当たらないんだ!』

「そんな見え透いた弾道に私が当たるわけがないでしょ」


下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるともいいますけど、私に当てるには弾幕が薄すぎましたね。


『フォルド迂闊だぞ!』

「私に挑んだ勇気は認めますけど、もう少し腕を磨くべきですね」


そう、迂闊にも私に挑んだのが間違いなのです。
どうやら、ガンダムの色とおなじで赤い方が瞬間湯沸かし器で、青い方が冷静みたいですね。それならば、


「やりようは、いくらでもあるのです」


私は赤いガンダムとのすれ違いざま、相手の背中に蹴りを入れて斜めに跳躍して、一気に青いガンダムとの距離を詰める。


『うわっ! 俺を踏み台にしただと!?』

『ちぃ!』


アムロが見ているんだから、アムロの技を見せてあげないとね! 宇宙でも踏み台は可能なのです。

そういえば、ガイアさんって今どこで何をしているんだろ? グラナダかな? あの人も腕の確かな武人だから、この決戦には参加したかっただろうね。
マ・クベ中将やキマイラ隊とかは、こっちの決戦に参加しているとは聞いているけど。でも、グラナダを守ることも重要な任務ですよね。


「少しは反応できるみたいですね。だが、遅い!」


既に抜き身のビームサーベルを振りかざすと見せ掛けて、私はビームサーベルをランスのように使って刺突させる。狙いはもちろん青いガンダムのコクピットです。


「もらった! っ!?」


その瞬間に、私のゲルググ・イェーガーと青いガンダムの僅かな隙間を一筋のビームが走った。私はビームを避けるために瞬時に体勢を崩しながらも、
刺突させようとしていたビームサーベルを横に払って、ガンダムの右腕だけを切断した。

相手を殺る瞬間は自分の無防備に近くなる。その僅かな瞬間を狙ったのか? 邪魔をしたヤツはどこのどいつだ?
私はビームを撃ってきた方向を視認した。ダークグレーの増加装甲を身に纏ったソレは、


「また、ガンダムかい?」


あれは・・・? チョバムアーマー装備のガンダムアレックス? バーニィがサイド6で壊してくれたんじゃなかったの?
いや、現実を直視しろ。理由はどうあれ、現に今ここに居るのはまぎれもない事実なのだ。

どうやら私は、よほどガンダムと縁があるらしい。これで遭遇したガンダムは、アムロから合わせて五機目だ。
これって、もしかして戦場に出ているガンダムそのほとんどと戦闘している事になるのかな?

青のガンダムも蹴って、今度はデブっちょなガンダムに向けて転進する。なんだか、青いガンダムから悲鳴が聞こえた気もするけど、気にしません。


「マリア大丈夫か!」

「ええ、大丈夫よ。アムロ、心配してくれてありがとうね」


アムロに心配を掛ける戦い方をするなんて、私もまだまだという事ですね。この戦場での危険度を判定するならば、青いヤツと赤いヤツよりもアレックスの方が
危険度は高い。一歩間違えれば、フレンドリーファイヤにもなり兼ねない精密な射撃をしてきたのがアレックス、ヤツなのだから。

頭のネジが数本は緩んでいないと出来ない芸当をしてのけた、あんな射撃ができるヤツは危険だ。
青と赤と遊ぶのは後回しにして、私はアレックスを倒すのを優先する事にした。


「05から04へ。新たなガンダムタイプは、これもサイド6でサイクロプス隊が交戦した機体です」

「04了解した。05、06は赤と青いガンダムを適当に牽制しといて。私は先にコイツを殺る!」


先に弱い方のガンダムを倒してからアレックスに向かった方が良いかも? 一瞬そう頭をよぎったけど、先ほどとおなじで邪魔をされるのは目に見えているから、
これで良いのでしょう。赤と青のガンダムの実力なら、アムロとレイチェルの二人に任せても大丈夫ですしね。
これでも一応は考えて行動しているんですよ?


「05了解! 適当にじゃれときます」

「06、了解! マリアも気を付けて!」


うんうん、二人とも言いますね。これなら大丈夫でしょう。私の目下の敵はアレックス。赤いガンダム相手に撃たずにケチっていて良かったです。
弾薬を節約する癖をつけといて、はじめて良かったと思う場面に出くわしました。まずはチョバムアーマーを壊させてもらいますか!

私はアレックスに狙いを定めてビームマシンガンを三連射した。


「ほぅ、増加装甲を自らパージしましたか。少しは頭が回るようですね」


三連射したビームマシンガンを避けきれずにアレックスは被弾したのですけど、チョバムアーマーの一部を半壊させたのみでした。
相手のパイロットは、チョバムアーマーがデッドウェイトになっているとみるや、即座にパージして身軽になったのです。


「思い切りが良いヤツは危険ですね。ここで墜とさせてもらいます」


さらにビームマシンガンを三連射しつつ、私はアレックスに接近して行く。相手も回避しつつもビームライフルで応戦してくるけど私には当たらない。


「さすがに身軽になった分だけ避けられてしまいましたか。でも、仕留めるのはビームサーベルと決めているのです!」


・・・多分ですけど。

私は素早くビームサーベルに持ち替えてアレックスに斬り掛かる。が、相手もさる者で予期していたのか、ビームサーベルで受け止められてしまった。

コイツは、


「強い!」


少なくとも、ソロモンで戦ったG-3よりもかなり格上の相手だ。
乗っているのは誰だ? プレッシャーは感じないけど。まあ、私はニュータイプじゃないからプレッシャーなんて、はじめから感じられないんだけどね。
でも、戦場の空気みたいなのは感じるのです。上手く言い表せませんが、そういうものなんです。

本当は、『来たなプレッシャー!』こんなカッコイイ台詞を言ってみたいんですけどね! それが言えそうになくて残念です。

でも、この台詞を言った人の死に様は、惨めだったような気がしないでもありませんが。あと、好きな女の子にも相手にされてませんでしたね。
やった事といえば、サラダを作ってくれる人の彼女を握り潰したくらいでしょうか? 戦争って本当に残酷で嫌になりますよね。

それはさておき、

コイツからはプレッシャーは感じないけど、コイツから感じるのは、また別の種類のナニか。
そう、野生のライオンとか虎みたいなのを相手にしている感覚なのだ。野生のライオンなんて見たことも相手にしたことも無いけど。


『宇宙の魔女さんに認めてもらえて嬉しいね』

「チャンバラごっこでも楽しみましょうか? 行くわよ!」


戦争は残酷で嫌になるといった傍から、私は言葉とは裏腹な行動をしているけど、それはそれ、これはこれなんです。
うん、やはり私はどこか壊れているんでしょうね。


『なんの!』

『ルースぅーーー!』

「やるー! それ!」

『むぅ!』


ビームサーベルを振り回しながら私と敵のパイロットは会話をする。既に三合斬り合いその全てを受け止めた相手。
はじめてだ。戦場でこんなにも高揚した気分にさせてくれた相手は、はじめてなのだ。

別のはじめては昨日のうちに体験したというのは内緒です。 あ、思い出したら・・・
なんか変な声が混じっていた気もしますけど、気にしないでおきましょうか。いまの私はアレックスと戦闘中なのですから。


『チャンバラしたいのはやまやまなんだが、』

「やまやまなんだが? その続きは?」


むぅ、気になるではないか。といいつつも、ビームサーベルを振り回すのは止めない。


『残念ながらお前さんとは、まともに相手にするなって命令がきているんでね』


なんですか? 人をデフコン2の警戒対象の病原菌みたいな扱い方をするのは?


「マリア! そいつとじゃれるな!」




[41069] 27話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/08 21:08


※ この作品はTS恋愛小説です ※










「マリア! そいつとじゃれるな!」


アムロの声が聞こえたと思ったら、私のイェーガーと敵のアレックスの間をビームが走った。あれ? これってさっきの焼き直しですかね?
というか、私とアレックスが離れて二機とも避けたともいう。避けなかったら、どっちかに命中してましたよ。危ないですってば。

といいますか、なんでアムロがこっちに来てるんですかね?


『おっと、ただでさえ不利なのに新手が来たなら、ここは退くしかないね』

「あら? 逃げるの?」

『お嬢さんには勝てそうにないから逃げるさ、それに命令もあるしな。じゃあな!』


じゃあな、そういった刹那、アレックスは腕部のガトリングガンを乱射して後退していった。まあ、私には当たらないんですけどね。
やけにアッサリとしていたわね。退き際の見極めが良いのも優秀なパイロットの証明でもありますね。

お返しに私もビームスポットガンをお見舞いしてあげました。アレックスは左脚の膝から下だけポロリと取れて逃げて行きました。
背中のランドセルを狙ったのに避けやがった。


「ちっ、悪運の強いヤツめ」


そう毒づきながらも、私は逃げて行くアレックスを見送ることしかできなかった。追撃は深追いになりますし、補給しないとこれ以上の戦闘はリスクが高いのです。


「結局あのガンダムは、なんだったのかしら?」


私と積極的に戦闘する事を禁止されていたみたいだし、なにをしに現れたのかしら? うーん・・・ さっぱり分からん。
でも、分かったこともある。アイツを野放しにしておくのは危険ということが。主に私を除いてだけど。


「まるで野獣みたいだったわね」


そう、敵のパイロットは、まるでヤザンみたいな感じのパイロットだった。もしかして、本当にヤザンだったのかしら?
そう思ったら、本当にヤザンのような気がしてきた。でも、相手を確かめる術がないのが残念ではありますね。もう一度戦場で会えるかな?

味方にすれば頼もしいけど、敵に回すと恐ろしい相手ってヤツだね。なぜだか、妙に波長が合うといいますか、親近感が湧いた敵でしたね。なんでだろ?


「野獣? あの新型のガンダムのパイロットが?」


考え込んでいて、独り言がアムロに漏れていたようですね。


「ええ、危険な感じのするパイロットだったわ。それで、アムロの方の弱っちいガンダムはどうなったの?」

「ああ、それなんだけど、青い方のガンダムは僕が撃墜したけど、赤い方は、」


おー! 久々の実戦でガンダムを撃墜するとは、さすがはアムロですね! 適当に牽制しておくだけで良かったのに、お姉さんも鼻が高いというものです!
私も乙女の純潔を捧げた甲斐がありましたね!

何十回何百回のシミュレーションよりも一度の実戦とはいいますけど、アムロの成長スピードは、やはり異常ですね。これが本当のニュータイプなのでしょう。
訳の分からない存在の私なんかとは雲泥の差の気がします。
ん? というか、赤い方は?


「赤い方のガンダムはどうしたの?」

「ああ、赤い方のガンダムはビグロがやって来てビグロの爪に持って行かれて、何処かに飛ばされてしまったみたい・・・」


なんということでしょうか、あのガンダムがボケをかましやがりましたよ。モブ扱いに成り下がったガンダムに哀愁すら感じます。
赤いだけに三倍の速度で放り投げられたのでしょうか? 謎ですね。

まあ、実際のところ私にとっては、ガンダムもジムも大して変わりはないんですが。


「そう、それじゃあ、一度補給に戻りましょうか。04よりメドゥーサ05へ。補給の為に一度後退する!」

「05了解しました!」

「アムロも一緒に下がるよ」

「06、アムロ了解!」


こうして、私たち02小隊は補給の為にSフィールドに帰投する事にしたのです。
リリー・マルレーンも無事だけれども、基地が使えるなら基地で補給した方が早いしね。他のシーマ艦隊とMS中隊のみんなは無事なのかなぁ。
あれから、ロストしたシグナルが三つ増えているのも気になりますね。シグナルロスト=戦死ではないのがまだ救いですが。でも、戦死の確率は極めて高いですけど。


「それはそうと、アムロさっきのは、なんだったのかな?」

「え、さっきのとは?」


とぼけているのか、素なのか判断に迷う返答ですね。


「ほら、『そいつとじゃれるな!』って叫んでビームマシンガンを撃ったじゃないの」

「ああ、それ・・・ あははは・・・」


本当は、『マリア! ヤツとの戯れ事はやめろ!』これが正解なのかも知れませんけど。でも、これを言ったのはアムロじゃなくて相手の方でしたね。


「なに曖昧に笑ってるのよ? 気になるじゃないの。ビームマシンガンを撃ったことに対しては別に怒ってないわよ?」

「いや、その、ほら、マリアが敵のガンダムと楽しそうに戦っているように見えたから、つい・・・ね」


なるほど、なるほど。要するに嫉妬って感情ですかね? 男の独占欲ってヤツですね。私も前世では男だったから、アムロの気持ちは良く分かりますよ。
ふふ、可愛いところがあるじゃないですか。

でも、そんなに戦っているのが楽しそうに見えたのかな? なんだか私が戦闘狂みたいじゃないですか? こうみえても私は淑女のつもりですよ?
そうしないと、お姉ちゃんからの小言が増えるんですから。

小言ばかり言っていると小皺が増えるよ。とは、とても恐ろ怖くて絶対に言えませんけどね!


「ふふ、アムロは敵のパイロットに嫉妬したんだね」

「嫉妬だなんて、そんな!」

「あら、私はアムロが嫉妬してくれて嬉しいのよ? アムロが私を好きじゃなかったら、嫉妬の感情なんて生まれないもの」


そう、好きの反対は嫌いではないのだ。本当に相手への好意や愛情が褪めてしまった場合の、好きの反対は無関心なのです。
だから人は好意を持っている相手に対して、あの手この手で関心を惹こうとするのです。

これって、動物の求愛行動とおなじですよね。とどのつまり、人間も動物の本能からは逃げられないのです。

ああ、だからか。やけに腑に落ちると思ったら、昨日のアムロがおサルさんに変身してしまったのは、こういう事だったんだね。
うん、納得した。


「じ、じゃあさ! 今日も戦闘が終わったら、」


アレ? もしかして、私が自らアムロに余分な餌を与えて地雷を踏んじゃったのかな? ひぇー、続きの言葉を聞かなくても理解できるのも良し悪しですね・・・
マジですか? 今日も致すといいますか! どれだけアムロはサルなんですか! 健全な年頃の男の子の性欲は凄まじいですね。

前世の私がアムロの年の頃ってどうだったっけ? うん、ヤリたい盛りでしたね。これではアムロの事を馬鹿にできませんよね。
でも、私は精々アムロの半分ぐらいの性欲だったと思いたいです。私が男だった時でも、13回はさすがに無理でしたから。

というか、今日は勘弁して下さい! まだアソコがヒリヒリしていますし、すりこぎが入ってる感覚が残ってますから!

うん、おサルさんに余分な餌を与えるのは自重しよう。私は一つ賢くなりましたね!


「終わったら?」


あえて私はイジワルをして、アムロに言葉の続きを言わせることにしました。このくらいの意趣返しをしても罰は当たらないよね。
それにヤリたいんだったら、恥ずかしがらずに男は根性を見せるべきなのです。女の口から言わすのは男が廃るってもんですよ。


「せ、戦闘が終わったら、ま、また、マ、マリアの、へ、部屋に行ってもいいかな?」


うん、よく頑張って言えたね。偉いぞアムロ。 でも、噛みまくりでしたが。
これは、ご褒美をあげないと今度は私の女が廃るってもんだね。でも、まだヒリヒリするしなぁ。ということは、


「あ、あのね? まだ、昨日したあとがヒリヒリして痛いの。もちろん、アムロが部屋に来るのはウェルカムなんだけどさ」

「ご、ごめん。大丈夫なの?」

「エッチをするのは、二日か三日は無理そうだけど、アムロはしたいよね?」

「う、うん」


アムロ君よ、私を気遣いながらも己の欲望に忠実ですね・・・ まあ、そこも好感が持てるんだけどね。下手にフェミニストを気取るヤツなんかよりも、
百倍も千倍も好感が持てますね。

聞いているか? シロッコとやらよ。


「だからね、お、お口でしてあげるから、それで今日は我慢してくれるかな?」

「うん!」


おう、即答かよ。そんなに出したかったのね。なんだか、耳をパタパタして尻尾をブンブンしている幻影が見えた気がするんですけど。
アムロが赤毛だから、アイリッシュ・セッターを想像してしまったではないか。今度バターを塗って試してみようかな?

というか、もう溜まってるのかよ。早すぎやしないですかね? 精力の回復って三日は掛かるんじゃなかったの? これが若さなのか。
まあ、アムロも気持ち良くなれて、私もタンパク質の補給ができて一石二鳥なんですけどね。
一石二鳥以上の気がしないでもないけど。


「こちら05。さっきから黙って聞いてましたけど、丸聞こえでしたよ。二人ともいい加減にして下さい! まだ作戦行動中ですよ!」

「あばばばばー!」

「す、すみません」

「今度ふざけたらシーマ司令に言い付けますからね!」


なんということだ! レイチェル少尉の存在を完全に失念していたとは! これが恋愛脳というヤツなのか? そうなのか?
ということは、私ってアムロに恋をしているって事になるのかな?

もう既にヤルことをヤっちゃてるんだから、いまさらな気がしないでもないんですけどね。でも、なにか忘れているような気がするような・・・?

あ!?


「あ゛ー!」

「マリアなにがあった!」

「隊長どうしました?」

「忘れてたー! アムロにちゃんと好きって言ってもらうのを忘れてたー!」


まあ、私もアムロにちゃんと好きって言ってないからお互いさまではあるんですけども。
なんという戦場の罠。これが吊り橋効果とかいうヤツなのかも知れない。


「そ、そういえば、ちゃんと言ってなかったかも・・・」

「アムロ特務曹長、やはり貴殿とは此処でお別れみたいですね。好きとも言わずに隊長を手籠めにするなど、男の風上にも置けません!」


そういったレイチェル少尉は、銃口をアムロのガルバルディに向けた。って、これなんてデジャヴですかね?









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

言い訳をば。

戦闘シーンを書くのが難しくて脳内お花畑に逃げました。といいますか、勝手にこっちの方向にキーボードを打っていました。




[41069] 28話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/09 16:09


「メッサー曹長とマルセイユ曹長の戦死は確実か。それで救助されたのがムタグチ曹長と。彼は、悪運が強いよね」


マルセイユは灰色の15のままで、黄色の14には成れなかったか・・・ これはマルセイユ違いだったか。ミッキーモウセは誰だったかな?

ア・バオア・クーのSフィールドにある基地に帰投した私たち02小隊は、MSへの補給の合い間に僅かな休憩を取ってます。
MSと同様に、それを操縦する人間にも補給と休憩が必要なのは当たり前のことですよね。

どこぞの旧世紀の軍隊は精神論で乗り越えようとしてましたけど、無茶苦茶な話だと思います。


「隊長、それを言うのなら彼は運が良いか、強運の持ち主じゃないですか?」

「うーん、なんとなく悪運のほうがイメージ的に、ね?」

「確かに脱出ポッドを一番有効的に活用しているのが、彼なのは否定はしませんけど」


それで、私たちMS増強中隊の現状は、非撃墜×4 メッサー、マルセイユ、フクドメの三名は戦死。ムタグチは救助。

増強中隊のMSを18機中、4機も失っています。損耗率でいえば、22%です。部隊としては半壊していると言っても過言ではありません。
いままでの戦闘の中でも一番の損害です。艦隊の守備に就いていた予備機も1機を失いました。

私の感覚ではソロモンの時の方が厳しかった気がしないでもありませんが、数字だけを見れば今回の戦闘の方が激しいのは一目瞭然ですね。
どうやら、私の感覚が狂っているみたいです。

しかし幸いにも、この基地がある場所のSフィールドの防衛は、ほぼ成功していると思っても差し支えはないでしょう。
まあ、苦戦をしていたのなら、こうやってのんびりと休憩して駄弁っている暇もないですしね。

ちなみに、シーマ艦隊はリリー・マルレーンをはじめ全艦艇が無事です。これは運が良かったと思います。


「マリア、他のエリアの戦況はどうなっているの?」

「全てのフィールドで我が軍の方が優勢よ。ここ、ア・バオア・クーを落とすには連邦軍は数が足りなかったみたいね」


アムロも実戦をくぐり抜けて、一端の戦士の面構えに近づいたみたいだね。ちょっとカッコイイかも。
うん、認めよう。私は完全に二つの意味でアムロに、やられちゃっているんだ、と。

ここにきて、あらかじめソーラ・レイで削っておいた事とソロモンで善戦した事とが、連邦にボディブローのように効いているのだ。
ソロモンから戦略的に撤退した事が、結果的に成功したみたいですね。私が総司令官だったらソロモンに固執して、こうは行かなかったでしょうね。


「そっか、これで僕も連邦から追われずに済みそうだね」

「追われたら追われたで、私が最後まで付き合うから心配しないで」


そう、私がアムロを巻き込んだのだから、私が最後まで責任を持って面倒をみるのが、私の人として最低限の矜恃だと思う。
それも既に建前になってしまってるのかも知れませんけど。これって、完璧に脳味噌が女のお花畑になっている自覚があるわ。


「マリアっ!」

「こらこら、まだ戦闘は終わってないわよ」


アムロが私の名を呼んで抱き付いてきたので、それを私は受け止めて背中をポンポンを軽く叩いて窘めさせた。ちょっと苦しいです。うん、前言撤回。

まだ、アムロは戦士の顔よりも子供の顔の方が大きいですね。小さい頃から母親と離れて宇宙に移民してきたんだし、もうちょっと自立心があると思ったんだけど、
強制的に乳離れをさせられた弊害なのかな? というか、この子は甘え上手だわ。キュンキュンきちゃうではないですか。

なんだか、アムロの母親代わりをさせられてる気分です。見た目は私の方が年下なのになぁ。


「アムロ特務曹長の腕立て伏せと腹筋が、天文学的に加算されて行きますね~」

「うげぇ」

「ふふ、レイチェル少尉も手加減してあげて下さいね」


ニヤニヤといいますか、半目の半笑いなんて器用で怖い顔をしながら言うレイチェル少尉に、これから先もアムロはイジられるのが確定した気がしました。


「ちゃんと公私の分別が出来るのなら、考えてもいいですけど」

「き、気を付けます!」


アムロ、頑張って生きろ! 私は応援しているぞ。心の中でしか応援しないけどね。この件については、私は傍観者に徹して被害を受けないようにしないとね。


「さて、補給が済んだら応援に行くわよ!」


私はパンパンと手を叩いて二人を促してMSに戻っていった。これからの戦いは、味方の薄い場所に駆けつけて敵を排除するのが私たちの任務だ。
戦場を俯瞰するように味方が不利な場所を見定めて横槍を入れる。あるいは、あと一押しさえあれば敵が崩れる場所に横槍を入れるのもそうですね。
これが本来の独立遊撃部隊の仕事なのです。

まあ、いままでそんな臨機応変に動けた試しは、ほとんどないんですけどね。大抵の場合は、はじめから横槍を入れる時と場所を指定されてたりしますし。
でも、防衛戦では特に臨機応変に対応する事が求められるのです。



「こちらメドゥーサ04。ア・バオア・クー管制応答せよ」

「こちら管制。メドゥーサ04どうぞ」

「味方が苦戦しているエリアを教えて下さい」

「ア・バオア・クー管制からメドゥーサ04へ。全体的に味方が押していますので、特に苦戦しているエリアはありません」


なんですと? 味方が有利なのは分かってましたけど、苦戦しているエリアすらないとは。これは勝ちましたね。


「メドゥーサ04了解。では、メドゥーサの独自指揮権に基づいて戦場を巡回します。オーバー」

「ア・バオア・クー管制、了解。グッドラック」


「04より05、06へ。戦場を偵察がてら、あぶれた敵を狩ってくわよ」

「06、アムロ了解!」

「05了解。掃討戦も間近ですね」

「それでも一応は気を引き締めないとね」


自分で気を引き締めろって言ったけど、これは余裕ですね。余裕のよっちゃんとはこのことか。うふふふ、正義は勝つ!

ジーク・ジオン! ジーク・ハイル! ハイル・ジオン! ジオン公国万歳!




















そう思っていた時期が、ついさっきまでありました。


私たちがWフィールドの外周部で狩りじゃなくて偵察していた時に、突然にアムロが、


「女の人の声が聴こえる? いや、女の子か?」

「女性の声?」


私には聞こえない女性の声がアムロには聴こえた? アムロが言った言葉に私が嫌なものを感じた直後、私は悪寒が走って叫んでいた。


「レイチェル回避ー!」

「きゃあ!」


レイチェル少尉の機体、ゲルググ・シュッズスタフェルの右腕が肩から吹き飛んだ。

撃ってきた方向を視認したその時、私の中で女性の声と嫌な予感とが繋がった。そう、ガンダムタイプの機体が目に入ったのだ。


「ニムバス仕事しろよ!」


思わず、ニムバス・シュターゼンを罵ってしまった。はしたないですね、反省します。

なんで、EXAMを搭載した機体がまだいるんだ?
それとアムロ。声が聴こえるって、ニュータイプに覚醒したのか? 戦場で強引に覚醒させる手法を取ったのは私だけど、それにしても早かったな。

ギレンの野望的にいえば、アムロはNTレベルが5だから、ランクDで覚醒するのと同じと思えばいいのかな?
射撃20、格闘18、反応20にまで成長する化け物がアムロです。うーん、マンガチックな想像ですね。

私を当て嵌めると、どうなるのかって? 私は、ランクSで指揮11、魅力13、射撃25、格闘22、耐久7、反応30くらいじゃないですかね? 手前味噌ですが。
限界値を楽に突破していますけど、気にしたら負けです。

いや、それよりも今はレイチェル少尉が優先だ。


「04より05へ。レイチェル機、被害状況を知らせよ!」

「こちら05。右腕を完全に持っていかれました。誘爆の危険はありませんが、戦闘能力は半減しました」


うん、外から見ても誘爆の危険はなさそうなのが、不幸中の幸いといったところですね。


「06は05を援護して後退せよ!」

「でも、それではマリアが一人に!」

「アムロ! これは命令よ! それとも私が損傷を受けた05よりも、役に立たないとでもいいますか?」

「06、アムロ了解しました・・・」


アムロが私を心配してくれる気持ちは嬉しいけど、これは少し修正が必要みたいですね。少し甘やかしが過ぎましたかね?
軍隊では私情を優先していては、部隊の崩壊に繋がりかねないのだから。

もっとも、まともな軍隊教育を受けていないアムロには酷なのかも知れませんが。でも、修正しないといけませんね。


「05から06へ。アムロ特務曹長、後退するぞ。援護を頼む」

「06了解。マリアも気を付けて、あの女の声の聴こえるガンダムは危険だ!」

「ええ、分かってるわ。大丈夫だから心配しないで」


捨てられた子犬のようなアムロがレイチェル少尉と後退して行った。しかし、瞬時に危険と判断できるのもニュータイプと疑似ニュータイプの共鳴ですかね?


さて、ここからは真剣にやらないとちょっと不味そうですね。相手はEXAMシステムという、オカルトチックな機械を搭載しているのだ。
どうやったら人の精神とか魂とかを機械に封じる事ができるのかは謎だけれど、そのサポートシステムは危険ですね。

それにEXAMを全部破壊しないと、確かマリオンは目を覚まさないんじゃなかったかな?

べつに彼女と面識があるわけでもなく思い入れもないですけど、 ・・・まあ、彼女の存在を忘れていたという多少の後ろめたさはありますけど。
それはそれとして、コイツを倒せば彼女の意識が戻るならば、倒すべきでしょう。それにコイツは敵なんだし。

コイツは先のアレックスよりもヤバそうな気配がプンプンするね。

紛い物とはいえ、疑似ニュータイプだ。覚醒前のアムロと戦った時のようにはいかない。気を引き締めて掛からないと、間違いなく私がやられる。
おなじ紛い物同士、どっちが上が試させてもらいましょうか。恐らくこの戦いは、対ニュータイプ戦の試金石に成り得る戦闘になるはずなのだから。

まあ、そんなニュータイプとの戦いが将来に訪れるなど、まっぴらごめんですがね。
私はサイド3でぬくぬく暮らせれば、それで満足なのです! 身の丈に合わない野心は、己の身を滅ぼすともいいますしね。

でも、目の前の敵は倒さねば、私に平穏は訪れません。だから私は戦う。それが紛い物であろうと、与えられた力を使って。


「さあ、行くわよ。ニュータイプもどき!」




[41069] 29話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/11 12:17

「私から先手を奪うとは、少しはやるわね」

『……』


私は敵が撃ってきたビームライフルを躱しながらも相手を称賛した。そう、私が牽制の射撃をする前に相手が撃ってきたのだ。
相手に強制的に後手を取らされたのは、はじめてかも知れない。私は敵の危険度を一段階引き上げる事にした。

この宙域には、私のゲルググ・イェーガーとEXAM搭載のブルーディスティニー・・・ 何号機だっけ? まあいいか。ガンダムもどき、この二機だけだ。
ブルーじゃなくてホワイトがメインなのにブルーディスティニーとは、これ如何に? そう思わなくもないが。

まるで私たちの戦いを邪魔しないように、不自然なくらい周りには敵も味方のMSもいない。ニュータイプの思念が、この宙域から人を遠ざけているみたいにも感じる。


「次はこっちの番よ!」


そういって私はバーニアを加速させて相手に接近する。が、相手は乗ってこない・・・。
多少は距離は詰まっているけど、相手は私を中心に見て円を描くように後退しているのだ。戦場からの後退ではなく、様子見の後退ということです。
相手に戦う意志はあるのだ。


「ふーん、面白いね」


私は相手の後退する行き先にビームマシンガンを連射して、行き脚を鈍らせて行き先を限定させる。こういう時には本当にビームマシンガンって便利だよね。
弾数の少ないビームライフルでは牽制射撃にも気を遣うからね。相手は一回しか応戦してこなかった、これなかったし。


「でも、円を描くように後退するのならば」


そう、円を描くような後退の仕方ならば、私から一直線に後退するのに比べて、


「回り込もうとする先を潰せば、距離は詰められるのです!」


三度相手の行き先を牽制射撃で潰している間に、私は相手との距離を詰めていく。弾がもったいないじゃないですか! まったく。
これは追いかけっこの変則バージョンみたいなもんですかね?

なにやら相手のペースに乗せられ、誘われている気がしないでもないのだが、相手が完全には逃げ出さないので、それも仕方なしと割り切りましょう。
虎穴に入らずんば虎子を得ずともいいますしね!


「無駄弾を撃たせられたお礼は、きっちりと利子を付けて払ってもらいましょうか!」


法定金利など私には馬の耳に念仏なのですから。私が接近戦に持ち込もうとガンダムもどきに接近した時、背筋に悪寒が走った。


「ちっ!」


私は舌打ちをしながらも、咄嗟にシールドを構えてMS本体を守りながら機体を横に滑らした。やはり誘いだったか。


「フルバーストだと!」


ガンダムもどきは、頭部バルカン、胸部バルカン、腹部の小型ミサイルランチャーと、ビームライフルから持ち替えていたマシンガンを、私目掛けて連射してきたのだ。

バルカンの何発かがシールドに当たって弾かれる。シールドとはいえ、敵が自らの意志で私に命中させたのはコイツがはじめてだ。
この戦争が始まってから私は、はじめて命の危険を感じたと認識した。相手が強くなるたびに、私の"はじめて"は増えていく。

というか、実弾系のフルバースト? まるでトロワみたいじゃないですか! じゃなくて、このガンダムもどきって陸戦型ガンダムがベースだったのね。


「ゾクゾクするね!」


はじめて感じたこの感覚に私は、自分の精神が高揚しているのを自覚した。うん、そろそろ認めようか。私は戦闘に興奮と快感を覚える性質なのだと。

いわゆる、バトルジャンキー、戦闘狂の類いである、と。 マイルドに言っても、トリガーハッピーってね。

ああ、だからなのか、アレックスのパイロットに親近感みたいな感情を覚えたのは。なるほど、そういうことだったのね。
私はヤツと同類、おなじ人種だったのか。うん、ストンと腑に落ちてスッキリした。

でも、言い訳をさせてもらうと、べつに普段から人を殺したいとか思っている訳ではないんですよ? それでは、ただの精神異常者とおなじになってしまいますから。
まあ、戦闘狂も似たようなモノなのかも知れませんけれども。でも、戦争だからといって積極的に人を殺したいとも思いませんし。どっちかというと、戦闘の結果で
人を殺してしまった。これが正解のような気がしますね。戦争が人を殺戮マシーンに変えるのです。

うん、私は悪くないし、いたって正常な思考と嗜好の持ち主です。よって自己弁護完了。ついでに妄想終了。


「だがしかし、このゲルググ・イェーガーは、私の専用機は伊達ではないのです!」


横に滑らした機体を姿勢制御バーニアを使って相手から見て半円を描くように、相手の斜め後ろに回り込むような位置へと機体を滑らせ持っていく。
さすがにEXAM搭載機といえども、この動きには反応が遅れたみたいですね。まあ、EXAM自身の性能なのかMS本体の性能が追い付かなかったのかは、
私が知る由はないですけど。


「陸戦型と宇宙専用との違いを見せてあげます」


そう、このブルーじゃないブルーディスティニーは陸戦型ガンダムがベースなのだから、元々はRX-78みたいな汎用機ですらないのです。その機体設計の差異が
宇宙では影響するのです。それが僅かな差であろうとも。私ができる動きが相手にはできない。この差は大きいのです。

相手はこっちの動きに対応できていない。私はガンダムもどきの斜め後ろに回り込んで、ビームサーベルを振り下ろした。
袈裟懸けに斬り掛けたビームサーベルを相手は必死に躱そうとするが、時すでに遅し。僅かに機体をずらせたのみで、一閃。左の肩口からズルリと腕が離れた。


「そんな、やっつけ仕事みたいな対応で宇宙用の機体に改修するから」


私は距離を取ろうとする敵を逃がさないように相手の後ろを取り続ける機体制御をしながら、必死で振り向こうとする相手に対して、今度は小さな動きで一振り。
ガンダムもどきの右腕が肘から分離した。おまけでランドセルも爆発しない程度に壊します。


「いくらEXAMを搭載していようと、こうなるのです」


これで、バルカン以外の武装は無力化されました。私はガンダムもどきを後ろから羽交い絞めにした。そう、聞きたいことがあるから、わざと墜とさなかったのです。
マリオンの魂が戻る方法を教えてもらう為に。

EXAM搭載機を撃墜しました。でも、マリオンの魂は戻ってきませんでした。こうなる確率もあるのですから。それなら、操縦しているパイロットに聞けばいいの
では? うん、我ながら名案だと思いましたよ。


「聞こえているか? 連邦のパイロット!」

『……』

「おまえが操縦しているモビルスーツは、幼気な少女の魂を犠牲にして作ったキメラみたいな、バケモンなんだよ!」

『……』

「私は、おまえを倒して彼女の魂を取り戻す!」


といいますか、教えて下さい。お願いします。でも、下手に出る訳にもいかないしなぁ。困ったな・・・


『……』

「無口は設定じゃなくてデフォルトかよ! なんとか言ったらどうなんだ?」


喋らないってことは乗っているのは、やっぱり、ユウ・カジマなのかな? このMSを操縦するのは、youだ! このコンセプトでキャラの名前がユウなんだっけ?
ゲームやった事ないですけどね。てへっ  でも、ここはゲームの中じゃないんだから、なんかしゃべれよ。















『…俺も死にたくはないのでな』

「わ! しゃべった!」


あービックリした。もう、ちゃんと喋れるじゃないですか。


『頭だ。それ以外は反撃する』


反撃するといってもねぇ。バルカン程度しか残ってないじゃないですかー。 オマケに私が羽交い絞めにしているから反撃は不可能ですよ?
というか、あたま? オツム、ヘッド、テンプルの頭ですかね?


「あたま? 頭にEXAMシステムは搭載しているのね?」

『そうだ。頭部のシステムさえ破壊すれば、彼女の精神も元の身体に戻る事が出来るはずだ』


なんということでしょうか、EXAMシステムは頭部に搭載されていたとは知りませんでした。てっきりコクピットにあるもんだとばかり思い込んでいましたから。
そうと分かれば、


「そう、それじゃあサクっと終わらせましょうかね」


私は羽交い絞めにしていたガンダムもどきから離れると、瞬時に居合抜きの真似事みたいな格好で、横一閃。ガンダムもどきの首を刎ねた。
そして、止めとばかりに刎ねた首を真っ二つに切り裂いた。


「ふぅー、これで呪われた機械は死んだわね?」

『ああ、完全にEXAMシステムは破壊された。宇宙の魔女よ、俺からも感謝する』


感謝されるような事をしたとは思わないけど、感謝するぐらいだから素直に教えてくれたんだろうね。EXAMシステムは疑似ニュータイプシステムのはずだから、
きっとパイロットの精神にマリオンの精神が干渉していたとか、そんな感じなのかも知れませんね。


「どういたしまして。それで、これからあなたはどうします? さすがに私も、これからあなたを殺すなんて鬼畜な事はできないわ」

『まだスラスターの一部は生きているから、近くの友軍に助けてもらうさ』

「そんな機体では死ぬわよ? それに近くには、もう既に連邦軍はいないみたいだし」


そんなボロボロの機体だったら鴨ネギどころか、まな板の鯉ですやん。まあ、どちらも似たようなものだと思うけどさ。


『え?』

「連邦軍の撤退信号が見えなかったの? もう我が軍が、ジオンが掃討戦に移行し始めてるわよ」

『なん・・・だと』


私にフルボッコにされてる最中だったから見落としたのかな? そりゃ、あんなやられ方をすれば普通はビビったりあせったりするよね。私でもビビる。


「死にたくなかったら、戦争が終わるまで大人しく捕虜になるしかないわね」

『ああ、では、お言葉に甘えて捕虜にしてもらおうか』


こうして私は、首なし腕なしのガンダムもどきを抱えて、ア・バオア・クーのSフィールドの基地へと帰投したのだった。

なんといいますか、なんだか消化不良で欲求不満な気分です。最後は相手の不戦敗みたいなものでしたし。
そう、いってみれば、イク寸前で止められてイケなかったような、寸止めされたような感じがしてモヤモヤします。

でも、これでマリオンは助かったみたいだし、結果はこれで良かったのかも知れませんね。




[41069] 30話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/11 12:18


UC 0080.01.01


「顎が痛い・・・」


うん、初心者のくせして、ちょっと頑張りすぎたかも知れませんね。 なにを? とは、聞かないで下さい。


我がジオンは、無事にア・バオア・クーの防衛に成功しました。連邦は這う這うの体でソロモンやルナツーに逃げて行きました。
連邦はグラナダ侵攻作戦も準備していたみたいですけど、ア・バオア・クーでの敗戦の知らせで、グラナダ侵攻作戦も中止になったみたいです。

ジオン独立戦争。史実の連邦がいうところの一年戦争が一年では終わりませんでしたね。ジオンの敗戦で終わってたら、私は非常に苦しい立場に追い込まれて
いたでしょうから、この結果には満足なんですけどね。

ソロモン防衛戦の前にあったジオンと連邦との艦艇の戦力比は1対2でした。この倍あった戦力比も、ソロモン、ソーラ・レイ、ア・バオア・クーの三会戦と、
他の宙域での小競り合いで連邦軍は擦り減らされ、現状での戦力はほぼ拮抗しています。やや連邦艦艇が多い程度です。
残存艦艇はジオンが160ちょっと。連邦が170~180隻くらいらしいです。

これも参謀本部と諜報部の言葉を信じればですけどね。まあ、現状で連邦の艦船が200隻を上回ることがないのは確かでしょう。

キシリアさんの部隊のエルメスやブラウ・ブロが大戦果を挙げているとの報告は聞いていますので、あながち間違った数字ではないのかも知れません。
ニュータイプとMAの組み合わせは、対艦では鬼畜の所業となりますね。もちろん、オールドタイプが乗るビグロも活躍していますけど。

ソロモンとア・バオア・クーでは、私もちゃっかりマゼランとサラミスを二隻づつ撃沈していたりもするんですよ?
あまりにも、あっけなさすぎて描写も残っていないですけど! それに、私も忘れていましたし。

私を含めた他の人の戦果も、エルメスの稼いだ数字の前には霞んでしまいます。

でも、連邦が本気になれば、また一年も掛からずに400隻や500隻の艦艇を揃えそうで怖いんですけどね。まあ、艦艇を揃えられても、今度こそソフトの方が
追い付かない気もしますが。人材の育成は一朝一夕にはいかないのだから。

この戦争は人が死にすぎましたね。

これで当分の間は、宇宙での大規模な戦闘は起こりえないと思います。いえ、思いたいですね。もし、あるとしたら、ルナツー宙域で最後の決戦でしょうか?


それで、私たちシーマ艦隊が今なにをしているのかといいますと、Sフィールドの基地で慌ただしく補給と整備をしています。

余力のあった艦艇は昨日のうちに戦力を再編して、逃げた連邦艦艇の追撃戦に入ってますけど、その役割は宇宙攻撃軍の仕事です。
まあ、ジオンの主力も宇宙攻撃軍ですしね。親衛隊の役割は、あくまでも補助、助勢と本国の防衛がメインの部隊ですから。

ワークシェアリング、役割分担です。ちょっと違う気がしないでもない。

うん、そろそろ現実逃避して時間を稼ぐのも限界ですね・・・



「顎が痛い? どこかでぶつけましたか?」

「そ、そんなところです。あははは・・・」


言えない。ナニをして痛くなったかなんて顎が裂けても言えない秘密です。あ、思い出したら・・・


「はぁ、お大事にとしか言えませんが、お大事に」


現在、私はシャア少佐とお茶を飲んでます。オマケにララァも一緒です。まだ、シャア少佐から紹介してもらってませんけど、褐色の肌で髪を左右にお団子にしている。
んで、インド系女性の特徴でもある、額にホクロ? なんていうのか知りませんけど、ホクロみたいなのを付けてる女性。

うん。間違いなく、ララァ・スン、その人だ。ララァは綺麗で美人ですね。まあ、私もそこそこイケてると自負しておりますが。


ちなみに、私の顎を痛くした犯人のアムロは、レイチェル少尉と仲良く一緒に腕立て伏せとか腹筋とかを頑張ってるみたいですよ?

彼女はマッスルオタクなんでしょうかね? レイチェル少尉は綺麗な顔に似合わず、ああ見えても薄っすらと腹筋が割れていたりするんです。
どうして、そんな事を知っているのかって? そりゃ、同性ですから知ってますよ。まだ、百合な関係ではないですよ? いまはまだ、ちょっとじゃれる程度です。

あ、もしかしてそういう事だったの? レイチェル少尉がアムロに刺々しかったのは? ふーん・・・ 今度、レイチェルをイジってみようかな。

MSパイロットはエリートですから、様々な面で配慮されていたり優遇されているのです。神経を使う職業ですし、MS非撃墜=母艦もお陀仏の時代ですからね。
その優遇措置の一つが休憩室なのです。パイロット専用の休憩室の中には浴室も備えてあるんですけど、そこで彼女の身体を目にしたのですよ。

うん、引き締まっている割りに出るところはちゃんと出ている、褐色の綺麗な身体をしていましたね。おっと、思い出したら涎が・・・

彼女の身体と比べたら私なんて月とスッポンです。まだ私は胸も小さくて、くびれも少しで、まだまだお子ちゃま体型に近い身体ですね。グスン。

で、でも、私だって、が、頑張るもん! まだ、私は発育途上、成長途上の身体なのですから! 揉んでもらえばホルモンの分泌が良くなって、大きくなるという
都市伝説もあるんだし、心配は無用ですよね。

っと、いかん、いかん。妄想終了。


というか、なんでシャアとララァお前たち二人が一緒にいるんだよ! 所属が違うだろうが、所属が! それと、追撃戦ついでにソロモン奪還に行けよ!


「それでシャア少佐、そちらの女性はどなたですか?」


まあ、知っているんですけどね。一応は確認と挨拶も兼ねて自己紹介をしてもらいましょうか。
マナーとしてもコミュニケーションツールとしても挨拶と自己紹介は大事ですよ。といいますか、社会人としての初歩です。軍隊では絶対です。


「ああ、失礼した。彼女はララァ。ララァ・スン少尉だ。今日は教官殿に彼女の話を少し聞いてもらいたくて連れてきました」

「はじめまして、特務大尉殿。ララァ・スン少尉であります」


最初にララァって呼び捨てねぇ・・・ 確実にヤってやがる。やっぱりそういう関係でしたか。モゲろって言いたいけど、私には、もう言う資格がないんだよね。

でも、モゲろ!


「ふふ、ララァ少尉、べつに堅苦しくしゃべらないでも大丈夫ですよ。私はマリア・アイリーン。階級は特務大尉です」

「特務大尉殿の噂は私も聞いてます」

「うわさ?」


やべっ! アムロとの事がもうバレてしまったのか? 所属が違う部隊にまで広がっているのか! 誰が言いふらしてるんだ? レイチェル少尉か?
私はともかく、アムロにはロリコンのレッテルが張られそうだなぁ。アムロ、イキロ。


「はい、特務大尉殿はニュータイプとの噂です」

「ぶっ! ・・・私がニュ~タイプぅ~?」


ビビった。違う意味でビビった。思わず紅茶を噴き出してしまったではないか!


「ご存知ありませんでしたか?」


フキン、フキン。あ、ララァ少尉すみません。拭いてくれてありがとうございます。どうもお手数をお掛けしますね。って、おい、ララァは冷静だな。


「いや全然知らなかった。それに私はニュータイプなんかじゃないし」

「ご謙遜を。ニュータイプではないのに、昨日EXAMシステムを搭載したガンガムタイプを倒したのですか?」

「アレね。あれは確かに、いままでの相手よりは強かったとは思うよ。でも、私よりは弱かった。だから倒せた。これが全てだと思うけど?」


そう、ニュータイプだろうがオールドタイプだろうが、強い方が勝つ。これが戦場の掟だ。まあ、勝った方が強いともいうけどさ。


「納得いきません・・・」

「はぁ、私も何回かフラナガン博士のテストを受けているけど、私にはニュータイプの適正は皆無だよ」

「それは初耳でした。そうだったんですか・・・」


ペラペラと他の被験者の事を喋る研究者がいたら、それはそれで問題でしょ?


「ララァ少尉が言うようなニュータイプ能力は、エルメスのビットを飛ばせるイコール、ニュータイプってことでしょ?」

「それだけではありませんけど、ビットの操作はニュータイプじゃないと出来ないのは確かです」

「それだと恐らく私は、ほぼ100%ビットを操作できないから、私がニュータイプではないって証明になるわね。操作する前の適性で弾かれてるんだし」


ああっ! 私も、


『行け! ファンネル!』


とか、格好良く言ってみたかったなぁ。アレはいいものだ・・・ 誰でも一度は憧れるよね。


「ニュータイプではないとしたら、特務大尉殿の戦果は説明が付かないのですが、うーん・・・」


ララァ少尉が考え込んでしまったけど、それは私も説明できませんってば。もう強い方が勝つでいいじゃん。それよりも、


「エルメスで思い出したけど、エルメスに乗っているのってララァ少尉でしょ?」

「はい、ご存知でしたか」

「まあね。それで、ニュータイプ部隊はキシリア閣下直属のはずなのに、なんで宇宙攻撃軍のシャア少佐と一緒にいるのか疑問なんだけど」


やはりビンゴでしたね。それで所属が違うのも判明したけど。


「ああ、それは私から説明しよう。彼女は地球で私が見出した存在でね。私の部下として、宇宙攻撃軍からキシリア閣下の特殊部隊に出向させている」

「なるほど。といいますか、シャア少佐は地球に降りてたんですか?」

「やんちゃをして士官学校を除籍処分になった後に、短い期間だけですがね」


ふむ、ここらへんはオリジン準拠なのね。ごちゃ混ぜの史実か・・・ よく分からん。


「ああ、アレ。連邦軍駐屯地襲撃事件ね」

「若気の至りです」


爺臭いことを言ってからに、アンタまだ21ぐらいでしょ! 十分に若いと思いますよ?


「それはそうと、シャア少佐は追撃戦に参加しなくても良かったの?」

「したくても、私のキャメル艦隊は部隊が半壊して参加は出来ないのです」


それで暇に託けて私に会いにきたと。書類仕事から逃げ出してきやがったなコイツ。少しはシーマ様を見習えってんだ。MSパイロットと艦隊司令を兼任していて、
いつも忙しそうに動き回ってるぞ。人の三倍は働いてる気がしますね。

現に、いまも書類仕事に追われているから、私がシーマ様に、「マリア、邪魔」なんて言われて部屋を追われたんだし。グスン。

今度、シーマ様の爪の垢を貰って保管しておいてコイツに飲ませてあげよう。うん、そうしよう。これは名案ですね!
特に足の親指の垢なんて良さげですね。あの、クサいんだけど、また嗅ぎたくなる匂いは麻薬に近いものがありますよね。私って匂いフェチの素質があるような・・・?


「なるほど、私のシーマ艦隊と似たようなもんか。それで、なんの話だったっけ? 私がニュータイプではないのは理解してくれたと思うけど」

「まだ、納得が出来た訳ではありませんけど、一応は。 ・・・特務大尉殿はニュータイプを、どの様にお考えですか?」


うん? それを私に聞いてララァはどうしたいのかな? 私はニュータイプじゃないから、あなたたちの同志にはなれませんよ? ニュータイプだったとしても、
同志にはなりませんけどね。だって、ララァの隣にいる人が貧乏神か疫病神の類いの人ですから・・・

私はアクシズなんかに逃げるのは真っ平ごめんです!




[41069] 31話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/12 12:48


「特務大尉殿はニュータイプを、どの様にお考えですか?」


ララァ少尉に、いきなり禅問答のように問われたけど、私も返答に困りますってば。そういう類いの話は坊主相手にして下さいな。

私は坊主でも尼でもない、煩悩万歳な人間なんだから。そもそも私欲を煩悩を抑えてストイックに生きて、なにが楽しいのか分かりませんし。
社会に害にならない程度には、欲望を発散させるのは人の営みに不可欠でしょうに。そうでなければ、人類はここまで発展してこなかったと思います。

ほら、アムロも言ってたじゃん、


『人間は戦い続けて歴史を作ってきた。それがなければ人間は滅んでいたさ』


うん、これはアムロの中で一番の名言だと私は思いますね。戦いは害でもあるけど、発展の助けでもあるんだよね。
っと話が逸れた。
まあ、仕方がないからララァの問いに答えてあげるけどさ。


「うーん・・・ 戦争の道具、かな?」


絶対に人の革新とは答えてあげません。

ニュータイプ自体はキチガイじゃないけど、ニュータイプ思想はキチガイ思想だなんて言えないよなぁ。
まあ、ニュータイプの中にはキチ入ってる人の割合が多そうだけど。主に、カミーユとかカミーユとか。クエスとかクエスとか。

逆に考えれば、もともとキチの素質がある人間が、ニュータイプの素質も持ち合わせているのかも知れませんね。
うん、これはこれで論文が一本書けそうなお題ではありますね。


「そう、ですか・・・」


そんな悲しそうな顔をされても私も困りますよ。


「ララァ少尉は否定して欲しかったんだろうけどさ、現実はちゃんと認識しないと。事実、ララァ少尉はエルメスに乗って多大なる戦果を挙げているでしょ?」

「それは否定しませんけど」

「フラナガン機関だって、ニュータイプの軍事利用が目的で怪しい研究を続けているみたいだしね。あなたも、そこの被験者の一人なんでしょ?」


マッドサイエンティストどもの巣窟、それがフラナガン機関。そんなに研究がしたいのなら他人の身体じゃなくて、自分の身体を切り刻めつーの!
ほら、別の世界では自分を人造人間に改造した科学者もいたことなんだしさ。まあ、あれはあれで恐ろしいから止めて欲しいですが。


「はい。でも、本来のニュータイプは殺し合いの道具ではないのです」

「それは、ニュータイプじゃなくて普通の人でもおなじだよ」

「それはそうですね」


ニュータイプは殺し合いの道具じゃない。ララァの名言をここで聞けるとは、ちょっと感動ものです。でも、


「ララァ少尉に一つ言っておくけど、ニュータイプを特別な人間だと思ってたら火傷するわよ」

「それはどういう意味で・・・」

「これは前にもニュータイプの子に諭したんだけどさ、人は自分と違うモノを嫌い怖がるのよ。マイノリティが迫害されてきた歴史を見れば一目瞭然でしょ?」

「それは分かります」


人の本質は集団、群れを作る生き物だと私は思うんです。集団とは、秩序で成り立っているのです。その秩序を乱そうとする者に待っているのは集団からの追放
でしかありません。マイノリティが生きていけるのはマジョリティの寛容さで生かされているという、謙虚な心をマイノリティは忘れてはいけないと思うのです。

意気軒昂に声を張り上げて、マイノリティの権利云々の御託を並べる輩を見ると虫唾が走りますね。もっと謙虚になれ、と。
私も謙虚さは皆無だと自覚してますけど、集団に対しては従いますよ? なんせ前世は小市民の日本人でしたから。日本人は集団が好きな民族なのです。
集団の中では個を殺す。これが処世術でもありますしね。

まあ、声を張り上げないと大勢の中に埋没するから、それが怖くて声を張り上げているのかも知れませんけども。でも、普通に一小市民として生きる分には、
声を張り上げなくても生きていけると思うんですけどねぇ。利権ですか? そうですか? あーやだやだ。人間って醜いわー。

っと、またまた話が脱線してしまった。でも、反省はしない。


「教官殿の知り合いにもニュータイプが?」


シャアさんよ、そこに喰い付きますか。


「ええ、まあ、知り合いといえば知り合いですかね」


ちょっと口が滑ったみたいですね。失敗した。それに、知り合い以上の関係になってます。なんて言えないしね。
ニュータイプの素質を持ったのが、おなじ部隊の同僚に四、五人いますのよ。オホホホホ。シャアに取られるなんて恐ろしいから言わないけどね。
ララァにアムロを会わせると、アムロを取られそうで怖いですし。

ここは話の矛先を変える意味でも、揺さぶりを掛けてみますか。


「しかし、シャア少佐も人が悪いですね」

「はて? なんのことやら?」

「ララァ少尉を使わなくても自分の言葉でおっしゃればいいのに。べつに私は聞かれたら大抵のことには正直に答えますよ?」


さっきから、なんだか宗教の勧誘みたいな感じがするんだよね。宗教の勧誘は二人ペアが大原則なのです。
ニュータイプ教なんか作ってどうするんだろ? シャアを教祖としたハーレムですかね? まあ、私の妄想なんですけどね。


「いや、教官殿には分かってましたか。しかし、ララァ少尉が教官殿に興味があって会いたいと言ってたのは本当の事です」

「まあ、それはそうなんでしょうね。それで本題は? 私がニュータイプじゃないと分かったから、話す前からもう終わっちゃったのかな?」

「これは手厳しいですな。教官殿がニュータイプではないのは確かに残念ではありますが、話の本質はそこではないですよ」

「ふーん、なんだか密談っぽくてドキドキするわね」


すみません、嘘です。まったくドキドキもワクワクもしません。
こちとら、宗教の勧誘と訪問販売の押し売りを玄関で、愛想笑いしながら嫌々ながら応対している気分なんですよ。


「教官殿はジオンの現状を、どうお考えか?」

「ぶぅ!」

「特務大尉殿、大丈夫ですか?」


ビビった。思わず紅茶を噴き出してしまったではないか! フキン、フキン。あ、ララァ少尉すみません。拭いてくれてありがとうございます。
あれ? さっきも似たような事があった気がしないでもないですね。


「あ、ララァ少尉ありがとう。それとシャア少佐、えらいストレートな質問ですね。それを私に聞きますかね?」

「先程、教官殿は自分の言葉で喋ろと仰ったので、お言葉に甘えて。それに教官殿には変化球は通用しなさそうですので」

「私の所為にしますか、まあいいですけど。シャア少佐も知っての通り、これでも私は一応ザビ家の親戚筋にあたる人間ですよ?」

「それは承知していますよ。しかし、教官殿には色が付いてません」

「色ねぇ~、ギレン派にキシリア派やドズル派とか、派閥の政治色ですかぁ」


あと、デギン派にダイクン派と・・・ ガルマ派? ガルマはドズルかキシリアが飼い馴らすのかな? あとは、ダルシア首相とかも派閥があるのかも知れませんね。

私はといいますと、アムロ色には既に昨日と一昨日で、あんなこんなで染められちゃったんですけどね。あ、思い出したら・・・


「ふふっ」


げっ! ララァに気づかれてるじゃないですか! 仕方ない、ウィンクして誤魔化しておきましょう。


「ん? ララァどうかしたのか?」

「いえ、特務大尉殿が可愛くて、つい」


まあ、確かに私は金髪碧眼で背中の中ほどまでの少し長めのストレートヘアで、おめめもパッチリしていて、まるでお人形さんみたいに可愛いですよ!
でも、人形みたいな女性が実際にいたら、それはそれで怖いかも。私の目標は歳を取らない人です。目指せ、イザベル・アジャーニです! そうじゃなくて、


「シャア少佐。でも、私は派閥でいったらギレン派ですよ? 私自身は親衛隊所属ですし、お姉ちゃんがギレン総帥の秘書ですから」

「確かにそうですな。私が申し上げたいのは、教官殿が政治的思想に染まってないという意味での、色です」

「そうですかね? 私は一応ジオニストだと自分では思いますよ? まあ、エレニズムやコントリズムはどうでもいいんですけど」


エレニズムなんて特に過激ですしね。僻み根性丸出しでみっともないですし。人は自分が持ってないモノを僻み妬むんですよね。
まあ、人間らしいといえば人間らしい思想とも言えますけど。


「その二つを、どうでもいいと仰る時点で教官殿はジオニストではありませんよ」

「ありゃ、そうなの? 難しいことは考えを放棄する主義なので良く分かりませんね。でも、私はジオン公国の国民でジオンがサイド3が好きだよ」


なんということでしょうか、どうやら私はジオニストの定義を間違えていたみたいです。知らなかった。恥ずかしいです・・・
ジオン大好き、ザク大好き、ザビ家の支配でも良いって人はジオニストとは言わないのね。じゃあ、私はザビニストかザクニストですかね?


「いまは、それで十分だと思いますよ。それで、ジオンの現状はどのようにお考えで?」

「現状ねー。連邦との戦争の落としどころは私では想像しかできないし、それをするのは政治だしね。私としては戦争が早く終わってくれれば、それでいいかな」


強い相手と戦えなくなるのは少し、ほんの少しだけ残念だとは思いますけど、それは乙女の秘密です。やっぱ平和が一番なのに変わりはありませんから。


「戦争の集結には、そう時間は掛からないでしょう」

「でも、シャア少佐が私に聞きたいのは、そんな事じゃないんだよね?」

「はい」

「そんなに子供の私の口から言わせたいの?」


私は、まどろっこしいのは嫌いなのに。シャアも子供じゃないんだから、言いたい事があるなら自分で言えって。なんだかイライラしてきた。


「教官殿を子供とは思ってませんよ。子供と侮って過去に痛い目に遭いましたしね」

「はぁ~・・・ これでも私は親衛隊所属なのになぁ。仕方ないですね、高く付くわよ」


あとで、たっぷりと仕返ししてやるから待ってなさい。


「出来れば安くお願いしたいですな」

「私としては権力側の人間なんだし、現状でも一応は満足なんだけどさ。でも、ザビ家の独裁体制は長くは続かないと思うわ」


そう、現体制ではジオンは恐らく持たない。仮に持ったとしても、それは暴力が支配する恐怖政治だ。今でもおなじかも知れないですけど、それはそれって事で。


「それは、どうしてそう思われるか?」

「シャア少佐は現状よりも、戦後を、ジオンの今後を考えてるんじゃないの?」

「お見通しでしたか」

「サルじゃなければ、子供でも分かるでしょ。そんな誘導の仕方では」

「仰る通りですな」


なんだか、馬鹿にされいてる気がして不愉快ですね。利子を多めに加算しときましょうかね。


「それで、ザビ家の独裁だけれども、独裁国家って常に外に敵を作らないと国内が治まらないのは歴史が証明しているわ」


ナチスドイツも、ソビエト連邦も、共産中国も、北朝鮮も、そして、前世の私の故郷に昔あった大日本帝国も、また然り。
まあ、民主国家であっても、国内の不満を逸らす為に外国に矛先を向けさせるのは常套手段ですけどね!


「なるほど、連邦との戦争が終わると外の敵がいなくなる、と」

「まあ、連邦が仮想敵国のまま残ってはいると思うけど。でも、戦争が終わって連邦を仮想敵国として残したままにして国民を煽っても、それだけでは無理ね」

「ほう、それはまた何故?」


なんで私はシャアと、こんな問答をせにゃならんのだ。こういうのは学生の本分でしょ? これは、どっちが先生で生徒か分からない問答ですけど。

というか、私も学生でしたね。それもまだ、たったの中学一年生ですよ。
なにが悲しゅうて軍人なんかやっているんでしょうかね・・・ キャッキャウフフな女子中学生活はドコですか?

私の青春は色々な意味で汗と血にまみれてます。 全部、連邦が、戦争が悪いんや。グスン。


「戦争が終わるからよ。この戦争にジオンが勝つのか引き分けるのか知らないけど、戦争の為といって我慢させて、半ば無理矢理に一致団結させてたでしょ?」

「なるほど、その反動が来るということですか」

「そういうこと。それを完全に力で押さえ付けるだなんて無理よ」


押さえ付ければ押さえ付けるほど、抑圧された民衆の怒りは増幅するのだ。空気を圧縮するのと似ているかも知れませんね。だから、ガス抜きが必要なのです。
でも、そのガス抜きに外国を使えないとなれば?


「暴動が頻発する、と」

「もし、そんな事になったら私はフォン・ブラウンかサイド6にでも逃げるわ。恐怖政治の片棒担いで政権が転覆したら吊るされるだなんて、真っ平ごめんだわ」


そう、ガス抜きができなければ、その民衆の不満と憎悪は現政権に及ぶのです。ザビ家に近い私は凌辱されてから殺される可能性が極めて高いのです。ほぼ確実と
いっても過言ではないでしょうね。クソったれな話ですが。

うん、ヤバくなったら、お父さんとお母さんとお姉ちゃんとグレミーとマリーダを連れて逃げよう。ミネバは一緒に連れて行くのは無理かなぁ。
ゼナさんとは、あまり親しくないから無理っぽいかな? あ、べつにゼナさんが苦手とかいうわけじゃないですよ? 時間的に会う機会が少なかっただけですから。


「ふむ、なかなかに過激な話ですな」

「他人事だと思ってるなら、シャア少佐、あなたも巻き込むわよ?」


というか、私を巻き込むな! 私は穏やかに暮らしたいんだ! ちくちょーめ!










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



没ネタ



「教官殿の知り合いにもニュータイプが?」

「あー、もう面倒くさいから呼んじゃおっか。ちょっと待ってて下さいね」


そういって私はインターカムを基地内呼び出しにして呼び掛けた。


『こちら親衛隊マリア特務大尉です。クスコ大尉、クレア中尉、レイチェル少尉、エリス少尉、アムロ特務曹長、至急、第二パイロット休憩室まで来て下さい』

「え? 五人も?」



この後の話を纏められなくて、お蔵入りになりました・・・

シャアとの話が長引いてクドイかも知れませんが、作者的には重要ですので、もう少し続きます。 m(_ _)m




[41069] 32話 機動戦士ガンダム~魔女戦記 第一部 最終話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/14 20:30
「他人事だと思ってるなら、シャア少佐、あなたも巻き込むわよ?」


さて、ここからは意趣返しと行かせてもらいましょうか。アンタが私を巻き込むなら、私もアンタを利用させてもらいましょうかね!


「それはまた、穏やかでない」

「というか、シャア少佐曰く政治的思想に染まってないらしい私に、こんな子供に、ナニをさせたいのかな?」

「戦後のジオンの在り方についてです。先程、教官殿も仰ったように、このままではジオンは持たない」

「それはそうね。でも、私はザビ家の親戚です。私からザビ家を裏切るような真似はできないわよ?」


ギレンとかキシリアとかは大人だからどうでもいいのです。大人なんだから自分の尻ぐらい自分で拭けるでしょうし、拭いてもらわなければ困ります。
でも、グレミーやマリーダはまだ子供なんです。マリーダとミネバなんて、まだ赤ちゃんですし、子供に罪はありません。

これまでお姉ちゃんの縁で私も少しは特権は享受してきたのだから、多少はザビ家に思い入れも義理もあります。後ろ足で砂を蹴る行為など言語道断であります。
私はそこまで落ちぶれていないし人間を止めてもいません。甥っ子姪っ子たちの為にも私は裏切りません。赤の他人より身内が大事なんです。


「それは理解してます」

「そう。それじゃあ、シャア少佐が何をするのかは知りませんけど、それに協力するか最低限それを黙認しろとでも言いたいのかな?」


話の内容次第では、ここでシャアを拘束させてもらいましょうか。親衛隊の看板は伊達ではないのだよ!


「話が早くて助かります。協力して頂けたら幸いですな」

「私が、お姉ちゃんやギレン総帥にチクらないと思ってるのかな?」

「いえ、ザビ家と敵対する訳ではありませんので、セシリア殿の耳に入っても問題ありません」


おろ? じゃあシャアは何がしたいんですかね? ザビ家に復讐したかったんじゃないの? これは別の角度からねっちょり深く掘り下げる必要がありますね。
いい加減その鬱陶しい下品な仮面を脱いでもらいましょうかね。本人は似合ってるとでも思っているのでしょうか? 謎ですね。


「ふーん、それで話は微妙にズレるけど、戦争が終わったらシャア少佐はどうするんですか?」

「どうするとは?」

「妹さんを探すの? そういう意味です。それとも妹さんを捨てたのかな?」

「いや、私には妹などいませんよ。なにやら教官殿は勘違いをなさっておいでだ」


シャア少佐よ、眉が動きましたね。人は嘘を吐く時には大抵の人は顔に出るのです。出ないように訓練している人も不自然なまでにポーカーフェイスですし。
これが天性の詐欺師とか自分で嘘を嘘とも思わないような非人ならば、ニコニコ笑って人を騙す事もできるんでしょうけども。でも、そんな人間は精神異常者だ。

まあ、マスクのおかげで眉の動きなんか分かんないんですけどね! そのマスクを剥ぎ取ってやる!


「ねえ、シャア少佐。そろそろ、そのマスクを外してもいいんじゃない?」

「これは強い光を防ぐ為にも必、」


面倒ですから最後まで喋らせないよ。会話の主導権は私が握っているのですから。


「言い訳は聞き飽きたわ。セイラ・マス。この名前を知らないとでも?」

「・・・どこまで、ご存知なので?」

「少佐・・・?」


うん、シャアの動揺が手に取るように分かるわ。ララァも詳しい事は教えてもらってなかったみたいですね。


「全部。恐らくギレンさんとキシリアさんは知っているわね。ゴリラ顔の筋肉馬鹿と地球にいる坊やは知らないと思うけどさ」

「ドズル閣下が筋肉馬鹿でガルマが坊やとは、教官殿も手厳しいですな」


そっちに喰い付きますか。というか、他愛ない会話で時間を稼いで、その間に脳味噌をフル回転させて考えてるんだろうね。でも、言い訳を考える暇は与えませんよ。
追い込むときは、とことん追い込むのが狩りの基本ですから。まあ、開き直られて逆ギレされるのも困りますので、ほんの少しだけ逃げ道を残してあげるけどさ。


「私ね、ずっと不思議だったのよ」

「何がですか?」


考える時間が欲しいから乗ってきましたね。


「どうしてシャア少佐が私に対して、初対面の他人の振りをするのが不思議だったのよ」

「それは、どういう意味で・・・」

「あら? 私とシャア少佐は、6、7年前に二度ほど会っていますよ? サイド5のテキサスコロニーで」


そういえば、テキサスコロニーはミライさんのお父さんの会社の持ち物だったっけ? ミライさんは元気かな? まあ、会ったことないけどさ。


「っ!」


シャア少佐、まだ慌てるような時間じゃない。ですよ? メインディッシュはこれからです。


「少佐と特務大尉殿は、昔から知り合いだったのですか?」

「ララァ少尉は知らなくても当然なんだけどね。知り合いというか、正確には私とシャア少佐は親戚よ。ちょっと遠いけどね」

「親戚? そうだったのですか。少佐は教えて下さいませんでした」

「ええ、私の母方の家名が、アズナブルよ。シャア少佐のお父さんと私のお母さんが従兄妹同士なの。だから私たちは、"はとこ"になるのかな? 彼が本物ならね」


私もそれを知ったのは5歳の時でしたけどね。はじめは少し珍しい名字だけど、フランス系なら他にもアズナブルは普通にいるし、ぐらいに思ってたんだけどね。


「本物なら・・・?」


ララァさん、眉間に皺を寄せると後が残っちゃいますよ。


「思い出したよ。君はあの時の・・・」

「ふふ、やっと思い出してくれましたか。エドワウ・マス。いいえ、キャスバル・ダイクンと呼びましょうか? シャア少佐殿?」


呪われた憐れな子・・・

それが私の抱いた、シャア・アズナブルに対しての第一印象でした。でも、あの時はエドワウ・マスでしたね。
まあ、一言二言の挨拶しただけで直ぐにエドワウとは別れたから、シャアが私のことを覚えていなかったのも仕方がないのかも知れませんね。

ヤツがペドでもない限りにおいて。

あー、エドワウがシャアでシャアがエドワウでエドワウが、、、ややこしい!


「ダイクン・・・?」

「そう、ジオン・ダイクンの息子がキャスバル・ダイクン。シャア少佐はジオン・ダイクンの息子よ」

「教官殿には参りましたな。降参です」

「少佐がジオンの息子・・・」


うむ、手の平だけ上に向けて降参のポーズですか。シャアは、なにをやっても"さま"になりますね。キザっぽいけど。
ララァが事態を飲み込めないのも無理はないか。これでニュータイプもエスパーじゃないことが証明できましたね。人には言葉が必要ということです。


「そういう事だから、さっさとマスクを外しなさい。それに、そのマスクは死んだムラタには悪いけど、ダサいし」

「ムラタの事もご存知でしたか」

「名前だけね。ゼナさんに聞いたのよ」


嘘です。でも、半分は本当かな。オリジンでの印象が深かったのと士官学校の名簿を調べてから、ゼナさんに裏を取りました。


「ああ、彼女も同期だったな。なるほど」


観念したらしいシャアはマスクを外した。そして、現れた瞳の色は、


「ふーん、6年振りのご対面ね。青い瞳はキャスバルというかエドワウだったわね。顔はそっくりだけどシャアは鳶色だったもんね」


6年振りに見たシャアの素顔は、少年から大人に変わっていてハンサムでした。まあ、6年前もハンサムではあったんですけどね。
ハンサムではあるけども、私的にはキュンとくるハンサムではないんだよなぁ。きっと、触れば斬られる鋭利な刃物みたいなのが私のタイプじゃないんでしょうね。
どうしても、アムロと比べちゃうしね。あの子は捨てられた子犬みたいで可愛いのだ。


「そうでしたね。本物のシャアは鳶色の瞳をしていました」

「それで、キャスバル・・・ えー面倒くさいから、いままで通りシャア少佐って呼ぶわ」

「はい。取り敢えずは、いままでの通りにシャアと呼んで下さい」

「シャア少佐はザビ家への復讐は諦めたの? そっちが諦めてないんだったら、私にも本当のシャアの為に、あなたに復讐をする権利があると思うけど?」


そう、私がシャアに聞きたかった事は、これに尽きる。こっちも平穏無事な生活が掛かってますしね。本物のシャアの復讐ってのは脅しだけですよ?


「一つ言い訳をさせて頂くと、私はシャアを殺してはいませんよ」

「未必の故意って言葉くらい知ってるでしょ? それでも十二分にアウトなんだから。それが例え、手を下したのがキシリア機関だとしてもね」


そう考えると、キシリアってキチ入ってるよね。シャア一人の為に、無辜の乗客を数百人巻き添えにして爆殺してるんだから。紫ババァ怖いです。


「背後関係までご存知でしたか」

「ええ、あなたがテキサスコロニーで大人しくしてさえいれば、誰も不幸になる事はなかったはずよ。まあ、もう過ぎた話ではあるけどさ」


シャアに、あることないこと吹き込んだジンバ・ラルは許せないけどね。墓を暴いて晒してやりたい気分ですよ。まったく。
エレニズムなんてウンコですよウンコ。お姉ちゃんの拳骨が飛んできそうだから声に出しては言わないけどね。


「確かに既に過去の出来事ですな」

「えらく他人事のように言うわね。あなたがジンバ・ラルの妄言を信じなければ良かっただけの話でしょ? まあ、あなたに多少は同情もしますけど」

「妄言とは手厳しい」


さて、そろそろ狩りの時間も終わりにしますか。きっちりと止めを刺しますよ。


「あなたが子供の時に、ラルに何を吹き込まれたのかは想像でしかないけど分かるわよ。ジオン・ダイクンはザビ家に暗殺されたとかそんな程度でしょ」

「流石にそれは、そんな程度とは聞き捨てなりませんな」

「だって事実、ザビ家はジオンを暗殺なんかしてないから。考えてもみなさい、あんな心身の衰弱したジオンを暗殺してどうするの?」


私はお姉ちゃんのコネで調べてみました。もっとも、コネなんかなくても分かる人には簡単に分かる、その程度の重要度でしかない資料で結果は判明したけど。


「なっ!」

「あの当時のジオンは、ほっといても数か月後には死んでたわよ。ダイクン派を敵に回してまで、そんなジオンを暗殺するメリットがデギンやギレンにあったと思う?」

「それは・・・」

「まあ、信じる信じないは、あなたの勝手だけどさ。死因に関する証拠、捏造されてない客観的な資料もちゃんと残っているわよ。あなたは自分で調べなかったの?」


やましい事がなければ隠す必要もないしね。

それにしても解せないのは、そこそこ簡単にジオン・ダイクンの死因は調べれるのにシャアが調べてなさそうな点だ。足が付くと思って調べなかったのか、
それとも、ジンバ・ラルの狂信的な妄言を妄信していたのか? 人は見たいモノしか見ない、ということなのかも知れませんね。

どちらにせよ、シャアが真実を知らなかったのは態度を見れば事実みたいですけど。


「少佐・・・」


ショックを受けて固まってしまったシャアに寄り添うララァ・・・ うーん、絵になるね。シャアにはララァは、もったいないぐらいですね。


「シャア少佐も頭の整理が追い付かないかも知れないけど、でも、お互いに水に流せるならそれが一番なのだから、私はそれがいいと思うけど?」

「少佐・・・」

「復讐をするなら棺桶を二つ用意しろ。旧世紀の格言に、こんな言葉もあったわね」


復讐の虚しさを言い表すのに、昔の賢人は上手いことを言いましたね。



「・・・ララァに出会って救われました。それが答えです」



ララァは私の母になってくれるかも云々ですね。そうですね、わかります。


「そう、彼女はイイ女ですもんね。ララァ少尉、彼を救ってくれて私からも礼を言うわ。ありがとう。これでサイド3の分裂は避けれそうね」

「いえ、私は私を救ってくれた少佐の傍にいるだけで、特に何もしてません」

「ふふ、傍にいるだけ。それが大事なんじゃないかしら。というか、やっぱりシャア少佐はマザコンだったのね」

「少佐、後でお話しましょうか?」

「ラ、ララァ?」

「少佐は色々と私に隠し事をしていたみたいですので、じっくりと聞かせて頂きますから!」


うん、ララァさん目が座ってますよ、怖いです。彼女でも怒ることがあったんですね。知りませんでした。メモっとこ。


「それで、結局のところシャア少佐は、戦争が終わったら何がしたかったんですか?」

「ああ、ニュータイプは人の革新。その人類の未来を見たくなった。それを私はララァを通じて教えてもらった」


はい、人の革新きましたね。しかし、私は保守なのです。平穏に暮らしていれば大多数の人間は急激な変化を望まないのです。もちろん私もその中の一人です。

それと、シャアは復讐を、とうの昔に捨てていたってわけ? それじゃあ、これまでの会話はなんだったのよ! 茶番ですか? そうなんですか?

もったいぶった言い方をして結論はそれだけかよ! 私の貴重な時間を返して下さい! しゃちほこばって損した気分です。トホホ。





UC 0080.01.03


我がジオンは連邦から空き家と同然のソロモンを奪還した。



UC 0080.01.05


ジオン軍がルナツー宙域に進出した時点で、地球圏における全戦線での停戦条約が発効。

これには、連邦軍の強行派であった戦争屋のレビルが、ソーラ・レイの照射によって戦死していた事が大いに影響していた。
レビルの死によって穏健派、早期に戦争終結を望む勢力が息を吹き返したのです。

ジオンにも連邦にも、これ以上の戦争を継続する体力もなく、また、これ以上の犠牲も無意味と判断されて、事実上の戦争終結となった。

地球に残っていたジオン支配圏からは3月末までに撤退をする事で合意。南極条約は継続され、それにソーラーシステムの禁止が付け加えられた。
両陣営とも、破壊力がありすぎるソーラーシステムの撃ち合いを恐れたのだろう。

サイド6とフォン・ブラウンの中立は継続。グラナダはジオンの自治都市として再出発することになった。


そして、ジオン公国の独立は承認された。

こうして開戦から一年と二日で、ジオン独立戦争は終結したのであった。





「ふぅ、長かったようで短くもあり、短かったようで長くもあった一年の戦争だったわね」


現在、私はリリー・マルレーンの自室でくつろいでます。
なぜだか、私の隣には赤毛で天然パーマの男の子がいますが。それも全裸で。まあ、当然の如く私も全裸なんですけどね。


「そうだね。僕にとっては密度が濃すぎる一年だったと思うよ。マリアと出会った日からは、特にそう感じられたね」

「ふふ、ねぇアムロはこれからどうする? ううん、どうしたいが正解かな?」


アムロが私の髪に指を絡めて手櫛で梳きながら答えを探している。こんな些細なことが私には幸せに感じられる。
もう既に私の中にあった元男の男性的な部分は、アムロによって完全に女に塗り替えられてしまったみたいだ。


「どうするとか、どうしたいって言われても直ぐには分かんないよ」

「アムロさえ良ければ、このまま私の家に居てもいいのよ?」


そう、アムロが愛おしい。アムロと一緒にいたい。きっとこれが、人を愛するという感情なのでしょうね。最初は打算だったのにね。
好きになる前にやることをやっちゃったけど。やった後から人を好きになっても、それはそれでいいよね? 多分、順序は逆なんだろうけどさ。


「そ、そう? じゃあ、まずはマリアの中に居させて欲しいな!」

「もう、アムロは盛りのついたエロザルなんだから。既に5回は私の中に入ったでしょ!」


せっかく私がロマンチックに浸ってたのをぶち壊しやがりましたよ。このサルは!


「それはマリアの誤解だよ」

「ここでオヤジギャグをかましますか・・・」


でも、こんなちょっとお馬鹿なところも含めてアムロが愛おしいのです。ダメな子ほど可愛いという気持ちと、似ているのかも知れないですね。おっと内線だ。


「はい、マリアです」

『ああ、マリア。セシリア殿から通信でサイド3に帰投したら、アムロと二人で総統府に出頭せよって命令があったぞ』


なんか嫌な予感がしますね。


「シーマさんは、お姉ちゃんから命令の内容を聞いてますか?」

『いや、聞いてないけど恐らくは、いまマリアの隣にいる坊やとの不純異性交遊の件についてのお説教だろうさ』

「あばばばば、な、なんでバレてるんですかー」


ピンチです。マリアさん人生で一番の大ピンチであります!


『そりゃ、マリアが好き好きオーラを隠しもしないのだから、バレるだろうねぇ。まあ、サイド3に着くまでは乳繰り合ってなさい』

「ジーザス・・・」


なんということでしょうか、自分の身から出た錆びもとい、ピンクオーラが犯人だったとは!

今次戦争で私は負けなしだったはずなのに、最後の最後で私自身に敗北したのでした。というか、これってアムロに負けたってことなのかな?

でも、こんな敗北ならば負けてもいいよね!





機動戦士ガンダム~魔女戦記 第一部 ~ 完 ~

to be continued?




[41069] 機動戦士ガンダム~魔女戦記 第二部 1話
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/18 14:33


「マリア・イレーネ・ザビ公女殿下、おーなーりー!」





どうしてこうなった?


「おーなーりー!」じゃねえよ! おーなーにー! の間違えじゃないの? そうじゃなくて、なんで、私がジオン公国の公女などに祭り上げられなきゃならんのだ!


お元気ですか? ジオン公国のスーパーウルトラアイドルこと、マリア・アイリーン改めマリア・イレーネ・ザビです。
なぜ、こんな事態になっているのかといいますと、話は独立戦争が終結した直後にまで遡ります。



UC 0080.01.07


「マリアっ! あなた、アムロくんと何やってるのよ!」


お姉ちゃんの剣幕が部屋中に響き渡る。私は思わず耳を塞ぎました。眉間に皺を寄せると皺が跡に残りますよ。というか、美人が怒ると迫力ありますよね?
頭から角が生えてるのが見えます。私も遂にニュータイプに目覚めたみたいですね! そう、現実逃避したくなります。


「なにって言われても、ナニをしてたとしか言いようがないような?」

「マリアは、この歳で私をおばあちゃんにさせる気ですか! はぁ、まだ私は三十路にも成っていないと言うのに・・・」

「はい? お姉ちゃんはナニを言ってるんですか? それに毎日ピル飲まされてるから、ほぼ大丈夫だし」


現状で私が妊娠することは、ほぼ確実にありえません。というか、おばあ・・・ちゃん? グランマ? 誰が? お姉ちゃんが?


「っ! ・・・感情的になって、思わず口が滑ってしまったわね・・・」

「なにを言ってるのか分かんないけど、もし、私が赤ちゃんを産んだとしても、おばあちゃんじゃなくて、お姉ちゃんは伯母さんでしょ?」


私の頭の中は疑問符で埋め尽くされたのでした。おばあちゃんじゃなくて伯母さんの言い間違え、聞き間違えだよね?


「マリアに赤ちゃんが産まれたのなら、私は、おばあちゃんで間違いではありません! あなたは、マリアは私がお腹を痛めて産んだ、れっきとした私の娘です!」

「ぶっ!」


思わず飲んでいた紅茶を噴き出してしまったではないか。ナニヲイッテイルンデスカ、オネエサマハ?
ララァさんフキン、フキンってララァはいなかった・・・


「じゃ、じゃあ、私のお父さんとお母さんは、本当はお爺ちゃんとお婆ちゃんだったという訳なの?」

「そうよ。いままでずっと黙っていたのは、私だって悪かったと思ってるのよ」


ジ-ザスクライst・・・ なんてこったい! どうりで、お姉ちゃんがお姉ちゃん以上に口喧しかったわけだ! なるほど、オカンと思えば辻褄は合いますね。
謎はすべて解けた! いや、まだか。種が残ってたか・・・


「それでグレミーとマリーダは、甥っ子と姪っ子じゃなくて弟と妹だった、と」

「ええ、二人は正真正銘、あなたの弟と妹よ」


叔母と甥と姪だから少しは似ているとは思ったけど、そりゃ、姉弟妹なら似ていて当然ですよねぇ。
お姉ちゃんを入れて四人とも金髪碧眼だし。マリーダは少し栗毛っぽいけどね。


「種は誰よ? 私の本当のお父さんは誰なのよ?」

「種だなんて、父親を、ギレン総帥をそんな風に言うものじゃありません!」

「あ、やっぱり、ギレン義兄さんでビンゴなわけね。それはそれで少し安心したかな?」


なるほど、合点がいった。どうりでギレンが私に甘いわけだ。義理の妹だから甘いと思ってはいたけど、よくよく考えたら所詮、義理は義理でしかないのに
甘すぎたのはこういう裏があったのね。でも、その割には私には頭の良さが遺伝しなかったのは解せませんが。私の脳味噌は分数すら間違えるからね・・・
ギレンがIQ240で、お姉ちゃんも160はありそうだもんね。でも、私は精々105くらいしかなさそうですよ。トホホ。

MSの操縦技術がなかったら、そこら辺にいる平々凡々の人とおなじだし。


「安心した?」

「だってそうでしょ? 何処の馬の骨とも知れない男が父親よりは百倍マシだわ」


まあ、14か15だった当時のお姉ちゃんに手を出した時点で、ロリ疑惑は浮上しますけどね! ギレンよお前もか、と。


「あの人を馬の骨と一緒にしたら怒るわよ!」

「だからしてないってば! それに、お姉ちゃんの貞操観念がしっかりしてそうなのも分かったしね」


私だけ種が違ってたりしたら疎外感を感じちゃうもんね。ただでさえ私は異質な存在なんですから。


「私は誰にでも股を開くような、そんなふしだらな女ではないわよ!」

「私だって、まだアムロしか知らないわよ!」

「まだとはなんですか、まだとは! まるで次の男が控えているような、その言い方は!」


これには普段は温厚で事なかれ主義の私も、ちょっとカチンときましたね。べつに私は一竿主義というわけではないけど、せめて付き合っている間はアムロに対して
誠実ではありたいと思うのは人として自然なことだと思うけどなぁ。男の浮気は仕方ないとは思うんだけどね。遺伝子レベルで子孫を多数残そうって本能があるしね。
それを宗教的価値観や倫理観や道徳やらでガチガチに固めてしまったのが近代以降ってわけだ。それが良いのか悪いのかと問われれば、私は多分それは悪いと思う。
人は、煩悩の犬は追えども去らずってお釈迦さまも言ってるしね。ちょっと違う気がしないでもないけど。


「言葉の綾でしょ! それじゃあ、お姉ちゃんはギレン義兄さんしか知らないわけよね?」

「う゛っ!」

「ははーん、言葉に詰まるってことは違うんだぁ。ふーん、ギレン総帥に教えてこよっと」


まあ、お姉ちゃんなら若い時からさぞやモテたことでしょうし、それもさもありなん。まあ、私が教えなくても当然ギレンは知ってるはずだけどね。
というか、身内の下半身事情って生々しいですね・・・

私は総統府にある、お姉ちゃんの私室から飛び出してギレン総帥の部屋へと向かった。ここで一つ疑問が、総帥なのに総統府とはこれ如何に? 前から不思議に
思っていたんだよね。まあ、そういうものだと言われたら、それまでだけども。


「マリアっ! 待ちなさい!」


あーあー聞こえないー。 私は止めるお姉ちゃんの声を無視して廊下を突き進む。べつに本当にギレンに喋るわけじゃないのに、お姉ちゃん焦りすぎです。
いままでずっと黙っていた事への、ちょっとした意趣返しですよ。これぐらいしても罰は当たらないよね?


「衛兵! マリアを特務大尉を止めなさい!」


後ろから追いかけてくるお姉ちゃんが前方にいる衛兵に対して、叫び声を上げて命令するのが聞こえる。
そんなにギレンに聞かれたくないのか? なんか疾しいことでもあるんでしょうかね?


「止めるな! これは親子喧嘩なんだから!」


衛兵は私を邪険に取り押さえるわけにもいかないので、廊下を塞ぐ程度の邪魔をしようと試みるが、それを私は威嚇した。


「親子・・・? マリア殿とセシリア殿がですか?」

「そうよ! たったいま私も知ったところよ。だからこうして喧嘩をしているわけよ!」

「姉妹ではなくて母娘・・・」


首を傾げて考え込んでしまった二人の衛兵。おまえら自分の役目を果たしてないぞ? まあ、相手が私ってのもあるんでしょうけども。


「マリアっ! ペラペラと喋らないで頂戴!」

「お姉ちゃん、それ、自分で認めているようなもんだよ?」


私は振り返って、からかい半分でお姉ちゃんに言い返す。いままで姉妹で通してきたのに突然今日から、実は母娘でした。テヘッ こう勝手にする訳にはいかない
理由も分からないでもないのですが。でも、それは大人の事情であって、子供の私には通用しません。こんな時には子供の肩書きって便利ですよね。


「姉妹だから顔が似ているのは当たり前だが、確かに歳が離れ過ぎているとは、俺も前から思っていたんだべさ。これで合点がいった」

「分かったのなら、そこを退きなさい!」


訛りのある方の衛兵は一人でウンウンと頷いて納得したらしい。


「母娘喧嘩は犬をも食わぬともいいますしな」

「お前それを言うなら夫婦喧嘩だべ」

「私はギレンパパのところに行きますので、じゃあねー」

「待ちなさい!」


衛兵の役割を果たしていない二人の間をすり抜けて私はギレンの部屋へと向かう。後ろから元姉で現母親のお姉ちゃんが追いかけてくるけど無視です。
あー面倒くさいから、いままで通りにお姉ちゃんと呼べばいいか。私のお母さんも突然おばあちゃんなんて呼ばれたくないだろうしね。


「ギレン・・・ パパ・・・?」

「おい、あまり詮索しすぎるとアクシズかどっかに飛ばされるぞ。君子危うきに近寄らずだべさ」

「あ、ああ、そうだな・・・」




[41069] 2-2
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/20 20:20

「ギレン総帥!」

「ん? マリアか。帰っていたのか? 任務ご苦労だったな」

「ギレン総帥が、お義兄さんが私の本当の父親、パパなんですね? そうですね!」


私はギレンの執務室に入るや開口一番に大声で吠えて問い質していた。どうやらギレンはデラーズのハゲ親父と、なにかの打ち合わせをしていたみたいです。

ちなみに、この執務室への出入りは顔パスです。一介の特務大尉が顔パスな時点でおかしいと気づくべきだったのでしょうか?
まあ、いままでも義理の妹とは周囲の人間も理解していたから、アポなしでも出入りを許されていたので、私が感づかないのも無理はないってことですかね。
うん、私はニブチンではないですよ。多分だけど・・・


「マリア、その話を誰から聞いた?」

「パ、パパ・・・」


ギレンは私の顔を見て穏やかな表情をしたのも束の間、一転して表情を険しくした。もしかして地雷を踏んじゃった? でも、確認はしておくべきだ。
デラーズはポカンと口を開けて呆けてます。


「お姉ちゃんがポロリと口を滑らしました!」

「まさか、セシリア様が!?」


私が、お姉ちゃんと言ったらデラーズが狼狽えて、ギレンは片眉をピクッと動かした。片眉を動かすだなんて器用ですね。これは、もしかしなくても、


「ええ、この歳でおばあちゃんになりたくない云々って言いましたよ。その顔はデラーズ閣下も知ってたんですね? んもう、大人たちみんなでグルになって、まったく」

「マ、マリア殿、グルとかではありませんぞ」


これは大人たちの陰謀です。みんなで私の存在を隠していたと私は推察します。理由は世間体とかでしょうかね?


「おばあ・・・ちゃん?」


あ、やべっ! ギレンは目聡すぎますね。さすがはIQ240の天才です。説明したらしたで教育用語でいうところの、不純異性交遊をしていたのもバレてしまうのでしたね。
これでは藪蛇じゃありませんか・・・ でも、言ってしまったものは仕方ありません。どう誤魔化しましょうか?


「あ、あははは・・・」

「コホン。あー・・・ マリア、その、なんだ、そういうのは、まだ少し早いのではないかな?」


とりあえず私は笑って誤魔化すことしかできませんでした。確実に頬が引き攣った笑いでしょう。『笑えばいいと思うよ』そう囁いた脳内の私を殴ってやりたい気分です。

ギレンも一つわざとらしい咳をしてから、どう言ったらいいのか迷ってしまったみたいですね。言葉を探しても無難なことしか言えてません。天才にも弱点があったとは!
天才とはいっても、所詮はギレンも人の子? 人の親ということか。これが娘を持つ父親の気持ちなんでしょうかね?

お互いに目を合わせないで気まずい雰囲気が部屋中に漂う。く、空気がドヨンと澱んで重いです。誰か、この状況をなんとかして下さい!
もう生娘じゃなくなってしまったのがバレた娘と父親の会話なんて、なにを話したらいいのよ。笑って誤魔化すしかないじゃない。それも、さっき父親と判明したばかりの
ギレンが相手だなんてハードルが高すぎます。

でも、開き直って私も言わせてもらいますよ。ここは正面から一点突破あるのみです。ギレンもお姉ちゃん相手に、やってることは似たようなモノなんだしね。


「でもさ、もう既に済ましてしまったのだから仕方ないでしょ? それに、お義兄さんが私をお姉ちゃんに仕込んだのも二年くらいしか違わないじゃないのよ」

「だが、しかしな・・・」


しかしもかかしもありません。ギレンがロリコンだったなんて外聞が悪すぎるから、恐らく私をおばあちゃんの子として育てたのでしょう。
15歳で腹ボテなセシリア・アイリーン。お腹の中には私。うん、これはこれで・・・


「し、仕込んだなんてマリア殿、はしたないですぞ」

「あら、これでもオブラートに包んで言ったつもりですよ? 種付けとか言うよりはマシでしょ?」

「た、種付け・・・」


デラーズよ、恥ずかしがって狼狽えるな。男は狼狽えてはダメなのだ。軍人たる者は常に冷静であれ。


「戦闘が終わったあとの興奮を静めるのには必要な行為なんですから。お二人ともア・バオア・クーでの戦いの後でどうなされましたか? やりましたよね?」


戦闘行為が終了したあとの兵士は非常に興奮した状態のままなのです。これは女性兵士も同様であります。だから昔から占領した場所でのレイプが絶えないのだ。
これは、軍事行動に付随する負の側面ですね。いつの時代でも軍隊を悩まし付き纏う問題でもあります。

私はアムロが強姦魔になるのを防いだ英雄なのです! ジオン十字勲章ものの行為ではありませんか。よって自己の正当性には、なんら後ろめたい事柄は無いと
断言するのであります! うむ、これで理論武装は完璧ですね。私って、なんて頭が冴えているんでしょうか!


「うむむ・・・」

「性的興奮に男も女も若いも関係ありません」


むしろ若い兵士の方が性質が悪いといっても過言ではないでしょうね。若いだけにエネルギーが有り余ってますから。


「ギレン総帥、我々の負けですな。マリア殿の言う通りです」

「だが、しかしな・・・」


デラーズのハゲ親父は首を左右に振って諦めたようです。ギレンパパはまだモゴモゴと、なにやら言いたそうではありますけども。
勝った。勝ったよアムロ! 正論はどんな時でも、おためごかしのまやかしに勝るのであります。

私が一人悦に入ろうとした時に、執務室の扉がバンっと開いた。


「待ちなさいマリアっ!」


お姉ちゃん遅かったですね。どこで油を売ってたんですか? もう喋っちゃいましたよ。


「ふむ。セシリアも来たことだし丁度良い機会だ。マリアにも、いつかは話さねばならぬと思っていたのでな」



それからギレンが話してくれた内容は、概ね私の想像した通りでした。ザビ家の長男が15歳の少女を妊娠させたなど世間体も悪いし、政敵にも付け込まれる余地を
生むことになりかねない。そこで半年ばかり世間の目からお姉ちゃんを隠して私を出産させたのです。おばあちゃんの子として生まれたことにして。
私生児を養子にしたうんたらかんたらとか、まあ、ここいらへんの誤魔化しテクや複雑な事情は、私には詳しくは分かりませんでしたけど。

でも、堕ろされなくて良かったぁ。万が一にも堕胎されてたら、現在の私は存在しないのですから。もし、仮にそうなっていたら水子になってギレンに憑りついて、
祟ってやるところでしたよ。

それで、私がまだ赤ちゃんの時に、ジオンが演説中に倒れて間もなく死亡。その直後に今度はサスロ・ザビが爆殺されてしまい、弱い存在の私が狙われるのを恐れて、
私の存在はそのまま姉のセシリアの妹のままで、今日まで至るというわけです。

なるほど、だからグレミーとマリーダも養子に出したのね。まあ、実質的に半分はお姉ちゃんが育てているから、既に養子も建前だけで形骸化しているけどさ。





「連邦との戦争も終結した事だし、そろそろマリアを公表しても良い頃合いではあったのだ。私が言う手間が省けたのは助かったがな」


手間が省けたて助かったとか、ギレンは父親の仕事を放棄するつもりかよ! それよりも、公表? 私が娘でしたって発表するの?


「公表? 嫌よ。私はお姉ちゃんの娘じゃなくて、お父さんとお母さんの娘のままで構わないです。政争の道具になんかには成りたくはありません」


誰が好き好んで権力争いに飛び込む馬鹿がいるのよ。魑魅魍魎との化かし合いなど、ごめんです。願い下げでございます。


「そういう訳にもいかんのだ。マリアは私に次いで公位継承順は第二位だ。それに国民からの人気はマリア、お前がザビ家の中で一番高い」

「そうです。マリア殿、いえ、マリア様の独立戦争での活躍は、コスモスの蝶、宇宙の魔女として全ての国民が知っておりますぞ! まさに国民のアイドルですな!」

「マリア、人生は時には諦めも肝心よ?」


ズイっと身を乗り出すな、デラーズ顔が近いよ! ハゲ頭が脂ぎってるよ! 私がジオンのアイドルって言ってたのは自称だったのに、まさか本当になっていたとは・・・
というか、今度また油取り紙プレゼントしてあげるから、その暑苦しい顔を引っ込めろ!

ん? その前にギレンは、なんと言った? 公位継承順が二位? それに、お姉ちゃんの言う、あきらメロンとは? それ、食べれるんですかね? あまり美味しそうな
名前ではありませんね。あきらメロンとは、どんなメロンですかね? うん、思わず現実逃避しちゃいましたよ。

継承順が二位。それって、つまり、えーと・・・?


「ちょ、ちょっと、みんなで一篇に言わないでよ! それに継承順位が二番ってなによ? 男子優先じゃないの?」

「我がジオン公国の公室典範では、長子優先だ」

「ぶっ! そ、そんなぁ。それじゃあ、私がギレン義兄さんの次の公王、女公王ってことなの?」


大事なことなのにギレンもサラッと言うなよ。ジオン公国は保守的な独裁国家だと思っていたのに、なんでそんなところだけ、戦後ヨーロッパみたいに先進的なのよ!
男子優先でギレンの次はグレミーでいいじゃん! 所詮、私は紛い物なんだから。前世は日本のそこそこ善良な小市民ですよ? 私には重すぎますってば!
それに、そんな重荷を背負う覚悟もないですし。本気でフォン・ブラウンかどっかに逃げたくなってきた。


「そういう事よ。だから、我がままを言わないで大人しく諦めなさい。マリア」

「そんな大事な娘なら、なんで戦場になんか出すのよ! おかしいじゃない!」


王位だか公位だか知らないけど、継承順位が第二位の娘を戦場に普通出しますかね? あー、でも第一次大戦までのヨーロッパでは、普通だったのかも知れませんね。
貴族の役割りだとか、ノブレス・オブリッジだとかリージュだとかで。ボーア戦争やWWⅠとかで継承者がバタバタ死んでますもんね。それで亡命ナポレオン家なんて
断絶しちゃったはずだし。公爵や侯爵、伯爵になると、もっと死んでるしね。


「それはそれよ。万が一に戦死したとしてもグレミーもマリーダも残っているわ」

「お姉ちゃんヒドい! それでも私の産みの母親なの!」


鬼がいた、ここに鬼がいましたよ。桃太郎さん!


「ええ、あなたの母親よ。何故か知らないけど、私にはマリアが戦死するなんて微塵も思えなかったのよ。不思議ね」

「だから、戦場に出した、と。 お姉ちゃんはエスパーでしたか? 確かに戦場では、かすり傷一つ負わなかったけどさぁ。なんか納得がいかない」


私はタコのように唇を尖らせ頬を膨らませて抗議する。そういえば、お姉ちゃん、史実のセシリア・アイリーンには、ニュータイプの素質があったとかって、
なにかで見た気もするけど、ニュータイプの勘ってヤツですかね? それでも納得がいかないものは、納得がいかないのです。


「これは、母親の勘ね」


母親の勘でしたか・・・ 私はズッコケそうになるのを気力で持ちこたえましたよ。偉いぞ私! その代わりに気力をゴッソリと持って行かれましたが。


「はぁ~・・・ とりあえず、この話は戦争も終わったことだから、もういいです。それで、私が継承するしないに、かかわらず、」

「かかわらず、なんだ?」


ギレンさん、その片眉ピクってどうやるんですか? 今度教えて下さいな。肩書きが父親や義兄さんや総帥とか紛らわしいから、もう眉なしでいいよね。ロリコンだし。
眉なしで眉ピクって器用ですよね。まあ、薄いけれども一応は眉ありますけどね。


「これは、私が継承するにしてもグレミーが継承するとしても、約束して欲しいことがあります」


そう、これは重要なことです。主に私たちが吊るされるか断頭台の露と消えない為にも。独裁者の末路ほど惨めで哀れなのもないでしょうから・・・


「ふむ、約束が出来るか出来ないかは内容にもよるが、言ってみろ」

「旧世紀のイギリスを手本とした、立憲君主制」




[41069] 2-3
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/20 20:52

「旧世紀のイギリスを手本とした、立憲君主制。ただし、拒否権は保持します。見習うならヴィクトリア女王の時代が良さそうですね」

「ふむ。しかし、現状でも建前上では、我がジオンは立憲君主制だぞ?」


自分で建前ってぶっちゃけやがりますかギレンは。まあ、相手が私だからだとは思いますけども。


「それはあくまでも、建前上はそうかも知れませんが、議会が形骸化しすぎていると思います。そもそも総帥と首相、二人がいる時点で歪なんですよ」

「ふむ、続けろ」

「公王と議会、相互の暴走を防ぐ意味でも議会の健全化は必要不可欠です。義兄さんが年老いてからも賢君であるとは限りませんし、それは私とグレミーも同様です」


そう、専制政治は君主がまともな時は、トップダウンで物事がすんなりと運ぶ分だけ、議会政治よりも円滑に政治が行えて、議会政治よりも優れているけど、
これが暗君が君主だった場合には、目を覆いたくなる惨状が待っているのです。絶対君主も議会制民主主義も一長一短ということでしょうか。

しかし、議会制民主主義の優れている点は、権力闘争や政権交代時において流される血の量が少なくて済む。この、なんとも血生臭い事象においての死者の数が、
絶対君主制や他の政治形態よりも極めて少ない。これは人類が編み出した叡智だと思います。故に旧世紀の先進諸国は議会制民主主義にごぞって移行したのですから。

まあ、民主主義も大衆迎合やら衆愚政治やら、いろいろと問題はありますけど、それでも独裁よりはナンボかはマシだと思うのです。


「相互監視による国内の安定か・・・ くくくっ、あの大人しかったマリアも言うように成ったではないか。続けろ」


ギレンの娘と分かった以上は遠慮する必要もありませんしね。安全マージンは最大限に取るべきなのです。


「ダイクン派との和解と恩赦。それに締め付けはもう必要ないでしょう。シャアが神輿になって、勝手に月かサイド6で活動するでしょうから」

「シャア? ダイクンの息子のキャスバルか」


やっぱり、ギレンも知っていて泳がせてましたか。ちゃんと諜報部は仕事をしていると。まあ、してもらわないと困りますよね。


「ええ、彼には精々頑張って踊ってもらいたいですね」

「なるほど、独立が成った今、過激なジオニズムは返って危険という事だな」


さすがはギレンです。一を聞いて十を知るとは、こういう人のことを差す言葉なんですね。話が早くて助かります。


「はい。ジオニズムは独立戦争を勝ち抜くまでの方便に使うだけで十分です。独立したならば、ジオニズムなどサイド3を縛る枷にしかなりません」

「し、しかしマリア様、それでは我々の大義が・・・」


あちゃー、こっちのハゲ親父は一を聞いても半分程度しか理解できてないみたいだ。デラーズよ、少しは自分の頭で考えましょうか。せっかく頭もハゲてるんだしさ。
イエスマンでは、そのうちギレンにも捨てられちゃいますよ?


「独立が達成された現在では、大義など薄めるか、別なモノを用意しても構わないのでは? このままジオニズムに拘りますと国家の土台を揺るがしかねませんよ?」

「それで国民が納得するでしょうか?」

「するしないではなくて、させるのです。それが政治ってもんでしょ? パンとサーカスさえあれば、大多数の民衆は不平不満は言わないモノなのです」

「古代ローマの詩人でしたかな?」


おう、それはハゲ親父でも知ってたのね。顔に似合わずに意外と博識じゃん。


「そっちの方向に誘導できなかったら、今度は月と地球の争いにジオンが巻き込まれるわ」

「ふむ、ルナリアン達か。しかし、マリアよ。古代ローマは滅亡したのだぞ?」

「言葉の綾ですよ。それに、どんなに優れた王朝や統治機構でも栄枯盛衰、盛者必衰ですしね。古代から一度も滅びてない王朝なんて日本ぐらいじゃないかしら?」

「マリアは政治家向きかも知れないわね」

「政治家なんて真っ平ごめんです! お姉ちゃんは私を地獄の釜に入れたいわけなの!」


産みの母親は怖いです。平気な顔して娘を谷底に突き落としかねませんってば! 政治家なんて、やりたい人間にやらせておけばいいじゃん。権力や名誉が欲しい
人間なんて、ごまんといるんだからさ。


「政治を地獄の釜か。くくくっ、確かにマリアの言う通り、そうかも知れんな」

「それで話を戻しますけど、いつの時代も不平不満を言うのは自称インテリです。この馬鹿どもを月とサイド6に穏便に放逐できたら、」

「ジオンは安泰という事か」

「革命家など中身が伴ってない夢想家ばかりだから、過激なことしかしないし、できないのです。こんな現実を直視できない連中はジオンには必要ありません」


そう、アムロも言ってたしね。


『革命は、いつもインテリが始めるが、夢みたいな目標を持ってやるから、いつも過激なことしかやらない』


うん、名言だね。これほど的確に破壊者を馬鹿にして捉えた言葉も、古今東西でも他に類をみないでしょう。さすがは私のアムロです!


「くくくっ、そのマリアの言葉も中々に過激だな」


私の前だとギレンさんも良く笑いますね。やっぱり私が娘だからなのかな?


「はい。ジオンが独立を勝ち取ったからには、次はフォン・ブラウンかサイド6でも反連邦の気運が盛り上がるでしょうし、サイド3の安寧の為には、」

「人身御供が必要という事か・・・」

「そういうことです。幸いにもシャアは父親の、ジオン・ダイクンの理想を実現するのに目覚めたみたいですし、我々には都合の良い駒になってくれるでしょう」


シャア自身も自分で人身御供の家系って自虐していたから、頑張ってもらいたいですね! ララァには少し同情しますけど。まあ、彼女が上手くコントロールして
くれるのを期待しましょう。影ながら援助でもしとけば、彼女なら恩を仇で返すことはしないでしょうしね。なんだか名案に思えてきましたよ!


「シャアを焚き付けたのか?」

「焚き付けたなど人聞きの悪い。私はちょっとだけ諭したまでですよ。あとは全部、ララァ少尉のおかげです」


そう、ララァには足を向けて寝れませんね。影ながらの援助する予定の額を少し増やしときましょうか。どうせ私のお金じゃないんだし。
まあ、人はそれは税金とか血税というのですけど。官房機密費みたいなモノですから気にしないでおきましょう。

万が一シャアが暴走するような事があっても、彼女がブレーキ役になってくれるなら安いモノですし。


「フラナガン機関のモルモットか・・・」

「お義兄さんこそモルモットなどと言ったらニュータイプに失礼ですよ? モルモットと言ってる時点で、お義兄さんもジオニストではなかったんですね」

「ふっ、嘘も方便と言うではないか」


なんだろ? ギレンから『越後屋お主も悪よのぉ』って聞こえてきそうなんですけど。



「それで、現体制から少しづつでも立憲君主制に移行して頂けなければ、私は継承権を放棄します。クーデターなど起こされて吊るされたくなんかありませんから」

「ふむ、マリアの言い分は理解した。その条件は、ほぼ全部が呑めるから案ずるな」

「え?」


ちょ、ちょっと待った! 無理難題を言って継承権を放棄しようと思ったのに、ほぼ私の案を丸のみですか? どこで失敗した? もとからギレンも議会制民主主義を
復活させようとしてたってこと? アンタは選民主義思想に凝り固まってたんじゃないの!


「ふむ、意外そうだな。なに、こう見えても私も血の通った人の親という事だよ。可愛い娘が不幸になる未来を望む親など居はしない」

「はぁ・・・」

「セシリア、ダルシア・バハロを呼べ」

「はい、分かりました」


ジーザス・・・ なんということでしょうか、ここまでの私の努力はすべて無駄になってしまったみたいです。なんてこったい! こんちくしょーめ!


「私はマリアが、こんなにも腹黒いだなんて思わなかったわよ。やはり政治家向きだわ」

「政治家だなんて、死んでも嫌ですってば!」

「あら? 女公王も君主だから、つまりは政治家のトップじゃない」


あうあう、私の平穏な未来をお願いだから返して下さい・・・ ぐすん。















「ふむ、それで話は変わるが相手は誰なんだ? マリア」

「あばばばば・・・」


忘れてた! ギレンとしては私の相手が誰なのかも重要なのでした!

アムロ、君は生き残ることができるか? 頑張れー。私は草葉の陰じゃなくて心の中で応援してるぞ!










私が現実逃避の長い回想に浸っている間にも、どうやらジオンとフォン・ブラウンとの友好親善の式典は、つつがなく進行していたらしい。

ただ豪華そうな椅子に座ってボーっとしているだけが、私に与えられた唯一のお仕事です。これって私がいる意味あるんでしょうかね?
まあ、形式ばった儀式には、お飾りが必要なのは認めますけども。そのお飾りが私ではなければね。権力者って不便ですね・・・

私はフォン・ブラウン市の強化ガラスのドーム型天井から地球を見上げて、深い溜め息を吐いたのでした。

どうしってこうなった? と。




[41069] 2-4
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/21 22:22


UC 0082.04


「は? ジム再開発計画?」


思わず私が素っ頓狂な声を上げてしまったのも、無理な話ではないと思います。ガンダムじゃなくて、なんでジムなの? GPシリーズはドコに行ったのよ?
ガンダム開発計画じゃないと、私にガーベラ・テトラが回ってこないじゃない! 私がガンダムを虐めすぎたのが響いて、ガンダムが過小評価されてしまったの
でしょうか? むむむ・・・ これは良かったのか悪かったのか、判断に迷いますね。

そうじゃなくて、

お元気ですか? ジオン公国の公女で、みんなのスーパーテラアイドルこと、マリア・イレーネ・ザビです。誕生日を迎えて私も今年で15歳になりました。
ミドルティーンですね。この二年で身長も少し伸びて、156cmになりました。まあ、身長の伸びはそろそろ頭打ちっぽいですけど。胸も大きくなりましたよ!

Cです。普通でしたね・・・ しょぼん。

ま、まあ、あまり大きすぎても、肩が凝るとか汗疹ができるとか垂れやすくなるとかの弊害もあるし、これぐらいで丁度いいのかも知れませんね。
べ、べつに悔しくなんて本当に思ってませんよ? 挟むことがやりにくいというかほぼ無理なのが、ほんの少し残念ではありますけど・・・

あ、ちなみに、まだ産んでませんよ? その代わり昨年にシーマさんが男の赤ちゃんを産みました! 名前はルートヴィッヒです。愛称はルヴィですね。
これがまた、ルヴィが可愛いのです! 将来はイケメンになりそうな予感がしますね。それで、シーマさんは来年まで産休と育休です。

我がジオン軍は福利厚生がしっかりしている、女性でも働きやすい職場なのです。

っと話が逸れた。


私は現在、アナハイム・エレクトロニクスの会長である、メラニー・ヒュー・カーバインさんと会談しております。まあ、ぶっちゃけると、この親父は死の商人ですね。
でも、戦争で肥大した経済は生半可な政策では、方向転換ができないのも事実なのであります。

資本主義が恐竜の身喰いとは良く言ったものですね。まあ、そんな格言は多分ないんですけどね! いま私が作りましたから。

実際に、リーア軍縮条約でジオンは軍備の縮小を余儀なくされ、軍縮といっても、軽巡洋艦以上の戦闘艦艇のみの軍縮なのですが、これがジオンの上限が150隻に対して
連邦が300隻。戦力比は1対2。まあ、全体の数は減ったけどソロモンの戦い以前と比べても、変わらないといえば変わらない戦力比なんですけどね。

それで、軍備の縮小で余剰になったジオニック社の人員をアナハイムに引き取ってもらってますから、我々ジオンもアナハイムには頭が上がらないのが現状なのです。
まあ、アナハイムも弱かったMS部門を強化できて、お互いにメリットがあったんですけどね。そうでなければ、営利企業のアナハイムが人員を受け入れるはずが
ないですし。


「はい、連邦軍再建計画の一環として、昨秋から北米のオーガスタ研究所が中心になって開発しています。私どもの方は既存のジムを改良したプランを提案したのですが、」

「連邦軍からは、あまり色よい返事はもらえなかった、と」


ありゃりゃ、これは地球派閥による宇宙派閥に属するアナハイムの締め出しかな? これがグリプス戦役の遠因でもあったはずだしね。


「はい。その通りです」

「それで、そんな裏の話を聞かせて、私にナニをさせたいのかな? 言っとくけど、ジオンは連邦に表だって喧嘩は売らないわよ? もう、戦争はこりごりですから」


もう、戦争はこりごりだなんて、どの口が言う。そう思われても仕方はないんですが、平和が一番なのは事実ですからね。


「それは十分に理解しております。ですから、表だってではなく裏から協力して頂けたらと」

「アナハイムには我がジオン国民も世話になってますから、協力するのは私もやぶさかではないけれども、出来ることと出来ないことがあるわよ?」

「はい、それはもう十分承知しております。それで、出来たらMS-17の設計図をお譲り頂けたらと・・・」

「ガルバルディかぁ。ガルバルディを改良したのを作って連邦にも売るというわけですか? でも、あまり数は売れないと思いますよ? 元は敵国ですしね」


史実ではガルバルディってルナツーで改良されて、ガルバルディβになったんだよね。この世界ではジオンが負けなかったから、連邦にジオンの技術が流出してないから
連邦もアナハイムもMS技術が遅れているのか・・・ ジオン経済の為にも、モンキーモデルの輸出ができるのはありがたいけど、ガルバルディって基礎がしっかりして
いるから、改良次第では十分に第二世代MSに対抗できるMSに化けるんだよね。

でも、連邦にジオン製のMSが売れるのかは疑問ですね。いくら性能が良くても感情的なしこりとかがありますから。試験的に少数を買うに止まる気がしますね。


「我がアナハイム・エレクトロニクスは、まだモビルスーツ製造の実績が足りません。ガルバルディで、そのノウハウの蓄積が出来たらと思いまして」

「なるほどね。当然ですが私の一存では決めれないけど、話は通してあげるわ」

「おおっ! ありがとうございます。それだけでも二歩も三歩も前進します」


ただ単に私は話を持って行くだけなのに、そんなに喜ばれてもねぇ。それだけアナハイムのMS技術が遅れているということですね。まあ、それでマラサイが完成するの
ならば、ガルバルディの設計図ぐらい安いモノなのかも知れませんね。

というか、それならジオニックだけで開発してもいいのか? あー、でもそうしたら経済が上手く回りそうにないか。うーん、ジレンマですね・・・


「ただし、条件があるわよ」

「その条件とは?」

「話が纏まったらアナハイムとジオニック、二社で株式の等価交換をしてもらうわよ。そうね、発行済み株式の12.5%ぐらいが丁度いいかしらね?」


うん、お互いの利害を一致させるには、株式の持ち合いが一番良い方法の気がしますね。アナハイムをダミー会社にして連邦と月とサイド6にMSを売りさばくのです。

なんだか私も、死の商人まがいの事をやっている気がしないでもないけど。サイド3の安寧の為には、これは止むを得ない行為なのであります。純粋な経済活動ですし。
武器、兵器は人を殺さない。引き鉄をひくのは、いつの時代も人間である。そう言い訳をしておきましょう。誰だって自分の国が一番大事ですしね。


「と、等価交換ですか? それでは我が社の損失が10億$近くに上るかと・・・」


おう、メラニーさん計算速いね。伊達で大企業の会長は勤まらないということですね。256ビットCPU搭載してそうですね。私は精々16ビットでしょうか。


「あら? ガルバルディが、たったの10機分よ。先行投資だと思えば安い買い物だと思うけど? 最終的に儲かればいいじゃないの。まあ、あくまでも私の私案ですけども」

「ふーむ、それは確かに・・・」

「それに、僅か10億$でジオニックの第二位の株主になれるのよ? 悪い話ではないと思うけどなぁ」


ただでガルバルディの設計図を渡すほどお人好しでもないですよ。こちらもアナハイムを利用しないとね。
最終的には、ジオン公国が軍産複合体の筆頭株主に成るのが理想的ですかね。政府のコントロールを離れた超巨大企業だなんて、恐ろしすぎますし。

市場の原理原則に自由主義経済ですって? なにそれ食べれるの? 美味しいんですかね? 私情の原理の間違いじゃないですかね? 国家社会主義、美味しいですよ?


「うーむ、それをするにしても自社株買いにするのか公開買い付けにするのか、新規に発行する分を割り当てるのかでも違ってきますな」

「それは任せるけど、ジオニックと協議しないとね。それか、いっそのことジオニックを子会社化するとかさ。まあ、これはさすがに議会がノーって言いそうだから無理か」


今のうちに、お姉ちゃんに言ってインサイダーを仕込んで儲けようかな? 裏の情報を知っていたら自由に株の売買ができないのも、私的にはおかしな話の気がしますし。
株取引で損をした云々なんて馬鹿ですよ。株価が下がった段階で売るから損をするってだけなんだと、素人から見たら単純な話の気がするんだけどなぁ。


「はははっ、それが出来れば我が社としては幸いですな」

「我がジオンとしましても、月との友好関係は大事ですからね」

「マリア様から、そのお言葉を頂けて私も安心しました」

「ガルバルディが無理だとしても、最悪でもゲルググは回せると思います。私からも頼んでみますから」

「お願い致します。それと・・・ これは些少ですけど、お納め下さい」


メラニーさんがドンっとテーブルに置いたのは、ジュラルミンケースでした。お、重たそうですね・・・
ジュラルミンケースの中身は金のインゴットが入ってました。横に4本で縦に2本の二段重ねです。合計16本ですね。このインゴット1本が1kgとすると全部で16kgです。
金の相場が1gあたり50$としますと、えーと・・・ 80万$相当ですかね? 


「あら? これは俗に賄賂と言われるモノですか?」

「いやいや、これは寄付でございます」

「まあ、くれるというなら捨てるのももったいないですし、頂いておきましょうか。お金に貴賤はありませんし。オホホホ」

「左様ですな」


俗物が! でも、俗物万歳なのであります! 越後屋、お主も悪よのぉ。オホホホホ。


こうして、私はアナハイムのメッセンジャーの役目を授かって、サイド3に帰るのでした。人はそれを使いっパシリともいいますけど・・・

結局のところジム再開発計画とは、なんだったんでしょうかね? ちゃんと聞くのを忘れてしまいました。まあ、重要な事でしたら諜報部が掴んでいると思いますから
多分大丈夫なんでしょうけども。

はぁ~、なんだか疲れました。帰ったらアムロに癒してもらいましょうか!




[41069] 2-5
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/25 05:39

UC 0083.02  フォン・ブラウン市郊外 月面


「ふむ、これはこれで、なかなか良いモビルスーツに仕上がりましたね」


現在、私はMS-17Rガルバルディβの試作機のテストをしています。多少のすったもんだはありましたけど、最終的にはガルバルディの設計図をアナハイムに提供する
ことで決着しました。株式の相互での持合いと合わせて技術提携、業務提携がなされました。もしかしたら将来的にはジオニックとアナハイム・エレクトロニクスは
合併するかも知れませんね。そこにツィマッドとかも巻き込んで業界再編でしょうか?

史実みたいに、アナハイムの一強時代とかになるのかな? まあ、そうなってもアナハイムの筆頭株主は既にジオン公国なんですけどね。
ジオニックの筆頭株主がジオン公国ですしね。それで、株式交換でジオニックがアナハイムの第二位の株主に成り上がったのです。それ以外にダミー会社を通じて、
せっせと株の買い増しを繰り返したり、既存の株主の会社に出資したりしていますので、アナハイムの影の筆頭株主はジオンというわけです。

これで、アナハイム社製のMS同士やジオニックとアナハイムのMSが戦闘でもすれば、自分で自分の尻尾を食べる恐竜の出来上がりというわけです。

資本主義って怖いですよね・・・

まあ、私もお金は大好きなんですけどね! それでも、自分で使い切れないほどのお金はいりませんけど。

っと話が逸れた。

史実での型式番号は、RMS-117だったと思いますけど、この世界ではMS-17Rです。まあ、連邦軍がお買い上げしてくれた場合は、RMS-117とかになるのかも知れませんけども。

しかし、このガルバルディβには、致命的な欠点が存在するのです! その欠点とは、格好良くない! 仮に以前のガルバルディをガルバルディαとするとして、
そのガルバルディαは、ゲルググに似た容姿をしていて格好良かったのです!

しかし、このガルバルディβは贅肉をそぎ落としすぎてモヤシっ子になってしまってるんです! ガリガリなんですよ。私が生理的に受け付けない容姿のMSなんです!
あまりにも、ロボットロボットしすぎているんですよ。MSに心が入ってないとでもいうのでしょうか? そんな感じをこのMSからは受けるのです。

おなじMS-17なのに、どうしてこうなった? 解せん・・・

いくら外見と容姿が好くても弱かったら意味はないのですけど、性能が良くて機能的に優れていても容姿が悪いのも考えものですよね。
ここら辺は、まだアナハイムがMS開発の浅い会社だから仕方がないのかなぁ。これは次のMSに期待するしかありませんね。


「宇宙の魔女に、失礼、マリア様にそう言って頂けると素直に嬉しいですな」


コクピットにメラニー会長の声が入ってきた。あのブルドッグみたいな親父も、この試作機のテストが気になるみたいですね。まあ、MS部門に新規参入するのに
社運の半分は掛けていますから、気になるのも当然でしょうか?


「全天周囲モニターとリニアシートは、慣れないと違和感を拭えないパイロットもいそうですけど、私は気に入りました」


アナハイム・エレクトロニクスというだけあって、さすがに全天周囲モニター等のエレクトロニクス系は強いですね。
容姿は気に入らないけど、その他の面においては現時点での性能は、恐らく宇宙世紀83年においてトップレベルのMSに仕上がっているのは確かでしょう。

さすがは、ガルバルディαの後継機ですね。このMSはアナハイムとジオニックの共同開発したMSなのです。政治的にも色々なしがらみとかがあって、結局は
ジオン公国向けはジオニックが、連邦や月向けはアナハイムの製造販売と決まりました。これだと、あまり前と状況が変わってない気がしないでもないですけど。

設計図を提供したジオンが一方的に損したように表面上は見えるかも知れないですね。でも、それも狙いみたいです。まあ、分かる人には直ぐにバレる嘘ですが。

それで、私が乗ってテストしているのはアナハイム製の方です。ジオニックが作るジオン向けのガルバルディβは、αの外見を引き継ぐ予定だそうです。その分、
重量が少し増えるけど、それは致し方ありません。万が一にでも外見がおなじMS同士が戦闘になったなら紛らわしいですしね。


「それでは、まず最初にMS-14Aゲルググと模擬戦を行ってもらいます。続いてRGM-79Lジム・ライトアーマーと、その次はRGM-79Cジム改と模擬戦をお願いします」

「こちらマリア機、了解した」


さて、模擬戦といえども久し振りの対MS戦です。相手も腕の良いパイロットでしょうから、ちょっぴりワクワクしますね。でも、性能試験の模擬戦をやるのに
パイロットが私で良かったんでしょうかね? 私ではMSの正当な評価以上の性能を見せてしまって、恐らくMSの評価が過大になってしまうはずですけど・・・

それで過去にレム主任に、グチグチと小言を言われてしまった事がありましたから。

けど、連邦軍の将校や技術士官も見学に来ているから、このMSの売り込みも兼ねてオーバーアクションを、メラニー会長は期待しているのかも知れませんね。
アナハイムの筆頭株主として、ここは私も一丁売り込みを手伝いますかね!





~~~~~~~~~~~~~~





「おおーっ! ゲルググが相手にならないとは」

「ああ、まるで大人と子供ほど違う」

「さすがは新型といったところですな」

「しかし、いくら新型といっても、これは姫様の腕じゃないのか?」

「それは迷うところだな。しかし、このガルバルディβが高性能なのは確かだ」

「ええ、一年戦争で戦場に出た、どのモビルスーツよりも高性能みたいですね」


「ワッケイン少将どうですか、ガルバルディβの性能は? ジオン系技術云々抜きにしても、連邦軍で採用して頂くに相応しい機体だと自負しております」

「うーむ、これは確かに欲しい。だが、我々の一存で正式採用が決定できないのはメラニー会長も理解しているであろう?」

「はい、それは十二分に。そこで、ルナツーの宇宙軍に評価試験機名目で数機お譲りしますので、ご検討頂ければと存じます」

「それはありがたい」





「しかし、ジオンも思い切った事をしたものだな」

「アナハイムへの技術提供ですか?」

「ああ、これだけの高性能機という事は、ほぼ最新鋭のモビルスーツだぞ? それを我が連邦にも売るなど、我々の立場では考えられん話だ」

「それだけ、戦争によってジオン経済が疲弊していたとは考えられませんか?」

「それもあるが、これはジオンのメッセージでもあるのだろう」

「独立を勝ち取ったから、今後は連邦とは仲良くしますよ。という事ですか・・・」

「ああ、虫の良い話だがな。しかし、それで平和が買えるなら安い買い物だ。我々もジオンも、な」

「しかし閣下、平和と言う名の旧世紀にあった冷戦になりませんかね?」

「ジオンがその気ならば、モビルスーツを売り込まんだろうよ。ジオンも寒い時代を終わりにしたいのだ」





~~~~~~~~~~~~~~





などの会話が繰り広げられてるとは、私は露ほども知らずに、ゲルググをサクっと撃墜判定させて、次のジムが出てくるのを待ち構えているのでした。


「おろ? 今度の相手はライトアーマーとか言ってなかったっけ? あれはジム改かな? 似ているけど違うような?」


ジムはバリエーションが豊富だけど、似ているから全部が全部おなじに見えて判別がしづらいのが難点ですね。さすがにライトアーマーとかスナイパーとかキャノンは
区別ができますが。まあ、それを言ったら、ザクやゲルググも見分けが付きにくいんですけども、ジオン軍人の私には分かりますので、連邦兵もジムの区別はできてる
のかも知れませんね。


「といいますか、ぞろぞろと6機も出てきたぞ? これは、ひょっとしてサプライズってヤツですかね?」


模擬戦を盛り上げる演出ですね。ふふ、私には分かりますよ! メラニー会長も教えてくれないだなんて人が悪いですね。まあ、この方が実戦っぽくって、バイヤーの
連邦軍のみなさんに満足して貰えそうですね! そうと分かれば、私も株主として期待に応えてあげないといけませんよね。

アナハイム・エレクトロニクスは顧客満足度一位を目指す、顧客本位の会社なのです!





~~~~~~~~~~~~~~





「メラニー会長、これはどういう事だ!」

「シ、シーマ大佐、お、落ち着いて下さい」

「見たこともない新型のジムが、それも6機だぞ! これは罠じゃないのか?」


「あの機体は!?」

「閣下! あれはジムカスタムです!」

「ジムカスタムだと!? 何故こんな所に!」

「まだルナツーには配備されてませんので、小官にも、てんで訳が・・・」

「ワッケイン少将、これはどういう事だね? マリア様に万が一の事でもあったら戦争が再開してしまいますぞ!」

「それを狙っている輩が、ジャブローには居るのかも知れませんな」





~~~~~~~~~~~~~~





「運動性は、なかなか優秀みたいですが、そこっ!」


ふむ、新型っぽいジムはア・バオア・クーとかで戦ったジムよりは性能が向上している感じがしますね。私のガルバルディβを取り囲むようにしていたジムだったの
ですけど、私は囲まれる前に各個撃破を心掛けました。反時計回りに一機づつ確実にジムに模擬ビームライフルを撃ち込んで行きます。まあ、当然の流れですよね。

外見の容姿はイマイチどころか、イマサンなガルバルディβですけど、性能は私のMS-14JGsゲルググ・イェーガー専用機に近いモノがありますね。あの子はチューン
してありますから、まだ性能的に若干は私の専用機の方が上ですが、このガルバルディβは、まだ弄れる余地が残ってますので、チューンしたらイェーガーよりも
高性能な機体まで仕上げられそうですね。伊達に1.5世代のMSじゃないってことでしょうか?

しかし、いまだに理解できないのが推力と運動性や機動性の関係だ。機体重量が減ったら推力が低くても運動性は低下しないのは理解できるけど、数値的に見たら首を
傾げざるを得ないカタログスペックなのに、高性能とかこれ如何に? まあ、考えても私の頭では理解できないから、考えるのは止めましょうか・・・

『高性能は高性能、なんか文句ある?』 多分そういうモノだと思っとけば良いのでしょう。

っと、いまは模擬戦の途中でしたね。雑念はいけませんよね。



「ということで、私と戦うには、そのジムではまだ未熟です! これで最後の6機目です! アディオス!」


というか、撃墜されてるはずのジムが、まだ撃ってくるのはなんでですかね? チャンバラごっこする前に全機撃墜しちゃったから、接近戦のテストをしろって事ですか?





~~~~~~~~~~~~~~





「ほぅ? これはこれは、この借りは高く付きそうだねぇ。ワッケイン、ルナツー司令閣下殿?」

「シーマ大佐、一つ言わせてもらうと、この襲撃は我々ルナツーの宇宙軍の差し金ではない」

「連邦も一枚岩ではない、それぐらいは理解しているわよ。おおかた、コリニーあたりが動いたんだろうねぇ」

「ああ、あのジムカスタムは、オーガスタで開発されたモノだ。ルナツーの我々の所には、まだ回って来てない機体だ」

「地球至上主義者たちの嫌がらせですかねぇ?」

「まあそんなところだ。我々とは派閥が違うのでな」

「それで、ルナツーは姫様がテストしているガルバルディβに目を付けた、と」

「そういう事だ。ジオンもアレを我々に売りたいのであろう?」

「さあ? 政治は本官の任務の範疇外ですから。しかし、既に連邦は敵ではない。とだけは、申しておきましょうか」

「なるほど、理解した」





~~~~~~~~~~~~~~





などなどの生臭い会話が繰り広げられてるとは、私は露ほども知らずに、


「こちらマリア機です。全機、撃墜判定が出てるはずのジムがしつこく撃ってくるけど、どうしたらいいですか~?」

「は?」

「シーマさんってば、『は?』じゃなくて、なんだかみんな怒ってるみたいですけど、プライド傷付けちゃったのかなぁ」





「シ、シーマ大佐、姫様は一人だけ、まだ模擬戦のつもりだったようですぞ・・・」

「そ、そうみたいですね・・・」





[41069] 2-6
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/25 05:41


「シ、シーマ大佐、姫様は一人だけ、まだ模擬戦のつもりだったようですぞ・・・」

「そ、そうみたいですね・・・ あんバカ娘がっ! マリアっ! そいつらが撃ってきているのは実弾だ! 全機ダルマにしておやり!」

「え? 実弾? ペイント弾じゃなくて? ということは、シーマさんこれって実戦だったんですか?」

「そういう事だ!」

「ありゃりゃ、なんか私もおかしいとは思ってたんですよー!」


なんということでしょうか、模擬戦だと思っていたら、いつの間にか実戦になっていたとは・・・

な、なにを言っているのか分からないと思うが、私もなんでこうなったのか分からない・・・
頭がどうにかなりそうだよ・・・ 催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃ断じてない。

まさに、ポルナレフ状態を現在進行形で味わっているのです。


「気づけよ! そいつら全部、マリアを暗殺する為に、はるばる地球から来たエネミーだよ! 私もゲルググで直ぐに向かうから、取り敢えず適当にあしらっとけ!」

「了解、わっかりましたー! 私を暗殺するなどと穏やかでないですね・・・ うしっ! そうと分かれば、マリアさんも久々に漲ってきましたよ!」


でも、こっちの武装は、出力を通常の5%位に弱めてある模擬戦専用のビームライフルとビームサーベルに、無炸薬シールドミサイルのみ・・・ どうしましょうか?

これは、詰んだかな?

逃げる? いや、私の辞書に敗北の文字は存在しないのです! 武器がなければ相手から奪えばいいんじゃない? うん、これは名案ですね!


「マリア・イレーヌ・ザビ、吶喊します!」


そういうことで、私は一番近くにいるジム目掛けて突撃を敢行した。


「死にたくなくば、そこをどけー!」


いや? 本当にどいってもらったら困るんですけどね? とりあえずマシンガンを奪わないと話になりませんし。


「アワナゲトチャン!」


欲望の宇宙に絶望の宇宙に駆け抜ける吹き抜ける嵐! 頭の中で、なんとかディスティニーがリフレインして、私は一人勝手に盛り上がってきました!
チャンスは確実にモノにしなければいけません。


「未来は誰の為にあるって? そんなの私の為に決まっているでしょ!」


弾丸をかいくぐってジムに接近し、私は右脚を横に蹴り上げジムの腹にぶちかました。格闘技でいうところの、ミドルキックってヤツですかね?
敵は、まさか私が無手で突撃してくるとは思ってなかったようで、完全に慌てていたのが幸いしましたね。不意打ち同然でしたから。


『グボッ!』


キックの衝撃でジムの身体は、くの字に折れ曲がる。体勢の崩れたジムから即座にマシンガンを強奪する。


「悪く思わないでちょうだい。私も死にたくはないのでね」

『ひぃ!』


そういって私は、奪ったマシンガンをジムに向けて三発撃った。頭と両肩が吹き飛んでジムは無力化された。なんか叫んでいたみたいだけれども、気にしません。
敵ですから情けは無用です。しかし、この連邦のマシンガンもMMP-80と同程度の性能があって、かつ使い易くて良いマシンガンですね。


「さて、残るは5機ですか。ちゃっちゃと終わらせるとしますか!」

「えー、こちら地球連邦軍ルナツー司令のワッケイン少将です。マリア公女殿下聞こえますか?」

「ワッケインって、あのワッケイン?」


ワッケインって一年戦争を生き残ってたんだ! そうじゃなくて、連邦が私になんの用なのかな? いま戦っているのも連邦で、通信で話し掛けているのも連邦だ。
なにが、どうなってるんでしょうか?


「姫様が、どのワッケインを差しているのかは存じ上げませんが、私はルナツー司令のワッケインです」

「多分あなたのことで正解よ。それで、用はなんですか? こう見えても私は現在戦闘中ですから、手短にお願いします」


そういいつつも、私は射程に捉えたジムに向かって、流れ作業の如く機械的に引き鉄を弾いていた。爆散。これで2機目、残りのジムは4機。


「それでは端的に申し上げます。姫様を襲った犯人の背後関係を調べたいので、出来るだけジムの生け捕りをお願いしたいのですが」

「ふーん、あなたが敵じゃないみたいってことは理解したわ。でも、生け捕りだなんて無茶を言いますね。私以外でしたら、ほぼ不可能ですよ?」

「姫様が宇宙の魔女だからこそ、お願いしているのであります」


私だからこそかぁ。そう言われたら悪い気はしませんよね。まあ、私だったら生け捕りも可能だしね。おだてられると私は木に登っちゃうタイプなのです!


「ふふ、ワッケイン司令も、おだてるのがお上手なことで。仕方ありませんね。無力化して捕獲します」

「そうして頂けると助かります」

「ただし、捕獲したジムはジオンが貰うわよ? このジムは新型みたいですしね」


もしかしたら、これがジム再開発計画で開発されたジムなのかも知れませんしね。オーガスタで開発していたってメラニー会長は言っていたから、いま戦っているのは
ジムカスタムとか、ジムクゥエルなのかな? ジムクゥエルはティターンズカラーで濃い紫か濃い紺色だったっけ? それに、まだティターンズは部隊として表だって
活動しているとは聞いてないから、戦っている相手はジムカスタムになるのかな? まあ、敵は排除するのみですから、どっちでもいいけど。


「それに関しましては、ルナツー宇宙軍は関与いたしません。元々の所属も違い、我々の指揮下にありませんので」

「ふふ、物分かりが良い大人って好きよ。それでは商談成立ってことで、頑張りますかね!」


生け捕りということで、私は1機目に倒したジムとおなじ要領で、相手の肩を狙ってマシンガンの引き鉄を弾いた。刹那、小さな爆発と共にジムの両腕が胴体から分離する。
これで両脚も切断したなら、ダルマの出来上がりですね。そういえば、シーマ様がダルマにしておやり! とか言ってたような?


「んじゃ、ダルマにして逃げれないようにして差し上げますかね」


カチッ


「おろ? 弾切れですか? 仕方ありませんね。もう一度マシンガン強盗をさせていただきます!」


私はガルバルディβのバーニアを加速させて、宙を漂っているジムの腕から再度マシンガンを奪って、逃げようとしていたジムの両脚目掛けてマシンガンを連射した。
うん、ハマーンのキュベレイとシロッコのジオにフルボッコされたシャアの百式ばりに、見事なまでにダルマですね。哀愁が漂ってますね。

ついでに、ビームサーベルもいただいておきましょうか。


『ひぃ! く、くるなー!』

「死にたくなければ、戦闘終了まで大人しくしてなさい!」


ジムのパイロットは私に捕まった恐怖で叫んでいるけど、失礼なヤツですね。殺されると勘違いしているみたいだから、仕方ないのかも知れませんが。

しかし、このガルバルディβのマニピュレーターのビームサーベルとの接続部分が連邦と共通で助かりました。まあ、連邦向けに開発したんだから当たり前といえば
当たり前なんですけどね。でも、これからはジオンのMSも共用で使えるようにした方が、なにかと便利そうですね。コストも削減できそうですし、これは提案しておく
価値がありますね。うん、心のメモ帳にメモっときましょう。

私はジムからビームサーベルも奪って、残りのジムに向かった。





~~~~~~~~~~~~~~





「し、新型のジムカスタムがまるで歯が立たないとは・・・」

「うむ、しかし、姫様の動きはなんだ? あの動き方は無茶苦茶だな」

「戦闘中の敵のモビルスーツから、マシンガンとビームサーベルを奪うとは・・・」

「閣下、あんなモビルスーツの動かし方は教本には載っておりません」

「この戦闘映像を見たら、ジャブローのモグラ連中は震え上がるだろうよ」

「はい、我々ルナツーの宇宙軍は、ジオンと敵対しなくて良かったと心から思います」

「一年戦争の時に、彼女と相対して生き残れたのはアレックスただ一機のみだ。それも、わざと見逃しただけらしいのだがな」

「そ、それは、つまり・・・」

「彼女と敵対して生き残るのは、ほぼ不可能という事だよ」

「まさに宇宙の魔女ですね・・・」

「死神が正解かも知れんな・・・」





~~~~~~~~~~~~~~





私は残っていた敵のうち、2機のジムも既にダルマにして無力化しています。


「これで、残りのジムは1機のみ! さあ、そろそろパーティーもお開きの時間ですよ!」


そういって、マシンガンのトリガーを引いた。


カチッ


「ちっ、また弾切れですか? それならそれでビームサーベルで、けりを付けるだけです!」


後退しながら弾幕を張る最後のジムに向かって、私は機体を寝かせながら突っ込んでいく。相手も途中で慌ててビームサーベルに持ち替えようとしたけど、遅い。
遅すぎる。既に私は、キルゾーン、接近戦の間合いに入ってビームサーベルを振り抜く寸前なのだから。


「再びジオンの栄光を掲げる為に、フォン・ブラウンよ私は帰ってきた!」


ズバッ ズサッ


「ふっ、なんと他愛のない、鎧袖一触とはこのことか」


あっさりと両腕を肘から斬り落とされて、最後に残っていたジムも無力化された。いやー、ガトーの台詞って格好良いですよね! ばっちり決まりましたよ!
うん、これは自画自賛しても誰からも貶される事のない完璧な決め方ですね!


『あ、悪魔め・・・』

「あら? 私が本当に悪魔だったのなら、あなたたち全員がモノも喋れない骸になっていたわよ」

『それもそうだな・・・』

「あとは軍事法廷で洗いざらい喋って下さいな」


私が最後に倒したジムのパイロットとお喋りしていると、シーマ様がパープルとカーキ色塗装のゲルググ・シュッズスタフェル専用機に乗って駆けつけてきました。
いつ見ても、MS-14FsはカッコイイMSですよね! 4年落ちでも十分に通用する機体ですしね!


「マリア! 待たせ ・・・てないような?」

「もう、シーマさん遅いですよ? 私が一人で全部片づけちゃいましたよ」

「そうみたいだねぇ、私もロートルってことか・・・」

「ロートルですか? まだまだシーマさんは若いと思いますよ? あー、でも、目尻の小皺とルヴィに吸われたおっぱいは垂れてきちゃったかな~?」


そういえばロートルって中国語だったんですってね! 私は最近になって、ようやく知りましたよ。ずっと英語の隠語だとばかり思ってましたから。


「マリアはいつも一言二言多いんだよ! 帰ったら折檻してやる!」

「えー! こう見えても私は一応は公女なのに! 暴力反対です!」

「マリアが寝小便していた時からの付き合いの私には通用しないよ!」

「ジーザス・・・」


なんということでしょうか、ここにも私が勝てない相手が居ましたよ! シーマ様は私の守り役も同然でしたから、私も一生シーマ様には頭が上がりそうにないですね。
まあ、べつにそれでも良いのですけどね!





[41069] 2-7
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/27 05:38


UC 0083.04


「特徴がないのが特徴かな?」

「なるほど、そういういう事なら量産機のベースにするには、うってつけの機体とも言える訳ですな」

「うーん・・・ ジオンと連邦のお互いの良いところを潰し合って、駄作が生まれる可能性もあり得るけどね」


お元気ですか? ジオン公国の公女で、みんなのペタアイドルこと、マリア・イレーネ・ザビです。あと、3回挨拶をしたら行き詰るのは内緒ですよ?
誕生日を迎えて私も今年で16歳になりました。身長は、ほとんど伸びませんでしたけど、胸は大きくなりましたよ!

Dです。ギリギリDです。多分だけども・・・ まだ少し挟み難いですから、最低でもあとワンランクはアップして欲しいですね。それ以上はいらん。
ホルスタインになってしまいますしね。

ナニを挟むのかって? パックに入った飲料を胸の谷間に挟むんですよ。そうすることで両手が空きますので、水分補給をしつつも、かつMSの操縦も疎かにならない
メリットがあるのです。
いやらしい想像をした人は前に出なさい。修正して差し上げますから。まあ、パック飲料の話は半分以上は嘘なんですけどね!

それはそうと、

現在、私はエリオット・レム技術大佐とお話し中です。話の内容はといいますと、この前フォン・ブラウンで、私を襲ってきた時にゲットしたジムカスタムを修理して
テストした結果の報告と、MS-06ザクⅡ系統の正統な後継機についてのお話しです。


「取り敢えずは、ジオンと連邦の規格を統一するのに試作するだけですから、性能は二の次です」

「まあ、パーツの互換性の点数が多いのは、我がジオンも大いに連邦を見習うべきでは、あるんだろうけどもね」


独立戦争時にマ・クベ中将が提唱した、統合整備計画を更に一歩踏み込んで実行する為の試作機なのです。


「製造コストの削減は喫緊の課題ですからな」

「ザクの後継機ですから、値段を安く仕上げないと採用されませんもんね」

「そうですな。しかし、このセミモノコックではない新フレームは色々と応用が利きそうですので、もったいない気もしますね」

「可変モビルスーツとかの開発ですか? それはそれで、ハイエンド機として開発すれば良いんじゃないですか?」

「可変式のハイエンド機ですか? ふーむ・・・ それだと、私だけの提案では心許ないですから、姫様からも口添えをお願いしますよ」

「移動可能な骨格ということで、ムーバブルフレームとか連邦では呼ばれていそうですね」


すみません、インチキ使いました。ムーバブルフレームは、ガンダムMkⅡを開発していたカミーユの親父さん、フランクリンが設計していたような気がしますね。
もう既に前世も遠い昔で、記憶もかなり曖昧ではありますけれども。


「ムーバブルフレームですか・・・ なんの捻りもなくそのままですね。そうじゃなくて、」

「口添えでしたっけ? まあ、言うだけならタダですから話は通しておきますね。私も、そろそろイェーガー以外にも乗りたいですしね!」

「本当にお願いしますよ?」

「ふふ、レム技術大佐は本当に技術馬鹿ですよね」

「まあ、これぐらいしか私には取り柄がありませんので」



こうして、ジオンと連邦の両方の技術とパーツを使ったMSが生まれることに成ったのです。冷却というか排熱ダクトみたいな所にジムの名残りが見受けられますね。
これが、翌年には正式に採用されて、MS-20の型式番号とハイザックと命名されるMSの誕生秘話でした。

ちなみに、お値段はといいますと、MS-17Rガルバルディβの約6割の調達コストで納まりました。1機あたりの値段は9000万$ぐらいですかね? まあ、その分性能も
値段相応で、そこそこの性能なんですけども。史実のハイザックと違ってビームライフルとビームサーベルを両方装備できるのが、まだマシな点ですかね。

でも、やっぱりといいますか、中途半端な仕上がりになったのは否めません。まあ、ローエンド機ですから価格重視なので、こればかりは仕方ないのかも知れませんね。
このハイザックの登場によって、MS-06F2とザクⅡ改ことMS-06FZは第一線を退くこととなりました。一部の機体をモスボールに残して、あとの機体は民間の作業用MSと
かの為に払下げられました。

ハイザックがローエンド機といっても、ガルバルディαと同程度か少し上の性能は一応あるんですよ? オマケに値段はガルバルディαよりも、1000万$も安いのです!
ガルバルディβが150M$で、ガルバルディαが100M$で、ハイザックが90M$ですね。

私の前世での戦闘機の値段と、あまり変わらない気がしないでもありませんね。これも技術の進歩による効率化ってヤツなんでしょうか? 気にしたら負けですよ?


ハイザックは史実では連邦軍とティターンズで採用されましたけど、この世界ではジオン公国の象徴として生き残ることができました。連邦には1機も売れませんでした。
まあ、ジオンが存在しているんだから当たり前なのかも知れませんけど。代わりに、月とサイド6向けに製造販売してます。それと、コロニー再生計画で順次修復されて
いく各サイドのコロニーにも、政治状況によっては売れるかも知れませんね。

連邦とティターンズは、ハイザックの代わりに何を調達するのでしょうかね? まさか、ジムカスタムとジムⅡだけってことは無いでしょうし、まあ、その辺は諜報部が
調べてくれることを期待しましょうか。

アナハイムは連邦向けのローエンド機として、中身はハイザックとほぼ同じ仕様で外見がジムの機体を売り込みたいみたいですけど、これは、もし売れたらジムⅡ改とか
って名前になるんでしょうかね?

このコロニー再生計画にジオンも一枚噛んでいるのです。不平等に締結されたリーア軍縮条約の見返りの一部としてですけども。まあ、ジオンの国力からいったら際限なき
軍備拡張なんて愚の骨頂ですから、軍縮は願ったりかなったりの状況で渡りに船だったんですが。

コロニーの破壊と再生。なんだか、ジオンのマッチポンプの気がしないでもありませんが・・・

それで、このコロニー再生計画と、ジオン軍のMSの更新。それと、アナハイムからの連邦と月やサイド6向けのMSの生産が堅調で、我がジオン公国は戦後の不況が
大不況とか大恐慌にならずに小不況程度で、どうにかこうにか乗り切ってこられてるのです。このまま順調に行けば、なんとか軟着陸できそうですね。

国家主導の統制経済さまさまです。これが、神の見えざる手による自由市場原理だけでしたら、目を覆いたくなる惨状が待っていたことでしょう。国家による市場への
介入は万歳なのであります! ケインズは良い政策を提唱しましたね。平時でしたら、アダム・スミスでも良いのでしょうけれども。


それはさておき、

ガルバルディβが売れました! 連邦はルナツーの宇宙軍から220機の受注です。月とサイド6からも、それぞれ160機づつを受注しました。ジムカスタムとの模擬戦という
のか、実戦での性能を目の当たりにして評価がうなぎ上りしたみたいですね。これは、私のおかげでもありますよね? えへん! しかし、これは嬉しい誤算でしたね。

メラニー会長も、


「マリア様のおかげで、予定の三倍以上も売れました!」


とかいって喜んでましたし。

いまごろ連邦の地球至上主義者たちは、きっと歯噛みをするか地団太を踏んで悔しがっていることでしょう。

月とサイド6は、ガルバルディβとハイザックのハイローじゃなくて、ミドルローミックスで部隊編成をするみたいです。MSの教官としてジオンのベテランパイロットは
引っ張りだこなのです。とりあえず、出向という形式で月とサイド6においてMSの指導をさせていますけど、極少数の地元出身者で希望する者は、そのまま月とサイド6の
防衛隊に移籍する許可は出したみたいです。友好協力の関係を維持するのは大事ですもんね。お得意さまですし。

ジオン公国は、ローエンド機にハイザックとガルバルディα、ミドルエンド機にガルバルディβ、ハイエンド機には、開発の始まったガーベラ・テトラ(仮)や
リックディアス(仮)を持ってくる予定です。

つい最近になって、ルナチタリウム? ガンダリウム・ガンマと名付けられた新合金の開発に成功して、実用化のメドが立ったガンダリウム・ガンマを使用したMSの
設計が開始されているのです。その他にも、可変式のMSをアナハイムと共同で開発する予定でいます。まあ、ほぼ全部のMSが共同開発なんですけどね。
アナハイムの資金力は凄まじいです!

これからのMS開発は、ジオンと連邦とアナハイムの技術の融合でMSの性能の良し悪しが決定する時代になりそうですね。

まあ、MSはまだ過渡期といいますか、黎明期を脱してないので数年で陳腐化するんですけどね。これを知っているのは私と極一部の技術者だけでしょうか?
ジオン公国の経済財政の為にも、どんどんMSをお買い上げしていただきたいものです! うん、私って間違いなく死の商人だわ・・・


それで地球至上主義者たちですが、私の暗殺未遂の責任を追及されて、コリニーだかコノリーだかの将軍が更迭されてしまいました。地球連邦政府は一部軍人の暴走と
公式に謝罪して、この一件は一応の解決をみたのです。まあ、トカゲの尻尾切りでなあなあなんですけどね。大将が更迭だから、私たちジオンもこれ以上の文句は言い
づらいですし、上手いこと逃げられてしまいました。

コリニーの代わりに台頭してきたのが、ご存知、ジャミトフ・ハイマン。彼は連邦軍の内部にアースノイドから選抜されたエリート部隊、ティターンズを結成して
地球至上主義者たちの不満の受け皿としたようです。

言うなれば軍隊の中に、もう一つ軍隊が出来上がったわけです。なんだか、私の暗殺未遂から派生して物事が大袈裟になってしまった感じがしますね。
まあ、元々ティターンズが出現する下地はあったのですから、私の所為だとは思いませんけど。



「それはそうと、姫様はフォン・ブラウンの一件でサイド3周辺宙域以外でモビルスーツに乗るのを禁止されてましたな」

「うぐっ! い、いいもん! テストでブン乗り回してやるから!」


ギレンパパも私が襲われたからって、なにも私がMSに乗るのを禁止しなくてもいいのに! これでは、機動戦士ガンダム~魔女戦記が続かないじゃないですか!
って、メタでしたね。ギレンの理不尽さに思わず愚痴が零れてしまったようです。オホホホ。

まあ、私がジオン公国の未来の女公王だから心配なのは分かりますけど。それにしても親バカといいますか、少し過保護すぎる気がするんですけども。
あ~、私の代わりにグレミーが公王になってくれないかなぁ。ダメですかね? ダメなんだろうなぁ。トホホ・・・


『きみの生まれの不幸を呪うがよい!』


なんて、シャアの高笑いが聞こえてきそうですよ。まったく・・・ 今度、ララァさんに聞いてみましょうかね?




[41069] 2-8
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/04/29 11:21


UC 0084.01


お爺ちゃんが亡くなりました。お爺ちゃんといってもデギン公王ですから、私的には、あまりお爺ちゃんって感じに思えなくて、ピンとこないんですけどね。
まあ、生まれてから13年近くも本当の父親だと思っていた、セシリア、お姉ちゃんの方の祖父は、もっとお爺ちゃんって思えないんだけどさ。いまも、二人のことは
「お父さん、お母さん」って呼んでますしね。

デギン公王は顔が土色でしたから、絶対に肝硬変か何かが死亡原因っぽいですよね。

それで、国葬です。ジオン公国の初代公王ですから、国葬は当たり前ですよね。私も目薬を差して一応は涙を流す振りをしました。私は薄情な人間なのかも知れません。
多少は悲しくは思いましたけど、涙は出なかったのですから。

これが、私が生まれた時からデキン公王がお爺ちゃんと分かっていれば、また違ったのかも知れませんが。うん、きっとそうです。ということで、大人たちが悪いと
いうことで、よって私が涙を流せないのは前言を翻して、私は薄情な人間ではない。という方程式が成立するのであります。

これにて自己弁護は終了。

デギン公王の崩御により、即日ギレンが二代目の公王に即位しました。これによってジオン公国総帥の席は空席となり、そのまま総帥のポストは事実上の廃止となりました。
これで議会制民主主義に一歩も二歩も近づきましたね。

私はといいますと、継承順位が一位に繰り上がってギレンの後継者としての地位を半ば無理矢理に確立させられています。誰か公室典範を男子優先に書き換えて下さい。
なんか、お付きの侍女やら護衛やらが併せて十人以上いるんですよ。私はシーマさん以外はいらないって言ったのに、そういう訳にはいかないみたいで押し切られました。

私が動くと、みんなもゾロゾロと付いてくるんです! これは、なんていう羞恥プレイですかね? カルガモの親子? いえ、金魚のフンが正解かも知れません。
でも、我がままを言うわけにもいかないので仕方がないと諦めて受け入れましたけど、元が小市民であった記憶が残っている私には少しばかりキツイものがあります。
しかしこれも、そのうち慣れて気にならなくなるのかも知れませんけれども・・・


それで話は変わりますけど、現在、私のお腹の中には新しい生命が宿ってます。赤ちゃんが生まれてくるのは、5月の終わり頃の予定です。
フォン・ブラウンでの一件で、サイド3以外でのMSの操縦を禁止されてしまった私は、独立戦争以来ずっと習慣で飲み続けていたピルを飲むのを止めてしまったのです。

そしたら数か月後には、ものの見事にビンゴというわけでありまして。まあ、やることをやっていれば、そのうちデキちゃってもおかしくはない年齢ですしね。
幸いにも悪阻はまったくと言っていいほど、ありませんでしたので助かりました。悪阻が酷くてゲエゲエするかもと心配していたのが杞憂に終わって良かったです!

私の妊娠を知った時の、お姉ちゃんの反応が、


「さ、33歳で、おばあちゃんに成るなんて・・・」


そういって、その場で崩れ落ちてしまいました。

しかし、私も今年で17歳になります。現に、お姉ちゃんは私の歳には既に私を産んでいるのですから、お姉ちゃんに文句を言われる筋合いはない気がしますし。
まあ、お姉ちゃんの気持ちも分からなくはありませんが。でも、言ってやりました!


「お姉ちゃんが私を産んだ歳よりも、私は一年遅いじゃないのよ」

「それはそれ! これはこれなのよ!」


お姉ちゃんの中で、なにか譲れない一線があるみたいですね。仕方がないので私は、まだ大きくなってもないお腹を擦りながら、お姉ちゃんに提案してみました。


「だったら、この子が生まれてきても、おばあちゃんって呼ばせなければいいんじゃないの? 例えば、あーちゃんとか呼ばせればさ?」

「あーちゃん? ふむふむ、なるほど・・・ それいいわね! あーちゃんかぁ」


うん、お姉ちゃんって思ってたよりも結構単純だったのね。

それで、私をこんな腹ボテにした張本人のアムロはといいますと、ダルシア・バハロ首相の養子になって、アムロ・レイ・バハロ・ザビって長ったらしい名前になっちゃい
ました。連邦出身でも、ア・バオア・クー防衛戦で連邦のMSを21機も撃墜していますし、ガルバルディ以降に開発されたジオンの全MSに搭載しているコンピューターの
プログラムを組む中心にいるのがアムロですから、私との結婚を表だって反対する人はいませんでした。

そう、私の妊娠が発覚して、お腹が大きくなって目立つ前にと昨年の12月に入籍を済ませちゃいました。結果的にデギン公王には曾孫を見せることはできなかったけど、
ウエディングドレス姿は見せることができたのですから、一応は最後に、おじいちゃん孝行できたのかな?

アムロがダルシア首相の養子になった件は、私と結婚するにあたって家柄が~とか政治的配慮やら国内の安定の為とか、諸々な大人の事情とやらがあったのですけど、
これで、アムロは私と結婚できて万歳! ダルシア首相も養子とはいえ、将来の女公王の伴侶が息子で万歳!

まあ、結果的には丸く納まったといえるのではないでしょうかね?

アムロがギレンパパに、


「アムロくん、一発だけ殴らせてはくれんかね?」

「お、お義父さん・・・」

「君にお義父さん呼ばわりされる覚えはない!」


ボゴッ!


「殴ったね! 親父にもぶたれたことないのに!」

「殴られもせずに一人前になったヤツがどこにいるものか。まあ、それはさておき、そのなんだ・・・ アムロくん、マリアを幸せにしてやってくれ・・・」

「は、はいっ! 僕は男ですから必ずや!」


などのコントを繰り広げたこと以外はですけれども。


それで件のアムロくんは、妊娠したことによってサイド3周辺宙域ですらMSに乗ることを禁じられてしまった私の代わりに、ジオニックとアナハイムが共同で開発した
新型MSのテストをしています。

装甲材にガンダリウム・ガンマを使用し、新機軸のムーバブルフレームや全天周囲モニターとリニアシート等を試験的に採用した、この新型のMSは、
MS-18Eケンプファーの後継機にあたる強襲用のMSなのです。

その名は、MS-21ガーベラ・テトラ。 ドラッツェなんてなかった!

アムロが乗っていたRX-78-2ガンダムと、ソロモンで鹵獲したG-3ガンダムのコンセプトも多少は設計思想に取り入れられています。
ですから、強襲用なのに汎用機を目指すなどという、少し無茶なことを追及した結果、1号機のガーベラ・モノは出力不足、2号機のガーベラ・ジは強度不足。
3号機のガーベラ・トリは強度を上げる為に重量が増えて推力が不足し、機動性と運動性能の低下と散々な結果に終わったのです。

そして、それらの失敗を糧にして完成したのが、4号機のガーベラ・テトラなのです!

しかし、ギリシャ数字の1~3までの言い方ってダサイと思うのは私だけですかね? モノ、ジ、トリじゃなくて、アルファ、ベータ、ガンマの方が格好良いですよね?

そんなガーベラ・テトラのスペックはといいますと、


MS-21、ガーベラ・テトラ

ジェネレーター出力 1730kw 推力 216,000kg シュツルム・ブースター装着時 316,000kg

武装は、X-04ビームマシンガン、腕部110mm機関砲×4、または機関砲×2と大型シールド、ビームサーベル

増設プロペラントタンクは2基装備


カタログスペックだけ見てたら、百式やZガンダムとかと同等の性能か下手したら、それよりも高スペックな気がするんですが・・・ 気のせいですかね?
オプションで左腕が機関砲かシールドを選べるのが良いですね! 私でしたらシールド一択ですけど。安心安全は買ってでも最大限取るのがモットーですから!

強襲用のMSですから、戦場までシュツルム・ブースターを装着して戦場に急行して到着したら、ブースターをパージして戦闘をするのを想定した設計みたいですね。
私でしたら、推進剤が残っていたらパージしないで戦闘しちゃうかも知れませんけど。戦闘毎に100万$やら200万$を使い捨てだなんて、もったいないですもんね。

そして、このガーベラ・テトラをテストで操縦したアムロの感想が、


「操作性がピーキーすぎて、ごく一部のエースパイロットにしか、まともに扱えない機体だよ」


とのテスト結果の報告でした。

まあ、ワンオフ機とまではいいませんけど、エースパイロット向けの少数生産にしかならないのは確かでしょうね。お値段は、1機で13億$もするみたいですし。
ハイザックが14機も買えちゃいますよ! でも、それに見合うだけの価値があるのも事実なんですよね。あくまでも、エースパイロットが操縦したらですが。

ハイザック14機に囲まれたらエースパイロットでもフルボッコにされそうですけども、それはそれってことで。試作機だから1機あたりの値段が高いですけど、
10機20機と生産したら多少なりとも値段が下がることを期待しましょう。

こんなにも高価で扱いづらい機体ですけど、既に改良型の開発も始まっているとのことでした。ガーベラ・テトラ改ですか? こっちが真打ちみたいですね!

しかし、両肩の大型バーニアといいますか大型スラスターは意味あるんですかね? 横向きですよ? 瞬時に真横に移動できるのは分かりますけど、あれは回転して
後ろとかに向かせれるのでしょうかね? 下には向くので、機体を寝かした格好での高速移動用ですかね?
でも、そしたら今度はシュツルム・ブースターが上を向いてしまいますしね。

うーん・・・ 疑問ですね。




[41069] 2-9
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/05/17 06:13

UC 0084.05.30


「オギャー!」


赤ちゃんが生まれました! ちょっと栗毛っぽい金髪碧眼の元気な女の子です。想像していたよりも出産の痛みはそれほどでもなくて、少し拍子抜けした感じでしたけど、
無事に安産だったので良しとしましょうかね。名前はどうしましょうか? ヴィクトリアとか女王っぽくって良さげですよね?


「うん、あなたの名前はヴィクトリアよ! 将来は立派な女公王になってね! アムロもヴィクトリアでいいでしょ?」

「旧世紀の大英帝国の女王様から名前を付けたのかい?」

「そうよ。太陽の沈まない国にあやかって、この子とジオンの繁栄を願っての名前よ」

「僕はリリーナとか考えていたんだけどなぁ」


さすがはアムロ、ニュータイプですね。時空と次元を飛び越えて、その名前に辿り着きましたか。確かに私がリリーナに似ていますしね。だがしかし、


「リリーナも良い名前だとは思うんだけどさぁ・・・」

「だけど?」

「将来この子がお尻を出してブリブリなんとかって言って、それをシーマさんに怒られる未来しか想像ができないのよねぇ・・・」

「それはニュータイプの予感ってこと?」

「もうアムロってば、私はニュータイプじゃないわよ。でもこれは、母親の勘ね」


この子の名前をリリーナにしたら、なぜだか必ずや、そうなりそうな予感がするのです! この胸騒ぎは何故なんでしょうかね? ですから、リリーナは却下します。


「母親の勘かぁ。母親にしか分からない何かなんて、科学でも解明出来ないだろうね」


そういえば、お姉ちゃんも母親の勘とか言って私を戦場に送り出したしね。私なら、この子が戦場に出たいだなんて言ったら全力で反対するけどなぁ。

うーん・・・ そう考えるとお姉ちゃんは鬼ですね。もう既に、お姉ちゃんじゃなくて、おばあちゃんですけどね! ですから鬼ババァですかね? プププッ。

いまなら、ほんの少しだけ前世での無防備平和主義の人達の言い分も、本当に小匙一杯分、いいえ、耳かきの分くらいは理解できる気もしますね。
世界中のみんなが赤ちゃんを産んだ母親の心を持っていたなら、戦争なんて起こらない気がするんですけれども、所詮それは理想論でしかないのかも知れませんね。


あ、胸は妊娠と出産でFカップまで膨らみました! まさしく乳女、ホルスタインですね。余裕で挟めるサイズまで成長してしまいましたよ。
挟めるのは嬉しいんですけど、大きすぎるのもそれはそれで問題がありまして、少し憂鬱な気分になりますね。垂れないように気を付けねば・・・

幸いにも私にはお付きの侍女が多数いますので、私の美容と健康の管理はしっかりとやってもらいましょうか。それも侍女の仕事の一部のはずですから。私が望まなくても
私の人生のレールは女公王へと繋がっているので、侍女さんたちには頑張っていただきましょう!

私は生まれてきた我が子に母乳を与えつつも、そんな益体もない事を考えているのでした。

え? 乳母は付かないのかって? 自分が産んだ赤ん坊にお乳を与えるのは母親の役目、特権ですよ! 赤ちゃんにお乳を飲ませなかったら誰に飲ませるんですか?
飲ます相手なんて赤ちゃん以外に誰がいるんですか? アムロは赤ちゃんじゃありませんし。 そういうことで、乳母の話は丁重にお断りしました。

まあ、アムロにも飲ませてあげるんですけどね!



それで話は変わりますけど、今月初めに月の裏側にある中都市エアーズでメーデーのデモ行進から、地球連邦支持者と反連邦支持者の諍いが発生しました。
この諍いは、たちまち騒乱へ暴動へと規模を拡大して手に負えなくなった両支持者たちが、エアーズ駐屯の地球連邦軍と月自治都市連合のエアーズ防衛隊にそれぞれが
助勢を求めたから、武力衝突に発展するに至ったわけです。

この多数の死者を出した武力衝突は月と地球の間に大きなしこりを残しました。なんだか戦前のジオン公国の姿とダブって見ているようで眩暈がしてきました。
一触即発といいますか、一気にきな臭くなってきましたね。まあ、もう既に暴発しているともいいますが。

ルナリアンなのに地球至上主義者とかいるんですね? この騒動で初めて知りました。まあ、年寄りの中には地球出身者もいるのかも知れませんけれども、基本的には
地球に帰還したくても帰還が許されない、地球から見捨てられた人たちがエアーズ市民なんですよね。それなのに親連邦なんて、アホなのかバカなのかと・・・

望郷の念が親連邦と地球至上主義に走る要因であるとは思いますが、それでも、その地に根を下ろして前向きに生きようとしている人たちの足を引っ張っているのも、
懐古主義の老人たちの気がしますね。そんな老人たちの妄想に振り回され死んでいった若者たちが可哀想です。

ジンバ・ラルもそうでしたし、恐らくデギン公王もそうでした。人は年を取ると判断力が鈍くなるのでしょうかね?

私は人生の先輩たちと同じ愚を犯さないように肝に銘じなければいけません。人の振り見て我が振り直せであります。これがまた、言うは易く行うは難しではあります
けれども、晩節を汚すことなく、あまり人様に迷惑を掛けずに穏やかに死んでいきたいものですね。


ちなみに、このエアーズ市での武力衝突には当然ですが伏線がありまして、その伏線とは、地球連邦政府から先月に発表された公式な声明です。
コロニー再生計画が完了し各サイドの再編が終わったら、ジオン公国を除く地球圏の現状をジオン独立戦争前の状態に戻すという内容のモノでありました。

つまり、これはジオンの自治都市となったグラナダを除く月都市とサイド6に中立を放棄させて、地球連邦政府の枠組みの中に戻るようにフォン・ブラウンとサイド6に
対して恫喝したも同然の行為なのです。

地球連邦政府は公式には敗北を認めてませんけど、既に独立戦争が実質的にジオン公国の勝利で終結した時点で、フォン・ブラウンとサイド6は連邦から離脱したまま
中立の継続が終戦条約の文言に含まれていますので、独立した国家として多額の予算をつぎ込んで独自に防衛部隊の整備にも心血を注いでいるのです。

そのおかげで、アナハイム・ジオニック連合の筆頭株主である我がジオン公国はウハウハなんですけどね! それはさておき、この連邦政府の突然の発表は当然ですけど
月とサイド6からは猛反発を喰らいました。

ジオン独立戦争後の地球圏は緊張感に包まれながらも、戦争が終わった後の一種の平和状態を保持していました。が、ここにきて地球に住む人と宇宙に住む人たちの間で、
お互いを敵視しあう状況に変化してきましたね。地球至上主義者たちがティターンズを結成したのを受けて、宇宙に住む人々は反地球連邦組織のエゥーゴを立ち上げて、
ティターンズに対抗し始めたのです。

Anti Earth Union Groupとかの略称がエゥーゴなんですけど、この世界では月とサイド6は独立国扱いなので、Anti Earth United nation Allianceとかが正解だと思います
ので、正確にはエゥーゴじゃなくてエゥーナの気がしないでもありませんけど、なぜだかエゥーゴと呼ばれています。

これは穿ったみかたをするならば、月とサイド6の政府は表だって地球連邦と喧嘩はしませんよ。という事なんでしょうかね? まあ、再建途上の他のサイドの人たちも
参加していますし、彼らは建前上は一応まだ連邦所属ですから便宜上はグループと呼んだ方が都合が良いのかも知れませんね。

それで、その再建途上の各サイドは地球連邦政府の管理監視下にありますので、各コロニーの防衛は当然ですが連邦軍が担っているわけであります。ですから、各サイド
コロニーは独自の防衛戦力を保持できないのです。よって我がジオンとアナハイムは残念ながら、現状ではMSを売りたくても売れない状況なのです。

しかし、これも蛇の道は蛇といいますか、裏では各サイドの反地球連邦の有力者と月とサイド6やアナハイム・エレクトロニクス延いてはジオン公国と繋がっているのです。
いざ、宇宙VS地球の戦争が勃発した場合には、即座に反連邦のサイドコロニーにMSを供給する準備は整っているのです。
まず最初はモスボールしてある旧式のMSを格安で提供して、それで当座を凌いでもらわなければなりません。
戦争が発生するまでは、高額なMSの在庫を大量に抱え込むわけにもいきませんので、それは仕方がありませんよね?

地球連邦から独立する代価として各サイドにも汗と血と涙、それとMSの代金をジオンに払っていただきましょう! ハイザックは安くてお買い得ですよ?

血を流さずに独立を達成した国など古今東西で存在しないのですから。我がジオン公国も大量の血を流して独立を勝ち取ったのです。
汗を掻くのも血を流すのも嫌なら未来永劫、地球連邦から搾取される植民地コロニーのままでいなさいということなのです。

まあ、連邦も折角再建したばかりの各コロニーの独立なんて認めるはずがないとは思いますけど。

エゥーゴとティターンズの対立の構図がはっきりとしてきましたけど、我がジオン公国は基本的には、この争いごとにはノータッチです。表面上はですがね。
ただ単に、エゥーゴから注文を受けたMSを粛々と生産して売るだけですから。

もちろん連邦軍からの注文も受け付けていますよ? 注文はこなさそうですけど・・・


「うーん・・・ こうやって考えてみるとジオンって完全に悪役の気がしないでもない」

「悪役? ジオンが?」

「うん、宇宙と地球のいざこざの裏で暗躍して、モビルスーツを売り捌く段取りをしているでしょ?」

「ああ、先の戦争で軍需産業が肥大化しちゃったからね。まさしくジオニックやアナハイムは死の商人だからね」


あー、やっぱりアムロも死の商人って思っていたんだ。その死の商人の親玉の娘が私なんですけどね!


「この子が大きくなる頃には地球圏から争いごとがなくなっていると良いのだけど」


私はヴィクトリアをあやしながら、我が子の将来を案じるのでした。死の商人をしつつ、かたや身内とジオン公国には火の粉が降り掛からないように、と。
でもこれって、相反する大いなる矛盾なんですよね・・・


「大規模な戦争は分からないけど、小さな紛争はなくならない気がするなぁ」

「それはニュータイプの勘ってヤツかな?」

「そんな大層なモノじゃないよ。ただ、人間は戦い続けて歴史を作ってきた。それがなければ人間は滅んでいたと思うよ」


おー、ここで私が好きな名言がきますか!
連邦からジオンに所属が変わっても、それまでにアムロが受けてきた教育や戦争を通して培った価値観は不変ということですね。

世界が変わってもアムロはアムロってことなんだね。 なんだか安心しちゃいました!




[41069] 2-10
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/05/17 06:14


UC 0084.07


「こ、これは!?」

「いかがでしょうか? このガーベラ・テトラの改良型は、なかなか良い仕上がりだと自負しておりますが、姫様はどう思われますか?」

「エイリアンみたいなフォルムですね・・・」


いまにも『シャキーッ!』とか『キャシィーッ!』とか言って襲い掛かってきそうな姿をしていますね。


「エ、エイリアンですか? それは地球圏外の知的生命体、いわゆる宇宙人という意味でのエイリアンですか?」


あ~・・・ そうでしたね。そういえば、エイリアンといっても私以外には通用しないんでしたね。

現在、私はエリオット・レム技術大佐と一緒に、MS-21E-1、ガーベラ・テトラ改の試作機を検分しています。私が以前にムーバブルフレームの有効利用をレム主任と一緒に
提案して、その試作機が完成したのです。それで、このガーベラ・テトラ改を初めて生で見た感想が、エイリアンに見えてしまったのです。


「ええ、もし宇宙人が存在するならば、こんな姿形をしているのかなって想像してましたので」

「そうでしたか、私は地球の海に生息するイカとかタコとかをイメージしていました」

「アハハ、旧世紀の人たちがイメージした宇宙人ってそんな感じでしたよね」


それはそれで、ずいぶんステレオタイプなイメージだとは思いますけれども、私が想像したエイリアンも昆虫みたいなモノですから五十歩百歩でしょうか?


「それで、ムーバブルフレームでの新機軸としての可変機構はどうなっているんですか?」

「はい、少々お待ち下さい。おーい、ちょっと変形させてみてくれー!」


レム主任がガーベラ・テトラ改の整備士に声を掛けると、ほどなくして、


ガコッ、ガコンッ!


「こ、これは!?」


なんということでしょうか、コクピットがある洋式トイレの便器みたいな部分が滑るようにスライドして、腰の部分の後ろ側に隠れてしまいました!
動力系統が集中している中央の基幹部分がスライドしても大丈夫なんでしょうかね? 不思議な技術ですね。

そして、両脚は腰の付け根の部分から90°折れ曲がってというか回転して真後ろ方向に垂直に伸びています。


「顔といいますか、頭は隠れないんですか?」

「はい、今回の可変機構は、あくまでもガーベラ・テトラからの改良ですので、そこまでは手が回りませんでした」

「まあ、それでもこれはガーベラ・テトラの改良型じゃなくて、既に別のナニかの気がしないでもないですけども・・・」


我がジオンの技術力は地球圏で一番であるとは自負していますが、それにしても、どうしてこうなった?
頭が引っ込んで隠れないとは。これではMAじゃなくて出来損ないのMSもどきではありませんか!

解せん・・・


「レム技術大佐、一言言わせてもらいますけど」

「なんでしょうか?」

「ハッキリ言ってダサイしキモイです! こんな出来損ないに乗せられるパイロットが不憫ですよ!」


私ならば、こんなポンコツには乗りたくはありません。格好が悪すぎます! そう、まるでスフィンクスの失敗作みたいな姿に見えるのです。やっぱり見た目って
大事ですもんね。まあ、MS状態では姿形も性能も十分に及第点以上ではあるのですが。


「た、確かに見てくれが良いとは言えませんが、しかし性能は十二分に発揮出来ます」

「それはそうかも知れないですけれども、といいますか、これで欠陥機だったら目も当てられないじゃないのよ」

「まだ可変式モビルスーツの技術は手探りの状況ですので、これからはもっと洗練されて行くでしょう」

「そう願いたいわね。最初から可変式で設計したなら、もう少しマシな機体が出来上がるはずですしね」


このガーベラ・テトラ改は、可変モビルスーツの先駆けとして犠牲になったと思っておきましょうかね。この子のノウハウがあって初めて、Zガンダムもメタスもバウも
洗練されて誕生するのですから。

といいますか、エゥーゴとアナハイムはZガンダムを作る予定はあるのかな? 先の戦争ではガンダムが活躍できなかったから、ガンダム神話が生まれなかったんだよね。
まあ、主に私の所為なんですが。ですから、ジオンも生き残っていますし、ガンダム=正義の象徴でもなんでもないんですよね。殺られ役の中ボス程度でしたしね。

アナハイムもジオン系列の会社になっていますし、私が口を挟んでZガンダムを作れって言わなければ、Zガンダムではないナニか別の可変モビルスーツが誕生しちゃい
そうな気がしないでもないですよね。

でも、ジオン系のMSは曲線が多くて、直線が多様されているZガンダムがアナハイムで生まれる余地は限りなくゼロに近い気がしますね。
はてさて、どうしたら良いのやら・・・ けど、アナハイムで作った連邦向けのガルバルディβは直線的なフォルムだったから、意外と案ずるより産むが易しなのかも
知れませんけれども。


「はい。あくまでもこれはMS-21の改良型ですので、新規で設計する可変モビルスーツは、こんな事にはならないでしょう」


連邦でも可変モビルスーツの開発をしているみたいって噂が入ってきているから、我がジオンとアナハイムも負けていられませんよね。アッシマーなんて、なんであんなに
綺麗な楕円形で完成できたのか教えて欲しいくらいですよ。


「それで現状でも、この可変機構はメリットがあるんですか?」

「一割程度は機動力が増しますが、運動性は三割ダウンしますね」

「運動性は戦闘になったらモビルスーツ形態に戻せばいいのですから、モビルアーマー形態での運動性の低下には目を瞑りますけど、直進力が一割かぁ」

「まだ試作段階ですので・・・」

「まあそうでしたね。でも、せめて二割増しの二割ダウンか、三割増しの三割ダウンぐらいには持って行きたいわね」

「データを取って順次デバッグして行けば、次のモビルスーツでは可能かと」


可変モビルスーツのメリットは、MA形態での機動力これに尽きると思います。一撃離脱も出来ますし、推進力を活かして他のMSが届かない場所から戦場に飛んできて
強襲したりも出来ます。ガーベラ・テトラのシュツルム・ブースターのMA版といった感じですかね?


「このガーベラ・テトラ改は、とりあえず5機作る予定でしたよね?」

「はい。2号機も既に完成間近であります」

「それでは3号機以降の可変機構はキャンセルした方が良さそうですね」

「通常のモビルスーツとして完成させるのですか?」

「データ取りには2機で十分でしょ? 可変機構を排除したガーベラ・テトラ改の完成系も見てみたいですし、コストの削減にもなりますしね」


そう、可変機構の実験で試作機としてだけで5機も作るのは、もったいない気がするのです。せっかく元のガーベラ・テトラが良いMSに仕上がったのですから、純粋に
その発展型のガーベラ・テトラ改を作ってもいいじゃないですか! マッドな技術者たちだけに任せていたなら、斜め上のMSしか完成しない気がしますしね。


「姫様がそう仰るのであれば否はありません」


現場が欲しているのは、技術の粋を集めた繊細な芸術品ではなくて、整備がしやすく実用性が高い機体なのですから。この技術者と現場の兵士との齟齬は永遠に埋まらない
のかも知れませんが、それでも少しでも溝は埋めておかないと、思わぬ時に足元を掬われる事になりかねませんし。


「浮いた予算は裏金としてプールしておけば、なにかの時に役に立つでしょうし」

「よろしいのですか? 私たちの手が後ろに回るという事にはならないでしょうか?」

「ふふ、その心配は杞憂ですよ。ジオニックもアナハイムもジオン公国の身内ですから、監査が入ってもシャンシャンなあなあで終わりです」


そう、お金もジオンの国内だけで回っているのならば、結局のところは差し引きゼロで損失は出ないのです。これが内需依存経済の最大のメリットなのであります。
まあ、お金が外部に流出しているのなら、それはまた別の話になりますけど。

輸出によって外貨を稼ぐのは、オマケとまではいいませんけども、ジオン経済のパーセンテージで計れば二割にも満たないのです。これが戦後不況が大不況になって
いないカラクリの要因の一つなのです。

外需は不確定要素が多すぎますので、外需依存は怖いですよね。 内需万歳なのであります!


「それに、万が一文句を言ってきたとしても、その時は『姫様の命令でやった』これで監査も何も言えませんよ」

「は、はぁ・・・」


なんだかレム主任は引き攣った笑みを浮かべていますけど、だがしかし、次期女公王の肩書きは伊達ではないのです!


『私には不可能という文字はないと自惚れたい』


いまなら、ギレンパパが言ったこの言葉も私にも理解できる気がしますね。
それに、このぐらいの役得がなければ公女だなんてやってられませんことですよ。オホホホホ。


「それで、ガーベラ・テトラの時から思っていたんだけどさ」

「なんでしょうか?」

「あのオチンチンみたいな所からは、メガ粒子砲を撃てるようにはならないのかな?」

「オ、オチ・・・ ゴホン。あの先端部分は姿勢制御バーニアですので現状では不可能ですが、そのアイデアは面白いですな」

「発射させるキーワードに『俺のマグナムが火を噴くぜ!』とか言わないと、撃てないようにすると良い雰囲気が出そうですよね!」


自分で言っといてなんですけど、今度ベッドの上でアムロにも言ってもらいましょうかしら? 笑っちゃいそうでエッチに集中できなさそうな気もしますが。
きっと今の私の顔はニヤニヤとほくそ笑んでいて、キモイ笑みを浮かべているんでしょうね。


「えーと・・・ それはノーコメントということで・・・」


うん? なんでレム主任は青い顔をして後退っているんでしょうかね? ちょっと下品な言い方で引いてしまいましたかね? 侍女と護衛の人たちも引いてますね。
護衛は私から離れたら護衛の役目を果たせない気がするんですけど、そこんトコどうなんでしょうかね?

といいますか、なにやら私も悪寒と背筋に冷たいモノが走っているんですが・・・
私は恐る恐るギギギッと油の切れた機械仕掛けの人形のように、ゆっくりと首だけ後ろに振り向かせてみた。そこには案の定、


「ふーん、へー、ほー。 アムロくんは、そんなことを言ってヴィッキーを仕込んだの?」

「ち、違いますよ。お義母さん、あれはいつものマリアの妄想ですよ・・・」

「げぇ! お姉ちゃんとアムロ来てたの!?」


なんということでしょうか、私のオチンチン発言を二人にも聞かれていたとは。


「なによ、まるで来てはダメなようなその言い方は」

「僕はプログラムの責任者として見に来たんだよ」

「マリア、あなたも母親になった事だし、ジオン公国の次期女公王なんだから少しは自分の発言に責任を持ちなさい!」

「あうあう、ぜ、善処します・・・」


この私のくだらない冗談がアイデアとなって、近い将来にドーベンウルフとかサザビーに応用されるのは、この時点の私にはまだ知り得ないことなのでした。




[41069] 2-11
Name: グレミーの叔母◆3914a4c0 ID:56fdadce
Date: 2015/05/19 19:16


UC 0084.07.31


「は? シーマさん、もう一度お願いします」


私が公王府の私室でヴィクトリアにお乳を与えているところに、シーマさんが慌てて駆け込んで来たので、何事かと尋ねたのですけど、その答えをイマイチ理解できずに
再度シーマさんに尋ね直しているところなのです。


「だから反地球連邦のデモを行っていたサイド2の18バンチが、ティターンズの毒ガス攻撃で壊滅したんだよ!」


サイド1の30バンチじゃなくて、サイド2の18バンチだなんて、なんでだ? それに記憶は既に曖昧だけれども、確か30バンチ事件は一年後のUC85年だったはずです。
もっとも、既に歴史は変わっているのだから、史実通りに事が運ぶわけではないのかも知れませんけど。

それにしてもティターンズが、わざわざ毒ガスを使うのも納得できないモノを感じますね。他のコロニーへの恫喝を含んでいるのかな?
毒ガスなんて使ったら、その後に宇宙の人々が態度を硬化させるだけの愚策でしかないと、ジャミトフは理解していないのか? いや、これは恐らくタカ派で知られている
バスクの独断専行の可能性の方が高そうですね。しかし、


「早い、早すぎる」

「なにが早いんだい? ティターンズの攻撃がかい?」

「はい、ティターンズが暴走するのが、私の予想よりも一年近く早いということです」

「先手必勝ってヤツなんだろうよ。戦場では相手は待っちゃくれないしねぇ」


先手必勝で勝手に毒ガスを使われて死ぬだなんて、18バンチの住民には迷惑な話ですよね。親連邦の人もいたでしょうし、当然ですけど無辜な人々が大多数なのですから。
まあ、独立戦争で多数のコロニーを散々潰した、我々ジオンの人間が言えた義理ではないのかも知れませんが、それでもティターンズの蛮行は許せない行為だと思います。


「苦しまずに死ねたのならまだマシかもしれないが、毒ガスの種類によっては苦しんで死んでいったのかも知れんし、やりきれないねぇ」

「この毒ガス攻撃は、他の反地球連邦よりのコロニーに対する見せしめの類いでしょうかね?」

「そうだろうね。それとメインは月とサイド6へのメッセージだろうね」


そうか、ティターンズの情報統制がザルだと思ったけど、月とサイド6への恫喝ならば毒ガスを使用したことを隠蔽する必要もないわけでしたね。でも、こんな脅しに
屈服するとは思えないんですがね。我がジオンも生き残ってますしね!


「地球連邦の枠組みの中へ戻れということですか・・・ こんな事をすれば、余計に月とサイド6の態度は硬化すると思うんですけど」

「反発は必死だろうけど私も情報分析官じゃないから、この後の動きの詳しいところまでは分からないよ」

「これはエゥーゴとティターンズとの開戦も近いですね」

「恐らく戦争は避けられないだろうね」


こうなったらグリプス戦役も早まりそうですね。まだ、サイド7にグリプスすら完成してないですけど。今回の件で、我がジオンは直接的にはティターンズ及び連邦と
矛を交えるつもりはありませんけど、どう転ぶのかは予断は許しませんので、色々と手は打っておかねばなりませんね。
まあ、その点はギレンパパとダルシア首相及び政府議会も、打つ手は考えてはいると思いますが。

幸いにも、月とサイド6へのガルバルディβとハイザック配備は順調に進んでいて、既に7割方は配備を完了していますので、万が一にも開戦となっても、ちょっとやそっとの
ことで負けることはないでしょう。

問題があるとすれば、再建が成ったばかりの他のサイドとルナツーですかね? 特にルナツーの連邦宇宙軍の動きが読めないのです。史実と違って、この世界の月とサイド6
は連邦の所属ではありませんので、ティターンズとエゥーゴの争いが地球連邦軍での内輪揉めという図式には単純に当て嵌めれないのです。

ルナツーの宇宙軍の兵士の中には月とサイド6出身者も2割か3割は居ますので、エゥーゴシンパの人数も当然ですけど、その3割と+αは居るのですが。
しかし、その逆もまた然りなのでありまして、地球出身者も当然の如く2割か3割は居るはずです。ですから最悪の場合はルナツーの宇宙軍が分裂して、それぞれがエゥーゴと
ティターンズに加勢するかも知れませんね。双方の様子を窺っているだけで、中立を保ったまま戦力の温存を計るのかも知れませんが。

そうそう、私が知らない間にアナハイム製の中身がハイザックのジムもどきがルナツーの宇宙軍に売れていました。それも660機もです! やはりティターンズを含めた連邦
の地球派閥と宇宙派閥とは仲が悪いみたいですね。ということは、ルナツー宇宙軍の一部がエゥーゴに加担する可能性もありえるという感じですかね?

まあ、なんにせよ、


「戦争は嫌でちゅね」

「あぅ」

「ヴィッキーもそう思いまちゅか?」


お乳を飲み終わったヴィッキーの背中をトントンと軽く叩きながらも、私はヴィッキーに話し掛けるのでした。この子には、まだ私が話す言葉の意味は分からなくても、
話し掛けることには十分に意味はあるのです。話し掛けることによって赤ちゃんは言葉を覚えていくのですから。

それはそうと、ティターンズには今回暴走だか独断専行だか知らないけれども、毒ガスの使用を許可した責任者の処分だけでもしてもらわないと、宇宙側の反発を抑えるの
は厳しそうですね。
今回の作戦がジャミトフも寝耳に水の方が私としても都合が良いのですが、どうなんでしょうかね? 資料を見た限りでは、ジャミトフ・ハイマンという人物はタカ派に見え
ても実のところは、ただの愛国者なだけの気がするのです。バスク・オムとかいう海坊主はキチ入ってる感じですけど、ジャミトフ、彼とは会話は通じると思うのです。

ですから私の打つ手は、


「ティターンズのジャミトフ・ハイマン総帥に大至急回線を繋いでって・・・ これはタブーでしたね」

「ああ、ジオンは既に独裁国家ではないからねぇ。政府を通さないと後々に議会から文句を言われるよ」

「ええ、それにギレン公王すら飛び越えた越権行為をするところでした」


独裁国家のトップダウンによる、スピーディーな行動が出来ないのも問題がありますね。しかし、議会をないがしろにするわけにもいきません。

自分が望んでいたとはいえ、こんなところで立憲君主制というか議会制民主主義に足を引っ張っられるなんて痛し痒しです。といいますか、はっきり言って歯痒いですね。
人間は一度楽を覚えてしまうと、なかなかその楽をしていた時の味を忘れられないみたいですね。これが権力が蜜の味と言われる所以なのかも知れませんね。

しかし、吊るされるのもごめんですので、ここは多少の不便さは甘んじて受け入るしかありません。既にザビ家は権力の大部分を返上したのですから。
ジオン公国の舵取りは政府と議会、つまりは国民に委ねられているのです。こういう危機の時こそ、民主主義が試されられているのかも知れませんね。


「私たちは成り行きを見守る事しか出来ないのが歯痒いねぇ」

「そのうちダルシア首相から何か言ってくるでしょうから、それまでは大人しくしておきましょうか」

「それでも現状ではジオンに出来る事といったら、精々エゥーゴに義勇兵を送る事ぐらいか?」

「ジオン独立戦争を生き延びた熟練兵は、エゥーゴにとっては喉から手が出るほど欲しい人材ですしね」


そう、エゥーゴの弱点は実戦経験がある兵士が少ないということが弱点なのです。既にシャアのシンパ、いわゆる旧ダイクン派の人たちが月とサイド6に一定の数は移住して
いるのですけど、それだけでは熟練した兵士の数は全然足りません。それを補うのが我がジオン公国からの義勇兵ということです。


「親衛隊からも派遣するリストだけでも、今のうちに作っておいた方が良いみたいだね」

「お願いしますね」


エルメスを早いうちにララァさんに渡しておいた方が良さそうな気がしますね。これぐらいの事でしたら私の権限でも可能ですしね。
いまなら改良したエルメスⅡでしたか、独立戦争から4、5年経っていますが、あれはビームの出力が上がっていますので、ララァさんの能力と併せたら十二分に実力を
発揮できるでしょうし。

そう考えると、キュベレイがまだ完成していないのが残念ですね。この世界では、キュベレイはアクシズで開発されてないのです。エルメスの小型化MS化プロジェクトは、
ジオン技術開発局で行われているのです。独立戦争末期に技術者をアクシズに避難させる必要がなかったからなんですけどね。

独立戦争ではララァさん以外のニュータイプはあまり活躍してませんけれども、そのララァさんが乗ったエルメスの戦果は目覚ましいモノがありましたので、エルメスの
MS化のプロジェクトが細々とですが進行しているわけであります。

いままでは平時でしたので、戦時下のように潤沢な予算と人員を使ってのドーピング的なMS開発とはいかないのですから、遅々として開発が進まないのもやむを得ないの
かも知れませんね。

親衛隊の私の同僚たちがニュータイプの活躍の括りに含まれていたのならば、もっと予算が付いていてプロジェクトも大掛かりになっていたのでしょうけど、それは言っても
仕方がないことですしね。ニュータイプ=ビットや有線ビーム砲を操れる能力って思われてますしね。キシリアさんに引き抜かれるのが嫌だったから、クスコ大尉、現在では
少佐ですけど、クスコ・アル大尉にはニュータイプ適性検査さえ受けさせないように裏から手を回していましたし。その結果がキュベレイの開発の遅れとなって返ってくる
なんて思いもしませんでした。

これが、因果応報ってことなんでしょうか? トホホ・・・

いや、まだUC84年だし、史実でのキュベレイの完成は86年か87年のはずだから、まだ慌てるような時間じゃないと思っておきましょうか?

でも、開戦は待ったなしの状況なんですよね・・・


「はぁ~・・・」

「溜め息なんか吐いてどうしたんだい? マリアらしくもない」

「いえ、人生は思い通りにはいかないものだなぁって思いまして」

「姫様なんて成りたくても成れるもんじゃないんだから、贅沢な悩みって言われるのが落ちだよ」


シーマさんの言う通りなのかも知れませんけど、私も好きで姫様なんてやっているわけではないんだけどなぁ。

まあ、私に出来ることなんてたかがしれてますし、成るようにしか成らないんですけどね!



UC 0084.08.02


宣戦布告なしの戦争がエゥーゴとティターンズの間で始まった。



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