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[35503] 【習作】 うちの妹が人外をヒャッハーしてる件について (東方project)
Name: myon◆d57a7827 ID:02412202
Date: 2012/10/14 22:30

妹の『霊夢』は幼稚園の頃からよく誘拐されそうになった。


霊夢が初めて誘拐されそうになった日の事は今でもよく覚えている。
私は小学校の宿題を部屋でこなしており、霊夢はうつ伏せになりながら絵本を読んでいた。確か『百万回生きた猫』だったような記憶がある。霊夢の髪はその頃から長く、本を読むときにその端を噛む癖があった。ちょうど噛むのを止めるよう注意しようとした時だった。



霊夢を後ろから掴もうとしていたのだ。肘から先の腕だけが。



何もない、本当に何もない空中から白い手が、肘から先が伸びて霊夢を掴もうとしていたのだ。妹を襲おうとしていたその怪奇現象に対し、私は唖然と動きを止めてしまった。叫ぶとか注意を促すとかそういった行動を起こすことができなかった。


しかし、霊夢は非常に冷静だった。無言で私の筆箱に手を伸ばすと、尖った鉛筆を取り出し自分に迫っていた手に突き刺したのだ。


「…うわぁ」


ドン引きする私に気を向けず、妹は部屋の隅に移動して黙って絵本を読み始めていた。正体不明の腕はバタバタと痛そうにもがいていた。なんだか可哀そうだったので鉛筆を抜いて、タオルで血を拭いてあげた。


「……ありがとう。なんか久々に誰かに優しくされたわ」


一体どこから声を出しているんだろう。そう思っていた矢先ゆっくりと消えていく腕に向かって霊夢が一言。


「兄さんに触るな。ババア」


ビクッと腕が振るえて落ち込んだ様にトボトボと消えた。霊夢怖いと本気で思った。



また、ある日のことだった。いきなり霊夢が私に飛びついてきた。何事かと思って霊夢の方を見ると先程霊夢が立っていた場所に紫の穴が開いていた。唖然とその穴を見つめている私を確認しつつ、霊夢は何かを戸棚から取り出し、穴に投げ込んだ。


「っぎゃあぁあああぁあぁっ!?」


女性らしき悲鳴が穴から聞こえた。相当慌てた様子だった。


「な、何投げたの?」
「アレ」


私の服の裾を掴みながらそう霊夢は淡々と告げた。アレってなんだろうと思いつつ霊夢が投げたものを確認すると初詣に行った神社で買った魔よけの矢だった。


「あの矢って凄かったんだ」
「…くたばらなかった」
「え?」
「頑張って削ったのに」
「え?」


何この妹怖い。

「兄さん」
「は、はい」
「見張ってて」
「はい」


トテトテと部屋を出ていく霊夢を尻目に私はゆっくりと穴に近づいて静かに告げた。


「逃げろ。あの子本気で怒ってる」


たぶん確実に止めを刺せる凶器を調達しに行ったのだろう。


「串刺しで動けないのよぉ!」


なんで小学生が投げた矢で誘拐犯が串刺しになっているんだよと思いつつ、穴の端にしがみ付いて中を覗き込んだ。目玉のようなモノが付いていて気持ちが悪かったが、矢に固定された腕が見えたので精いっぱい手を伸ばして引き抜いた。


「…兄さん?」


穴が凄い勢いで閉じるのと霊夢がチャッカマンで包丁を熱しながら戻ってきたのはほとんど同じタイミングだった。


「ご、ごめん。にげられちゃった」
「そう」


ガクガクと膝が震えていたが頑張って見えない様にした。黒曜石のような霊夢の瞳は疑っているようだったが、私は平穏を装った。


「兄さん。手洗って」
「いいけど、なんで?」
「あのババアの匂いが染みついてる」
「どんな匂い?」
「胡散臭い匂い。兄さんらしくない」
「洗ってくるよ」


ただ、霊夢も怖かったらしく珍しく私の布団に入り込んできた。基本的に感情豊かなのだが、何かに集中した時、まるでトランスしたかのような表情になることがある。霊夢の集中力は尋常ではない。本物の天才だ。


「兄さん。お茶が飲みたい」
「はいはい」


何故か霊夢は私が淹れたお茶が好きだった。自動販売機のジュースには反応せず、何故か私の淹れたお茶を好む。時折、怪奇現象に巻き込まれるがそれ以外は問題の無い自慢の家族だった。


だから、私は一連の奇妙なできごとを誰にも言わなかった。


「痛いっ!イタイッ!ギブ!ギブアップ!」


 ある日、自宅に戻ると例の正体不明の腕が霊夢に関節技で押さえつけられていた。霊夢が飽きた後適当に氷で冷やして帰してやった。


「凄い腫れてる」
「……悪いわね」
「そう思うなら霊夢に手を出さないでください」
「妹さんが大事?」
「家族ですから」


 気が付いたら腕は消えていた。


また別の日のことだった。

私が自宅に戻ると今度は何故か大きな針もしくは杭らしきものであの腕が床に張り付けにされていた。可哀そうなので抜いて、できる限り治療してやった。

「優しい手ですわ」

そんな声が聞こえた気がした。


また、別の日の事だった。信じ難いことに狐が檻に入れられていた。金色の毛並みが艶々として北海道辺りに居そうな大きな狐だった。それもただの檻ではなく何か文字が書かれた紙が何重にも張られた紙で覆われた檻だった。

「あ、もしもし保健所ですか?」

霊夢が保健所に電話しているのが聞こえたので檻を持って私は逃げ出した。途中で鶏肉と油揚げを与え、山で放した。少しだけこっちを見た後、狐は山に帰って行った。

「掛布団にするつもりだったのに」

その後、霊夢に少しだけ愚痴られた。



また、ある日の事だった。

何か御札らしきものにグルグル巻きにされた腕が畳の上に転がってきた。


『工具買ってくる。触らないで  by霊夢』


どっからこんな御札調達したのだろうかと思いつつ、腕を確認するとまだ『生きて』はいるらしい。床に霊夢が書いたらしい解剖の方法や拷問チックな内容が書かれた紙は見ない様にする。何故かファブリースの空き容器がいくつか転がっていた。


「え、えーと。どうも」
「……助けてくださらないでしょうか?」
「今回はどうしてそのような格好に?」
「神隠しをしようとした結果ですわ」
「へえ」
「私とて本当に必要だからこのような行為に及んでいるのです」
「あ、そうですか」

なんか変な宗教みたいだなと思いつつ、どうしたものかと思っていると霊夢が帰って来た。

「兄さん。戻ってたの?」
「ついさっき」
「ふーん、私これからすることあるから。部屋出てもらっていいかしら?」

白いビニール袋からハンマーと大型の釘がはみ出ていた。まさかとは思うが使う気じゃないだろうか。

「霊夢。さすがにソレはヤバイ」
「兄さん。やる時は徹底的によ」

なんでまだ小学生の妹がこんな言葉を発するのだろうかと背筋が冷たくなる感覚を味わいつつ、速やかにキッチンに移動。一番いいお茶を出して速やかにお湯を注ぐ、むろん茶菓子も忘れない。


「先にお茶にしない?」
「…そうするわ」

糸ノコギリの歯を取り付けいていた霊夢は打って変わって上機嫌な表情でお茶を啜り始めた。その隙に逃がしてやろうと思っていたのだが、御札が取れない。

「この年にしてこの技量とは恐ろしい才能ですわ」

全く嬉しくない腕の発言だった。なんか慣れてきたのかよく見ればこの正体不明の腕は何もない空間から生えているわけではなく、紫色の穴から生えているようだ。あるで蜃気楼のように曖昧で全体が良く見えないが一番無難だろうと思い、御札で動けなくなっていた腕をその不思議な空間の『スキマ』とも呼べる場所に押し込んだ。

「…兄さん」
「なに?」
「おかわり」
「ああ」
「やっぱり兄さんが淹れてくれるお茶が一番ね」

先程の腕のことは無かったことにされたらしい。それがいいと私も思った。


そんな奇妙な腕、紫色の穴と何故か綺麗な狐との攻防は毎回霊夢の圧勝で終わり、私が霊夢が止めを刺す前に逃がすという形で数年間続いた。


今から思えば霊夢が止めを刺した方がよかったかもしれない。


霊夢を誘拐することが無理だと判断した誘拐犯は私を誘拐した。否、しようと試みた。


「はぁい♡旦那様候補。スキマへボッシュート♡」


そう告げた金髪でどこか妖艶な雰囲気を醸し出していた女性に、霊夢が膝蹴りを叩き込んだ。



[35503] うちの妹が九尾の狐をヒャッハーしてる件について
Name: myon◆d57a7827 ID:02412202
Date: 2012/10/22 00:16


ある日家に帰ると、狐が自分の尻尾で首を吊ろうとしていた。


時折、霊夢に捕獲されているのを見掛ける可愛らしい狐で、まるで尻尾が幾つも重なっているのではないかと思える程毛の量が多く、フワフワな手触りが心地良い。その尻尾をブラッシングするのが私の趣味の一つなのだが、その尻尾を使って当の本人は自殺しようとしていた。


驚いた私は、ピンと張りつめるほど尻尾を伸ばし自分の首を絞めようともがく狐を後ろから抱きしめ、尻尾を引きはがし、落ち着くまで黙って撫で続けた。最初はかなり暴れていた狐だったが風呂に入れ、微温湯でシャンプーを初めて時点で大人しくなっていた。ただ、しょんぼりとした姿が可愛らしかった。


金色のフカフカの塊になって山へと帰って行った狐だったが、私はその日の事がどうもきになって霊夢に尋ねてみた。


「狐が尻尾で自殺って……兄さんの勘違いじゃない?」
「そう?ならいいんだけど?」


お茶を啜りながら応える霊夢はいつも通りだ。動物もストレスで体調を崩すことがある。山で餌でも不足しているのだろうか。


「そう言えば、あの狐、尻尾が多くない?一本以上あるわ」
「そう?ただモコモコなだけだと思うけど?」


私がシャンプーをした後なんか特にモコモコでフワフワだ。


「ねえ、兄さん。九尾の狐って知ってる?」
「傾国の美女とかよく小説とか漫画で出てるね」


大体悪役で登場することが多いが、それは単に狐が過去に家畜を襲っていたからだと思う。


「権力者相手に股開きまくったビッチ」


小学生の妹からとんでもない言葉が飛び出たので私は思わず、コップを落としてしまった。幸い中身は空でコップも割れなかったが私はかなりショックを受けた。


「私の勘がね兄さんはもう少しあのbit…狐に気を付けた方が良いって言ってるの」


霊夢の勘は必ずと言っていいほどよく当たる。霊感なのかは分からないが、危険なことや将来に起こる出来事に対する的中率は異常な程。でも、ロト6とか金銭的なものには働かない。勘は鋭くても金運は無い。


「霊夢。女の子がそんな言葉を使うのは駄目」
「もう言わないわ。ただ兄さんに注意したかっただけだから」
「まあ、何回か誘拐されかけたしね」
「私がいるから大丈夫よ。それにあの狐にはちゃんと話したから」
「ん?」
「兄さんには関係の無いことよ」

あの不思議な穴に一回堕ちたが、霊夢によって誘拐犯が撃退されたため無事に帰ってこれた。前歯が何本か折れた様に見えたけど、あの誘拐犯大丈夫だろうか。


「兄さん。お茶」
「ああ、もうそんな時間か」


夕食から一時間後くらいになると霊夢はお茶を飲みたがる。それを淹れるのが私の仕事だ。


「それが兄さんの仕事よ」
「はいはい」


適当な雑談の後風呂に入り自室に戻るとベッドの脇から誘拐犯の腕が生えていた。


「あ、どうもお久しぶりです」


腕が左右にユラユラと揺れて意思表示してきた。どうして会話ができないのだろうと思っていると腕が移動して私の机からペンと紙を取るとこう書いた。


『申し訳ありませんが、まだ顔が腫れていて話せません』
「お大事に」


すっと腕が伸びてきて私の右手の甲に触れた。その感触を確かめる様にゆっくりと指先が私の手を確かめていく。スルスルと私の体を這い上がり私の頬を、額の感触を確かめていく。何もない空間に浮いた腕に撫でられるというのはどこか夢の様な奇妙な感覚だった。


「あなたは何がしたいんですか?」


霊夢をなんども誘拐してようとして、撃退され、そして、私を誘拐しようとして。一体何をしたかったのだろう。腕は何も答えず、筆談もしなかった。ただ、私の頬を撫でると消えた。


「兄さん!」


その直度に霊夢が部屋に飛び込んで来た。何故か消毒液とタオルを持って。そのあまりに必死な形相に身が竦んでしまったが、霊夢は私に構うことなく消毒液の染み込んだタオルで私の頬と手を擦り始めた。


「あのババアッ」
「いや、どうしたの?」
「兄さんには常識ってものがないのかしら?」


それを霊夢に言われたくないと思ってしまった私は正常だと思う。


「兄さん。お風呂直行ね」
「もう入ったよ」
「もう一回」
「……はいはい」


ここで逆らっても無駄なので大人しく風呂に入り直した。その後、自室に戻ると何故かベッドのシーツと枕カバーが変わっており、机は丁寧に磨かれていた。筆談に使われたペンはどう見ても新品に変わっていた。何時の間に調達したんだろうか。


「まあ、いいか」


新しい方が寝やすいのは事実だ。ここは素直に感謝しようと思いその日は素直に眠りについた。何か赤と白の球体がベッドの横に置いてあるのが気になったが特に害は無いようなので放置した。



ある日、家に帰ると黒猫が塀の上からこちらを見ていた。尻尾が二本あり、先端だけ白い珍しい猫だった。まあ、尻尾が九本ある狐がいるくらいだから尻尾が二本ある黒猫がいても別に不思議なことではないのだろうと思い、特に気にしなかった。

特に逃げる様子もなかったのでそのまま通り過ぎると今度は部屋の窓の外に静かに座っていた。その日は課題が多かったのですぐに机に向かった。


「雨?」


ふと顔をあげると雨が降っていて相変わらず黒猫は窓の外からこちらを眺めていた。寒そうだったので窓を開けると部屋に入ってきた。逃げるかと思ったが人間に慣れていたらしく、私がキッチンからホットミルクを持ってくる間も部屋の隅で大人しくしていた。


「飲む?」


かなり頭が良いらしく私が一歩下がってからミルクに口を付け、床を汚さないようにゆっくり飲んでいた。ただ、雨の音と静かに猫がミルクを舐める音だけが聞こえる穏やかな日だった。


「またおいで」


雨が止むと黒猫は私に軽く頭を下げて出て行った。


「雌猫の匂い」
「ああ、あの猫雌だったんだ」


帰宅した霊夢の第一声がソレだった。


「猫がいたの?」
「雨が降ってたから中に入れてあげた」
「ふーん。どんな猫?」
「普通の黒猫だけど?」
「そう」


お茶を飲みながらのんびりと霊夢と語る静かな日常、こんな日々が私は好きだった。


「兄さん。頭下げて」
「こう?」


霊夢の袖口から何か飛び出たと思ったら後ろから悲鳴がした。また誘拐犯が家に不法侵入していたらしい。最近、医者を志すべきか迷いつつある。正体不明の腕の手当。これも私の日常の一部だ。




[35503] うちの妹がいなくて幻想郷がヒャッハーな件について
Name: myon◆d57a7827 ID:02412202
Date: 2012/10/28 03:14
現在、幻想郷は結界の緩みや新勢力の参入等の事件により、非常に危ういバランスの上になりたっている。


人里を一歩出ればいつ命を落としても不思議では無く、妖怪同士の争いにより貴重な種が失われつつある。戦闘能力が高い妖怪であっても集団で襲われ殺されることすらある状況ではそう簡単に外を出歩くことができない。


そんな中、幻想郷の方針を定める為に有力者達は会合を開いた。




【ただし】幻想郷の未来を本気で考える4スレ目【暇人に限る】

1:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 02:30:45 ID:yaKumo
 ここは世紀末になりつつある幻想郷の未来をどうするか話合うスレですわ。


*禁止事項
・度が過ぎた挑発、風評の流布は禁止。
・気に入らない意見は冷静にスルー。戦争は駄目。絶対。
・幻想郷の未来に関する意見以外は他のスレで。
・特定の勢力の支持は禁止。
・画像、動画を公開する場合はプライバシーに配慮。


過去のスレタイ
【なんか】幻想郷の未来を本気で考える3スレ目【世紀末】
【幼女率】幻想郷の未来を本気で考える2スレ目【高過ぎ】
【挨拶は】幻想郷の未来を本気で考える1スレ目【ヒャッハー】


人気のスレタイ
【閻魔ですら】⑨が作った裸婦像がセクシー過ぎるんだが【解せぬ】
【グロ】最近、うちの姫様が実験用モルモットになってる【注意】
【労働法】転職先を探しています。どこかで従者を募集していませんか【作ってください】
【婚活しても】大妖怪の90%以上が未婚な件について【フラグ立たない】
【そろそろ】誰が一番モフモフか【白黒つけようや】


2:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 02:33:28 ID:yaKumo

過去に話題になった人物の概略

・幼女様
次期博麗の巫女候補。
重度のブラコン。
直感が鋭すぎるうえに戦闘能力が高過ぎて神隠しできない。
幻想郷の総戦力より強い(何それ怖い)
得意技:針、結界、道具作成、ニフラム


・お兄様
幼女様の4つ上の兄
誘拐犯(腕)や誘拐犯(獣)の治療をしてくれる
イケメンではないが旦那向き
生まれてくる子供のポテンシャルは高いはずなので誰か子作りを


・きつーね様
隙間妖怪の式神
博麗の巫女に化けて人里で行動中(Iカップの黒髪美少女)
男性にイヤらしい視線を向けられることが多い
お兄様のシャンプーと自分の式が癒し
最近、皆から励まされている


・黒猫様
隙間妖怪の式の式
対幼女様最終兵器
魔改造し過ぎて強く成り過ぎた(猫なのに泳げる)
性格は素直で純粋。主を大事にしている
色んなことに興味を持つお年頃(性的な意味ではない)


3:名無しの亡霊姫:12/10/29(月) 02:40:45 ID:meikaI
スレ立お疲れ様

4:名無しの覚り妖怪:12/10/29(月) 02:41:25 ID:unDerground
いつもお疲れ様です

5:名無しのロードヴァンパイア:12/10/29(月) 02:41:30 ID:Karisuma
毎度毎度ご苦労なことだな

6:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 02:41:50 ID:yaKumo
三人だけかしら?他の代表は?

7:名無しの薬剤師:12/10/29(月) 02:41:55 ID:yakuhin
もう来てるわよ

8:名無しの四天王:12/10/29(月) 02:42:05 ID:sakeHoshii
宴会じゃないけど、一応来たよ~

9:名無しのひまわり:12/10/29(月) 02:43:05 ID:Sunflower
なんで私も呼ばれたのかしら?

10:名無しの裁判官12/10/29(月) 02:43:15 ID:faIrjudge
遅れて大変申し訳ありません。只今より参加させていただきます。

11:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 02:43:50 ID:yaKumo
それでは始めましょう。
どなたか報告事項等がありましたらお先にどうぞ。

12:名無しの裁判官12/10/29(月) 02:44:15 ID:faIrjudge
それでは私からでよろしいでしょうか?

13:名無しの亡霊姫:12/10/29(月) 02:44:45 ID:meikaI
はぁーい

14:名無しの覚り妖怪:12/10/29(月) 02:45:25 ID:unDerground
お願い致します

15:名無しのロードヴァンパイア:12/10/29(月) 02:45:30 ID:Karisuma
所詮無礼講の集まりだ。さっさと進めるといい。

16:名無しの裁判官12/10/29(月) 02:46:15 ID:faIrjudge
では、以前ご依頼のありました次期博麗の巫女候補である少女、通称幼女様とその兄の前世についてご報告させていただきます。

まず、幼女様についてですが詳細不明です。今のところ前世は分かっていません。
少なくても歴史上名のある人物ではありません

17:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 02:47:20 ID:yaKumo
あれほどの力をもっているならかなり徳の高い人物か妖怪だと推測していたのですが
予想が外れましたわ

18:名無しの四天王:12/10/29(月) 02:48:05 ID:sakeHoshii
でも物凄く強いんだよね?何なら私が攫ってみようか

19:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 02:48:20 ID:yaKumo
止めなさい。鬼でも勝てる相手じゃないわ。

20:名無しのひまわり:12/10/29(月) 02:49:05 ID:Sunflower
自分が毎回負けているからって随分と怯えているようね。

21:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 02:49:20 ID:yaKumo
ならあなたが行けばいいわ。確実に殺されるでしょうけど。

22:名無しのひまわり:12/10/29(月) 02:50:05 ID:Sunflower
お断りするわ。人間風情に興味は無いもの。

23:名無しの裁判官12/10/29(月) 02:50:15 ID:faIrjudge
続けてもよろしいでしょうか?

24:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 02:50:20 ID:yaKumo
これは失礼いたしました。続きをお願いしますわ。

25:名無しのひまわり:12/10/29(月) 02:50:35 ID:Sunflower
どうぞご自由に

26:名無しの裁判官12/10/29(月) 02:50:55 ID:faIrjudge
あの少女の兄ですが、彼については分かりました。

彼の前世は『竹取の翁』です。

27:名無しの薬剤師:12/10/29(月) 02:51:00 ID:yakuhin
なんですって!?

28:名無しのロードヴァンパイア:12/10/29(月) 02:51:30 ID:Karisuma
ほう。確か竹取物語の登場人物だったな。

29:名無しの亡霊姫:12/10/29(月) 02:51:45 ID:meikaI
有名人が出てきわね~

30:名無しの覚り妖怪:12/10/29(月) 02:52:25 ID:unDerground
ですが、物事の筋は通っています

31:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 02:53:20 ID:yaKumo
まあ、確かにそうね。

32:名無しの四天王:12/10/29(月) 02:53:35 ID:sakeHoshii
ん~、どういうこと?

33:名無しの覚り妖怪:12/10/29(月) 02:54:25 ID:unDerground
皆さまもご存じの通り、幼女様は凄まじい戦闘能力の持ち主であり、
隙間妖怪と九尾の狐を余裕でフルボッコにすることができます。

34:名無しのひまわり:12/10/29(月) 02:55:05 ID:Sunflower
無様ね。妖怪の賢者(笑)

35:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 02:56:20 ID:yaKumo
皆さま、こちらの画像をご覧ください
zip

36:名無しのひまわり:12/10/29(月) 02:56:30 ID:Sunflower
ちょっと待ちなさい

37:名無しの薬剤師:12/10/29(月) 02:57:00 ID:yakuhin
うちでよければいつでも処方するわよ

38:名無しのロードヴァンパイア:12/10/29(月) 02:57:30 ID:Karisuma
吸血鬼が笑い過ぎで腹筋を痛めたぞ。どうしてくれる

39:名無しの亡霊姫:12/10/29(月) 02:57:45 ID:meikaI
あまりうちの妖夢に近づかないでね~

40:名無しの四天王:12/10/29(月) 02:58:35 ID:sakeHoshii
これってあの子だよね?あの魔法使いの

41:名無しの裁判官12/10/29(月) 02:58:55 ID:faIrjudge
微笑ましい光景ですが、有罪です

42:名無しの覚り妖怪:12/10/29(月) 02:59:25 ID:unDerground
なかなかマニアックな趣味をお持ちで

43:名無しのひまわり:12/10/29(月) 03:00:05 ID:Sunflower
倍で返す

44:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 03:01:20 ID:yaKumo
楽しみにしていますわ。では、続きをどうぞ

45:名無しの覚り妖怪:12/10/29(月) 03:02:25 ID:unDerground
ええ、まあ簡単に要約しますと、幼女様を家族として受け入れられる器の持ち主なら前世に似たような経験をしていてもおかしくは無いということです。

46:名無しの薬剤師:12/10/29(月) 03:03:00 ID:yakuhin
詳しく説明してもらってもいいかしら

47:名無しの覚り妖怪:12/10/29(月) 03:03:25 ID:unDerground
妖怪が跋扈していた時代において
1.竹から生まれた(入っていた?)
2.手のひらサイズから凄い勢いで成長
3.自称宇宙人
こんな人物を育てたことが前世であれば幼女様の兄も勤まるということです

48:名無しの薬剤師:12/10/29(月) 03:04:00 ID:yakuhin
…ここは姫様に代わって怒るべきなんでしょうけど、そう言われるとあの方々の価値観と器の大きさって凄いわね

49:名無しの覚り妖怪:12/10/29(月) 03:04:25 ID:unDerground
普通に考えれば、違和感がありますね

50:名無しの裁判官12/10/29(月) 03:05:55 ID:faIrjudge
亡くなる前に恵まれない人々に全財産を寄付した大変徳の高いご老体でした

51:名無しの薬剤師:12/10/29(月) 03:06:00 ID:yakuhin
……ご夫婦とも極楽にいけましたか?

52:名無しの裁判官12/10/29(月) 03:06:55 ID:faIrjudge
両者とも十分に善行を積んでいました。私が言えるのはそれだけです。

53:名無しの薬剤師:12/10/29(月) 03:07:00 ID:yakuhin
姫様に伝えておきます。ご親切にどうも。

54:名無しのロードヴァンパイア:12/10/29(月) 03:08:30 ID:Karisuma
良い話だと思うが、ここは幻想郷の未来を話し合う場じゃなかったのか?

55:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 03:09:20 ID:yaKumo
少し話題が逸れてしまいましたが、本題に移りましょう。
まず、今の幻想郷は大変不安定です。
博麗の巫女は高齢。今は私の式が人間に化け後継者として振る舞っていますがいつまで続けられるか分かりません。

56:名無しのロードヴァンパイア:12/10/29(月) 03:10:30 ID:Karisuma
結界の仕組みごと見直した方がいいんじゃないのか。なんならうちの知識人を貸すが

57:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 03:11:20 ID:yaKumo
それも今検討していますが、時間が足りないというのが現状です

58:名無しの四天王:12/10/29(月) 03:12:35 ID:sakeHoshii
何か手伝おうか?

59:名無しの亡霊姫:12/10/29(月) 03:12:45 ID:meikaI
遠慮なく言ってね

60:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 03:13:50 ID:yaKumo
今具体的に進めている対策は
1. 結界の強化と管理方法の変更
2. 幼女様とお兄様の勧誘
3. 他に博麗の巫女と成り得る候補者の選定
4. 幻想郷の治安の見直し

治安の見直しについては各勢力により一層秩序のある行動を求めます。人間の人口が減り過ぎです。

61:名無しの四天王:12/10/29(月) 03:13:35 ID:sakeHoshii
分かった。天狗に自重するように言っておくよ

62:名無しの薬剤師:12/10/29(月) 03:14:00 ID:yakuhin
私も人里に出向く際になるべく注意しておくわ

63:名無しのロードヴァンパイア:12/10/29(月) 03:14:30 ID:Karisuma
うちの門番に少し雑魚を狩るように言っておく

64:名無しの覚り妖怪:12/10/29(月) 03:15:25 ID:unDerground
それで、結界の管理方法を見直すにはどれくらい時間が掛かるのですか?

65:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 03:15:50 ID:yaKumo
どんなに早くてもあと5年

66:名無しの裁判官12/10/29(月) 03:16:55 ID:faIrjudge
仮に管理方法が変わったとしても増えつつある妖怪と人間の争いの調停役は必須だと思われます

67:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 03:17:50 ID:yaKumo
ええ、ですから新しい博麗の巫女を見つけ、秩序を安定させつつ緩やかに結界の性質に変化を加える。これが一番望ましい形ですわ。

68:名無しのひまわり:12/10/29(月) 03:18:05 ID:Sunflower
けど、候補が今のところその幼女しかいないと

69:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 03:19:50 ID:yaKumo
他にもいないわけではないけど、基準を満たさないし、長くは持たないでしょうね

70:名無しの亡霊姫:12/10/29(月) 03:20:45 ID:meikaI
幼女ちゃんにお願いするのはダメなのかしら

71:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 03:21:50 ID:yaKumo
何度か直接話したけど、
「人食いがいるようなところに行く気はないわ。そんな奴らに兄さんは渡さない」
の一点張り

72:名無しのロードヴァンパイア:12/10/29(月) 03:22:30 ID:Karisuma
……今試しに二人の運命に干渉しようとしたら弾かれた

73:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 03:22:50 ID:yaKumo
私達の能力では干渉は不可能。能力に差があり過ぎて。

74:名無しの覚り妖怪:12/10/29(月) 03:23:25 ID:unDerground
手詰まりですね。何か対価があればいいのですが

75:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 03:23:50 ID:yaKumo
幻想郷にくればお兄さんのお嫁さんになれると言ってみたのだけど

76:名無しの裁判官12/10/29(月) 03:24:55 ID:faIrjudge
倫理的に許される内容ではありませんが結論を聞きましょう

77:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 03:25:50 ID:yaKumo
精通が来たら自分でなんとかするから助けはいらないと

78:名無しのひまわり:12/10/29(月) 03:23:05 ID:Sunflower
何をするつもりよ、その幼女

79:名無しの薬剤師:12/10/29(月) 03:24:00 ID:yakuhin
ナニでしょう

80:名無しの隙間妖怪:12/10/29(月) 03:24:50 ID:yaKumo
…巫女候補は八雲で探しますので各自幻想郷の秩序安定に
私はここで失礼させていただきますわ。

81:名無しの覚り妖怪:12/10/29(月) 03:25:25 ID:unDerground
なるほど、先に襲いにいきましたか。それか幼女様狙いですね

82:名無しの薬剤師:12/10/29(月) 03:26:00 ID:yakuhin
成功するなら苦労しないでしょうに

83:名無しのロードヴァンパイア:12/10/29(月) 03:27:30 ID:Karisuma
運命を見なくても結果が見えた。幼女に串刺しにされる。以上。

84:名無しの裁判官12/10/29(月) 03:28:55 ID:faIrjudge
判断に迷う内容ですね。幻想郷のことを思っているだけに





85:名無しの四天王:12/10/29(月) 03:29:35 ID:sakeHoshii
しょうがないなぁ。ここは私が一肌脱いじゃおうか









[35503] うちの妹が鬼をヒャッハーしてる件について
Name: myon◆d57a7827 ID:8c99356f
Date: 2012/11/11 01:44


ある朝、歯を磨こうとコップを手に取ると、『ホビット』らしきものが入っていた。



頭部からの触覚或いは角が二本程生えており、焦げ茶色の髪を赤いリボンで束ねている胸元にもリボンが巻かれワイシャツらしき服装、しかし手首には手枷というアンバランスな格好の小人らしき何か。


それが歯を磨こうと手にしたコップの中に入っていた。霊夢の人形か何かだろうかと思ってよく見てみると所々白いシャツが血痕らしきもので汚れており、痣らしきものが見える。人形にしては精巧すぎるので、一応生き物らしい。この体格から察するに、鴉か何かに餌と間違われて襲われたのだろう。


意識が無いのかグッタリしている。いつもの誘拐犯の腕でもないようだし、どうしたものかと逡巡していると窓のガラスをポンポンと黒猫が叩いていた。普段なら窓を開けて中に入れるのだが、この小人的な何かを食べられても困る。


「入っても良いけど、食べないでね」


素直に黒猫が頷いたので窓を開けた。食べはしないものの、スンスンとコップからはみ出た小人的な何かの匂いを嗅いでいた。


「橙?」


最近の小人的な何かは猫と話せるらしい。猫はにゃーとしか鳴いていないのに通じ合っているようだ。


「いやー、負けた。負けた。パンチ一発でこの様だよ」


パンチ一発で負けた小人的な何かが何故私のコップの中に入っていたのだろうか。そもそも喧嘩をしていたと言うならばその相手は一体どこに行ったのだろうか。まさかうちの洗面所にこの小人的な何かが複数住んでいるのだろうか。


「お兄さん悪いね。今、出るよ」


よいしょっとコップの淵に手を掛け小人的な何かは黒猫の背中に飛び移った。見かけ通り俊敏なようだ。


「んん、一回戻って仕切り直しかな」


何か小人的な何かが言いかけていたような気がするが黒猫が全身の毛を逆立てて凄い勢いで逃げ出した。小人的な何かが辛うじて背中にしがみ付いていたから、落ちて怪我をすることはなかったようだ。


「おはよう。兄さん」
「ああ、おはよ……ゥ。いやいやどうしたのその手?」


何か手の甲に赤いモノが張り付いている。少量では無く、染みのように広がっている。切り傷などは見当たらない。


「ちょっと変な物触っちゃって」
「見せて」


霊夢の手を無理矢理掴んで水で赤いモノを洗い流す。怪我や腫れは無い綺麗な肌色だ。特に霊夢は抵抗せず大人しくされるがままになっている。一応肘まで確認したが何もない。気持ちよさそうに目を細めている霊夢がいるだけだ。


「何触ったの?虫?」
「さあ?針がちょうど手元に無かったから手でつぶした」
「あの腕じゃないんだから新聞紙とか使いなよ」
「次からそうするわ」


以前に霊夢が針でハエを打ち抜くのを見たことがあるが、そのまま床に突き刺さって畳に穴を開けてしまったので、最近ようやく針の使用回数が少なくなってきた。


「そういえば」
「何?」
「前に霊夢が針でハエ刺したことあったよね?」
「そんなこともあったわね」
「針ってどこまで飛ばせるの?」


霊夢の手を拭きながらそんなことを訊ねると驚くべき答えが返ってきた。


「半径5km以内なら100円玉くらいの大きさなら当てられるわね」
「ゴルゴ超えてる」


いくらなんでも某スナイパーを超えていることはないとは思うが、何故か納得しそうになっている私がいた。ただ、霊夢の腕力でもそんなに投げることはできないはずなのでもちろん誇張表現だろうが。


「針があったら串刺しにしてたのに、あの角付き」
「角付き?」
「別に大したことじゃないわ」
「そういわれると気になる」


一瞬躊躇した後霊夢はこう答えた。


「別に大きくなろうが、小さくなろうが同じってこと」


余計に意味が分からなくなってしまった。


「あと兄さん。そのコップ捨てた方がいいわ」
「え、何で?」


確かに先程小人的な何かが入っていたが洗えば使用するのに問題は無いはずだ。しかし、私が反論する前に霊夢が私のコップを取上げゴミ箱に投げ捨ててしまった。


「こらっ!」


頬をハムスターのように膨らませて何か言いたげな霊夢だったが、さすがに悪かったと思ったのか、小さな声でごめんなさいと呟いた。問い詰めるべきか迷ったが霊夢がしょんぼりしているのでこれ以上言及することは止めた。


「物は大切にしないと」
「……分かってる」


霊夢の悲しげな表情を見ているとこちらが悪いことをしている気分になってしまった。


「兄さん」
「ん?」
「………やっぱりいいわ」


何か言いたげな様子だったが霊夢は何も言わなかった。ただ、櫛を私に差し出してきたので久しぶりに霊夢の髪を解くのを手伝った。長い髪の手入れは大変だと言っているのに本人は切ろうとしないので案外この髪型を気に入っているのかもしれない。


「勘なんだけど」


霊夢が直感に基づいて何かを言う時大体直観であることを口にする。


「兄さんは娘の髪を梳くのが好きなタイプね」
「そう?」


そう言われてみるとそんな気がする。確かに慣れているがそれは霊夢の髪を時折弄っているからだと思っていた。


「慣れ過ぎ」
「まあ、狐とか猫もブラッシングしてるしね」
「……次半径5km以内に入ったら」


特に狐の尻尾に関しては自身がある。ブラッシングする前と後では手触りが全然違う。綿あめのようにモコモコにできる。動物園の飼育員とかペットショップとか向いているかもしれない。


「ペット欲しいな」
「犬がいいわ。シェパードとか」
「霊夢は犬派?」
「別にどっちも嫌いじゃないわ」


イヌも好きだが散歩が大変そうだ。室内で飼えるモルモットやウサギもいいかもしれない。霊夢は意外とぬいぐるみが好きでベッドの周りに結構な数が置いてある。いつの間にか霊夢に毎年新しいぬいぐるみを誕生日に渡すのが決まりになっていた。


「兄さん。コップごめん」


そう言って先に歯を磨き終わった霊夢が洗面所を出て行った。そして、ふと前を見て


「これで梳けと?」


空間から垂れている綺麗な金髪な髪の毛と誘拐犯の腕が差し出したブラシに気が付いた。


「別にいいですけど」


少し髪を梳いたところでライターを持った霊夢が乱入してきたので中断された。美容師もいいかもしれないと思う今日この頃。




[35503] うちの妹が幻想郷をヒャッハーしに行く件について
Name: myon◆d57a7827 ID:39d50079
Date: 2012/11/24 07:59


ある日、黒猫が手紙を二通咥えてやってきた。



黒猫から手紙を貰うとことが果たして吉なのか凶なのかは別として内容を確認しないと何も始まらないので黒猫郵便を受け取り、封筒を確認する。きちんと肉球マークで封がしてある。この黒猫中々分かっているらしい。誇らしげに胸を張っているので撫でてやるとゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らしていた。床をペチペチと叩いている尻尾も大変可愛らしい。霊夢は犬派のようだが、私はどちらかというと猫派だ。


「手紙もいいけどまずはブラッシング」


グッドと言いたげな黒猫をブラッシングすることに一時間ほど費やしてしまった。どこまでサラサラにできるのか実に楽しみだ。


「ふーん、幻想郷ね」


一通目には人外魔境、人外の住居である幻想郷という場所について詳しく書いてあった。そこに霊夢と私に永住して欲しいとか、その必要性とか。


「無理」


霊夢も私も普通の人間だ。仮に幻想郷という人外魔境が実在したとしても私の様なごく普通の凡人がそこで生活するのは無理だろうし、他人より若干強いとはいえ、霊夢に人外だらけの土地で暮らして欲しいとは思わない。事情があることは理解できる、心苦しいが別の方法を探して欲しい。


「悪いけど、この件は断るよ」


ふむふむと神妙に頷いて黒猫はもう一通を差し出した。二通目は肉球ではなく笹の形をした印が押されていた。使われている封筒も無駄に高そうだった。


「読めない」


高そうな和紙に墨で達筆な文章が書かれているが、達筆過ぎて逆に読めなかった。漢文だろうかまったく解読できない。どこかで見たような、見たことが無いような。読めない者の、この筆跡をどこかで見たような気がする。


「かぐや?」


かぐや、カグヤ、輝夜。手紙に同封されていた一枚の写真。淡い緑色の浴衣を着た少女が竹林を背景に微笑んでいる。霊夢よりも長い髪は真直ぐ腰まで伸び、上品に手を口元に当てている。



彼女の名前は『輝夜』



立ち眩みに似た感覚に襲われ、トイレに駆け込む。便器を抱きかかえるようにして嘔吐した。意識が朦朧とし、視界がぼやける。思い出せそうで思い出せず、気分が悪かった。




『あの子のこと後悔してますか?』

後悔が無いと言えば嘘になるねと初老の女性に対して床に伏した私は応えた。別に寿命が尽きるまでともにいられなかったことを後悔しているわけではない。あの子にはあの子の人生があるのだから。

『では何を?』

同世代の友人を一人も作らせてあげることができなかった。それが残念でならない。
寝食を共にし、あの子と君に支えられ幸せだった。間違いなく、私の生涯は恵まれていた。
だが、あの子は幸せだったのだろうか。裕福になるにつれ、あの子を求める人々は増えた。しかし、それは決して愛情によるものではなかった。肉欲、独占欲、金銭欲、多くの欲望に私はあの子を晒してしまった。

『ええ』

可能な限り拒んだ。あの子と君と策を練り、難題を考えた。それがあの子の幸せに直結していたのかは分からない。ただ、あの子は嫁ぐことを望んでいなかった。

親としてあの子に接し、愛情を注いだ。

それは間違っていない。

けれども、子には親以外の理解者、共感できる相手が必要だ。

あの子にそんな相手がいてくれればと思っていたが、結局巡りあわせることができなかった。

『なら、会いに行けばよろしいかと』

親として至らなかったことを謝罪しに?

『いいえ、あの子にその想いを伝えるために』

それから?

『さあ、私にも解りかねます』

でもと誰かが微笑むあなたはあの子に、輝夜に会って…………






数分間嘔吐し続け、意識がようやくはっきりしたことで白昼夢から解放された。口の中が辛く無性に水が飲みたかった。顔も涙と鼻水でベットリと濡れている。口内の異物をペッと吐き出し、便器を支えになんとか立ち上がろうとすると腕に力が入らない。


「兄さん!?」


泣きそうな表情で霊夢がトイレに飛び込んで来た。目に涙が溜っており、顔色も真っ青だ。


「水とタオル持ってきて」
「分かった!」


ものの数秒で霊夢は戻ってきてくれた。水で口の中をすすぎ、霊夢に抱きかかえられ、シャワーで汚れを落とす。霊夢が力持ちでよかったと心の底から思う。


「兄さん。救急車呼ぶ?」
「もう落ち着いたから大丈夫」


頭を撫でるなりして落ち着かせたいが手が汚れているので何もできなかった。苦笑いを浮かべて何とか立ち上がる。未だに気分は悪いがだいぶマシになった。


「お願いだから無理しないで」
「大丈夫だって、ただの立ち眩みだから」


霊夢には悪いことをしてしまった。突然発作か何かに襲われてしまったようだ。


「……兄さん。この写真ナニ?」


輝夜の写真を握りしめたままだったらしい。端が少し折れてしまっている。さて、先程の白昼夢や曖昧な輝夜の記憶といい、どう説明したものだろうかと暫し逡巡し、こう答えた。


「…大事なヒトかな?」


家族愛なのか、後悔なのかまだ区別は十分つかないけれども、大事な人であることに変わりは無いと思う。


「………へぇ」


俯いたまま、霊夢は言った。


「でも、兄さんが体調崩したのはそのヒトが原因なのよね?」
「関係あると言えばあるし、無いと言えばないんだけど」


私自身まだあまり整理ができていないので何とも言い難い。


「大丈夫。兄さんは私が守るわ。どんな法則も私を縛れないもの。時間だって超えられるわ」


霊夢の目から完全に光が消えていた。まるで能面のような鉄面皮。目は大きく見開かれ、口は少し開いている。若干遠くを見ているような。蚊の鳴くような声で霊夢は呟いた。


「ヒャッハー」


どこかで狐と黒猫と腕の悲鳴が聞こえた気がした。






[35503] うちの妹が隙間妖怪をヒャッハーしてる件について
Name: myon◆d57a7827 ID:a59d68b7
Date: 2013/01/03 05:53
『ブロリーが裸足で逃げ出す様なオーラ』


霊夢から放たれる空気を端的に表現するとこうなる。
両手の指の間に針を挟み込んで、俯いたまま左右にユラユラと揺れている霊夢。部屋の隅に狐と猫が腹を見せて転がっていた。ああ、これは本気で怒っているなと霊夢の事をよく知らない人間でも分かるだろう。微振動している針の先端がチッ、チッと音を出している。


「オッケー。霊夢怒っているのは分かったから落ち着こうか」


ようやく顔をあげた霊夢は瞳孔が赤く猫のように縦に割れ、髪が一部逆立っていた。蜃気楼のように黒いモヤのようなものが湧き出している。前髪が影を作り、炯炯と紅い瞳が光っている。真夜中に猫の瞳が光っているような光景だ。


「大丈夫。私は冷静よ」


その表情で言われても全く説得力が無い。なんか気というか、瘴気のようなものが立ち上っている時点で色々アウトだ。


「こんな力を持っていても普通に接してくれるのは兄さんだけだから」
「父さんと母さんもいると思うけど」
「…うん、でも違う。あの二人じゃ私の異常性を受け入れられない」
「そう?」
「兄さんしかいないわ」


確かに家を空けていることが多いが、霊夢のことを十分に娘として愛していると思うのだか、霊夢には何か不安要素でもあるのだろうか。


「まあ、よく分からないけど霊夢はいたって普通だと思うよ」


難しいお年頃であることは分かるし、自分と周囲の繋がりを疑問に思うこともあるだろう。おぼろげだが、輝夜と比較すると相当普通だ。輝夜の場合、体が大きくなる速度が尋常が無かったことを覚えている。ソレと比較すると霊夢はだいぶ普通だ。


「……そう?」
「うん」
「…じゃあ、兄さん一緒についてきて」
「どこに?」
「ちょっと本気で暴れるから一緒に来て」
「いや、だからどこに?」
「あの写真の女のとこに」
「輝夜の?」
「………呼び捨てなんだ」


会話をしつつ、霊夢は背後に手を伸ばし、狐と猫を回収しようとしていた誘拐犯の腕を掴み、引き込み、どっせいという掛け声と共に一本背負いで投げ飛ばした。無理矢理引き釣りだされた誘拐犯はただ唖然とした表情で天井を見上げていた。


「そこのババア。私と兄さんを幻想郷とやらに連れて行きなさい」
「元々そのつもりですわ」
「んでもって、一番強い奴のとこ、その次にこの輝夜って女のハウスに連れて行きなさい」
「もちろんですわ。ただし、巫女として仕えてもらえるのならばですけど」
「私が強引に道を抉じ開けてもいいのよ。それとも股の間に針を打ち込まれたい?」
「その必要はございません。すぐに道を用意致しますわ」


何度か見たことのある紫色の割れ目のようなモノが見え、次には青々とした森と空に向かって咲き誇るひまわりが見えた。霊夢に顔を掴まれガクガクと震えている誘拐犯には後で謝っておこうと思う。


「じゃあ、兄さん行きましょう」
「もう少し事情を説明してほしいんだけど」
「今から私は本気で暴れるわ。今まで兄さんが見たことの無い正真正銘の、私の本気」


肩を震わせ、泣きそうな程目を潤ませ霊夢は私を見上げてきた。


「本当の私を見ても、兄さんは今まで通りの、私の兄さんで居てくれる?」
「特別に何かが変わることはないと思うよ」
「絶対に?」


そもそも本当も偽物も無いと思う。私は霊夢が生まれた時から霊夢の兄をやっているのだから。


「約束はできないなぁ」
「…」
「でも、大丈夫だと思う。霊夢が悩んでいることをちゃんと理解できるように頑張るから」
「でも、兄さんも皆と同じなんでしょう?私は喧嘩で絶対に負けない。スポーツも負けない。勉強だって直感で分かる。天才って呼ばれるけど何が天才なのか私には分からない。私には『普通』が分からない」
「それで?」
「私は異常。自分でもその自覚はあるわ。別に誰にどう思われようが気にならないけど、兄さんに怯えた目で見られるのだけは嫌!」
「あのさぁ、霊夢って意外と頭悪いよね?」


クシャクシャと霊夢の髪を掻き回す。


「これは何?」
「何って父さんのIpodだけど?」
「これ作れる?」
「もちろん無理よ」
「これ作った人は間違いなく天才だよね?」
「天才じゃない?私でもそれ位分かるわよ」
「つまり、そういうこと」
「ごめん、兄さんが何を言いたいのかよく分からないわ」


霊夢の頭にデコピンを叩き込む、むうと声を上げたが無視。誘拐犯は緊張した面持ちで事の成り行きを見守っている。


「天才っていうのはこういう世界を変えた製品を作ったヒトとかマイケルのことを言うんだよ。霊夢が異常?具体的にどこが?だったら腕だけ空中に出せるこのヒトはなんなの?」
「え、私?」


何も無い場所から腕を生やしたりできるのは私からみても十分異常なことだ。それに天才というのは本当に一握りの存在であって霊夢は天才かもしれないが、世界的に名を知られている『天才』や『偉人』の偉業と比較すれば霊夢の能力なんて微々たるものだ。動揺している誘拐犯は無視。あと別にあなたの能力と婚期は関係ない。


「つまり霊夢の才能なんて大したことないってことだよ」
「貶されているのか、励まされているのか分からないわ」
「別にこれからも霊夢が私の家族で、妹であることは変わらないし、特に霊夢を怖いとかそういうのは無いよ。まあ、本気を見せたいというなら付き合うけど」
「兄さんはそれでいいの?」
「何が?別に霊夢は霊夢だと思うけど?」
「そうなら本気で幻想郷にカチコミに行くわ」
「…それはご遠慮願いますわ」

誘拐犯に対して申し訳ないとは思うが他人よりも家族を優先したいと思う。あと霊夢カチコミなんて言葉どこで覚えてきた。


「何か悩んでいた私が馬鹿みたい」


ふふっと霊夢は微笑み、私の腕に抱きついてきた。むふっーと幸せそうに肘を抱え込み頬擦りをしてくる。可愛らしいのだが針を仕舞って欲しい。刺さりそうで怖い。


「兄さん♪」
「何?」
「今から本気で暴れるわ」
「それさっきも聞いたよ」
「だから見てて。ちゃんと見てて。私を見てて」
「はいはい」


誘拐犯の喉に針を当ててニコニコと霊夢は微笑む。そのあんまりな光景に何か言おうと思ったが誘拐犯と妹どちらの味方をするべきか逡巡している間に霊夢は幻想郷に向かって歩き出した。御札のようなもので誘拐犯を捕縛し、私の左腕を抱え込んだまま。


「紫。この状況は何かしら?」
「見ての通りよ」


いつの間にか大輪を咲かせているひまわり畑の前に私達は立っていた。日傘を差し、赤と黒のチェック柄の服を着た女性がこちらを怪訝そうに眺めていた。緑色という珍しい髪の色だが、不自然では無く、背後のひまわりと良く合っていた。


「分からないから聞いているのだけど」
「助けてゆうかりん」
「お断りするわ」
「ZIPで掲示板に掲載したあの写真ネガごと消すことを約束しますわ」
「………そこの幼女かかってきなさい」


苦虫を潰した様な顔でゆうかりんと呼ばれた女性は霊夢と向き合った。手にしていた日傘を近くの木に立てかけ、何か茂みから引っ張り出した。

「え?」
「ちょっと待て」


思わず声を出してしまった。霊夢も絶句している。桃らしき飾りがついた帽子をかぶった青い髪の女子が縄で縛られていた。怯えた様子も、助けを求める様子も無く、何かを期待しているような恍惚とした表情をしている。縄で縛られ足首を掴まれまるで棍棒でように持ち上げられているにも関わらず彼女は終始幸せそうだった。年も私より少し上くらいだろう。ニュースで見た薬物中毒者を彷彿させる。


「どうかしたの?」
「あのー、なんですかソレ?」
「これ?」
「そうソレです。誰というか、何というか」


にっこりと優しげな笑みを浮かべてゆうかりんさんは応えた。肉食獣が微笑むならきっとこんな感じなのだろう。


「まな板シールドよ」
「はい?」
「まな板シールドの『天子』よ」
「まな板?」
「まな板よ」


無言で霊夢が針を投擲した。手首を狙ったらしく途中で軌道が大きく変化したのがチラリと見えた。そして、ボーリングの玉を床に落とした時に聞こえるあのドンという音がした。霊夢の針は見事に掲げられた『まな板シールド』によって塞がれていた。


「ウェヒヒヒ、気持ぢい」


霊夢に一言謝りたい。正直、霊夢の本気よりもあの盾にされている人が気になってしょうがない。何故、涎を垂らして笑っていられるのだろう。


「成程、強いわね」
「手癖の悪いお子様ね」


誘拐犯に至ってはポロポロと涙を流しながら私の愛した幻想郷がと呟いていた。あまりに哀れだったので拘束を解いて、ハンカチで汚れた顔を拭いた。私にはそれくらいしかできなかった。


『いともたやすく行われるえげつない行為』
『物理法則に縛られない』


霊夢が重力を無視して空にふわりと浮き上がり、まるで地面から生えてくるかのようにゆうかりんさんが複数人現れた。


「どうしてこうなった」


思わず私は声に出した。本当にどうしてこうなった。




[35503] うちの妹が天人をヒャッハーしてる件について
Name: myon◆d57a7827 ID:11c27b96
Date: 2013/01/06 23:15
部屋の隅、体育座りで俯いているタンコブのできた誘拐犯(腕)

優雅に紅茶を啜っている風見幽香さん

目からハイライトが消えた紅白で脇が開いた独特な巫女服を着た美女

目からハイライトが消えた化け猫の女の子

ハムスターのごとく、頬を膨らませ私の膝の上に座っている霊夢

机の下に転がっているまな板シールドの女の子

外の花畑で楽しそうに遊んでいる異種族混合の子供たちと作業をしている風見幽香さん達(分身?)

『児童保育所 ゆうかりんランド』の一室のそんな奇妙な雰囲気に飲まれつつも、私は霊夢が暴れない様に腰の周りに手を添えた状態で状況の整理を始めた。そして、改めて自分自身に問うた。


どうしてこうなったと。


霊夢がゆっくりと空中に浮かび上がり、ゆうかりんさん(後の自己紹介で『風見幽香』さんという名だと知った)が大勢に増えた際に、私は何故か「この二人に喧嘩をさせると恐ろしいことになる」という感覚に囚われた。いけない。それだけは避けなければならないと。


「霊夢っ!」
「えっ!?」


空中に浮かび上がった霊夢の足に私が抱きついたため、霊夢の集中力が完全に途切れた。風見さんが慌ててまな板シールドを振り抜くのを止めようとしたのが見えたが、時既に遅し、止められなかった。


「せいっ」
「きゃっ」


しかし、まな板シールドの直撃よりも霊夢が掌底を放った方が早かった。まな板シールド(女の子)の胸部が霊夢の掌底で弾かれ、その衝撃に耐えられず、風見さんはまな板シールドを手放してしまった。


「出なさい!藍、橙!私が兄さんを遠ざける間時間を稼いで!」


見覚えのある狐と黒猫がいつの間にか霊夢の真下に佇んでおり、次の瞬間、物凄く胸が大きな巫女さんと獣耳と尻尾の生えた女の子になっていた。正直、意味が分からない。確かに目撃したものの、その過程が全く理解できない。


「藍!あなた何してるの!?橙も危ないからこっちに戻りなさい!」


慌てる誘拐犯(腕)に霊夢がどんな表情でその事実を告げたのか、私からは見えなかった。


「とっくの昔に私が主従権奪ってるけど?」
「……え?」
「私が式神の主」
「…嘘よね?藍?ねえ、私達家族よね?橙も何か言いなさいな」
「変だと思わなかったの?兄さんが藍と橙に直接触れているのに、私が何もしないなんて」


誘拐犯(腕)の顔色は蒼白から土気色に変化した。確かに霊夢は狐を捕まえたことは何度かあったものの、危害を加えたことは一度もなかった。黒猫に至っては一度も捕まえていない。


「奪えるはずないわ」
「本当に?絶対にそうだと言い切れる?私の兄さんへの愛があなたの能力を下回るって本当に断言できるの?」


瞳孔を大きく見開き、虚ろな笑みを浮かべながら霊夢は告げた。




「ねえ、今どんな気分?いきなり家族を奪われた気分は?」




静観している風見さんを背に霊夢は私から名残惜しそうに離れ、誘拐犯(腕)の顎を掴み眼を覗き込んだ。


「ずっとあんたがやってきたことでしょう?やろうとしたことでしょう?」
「……っ」
「私から兄さんを、家族を奪おうとしたじゃない。何度も、何度も」
「否定はしませんわ。私は私にとっての優先順位を選択したまで」
「藍から十分に情報を聞けたし、仲間も含めて全滅させてやるわ」
「なるほど、通りで最近結界が緩み治安が悪くなっていると思いましたわ」


私は日常の一部として捉えてしまった霊夢と誘拐犯の攻防だが、霊夢からすれば家族を奪われかねない、必死の攻防だったのだろう。霊夢の焦りを、気持ちを理解できていなかった私は兄失格だ。


「霊夢。落ち着いて」
「大丈夫。私は冷静よ」
「…ごめんね」
「…何が?」
「気づかなくて」
「本当に兄さんは危機感が無いんだから」


冷静とは思えなかったので、私は霊夢を後ろから抱きとめ、頭を撫でる。さて、どうしたものかと思案していると風見さんが何か言いたげな様子で上空を指差した。ふと上を見上げるとまな板シールドが落ちてきている途中だった。このままだと私にぶつかるだろう。


「アハッ♪」


生まれて初めて霊夢にゾッとした。その時、霊夢が浮かべていた笑みはそのくらいサディズムに満ちた笑みだった。口の端をつり上げ目を細め、いかにも悪いことを思いついた表情だった。ああ、この表情は不味い。本気で怒りつつも冷静に相手の精神にダメージを与える感じだ。


落ちてきたまな板シールドを霊夢は的確につかみ、誘拐犯の方に投擲した。自称5km先の硬貨を打ち抜ける霊夢による投球は、誘拐犯が咄嗟に展開した空間のスキマと呼べるべきものをスライダーのように迂回した。しかし、それも予想していたのか新たに展開されていたスキマにまな板シールドは吸い込まれ、別のスキマから遥か遠くに見事な放物線を描いて飛んで行った。


「危ないっ!」


私が警告を発したことで間一髪誘拐犯の回避が間に合った。いつの間にか橙と呼ばれていた女の子がバールのようなものを誘拐犯の頭に向けて振り下ろしていた。それを誘拐犯は自身が空間のスキマに飛び込むことで回避した。


「霊夢!止めて!アレ頭に当たったら死んじゃうって!」
「嫌よ。兄さんを、私の家族に危害を加える犯罪者はここで潰すわ」


誘拐犯の件を日常の一環として見逃していた件は私の責任だ。霊夢が守ってくれるから大丈夫だと無意識に逃げていた私の落ち度だ。誘拐犯については後で決着を付けないといけんが、まず妹に殺人を犯させないことが第一だ。


霊夢の行動原理は家族の安全だ。頭の良い霊夢の事だ、私や両親の安全を第一に行動し、万が一私が誘拐犯に拘束された場合のことも視野に入れているはず。発信機くらい服に着いていそうだ。後は霊夢がとる対策として考えられるものを想定し、ふと思いついた。霊夢なら私にも主導権を残してくれているのではと。……有り得る。過保護な霊夢なら十分に。


「藍さん。あの人が出てきたら取り押さえてください。橙さんはそのまま待機」
「かしこまりました」
「はい」


霊夢は私が抑えているのでこのまま話し合いに持っていければなんとかなりそうだ。


「……あ、さすが兄さん」
「大体霊夢が考えそうなことくらい分かるよ」


やっと霊夢が落ち着いてくれたので、誘拐犯と話そうと振り返ると。誘拐犯が巫女さんと風見さんにボコボコにシバかれていた。私は取り押さえて欲しいと依頼したはずなのだが。


「まさか、あの時盗撮されているなんて思わなかったわ。私もまだまだね。まあ、これで魔理沙とアリスにバレずに済むわ」
「あなた初めからコレ狙ってたわね」
「当たり前じゃない」


その後、巫女さんに見事な関節技を決められ、意気消沈してしまった誘拐犯を横目に、何か通じるものがあったのか霊夢と風見さんはがっちりと握手を交わしていた。


「やっぱり愛よね」
「ええ、あなたもとっても素敵よ」


想定外だったがこれで綺麗に収まると思った私は危機感が本当に足りなかった。あまりにも当然のように武器として扱われていたので、まな板シールドが人間であることをすっかり失念していたのだ。


人間ならば意思疎通ができる。故に余計な情報を外部に与えてしまうことがある。


私はそれを完全に失念していたのだ。


あの時、まな板シールドにまで気を回していれば、輝夜と霊夢の関係があれほど拗れることもなく、藤原さんが悲劇に巻き込まれることもなかったのだ。





[35503] 幻想郷縁起 『風見幽香』の章
Name: myon◆d57a7827 ID:1991e979
Date: 2013/05/04 20:17
幻想郷縁起 『風見幽香』の章


名称:風見幽香 (かざみ ゆうか)
起源:花々
能力:花を操る程度の能力
住居:太陽の畑、児童託児所ゆうかりんランド
友好関係:植物を愛する子供たちには理想の教師であるが、自然を敬わない者に対しては極めて残忍
危険度:どうあがいても絶望。勝てる気がしない。



・『霧雨家の婿』『アリスの旦那』『ゆうかりん先生』等々、恐らく人里で最も愛されている妖怪であると思われる。彼女が解決した数々の異変については下記に記すが、風見幽香程母性に溢れる妖怪は他に居ないだろう。取材の際に顔を埋めて感触を確認したが、極めて中毒性が強い。まるで春の日差しの様な心地良さに加えて、花の良い香りが漂ってくるのだ。D-89パネェ。



<花を操る程度の能力について>
・花々の成長を促したり、季節外れの花を咲かせる等一見戦闘に向いていない能力のように思われるが、後述の『霧雨魔理沙』の提案、もとい発言により非常に強力な能力となった。

・曰く「『花を操る程度の能力』なら幽香が花として認識したらなんでも操れるんじゃないか」と

この結果、花の化身であり、花の妖怪である自分をほぼ無限に生み出せるようになってしまった。分身はどれもが本体であるため、一体でも即死しなければ無限に再生することができる。何その無理ゲー。この無限分身は通称『いともたやすく行われるえげつない行為』と呼ばれており、風見幽香が最強の妖怪であることを裏付ける能力となっている。

さらに、花であればなんでも操れるため、麗しい少女や花よ花よと育てられたお嬢様も対象になっているらしい。著者は目撃したことが無いが、本人曰く

「身体に一切の害を与えることなくオシオキができる」

とのこと。経験した者は例外なく彼女をお姉さまと慕うようになっている。是非、一度体感してみたいものである。ちなみに某五名の大妖怪通称、Big 5 もしくはBBAに対して使用してみたところ、能力は全く効果が無かったとのこと。BBA無理するなと言いたいが、最近恋する乙女に成りつつある某妖怪の賢者には一部効果があったと、あの風見幽香が全身に鳥肌を立てながら語ってくれた。何ソレ怖い。


<主要な攻撃手段について>

・日傘で撲殺
→どんな強度をしているか分からないが、頻繁に相手をいつも手にしている日傘で撲殺しているのが目撃される。日傘も『幻想郷で唯一枯れない花』と認識しており、無限に分身した際には日傘も同数に増やすことができるらしい。時折、敵を真っ二つにしているが、それは単に力任せに斬っているらしい。

・ビーム
→通称、弾幕と呼ばれる妖力や魔力を使用した光弾による攻撃方法だが、風見幽香の場合は力が強過ぎる為、球体では無く、光線の形状で攻撃する場合が多くみられる。

1.分身して全方位から囲む
2.チャージ
3.砲撃

上記三段階で大体の敵は詰む。というか、避けようが無い。うまく囲んで相殺するため周りに被害はほぼ出ないという利点がある。妖怪の賢者である八雲紫曰く、「瞬間移動でもできない限り避けるのは不可能」とのこと。一度入浴中の盗撮を試みた自称最速の天狗がいたが、全方位から囲まれて、1mmの隙間もない状況で攻撃されたら、速さなんて関係なかった。それでもフィルムを守り抜いた天狗には心からの賛辞を送りたい。


・踏む
→ご褒美だ。ただ一言、それだけは伝えておく。アングル次第では十分に見える。


・握って捻じる
→どこをとは言わない。時折、首の場合もある。運悪く目撃したら一生賢者。
ゆうかりん!オレだ結婚してくれ等と発言したモノの末路は大体コレ。



<風見幽香が関わった異変>

『異生物異変』
・『身長約2Mのマッチョなゴキブリ』の軍団に幻想郷が襲われ、人間・妖怪共に多くの犠牲者が出た歴史上最悪の異変。数々の勢力が尽力したにも関わらずその圧倒的な数の暴力により、被害が手に負えなくなった際に、風見幽香が無限分身を行い、ゴキブリを駆逐した。

・ゴキブリの白いドロドロの体液に汚れつつも圧倒的な暴力で敵を蹴散らす風見幽香を前にして、大半の男性は前かがみになってしまい使い物にならなかった。尚、この異変以降、人間・妖怪を問わず男性は使えないという認識が強まった。(当代の博麗の巫女『博麗九美』、人里の守護者『上白沢慧音』、紅魔館の門番『紅美鈴』、フラワーマスター『風見幽香』の戦闘中の姿は素晴らしかった。謎の白い液体は衣類を若干スケさせる効果があったことだけはあの忌々しいゴキブリどもに感謝したい。)

・この謎の白い液体と触手に塗れた世紀末な幻想郷にて、せめて子ども達でも健やかに育てるようにと多くの寄付を募り『児童託児所ゆうかりんランド』がこの異変を契機に設立された。無限に分身できるため、子供たち一人一人に適宜対応できるうえ、自然にさえ敬意を払っていれば絶対に安全、且つ料金も良心的という素晴らしい児童託児所ができた。時折、風見幽香をお姉さまと慕ってしまう子供が出てくるのはご愛嬌。


『辻斬り異変』
・庭師である『魂魄妖夢』が主人の命令で春を探して求め、辻斬りを行ったため、風見幽香を中心とするPTAのメンバーが直接乗り出した異変。

「こんな年頃の女の子に春を買いに行かせるなんて、どんな情操教育しているんだ!」

とは人里の守護者の主張。その後、保護者である亡霊姫の待遇が労働基準法を満たしておらず、『魂魄妖夢』が十分な情操教育を受けていないことが発覚したため、しばらく児童託児所ゆうかりんランドに預けられた。今では、風見幽香をお姉さまと呼ぶ程慕っている。いつの間にか男を知った顔になっていると亡霊姫が嘆いたらしいが、本人に直接尋ねたところ、異性経験は無いらしい。異性は無いとのこと。大事なことなので二度記す。


<平ら事変>
某天人『まな板シールド』が幻想郷征服を試み、博麗神社を襲撃した際に、『博麗九美』と『八雲紫』によって返り討ちにされた。後に、紅魔館、永遠亭、ゆうかりんランドを襲撃したため風見幽香によって調教され、新しい何かに目覚めた異変。一部の建物が倒壊し平らになったものの、人的被害はなかった。この異変の結果、某天人は精神的に深刻なダメージを負った。

「胸を殴ったら、手首まで陥没した。何よアレ反則じゃない」

大丈夫だ、ステータスだと著者が必死に励ましたが、本人は納得しなかったらしく、ドMに目覚めることで自我を保った。今では『児童託児所ゆうかりんランド』で時給800円で用心棒兼武器として働いている。


<吸血鬼事変>
幻想郷を紅い霧が覆い隠すという大規模な異変だったが、『児童託児所ゆうかりんランド』の子供たちの尽力によって解決された。数十人の風見幽香の立会の下、紅魔館の門前で子供たちによる「フランちゃーん、遊ぼー」コールにより、紅魔館は倒壊。狂気を纏った最終鬼畜妹『フランドール・スカーレット』は数十人の風見幽香によってあっけなく取り押さえられて、正しい遊び方を言語的且つ物理的に教わった後、子供たちの仲間入りを無事に果たした。


「私もお姉さまみたいな大人の女性になりたい!」
「そう。なら、いいことを教えてあげるわ。あなたが大人になる方法」
「なれるの!?」
「ええ、あなたの能力で身体が成長しないっていう概念が壊せるように練習すればいいのよ」


あのお姉さまの一言と託児所のみんなのお蔭で自分は救われたとナイスバディ兼知能も大人になったフランドール・スカーレットは自身が大人身体を手に入れた経緯を誇らしげに著者に語ってくれた。彼女は現在、人里で教師になるための勉強をしている。友人である古明地こいし、ぬえと共に大人の身体を手に入れ、姉はロリという奇妙な構図だが、姉どもを弄るのが、風見幽香の愉悦の一つらしいので、姉が妹の胸囲の格差を埋めることは当分無いだろう。喜べロリコンども。



<霧雨魔理沙及びアリス・マーガトロイドとの関係について>

某新聞記者の協力の下、調査を試みたが情報を得ることができなかった。尚、著者は常に新しい情報を募集している。



<所見>
・自然を慕うものにとってはこれ以上優しい存在はいない。基本的には淑女であり、良き教師である。それと同時に常に人を滅ぼす力を内包していることから自然の化身であるとも考えられる。いずれにせよ、実力や人里との関係を考慮し、敵対すべきではないと思われる。




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