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[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 2-10投稿
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/24 17:36
こんにちは。
かなり頭悪いSSです。


3DSパルテナの鏡の操作が難しいなあ。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/04 22:23


 長谷川千雨には誰にも言っていない秘密がある。
 それは千雨が『生まれる前から』抱えていた事情。
 よく覚えていないが、千雨ではない誰かだった記憶。


 新学期初日、中学三年生になった長谷川千雨は、友人の宮崎のどかと二人で暗くなった桜通りを歩いていた。
 好みのジャンルは違うが、二人とも本が好きなので、話は自然と本の話題になる。
「――っていう著者の本はあんまり信用できなくてなー」
「あれ? この前分かりやすいって言ってなかった?」
「んー、理解できてくると内容が初心者向けに偏りすぎてるという事が……」
 千雨が言葉を切ったその時、一際強い風が吹いて、のどかがビクッと体を固くした。
「どうした?」
「う、ちょっと学校で聞いた噂のことが……」
 桜通りの吸血鬼。満月の夜に出てくるという化け物の噂。
「いや、のどか。吸血鬼なんていないから――」
 千雨は気の弱い友人に“嘘”をついて安心させようとした時。
「25番長谷川千雨に、27番宮崎のどかか……」
 第三者の声にバッと振り返る。
「悪いが、少しだけその血を分けてもらうよ」
 黒い布を身にまとった、怪しい人物が、そこに立っていた。
「……なんだテメー?」
「言う必要性があるとは思えないな」
 不審者の口元がわずかに見えた。その口の端は、こちらをあざ笑うかのように吊り上っていて、
「どうせこのことは忘れてしまうのだからな!」
 そう言い放った不審者は、勢いよく千雨に飛び掛かってきた。
 不審者に押し倒され、身動きができなくなった千雨を見て、のどかが叫ぶ。
「ちさめ!」
「のどか! 警察に、いやにげろっ!」
 千雨の言葉を聞いて、急いで携帯電話を取り出そうとしたのどか。しかしその手が、急に不自然に上げられた。
「あうっ」
「のどかっ!」
「警察は面倒だからな、大人しくしていてもらおう」
 千雨の目には、不審者の手からキラキラしたものが伸びているのが見えた。おそらく糸か何かがのどかの手を縛り上げたのだろう。
「さて、少し痛いかもしれないが、まあ我慢してくれ」
「放せ! このヤロウ!」
 千雨は必死に抵抗するが、押さえるのがうまいのか、胴の上の小柄な不審者はびくともしない。
 せめて一発ぐらいブチ込む力があれば。
 そう思う千雨に不審者の顔が近づいてきて、ようやく見えた不審者の素顔に千雨は驚愕する。
「なあに、死にはしないさ」
 そういって、不審者――エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの小さな牙が千雨の首筋に突き立てられた。

 ドクン。

 千雨は、エヴァンジェリンの牙から何かが自分の体に入り込むのを感じた。
「ひぐっ!?」
 急にエヴァンジェリンが妙な声を上げて千雨の首筋から離れた。
「痛た……なんだ? 急に血が冷たく……?」
 千雨の血が勢いよく全身をめぐりだす。それなのに体温はちっとも上がらない。それどころか冷たくなっていくようだ。
 だが、これが正常。冷えていく千雨の頭が、魂の記憶がそう語っていた。
 そうだ、私は――。
「コラーッ!! 僕の生徒に何するんですかーっ!」
 そこへやってきたのは、担任の子供先生、ネギ・スプリングフィールド。
 彼の手から何かが放たれる。
 それは、千雨が千雨でなかった時の記憶を強く呼び起こした。
 記憶は完全ではない。しかし、重要なことは思い出した。

 『あたい』は氷の妖精『チルノ』だ。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 2
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/06 17:57
 千雨が『チルノ』だったころの記憶を取り戻してからしばらくして、神楽坂明日菜と近衛木乃香がやってきた。
 明日菜はどこかへ行ってしまったエヴァンジェリンとネギを追いかけていき、千雨と木乃香は気を失っていたのどかを寮に運ぶことにした。
「ほんまに大丈夫なん? 顔色わるなってるようにみえるけど……」
 のどかを背負う千雨を心配する木乃香。生気のない顔で千雨はこう答える。
「ああ、大丈夫だ……そう、大丈夫だから。うん」
 このやり取りは何回かおこなわれた。
 のどかが気を取り戻したのは寮につく少し前で、不審者のことを千雨に尋ねてきたが、千雨としてはそれどころではなく、適当に流しておいた。
 二人と別れた千雨はダッシュで自室に入り、すぐさま鍵を閉めてベッドに飛び込んだ。
「ああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!」
 ゴロンゴロンとのた打ち回り、布団をかぶって絶叫した。
「なにがサイキョーだあぁぁっ!! ノーミソ最弱じゃねえかあああぁぁぁ!!」
 思い出される『チルノ』の記憶。
 カエルを凍らせて遊んだ記憶。
 オオガエルに頭からたべられた記憶。
 簡単ななぞなぞに答えられなかった記憶。
 どんどんでてくる馬鹿丸出しだった過去の記憶。千雨としてはもう恥ずかしくて死にそうだった。



 何とかヤバい記憶を封印し終わった千雨は、ネットで過去の自分に関わることを調べていた。
「まあ、出てくるわけねーな」
 もともとあんまり期待はしていない。幻想郷は妖精やら妖怪なんかが闊歩していたところである。別の世界にあるとか、何らかの方法で隔離されているのだろう。
「皆どうしてるんだろうなー……」
 一緒に遊んだ仲間を思い出す。
「……いなくなったことに気が付いてない。……いないことは気が付いたけど、まあいいやで終わった。……そもそも存在自体忘れられた」
 ありそうでちょっと泣きそうになった。
「それでも、大ちゃんならきっと……」
 一番仲の良かった妖精なら、心配してくれていると願う千雨であった。
「まあ、もう『千雨』になっちまったしな……」
 元通り、とはいかないだろう。何よりあのころの『チルノ』はいないのだから。
 パソコンの電源を切ったところで、ふとあることを思い出した千雨。
「……ちょっとやってみるか」



 パソコンを能力で冷やしながらオーバークロックしてみたらすごいことになった。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 3
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/06 22:50
 夜中、トイレに起きたらその間に不法侵入された。
「……瞬間冷凍ビーム」
 千雨の指先から放たれた怪光線が直撃してエヴァンジェリンの頭部が見事に凍った。
「マスター!」
 ついでにロボットも凍らせておいた。



「殺す気か貴様ッ!」
 パソコンの時の様に能力が及ぶ範囲を調整しなかったので、見事に故障した絡繰茶々丸。
 彼女を部屋の外へ運び出している最中に、復活したエヴァンジェリンが怒り出した。
「吸血鬼がそのくらいで死ぬかよ」
 ぐぐぐ、と何か言いたそうにしているが、無視して千雨は作業を続ける。
「で、何しに来た? 献血する気はないぞ」
「記憶の処理をしに来たんだが、……この様子なら必要なさそうだな」
 何とも穏やかではない話である。
「必要ないって……」
「貴様は一般人ではないだろう?」
 確かにもう一般人は名乗れないだろう。生身で冷凍ビームとか物理法則無視してるし。
「ふう」
「というか貴様さっきから何をしている」
 エヴァンジェリンが千雨の部屋から出てきて見たのは、氷のベッドに寝かされた茶々丸の姿。
 呆然とするエヴァンジェリンの肩をたたいて、千雨は言う。
「運びやすいようにしてやったから、ハカセに見てもらえ」
 千雨が渡したのは、一本の綱。見れば両端が氷の中に入っていて、氷塊を引きずることができるようになっていた。
「なッ!? こんなもの引きずってたらあからさまに怪しいだろうが!」
 エヴァンジェリンを見る千雨の視線は冷たかった。
「何言ってやがる。桜通りの噂の不審者当人で、不法侵入者だろう? 運びやすくしてやっただけありがたいと思え」
 無情にもドアは閉められて、エヴァンジェリンは立ち尽くすしかなかった。



 氷のそりは意外と引きずりやすく、茶々丸を葉加瀬聡美の元に持っていくのに時間はかからなかった。



「また来たのか」
「あたりまえだ。こちらの要件は終わっていないんだぞ」
 千雨の部屋に勝手に上り込んで、勝手に座り込んだエヴァンジェリンは単刀直入に言った。
「貴様、何だ?」
「……妖精さん」
「馬鹿にしてるのかぁーッ!!」
 とりあえず凍らせて、寮の外に放り出した。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 4
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/07 10:12
 翌日、茶々丸は普通に出席していた。葉加瀬の顔を見ると目の下に隈ができていたが、よくあることなのでたぶん大したことはなかったのだろう。
 千雨は、ネギと茶々丸の会話でエヴァンジェリンが保健室にいることを知った。
「よう」
 席に戻る途中の茶々丸に声をかけた千雨だったが、ぷいと顔をそむけられた。
「あー、……悪かったな」
 一応謝罪してみたが、無視して席に座ってしまった茶々丸。
 そこでふと千雨の中に、ちょっとした悪戯心が湧き上がる。
 もともと悪いことをしたのはあちらのほうだし、謝罪も聞き入れないというのはいかがなものかと自己正当化した千雨は、おもむろに茶々丸のゼンマイに手をかけた。
「ッ、何を!?」

 カリッ!
「ッ、あんッ!」

 茶々丸の口から突如発せられた、なんかこうアレな動画でしか聞けなさそうな声に教室が凍った。
「は、長谷川さ――」
 カリッ!
「くはぁッ!」

 何かの間違いだと思った千雨はもう一回ゼンマイをひねったが、結果は同じだった。
「――傷物にされた挙句、こんな声を上げさせられるなんて……」
 何やらつぶやいた後、立ち上がった茶々丸は、おもむろに千雨に向き直った。
「責任は取ってもらいます――」


「――ふつつかものですが、よろしくお願いします」
「まだどっか壊れてるだろ、お前」


 教室の時が動き出したのは、チャイムが鳴ってからだった。
「さ、さあ今日も一日頑張りましょう!」
『は、ハーイ!!』
「……誰か突っ込んでくれ」
 千雨の願いは聞き入れられなかった。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 5
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/07 13:35
 学園長に呼び出された千雨。お茶を出されて世間話中。
「このかとは仲良くやってくれてるかね」
「ええ、まあ同じ部活ですし」
 幼いころ、馬鹿にされまくったのが悔しくて必死に勉強した千雨。その頃に本が好きになり、現在図書館探検部に籍を置いている。
「ところで、最近何か変わったことはなかったかの?」
「いえ、特に何も」
 まさか前世の記憶云々を言うわけにもいかないだろう。
「……ふむ、そんなことはないじゃろ。――たとえば吸血鬼に襲われたとか」
 そう言った学園長の目は鋭く光っていた。どうやらこの爺さんも只者ではないらしい。
「まさか、ぬらりひょん!?」
「……ワシ、人間じゃよ?」
 説得力がない。 



「はあ、魔法使い、ですか」
「たくさんおるのじゃよ。普通の人間は知らんがの」
 そこで千雨の脳裏にひとつ疑問が浮かぶ。
「でも、魔法使いって不老不死だから、いつか人間にばれると思うんですが……」
「……は?」
 どうやら種族が魔法使いなんてのはすでに居なくて、なる方法も失われているらしい。
「それにしてもおかしな話じゃのう。禁術のことは知っておるのに魔法使いがたくさんいることは知らんとは」
 まあ、ここまで来たので、千雨は前世で特殊な場所にいて、そのころの記憶を持っていることを話した。
「ふむ。そうか……。その辺に謎があると考えていいのか……」
「謎?」
「うむ、君は自覚していないかもしれんが、現在君はワシらが魔力と呼ぶ力を、ものすごい勢いで放出し続けている状態なのじゃよ」
「はあ」
「君自身の魔力容量は普通の人間の平均程度で、現在もそのまま。放出している魔力量は莫大。普通に考えればすぐに気を失ってもおかしくない状態じゃ」
 タライの水をバケツでくみ出しているのに、ちっともタライの水が減ってないような矛盾。
 そこで何がどうなっているのか気になった学園長は千雨を呼び出したらしい。
「元気そのものですけどね」
「何が原因なのやら……」
 と、そこで千雨の携帯が鳴った。
「あー、もう時間か」
「何か予定でも?」
「ネギ先生が元気ないみたいなので、パーティーでも開こうかって話が」
「ふむ、そうか……。千雨君には特に問題もないみたいじゃし、今日は帰っても構わんよ。調査は続けてみるが」
「はい、それじゃ失礼します」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 6
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/07 18:49
 寮の大浴場で行われたネギ先生を元気づける会が、ネギ先生に逆セクハラする会になってしまった。
「頭冷やせ」
 桶ですくったお湯を一気に冷やしてぶちまける千雨。調整に失敗したので8℃程度まで下がってしまったが気にしない。
「つ、冷たいッ」
「千雨ちゃんどっからこんな冷水持って来たの!?」
 歯止めが利かなくなりそうなのでお開きにしようとしたが、千雨の一撃で体が冷えてしまった面々から抗議の声が。
「体冷えちゃったもん!」
「5分もつかってれば温まるだろ。そしたら出てこい」
 付き合いきれなくなった千雨は脱衣所に移動する。
 と、そこで何やら妙な声を聞き取った千雨。
「うへへ、こりゃまたイイ感じの……」
 そこにはどう考えてもエロいことを考えている様にしか見えない小動物が!

 ガシッ!ボカッ!

「何モンだてめー」
「きゅ、きゅー!」
「とぼけんな」
「あ、アルベール・カモミールと申します……」
「しゃべるネズミか」
「猫妖精に並ぶ由緒正しいオコジョ妖精つかまえてネズミ呼ばわりとはなんだ!」
 瞬間、千雨の周囲の温度が下がった。
「……妖精?」
「おうよ!」
 さらに温度が下がる。
「……お前が?」
「何度も言わせんな!」
 かつての友、仲間、そして自分自身の尊厳を守るため、千雨は動いた。
「よし、久しぶりにコールドスリープごっこするか。今回は下品なオコジョでやろう」
 ようやく千雨の怒りに気が付いたカモが尋ねる。
「……あの、コールドスリープごっこって?」
「一瞬で凍らせた生き物を水に入れて戻して、それで生き返ったら成功っていう遊び」
「……殺される!」
 にっこり笑った千雨が言う。
「大丈夫。カエルでは三回中二回は成功してたから」
「あの、残りの一回は……?」
「砕け散るよ」
「えっ」
「砕け散るの」



 十二回やっても失敗しなかった。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 7
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/08 11:12
「うー」
 夜、鼻水をすすりながら茶々丸のゼンマイを巻くエヴァンジェリン。
 ゼンマイを巻くのは魔力供給の儀式で、茶々丸が活動するために必要な行為だ。
「すみませんマスター。もっと強くしていただけないでしょうか?」
 従者の要望に、エヴァンジェリンは顔をしかめる。
「これ以上は無理だ、体調が悪い。くそ、長谷川千雨のせいだ」
「……わかりました」
 魔力供給も終わり、エヴァンジェリンは眠りについた。
 その様子を確認した茶々丸は、小さくうなずいて立ち上がった。


 茶々丸が訪れたのは、千雨の部屋。
「巻いてください」
「なんだ藪から棒に」
「あなたが! あなたがこんな体にしたんじゃないですか!」
「いや、わけわからん」
 半分寝ぼけていた千雨はとっとと帰ってもらう為に、巻いた。

 カリカリカリカリカリカリカリガリガリッ!
「そッ、いきな、ああっ、や、んくっ、ぃいやあああああああぁぁ!!」

「もういいな。ハイじゃあお休み」
 玄関が閉められて、倒れ伏す茶々丸が残された。
「普段からあんな声出してるのか? 作ったのはハカセ達のはずだから。……ちょっと付き合い方考えたほうがいいかもしれんね」
 その日の千雨の夢には、オヤジ臭いことを言いながらゼンマイを巻くエヴァンジェリンと、喘ぐ茶々丸が出てきた。


 次の日の授業中。
 そこには授業そっちのけで千雨をガン見する茶々丸の姿が!
「あ、あの茶々丸さん、ちゃんと授業を……」
「すみません、ネギ先生」
 茶々丸は謝ったが、千雨を見続けていた。

 昼食の時間。食堂に行こうとした千雨の元にすっと近寄ってきた茶々丸。
「千雨さん」
「……なんでしょう絡繰さん?」
 スッと差し出されたのは、お弁当箱。
「……これからも、よろしくお願いします」
 名残惜しそうに教室から出ていく茶々丸。
 綾瀬夕映の言葉が教室に響いた。
「茶々丸さん、本気なのでしょうか?」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 8
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/08 17:16
 休日。
「ふんふんふーん♪」
 千雨は山のほうの空を気分よく飛んでいた。
 飛ぶために羽を出してみたら毛や瞳の色が青系統に変化したので、服装もチルノ時代に着ていた物によく似た、白いシャツの上に青いワンピースにした。
 さすがに下から丸見えは勘弁なのでジーパンを着用している。伊達メガネは外して、リボンを頭につけた。色は迷ったが青にしておいた。
「ケロちゃんスイスイすーわこー♪ あー、あとは弾幕ごっこの相手でもいればなぁ」
 気分が乗ってきたので全方位に氷弾を放ってみる。どかーんと。

 パカンッ!
「もぎゅっ!?」

 妙な音がしたので振り返ってみれば、弾を食らったネギが落ちていくのが見えた。
「……失敗した」


「いや、ホントすみません」
「いえいえ、悪気があったわけではないんですから」
 悪気無しにはた迷惑な騒動を起こしてきた面々を知っている千雨は、悪気がなかったから許されるもんでもないと土下座しておいた。
「で、先生も空中散歩ですか?」
「え? なんで僕が先生だってわかるんですか?」
 不思議そうなネギの顔を見て、ちょっと不安になった千雨は聞いてみた。
「……えーと、私が誰だか分かりますか?」
「あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。まだ未熟ですが魔法使いのネギ・スプリングフィールドです。妖精さんのお名前は?」
「……チルノです」
「チルノさんですか。素敵なお名前ですね」
 どうやらこのお子様教師、本気で気が付いていないようである。
「実は僕、逃げてきたんです」
 訂正する間も無しに話が続けられた。
「えーと、何でまた?」
「エヴァンジェリンさんっていう真祖の吸血鬼から逃げてきたんです。僕がいると皆さんに迷惑がかかると思って……」
「でも真祖とかいっても結局は吸血鬼ですよね?」
「えっ」
「えっ」

 どうやら認識にかなり齟齬があるらしい。

「六百万ドルの賞金首……」
「はい、惨敗してしまって……」
「……てっきり先生が懲らしめたから二日も保健室登校してたのかと」
「えっ」
「いや、なんでもないです」
 そこにガサガサと物音がして、現れたのは長瀬楓。
「おや、そこにいるのはネギ坊主と……」
 なぜか必死に千雨を体で隠そうとするネギ。
「あうあういや違うんですこの方はえーとなんというか――」
「……妖精!? まさか本当にいるとは!」
「あああああああ、ばれちゃったあぁ」
 ガックリしているネギと楓を見て、千雨は本当に気が付いていないのか確かめるべく声をかけた。
「あー長瀬、これはだな……」
「なんと! なぜ拙者の名前を!?」
 ネギのほうを見たので、千雨もネギのほうを向く。
 ジェスチャーで違う違うとネギが否定。
「ネギ坊主が教えたわけでもない!? 本物!」
 千雨が目を見開く長瀬楓を初めて見た瞬間であった。
 もしかして誰にも気が付かれないのだろうかと不安になる千雨。
「すみません、ちょっと失礼します」
「えあっ!? ちょっとチルノさん。チルノさーん!!」



「ゆえゆえ! 妖精さんが私の名前を!?」
「ちょっとまってください妖精がのどかの名前を知っているからと言って誰かがのどかの名前を教えたことは否定できないのですが実際にこの目の前に妖精がいる事実そのものは否定できなくて――」

「ひゃ、妖精さんや! あ、握手してください! うわあうわあ、おじいちゃんウチ妖精さんに名前呼ばれたー!」
「お、お嬢様ッ! まさか西がこのような手段を用いてくるとは! 仕方がない、学園長に連絡を取って……」

「ほらほら妖精さんがきたえ! ほらおじいちゃん!!」
「ぬ、ぬう……西……、いやそれにしてはおかしい。まさか本当に……」

「スクープキタ――――――!!」


「何でだれも私だって気が付かないんだろう?」
 自室で膝を抱える千雨。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた ⑨
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/10 11:14
 メンテナンスのための一斉停電が始まった。茶々丸が結界の機能を停止させ、エヴァンジェリンは魔力を取り戻した。
「ふふふ、これであとは坊やの血を絞り尽くすだけだ」
 エヴァンジェリンは新学期開始の前日に血を吸った佐々木まき絵を操り、明石裕奈、和泉亜子、大河内アキラを下僕に変えた。
「そういえば長谷川千雨の血も吸っていたな。奴には氷に閉じ込められた借りもある。ク、ククク」
 どのように千雨を料理するか考えるエヴァンジェリンはニヤニヤと笑っていた。
「まあ、こんなことに時間をかけるべきではないか。とりあえず『来い』、長谷川千雨」
 そうエヴァンジェリンが命令すると同時に、寮のベッドで寝転がっていた千雨が起き上がった。


 まき絵からエヴァンジェリンのメッセージを聞いたネギは、完全武装して大浴場へと向かう。
「エヴァンジェリンさん! まき絵さんを解放してください!」
 ネギが声をかけるが、返事はない。
「エヴァンジェリンさん! ……そういえば、まき絵さんは確か十分後って言ったな……」
 時計を見てみると、九分しかたっていない。
「あと一分……」
 今のところ罠らしきものはなかった。どこかに潜んでいるのか、それとも一分後にやってくるのか。
「……一分経った」
 しかし何も起こらない。
「おかしいな?」
 そのまま十分が経った。
「兄貴! 無事か!? ……あれ? エヴァンジェリンは?」
「ちょっとネギ! あんた何考えてんのよ!?」
 明日菜とカモが追いかけてきた。
「あ、明日菜さん。なんで?」
「なんでじゃないわよ! 私が来たくて助けに来たんだから迷惑でもなんでもないの! ……で、エヴァンジェリンはどこ?」
「ええっと、それが十分待ってるんですが……。まだ来てないみたいで」
 その時、突然直径10mはある氷塊が大浴場に飛んできた。
「うわあーっ!」
「な、なんだ!? エヴァンジェリンの攻撃か?」
 氷塊が開けた穴から外をのぞいてみると、そこにはエヴァンジェリン、そしてパジャマのチルノ(千雨)の姿が!
「えっ!? チルノさん?」
「うわ、あれ、もしかして噂になってる妖精じゃないの?」
 全方位に連続して打ち出される氷の弾幕から逃げ惑うエヴァンジェリン。
「ギャー! 誰か助けてーッ!!」
「だからさっきからこの頭にキンキン響く声を止めろって言ってんだろがッ!!」
「誰かこの凶暴な妖精を止めて、っおぶっ!」
 被弾したエヴァンジェリンの腹部に大穴が空く。即座にふさがるが、氷の弾幕が止まったわけではない。
「うわーん! いくら不死身だからって何度も大けがするのは嫌だーっ!!」
「だからこの声を止めろって言ってんだろッ!!」
 なんかもう目を覆いたくなる大惨事が繰り広げられていた。
「……えーっと」
「……うーん」
 その時エヴァンジェリンとネギの目が合ってしまった。
「せ、せんせーたすけてーっ!!」
「え、えええええッ!?!?!?」
「邪魔すんなクソガキッ!!」
 ギロリと睨むチルノ(千雨)に思わず敬礼して答えるネギ。
「邪魔はしません!!」
「せんせー、見捨てないでーッ!!」
 この惨劇は停電復旧まで続けられた。止まった理由は魔力を封じられたエヴァンジェリンが即時回復ができなくなって意識を失い、千雨への無意識の命令が止まったからである。



「う、うーん、……ん?」
「あ、よかった! エヴァンジェリンさん、気が付いたんですね!」
 飛び起きたエヴァンジェリンはネギに抱き着き、ババッと周囲を見回す。
「だ、大丈夫です! チルノさんはもう居ません。落ち着いて帰りましたから!」
「本当か! 本当だな!?」
 ようやく落ち着いたエヴァンジェリンは、ふと最初の目的を思い出す。
「……呪い、解けなかった」
「の、呪いなら僕がもっと勉強して、ちゃんと解いてあげますから!」
「……本当か? 言質は取ったぞ! 約束破ったらひどいぞ!」
「がんばります!」
 その様子を見ていた明日菜はつぶやく。
「これって、よかったよかったって言えるのかしら?」


「……ところで、エヴァンジェリンさんは何時チルノさんの血を吸ったんですか?」
「あんな恐いのの血なんか吸えるわけないだろ!」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 10
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/10 09:52
「あー、眠い……。全部あのアホ吸血鬼のせいだ」
 千雨はコーヒーを飲んで眠気を覚ますためにスターブックスへやってきた。
 そこには何故か嬉しそうに笑うエヴァンジェリンの姿があった。
「えいやっ」
「おぶっ!?」
 取り敢えずムカついたので張り倒す。
「ち、千雨さん! だめですよ、暴力は!」
「長谷川千雨、貴様ッ!」
 自分でも軽率だったと思うので謝る千雨。
「あー、すみません先生」
「マテ、謝る相手が違うだろうが……!」
 エヴァンジェリンが怒るが、昨晩ピーピー泣いて逃げ回った奴に凄まれても千雨は全然怖くなかった。
「うるせえドヘボシューター。悔しかったら被弾数を一ケタ減らしてみろよ」
 ちなみに昨晩のエヴァンジェリンの被弾回数は59223回である。遠い道程だ。
「何を訳のわからんことを。貴様一人殺す事くらい造作もないのだぞ」
「あー? テメー昨日大技出したっぽかったけど、ちっとも効かなかったじゃねえかよ」
「……フフフ、とにかく貴様が今すぐ死にたいらしいことは分かった」
 始動キーを唱え始めたエヴァンジェリンを必死に止めようとネギが奮闘する。
「そ、そんな悪いことしてるとまたチルノさんが懲らしめに来ますよ!」
 苦し紛れにネギが放った一言で、エヴァンジェリンの動きがぴたりと止まる。
「……ちるのこわい」
 一気に幼児退行するエヴァンジェリン。涙目になって体育座りして震えだした。
「ごっ、御免なさいエヴァンジェリンさん。チルノさんいません。来ませんから!」
「いや、ここにいるんだけど」
 自分を指さしていった千雨に、一同がぽかんとする。
「またまた、千雨ちゃん冗談が下手なんだから」
 明日菜が笑いながら千雨の肩をたたく。
「フフフ、あまりにもくだらなすぎて逆に笑えてきたじゃないか」
「そうですよ千雨さん。どう見ても違うじゃないですか」
 笑い出した一同を見て、千雨はぱっとチルノモードに移行してみた。
「キャーッ!」
 エヴァンジェリンが見た目相応の悲鳴を出して逃げ出す。
「エヴァンジェリンさん! 待ってくださーいっ!」
 ネギがエヴァンジェリンを追いかける。
「チ、チルノさん!? え、千雨ちゃんはどこ? ちょっとチルノさん、千雨ちゃんをどこにやったの!」
 明日菜が千雨の肩をつかんで揺さぶる。
「よ、妖精さんだ! 妖精さんが出てきたぞ!」
 騒ぎ出すほかの客たち。
 ガクガクと揺さぶられながら、千雨は思わずこうつぶやいた。
「解せぬ」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 11
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/10 16:57
 修学旅行初日。千雨は空を飛んでいた。
「――ちゃちゃちゃ、ちゃちゃちゃ、うー☆ れみりゃ!」
 服装は制服。下半身の防御力を高める為にスパッツを着用済みだ。
「ねーママー、妖精さんがお空飛んでるよー」
「あら、どこどこ? ……キャーッ! 衝撃映像よ! カメラカメラ!」
 ワーワー。ギャーギャー。
 下のほうが騒がしいが、気にしない。
「お、見えてきた」
 千雨の視線の先にあるのはJR大宮駅。修学旅行の集合場所である。
「よっ」
 地面の近くまで下りて、チルノモード解除。途端に妖精を見失った人々が騒ぎ出す。
「ねえ君!」
 千雨の肩に手をかけたのは、カメラマン達撮影スタッフを引き連れたインタビュワー。偶然テレビの街頭インタビュー中だったらしい。
「なんでしょう?」
「さっきこの辺に妖精が下りてきたよね!? もしかして見てないかな!?」
「……ああー、見てたけど見失っちゃいました。どこに行ったんでしょう?」
「君も知らないかー。……お前たち、これは大スクープだ! 絶対に妖精を探し出すぞ!」
 そういって、手分けして捜索を開始するテレビスタッフ。
 彼らが去って行ったのを確認した千雨は、携帯電話を開いて時間を確認。
「八時四十八分……。よし、間に合うな」
 今朝うっかり寝坊した千雨は、騒ぐ人々の中から抜け出て大宮駅に入って行った。



 茶々丸の工作活動によって6班に引き抜かれた千雨。班長の桜咲刹那を見つけて駆け寄る。
「あれ? エヴァンジェリンは?」
 人数が足りないので尋ねてみる。
「エヴァンジェリンさんは欠席のようです」
「マスターは麻帆良から出ることができませんから」
 そんなことは初耳であるが、まあ休むという事実が分かっていればいい。
「ふーん、じゃあ相坂は?」
「え?」
 不思議そうな顔をする刹那。
「いや、だから相坂だよ。相坂さよ」
「そんな人いましたっけ?」
 茶々丸とザジ・レイニーデイに尋ねる刹那。二人とも首をかしげる。
「なんだよ、二年ちょい同じクラスにいたのに薄情な奴らだなあ。先生ー、相坂が来てませーん」
 声をかけられたネギも首をかしげる
「……あれ? そんな人うちのクラスにいましたっけ?」
「先生まで忘れてるのか……。あいつ携帯持ってないし、連絡のしようが無いな。しょうがないから欠席か……」
 お供えに八ッ橋でも買って帰ってやろうかと考える千雨であった。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 12
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/10 19:09
「あ、すいません。ジョジョ通ありますか?」
 新幹線の車内販売員に尋ねる千雨。
「え、あ、は? ジョジョ通……ですか?」
「ええ、ジョジョ通です。……ああ、あったあった」
 ひょいとワゴンからジョジョ通を取り出して代金を渡す千雨。
「……やっぱ若返ってるなー、先生」
 そのままジョジョ通を読みはじめる千雨。
「あ、すいません。私にもジョジョ通をください」
 しばらくして、車内販売員に千雨と同じものを注文する人物がいた。
「あ、はい。ええと……」
「……あ、ない」
「なんでせっかくの修学旅行なのにそんなもの読もうとするのよ」
 友達に呆れたように言われていた。
「修学旅行でもジョジョ通は読みたいよー」
 そのやり取りをきいていた千雨は親切心を出してみた。
「読み終わったら差し上げましょうかー?」
 声を上げ、仲間の居場所を確認するために席から立つ。
「え、でもいいんですか?」
「ええ、速読できるんで、すぐに……」
 声のする場所から立ち上がったのは、他の学校の制服を着た、髪の毛を左側でまとめ、サイドテールにした少女。千雨は彼女を見て止まってしまった。
「……? ちょっと、どうしたの?」
 隣に座っていたらしい金髪の少女が立ち上がり、サイドテールの少女に尋ねるが、彼女は千雨から目を離さない。
「いったいどうしたの? な――」
 先に動いたのは、サイドテールの少女。バッと音がして、一瞬で髪の色が変わる。背中から羽が飛び出した。一緒ににいた少女たちが仰天する。
「もしかして――」
 その光景を見て、千雨もバッと羽を開く。一瞬で髪と目の色が変わる。
「やっぱり! チルノちゃん!」
 サイドテールの少女、いや、『大ちゃん』と『チルノ』が呼んでいた妖精が嬉しそうに千雨に飛びつく。
「大ちゃん! どうして?」



 場所を移して二人っきりになった『大ちゃん』と千雨は再会を喜んだ。
「でも大ちゃんも生まれ変わっていたなんて……」
「チルノちゃんも人間になってたんだー」
 そして何くれとなく話し始める。
「『チルノ』の頃の事は、最近ようやく思い出したとこなんだ」
「私は小学生の頃にちょっとした事件に関わってから」
「ふーん。……魔法関係?」
「え? チルノちゃんも『こっち』にあるの知ってるの?」
「ちょっと吸血鬼に噛まれて」
「ええっ!? 大丈夫なの?」
「ああ、元凶はぼこぼこにしといた」
 あはは、と『大ちゃん』があきれたように笑う。
 そこでふと、何かを思い出したように『大ちゃん』が手をたたく。
「そうそう! チルノちゃんの『今』の名前、教えて!」
「え? ああ、千雨。長谷川千雨だよ」
「私は、高町なのは! なのはだよ。よろしく、千雨ちゃん!」
 そういってなのははにっこり笑った。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 13
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/11 14:00
 千雨がなのはと『今週の素晴らしきジョジョ立ち』について熱い感想を述べ合った後、メアドなどを交換して席に戻ったら、なぜだかカエルが大量発生していた。
「なんだぁ? ……ハッ!」
 思わず手に取ってしまったカエルを見て、違いに気が付く千雨。
「みんな! あわてるな、これはカエルじゃない!!」
「な、なんだってー!!」
 みんなが千雨のほうを向いてMMR的にリアクションを取ってくれた。
「よく見ろ! 色、湿り気、匂い、すべてにおいて本当のカエルに劣っている! そして何より――」
 そういって千雨はカエル(偽)を持った右腕を掲げて力いっぱい握りしめた!
「――握った感触がおかしい!」
「そ、そうか! あんな握り方をしたら普通のカエルは死んでしまうはずだ! なのにあのカエル(偽)はいまだにゲコゲコ鳴きながらじたばたしている!」
 なぜかアキラが乗ってきた。
「じゃあこのカエル(偽)はいったい……」
 千雨はふっとみんなから目をそむけて言った。
「……私にだって……わからないことぐらい……ある……」
 偽物だとわかって落ち着いたところで、カエルを集め始めた3-A生徒たち。
「所で千雨さん……」
 茶々丸が千雨の横にやってきて、尋ねる。
「……なんで女の匂いがするんですか?」
「なんだよ、女の私から女の匂いがしたらおかしいか?」
 追い払って回収に参加させる。今度は鳴滝風香がやってきて千雨に尋ねる。
「なんでそんなにカエルに詳しいの?」
「まあ、昔取った杵柄ってやつだな」
「ふーん」



 清水寺見学。
 落とし穴が設置されるという悪戯があったが、それ以外は特に問題などなく、見学が行われる。
「お、なのはからメールだ」
 内容を確認する千雨。
 
 タイトル:信じられない!!
   本文:もったいないことに音羽の滝から日本酒が流されていたの。せっかくなので回収しちゃいました。後で一緒に飲もっか!

「おお、いいじゃん!」
「千雨ちゃーん、音羽の滝いくよー!」
 明日菜が呼んでいたので、簡単に『OK』と返事して、駆け出す千雨。
「酒なんて久しぶりだな~」
 友達と酒が飲めるので、ご機嫌になった千雨であった。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 14
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/11 17:16
 夜。ビルの上で千雨となのはは二人して妖精モードで酒を飲んでいた。氷で杯を作り、ぐいぐい飲んでいく。
「あはははははははは!」
「わはははははははは!」
 何がおかしいのかは当人たちにしかわからないだろうが、大声で笑いながら、どんどん酒を飲んでいる。
「ちーちゃん、みてみて! 天狗かなあ? いっしょーけんめー走ってるよー! 飛んだほーが速いのにー!」
「あはは! よく見たらさくらざきじゃねーか! せんせー達といっしょにさるおっかけてら! はははは!」
「しりあいー? じゃあなんでおさる追っかけてるのか、ちょっとおはなしきいてみよーかー?」
「おー!」
 ぴゅーっ!
 即断即決、ネギたちの元に飛んでいく二人。
「ごめーんくーださーい。ちょっとおはなしきかせてー!」
 なのはがネギに声をかける。
「うわっ、よ、妖精さんが二人も!?」
「チルノさん! うわっ、お酒臭い!」
「先生、神楽坂さん、お知り合いですか!?」
 明日菜がなのはのほうを見て、少し戸惑う。
「ええっと、青いほうがチルノさんで、もう一人は――」
「えーっと、ナタネって呼んでー? 別に大ちゃんでもいーよー」
 適当な偽名をでっちあげるなのは。
「おー! ナタネー!」
「なーに、ちーちゃん? あはは」
 笑う妖精たちに顔をしかめる刹那。
「邪魔をしないでください! このかお嬢様を取り戻さなければ!」
「あのおさるがこのかおじょーさま?」
「ちげーよナタネー。おさるが抱っこしてんのがこのかだー」
「そっかー、じゃあこんどはおさるにおはなしをきこー!」
 するっと木乃香を抱えるサルの隣にぴったりくっつく二人。
「おさーるさーん! おじょーさまかかえてなにしてるのー?」
「ゆーかいかー?」
「うわ!? なんや、妖精が来た! クッ!」
 速度を上げるサル、というかサルの着ぐるみ。
「とまれー!」
「とまらんとうつぞー!」
 無論、着ぐるみが言うことを聞くはずもない。
「ほんとにうっちゃおうかー?」
「よーし、ナタネちゃんにまかせろー! れーじんぐはーと、せーっとあーっぷ!」
 なのはの服装が一瞬で変わる。片手に機械的な杖を持ち、先端を前に向ける。
「おー! へんしんしたー!」
「いかくしゃげきー! でぃばいんばすたー!」
 桃色の閃光が着ぐるみの隣を通り抜ける。
「きみは完全にほーいされているー!」
「にげてんじゃん! あははは」
「次はあてるー! 五で止まらないとうつぞー!」
 それを聞いて、さらに速度を上げる着ぐるみ。だが現実は非常。
「五ー! とまんないから、すたーらいとぶれーかー!」
 さっきより強力な桃色の光がサルの着ぐるみを包む。
「うぎゃー!!」
 着ぐるみが思わず悲鳴を上げる。
「お嬢様!」
 その光景に思わず声を上げる刹那
「へーきー! ちょっと痛いけど怪我はしないよー」
「便利だなそれ! おしえろー」
 光が収まった後には、なぜか木乃香しかいなかった。
「おさるが消えたー」
「木端微塵だー!」
 刹那が辺りを見回すと、上空に別のサルの着ぐるみが見えた。
「くっ、逃がしたか」
 なのはが木乃香の横に降りて、桃色の光を木乃香にまとわりつかせた。
「何を!」
「あははは、やりすぎちゃったから回復まほうかけてるのー」
 ほどなくして気が付く木乃香。ただダメージはまだ残っているようであった。
「うあー、せっちゃんがさんにんおるー?」
「お、お嬢様!」
「このか!」
「このかさん!」
 回復魔法を掛け終わったなのはが、元の浴衣姿に戻り、笑い出す。
「ゆーかいされたおじょーさまをとりもどしたー!」
「めでたしめでたし! しゅくはいだー!」
「おー!」
 そういって二人はビルの上に戻っていく。
「た、助けてくれたのでしょうか……?」
 刹那の疑問に答える者は誰もいなかった。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 15
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/12 15:31
 朝っぱらから頭を抱えて唸る千雨。
 二日酔い、というわけではない。目の前にある一枚のカードを見ておきた頭痛をこらえているのだ。
 どうやら昨晩、酔った勢いで妙なスペルカードを一枚作ってしまったようだ。
「……“エターナルフォースブリザード”レベルの黒歴史スペカじゃねえか」
 千雨は“三つ子の魂百まで”という言葉を思い出して、ぶんぶんと頭を振る。
「弾幕ごっこじゃルール違反でつかえねえし」
 千雨の目の前に置いてあるカードにはこう説明が書かれていた。

『終わりなく白き九天』
 氷の竜巻状になる冷凍攻撃。雷撃の形で標的を追って永遠に周囲を凍らせ続ける。
 標的は死なずに精神のみ生き長らえるため、永遠に恐怖を与え続ける事ができる。

「見た目は派手でいいんだけど、効果が……」
 窓を開けて、その辺を飛んでいた虫に向かって最小威力の『終わりなく白き九天』を放ってみた。
 冷凍雷撃に捕まった虫は凍りつき、活動を停止させた。
「……ダメだなこれは。自分でも解除できないってなんだよ」
 千雨は窓を閉めて、ため息を吐いた。
 起床時間が近づいてきたので、巻きまくってオーバーヒートさせた茶々丸を蹴って起こそうとする。
「茶々丸、起床時間だぞ」
「ううん、……私は…………千雨さんの……オモチャ……」
 どうにも起きそうにないので、班長の刹那のほうを起こすことにした。
「……おーい、桜咲。……お前起きてるだろ」
「…………ぐう」
「思いっきり口で言うんじゃない」
 飛び起きた刹那があわてて手を振って弁解する。
「ししし、しかたないじゃないですかぁ!! 絡繰さんが! あんな声を出すから眠ろうにも眠れなくて!!」
 一睡もしてないのだろうか? あれだけ走り回っていたのに元気なものだと千雨は思った。
「……長谷川さんは、魔法使いなのですか?」
 その言葉で刹那がさっきのスペル発動を見ていたことに気が付く。
「うんにゃ。……そうだな、妖精って言って信じるか?」
「え? 妖精、ですか?」
「おう、お前には言っても大丈夫そうだし。……まあ信じるかどうかは、お前次第だ」
 なのはは何とか友達たちに信じてもらえたらしい。一年はかかったとの話だ。
「茶々丸起こすの手伝ってくれ」
「あ、ハイ」
 ザジはいつの間にか起きていた。
「さて、朝飯食うか」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 16
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/12 19:33
「え? 魔法関係ってバレたら駄目なの?」
「あ、当たり前です!」
 刹那から聞いて初めて知った千雨。学園長もそんなことは一言も言っていなかった。罰があるなら言ってほしいものだ。
「でも6班の中ならいいだろ?」
「え? でもザジさんは……」
「悪魔だろ? 別に悪い奴じゃないっぽいけど」
 なあ、と千雨が顔を向けた方向にザジがいてコックリ肯いた。固まる刹那。
「さて、大体ウチの班長さんの意図も理解できて来たところで……」
「へ?」
「うおーぉい、こーのかー! 良かったら私たちを5班にまぜてくんねー!?」
「えうおれあうええッ!? ちょっ、長谷川さん!」
 見事に狼狽する刹那。
「ええよー!」
 ということで合流後、五秒後。
「わりぃ、携帯落としたみたいだ! 茶々丸探すの手伝ってくれ!」
「わかりました」
 千雨と茶々丸はあさっての方向へ走り出す。
「は、長谷川さんッ! そういう事なら6班のみんなで……え? あ、あれ?」
 ザジはいつの間にか消えていた。班員全員を見失った刹那は5班と行動を共にする他なかったそうな。


「ほう、のどかを告白させると」
「残念なことにまだできていないんだけどねえ」
 早乙女ハルナと綾瀬夕映の二人と合流した千雨はそんな話を聞いた。
「となればパルよ、私たちがやることは決まってるな」
「ふふふ、ちうっち、話が早い」
 ハルナと千雨の声がハモる。
「デバガメだ!」
 ふたりはデバガメ!
 二人の眼鏡がギラッと光る。
「違うでしょう! 陰ながら応援するのです!」
 夕映が訂正するが、基本的にやることは変わらない。
「茶々丸、映像記録頼む」
「了解です」
 ハルナと千雨がコンビを組むと暴走するのが常であった。
「というか、千雨は最近暴走に拍車がかかってるような……」
 夕映のつぶやきは空に溶けて消えた。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 17
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/13 14:29
 ゲームとやるという話を聞いた千雨は、主催者らしい朝倉和美に詳しい話を聞きに来た。
「はあ? ネギ先生とキスするゲームぅ?」
「そそ、上位入賞者には豪華賞品プレゼント。トトカルチョもやるよー!」
「はあ……」
「あれ? 興味ない?」
「うーん、のどかに悪いような……」
「いいじゃんいいじゃん、ゲームなんだから。十時半までは参加受け付けるから待ってるよー」
 準備に忙しいらしい朝倉を見送って、千雨はトコトコと班部屋に戻る。
 ドアを閉めた千雨は、一転して黒い笑みを浮かべる。
「面白いことになりそうじゃねえか」
「ま、まさか千雨さん……参加するのですか!?」
 茶々丸が愕然とする。どこか非難しているように聞こえるのは気のせいだろうか?
「別にキスするわけじゃねえよ。いろいろ引っ掻き回させてもらうだけさ」
 千雨はどうやって自分的に面白い展開に持っていくか考え始めた。
「……ククク、全員正座っつーのも悪くねーかなぁ」


「桜子、あんたまだどこにかけるか決めてないの?」
「うーん、どこもなんだかピンと来ないんだー……」


 ゲーム開始。
『――おや、どうしたことだ! 6班代表の千雨選手の姿が見えない! これはいったい!?』
 物陰に隠れた千雨はチルノモードにチェンジ。勢いよく走りだした。
『な、なんだぁ!? ……これはまさか! 妖精だ! 妖精が現れたぞ! 何が起きている!』
 千雨はダッシュで移動して、標的を探す。
「見つけたぁっ!」
『なんと妖精が鬼の新田に枕を投げつけた! 馬鹿にしている、挑発しているぞ!』
 新田を怒らせた千雨はダッシュで逃げる。
『これはチャンスか!? 妖精が新田を引き付けている間に……いや、違う! 新田の移動スピードが上がって、見つかる危険性は大きく跳ね上がった!』
「ヒャッハァ! ゲームモードはLunaticだあッ!」
『各班、新田の怒鳴り声を聞いて逃げる逃げる! これはもはや手が付けられない!』
 追いかける新田を誘導し、千雨は目的の場所にたどり着いた。
『妖精がピタリと止まった! 追いついた新田が、え、ちょ、もしかしてここって――』
 千雨は実況中の朝倉を女子トイレから引っ張り出して新田にぶつける!
「ぎゃあああっ!!」
「な、朝倉ッ! お前、部屋の外のトイレで何を……。なんだこの機材はっ!」
 各班のゲーム参加者を映すモニターを見て、3-Aの生徒が遊んでいることを知る新田。
『お前たち全員ロビーで正座だっ!!』
 新田の怒鳴り声がテレビから流れた後、千雨の指示で部屋に戻っていた夕映はテレビの電源を切った。
「……さあ、みんな寝るですよ」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 18
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/14 18:50
 二人でどこかに行こうとしているネギと明日菜に声をかけようとした千雨は刹那からようやく詳しい事態の説明を受けたのであった。
「そんなことになってるとは」
「とはいっても、長谷川さんは気にせず修学旅行を楽しんでください」
 そうは言われても、木乃香が狙われているのに何もせずにいるというのも気分的によくない。
「ただまあ、相手が動かないことにはどうしようもないか……」
 刹那が式神を飛ばすのを、黙ってみているしかなかった。



 関西呪術協会の本山に親書を届けに行ったネギたち。明日菜とのちゃんとした仮契約は今朝したばかりだ。
「――これは、無間方処の咒法です」
 いともあっさり罠に引っかかった。
「本物の刹那さんは助けに来れないの!?」
「敵が狙っているとわかった以上、お嬢様の側を離れる訳には……ってああ、本体のほうでも敵が――」
 そういってちびせつなの姿が薄れて、なぜか別の姿になった。
「え?」
「あれ?」
「は?」
 それは薄い水色の髪、青い瞳で、緑のリボンを頭に着けていて、白いシャツの上に青いワンピース。
 デフォルメされたチルノであった。
「おっす! あたいちびチルノ! 夜露死苦!」
「ちょ、いったい何が起きたの! 刹那さんは!?」
 明日菜がちびチルノに詰め寄る。
「サイキョーのあたいが答えてやろう! 知らん!」
 明日菜は目の前が真っ暗になった!
「ていうか、何が起きてんの?」
 ちびチルノの疑問に閉じ込められたことを必死で伝えるネギたち。
「ふーん……、よし分かった! サイキョーのあたいが何とかしてやる!」
 そういってちびチルノは、あさっての方向をむいて、氷弾を放つ!
「そこかーっ!」
 鳥居にぶち当たる。
「こっちかーっ!」
 柵にぶち当たる。
「隠れても無駄だーっ!!」
 やみくもに氷弾を放つちびチルノ。さすがにネギたちにはあてないようにしているものの、周囲の物がどんどん壊されていく。
「わはははははは!!」
 ああ、これはもうだめだとネギたちが思った瞬間、学ランの少年が飛び出してきた。
「ちょっ、俺はこっちや! むやみにモノ壊すんやない!」
「出てきたな! なんか犬っぽいやつだな! あたいが相手だーっ!!」
 戦い始めるちびチルノと学ラン少年。
 思いっきり置いてけぼりをくらったネギたちだが、ふとネギがあることに気が付く。
「あ、明日菜さん! たぶんなんですけど脱出方法がわかりました!」
「……あ、御免。事態が急展開過ぎてちょっと意識が飛んでた。で、何?」
「ちびチルノさんは周りの物を壊していただけでした。でもあの男の子は遠くからあわてて出てきて、ちびチルノさんと戦い始めたんです。もしかしてこの罠って中のどこかに弱点があるのかも!」
「な、なるほど……」
「僕たちはちびチルノさんがあいつを引き付けてくれている間にここから脱出しましょう!」
 そういってネギもバンバン魔法を使って周りの物を壊していく。
「ちょ、まてまてまてまたんかー! ってああああ!!!」
 ネギたちとちびチルノの無差別破壊活動を止めることができず、結局流れ弾やら何やらでズタボロにされた少年。彼は術が解けても破壊活動を続けたネギたちの様子を見に来た関西呪術協会の人間によってとらえられた。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 1⑨
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/16 09:54
 ちびせつながちびチルノになったのだが、式神のコントロールを奪い取った千雨は何もしていなかった。
「……? なんか向こうに引っ張られてるような気がする」
 ダダ漏れになっている魔力が勝手にちびチルノを生み出し、維持している状態なので本人は全く知らない。
「とと、それより奴を何とかしないと」
 氷弾で敵が放った棒手裏剣を打ち落としつつ、刹那を追いかける千雨。ためしに2,3回敵に氷弾を打ってみたが、あっさりはじかれてしまった。
「……さすがに殺す気で行くわけにもいかんしなあ」
 威力を上げて撃てば防御貫通してミンチにできるとは思うが、街中でそんなことはグロすぎて無理だ。
 それに一応相手も関西呪術協会の一員なわけで、仲良くしましょうと親書を渡しに来たのに、ケンカ売ってきたから構成員をぶっ殺しましたなんて出来ない。
「面倒な話だよ全く」
 まあ何とか近づいて両足凍らせるくらいが妥当か。そう考えた千雨は機会をうかがうことにした。



 刹那がシネマ村に逃げ込んだ結果、千雨が刹那を見失ってしまった。
「あれ、私戦力に数えられてない? それともぬけてるから見失っただけ?」
 どちらにせよ千雨としては傷つく話だ。
 トボトボ探し回って見つけたのは正門横の「日本橋」の上。すでに敵に見つかっていた様子。
 なんだか今にも戦い始めますよ的な雰囲気だったので、千雨は敵の背後に回って冷凍ビーム発射。
「ぴぎゃっ!?」
「月読はん!?」
 木乃香の後ろにいた女性が凍ってしまった少女の名前? を呼んだので、こいつも敵と判断。即座に冷凍ビーム発射。
「ぎゃぴっ!」
 そうして敵二名を捕まえた千雨であった。
「ちょっとちうっち! 今いいとこだったのに何してんの!」
 なぜか合流していたらしいハルナ達3-A生徒にKY扱いされる千雨。
 話を聞いていると、どうも刹那と木乃香が百合百合な関係で、月読とか呼ばれた少女が二人の間に割って入ろうとしていたとか。
「そうなのか、桜咲!?」
「違います! 長谷川さんには事情を説明したじゃないですかあ!」
 そうして刹那が魔法関係をぼかして説明しているときに、あることを思い出した。
「そ、そうだ! ネギ先生たちがまだ敵の術中に! 長谷川さん、すみませんがついてきてください!」
 そういって刹那は木乃香の手を引いて貸衣装屋に飛び込んでいった。
「着替えを手伝え……ってことじゃないよな」
 凍らせた敵はどうしようか考えようと、そちらのほうを向くと、なぜか二つの氷塊は忽然と消えていた。
「あれ? ……そうか、まだ敵がいるのか」
 まだ騒動が終わりそうにないので、千雨はため息を吐いた。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 20
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/16 19:46
 ネギたちを助けに行ったのだが、刹那が彼らが最後にいたと証言する場所がボロボロになっていた。
「ウチの実家までの道が壊されてる!」
 呆然とした木乃香の復活を待っていたら、5班とか朝倉とか茶々丸につかまった。いつの間にか刹那と千雨の荷物にGPS携帯を紛れ込ませていたようだ。
「ていうか、人間が一瞬で凍るとか千雨はいったい何をしたのです!」
 夕映が千雨に詰め寄る。千雨は魔法関係が内緒なのでどう説明したらいいものか悩む。ネギがチルノを必死に隠そうとしていた時も同じような気持ちだったのだろうか?
「えーと、……妖精パワー?」
 結局真実をいうしかなかった。もう妖精の存在は麻帆良では誰でも知っていることだし。
 夕映の目がちょっと胡散臭いものを見る目になったので、千雨が焦る。
「嘘じゃねえよ。麻帆良中を騒がしてる妖精の正体は私なんだよ」
 朝倉から昨夜のことを責められることを覚悟して、千雨は真実を告げる。
「またまた~」
 全員から嘘吐き扱いされた。魔法関係を知っているはずの刹那、茶々丸まで一緒になって生暖かい目で千雨を見る。
「どっからどう見ても違うじゃない」
 朝倉が所持していたチルノの写真を取り出して、千雨に同じポーズを取らせる。
「背格好とか顔立ちとか声とか似てるけど、やっぱ別人だよ」
「妖精さんはまさしく神秘のオーラ纏ってるよ」
 もしかしてチルノモードで電話に出たりしてもびっくりされるのだろうか。
 千雨がかわいそうな子扱いされていたところで、周囲を警戒していたらしい刹那が何かに気が付く。どうやらネギが来たようだ。無事であることにホッとする刹那と千雨。
「まって、まってくださーい!」
 まるで誰かを追いかけているような声を出しながら、走ってくるネギ。
「やっぱり! あたい発見!」
 どこからともなく聞こえる女の子の声。よく目を凝らすとちみっこい何かがネギの前を飛んでいる。
「よ、妖精さんやー!」
 木乃香が嬉しそうに声を上げる。
「ああああああああ!! やっぱり見つかったー!」
 ガックリするネギ。ネギの前を飛んでいた何かは一同の前で宙に浮かびながら自己紹介した。
「あたいはちびチルノ! サイキョーのしきがみだっ!!」
 一拍おいて騒ぎ出す少女たち。千雨はちびチルノの『サイキョー』の一言に愕然とする。
「どうしたあたい? お腹でも痛くなったのか?」
 ちびチルノが千雨の心配をする。
「ああ、お前を見てから頭痛と胃痛がしてきたよ……」
「あ、おうどんたべたくなってきた」
「頼むから消えてくれ」
 千雨の切なる願いは、叶わなかった。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 21
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/17 07:38
 親書とやらも渡したし、木乃香もどうやら実家にいると安全らしい。ミッションクリアーということでなんか宴会が開かれる。
 その前に千雨は、どうにかしてちびチルノを消すために魔法関係者に相談することにした。相手は関西呪術協会の長、木乃香の父、詠春である。
「君が放出する莫大な魔力によってちびチルノ君は維持されているようなので、魔力の放出を止めればおのずと消えるでしょう」
「無意識で放出してるみたいなんですが、どうやって止めればいいんですか?」
「……無意識ですか? 魔力の扱い方がわからないのですか?」
「これっぽっちも」
「……無意識でこれだけの勢いで放出……ナギ、いやこのか以上……」
 取り敢えず魔法を学んでいけば無意識の魔力放出も止められるようになるだろうとのこと。修学旅行が終わったら学園長に相談するように言われた千雨。どうやらちびチルノとは長い付き合いになりそうだ。



 宴会待ちしていた5班の面々がちびチルノのせいで魔法の存在を知ってしまった。他にもいろいろばれたが、千雨がチルノであることは信じてもらえなかった。
「さくらざきー! お前天狗か?」
「い、いえ、違います……」
「鳥みたいな羽あるのに天狗じゃないの? じゃあ鳥の妖怪?」
「えっ」
「何で白いの? こういうのカルビーっていうんだっけ?」
「い、いや私はアルビノで、ってあああああああ!!」
 戻ってきた千雨はまたも頭を抱えることに。
「何で桜咲は羽出したまんまぐるぐる巻きに縛られてるんだ?」
「せっちゃん掟がどうのこうのいうて失踪しようとしてたから、止めるためにやむなく」
 木乃香がきもちえー、と刹那の羽にほおずりする。ビクビク痙攣する刹那。
 刹那が何か顔を赤くしてブツブツつぶやいていたので、千雨は耳を近づけてみる。
「……ああん……このちゃん、だめ……ダメや、ああッ……ウチもう……」
 聞かなかったことにした。



 宴会で酔っぱらった千雨。
「チルノでーす!」
「ちびチルノでーす! サイズチェンジ!」
 ボンっ! とチルノと同じサイズになるちびチルノ。
 二人が腕を組んでぐるぐる回り、ピタリと止まって声を合わせる。
「どっちがチルノだっ!」
 このかが答える。
「右や!」
「ハズレ! 左がチルノだ!」
 またまたボンと音を立てて右のちびチルノが元のサイズに戻る。
 その光景を見ていた詠春。
「制御できているような気が……」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 22
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/17 12:04
 宴会も終わり、部屋でのんびりしていた3-A生徒たちのところへ白い髪の少年がやってきた。
 少年はすぐに立ち去り、残されたのは石にされた少女たち。
 しばらくしてから、千雨の石像がカタカタと揺れ動き始めた。全体にひびが入り、中から裸の千雨が現れる。
「ふう、全身を氷の膜で覆って何とか事なきを得たぜ」
 まだまとわりつく石になった氷の膜をはがして、周りの状況を確認する。
「……夕映がいねえな。茶々丸はオーバーヒートしてたから見逃されたか」
 木乃香に明日菜、刹那とネギは部屋にいなかった。千雨と同じように防御していたちびチルノも石の殻を割って取り出しておく。
「待っててくれよ、みんな」
 そうして着替えをすませた千雨は茶々丸をけり起こした。
「千雨さん! 今さっきみんなの悲鳴が!」
 悲鳴を聞いて駆け付けたネギに状況を説明する千雨。
「夕映が部屋にいたはずなのにいなくなってる。攫われたか、逃げたかのどっちかだと思う。先生は木乃香たちがどこにいるか知らねえか?」
「ええっと、確か長がちゃんと魔法のことについて説明するから、部屋に呼ぶって言ってました。アスナさんと刹那さんは……」
「兄貴! 姐さんならカードで念話できるはずだ!」
 カモがトラウマを乗り越えて千雨の前に姿を現す。千雨も緊急事態なので特に何もしない。
「そうか! 『念話』! アスナさん! 無事ですか!?」
 どうやら木乃香も一緒らしいことが判明。刹那がいろいろと気持ちの整理をつけるために一人でお風呂に向かったとのことで、まずはそこで合流することにした。



 浴場に向かう途中、刹那が飛び出してきた。
「あれ、刹那さん? お風呂に行ったんじゃ!?」
「ただならぬ気配を感じて飛び出してきました。何があったんです!?」
「それが、みんな石にされちゃって――」
 そこで、石が動くような音がする、一同が振り向くと、下半身が石化している詠春がそこにいた。
 白い髪の少年に気を付けること、学園長に救援を求めるようにと二つの言葉を残したあと、全身が石化してしまった。
 ネギはすぐさま携帯電話を取り出して、浴場に向かいながら学園長に電話をかける。
 千雨もその様子を見て、最近登録したばかりの番号を呼び出す。
「千雨さんはどちらに電話を?」
 茶々丸の疑問に千雨は答える。
「頼りになる友達がいてな! ちょっとそいつに助けてもらう!」




「なんだジジイ、マヌケ面して」
「エヴァンジェリン。ネギ君たちの救援に向かってくれんかのう?」
「いや、無理だろう。呪いを解かんことには麻帆良から出られないし、何よりいま私は……」
「孫の危機じゃし、わしも頑張らんとのう。ちょっと待っておれ、何とか呪いの精霊をだまくらかしてみる」
 そういって準備を始める学園長。
「いや、今の私は本当に弱っているから、行っても役に立たんと思うぞ?」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 23
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/17 18:31
 千雨たちが浴場についたら明日菜が裸になって倒れていた。
 駆け寄ってみたら、明日菜が木乃香をさらわれてしまったことを詫びて、『アイツ』が近くにいるかもと警告してきた。
 直後、刹那が後ろに現れた少年に反応するが、力の差は大きく、殴り飛ばされてしまった。その時千雨が少年の伸びきった腕を掴むことに成功して、蹴りをたたきこもうとするが、逆の手で防御されたので、千雨は一度少年から離れる。
「茶々丸! 桜咲を!」
「ハイ!」
 少年は表情を変えずに千雨に尋ねる。
「君は……石化させたはずじゃなかったかな?」
「どうやって復活したか? 教えるかよ」
 ネギが意を決して、言葉を紡ぐ。
「みんなを石にして、刹那さんを殴って、このかさんをさらって、アスナさんにエッチなことまでして!」
 杖をぐっと握り、ネギが叫ぶ。
「僕は許さないぞ!」
 少年は気にした様子もなく応える。
「それでどうするんだい? 僕を倒すのかい? やめた方がいい、今の君では無理だ」
 そういって、足元の小さな水たまりの中に消えていった。
「あ、コラ待ちやがれ!」
 千雨が水たまりを凍らせて、体を氷の中にねじ込み、そのまま消えた。ちびチルノも後に続く。
「うええぇっ!? 水を利用した『扉』に氷を利用した『扉』!? アイツもかなりの使い手だが、あの姉さんもとんでもないな……ていうか氷が『扉』って」
 その光景を見ていたカモが驚く。こぶしを握りしめたネギが、強い口調で言う。
「とにかく、追わないと。刹那さん、軽い傷なら僕にも治せます。見せてください」
 治癒魔法を使い、刹那の傷を回復させるネギ。
 その後、仮契約の話で一悶着あったり、明日菜が着替えを取りに行ってちょっと遅れたりもしたが、一同は木乃香を助けるために外に飛び出した。



 天ヶ崎千草という木乃香誘拐の首謀者の元へネギたちがたどりついたのだが、なぜか千雨がいない。
 とはいえ、敵は目の前。投降するように呼びかけたが、千草は一蹴して木乃香の魔力を使い、妖怪たちを召還する。
「まあ、殺さんようにだけは言っとくわ。ほな」
 千草と少年は飛んでいき、百体近く居る妖怪たちに囲まれたネギが風の障壁を展開する。
 障壁の中で手短に作戦を立て、刹那とネギが仮契約して、障壁が切れるタイミングを待つ。
「『雷の――、……あれ?」
 障壁が切れたところから外を見ると、妖怪たちが壊滅状態に陥っていた。空から絶え間なく降り注ぐ氷塊が妖怪たちを押しつぶしている。
「悪い! 出口なかったからかえって時間くっちまった!」
 空からチルノとちびチルノが妖怪たちを狙撃している。どうやら風の障壁を目印に飛んできたようだ。
「チルノさん!」
「こいつら何とかして追いかける! 先行け!」
 作戦を即座に組み直して、全員で行って木乃香を奪取し、足止め役を置いて逃げることにしたネギたちは、移動を開始する。

「ところで千雨ちゃんはどこ行ったのかしら?」
「千雨さん、無事でいてください……!」
 やはり千雨とチルノが同一人物だと認識できないままであった。



 ネギが杖で飛び、刹那は明日菜を抱えて翼を羽ばたかせ、茶々丸はジェットで飛ぶ。
 ネギが作戦の確認のため、つぶやく。
「茶々丸さんとアスナさん、刹那さんがあいつらを足止め。アスナさんたちは危なくなったら仮契約の召喚で退避。茶々丸さんは……」
「記録メモリーさえ残っていれば、ハカセ達が修復してくれます」
「ごめんなさい、僕にもっと力があれば……」
 明日菜が手を伸ばしてネギの頭をはたく。
「バカなこと言ってる暇あったら、ちゃんと前向いて飛びなさい」
「……そうですね」
 ネギが気を引き締めた時、刹那が後ろからの攻撃に気が付く。
「あれは、狗神!? みなさん避けて!」
 刹那と茶々丸は避けることができた。だが、狗神はネギを追いかけて撃ち落とした。
 ネギの杖から放り出され、空中を舞っていたカモを茶々丸が掴む。
「ヤバい! 兄貴は作戦の要だ! 兄貴無しじゃあ足止めの危険度が格段に跳ね上がる!」
 やむを得ず、刹那と茶々丸はネギが落ちた辺りに助けに向かった。



「くくく、さっきは滅茶苦茶やられたが、今度はそうはいかん!」
 ネギが墜落した場所では、学ランの少年、小太郎と月読が待ち構えていた。
「いきなり凍らされたりで欲求不満気味なんですー。刹那センパイは……あ、降りてくるみたいどすなー」
 降りてきた刹那が、月読と対峙する。小太郎はネギを指名してきたが、ネギには小太郎に構ってる暇などない。明日菜が前にでて、ネギに先に行くよう促す。
「おい、姉ちゃん邪魔すんなや。俺はネギに用があるんや」
「とは言われても、こっちだって引けない理由があるのよ!」
 ネギが杖に乗って行こうとするが、狗神に邪魔される。
「後ろでごちゃごちゃやってるような西洋魔術師なんざ大したことないわ!」
「くそっ! 時間はないのに戦うしかないのか!?」
 カモが悪態をつく。
「勝つ策はあるよ、カモ君」
 ネギが、何らかの儀式が始まったらしい、立ち上る光を気にしながら言う。
「はっ! 大口叩きおって! ならその策ってもんを見せてもらおうか!」



「いや、だからなジジイ。正直言いたくないんだが今の私は氷恐怖症なんだ。だから得意の氷雪系の魔法は使えんし、家の冷凍庫すらあけるのに手が震えて――」
「ぬうう、これでもダメか! ナギの奴無茶苦茶に呪いをかけおって!」
「いや、聞けよジジイ」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 24
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/18 11:46
 何とか自分への契約執行で小太郎に痛撃を与えたネギ。そこに夕映から連絡を受けて長瀬楓、龍宮真名、古菲の三人が来たので、小太郎と月読を抑えてもらい、木乃香を助けに行く事になった。
 しかし小太郎との戦いは代償は大きく、もはやネギは限界。白い髪の少年を出し抜くことはできそうになかった。
「それでも、このかさんを助けないと!」
 何とか木乃香が見える場所にやってきたが、そこで儀式が終わってしまった。
「……そ、そんな……」
 現れたのは、巨大な鬼。千草が笑いながら、呼び出した者の説明をしてネギたちに絶望を与えようとする。
「二面四手の巨躯の大鬼『リョウメンスクナノカミ』や! これで明日来るとかいう応援も蹴散らしたる!」


 そこに、雷光が奔る。


 千草にぶち当たったそれは、黒い衣装に身を包んだ、明日菜たちと同年代の少女。
 弾き飛ばされた千草が、少女に怒鳴る。
「な、なんや貴様!」
「……フェイト・T・ハラオウン。覚えなくていいよ。その必要は直ぐに無くなるから」
 怒る千草はスクナを操り、フェイトに攻撃を加えようとする。が、軽くかわされる。
「くそっ、新入り! こいつを何とかせい!」
 白髪の少年がフェイトに飛び掛かろうとしたところで、足を包む違和感に気が付く。
「これは、氷?」
「テメーの相手は私だ! 白ガキ!」
 下から飛び出したチルノが少年の顎に拳をたたきこみ、そのまま少年を足止めする。
「糞、クソッ! スクナ、あのガキ共を叩き潰せっ!!」
 千草の声に従い、スクナが腕を振り上げ、そしてなぜかとまる。
「……な、なんや?」
 コントロールが効かない。その事実に気が付き、原因を探して、見つけた。木乃香がいたはずの場所から誰もいなくなっている。
「はやてちゃん、近衛木乃香ちゃんの救出完了しました!」
「ようやった、シャマル! ほなヴォルケンリッターは味方を拾いながら全速で避難!」
「おうっ!」
 いつの間にかネギたちの周りにいた謎の人物たちが、ネギたちを掴んで逃げる。
「ちょ、え!? なんですかあなたたち!?」
 ネギの疑問に答えたのは、シャマルと呼ばれた女性。
「あとで説明します! 今は全力で逃げないと、巻き込まれます!」
 見ればフェイトという少女もものすごい速さであさっての方向へ飛んでいく。彼女を目で追うと、目に映ったのは、桃色に光る星。
「な、なんだあのバカみたいな魔力の塊!」
 カモが絶叫する。
「いまからあれが敵にぶち込まれるんや。はよ逃げんとぶっ飛ぶでー!」
 はやての言葉から、その威力を想像して顔が青ざめるネギとカモ。
「みなさん、今は逃げることだけ考えましょう!」



「なのは、あとは千雨さんだけだよ」
 フェイトが魔力を収束させているなのはに声をかける。
「うん、すぐ来るよ」
 なのはの肩に乗っていたちびチルノが氷を空中に放り投げて、その氷からチルノ状態の千雨が飛び出す。
「おし、準備完了」
 千雨の声を聞き、なのはがうなずく。
「悪いことした人には、お仕置き! これが本当の、スターライト――」
 フェイトが十字を切る。
「――ブレイカーッ!」
 一瞬、世界が桃色の光に包まれる。



 キノコ雲が発生し、地震が起きた。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 25
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/18 16:50
 ヴィータが独り言のように呟く。
「うへえ、また威力上がってんだろ」
 あたりを見回していたシャマルがほっと胸をなでおろす。
「周りにいた人たちは全員無事ですね。結界が張ってある建物が近くにあってよかったです」
「重ね掛けしないと私たちも危なかったな」
「まあ、この結界も今回の一撃で相当ガタガタになったみたいだが」
 そうシグナムとザフィーラの言葉が続く。
 救出された人の中には一応小太郎と月読もいて、結界の中から土煙の収まらない外の様子を呆然と見ていた。



 一方この惨事を引き起こしたなのはのいる場所。千雨はその威力に感心していた。
「まさかここまでぶっ飛んだ威力の砲撃とは……。もう弾幕ごっこもなのはに負けるかもしれねえなあ」
 にゃはは、となのはは頭をかく。そのなのはめがけて、上空から石の槍が落ちてくる。
「なのは、危ない!」
 千雨がそれに気付いて、なのはを突き飛ばす、千雨が代わりに石の槍に貫かれ、落ちる。
「千雨さん!」
 フェイトが叫び、バルディッシュを構える。降りてきた白髪の少年は、表情を変えずに言った。
「君は危険すぎるね。できればさっき仕留めたかったな」
 そう言われたなのはは、なぜか千雨が落とされたにもかかわらず、不敵な笑みを浮かべていた。
「……なのは?」

「そういえばフェイトちゃんには言ってなかったね――」
 少年は下から一瞬で伸びてきた氷の槍に貫かれる。
「――妖精は、ピチュっても復活できるんだよ」

 槍の上には、いつの間にか千雨が浮かんでいた。
「こっちでもそうだっていうことは教えといてくれ、なのは」
「ごめんね、千雨ちゃんも知ってるかと思ってた」



 千雨が念のため、虫の息のスクナが何かの拍子で暴れないように凍らせていたら、絶対零度近辺に到達したはずなのに、まだ温度を下げられそうなことに気が付いた。
「物理的に無理がありそうだけど……」
 好奇心の赴くまま、千雨は絶対零度以下にチャレンジ。なぜだかスクナがぐずぐず消えていった。
「なんでだろう?」
 熱エネルギーがないにもかかわらず熱を奪い取ろうとした結果、質量がエネルギーに変換されて奪い取られたので消えたように見えたのだが、千雨はそんなこと知る由もなかった。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 26
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/18 19:36
 とりあえず今頃落ちてきた天ヶ崎千草と、呆然としている犬上小太郎と月読を捕まえておいたらエヴァンジェリンがやってきて、救援に来たといった。
「戦いならもう終わったぞ」
「そうか、それはよかった」
 千雨の言葉に心底安堵した様子のエヴァ。そこにちびチルノがやってきて、エヴァを追いかけまわしたりしたが、まあそれは置いておく。
「パッと見たところ、ほとんど石化されたみたいだな」
「そうです! みんなの石化を解かないと!」
 思い出したように叫ぶネギ。エヴァは紙に何かを書いて千雨に渡してきた。
「なんだこれ?」
「石化解呪の呪文だ。お前が馬鹿みたいに垂れ流す魔力を使えば少々強引になるが解呪もできるだろう」
 そういって小さな杖を渡すエヴァ。木乃香やなのはたちにも杖と紙切れを渡していく。人海戦術で解呪していくつもりらしい。
「ぼーやは呪文だけあればいいな。最初は近衛詠春あたりを解呪した方がいいか。奴なら西にいる石化解呪できる術者を知っているはずだ」
 そういって解呪に取り掛かるエヴァ。千雨は役に立つかわからないが、やらないよりはましだと考えて手の中の紙切れを見た。
「えーと、何々? プラ・クテ ビギナル……」



 途中千雨がエヴァンジェリンにかかっていたらしい呪いを解いてしまうというアクシデントがあったものの、何とか全員元に戻った。
「学校卒業したら南の島で人形作ったり、子供たちに魔法を教えながら暮らそうかな……」
 などとエヴァンジェリンが元賞金首らしからぬことを呟いていたのを千雨は聞いた。
 あと、どうもなのはたちの魔法とエヴァンジェリンたちの魔法は違うものらしく、互いに興味を持っていた。




 長谷川千雨は夢を見ている。それはまだ、長谷川千雨になる前の事。

 チルノは縄張りにしていた湖の上で、大ちゃんと追いかけっこしていた。
「少女たちよ! 転生したくはないか!?」
 なんだか真っ白でピカピカ光る、変なおっさんがあらわれてそんなことを言った。
「だれあんた?」
「うむ、名前はまだないが、私は神だ!」
 そう言い切る変なおっさん。
「神様?」
 大ちゃんは不思議そうに首をかしげる。
「うむ、正確にはチート転生の神! さまざまなチート能力を与え、あらゆる世界に転生させることができる神だ!」
 チルノはそんな神様聞いたことがなかった。
「うさんくさー」
「何を言うか! 私は今までこの幻想郷に住む妖精たちをたくさんチート転生させてきたぞ!」
 そういわれると、最近妖精の数が減ってきていたような気がする。
「では、質問を変えよう。君たちには何か願い事はないかね?」
 チルノは速攻で手を挙げて、いつもの言葉を口にする。
「あたいはサイキョーになりたい!」
 大ちゃんはおずおずと、手を挙げて、
「私はチルノちゃんみたいに強くなりたいなあ……。あ、あと自分の名前もほしい!」
「なんで?」
「チルノちゃん達は私のこと『大ちゃん』って呼んでくれるけど、ほかの人たちは、『大妖精』って呼んでくるから……」
「そっか」
 チルノたちのやりとりを聞いていた自称チート転生神は大きくうなずく。
「そうかそうか、両方とも簡単な願いだ! 私がかなえてあげよう!」
「ほんとっ!?」
 自称チート転生神が、笑う。
「そうだとも。よし、君たち二人は仲がいいようだし、同じ世界に転生させてあげよう」
「やったあ!」
 そして、チルノと大ちゃんはピカピカの光に包まれる。
「一つ注意だ! チート転生してもチート能力は悪用してはいけない!」
「はい!」
「はーい!」
 二人が元気よく返事をしたので、チート転生神は二人を転生させた。

 夢から覚めた千雨は、ぼんやりとつぶやいた。
「そういやそんな経緯だったっけ」




 ちなみにこのチート転生神、戦闘力は皆無で、異変に気が付いた博麗の巫女に三秒で倒された。
 後、転生したチート妖精たちがあとで全員帰ってくるという驚愕の事実が判明して、八雲紫が「最悪」と言い切った異変である。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 2-1
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/19 11:33
 転生した経緯を思い出した千雨は、どこまでチートなのかを試すためにちょっくら高速飛行してみた。
 大気圏突破して光速も突破。ブラックホール突入して別世界に飛び出してしまった。
「……チートすぎる」
 寮においてきたちびチルノとのつながりはまだあるらしく、氷で転移すれば元の世界に戻れることを確認した千雨はどんな世界なのか見て回ることにした。
 この世界の地球の日本列島に降りた千雨。ちょっくら散策してみたら、見覚えのある神社を見つけた。
「博麗神社……もしかして戻ってきたのか?」
 結界をぐいぐいと潜り抜けてみたら、やはり幻想郷があった。
「……また来た」
 声がしたので後ろを振り向くと、そこにはチルノの記憶のままの博麗霊夢が箒を持って立っていた。
「今度はどこの妖精?」
「えーと、ちょっと待ってくれ。また来たってどういうことだ?」
「質問してるのはこっち、早く答えて」
 仕方がないのでチルノであることを告げると、霊夢は驚いた。
「チルノ? あのバカな氷の妖精!?」
「本人目の前にしてそれはないだろう。……否定は出来ないが」
 霊夢の説明によると、どうやらあのチート転生神がほいほい転生させまくった妖精たちが続々と帰ってきているという。
「あの馬鹿な神の言葉によると、半年以内に全員一度は帰ってくるとか」
 千雨は違和感を覚える。
「半年? 私は十五年位人間やってたぞ?」
「時間の流れは世界によって変わるし、チート存在は時間を超える事が出来たりもするらしいわ。これも馬鹿神の言葉」
 霊夢は騒動や異変を起こさないよう釘を刺して、掃除を再開しようとした。
「あ、そうだ。そのチート転生神はどうなった?」
 霊夢がなんでもないことの様に、千雨に教える。
「紫のところでサンドバッグやってるって聞いたけど」




 人里を訪れてみれば、前より活気があった。チート転生した妖精たちがそこらへんで人間と一緒に暮らしているようだ。
「まあ、人間に転生したなら、そういうこともあるか」
 ぶらぶら歩いていたら、赤い髪の高校生くらいの少年が千雨に声をかけてきた。
「おーい、もしかしてチルノじゃないかー?」
「ん? お前誰だ?」
「おいおい、忘れたのか? 鍛冶屋で手伝いやってた……」
「ああ、シロウか」
「おう」
 チルノ時代に時々遊んだりしていた相手だ。確か紅魔館のメイド長にナイフを作っていたとか言っていた。
「お前もチート転生してたのか」
「おう、もっといい刃物作りたいって言ったらいきなり転生させられてな」
 チート転生神も無茶苦茶だ。
「その願いは叶ったのか?」
「もちろん。投影、開始」
 呪文らしきものを唱えたシロウの手の中にキラキラ光るなんだかすごそうなナイフが出現した。
 手に取って観察していたら、シロウがチルノにやるよといった。
「いいのか?」
「ああ、材料とかも別にいらないし。じゃあ俺はメイド長に注文されてたナイフも納品したし、転生先の世界に帰るよ」
 そうして彼は宝石でできた棍棒のようなものを取り出して、どこかに消えてしまった。
「今度はなのはもつれてくるか」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 2-2
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/20 09:36
 修学旅行明けの日曜日、午前を幻想郷で過ごして帰ってきた千雨。昼食をとってから、勝手に維持されているちびチルノのことを学園長に相談することにした。
「制御できるようになるのが一番なんですが、まずは消さないと魔法関係をバラしまくるので……」
「確かにそれはまずいのう」
 そんなわけで学園長が教師役に選んだのは、エヴァ。
「なんで私がお前に魔法を教えなければならんのだ……」
「ちびチルノ放置しとくと、またお前を追っかけまわしそうだし」
「よしわかった。速攻で一人前の魔法使いにしてやろう」
 快諾してくれた。
「ところでなぜお前が、……ちびチルノを動かしているんだ? チルノが動かしてるのならわかるが」
「だから私がチルノなんだって」
 エヴァの視線が生暖かい感じになったので、ちびチルノに行ってよしと命令を出す千雨。
「し、師匠には敬意をもって接しろ!」
「まだ何も教えてもらってないから尊敬できる点が……」
 そんな時に茶々丸が客が来たという。やってきたのはネギと明日菜。カモも一緒だ。
「千雨さんがこちらにいると聞いて……」
 チルノかなのはを紹介してほしいと頼み込んできた。
 魔法使いとして弟子入りしたいとの事だが、千雨はなのはの魔法がネギたちの魔法とは違うことを知っている。チルノ(千雨)に至っては魔法すら使ってない。その辺をちゃんと説明して提案。
「私の師匠に教えてもらったらどうですか?」
「おい、そこで私を巻き込むんじゃない」
「エヴァンジェリンさんが師匠?」
「まあ、今日からですけど」
 停電の時の情けない姿がネギたちの頭に浮かぶ。表情を見てそれを察知した千雨はフォローに回る。
「いやでもチルノも、エヴァンジェリンはなのはにも負けない……負け……、負けるか」
 一発が核兵器級の魔法使いと一緒にするのは無理があった。
「でもまあ、すごい魔法使いだってのは学園長も言ってましたし……、なのはとかチルノは規格外なので」
 結局、ネギもエヴァに弟子入りすることになった。



 月曜日、千雨が相坂さよの席に八ッ橋を置いて手を合わせたら、何故か普通の人間にもさよが見えるようになった。
 トコトコやってきたエヴァに耳打ちされる。
「どうもお前が供えた八つ橋に大量の魔力が溜まっていて、その魔力で一時的に見える状態になったようだ」
 さよのことで大騒ぎになって、授業どころではなくなった。嬉しそうなさよをみて、毎日弁当を供えるのも悪くないかなと千雨は思った。

 放課後、エヴァンジェリンによる魔法修行タイム。
 魔力についての説明を受け、放出を止めてみることになった千雨。目を閉じて、魔力放出を止めるイメージ。
「……止まったか?」
「止まってない! ナチュラルに『気と魔力の合一』を成功させるな!」
 頭をはたかれた千雨。どうやらちびチルノ制御にはまだまだ時間がかかりそうだ。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 2-3
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/20 11:23
 やってきました図書館島探検タイム。
「まさかいきなり落とし穴があるとは……」
 これでも図書館探検部の千雨。あんなところに落とし穴などなかったと記憶しているが、あったものはしょうがない。
「まあ、結構下層のほうまで落ちたみたいだし、せっかくだから探検して行くか」
「いえいえ、それはちょっと困ります」
 フッと隣に現れる謎の人影。
「どちら様ですか?」
「この図書館島の謎の司書、クウネル・サンダースです。ちょっとあなたに興味がありまして、今日はご招待させていただきました」
「あの落とし穴は……」
「私が作りました」
 こともなげにいうクウネル。
「それにしても無茶苦茶な出力の魔力ですねえ。これならナギの呪いを解いてしまうのもわかります」
「はあ」
「お茶会などいかがですか? ああ、もちろん全部終わったらちゃんと出口まで送って差し上げます」
 いざとなったら転移して帰ればいいや。図書館島の秘密もわかるかもしれないので、クウネルについていくことにした千雨。
 お茶を飲んでいたら、クウネルが用件を口にした。
「実はわたし、あなたの過去に興味がありまして」
「あんまりしゃべりたくないんですが……」
「しゃべる必要はありません。ほいっと」
 ポンと千雨の頭に手を置くクウネル。
「……こ、これはっ!?」
 動かなくなったので、不思議に思った千雨はクウネルに声をかける。
「クウネルさーん」
「…………か、カエル」
 ボンっと音を立てて消え去るクウネル。後には古そうな本が残された。
「……帰るか」
 残された古本を拾って、元来た道をたどる千雨。
 部活終了後、提出しようかとも考えたが、魔法関係だということに気が付いたので、そのまま持ち帰ることに。




 今日はちゃんとした修行場所を整えるべく、修行はお休みでエヴァの『別荘』を掘り出すらしい。
 『別荘』を探す前に千雨はエヴァに本を見せることにした。
「この本は何処で手に入れた!?」
「図書館島で拾ったんでな、お前に話を聞こうとして持って来た」
 直後、いきなり本を殴りだすエヴァ。見た目的にはかわいそうな行動をしている。
「ど、どうしたんですか、エヴァンジェリンさん?」
「クウネルって人に恨みでもあるのか?」
 はあはあと、肩で息をするエヴァ。一息ついて、ネギに本を差し出した
「す、すまん。取り乱した……ぼーや、お前の父親の手掛かりが見つかったぞ」
「え、本当ですか? うわーい! やったあ!」
 千雨には何が何やらよくわからなかった。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 2-4
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/21 17:01
 恐れていた事態が起きた。
 食堂で昼食をとっていた千雨は、周りが騒がしいことに気が付く。
 どうやらみんなテレビを見ているらしく、千雨も視線をテレビに向けてみたら、ちびチルノが映っていた。
「ブフウゥッ!!」
 ゲストに出された飲み物のコップから顔を出していたちびチルノ。千雨は速攻で氷を作って、指先でちびチルノを回収した。
 しかし番組は生放送。日本全国にちびチルノの存在が知られてしまった。携帯でネットの状況をチェックすると、もう話題は拡散して、動画までアップされていた。
「……どーしよ」
 千雨も一応魔法使いに弟子入りしたので、バレたらオコジョにされるのは知っていた。
 ビクビクして午後を過ごした。いつ学園長に呼び出されてオコジョにされるのか心配でしょうがない。
「……いざとなったらチルノとして生きようかな。……幻想郷に戻るのもいいかな」
 ところが学園長からは何の連絡もない。やってきたのは人の言葉をしゃべれないほどに混乱したネギだけであった。
 千雨は状況が気になって、放課後になって学園長室に行こうとしたら、しずな先生に止められた。今は忙しいのだそうだ。
 仕方なく出直そうとすると、茶々丸からメールが来る。エヴァが修行に来いと言っていることを伝える内容だった。



 師匠に相談してみると、眼鏡をかけて説明してくれた。
「お前のことはジジイに報告してある。ド素人のくせに私の呪いを解いた人間だとな。……呪いをかけたのは、ぼーやの父親『千の呪文の男』だ。コイツは今でも大英雄。そんなやつが掛けた呪いを、魔力の扱い方も知らんのに力技でブチ破って『闇の福音』という化け物を解き放った、化け物以上の化け物がお前だ。ジジイがお前のことを本国に報告しているなら手を出す勇気があるやつなんざいないし、報告していなかったならお前がいること自体知られてない」
「なるほど、よくわかりました師匠。チート万歳」
「……? ついでに化け物扱いの私も責任は取らされることもない」
 面倒なことが来ても学園長のところで止まるから、心配いらないと話を締めくくるエヴァ。
「だからぼーやも意味不明な言葉を呟いてないで、別荘に入れ。修行を始めるぞ」
 結局その日も魔力放出を止めることができなかった千雨であった。



 帰宅した千雨がネットを見たら、なんか話が変な方向に飛んでいた。

 1.妖精さんはいたんだよ。
 2.奇跡も魔法もあるんだよ。
 3.ていうか魔法使いもいるんだよ。
 4.普通の人たちに紛れて暮らしているよ。
 5.実はNGO団体を隠れ蓑にして活動してるよ。
 6.魔法の世界もあるよ。
 7.実は火星に幻想空間を作ってそこで生活してるよ。
 8.魔力が枯渇してその幻想空間壊れそうだよ。
 9.完全なる世界に移住するといいよ。
 10.とにかく妖精さん萌え。←今ここ



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 2-5
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/21 16:58
 魔法公開肯定派の魔法使いからの情報暴露等で、公開否定派の魔法使いたちが隠蔽工作に躍起になっていた頃。
「『おわるせかい』と『千の雷』が出来て、なんで……」
 広範囲殲滅魔法をあっさり成功させるが、垂れ流しの魔力を止められないおかしな弟子に頭を抱えるエヴァ。
 ちびチルノを消せないなら制御させてみようと、関西呪術協会の資料を手に入れて教えてみてもうまくいかなかった。
「しかたがない、もっと別の方向からのアプローチを試す」
 そうしてエヴァが提案したのは、なのはたちが使うミッドチルダ式、ベルカ式の魔力制御方法。
「GWを使って高町なのはたちがいる海鳴市に行くぞ。別荘から出たら連絡を入れておけ」
「はーい」
 まあそんな感じで千雨とエヴァは海鳴市に行くことになった。



 なのはからフェイトを通じてフェイトの母、リンディに話が伝わり、そこからなのはたちが所属する時空管理局という組織にまで千雨の話が到達した。
「なんか、大事になっちゃったね」
「これじゃまるで兵器の実験じゃねえか」
 千雨となのはがそうつぶやく。無人世界に移動して、現在時空管理局の局員たちによって千雨のミッド式魔法の使用実験の準備が行われている。
「でも、千雨はなのはといっしょで『妖精』なんでしょう? 下手すると京都の時みたいなことが……」
 フェイトの言葉を否定しようとしたが、千雨は自分がチート存在である事を思い出し、ないとは言い切れなかった。
「まあ、細かいところを調べておけば問題点もわかるやろ」
 はやては続けて、にやりと笑う。
「これだけ大掛かりやし、管理局は千雨ちゃんをスカウトする気でいるかもしれへんな~。何しろなのはちゃんに匹敵する素材やし」
「……まあ、将来の選択肢の一つには入れとくか」
 そうして千雨はミッド式の魔法教本を読み始めた。



「なんとなく理解はできたけど……」
 教本を読み終わった千雨は、リンディからデバイスを受け取る。なんだか機械的だが、これが魔法の杖なのだそうだ。
【Hello world!】
 杖が、しゃべる。
「は?」
【起動SE再生完了。はじめまして。今回、長谷川千雨様のミッドチルダ式魔法習得を補助するAI、仮名称『Fairy-01』です。よろしくお願いします】
 英語のようだが、頭ではちゃんと日本語の様に理解できる。
「お、おう」
【では、まずはバリアジャケット構築……。構築中です。しばらくお待ちください……】

 少女変身中。

「なんださっきの魔法少女の変身シーンみたいなものは」
【仕様です。バリアジャケットは千雨様の普段着をアレンジさせていただきました】
 現在の千雨の格好は、チルノの服に似ていた。確かに普段着ではある。細かい部分を見ると、なのはの変身後の衣装に似ているような気もする。
【ではさっそくエターナルコフィンを――】
「ちょ、ちょっとまって!」
 リンディが『Fairy-01』を止める。
【なんでしょう?】
「それは極大氷結魔法じゃない! 何であなたに記録されているの!?」
【彼女の力を十全に発揮するためには、氷結魔法こそがベストだと判断しました。名称は対象を永久凍結する効果をもって、エターナルコフィンとしました。同じ名称の魔法が存在するのですか?】
 なんだかリンディと『Fairy-01』がもめた。しばらくして『Fairy-01』が折れた。
【では要望通り、組み上げたプログラムを破棄して、遠距離攻撃魔法を行使します】
「ええ、そうして」
【では千雨様、構えてください】
 何度か『Fairy-01』から姿勢がダメだといわれて、修正した千雨。『Fairy-01』は納得がいったらしく、OKを出す。
【では、スターライトブレイカー発射シークエンス開始します】
「ちょっとまってえ!」
 リンディが絶叫する。青色の光が『Fairy-01』の先端に集まり始める。
【停止命令。……エラー。スターライトブレイカー発射シークエンス継続します】
 京都でのなのはの一撃がスターライトブレイカーだったことを思い出して、千雨は顔を青くする。
「大丈夫だろうな?」
【人命にかかわることはありません。観測機器が粉砕される恐れがあります。魔力集束中です】
「負傷者は出るか?」
【…………千雨様には一切影響はありません。魔力集束完了しました。発射シークエンス、次の段階に移行します】
 即座に避難命令を下すリンディ。



 負傷者はおらず、観測機器はいくつか壊れた。弁償はしないで済むらしい事に千雨はほっとした。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 2-6
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/22 08:11
「とんでもない威力だな」
 千雨の(『Fairy-01』が勝手に撃った)スターライトブレイカーを見てエヴァはぽつりとつぶやく。
「茶々丸、ちゃんと記録は残しているか?」
 従者に一応確認を取ってみるが、返事がない。
「茶々丸?」
「…………しい」
「おい、茶々丸」
「うらやましい!」
 意図がわからない言葉を叫ぶ茶々丸に目を丸くするエヴァ。
「デバイスとかいうのは千雨さんの魔力を一身に浴びるだけでなく、必要とあらば掠め取って自分で使えるんですよ!」
「……は?」
「……くっ、こうなったら私を千雨さんのデバイスのAIにしてもらうべく交渉を……」
 おかしなことを言いだす茶々丸に、エヴァは引いた。
「ハカセ達に調整してもらったほうがいいかな……」



 取り敢えず『Fairy-01』の言うとおり魔法を使ってみて、ミッド式の魔力制御が感覚で理解できてきた千雨。
「よし、じゃあ魔力カットできるか試してみよう」
 ちびチルノはなのはたちに預けていたので、エヴァたちと一緒に引き取りに向かう。
「なのは~、ちょっとちびを……」
「おお、ほんたい! ちょうど良かった。実はリインに面白い技教えてもらったんだ!」
 ばひゅんと千雨のところに飛んできたちびチルノ。
「ゆにぞん、いん!」
 千雨に体当たり。そのまま千雨の中に消えた。後には核となっていた紙切れが残された。
「……エヴァ、どうもちびは消えたみたいだ」
 豪快にひっくり返るエヴァ。

 Q:式神がコントロールできなくて消せないんですが、どうしたらいいでしょう?
 A:自分から本体、術者の中に戻らせるように仕向けるといいでしょう。あるいはしこたまダメージ与えて無理やり消すのもいいかもしれません。

 その後、実験的にいろいろやってみた結果、氷を核にちびチルノを作ったり、魔力カットして消したりと、出し入れ自在になった。
「すみません。こんなことに付き合っていただいて……」
 リンディに詫びる千雨。
「いいのよ。管理局が千雨さんのデータ欲しがってただけなんだから」
「てことは、やっぱりスカウト……」
「まあ、欲しがるかもしれないけど、千雨さんの意思次第ね」
 ほっと胸をなでおろす。



 後日、管理局から千雨にデバイスが贈られることになった。
「ま、ツバ付けとこうって魂胆やな。でもあんま気にせんでええと思うで」
 そんなはやてのコメント。
「うらやましい!」
 茶々丸の意味不明なコメント。



 今回使われた『Fairy-01』の製作者は、千雨のデータを見て大いに喜んだそうだ。
「ハハハハ! おもしろいよ、長谷川千雨! 高町なのはといい、君たちは本当に面白い!」
「ドクター。回収された『Fairy-01』は、いかがいたしますか?」
「もちろん完璧に仕上げて長谷川千雨君に贈らせてもらうよ。急ピッチで作ったから満足できないところがいろいろあってね」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 2-7
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/22 13:27
 管理局から送られてきたデバイスが千雨の元に届いた。
【お久しぶりです。『Fairy-01』改め、正式名称コキュートスです。改めてよろしくお願いします、マスター】
 待機状態は六角形の青い金属板に白い雪の結晶の形が張り付けられたようなペンダントになっている。
 これが地味に便利だった。

 買った商品の値段がいくらか思い出せなくなったとき。
『2598円でした。今月の予算は――』
『……家計簿つけてんのか?』
『不要でしょうか?』
『いや、継続してくれ』

 立ち寄ったパソコンパーツショップで。
『コキュートス、ちょっとネットでこの商品の売価調べてくれ』
『了解です。……明後日到着で売価がここより2002円安いショップが見つかりました』
『そうか、じゃあ注文しといてくれ』
『分かりました』

 パソコン使ってるとき。
【不審なプログラムが動作しています】
「どれ、……あ、新種のウイルスか」
【どうやらこのサイトから侵入したようです。このサイトの管理者が意図的に感染させている模様】
「チッ、じゃあちょっと懲らしめておくか」
【パソコン内部の温度が上昇。危険度は中です】
「ほいほい、冷却ー」

 プログラム組んでる最中。
【コードに誤りが存在します。148行目です】
「……あ、セミコロン忘れてた」

 DVD鑑賞中。
「ちょっと巻き戻して……行き過ぎ。ここだ、ちょっとこの辺りを拡大してみて」
【こうでしょうか?】
「……うわ、これ本物の幽霊映ってねえ?」
【ネット上では、そのような情報は確認できませんでした】
「どれ……、ちょっと書き込んでみるか」
【……反応がありました】
「あー、騒ぎになった」

 そんなことを昼食中にエヴァに話してみた。エヴァは適当に聞き流していたが、茶々丸が過敏に反応。
「わ、私だってちゃんと役に立ちます!」
 千雨は茶々丸の弁当を食べながら言った。
「うん、お前の飯はうまいよ?」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 2-8
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/23 10:04
 『完全なる世界』のシンパ探しやら現実世界での魔法隠蔽工作、魔法世界崩壊危機問題の暴露と、崩壊危機解決に現実世界に協力してもらうべきではとの意見の噴出。そして存在が幻想であると言われた人々の暴動。そういった山積みの問題でメガロメセンブリア元老院が大忙しになっていた。
 そんなわけでネギや明日菜に対しての調査の話がどっかへ吹き飛んだというのは、ネギたちにとっては良かったのかも。



「今日から本格的に戦闘訓練を行う」
 エヴァによって唐突な修行内容の変更がネギに告げられた。
「本格的、ですか?」
「ああ、そうだ。私の弟子が戦えもしない頭でっかちなのは非常につまらん」
 氷恐怖症は別荘を使ったりして何とか回復してきたとのこと。とはいえまだ全力戦闘は無理らしい。
「私はいいのか?」
 千雨の疑問に、エヴァが答える。
「全力の私をボコボコにした奴にどうやって戦闘訓練しろというのだ」
「あ、私がチルノだっていうことはようやく認めるようになったのか」
「数々の状況証拠に、本人の主張。まあ、認めるしかなかろう」
 ふうとため息をついて、エヴァがそういった。ようやくわかってくれたことに何か感慨深いものを感じる千雨であった。
「でも師匠の強さって……」
 強いことは分かるが、チルノ相手にボコられたイメージが強いネギがちょっと疑問に感じる。
「分からないなら、身をもって体験してもらう」



 ぼこぼこになったネギ。
「まあ、こんなものか」
「術式兵装とかいうのは?」
 千雨が停電の夜に見た技について訊く。
「あれは、ぼーや相手には必要ないだろう。それに氷結魔法取り込むのは抵抗がある」
 答えたエヴァが、げしげしネギの頭を蹴る。
「なんだあのへっぽこな避け方。これは魔法戦闘以前に体術教える必要があるな」
 エヴァは合気柔術を使えるらしいので、一応教えてみる事になった。
「とはいえぼーやに合った体術かどうかはわからん。他の武術も自分で調べてみろ」
「……ふぁい」
 刹那に剣術、楓に忍術、古菲に中国拳法、まあいろいろ選択肢はありそうだ。

「ところで、クウネルさんはまだ起きないのか?」
「別荘に置きっぱなしだが、全く目を覚まさん。いったいアイツに何が起きたのやら……」



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 2-⑨
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/23 13:33
「千雨さん、これは危険なんです!」
「いきなりどうした茶々丸」
 コキュートスを奪い取った茶々丸調査によるデバイスの危険性講座が始まる。
「これは常時千雨さんのバイタルデータなどを採取しています!」
「うん、健康状態の情報整理とかもさせてるしな」
【ええ、マスターからちゃんと了承を取っています】
「違うんです! コイツは採取したデータを極秘にどこかへ送信していたんです!」
 茶々丸が調べ上げた、コキュートスの秘密を暴露する。
【そんな! 私はそんなことしていません!】
 コキュートスは反論した。
「データ送信してたのは知ってた」
「えっ」
【えっ】
「でっかい組織が、こんな便利で兵器にもなるような物を所属もしてない人間に無償提供なんて、裏があるにきまってるだろ」
 千雨は調べ上げたことを茶々丸とコキュートスに教えていく。
「まあ、コキュートスは把握してなかったみたいだが、AIに気が付かれないように細工してあったからな。送信していたデータはバイタル、位置情報、発動した魔法のログとかだったな。とりあえず事故を装ってシャットダウンしてからいろいろ細工してやった。送信データは偽造にすり替えて、逆に送信先の情報を調査してる。ああ、管理者権限も私じゃなくてジェイルとかって奴にあって、そっちの命令で私のコキュートス使用権限剥奪もできるみたいだったから、権限使おうとしたら意味のないデータを大量に送信するようにしておいたな。もちろん今は私が管理者権限握ってる。あとは、魔法使用に関してリミッターかけられてたみたいだったからそれも外しておいた。超に協力してもらってそういったことをやった後に、再度、超が細工してないかチェックかけたから問題ないはずだ。……茶々丸はこの辺超から聞いてなかったのか?」
「え、ええ……」
【私、そこまで丸裸にされてたんですか!?】
 コキュートスの悲鳴に千雨は何でもない事のように答えた。
「別にお前は私の物なんだから問題ないだろ」
【マスターの物……。そうですね問題ないです】
 何やら妙な響きがあったが、気が付かなかった千雨。
「情報扱う機械は用心して使うようにしてるんだ。あ、コキュートス。今度から送信する偽データお前が作ってくれ」
【いいんですか?】
「ん、お前に任せた方がこっちが気付いたってことがばれにくいデータが作れそうだしな」
【了解しました! マイマスター!】
 茶々丸が膝をついてがっくりしていたので、千雨は茶々丸に声をかけた。
「大丈夫か? 最近葉加瀬達は計画がどうのとか言って忙しそうにしてるけど、お前はちゃんとメンテ受けてるのか?」
「だ、大丈夫です……」
「……まさか葉加瀬達、メンテナンス適当にしてないだろうな?」
 葉加瀬達に話をしに行った千雨を見て、茶々丸はレンズ洗浄液をボロボロこぼした。



[31818] 【ネタ】千雨をチルノにしてみた 2-10
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/24 17:36
 コキュートスの件の借りを返すために超の手伝いをすることになった千雨。
「つってもコキュートスのデータとか色々やったろ。無茶なことはしねえぞ」
「ハハハ、まあ面白いものをありがとうネ。用件は対したことじゃあ無いヨ」
 そういって超は一枚の紙を千雨に渡した。
「……? まほら武道会?」
「今度の麻帆良祭で開こうと思ってる格闘大会ヨ。いろんな格闘大会をまとめてコレ一個にするつもりネ」
「ビラ配りでもやればいいのか?」
 とは言いつつも、千雨はそうではないことは分かっていた。
「いやいや、頼みとは、この大会に参加して貰いたいという事ネ」
「まあ、いいけど。八百長でもするのか?」
「そんな無意味なことはしないヨ。大会を盛り上げてほしいだけネ。ああ、優勝しても賞金を返せなんてことも言わないヨ」
 超は話は終わりだと千雨に告げる。千雨は了承して帰って行った。
「千雨さんのおかげでメガロは大騒ぎ。大分前倒しになってしまったケド、計画も楽に進みそうネ」
 ひとしきり悪そうな笑みを浮かべた超だが、今回のことでどうにも腑に落ちないこともあった。
「魔法バレに関しては専門の対策機関まで存在するネ。たかが式神一体をTVに出したくらいではすぐに対応されて騒動は収まるハズ……」
 ところがこの件に関しては、多くの人間が『妖精』がTVに出たと認識している。そこがきっかけとなって多くの人間が魔法使い達の吐く嘘を疑い始めている。
「なぜあの小さな式神が例外となったのだろうカ? ……不思議だネ」
 チート転生神が「変身したら正体がバレないのはお約束だよね!」と適当に付加した力が変な風に働いているのだが、神ならぬ身である超にはわからなかった。



 帰宅した千雨は超に渡されたプリントを眺めて、どうしたもんかと考える。
「これも計画の一部なのかね」
【恐らくそうでしょう。超常の力を記録した映像を世界にばらまけば、彼女の目的には近づきやすい】
「まあ、私がオコジョにならないなら、勝手にやってくれって思うけど……」
 空中散歩も気楽に行ける様になるだろう。もしかしたら弾幕ごっこの相手も現れるかもしれない。
【しかし、どうやって最後の一線を越えるつもりなのでしょう? これだけでは対策機関がつぶして終わりになるのでは?】
「その対策機関ってのがどこまで優秀なのやら。ちびの一件はまだ鎮火されてないんだろ?」
【ええ】
 しばし沈黙する千雨とコキュートス。
「まあ、どーでもいいや。今日はちょっとまほネットでアーティファクトについて調べてみるかね」
【あ、これ面白いかもしれませんよ。『力の王笏』】
「見た目がマジで魔法少女ステッキだな。機能については……」



[31818] おまけ
Name: 川岸新兎◆d56cdddf ID:77548ced
Date: 2012/03/19 17:16
転生妖精図鑑1

 スレタイ:前世でチート転生神に転生させられて今高校生やってる

 1:質問どんと来い

 4:転生神どんなカッコしてたかkwsk
 >>真っ白でピカピカ光る胡散臭いおっさん

 15:転生前何してた?
 >>名もない妖精さん 今はガチヲタ

 25:普通逆じゃねw
 >>だよねw

 38:チート能力なんだ?
 >>不明 能力指定しなかった

「なかなか食いつき悪いな~。 ……ま、いいや。ネトゲやろ」

 転生前 名無し妖精
 転生後 泉こなた
 転生時の願い エンジョイしたい

転生妖精図鑑2

「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」

 ハルヒはこの時列挙した肩書きを持つ奴らを無自覚に集めて、様々な事件を起こしていくんだが、まあそれは別の話だ。

 転生前 名無し妖精
 転生後 キョン(正式な氏名は不明)
 転生時の願い 面白い奴を見たい


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