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[31555] 【チラシの裏から】機動戦士ガンダムワールドNG(ガンダム VRMMO)
Name: ゆーたん◆83e6744c ID:94309d45
Date: 2012/02/22 22:54
どうもゆーたんです。
ソードアートオンラインを読んでから、VRMMMOが実現したら
楽しそうだなと思ったので1年ぶりくらいに、話を書いてみよう思いました。

にじファンで書き始めたのですが、こちらで挑戦?というか
投稿させて頂きます。
まとめて書くのが苦手なので一度に上げる文章量は少ないです。
全件表示にして頂いた方が、読み易いかもしれません。

ある程度短い物がたまったら、頂いたご指摘等に修正を加えつつ、
一つにまとめようかとも思います。

よかったらお付き合い下さい。
ご感想やご指南等頂けましたら幸いです。
頂けるご感想やご指摘ご指南が、非常にありがたく楽しみでございます。

チラシの裏におりましたが、飛び出してみました。
文法等未熟ではございますが、宜しくお願い致します。

■修正履歴
----------
2012/02/15 サンダスタウン1を大幅修正致しました。
       1~4をまとめました。

2012/02/19 サンダスタウン5を書き直して日常1と
       した物をアップしました。



[31555] ようこそ、機動戦士ガンダムワールドNGへ
Name: ゆーたん◆83e6744c ID:94309d45
Date: 2012/02/14 22:14
 砂塵が舞う荒野に存在する街は、今日も活気に包まれている。市場で果物や野菜を売る売り子に、開けた場所では鉄クズの様な物から、刃物や銃火器果てはMSモビルスーツと呼ばれる有人機動兵器まで、様々なものが並べられ交渉が繰り広げられている。
 ここは地球……という設定で重力や風、波の動きから季節まで細かく設定反映された架空の地球。ここは様々なプレイヤーが集められた、いわば仮想空間。

 この仮想空間を実現させる技術、NERDLESニードルスと呼ばれるバーチャルリアリティ技術は、直接神経結合環境システムの名称で呼ばれ、ニードルスはその略称である。詳しい事情は省かせてもらうが、今巷に出回っている次世代の多目的活用機器で、この仮想空間への接続機器の第二世代アミュスフィア。現在の所複数メーカーによってアミュスフィアの後継機が作られている。このアミュスフィアを利用したVRMMO(Virtual Reality Massively Multiplayer Online)ゲームが人気を博している。
 現在有料無料問わず多数ゲームが公開されており、企業開発や個人開発など多種多様にわたる。
 その中で、一部のファン待望のソフトがついに実現した。
 それが『機動戦士ガンダムワールドNG』である。
 1作目から現在に至るまで多種類に渡り、メディア展開されており1作目においては人気があり、どちらかと言うと大人のファンが多い。クローズベータ、オープンベータを経て3年ほど前に正式オープンされた。
 現在は多い時で2万人前後混雑するほど、ある意味盛況と言えるのでは無いだろうか。ゲームショップ、家電量販店、通販等でゲームソフトを購入し、アミュスフィアにインストールするだけでいい手軽さもある。インストール方法は購入時の説明書に書かれているので、省く事にする。

――――――


『ようこそ、機動戦士ガンダムワールドNGへ』

『まずはあなたのお名前を教えてください』

『リブロフ……で、よろしいですか?』

『それでは外見を作成します。アミュスフィアスキャン実行致します』

『……スキャン完了致しました。外見をカスタマイズしてください』

『カスタマイズ終了してもよろしいですか?……それではあなたの所属を教えて下さい』

『……所属はよろしいですか?』

『改めまして、ようこそ。機動戦士ガンダムワールドNGへ』



[31555] 【大幅修正】サンダスタウン1 (旧1~4をまとめました)
Name: ゆーたん◆83e6744c ID:94309d45
Date: 2012/02/19 19:47
 機動戦士ガンダムワールドNGを購入して3ヶ月。
 プレイヤーキャラクターを作成するときに、迷わず宇宙移民を選んだ俺は今コロニー……ではなく、地球フィールド上の宇宙移民側占領地域の荒野にある街、サンダスタウンで生活プレイしていた。

 このゲームに備わっている領地システムによって、自分が所属している側の領地と中立地域以外立ち入ることは出来ないと決まりがある。3年前に正式オープンされた直後は、地球人側は地球フィールド全てが領地。宇宙移民側は宇宙フィールド全てが領地となっていた。
 現在宇宙移民側は地球フィールドの2割程占領地域としているが、地球人側に宇宙フィールドの3割を占領地域にされている為戦況としてはやや押されている。


「ご苦労様。今日は上っておくれ」

 背後から掛けられた言葉は、ノンプレイヤーキャラクターNPCが発したパターン台詞1つ。今の台詞は現在実行していた仕事《クエスト》終了を告げるもので、この後成果を受け取りミッション完了となる。今行っていたクエストは、単純なNPCのMSモビルスーツを整備するという内容だ。整備を実行すると体が勝手に整備モーションを始めるので、そのモーションが終わるのを待てばいい。整備スキルが整備完了度に影響するだけでなので、やり方を工夫するとか気合を入れるとかする必要は無い。と言ってしまえば寂しいものだがそういう仕様だ。

「んん~……ふぅ」

 ゲーム内でネット上にある各種情報サイトなどを見られる機能がるおかげで、クエストも無事終了した俺は現実と同じ様に大きく伸びをして固くなった体をほぐす……いや、ほぐした気分を味わう。現実の体はベットに横になっているから、実際伸びをしているわけではないが、アミュスフィアの特徴として脳に直接働きかける為、似たような気分を味わうのだろうか。
 とりあえず手にした整備ツールを装備欄から外して、持参アイテム欄へと移動をさせる。アイテム欄等を表示させるメニューは、プレイヤーの好みで左右どちらかの腕に装着された時計型端末を利用してウィンドウを表示させる。このウィンドウは自分以外に見えない為人通りの多い通りでも安心して操作ができる設計だ。
 今の整備クエストは、短い時間で収入は5桁近くまで取得でき効率がいいので、回数はかなりこなしている。最初は上手く行かなかったこの整備クエストも、繰り返すことで上がった整備スキルのおかげでそれなりに稼げるようになったのはありがたい。

 プレイ直後にプレイヤが所持しているのゲーム内通貨10000クレジット。その他に半袖長袖2種類のシャツとズボン、それにスニーカーだ。各プレイヤーに最初からMSは所持していない。MSを入手する方法は軍に所属して支給してもらうか、自分で購入するの2つ。
自分の好きなMSを選んでカスタマイズする……そんな事を思い描きながらゲームを始めたのだが、現実と同様なかなか厳しいゲームだと実感させられた。軍に入隊すればMSをすぐに支給されるらしいのだが、俺はそうしなかった。軍属の場合、クエストや依頼《ミッション》をクリアすることで溜まるポイントがあるらしいのだが、そのポイントにより階級が上下し使用できるMSが増減するとの事だ。最悪除隊させられるとかなんとか噂もあるらしいので、軍には入らない事にした。
 最初から民間人でやれば気にすることないじゃん、というのが俺の素直な思いだ。そんな俺もクエストをこなしながら念願のMSを手に入れたのは今から2週間前になる。

 MS-06F――通称ザクだ。
 ガンダムの1作目、連邦軍の敵であるジオン公国軍の量産型兵器として登場したザクは、ザクⅡMS-06シリーズのMSだ。ザクの前身である旧ザクMS-05というMSもあり、ザクより価格は安い。プレイヤーの中には旧ザクをザクⅠ、ザクをザクⅡと呼ぶ人もいる。
 民間人としてプレイ開始して3ヶ月の俺に、新品MSを買えるお金が溜まる訳も無く他プレイヤーが売却した中古MSを買ったのだ。初めて手に入れたMSと言う事もあり、喜びは一塩だ。もちろん中古のMSは整備が必要で、整備が完了したのがだいたい一週間前になる。
 まさかMSに乗るまでにこんなに時間が掛かるとは思わなかったが、苦労が伴った分の感動は何物も及ばないだろう。たとえゲームだとしても、嬉しいものは嬉しい。

「さて、今日も操縦訓練でもやるか」

 そうと決めた俺は、サンダスタウンの住宅地区に借りている自室へ戻らず、街の中央に位置する他プレイヤーも利用するMS格納庫へと向かった。格納庫へ向かう途中に通りかかる屋台通り。道の左右に屋台が所狭しと並び、売り子のNPCや他の街から仕入れてきた食材や自前の料理を売るプレイヤー達が、声を張り上げお客を呼ぶ。ゲーム内では擬似空腹機能があり、ゲーム内である程度時間が経つを空腹を感じてくる。空腹は地味にやっかいで集中力等に及ぼす影響は小さくない。空腹など気にしないという精神力の持ち主ならば食べなくてもいい。大概我慢するのは難しく空腹を感じたら素直に食事をする事をおススメする。
 現状それほどお金に困窮している分けではないが、MS格納庫手前の屋台通り端の店に並べられている痩せ細ったりんごを左手に取り、売り子のNPCへ話しかけた。目の前に購入確認ウィンドウが表示され、右手でOKのボタンに触れた。購入完了したアイテムは、一度強制的にアイテム欄へと移動させられる仕様のため、端末を操作しアイテム欄ウィンドウから左手にドロップさせる。ドロップしたりんごの重さを左手に感じ一口かじると、なんともいえない渋みを帯びた酸味が口の中に広がり、俺は少しだけ顔をくしゃめた。

 なぜこのリンゴを買ったかだって?一番安いからさ。

 初めて食べた時は驚いたのだがあのすっぱさは、なぜかわからないが病み付きになる。かじるたびに現実と同じようにりんごが欠け、5度ほどかじるとりんごは無くなり先程まであった空腹感が解消された。まあ、りんご1個だけでは満腹には程遠いけどね。
 独特の歩行音と車両の走行音が入り混じる大通りは、MSの歩行が可能な道でその足元を縫うように車が走っている。ゲームということも有り、実際だったらそれなりに大きいだろうと思われる振動はあまり感じられない。街の東西南北の入り口から中央で合流する大通り以外はMSの歩行できない。その大通りであっても街中ではスラスターを使用した高速移動は禁止されている。噂ではクローズベータの時に、プレイヤーがMSに踏まれる事があったらしいが、製品版ではMSに踏まれる事は無くなった。原則街中での戦闘は禁止とされている事を付け加えておこう。

 格納庫に着いた俺は、つなぎを着た青年NPCに話しかけ表示されたウィンドウを指でタッチしていく。

「ちょっと待ってな。今準備するよ」

 威勢のいい声で青年NPCは、倉庫入り口についているパネルを操作し始めた。あのパネルをこっそり触ったことがあるが何も反応しなかった。恐らくただのオブジェクトなのだろう。
 格納庫の床のベルトがスライドし始めると預けたザクがその姿を現した。ベルトの動きが止まったらMSへ近づくことが可能になる。足元の部分へ移動し右足内円部にあるスイッチを操作し、胸側から乗り込むタイプのコックピットのハッチを開く。続けて捜査してパイロット昇降用のリフトを降下させた。
 リフトを上昇させてコックピットへ乗り込み座席へと腰を下ろす。端末を操作しアイテム欄よりキーを取り出してキー挿入口へ差し込むと、コックピットのドアが自動で閉まり、ヴゥゥンという音と共にメインカメラが外の映像を取り込み、コックピット前面と左右のパネルに外部映像を映し出した。足元のフットペダルに足を乗せ、二本の操縦桿を握り俺はザクを前進させ格納庫からでた俺は、街の入り口を目指し大通りを歩き始めた。

 俺のザクのコックピットは前面と左右のサイドパネルの3面がメインパネルに座席というオーソドックスタイプ。文庫本2冊分くらいの大きさのサブパネルが左右のサイドパネルの下に設置されており、ゲーム内でのログ等細かい操作を使用する時に必要となる。小さいパネルの種類や座り心地のいい座席など、お金に余裕があればコックピットを買い替える事もできる。非常人気のコックピットはほぼ360度視界のフルスクリーンモニタとリニアシートのコックピット。お値段はなんと新品ザクが数機買える程。人気の理由は市場流通数は少ないため入手機会が難しい。
 今のコックピットの場合、座席に座り膝くらいの左右に設置されている操縦桿、両足の所にフットペダルがある。
 基本的な操縦方法だが、操縦桿を握り双方を同時に前に倒と、機体が上下にゆれながらゆっくりと前進を始める。両方の操縦桿を同じ方向へ倒す事で後退、水平移動も自由自在だ。前進しながら右足のフットペダルを踏む事で、背中のスラスターが噴射を始めて機体を一気に前方へと押し出す。これがブーストアクションの一つ高速移動だ。
 メインパネルに表示されテイル情報についてだが、前面パネルの左下に機体のHPヒットポイントを表すエネルギーゲージと、高速移動や緊急回避などのブーストアクションで消費するブーストゲージが表示されている。エネルギーゲージが無くなれば撃破されるし、ブーストゲージが無くなればフルチャージされるまでブーストアクションが使用不可だ。高速移動はブーストゲージを消費し続けるため、ゲージの残りには注意が必要になってくる。戦闘ではブーストゲージのコントロールが必要とされているのだが、俺は相変わらず空になるまで使ってしまう為格好の的に良くなっている。
 慣れるまでは練習が必要。、街の外は戦闘エリアに入らない限り敵も出てこない為、機体制御の訓練ができる広い敷地と思っていいだろう。お陰でこのザクを買った初日は、練習と称して遠出をしてしまった為街に戻れず苦労した。その苦労があって目的地設定機能に気づいたのだから、プラマイゼロ……という事にしておきたものだ。

「そろそろ見えてくるはずだけど……」

 予め目的地設定をしている場所を示すマーカーが、サイドパネルに表示しているレーダーで点滅している。町の周辺に数箇所ある戦闘エリア、今向かっているのは街の東側にある対NPC戦闘エリアだ。このフィールドは宇宙側占領地の為、地球側前線補給基地という設定になっている。占領している側によって出現する敵と、参加できるプレイヤーが変化していく。
 今回の場合、出現するのはもちろん地球軍のMSや戦闘車輌で、比較的性能は低くザクでも問題は無い。ただ、複数同時に相手にする場面もあるため、油断していると背後からズドンと攻撃される可能性もある。自分の位置を敵の位置に数を、レーダーで確認する事を怠らない……ようにしなければならないのだが簡単に行くなら苦労はしないって事だな。

「あったあった」

 メインパネルに映る倉庫が複数並んでいるコンクリートの敷地を、薄らと白い光が囲んでいる。この戦闘エリアへ参加するには敷地内へ入る、それでけで戦闘エリアMAPへと転送される仕組みだ。もし戦闘エリアMAPへ転送されない場合、進入可能人数を越えている可能性がある。この戦闘エリアの参加可能人数は10人。そのMAPが10ルームあるため、最大100人までは来たプレイヤーから順番に部屋を埋めていくので、待たずに入る事ができる。

『俺達の手助けをしてくれるって義勇兵はお前か。上から聞いているぜ』

 戦闘エリアへ転送されると、正面パネルの通信ウィンドウが開かれ映し出された宇宙軍の軍服を来た無骨な男がぶっきらぼうに話しだす。声は豪胆、筋肉質な体には少しきつそうに見える軍服が少し可愛そうだ。

『地球の連中を撃退してくれればそれでいい、報酬は弾むからよ。ん?司令部よりお前にだとよ。ミッションクリアすれば追加で報酬が出るみたいだぜ。自分の力量にあったのをやるんだな』

 多少差異はあるものの、対NPC戦闘エリアではお馴染のやり取りだ。表示され他目の前のウィンドウには、ミッションが数種類ほど表示されている。この間、MSの操作は目の前のウィンドウ以外不可となっている。
 どれにしようか悩んだが……。


「とりあえず」

 今回は、敵MSを20分で20隊撃破のミッションを選択した。最終確認ウィンドウのOKをタッチすると、ミッションウィンドウが消えて、代わりに正面パネル上にカウントダウンを示す数字が表示される。10……9……、0になればいよいよ戦闘が開始だ。このカウントの間にサイドパネルを操作して、このエリアに参加しているプレイヤーに対してマナーの1つである、挨拶をするためにテキストチャットウィンドウを出す。簡易メッセージを選択して送信するとチャットログに、よろしくと表示されたのを確認してそのウィンドウを閉じた。

――よろしく――

 このエリアに何人参加しているかわからないが、6名からの返信は確認できた。

 3……2……1……。

 0、と同時に俺とザクはようやくシステム上の拘束から解放されたのだった。

 システム上の拘束が外れた俺は、、右足のフットペダルを踏むと同時に左右の操縦桿を前に押し出す。バックパックから噴出されるスラスターが、機体を強引に押し出し一気に最高速度へと加速させる。
 俺の体がGによってと座席に押し付けられて、少しばかり苦しい。今まで何回も味わっているが、この苦しさはむしろ心地よい。現実では体験する事は無いだろうこの臨場感が、俺の感覚を麻痺でもさせているのだろうか。
 本来、戦闘開始直であれば周囲の状況を気にするのだが、レーダーに何の反応も無かった。その為高速移動を即座に開始させた。どの方角からこの戦闘エリアへ入っても強制的にスタート位置は南に固定されている。

「さて……、まずは敵MSを見つけないとな」

 対NPC戦闘エリアの敵MSは、参加している人数により最大出現数と出現間隔が変動する仕組みだ。レーダーに引っかからないという事は北側でプレイヤー達が混戦しているのか、現在参加している人数が少ない……極端な話俺だけなのかもしれない。コックピット内設置されたスピーカーから銃撃音や爆発音といった外部音が聞こえてくるので、少なくとも戦闘は行われているはず。

「はやく撃破しないとなぁ」

 戦闘開始前に俺が選択したミッション、20分でMS20体撃破。単純計算1分で1体以上を倒さないと間に合わない。その為索敵に時間を取られるのは勿体無いと少し焦りを覚えている。残り時間は正面モニタ上部に表示されており、最初は青色で表示されるが時間経過と共に徐々に赤に変わっていく。目に付く赤と言う色が俺を追い詰めてくるのだ。ミッションをクリアし制限時間が残っている場合は、時間切れまでまでプレイすることが可能。ミッションを失敗したとしても、撃破したMS数分の通常報酬は取得が出来るので、初心者でも安心して失敗できる。しかし注意しなければならない点があって、戦闘後の結果画面リザルトで使用した弾薬については全弾補充をしてくれるのだが、補充した弾薬の費用が報酬から天引きされてしまう。無駄に弾を撃ち過ぎると赤字になる可能性もある。


[ピッ]

[ピピピピッ]

 コックピット内に響くアラーム音。連続で鳴る音が、自機が敵機にロックオンされたことを俺に教えてくれる。

「いつの間に!?」

 ちょうど出現時間だったのだろう、正面モニタ右下に表示させているレーダーに、赤い丸のマークが表示されている。位置的に俺の後方で、先ほど通り過ぎた倉庫の辺りだ。正面モニタ左下のブーストゲージに目をむけ残量を確認すると、ゲージはまだ3分の1程残っている。俺は、一度右足をペダルから離しスラスターの射出を止める。
 慣性が働き機体が前方へ流れているのを感じながら、左右の操縦桿を同時に右へ傾ける……と、同時に右フットペダルを踏む。左に向いたバックパックのスラスター射出口。射出時のエネルギーによって得た推進力が、機体を強引に右方向へとスライダさせる。敵の射線上から外れたことを祈りつつ、右ペダルから足を離し右操縦桿を前に、左操縦桿を後ろへ引く。反時計回りに機体が左旋回を始め、モニタに映る景色がそれに併せて流れていく。レーダーを見ながら敵機のマーカーがが正面に来た所で操縦桿をフラットに戻す。モニタに映ったMSはRGM-79、通称ジムGMだ。
 ガリガリという機体が地面を滑る際、足元を削る音が聞こえるのと同時にコックピット内を揺らす振動が妙にリアルだ。機体の動きが一瞬静止する膠着時間。ブーストゲージの消費量によって増減する為、対プレイヤー戦ではこの膠着時間をいかに狙うか、またはいかにカムフラージュするかが重要になってくる。もちろん対NPC戦でも、膠着時間を上手く使えば倒すのは難しくない。その逆もありえるのだが、この戦闘エリアの敵は鬼畜な強さではない為、下手な俺でも十分戦える……はずだ。
 極力慌てないように右操縦桿を操作し、敵に対し照準を合わせようとするのだが肝心な事を忘れていた。武器を装備して無い……、正確にはザクの両サイドとリアアーマーには装備設置可能部位マウントラッチがあり、所持したMS用武器を装備する事で実際にゲーム上に武器グラフィックが表示される。ライトラッチにはザクの代表武器の120mmザク・マシンガン。レフトラッチにはこれまた代表するヒートホークを装備。リアラッチには他に装備する武器を持っていないため、マシンガンの予備弾薬を装着している。予備弾薬に付いては、MS用アイテム欄に入れておけば装備しなくても装填リロードされるのだが、見栄えを良くする為だけに装備させていた。
 両方の操縦桿の人差し指側には装備選択のボタンが付いており、装備に対応したボタンを押しながら左右どちらかの操縦桿のトリガーを押す事で武器を手に装着でき、装備武器の各残段数に付いては、サイドモニタ下に並んで表示されており、今装備しているものは不透明で表示され、それ以外は半透明で表示されている。

「それでは……いくぞぉ」

 右の操縦桿を操作し、武器を装備させる事で表示させる照準マーカーを相手に向ける。拳2個分くらいの円形と、その中心に×マークの物が照準マーカーである。×マークは中心点を、円形は精度を表している。特にマシンガン系は集弾性能は悪い為ブレ易い。敵が射程距離内に入ると、照準が赤くなる。その時に装備した方の操縦桿のトリガーを引く事で攻撃を行う。
 120mmマシンガン――通称ザク・マシンガンから銃弾が連続で発射されると、それにあわせて右の操縦桿に振動が返ってくる。もちろんその影響で照準がずれる事があるので、これをコントロールしなければ効果的なダメージにはならない。集弾率を上げる為は、トリガーを押しっぱなしにせず発射弾数を区切るか、射撃によって暴れる銃身を制御するしか無い。他ファーストパーソン・シューティングゲームFPSの様に、マシンガン系の武器を使う場合はリコイルコントロールというテクニックを身に付ける事、これが上達への一歩であり覚えておかないと弾の出費がバカにならない。
 始めたばかりの初心者にはコントロールは難しい、なので俺は左手を使うのだ。添えるだけじゃない、左手も重要なんだ。
 ザクマシンガンのグリップより砲身側に、フォアグリップがついている。片手射撃できる武器で、両手持ち可能な武器に限り両手持ちアクションが可能だ。フォアグリップを左手で掴み構える事で、リコイルコントロールがし易くなる。初心者だからというわけではなく、上位のプレイヤーの中にも両手持ちしているプレイヤーは少なく無い。戦闘は避ける事と当てる事が重要なのだ。
 両手持ちにして格段に照準をコントロールしやすくなった俺の攻撃は、着実に相手のエネルギーゲージを削っていく。相手のエネルギーゲージは相手機体の上部に表示されるため、エネルギーゲージの減り具合を確認できる。
 今闘っているジムの装備は同じくマシンガン系、恐らく威力もザク・マシンガンと似たり寄ったりだろう。ビーム兵器等に比べ、マシンガン系は相手を怯ませるスタン値と言うものが少ない為、攻撃を当てても平気で動いてくる。恐らく連続で当て続けないと無理だろう。ジムの放つ銃弾を回避しつつ、片手時よりも狙いやすくなったザク・マシンガン照準を合わせてトリガーを引いた。

「よし!!」

 思わず叫んでしまったが、敵機であるジムの機体が動きを止め煙とスパークを出しながら地面に倒れた数秒後に、爆発のエフェクトを撒き散らしながら地面へと溶け込み跡形もなくなった。1機を倒すのに要した時間は90秒。15分で10体撃破のミッションはすんなりクリアできたのだが、今回……雲行きは怪しい。

「きびしいな……」

 そう呟いた俺は、次の敵MSを探すため移動を始めた。


***


「ふぅ……」

 サンダスタウンへと戻ってきた俺は、ため息を漏らしながら格納庫と戻ってきた。

『おう、今日はどんな用だい?』

 先ほどと同じ威勢のいい青年に話しかけ、メニューウィンドウを開く。整備とカスタマイズのボタンを押す。

『わかった。今ハンガールームを用意するからな』

 その直後、ハンガールームへ転送させられた俺は固定されたMSのコックピットを開いて、リフトに掴まり降下した。1つのハンガールームには最大10名まで入室でき、現在プレイヤーの姿が7名ほど見える。ガンダムWに出ていた赤茶色のトーラス以外はほとんどが俺と同じザクタイプだ。

「まぁ、プラスだから良しとするかな」

 アイテム欄に表示されるお金の数値を確認した所、先程より増えている為少し安心した。実際はプレイヤーMSの整備依頼を受けた方が稼げる。戦闘エリアのミッションをクリアできていれば、そんな事もなくおいしくなるのだがそう上手くはいかない。
 結局、制限時間20分で20体のMSを倒すというミッションは達成できなかった。3体に囲まれて数的不利な状況が何度かあり、1体を集中して攻撃しすぎて他のMSのケアができていなかったり、いろいろ考えながら操縦している内にタイムアップとなった。結果として13体までは行けたのだが、まだまだ操作に付いては未熟だ。いつかはプレイヤー同士の大規模戦闘も参加してみたいとは思う。

 週に1度行われる両陣営の陣地取りに影響する大規模戦闘は、ネット上でもゲーム内でもリアルタイムで配信が行われ、後日にはその映像がアップロードされる。多種類のMSがアニメさながらに飛び交いながら、攻防が繰り広げられている映像をゲーム内で見ていた俺は、身震いするほど興奮した。いや、興奮させられたのかもしれない。

対プレイヤー戦闘では、MSが撃破されたり宇宙では艦隊、地上では陸用艦を攻撃・撃破する事で敵の戦力ゲージを減少させられ、制限時間内に戦力ゲージを0にした方が勝利となる。制限時間内でも戦力ゲージが0にならなかった場合、ゲージが多く残っている方が勝ちというルールだ。このため、単独行動するより味方との連携が必要となる。
 そうなってくると必要となってくるのは、優秀なオペレータや指揮官という存在なのだが、このゲームには勿論存在する。
 俺の様にMSも乗るし機体整備もするプレイヤーもいれば、基本的にMSに乗らずに戦闘エリアで指揮を取るプレイヤーもいて、遊び方は色々だ。もちろん1人が全体の指揮を取るという事は実際難しいだろう。そこで搭乗するのが隊というゲームシステムになる。最大500名の大隊は5つの中隊、中隊は5つの小隊、小隊は最大20名での構成となり、プレイヤー間で作成できる分隊《チーム》の最大人数は小隊と同じ20名までとなる。指揮官は各隊をまとめるオペレータ補佐官へ情報を伝達する事で、大規模戦闘で指揮する事を楽しめると言うものだ。指揮官のプレイヤーは毎回ランダムのルーレット抽選となるため、毎回同じプレイヤーが指揮官になれるわけではない。
 さまざまなプレイヤーが集う大規模戦闘のは、このゲームの醍醐味の1つ。1度は経験しておく方が良いと情報サイトには必ず書かれている。ある意味このゲームの醍醐味であるし、病み付きにさせる魅力とやらがあるらしい。

「とは言うけどねぇ……」

 魅力とやらを味わうには、まだまだ当分先だろうとため息をついた。それよりもまずやるべき事がある。戦闘で減ったエネルギーゲージの修復と、各部位や部品に存在する耐久値の修復だ。必要なアイテムは整備ツールとエネルギーパック。エネルギーパックにも種類があり、基本回復量と金額に差がある。最大値の1割回復させるエネルギーパックが一番安い物で、一番高いのは5割回復させる物だ。
 俺が使うのは、もちろん1番安いエネルギーパック。節約するのは本当に大事。そうしなければMSを手に入れるのは当分先になっていたであろう。エネルギーバーを半分近く削られているが、整備スキルのおかげで3個ほど使えば満タンになる。あとは各部位のパーツと武器の手入れになるのだが、それぞれに耐久値というのが存在し戦闘をするほど徐々に減っていく。もちろんダメージを受ければその分さらに減ってしまう。この耐久値が減る事で、MSの動きが鈍くなったり、各武器の性能が低下していく。マシンガンの場合、集弾率はさらに悪くなり戦闘が不利になったりと良い事が無い。
 この耐久値の問題を改善する方法は2つ。耐久値を回復させるか新品を購入するか。後者の方が費用はかかるが即時に解決できる。前者はプレイヤーが耐久値を回復させるという方法だ。だがプレイヤーが耐久値を回復させるには条件がある。条件と言うのは整備スキルのオーバーホールが必要となる。その為、このゲーム内でオーバーホールのスキルを持っているのは主に整備士プレイをしているプレイヤーだろう。その為、オーバーホールを持つプレイヤーの所には耐久値修理の依頼が集まる為待たされる事が多い。ただ新品を買うより、はるかに費用は安い……はずだ。その整備士のプレイヤーのさじ加減1つだが。
 俺がMSを手にいれて実際に乗れるまで時間が掛かったのは、主にこれが理由だ。購入した当初、各パーツの耐久値のゲージが赤だったり最悪無い状態だったりで無残な状態だった。幸い、このサンダスタウンにもオーバーホールスキルを持つ整備士はいるのだが、やはり混雑している。なかなかチャンスがやってこなかったという事もあり、自分でこのスキルを取得する事を決めた。
 このオーバーホールのスキルは誰でも取得できるが、試験を受けねばならない。前提条件は一定以上の整備スキルを持っている事……それだけだ。それがクリアできているならば、あとは試験を受けられる街まで行き試験を受ける、たったそれだけでいい。もちろん受験料は初心者にはきつい初回5万C。しかも試験合格判定はなんとランダムという、非常に恐ろしい試験である。しかも試験を受ける回数が増えると、受験料もあがるという理不尽な試験なのだ。
 情報サイトでは、合格率15%~25%とも言われているが実際のパーセンテージは公開されていない。1回で合格するプレイヤーもいれば、20回受けても合格できないプレイヤーもいる。なんかブログで怒りまくっているのを見た記憶がある。
 もちろん俺は、そんな試験なんて1発……とはいかず5回目でようやく合格した。MSを買い、余った分でいろいろ装備を買おうと思っていた虎の子のお金が、この試験のお陰ですべて消し飛んでしまった。
 ただし、オーバーホールのスキルを持っている事がばれると、依頼が殺到しそうなので誰にも教えていない。

[ポーン]

 こっそり整備していた俺は、この音にビクっと体を強張らせた。

[1件の通信が繋がっています。通信を許可しますか?]

 腕に付けた端末の女性AIがたんたんと告げる。端末の画面を見ると通信者の名前と、顔写真が表示されている。『ガスパー10』という顔馴染みと言うか、サンダスタウンで3ヶ月近く整備の仕事をしていれば、自然と知り合いもできるというもの。通信のボタンを押し相手との通信を接続する。

『ようリブロフ。今平気か?』

 大丈夫、とだけ答えながら俺は整備を再開していた。非常に爽やかでいい声を持っているが、外見とのギャップがある。金髪オールバックの強面の顔は、俺の短髪で中年職人をイメージした顔とは違った意味で近づき難い印象を受ける。外見については人の事は言えないな、と思いつつガスパーの近況など他愛ない話をしながら、俺は整備モーションを続けている。

『それでよう、今度の日曜日は空いてるか?』

 空いている、というのはもちろんゲームにこれるかという内容だ。現実世界での知り合いではないし、お互い現実の情報は一切やりとりしていない。

「日曜日は問題ないよ。予定は今の所ないし」

 今週の日曜は確かバイトも休みだったはず。それに試験前でもないから特に大丈夫そうだなと記憶を探る。
 言い忘れていたが、俺は高校2年生だ。自分のバイトしたお金でアミュスフィアとゲームを購入し、さらに学校の成績も落とさないという約束を両親と交わし今に至っている。テストで成績を落とさないよう、テスト間近はゲームをやらない……など自分で制限を定めている。

『それなら、日曜日に東の小規模戦闘エリアに分隊チーム組んで遊びにいかないか?』

「あー、30対30の所?チームって後はガスパーさんの他に、コイおうさんとクラゲさん?」

『そうそう。だから4人でどうかと思ってね。リブロフもMSなれて来ただろうしさ』

「んー、まだ20分で20体のミッションクリアできないくらいの腕だけど」

『あー、いいからいいから。対NPC戦あんなもん、対プレイヤーとは感覚が全然違うから気にするな』

「おいおい」

『今週は防衛側だから、勝利できたら来週はチャンスになる』

「チャンス?」

『そうそう。今度はこちらから、地球側の領地へ進行できるんだ』

 まだ十分な操縦スキルは無いので渋っているものの、やっぱり対プレイヤー戦という魅力に俺の心は揺れ動いてしまう。いつかはと思っていた機会がこんなに早く訪れるとは……。

『深く考えずに行こうぜ。まずは楽しめばいいのさ』

 結局ガスパー10に押し切られてしまったが、それは良かったのだろうと思う。俺一人では、まだまだとか言いながらどんどん先延ばしになっていただろうから。
 今度の日曜日が今から待ち遠しくなっていた。




[31555] 日常1
Name: ゆーたん◆83e6744c ID:94309d45
Date: 2012/02/19 22:17
 ザクの整備を終わらせた俺はログアウトゲーム終了する為に、サンダスタウンの北西にある第2居住区の自室へ戻ってきていた。外壁と土色の内装の中に、ベッドとテーブル、それにイスが1つ設置された簡素な部屋。ゲーム内通貨クレジットを使い商人から家具を買う事で、自室のデコレーションができるのだがそこに回す余裕は今の所無い。

 「ただいま」

 そう発すると同時にチャリ、という音を聞いた俺は端末を操作してアイテム欄を表示させる。所持金が少し減っているのを確認すると続けて操作してログウィンドウを表示する。

――家賃を支払いました――

 この自室はあくまで借家なので、ログイン時ゲーム中にゲーム内24時間に1回支払われる。ログアウト中はこの時間には含まれないというのは、貧乏な俺にとっては有りがたい仕様だ。

「ふぅ」

 少し長い吐いてベッドに腰を下ろした。ログアウトする時は、いつも自室のベットの上で行っている。現実世界の俺がゲームにログインする際は、自室のベットの上だからなんとなくゲーム内でも同じ様にしているのだ

「さて、終わりにするか」

 ベットに横たわり端末を操作してログアウトのボタンを操作する。瞼を閉じリブロフとしての俺の意識が徐々に暗闇が俺を包みこむ。目を閉じているはずなのだが、ログイン時にも現れる光を帯びた球体が徐々に大きくなっていく。


『お疲れ様でした』

 バレーボール位の大きさの球体から、聞こえてくる女性的な声。抑揚を抑えられた声で事務的だ。反応があるわけないのだが、お疲れ様と俺は彼女へ投げる。やっぱりというか何も反応が無いので俺は苦笑した。

『あなたの帰還をお待ちしています』

 いつも通り事務的な言葉を聞くと、視界がゆっくりと揺らぎ始める。ゆっくりと意識が深く深くもぐり始める。リブロフからの離脱。やがて現実世界に横たわる自分の体に意識戻るのを感じた俺は、ゆっくりと瞼を押し上げた。体を起こしてアミュスフィアを外すと、、外から差し込まれる街灯の明かりが室内を仄かに照らす。ベット横の机の上に置いた目覚まし時計に目をやると、

「1時15分か……」

 いつの間にか日付が変わっていたようだ。アミュスフィアを机の上に置き、代わりにその時計を枕元へと置いた。1時15分……この時間はマシな方だ。一番ひどい時は午前5時を過ぎた事もある。その日の授業は相当辛かった記憶があり、もちろん授業の内容など覚えていない。今はそんな無茶はしないように心がけているが、翌日がが休日の時はこの限りではない。
 ベットに再び横になり瞼を閉じると、今度は睡眠へと俺の意識は落ちて言った。
 翌朝、俺の目覚めは良かった。目覚ましにセットした時間より早く起きれた為、目覚ましのセットを解除して制服に着替える。高校は上下紺のブレザータイプの制服で、ネクタイ締めて1Fと向かった。2階にある部屋から降りようと階段に顔を出すと、俺を起こしに来る所であろうと思われる母親と目が合った。おはようと挨拶を交わし階段を降りた。
 リビングにはすでに食べ終えられた空の食器があり、それを食べた人物の姿はすでにない。

「父さんは?」

「今日は会社で会議みたいよ」

 母親が俺の問いかけに答えつつ、テーブルの上に朝食を並べていく。

「いただきます」

並んでいるおかずはなんというか、昨日の残り物だ。別に手抜きだなんて思っているわけは……ない。そんな思いを感じ取ったのか、目の前の母親から鋭い視線を感じる。うん、気のせい気のせいと決して視線を上げないように、朝食を胃の中へ流し込んだ。



「いってきます」

「いってらっしゃい、気を付けてねー」

 いつも通り母親の言葉を背に受けて、馴染みのバス停へと向かった。俺には可愛い幼馴染などいるわけもなく、妹や姉もいるわけでもない。平凡な一人っ子。VR恋愛シミュレーションゲームの主人公の様に、そうそう恵まれてる環境なんてあるわけ無いなとかぶりを振りながら短いため息を吐く。

「そんな事より」

 ほぼモバイルパソコンと同性能……それ以上かもしれない携帯電話をズボンから取り出す。ゲームの情報サイトやブログをチェックする為、タッチパネルを操作してブラウザを起動しお気に入りを開く。ブログについては最近増加傾向らしく、単語で検索するとかなりの件数ヒットする。最近良く見ているブログは、ブログネーム星野という女性プレイヤーのブログだ。自分のプレイ動画や対プレイヤー戦の感想を載せている。俺からしたら他のプレイヤーは皆上手く見えるが、この星野はその中でも郡を抜く。俺は無線式イヤホンを装着し動画の再生を始めた。

「ほんとすげぇ……」

 星野というプレイヤーが使用している機体は連邦系の可変MSデルタプラス。人型と巡航ウェイブライダーの2つの形態の特性を活かし彼女は戦闘宙域を飛び交う。対戦している相手も、同じ可変MSのゼータガンダム。今回の戦闘は1対1。他の機体はいない。
 開始直後に両機体がウェイブライダーで距離を縮め、すれ違いざま互い射撃武器ビームライフルで攻撃。牽制だろうその攻撃の直後、すぐ様人型へ変形し再度射撃。相手のゼータはそれを回避してデルタプラスと距離を取りながらの射撃戦。残弾が無くなった両者はリロードせずに、今度は近接武器のビームサーベルを片手に突進する。デルタプラスはビームライフルを左手に持ち替え、ゼータは右腕にビームライフルを装着し、それぞれ右手に持ったビームサーベルをすれ違い様に一振り。
 互いにダメージを受けつつも近接武器の応酬。機体のHP総量で言えばゼータに分があり、このままいけばデルタプラスの不利は変わらない。だがそれでもデルタプラスはゼータとの接近戦を継続していく。何度目かの斬り合い時にデルタプラスが――。

「よそ見してると危ないぞ」

 頭上より降り注いだ言葉と同時に後頭部に軽く衝撃が走る。

「うわぉぇ」

 不意の事に体をビクつかせると同時に大きめな声を上げてしまった俺は、犯人である人物の顔を見上げる。その犯人である男子生徒は中学3年からの級友の佐久さくまこと。中学からサクマという愛称で呼んでいる。そんな彼は悪びれた様子も無くにひひと笑っていた。

「びっくりするじゃんかサクマ」

 少し尖った言い方でお返しとばかりに腕を叩こうとするも、運動部であるサクマに簡単に避けられてしまう。

「頭叩くなんて、バカになったらどう責任取ってくれるんだ?」

「俺よりテストの成績がいいんだから、少しくらいバカになってくれた方がちょうどいい」

 もう一度にひひと笑うサクマは歩調を合わせて俺の隣に並んだ。ここで互いにおはようと交わし、俺は携帯をズボンのポケットへとしまった。隣を歩くサクマは、バレー部に所属する身長180cm以上あるスポーツマンだ。『佐久 真』と言えば県内でもそれなりに有名……、らしいような事をサクマが言っていたが本当かどうか怪しい。実際確かめるのはめんどくさいから、有名という事で放置している。
 隣に並ばれると20cm前後差があるのでなんか悔しい。ゲーム好きでインドアな俺と対照的で、スポーツマンらしい引き締まった体はブレザーの上からでも分かる。短髪で清潔感があり爽やかで明るい彼は学年でも人気がある。嫉妬とかうんぬんを取り除いて男の俺から見て、サクマはイケメンというよりかは愛嬌があると思っている。

「な、なに人の顔をジロジロ見てんだよ」

 そんな事を考えていたら、いつのまにかサクマの顔祖見ていたらしい。少し体を反らしながらいぶかしい表情を浮かべてこちらを伺うサクマに対して、なんでもないよと慌てて視線を外す。
 これでは俺が変に意識しているあっち系みたいじゃないか、などと考えてしまった俺をよそにサクマが声を上げる。

「なにボーっとしてんだ?バス来たぞ」

「え?」

 いつの間にかバスの入り口付近に立っているサクマの呼びかけに、先ほどまでトリップしていた俺は慌ててバスへと滑り込んだ。

「お前も相変わらずだ、うっ」

 くすくすと含み笑いを浮かべるサクマのわき腹に、俺はかるーく肘鉄をお見舞いした。




[31555] 日常2
Name: ゆーたん◆83e6744c ID:94309d45
Date: 2012/02/22 22:50
 教室に入り席が廊下側のサクマと別れ、窓際列の真ん中に位置する自分席へ向かう。机の上にかばんを置き椅子に座る。隣の席の級友らと挨拶を交わし他愛ない話題で盛り上がる。類は友を呼ぶというのだろうか……、ドラマやバラエティーも見てはいるが、大半が深夜アニメの話やゲームの話だ。
有名どころのVRMMORPGとしては、アルヴヘイムオンラインといやガンゲイルオンラインなどがあるしFPS系にシューティング系、最近ではスポーツ系の人気が高まってきている。俺のやっているガンダムワールドをロボット系と括るなら、他にギガンティックドライブNEOやアーマドなんちゃらなど種類はそれなりに多い。

「昨日のアレ見たか?」
「あれ?」
「ガンダムJだよ」
「ああ」

 前の席とその隣席の男子が話しているのは、深夜にやっているアニメでガンダムシリーズの最新作、ガンダムJだ。

「昨日の展開はなんというか」
「ああ。アニメだと思っていたけど主人公が……」

 二人とも驚いた表情を浮かべながら、昨夜の感想を話している。当然俺もそのガンダムは録画しているがまだ見ていない。ネタバレは非常に困るのが本音だが、その二人の会話も気になってしまう。まさにこれからそれを語ろうと言うときに、「席について」と担任である御堂みどうの声が教室に響いた。二人の男子は会話を中断し教卓の方へと向き直る。内心ほっとしている反面、早く帰って見たいという気持ちの方が今は強い。前の席の男子二人を交互に見てから、心の中で恨むぞと密かに呟いた。



キーンコーンカーンコーン

 今日最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。授業で凝り固まった前進をほぐす為、両手を腕に上げて大きく伸びをした。同時にでてしまった欠伸が思いのほか長く、自分でも少し驚いた。最後の授業の教科書を鞄にしまい、今週の掃除当番ではない俺席を立つ。今日は月刊雑誌の発売日のため、駅前の本屋へ行こうと考え教室を出た所で、俺を呼び止めるサクマの声が聞こえた。
 振り向くと、ちょうど帰りなのか肩にスポーツバッグを掛けたサクマが、右手を上げて近づいてくる。

「今日、駅前の本屋へ行かないか?」
「いいよ。俺も今日本屋行こうと思っていたからさ」
「サクマは今日部活無いのか?」

 いつもであれば部活に向かっている時間だ。

「ああ、この間大会やったから休息が必要だ、とかなんとかで」
「それで休みなのか」

 「そうだ」といいながらサクマは頷いた。
 この時間は掃除当番以外の下するの生徒が昇降口に集まっている。学年ごとに列が違うとは言え、階段と下駄箱の間の廊下は生徒が所狭しと生えているのを階段の上から見下ろす。

「ったく、みんな少し時間ずらせよな」
「まったくだな」

 俺の隣のサクマは、俺の言葉に2度3度頷く。俺たちが昇降口を出るまでに結局5分ほど後の事だった。この5分のおかげで、バスの時間を逃してしまったのが少し痛かったが。しかしバス停ついた俺たちはバスを待つ生徒の列を見たときに、5分のロスが無くても乗れなかったなと思わせるには十分の長さだった。俺たちは15分後にやってきたバスに乗り駅前へと向かった。


『お降りの際は、お忘れ物などないようご注意ください』

 プシューという音と共に開かれたドアから、乗客たちが一斉に降り出す。その流れに乗り、ほぼ満員で窮屈だった車内からようやく解放された俺は長い息を吐いた。乾いた笑いを浮かべながらサクマは、俺の肩を一度叩いた。

「大丈夫かよ」
「うん。ただぎゅうぎゅうだったね」
「たしかにな。何度か足踏まれたしな」
「さぁ、本屋へ行こうぜ」

 地域で一番栄えている駅前は、渋谷や新宿と比べるには足らないがそれなりに人が多く行き交っている。駅前のデパート内にある書店はかなり大型店舗で、地下階の1,2階に店舗を展開しているほど。バス1本で駅まで来られる為、良く利用している。

「雑誌は……と」

 サクマが店舗案内のマップへ目を向ける。

「たしかB1じゃなかったっけ?」
「お、ほんとだほんとだ」

 サクマも店舗案内のB1部分の雑誌という文字の所を、人差し指で差している。B1へのエスカレータへ乗り、目の前に飛んできた書店名の看板を通り過ぎ雑誌コーナーへと向かう。サクマの探しているスポーツ系雑誌とゲーム系雑誌の場所は逆方向の為、1度別れ、購入後合流と言う事になった。ゲーム系雑誌は割と狭い通路の奥にあるため、すいませんと言いながら立ち読みしている人にぶつかりつつ進んでいく。
 リュックとか降ろせよ、と心の中で愚痴を言いながら目的の雑誌を探す。月刊VRMMOという雑誌は、現在人気のゲームから開発中のゲームの情報が載っていて、俺がガンダムワールドNGを知ったのもこの雑誌だ。
 今月号は、と心の中で呟きながら視線を動かしていると――。

「きゃっ」

 かわいらしい声のした方へ目を向ける。上体を少し反らせている制服女の子と、手に持っていたであろう雑誌が床に落ちている。雑誌を探すのに夢中になっていた俺は、進行方向から来ていた彼女に気づかなかった。

「すいません」

 そう言って、床に落ちている雑誌を拾い上げる。あ、と心の中で呟いてしまったが拾い上げた本は俺がまさに探している雑誌の今月号の物。よく見ると表示が綺麗に斜めに折れている。

「ご、ごめんなさい」

 完璧俺の方が悪いのだが、俺の手にあった雑誌を奪い取り深々と頭を上げている女の子。それされると、罪悪感をすごい感じるからやめてほしい。ふと視線を外した先には、女の子が持っている本と同じ表紙の本が並んでいた。

「いえ、こちらこそ。あの、その本表紙折れてしまっているのでこっちを」

 いそいそと並んでいる本を手に取り女の子へと差し出す。

「え、あ」

 きょとん、なのかとまどっているのか……恐らく両方だと思うが女の子が挙動不審ぽい動きをしている。雑誌と俺の顔を交互に見ているので、彼女から雑誌を奪って強引に折れていない本を渡す。

「あの」
「この本は俺が買いますよ。元はと言えば俺が悪いので」
「でも」
「大丈夫ですよ。俺もこの本探してたんです」
「え?」

 最後彼女は疑問の言葉を浮かべたが、俺は「ごめんなさい」と一言加えて軽く会釈しレジへと向かった。



[31555] 閑話「ガンダムJ」
Name: ゆーたん◆83e6744c ID:94309d45
Date: 2012/02/23 01:46
日常2で書いた話中の架空のガンダムシリーズ最新作の、ガンダムJについて簡単に適当なあらすじを書いて見ました(笑)

読み飛ばしていただいて構いません
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ガンダムジュピリス

 スペースコロニー連合(UCU)が、地球圏を統治するようになりすでに半世紀以上が過ぎた宇宙聖歴123年。アースノイドに圧政を強いられていたスペースノイド達は、宇宙に住む人間に見られる特殊な能力、感覚の鋭敏化した者達を集め独立戦争を起し見事統治を得るまでに至った。

 地球圏の重要な資源産出星の木星群で生活している主人公は、資源運搬チームの一員として20年ぶりに地球圏に帰ってきた。

 UCUによるアースノイドへの圧政を目の当たりにした主人公は、艦の護衛用として木星製単独殲滅用MS2号機ガンダムジュピリスで一人地球に降り立つ。荒果てやせ細った大地に細々と暮すアースノイドの姿は、20年前当時8歳であった主人公が住んでいた頃の面影を感じさせない程変わり果てていた。

 現状を変えたいと望む者達と、反抗活動行う者達と出会う事により主人公はガンダムジュピリスを駆り、アースノイドの解放と独立を求め一人孤独な戦いを始めるのだった。
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ごめんなさい。
ぱっと思いついたので矛盾とか、クロスボーンがあるぞとか許して下さい


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