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[28743] 【ネタ】リリカルマテリアル!(旧題フェイトちゃんはアホの子)
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/08/01 07:30
 その日のテスタロッサ家の朝は早かった。

「フェイト、朝ですよ」

 この家の主の使い魔であるリニスが起こしに行くが、部屋の主はだらしなく布団をはだけさせて眠っていた。

「もう、フェイト、早く起きなさい」

 そう言ってリニスは青い髪の少女を揺する。

「う~ん、リニス~あとごふ~ん」

 お決まりのセリフを吐いてフェイトと呼ばれた少女は布団を巻きつけ芋虫となった。

 はあ、とリニスはため息をつく。

「まったく、忘れたんですか? 今日はプレシアと旅行に行く予定だったでしょう?」

 それを聞いた瞬間、フェイトはがばっと跳ね起きた。

「リ、リニス早く言ってよ! わーん、すぐ準備するよお!!」

 と、どたばたとフェイトは着替えだす。

 まったく、元気に育ってくれたのは嬉しいけど、なんでこんなあほの子になってしまったのかしらと、リニスは呆れつつも微笑むのだった。








 どたばたとフェイトは家の中心にあるホールに駆け込む。

「か、母さんおはよー! それとごめんなさーい! 僕寝坊しちゃったあ!!」

 ばっと母に頭を下げるフェイト。

 そんな娘にふんわりとした笑顔を返す母プレシア。

「おはようフェイト。あらあら、今度からは気をつけなさいね」

 と、フェイトの頭をプレシアは優しく撫でる。

「ははは、フェイト、あたしよりも寝てたらダメだろ~?」

 と、フェイトの使い魔であるアルフが笑う。

「アルフ~、なんで僕を起こさないんだよお!」

 フェイトがアルフに文句を言う。

「フェイトの方が姉なんだろう? なら、妹のあたしに起こされたくないかなあって思ったんだよ」

 にししと意地悪に笑うアルフ。う~とフェイトは呻く。

 先日、フェイトはアルフが大人モードを使ったときに、

『アルフは僕の妹だから、僕より高くなるの禁止!!』

 なんて言ってしまった。

 まさか、ここでそんなことを言われるとは思ってなかったフェイトは歯噛みしてから、

「妹なら、お姉ちゃんを助けるんだぞ!!」

 なんて言い出す。それをはいはいとアルフは流す。

 そして、戻ってきたリニスに促されて二人が座ると朝食を食べ始めた。

 フェイトとアルフががつがつとかきこみ、リニスが行儀悪いと注意する。それを嬉しそうに眺めるプレシア。

(ほんと、あの子が生き返ったよう。でも、この子は違う。この子は『アリシアの妹』なんだから)

 そう、プレシアはアリシアとの約束を覚えていた。

 当初はフェイトを道具のように使おうと思っていたプレシアだったが、リニスと契約をした数日後、夢の中に現れた彼女の愛しい愛しいアリシアが、

『ママ、やくそくまもってくれてありがとー!!』

 と、抱きついてきた。その時、プレシアは思い出したのだ。アリシアとの約束を。

 以来、研究を止め、今ではリニスに手伝われながらも、フェイトの母親を立派に務めている。

(アリシア、あなたの妹は元気に育ってるわよ)

 プレシアは天に昇った愛娘に今日もいつも通りの報告をしたのだった。










 そして、朝ごはんを食べ終えてから、民間の次元航行船で、初めての家族旅行に向かうテスタロッサ家。

 だが……

「これは……救難信号?」

 まず最初に気づいたのはリニスだった。

 リニスの言葉にプレシアも探知魔法を使ったら、確かに救難信号が微弱ながら届いていた。

 それは、魔法技術のないはずの管理外世界からだった。

(これって、すごく厄介ごとの匂いがするわね)

 せっかくの家族旅行だったけど、どうするかとプレシアは考える。できるなら管理局に丸投げしたいところだけど……

「ねえ、きゅーなんしんごーってなんなの?」

 と、フェイトはリニスに尋ねる。

「えっとですね。救難信号というのは、誰かに助けを求める合図なんですよ」

 と、わかりやすく説明するリニス。

 ふーんとフェイトは頷いた後、

「なら、助けに行かないとね!」

 その一言にプレシアはため息をついた。

 我が娘ながら、なんとまっすぐな一言。まあ、ここでほっといて家族旅行なんて目覚めも悪い。

「そうね、残念だけど、旅行は中止にしましょう」

 そうプレシアは頷いて、転移魔法の用意をする。











 まだフェイトは知らない。

 今これから行く場所にある大切な出会いを。

 親友であり、ライバルである少女と、心をつかんで離さない少年との出会うことを。










~~~~
なんとな~く、雷ちゃんってアリシアっぽくね? という友人のセリフから作りました。
劇場版のあのセリフとかからあれ思い出してればもっと違う結末があったんじゃという思いも。
それでは、また。



[28743] なのはちゃんは真面目ちゃん
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/07/10 10:49

 私、高町なのはは平凡な女の子でした。せいぜい周りから真面目と言われる程度くらいの個性しかありません。

 変な夢を見たものの、いつも通り、携帯のアラームが鳴る前に起き、お母さんに言われて道場にいる恭也さんと美由紀さんを呼びます。

 そして、みなさんでご飯を食べます。

 決して私は仲間外れにされているわけではありません。ですが、和気藹々と朝ごはんを食べる家族を見ていると、どこか、私だけ浮いているように思えました。

 それから、通学バスに乗って、

「あ、おはようなのは」

「おはようなのはちゃん!」

 と、入学時からの友人であるすずかとアリサが手招きしてるのに気付き隣に座りました。

「アリサ、すずか、おはようございます」

「前から思ってるけど、固いわよねあんた」

 と、アリサが口をとがらせる。

「そう言われましても、これが私ですから」

 真面目の塊、クールオブクールなんて呼ばれてましたっけ。好きでなったわけではないのですが。










 そして、昼休み、屋上でお弁当を食べていたら、授業であった将来の自分の話をすることになりました。

 将来ですか。まだ、先とはいえ、だからといって無視もできない。

「で、なのはちゃんは?」

 と、すずかに尋ねられました。

「私はですか?」

 うんうんと頷く二人。

 そうですね。

「母から翠屋を継ぐのもいいですが、工学の道も魅力がありますね」

 一瞬、大人になった私が翠屋のカウンターで無表情に接客する姿を描いてしまいました。

 なんともシュールな絵ですね。翠屋に来る客が減りそうです。

 できれば、己の才能を活かせる道が良いのですが。

「そうね、あんた理系得意だしそっちもありよね」

 と、アリサがうんうん頷いたあと、よかったらうちで拾ってあげるわよ。と、言われました。

 正直、コネで仕事にありつくのは止めておきたいと思いましたが、そこはよろしくお願いしますと頷いときました。













 そして、帰り道、アリサが近道という道を通ったのですが……どこかで見たことがある気がします。

 でも、少し進むと何かおかしいものを感じます。まるで巻き戻した映像を見ているような……

 そこでピーンと来ました。ここは、昨夜夢で見た場所? そんなわけありませんね。

 突然止まった私に不思議そうに二人が振り返ります。私はなんでもないと言ってまた一緒に歩き出しました。だけど、

《助けて……》

 声が聞こえました。

「誰ですか?」

 私はつい問い返してました。

「なのは?」

「なのはちゃん?」

 二人が訝しげに見ますが、気にしません。

《助けて……》

 今度はしっかり聞こえました。幻聴というわけではありませんね。

 私はそれが聞こえた方向……と言っても音のように感じないですが、そっちに向かって歩を進めました。

 そこに、傷だらけのフェレットが倒れていました。

 夢では男の子でしたが……やっぱり夢は夢ですか。

 そう考えながらフェレットを抱え上げる。かなり衰弱してますね。

「なのはちゃん、それ……フェレット?」

 すずかの言葉に頷きます。

「はい、けがをしているようです」

「た、大変じゃない! 早く病院に連れてかないと!!」

「病院ではなく、動物病院では?」

 そんな問答を交わしながら、私たちは森を抜けました。












 それから、いろいろと相談をした末に私がそのフェレットを預かることになりました。

 お父さんもお母さんもすぐに頷いてくれました。なんでも、私からなにかお願いしてくれたのが嬉しいとか、よくわかりません。

 それからベッドに転がってそのフェレットのことを考えました。

 フェレットのエサとはどんなものなのでしょうか? 遊ぶ道具も必要ですよね。それに、トイレや寝床は猫と同じでいいならすずかから貸してもらえるのですが……

 そんなことを考えながら、私は寝る前に二人にメールで私が引き取ることを伝えました。そしたら、

《助けて!!》

 突然、声が聞こえました。











「わかりました」

《え、あ、ありがとうございます》

 そして、こっそりと私は家を抜け出します。

 こんなことをしたのは初めてだと思いながら、私は急ぎます。

 助けを求めるなんてよほど切羽詰ってるのでしょうから。










 そして、声に導かれて動物病院につきました。

 そこで、黒い毛玉があのフェレットに襲い掛かっていました。

 あれは、夢で見たものと同じですね。そして、その黒い毛玉が木に突撃して動けなくなった隙にこちらにフェレットが飛んできました。それをキャッチします。

「来て……くれたの?」

 不思議そうに私を見るフェレット。助けを求めておきながらなぜ戸惑い気味なんでしょう?

 それに、なんでフェレットがしゃべってるんでしょうか? 声帯がどうなってるのかすごく気になりますね。

「なにが起きてるのかよくわかりませんが、私はどうすればいいんでしょうか? 対策をASAPで」

 緊急事態ですから、説明よりも対処を先にしたいですね。

「あ、はい。わかりました!」

 そして、フェレットの説明を簡潔に聞いてから赤い球を手渡される。

 フェレットの言葉になぞって呪文というものを読み上げます。

『我、使命を受けし者なり』

『契約の元、その力を解き放て』

『風は地に、星は空に、そして輝く明星はこの胸に』

「この手に魔法を、ルシフェリオン、セットアップ」

《スタンバイ・レディ、セットアップ》

 溢れる桜色の、どこか温かい光。

 なんでしょうか、私にはあまり似つかわしくない気がします。でも、なんだかとても心地いいです。

「凄い魔力だ……はっ! 想像してください、貴女の身を守る服を!」

 その声に私はイメージを浮かべます。聖祥の制服……ですが、前から白は似合わないと思ってるので、色は変更します。赤と黒、これがいいですね。

 そして、私は変身を完了しました。

 なんか、アニメの魔法少女みたいですね……

 そして、フェレットの指示で私は毛玉お化けを《封印》しました。











 ふう、そういえば、そんな始まりでしたっけ。

「あの、なのはどうしたの?」

 と、肩のユーノが聞いてきます。

「いえ、少し始まりを思い出していました」

 そっとユーノの背を撫でます。

 なぜでしょう、彼の背を撫でるのはとても落ち着きます。毛並がいいからか、それとももっと別の理由があるのでしょうか?

 そんなことを疑問に思いながら、夜の街を眺めます。

「えっと、あった、ここだね。ここにジュエルシードがあるみたい」

 と、ユーノが位置を指示してくれます。

「では、問題が起きる前に回収しましょう」

 うなづいて、私は飛び出しました。









~~~~
なのはさん側です。
この後テスタロッサ家と合流予定です。
こう見えて呼ばれたら飛んでいくなのはちゃんはとっても正義感の強い子ですw



[28743] なのはとフェイト
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/07/12 08:36
 私は最近日課となった魔法の練習を終えてから家に向かいました。

 なんで練習をしているのか? 最初のあれみたいなことがまた起きるのを想定するのは当然かと。また、私がどんなことをできるのかという興味もありますし。

「どうでしたかルシフェリオン?」

《八十点です。そろそろ次の段階に行きますか?》

 八十点ですか……まだまだですね。

「いえ、九十点を出せるようになるまではこの段階で」

 基礎を疎かにすれば痛い目を見るのは自分ですからね。

 まずはじっくりと身に着けていきましょう。

《All right》

 さて、明日はもう少しうまくいくでしょうか?

「はあ、なのははすごいね……」

 と、ユーノが呟きました。

「すごいとは?」

 いきなりなんでしょう?

「だって、僕には起動できなかったルシフェリオンを起動させて、今だってこうやって、魔法の練習も飲み込み早くて僕が教えることないし、すごいと思うよ」

 そうですか。確かに最近はユーノよりもルシフェリオンの組んだプログラムが中心ですが、

「ですが、私もユーノがすごいと思います。魔法の原理の説明も非常にわかりやすかったですし、ジュエルシードの探索も、結界の設置も私ではてきません。それに、ジュエルシードを捜しに来ようという責任感はとても素晴らしいと思います」

 その背中を撫でながら、こんな小さな体にどれだけの力を秘めているのかといつもいつも思ってしまいます。

「誇ってください。ユーノ、あなたはとても立派です」

「あ、ありがとう……」

 ユーノが頬を赤らめて、顔を伏せます。

 ……毛で包まれているはずなのに、なぜ赤面できるのか、とても不思議ですね。

《sweet》

 なにか言いましたかルシフェリオン?












 それから、数個のジュエルシードの回収を終えました。ジュエルシードに取りつかれた動物との戦闘もありましたが、拾ってしまった少年を説得して回収するのにもなかなか苦労しましたね。いざとなれば実力行使も辞さなかったですが。

 そうしていて、たまには休んだらというユーノの提案で、すずかの家でお茶をすることとなりました。

 そして、そのすぐそばでジュエルシードの発動が起きてしまいました。

 休暇のはずだったんですが……












 ユーノに先行してもらうことでなんとかお茶会を抜け出し、ジュエルシードのある場所に向かいます。

 そしたら、

『……だあ』

『いい……さい』

 なにか声がしました。

「ユーノ……」

「うん……」

 誰かいる? しかも、複数ですね。

 もしや、ジュエルシードを狙った人間? ユーノは事故と言っていましたが、もしかしたら……

 そっと近づいていきます。そして、視界が開けるとそこに……大きな猫がいました。

「はい?」

 ユーノと一緒に目を丸くします。

「これはいったい?」

 隠れるのを忘れて、呆けてしまいました。

「えっと、あの猫の大きくなりたいって願いが正しく叶ったとか?」

 それは……正しいんでしょうか?

 と、そこで、また声が……

「嫌だ嫌だ嫌だー! こいつをうちで飼うんだー!!」

「フェイト! いい加減にしなさい! うちでは飼えませんって何度言えばわかるんですか!!」

 猫の足元に四人の人影がありました。

 うち一人の私と同じくらいの青い髪の少女が猫の足にしがみついて泣きながら駄々をこね、帽子を被った女性に叱責されていました。

 そして、私よりも小さな赤い髪の少女は呆れたように青髪の少女を見て、もうひとり、妙齢の女性はあらあらとその様子を傍観しています。

 ……どういう状況なのでしょうか?

「いいじゃん、うちの庭広いんだからさあ!」

「それでもです! だいたい、首輪がついてるのだから、飼い猫でしょう。それに、ロストロギアに憑りつかれてるんですから駄目です!!」

 ……ジュエルシードを知っているんですね?

「あの……」

 そこで私は声をかけると、その場の全員がこちらに振り向きました。

「少しお話ねがえないでしょうか?」











「改めて、初めまして、私は高町なのはと言います」

「ユーノ・スクライアです」

 あの後、私は一度戻らないとならないため、猫に着いたジュエルシードを封印してから、後日改めてということになり、今は彼女たちが借りているホテルにいます。

 封印の直前まで青い髪の少女は駄々を捏ねてましたっけ。

「初めまして、私の名前はプレシア・テスタロッサよ」

「僕はフェイト・テスタロッサだよ!」

「プレシアの使い魔のリニスです」

「フェイトの使い魔のアルフだよ」

 そして、なぜ彼女たちがここにいるのかを聞きました。

 なんでも、家族旅行に行こうとしたらたまたまユーノの救難信号をキャッチしたらしく、わざわざ来てくれたそうです。

「でも、よかったわ。大事ではないようで」

 まあ、確かにまだ大事にはなってないですね。

 にしても、放っておけないからわざわざ旅行をキャンセルしてまで来るとは、私も人のことを言えませんが、かなりお人よしですね。

「ところで、ユーノさん、いつまでその姿なんですか? できれば、ちゃんとした姿でお話ししてもらいたいんですけど」

 と、リニスさんがユーノに言いました。

 ちゃんとした姿?

「あ、すいません、では……」

 そういってユーノは床に下りると、光を放ち、次の瞬間には私と同じくらいの少年へと変貌しました。

 …………なんですと?

「なのはにこの姿を見せるのは久しぶり……って、な、なんでルシフェリオンをセットアップしてるのかな?」

 私は黙ってルシフェリオンをユーノに突き付けます。

「騙していたんですね……」

「え?」

 ユーノが首を捻ります。そんなポーズをとっても許しません。

「今までずっとフェレットのふりをして私に取り入っていたんですね?」

 私の言葉にユーノは腕組みして考えてから、ぽんと手を打ちました。

「もしかして、最初、この姿じゃなかったとか?」

 ええ。こうなれば最初に見た夢との辻褄が合いますね。

 つまり、私は気づかなかったとはいえ、同い年の男の子と一緒にお風呂入ったり、私の膝に乗せたり、お腹にすりすりさせたり、指を舐めさせたりさせたということで……ううう。

 私はその場で今までのことを思い出して崩れ落ちてしまいます。

「えっと、なのは?」

 ユーノが私のことを覗き込んできます。

「……ください」

「え、な、なに?」

「……責任、取ってください」

「責任っ!?」

 私はユーノの肩を掴みました。

「今まで知らなかったとはいえ、あんなことやこんなこと……責任取ってください!!」

「わー! わかったわかったからあんまり揺らさないでええええ!!」















「お見苦しい姿をお見せしました……」

 うう、私は人前でなにを口走っていたのでしょうか?

 いいのよ。と、優しい目がより落ち込みます。

「取り敢えず、そんな危険物を放置できないし、管理局が来るまでにできる限り集めときましょう」

「管理局とは?」

 私の質問にプレシアさんが簡単にどんな組織か教えてくれました。

 ふうん、なんか胡散臭いですね。あまり進んで関わりあいたくはないですね。

「ありがとうございます! このお礼は必ずさせていただきます!!」

「あら、気にしなくていいわよ」

 と、プレシアさん。彼女たちのような人達が来てくれてよかった。私だけでは対処しきれないことも起きるかも知れませんし。

 と、そこで、青い髪の、フェイトでしたね。が、じいっとこっちを見ているのに気づきました。

「どうしたんですか?」

 私が尋ねると、フェイトはすうっと息を吸って、

「なら、僕と友達になってほしいんだ!」

 と、大声で頼んできました。

 えっと、友達?

「その、僕さ、少し前まで病気で家を出られなくて友達いなくて……だから、友達欲しくて」

 顔を赤くしながらフェイトがもじもじします。

 そうですか。

「そのくらい、大丈夫だよ!」

「まあ、私は構いませんよ」

 物理的なお礼よりもこちらの方がずっといいですし。

 すると、フェイトはぱあっと笑顔を浮かべる。

「ありがとー!!」

 フェイトがユーノに抱きつきました。

 ……なんでしょう、こう、心の底がどろどろに煮えたぎる感じは。

 別に私はユーノに対して特別な感情は……ああ、そういえば、今まで正体を隠していたマイナスポイントがありますね。

「フェイト? いきなり抱きつくのはユーノに迷惑ですよ?」

「えっ? でも、嬉しいときは友達に抱きつものだよね?」

 まあ、そういう文化はあるそうですが。

「いいですか? そういうのはもう少し、親しくなってから」

「ん~、いいじゃ~ん。えへへ、僕の初めての友達~」

 まったく聞く耳を持つ気のない彼女。

 そして、少し赤いユーノ。 

 気づけば私はルシフェリオンをセットアップしていました。

「少し、お話ししましょうか?」

「お、あれだね。友達同士で殴りあってわかりあうんだよね! よーし、やるぞー!」

 デバイスとバリアジャケットを展開するフェイト。

 さて、アホの子には、しっかりお灸を据えなければ。
















 しばらくして、はあはあとお互いに息を切らしながら屋上で転がっていました。

「あなた、なかなかやりますね……」

「君もすごいよ、僕が攻めきれなかったなんて」

 ジュエルシードの怪物相手ならある程度はできるようになったとはいえ、私もまだまだですね。

「いや、魔法をちょっと前に知ったばかりなのに、しっかりと教育受けているはずのフェイトと対等なあなたって何者ですかって尋ねたいんですが……」

 と、リニスさんがぼやいてますが、気にしません。

「これからよろしくおねがいしますねフェイト」

「こちらこそよろしくなのは!」

 それが、親友でありこれからずっと続くライバルとの邂逅でした。










~~~~
テスタロッサ家との合流。フェイトのアホの子っぽさは出てますかねえ?
どんどん変わっていく無印。
は「うちの出番……」



[28743] 温泉で
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/07/29 21:28

「そうだ、なのはさんのデバイス、今のうちに整備しておきましょうか?」

 と、リニスさんが提案してきました。

「ルシフェリオンをですか?」

「はい、登録してから、ろくな整備をしていないですよね。少しフェイトに任せて休ませてあげてはいかがですか?」

 確かに少し無理をさせてきたかも知れませんね。

「では、お願いします」

『よろしくお願いいたします。ミスリニス』

 はい、とリニスさんは優しくルシフェリオンを受け取ってくださいました。

「それと、なのはさんのご両親にあいさつしておきましょう。心配させてるかもしれないし、何かあった時のためにもね」

 そうですね。こっそり抜け出しているのもそろそろ、いえ、あの家族なら多分もうばれているでしょうし。

 プレシアさんが誤魔化していただけるならそうしてもらいましょう。












 ということで、みなさんを連れて翠屋に行きました。

「いらっしゃ、ああ、なのはか。ん? そちらの皆さんは?」

 と、お父さんが私の後ろにいたプレシアさんたちを見ます。

「初めまして、プレシア・テスタロッサと言います。少々お時間いただけないでしょうか?」










 そして、プレシアさんは適当に私がプレシアさんたちの手伝いのために抜け出していたと、誤魔化してくださいました。 

「そうか、それでなのははたまに家を抜け出していたのか」

 と、お父さんがうなづきます。

「はい、心配をおかけして申し訳ありませんでした」

 と、謝ります。が、いいんだとお父さんは笑ってくれます。

「なのはが自分から進んで人助けかあ。お父さんは嬉しいぞ」

「あら、この子は元から困った人は見逃せない子よ?」

 そっかあと、お母さんの言葉にお父さんがあははははと笑います。

 本当に仲がいいですね。リニスさんも砂糖を入れずにアイスコーヒーを飲んでますし。

 フェイトは……楽しそうにユーノの背を撫でています。

 少し気持ちよさそうなユーノ。

「……フェイト、変わりなさい」

 なんか、ユーノが怯えてるのは気のせいでしょうか? いえ、きっと気のせいですね。

「やだよ~」

 ほう? いいでしょう。なら、お話です。

 そしてフェイトからユーノを取り返そうとしていたら、

「そういえばテスタロッサさんは海鳴には観光目的でもいらっしゃってるんですよね?」

「ええ。それとプレシアでいいわよ」

「なら、私は桃子でいいです。実は今度私たち日帰りで温泉に行くんですけど、よろしかったらいっしょにいかがですか?」

 え?











 というわけで、すずかやアリサたちと一緒に行く温泉にフェイトたちが来ることになりました。

「僕はフェイト・テスタロッサ! よろしく!!」

「フェイトの妹のアルフだよ。よろしく」

 アリサとすずかに自己紹介するフェイトとアルフ。

「ア、アリサ・バニングスよ。よ、よろしく」

「私は月村すずか。よろしくねフェイトちゃん」

 アリサはフェイトのテンションに若干引き気味で、すずかは普通に対応しました。

 意外と強いですよねすずかは。

「プレシア・テスタロッサです。本日はお招きいただきありがとうございます」

「リニスです。よろしくおねがいいたします」

 と、プレシアさんが保護者グループとあいさつしています。

 ふう、予定よりも大人数ですが、大丈夫でしょうかね?












 そして、私、フェイト、アリサとすずかにユーノは同じ車に乗ることになりました。

「僕、温泉っていうの初めてなんだ!」

「ふーん? すごいわよ今から行く場所は」

「おー! 楽しみだぞ!!」

 と、少しすればあっさりとフェイトは私たちの中に馴染んでいました。リニスさんはそんなフェイトを嬉しそうに見ています。

 若干浮かれ気味に見えるのはやはり友人が増えた喜びなのでしょうか。そう考えると、いつの間にか、私も微笑んでいました。












 そして、旅館につくと真っ先にフェイトが飛び出しました。

「おお~、すごいぞ、でかいぞ、立派だぞ~!」

 などと大声で感動して、リニスさんが恥ずかしそうに顔を赤くしていました。

 まったく、本当にアホの子なんですね。











 それから、温泉に行こうとして、

「よーし、綺麗に洗ってやるぞユーノ!」

 と、フェイトがフェレットのユーノを拾い上げました。

 ちょっと待ちなさい。

「駄目です、ユーノは男湯です」

「え~、なんでさ~」

 本当にわからないのですか?

「曲りなりにもユーノは『男の子』です。なら男湯に行くのが当然でしょう?」

 フェイトはユーノの正体を知っているからこれで納得してくれると思ったのですが……

「ぶ~、いいじゃん。だいたいこの年でそんなこと言い出すなんて君、理屈っぽ過ぎ」

 と、口を尖らせてフェイトが難色を示します。

 ……ふっ。

「あなたとは、やはり拳で語り合わなければならないのですね」

「よーし、この前の決着をつけるぞお!!」

 私が腰を落として構えると、フェイトはしゅっしゅっと拳を奮う。

 一触即発の空気が漂い……

「いい加減にしなさいこのバカちんども!!」

 アリサの鉄拳が下りました。











 その後、ユーノ自身がちゃんと恭也さんのところに行ってくれたため、安心して温泉となりました。

 お母さんとお父さんにプレシアさんは後で入ると散歩に出てしまいました。

 よりにもよってあの二人と一緒とは……プレシアさんの冥福をお祈りしましょう。

 なお、余談ではありますが、私たちが上がった時はプレシアさんは、濃いめのお茶を飲んでいました。あー甘いと言いながら。

「うおー! 一番乗りだぞー!!」

 なんてフェイトが風呂場で走って、お約束の通り転びました。

「う~、痛い……」

「あんまりはしゃぐからです。風呂場なのだから気をつけなさい」

 とフェイトを嗜めながら、手を差し出して起こします。

 ごめーんとあまり反省していない様子でフェイトが笑う。

 ……まあ、いいでしょう。せっかくの温泉なんですから。










 フェイトと洗いっこをしていましたら、年長者組は一か所に固まっていました。

「ふう、なかなか気持ちいいですね。日頃の疲れが抜けそうです」

 と、リニスさんがぐいいっとお湯の中で体を伸びます。

「でしょう?」

 と、忍さんが笑います。

「やっぱり足を延ばせるっていいよねえ」

 と、美由紀さんが言いますが、微妙に小さくなって、その眼は何度も忍さんとリニスさんの胸を行ったり来たり。ああ、そういえば、美由紀さんは胸のサイズにコンプレックスがあったんでしたっけ。

 なんとなく自分の胸を見ます。

 ……きっと大丈夫です。きっと将来は大きくなります。

「どうしたのなのは?」

「いえ、気にしないでください。それと、お湯をかけますから目を瞑ってください」

 そう答えてから私はフェイトに頭からお湯をかける。

 そのあとは僕の番だぞー! と、フェイトに背中を流してもらいました。












 そして、晩御飯も終わり、布団に入りました。

 その時、どっちがユーノと一緒に寝るかということで一戦する羽目になったことを明記しておきます。

 いえ、別に私はユーノに対して深い思い入れはありません。ただ、あのもふもふが欲しいだけです。

 結局、アリサの仲裁で二人と一匹で寝なさいなんてことになってしまいましたが……

 それから、みんなが寝静まった頃、それは起きました。

 これは、ジュエルシードの反応!

「フェイト」

「うん!!」

 私の呼びかけに頼もしくフェイトは頷いてくれました。











 旅館から抜け出して私たちはジュエルシードの発動場所に向かいます。プレシアさんは何かあった時のため、残っていただきました。

「なのはさんすいません。まだルシフェリオンの整備は途中で」

「いえ、構いません」

 リニスさんに答えながら急ぎます。

「あそこだ」

 とユーノの言葉に視線を向ければ……化け物?

 以前境内に現れたものと似ていますが、より攻撃的な姿、背からは翼が生え、一回り大きい犬の化け物。

 これは……空が飛びたい、もしくは強くなりたいといった願望でしょうか? しかし、それであのような禍々しい姿となるとは、ジュエルシードの化け物を見るのは三度目ですが、妙ですね。

 まるで態と間違えているような……

「隔離結界張ったよ!」

 ユーノの言葉に思考の海から戻りました。

「よーし、行くぞバルフィニカス!」

『Yes,sir!』

 フェイトが飛び出す。まあ、考えるよりも先に止めなければ。

「あたしも行くよ!」

 アルフが一瞬で大きな狼へと変貌し、フェイトに続いきます。

「……ユーノはあのような姿には?」

「いやいや、なれないからね」

 そうですか。少し残念です。

「フォトンランサー!」

 さらに、リニスさんも後方からフェイトたちを魔法で援護します。

 私は……デバイスがないので見学です。

 噛みつこうとする憑依体をひらっと躱し、お返しとばかりにバルフィニカスで切りかかり、憑依体が迫ればすぐ離れる持前のスピードを生かしたヒット&アウェイ。

 どうやら大きい分小回りが利かないようですね。フェイトとアルフが優勢です。しかし……


「Gaaaaaaaa!!」

 と、いきなり憑依体が炎を吐きました。

「うわっと!!」

 意表を突かれたフェイトがぎりぎり避けました。間一髪ですね。

 さらに、こちらに向かって炎が……まずい。今の私はバリアジャケットすら着ていない!

「なのはさん、私の後ろに!」

 リニスさんがシールドを張ってくれます。

 しまった。フェイトたちが大丈夫かと心配でついてきてしまったけど、完全な足手まといでした。

 これならプレシアさんと一緒に旅館に残っておくべきでした……

 ですが……

「このお!!」

 フェイトが突っ込む。

 再び炎を吐き出され、フェイトが消えた。

 一瞬で敵の後ろに現れる。

「それは、もう見たよ!」

 バルフィニカスを一閃、敵の背にある翼を両断する。

「Gaaaaaaaaaa?!」

 落ちる敵にアルフが組み付きます。

『今だフェイト!』

「うん! バルフィニカス!」

『Sealing form. set up』

 バルフィニカスがシーリングフォームへと変貌します。

「ロストロギアジュエルシード、えっと、シリアル……なんでもいいから封印!」

 適当ですね……

 そして、また一つジュエルシードの回収に成功しました。










 そして帰り道、私は悩んでいました。

 ジュエルシードの発動。まるで態と願望を間違えて叶えているかのような憑依体……いったいなんでしょうかこの言いようのない不安は……

「どうしたのなのは?」

 私の肩に乗っていたユーノが尋ねてきます。

「いえ、ちょっと反省を」

 と、誤魔化しました。まだ、ユーノに言うには情報が少なすぎますし、今までのが特殊だっただけかもしれませんしね。

 私はそう自分を納得させるのでした。








[28743] すずか
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/08/01 07:30
another side

 旅行から帰ってきて数日後、アリサとすずかが一緒にいた時だった。

「んっ?」

 アリサの視界の隅で何かが光った。

「ねえ、あの雑木林でなにか光らなかった?」

「えっ? わからないけど、アリサちゃん、なにか見えたの?」

「ええ、ほら、あそこ」

 アリサが指す方を見るが、すずかにはなにも見えない。

「アリサちゃん、またなにか見えてるの?」

 と、疑惑に満ちた目でアリサを見返すすずか。

 この時すずかは前にみんなでお化け屋敷に入った時にアリサが、『天井から生首が垂れていた』『小さな女の子が手を引っ張っていた』など、存在しないはずの仕掛けを言ったことを思い出していた。

「失礼ね!」

 先日、父親にまでお祓いに行くよう進められていたアリサは、すずかまでと憤慨する。

 そして、いくわよっと言い雑木林に入る。それにしかたないとすずかは遅れてついていった。












「なにもないわね……」

 おかしいわねと首を傾げるアリサに、すずかはため息を吐く。

 その時、すずかは視界の隅になにか光るものを見つけた。

「これ、宝石?」

 それがアリサの言ったものかと思ってすずかはそれを拾い上げ……宝石が光を放った。













「もう、なんなのよ! すずか、大丈夫?」

 突然広がったと思うと、唐突に消えた光に悪態を付きながら、間近で光を浴びていたすずかに声をかける。

 だが、すずかは答えない。アリサに背を向けたまま、虚空を見ている。

「ちょっと、どうしたの、よ?!」

 すずかの肩を叩こうとしたら、その腕を掴まれてしまった。

「ちょっと、すずか……いた!」

 信じられないほどの力にアリサは顔をしかめる。

「渇くの」

 唐突にすずかが呟く。

 痛みに堪えながらなんとかすずかの顔を見て、アリサはゾッとした。

「すごく渇くの」

 すずかの瞳が深紅に怪しく輝いていたのだ。

「だから、アリサちゃんを頂戴」

 かぱっと端を釣り上げるように開いたすずかの口。そこに、ぎらっと牙が存在した。













なのはside

 この感じは!

 踵を返し、私は走ります。

 ルシフェリオンのない今はフェイトに任せるべきなんでしょうが、なにか嫌な予感がします。

 そして、

「いやあぁぁぁぁぁ!!」

 アリサの悲鳴!

 雑木林に飛び込めば、なぜかアリサがすずかに組伏せられていました。

 くっ!

「すみません」

 咄嗟にすずかにタックルします。

「きゃっ!」

 悲鳴を上げてすずかが転がる。

 さっとアリサの前に立つ。

「な、なのは?」

「アリサ大丈夫ですか?」

 すずかから視線をずらさず、アリサに尋ねる。

「え、ええ、平気よ。それよりすずかが!」

 ゆっくりすずかが体を起こします。

「あ、なのはちゃんも来てくれたんだ」

 にたあっとイビツな笑みを浮かべるすずか。いえ、

「あなたは誰ですか?」

 私は『すずか』に問いかけてしまいました。

「ひどいななのはちゃん、私すずか、月村すずかだよ」

「ふざけないでください。私の友人はそんな顔で笑ったりしません」

 すずかは、もっと控えめに笑う。そんなイビツな笑みを浮かべたりしない。

 『すずか』を睨みつけながら両手に魔力を集める。ルシフェリオンのない今、この程度しかできませんが……

「ふふふ、なのはちゃんは別に私のこと全部知ってるわけじゃないでしょ? これも、私。ずっと隠していた『私』だよ」

 確かにその言葉も一理ありますが……

「本人の意思と関係なく無理やり引き出されたものがなにを……あなたから力づくで引きはがします!」

「ふふ、おいでなのはちゃん、遊んであげるよ」

 『すずか』が走り出す。しんどい時間になりそうですね!










 『すずか』の拳が迫る。それをなんとか弾く。早い! それに重い!!

 運動神経がいいのは知っていましたが、この力とてもじゃないけど、九歳の少女のものとは思えません。ジュエルシードのせいでしょうか? 地上での速度はフェイトほどはありそうです。


 何度も拳を弾く。魔力で強化してるはずなのに、駄目です、このまま何度も受ければ腕が……

 そう考えた瞬間に蹴りが迫る。なんとかガードしますが、あまりの力に弾き飛ばされます。

「かっ、は!」

 二、三度地面をバウンドしますが、すぐに姿勢を正してブレーキをかけます。

「なのはちゃん、意外とすごいね」

「どうも!」

 揶揄するように評価するすずかにそう返しながら立ち上がり、再び迫る『すずか』の拳を防御する。

 まだ、まだですか?

 私が焦りかけて……

「なのは、受け取って!!」

 ユーノの声!

 天を仰ぐと、人間形態のユーノが紫の宝石を放り投げる姿。

 あれは……ルシフェリオン!!

 迫るすずかを避けて空中のルシフェリオンをキャッチ、同時に、

「ルシフェリオン、セットアップ!!」

 デバイスとバリアジャケットを展開します。

「久しぶりですが、お願いします」

『Yes,my master』

 いい子です。

 すずかとアリサは目を丸くします。が、すずかはすぐにくすっと笑う。

「ふーん、よくわからないけど、面白そうだね」

 そうイビツな笑みのまま、腰を落とす。

「ユーノ、アリサをお願いします」

「うん」

 私はデバイスをすずかに向けながらユーノに頼みます。

 そして、すずかがこちらに突っ込んできました。

「ブラストファイアー」

 対し私はすずかに砲撃魔法を撃ちます。

 しかし、すずかはそれを飛んで避ける。初めて魔法を見たはずなのに、あっさり避けるとは!

 私はすずかから距離を離すために後ろに跳び退りつつ、

「パイロシューター」

 誘導弾で牽制。しかしすずかはそれを意に介さず私に迫る。まったく、少しは躊躇ってもらいたかったんですが。

 でもそれで構いません。今のはすずかの行動を制限するためにパイロシューターで進路を限定させます。

 すぐにデバイスモードからシューティングモードにコンバート。

「ブラストファイヤー!」

 限定させた進路に砲撃を撃ちこんで……それを地に這うかのような低姿勢で飛び込み、ぎりぎりで避けるすずか。 

 そして私の目前に迫ったすずかに……ルシフェリオンを放し、拳を叩きこみました。

「わ!」

 突然の攻撃にすずかが目を丸くします。

 それだけで止まりません。止まる気もありません。ルシフェリオンの柄頭で顎を跳ね上げ、掌底を打ち、足払いで体勢を崩す。

「接近戦の備えがないとでも?」

 実を言えば、今までのは全部ブラフです。私が遠距離攻撃主体だと印象づかせるための。

 デバイスがない状態でガードばかりしていたのも、目を慣らすため、そして、近づかれたらガードしかできないと思わせるためでした。

 そして、私は放したルシフェリオンをキャッチして、

「ブラストファイヤー!」

 今度こそ、すずかに直撃させました。












 そして、気絶したすずかの元に慎重に近寄ります。

「大丈夫……でしょうか?」

「たぶん、非殺傷設定だし、ジュエルシードのおかげで体を強化されてたみたいだから、封印すれば元通りになるんじゃないかな?」

 そうだといいのですが……

「ところでさっきのは?」

「あれは、実はフェイトとの対決の後に少し」

 もともと、自分の弱点が接近戦とわかってました。それに、いくら強力な攻撃ができても当たらなければどうということはありません。

 フェイトにもあっさり避けられてましたし。

 なら、当てられる状況を作る。すなわち相手の体勢を崩したりするなど『繋ぎ』も必要と考え、短期間ながら、『護身用』の名目で恭也さんに教えていただいていました。

「ところでフェイトたちは?」

「フェイトたちはもう一つジュエルシード見つけらからそっちに行って、僕だけルシフェリオン届けにこっちに来たんだ」

 なるほど、こういう時、やはり人数が多いほうがいいですね。

「あ、あんたたちいったいなんなのよ?!」

 声に振り向けば、ぽろぽろと涙を零すアリサ。

 しまった、彼女のことを忘れていました。

「なんなのよいきなりすずかはおかしくなるし、あんたはあんたでいきなりそんな格好になってすずかと戦うし、だいたいそいつ誰よ!! 同じユーノだけどフェレットのユーノと関係あるの?!」

 と、アリサが一息で言い切りながら詰め寄ってくる。

 そうですね、ちゃんと説明しないといけませんが……

「すいません、説明は後で。ルシフェリオン」

『All right. Sealing form set up』

 ルシフェリオンがシーリングフォームにコンバート。

「リリカルマジ」

 そこまで唱えて……すずかが跳ね起きました。しまった話してるうちに目を!

 すずかがアリサにとびかかる。

「っひ?!」

 足が竦んだのかアリサは動けず……

 ユーノが割って入った。アリサを押しのけ、すずかに組み伏せられる。

 そのまますずかはユーノの首筋に噛みついて……

「ユーノ!?」

「なのは今だ!」

 ……っ?!

「リリカルマジカル! 封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード封印!!」

『Sealing』














 ジュエルシードを封印し終えた後、正気に戻ったすずかは……真っ先に土下座しました。

「ごめんなさい」

 深々と、これ以上ないくらい深々とすずかは頭を下げます。そう、頭が回りこんでお腹の方まで……体柔らかすぎです。

「あー、そのいいわよ。いきなりでびっくりしたけど、なのはのおかげで助かったから」

 と、アリサはすずかの肩を叩く。

「僕も、首を噛まれただけだし」

 と、治療魔法で傷を塞ぎながらユーノは笑う。

 私は……まあ、明日筋肉痛確実ですね。腕が痛いです。

「で、なんなのよあんたたち。それにすずかの中から出てきたあの宝石はなに?」

 そうですね、ちゃんと説明しないと。














 小一時間後、一通りの説明を終えました。

「ふーん、魔法に願いを叶える宝石ジュエルシードね……絵空事って切り捨てるには実際にみちゃったしね」

 と、アリサは納得してくれました。

「まあいいわ信じましょう。でも、すずかのあれは? 人の首筋に噛みつくっていったいどんな願望だっていうのよ」

 と、私たちがすずかを向けばすずかは引きつった笑みを浮かべる。

「え、えっと……たぶん私の一族に関わるかなあ」

 一族?

「その……みんなに嫌われたくなくて今まで黙ってたけど、私吸血鬼なの」

 沈黙が落ちる。そして、

『えええ?!』

 すずかの突然の告白に私たちは驚きの声をあげたのだった。


 すずかの一族は正確には『夜の一族』という一族で、人間より優れた身体能力と特殊能力を持つ代わりに、代償として体内で生成される栄養価に欠陥があり、完全栄養食である人間の生き血を求めるということらしい。

 なるほど、もしかしてたまに恭也さんと忍さんが抱き合っていたのを見ましたが、もしかして?

「黙ってて、ごめんなさい!」

 ばっと再びすずかが頭を下げる。そんなすずかにアリサがため息をつく。

「別に謝らなくていいわよ。知らなければどうってことないし、知っても対して変わらないわ」

「誰でも隠し事はあります。あまり思いつめないでくださいすずか」

 と、私たちはすずかを慰めます。

 すずかはただありがとうありがとうと涙を流しました。










 それから、一応プレシアさんたちに合流しようとして……

「あ、あの、ユーノくん大丈夫?」

 心配そうにすずかはユーノに尋ねます。

「うん、大丈夫だよ」

 と、安心させるようにユーノが笑って、よかったとすずかが若干頬を染めながら笑います。

 ……なんでしょうかその頬の赤さは。

「にしてもあのフェレットの正体がねえ?」

 と、アリサがじろりとユーノを観察します。

「あ、えーとその……ごめん」

「謝らなくていいわよ実害があったわけじゃないし、むしろ私はお礼を言う方よ。さっきはありがとうね」

 と、アリサがにっと笑う。それにユーノが申し訳なさそうに笑う。

 ……なんでしょうかこの面白くない感じは。

「早くいきますよ」

 ユーノの手を取って引っ張る。

「って、うわ、引っ張らないでなのは!」

 ユーノの言葉を無視して私はずんずんと進むのでした。

 しかし、今回ので決定的ですね。プレシアさんと相談しなければ。






~~~~
すずか編です。これ実は旅行編の前に考えたんですが、いろいろあって旅行後に変更です。
異性の血じゃないとダメなんじゃという突っ込みはできたらしないでください。ジュエルシードのせいで吸血衝動が暴走してるだけですから。
本編では日常の象徴と言える二人でしたがおかげでストライカーズ以降はぶられちゃってたので、今回はがっつり魔法にも関わって貰おうかと。
次回からなのは版に引っ越し予定。


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