力が欲しかった。
情けないままじゃ弱いままじゃ耐えられなかった。それがどんな力か、その力でなにがしたいか。俺はその頃そんな事理解せずに、本当にただがむしゃらに単純に力を求めてた。
勉学には人一倍励んだ。トレーニングも欠かさなかった。空手柔道テコンドー合気道etc.武術も何個も習った。その中の一つとして剣道も続けてた。
周りの大人からは神童と持て囃されていたが、姉さんが俺を見る目はいつも苦々しいなにか悔しそうな目をしていた。姉さんにそんな目をさせてる事が悔しくて俺は一層勉学に励み、武術の腕も磨いた。
中学卒業後の進路選択のさい、俺はいつまでも姉さんの世話になってるのも嫌だったので、なんのためらいもなく就職と書いて提出した。学校側からは成績優秀だった俺は当然難関校を受験するだろうと思ってたらしく、提出して1時間後には担任に呼び出され、長い面談を終えクタクタになって帰宅した俺を待っていたのは、玄関でいつものスーツ姿で仁王立ちした姉さんだった。
無言の姉さんの後をついて行きリビングに着くと、姉さんはビール片手に俺に話し始めた。聞けば担任から電話を受けて仕事をほっぽり出してきただの、お前の事は大学院まで入れるつもりだっただの、あの事件以来お前は変わっただの、いつから姉の言う事を聞けなくなっただの。
酒が入った事で、進路に関係ないことまで言い始めた姉さんに適当に相槌を打ちながら俺は、半ベソで俺に喋りかけてる姉さんに無条件降伏しすぐに高校進学に進路を変えることにした。クソが泣くなんてなんて卑怯じゃないか……
憂さ晴らしとまではいかないが中学最後の年はこれまで以上に武術に力を入れていた。
今まで二の次にしていた剣道にも熱心に取り組み一応在籍していただけの剣道部にも顔を出す頻度を増やした。その結果学校の代表になり大会にまで出場することになった。
初めての大舞台で俺はいつも以上の力を出せ、めでたく男子個人の部優勝。
女子のほうはうちの中学はダメだったんだが、昔馴染みが優勝したらしく挨拶に行きたかったんだが、撤収やら祝勝会やらで挨拶には行けなかった。
中学最後の年は武術一辺倒で終わり、気がつけば高校入試の季節になっていた。
実は姉さんにはウソをついていたが、この高校は入学すればエスカレーター式に関連企業への就職にこぎ着ける。高校卒業後の進路を決める時は絶対に泣き落としなんかには屈しないと誓い、俺は試験会場に向かった。
その人生における通過点に過ぎないと思っていたその場所は、俺にとって重要なターニングポイントであって、俺の平凡な日常をブチ壊し、俺が憧れた。手に入れたかった。そして心のなかでは諦めていた、力を手にした場所だった。
あとがき
初投稿。今回は高校入学までの話。設定がアレですが最低系やメアリー・スーにはさせないつもりです。