<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[28466] 【習作・処女作】送り狼のウタ【オリジナルロボット戦記?】
Name: 全自動式メタル棺桶◆2f0eeb4d ID:dd6ac1e6
Date: 2012/05/12 23:27


さて、唐突になるが、現在形で俺は絶体絶命だ。

いや、いきなりこんなことを言っても諸兄がたは頭上に疑問符を浮かべ、首を捻るだろう。

まあ無理も無い。
俺も平次ならば怪訝な顔を浮かべるだろう。
だが状況を説明すると別だ。
敵に前線拠点を完全にではないが包囲され、そこかしらから前線から担ぎこまれた味方の呻き声が聞こえて来るのだ。
しかもソレを鎮める医薬品が絶対的に不足している。
なんせ一月も補給がこない(おかげで食料品も弾も不足しているクソッタレ)
そして機体の予備部品も不足している、つまり機体の整備がままならない。
その結果、兵器性能の低下を招いている。


詰まる所、八方塞がりの破漢破天、四面楚歌なのだ。


まあグダグダ言っても始まらないので、ともかく出撃して状況を打開しよう。
幸いに勝機はまだある。
「オイ!!そこの傭兵!!ぼさっとつったって無いで出撃しろよ!!」
傍らの新兵と思わしき青年が喚き立てる。
「言われんでも解かってるさ」
「じゃあとっと出ろよ!!この薄汚い傭兵が!!」
やれやれ良く言ってくれる。
傭兵や女子供にも頼らないと戦線の維持が出来ない程追い詰められた軍なのに、プライドだけは一人前ってか?
「笑えない冗談だぜ…全く…」

四角い胴体、そこに取っ付けられた防塵布と装甲に覆われた腕部と脚部、そして頭部。
現在の戦場の陸戦兵器の花形、戦車に次いで使用されている人型機動兵器。
タクティクス・アームズ、略称TA。

その歴史は古く300年前発生した【統合戦争】の中期に、世界初の第一世代型のタクティクス・アームズ【ウォーカーポッド】が投入された。
当初は戦車や、歩兵が持つ携帯ランチャー等で鴨が葱を背負ってきたと言わんばかりにに撃破されていたが、機体自体の改良や世代を重ね、現在では高性能化の弊害で値段が嵩張る戦車よりも、配備台数が多い強力な兵器になっている。

素早く降着状態にしてあったTAのコックピットに乗り込み、シートに体を預けると、備え付けのコンソールを叩いてコンバットプログラムを起動させる。

【戦闘プログラム作動】

TAのジェネレーターがヴゥンと音を立て起動。並列に並んだ複数のモノアイ型のカメラが、カバーの下で鈍く光り鋼鉄の体ゆっくりとが起き上がる。

先程の傭兵が乗り込んだTAのセッティングは、右肩部分にマウントされている9連装ミサイルポッド、右手には主武装のTA用アサルトライフルを装備。
起き上がった機体は、鋼鉄の脚部を軋ませながら、眠っていた格納庫を出る。

「オペレーター外の状況はどうだ?」
「現在前線の基地防衛部隊は基地の5キロ先まで後退。ゼメル共和国軍はTAと戦車の混成部隊繰り出して、円形状に包囲しながら迫っています。」
「絶望的だな」
「全くですよ。なんで包囲される前に、逃げなかったんですか」
と、オペレーターのイレーナ・ミンクスが良く透る声で抗議してくる。
「仕方が無いだろう。請けた仕事はキッチリ済ませるのは、俺の流儀だし、まさかここまで追い詰められるとは予想だにもしなかった……」
とかなんとか言いながら、機体が格納庫から出てヘリに吊り下げられようとした瞬間―――

何処からともなく重々しい物体が風を切るような音がしたかと思うと、いきなり背後で激しい轟音が轟いた。

「ヌオオォォ!?」
突如として格納庫が爆発した、ありゃ中に残っていた連中は木っ端微塵だな。
「おい!!格納庫に弾があたったぞ!?敵に長距離砲がいるじゃないか!?」
「うぇ!?イやそんな事は……AEWKSより入電!!敵地上戦艦ティタノボア級を確認との事です!!」
「よりによって地上戦艦まで出張してきやがった……」
コイツはますます面倒な事になって来たぞこりゃ……。












そして噂に出て来た、前線は酷い有様だった。
味方の歩兵が無残な骸を晒し、TAと戦車が物言わぬ残骸として、数え切れないほど転がっている。
「クソが!ゼ軍のノロガメと鈍牛が!」
塹壕に篭ったリオネア軍の歩兵達が、敵TAグランディング・タートス達やステラー戦車に向けて、無反動砲や携帯ミサイルランチャー、迫撃砲や塹壕に備え付けられた機銃でなんとか応戦していた。
「これでも喰らいやがれ!!ゼ軍の豚共が!!」
一人の兵士がランチャーを肩に担いで、敵のTAに向けて発射。
炭酸が抜けるような音と共に、射出されたミサイルが敵TAの上半身に直撃し、派手に爆発しながら倒れる。
「ハッハー!!どうだゼ軍のノロガメめ!!リオネア軍の力、思い知ったか!」
そして彼が、もう一回ランチャーを使いTAに攻撃しようと塹壕から身を乗り出した瞬間―――
「軍曹!!危ない!!」
「あ……?」
敵TAが腰に装備した、凡用20ミリ機関砲が彼の体をズタズタに切り裂いた。





「おおう、こりゃヒデェな。」
俺が愛機と共に颯爽と駆けつけると、回りは敵だらけ、味方は必死に抵抗して居ると言う有様だった。
「全くこの戦況を打開しろとは、雇い主も無茶な事を言ってくれるじゃねえか」
全くどうしようもない戦況だ、だが依頼は依頼だ。
「さあ、ゼ軍をパパッと片付けて、たっぷり報酬を貰うとしますか」












「ふっ、リ軍もたいしたことが無いではないか」
ゼメル共和国軍陸軍第35大隊司令官イベル=リャコブスキー大佐は自軍の
進攻状況を見て笑っていた。予想よりも進攻がはやいのだ。
(この調子で進めば後3時間で前線拠点をおとせるぞ。)
昂る気持ちを押さえながら進んでいると
「少佐!偵察機より入電!敵TAが増援として出撃したようです!!」
「何?数は何機だ?」
「それが…その…たった3機です」
「3機?3機で一体何をするつもりだ?リ軍のやつらめ…?ともかく迎撃部隊を向わせろ。手の空いている小隊に迎撃指令を出せ」
「了解しました」

前線では敵の増援を叩く為に、攻撃中の部隊から手が空いている小隊を向わせていた。
「敵TAを確認、コマンド・ラプターとストライク・ウルフです!!数は3機!!」
傍らのパイロットが機種と数を伝えてくる。
(コマンド・ラプターはまあ良いとしてストライク・ウルフ?一世代前の機体じゃないか。そんな物を出してくるとはリ軍も相当苦しいらしいな)

さて唐突だがTAにも世代というものがある。
今現在開発、量産されてる機体達は俗に第四世代型と呼ばれるタイプである。
主にコマンド・ラプターとグランディング・トータス等がその世代に当たる。

そしてストライク・ウルフは、それより一世代前の第三世代型と呼ばれる60年前に初めて生産されたタイプの機体郡に属する機体だ。
この機体は指揮官タイプ(【マークス・ミリタリー社】系列の機体はストライクが指揮官タイプの機体の総称であり、【ゼノア・ワークス社】系列の機体はファングである。この名前は製造メーカーごとに微妙に差異がある)のカスタムが施してあり、元となったコマンド・ドックは高い生産性と拡張性を持ち、幾度と無く改修され、大量生産されたので、この機体と指揮官タイプがアチラコチラの秘密結社や、反体制組織に独立武装勢力、民兵集団や傭兵に使われているのだ。

(まあ良いどんな相手でもただ下すのみ!)
そう思いながらトータスのパイロット達は迫り来る3機に迎撃を開始した。

                                つづく?

作者あとがき

いやはやチラ裏の皆様始めまして
全自動式メタル棺桶と言うものです
昔からこちらで楽しいSSを読ませて頂いて常日頃からワクワク
させて頂いております。このたびは初めてのSSとしてこの作品を
投稿させて頂きました、何分他の先輩作者にくらべれば見劣りする
作品ですが何分楽しんでいただけたらと思います
それではこの辺で失礼させていただきます。



[28466] 第2話
Name: 全自動式メタル棺桶◆2f0eeb4d ID:dd6ac1e6
Date: 2012/05/12 23:50
前回までのあらすじ。
敵の大軍に囲まれてピンチだ!

(さて、前方にいる亀さんを蹴散らしますか。)
私はそう思いながらアクセルを強く踏み目の前の敵をロックオンした。
(FCSは距離によって自動的にロックしてくれる。)
弾丸ライフルから放出され、敵機の装甲に着弾する。


しかし


「当たったはいいが、全く聞いてねぇ……」
弾がバラけたのと、弾丸が粗悪品だったかどうかは解からないが、敵の装甲に軽い音を立てて、当たったに過ぎなかった。
(クソ!!格納庫の隅に置いてあったヤツなんぞ持ってくるんじゃなかった!)
そうこう考えていると、敵がコチラに反撃を行ってきた。
敵の装備、携行型小型ガトリングが火を吐き、その射線上から私は、機体を左方向へ避けさせたが、追従してたコマンド・ラプターの2機の内1機が、回避行動が遅れて餌食になってしまった。
「うわぁぁぁぁ!!嫌だ死にたくない!!母さん!!マルコさん!!」
餌食になったラプターのパイロットがパニックになりながら叫ぶ。
「ベイト!!早くイジェクトしろ!!」
もう一機のパイロットが回避行動取りつつ叫ぶも、ラプターは敵TAのダメ押しの小型ミサイルの直撃によって、あっけ無く爆散した。

「ベイトォォォォォォォォ!!チクショウ!!ゼ軍の奴らめ!!」
マルコ・ロッシは今餌食になったラプターのパイロット、ベイト・ハルミトンの兄貴分だった。
ベイトが訓練生時代からの付き合いで、彼が新人パイロットとしてここの基地に配属され再会した時は、お互い喜んで抱き合うほどの仲であった。
そして取り分け情に厚い彼が、可愛い弟分を目の前でアッサリ殺された時、どうなるのであろうか?
その答えが、今サブマシンガンとライフルを振り回し、狂戦士の様に暴れているラプターであった。
「チクショウ!!チクショウ!!チクショウ!!ベイトォォォォォォ!!」



「前方のラプター突出しすぎだ!!もう少し下がれ!!」
「うるさい!あいつが殺られたんだぞ!」
だめだ、完全に頭に血が上ってやがる。
そう思いながら、途中で倒れていた味方機から失敬したライフルを使い、敵機を撃破しつつ何とかフォローしてゆく。
「右翼より敵増援接近!!数六機です!!」
オペ娘が増援を知らせて来た、ちょっと数が多いな……ミサイルを使うか。

FCSをマルチロックに切り替え、敵機をロックする……ロック完了!!ボンバァ!!

ウルフの方に装備されたミサイルポッドから、ミサイルが六発発射され、見事全弾が獲物に命中する。

「敵機に命中しました!!」
オペ娘が敵機の撃破を伝えて来る、これで右翼はとりあえずは一安心だな。
「ウオオオオオオオ!!」
相変わらずラプターのパイロットは頭に血が上りすぎている。
毛細血管切れるぞアイツ。
まあ他人の健康の心配をする暇が合ったらトリガーを引けと師匠も言ってたし、戦後の事なんてその時に考えれば良いしな。
今は生き残ることが重要だ。
「さてと……粗方ここのノロガメは狩り終わったな。さあゲイズ1、孤立した味方部隊の救援に向うぞ」
「言われなくても解かっている!!もはや誰もベイト見たいな目にはあわさん!!」
ま、そう言ってくれると頼もしいがね。












~所変わってゼメル陸軍第35大隊旗艦ティタノボア級陸上戦艦オルゴイ艦橋~

「なに?あの3機を迎撃に向かったTA部隊の反応がロストした?9機もいたんだぞ!?」
「はい……一機は撃破したと報告があった後、反応が全機途絶えました。最後の交信の内容から『黒い狼のエンブレムをつけた奴がいる。』との報告がありました」

黒い狼のエンブレム?

イベル=リャコブスキー大佐はその報告に首をかしげた。
リオネア軍の全部隊章を把握している(少佐は部隊章マニアで、各国の正規軍の部隊章集めを趣味としている)が、そんな部隊章は見当たらなかった。

(黒い狼のエンブレム……はてどっかで見たことあるような無いような……まさか!!送り狼がいるとでもいうのか!?)

ストライク・ウルフ、黒い狼のエンブレム、そしてたった3機で9機のTAを撃破したこと、これらの情報がそろったことでリャコブスキーの脳裏に甦ったのは、新兵時代に雪原で目撃した黒い機体の事だった。
(まさか!!だがしかしもう32年も経っている……他人の空似か?だがしかし……)




リャコブスキー大佐がブリッジでうんうん言ってる時に、格納庫では一人のパイロットがオペレーターと揉めていた。






「出撃すると言ってるんだ!何度言ったらわかるんだ、この偏屈女!」
青年が、眼前の女性に怒鳴り散らす。

短い金髪に整った顔立ちをしており、街を歩けば10人に10人の女性が振り向く程美しい容姿をしている。

そんな彼の名前はレイ・バルトレット。ゼ軍の新エースである。なお19歳。
「ですから言ってるでしょう!!まだ貴方の専用機の調整が完了してないと!!」
負けじと女性も怒鳴り返す。
セミロングのシルバーブロンドの髪にクリッとした目をしておりまだ少女特有の幼さを残しているが、その胸部には確かに大人の女性特有の膨らみがあった。
彼女も街を歩けば10人中10人の男性がカバッと振り向く様な容姿をしていた。
彼女の名前はジェシカ・ハーディマン。彼のオペレーターでもあり恋人でもある。
ちなみに18歳。

さて何故彼と彼女が言い合いをしているのかと言うと、誕生日を彼が祝ってくれなかったとかそんなんでは無く、彼の専用機【アルゲンダビス】の調整が完了して無いのに、無理やり出撃しようとしてたからである。

「だから、あれだけチューニングして合ったなら調整が80%でも大丈夫だろうが!!」
「ですから、いくらチューニングして合っても、調整不十分で撃破されたエースだっているんですよ!!」
と、二人の論争が平行になってきたその時
≪バルトレット少尉、大佐から出撃命令が下りました!至急出撃して下さい。≫
艦内放送がそう響き渡った。
「出撃命令!?よっしゃあ!命令じゃ仕方ないな、じゃあ言ってくるぜ!」
「はぁ……解かりましたよ、でも機体はファング・イーグルにしてくださいね」
「わってるて!じゃあいって来るぜ!」
そう言いながら、レイはジェシカと唇を重ね、愛機であり自分の色に塗られたファング・イーグルに駆け寄って行く。

機体のジェネレーターに灯が付き、特徴的なツインアイに蒼い光が光る
そして鋼鉄の機体が音を立てて動く。

右手に携行タイプの小型ガトリングガンを持ち、右肩には12連装特殊ミサイルポッドが付けられており、左手にはTA用サブマシンガンを装備している。
そしてハンガーユニットにはとある【秘密兵器】が格納してある。
「出撃準備完了!いつでも行けるぜ。」
≪了解、ファング・イーグル、バルトレット機発進どうぞ!≫
「へッ!リオネアの奴等に一泡ふかしてやるぜ!」
そう言いながら、白いファング・イーグルが飛び出して行った。

                               続く?

作者あとがき

どうもこんにちわ作者の全自動メタル棺おけです。
1話兼プロローグの次のお話を投稿させて頂きました。

こんな駄SSなのに感想が2つも付いて作者もうれしいです。

誤字・脱字等やココが不自然だ演出が過剰だと言うご意見もお待ちしております。

ではでは。



[28466] 第3話
Name: 全自動式メタル棺桶◆2f0eeb4d ID:dd6ac1e6
Date: 2011/12/02 23:09
AMIDAでもわかる前回までのあらすじ?

敵のイケメンエースが出てきたぞ!!


さて、現在形で私は機体ごと輸送ヘリで吊り下げられて味方部隊の救援に向かっている。これはTA特有の利点の一つだ。さて唐突だがTAには4つの利点がある。

まず一つ目の利点だ

これは私がTAに乗ってる理由一つでもあるが何よりも他の兵器よりも(歩兵の装備にはかなわないが)安いのだ!解かりやすく例えると普及型多脚戦車ダスト・バグ一台の値段が(品質も関係するが)大体が450万コームである。(ちなみにコームは1コームが日本円で50円である)それに対し第三世代型TAコマンド・ドックは一機丸々買うと大体(こっちも品質にもよるが)一機240万コームだ!

二つ目の利点はパーツの組み替え機能・入手のしやすさである。

機体やメーカーにも依るが、TAのパーツはある程度他のTAにも流用可能だ。例えるならば【マークス・ミリタリー社】のコマンド・ドックと【ゼノア・ワークス社】のトライ・タートルはある程度武装と内部パーツと外装が流用が可能だ。もう少し詳しく説明すると、ドックの右手と左足が何らかの理由で破損したとする、そしたらタートルの右手と左足をそのまま移植すればいい。
これだけでもうガチョガチョ動く動く。
部品の入手のしやすさはスクラップ置き場から、一回に付き大体8~9時間の戦闘に耐えうる機体を復元出来た(性能は著しく低い)と言えば解かるだろう。ちなみに市場にも結構部品が出回ってる格安で。

三つ目の利点は戦術的な運用が他の陸上兵器よりも多少優れている。

現在私達を運んでくれているヘリはTAが世に出回ると同時に開発された物だ。このヘリはTAを3機分搭載でき、それ以外にも多脚戦車や武装コンテナが運搬できる。私もTAの武装も持ってきて貰い換装したのであった・・・。話がずれたな元に戻そう…。戦術的展開と言うのは所謂敵の陣地や都市に直接降下したり、過酷な環境下での長時間使用だ。標準的なTAのサイズは5~6メートルであるこのサイズで重さがゼ軍のスカラー戦車の57トンよりも45トンも軽いのだから驚きだ。このサイズは降下する時に敵の対空砲火を喰らいにくいという利点も有り、さらに屋内の展開も容易に可能だ。(その所為かさらにサイズを一回り小さくした、特殊部隊用TAなんて物も有る)それに格納場所にも困らない。
その気になれば農家のオッチャンを叩き出して、トラクターのガレージにしまえたり。長距離輸送のトラックのコンテナの中に、ちょっと分解して格納出来たりするのだ。

四つ目の利点それは操縦のしやすさだ。

大体3~4ヶ月ぐらいあれば誰でも乗れてしまうソレがTAでもある。
やはりこれも機体にもよるが、コマンド・ドックやトライ・タートルは原チャリが乗れる腕前であれば基本的な動作(歩く、走る、走行する、物を掴み移動させる)は出来るだろう。(戦場で生き残れるかは保障しないが)逆に【アルフ・メガリス社】のクロム・スティンガーや【フロム・コア社】のクラウド・レイヴン等の機体は操縦性が凄まじくピーキーなので、基本操作をするにも一苦労だ。だがこの機体達はその操縦性を物にしてしまえば一騎当千の性能を引き出せるだろう。

五つ目の利点は武装を換装することでで様々な陸上兵器の役目が代行できることだ。

大まかに分けて手持ち兵装、腰部兵装、肩部兵装、背部兵装、特殊兵装にわけられる、厳密に言えばさらに細かく分類されるのだが、そうするとゴッチャになってしまう為ここでは五種類に分けて分類する。

まず手持ち兵装の種類からだ。

ライフルはTAの武装の中でもポピュラーな兵装だ。連射出来るタイプと単発式の2タイプがある。
連射出来る方は色々なTA達が装備しており、ある意味標準兵装でもある。
このタイプは中距離戦闘に適しており、弾丸を複数回連続で叩き込んで敵を撃破する。口にして言うと凄い難しそうだが、何ら問題はない。全部FCSが弾道計算してくれるのだ凄いぞFCS。
単発式の方は俗に言う狙撃銃である。
遠距離から必殺の一撃を叩き込む。そのため連射タイプよりも威力と射程が強化されている。がしかし対照的に連射力と装弾数が落ちているものが多い。

続いてマシンガン、これもライフルに次いでポピュラーな兵装だ。
この兵装は中~近距離の戦闘に適しており、連射力はTAの兵装の中でもトップクラスだ。
その為威力は低い物の、連続で当てることがさらに簡単になったのだ。

続いてはバズーカ。これは極単純狙いを付けて弾頭を打ち出す。それだけだ。
手持ち兵装の中では威力はトップクラスではある。
欠点は他の武装よりも弾速がおそいことと、重量がかさむことだ。

その他手持ち兵装。
重ガンリング砲や手持ちミサイルポッド等がある。
戦略的意味合いが強い武装が多くあまり通常戦闘には適さないが
乱戦状態になった時や自機よりも巨大な目標を攻略する際には非常に効果的である。

腰部兵装

主に対人兵装や補助兵装等が充実している。
様々な機体がこの部分に固定武装を搭載している、所謂ハードポイントだ。

肩部兵装

主にミサイルやレーダー、フレアやジャミング装置と言った、機体の火力や補助性能を大幅に引き上げてくれる装備が充実している。
これらを隊の一機が何かしら積むことによって、大幅に戦闘能力をアップさせることが出来るのだ。

背部兵装

主にキャノン系の武装が多く肩部兵装と併用することにより、高い火力と単機で高い戦術性を発揮するため、主に傭兵たちが好んで使用する。

特殊兵装

ステルス迷彩や暴徒鎮圧用装備などがある。
前者のステルス迷彩は、開発されたばかりで限定的に戦場へと投入されている…。筈だ。
後者は政情が不安定な南ダラス地域の緒国では、よく見かける装備である。

これ等の武装をうまく使い分けることにより、TAは様々な陸上兵器の代役が務まるため私達傭兵には物凄く重用されているのだ。
(幾つかの兵器を揃えるよりも費用が掛かり難いのも魅力か)

ま、これらの他にも利点はあるのだが基本的な五つの要素を挙げてみた。機会が有ればまた語るか。

「うおい。なに一人でぶつぶつ呟いてんだよ~。」
ヘリのパイロットが通信を入れてくる。どうやら通信がONのままだったようだ。
「なあ、このヘリにはステルス機能が付いてるって話だが本当なのか?」
私の長年の疑問にヘリのパイロットが陽気な声で答える。(なお髪型はややくすんだオレンジ色のアフロだった。)
「本当だよ。このステルスヘリ、サイレント・ダウストロは【バクスター・グラインダー社】の傑作ヘリだぜ。」

「は~ん成る程ね。所でゲイズ1。この先14キロに味方部隊の陣地があるんだな?」
「ああ間違いない。確かにこの先14キロ地点に、第56機械化混成大隊の拠点陣地があるはずだ…。壊滅してなけりゃな…。」
「まあ、気を落とすなよその大隊はリオネア国防軍の中でも精強なんだろ?そうそう壊滅はしないと祈ろうか、エイメーン。」
「なんで最後をのばすんだぁ?」
パイロットからツッコミを受けちまったぜ。エイメン。


~所変わってリオネア国防軍第56機械化混成大隊拠点陣地~


「ヌォォォォォォォ!!」
むさ苦しい黒人の巨漢が両手にバズーカを持ち、対TA用ライフルを背中に背負い、専用の弾薬を胸に巻き付け、なんかゴテゴテしたスーツを着込んでいる。巨漢は両手のバズーカを乱射し敵TAと歩兵を次々と撃破してゆく。豪快すぎる光景だ。
「ガイアさん…、凄まじくむさ苦しいですね。」
そう発言したのはまだ顔に子供っぽさをのこしたフワッとした赤毛をしている少年である。彼の名前はキース・キャロット。戦況が開戦から不利なリオネア軍が義勇兵を募った結果、志願して来た少年兵の一人である。
なお16歳であり、故郷に8歳の弟と15歳の妹がいる。
「まあそう言ってくれるな。奴は馬鹿だが重火器の取り扱いに関しては天才的だからな…っとよし敵スナイパーを排除。」
そんな彼はスロ・ヘイヘ、6年前リオネアと北の大国レウラティア連邦が肥沃な大地であるカンセア地方を巡って争ったカンセア紛争で、リオネアを勝利に導いた凄腕の狙撃手である。この戦争が始まる前は、一度軍を退役し、狩猟犬のブリーダーを営んでいた。特徴はソフトモヒカンという髪型にした黒い髪に茶色の瞳、頬にある火傷の痕だろうか。
なお現在年齢は31歳である。嫁はいない。
「オラァァァァァ!!キィィィィィスゥゥゥゥゥ!!バズーカの弾が無くなったぁ!!何でも良いから重火器持ってこーい!!」
そしてさっきのむさ苦しい彼はガイア=フォックス。スロと同じく6年前のカンセア紛争で活躍した重火器取り扱いのプロである。
スロとは違いカンセア紛争後も軍に残り第56大隊に配属される。
特徴は筋肉達磨と形容しようが無い肉体と、スキンヘッドだろうか。
なお現在年齢は34歳である。独身。
そんな彼らが所属しているリオネア国防軍第56機械化混成中大隊は今現在、前線基地から約16キロ先で敵の大軍に包囲されていた。敵戦車の砲弾が近くのTAの上半身に着弾し吹っ飛び、敵TAが歩兵を蹴散らしバリケードを破壊、その隙間から敵歩兵が白蟻の如く湧きながら、コチラに突貫してくる。だが大隊側に勝機が無かった分けでも無かった。ココ数日の抵抗でゼ軍も確実に数を減らし、無茶な電撃作戦で息を切らしていた。もう少し抵抗すれば敵も退却してくれるはずだ。
頭の片隅でスロはそう考えながら、スコープを覗き、大破したスカラー戦車を盾にする敵兵に狙いを定める
「まさか敵さん俺達をスルーして基地と一緒に囲むだなんてな…。全く6年前の焼き増しか?」
スロはそう愚痴りながらも的確に戦車の陰に隠れた敵歩兵を排除してゆく。
「でも中々いい手だと思うんですけど…。基地を囲みつつ僕達の救援を封じることが出来るんですから。あ、ガイアさんこれで良いですか?」

キースが他の成人した兵士数人と共にえっちらおっちら持ってきたチェーンガンをガイアに渡す。

このチェーンガンの名前はエレファントキラー、総重量660キロ、口径60ミリと言う何でこんな物を開発した?と言われるがこれはTAの部隊数がカンセア紛争で大幅に減らしたリオネア軍が、【他国のTAに対抗可能な歩兵】と言うコンセンプトを元に計画した【装甲歩兵計画】の産物である。
結果的には、当時のリオネアの財政状況は厳しく(カンセア紛争が起きる約2年前に大規模な世界的な経済恐慌が有った。)軍部の予算も縮小されていたのと、TAの大手製造メーカー【マークス・ミリタリー社】がリオネアに対して開発されたばかりの第四世代TAコマンド・ラプターの正式採用を勧めて、これを軍部が正式採用を決定した為(当時軍部は再びコマンド・ドックを再び調達しようとしていたのだが、マークス社がしつこくラプターの採用を進めて来て軍部はこれに折れたことになる)この計画は専用武装とパワードスーツを少数開発しただけで終了し、武装も一般の歩兵が扱えないため体の良い厄介払いとしてこの大隊に配備されたのだ。

「オウよぉ!!コイツがあればゼ軍のクソ野郎共をまとめて掃除できるぜ!」
そう言いながらエレファントキラーを向かってきたTAと歩兵の連隊にむけて凄まじい勢いで発射した。
辺りに雷鳴の如くの轟音が響く。
凄まじい勢いで発射された弾丸は容易く敵兵の体を砕きTAの装甲を容易く貫通し、あっという間に地獄を生み出した。
「おおう、凄い威力ですね」
「へへッ、だろ?」
と言いながらスロとキースは他の15人の対機甲用装備を装備した兵士達と共に反対方向からこちらに向かってくる戦車のとTAの混成部隊の迎撃を開始した。


「敵は対機甲用装備を施した歩兵とスナイパーだ!主砲を使うな榴弾で仕留めよ、TAは前方へ戦車は後方支援だ!」
ゼメル陸軍軍第35大隊所属第5混成中隊の指揮官モッド=サハロフ中佐は最近妻と娘に逃げられたばかりだ。(書置きには実家に帰りますとだけかいてあった。)
そのため武勲と名声を上げれば逃げた妻と娘が帰ってくると思い立って、今回のリオネア侵攻に参加した指揮官である。
(スナイパーや機甲猟兵など武勲の足しにもならんがこの部隊の司令官の首を取れば2階級特進も夢では無いわ!!)
と、考えていた。がしかし。
『ん?何だ?敵スナイパーが当車に向けて発砲しました。あいつ何を考えて…』
次の瞬間その交信をしてた8番車が突如爆発、随伴してたTAがそれに巻き込まれた。
「ぬおッ!!な、何が起こったのだ!!」
「解かりません!いきなり8番車が爆発!それに随伴していたTA二機が巻き込まれました!」
「馬鹿物が!いきなり戦車が爆発するなんて有るわけ…」
『こちら2番車!隣の3番車と随伴のTAが2機殺られた!』
『こちら5番車です!6番車も沈黙しました!ああッ、ジョン・イルが乗った4番車がやられた!』
「一体何が起こっているんだ!」
「解かりませんが、8番車の爆発の映像からすると恐らく内部の弾薬に直撃して、爆発した様です。恐らく推測ですが敵スナイパーが主砲の穴から直接弾頭を狙撃した物かと…」
「ええい!馬鹿なこというな!そんなこと有りえな…」
「ほ…報告します!な…七番車が沈黙しました!それに前方のハンティング・シミネスが撃たれて沈黙しました!」
通信手が慌てた様子で報告を上げてきた。
「な…なんだと…ええいスモークを焚け!残りの車両と機体の数は!?」
「当車を含め戦車は4両、TAは6機です!」
配置的には正面の1番車、後方の9番車、左翼の2番車と5番車である。なおTAはスモークを焚いた瞬間、全機スモークの中に引っ込んだ。
「クソ!?ただのスナイパーだと侮っていたが最早容赦はせん!全車主砲の使用を許可する!敵を捻り潰せ!」
『了解!』
そう言うと一番車を中心に次々に目の前のスナイパーに向け130ミリ口径弾を次々と打ち込んだ。

スカラー戦車の砲身がコチラに向いた。
「マズイ!皆どこかに隠れるか伏せろ!」
スロがそう叫ぶやいなやドォン!!と腹に響く轟音が轟くと前方の遮蔽物にしていたコンクリートで補強した土嚢陣地がアッサリ吹っ飛んだ。
スロは愛用してる狙撃銃を背中に引っさげ右手にキースの襟元をを引っ掴み掘ってあった塹壕に駆け込んだが、しかしTAの銃撃によって3人機甲猟兵が死亡した他、普通の歩兵が砲弾の直撃を受け木っ端微塵になったり、逃げる途中にこけた拍子に20ミリ対人機関砲を喰らい塹壕の前で木っ端微塵、肩やら足やらに弾丸を喰らってもんどりうって倒れるものもいる。

「打ち方やめ!」
モッドはそう言うと全車に発砲を辞めさせた.
「やったか?」
いや、やれぬはずが無い…。アレだけの砲弾を撃ち込んだのだ。むしろ死体が残ってる方が不思議だ。
だが、しかし―
『2、2番車が爆発しました!』
『何だと!まだ生き残りが居やがったのか!』
一機のハンティング・シミネスが右腰の20ミリバルカンを撃とうとしたが
左腰に備え付けられていた携帯ミサイルポッドが突如爆発しパイロットごと葬り去った。
その光景を見た時時モッドの顔が青ざめた。
「そんな馬鹿な!何故死なぬのだ!」
「中佐、早くご支持を!」
部下が焦った様に、指示を求めてくる
その間にも反撃を開始したリオネア軍により戦車とTAが撃破されて行く。
そして呆然としていたモッドは恐怖に彩られた声で
「撤退だ!早く撤退しろ!」
それがモッドの最後の指示となった。

その直後モッドが乗る戦車のキャタピラに生き残った機甲猟兵の一人が放った携帯ランチャーの弾が直撃し行動不能になった瞬間、スロが撃った弾丸が砲身の中に吸い込まれる様に侵入し、内部に装填していた弾頭に誘爆してモッドが乗る戦車は爆発した。モッド=サハロフ中佐はこの瞬間悲願である二階級特進をしたのであった。

「よし敵戦車8両目撃破だ!」
スロはそう言うと前方の戦車ステラーにメガホンを使い降服を呼びかけた
「おーい!前方の敵戦車とTA!降服しろー。もうおめえしか残っていないぞー」
すると敵戦車から、白旗を持ち士官服を着た、20代位の男性が降りてきた。
「こちらはゼメル陸軍第35大隊所属第5混成中隊所属のエルヴィン=ロッソ中尉だ!貴軍に降服したい!私の命はともかく部下の命は保障してくれ!」
「(まだ若いな、どこぞのお偉いさんの息子か?)了解した!それじゃコチラに戦車ごと来てくれ!」
「降服受諾感謝する」

さて、何故ステラーの130ミリ砲の掃射を受け彼らが生き残れたのか、あの砲弾の雨霰である。木っ端微塵になりこそせ、何故五体満足で、しかも軽傷で済み戦車3両とTA4機を撃破出来たのか?ソレはスロが身の危険の感じ素早くキースを塹壕に放り込んで自身も塹壕に飛び込んだのだ。運よく砲弾は二人の傍には着弾しなかったので特に何事も無かったのだ。(あったことと言えば彼のお気に入りの煙草が逃げ込む際に落としてしまい燃えてしまった事くらいか)

15分後、スロが敵の混成部隊を撃破しTA二機と戦車一台が降服させた後、近くにいた兵士から一箱煙草をおすそ分けして貰い、衛生兵に頭に包帯を巻いて貰って、良い尻と胸してたなーと思いつつ一服して居ると、指揮所に報告に行っていたキースが戻ってきた。
「何?この陣地から6キロ先に敵TA部隊を叩きに行ったレスター大尉の隊はまだ帰還してねえのか?」
スロがキースに25分前に出撃したTA部隊が帰還して無いことを聞く。
「はい。まだレスター大尉の小隊は帰還してないとバロット大佐が行ってました」
(おかしいな?あのレスターが8機程のTAに負けるはずが無い)
「解かった。必要とあれば俺も機体で出るって中佐に言っといてくれ」
キースにその伝言を報告させに行ったスロは一人呟いた
「嫌な予感がするな・・・」

そしてコチラは噂のTA部隊の状況である。
「うわッ!何なんだよこの白い奴の動きは!」
コマンド・ラプターに乗っているパイロットの一人がさけぶ。
「ハリソン!弾幕を絶やすな!」
隊長機のストライク・ラプターに乗るパイロットは部下に指示しつつ右手に持つサブマシンガンをフルオートで連射していた。

彼の隊は敵が増援として送り込んできたTAを殲滅した後、帰還しようとしたら未確認の敵機に襲われたのであった。

〔マガジン残弾数ゼロ。マガジンを交換してください〕
音声ガイドが人工的な音声で弾切れを知らせる。
「言われんでも解かってる!」
S・ラプターがマシンガンのマガジンを交換しようと腰のラッチの手を伸ばしマガジンケースを取った瞬間、目の前に白い奴がいた
「・・・!!」
「隊長に手を出すなァァァァァァ!!」
一機のラプターが右手に持ったライフルを牽制に撃つと、怯んだ様に飛びのいた。
「隊長!大丈夫ですか!?」
「ああ…助かったぞミネア」
(しかし、何て動きだ・・・カスタム機とはいえアレはTAの動きではないぞ!?)
そうこうしてる内に敵機が右手に装備した携行型ガトリングを打ちながら突進して来た。
(クソ、このままではいずれ全滅するか…!)
このレスター隊は五機のTAで構成されており、隊長のグロック・レスターはリオネアのエースとまでは行かなくとも、カンセア紛争を生き抜いた歴戦の猛者である。その彼が率いる隊がこうまで苦戦するとは、敵パイロットの技量の高さが伺える。
「ともかくこのままでは全滅する!一旦拠点陣地まで退却するぞ!」
『了解!しました!』

五機の敵機が撤退するそぶりを見せた。
「へッ!逃がすかよ!」
そうレイ・バルトレットは言い放つと敵機に向かってブースターを使い飛び上がり装備しているミサイルをばら撒いた、ミサイルは敵機の周辺に着弾し、必然的に敵機の足を止める。
「よし!かかったぜ!」
彼は機体の両腕の装備を腰にマウントすると背中にマウントしていた何かを抜き放った。
「上層部から送られてきた新しい玩具!試させて貰うぜ!」
そして機体をすばやく一機の敵機に接近するとすばやく両手に持った何かを振り抜いた。そして―
迎撃しようとライフルを構えた敵機の右腕を切断した。

超震動波ブレード。彼専用に作られた専用装備である

続いて彼はその機体の両足を素早く切断し仲間を助けようとした指揮官機に接近する。敵指揮官機は左手に装備していたシールドを捨てると素早く予備のハンドガンを展開し、振り下ろされようとしていたマシンガンと一緒にブレードを受け止めた。がしかし
「そんなんで止められると思ったか!」
ハンドガンとマシンガンを止められた場所から一気に切り裂いた。
「チッ!両腕までは奪えなかったか」
敵指揮官機は超鋼カーボンナイフを展開する。様々なTAが装備する固定武装の一つだ。
「そんなショボイ装備で!」
彼が敵機に踊りかかろうとしたその瞬間―
「少尉!敵機接近です注意してください!」
オペレーターのジェシカが注意を促す。
「へッ!やっと来たか!黒いの!」
そう言って彼が空を見上げーそして目を見張った。
「おいおい、聞いてる装備とちがうじゃねえか・・・!」
彼の聞いた装備はライフルにミサイルといったベーシックな装備だったはずだ。
だがしかし彼の目の前の【黒い狼】は違った。

右手に装備させた重ガトリング砲は問題なし、左手のライフルもだ。

右肩の14連装ミサイルもオールグリーン、左の78口径リボルバーキャノン同じだな。

久々に楽しめそうなパイロットだ武装を変えてきて良かったよ。

「さあ、私を楽しませてくれよ・・・!!白銀の鷲どの!!」

今ここに

【送り狼】と【白銀の鷲】の死闘が始まる。
                             
                               続く・・・

作者あとがき

感想が一件も来なくて凹んでた全自動式メタル棺桶です。

いや始めた時から覚悟はしていたのですが、こないと結構寂しいものです
茶菓子とお茶を用意しても誰も来ない赤鬼の気分ですね

今回のお話は生身の歩兵対機甲師団といった所でした。

次回は悪役みたいな台詞をかます主人公と敵軍の若きエース君の激闘です。

誤字・脱字や過剰な演出、いらん描写が合ったら
どしどし感想をください。あと普通の感想もお待ちしております。

6月26日改訂版投稿
12月2日更に改定。
では今回はここら辺で失礼します。



[28466] 第4話
Name: 全自動式メタル棺桶◆2f0eeb4d ID:dd6ac1e6
Date: 2011/12/13 00:22
空しく孤影を刻むあらすじ?

ゼ軍のエースと戦う送り狼さん、果たして勝つのはどっち!?



敵機が動揺している様だ。そりゃ仕方がない。私だって敵機の武装が報告内容と180度違ったらパニックにはならんが、焦りはする。

ヘリから機体が切り離されると同時に右手の重ガトリング砲のセーフティを解除し自由落下しながら連射する。が命中せず…敵機はローラーダッシュで回避。一応は間合いを確保した。

背部と脚部に設置されたスラスターを吹かしながら、着地したストライク・ウルフはカメラカバー越しに敵機を―ファング・イーグルを―捕らえる。だが先に動いたのはファング・イーグルであった。

ファング・イーグルは腰にマウントしていた携行ガトリングガンを素早く抜き放つと、ストライク・ウルフに向かって接近しつつ弾を発射した。ソレと同時にストライク・ウルフもホイールを唸らせ、接近しつつ左手に装備したライフルを連射した。
互いの銃口からマズルフラッシュが瞬く

一瞬の交差

次に先手を打ったのはストライク・ウルフであった。
素早く右足のフットピックを地面に打ち込み敵機に向かって、勢いよくターンするとミサイルを連続で8発発射した後、着弾を確認せずに右手に直接付けられたガトリング砲と左手のライフルを連射しつつ正面から被弾覚悟で突っ込む。

普通の機体達ならばこの一連の攻撃で仕留められるだろう。がしかし―

素早く接近しつつ、左手に持ったライフルを腰部のマウントにクラッチ。左手をフリーな状態にしアームパンチを叩き込もうとしたが、そこに白銀に塗装された機体の姿は無かった。
「!?」
次の瞬間、「敵機反応上です!」オペレーターの警告と共に上空の敵機から右肩部に設置されたミサイルポッドより3発のミサイルが発射される。

発射されたミサイルの軌道を、ウルフのPCが予測し、後退しながら肩部に設置された筒状の物体から市販の打ち上げ花火のような音を立てながら、簡易フレアが発射され、ミサイルを誘導する。

突如として発射されていた弾頭が割れ内部から一回り小さい弾頭が合計24発が頭上からストライク・ウルフに向かって襲い掛かる。


「…っ!!」
回避がこの状態だと間に合わないと感じたウルフは、少しでも機動性をあげようとミサイルをパージして、アクセルをフルスロットルにし回避しようとしたが、だがソレよりも早くミサイルの子機が、ウルフに喰らいつき爆発した。

「ヨッシャア!仕留めたぜ!」
イーグルに一応の警戒態勢を取らせつつ、レイは前方の爆風を見る。
敵はいつもあの攻撃に驚いて足をとめる。
まさかミサイルの中にまたミサイルが入ってるなんて思いもよらなかっただろう。
「しかし送り狼も噂に聞くほど大したことは無かったな、アレ位の攻撃見切れると思ったんだがね」
レイはそう呟き、肩の力を抜き、首の骨パキポキと鳴らした。
しかし彼はまだこの時知らなかった

まさか敵機が生き残っていて
着弾後の爆風とチャフをフルに使って逃走した事を。
そして反撃の機会を伺っていることを。

(危なかった)
荒い息を付き、機体を引きずりながら私はそう一人思考する。
(まさか、焼夷弾やクラスターでも無いのに弾頭からもう一回り小さいのが出て来るって誰も思わないな…。)
「やれやれ…。私もまだまだか…」
余目、フレアを展開して居なかったら恐らくはコックピットに直撃していただろう。
今回のアレは恐らくはゼ軍の新兵器だろう。あんなクラッカー見たいなミサイルなんざ、傭兵生活21年。あんな兵器は見たこと無い。
「ゼ軍の奴ら…また新兵器を作りやがって…」
機体の状態を確認する為降着状態にし、降りるとちょっと機体がマズイことになっていた。

まずミサイルポッドは別に良い。ありゃ何時でも手に入る…。そう思わないと諦めが付かない。次に頭部。どうやら一発貰ったようだ。野球のキャッチャーの様なメインカメラの保護カバーがプランプランと、力なく垂れ下がっている。お気に入りなんだよなコレ。
その他、カメラ映像に時折砂嵐が走ったり首の間接がカクカクしたりする。重症だ。
また他にも、右腕部の駆動間接から嫌な音がしたり、ガトリング砲の砲身が無かったりとさんざんな状態だ。もう嫌だ家へ帰って、冷たい缶ビールを煽って、ピーナッツを摘まんで寝たい気分だ。
「ま、帰る家も故郷も、もう無いんだがね…」
もはや25年前に全てが赤い肩のTA達の所為で炎に沈んだ。私の帰る場所などどこにも…。
…脳内ポエムをやってる暇など無い。そろそろ敵さんも気付く頃合いだろう。
不幸にもここは岩と焦げた大地とスクラップの山以外何も無い場所だ。森林地帯やジャングルならば多彩なトラップを設置出来るのだが、ここは岩陰にちょっとした地雷や落とし穴を仕掛ける事しか出来ない。そんな小細工はあの凄腕には通用しないだろうと足りない脳味噌をフル回転させていると、周辺にあるスクラップの中にある物が目に入った。
(廃棄されたTAや通常兵器…?)
そこにはボロボロだがまだそれなりには動けそうなTAの残骸や、それなりに使えそうな通常兵器の残骸が、複数転がっていた。
どうやらパイロット達が乗り捨てしたり、スクラップ処理の費用が面倒になったリオネア軍がココへ廃棄していったようだ。
その途端あるアイデアが脳裏に、ピンと閃いた。
スクラップの山、兵器の残骸、そして僅かに感じた敵機の慢心。
「コレならばあの白銀の鷲を落とせるかもしれん…」

「チィ!!何処に行きやがった送り狼!!」
レイは機体を逃走したと思わしき方向へ走らせていた。
ウルフと思った熱反応は装備していたミサイルポッドだったのだ、まさかミサイルをデコイ代わりに使うとは…。
「さすがは送り狼…。やる事が違うな」
本当は少しでも機体をの機動性を上げる為にパージしただけで、ミサイルが命中して爆発したのは偶然なのだが(しかも余計な手傷まで負った)彼は完全にコレも敵の計算の内だと思い込んでいる。
「確かに情報ではこっちに逃げたはずなんだが…オペレーター、本当にこっちで間違い無いのか?」
レイはもう一度ジェシカに確認を取る。
「はい。最後に取った敵機の動きからすると、敵機はそちらの方角に逃げたのは、確実です」
「ま、それなら良いんだけどよぉ…」
そう一人呟いた次の瞬間。
「ヌォ!?」
岩陰から一機のボロボロのTAが襲い掛かった。

レイは反射的に左手に持っているサブマシンガンを襲い掛かって来たTAに向かって連射した。



軽快な発砲音が響きTAに穴を穿って行く。
「アアッ!?何だよコイツラ!?」
レイはいきなり襲い掛かって来たTAに驚きを隠せない。
「恐らくは指揮官機に遠隔操作された無人のTAです!注意して下さい!」
ジェシカが敵の正体を伝えてくる。
通常タイプの機体を遠隔操作出来るのは、世代は関係なく指揮官機の特権と言えよう。
無論コレだけ聞くと「それでは、敵勢力が味方勢力の機体を操って同士討ちさせるのでは無いか!?」と言われるが御心配無用!そこ等辺は【認識コード】と呼ばれるコードが有り、アングラな組織だろうが正規軍だろうが各勢力が最低一つ独自のコードを所有しているので大丈夫だ。
逆にこのコードがハッキングされて盗まれたり、悪用されたら非常に大変なことになる。(事例を紹介したいがこのお話には全く関係ないので後々に紹介する)
「クソが!本当に厄介な事を考えるぜ!送り狼!!」
レイは後方から襲い掛かって来たTAを前方のTAに向かって手首を掴み勢い良く投げ付けた。
「コレで三機目だ!」
投げ付けられたTAは投げられたTAと正面から衝突し共に炎上し爆発する
ファング・イーグルはさらに三機で襲い来るTAに向かって右手に装備したガトリングガンを乱射し次々と敵機を蜂の巣にして行く
さらに左手に持ったサブマシンガンを敵機に向かって撃つが

何かがひっかる様な金属音

なんか情けない音が響いた。
「ジャムった!?クソ!こんな状況でかよ!!」
どうやら弾が詰まって出なくなってしまった様だ、どうやら運悪く滅多に無いジャムを(約1000丁に一丁有り。それでも起こる確率はゼロに近い)起こしてしまった様だ。
そしてマシンガンで仕留めきれ無かった敵機が急速に接近し超鋼カーボンナイフを展開すると

左手に持っていたサブマシンガンを叩き切った。

「…ッ!!」
レイは焦った様に機体を後退させると、自機のハンガーユニットからある物取り出した。それを敵機に向けロックオンする。

高速でモーターが回転\歯医者で歯を削るアレ見たいな音を立ててチャージ\そして甲高い発砲音と共に弾丸が牙を剥いた。

ソレは目にも止まらぬ速さで敵機の装甲を打ち抜き、内部のジェネレーターを粉砕し、爆発させた。

「…頭でっかちの技術屋どもが送ってきたからどうかと思ったが…。中々良いじゃんか!この新兵器!!」

レールガン。それは本来であれば超大型の兵器なので、砲台としての活用。戦艦の主砲として積むか、要塞砲としての運用が望ましい。
TAに装備させるとしても背部兵装で、しかも超重量であり、装備した機体が地面に沈んだとか、発射時の衝撃で機体が横転したとかの逸話が絶えない武器である。しかも市場には極少数しか出回って無いのである。(生産しているメーカー自体が少ないのと、そもそも余り数を作らない)
そのレールガンを小型化かつ携行化したのが、この携行型レールガンである。


(レールガンとは…。随分と恐ろしい装備を携行化する…)
スクラップの山の中に(ここいらの地方は統合戦争以来、紛争がアチラコチラで勃発しており、スクラップの山が結構ある)隠れて敵機の隙を私は窺っていた。
今現在動いている機体達はイレーナがこの機体の指揮官専用システムを介して動かしている。言わばラジコンだ。
一時期押しかけてきた時は如何しようかと思ったが、電子戦からハッキングを今では朝飯前くらいにこなせる様になった。
でも料理はどうにかならんのかと思うが。

そろそろ敵機はスタミナ切れの様だ。どうも動きにキレが無くなって来てる。良しここいらが仕掛け時だな。
「イレーナ!猟犬達にそろそろ追い込みを掛けてくれ!」
「了解です!」

「これで十一機目だ!!」
襲い来る機体をほぼ全機撃破したレイ・バルトレット
そんな彼はここのスクラップの山の中に真の狩人が潜んでいることに全く気付かなかった。


突如耳障りなロックオン警報が鳴り響き、背後からミサイルがいきなり放たれた。
ファング・イーグルは肩部にある携行フレアを撒き回避するも、着地地点のスクラップの山背後から軽装のストライク・ウルフがブースターを推力全開で隠れていた
スクラップの山を崩し襲い掛かった。
「やっぱりな!そう来ると思ったぜ!」
ファング・イーグルは左手の携行レールガンを向けると、そのまま突っ込んでくるストライク・ウルフのコクピットに向かって発砲した。
弾丸は吸い込まれる様にしてウルフのコクピットを打ち抜き爆発させたのであった。
「なんだよ?もう終わりか?大佐が言った割りには呆気無かったな」
レイが残った敵機を片付けて帰還しようとした、次の瞬間。
「敵機反応確認下です!」
突如として足場にしていたスクラップの山から二本腕が伸び、ファング・イーグルの両足をガッチリ掴んだ。
「ウォ!?なんだ!?」
イーグルがブースターを吹かせて引き離そうとするが、ガッチリ掴んで離さない
そしてスクラップの中からその腕の『主』が姿を見せた。
腕の主、ストライク・ウルフが立ち上がった。
「ぬおおおおお!!」
足を掴んだまま立ち上がった為、必然的にストライク・ウルフが上に、ファング・イーグルが下になった。
そしておもむろにウルフは足を掴みながら勢い良く回転しだした。
「うわ、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
更に回転加えて行く、そして

おもむろに、ぱッと手を離した。

「ぬえェェェェェェェェェェ!?」
思い切りブン投げられたイーグルはそのまま吹っ飛んだ先のスクラップの山に突っ込み掛けたが直前に、脚部に備え付けられたスラスターを使い、機体を宙返りさせて地面に着地した。そして左手に携行レールガンを持ち、右手に超振動波ブレードを展開する。(その際、肩部のミサイルは機動力を更に上げる為パージした)

同じくウルフもスクラップの山から滑り降り、胴体部の格納部に仕込まれた、TA用ハンドガン(形状は非常にベレッタに酷似)を構え、腕部の装甲の内部に仕込まれたパイルバンカーを展開する。

両機の間に緊迫した空気が流れる。
どっちが先手を取るかで戦いの優劣がきまる。

そして両機は再び激突する

先に動いたのはイーグル。急速にスラスターを吹かしながら、接近。ブレードを使い斬りかかる。その斬撃をウルフが左腕の腕部装甲で受け流がし、素早く右手のハンドガンをコックピットに向け発砲。
その弾丸をイーグルは機体上部を僅かに捻りながらか避ける。レールガンを向け、既にチャージしていた必殺の弾丸を放つも、紙一重でウルフはソレを回避、距離を離しつつハンドガンをを連射して応戦する。
だがしかしイーグルも弾丸の軌道を読んで、その隙間を縫うように避ける。

戦いは一進一退の状況を呈していた。互いに技量はほぼ互角。勝るとも劣らない。しかしこの時点で機体性能が確実に差を生み出していた

次々とイーグルが放つ攻撃に段々とウルフが反応仕切れ無くなって来ていた。
どうやらパイロットの方は普通に敵機の斬撃を見切っているらしいが、機体の方は碌な整備をここ数週間受けられなかったらしく、パイロットの機体捌きに機体が追いつけず悲鳴を上げている様だ。そして遂に機体の性能差と整備不良が顕著に現れた。

イーグルが放った斬撃を、ウルフが受け流そうとしたが機体の反応が遅れて左腕部が切断されてしまった。
「…ッ!?」
送り狼が目を見張る。
「その首貰った!!」
レイがその隙を見逃さず斬りかかり、頭部を跳ね飛ばそうとブレードを放つがギリギリで回避し、事無きを得るも、イーグルは更にコクピットを狙い鋭い刺突を繰り出してきた。回避が間に合わずこのままコクピットに直撃する。そう思われた。だが次の瞬間。

「残念だがまだ死ねないのでな!」
突きを繰り出してきたイーグルの右腕をウルフが掴み脇で押さえ込む
「なッ!?」
今度は逆にレイが目を見張った。
レイが自機の腕を引っこ抜こうとするがウルフが凄まじい馬鹿力で押さえ込む。力比べは一世代前の機体だが、フレーム自体のパワーが上のストライク・ウルフに分があった。

ガッチリ掴んだ。もう離さないってな。
「クソが!!離せ!!離せよ!!」
機体同士が触れ合っているため、敵の通信が聞こえてくる。
「離せと言われて離す馬鹿がどこにいる!!」
そう私は言いながら、背部に背負っているリボルバーキャノンを展開し至近距離で狙いを付ける。
「な…ッ、そんなことしたらお前の機体も吹っ飛ぶぞ!?正気かよ!?」
敵パイロットは物凄い慌て振りでさらに力を込め右腕を引っこ抜こうとする。
「正気かって?15年程ソレを指摘するのが遅いぜ…ゼ軍のエースどの!!」
そしてレイは引っこ抜けないと見るや左腕のレールガンを使い自機の右腕を打ち抜き飛び退こうとする。
発砲音が鳴り響き、右腕を切断した直後リボルバーキャノンが放たれた。

「うぁぁぁぁぁぁ!!」
「クッ…!!」

ド派手な爆発が起こり、二機はその爆発に巻き込まれた。

(ハアッ!ハアッ!ハアッ!)
機体は酷い有様だった、頭部を喪失し、右腕も無く、機体のあちこちがスパークしていた。
レイは激しい息切れを起こしていた彼は戦場に出てからこれほど追い詰められたことなど今まで一度も無かったのだ。
(なんだ…!何なんだよ…!この感覚は!?)
心臓が早鐘を打ち、毛穴から嫌な汗が止まらず、顎をガチガチ打ち鳴らし、鳥肌が収まらない。戦場で初陣を切った時も、敵エースと一騎打ちした時も高揚こそ感じこそすれ、こんな感覚は感じた事は一度も無かったのだ。
そこへウルフが残った右腕のパイルバンカーを展開し機体のアチラコチラを軋ませながら、ブースターの推力を全開にして追撃を仕掛けてきた。レイはこの攻撃を紙一重で回避し逆にレールガンでコクピットを狙うも、弾の軌道がそれ、頭部を吹き飛ばす。
(アイツを…!送り狼を殺さないと…!俺が死ぬ…!)
「レイ!大丈夫!?レイ!?」
オペレーターのジェシカが取り乱した様子で声を掛けてくる。
が、今のレイはジェシカの声が耳に入らなかった。
「アイツを…!アイツを…!アイツを…!アイツを…!アイツを殺さなきゃ俺が殺される!!」
レイは錯乱した様に叫びながらボディから火花を出してピクリとも動かなくなったストライク・ウルフに対してレールガンを構える。
「俺が!俺が!アイツを!アイツを殺すんだぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして狂った様に叫びストライク・ウルフのコクピットをロックオンし、レールガンをチャージ、トドメを刺そうとし―

邪魔された。

「ウォォォォォォォォォォ!!させるかよォォォォォ!!」
一機のコマンド・ラプターが、両手に持ったサブマシンガンとライフルを乱射しながら突っ込んで来た。
「ッ!!」
弾かれた様にレイは機体を射線上から回避させた。
「レイ!退却して!その機体じゃもう無理よ!それに本隊も撤退を開始したわ!」
「うるさい!今ココでトドメをさすんだ!あの送り狼に!」
ジェシカは退却を呼び掛けるも、レイは機体を動かしながらトドメをさすと言って聞かない。
そして大体同じやり取りが二・三回あった後、堪忍袋の尾が切れたジェシカが機体の操縦権を自分の手に移すと、そのまま機体を撤退させたのであった。

(やれやれだ、助かった…)
私は大きくため息を付いた。また無事に生き残れたのだ。
(しかし、機体の損害が凄いことになってるなぁ…)
改めて機体の損害率をチェックすると、下半身はほぼ無事だったが、上半身が軒並壊滅だった。まず頭部と左腕部が喪失し、右腕もさっきの追撃で内線が切れたのかダランと力無く垂れ下がった状態なのだ。しかも背部のリボルバーキャノンはその名の元になった特徴的な回転式の弾倉を有する本体は辛うじて残っているも、砲身は途中から無くなっている。
「はあ…」
私はまたため息を付いた。コリャ今回分の報酬を得たとしても、機体の修理費に三分の二は吹っ飛ぶな…。イレーナにどう説明しようか。
「おい!大丈夫か!?」
そうこう考えていると例のコマンド・ラプターのパイロット。ゲイズ1が通信を入れて来た。
「機体は見ての通りだが、体の方は何事も無いぞ。そんな事よりだ。アンタには襲われていたTA部隊の方を頼んだはずだが、ソレはどうなった?」
確か一機右手と両足を切断されてたはずだが
「ああ、そっちは無事前線拠点の味方の本隊まで送り届けたんだ。んでだ、その後気になったから、あんたの機体反応を追ってココまで来たってわけよ。そしたらさっきの状況だ」
ああそう言う事か。なら問題ないか。
「所で敵部隊はどうした?撤退したのか?」
もう一つの最重要事項も聞く、まさかこんな状態で敵機と戦闘するなんてお断りだからな。
「ああ機甲部隊や歩兵部隊に大きな損害が出た見たいで、つい先程撤退してったぞ。あとお前が機体を中破させてるってお前のオペ娘が言ってたから、ヘリも持ってきたぜ…ああほら来たみたいだ。」
確かにヘリのローター音が聞こえるな、そして帰ったら、説教か…ハア…肩が重いよ、全く。
「…んじゃあ、帰りますか。」
こうして俺とゲイズ1はヘリに吊り下げられ味方の前線拠点へ帰還するのであった。

                                  続く

作者あとがき

どうも作者の全自動メタル棺桶です

今回は前回予告したとおりTA対TAのお話でした
実は作者コレが処女作なのでメカ同士の戦いを書くのがコレが初めてです

ほんで次回はいよいよ主人公の紹介です
はたして男なのか、女なのか
渋い親父か、はたまた好青年か、美少女か
皆さんはどちらだとおもいますか!?
というわけで次回は小休止です
戦士達の休息を話半分で期待あれ~

その為不自然な点が御座いましたら、感想欄までドシドシご指摘ください

普通の感想も待ってます。

それでは今回はこの辺で失礼します。
7月2日改訂版投稿



[28466] 第五話
Name: 全自動式メタル棺桶◆2f0eeb4d ID:dd6ac1e6
Date: 2012/02/20 22:46
モノクロがセピア色になる頃なあらすじ


ゼ軍のエースと引き分けた狼さん、ですがまだ苦難は続くようですね?



懐かしい夢をみた。

私と師父が戦場で、何かを話していた。
その時の私は当時12歳の少年兵で、師父は30歳ちょうどの頃の姿だ。

話の内容は取り留めの無い話だった気がする。(記憶があやふやなのだ)
なぜ人は戦うか、本当に戦場に答えはあるのか。
内容を要約するとこんな感じだ。

今となってはもう昔の話。もう戻れないあの懐かしい戦場だ。

「おーい聞こえるかい?」
思い出に耽っていたら、ヘリのパイロットが通信を入れてきた。
私は記憶の海から、自らを引き上げると、返答を返した。
「こちらケグルネク。ペリカン2、どうした敵にでも見つかったか?」
ケグルネクとはリオネア軍から与えられた私のコールサインだ。

ちなみにペリカン2はこのヘリのパイロットのコールサインである
「違う違う。やっとこさ前線拠点に着いたぜ」
ヘリのパイロットが、軽く笑いながら返す。
どうやら敵の航空戦力に襲われることも無く、無事に拠点までついた様だ。

ヘリがゆっくりと垂直に降下していく、機体を地面に置いて切り離すためだ。
降下先には誘導員が誘導灯を使いヘリを誘導し、整備員達が駆け回り、リフト車が掛けてきたりと凄い賑やかだ。
他にも胴体に付けられたサブカメラで拠点の様子を伺うと
今日負傷した兵士が赤十字が書かれた天幕に消えていったり。
TAや無限軌道戦車が仲良く横に並んで、軽い整備を受けていたりした。

そして送り狼の乗る機体とマルコが乗る機体が地面に降りると、周囲にいた整備員達が夏にセミの死体に群がるクロアリの様によって来て機体の整備を開始した。

「班長!この機体凄いボロボロですけど、どうします?」
若いメカニックが、顎に無精髭を生やした四十代ぐらいの男に話しかける。
「ウルフは俺達がやっとくから。若いの、お前さんはラプターの方に行ってくれ」
彼がそう言うと、「了解しました!」と言ってラプターの方に駆け出していった。
「やれやれ、それにしても酷い壊れ様だなぁ。えぇ?送り狼さんよぉ?」
彼は機体を見上げ、そう一人呟く。彼が見た中では十本指に入る位の壊れ方だった。

ともかく機体からパイロットに出て貰わねばならない。
コックピットに近づき声をかけた。
「おーい!聞えてるか!?聞こえんなら返事をしろ!」
彼が中に向かって声を掛ける。
「聞こえるよ!今出るからちょっと離れてくれ!」
中から返答があった、彼は周辺にいた整備員を機体から少し離れさせてパイロットが出て来るのを待った。

機体の胴体部分からエアロックの解除音が響き、中から人が降りてくる。

どうやら男性のようだ、男性はゴーグルが固定され一体化した旧式のヘルメットを頭に付け、胴体部分に万能ベスト。腰には拳銃を入れる為のホルスターとポーチを付けていた。そして男は地面に降りるとヘルメットをはずした。

その下にあった短く剃り込みが入った髪は、月の無い夜空を映したかのような漆黒の色をしており、二つの灰色の瞳はまるで、狼の様にギラギラと光を放っており、袖を捲ったカーキ色の軍服から覗く腕は日に良く焼けている。
その体躯は鍛えられてるのが良くわかる。
そして肩にはオリーブの枝を咥えた狼のエンブレムのパッチが縫いこまれていた。

彼の名はフーリエ・レジョネア。このお話の主人公【送り狼】である。
年齢は33歳。オペレーターとは親子みたいな関係だと本人は思っている。

「すまないな。また迷惑をかける。」
私は安堵の溜め息を付きながら、整備員に侘びを言った。
「別に良いですよ…。そんな事より、また何をやったらこんなことになったんです?」
整備員の一人が質問して来た、それに私はこう答える。
「至近距離でキャノンを撃ったらこうなった。」
彼の答えに整備員達が、(コイツ、馬鹿なの?)と言う視線を、投げかけてくる。
そんな視線を投げかけられても…と思っていると、向こうから赤毛の少年兵がコチラに駆け寄って来るのが見えた。
「ハァ……ハァ……間違いない、送り狼さんですよね?」
少年兵がなにやら話し掛けてきた。
「うんまあそうだが……。何だ?サインはしない主義でね。」
私が冗談めかして言うと
「いや、違いますよ……貴方のオペレーターって人に、呼んで来るように言われたんですよ」
彼はそう言って伝言を私に伝えた。
「それとあの人にこう言ってくれっで覚悟しといてください、このクソ狼”だそうです」
その伝言を聞いて、私は急いでイレーナの元に駆け出した。
今だったら、土下座くらいで済むはずだ。え?誇りは無いのか!って?命が助かるなら土下座でも何でもしてやるさ。誇りなんぞ溝に捨てちまえ。

全速力で待っている場所に掛けてくると、そこには見知った相棒と、腐れ縁の傭兵が居た。
「いやいや、待たせたなイレ―」
「遅いですよ、腐れ狼」
私が声を掛け、謝罪しようとした、次の瞬間に

私の鳩尾に、栗色の髪をした小柄な相棒が放ったジャブがクリーンヒットした。

「ごァ…!!」
私の口から呻きと、息の漏れる音がした。
「私を待たせるなんて、いい度胸してますね?フーリエ?」
私に今、鳩尾にジャブを叩き込み悪態を付くこの少女は、私の相棒である
イレーナ・ミンクスだ。

小柄な体躯に、クリッとしたオニキスを埋め込んだような瞳、真っ直ぐに伸びた、ライトブラウンの髪。そして透き通るような声(さながら、セイレーンの様だ)。そして、十八歳。
コレだけを、傭兵仲間に話すと「チッ。爆発しろ」とか「ケッ。死に腐れ」とか言われるのだ。そう、奴等は知らない。こいつがいかに凶暴か、そして口がいかに悪いのか。奴等は知らないのだ。

そう思考してる間にも、彼女の説教と悪態は続いていた。

「大体ですね、貴方は無茶しすぎなんですよ。フーリエ。一体何がしたいんですか?もしかしてボロボロになった所を集団でさらにボコボコにされる性癖でも有るんですか?
それは救いの無い変態ですね。もしかしてこの為に傭兵となったのですか?」
なんか酷いことを言われた。心外だ。
「いやいや。私にそんなアブノーマルな趣味は無いし、その為に傭兵になった訳じゃないからな?」
私はやんわりと、否定する。
「じゃあ、あの機体状況はどう説明するんですか?おかげで、修理代や武装の発注の所為で報酬の三分の一は持ってかれたんですよ?私達傭兵にとっては、死活問題ですよ?デッドオアダイですよ?何なんですか?バカ何ですか?死ぬんですか?」
イレーナが報酬について攻め立てて来る。
これは反論出来ない。
「報酬については、まあ悪かったと思ってるさ。それとデッドオアダイじゃなくて、デッドオアアライブじゃ無いのか?」
地味に上げ足を取る。そこ女の腐ったの見たいとか言うんじゃない。
「いや本当にデッドオアダイですよ、新兵装が買えなくなって、戦場で貴方が死ぬんですよ?それで貴方が死んだら飯の種が無くなって、他の傭兵の元にいくか娼婦をやれってことですか?そんなの絶対に嫌ですよ」
イレーナが悪態を交えつつも、私を心配してくれる様だ。
かわいいな、コンチクショウ。
「解かってるよ、今度から気をつけ――」
いきなり太腿にローキックを入れられた、物凄く痛い。
「何故いきなり蹴りを入れた!?」
イレーナに向かって突っ込みを入れる。何故に蹴った。
「貴方が私にその台詞を吐いたのはコレで約23回目です!何回無茶をすれば気が済むのですか!全くもう!」
なんかさらにキレていた。やはり報酬が三分の一も吹っ飛んだのが相当腹に据えかねるようだ。
「解かった!解かったよ!今回の取り分はお前が7割りで俺が3割りで良いだろ!?そして危険な策は事前にお前に相談する!コレで今回の件は、チャラだ!」
何とかイレーナの怒りを鎮めんと、普段の取り分よりも二割増やした。
コレで駄目だったら、恐らく夕食で私だけ味気の無いスープだろう。
「ハア……そう言う事では無いんですけど……解かりました。もうこの件は終わりにします。ですが次にこんな事が有ったら、許しませんよ!!全くもう!!」
イレーナはそう言うと、機体の様子を見に向こうへ言ってしまった。
「やれやれ。お前も、お前の所の嬢ちゃんも相変わらずだな?」
イレーナの隣に突っ立ていた男が笑いながら、声を掛けてくる。
「オルデか。助け舟くらい出してくれよ?それと久しぶりだな。お前も私と同じ用件か?」
この男の名は、オルデ=ハイゼン。私と同じく傭兵で、何かと共同戦線を張ることが多い男だ。
特徴としては、少しくすんだシルバーブロンドをオールバックにして後ろで髪を一本に括っており、顎には無精髭を生やしている。
私と同じカーキ色の軍服を着ており、鍛えられた鋼の肉体をその下に秘めている。
現在年齢は35歳。なお独身。
「ああそうだ。軍事演習のアグレッサーとして招かれたら、この戦争が始まっちまったてわけさ」
どうやら私と同じようだ。

そもそも、この戦争が何故始まったか、それを話さねばならない。

私が現在雇われているこの国、リオネア公国は四方を豊かな土地や海に囲まれたユーラント大陸の小国である。
西はクリミナ高原、南はオルトレット海に面しており、北は肥沃な大地があるカンセア地方、東は『神々の山』とも呼ばれるアルメット山脈が広がっている。
さらに地下には大量の鉱物資源が埋まっている。この豊富な地下資源や、肥沃な大地を巡ってリオネアは各国に狙われている。

政治体制は立憲君主制であり、一応国のトップは王家の現当主、つまりこの国の王様、第二十三代リオネア公国国王レインジャー=マルサンティス=オルレアノ=リオネアが統治しているとなっているが、実際の所リオネアの象徴としてトップに君臨しているのであって、実際の所王は議会に対しては何ら発言権を持っておらず、実際のトップは、第四十七代リオネア公国首相マルク=ユーロ氏が現行のトップである。
マルク氏は【リオネアの快刀】と呼ばれるほどに有能であり、八年前に起こった経済恐慌と六年前に発生したカンセア紛争で困窮状態にあった、リオネアの経済を立て直し、領土問題で揉めていたレウラティア連邦との和解を成功させた人物である。

国の説明は置いといて、なぜこの戦争が発生したか、その原因を話そう。

結論から話してしまうと、戦争の原因は前述した経済恐慌の所為だ。
この経済恐慌は世界的な物で、原因はアンセア大陸の某超大国の内紛である。
アンセア大陸はユーラントより東の方にある大陸で、そこにある某超大国は昔から争いが絶えず発生し(しかもその原因が権力者の腐敗だから、余計にたちが悪い)今回も長らく一党独裁を行っていた政党に地方の軍閥が民間人や反政府勢力と結びつき、武装蜂起をしたのだ。
この紛争は私も参加し、不謹慎だがガッポリ儲けさせて貰った。機会があれば話そう。

それで結局のところ戦争は、物量で勝り士気が劣る正規軍と、士気で勝り数で圧倒的に劣る反乱軍は互いに致命的な決定打を与える事が出来ず、ズルズルと長引き両軍が疲弊した所を、多国籍軍が一気に両軍を叩き某超大国を保護の名の元に占領したという結末だった。

コレだけを話すとどこが経済恐慌の原因なんだと、諸兄方は私に向かって空き缶や革靴にスニーカー、ビスケットの空き箱を投げ付けて来るであろう。
まあ、コチラも何と言うか……別の大国が関わっているのだ。

その大国の名は、アーシア連邦共和国。

一昔前までは、『世界の警察』だの『経済の中心地』だのと言われていたが、現在は経済不況で失業者が増え、しかも国内で対テロ特殊部隊が大規模なテロを起こしたりとこんな感じに国がガタガタなのだ。

何故こんな事になったか。理由は簡単、あの超大国と経済的に仲が良すぎたのだ。

アーシアにとって某超大国は、良い市場であった、なんせ三十億人もの市場があり、現地人はアーシア国内で雇用するよりもいろんな意味で安上がりだ。
逆に某超大国も経済的にも世界一のアーシアの市場開拓に乗り出しており、積極的に中小企業の買収や合併等を進め、商品を製造する為の工場を本国に誘致したりと、お前ら本当に社会主義国家なのか?と疑いたくなる様なことをしていた。
ここまでは別に良い。だが問題はこの後だ。そうあの戦争が勃発してしまったのだ。その結果、当時のその政党と結びついていた企業は反政府勢力からテロの対象となり、所有していた工場や邸宅に爆発物を仕掛けられたり、街中で白昼堂々と襲撃されたりと、散々な目に遭って潰れた企業が多発した。
アーシア側も進出した企業が、暴徒と化した市民によってオフィスを襲撃されたり、工場でストライキやテロリストを招き入れられ生産ラインを破壊されたりと、コチラも散々な目に遭っている。
この戦争によって、某超大国の大企業の倒産が相次いだため、アーシアポートレット市場の株価が大暴落。その煽りを受け提携していたアーシア系企業の株も道連れ状態となり大暴落。
この結果、世界的な経済恐慌が起こったのだ。
この経済恐慌は、瞬く間にあちこちの国の財政状況を悪化させ、燻っていた紛争の火種を一気に燃え上がらせた。
幸いにしてリオネアは当時、経済財務担当大臣のマルク=ユーロ氏と当時の首相ニカロヴィッチ=カプチェンコ氏の尽力や豊冨な地下資源のおかげで、国内の財政を立て直したが、隣国のゼメル共和国はそうは行かなかった。

天然資源が乏しく、観光産業も大したものが無く、そして三年前から不況に喘いでいたゼメルは瞬く間に国内情勢が悪化し、軍部のトップ、イブロス=ハーヴェイ少将がクーデターを起こして政権を奪い取ってしまった。
その後イブロス少将は自ら総帥を名乗り、独裁体制を確立。その後隣国のリオネアに対し突如宣戦布告し、同時に攻撃を開始。西方の国境防衛の要、マルズベル要塞を僅か三日で陥落させ、そこを拠点に電撃的に西部各都市を占領。何もかも唐突だったリオネア軍は反撃体勢を整える事が出来ず、僅か二ヶ月で国土の三分の一を奪われてしまい、現在の状況は首都のディレクト・メリアまでここを数えて二つ地方を挟んで対峙していると言う状況だ。

敵の目的は恐らく、いや絶対にこの国の地下資源だろう。
この国の地下に大量に埋まっているメルトニウムと呼ばれる鉱石の鉱脈が目的に違いない。
メルトニウムは現在では様々な物に使われている。

コップに、スプーンに、飯ごうに、ゲーム機に、乗用車に、TA。
加工しやすく、どの様な鉱石を使った金属でも見事に高い融和率を叩き出す鉱石だ。
その他にも原子力発電よりもクリーンで高エネルギーをたたき出す、プラズマイオン発電の燃料としても重宝されている。
しかし、陸地にはさほど埋まっておらず、主に海底や海溝の底に大量に埋まっているため、内地のゼメルは輸入に頼らざる負えない。
だがしかし何故このリオネアには埋まっているのかは、古代の深海に生息していた生物の化石が発掘されると言えば、解る人には解るだろう。
ゼメルは経済的に困窮しており、この豊富な鉱脈は奴らにとっては金の鉱脈に等しい価値があるはずだ。

長ったらしくなってしまったが、大体は解かってもらえたと思う。この戦争は資源目的の戦争だ。全くもって納得できてしまう理由だ。

「しかしオルデ、お前良く無事だったな?この大隊と一緒に戦っていたのか?」
私はオルデに対してちょっとした質問をした。
「ああそうだ。たまたまこの大隊にアグレッサーとして招かれたら、ゼメルの連中が宣戦布告して来て国境近くにいた俺達はいきなり侵攻して来た連中と戦闘し、ここまで撤退して来たってことよ」
なるほど。私もだいたい同じ理由だ。
「しかし何故撤退してきた?この大隊はリオネア軍の中でも精鋭だと聞いたぞ?」
もう一つの疑問を尋ねる、なにか嫌な予感がする。
「ああ……交戦状態になって上手い具合に迎撃したのは良いが、敵地上戦艦から新型兵器による攻撃があったらしくって、俺が状況を確認した時は既に大隊は戦力の三分の一を消失。だから撤退を余儀無くされたのさ…」
また新兵器か。財政が困窮してんじゃねえのかよ、ゼメルさんよ。
「しかしだ。話が変わるがどうやらこの大隊撤退する見たいだぞ?」
は?今なんと言った?
「撤退するって……どう言う事だ?」
いきなり出て来た、撤退の二文字だ。
「いやさ、俺達傭兵や後方の基地の連中を連れてオークリーまで撤退しろってさ。軍のお偉いさんから命令されたらしくって、この隊の指揮官が抗議したけど結局折れたみたいだ」
いやいや待て待て。
「オークリーと言ったら、首都の一歩手前の地方だろ?そんな所に防衛線を引く気なのか?リオネア軍は?」
正直気が狂っているとしか思えない。
「いやさ、話によると撤退先の基地で義勇兵や予備役、新兵の補充を受けろって話らしい」
さらに聞き捨てなら無い話を聞いたぞ。
「予備役は兎も角、義勇兵や新兵ってなんだよソレ?そんなの投入して勝てるとでも思ってんのか?」
一体何を考えてるんだ?この国の上層部は?
「ワケが解からないぜ…」
「ああ、本当にワケが解からないな…」
ハア…
暮れなずむ空の下、二人の傭兵がためいきを付いた。

同じ頃。指揮所の天幕でも同じ用件で会議が紛糾していた。

「私は断固として!撤退に反対です!ここから撤退してしまえば、残す防衛ラインはオークリー地方ですよ!?この防衛線は非常に脆いです!撤退すればゼ軍に勢いを与え、一気に首都侵攻を許すことになりますよ!」
仕官服に身を包んだ若者が、激しい勢いでテーブルを叩く。
彼の名はジャック・デルウィッツ大尉。リオネア軍の若き士官である。
「そうは言うがね、デルウィッツ君。今の兵力では戦線を支えられるかどうかも怪しいのだ。ここは一度撤退し、体勢を立て直すのが先決で無いかね?幸いにしてゼ軍も当初の勢いを失っているし、敵兵も疲弊している。反撃のための撤退なのだ」
静かな口調でデルウィッツを牽制したのは、大隊の№2、ギルバート・モンシア中佐だ。
長年この大隊の№2として活動しており、所属してる兵士達からの信頼も厚い。
なお54歳で、妻と息子と娘がいる。
「敵が疲弊している?勢いを失っている?そんな確証はどこにあるんですか!
貴方は憶測だけで戦況を語っています!中佐!
だいたい、現場の兵士達は最後の一兵まで戦うと言っている者達もいます!
彼等の気持ちを無駄にするのですか!」
デルウィッツが捲くし立てる、彼は会戦時に父親を失っており、ゼ軍に対して尋常ではない位敵視をしているのだ。
「デルウィッツ君、それは根性論だ。
極東の国にギョクサイと言う言葉があるが、アレは本当に愚かしい事だ。
確かに彼らの士気は凄まじいが、今の我々にはまともに稼働するTAや戦車が平時の三分の一にも満たないのだ。機甲戦力の支援無しに歩兵だけで戦えと言うのかね?
今は一兵たりとも無駄に死なせたくはない。ここは撤退すべきだよ」
デルウィッツの根性論に、ギルバートが冷静に反論する。
「それにだ、君は私が言った敵が疲弊している、それの確証が無いといったね?
実は確証があるのだよ」
ギルバートの言葉に、デルウィッツが机を叩く。
「では、その確証とやらを話してください!中佐!」
ギルバートが、確証を語りだした。
「まず敵が展開して来た戦法は電撃戦だ。コレは解かるね?」
無言でデルウィッツが頷く。
「電撃戦は勢いが大事だ。それは敵も解かっている筈だ、だが敵は初戦でいきなりこけた、マルズベル要塞を一日で陥落させるつもりだったが、三日かかっている」
マルズベル防衛隊は壊滅したものの、三倍の戦力からよく三日持ったと彼は評価している。もっとも、彼は自分達の部隊が増援として間に合えば壊滅することも無かった。と考えていた。
「僅か三日。だがしかし僅かなりとも防衛体制を整えることが出来たのは僥倖だったと言えるな」
まあ、その防衛体制も呆気なく瓦解したが。
「さらに敵は自分達の国力に比べて、戦線を拡大しすぎた。しかも強行的な進軍のツケで前線部隊の進撃速度に補給線が追いついてはいないし、現地の抵抗勢力に物資が強奪されるといった事件も発生している。恐らく敵は一度進撃を止め、補給路の安全確保、残存勢力の掃討を開始するだろう」
ギルバートが敵の今後の方針を予想する。
「……敵が再侵攻を開始するのは、大体何ヶ月ですか」
デルウィッツが敵の再侵攻がいつか聞き返す。
「早くて二ヵ月後、遅くて六ヵ月後か」
ギルバートが質問に答える、恐らくゼ軍はこのアバクスとローレットを拠点とし、撤退先のオークリーへ侵攻して来る事だろう。だが二ヶ月もあれば、十分に反撃体勢が整えられる。

国土の三分の一が奪われたが、まだ勝機は十分にある。
なんせ敵国に首都を奪われ、国土が僅かとなった国が逆転し、敵国に下克上を叩きつけた例もある。
それに頼もしい傭兵達もいる。
ギルバートはまだ見習い士官だったころ、ある傭兵達の活躍が脳裏に刻まれていた。

灰色の機体達が敵機を蹴散らして行く、自軍の正規兵が敵わない相手に対しても恐れずに立ち向かってゆく。
あの勇姿にギルバートは自らも奮い立った。

だがしかし次の言葉でギルバートが激昂した。
「解かりました…でも傭兵も一緒にとは、納得が行きません!
あいつ等は普通に捨て駒として使えば良いじゃないですか!」
次の瞬間、ギルバートがデルウィッツに向かって、拳を繰り出していた。
骨が骨を打つ、鈍い音が顔から響き、デルウィッツがその場に倒れた。
「次にその様な口を利いて見ろ、若造…!!高級士官学校の首席だろうが、高位貴族の家出身だろうが、戦場の厳しさを知らぬ貴様に傭兵の何が解かる!!捨て駒にしろ!?良くその様な口が利けたな!!今回の勝利も傭兵達の活躍が合ってのことだぞ!!それを解かっているのか!!」
いつも温和なギルバートが、ここまで怒るとは、一体彼の過去に何が有ったのだろうか?
「……」
余りの気迫に、デルウィッツが凍り付いてしまった。
「……すまない。年甲斐も無く激高してしまったな……。君みたいな若い士官には良くある傾向だったな。だがしかしその傾向は良くないことだ。確かに傭兵の中にも、外道な輩がいたり、非道な行為を行う者も少なからずいる。
だがしかし皆が皆そうだとは限らない、その事だけは肝に銘じてくれ」
ギルバートが息を整え謝罪した後に、少し説教臭い事を話す。
「……こちらも済みませんでした」
デルウィッツが、謝罪するも、声にはどこか不貞腐れた様な響があった。
「済まない話を逸らしてしまった様だ。他の方々からオークリーへの撤退に関する意見は無いか?」
ギルバートが声を掛けると、一人の男が発言した。
「撤退は別に良いが、敵が追撃して来ない保障は無い。そこの点はどう考えてんだ?中佐殿?」
男の名はジョシュア・ニールマン少佐。髪はぼさぼさ、顎には髭が生えている。
年齢は38歳。こんなんでも嫁が居る。
「撤退作戦に付いてはすでにプランは練ってある。まずは負傷兵達を先に、オークリーへ撤退させる。その際の護衛はレスター大尉の小隊とダスト・バグ五機で構成されたクランチ傭兵隊に担当して貰おう。その次に本隊だ、本隊は三回に分け、順次撤退する。
まず第一陣は整備兵達と要修理TA・戦車達とそのパイロット達だ、先にオークリー基地へ入って貰い、修理を受けさせ後に第三陣に合流して貰おう。
指揮はデルウィッツ大尉、君が執ってくれ」
デルウィッツが敬礼する。
「次に第二陣は、新兵集団と捕虜だ。
彼らは祖国にとっては、千金の価値がある者達だ。わざわざ最後まで前線に残ってもらうことも無いだろう。
捕虜の方は、まだ聞き出してない情報が大量にあるからな。
指揮はニールマン少佐。頼みますな」
了解したぜ、と多少気だるそうにニールマンが敬礼を返す。
「最後に第三陣。これで全戦力の撤退を完了とするステージだ。
撤退するのは、主力の兵士達や機甲部隊等だ。
この部隊は撤退中、確実に襲撃を受けるだろう。だがコレも予測の内だ。
迎撃できる部隊を全力で投入し、無事部隊をオークリーまで撤退させる。
指揮は私が直接とろう」
彼は撤退作戦のプランを全て話し終え、一人の男性に話しかけた。
「このプランで如何でしょうか?バロット大佐?」
横長の机の奥に、デンと座って居るのは、この大隊の総指揮官ハーリング・バロット大佐だ。
特徴は、パシッと七三に分けられた髪型をしており、なんか偉そうな口髭を蓄えている。
だがしかし、軍服の下からは伺えないが、その肉体はガッチリと鍛えられており、リオネア軍ボディビル大会を三年連続で優勝したことがある。
「フム…。悪くない案だな、してこのプランに掛かる日数は何日だ?」
大佐がギルバートに確認を取る。
「ハッ、今から五日で完遂できます」
ギルバートが絶対の自信を持って答える、なにせ一週間も練りに練ったプランなのだ。
自身が無い筈が無い。
「よし!!この作戦を決行しよう!!作戦決行は5日後。以上解散!伝令兵!各部隊に通達!撤退準備を整えさせよ!」
大佐は天幕の外に待機していた、伝令兵を呼ぶと各部隊に作戦の通達を命令した。

そしてついに歴史書に「アバクスの撤退戦」と呼ばれる、一大撤退作戦が開始されるのであった。

                                   続く?


作者あとがき

どうも、作者の全自動式メタル棺桶です。

今回は主人公の紹介と、その周辺人物の紹介。
そして、大隊の主要幹部の登場でした。

主人公の名前の由来は、解かる人には解かる思想家と、某ジ○ン・ク○―ド・ヴァ○ダムの主演映画から、名前を取らせて頂きました。

次は撤退戦を書きたいと思います。
果たして無事にフーリエは撤退できるのか?
と言うか機体の修理はどうすんだ!?
そんな感じなことが展開されます。
どうぞ、お楽しみに~。

なんかおかしい点、いらん部分、誤字脱字等がありましたら、感想欄までどうぞ~

あと普通の感想もお待ちしております。

では今回はこの辺で失礼いたします。



[28466] 第六話
Name: 全自動式メタル棺桶◆2f0eeb4d ID:dd6ac1e6
Date: 2011/07/26 23:03
猫にフランカーとスコープドックのプラモデルを壊された的なあらすじ


撤退作戦が提案されて、承認されたぞ!でも狼さんはなにやら交渉してるようです。



ただいま、現在形で私は土下座をしている。
「………!?」
目の前に、現在私が行動を共にしている大隊のナンバー2、ギルバート・モンシア中佐が唖然とした顔でこちらを凝視している。

無理も無い。いきなり、ちょっと話がありますとか言って天幕に入って来た相手が、いきなり土下座をしたのだ。
私も同じことをされたら、驚く自信がある。
「中佐殿。頼みたいことが何点ほどあって、お願いに参りました」
私がさらに頭を下げる。もう額が地面に付きそうだ。
「…分かった、分かったから、顔を上げて立ちなさい。話はそれからだ」
どうやらこの中佐殿は話が分かる人のようだ。前に行動を共にしていた部隊の指揮官なんて門前払いだった。あーちょっと涙出て来た。
「感謝します!」
立ち上がると再び頭を下げた。
「全く…、泣くほどかね…。まあ、そこの椅子に掛けたまえ。コーヒーを入れよう。」
本当に人が良い中佐殿だ、他の士官とは一味違うな。
「よっこいしょ」
よっこいしょとは、我ながらオッサンになったものだ。引退が近いな。
「ブラックで良かったかね?私はコレしか飲まない物でね」
中佐が、二つ真鍮製のマグカップを持ってきた。
「いえ、お構いなく」
マグの一つを受け取る。
「ふむ…、それで話とは何かね?傭兵の君が直接出向いてくるとは、報酬額が足りなかったかね?」
ズズズ、とコーヒーを飲みながら中佐殿が尋ねてくる。
「いえ、報酬額は十分です。今日ここに無理言ってお邪魔したのは別件です」
こちらもズズズ、とコーヒーを啜りながら答える。
「別件とは?」
「ええ、実は二機ほど、撃破されたTAを頂きたいと。」
中佐が不思議そうな顔をする。
「何故それを私に?」
「いえ、最初は若い士官に掛け合ったんですが…」

「何?破壊されたTA二機を貰いたい?お前ら傭兵などに回す物など、
リオネア軍には一つも無い!貰いたいなら、自分でスクラップから取ってくることだな!」

「と、言われまして…」
私は2時間前のやり取りを思い出す。
「またデルウィッツ君か…、やれやれ」
中佐殿が、額を押さえる。
「その件は置いといて、TA二機貰えますか?」
とりあえず用件をサッサと終わらせたいので失礼ながら急かした。
「ああ、破壊されたTAは別に良い。勝手にもって行きなさい」
「いえ、副指令に一筆お願いしたいのですよ。許可状みたいなものを」
私がお手数掛けますがと言う。
「何故私から許可状を取りたいのだ?」
訝しそうな顔をする中佐。
「いやですね、許可状が無けりゃ渡せない。と言われてしまいましてね」
訳を話す。何でこの国の軍はこんなに面倒くさいのか。
「…ちょっと待ってなさい」
そう言い残すと、中佐殿は紙を護衛の兵士に持ってこさせ、万年筆でサッと何かを書いて私に手渡した。
「コレで良いはずだ。後デルウィッツ君に何か言われたら私の所まで来なさい」
「…わざわざ有難うございます」
そう一礼して私は中佐殿の天幕から出た。

~そして場所は変わって6番格納庫~

その後私は、その足で、廃棄予定のTAが集められている一角に行き、許可状を見せ、
ボロボロのTAを二機貰い、トレーラーで愛機が置いてあるこの格納庫へ運んで貰ったのだ、…私込みで。
「おおう。コレが修理用のTAですか」
イレーナが少し驚いた声を上げる。
ここの格納庫には傭兵達の機体が置かれている。
本来使用していた、格納庫。13番格納庫が、ゼ軍の地上戦艦の砲撃の直撃を喰らい、
ドカン、パーになってしまった為、こちらの格納庫に無事だった機体や装備等を全部移していたのだ。
驚いたことに、私の機体の装備が保管された武装コンテナは無傷で発見されたので、(ただし、無傷ではなく、表面が焦げてたり、TA用狙撃銃が熱で使えなくなっていたりした)
武装を新たに調達する手間が省けたのであった。
「しかし、良くリ軍も第四世代のTAを手放しましたね」
「まあ、この大隊のお偉いさんにも掛け合ったし、何より話の分かる人だったからな」
ちょっとした世間話。第四世代TAは余り傭兵達に出回ってないのだ。
「とまあ、その話は置いといて、修理兼改造プランは出来てますか?フーリエ?」
「持ちの論よ。時間が無いからサッサと始めるぞ」

~それから約3時間後~

キュウウン。
私が持つ工具からこんな感じの音が響く。
現在私は、寝かせた機体の足元で機体を直している。(格好は戦闘服のまんまだ)
頭に鉄化面(正式名称が解らなかった)を付け、機体の脚部にグランドタイプのホイールを装備させ、しかも両足のそれぞれ2輪付けるという大サービスだ。
「フーリエさん電源を付けてくださーい!」
上から共に整備している整備員が声を掛けてくる。
「電源?どこの?」
聞き返す。電源を付けろといわれても、ココだけでも12個もある。
間違った電源を付けてしまって、機体がポーンとなっても困るのだ。
「ですからー、そこの電源ですよ」
「だから何番の電源だ!!」
ちょっとイラッとしながら聞き返す。私の言い方も悪かったと思うが。
「3番ですよ、ちょっと右腕の回路をバイパスしたので、チェックしたいんです」
3番回路のトグルスイッチをONにする。
「付けたぞ、どうだ?」
「異常ありません。OKです」
どうやらOKの様だ。
私の方の工程も、ちょうど終わったし、後は動くかどうかだ。
「よーし。機体を起こしてくれ!」
上の連中に起こす様に声を掛ける。

鎖が巻き上げられ、機体が軋みながら重い音を立てながら、ゆっくりと起き上がる。

起き上がった機体は、―いやストライク・ウルフは―だいぶ外見が変わっていた。

まず目に付くのは、左腕の二の腕から下に直接付けられたガトリング砲である。
コレは直接的に腕に付けることにより、手持ち武装を装備しなくても高い火力を常に発揮出来ると言うメリットがある。
デメリットは、汎用性が下がってしまうことである。ちなみに関節はちゃんと動く。

次に頭部。
狼の耳を模した特徴的な二本の通信アンテナは、通常タイプのブレードアンテナに換装されてた。
ストライク・ウルフ用のアンテナを入手出来なかった為、頭部を修復した後、別のTAのアンテナを付けたのだ。
…なんか格好悪くなった様な気がするが、気の所為だ。

下半身は、特に目立った改修は施してない。
しかし、目に見えない部分は相当改造してある。
まず、例の白いファング・イーグルに対抗するため、ホイールを通常タイプから、グランドタイプに変更し機動力を底上げ。
脚部のピックも新品に変更。
内部パーツも痛んでいた部分を全て新品に変更してある。

更に修理する際、第四世代のパーツを幾つか組み込んだので、それになりには能力が向上してる筈だ。

ストライク・ウルフ、リペアカスタムである。

「後は動作チェックだな」
整備用やぐらからコックピットに渡してあるタラップから機体のコックピットへ乗り込む。
「イレーナ、ちょっと来な」
イレーナをコックピットまで呼ぶ。
「なんでしょう?」
トテトテと階段を上り、タラップからコックピットにイレーナが近づく。
「イレーナ、機体の最終チェックを一緒に手伝ってくれ」
ちょっとしたお願いである。
「でも機体の座席は一人分しか確保されて無いじゃないですか」
ポンポンと膝を(正確には太腿)叩きながら。
「じゃあ私のここに座れば良い」
そう言うと、突如、イレーナがにへらと笑いながら(物凄い幸せそうな顔だ)。
「んもう、仕方が無いですね~」
と言うなり、私の膝(くどい様だが、正確には太腿)に滑り込んできた。
そして上機嫌のまま、ラップトップを開き、カタカタとキーボードを叩き、「~♪」とハミングしながら
1時間で、作業を終わらせた。
「ハイッ!終わりましたよ!フーリエ!」
なんか凄い上機嫌だ。
「良し。ちょっと降りてくれ、イレーナ」
そう言った途端。
「………」
いきなり押し黙ったかと思うと。
「…嫌です」
降りるのを拒否された。
「いや、降りてくれなきゃ機体を動かせないんだが」
「嫌です」
「…ハァ」
時々、こんな感じでイレーナは機体の最終チェック後、機体から降りるのを拒否する。
TAはその性質上、成人男性基準で一人分しか確保されてないのだ。
前にも一緒に搭乗したことが有ったが、イレーナを膝に乗せ、その上からシートベルトを締めるのだ。きつくてしょうがない。
だが後で泣かれても後味が悪い。また一緒に乗るか。
「仕方が無い、イレーナ、ベルトをシートの脇から引っ張り出して装着しな」
そう言うと、彼女は素早くシートの脇からベルトを引っ張り出し、私の体にも垂れかかりつつ、装着した。
「準備OKですよフーリエ!」
一応ちゃんと絞まってるか確認、ちゃんと絞まってる。

パチパチとコックピット内の計器を操作し、起動シークエンスを取る。
コックピットが閉まり、周りが暗闇に包まれるも、直ぐにカメラを通してモニターから、
外部の映像が入ってくる。
コックピットの下のジェネレーターが起動し、心地の良い音と振動を奏でる。
モノアイが鈍く光り、機体の四肢に力が行き渡る。
「動いてみるから、足元にいる奴は退避してくれ」
外部に向かい警告。
足元の整備員が水槽に手を突っ込まれた、メダカの様に退避していく。
誰もいなくなったことを確認すると、私はペダルを踏み、機体を前進させた。

ゴウンと音を立てて、機体が一歩前進する。

「おお…!動いたぞ!」
「やった…!成功したんだ!あの死に体の機体が動いたんだ!」
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
下から、歓声が沸きあがり、整備員達が互いに抱き合っている。
「イレーナ?機体の調子はどうだ?」
「はい!問題ありません!」
ニヤリと、私も笑う。
(俺の牙が甦ったか…!!)

ウオォォォォォォォォォォォン!!
機体の装甲がこすれる音が、狼の遠吠えのように響き渡る。

今、ここに、【ストライク・ウルフ】は甦ったのであった。

「んふ~」
私が満足してると。
ピピッ!!
誰かからか通信が入った。
(ん~、誰だ人の感動をブレイクする奴は)
通信回線を開く。
「こちらケグルネク」
「フーリエか?オルデだ」
通信相手はオルデだった。
「どうしたオルデ?」
「いやさたった今、司令部から伝令が来て…」
オルデが撤退作戦の内容、そして俺達が一番最後の組に入ってることが知らされた。
「あの話は本当だったのか…」
眉間に、指を這わせる。
「それはともかく。私とチームを組まないか」
いきなり唐突の話。まるでちょっと飲みに行かないかと言わんばかりのお気楽さと唐突さである。
「え?いきなりどう言う事なんだ」
「いやどう言う事って、もうお前と一緒に行動していたゲイズ1だっけ?そいつにも声を掛けといたからよ、いい返事期待してるぜ!」
そう言うと彼は通信を切ってしまった。
いつもアイツの話は唐突だ。
「こちらでも確認しました。ついでにミッションプランも添付されていました」
イレーナがラップトップを展開し、司令部から送られてきた作戦内容を確認する。
「なるほど…」
「どうします?受けますか?それとも拒否して、サッサとずらかりますか?」
イレーナが、尋ねてくる。だがその目は既に悟りきった目だった。
「私の答えは、分かっているだろう?」
イレーナに問いかける。
「ええ…、ですから承諾のメールを送っときましたよ。作戦は三日後です」
「了解!」
そう言うと私は装備のアッセンブルを考え出した。

~そして時は流れ、三日後~

遂に作戦決行日の夜が来た。

動けるTAや戦車、戦闘ヘリは、資材や弾薬を満載したトレーラの護衛についていた。
「いや~。壮観な眺めだな~」
そんなお気楽なことを言ってくるのが、オルデだ。
「気を引き締めろよ、いつ襲撃が有るか分からないからな」
逆に緊張した様子を見せるのが、ゲイズ1こと、マルコ・ロッシである。

この二人が乗っている機体はそれぞれ違う。

ゲイズ1は当初から乗り続けている、コマンド・ラプター。
装備は右肩に八連装ミサイルポッドと両手にサブマシンガンを装備している。

オルデは私と同じ機体、ストライク・ウルフだ。
通常のウルフと違うところは、オルデの装備にあわせて頭部に、スコープバイザーと
左肩に、小型レドームを装備。
機動性を上げる為に、脚部にブースターを仕込んであることか。
装備は極東の国【桜花皇国】の企業【三塚重工】が開発に成功した、ビーム式スナイパーライフル。オルデはモニターとして、この装備を無償で貸与されている。
35年前にアーシアのリンデンス・クーガー博士によって発見された粒子【クーガー粒子】
空気中に漂うその粒子を圧縮し、打ち出す方式を取った銃を総称で、ビームライフルと呼ぶ。ちなみに最近の研究により、この粒子は圧縮濃度を上げることによって、核分裂以上のエネルギーを出すことが、判明した。
「所で、私がこのチームのリーダーで良かったのか?」
そして私の装備は、左腕に直接付けられた、ガトリング砲は勿論のこと。
右腕に装備したライフルに、同じく右肩に付けられた十二連装ミサイルポッドだ。
「ああ。俺は狙撃タイプの機体、ゲイズ1は通常機だ。
指揮しながら、戦闘できる技量を持った奴はあんたしかいないよ」
褒められた。ちょっと照れくさい。
≪お話中悪いが、そろそろ出発だ。護衛をしっかりと頼むぞ。≫
近くのトレーラーの運転手からの通信。
遂に移動開始だ、ここからは何が起こるか解らない。
「各機に通達、対空監視を怠るな」
≪≪了解≫≫
私の予想が正しければ、ゼ軍は対地攻撃機を使用し、足止めと主力部隊に打撃を与え、その後TAの大部隊を降下させ壊滅させる作戦だろう。

そして私が予想したとおり、出発から一時間後。

≪レーダーに反応!!これは…戦闘機!?数は14!!≫
この大隊の女性オペレーターが慌てた様子で報告する。
≪さーて、おいでなすったかい≫
オルデがライフルを構える。
それと同時に頭部から、スコープバイザーが降り、モノアイを覆い隠す。
≪落ち着け。護衛部隊は対空砲火を展開せよ。フォウンス空軍基地からの増援は?≫
この声は中佐殿か。
≪はい。現在F-54が五機、F-55が七機こちらに向かっています≫
F-54はアーシアの企業、【ロック・マーキソン社】が開発した戦闘機だ。
この戦闘機は旧時代の傑作戦闘機F-15の再来と呼ばれており、各国が主力として
採用している。
双発式のエンジンを持ち、カナード翼を付けたデルタ翼機となっている。
F-55はこちらもアーシアの企業、【スカイ・セプション社】が開発した戦闘機だ。
こちらも旧時代の戦闘機F-16になぞらえ、THE・ベストセラーと呼ばれている。
やはりこちらも各国が主力戦闘機として、採用している。
単発式のエンジンを持ち、可変翼を採用した機体となっている。
≪後何時間でこの空域に付くか?≫
≪はッ、後30分で到着するとのことです≫
遅すぎる。敵の攻撃機は撤退しているぞ。
そうこうしている間にも、敵は迫っていたが、既に迎撃準備は完了していた様だ。さすが精鋭部隊。
そして敵機の姿を視認した。
「なるほど、D-24か…」
D-24はレウラティア連邦の企業、【サウス・グライダー社】が設計した攻撃機である。
足は鈍いが、大量に弾薬を搭載可能で、エンジンを片方吹っ飛ばされても航行可能と言う、恐るべきスペックを持った機体である。
「こちらスコール1からスコール2へ。前方右翼のD-24を迎撃せよ」
≪了解!!≫
そう言うと、オルデの機体は、狙撃銃で狙いを付けると、発砲した。
雷鳴が、轟くような音が響くと同時に、圧縮されたクーガー粒子が発射され、
見事に、2機のD-24を撃墜した。
≪やったぜ!≫
そしてこの撃墜に反応するかのように、次々と対空砲火の機銃やSAMが火を噴き、空に鮮やかな弾幕を描き出す。

私も左腕のガトリング砲を空に向け撃つ。
実は対空砲火も兼ねて、付けていたのだ。

次々と弾丸の網にかかって、夜空に花を咲かせる航空機。
全滅には、5分もかからなかった。

≪やったぜ!!ゼ軍もたいしたことが無いな!!≫
周辺を警戒しつつ、オルデが軽口を叩く。
≪ヘッ!!所詮ゼ軍の実力はこんなもんか。こんな奴らに負け続けて来た俺らが、恥ずかしいぜ≫
マルコも同じく軽口を叩く。
≪フーリエ!!お前もそう思うだろ!?≫
「…嫌な予感がするな」
今のが襲撃だとしたら、温すぎる。
まるで本気じゃないよう…。差し詰め俺達を油断させる様な…。
≪!?レーダーに再び反応!!これは…大型ミサイルです!!≫
≪何!?対空迎撃!!≫
≪無理です!!間に合いま―≫
次の瞬間、撤退していた隊列に、物凄い衝撃と爆風が襲い掛かった。

腹に響くような音がして、俺達に容赦なく爆風と凄まじい衝撃が襲い掛かった。

≪ぬおッ≫
「くッ…」
3人そろって、衝撃をやり過ごす。
その間に部隊は大変なことになっていた。


【side:ギルバート】
「ぬう…、全員大丈夫か!?」
私はクラクラするあたまを振り、起き上がった。
「ハイ…、何とか…」
近くに倒れていた、通信手が返事をする。
「くそ!!フランツ隊応答しろ!!」
「レット小隊は、カチュア小隊の援護に向かってくれ!至急だ!」
≪司令部!!司令部!!応答してくれ!!敵のTA―≫
どうやら、敵の新兵器を使用されたようだ。
「状況はどうなっている!?」
「ゼ軍がこの混乱に乗じて、TA部隊を降下してきました!
残った対空砲火で迎撃したのですが…、如何せん数が少なく、大半は無傷で降下させてしまった状況です!!」
不味いな、この作戦は各隊の連携が要だ、こうも分断されてしまっては、全滅もありうる。
「それにしても、電波状況が悪いな!!どうしてだ!?」
さっきから通信にノイズが多い。
「敵があの弾頭にクーガー粒子を大量に詰めていたんです!!恐らくあの爆発もクーガー粒子を高濃度に圧縮した結果だと思われます!!」
さらに不味い事になった。
放射能と違い、自然環境や人体にクーガー粒子は影響しないが、電子機器に干渉し、
誤作動を起こさせたり、通信を妨害したりするのだ。
(してやられた…!!)
開戦当初も同じ攻撃を受けたが、あの時はただ衝撃を起こすだけだった。
ソレを短期間でここまで改良するとは…!!
「全部隊に通達!!近くにいる隊ごとに合流し各自で退却ポイントまで退却せよ!!
ポイントO23で集結する!!」
ともかく纏まっていては、そのままの意味で全滅の危険性がある。
「それと信号弾を打ち上げろ!!少しでも敵の目を此方に向けるのだ!!」
パイロットや機体達を少しでも多く逃がす。それが今の仕事だ。
「了解!!」
指令と同時に、信号弾が打ちあがる。
「皆…、生き延びろよ…!!」
静かに呟く、ギルバートの横顔は何やら決意を決めた顔であった。


【場面は戻ってSide:フーリエ】

「チッ…!!」
ストライク・ウルフが左腕の一体化ガトリング砲を襲いかかって来る、TA達に向け連射する。
≪クソ!!キリが無い!!≫
側のコマンド・ラプターも両手のサブマシンガンを乱射しつつ、後退してゆく。
「本隊の状況はどうなっている!!」
先程から本隊に支援要請をしているのだが繋がらない。
それにFCSの調子が爆発からおかしいので、オートロックからマニュアルロックに切り替え、応戦している状況だ。
≪スコール1!!このままじゃジリ貧だ!!≫
オルデが弱音を吐く。
「スコール2。そんな事は既に解りきっている」
そう運悪く、降下してきたTAの部隊に包囲されてしまったのだ。
そうこう言ってる内にも、敵が背後から襲い掛かって来た。
「オラァ!!」
振り向きながら、裏拳を叩き込むように左腕のガトリングで殴打。
グシャと敵機の胴体とほぼ一体化した、頭部が潰れる。
オルデ機の方も、片手に持ったサブマシンガンで応戦する。
敵機に命中し、穴を穿っていくが、次から次へと仲間の残骸を押しのけて、向かって来る。
三機とも、自らに降りかかる火の粉を振り払うのに必死だ。
「本当にこのままじゃ、押しつぶされるな!!」
愚痴っても仕方が無いが、愚痴りたい。
「ああもう!!近くに戦車隊が居ればいいのにな!!」
≪なんだ?お困りのようだな?≫
ヤケのクソパッチで叫んだら、いきなり通信が入った。
≪こちらはリオネア軍第56機械化混成大体所属の、第9戦車中隊だ。貴官は当方に雇用された傭兵だな?≫
「ああそうだよ!!この状況を見て敵軍の傭兵だって思うなら、貴官は目医者へ行け!!」
≪まあ、そうやっかむな。今より援護射撃を開始する。巻き込まれるなよ≫
そういうや否や、轟音が轟き、次々と敵TAを吹き飛ばしていった。
「全機へ!!この気に畳み掛けるぞ!!」
砲撃を受け怯んだ敵のTA部隊に、左腕のガトリングを撃ちながら突っ込む。
その動きに同調するかのように、コマンド・ラプターもマシンガンを連射しながら突っ込む。
≪送り狼が猪のように突っ込んできたぞ!!蜂の巣にしてやれ!!≫
アンテナを換えてから、どうも敵味方の区別無く通信が傍受出来る様になってしまった。
コイツは面倒だ。
「スコール2前方の指揮官機を狙撃できるか?」
右手のライフルを撃ち、目の前のTAをスクラップにしながら狙撃の指示を出す。
ド派手な濃紺の機体。明らかに指揮官機だ。
≪任せとけ。でも周りの敵が邪魔だな、排除を頼む。≫
オルデがサブマシンガンを、近くの機体に叩き込みながら言う。
「了解。任せとけ」
ライフルを一旦地面に置き、パイルバンカーの代わりに仕込んだ、ワイヤーを射出し、
敵機を一機掴む。
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そして物凄い勢いで、ぶん回す。
そして。
「だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
前方の蝿みたいにたかっている連中に、ブン投げた。
物凄い勢いで投擲された、機体がぶつかり、機体と機体が接触し巻き込みながら、雪玉みたいに転がっていき。
盛大に爆発した。
≪………≫
スコール3が動きを止めていた。いやオルデ以外の全機が動きを止めていた。
当たり前だ。こんな攻撃、常識の範疇外である。
≪…お、お前ら!!止まってないでとっと動かんか!!≫
指揮官機から、檄が飛ぶ。だが。

一瞬にして濃紺の機体に煌めくクーガー粒子がコックピットを撃ちぬく。
「ナイスキル」
撃ちぬかれた機体の先には一機のストライク・ウルフが居た。
≪ヘン!!どんなもんじゃい!!≫
「スコール2よくやった。後は残った下っ端を狩るだけだ」
そしてその号令と共に北欧の狼の名を付けた部隊が襲い掛かっていった。


三十分後。
「やれやれ…。やっと一息つけるな」
近くの茂みに機体を隠しながら、ほっと一息ついていた。

あの後、敵機の部隊を退却させ、上空からの追撃を回避するため近くの森に逃げ込んだのだ。
森の中にも当然の如く敵機が居たが、即座に殲滅。
その後、援護砲撃してくれた戦車部隊と共に撤退ポイントまで急いでいた。
≪しかしあの衝撃…。俺が開戦時に受けた攻撃に似ているな…≫
オルデがサラッと重大なことを呟く。
「何!?なんでそれを言わなかった!?」
≪言える状況だった思うか?≫
あの衝撃の後にゼ軍は素早くTAの大部隊を展開してきたのであった。
≪それでも多少は話せる時間はあったはずだ≫
スコール3ことマルコが不機嫌そうな声を上げる。
≪忘れてたんだよ。済まなかったな≫
オルデの方も不機嫌そうだ。
≪まあ、ともかく喧嘩なんかしていないでとっとポイントまで急いでください。落武者狩りに会っても知りませんよ?≫
イレーナが間に割り込む。
≪ん。ごめんなイレーナちゃん≫
≪…すまん≫
二人が謝った後沈黙する。
「イレーナ。ポイントまで後何キロだ?」
≪ハイ。直線距離で8キロです。そこで味方部隊のお迎えが来ているはずです≫
HMDにルートが表示される。
いまだ本隊の方は騒がしい、果たしてあの中佐殿は無事だろうか。
(まあ生き残っていることを祈ろう。コッチはコッチで忙しいからな)
三機の機体と、五両の戦車は茂みの中をザワザワさせながらも、慎重に撤退ポイントに向け、退却して行った。

~そして約4時間後~

空も白み始めた頃合いでやっとこさ私達はお迎えの部隊と大隊が集結している地点にたどり着いた。
たかだか8キロの距離をどうしてこんなに時間がかかったのか?
それは敵の部隊を避け、迂回したからである。
撤退中に敵の大部隊に出会ったのだ。
オルデが装備していたレーダーのおかげで先んじて、敵の位置を掴むことが出来たが、如何せん数が多すぎた。(こちらはTAが三機、無限軌道戦車が五両。敵の数はその三倍である)
流石にこの状態で、戦闘するのは不味かったので、急遽ルートを変更し、大幅に迂回して
集結地点にたどり着いたのであった。


撤退してきた連中を見ると酷い有様だった。
黒い死体袋に縋って、恋人と思わしき名を叫びながら泣き崩れる男性兵士。
片足が無く、呆然としている少女。
両手が吹っ飛ばされ、ぐったりしている兵士。
友の名を呼びかけながら、必死に肩を揺さ振る少年。
壊れたTAから二人がかりで、引きずり出される満身創痍のパイロット。
胸に息絶えた仲間を抱き、静かに慟哭する戦車兵。
そして
この大体の総指揮官と思わしき人物が、撤退を指揮した士官に報告を受けていた。
「今ある大隊の戦力の3割を喪失か…」
大隊総司令官バロット大佐が眉根を寄せながら、呟く。
「無事オークリーまで撤退させることが出来ませんでした…面目ない」
頭部に包帯を巻かれ、ギルバートは謝罪する。
「そもそも隊を分けて撤退させるべきではなかったのです…。責任は受けます…!!」
ギルバートの顔は焦燥しきっていた。大隊の戦力を3割も失い、ましてやそれが自分の提案した作戦だったのだ。
「落ち着けギルバート。責めはこの戦争が終わってからで良い。今この大隊にはお前が必要だ…よく無事に戻って来てくれた…!!」
ともかく感動的な光景なのだろうが、私にはいまいち判らない。
「やれやれ、大変な撤退戦でしたね。フーリエ」
機体から降りると、イレーナがよって来た。
「ああ…。本当にな…」
共に行動していた機体達に目を向ける。
オルデの機体も、マルコの機体も装甲にへこみが出来ていた。
戦車中隊は本来8両編成なのだが、私達と合流した時には既に、五両までに減少。
「やれやれだよ…。全く…」
ともかく今回も無事に生き残れたか。
「日の出前に出発する!!搭乗していない者達は速やかに搭乗する様に!!」
メガホンで、ひょろっとした眼鏡の男性兵士が出発を知らせる。
「出発だ。行くぞ」
「ハイ」
私達は機体をTA用輸送ヘリに吊るした後、自分達も退却するためにヘリに乗り込んだ。

ローター音を巻き上げ、VTOL機のヘリ達が濃い群青色の空へと離陸してゆく。
周りには、護衛の戦闘機と戦闘ヘリも一緒だ。
私は段々と離れてゆく大地を、窓の外から見送り、しばし眠ることにした。


                                  続く?


作者後書き

エー皆さんどうも、作者の全自動式メタル棺桶です。

更新が凄まじく遅れてしまい、非常に申し訳ありません。

今回の内容は作者的には詰め込みや、省略形が多かったと思います。
コレは作者の力不足です。本当に申し訳ありません。

そして次回の内容は、撤退先のオークリーがどんな所なのか?
これからの戦略は如何するのか?
と言うことを、書けたら良いなと思っております。
どうぞあまり期待しないでくださいね。

なんかおかしい点、いらん部分、誤字脱字等がありましたら、感想欄までどうぞ~

あと普通の感想もお待ちしております。

では今回はこの辺で失礼いたします。



[28466] 第七話
Name: 全自動式メタル棺桶◆2f0eeb4d ID:dd6ac1e6
Date: 2011/12/21 00:49
アパーム!弾を持ってこーい!的なあらすじ。

撤退中の狼さん。ボロ負けです。



「うぁお!?」
そう言うなり私は泥の様な眠りから、覚醒した。
「ハァ…、ハァ…、ハァ…」
心臓が早鐘を打つ。全身からベタベタした汗が、吹き出てくる。

クソッ、久々にあの夢だ。炎に包まれた故郷を、闊歩する赤い肩のTA部隊…。
「ああもう!!なんだってんだ…チクショウ…」
「ウルセーぞ!!静かにしろ!!」
寝ていた様子の一人の兵士がそう言うなり、レーションの空き箱を投げ付けてきた。
「ああ、すまんね」
ひょいと、上体をずらし回避。私の所為だが、全く気が荒い奴だ。
だが運悪く、隣ですやすやと寝ていたイレーナに直撃した。
「…ッ、痛いですね…」
クワァ!と目を覚ますイレーナ。
問うの張本人である、投げた兵士は素早く寝たふりをしていた。
「誰です?こんなものを投げたのは?」
手に空き箱を持ち、周りを見渡すイレーナ。無論投げた張本人も、回りも黙ったままだ。
「まあ良いだろ?お前も大した怪我をして無いし。許してやれ」
お前に許す権利もクソも有るのか?と聞かれてしまえばなんとも言えないが。
「…判りましたよ。人が良いんですから…んもう」
ちょっと納得しない顔で、了承するイレーナ。変に真面目だからな。顔に直撃したってのもあるが。

窓の外にはさんさんと春独特の太陽光が差し込んでおり、機内の様子を映していた。

機内は大体は半分の人間に分かれている。

まだ眠っている奴。皆疲れている、どいつもコイツも疲れているだ。

起きて考え事をしたり、、銃を弄くってる奴。私もコレだ。

そして起きてる奴らの中にモソモソしている奴が一人居た。
物凄く銃を持っている。恐らく戦場敵味方構わず、死体から剥ぎ取ったのだろう。携帯電話を使い、小さな声で会話をしていた。
「…ああ…上々だ…また武器が流せるぜ」
どうやらコイツは小遣い稼ぎをしている様だ。
私達傭兵が使う武器も流出品や横流しが多い。(勿論正規品も使っている)。
「へへ…リーリス…三番街…BAAエネックですね…頼みますよ…黒蛇の旦那」
小声で所々聞こえなかったが、何やら聞き捨てならない名前を聞いた気がする。他人の空似かもしれんが確かめといて損は無い。
「おい…お前さん…」
ゆっくりと静かに接近して、小声でこっそりと電話をしていた奴に話しかける。
「なんだ?」
しかめっ面をして銃が触れ合う鈍い音をさせながら、こちらに体ごと振り向いた。
「よう。お前武器の横流しをしているな?」
スパッと切り込む。この手合いは無駄な世間話をするよりも、こう切り込んだほうが私の中では得策だ。
「…ッ!!」
驚いた表情を見せると、右腰のホルスターから拳銃を抜いてきた。サプレッサー付のガバメントだ。
完全に此方に銃口を向ける前に、手首を上から押さえ無力化する。
「まあ慌てなさんな。別にお前をお縄にして、MPに引き渡そうとかは考えてないから」
「な、何者なんだ、あんた」
手が小さく震えている。ちょっとビビッて居るな。
「傭兵だ。傭兵。マーセナリー、客将、戦争屋、解ったな?」
きょとんとした表情を見せた後、奴はほっと溜息を付いた。
「なんだ傭兵か…。驚かせんなよ…」
そう言うなり銃を引っ込めた。でもホルスターには戻していない。どうやら警戒は一応解いてないようだ。軍に入る前はギャングかなんかだったのか?
「んで?用件は何だよ?悪いが銃はまだ売れねえぜ?ガンロンダリングしてねえからな」

ガンロンダリング。銃洗浄とは横流し品の銃のIDを解除することである。
基本的に殆どの銃は生体IDロックが掛けられている。
指紋等で所持者を認識し、安全装置を解除するシステムだ。
その場で他人に奪われても乱射されることも無い。捕虜が脱走して武器庫に逃げ込んでも持ち出される心配が無い。デメリットは、番号やこいつのだと判るものを振っていないと、他人の銃を持ち出したりしてしまう事。

全部では無いのは、回収時の際に書類上や実際に破壊されてもう在りませんよ的な事になっていたり(フーリエが所持するM92Fもその一つだ。)してIDロックを免れた物。
生産過程の不具合やミスで機能が上手く作動しないもの。
約1千丁に一丁だけ混じっていたりする。なおその確立は一生に一度、スカイフィッシュを肉眼で確認する確率位と言えば、諸兄らには納得ていただけるだろう。

因みに悪魔で先進国の工場でのデータである。と言うことを一応ココに明言する。

閑話休題。

ともかくロックが掛かった状態だと、蹴ろうが、ぶん殴ろうが、岩に叩きつけようが撃てないのだ。

そこで登場したのが、ガンロンダリング。
元々登録されていたIDを消去すると言う技術だ。
デジタル機材を使うのは同一の手口?だが、その使用する機械によって様々。

レジスターみたいにほぼ一瞬で解除できる装置。
PC等を使い普通にやるやり方。
その他にも、デジタル機器が使えない状況下だと直接銃本体を分解して取り除いてしまうと言う方法もある。

「いやいや、お前さんが武器を横流ししている商人についてちょっと話を聞きたくてね…」
「あぁ?なんでそんなこと話さなきゃなんねぇんだよ?」
怪訝そうに眉を顰める。奴さんからしてみればとっとと話を切り上げたいのだろう。
「いや、お前さんが話していた相手が私の古い知り合いかも知れなくてね。」
それでも疑いの眼差しを崩さない。そりゃそうだ。犯罪行為をやってる奴が(それもそれなりに重大な)そうそう簡単に初対面の相手の言葉をホイホイ信じてくれる訳が無い。
ココは金の力を借りるか。
左ケツのポケットから財布を出し、国際統一紙幣の1000コーム紙幣を五枚抜いて、奴さんの手に握らせる。
「これはそいつに会う為…、そしてお前さんに対する私からの口止め料だ。その商人に【送り狼】が会いに来た。と言ってくれ」
しばし沈黙。そして。

「…チッ。しゃあねえな…。ちょっと待ってろ」
舌打ちした後、携帯電話を取り出して電話をした。
「ああ…すいません俺ですゲーニスの旦那。え?見つかったのかって?いえいえ違いますよ。なんか一人の傭兵が旦那に会いたいって言ってるんですよ。なんか、【送り狼】が会いに来たって、言えば解るって…え?絶対に連れて来いって…?はあ…解りました…。それじゃ」
そのまま彼は電話を切ると、こちらに向き直った。
さっきよりも訝しそうな顔をしている。
「本当に何者なんだ…あんた。ただの傭兵…って訳じゃなさそうだな」
「まあ、知る人ぞ知るって所だな…」
私より強い奴なんぞ、巷にゴロゴロ転がっているだろう。
「ふーん…ま、取引は今日の夜だ。ここに場所を書いとくから、あんたも来いよ。必ずだぞ。OK?」
「了解だ」
そう言うと奴はメモを一枚渡してきた。
取引場所の住所が書かれている。ご丁寧にも、「追跡されないように」と書かれている。
「所でお前さんの名前はなんと言うんだ?名前がなくては呼び辛いんでね?」
離れる前に名前を聞いておく。
「ゴールデンだ…。俺を呼ぶときはその名で頼むぜ」
偽名だろう。だが迂闊に本名を名乗ることも無いのが、その業界の鉄則である。
「…いい名前だな。私の名はシルバーだ。よろしく」
こちらも偽名で対応する。本名を名乗らない奴には本名は明かせない。
「…そっちもいい名前だな。こちらこそよろしく」
そのまま私は静かに元の位置へと戻っていった。

(あの男が、商売しているとはな…)
一昔前の時点では考えられなかった事だ。
そう思っていると。
≪搭乗している全兵士へ、当機は間も無くシュネアー基地に到着します。総員乗降準備をしてください≫
ヘリのパイロットから機内通信があった。可愛らしい声だ。今時珍しくない女性パイロットだな。
(やっと到着か。)
ここまでの道のりは何時間かと見てみると、現在時間午前11時21分だ。
確か明け方の、4時か5時位に睡眠を取ったのだから、大体7時間から8時間位経ったと言う事だ。
(ここまでなんとも無かったって事は、最低限の制空権はしっかり取れてるって事だな)
いくらTAと言えども、航空兵器の攻撃を受けりゃ一溜まりも無い。
どの道、陸戦兵器のTAが航空機に対抗しようが無いのだ。…対空兵装があれば別だが。


それから一時間後、私はシュネアー基地に付いていた。
ヘリが誘導員に従いゆっくりと降下して行く。私は体に掛かる心地の良いGを感じながら、ヘリから降りる準備をした。

シュネアー基地はアバクスの州境から、東に40キロ地点にあるそれなりの規模がある基地だ。
ここいら一帯の前線基地を束ねる存在でもある。

とすんと機体が少し揺れた後、プロペラのローター音が小さくなって行き完全に聞こえなくなった。
そしてハッチがゆっくりと開放されると、ぞろぞろと兵士達が降りていった。

中には担架に乗せられた奴二人でを担いでいったり、仲間の兵士の肩を借りながら、降りていった奴もいる。
私もイレーナを連れてヘリから降りると、基地の風景を見る。

まず目に入ったのは、数機のコマンド・ラプターからなるTA部隊が、輸送ヘリに吊り下げられ、前線に送られて行くと頃だった。
特徴的な四つのローター音を響かせ、離陸するとあっという間に遠くへと見えなくなった。
他にも対空機銃をを乗っけた車両が市街地方面へ向かって行ったり。歩兵を乗っけたトラックが基地からアバクス州境に向けて出発するところだった。

空ではリオネア空軍所属のF-55が四機編隊を組んで、哨戒をしている。

だがその群れの中に一機だけ、見慣れぬ機体が合った。

レーダーの発展により、ステルスよりも機動性が重視されたF-55が可変翼なのに対し、前進翼を使っておりエンジンとエアイティークはそれぞれ一機ずつ独立したブロック式になっている。
コックピットは、一般的な強化ガラスで覆われており、現在でも無理やり運用が続いている練習用や無人アグレッサー機として運用されている、F-35Eを思わせるフォルムになっている。
「なんだありゃ?」
見慣れぬ機体だ。何処のメーカーだありゃ?
「ああ…。ⅩRF-00ですね。リオネアの試験戦闘機です」
ちなみに、Ⅹとは試験ナンバー、Rとはリオネア、Fはファイターである。
要するにリオネア空軍試験機体である。
「そんな物まで持ち出すとは…、空軍も苦しいのかよ…」
ちょっと目眩がした。


~そしてちょっくら場面は飛んで、三十二分後~


「で、あるからにして…」
現在私は、正規兵に混じってこの基地の司令官殿の訓示を聞いている。
放送で、基地に撤退して来た物、志願兵等は簡易健康検査を受けた後、基地のグラウンドに集合する事と言われたのだ。
私とオルデと合流して、健康検査を受けた後、指示に従ってグラウンドに向かって、今現在に至る。

この基地の司令殿は、演説や訓示がクソ長い事で有名である…と風の噂には聞いていたが、本当に長いな…。かれこれ24分も話しっぱなしだ。喉が渇かないのか?
話を短く簡潔に纏める能力が無いのか、そもそも演説とはこう言う物なのか。
「…だからこそ!!我らリオネア軍は苦しむ国民の為に、一刻も早く反抗作戦を決行し、非道なゼメル軍をこのリオネアの大地から叩き出さねばならない!!」

非道なゼメルねぇ…、一応あっち側にも、「地下資源によって全ての人々に平等にもたらされる筈の利益を、独占するリオネア政府と資産家達に正義の鉄槌を下す」って言う、建前は一応あるんだがね。そんな建前を信じるのは、革命家気取りの馬鹿者か、熱狂的な若い兵士達だけだな。どの道、戦争に関係ない一般人にはいい迷惑だ。

「…諸君らの鬼神の如くの活躍を期待する所存である!!」
そんな締めでやっと演説が終わる。
一応要点と大事な部分だけは聞き逃さない様にしており、大体言いたい事は解った。
要するに、とっと反抗作戦してゼメルを叩き出したい。だから物凄く頑張って。この一言に尽きる。

いや、現状のリオネア軍の戦力を持ってすれば、ゼメルを叩き出すことは可能だろう。
だがそれは、所詮机上の空論に過ぎない。北の状況が怪しくなって来たのである。
そう、北の大国レウラティア連邦が怪しい動きをしている。

具体的に言えば、リオネア方面の国境を守る以上の戦力を集結させているのだ。
TAと戦車の機械化混成機甲師団が2個。戦闘航空師団が2個。その他支援部隊や補給部隊が6個大隊。

リオネア程度規模の国に対しての侵攻作戦は、これだけの戦力があれば簡単だ。
疲弊したリオネアとゼメルを、一辺に併合してしまおうと言う腹積もりだろう。

リオネアを併合したいのは解る。明らかに資源目的とカンセア紛争の雪辱を晴らす気だ。
ゼメルは大した資源は無いが、実は戦略的に重要な場所である。
ユーラント大陸の西にある連合国家、ラウンディア連合国の玄関口でもあるのだ。
この二大国は長年反目し合っていた。

領土問題。民族問題。資源問題。その他etc…。

ともかく大国は周辺の中小国を巻き込んで、反目し合っている。
正直に言うと私たち戦争屋は飯の種には困らないが、民間人にとっては本当に災厄の時代だろう。

大国が反目しあい。中小国がその代理戦争をし。その所為で平和に暮らしていた人が犠牲となる。
困った時代だ。だがこの困った時代を私達が変える術など何処にも無い。
所詮私は大地を這いずり回り、人の嘆きと怒りを喰らう一匹の戦争の犬に過ぎないのだから。
そう。大海に小魚が一匹跳ねたところで、何も変わらないことと同じ様に。

「やれやれだ…」
ともかくナーバスな気分に浸っていても、仕様が無い。
レウ連に関しては、政治家やこの国の諜報機関が上手い具合にしてくれる事を祈ろう。
いざと言う時は、適度に戦ってイレーナを連れて逃げよう。

そして機体の状況を見に行くか。ガトリング砲で敵機を殴った。不味い事になっているはずに違いない。
「…確か私の機体が置いてある格納庫は…二番か」
近くにあった地図によると現在地である、グラウンドから近いため歩いていくことにした。

歩いて行くと、様々な機体がこの基地に集結していることが解る光景が、見受けられた。

恐らくこの基地に配備されていた物であろうコマンド・ドックが数機、追加装甲を施されたり、ホイール等を交換されたりして簡易改修を受けていた。
背部にTA用152㎜キャノンを装備している。直接支援用の機体にするつもりだろう。
脚部と腰部にその場で着脱可能な姿勢固定用の大型バンカーが増設され、肩部に長距離索敵レーダーが乗せられていた。腕部には自衛用の為か固定式30㎜サブマシンガンを装備している。

その傍らでは、リオネア陸軍現行主力戦車のギガントと、旧主力戦車M8ライガーが混成編成されていた。

M13ギガントはリオネアのMBT(メインバトルタンク。英語での綴りでは、Main battle tank。MBTはその省略形)であり、ゼ軍のスカラー重戦車よりも機動性に優れるが、主砲の口径が120㎜なので正面から撃ち合う事は現代戦ではあまり無いが、正面からの砲撃は有効では無い。

更に別の格納庫では、鹵獲品のスカラー戦車とグランディング・トータスが、ゼメル陸軍機甲部隊所属を示す、赤と黒を基調とした兜と戦槌が交差するエンブレムを、リオネア陸軍機甲部隊所属を示す、青と白を基調とした剣と盾を掲げ持った騎士のエンブレムに変え。暗い緑色から明るいライラック色に、カラースプレーと塗料によって塗り替え作業中だったりしている。

「結構苦しいのか…」
思った以上の打撃のようだ。
いろいろ見ているうちに、目的地の二番格納庫に付いていた。
何処もかしこも整備員や機体がごった返しているが、ここも例外ではなく正規軍のコマンド・ラプターやドックに混じり、傭兵が使用していると思わしきトライ・タートルやコマンド・ドックに混じり、珍しい機体【ソービス社】製のTA、ケルビムがあった。
「珍しい機体に乗っている奴もいるな」

ケルビム自体作った会社が倒産してしまった為、入手が困難な機体だ。
毎度の如く四角い胴体(TAの胴体は多少の差異はあれ、どの機体も引越しに使われテいるのは、ダンボール箱みたいな胴体だ)ではなく、流線型の多少丸みを帯びた胴体に、ツインアイ型のカメラを備え、おでこの部分に一角獣のようなブレードアンテナを付けた丸い頭部。
肩部が盛り上がった腕部は改造され、様々な装備が取り付けられる様にハードポイントが取り付けられていた。
爪先が尖ったTAでは珍しい細身の脚部。

そして目を引くのが、左腕の装備ガンランス・パイルだ。
TAの身長程もある巨大なシルエット。
拳銃のリボルバー機構を模した弾倉。
武器の三分の一を占める、中世の騎士の槍の様にも見える鋼鉄の杭。
そしてその武器を肩と腕の二箇所のハードポイントにあわせて取り付けられていた。

接近戦では当たればTAを一撃で破壊し、地上戦艦の装甲をいとも容易く打ち抜く威力を誇る。
ただし、この武器はTAの汎用性を大幅に低下させ、更に重量やパイルを打ち出す際に発生する反動で機動性と安定性が低下するという諸刃の剣だ。

使いこなせれば最強の兵装。使いこなせねばその力に飲まれる。正に諸刃の剣だ。

この機体のパイロットは、脚部に姿勢固定用のバンカーを装備し、更に加速用ブースターを増設して対策を施している様だ。
それでもまだ充分ではあるまい。むしろ加速用ブースターを装備した結果、さらに扱い難い機体になっているはずだ。
でもこの機体は数々の戦乱を潜り抜けて来た様だ。

装甲が所々小さく凹み、灰色の塗装を施された装甲には土埃と、銃弾による黒い焦げ痕が付いていた。

「なるほどな…」
今まで戦場にて戦った相手は、共に戦いたかったと言うもの達もいた。
(このパイロットもその一人かもしれんな…)

さてさて、他人の機体を眺めた後は自分の機体の方にちゃっちゃと行かなくては。
他の女に見惚れていたら、自分の相棒が拗ねてしまうからな。

「お~、直ってる直ってる。」

私の愛機のストライク・ウルフが綺麗に修繕されていた。
「これで誰に見せても恥ずかしくないな!」
ガトリング砲が付けられていた左腕は、無事に新品の腕に取り替えられていた。
「お~い。あんたがこの機体のパイロットか?」
頬を緩ませながら機体を見上げていると、唐突に背後から声を掛けられた。
「ああ…、そうだが…。アンタは一体?」
ちょっと驚きながら、振り返りながら応答すると、前から顔面にもじゃもじゃとした髭を生やし(まるで旧世紀の中米の島国の革命家みたいだ)、ガッチリとした体つきの男が目の前にいた。

歳は三十代後半か四十代の始めごろだろう。
整備兵であることを示す、オレンジ色を基調としたツナギを着ている。
「この機体の整備を担当させて貰った、ローディ・ブラウンだ。よろしく。後今後からお前ら傭兵達の機体の整備を請け負うことになった」
「こちらこそよろしく」
握手を求めて来たので、手を差し出して握る。ローディと名乗った男も太い丸太の様な手で強く握り返してきた。
「んで?用事がある様だが?」
恐らく戦闘服に縫い付けてあるエンブレムを見て判断したのだろう。もしくは機体を眺め、ニヤニヤしている表情を見たかだ。
「ああ、アンタのガトリング砲。悪いけどコッチの判断で放棄させて貰ったぞ」
いきなり聞き捨てなら無い言葉を聞いた。
「え?どう言うことなんだ?冗談ならよしてくれ」
少なくとも思い当たる節はあるのだが、勝手に放棄されたらあの金に五月蝿いイレーナが黙っている筈が無い。(なんせカレー味の豆煮の缶詰めの空き缶を、植木鉢にしてしまう程にけち臭い。そのサイズならばホームセンターに行けば、幾らでも売っているだろうに)
「アンタが砲身で殴ったかなんかした所為で、砲身が歪んじまったんだよ。交換しようにも、砲身の替えが今は無かったもんで、仕方が無いから現場判断で放棄しちまったぞ」
砲身の替えが無いって、どういう事だと文句を言いたくなったが恐らく正規軍の方に取られてしまったのだろう。
「…OK解った。貴方達の尽力に感謝するよ…。私の愛機をきっちりと直してくれたしな」
ともかく、言い訳は考えておこう。
「んま。そう言ってくれると有難いな。あとチューニングの際には、俺達に相談してくれ。勝手にやられると整備が大変だ」
釘を刺された。時々現地調達したパーツでチューンをする時がある。
「解ったよ」
そう返し、格納庫を私は後にした。


「あ~。宿舎はコッチか」
格納庫を後にした私は、今現在自分達が寝泊りする宿舎に向け、足を進めていた。
先に、イレーナの奴が先に部屋に向っている筈だ。確か荷物の整理をするとか何とか言っていたな。
「ん?ここか…?」
イレーナから渡されたメモに書かれている簡単な地図には、格納庫からここであると書かれている。
外観は四角いコンクリートの(今でもコンクリは建物の資材に使われる)アパートメントみたいな感じだ。

桜花皇国にあるアパートメント【ダンチ】に似ている。
三階建てで、それが七棟ずらっと並んでいる。屋上には雨水を溜めておく貯水タンク。
「私達の部屋は二番棟だったな…」
それぞれの棟の間隔は、大体15メートル間隔で建っている。
で、現在私がいる位置は七番棟の前。要するに格納庫と位置がリンクしているのだ。

三年前、ホームでソファーに座って缶ビールを飲み、ツマミの炙ったイカとホタテ貝を齧りながら見ていたテレビのドキュメンタリーからの情報によると、パイロットが出撃時にすぐさま機体の元に行ける様に、陸空海軍、事に多少の差異があるも、各基地がこんな感じの作りだと言う。
空爆されたり、前の基地であったように、長距離から砲撃されたら如何するんだと、レポーターに突っ込みを受けていたが、リオネア軍の広報担当らしき男性が大丈夫と言い。ご自慢の防空網や、精鋭部隊と国境の防衛部隊に付いて自信に満ち溢れた顔で語っていた。

まあ、ご自慢の防空網や防衛部隊もアッサリ殺られて、砲撃やら空爆やらで、正規兵を大量に失い義勇兵に頼らざる追えない状況ではあるが。

そうこう考えている内に、二番棟の玄関口に着いていた。
玄関口は無骨な鉄製のドアだ。確実に対爆仕様に違いない。
「部屋は二階か」
224号室とメモには書いてある。
エレベーターやエスカレーターなどと言う便利な物は無いため、階段である。
まあ、階段と言っても建物自体が大して高くないため、昇るのは楽である。
二段飛ばしで階段を上がり、とっとと224号室のドアの前にたどり着いた。
カードキーを右ケツのポケットから取り出し、リーダーに通す。
ピピッ。と言う電子音がして、ロックが解除される。
「イレーナ?居るか?」
扉を少し開け一言大きな声で声を掛ける。
「フーリエですか?いま着替えている途中なので入らないでくださいね~」
のんびりとした声が返ってきた。昔着替え中にうっかり入ったら、悲鳴を上げられながら、いろいろ物を投げ付けられた(育ててたハエトリグサ。アルミの灰皿。ビールの空き缶。作った桜花皇国製のプラスチック模型。レイヴンレコードで見つけた、リーフユニットのCD)。へッ、まだまだ14で、エバーク平原みたいな胸囲の癖に一人前に恥ずかしがりやがってと思ったものだ。

「もう良いか?」
衣擦れの音が収まった頃合で声を掛ける。
「入っていいですよ~」
気の抜けた声が返ってくる。扉を開け部屋に入る。

部屋の内部は二段ベットが一つと、作業用の机が二つ。
どうやら二人用の共同部屋の様だ。

二段ベットの割り振りは私が上段で、イレーナが下段で良いだろう。寝ぼけて落下されても困る。

イレーナの服装は今まで来ていた、水色のシャツと茶色のプリーツスカートから、全体を黒に統一した服装に着替えていた。
上半身は、長袖のシャツ。このシャツは防刃と防弾仕様となっており、ちょっとやそっとの攻撃じゃ破れない仕様だ。(逆説的に言えば、ちょっとやそっと以上の攻撃だと何の役にもたたない。要するに気休めだ)下半身はパンツスーツになっているこちらもシャツと同じ仕様だ。靴はガッチリとしたコンバットブーツになっている。

「おおう。凄い格好だな」
さくっと褒めてみる。
「ありがとうございます」
イレーナもさくっと返してくる。
「所でフーリエは何時までそんな格好なんですか?そろそろ着替えてください」
現在彼の格好はアーマーベストを付けたカーキ色の戦闘服のまんまである。
更に補足すると、三ヶ月もこの格好のままだ。
「いやこの服のままで構わないし、緊急出撃の際にスコアドローンジャケットのままで乗る訳にゃいかんだろ」
訓令生でさえ、カーキ色の戦闘服の上からアーマーベスト着用だ。TAの操縦はそれなりにGが掛かる。
「いや、そう言う問題じゃ無いんですよ。臭いんですよ。香ばしい体臭がコッチまで漂ってくるんですよ。ちゃんとシャワー浴びていますか?」
臭いと言われた。凄く心外だ。
「浴びているよ。大体この臭いの原因は俺じゃない。この服だ」
「だから着替えろって、言っているんですよ!!とっと脱いでバックに入っている服に着替えてください!!コインランドリーに持って行きますから。」
しまった、墓穴を自分で掘った。
そう言うなり、イレーナは部屋の外に出て行ってしまった。あいつなりの気遣いだろう。

私はバックから、服を取り出すと着替え始める。


~男の、それにむさい苦しい親父の着替えは見せられませんので割愛~


「こんなもんでいいかね」
フーリエの格好はそれなりに変わっていた。

上半身は、長袖のオリーブドライの戦闘服の上からスコアドローンジャケットを羽織っている。

下半身もオリーブドライの戦闘服だ。ただ足元は相変わらず黒いコンバットブーツだ。

「着替え終わったぞ~」
扉の外に向って声を掛ける。
「ええ。結構いい男になりました」
扉を開けながらイレーナが褒めて来た。ちょいと照れくさい。

バッグに脱いだ服を一緒くたに詰め込みながら、イレーナは「ちょっと外出してきますね。フーリエも外出するようなので、カードキー持ってきますね」
なんて言って部屋から出て行った。
まあ、こっちも用事を済まさねばいけないしな。
ジョンから渡されたメモを見る。
「んと…場所はリーリス市。ここ一帯の前線基地の補給線を担う街か」
このシュネアー基地から、東に5キロ。オークリでは大規模な都市だ。(と、リオネア観光局発行のパンフレットには書いてある)

(足は車で決定だな。だが果たして貸してくれるかねえ)
この基地に撤退してきたばかりの傭兵に車なんぞ貸してくれる訳が無いと思うがね。

それに会いに行くにしても準備が必要だ。
まずは拳銃。銃身をスライドさせて薬室から銃弾を抜き、弾倉に装填してある9㎜の残りを数える。
「残り八発か…」
予備の弾倉も持っていくか。

それと手榴弾。
スタン(マグネシウムやなんやらで、爆発・発光させて、相手の目を眩ます兵器。主に特殊部隊が突入する際に使用する。)とスモーク(煙幕のこと)それぞれ二個づつ持って行くことにしよう…。あっても困るということは無いな。

拳銃を腰のホルスターに入れ、更にスタンとスモークをジャケットの中に引っさげて、財布と煙草がポケットに入っているのを確認して準備完了だ。

「さて…、ちょっとアイツの顔でも拝みに行きますか…」

あんまり拝みたい面じゃないが。


部屋のドアに鍵を掛け、宿舎を出た後に車庫へと向う。
車庫は歩いて三分。直ぐそこだ。

「おーい。すまないが、車を一台貸してくれないか?」
私は車庫の番人に声を掛ける。視力が悪いのか、眼鏡を掛けており、小麦色の髪がだいぶ後退している。それと恰幅がいい体型だ。

「名前と階級。それと所属とⅠDカードを見せてくれ」
今まで啜っていたと思わしきコーヒーが入ったプラスチック製ぼマグカップと、お茶請けのクッキーの箱が事務所内に置いてある。
「フーリエ・レジョネア。階級は特務中尉。所属は現段階では第56機械化混成大隊所属だ」
IDカードを番人に渡しながら答える。
「特務中尉と言うことは、アンタは傭兵か」
少しずれていた眼鏡をふちを摘まんで戻しながら、IDカードを受け取る。
「まあな」
特に否定すべき要素ではない。
「んで?車両の使用目的は?」
「近辺のリーリス市に行くだけだ。古い友人が居るのでな」
あながち間違った事でもない。
「解った。好きなのに乗ってけ」
そう言うなり、車の鍵を番人は渡して来た。


アスファルトで整備されたリーリス市へ向う道路を、時速60キロで走りながら私は車から流れるラジオニュースを聞いていた。
≪…続いてのニュースです。ゼ軍による侵攻の結果アバクス地方が陥落し、政府は州境のレーム川周辺の住民に退避命令を発令しました≫
どうやら州境のレーム川に防衛線を気付くようだ。

レーム川の川幅は広く(確か15キロあった筈だ)水深も深い(深い所では、約7M)為、防衛線を構築するにはうってつけだろう。

オークリー地方は手持ちの地図を見る限り、目だった山も無ければ渓谷も無い。完全に平らな平地だ。
小高い丘や、少し深い谷があったアバクス地方で何とか、一ヶ月足止め出来たが、オークリーは平坦な土地が広がっている場所だ。
戦車やTA、地上戦艦にとっては最も戦いやすい地形だ。
攻め込まれれば、防衛は愚か足止めも難しいな。

オークリーはリオネアの中では比較的田舎だ。
主に農業や牧畜等が盛んで、それを観光の売りにもしている。

人口は約45万人が生活している。
リオネア公国の総人口が約6563万人で、このオークリー地方の人口は普通と言った所だろう。

大規模な都市は、今向っているリーリス市。

首都の州境に近いアルメッド市。

オークリーの物流を担うファウデン市。

リオネアの工業力と生産力を支えるルーカン市が上げられる。

そしてこの四都市を繋いでいるのが、リオネア鉄道だ。
リオネア鉄道は件の経済恐慌が起こる二年前に、桜花皇国と共同で敷設された鉄道であり、リオネア中に敷設されている。

この鉄道を駆使し、補給を行なったり、撤退作戦をスムーズに進められたりした…らしい。
(私自身利用したことが無いので、よく解らん)
ともかくこのオークリーは補給線の充実以外は防衛に向いていないのだ。

≪…この退避令の発令により、周辺住民は不安と動揺を隠せないようです≫
リオネアは戦時下の情報統制はして無いのか?ちょっと周波数を変えてみる。
≪ゼメル共和国軍放送!!≫
軍歌をBGMにゼ軍の放送が入った。どう言う事だ?
≪偉大なるイブロス総統の指揮下の下に、快進撃を続けるわが軍は、昨日アバクス地方を解放した!!≫
おおう、プロパガンダか。
≪現在もわがゼメル共和国軍の解放した地域では復興が始まっており、治安や生活もリオネアが支配していた頃よりも格別に良くなっている!!≫
へー。では何故今まで出なかった餓死者が出て、殺人や窃盗、強盗が増えているんだろうなー。不思議だなー。
≪そして、わが軍は共和国軍は近日中にも、リオネア軍を打ち破り首都のディレクト・メリアを解放する所存である!!≫
前線の物資が不足しているくせにどうやって攻める気だ。靴屋の小人でもいるのか?
≪今なお抵抗を続ける、リオネア軍各部隊に告げる!!今ならば罪は軽い。我らが総統も寛大であるし、君達の同胞も皆我が軍門に降った!!残っているのは君達だけだ。無駄な抵抗は止め、銃を置いて塹壕から出て来て欲しい。それが両国の為になるのだから。
諸君らの英断に期待する!!≫
やれやれ、嘘っぱちだらけだ。
あのイブロスが寛大だって?もうココまで行くと笑いのセンスがあるとしか思えん。

自分に反対する者や政敵は皆殺しにして、あまつさえ自分の側近を粛清する奴が寛大だって?
「全く…。お笑い種だよ」
その間にも、ラジオから散々同じ内容が流れていたので、また周波数を変える。
≪えー…続いてのお便りはリーデル市在住のミック・中田さん。男性。64歳。牧場経営。からのお便りです。
最近戦争が激化してきましたね。自分の息子も軍に入っているので心配です…。
ジャックや。このラジオを聴いているなら、便りを送ってくれ…。だそうです≫
今度は地方ローカルのラジオ番組の様だ。
≪確かに戦争が激化してきましたね…。私の叔父も軍の戦車乗りをしているのですが、この前の便りに、同期が二人も戦死して、部下を三人も失ったと書かれていました…≫
そいつは大変だな…。
≪まあまあ、セリアさん。貴方はこのラジオの花なんだから落ち込まないで。
そして聴いているなら、ラジオの前のジャック君。お父さんに手紙くらいは送ってあげなさいね。心配しているから≫
そうだぞ、ジャック君。心配してくれる家族がいるのなら手紙は一ヶ月に一度送らなきゃ駄目だぞ。
≪とまあ、ここで一旦CMです。CMの後は毎度お馴染みのDJリン・チェンとメル・ハーカーの音楽コーナーです。この番組の提供はオークリー商工会とオークリー農業組合の提供でお送りしています≫
番組のMCが一旦締め括ると、CMが流れ始めた。
≪義勇兵募集中!!≫
ポップな感じにアレンジされた軍歌をバックに今度はリオネア軍のCMだ。
≪現在リオネア軍は義勇兵を募集中です!!
近隣の陸軍センターに受付があるので、そこで「義勇兵希望」と言えばOKです!!
さあ、リオネアを守るために私達と戦おう!!≫
甘ったるい女性の声だ。個人的には悪い手ではないと思う。

「さて、そろそろだな…」
ラジオからは地元の会社のCMが流れ続けている。

私はアクセルを踏むと、あの戦争で死闘を繰り広げたあの男の居る町に向かった…。



続く…


作者後書き。

…だいぶ更新が遅れてしまった、全自動式です…。
私生活でちょっと色々あったとは言え、更新できないのは作者の怠慢です。申し訳ない。

今回はオークリーでの導入編になればいいと思っております。
今後ともよろしくお願いします。

あとロボの名称を変えようと思います。知らなかったとは言え、ガサラギに登場するメカの名称が、一緒だったもので…。

なんかおかしい点、いらん部分、誤字脱字等がありましたら、感想欄までどうぞ~

あと普通の感想もお待ちしております。

では今回はこの辺で失礼いたします。


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.059264898300171