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[28418] 【ネタ】僕「なんかQBみたいっすね?」神「効率的だろう?」【リリカルなのは】
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/06/26 14:01
【注意事項】

・転生モノです
・たくさんいます
・神さまもでます








『さあ、目覚めたまえ』

 脳に直接響くような、そのくせ耳障りでもなく大音量でもないそのコトバに僕の意識は覚醒する。

 目を開けると、地面に横たわる僕を形容しがたい誰かが覗き込んでいた。

『おめでとう、君は二度目の生を受ける権利を手に入れた』

 誰かは、目を覚ました僕にどこかで聞いたような台詞を綴る。

「僕は……死んだのか?」

『左様、中々話が早いな。いや、だいたいこのようなものか』

 誰か、いやもう『神』でいいだろう。
 ちがうか、これは『神さま』か。
 よりによって『神さま転生』か?
 例によって僕もこの『神さま』のミスとやらで死んだのだろうか?

『ふむ、比較的冷静であるな。肯定すると喚きながら殴りかかってくる輩も少なくないのだが』

 ああ、やはりそういう『転生モノ』か。
 そういうのは大概『神さま』がへいこらするものだが。

「そいつらに説教でもされたのか?」

 気になった僕はそのお約束をした連中のことを尋ねる。
 ほんとうに何気ない質問であったが、僕の現状を正しく認識するのに必要な質問であったことに後々息をつくことになる。

『いや、私に触れた瞬間魂ごとズタズタに消し飛んだだけだ』

 予想外の台詞が返ってくる。

 なんだそれは?
 『神さま』のミスで死んだとかではないのか?

『皆、大体同じ表情をするな。そもそも君たちの世界で所謂神が観測されたことがあるのかね』

 どういうことだ?
 わけがわからない。

『私はただ次元の狭間から転生を望む死者の魂をこの場に召喚しているに過ぎない。君たちの死に私は何の関与もしていないよ』

 僕は何で死んだ?
 あれ?
 なんだ、思い出せない?

『ああ、死のフラッシュバックで発狂することもあるから君らの記憶から消去してある。安心してくれたまえ』

 なんだ?
 心を読めるのか?

『ちなみに読心とかではないよ。多くが君と同じ反応をするからね、表情から模範解答を話しているだけだ』

 『神』は淡々と言葉を紡ぐ。
 僕は改めて、正しく『神』の前にいるのだと理解する。

『ああ、幾許か理性的だと助かるね。魂の召喚に仮初の肉体を作るのもタダではないのだから』

 と、途端に生々しい内容が出てくる。

「ただ?」

『そう、この場に君らを呼ぶのにも力を使うのさ。先ほど言った面々のような真似をされると力が無駄になる。もっともそんな無駄、許すわけは無いのだけれど』

 『神』は淡々と言い放つが、幾許かの揺れが混じったように感じる。

「……その、ズタズタになった連中は?」

 消滅したのか? と、聞きたかったのだが。

『ふふ、そこにいるだろう。私は無駄が嫌いだからね、せめてこの場の明かり程度には成って貰わないと割が合わない』

 そう言うと、『神』は天上の光源を見上げる。

 その青白い光を放ちながら揺ら揺らと揺らぐそれは、時折人間の顔のような形を作りながら、耳障りな不協和音のように聞こえる呻き声のようなものを発していた。

 僕はあれがこの場で最悪な選択をしたモノの末路と正しく認識する。

 どうやら死してなお、碌でもない場所に来てしまったようだった。














「それで、無駄を嫌う貴方は僕に何をさせるつもりですか?」

 そう口にした直後に背筋が凍る。
 何をも糞も、転生と言っていたじゃないか。

 これは『転生モノ』なんてぬるい事態なんかじゃない。
 この『神』の機嫌を損ねたら、アレの仲間入りじゃないか。

『最初に言っただろう、二度目の生を受ける権利を得たと。私の創生した世界に転生してもらう』

 そんな僕を尻目に、『神』は普通に質問に答えてくれた。

 無駄を嫌うという割には、説明は苦になるわけではないらしい。
 そんなことを考えながら、僕は地雷をわざわざ踏みにいった自分を殺してやりたくなる。

 あの末路だけはゴメンだろうが!

 ああ、死因はこの思ったことを口に出してしまう軽率な性格かもしれない。

「どのような世界ですか? 所謂生前のような世界でしょうか」

 そんなことを考えながら質問を続ける。
 なんとなく敬語っぽくなっているだろうか?
 ああ、こんなことならもっと国語を勉強しておけばよかった。

『君の、ああ君らが生まれ変わるならと望んでいた、所謂『リリカルなのは』シリーズと呼ばれる世界だ』

 ああ、そういえばそんなことを考えていたかもしれない、死ぬ前に。

 そして、たびたび出てくる複数形。
 僕だけ、という訳ではないんだろう。

『勿論、ただの人間として転生するわけではない。君は魔導師となる』

 果たして、『神』にとって僕たちを転生させることに何の意味だあるのだろうか?

 生前、妄想していた『なのは世界』に転生するという機会を得たにもかかわらず、僕は全然喜べずにいた。

「どういうタイプの魔導師になるかは、ここで選べるのですか?」

 もう、とにかく疑問に感じたことは全部聞こう。
 もし機嫌を損ねたら謝りたおすしかないが、転生後に一切フォローが無い場合、どんな落とし穴があるか解ったもんじゃない!

『その質問は稀だね。大概はSSSランク魔導師で無限の剣製などのレアスキルと自称するものを欲しがるものだが』

 『神』はそう言いながら『リリカルなのはTRPG・ルールブック』と表記された文庫サイズの本を虚空から出現させる。

 突っ込みたいのを我慢しながら、ほぼ正方形に近い形状のそれを受け取る。
 けっこう重い。

『詳しくはそれに書いてある。一々応対するのは飽きたのでね』

 みもふたも無いことを言ってくれる。
 この量で制限時間付とか洒落にならない。

『ああ、時間は無制限だ。終わったら言ってくれたまえ』

 懸念の一つはクリア。

 とりあえず、何もかも置いておこう。
 とにかくこれから始まるであろう第二の人生を恙無く生きるためにルールを把握せねば!





 僕の体感時間でおよそ2時間。
 スキルなどは後回しで、とりあえず転生におけるルールを一通り把握する。

 簡単に言えばポイント制のシステムということだ。
 僕の知る限りではガープスが近いだろうか?

 基本的な持ち点である100ポイントを消費することで先天的才能などを得る形になる。

 例えると、

 ・空戦Sランク魔導師(50P)
 ・ミッドチルダ上流階級出身(30P)
 ・容姿:美形(20P)

 こんな形で、作中のクロノ・ハラオウンとほぼ同等のスペックを得る事になる。

 さて、先ほど『神』との会話でSSSランクに無限の剣製という単語が出てきたが、スキル表にしっかりと載っている。

 ・SSSランク魔導師(300P)
 ・無限の剣製(1000P)

 普通に持ち点オーバーである。
 これらのチートスペック、チートスキルは基本的に実装できない形式になっているが、一応2種類の抜け道が用意されている。

 ・単一魔法(選択したスキルの必要Pを10分の1にする)
 ・容姿:不細工(-20P)

 所謂デメリットスキルによる必要P修正とP増加効果である。

 そして基本ルールの最悪の罠が、ポイントを超過して転生した場合は寿命が減るという鬼畜仕様という点だ。

 つまり、このルールを知らず、仮に1000Pのスキル選択で転生した場合、通常の10分の1の寿命しかないということになる。
 ちなみに今までの最大P使用者は実に250950P、端数切捨てだろうが切り上げだろうが、およそ2500分の1!
 仮に100Pで100歳まで生きれたとして、単純計算でおよそ2週間程度しか寿命が無い計算になる。

 一応、原作に介入した時点からタイムカウントがされるということだが、一体どうなることやら。




 さて、僕の体感時間で丸一日が経過した。
 食事も睡眠も取っていないが、空腹や疲労を感じない。

 つまり肉体を感じていても、実質的に魂のみということなのだろう。

 さて、一通りルールブックに目を通したところ、気になっていたいくつかのことが解消された。

 先ず、所謂型月魔法の数々。
 この場合は魔術が正しいか?
 ともかく、代表的な『無限の剣製』であるが、属性として固有結界という個人の内面世界が肝となるモノである。
 これを原点そのままで使えるのかが疑問であったのだが、回答は実に力技であった。

 なんと、英霊エミヤの『無限の剣製』そのものを使用者の魔力で無理やり具現させているだけの代物である。
 そのほかの固有結界や、それに類似する宝具のようなものも同様の方式で再現しているとのこと。
 ちなみに2番人気らしい『王の財宝』は必要Pを10000要する。

 とりあえず、人気1、2位の二つを例に挙げたが、基本的に『なのは』世界の魔法体系でないものは必要Pが多くなる形式となっている。

 この正方形に近いルールブックの実に8割がスキル解説であるのが、この先の人生を大いに不安にさせられる。
 『神』の発言からも伺えたが、間違いなく僕以外の転生者がいる。それも複数。
 一体何人目から質問されるのが飽きたのかは不明だが、少なくとも10人以上いると考えていいだろう。

 更に言えば、さほど積極的に原作面子に関わっていくほどの勇気も無い。
 特に、ニコポ(100P)、ナデポ(80P)、SEKKYOU(250P)辺りがヤバイ。
 スキル特性に転生者無効の洗脳タイプの永続魔法とか表記されてる。
 一応、使用者死亡と同時に正気に戻るとも表記されているが、焼け石に水である。
 しかも上書きタイプとか……ヒロインたちを巡ってのニコポ・SEKKYOU合戦が簡単に想像できる。

 結局、僕は大した冒険をせずにどちらかというと後ろ向きのスキルを選択した。

 ・総合Aランク魔導師(5P)
 ・Sランク結界魔導師(25P)
 ・マルチタスクLv5(15P)
 ・転生者一覧Lv1(50P)
 ・身長:185cm(3P)
 ・体型:標準+2(2P)

 容姿を伴わない体格に必要なPは総じて低めであり、結界魔導師も戦闘魔導師の半分ぐらいだ。
 マルチタスクもLv1で2本、Lvがあがるごとに3Pづつ増えていくだけだ。

 僕的に選択スキルの一番の肝は転生者一覧を取ったことだろう。
 このスキルは転生者の情報をLvごとにリストアップする優れものだが、その分必要Pも多くチキンな僕は最低Lvしか選択できなかった。
 それでも出会った(すれ違った場合でも可)転生者の能力をリストアップし、死者は自動でリストに表記されるという僕的にはチートスキルと確信できるものだ。(最大Lv5でLv2から転生者の名前、容姿・スキル・現在地・残り寿命の順で最初から表記されている)
 そして最大の利点は、この一覧が魔法であり自分以外には確認できないことにある。

 目立つ容姿でなければ、このスキルにより他の転生者に比べ圧倒的アドバンテージを得れる!

 このときは僕はそう信じていた。
 まあ、そんな甘い話があるわけないと気づくのは転生後、物心つくころになってからだ。

 ああ、この世界、
 ・全記憶保持Lv5(100P)
 を持っていない限り、生まれたときから全記憶を持てず、5歳になるまで順次記憶がインストールされるような仕様になっている。
 あと、
 ・0歳行動可(500P)
 のようなスキルがないと知識はあっても年齢相応の行動しかできなかったりする。

 そして、出身地選択もかなり重要になってくる。

 簡単に言えば、原作キャラに近い原作に出てこない人物はほぼ100%の確立で転生者だってことだ。

 これでもしっかり考えてスキル選択はしたつもりだったんだけどね。





 そんなことを、僕こと、高町勇治(5)は三つ子の姉妹であるなのは(5)とゆきの(5)を見ながら考えていた。

 きっと、ゆきのさんも同じことを考えていただろうけどね。










 《転生者一覧が更新されました》





 【高町ゆきの】

 年齢:5歳(/100歳)

 ・空戦Sランク魔導師(50P)
 ・マルチタスクLv10(30P)
 ・容姿:美形(20P)
 ・男運:悪い(-30P)
 ・恋愛:特定(5P)
 ・恋愛:一目惚れ(15P)
 ・恋愛:ユーノ・スクライア(10P)

 現在地:第97管理外世界



 さて、ゆきのさんは原作介入の特定恋愛特化型だ。

 ちなみにハーレム型は、既に出ているニコポかナデポ、SEKKYOUを所持した上でハーレム維持(500P)を必要とする。
 なぜかと言えば、ハーレム維持のスキルを持たないと、落とした女性間の関係は自分で調整しないといけないからだ。
 おそらく素でこれが可能な転生者はいないだろう、確実に修羅場になる。

 話は戻って、ゆきのさん。
 完全にユーノ狙いの原作はどうでもいいタイプの人と思われる。

 原作介入タイプにしては、所謂無印以降に何かしようというスキルが一つもない。
 恋愛系スキルは比較的少ないPで確実な効果が得られる上、一旦カップル化すると洗脳タイプのスキルを無効化するおまけもついてくる。
 さらに容姿:美形は異性の興味をひきつけるスキルだが、これを男運:悪いである意味無効化している。
 そして恋愛系スキルでユーノ一人を狙い撃ち、という腹積もりだ。

 おそらく無印はなのはに付き合いつつ、A'sでユーノと一緒に無限書庫に引っ込みつつ原作からフェードアウト。
 その後は完全に高みの見物だろう。






 きっと、他の転生者がいなければその望みはかなっただろう。

 僕の存在を認識した時点で相当驚愕していたからなぁ。
 相当初期の人選メンバーなんだろう。

 僕なんか、『神』に君で最後だとか言われたしな。

 何人いるかは教えてくれなかったけど。

 その代わり、とんでもないこと教えてくれたけどな!










「最後に一ついいですか?」

 スキル選択を終え、『神』に君で最後といわれた僕は途中から疑問に感じていたことを尋ねる。

『何かね』

「何でこんなことしてるんですか? 力はタダではないのでしょう?」

 僕の疑問、それはこの『神』に僕たちを転生させるメリットを感じないことだ。

『それを聞いてきたのは君で3人目だな』

 意外そうな『神』の言葉。どうやら珍しいが僕が初めに尋ねたわけでもないらしい。

『詳しく説明しても理解できないだろう。故に簡単に言えば力を増やすためだ』

「増やす?」

 今まで聞いた限りだと、その力とやらが増えるような要素が見当たらないが?

『そう、君たちに貸した力を君たちが死んだときに返してもらう。そのときに絶望や恐怖といった感情を付加させて増した力を返してもらう』

 唖然とする。

 予想以上にどうしようもない理由だ。
 要するに僕らは高利貸しに無理やり金を押し付けられた債権者というわけか?
 絶対に借り逃げのできないシステムで、利子も強制的に回収されるわけか?

『無論、これは何もなせずに死んだ場合だがね。貸した力に何らかの進化、それ以外でもその人生が世界に対し何か足跡を残せたのであれば、それは付加された力になる。そうなれば安らかな死を約束しよう』

 つまり、莫大な借金をして何もなせなければ、死後も労役が課され、定額でも何もしなければ同じ。

 この場に呼ばれた以上、何かを成し遂げない限り死後の安息すら許されない、と。

『さあ、君の二度目の人生。期待しているよ』

 『神』の言葉に、僕の中で形にならない感情が渦を巻く。

 怒りか? 絶望か? それとも恐怖か?

 いや、どれも違う。

 ああっ! 二度目の生がそんなに安いわけないじゃないか。

 かつての僕の人生、自身の命を賭けるくらいの大きな出来事があっただろうか?
 これほどまでに何かを期待された事があっただろうか?

「二度目の人生、それで既に奇跡じゃないか。もう、絶望なんて、ない!」

『いい覚悟だ。では、君の人生の終わりにまた会おう』

 『神』の言葉が終わると共に、僕の視界が、全ての感覚が消失する。

 絶対、利子の多さに驚かせてやると誓いながら。









「それでも、高町家はねーよ『神』さま」

 一発で転生者ってわかるじゃん。

 高町勇治、5歳の誕生日に前世記憶を完全に取り戻し、この先の未来に軽く絶望。





[28418] 2話 「経験は大事、というお話」
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/06/26 14:01
 特に語るべきこともなく、年月は流れ僕らは聖祥に入学。

 僕らは三つ子なので、別々のクラスに分かれることになる。

 そして、意外なことにこの時点での転生者はゆきの以外は実にゼロ。

 一人か二人は小学1年のころからなのはにこなをかけてくるかと思ったが。

 さて、肝心のファースト転生者である高町ゆきのさんであるが、一応共闘関係にある。
 転生者一覧の彼女のスキルを見ればわかる通り、ユーノ狙いである。
 そして僕は男であり、そしてなのはとは兄妹である。

 よほどおかしな頭をしていない限り、ユーノやなのはにちょっかいをかけようとはしないという判断であろう。

 こちらとしても高町家に転生するのは完全に想定外だったので、同じ秘密を内包する相手がいるとやりやすい。





 ただ、ゆきのさん、完全に恋愛脳のためか、

「あんた、誰狙い?」

 覚醒後の第一声がこれである。

 一応誤解のないよう恋愛が目的ではないと言ったのだが、残念ながら信じてもらえなかった。

「で、誰よ?」

 仕方なく、僕はstsに出てきた寮母のアイナさんと答えておく。
 登場は10年以上後だ。
 そのうち忘れているだろう。

「……あー、あの人かー」

 と、一旦うなずくが、

「ん? なんでこの時間帯に転生してんの? いや、なのはの知り合いのほうが会いやすいか?」

 再び唸り始める。
 とりあえず、高町家に転生したのは想定外だったと告げておく。

「あー、うん。わかるわかる。あたしもなのはの姉妹になるとは想像もしてなかったしねー」

 そう言って、ゆきのさんは気さくに笑った。

 当初、僕としてはゆきのさんの中身が気になったわけだが、よく考えてみたら僕自身、前世が何者であったか記憶に無いことに気づく。
 どうもそういう仕様であるらしい。

 所謂『リリカルなのは』シリーズの覚えている限りの記憶はある。
 が、それ以外の、例えば『神』のいた場所でみたスキルの元ネタが相当怪しいことになっている。

 そして、前世の自分の情報、簡単な性別ですら記憶にない。
 これは、ゆきのさんも覚えてねーな。

 まあ、確かに前世の記憶とか、トラウマとか思い返してもいいことないよなぁ。
 そう思いながら、少しだけこの仕様に感謝した。







 さて順調に学年は上がり、転生者も出現しないという奇妙な時間がしばらく続く。






《転生者一覧が更新されました》






 まあ、そんなわけないわな。
 早速、確認確認。




 【天鏡将院 八雲】

 年齢:死亡(/8歳)

 ・総合SSSSランク魔導師(600P)
 ・斬魄刀:天鎖残月(900P)
 ・洗脳:sekkyou(250P)
 ・幻想殺し(50000P)
 ・幽波紋:ザ・ワールド(25000P)
 ・デバイス:ストームブリンガー(500P)
 ・容姿:超絶美形(300P)
 ・名前:天鏡将院八雲(30P)

 現在地:第97管理外世界





「……」

 これはどう判断すべきか?

 転生者同士の内ゲバか? それとも単純に寿命か?
 というか、突っ込みどころが多すぎる。

 幻想殺し燃費わりーとか、ザ・ワールドも重いとか、名前、P必要なんだとか、それよりなにより、

「寿命8歳って何だよ……」

 死因がわからないのがここまで混乱するとは思わなかった。
 
 しかも、超絶美形って強制魅了効果付だぞ、アレ。
 sekkyouよりP必要なだけあって相当影響力あるからな。
 顔さえあれば永久魅了だからな、ハーレム維持とかカリスマがないと首をもがれかねん。

 仮に寿命だとすると、例の25万さんの約3倍だから6週間ちょいか?
 いまが春の大型連休の前だから、3月頭ごろに活動開始?
 それにしては音沙汰なかったしなー。

 いや、これは考えるだけ無駄だ。
 現在地がアバウトすぎて、最低でも日本国内に死体があることぐらいしかわからん。





 謎の転生者、天鏡将院八雲のことを記憶の彼方に追いやり、僕は市立図書館へと向かう。

 無論、八神はやての有無の確認である。

 高町家への転生が予想外のことだったので、原作がどの程度再現されるかは地味に命に関わる。
 とりあえず、我が妹ゆきのさんのおかげで無印は何とかなりそうな気はするのだが、その後の見通しが立っていない。

 ゆきのさんは完全にユーノの嫁になるつもりなので、いずれ高町家を出るだろう。

 対する僕は、『神』を見返してやると決めたものの、いまだ将来は未定である。
 やはりこのシステムを知ったのが転生直前というのが痛い。
 基本的に原作に関わらずに、天寿を全うしようとして組んだ後ろ向き仕様だからなぁ。

 と、ため息混じりに館内を探索していると、




《転生者一覧が更新されました》






 今日は豊作、てか?
 さてさて。






 【八神 迅雷】

 年齢:28歳(/100歳)

 ・総合Aランク魔導師(5P)
 ・家族:八神はやての叔父(40P)
 ・魔力値:SSSSS(500P)
 ・単一魔法:→魔力値(-450P)
 ・使用可能魔法:フレイム・ショット
 ・身長:190cm(5P)

 現在地:第97管理外世界






 げ、『余のメラ』タイプじゃねーか!
 バ火力がはやての叔父とかどーいう状況だよ。

 まだ春だというのに、真夏のサーファー見たいにアロハシャツにグラサンとか、肌も真っ黒に焼けてるし。
 本格的にこのオッサンが何者かわかんねー!

「おー、ジン叔父さん」

「まったく、久々の里帰りなのに姪の迎えに出されるとはね。兄貴も人使いが荒い」

 しかも、はやて。聖祥の制服着てるじゃねーか!
 車椅子のイメージ強すぎて、完全にチェックの範囲外だぞ。

「よろしいですか?」

「!?」

 僕が本棚の隅から二人の様子を伺っていると、頭上から女性の声と共に肩に手を置かれた。

 なんだ!?
 転生者なら僕が気づかないわけないぞ!

 ぎょっとした僕が振り向くと、すらっとしたスーツを身に着けた女性が僕の肩に手をまわしている。

「おーし、お手柄だ。エレノワール」

 もう一度あわてて正面を向くと、グラサンが腕組みをしながらニヤニヤ笑っている。

 その後ろでは、はやてが叔父さんどしたのーとオッサンの後ろから顔を出してくる。

 挟まれた! つーか、痛ぇ! この女握力ぱねぇ!

 こいつ、使い魔か!







 さて、あの後ちょっと面かせやと、オッサンに図書館裏に連れ込まれた。

 少しだけはやてに助けを期待したのだが、使い魔と思われる女性に促され先に帰宅したようだ。
 その際、その子いじめたらあかんよ。と、言ってくれたはやてちゃんマジ天使!

 ニヤニヤ笑いながらオッサンはタバコをすっている。

「おまえさんよぉ、転生者だろ? しかも、飛び切りレアな感知系の」

 てっきり、煙を吹きかけてきたりポイ捨てしたりするのかと思いきや、そんなことはなくアロハシャツから取り出した携帯灰皿に吸殻をしまう。
 と、意識そらしている場合じゃねぇ! バレバレじゃねぇか!

「ああ、とって食おうってわけじゃねぇ。お前さんの名前と、天鏡将院とか言うガキの行方を聞きたい」

 そういって笑みを浮かべながら、オッサンはサングラスをずらす。
 やべえ、目が笑ってねぇ!
 このオッサンと僕とじゃ潜った戦場が違いすぎる。

 つーか、ここでも天鏡将院かよ。

「っ、僕は、高町勇治。多分、あんたも知ってるだろうけど、高町なのはの三つ子の兄だ」

 僕の返答に、おっさんは心底驚いたようで、

「高町なのはが三つ子かよ!」

 そう言ってヒヒヒッと笑う。

「あと、天鏡将院八雲ってのとあんたの関係は知らないけど、そいつはもう死んでるよ」

 続けた僕の言葉に、オッサンは笑うのを止めると。

「あー、死んだが、あのクソガキ。……あー、逃がしたと思ったが、ちゃんと死んでたか」

 そう吐き捨てるように口にする。

「あんたがやったのか?」

 スキルを見るからに、実にアレな人間だと思っていたが。
 それでも、死んで清々したといわんばかりのこのオッサンの言葉に顔を顰める。 

「だとしたら、なんだい?」

 それとも、やはり僕が知らないだけで、例のアイツは何かやらかしていたのだろうか?







      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「いけないなぁ。いけないなぁ。八神はやて、君の両親が健在だと原作が崩壊してしまうじゃないかぁ」

 まるで絵画の中から出てきたかのごとき、絶世の美貌を持つ少年が長い髪を揺らしながら道を進む。

「いけない子だよ、八神はやて。君が健康な体じゃ、だめだろう?」

 その美貌に貼り付けたるは、醜悪な笑み。
 腐った溝沼のごとき瞳が虚空をさまよっている。

 少年の名は天鏡将院八雲。

 多くの転生者の中でもトップクラスのPを消費した、所謂ルールブック未読組の一人である。

 転生者の中でも、最も原作であるところの「リリカルなのは」シリーズを愛していると思っている彼は、原作開始前であるにも拘らずズレが発生していることを誰よりも憤っていると思っていた。

 このままでは自分の愛する「リリカルなのは」の物語が崩壊してしまう。

 そう結論を出した彼は、原作開始まで残り1年という時点で崩壊を阻止すべく行動を開始した。

 手始めに、八神はやての両親の抹殺。
 そしてはやて本人を半身不随にする。

 すでに、その行為自体が原作と外れていることに彼自身気づいていなかった。

 スキル:sekkyouにより、覚醒してからの約3年、彼の周囲にはイエスマンしか存在しなかったが故の弊害、自身の判断が何よりも正しいという思い込みのためである。





「よぉ、ここから先は通行止めだぜ」

 妖艶たる美貌の少年の視線に、大柄な男が横柄にも侵入してきた。

 黒い男であった。
 男は笑みを浮かべながらも、一部の隙もない。
 歴戦の風格を漂わせる男である。

 しかし、そのようなものなど、彼にとって何の意味も持たない。

「失せろ」

 彼は静かに、だが言葉そのもに力を籠め命ずる。
 いつものように、淡々と。

 が、男は不敵な笑みを浮かべながら、

「てめぇが失せな」

 そう返答した。

「ああ、貴様が転生者ということか。……死ね!」

 その答えに彼は男が自身と同じく、そして己に刃向かう実に不遜な転生者であることを理解する。
 そして、無詠唱でディバイン・バスター級の砲撃魔法を殺傷設定で放つ。

 彼の圧倒的魔力を元に放たれた漆黒の光線は、しかし無詠唱・デバイスなしという構成の甘さにより、男の前に出現したプロテクション・フィールドに遮られ霧散する。

「マスター、遅くなりました」

 真紅の魔力光を身に漂わせ、バリアジャケットを身にまとった女性が男に寄り添うように出現する。

 そして頭一つ以上差のあるその女性に、男は良くやったとばかりにポンと後頭部をタッチする。
 女性の頭の猫耳がどこかしらうれしそうにピコピコと揺れる。

「使い魔か、屑め」

 彼は何の根拠もなくそう口にする。
 そして、無言で彼のデバイス・ストームブリンガーを起動させたところで、初めて世界の位相がずれていることに気づく。

「結界か」

 無駄なことを、と思う。
 彼の右手は幻想殺しだ。
 いかなる結界だろうが、無効化することは難しくない。

「お、次は俺の番だろう? それとも俺に攻撃させるのは怖いかい?」

 黒い男が聞き捨てならない言葉を放つ。

 実に無礼千万である。
 彼はすぐさまこの男を殺したい衝動に襲われるが、それと同じぐらいこの男に絶望の表情を浮かべさせてやりたいという欲求が生まれる。

「貴様の手順を許す。このボクの前に絶望しろ!」

 そうして、彼は後者の欲求を選択した。








 黒い男、八神迅雷はこの転生者の言葉に内心安堵の息をつく。

 この目の前の転生者は、彼がこれまでに出会ってきたどのタイプの転生者とも異なっていた。

 彼が普段、次元世界の戦場で相対する『フリーダム』の連中や、同僚である友人や上司たちと異なり、おそらく覚醒してから数年であるにも拘らず圧倒的なプレッシャーを放っている。

(まともにやれば、相手にならんな……)

 彼はそう判断する。

 先に放たれた無詠唱魔法は、それだけで所謂高町なのはのディバイン・バスターを凌駕する威力である。
 たった一つの魔法しか使えず、全てのサポートを使い魔であるエレノワールに任せきりである彼には、元々勝ち目など一つしかない。

(フランの姐さんに、兄貴たちを狙ってるバカがいると聞いたときはどんなバカかと呆れたが、超ド級のバカかよ)

 そんなことを考えつつ、彼の使えるたった一つの魔法を起動。
 この世界に覚醒してから何千・何万と繰り返したその工程を、いつものように、そして今回は非殺傷設定を起動させずに発動する。

「フレイム・ショット」

 管理世界で基本となる魔力弾、それに彼の魔力性質である炎属性を乗せたそれが転生者の少年に射出される。

 少年はそれを避けようともせず、タダ右手を掲げるのみ。
 左手に持つ長剣タイプのデバイスを起動させる様子もない。

(? 何だ?)

 彼は少年の行動が理解できず、そして着弾と同時に理解する。

(っ! アンチマギリングフィールドか? いや、何かこれを知っている気がするが……)

 彼の魔法は少年の手のひらに遮られ、その場に食い止められているのだ。

 が、如何せん彼はこの能力の原典を知らない。
 スキル欄にあったのを確認しているが、それも彼にとって20年以上前の話。
 すでに記憶の端にも残っていなかった。

 少年は笑みを浮かべながら、左手のデバイスを起動させようとする。
 が、いつまでたっても消滅しない、右手に遮られた魔力弾を怪訝に見る。

(まあ、なんだろうと)

「俺のそれは止まらんぞ?」

 訝しげにしている少年に、彼は一言告げる。

『ブレイク!』

 その言葉と共に、少年は半径2mはあろうかという天まで届かんとする火柱に包まれた。








「──! ──っ!」

 八雲は声にならない声を上げながら、右手の幻想殺しを振り回す。

 幻想殺しのお蔭で、魔力ダメージはない。

 しかし、彼を包囲する火柱により酸欠状態に陥り、そして発生する熱により彼の体は焼き爛れていた。

(なんだ!? これは、なんだ!?)

 彼は、ただ、ただ混乱していた。

 仮に、純粋に能力だけ見た場合、八雲と迅雷が相対すれば100戦中100戦で八雲が勝利するだろう。
 それほどまでに、転生者としての能力に格差はある。

 それも、実戦経験が同じという条件での話。

 既に自分より格上の転生者との戦闘を繰り返してきた迅雷と、この日が初陣となった八雲の経験の差がそのままこの結果に結びついた。

 それだけの話である。

「──!」

(そうだ! ザ・ワールド!)

 初めからそれを使っていれば、一方的に勝利できたそれを思い出す。

 それを使って脱出しようとしたところで、体が動かなくなっていることに気づく。

(なんだ? どうして動かん! 動けっ!)

 それどころか、既に目も見えていない。
 いや、彼が自分のザ・ワールドというスキルに気づくまでの数秒で、彼の体は致命的なダメージを受けていた。

(動けっ! 熱いんだ! 動けよ! 痛いんだ! 動くんだよっ! 苦しいんだ!)

 彼の魂は慟哭する。

 熱いと。

 痛いと。

 苦しいと。

 そう、天鏡将院八雲の肉体は、既に炭化しているのだ。





『本当に、君は道化にもなれなかったな』

 慟哭をあげる魂を見やり、『神』はつまらなそうに言う。

(痛い──。熱い──。苦し──)

『これで、5人目。まぁ、天寿を全うできなかったのは君が初めてなのだがね』

(あ、ああ──)

『ああそうだ。君にはこの世界の行く末を見続けてもらおう。程よい絶望を生んでくれそうだ』

(っ! う、あ、あ────────────!)





[28418] 3話 Q:転生者はどんだけいるの? A:108人
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/06/20 16:03



 結局、オッサンこと八神迅雷は肝心のことを教えたりはしてくれなかった。

 とりあえず、現状でわかったことは、

 1.八神はやては健康体で、かつ自分と同じ聖祥の生徒であるということ

 2.八神迅雷というはやての叔父が転生者で、かなり強力な使い魔を所有しているということ

 3.なんらかの抗争があり、天鏡将院八雲という転生者が死んだということ

 4.どうやら八神はやての両親、すくなくとも父親は生きているということ

 の4点である。

 しかも、

「俺からお前さんに話すことはねぇな」

 そう言って空を指し、

「お前さんが上に来るなら、いずれ知りうることで──」

 続けて空を指した手を下げると、

「来ないなら、一生知らんでも問題ないだろ?」

 そう言い残し、迅雷のオッサンは去っていった。

 その言葉は地味に堪える。
 なにせ、転生者という圧倒的なアドバンテージを持ちながら、いまだ将来を決めかねているという優柔不断っぷり。

 いや、高町家に生まれなければもう少し、こう、なんとかなった気もしないでもないのだが。

「ほんと、中途半端だな。僕は」









      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







「ゾート、考え直す気はないのか? 今のままではそなたを部族から追放せねばならん」

 簡易テントのなか、二人の人間が対峙し、老齢の男性が対面の少年に語りかける。

「すればよかろう。この俺が何故貴様らの言うことを聞かねばならん」

 果たして何度目になるであろうか、この問答は。

 自身の孫であるこの少年、それを致命的に集団行動に向かない性格に育ててしまったことの後悔に目を伏せる。

 しかし、少年がこうなったことに男性の責任は実はなかった。
 ただこの少年が、転生者であったというそれだけのことである。

 生まれながらに、このような性格だったのだ。

「……そうか。最早、祖父であるという理由でそなたを庇うことはできん。ゾート・スクライア、族長の名においてそなたをスクライアの一族より追放する……」

 男性が悲しそうに告げる。

 反対に少年は不遜に笑う。

「実に墓荒しらしい結論だ。よかろう、今から貴様らを皆殺しにしてやろう!」

 少年が腕を挙げ、指を鳴らそうとしたその瞬間、

「っ! なんだ?」

 少年の動きが止まる。

「そなたが何故そこまでスクライアを疎むのかはわからん。だが、我らは遥かな過去より歴史を見守り、その営みを後世に紡ぐのが使命。滅ぼされるのを甘受することはない」

 男性は悲しげに語る。

「ええい、黙れ!」

「せめて、そなたがスクライアであったという過去を消そう。そなたと我らは初めから交わることがなかった。そういうことにするのが良かろう」

「黙れ! 何を言っている?」

「そなたは、ゾート・スクライアではなく、ただのゾート。この先は己が意思のままに生きるが良い」

「ぐ、あ……」

 男性の言葉が終わると共に、少年が倒れ付す。
 それを悲しそうに見つめ、男性が息をつく。

「族長、お疲れ様です」

 事が終わったのを察し、テントの外から壮年の男性が声をかける。

「ん、このものはこの地の医者に預けよう。結局、こうなるのであれば誰も傷つかぬうちに、こうすべきであったのに……」

 少年への指図を出した後、これまでのことを思い返し、男性は悲壮な顔で呟く。

「いたし方ありますまい。この子が鬼子とはいえ、いきなり存在が気に入らないと暴力を振るうとは……しかも殺す気で」

 男性の右腕である部下が少年を抱き上げると、アレは仕方がないとなだめる。

「これもこの身が至らぬ故か……」

 しかし、男性が塞ぎこむのを止めるには至らない。

「あ、あーと、そういえば!」

 少年を外に控えている者に預け、指図した後、部下は必死に話題を変えようとする。

「ユーノから連絡がありましたよ、族長」

「ほう、ユーノか」

 実の孫と同じく、孫のようにかわいがっていた少年の名に、男性の表情がいくらか和らぐ。

「ええ。ただアークとフーカの二人が留年して、しかたなくミースとラーナもユーノに付き合ってあちらに留まるようです」

「そうか、こちらに戻り次第、次の発掘の指揮を執らせたかったが……」

 そしてユーノと同じく目をかけている4人の少年少女、お調子者のアーク、うっかり者のフーカ、リーダー気質のミースに引っ込み思案のラーナ。
 学院に入る前から仲の良かった5人組、孫のゾートも、と思うが何故か彼はユーノ個人に対して異常な憎悪を持っていた。

 いまだにその理由が男性にはわからなかった。

 しかし、理解にいたらなくて当然なのだ。
 理由など、転生前からユーノ・スクライアという個人が嫌いだったというだけのことなのだから。

「まあ、無理に呼び戻すほどの案件でもない。たしか、リーガが指揮を執る遺跡が梃子摺っているという話であったな?」

「はい、如何せんあの世界は紛争が日常茶飯事ですので……」

「先ずはそちらを優先するとしよう」

「は、見積もりを計算しておきます」

 そういって部下はテントから退出する。

 部下が去り、一人になると男性はやはり追放した孫のことに思案が行く。

「始祖よ、まこと勝手な願いながら、あの者にも始祖の加護のあらんことを……」

 そう、スクライアの始祖たるリーン・スクライアに祈りを捧げた。








「ユーノ、皆。爺さんから連絡が来たぞ」

 そう言いながら、ミース・スクライアは隣室で勉強中の3人に族長からの手紙を見せる。

 その言葉にダウン寸前だったアーク・スクライアとフーカ・スクライアの二人が、ピクンと反応する。
 二人の反応に、二人のために勉強を見ていたユーノ・スクライアはやれやれと肩をすくめた。

 そうして、ユーノがミースのほうを見ると、ふと目が合ったミースの双子の妹ラーナ・スクライアがビクンと反応し、兄ミースの体を盾に視線から隠れる。
 生まれたときから一緒にいるユーノたち5人であるが、ラーナは異様なまでに人見知りが激しく、兄であるミース以外の人間とまともに話せたためしがない。

 そんないつも通りのことなので、ユーノも特に気にすることはなく、兄ミースも、

「まあ、あっちは気にすることなく勉学に励めとさ。とくにお前ら二人はな」

 そう言って留年したアークとフーカの二人に視線をやる、その二人はさっと視線をそらした。

「じゃあ、上にいってもいいんだ?」

 ユーノが意外そうに言う。
 次代の星として期待されているユーノは、本来学院を卒業した時点で一族の発掘作業の指揮を執る予定であった。

 それが同期の二人が留年し、ユーノに泣きついたために1年の期間限定で帰還延期を告げていたのだ。
 その返答に、気の済むまで学べとのこと。

 ユーノとって最低限、必要なことを履修していたし、何時スクライアに戻っても問題はなかったのだが、それでも管理世界の中心であるミッドチルダに集積された知識は魅力的であったし、開放された本局の無限書庫も非常に興味を引かれていた。

「無限書庫の閲覧レベルはどうなってたっけ?」

「第一階層は管理世界市民権を持ってれば問題ないな。それ以降は資格やら何やらが必要になってくるぞ」

 と、ユーノの疑問にミースが即座に答えを口にする。

「そっか、じゃあアーク、フーカ。一旦休憩にしよう」

 ユーノはそう言い、無限書庫に関する情報をまとめるために部屋を出て行く。

「りょーかい!」

「はーい」

 留年二人組みはぐでっとしながら返事をした。








「さて、予定とは異なるが、これでユーノが原作に入ることは先ずないだろう」

 ユーノが去るのを確認した後、ミースがそう口にした。
 無論、転生者である。

「バカ二人のおかげ……」

 先ほどまでユーノに対し呆れるほどの人見知りを見せていたラーナがぼそりと毒を吐く。

「結果オーライってことよ!」

「そうそう!」

 その言葉に怒りを見せることなく、アークがキラッと歯を光らせながら、グッと親指を立てる。
 それに便乗するフーカだが、その顔には幾すじかの汗が見れる。

「まあ、その通りだな。あまりユーノに負担をかけるなよ?」

 これ以上言うこともないとミースは判断し、二人に注意を促すだけに留めた。

「おう!」

「はーい」

 二人はいい笑顔で返事をする。

「……糞ゾートが私たちから追放された」

 話が一段落ついたと判断したラーナが、この場の4人にとってのみ朗報を告げる。

「っしゃあ!」

「ようやく? ってまあ、族長の孫だからなー」

 その事に喜びを露にする二人。
 ユーノを淫獣呼ばわりする少年をアークたち4人はことのほか敵視していた。

 が、ゾート・スクライアはかなり強力な転生者であり、初めからユーノを原作に近づけるつもりがなかった4人は揃いも揃ってサポ系のスキルを選択しており、4人がかりですら歯が立たず、覚醒してから学院に入学するまでの半年間、常に大人たちの目の届く範囲でゾートの横暴に耐えるほかなかったのである。

「スクライアの名を失えば、スクライアの知識・記憶も失われる。あのクソがユーノに関わることは二度とないだろう」

 そう言いながらミースがフンと鼻をならす。

「スクライアの加護……リーンの翼……」

 ラーナが呟く。

「……やっぱり、始祖様のリーン・スクライアってあたしらと同じなのかな?」

「俺はそうだと思うぞ!」

 フーカの疑問にアークが即答する。

「だとすると、とんでもないユーノスキーだな。10万年前の彼女の逸話が、いまだに管理世界・管理外世界で語り伝えられているんだ、尋常じゃない」

「現存する最古の記憶……伝承の一族……」

「ユーノのためにスクライアを創り上げた。っていうことかな、やっぱ」

「だな!」

 いつものようにその結論にたどり着き、始祖の愛の重さに4人ともげんなりしつつも、勝てないなぁとため息をついた。









      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








 さて、セカンド転生者・八神迅雷との遭遇から約一月が経過した。

 本日は兄の高町恭也さんに連れられて、月村家に向かっている。
 どうやら連休明けぐらいに、例のなのはとアリサ嬢の喧嘩があったらしい。

 ゆきのさんはその当日には知っていたらしいのだが、僕が知ったのはその三日後である。
 まあ、男兄弟だし仕方ないね。

 で、暫く前にそのことが夕食中に話題に出て、恭也さんの彼女がすずか嬢の姉とわかり、色々巡って本日のお茶会となったわけである。
 当然、アリサ嬢も参加する。

 ついでに八神さん家のはやてちゃんも参加する。

 これまで気づかなかったのはうかつに過ぎるが、なのはとはやては同じクラスであった。

 ちなみにはやてがこのグループに参加する切っ掛けは、図書館ですずか嬢と仲良くなったのが原因である。

 しかし、なんとも気まずい。
 今はまだ兄の恭也さんがいるからまだしも、月村家に着いて彼女の忍さんといちゃつかれたら女5人に対し男は僕1人だ。

 今から気が重いや。

 そんな風に考えていたことが、僕にもありました。







《転生者一覧が更新されました》







【ユージン・バニングス】

年齢:16歳(/100歳)

・家族:アリサ・バニングスの兄(50P)
・秀才(30P)
・容姿:美形(20P)

現在地:第97管理外世界






「……」

 結構、近くにいるもんだな。

 僕はそんなことを考えつつも、なんともいえない笑顔でお互い自己紹介をしている迅雷のオッサンとサード転生者を眺めていた。






 一通りの紹介が終わった後、僕の予想通り兄の恭也さんは彼女の忍さんに連れられて屋敷に姿を消した。

 僕はといえば、女の子5人の華やか空間を遠慮し、保護者の方々とご一緒させてもらうことになった。
 それにしても、ゆきのさんのスルーっぷりは尋常ではない。
 まごうことなく転生者である二人を前にしても一切動揺しないのである。
 内心はどうか推し量るしかないが、いや大したものである。

「で、小僧。コイツは信用できるか?」

 タバコを吸おうとしたところ、当家は禁煙ですとメイドさんに没収され、悲しそうな顔で去っていく彼女を見つめていた迅雷のオッサンであったが、それを呆れたように見ていた僕たちに気づき、ゴホンと咳をする。

 そして、露骨な話題そらしを振ってきた。

「まあ。僕からしたらアンタよりは」

 とりあえず突っ込むほどでもないので、正直に答える。
 よく考えたら僕はこのオッサンについて、はやての叔父という以外はいっさい知らない。

「ほう、なら安心だ」

 オッサンはそれを聞いてニカッと笑う。

「おや、君は例のアレを取ったのかい?」

 僕ら二人のやり取りを聞いていたアリサ兄が、紅茶を飲むのを止めそんなことを言ってきた。

 これは一覧スキルに気づかれたか?
 というか、ルールブックを一通り見たら気づくのが普通か?

「やっぱりわかりますか? まあ、そうです」

「わかるよ。というか、そこまでわかるタイプのスキルはアレだけじゃないか」

 そう、他の転生者の情報、特にスキルの情報を入手するには相手に教えてもらう以外、このスキルで情報を得るしかない。
 転生者の位置を感知したりするものは、他にいくつかあったりするのだが。

「ん? ただの感知系じゃないのか?」

「おや、ルールブック未読組ですか?」

 オッサンがそんなことを言い、アリサ兄が尋ねる。
 でも未読にしては、かなりしっかりしたスキル選択だったが?

「ルールブック? なんだそりゃ?」

「リリカルなのはTRPG・ルールブックという名のふざけた本ですよ、500ページぐらいある」

 ん? 500ページ?
 いや、あれ3000ページはあったぞ確か。

「知らんなあ」

「では、必要P制というのもご存じない? 寿命に関わってくるからかなり重要ですよ」

「ん、あの持ち点100ってやつだろ? 100を超えると寿命が減るっていう」

 なにやらかなり情報に齟齬が。
 と、そういえばゆきのさんも他の転生者がいることに驚いていたな。

「あの、お二人は僕らみたいのが複数いるというのは転生する前からご存知で?」

「ああ。まあ、こんなにいるとは思ってもいなかったがな」

「ええ、かなりいるはずと想定していましたよ」

 と、またしても異なる答え。

「僕も結構いることはわかっていたんですけどね。ただ、妹のゆきのは他にいることを知らなかったっぽいんですよね」

「あん、どういうことだ?」

「……なるほど」

 そう、ルールブックは神が応対に飽きたから作成されたものだ。
 単純に考えれば、ゆきのさんは相当初期、迅雷のオッサンはルールブックが作られる前、アリサ兄の人は作成後、そして僕は最後である。

「──と、いうことです」

「なるほどねぇ。面倒臭い世界だな、まったく」

 と、僕がしばし思考の内に沈んでいた間に、兄の人がオッサンにその辺を説明していた。

 オッサンの言葉通り、なんとも面倒臭い世界である。

 この面倒臭いの意味合いが、実は相当異なるのを知るのはおよそ1年後の話。

 所謂原作開始のおよそ1年前の、本当に幸せだったと思い返すことになる日々の出来事であった。





[28418] 4話 いうなれば主人公は、マサルさんのフーミン、銀魂のメガネポジ
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/06/26 13:55

「ここは……」

 知らない天井だ、と呟きながらゾートは体を起こした。

 周りを一瞥すると、病室のように見える。

「俺は、一体……」

 転生者ゾートは何故自分がこのような場所にいるのか思い出そうとし、

「痛ッ、なんだ?」

 一瞬、頭に鋭い痛みが走った次の瞬間、ここに至るまでの経緯を思い出した。

「そうだ、ジュエルシードを探す旅の途中だったな」

 そう、なのはと、■■■に先駆けてジュエルシードによる出会いを演出するためだ。

「ん? ■■■? ん?」

 彼は何か忘れている気がした。

「あら、気がついたのね?」

 が、見回りに来た看護士に声をかけられたことで、その疑問もいつの間にか霧散していた。

 その後、看護士の連絡で医師がやってきて、ゾートがただの疲労で体力が回復し次第、退院できると告げる。

 どうやら、なかなか手がかりがつかめないジュエルシードの探索に体力の限界を超えてしまったらしい。

「フッ、幾許自重せねばならんか。アレを見つけるのは俺となのはのロマンスに至るプロローグに過ぎんわけだしな」

 そういえば、原作においてアレを発掘したのは■■■■■一族で、

「ん? ■■■■■? ん?」

 発掘したのは、どこの誰だったか?

 まあ、この世界、ロスト・ロギアのオークションなんてものもあるのだ、それを生業にする連中もいるのだろう。

「問題ない。この俺、『素晴らしき』ゾート様がジュエルシード風情を見つけられないわけがない!」

 そう言いきり、ゾートは自身の能力を確認するかのように指をパチンと鳴らす。

 その音と共に不可視の真空波がそばの水差しを縦に真っ二つに切り裂く。

「そうだ、この俺『素晴らしき』ゾートの人生は素晴らしいものと決まっているのだ!」

 フハハハと、声を上げて笑う。





 その後、水差しを壊したことを看護士に注意され、ついカッとなって真っ二つにしてしまった。
 無論、即日全次元世界に指名手配され逃亡生活を余儀なくされることとなる。







「ういっす、姐さん。どうしました?」

 八神迅雷は上司からの定期連絡以外の緊急通信を使い魔のエレノワールから知らされ、これ幸いとはやての相手を彼女に押し付けて自室にやってきた。

『うむ、いい報告ではないな』

 そう言いながらも、何時も浮かべているうっすらとした笑みのまま、リーゼフラン・グレアム査監部長は情報を提示する。

『またしても『フリーダム』が増えたぞ。こいつで10人目だな』

 情報にあるのはゾートという少年。
 無論、考えるまでもなく転生者だ。

「この、元スクライアの可能性あり、というのは?」

『所謂、非合法施設辺りの出身でもない限り、基本戸籍は無限書庫に蒐集されるからな。戸籍のないコイツが事件を起こした場所は、前日までスクライアが調査を行っていたところだ』

 なるほど、件の始祖の加護を失ったとも考えられるわけだ。

「で、なんで自分に?」

 一応、現在は特殊任務中だ。
 勿論、元の部隊が対『フリーダム』部隊なのは承知のうえだが。

『コイツが逃亡中に何度か情報屋に接触し、ジュエルシードについての情報を探っていった。そちらに行く可能性が高い』

 思わず、迅雷はげっと声を上げる。

「ユーノが来ないから、後は沸いてくるバカを教育するだけでいいと思っていたんですがねぇ」

『早々うまくいかんという事だろう。コイツの動向が判明し次第、待機中のアースラには増員を送る』

 現在、地球衛星軌道上の別次元に待機中の次元航行艦アースラには、迅雷たちと同じく転生者である艦長のロベルト・ナカジマとその使い魔ペーネロペーが彼のバックアップを務めている。

「増員は誰に? 普通に考えりゃルミカとカウリの2人でしょうが」

 他の連中だと、下手すりゃ海鳴が吹き飛んじまう。

『それにペンドラゴンの爺様をつける。笑えることにまた強くなったぞあの爺様』

 もう復活したのかあのジジイ。あの脳筋にボコボコにされたのは確か先週だろう?
 しかし、9人しかいない対『フリーダム』部隊なのに半数近い俺を含めた4人を投入するとは。

「……やっぱ、やばいですか? ココ」

『……お前次第だ、としか言えんな』

 リーゼフランの目は千里を見通すと言われる姐さんがこうも言いよどむとなると、先の天鏡将院とは比べものにならんか。

 その後、幾つかの定時報告もついでに行い、迅雷はすこし憂鬱気味に部屋を出た。






「ほーれ、ほれ! エレさん、ええ乳しとりますな~」

「あ、あん。って、やめて下さい、はやてちゃん!」

 居間に戻った迅雷が見たのは、乳揉み魔と化した姪のはやて。

 兄夫婦は苦笑しつつも、暴走する娘を放っている。

「あっ、マス……じんさんっ! 助けてください!」

「お、あかんでぇ、ジンさん。こんな一級品のおっぱい、独り占めにしたら」

 涙目で助けを求めるエレノワールに、なんだか目がぐるぐるして焦点の合っていないはやて。
 迅雷はため息をつきながら、おっぱいを揉みしだくはやての襟をつかみ、ぐいっと一気に自分の目線近くまで持ち上げた。

「むー!」

 はやてが口を尖らせて抗議する。

「悪いな、はやて。こいつは俺んだ」

 そう言ってニカリと笑う。
 それを聞いたエレノワールが、小声でますたーと呟きながら目をうるうるさせたりする。

「ぶー」

 迅雷は不承不承といったはやてを下ろし、エレノワールのことは見なかったことにした。
 はやてにおっぱいを揉まれまくったためか、なんだが顔を赤らめ、ぴとりと背に張り付いてきたが気にしないことにする。

 なにゆえ自分の使い魔に欲情せねばならんのか。
 正規の使い魔とは幾分違うとはいえ、そういうのは管理世界でもいまいちいいとされていない。
 ついでに、もし手を出したら、とんでもないことが起きるとわかっているのに、手を出す道理があるわけなかった。

 はーっと、深く息をつき、エレノワールを小突いて背から離す。

 そうしてソファーに腰を下ろすと、

「えいっ!」

 と言って、エレノワールがぴょんとひざの上におさまる。

「あーっ! ジンさんのひざははやてちゃんのもんやで!」

 それを見たはやてが対抗するように迅雷のひざに突撃する。

 迅雷のひざの上で二つのお尻が激突する。

「なんだコリャ……」

 目の前で繰り広げられるどうしようもない争いに、迅雷は天を仰いだ。





 後日、勇治とユージンの2人にそのことを愚痴ると、リア充爆発しろと勇治は言い、ユージンは苦笑しながらノーコメントで通した。








 ユージン・バニングスはバニングス家の長男である。

 要はよほどのあほな事をしない限り、将来は薔薇色である。

 転生者ではあるが、原作のバトル重視に途中から微妙についていけなくなった彼は、転生に当たってメインストーリーに関わるという選択を真っ先に除外した。

 故に、アリサ・バニングスの兄へと転生を果たしたのであるが、したらしたで結構面倒臭いことがわかった。

 上流階級ならではの躾や、学業などは秀才スキルで無難にこなしたので問題はなかった。

 問題は妹のアリサである。

 声も容姿も彼好みの少女であるが、無印が一番好きなため、あまりにシスコンが過ぎると妹がなのはやすずかと友情を結ばない危険もあった。

 そんな中途半端な日々が続いていたのだが、先日ようやく例のイベントが発生し、3人が友情を結ぶことと相成ったのである。

 とはいえ、なのはの姉の転生者や、何故か健常なはやてがおまけについてきたりしたわけだが。

 ともかく懸念であったアリサのわがままにある程度の掣肘がなされ、ユージン自身も意外な友人を得る機会に恵まれることとなり、順風満帆の人生といえるだろう。

「なのはが、冒頭で微妙な疎外感とか言うのあるじゃないですか」

「ああ、なんとなく覚えてる」

「そういうのもあったね」

 あの日、月村の家で偶然遭遇した相当年齢差のある転生者3人は、その後も翠屋ちょくちょくあって話などをするようになる。

「あの疎外感みたいのは、確実に僕にきてますね。なのは、ゆきのにかなり懐いてますから」

「あー、成る程ねぇ」

「そうなると、なのはちゃんは原作の通りとはいかないかもね」

 そのユージンの言葉に、迅雷は内心どうなることやらとため息をつく。

「で、ゆきのが花嫁修業みたいな感じで桃子さんに料理を習うと、負けられんとでも思うのかなのははお菓子作りを習うんですよ。翠屋2代目は安泰だなとか士郎さんもニコニコしてますね」

「ま、そーゆーのもありだわな」

「僕らが言うのもなんだけど、もう原作? なにそれ状態だね」

 なんだかんだと、表向きにはまじめな優等生で通しているユージンではあるが、所謂転生者仲間である八神迅雷と高町勇治の2人には割りと素で接していた。







「いやああああああ!」

 母親の注意が世間話で逸れていたために、ボール遊びに夢中になっていた子供がそれを追いかけて車道へ飛び出してしまう。

 そこに運悪くもトラックが迫る。
 運転手も、とっさにブレーキを踏むが、それが間に合いそうもないのはこの場にいる誰もが感じたことだった。

 不意に車道を横切る黒い影。

 トラックが大音声を上げ、盛大にブレーキ跡を地面に残し、子供のいたであろう場所をわずかに過ぎて停止したとき、運転手は来ると思った衝撃がないことを疑問に思った。

 慌てて外に飛び出て、辺りを見回すが、へたり込んでいる女性と集まってきた野次馬のほかは見当たらない。

 と、それらの人間の視線が自分以外の一点に集中していることに気づき、彼がそちらを見やると、

「フッ、危機一髪、と言ったところか?」

 そう、笑みを浮かべながら、なんだかわかっていない顔でボールを持った子供を抱き上げる、凄まじき威圧感を放つ青年がいた。

 ゴクリと息を呑む運転手の前を通り過ぎ、へたり込んでいる母親の前に子供をおろすと、

「会話を楽しむのも良かろう。が、場所は考えるべきであったな。今後は慎むが良い」

 そう言いながら子供の頭を撫でる。

 子供は相変わらず良くわかっていないようであったが、頭を撫でられ笑顔を浮かべる。
 ハッと、感情が追いついたのであろうか、母親はゴメン、ゴメンねぇと口にしながら子供をぎゅっと抱きしめた。

「こちらはかように大事無い。貴様も仕事に戻るがいい」

 そう青年に言われ、運転手はコクコクとうなずきながら運転席に戻る。

「見世物ではないぞ? 早々に散るがいい」

 最後に群集に向かってそう命じる。

 彼らは青年の威圧感に推されるまま、三々五々と散っていく。

「あ、あの!」

「フム?」

 そうして青年が歩き出そうとしたところで、母親が彼を呼び止める。

「お、お名前を……お礼に……」

 そう言いかけるが、

「礼など不要。貴様らを導き助けるは我(オレ)の定めよ」

 青年はそう言って不敵な笑みを浮かべる。

「が、名は伝えよう。我(オレ)はフリードリッヒ・ジークフリード・ウィルヘルム・バルバロッサ。覚えておくがいい」











 その日も呼吸をするように人助けを敢行した青年は、人気のなくなる夕方、郊外の林のほうへ歩を進めていた。

 歩くこと15分ほど、

「出て来い、この我(オレ)が気づかんとでも思ったか?」

 不意に青年がそう口にする。

 周囲の殺気が増し、わざと郊外まで誘導されたと気づいた襲撃者が、憤怒の相を浮かべながら青年の前に姿を現す。

「なんだ、オマエもガキか。狙いが透けて見えるようだな?」

 凄まじき殺気を放つのは遥かに年下の少年。

 青年は全く動じていないが、並の人間なら殺気に当てられ気絶してもおかしくはないほどの濃厚なそれである。

「なんだ? 黙っていないで何か口にしろ。我(オレ)が許すと言っているのだ、口を開け」

「死ね!」

 青年の挑発に、少年はそう口にすると共に瞬時に十振りの魔剣を投影し、青年へと放つ。

 が、その魔剣は青年へと届く前に、ノーモーションで青年の背後に現れた同数の魔剣により迎撃される。

「っ! ────I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)」

 その迎撃時の衝撃の瞬間、少年は距離を取り詠唱を開始する。

「またそれか……オマエで4人目だぞ? 無限の剣製は」

 少年の詠唱を聞き、つまらないというのを顔に隠さずに青年は肩をすくめる。

 少年は青年の言葉を無視し、詠唱を続ける。

 そして、青年も少年の詠唱が終わるまでの数秒を黙って待っていた。

「───Mywholelifewas(この体は、)“unlimited blade works”(無限の剣で出来ていた)」

 詠唱が終わると同時に、世界が赤く荒涼とした剣の丘に塗り替えられる。

 固有結界『無限の剣製』である。

「いくぞ贋英雄王(モドキ)。武器の貯蔵は十分か」

 少年は勝ち誇った笑みを浮かべ、そう宣言する。

「オマエたちはいつもそれだな。確かに我(オレ)はかの英雄王を再現したと言っても過言ではない」

「黙って、死ね!」

 青年がそう語り始めるが、少年はそれを無視して攻撃を開始した。

 数十の魔剣が青年に襲い掛かり、

「が、そ・れ・だ・け・しか、していないわけがなかろう?」

 その身体から少しばかり離れたところで急停止し、そのまま地に落ちる。

「なんだと!?」

 必殺の攻撃が青年に触れることなく無力化され、少年は愕然とする。

 少年が愕然とした数瞬のうちに、青年は乖離剣・エアを虚空から手に取る。

「死なぬよう手加減はしてやる。我(オレ)は寛大である。が、二度はないぞ?」

「────っ!!」

「天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ) !」

 朱の閃光が、少年の固有結界を吹き飛ばしながら咄嗟に展開したプロテクション・フィールドごと、通常世界に戻った林の奥へと容赦なく押し込んでいった。

「……フン、死んではおらんな。しかし、こうも好戦的なバカ共が多いとは。積極的に関わるつもりはなかったが、我(オレ)とて一ファンの内、いまや原作などあってなきがごとくであるが……彼女たちがバカに蹂躙されるのは好かんな」

 転生に当たり、

『牙無きものの牙とならん』

 そう決心した青年はこれまで各地をふらふらとしながら人助けの旅をしていたのだが、最近になって急に増えた襲撃者を前にして原作への介入を考え始めていた。

 青年は転生者にしては珍しく、原作への積極的介入を考えない人間であった。

 そんな彼が他の襲撃者に狙われるような事態に陥ったのは、人助けに人外の力を使っておきながら全く隠遁を行っていないため、ネットや口コミで金髪のヒーローとして日本各地へ広まっていたからである。

 そして、それを他の転生者が知れば、確実にかの英雄王のスキルを持っていることを知るのは容易い。

 出る杭は、と言わんばかりにこれまで4度の襲撃を受けることとなったのである。

 その4人の襲撃者が4人とも『無限の剣製』を所持していたのは何の偶然であろうか。

 原典を考えればほぼ確実に相性勝ちが狙えるのであるが、如何せん青年が習得したスキルは英雄王のものだけではない。

 その4人とて、習得スキルは『無限の剣製』だけではないにも拘らず、それを失念していた。

「原作開始は何時であったか……まあ、夏前のこの時期にこやつ等が襲撃をかけるだけの余裕があるのだ。まだ始まってはいまい」

 来年の4月あたりに海鳴へと足を向けるとしよう、そう青年は呟く。








 考えの足りない転生者は自ら禍を引き寄せる。

 青年は現在、覚醒している転生者の中でも最強の一角。

 『神』曰く、250950Pの男。

 海鳴は魔境となるのか?




[28418] 5話 原作に登場するはずだった人たち、他
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/06/26 13:52

「ふぁーあ、おはようアリシア」

「おはよう、お父さん」

 バラン・テスタロッサの朝は早い。
 が、それにまして早いのが義娘のアリシア・テスタロッサである。

 テスタロッサ家唯一の専業主婦にして、最高権力者である彼女は本日も楽しそうに8人分の朝食を慣れた手つきで用意している。

『昨夜未明、第37管理世界ファーンにて超S級次元犯罪者キラ・ヤマトが中央空港を襲撃、いつものように「僕に撃たせないで!」「守りたい世界があるんだ!」など、意味不明の発言を繰り返しており──』

 バランはアリシアが用意してくれたコーヒーを飲みながら、朝のニュースを見ると『フリーダム』の二強の一人、キラ・ヤマトがまたしても無死者を貫きつつも破壊行為に精を出していた。

 同じ転生者のバランであるが、如何せん恋愛型の転生者であり『フリーダム』の連中の思考は理解の範疇になかった。

「おはよう、アリシア。おはようございます、義父さん」

「おはよう、アナタ」

「ああ、おはよう」

 そんなことを考えていると、同じく転生者であるカールライト・テスタロッサが特徴的な赤毛をかきながら、途中ですれ違ったアリシアと軽く朝のキスを交わすと、居間まで歩いてきた。

「また、アイツですか。ほんと、どんなスキル編成にすれば本局の化け物連中相手に圧倒できるんだか……」

 カールライトとて転生者である。
 恋愛型とはいえ、歴とした空戦Sランクの資格を持つ魔導師だ。

 しかし、『フリーダム』の連中は最低がSSSランク、今話題に上がっているキラ・ヤマトは総合SSSSSランクに位置する最強クラスの化け物である。

 かつて、恋もバトルもと意気込んでいた自分の浅はかさを、カールライトは笑うしかない。

「はよっす、義父さん、義兄さん」

「ああ、おはよう」

「おはようさん」

 二人がそれぞれ考え事をしながらニュ-スを見ていると、テスタロッサ家最後の転生者である青髪のレオン・T・スラッシャーが居間へとやってくる。

 二人と同じようにレオンもニュースをみてため息をつく。

 彼もまた恋愛型の転生者であるが、義父義兄とは異なりバトル面にも重きを置いていた。
 今思うと失笑モノであるが、戦闘スキルで幽波紋:エンペラーを習得し、不可視の弾丸をもって戦場に君臨しようなどと考えていたのだ。
 そして魔導師ランクもSS、原作では八神はやてのみであった最高ランクといっていいものであったのだが、残念ながらSSランクよりSSSランク以上のほうが多いというこの世界ではレオンのスキル編成は中途半端なものというほかない。

 それでも首都航空隊最強の魔導師として知られているが、対『フリーダム』部隊にお呼びがかからない辺り、転生者の中では中の下の強さだったりする。

「おはようございます、皆さん!」

 転生者三人がニュースを見ながらそれぞれの思考に耽っていると、早朝ランニングから帰ってきたアリシアとカールライトの長男、エリオ・テスタロッサが元気よく挨拶する。 

「ああ、おはよう」

「おはよう、エリオ」

「おはよ、今日も元気だな」

 と、三者三様の挨拶を返した。

 その後エリオはテーブルに並べられた朝食に目を取られるが、母アリシアにシャワーを浴びてくるよう言われ、大急ぎで浴室へと駆け込んでいく。

「おはよう、皆」

 入れ替わりにプレシア・テスタロッサが気怠げに、アルフを除く皆の使い魔を伴って居間へとやってきた。

 プレシアの使い魔、ネズミのシャイターン。
 バロンの使い魔、白猫のローラシア。
 アリシアの使い魔、山猫のリニス。
 カールライトの使い魔、柴犬のミケ。
 レオンの使い魔、ハムスターのミカヅキ。

 それぞれ動物形態でプレシアの後にチョコチョコトテトテと続く。

「リニスたちはこっち、先に食べちゃいなさい」

 母親と共に使い魔たちが起きてきたのを見たアリシアは、使い魔用のペットフードを台所に用意する。

 使い魔たちはそれを聞き一斉に駆け出した。

「さて、フェイト達を起こしてきます」

 相変わらず寝起きの悪い妻子を起こすため、レオンが席を立つ。

「なんだかあの子、年々おバカになっていくきがするわ……」

 孫と使い魔一緒になって幸せそうに眠りこける次女の寝姿を思い浮かべ、プレシアははぁっとため息をつく。

「幸せな証拠だよ」

 バランはそう言って笑う。

 夫の言葉にそうかもね、とプレシアも笑みを浮かべた。








「ほら、フェイト起きろ。レヴィもアルフも起きなさい」

 そう言いながらレオンは3人の眠る寝室のカーテンをバッと開く。

「っ!」

「ほえ?」

「んあー?」

 朝日が部屋を照らし、光から避けるように布団に潜り込んだフェイト・T・スラッシャーに対し、娘のレヴィ・T・スラッシャーとフェイトの使い魔であるアルフはもそもそと布団からはい出てくる。

「……はぁ」

 妻のダメさにため息が出るレオン。

「パーパ、おはよー!」

 娘がまともなのが救いだが、この子もそのうちアホの子へとなっていくのだろうか?
 所謂『雷刃の襲撃者』をそのまま幼児にした姿の娘に、ついレオンは暗雲とした将来を思い浮かべてしまう。

「うーん、おはよ、だんな」

 と、アルフの声に正気にかえる。

「もうミカヅキたちの食事ははじまってるぞ、アルフも急ぎなさい」

「えっ、もうそんな時間? アリシア、まっとくれー」

「パーパ、だっこ」

 アルフにそう告げ、抱っこを要求する娘を抱き上げる。
 同時にアルフは大急ぎで台所へと駆けていった。

「フェイト、いい加減起きないか。レヴィもアルフももう起きたぞ」

「……あと1時間」

 5分でなく、1時間とな? 駄目だ、コイツ、とレオンは布団を無理やり剥ぎ取る。

「うにゃあーーーーー!」

 朝日を浴び、ゴロゴロのたうちまわる妻の惨状にため息をついた。





 あの後、数分のゴタゴタがあったもののレオンは寝ぼけ眼のフェイトを連れ居間へと戻る。

「もう、しゃんとなさい! フェイト」

「うん、アリシア」

 姉の叱咤に蕩けた笑みで答える妹に、母はため息をつく。

 男衆3人は苦笑するほかない。

 それから更に5分、ようやく全員が食卓に着く。



「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」



 8人の声が食卓にいっせいに響く。



 中央技術開発局総長:プレシア・テスタロッサ58歳

 ミッドチルダ治安維持局局長:バラン・テスタロッサ50歳

 元開発局第7室室長、現専業主婦:アリシア・テスタロッサ30歳

 クラナガン機動魔導師団団長:カールライト・テスタロッサ36歳

 テスタロッサ家長男:エリオ・テスタロッサ8歳

 開発局第7室室長:フェイト・T・スラッシャー23歳

 クラナガン第一航空隊隊長:レオン・T・スラッシャー26歳

 スラッシャー家長女:レヴィ・T・スラッシャー4歳



 クラナガン郊外に豪邸を構えるテスタロッサ家の、毎朝の一コマである。










「母さん、いってきます」

 そう言って、クロノ・ハラオウンは表で待っている幼馴染2人の元へと急ぐ。

「いってらっしゃい」

 リンディ・ハラオウンはエプロンを片付けながら息子を見送る。

 この後、彼女も本局へと出勤する。
 夫のクライド・ハラオウンは長期航行訓練中のため、ここ一月は息子と二人暮らしである。

 一人息子のクロノはリミエッタ家の双子の姉妹と共に、ミッドチルダ中央学院大学に在学中で、2年後の卒業と共に入局予定だ。

 彼女自身としては、息子が夫や自分と同じ道を選んでくれるのは嬉しく思いつつも、まだまだゆっくりしてもいいのにと複雑な心境である。

 彼女自身も参加した、グレアム一派による15年前の大改革は次元世界を一変させた。

 『サーヴァント・システム』による強力な使い魔の量産。

 無限書庫の開放による対ロスト・ロギア専門部隊の創設。

 これら局員の努力により、人材不足は解消され、次元世界崩壊につながるような大事件も減少傾向となった。

 それに伴い、入局規定も改変され、現在は15歳未満の就業は禁じられている。

 それでも新たな問題は起こるし、世界はいまだ平和とは言いがたい。

 『スーパー・フリーダム』キラ・ヤマト

 『求道者』リュウ・サカザキ

 『歩く大迷惑』孫 悟欽

 『金色の』ギル・ディラン

 『無限剣』ロードリッヒ・セルバイアン

 『ザ・ワン』エミヤ

 『二番目』エミヤ・シロウ

 『三人目』衛宮 士郎

 『百計の』ゼロ

 そして先日これに加えられた『切り裂き』ゾート

 これらSSSランクオーバーの怪物たち。

 まとめて『フリーダム』と呼称される次元世界に住む人間全ての敵。

 できればクロノが入局するまでに、一人でも『フリーダム』の人間を減らしたいものだ。

 









      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










「この、洗脳タイプの魔法は誰にでも効くの?」

 転生の間に質問の声が上がる。

『君らには効かないがね』

「そう、なら今までどれだけの人を転生させてきたの?」

『それを君に教える必要を感じないな』

 幾度かの問答がなされ、ルールブックに記入されていない事柄が返答の度にルールブックに追加されていく。

(この『神』は、やはり転生者の人数を教える気はない)

「……では、特定の人物をこの洗脳タイプの効果から除外させることは可能?」

『可能だよ』

(やった、これならユーノが白痴化せずに……いや、スクライア一族にわざわざ転生してユーノを排除しようとする人がいないとも限らない)

「スクライア一族に対する洗脳タイプの魔法無効化は可能?」

『そうだな、200Pといったところか』

(やはり、それなりにPは必要……)

「例えば、特定の人物が不幸にならない、といった抽象的なものもいいの?」

『構わない。そうだな、転生者を含めたすべての存在がその特定の人物に害をなそうとするのを不可能とする、という形にしよう』

「それはいいわね、ユーノ・スクライアが不幸にならないを追加して」

『いいだろう、250Pだ』

(……これで、他の転生者もユーノを傷つけることはできない。Pはオーバーしちゃったけど、問題ないか)

「じゃあ、その二つでいいわ。さっさと転生させて頂戴」

『ところで、君がこの人物に其処までするのは何故かね』

「愛よ!」

『……そうか。では、その愛、どの程度のものか見せてもらおうか』

 ステータス追加→出身:原作開始前に死亡(-500P)

 ステータス追加→SSSランク結界魔導師(150P)

「あら、これで100P? 気前がいいのね?」

『いいのかね。この条件だと件の彼に会えなくなるが』

「何の問題が? 私の愛は無限だよ!」

『……では、頑張ってくれたまえ』















 そうして私が生まれたのは、古代ベルカもアルハザードの萌芽すらない遥かな過去。

 とある辺境の村のリーンとして生を受けた。











 このまま特に何かをなすこともなく生を終えると思っていた私であったが、こんな時代でも、いやこんな時代だからこそ私たちのような異能者は目立ってしまうものらしい。

 私の生まれたこの地方では、理論だった魔法式が生まれる前の原始的な儀式魔法が主流であったのだが、所謂スキルとしての結界魔導師がこれに相性抜群であったためか、生き神様のような立場に崇められてしまった。

 この星ではそういった生き神様を奉り、その力で生産力を増したり戦争を有利に運んだりと、今一現代人だった私にはピンと来ないシステムであったのだが、面倒臭がりでもあった私はその力を主に専守防衛に使っていた。

 そんなことをしているうちに、戦乱を避けて各地の知識人たちが私の地方に集結してしまい、いつの間にかこの星で最強の力を持つようになっていた私に、戦乱を終結に導くよう願うようになっていた。
 それでも、争うのが面倒臭かった私は、「私は基本的に見てるだけ、それが嫌なら他のところに行こうよ」と言ったら、なんか皆が感動して他の星へ行くことになってしまった。

 そうして私たちはこの星を離れることとなった。

 残念ながら私の生まれたその星は、私という重石がいなくなった事に加え、社会基盤を構築しつつあった知識人が根こそぎ私に着いて来てしまったため、幾度かの暗黒時代を経て滅亡してしまった。

 なにやら、私と共に星を離れた連中は何時しか自分たちのことを、文明の興亡を見守り、後世へと紡ぐ一族と名乗るようになった。

 なんだか私の知っているスクライア一族みたいだったので、私は彼らにスクライアを名乗るように命じた。

 久々に私からの指示だった為か、なんだか予想以上に彼らは喜んでいた。










 いつの間にか私の力は全次元世界に及ぶまでになっていた。

 スクライアを名乗る連中も、かつて私が生まれた星の血を引くものは一人もいない。

 丁度いいか、と私は思う。

 単純に生き飽きた。

 例の生き神を奉るシステムは星が滅んだときに消失している。

 それを維持する祭司の一族も絶えて久しい。

 スクライアの連中とて私が守護神的な存在と思っている。

 まあ、所謂天使のような姿で出現するから仕方がないとも言えるけど。

 本当の私など、数千年前、とある星でその力から生贄にされただけの人間だというのに。

 私の本体は神殿の聖櫃に安置されたミイラだ。

 既に神殿は樹海に覆われ、神殿のある星はスクライアからも忘れられた星だ。

 というか、祭司が絶えた時点で私がそうなるように仕向けた。

 これから私がすることを邪魔されたくないからだ。








 私は今、お呪いをかけようとしている。

 私が大好きな人のためのお呪いだ。

 私の全ての魔力を祈りに変えて、全次元にかけるお呪いだ。

 大好きなユーノ・スクライアにかけるお呪いだ。

 私の存在を、そのまま世界の法則に書き換えるお呪いだ。

 









『ユーノ・スクライアが幸せでありますように!』











『君の愛、しかと見せてもらったよ』

(……)

『この【世界結界・リーンの翼】は間違いなくユーノ・スクライアの元へと届くだろう』

(……)

『では、ゆっくりと休みたまえ』

(……ユーノくん、大好き──)

『しかし、最初の一人がこれほどとは、後は期待できそうにないか……』





[28418] 6話 今回、名前を考えるのに一番時間が掛かった
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/06/26 14:08

「ねえ、ゆきちゃんは誰か好きな人いるの?」

 仲良し五人組で温泉につかっていると、高町なのはが姉のゆきのにふとそんなことを尋ねる。

 母親にもうすぐお店に出せるわよ、などと褒められることもあるお菓子作りは、この姉が花嫁修業と言って始めた料理作りに対抗して始めたものだ。

 そのこと事態になんら問題はないのだが、ゆきのが時折ウェヒヒヒとだらしない笑顔を見せるたびに、すでに心に決めた相手でもいるのかと思っていた。
 ただ、普段はそういったことは簡単にスルーされてしまうので、クラスのトラブル核弾頭こと八神はやてのいる場でこの話を切り出してみた。

「ほぉ~、ゆきのちゃんも案外すみに置けませんなぁ」

 ほら、食いついた。

 はやての瞳が怪しく瞬き、スススっとゆきのに近づいていく。

 アリサ・バニングスはこれを内心はともかくスルー、月村すずかはあわあわと様子を伺う。

「フフフ、ばれてしまってはしかたありませんね」

 しかし、ゆきのはあっさりそのことを認める。

 はやてが拍子抜けと言った顔を浮かべ、なのはは姉の言葉にえっ? とつい声を上げてしまう。

「ええ、そうなのです。この高町ゆきの、いずれ私の前に現れるフェレットの王子様にぞっこんなのです!」

 続く言葉はこの場の誰もが予想しないものであった。

(フェッレット? 白馬じゃないの?)

(あかん、ゆきのちゃん。脳が……)

 と、なのはとはやてがそれぞれ、ゆきのの返答に頭を悩ませる。

「まったく、妄想もほどほどにしておきなさいよね」

 アリサが呆れながら肩をすくめた。

「アリサちゃんはかっこいいお兄さんがいるもんね」

 と、すずかがボソッと呟く。

「! たしかに、あのカッコエエお兄さんがおったんじゃ、アリサちゃんの目も肥えてしかたないですなー」

 即座にはやてがそれに便乗する。

(はやてちゃん、ずるい~)

 ちなみに今もゆきのはなのは相手に、フェレットの王子様のかっこよさを延々と語っている。

「ちょ、すずか! はやて、あんたもうるさいっ!」

 トラブル核弾頭の目標がこちらになり、アリサがうっと怯むも、

「そもそも、あんたもあの柄の悪い叔父さんにぞっこんじゃない!」

 即座に反撃する。

「うぇいっ! あー、ジンさんはちがうんよ? そういうのとは」

 はやてが、変な声をあげわたわたと顔を赤くする。

「へー、はやてちゃんも好きな人いるんだ?」

 すずかがフフッと笑みを浮かべる。
 すずかの笑みに、一瞬怯むはやてであったが、

「えーやんか! 叔父さんやし結婚はできるんやで! アリサちゃんは実の兄妹やろがっ!」

 顔を真っ赤にしながら矛先を変えようとする。

「えーい! だからこっちに振るな! っていうか、自爆気味でしょ、それ!」

「はやてちゃん、それはいとこだよ?」

 ガー、とアリサが叫ぶ。
 すずかは冷静に突っ込む。

 既にはやての目はグルグルとしており、微妙に正気を失っている。

 と、

「あなたたち、湯あたりする前にでなさいよね」

 それまで身体を洗っていた桃子さんたち大人組みが、大騒ぎの5人を嗜める。

「「「「「はーい」」」」」









「しかし、俺らが来てよかったもんかねぇ?」

 真っ黒に日に焼けた長身をだらしなく温泉に横たわらせながら、八神迅雷がふと呟く。

 現在、高町・月村・バニングス・八神家で原作であった温泉イベント(1年前)の真っ最中である。

 ここに八神家が参加しているのは、はやてがらみでいつの間にかうちの両親とはやての両親が親交を深めていたためである。

「いいんじゃないですか? 貴方が大型二種を持っていたおかげで、分散せずに家のバス1台ですんだわけですし」

 参加者は士郎さん、桃子さん、八神夫妻、迅雷のオッサン、恭也さん、美由希さん、忍さん、月村のメイドさん2人、アリサ兄、5人娘、そして僕の17人。

 当初は車3台の予定であったが、何故か迅雷のオッサンが大型二種を持っており、都合よくアリサ兄がバニングス家所有のバスを提供してくれたため、一同バスに揺られワイワイと温泉へとやってきたのである。

「しかし、なんで二種なんて持ってんの?」

「たいした理由じゃないが、折角2度目の人生が送れるんだ。前にやり損ねていたような気がすることは、やっておきたい気がしてな」

 何でこんなものを、と思った僕の疑問に、オッサンはなんとなくとのお答え。

「そうですね、折角の2度目の人生ですし、前はなんとなくやれなかったこと、できなかったことをやるのは楽しいかもしれません」

 アリサ兄もそんなことを言う。

 アリサ嬢曰く、生徒会長で成績は学年1位でスポーツ万能らしい。

 才能に関するスキルは秀才しかとってないのに、これである。
 どうも本人は努力すれば成果が出るので、結果として色々充実しているとのこと。

 確かに、勉強も理解できれば楽しいだろうし、運動も結果がついてくればやる気にもなるってもんだ。

 では、僕は何ができるだろう。
 今考えてみると、デバイスを選択しなかったのは痛恨のミスだな。

 ゆきのさんはユーノから教わる気満々だが、正直予習しておくのも良かったかもしれん。

 そんなことを考えていたら、二人とも温泉からあがっていた。

 湯あたりとか面倒なので、僕もさっさとあがることにする。

 その後、全員で食事をするころにはその辺をすっかり気にしなくなっていた。









 そんな何事もない1年が過ぎ、ついに原作開始年である聖祥3年の新学期を迎えることとなる。








「今日は、皆さんに新しいお友達を紹介しますねー」

 先生がクラスの皆にそう告げ、廊下に声をかける。

 と、ドアが開き、黒い長髪の少年が入室する。
 そして、それに続き、ぞろぞろぞろぞろと計11人の少年が入室してくる。

 先生はそれを何の疑問も無く見ているが、はやてを筆頭にクラスの全員が、なにそれ? 状態である。

 が、それもはじめの一人が自己紹介を始めるまでだった。







「東 樹(あずま いつき)だ。よろしく」

 ニコッ! キャー、イツキクーン、カッコイー!

 その歓声を聞き、樹は優雅に髪をファサッとかきあげる。

「天宮 聖(あまみや ひじり)。よろしくお願いします」

 ニコッ! キャー、ヒジリクーン、カッコイー!

 続いて聖が微笑むと、樹に歓声を上げていた全員が聖に歓声を上げる。
 樹が、なん……だと……と愕然とした表情をし、聖がクククッとポーズを決める。

「神薙 北斗(かんなぎ ほくと)だ。よろしくな!」

 ニコッ! キャー、ホクトクーン、カッコイー!

 更に北斗が微笑むと、聖に歓声を上げていた全員が北斗に歓声を上げる。
 聖が、なん……だと……と愕然とした表情をし、北斗がフッと2人を見下す。

「……虎桜院 闇守(こおういん やみもり)。……よろしく」

 ニコッ! キャー、ヤミモリクーン、カッコイー!

 更に闇守が微笑むと、北斗にに歓声を上げていた全員が(以下略)
 北斗が、なん……だと……と愕然とした表情をし(以下略)

「カイ・スターゲイザー、こうみえてもアメリカ人だぜ?」

 ニコッ! キャー、カイクーン、カッコイー!

 更にカイが微笑むと、闇守にに歓声を上げていた全員が(以下略)
 闇守が、なん……だと……と愕然とした表情をし(以下略)

「皇 劉騎(すめらぎ りゅうき)といいます。どうもよろしく」

 ニコッ! キャー、リュウキクーン、カッコイー!

 更に劉騎が微笑むと、カイに(以下略)
 カイが、なん……だと……と(以下略)

「アレクサンドロ・セラフィスだ。気軽にアレクと呼ぶといい」

 ニコッ! キャー、アレククーン、カッコイー!

 更にアレクが微笑むと、劉騎に(以下略)
 劉騎が、なん……だと……と(以下略)

「レイ・ドラグーン。まだ日本に来て短いので、どうぞよろしくお願いします」

 ニコッ! キャー、レイクーン、カッコイー!

 更にレイが微笑むと(以下略)
 アレクが、なん……(以下略)

「刹那(せつな)・S・ナイブズ。よろしく頼む」

 ニコッ! キャー、セツナクーン、カッコイー!

 更に刹那が微笑むと(以下略)
 レイが、なん……(以下略)

「鳳凰院 朱雀(ほうおういん すざく)といいます。よろしくお願いします」

 ニコッ! キャー、スザククーン、カッコイー!

 更に朱雀が(以下略)
 刹那が(以下略)

「龍泉 光峨(りゅうせん こうが)だ。よろしく頼むぜ」

 ニコッ! キャー、コウガクーン、カッコイー!

 更に光峨が(以下略)
 朱雀が(以下略)

 以上、11人の自己紹介が終わり、クラスメイトのほとんどが頬を染め光峨を見つめる。

 ここに至り、ようやく光峨を除く10人がニコポが上書き式の能力であることを知る。

 舌打ちを抑えつつ、それぞれ念話でこの時間が終わったら屋上、と確認をとる。








 噂好きのクラスメイトが、なのはのクラスに転校生が来ると騒いでいたが、隣のクラスに聞こえてくるほど大きな声が上がっている。

 これは、転生者がやってきたようだ。
 それも複数。

 なるほど、今まで連中が海鳴にこなかったのはこれが狙いか。

 原作開始と共に、謎の転校生が圧倒的実力でなのはを魅了する! ってな感じか?

 まあ、さすがにここまでテンプレではないだろうが、確かに転校生と言うのは中々魅力的な立場かもしれない。

 休み時間になったらすぐになのはのクラスに行かねば。

 高町家の人間と言う時点で、転生者ということを隠し通すのは不可能だ。
 ならば、せめて相手の能力を把握しないとどうにもならない。

 万が一、初見で気づかれるにせよ、衆目の前で仕掛けるほどの常識知らずはいないだろう。

 そんなことを考えつつ、チャイムが鳴ると共になのはのクラスにダッシュ。

「っと、失礼」

「お、ゴメン」

 丁度クラスの入り口に着いたところで、中から長い黒髪の凄い美形が出てきてすれ違う。
 その後を、ぞろぞろと凄い美形集団が出てきて、僕とすれ違うこととなった。
 最後の一人だけ、やけにクラスから黄色い声が上がっていたが。

 って、こいつら、全員転生者か!?









 転生者一覧が更新されました。








【東 樹】

年齢:9歳(/10歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・王の財宝(10000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:東樹(10P)

現在地:第97管理外世界



【天宮 聖】

年齢:9歳(/15歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:天宮聖(15P)

現在地:第97管理外世界



【神薙 北斗】

年齢:9歳(/19歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・北斗神拳(300P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:神薙北斗(20P)

現在地:第97管理外世界



【虎桜院 闇守】

年齢:9歳(/15歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:虎桜院闇守(25P)

現在地:第97管理外世界



【カイ・スターゲイザー】

年齢:9歳(/17歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・デバイス:スターゲイト(600P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:カイスターゲイザー(27P)

現在地:第97管理外世界



【皇 劉騎】

年齢:9歳(/24歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・改造人間:ライダータイプ(50P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:皇劉騎(15P)

現在地:第97管理外世界



【アレクサンドロ・セラフィス】

年齢:9歳(/9歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・王の軍勢(20000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:アレクサンドロセラフィス(36P)

現在地:第97管理外世界



【レイ・ドラグーン】

年齢:9歳(/10歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・王の財宝(10000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:レイドラグーン(21P)

現在地:第97管理外世界



【刹那・S・ナイブズ】

年齢:9歳(/19歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・幽波紋:シルバー・チャリオッツ(500P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:刹那スカーレットナイブス(40P)

現在地:第97管理外世界



【鳳凰院 朱雀】

年齢:9歳(/15歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:鳳凰院朱雀(25P)

現在地:第97管理外世界



【龍閃 光峨】

年齢:9歳(/15歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:龍閃光峨(20P)

現在地:第97管理外世界




「……」

 また、なんというか、量産型? とでもいうか。
 人気あるなー『無限の剣製』とか、全員ニコポ・ナデポ実装かよとか、全員超美形持ちとか。
 しかも、Pオーバーしてんじゃねぇか。

 それよりなにより、お前ら、その名前はねーよ!

 ……突込みどころが多すぎる。

 しかし、あのなのはに、光峨くんってかっこいいね、ポッとか言わせる辺り、ニコポ半端ねぇな。

 すずかもなのはと同じ症状だ。

 なぜか、はやてとアリサには効いていない様で、急におかしくなったクラスメイトにドン引きしている。

「ちょっと、勇治くん。なのはちゃんたちがおかしいで?」

「勇治! アンタなんとかしなさい!」

 そうですね、はやてさん。あと、無茶は言わんでくださいアリサさん。

 ちなみにゆきのさんは、最近もうすぐユーノに会えるとワクワクしているので使い物にならない。

 ゆきのさーん、あなたの妹が今絶賛正気を失っておりますよー?

 これはあの2人に相談しないと、いや、しても駄目かもわからんね。










      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










「やった、やったぞ! これがジュエルシード!」

 とある管理外世界の遺跡の奥に、少年の声が響く。

 現在、全次元世界に絶賛指名手配中の『切り裂き』ゾートこと、自称『素晴らしき』ゾート様である。

 彼は既に記憶にないがスクライアを追放後、指名手配による妨害を掻い潜りながら各地の情報屋を虱潰しに当たり(sekkyouで言うことを聞かせた)、遂に原作でユーノたちがジュエルシードを発掘した星までたどり着いたのだ。

「さあ、後はこれを海鳴にばら撒くだけか……」

 ちなみに、当然であるが彼はシーリングをおこなっていない。
 ので、ジュエルシードは準励起状態である。

「これが、この俺、『素晴らしき』ゾート様の伝説の第一歩よ!」

 遺跡に彼の笑いが響く。

 その様子を横にジュエルシードは青白き光を放ちながら、宙に浮かんでいた。












 今日も今日とて、日本横断人助けの旅を続けていた黄金のヒーローはふいに空を見上げた。

「いかん、もう4月であったか。最近はあいつらも来ないから、すっかり忘れていた」

 半年前に現れた7人目の襲撃者(使用したのは同じ『王の財宝』だった)を最後に、青年の周囲に転生者の影はなかった。

 現在、北海道の稚内。

 海を見ていて、ふと思い出したのだ。

「まあ、海鳴に行こうと思えば二日もかかるまい。十分、間に合うであろう」

 最近、観光気分であったことを思い出し、旅のペースを上げることにする。

「と、──ふむ」

 ここのところ、助けを呼ぶ声が聞こえるようになった青年は、その声が求める方向へと歩を向ける。

 その声を無視する道理など青年には無い。

 もし、そのことを聞かれたら、彼はこう答えるであろう。

「我(オレ)が人助けをする理由だと? 貴様、呼吸をするのに理由が必要か? そもそも強者が弱者を守り導くなど当然の義務であろう」

 彼のその力は確かに借り物であったし、その精神もまたどこかの誰かのツギハギである。

 しかし、その行動に迷いは無い。

 そして、彼に助けられたものにとって、彼は間違いなくヒーローなのだ。







 現れた11人の転校生。

 海鳴を襲う封印未処理のジュエルシード。

 遂に、海鳴に来てしまったヒーロー。

 役者は揃い、物語は幕を開ける。



 はたして、高町勇治は生き残ることができるか?




[28418] 7話 一応、量産型にも性格設定はしてある。
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/07/03 17:47

「さて、集まってもらってさっそくだが、僕は皆に共同戦線を申し入れる」

 屋上に集まった転生者たちに、黒い長髪が目印の東樹(あずまいつき)が皆に提案する。

「なんだ? 教室での惨状の話かと思ったぞ」

 11人のなかでは年齢にあわぬ長身のアレクサンドロ・セラフィスがフンッと鼻をならす。
 その言葉に、カイ・スターゲイザーにレイ・ドラグーン、刹那・S・ナイブズが頷く。

「それはもうわかりきったことだろう? 僕らのコレは上書き式だ。それも含めてた上での共同戦線の提案だ」

 僅かに見下すような視線でアレクサンドロを見る樹。

 アレクサンドロは不快そうに眉をひそめるが、無言で続きを促す。

「君たち4人は知らぬことと思うが、近日中に僕らと敵対するであろう強力な転生者がこの街を訪れる。少なくとも一対一で勝てる相手ではない」

「それは貴様が弱いだけ……4人?」

 アレクサンドロら4人は訝しげに樹を見やる。

 と、彼ら4人をのぞく、樹以外の6人が苦々しそうに舌打ちする。

「そうだ、僕ら7人は一度その転生者とやり合い、敗北している。奴の外見はそのままほぼ英雄王そのもので、能力もおそらくそうだろう」

 唯一、樹のみが淡々と話を続ける。

「なんだ? そのおそらくというのは」

「奴が『王の財宝』、『乖離剣・エア』を使用するのは確認済みだ。が、黄金の鎧ではなく何らかの障壁を展開している」

 その言葉に、何人かがその時のことを思い出したのか眉を顰める。

「ふうん、なかなか考えているじゃないか」

 アレクサンドロは素直に感心した。
 自身もであるが、この場にいる10人もおそらく『そういった』特殊能力は一つしか持っていない。

 あの場で『神』は確かに与える能力は一つに限るとは言っていない。
 こちらがそう早合点しただけだ。
 
「感心している場合ではないぞ? 奴は行動の秘匿に全く気を払わない人間だ。下手に管理局に気づかれてみろ、面倒なことになる」

 最悪、クロノによる介入も武力制圧すればいいだけだが、なるべく原作から筋を外したくないというのが樹を含めた7人に共通した考えだ。

「それに何の問題があるというのだ? 全て制圧前進すればよかろう」

 そんな樹たちの考えを鼻で笑うアレクサンドロ。

 ここに至り、アレクサンドロが原作破壊を厭わない人間ということを、この場のすべての転生者が理解する。
 流石にアレクサンドロを除く3人も白けた表情を浮かべる。

「では、君は僕らの共同戦線に参加する気はないと?」

 樹が確認を含めて、もう一度尋ねる。

「ああ、俺は不参加だ。貴様らのように群れて行動するのは美学に反する」

「……そうか、残念だ」

 アレクアンドロと樹の会談はなんの実りもなさず、アレクサンドロは屋上を去っていく。

 が、彼を除く3人はこの場にとどまる。

「君たちは協力してくれるということか?」

 樹の問いに3人が頷く。

 カイは所謂リリカルなのは世界の魔導師に特化しすぎた故に、不安から。

 レイは自身が持つ『王の財宝』に加え他の能力を有していることから、単独で挑むことを無謀と判断し。

 刹那は自分のシルバー・チャリオッツでは近づかない限り勝機が見いだせないため、盾を必要としたことから。

 それぞれ、樹たちに協力することを約束した。

 当然ではあるが、既に手を結んでいる7人も自分以外は最悪捨て駒にすることを考えている。

 よく似た者同士の、その場限りの同盟であった。

「じゃあ、教室での件はどうする?」

 皇劉騎(すめらぎりゅうき)が思い出したように、皆に声をかける。

「あっ」

 樹は忘れていたと、考え込み。

「あれは取り敢えず、範囲・効果を確かめながら日替わりにでもするしかないのでは?」

 一応、7人のサブ・リーダー的な立場にいる鳳凰院朱雀(ほうおういんすざく)が妥協といえる提案をし、皆それに従うこととなった。










      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











 待機中の次元航行艦アースラに、突如として警報が鳴り響いた。

「何事か!」

 艦長のロベルト・ナカジマが居眠りしていた艦長席から飛び起きる。

「中規模の次元震反応です! 発振元は、座標・115・64・887、出現します!」

 彼の使い魔のペーネロペーが返答と共に、その原因をモニターに映す。

 その宙域が映し出されと共に、その場所に小型の次元輸送艦が出現する。

「識別完了、先日『切り裂き』ゾートに乗っ取られた輸送艦です、マスター」

「あん? ってことは、あの中にジュエルシードがありやがんのか!」

 そして、その艦がロベルトの任務に関わる犯罪者が関連していることを知る。

「ちっ、動きがあるまで待機。サーヴァント部隊は全起動、いつでも動けるようにしておけ」

「イエス、マスター」

 そう、ロベルトは顰めっ面で指示をだした。

 昨年、新たに『フリーダム』に括られたゾートは、その歳にふさわしく『フリーダム』の中で最弱とされ、対『フリーダム』部隊の人間でなくとも、経験豊富なオーバーSランクの魔導師であれば対処可能とされている。

 そんなゾートが全次元世界で指名手配されているにも関わらず、比較的自由に動き回れるのは理由がある。

 ロベルトや体制派側転生者のトップであるリーゼフラン・グレアム以下の転生者たちにとって、所謂原作開始と共に海鳴に大量の転生者が出現することは想定のうちであった。
 が、既に体制に所属し、皆それなりの地位についているため、海鳴に現れる転生者に比べ行動の自由度が圧倒的に劣っている。

 更に、原作があるから派生するという事態なので、公に対策が取りづらいという問題点も抱えていた。

 対『フリーダム』部隊所属の八神迅雷の長期休暇による里帰りや、アースラの哨戒任務という名の地球の衛星軌道上での待機行動は、彼らなりの苦肉の策といえる。

「と、迅雷にジュエルシード到着と、転生者の動きに気を配るよう通達」

「イエス、マスター」

 所謂PT事件と呼ばれるものは、原因の9割が解決済みでもはや事件自体がおこりようのないものとなっている。

 しかし、八神迅雷が遭遇した天鏡将院八雲を筆頭に、アースラから地球、主に日本でSSSランク以上の魔力値は10近いものが観測されており、これらの転生者が原作が開始しない事を知った場合に何をするか分かったものではない。

 故に、ジュエルシードを発掘し地球へと向かう次元犯罪者のゾートは非常に都合の良い存在であった。

 すなわち、地球への本格的な介入を行うための原因として、都合の良い存在である。

「糞ガキ、そのままおとなしくジュエルシードを海鳴に撒くだけにしとけよ?」

 ロベルトとて組織人、リーゼフランたちの考えは理解できる。
 が、納得はしたくはなかった。

 『切り裂き』ゾートは現在までほぼ全ての行動を見逃されてきた形に近い。
 ここまで彼が出した死者は4桁に迫る。
 無論、その全てを防げたとはロベルトも思っていはいない。

 それでも半分は防げた可能性があった。
 そう思うと歯噛みするしかない。

 これ以上、自分たち転生者がらみによる死者が出て欲しくないロベルトには祈るしかなかった。

「っ! 次元震反応拡大! ジュエルシードが地球に向け落下……これは! マスター、ジュエルシードの全てが励起しかかっています! このままでは落着と共に第97管理外世界を中心とした大規模次元震が発生します!」

「はぁ?」

 一瞬、ロベルトは何を言われたのか理解するのを脳が拒否した。

 が、すぐに状況を理解する。

「封印してないのか? ゾートってのはバカか?」

「大バカのようです、マスター! 機関部から爆発! ダメコンが行われていません、このままでは沈みます!」

 更に行きがけの駄賃とばかりに彼は輸送艦の機関部を破壊し、地球へと転移している。

 ロベルトの祈りも虚しく、状況は最悪へと着々と進行していた。

「こんの! ペーネロペー、俺はジュエルシードに簡易シーリングを行いつつ、海鳴に励起を抑える結界を張る! お前たちは救助に専念しろ!」

 ロベルトは艦長席にて複合型積層魔方陣を即座に展開、21個の目標に対する超長距離シーリングと海鳴への結界を同時に発動させる。
 SSSSランク結界魔導師の面目躍如といった大魔法は、流石に単独でこの任務に割り振られるだけの実力者である。

「イエス、マスター! サーヴァント全起動、輸送艦乗員の救助を開始!」

 ペーネロペーも宇宙空間用の特殊バリアジャケットを展開し、同じく使い魔であるサーヴァント部隊と共に輸送艦乗員の救助をするために転移ゲートへと向かう。

「あんのガキィ! 次に会ったら、絶対許さんぞぉ!」

 管制担当の使い魔が本局との通信を行う中、ロベルトの怒声が艦橋にむなしく響いた。






 この日、21個のジュエルシードが第97管理外世界に落着。

 幸いにして、この周辺宙域で哨戒任務中であった次元航行艦アースラ艦長、ロベルト・ナカジマの迅速な対応により次元震の発生は阻止することができた。
 また、輸送艦乗っ取りにあったクルーたちも、見せしめに殺された艦長以外は無事救出されている。

 さらに、このジュエルシードを持っていたのが『フリーダム』の『切り裂き』ゾートであったため、対『フリーダム』対策本部長を兼ねるリーゼフラン・グレアム査監部長はこの件を重視し、即座に対『フリーダム』部隊の派遣を決断する。

 都合良く現地に休暇中であった『火葬』八神迅雷の特殊任務復帰に加え、『山羊座』カウリ、『小天位』ルミカ・シェベル、『剛拳』ペンドラゴンら3名が第97管理外世界へと赴くこととなる。

 一昨年、結果として失敗に終わった『キラ・ヤマト』討伐作戦に次ぐ規模の戦力投入であった。











      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











「さて、先ずは一つ」

 海鳴の高台の公園で一つ目のジュエルシードを確保したゾートは独り呟く。

 未封印状態であったジュエルシードが、簡易とはいえ封印されている事にまるで気づいていなかった。
 これはゾートが元々、そちら方面の魔法を見下していたためスクライアにいたときも、補助系の魔法は一切習おうとしなかったためである。
 幸い、彼が優先した飛行魔法や転移魔法はスクライア独自の魔法体系ではなかったため、記憶を消された後も失うことはなかった。

「次は、なのはを呼ばないとな」

 そう言って、懐から見る人が見ればレイジングハートを想像するであろうデバイスを取り出す。

 ジュエルシードの情報を探す最中、なのはに渡すべきデバイスがないのに気がついたゾートは、デバイス取り扱い店を襲撃しこれを調達したのだ。
 レイジングハートと同じインテリジェンス型で、名前は不明だがゾートはレイジングハートでいいと思っている。

 実際は、正規登録がされていないので起動状態にすらならないだけなのだが、ゾートはこのあたりの常識が記憶剥奪と共に失われている。

 仮に原作と同じ状況でなのはがこのデバイスを手にしても何も起こらないであろう。
 もっとも、ジュエルシードモンスターはゾートが本気を出せば瞬殺が可能なので、問題ないと言えば問題ないのであろうが。

「さて、この俺となのはの出会いの場所は、と」

 呟きながら、ふわりと浮かび上がりゾートは深夜の空中から海鳴を見回す。

 高町なのはとの出会いを想像し、ゾートは笑みを浮かべた。











 同時刻──。

 海鳴に到着と同時に、悪感に襲われた金髪の青年は心の向くままその場所に急ぐ。

「いかんな……」

 そこには落着の衝撃により、封印がとけかけているジュエルシードが煌々と青白い光を放っていた。

 結界の効果により、励起反応こそ起きていないものの危険なことには変わりない。

 青年は迷うことなく封印のためにジュエルシードに手を伸ばした。

「むっ」

 と、同時に背後より魔力弾の攻撃を受ける。
 当然、不可視の障壁により霧散するが、厄介事が起きたことには変わりなかった。

「ほう、それが何らかのシールドか?」

 そう言って近づいてきたのは、過去7度ほど青年に襲撃をかけてきた転生者と同じくらいの年頃の子供である。

 とはいっても纏う空気は常人のそれではない。
 燃えるような赤髪を逆立て、壮絶な笑みを浮かべる少年、アレクサンドロ・セラフィスはまさに魔人であった。

 とはいえ、アレクサンドロもこの目の前の男の外見が、まんまかの英雄王であることに失笑するところではあったが。
 無論、自身の超美形のスキルは棚に上げている。

「見てわからんか? 我(オレ)は今立て込んでいる、後にしろ」

 が、青年はアレクサンドロを一瞥だけすると、すぐに背を向けジュエルシードの封印に取り掛かろうとする。

 アレクサンドロは青年の、まるで英雄王とは真逆の行動に驚くも、

「ククッ、俺には貴様を殺す絶好の機会に見えるがな!」

 そう、宣言し、『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』を起動させようと一歩を踏み出し、

「えっ?」

 次の瞬間、腹部に大穴を開けた状態で仰向けに倒れていた。

(な、何がおきた!?)

 何が起きたのかも分からず、アレクサンドロはパクパクと口を開閉させる。

「貴様は……見逃すに値せんクズだな。ここで死んでおけ」

 と、いつの間にかジュエルシードの封印を済ませ、傍に立つ青年がアレクサンドロを見下ろしながら無慈悲に告げる。

(えっ? ひゃ、し、死にたくな────)

 アレクサンドロが命乞いをしようと腕を上げようとしたところで、グシャリと彼は原型をとどめぬほどに潰れる。

「む?」

 青年は地面の赤いシミになった転生者が、次の瞬間跡形もなく消えた事に眉を顰める。

「……転生者自体が世界の不条理、考えるだけ無駄か」

 が、自分たち転生者が『神』の力でこの世界に存在することを思い出し、思考を切り捨てる。

「これがあるということは、ユーノ・スクライアがいる可能性が高い。かような輩が多いのであれば難儀するか……」

 青年は封印状態のジュエルシードを見ながら、周囲を見渡す。

 幸いにして助けを呼ぶ声は聞こえなかった。

 が、邪悪の笑いが耳をうつ。

「……これも転生者か? 何故、この力を悪しきに使うのか、かつてどれだけ望んでも得ることが無かった力だというのに」

 先程の少年や、過去の襲撃者を思い出し青年は呟く。

 そう言いながらも青年は、悪を感じた場所へと急ぐのであった。










「勇治、何やらなのはの様子がおかしいようだが?」

 11人の転校生が訪れ、なのはがニコポにやられ、帰宅後もポッ、光峨くん……とかやっているので心配した士郎さんが僕に尋ねる。
 ちなみにゆきのさんは、原作開始間近のため、なのは以上におかしいのだが、元々そんな感じなのでスルーされていたりする。

「今日転校生が来んだけど、そいつに一目惚れしたみたい」

 まあ、誤魔化しようもないので正直に話す。

「あのなのはが一目惚れか、明日は雪か……」

 恭也さんが意外だ、となのはを見る。

「で、あのなのはがぞっこんだなんて、どんな子?」

「私もちょっときになるわね」

 そう美由希さんと桃子さんが僕に聞いてくる。

「すげー、かっこいい奴です」

 僕は投げやりに答える。

 とはいえ、そうとしか言いようがない。
 容姿:超美形は人間の美的感覚に直撃するスキルなので、誰が見てもカッコよく見える。

 ので造形を詳しく設定しても、転生者以外には凄いカッコイイとしか感じない、個人的には微妙と思うスキルだ。

 僕の答えに士郎さんたちが会ってみたいもんだとか言うが、下手したら明日には別の奴にポッとかしている可能性もあるのだ。

 最悪である。

 あの時、はやてとアリサがニコポの効果にかかっていなかったのは、他の転生者の家族スキルのおかげである。

 洗脳タイプのスキル防御は、恋愛スキル持ちと恋人関係になるか、家族スキル持ちに名前が表記されているなどが条件だ。
 例えば、アリサの場合、アリサ兄が仮にアリサ父の息子と設定していた場合、防御から外されることになる。

 なので、なのはの兄姉でありながら高町家に転生するつもりでは無かった僕とゆきのさんのせいでなのははニコポの餌食となってしまった。

 ちなみに迅雷のオッサンは11人の転校生のことを聞くと、黒い顔を真っ青にしてすっ飛んで帰ってしまった。
 アリサ兄は全然我関せずであったし、微妙に頼りにならない。

 ゆきのさんもアレだし、士郎さんたちがなのはのことで盛り上がる中、僕は地味に途方に暮れていた。

 まあ、翌日からそれどころではなくなるのではあるが。







《転生者一覧が更新されました》







【アレクサンドロ・セラフィス】

年齢:死亡(/9歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・王の軍勢(20000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:アレクサンドロセラフィス(36P)

現在地:第97管理外世界









 力を得たからそう生きたのか、そう生きるために力を得たのか。

 ヒーローは舞台を降りる。

 第二幕が始まるのだ。

 次回、海鳴地獄篇。




 はたして、高町勇治は生き残ることができるか?




[28418] 8話 カウントダウン開始
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/07/03 18:28

 昨夜、アレクサンドロ・セラフィスの死を知った僕だが、翌日それが吹き飛ぶほどの衝撃を受けることとなる。

「あかん、訳わからんわ……」

「誰も覚えていないってどういうことよ……」

 そう混乱した様を見せるはやてとアリサ。

 なんと、翌日の学校でアレクサンドロの事が無かったことにされていたからである。

 本日は天宮聖(あまみやひじり)に熱を上げるなのはとすずかを含む、このクラスの殆どが昨日の転校生を10人だと認識している。
 無論、転校生ズはアレクサンドロの事を覚えているだろうが。

 しかし、存在が無かったことにされるというのはどういうことなのだろうか?
 転校生ズの間で何かがあったらしいのは、昨日あの後アレクサンドロが一人で先に戻ってきたらしいので分かるのだが。

 それを尻目に、本日この学年の全クラスで将来の夢についての話がされたことで、ゆきのさんのテンションが天元突破状態である。

 








「──ということなんですよ」

 昨日、話を聞くなりすっ飛んで帰っていった迅雷のオッサンであるが、今日も今日とて翠屋で密談である。

「なるほどねぇ、そんなことが……いや、だとあの連中の逸話が残っているのはおかしかねぇか? うーん、天鏡将院の方を調べれば何かわかるか?」

 取り敢えず、昨日の続報ということでアレクサンドロの末路を伝えたのだが、なにやらブツブツと独り言である。

 はて、あの連中とは如何なることか?
 現状、僕の知る限り死者は天鏡将院八雲とアレクサンドロ・セラフィスの2人である。

「まあ、いいか。正直、それどころじゃないというのもあるんでな」

「……11人の転校生も相当シャレにならん話ではありますが」

 あの量産型オリ主たちはかなりヤバイ気がするのだが。

「面倒な話だが、昨日この街にジュエルシードが落着した」

「……そりゃ、また厄介なお話ですな」

 やっぱり、ジュエルシード自体はここに来るのか。
 確かに、危険度でいえばこちらが勝るか、下手すれば海鳴どころか地球が危ない。

「ちなみに、ユーノ・スクライアは来てない」

「ゆきのェ……」

 哀れなゆきのさん。
 しかも詳しく聞けば、そもそもユーノ君、ジュエルシードの発掘にかかわっているわけでも無く、現在ミッドチルダの魔法学院の研究機関に所属しているらしい。

「で、だ──」

 と、ようやく本題。
 簡単にいえばジュエルシードの封印を手伝って欲しいということだ。

 本来は規則的に不味いらしいのだが、オッサンのほうも打つ手がないらしい。
 元々のバックアップ要員はジュエルシード落着の際に色々あり今動けず、オッサンはそもそも封印自体が出来ない。
 そのうえ、ジュエルシードがここに落ちる際に起きた次元空間の乱れにより、増援が到着するのは2週間以上先とのこと。

 ついでに使い魔も封印作業には使えない以上、現地に協力者を用意せざるを得ないと。

「そのへんは了解です。まあジュエルシードがある以上、なんとかしなきゃいかんのはわかりきってますし。それで、あんたは結局どこの人間なの? たぶん管理局の人間とは思ってたんだけど、こっちもかかわりたくないから聞かなかったけどさ」

「まあ、ご想像の通り、八神迅雷一等陸佐だ。それと、所属だが……あー、全時空平和委員会に所属している」

 29で一等陸佐か、って、全時空、なんだって?

「……全時空、なに?」

「全時空平和委員会だ」

 略して、『全平和会』!

 なにそれ?

 どうも、転生者の「管理局、最悪だな(以下略)」により改名したらしい。
 後ろ向きだなぁ、おい。

 ちなみに支給されたデバイスはストレージ。
 なんだかんだで、使い勝手はインテリに勝るとか。










「さて、ここいらでいいか」

 周囲を見渡しながらゾートが呟く。

 この場所は、いうなれば原作において高町なのはがユーノ・スクライアと初めて会った場所である。

 一応、昨夜のうちにあたりは付けており、この時間になったのは単純に高町なのはが学校を終えるのを待っていたからである。

「じゃ、念話で助けを呼ぶとするか」

 そう呟くゾートの姿は、軽い負傷者に見える。
 原作ではユーノは体力回復のためフェレットへと変化していたが、記憶剥奪のため変身魔法を使えないゾートはその姿のまま、なのはとの出会いを再現するつもりであった。
 流石に無傷はおかしいと、負傷者を装ってはいるが。

『助け──』

「ほう、助けを呼ぶのは貴様か?」

「っ! 誰だ、お前は!」

 邪魔をするな、と言いかけ、ゾートは声の主を見て呆気にとられる。

 おぼろげながらに記憶に残る英雄王そのものの姿をした青年が目の前にいるのだ、驚かない訳がない。

「同郷の好だ。そのジュエルシード、素直にこちらに渡すのであれば、見逃してやろう」

 昨夜のアレクサンドロ戦を経て、いささか神経がささくれている青年は呆気にとられるゾートに高圧的に命じる。

「なぁ──にィ?」

 が、ゾートとて僅か1年で4桁に迫るほどの死者を量産した、生粋の犯罪者である。

 即座に青年の敵意を感じ取って、戦闘態勢に入った。

「もう一度言うぞ? そのジュエル──」

「死になァ!」

 パァン!

 ゾートの戦意を感じてなお、勧告する青年の言葉を遮り、抜き打ちの如く腕を振り抜きざまに指を鳴らす。

 キンッ!

「なっ!」

 が、ゾートの放った真空波は青年に触れる前に、硬質な響きをたて霧散する。

 その事実にゾートは驚愕する。
 自身のこの能力『十傑集:素晴らしきヒィッツカラルド』は、『指を鳴らした際に生じる真空波があらゆるものを真っ二つにする』というものだ。
 超再生能力者でもない限り、物理・魔法・現象だろうが構わず真っ二つにすることが可能なのだ。

 が、この目の前の男はそれを何らかの方法で無効化した。

 これまであらゆるものを真っ二つにしてきたゾートが、初めて遭遇した真っ二つにできないモノ。

「クククッ、絶対にテメエを真っ二つにしてやんよ!」

 マグマの如き戦意がゾートから溢れ出る。
 初めて出会う強敵に、これまでになく血潮が滾るゾート。

「死なないよう、手加減はしてやる……」

 対照的にテンションの低い青年であった。









「ク、クハッ──クソ、強えー」

 幾多の欠けた宝具を足元に散らばせながらも、ぼろぼろになったゾートが地面に貼り付けられたまま青年を見上げる。

 結果はゾートの完敗。

 が、金髪の青年にとって、初陣以来の5分を超える戦闘となった。

 基本的に無駄な死者を出す気がない青年は、初手に自身の加減か可能である『乖離剣・エア』を選択したのだが、ゾートはその衝撃波を切り裂いて無効化するという出鱈目な方法で対抗してきた。

 止むを得ず、青年は『王の財宝』を展開、なるべく手加減を──と、即死効果のないものを射出したのだが、これもゾートが踊るように繰り出す真空波に切り裂かれ無効化されてしまう。

 この時点で、青年にはまだ3つほどゾートを無力化する手段があるのだが、そのうち2つは彼にしても微妙に加減が難しく、昨夜も怒りに任せて初めて会う転生者を殺してしまっている。

 よって、青年は残る一つである目の前の転生者が対処しきれない量の宝具で押し切るという戦術を選択した。

 指を鳴らすという動作に対して、破格の威力を誇る『十傑集:素晴らしきヒィッツカラルド』であるが、如何せん人間の腕は2本であり、親指を使う以上一度に2つ以上の目標を狙うことが出来ない欠点を持つ。
 本来、この欠点は十傑集の圧倒的な身体能力で些細なものとなっているのだが、その身体能力をもってしても360度、全方向から

続けざまに放たれる宝具の嵐に曝されて耐えうるものではない。

 それでも、5分。

 真空波を放ち続ける両の手を地面に貼り付けにされるまで、ゾートはその二つ名の如く宝具を『切り裂き』続けた。

「見事だ。我(オレ)のコレをここまで耐えたのは貴様が初めてだ」

 そう感心しながらも、青年はゾートの胸元からジュエルシードを抜き出す。

 殺すことなく勝利した、にも関わらず青年の表情は暗い。
 戦うことで、このゾートの心根というべきものが見えたためだ。

 その瞳は腐った溝沼のように濁り、何処までも暗く、歪んでいる。

 相当数の人間を大した理由なしに殺害してきたであろう、その経緯。

 この場で見逃しても、改心は見込めそうになかった。

「これに懲りたのであれば、二度とこの地を踏まぬことだ」

 それを理解しつつも、青年はゾートにチャンスを与える。
 両手を貫く宝具を含めた周囲の全てを霧散させつつ、ここから離れるため背を向ける。

(ク、クソガァッ!──上からモノ見てんじゃ、ねぇ!)

 忠告など即座に無視、ゾートは両手が開放されると右手を青年に向け、渾身の力を込める。

「死ね、コラァ!」

 パァン!

 ひときわ大きな音が鳴り、

 キィン!

 やはり、青年の不可視のそれは貫けず、ゾートの真空波は正しく『反射』され、ゾート自身を刻む。

「っ! こ、いつぁ、ベクト……」

 放った真空波が完全な形で自身に反射されたことで、ゾートにもこの青年の不可視の障壁の正体にようやく気づく。

 が、気づいたところでゾートは致命傷を負っている。

 振り向いた青年が心底落胆した目を向けているのを感じながら、ゾートはもう一度手を構えようとし、

「あ──」

 ボロッと体が崩れ消滅した。









《転生者一覧が更新されました》










【ゾート・■■■■■】

年齢:死亡(/20歳)

・総合SSランク魔導師(100P)
・出身:■■■■■一族(10P)
・十傑集:素晴らしきヒィッツカラルド(300P)
・洗脳:sekkyou(250P)

現在地:第97管理外世界











 高町ゆきのは走っていた。

 全速力で走っていた。

「ゆきのちゃん、待ってー」

「ゆきのー、待ちなさーい!」

 追いかけるはやてとアリサの声を完全に無視して走っている。

 懸命に走るわけは、念話が聞こえたためだ。
 しかも、ただ聞こえたわけではない、『助け──』で途切れて聞こえたのだ。

 問題として、待ち望んだユーノ・スクライアの声でなかった気がするのだが、短すぎて判断がつかない。

 そして、続きが聞こえない。

 何かあったのかもしれない。

 そう不安に襲われたゆきのは、ユーノ・スクライアがいるであろう場所へ走るしかない。

(ユーノくん、ユーノくん、ユーノくん──)

 頭の中は既にユーノのことしかなく、公園を抜け彼がいるはずの山道へと踏み入れた途端、彼女の足が止まる。

 山道を誰かが降りてくる。

「おうさまだ……」

 そうとしか形容の仕様のない男であった。









 消滅したゾートのいた位置に転がったデバイスを拾った青年は、それが登録すらされていない未使用品であることを知る。

「このままにするのも、もったいなかろう」

 そう呟き、己がデバイス『クロック・タイム』を起動、連動させることでこのデバイスを強制起動させる。

「インテリジェンス・タイプか、名前は……Excavate(貫くもの)か、ずいぶん物騒な名だ」

 デバイスのスペックを見ながら、青年はその場を離れる。

 最早この場所に用はない。
 悪意を感じ取った場所にいたのが、先の転生者だっただけの話。

「しかし、本格的にこういった奴しかおらんのか?」

 かつて襲撃をかけてきた7人、昨夜のアレクサンドロ、そして先ほどのゾート。

 10人近い転生者と出会いながら、青年は1人として仲間意識を持つことのできる転生者と会っていない。

『──master』

「む、誰かこちらに来るな」

 そんな考え事をしながら山道を下ると、それまでの転生者と同じ年頃であろう少女が呆然とした顔でこちらを見ていた。

「ほう、我(オレ)のカリスマに動じんとは、あの娘も転生者か」

 初対面時に青年に威圧されるのが普通の人間であり、容姿に驚くのが転生者である。

 深く考えてこの容姿を選択したわけではなかったが、偶然にも転生者を見分けるのに役立っていたりする。








「何用だ、娘。この先には何もないぞ?」

 今までが今までな為、特に期待せず青年はゆきのに話しかける。
 ここで喧嘩を売ってくるような転生者なら、もう殺っちまうかぐらいに考えて。

「……あ! えーと、そう。おうさま! ユーノ君、見なかった?」

「ほぅ」

 ゆきのの第一声に、よくよく見ればそれなりの才能こそあるが、魔導師として覚醒すらしていないのが見てとれる。

「いや、ユーノ・スクライアとはまだ遭遇しておらんな」

 青年の言葉にしょんぼりするゆきの。

 逆に、初めて悪意のない転生者と出会ったことで、青年の気分は高揚していた。

「これを見ればわかると思うが、ユーノ・スクライアの安否は不明だが、ジュエルシードは既に海鳴に存在している」

 ジュエルシードをデバイスから取り出して見せ、続けた言葉にゆきのが顔を青ざめる。

「我(オレ)もそちらまでは手が回らん。ユーノ・スクライアは貴様が探せ」

 ジュエルシードは自分に任せろと、彼はゾートからパクったデバイス『Excavate』をゆきのに手渡す。

 その唐突な行動に、目を白黒させるゆきの。

「最早、待つだけでは道は開けん。先ずは魔導師となれ、それは『Excavate』、貴様も貴様の想いを貫くがいい」

 そのデバイスにはレイジングハートには及ばぬものの、基本的な機能はインストールしてあることを告げる。

「……わかった。おうさま、ジュエルシードはお願い!」

「まかせろ、我(オレ)を誰だと思っている」

 ゆきのは不安を振り払いニッと笑う。

 青年もまた破顔一笑、ゆきのと共に山道を下る。

「ゆきのちゃーん」

「ゆーきーのー!」

 途中、親友2人の声を聞き、やべっとゆきのは顔を引きつらせ、足を止める。

 そんなゆきのを一瞥し、青年は笑みを浮かべたまま彼女たちとすれ違い去ってゆく。

 このときのゆきのは荷馬車に揺られた子牛のような瞳をしていたかもしれない。

 息を切らせながらも怒りの表情を見せる二人に、乾いた笑みを浮かべるしかなかった。











 こうして、濃密な一日が終わる。

 『切り裂き』ゾートは、なのはと出会うことなく討たれた。
 高町勇治は八神迅雷の申し出を受け入れ、ついでに家族にも話を通しておくことにする。
 ついでに、ゾートとやらが死んだことも告げる。これを聞いて、バックアップの人が大いに憤慨した。
 高町ゆきのは黄金のヒーローと出会い、道を歩き始める。
 そうして始まるカウントダウン。

 未だ動かぬ転校生たちは何を待つのか、何を求めるのか。

 ここ海鳴に、激動の時間が始まろうとしていた。










 あの日からから、およそ2週間があっさり経過した。

 その間、封印したジュエルシードは勇治・迅雷組が6つ、青年が8つ。

 ロベルト・ナカジマ提督の張った結界により、原作のようなジュエルシードモンスターが出現しなかったため街に被害は一切ない。

 また、ユーノ・スクライアを確認できなかったため、フェイト・テスタロッサがくるのを待ってから動き始めようと決めていた転校生ズ10名は大いに混乱していた。

 フェイトが来ないのにジュエルシード集めがあらかた終わっているからである。

 まあ、この世界のフェイトさんは、24歳で既に子持ちの人妻なので来るはずもないのだが。

 高町ゆきのも2週間の間、学校を終えるとふらふらとユーノを探して街を彷徨き、日替わりで転校生たちに頬を染める親友を見ていられない八神はやてとアリサ・バニングスは勇治に頼まれたこともあり、ゆきのに付き添う。

 こちらも、ユーノ・スクライアは来ていない。

 卒業試験中の友人に勉強を教えつつ、卒業済みの友人と共に上の学部の研究機関に所属し、最近は無限書庫に入り浸っている。

 また、流石の高町家でも最近のなのはの様子に焦りを隠せていない。
 特に、恭也が恋人である月村忍経由で彼女の妹のすずかもおかしくなっているのを聞いてからは尚更だ。

 更にゆきのが情緒不安定で、帰宅すると部屋で塞ぎ込みがちである。
 実際には、マルチタスクを使っての魔法訓練に、放課後のユーノ探索にふらふらになっているだけなのだが。

 勇治に関しては、信頼の置ける八神迅雷の話もあり、そういった不思議な話にはなんぼか耐性のあった高町家の面々はジュエルシードの探索に全面的に協力している。
 といっても、なるべく時間を作って士郎や恭也、美由希が迅雷たちと手分けして町中を捜索、見つけたら勇治の帰宅を待って封印作業に赴くだけだ。
 ロベルトの結界のおかげで、一般人にも、勇治を含めた高町家の人間にも被害が出ることはなかった。

 まあ、迅雷本人は金髪の青年と遭遇し、

(──やべぇ、コイツ。キラ・ヤマトより上かもしれん)

 みたいなやり取りをしていたのだが。

 最悪、自分たちの最強戦力であるリーゼフランの『女王艦隊』を上回るかもしれない青年に冷や汗を流すが、どちらかと言えば自分たちよりの思考のため、ジュエルシードに関しては協力を取り付けることに成功する。

 そんな感じで、ジュエルシード集めに関しては順調であり、ゆきのもなんだかんだで勇治がフォローしている。
 とはいっても、肝心のユーノが来ていないことを告げていないのだが。

 やはりそうなると、高町家の問題は末娘のなのはと、将来的に縁戚となる月村すずかの動向になってくる。

 現状、日替わりで惚れる対象が変わっているだけであり(しかも、それが毎回毎回本気に見える)、何が起きているわけでもないのだが、家族としてはたまったものではない。

 それ以外は普段と変化はないため、あいにくと今のところ打つ手がなかったのである。









 さて、そんなこんなで高町家を悩ます転校生ズであるが、遂に行動に出ようとしていた。

「では、全力を持ってにフリードリッヒ・ジークフリード・カーマイン・ロッテンマイヤーを倒す! ということでいいな?」

 と、東樹(あずまいつき)の言葉にはじめからの協力者6人が異を唱える。

「ん? フリードリッヒ・ジークフリード・アウグストゥス・ガブリエフだろ?」

「いや、フリードリッヒ・ジークフリード・ディリードムルド・ロドルバンだったはずだ」

「違う違う、フリードリッヒ・ジークフリード・カールグスタフ・グーデリアンだ」

「……フリードリッヒ・ジークフリード・マスターフォース・トーテンコップ」

「確かフリードリッヒ・ジークフリード・ダークマグナス・ゲルトリッヒでは?」

「俺が聞いたのはフリードリッヒ・ジークフリード・グリファナード・スタイナーだ」

 と、天宮聖(あまみやひじり)、神薙北斗(かんなぎほくと)、虎桜院闇守(こおういんやみもり)、皇劉騎(すめらぎりゅうき)、鳳凰院朱雀(ほうおういんすざく)、竜閃光峨(りゅうせんこうが)の順にジークフリード以降別の名を口にする。

「……全員違うじゃねぇか。まぁ、これだけ違うと聞き間違えはないな」

「ジークフリードまでは一緒か……本人が毎回忘れているのか、単に自称か」

「どっちでもいいさ。長いし、もうフリード(略)でいいだろ」

 カイ・スターゲイザーが呆れたように呟き、レイ・ドラグーンがフムと考え込む。
 最後に心底どうでもいいと、刹那・S・ナイブズが話をしめた。

「……では、フリード(略)討伐作戦、開始する」

「「「「「「「「「おー」」」」」」」」」

 げんなりした樹の掛け声に、残る9人が適当に答える。

 残念ながら、数の利はともかく連携は期待できそうになかった。









 さて、フリード(略)こと金髪の青年は、これまでの転生者に比べ遥かにまともである高町ゆきのと出会ったことで、俄然やる気を取り戻していた(ゆきの自身はユーノと会えないためテンションは徐々に下がっていたが)。

 そして、数日前に出会った八神迅雷(平日午前中のため、エレノワールと分かれて単独行動中であった)。

 彼もまた公私を弁えた人物であり、原作における管理局に所属しているとのこと。
 さらに原作における問題点はあらかた潰し、現在もなお改革中との話を聞く。
 それを聞いた青年は、力を正しく行使する同胞に出会えたことで更に気分を高揚させる。

 そして、彼らに協力を約束しジュエルシードの封印に邁進することになる。

 結果、2週間で何のバックアップもなしに先に封印した2個に続き、ジュエルシード6個を追加で封印するというハイペースを出していた。







 10人の転生者が彼を襲撃したのは、そんなときである。






[28418] 9話 Credens justitiam
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/07/04 21:07


「貴様らか、せっかくのいい気分が台無しだな。が、我(オレ)は寛大である。2度目の者もいるようだが、失せるがいい。見逃してやる」

 ジュエルシードの気配を感じたので、封印に赴いたら無粋な転生者に出会った。

 青年の心境はそういったところであろうか。

「相変わらずの高慢さ、反吐が出るな……」

 リーダーである東樹(あずまいつき)が手を上げると、残る9人が一斉に散り青年を包囲する。

「死ぬ覚悟はしてきたか。よかろう、尽く冥土に送ってやろう。死ぬがよい!」

 包囲されてなお、余裕の笑みを浮かべ青年は命じた。
 勿論、結界を展開することも忘れない。

 同時に無動作で『王の財宝』を全方位に展開・射出する。

 その数、実に1024。

「なっ! 馬鹿なっ!」

 レイ・ドラグーンが驚愕の表情で同じく『王の財宝』を展開。
 しかし、こちらは指を鳴らす動作を必要とし、数もわずかに48。

「ええい、出鱈目な!」

 『王の財宝』持ちである樹もこれを展開するが、やはり腕を上げる動作を必要とし数はレイに勝るが144と青年には圧倒的に劣る。

 ここに『無限の剣製』持ちが4人もいなければ、いきなり終了モードであった。

 内心の驚愕を押し殺しつつ、天宮聖(あまみやひじり)、虎桜院闇守(こおういんやみもり)、鳳凰院朱雀(ほうおういんすざく)、竜閃光峨(りゅうせんこうが)は襲い来る宝具の矢を必死に迎撃する。

 そして、残る4人も必死に逃げ回りながら、宝具のぶつかり合いによって生じる僅かな隙を虎視眈々と狙っていた。

「ふむ、凌ぐか?」

 僅かに感心し、青年が第二波を展開しようと周囲を見やるその瞬間、

「ハァアアアアアアッ!」

「シッ!」

 近接型である神薙北斗(かんなぎほくと)と皇劉騎(すめらぎりゅうき)の二人が動く。

 純粋な身体能力では青年を上回るこの2人が瞬く間に間合いを詰める。

 が、青年の周囲に展開されているのは絶対防御、『反射』の膜。

「キィイイイック、あれ? グァッ!」

 劉騎が放った全力のキックは、その威力をそのまま反射され、錐揉みしながら吹き飛んでいく。

「やはり、な!」

 実質、劉騎を捨て駒にした北斗は、樹から告げられていた青年の障壁についての推測がおそらくあたっていること悟る。

 ならば、することは一つ。
 北斗神拳の業と、魔導師のマルチタスクを持って、この場で木原神拳を完成させるのみ!

「……まあいい」

 自身に張り付いて『反射』の膜を精密な動作で突付く北斗の様子に、何をしたいか理解した青年はそのまま放置する。
 実際、あれは種がわかれば手品の類だ。脅威足りえない。

 それよりも──。

「「「「───Mywholelifewas(この体は、)“unlimited blade works”(無限の剣で出来ていた)」」」」

 接近してきた2人に気を取られていた間に、攻守が逆転していた。

「「「「いくぞ贋英雄王(モドキ)。武器の貯蔵は十分か」」」」

 赤い剣の丘が結界内を侵食し、その丘を共有する4人の偽者の贋作者(フェイカー)が勝ち誇る。

 リーダーの樹はこの状況に持っていくまでに必死に援護を続けていたが、青年の障壁がやはり自身の最悪の予想通りであったのに調子付いている4人に頭を痛める。

「貴様ら、本当にそれが好きだな……」

 心底げんなりした様子で、青年が第二波を展開。

 無論、相手側の攻撃は既に始まっている。
 一度に来ているわけではないが、その総数は青年の第一波攻撃をも超える数だ。

 なので、倍の2048を展開する。

「なんだ、そりゃあ!」

 青年の初弾に、自分のミッドチルダ式の魔法では攻撃の役に立たないと判断し、自身の役を補助に割り切ったカイ・スターゲイザーが怒鳴る。

 この場の(吹っ飛んだ劉騎を除く)全ての人間の正直な意見である。

 何ゆえ、無動作、ノーリスクでこれほどの数を展開できるのか。

 答えは、純粋な魔力量とマルチタスクである。

 青年の魔導師ランクはSSSSS、数値にすればおよそ100億(初期値の5億から地味に成長している)。
 また、マルチタスクも初期のLv100から500までレベルアップしている。

 この場の10人のSSSランク魔導師の魔力量を全て足しても届かない高みにいるのだ。

「殺ったぁ!」

 と、数の暴力が転校生ズに放たれんとしたその時、

「むっ!?」

 いままで何の役にも立っていなかった刹那・S・ナイブズが青年の後背から跳躍、『シルバー・チャリオッツ』による不可視の剣を青年の額につきたてる。

 青年の障壁の正体に気づいていた樹と北斗はこれに驚愕、残る6人は喜色の笑みを浮かべた。

「このまま、死──」

 刹那の叫びはそこで停止する。

『over clocking──start』

 無論、青年の主観時間のうちであるが。








「反射の膜を抜けるとは……何だ?」

 停止した時の中で、自身の脳を貫通した不可視の何かに青年は疑問の声を上げる。

『──』

 即座にデバイスが返答する。

 基本的に青年はベクトル操作と時間操作はこのデバイス『クロック・タイム』で制御している。
 特にベクトル操作は防御用に選択したため、攻撃に使うとどうしても加減が効かなかった。

 最も、アレクサンドロ戦では怒りのままに手加減なしで重力を操作し、彼をペチャンコに潰したのだが。

「ほう、なるほど幽波紋か。反射の膜に引っかからんとは意外であるな」

 そう呟きながら、スススッと切っ先から頭を抜く。

 そうして傷口を指で拭うと、跡形もなくそれは消える。

『──』

 スキル:幽波紋のメリットの一つである、スキル持ち以外には見えないという効果であるが、触れることもできないという本来の性能も備えている。

 が、それでも幽波紋はこの世界の魔力で構成されている。
 一度味わった以上、二度とベクトル操作の『反射』の膜は突破できない。

「む、もう覚えたか。二度目はないが、貴様の健闘を讃えよう。褒美に我(オレ)の最大の秘技で葬ろう」

 青年は自身に一太刀を浴びせたこの少年に、最大の敬意で答えることに決めた。

 その技は生み出したものの、ある意味で強力すぎたため使うこともあるまいと封印したものである。

 また、停止空間でしか使用できないという欠点もある。

「──『時間暴走(タイム・クラッシュ)』起動」

『Yes mastar.《time crash》start!』

 効果そのものは単純明快。
 結界内に包んだ対象の時間を無理やり加速させるだけである。

 が、停止した時間の中で、意思も何もかもが停止したまま、物体の時間だけが加速していく。
 老化し、劣化し、風化していく。

 そして、人間であれば起動して1秒ほどで塵となる程度に問答無用の技であった。









 青年が時間停止をといた時、その場の8人はすべからく同じ想いを抱いたという。

 すなわち、

(あ……ありのまま、今起こった事を話すぜ! 『刹那・S・ナイヴズが奴の脳天を貫いた、そう思ったらいつのまにか消えていた』な……何を言ってるのか、わからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……)

 である。

 とはいえ、8人共に転生者。
 メタ視点とはいえ、青年の能力が何か当たりはつく。

「時間停止能力……」

 樹が呟く。

「まあ、分かるか。安心しろ、我(オレ)は基本的にこの力は攻撃には使わん」

 実質、ほぼ全ての手札を晒してしまった青年が苦笑する。

「それだけではないな。頭を貫かれて死なんとは、不死者か何かか?」

 一瞬でテンションを下げられ、冷静さを取り戻した朱雀が尋ねる。

「どうでもよかろう。ついでに自身の死刑宣告を読み上げる気分はどうだ?」

 それを知ったところでどうしようもないだろうと、青年は質問に質問で返す。

 こういった能力は分かれば対処可能となるもの、分かったところでどうにもならないものの2つに分かれる。

『ベクトル操作の反射の障壁を備えた、不死であろう時間操作能力者』

 青年は完全に後者である。

 対応する能力を持たねば、対処の手段がない。

「ひ、ひぃああああああ~!」

 恐慌状態に陥ったレイが一目散にこの場から逃走を試みる。

「無様な」

 が、青年の放つ即死の槍に貫かれ、ギャッと悲鳴をあげそのまま動かなくなった。

「貴様らは無様な真似を見せるなよ?」

 そう、壮絶な笑みを7人に向ける。

 一方的な掃討の開始であった。









 掃討開始から3分。

 7人全員が守勢に転じたため、一応まだ誰も死んでいない。

 青年も攻撃に使うのは『王の財宝』のみ。

 が、すでに攻撃に用いる数は5120。

 一度ごとに1024づつ増えていき、現在第5破目である。

「これも凌ぐか!」

 弑虐的な笑みを浮かべ、青年が続く宝具を展開しようと蔵を開ける。

 そんな時であった。

 ガサリ──。

 青年の背後で草木が物音を立てる。

「む?」

 目を向けると、澱んだ魔力が蠢いていた。

 ジュエルシードモンスターである。

 本来、ロベルト・ナカジマの張った強力な結界により、この地で原作のごときジュエルシードモンスターは姿を形成できない。
 が、青年の張った封時結界は、SSSSランク結界魔導師であるロベルトの結界効果を無力化してしまったのだ。

 とはいえ、結界内に溜まった高レベル魔導師の負の感情に反応し、澱んだ魔力で形成される原作1話のアレより少し強い程度のジュエルシードモンスターである。

 青年に負ける道理はなかった。

 通常であれば──。

「ちっ、時間をかけすぎたか」

 青年はこの転生者たちを弄っていることを自覚していた。

 それほどまでに、在り方に苛立ちが募っていた。
 とはいえ、青年とて自身の在り方を彼らに押し付けるのは間違いだということも理解している。

 が、はじめから吹っかけた来たのは彼らのほう。
 すぐさま殲滅できたのに、こうも弄るのは青年に積もり積もった悪意のせいであった。

 気を取り直し、蔵から魔力を奪う剣を取り出す。

 こういったときあらゆる宝具の原典が収められた『王の財宝』は便利だ。
 破損すれば次元震を起こしかねない危険なジュエルシードを安全に無力化できる。

 そんなことを頭の隅に、青年は切っ先をジュエルシードモンスターに向けた。

 その瞬間であった。

『時間だ』

「っ!?」

 始まりの地で聞いたその声が、青年の脳裏に響く。

 と、同時に全身が弛緩した。

 青年は悟る。

 自分は今ここで死んだのだと。
 理由など分からない。
 あらゆる能力が使えない。
 だから、もう死んでいる。

 だが、

(これを、ジュエルシードを、奴らに渡すわけには、いかん!)

『ほう』

 限界など凌駕しろ!

 『神』よ、この我(オレ)を誰だと思っている!

(受け取れ、高町ゆきの! これを奴らに渡すな!)

 もう何処にもないはずの力を、それでもなお、魂をも燃焼させんばかりの勢いで力を捻り出す。
 そうして、青年は覚醒を果たしてから19年間を共にしたデバイスを、自身に希望を与えてくれた少女の元へと転移させた。

 死してなお、意志を貫く青年を、『神』は驚きながら見ていた。







 そうして、立ったままの青年の形をした死体に迫るジュエルシードモンスター。

 その不定形な口を大きく開き、

 ゴリッ!

 その頭部を通過した。










《転生者一覧が更新されました》









【レイ・ドラグーン】

年齢:死亡(/10歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・王の財宝(10000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:レイドラグーン(21P)

現在地:第97管理外世界






【刹那・S・ナイブズ】

年齢:死亡(/19歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・幽波紋:シルバー・チャリオッツ(500P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:刹那スカーレットナイブス(40P)

現在地:第97管理外世界






【山田 三郎】

年齢:死亡(/24歳)

・総合SSSSSランク魔導師(900P)
・マルチタスクLv100→500(300P)[限界突破]
・デバイス:クロック・タイム(200P)
・王の財宝(10000P)
・乖離剣・エア(5000P)
・天の鎖(250P)
・カリスマLv10(1000P)
・黄金律(700P)
・ベクトル操作(80000P)
・不老(7500P)
・不死(100000P)
・時間を操る程度の能力(45000P)
・容姿:英霊・ギルガメッシュ(100P)
・誰かが助けを呼ぶ声が聞こえる[限界突破]
・誰かのピンチに偶然居合わせる[限界突破]
・悪の企みを察知する[限界突破]
・悪事の現場を偶然通りかかる[限界突破]
【英雄(日本限定):黄金のヒーロー】[限界突破]

現在地:第97管理外世界









 高町ゆきのは自室のベッドに横たわっていた。

 本日もユーノ捜索が空振りに終わり、最近では魔法訓練にも身が入らなくなっている。

 そんな時であった。

「っ!」

 彼女の部屋に、何かが転移してきた。

「……懐中時計?」

 見た通り、金色の懐中時計ではあるが、実際には懐中時計型デバイス『クロック・タイム』である。

『──!』

「え? おうさまが!」

 ゆきのは青年の死と、敵対する転生者のことを知る。
 実は、このゆきの、今の今まで転校生ズの正体に、というか存在に気づいていなかった。

『──』

 と、8個のジュエルシードを出現させると同時に、『クロック・タイム』は跡形も残さず砕け散る。

「あ……あれ? ……おうさま、死んじゃったの?」

 何が何だかわからぬうちに、ジュエルシードを託され、消えてしまったデバイスに、一度出会っただけの金色の青年を思い出す。

 散らばったジュエルシードを拾いながら、ゆきのは訳もわからず悲しくなり涙をこぼす。

「何が何だか、訳がわからないよ。ユーノくん……」











 7人の転生者は、唐突に起きた目の前の出来事を無言で見つめる。

 頭部を失い、力なく倒れ付す最強の敵。

 呆気に取られる間に、ジュエルシードモンスターはガサリガサリと蠢きながらこの場から離れていった。

「はっ!」

 リーダーの樹が死体のほうにすっ飛んで行き、蔵から取り出した槍で死体を貫く。

「おい、何を!」

 いきなりのリーダーの凶状に朱雀が制止の声をかける。

「バカ野郎! コイツは不死身とかだろっ! 死ぬまで殺しつくさなきゃヤバイだろうが!」

 目を滾らせながら、凶相を浮かべ樹が叫ぶ。

 その声に、全員がハッとする。

「そうだった」

「そういや、そうだ」

 そう口々に、それぞれ獲物を手に、死体に群れる。

 ゴシャ! グシャ! グチッ!

 各々の武器が死体に叩きつけられるたびに、赤いものが飛び跳ねる。

 ピクリとも動かないそれは、何時しか地面を染める赤黒い絨毯となっていた。

「やったのか?」

「……ああ、やった」

 誰かが呟き、誰かが答える。

 誰もが笑顔を浮かべる。

「クヒ、ウヒャ、ヒャハハハハハ!」

 誰もが血まみれで、狂気に歪んだ顔で笑っていた。

「……」

 それを漸く復帰し、途中、ジュエルシードモンスターを倒し、確保した皇劉騎が気味の悪いモノを見たといった顔を浮かべる。

 彼ら10人は、2人の尊い犠牲を出しつつも、巨大な敵を倒すことに成功する。

「さて、次は小煩いハエの始末だ」

 凶相を浮かべるリーダーの樹は、虚ろな瞳でそう呟く。

 縛めを釈かれた悪鬼たちが、海鳴に解き放たれた瞬間であった。










『君には最後まで驚かされたよ』

(……)

『が、これも決まりだ。頑張ってくれたまえ、山田くん……っと』

(っ! 我(オレ)は、フリードリッヒ・ジークフリード……ん? ここは?)

『……いや、本当に驚かされるな。この場で覚醒、しかも力を倍返しでか』

(……そうか、我(オレ)は死んだのか)

『そうだ。君は死んだ。色々言いたいこともないでもないが、まあ、ゆっくり休みたまえ』

(……断る)

『……別に、それならそれで構わないが、ここに君がすることは何もないよ』

(声が、誰かが我(オレ)を呼ぶ声が聞こえる)

『……本当に規格外だなぁ、君は。まあ、自由にしたまえ。力は既に返してもらった。君が、なんの力ももたない今の君が、それでも何かできるというのなら、見せてもらうよ』

(無論、もう答えは得た。誰かに与えられる力はもう必要ない。我(オレ)に限界など無いのだからな!)

『まあ、頑張ってくれたまえ』

(うむ、見ているがいい)

『しかし、力の超過をこういった形で返すとは……イレギュラーにも程がある……』











 この日、遂に件の25万さんが死亡した。

 スキルから見て寿命以外の死因が浮かばん以上、きっとそうなんだろう。

 ついでにレイ・ドラグーンに刹那・S・ナイブズも死亡。

 アレクサンドロに続き、2人目3人目の転校生ズからの死者である。

 ジュエルシードの捜索中だったので、迅雷のオッサンにそのことを言ったら、25万さんの名前を聞いてきた。

 山田三郎さんですと答えると、はぁ? といった顔で「フリードリッヒとかじゃなくてか?」と聞いてくる。

 違いますよー、と答えると、オッサンは、「んー? かっしいなー? あれが最高Pかと思ったが……」とか呟いていた。

 どうやら、25万さんと勘違いするほど強力な転生者がこの街にいるらしい。

 しかし、何故転校生ズはこうもポロポロ欠けるのか、内ゲバでもやっているのだろうか?

 だが、僕がそういうことを考えていられたのはこの日までの話。






 翌日、珍しく転校生ズが一斉に休み、レイと刹那がいなかったことにされていることに、やはりはやてとアリサが疑問の声を上げるも、これに答えることができるのは僕も含め誰もいない。
 なのはたちは昨日のニコポ担当が刹那だったためか、珍しく正気にかえっている。

 ゆきのさんは相変わらず挙動不審であるが、なにやら迅雷のオッサンと話がしたいと言ってきたので、放課後翠屋に集合する旨を伝えておく。

 そんな風に、珍しく高町三兄妹で揃って帰宅したのであるが、まあ僕の考えの甘さを思い知らされることになる。

 ジュエルシード捜索絡みで、最近は家に待機している事が多い士郎さんが丁度玄関から出てきたので、

「「「ただいまー」」」

 と、ただいまの挨拶。

「ああ、おかえりなさい、なのは。ところで、そちらの子達は誰だい?」

 そう、士郎さんは本当に誰だかわからないといった顔で聞いてきた。

 ナニソレ?




[28418] 10話 ニコポとはかように恐ろしいものなのだ
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/07/07 21:26



「お父さん、何言ってるの? ゆうくんとゆきちゃんだよ」

 士郎さんの言葉に訳が分からないよと、なのはがムッとした顔で抗議する。

 なのはの声に、一瞬瞳が揺らぎ、改めて僕らを見る士郎さん。

「……ん、んむ」

 と、その時である。

「イヤイヤ、高町なのは。その二人は君とは何の関係も無い、赤の他人だろう?」

 玲瓏な声が、玄関のなかから響く。

 現れたのは鳳凰院朱雀(ほうおういんすざく)。

 そうしてニコリと微笑む。

「高町士郎殿、そこの二人は貴方がたとは何の関係もない赤の他人。そうだろう? 高町なのは」

(ッ!……なんと、瞳の綺麗な少年だ!)

(キュン! そういえばそうだった、かな?)

「なのは? それで、隣の二人は?」

「あ、えーと……誰だっけ?」

 士郎さんに加え、一瞬で言動がおかしくなるなのは。

「ちょ、ちょっと、お父さん? なのは? 冗談は──勇治?」

 僕は慌てて声を上げるゆきのさんを制す。

 ──やばい。

 正直、ニコポ舐めてた。
 学校でアホな感じでしか使ってなかったから、ここまでのものとは思っていなかった。

 朱雀はこちらを嘲笑の目で見つめている。

 その目が、お前たちも同じことをしてるんだろう? と言っている。

 するか、ボケェ!
 お前らと一緒にするな!

 いちいち視線が腹立たしいが、生憎相手は格上だ。

 考えろ、高町勇治。

 ここから先は、冗談抜きで、一手のミスが死に繋がる。

「跳ぶぞ」

「えっ?」

 思考は一瞬、僕は逃走を選択する。

 この2週間、迅雷のオッサンの使い魔、エレノワールさんに散々に扱かれ覚えた転移魔法。

 無動作、無詠唱のそれを即座に展開、僕とゆきのさんの足元に青白い魔方陣が広がると共に起動させる。

「おや、逃げるか」

「え、ええ~!」

「ムッ」

 嘲る朱雀に、驚きの声をあげるなのは。
 流石の士郎さんは戦闘体勢だ。

 そんな3人を視界の端に、僕たちは迅雷のオッサンがいるであろう翠屋の近くの路地裏に跳ぶ。





「ちょっと、勇治! 何あれ、何なのあれ!」

 跳んだ先の路地裏で、ゆきのさんが泣きそうな顔で聞いてくる。

「……あれが、ニコポってやつです。正直、舐めてましたね」

 そう、微笑むとポッとなるだけかと思っていた。

 だが、そんなもんじゃなかった。
 今更ながら、同じクラスに11人も転校生を受け入れさせる、頭のおかしいスキルであることを思い出す。

 こうなると、望んで高町家に生まれた訳でないことが致命的だ。

 はやてとアリサが家族スキルもちの恩恵で、洗脳魔法の範囲外になっていたことを思い出す。

「あれが、ニコポ……ッ!」

 と、考え込んでいたゆきのさんが、急に走り出す。

「ちょっと?」

「お母さん! お兄ちゃんとお姉ちゃんも!」

 僕の声に、そう返してくる。

 ハッとして僕もゆきのさんに続いたわけだが、走っている最中に嫌な予感がしてくる。

 あの場にいたのは、鳳凰院朱雀1人のみ。

 あとの7人はどこにいる?

 そして連中は、今日学校が終わるまでは丸ごと自由に行動していたのだ。

 大通りにでた僕らは、翠屋へ向けて走る。

 店外の席に迅雷のオッサンがいないことに、猛烈に嫌な予感がする。
 この時間にはもういるはずなのだ。

「お母さん!」

 丁度、桃子さんが店先に出てきたところであった。

「あら、どなたかしら? たぶん、誰かと間違えていないかしら?」

 その答えに、ゆきのさんはガクリと力なく膝を付く。

「えぇ? あ、おかーさ……うぇ」

 というか、これはかなり効く。

 どちらかというと、今だ客観的で家族から浮いてる感のある僕ですら、かなりグサリとくる。

 ゆきのさんはかなりやばい。
 マジ泣きしている。

「あ、あら?」

 そんな僕らの有様に、桃子さんが少し狼狽え、

「ただの営業妨害ですよ。私が追い払っておきます」

 そう微笑みながら店から出てきたのが、カイ・スターゲイザーであった。

 どうやら朱雀から連絡が伝わっていたのだろう、既に臨戦態勢だ。

 桃子さんは、ええ、お願いね、と僅かに頬を染め店の中に入る。

 あー、クソ。

 最悪だ。

 目の前のコイツはニヤニヤ笑っている。

 ゆきのさんは俯いたまま泣いている。

 僕は今どんな顔をしているのだろうか、怒りか諦めかそれとも悲しみか。

 まあ、そんなことを考えられるほどには、頭の中は冷静だった。

「死んどけや」

 そう言って、カイがデバイスをこちらに向ける。

 まだ、死ぬ気はない。

 行き先を思いつかなかったので、適当に跳躍。

 ただし、八神家、月村家、バニングス家は候補から外す。
 コイツがここにいるいる以上、そこはもう安住の地ではない。

 どうにもこうにも、力が足りない。
 迅雷のオッサンも、アリサ兄も、無事を祈るしかなかった。













      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆













 この日、八神迅雷は朝から妙な不安に襲われていた。

 午前中、海中分を除く、最後のジュエルシードを探していたのだが、昼前にくるはずのフリードリッヒからの連絡がなかった。

 仕方なしに、エレノワールと手分けして搜索を行うも空振り、一旦彼女を家に戻し、現在は翠屋にてパフェをつついている。

「くそ、このモヤモヤした感じはキラとやりあって以来だな……」

 2年前に行われた『キラ・ヤマト討伐作戦』、対『フリーダム』部隊の6名を投入する大規模作戦であったが、結果は惨敗。
 ペンドラゴンはいつも通り重症、迅雷自身とルミカ、プリンスが全治1~3週間の負傷、カウリすら手傷を負い、瀕死のエーリヒが覚醒して漸く撤退に持ち込んだのだから、キラ・ヤマトの転生者としての異常さが突出している。

「フランの姐さんが動ければなぁ」

 全時空平和委員会、最強戦力たるリーゼフラン・グレアムの『女王艦隊』であれば打倒は可能かもしれない。

 が、彼女は本局を動けない。

 5年前の、エミヤズによる『本局殴り込み事件』により、襲撃に対応するため本局から一歩も動けなくなってしまっていた。
 まあ、この事件こそが対『フリーダム』部隊結成の原因であるのだが。

 『フリーダム』の大半はアンチ管理局思考で行動している。
 例外は、リュウ・サカザキと孫悟欽の二人のみ。

 結局、原作開始時期になっても動いたのは、ゾートただ一人。
 連中は今日もどこかの次元世界でテロ活動に勤しんでいることだろう。

 ジュエルシードの捜索が空振りに終わったため、本日の封印作業は無し。
 あとはそのことを高町勇治に伝えるだけなので、迅雷本来の仕事に思考がそれていた。

 そんな時のことである。

『マス、タァアア!』

 使い魔のエレノワールの念話による絶叫。

「ッ!」

 それを感知した瞬間、迅雷は走り出す。
 ちなみに、料金は先払い。食い逃げではない。








 八神迅雷の使い魔、エレノワールが状況に気づいたときには既に詰みかけであった。

 昼過ぎまで行なっていたジュエルシード捜索は空振り、主に命じられ先に帰宅した八神宅で待機していた矢先のことであった。

「お帰りなさいませ」

 エレノワールが帰宅したときに入れ違いで買い物に出かけたはやての母が、買い物から帰ってきた時のことである。

「……」

 ふらふらと定まらぬ足つきで玄関から入ってきた彼女は、目も虚ろにそのまま立ち尽くす。

「これは?」

 エレノワールが目を凝らせば、彼女の首には魔力を帯びた首輪がはめられている。

 この状況の原因であると判断し、取り除こうと手を伸ばし、

「それに気づくということは、こちら側か」

「っ!」

 その声と共に、首輪に触れた指がバチンと障壁に弾かれる。

 彼女に続いて玄関に入ってきたのは、東樹(あずまいつき)。

 無言のままに腕を上げ、『王の財宝』を展開する。

「なっ!」

 即座にシールドを展開するが、純粋に威力が違う。
 エレノワールもそれは承知で、目的は射線をずらすことだ。

 この時点でエレノワールは主の迅雷との合流を選んでいる。

 目の前の少年は、かつての天鏡将院八雲より格下。
 とはいえ、自分を上回る戦力を持っていることは間違いない。

 故に、はやての母を見捨てることになるが、この場を切り抜けることを第一にリビングに逃げ込む。
 そこから外に飛び出すためだ。

「ちっ、逃がすか!」

 使い魔の狙いを読んだ樹が、外で待機している神薙北斗(かんなぎほくと)に念話をつなぐ。

(庭に行く、逃すな)

(りょーかい)

 彼が遅れてリビングに乗り込むと、丁度外に出るところであった。

「どうせ、逃げられん」

 樹はそう笑みを浮かべた。

 庭に飛び出したエレノワールが見たのは、神薙北斗その人。

 それだけなら即座に逃走可能であっただろう。

「エレさん?」

 北斗が、八神はやてを人質にとっていなければ。





 八神迅雷は、かつて八神はやての大ファンであった。
 はやてを不幸にしたくないと、その想いを第一に転生した男である。
 ただ、リーンのようにそれを神に望んだのではなく、自分がはやてを不幸から遠ざけようとしただけだ。
 共に歩いたり、恋愛をしたりなどではなく、ただその笑顔を守るためだけに。
 そのために、はやての父親の弟として転生する。
 結果、本来起こるはずであった両親の事故は彼の手で防がれ、彼女は孤独な身の上とならずに済む。
 闇の書事件そのものは、彼が絡むことなく解決してしまったため出番はなかったが。

 そして、八神迅雷の使い魔であるエレノワールもまた、八神はやてに害をなすものに対して、黙って逃げられるわけがなかったのである。





 はやてを人質にした北斗に、頭に血をのぼらせ獣性を最大限開放したエレノワールが襲いかかる。

 使い魔としてみれば、確実に上位に来るであろう彼女ではあったが、如何せん相手が悪い。
 北斗は北斗神拳伝承者クラスの近接戦闘能力の持ち主であり、はやてを盾にせずとも問題なく迎撃が可能であった。

「アータタタタタタッ!」

 空いている左手で拳のラッシュを放つ。

「グッ!」

 ただそれだけでエレノワールの突進を防ぐ。
 拳圧に押しやられ、一旦距離を取らざるを得ない。

「チェックメイト」

「ガァッ!」

 背後からの声と共に、複数の宝具が彼女を貫いた。

「エレさん!」

 はやてがどう見ても致命傷のエレノワールに叫び声を上げる。

「は、やて、ちゃん……申し、訳ありませ──」

『マス、タァアア!』

 最期の叫びを主に飛ばし、絶命した。







 迅雷が八神家へとたどり着いたのは、すでに何もかもが終わった後である。







 息を切らせながら、迅雷はその場を見る。

 玄関を開け放ち、もたれかかるように樹が立ち、泣き崩れるはやての襟をつかみながら立つ北斗。

 そして、血まみれで素体である黒猫の姿で事切れた使い魔のエレノワール。

「いやはや、八神はやての過去をここまで変える大罪を犯すとは、大したもんですな。おかげで、彼女は車椅子であるという前提でいた我々は最近まで同じクラスに彼女がいることに気づきませんでしたよ」

 したり顔で樹が喋る。

「で?」

 まるで血が沸騰しているかの様に体が熱くなっているのを感じながらも、迅雷は彼に話を続けるよう促す。

「……ふん、反応が薄いですねぇ。まあ、いいでしょう。そうそう、どういうわけか彼女には我々の魅力がわからないらしい。でもね、そんな彼女にもこんな手段があるのです」

 視線を向けられ、北斗がはやての背を突く。

「えっ?」

 突然の出来事に、困惑の表情を浮かべるはやて。

「うふふ、ご存知ですかな? 経絡破孔・死環白。一時的に意識を失くし、情愛を失わせる。そして目覚めた時、最初に見た者にすべての愛を捧げる。素晴らしいでしょう?」

 凶相を浮かべ、樹が喋り続ける。

 迅雷は血がでるほどに、拳を握りしめる。

 現状、八神迅雷に出来ることは何もない。
 もし、攻撃したのであれば即座に目の前の二人を消し炭にすることが可能であろう。
 しかし、その場合ははやても巻き添えにしてしまう。
 火力が高すぎるのだ。

 そして周囲を考慮した威力では、二人の防御を抜けない。

 樹が喋り続けるのを黙って聞くしかなかった。

「ジンさ……ん」

「すまん、はやて。今の俺はお前に何もできん……」

 ガクリ、とはやてが気を失う。

「では、別れも済みましたか。では、ご機嫌よう」

 ニッと笑みを浮かべる樹が腕を上げ、『王の財宝』を展開、迅雷へと射出する。

 ドスドスッと焦げ臭いにおいを放ちながら、複数の宝具が迅雷に突き立つ。

 そして、そのまま突き立った接合部からポロリと落ちる。
 放たれた宝具全てが溶かし燃やされていた。

「な、なんだ?」

「ああ、こちらも帰らせてもらう」

 樹の疑問を無視して迅雷はエレノワールの亡骸を大事に抱き上げると、傷口から炎を巻き上げながら踵を返す。

「お、おい! それはなんだぁ!」

 樹が声を震わせながら、再度宝具を放つ。

 が、再び放たれ背に突き立ったそれらも、同じように溶かし燃やされるだけであった。









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【八神 迅雷】

年齢:29歳(/100歳)

・総合Aランク魔導師(5P)
・家族:八神はやての叔父(40P)
・魔力値:SSSSS(500P)
・単一魔法:→魔力値(-450P)
・使用可能魔法:フレイム・ショット
・身長:190cm(5P)
・熱血[限界突破]

現在地:第97管理外世界









「……さっさと治療せんと貧血で倒れかねんな」

 傷口から燃え上がる炎で煙草に火を点け、煙をふかしながら迅雷はアースラへのゲートへと向かう。

 沸騰しそうであった血は、文字通り炎と化した。
 現在、迅雷の体を駆け巡る血液は3000度の熱血そのものである。

 そんな血液が地面に垂れようものなら大惨事であるが、幸い外気に触れると炎となるため一応コントロールが可能であった。

 かなりの出血のため、いい意味で頭が冷えた迅雷は次に備えて動く。

 先ずはアースラに帰還。

 増援と合流し、転生者たちを叩き、残りのジュエルシードを回収。

 後は海鳴の人達の記憶処理をしてこの地から去ればいい。

「……クソ、連中の動きは本当に読めなかったか? ジュエルシードに気を取られすぎたか?」

 やるべき事はわかっている。
 それでも、出来ることはなかったか? そう考えてしまう。

「オッサン!」

 と、向かいの角から高町勇治が走ってきた。

 同じく彼に引っ張られ、泣きじゃくっている高町ゆきの。

 どうやら、彼らも同じらしい。

 取り敢えず、簡潔にお互いの情報を交換。
 その際に、勇治に軽く治療魔法をかけてもらう。

 やむを得ないので、彼らもアースラへと連れていくことにする。

 連中にあれだけ殺意がある以上残すわけにはいかなかった。

 問題はユージン・バニングスだが、さてどうしたものか。

 一応、勇治は範囲は狭いが封時結界を張ることが可能だ。
 なんとか迅雷自身も戦闘が可能となるのだが、如何せん子供を戦いに出したくないという感情もある。

 まあ、そんなことをいっている場合ではないのだが。

 とはいえ、ゆきのをなんとかしないとその手も取れない。
 一旦ゆきのをアースラに送るべく、ゲートに向かうことにした。

 と、丁度公園の入口にたどり着いたところで、勇治が顔を真っ青にする。






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【ユージン・バニングス】

年齢:死亡(/100歳)

・家族:アリサ・バニングスの兄(50P)
・秀才(30P)
・容姿:美形(20P)

現在地:第97管理外世界







 そして、真っ青な顔のままユージン・バニングスの死を告げた。

「そうか……」

 ゲートの位置はすぐそこである。

 原作で、なのはとフェイトが別れを告げた場所だ。

「あー、クソッ! 俺次第ってのはこーゆー事ですかい、フランの姐さん……」

 何か、何かもっといい方法があったのではないか?

 迅雷は、天を仰ぐ。

 そこには、いつもと変わらない青空が広がっていた。













      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆













 その日、ユージン・バニングスが帰宅すると、屋敷に来客が訪れていた。

 虎桜院闇守(こおういんやみもり)と皇劉騎(すめらぎりゅうき)の二人である。

 アリサが毎日言っていた彼らか。

 ユージンは正直会う気も起きなかったが、間違いなく両親不在の今、彼がこの家の責任者である。

 それに、ニコポされている家の使用人たちにも悪い。

 さっさとお引き取り願おう。

 そんな考えが非常に甘いことと知ることになるのは直後のことになる。
 今まで遭遇した転生者が、高町兄妹に八神迅雷らまともな人間であったため、転生者同士で会話が成り立つという勘違いをしていたのだ。

 虎桜院闇守は、ユージンと会うやいなや、さっさとバニングス家から出て行けと高圧的に命令してきた。

「……君は何を言っているんだい?」

 訳が分からないよ、とユージンが聞き返す。

 共に来たという皇劉騎は無言で座っている。

「だから、とっととここから失せろと言っている。頭がおかしいのか?」

 何にいらついているのか、闇守はそう繰り返す。

 ユージンは何らかの情報を求めて、劉騎の方を見るがこちらはそれに気づいているのかいないのか、無言のままだ。

 会って5分で途方にくれことになるとはユージンも思っていはいなかった。

 妹のアリサが帰ってきたのはそんな混沌としたタイミングであった。

「あ、あんたたち! 家に何の用よ!」

 家の使用人たちの様子が、昨日までのクラスメイトたちに酷似していることに気づいたアリサが応接間に乗り込んでくる。
 そして、想像通りそこにいるのは原因であろう転校生のうち二人。

「うるせぇ! なんで俺がここ担当なんだよ! 俺はフェイトがいいんだよ!」

 と、アリサの姿を見るやいなや闇守が唐突にキレる。

 その様子に、ユージンはため息と共に、

「いい加減、帰りたまえ。君らもいい年だろう、物事の道理ぐらい理解している──ん?」

「うるせぇ、ってんだろうがよ!」

 言いかけ、胸元に激痛。

 視線を下げると、闇守の手に握られた長剣が自身の胸に突き刺さっていた。

「いやぁあああああ!」

 目の前の、唐突な出来事にアリサが悲鳴を上げる。

「ア、リサ……にげ」

 ここから逃げるよう、ユージンはアリアに命じようとするが、そのまま力なく仰向けに倒れる。
 ゴフリと口から血があふれる。

 どうやら心臓を貫かれたようだ、そんなことを考えながら、ユージンの意識はブレーカーを落とすように消失した。







「おい、落ち着け」

「うるせぇよ、雑魚は黙ってろ!」

 血溜で動かなくなったユージンに、蹴りを入れる闇守に劉騎が注意を促す。
 が、闇守は無視。

 先日の戦いで劉騎とそれ以外の7人に妙な格付けが出来ていた。

 舌打ちとともに口を閉じる。

「兄さん! 兄さん! 兄さんッ!」

 そんな二人など、まるで目に入らずアリサが兄ユージンの死体に縋り付く。

「嘘でしょ? ねぇ、目を開けてよぉ」

「うるせぇ! キャンキャン騒ぐんじゃねぇ!」

 ガッ!

 闇守が情け容赦なくアリサを蹴り飛ばす。

「グうッ!」

「おい! やりすぎだ!」

 流石に見ていられなくなった劉騎がアリサのそばに駆け寄る。

「ちっ! 興ざめだなぁ! おい、そこの、一番いい部屋に案内しろ!」

 フン、と唾を吐き捨て、闇守は控えていた使用人に命じて、屋敷の奥へと進む。

「おい、大丈夫か?」

 かなりの距離を飛ばされ、うずくまっているアリサを助け起こす。

 が、アリサはそれを振り払い、ユージンの元にふらふらと近づく。

「にいさん……」

「ん?」

 彼女が倒れないよう、数歩後ろを歩きながら劉騎はユージンの死体に異変が起きていることを目の当たりにする。

「え、なによコレ!」

 ユージンの死体が突如発光し、光の粒子となってその形を崩しながら天へと登っていくのである。

「いやぁあ! にいさん、いかないでぇ!」

 アリサが必死に光の粒子をかき集めようとするが、その両手はむなしく空を切る。

 それを見て劉騎は、そういえばあの後レイの死体も消えていたな、とどうでもいいことを思い出していた。

 ほんの数秒でユージンの死体が、血痕もなく消え去る。

「なによ、これ……なんなの……」

 虚ろな瞳でアリサが呟く。

 なんなんだろうな? とか、自分のしたかったのは、こんなことじゃなかったはずでは? など、劉騎はどこか人ごとのようにその光景を見つめていた。









『本来、こういう形で死なれても損しかないのだがね』

(……)

『まあ、彼のおかげで返済分はどうでもいいというのもあるのだが……まあ、決まりは決まりだ』

(……)

『10年。その間、アリサ・バニングスの行く末を見て、存分に絶望してくれたまえ』

(あ、ああ……)

「そこで諦めるな! 貴様の想いはそれで終わりか!」

『……皆が皆、君の様になれるとは思わんがね』

「限界など凌駕しろ! 絶対できると思い込め、それが貴様の魂の力だ!」

(……あ、ああああ! ──ア、アリサ……)

『いやいや……』





[28418] 11話 漸く主人公にも陽の光が、と思ったがそんなことはなかった
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/07/11 15:36

「以上が、本日の海鳴で起きた一連の事件です。……正直、急展開すぎてついていけませんな」

 八神迅雷がアースラへと戻るのとほぼ同時期、そのだいたい1時間前に始まった転校生ズの凶行についての報告をロベルト・ナカジマは、直接の上司ではないが全時空平和委員会に所属している転生者23名のリーダー格であるリーゼフラン・グレアム『フリーダム』対策本部長に行なっていた。

 転生者絡みの事件はどうしても洗脳タイプのスキルを考えると、どれだけ優秀でも転生者以外では対処が難しい。

 故に今回のコレは、意図的に『フリーダム』のゾートを誘導することで『フリーダム』対策本部がイニシアチブを握り、動かせる最大戦力を一気に投入することで短期間で事態を収束させる予定であった。

 しかし、現実にはこの有様だ。
 ロベルトは自分たちの力のなさにため息をつく。

『フン、想像力の欠如だなロベルト。今回のこれは私が想定していた流れの中では5番目に良い方だ。無論、最悪は次元震が貴様らを巻き込んで地球を周辺の次元世界ごと吹き飛ばすいうものだが』

 しかし、転生者以外の死者はいないではないかと、リーゼフランは笑う。
 死んでいなければまだ手の打ちようがあると言わんばかりであった。

「……参考までに、最善手は?」

 相変わらず好きになれない女だと、どちらかというと情を取るロベルトが尋ねる。

『私が海鳴に行くことだ』

 と、一言。

「……そりゃ、そうでしょうな。千里眼のあなたがいればどれも防げそうですからな」

 千里眼の悪魔、冷血の魔女などと陰口を叩かれて、平然としているのがリーゼフランという女性であった。
 少なくとも彼女が直接扱った案件に失敗は一つもない。

『当然、不可能な話だが』

 当たり前の話である。
 どうすれば全時空平和委員会最強戦力たるリーゼフラン・グレアム査監部長を、予知にも上がらない管理外世界に派遣できるというのか。

「しかし、ようやく増援の到着ですか」

 あと1日早ければ、と思う。

『文句はゾートに言え』

 次元空間の乱れによる、長距離転移行為に危険さえなければ対『フリーダム』部隊からの招集自体は4日前に終わっている。
 招集された3人は、多少危険だろうが構わないと言ったのだが、担当部門が断固拒否を貫いたのだ。

 当然といえば当然で、どうして最強クラスの人員を無為に失うかもしれない事をしなければならないのだ。
 もちろんそこには保身もあるであろうが、彼らは職務に忠実だったと言えるだろう。

「ま、その通りですがね。あれがバカだったせいでこうなるとは、やりきれませんよ」

 結局、初手の躓きが致命的なものとなったのだ。

 ロベルトは深々と溜め息をついた。








「お疲れ様です」

「ああ、取り敢えずこいつらを頼む、ペーネロペー」

「かしこまりました」

 アースラへの転移は一瞬で終わった。

 どこかで見た──まあ、かつて映像で見たのだから間違いない──艦内の様子を僕はぼんやりと眺める。

 いまだアリサ兄、ユージンさんの死が衝撃となり考えがまとまらない。

「俺はロベルトのダンナに、ん?」

「直に報告するよう本部長の御達しです」

「……あー、直で、ね」

「はい」

 なにやらオッサンたちが話していたようだが、終わったみたいだ。

「お待たせいたしました。ご案内しますので、お二人ともこちらへ」

 と、ペーネロペーと呼ばれたウサギ耳の使い魔の人に連れられ、この場から移動しようとしたタイミングであった。

「カカカッ、またこっぴどくやられたもんじゃのう!」

「爺さんか」

 通路の先から声がかかる。

 カツカツと靴を鳴らし、タキシードを身にまとった皺と傷だらけの顔に笑みを浮かべた初老の男性が歩いてくる。
 腰元まである長い白髪が首元から三編みにされ、尻尾のように揺れている。
 背はオッサンよりも低いが、それでも180cmはある。
 服の上からでもわかるがっしりとした体つきで、細身ではあるがその全身は鍛え抜かれた筋肉に覆われているのだろう。

 そして、3歩後ろを静静と歩くのは垂れた犬耳のメイド服の少女。
 きっと使い魔なんだろうけど、趣味全開だなぁ。

「油断、とも言えんか。儂らは何だかんだで正面戦闘以外は苦手だからのう」

「返す言葉もない」

 そして、

「修行不足だ」

「カウリか。……全くだな」

 続くのは黄金の鎧を身にまとった青年と、すぐ後ろで仮面で顔を隠しているマントの人。
 つーか、まんま黄金聖闘士じゃねーか!

 しかも、山羊座(漫画版)!

 てことは、使い魔は女性聖闘士扱いってことなのだろうか。

「……うす」

「おう、ルミカ」

 3組目は和装の女剣士と、どこかで見たことのあるオレンジの学生服みたいな服を着ている多分猫耳の使い魔の人。
 髪型はおかっぱで黒髪、どこか寝惚け眼というか半目っぽい感じで可愛く見えるのだが、でかい。
 身長は先の二人には劣るが、額分ぐらいしか差がない。

 モデル体型なのに童顔とか、なんかバランス悪い感じだ。

 この人も正体、っていうかどういう能力かは見ただけじゃわかんないなぁ。

 というか、一目で元ネタがわかったのは黄金聖闘士の人だけなんだけど。








《転生者一覧が更新されました》








【ペンドラゴン】

年齢:59歳(/100歳)

・念能力:強化系・覚醒初期(100P)
    :強化系・試験官級[限界突破]
    :強化系・旅団戦闘員級[限界突破]
    :強化系・協会会長級[限界突破]
【発:極・中段正拳突き】[限界突破]

現在地:第97管理外世界





【カウリ】

年齢:22歳(/100歳)

・聖闘士:山羊座(12000P)
・魔法使用不可:→聖闘士(-12000P)
・魔力値:SSS(100P)
    :SSSS[限界突破]

現在地:第97管理外世界





【ルミカ・シェベル】

年齢:18歳(/100歳)

・騎士:ヘッドライナー・公安騎士(50P)
   :ヘッドライナー・騎士[限界突破]
   :ヘッドライナー・国家騎士[限界突破]
   :ヘッドライナー・天位[限界突破]
   :ヘッドライナー・小天位[限界突破]
・SSランク結界魔導師(50P)

現在地:第97管理外世界









「……」

 強えー。

 つか、この爺さんと姉さん、どんだけ限界突破しとんねん!

 しかも、この人ら、殆ど戦闘以外切り捨てたスキル編成すぎる。
 所謂バトルジャンキー的な人たちなんだろうか?

 そんな風に驚いているうちに、何となくいつもの気分に戻っていた。












      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












「リーダー、他の場所も終わったみたいだぜ」

 神薙北斗(かんなぎほくと)は玄関で考え込んでいる東樹(あずまいつき)に声をかける。

 死環白をかましたはやてをリビングのソファに寝かせ、タイミングよく他の担当から念話が届いたのだ。

 高町家に入り込んだ異物は取り逃がしたものの、所謂原作キャラたちの説得はほぼ完了したようだ。
 ただバニングス家担当の皇劉騎(すめらぎりゅうき)の報告では、やはりアリサ・バニングスは説得に応じなかった模様。

 それを聞き、北斗は後でアリサにも死環白を撃たねばならんなと呟く。

「おい、樹?」

 完全な利害関係からなった彼ら8人の共闘であるが、当然隙あらば相手を出し抜こうと皆心の底で思っている。

 そんな中で、北斗は樹だけには忠誠に近い形の感情を抱いていた。

 先日打倒した偽英雄王。

 大片にその能力を秘匿しない彼に苛立ち、挑んだものの返り討ちにあった後、北斗は完全に自信を喪失していた。
 そんな彼に共闘を持ちかけたのが樹である。
 共闘など思考の端にもなかった北斗は、樹の話を目からウロコが落ちる思いで聞くことになる。

 そして、思い通りにはいかなかったものの、予定通り偽英雄王は退場させた。

 続いて、兵は神速を貴ぶとの言葉通り、海鳴に潜り込んでいた転生者共を今日1日で撃破せしめた。
 まあ、自分たちの担当した八神家の転生者は逃がしてしまったし、高町家の転生者たちも同様ではあるが。

 だが、拠点は潰したのだ。
 これからシラミつぶしに探して、バニングス家の転生者の後を追わせてやろう。

 北斗はそんな風に考えている。

「うん、ああ。さっきの男は逃がしたが、些末ごとだな。それに、フェイトが来ていないから3人ほど動向が読めない。早めにケリをつけよう」

 樹がハッとしたように答える。
 自分の宝具が通用しなかったのは、一旦棚に上げる。

 それよりも、問題は虎桜院闇守(こおういんやみもり)を筆頭に、フェイト好きが未だ現れぬ彼女に苛立ちを隠そうとしない。

 昨日までは偽英雄王という重石があったために表面化していなかったが、それがなくなった今、彼らの結束は恐ろしく脆くなっている。
 とはいえ、樹も他の者も期間限定の共闘というのは自分だけが理解していると思っている。

 割り当てに不満を隠そうとしなかった闇守と月村家の2人は、高町家担当の2人についでに皇劉騎も誘って処分することを考えねばな、と樹は思う。

 幸いにして、目の前の北斗は自分に協力的だし、鳳凰院朱雀(ほうおういんすざく)は先の読める男だ。
 カイ・スターゲイザーは読めない男だが、先行きのわからない男ではあるまい。

 樹はそこまで考えて、さて死環白を撃ったはやてはどうしようと悩む。

 自分を含めた生き残った8人に是非はやてが欲しいという人間がいなかったのだ。
 ちなみに死んだ3人は、アレクサンドロがなのは派、刹那とレイはフェイト派である。













      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












『さて、言いたことがあれば聴くぞ?』

 画面の魔女がいつものようにうっすらと笑みを浮かべている。

「姐さんから見て、どんなもんです? 今回の按配は」

 そして、迅雷も文句は言わない。
 この画面の女性が自身を含めた転生者全てを、盤上のコマのようにしか思っていないのを知っている。

 それを承知で従うのは、迅雷が八神はやての幸せを願うのと同じように、この女性がギル・グレアムとその使い魔2人の幸福を願っていることを知っているからだ。

『50点。まあ、ギリギリで赤点は免れたな』

 そしてグレアムたちが半生を捧げたであろう時空管理局を、それにふさわしい組織にすべく全能を尽くしていることを知っている。
 豪放磊落と腹黒陰険。
 正反対なのにどこか似た者同士の2人は、彼女を嫌ったり苦手に思う転生者が多い中、異色の組み合わせとして全時空平和委員会でも有名だった。

「詳しくは聞きませんがね。まだ、取り返しはつきそうですか?」

『無論。作戦決行は明日○九○○。新しい力はそれまでに使いこなせ』

「了解。……それと、エレノワールのことは……すいません」

『構わん。娘の様なものだが、それでも道具だ。が、貴重な道具だ。次は大事に扱え』

 サーヴァント・システムの生みの親にして、システムの根幹を担う女がどこか空虚に笑う。

「いっ、一応、今回ばかりは……」

 単独じゃダメですか? とまで言えずに、

『ダメだ。規定にあるだろう?』

 直ちに却下。
 即ち、第九条第二項『全時空平和委員会局員は、有事に備えて必ず使い魔を1体以上所有しなければならない』である。

「まー、そうなんですが……」

 言い淀む迅雷に、彼女が邪悪な笑みを浮かべる。

『因みに、既に次は用意してある。姿はエレの因子にお前のを加えて、娘っぽく仕上げてみた』

 そう言うと、部屋の隅に不自然に置いてあったコンテナがプシューと開き、内部があらわになる。
 中には、彼女が言うようにどこかエレノワールの面影を残した褐色の少女タイプの使い魔が、スリープ状態で待機していた。

 さしもの迅雷も、顔がひきつる。

「……ここまで予測済みですか?」

 至れり尽くせり。そんな言葉が浮かぶ中、ため息と共に尋ねる。

『当然だ。最悪に備え、既にアルカンシェル搭載済みの次元航行艦隊を火星軌道で待機させているぞ』

 その返答は、最悪の場合は自分たちごと地球を吹き飛ばすということだ。
 その最悪とは、自分たちが全滅し、バカな転生者がジュエルシードでやらかした場合となる。

「明日の作戦は、必ず成功させろ、ということですか」

 状況は良くない。
 こだわりは捨てろということか。

 迅雷の言葉に、期待しているぞ、と彼女は通常グレアム家の者しか見ることのない邪気のない笑顔で笑った。










「おい、勇治」

 僕が休憩所でぼんやりしていると、かんり……全時空平和委員会の制服(変更なし)に着替えた迅雷のオッサンがやってきた。
 しかし、アロハシャツに見慣れた為か驚くほど陸士の服が似合わんな。

 ちなみに、ゆきのは用意してもらった部屋で寝ている。
 僕は寝る気にもなれなかったので、ここでぼんやりしていたのだが。

「どうしました?」

「うちらの大将がお呼びだ。滅多なことじゃ怒らんだろうが、まあ失礼のないようにな」

 そう言って、付いて来いと促す。

 大将?

 全平和会のトップか?

 そんな疑問符を浮かべながら付いていくと、通信室に入っていく。

「姐さん、連れてきましたぜ」

『ご苦労。後は自由にしていいぞ』

「自由にって、これ使い熟さんといかんでしょう……」

 と、やりとりをした後、部屋を出る。
 その際に、オッサンは指を鳴らしそこからボッと火を出した。








《転生者一覧が更新されました》








【リーゼフラン・グレアム】

年齢:35歳(/100歳)

・出身:何らかの実験施設(-200P)
・魔力値:無限(1000P)
・魔法使用不可:→魔力値(-1000P)
・軍師孔明(100P)
・運勢:天運(200P)

現在地:次元空間・全時空平和委員会本局







『さて、高町勇治くん。初めてお目にかかる、全時空平和委員会査監部長を務めるリーゼフラン・グレアムだ』

 と、画面上であるにも関わらず転生者一覧が更新された。

 そして、その情報によれば、この目の前の女性は圧倒的な運はあれども、ほぼ実力でその地位まで上り詰めたはずである。
 『軍師孔明』は物事の成否を100%の確率で判断するスキルだ。
 ただ有効な何かが前もってわかる訳ではないので、持ち主が有能でないと宝の持ち腐れになるはず。

「よ、よろしく」

 というか、目がやばい。
 僕を見る目、完全にモノを見る目だ。

『最初に言っておくが、私は自身を含めた全ての転生者に対して平等に価値がないと思っている。だが、そんな無価値な我々だがこの世界をよき方向を導く力だけは持っている。そして、それを正しく用いないクズは今すぐにでも処断してやりたいほどに嫌いだ』

 淡々と言葉を重ねる画面の女性。
 その紅い瞳に貫かれた僕は冷や汗を流すしかない。

『さて、高町勇治。君はこの世界に何ができる? 何をしようとしている? 是非、教えてくれないか』

 それは質問と言う名の脅迫だった。

 だけど、それは僕が──今だ為すべきことすら決められない自分の──本当にやりたいことを、見出す一歩になった。

「高町家の、しろ……父さん、母さん。兄さん、姉さん、なのはを、あいつらから取り戻したい!」

 今は先ず手の届くところから。

 そこから一歩ずつ進んでいこう。

『いいだろう、高町勇治。我々は全面的に君に協力しよう。まあ、実際は君が我々に手を貸す形になるだろうが』

 それはそうだ。

 僕では逆立ちしようが、あの転校生ズ一人相手に手も足も出ない。

『君の感知系スキルは相当レアだ。協力はじめに海鳴を我がものにしようと企む、愚か者共の情報を提供して欲しい』

 そういえば、この転生者一覧については誰にも話したことはない。
 ユージンさんは知っていただけだし、迅雷のオッサンも口にしたのは僕がそういったスキルを持っているということだけだ。

『君のスキルは転生者一覧というものだろう? Lvはしらんがね。クラナガンのバランという転生者から聞いたのだ、そういったスキルがあるとな』

 僕のその疑問が顔に出ていたのか、リーゼフランさんはそう言ってきた。
 ユージンさんと同じく、そうとう後発の人なのだろう、そのバランなる人は。

「わかりました。えーと、文書で提出する感じですか?」

『そう言えば、地球出身か。使い魔の一人を回す、その子から詳しいことを聞くように』

 そう言って、彼女は通信を終える。

 これが、僕の生涯の上司となるリーゼフラン・グレアムとの出会いであった。













      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
















「……殺してやる」

 明かり一つ点けていない自室でアリサ・バニングスは呪詛を吐く。

 あの後、放心しているアリサを劉騎は使用人に命じて部屋へと運ぶ。
 その際中、彼に笑顔が浮かぶことはなく、使用人たちに命じるのに手こずり、闇守の指示ということで漸く命令にこぎ着けていた。

「殺してやる」

 正気に返ったアリサが最初にしたことは部屋から出ることだった。

 が、ドアの外側には劉騎がもたれ掛かっており、彼女の非力ではそれを開ける事は叶わなかった。

 出して! と叫ぶアリサに劉騎が、

「やめておけ。刃物を持ち出しても、俺は疎か闇守にも何もならんぞ」

 淡々と言う。
 しかも、通せんぼの本当の理由は闇守が八つ当たりに来るのを防ぐためらしい。

「逃げるんなら、手を貸さんでもない」

 彼はアリサが両親のいる海外なら連中の手も届きにくいと言ってきた。

 ついでに、

「どうせ、お前さんはアイツらにしてみれば刺身のつまだ」

 非常に失礼な事を言う。
 が、その言葉でいくらか頭が冷えた。

 よく考えろ、アリサ・バニングス。

「絶対に、コロシテヤル」

 そうだ、兄さんの仇を、絶対に──。







 部屋の中から呪詛の声が聞こえなくなってから数時間、彼女は寝たのだろう。

 劉騎は窓の外を見る。
 いつの間にか夜が明けかけていた。
 一睡もしていないが、それで参るようなヤワな体ではない。

「おい! 一杯付き合え! ウヒィヒヒヒ」

 と、廊下の反対側から高そうな酒瓶を片手に、闇守が千鳥足で歩いてくる。

 おまえ9歳だろ、と呆れながら手を振り無言で断る。

「ウェヒー、そんなつれないこというなよー。飲もうぜー、よー!」

 断られてもなおフラフラと近づいてくる闇守。

 いい加減、ウザイなと背をあずけていた扉から離れる。

「あ……」

 ギィと、扉が開く。

「それなら、私がお尺を致しますわ」

 と、どこか虚ろに見える瞳を浮かべたアリサが上目遣いで彼に近づく。

「おい?」

 ほんの数時間前とは180度異なるアリサの態度に訝しむ劉騎。

「いいねぇ、いいねぇ! じゃああっちで飲み直そうかぁ!」

 反対に、漸く俺の魅力に気づいたか! と、闇守は上機嫌でアリサの肩に手を回し歩き出そうとする。

 笑顔に狂気を浮かべながら、アリサが闇守に密着する。

「ええ、だから……死んでくださらない!」

 ドスッ!

「ギィッ! 痛ぇ!」

 脇腹に強烈な痛みを感じ、視線を下に向けるとアリサの両手に握られたナイフが突き刺さっている。

 一瞬で酔いが醒める。
 変わりに頭の天辺まで血が昇った。

「て、てめぇ!」

 腕を振り、アリサを体から引き剥がして蹴り飛ばす。

「あうっ」

 思いっきり力を込められたため、踏ん張ることもできず廊下をゴロゴロと転がされる。

「こ、こここ殺す! ぜぇーってぇコロス!」

 顔を真っ赤にしながら放った剣は、ギィイン! と硬質な音を放ち床に突き刺さる。
 2人の間、アリサを守るようにして劉騎はが立ちはだかっていた。

「お……い、おい、おーい。んだ、てめぇ?」

 邪魔してんのか? 殺すぞ? と闇守の口が歪む。

「やってみろ」

 アリサに放たれた剣をたたき落とした劉騎は、一言、そう口にする。

「死ねよや!」

 まるで上から見下すような物言いに、完全に殺す気で剣を続けざまに放つ。

「今まで、誰にも言わなかったが俺はベルトをしている。風車がついた所謂ライダーベルトってやつだ」

「あん?」

 しかし、そのいずれも劉騎の拳にたたき落とされ、床に壁に突き刺さる。

「ただ、不思議なことにコイツが回ったことは今まで一度もなかった。まあ、改造人間としての力は問題なく発揮できていたから気にも止めなかったが」

「何言ってんだ、てめぇ」

 劉騎の独演はなおも続く。
 闇守もいつしか攻撃の手を止めていた。

「それが今、漸く理解できてな。俺の憧れたライダーたちは、何時だって誰かを守るために戦うヒーローだった。誰かを食い物にするような下衆とは違う。俺がやっていたのは彼らの敵がするようなことばかりだ」

 劉騎の腹部にバックル部分が異常にゴツイベルトが浮かび上がる。

「本当に今更だ。でも、今更だろうが! やらない限り、俺は!」

 ゴォオオ! とベルトの風車が音を立てて回り始める。

「あん? 風もないのに」

「風なら、今俺の心に吹いている……変、身!」

 その掛け声と共に彼の体を光が覆い、次の瞬間、どこかで見たような、それでいて決定的に違う何かがそこにいた。
 背はとてもではないが小学3年とはいえない。最低でも成人の平均身長は超えている。
 それは一見、仮面ライダーと呼ばれる個体に見えなくもない。
 しかし、それは生物質な外骨格に覆われ、どちらかというと敵側の怪人に見えた。
 顔の、バッタを思わせる二対の瞳が、唯一それがライダーであることを主張している。

「ヒ、ヒヒ、なんだぁ、そりゃ! バケモノじゃねーか!」

 その異形の姿にゲラゲラと闇守は笑い出す。

「バケモノか、今の俺にはそれこそが相応しい。待っていてやるから、さっさと出すといい」

 文字通り上から闇守を見下ろし、劉騎が告げる。

「て、てめぇ! 変身したからって、調子こいてんじゃねーぞ!」

 怒りの声を上げながらも、闇守は『無限の剣製』の詠唱を開始する。

 そして、

「───Mywholelifewas(この体は、)“unlimited blade works”(無限の剣で出来ていた)」

 待つこと数秒、2人の対峙する廊下は紅い剣の丘となる。

「笑えるくらい、無様に殺してやるよ!」

「やってみろ」

 双方、そう告げ、剣と拳が激突した。








(なんだ、コリャ?)

 打ち合って数合。
 必殺のはずの『無限の剣製』を展開したのに押されている。
 闇守はこの状況が理解できなかった。

 剣を振るう。弾き飛ばされる。剣を振るう。弾き飛ばされる。

 まだ十も打ち合っていない。
 しかし、既に一方的な展開になりつつあった。

「なんなんだ、テメェ!」

 雄叫びと共に剣を振るう。しかし、それが目の前の異形に届くことはない。

 虎桜院闇守は根本的な勘違いをしていた。
 『無限の剣製』は確かになんのリスクもなしに、原典の赤い英霊と同じ固有結界を展開できるトンデモスキルだ。
 しかし、それを扱うのはあくまでも闇守本人なのである。
 同じことはできる。
 だが、同じように剣を振るっても膂力も技能もかの英霊に及ぶ訳がない。

 そして本来であれば現実を侵食する神秘の御技は、最終的に同じ世界の魔力で形成されている異形の装甲となんら変わりのないものとなっている。
 確かに、付加された特性は持っているだろう、しかし、それは神秘によるものではなくこの世界の魔力によるものなのだ。

 ぶつかり合う剣と拳。

 その中身が同じであれば、力が強いほうが勝つのは道理。

「ヒ、ヒィ!」

 闇守は追い詰められていた。

 最早、目の前の相手を倒すために剣を振るうのではなく、繰り出される拳を躱すために剣を振るっている。

 溺れるものは藁をも掴む。

 闇守の視界の端にその藁が写った。

「ムッ?」

 今まさに、止めの一撃を打ち込まんとしたその瞬間、相手の剣が大きく弧を描いて飛んでいく。

 手が滑ったか? と思ったのは刹那、剣の行く先にアリサ・バニングスがいることを思い出す。
 と、同時に駆ける。

 罠は承知。それでも彼はライダーたらんと望んだことを思い出した男だ。見捨てるという選択肢はなかった。

 ギィン!

 間一髪で剣を弾く。そして、彼女への射線をふさいだその背に、数多の剣が突き刺さった。







「ヒ、ヒヒ、ねえ? 今どんな気持ち? 今どんな気持ちィ?」

 高笑いしながら、凶相に顔を歪める男が近づいてくる。

 アリサが目まぐるしく動く現実に、なんとか付いていこうと体を起こした矢先のことである。

 目の前の無愛想な男が急に変身して、憎たらしいアイツを圧倒したと思ったら、どうも自分のせいで窮地に陥っている。

「なんなのよ、コレェ」

 兄が殺されてから、全然理解が追いつかない。

 己を曲げて、媚びるような真似までしたのに、なんにもできないなんて。
 どうにもならない現実にアリサは泣き言を零す。

「気にするな、と言っても無理か。さて、どういたものか……」

 と、どう見ても致命傷に見えるが異形のライダーは人事のように呟く。

「えっ?」

 そんな時であった。

 ライダーの胸元から青白く光る宝石のようなものが飛び出したのは。

「ムッ?」

 全く表情はわからないが、彼は幾拍か焦ったようにそれをつかもうとする。

『──アリサ、聞こえるかい? アリサ』

 宝石から亡き兄、ユージン・バニングスの声が聞こえた。

 そんな異常事態に劉騎も手を止める。

「兄さん?」

『ああ、聞こえているようで何よりだ。……アリサ、早速だけど君には辛い選択をしてもらわなければならない』

 ホッとしたような声もつかの間、幾分沈んだ声が2人の耳をうつ。

「何? 兄さん、言って」

『君を戦いに巻き込むなんて考えたこともなかった。でも、そうも言っていられる状況じゃない』

「決めるなら早くしろ。長くはもたんぞ?」

 と、再び闇守が剣を放ってきたので、それを弾きながら劉騎が口を挟む。

「ちょっと!」

 口を挟んできた無粋な男に、ガーと唸るアリサ。

『ああ、すまない。アリサ、この宝石を手に取って』

「はい、兄さん」

 と、反対に素直に従うアリサ。

 劉騎はげんなりしながら剣を弾いた。

『じゃあ、僕の言葉に続いてくれ』

「わかったわ」

 ジュエルシードを握りしめながら、アリサは祈るように兄の言葉を続けた。

『魂は天に、魄は地に』

「魂は天に、魄は地に」

 詠唱と共に、手の中のジュエルシードが光を放つ。

『不屈の心を翼にのせて』

「不屈の心を翼にのせて」

 その光は次第に色を変え、緋色へと変化していく。

『浄化の炎をこの胸に』

「浄化の炎をこの胸に」

 このジュエルシードはユージンの魂と一体化し、全く別の存在へと変化していく。

『浄炎(PURGATION BLAZE)、起動(Set Up)!』

「パーゲイション・ブレイズ、セットアップ!」

 赤い剣の丘を緋色の光が覆い尽くす。
 その光が収まると、全長3mはあろうかという緋色の炎で形作られた翼がアリサの背に出現した。







「どうすればいいの?」

 一応、自分の意思で動かせるようだが、如何せん反応が悪いそれを見ながらアリサが尋ねる。

『簡単なんだが、難しい。この炎の翼で相手を貫けばいい、のだけど。如何せん僕もアリサも戦ったことなどないからねぇ』

「俺がアレの動きを止める。それぐらいならこの体でもなんとかなるだろう」

 ユージンの言葉に、流石に警戒して距離を取った闇守を見やりながら劉騎が答える。

「いっ! おい、こっちに来るんじゃない!」

 引きつった顔で剣を放つ闇守。
 無言でそれをたたき落としながら、一歩一歩近づいていく。

 この時、彼が逃走に移らなかったのは、この剣の丘で、どうして自分が逃げねばならないというプライドのようなものにこだわったからだ。

 そして、それが彼の運命を決めた。

「よし、捉えた。俺ごとやれ!」

 ついに、至近距離まで近づかれ、干将莫耶を手にした両腕を万力のような手で握られる。

「は、離せ! 離せよぉおおお!」

「生憎、俺と一緒に地獄行きだ。付き合ってやるよ、一人きりじゃ寂しいもんな?」

 両腕をつかまれ、闇守が自由な足でガシガシと蹴りつける。
 が、魔力で幾分強化されているとはいえ所詮小学3年の筋力、変身した劉騎の体は小動もしない。

「……さよなら」

 万感の思いを一言に、アリサはいまいち自由に動かせない緋色の翼に苛立ちを覚えつつも、それをどうにか2人に向け振るう。

「ハ、ヒュッ!」

「グッ!」

 動きの止まった2人の転生者を、緋色の翼が諸共に貫いた。

 そして、先日ユージン・バニングスがそうなったように、2人の体は光の粒子となって天に昇っていく。

「い、嫌だぁ! 死にたくなぁいいいいぃ!」

 違うのは、生きたまま粒子に還元されることだろうか。

「……アリサ・バニングス、すまなかったな」

 劉騎はそう言って消滅する。

「なによ、それ……」

 勝手な事を、とアリサは憮然とした表情を浮かべる。

『まあ、彼のおかげで助かったのも事実だ。どう思うかはアリサの自由だが、それだけは認めてあげなさい』

 いつの間にか、待機状態である緋色の水晶に戻ったのかユージンがそう言った。

「……そう、ね。ありがと、助かったわ」

 はたして声は届くだろうか、アリサは窓から空を見上げた。








《転生者一覧が更新されました》







【ユージン・バニングス】

年齢:死亡(/100歳)

・家族:アリサ・バニングスの兄(50P)
・秀才(30P)
・容姿:美形(20P)
【守護霊:アリサ・バニングス】[限界突破]
【浄炎‐PURGATION BLAZE‐】[限界突破]

現在地:第97管理外世界







【虎桜院 闇守】

年齢:死亡(/15歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:虎桜院闇守(25P)

現在地:第97管理外世界






【皇 劉騎】

年齢:死亡(/24歳)

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・改造人間:ライダータイプ(50P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:皇劉騎(15P)

現在地:第97管理外世界






『まあ、感動的とでも言うのかね。ともかく貸した分の利息はきちんと働いてもらうよ』

(……)

(う、あ……ああ、うあああ)

『なんだか1人はそのままでも平気そうだね。もう1人の君は絶望は振り払っているようだから、人間の言うところで67年ほど痛みにのたうち回ってもらおうか』

(……承知、それが俺の罪だろう)

『……まあ、いいか』

『しかし、絶望したまま10年と、魂のまま妹の残り人生……普通、後者を選ぶものかね』

「ムッ、どうした高町ゆきの! 貴様の想いはそれまでかぁ!」

『……ほんとう、今回は変なのばかりだなぁ』





[28418] 12話 覚醒のゆきの、留守番の勇治
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/07/16 13:27


「ところで、なんで全時空平和委員会なのに局員って呼ばれてるんすか?」

「んー、ほんとどうでもいい理由なんだが、会員って響きが不評でな」

「……はぁ」

「で、全平和会『本局』局員、『地上支局』局員ってことで、それまで通り局員って呼ぶのが慣例になった」

「ほんと、どうでもいいっすね」






《転生者一覧が更新されました》





【ロベルト・ナカジマ】New!

年齢:33歳(/100歳)New!

・出身:孤児院(-30P)New!
・SSSSランク結界魔導師(300P)New!
・攻撃魔法使用不可:→SSSSランク結界魔導師(-200P)New!
・マルチタスクLv10→50(30P)[限界突破]New!
【鉄壁:魔法や武器に付加された効果を無効化する】[限界突破]New!

現在地:第97管理外世界New!







 僕たちが海鳴から逃げ出してだいたい1日が経過した。

 リーゼフランさんとの会話の後、アースラ艦長のロベルト・ナカジマ提督と会い挨拶を交わした。その際『転生者一覧』が更新された。

 その後、何だかんだで疲れていた僕は用意されていた部屋で寝ていたのだが、『転生者一覧』の更新情報でたたき起こされることとなった。

 なんと、死んだはずのユージンさんの情報が更新され、転校生ズが2名も死亡するという異常事態である。

 早朝にたたき起こされた僕は、大急ぎで迅雷のオッサンの元へ駆ける。
 とはいえ、オッサンがどこにいるのか知らないので、そのへんの人に聞く。

 親切な使い魔さんが、訓練室にいることを教えてくれた。
 というか、この船使い魔以外のクルーが殆ど居ない……どういうこと?

「オッサン!」

 と、訓練室に来たのだが、現在入室厳禁と出ている。
 どうしたものかと、入口でウロウロしていると褐色の使い魔の女の子がこちらへやってくる。

「現在、マスターは訓練中です。ご要件があればお伝えしますが?」

 どこかエレノワールさんに似た女の子にそう言われる。

「え、えーと。う、海鳴の転生者が2人も死んで、ユージンさんが訳の分からないことに……」

 いかん、自分でも何言ってるのかわからん。

「っ! はい、畏まりました」

 と、使い魔さんが急にビクッしたかと思うと、訓練室の方をむいて頷く。

「勇治さま、こちらに。マスターが出られるまでもう暫くかかりますので」

 そういって、彼女は僕を控え室のようなところへと連れて行く。

 その控え室のような部屋には、彼女の他に3名ほどの使い魔がいた。

「えーと……」

 名前は? と尋ねると、彼女はウィルと申しますと答えてくれた。

「ウィルさん、今までこの中で制服着た人って迅雷さんとロベルトさんしか見てないんだけど……」

 昨日会った3人は、タキシードに聖衣に和服だ。
 後は使い魔数名と遭遇したのみである。

「はい、仰られるとおり、現在アースラに乗艦している人間はあなた方お二人を含めて、6名となっております」

 やはり……

「このアースラは対転生者用に、同じく転生者及び全平和会所属の使い魔のみでクルーが編成されております」

 というと、彼女たち使い魔には洗脳タイプのスキルは効かないらしい。理由は不明だが。

 ドゴォッ!

「うえぃ?」

 と、そんなことを話していると、隣の、おそらく訓練室だろう部屋から衝撃と共にすさまじい音がする。

 僕が驚いていると、ウィルを含めた使い魔たちが慌しく動き始める。

「……? うおぁ!」

「おう、待たせたな」

 プシューと扉が開き、真っ赤に燃えるオッサンが片手を挙げ気軽そうに声をかけてくる。

 が、血まみれ、というか火まみれである。
 ウィルさんが慌てながら治療魔法をかけている。

 これが『熱血』、海鳴で見たときも思ったが、とんでもないスキルだ。







「なるほど、そりゃ訳わからんなぁ」

 僕の説明にオッサンが頷く。
 あの後、10分ほど治療やら着替えやらで待った後、転生者一覧の情報を伝える。

「特に、ユージンさんの【守護霊:アリサ・バニングス】ってどういうことでしょう? まんま、守護霊になったって考えていいんですかね?」

「うーん。正直、生まれてこの方幽霊なんぞ見たことねえしな。百聞は一見にしかずとも言うし、見てみないと判断できんな」

 ですよねぇ、と僕が同意した時である。

『待たせたな』

「いえ、待つほど時間はたっちゃいませんぜ」

 リーゼフランさんが通信を繋げてきた。

『一通り聞いた。海鳴で動きがあったようだな』

「ええ」

 僕は同意する。

『……作戦を前倒しする。お前たちの準備が整い次第、出撃だ。いけるな?』

「勿論」

 彼女の問いに、オッサンは力強く頷いた。

 それから5分後、慌しく集合したオッサンたち4人と使い魔4名はリーゼフランさんの指示の元、出撃していく。
 僕はというと、艦橋にて転校生ズの生死判定のお仕事である。

 まあ、僕が下に行ってもやることないから仕方ないんだけど。








 ルミカ・シェベルが使い魔と共にバニングス邸に着いたときには、全てが終わったあとであった。

「誰よ、アンタ?」

 封時結界内にいるアリサ・バニングスを見て首をかしげる。
 しかも、その背には3mはあろうかという炎の翼が展開している。

 そして、無茶苦茶こちらを警戒している。

 更に、この場に他の転生者の気配は感じなかった。

「えー、うー、あっ、そうです。私、八神迅雷の同僚でルミカ・シェベルというものです」

 こんな異常事態、『フリーダム』の連中とやりあっている時でも無いのに、とルミカは焦る。

 既に死んでいるはずのユージン・バニングスとやらに異変が起こり、この地を牛耳る転生者に2名も死者が出たので何かがあったのは間違いないのだが、どうやらここでまとめて何かが起きたらしい。

「はやての?」

 ルミカの言葉に、親友の叔父の胡散臭い顔が脳裏に浮かび、アリサの警戒がいくらか和らぐ。

「はい。あっ! それと、高町勇治、ゆきの両名も保護しています」

 そういえば、と高町家の転生者も保護していたのを思い出す。

「勇治たち? そう、よかった……」

『アリサ、この人たちは敵じゃなさそうだ』

 と、アリサがホッとした表情を浮かべ、彼女の胸元に輝く緋色の宝石から声がすると共に、背中の炎の翼が消える。

「……」

 幼少時から剣を振るってばかりいたルミカは、一言で言うと学が足りない。
 この状況から、何が起こったかを察するのは不可能であった。

「マスター」

 と、使い魔のエストがアースラからの通信をルミカに知らせる。

 どうやら、高町家に向かったペンドラゴンが苦戦しているらしい。
 まあ、苦戦するのがあの老人の癖みたいなものだ。

「エスト、後はよろしくね」

 後のことは全て使い魔に一任し、彼女は転移のための魔方陣を展開した。
 







 その時、天宮聖(あまみやひじり)と龍閃光峨(りゅうせんこうが)の2人はバニングス邸に赴く直前であった。

 彼ら2人に虎桜院闇守(こおういんやみもり)を加えた3人は、近いうちに他の転生者の排除に乗り出そうと手を組んでいたので、闇守からの定期連絡が途絶えたため様子を見に行こうとしていたのだ。

 海鳴全域を覆う封時結界が張られたのは、彼らが丁度月村邸の玄関へと出たタイミングである。

 訝しむ2人の前に、月村家担当の転生者とその使い魔が姿を現した。

 黄金の鎧を身に纏うカウリと、仮面で顔を隠した使い魔のシアの2人である。

「ほう、タイミングよく2人ともか」

 そして、情報では『無限の剣製』持ちの2人だ。
 5年前のエミヤズの本局襲撃時に居合わせなかったカウリとしては、是非ここで予行演習といきたい。

「おいおい、冗談きついぞ。なんだそりぁ?」

「プクク、今どき聖闘士とかないわー」

 仰々しい黄金の鎧に、聖と光峨は其々呆れた声を上げる。

「語るべき言葉はない。参る!」

 その2人の様子に特に思うこともなく、カウリはそれだけ言う。

 同時に、必殺の手刀を振りかぶる。
 聖闘士にこの程度の間合いなど、無いも同然であった。

 一瞬のうちに間合いを詰め、それを振り下ろした。

「え?」

「まずは一人!」

 その挙動に殆ど反応できなかったものの、本能的に受け止めようと展開した干将・莫耶ごと天宮聖はその手刀に切り裂かれる。

「ちょ!」

「二人!」

 続けざま、返す一刀で動きの止まった龍閃光峨を切り裂いた。

 そしてそのまま2人とも光の粒子となって消えてゆく。

「お疲れ様です、カウリ様」

「……こんなものか。他の状況は?」

 予行演習にもならん、と吐き捨てる。

「はい、ルミカ様はアリサ・バニングスを無事確保された模様。迅雷様は戦闘中。ペンドラゴン様の状況が不利なので合流するよう本部長より、御達しが」

「うむ。お前はこの場の後始末を」

「畏まりました、カウリ様」

 カウリは状況を確認後、使い魔のシアに月村家の面々の保護を指示し、テレポートで高町家へと向かった。





《転生者一覧が更新されました》





【天宮 聖】

年齢:死亡(/15歳)New!

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:天宮聖(15P)

現在地:第97管理外世界





【龍閃 光峨】

年齢:死亡(/15歳)New!

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:龍閃光峨(20P)

現在地:第97管理外世界








「おいおい、こいつは流石に儂がハズレすぎじゃろ……」

 海鳴に降り立ったペンドラゴンを出迎えたのは、鳳凰院朱雀(ほうおういんすざく)とカイ・スターゲイザーの転生者2人と、高町士郎、恭也、美由希ら御神流の剣士3人である。

 その上で、余裕を崩さず愚痴を言う。

「ご主人、あの3人では手加減できない」

「ま、そうじゃがな」

 使い魔のエペソがぼそりと呟く。

 事実、その通りである。
 迅雷はいうに及ばず、ルミカも純粋な技術ではやはり劣る。
 カウリも単独では加減が効かないだろう。

 そして、当然ではあるがリーゼフランはこのことを織り込み済みで、ペンドラゴンをここの担当としている。

 まあ、あの女狐のことだ、一石二鳥にも三鳥にもなるよう手を打っているのだろう。

「ほれ、手加減してやるから……本気でかかってこい!」

 皺だらけの口元に、ニィっと挑発的な笑みを浮かべ宣言した。








 八神迅雷は昨日逃げ出さざるを得なかった八神家の前に、万感の思いで帰還した。

 既に目の前の2人の転生者、東樹(あずまいつき)と神薙北斗(かんなぎほくと)は戦闘態勢だ。

「よお、リベンジマッチといこうや」

 お前ら、殺すわ……と壮絶な笑みを浮かべる迅雷。

「ハッ、どこに雲隠れしたかと思えば、自分から死にに来るとはな!」

 迅雷の着る陸士の制服に、悪い予感が当たったと内心舌打ちする樹。

 が、ちょうどいいタイミングでの新たな驚異の登場だ。
 切り捨てどきと判断していた3人の転生者の使い道が出来たと、皮算用を立てる。

「なんの対策もしていないと思ったか! この剣は炎を喰らう魔剣よ!」

 そして、この男に対しては万全とはいかないまでも対策はしてある。

 昨日、この男が宝具を溶かしたことから、所謂悪魔の実の自然系の能力者と予測を立てたのだ。
 原典における炎系のそれは、メラメラの実かマグマグの実の2つ。
 一応、不死鳥の炎も考慮にはいれたが、傷から上がる炎が赤かったことから候補から外している。

 タネさえ分かれば、英雄王の蔵は万能に近い対応力を持つ。
 炎を吸収する魔剣を用意した今、敗北の可能性はない。

 樹はそう確信していた。

「へぇ、いいぜ。やってみな」

 対する迅雷は不敵に笑う。

「その余裕、後悔するぞ!」

 樹はその態度に悪魔の実の能力者であるという確信を深めた。
 と、同時に勝利への確信も得る。

 そう無防備に近づく男に、魔剣を袈裟斬りに振り下ろした。

 ジュ!

「なん……だと……」

 炎を喰らうはずの魔剣は、迅雷の体に食い込んだ瞬間、切っ先から蒸発していく。

 振り切った魔剣は根元をわずかに残すのみ。
 対する迅雷は切られた傷口から炎を噴き出すだけだ。

 樹は呆然と溶けた剣を見つめる。

 純粋に魔力量の問題であった。
 樹の魔力値は現在およそ6000万、これでも原作でのこの時点でのなのはたちの10倍以上あるのだが。

 対する、迅雷の魔力値は約250億で文字通り桁が違う。
 かつて天鏡将院八雲の『幻想殺し』を正面からぶち抜いた圧倒的魔力量であった。

「悪いな、俺の炎はその剣風情じゃ、消せねぇよ!」

 迅雷は樹の顔面を掴む。

「は、放せ! 放せぇ!」

「爆熱!」

 暴れる樹に構わず叫ぶ。

 それは己が『熱血』を手のひらに収束して放つ、超高熱アイアンクロー。

 ボンッと樹の頭部が爆発し、その四肢が力なく垂れた。

 3000度の高熱で頭部を焼かれたのだ、普通に絶命である。






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【東 樹】

年齢:死亡(/10歳)New!

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・王の財宝(10000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:東樹(10P)

現在地:第97管理外世界





 北斗は目の前で起きた事が現実とは思えなかった。

 この男が厄介な転生者であることは昨日の時点でわかっている。
 おそらく自然系の悪魔の実の能力者、自分の北斗神拳もオーラ系の技以外はほぼ通用しまい。

 その対策に、樹はほぼ万全の用意を整えていた。
 あの魔剣だけではない。
 他にも対炎用の幾多の装備を用意していたのだ。

 それが、相手に乗せられたとはいえ何もできずに終わるなんて。

「そんな、ウソだ……」

 北斗にとって目の前のそれは到底受け入れられない現実であった。

 樹の体が光の粒子となって消えていく。
 それが、紛れもない現実であった。

 迅雷はそれを一瞥し、北斗にバインドをかけるようウィルに指示する。

 自失呆然となった彼は抵抗もなく拘束された。

 それを横目に八神家へと入る迅雷。
 ソファーにははやてが寝かされており、兄夫婦は姿が見えない。
 が、死んではいない。どうやら寝室に放り込まれているようだ。

「ふぅ、どうしたもんかね」

 昨日の死環白とやらで、現在はやては誰かを強制的に愛するようにされている。
 これが洗脳系スキルなら使用者をどうにかすれば、何とかなるのだが。
 はたして北斗神拳の業がどこまで持つか、スキル持ちが現段階で北斗しかいないためなんともいえなかった。

 そして、迅雷個人としてもはやてが誰かに愛情を向けるのを見るのは精神衛生上宜しくなかった。
 特に、こいつらに愛情を向けるなど、考えただけでも憤死しそうだ。

「ん……ジン、さん?」

 と、考えているうちにはやてが目を覚ます。

「おう、はや……って?」

「ジンさんっ! 大好きやー!」

 そう叫び、ソファーから迅雷に向かって飛びつくはやて。
 うおっ、と慌てつつもしっかりはやてを受け止める。

「落ち着け、はやて! お前は今正気じゃない!」

「いやいや、むっちゃ正気やで? その証拠に、キスしたいくらい大好きや!」

 んー! んー! とキスを迫るはやて。
 それをどうにか抑えながら、庭へと向かう。

「おい! おまえ、これを何とかしたら命だけは助けてやるよ」

 やたらとキスを迫る子狸を止まらせながら、迅雷は北斗に言う。

「え、えっと、記憶を消す秘孔と突けば……」

 結局、あのまま寝かせっぱなしだったと、忙しかったとはいえすっかり忘れていた北斗が対処法を答えた。

「よし、じゃあさっさとやれ」

「は、はいぃ!」

 バインドを解かれた北斗が小走りで2人に近づく。
 ハァ! と原典でバットがリンにしたように秘孔を突く。
 はうっ! とはやてが再び気絶した。

 迅雷ははやてを再度ソファーに戻すと、二カッと笑顔で北斗に近づく。
 北斗も愛想笑いを返す。
 感謝するといわんばかりに勢いよく両手を握る。

 助かったと、安堵の息をつこうとしたその瞬間、両手に激痛が走る。
 目を下にやると、握られたその手は真っ赤な手に覆われ、肉の焦げる嫌な匂いと共に煙をあげて崩れていく。

「手、手がぁ! 手がぁー!」

 焼け落ちた両手を踊るように振り回す北斗の顔面を、迅雷は両手で挟み込むように掴む。

「命だけはといったが……あれはウソだ」

 大事な、俺の命より大事なはやてを、こんな目にあわせたてめえは絶対に許さん。

「ヒ、ヒァー!」

 迅雷は悪鬼のごとき表情を浮かべ、そのまま両手でつかんだ北斗の顔に、全開の力を叩き込んだ。






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【神薙 北斗】

年齢:死亡(/19歳)New!

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・北斗神拳(300P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:神薙北斗(20P)

現在地:第97管理外世界











      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










 海鳴にて全平和会の転生者と、転校生ズの戦闘が始まった頃、高町ゆきのは与えられた一室のベッドの上で体育座りでメソメソしていた。

「おとうさん……おかあさん……」

 勇治と異なり、覚醒後もすぐさま高町家に溶け込んだゆきのは、根本的な目的を除いて見た目相応の精神状態になっていった。
 この辺は同性の転生者がいなかったことも影響している。

 原作開始時点においてゆきのは、『ユーノ君のお嫁さんになる』ことと未来知識を持っていること以外は、完全にこの世界の9歳児と変わらないメンタルになっていた。

 そして始まらない原作。
 山田三郎との邂逅を経て、目標を見つけたものの進展しない毎日に心を蝕まれていた。

 そこに今回の事件である。

 運良く勇治と行動を共にしていたからこの程度ですんだが、もし一緒でなかった場合は精神崩壊、いや、為すすべなく転校生ズに殺害されていただろう。

「いやだよ……こんなのいやだよ」

 ただでさえメンタルが後退している所に今回のコレなので、自分が転生者であるということすら忘れかけていた。

「誰か……助けてよ……」

 そうして呟く。

 助けを求める言葉を口にした。

『呼んだか?』

 と、胸元から声がした。

「おうさまっ!」

 その声は、ゆきのがほんの一時だけ話した相手。
 それでも一度たりとて忘れることはなかった相手。

 『おうさま』こと、山田三郎その人である。







 胸元から紐につないでいたデバイスを取り出す。

 それは金色の光を点滅させ、ゆきのに語りかける。

『どうした、高町ゆきの? お前にできるのは、今そこで泣くだけか?』

「でも……わたしに何ができるの?」

 何もできないよ、と自嘲の笑みを浮かべる。

『何が、だと? 笑止。お前なら何だってできるはずだ、高町ゆきの』

「わたし、何もできなかったよ?」

 できるという彼に、できなかったと泣き笑いの顔で答えるゆきの。

『何かを成し遂げようとするものにしか、何かは成せん。何もできなかったのではない、お前はまだ何もしていないのだ』

 彼は自ら動かぬものに何ができようと笑う。
 それでも、なぜか動き出せばゆきのが何でもできると信じているようだった。

「……わたしでも、何かできる?」

 果たして、自分にそんな大層な力があっただろうか? と疑問符を浮かべながら点滅するデバイスを見る。

『そうだ。高町ゆきの、それでも自分が信じられないというのなら、我(オレ)の信じたお前を信じろ』

「おうさまの、信じたわたし?」

 一度会っただけのこの人に、自分は何かできただろうかと疑問の声を上げる。

『そう、我(オレ)が信じたお前だ。我(オレ)が同胞を信じられなくなっていた時、お前が希望を与えてくれたのだ。利用するのでもなく足蹴にするでもなく、ただユーノ・スクライアを案じたお前に希望を見たのだ』

 あの時、山田は10人近くの転生者と出会いながら、そのすべてが所謂最低オリ主──しかも『無限の剣製』持ちが4人──だったこともあり、同じ転生者というものに絶望しかけていた。
 あの時、ゆきのと出会わなければ、転生者全てを狩る存在に成り果てていたかもしれなかった。

 故に、山田三郎にとって、高町ゆきのは特別であった。

「おうさまの、信じるわたし……」

 あの時のアレは、『おうさま』が言うほどキレイな理由ではない。
 それでも、大好きな『ユーノ君』が心配だったのは本当だ。

「わたしの、今できる、コト」

 そう呟きながら、ベッドから降りる。
 両の足でしっかりと立つ。
 その瞳には、力が、意志が形になろうとしている。

『そうだ、先ずは立ち上がれ。全てはそこからだ』

 何ができる?

 何だってできる!

 『おうさま』がそう信じてくれた。

 今の『わたし』なら、何だってできる!

「お父さんを、お母さんを、お兄ちゃん、お姉ちゃん、なのはを……アイツらから取り戻すんだ!」






《転生者一覧が更新されました》





【高町ゆきの】

年齢:9歳(/100歳)

・空戦Sランク魔導師(50P)
・マルチタスクLv10(30P)
・容姿:美形(20P)
・男運:悪い(-30P)
・恋愛:特定(5P)
・恋愛:一目惚れ(15P)
・恋愛:ユーノ・スクライア(10P)
【天元突破:気合を魔力に変換】[限界突破] New!

現在地:第97管理外世界





 部屋を飛び出したゆきのは駆ける。

 ここがアースラというのは、部屋を出たときに気がついた。
 であれば転送ポートは艦橋か転送室。

 偉い人の許可も取りたかったので艦橋へ向かうことにする。

「すみません! お父さんたちを助けに行かせて下さいっ!」

 親切な使い魔の人に道を教わり、艦橋にたどり着くなりゆきのは叫ぶ。

「ゆきの? 平気かって、何言ってんの!?」

 唐突に現れた妹に、兄勇治は元気な姿にホッとするが、すぐさま突っ込む。

「高町ゆきのさん、安心して欲しい。現在、我々の精鋭が高町家を、いや海鳴をあの胡乱な転生者共から取り戻すべく奮闘中だ。もうじき朗報も入るだろう、君も勇治君と一緒にここで待っていてくれたまえ」

 と、ロベルトがやんわり拒否する。

「待てません!」

 が、即座にゆきのも拒否。
 ロベルトの顔が引き攣る。

『高町勇治、先程妙な顔をしただろう? 君の妹に何があった?』

 と、リーゼフランは勇治の表情の変化を見逃さず尋ねる。

「……こいつ、限界突破してます。気合で魔力が上がる無茶苦茶なやつです」

 隠しても無駄と思い、正直に告げる。

『……ロベルト、行かしてやれ』

「おい! 正気か、この子まだ9歳だろうが!」

 転生者だ問題ないと宣うリーゼフランに、それは関係ない大問題だと噛み付くロベルト。

 二人が言い合いを始める直前、リーゼフランが勇治に目配せする。
 それに気づいた勇治は妹のゆきのを見る。

 昨日の泣き顔が嘘みたいにいい表情を浮かべている。

 はぁ、とため息一つ。

「行けよ、送ってやる」

「えっ? あ、うん!」

 勇治の言葉に一瞬疑問を浮かべるも、すぐさま理解しゆきのは転送ポートに飛び込む。

「ちょ、待て! おい、ペーネロペー! って、リーゼてめぇ、グランドマスター権限なんぞ使いやがってぇ!」

 誰一人として止めない使い魔たちに、ロベルトが貸し一つだぁ! と叫ぶ。

『安心しろ、あの子は傷一つつかずに戻ってくるよ』

「そーゆー問題じゃ、ねぇだろうが!」

 ロベルトの叫びを背に、ゆきのは勇治のゲート起動により海鳴へと転移した。














      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆














 海鳴、高町家上空──。

『さて、初陣であるな高町ゆきの。だが、臆するな。我(オレ)が補佐に付く。思い切りやってやれ!』

「うん。任せたよ、おうさま!」

 山田の憑依したデバイス、エクストバイトを起動。
 これまで何度も訓練に使ってきたが、実戦、そしてセットアップ自体初めてだ。

「エクスカベイト、セットアップ!」

『stand by ready. set up.』

 その初めても恙無く起動。
 ゆきのの身を包むバリアジャケットは、一言で言えば金ピカだった。
 そして、デバイスは左手に一体化したドリルであった。






 アースラにて──。

「うげ、趣味わりー」

 勇治は顔をしかめ、

『ドリル型のデバイスか、今のところ初めてだな』

 リーゼフランは関心の声を上げ、

「……もう、知らん!」

 ロベルトは不貞寝した。







『……高町ゆきの、起動呪文はどうした?』

「え? もう必要ないと思って」

 問題なく変身したと思ったゆきのに、待ったの声がかかる。

『必要ない? 冗談ではない! 魔法少女の変身に、呪文は必須であろうがっ!』

 所謂山田的ヒーロー像である。
 男のヒーローは不言実行(黙って助ける)、女のヒーローは有言実行(名乗りと共に助ける)という彼独自の美学であった。

「あっ! そういえば!」

 はっとした表情でゆきのが顔色を変える。
 そして、妙なところで気の合うふたりは、こんなどうでもいいところでも気が合っていた。

『うむ、次からは気をつけるがいい。さて、下も気づいた、来るぞ!』

「うん! いくよ、エクスカベイト!」

 ツッコミ不在のまま、ふたりは戦闘に思考を移す。

『yes mastar. charge!』

 ゆきのの掛け声とともにドリルが回転し、直滑降で加速していく。







「おっとー、新たなお客さんかーい?」

 丁度手の空いた状況であったカイが、デバイスの報告により上空に現れた新手に気づく。

「朱雀、ここは任すぞ」

「ああ」

 それだけ告げると、デバイスを起動。
 全身をメタリックな漆黒の鎧で覆う、基本形『漆黒の堕天使(ダーク・フォーリン・エンジェル)』モードである。

 右手のブレイドソードの柄の紫の宝玉が点灯する。

「推定Sランク魔導師、か。余裕だな」

 カイは笑みを浮かべながら飛翔。
 デバイスの補助で上空のゆきのをその視界に捕らえる。

「スターゲイト、『殲滅の死天使(ジェノサイド・デス・エンジェル)』モード!」

『……』

 カイの叫びとともに漆黒の鎧の一部が変化。
 ブレイドソードが巨大な大砲となり、そこから幾多のケーブルが背中の羽が変化したプロペラントタンクのような構造物につながっている。

「いくぞ、羽虫!」

 大砲の照準をゆきのにセット、漆黒の魔方陣がカイの足元に展開する。

「喰らえっ! 『星崩衝撃砲(スター・ブラスト・ゲイザー)』!」

 カイの巨大な銃型デバイスから放たれる漆黒の魔力光が、天を埋めつくさんと唸りを上げて昇ってゆく。







 唸りを上げ迫る漆黒の魔砲に、ゆきのは怯むことなく突貫する。

『舐めるなよ?』
「舐めないでよ?」

 本来であれば差は歴然、されど今のゆきのに限界などという言葉はない。

『此奴のドリルは!』
「私のドリルは!」

 何時しかその体は、緑色の魔力光に包まれている。

『天を衝くドリルだ!』
「天を衝くドリルだ!」

 その言葉と共に、目元を赤く光るサングラスが覆う。

「必ッ殺ゥー! ギィガァ!」

 ゆきのの叫びと共に、左手のドリルの回転が更に増し、十倍以上に巨大化する。

 漆黒の砲撃と緑色に光るドリルが拮抗したのは一瞬。

「ドリルゥー!」

 砲撃を穿って、巨大なドリルが直滑降していく。

「なんだそりゃあああああああ!」

 ありえねぇだろぉ! とカイが絶叫する。

 純粋に高町なのはのスターライトブレイカーを上回る一撃が、自身に向けて突っ込んでくる巨大なドリルの螺旋に雲散、無消していく。

「ブレイクッ!」

「クソがぁあああああ!」

 砲撃を抜け、緊急展開したシールドをも貫き、デバイスをバリアジャケットを砕きながら、巨大なドリルがカイを穿つ。

「ガハッ!」

 そしてドリルに貫かれた勢いそのままに、地面に叩きつけられる。

 その衝撃か、はたまた魔力ダメージか、カイの意識はそこでブラックアウトした。









 捌く。捌く。捌く。

 御神流剣士の、神速を交えたその攻撃を。

 捌く。捌く。捌く。

 3名の御神流剣士の連続攻撃を、その老人は捌き続ける。

 初めから数合で、朱雀とカイはかえって3人の邪魔になると攻撃から外れている。

 そして、今カイは新たな乱入者により無力化された。

 が、朱雀には現状為す術がない。
 昨日殺しそこねた転生者の傍にはメイド服の使い魔がいる。
 カイを倒した相手に、二対一の不利な状況で勝てる算段ができるほど朱雀は自信過剰ではない。

 その逆だからこそ、手間をかけてまで結界内に高町家の戦闘員を入れたのだ。

 幸い、カイを倒した奴は力を使い切ったように見える。
 なんとかこの老人を3人が倒してくれれば、手の打ち様もあるのだが。

 と、朱雀が思案したときであった。

 ガガッ、キィン、といった金属音と共に目の前の動きが止まる。

「遅くなった」

「遅れました」

「遅いわい」

 三者三様の言葉、先程とまでは異なり、御神流剣士たちの一撃は老人ではなく、黄金の鎧をまとった青年と和装の少女により止められていた。

 それぞれの担当地での任務を終えた二人が合流したのである。

「なんだぁ?」

 その光景に朱雀が目を剥く。

 トッ!

「あっ?」

 その一瞬であった。
 朱雀の目にはペンドラゴンの体がその場から消えたように見えた。

 ただの一歩で10m以上の距離が踏破される。

 自分の懐に瞬間移動でもしたかのように、老人が正拳突きの構えをとっている。

 ペンドラゴンという男が50年以上かけて磨きあげた、基本にして最強最大の技。

 その名も、『極・中段正拳突き』!

「ひいっ!」

 咄嗟に張ったシールドに、放たれた拳がぶつかり、

 パァン!

 耳を劈く衝撃音と共に拳はそこで止まる。

「うぼぁ!?」

 拳は確かに朱雀に触れなかった。

 しかし、彼はくの字なって水平に吹き飛ぶ。

「……儂の、全オーラをこめておるんでな。拳の当たる当たらんはあまり関係ない」

 正拳突きの軸線上100mほどが命中範囲となる。
 が、殴れるものなら殴りたいペンドラゴンであった。

 そして撃ち込んだオーラは、対象の内部で一旦爆縮され、直後に連続する核爆発の如き圧倒的破壊を引き起こし、その体を数倍に膨脹させる。

「う、うぼぉおあああああああ!」

 朱雀は断末魔と共に、爆発四散した。






《転生者一覧が更新されました》





【鳳凰院 朱雀】

年齢:死亡(/15歳)New!

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・ニコポ(100P)
・ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:鳳凰院朱雀(25P)

現在地:第97管理外世界







「えーと、ゆきのがやったカイってのを除いて、全滅です」

 勇治はゆきのの行動に冷や冷やしながら、リーゼフランに一覧の情報を逐一伝える。

『フム、まあこんなものか。生き残りは……そういえば初期からのオーバースペック・デバイスには興味があるな、技研に送ればカタギリも喜ぶ。本体は、生かさず殺さずで……まぁ、極東に任せるか』

 などと物騒なことを呟きながら、彼女は勇治にご苦労とねぎらう。

 アースラ艦長のロベルトは艦長席で不貞寝している。

 こうして、海鳴を──たった1日であるが──混乱に陥れた転生者たちは、自分たちがしたのと同じように僅か1日で鎮圧された。

 後に、『フリーダム・ゾート』事件と呼ばれる事件の顛末である。





[28418] 13話 「ただいま」
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/07/19 21:45
「ところで、ニコポ持ちの転生者を生かさず殺さず拘束なんてできるんですか?」

『問題ない。結局、あれは持ち主が微笑まないと発動せん。ウチの暗部はそういったことの専門でな、全身の筋肉だけを破壊するなんてことも簡単にできる』

 それはまた、エグい。

『と、こちらの都合ばかりだな。もし、生き残りが君の家族に洗脳を施していたら、即座に殺そう』

 そういえば、桃子母さんはこいつにやられてたはずだな。
 それにしても、

「……ほんと、容赦ないっすね」

『当たり前だ。転生者であるというだけで価値がないというのに、世界を悪しき方向に変えようなど存在するに値せん』

 この人は淡々と語る。
 わりに、何かを堪えているようにも見える。

「誰か、嫌な奴とでも会ったんですか?」

 そうでもないと、これだけ見知らぬ他人を憎めるものか。

『……意外と、鋭いな』

 物凄く驚いた、といった顔で見られた。
 この顔が無茶苦茶レアなことを知るのは、僕が全平和会に入局した後のことだ。

 僕は黙って続きを待つ。

『まあ、ね。20年前に一度きり会っただけだが、本当に嫌な奴だった。パープル……パープル・エイトクラウド。君も会うかもしれんな、取り込まれないよう気をつけなさい』

 秘密結社『フェアリー・ガーデン』主宰、パープル・エイトクラウド。
 リーゼフランさん曰く、確実に10万Pは超えているはずだ、とのこと。

 後に知ることになるが、僕は世界のシステムを知る一人目とここで出会い、二人目の名前をここで聞いていたのだ。









 さて、転校生ズのケリはついた。

 しかし、まだ一つ大問題が残っている。
 すっかり忘れていたが、ジュエルシードである。

 一応、家族のことも気になるが、治療系魔法は基礎しか習っていないので僕が行っても邪魔になるだけだろう。

 それよりも自分にできることからやっていこう。

 さて、消息不明のフリードリッヒさんが所有する8個のジュエルシードに、僕が持つストレージ・デバイスのR2-D2に収納してある6個のジュエルシード。
 これに原作通り海中に沈んでいるらしい6個を除くと、海鳴のどこかにもう1個あるはずなのだが。

 取り敢えず、邪魔モノも居なくなり、サポートも万全となったので先に海中の方を済ますこととなった。

 ──なのだが。

「いやいやいや」

 封時結界内に降り立った僕は思わず目の前の光景に唖然とする。

 闇の書の防衛プログラムみたいなバカでかい化け物がそこに居た。
 6個のジュエルシードが死んだ転生者7人の怨念を取り込み、具現化したのだ。

 そして、それよりも信じられないのが迅雷のオッサンたちである。

「なんで、戦わないの?」

 現在、ハイパー・ジュエルシードモンスターと戦っているのは、我が妹ゆきのさんと、ルミカ・シェベルさんのみ。

 どういうことなの?

「飛べんしのう」

「同じく」

「ルミカに手を出すなと言われたので」

 と、爺さん、オッサン、黄金聖闘士の順である。
 それぞれの使い魔さんもどこか呆れたような表情を浮かべている。

 まあ、ルミカさんがそう言うのは、この人らがバトルジャンキー的な人物だと考えればわからんでもない。
 彼女視点では、今回何もしてないに等しいだろうからだ。

 やったことは美由希姉さんの一撃を止めて、士郎父さんと恭也兄さん3人まとめてショック・バインドで気絶させたぐらいだ。

 僕的には、かなりとんでもない気がするのだが。

 しかし、飛べないって……オッサンって実は相当な役たたずではなかろうか?
 いままで気にしなかったが、どうやって一佐まで出世したんだろう。

「……まあ、僕がどうこういえる立場じゃないのはわかってますけどね」

 呟いて、戦場を見る。

 ゆきのさんが、本当楽しそうに戦っている。
 吹っ切れてんなぁ。

「すみません、今のゆきの。魔力どんくらいあります?」

 緑色の魔力光を吹き出しながら空を駆ける妹の姿に、つい尋ねる。

『現在、およそ8000万。最大値は2億を超えるでしょう』

 と、アースラからペーネロペーさんが律儀に教えてくれる。

 単純にSSSランクで、最大ともなればSSSSランクの魔力値だが、一覧の情報ではSランクのままだ。
 ということは、あのスキルの効果ということか。ぱねぇ。

 しかし、それでもSSランクのルミカさんのほうが強く見えるな。

 うまい感じに各種バインドを設置しながら、ザックザック斬りまくっている。

 やはり戦闘経験の差であろうか?
 まあ、単純にヘッドライナーが速くて強いってのもあるだろうが。

 と、感心しているうちに、僕の方へジュエルシードが一つ飛んでくる。

「と、おおっ! ジュエルシード・シリアル6──封印!」

 慌ててR2-D2を取り出し封印する。

 同時に、ルミカさんのぶった斬ったごん太の触手が消滅する。
 どうやらあれにこのジュエルシードがあったらしい。

 そんな感じで終始2人は戦闘を優位に進め、僕は数分に一回飛んでくるジュエルシードの封印に勤しむ。
 僕がこの場に到着してから15分ほどで、ハイパー・ジュエルシードモンスターは駆逐された。








「あっ、勇治、いたんだ」

 ええ、だいぶ前からいましたよゆきのさん。
 相変わらず注意力散漫なやつだな、ほんと。

 緑色の魔力光を吹き出しながら、金色の趣味の悪いバリアジャケットに身を包んだ彼女がトンッと地面に降りる。
 その金色のバリアジャケットに目をやれば、胸元が螺旋力ゲージになっていた。

「フフフ、たくさん斬れました……ウフフフ」

 と、こちらはルミカさん。
 実は変な人かもしれない。
 そういや、ちょくちょく天瞳流うんたらかんたらと言ってたけど、どっかで聞いたことあんだよなぁ。なんだっけ?

『高町ゆきの、すまぬが、一旦デバイスを地面に置いてはくれぬか?』

 と、ゆきののドリルから、いや、根元の宝石から声がする。

「うん。はい、置いたよおうさま」

 と、ゆきのさんは素直に変身を解除、言われる通りデバイスを地面に置く。

『うむ』

 おうさま? と、僕が疑問符を浮かべていると、デバイスから螺旋状に緑の光が立ちのぼり、一人の男が出現する。

「んお! フリードリッヒじゃねーか!」

 オッサンが驚いて声を上げた。
 ああ、このギル様そっくりな人が25万さんに匹敵するとかいう……なんか変だぞ?

 ひょっとして、

「……山田さん?」

『違う! 我(オレ)の名はって……いや違わぬな。八神迅雷、改めて名乗ろう。山田三郎だ』

 僕の言葉に、即座に反論しかけ、肯定したフリードリッヒさん改め、山田さんがそう名乗った。

 あれ? これひょっとしてこの行き違いが、かなりあれじゃないか?

「やっぱり、お前さんが25万の男だよなぁ。うんうん、俺の勘もまだまだ捨てたもんじゃないな」

 ……オッサンが特にないなら僕も言わんとこう。

『すまんな。その25万が何のことかは分からぬが、奴等相手に不覚を取ったのだ。弄ばねばこんな事態も防げたであろうに……迷惑をかけた』

 どうも転校生ズとやりあってる最中に寿命で死んだっぽいな。
 あのスキル構成で、転校生ズに負ける訳がない。

『という訳でジュエルシードは高町ゆきのに預けたのだ。その後あの転生の間で意識を取り戻したのだが、ユージンめが来るまでは本当に見ているだけしか出来なくてな、歯痒いものであった』

 どうも、ユージンさんが復活したのはこの人が何かやらかした結果らしい。
 いや、それよりもP超過のペナルティとかどうなったの?

 と、8個のジュエルシードはゆきのさんが持ってるのか。

『あやつがやった方法を試みたところ、上手くこやつのデバイスに意識を移すことに成功してな。大分コツを掴んだ故、このように魂の実体化に成功できたわ』

 何やらおかしなことをツラツラと喋る山田さん。
 魂の実体化とか、マジ意味不明すぎる。

「そうやって、出たきたところを察すると、儂らに協力してくれるのかのう?」

 ゆきのとオッサンを除いて、自失状態の僕らであったが、一番に立ち直ったのは最年長のペンドラドン爺さんだった。

『うむ! と、言いたいところではあるが、今の我(オレ)はただの人に過ぎぬ。其方たちの役には立てん』

 とのお答え。
 ただの人は、魂から復活したりはしないと思うのですが……まあ、スキルとか無いなら仕方ないのか。

『それに、恐らく我(オレ)はまだこの国から出ることは適わんだろう。こ度は我(オレ)と高町ゆきのとの絆が生み出した一度きりの奇跡よ』

 いずれ声に従い、何処だろうとゆくことになるだろうがな、とか言ってるけどどういうことだ?
 スキルの【英雄(日本限定):黄金ヒーロー】がなにか関係しているのだろうか。

『さて……』

 山田さんが空を見上げた。
 僕も釣られて見上げるが、特に何かは見当たらない。
 結界に区切られた普通の空が広がるのみだ。

「おうさま?」

 何やら察したのかゆきのさんが山田さんの袖を掴む。

『そうだ。ここでお別れだ、高町ゆきの』

 正直、初めの状況からしてわからないから、今何が起こっているのかもわからない。
 2人のみに分かる、というやつであろうか。

「……」

『元々、原作に介入する気はなかったのだ。今まで通り、我(オレ)の進む道に戻るだけ。なに、永久の別れというわけでもない、道が交わればいつか会うこともあろう』

「おうさま! わたし、ユーノ君に会わない!」

 ゆきのさんまで、なんか変なこと言い出したし。

『どうした?』

「ユーノ君に相応しい私になるまで……おうさまが信じてくれた『わたし』に、相応しくなったとわたしが思うまで、ユーノ君には会わない!」

 うわ、これゆきのさんユーノに会いに行く気ないぞ。
 ガチで恋愛スキル捨てる気か?

『そうか……その想い、貫くがいい』

 この人も止めないしさー。

「うん!」

 そう、ゆきのさんはニシシと笑い、拳を山田さんにむける。
 山田さんもまたいい笑顔で、コツンと拳を合わせ、緑色の粒子となって天へと昇っていく。

「さよなら、おうさま。また会う日まで……」

 ゆきのさんは消えた山田さんの姿を追うように空を見上げる。
 ペンドラゴン爺さんとオッサンは、カッコつけやがってみたいにホッホとかヘヘッとかニヒルな笑みを浮かべる。
 カウりさんもフッとか笑ってるし、ルミカさんに至ってはなんかグスグス泣いてるし。





 しかし、ここでクッセーと感じた僕は空気読めてない?














      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆














「ここに『聖闘士』の項目はないが、『聖闘士』……例えば『黄金聖闘士』を選ぶことは出来るのか?」

『……可能だね』

「では、『山羊座』の必要Pは?」

『ふむ、12000といったところかな』

「い、一万超……」

 山羊座の転生者は必死にルールブックを捲る。

「こ、この魔法使用不可と組み合わせた場合、どうなる?」

『魔法っぽいことは一切出来ないかな』

「ぐっ!」

 それだと意味がない。
 あくまでも自分は『聖闘士』の如き存在になりたいのだ。

「はっ! 魔法っぽいこと、だな? よく切れる手刀は魔法じゃないよな!」

『……まあ、いいだろう。では、『聖闘士』の小宇宙を魔力で再現する形にしよう』

 ただし、魔法使用不可と合わせた場合、超常現象や放出系の技は使えないものとする。

 そう決まった。

 山羊座の転生者はガッツポーズを取る。
 他の星座? 知ったことか。

 10000Pオーバーだから必要な魔力値はSSS。
 誂えたように100Pピッタリだ。

 これで俺はあの憧れの『聖闘士』になれる。

 山羊座の転生者は歓喜と共に転生する。

 こうして、『山羊座』カウリは誕生した。







 カウリは覚醒後、歓喜の声を上げ、すぐに落胆した。

 聖衣は纏える。
 5歳児の体に丁度フィットするよう変化してくれる。

 技も恐らく扱える。
 聖衣から、技の情報が頭に流れ込んでくる。

 が、動きの再現は全くと言っていいほどダメだった。

 間違いなく現在のカウリは、5歳児として破格の身体能力を持っているだろう。
 しかし、それは原典の『聖闘士』に及ぶべくもない。
 小宇宙が低いのだ。
 多分、今の実力では邪武にも勝てない。

 そんな時であった。

『カウリよ、小宇宙を高めよ』

 そんな声が脳内に響いたのは。

 その声は、カウリが前世で憧れた『山羊座の黄金聖闘士』の声であった。

「はぁああああ! 我が師よ! わかりました、この聖衣に相応しくなるよう小宇宙を高めます!」

 カウリはその声に滂沱し、歓喜の表情で誓いを立てる。

 修行の日々の始まりだった。

 この脳内師匠との出会いを経て、カウリは着々と『聖闘士』に相応しい実力をつけていく。

 10歳の時にディメンジョン・スポーツ・アクティビティ・アソシエイション開催の「インターミドル・チャンピオンシップ」に参加、そして初出場初優勝を掻っ攫うまでの実力は身に付けていた。
 以後、「I・C」で連覇を続けていくうちに、管理局からの勧誘もあったのだが断っていた。

 キラ・ヤマトを知ったのは、「I・C」最後の参加で9連覇を達成した翌日、ニュースで彼の活動が大々的に取り上げられたのを見た時だ。

『カウリよ、大義を貫け』

 その二つしか言わない脳内師匠ではあるが、丁度DSAAの「I・C」は年齢規定に達しており、プロになる気もなかったカウリは新たな目標を見つけた。

 嘱託として、いつの間にか改名していた全時空平和委員会に所属、すぐに対『フリーダム』部隊に回され、キラ・ヤマトと対峙するに至る。

 そこでカウリは初めて壁にぶつかる。
 それほどまでにキラ・ヤマトは強かった。

 聖衣のおかげで、受けた傷は浅い。
 しかし、有効な一撃は一つたりとて与えられなかった。

 井の中の蛙を思い知らされ、改めて記憶に残る『聖闘士』の実力と、今の己の力を比べてみる。
 残念ながら、いいとこ白銀レベル。
 本来の『黄金聖闘士』には到底足りていなかった。

『カウリよ、小宇宙を高めよ』

 折れそうな心を脳内師匠が叱咤する。

 それから再び鍛錬の日々に『フリーダム』の連中との戦い。
 リュウには7戦全敗、悟欽は勝手に戦うとプリンスが怒るので放置。
 エミヤズとは互角、というか『ザ・ワン』以外のエミヤは逃げられなければ倒せる。
 他の3人とは今だ面識はない。

 それでも光速拳は未だ遠い。
 『聖剣』もよく切れるだけの手刀だ。

 そんな時に発生した「フリーダム・ゾート事件」。

 複数の転生者が原作の海鳴に大量発生したこの事件に、カウリは勇んで参加する。
 『無限の剣製』持ちも多いという。

 が、これがとんだ期待はずれ。
 エミヤズであれば、余裕(あちらからすれば結構必死)でよけて反撃してくるというのに、一撃。

 まだ、高町家の面々のほうが遣り甲斐があったであろうに。
 そう失望を覚えるカウリに、

『カウリよ、大義を貫け』

「はい、師匠!」

 今日も脳内師匠は語りかけるのだ。













      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆













 アースラに戻った僕らを待ち構えていたのは、肩を怒らしたアリサ・バニングスその人。

 どうも僕らの素性を聞き、ご立腹らしい。

「違うわよ!」

『黙っていたことに、仲間はずれにされたみたいで寂しいのさ』

 兄さん! とアリサが胸元のなにやらジュエルシードに似た緋色の宝石に怒鳴る。

 気のせいでなければ、ユージンさんの声が聞こえたのだが?

 儂らは関係ないのう、とペンドラゴン爺さんら3名とその使い魔たちはそそくさと去る。

 という訳で、僕とゆきの、迅雷のオッサンと使い魔のウィルさんが、バニングス兄妹に起こった事態の説明をリーゼフランさんから受ける。

「なるほど、それはジュエルシードが変化したもので、ユージンさんはマジ死んじゃったと」

『いやぁ、彼らがあんなに話を聞かないとはね』

 アハハと笑うが、笑い事ではないと思う。

 と、これでジュエルシードは全部揃っているわけか。
 あの後すぐ戻ってくるよう言ってきた理由がようやく理解できた。

「しかし、いいのか? 本当に見守って、話しかけるだけしかできんようだが……」

『だけ、って、それだけ出来れば十分でしょうに。一度死んだ身で、高望みはしませんよ』

 オッサンが複雑そうな顔で唸っている。
 やはり、なんとかできなかったかと、今も思っているようだ。

「あんたが、どこか浮き世離れしてたのはそのせいだったのか……」

「アハハ、今までは浮かれすぎてたんだよ」

 僕らがユージンさんと話している間、少し離れた場所でアリサとゆきのさんは話している。

「そういえば、こいつらの家族はどうですかい?」

 と、迅雷のオッサンがリーゼフランさんに尋ねる。
 それは僕も気になるところだ。

『都合良くというか、運良くというか、な』

 どうやら桃子母さんも無事洗脳は解けたようだ。
 どうも鳳凰院が記憶の齟齬をなくすために、まとめてニコポしなおして調整していたようだ。

『その鳳凰院だが、高町家の方々の記憶から消えていてな』

 コレは仮説だが、とリーゼフランさん。

 どうも100P超過組が死ぬと世界から居なかったこととして扱われるらしい。
 現状、転校生ズはまだ詳しいことは不明だが、少なくとも天鏡将院はその家族(といっても孤児院出身らしいが)の記憶からも消えているようだ。
 逆にユージンさんは高町家の皆も月村家の人たちも覚えているようなので、超過組のみの特殊事例らしい。

 まだまだ例が少ないから、詳しく判明するのは今回の転生者連中の調査が終わってからのことになるだろう、と締めた。

「不幸中の幸いってことか。よかったな、勇治」

 と、自分の事のように嬉しそうに僕の頭をペシペシ叩くオッサン。

「ちょっと、ゆきの? あんた、どうしたの?」

 アリサの声に、そちらを見ると、ゆきのさんがプルプル震えている。
 
「ダイジョウブ、ダイジョウブダヨ……」

「顔真っ青じゃない! どう見ても大丈夫じゃないわよ!」

 流石に昨日の今日ではあれまでは吹っ切れなかったみたいだ。
 どうもトラウマになってるっぽい。

 さて、どうしたものか。







 その後、一旦ゆきのさんを外して高町家家族会議を行う。

 カイが生きているため、月村家と異なり完全に記憶が飛んでいないので、はじめはかなりギクシャクしたが、そのへんは僕があまり気にしない質だったので表面上はいつも通りとなった。

 取り敢えず、第一に僕らの素性のネタばらしからはじめる。
 これはリーゼフランさんの入れ知恵で、コレを受け入れられないようならこの先は諦めたほうがいいとのコト。

 まあ、高町家の皆は前世の事など気にしないと言ってくれたが。

 実際僕としても前世知識など、この世界の未来知識と覚えている限りの戦闘スキルの元ネタぐらいだ。
 しかも、既に未来知識乙状態である。
 原作のゲの字もありゃしない。

 続いて、カイの処遇である。

 ここで殺すとスッキリ終わる。
 関連情報が無かったことにされるため、今回の一連の事件で高町家の皆がとった行動も無かったこととなり、ゆきのさんがトラウマを克服すれば、めでたしめでたしである。

 リーゼフランさんも、実にもったいないのだがそれが一番いいだろうと言っていた。

 のだが、これには高町家の皆が難色を示した。

 どうも僕らに──というか主にゆきのさんだが──トラウマを植え付けといて、それを忘れて今まで通りという訳にはいかないらしい。
 色々思いつめられると、僕的には逆に辛い……桃子母さんとかマジ落ち込んでるし、さっぱり忘れて欲しいところなのだが。

 話し合いは平行線、というかうまい着地点が見いだせなかった。
 僕としてはすっぱり忘れて、最悪僕らを忘れてしまったしとても、高町家の皆には笑顔でいて欲しいのだが。士郎父さんたちは僕らがいなければ、家族が揃わなければそれは心からの笑顔じゃないと言って譲らない。

 このへんの機微が今一わからない僕は、やはり外側にいるんだろう。

『では、こうしたら如何か?』

 僕以上に外側で、やはりそのへんの機微を理解していないであろうリーゼフランさんを見てそう思った。

 煮詰まっていた僕らに彼女が提案したのは、なんというか碁盤をひっくり返したような案であった。

 先ずは高町ゆきのがトラウマを克服することが第一、これの克服に一週間を空ける。
 次に、家族の絆というやつの確認と称して、高町家の皆から僕ら2人の記憶を消去。
 最終的に、皆が僕らの事を思い出せば絆の力でなんでも克服できる。

 要約すればこんな感じである。

 僕的には意味不明なのだが、リーゼフランさんは高町家の皆が、ちょっとそれは、とか、いやここはおかしい、とかの反論を一つ一つ煙に巻くように論破していき、この案を通すことに成功した。

 皆も、何となく賛成してしまったが、本当にこれで良かったのか? と、そんな顔をしている。

「これ、皆が思い出せなければそのままってことですよね?」

『おや? 高町勇治、君は家族が君たちの事を思い出せないとでも思っているのか?』

 僕の呟きに、リーゼフランさんは逆に質問を返す。

 ああ、この人はもう答えが分かっているのか。
 改めて『軍師孔明』スキルの恐ろしさを理解する。
 直接事象が操作できるのであれば、正解がわかるこのスキルはほぼ予知のようなものだ。
 本当に恐ろしいのはそれを使いこなすこの人だが。

 結局、リーゼフランさんの提案通り、一週間後僕らが海鳴に赴き、高町家の皆が記憶を取り戻せば、今まで通りということに決定した。






 さて、僕らとは逆にあっさり今後を決めたのが迅雷のオッサン。

 はやての周囲の危険は今回でほぼ消えたと言って、記憶喪失の今、完全に縁を切ることに決めたのだ。

 前から薄々感じていたが、闇の書事件は既に解決済みのようだ。
 まあ、当然といえば当然なのかもしれない。
 ギル・グレアムと八神はやての周囲に、原作『キャラ』至上主義の人間がいるのであれば、あの事件は11年前に解決済でなんの不思議もない。

 そうなると、フェイト・テスタロッサが姿を現さなかったことも。大元が改変されているからだろう。
 例えば、アリシア・テスタロッサが死ななかった、とか。

 閑話休題。

 どうも今回はやてと何かあったらしく、今後同じこともしくはそれ以上のことをされたら耐える自信はないから、この機にさっぱり縁を切ると言っていた。
 何をされたのだろうか?

 と、これに怒髪天をついたのがアリサ。

 アンタなんかに、はやては任せられない! と言って怒鳴り込んだところ。

「ああ、頼む」

 逆にお願いされ、更に激怒。

 はやてを連れてさっさと海鳴に帰ってしまった。

 現在、高町家の皆も月村家の人たちも海鳴に戻っているので、ゆきのさんのトラウマ克服に付き合うのは僕と使い魔のみなさんである。
 正直アリサには残っていて欲しかった。

 ここの所、オッサンは飲んだくれているので、酒臭いのが嫌いな僕はこの状態でユージンさんがいなくなると、リーゼフランさん以外に会話相手がいないのである。

 ペンドラゴンの爺さんとルミカさんは暇さえあれば拳と刀を合わせている。
 カウリさんはほぼ無言で、浮き世離れした雰囲気を漂わせており、実に話しかけづらかった。
 艦長のロベルトさんは、本局に戻るまで部屋から出ねぇ! とぷちストライキを敢行しており、話せるような状況でもない。
 専属の使い魔さんたちは基本、主人に付きっきりだし、アースラクルーの使い魔は性格付けが殆どされていないので機械に話しかけるようなものだ。

 というわけで、ゆきのさんの世話を終えた僕は、気づくと彼女と話しているのだった。












      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











「こんなの茶番よ」

 アリサがいつものようにはやてを連れ回しながら呟く。

『そうかな? 転校生たちのアレはとても強力だったよ?』

「アレは『神様』ってのの力でしょ? 今回のはただの魔法、そんなもので今までの家族の絆が切れるわけなんてないわ!」

 どちらかというと、絶賛記憶喪失中のはやての方が問題だとアリサは兄の言葉を否定する。
 こちらは紛れも無く『神様』パワーによる戦闘スキルによる記憶喪失だ。

 アリサがつきっきりで、数日かけてなんとかまともな学校生活がおくれるくらいには回復したが。

『そうなると、後三日でゆきのちゃんがトラウマを克服できるかが問題になりそうだ』

「そうね。それはともかく! ほんと、あの黒いのはヘタレなんだから!」

 わざわざ週末を利用してはやてを温泉に連れてきたアリサは、迅雷のヘタレっぷりに文句を言う。

『そうは言うがね、アリサ。叔父と姪では、やはりイロイロまずいって』

 なんだかんだで、考えた末の結論なのだ。
 ユージンとしては迅雷の意思を尊重したいので、アリサに苦言を呈する。

 しかし、大好きな兄が一生自分の傍にいてくれるというある意味末期状態のアリサは聞く耳など持たず、はやてがなんだかんだで好意を寄せている迅雷とくっつけようと、余計なお世話を発揮している最中であった。

 見ているだけは、やはり辛いかもしれないねぇとユージンは内心ため息をついた。







 あっという間に1週間が経った。

 なんとかゆきのさんはトラウマを克服し、といってもそれ以前にもまして挙動不審であるが、少なくとも動きが止まることはなくなった。
 さて、そんなゆきのさんを連れ海鳴へと転移する。

 人払いの結界を展開したゲートに転移した僕らは急ぐこともなく高町家へと向かった。

 たどり着いた高町家。

 ゆきのさんはまだちょっと躊躇いがあるようにも見える。
 ちなみに僕もそのへん全く感じなほど木石ではない。

 そっと、2人して垣根から玄関を覗いたところで、箒をはいている美由希姉さんと目があった。

「……」

「……っ、父さん、母さん! 恭ちゃん、なのはも! 勇治が、ゆきのが帰ってきたよ!」

 あれ?

 僕的には顔をあわせて初めて記憶が蘇る、みたいな感じを想像していたのだけど?

 美由希姉さんの声とともに家の中が騒がしくなる。
 意を決したのか、ゆきのさんがおずおずと中へと入ってゆく。

「……え、と。ただい……ま、お姉ちゃあああああん、うわああああああん」

「うん。おかえり、ゆきの。勇治もおかえり」

「えーと……ただいま、美由希姉さん」

 ゆきのさんは途中で泣き出してしまった。
 まあ、多分嬉し涙だと思うんだけど。
 美由希姉さんはそんなゆきのさんを優しく抱きしめる。

「勇治! ゆきの!」

 と、玄関が開き士郎父さんを先頭に、高町家の皆が押取り刀で駆けつける。

 僕の予想と全然違ったが、まあ得てしてこんなものかもしれない。

「高町勇治、ただいま戻りました!」

 僕は笑顔で、僕の家族にただいまの挨拶をした。













      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆










「だーれだ?」

「……ハァ、八神はやて」

「あれぇ? かなり声色とかも変えたつもりやのに」

「俺が、お前さんの声を聴き間違えるわけないだろうが」

「むぅ、ジンさん。私の記憶が戻ったのに全然驚いてへん」

「俺が海鳴に向かわされるのに、お前さん絡み以外の理由があるか」

「……なんで、死んだなんて嘘ついたん?」

「何だかんだで、俺はお前さんが大好きだからな。これから成長して同じように好意を向けられたら自重できんかもしれん」

「……」

「んで、お前さんが俺以外の誰かに好意を向けるようになったら、それはそれで辛い」

「……」

「ん、でも、死んだ事にしたのは謝る。ごめんな」

「……うん、はやてちゃんは寛容やからな、ゆるしたげるで」

「……何笑ってんだ?」

「内緒や!」



[28418] 14話 A's編終了のお知らせ
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/07/23 19:25

「父よ、朝だ! 起きるがよい!」

「う、うん……おはよう、ロード」

 いつものように娘のロードに起こされ、マイヤー・ディアーチェは体を起こす。

「ロード、母さんは?」

「母はもう出仕された、爺もとうに出られておる。レナードも騎士たちも起きているので、父が最後である」

「そう、ふぁあああー」

 マイヤーが欠伸と共に大きく伸びをする。
 いつものように妻のオーリスと義父のレジアスは既に出仕しているようだ。
 使い魔や騎士たちは当然、息子のレナードも起きている、と。

 全時空平和委員会ミッドチルダ地上支局クラナガン防衛隊本部、通称『地上本部』総司令である義父とその秘書である妻は多忙である。

 対するマイヤーは表向きは『地上本部』の窓際部署である第7資料室の室長だが、実際には全平和会暗部の象徴たる対『フリーダム』部隊、通称『ゴミ処理部隊』の隊長である。

 実は部隊所属者の家族と転生者以外には部隊員は極秘である。
 対『フリーダム』部隊はいわば『絢爛舞踏』の集団、全時空平和委員会の暗部たる血と恐怖の象徴だ。
 その人が、世界を揺るがす化け物と対峙できる化け物と知って、普通に会話できる人間は多くはない。

「主、起きられたのですか?」

 と、続いて部屋を訪れたのが「夜天の書の管制人格」であるリインフォースⅠ(アインス)。
 昨年、「守護獣」ザフィーラとの間に娘をもうけ、マイヤーがその子にリインフォースⅡ(ツヴァイ)の名を与えたので、わかりやういようにとⅠ(アインス)を名乗るようになっている。

「ん? Ⅱ(ツヴァイ)は?」

「今はヴィータが見ています。主、子供とはいいものですね」

 どうやら騎士達を代表して起こしに来たらしい。
 そして最近のⅠ(アインス)さんは毎日のように、子供はいいと繰り返す子煩悩になっている。

「うん、子供はいいねぇ」

 と、同じく子煩悩のマイヤーもそう返す。

 しかし、妻が多忙ゆえ子供たちの面倒は基本的にヴィータが見ているのだが、長女のロードが最近原作の闇統べる王っぽくなっているのが気がかりだ。
 ヴォルケンきっての常識人であるヴィータがおかしな教育をするはずがないのだが……今日、仕事先で聞いてみよう。

「そんなことは後でよかろう。父よ、急ぐのだ! 寝坊組が全員揃わねば、朝ごはんが食べられないではないか!」








 新暦54年に起きた、通称「闇の書事件」は当時新人であったマイヤー・ディアーチェの手により解決した。

 といっても、マイヤーのしたことは闇の書の暴走プログラムを正常化し、バグ化する前の夜天の書のとしての機能を取り戻すことだけであったが。

 まあ、だけといっても本来は当時動ける転生者を総動員して、封印した後に無限書庫の封印区画に放り込むという力業によるものだったので、彼の功績といって問題はないだろう。
 これにより、闇の書は八神はやての元に転生することなく本来の機能を取り戻し、管制人格も消滅することなく原作と同じくリインフォースの名を与えられた。

 また、守護騎士達もなんだかんだと前科持ちにはなったものの、半世紀の管理局(この頃はまだ改名前)への勤労のみで実質無罪放免といえた。

 問題は、ヴォルケンリッターがディアーチェ家に居候することにより、所謂八神家居候ルートを狙った2名の転生者がマイヤーの元に転がり込んできたことである。
 しかもその転生者、ミストナム・フライム(5歳)とカイト・ゴーダ(5歳)の2名とも恋愛タイプの転生者のため、対象のシャマルとシグナムに一発で気に入られたため追い出すわけにもいかないという状況となった。

 とはいえ、マイヤー自身がヴォルケン・ハーレム、ヒャッハー! という人間ではなかったので、結局そのままでいいということとなった。

 さて、転生者マイヤーの目的は達したとはいえ、この時間軸に生きるマイヤー・ディアーチェという人間にはやるべきことが残されている。
 第一に、没落したベルカの名門であるディアーチェ家の復興。
 ここまで育ててくれた亡き両親の恩には答えたい。とはいえ、入局するまでその日の暮らしにも困窮した程だ、先は長い。
 第二に、夜天の書の主になったことによる原作改変に対する責任。
 ヴォルケンリッターの面々には原作以上の幸福を与えるのが、少なくとも原作を変えた人間の義務だろう。
 まあ、シャマルとシグナムは取り敢えず、彼らに任せるとして。
 最後に、結婚したい。
 最低でも、原作の名ありのキャラと結婚したい。原作メインなどと贅沢は言わないのでモブ以外でお願いします!

 と、そんなことを考えながら11年。

 エミヤズの本局襲撃事件による管理局の全時空平和委員会への改名。
 特定転生者への『フリーダム』の呼称と、対『フリーダム』対策本部と対抗部隊の設立。
 『スーパー・フリーダム』キラ・ヤマトの出現、そして原作開始時間に起きた「FZ事件」。

 今も多くの事件が起き、世界も平和とは言い難い。

 それでもマイヤー自身は、幾多の困難を経てオーリス・ゲイズとの結婚に漕ぎ着け、娘ロードと息子レナードを得たことで、間違いなく幸せを掴んだと断言できる。
 義父のレジアスも、最近は治安維持局のバランと孫自慢などをしており、原作のような焦燥感は一切ない。
 (キラは滅多にミッドチルダにこないので、クラナガンはかなり平和)

 ディアーチェ家もゲイズ家と結びつくことで、なんとかかつての名門としての矜持ぐらいは持てそうだ。

 シャマルは毎日つやつやして──ミストナムは反対にカラカラして──いるし、シグナムはカイト相手に毎日楽しそうに剣を振るっている。
 ザフィーラはいつの間にかにリインフォースⅠ(アインス)とよろしくやっているし、そのⅠ(アインス)も娘のⅡ(ツヴァイ)が生まれてより一層幸せそうだ。
 ヴィータも毎日マイヤーに文句を言いながらも、窓際部署の第7資料室で資料整理、偶に『フリーダム』の面々と戦うという、それなりに充実した日々を送っている。

 因みに、ヴォルケンリッターの面々は原作より2ランク前後実力が上がっている。
 これはマイヤーの魔力値の恩恵と、格上である『フリーダム』との戦いで必然的に原作以上の強さを身に付けざるを得なかったためだ。

「あー、さっさと『フリーダム』の連中は死んでくれんかなぁ~」

 子供たちを魔法学院に送った後、そうボヤきながらヴィータと一緒に出仕する。
 第7資料室、別名「緩慢なる拷問室」の名で恐れられる部署だが、それでも『フリーダム』の連中とやり合うよりはましだと思う。

 戦闘馬鹿のペンドラゴンやプリンス、カウリにルミカとは違うのだ。
 ウィンドに迅雷、エーリヒほどの使命感もないし、カーミィナルほど拝金主義者でもない。
 『フリーダム』に通用する程度に強くなった自分が恨めしい。
 テスタロッサ家の連中程度に抑えておけば、あの魔女に見込まれることも無かったんだがなぁ。

 はぁ、とため息をつき、ヴィータに辛気くせーデスと文句を言われる。

「平穏が欲しいなぁ」

 マイヤーは天を仰いだ。






 対『フリーダム』部隊

『夜天の王』マイヤー・ディアーチェ
・局員。隊長。主に『地上本部』で『フリーダム』の動向を監視。特定の面子にはヴォルケンを動員して対応。
『剛拳』ペンドラゴン
・嘱託。戦闘員。普段は本局で修業。基本的に他の面子が来るまでの足止めが役目。
『火葬』八神迅雷
・局員。戦闘員。事務も一通り熟すので普段は本局の忙しい部署の手伝い。本来は査監部の第5課課長。役目は止めの一撃、まだ誰も倒せていないが。
『山羊座』カウリ
・嘱託。戦闘員。普段は本局で瞑想。二強以外は互角以上に戦えるので出動回数最多。
『小天位』ルミカ・シェベル
・嘱託。戦闘員。普段は本局で修業。最年少。実はカウリをライバル視している。
『雷神』カーミィナル・ドーン
・嘱託。『フリーダム』の素質がある拝金主義者のため金銭で入局させた問題児。部隊最強だが滅多に動かない。
『エース・オブ・エース』エーリヒ・ヨアヒム・ルーデル
・局員。対キラ最終兵器。覚醒して対転生者戦最強格に。
『スーパー』プリンス・ツールフ
・局員。ツンデレ。孫悟欽をライバル視し、ストーカーのごとく付け狙っている。
『ニンジャマスター』ウィンド
・局員。NINJA。ガチテロリストのゼロの動きを封じるため単独行動中。












      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆













「その世界にはキラ・ヤマト、いや『機動戦士ガンダムSEED』という作品は存在するのか?」

『いや、ないだろうね』

「……そうか」

 その転生者はそう呟き、ルールブックに目を向ける。

「……例えば、自分の事を誰も信じないというスキルはどういった形になる?」

『……よく意味が分からないが、-500Pといったところかな』

「それじゃあ、自分の言うことを誰も理解しないというものはどうだ?」

『……それも-500Pでいいかな』

 『神』の言葉に転生者は再びルールブックのページを捲る。

「オリジナル・デバイスは……一旦展開した後は状態の変化は無し、形状はバリアジャケットと一体型でZGMF-X20Aストライクフリーダムガンダムとほかの転生者が一目でわかる感じに、武装はMMI-GAU27D31mm近接防御機関砲以外を実装する形で」

『武装の威力と装甲は原型機にあわせるかね』

「その必要はない。あくまで形状のみでいい」

『なら100Pで、名前は』

「ストライクフリーダム」

 熟考する転生者のページを捲る指が止まる。

「コーディネイターの項目がないが?」

『1世代なら15P、2世代なら30P、ハーフで5P、スーパー・コーディネイターなら50Pにしよう』

 返答を聞き、再び指が動き出す。

「名前は……片仮名1文字3Pか、地味に高いな。容姿をキラ・ヤマトにするには?」

『ふむ、美形の特定キャラで……40P』

 その言葉に必要なスキルはもうないと判断したのか、ルールブックを閉じる。

「マルチタスクは最低でも14は欲しいが……ああ、問題ないか」

 そう独りごちるが、すぐ納得したように頷く。

「では、このスキルで転生をお願いする」

『……どうでもいいがね。君はなんの為に転生するのかね』

 これまで見たことのないスキル編成──今後も見ることもないそれ──に、『神』が尋ねる。

「決まっている」

 転生者はとびっきりの笑顔で答える。

「世界に、絶望を届けるためさ」

 こうして、最凶最悪の転生者が誕生した。















      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆















 彼は目覚めると共に端末を操作しニュースを映す。

『昨夜未明、突如として第12管理世界フェディキアのStワレリー空港を超S級次元犯罪者キラ・ヤマトが襲撃しました。幸い、いつものように死者こそいませんが、負傷者は1000人を越えており、更に空港は完全に瓦礫の山と化しています』

 アナウンサーが悲愴な表情で事件を読み上げる。

 彼はそれを見て愉悦の笑みを浮かべる。

 彼がこの活動を初めて5年。

 もう、管理世界の住人の殆どは『キラ・ヤマト』という存在を知ったことだろう。

 彼の目的の大半は達成したと言える。

【キラ・ヤマトという最悪のクソの存在を未来永劫全次元世界の全人類に記憶させる】

 これが彼の転生した最大の理由だ。
 ただそれだけの為に第二の人生全てをなげうち、原典の『キラ・ヤマト』への底知れない悪意で行動している。

 人を殺さないのも、『死んでしまってはキラ・ヤマトの悪行を語れないじゃないか』とそれだけの理由で殺さないだけ。
 原典とかそういったものはまるで関係なく、純粋に直接殺したら勿体無いという理由なのだ。

「さて、今日はどこへ行こう?」

 『フェアリー・ガーデン』に提供された隠れ家のベランダから街並みを眺め、彼は呟く。

「……ああ、そうだ。ミッドチルダは最初に行ったきりだ。今日はそこにしよう」

 ふと、頭をよぎった他の転生者たちにより、第1管理世界ミッドチルダをここ数年訪れていないことを思い出す。

 こうやって、彼は散歩に赴くかの様に襲撃地点を決めるのだった。








《転生者一覧が更新されました》







【リーゼエルザ・グレアム】New! 

年齢:35歳(/100歳)New!

・出身:何らかの実験施設(-200P)New!
・総合SSランク魔導士(100P)New!
・マルチタスクLv100→5000(300P)[限界突破]New!
・攻撃魔法使用不可:→マルチタスク(-200P)New!
・運勢:豪運(100P)New!

現在地:次元空間・全時空平和委員会本局 New!






【リーゼマリナ・グレアム】New!

年齢:35歳(/100歳)New!

・出身:何らかの実験施設(-200P)New!
・Sランク結界魔導師(25P)New!
・マルチタスクLv25→1000(75P)[限界突破]New!
・真贋判定(100P)New!
・運勢:豪運(100P)New!

現在地:次元空間・全時空平和委員会本局 New!






【リーン】New!

年齢:──(/──)New!

【種族:神】[限界突破]New!
・SSSランク結界魔導師(150P)New!
・SSSSランク結界魔導師[限界突破]New!
・SSSSSランク結界魔導師[限界突破]New!
【無限結界師】[限界突破]New!
・出身:原作開始前時にはすでに死亡(-500P)New!
・スクライア一族に対する洗脳タイプの魔法無効化(200P)New!
・ユーノ・スクライアが不幸にならない(250P)New!
【世界結界:リーンの翼】[限界突破]New!

現在地:封印世界・楽園の星ヴァルハラ New!






 先の「フリーダム・ゾート事件」解決後、2日に一度の割合でリーゼフランさんが連絡してくるようになった。

 主に僕の『転生者一覧』がお目当てなのだろうけど。
 とはいえユージンさんがアリサに付きっきりなうえ、迅雷のオッサンも本局の方に戻ってしまったので、放課後の話し相手に飢えていた僕としても願ったり叶ったりするのだが。

 あまり都合が合わないらしく、中々全平和会所属の転生者と顔をあわせることはなかったが、それでも彼女の身内というべき2名の転生者と話すことができた。

 リーゼエルザ・グレアム無限書庫長とリーゼマリナ情報部長の2人だ。

 無限書庫長を務めているというリーゼエルザさんはボソボソと話すのが印象に残った。それに顔の筋肉が存在しているのか疑問に思うほど無表情で、話している間は口以外の動きは僕には見受けられなかった。

 情報部長のリーゼマリナさんは先の2人とは逆に常にニコニコしている人だ。ただ本当に笑っているわけでないというのは僕にも理解できる。

 彼女ら3人がギル・グレアム提督とどういう関係なのか気になったので聞いてみた。

『義父さ、ああギル・グレアム義父さまが我々を施設から救い出してくれたのだ。まあ、ほぼ覚醒直後だったので何がなんだか分からぬ間に義父と義姉たちに抱かれていたわけだがね』

 おそらく極東の手引きだろうが、とボソリと呟く。

 要するに義理の娘ということらしい。
 それにしては名前にリーゼが付くのは変に感じるのだが、顔に出ていたのだろう説明してくれた。
 簡単にいえば、使い魔二人も彼からすると娘のようなものらしい。

 このリーゼフランさんがとの会話にたまに出てくる極東という単語、気になって聞いたところ極東日昇(きょくとうひのぼり)という転生者ということだ。
 リーゼフランさんたちの出身地である施設に所属していた科学者で、彼女たちが同胞と気づいた後に、覚醒にあわせるように管理局に施設の情報を垂れ込んだということだ。

 一応、命の恩人なので彼女が珍しく頭の上がらない転生者らしい。
 最もその恩人はマッド・サイエンティストを自称し、組織の裏側で色々するのが大好きという変人らしい。現在は全平和会の暗部を切り盛りするのが楽しいらしい。
 正直、一生会いたくないような人間に思えるのだが、そうもいかないのが僕の運命のようだ。

 さて、僕の『転生者一覧』であるが、僕の生まれる以前に死んだ転生者については記載されていないらしい。

 どう考えても転生者しかありえないスクライアの始祖、リーン・スクライアの事が記載されていなかったからだ。
 この始祖さんが一覧に登録されたのは、リーゼフランさんとの会話の最中、一覧の名簿の中に始祖の名が無いことに疑問を覚えた彼女にそのことを聞かれた時だった。

 それを告げると、リーゼフランさんはそういう仕様か! と舌打ちし、次までに怪しい人物をリストアップしておくと言ってその日の会話はお開きとなった。
 通信を終える際に、まあ、アイツは間違いなくクロだろうがと言っていたのが気になった。





 個人的に中途半端なところでお開きとなった日の翌日、珍しく連続でリーゼフランさんからの通信が届いた。

『すまない、高町勇治。緊急事態でな、なにも言わずにこの映像を見てくれ』

 そう言って、僕が断る暇も与えず──断る筈もないのだが──通信が別の画面に切り替わる。

 その映像は戦場であった。

 それは、先日の転校生ズとの戦いが幼稚園の遊戯に思えるかのような次元の違う戦いの映像だった。

『つい先程、キラ・ヤマトのバカがクラナガンに襲撃をかけてきた。幸い、というには不足だがあそこはマイヤーが常駐している。運良くドーンの強欲野郎が動いてくれた、絶対倒せんがなんとか被害を抑えることはできそうだ……』

 珍しく焦りを見せるリーゼフランさんが僕に解説するように言葉を重ねる。

 僕はその言葉を殆ど聞き流しながら映像を見る。

 画面の中では、僕のよく知るヴォルケンリッターの面々が濁流に流される木の葉のように、圧倒的な暴力に晒されている。
 それを画面の端に、中央では金色に光る雷神が青と白の悪魔に一方的な戦いを挑んでいる。

 画面を埋め尽くすほどの雷光は、しかし悪魔に簡単に回避され、6門の砲から放たれる3色6条の光線は全て雷神を貫く。

 それを何度か繰り返し、しかし両者はともに無傷。
 画面端で8つの子機から放たれる光線を必死に回避しているヴォルケンリッターのほうがボロボロだ。

 そのヴォルケンリッターたちに指示を出しているらしい青年──どこかで見たことのあるバリアジャケットを着ている──が、必死に立ち回っているようだが今のところ有効な手は打てていない。





《転生者一覧が更新されました》





【マイヤー・ディアーチェ】New!

年齢:26歳(/100歳)New!

・運命:闇の書のプログラム正常化(50P)New!
・出身:没落した名家(-50P)New!
・総合AAAランク魔導師(25P)New!
・総合Sランク魔導師[限界突破]New!
・総合SSランク魔導師[限界突破]New!
・魔力値:SS→SSSS(50P)[限界突破]New!
・マルチタスクLv5→50(15P)[限界突破]New!
・デバイス:夜天の書のバックアップ(50P)New!
・運勢:悪い(-50P)New!
・恋愛:原作キャラ(10P)New!
【天眼:戦場を盤外から見るように把握できる】[限界突破]New!

現在地:第1管理世界ミッドチルダ New!





【カーミィナル・ドーン】New!

年齢:16歳(/50歳)New!

・出身:何らかの実験施設(-200P)New!
・SSSSSランク結界魔導師(450P)New!
・攻撃魔法不可:→悪魔の実(-600P)New!
・防御魔法不可:→SSSSSランク結界魔導師(-225P)New!
・悪魔の実:ゴロゴロの実(900P)New!
・貧乏Lv2(-100P)New!

現在地:第1管理世界ミッドチルダ New!





【キラ・ヤマト】New!

年齢:20歳(/100歳)New!

・総合SSSSSランク魔導師(900P)New!
・マルチタスクLv10→1000(30P)[限界突破]New!
・容姿:キラ・ヤマト(40P)New!
・デバイス:ストライクフリーダム(100P)New!
・誰も自分のことを信じない(-500P)New!
・誰も自分の言うことを理解しない(-500P)New!
・名前:キラヤマト(15P)New!
・コーディネイター(15P)New!
・スーパー・コーディネイター[限界突破]New!
【ハイパー・コーディネイター】[限界突破]New!
【グレート・コーディネイター】[限界突破]New!
【時間制御:棒立ち】[限界突破]New!
【運命制御:被弾しない】[限界突破]New!
【手加減:生きてないと僕の悪行を語れないだろう?】[限界突破]New!

現在地:第1管理世界ミッドチルダ New!






 ナンダコレ。

 圧倒的じゃないか。
 さっきから攻撃が当たらないのは【運命制御:被弾しない】で、逆に回避できないのは【時間制御:棒立ち】のせいか!
 というか、ハイパーとかグレートって何だ!
 何より、戦闘スキルを何も取ってないのに強すぎる!

 って、実は強い理由はなんとなくわかる。
 純粋に戦い方が上手い。

 偶に弾幕を掻い潜って、シグナムさんとヴィータさんが近接攻撃を仕掛けているが、恐らく渾身の一撃であろう二人のそれをビームサーベルっぽい武装で簡単に凌ぐ。
 直後に二人を巻き込むように放たれる雷光を、わざわざ当てないよう蹴り飛ばしたうえで余裕をもって回避している。

 反応速度と状況把握能力が恐ろしいレベルで高い。

 しかし、このカーミィナルってのもかなりやばいな。
 今、躊躇なく二人を巻き込もうとした。何となく、先の転校生ズと同じ臭いを感じる。

 と、キラがあさっての方角を見る。
 その隙は逃さんとばかりに、カーミィナルが雷光を放つがそれが当たることはない。

 キラの見た方角から何かが来るようだ。

『……間に合ったか?』

 と、リーゼフランさんが呟く。

 何やら切り札を切ったようだ。

 キラが考え込んでいる。
 その間も、子機(多分ドラグーン)による攻撃は続き、ヴォルケンリッターとその主っぽい人は逃げ回り、カーミィナルってのは続けざまに攻撃を仕掛けるが尽く回避されている。

 と、どうやら考えがまとまった模様。
 キラは肩を竦めて、魔方陣を展開した。

『逃げる……いや、引いてくれるか』

 リーゼフランさんの言うように転移魔法陣だ。
 しかし早いな。
 電撃による攻撃を避けながら一瞬で展開し、同じように一瞬でそれを発動させたぞ。

『エーリヒ、キラは撤退した。特命は解除、通常任務に戻れ』

『jawohl!』

 彼女のそんなやりとりが聞こえる中、画面の方ではカーミィナルが不満そうな顔でキラの消えた場所を睨んでいる。
 どうも、初対戦っぽい。
 反対に、夜天の主っぽいマイヤーって人はホッとしたような顔で、シャマルさんと一緒に他の面子の治療をしている。
 こちらは何度かやりあっているようだ。
 不満そうな顔──といっても不満なのは自身の実力不足についてのようだが──でシグナムさんとヴィータさんが、ザフィーラさんに何やら語っている。
 よくよく見れば、リインフォースさんがいるな。
 僕には予想もつかんが、闇の書のバグをどうにかしたんだろう。

『結果としては、想定した中で二番目に良い。マイヤーが粘ってくれたおかげで一般市民の被害や施設の損害は無し、初動が間に合えばキラも何とかできるという実績はあげた。問題は、その初動がミッド以外ではどうにもならんことだが……あと、欲をいえばドーンのバカが相打ち気味に手傷を負わせて死んでくれれば言うことはなかったのに……』

 取り敢えず、聞こえてくる彼女の呟きは無視することにしよう。

 しかし、先の事件で覚悟を決めてはいたが、僕の想像以上に管理世界は混沌としているようだ。
 恐ろしいが、今後の予定の変更はしない。
 これだけ状況が混沌としていると、原作崩壊とかの次元ではなく、明日が平和である保証もない。
 他の実力がある転生者とつるむのが正しいだろう。

 しかし、それでも。

 僕は、この先生きのこれることができるのだろうか?




[28418] 15話 オリ主で厨二の邪気眼
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/07/26 16:49



『さて、高町勇治。あれが現在我々が敵対する最強の転生者キラ・ヤマトだ』

 で、どんなバカだ?

 リーゼフランさんの質問に僕はなんと答えていいものやら迷う。
 取り敢えず、能力を纏めてっと、送信。

「とんでもないバカです」

 こう答えるしかなかった。

『……』

 リーゼフランさんも送った能力を確認するなり沈黙する。

『……最悪だ』

 2分後、ようやくそれだけを呟く。

 まあ、寿命ペナないしなぁ。
 正直倒す方法が思いつかん。
 僕の知る限り、倒せそうなの生前の山田さんぐらいじゃねーの?

『完全に転生後の人生を捨てている……スクライアのリーンと同じタイプ、まあベクトルは逆だが。これは本格的にエーリヒの成長待ちか……』

 どうやら彼女には打倒方法があるらしい。
 一応条件はあるようだが。

「ところで、カーミィナルって人はどんな人なんです? かなりアレに見えましたけど」

『ん? ああ、気にせんでいい。その内、覇気使いかゴム人間に当てて始末する』

 嫌っているとか、そういうレベルじゃなくて、本気で殺す気だ……どんだけアレなんだカーミィナルさん。














      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆














 新暦50年に時空管理局で起きたグレアム派による大々的な改革は、それまでの構造を一変させた。

 最大のキモである「サーヴァント・システム」、これにより時空管理局の構成員は一年後には倍以上に増大した。
 そして、それまでAAAランク以上は管理局全体の5%と言われていたものが、60%以上となる。

 システムの開始直後は、最大2ランク上までの使い魔を所有できることから、格上の使い魔を所持したはいいが逆にコンプレックスに苛まれる局員も発生した。
 が、これはすぐに解決する。
 本来、主の魔力が生命線の使い魔だが、「サーヴァント・システム」の使い魔たちの魔力の源は無限の魔力を持つリーゼフランである。
 逆に使い魔から魔力を供給することができることが判明したため、武装隊などからは両手を持って受け入れられることとなる。

 また、ドールマスターなどと揶揄される複数の使い魔を効率的に運用する局員により、殆ど使い魔で構成される部隊が出現するなど陸でも空でもシステムの恩恵を受けていた。
 同じように海でも、普通に優秀な執務官が強力な使い魔と組むことで効率が上がるほか、不良執務官に対する首輪として機能するなど枚挙にいとまがない。

 同じく無限書庫の整理終了に伴う情報の開放は、主にロスト・ロギア対策に大きく貢献することとなる。
 それ以外にも書庫の情報が、事件解決に貢献するという事例は増え続け、いつしか当たり前のこととなっていく。

 と、これらは主に局員一人一人、個人への変化である。

 管理局全体で見ると、この改革で最も恩恵を受けたのは陸で、予算は微増であったものの、権限は海とほぼ同等となる大幅な拡大を見せた。
 実際には海が大きく権限を失ったのだが、それでも本来本局に一極化していた権限が各世界の現地政府に譲渡され、各地の地上本部と一体化することで陸は充実した戦力と権限を手に入れる。

 さて反対に権限を大きく失った海だが、戦力の上乗せは陸の比ではない。
 それまでの比率で言えば陸が数倍の戦力を得ているが、初期値が異なる海は純粋に倍の戦力を得た。
 これまで100隻体制の次元航行艦隊が、新造艦の入れ替えと共に順次200隻体制に移行する。
 ただし本局直属の肩書きは失い、分艦隊規模で各管理世界に駐留する形となった。
 本局に残るのは艦隊司令部と幕僚監部のみである。

 変わって本局の実権を握ったのが査監部、情報部、無限書庫で構成される、所謂グレアム派の中枢である。

 この改革で権限を大きく失うことになる──主に海の──権力者たちは必死に反発するものの、当時本局の4割を占めたグレアム派がバックに最高評議会と三提督を背負っては抵抗できるものではない。
 最後の抵抗に海が本局を離れることで起こる防衛力の低下を挙げたが、『女王艦隊』の登場で即座に封殺されてしまう。

 こうして、改革後の時空管理局は本局、海、陸のトロイカ体制で運営されていくこととなる。

 この体制は10年後のエミヤズによる本局襲撃事件まで維持される。

 この事件で失墜した本局の権限を取り戻そうと海の旧権力者が暗躍するが、同時期に発生したほかの転生者が起こした事件で本局以上の無様を晒し、陸も根本的な対処はできなかったことで体制そのものは崩れることはなかった。

 が、『ザ・ワン』エミヤの弾劾。

『フン。これが世界を支配する組織か……第一管理局という名前が良くない。管理という言葉は支配とも取れる。自分たちが観測した世界は己が支配域とでも思っているのか強盗のごとき介入で併合をおこなうなどもっての外。なにが法の守護者か。まるで侵略者ではないか。それにロスト・ロギアに関しても合法だからと持ち主の意思を無視して持ち去るなど言語道断。悪法など法にあらず。最早こんな組織は存在に値しない最悪のものだ。最低だ。腐りきった膿みは丸ごと消去してやろう。感謝するがいい今ここで死ぬことを。世界を捻じ曲げずにすむのだ。それが貴様ら屑に許された唯一の権利だ』

 『sekkyou』スキルにより語られたそれは、サーヴァント・システムにより一定の洗脳耐性を備えていたにも関わらず、多くの局員を動揺させる。
 そして、どこかの誰かによりこの事件は全管理世界へ実況中継されたため、各管理世界住人の時空管理局への信頼を揺るがせるのに十分だった。

 これにタイミング悪く『百計の』ゼロの連続爆破テロ、『金色の』ギル・ディランに『無限剣』ロードリッヒ・セルバイアンが各世界で起こす事件の解決を海も陸も尽く失敗、管理局の威信は地に落ちる。

 かといって、各管理世界が単独でそれらをどうこうできる訳もない。

『新たな組織、いや管理局でもいいのだが、世界で我が物顔に事件を起こす犯罪者どうにかして欲しい!』

 当時の各管理世界住民の紛れもない本音である。

 そして、やはりというかここで主導権を握ったのはリーゼフラン・グレアムである。
 即座に幹部を招集して、局員の動揺を収めるために時空管理局を「全時空平和委員会」に改名する。

 同時に、エミヤズほか3名を『フリーダム』と呼称、『フリーダム』対策本部を立ち上げる。

 この時点での「全時空平和委員会」所属の転生者は15名。

・バラン・テスタロッサ(46)総合Sランク魔導師 ミッドチルダ行政府管理局顧問

・極東日昇(40)非戦闘員 最高評議会付き科学者

・カールライト・テスタロッサ(31)総合Sランク魔導師 首都航空隊司令

・リーゼフラン・グレアム(30)非戦闘員 査監部長

・リーゼエルザ・グレアム(30)総合SSランク魔導師 無限書庫長

・リーゼマリナ・グレアム(30)Sランク結界魔導師 情報部長

・謎野食通(なぞのたべみち)(30)陸戦SSランク魔導師 ゼスト隊副隊長

・ロベルト・パーティアス(28)SSSSランク結界魔導師 次元航行艦艦長

・レオン・T・スラッシャー(26)空戦SSランク魔導師 首都航空隊所属

・ウィンド(25)強い 査監官

・八神迅雷(24)魔力値SSSSS 査監部第5課課長

・プリンス・ツールフ(22)総合SSランク魔導師 執務官

・グラハム・イェーガー(22)空戦SSランク魔導師 教導官

・ウィリー・カタギリ(22)非戦闘員 本局技術研究部主任

・マイヤー・ディアーチェ(21)総合SSランク魔導師+ヴォルケンリッター 特別捜査官

 そして対『フリーダム』部隊のメンバーには、襲撃事件で死にかけたグラハム以上の戦闘力を持つことが条件とされた。
 よって、初期メンバーはウィンド、八神迅雷、プリンス・ツールフ、マイヤー・ディアーチェの4名。

 これに翌年入局したエーリヒ・ヨアヒム・ルーデルが加わる。

 新暦62年以降、民間からペンドラゴン、カウリ、ルミカ・シェベルが嘱託として参入する。
 カウリとルミカは共にDSAAのインターミドル・チャンピオンシップの世界チャンプ(カウリは54~62年まで9連覇、ルミカは63年度チャンプ)で、嘱託とはいえ全平和会への入局は多くのプロ格闘団体が涙を飲んだという。

 カーミィナル・ドーンは覚醒直後に己が能力で研究施設を破壊、したらしたで辺境の何もない場所で途方に暮れていたところをリーゼフランらに保護され、能力を鼻にかけわがまま放題に暮らしていた(貧乏スキルのためグレアム家から離れるという選択肢はなかった)が、15歳になった新暦64年に部隊に放り込まれている。
 (なお、後の『フリーダム』二強の一人リュウ・サカザキと、プリンスがライバル視している孫悟欽も嘱託で誘われたのだが、「俺より強い奴になら従おう」「オラ、もっと強ぇヤツと戦いてぇな」と断られている。この後、二人ともちょっとした事件をおこし、通常戦力では対処できないので『フリーダム』に数えられている)

 こうして現在に至る。
 
 この間、キラ・ヤマトが行動を開始、僅か1年で数百万人の負傷者を生み出し3つの管理世界を経済破綻に追い込むも、直接の死者は皆無。
 翌年の部隊員6人を投入した討伐作戦も失敗に終わり、キラに関しては65年のクラナガンの防衛戦まで自然災害扱いされることとなる。

 60年以降の全平和会所属の転生者は以下の通り。

・エーリヒ・ヨアヒム・ルーデル 空戦SSSSランク魔導師 武装隊所属

・ペンドラゴン 強い 嘱託

・カウリ 強い 嘱託

・ルミカ・シェベル SSランク結界魔導師 嘱託

・カーミィナル・ドーン SSSSSランク結界魔導師 嘱託

・ヘンリー・コールドウェル 空戦AAAランク魔導師 首都航空隊所属

・ミストナム・フライム 総合Sランク魔導師 嘱託

・カイト・ゴーダ 空戦Sランク魔導師 嘱託














      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆














「そうだな、ジェイル・スカリエッティのクローン元というのは可能かい?」

 転生の間に、一人の転生者の声が響く。

『可能だ。……40Pとしよう』

 ただし、強制的に出身はアルハザードとなるが。

 『神』の言葉に動揺することなく転生者は頷く。

「問題ない。それで、その場合のPは?」

『-1000P』

「それは、大盤振る舞いだ」

 なるほど、必ず滅びる=必ず死ぬ運命か。

 いや、しかしなんの問題もない。
 大嫌いなスカリエッティへの嫌がらせを考えに考えたのだ。

 何が嫌いか?
 ラスボスとして見た場合、そのキャラクターがその転生者にはどうしても受け入れられなかった。
 故に彼は転生するにあたって、スカリエッティへの嫌がらせをするためだけに第2の人生全てを費やす覚悟を決めたのだ。

 sts時間軸に転生し、原作より鮮やかに事件を解決することも考えた。
 が、頭上に輝く21の魂がある以上、他にも転生者がいるわけだ。それも相当数。
 であるならば、原作にこだわるのは危険とその転生者は判断する。

 ならば過去。

 他の転生者が思いもつかない時期に、ありとあらゆる手段でスカリエッティへの嫌がらせを敢行する。

「では、これに、これと……そうだ変におかしくなって世界を滅ぼすのは本位ではないな。ボケ防止のようなスキルはないか?」

『ふむ、では脳の劣化や老化、病気による痴呆などまとめて防止で250Pとしよう』

「おお、丁度いいな」

 案外この手の特殊スキルが記載されていなことに、まあそうだよなと変に納得しながら転生者は頷く。

「残りは60Pか……よし」

 しばし思考し、

「名前は、オーリシュデ・チューニーノ・ジャッキーガーンにしよう」

 ニッコリと笑みを浮かべ宣言する。

『……』

「オーリシュデ・チューニーノ・ジャッキーガーン。これで60P」

 宣言する。

『……わかった』

 『神』はしばし沈黙するが、どうでもいいかと許可を出す。

 自身がアレな名前になろうと構わない。
 本格的にスカリエッティへの嫌がらせのみに人生をかけていた。

「ああそうだ、先に戦闘機人より高性能なものを造っておいてあげよう」

 その転生者は最高の笑顔を浮かべ、転生した。







《転生者一覧が更新されました》






【オーリシュデ・チューニーノ・ジャッキーガーン】

年齢:死亡(/100歳)

・出身:アルハザード(-1000P)
・超天才(250P)
・製造:ロスト・ロギア(500P)
・製造:神器複製[限界突破]
・製造:神器創造[限界突破]
・ボケ防止(250P)
・スカリエッティのクローン元(40P)
・名前:オーリシュデチューニーノジャッキーガーン(60P)
【神器:無敵戦艦『キング・アルティメット・スーパー・ジャッキーガーン』】[限界突破]
【神器:神剣『ウルトラ・ハイパー・クリティカル・オーリシュデソード』】[限界突破]
【神器:神盾『グレート・スペシャル・エクセレント・チューニーノシールド』】[限界突破]

現在地:次元の狭間・アルハザード






【エメラルダ・カスティン】

年齢:死亡(/100歳)

・出身:古代ベルカ(-300P)
・総合SSランク魔導師(100P)
・総合SSSランク魔導師[限界突破]
・マルチタスクLv10(30P)
・魔法少女:呉キリカ(150P)
・容姿:超美形(100P)
・恋愛:イングヴァルト(20P)
【大殺界:停止】[限界突破]
【守護者:覇王】[限界突破]

現在地:虚数空間






【ローランド・バスターバルカン】

年齢:死亡(/100歳)

・出身:古代ベルカ(-300P)
・総合SSランク魔導師(100P)
・総合SSSランク魔導師[限界突破]
・マルチタスクLv10(30P)
・ARMS:ナイト・第一形態(250P)
・ARMS:ナイト・最終形態[限界突破]
・容姿:美形(20P)
【守護者:聖王】[限界突破]

現在地:虚数空間






 キラ・ヤマトという転生者から見ても常識外れの極限を目にした翌日、またしても頭のおかしい転生者が一覧に記載された。

 この世界ではアルハザードは普通に実在したようだ。
 どうも千年ほど前まで現在の管理世界以上の次元世界を支配していたらしいが、どうも不死者の法が大隆盛し件のオーリシュデさんに殲滅された上、次元の狭間に沈められたという話だ。

 この後、所謂古代ベルカ諸王時代に移行していくらしい。
 で、その時に話に出た聖覇の双騎士の名を聞いたら2名の転生者が一覧に追加される。

 これは、結構過去にいろいろやってる連中が他にもいるかもしれないなぁ。

『やはりオーリシュデは転生者か。歴史を変えたという点では間違いなくトップクラスに位置するな。なにせアルハザードをおとぎ話でなく現実の話にしているからな』

 リーゼフランさんは複雑そうな顔で言う。

「個人的にはオーリシュデの欄にある【神器】3つが気になるのですが?」

『ああ。それは気にしなくてもいいだろう。旧暦の462年にどれも消滅している。ちなみにそれをやったのが聖覇の双騎士、オリヴィエ聖王女の騎士ローランド・バスターバルカンと覇王イングヴァルトの騎士エメラルダ・カスティンの2人だ』

 2人とも聖王教会が公式に認める聖人だぞ、と彼女は苦笑する。

 あー、確かに2人とも下心まみれっぽいからなぁ。
 聖人とか言われてもピンとこない。

「で、その2人、イロイロ出来たんですか?」

『結論を言うと、出来なかった。どうも時代が微妙にずれていたらしく、オリヴィエ、イングヴァルト両名からは親や師匠のように見られていたようだ』

 まあ、そのへんは諸説あるがな、と彼女は言った。

 なんだかんだとPがそこまで高くないせいで、恋愛スキルはそこまで便利なもんではないらしい。

 リーゼフランさんから聞いたが、全平和会に所属している恋愛型の転生者は複数いるが、結構苦労しているらしい。
 なんだかんだ言っても相手のご機嫌取りは必要だし、本人は納得しても家族に認めさせるのにスキルは効果が発揮しないから、結婚するまで長引いた人もいるとのことだ。
 他にも転生者本人の要領が悪いせいで、恋愛対象にいいように振り回されているのもいるらしい。

 なかなか恋愛方面も大変なのだなぁ、とスキルを持たない僕は人ごとのように思う。

 後悔先に立たずとはよく言うけれどこの時、もう少しちゃんと考えていれば、6年後のゴタゴタはなんとかなったのだろうか?





『話は戻るが、オーリシュデは[限界突破]の神器関連より、造りに造ったロスト・ロギアの方が問題でな』

 実は夜天の書はコイツが原型を造った。
 しかも、同型のものがあと12個ある。

「そりゃまた、大変ですねぇ」

 なお、夜天の書のほか晴天・雨天・曇天・霧天・暗天・荒天・昼天・暁天・宵天・雪天・嵐天・曙天の全13冊、通称「天の書シリーズ」とか呼ばれているらしい。
 ちなみに残る12冊は無限書庫に眠っていらたらしく、現在は無限書庫の司書長になる条件が書のマスターになることが必須。
 なんか伝説の十二司書長とか妙な逸話がひとり歩きしているとか。

『他にも戦闘機人より強力な人造人間、パーフェクト・ソルジャーなんかも造っていてな』

 リーゼフランさんが極東氏と「サーヴァント・システム」を構築していたときに、ジェイル・スカリエッティがP・Sを再現しようとした戦闘機人計画があがってきたのだが、戦闘力(現在最大でSSランク、理論上SSSランク以上も可能vs今のところSランクが限界)・準備期間(今すぐできるvs最低1年欲しい)・準備資金(いらないvs最高評議会の機密費8割)全ての面で「S・S」に劣ったために最高評議会に「お前、思った以上につかえねぇな」と放逐されてしまったのだ。

 因みにパーフェクト・ソルジャーとはSSSランク戦闘魔導師に匹敵する人造人間で、古代ベルカの冥王の覇業に大いに貢献したらしいが、これも先の双騎士に殲滅されている。
 先の神器3種も冥王が所有しており、つまるところ冥王の覇業は転生者2名により頓挫したこととなる。

『で、ゆりかごもコイツが造った』

 よりによって100隻以上造ったとか記録にある。

 うわ、こんなのがクローン元とか、スカさん本気で涙目すぎる。

 そのスカリエッティであるが、放逐後かなりの期間消息不明であったが昨年史実通り、クイント・ナカジマがギンガとスバルを保護しており、どうやら折れることなく研究を続けていらしい。
 恐らく『フェアリー・ガーデン』に拾われたんだろう、とリーゼフランさんは言う。

 なるほど、僕は他の管理世界が秘密裏に囲ったのかと思ったが、パープル・エイトクラウドが例のアレだとするとそのくらいしても不思議じゃない。

 しかし、パープルさんは何がしたいんだろうな?

 閑話休題。

 ただ、ゆりかごは所謂「聖王のゆりかご」以外、冥王軍と諸王連合の最終決戦で『無敵戦艦』に尽く破壊されたとか。

 他にも、レリックやエクリプスウィルスにその特効薬、アルハザード滅亡の原因となる不死の秘法など世に出れば確実に騒動になりそうな研究成果を上げている。
 幸いなのはその大半がデータを搭載した『無敵戦艦』ごと消滅していることだが。

「要するに、この世界ロスト・ロギア関連は……」

『ああ、だいたいコイツのせいということになる』

 なんてことだ……





[28418] 16話 閑話みたいなもの
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/08/08 14:52

『さて、第二の人生はどうだったかね』

「……」

『いやいや、原作に関わりたくないと言ったのは君だろう』

「……!」

『まあ、そんなことはどうでもいい。君に貸した力の利子を払ってもらうとしよう』

「……」

『なあに大したことはない。君たちの感覚でほんの10年ほど、これまでの人生の後悔を振り返ってもらうだけだ』

「……! ……!」

『それは、聞かれていないからねえ。それに君が幽閉の身で過ごした二十数年に比べれば大したことはないだろう』

「……!」

『ふむ、君がそう思うのならそうなのだろうね』

「……」

『では、頑張ってくれたまえ』








《転生者一覧が更新されました》








【森元与平】New!

年齢:死亡(/100歳)New!

・運命:原作に絶対関わることはない(100P)New!

現在地:第九十七管理外世界New!









 キラ、オーリシュデのショックから数週間、衝撃冷めやらぬうちに夏休みに突入していた。

 その間、ゆきのさんは士郎父さんをどう説得したのやら、恭也兄さんや美由希姉さんと一緒に修業に精を出すようになった。
 ちなみに、僕ら三兄妹が御神流に触れていないのは、士郎父さんに才能なしと判断されたからである。

 まあ、まだ体幹が出来ていないってのもあったんだろうけど。
 取り敢えず僕も朝のランニングには付き合うだけはしている。勿論何kmも走れるわけでないので30分ほどだが。

 魔法の訓練は前に迅雷のオッサン、というか亡きエレノワールさんから教わった基礎の繰り返しに、ゆきのさんのExcavateが応用練習を考えてくれている。
 偶に一緒に訓練するのだが元々の魔力差はいかんともし難く、悔しいが一度も勝てたことはない。
 しかも、螺旋ゲージが全くたまっていない状態で、僕のシールドは面白いように撃ち抜かれた。
 改めて結界魔導師としてのユーノ・スクライアのスペックに畏敬を覚える。

 ゆきのさんのバリアジャケットは、基本はギル様の鎧を女性向けに改造した感じ(ぱっと見は色違いのセイバーに見えなくもない)

で、胸元の螺旋ゲージと赤いマフラーが原典からすると大きな違和感を感じさせる。
 僕はというと、聖祥の制服を少し軍服チックにした、例えるならクロノ・ハラオウンのバリアジャケットからトゲと手甲を外して色を白くした感じである。

 魔力色はゆきのさんが濃いピンクで、【天元突破】すると緑色。
 僕は薄白い青色である。

 個人的になんだかんだと楽しみにしていたリーゼフランさんとの通信は、何やら仕事がらみで忙しくなったらしく、週末に一度だけ30分ほどの通信を入れてくるだけになってしまった。
 僕的に素で話せる少ない話し相手なので少し寂しい。

 つまり、あちらにいる転生者たちとも顔合わせができなかったわけだが、ある日一覧が更新される。

 なんというか僕以上に後ろ向きな転生者だな、いや、だったな。
 丁度原作開始のこの年に寿命で死亡だろうか?

 少し気になった僕は翌日の新聞を確認したところ、確かに載っていた。

 御冥福をお祈りしたいところだが、多分無理だろう。
 スキルもない過去の日本人じゃ余程運が良くない限りどれだけ努力しようと、歴史改変などどうにもなるまい。
 まあ今だ小学3年の身、歴史の授業自体まだであるからひょっとしたらその内教科書に見るかもしれないが。

 取り敢えず、週末のリーゼフランさんからの通信の際に伝えておく。





『まあ、今までそんなタイプの転生者が居ない方が不思議だったわけだが。要は関わらない詐欺はあの神には通用せんというわけか』

 きっと、内心は関わる気満々でポーズだけ関わらないと言っていたのが、本気に取られて本当に関われない状況下で転生させられたのだろう、と彼女は推測した。

 確かにあのスキル取りだとルールブックを見ていないのは確定的に明らか。
 本気で原作無視で過去改変するならあれは無いわな。

『そうなると今年が終わるまでに、その森元氏と同じように一覧に載る転生者が複数出るかもしれんな』

 彼女の言葉に僕は頷く。
 その手の転生者が彼しかいないわけはないもんなぁ。
 まあ、管理世界の方なら幾分ましかもしれない。

『さて、話は変わるが……』

 丁度、夏休みになったことだし職場見学にでも来てはどうかとの提案を受けた。
 将来的に全平和会絡みの仕事を考えている僕としては断る理由もないので、士郎父さんたちに話しておく。

 ところが、この話がどう広がったのか、何故か海鳴組(家族含む)で1泊2日の全時空平和委員会本局見学ツアーと相成ってしまった。
 
 僕個人としては、向こうには迅雷のオッサンも居るし一人で問題ないと思ったのだが、士郎父さんたちはそう思わなかったらしい。

 しかも、ゆきのさんも全平和会への進路を考えていたらしいので余計就職先が気になったようだ。
 これがゆきのさんルートではやてとアリサに伝わり、二人とも、特にアリサがこれに食いついた。
 例の転校生ズの事件以降、本格的に全平和会への進路を考えているようだ。

 それにそれぞれの家族も士郎父さんたちと同じように全平和会という組織が気になったのだろう、子供だけでいかせるわけにはいかないと家族同伴を希望した。
 特にバニングス家は転生者絡みで長男が死んでるからなぁ。

 で、一応関係者と言えば関係者だし、月村のみなさんもハブるわけにはいかんと、去年の温泉行きの面子にユージンさんの変わりにアリサ父が入り、オッサンを除いたメンバーで見学ツアーをすることになった。

 何やら話が大きくなってしまった事をリーゼフランさんに詫びるが、問題ないと彼女はいつもの薄笑いの顔で答える。

『まあ、予想はしていたからな。日程はそちらに合わせるからそのままで結構、こちらに来てもらえばそれぞれの職場に連絡をとるだけで済むからな』

 うん、この人からすればメインはそうなるか。
 きっと、都合良くキラ戦みたいのが起こるんだろう。
 正直あの手のぶっ飛んだ転生者はお腹いっぱいなのだが。






 と、見学ツアーが決まって早1週間。

 現在AM10時。
 高町家、月村家、バニングス家、八神家の皆さんが海鳴の沿岸のゲート地点に集合している。
 この場所は原作的にも、僕個人としても因縁のある場所だ。

 そんなことを考えていると、ゲート地点が輝き、中から緑の髪の提督服を着た女性が猫耳っぽい使い魔の人を伴って現れた。

「お待たせいたしました。初めまして、私このたび皆様のご案内を務めさせていただきます、リンディ・ハラオウンと申します」

 こちらは使い魔のシルフ、と女性は丁寧に自己紹介する。

 実に久々に遭遇する原作の人物だ。
 というか、リンディさんに管理外世界からの見学者の引率をやらせるなんてリーゼフランさんも色々無茶をする。
 いや、原作と異なり提督とかではないのだろうか?

 保護者組が彼女と挨拶を交わしている最中、僕はそんなどうでもいいことを考えていた。

「本局までは6時間の航程です。なお今回のツアーの段取りは取り敢えずこちらのプランを考えてありますが、可能な限り皆様方の希望を聞くよう伺っておりますので」

 と、皆に態々紙製の旅のしおりを配る。

 それによると──。

 ・搭乗から30分ほど乗艦であるXV級大型次元航行船クラウディア及び全時空平和委員会の簡単な概要説明映画。

 ・30分の自由時間。

 ・再び60分の概要説明会。こちらはかなり突っ込んだ内容になるため参加は自由。参加しない場合は引き続き自由行動。

 ・昼食を含めた自由時間45分。

 ・最後の説明会。時間は休憩を含み75分。主に全時空平和委員会の前身、時空管理局設立から改名までの歴史の説明である。これも参加しない場合は自由行動。

 ・残る到着までの120分は自由行動。なお時差が5時間ほどあるらしいので年少組は軽く睡眠を取ることが推奨されている。

 この辺が本局につくまでの予定。
 因みに自由行動中艦内を移動する場合は案内役が付くとのこと。

 時差5時間でこっちより遅いとなると、今あちらは早朝の5時ごろか。

 僕は取り敢えず説明会は全部参加だなと決めた。










《転生者一覧が更新されました》










【プリンス・ツールフ】New!

年齢:27歳(/100歳)New!

・出身:スラム(-100P)New!
・サイヤ人:戦闘力100→3900(100P)[限界突破]New!
・総合SSランク魔導士(100P)New!

現在地:第97管理外世界New!









 クラウディアについた僕らを待っていたのは執務官服に身をつつんだ小柄な男、プリンス・ツールフ。
 僕らと同じく転生者だ。
 しかし、凄い名前だ。
 野菜じゃなくて果物か。
 そしてあの原典からの戦闘スキルだ。
 個人的にあれは非常に効率悪いと思った戦闘スキルの一つだ。

 彼は一通り定形通りの挨拶を交わすと、僕とゆきのさんにニヤリと笑う。

「おう、お前らのことは聞いているぞ。中々難儀したようだが、これも経験の内だな」

 そう言ってクハハハと高笑いし、ペシンとリンディさんに頭を叩かれた。

「ツールフ執務官、本艦の御客人に対してその態度はなんですか。いい大人が子供にする言葉じゃないでしょう」

「いや、貴様とて聞いているだろう! こいつらは所謂特別だ、同郷みたいなもんだから問題ないだろう!」

「ふぅ、いつも思うのですが貴方たちのそのシンパシーはどこから来るのやら。やはりフランが特別すぎるのかしら?」

「あの化物と一緒にするな!」

「……ほんと、貴方たちはフランが嫌いよねぇ。あんなにちっちゃくて可愛いのに」

 ガーと小男が唸るが、リンディさんには軽く流されている。
 フランってリーゼフランさんのことだよな?
 基本画面越しでバストショットなので背の高さはわからなかったが、低いのか。へぇー。
 というか、やっぱり冷たいのは転生者のみになのか。

 後でわかるのだが、彼女の態度は基本的に誰に対しても冷淡であまり変わらないらしい。
 特に転生者に対してはそれがあからさまで隠そうとしていない。
 そして、極一部の例外のみ愛嬌のある態度を見せているのだ。
 それがリンディさんらハラオウン家の人間であり、グレアム家の家族たちだ。

 と話がそれたが、二人が──原作を考えるとありえないが──コントみたいなやり取りを始めてしまったので、使い魔らしい紫髪の狐っぽい耳の優男が苦笑しながら、リンディさんの使い魔シルフと共に皆を会議室へと案内していく。

 ちなみにそれに気づいたリンディさんは直ぐにコントを止め、赤面しながら一行に加わった。

 ついでに、果物王子ことプリンス・ツールフ氏はムスッとしたまま自分に割り当てられた部屋へと戻っていった。
 どうも、クラウディアに乗艦している最大の理由は僕との顔合わせだったらしい。

 リーゼフランさん曰く。基本的に孫悟欽のストーカーが仕事なので、対『フリーダム』部隊の中では一番表の仕事を頑張っているとのこと。
何だかんだで執務官は忙しいのだ。
















      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

















 八神迅雷は姪の八神はやてが家族と共に本局の見学に来ると聞き、急遽第3管理世界ヴァイゼンへと飛んだ。

 表向きの理由は超S級次元犯罪者キラ・ヤマトの隠れ家を突き止めるためで、本音ははやてと顔を会わせたくないので逃げ出したのだ。

 首都にある支局のゲートポートから出た迅雷と使い魔のウィルは、普段着に着替え街に繰り出す。
 迅雷はいつも通りアロハシャツにジーンズで、ウィルは褐色の肌が映える白いワンピース・スカートに麦わら帽子をかぶっている。

「よろしかったのですか? きっと、はやてちゃんはマスターと会うのを楽しみにしていましたよ」

 今更であるが、ウィルが一言。

「俺だって会えるなら会いたいよ! あれ以来距離が近いんだよ! 我慢してんだよ! 大体、29のおっさんと9歳児とかありえんだろ、常識的に考えて!」

 うがー、と迅雷が吼える。

 基本的に生まれた時から知っているので冗談抜きで娘みたいなものなのだが、根本的に八神はやてが大好きなので理性が実に脆弱なのだ。
 本能が暴走したら止める自信がない。
 20歳差という完全に犯罪状態で手を出してしまう危険があった。

 だからこそ、態々この任務に自分をねじ込んだのだ。

「ユージンも妹の轡ぐらい握っておけってんだ……」

 そのはやてであるが、どうも末期状態のアリサに色々唆されているらしい。

 そのことを知り、亡き同胞に文句を言う。
 が、その相手も魂状態、言って聞かねばいかんともしようがない。

 首都のオフィス街を歩きながら、迅雷はブツブツと呟く。

『……マスター』

『ん、わかってる。ここに来た時から監視されてるな』

 通常の念話では傍受される危険があるので、接触念話で使い魔のウィルと情報確認。

 まだ生まれたばかりのウィルですら気づくほどに気配を隠していない。
 が、彼女のエリアサーチに引っかからない程度にはやるようだ。

(想定可能なうち、『フリーダム』の連中がつるむのはエミヤズ以外は考えられん。まあ、ゼロの野郎はないとは言えんがそれならウィンドの旦那から連絡がある。やはり『フェアリー・ガーデン』か。よりによってキラの奴と接触済みか……)

 現在、『フリーダム』に登録されている9名のうち、今回判明したキラ・ヤマトに加え、リュウ・サカザキ、孫悟欽以外は所在地不明である。
 エミヤズはsekkyouで一般社会に溶け込み、ゼロは今だ『黒の騎士団宣言』時以外姿を見せたことが無い程度に正体不明、残る2人は拠点を管理外世界に置いていると思われるため手が回らないのが現状だ。
(ギル・ディランとロードリッヒ・セルバイアンはあまり派手に動かないので優先順位は低い。ただし強さはギルは下位エミヤ2人より強く、ロードリッヒはエミヤ筆頭とほぼ互角)

 キラのスキルが判明した時点で全平和会側の転生者たちは無人世界に拠点を置いているのかと思ったが、高町勇治の一覧情報では普通に第3管理世界ヴァイゼンにいる。
 クラナガン襲撃以後もキラの襲撃は治まることはなかったが、そのいずれも最終的にヴァイゼンにいると記されている。
 が、スキルの構成上キラが普通の生活を送るのは難しいはずだ。
 何者か──無論転生者──による支援があるはず、というのがリーゼフランたちの見解だ。

 十中八九『フェアリー・ガーデン』だろうが、万が一別の組織という可能性もなきにしもあらず。
 海鳴にあれだけの転生者がいたのだ、今だ確認されない転生者が居てもおかしくないのがこの世界である。

 よってキラの攻撃をほぼ無効化できるカーミィナルか、死ににくいペンドラゴンのどちらかがここに派遣されることになっていたが迅雷が無理やりねじ込んだのだ。
 とはいえ限界突破によりカーミィナルの次に死ににくくなった迅雷である。
 リーゼフランも苦笑しながら許可を出した。

『一応安全を考えて郊外に出てから封時結界を展開、お前は外で待機。俺がやられたら即座に帰還しろ』

『……はい、マスター』

『ああ、そういえば勇治が来るんだったな。結界展開後は俺のC-3POからの映像を本局の姐さんに繋いでおけ』

 使い魔に確認を取りながら、迅雷は街の中心部から離れる。
 それを追う監視者は相変わらず気配を隠さず、しかし姿は一切見せないままであった。






「さてと」

 迅雷が足を止める。

 場所は郊外の閑散とした森林公園。
 今日が平日であるためか、人は殆どいない。

「ウィル」

「はい、魔力反応はマスターと私、監視者のみです」

 使い魔の言葉に頷く。

「ご武運を」

 同時に、彼女が魔方陣を足元に展開、半径500mの封時結界を張る。
 空間の位相がずれ、無人の空間に迅雷が一人立つ。
 監視者の気配は結界内にある。
 上手く取り込めたようだ。

「!」

 結界に閉じ込められたと気づいた監視者の殺気が爆発的に膨れ上がった。

「さて、どうする? 素直にキラの情報を話してくれるんなら対応を考えんでもないが」

 一応、迅雷は姿の見えない相手に勧告する。
 何らかの反応があれば儲けものだ。

「……」

 しかし数秒の沈黙の後、監視者は態々迅雷の正面からスゥっと姿を現した。

「……てめぇも、気合入ってんなぁ」

 その姿は一言で言えば異形であった。
 190cmの迅雷より頭一つ以上デカイ、その巨体はゴツイ筋肉質な体型でいかにも強者といったオーラを纏っている。
 体表は爬虫類にも似た鱗のようなものも見受けられる。
 特に異質なのは頭部だ。
 一見カニのような甲殻類を思わせる甲羅の様な頭頂部からケーブルにも見える髪のようなものが生えている。
 果たしてその表情はマスクに覆われ伺うことはできない。

 一言で言えば某宇宙の狩猟者である。

「……」

 狩猟者は無言で右手の鉤爪を迅雷に向け、構える。

「まあ、そうだよなぁ。来な!」















      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

















 僕たちが食堂で昼食をとっていると、果物王子が慌てた様子で飛び込んできた。

「高町勇治はいるか! って、食事中か……」

 幸いというか、僕は食事が早いの方なので丁度終わったところだが。

「いえ、終わったとこです。また変なのが来ましたか?」

 果物王子の慌てた様子に士郎父さんたちが僕を伺うが、問題ないことを告げておく。
 なんせ見るだけだ。
 まったくもって問題ない。

「話が早いな。まあ流石アレの肝いりか」

 化物とかアレとか、この果物王子は余程リーゼフランさんが嫌いらしい。
 まあ、あれだけ上から目線だ、嫌いな人はとことん嫌うだろう。

 こっちだ、と彼の案内で通信室へと向かう。
 最初の映像でも思ったが、やはりこのクラウディアでかいな。
 というか、なんでこの時期にXV級が就役しているのだろうか?

 そんなことを考えているうちに通信室に到着。
 中に入るといくつものモニタが展開されていた。

「あ、オッサン。と、なんだアレ……」








《転生者一覧が更新されました》








【ゲルカ】New!

年齢:79歳(/380歳)[限界突破]New!

・出身:何らかの研究施設(-200P)New!
・Sランク陸戦魔導師(25P)New!
・マルチタスクLv5(15P)New!
・防御魔法使用不可:→念能力(-750P)New!
・容姿:異形(-300P)New!
・女運:最悪(-150P)New!
・身長:230cm(20P)New!
・デバイス:インテリジェンス(40P)New!
・誰とも会話出来ない(-300P)New!
・超能力:ESP・書を守る者クローン級(300P)New!
・念能力:特定・メレオロン(1500P)New!
・貧乏Lv2(-100P)New! 
【生命吸収】[限界突破]New!

現在地:第3管理世界ヴァイゼンNew!





 迅雷のオッサンが戦っているのは異形の戦士であった。
 何かで見たことある気がするが、もう思い出せないなぁ。

 しかし、なんというか、スゴイな。

 モニタの向こうの戦場ではオッサンが大苦戦中である。

 ゲルカってのが結界中を飛び回りながら光の槍みたいのなので攻撃している。
 オッサンも反応できる分は手のひらの炎で消し飛ばしているのだが、ダメだと体に突き刺さっている。

 おかげで血まみれ、いや火まみれだ。

 しかしあれで全くダメージ受けてないように見えるのは凄いなぁ。

 ゲルカが近接しないのは多分右手の焦げあとが原因だろう。
 迂闊に飛び込んで、文字通り火傷したのだろう。

『どうだ?』

 と、忘れていたが別のモニタからリーゼフランさんが声をかけてくる。
 僕は情報を手短にまとめて送る。

 画面の彼女が眉を顰める。

 気持ちは非常によくわかる。
 実に厄介な転生者だ。
 純粋な強さはさほどでもないが、面倒くさい戦闘スキルを持っている。

 モニタを見る限り使っていないようだが、念能力でメレオロンはヤバイ。
 というか、あれは本体が殆ど戦闘力を持たないから許されてるようなもんだろうに。

 と、戦局が動いた!






「……」

 幾度目かの攻防を終え、狩猟者が大きく迅雷から距離をとった。

「おい、打ち止めか?」

 無論、そんなわけないことを確信して迅雷は問う。
 これまで何度か挑発するが、相手は一言も発してこない。

 厄介な相手だ。
 手の内も殆ど見せないし、情報を欠片もこぼさない。

「ん?」

 狩猟者が構えを解く。

 と同時に、その背後に赤いリボンにその両端を括られた空間の隙間が発生した。

「あん?」

 迅雷が驚く間もあればこそ、狩猟者はその隙間へと跳躍する。

 瞬く間の出来事であった。

 結界内に一人取り残された。
 先程までの気配も殺気ももう感じられない。

「逃がしたか……いや、見逃されたか?」

 そう独りごちる。

 しかし、あの狩猟者の姿は高町勇治が確認したはずだ。
 あのヘンテコな空間はあれの能力だろうか?

 迅雷はそんなことを考えながら、慌ただしく結界内に入ってきた使い魔のウィルに治療を任せる。

「しかし、お前も訓練では俺がどんだけ傷を負っても気にせんくせに、何だその顔は」

「グスッ、く、訓練と実戦は違います! マスターが死んじゃうかもしれないんですよ!」

 鼻水を垂らしながら涙を浮かべる使い魔を嗜める。
 一応、そんな形でも彼女は安堵しているのだが。

『戦闘終了早々で悪いが、任務は中止だ』

 と、上司からの通信が入る。

「中止とは?」

『キラの所在地が変わった。どうやら今のヤツは足止めが役目のようだ。まあ、キラの後ろにあるのが『フェアリー・ガーデン』と判明した。ついでに所属している転生者の能力も割れた、上々だよ』

 疑問符を浮かべる迅雷にリーゼフランが解説する。

「ならいいんですがね。ところで……」

 ふう、と息を付き迅雷が続きを言いあぐねる。

『ああ、直ぐに帰ってこなくてもいいぞ。具体的には明日いっぱいは』

 ニヤニヤしながらリーゼフランが告げる。

「感謝します」

 話のわかる上司に、迅雷は心底感謝した。





[28418] 17話 その頃、世界の裏側で
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/09/04 20:05



 新暦50年の管理局における大改革は、局の資金面を大幅に改善させた。

 具体的には聖王教会からの供出金が1位から30位以下に転げ落ちたぐらいである。

 理由もいたって簡単であった。
 そもそもかつて聖王教会が供出金1位であった理由は、

『言っちゃ悪いけど、おたくに金出すメリットがうちらの管理世界には少ないんだよね』

 これに尽きる。

 とはいえ管理局としてもそれまでの現状でいっぱいいっぱいであり、全管理世界の現状維持が限界である。
 そもそも人手が足りないのだ。
 故に各管理世界への対応が遅れるのは致し方なく、その結果各管理世界もお金を出すのを渋るという負のスパイラルであった。

 これを改善したのが「サーヴァント・システム」であり、次元航行艦隊の各管理世界駐留である。
 それまで艦隊派遣には、本局への連絡がなされてから派遣について検討されるというスパンがあったため、なんだかんだと手遅れな事態が数多く現出していた。
 さらに、現地警察より多少ましと揶揄されていた各地上本部が劇的な戦力向上が為されたために、目に見えて犯罪検挙率が上がり、それに伴い犯罪発生率も激減したのだ。

『これが維持できるんなら、こっちとしても金を出すのは吝かではないよ』

 各管理世界も頭痛の種である次元犯罪者やロスト・ロギア関連の事件が速やかに解決されるのであれば、その分管理局に金を落とすのは当然の帰結である。
 元々管理世界と括られている各世界は、古代ベルカ崩壊後の混乱を収束させた時空管理局の統治下に入ることで安寧を得たのだ。
 その後、マシにはなったがそれでも平和とは言い難い次元世界に備えはやはり必要だった。
 それが最低限で済むようになるというのだ、余剰金は各所に分配され、その行き先の一つが管理局へと流れてきたわけである。

 この予算の充実が海の艦隊新造をメインに各種設備や装備の改装を可能とし、反改革派の息の根を止めたのである。

 この時点で、史実と異なったことで損をした人間は時代の変遷についていけなかった海の元重鎮と、影響力が大きく低下した聖王教会の上層部ぐらいであった。

 最も、キラをはじめとした『フリーダム』の面々によりほぼ全ての管理世界の住民が不幸になってしまうのだが。





 さて、紆余曲折はあったものの現在管理世界は『フリーダム』、特にキラが動かなければ安定していると言えるだろう。
 が、その安定をもたらしたのはたった一人の転生者によるものといっても過言ではない。

 そう、全時空平和委員会の生ける魔力炉こと、リーゼフラン・グレアムその人である。

 ぶっちゃけ、彼女が死んだ時点で『女王艦隊』と「サーヴァント・システム」は瓦解する。
 体制の脆さは本来の管理局最高評議会の体制の比ではない。
 勿論、リーゼフラン本人もそんなことは承知である。

「そもそも私が死んだらというが基本的に本局にこもっている以上、それが起きるのは本局が崩壊するか、私が暗殺された時ぐらいだろう。その上、私が体制の要と知っているものは二桁も居ないというのに。それに、だ。『フリーダム』さえ処理できれば、私の寿命に従い半世紀以上はこの体制が維持できるのだぞ? 一体何が不満だ。……ああ、勿論私の死後のことは既に対処済みではあるがね」

 彼女は既に体制維持のため、自身の延命、というか己の無限の魔力をいかにして後世に残すか、恩人であり共犯者たる盟友の極東日昇と共に対策を立てていた。
 対処済みと、ドヤ顔で語ったものの、この案件が完全に解決したのは「フリーダム=ゾート事件」の8年後であるから何だかんだと手こずったことには違いない。

 方法としては単純であるが、先例があるインキュベーターによる魔法少女方式が選ばれた。
 乱暴にいえば、魂を頑丈な別の入れ物にぶち込んでおこうというものである。
 寿命の方も原典でソウルジェムが持つ限りなんとかなりそうな描写があったので、形式を似せればなんとかなるだろうという皮算用である。
 こんな方法、ギル・グレアムの為に命すら投げ捨てるリーゼフランでもなければ取れないだろう。
(因みに、この魔法少女システムはかなりのインチキ仕様だ。魔女・魔獣が存在しないためソウルジェムを浄化する必要がないシステムで、濁らないため魔女になったり円環の理に導かれたりはしない。その代わり、覚醒して魔法少女となったとき願いが叶ったりはしない。そのため比較的Pは少ないが、リリカル方式の魔法よりも効率が悪いなどのデメリットもある)

 問題点として、果たして魂の状態で現在のように魔力炉の代わりができるのか? という技術以上に根本的な問題があり、流石に全平和会に所属している転生者を実験台に使うわけにもいかず、この方式は最近まで優先上位に上がっていなかった。
 それでは何故この方式が選ばれたかというと、転生者カイ・スターゲイザーが生きたまま捕獲されたからである。

 拘束された後、麻酔で眠ったまま本局に移送された彼は、そのまま極東日昇のラボに運ばれ生きたまま彼の実験体となる。
 そして各種実験の結果、リンカーコアはどうやら魂に付属する器官であるということが判明した。
 最も、転生者のみに適応しているだけかもしれないのだが。
 この後、カイ・スターゲイザーは魂状態のまま17歳で寿命を迎えるまで、自称・狂気のマッドサイエンティスト、Dr.ファーイーストこと極東日昇による死なない程度の実験が繰り返されることとなる。

 他にも、ポイントオーバー型のデバイスは殆どロスト・ロギア級の代物ということなども判明した。
 カイの所有していたデバイス『スターゲイト』は現存するあらゆるデバイスを凌駕する性能で、その処理能力だけを見ても無限書庫──整理されている現状とはいえ──を運営可能だというのだからとんでもない。
 しかも本来の性質が『星間物質を取り込んで魔力に変換する』というものである。
 カイ本人のイメージ的にはSF的な宇宙船のようなものをデバイス化したためである。これが『神』の解釈によりわけのわからん性能となってしまった。
 その全性能を発揮すれば、カイの基本スペックだけでキラ・ヤマトにすら肉薄することも可能かもしれなかった。

 結局、持ち主が普通の高性能デバイスとしか認識しておらず、しかも優秀な人口知能を口うるさい教師のように感じた持ち主により最低限の受け答え以外の会話を禁じたため、持ち主はすべての可能性を失い、今では自ら何もできない哀れな実験体となってしまった。
 対照的に『スターゲイト』は持ち主が本人認識プロテクトすら施していなかったため、技研主任のウィリー・カタギリのもとへと送られ、新型デバイスのための各種実験を手伝うという充実した日々を送っていた。

 閑話休題──。

 カイの尊い犠牲(まだ生きて? はいるが)により、魂状態でも転生者としての存在が消えないことが判明した。
 続く、どの程度で寿命を超えることが可能なのはか今後の経過待ちであるが。

 現在、死亡した転生者を調査したところ、二種類の死に方が判明している。
 一つは遺体が残る場合であり、もう一つが光の粒子となって消える場合である。

 前者で判明しているのは過去組4人と山田三郎と森元与平だけであるが、間違いなく寿命で死んだからであろうと推測されている。
 なぜかと言えば、4人は既に歴史上の人物で確認のしようもないが、山田はスキルの関係上寿命以外で死に様がない。
 森元は日本人で新聞に100歳で死亡と明記されている以上、遺体が消えたらそれこそ大騒ぎだ。

 後者もふた通りの世界への影響があり、一つは文字通り初めから居なかったものとして扱われるもの、天鏡将院や転校生ズがそれにあたる。
 もう一つは遺体はないが、間違いなく周囲から死んだと認識されるものである。
 こちらはゾートとユージン・バニングスである。

 天鏡将院たちのほうは恐らくPオーバーが原因と思われるが、問題はゾートだ。
 Pオーバーしているのに『フリーダム』の『切り裂き』ゾートの死亡は、管理世界への数少ない朗報として伝わっている。

 この報告に、リーゼフランのみゾートが歴史改変を達成したからであろう事に気がついたが、この件に言及することはなく、原因不明で以後の例を待つということとなった。

 基本的にこの転生システムを知る3人はこの件を誰にも話していない。
 高町勇治は本能的に、リーゼフラン・グレアムとパープル・エイトクラウドは計算ずくで秘匿している。

 彼ら3人は何だかんだと情報を秘匿する。
 最も高町勇治は秘匿すべき情報とそうでない情報を区別する判断が甘く、そのせいで危機に陥ったりもしているが。















      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆













『しかし、ゲルカが転生者か。まあ、なんともなあ』

「ご存知で?」

『いや、全くご存知ない。が、情報を漁ったらすぐに出てきた。時空傭兵ゲルカ、時空管理局の設立前から次元世界各地で名を上げた猛者だな。誰もその素顔を知らず戦場の噂ともされた伝説の傭兵で、30年前にプッツリと姿を消したため死んだと思われていたらしい』

 リーゼフランさんの言葉を聞き、なるほどと頷く。
 30年前に名を聞かなくなればこの人が知る由もない。

「ところでこの人の居場所が未登録無人世界ってなってますが」

『これで居場所が分かればとも思ったが、そうそう上手くいくはずもないか。しかし秘境に『妖精郷』とは、まあ名付けたのはアイツだろうな』

 リーゼフランさんが苦笑する。
 今回のオッサンの戦いの時に出てきたスキマを見れば、知っている人はパープル・エイトクラウドがかのスキマ妖怪と分かるだろう。

 山田さんの時間を操る程度の能力が45000Pだった。
 はたして境界を操る程度の能力は如何程のものとなるだろう。

『しかし、問題は「フェアリー・ガーデン」がどの程度の組織という点だな。少なくとも未登録の無人世界を自由にできる程度には色々と余裕があるわけだが……場所はともかく、キラへの融通などどういった人脈と資金源を持っているのかが問題だな』

 僕はパープルさん個人が気になったが、この人にしてみれば組織の方が大問題だろう。

 と、資金源で思い出した。

「そういえば、ゆきののデバイスってどういう経緯で山田さんの手に渡ったか知ってます? 消えてないってことは少なくとも死んだ転生者関連のデバイスではないんでしょう?」

 一覧にも乗ってないし。

 ふと気になった僕がリーゼフランさんに尋ねる。

『ああ、あれは本来盗品なのだがね』

 予想外の言葉が返ってきた。
 なんと、盗品とは。

 リーゼフランさんによると、例のゾートが地球に来るまでの間に管理世界のデバイス取扱店から強奪したものらしい。
 そうなると、返品せねばならないのだろうか? そんな僕の疑問は続く言葉で解消される。

『基本的に『フリーダム』の連中がしでかした事件の被害は全平和会が保証する形になっている。だから高町ゆきののデバイス・Excavateに関しては心配する必要はない』

 とはいえ、キラのバカのおかげで保証云々も馬鹿にならないのだがね。

 リーゼフランさんはそう苦笑する。

 何だかんだで世話になっているし、ゆきのが宝物のように大事に扱っているのでExcavateを所有することに問題ないのであれば一安心である。
 それとは別に、何というかまた一つ全平和会に借りができてしまったなぁ、と感じてしまう僕であった。





 さて、リーゼフランさんとの通信を終え、食堂に戻ると既に皆も食事を終えていた模様。

 大体、保護者組、年長組、年少組に別れて雑談中だ。
 と、なのはとすずか嬢が何となく所在無さげに、ゆきのさんにアリサとはやてが何か話しているのを見ている。

 感覚としては、全く興味のないのに工場見学に付いてきてしまった夏休み中の小学生といったところか。
 大半の責任は僕にあるだろう。
 フォローできるかはわからんが、何もしないのも目覚めが悪い。

「なのは、月村。なんというか、ゴメン」

 取り敢えず、謝る。

「え?」

「いいよ、勇治君。もう関係ないとは言えないし」

 きょとんとするなのはに、こちらの意図を察したであろうすずか嬢。

「正直こんな大げさな事になるとは思わなかったんだ。二人が暇なら是非暇つぶしに利用して。役に立つかはわからないけど」

 現状で僕ができることなどこの程度だろう。
 なのはがうーんと首を傾げ、すずか嬢の目が妖しく瞬く。

 早まったか?

「じゃあさ、勇治君はなんでこの世界に来たのか教えてくれない?」

 いきなり核心を付いてくるすずか嬢。
 が、実は大した理由はないのだ。

「正直来るしかなかったと言える。断ったらその場で消滅しかねなかった」

「それは神様? 本当にそんなのがいるの?」

 普通に考えれば、敬遠な信徒でもなければこの現代で信じる人は少ないだろう。

「魔法があってさ、わけのわからない強さをもった人間がいて、幽霊みたいな存在がいるんだ。神様がいてもおかしくはないだろう?」

 その辺、月村なら信じられるだろう?
 そんな風なニュアンスを含めすずか嬢を見る。

「……そういうのも知ってるんだね。それなのに何の目的もなかったの?」

 またも僕の意図を察してくれたすずか嬢、話が早くて助かる。

「はっきり言うと、前世が本当にあったのか疑わしいぐらいに記憶がないんだ。気がついたら神様がいて、この世界に転生することになったんだ。ぶっちゃけると、高町の家に生まれたのも想定外でさ、だからゆきのとかと違ってまだ何をするか決まってないんだ。正直、未だに何をしたいかは決まってない」

 ここで嘘をつく意味はない。
 だから正直に答える。
 その答えにすずか嬢は呆れた顔で僕を見た。

「でも、ゆうくんはゆきちゃんと一緒で全平和会ってとこに行くんでしょう?」

 あれ? っとなのはが不思議そうに聞いてくる。

「うん。でも将来の就職先がほぼ決まっただけだろ? そこで何をするかとかを決めてないんだ」

 正直どこに配属されるかは薄々感づいてはいるが。
 その答えに、ふーんと納得したらしいなのはが何か思いついたのか、しばし沈黙する。

「……ねえ、ゆうくん。例えばだけど私もゆきちゃんみたいに魔法を使えたりはする?」

 少し口篭りながら、なのはも結構踏み込んだところを聞いてくる。

「……使える、と思う。まあ、正直オススメはしないよ。こっちの世界はこの前の連中が木っ端扱いの人外魔境だし、なのはじゃ多分中の下ってとこだと思う」

 あまり期待させるようなことは言うべきではないだろう。
 原作から比べると戦闘レベルのインフレが尋常ではない。
 ヴォルケンリッターを雑魚扱いできる化け物がウヨウヨしているのだ。

「ゆきちゃん、アリサちゃん、はやてちゃんは?」

 僕の評価に流石にムッときたのか、なのはがあちらの三人について聞いてくる。

「ゆきのは成長次第で最強クラスに成り得る。アリサは僕らみたいなのに対して絶対殺害権をもってるし、はやての素質はなのはより上だよ」

 僕から見た三人の評価を少しぼかして話す。
 それでもはやては中の中だろう、ヴォルケン抜きだと。

 むむむ、となのはが唸る。
 とはいえ、それほど興味をもったわけでもなかったのだろう、才能がないんじゃ仕方ないよね、とあっさり引き下がった。
 すまない、なのは。
 本来ならその才能は次元世界でも有数のものだが、この転生者があふれる世界では十把一絡げなんだ。

「それで肝心の勇治君は?」

 と、やはり僕自身の能力に聞かれるか。

「下の中が精々。但しこれは純粋に戦闘力としてはってコトだけど」

 第一、僕は文官志望だ。

 なのはが疑問符を浮かべながら僕を見る。

「さっき何をするか決まっていないとか行ったけど、何のために行くかは決まってるんだ」

 そう、未だ道は定まらず。されどすべきことは決まっている。

 なのはもすずか嬢が黙って続きを待つ。

「一つは保身。今言ったけど僕は相当弱い。けど何だかんだと命を狙われたりする立場だったりする」

 例の転校生ズのような連中が再び現れないとも限らない。

「だから全平和会に入るのは身の安全を考えてっていう一面もある。父さんたちが頼りにならないってわけじゃない、そもそも規格外の化け物が相手だ。だから、父さんやなのは、月村たちの安全を保証してもらうっていう理由も大きい」

 二度とアレはゴメンだ。
 ああ、リーゼフランさんや迅雷のオッサンの気持ちがよくわかる。
 大好きな人たちが不幸になるなんて、理不尽な目に合うなんて耐えられるものではない。

「私たちの為?」

 すずか嬢がムッとした顔で僕を見る。

「いや、だから一番は保身だよ」

 僕は臆病だからね。
 これも紛れもない本音だ。
 だから、そっちはついでということにしてくれないかな?
 その理由を第一にするのは恥ずかしいんだ。















      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆















「やっほー、マッキー! 調子はどう?」

 薄暗い研究室に底抜けに明るい声が響く。

「何か用かね? 同志パープル」

 それとは正反対の低く嗄れた声が面倒そうな口調を隠そうともせず疑問を投げかける。

 部屋の主はDr.マキシマ。
 秘密結社「フェアリー・ガーデン」の科学参謀を務める頭脳労働系転生者である。
 その容貌は年経た老科学者そのものだ。
 唯一常人から異なるとすれば、その皺だらけの額に埋め込まれた真紅の宝石のようなものが異彩を放っていることだろう。

 相対するのはその秘密結社の主宰、パープル・エイトクラウドその人だ。
 対照的に若々しく豊満な肉体に、妖しい色気を充満させてニコニコと胡散臭い笑みを浮かべている。

「スカちゃんの方はどうなってるかしら? どういうわけかキラくんの居場所が掴まれちゃったのよ。根本的な解決にはならないでしょうけど、四六時中追いかけられたら流石のキラくんも酷しいでしょうから、ちょっと援護とかしたいわけ」

「私の調整体は出さんのかね?」

「貴方の玩具はハイパーゾアノイド級じゃないと、スカちゃんのお人形さんにも勝てないじゃない」

 はっきりとモノを言う目の前の魔人にマキシマも苦笑する。
 確かに強さで言えば、原作以上の戦闘力をもつに至った戦闘機人たちにははるかに及ばない。だが彼の調整体の真価は普通の人間を改造できる点にあるのだ。
 そして、マキシマに対する絶対的忠誠心により反逆の可能性が限りなくゼロに近いのが最大の強みである。
 また、自身と同じゾアロードの調整も可能だがまったくもってする気はなかった。
 何せ反逆率が4割近い同格など信用できたものではない。
 その上、原型たるハルミカル・バルカスと異なり主たるアルカンフェルは存在しないのだ。
 己以外は全て下僕。全くもって問題ない。

 すでに各管理世界で少なくない数の住民が調整体へと改造されている。
 これが秘密裏に「フェアリー・ガーデン」が各管理世界に介入できる所以である。
 一応、念の為に全時空平和委員会関係者周辺には調整を施さないよう注意している。
 普通なら気づかれる恐れはほぼないが、普通じゃないのが転生者である。

 パープルは基本的にマキシマの調整体を管理世界のコントロールに当てているため、対全平和会への戦いに投入する気はなかった。

 基本的に荒事は時空傭兵のゲルカに任せきりであったが、今回のゲルカ・迅雷戦で薄々予想していたが全平和会側戦闘用員の転生者の戦闘力はやはり尋常ではない。
 あちらの転生者を殺さずに、手加減して事を済ますには彼らは強すぎる。

 斯様に暗躍しつつもパープルという転生者は、転生者同士の潰し合いを嫌う傾向にある。
 とはいっても、海鳴の転校生ズのような転生者をあえて助けるほどに徹底しているわけでもなかったが。

「過去に完全体が存在するためか原作よりは制作は早まっているようだな。既に6番目までロールアウトしている」

 研究室に上がってきた書類を彼女に渡しつつ、簡単な状況説明を行う。

「あら、もうセインちゃんが使えるんだ? 運用を考えるとドゥーエちゃんの次に使えるわよねー」

 とはいえ荒事ならばトーレが最も適しているであろう。
 スカリエッティ渾身の技術を込めた彼女は魔導師ランクで言えばSSSに肉薄するまでに至っている。
 限りなくオーリシュデ謹製のパーフェクト・ソルジャーに近いであろう。

 転生者オーリシュデの嫌がらせは、ジェイル・スカリエッティという人物を別人と見まごうまでに変質させた。
 どこか享楽的な一面は消え、あらゆる物事へ真摯な態度で挑むようになっている。

 かつては管理局改め全平和会、主に最高評議会とリーゼフランへの復讐で動いていたのだが、「フェアリー・ガーデン」に拾われ『怪物頭脳』や『浪漫天才』との邂逅を経て、濁った感情の大半は昇華するに至る。
 今ではオリジナルである万能の超天才オーリシュデ・チューニーノ・ジャッキーガーンをたとえ一点だろうと超える! との信念を胸に戦闘機人計画に没頭している。

「オリっちには感謝しないとねー。おかげでいいコマが手に入ったもの」

 次なる一手は、とパープルはニッコリ微笑んだ。

 次元世界をまたにかける秘密結社「フェアリー・ガーデン」を構成する転生者は3人しかいない。
 主宰:パープル・エイトクラウド、科学参謀:Dr.マキシマ、運営部長:ジョン・スミスとこれだけだ。
 傭兵のゲルカに外注のビアン・イーグレットを含めても5人だ。

 が、ジェイル・スカリエッティなどの原作キャラなども多数支援を受けており、その影響力は特定の管理外世界では全時空平和委員会を凌ぐ場合もある。
 その上でほぼすべての世界にひっそりと調整体が紛れ込んでいる。

「うふふ、もう直ぐ二大組織による冷戦構造が完成するわね。私の計算だとそれだけで100年は安定した状態が続くから、フランちゃんもきっと喜んでくれるわね、ウフフ」

 ニコニコとパープルが一人ごちる。
 何度目かのそれを聞くマキシマだが、あのリーゼフランが絶対喜ぶわけないと毎回思う。

 ゲルカの意思は不明だが、少なくともマキシマとスミスはパープルのこの思想に賛同してこの場にいるわけではない。
 それなのに同志呼ばわりするのは、口を開けば大事な仲間などと嘯くくせに一切真意を見せず自分勝手に行動するパープルへの嫌味を込めているからだ。

 マキシマは元々大日本帝国改変を狙って、密かに幕末・明治から歴史介入をしようとした時間犯罪型の転生者だ。
 上手く名を上げる直前にパープルにとっ捕まったのがケチの付け始めである。
 今だにそのことを根に持っているが、寝首を掻こうと機会を窺ったことなど過去の話。今では復讐する気力など既にない。
 そんな意志も萎えるほどにこの目の前の魔人は凶悪であった。

 そしてもう一人。
 この組織の表側、『ゆりかごから墓場まで、貴方の一生を見守る』が標榜の超巨大企業ウルトラ・スミス・カンパニー、その代表取締役を務める転生者ジョン・スミスは完全に金と己の企業のためだけに動いている。
 この男が無理やり加入させられた20年前から「フェアリー・ガーデン」は格段に活発化している。
 金の力は偉大であった。

 無理やり加入させられたジョンであるが、彼の会社がここ10年で急成長したのはマキシマの調整体を利用したことが非常に大きい。
 それまでも第3管理世界の超優良企業だったとはいえ、現在では全管理世界でその名を知らぬものは居ないとまで言われるまでに成長したのだ。
 WIN-WINの関係である。
 はっきり言ってジョン本人はパープルの思惑などどうでも良く、最近では『妖精郷』に立ち入ることすら稀である。 

「結局、管理局が原作で実は黒幕的な描かれ方をしたのは、対等の、もしくはそう思われるだけの対抗組織の不在が原因なのよ。敵がいないから世界最大の巨大組織に対抗出来るのは、実は根っこは同じってどうしてもマッチポンプことになるわ。ここだとキラくんが対等の敵にあたるかもしれないけど、やっぱり個人の力ではあれだし彼自身がそんな気じゃないしね。光だけでも闇だけでもダメなのよ。フランちゃんの全平和会が光となるなら、私たちが闇となればいいのだわ」

 ニコニコと笑顔の裏で策謀を張り巡らしながらパープルが呟く。

 しかしそれを耳にしたマキシマには、そもそもこの魔人がそんなことするだけに転生したとは到底思えないのだ。
 絶対に何か裏がある。
 何せこの組織をつくったのは全平和会になる前の管理局が設立される10年以上も前のことだ。

 されどその裏が何なのか……100年以上の付き合いになるマキシマにもまったく想像がつかなかった。






[28418] 18話 きっとターニングポイント
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/12/08 12:34


「ヴォラギノル卿……」

 ベルカ自治区聖王教会総本山、聖堂からかなり奥に入った位置にある聖遺物を安置してある部屋にて聖王の聖骸布を眺める男に暗闇から声がかけられる。
 一般人どころか、教会上層部ですら入室が制限されているこの部屋に男の許可なく入れる人物など一握りしかいない。

「貴様は、パープルの……インディゴだったか。何用か?」

 インディゴと呼ばれた、白と青の和服のような衣装を着た女性は『魔人』パープル・エイトクラウドの使い魔、インディゴ・エイトクラウドである。
 強力な使い魔だが、如何せん主が相当にアレであるので常に振り回されている。

 男は振り向きもせずに尋ねる。
 彼は聖王教会の第一枢機卿を任じられているジーニッファ・ヴォラギノルという転生者だ。

 現段階でミッドチルダに所在していながらリーゼフラン・グレアムに尻尾を掴まれていない稀有な転生者でもある。
 無論、怪しまれているが。

「主の言葉を伝えます。『ちょっと計画前倒しでやるわよ。聖王陛下の聖骸布、用意しておいてね~』とのことです」

 インディゴはいささか言いずらそうに、主からの伝言を目の前の男に伝える。

 相当に軽く、その上ふざけた内容であるにもかかわらず、ジーニッファはフムっと頷き、

「承知した。と、パープルには伝えておけ」

 肯定の言葉を返す。

「ハッ、ありがとうございます」

 内容が内容なだけに、簡単に受け入れたくれたこの転生者に感謝するインディゴ。
 そんな彼女に続けて言葉がかけられた。

「ところで、プレシア女史のプロジェクトFは影も形もないが、ヴィヴィオ嬢は問題なく誕生するのかね?」

 パープルの計画前倒しについてのジーニッファの純粋な疑問。
 原作において、聖王のクローン製造は最高評議会の指示で行われていたはずだ。
 その上、クローン技術はプロジェクトFを引き継いだプレシア・テスタロッサのものが使われていたと記憶している。

「はい、問題ないそうです。プロジェクトFこそありませんが、アルハザードの技術を幾らかスカリエッティ博士が復活させており、その中にジャッキーガーン謹製のクローン製造法があったそうです」

 疑問は簡単に明らかになる。
 所謂、だいたいあいつのせいである。

 特に秘匿する情報でもないのでインディゴは素直に答える。

「ほう、かのアルハザードの大天才の技術が」

 またしてもジャッキーガーンか……との内心の呆れを表に出さず、感心した風を装う。

(であるならば──)

 聖覇の双騎士のクローン体も製造可能なのでは?
 別段、世界の覇権云々を言うわけではないが、ジーニッファがこの地位に君臨している力の源である戦闘スキル『天罰術式』は転生者には効かないものだ。
 リーゼフランやパープルは迂闊な動きをしなければ問題なかろうが、『フリーダム』を筆頭とした話し合いの余地がない転生者のことを考えると身の安全を確保したい。

 カリム・グラシアら聖王教会上層部にすら絶大な権限を持つジーニッファであるが、こと転生者が相手では教会の騎士達では相手が悪い。
 現時点で『フリーダム』下位クラスの転生者に勝利しうる原作キャラは、リーゼフランが贔屓しまくるロッテとアリアぐらいのものである。将来的にはヴォルケンリッターがそのレベルまで達せそうではあるが。

 単純に絶望的なまでに魔力量が異なるのだ。

 故に、ジーニッファとしては自由に動かせる最低限SSSランクのベルカ騎士が欲しかったのだ。

「聖王以外でもクローンは可能か?」

 一応ダメ元で聞いておく。
 可能であればあの二人のクローンを作っておきたい。

「恐らく、可能かと」

 勿論、その人物の遺品は必要となりますが……。





「さて、如何したものかな……」

 パープルからの使いが去り、ジーニッファは一人呟く。

 元々ジーニッファが何もせずとも聖骸布はナンバーズのドゥーエが回収したはずだ。
 普通に考えればそれに二人の遺品をまとめればいいだけだ。

 とはいえ、現在聖王教会には彼以外にも2人の転生者がいる。

 ひとりは原作遵守派で現在の世界の有り様に憤っているが、もうひとりはリーゼフランの改革に迎合する原作介入派である。
 この2人が表で激しくヤリあってくれている御陰もあり、ジーニッファは限りなく存在を隠していられるのだが。

 遵守派である騎士ハーケンセイバー・ストライトは問題無いにしても、介入派の騎士ギーズ・ゴッドスペルはドゥーエの阻止行動を行う可能性があった。
 下手を打てば自分の正体をあの魔女に知られてしまう可能性もある以上、慎重にコトを勧める必要がある。

「時期が早まる以上、ギーズめの油断は誘える。……それだけでは弱いか? カリムを通じてミッドから離すか? 俺が直接やれば簡単だが……ここまで存在を隠したのだ、こんなことでスカリエッティ陣営と通じていることを欠片でも悟られては意味がない。やはり、ハーケンにそれとなくドゥーエを近づけるか……奴のことだ、深く考えずに自発的な協力をしてくれるだろう」

 斯様に陰謀を廻らせているジーニッファであるが、別段リーゼフランに対する敵意や対抗心はない。

 ただ、これ以上自分より上に誰かを置きたくないだけだ。

 苦労してこの地位まで上り詰めたのだ、まあパープルほどの化け物に見つかったのは諦められる。
 そもそもパープルと出会ったのは30年以上も昔の話、生きる残るためだけに生きていたガキの頃だ。
 それが今では次元世界に散らばる100億の信徒の頂点たる第一枢機卿……今更リーゼフランには従いたくはないのだ。

 取り敢えずの方針を決め、部屋から出る。

「ジーニ様……」

 と、部屋の外に待たせていた護衛の騎士二人の他に、シャッハ・ヌエラがいた。

「如何したシスター・シャッハ?」

 表向きカリスマ溢れる人格者として振舞っているジーニッファである、狙ったわけではなかったがカリムやシャッハたちから異様に頼りにされている。まあ、枢機卿の殆どが権力闘争に終始した俗物が多いのも原因の一つだろう。

 この世界の聖王教会は所謂原作よりも管理世界に対する影響が大きい。
 およそ500年前の継承戦争でオリヴィエ・ゼーゲブレヒトが戦死していないのと、『無敵戦艦』を有する冥王軍が戦争初期に原作で言われる質量兵器の駆除に成功しているため、本来消滅していたり、破棄された次元世界自体が多く残っているためである。
 特にオリヴィエは師のローランドが適当にでっち上げた『騎士道大原則』なる胡乱な教えを守り、悲劇の聖王女とかではなくガチで聖女と崇められる程に、戦後無辜の民を救いまくった結果、現在の区分で言う管理外世界にすら聖王教会は影響を及ぼしている。

 そのため、原作だとそこまで巨大ではなかったためにリベラルな気風であったのに対し、巨大組織ゆえの利権が複雑に絡み合い、それぞれの信仰を持った保守派、リベラル派が権力闘争に明け暮れ、特にここミッドチルダ極北地区ベルカ自治領の聖王教会本部は政争真っただ中の魔窟になっている。

 因みに、ジーニッファは中道派。
 そもそも信仰とは無縁の人間だ。
 別に神を信じないわけではない、というかジーニッファら転生者自体が『神』の奇跡の産物だ。
 ただ、『神』も結局は自分のことしか考えていないことを知っているだけだ。

 まあ、そのスタンスと能力も相成り緩衝材、調整弁としての、第一枢機卿なのであるが。

「はい、全時空平和委員会への理事官派遣についてなのですが……」

 どうやら、ハーケンセイバーを抱える第三枢機卿メイノス・マーファが全平和会への供出金の増大と発言権強化を題目に、信徒からの寄付の定額を上げようと言い出していらしい。
 本音はどうでもいいのだが、立場としてはそうはいくまい。

「反対しているのはスヴェーラトか……」

「はい、イスカ第二枢機卿がが強固に反対しています」

 リベラル派の第二枢機卿スヴェーラト・イスカとしては下手に信徒を刺激して教会離れを起こしたくないということだろう。
 後ろ盾であるグラシア家に並ぶベルカの名門、ゴッドスペル家のギーズの意向もあるのだろうが。

(厄介なことだ……とはいえ、俺が顔を出せば一言で決まる案件だ。だからこそ不在のうちに決めてしまおうという腹だろうが)

 現在、大まかに保守派、リベラル派に分かれる聖王教会であるが、中道派のジーニッファは派閥的なものを形成していない。
 一応、現状維持が一番マシと信じる面々、具体的にいえばカリムら若手の連中がグループ的なものを形成しているが、流石に政治力はまだ殆ど無い。
 ジーニッファ自身が後ろ盾を必要としていない為、大々的な協力関係ではないのだ(それなりに彼らの勉強会などには呼ばれているので、無関係というほどでもない)。

 何せカリスマ一発で大抵の案件は通せるし、潰せる。

 今回の案件もそれを恐れた保守派がジーニッファのいないところで、第一枢機卿の判断が要るほど重大な案件ではないとゴリ押しして、理事官派遣の人事を名目に関係ないことまで決めようとしているらしい。
 しかも、リベラル派にとって予期せぬ奇襲だったらしく、多数決に回られては勝ち目がないようで。

 それを憂いた立場的には中道派のカリムが、シャッハに第一枢機卿を連れてくるように秘密裏に命じたのだ。

「まあ、メイノスの言い分もわからんではないしな……」

 何だかんだで、昨今の聖王教会の全平和会への影響力低下は教会上層部に深刻な不安をもたらしている。
 バカバカしくも、『全時空平和委員会が聖王教会にとって変わろうとしている』という被害妄想としか言いようがない妄言を信じているものも多い。

(強引に押さえつけると、変なところで暴発しかねん危うさすらある。ある程度保守派に融通を効かせる必要があるか)

 自分たち転生者という異物が混ざり、混沌とした世界に思わず苦笑が浮かぶ。

(寄付の定額云々は無意味だな。そもそも供出金は各管理世界が本気で出していない状況に合わせて一番の金額だったのだ。宗教組織の集金能力を連中は過小評価でもしているのか? 現状でも無理のない範囲で10番目程度の金は簡単に用意できるのに……いや、其れに託けて自分たちの政治資金のプールが本命か……予算の供出金の割合を増やして保守派の被害妄想連中を切り崩すのが一番だな)

 シャッハの案内に従いながら、ジーニッファは今回の案件についての折衷案を思考する。

 彼、ジーニッファ・ヴォラギノルは絶対的なアドバンテージを持ちつつ、周囲に合わせた議論を交わす……そんな政治ごっこが大好きだった。
















      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆















 『金色の』の異名で呼ばれるギル・ディランという男は一言で言い表せば世紀末の人間だ。

 2mを超える鍛えられた巨人は見ただけで威圧感を放っている。
 その子供の胴体ほどもある腕はミッチリと筋肉が詰まっているのが見て取れる。
 一見精悍な顔つきだが、よく見るとどこかしら禍々しさを感じさせる。

 『フリーダム』驚異レベル第7位たる彼の犯罪歴は殺人を筆頭に強盗、公共物破壊など数えるのも疲れるほどだ。

(※驚異レベル=純粋な戦闘能力ではなく、犯罪者としての周囲への危険度)

 第1位:キラ・ヤマト        死者:0 負傷者:8000000以上
 第2位:ゼロ            死者:約1000 負傷者:100000以上
 第3位:エミヤ           死者:36019 負傷者:0
 第4位:エミヤ・シロウ       死者:10561 負傷者:0
 第5位:衛宮士郎          死者:10455 負傷者:0
 第6位:ロードリッヒ・セルバイアン 死者:5476 負傷者:80759
 第7位:ギル・ディラン       死者:10028 負傷者:1062
 第8位:孫悟欽           死者:0 負傷者:0
 第9位:リュウ・サカザキ      死者:0 負傷者:0

 ちなみに最多は無許可の転移魔法で次点が無許可の飛行魔法──この辺は他の『フリーダム』にも共通していることでもある。

 全時空平和委員会からの評価は、『推定魔力値3億、純粋な魔導師としてのレベルはSランク程度。近接格闘能力は『山羊座』カウリにわずかに劣るレベルだが、魔力反応のない魔法のような特殊な拳法を使う。どういう原理か不明だが危機感知能力が高く、対『フリーダム』部隊が投入される前に逃走してしまうため、現在まで交戦経験はなし』といったものだ。

 活動範囲も管理外世界が多く、特に全平和会の介入を拒む管理外世界に多く出没するため補足が極めて難しい人物である。
 これまでもその計算されたかの如き犯罪行為に、いく度となく局員が苦渋を味わっている。

 現在、全平和会の対『フリーダム』部隊は主に『スーパー・フリーダム』キラ・ヤマトの撃破プランにシフトしているため、『百計の』ゼロ以外の『フリーダム』メンバーに対する締め付けは意外と緩くなっていた。

 故に、油断があったのだろう。

 普段であれば近寄ることもなかった第2管理世界アイヤールへと足を運んだのは。






 その邂逅は偶然であった。

 現在、リーゼフラン・グレアムを筆頭とする『フリーダム』対策本部はキラ・ヤマトの討伐プランをメインに置き、一時的にではあるが他の驚異レベルの低い『フリーダム』メンバーに対する警戒をある程度解除していた。

 故に、グラハム・イェーガー率いる戦技教導隊が機動甲冑型デバイス「インフィニット・ストラトス」第三世代型の運用に第2管理世界アイヤールに赴いた裏に、リーゼフ
ランは一切関わっていない。

「何という僥倖! なんという廻り合せ! 天運とはかようにもなるものだな!」

 漆黒の「I・S」、『カスタムフラッグ』を身に纏ったグラハムが封時結界下においたギルを視界に置き、声を震わせる。
 芝居掛かった隊長の叫びを、ああまた変になった……これさえなければ、とゲンナリしながらも他9名の教導官は同色の『オーバーフラッグ』を纏い、油断なく主兵装のトライデント・ストライカーの非殺傷設定を解除する。
 勿論、その傍らには其々の使い魔が臨戦態勢で控えている。
 ちなみに、グラハムの使い魔は赤熊を素体とした戦闘特化の男性型使い魔で、名をサキガケという。





「チッ」

 相対するギルは、実に20もの敵対意思に囲まれながらも少しも怯んだ様子を見せない。
 とはいえ、見る者が見れば明らかにこの世界のモノでないことが簡単にわかる装備を持つ管理局の魔導師たち……一人テンションの高い男は確実に転生者であろう、と判断し舌打ちする。

 ギル自身が『元斗皇拳』とミッドチルダ式の魔法を組み合わせた、新元斗皇拳とでも言うべきであろう技はこの世界においてはほぼ完璧な初見殺しの秘技だ。
 それから考えれば連中のどこかで見たことのあるような装着型デバイスは、例のストライクフリーダム程でないにしろこの世界本来の魔導技術から隔絶したものと思うべきだ。

 で、あるならば様子見は不利になるだけ、真っ向から全力全開で突破するしかない。

「……コォオオオオ!」

 独特の息吹からギルの周囲に魔力とはまた異なった金色の闘気が溢れ出した。

 その状況下で飛行魔法を使用したのであろう、両手を側面に構えた状態で宙に浮き上がる。

「この状況下でも一切怯まぬか! 流石は一騎当千を謳われる『フリーダム』が『金色の』ギル・ディラン! あの者共への前哨戦としては申し分ない!」

 既に原型の欠片しかないグラハムが壮絶な笑を浮かべる。

 グラハムの脳裏に一瞬浮かぶのはかつての辛酸、エミヤズによってズタズタにされたプライドに虐殺された部下たち、そして炎上する本局の建物……さらにはリーゼフランから通達された戦力外の一言。
 執念で這い上がり、全くの偶然から得たこの邂逅に歓喜と怨念がまぜこぜになったドロドロの感情が魔力の迸りとなって漆黒の『カスタムフラッグ』が真紅に染まる。

「トランザム!」

 その雄叫びが開戦の合図となった。
















      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆














《転生者一覧が更新されました》







【ギル・ディラン】New!

年齢:死亡(/39歳)New! 

・魔力値:SS[限界突破]New!
・魔力値:SSS[限界突破]New!
・魔力値:SSSS[限界突破]New!
・空戦Sランク魔導師(50P)New!
・元斗皇拳(250P)New!

現在地:第2管理世界アイヤールNew!


 




 全時空平和委員会本局についた僕がはじめにすることは、リーゼフランさんに転生者ギル・ディラン氏の死亡報告を届けることであった。

 士郎父さんたちと分かれ、案内の使い魔の後について彼女が待つ部屋へと急ぐ。


「ああ、高町勇治か、ご苦労」

「……」

 無茶苦茶機嫌が悪いようだ。

 普段浮かべているうっすらとした笑みが消え、能面のような表情で机の上に浮かぶモニタに目を走らせている。

「チッ、サーヴァント・システムの弊害がここで出たか。とはいえ、これ以上使い魔へのマインドコントロールを露骨にすると局員どころか管理世界の魔導師全てから反発を喰らいかねん……」

 ブツブツと愚痴が口から溢れる。

 どうやら、先のギル・ディラン戦で何やらあったらしい。

 疑問詞を浮かべる僕に、いつの間にかに部屋にいた(これは僕が気付かなかっただけで来る前から居たらしい)リーゼマリナさんがいろいろ説明してくれた。

 僕がギル・ディランの死亡を知る1時間ほど前、全平和会所属の転生者グラハム・イェーガーさん率いる戦技教導隊が訓練先で、偶然『フリーダム』驚異レベル第7位『金色の』ギル・ディランと遭遇したとのこと。
 そのまま戦闘になだれ込み、なんとかギル・ディランを討ち取ったものの、教導隊から二名の死者を出してしまったということだ。

 この報告を受けリーゼフランさんがキレた。

 基本的にこの人は、転生者<<超えられない壁<<この世界の住人、という思考の持ち主だ。
 そのため、むざむざ部下を死なせてしまったグラハムさんに対し怒り心頭だったらしい。
 勿論、リーゼフランさんの思考はともかく、全平和会いや管理世界的に見れば僅か二名の死者のみに抑えたグラハムさんの手腕は賞賛ものだ。なにせ相手は殺人総数5桁の真正である。
 最もグラハムさん本人もリーゼフランさんとベクトルは異なるものの、部下を死なせたことを大いに嘆いているのだが。

 そして今、リーゼフランさんが僕を呼んだにもかかわらずこんな有様なのは、先程上がってきた戦闘レポートに死者のうち一人が使い魔をかばって死んだという報告があったことだ。

 リーゼフランさんが構築した「サーヴァント・システム」は第一に旧管理局の人手不足を解消すると共に、どうしても避けられない人的損害を使い魔に当てることで局員の保全を確保するという面も持つ。
 が、なまじ人とほぼ変わりがなく主に忠実な使い魔に、いれこんでしまっている局員は少なくない。

 今回、そんな局員であった教導官が自分を庇った使い魔をわざわざ射線から退かして、自己満足気味に死亡してしまったのだ。
 本末転倒である。
 しかも、魔力源はリーゼフランさんでも通常と同じく使い魔の命は主と共有されているため、その使い魔は結局死んでいるので無駄死にでもある。
 
「まぁ、全てがこっちの思い通りにいくわけなんて無いんだけどね。それでも予想外の事態が起こると、その対策は考えられなかったのか? ってなっちゃうのよ、姉さん。マジメだから」

 そう言って、いつもの軽薄そうな笑顔ではなく心配そうな顔で彼女は姉を見る。

 軍師孔明の罠、というかスキル上所有者の思考外の成否判定はどうしようもない問題だ。
 それでも100%を望むのがリーゼフランさんなのだとうのことは、付き合いの短い僕にも理解できた。

 そして、僕はうなずきながらも、恭也兄さんと大体同じところに顔がある長身のリーゼマリナさんと、座っているためこちら側からだと顔しか見えないリーゼフランさんの身長に改めて戦くのであった。





「ああ、丁度いいや。姉さんがこんなだし、君の将来の同僚たちと顔合わせをしておきましょう」

 と、現状の説明が終わっても一人の世界に入っているリーゼフランさんの様子に、リーゼマリナさんが気を利かせてくれたのか案内役を買って出てくれた。
 非常に助かるのだが、情報部長がする仕事ではないと思う。暇なのだろうか?

 顔に出ていたのだろう、彼女は現在僕と話しながらも直接承認が必要な案件以外の処理を同時進行していることサラリと語る。

「基本的に転生者ってのはマルチタスクを軽視しすぎなのよ。君もわかると思うけど、有ると無いとでは雲泥でしょ?」

 彼女の言う通り、スキル『マルチタスク』は非常に便利なスキルだ。
 僕のLv5で常人に比べ相当のアドバンテージを持てると思う。
 並列した思考を6本走らせることができるのだ。例えれば、宿題をしながらその日の復習と翌日の予習、リーゼフランさんに提出する資料の作成に、ゆきのさんのデバイス

・Excavateからだされた修行プランをこなしながら、この先どうなるんだろうとどうでもいいことを考えたりできるのだ。

 それでも今現在彼女が行なっているような事柄は簡単にできることではないが。

 なお、このスキルを取らない魔導師タイプは基本的にデュエルタスクになる。

 戦闘面における重要さは、例えば同レベルの魔導師が対峙した場合、完全なミラーマッチだとすればタスク数が勝負を決める要因になる。

「……あまり戦闘には関係ないですけどね」

 逆を言えば、そうでもないとそこまで勝負を決める要因には成り得ないのだ。

「えっ? 何で戦闘の話になるの?」

 いかん、思考が逸れた。

 まあ、内勤にしてみればこれほどありがたい技能もあるまい。
 ユーノ・スクライアの成し得たことを考えれば言わずもがな、この世界でリーゼエルザさんがLv5000というキチガイじみたタスク数で無限書庫を稼働状態まで持っていったのも宜なるかな。
 そういえばユーノと言えば、彼の功績たる無限書庫の運用が無くなってしまったわけだが、どうしているのだろう?
 少し前に迅雷のオッサンから友人と一緒にまだ学院通いと聞いたが。

「いえ、変なことを言ってすみません。ところで、ユーノ・スクライアの現状を聞きたいのですが?」

 と、僕が口にしたところでリーゼマリナさんがいきなりニヨニヨとしだした。
 なんだろう?

 残念ながらそのまま笑みを浮かべたままリーゼマリナさんは歩き続ける。

 これは恐らくユーノ絡みで何らかの転生者がいるということではなかろうか?
 既にユーノがジュエルシードに関わっていないくさいことが判明している。
 となると、既に恋人ポジションか兄貴分ポジションに転生者がいると言うことでは?
 そう考えるとゆきのさんの迂闊さが浮き彫りになるな。
 まあ、今のところユーノへの想いは断ち切ったと言っているが。

 そんなことを考えながら彼女の後に続く。

「ここが、当面キミの職場となる無限書庫よ」

 そう、笑顔で扉を開けるリーゼマリナさん。

「……」

 うん。まぁ、予想しないでもなかった。

 だが、しかし。
 この状況下で僕がココで働く意味はあるのだろうか?

「なんでココ? と思ってそうだけど、理由はきちんとあるのよ?」

 やはり僕はわかりやすい人間なのであろうか?
 質問の前に回答が来るのがこれだけ続くとそう思わざるを得ない。

「一つは新人教育にはもってこいの部署であること」

 鼻息の洗い新人局員を凹ますにはもってこいの職場らしい……。
 ちなみに転生者は例外なくココの一番キツいコースに送られるとのこと。

「次にこの部署だとその人物がもっている資質が実にわかりやすく浮き出ること」

 三日持たなければそいつは局員の資格はないとか。
 かのドーン氏も一週間は持ったという。
 果たしてかつての量産型連中であればどうだったろうか?

「──最後に、ココが本局でも有数の戦力を保持しているからよ」

 僕がそんな他愛もないことを考えているうちに、他にいくつかの理由を話したリーゼマリナさんはそう締めくくる。

 一瞬疑問符が頭に浮かぶが、直ぐに何時ぞやの話を思い出す。

「……夜天をのぞく12冊の天の書、ですか」

 僕の言葉に彼女が苦笑を浮かべる。

「そう、12人の書の主に付き従う12の管制人格、68騎の古代ベルカの高レベル魔導師、いえ騎士ね。これに使い魔が別枠で付くからね。一つの部署にこれだけの戦力が揃っているのは流石にココだけよ」

 それは恐ろしい……。




「さて、先程の質問の答えね」

 と、リーゼマリナさんが書庫内に向かって声をかける。

「スクライアの5人組ー。ごめんなさいね、子守をお願いしたいの」

 ……まあ、9歳ですしね。
 って、答え?

 と、僕がはて? と首を傾げているうちに5の少年少女たちが集まってくる。
 そのうち一人は見覚えがあった。

「お呼びでしょうか、グレアム情報部長?」

 彼らを代表してか、見覚えのある蜂蜜色の柔らかそうな髪の毛の美少年が質問する。

 ユーノ・スクライアその人である。

 うん、驚いた。
 唖然として彼女を見るとしてやったりと言いたげな笑みを浮かている。

「うん、お呼びよスクライアの皆。面倒で悪いけど職場見学の案内をお願い。連れてきた以上私がするのが道理なんだけど、この子も同年代のほうが何かと聴きやすいでしょう?」

 実に傍若無人なお願いに、構いませんよとあっさり承諾するユーノくん。
 ホンマええ人である。

「と、勝手に受けちゃったけど、問題ないよね?」

 そう、後ろに控える4人のスクライアの同郷たち──まあ、一覧を見るまでもなく転生者なんですが──は僕を見てそれぞれの反応をしながら問題なしと頷いた。

「勿論、問題ないさ。なあ?」

 と、爽やかに笑みを浮かべる短い黒髪の少年。

「……」

 その少年に隠れるようにしながらもオドオドと頷く、こちらは腰まで届く黒髪の少女。

「もち、オッケー」

 あっけらかんと、妙にバカっぽいオーラを放つ銀髪の中に一房の赤毛を垂らす少年。

「ユーノの言うことに反対するわけないよー」

 アハハと、何も考えていないような笑顔を浮かべる長い紫髪をポニーテールにして纏めている少女。

 彼ら4人の答えにホッとした表情を浮かべ、

「よろしく。僕はユーノ、ユーノ・スクライア。君は?」

 僕に向かって右手を差し出す。

 コレまでの流れは非常に不意打ちであった。

「こ、こちらこそよりょひく……高町勇治です」

 か、噛んだ……。

 ハズい……。

 多分、僕は顔を真っ赤にしながらユーノと握手をしているのだろう。
 とてもではないが顔を上げられない。
 リーゼマリナさんにスクライアの転生者たちのニヤケ顔、ユーノの困ったような笑顔を簡単に想像できる。

 ウゴゴ、ナズェコンナコドニィ……。








《転生者一覧が更新されました》








【ミース・スクライア】New!

年齢9歳(/100歳)New!

・出身:スクライア一族(10P)New!
・Sランク結界魔導師(25P)New!
・マルチタスクLv5(15P)New!
・秀才(30P)New!
・美形(20P)New!

現在地:次元空間・全時空平和委員会本局New!




【ラーナ・スクライア】New!

年齢9歳(/100歳)New!

・出身:スクライア一族(10P)New!
・SSSランク結界魔導師(150P)New!
・マルチタスクLv5(15P)New!
・デバイス:フォルセティ(5P)New!
・美形(20P)New!
・人見知り(-100P)New!

現在地:次元空間・全時空平和委員会本局New!




【アーク・スクライア】New!

年齢9歳(/100歳)New!

・出身:スクライア一族(10P)New!
・SSランク結界魔導師(50P)New!
・美形(20P)New!
・頭髪:銀髪+赤毛(10P)New!
・虹彩異色症:金+青(10P)New!

現在地:次元空間・全時空平和委員会本局New!




【フーカ・スクライア】New!

年齢9歳(/100歳)New!

・出身:スクライア一族(10P)New!
・SSランク結界魔導師(50P)New!
・美形(20P)New!
・金運:良い(20P)New!

現在地:次元空間・全時空平和委員会本局New!







 これが、後に全次元世界が戦く悪名高き全時空平和委員会庶務室の主要メンバーが顔を合わせた瞬間であった。






[28418] 19話 嵐の前の静けさ
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2011/12/30 18:46



 僕が非常に恥ずかしい自己紹介をしてから2時間後。

 図らずとも笑いが取れたこともあって、あっという間に打ち解けたユーノと転生者4人組から雑談混じりに無限書庫の案内を受けて
いると、ちっちゃいリーゼフランさんがお供を連れてやってきた。
 途端に表情がこわばる4人。

 しかし、改めて背が低いなリーゼフランさん。
 僕はなんだかんだでスキルの御陰か、この年齢では背が高い方(140近い)だ。
 ユーノを含めたこの面子で一番背が高い。

 そしてリーゼフランさんであるが、この中で一番背の低いラーナ嬢とトントン……。

 35歳とは一体、ウゴゴ……。

「ユーノ・スクライア、とそのシモベたち。手間をかけさせたようだな、礼を言う」

 と、彼女に伴ってやってきたリーゼエルザさんの魔方陣に乗ってこちらに近づくと、開口一番ぺこりと頭を下げる。

 ユーノは4人を見下した物言いに少し眉をひそめるが、大したことは、と言葉少なく返事をする。
 シノベ扱いされた4人はというと、何やら様子がおかしい。
 皆が皆、信じられないものを見たといった表情を浮かべている。

 後に聞くのだが、彼ら4人がリーゼフランさんが頭を下げる瞬間を見た最初で最後の場面だったようだ。

「高町勇治、ここが貴様の初めの仕事場になる。まあ、言うまでもないが励むといい」

 続く言葉にポカンと口をあける4人。
 どうも転生者に激励の言葉をかけるのは滅多にないという。

 当たり前だが、この時の僕はそんなことは知らない。
 その上、海鳴組の転生者以外とはほとんど顔を合わせないから僕にとって数少ない本音トークができる相手である。
 さらに、通信とはいえ結構気安く話したりしていたので全平和会入した後、この人の裏と表の結構なギャップに驚くことになる。

 この後も、30分ほどユーノたちに案内を続けてもらったが、ここの書庫長であるリーゼエルザさんから閉館時間(一般開放時間の終了)が迫っていると告げられたので、名残惜しいながらも彼らに別れを告げる。
 ここが地球なら携帯番号にメアドを交換して後で連絡を~となるが、ここは生憎管理世界。
 管理外世界との通話は基本的に許可がなければ不可能だ。
 まあ、運が良ければ明日も会えるかもしれないし、僕がここに入ったら会うのは難しい話ではない。

 僕も聞きたいことがあったし、彼らも聞きたいことがあっただろうがまたの機会を楽しみにしよう。
 再開の約束をし、僕は無限書庫を後にした。

 引き続きの本局案内役はリーゼフランさんである。
 しかし、情報部長に引き続き査監部長直々の案内とは……プ、プレシャーが……。
 それでもここに就職したらこれが当たり前の日常になるかもしれないのだ、今のうちから慣れておかないと……。

 当然、高町勇治の心境など気にするはずもなく、リーゼフラン・グレアムはスタスタと先を進む。
 そんな彼女を彼が慌てて追いかけるのが数年後の本局の日常となるのだが、まだ誰も知る芳もなかった。
 






 リーゼフランさんに連れられ、本局の廊下を歩く。

 一般向けの本局案内のデータを貰ったので、覚えている限りの原作での本局と照らし合わせてみたりもしたが、残念ながらそれっぽいところは通らなかったのでいまいちよくわからなかった。

 そんなことをしているうちに前を歩く彼女の足が止まる。
 同じように足を止め、彼女が向きを変えた方を向く。

 ミッドチルダ語で『未来秘密工房』とある。

 なんぞ?

「ここの主がいつぞや話した私の恩人だ」

 と、苦笑を浮かべ扉の端末を操作するリーゼフランさん。
 僕が部屋の名前について質問しようか迷っている間に彼女は扉を開け中に入ってしまった。

「日昇、入るぞ」

 手招きされ、僕もそれに続く。

 部屋の中は一見、原作のA's編でレイジングハートとバルディッシュの修復・改造時の部屋に似ている。
 勿論広さはその比ではなく、巨大な機材が所狭しと並んでいる。
 かなり奥行はありそうだが機材に邪魔され奥まではどれも見えない。
 床にはところどころ何かの部品が散乱したりしていて、なんともゴチャっとした印象を受ける。

「日昇、いないのか?」

 部屋の中からは返事がないが、彼女は構わず奥へと進む。
 僕はどうしたものかと入口付近で佇んでいたが、不意に右肩を掴まれる。

「うわっ!」

 慌てて振り向くと、まず白衣が目に入った。
 視界を上に向けると、

「……ロー〇ン?」

 穴のあいたビニール袋を頭にかぶった不審人物がそこに居た。

「どうした? と、日昇か」

 どうやらこの不審人物が件の極東日昇氏らしい。
 僕は驚きのあまり唖然としたままこの不審者を見上げる。
 不審者は僕とリーゼフランさんを穴から覗く目で交互に見たあと、器用にもビニール袋が吸いつかないように大きく息を吸い込み、

「ドォ~クタ~! ファー!! イィ~ストゥッ!!!」

 叫んだ。

 とんでもない大声で。

「日昇、うるさい」

 いつものことだというのか、呆れたような声が背中から聞こえた。







《転生者一覧が更新されました》







【極東日昇】New!

年齢:45歳(/100歳)New!

・覚醒:+5歳(-50P)New!
・出身:何らかの研究施設(-200P)New!
・魔力値:AAA(10P)New!
・総合Aランク魔導師(5P)New!
・マルチタスクLv5(15P)New!
・超天才(250P)New!
・魔法技能開発Lv1→10(50P)[限界突破]New!
【未来秘密工房】[限界突破]New!
・名前:極東日昇(20P)New!

現在地:次元空間・全時空平和委員会本局New!






 なお、日昇さんがビニール袋をかぶっている理由は何もなかった。
 スキルにそのへんのマイナススキルはなかったので、研究所での実験で何かの傷跡がとかあるのかと思ったが、あっさり袋をとって

見せてくれた上普通にモブっぽい中年のおっさんの顔である。

 僕に顔を見せたらまたかぶる。

 彼が言うには「カッコイイだろう!!!(ギャキイ!!)」と言うことだが、確実にセンスがおかしい。
 リーゼフランさんは気にならないのかどうでもいいのか、何も言わない。

 なんだこれは? 僕がおかしいのか?

「ほうほう、コレが吾輩のステータスかね」

 リーゼフランさん経由で自身のステータスを確認した日昇さんがふんふむと頷いている。

 因みに、当たり前のことだが転生者は自分のステータスを確認することはできない。
 あの『神』なら『君は前世において自身のステータスを確認することなどできたのかね』とか平然と言ってくるだろう。
 もちろん一覧を所有している僕自身、自分のステータスは確認できない。

「しかし、【未来秘密工房】が[限界突破]とはな……いつも通りのイカレたセンスと思って見逃していたか」

「まあ、言われてみれば納得のコトだがね。ここでの実験が今まで一度も失敗したことがないと考えれば、何らかの補正が無い方がおかしいわけだね」

 2人はそんな会話をしていたのだが、僕はそんなことなどそっちのけで部屋の奥に鎮座している巨大な冷蔵庫に目を取られていた。

 何しろ、デカイ。
 業務用の冷蔵庫を倍ぐらいにした大きさだ。

 そして……羽が生えている。
 神々しさすら感じる6枚の漆黒の翼が微動だにせず、どこかしら本体(?)の冷蔵庫を守護しているかのようにも見える。
 訳が分からない。

 ナンダコレ……。

「おや? それに目をつけるとは中々わかっているねぇ」

 唖然としていた僕に気づいたらしい日昇さんがクククと笑いながら冷蔵庫に近づく。

「これぞ、吾輩が誇る世紀の大発明! ハイパー・ファーイースト究極メカ38號ッッ!! その名も、『カイ蔵庫』!!!」

 そして叫ぶ。
 その長身を左右に振り回しながら、叫ぶ。

「オ~~~~プンッ、ゲェーット!!」

『yes,2nd owner』

 デバイス特有の人口音声と共に、冷蔵庫の、いや『カイ蔵庫』の扉がプシューと音を立てて開く。

 演出か、純粋に温度差の為か吹き出た白煙が晴れると中には、どこかで見たことのある卵型の宝石のようなものが安置されていた。

「勇治は久しぶりだろう。それがカイ・スターゲイザーだ」

 リーゼフランさんが何の感慨もないように言った。

 ……なんと哀れにも、転生者カイ・スターゲイザーはソウル・ジェムと化していた。
 しかも、ゾンビ化した肉体は魂だけで現界できるかどうかの実験のため問答無用で焼却処理されているという。
 実験は成功し、カイ・スターゲイザーは魂だけの存在となりここで眠りについている。
 そう、寿命を迎えるそのときまで、この狂気のマッドサイエンティストの実験台となり続けるのだろう。

 因みに、所持デバイスの「スターゲイト」さんは消滅に備えて機能の分析と、記録データを保存を行っており、主人に付き合う気は更々ないようであった。






 カイ・スターゲイザーの末路に1秒ほど涙した僕であったが、程なくリーゼフランさんから本題を切り出される。

 すなわち、残る全平和会の転生者11名のステータス確認のお仕事である。

「……リンク開始。ミサ、アドルフ、ローラシア、ミケ、ミカヅキ、トロンベ、マーナ、サキガケ、ポポ、アストラ、ディグラの視界をモニターに、どうだ? 勇治」

 リーゼフランさんがそう言うと、展開された十一のモニターに11人の男性が映る。

 一見するとスーツ姿のサラリーマンにも見える男が使い魔の視線に気づいたのであろうかこちらを見る。
 武装隊の紺のバリアジャケットを身にまとった実直そうな若者がどこかの通路を歩いている。
 口元が隠れるくらいの髭でツンツン頭の厳つい壮年男性がスーツ姿でデスクワークをしている。
 ForceのAEC武装よりゴテゴテした赤い甲冑のようなバリアジャケットで編隊航空中の若々しい男性。
 雷刃の襲撃者さんそっくりの女の子を肩車しているどことなく哀愁を漂わせている男性。
 陸の制服を着た怪しげなグラサン金髪ロン毛がゼスト・グライガンツと思わしき人物と会話中だ。
 眼鏡をかけたポニーテールの長身が端末を操作しながら黒い甲冑を修理しているようだ。
 どうやらそれと同じ部屋で金髪の男性は沈んだ雰囲気も相まってかなり背が低く見える。
 僕らより年下と思う女の子とその兄らしき人物と食事をしているニコニコ笑う人参頭の若者。
 おそらくシャマルさんと一緒に買い物をしている彼女より背の低い少年。
 どうやらシグナムさんにしごかれているらしき少年は必死に木刀を振るっている。







《転生者一覧が更新されました》







【ウィンド】New!

年齢:30歳(/100歳)New!

・修行を積むことでNINJAになれる(100P)New!
・NINJA:木の葉下忍級[限界突破]New!
・NINJA:木の葉中忍級[限界突破]New!
・NINJA:木の葉上忍級[限界突破]New!
・NINJA:木の葉火影級[限界突破]New!
・NINPOU:三代目火影・猿飛ヒルゼン [限界突破]New!
・NINPOU:単身赴任のサラリーマン[限界突破]New!
・NINPOU:ニンジャマスター・ガラ[限界突破]New!

現在地:第99管理外世界クォンタムNew!







【エーリヒ・ヨアヒム・ルーデル】New!

年齢:19歳(/100歳)New!

・空戦SSランク魔導師(100P)New!
・空戦SSSランク魔導師[限界突破]New!
・空戦SSSSランク魔導師[限界突破]New!
【幻想無効】[限界突破]New!

現在地:次元空間・全時空平和委員会本局New!





【バラン・テスタロッサ】New!

年齢:51歳(/100歳)New!

・出身:クラナガン(10P)New!
・総合Sランク魔導師(50P)New!
・マルチタスクLv10(30P)New!
・恋愛:プレシア・テスタロッサ(10P)New!

現在地:第1管理世界ミッドチルダNew!






【カールライト・テスタロッサ】New!

年齢:37歳(/100歳)New!

・出身:ベルカ自治区(5P)New!
・総合Sランク魔導師(50P)New!
・マルチタスクLv5(15P)New!
・デバイス:アームド・デバイス(30P)New!
・恋愛:アリシア・テスタロッサ(10P)New!
・体型:痩せ型Lv1(-10P)New!

現在地:第1管理世界ミッドチルダNew!







【レオン・テスタロッサ・スラッシャー】New!

年齢:31歳(/100歳)New!

・出身:何らかの研究施設(-200P)New!
・空戦SSランク魔導師(100P)New!
・幽波紋:エンペラー(200P)New!
・恋愛:フェイト・テスタロッサ(50P)New!
・貧乏Lv1(-50P)New!

現在地:第1管理世界ミッドチルダNew!







【謎野食通】New!

年齢:35歳(/100歳)New!

・出身:管理世界(1P)New!
・覚醒:+5歳(-50P)New!
・陸戦SSランク魔導師(50P)New!
・マルチタスクLv6→150(18P)[限界突破]New!
・魔法少女:巴マミ(40P)New!
・盟友:ゼスト・グランガイツ(1P)New!
・容姿:レーツェル・ファインシュメッカー(20P)New!
・名前:謎野食通(20P)New!

現在地:第1管理世界ミッドチルダNew!







【グラハム・イェーガー】New!

年齢:27歳(/100歳)New!

・出身:第1管理世界(3P)New!
・覚醒:+4歳(-40P)New!
・空戦SSランク魔導師(100P)New!
・空戦SSSランク魔導師[限界突破]New!
・容姿:グラハム・エーカー(25P)New!
・名前:グラハム(12P)New!

現在地:次元空間・全時空平和委員会本局New!







【ウィリー・カタギリ】New!

年齢:27歳(/100歳)New!

・出身:クラナガン(10P)New!
・天才:特定・篠之乃束(50P)New!
・人物登録(3/5):→グラハム・イェーガーNew!
         →リーゼフラン・グレアムNew!
         →マーナNew!
・製造:デバイスLv1→10(10P)[限界突破]New!
・製造:インフィニット・ストラトス型デバイス[限界突破]New!
・女運:良い(30P)New!

現在地:次元空間・全時空平和委員会本局New!







【ヘンリー・コールドウェル】New!

年齢:17歳(/100歳)New!

・出身:第1管理世界(3P)New!
・覚醒:+5歳(-50P)New!
・空戦AAAランク魔導師(25P)New!
・マルチタスクLv7(21P)New!
・運勢:豪運(100P)New!
・親友:ティーダ・ランスター(1P)New!

現在地:第1管理世界ミッドチルダNew!







【ミストナム・フライム】New!

年齢:15歳(/100歳)New!

・出身:ベルカ自治区(5P)New!
・総合Sランク魔導師(50P)New!
・恋愛:特定(5P)New!
・恋愛:一目惚れ(15P)New!
・恋愛:シャマル(25P)New!

現在地:第1管理世界ミッドチルダNew!







【カイト・ゴーダ】New!

年齢:15歳(/100歳)New!

・出身:没落した名家(-50P)New!
・空戦Sランク魔導師(50P)New!
・デバイス:アームド/ケーニヒスヘルト(100P)New!
・容姿:美形(20P)New!
・恋愛:シグナム(30P)New!
・運勢:悪い(-50P)New!

現在地:第1管理世界ミッドチルダNew!







 意外、いやそうでもないのか?
 対『フリーダム』部隊以外で[限界突破]しているのは半分もいないな。

「おや、バラン殿は素であれか。純粋な才覚のみであの地位まで上り詰めたわけだね」

 其々のステータスを一見し、日昇さんがそう言う。
 因みにバラン氏は現在、ミッドチルダ地上本部のナンバー2の立場にあるという。

「チッ、予想通り使えんか……」

 リーゼフランさんが舌打ちする。
 間違いなく部隊の面子以外が対『フリーダム』戦に使えないという事なんだろうけど、それでも全員少なくとも初期のなのは以上に強いのは間違いないのが『フリーダム』の面々のぶっ飛び具合を示しているよなぁ。

 しかし、NINJAぱねえな。
 どうやればこんな意味不明の成長をできるのだろう?

 それに、エーリヒ氏。
 かの空飛ぶ魔王の名を持つだけあって色々とおかしいね。
 【幻想無効】とか、なんぞって感じだ。
 まあ、リーゼフランさんがキラへの切り札って言っている以上、きっと転生者に対して凄い効果が有るんだろうけど。

 さて、こちらの転生者の皆さんの現状はこうなる。

 ウィンド……本局特別捜査官
       魔導師ランク:陸戦S(の試験を受かったと言うこと)
       魔力値:だいたい50億
       使い魔:ミサ(♀/豹)、エンマ(♂/猿)
       デバイス:ストレージ「ニョイキンコボウ」

 エーリヒ・ヨアヒム・ルーデル……本局武装隊「アインツ」所属(隊員1人)
                 魔導師ランク:空戦SSS(公式にはこれ以上のランクはない)
                 魔力値:およそ4億
                 使い魔:アドルフ(♀/狼)
                 デバイス:I・S型ストレージ「ルフトヴァッフェ」

 バラン・テスタロッサ……ミッドチルダ治安維持局局長
             魔導師ランク:総合S+
             魔力値:930万
             使い魔:ローラシア(♀/猫)
             デバイス:I・S型ストレージ「ベミドバン」

 カールライト・テスタロッサ……クラナガン機動魔導師団団長
                魔導師ランク:総合S+
                魔力値:880万
                使い魔:ミケ(♂/犬)
                デバイス:I・S型アームド「フェラーリ」

 レオン・テスタロッサ・スラッシャー……クラナガン第一航空隊隊長
                    魔導師ランク:空戦SS
                    魔力値:3010万
                    使い魔:ミカヅキ(♂/ハムスター)
                    デバイス:I・S型ストレージ「セイメンコンゴウ」

 謎野食通……ミッドチルダ地上本部クラナガン防衛隊所属
       魔導師ランク:陸戦SS+
       魔力値:4830万
       使い魔:トロンベ(♂/馬)
       デバイス:ストレージ「トロンベ」

 グラハム・イェーガー……本局特殊戦技教導隊隊長
             魔導師ランク:空戦SSS
             魔力値:6240万
             使い魔:サキガケ(♂/熊)
             デバイス:I・S型「フラッグ・カスタム」

 ウィリー・カタギリ……本局技術部総監
            使い魔:マーナ(♀/兎)

 ヘンリー・コールドウェル……クラナガン航空隊所属
               魔導師ランク:空戦AAA-
               魔力値:162万
               使い魔:ポポ(♂/海豹)
               デバイス:ストレージ「スパルタニアン」

 ミストナム・フライム……嘱託魔導師
             魔導師ランク:総合S-
             魔力値:525万
             使い魔:アストラ(♂/狼)
             デバイス:アームド「ネーベルヴィント」

 カイト・ゴーダ……嘱託魔導師
          魔導師ランク:空戦S-
          魔力値:510万
          使い魔:ディクラ(♂/狼)
          デバイス:アームド「ケーニヒスヘルト」

 わかりやすく例を挙げると、現状ではやての魔力値は1100万(これは最大値。通常では4分の1程である。また、基本転生者に魔力値の変動は無い)、魔導師ランクは最低でもSS-になる。

 因みにキラ・ヤマトさんの魔力値は驚きの50垓!
 迅雷のオッサンの250億が屁のツッパリにもなんねぇ!















      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆















 ──その生き様が憧れだった。

 カッコイイから、憧れた。

 こんな生き方が出来たら、と思いながら生きていた。

 ──勿論、思うだけだ。

 何もない、普通な、ただの凡人に出来るわけないと、何もすることなく諦めているだけだった。

 だから──。

 『神』に力が貰えるとわかった時、「彼」のように生きてみたいと思ったのだ。





 多分、初めの間違いは一つだけ。

 どんなに努力しようとも、どれだけ高尚な理想を唱えようとも──。

 そもそもが異なるこの世界で、かの英霊の生き様を真似ようとしても、それが憧れに重なることは無いということに──そして、そのことに最後まで──気づかなかった。






 男は一人戦場を歩く。

 第88管理外世界パスティアータ。

 全時空平和委員会加入を目指す連合と、孤立主義を唱える同盟が主義の対立から相争うようになってから5年が経過し、今もなお戦争継続という泥沼でのたうち回っている。

 男に政治に対する興味は全くと言っていいほどない。
 ただ、自身が正しいと思ったことを実行することに躊躇いはなかった。

 故に、男はこの地で同盟側に与して戦っている。

 男の名は、エミヤ。

 全時空平和委員会から『ザ・ワン』の二つ名で呼ばれるS級次元犯罪者である。

「……」

 この地に降りてから3ヶ月、既に10を越える拠点を落とし、千を超える敵を倒している。
 勿論、倒した敵の数がそのまま殺した数だ。
 エミヤは救えるモノを確実に救うため、排除すべきと判断したものにかける慈悲を持ち合わせていない。

 エミヤの憧れである赤い英霊が9を救うため1を切り捨てたように──。

 だが、同じように見えてエミヤの行為は彼の理想とは全く異なる。
 かの赤い英霊は正義の味方を目指し、磨耗し、それでもなお理想を目指していた。
 対するエミヤは彼の行為を正義と見なし、妥協し、何時しか切り捨てるべき1が2となり3となり、今では百人を救うために平気で九十九人を切り捨てる、外見以外は似ても似つかぬ存在となっていた。

 エミヤとて始めからシリアルキラーの如き存在というわけではない。
 赤い英霊を憧れたように、エミヤ自身の正義を実行しようとしていただけだった。

 ただその根底に、『英霊エミヤ』、『アーチャー』、『衛宮士郎』は管理局に否定的、もしくは敵対するもの、という思考があったのだ。
 だから、当然のごとくエミヤは管理局の魔導師に対して容赦しない。

 それでもエミヤから仕掛ける様な事は無かった。

 当たり前の話であるが、時空管理局(当時)はエミヤの思うような強盗組織ではないからだ。
 別に管理外世界に侵略したりしないし、ロスト・ロギアの強奪もしないから、エミヤが覚醒してから40年の修行を終え、憧れの赤い英霊の真似事を始めたところでそうそう出くわすものではない。
 何でも屋のような事をしていたが、基本的に管理外世界で活動し、積極的に管理世界に出向くこともなかった。

 ──1人の転生者と出会うまでは。

 紫色の全体的に胡散臭い女ではあったが、言ってきたことはエミヤには見過ごせないことだった。

「私の知り合いの転生者が管理局に追われています! 是非貴方のご助力を!」

 断る理由はなかった。

 即刻、紫の女に同行し、執務官に追われる殆ど写し身とも言えるかの英霊の姿をした転生者を助ける。
 この時倒した執務官がエミヤにとって前世から含めて初めての殺人となったが、何の感慨も起きなかった。
 当たり前のように殺そうとして、当たり前のように殺した。

 周囲を飛び交う羽虫を払うのと同じ感覚で──殺した。

 紫の女は当然のようにいつの間にか消えていたが、そんな些細な事など目の前の転生者に比べればどうでもよかった。






 助けた転生者の名はエミヤ・シロウ。

 彼にとって悪の秘密結社である時空管理局に先制攻撃をかけたはいいが、リーゼフランの改革によって遥かに改善した各管理世界の地上部隊の戦力は彼の想像を超えており、返り討ちとなった上凄腕の執務官(エミヤ・シロウから見ての感想。原作無印時点でのクロノクラスの執務官だが、この世界では下から数えたほうが早い)に追跡され、危うく捕縛されるところであった。

 救われたこともあって、エミヤ・シロウから見れば、エミヤはまるで本物の『アーチャー』の様に見えた。
 だから、恥を忍んで弟子入りを嘆願する。

 「無限の剣製」さえ使えれば管理局の魔導師など遅るるに足らず!

 そんな思い上がりは、雑魚と思い込んだ地上部隊に一蹴され、執務官にあと一歩のところまで追い込まれたことで崩れさった。
 だが、自分を翻弄した執務官を瞬殺したこの男に師事すれば、自分もきっと『アーチャー』のように強くなれると確信する。

 エミヤも同好の転生者の尊敬の眼差しに優越感がわかない訳がない。
 そして自身が修行に費やした時間は、間違いなく目の前の転生者を導くためだったと確信する。

「いいだろう。今日から、俺とお前で──ダブル・エミヤだ」

「っ! ああっ!」

 エミヤの言葉に、エミヤ・シロウは目を輝かせながらガシッと腕を交わす。
 どことなく年季を経たエミヤに笑みが浮かび、若々しいエミヤ・シロウが『例の』笑顔を浮かべる。

 この後、運命の糸に導かれるかのごとく転生者・衛宮士郎が二人と出会う。
 そして新暦60年、彼ら「トリプル・エミヤ」が時空管理局本局を襲撃する。

 残念ながら、3人が3人とも『英霊エミヤ』、『アーチャー』、『衛宮士郎』は管理局に否定的、もしくは敵対するものと信じていた。
 その信念にブレはなく、3人とも最後までそれを貫いた。

 かの英霊の言葉にある通り、

 ただの一度も本当の意味で理解されず、

 その生涯にも意味はなかったが、

 それでも、彼らはその信念を貫き通したのだ。
 













      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆















 ゲルカは長い通路を1人歩く。

 ここは妖精郷。
 転生者であるパープル・エイトクラウドを名乗る人物がその力を使って無から創り出した人工世界である。
 彼女の力の顕れであり、根源でもあった。

 しばし歩を進めたゲルカは突き当たりの扉を無造作に開く。
 中にはひとりの老人が椅子に座っている。

 秘密結社「フェアリー・ガーデン」の科学参謀を務めるDr.マキシマだ。

「早いな、と言ってもヴァイゼンからここに直帰だったか」

 扉の開く音に振り向いたマキシマが彼と認識し、話しかけながら隣の椅子をさしだす。

「……」

 無言で彼はその席に着く。
 そもそも彼はしゃべれないのだ(念話は可能だが、面倒なのでやらない)。

「相変わらずの無口よな。まあ、それはともかく右手の怪我は……治療済みか」

 つまらん、と口を尖らせるマキシマ。

 その様子に、冗談ではないと内心で横のマッド・サイエンティストを罵る。
 同時にさっさと治療しておいてよかったとホッとするゲルカであった。

 せっかく人が好意で色々と改造、いや治療してやろうと……と不穏なつぶやきをマキシマがもらしていると、再び部屋の扉が開く。

「おやー、お2人さん。お早いお付きだねぇ」

 と、低い声色なのにいやに軽薄そうな声が二人の耳を打つ。
 部屋に入ってきたのは背の高い壮年の男性である。

 ビアン・イーグレット。

 勿論この男も転生者である。

 ミッドチルダのイーグレット・セキュリティ・サービス代表取締役の弟で、子会社のイーグレット・コーポレーションの社長兼開発主任である。

 彼の開発した魔導兵装『アーマード・モジュール』は全平和会の『インフィニット・ストラトス』には及ばないものの、簡単に魔導師ランクを一つ上げられる特殊デバイス(僅かながら現存していたベルカの融合騎の止めを指した)として、開発・発表された新暦5
0年から今日まで改良され続け各管理世界有数のロングセラーである。
(管理世界において通常デバイスは量販店で普通に取り扱っているが、『I・S』や『A・M』のような特殊デバイスは専門店のみの取り扱いで購入に免許が必要である)
 同時に、管理世界では質量兵器として禁制の非魔導兵装(要するにリンカーコアが無くても扱える)『パーソナル・トルーパー』を管理外世界で売りさばく死の商人としての顔も持つ。

『質量兵器が人を殺すのんじゃぁない。人が人を殺すのさ』

 この言葉は彼が好きな名言をこの世界にあわせてアレンジしたものだ。

 当然ではあるが、全平和会は『P・T』の販売、開発を認めていない。
 しかし、全平和会の介入を認めていない複数の管理外世界(このうちいくつかの世界の有力者は既にゾアノイド化していたりする)に工廠を構えており、彼自身も尻尾を出すようなミスを今のところしていないため「安い・簡単・高性能」の三拍子揃った『P・T』
の拡散は広がるばかりである。

「スミス氏は今回も欠席。白紙委任状を預かってきたよ」

 そう言ってビアンは空いている席に座ると、その隣の空席に懐から取り出した封筒を置く。

 運営部長を務める転生者ジョン・スミスは今年50歳になる。
 彼の作り上げた会社は順調、無理やり参加させられた秘密結社もマキシマの協力で資金協力のため自身がいちいち動く必要もなくなっている。
 そろそろ我武者羅に生きてきた第二の人生を振り返っての隠居生活を考えているほどだ。
 そんな彼が積極的にこの集まりに参加する訳もない。

「またか。とは言え、いまさらあやつの協力が必要なことなど殆どないしな」

 通常であれば口封じだが、彼らの盟主であるパープルは基本的に転生者を殺さない。
 おそらく黙認という形になるだろう。

 まあ、ジョンとて全平和会の実質的支配者たるリーゼフランの苛烈さは周知のはずだ。
 こちらの情報を漏らすことはあるまいとマキシマは彼のことを思考から外す。

「!」

 唐突に、椅子に座りながらも周囲を警戒するゲルカ。

 それにつられて周囲を伺うマキシマとビアン。

「インディゴちゃん、周囲の確認は完璧かしらぁ?」

 3人にはご存知の、実に胡散臭い声と共にいつの間にか部屋に現れた彼女の使い魔、インディゴ・エイトクラウドが申し訳なさそうに周囲の様子を伺っていた。

「状況、問題ありません。パープル様、どうぞ」

 その言葉と共に、3人の前の空間が裂け、その両端がリボンに結ばれた隙間から這い出した妖艶な金髪の女性がするりとその隙間に腰掛ける。

 秘密結社「フェアリー・ガーデン」主宰、パープル・エイトクラウドその人である。







「うふふ、来度もお集まりいただき感謝にたえませんわ」

 齢150を超えるマキシマよりも確実に年経た怪物であるこの女性を前に、特に何するでもなく話を聞く3人。

「スミス氏からこれを預かっているよ」

 そう言ってビアンは隣の椅子においた封筒を近づいてきた彼女の使い魔に渡す。
 それを見ても特に発言はない。

 実際、この組織的に転生者ジョン・スミスの役割は殆ど無くなっている。
 会社の大きさから比較的フットワークの軽いビアンはともかく、彼ほどの有名人となると全平和会の監視だけでなく一般マスコミ等の目も多い。
 その上マキシマの調整体がUSCの各所に入り込み、次元世界各地を独自のネットワークで結んでいる。

 転生者に甘いパープルはジョンが自分たちを裏切らない限り自由にさせる所存である。
 勿論、監視のためにジョンの下にはオレンジという使い魔を送り込んでいるが。

「全員に招集をかけたということは、大きく動くのか?」

 基本的に事後通達しかしない彼女が自分たち全員を呼び出すのは実に異例、マキシマはどうせろくでもないことだろうと思いつつも尋ねる。

「ええ、第3フェイズに移行しますわ」

 実に楽しそうに彼女は言う。

 因みに、各フェイズの内容がどんなものかは彼女以外誰も知らない。
 なので今この場にいる彼女以外の誰もが、ほぅっと頷きつつも内心何言ってんのコイツ状態である。

「僕らの仕事は?」

 取り敢えず割り振られた仕事があるならスケジュールを調整しなければならないビアンが尋ねる。

「ゲルたん以外は通常進行で問題ありません。ジーぽんの都合が整い次第、ゲルたんはドゥーエちゃんの教会本部での護衛をお願い。ギーズくん以外の転生者が潜んでいた場合の足止めが今回のお仕事よ」

 彼女の言葉に頷くゲルカ。
 容姿系マイナススキル・異形はこの世界の変身魔法やESPのマトリクス取得による変身を弾く。
 よって姿を消しての護衛となる。

「ああ、忘れていたわ。マッキーは双騎士クローンへの調整とその子達の指揮官タイプの使い魔の製造をお願い」

 ジーぽんに渡すモノだから適当に調整しておいてね、そう言っていつもの胡散臭い笑みを浮かべるパープル。

(ジーニッファの私兵用か。自分の下位に置くのは当然として、支配下に置くのはどうするか? 奴とてこの化け物には逆らうまいし、安定を欠くモノをあえて造るのもし癪だな……)

 ジーニッファ・ヴォラギノルが転生者以外に対し、圧倒的な力を持っているのはこの組織では周知の事実。
 であるならば、埋伏の毒を仕込んだところで殆ど意味があるまい。
 折角だし、スカリエッティの鼻を明かすついでにゾアノードクラスの調整体を造るかと、今後の算段をするマキシマ。

「では、僕も御暇するよ」

 これでも忙しい身なのでね、とビアンは早々に席を立つ。

「ああ、ビアちん」

「何かな?」

 パープルの呼びかけに足を止め振り向く。

「来週、クォンタムにフランちゃんの手下が入るわよ。エミやん2号の拠点だし、気を付けなさい」

 第99管理外世界クォンタムにはビアンの『P・T』工廠がある。
 隠すか移すかしろとの忠告であった。

「そう言えば、2号くんのアジトはあそこだったか。情報助かったよ、早速手を打つか……」

 やれやれ、とため息混じりに今度こそビアンは部屋を後にする。

「さあ、次元安定プログラム第3フェイズの始まりですわ!」

 とてもいい笑顔で、胡散臭さを振りまきながら声高らかに宣言するパープル・エイトクラウド。

 それを横目にマキシマはビアンに続いてラボに戻るために退室、ゲルカも仕事まではすることもないので訓練室に向かうため彼に続いた。
 使い魔のインディゴは高笑いを続ける主人を困った目で見つめながら、彼女が自分の世界から帰ってくるのを待つのであった。







[28418] 20話 「フリーダム壊滅作戦・上」
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2012/01/03 07:16

 その後、滞在中ずっと全平和会のある意味中枢とも言える2人から次元世界の歴史のあらましと共に歴史的人物を四桁近く聞かされたのだが、僕の転生者一覧に新たな名がヒットすることはなかった。
 何人か妖しい人物がいたのだが、如何せんそれらの人は皆生存中だったので生映像でないと一覧には乗らない。

 リーゼフランさんは幾分残念そうであったが、現時点でリーン、オーリシュデ、ローランド、エメラルダ、ついでに森元以外の過去に転生して死亡した者がおそらく判明したであろうことには満足したようだった。

 生憎、僕の本局訪問はこの歴史の授業だけで終わり、ゆきのさん一行のようにギル・グレアムさんに会ったり、レティ・ロウラン提督とお話したりするなどのイベントには参加できなかった。
 まあ、初日いきなり別行動となった僕を心配してか、まず美由希姉さんが付き添っていたのだが淡々と歴史に歴史上人物を聞き続けるだけの苦行に、恭也兄さん、士郎父さん、桃子母さん、なのはとバトンタッチし最終的に僕に付き添っていたのは、何故かすずか嬢であった。
 と、僕の事は他所に、ゆきのさんとアリサ嬢は完全に進路をここ全時空平和委員会に決めたようで、父親たちは娘が外国どころか次元の外に就職するというので、今から実家通いを押したり、それがダメならと最低でも週一で戻ってくるようと話し合っている。
 はやては迅雷のおっさんに会えなかったので終始不機嫌だったが、意外にも両親が迅雷を追いかけることに反対、いやむしろ風来坊気質(当時の管理局に入ってから、はやてが生まれるまでの5年間完全に行方不明で、その後も年の半分以上地球にいない)の弟に重しとしてけしかける気満々のようだ……ありえん。

 そんな感じで本局見学を終えた僕らであったが、帰るときにお土産をもらうことになる。

 僕に、ゆきのさん、なのは、はやて、アリサ、すずかは使い魔を持たされることになった。
 これは先の転校生ズの再来を懸念してのことで、所謂洗脳スキル対策としての使い魔所有である。

 本来、局員でもない管理外世界の住人に使い魔を持たせるのは違法であるが、囲い込みの形で保護を念頭とした使い魔による護衛はギリギリ法の抜け道(しかも、わざと整備していない)らしく、僕らは所謂テンプレ転生者対策として使い魔を持つことになる。

 ゆきのさんは予想通りフェレットで、意外にも女性タイプ(設定年齢18歳)。名前はヨーコ。
 なのはもフェレットを選択した。これが世界の意思だろうか? こちらは逆に男性タイプ(設定年齢8歳)を選び、レックスと名付けた。
 はやては黒猫で女性タイプ(設定年齢20歳)で勿論巨乳、名前はカトライア。
 アリサは大型のハスキー犬で女性タイプ(設定年齢17歳)を選び、マリアと名付ける。
 すずかはモコモコした毛並みの猫(品種はよくわからない)で、これまた女性タイプ(設定年齢9歳)。名前はミコト。

 さて僕はというと、ハムスターを選択、当然男性タイプ(設定年齢30歳)で名前はウリクセス。英雄オデュッセウスのラテン語読みだ。はじめは英語読みのユリシーズにしようと思ったが、百合とかゆりしーとかの変なイメージが浮かんだのでこちらにする。
 これに僕は特別に、本局に置いていく特製の使い魔を持つことになる。同じくハムスターの男性タイプ(設定年齢30歳)で名をクレアボヤンス、どういう状況下でも緊急的に僕と視界を共有できる転生者発見用の使い魔である。

 帰りは行きと同じくクラウディアで、艦長はリンディさん。
 行きと異なり、艦内にはかなりの局員が乗り込んでいる。
 どうも海鳴に拠点を置くらしい。
 そのための交渉役と、転送ポート設置のための技官、拠点改装に携わる整備員など十数名が各々使い魔を連れているのだから、行きは通路を歩いても海鳴組以外に遭遇する事は殆どなかったが、帰りは局員をよく見かけた。

 幸いにも、何事も無く海鳴に到着。

 こうして、僕のやたら密度の濃い本局初訪問は終了した。

 その一ヶ月後──。







 転生者一覧が更新されました。







【キラ・ヤマト】

【恐怖公:他人の恐怖を魔力に変換】[限界突破]New!







 ……ヤマトさんがまたパワーアップしとる。

 そして、その翌月。







 転生者一覧が更新されました。






【山田 三郎】

【種族:英霊】[限界突破]New!
【英霊降臨】[限界突破]New!
【英雄(地球限定):黄金のヒーロー】[限界突破]New!







 山田さんはいつの間にか世界進出を果たしていたようだ。
















      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
















 孫悟欽は転生者である。

 しかも、かなり強力なタイプの転生者である。

『推定魔力500万、純粋な魔導師ランクはAAA-と低め。これは高位魔法を使用しないためで、単純な戦闘力としてはキラに次ぐレベル。格闘家としては全次元でも最強クラス、恐らくリュウ・サカザキ以外の敗戦はない。主な使用魔法はバリアブレイク、魔法障壁・結界をレベルを問わず破壊可能でロベルト・ナカジマでも対応できるか怪しいレベル。金銭感覚がないのか、基本的にトラブルは金銭絡みで発生、現在は本局が料金を立て替えることで対応している』

 これが全平和会からの評価である。

 1対1で彼に勝ちうる全平和会側の転生者はエーリヒとカーミィナルの二枚看板のみだ。
 一応、プリンスがライバルを名乗っているが、目下全敗中である。

 さて、『フリーダム』純戦闘力2位の彼であるが、犯罪履歴は無許可の転移・飛行魔法使用に小国の国家予算レベルに達した食い逃げの3点である。
 貧乏スキルのおかげで金に縁のない生活を送っており、基本は辺境の野生動物で腹を満たしているが、たまに旨いモノ食いたさに街に出向きついつい無銭飲食してしまうのである。
 現在では彼の食費は全平和会が立て替えており、彼の背中の孫に〇マークは天下御免の飲食無料証である。
 因みに店側は彼が飲食中に全平和会に連絡し、局員が彼を本人と確認しない限り立て替えてはくれない。
 立て替え開始初期に「オレ、孫」詐欺が結構出たための処置であった。

 それまで気ままに過ごしていた孫悟欽であるが、最近周囲が慌ただしい。

 ペンドラゴン、カウリ、ルミカら所謂脳筋組が日替わりで手合わせに現れるのである。
 彼としては強力な戦闘屋と戦えるのは望むところなので気にしていないが、自称ライバルのプリンスは仕事の関係上自由に行動できないのでイライラを募らせていた。

「やあ、悟欽くん。この後いいかい?」

 ペンドラゴンをいつも通りフルボッコした翌日のことである。

 前に一度会ったことのある同郷、転生者マイヤー・ディアーチェがヴォルケン・リッターを引き連れ食事中の彼に声をかけてきた。
 食べるのに忙しいので、適当に頷く。

「ちぇ、これでギガつえーんだからやってらんないよな」

「言うな、ヴィータ。これでも存在そのものが反則みたいな上2人に比べればマシな方だ」

 自分たちを前にして警戒すらしない事に口を尖らせるヴィータに、それを嗜めるシグナム。
 この状態で不意打ちをかけても無駄なのは、ペンドラゴンが何度も返り討ちにあっているので周知の事実だ。
 ヴィータとシグナムがそんな話をする横でアインスとザフィーラが対戦時の陣形を話し合っている。
 シャマルは局員証を店員に提示し、その店員は疲労をにじませながらも笑顔を浮かべた。

 さて、主であるマイヤーであるが、テンションは非常に低い。
 嫁や子供たちの為なら無双モードに入る彼であるが、基本的に出世に興味がなく労働意欲も低いため対『フリーダム』戦は大嫌いであった。
 が、「闇の書事件」の後始末にリーゼフランに借りを作ってしまったのが運の尽き。
 更に、闇の書の闇(ユーリさん絡みはその内どっかでこじつける予定)から開放され、悪夢じみた戦闘力を持つ転生者にあてられたヴォルケン脳筋組は当然、世界の平和、ひいては主の平穏のためと残る面子も『フリーダム』との戦いを望む傾向にある。

 先日決定された「フリーダム壊滅作戦」に向け、対『フリーダム』部隊の戦力向上が命じられた。
 修行対象は当然この孫悟欽。
 殺しをせず、相手の実力以上を発揮させてボコる事に定評のある彼は、ある意味最良の経験値稼ぎ用敵ユニットと言えるかもしれない。

 ヴォルケンリッターの面々の衣装は原作と大体同じである。
 相違点はシグナムがタイツで生足じゃないのと、ヴィータのウサギの造形が違うことぐらいだ。
 シグナムはマイヤーがパンチラはいかんよなぁとタイツでデザインしたのと、ヴィータは例のウサギがミッドチルダで売っていなかったので、こちらで売っていたメソウサみたいなデザインになっている。

「あー! 食った食ったぁー!」

 最後の丼を口の中に書き込んだ悟欽が感嘆の声を上げる。

 店員がグッタリしながらシャマルと立て替えの手続きをする。
 今日用意できるものを全部と注文を受け、本日はこれで閉店だ。
 だいたい2時間で一日分の料理を作った料理人はご苦労様である。

「で、やるかい?」

「乗り気はしないがね……」

 そう呟き、マイヤーは封時結界を展開する。

「アイゼン!」

「レヴァンティン!」

 前衛二人が開戦早々カートリッジを使用、グラーフアイゼンがラケーテンフォルムとなりレヴァンティンが炎を纏う。

「よおっし、ワクワクしてきたぞ! 今日も楽しませてくれよ!」

 破顔一笑。
 孫悟欽の周囲に不可視のオーラが舞い上がり、地面にヒビが入る。

「ぶっ飛べ!」

「参る!」

 魔力を推進剤に加速して目標に迫るヴィータに、シグナムが時間差で追撃するためにそれを追う。

 突撃した二人を援護するために其々散開し、アインスとマイヤーは術式を展開する。
 ザフィーラは前衛二人の連携の補助、シャマルは後衛の補助だ。

 タイプ的には後衛のマイヤーは、本来の主のはやてと比べれば動ける分原作のなのはに近い砲戦魔導師だ。
 マイヤー自身は知らないが【天眼】スキルの恩恵で、集団での乱戦にも強い。
 戦場において、絶対的に有利な位置取りをできるのは非常に強力だ。

 最も、そんな戦術的優位を単騎でひっくり返す『フリーダム』を相手にしなければいけないのだから彼も不幸なものである。
 まあそれでもリア充なのできっと爆発すべきなのだろう。

 ──2時間後。

「界王拳、10倍!!」

「やっぱ、ダメかー!」

 当然勝てるわけもなく、負けた。







 転生者一覧が更新されました。







【孫 悟欽】New!

年齢:38歳(/100歳)New!

・魔力値:SS[限界突破]New!
・魔力値:SSS[限界突破]New!
・総合Sランク魔導師(50P)New!
・サイヤ人:戦闘力50→5000(50P)[限界突破]New!
・界王拳Lv1→10[限界突破]New!
・念能力:具現化系・覚醒初期(200P)New!
・念能力:具現化系・試験官級[限界突破]New!
・念能力:具現化系・旅団戦闘員級[限界突破]New!
【発・仙豆】[限界突破]New!
・胃袋:ナゾノ・ヒデヨシ級(40P)New!
・体型:標準+10(10P)New!
・貧乏Lv5(-250P)New!
【貫通:素手による攻撃が障壁・結界破壊効果を持つ】[限界突破]New!

現在地:第57管理世界ポートコラNew!






【カウリ】

・魔力値:SSSSS[限界突破]New!






【マイヤー・ディアーチェ】

・部隊指揮Lv1[限界突破]New!







 ロードリッヒ・セルバイアンは転生者である。

 2mを超える巨体に、赤系統の衣装を纏ったこの男は他の転生者が見れば、おおかたマッチョになったかの英霊を思い浮かべるだろう。
 『無限剣』の異名により余計そういうタイプの転生者という印象を与える。

 が、それはこの男のフェイクである。

 彼の戦闘スキルはアーティファクト「千の顔を持つ英雄」だ。
 あえて「無限の剣製」と思わせた上でわからん殺しを狙ったものだが、エミヤズと異なり積極的に全平和会に喧嘩を売るわけではないので他の転生者との交戦は殆ど無い。

 因みに数少ない相対した転生者は『金色の』ギル・ディラン。
 軽く様子見した段階で妙に気があったため、そのまま近くに展開していた紛争中の両軍を技の披露に殺戮したのが世に名を知らしめる出来事となった。
 元々、強さを確認するために他者を殺害するのに躊躇ないタイプの転生者のため、この2人は気があったのだろう。

 全時空平和委員会からの評価は、『推定魔力18億、魔導師としても非常にレベルが高くランクはSSS。エミヤズと似た技を使うが、武器の多彩さ対応能力ははるかに上。主に管理外世界で活動しており非常に対応しにくいタイプの犯罪者』とギル・ディラン以上に補足が難しく、放置状態に等しかった。

 しかし半年前に「フリーダム壊滅作戦」がスタートし、ゼロ対策として貼り付けてあったウィンドを高町勇治と合わせたステータス照合のために『フリーダム』探索に起用、遂にこの男を補足することに成功する。

「フラン、どうする? 仕留めるか?」

 およそ1kmほど離れた地点で、エンマ→リーゼフラン→クレアボヤンス→勇治→リーゼフランのラインでロードリッヒのステータスを確認した彼女にウィンドが確認を取る。

『……いや、いい。奴は予想通り超過組だ。残り寿命も少ない、無理して戦う必要もないからな』

 勇治からの情報でロードリッヒの寿命が少ないことを確認し、リーゼフランはウィンドに引き上げを指示する。

「了解。さて、次はエミヤズの面々か──」

 半年前に行われた『二番目』エミヤ・シロウ補足のためのガサ入れは、多数の局員を動員したにもかかわらず成果を上げられなかった。
 これには「フェアリー・ガーデン」の支援もあったと思われるので一概には言えないが、やはり転生者を相手取るには転生者が有効なのだろう。
 再びの失敗は被害の拡大を招く、迅速にエミヤズの補足が求められていた。

 ロードリッヒはその間放置となるが、いかんせん手が足りない。
 とはいえ、対『フリーダム』部隊の面子でもこれに完勝できるレベルとなると、やはりエーリヒ、カーミィナルの二枚看板になるし、勝ちが見込めるのはウィンドにカウリ程度の強さは求められる。
 そして、ウィンド以外では逃げに入られるとどうしようもないという問題点もあった。

 であれば、自然死してもらうのが丁度いい。
 時期になったら追跡部隊を派遣するだけで済む。
 一覧の現在地はどの次元世界にいるかしかわからないが、それでも有ると無いとでは大違い。
 ウィンドをしても、全く情報なしの状態から探すのでは時間がかかる。
 今回もここ第62管理外世界セッツァールに滞在していると判明するまで、4ヶ月以上かかっている。

『見逃しはするが、死ぬ直前か、最悪死んだ直後でも局員を居合わせんとな。散々好き勝手にやってきたのだ、次元世界の住人の不安を紛らわすために少しでも役立ってもらわんと……』

(そういうことは通信切ってから言え、そんなんだから他の連中に嫌われるんだ)

 口にしないと決意が鈍るからとはいえ、聞かされる方もたまったものではないとウィンドは内心で独りごちた。







 転生者一覧が更新されました。







【ロードリッヒ・セルバイアン】New!

年齢:26歳(/28歳)New!

・総合SSSランク魔導師(300P)New!
・総合SSSSランク魔導師[限界突破]New!
・総合SSSSSランク魔導師[限界突破]New!
・アーティファクト:千の顔を持つ英雄(1000P)New!

現在地:第62管理外世界セッツァールNew!







 ロードリッヒとウィンドを比べれば能力的には勝ちうるが、リーゼフランは負ける可能性をいくつか(一応10回やれば9回は勝つレベルだが)見つけたので確実に始末するため今回は見逃す。
 強いうえに、索敵能力も一流のウィンドは全平和会では替えのきかない人材の一人だ、石橋を叩いて渡らないぐらいの使い方がちょうどいいと彼女は判断している。

 なお、ウィンドの代わりのゼロ対策はリーゼフラン直属の使い魔師団(女王艦隊所属。全員SSSランクで総数20000)を投入し、人海戦術で対応している。
















      ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆   ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
















「よろしいでしょうか、Dr.マキシマ?」

 マキシマがラボで調整槽の整備をしていると、スカリエッティの戦闘機人ウーノがノックと共に声を上げる。

 特に差し迫った案件はないので部屋に入るように促す。

「いえ、よろしければドクターの下までおいでいただきたいのですが」

 扉を開けた彼女はそのまま要件を告げる。

 さて、何用か? 余裕はあるとはいえ、どうでもいい事に時間を取られたくないマキシマはウーノに詳細を求める。

「……新たな『転生者(オーバーテイカー)』が出現しました」

「ほう!」

 中々面白い展開だ。
 ウーノの言葉にマキシマはニンマリと笑みを浮かべる。

「さて、ただの馬鹿か、それとも突き抜けた馬鹿か?」

 自分の様な中途半端な馬鹿が一番つまらんがな。
 そう自嘲し、ウーノについてスカリエッティのラボへと向かう。







 マキシマがスカリエッティのラボに着くと、綺麗な笑顔のスカリエッティが近づいてきた。

「状況は?」

「中々楽しい状況ですよ、マキシマ翁。まずはあちらの培養槽をご覧あれ」

 言われるままにそちらを見ると、見慣れぬ培養槽に漬かる見慣れぬ戦闘機人を見つける。

「む? あの位置にあったか?」

「いえいえ、昨日生えてきました」

 マキシマの疑問にスカリエッティがアハハと笑いながら答える。

「生えた?」

「ええ。こうニョキニョキと、でゴボゴボ~っと謎の液体で一杯になってですな」

 ココからは記録映像をご覧になったほうが面白いですよ? と、端末をいじり大画面のモニターに映像を出す。

 薄い緑色の液体で一杯になった培養槽の中心がポゥっと光った次の瞬間、光の消えた場所に握り拳小の人型と思われる何かが出現する。
 続いて、その人型が液体を吸ったのかみるみるうちに膨張していく。

「昔屋台で見たおもちゃかよ……」

 その様子に呆れてつぶやくマキシマ。
 この物体が見慣れぬ戦闘機人になったというのか? まあ、なんでもいいのだが。

 そんなマキシマを尻目に、映像の膨張する人型はまるで力士の様な体型でぶよぶよした質感にも見える。
 緑の液体に漬かっているから青く見えるのか、それとも元から青いおもちゃのようなものなのか。

「ん? もう標準以上にデカくないか……」

 いつまでたっても膨張を止めない人型に眉を顰めるマキシマ。
 そんな彼を置いて置きぼりに、人型の膨張は止まらず遂に培養層一杯になってしまう。

 ピシッ!

「あ……」

 マキシマが培養槽にヒビが入るのを見るのとほぼ同時に破滅的な音が聞こえ、ガシャーンと人型の膨張に耐え切れず培養槽が破裂した。
 外に放り出され、ビシャビシャと周囲を転げまわる青いぶよぶよした物体。

 漸く騒ぎが外に伝わったのか、ナンバーズが何人か部屋に入ってきた。
 ウーノにトーレにクアットロだ。

『何がって、何コレッ!!』

『うげ……』

『うわ、きもっ!』

 映像の三人は室内の惨状に其々の感想を漏らす。
 確かに気持ち悪い。
 マキシマも映像のそれを目の前にしたら同じように反応するだろう。

 しかし、その彼女らの声に反応したのか、唐突に青い物体が停止する。
 その様子に彼女たちがお互いの顔を見合わせた次の瞬間、ブシューと臀部と思わしき場所から蒸気が吹き出す。

『クアットロ! すぐに換気を上げて! トーレ!』

 謎の蒸気が室内を満たす前に、ウーノが妹二人に指示を出す。
 成分に毒性がないことを確認したクアットロが手でサインを出し、トーレが二人を守るような位置取りをする。

 ほんの数秒で室内は白から元通りとなるが、数秒は確実に映像からも彼女たちからも物体の姿は隠されていた。
 だから、蒸気が晴れ物体が再び目視できるようになると、映像の彼女たちもそれを見ているマキシマも驚愕する。

 ──美形だった。

 美形がそこにカッコをつけて立っていた。

 クセのない長い金髪をサラリと靡かせ、淡麗に整った顔に笑みを浮かべる。
 身長は恐らく数m先で対峙するトーレより頭一つ分以上高い。
 体格はごつくはないが、ナンバーズが着用する少しエロい衣装に浮かぶ筋肉からほどよく引き締まった体をしている。
 ちなみに男だ。
 股間が実に見苦しい。

『何者です!』

 ウーノの詰問に、おや? っと眉を顰める金髪。

 その様子にマキシマは、コヤツ「ニコぽ」持ちか、と内心呆れる。
 洗脳タイプのスキルは転生者に無効なのはル-ルブック読破組は周知だが、パープルからの情報で知り得たモノのひとつに転生者の子孫(遺伝子情報があればいいらしいのでクローンでも可)は同じように無効化できるというものがある。

 何が言いたいかと言えば、ここのスカリエッティは自分の大元であるオーリシュデが転生者なのを今は知っている。
 故に、ナンバーズに自分の遺伝子情報を使うことで、転生者が習得可能な激レアを越える異世界スキルを習得させようと企んだのだ。
 残念ながら、現在までに稼働している7体のナンバーズはパープルから教わったとおりの原作通りのスキルしか保有しなかったが、前述の洗脳無効化と原作以上の身体能力を身につけることに成功していた。

 つまり、この転生者はナンバーズでハーレムをやりたかったのだろうが、そう都合よくはいかないというわけだ。

『フッ、聞いていないのか。仕方がないな妹達よ……。私は──』

 そんなことは露知らず、やれやれと肩をすくめ金髪がそこで言葉をため、

『私は、スカリエッティ・ナンバーズ・タイプゼロオリジナル! ラストナンバー、オメガ!!』

「止めろ」

 映像の金髪が叫んだところでマキシマは映像を止めるよう言う。
 ウーノがそれに従い、狙ったのか丁度金髪、オメガがアップななったところで止まった。

「で、何だ? コレは」

 と、しゃがみこんで呼吸困難になっているスカリエッティに尋ねる。

「ヒヒ、いや、プク……なんでしょ? ブフッ」

 余程ツボにはまったのか、スカリエッティはヒーヒー言いながらもなんとか答える。
 取り敢えず彼自身は何も知らないらしい。
 少なくとも、自分だったら『ゼーロ』か『ウルティモ』と名付けると、『オメガ』は絶対ないと断言した。

「で、続きは見たほうがいいか?」

 マキシマの問いに、未だ腹筋がヤバイことになっているスカリエッティは手を振ることで見る必要のないことを告げる。
 どうやらこれ以降は彼にとってそこまで面白い場面はないようだ。
 正直、むず痒くなってきたところだったのでこれ以上見なくていいのは有難い。
 と、ウーノにこのあとどうなったのかを聞く。

「はい、このオメガさんは先程の台詞を言った直後に、口から緑の液体をもどしひっくり返りました」

 無様に痙攣していたところを、いつの間にか復活していた培養槽が中に入れろとばかりに開閉を繰り返すので、考えるのが面倒臭くなったのでトーレが放り込んで今に至るという。
 他人のゲロなんぞ見る趣味のないマキシマは見なくてよかったと胸をなでおろす。

 コレが転生者絡みでなければもう少し楽しめたのだろうが、はっきり言って痛々しさしか感じられなかった。

「ああ、そういえばコレはこれで突き抜けた馬鹿か……」

 因みに、この映像を見たパープルは大爆笑、ゲルカは無言で立ち去った。





[28418] リリカルなのはTRPG・ルールブック 1/3改訂
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2012/01/03 08:05
◆ポイントの数値は本編での動きによって変動することがあります。
◆本編とルールブックでの設定が異なる場合、本編が優先されます。


【基本ルール】

 貴方は『リリカルなのは』の世界に転生するに当たり、100Pの持ち点を所有しています。

 ※)原作の名前持ちのキャラに憑依転生することはできません。

 この持ち点を消費することで貴方は様々な能力を得ることになります。

 また、転生後の寿命は基本的に100年となります。
 ただし、持ち点を超過した場合は、100×100/(100+超過分)年の寿命となります。

 なお、持ち点があまった場合、ランダムで合計100Pになるようスキルが選択されます。

 ※)例えば95Pで作成を終え、他にスキルが思いつかずそのまま転生した場合、転生後の名前が“げろしゃぶ”になったりします。

 寿命システムは持ち点を超過した場合は、原作キャラに遭遇した(すれちがうだけでもアウト)瞬間に発生します。
 システム発生後は、本来の寿命がその時点から加算された寿命となります。

 つまり、1000Pの転生者が10歳の時にシステムが発生すると、20歳が寿命となります。

 ※)名無しのモブキャラでも発生します。つまり、海鳴やクラナガンはそこらの道を歩くだけでも寿命システムが発動します。


【基本スキル】

 『リリカルなのは』の世界に転生するに当たり、基本となる魔力値・魔導師のランクです。

 魔力値は基本的に生まれたときからあるものですが、魔導師ランクは基本的に各転生者の限界成長値となります。

 なお、魔導師ランクは才能であり、技能ではありません。
 魔法の訓練をしない限り成長しません。
 特に管理外世界出身の場合、デバイスを所持するなどの特殊例を除き、覚醒直後に魔法の使用は不可能です。

・魔力値:無限   (1000P) ∞
     SSSSS(500P)  500,000,000~
     SSSS (250P)  100,000,000~500,000,000
     SSS  (100P)  50,000,000~100,000,000
     SS   (50P)   10,000,000~50,000,000
     S    (25P)   5,000,000~10,000,000
     AAA  (10P)   1,000,000~5,000,000
     AA   (5P)    500,000~1,000,000
     A    (1P)    100,000~500,000
     B    (-5P)   50,000~100,000
     C    (-10P)  10,000~50,000
     D    (-25P)  5,000~10,000
     E    (-50P)  1~5,000
     なし   (-250P) 0

 ※)基本的に魔力値は選択した魔導師ランクと同じになります。

 ※)魔導師ランク以下の魔力値は選択できません。

 ※)魔力値:なしはあらゆる努力をしても後天的に魔法を使えるようにはなりません。

・魔導師:SSSSS(900P)
     SSSS (600P)
     SSS  (300P)
     SS   (100P)
     S    (50P)
     AAA  (25P)
     AA   (10P)
     A    (5P)
     B    (-5P)
     C    (-10P)
     D    (-25P)
     E    (-50P)

 ※)上記のランクは総合・空戦魔導師に適応されます。ただし、空戦魔導師はB以下を選択することはできません。

 ※)陸戦・結界魔導師の場合、基本的に上記必要Pの半分、AAAは10P、Aは1Pとなり、B以下は-Pが倍になります。ただし、結界魔導師はC以下を選択できません。

 ※)複数の魔導師ランクを習得した場合の魔力値は、習得した中で一番低いものとなります。ただし、総合・空戦・陸戦は重複して選択はできません。

・マルチタスクLv1~(Lv1ごとに3P、上限はありません)

 ※)マルチタスクはA以上の魔導師ランクを習得すればLv1を自動習得したことになりますが、それ以上増やしたい場合、重複する

ことになりますがこのスキルを習得する必要があります。


【魔法スキル】

 選択した魔導師ランクにより使用可能な魔法が異なります。

・総合タイプ:器用貧乏型、突き抜ければ器用万能。

・空戦タイプ:空中戦を得意とする魔導師です。

・陸戦タイプ:高速空中戦闘ができません。

・結界魔導師:魔力弾のような射出タイプの攻撃魔法を使用できません。

・古代/近代ベルカタイプ(50P/10P)

 ※)近代ベルカを選択するとstsの時間帯にあわせて転生となります。それ以前に転生条件を合わせると選択することはできません



・レアスキル:予知Lv1~25(200P)

 ※)Lv5で原作でのカリムの予知と同じ精度となります。

 ※)Lv25(上限)で変動する未来を含めたあらゆる可能性が予知として提示されます。

・魔力変換資質:炎熱(20P)/雷電(30P)/氷結(50p)

 ※)単一魔法などで特定属性の魔法を選択すると自動で変換資質を得ることが可能です。


【人物スキル】

 貴方が転生するに当たり、どのような人物になるかの技能です。

 ※)基本的に人間以外への転生はできません。容姿:異形を選択したときのみ貴方の望む姿形を選択できます。

 特に選択しなかった場合、貴方の容姿は所謂モブにいくらかの修正がかかった程度の人物になります。

 出身等の選択をしなかった場合、貴方が『リリカルなのは』の世界に望む行為により近い位置に転生が行われます。

・生年:特に設定しなくてもある程度転生先に配慮されます。
 
 必要Pは新暦56年以降は-、以前は通常になります。

 ※)本作中では新暦65年=西暦2004年として扱います。

 :-1~(1P)
 :+1~4(-3P)…原作のスバル・ティアナとほぼ同時期の生年です
 :+5~10(-5P)…原作のエリオ・キャロと近い時期の生年です
 :+11~(-10P)…物語に絡むのは4期以降になるでしょう

 :幕末・日本(100P)
 :戦国時代・日本(300P)
 :中世・ヨーロッパ(500P)

 ※)年数を正確にせずに特定期間にした場合、ある程度必要Pが低めになります。

・出身:原作のメインに近い位置ほど必要Pが多くなります。また、特定の出身は必要Pがマイナスとなります。

 :第97管理外世界(1P)…確実に地球出身を選択したい場合
 :海鳴(5P)…比較的物語に近づきたい場合
 :管理世界(1P)…魔法を確実に習得したい場合
 :第一管理世界(3P)…管理局に介入しやすくしたい場合
 :ベルカ自治区(5P)…教会関係者とお近づきになりたい場合
 :クラナガン(10P)…原作介入への選択肢を増やしたい場合

 :名家・ベルカ(25P)…魔法スキルの古代ベルカ式、デバイスのストレージをスキルなしでも所有出来ます
 :名家・ミッドチルダ(40P)…クロノ・ハラオウン並みの家庭環境が与えられます
 :ル・ルシエ一族(30P)…特殊技能:〇〇召喚・使役を習得できます
 :スクライア一族(10P)…ユーノ・スクライアと同じ出身となります
 :孤児院(-30P)…両親が不明、軽い差別を受ける場合があります
 :没落した名家(-50P)…貧乏Lv2と同等のペナルティを受けますが、名家間の繋がりがある程度あります
 :スラム(-100P)…通常の5歳覚醒時の生活環境は最悪で、何らかの技能がない限り死ぬ可能性があります
 :何らかの実験施設(-200P)…覚醒時の状況は最悪で、早期に対策を打たない限り死亡又は精神崩壊します
 :古代ベルカ(-300P)…基本的に原作開始前に死亡します
 :原作開始前にはすでに死亡(-500P)…基本的に原作開始前に死亡します
 :アルハザード(-1000P)…基本的に原作開始前に死亡します

・家族:原作のメインキャラと近い関係となるほど必要Pが多くなります。

 ※)原作改変の結果、生まれることがない場所に転生を選択した場合、限りなく近い状況での転生となります。

 :高町なのはの      兄弟姉妹(75P)・伯父叔母(50P)・いとこ(30P)
 :フェイト・テスタロッサの兄弟姉妹(75P)・伯父叔母(50P)・いとこ(30P)
 :八神はやての      兄弟姉妹(65P)・伯父叔母(40P)・いとこ(20P)
 :アリサ・バニングスの  兄弟姉妹(40P)・伯父叔母(15P)・いとこ(5P)
 :月村すずかの      兄弟姉妹(55P)・伯父叔母(30P)・いとこ(20P)

 :スバル・ナカジマの   兄弟姉妹(60P/40P)・伯父叔母(15P)・いとこ(5P)
 :ティアナ・ランスターの 兄弟姉妹(40P)・伯父叔母(15P)・いとこ(5P)
 :エリオ・モンディアルの 兄弟姉妹(60P/20P)・伯父叔母(1P)・いとこ(1P)
 :キャロ・ル・ルシエの  兄弟姉妹(50P)・伯父叔母(25P)・いとこ(15P)

 ※)スバルとエリオの兄弟姉妹の必要Pは戦闘機人かクイントの実子であるか、及びクローンかクローン元かで別れています。

・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
    :中学のなのはと同じクラス(10P)

・覚醒:基本的に5歳に記憶と能力が覚醒する仕様ですが、Pを変動させることで任意に選択できます。

 :-1~5歳(50P)
 :+1~5歳(-10P)
 :+6~15歳(-20P)
 :+16歳以降(-25P)

・身長:平均身長から増減することで+-が発生します。

 ※)当然ながら、成長限界値になります。またこのスキルを取ると身体の成長・成熟が速く、身体機能の劣化が遅くなります。

・体型:設定体型からの維持レベルです。+だと太ったり痩せたりしにくくなり、-だとその逆になります。

 :標準+X(XP)…暴飲暴食耐性とも、5Pあればほぼ太らない体質となる
 :標準-X(-XP)…スキル対P効果は低い、食生活に気を付けないと簡単に太る
 :痩せ型Lv1~5(-10P)…スキル対P効果は低く体力・魔力においてもペナルティがかかるが、病気にはならない
 :肥満型Lv1~10(-5P)…スキル対P効果は低く体力・魔力においてもペナルティがかかるが、病気にはならない

 ※)痩せ型Lv4、5と肥満型Lv8~は日常生活に支障が出るレベルです。

・容姿:超絶美形(300P)
    超美形 (100P)
    美形  (20P)
    不細工 (-20P)
    醜悪  (-100P)
    異形  (-300P)

 ※)容姿スキルは転生者の覚醒時に発動し、それ以前はスキルによるメリット・デメリットはありません。

 ※)容姿:異形は転生者を除くあらゆる知的生命体に生理的な嫌悪を抱かせます。また、社会的に多大なペナルティを負うことになります。そのため覚醒時になんらかの対策を行わない場合、最悪死に至る可能性があります。

・頭髪(10P)…所詮髪型なのでどんな奇抜な色・形でも必要Pは同じ

・虹彩異色症(10P)…所謂ヘテロクロミア、色は選択できる

・名前:一文字に着き、漢字5P・カタカナ3P・ひらがな1P


【戦闘スキル】

 所謂『リリカルなのは』の世界に存在しない戦闘技能です。

 習得に必要な魔力値が設定されています。

 100000P~:魔力値SSSSS以上
 50000P~ :魔力値SSSS以上
 10000P~ :魔力値SSS以上
 5000P~  :魔力値SS以上
 1000P~  :魔力値S以上
 1000P未満 :魔力値なし以外

 必要となるPの数値は、この世界の魔法でそのスキルを再現するための難易度と考えてもいいでしょう。

 そのためスキルの原典に比べると性能が完全に再現されない場合があります。

 ※)全ての戦闘スキルは貴方の魔力を用いて、原典の能力の再現を行います。あまりに低い魔力値であると、原典の能力の再現が難しい場合もあります。また、魔力値:なしを習得すると戦闘スキルの習得ができません。

【出典:BLEACH】

・斬魄刀:天鎖残月(900P)
    :鏡花水月(1500P)
    :氷輪丸(100P)

 ※)精神系に作用する能力は転生者には効果はありません。

【出典:超人ロック】

・超能力:ESP・特殊部隊兵士級(50P)
    :ESP・特殊部隊隊長級(100P)
    :ESP・書を守る者クローン級(300P)
    :ESP・書を守る者ネームド級(1000P)
    :ESP・太陽系連合期ロック級(10000P)
    :ESP・第1次銀河連邦期ロック級(50000P)
    :ESP・銀河帝国期ロック級(100000P)
    :ESP・第2次銀河連邦期ロック級(150000P)

 ※)全てのロック級は限定ながら不老不死を得ます。ただし、第2段階を制御できないとそのまま暴走し大規模次元震を起こし消滅

します。

 ※)精神系に作用する超能力は転生者には効果はありません。

【出典:とある魔術の禁書目録/とある科学の超電磁砲】

・超能力:発火能力・Lv1(10P)
    :発火能力・Lv2(25P)
    :発火能力・Lv3(50P)
    :発火能力・Lv4(100P)

 ※)大まかな系統として、ESP(超人ロック系統)と単一能力(学園都市系統)に別れます。

・ベクトル操作(80000P)

・未元物質(70000P)

・超電磁砲(1200P)

・原子崩し(1000P)

・心理掌握(500P)

 ※)転生者には効果はありません。

・幻想殺し(50000P)

・神の右席:天罰術式(3000P)

【出典:ジョジョの奇妙な冒険】

・幽波紋:ザ・ワールド(25000P)
    :エンペラー(200P)
    :スター・プラチナ(5000P)
    :クレイジー・ダイヤモンド(30000P)
    :キラー・クィーン(10000P)
    :ゴールド・エクスペリエンス(40000P)

 ※)幽波紋スキルは転生者でも同じように幽波紋スキルを持っていないと視認できません。

 ※)幽波紋の攻撃において、所謂遠距離攻撃は幽波紋スキル持ちの人間以外には不可視の魔力攻撃と同じ扱いになります。なので、シールド等で防御可能です。

 ※)時間操作系の幽波紋は時間の巻き戻し、過去改変以外は限りなく原作再現されています。

【出典:月姫/Fateなど】

・魔術:強化・初期(5P)
   :投影・初期(5P)

・固有結界:無限の剣製(1000P)
     :枯渇庭園(500P)
     :獣王の巣(666P)

 ※)一部の固有結界スキルは覚醒時に吸血鬼化します。

・王の財宝(10000P)

・乖離剣・エア(5000P)

・約束された勝利の剣(4000P)

・王の軍勢(20000P)

【出典:HUNTER×HUNTER】

・念能力:強化系・覚醒初期(100P)
    :変化系・覚醒初期(150P)
    :放出系・覚醒初期(100P)
    :操作系・覚醒初期(150P)
    :具現化系・覚醒初期(200P)
    :特質系・覚醒初期(900P)

    :〇〇系・試験官級(初期値の3倍)
    :〇〇系・旅団戦闘員級(初期値10倍)
    :〇〇系・協会会長級(初期値の30倍)
    :〇〇系・王級(初期値の50倍)

・念能力:特定・〇〇(Pは〇〇によって異なります)

 ※)特質系は選択時に大まかな方向性を選択できます。 

 ※)念能力のオーラはイコール魔力となります。初期に魔力値を選択しなかった場合は潜在魔力値がオーラの成長にあわせて成長し

ています。

【出典:聖闘士星矢/G、ND、LC】

・聖闘士:青銅2軍(1000P)
    :白銀(2500P)
    :青銅1軍(5000P)
    :牡羊座(11000P)
    :牡牛座(10000P)
    :双子座(90000P)
    :蟹座(75000P)
    :獅子座(12000P)
    :乙女座(100000P)
    :天秤座(11000P)
    :蠍座(13000P)
    :射手座(11000P)
    :山羊座(12000P)
    :水瓶座(15000P)
    :双魚座(30000P)

 ※)小宇宙イコール魔力となります。原作の黄金聖闘士の小宇宙は最低でもおよそ1兆と考えてください。

【出典:ファイブスター物語】

・騎士:ヘッドライナー・公安騎士(50P)
   :ヘッドライナー・騎士(250P)
   :ヘッドライナー・国家騎士(500P)
   :ヘッドライナー・天位(1000P)
   :ヘッドライナー・小天位(2500P)
   :ヘッドライナー・強天位(5000P)
   :ヘッドライナー・太天位(10000P)
   :ヘッドライナー・超帝国騎士(15000P)
   :ヘッドライナー・超帝国剣聖(30000P)
   :ヘッドライナー・ログナー(50000P)

 ※)原典の騎士技でダイバーパワーを使用するものは、魔導師スキルもしくは戦闘スキル:ダイバーを必要とします。魔法使用不可スキルを持っている場合は使えません。

・ダイバー:街の占い師(10P)
     :王宮付術師(50P)
     :パラ・ギルド正規術師(100P)
     :メル・サッチャー(500P)
     :ウィッチ・ズーム(1000P)
     :ボスヤスフォート『初期』(1500P)
     :ボスヤスフォート『命の水後』(10000P)

【出典:北斗の拳/蒼天の拳】+機動武闘伝Gガンダム

・流派:北斗神拳(300P)
・流派:北斗劉家拳(250P)
・流派:北斗曹家拳(200P)
・流派:北斗孫家拳(200P)
・流派:北斗宗家拳(150P)
・流派:西斗月拳(250P)
・流派:南斗鳳凰拳(200P)
・流派:南斗水鳥拳(120P)
・流派:南斗孤鷲拳(120P)
・流派:南斗紅鶴拳(150P)
・流派:南斗白鷺拳(120P)
・流派:元斗皇拳(250P)

・流派:東方不敗(250P)

 ※)これらの流派は一子相伝や特定の血統や才能を必要とするため、それ以外の戦闘スキルを選択できなくなります。

 ※)これらのスキルを習得すると覚醒時に身体の成長に合わせた最適の修行法が自然と身についています。

 ※)当然ですが、その修行をしなければ強くなれません。

【出典:ジャイアントロボ】

・十傑集:衝撃のアルベルト(150P)
    :幻惑のセルバンテス(500P)
    :激動たるカワラザキ(300P)
    :混世魔王樊瑞(400P)
    :マスク・ザ・レッド(200P)
    :直系の怒鬼(150P)
    :暮れなずむ幽鬼(450P)
    :命の鐘の十常寺(500P)
    :白昼の残月(250P)
    :素晴らしきヒィッツカラルド(300P)

 ※)十傑集スキルは強烈な個性に侵食されるため、それ以外の戦闘スキルを選択できなくなります。

 ※)アニメ版です。

【出典:ドラゴンボール】

・サイヤ人:戦闘力X(XP)
・地球人:戦闘力X(0.5XP)
・ナメック星人:戦闘力X(1.5XP)
・その他の宇宙人:戦闘力X(1.2XP)

 ※)戦闘力に対応する魔力は、戦闘力1につき魔力1000となります。

 ※)あくまでサイヤ人のような、ナメック星人や他の宇宙人のような強さを持った人間です。尻尾は生えていませんし、口から卵を産めません。

【出典:東方Project】

・闇を操る程度の能力(250P)…光源を完全に遮断する闇を作り出せる
・冷気を操る程度の能力(30P)…魔力資質:氷結とほぼ同質、ただ効率は遥かに上
・気を使う程度の能力(50P)…所謂とらハでの武術の気とかと同質、色々と応用は効く
・魔法を使う程度の能力(100P)…SSSランクの魔導師と同質だが、デバイス特性は自動的にタイプ:書となる
・時間を操る程度の能力(40000P)…巻き戻しは出来ない
・運命を操る程度の能力(50000P)…過去は変えられない、転生者の運命は操作できない
・ありとあらゆるものを破壊する程度の能力(200000P)…転生者のスキルなどの『神』絡み以外なら概念すら破壊可能

 ※)弾幕能力は付属しません。

 ※)あくまで其々の能力を持った人間です。

【出典:速攻生徒会/風林火嶄】

攻校生:楯無(5000P)…セーラー服「楯無」を制御・操作できるようになります
   :熱血(3000P)…血液の変わりに1000度の炎が体を巡ります
   :電血(2500P)…血液の変わりに100万ボルトの電流が体を巡ります
   :最終格闘技・暗黒式攻撃術(1500P)…重力を操ると思われる謎の格闘技です

 ※)このスキルを取ると体力(耐久力)=魔力という体質に変化します。

 ※)多分人間です。

攻校生:本田愛(150P)…やることなすこと適当になります、何をしても勝利さえすればよかろうなのだになります
   :榊原 優子(50P)…凄まじい近眼になります、貧乳になります、勝てなくなります
   :井伊 みか(50P)…CV:かないみかになります
   :酒井 綾(100P)…プリンが好きになります

 ※)この個人名スキルを取ると強烈な個性に侵食されるため、それ以外の戦闘スキルを選択できなくなります。

【出典:魔法少女まどか☆マギカ】

・魔法少女:巴マミ(40P)…初期はリボンを操れるだけである
     :佐倉杏子(80P)…幻覚系魔法も問題なく使える
     :呉キリカ(150P)
     :暁美ほむら(100P)…過去に戻れないので時間操作は使用不能、何でも収納できるだけの盾

・改造人間:


【補助スキル】

・デバイス:このスキルを所有することで貴方は覚醒時に管理外世界でもデバイスを所持することが可能です。

 ※)所持している理由は余程の無理がない限り貴方の希望通りとなります。

 :ストレージ(5P~)
 :インテリジェンス/アームド(30P~)
 :オリジナル(100P~)

 ※)アームドデバイスはスキルの古代/近代ベルカタイプの選択が必要となります。

・製造:デバイスLv1~10(Lv1ごとに10P)
    ロスト・ロギア (500P)

 ※)デバイスLv1~4はストレージ、5~9でインテリジェンスもしくはアームド、10になると融合デバイスの自作が可能となります。

 ※)デバイスの製造は、管理世界かつ文明レベルが一定値に達している場所でないと、材料がないので作成できません。

・魔法技能開発Lv1~10(50P)

・恋愛:

 ※)恋愛スキルは第一印象や対象の好感情を増幅する効果をもたらします。

 ※)恋愛をするのはあくまでも貴方です、+補正はつきますが貴方の行動如何では失敗することもあるでしょう。

 ※)転生者には効果はありません。

・洗脳:sekkyou (250P)…貴方が『説教』した相手はすべからく貴方の盲目的な信者となります
   :ニコポ (100P)…貴方が『微笑み』かけた異性はすべからく貴方に盲目的な愛を捧げます
   :ナデポ (80P)…貴方が頭を優しく『撫でた』異性はすべからく貴方に盲目的な愛を捧げます
   :過去ポ (50P)…貴方が『つらい過去』を語った異性はすべからく貴方に盲目的な愛を捧げます

 ※)効果は使用者が生存する限り永続します。

 ※)他の使用者による上書きは可能です。

 ※)転生者には効果はありません。

【特殊スキル】

・魔法使用不可:→スキル選択(選択スキルの必要Pを0にする)

・攻撃魔法使用不可:→スキル選択(選択スキルの必要Pを1/3にする)

・防御魔法使用不可:→スキル選択(選択スキルの必要Pを1/2にする)

・単一魔法:→スキル選択(選択スキルの必要Pを1/10にする)
・使用可能魔法:魔法選択(スキル・単一魔法をとった場合、貴方が習得可能な魔法・戦闘スキルから一つ選択をする)

 ※)上記のスキルは、魔力値:E以上か魔導士ランクを選択しない場合、習得はできません。

 ※)魔法使用不可は当たり前ですがすべての魔法が使用できなくなるため、他の制限スキルと重複して習得することはできません。

 ※)攻撃/防御魔法使用不可と単一魔法を同時に習得することはできません。

 ※)攻撃/防御魔法使用不可を同じスキルに選択した場合、一旦修正した後のPを修正します。

・デスノート(500P)

 ※)転生者には効きません。
 ※)死神は付いてきません。

・死神の目(200P)…対象の名前と残り寿命がわかります

 ※)所有者の寿命は半分にはなりません。

・転生者一覧Lv1~5(Lv1ごとに50P)
 :Lv1…所有者が遭遇した転生者の情報が一覧に追加される
 :Lv2…最初から全員分の名前が一覧にのっている 
 :Lv3…最初から全員分の名前・スキルが一覧にのっている
 :Lv4…最初から全員分の名前・スキル・現在地が一覧にのっている
 :Lv5…最初から全員分の全情報が一覧にのっている

・部隊指揮Lv1~10(25P)
・艦隊指揮Lv1~10(50P)
・軍団指揮Lv1~10(100P)

 ※)指揮スキルはレベル×10%分指揮下の部下の能力が向上します。

・人見知り(-100P)…生涯、転生者以外の他人(血縁者はOK)とまともに会話できません

・貧乏Lv1~10(-50P)

 ※)Lv1で趣味に金が使えない、3で給料の大半は借金の利子、5で借金取りに追われ、10になると覚醒時に対策がなければバラで売られるレベル。

・金運:良い(20P)

・黄金律(700P)

・カリスマLv1~10(Lv1ごとに100P)

・第1世代コーディネイター(15P)
・第2世代コーディネイター(30P)
・スーパーコーディネイター(50P)

・不老(7500P)

・不死(100000P)

 ※)この不死は本当になんのデメリットもないスキルです。肉体が完全に消滅しても、再生が可能です。

・秀才(30P)

・天才(100P)…問いを見て答えが瞬時に脳裏に浮かぶ、初陣でエースなどの一般的に言われる天才

・天才・特定(基本的に+)…特定の天才が原典で成し遂げた発明や技術などを再現できます

・超天才(250P)…所謂アニメや漫画の世界の発明や技術を過程をすっ飛ばして再現することが可能

 ※)過程を飛ばしたモノは本人以外に再現できませんが、なのは世界における技術系統を絡めて進めた場合は失伝しない限り後世に伝わるでしょう。

・天命:

・運命:闇の書のプログラム正常化(50P)…消滅するリインフォースを救えるでしょう
   :管理局との敵対(-100P)…貴方の行動は意識・無意識にかかわらず管理局に敵対する行為となります

・運勢:天運(200P)…貴方の行動の尽くが貴方にとって都合の良い方向に進みます
   :豪運(100P)…所謂主人公補正に近い幸運が貴方を護っています
   :良い(50P)…貴方は大抵の時にラッキーと思う事柄が起こります
   :悪い(-50P)…貴方は大抵の時に「なんで俺がこんな目に……」と思うことでしょう
   :かなり悪い(-100P)…周囲のミスが殆ど貴方に降りかかるように不運が集まります
   :最悪(-200P)…一歩間違えれば運悪く死亡するような毎日です

【ルール外】

・限界突破

 貴方は才能の限界を突破しました。

 ※)貴方は努力や執念の果てにスキルがレベルアップしました。

 ※)魔力値、魔導師スキルを習得しない場合でも限界突破により、Aランク相応の魔法資質を得ることは可能です。

・貴方は天寿を全うするか、道半ばで力尽きた場合、持ち点に応じた死後の世界が用意されています。

 ◆持ち点100P

 上記を満たした段階で天寿を全うした場合。

 選択スキルが限界突破した場合か、『リリカルなのは』の世界の教科書に名を残すか、原作に対し多大な影響を与えた場合は安らかな眠りが用意されています。

 ただし、何事もなし得なかった場合は、持ち点100P分の死後の労役が発生します。

 ◆持ち点100P超過

 上記の場合は必ず死後の労役は発生します。

 ちなみに必要P超過をしつつ、スキルに不死やそれに類するものを習得している場合、効果に矛盾が発生しますが寿命にいたれば死にます。






 情報は順次追記していきます。









【以下、本編ネタバレ情報】











最終話で判明する(予定)ことですが、どうでもいいといえばどうでもいいことなので。




・『神』の目的
 この『神』は、本質的に『ザイクロイド・アノド』であり、性質は『ルドラサウム』的な面を持っており、契約に関しては『QB』的な誠実さを持っています。
 基本的に、人間の感情を理解することはないでしょう。

 目的は完成してしまった自分が新たに生み出せない『力』を得ること。
 そのために異世界から『転生を望む』魂を召喚して、『力』貸し出し『進化』させようと一方的に『契約』します。

 なので本来は[限界突破]を成し得た転生者以外はどうでもいいのですが、『契約』を交わした以上、死後の安息程度はサービスで与えています。

 つまり、「歴史に名を残す、又は原作を改変した場合の労役免除」は100P内でやりくりした『役たたず』に与えられる最大限のサービスです。

・死後の労役
 『神』は転生者に対して、最低限貸し与えた『力』の1割は上乗せして返してもらわないと損と考えています。

 が、死後は『力』を失い、全てが曖昧な魂状態なのでなにも生み出せない状態です。
 よって、絶望や恐怖などの感情を繰り返し与えて魂を無理やり活性化させることで、人間の体感時間で1年につき『1P』ほどの『力』が発生します。

 つまり、『天鏡将院八雲』を例に挙げると7758年の労役が発生することになります。

 そして『山田三郎』は魂状態にも関わらず、はっきりとした意識を取り戻し、その際に自分が使用した『250950P』分の『力』を無から生み出しました。
 この時点で『神』的には黒字です。
 今回の転生で使用した『力』の総量はPにすると約80万Pでした。
 あと、こんなことが出来るのは『山田三郎』が最初で最後です。

 最後に、幾ら[限界突破]をしようと『力』の性質が変化するだけなので、100P超過組はどれだけ[限界突破]しても死後の労役は減りません。


[限界突破]について

 これは習得スキルによってしやすいものとしにくいもの、不可能なものがあります。

 ①しやすいものは、Lvタイプのものや、上位スキルが存在するもの。
 ②しにくいものは、上位スキルが存在しても、生半可な努力ではたどり着けないもの。
 ③不可能なものは、完成されているもの、最上位のスキルというもの。

 ①は本編でペンドラゴンやルミカのような、念能力や騎士のスキルになります。
 ②は簡単なところで魔力値:SSSSSから魔力値:無限への[限界突破]、間が開きすぎてほぼ不可能といってもいいでしょう。
 ③は魔力値:無限が代表例。このスキルひとつで全次元世界の過去・現在・未来全てのエネルギーを内包しています。この上はありません。

 また、【】で覆われているスキルは転生者が生み出した専用スキルです。

 『神』的に一番おいしい[限界突破]になります。

・【】のスキル解説

【天元突破:気合を魔力に変換】
効果:文字通り気合で魔力を生み出すスキルです。所有者のテンション次第で無限の魔力を生み出すでしょう。

【種族:英霊】
効果:貴方は語られる英雄として、座に顕在する英霊として魂状態での行動が可能となります。

【英霊降臨】
効果:召喚を必要とせず、自分の意思で助けを求める人間の元に降臨できます。

【英雄(日本→地球限定):黄金のヒーロー】
効果:所謂主人公的な不屈効果を得るスキルです。貴方を信じる者の祈りが、貴方が救った者の声が届く限り貴方の力が尽きることはないでしょう。

【発:極・中段正拳突き】
効果:原典の『貧者の薔薇』に幾分劣る程度の威力を持っています。誓約等を組み合わせれば『王』も撃破可能(当てられれば)かもしれません。

【鉄壁:魔法や武器に付加された効果を無効化する】
効果:通常の結界破壊効果や魔力結合分断等の無効化のみならず、転生者の戦闘スキルの特殊効果も自身の魔力以下のものは無効化します。

【守護霊:アリサ・バニングス】
効果:文字通りアリサ・バニングスの守護霊です。アリサ・バニングスが死亡するまで消滅することはありません。

【浄炎‐PURGATION BLAZE‐】
効果:転生者を強制的に転生の間に送還します。送還された転生者はもちろん死亡扱いとなります。

【ハイパー・コーディネイター】
効果:スーパー・コーディネイターを超越した身体能力と反応速度を得ます。同時に不老効果を習得しています。

【グレート・コーディネイター】
効果:ハイパー・コーディネイターを超越しました。所謂ガンダムファイターと互角以上に戦えます。

【時間制御:棒立ち】
効果:ロックオンした瞬間から命中するまで、対象は時が止まったのかのように棒立ち状態になります。

【運命制御:被弾しない】
効果:まるで運命に操られるかのごとく、所有者を狙う射撃攻撃は命中しません。

【手加減:生きてないと僕の悪行を語れないだろう?】
効果:所有者の全ての攻撃は非殺傷設定がかかったかのごとく絶妙な手加減がなされています。但し転生者に効果はありません。

【恐怖公:他人の恐怖を魔力に変換】
効果:己の行いで他人を恐れさせるとその恐怖心が自分の魔力となります。

【生命吸収】
効果:所有者が殺害した対象の数だけ寿命が1日づつ伸びます。動物なら種類を問いません。

【守護者:聖王】
効果:オリヴィエ聖王女の血統を守護する精神体の騎士です。時間制限もありますが実体化も可能です。現在直系は存在しません。

【種族:神】
効果:文字通りの神です。現在の管理世界に対してはほぼ全能とも言っていいレベルの影響を持ちます。

【無限結界師】
効果:無限の魔力を持つ結界魔導師です。

【世界結界:リーンの翼】
効果:全次元世界に以下の恩恵が与えられます。
・ユーノ・スクライアが幸せになりやすい世界に改変されている。
・スクライア一族の魔法起動時、起動中のエフェクトにメルヘン・ウイングが追加される。
・スクライア一族を追放されると、能力・記憶を剥奪される。
・スクライアはその名をもって一族となる。

【天眼:戦場を盤外から見るように把握できる】
効果:所謂SLGなどのプレイヤー視点で戦場を俯瞰できます。

【大殺界:停止】
効果:対象の動きを停止させます。

【守護者:覇王】
効果:覇王イングヴァルトの血統を守護する精神体の騎士です。時間制限もありますが実体化も可能です。現在直系はホーリー・ストラトス。

【神器:無敵戦艦『キング・アルティメット・スーパー・ジャッキーガーン』】
効果:ゆりかごの一億倍強い全長75kmの凄い戦艦です。

【神器:神剣『ウルトラ・ハイパー・クリティカル・オーリシュデソード』】
効果:ありとあらゆるものを切断する凄い剣です。

【神器:神盾『グレート・スペシャル・エクセレント・チューニーノシールド』】
効果:ありとあらゆるものを防ぐ凄い盾です。

※)神剣と神盾が激突すると矛盾が生じて大規模次元震が発生し巨大な虚数空間が周囲を飲み込みます。

【未来秘密工房】
効果:この工房内で行われる実験・発明は全て持ち主の望む結果が出ます。

【幻想無効】
効果:転生者の持つリリカルなのは世界の魔法以外を全て無効化します。

【発・仙豆】
効果:この豆を食すると死亡状態以外の負傷・状態異常が回復し、満腹になります。一度に一つしか創り出せません。一時間しか保存できません。

【貫通:素手による攻撃が障壁・結界破壊効果を持つ】
効果:素手の攻撃にバリアブレイク効果が付与されます。およそ魔力によるものであれば魔法形式を問いません。

・いろいろな転生者

 リーンや山田三郎のような特例は除き、基本的に転生者は何らかの我欲を持って動いています。
 リーゼフランや八神迅雷のように特定個人のために原作破壊をするものもいれば、天鏡将院八雲や量産型のように原作をなぞりながらところどころで介入しようとするマッチポンプ型もいます。

 全体の1割以上を占める求道者型は、第二の人生でこそ成功を手にしたいという転生者たちで、成長が見込めるスキルを低いところから取り、強くなっていく過程を楽しむタイプです。

 また、精神が一般人を突き抜けているように見える転生者が多いのは、この転生がP制の為、役になりきっている人が多いからです。
 通常、この手のなりきり型は壁にぶつかればメッキが剥げるものですが、そこはご安心の『神』メッキ、生半可な壁では剥がれません。



・系統図(新暦65年時)

【テスタロッサ・スラッシャー家】

 前夫(?)
  |
  ├───────アリシア(30)
  |        ├──────エリオ(9)
 プレシア(59)  カールライト(37)
  |
  ├───────フェイト(24)
  |        ├──────レヴィ(5)
 バラン(51)   レオン(31)


【ゲイズ・ディアーチェ家】

 ???
  ├───────オーリス(22)
 レジアス(44)   ├──────┬レナード(3)
          マイヤー(26) |
                   └ロード(5)

 ザフィーラ(?)
  |
  ├───────リインフォース・ツヴァイ(2)
  |
 リインフォース・アインス(?)

【八神家】

  はやて母(33)
   ├──────はやて(9)
 ┌はやて父(36)
 ┤
 └迅雷(29)



[28418] ・転生者一覧(20話終了時点)
Name: タナカ◆68fc5ba6 ID:85f33da0
Date: 2012/01/03 08:10
 キャラ確認用の転生者一覧です。
 名前のみは作中に登場、主人公とは未遭遇のキャラになります。

No.001:照明

No.002:照明

No.003:天鏡将院 八雲
 年齢:死亡(/8歳:死亡前日に八神はやてと遭遇)
・総合SSSSランク魔導師(600P)
・斬魄刀:天鎖残月(900P)
・洗脳:sekkyou(250P)
・幻想殺し(50000P)
・幽波紋:ザ・ワールド(25000P)
・デバイス:ストームブリンガー(500P)
・容姿:超絶美形(300P)
・名前:天鏡将院八雲(30P)
 現在地:第97管理外世界

No.004:照明

No.005:高町 ゆきの
 年齢:10歳(/100歳)
・空戦Sランク魔導師(50P)
・マルチタスクLv10(30P)
・容姿:美形(20P)
・男運:悪い(-30P)
・恋愛:特定(5P)
・恋愛:一目惚れ(15P)
・恋愛:ユーノ・スクライア(10P)
【天元突破:気合を魔力に変換】[限界突破]
 現在地:第97管理外世界

No.006:東 樹
 年齢:死亡(/10歳:転入してきた日になのはたちと遭遇)
・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・王の財宝(10000P)
・洗脳:ニコポ(100P)
・洗脳:ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:東樹(10P)
 現在地:第97管理外世界

No.007:鳳凰院 朱雀
 年齢:死亡(/15歳:転入してきた日になのはたちと遭遇)
・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・洗脳:ニコポ(100P)
・洗脳:ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:鳳凰院朱雀(25P)
 現在地:第97管理外世界

No.008:照明

No.009:神薙北斗
 年齢:死亡(/19歳:転入してきた日になのはたちと遭遇)
・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・流派:北斗神拳(300P)
・洗脳:ニコポ(100P)
・洗脳:ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:神薙北斗(20P)
 現在地:第97管理外世界

No.010:レオン・テスタロッサ・スラッシャー
 年齢:32歳(/100歳)
・出身:何らかの研究施設(-200P)
・空戦SSランク魔導師(100P)
・幽波紋:エンペラー(200P)
・恋愛:フェイト・テスタロッサ(50P)
・貧乏Lv1(-50P)
 現在地:第1管理世界ミッドチルダ

No.011:照明

No.012:ミース・スクライア
 年齢:10歳(/100歳)
・出身:スクライア一族(10P)
・Sランク結界魔導師(25P)
・マルチタスクLv5(15P)
・秀才(30P)
・美形(20P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.013:リーゼフラン・グレアム
 年齢:36歳(/100歳)
・出身:何らかの実験施設(-200P)
・魔力値:無限(1000P)
・魔法使用不可:→魔力値(-1000P)
・軍師孔明(100P)
・運勢:天運(200P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.014:森元与平
 年齢:死亡(/100歳)
・運命:原作に絶対関わることはない(100P)
 現在地:第97管理外世界

No.015:カイ・スターゲイザー
 年齢:10歳(/17歳:転入してきた日になのはたちと遭遇)
・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・デバイス:スターゲイト(600P)
・洗脳:ニコポ(100P)
・洗脳:ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:カイスターゲイザー(27P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.016:衛宮 士郎

No.017:照明

No.018:照明

No.019:照明

No.020:照明

No.021:山田 三郎
 年齢:死亡(/24歳:ゆきのと別れた直後はやてたちと遭遇)
【種族:英霊】[限界突破]
・総合SSSSSランク魔導師(900P)…使用不可
・マルチタスクLv100→500(300P)[限界突破]…使用不可
・デバイス:クロック・タイム(200P)…使用不可
・王の財宝(10000P)…使用不可
・乖離剣・エア(5000P)…使用不可
・天の鎖(250P)…使用不可
・カリスマLv10(1000P)…使用不可
・黄金律(700P)…使用不可
・ベクトル操作(80000P)…使用不可
・不老(7500P)…使用不可
・不死(100000P)…使用不可
・時間を操る程度の能力(45000P)…使用不可 
・容姿:英霊・ギルガメッシュ(100P)…一応そのまま 
・誰かが助けを呼ぶ声が聞こえる[限界突破]…一応そのまま
・誰かのピンチに偶然居合わせる[限界突破]…使用不可
・悪の企みを察知する[限界突破]…一応そのまま
・悪事の現場を偶然通りかかる[限界突破]…使用不可
【英霊降臨】[限界突破]
【英雄(地球限定):黄金のヒーロー】[限界突破]
 現在地:第97管理外世界

No.022:孫 悟欽
 年齢:39歳(/100歳)
・魔力値:SS[限界突破]
・魔力値:SSS[限界突破]
・総合Sランク魔導師(50P)
・サイヤ人:戦闘力50→5000(50P)[限界突破]
・界王拳Lv1→10[限界突破]
・念能力:具現化系・覚醒初期(200P)
・念能力:具現化系・試験官級[限界突破]
・念能力:具現化系・旅団戦闘員級[限界突破]
【発・仙豆】[限界突破]
・胃袋:ナゾノ・ヒデヨシ級(40P)
・体型:標準+10(10P)
・貧乏Lv5(-250P)
【貫通:素手による攻撃が障壁・結界破壊効果を持つ】[限界突破]
 現在地:第57管理世界ポートコラ

No.023:八神 迅雷
 年齢:30歳(/100歳)
・総合Aランク魔導師(5P)
・家族:八神はやての叔父(40P)
・魔力値:SSSSS(500P)
・単一魔法:→魔力値(-450P)
・使用可能魔法:フレイム・ショット
・身長:190cm(5P)
・攻校生:熱血[限界突破]
 現在地:第1管理世界ミッドチルダ

No.024:天宮 聖
 年齢:死亡(/15歳:転入してきた日になのはたちと遭遇)
・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・洗脳:ニコポ(100P)
・洗脳:ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:天宮聖(15P)
 現在地:第97管理外世界

No.025:照明

No.026:カールライト・テスタロッサ
 年齢:38歳(/100歳)
・出身:ベルカ自治区(5P)
・総合Sランク魔導師(50P)
・マルチタスクLv5(15P)
・デバイス:アームド・デバイス(30P)
・恋愛:アリシア・テスタロッサ(10P)
 現在地:第1管理世界ミッドチルダ

No.027:

No.028:エミヤ・シロウ

No.029:アーク・スクライア
 年齢:10歳(/100歳)
・出身:スクライア一族(10P)
・SSランク結界魔導師(50P)
・美形(20P)
・頭髪:銀髪+赤毛(10P)
・虹彩異色症:金+青(10P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.030:ペンドラゴン
 年齢:60歳(/100歳)
・念能力:強化系・覚醒初期(100P)
・念能力:強化系・試験官級[限界突破]
・念能力:強化系・旅団戦闘員級[限界突破]
・念能力:強化系・協会会長級[限界突破]
【発:極・中段正拳突き】[限界突破]
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.031:

No.032:

No.033:ミストナム・フライム
 年齢:16歳(/100歳)
・出身:ベルカ自治区(5P)
・総合Sランク魔導師(50P)
・恋愛:特定(5P)
・恋愛:一目惚れ(15P)
・恋愛:シャマル(25P)
 現在地:第1管理世界ミッドチルダ

No.034:プリンス・ツールフ
 年齢:28歳(/100歳)
・出身:スラム(-100P)
・サイヤ人:戦闘力100→3900(100P)[限界突破]
・総合SSランク魔導士(100P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.035:

No.036:照明

No.037:ロベルト・ナカジマ
 年齢:34歳(/100歳)
・出身:孤児院(-30P)
・SSSSランク結界魔導師(300P)
・攻撃魔法使用不可:→SSSSランク結界魔導師(-200P)
・マルチタスクLv10→50(30P)[限界突破]
【鉄壁:魔法や武器に付加された効果を無効化する】[限界突破]
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.038:

No.039:

No.040:リーゼエルザ・グレアム
 年齢:36歳(/100歳)
・出身:何らかの実験施設(-200P)
・総合SSランク魔導士(100P)
・マルチタスクLv100→5000(300P)[限界突破]
・攻撃魔法使用不可:→マルチタスク(-200P)
・運勢:豪運(100P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.041:ハーケンセイバー・ストライト

No.042:カウリ
 年齢:23歳(/100歳)
・聖闘士:山羊座(12000P)
・魔法使用不可:→聖闘士(-12000P)
・魔力値:SSS(100P)
・魔力値:SSSS[限界突破]
・魔力値:SSSSS[限界突破]
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.043:

No.044:カイト・ゴーダ
 年齢:16歳(/100歳)
・出身:没落した名家(-50P)
・空戦Sランク魔導師(50P)
・デバイス:アームド/ケーニヒスヘルト(100P)
・容姿:美形(20P)
・恋愛:シグナム(30P)
・運勢:悪い(-50P)
 現在地:第1管理世界ミッドチルダ

No.045:キラ・ヤマト
 年齢:21歳(/100歳)
・総合SSSSSランク魔導師(900P)
・マルチタスクLv10→1000(30P)[限界突破]
・容姿:キラ・ヤマト(40P)
・デバイス:ストライクフリーダム(100P)
・誰も自分のことを信じない(-500P)
・誰も自分の言うことを理解しない(-500P)
・名前:キラヤマト(15P)
・コーディネイター(15P)
・スーパー・コーディネイター[限界突破]
【ハイパー・コーディネイター】[限界突破]
【グレート・コーディネイター】[限界突破]
【時間制御:棒立ち】[限界突破]
【運命制御:被弾しない】[限界突破]
【手加減:生きてないと僕の悪行を語れないだろう?】[限界突破]
【恐怖公:他人の恐怖を魔力に変換】[限界突破]
 現在地:第12管理世界フェディキア

No.046:リーゼマリナ・グレアム
 年齢:36歳(/100歳)
・出身:何らかの実験施設(-200P)
・Sランク結界魔導師(25P)
・マルチタスクLv25→1000(75P)[限界突破]
・真贋判定(100P)
・運勢:豪運(100P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.047:ルミカ・シェベル
 年齢:19歳(/100歳)
・騎士:ヘッドライナー・公安騎士(50P)
・騎士:ヘッドライナー・騎士[限界突破]
・騎士:ヘッドライナー・国家騎士[限界突破]
・騎士:ヘッドライナー・天位[限界突破]
・騎士:ヘッドライナー・小天位[限界突破]
・SSランク結界魔導師(50P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.048:

No.049:照明

No.050:

No.051:エミヤ

No.052:龍閃 光峨
 年齢:死亡(/15歳:転入してきた日になのはたちと遭遇)
・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・洗脳:ニコポ(100P)
・洗脳:ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:龍閃光峨(20P)
 現在地:第97管理外世界

No.053:ビアン・イーグレット

No.054:

No.055:リュウ・サカザキ

No.056

No.057:照明

No.058:ゾート・■■■■■
 年齢:死亡(/20歳:覚醒直後ユーノと遭遇)
・総合SSランク魔導師(100P)
・出身:■■■■■一族(10P)
・十傑集:素晴らしきヒィッツカラルド(300P)
・洗脳:sekkyou(250P)
 現在地:第97管理外世界

No.059:照明

No.060:

No.061:フーカ・スクライア
 年齢:10歳(/100歳)
・出身:スクライア一族(10P)
・SSランク結界魔導師(50P)
・美形(20P)
・金運:良い(20P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.062:

No.063:虎桜院闇守
 年齢:死亡(/15歳:転入してきた日になのはたちと遭遇)
・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・無限の剣製(1000P)
・洗脳:ニコポ(100P)
・洗脳:ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:虎桜院闇守(25P)
 現在地:第97管理外世界

No.064:

No.065:

No.066:ゼロ

No.067:

No.068:

No.069:皇劉騎
 年齢:死亡(/24歳:転入してきた日になのはたちと遭遇)
・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・改造人間:ライダータイプ(50P)
・洗脳:ニコポ(100P)
・洗脳:ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:皇劉騎(15P)
 現在地:第97管理外世界

No.070:ゲルカ
 年齢:80歳(/380歳)[限界突破]
・出身:何らかの研究施設(-200P)
・Sランク陸戦魔導師(25P)
・マルチタスクLv5(15P)
・防御魔法使用不可:→念能力(-750P)
・容姿:異形(-300P)
・女運:最悪(-150P)
・身長:230cm(20P)
・デバイス:インテリジェンス(40P)
・誰とも会話出来ない(-300P)
・超能力:ESP・書を守る者クローン級(300P)
・念能力:特定・メレオロン(1500P)
・貧乏Lv2(-100P) 
【生命吸収】[限界突破]
 現在地:未登録無人世界・秘境『妖精郷』

No.071:

No.072:

No.073:照明

No.074:照明

No.075:ロードリッヒ・セルバイアン
 年齢:26歳(/28歳)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・総合SSSSランク魔導師[限界突破]
・総合SSSSSランク魔導師[限界突破]
・アーティファクト:千の顔を持つ英雄(1000P)
 現在地:第62管理外世界セッツァール

No.076:

No.077:

No.078:エーリヒ・ヨアヒム・ルーデル
 年齢:20歳(/100歳)
・空戦SSランク魔導師(100P)
・空戦SSSランク魔導師[限界突破]
・空戦SSSSランク魔導師[限界突破]
【幻想無効】[限界突破]
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.079:

No.080:ローランド・バスターバルカン
 年齢:死亡(/100歳)
・出身:古代ベルカ(-300P)
・総合SSランク魔導師(100P)
・総合SSSランク魔導師[限界突破]
・マルチタスクLv10(30P)
・ARMS:ナイト・第一形態(250P)
・ARMS:ナイト・最終形態[限界突破]
・容姿:美形(20P)
【守護者:聖王】[限界突破]
 現在地:虚数空間

No.081:

No.082:

No.083:照明

No.084:ギル・ディラン
 年齢:死亡(/39歳:覚醒直後にリーゼアリアとすれ違う)
・魔力値:SS[限界突破]
・魔力値:SSS[限界突破]
・魔力値:SSSS[限界突破]
・空戦Sランク魔導師(50P)
・元斗皇拳(250P)
 現在地:第2管理世界アイヤール

No.085:

No.086:

No.087:

No.088:ウィンド
 年齢:31歳(/100歳)
・修行を積むことでNINJAになれる(100P)
・NINJA:木の葉下忍級[限界突破]
・NINJA:木の葉中忍級[限界突破]
・NINJA:木の葉上忍級[限界突破]
・NINJA:木の葉火影級[限界突破]
・NINPOU:三代目火影・猿飛ヒルゼン [限界突破]
・NINPOU:単身赴任のサラリーマン[限界突破]
・NINPOU:ニンジャマスター・ガラ[限界突破]
 現在地:第99管理外世界クォンタム

No.089:

No.090:リーン
 年齢:──(/──)
【種族:神】[限界突破]
・SSSランク結界魔導師(150P)
・SSSSランク結界魔導師[限界突破]
・SSSSSランク結界魔導師[限界突破]
【無限結界師】[限界突破]
・出身:原作開始前時にはすでに死亡(-500P)
・スクライア一族に対する洗脳タイプの魔法無効化(200P)
・ユーノ・スクライアが不幸にならない(250P)
【世界結界:リーンの翼】[限界突破]
 現在地:封印世界・楽園の星ヴァルハラ

No.091:マイヤー・ディアーチェ
 年齢:27歳(/100歳)
・運命:闇の書のプログラム正常化(50P)
・出身:没落した名家(-50P)
・総合AAAランク魔導師(25P)
・総合Sランク魔導師[限界突破]
・総合SSランク魔導師[限界突破]
・魔力値:SS→SSSS(50P)[限界突破]
・マルチタスクLv5→50(15P)[限界突破]
・デバイス:夜天の書のバックアップ(50P)
・部隊指揮Lv1[限界突破]
・運勢:悪い(-50P)
・恋愛:原作キャラ(10P)
【天眼:戦場を盤外から見るように把握できる】[限界突破]
 現在地:第1管理世界ミッドチルダ

No.092:

No.093:

No.094:

No.095:ユージン・バニングス
 年齢:死亡(/100歳)
・家族:アリサ・バニングスの兄(50P)
・秀才(30P)
・容姿:美形(20P)
【守護霊:アリサ・バニングス】[限界突破]
【浄炎‐PURGATION BLAZE‐】[限界突破]
 現在地:第97管理外世界

No.096:

No.097:

No.098:

No.099:バラン・テスタロッサ
 年齢:52歳(/100歳)
・出身:クラナガン(10P)
・総合Sランク魔導師(50P)
・マルチタスクLv10(30P)
・恋愛:プレシア・テスタロッサ(10P)
 現在地:第1管理世界ミッドチルダ

No.100:レイ・ドラグーン
 年齢:死亡(/10歳:転入してきた日になのはたちと遭遇)
・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・王の財宝(10000P)
・洗脳:ニコポ(100P)
・洗脳:ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:レイドラグーン(21P)
 現在地:第97管理外世界

No.101:

No.102:グラハム・イェーガー
 年齢:28歳(/100歳)
・出身:第1管理世界(3P)
・覚醒:+4歳(-40P)
・空戦SSランク魔導師(100P)
・空戦SSSランク魔導師[限界突破]
・容姿:グラハム・エーカー(25P)
・名前:グラハム(12P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.103:

No.104:照明

No.105:ラーナ・スクライア
 年齢:10歳(/100歳)
・出身:スクライア一族(10P)
・SSSランク結界魔導師(150P)
・マルチタスクLv5(15P)
・デバイス:フォルセティ(5P)
・美形(20P)
・人見知り(-100P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.106:

No.107:ジョン・スミス

No.108:極東日昇
 年齢:46歳(/100歳)
・覚醒:+5歳(-50P)
・出身:何らかの研究施設(-200P)
・魔力値:AAA(10P)
・総合Aランク魔導師(5P)
・マルチタスクLv5(15P)
・超天才(250P)
・魔法技能開発Lv1→10(50P)[限界突破]
【未来秘密工房】[限界突破]
・名前:極東日昇(20P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.109:

No.110:刹那・スカーレット・ナイブズ
 年齢:死亡(/19歳:転入してきた日になのはたちと遭遇)
・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・空戦SSSランク魔導師(300P)
・幽波紋:シルバー・チャリオッツ(500P)
・洗脳:ニコポ(100P)
・洗脳:ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:刹那スカーレットナイブス(40P)
 現在地:第97管理外世界

No.111:ジーニッファ・ヴォラギノル

No.112:

No.113:謎野食通
 年齢:36歳(/100歳)
・出身:管理世界(1P)
・覚醒:+5歳(-50P)
・陸戦SSランク魔導師(50P)
・マルチタスクLv6→150(18P)[限界突破]
・魔法少女:巴マミ(40P)
・盟友:ゼスト・グランガイツ(1P)
・容姿:レーツェル・ファインシュメッカー(20P)
・名前:謎野食通(20P)
 現在地:第1管理世界ミッドチルダ

No.114:

No.115:

No.116:エメラルダ・カスティン
 年齢:死亡(/100歳)
・出身:古代ベルカ(-300P)
・総合SSランク魔導師(100P)
・総合SSSランク魔導師[限界突破]
・マルチタスクLv10(30P)
・魔法少女:呉キリカ(150P)
・容姿:超美形(100P)
・恋愛:イングヴァルト(20P)
【大殺界:停止】[限界突破]
【守護者:覇王】[限界突破]
 現在地:虚数空間

No.117:

No.118:ヘンリー・コールドウェル
 年齢:18歳(/100歳)
・出身:第1管理世界(3P)
・覚醒:+5歳(-50P)
・空戦AAAランク魔導師(25P)
・マルチタスクLv7(21P)
・運勢:豪運(100P)
・親友:ティーダ・ランスター(1P)
 現在地:第1管理世界ミッドチルダ

No.119:

No.120:照明

No.121:ウィリー・カタギリ
 年齢:28歳(/100歳)
・出身:クラナガン(10P)
・天才:特定・篠之乃束(50P)
・人物登録(3/5):→グラハム・イェーガー
         →リーゼフラン・グレアム
         →マーナ
・製造:デバイスLv1→10(10P)[限界突破]
・製造:インフィニット・ストラトス型デバイス[限界突破]
・女運:良い(30P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.122:照明

No.123:

No.124:ギーズ・ゴッドスペル

No.125:照明

No.126:カーミィナル・ドーン
 年齢:17歳(/50歳:覚醒1週間後にギル・グレアムと遭遇)
・出身:何らかの実験施設(-200P)
・SSSSSランク結界魔導師(450P)
・攻撃魔法不可:→悪魔の実(-600P)
・防御魔法不可:→SSSSSランク結界魔導師(-225P)
・悪魔の実:ゴロゴロの実(900P)
・貧乏Lv2(-100P)
 現在地:次元空間・全時空平和委員会本局

No.127:オーリシュデ・チューニーノ・ジャッキーガーン
 年齢:死亡(/100歳)
・出身:アルハザード(-1000P)
・超天才(250P)
・製造:ロスト・ロギア(500P)
・製造:神器複製[限界突破]
・製造:神器創造[限界突破]
・ボケ防止(250P)
・スカリエッティのクローン元(40P)
・名前:オーリシュデチューニーノジャッキーガーン(60P)
【神器:無敵戦艦『キング・アルティメット・スーパー・ジャッキーガーン』】[限界突破]
【神器:神剣『ウルトラ・ハイパー・クリティカル・オーリシュデソード』】[限界突破]
【神器:神盾『グレート・スペシャル・エクセレント・チューニーノシールド』】[限界突破]
 現在地:次元の狭間・アルハザード

No.128:照明

No.129:アレクサンドロ・セラフィス
 年齢:死亡(/9歳:転入してきた日になのはたちと遭遇)
・転校生:9歳のなのはと同じクラス(30P)
・総合SSSランク魔導師(300P)
・王の軍勢(20000P)
・洗脳:ニコポ(100P)
・洗脳:ナデポ(80P)
・容姿:超美形(100P)
・名前:アレクサンドロセラフィス(36P)
 現在地:第97管理外世界

No.130:高町勇治
 年齢:10歳(/100歳)
・総合Aランク魔導師(5P)
・Sランク結界魔導師(25P)
・マルチタスクLv5(15P)
・転生者一覧Lv1《53/107》(50P)
・身長:185cm(3P)
・体型:標準+2(2P)
 現在地:第97管理外世界


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