○クランクイン
こんにちは。私、アンナ・クアンタって言います。九歳です。
突然ですけれど、私は今、あるところにいます。
目の前にはとてもたくさんのカメラがあって、フラッシュをピカピカ光らせるので眩しくて目が痛いです。でも、だからと言って目を細めていると、私が笑っていると勘違いした記者さんが余計にカメラをパシャパシャするんですよ。これじゃあ、いつ目を開ければいいのか分かりません。
では、私が一体何処にいるのかを教えちゃいますね。
実は今、私は記者会見というものに出席しているんです。
一体何の記者会見なのかと言うと。
「監督にお伺いします。作品に出演する主要登場人物には子供が多いようですが、子役の選出には苦労されましたか?」
実は私、今、映画の製作発表の場に出席しているんです。
何で私が出席しているのかと言うと、なんと、私がこの映画に出演させていただくからなんです!
出演が決まった時はすごく嬉しかったです。事務所の社長さんとマネージャーさん、それにママも一緒になって飛び跳ねて喜んじゃいました。
しかも、物語の中でも結構重要な役を演じるんですよ。すごいでしょ。
「そうですねぇ。出演希望者を募ったところ、本当にたくさんのご応募をいただきました。その中から、この作品の魅力を最大限に引き出してくれるだろうと、私が確信を持てるくらいの子達を選んだつもりですからね。そりゃあ大変でしたよ」
監督が得意気にそう言うものだから、記者の皆さんも胸をドキドキワクワクさせています。皆口を大きく開けて驚いちゃってるんだから。
「では! その選ばれた子供達の中でも監督が特に注目している子はいますか!?」
監督が腕を組みながら「うーん」と唸っています。迷っているのかな?
でも、きっと監督の答えは決まっているんだろうな。
だってこの映画の主演を務める子は、テレビに映らない日がないくらいに人気のある天才子役、リュッカちゃんなんだから。
「そうですねぇ…………もちろん、皆それぞれ良いものを持っているんですが、その中でも強いて挙げるならば…………」
私の隣に座っているリュッカちゃんが目を輝かせています。
こうして隣で見ていると、やっぱりリュッカちゃんは可愛いなぁ。さすがは主演を務めるだけのことはあるなぁって思っちゃいます。
彼女の名前が呼ばれたら、私も拍手でお祝いしてあげようっと!
「アンナ・クアンタ……彼女ですかね」
…………え?
カメラのフラッシュがさっきよりもいっぱい集まってきて、私は思わず目をぎゅっと閉じちゃいました。
眩しいです。目の前に何も見えません。
そんな時、突然耳元でリュッカちゃんの声が聞こえました。
「おめでとう、アンナちゃん! せっかく期待されてるんだから、せいぜい良い演技を期待してるわねぇ……ふふふっ」
鳥肌が立ちました。
監督は一体何で私の名前を口にしたのでしょうか。私なんて今まで一度も主役を演じたことがないのに。
その時、私の爪先を誰かが踏みつけてきました。
痛い! 思わず歯を食いしばっちゃいます。
しかもそのタイミングで、さっきよりもたくさんのカメラが向けられたから、もう全然目を開けられません。
「良い笑顔だ! こっち向いて!」
「その満面の笑みは監督の期待に応えているんですね!?」
全然違います! 誰かが私の足を踏みつけて、グリグリグリグリしてくるんです!
「アンナちゃん! 何か一言お願いします!」
「いっ…………たい!」
その時、また聞こえたのはリュッカちゃんの声。
「アンナちゃん、ほらほら、ちゃんと自己紹介しないと……ねー」
いたたたたたたたっ!
私は痛みから一刻も早く逃れたくて、大きな声で一生懸命自己紹介をしました。
「フェッ……!」
「フェ?」
「フェイト・テスタロッサ役をやらせていただきますっ! アンナ・クアンタですっ! 足いててててて足手まといにならないように頑張りますっ!」
会見場に拍手とシャッターを切る音が響き渡ると、私はようやく苦痛から解放されました。
何だか、映画の撮影が無事に終わるのかどうか不安になってきましたが、大丈夫なんでしょうか?
『魔法少女リリカルなのはThe MOVIE 1st』の撮影、はじまります。
○上下関係
というわけで、とうとう映画がクランクインしました。
私、今まで大きな役を貰ったことがなくて、今回の大役がとっても嬉しいんです。
でも、大きな役でも小さな役でも、そんなに違いはないのかもしれないな。
どんな役でも作品の中ではとても大切で、あってもなくてもいいなんていう役は存在しないんだから。作品は、重要な大役から細かなちょい役、エキストラまで含めて、全てが合わさって素敵な仕上がりになるんだもんね。
だから今までどおり。初心を大切にして、頑張っていかないと!
「あら、フェイトちゃん」
あ、向こうからリュッカちゃんが近づいて来ました。
やっぱり他の出演者さんに会ったら、きちんとご挨拶しないとね。
「リュッカちゃんこんにちは。これから映画の撮影が始まっていくけど、よろしくね!」
歳が近いのもあって、彼女とは仲良く出来るといいなって思います。だからにっこり微笑んでご挨拶。
と、思ったのに。
「違うでしょう? フェイトちゃん?」
いったぁい! ほっぺがつねられてる!
「監督の方針をお忘れかしら? 良い映画は、製作スタッフやフィルムに映らない部分などの全てが作品の世界に染まってこそ作られるもの。そのためにも私達役者だって、クランクアップするまでの間は撮影時間外でもそれぞれの役名で呼び合っていきましょうって、お話があったでしょう?」
そ、そうでした。私は彼女のことを、役名で呼んであげないといけないんだった。
「ごめんなさい、なのはちゃん!」
「だから違うでしょう?」
ほっぺの激痛が更に強まっていきます! どうしてまだ許してもらえないの!?
痛みで涙が浮かんでくる中、私は考えてみました。すると、一つのことに気が付いたのです。
そうだった。劇中では、フェイトはなのはのことを呼び捨てにするんだった。
「なのは、ごめんなさぁい!」
「“様”が付いてねえだりゃおんどりゃああっ!」
なのは様!?
「にゃのひゃしゃまごみぇんにゃしゃーいっ!」
「ふんっ」
ようやく解放されました。
ほっぺたが取れちゃいそうで本当に痛かったし、怖かったです。両手で顔を挟んでみると、右のほっぺたがとても熱くって、でも形がちゃんとあって安心しました。
「フェイトちゃん、監督に期待されてるからってたるんでるんじゃないの?」
そんなことありません。私は初心を大切にしていこうって思っていたところなんです。
「役者を嘗めてるんでしょ?」
そんなことありません。私は役者を一生のお仕事にしたいって思っているくらいなんです。
「ってか私を嘗めてるんでしょ?」
滅相もございません。私めはなのは様と仲良くなれたらなって勝手ながら思っている次第でございます。
「いい? 私はあなたと違って天才子役なのよ? 才能が違うの」
「恐れ入ります」
「いいわ。じゃあ、テストをしてあげましょう。私があなたの役者としての力を試してあげる」
テスト? 一体どんなことをするんだろう?
もしかしてなのは様が演技指導をしてくれるのかな。それだと本当に嬉しいな。だって私は、いっぱい勉強して素敵な女優さんになりたいもの。
ちょっとドキドキするけれどワクワクもしている私は、「こっちに来て」というなのは様についていきました。
撮影機材を念入りにチェックするスタッフさん達の間を進み、監督と脚本家さんが真剣な面持ちで打ち合わせをしている横を歩き、「影を踏まないでくれる?」となのは様に怒られながら、私は現場の隅っこに連れてこられました。
なのは様はもうすぐ撮影が始まるということで、衣装を着ています。真っ白なワンピースタイプの学校制服に身を包んでいて、胸元の赤いリボンがちょっとオシャレです。髪を頭の上で二箇所、ツインテールに結わいている姿が可愛らしくて、なんだか羨ましいな。
思わず見惚れていると、なのは様が厳しく言いました。
「ちょっと! 集中しなさいよ!」
「あ、はい! ごめんなさい!」
「台本は持ってきてるわね? じゃあいくわよ」
なのは様が台本を捲りながら、ページ数を指定しました。
私は急いでそのページを開くと、そこは私とプレシアママが『時の庭園』と呼ばれる場所でお話をするシーンでした。
ここは結構シリアスなシーンで、ジュエルシードという魔法の石とケーキをママのところに持って帰った私は、ママに怒られておしおきをされてしまうのです。
まだこのシーンの撮影はずっと先の予定らしいけれど、鞭で叩かれたりプレシアママに怒られたりすることを考えると、今からちょっと震えちゃいそうです。
プレシアママを演じるレイランさんはベテラン女優さんで、私が目標としている人でもあります。
プレシアママは、制作発表会見後にちょっとお話してみたらとても優しい人でした。それに衣装合わせの時、劇中で着るセクシーなバリアジャケットを身に着けたプレシアママはすっごく綺麗でした。
しかも、私が顔を真っ赤にしながら見惚れていると、胸がほっとするような声で「似合う?」と言って微笑んでくれたんです。
そんなプレシアママに怒られるシーン。正直に言うと、実はあまりイメージが湧かないんです。
だから、こうしてなのは様が予行練習をしてくれるんだと思うと、やっぱり嬉しいな。
「じゃあ私がフェイトちゃんのママ役をやるからね」
「はい! お願いします!」
緊張が全身を駆け抜けていきます。
ううー! 頑張らなくちゃっ!
そしていよいよ始まります。
なのは様の表情が、氷のように冷たくなっていきました。
「…………なのに、こんなに時間を掛けて、たった三つ?」
遂にきました。プレシアママが、フェイトの持ち帰ったジュエルシードの数に怒る場面です。
トーンの下がったなのは様の声。足元からじわりじわりと冷たさが伝わってくる感じがして、思わず体を強張らせちゃいます。
なのは様すごい。やっぱりすごい。周囲の雰囲気が、本当に暗くなっていく感じがする。
「ん? それは?」
私はケーキの入った箱を持っているつもりになって、体の前で両拳を握りました。
そして、小刻みに震わせます。
それからゆっくりと、それを胸元の高さまで持ち上げて。
「あの……母さんに…………」
「なんだとっ!? でぇりゃあぁぁぁっ!」
その時、顔の横になのは様の平手打ちが飛び込んできました。
気持ちがいいくらいに乾いた音が鳴り、さっきつねられて真っ赤になっていた私の頬が再び痛み出します。
「え!? 本当に打つの!?」
「あたりまえでしょう! 演技指導を何だと思っているの!?」
さすがはなのは様。稽古も本番も変わりはないということなんだ。でも確か、そこで叩くのは頬じゃないはずなんだけど……。
だけどせっかく稽古をつけてもらってるんだし、応えなくちゃ!
「もう一度お願いします!」
「その意気やよし! 何発でも叩き込んでやるわ!」
そして、怒涛の猛特訓が始まりました。
私となのは様は同じシーンを何度も何度も繰り返し、同じ台詞を何度も何度も繰り返し、しまいには「台詞はもういいや」と言って平手打ちを何度も何度も繰り返し。
なのは様の手の平が限界を迎えたころ、ようやくそのシーンの稽古は終了しました。
息を切らしたなのは様は、額の汗を拭いながら言いました。
「だいぶよくなったわ」
なのは様に褒められた? やったぁ!
「あ、ありがとうございます!」
「よし、次は鞭のシーンいくわよ」
「ええっ!?」
なのは様が小道具の鞭を持ってきました。
まさか本当にやるの? マジで? ガチで?
ちょっとなのは様、台本をよく見て。そこのシーンは、確かにSEでは鞭で叩かれている様子だと分かるけれど、実際に叩かれているシーンは無いはずだよ。叩かれ終わったシーンまで、アルフが登場するシーンのはずだよ。
本当に叩くの?
「そりゃあ!」
「いたぁーい!」
突然飛んできた紫色の鞭が、私のお尻を叩きました。
すごく痛いです!
「痛いよ、なのは様!」
「違うでしょう!」
「え?」
「鞭で叩かれたら、イヤァーンとかアハァーンって、気持ち良さそうに言うのよ!」
「ええ!? だって台本には、“鞭で叩かれるSEに合わせて悲鳴”って書いてあるのに!?」
でも、なのは様は譲りません。
「何を言っているのよ、アドリブに決まってるでしょう! 台本どおりにしか出来ませんなんて、そんな半端なことで役者が務まると思っているの!?」
そ、そうか! これはアドリブなんだ!
私は勘違いをしていたみたいです。確かになのは様の言う通り、台本どおりにしか出来ない役者でも困ります。登場人物の心情を読み取り、その気持ちを自分の体で表現しなくてはいけないのだから、時には台本に書かれていない気持ちを読み取ることだって必要なんです。
世界を作るのは台本じゃない。私達役者自身が、物語の世界を体現しないといけないんです。
きっとなのは様の言うアドリブも、天才子役と呼ばれる彼女が、この台本から読み取った世界なんです。
だったら、やっぱり応えなくちゃ!
「ずありゃあっ!」
「アハァッフ!」
「それえぇ!」
「いやあぁっん!」
「これがいいんかぁ!?」
「はぁい! もっとお願いします!」
「これならどうだぁ!」
「いい! いいです、すごく!」
熱の入った、凄く良い演技指導です。
これで、少しは素敵な女優さんに近づけたでしょうか?
○使い魔
なのは様との稽古が終わった後、私はヒリヒリするお尻を擦りながら、出演者控え室に向かいました。
控え室と言っても、今日は屋外での撮影なので、現場の一角にテントが張ってあるだけの控え室なんですけど。
鞭で叩かれながらいっぱい声を出したので、すっかり喉が渇いてしまいました。控え室にあるお茶でも飲もうと、テントの下にやって来ると、
「おお、フェイトじゃないか」
そこには頭の横にぴょこんとした三角耳を生やしている、アルフがいました。
アルフは私のことを見るなり、腰から生えている尻尾を振って近づいてきました。
アルフという役は、フェイトの仲間として登場する狼の使い魔です。実はこの控え室にいるアルフも、本物の使い魔なんですよ。しかも狼。この映画への出演は、選ばれるべくして選ばれた、まさにうってつけの役なんです。
「アルフは今日撮影があるの?」
「ううん、無いよ。でも、現場の雰囲気を掴んどこうかなって思ったからさ」
おお、偉いです。さすが、副業とは言え役者をやっているだけのことはあります。
映画の中では、アルフはフェイトのことが大好きで、プレシアママに虐められるフェイトをいつも気遣ってくれるんです。
でも、こちらのアルフだって映画の中以外でもすごく良い子で、仲良くしてくれるんです。人間の姿をしている時は背も大きくて、体つきだって大人の女性なのに、中身はまだまだ子供っぽくて、何だか歳が近く感じちゃう。可愛いお友達なんです。
「ねえねえフェイト」
「なあに?」
「これあげる。おいしいよ」
そう言ってアルフが差し出してきたのは、一粒のペットフードでした。
「ありがとう!」
こうして時々、自分のおやつを分けてくれます。
今では本物のフェイトとアルフみたいに仲良しなんですよ。と言っても、本物のフェイトとアルフには会ったことがないんですけどね。
制作発表会見の日、アルフのマスターさんにも会ったことがあるんですけど、その時に聞いた話では、マスターさんは時空管理局の局員さんだと言っていました。そして、マスターさんは次元航行部隊というところに所属していて、時々本物のフェイトさんを見ることもあるんだそうです。私も会ってみたいなぁ。
と、そんなことを考えていたら、一つだけ気になっていたことを思い出しました。
「そういえばアルフ、訊きたいことがあるんだけど」
「んん?」
アルフはペットフードの袋を小脇に抱えながら、ほっぺたいっぱいにペットフードを詰め込んでいました。
「制作発表会見の時、マスターさんがアルフを迎えに来たでしょう?」
「そうだったっけね」
「その時、アルフってば会見場の中にいたのに、マスターさんの車が建物の駐車場に入ったのを言い当てたじゃない?」
そうなんです。
制作発表会見の会場が設置されたのは、とあるホテルの披露宴会場だったんですけど、そこで会見が終わった後に一息ついていたら、アルフが突然「迎えが来たな」と言って、ホテルの駐車場に向かったんです。気になった私が後を追いかけてみたら、なんとそこにはアルフのマスターさんがいました。
何で分かったんだろうと、ずっと疑問に思っていた謎なんです。もしかしたら、アルフは狼だから匂いとかで分かったのかな?
「あれはどうやって分かったの?」
そう訊くと、アルフの口からは聞き慣れない言葉が飛び出て来ました。
「そりゃあ『念話』だよ。念話でマスターが話しかけてきたからさ」
「『念話』って?」
私が首を傾げると、アルフも首を傾げながら言いました。
「えーっとね…………声じゃない声って言えば分かるかな? 口を使わなくても、思ったことが相手に伝わるんだ」
「ええ! すごい!」
「たぶん映画の中でも使うシーンがあると思うけどね。魔導師とかはよく使ってるよ。それと、魔導師じゃなくても資質のある人には声が伝わったりするものさ」
そう言ったアルフは、いきなり目を閉じてじっと固まってしまいました。
何をしているのだろうと、私がアルフの目をじっと見ていると。
――どうだい? あたしの声が聞こえるかい?――
あ、すごい! 突然頭の中に響いてきたアルフの声に、私はとても驚きました。
こちらから声を送るのは出来ないみたいだけれど、アルフの念話を聞くことなら、私にも出来るみたいです。
ということは、私にも魔導師としての資質があるんだ。そのことに気が付くと、私が演じる人、魔導師であるフェイト・テスタロッサに、今まで以上の愛着、と言うか親近感みたいなものを持てるような気がします。
念話が面白くて、私はアルフにいろいろと話しかけてもらいました。
アルフってば冗談話が大好きで、アルフの念話を聞いているとお腹がとても痛くなります。笑い声が止まりません。
「ちょっと、何をそんなに笑っているの?」
私が涙目になりながらお腹を抱えていると、そこに撮影を終えたなのは様がやってきました。
「あ、なのは様」
――ん? ねえねえフェイト、何で“なのは様”なんだよ?――
目の前からなのは様に話しかけられ、頭の中にはアルフの声が響いて。
この初めて体験する不思議な感覚に、私は頭が混乱してしまいそうです。
「ちょっとフェイトちゃん?」
「あ、ちょっと待ってねなのは様」
――だから何で“なのは様”なんだよ!?――
「私には教えられないの?」
「後で説明するから待ってってば!」
「な、何でそんな強気なのよ? 私にそんな態度をとってもいいの? 先輩なのよ!?」
「今のは違うの! 私はちゃんとなのは様には敬意をもって」
――もしかしてフェイトって、なのはの使い魔だったのか?――
「んなわけないでしょう!?」
「えっ!? 敬意はっ!?」
――じゃあフェイトもどっかに三角耳があるんだな?――
「あるわけないでしょっ!」
「ちょ……! フェイトちゃん! どういうこと!?」
「え? なのは様、違うの! 今のは」
――なあなあ、何の動物なんだよ?――
「ちょっとフェイトちゃん! 私のことを何だと思ってるの!?」
――ネコ?――
「ネコ?」
「え、ネコ?」
――キツネか?――
「キツネってそんな!」
「キツネ!?」
――意表を突いてイノシシか――
「イノシシ!?」
「はぁあっ!? 私がイノシシ!?」
見ると、なのは様が肩を震えさせていました。
怖いです。なんか禍々しいものが出ています。
ああ、私、ちゃんとやっていけるのでしょうか?
こんな風に映画の撮影が続いていくのかと思うと、とても不安な気がしてきました。
To be continued.