全てを飲み込むように真っ黒な宇宙空間。
破壊された月の破片に混じり二人の闘士が浮かんでいた。
しかし、片方の闘士の命はすでに燃え尽きようとしていた。
「どうした……ウルトラマン……」
「いや、なんでもないさ。奴は粉々だ、地球は救われた。お前のおかげだ」
「そうか……良かった……」
「はっ、メフィラス! ……くぅ……」
――あとはまかせたぜ……ウルトラマン……――
そう声に出す前にメフィラスはウルトラマンに抱えられながら息を引き取った。
本来ならばツイフォンを倒したウルトラマンによってその亡骸は地球に運ばれるはずだった……
本来ならば……
偶然だった……これは誰しもが予測できなかった偶然。そう、太陽神でさえも。
ウルトラマンから発せられるデルタスターの光が突如メフィラスを包みだしたのだ。
永遠の命とも呼ばれるデルタスターはまたたくまにメフィラスの傷を癒し、そしてメフィラスを光とともに別世界へと送り出した。
誰にも気づかれずに。
「帰ろう、メフィラス。俺達の地球に。」
ツイフォンを倒したウルトラマンはそう言うと、メフィラスを安置していた場所に向かった。
が、そこにはすでにメフィラスの亡骸はなくなっていた。
「メフィラス? どこだ、どこにいったんだ。メフィラス、メフィラーース!」
ウルトラマンの叫びは空しくこだまするだけであった。
高町なのはの朝は早い。
朝に弱いので本来ならば寝ていたいが、家族と一緒に食事をとれるのが朝食だけなので早く起きざるをえないのだ。
「なのはー朝よ、起きなさい」
誰だろうこの声は……
もうちょっと寝ていたいのにどうして起こそうとするの?
「早く起きて、なのは。もう朝ごはんだよ」
そうだ、朝ごはん。 早く起きないと。
「う、うーん……お姉ちゃん……おはよう……」
「はい、おはよう。もう朝ごはんだよ、早くリビングにきてね」
「はーい……」
席に着いたときにはもうみんな準備出来ていた。
またやっちゃった。早く起きる様にしないとなのはは悪い子になっちゃう。
「いただきます」
「お母さん、今日は何時に帰ってくるの?」
今日はなのはの誕生日。
早く帰ってきてくれるかな。
お母さん達がいてくれればそれだけで十分なの。
「ごめんなさい、なのは。今日も遅くなるから先にご飯食べて寝てて頂戴。
なのはは良い子だからできるよね?」
「うん……」
あれ? お母さん忘れちゃったのかな?
「お兄ちゃんたちは?」
「俺たちも店の手伝いがあるからな、すまん」
「ごめんね、なのは」
お兄ちゃん達も……なのはの誕生日忘れちゃったの?
「わかった……良い子にしてるね」
今日も私は一人ぼっち。私だけ仲間はずれ。
「じゃあお店に行って来るからいい子にしててね」
「はい……」
家の中で一人はいやだから私はいつも公園に行く。
でも公園に行っても私は一人。私も一緒に遊びたいな……
「誰か声かけてくれないかな……」
なのはが公園でうじうじしているそのとき
突如裏山のあたりで閃光がはしった。
「きゃあっ、なんだろうあの光」
誰もさっきの光には気づいていないみたい。
あれが見えたのは私だけ?
なんなんだろう、確かあそこの山のあたりで光ったよね。行ってみよう。
「はぁ……はぁ……うぅ、坂登るの大変なの……」
「ここらへんだと思ったんだけど……あっ!」
見えるのは巨大な漆黒の体、引き締まった見事な筋肉。
極め付けはこの悪人顔……これはまさしく……
「メ、メフィラス星人なの……」
これは少女と大魔王(元)が織り成す物語。
この出会いの先に何が待ち受けているのかはまだ誰も知らない。