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[28243] 【チラ裏から移動】魔女となった少女(魔法少女まどか☆マギカ オリ主+転生)
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/11/07 22:53
アニメを見て急に書きたくなったネタです。
人によってはこんなのまどか☆マギカじゃないなんて言うかもしれませんが、どうかお付き合いお願いします。


ご都合主義、テンプレ、ねつ造などをやらかす可能性ありまくりです。


にじふぁんにも投稿はじめました。



[28243] 序章
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/06/08 00:51
「ぼくと契約して魔法少女になってよ!」

なんだろうなぁ?私の前にネコとうさぎを足して割ったような動物が人の言葉を喋っている。
私はそれを見ながら思い出す。
これとよく似た漫画をアニメを……

私には前世の記憶がある。
こことよく似た、だけど違う世界。
そこで私は普通の女の子だった。
学校に行って、青春をやって、漫画やアニメ、ゲームをこよなく愛していて……
そんな私は死んだ。死因は覚えていない。
それでも後悔は不思議としていない。
若くして死んだのに、不思議と満足感が大半を占めていた。
だからこそ、私は笑ってここで生きている……んだが……

「ぼくと契約して魔法少女になってよ!」

白い生き物はもう一度、同じセリフを吐いた。
白い生き物……インキュベーターを私は知っている。
よく解らないけど宇宙生物で、宇宙の存続のために少女の希望を絶望に変えるエネルギー変換システムを構築している。
大局から見ればそれは正しい。
この宇宙事態がなければ、すべての生物が死滅してしまう。そのための犠牲なら、仕方ない。
だけど個として見れば冗談じゃない。
誰が好き好んで自我のない……本能だけの化け物になりたがる。
待っているのは死しかない。
私はそれを解っていながら、別のことを考えている。

「魔法少女ね……それについてなにかメリットとデメリットがあるの?」

どうやってこいつを出し抜いてやろう。
なぜかわくわくしてくる気持ちが湧き上がってくる。
私はにんまり笑いながら、インキュベーターから情報を引き出すことにした。
















「どうせ魔女になるなら……最初からなっちゃえば良くない?」

それが私、月陽 紅(つきひ くれない)の結論。



[28243] 第1話
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/11/02 22:24
今日も一日が始まる。
朝食を食べて、学校に行く支度をして私は家を出る。
雲一つない良い天気で、風も爽やかで気持ちがいい。

「今日はいい一日になるかな?」

毎日言っている言葉と同時に私は足を踏み出した。


















「おっはよー!」

教室に入ると同時に元気よく挨拶する私。
それに何人かは同じく挨拶を返してくれる。
私はそれに笑顔で返して自分の席に座る。

「おはよう、紅ちゃん。」

「おはよう、紅。」

「おはようございます、紅さん。」

「おっす!まどか、さやか、仁美、おはよう!」

席の近くの友達が挨拶をしてくれる。
そんな何気ない日常で、私の心は希望で満たされる。

『わからないね。なんでこんな何でもないことで心に希望が溢れるんだい?』

みんなには見えない白い生き物が私に念話を掛けてくる。
建物の外からの念話はこいつなりの気遣いなのか?と一瞬思ってしまうが、ないな。
こいつらはただ効率しか考えない。どうすれば高純度のエネルギーを手に入れられるのか。こいつらの考えはそこに帰結する。
私は見えないそいつに苦笑しながらも念話を返す。

『うーん、私の性質はそんなものだからね。こんな何気ない日常こそ絶望を乗り越える糧となる。』

私は教室をぐるりと眺める。
みんな笑顔だったり、朝から学校でダルいと感じている顔とか千差万別。
これは特別でもなんでもない、本当に普通の光景だ。
だからこそ私は嬉しくなる。
前世で失ったものをもう一度味わえるだけでもうれしいし、こうやってみんなの笑顔を見るのがキュウべぇと契約して変質したからかもしれない私の糧となる。
まぁ、糧としての量は微々たるものだから定期的に補給しないといけないけどね。

私は今日も日常を謳歌する。




















放課後になって私は高層ビルの屋上から夕焼けに照らされる滝見原の町を見下ろす。
今、この町の裏で魔女と魔法少女の戦いがあるとはとても思えないほど、美しい光景が広がっている。
私の格好も姿も普段の姿とは違う。
年齢は上がって大体20歳くらい。
服装も目元まで隠れるフードのついた真っ白いローブ。
手には身長よりも長い、細やかな月と星と太陽の装飾が施された杖がある。

「はー、やっぱりいいね。私はこの景色が大好きだよ。」

「本当に変な人間だね。自分から魔女になるなんて。やっぱり人類のことはよくわからないや。」

「いいの、いいの!女の心なんて海より深く……というより、宇宙より広いんだから。」

そう言って私は自分の首元に手を当てる。
そこに張り付いている私の髪と同じ色の菫色の宝玉。
私からは見えないけど、穢れがほとんどない状態で輝いていることだろう。
キュウべぇはそれが気に入らないのか、無表情ながらもむっすりしているように私には感じられる。

「まったく、絶望じゃなく希望を振りまく魔女なんて前例がないよ。」

「なーら私が第一号!やったね!!」

私は杖をクルクルまわしながら結界を構築していく。
それと同時に魔力を振りまいて、特定条件の人間に『魔女の口づけ』を施していく。

「そんじゃ、一仕事やりますか。」

私は結界の中に身を躍らせる。
招くは絶望を抱えた人間。
世界に憂鬱を感じ、疲れている人間を招いていく。

「さぁ、おいで。夢と希望の魔女が癒してあげるよ!」




























それは他の時間軸において、最悪の魔女クリームヒルトが生まれる1年前のこと。
本来なら生まれるはずのない希望の魔女が滝見原に出現した。

魔女の名前はホープディス・プリフィケーション
性質は「夢と希望」
結界内に取り込んだものに夢を見せ、希望を取り戻させる。
この魔女を倒すには彼女にも癒しきれない絶望と悪意を大量に叩きつけなければならない。

「そこまでどん底いったなら、あとは這い上がるだけだよ。手伝ってあげるから、もう一度手を伸ばしてみな。」



[28243] 第2話
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/06/09 21:54
おはこんにちわ!(古!?
夢と希望の白き魔女、ホープディス・プリフィケーションだよ。
気軽にホープちゃん♪と呼んでくれたまえ。
そんなホープちゃんですが、いきなりですけどぶっちゃけ今ピンチです。

「さぁ、観念しなさい!」

ドンドンドンドンドン!!

慌てて銃弾をよける私に続けて撃たれる鉛ではない弾。
魔女としての身体能力をフルに使って避けているが、ローブの端に弾が掠っているのかすでにボロボロだ。
うわーん、このローブ何気に気に入っているのにどうしてくれんのよ。

魔法少女の襲来

いつも通りに結界の中に絶望を感じる人間や、人生に疲れている人間を招いて夢を見せていると、キュウべぇを連れて黄色い魔法少女が襲いかかってきた。

私は魔法少女をすっ飛ばして魔女になったことには後悔はしていない。
魔女になった時に唖然としたキュウべぇを見れただけでも儲けものだ。
魔法少女から見れば敵である魔女。
追われることも、命も狙われることもそれなりに覚悟していたが……初っ端からこんな強力な子が来るなんてーーー!!!!

私は半ば必死になりながら赤いチョッキを着た二足歩行のウサギやにんまり笑った赤紫色のネコ……不思議の国のアリスをモチーフにした時計ウサギやチェシャ猫……使い魔たちに人間を流れ弾から護るように指示を出しながら逃げ惑う。

私の結界は他の魔女のように不気味な抽象世界ではなく、暖かい陽光が降り注ぎ、柔らかく爽やかな風が吹く、とあるゲームで世界三大昼寝スポットの王国をモチーフにしたファンタジーな場所。
私は建物の陰に隠れながらどうやって魔法少女を追い返そうかと思案する。

「おかしな魔女ね。逃げ惑うばかりで、ちっともこちらに攻撃してこないわ。」

「油断しないで、どこから攻撃がくるのかわからないよ。」

「わかっているわ、キュウべぇ。」

そんな時に私の隠れている壁の向こう側から、あの魔法少女とキュウべぇの声が聞こえてきた。
おいおい、こんな近くにいるのかよ!?
これじゃ迂闊に動けねーじゃねぇか!
私ははやる心臓を抑えながら慎重に二人の気配を追う。
二人がここからいなくなれば、私は結界の外に出て二人を強制的に追い出せるのに……!!

「ふわあぁぁ……なんだか眠くなってきたわ。」

突然、魔法少女がそんなことを言ってきた。
そしてその数秒後にドサっと倒れこむ音と、心地よさそうな寝息……まさか……

私はそーっと物陰から魔法少女のことを窺うと、彼女はこちらが拍子抜けするくらい気持ちよさそうに眠っている。
眠っているせいなのか、彼女の変身も解けて見滝原中学の制服になっている。うちのとこの生徒だったのか。
上手いこと木陰に入ってぐーすかぐーすか……あれほど追っかけときながら放置プレイかコノヤロー!

「ちょ、マミ。マミ!」

キュウべぇはマミと呼んでいる魔法少女を起こそうと必死に(見えるのは私だけか?)呼びかけている。
あーあ、ありゃ完璧に寝てるわ。

「残念だったわね、キュウべぇ。私を殺すことが出来なくて!」

私はローブの裾を払いながら颯爽と登場!
ん?さっきまでと態度が違う?ほっといてよ。

「紅、これが君の力かい?」

キュウべぇは感情の見えない赤い目でこちらを見るが、その姿と相まって不気味だけど怖くない。
私は眠っている少女の寝顔を覗きこみながら答える。

「半分正解かな?私は結界内に招いた人間に夢を見せて、その人間が持っている絶望や憂鬱を希望や夢に変える。だから昼寝には打って付けの世界を構築して安眠をお約束♪ってわけなんだけど、まさか魔法少女にも有効とは思わなかったわね。それとも、この子がそれほどの負担を抱え込んでしまっているってことなのかな?」

魔女がこれほど近くにいるというのに、彼女はまったく起きる気配がない。
穏やかに微笑んですらいる彼女の様子に私は苦笑しか浮かばない。
これがさっきまで何十発も弾丸を撃ち込んできた子とは思えないな。

「なるほど、最近のマミは頑張っていたから負担が蓄積。それで君の術に陥ったというわけなんだ。」

「なによ、まるで人が悪い魔女みたいじゃない。」

「実際に僕たちインキュベーターから見れば君は悪い魔女だよ。君が一人だけとはいえ、絶望の感情エネルギーの集まりが少し悪くなっているんだ。」

「ああ、それで最近は私のところに姿を見せずに彼女を使って私を殺そうとしたわけか。」

私は納得がいった、という顔でうんうん頷いていると、キュウべぇはらしくもないため息を吐いている。
この調子じゃ、今日は諦めてもまた別の魔法少女をけしかけてきそうね。
私はこんなときの為に作っておいたあれはキュウべぇの前にちらつかせる。
まるで……というかソウルジェムそのものにそっくりな宝石。
だけどその色は深いふかーい闇の色。
通常は色鮮やかな色にたいしてこれは一切の光も反射しないほどの闇を湛えているそれに、キュウべぇは言葉も出ないようだ。

「これがいったいなにか、キュウべぇなら予測つくでしょ?」

私は自分でもわかるくらいにんまりと笑っている。

「絶望の塊……なんだね。」

「せーかい♪もしもあんたらが私を殺そうとした時の為に作っておいたんだよ。こいつには私のソウルジェムの穢れを含めて今まで浄化してきた人間たちの絶望と憂鬱が詰め込んである。」

私はそれを陽にかざすが、やっぱり光なんて反射していない。

「取引だよ、地球外生命体。私はこいつをあんたたちに提供する。あんたたちは私の活動に干渉しない。」

時間は掛かるがわざわざ新しい魔法少女を選別、育成しなくても上手くいけば定期的に絶望のエネルギーが手に入る。
こいつ1個でも並みの魔法少女の2人くらいのエネルギーが入っているんだ。
悪くない取引のはずだ。
ま、多少のエネルギーは私の糧の為に使わせてもらっているけどね。

「……わかった。僕たちインキュベーターは君に手は出さない。けど、君を狙った魔法少女までは知らないよ。」

「十分よ。今回は魔法少女の襲来なんて初めてだから驚いたけど、今後はそれなりの対策を立てさせてもらうわ。」

こうして私と宇宙人の間に密約が交わされた。























「あ、ついでにこの子のソウルジェムの穢れもとっとこ。」

取引が成立されて、置いて行かれた魔法少女……えーっとマミちゃんだっけ?のソウルジェムに手をかざすと、私の手のひらに黒いモヤモヤが集まり小さな結晶に変わった。
親指の爪ほどのそれを見ながら、私は掻いてもいない汗を拭う仕草でそれを懐にしまった。

「ずいぶんため込んでいたのね。普通の人間ならこれの半分以下の量なのに……やっぱり魂を露出している分、絶望にさらされやすいのかな?」

私は立ち上がると杖を一振りしてマミちゃんによって穴ぼこだらけにされた街を修復していく。
使い魔にも指示を出して、お客さんたちをもっと寝心地のいい場所に移動させる。
私はフードを脱いで、魔女形態時に腰まで伸びた菫色の髪を払うとマミちゃんもお姫様抱っこして連れて行く。
ここもいいお昼寝スポットだけど、修復が終わるまでは別の場所で眠ってもらおう。

「んん……ママ…パパ……」

マミちゃんは私にすり寄りながら幸せそうな顔で眠っている。
私はそれに苦笑しながら彼女を連れて行った。
























































今だけは優しく幸せな夢の中で微睡んでいていいよ。
起きたらまた戦い(現実)が待っているのだから。
でも、また疲れたらここに来て。
ここは疲れた人が休む休息所。
人々の絶望を希望に転換する自己を見つめる鏡の間。
絶望という闇を希望という光で照らすことを手伝う鍛錬所。

「我が名、ホープディス・プリフィケーション(希望と絶望・浄化)に誓って、ここにいる人々の絶望と憂鬱を癒そう。」

だけど、もし……

「我が身でも癒せぬ絶望と憂鬱があるというなら、たくさんの希望と夢を束ねよう。それこそが我が最期の魔法なのだから。」



[28243] 第3話
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/06/10 12:35
その日の私は結界を張らずに魔女の姿のまま、夜の街を箒に横乗りで飛び回っている。
もちろん普通の人間には見えないように軽い認識障害は掛けてある。
魔女は箒に乗るものだから、私にとって箒に乗るなんて軽いものだ。

夜の街はたくさんの灯りに照らされて空から見ると宝石箱のようにも思える。
うん、地上の星とはよく言ったものだ。
そうやって私が空を悠々と飛び回っていると目的のモノを見つけた。
いや、正確には感じた。と言うべきかな。

魔女はどうやらお互いがどこにいるのか解る性質があるみたいだ。
近くにいれば正確な場所すら把握できる。
私はそれを辿って見つけた魔女の紋章を通って結界に入り込む。
それと同時に周りの景色が一変する。
私の結界とは違う。
子供が描いたような落書きのような抽象的な世界。

「落書きの魔女、アルベルティーネ……」

結界から読み解いた情報。
かくれんぼが大好きだけど、手下にすら見つけられることがない。
誰にも見つけてもらえない無知で孤独な可哀そうな魔女。
私は箒に乗った状態のまま、結界の迷路を進んでいく。
同じ魔女だからなのか、彼女がどこにいるのかまるで導かれるかのように解る。
私は襲ってくる使い魔を杖で叩き落としながら最深部を目指す。
気分はもぐら叩きなのはちょっと楽しい。
そう思う自分に苦笑しながら箒のスピードをさらに上げていく。

「ここね。」

私は最後の扉を上げて中に入るが、誰もいない。
他に扉なんてないし、ここが最深部で間違いないはずなんだけどな?

「おーい、アルベルティーネちゃーん!かくれんぼはアルベルティーネちゃんの勝ちだよ。今度はお姉さんとお昼寝しよう!」

私は杖をメガホンに変えて呼びかけるが返事なし。
むむ、なかなかに手ごわいな。

私は箒から降りると足で部屋の中は探し始めた。
部屋はかなり広い。
アルベルティーネの本体の大きさもわからないから、どんな姿をしているのかもわからない。
ほとんど勘で探しているようなものだ。

それからどのくらい探したのか、私は見つけることが出来た。
隅のほうで体を小さく丸めて、誰にも見つからないよう、見つけてもこれが魔女だとわからないようなそれ。
子供の落書きがそのまま実体化したようなおとぎ話の魔女の人形。
わかる、私のソウルジェムと共鳴している。

「みーつけた♪」

私はその人形を躊躇なく抱き上げると優しく抱きしめた。
アルベルティーネはわずかに身じろぎするが、抵抗はしない。

「探したよ、アルベルティーネちゃん。かくれんぼはもうお終い。お昼寝したら今度はみんなで一緒に遊ぼう。」

私がそう言うと同時に私の足元から侵食するかのように結界が塗り替えられていく。
私の結界が完全に展開されると腕の中の人形は普段の私より少し幼い少女になる。
ファンシーなフリルをたくさん使った魔法少女のソレ。
これがアルベルティーネの本来の姿。

「ふふ、よく眠っている。」

私はアルベルティーネの前髪を払うと彼女のソウルジェムがその姿を現す。
元は鮮やかな宝石だろうに、今は黒い色に染まりきっている。
いや、宝石の奥でわずかながら本来の光が輝き始めている。
これが本来の色に戻るには長い時間が必要になるだろうな。
今まで魔女になっていたのだからそれは仕方ないか。
私は軽いため息を吐くと彼女の眠りやすい場所に移動するべく足を進める。
彼女が目覚めるその日まで……どうか安らかに。






















なんて思っていた私の思いを返せ。
あと、読者の涙?

「わーい、うさぎさーん、ねこさーん。こっちだよー!」

結界内のお城にあるバルコニーでお茶(私は緑茶が好き)を飲んでいる私の目の前には数時間前まで眠っていたはずの元・魔女の少女が私の使い魔と元気に追いかけっこしている。

あれー?おっかしーな、彼女が目覚めるのは早くても数か月は掛かると思っていたのに……
あれか、子供は落ち込むのは早いが立ち直るのも早いというアレか?
私はなんとなく痛む頭を押さえながらお茶菓子と出されている羊羹を頬張る。
うん、おいしい。

「あー、オネェちゃんは和菓子?アルはケーキとかの方がいい。」

追いかけっこに飽きたのかアルベルティーネが私の目の前に座る。
それにすかさずに使い魔たちが彼女のご要望通りのイチゴのショートケーキとそれに合う紅茶を並べいく。
さすがは役割が接待・接客。
我ながらいい使い魔を持ったものだ。

「私としてはやっぱり日本人だからかな?紅茶や洋菓子も好きだけど、緑茶と饅頭とか和菓子が落ち着くのよ。」

そう言ってまたお茶を一口。
アルベルティーネもケーキとお茶にご満悦の表情で頬張っている。
私は湯呑をテーブルに置くと彼女をまっすぐに見つめる。

「それで、自分のことは理解できたのよね?」

「うん。本当の肉体は無いから、この体は魔力でそれを真似しただけのまがい物。魔法少女には見えるけど、普通の人間には見えない。だっけ?」

よし、よく覚えているな。

「そう。ついでに言えば、魔法少女の頃のように魔法も使えるけど、魔力を使いすぎれば肉体を保つことが出来ない上に、魔力が完全になくなればそのまま成仏しちゃうのも要注意。この世に未練がないならいけど、まだ遊びたいなら肝にめいじときなさい。」

私がいれば魔力の補充はいくらでも出来るからその心配はよっぽどのことがないと大丈夫なんだけどね。
そうやって私とアルベルティーネはお茶会を楽しむ。
片や洋風、片や和風の奇妙な図式だけどね。
お茶会でどのくらい過ぎたのか、急にアルベルティーネの眉間にしわが寄った。

「どうしたの?」

「オネェちゃん。私を魔女からもとに戻してくれたのは感謝してるけど、あの方法はないでしょ?」

「ん?相手に夢を見せて、やる気や希望を取り戻させること?」

「聞こえはいいけど……人のトラウマ抉って、怒りでその場のやる気を出させて、その後に幸せの記憶を思い出させてその人の夢と祈りを見つめさせる……実際に体験してみてわかったけど、あれってなんて飴と鞭?」

「ああ、それはよっぽど絶望が深い人用のものよ。普通はその人の夢や頑張っている頃の記憶を反芻させて希望を取り戻すのが主流よ。あとは人生に疲れている人は普通に穏やかな夢でリフレッシュってところかな?」

怒りというのは場合によっては、強力なやる気への起爆剤になるのだ。
たとえ怒りでも前を向こうと思えることが多い。
その後に穏やかな夢でその人の心を落ち着かせてやると、結構な効果が期待できるのだ。
実際にアルベルティーネもこれで希望を取り戻したようなものなんだから。
私の説明にアルベルティーネはテーブルに突っ伏した。

「うぅ、いくらなんでもやりすぎだよ。」

「いいじゃない、もとに戻れたんだから。今はお茶を楽しみましょう。」

こうやって私たち魔女のお茶会は続いていく。









































「あ、言い忘れたけど格好は魔法少女でも本質は魔女だからね。」

「え!?」

というか魔女っ娘かな?



[28243] 第4話 蛇足っぽいなにか
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/06/11 23:36
「あ、やりすぎちゃった。」

自分の結界のお城の中で、私は自分のソウルジェムの絶望を抜き出していると、ちょっと力が入りすぎてしまった。
しまったな、ただでさえ少ないのに。

「え?どこが失敗したの?オネェちゃんのソウルジェム今まで見たことがないほどすっごく綺麗になってるじゃない。」

どっから出てきたのよ、アルベルティーネ。
確か使い魔たちと遊んでいたんじゃないの?

「そのすっごく綺麗なのが問題なのよ。」

私は結晶化している絶望を掌でコロコロ転がしていく。
それはだんだんと角が丸まって完全な球体に変わった。
以前にキュウべぇに渡した絶望の塊ほど黒くないけど、一目で禍々しいものだとわかる。
私はそれを一瞬の躊躇もなく口に含んだ。
それと同時にアルベルティーネが息をのむのがはっきり聞こえた。

「お、オネェちゃん!それって絶望なんだよね!?飲んでも大丈夫なの!?」

「うーん、本当ならあんまり大丈夫じゃないけど必要なのよ。」

絶望の塊……呼びづらいわね、呼び名募集!……はすぐに口の中で溶けて喉の奥に流れていく。
私はそれを感じながら口を抑えるのを止めることが出来なかった。

「くっ!」

「お、オネェちゃん!?大丈夫?やっぱり吐き出しちゃいなよ。」

「ダメよ。ねぇアルベルティーネ、使い魔たちから何か飲み物貰ってきて、できれば甘いものがいいんだけど……」

「わ、わかったわ!」

タッタッタッタッタ

アルベルティーネがその場を離れるのを見送って私はその場に突っ伏してしまった。

「に…………にっがーーーー!!」

そう苦いのだこれわ。
コーヒーの粉を丸ごと飲んだより、カカオ99%のチョコレートを食べたよりも苦い。
しかもすぐに口の中で溶けるから飲み込む暇もない。
最近は力加減もわかってこういう失敗はなくなってきたけど、いざやるとキツい。
事前に飲むとわかっていたら、もう少しマシなんだけどこうも突発だと遣る瀬無い。

ん?なんでわざわざ絶望を飲むのかって?
これこそが私の欠点のようなものなのだ。

人間というのは絶望では溺れ死ぬけど、じゃ逆に希望だけで生きられるのか?と聞かれると私はNOと答える。
これは私の持論でもあるけど、人間というのはぷらすの感情だけで生きているのではない。
怒り、悲しみなども併せて心というものだ。
仮に、希望だけが胸の中にある人間と希望に溢れているけど絶望も宿す人間が困難極まりないダンジョンを踏破する場合、どっちが無事に到達すると思う?
ダンジョンの難関さも、トラップの数も、入る人間の運の良さもすべて同じ場合。
大抵は前者と思う人が多いかもしれないけど、私は後者だと考えている。
前者は希望ばっかりで立ち止まることを知らないけど、後者は立ち止まることを知っている。
つまりそういうこと。
希望は前を進むのにいいけど、前だけを突っ走っていったら走っている本人も、一緒に走っている人間も転んだ時が悲惨極まりないのだ。
人間というのはときに立ち止まり、周囲を見ることも重要なことである。
絶望とは恐れ、悲しみ、孤独などのマイナス感情。
プラスとマイナスが両方あって、初めて心は健康なんだと私は思っているわけ。
で?なんでそれが私の欠点かって?
それではみなさんに質問です。
私の「性質」ってなに?

うん、「希望」なんだよね。

希望の魔女である私は他の人間なんかより絶望の感情が溜まりにくい。
時々、ソウルジェムの浄化の為に抜き出すけど完全な浄化はしない。
希望だけの心は慢心を産み、傲慢になってしまうことがある。
他の人間はほっとけば勝手に絶望が蓄積されてバランスがよくなるけど、私は自分で調整しないといけないから面倒だ。
ま、これも私の「祈り」の範囲内だから自業自得なんだけどね。
とりあえず思うこと……

「アルベルティーネ……飲み物早くプリーズ!」

口直しさせて!


























「おやすみなさい、良き夢を。」

私は今日も結界内に人を取り込み、夢を見せる。
ああ、どうか安らかに眠りたまえ。

「全然、安らかじゃないよ。」

「あり?遊びに行ったんじゃないの?」

「う~ん、魔法少女がうろついていたから今日はやめにしたの。それより聞いていい?」

「いいよ~」

アルベルティーネから質問とは珍しい。

「なんで絶望を抜き取った後に希望を入れないの?わざわざ本人から出させるんじゃなくて。」

おう、難しい質問だね。
確かに私は絶望を希望に変えているけど、別にそれは絶望を希望に変換しているわけじゃないのだ。
それだったら、わざわざ絶望の塊なんて作らないし、必要ない。
私はただ、人間から、魔法少女から絶望を抜き取って夢を見せているだけなのだ。

「私わね。希望というのは誰かに与えられるんじゃなくて、自分で見つけるもんだと思っているんだ。」

私がこうやってアルベルティーネと話しているのも、普通の日常にも希望を見出すように。

「私がここの人たちに希望という感情を与えたら、それは本人のものじゃない。偽物の感情なのよ。だから私は夢でそのきっかけを与えるだけ。その人にはその人の希望があるのだからね。」

それに……

「私にも旨みはあるしね。」

そう言って私の手のひらには抜き取った絶望が結晶として掌に集まる。
水晶の原石のように黒いながらも光に反射する絶望。
キュウべぇに渡すにはもっと高純度にしないといけないかな?
私は絶望の結晶を一つとると口に含んで飲み込む。
う~やっぱり苦いや。

「面倒だね。」

「それが人間ってものっしょ?」

私とアルベルティーネがにこやかなに笑いあうと、いきなり招いた人間が起き上がった、つか立ち上がった。
妙齢のメガネの女性……つか先生!?

私の学校の先生までここにいんのかよ!?
先生はなにやらやる気を漲らせて、がおーっと吠えるかのような咆哮をあげた。

「そうよ!男なんて男なんて男なんて!!あの人以外にもいっぱいいるんだからーーーーー!!!!!」

それはまさしく魂の叫びだった。
おそらく現代の独身女性を代表するかのような悲鳴だ。

「またダメだったのか……」

というより、この結界に招かれるほど疲れてるのね。

「……今度、なにか差し入れしようかな?」

「おかしいな……私って子供のはずなのに、あの人の叫びを聞いていたらなんだか涙が……!!」

優しいねアルベルティーネは。
どうかその優しさを忘れないで。

先生はそのまま叫ぶとそのまま結界から走り去ってしまった。
グッドラック、先生。
今度はいい人が見つかりますよ。




































「あの人このまま魔法少女に見つからないかな?」

「あ」

結界を移動させたのは言うまでもありません。



[28243] 第5話 どうしてこうなった!?
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/06/12 22:34
彼はその日、不思議なものを見た。

用事ですっかり暗くなった夜の街。
彼はふと空を見上げて見つけた。
月明かりの下でビルの合間を飛び交うそれ。
他の人間には見えなかったのに、なぜか彼にはそれがはっきり見えた白いローブを纏った箒に乗る存在。
性別はおそらく女性……恐らくというのはフードで顔が見えなかったのと、体型が女性のような細さがあるからだろう……はビルの合間をすいすいと軽やかに飛び交う。
月明かりがローブを軽く反射して、彼女自身が輝いているかのように彼には見えた。

「魔女…?」

彼は思わずつぶやいたが、なるほどしっくりきた。
彼女はまるでおとぎ話に出てくる魔女のようだ。
それも禍々しい悪い魔女ではなく、人々を助ける白き魔女。
彼は気が付いたら走り出していた。
魔女を追いかけて。

見失ってはいけない。
それだけを思って彼は必死に足を動かす。
途中、何人かにぶつかってしまったが彼は振り返らずに走り続ける。
流れる景色にも目をくれない。
ただまっすぐに魔女を追いかける。
そうやってどれくらい走り続けたのだろう。
彼は人並みに体力はあるつもりだったが、すでに足は棒のように感覚が麻痺してしまっている。
呼吸もつらい。軽い酸欠で頭がガンガンする。
それでも気力で足を動かし続ける。
まだ自分の視界には魔女が映っているだから。
























誰もいない公園が見えてくると彼は足を止めた。
それは魔女を見失ったのではない。
魔女の箒が減速して、徐々に降下を始めたからだ。
彼は魔女を見失うものか、と静かに近づいていった。
急に近づいたら逃げられるかもしれない。
そう思い彼は足音を殺して近づいていくが、魔女は噴水の前に行くと、どこからともなく杖を取り出した。
魔女の身長よりも長い杖を一振りすると、月と太陽を組み合わせた紅い魔法陣が目の前に現れた。
彼はそれに息を飲んでいると、魔女は魔法陣の中に入って行ってしまった。
彼はおいて行かれてはたまらないとばかりに自分も魔法陣のなかに飛び込むと、そこはとても美しい世界が広がっていた。
























「ここはいったい……?」

彼は目の前に広がる景色にただ呆然とするしかなかった。
今は夜のはずなのに頭上には暖かな太陽の日差し。
それだけでも驚きなのに、彼は目の前の王国にも目を奪われる。
ファンタジーのような西洋式の王国。
シンデレラのお城のような城を中心に展開されるおもちゃの様な城下町。
それも完全に自然と調和している形でそこにあった。
彼はそこを完全に見渡せる丘の上にいたのだ。
そこは背後を振り返ると自分が通ってきた魔法陣をそのままに緑の草原が広がっている。
向こうに見えるのは山なのだろうか?
それも背景の絵のようなものじゃない完全な存在感を醸し出している。

「夢なのか?」

彼自身、この存在感を無視できないのを自覚しておきながらもつぶやいた。
彼はもう一度、その王国を見渡した。
目をこすっても、頬を抓っても王国はそこにある。
その時、彼の視界に城に向かって飛んでいる魔女の姿を見つけた。
彼は頭が動く前にその魔女を追いかけるために丘を駆け下りた。
その彼の後ろから追いかけるネコとうさぎに気づかずに。

彼は城下町に降り立つと違和感を感じた。
人の気配がない。
いや、人の気配はするのだが人の営みをする音が聞こえないのだ。
彼は思わずその辺の家の中を覗くと、家のベットやソファの上で人が眠っている。
よくよく見れば眠っている人の服装はこのファンタジーの世界に似つかわしくない自分と同じような現代の服装だ。
家の中庭にはベットチェアが置かれてそこで眠っている人もいれば、無造作に木陰で眠っている人もいる。
みな、一様に安らかで穏やかな寝息を立てている。
中にはなにをそんなに悔しがっているのか、難しい顔で歯ぎしりしている人もいるがしばらくすると穏やかな顔をする。

「なんでみんな眠っているんだ?」

確かにここはとても暖かく、風も穏やかで気持ちいい。
昼寝には絶好の環境だが、それだけでこれだけの人間が誰も起きずに寝ているのがおかしい。
彼は魔女のいるであろう城を目指しながらも、それに疑問を思っていると目の前になにか降ってきた。

「うわ!」

彼は思わず手で顔をかばうがなにも起きない。
彼はそーっと構えを解くと目の前に赤いチョッキと時計を持った白いウサギと赤紫色の縞模様のネコが立っていた。
二本足で。

「え~っと、ここまでファンタジーだから喋っても驚かないよ。というか君たち喋れる?」

ウサギとネコは彼の頭の先から爪の先まで眺めるとそろってコクンと頷いた。

『私たちはここの案内人でございます。』

『あの方が招いた人間を案内し、接待するのが私たちの役目。』

『お客人、あなたは主が招いた方ではないようでございます。』

『なに用でこちらに参られましたか?』

交互に喋るウサギとネコに彼は頭をかきながら説明する。
説明すると言っても彼自身、ほとんど衝動に身を任せての行動ゆえにうまく説明できていないのだが。

『なるほど、それでは我が主にお伺いをたてましょう』

『このままお客人を無粋に追い返しては我らの名折れでございます故。』

そう言ってウサギは城に向かって走り去っていき、ネコは彼を城下町の噴水の広場らしき場所に案内する。
彼は逆らうのもなんなので、ネコの後ろを素直についていく。
ここまで不思議なことが続くと、彼自身は何でもアリな気がしてきたのだ。


























「お客様?しかも私が招いたわけじゃない?」

私がお城の中でいまだに眠っている魔女の様子を見ていると、時計ウサギ……名前はペーター。某ゲームからいただきました。……が知らせに来た。
私が招いたのはみんな『魔女の口づけ』がついていて、半ば意識が朦朧状態なのに……それでもここに来たって魔法少女じゃないでしょうね?
いや、魔法少女なら使い魔がやられるからすぐに解るか。

「そのお客さんってどんな人?男?女?」

『男性でございます。主と同じ見滝原中学の制服を着ておりました。』

男?男子でここに来ることが出来る人で心当たりなんてないわよ?

「そんで?その人はどうしたの?」

『は、どのような力があるやもしれませんので、城ではなく広場に案内させていただきました。』

ふむ、確かに城の中にはいまだ絶望を癒しきれていない魔女やキュウべぇに渡すために凝縮中の絶望の塊……ダークネスジェムがあるのよね。
やはり私の使い魔は優秀ね。

「それじゃ会ってみようかな?ここまで魔女を追いかけてきた勇気ある若者にね♪」





































うん、会ってみようと思った数分前の自分を絞殺したいわね。
私は口元しか見えないように気を付けたローブの奥で口がひくつくのを必死に抑えていた。

「それで?いったいなに用なのかしら?」

なーんで彼がここにいるのよ!?

「上条恭介くん?」

私が名前を呼ぶと彼は驚いたような顔をした。
そりゃ初対面……じゃないけど、向こうからしたら知らない人にいきなり名前を呼ばれたらびっくりするよね。
でもね、私もそれ以上にびっくりしているから。
なんでさやかの思い人と結界内で対峙しなきゃならないのよ。
私としてはさやかの恋は応援したいの!こんなところで彼に変な影響を与えて話を拗れさせたくないのよ!

「あ、あの……あの!」

恭介は何かを言おうとするが言いよどんでしまう。
しかしそれも数回で、彼は意を決して口を開いてきた。
私にとって大きな爆弾を……

「一目ぼれしました!僕をあなたの僕にしてください!!」

なんで告白が隷属宣言になってんのよ!?



[28243] 第6話 …………ほっ
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/06/14 00:07
「一目ぼれしました!僕をあなたの僕にしてください!!」

もう一度、上条恭介の声が聞こえた。
が、彼の口は中途半端に開かれたままで一切動いていない。
自分が声を出す前に、自分にそっくりな声をしたなにかが先ほどのセリフを言ったのだ。

目の前の魔女も自分が言ったのではないセリフに、唖然とした態度でこちらを見つめる。
彼は声が聞こえてきた方向をギッギッギッと壊れたオモチャのように首を動かすと、そこにはフリルをたっぷり使ったゴスロリに似た格好をしている自分より1,2歳下の少女が奇妙な形のメガホンを片手にニヤニヤしている。

「一目ぼれしました!僕をあなたの僕にしてください!!」

少女はメガホンに向かって一字一句間違えずに、さきほどのセリフを繰り返した。
それも恭介と同じ声で。

白い魔女もそれが恭介ではなく、この少女の言葉だと気付いたのか、つかつかと早足に彼女のもとに向かうと拳を振り上げて……

ガゴンッ

実にいい音でした。
のちに恭介はそうコメントした。













「え~っと、なにか手違いがあったみたいだからもう一度聞くわよ?」

魔女は仕切りなおすかのように咳払いすると恭介に向き直る。
空気がなんとも微妙だ。
だが、恭介はいい意味でも悪い意味でも緊張が解けた。
彼は魔女をまっすぐに見つめて口を開いた。

「どうかあなたの「奴隷にしてください!」……」

また空気が凍った。
恭介と魔女はもう一度、声がある方を向くとあの少女がタンコブ作りながらもメガホン片手にニヤニヤしている。
そしてもう一度魔女の拳が降りあがった。
まったく懲りない少女である。

魔女はまた咳払いして、恭介を促す。
恭介は頷いて、今度こそ自分の要求を伝えた。

「どうかあなたの曲を、ボクに作らせてください。」











「どうかあなたの曲を、ボクに作らせてください。」

え~っと、なんでこうなのかな?
それから恭介は自分のことを語りだした。
自分はこう見えてもバイオリニストで、それなりに腕がたつ。(知ってる、学校でも有名だもん)
今までは曲を弾いてばかりだったけど、私を一目見てインスピレーションが刺激された。(なんのこっちゃ)
私をイメージした曲を作りたくてたまらなくなり、ここまで追いかけてきた。(それで追いかけてくる執念がすごいわね)

「ボクにあなたの曲を作らせてください!」

恭介はまたそう言って、詰め寄るような勢いで私に近づく。
私は慌てて距離をとった。
なにせ今の私は普段の自分を成長させただけでしかないのだ。
顔を見られたらバレる!
一瞬、恭介を眠らせようかと思ったが、私の結界は絶望、憂鬱、疲れている人に効果があるのであって、ここまでキラキラした眼でくる人間には効果なんてない。
どうしよう?

「別に作らせても構わないでしょ?」

私が頭を悩ませていたら、頭に二つのコブをつくったアルベルティーネが私たちの間に割って入った。
とういうか、今どこから湧いた!?

「曲の一つや二つ、好きに作らせたら良いじゃん。いいのが出来たらここのBGMに使わせてもらえばいいし。」

アルベルティーネの提案に私は考えてみる。
確かに曲を作らせるぐらいはいいかもしれないけど、恭介は私のことをほとんど知らない。
それで勝手なイメージで曲を作る→ホラー系やミステリー系の曲→希望の魔女のイメージが!?

「……あなたは私をどのようなイメージで作りたいのですか?」

とりあえず、恭介の話を聞いとこ。
さすがにこの世界を見て私にそんなイメージがついたらヤダし。

「え?そうですね……最初は幻想的な夜のイメージだったのですが、この王国とそこで寝ている人たちを見ているとなんというか……」

言いづらいのか恭介は一瞬言いよどむが、意を決して口を開く。

「お昼寝王国?」

小首を傾げて、テヘッなんて言われて思わず萌えてしまった。
畜生、美少年ってやっぱ得だよ。
そうやって私の結界のBGM作成が決定された。















「おはよう!」

今日も私は元気に学校に登校する。
自分の席に向かう途中で恭介の席を横切るから挨拶しようと思ったが、思わずぎょっとしてしまった。
なにせ、彼の机の上には音符の書いていない楽譜が何十枚とあり、恭介はそれに必死に書き込んでいたのだから。
私は話しかけることが出来なくて、彼の幼馴染であるさやかに話を聞くことにした。

「ねぇ、さやか。上条君どうしたの?」

「うーん、なんか作曲に目覚めたとか言って急にやりだしたのよ。もう鬼気迫る勢いでさぁ。恭介の奴、私の知らないところでなにがあったのやら……」

そう言って落ち込むさやかをみんなで浮上させてました。
うん、恭介にはもっと幼馴染を敬え、構えと言っておこう。



[28243] 第7話 リンゴひとつ
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/06/14 00:08
彼女はその日も魔法で食料を調達して、自分の今の住処に帰ろうとした。
時刻は夜中。
町中を悠々と闊歩する中学生くらいの彼女を人が見たら眉をしかめたことだろう。
時代が変わり、町には街灯やビルの灯りなどのたくさんの光があろうとも、子供がこんな時間にひとり歩くのはあまり感心できたことではない。
だというのに、彼女とすれ違う人は誰も彼女に目もくれようとしなかった。
まるで彼女の存在がそこにはいないかのように。
彼女は手に入れたリンゴを一つ取り出すとおもむろにかぶりつく。
果汁が口の端にこぼれたが、それは指ですくってで舐めとる。
酸味の効いたほどよいそれに、彼女は微笑んでいると一人の女性とすれ違った。
とくに特徴もない、会社帰りらしい自分の倍も年が上のどこにでもいる女のひと。
だが、彼女は見てしまった。
女性の首筋に普通の人間には見えない魔女の紋章が……









彼女は獲物ができた。とほくそ笑むとその女性の後を追い始めた。
首筋の紋章……魔女の口づけを受けた人間は正気じゃなく、少々もたついた足取りで魔女がいるであろう場所までその足を止めない。
彼女はそれにもどかしく思いながらも、表面上は冷静に女性の数メートル後ろを歩く。
それからどのくらい歩いたのか、女性は人気のない公園に入った。
普通なら公園でいちゃつく男女がいても良いのに、そこには誰もいない。
あるのは噴水の水が流れる音とその噴水の前にある紅い、女性の首筋と同じ紋章だけだった。

「へっここが根城ってわけか。」

彼女はそう言いながら自分のソウルジェムを持って瞬時に変身する。
飾り気はないが、それでも魔法少女と呼べるだけの格好であり、その手には昔懐かしい魔法の杖とはお世辞にも呼べない長身の槍が握られていた。
表情もおよそ希望を振りまく魔法少女というより、戦闘者のそれである。
いやはや、最近の魔法少女も変わったものだ。

閑話休題

彼女は準備を整えると魔法陣の中に入っていく。
敵の奇襲に十分、警戒をしながら。












「へ?」

彼女はらしくもなく間抜けな表情を浮かべてしまった。
それだけ目の前の光景は彼女には衝撃だった。

「お、王国?」

そう、まさしく小さな王国が彼女の目の前に広がっている。
彼女は自分はまったく違う場所に来てしまったのか?と、頭を抱えたが、先ほど自分が尾行していた女性がその王国に向かって歩いていたので、ここで間違いがないはずだ。

「なんつーか、まさにファンタジーな結界だな?普通はもっとドロドロのグチャグチャなもんなんだが……」

彼女はそう呟いていても、警戒は解かない。
これが彼女が今まで生き延びてきた理由の一つなのだ。
魔女は人の形をしていない。
それどころか依存のどんな生物にも当てはまらないような姿をしている。
形状から攻撃が予測できない以上、警戒してよく観察するくらいしかない。
彼女はそうやって経験と観測、才能を持ってここまで来たのだ。
彼女がそうやって城下町に降りると、あちこちで人間が寝ていた。
気持ちよさそうに、穏やかに。
誰一人として死んでもいないし、生命力を奪われて青ざめた奴もいない。
彼女はどうしたもんかと頭をかいていると、ひょこひょこと二本足のウサギとネコが出てきた。
恐らく、この結界の魔女の使い魔なのだろう?
彼女は殺るか?と武器を構えていると、二匹の使い魔はその彼女に向かって礼をした。
まるで客をもてなすかのように。

『よくぞ来られましたお客人。』

『ここは希望の魔女たるホープディス・プリフィケーションさまの国でございます。』

『いかなる御用かは察しがつきますがここでの戦闘は控えてくださいませ。』

『この王国ではたくさんのお客人が眠っておるゆえ、その妨げは極力控えたいのでございます。』

かわるがわる喋るネコとウサギ。
使い魔が日本語を喋ったことに彼女は驚きながらも槍は下げなかった。
それは戦場では致命的なミスに繋がるからだ。

「へぇ?つまり人質ってわけ?」

「残念ながらハズレよ。」

そう挑戦的に笑う彼女に目の前の二匹以外の第三者の声が聞こえてきた。
彼女は気配を感じなかったそれに驚きながらも、後ろに跳躍して距離をおく。
いつの間にか二匹の使い魔に傅かれながら、白いローブを纏った魔女が彼女……佐倉杏子の目の前に現れた。











ありゃー、警戒されちゃってるねー……って当たり前か。
あっちは狩る側で、こっちは狩られる側だからね。
けど、そう簡単に狩られたくないわ。

「私はこの結界の主、夢と希望の魔女、ホープディス・プリフィケーション。あなたのお名前を窺ってもいいかな?」

目の前の赤い魔法少女はこちらに目を向けたまま、ゆっくりと槍を下す。
どうやら私と対話することにしてくれたみたいだ。

「佐倉杏子だ。それで?絶望と呪いをまき散らすはずの魔女が夢と希望ってのはなんの冗談なんだ?」

そう言った杏子の目は誤魔化しは聞かない。とばかりにギラギラしている。
おまけに手に持っている槍もすぐさま構えられるようにしている。
あ、あはは……魔法少女としてはアレだけど、戦闘者としてはベテランだね、この子。

「そのままの意味よ。私は絶望ではなく希望の祈りから生まれた魔女。だから結界内に人間を招いて絶望を癒す。」

こんな風にね。

私は掌を上に向けて力を行使すると、杏子のソウルジェムにため込まれていた絶望が抜け、それはそのまま私の手のひらで結晶へと変わった。
その様子に杏子は息を飲む。
やっぱり魔法少女からしてみたら、いきなり敵に魔力を回復させられたってところかな?

「……なんなんだ、あんた?」

「だから言ったでしょ?祈りから生まれた魔女だって。また魔力を回復させたかったら、私の結界を探してごらん?」

しばし私と杏子の間でにらみ合いが続く。
杏子は厳しい目で、私はフードで顔が見えないだろうが、にこやかに。

この穏やかなお昼寝王国には似つかわしくないほどの……











「それでどうだったの?」

アルベルティーネに聞かれて、私は手の中のリンゴをいじりながら答える。

「交渉は一応成立……かな?」

そう言って私は手の中のリンゴを二つに割って、片方をアルベルティーネに渡したのだった。



[28243] 第8話 魔法少女……?
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/06/14 19:31
見滝原町。
この町には今、ある都市伝説がひそかに蔓延している。

絶望を、憂鬱を癒してくれる白き魔女がいる。

一体何時ごろから流れはじめたのか、中高生の間には確実に広がっているその噂を、鹿目まどかも美樹さやかも耳にしていた。

「でも本当にいるのかな?」

「さぁ?でも噂にしては結構な目撃者とか体験者らしい人がいっぱいだよね?」

まどかとさやかはそうやってその噂をしていて、二人はもう一人いた自分の友人に……というか私に話題を振ってくる。

「あ~、まぁいてもいいんじゃない?悪いことをやってるわけじゃないしさ。」

私は苦笑しながらそう言うしかなかった。
白き魔女……自分を変に乏しめるのも、褒めるのも微妙でしかない。

「え~?夢がないよねぇ紅は。」

「さ、さやかちゃん。でもあたしは会ってみたいなぁ、その魔女さんに。」

さやかはつまらなそうに私は見て、まどかはその魔女に会いたいと言ってくる。
ヲイヲイ、ホープディス(私)に会いたいほどなんか疲れていることがあるの?

「まどかぁ、その魔女に合う条件は絶望していることだって話だよ?」

「あ、でも上条君は交通事故で手が使えないから、それで落ち込んでいるんじゃ……」

「いやいや恭介の奴、作曲に夢中で入院中は思う存分やるんだって活き活きしていたわ。」

「あ、あははは。上条君って結構逞しいんだね。」

「ま、わたしらには縁のない話だよね。」

さやかの言葉に私もうんうんと頷いておく。
この二人に絶望なんて言葉は似あわない。
絶望にさらしたくもない。
まどかもさやかも、ここにはいない仁美も私の大事な友達なのだから、絶望に堕ちても助けたい。
私がそんなことを考えていたら、近くに魔法少女の気配を感じた。
この町の魔法少女である巴マミの気配かと思ったけど、それとは違う魔力の波長。
私はこのままじゃこちらが嗅ぎ付けられると思い。
いったん、二人と別れて人のいない路地裏で魔女に転化する。
フードで顔を隠し、箒に乗ってその魔法少女がいるであろう場所まで飛ぶ。













その魔法少女は高層ビルの屋上にいた。
灰色を基調とした服に、長い黒髪の彼女は静かに見滝原の街を見下ろしている。
私は彼女の目の前に箒乗ったまま現れる。
一応、防衛のために杖を持って、かなり強固な見えない障壁を張り巡らしながら……

「こんにちわ、新しい魔法少女さん。」

目の前の魔法少女はいきなり姿を現した私に警戒の目で見てくる。
彼女の持つソウルジェムが私に反応して光り輝いて、彼女は私の正体に気づいたようだ。

「私は希望の魔女、ホープディ……!!」

ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!

私の自己紹介は途中で遮られた。
目の前の魔法少女がいつの間にか握られていたガトリングガンによって。
って、ガトリング!?
魔法少女なら、もうちょっと『らしい』ので戦おうよ!?
マミといい、杏子といい、この子といい。なんでこんな物騒なもので戦うのよ!?
事前に障壁を張っていて助かった。
もしそのままだったら、今頃私は蜂の巣だったわ。
私は攻撃系の魔法はほとんど使えないけど、支援系補助系はかなりのものだと自負している。
なんせ攻撃手段は身体強化して杖でぶっ叩くしかできないしね。
そうやって私は障壁を維持しながら魔法少女の銃弾を防ぎ続ける。
くそ、この子どんだけ銃火器持ってるのよ!?
次から次へと繰り出される武器に私は辟易としながらも耐え続ける。
ときどき投げつけられる爆弾も……っていうか、本当に魔法少女らしい戦いしようよ!?
私は若干涙目になりながらも、やっぱり耐え続ける。
魔法少女は私に攻撃が届かないと悟ったみたいで、いったん攻撃を中止してくれた。

「あなた、なんなの?」

魔法少女は感情を悟らせない瞳で問いかけてくる。
私は衝撃で乱れたローブの端を簡単に整えて、居住まいを直すともう一度自己紹介をした。

「私は夢と希望の魔女、ホープディス・プリフィケーション。あなたの名前を聞いてもいいかしら?」

「暁美 ほむら。」

魔法少女……ほむらは銃を私に向けたまま静かにそう言ってくる。
や……やっと自己紹介できた。
私は気づかれないようにため息を吐きつつ、彼女のソウルジェムに杖を向けつつ、穢れを回収する。
ほむらはそれに驚いた様子で、私をにらむ。

「私は絶望と憂鬱を取り除くことができるわ。またソウルジェムを浄化したかったら、私の結界まで来てごらんなさい。歓迎するわ。」

最初に力を見せて、私の有用性をアピール。
この子がどんな力をもっているのか解らないけど、これですぐに私を殺すのは早計と思ってくれるはずだ。
ん?巴マミはどうかって?
あの子はどんなに魔力を回復させてもライフル両手に追いかけられます。
おかげで障壁の魔法に関してはだいぶ腕が上がりました。
杏子とは時々お茶会するほどなのにー!!

ほむらは私を探るような目で見てくるけど、私を殺すことに対してメリットを感じなくなったようだ。

「あなた、キュウべぇになにを願ったの?」

「あら?そのことを知ってるんだ。それじゃソウルジェムのことも?」

「全部知っている。キュウべぇの目的も正体も、全部。」

「ふーん、それでも魔法少女になったのか、それとも魔法少女になってから知ったのかはわからないけど、強いのね。」

普通なら絶望に狂って魔女になるか、自殺するのが大半なのに。

「まぁいいや。あなたになら話してもいいかな?私の願いは単純な話。」

そう言って私は一冊のノートを取り出した。
中には私のことが……魔女、ホープディスのことがびっしりと書き込まれている。
私が書いたものだ。

「私はキュウべぇに魔女にしてって願ったの。」

「!?……なぜ?」

「だっていつか絶望して本能だけの魔女になるくらいなら、最初から魔女になったほうがいいじゃない。」

キュウべぇの奴は、上位世界(現実世界)から記憶を持ったまま転生した私の因果に気づいて、逃がす気なんてなさそうだったし。
私が願ったのは本当に簡単なことだ。

ノートに自分がなりたい魔女の設定を書き込んで、キュウべぇに何度も質問して矛盾を極力排除して、このノートに書いてある設定の存在にしてほしいと願っただけなのだ。

まぁ、設定を切り詰めるのに一か月は掛かったけどね。
誤字脱字がないかチェックしたり、意味が通らなかったり、曲解されないか何度も読み返したり苦労したわ。
最強設定はさすがにできなかったから、私の因果の大きさをほとんど支援にまわしちゃった。
いわゆるH×Hの『制約と誓約』に似たものだ。
おかげで補助、支援、防御に関しては軽くチートなのだ。
ま、魔力を増幅させるシステムも織り込んでいるからそんなに困っていないけどね。
私は全てをほむらには話さず、ただ魔女になることを願ったとしか伝えない。
こっちの弱点までバレちゃたまらないからね。

「……そう。あなたがなにを目的として魔女になったかは知らないけど、私の邪魔はしないでもらうわ。」

いえ特に目的なんかありません。
キュウべぇがしつこすぎたので、ちょっと意趣返しのつもりでした。

「あらあら、私としては仲良くしたいのよ。ソウルジェムが穢れたら私のところに来てね。」

そう言って、私はそのまま箒で飛び去っていった。
暁美ほむら。
なかなか業が深そうな子だったな。

私と暁美ほむらの邂逅はこれでひとまず終わった。













「暁美ほむらです。よろしくお願いします。」

なーんて思っていたら一週間後に転校生として来ちゃいました。
しかもまどかを熱い目で見てる。
なに?ほむらってそっちの気でもあるのか?

私は友人の貞操を思わず案じてしまったのは仕方がないと、思わずにはいられませんでした。



[28243] 第9話 マッミマミにしてあげる♪
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/06/16 21:21
わたし鹿目まどか、中学2年生。
特に何かしらの特技なんかがあるわけじゃないごく普通の女の子。
優しい両親に、大切な友達。そんな人たちに囲まれている私。
そんなわたしに変化が起きた。

黒髪美少女の暁美ほむらちゃん。
彼女が転校してきたことが始まりだったかもしれない。

「鹿目まどか。貴女は自分の人生が、貴いと思う? 家族や友達を、大切にしてる?」

突然問われたことにわたしはうんって答えたけど、よくわからなかった。

「そう。もしそれが本当なら、今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思わないことね」

わたしはもっと違う自分になりたいと思う私の心を見透かされたようだった。

「さもなければ、全てを失うことになる」

こんな誰にも感謝も役にも立てないわたしは変わっちゃダメなの?















そうやって放課後にいきなり頭に響いた自分を呼んでいる声。
それに従ってその場所に行くと、白いぬいぐるみのような傷ついた動物と、見たことのない服と盾を持ったほむらちゃんがいた。
ほむらちゃんはわたしにその動物を渡すように言うけど、わたしには助けを求めてきたその子を渡すことが出来なかった。
その場はさやかちゃんの機転で逃げられたけど、すぐに別のもの……後から聞いた魔女の結界に迷い込んでしまった。
そこであったのはとっても素敵で、かっこいい魔法少女でした。

そしてわたしたちはキュウべぇに魔法少女になってほしいと言われたけど、望みをかなえる代わりに魔女と戦うのはちょっと怖い。
マミさんに助けられた時もすごく怖かった。
わたしとさやかちゃんが悩んでいるのをマミさんは察して魔女退治の見学をしないかって。
わたしたちは恐る恐るだけど受け入れた。
魔法少女に対する憧れと好奇心とすこしの恐怖で。

「それじゃ第1回魔女退治見学ツアーに行きましょう。」

次の日の放課後。
わたしは仁美ちゃんや紅ちゃんと別れてさやかちゃんと一緒にマミさんと喫茶店で話し合っていた。
さやかちゃんはやる気十分で金属バットなんか持ってきてたけど、ここで広げるのは恥ずかしいよ!
わたしもコスチュームだけは考えてきたけど、マミさんもさやかちゃんも笑うなんてひどいよ。

そうやって私たちのツアーは始まった。
マミのソウルジェムを頼りに、町を歩きながら魔女の魔力を探すんだけど結構大変なんだ。
そうやっているとマミさんのソウルジェムが点滅し始めた。
近くに魔女がいるんだ。

「こっちね。二人とも気を付けて」

マミさんに言われて人気のない公園に入っていった。
本当に誰もいなくて、噴水の水音だけがなんだが不気味に感じてしまう。
噴水の前には紅い月と太陽のような紋章があった。

「これが魔女の結界の入り口よ。ここから魔女の迷路を抜けて魔女を探すの。いくわよ!」


















そうやってわたしたちは結界を通り過ぎたのだけど……
なんでメルヘンな王国!?
昨日の魔女の結界とは似ても似つかないどころか、雰囲気も違いすぎるよ!?
しかもすっごい穏やかだけど明るいBGMまで流れてる!?
わたしとさやかちゃんは本当にここが魔女の結界なのか疑っていると、マミさんはずんずんと一人でライフル片手に王国に向かっていく。
わたしもさやかちゃんも置いて行かれたくないから急いで後を追いかけるけど、ここって迷路ってわけじゃないいよね?
それに……

「おーほほほほ!我が宿敵、ホープディス!今度こそ観念しなさーい!!」

「いやだって言ってるでしょ!?いい加減に他の魔女を狩りに行けーー!!」

「私が狩りに言ってもあなたが最後の最後で妨害するでしょーがぁ!!」

「私には私のやりたいことがあるのよ!」

「おまちなさーい!!!」

「くるなーーーーー!!!」

なんだか聞き覚えがあるような無いような声で逃げ回る白いローブの魔女さん?と、それをノリノリで追いかけまわすマミさんにわたしたちは言葉を失ってしまった。
魔女退治にそれなりに覚悟を決めていたわたしたちだったけど、なんでこんなコミカルな追いかけっこが展開されているのかな?
いつの間にか私たちは二本足で歩くネコさんとウサギさんに案内されて、お城のバルコニーから二人の追いかけっこを見ている。
しかもすごく美味しい紅茶とお菓子までついてなんだかお茶会みたいだ。
結界の中に入った時に聞こえていた穏やかだけど明るいBGMも、二人が追いかけっこを始めた時にはコミカルなゲームで使うような戦闘の曲に変わってるし……
それにしてもマミさんと魔女さんの様子ってまるで……

「ト○と○ェリー……」

「ああ……まさにそれだ。仲良く喧嘩してるよ。」

まさしくしっくりくる。
心なしかマミさんが楽しそうに見えて、わたしもなんだか笑ってしまう。
それからわたしたちは二人が気が済むまでお茶会を楽しむことにしました。
こんなのだったら魔法少女になるのもアリかな?















アレが例外中の例外だとすぐに思い知らされました。
わたしたちはマミさんがほ、ホー、プ、ディス?という魔女さんを退治できなくて別の魔女さんを退治することになった。
マミさんが後輩にかっこ悪いところばかり見せられないから張り切っているんだってキュウべぇは言っているけど、あの魔女さんとの追いかけっこは見ていて楽しかったのにな。
ちょうど?病院で孵化したグリーフシードを見つけて、結界に入るとさっきまでのメルヘンな結界とはぜんぜん別のすごく不気味で怖い結界だった。
巨大なお菓子に、病院で使われるような薬瓶に巨大な注射器。
至る所に目玉の様なネズミのような不気味な使い魔が徘徊している。
マミさんはそんな使い魔たちをライフルで撃ちぬいていく。
さっきまでの白い魔女さんとの追いかけっこなんかとは違う。
簡単そうに見えて本当に命を懸けている戦い。
マミさんは白い魔女さんとの戦いは本当にじゃれていただけなんだと思い知らされる。
そのギャップがなんだか怖い。
そうやってわたしたちは結界の最奥に到着した。

そこにいたのは小さな人形のような魔女。
マミさんはその魔女を見ると同時にいきなり撃ちぬいた。
その追撃にライフルを振りかぶって殴り飛ばして、また撃ちぬいて、魔法で縛り上げた。
本当に早くて流れるような動き方。

「これで終わりよ。ティロ・フィナーレ!」

大砲の様な大きな銃でそれを撃ちぬくと爆炎が出来て、わたしたちはマミさんが勝った!と思った。
けど、その魔女の口から大きくて長いのが出てきて、すごい速さでマミさんを狙う。
わたしたちは思わず幻視してしまった。
そのままマミさんの頭が食べられてしまうのを……













「甘い!!」

バコーーーン!!

「「へ?」」

思わずわたしたちは変な声が出てきてしまった。
食べられてしまうと思ったマミさんがその長い……恵方巻き?をライフルでフルスイングで殴り飛ばしてしまった。
そのまま恵方巻き?は弾き飛ばされて壁に激突する。

「悪いけど、その程度で私を殺すなんて百年早いわよ!!」

それからはマミさんの猛攻がすごかった。
ライフルで魔女を滅多打ちにして、巨大なライフルで撃って、また滅多打ち……
なんだろう……魔女のほうが哀れになってきちゃった。

「ホープディスを撃ち損ねたストレス、あなたで晴らさせてもらうわ!ティロ・フィナーレ!!」

ドカーーン!!

マミさんはそうして魔女に止めをさした、ていうか。

「「やつあたりーーー!!?」」

わたしとさやかちゃんは思わず叫んでしまったけど、悪くないよね?
マミさんが白い魔女さんを追いかけているのはジャレているんじゃなくて、本気だったのかな?

マミさんは止めを刺したはずなのに、まだライフルを構えている。
けど、あれだけ攻撃したのにまだ生きているの?
爆炎が晴れるとわたしたちは目を見張った。
そこにいたのは、さっきまでマミさんと追いかけっこをしていた白い魔女がいたから。
ホープディスさんはあの黒い魔女の首を掴んで逃げないようにさらに口を縛っている。

「あーら、やっぱり邪魔しに現れたわね。」

「いやー、こっちもこっちの都合があるからね~この魔女は悪いけど貰っていくよ。」

ホープディスさんはマミさんに杖を向ける。
マミさんはそれに抵抗なんてしない。
まるで自分に危害を加えないことを確信しているかのように。
そうしてマミさんのソウルジェムから黒いなにかが出てきて、それがホープディスさんの手の中で結晶になった。

「それじゃ、私はこの辺でお暇させてもらうわ。それじゃ今度はゆっくりお茶会でもしましょう。」

そう言ってホープディスさんは消えて、わたしたちは結界からいつの間にかはじき出されていた。

「ホ~プ~ディ~ス~……次は勝たせてもらうわよーーーー!!!」

こうやって私の最初の魔女退治ツアーは終わった。
マミさん、ちょっと怖かったよ。











その頃、まどかたちを物陰から見ていたほむらは生き残ったマミとホープディスに驚いていた。

「マミが生き残るなんて……私が介入しなかった場合ほぼ100%死んでいたのに、それにあの魔女……」

このことがこれからのことにどれほどの影響を及ぼすかは、ほむらは予測がつかなかった。



[28243] 第10話 シリアス……なのかな?みじかめ
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/06/16 21:22
はろはろ!なーんか最近まどかとさやかが魔法少女候補になってまーす。
この間、マミと一緒に結界に入ってきたときはびっくりしたわよ。
そんでマミと私が追いかけっこしているときに二人はのんきにお茶会しているし……まぁ、私の使い魔が案内したというから、別にいいけどね。
で、そんな魔法少女候補がなーんでまた私の結界でお茶会しているのよ。

「それで……わたしどうすればいいでしょうか、ホープさん」

そう言って問いかけるまどか。
いや、ホープと呼ぶのはいいけど私がそう呼んでいいと言ったし。

ん?どういう状況かって?
まどかから相談受けてます。
魔法少女になるかならないのかの!

「その前にまどかちゃん、聞いていい?」

「はい?」

私は大きくため息を吐く。

「私は魔女で、魔法少女に狩られる立場なの。で、な~んで私がその狩る立場候補から相談されにゃあならんのだ?」

私がそう言えば、まどかは苦笑してほっぺたをポリポリ。

「えっと、この間の追いかけっこでなんだかマミさんと仲が良さそうだったし、他の魔女さんと違っていたから……」

「あ~……なるほど、魔女視点からの意見が聞きたいと?」

まどかはこっくり頷く。
さやかに内緒にしてまで来るなんて、こりゃ相当悩んでいるな。

「そうだね~まどかちゃんは今より成長したい?」

「へ?し、したいです。」

「ナイスバディになりたい?」

「な、なりた……なに聞いているんですか!!」

「あはは、ごめんごめん。でも結構重要な質問だからね。」

私はお城の中庭の薔薇を見ながらゲルトルードの仕事に満足し、お茶菓子を一口食べてシャルロッテの腕前に頷く。
新しく招いた私の同胞たち。
みんな成り立ちは違うけど、共通点がある。

「まどかちゃん。魔女の寿命ってどれくらいかわかる?」

私の質問にまどかちゃんは驚いたような反応をしながらでも、まじめに考えて頭を唸らせる。
ちょっと意地悪な質問だったな。

「それじゃあ聞き方を変えるね。魔法少女はいつまで魔法少女かな?」

「え?それはやっぱり子供の時まで……あ、でもキュウべぇはそういうの言ってなかったよ。やっぱり大人になればやめなくちゃいけないんですか?」

ふふ、普通ならそう思うだろうね。

「違うよ。魔法少女はいつまで経っても魔法少女だよ。ソウルジェムを浄化し、魔女を退治し続けるかぎり魔法少女は永遠に少女のまま。」

私がそう言うとまどかちゃんは凍りついたような顔をする。
どうやら私の言いたいことがわかったようだ。

「それって……歳を取れなくなるって意味ですか?」

それに私は笑顔で応える。

「うん。魔法少女も魔女も寿命がなくなる。外的要因でしか死ぬことができなくなるの。」

そう言って私は自分のソウルジェムをなでる。
まどかからの位置からは見えないけど、いつも通りの輝きを放っていることだろう。
私は天涯孤独だったし、それも覚悟の上で契約したから自業自得。
だけど、ちゃんとした親兄弟がいるなら知っておかないと後悔する。
とくにまどかやさやかみたいな子たちはね。

「最初は歳を取れなくてもある程度誤魔化せる。けど、それが5年10年といけばそうはいかない。人間というは成長する生き物、その生き物の中で何時までも成長しない不老の存在がいたらみんなはどう思うかな?」

まどかの顔は今は真っ青だ。
心なしか体も震えて、手はスカートを握っているのか爪が真っ白だ。
だけど私は止めない。
たとえこれでまどかが傷つこうと止めるわけにはいかないのよ。

「自分の外見年齢を変えることができるなら問題はないわ。まわりの人間に暗示をかけて誤魔化したっていい。だけどそれらができないなら……魔女と違って結界を持たない魔法少女はいつか自分と周りの時の流れに耐えきれなくなる。自分の親が、友達が、恋人が老いていくのをただじっと見ることしかできない。これから出会う人たちも同じ。自分だけ変わらず、他の人間は歳を取っていく。魔法少女である限り、魔女を狩りながら人に交じることが出来なくなり、その人たちの死を看取っていく。同じところに留まることもできない、不老は異端であると同時に人類の夢。もし見つかったら追われることになるかもしれない。まどかちゃんは耐えられる?そうなってまで叶えたい願いはある?」

私の問いかけにまどかは呼吸困難に陥ったかのように、ヒューヒュー喉から空気が漏れる音がする。
なにかを言いたいのに、なにも言えない状態で顔は汗まで出てきている。
私はそんなまどかの頭をなでてあげる。
まどかは一瞬びくっと体を震わせるけど、抵抗はしないようだ。

「ごめんね。だけど、これは本当のことだからよく考えてね?そういう存在になってまで叶えたい願いなら、私は止めはしないわ。」

「ホープ……さん…」

まどかの顔はまだ青ざめていたけど、さっきよりは落ち着いたみたいだ。
私はそのまままどかの頭をなで続けた。
マミにも一応説明したけど、その後にさんざんライフルで追いかけられて、なんかすっきりした顔で帰って行ったな。
「それではこれからもよろしくお願いね♪」
なんて朗らかに笑ってたし!
杏子はなんかかっこよく不敵に笑って
「はっすでに天涯孤独の身なんだから、今更さ!」
なんて言うし。

それに比べたら喚かない分、まどかは本当にいい子だよ。














「おはよう!」

まどかに相談を持ちかけられた翌日、今日も元気に学校に登校している。
私が教室に入ると、なんでかさやかが落ち込んでいるように見える。
机にへばりついてまどかが必死に声を掛けているが、さやかは全然反応しない。
おいおい、あの正義感が強くて元気なさやかちゃんはどうしたんだ!?
私はあわててさやかの傍によると覚えがあるようで、微妙に違う気配がしてきた。
これって……ほむらのじゃない魔法少女の気配?
マミのでもないし……これはさやかから感じているの?
私はさやかの指を見る。
そこにあるのは青いサファイアのような石の嵌った指輪。
信じたくなかった。これはただの指輪でもしかしたらおしゃれで付けているだけかもしれない。
私はそう祈りながらもさやかの指輪の装飾を詳しく見た。
その表面に刻まれいたのはこの1年で見慣れた俗に魔女文字と呼ばれる……ソレであった。

さやかが魔法少女になった。



[28243] 第11話 さやかのやけ食い 今回も短いな
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/06/17 23:47
いや~これってどういう状況なんだろう?

「ふぇーーーん!!!」

バクバクバクバクバクバクバクバク!

「さ、さやかちゃん!そんなに食べたらおなか壊しちゃうよ?」

「いいのよ、鹿目さん。私も気持ちがわかるからそっとしといてあげなさい。」

こんばんわ、毎度おなじみのホープディスちゃんです。
なぜか魔法少女2人とその候補一人が私の結界にお邪魔して、そのうちの青い髪の子がシャルロッテのお菓子を大量にばくばく食べてます。
やろうと思えばカロリーを消すこともできるけど、魔法少女になって日が浅いうちはまともにくらっちゃうよ?
つーかマミが私を追いかけないのも珍しい。
さやかが魔法少女になって落ち込んでいる理由を聞こうとしたけど、さやかもまどかも早々にマミと合流して話しかけられなかった。

「はいな~追加のお菓子を持ってきたよ~」

さやかがどんどんお菓子を消費する傍ら、のんびりとした喋り方のパティシエ服に似た魔法少女の衣装を着たシャルロッテが追加を持ってきた。
シャルロッテもここに馴染んだもんだよ。
さりげにチーズ系のお菓子が多いのはご愛嬌だろう。

「それでさやかちゃん。そろそろ話してくれないかな?」

なにがあったの?
私が問いかけると、さやかはグスグス言いながら話し始めた。















あれはあたしがいつものように恭介のお見舞いに行った時だった。
恭介は入院してから毎日のように作曲を続けていたの。
少なくともあたしがお見舞いするときは作曲しているの姿しか見えなかったわ。
あたし、恭介が事故や怪我のことで落ち込んでいなくてよかったとおもったよ。
それでその日も作曲している姿を見ながら、いろいろと話をしていたんだけど……恭介が言ったんだ。
バイオリンはもうできないって。
今の医療じゃ生活に差し支えないレベルにできるのも奇跡的な確率でしかないって。
その時の恭介ね、笑っていたんだ。
本当は……本当は泣きたくてたまらなくせに笑ったんだ!
例えバイオリンが出来なくても、自分はまだ音楽に関われる可能性はあるんだって言うんだ!
あいつ、あたしが気づいていないとでも思っていたの!?
体を震わせて、シーツを爪が白くなるまでつかんで……目にも涙を溜めてさ。
恭介は冗談交じりで、こうなったら奇跡か魔法じゃなければ治らないなって笑うんだ。
あたし、もう見ていられなくてさ……だからこう言ったんだ。

「奇跡も、魔法もあるんだよ!」

ってさ。それでキュウべぇに頼んだんだよ。
恭介の手を完治させてくれって。元通りに治してくれって……
あはは、あたしってバカだよね。
まどかが今朝説明しくれた時に、もっとよく考えればよかった。
これからは恭介と一緒に成長して、歳をとって、あいつがバイオリニストとして活躍するのを見るんだって思っていたのに……
あたしだけ置いてけぼりになっちゃったよ。
こんないつまでも子供のままで、恭介に抱きしめてなんて、キスして欲しいなんて言えないよ。
今はまだ、同い年で外見も年相応だけど……あいつは大人になってもあたしは子供なんだ。
ひっく……だ、だから……もう……あたしは…魔女を……魔女を狩り続けるしか……











「ないんだーーーー!!!」

「とか言いながらさっそく私を狩りに来るなーーーーーーー!!!」

途中でお菓子を食べるのをやめたさやかが泣きながら変身して、私を追いかけまわしてくる。
剣を何本も出して投げつけてきたり、直接斬りかかったりしてくる。
まぁ、泣きながらで視界が安定していないからなのか、当たることはないんだけどね。
まわりの子たちにもバリアを張って、流れ弾がないように調整しているし。
さやかもあたしで少しでも気が晴れるなら、鬼ごっこに付き合いましょう。

「うわああああああああああああ!!!!!」

あと、さり気に私はさやかのソウルジェムを浄化しながら逃げておりやす。
まださやかが戦闘に慣れていないからできる芸当でもあるんだけどね。
マミレベルなら逃げることに集中していないとお互い危ないからね。













「落ち着いた?」

あれから数時間も追いかけっこが続いて疲れたなぁ。
さやかも落ち着いたみたいだけど、まだシャルロッテのお菓子をドカ食いしている。

「ふぁい、ふぉめいわくふぉふぁふぇひまひは。(はい、ご迷惑おかけしました。)」

「いやいや、飲み込んでから喋ろうね。何言っているかわからないからね。」

私の注意にまどかとマミもうんうんと頷いているし、あといつの間にかほむらもここからまどかに見えない位置でお茶している。
ねぇ、本当にストーカーじゃないよね?

「ごくんっ…・・はぁ、落ち着きました。ごめんなさい、迷惑かけちゃって……」

「いいのいいの、気が晴れたならさ。それで、これからどうするつもりなの?」

私が聞くとさやかはちょっと遠い目をして私の王国を見渡す。
のどかで、気持ちよくて、暖かい場所。私の自慢の王国だ。
そうやってしばらく見ていると、さやかはこっちを向いた。

「そうですね。もうなっちゃったモノはしかたないですから、あたしは魔法少女として戦います。ホープさんはいい人だって解りますけど、他の魔女で苦しめられている人は大勢いますから。」

そう言ったさやかの瞳は揺れていたけど、そこはマミやまどかにサポートを願うしかないか。
私はお茶を飲みながら、ちょっとあることを考える。
今度、杏子と引き合わせてみるか?
もしかしたら一皮むけるかもしれないし。

「そうか、だけど私は私の活動があるからね。もしさやかちゃんが魔女を狩るなら私も魔女を捕獲するわ。」

「わかっています。けど、負けるつもりはないです。」

さやかのそれに応えるようにマミも頷く。
もう少ししたら、杏子も交えて魔女の真実も話しておこう。
この子たちが受け入れるくらい心が強くなったら、ちゃんと魔女の真実を……













さやか「それにしてもマミさんがホープさんを追いかける理由がちょっとわかった感じかな。」

マミ「あら、それは嬉しいわ。ホープさんとの追いかけっこってクセになるんですよね?」

さやか「うんうん、なんかこう『待てー!○○○ーー!』って気分なんですよね。」

マミ「それなら今度は二人で追いかけましょう」

ホープ「え!?」



[28243] 第12話 魔女と魔法少女の密約
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/07/09 19:45
「そんで?あたしにそいつに会えっていうのかい?」

「う~ん、あなたと会わせたら迷いも少しふっきれるんじゃないかな~と思ってね。」

私は現在結界内で杏子と向かい合わせでお茶会をしている。
先日のことでさやかはだいぶ持ち直したとは思うけど、まだちょっと不安だからね。
そこでさやかと似たような境遇の杏子と会せたらなにかきっかけが出来るんじゃないかな~?と目論んでいるけど、大丈夫かな?
杏子って良い子だけどだいぶ好戦的なところがあるから、喧嘩したらそのままなんてことにならなければいいけど……やっぱりちょっと心配だわ。

「別に会うのはかまわねーけど、むかついたらぶっ飛ばしていいよな?」

「いやいや構うわよ。私としては仲良くしてほしいくらいなんだから。」

「う~ん、誰かを元気づけるのは苦手なんだよな。魔女と戦う方が気楽だ。」

そう言って笑う杏子に私も苦笑する。
だけど私は知っている。
杏子はちゃんと人を思いやれるいい子だって。
むしろこの子はシスターにでもなれば絶対に人を導けるほどの存在になれると思っているくらいだ。
口ではこんなこと言ってもさやかにもいい影響を及ぼすはずだわ。
私は残っているカップの中身を飲み干すと席を立った。

「ん?出かけるのか?」

「うん。ちょっと人と会う用事があってね。」

「魔女に会うって……他の魔法少女か?」

私はその問いににっこり笑った。

「そうだよ。あなたやマミ、さやかみたいな魔法少女らしくない魔法少女にね。」












ズズズズズズズズ~

ところ変わって魔法少女らしくない魔法少女のほむらちゃんとお茶をしている。
さっきまで杏子とお茶してたし、お腹がお茶でたぷたぷになりそう。

「それで私に何の用なの~って……この部屋を見れば見当はつくかな?」

私はそう言いながら部屋の中を見渡す。
部屋の中でおそらく魔法で浮いている額縁の中に書かれている、ある魔女の情報。
私も魔女になって1年経つ。
この魔女に関してのうわさぐらいなら聞いている。
人類史上で最も強力で凶悪。
むしろ天災とまで言われている超ド級の大型魔女。
この魔女が現れればそこにある文明はすべて破壊される。
魔女の名前は不明。だけどこう呼ばれている『ワルプルギスの夜』と。
そこまで考えて私はテーブルの上にある地図に目を向ける。
見滝原の町の地図。
バツ印がいくつかついているけど、それは大体同じところに集中している。

「これがワルプルギスの夜の出現予定地?」

「……そうよ」

私の問いにほむらは端的に返した。
余計なことは言わないってわけだ。

「それで私に望むのはなに?ワルプルギスの夜を退治するのを手伝え?それとも余計な手を出すな?」

実を優先するならほむらは私との協力を申し出るし、プライドが邪魔するならせめて手を出さないように言うはず。
私は慎重にほむらの出方を窺う。
ここで対応を間違えれば私の命がマッハで終わる。
ほむらの警戒を解く意味でも杖も出していないし、障壁も展開していない。
唯一使っているのは身体強化ぐらい。
それも必要最低限ぐらいで、銃弾をとっさに避けるぐらいしかできない。
実質、私の命をほむらに預けていると同じなのだ。

「あなたには……協力を要請したい。私たちがワルプルギスの夜と戦うバックアップをしてほしいの」

ほむらはまっすぐ私を見ながら言う。
その顔は無表情ながらも瞳には闘志が宿っていた。
とても強い闘志が……
ほむらってこんな子だっけ?

「なるほど、私たちって言っていたけど他に魔法少女が?」

「巴マミ、佐倉杏子の他に場合によっては美樹さやかにも協力してもらうつもり」

「ふむ、たしかにそれだけの戦力があればワルプルギスの夜を退治とはいかなくても退けることはできそうね。いいわ、協力してあげる。ついでにこっちの戦力もある程度貸してあげるわ。」

「戦力?」

「そ、私に協力してくれる戦力」

そう言って私はニヤっと笑った。
私が言う戦力とは私が浄化した魔女っ娘たちのことなのだ。
みんな魔女としての能力に加えて、魔法少女であったときの能力もある程度使えるから一応戦力にはなるのよね。
協力してくれるかは別だけど。
話し合い終わったら、このことをとりつけなきゃね。
あ~も~……私はのんびり魔女や魔法少女集めながらのんきにお昼寝王国で暮らしたいのに……ワルプル殴っ血KILL。

こうやって魔女と魔法少女の密約が完了した。










「そういえばさ、ほむらの能力ってなに?」

いろいろと話し合ってある程度決まったあと、私は残っていたお茶とお菓子を楽しんでいる途中、ふと思いついて口にした。

「……」

それにほむらは無言を貫くけど、気になり始めてしまったのは仕方ない。
ほむらは銃をいくつも瞬時に取り出すけど、あの銃火器は魔法でコーティングしてあるだけで銃自体は概製品っぽいんだよね。
やっぱりあの瞬間移動っぽいのがほむらの能力かな?
空間転移とも違うし、それだったら銃を瞬時に出す説明もできないし……時間かな?

「時間移動……それとも時間停止かな?」

私はつい口にするとほむらの眉がぴくっと動かした。
なるほど時間関係の能力か。

「あたりっぽいね。」

私は笑った。
そんな私にほむらは憮然としたオーラを出して睨んでくる。
ありゃ怒らせちゃったかな?
でも、ほむらをサポートする以上知らないわけにはいかないからね。

「……あなたの正体はなに?」

逆に聞かれた。
あ~これは下手に誤魔化すと撃たれそうね。
それにもう潮時なのかな?
私は深くため息を吐くとフードに手を掛けた。
今まで魔女となったときは一度として人前ではずしたことのないフードをゆっくり……ことさらゆっくりと下す。
あらわになる私の顔。
ほむらも私の顔を見て息を飲むのが聞こえた。

「月陽……紅」

「あら私の名前を知っていてくれていたんだ。てっきりまどかにしか興味がないのかと思っていたんだけどね。」

私はくすくす笑いながら魔女化も解いた。
その姿は毎日まどかたちと一緒に学校に行っているクラスメイトの姿に他ならないことをほむらもわかったでしょ?

「な……ぜ…」

「う~ん、ぶっちゃけて言えばキュウべぇがしつこいからかな?」

「どうして……」

「だって最終的に理性のないバケモノになるくらいなら、理性のあるバケモノになりたいじゃない。キュウべぇたちもいつまで地球にいるかわからないし、キュウべぇたちがいなくなった後は魔法少女によるグリーフシードの取り合いじゃない。」

そう私はそれが気がかりなのだ。
キュウべぇたちはノルマが達成されないうちは地球にいるけど、その後はあいつらはここからいなくなるだろう。
それも魔女も魔法少女もほったらかして、アフターケアなしで。
魔女について詳しい説明もしないんだからこれぐらいやりかねない。
だからそれも含めて私は希望の魔女になった。
魔女も魔法少女も絶望に沈むことなく、希望を持てるように。
いつまでも少女の姿でいる彼女たちの安らげる場所を作り上げて。
いつかは使い魔たちも私と同じ魔女に成長させて世界中に派遣するつもりだけど、今はそこまで時間がない。

私はそこまで説明して、ほむらをまっすぐに見る。
ほむらはキュウべぇたちがいなくなった後のことまでは考えていなかったみたいで顔を蒼白にしている。
本当にまどかしか見てないわね。
将来設計とか基本でしょ?
そんなんじゃまどかはお嫁にやれません!

「そういうわけで、私はあなたに協力するわ。マミも杏子もさやかも私にとって大切な友達だからね。」

そう言って私は席を立つ。
これ以上ここにいてもやることないから、早く結界に戻って魔女っ娘たちに協力求めないと。
あ、その前に……

「当然、あなたのことも私は友達だと思っているわ。いや……友達になりたいのよ、ほむら」

その時のほむらの顔は残念ながら私には見えなかった。



[28243] 外伝 ホープがサーヴァントになりました! (ステータス修正しました)
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/11/03 10:19
その日、間桐雁夜は全てを掛けていた。

「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

いとしい人の大切な娘を助けるために。

「――――――告げる」

地獄で苦しんでいる少女を解放するために。

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

その地獄に突き落とした男を問い詰めるために。

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」

今ここに漆黒に染まりし凶戦士を召喚する……!!

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ……」

「むっいかん!二節忘れておるぞ、雁夜!!」

「……あ;;」

……はずだった!

ちゅどーーーーーーーん!!

激しい爆発とともに大量の煙が巻き起こり、二人の視界を覆った。

「くっいったい何が……!?」

徐々に晴れていく視界を魔法陣の中央に向けるとそこには一人の魔女が立っていた。
縁に金糸を縫いこんでいる白いロングドレスに目元まで隠れている同じ金糸のフードマント。
年齢は顔が良く見えないからはっきりしないが恐らく20歳前後。
その手には魔女に相応しい月と太陽の意匠が施された身長よりも高い杖を持っている。

「あなたが私を召喚したマスターですか?」

いまここに別の世界でたくさんの絶望を希望に変えた魔女が現界した。

「此度の聖杯戦争にてキャスターのクラスで現界したサーヴァント。名をホープディス・プリフィケーションと申します。」

並行世界で絶望より生まれたのではなく、祈りによって生まれた魔女。


「我が杖と祈りに誓って、どんな絶望も希望へと変えましょう!」

正史には本来よばれるはずのなかった魔女が木漏れ日の様な笑顔で笑った。














その魔女は魔女らしくなかった。

「いったいどこの英霊なんだ、おまえは。」

「どこだっていいじゃん。マスターは確実に生き残らせるよ。」















その魔女は恐ろしさなどなかった。

「だ……れ……?」

「私はホープディス。あなたの絶望を癒してあげるわ。」












その魔女は弱かった。

「跪け、雑種が!!」

「こんなチートにどう勝てっていうのよーーー!!」













その魔女は強かった。

「な!私のエクスカリバーを!?」

「あっぶなー!全力で障壁展開しなかったら死んでたわよ。」














その魔女は剛毅であった。

「余の軍門に下らぬか?」

「未成年を誘惑すな、ロリコン。」













その魔女は幼かった。

「いったい幾つの童女なのだ?」

「こら!いくらアジア系が童顔だからってそれはないでしょ!!」














その魔女は厳しかった。

「おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ!!神の狗めが!!!!!!」

「ストーカーは今どき流行んないわよ!」
















その魔女は摩訶不思議であった。

「我らが前に死ね」

「そんなことよりお昼寝しましょう♪」
















その魔女はまさに魔女であった。

「僕の祈りは邪魔させない!」

「心は正と負があって初めて"心"なのよ!あなたの願いを私は認めない!!」
















その魔女はまさに聖女であった。

「私の……私の望みはコレなのか。」

「あなたの心の在り方を私は否定しないわ。それを含めてすべてあなたなのだから。」
















その魔女は……

「さぁ、来なさい『この世全ての悪』。私とあなたで我慢比べよ。あなたの絶望と私の希望!どっちが先に音を上げるか勝負よ!!」














始まりにして終わりの物語の幕が上がる。

Fate/zero Hope
.
.
.
.
.
.
.
.
..........start!










あとがき
すいません、本編のほうは煮詰まってまだできていません。
一応、Fate/zeroアニメ化記念も兼ねています。
雁夜って好きなキャラですから幸せになってほしいです。
一応ホープのサーヴァントデータも載せたり?
スキルって考えるの難しい……
みなさまの反応次第では増えたり、減ったり……?
いろいろとご評価いただきましたのでステータス修正いたしました。
修正前のも比較として残しておきます。


<修正前>
【クラス】キャスター
【マスター】間桐雁夜
【真名】ホープディス・プリフィケーション
【性別】女
【身長・体重】撲殺しちゃうよ♪
【属性】中立・善

【筋力】E 【魔力】EX
【耐久】D 【幸運】A
【敏捷】C 【宝具】EX
ステータスは身体強化していない状態

【クラス別能力】
陣地作成:EX
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
"神殿"を上回る"王国"を形成することが可能

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成できる。


【保有スキル】
絶望を希望に:EX
自らの絶望を抜き出すことで魔力を回復することが出来る。実質魔力に底がない状態。
抜き出した絶望は他の者に与えることができる。

物質変化:A
魔術で概存のものを別のものにしたり、付加効果をつけることができる。

希望の魔女:A
消費魔力を半分以下に抑えることができる。

身体強化:A
魔力での身体強化。
魔力を回した分だけ幸運を除いたパラメータランクが上がる。しかし本人の資質上B以上は上がらない。

補助・支援魔術:EX
Aランク以上の攻撃でないと突破できない障壁や瀕死の重傷でも治せる治癒魔術を使える。
このスキルのランクが高いほど攻撃系の術は使用できない。
EXでは一切使えず、杖などで直接殴ることぐらいしかできない。

正体隠蔽:A
本来の姿である月陽紅の姿になることができる。
この姿の時は誰もサーヴァントだとは思わない。

ソウルジェム:A
自らの魂を宝石として身に着けている。
この宝石が砕けない限り、魔力があれば何度でも体を修復できる。だが肉体から100m離れると肉体を維持できずに崩壊し、また一から肉体を作らなければならない。

【宝具】
固有結界
お昼寝王国
ホープの結界が元になっている固有結界。
この結界に取り込まれた者は強制的に眠りにつき夢を見させられる。
味方なら良い夢を、敵なら悪い夢を。
ふわふわぽかぽか白い夢
カチカチコチコチ黒イ夢
誰もが夢見るアリスの夢
あなたはどっち?



<修正後>
【クラス】キャスター
【マスター】間桐雁夜
【真名】ホープディス・プリフィケーション
【性別】女
【身長・体重】撲殺しちゃうよ♪
【属性】中立・善

【筋力】E(B) 【魔力】A++
【耐久】E(B) 【幸運】A
【敏捷】C(B) 【宝具】EX
()は身体強化した場合のステータス

【クラス別能力】
陣地作成:C
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
この世界においての一般的な魔術師の工房を形成することが可能。
これはホープが別の魔術形態に属しているためランクが落ちている。

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成できる。


【保有スキル】
絶望を希望に:B
自らの絶望を抜き出すことで魔力を回復することが出来る。実質魔力に底がない状態。
抜き出した絶望は他の者に与えることができる。
本来ならば他者の絶望も抜き出すことができるが、ランクが落ちているために抗魔力がC以上ある場合相手の同意なしには絶望を抜くことが出来ない。

身体強化:A
魔力での身体強化。
魔力を回した分だけ幸運を除いたパラメータランクが上がる。しかし本人の資質上B以上は上がらない。

補助・支援魔術:A
Aランク以上の攻撃でないと突破できない障壁や瀕死の重傷でも治せる治癒魔術を使える。
このスキルのランクが高いほど攻撃系の術は使用できない。
Aでは一切使えず、杖などで直接殴ることぐらいしかできない。

正体隠蔽:B
本来の姿である月陽紅の姿になることができる。
この姿の時は誰もサーヴァントだとは思わない。
ただし変身するところを見られたら以降効かなくなる。


【宝具】
固有結界:EX
お昼寝王国
ホープの結界が元になっている固有結界。
この結界に取り込まれた者は強制的に眠りにつき夢を見させられる。
味方なら良い夢を、敵なら悪い夢を。
ふわふわぽかぽか白い夢
カチカチコチコチ黒イ夢
誰もが夢見るアリスの夢
あなた
はどっち?

ソウルジェム:EX
自らの魂を宝石として身に着けている。
この宝石が砕けない限り、魔力があれば何度でも体を修復できる。だが肉体から100m離れると肉体を維持できずに崩壊し、また一から肉体を作らなければならない。



[28243] 第13話 新たな魔法少女
Name: 朱鳥の巫女◆660375cd ID:a5d53a14
Date: 2011/11/07 22:23
「というわけで、これからほむらに協力してワルプルを殴ッ血KILLしまーす!」

ほむらとの会合を終えた私が結界内で魔女っ娘を集めて臨時集会をした際の第一声である。















「事情はわかったけど、具体的にはどうするの?」

私がある程度事情を話した後アルベルティーネにそう聞かれた。
ふふ、考えていないとでも思っていたのかい?

「とりあえず町に被害を出さないことが大前提!それについてもちゃんと考えてあるよ。」

問題はタイミングね。
ワルプルギスの夜が出てきた瞬間にやらないといけないからちょっと難しいのよね。
勝負は一回。やり直しはないのよね。
失敗したら町に被害が出る。

「ふーん、そのほむらって子も信用できるのよね?」

「大丈夫よゲルトルート。ほむらはまどかが大切すぎるだけだから、まどかに危害を加えなければこちらに牙を向けることはないわ。」

「ならいいけどね。私は私の薔薇たちが無事ならそれでいいわ。」

ゲルトルートは納得してくれた。
他の魔女っ娘もほむらと共闘することに承諾してくれた。
つーか中には魔法少女時代にワルプルギスの夜に敗れた子もいるからリベンジしてやる!ってやる気出している子すらいるわ。
よし、これで戦力はゲット!
さーてこれで後はさやかたちのことだけね。













「うがーーーーーー!!!次はぜったいかーーーーーつ!!!」

数日後、いつものように結界で人を招き、まどかたちも私のお茶会に乱入して一緒にお茶を飲む。
その際に魔法少女たちの絶望を抜き出すのも忘れない。
その時突然さやかが何を思い出したのか叫んだ。というか吼えた。
獣のごとく、虎のごとく。

「なにがあったの?」

私がまどかに聞くとまどかは恐る恐る小声で話してくれた。

「その……マミさんやさやかちゃんとは違う魔法少女と……喧嘩しちゃって……」

「ああ、それでさやかちゃんが荒れているのね。」

杏子、一体なにやったのよ。
まぁライバルフラグがたったらさやかも前を向いてくれる……よねぇ?
私はいまだ吼えているさやかに鎮静効果のある魔法を掛けると椅子に座らせた。
うん、我ながらいい腕だ。

「せっかくのお茶会なのだから落ち着きなさい。はい、ハーブティ」

私がハーブティを差し出すとさやかは騒いだことに対する羞恥心か顔を赤くして口をつける。

「ごめんなさい。ちょっと気が高ぶっていて……」

「ライバル出現で張り切るのはいいけど、あまり無理はしないでね。」

張り切った挙句にここに来るのも忘れて魔女になるなんて洒落にならないからね。
私はお茶菓子をつまみながらのほほんと使い魔を撫でる。
ああ、アニマルセラピーって結構効くもんだね。癒されるわ。
使い魔も私の意を汲んでくれるみたいで大人しく膝の上に納まっている。
動物系の使い魔の種類もうちょっと増やそうかな?
そんな感じに私が真剣(マジ)に検討していると結界に私が招いていない人が入ってきた気配を感じた。
好奇心で結界内に入った一般人ではなさそうね。
感じる限りかなり高い魔力の持ち主……感じたことがない魔力波長だわ。
私は膝から使い魔を下ろすと席を立った。
みんなはそれにハテナを浮かべるけど、私は何でもないようにふるまう。

「ちょっと城下の様子を見てくるから、みんなはここでお茶会を続けてね。ピーターとボリスは私の代わりにみんなのお世話をお願いね。」

『『御意、マスター』』

私は念のためお茶会をしているバルコニーに障壁を張ると箒に乗って城下に降りて行った。
















「あれ?ここって魔女の結界だよね?」

結界の入口。王国が見渡せる丘のところに一人の小さな少女がいた。
まどかやさやかよりも幼い……まだ小学生くらいのネコを象った衣装を身に着けた魔法少女・千歳ゆまは戸惑ったようにあたりを見回す。
今まで彼女が経験してきたようなどろどろでぐちゃぐちゃな結界ではなく、それとは逆の穏やかで温かい結界。
戦いを覚悟していたゆまにとってこれは予想できなかったことである。
ゆまはとりあえず目の前に王国に降りてみようと足を踏み出した。

今まで起こりえなかった白き魔女との邂逅がどのような影響が起きるか、今はまだわからない。


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