―――ブランコを漕いでいる女の子はどう見ても日本人ではなかった
「この思い出の主は彼女のようだ。何があったのか聞いてみるといい」
ヤトさんに促される、が
「ねぇヤトさん。あの子どう見ても日本人に見えないんだけど?」
彼女は日本人特有の黒ではない色の髪に少しウェーブに伸びた髪。同じく黒ではない色の瞳を伏せている
「今更か?別にイナバの血統を持つ者は日本人に限られていないさ。ほら、国際結婚が存在するだろう?」
「いやまぁ、そりゃそうだけど…」
正直日本人だけだとタカをくくっていたからか、戸惑いを隠せず狼狽えてしまう
「ほら、話しかけなければ何も変化しないぞ。物語を動かすのは主人公の行動なんだ」
背中から押してくるヤトさん
―――仕方ない、覚悟を決めよう
「…ども」
「………」
スルーされた
「ねぇ君」
「…Who are you?」
こっちを見て一言。反応したと思ったら…英語
?
焦る僕。後ろからクスクス聞こえる笑い声
「あー…えー…My name is Kyosuke.」
「Sorry Kyosuke.My mother said,"You must not talk with a person not to know"」
「………」
聞き取れず呆然とする僕。後ろから聞こえるハハハと爆笑の声
「随分楽しそうじゃないですかヤトさん!?」
少女を放っておいてヤトさんを責める僕は仕方ない、と思いたい
「良いものを見させてもらったよ恭輔。舌足らずな発音で『あー…えー…My name is Kyosuke.』だってさ!」
妙に似ていてムカつく
「What are you doing?」
ブランコに座った少女はこちらを不思議そうに話しかけてくる
「えっと…Ah…」
「助けて下さいヤトえもん」
「くくく。いい経験になったじゃないか。きょう太君。さぁ、今日は一度帰ろうじゃないか。私自身、いきなり海外の子が相手だとは思わなかったからな」
英語で少女に別れを告げ、僕たちは一度通った道を戻る。気温を感じ無いはずの帰り道だというのに何故か僕には寒さを感じた