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[27936] 【単発ネタ】つむりにっき その17【うさぎのーと】
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2012/08/31 00:41
まあ、知る人しか知らない4コマSSです。

今回は、一発ネタに近い感じで『うさぎのーと』のSSです。
反応によっては次のネタもありなのか…?
まあ、期待しない方向でお願いします。
もとより誰も期待していませんが……

ちなみに、個人的に好きな4コマは『あかるい夫婦計画』です。



一応、キャラ紹介(まあ、元ネタ知っているのが前提なもので…)


片岡 瞑(かたおか つむり)
学校一の美少女だけど男。毎日男子に告白されている。

大鎌 霧(おおかま きり)
元不良の眼鏡男子。つむりの幼馴染兼ボディーガード。

早乙女 優(さおとめ ゆう)
つむりちゃん大好きの女装男子。



[27936] つむりちゃんと霧くん
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/05/22 23:10
ここはとある中学校。
『うさ耳』をつけた、心身ともに発育不全の女教師との騒がしい時間も終わり、時は夕暮れ。
部活動の時間も終わり、生徒たちは帰路を歩くのみである。

先に述べた教師を筆頭に、とにかく変な教師、生徒の多いこの学校。
その中でも、一際異質な生徒が『幼馴染の眼鏡君』と一緒に下校していた。

その生徒は実家のパン屋の看板娘であり、この学校では一番可愛い美少女として知られている。

彼女の名は『片岡瞑(つむり)』。
ウェーブの掛かったショートヘアに大きな瞳、リボンつきスカートの制服、そして多少(?)天然の入ったおっとりとした性格もあり、学校の内外で彼女に声をかける男は後を立たない。

しかし彼女……



否!

彼はれっきとした『男』であった。
無論、彼は好き好んで女の子の格好をしており、女の子と勘違いした多数の男子を絶望させたり、道を踏み外させたりしている。

先に述べた彼の幼馴染の眼鏡、『大鎌霧』は彼のボディーガードのようなものであり、悪い虫がくっついてきてはそれを追い払う日々に若干うんざりしていた。



言うまでもなく、この日も霧君はつむりに言い寄ってくる道を踏み外した男どもを、ちぎっては投げちぎっては投げを繰り返していたわけで。



「ったく…面倒くさいな……」
「いつもごめんね~」

あくまで面倒くさがる霧と、半笑いで謝るつむり。
まあ、こんなことさえも日常茶飯事であるため、この学校はオカシイ。

「ねえ、霧ちゃん」
「な…なんだよ」

このいちいち人に話しかける際にも首をかしげる様は―――
圧倒的ッ……反則であり、霧も動揺せざるを得ない。

「今日体育の時間、指すりむいたでしょ?」
「あ…ああ……」

この日の体育の時間はバスケであった。
まあ、察する方は察しているとは思うが、バスケットボールがつむりの顔に当たりそうになったところ、済んでのところで霧が左手でボールを叩き落したのである。
さすがはつむり専用ボディーガード…ナイス過保護っぷりである。

「指見せて。早く治るようにおまじないしてあげるっ」
「いや、いいって…(すりむいただけだし…)」

「いたいのいたいのとんでけ~~~」
「………」

正直、これほどまでに無意味な時間は存在しないと思われ。
しかし、このつむりの天然ともいえる花満開の笑顔を前に、霧は顔を赤らめるばかりで反論の余地がない。

霧…ッ!屈服…ッ!屈服せざるを得ないッ!!



何度も言うが、これが男女であれば何の問題はない。
いや、それはそれでいろいろと突っ込まざるを得ないものがあるが…

しかしつむりは男であり、その上、そんな霧に嫉妬する男子が多いものであるものだから、もはやいろんな意味で救いのない学校であろう。



…おまけ…



「ねえ、霧ちゃん。なんか指を舐めるとイイ…っていうけど…」
「やらんでいい!!!」



[27936] せんせいとわたし
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/05/26 00:30
「霧ちゃん、この服どうかな?」

美少女の名前はつむり―――

「まあ、いいんじゃないのか」

眼鏡男子の名前は霧―――

「たまには霧ちゃんの服も選んであげよっか?」
「い、いや、いいって…」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「そんな、遠慮することないのに」
「だが断る」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「たまには霧ちゃんとのペアルックもいいと思ったのに…」
「男とペアルックで歩きたくないぞッ!!!」

美少女は男子だったのです。



と、いうわけで今回の話は街の洋服屋の話である。
いつもどおり、つむりが服選びのお供に霧をつれてきたわけなのだが、どうにもこうにも安めのイラスト(I LOVE TOKYO的な何か)の付いた独特のシャツがつむりの目に留まったというわけで。
しかもそのTシャツの残りがちょうど二枚ということもあり、女子思考のつむりの脳内では『Tシャツ二枚=ペアルック』という図式が自然に浮かび上がってしまった。

ちなみにこの日のつむりの格好は、白のTシャツにホットパンツと、これでもかというくらい眼のやり場に困る格好をしていた。
これで男というものだからほとんど詐欺ではあるが、第三者には当然そんなことなど知る由もない。
ともなれば、霧のボディーガードも自然と忙しくなるわけで(通常の3倍程度)。



閑話休題…
ペアルックの案は却下とのことで、ひとまず街を散策すると、今度は父子にしては結構いちゃついた様な男女が歩いていた。

「さとしく~ん。松茸が安いよ~」
「ダメだよ、菜穂。今月もピンチなんだから…」
「ちぇ、さとしくんのケチ」

男の方は、年の割には老けた感じの眼鏡男であり、女性の方は逆に年の割りに子供っぽい、まだセーラー服さえ似合いそうな黒髪の娘であった。
まあ、男女共に同じ指輪を薬指につけてるということは、おそらくは夫婦なのであろう。

「でも、あのころ(高校のとき)と違って、堂々とデートできるなんて夢みたいだね~」
「ああ、そうだね」

しみじみと語る男女…

「そうだよねっ『せんせいっ』」
「わっ!バカ!こんなとこで―――」

どうやらこの二人は、かつては先生と生徒の仲だったらしい。
もっとも、そんなことは周囲の人物の知ったことではなかった。
女は女子高生と呼ぶにはあまりにも違和感がなく、傍目児童福祉法に抵触してるように間違われても、致し方のないことであろう。



「そういえば、『香鳥先生』もダンナさんが『担任教師』だったんだよね」
「ああ、そうだっけな」

この現場をもちろん見ていたつむりは、体育教師である香鳥先生のことを思い出していた。

「じゃあ、私も霧ちゃんのこと、『せんせい』って呼んでいい?」
「ダ、ダメだ!!」
「どうして、せ ん せ い ?」
「ヤメロー!!!」

まあ、こんなノリになるのはある意味当然であろう。
またつむりも首をかしげながら言うものであるから、霧も赤面を免れず、彼の脳内では……

築くんだッ…!理性をッ…!

大鎌霧の揺れない心ッ…!

…まあ、その後も『せんせい』といいまくるつむりと周囲の目を気にしまくる霧の姿があったわけで……







「…………!!!?」

というつむりと霧のやりとりを中途半端なところから目撃してしまった、髪を低い位置で二つに結びにしている女子生徒『高山すずめ』。

たまたま街に、爬虫類の餌を買いに着ただけだというのに…
なんという圧倒的ッ不運ッ……!

彼女は好きなこと以外には非常に無口な娘であり、それをクラスで言いふらすということは決してないであろう。
しかし小動物の心ゆえ、しばらくつむりと霧とまともに接することが出来ないであろうことは想像に難くない。

出来ることであれば、従姉妹の『こばと』と生き物の話をして忘れていただけることが幸いなのであろう。



[27936] つむりちゃんと霧くん 2
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/05/29 01:06
「霧ちゃん、家庭部でマドレーヌ作ったんだけど」

美少女の名前はつむり―――

「まあ、うまそうだな」

眼鏡男子の名前は霧―――

「はい、あーん」
「バッ…バカ!!ヤメロ!!!」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「そんな、遠慮することないのに」
「そういう問題じゃない!!!」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「…だって霧ちゃんは、私の初めての相手になってくれるって言ってたんだもん」
「前と同じオチ使うな―――ッ!!!(うさぎのーと2巻参照)」

美少女は男子だったのです。



というわけで、今回は家庭科部でお菓子を作ってきたつむりと霧くんのお話である。
ちなみに先ほどのやり取りにより、一部を除く男子生徒の眼が猛禽類のごとく輝き、霧に向かいこれでもかというくらい殺気が放たれたのは言うまでもなかった。

この狭い学校では何か狂っている…狂っている……


「~~~~~~!!!」

そしてこの二人(つむりと霧)を極力見ないようにしているのが、前回、あらぬ場をみてしまった『高山すずめ』でございます。
それもまたすずめの抱いた誤解ではあるのだが、それを証明するすべもなく、ましてやそんなことを聞ける人間ではとてもとても……



「あ~あ…幼馴染、かぁ…」

一方、そんなつむりと霧をみて憂鬱になる女子生徒もいた。
彼女の名は『貝原楽子』。
黒髪でツインテール、ニーソックスであり、幾度となく小学生と間違われている。
そんな彼女にも幼馴染で同級生が存在するわけで。
その男は『小鳥遊空太(そーた)』といい、勉強、運動共に万能という所謂『天才』であり、楽子の想い人でもあった。

「そーたのことはあ き ら め ろ」
「ヒドッ!!」

そんな楽子に見も蓋もない言葉を投げかけるのは、楽子の友人『早久万理(くまり)』である。
楽子とは正反対に、中学生とは思えないスタイルの持ち主でありスポーツが得意。
そして常にしれっとした感じの女子である。

「でも、私もそーたのためにマドレーヌ作ったんだし、今度の今度こそ積極的にいくんだから」

くまりの「がんばれー(棒読み)」を背景に、そーたの下へ駆ける楽子。
頑張れ楽子!…と、言いたいところではあるが、おそらくはライアス(うさぎ先生のペットのゴライアスガエル)に食べられ徒労で終わることであろう、合掌……



…一方、つむりのマドレーヌ争奪戦(?)は、とりあえずクラスのみんな分のマドレーヌを作ってきたという、見事な女子力を発揮したつむりが勝者であったことは言うまでもないであろう。
ただ、こんなことであれば霧はクラスの男子からいらぬ恨みを買わずにものであっただろうに……
ある意味、霧の最大の不幸は。この女子スキルの高すぎる幼馴染を持ったことなのであろう。



[27936] つむりちゃんと霧くん 3 (ネタバレ注意)
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/06/03 20:02
「二人ともがんばって~」

美少女の名前はつむり―――

「他人事のように言うな!!」

眼鏡男子の名前は霧―――

「でも、とっても仲よさそうに見えるんだけど」
「どこがどうやってそう見えるッッ!!?」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「だって、霧ちゃん、あんまり自分の感情出さない人だから」
「………」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「お前!!つむりちゃんに怒鳴って……彼氏気取りかよ!!!」

「違う!!このクソ女ぁあああ!!!」
「………」←(結構うらやましい)

美男子は女子―――もとい、美少女は男子だったのです。



状況を説明すると―――
美男子(ホントは女子)である『早乙女優(仮名)』は、つむりのストーカーであり、いつも一緒にいる霧を敵対視していた。
先日は霧に対して様々な嫌がらせをしてきたわけなのだが、いずれも効果はなく、ついには霧につかまり三人での話し合い(?)のもと、一応は優はつむりのお友達からはじめることが出来たわけなのだが……

「今日こそはボクはお前を倒し、つむりちゃんのナイトになるんだ!!!」
「別に俺はナイトじゃないって」

まあ、黙ってれば可愛い男装女子ではあるのだが、まあ、惚れた相手は校内一可愛い女装男子相手であり……正しいような間違っているような……

閑話休題…
別に霧と優は、別に取っ組み合いの喧嘩をしてるわけではない。
これが喧嘩であったらつむりも悠長なことは言っていないだろう。

「つむりちゃんの実家はパン屋さん。つまり、おいしいパンを作ったほうがつむりちゃんを独り占めできるってのはどうだ!!!」

勝手に試合のルールを決める優に対し、霧は心の中で「どうだ…じゃねえ」と毒づく。
しかし、こうなってくると黙ってられない連中たちがそこにいた。



「ずるいぞA組(優はA組の生徒です)ッ!!この勝負、俺も入れさせてもらうぜ!!!」
「あっ!!抜け駆けか!!!俺も参戦するぞ!!!」
「俺も―――」
「俺も―――」

「えええ!!?」

負けられない戦いがここにある!
突如現れたC組の倒錯した男子生徒の数々に、さすがの優も驚くばかりである。



「……これは……俺も参戦しなきゃいけない流れなのか……?」
「なんかごめんね~…」

そして、結局はいつものパターンとなり、途方に暮れる霧と、おっとりと申し訳なさそうなつむりが残されてしまったわけで……



[27936] 天子様が来る!
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/06/06 19:53
「う~ん…私は特にないかな~」

美少女の名前はつむり―――

「とはいえ、俺も特に『願い事』なんかないんだが…」

眼鏡男子の名前は霧―――

「だって、今のままでも十分幸せだし」
「でも、なんか勿体無い気もするな……」

イラッ~…

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「じゃあ、霧ちゃんが…」
「…いや、つむり、お前でいいよ」

イライラッ~……

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「ああもう!早く決めなさいよバカップル!!!」

「カップルじゃないッッ!!!」
「う~ん…」

美少女は男子だったのです。



時は遡ること数分前……
この日の霧の昼食は『カップ麺』であった。
つむりには「早く言えば私が作ってきてもよかったのに」と言われ、赤面しながらも断ったわけで。
その時のクラス男子の殺意は霧に向けられたことは言うまでもない。

閑話休題…
そんなクラス男子を無視し、霧が出来上がったカップ麺の蓋を開けた瞬間……
方まで黒髪の仏像顔で、見た目天使とも取れる謎の妖精が「はろ~」という声と共に現れた。
彼女の名前は『天子様』…カップ麺の妖精であり、曰く「願い事を一つだけ叶えてあげる」とのことだった。

しかしながら、霧もつむりも特にかなえたい願いはないらしく、その上お互いが譲り合う結果、俗なフェアリー天子様のイライラが頂点に達したわけで。

「じゃあ、他の人たちの願い事を叶えてあげよっか?」
「バカッ!よせ―――」

優しいつむりはクラスメイトに願い事を委託しようとしたが、もはやオチが見えている霧は、当然それを阻止しようとする。



「じゃあ、片岡を『本物の』女の子にして!!!」
「てめー!!そうやって片岡狙うつもりなんだろ!!!」
「そーゆーてめぇだって!!!」
「んだと―――」

やいのやいの………



案の定、クラス男子どものつむりに関する願い事合戦となってしまい、「あれ~?」という具合のつむり。
一方の霧は、「やっぱり…」といわんばかりに片手で頭を抱え、ぼそりと……

「『こいつら全員消えてくれればいいのに』……って願ったらダメですかね?」
「良んじゃね?」

という、不穏なやり取りを天子様としていたことは言うまでもない。



結局、天子様への願い事は、しれっと介入してきた『くまり』の、『香鳥先生のダンナのポエムを見てみたい』というものが採用され、くまりと天子様がそれを読んでは『大爆笑』していた。

尚、くまりに先手を取られ『そーたと両想い』という願い事を叶えられなかった楽子が本気で悔しがっていたことは言うまでもなかった。

ちなみに、ハニーは『犬飼(兄)先生と両想い』、こばとは『学園にムツゴロウ王国を』、そーたは『うさぎ先生をもっと知りたい』という願い事がひそかにあったとか……



とりあえず、今回の最大の被害者は間違いなく『香鳥先生のダンナさん』であったことをここに追記しておく。



[27936] つむりちゃんと霧くん 4
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/06/10 21:20
「…なんという水晶のような透き通った心なのだろう……」
「………」

美少女の名前はつむり―――

「君の瞳を見るだけで、俺は天にも昇る……」
「………」

眼鏡男子の名前は霧―――

「君の輝きはバルゴの星さえ届かない……」
「………」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「それでも俺は君の傍に居たいんだ……ッッ」
「霧ちゃん……」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「―――って、なんで俺が『香鳥の亭主』の詩集読まなきゃならないんだ!!!」
「たしかに…霧ちゃんって感じじゃないよね……」

美少女は男子だったのです。



と、いうわけで時は放課後…

香鳥小巻(旧姓・桃栗)先生はD組の担任の超サイヤ人3……もとい、最強の女教師である。
その戦闘力を物語る列伝は枚挙に暇がないため割愛するが、今回の話で問題となっているのは、その旦那さんの方である。

旦那の名前は『香鳥螢助』。かつては香鳥小巻の担任の先生である。
この男は昔から何かと不幸であり、今でも大福高校『校長』を始めとして、『マッドサイエンティスト妹』、『大財閥夫人』からの嫌がらせ…もとい、騒動による被害をこうむっている。

そんな彼の趣味は『詩』を書くことにあるが、先の霧が読み上げたセリフで察するとおり……まあ、なんというか、宇宙人からまた別の宇宙人へのオマージュみたいな…土星に行くために2048年まで待たなくてはいけないものを、宇宙旅行へのタダ券を手に入れたようなものであり、全く別世界の出来事のポエムである。

そんなものが何故あるのかは、前回の『天子様が来る』を参照してもらいたい。

とにかく今言えることは、そんなクソ恥ずかしい詩を何の因果かつむりが手に入れて、それを霧が棒読みしているという、ただそれだけの話なのである。

「…っていうか、こんな寒すぎる詩を俺に読ませて誰得なんだよ……」
「ごめんね~」

相変わらずの正論の霧に、おっとりと謝るつむり。

「でも、香鳥先生の旦那さんって、とってもユニークな人だね」
「ユニーク…ってレベルなのか?」
「やっぱり、香鳥先生へのプロポーズって、こんな詩のような感じだったのかな~…?」
「……それで口説かれる香鳥先生…ってのもあまり想像できないけどな」

なんだか言いたい放題のつむりちゃんと霧くんである。
まあ、どっかの会計チーフ(現・園長)のプロポーズも非常にマヌケなものであったが、この香鳥螢助先生のプロポーズもこれに負けず劣らずマヌケであろうことは想像に難くないであろう。



「じゃあ、霧ちゃんならプロポーズに何て言うの?」
「え?俺!?」

ここに来て、唐突のつむりの質問(上目遣い)である。
このチート仕様に対して霧は……

「……そうだな―――」



………

……





「って、なんでそんなこと考えなきゃならないんだ!!?」

冷静に考えた後、赤面しながらツッこむ霧に対し「あれ~?」といった感じのつむりであった。



[27936] つむりちゃんと霧くん 5
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/06/13 23:33
「霧ちゃん、進路希望調査になんて書いたの?」

美少女の名前はつむり―――

「一応、近場の高校って書いといたけど」

眼鏡男子の名前は霧―――

「えっ?それじゃ、私と一緒の学校だねっ」
「ハハ…受験は来年だし、そもそも合格するとも限らんだろ」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「じゃあ、一緒に勉強して合格しようねっ」
「いや…その……」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「…だったら『泊り込み』で勉強してもいいけど」
「それやると面倒なことになるから(主にクラスの男子が)やんない」

美少女は男子だったのです。



と、いうわけで、時は放課後。
今回は進路の話である。
どの中学高校でも、大概は進路希望調査を取ることになっているのであるが、まあ、霧もつむりもそこまで将来の夢が固定されているわけでも、学を志しているわけでもないので、無難に近場の学校と記入しておいた。

尚、言うまでもなく楽子はそーたと同じ学校を記入しようとしていたが、そーたは『超天才』であるためレベルの高い高校名を記入している可能性もあるわけで……
楽子の恋愛道は果てしなく長い……



「おっす!」

「香鳥先生ッ!?」

ガラッと足で教室の戸を開け、最強教師香鳥先生の登場である。

「ふーん…進路希望調査ねぇ……」
「わっ……か、勝手にッ」

勝手に霧の進路希望調査票を見て、なにやら考え込む香鳥先生。

「ちなみに、先生は学生のとき、やっぱり教師になりたかったんですか?」

その横から、つむりが興味ありげに香鳥先生に質問をする。
すると香鳥先生は昔を懐かしむかのように、つむりの質問に答え始めた。

「そーだね。高校のときは教師になりたかったかな~」

香鳥先生は「ウシシシ」と笑いながら、今のダンナが担任だったしと付け加える。

「そういや……」

そして何かを思い出したかのように、香鳥先生は言葉を続ける。

「高校3年のときに、進路希望調査に『先生のお嫁さん』ってふざけて書いたらダンナに放送で呼び出されて怒られたっけ……」

「「………」」

さしもの霧とつむりも言葉が出なかった。

尚、香鳥先生は「エヘヘ」と笑って済ませてはいるが、当のダンナは同僚の女教師に揶揄された挙句尋問に遭い、その上校長にまで呼び出しを喰らうという、それはそれはひどい目に遭ったことをここに追記しておく。



こうして香鳥先生は教室を去り、再び霧とつむりが残されたわけで。

「なんだか、香鳥先生って改めてすごい人だよね」
「……ある意味、ダンナの方もな……」

呑気におっとりと感想を述べるつむりに対し、前回のポエムといい、香鳥先生の旦那さんに同情を禁じえない霧であった。
まあ、ここでつむりに『霧ちゃんのお嫁さん』と進路希望調査票に書かれないだけ今回はマシだったといえる。



[27936] スーパーメイドつむりちゃん
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/06/19 21:50
「霧ちゃん」

美少女の名前はつむり―――

「ん、なんだ?」

眼鏡男子の名前は霧―――

「なんだか、いっつも買い物のときについてきてもらってゴメンね」
「別に改まらなくても…。もう慣れたし」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「でも、いっつも迷惑ばっかりかけてちゃイケナイと思うから…」
「……?」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「…今日は私、好きにして……いいよ……」
「ヤメんかーーー!!!(クラスの男子が誤解する!!!)」

美少女は男子だったのです。



というわけで、ここは休日の霧の部屋である。
この日も例によって、つむりと霧は街に買い物に出ていたわけなのだが、案の定、つむりに迫り来るナンパ野郎どもを、霧はちぎっては投げ、ちぎっては投げの無双状態であった。
まあ、毎度毎度こんなんばっかではアレだからと、たまには霧くんに恩返しをしようと奮起するつむりちゃんだったわけで。

尚、先のつむりのセリフは本人には至って自覚はないものの、普通の男子であれば『うちゅうの ほうそくが みだれる!』レベルであり、幼馴染の霧だからこそ何とか耐え切ったわけである。

「…っていうか、なんで今日はメイド服なんだ?」

そう、作者はうっかり冒頭で書くのを忘れていたのだが、この日のつむりの服装は、なぜかメイド服であった。

「うんと……なんか近くの古着屋さんで安売りしてたからつい…」
「(……この街の近くにはメイドでも住んでいるのか?)」

いくらつむりがメイド服を着ているとはいえ、まさか幼馴染の『男の子』をメイド扱いするほど霧は人間を辞めてはいない。

「ねぇ…霧ちゃん……」
「うっ…」

メイド服で上目遣いは反則である。

「(落ち着け…素数を数えて落ち着くんだ…ッ!)」

人は自分の心の底を『他人』に隠したまま生活している。
しかし……永遠に誰にも『自分の本性』を隠したまま、一生をすごせるものだろうか?

「とにかく、そんな格好は許さん。俺は部屋を出てるから早く着替えろ!!!」

…まあ、霧の本性は不明ではあるが、つむりに対しては非常に紳士な侠客であった。

「残念…」

ナニが残念なのかは知らないがしょぼんとした表情になり、それでも気を取り直し新たな紙袋より次の服を選び始める。



「うーん…じゃあ、他にあったナース服で…」
「ヤメロ」

さすがは幼少時代からの歴史をもつ、つむりちゃんの幼馴染霧くん!
その長所も短所も知り尽くしている。
知り尽くした上でのナース服の拒否である。(大樹とは違う)

まあ、もしここで大樹がこの場にいようものなら、力みなくしてのカタルシスなどありえず即刻通報されていたと思われ。



[27936] つむりちゃんと霧くん 6
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/06/23 19:52
「ねえ、霧ちゃん」

美少女の名前はつむり―――

「なあ、その『霧ちゃん』っていうの、やめないか?」

眼鏡男子の名前は霧―――

「え、どうして?」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「いや、なんていうか、恥ずかしいというか……」
「うーんと…じゃあ!」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「…『霧さん』……?」
「―――やっぱ、元のままでいいや」←なんとなく照れくさい

美少女は男子だったのです。



というわけで、本日も街中。
霧はいつもどおり、つむりの買い物の護衛である。
まあ、先ほどの会話内容から察するに、思春期真っ盛りの霧くんは、いつまでも『ちゃん』付けで呼ばれるのが恥ずかしいとのことであり、つむりに違う呼び方を頼んでみた。
しかしながら『さん』付けの方がいろんな意味で『ヤバイ』ということが判明し、結局、元の呼び方に戻したわけで。



まあ、そんなこんなで街を歩くこと数分…
二人はペットショップ付近にて、見知った顔の人を発見した。

「あ、すずめちゃんだ」
「ああ。でも、もう一人の人は誰だ?すごいソックリだけど…」

『高山すずめ』は基本的には無口な分類ではあるが、好きなことに関してはとたんに饒舌になる。
無論、饒舌なすずめなど普段目にすることのない二人はその姿に、多少の戸惑いを覚えずに入られなかった。

そして、その彼女の話し相手となっているすずめソックリの女性は、言うまでもなく従姉妹の『高山こばと』であった。

「ねえねえこばとちゃん。コウモリってカワイイよね」
「一回飼ってみたいのが『ウマヅラコウモリ』…かな」
「ああ、あのとってもとってもカワイイの!」
「あのオスのなんともいえない顔の形、素敵だよね」
「それにあの鳴き声。『ブーブー』鳴くんだけど、それがまたイイよね」
「求愛のために鳴くんだけど、それで顔がふくらんでるんだよね」
「ロマンだよねー」
「恋だよねー」


………

……





「……霧…さん……?」
「だから、その呼び方ヤメロ…(しかも上目遣いするな)」

そのあまりにディープな話題…もとい、楽しげな時間を邪魔するのは野暮であると、黙ってその場を去る二人であった。



[27936] つむりちゃんと霧くん 7
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/06/27 20:29
「次の体育は創作ダンスだね」

美少女の名前はつむり―――

「…なんか面倒くさいけどな」

眼鏡男子の名前は霧―――

「でも、成績落とせないから頑張らないとね」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「でも、あの香鳥先生なら、なに踊ってもいい気もするけどな」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「じゃあ、思い切って『チーク』でも…」
「…なんでそうなる?」

美少女は男子だったのです。



と、いうわけで今回は体育の授業前の休憩時間の話。
先の話の通り、この日の体育は『創作ダンス』である。

なお、ここの体育教師である香鳥先生も高校時代は創作ダンスなるものがあったわけなのだが、自身も含むクラスメイトがあまりにも『邪念』を込めすぎてしまったため、体育教師が『謎の腹痛』により欠勤となってしまったことがあったわけで(女クラのおきて4巻参照)。

そんなことはさておき、まあ、さすがは中学生とのことで、大抵のクラスメイトはダンスを『創作』することに、胸躍らせている。
ちなみに彼らの担任である『うさぎ先生』が、さも当然のごとくクラスメイトに紛れ込みダンスの練習にいそしんでいるのは『いつものこと』なので誰も突っ込まない。
まあ、それで天才『そーた』君がやる気を出しているのでよしとする。

「ねえ、霧ちゃん。一緒に踊らない?」
「え…?」

つむりちゃんは、どうやら霧とダンスを踊りたいようではあるが、霧君はあまりノリ気ではない様子(そもそもダンス自体がダルイ)。
そんな霧に対しつむりは「ふーん…」という風に少し考えた後……



「私のことが……好きにな~る、好きにな~る。……ダメ?」

小首をかしげながら問いかけるつむりは反則である。
霧は顔を赤面させながらも、HPギリギリの状態で「ダメ」と答えたのであった。
…っていうか、今さらのFF8であることに突っ込む人もいなかった。



「なあ片岡。俺と一緒に踊らないか?」
「え?」
「あっ!てめぇだけ抜け駆けすんな!!」
「俺と踊ってくれ」
「いいや俺が!」

これもお約束の、つむりに声をかける男子生徒の数々。



「……なあ、殺人ダンスで血の雨を降らせても……」
「ダメだよ霧くん…」

物騒なことを口走る霧と、それを静止するそーたも、完全にお約束であることはいうまでもない。



[27936] つむりちゃんと霧くん 8
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/07/04 18:52
「なんか…すごい事になっちゃったね」

美少女の名前はつむり―――

「…ああ、俺も何がなんだかさっぱり……」

眼鏡男子の名前は霧―――

「やっぱり、休日はいつも付き添わせてるのが悪かったのかな…」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「……あるいは、休み時間も一緒にいるのがまずかったか…」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「「「我々は大鎌霧に対し『つむりちゃん独占禁止法』を適用する!!!」」」

「…なんかクラスの男子どもが一致団結してるし……」
「みんな、仲良くしてー…」

美少女は男子だったのです。



と、いうわけで、時は放課後。
なぜかクラスの男子が起こした『つむりちゃん独占禁止運動』…
首謀者は勿論……


「お前!!そうやっていっつもいっつもナイト気取りしやがって!!!」
「「「そうだそうだ!!!」」」

A組の男装女子、『早乙女優』である。
彼(?)つむりのストーカーであり、いつも一緒にいる霧を敵対視していたわけなのだが、まあ、霧の立場を羨ましいと思っている男子は、それこそ学校中ほとんどと言っても過言ではなかった。

「今日こそ観念してもらうぞ『くそメガネ』!!!」
「っだと!このクソ女ぁあああ!!!」

「み、みんな少し落ち着いて……」

つむりが何とか場を宥めようとするも、それで沈下する嫉妬の炎ではなかった。

「大体、いくら幼馴染だからって、こっちにも限度があるんだぞ!!」
「そーだそーだ!!」

そして、早乙女優の檄に続く男子生徒たち。
この毎度毎度のやりとりに、言うまでもなく霧はイラッときているわけで…

「つむり…ちょっと向こうを向いててくれ……」
「え?」

霧がそう言った瞬間、優がつむりに目隠しをし、その後は『無双モード』である。
全く以ってこの二人、息が合っているのか合っていないのかよく分からないものである。
それでも霧は、例のごとく男子生徒たちをちぎっては投げちぎっては投げ、結果的に教室には、つむりと霧と優の三人だけが残った。



「…さて…、邪魔者が粗方片付いたところで俺から一言…」

霧は改めて、優に向かって言葉を投げかける。

「大体、そんなにつむりと出かけたかったら、本人に直接言えばいいだろ。この間だって、ハニーとつむりと出かけたんだし……」
「そ、それはそうだけど……」

霧の正論に対しうろたえる優は、やはりどこか女性っぽかった。



「じゃあさ、今度、一緒に買い物いこうよ」
「え?」

それでも優はつむりといたい…その気持ちを汲んだつむりは、ここでやんわりと提案をする。
そして、女子以上に女子力の強いつむりスマイルである。
さすがの優も、この笑顔には一発で屈服……屈服せざるを得ないッッ!

「いや…かな……?」
「そ、そんな……!むしろ、一緒に行かせて頂きますッッ!!」

優としては、つむりと一緒にいれればとにかくOK!
かくして、優の怒りも収まり一件落着……



…かと思われたが……



「じゃあ霧ちゃん、何時に集まる?」
「え!?俺も行くのかッッ!!?」

なんとつむりは、さも当然であるかのように霧に集合時間を確認してきたのだった!
てっきりつむりと優の二人で買い物に行くとばかり思っていた霧にとっては、まさに青天の霹靂であろう。
そして……



「どういうことだくそメガネッッ!!!」
「知るか!!ってか、俺が悪いのか!!?」

案の定、『霧に対し』ブチ切れる優。
得てして霧くんの苦悩は、続くところまで続くのであった。



[27936] つむりちゃんと霧くん 9
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/07/20 21:23
「次は体育だね」

美少女の名前はつむり―――

「ああ、そうだな」

眼鏡男子の名前は霧―――

「確かプールだと思ったけど、つむりはどうするんだ?」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「…うーん…、まだ風邪が治ってないけど、どうしよっかな…」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「もし風邪が悪化したら、霧ちゃん…看病してくれるかな?」
「なんだその地雷は」

美少女は男子だったのです。



と、いうわけで、時は体育の時間前。
この日の男子体育は水泳の授業ということで、クラスの男子はつむりちゃんの水着姿に期待と局部を膨らませていることは間違いなかった。
もはやつむりが男子生徒であることなど、みんなは忘れているのであろう。

ちなみに、このクラスの担任である宇佐美先生こと『うさぎ先生』は、端からプールに入らんとばかりに直に水着を着てきており、あまつさえフライングでプールではしゃぎまくった挙句、『下着』を忘れるというベタなミスを犯してしまい『犬飼(弟)先生』にしこたま起こられていたのはいつものことであるので誰も突っ込まなかった。

まあ、うさぎ先生のフォローはそーたがなんとかしてくれるのであろう。

問題は、つむりが水泳の授業を休むか休まないか…そこに焦点が当てられていた。
クラスの男子の希望としては、ぜひとも授業に出てもらい、その水着姿を一目見てみたいものである。
しかし、彼女は風邪を引いており、無理に授業に出すのも酷というものではあるし、また、あのナイト(霧くん)もそのまま黙ってはいないことであろう。

「とにかく、風邪が悪化したらコトがコトだ…。先生には俺が言っとくから休んでろ」
「霧くん……」

まあ、この霧の優しさの裏側には、看病に行く手間と、その際のクラスメイトのやっかみも考慮されてのことであろう。



「じゃあ、風邪が治ったら、今度プールに行こっか?」
「なっ……!!?」

しかし、多少なりとも天然の入っているつむりは、そんな霧の考慮を無に帰すかのような、完全に余計な一言を発してしまった。



「テメェ!!ずるいぞ!!!」
「そーだそーだ!!!」
「つむりちゃん独占禁止!!!」
「オレもつれてけ!!!」

…いつもどおりのオチというか…
案の定のクラスメイトからのやっかみを前に、霧は「こいつら全員風邪引かないかな…」と思ったことは、いた仕方のないことであろう。



[27936] つむりちゃんと霧くん 10
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/07/31 19:39
「ねえ、霧ちゃん」

美少女の名前はつむり―――

「どうした?」

眼鏡男子の名前は霧―――

「今日、なんだか面白いニュースやってたんだけどね」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「へぇ…どんなんだ?」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「ニューヨークで『同姓婚』が認められたんだって」
「―――ッッ!!?」

美少女は男子だったのです。



と、いうわけで、時は朝の朝礼前。
どうやら朝から物騒な話題を持ちかけるつむり。
これが並みの男性であれば、こんなのは『真夏の夜の淫夢』よろしく笑い話で済むかドン引きで終わるであろう。
しかし相手は校内一の美少女…に見える『男』、片岡つむりである。

「(これを聞いた俺はどうしろと……?)」
「???」

嫌な汗だらだらな霧に対し、つむりは「どうしたの?」といわんばかりに首をかしげる。
正直、そのポージングも男性諸君から見れば、青銅二軍相手にいきなり黄金聖闘士が出てくるぐらい、ほとんど反則である。

これには霧も反応に困る…ひたすら困る。
ここで下手な回答をしてしまえば、女子には間違いなく冷やかされ、殺気立ってる男子にはその洗礼を浴びさせられることは間違いない。

というか、おそらく『くまり』あたりは勝手に結婚式やら何やらを『面白いから』という理由でおっぱじめることであろう。



……そして何より、新たなる敵(?)『早乙女優』からの執拗なる攻撃がとにかくイヤであった。
相手が一般男子生徒であれば、それこそ無双乱舞発動で済む話であるが、早乙女優は美少年風の『女子』である。
暴力で片付けられない分タチが悪く、口喧嘩で打ち負かそうにも大人気なく感じる。

ここはせめて、あの『うさぎ先生』がいち早く教室に入ってきて、『全てをうやむやにする珍事』を起こしてくれることを期待するも、それもダメ。
なぜならうさぎ先生は、今朝職員会議をサボろうとしたところ、犬飼(弟)先生に捕まり会議へ強制連行されてしまったからである。
大の大人が会議をサボるのもどうかと思うが、これで霧の望みが一つ費えたことは確かであり、この現実に絶望さえ覚える霧であった。

「~~~ッッ」

こうなったら、非常に難解ではあるが、上手く角の立たない解答を考えるしかない……
そう霧が考えていた矢先であった!



「へぇ、そうなんだ。こうして結婚も自由化していけば、いつかは人間と動物との婚姻もよくなったりして」
「うん、そうだねっ」

……なんということでしょう。
さすがは天才・そーた君。
つむりちゃんの反応の困る話題でも、問題なく対応している。
このそーたの模範解答を聞いて霧は…

「(なんだ。こんな答えでよかったのか…)」

と、ほっと胸をなでおろしたのであった。



[27936] Kanon
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/09/06 21:17
「霧ちゃーん」

美少女の名前はつむり―――

「Zzz―――」

眼鏡男子の名前は霧―――

「朝~朝だよ~」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「朝ごはん食べて学校行くよ~」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「―――ッッ!!?何だこの目覚ましはッッ!!!?」

美少女は男子だったのです。



と、いうわけで時刻は朝、ここは霧の部屋である。
寝起きをイキナリつむりの声で起こされたと思いきや、それは見たこともない目覚ましから放たれた音声であった。

「……これは、録音機能付の目覚ましか……」

…にしても、なんでこんなものが…とつぶやく霧くん。
ちなみに録音機能付目覚まし時計は、どこぞの『HoneyVoice』にてダミ声の彼氏がアニメ声の彼女に声を録音させていたのは余談でしかない。

問題は、何でこんなものが自分の部屋にあるのかということである。

「………」

ベッド上で上半身だけ起こし考え込む霧ではあったが、皆目見当がつかない。
目覚ましをプレゼントされた記憶もなければ、自分で買ってつむりに声を録音させた記憶もない。(ダミーとはちがう)

「わからん……」

頭を抱えて考え込んでいくうちに……



「朝だよ~霧ちゃん」

と、聞きなれた幼馴染の声が耳元で聞こえる。

「!!?」

ハッ――と横を向けば、そこには幼馴染のつむりちゃんがいるではないですか。

「な、何故お前がここにいるんだ!!?っていうか、この目覚ましは何だ!!!」

ツッこみたいことが多々あるのか、早口になり強い口調でつむりに当たる霧。

「えっと…なんか、針羽さん(ハニー)から借りたマンガ本に、『幼馴染が起こしに行く』っていうのがあったから、一回やってみたいな~って。…でも、なんだかちょっとはずかしいから、はじめは目覚ましで…と思って……」
「思ってじゃない!!!」

ハニーは何のマンガをつむりに貸したのであろうか……
というか、幼馴染とはいえ、簡単に部屋に上がらせる家族にも何らかの問題はあるのであろうか……
とりあえず、まずは気を取り直して学校に行く支度をする霧であった。



[27936] いつも心に太陽新聞
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/10/15 23:05
「あーあ…今日も仕事かー」

女性の名前は桜木優―――

「早く結婚して寿退社したいわー…」

太陽新聞広告部に勤めています―――

「それには早く相手を見つけないと…とほほ……」

普通に美人の彼女ですが―――
未だ独身で彼氏すら出来ません―――

「ん?」

ある日あの時―――
帰宅する途中で―――



「霧ちゃん、ほっぺにお昼のご飯粒ついてるよ」
「わっ!い…イイッ!!自分で取るからッッ!!」

「………(イラッ)」

バカップルどものイチャイチャする現場に遭遇しました。



と、いうわけで時は昼から夕方にかけて…
繰り返すようだが『独身』の桜木優が気分転換にと、いつもと違う帰り道を車で走っていると、つむりと霧が歩いていたわけで。
まあ、うかつにも霧がおべんとをつけていたばっかりに、三流ラブコメにありがちなシーンを目撃してしまったわけで……

「ああ、ガキのくせに見てて腹立つ……。早く家に帰ってビールでも飲も……」

見当はついていたが……案の定ひねた口ぶり。
仕事のことばかり考えてきた独女の発想―――痩せた考え―――







翌日の会社にて…

「はぁ……」
「そりゃあ、最近の中学生は、街中でも平気でイチャつきますよね」

ため息をつく桜木に対し、平然とした態度の雪谷浅葱。
無論、彼女は彼氏もちである。

「それはそうだけど、もっと人目というか…最近の若い者は―――」

こんな発言が出てくる時点で、桜木は完全にオバサン化しているといえよう。

「桜木先輩、そのカップルなんですけど…」
「え?」

一方、憮然とした態度のこばとは、何か知っている口ぶりで桜木に話しかける。

「多分、イトコの『すずめ』の同級生です」
「そ、そうなの…?」

そう、すずめはこばとのイトコである。
尚且つ、どちらも動物好きという共通点があり、非常に話は合うと思われる。
おそらくは、すずめの学校での話も当然聞いているのであろう、つむりと霧のこともこばとは知っていた。
…知っていたということは……

「そのカップルのカワイイ女の子……、実は男の子なんですよ」
「「お…男の娘おおお!!!?」」

こばとから聞いた衝撃の事実に驚く桜木と浅葱。
特に、昨日実物を見た桜木にとっては、つむりが男であることなど予想すら出来ないであろう。

「…男同士ですら『つがい』が出来てるというのに、桜木先輩ときたら……ププ……」
「な、なんですって!!!自分だって『雪谷所長』目当てで『萌葱』と付き合ってるクセに!!!」
「まあまあ、二人とも落ち着いて」

相変わらず、静かに毒を吐くこばとと、すぐムキになる桜木。
そして、それをなだめる元ヤン…もとい、後輩の浅葱。

なんだかんだ言っても楽しい職場ではあるわけで……



[27936] まんがホーム2月号~3月号の間らへんの話
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:ddf0a798
Date: 2012/02/04 23:51
「………」

美少女の名前はつむり―――

「―――悪ィなつむり、待たせて。帰ろーぜ」

眼鏡男子の名前は霧―――

「………」

二人はごく普通の幼馴染で―――
いつも二人一緒に下校しています―――

「ハニーと一緒に帰ったら?」
「はぁ!?何言って…」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「知らない!霧ちゃんのばかっ!!」
「つむり!!?」

この日はつむりちゃんと霧くんはケンカをしていたのです。




そういうわけでハニーがうろたえる中、つむりはダッシュで逃げるように帰宅…
それを呆然と見送る霧……

どうしてこうなったのかというと、霧とハニーがネット小説の話題で盛り上がっていたところを、つむりが自分に隠れて付き合ってるんじゃないかと誤解しただけの話である……(まんがホーム2月号ネタバレすまぬ)

なんともしょうもない切欠でのケンカであるが、霧が自分の趣味(ネット小説鑑賞)を下手に隠すものだから、なんとも誤解を解くのが難しいものである。



何はともあれ、この日は一人で帰宅する霧。
いつも一緒にいる幼馴染がいないだけでも、こうも物寂しいものなのか……

……という自身の心は、ひとまず見てみぬふり……

「………」

うまく自分をごまかし、何事もなかったかのように帰路を歩く。
なんとなく無意識の気分晴らしに、商店街にふらっと立ち寄ってみる。
勝手に勘違いして突っ走るつむりへの当て付けか、こぐまベーカリー支店のパンを買ってみる。

「……うまいな」

ネットでも評判のパン屋なだけあって、確かにうまい。
しかし、やはり何か物足りない……

昔は幼馴染の頑固親父が焼いた、どこにでもありふれたパンを二人でよく頬張ってみたものだ……
……とノスタルジックな気分に浸ってみる。



「明日はつむりん家のパンでも食うかな……」

と、一言つぶやき、霧は再び帰路を歩む。
明日になれば、すこしは誤解も解けるだろう……と、少し明るい展望を抱きながら、パンの残りを一気に頬張った霧であった。


















以下、ネタバレ注意…






なお、つむりの誤解については『うさぎ先生』が円満に解決してくれたおかげで、つむりと霧なんとか仲直りすることが出来た。
しかしながら、この『ネット小説』がクラスで一斉風靡してしまったことから、こんどは『楽子』が苦境に立たされることになったことは言うまでもない…



[27936] つむりちゃんと霧くん 11
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:ddf0a798
Date: 2012/05/02 03:28
「霧くん、今日は一緒に『うたんたん』のグッズ見に行かない?」

美少女の名前はつむり―――

「あ…ああ……。別にいいけど……」

眼鏡男子の名前は霧―――

「しかし、お前も好きだよなー…」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「うん。なんだかかわいくてね」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「あっ!!でも、霧くんも大好きだからっ!!!」
「そのフォローはいらん(ってかみんな見てるし…)」

美少女は男子だったのです。



そういうわけで、今回はクラスで何故かはやっている『キモブサイクなうさぎモドキ』の『うたんたん』の話。
女子の流行だけあってそれに女子以上に女子らしい『男』、つむりが反応しないわけがなく……
そのつむりの洗脳にあってか、霧は『うたんたん』が『うたんたん星』からやってきたこと、仲間が16人いること、うたんたんの両親の趣味、季節の行事、うたんたん星パーティや運動会のプログラムまで余すことなく知りたくもない情報を暗記させられるまでにいたっていた。

「ねえねえ、霧くん」
「今度は何だ…」

ここしばらく、つむりのうたんたんネタに多少辟易している霧は、じゃっかんぶっきらぼうな感じで答える。

「うたんたんのTシャツ、一緒に着ない?」
「断るッッ!!」

案の定のうたんたん話…
しかも今度は『ペアルック』の話ときた。
霧としては将来ブームが去った後に訪れるであろう『黒歴史』としても、旗からどう見ても『バカップル』にしか見えないであろうという二重の意味においてもそれは却下したかった。

「残念……」

鬼気迫る表情で提案を却下した霧に対し、つむりは心底残念そうであった。



「~~~~~~ッッ!!!」

そして『なぜつむりちゃんとのペアルックを断るッッ!?』よ言わんばかりにクラスの男子が内心怒り狂ったのは言うまでもない。

…しかし、クラス男子の怒りの火に油を注ぐのはここからであった。

「霧くん、ホントは(『うたんたん』のこと)好きじゃないのかな…?」
「そ…それは……」
「私だって霧くんのコト(『恭也シリーズ』)わかって好きになったのに……」
「あ…あの……」

今にも泣き出しそうなつむり…
こんなところでつむりを泣かせてしまっては、クラスの男子やら『早乙女優』やら面倒くさい展開がごり押しで来ることは容易に想像ができる。

それらを回避するためにも、霧はつむりの機嫌をとらなくてはならない。
そこで霧がとった行動は……



「…わかったよ…。俺ももっと(うたんたんのこと)好きになるよ」
「ホント?」
「ああ、ホントだ」
「ホントにホント?」
「ホントにホントだ」

…と、まあ、某ギャルゲーの展開でうまくつむりをごまかしてしまった。



「ふざけんな!!!!」

…しかしコトは問屋がおろさない。
よくよく考えたら、第三者が聞けば確実に勘違いする主語歯抜けの会話文…

「……しまった」
「……?」

つむりの機嫌は戻ったものの、この勘違い丸出しの会話文を丸聞きしていたクラスの男子やら『早乙女優』やらが、これ以上内面倒くさい展開がごり押しで来てしまったことは言うまでもなかった。



[27936] 次で本編は最終回か…orz
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:ddf0a798
Date: 2012/08/31 00:40
「ねえ、霧くん…」

美少女の名前はつむり―――

「どうしたつむり」

眼鏡男子の名前は霧―――

「なんだかこういうのって、何年かぶりだよね」

二人はごく普通の幼馴染で―――
ごく普通の同級生になりました―――

「あ…ああ……」

だがしかし―――
一つだけ違っていたのは―――



「二人で一緒のベッドで寝るなんて」
「……絶対に他の奴らにいうなよ……コレ……」

美少女は男子だったのです。



学校イチの美少女とメガネ不良は幼馴染…
それがなぜ、雷雨の中一つ屋根の下、こんな狭いベッドで一緒に寝る羽目になってしまったのか…?



時が遡ること数時間前…



たまたま霧の家に遊びに来ていたつむりであったのだが、突如降り出した大雨により帰宅は困難と判断したつむりは、自ら家に「友人の家に泊まる」と電話していた。
尚、あの娘(?)溺愛の親父のこと……つむりが悪い男にだまされているのではないかと心配で心配でどうしようもなく、炭と化したパンを大量生産し、あまつさえレインボーパンを販売してしまうなど、とても仕事どころではなかっとことは言うまでもない。

尚、こういうときのお約束の展開として、霧の両親は何故か旅行中で不在である。



閑話休題…

このまま霧の家にお泊りとなったつむりは、それはそれは好き放題であった。
霧の冷蔵庫を勝手にあさっては、余りモノから夕食を作り出し…
それを「あーん」とばかりに食べさせようとしたり…
着替えがないといっては、ガタイが違うであろう霧のYシャツを勝手に着てはその『ぶかぶか具合』で霧を見事なまでに困惑させたり…
さすがに「一緒にお風呂入ろ」などといわれたときには霧も断ったのだが……

いかんせん、これらのつむりの行動はいずれも『女子だったら』完璧であろう。
しかしながらつむりは見た目は美少女であれどもれっきとした『男』であり、その背徳感が余計に霧を追い詰めていることは言うまでもなかった。



…そして今現在…
何故か一緒のベッドで寝るという状況に至ったのである。

「……なあ、つむり…、俺、やっぱり床で寝てもいいか……?」
「だめ」
「………」

無論、霧は男であり、つむりに気を使い床で寝ることを何度も提言したのだが、つむりはそれを全て却下。
こうなれば霧はつむりには勝てない。

その上『ぶかぶかYシャツ』も健在であり、至る隙間から白き肌が見えるという凶悪コンボがさらに霧の理性崩壊に拍車をかけていた。



「(……俺、このまま無事に夜明けを迎えることが出来るのか…?)」



などという自問自答を延々と繰り返す霧であったが、よくよく考えればつむりが寝たころを見計らいベッドを抜け出せばよいだけの話であった。
霧は頃合を見計らいベッドを抜け床に寝転ぶと、先までの疲れが一気にのしかかってきたのか、はたまたつむりを意識しすぎた緊張から解き放たれたからなのか、そのまま熟睡へと誘われたのであった。


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