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[27467] 【完結】Fate stay Magica(Fate×まどか☆マギカ おまけ追加)
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:a9f084e4
Date: 2011/11/15 11:54
「早くサーヴァントを召喚し令呪を開け。もっとも、聖杯戦争に参加を辞退するのならば話は別だ。命が惜しいのなら早々に教会に駆け込むがいい」

 兄弟子の嫌味ったらしく勘に触る忠告を聞き流しながら私――遠坂凛は儀式の準備を進める。

 別にサボっていたわけではない。ついに迎えた聖杯戦争を勝ち抜くために最強のサーヴァントを手に入れるために今日までこつこつ準備しておいたのだ。

 狙いは最良のサーヴァント、セイバー。

 ただ、残念ながら強力なサーヴァントを引き当てるための触媒が私の手元にはない。仕方なく私は魔力にものを言わせて召喚というぶっつけ本番の荒業に出ることになった。

 でもしかたがない。強力なサーヴァントを呼び出すにはリスクのでかい賭けであるものの、触媒を探している間に座が埋まってしまっては本末転倒。

 そして、私は召喚を試みて……

「やっちゃった……」

 見事に失敗した。爆発が起き、めちゃくちゃになった儀式の道具の数々。その中心にサーヴァントはいなかった。

 ふっふっふ、なんでこんな時に遠坂家に代々受け継がれる『ここぞ、という時に発動する遠坂の呪い』によってドジを踏んでしまうのよ……

 私は自分自身に絶望しかけ……上で爆発音が響いた。

「な、なに?!」

 ま、まさか!!

 私は慌てて部屋を飛び出した。











 先ほどの轟音が聞こえた部屋、居間の扉を開けようとして、壊れてるのか開かないそれを蹴りとばし、なんとかこじ開ける。

 めちゃくちゃになった部屋の中心にその子はいた。

 まるで、アニメで出てきそうなふりふりの服に、ピンク色の髪をリボンで纏めた女の子。

「あの、その……部屋を滅茶苦茶にしてごめんなさい!!」

 私を見たとたんに頭を下げるその少女こそが、私のサーヴァントだった。









「で、あんたが私のサーヴァントでいいの?」

 ラインはつながってるからほぼ百パーセントそうであるだろうが、念のために尋ねる。

「は、はい!!」

 私は頭を抱える。はっきり言おう。目の前の少女は戦闘ができるようには見えない。

 いや、聖杯に呼ばれたのだから、れっきとした英雄なのだろうが、その服装も交じって聖杯にバグでも発生したのかと問いかけたくなった。

「で、あんたのクラスは?」

「はい、私はアーチャーです! 真名はありませんけど、私の名前は鹿目 まどかです!」

 アーチャーねえ? とてもじゃないが目の前の少女が弓兵として名を馳せたような人物には見えない。それに、『鹿目 まどか』なんて名の英雄なんて私は知らな……ん?

「あんた、今、真名がないって言った?」

「あ、はい。私ここでは無名のサーヴァントみたいです」

 聖杯戦争において、知名度は重要な要素である。

 誰もが知っているような有名な英雄ならば、能力値に補正が加わる。逆に無名ならそういった補正は皆無になる。

 まあ、有名であれば逆に弱点も知られやすいという欠点もあるからどっちもどっちね。

 だが、無名か。もしかして……やっちゃった? やっぱりちゃんと触媒探しておくべきだった?

 ま、まあ、無名でも、座にたどり着き、聖杯戦争に呼ばれるほどなのだ。私なんかじゃ想像できないような偉業をなしたはずであろう。

「む、無名ね。ま、まあいいわ。アーチャー、なら宝具はなんなの?」

 とりあえず、セイバーじゃないのは残念であるものの、アーチャーも悪いクラスではない。そこは妥協点といえる。

「はい、これです!」

 そういってアーチャーが出したのは、宝石と弓だった。

 弓が宝具っていうのはアーチャーとしてわかりやすいわね。宝石のほうは……よくわからない。

「じゃあ、アーチャー、最初の仕事」

「は、はい!」

 私は箒とちりとりを渡す。

「この部屋の掃除をお願い」

 正直、ものすごく疲れた。サーヴァント召喚のためにほとんどの魔力を消耗してしまったあとのこのドタバタなのだから。

「はい! 頑張ります!」

 と箒を受け取ったアーチャーは背を向けて掃除を始めた。

 本当に、英霊なのかしら? ただの女の子しか見えない。

 その背に私はそんなことを考えながら、部屋を出た。










 ――夢を見た。

 ――世界が壊れ、その中心に人形状の上半身と歯車状の下半身を備え、背中には虹色の魔方陣が光る巨大な化け物の姿。

 ――倒れ伏す友。白い生き物。

 ――何度立ち向かっても敵わない悔しさ、自身の行いが結局はかえって自分を苦しめていることに絶望する友。

 ――黒く染まっていく魔法の宝石。

 ――決意の眼差しで、目の前の敵をにらむ。祈りが絶望に終わり果てた、あまりに哀れな存在を。

 ――ごめんね。私、魔法少女になる――

 ――私、やっとわかったの。叶えたい願い事を見つけたの。だから、そのためにこの命使うね――

 ――今まで守ってくれていた、自分のことを大事にしてくれていた友達に伝える。

 ――泣きながら自分に訴える友を抱きしめ、白い生き物に向き合う。

 ――数多の世界の運命を束ね因果の特異点になった君ならどんな途方もない望みだろうと叶えられるだろう――

――その魂を対価にして君は何を願う――

 ――そして、その願いを口にした。

 ――希望を抱くのは間違いだという言葉を否定するために、すべての祈りを絶望で終わらせないために、絶望を否定するために。

――世界の理すら否定する、因果にすら反逆する祈りを。

 ――全ての……












~~~~
勢いです。
なんとなくまどかのあれが、アーチャーの世界との契約にダブって見えたのでつい。
とりあえず、型月の世界観に詳しい友人が、「真名はあくまで『その英霊が周りからそう認識されている名前』であり、厳密に言えば、未来のサーヴァントのエミヤも無名の英霊だから平行世界のまどかも無名が正しいんじゃないか」と指摘してくれたため、修正しました。



[27467] Fate stay Magica 第二話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:a9f084e4
Date: 2011/05/09 21:36
 翌日、私は気怠さと寝苦しさに目を覚ます。窓を見れば……すでに夕暮れ。おそらく学校は終わってるだろう。

 一応時計を確認すれば、針がすでに四時を指している。

 まったく、欠席の連絡もせず学校をさぼってしまうとは、しかも、病気でもなんでもない、ただの寝坊。

 正直、優雅であることを信条とする私としては、少し腹立たしい。

 でも、それよりも、

「夢……」

 内容はよくわからなかったが、たぶん、アーチャーの生前の夢であろう。

 パスが繋がっている証拠とも言えるけど、人の記憶を覗き見しているようで気分はよくない。

 でも、ふと思った。あの町は近代的なビル街だった。そして、アーチャーの姿からすると割と最近の存在だと思われる。

 だけど、あんな事件があればニュースに……いや、協会が感知しないわけがない。

 どういうことなのかしらね?

 考えるが、少ない情報に、そうやすやすと答えは出ない。

「あー、やめやめ! これからが始まりなんだから、先のことを考えないと!」

 寝起きの陰鬱な空気を振り払って寝巻のまま居間に向かう。

 にしても起きたのがお昼って、我ながら少々呆れてしまう。

 なんということか、これだけ眠ったのに魔力が三割かそこら。召喚の際にかなりの魔力を持って行かれたみたいで、もしかしたら私が思ってるよりも大物だったのかもしれない。

 それと、昨夜はアーチャーにめちゃくちゃになった部屋の掃除を任せたけど、大丈夫かしら?

 と、居間に入れば、元通りとは言えないものの、それなりに片付いた部屋の整頓振りが飛び込んできた。

「あら、すごいじゃない」

 と、関心する。女の子だし、割と掃除は得意なのかしらね?

「あ、マスターおはようございます」

 そう私に声をかけてきたのは、昨日とは違う、どこかの制服らしきものを着たアーチャーだった。

 まあ、あっちの服装は悪い意味でも目立ちそうだし、こういう格好のほうが助かるわね。

「おはよう」

 挨拶を返すと、アーチャーが準備しておいたのか、お茶を淹れて私に出してくれる。

「マミさんみたいにうまく淹れられないんですけど、どうぞ」

 気が利く子ね。ありがたく紅茶を受け取る。

「ありがとう。って、マミって?」

 たぶん、アーチャーの知り合いのことなんでしょうけど。

 あ、とアーチャーが口を押える。

「生前の私の先輩です。強くて、綺麗でかっこよくて、私の背中を押してくれました」

 ふーん、生前ね……先輩で強いってことは戦いの先輩とも取れるけど、この子からは、学校の先輩みたいな感じがするわね。

 そして、お茶を飲んでいて、じっとアーチャーが私の顔を見ていたのに気づいた。

「なに? 私の顔に何かついてるの?」

 私が問いかけると、アーチャーは、

「あの、そういえば、まだマスターの名前を聞いてないんですけど……」

 名前? ああ、そういえば、言ってなかったわね。正直、別に知らなくてもいいだろうとも思ってすらいた。

 だいたいマスターとサーヴァントとは令呪に縛られた主従関係、さらに突き詰めれば聖杯を手に入れるという利害が一致しただけの協力関係。

 主にふさわしくなければ裏切るサーヴァントもいると聞くし、マスターの名前をサーヴァントが知るというのはさほど意味がない。ただ……

 じっと私を見つめるアーチャー。

 その姿に、たぶんこの子はそんな子じゃない。ただ純粋に私の名前を知りたがっていると思える。

 会ってからそれほど時間が経ってないのにこの子の雰囲気は容易く人を信用させるようね。

「私の名前は遠坂凛よ。貴女の好きなように呼んで頂戴」

 すると、アーチャーは笑顔を浮かべて頷く。

「はい、凛さん!」

 う……

 その笑顔があまりにかわいくてちょっと顔をそむける。いや、別に私はそっちの気はないけどね。

「さてと、行くわよアーチャー」

 お茶を飲み終え、私が立ち上がるとアーチャーは首を捻った。

「行くって、どこにですか? お買いものですか?」

 がくっと私は脱力する。

「町を案内するのよ! いざという時に地理に詳しくなかったらしょうがないでしょう!!」

 あ! と納得するアーチャー。

 まったく、本当になんなのこのサーヴァントは? 自分が聖杯戦争というたった七組のマスターとサーヴァントで行われる殺し合いに参加しているということを理解しているの?

「じゃあ、よろしくお願いします凛さん」

 でも、アーチャーの笑顔を見るとまあいいかと思ってしまえる。

 サーヴァント相手に、まるで妹かなんかができたみたいね。そんな自分の心境に苦笑するものの、悪い気はしなかった。











 町を案内する私の説明に、うんうんと頷いて頭に入れようとするアーチャー。

 そして、今は私が通う学校に来ていた。

 まあ、学校なんて不特定多数の人間が出入りし、不意打ちされやすい場所ともいえるけど、一般人がほとんどのここなら魔術の秘匿を基本とする魔術師なら、下手なことはしてこないはず。

 それに、一応この学校の関係者で魔術に関わる人間は把握しているものの、そのうちの一人は魔術師見習い、もう一人はかつては名家だったが、すでに家が落ちぶれていてマスターになれているとは思わない。

 というわけで、私は昼はここにいるつもりではある。

 すでに夕暮れ時を回ったこの時間、それに最近物騒な事件もいくつかあるから、学校には人っ子一人いない。

 なんていうか、やっぱり夜は昼間とは違った印象を受けるわね。人がいて賑やかな学校を知っているだけに余計にそう感じてしまう。怪談のネタにぴったりっていうのもわかる気がする。

 と、考えていたら、

「よお、こんな夜更けに女だけとは危ねえなあ」

 かけられた声に私たちは振り向く。

 そこに、青いボディスーツのような戦闘服を纏い、血のように紅い、燃え滾るような魔力を纏った槍をもった男。いや、サーヴァント!!

 槍ということはランサーかしら?

「お嬢ちゃんがサーヴァントだろ? にしても、英霊に見えねえなあ」

 と、アーチャーを見て笑みを浮かべるランサー。その点には激しく同意ね。アーチャーも少し申し訳なさそうに縮こまる。

「まあいい……得物をだしな。聖杯戦争は始まってねえが前哨戦と行こうぜ?」

 そういってランサー槍を構える。途端に吹き出すは魔力を纏った尋常じゃない殺気。

 得物を出せ、ね。正々堂々と戦うことを信条にしてるのか、はたまた、単に戦いが好きな戦闘狂か……まあどちらでも構わない。

 正直、サーヴァントを前にして身体が震えそうになるけど、なんとかそれを押さえつけランサーを睨む。

 遠坂の人間たるもの、常に優雅に勝利を掴むもの! 弱みなんて見せるわけにいかないわ!!

「アーチャーあなたの力、見せてもらうわよ」

 私がアーチャーに呼びかけるとびくっとアーチャーが震えた。

「は、はい!」

 ……本当にこの子はサーヴァントなのよね?

 アーチャーがどこからか宝石を取り出す。そして、それが光ると一瞬で彼女は昨日見た桃色と白の優しい色合いのふわりとしたスカートと服へと変わる。

 その手に大きな花弁のついた木の枝のようなものを携えていて、その枝の先の花弁が広がり、枝が伸びた。そして、その花弁と枝の先端に桃色の光の弦が張られ、弓を形作る。

「へえ? 嬢ちゃんはアーチャーか」

「あ、はい。私はアーチャーです。で、できたら戦いたくはないんですけど……呼ばれた以上は頑張ります」

 そのセリフに私はついに涙を零したくなった。サーヴァントのくせに戦いたくないって……

「はっはっは! 面白い嬢ちゃんだ!!」

 一瞬ランサーも呆けた顔をしたが、すぐに額に手を当てて笑い出した。そこに邪気なんか感じない、爽やかさすら感じられるほど澄んだ笑いだ。

「だが、サーヴァントは戦うための存在だ。さあ、始めるか!!」

 そして、改めて槍を構えなおし獰猛な笑みを浮かべ、ランサーが飛び出した。





~~~~
続いちゃいました。
まあ、キャスター戦まではやりたいなあとは思ってます。



[27467] Fate stay Magica 第三話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:a9f084e4
Date: 2011/05/16 10:01
 戦いが始まった。

 迫るランサーに対し、アーチャーが弦を引き絞ると、桃色の光が凝固した矢が生まれ、それを射る。

 離れている私も追うことのできないほどの速度で駆ける矢がランサーに迫るが、それをなんなく回避するランサー。さらにアーチャーが数射するものの、ことごとくランサーに回避される。

 お返しとばかりに突き出される槍をアーチャーはなんとか寸前で避ける。

 正直、それなりに武術を噛んだ私から見てもお世辞にもアーチャーの動きは訓練されたものとは言えない。多分にその動きは我流であろう。

 だが、距離を離した私ですら、やっと線で終えるほどの速度のそれを、紅い残像を描きながら繰り出される魔槍をアーチャーはぎりぎりで避け続ける。

 それだけでなく、回避しながらも、アーチャーは距離を離し、再び弓を射るものの、またも避けられる。

 しかし、避けられているとはいえ、あの矢も私が全力で出せるほどの魔力が一射一射に籠められている。たとえサーヴァントと言えども、高い抗魔力を持たなければただでは済まないだろう。

 桃と赤、似ているようで似ていない二つの色が交差する戦場は不覚にも見惚れるくらい美しく、ランサーと互角に渡り合うアーチャーの姿は私の想像以上の実力だった。

 はっきり言おう。私はアーチャーの力を見誤っていた。

 そう、彼女も聖杯に英霊として選ばれた英雄の一人であるのだ。

「はは! やるな嬢ちゃん! 相当場数を踏んでるとみた!!」

「あ、ありがとうございます!」

 でも、会話の内容は……ううう。

 少しだけアーチャーに対して抱いた感動が損なわれる。

 弓と槍、その戦いは激しく美しく続く。

 パッと見た感じでは五分五分と言えるかもしれない。

 だが、違う。アーチャーの矢はランサーに掠りもせず、対してランサーの槍はアーチャーに何度も掠り、アーチャーの服を、肌を幾度も切り裂いている。致命傷にはならない、だが、それでもいつかはこの均衡も崩れる。流れはランサーの味方だった。

しかし、なぜアーチャーの矢はランサーに当たらない? まるで、矢がどう飛ぶのかわかってるようにランサーは避けてしまっているが……

「は! 確かにすげえが……わりいな嬢ちゃん! 俺には目に見える飛び道具なんざ、よほどのものじゃなければ通じねえよ!!」

 私の疑問はランサーの一言で氷解した。  

 なるほど、あのランサーは相当なレベルの矢除けの加護を持っているのだろう。そうなると弓が主体のアーチャーにも厳しいものがある。

 だが、唐突にランサーが距離をとる。なぜこのタイミングで?

「いいねえ嬢ちゃん。正直ここまでできるとは思わなかったぜ。なかなか楽しかった」

 そういって心の底からアーチャーを称賛するように涼しげな笑顔を浮かべる。その笑顔はどこまでも透明で、ここを戦場だということを忘れさせるような魅了を持つ笑み。

「だからこそ、惜しいな……」

 だが、次の瞬間には苦々しい、そう、無念そうな苦々しい表情を浮かべ、心底アーチャーのことを惜しむような声を吐き出す。

「もう少し、そうだな……五、六年もすれば、もっといい女になっていただろうに」

 そういってランサーが槍を振る。それに対しアーチャーは、

「あの、私たちサーヴァントって成長しませんよね?」

 などと、ランサーに返した。

 アーチャー、あんた何言ってるのよ! どう考えてもそんなこと言う状況じゃないでしょうが!!

 ついに私はアーチャーに一言言おうとして、ランサーの笑い声が響いた。見れば、彼から先ほどの苦々しい表情はなくなっていた。それはもう心の底から楽しそうに笑っていた。

「あっはっはっはっは! そうだな、嬢ちゃんの言うとおりだ!! こりゃ一本取られたな!!」

 あーもう、本当になんなんだこいつらは……

 長年自分が思い描いていた聖杯戦争への幻想はこの二人によって完全に殺された。

「ふ、もう変なことを言うのはやめにするか……嬢ちゃんに敬意を表して俺の最高の一撃を見せるとしよう」

 そうして、いまだ笑みを残した表情でランサーが身を低くし、その槍に大気に満ちていた魔力が集まる。

 まずい! 宝具!!

 それを見た瞬間、アーチャーがライダーに敗北するイメージが浮かぶ。アーチャーもランサーの一撃の意味を理解し、強張った、真剣な顔をする。

 緊迫した空気に、私も冷たい汗が流れる。だけど、

 ぱきっと小さな音がした。それが、この戦いをあっけなく幕を閉じさせることとなった。私が振り返ると、そこに一つの人影。しまった!!

「誰だ!?」

 ランサーの鋭い声に弾かれる等に逃げ出すその人物。

 それを見て、ランサーの槍から霧散する魔力。

「ち、つまんねえ幕切れだが……見られたからには仕方ねえ。この勝負預けておくぜ!!」

「待ってください!!」

 アーチャーの制止もむなしく、心底残念そうに吐き捨ててランサーは目撃者を追って校舎の暗闇に消えていく。

 く、これは私のミスだ。校舎に光がないからとはいえ、誰もいないって思い込んで人払いの結界なんていう初歩的な行動を取らなかった私の。

「アーチャー追って!!」

「はい!!」

 アーチャーもランサーを追って校舎へと向かう。

 ただの人間がサーヴァントから逃れられるとは思えない。それでも!

 一縷の望みを託して私も校舎の闇へと飛び込んだ。











 ランサーの後を魔力の残滓を辿りながら追う。

 校舎の階段を駆け上がり、廊下に出ると、そこに一人の少年が、夥しい血の海に倒れていた。

 そのそばでアーチャーが膝をついて何度も少年にごめんなさい、ごめんなさいと涙を流して謝っていた。

「……アーチャー、あなたのせいじゃないわ」

 そう、別にアーチャーのせいなんかじゃない。これは……私の責任だ。私が魔術師の基本であるはずの隠匿を怠ったせいだ。

 なんで、こんな時にうっかりなんて……自分自身が腹立たしくてしょうがない。

 ごめんなさい――謝ってもしかたなく、許してなんて口が裂けても言えない。だって私のせいなのだから。

 せめて顔だけでも……

 そう思って近づこうとして気づいた。この髪の色と背格好……

 嫌な予感がついて離れない。違ってほしいと思う反面、その相手が誰なのか確信があった。

 そして……その通りだった。

「なんで、あんたが……」

 それは、この学校でそれなりに有名な人物。

 生徒会長柳洞一成の親友であり、この学校一のお人よし…………そして、ある事情で共に暮らすことができなかった妹の思い人、衛宮士郎。

 その彼が、死んでいる。殺されてしまった。

 あの子はそれを知ったら……どうなってしまうだろうか?

「っ!!」

 その想像を、私は許せなかった。

 懐から一つの宝石を出す。この聖杯戦争に向けて長年魔力を籠め続けた切り札のルビーを。

 それが魔術師として間違ってることは理解している。だけど、もしこのまま彼を見捨てたらきっと……私は一生自分自身を許せない。

 そして、宝石に籠められた魔力を解放し、私は衛宮士郎を蘇生した。






~~~~
ランサー戦です。どう見ても弓が主体のまどかでは矢除けの加護を持つランサーには敵いませんが、善戦していただきました。
さて、セイバーはどうするか……



[27467] Fate stay Magica 第四話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:a9f084e4
Date: 2011/05/21 20:16

 処置を終えた後、私たちは足早に校舎の外に出て、二人で夜の街を歩く。もちろんアーチャーは元の姿にもどってる。

 衛宮くんを蘇生したと言った途端に、アーチャーは泣き顔から笑顔に変わった。

 反面、私は沈んだ顔をしている。なにせ、私は魔術師失格の行為をし、その上切り札をこんな段階で失ったのだから。

 決して後悔はしてない。それでも、私の気は沈んだままだ。

「あの、凛さん……」

「……なに」

 アーチャーに呼びかけられて、振り向けば、まっすぐに私を見るアーチャー。

「私、凛さんは正しいことをしたと思ってます」

 え……

 アーチャーがほほ笑む。

「私、凛さんがマスターでよかったです!」

 ああ、なんだろう。本当にこの子は英雄なんだろうか? うじうじしていたのが馬鹿らしくなる。

 ふと気づけば、私は笑っていた。

「あったりまえよ! 私も、あなたがサーヴァントで……よかった」

 尻すぼみでつい呟いていた。

「え? なんて言ったんですか?」

「な、なんでもないわ! ほらさっさと行くわよ」

 ああ、本当に何を言っているんだ私は。

 早足で歩いて、アーチャーが着いてきてないのに気付いて振り返る。その顔は青ざめている。

「どうしたのよ?」

「あ、あの、凛さん。ランサーさんは、私たちの目撃者だから衛宮さんをこ、殺したんですよね?」

 それが、どうしたのよ?

「も、もし衛宮さんが生きてたことに気づいたら、ランサーさん……」

 あ……

 目撃者を消す。魔術に関わるものとして当然のこと。だからランサーは一般人であろう衛宮士郎をあの場で殺害した。

 なら、もしも衛宮くんが生きていることを知ったら……

「あ、アーチャー、なんで早く言わないの! は、早く衛宮くんのところに行かないと!」

「は、はい! 凛さん摑まってください!」

 摑まる?

 一瞬でアーチャーが変身する。私が言われたまま、アーチャーに摑まると、

「行きます!」

 アーチャーの背中から桜色の光が解き放たれる。すると、それが半透明の桜色の翼になった。

 そして、一気に飛翔する。

「うそお!?」

 飛行は非常に高度な魔術だ。強固で具体的なイメージがなければ浮くことすら難しい。それをこの子はやすやすとやって見せた。

 本当にこのサーヴァントは何者なんだろう?

「凛さんどっちですか?!」

 あ、えっと……

 学校のある方向を確認し、自分たちの位置を把握、それから大まかな衛宮くんの自宅の位置を思い出す。

「あっちよ!」

 アーチャーに指示した瞬間、高速でアーチャーは動く。

 あっという間に後ろに流れていく景色、ごうごうと耳元で鳴る風を切る音。

 飛行とは随分なアドバンテージだ。もし相手が飛行、または遠距離への攻撃手段がなければ、手の届かない位置から一方的にアーチャーは攻撃することができる。

 まあ、そしたらマスターである私を守るのが難しく、先に無力化しにくる恐れがあるというデメリットも存在するが戦術の幅が広がる。

 そうして、私たちは衛宮邸へと迫った。










 飛行により一直線に移動したおかげか、予想より早く衛宮邸に私たちは到着した。

 上空からアーチャーが衛宮邸に降りようとして、

「あ、凛さん、ランサーさんが!」

 アーチャーに示され、そちらを向くと、家の屋根に飛び移って衛宮邸から離れるランサーが目に入った。

 もう、衛宮くんは……そう思った瞬間、衛宮邸から一つの影が飛び越えてきた瞬間に消し飛んだ。

 その影は屋根を蹴って、空中の私たちに迫る。

 アーチャーが反射的に動く。相手は何もない手を振る。

「きゃ!!」

「アーチャー!?」

 その瞬間、アーチャーの右腕の半ばまでが『切れた』。

 アーチャーが腕を押えながら相手サーヴァントから距離を離す。そう、サーヴァント。

 ランサーと同等の圧迫感を感じる『彼女』

 斬れたってことはセイバーかしら?

 にしてもまさか、初日に二人のサーヴァントに出会うなんてね……

 しかし、状況はまずい。どうやら相手サーヴァントは地面からこちらを見上げているということから飛行ができないということ。

 だけど、アーチャーは私を背負った上、右腕はどう見ても弓を射るのは難しい怪我をしている。お互いに出せる手はなくなっていた。

 どうすればいいかしら……

 私はこの状況を打開する方法を思案して……屋敷から誰かが飛び出した。

「セイバー! 敵っていきなり……え? 遠坂が飛んでる?!」

「衛宮くん?!」

 そう、飛び出してきたのは、言うまでもなく屋敷の主、衛宮士郎。

 それを見たとたん、アーチャーがほっと息を吐く。敵かもしれないというのに。

「マスターなにをしているんですか! 状況を理解できているのですか?!」

 ……まさかこいつがセイバーのマスター? いや、おそらく十中八九間違いない。なにせ、今セイバーにそう呼ばれたのだから。

 その上、その表情、言葉は明らかに状況を理解してないのがありありとわかった。

 もしも彼が正規のマスターなら私たちの前に現れるという愚行を犯すはずがない。おそらく……なんらかの偶発的な出来事でセイバーを召喚したのだろう。

 ふつふつと怒りが湧き上がってくる。

 遠坂である私が彼が魔術師であることも知らず、助けにきたと思ったらセイバーのマスター? 私が狙っていたクラスだというのに?

 理不尽な怒りではあるのはわかっているが、この感情だけはどうしようもない。

「あ、あの、凛さん?」

 アーチャーが声をかけてくるが気にならない。

 ふっざけんじゃないわよ。

「なにって、なんもわかんねえよ! マスターだの、聖杯戦争だの、ちゃんと説明してくれ!!」

 ぶちっと、理性の糸が切れる音がした。

「黙れ」

 気づけば、私はそう洩らしていた。

「へ?」

「は?」

「えっと、凛さん?」

 爆発した感情は一気に噴き出してもう私は止まらなかった。

「なんなのよあんたは! あんたがランサーに殺されるかもしれないと思って大慌てでここまで来て、そしたらあんたが召喚したサーヴァントに襲われた? ふざけないで!!」

 もうぐちゃぐちゃだった。ひたすら溜まったものをぶちまける。

「しかも、あんたが召喚したのはセイバー? 私が狙っていたクラスだったのよ! それを、ど素人のマスターに召喚されるなんて……あんた私のこと馬鹿にしてるの?!」

 それだけの量を一気呵成に言い切れば、さすがに息切れだった。

 なんか一気に言いたいことをぶちまけたからか少しだけすっきりした。人間溜めこむのはだめなのね。

 見れば、セイバーはじっとこちらを見つめ、衛宮くんはぽかんとして、そして、アーチャーはどこか悲しそうだった。

「あ、その、遠坂……よくわかんないけど、ごめん。セイバーも剣を収めてくれないか?」

 と、申し訳なさそうに衛宮くんが指示を出す。

 そして、セイバーと衛宮くんが一言、二言話し合う。

 それからセイバーはこちらに視線を上げる。すでにさっきまで放たれていた威圧感を解き、構えていた腕は下げている。

 もう戦う意思がないのだろう。

「もし、その話が本当でしたら、その経緯はわかりませんが、その行動に感謝します。そしてそれを知らず襲いかかったことを謝罪させていただきます。今回は剣を納めましょう。そちらのサーヴァントもそれでよろしいか?」

「はい……」

 どこか気落ちした風にアーチャーが頷く。どうしたのかしら?

 そして、アーチャーが地面に降りると同時にアーチャーの服が元に戻る。それに衛宮くんが少し驚いた。

「あ、あのさ、遠坂、その子もセイバーとかさっきの男と同じなのか?」

 まあ、アーチャーの姿に戸惑うのもわからないでもないわね。普段の格好はまるっきり私たち現代人と大差ないのだから。

「ええ、この子が私のサーヴァント、アーチャーよ」

 と紹介するとおずおずとアーチャーが前に出る。

「えっと、アーチャーです。よろしくお願いします衛宮さん、セイバーさん」

 ぺこっとお辞儀するアーチャー。ほんと礼儀正しい子ね。

「あ、ああ、よろしく」

 と、戸惑い気味に衛宮くんが頷いた。












~~~~
士郎とセイバーとの邂逅編です。
次回、教会編からできたらバーサーカー戦まで行きたいです。



[27467] Fate stay Magica 第五話
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:c44bbb35
Date: 2011/05/25 23:08

 外から見た時も思ったけど衛宮邸はなかなか立派な屋敷だった。

 純粋な和風っていうのも普段洋風の我が家からすると新鮮にすら感じる。

「ちょっと着替えてから茶と茶菓子持ってくるから少し待っててくれ」

「あら、悪いわね」

「ありがとうございます」

 と、衛宮くんが破れた服を着替えに席を立つ。

「シロウ、私も手伝いましょう」

 衛宮くんの体調が心配なのかセイバーも連れ立って席を立ち、衛宮くんに続く。

 確かに衛宮くんの声には張りもなく、濃い疲労の色が出ていた。

 まあ、今日一日ここまでいろいろな出来事、それこそ一回死んだり、殺された相手にまた殺されかけたり、セイバーを召喚したりしたんだから疲労するのも無理はないわね。

 にしても、ずいぶん仲が良く見えるわね。さっきは口喧嘩してたりしたのに……

 と、そこまで考えて、未だにアーチャーの表情が暗いのに気付いた。

「どうしたのアーチャー? もしかして傷が痛むの?」

「あ、いえ……」

 そして、またアーチャーが項垂れる。

 あーもう、たく。

「アーチャー、そんな顔してなにもないなんて言っても信じられないわよ? なにかあるなら言いなさいよ」

 まったく、本当に顔に悩んでいるというのがよく出るわね。

 そして、少しアーチャーは思案してから、

「ご、ごめんなさい!」

 いきなり謝ってきた。

 へ?

「そ、その凛さんはアーチャーの私よりセイバーさんがよかったんですよね? そ、その、私が召喚されちゃってごめんなさい」

 ……あー、気にしてたのねあれ。

 少し悪いことをしたと思う。イライラしてたとはいえ、この子を傷つけるようなことを言ってしまったんだから。

 ぽんと私はアーチャーの頭に手を置く。

「別に気にしなくていいわよ。確かに最初は剣を使うセイバーの方がいいかな。なんて思ってたけど、今はそんなこと欠片も思ってないわ」

 え? とアーチャーが顔を上げる。

 だって、この子は私がマスターでよかったと言ってくれた。そして、私の選択を認めてくれた。それが、なによりも嬉しかった。

 そう、たった一日しか経たないけど、今なら胸を張って言える。アーチャーを召喚できてよかったと。

「これでも頼りにしてるんだから、しっかりしなさいよね」

 にっと私が笑ってみせると、アーチャーも満面の笑みを浮かべる。

「はい!」

 それでよし。

「お待たせ遠坂、アーチャー……どうしたんだ?」

 と、気づけば衛宮くんが戻ってきていた。

「な、なんでもないわよ。あ、お茶ありがとう」

 アーチャーの頭から手を放してお茶をいただく。

 そして、彼らが席に座ってから聖杯戦争の説明を始める。

 なんかアーチャーは「マミさんみたいな味……」と衛宮くんのお茶に感動していたわね。

 時折、衛宮くんが困惑や反論の言葉はあったものの、聖杯戦争の説明はすぐに終わった。

 それに衛宮くんは黙りこくって俯き、対してセイバーはきっちりと背筋を伸ばして私の話を聞いている。対照的ね。

「とりあえず、一度教会に行っておかないとね」

 私だけでなく綺礼の話しも聞かせた方がいいだろう。それにマスター登録もしないといけないしね。

 正直、あまり会いたくないけどあの似非神父。

「え? 教会って確か隣町だよな?」

「そうね、まあ、今からなら夜明け前までには帰ってこれるんじゃない?」

 ここから歩いて一時間、今の時間帯なら話を聞いて帰ってくればそのくらいになるだろう。

「明日じゃだめか?」

「だめよ」

 行きたくないオーラを発する衛宮くんをバッサリ切る。ただでさえ自覚が薄いのだから、ちゃんと持ってもらわないと困る。

「セイバーもいいでしょ?」

「はい。シロウ、あなたの知識のなさは致命的です。此度の戦い意図して参加したわけではなくとも、契約をした以上、自覚していただかなければなりません」

 セイバーの言葉にうっと衛宮くんが唸る。

「教会で話を聞くことで少しでも理になるならそうすべきでしょう」

 そうセイバーに言われて衛宮くんは頷くしかなかった。










 そして、教会に行くことになったのはよかったのだけれども、一つ問題があった。

「私は武装を解除する気はありません」

 それだった。なにせセイバーが銀色の鎧のまま教会に向かおうとしたのだ。

 私たちは困り果て、その様子をセイバーはきょとんとしていた。

 唯でさえ人目を引く美貌、その体を覆う銀色の鎧。深夜とはいえ、それを連れ歩くのだ。できれば御免こうむりたい。

 さらには、聖杯戦争関係者に見られたらサーヴァントを連れ歩いていることを宣伝するようなもの。ただでさえへっぽこマスターである衛宮くんには負担以外のなにものでもない。

「あ、あのセイバーさん」

「なんですかアーチャー?」

 と、そしたらアーチャーがセイバーと交渉をし始めた。

 「この国には郷に入っては郷に従えっていう言葉が……」「無暗に正体をさらすべきでは」とセイバーを説得する。

 そして、ついにアーチャーの説得にセイバーは折れたのだった。

 やっぱりアーチャーもそうしてるし(自前ではあったが)同じサーヴァントの方が説得させやすかったのかしらね?













 そして、セイバーに衛宮くんのお古の洋服を着せて、私たちは教会へとやってきた。

「先に言っておくけど、覚悟しといてね」

「か、覚悟っていったいなんのだよ」

「入ればわかるわ。入れば」

 腹黒、精神歪みきったあの神父が何を言うか、それを考えるだけで私まで頭痛がしそうになる。

 なによりも、すっかり忘れていたが、私もあの似非神父になんの報告もしていないことを思い出した。

 いったいどんな嫌味を言われるのだろうか? それに思い当って今度は胃が痛くなり始めた。

 と、考えていたらアーチャーがどこか複雑そうに教会を見つめているのに気づく。

「アーチャー、どうしたの?」

「え、いえ、なんか嫌な感じがして……」

 嫌な感じね? 私は全然感じないけど、英霊特有の勘かなにかかしら? 少しそれが気になりながらも、私たちは教会の扉を開けた。

 あー、憂鬱だわ。












 教会での話し合いはつつがなく終了した。もっとも、ねちねちとした嫌味と共にあの似非神父は、衛宮くんにプレッシャーをかけた。そのくらいしないと衛宮くんは平和ボケしたままな気がするからちょうどいいかもしれないけど。

 特に、あの冬木の大火事が聖杯戦争が引き起こしたことに憤ってたわね。おそらく彼はあの時の被害者なのだろう。

「事情はわかった。もう二度とあんなことを引き起こすわけにはいかない。俺は、マスターとして戦いを止めてみせる」

「ではシロウ!!」

「ああ、半人前だが、一緒に戦ってくれセイバー」

「あなたがそういってくれるのならば、私は貴方の剣となることを改めて誓いましょう」

「ありがとうセイバー」

 二人の話はあっさりとおさまった。サーヴァントはマスターと近しいものが呼ばれるといいし、あの二人割と相性がいいのかもね。

 それに、衛宮くんもここに来る前よりは決心がついたのだろうし、ここに来た意義もあったってことね。

 まあ、ここまでする必要はなかったけど、だからと言ってほっといても後味が悪いし。

 まったく、こんな考えは余計なもの。心の贅肉なのに。油断したら増えやがって畜生。

「あの二人とも戦わないといけないんですね……」

 少し残念そうに呟くアーチャー。まったく、この子は。

「彼だって覚悟はできてるのよアーチャー。だからあなたも覚悟しなさい」

「はい……」

 こくっとアーチャーは頷く。

 優しい子だけど、きっとアーチャーは戦える。なんとなくだけど、そう思える。












 そうして私たちは教会に背を向け歩き出す。

 なんなんだろうかこの状況は。本来なら、サーヴァント同士が揃ったのだから、血なまぐさい戦いを行うはずなのに……調子が狂う。

 いや、もしかしたら私はアーチャーを召喚した時から調子が狂ってるのかもしれない。妙に優しくて、甘いこのサーヴァントのおかげで。

 まあ、それが悪くないって思える自分がいるんだけどね。

 ただ、そろそろ一度仕切り直したいとも思う。これ以上あの二人に感情移入したら、戦いに支障を来しそうだから。

 まあ、そんなことを考えてる時点で十分感情移入してるわね。

 まったく、本当になんなんだろう。

 そして、目の前に分かれ道。そこがちょうどいいと私は思った。

 そう、ここで別れれば次は敵同士になれる。私は足を止める。

「どうした遠坂?」

「ここでお別れよ衛宮くん。もう聖杯戦争は始まってるんだから」

 私は切り出す。

「なんでさ、帰り道はどうせ同じだろ?」

「特別サービスでここまでやってあげたけど、私たちは敵同士よ?」

 その表情に戸惑いの色が浮かぶ。

「それはわかっている」

 と言っているけど、本当はわかってないと思う。だからこそ、ここで別れないとならない。私のためにも衛宮くんのためにも。

 まったく、甘いったらありゃしない。

「これ以上いたら、お互い戦いづらいでしょ? だからここで最後。次にあったら容赦しないから、覚悟しなさい」

 できる限り冷たく、突き放すように言い放つ。ここまですればさすがのお人よしの彼でも理解できるだろうと信じて。だけど、その答えは私の予想の明後日の方向だった。

「俺はできれば遠坂とは戦いたくない。今日はいろいろ助けてもらったし、敵ってのは嫌だ」

 開いた口が塞がらないと言うのはこういうことだろうか。あまりにお人よし。あまりに馬鹿正直。

 どこかアーチャーが嬉しそうなのは気のせいだろうか?

「はぁ、本当に自覚を持ちなさい。衛宮くん、貴方のその考えは戦いにおいて余計なもの。心の贅肉よ」

 教会で話を聞いて少しはマシになったと思ったのに。まったく……

「まあ、今日のことは感謝してる。絶対に一生忘れない。ありがとう遠坂、アーチャー」

「私もこれまでのことは感謝します。健闘を」

 まったく、なんなんだ。これは?

 勘弁してほしい。本当に戦いづらくなりそう。

「そ、それじゃあ衛宮くん、さっきの言葉は忘れないでね。いくわよアーチャー」

 そういって話を強引に打ち切り、私たちは衛宮くんとセイバーと別れようとして、

「ねえ、お話は終わった?」

 突然かけられた声に振り向いた。














 振り向いて、坂の上にある二人の影を見て私たちは固まった。

 その圧倒的な存在感に、暴力を具現化したような異様に見ただけで心が屈しかける。

「バーサーカーよ、ね?」

 鉛色の肌、見上げるほどの巨躯。

 正気を失うのを引き換えに、大幅に上げられた能力と狂気を得てしまったサーヴァント。

 知識では知ってたけど、比較的弱い英霊を狂化すると聞いてたから、これほど圧倒的なものだなんて思いもしなかった。

 軽く見てもセイバー以上のスペックの持ち主。果たしてアーチャーがどこまで戦えるかわからないけど、絶望的な状況。

 唯一の救いは、私たちだけじゃなくて、衛宮くんがいること。

 こっちは二組、勝つことは難しくても、渡り合うことはできるはず。

 我ながら情けない打算だが、今は生き延びることが優先ね。

「こんばんわお兄ちゃん。会うのは二度目だね」

 と、マスターと思わしき十歳ほどの少女が衛宮くんに声をかける。

 知り合い、と言ってもとてもじゃないが、友好的な関係じゃなさそうね。

 無邪気な笑みとバーサーカーの威圧感が相まって異様な雰囲気を作り上げる。

「アーチャー」

「凛さん大丈夫です」

 強張った顔でアーチャーが宝石を取り出す。

「私も怖いけど、一人じゃありませんから」

 そう言って光を纏いアーチャーが変身する。

 まったく、この子は。

 私はありったけの魔力を籠めた宝石を取り出す。サーヴァントが頑張るなら、マスターの私もしっかりしなければ。

「ふふ、あなたのサーヴァント、私のバーサーカーに敵うのかしらね凛?」

「へえ、私のことを知ってるの?」

 つい、そう減らず口を叩く。

「そういえば、あなたにはまだ挨拶してなかったわね。私はイリヤ、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン」

 なるほど、あのアインツベルンの人間ね。

 あんな規格外の化け物を引き連れている理由が少しわかったわ。

「衛宮くん、この場を切り抜く方法を考えなさい。生き残りたければ、ね」

 肩を叩いて声をかける。微動だにしなかった衛宮くんが息を吐き出して頷く。

 まあ、仕方ない。あんなのに、相対しているのだから。

「セイバーが前衛でアーチャーと私が後方からセイバーを援護。いいかしら?」

「セイバーさん、すいません。私は矢を射ることしかできませんので」

 アーチャーが頭を下げて謝る。

「いえ、今はそれが最善でしょう」

 そう答えて、セイバーが一瞬で武装する。

「じゃあ、殺すよ。やっちゃえ、バーサーカー!」

 イリヤの命令に暴力が解き放たれた。







~~~~
覚悟編とバーサーカー戦です。
さて、次回で、本格的にバーサーカーと戦います。どうしよっかなあ。



[27467] Fate stay Magica 第六話
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:c44bbb35
Date: 2011/06/04 18:46
「■■■■■■ーーーー!!」

 バーサーカーが斧剣を振るう。

「はあっ!」

 大気を切り裂き、凄まじい破壊力の籠った一撃をセイバーが不可視の剣を持って弾く。

 いくらセイバーの技量を持っても、斧剣を弾けるとは思えない。他にもなんらかの力、おそらくは剣のなにかが働いているのだろう。

 さらにバーサーカーが斧剣を振るう。それは狂戦士の名の通り、技もなにもないただの暴力。

 しかし、同時にその攻撃は、いかなるものも粉砕せしめる力だった。

 だが、その猛威に臆することなくセイバーは立ち向かう。

 その表情に焦りも恐れもない。その可憐な姿でバーサーカーに一歩も怯まない姿は美しく、そして、恐ろしかった。

 あまりに、非現実的な光景に私と衛宮くんは動けなかった。それは神話の戦い。ただの人間にはとてもじゃないが、割り込む余地はなかった。

 そこに数条の光の矢が走り、バーサーカーに突き刺さる。

 アーチャーの援護。

 絶大な魔力が込められた攻撃は、しかしバーサーカーを傷つけられない。

 すると、アーチャーはバーサーカーの足元を攻撃した。足に矢が突き刺さり、地面を破壊する。バーサーカーの体勢が若干乱れる。

 そうか、攻撃が効かないなら体勢を崩したのね。

 その僅かな乱れを見逃すセイバーではない。

 乱れた剣先を避け、セイバーはバーサーカーの懐に入る。あそこまで近づかれたら、バーサーカーは反撃できない!

「はああああっ!」

「お願い!」

 セイバーの渾身の一撃が、バーサーカーを切り裂き、アーチャーの先程より強い輝きの矢が射抜く。

 やったと、私は震える手を握りしめる。あれなら、倒せないまでも、きっと!

 だが、それは私の儚い願望だった。

 並みのサーヴァントならきっと倒れている二撃を喰らいながら、バーサーカーは倒れなかった。僅かに揺らいだだけ、その身に小さな傷を与えただけ。

「そんな!」

 あまりの現実にそう洩らしてしまったのに対して余裕の笑みでイリヤは笑う。

「当然よ。バーサーカーは無敵なんだから」

 イリヤの言葉には絶大な自信と信頼がこもっていた。

「■■■■■ーーーー!!!」

 そして、それに答えるようにバーサーカーが、最も近く、渾身の一撃の隙を突かれたセイバーに斧剣を振るう。

「セイバーさん!」

 咄嗟にアーチャーが弓を射る。それは、バーサーカーではなくその斧剣を射抜く。

 うまい、本体に効かないなら武器を。先の足元への攻撃といいアーチャーは冷静だった。

 振るわれた斧剣がぶれるが、その勢いは凄まじく、私たちまで風圧が届く。

「ぐうっ!」

 なんとかセイバーは直撃を避けたものの、バーサーカーの力で十数メートルもセイバーは吹き飛ばされる。

 直撃を避けたって言うのになんという馬鹿力。

「セイバーさん、大丈夫ですか?!」

「ええ、戦闘に支障はありませんアーチャー」

 アーチャーが駆け寄り、セイバーは立ち上がる。

「あの、セイバーさん……」

 そして、何事か相談する二人。

 その間にもバーサーカーが迫る。

「ええ、わかりました」

 そう答えてセイバーはバーサーカーに突っ込む。アーチャーは数射援護してから、距離を一定に離す。

 いくらセイバーといえど一人ではバーサーカーの猛攻を捌ききれるものじゃない。これまで拮抗できたのは即席とはいえ、二人のコンビネーションが上手くいってたためだ。

 それを止め、いったいなにをするかと思い、アーチャーは弓の弦を引き絞る。だが、そこに込められた魔力も、アーチャーの雰囲気も全然違う。

 まさか、宝具を使うつもり?!

 そう考えた瞬間、体から力が抜けていく。

 一気に魔力がラインを通じてアーチャーへと奪われていくのがわかる。折れそうになる膝を必死に立たせる。

「お、おい遠坂!」

 心配そうに声をかけてくる衛宮くんを手で制する。弱みを見せるわけにはいかない。

「バーサーカー!」

 アーチャーの意図に気づいたのか、初めてイリヤの声に自信以外の感情が籠った声を上げる。

 その指示によるものか、はたまた本能的に自身を倒しうる力と感じたのか、バーサーカーはアーチャーへと向かう。

「させませんっ!!」

 バーサーカーを足止めしようとセイバーが割って入るが、その表情には若干の焦りが浮かび、動きに余裕がなくなりつつあった。

 二人でやっと拮抗してたというのに、一人で足止めをしないとならないのだから当然だった。

 アーチャー早く!

 そして、

「セイバーさん!」

 アーチャーの声にセイバーはバーサーカーの足を切る。

 傷は負わせられなかったものの、バーサーカーの体勢を崩すのに成功し、離脱するセイバー。

 そして、アーチャーが弓を解き放ち、桃色の光が一直線にバーサーカーへと迫る。

 バーサーカーはなんとか斧剣で受けるが……弾かれ、その無防備になった胸にアーチャーの矢が突き刺さった。

 一気に莫大な魔力が解き放たれ、巨大な、天すらをも貫く光の柱が上がる。

 それは必殺の一撃のはずなのに温かく、優しい光。呆然と私は……いや、私だけでなく隣にいる衛宮くんも、セイバーも、イリヤですらその光に目を奪われていた。

 そして、光が収まると、崩れ落ちたバーサーカーが現れる。

 今度こそやったと思った。今のバーサーカーは骸だと。

 ぎりっとイリヤが歯ぎし、こちらを睨んでから、笑みを浮かべる。

「すごいわねリン、あなたのサーヴァント」

 負け惜しみをと私は笑おうとして、














「まさかバーサーカーを四回も殺すなんて」













 な、に?

 骸になったはずのバーサーカーを見る。サーヴァントが死んだなら、消滅するはず……だが、違った。

 アーチャーの一撃でぼろぼろになった体がゆっくりと逆再生のように元に戻っていく。な、なんで!!

 再生、その上四回殺した? どういう意味?!

 誰もかれもが動揺を隠せない。

「教えてあげるリン。バーサーカーの真名はヘラクレス。十二回殺さなければ死なないの」

 イリヤの言葉に、バーサーカーの正体に愕然とする。

 先も述べたけど、本来バーサーカーは弱い英霊を強化するためのクラス。ヘラクレスなんていう存在をバーサーカーとして召喚した? でたらめにもほどがある。

「大英雄ヘラクレスは神に与えられた十二の試練を乗り越えて不死の権利を得た。そして、バーサーカーは乗り越えた死の数だけ命のストックがある。それがバーサーカーの宝具『十二の試練』」

 サーヴァントの肉体そのものが宝具だなんて……

 もしその言葉が本当なら、単純計算あと二回今の攻撃を与えないとならない。しかし、一度食らった攻撃をそう何度も食らうことはないだろう。

 なにより、その前に私が先に倒れる。そう言えるだけの魔力を持って行かれてしまった。現に今にも膝を付きそうなのだ。

 だが、そんなことはしない。屈しそうになる膝に活を入れ、背筋を伸ばし、こちらの弱みを見せつけないようにする。

「ねえ、リン。本当はあなたのことなんてどうでもよかったけど、少し興味がわいたから今回は見逃してあげる」

「なんですって?」

 この場に不釣り合いなまでに無邪気な笑み。だが、そこに込められたのは絶対的な自信。

 たとえここで見逃し、こっちが対策を立てたとしてもいつだって私たちを殺せるという自信だ。

「それじゃあまた遊ぼうね」

 そう言い残してイリヤは完全に元に戻ったバーサーカーとともに姿を消した。

 それを見送り、力が一気に抜ける。それは衛宮くんも同じで嫌な汗をかいている。

 一矢報いることはできたけど、ほとんど完敗に近い結果。

 見逃されるという、こちらの自尊心を粉々に打ち砕かれ、でも、それに安心した自分がいて、なお悔しかった。





~~~~
バーサーカー戦終了、ちょっと強力すぎる気もしないでもないですが、ワルプルギスの夜を一撃で倒したことを考え、これくらいかなあと。
あと、テンプレというご指摘もありましたが、甘んじて受け止めます。
基本まどかが要所要所で介入する以外、本編とさほど変わらないプロットなので。
ちょっと見直ししておこうかな。



[27467] Fate stay Magica 第七話
Name: 空の狐◆5af2036d ID:c44bbb35
Date: 2011/06/04 17:28
「ふう」

 タンスから引っ張り出した布団に衛宮くんを寝かせる。

 あの後、ついに疲労がピークに達してしまったのか、イリヤたちが立ち去った直後に倒れてしまった衛宮くんを衛宮邸に運び込んだ。

 まったく、気持ちはわからないでもないけど、女の子に重労働させるのって男としてどうなのよ?

「セイバー、衛宮くんが起きるまでここで休ませてもらっていいかしら?」

 そんなことを考えながら私は、セイバーに尋ねる。今から家に帰るほどの体力も残っていない。できれば今すぐにでも眠りたいくらい。

 それに、衛宮くんとは話したいこともある。

「構いません。あなた方が闇討ちをするような人物でないのはわかっています」

 うーん、敵になるはずなんだけど、信用されるなんて。

 小さく苦笑して、アーチャーに袖を引っ張られる。

「あの、凛さん、ちょっと話があるんです」

 話?

 アーチャーはちらっとセイバーを見る。

 セイバーがいる場所では話しづらいのかしら。

 私は頷くと休息を求める身体を無視して腰を上げた。











 セイバーのいる部屋からだいぶ離れた廊下でアーチャーに向き合う。

「で、話って?」

 アーチャーは少し躊躇うと、あの宝具だと言っていた宝石を取り出した。

「これなんです」

 これがどうしたのかしら? アーチャーが差し出した宝石を見る。

 それで気づいた。最初に見たときはきれいに透き通った桜色だったそれは、黒く濁っていた。

「なにこれ?」

 正直、その色は見てて気持ちのいいものじゃなかった。

 まるで、光を飲み込もうとする闇だ。

「これは、私の力の源ソウルジェムというものです」

 ソウルジェム。直訳すれば魂の宝石かしら。

「私が力を使う度にこのソウルジェムは穢れを溜めていきます。そして……その穢れが溜まりきった時に、私は消滅してしまいます」

 ……なんですって?

 もう一度アーチャーがソウルジェムと呼ぶ宝石を見る。中心に揺らめく闇はその小さな宝石の中を蝕んでいるように見える。

「これ、だいぶ溜まってるように見えるけど?」

「たぶん、三分の一くらい溜まっちゃってます」

 困ったようにアーチャーが笑う。

 ……冗談ではない。アーチャーはバーサーカー戦という多大な消耗を強いられる戦いを潜り抜けたとはいえ、たった二回の戦闘でリミットを三分の一も消耗しているというのだ。

 もし、持久戦に持ち込まれたら、いや、その前にバーサーカーと戦えば間違いなくアーチャーの消耗の方が早い。

「あ、あんた、なんでそんな重要なことを早く言わないのよ!」

 気づけば私はアーチャーの肩を掴んで食って掛かっていた。

「ご、ごめんなさい! 本当はもっと早く言うつもりだったんですけど、言うタイミングが見つからなくて!」

 しかし、となると今後の方針を考えねばならない。

 こんな序盤で躓くわけにいかない。まずはこの穢れをどうにかできないかね。

「その穢れは浄化できないの?」

 試しに聞いてみる。

 アーチャーだってこんなリスクを背負ったままで戦っていたわけじゃないだろう。なにか対策を持って戦ってたはず……と信じたい。

「いえ、自分ではできません。普段ならグリーフシードに穢れを転嫁するんですけど、今、手元にありませんし」

 グリーフシード、嘆きの種ね。でも、それがないか……

 さっきから知らない単語のオンパレード。この子の正体がなんなのか洗いざらい吐かせたいが、それよりも当面の問題はこっち。どうする?

 と、私が考えていたら。アーチャーは少し困ったように首を傾げる。









「でも、今のソウルジェムは自然と穢れが小さくなってるんです」










 はっ?

「それって自浄能力があるの?」

 ふるふるどアーチャーは首を振る。

「いえ、そういうのはないはずなんです。穢れは溜まっていくだけで、自然には浄化されません。だけど、バーサーカーさんと戦った後と今だと、今の穢れの割合が小さくなってるんです」

 どういうことかしら?

 正直これがどういうものなのかは、アーチャーの事情を知らない私にはさっぱりわからないから。というか、それ含めてこの子のことも聞かないといけないわね。

 ま、今の話も含めだいぶ何者なのかは想像できてきてきたけど。

 おそらく、その出で立ちに言動、なにより聞いたことのない英霊の名前に単語。これらから、彼女は近い未来、もしくは平行世界の英霊と私はあたりをつけている。

 まったく、もしそうなら遠坂の家で平行世界の英霊を召喚するとは、おかしな縁を感じるわ。

 だが、今は詳しい説明を聞くのは置いておこう。こういうのもあれだが、ここは敵の本拠地。

 セイバーや衛宮くんがそんなことしないのはわかってるが、一応そこは分別をつけないとならない。

「まあ、あなたが戸惑うのも無理はないと思うけど、メリットにはなってもデメリットにはならないでしょ?」

 私の問いにこくっとアーチャーは頷く。

「なら、気にしないで儲けものだと思っときなさい。まあ、あとで詳しい話は聞かせてもらうけど」

「はい」

 アーチャーは神妙に頷く。

 さてと、ここは一度休ませてもらおうかしら。あ、でも、その前に……

「アーチャー、今の話を踏まえて一つ提案があるんだけど、いいかしら?」

 そして、少し前から考えていたことをアーチャーに話す。それを……アーチャーは満面の笑みで肯定した。

 はあ……












 アーチャーの話を聞いたあと、軽く仮眠を取る。アーチャーに食われた魔力はかなりの量だから、少しでも回復をしたかった。

 そして、軽く休んだけどいまだ起きない衛宮くんにため息をつく。

 仕方ないし、小腹も空いたから冷蔵庫の食材を借りて簡単な料理を作る。

 勝手に人の家のを使うのはどうかとも思ったけど、ま、衛宮くんの分も作ってあげるからいっか。

 そして、出来上がったチャーハンをアーチャーたちと食べる。なんか、二人とも匂いに釣られてきたらしい。犬か。

 アーチャーはほむほむと、セイバーはもっきゅもっきゅと頬張る。

 あれ? 私まだ疲れてるのかな? 二人の頭の上に擬音が見える。

「桜来てるのか、って、遠阪?!」

 まあ、そんな風に時間を潰していたら衛宮くんも匂いに釣られて起きてきた。

「落ち着きなさい衛宮くん。あなたの分はとっといたから」

 空いた席にチャーハンを盛ったお皿を置く。

 最初は大皿に装ってたんだけど、セイバーの速度があまりに早かったため、別に分けといた。

 本人はちゃんと衛宮くんの分は残すっていってたけど、ごめん。信じられなかった。

 戸惑いながらも衛宮くんは席に着く。

「で、体調はどう?」

「ああ、ちょっとダルいけど、特に問題ないぞ」

 よかった。まあ、刺された心臓とか大丈夫か気にはなってたけど、それならいい。

 ちらっとセイバーとアーチャーを見る。満足そうに、並んで座っている。

 いつの間にか仲良くなってたわねこの二人。一緒に闘った信頼感かしらね。チャーハンに釣られてきたのも一緒にだったし。

 昨日の戦いといい相性がいいのかもしれない。それはこれから私が提案することにとってはプラスにはなるけど、これからのことを考えると、少し喜ばしくない。

 はあ、昨日はああ言った手前恥ずかしいけどそんなこと言ってられないものね。

「それでね、衛宮くん、突然だけど、私からの提案。同盟を結ばない?」

 へっと間抜けな顔を晒す衛宮くん。対してセイバーはすぐに理解してくれたようだ。

「バーサーカー、ですね?」

 セイバーの言葉に頷く。そう、それが私の考えだった。

 バーサーカーは少なくともあと八回殺さなければならない。

 それは、アーチャーの宝具を二回当てなければならないが、あれには溜めがある。一度あれを食らっているバーサーカーはそれを許さないだろう。

 他にも宝具があるが、それも発動には少し時間がかかるとアーチャーは言っていた。

 なにより、それを抜きにしてもバーサーカーは強大すぎる。

 あと、できたらソウルジェムの負担を減らしたいという二人には話せない事情があるわね。

 それを話しておいたからか、少しアーチャーが申し訳なさそうに縮こまっている。

「ああ、わかった。一緒に戦おう遠阪。セイバーもいいか?」

「はい。彼女とアーチャーは信用できますし、二人の人柄は私も好ましい」

 衛宮くんの言葉に頷くセイバー。

 えらくあっさり決まったわね。

「では改めて、これからよろしくお願いします。士郎さん、セイバーさん!」

 と、アーチャーが二人に微笑む。さてと、

「ほら、冷めるからさっさと食べちゃいなさい」

 と、促すと、衛宮くんはごくっと生唾を飲んでチャーハンを食べ始める。

 ま、お腹空いてて当然か。

「うまい。そういえば遠坂は中華がうまいって後藤が言ってたな」

 あ、懐かしいわね。

 去年の料理対決を思い出す。蒔寺さんが料理に関して私にだって勝てるって言うもんだからついむきになったんだっけ。

 それにしても後藤くんのあの解説ぶりは面白かったわ。あと、綾子のせいで自爆したのもなかなか。

 そんなことを考えながら、私たちは遅い朝食を食べるのだった。













another side

 彼女は考え込んでいた。

「ギリシャの英雄ヘラクレス。とんでもないものが召喚されたわね」

 使い魔越しに得た情報を吟味する。

 十二回、いや、今はあと八回殺さねばならないのは厳しい。

「できれば、手駒をもう少し強化したいのだけど」

 続いて見るのはバーサーカーと対峙する二体のサーヴァント。

 その片方。弓矢を武器にする方を見る。

 彼女は魅力的だった。なにせその可憐な見た目に反し、一撃でバーサーカーを四回も殺すほどの力を持っていた。

 なにより、

「かわいい」

 可愛かった。そのフリフリの服は彼女の好みにストライクだった。

 はっとして、首を振る。今はそういう問題ではない。

 それに、彼女だけでは問題がある。この様子からは彼女のクラスがアーチャーで、接近戦ができない、もしくは不得手と思われる。そこが、ネックだった。

 手持ちの駒があるものの、組み合わせるには少々問題もある。

「となれば」

 もう一人、剣を使うサーヴァントを見る。彼女も必要。

 それに、彼女もあの弓矢のサーヴァントのように……だから違う。

 どうやってこちらに引き込むか、その策を考え、彼女はほくそ笑むのだった。








~~~~
同盟組むタイミングちょっち早いかなあ。でも、まどかは単体では少し使いづらい感じに設定してますんで。
ソウルジェムのあれはもう少し後に説明します。
次回、主夫衛宮くんの活躍予定&ライダー登場?



[27467] Fate stay Magica 第八話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:c44bbb35
Date: 2011/06/15 08:36
 同盟を結ぶということで、衛宮くんの家に聖杯戦争の期間居候することにした私達は家に荷物を取りに私は戻った。まあ、用事はそれだけじゃないけどね。

 居候を言い出した時の衛宮くんの顔はよかったわ。なかなかからかいがいがありそう。

 そして、着替えなど生活に必要なものと、ありったけの宝石を纏めてから、私たちは我が家のリビングで向かい合っていた。

 ここなら誰にも聞かれずにすむわね。

「さてと、やっと聞けるわ……アーチャー、あなたは一体何者なの?」

 それが、私の疑問の全てを現した言葉だった。

 前も言ったが現代人と変わらない姿、そして、鹿目まどかという聞いたことのない真名。

 これらから私は彼女が平行世界、もしくは近未来の英雄と辺りをつけている。

 だが、一応ちゃんと確認しないとならない。憶測でミスをするのは御免だ。

 アーチャーは頷くと、まっすぐ私を見つめる。

「多分、凛さんも気づいていると思いますが、私はこの世界の存在ではありません。平行世界から来ました」

 やっぱりね。

 本当に平行世界からか……第二魔法に関わる家だからあり得るかもしれないけど、やっぱり驚き。

 少し調べたいけど、今は聖杯戦争の途中だからそれらは後回しか。

 そして、アーチャーの説明は続く。

「私は、私の世界で魔法少女として魔女と戦っていました」

「魔法少女?」

 はい、と頷くアーチャー。

「簡単に言えば、私たちの世界にいるインキュベーターという生き物との間で、願った奇跡の対価として魔女と呼ばれる怪物と戦うという契約を交わした女の子のことです」

 そして、アーチャーは語った。

 アーチャーはもともとは大切な家族や友達と平穏に暮らしていたらしい。

 だか、インキュベータの一体、キュゥべえという生き物に出会い、彼女の運命は変わった。

 魔法少女の契約を交わし、魔女と戦うことになったのだ。

 みんなの平和な世界を護れる。それを誇りに、まどかは魔女と戦った。

 頼りになる先輩魔法少女のマミ、大切な友達、暁美ほむらとの出会いを重ね、表向きは普通の少女、裏では人々の平和を護る魔法少女として、戦う日々。

 だか、それも終わりを迎えてしまった。まどかの住む町に伝説の魔女『ワルプルギスの夜』が現れたのだ。

 まどかはマミと共にワルプルギスの夜に挑んだ。

 しかし、ワルプルギスの夜は圧倒的で、マミは善戦するが、殺されてしまった。

 一人残ったまどかも、ほむらに別れを告げてワルプルギスの夜に立ち向かったが、最後は敗北し、死んでしまったという。

 その話を聞き終え、私は頷いた。

「なるほど、まさに英雄ね」

 護るもののために強大な敵と戦い死んだとは、まさに英雄の物語だ。

 ただ、それを言ったらそのマミという少女を含めて、魔法少女たちの何人かがそう言える。

 この子が彼女たちの代表として選ばれたのか、それとも、たまたまアーチャーに該当するのがこの子だから召喚されたのかわからない。

 それに、何かが引っ掛かる。それがなんなのかもわからない。今の話には矛盾らしき話は見当たらなかったけど、どうして?

「私は、別に英雄なんなじゃありません。ただ、誰かを助けたかっただけですから」

 と、アーチャーは笑う。そこで私は思考を変えた。そんなこと考察するのはまあ後でいいし、確かめる方法もないしね。

 そして、アーチャーの言葉になんとなく、衛宮くんとこの子は少し似ているんじゃないかと思った。

 普段の姿や、昨日からの言動から、彼も『誰かのため』になにかをするタイプだとわかった。

 そのうち、アーチャーの話を聞かせてみてみようかな? 結構感動するかもしれない。まあ、話すのは聖杯戦争が終わってお互いが生きてたらだけど。

 生きてたらか……一時的な同盟であって、いつかは敵になるっていうのにずいぶん情が移ったわね。

 そんなことを私は自嘲して……って、あれ?

「あなた、そのキュゥべえていうのに、なにかは知らないけど願いを叶えてもらったのよね」

「はい」

 アーチャーは私の問いを肯定する。なら、

「あなたは今度は聖杯になにを願うの?」

 それが、今この話を聞いた私の疑問。

 すでに願いを叶えたこの子が、今度はなにを願うのか。だが、










「私は聖杯に望みはありません」













 きっぱりと断言して見せた。

 はっ? 聖杯に願いがない?

「条理を曲げるようなことは、歪みを生んでしまいます。だから、私はもうなにも願いません」

 毅然とまっすぐに私を見ながらアーチャーは断言した。情理を捻じ曲げる、ね。確かにその通りだけど、この子からそんな言葉が出るなんて。

 でもなら、

「なんであなたはこの聖杯戦争に参加したの?」

 聖杯になくても、なにか他に目的があるはずよね?

「呼ばれたんです」

 呼ばれた?

「なにに呼ばれたのかわかりません。でも確かに聞いたんです。悲しくて、辛い叫びを。私、叫んでいる人を受け止めてあげたいと思ったから、だからここにきました」

 ――――ただ、それだけで、この七組のマスターとサーヴァントによる殺しあいに参加したっていうの?

 きっと、嘘じゃない。本当にこの子はそれだけでここにいる。救いを求められた。ただそれだけで。

「本当に……あなたはおかしなサーヴァントね」

 私が苦笑すると、申し訳なさそうにアーチャーは頭を下げた。








 そして、衛宮くんの家に荷物を運び込んだんだけど、その衛宮くんは台所で慌ただしく動き回っていた。

「どうしたのよ?」

「これから藤ねぇ、じゃなくて藤村先生が来るんだ」

 ああ、そういえば、藤村先生と衛宮くんって古い仲なんだっけ。

 で、その藤村先生にセイバーや私たちの説明をする前に暴れられたりしないようにしようと考えたらしい。

「とりあえず、藤ねぇを宥めるために好きなものやご馳走を用意する!」

 そう言って衛宮くんは再び料理に向き合う。ちらっと見ればセイバーはじっと衛宮くんを見つめている。なんか、パタパタ動く尻尾が見えるのは気のせいかしら?












 そして、藤村先生と……桜が来た。

 思いを寄せてるとは思ってたけど、まさか家に来るまでとは思わなかったわ。

 私たちはお互いに視線を合わせようとしない。でも、ちょこちょこと私は気づけば桜を見ていた。

「いやあ、やっぱり士郎の料理はおいしいわね! 遠坂さんとまどかちゃんもそう思うでしょ?」

「はい、士郎さん、なんかお父さんみたいです」

 藤村先生の言葉にまどかがそう頷く。

 見た目は外国人だからまだセーフなセイバーと違い、アーチャーの見た目は髪の色を除けば日本人。

 そういうことで、しかたなく真名で呼ぶことになった。まあ、この子の名前が知られても特に困ることはないしね。なにせ正体の調べようがないんだから。

 セイバーは真名で呼ぶことに少し抵抗があったみたいだけど、すぐに受け入れてくれた。

「お父さんみたい、ですか?」

「はい、私の家、お母さんが外で働いて、お父さんは家事をしてたんです」

 桜の質問にまどかはそう返す。

 ふーん、普通は逆よね。

「まどかちゃんも残念だったわね。せっかく来た遠坂さんの自宅が改装中だったなんて」

「あ、いえ、大丈夫です。お世話になっちゃってすいません」

 まどかのバックストーリーは『事情があって遠縁の遠坂の家に尋ねてきたんだけど、うちは今改装中で仕方なく新都のホテルで寝泊まりしようとしていたら、たまたま衛宮くんが声をかけてくれた』という内容。

 藤村先生もその事情という部分に反応して、多くは聞いてこなくて助かった。

「いいのいいの、士郎は困った人は見過ごせないし」

 それからからからと笑う。

「なにせ、将来の夢は『正義の味方』だもんねえ」

「な! 藤ねぇ人前でそういうのやめろって、この前桜の時にも言っただろ!!」

 へえ?

 なんていうか、よく人助けしてるのも、そういう理由があったからなのかしらね。

 また一つからかう材料が手に入ったわ。

「いいじゃない、おねえちゃんは覚えてるよ。確か、あれは……」

 なんて語りだした藤村先生。それを止めにかかる衛宮くん。本当に元気ね。 

 と、そこで気づいた。まどかがじっと衛宮くんを見ていたのを。

 その眼はどこか寂しげで、懐かしいものを見るような目で少し声をかけづらかった。

「あ、あの鹿目さん、どうしたんですか?」

 戸惑い気味に桜が問いかけると、はっとしてまどかは首を振る。

「い、いえ、なんでもありません!」

 明らかにただならぬ雰囲気だったけど、本人がそういうなら、そういうことにしておこうかしらね。













 それから、藤村先生と桜を見送ろうとして、

「あの、桜さん!」

 まどかが桜に声をかけた。

 桜が振り向くと、まどかは、

「今の関係に満足しないで、勇気を出して衛宮さんを支えてあげてください」

「か、鹿目?!」

 衛宮くんが狼狽する。

 まどかの言葉に桜は目を丸くする。

 いきなりの言葉にみんなが反応できない。ただ、桜だけは、

「ありがとうございます鹿目さん」

 そう微笑んで背中を向けた。











「さっきの、なんだったの?」

 桜たちがいなくなってから私はまどかに問いかける。

「その、士郎さんが友達に重なって、なんとなく桜さんなら、私みたいにならずに衛宮さんを支えられるんじゃないかなって思ったんです」

 と、まどかが遠い目で答えた。

 この子がなにを衛宮くんに重ね、そして、なにを思ったのかわからない。そして、それはまだ私が立ち入ってはならないことのように思えた。

 そうだ、この子が反応した言葉は、

「正義の味方……か」

 私はなんとなく、後ろの衛宮邸を見たのだった。







~~~~
まどか自分のことを話す&桜との邂逅。
さやかと士郎が似ていると思い、同時に桜がさやかと同じく現状に満足していることを見抜いてああいったセリフを言いました。



[27467] Fate stay Magica 第九話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:c44bbb35
Date: 2011/06/24 07:02
 ――また私は夢を見る。

 ――最強の魔女に対峙するあの子。

 ――永い眠りについた先輩と、その傍らで涙を流す黒髪の少女に背を向ける。

 ――……じゃあ、行ってくるね――

 ――自分にしか止められないから。

 ――必死にあの子を止めようと訴える黒髪の少女。

 ――たとえ、死んでしまうとわかっていても、戦わないといけないとあの子は大切な友達に背を向ける。

 ――さようなら――
 



















 翌日、私達はまどかを霊体化して私達の護衛に、そして、緊急時のためにセイバーは校外で待機させて学校に向かう間、今朝見た曖昧で断片的な夢を思い出していた。

 またまどかの記憶なんでしょうけど……人の最期の瞬間なんか夢に見てしまうとはなんかいやな感じがする。

 と、考えていて……学校を見た瞬間、それまでの思考を切り捨てて私は頭を抱えた。

 なぜなら、昨日は気づかなかったけど、いつの間にか校内に結界が張られていたのだ。

 以前、学校は安全とか言っていたけど、あれ、撤回するわ。

「凛さん、これ、結界張られてませんか?」

 言わないでまどか。

 サーヴァントの言葉に涙が出そうになる。だが、

「ん? 遠坂どうした?」

 なんて、のほほんと衛宮くんが尋ねてきた瞬間、本気でぶん殴ってやりたくなった。

 こいつ、本当に魔術師?

「……学校に結界が張られてるのよ」

 投げやり気味に答える。

「がっ?!」

 叫びかけた衛宮くんの口を塞ぐ。このバカ、敵に気づかれたらどうするつもりよ!

「後で、詳しく話すわ」

 それだけ言って、私は衛宮くんを連れて怪しまれる前に校舎に入った。










 そして、昼休み。衛宮くんを連れて屋上に出て、お昼を食べながらわかったことを説明する。

「まあ、詳細に調べるのは放課後だけど、おそらくろくでもない代物よ。発動すれば中にいる人間の命はないと思うわ」

「なっ、は、早くなんとかしないと!」

 目の色を変えてガタッと衛宮くんが腰をあげる。

 今すぐにでもセイバーを呼びそうな雰囲気だった。

 はあ、沙条さんもさっさと解決してくれと言いたげにこっちを見てたし、私だって早く解決したい気持ちはわかるけどね。

「落ち着きなさい衛宮くん。まだ、結界の正体はわからないし、今私達が騒いで敵のマスターに気づかれたら、逃げられるか、もしかしたら襲撃してくるかもしれないわよ?」

 後者の方は神秘の秘匿を常とする魔術師なら可能性は低いが、あり得ないことではない。それに、なんか隠し方が素人くさいしこの結界。ちゃんとそのルールを守る気があるのかも怪しい。

 私の言葉を理解したのか、渋々衛宮くんは腰をおろす。ん、よろしい。

「行動は生徒がいなくなった放課後。それなら何かあっても被害は小さくなるわ」

 例の事件のおかげで部活もほとんど活動を自粛してるし、あまり生徒はいないはず。

 それでも、ゼロにはならないかもしれないが、不安を煽るようなことは言わない方がいいだろう。

「わかった」

 不承不承に衛宮くんは頷いた。












 そして、放課後。私達は結界の調査に乗り出したんだけど、

「ダメだ、これは私の手に負えない」

 校舎内の各所にあった基点を調べた結論だった。

「遠坂にも無理なのか?」

 見ていただけの衛宮くんが問いかけてくる。

 本当にこういった魔術的なことには役立たずだった。

「ええ、基点にあった魔力は打ち消せても、張った本人が魔力を流せば再生するわ」

 そうか、と残念そうに肩を落とす衛宮くん。

 そこから、さらにわかったことを説明する。

 この結界は内側の人間の体を溶解させ、その魂を得る魂食いの結界であること。

 魂なんて言うものの使い道は非常に限られていて、聖杯戦争の期間だから思いつくのは、霊体であるサーヴァントを強化するために無差別に魂を手に入れるためのものと思われることを説明した。

「なんで、こんな無関係の人を……」

 説明を聞き終わるとまどかは悲しそうに顔を伏せてぽつりとつぶやく。衛宮くんも「くそ」っと毒づく。

「とりあえず、基点を見つけて私が無効化すれば、少しは発動を遅らせられると思う。それまでに結界を張った張本人をどうにかすればなんとかなるはずよ」

 しかし、これを張ったのは何者だろう? 魔法なみに高度な術式、使用されている文字は見たこともなく、いかなる方法で描いたのかわからない。

 この術式を破壊するのは困難この上極まりない。例えて言えば、中身のわからない時限爆弾をありあわせの道具だけで解除するようなものだ。

 これだけの術式なのだからキャスターかもしれないが、まだ断定できない。

「衛宮くん、学校の外にいるセイバーを呼んできて。もしかしたら、基点を打ち消したら、気づいて敵が現れるかもしれないわ」

 罠を警戒して現れないかもしれないが、これだけ大がかりなら準備一つとっても大変な労力。無視もできないだろう。

 それにしても、一流の術者なら発動されるまで隠すのが定石というものなのに、結界の隠し方が粗雑ね。これだけの高度な術に対し、どこかアンバランス。

 いったいどういうことなのかしらね。もしかしたら、これ自体が罠とか?

 まあ、だからといってこちらだって無視することもできない。私のテリトリーで好き放題できると思わせるわけにいかないわ。

「わかった。ちょっと行ってくる」

 と、答えて衛宮くんが校外に待機しているセイバーを呼びにいく。

 こういう時って霊体になれないのは不便ね。












 そして、しばらく待ったがなかなか衛宮くんは戻ってこない。

「どうしたのかしら?」

 私は首を捻って、同時に感じた。

「凛さん!」

 まどかの呼び掛けに頷く。この魔力、サーヴァント!

 セイバーとあと一人別にいる!

「いくわよまどか!」

「はい!」

 すでに魔法少女に変身した状態でまどかは現れる。

 そして、私達はすぐに校舎から飛び出した。














 学校のそばの雑木林でセイバーがそのサーヴァントと戦っていた。

 長い髪の長身の女。それを見た瞬間まどかが矢をつがえ、射る。

 咄嗟にそのサーヴァントは矢を回避する。く、惜しい!

「遠坂! 鹿目!」

 私達は衛宮くんたちに並んで、敵のサーヴァントと対峙する。おそらく、こいつが結界を用意したのね。

 しかし、なんのクラス?

 今の身のこなしといい、遠目からセイバーと戦っていた姿からはとてもじゃないが、キャスターには思えない。そして、暗殺を得意としてるような感じではない。

 となると、ライダーか。でも、こんな大規模な結界を用意できるとは……

「二対一ですか。仕方ありません。ここは引かせていただきます」

 そう言って身を翻し逃げに走る敵のサーヴァント。は、早い!

「待て!」

「待ってください!」

 衛宮くんとまどかの制止も空しく、サーヴァントは闇に消えた。











 そして、ライダーが去った後、すぐに情報交換を開始した。

「なんで、あんたたちはここに来たの?」

 それが不思議だった。ここには先のサーヴァントの結界の重要な基点となるところだった。

 まあ、例え見つけたからと言って、ここもまた術式を壊すのは私には無理だが。

「いや、なんか甘い匂いというか、なんか感じて来たらライダーに襲われたんだ」

 ふーん? 私は特になにも感じないが、ここを見つけたというなら、そうなのだろう。

 しかし、彼は何者だろう? 強化くらいしかできず、私すら気づけないへっぽこ魔術師だと思ったら、偶然とはいえセイバーを召喚し、今度はライダーの結界の基点を見つけ出した。

 なにかあるのかも。

「って、あいつライダーなんだ」

 スルーしかけたけど、重要なところね。

「ああ。自分でライダーだって名乗った」

 そうか、ライダーがこんな結界を用意したとは。少しクラスに対する認識を改める必要があるかもしれない。

 残ったクラスはキャスターとアサシンだが、この二つもその名に囚われないものを持ってる可能性がある。警戒しなければ。

 もしかしたら、前線が得意なキャスターやアサシンだっているかもしれない。想像できないけど。

「まあ、クラスがわかっただけでも儲けものと思いましょう。セイバー、次あったらあなた勝てると思う?」

 私の問いにセイバーは頷く。

「ええ。能力においては、彼女よりも私の方が上です。普通に戦えば私が勝つでしょうが……宝具によってはわかりません」

 まあ、そう答えるしかないわね。

 英霊の強さは私たちの常識を超える能力とともに、その宝具にある。

 最強の切り札にしてサーヴァントの象徴。伝説に語り継がれ、格上である幻想種すらも打倒せしめる兵器。

 確かに宝具を使われたら一発逆転なんてこともあるわね。

「あー、あの宝具ってなんだ?」

 ……それすらわからないんだこいつ。

 私は呆れながら衛宮くんに宝具とはなんたるか、そして、その危険性を説明した。












「なるほどな。宝具ってそんなに危険なのか」

 うーんと衛宮くんが考え込む。

 宝具の危険性、強力さと同時にその相手がどの伝承に現れる英雄かを晒す行為であるということを理解してはくれたみたいだ。

「でも、メデューサさんの宝具ってどんなのですかね?」

 と、まどかが零して……ちょっと待て。あまりに自然でスルーするところだったわ。

「あんた、今なんて言った?」

 え? と、まどかは首を捻ってから、慌てて口を塞いだ。だが、もう遅い。

「マドカ、あなたはライダーのことをメデューサといいましたか?」

「は、はい。確かにメデューサさんでした」

 セイバーの言葉にまどかが答える。

「えっと、メデューサって、あれだよな。目を見たら石になるって」

 と、衛宮くんがつぶやく。

 うん、伝承にあるメデューサって名前なら、あのギリシャ神話に登場するゴルゴン3姉妹の末妹のことよね。

「なんでわかるのよ」

 私の問いに、えっとと言いよどみ、

「その、会ったことがあるので」

 会ったことがある?

 私はちらっとどこかまどかを警戒しているセイバーを見てから、そっとまどかの耳元に顔を近づける。

「見たことあるって、メデューサも魔女だったりしたの?」

 でも、夢に出てきた魔女って人の形をしてなかったと思うけど、それが特別だったとか?

「あ、いえ、メデューサさんは魔法少女でした」

 魔法少女って、この子、確か私たちと同じくらいの時代の人間って言ってたと思うんだけど。

「その、ソウルジェムを浄化し続ければ、人の何倍も長生きできるので」

 私の疑問を察したのかフォローするまどか。いや、ギリシャ神話の時代から存在していたとしたら、長生きってレベルじゃないと思うけど。

 まあ、いいか。細かい詮索をしている場合じゃないしね。

「まあ、よく似た相手かもしれないけど、相手の正体がわかったのは助かったわね」

「だな。つまり目を見ないようにすればいいんだもんな」

 と、衛宮くんが頷く。まあ、それだけじゃないかもしれないけど。

 私と士郎の言葉にセイバーが少しむっとしてから、息をつく。

「そうですね。詳しいことは詮索しませんが、正体がわかれば対策のしようもありますしね」

 と、納得してくれるのだった。

 まったく、一度説明してはもらったけど、本当に何者なのかしらねこの子。

 ライダーの正体という思わぬ収穫以上に、まどかの正体に対する疑問がまた強くなる私だった。




~~~~
ライダー登場です。
彼女も一応魔女の範疇かなあとみなさんのコメントで思ってますが、今の状態は黒化というか反転してないし、どちらかというと、魔法少女?
今回、まどかの矢は当たっていません。

板移動予定です。



[27467] Fate stay Magica 第十話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:c44bbb35
Date: 2011/06/25 08:09
 ――荒廃した街で巨大な魔女に立ち向かう黒い少女。

 ――それを見守ることしかできないあの子。

 ――がんばって――

 ――その言葉が彼女に届いたかはわからない。

 ――戦いが続く。爆音、銃声……少女が魔女の飛ばす歯車の攻撃に晒される音。

 ――あまりに圧倒的な魔女の前に少しずつ追いつめられる黒い少女。

 ――そんな、こんなのってないよ……あんまりだよ!!――

 ――残酷な運命に悲鳴を上げるあの子。

 ――仕方ないよ。彼女一人では荷が重すぎた。けれど彼女も覚悟の上だろう――

 ――冷静に語る白い獣。なんでそんな冷静でいられるのかとあの子は一瞬思ったが、次の言葉でどうでもよくなった。

 ――諦めたらそれまでだ。けれど君なら運命を変えられる。避け様のない滅びも、嘆きも、全て君が覆してしまえばいい。その為の力が、君には備わってるんだから――

 ――甘い誘惑。それにあの子は乗ってしまった。

 ――それこそが全てを終わらせてしまうことになると知らずに……











 いったい、なんだろう今度の夢は。まるで自分のことのように襲った無力感と喜び。そして、その裏にずっと残る悲しみ。

 ラインを通じてあの子の夢を見るのは三度目。それに応じてかなかなか把握できなかったあの子のスペックをだいぶはっきりと見れるようになってきた。それでも大部分が見えないけど。

 だが、それとは別に今度の夢は私を戸惑わせる。今度の夢は前の夢と比べると矛盾点がいくつもある。

 あの子は確かあの魔女が現れる前に契約したはずだった。だけど、今度は現れた直後。それに、確か一回目の夢も形は違えど、あの魔女の前での契約だったはず……

 なんだこの矛盾は?














 翌日、またも見ることとなった夢のことを考えながら、私は衛宮くんたちと校内にいると思われるマスターの探索を始めたけど、なかなか実りはなかった。

 まあ、沙条さんは私に自分が無関係で、今日からしばらく学校を休むと言ってきた。あのアマ、結界を察して逃げたわね。 まあ、いいけど。彼女が違うのは最初っからわかってるし。

 そして、放課後、士郎が行方不明になった。

 あんのバカ! どこいったのよ!

 私は憤りながら士郎を探す羽目になった。

 探しても見つからない。まさか、

「敵に捕まった?」

 その答えに頭を抱える。どんだけ心配かけるつもりよあいつ!

「まどか、セイバーと合流してあいつを探すわよ!」

「は、はい!」











 そして、三人がかりで士郎を探したけど、見つからない。

「シロウ……」

 士郎が見つからなくてセイバーも項垂れている。

 仕方なく、私達は一度衛宮邸に戻ったんだけど、

「お、遅かったな三人とも」

 のんびりと晩御飯の準備をしている士郎に出迎えられた。

 うん。安心した。だけど、しばかなければ。












「な、なんでさ遠坂、セイバー」

 恨みがましく折檻した私達を睨む士郎。

「なんでさ、じゃなーい! こっちがどんだけ心配して探したと思ってるのよ!」

「そうですシロウ!」

 セイバーも私の言葉に同意しながら士郎にお説教を始める。

「そ、それは、すまなかった」

 本当に反省してるのよね?

 昨日みたいなことがあったと言うのに、今日のこれ。少し疑ってしまう。

「でも、よかったです士郎さんになにもなくて」

 まどかは純粋に士郎の無事を喜ぶ。まったく、この子は……

「で、士郎、あんたはいったい今までなにしてたのよ?」

「ああ、実は――」

 そして、士郎が今まで何をしていたのか説明し始め、私はまた頭を抱えた。なんとこいつは、あのライダーに拐われていたというのだ。あー、もう、こいつ嫌だ……

 しかも、そのマスターが慎二という、胡散臭くて仕方ない。

 あいつの家系は古くからの魔術師ではあるのだが、既に廃れた家だ。どういう手を使ったのかしら?

 一つありえる方法もないことはないが、それはない。そう信じたい。

 そして、学校の結界はあくまでも、ライダーの独断専行であり、自分の指示ではないとのこと。胡散臭さここに極まれる。

「あのね、士郎」

 私はこめかみを押さえつつ、説教をしようとして、

「士郎さんはその間桐慎二さんの話を信じたんですか?」

 私がなにかを言う前にまどかが口を開いた。

「いや、全部鵜呑みにしたわけじゃないさ。でも、あいつだって本当は悪い奴じゃないからな、そんなことしないさ」

 と、能天気な士郎、対し、まどかは暗い顔。そして、

「私はその人のことを信じられません」

 まどかがはっきり言い切った。

 私もセイバーも目を丸くしてまどかを見た。まさか、この子がこんな風に言い切るなんて。

「あいつに会ったことないのに、なんでそんなこと言うんだ!」

 珍しく士郎が食って掛かる。さすがに友達を疑われて嫌なのはわかるけど、正直私もまどかと同意見だ。

「確かに私はその慎二さんという人を知りません。でも、メデューサさんは知っています」

 そこから、まどかはライダーの正体であろうメデューサのことを話し始めた。

 冷たく見えるけど、本当はただ不器用で姉思いの優しい心の持ち主であること。周りからの悪意で歪められ、最後は世界に呪いを振りまく存在なった存在であること。

「だから、メデューサさんが自分からそんなことをしたなんて思えません」

 まどかはぎゅっと、手を握りしめてそう訴える。

 にしても、まどかの話は私が知るものと少し違う。世界が違うからか、単に伝承が歪んだのかはわからない。

 しかし、なんでそんなに相手の事情に詳しい?

「それに、たとえ私たちが慎二さんと戦わなくても、他にランサーさんにバーサーカーさんたち四体のサーヴァントがいます。そちらが戦いをしかけたら慎二さんは使うかもしれないんですよ?」

 その言葉に、士郎はぐっと息を詰める。

 確かにね。特にバーサーカーなんて、いくらライダーをそんな方法で強化しても勝てるとは思えない。まあ、こいつの場合助けると言い出しかねないけど。

「士郎さん。私も友達のことを信じるのは大切だと思います。でも、ただ信じるだけじゃダメなんです」

 静かにまどかは語る。

「もし、友達が間違えそうになっていたら、間違えていたら、止めてあげないと、救ってあげないといけない。それが、友達の責任なんだって、私は思います」

「友達の責任……」

 まどかの一言を呟くと、今まで項垂れていた士郎は顔をあげる。

「わかった、もしあいつが道を間違えていたら……俺が止める。それが友達としての俺の責任だ」

 本当にわかったかどうかわからないけど、まあ、こういうんだったら信じてやるか……

「って、そういえば、遠坂さっき俺のこと士郎って」

 あ、そういえば、周りがみんな士郎って呼ぶからついそう呼んでたわね。

「ああ、なんとなくよ。特に意識してなかったわ。嫌ならやめるけど?」

「いや、別にいいけどさ」

 うん、よろしい。

 そのあと、現状把握したサーヴァントの情報を元に今後のことを話し合った。

 その過程でランサーがクーフーリンであることを知れたのは儲けものと言えるだろう。

 ランサー=クーフーリン、ライダー=メデューサ、バーサーカー=ヘラクレス、今さらながら、そうそうたる顔ぶれよね。

 まあ、まどかが「ゲイボルグは対処できる」って言ったのはびっくりした。どうするつもりかはわからないけど、頼りになるわ。

 そして、相談を終えて、

「そうだ、セイバーできたらこれから稽古つけてくれないか?」

 と、いきなり士郎がセイバーに頼んだ。

「稽古ですか?」

「ああ、その……バーサーカーの時、俺はなにもできなかった。少しでも戦えるようになりたいんだ」

 ぐっと手を握る士郎。

 はあ、バーサーカーみたいな規格外は私たちにはどうしようもないでしょうに。

「士郎、マスターであるあなたが戦う必要は」

「そりゃあバーサーカーみたいな相手に一朝一夕で対抗できるなんて思ってない。でも、できる限りのことはしておきたいんだ」

 セイバーも少し考えてから、

「そうですね。では、今日から始めましょう」

「ああ、頼むセイバー」

 ふーん、そういう姿勢は嫌いじゃないわね。

 その後、士郎は衛宮邸の道場で稽古を受けたけど、当然ながら英霊であるセイバーに一本も入れられなかったことを記しておく。










another side

 その、人間の頃の習慣でついつい私がトイレに行った時でした。

 奥の土蔵で人の気配がしているのに気付きました。なんだろうと思って私はそちらに向かいます。

 そして、土蔵の中では、

「士郎さん?」

「っと、鹿目か?」

 なにか、おそらく魔術の練習をしていた士郎さんが振り向く。

 よかった、あんなこと言った後だから少し嫌われてないか心配だったけど、そんなことなかった。

「ここで練習してたんですか?」

「まあな、最近強化がうまくいきやすくなったし、今のうちにコツを掴もうと思ってな」

 そういえば、士郎さんは強化の魔術しかできないって話してたことを思い出します。

 そして、再び士郎さんはその手に持つ木刀に集中します。

「士郎さんは、なんでそんなに頑張るんですか?」

 今だってセイバーさんにあんなにしごかれたばかりなのに、ここで魔術の練習をしている。その背中になにか、言い知れぬ不安を覚えます。

 そう、あの時、正義の味方の話を聞いたときに覚えた懐かしさにも似た。

「なんでって……ん~、俺は正義の味方にならなくちゃいけないからだ」

 と、士郎さんが答えてくれた。

 なりたいじゃなくてならなくちゃいけない……

 それから士郎さんは少しだけ事情を話してくれました。

 十年前の大火災で衛宮切嗣さんという人に助けられたこと。そして、お父さんになったその人と正義の味方になると約束したことを。

「だから、俺の命は誰かのために使わなくちゃいけないんだ」

 と、士郎さんが笑います。

 それを聞いてわかりました。なんで私は士郎さんをずっと気にかけていたのかが。

 そう、似ていました。私の大切な友達のさやかちゃんに、マミさんに……

 そう思ったとき、二人の最期を思い出しました。士郎さんもそうなってしまったら……

「士郎さん、それは、少し違うと思います」

「え?」

 気づけば私はそう言っていました。

「誰かのために頑張るのはすっごくすっごく大切なことだって思います。でも、自分を粗末にしちゃダメなんです。自分一人の命じゃないんです。士郎さんが犠牲になったら、桜さんや大河さん、悲しむ人もいるんですよ?」

 言葉だけでなんとかなるなんて思ってない。

 でも、それでも、ちゃんと言わないといけない。伝えなくちゃいけない。

「私も自分の叶えたい願いのために命を使いました。だから、考えてください。自分の命をどう使うのかを」

 私はそう言ってから、土蔵を出ました。









 俺はじっと鹿目が出て行った土蔵の扉を見ていた。

 いったい、なんなんだろうか、ああ話していたとき、鹿目は俺なんかよりずっと年上に見えた。

 英霊って言ってたけど、なにをしたやつなんだろう。それに、

「自分の命をどう使うか、か……」

 土蔵の天井を見上げる。

 鹿目はああ言っていたけど、俺は人助けのために使う。あの時からそう決めたんだから。

 でも、なんとなくじいさんの葬式の時の藤ねぇの泣き顔を思い出す。

 そうだな、確かに……桜や藤ねぇの泣き顔なんて嫌だな。そう思った。






~~~~
板移動しました!
そして、今回はまどか、士郎へ語るの回です。
アーチャーの代わりにまどかには士郎の歪みを指摘する役をしてもらえるよう頑張りたいです。
まあ、まどかは士郎にマミやさやかを重ねてるので自然と気にするかなと思ってます。
なお、僕が氷室の天地大好きなので、沙条さんがところどころ顔を出していますが、これ以上は出る予定はありません。
それでは、次回ライダー戦です。



[27467] Fate stay Magica 第十一話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/06/29 10:39
 翌日、学校で私たちはライダーの結界の基点をある程度無効化する作業を行った。

 その間、ずっと士郎とまどかの様子がおかしかったけど、昨日の話をまだ引きずってるのかしら?

 その間に結界の進行のチェックもしたけど、結界がまた完成に近づいてるように感じた。これは本当に保険なんて嘘としか思えないわね。

 慎二の奴。もしこんなことすれば協会だって黙ってないって理解してるのかしら?

 いや、そもそも魔術師でもなく、正規の方法でマスターになっていないなら、そういうことも理解していないかもしれない。忠告ぐらいはしておくかしら?

 士郎の淹れたお茶を飲みながら考え込んでいて、

「で、遠坂、どうなんだ?」

 と、士郎に聞かれた。

 今回、士郎はライダーの結界の結節点の特定をこなしてくれた。変なところで能力が優れてるわね。

「ん、昨日よりも結界の状態は進んでいたわ。こりゃ慎二の言い分はあてにならないとみていいわ。どうする?」

 じろっと睨むと士郎はむっとする。

「昨日も言ったけど、俺はあいつを信じる。でも……駄目だったときは俺が決着をつける」

 たく、こいつは。

 まあ、なら私が動けばいいだけだけど……他人の間に割って入るほど無粋でもない。我ながら甘いったらありゃしない。

 そんなことを考えていたら電話が鳴った。

 士郎が対応するために出て行って、

「なんだって?!」

 大声を上げた。

 なんなのよ? 声の感じからしてかなりの大事そうだけど。

 私は腰を上げて士郎の元へと足を向ける。

「あ、ああ、わかった。ありがとう藤ねぇ」

 がちゃんと士郎が電話を切る。心なしかその顔は青い。

「士郎どうしたの?」

 私が問いかけると、ゆっくりと士郎が顔を向ける。

「美綴が……病院に担ぎ込まれた」

 綾子が?!














 すぐに私たちは綾子が運び込まれた病院へと駆け込んだ。面会時間は過ぎているって言うけど、私たちはそれを無視してこっそりと綾子の病室へと忍び込む。

 ベッドの一つで綾子が死んだように眠っていた。普段の綾子からは想像できない青白い肌から、かなり消耗していることがうかがえる。

 そっと綾子のそばにより容態を見て、それを見つけた。

 綾子!!

 ぎりっと私は歯ぎしりする。

「遠坂、美綴は?」

 心配そうに士郎が聞いてくる。

「……生命力をぎりぎりまで吸われてるのよ」

 そして、それを見せる。

 おそらくはサーヴァントが魂喰いをしたであろう噛み傷を。

 士郎はそれを見てくそ、と毒づく。

「美綴、敵は必ず取ってやる!」

 そうしてくれるとありがたいわね。

 口先だけじゃないって証明できるんだから。

「新都で最近起きてたのとは違うわ。こんな杜撰な後を残すような手合いじゃない」

 だから、言っておくことにした。

 その一言に士郎は私が何を言いたいのか察したようだ。

 そう、私が言いたいのは、

「おそらくライダー、いえ、慎二の仕業よ」

 私は拳を握りこむ。あいつ、よくも!!

 今すぐにでも間桐の家に殴り込みに行きたい。でも、表面上は冷静に見せる。

「ちょっと行くところができたわ」

 慎二に言う前にあの性悪神父に言わないとね。さすがに、これはアウトだ。

 私は綾子と士郎に背を向けて、病室を出た。












 そこそこの距離を歩き、私は教会へと訪れていた。

 そして、まるで待ち構えていたように私を出迎えた綺礼に今回のことを話した。だが、

「まあ構わないのではないか? まだ死者が出たわけではない。そして、聖杯戦争において魂喰いは勝利のための定石であろう」

 確かにそうではある。サーヴァントの強化という方法では、これが確実ではある。

 それでも、

「ここは私の管理地よ。そんなところで好き勝手されたらたまらないわ。いざというときは協会よりも先に私が始末をつける」

「ならば、戦えばよかろう。相手もマスターなのだ。いずれ殺しあうだろう?」

 それから、ふんと綺礼が考え込む。

「だが、確かに今回のこれは新都のものと比べ拙い。監督役として一応忠告は行うとしよう」

 そうしてもらえれば助かるわ。

 綺礼との話を終え、教会の外に出ると、少し離れた場所でまどかが待っていた。

「どうしたのよ?」

 まるで教会から距離を置きたいような感じがした。

「あ、いえ……前よりも嫌な感じが強くするんで、つい」

 嫌な感じ、か。この前教会に来た時も同じこと言っていたけど、どういうことかしら?

 私は教会を振り返る。夜の暗さからか、それともまどかの言葉のせいか、教会は不気味な雰囲気を醸し出していた。

 少しだけ、綺礼を警戒するべきかしらね?











 そして、教会からの帰り道にだった。

「あの、突然すいません、桜さんと凛さんって姉妹なんですか?」

 まどかが突然そんなことを聞いてきた。

 んな!?

「な、なんでそんなこと?!」

 どうして気づいたのよ!!

「ご、ごめんなさい! なんか、凛さんも桜さんもお互いのこと気にしてるように見えますし、二人ともよく見れば似てるような気がしたんです!!」

 と慌ててまどかは答える。

 あー、もう、本当になんなんだこの子は。

 隠し事もあっさり見抜いて。誤魔化しても無駄と思わされる。

「ええ、察しの通り、私と桜は姉妹よ。事情があって、父が間桐に養子に出したのよ。それが?」

 そう答えるとその場でまどかは考え込む。

「凛さんの妹さんなら魔術回路もありますよね?」

「ええ」

 確か父がそんなことを話していた。桜の優秀な魔術回路を遠坂の次女という立場のままにしておくには惜しために出したのだ。

 うんとまどかは頷く。

「で、それがどうしたのよ?」

 なにが知りたかったのかよくわからない。なんで私と桜の関係なんか。

 でも、なにか、そう、この子は私が見たくない何かを見抜いている、そんな気がしてくる。

「すいません。慎二さんの回りについて少しでも知りたいんです」

 慎二について、ね。

 戦うであろう相手の情報を得たいのから、それとも、知り合いのマスターだからか、それとも……もっと別に理由か。

 そして、私たちは衛宮邸に着く。で、玄関でなぜか士郎が待ち構えていて、

「俺が慎二と決着をつける」

 私達を出迎えて、いの一番に告げた。

 えっ?

「いきなりなによ?」

 あんだけ、慎二と戦いたくないって言ってたのに。

「鹿目にも言ったろ。あいつが間違えたら俺が止めるって」

 なにがあったのか知らない。

 ただ、その眼を見れば、腹を括ったことだけは理解できる。

「わかった、ライダーはあんたに譲る。まどかもいい?」

「はい。士郎さん、頑張ってください!」

 まどかの応援に、士郎が笑みを浮かべる。

「ああ!」

 ……いつの間にこの二人は仲良くなったのだろう? まどかのマスターは私なんだけどな。













 翌日の早朝、士郎とセイバーは間桐邸前で慎二と接触、冬木の山で決着をつけることになった。

 一方私達は、

「桜さん、お話があります」

「鹿目さん?」

 桜を待ち伏せていた。












「あの、なんですか? 部活の朝練もあるので、できたら手短に」

 ちらっと私を伺う桜。

 悪いけど、私じゃどうしようもないわ。この子が強引に決めたことだから。

「桜さん、正直に答えてください。メデューサさんを召喚したのは桜さんですか?」

 なっ!?

 それは、私も一度考えた。だけど、そんなはずはないと切り捨てた答え。

「い、いったいなんのことですか? 私がライダーを召喚したって」

 そ、そうよ、この子が……待ちなさい。

「桜さん、なんでメデューサさんのクラスを知っているんですか?」

 はっと桜は自分の失敗に気づく。

「い、家にいますからだから」

 しだいに、桜の声は小さくなっていく。たぶん、まどかの目に隠し事に意味はないと悟ったのだろう。

「は、い。私が兄さんのかわりにライダーを召喚しました……」

 顔を伏せて答えた。私が一番欲しくない答えを。

 そうですかとまどかは頷いてから、

「桜さん、お願いがあります。士郎さんと一緒に慎二さんを救ってあげてください」

 ……なんですって?







~~~~
桜の正体をまどかが言い当てるの回です。
次回ライダー編終了です。今回はまどかの夢を見るのはなしっす。
まどかさんが何を考えてるのかも次回で説明。



[27467] Fate stay Magica 第十二話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/07/02 08:13
 そして、士郎たちと慎二たちが戦う冬木の山に向かう途中で、桜は少しだけ事情を話してくれた。

 間桐の家に引き取られてから、間桐の魔術に適合できる訓練を受けさせられたという。

 その内容について桜は多くを語ろうとしない。まあ、当然だろう。

 そもそも間桐とは属性の違う桜を調整するという事は、空を自由に飛ぶ鳥を無理矢理泳げるようにすることにも等しい愚行。本当にそんなことをしていたとしたら、ただの訓練なんかなはずがない。

 想像したくもない仕打ちをあの家は桜に行ったのだろう。

 ――本当に反吐が出そう。

 そして、今度の聖杯戦争では桜が召喚したライダーを令呪を使って、マスターの権利を慎二に譲渡。偽臣の書を使いライダーを使役しているのだという。

 なるほどね。そういう方法で慎二は魔術師でもないクセに聖杯戦争に参加しているのか。

「最初の頃は、兄さんは兄さんなりに兄妹になろうと努力してくれていました。でも、ある日おじいさまが私に間桐の魔術を継がせようとしてたのを知ったみたいで……」

 それから兄妹仲は最悪の状態だとか。

 あの慎二のことだ。義妹なら自分の下とかそういうことを思っていたのだろう。だが、実際は桜が自身に無いものを全て持っていたことを知った時、桜に対して強い劣等感でも抱いたんでしょうね。

 そうして慎二は歪んでいったのか。生来のプライドの高さが災いして、いつか魔術師になるという妄執に囚われながら。

 静かにまどかは聞いていた。そして、

「あの……兄さんを救うって、どうするんですか?」

 と、話し終えた桜が先を行くまどかに問いかける。

 確かに、この子はどうするつもりなのだろう?

「慎二さんには……一度転んでもらいます」

 転ぶ?

「自分が正しいって意固地になったら、どんどん幸せって遠ざかっていくんです。だから、一度間違えて、転んで、そこから考えればいいんです。なんで間違えたのかって」

 私たちに背中を向けたまままどかは語る。

 その後ろ姿はどこか悲しくて、優しい。

 まるで母親に悟らされているような気持ちになる。

「で、間違って、転んだ慎二さんに士郎さんと桜さんが手を伸ばして上げてほしいんです」

 手を伸ばす……

「慎二さん、きっと味方がいないって思い込んでるんです。誰にも頼れない、誰も助けてくれないって。だから、それは違うって教えてあげないといけないんです」

 まどかは振り向いて桜に微笑む。

「でも、今更兄さんに……」

 桜は視線を逸らす。

「それに、これは士郎さんにも必要なんです」

 そこで、まどかは士郎の名を出した。

 士郎に?

「先輩に?」

 どういう意味だろうか。

「士郎さんには『誰かを助けられた』って実感が必要なんです。それから、転んだ慎二さんを見て考えてもらいたいんです。いつか、自分が間違った時のために」

 じっと目を見て、まどかはそう桜に伝える。

「でも……」

「桜さん、私、前に言いましたよね? 衛宮さんを支えてあげてくださいって」

 まどかの問いにこくっと頷く。

「士郎さんには止めてくれる人が必要なんです。それは、桜さんにしかできないって思うんです。だから、桜さんも、助けられるだけじゃない、一歩踏み出して士郎さんを助けてあげてほしいんです」

 桜は少しの間、黙って、

「……わかりました。私になにができるかわかりませんが、できる限り頑張ります」

 強い目でまどかの言葉に答えた。

 にしてもこの子、ずいぶんと士郎という人間を理解してるわね。友達に重なるって言ってたから、士郎の行く末が気になるのかも。

 なんだか……それが悔しい。

 マスターの私よりも士郎の方がまどかに近い気がして。













 そして、私たちは士郎と慎二が戦う冬木の山に着いた。そこで、

「約束された――」

「騎兵の――」

 眩いばかりの光が支配する世界。そう、今が二柱の英霊の決着がつく瞬間だった!

「勝利の剣!!!」

「手綱!!!」

 二つの宝具がぶつかり合う。セイバーの輝く剣の一撃が、ライダーの操る何かの魔力を纏った一撃が!!

 轟く轟音、乱舞する光と魔力。

 そして……光が収まると、そこにライダーの姿はなかった。













 慎二が膝を付く。その手の偽臣の書が燃える。

 つまり、完全にライダーは敗北したということだ。

 士郎が慎二に歩み寄る。

「慎二、これで終わりだ。俺の手を取れ」

 すっと士郎が慎二に手を差し出す。

 だが、慎二は敵意の籠った目で士郎を睨み返す。

「ふざけるなよ衛宮、僕が、僕が……」

 そう言って震える慎二。

「兄さん!」

 そんな慎二に桜は駆け寄る。

『桜?!』

 突然の桜の乱入に、士郎と慎二の驚きの声が重なる。

「兄さん、もう、いいでしょ? 負けちゃったんです。もう……」

 顔を伏せながらも慎二を説き伏せようとする桜だが、

「うるさい! 桜のクセに僕に指図するな!!」

 そう狂ったように叫びながら慎二は手を挙げて、



















「見苦しいわね。いい加減、負け犬は退場しちゃえばいいのよ」



















 あまりに場違いな幼い声。だが、それは私に忘れられない恐怖を思い出させるには十分な声だった。

 慎二が振り向く。

 そこに、いつの間にか、バーサーカーを連れたイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが立っていた。

「殺しちゃえバーサーカー!!」

「■■■■■■――――――!!!!」

 バーサーカーがその斧剣を振りかぶる。

 慎二が桜を押す。まるで少しでもその猛威から離すために。

 士郎が、セイバーが慎二に向かう。

 まどかが弓を取り出し、私は宝石を取り出そうとする。

 しかし、どれもすでに遅く、誰も間に合わない。慎二の死は絶対の運命だと。















 だが、一陣の風が吹いた。

 一瞬でその猛威の範囲から慎二と桜が消える。そして、私とまどかのそばに現れた。

 今にも消えそうなライダーに抱えられて。

「ライダーお前?!」

 慎二が驚きの声を上げる。

「まさか、そんな死にぞこないが邪魔するなんて思いもしなかったわ」

 本当に驚いたようにイリヤはライダーを見る。

 その一言に、イリヤを睨む慎二。

「まあいいわ。もう邪魔は入らないからバーサーカー」

 イリヤが命令を下そうとして、士郎がその前に立ちはだかった。

「お兄ちゃん、なんで邪魔するの?」

「俺の命に代えても、お前に慎二は殺させない」

 そう宣言し、まっすぐにあのバーサーカーと対峙する士郎。その膝は少し震えてた。

 イリヤは少しの間、慎二と士郎を見てから、

「ならいいわ。帰るわよバーサーカー」

 興が削がれたような表情を浮かべ、イリヤはバーサーカーを連れて去って行った。

 それに安心したのか、士郎は肩の力を抜いてから慎二に向き直る。

「慎二、大丈夫か?」

 慎二は答えない。

 今にも消えそうなライダーのそばでへたり込んでる。

「ライダー、お前、なんで……」

 ライダーは、その見惚れるほどの美貌を持つ素顔で優しく微笑む。

「慎二、これからは……もう少し、周りを見て、話を聞くべきです。せっかく心配してくれる、友人がいるのだから……」

「お、お前までなに言ってるんだよライダー!!」

 ライダーが慎二に言い聞かせるように言葉を紡ぎ、慎二は聞きたくないと言わんばかりに声を張り上げる。

 そんなライダーに一歩まどかが近づく。

「メデューサさん……」

 まどかに気づき、ライダーはまどかに顔を向ける。

「気にしないでください」

「でも!」

 今にも涙を零しそうな顔で、まどかはぎゅっと弓を握る。

「あなたに浄化されては、この結末はない……ならこれでいいんです。これで……」

 浄化? なんのこと?

 まどかははっとしてライダーを見る。

「メデューサさん、私のこと……」

 ええ、と頷く。それだけで、まどかは察したらしい。ついに涙を零してしまった。

 そして、再びライダーは桜と慎二に向き合い、

「慎二、妹を、桜を大切に」

「ライダーーーーー!!!」

 ライダーは慎二へと最後の言葉と笑顔を贈って光となって消えた。
 
 しばらく、慎二は黙ってライダーのいなくなった場所を見ていた。私たちは声をかけられない。

「兄さん、さっきは……なんで」

 そして、桜が問いかけると、視線は動かさずに、

「あ、兄が妹を助けるのは……当然だろう」

 肩を震わせながら、慎二は答える。

 そして、その答えに、桜は微笑みを浮かべる。

「ありがとう、兄さん」

 途端に嗚咽を漏らしながら慎二は泣き出した。

 肩を震わせて泣く慎二を、士郎も桜も、ただ見守っていた。











 しばらくして収まった慎二は一言も発しないまま桜に支えられて歩く。

 そして、間桐邸と衛宮邸の分かれ道で、

「その、すまなかったな衛宮……」

 唐突に、視線を合わせず、ぶっきらぼうに慎二は士郎に謝った。

「いや、俺もお前の気持ちも知らずに説教じみたこと言って悪かったな」

 と、士郎もバツが悪そうに謝る。

「ふん、そうだな。衛宮が僕を説教しようなんて一億年早いんだよ!!」

 そんな慎二に士郎と桜が笑う。

 私は少し呆れ気味にため息をつく。まどかは嬉しそうに三人のやり取りを見ている。

 そして、

「じゃあ……またな衛宮」

「ああ、またな慎二」

 慎二と桜と別れ、私たちは衛宮邸へと帰る。

 そして、玄関を潜った途端にセイバーが倒れた。







~~~~
ライダー編終了です。
前回、自分の勉強不足が露呈……数年前だから桜の周囲はうろ覚えの記憶頼りだったため、間違えてしまいました。申し訳ないです。
気を付けますが、間違えていたら、どうかご指摘お願いいたします。



[27467] Fate stay Magica 第十三話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/07/06 09:00
 玄関で倒れたセイバー、その原因は宝具を使用した結果の魔力の枯渇。どうも、士郎とセイバー間のラインになんらかの不調があり、魔力を補充できないようだ。

 そのため、セイバーは少しでも魔力の消費を抑え、僅かな回復も取りこぼさないための手段として眠り続けている。

 一応、解決策を私は知っている。

 ――――魂喰い。聖杯戦争とは無関係の一般人の魂を喰らって糧とする事。

 だけど、あの二人がうんと言うとは思わない。一応言ってみたが、士郎は拒否した。まあ、仕方ない。慎二のやり口を否定した以上、それは当然と言える。

 だけど、そうしなければセイバーが消える、その板挟みに苦しんでいた。

 方法はもう一つあるけど、それは本当に最後の手段。それをすれば、士郎の魔術師としての人生が終わるから。

 そして、私達は二人を衛宮邸に残し街の見回りに出た。

 士郎に考える時間を与えるのもあるけど、まだ新都の魂喰いの正体もわからないし、ライダーが倒されたことで、他の連中に動きがないかの調査だったんだけど……少し後悔した。

 蒼い装束を纏い、血のように紅い槍を持ったサーヴァントが私たちを待ち構えていた。

「ランサーさん」

 まどかが呼びかけられて、こっちに顔を向けるランサー。

「よう、嬢ちゃん方また会ったな」

 気さくに笑うランサー。だが、次の瞬間には得物を捉えた肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべる。

「この前預けた勝負を着けさせて貰おうか」

















 場所を冬木中央公園に移してまどかとランサーの戦いは始まった。だけど、

「そらそらそら! それで全力かい嬢ちゃん!」

 怒涛の突きを繰り出すランサー。それをひたすら躱し、流すまどか。

「きゃっ! ひゃ!」

 以前は目にも止まらぬ速さだったランサーの槍。だが、今は目にも写らぬ速さ。

 前回は手を抜いてたわねこいつ!

 必死に避け続けるまどかは弓を射って反撃することもままならない。

 しかも、クリーンヒットはなくとも、確実にランサーの槍はまどかの体を切り裂いている。そのピンクの服を、肌を切り裂かれ、まどかはあちこちから血を流している。

 なんていう速度、とてもじゃないが、私が宝石魔術で援護する隙なんかない。

 このままじゃ!

「はは、らあ!」

 凄まじい速度で突き出される槍をあの子は必死にいなしていたが、ランサーは突き出した槍を器用に操って、横薙ぎに振るいまどかを無理矢理弾き飛ばす。

 さすがはランサー、あんなに長い槍をまるで自分の手足のように……って、感心している場合じゃない!

「きゃあ!」

 体が軽いからか、かなりの距離まで弾き跳ばされるまどか。

 だが、その状態でもまどかは体勢を整えつつ、矢をつがえる。

 追撃するランサーがそれを笑う。

「前に飛び道具は意味ねえっていっただろう嬢ちゃん!」

 そうだ、ランサーには矢避けの加護がある。だが、次の瞬間、まどかは私達には理解できない行動を取った。

 空に向かってその光の矢を放ったのだ。

 なんで?

 だが、すぐに答えが出た。

 天から幾万の光の矢がランサーに向かって降り注いだのだ。

「ちっ!」

 追撃の足を止めて降り注ぐ矢の雨を迎え撃つランサー。

 その卓越した身のこなしで降り注ぐ矢を避け、時にはその手の槍で弾く。

 なんて奴。矢除けの加護があるとはいえ、あれだけの物量を相手に一歩も引かないなんて。

 対し、まどかはあの光の翼を広げる。

 なにをするかと思ったら、まどかは矢をつがえると、翼を羽ばたかせて一気にランサーに迫った。

「なに?!」

 まさか、矢除けの加護で離れて当たらないから零距離射撃?!

「やあああああ!!」

 天からの矢に手を塞がれていたランサーの懐に入って、まどかは矢を放つ。だが、

「舐めるなあ!」

「えっ?!」

 いかなる魔技か、天からの矢を弾いていた槍を強引に動かし、烈拍の気合いを込めてまどかの矢を薙ぐランサー。

 あれだけ長い槍で?!

 弾ける閃光に視界を焼かれ、とっさに私は手で目をかばう。

 二人はどうなったの!

 そして、視界が回復した私の目に写ったのは、数メートル離れて対峙する二人だった。

 ランサーの全身に無数の傷、特に槍を持っていた腕に最も深い傷が刻まれていた。

 対して、まどかは片膝をついてランサーに視線を向けている。

 ランサーにも相応のダメージを与えたが、まどかの方がダメージが深い。それに、遠目にもソウルジェムにだいぶ穢れがたまってるのがわかる。

「は、流石だぜ嬢ちゃん。目をつけたかいがある」

 本当に楽しそうに笑うランサー。こいつ完全に戦闘狂ね。

「が、そろそろ決着つけっか」

 ランサーは笑ってから槍を構える。

「はい、ランサーさん。でも、その前に一つ聞いてもいいですか?」

 と、まどかが切り出す。

「んっ? なんだ?」

「ランサーさんは、なんのためにこの戦いに参加したんですか?」

 光の矢をつがえながらランサーに尋ねるまどか。

「変なことを聞くな嬢ちゃん。まあいいか、付き合ってくれた礼だ。俺は聖杯なんかに、二度目の生なんてのに興味はねえ。ただ、全力で戦いてえ。それだけだ」

 まどか以外にも聖杯に拘らない奴がいたのね。

 ランサーの答えにまどかは微笑む。

「そうですか……なら、私は出来る限りの力でランサーさんの全力を受け止めます!」

 まどかのその宣言に呼応するように、より輝きを増す光の矢。

 対して、ランサーは一瞬呆けてから、

「あははは! 本当におもしれえ嬢ちゃんだ! そんなこと言ってくれるたあ、俺は嬉しいぜ!!」

 まどかの言葉に心の底から嬉しそうに笑った。

「んじゃあ、いくぜ。その心臓貰いうける」

 ランサーの槍に膨大な魔力が集まる。宝具だ。

 まどかはランサーに矢を向ける。

 あの、士郎というイレギュラーのせいで中断された戦いの続きが今始まる。

 まどかが矢を放ち、ランサーが消えた。

 いや違う。私には見えないほどの速度で一瞬でランサーが距離を積めていたのだ。すでにランサーはまどかの目前にいる!!

「刺し穿つ――」

 ランサーが上段に槍を構え、その切っ先をまどかの足元に向けつつ、下段に向かい槍を放つ。

 明らかにおかしな行動。あれでは、槍はまどかに当たらないと思ってしまう。

 だが、私達は知っている。あの槍が放たれれば必ず心臓を穿つ呪いの魔槍であることを。

 そして、まどかが再び矢をつがえようとして、

「死棘の槍!!」

 真名が解放された。

 その深紅の魔槍が因果逆転の呪いの力であり得ない軌跡を描いてまどかの心臓へ迫る。

 そして、魔槍がまどかの心臓を貫いた。

「うそ……」

 全てがスローモーションに見える。ゆっくりと、まどかが膝をつき、弓の先端が地面に突き刺さる。

 サーヴァントも実体化すれば人間と同じ体構造。心臓を貫かれたのなら、死ぬしかない。

 あ、あんた、それに対策があるって言っていたじゃない!!

「わりいな嬢ちゃん。だが、楽しかったぜ」

 ランサーがまどかの胸から槍を引き抜こうとして、突然伸びたまどかの左手がランサーの手を掴んだ。

『なっ!?』

 そして、手を掴まれ動けないランサーをまどかの矢が射抜いた。














 弓を地面に刺したまま放し、槍を胸から引き抜いたまどかがランサーのそばに歩み寄る。

 そうか、弓は地面に固定するために突き刺したのね。

「はは、俺の敗けか。でも、悔いはねえ。嬢ちゃんのお陰で楽しめたからな」

 清々しい顔でランサーは笑う。私もランサーの元に駆け寄る。

 敵ではあるものの、正々堂々、清々しい戦いをした英雄の最期を看取るために。

「だが、今度は俺から一つ聞かせてくれ。確かに俺の槍は嬢ちゃんの心臓を貫いたはずだ。それなのに、なんで嬢ちゃんは平気なんだ?」

 体が消え行くなか、ランサーは問いかける。

 そうよ、私もまさか、対策っていうのがああいう方法なんて思いもしなかった。

「それは、私の体が脱け殻だからです」

 脱け殻?

 まどかはソウルジェムをランサーに見せる。

「契約により私の魂はこの宝石へと加工されています。肉体はただの器に過ぎないんです」

 た、魂を宝石に?!

 それはすでに魔法の領域だ。

「この宝石、ソウルジェムが有る限り私は死ぬことはできないんです」

 悲しげな微笑みを浮かべるまどか。

 ランサーは話を聞き終えるとはっと笑った。

「そういうことか」

「すいません。ズルいですよね」

 申し訳なさそうにランサーに謝るまどか。

「気にすんな。それより、嬉しかったぜ。全力を受け止めるって言ってくれたのはさ」

 いよいよ輪郭もぼやけてきた。ランサーはもうすぐ消滅する。

 だけど、ランサーはあー、くそと毒づく。

「ほんと、いい女だよ。後数年歳食っていたら」

 口説いてたんだけどなあ。その言葉にまどかが真っ赤になる。

 それを彼が見れたのかわからないし、私の気のせいかもしれない。だが、きっとそうだろう。

 悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべてランサーは消えた。















 まどかはしばらくの間、ランサーがいなくなった場所を見つめ、それから、空を見上げる。

「そうですね、ランサーさんみたいな人ならきっと素敵ですね」

 そう、穏やかな微笑みを浮かべてランサーの言葉に返事を返した。













~~~~
ランサーの兄貴戦です。
ちょっとあっさりしすぎたかと思いますが、その、できれば望みの通り本気の戦いをしていただきたかったので。
まどかは少々奇策気味の戦法ですが。
それでは、コメントお待ちしております。



[27467] Fate stay Magica 第十四話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/07/09 23:39
「まどか、大丈夫?」

 ランサーとの死闘を終えたまどかをおぶさり、衛宮邸に向かう。

「はい、だいじょうぶ、です」

 切れ切れにまどかは答えてくれる。

 ランサー戦の消耗は酷く、ソウルジェムはかなり、三分の二以上が濁っているという。

 もし、今他のサーヴァントに襲われたら……故に一番の傷である心臓回りを止血し、すぐにその場を離れた。

「でも、あなたにそんな秘密があったなんてね」

 ソウルジェムが本体だなんて、突然過ぎて驚いた。

「ごめんなさい。まるでゾンビみたいだから話したくなかったんです」

 いいのよ、謝らなくて。

 しかし、少しこの子の、いや、魔法少女への認識を改めないとね。

 きらびやかな名前の裏にそんな秘密があったなんて。













 そして、やっと見えてきた衛宮邸に不穏な魔力が漂っていた。

 まさか?!

「凛さん!」

 背中のまどかが変身し、私の背中から降りて駆け出す。私もそれに続く。

 うっかりしてた……弱っている方を襲うなんて常識じゃない!!

「まどか、ソウルジェムの状態は?」

「……バーサーカーさんの命を削るほどは無理です」

 当然だけど、この短時間でそこまで回復はしないか。

 でも、見逃すわけにもいかない!

「士郎とセイバーに合流したら、すぐ撤退、いいわね!」

「はい!」

 私たちは衛宮邸に突入した。












 居間に向かえば、なぜか士郎に剣を向けるセイバーがいた。

 そして、その奥に莫大な魔力を放つローブを纏った女。やっぱりサーヴァントの襲撃!

 残りのクラスからキャスターかアサシンね。

「士郎さん!」

 まどかは躊躇わず士郎に剣を向けているセイバーに矢を射る。

 セイバーがその矢を切り払い、その隙に私は士郎の腕を掴み、逃げる。

「遠坂、鹿目!?」

「逃げるわよ!」

 振り向く士郎を無理やり引っ張る。

「でも、セイバーが!」

 やっぱり、なんらかの方法でセイバーをあのサーヴァントが奪ったのだろう。

 あのセイバーが士郎に剣を向けるなんて、令呪に相当する強制力ね。

「諦めなさい! ああなったらどうしようもないわ!!」

 今の状況であのサーヴァントからセイバーを取り返すのは容易ならざるを得ないだろう。

 私たちは衛宮邸から飛び出す。

 と、同時に、

「まどか、矢の雨!!」

「え、は、はい!!」

 一瞬、士郎を申し訳なさそうに見てからまどかは天に向かって矢を射る。

「待ちなさいお嬢ちゃ」

 と、先のサーヴァントが飛び出そうとして、

 天から降り注ぐ矢に阻まれた。

 吹き飛ぶ玄関、舞い踊る瓦や破片。

「お、俺の家があぁぁぁぁぁぁ!!!」

 悲痛な士郎の悲鳴が響く。ごめん、でも、今は生き延びることが優先よ!

「掴まってください!」

 まどかがキャスターに背を向けて翼を広げる。

 私達がまどかの手を取った瞬間、急激な加速に襲われ、一瞬で空高く舞い上がる。

 そうして、なんとか私達はキャスターから逃げられたのだった。









「逃げられたかしら?」

 まどかの右腕に掴まりながら私は後ろを向く。とりあえず、追ってくる気配はないけど……

 と、思った瞬間、がくんと、失速した。

「まどか?!」

 まどかを見れば、その背の光の翼が霧散していた。

 まさか、もう限界?!

 見る見るうちに高度が落ちていく。

 ちょ、不味い! この高度から地面に落ちたら!!

 慌てて重力軽減魔術や、物理保護を重ね掛けする。ま、間に合え!!

 そして、私たちは中央公園に不時着した。














 


 なんとか、あの落下から軽傷で済んだ私たちは私の家に逃げ込んだ。

「いったいなにがあったの士郎」

 無理をさせ過ぎたまどかを寝かせながら士郎に聞く。今は少しでも情報が欲しい。

「実は……」

 そして、士郎は話し出した。

 あのサーヴァントはキャスターで、藤村先生を人質に衛宮邸を襲撃し、セイバーの令呪の譲渡を迫ったらしい。

 もちろん士郎は断ったが、宝具の使用で魔力が枯渇し、弱体化したセイバーはキャスターに捕らえられ、妙な形をした短剣を突き刺されたらしい。

 すると、令呪が士郎の手から喪われ、キャスターの腕に刻み込まれたという。

 他者の契約を無効にする力……おそらくそれがキャスターの宝具ね。

「しかし、不味いわね」

 まさか、そんな方法で他人のサーヴァントを奪うなんて。

 どうしたものか。

「セイバー、俺がしっかりしていれば!」

 悔しそうに士郎は拳を握りしめる。

 正直、セイバーが敵に回ったのは痛い。まどかじゃ接近戦でセイバーに敵わない。

 飛行魔術でアウトレンジからって手はあるけど、そしたら今度はキャスターの出番。

 魔術師なら遠距離戦はお手のものだろうし、こんな風に行動を起こしたというなら、隠し玉がいくつかあるだろう。

 はあ、情報が足りないわ。

「とりあえず、今は休むしかないわ。キャスターと戦うにしても、まどかが回復しないと話にならないし」

 ランサー戦の直後にこれだ。しばらく戦えないだろう。

「そういえば、鹿目は大丈夫なのか?」

 心配そうにまどかを見る士郎。

「大丈夫よ。少し無理させたけど、休めば回復するわ」

 そう信じたいけど、ソウルジェムの回復に関してはまったくわからないのよね。

「そうか……」

 と、士郎も納得してくれる。

 とりあえず、私も休みたいし、士郎には客間あたりを使わせるかしらね。










 翌日、まどかは昼に目を覚ました。

「心配かけてごめんなさい。それに、途中で墜落しちゃって……」

 と、まどかは謝ってくる。

「いいのよ、あんな状況じゃ仕方ないわ。で、ソウルジェムの状態は?」

 はい、とまどかはソウルジェムを取り出す。まだ、結構穢れが溜まっている。

「たぶん、夜までにはある程度回復すると思います」

 そっか、まだ万全じゃないんだ。

「なあ、遠坂、ソウルジェムってなんだ?」

 なんて、士郎が聞いてくる。

 しまった。こいつがいたんだ。

「この子の宝具よ。それ以上は言えないわ」

 一から十まで説明するつもりはない。なにせ、これからの作戦しだいでは、こいつはまたセイバーのマスターになるのだから。

 わかったと士郎は頷く。

「それじゃあ始めましょうか。キャスターをどうするか。まどか、キャスターの正体に心当たりある?」

 ライダーの正体を看破したこの子ならなにか知ってるんじゃないか期待して聞いてみたんだけど、

「はい、たぶん、メディアさんです」

 やっぱりすぐ出たわね。

「メディアって?」

「コルキスの魔女、別名裏切りの魔女よ」

 別名の通り、相当な人間を裏切ったらしい。それこそ実の弟ですらその身を引き裂いて捨て、追っ手を撒いたなんていう逸話もあるほどだ。

 でも、裏切りか。なら、例の宝具は裏切りの象徴といったところかしら。

 そして、私達は対キャスター戦の作戦を練り始める。

 その最初で、

「キャスターさんは私に任せていただけませんか?」

 と、まどかが言い出した。

「最初からそのつもりだったけど、どうしたのよ?」

 元々、そのつもり、というか選択肢はそれしかないんだけど。

「私の宝具なら確実にキャスターさんを倒せます」

 毅然とした顔でまどかは言い切る。

 まさか、この子がここまではっきりと言い切るなんて思わなかった。

 ランサーの時も「倒せる」じゃなくて「ゲイボルグならなんとかなります」だったし。

「それって、例のバーサーカーに使うつもりだった?」

 私が尋ねるとまどかはふるふる首を振った。

「あ、いえ、それとは別のメディアさんが『魔女』だから効く方法です」

 ああ、そういえばこの子が戦ってたのは魔女だっけ。

「なら、任すわ」

「え? 鹿目だけで、大丈夫なのか? こういうと、悪いけど、あのキャスターもとんでもない強さだろ?」

 なんて、士郎が言ってくるが、私達には別の役がある。

「大丈夫よ。この子、こう見えても魔女狩りのプロフェッショナルなんだから」

 嘘は言ってない。ただ、その魔女は士郎の想像と少し違うだろうけど。

「でも、セイバーさんは」

 ああ、そのこと。

「大丈夫よ。セイバーは私と士郎が足止めするから」

 と、私は士郎の話を聞いてからずっと考えていた秘策を語った。

『えっ?!』














 士郎の話ではセイバーは元のマスターである士郎を斬ることを躊躇ったと言う。

 なら、それを利用する。まどかがキャスターと決着をつけるまで、私達で足止めをする。

 躊躇いのある剣なら、私達でも対処することができると思う。思いたい。

 そして、私達は敵の本拠地であろう、柳洞寺に向かおうとしたんだけど、

「あ、すいません、遠坂凛さんですか?」

 と、家を出た途端に声をかけられて振り向く。

 そこに、金色の髪と端正な顔立ちをした美少年が立っていた。

「そうだけど、なに?」

 いったい何者か。もしかしたら、キャスターに操られてるなんてことはないでしょうね?

「あ、僕、そこで変な人に伝言を頼まれたんです」

 伝言?

 いったいなんだ?

「『教会にキャスター』だそうです」

 な!

「いったいどういうことよ!!」

 気づけば私はその少年に掴みがかっていた。

「い、痛! し、知りませんよ。僕は伝言を頼まれただけなんですから!!」

「あ、ごめんなさい……」

 慌てて手を離して謝ると少年はそれではと去って行った。

 しかし、いったい誰が伝言を……まあ、今はいい。とりあえず、今はキャスターをどうにかしないと。












 僕は角からこっそりと三人の様子を窺う。どうやら柳洞寺ではなく教会に向かうようだ。

 よかった演技をしたかいがあった。

「まったく、大人の僕や言峰も、なんでこんなめんどくさいことを僕にさせるのかなあ」










~~~~
キャスター編です。セイバー√を中心に凛√を組み込めたらなあと思っています。
でも、まどかは裏切りませんよw



[27467] Fate stay Magica 第十五話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/07/17 09:12
 教会のそばの外人墓地に私たちは来ている。確か、綺礼の教えてくれた場所は……あった。

 私は見つけた隠し扉のスイッチを押す。と、そばにあった墓が動き、隠し階段が現れた。

「教会にこんなものがあるんですか」

 まどかが驚いたように呟く。

「ま、私たちのような人間なら当然の用心よ」

 私も最初、綺礼に教えられたときは流石に驚いたけど。

 そして、私たちは隠し階段から教会へと急ぐ。

 さすがにまだここはばれてないとは思うけど、気を付けないと。











 そして、地下から教会に侵入した私たちは慎重に中を探索する。

 その途中、なぜか白いドレスを纏ったセイバーが倒れてるのを見つけた。

「セイバー!!」

「セイバーさん!!」

 途端にまどかと士郎が弾かれるように飛び出した。

 たく、罠かもしれないってのに!

 だけど仕方ない。私もセイバーに駆け寄る。そっとセイバーを見る。かなり弱ってるみたいだけど……

「気絶してるだけみたいね。でも、よかったわ。なら敵はキャスターだけ」

「私がどうしたのかしらお嬢ちゃん?」

 !?

 膨大な魔力が込められた魔術が私たちに迫る。

 咄嗟に私は宝石でブーストした防御魔術を発動させる。

 ぐ! 想像以上に重い!! だけど……

 宝石が砕けると同時になんとか、キャスターの魔術を相殺した。

「あら、驚いた。宝石に貯めた魔力で一時的にブーストしたのね。格下らしいやり方だけど、神代の魔術を防ぐなんて、褒めてあげるわよ」

 と、嘲るようにキャスターが影から現れる。

 は、格下ね。確かに、私の魔術ではキャスターに敵わないでしょうね。

「ずいぶん年寄り臭いこと言うわねお、ば、さ、ん?」

「おば!!」

 私の言葉にキャスターが憤る。

 と、そしたら、袖を引っ張られた。

「凛さん、さすがにおばさんって言うのは……」

 と、難色を示すまどか。あのねえ……

「ふん、サーヴァントの方が礼儀を弁えてるわね」

 どこか嬉しそうにキャスターがまどかに同意する。

 はあ、まあいい。

「さあ、決着をつけましょうか、キャスター?」

 私の言葉にまどかが弓を構え、士郎が木刀を構える。

 すると、もう一人、影から現れた。え?

「ふむ……まさか衛宮と遠坂がマスターだったとはな」

 現れたのはスーツを着た男。私と士郎にとっては学校で毎日見ていたその姿。私の担任である葛木宗一郎。

 士郎もそうだけど、私も驚きを隠せない。まさか、他にも魔術師でない人間がマスターだなんて……しかも、またうちの学園の関係者。

 聖杯戦争の舞台にあるとはいえ、なんかあるんじゃないのあの学校。

 そして、葛木が構える。中国拳法をかじっている私だけど、まるで見たことのない構え。

 武闘派教師とは呼ばれていたけど、その実力をこんな形で見ることになるなんてね……

「キャスター、衛宮は私が相手をする。お前はアーチャーを」

「はい、宗一郎様」

 それを合図に動いた。

 葛木は士郎に。対して私とまどかはキャスターに。

 頼んだわよ士郎。まどかが宝具を使うまで葛木を足止めしといて。

「さてと、お嬢ちゃん、一応聞いてみるけど、あなた、私のものにならない?」

 なんて、キャスターがいいだした。

 は?

「バーサーカーを四回も殺す力を失うのは正直惜しいわ。こちらにこないかしら?」

 なんてキャスターが言い出す。だけど、

「お断りします。私のマスターは凛さんです」

 まどかはそう返した。嬉しいことを言ってくれるじゃない。

「そう、残念だ、わ!」

 キャスターが攻撃魔術を使う。それを私が防御魔術で相殺する。

 私たちの策は単純。まどかの宝具が発動するまで、私が宝石を使ってキャスターの魔術を防いで時間稼ぎをする。

 でも、宝石だって限りがある。まどか早く!










 なんとか、私はキャスターの魔術を防ぎ続ける。どんどん削れていく虎の子の宝石。

 士郎も、なんとか葛木を足止めしてるようだけど、正直、そっちまで気をやれる余裕がこっちにもない。

 そして、

「凛さん!!」

 まどかの合図。どうやら、宝具の準備を終えたようだ。

 振り向けば、強い輝きを放つ矢。相当な魔力が込められてるのはわかるけど、バーサーカーに使ったのと差がないように感じるんだけど……

「ふうん、バーサーカーを殺した矢ね。それで、私を倒すつもりかしら?」

 キャスターが嗤う。

 確かに、先の言葉からこれをすでに見ている。だとしたらすでに対策が立てられてる可能性もある。だけど、

「はい、キャスターさん……いえ、メディアさん」

「な、なぜその名を?!」

 キャスターが初めて驚きをあらわにする。

 まあ、真名を言い当てられれば当然ね。

「知っています。私が看取ったんですから。ここじゃない何処かで、いまじゃない何時かで」

 静かにまどかは答える。看取った?

 対し、キャスターが今までで最大まで魔力を籠めた魔術を発動しようとする。あ、あれは私じゃ防げないどころか、この教会が吹き飛びかねない!!

「消えなさい!!」

 キャスターが叫び、魔術が起動する。

「円環の(マドカ)――――」

 対し、静かにまどかはキャスターを狙う。そして、

「理(マギカ)!!」

 真名を解放し、まどかが矢を放つ。走る一条の弓、それが、膨大な魔力の渦に触れた途端、キャスターの魔術が霧散した。

 まるでなかったかのように。

「な?!」

 慌ててキャスターが防御魔術を使うが、それもまどかの矢は無視し、キャスターに吸い込まれるように貫いた。

 やったと思うと同時に、私の意識が引っ張られた。ここじゃない何処か、今じゃない何時かに。











 ここはどこだろう。曖昧な意識の中で考えて、気づく。

 視界の中で、紫のローブを纏った一人の女が泣いていた。それが誰なのか、私はすぐに気づいた。

 キャスター、いえ、メディア。

 彼女を意識した途端に私の中に情報が流れ込んできた。

 なぜ彼女が泣いているのか、なぜ、絶望しているのか、胸を引き裂くような悲しみと絶望とともに。

 な、によ、これ。

 どこが裏切りの魔女だ。裏切られてるのは、裏切られたのは彼女自身じゃないか。

 なんて……救われない。そう思ってしまう。だけど、

 メディアの前にあの子が、まどかが慈愛に満ちた微笑みを浮かべて現れた。

――もう、いいんだよ。泣かなくて。あなたの思いは全部、私が受け止めるから。

 不思議そうに自分を見るメディアをあの子は優しく抱き締める。

――あなたは、私を裏切らないでくれるの?

 メディアの問いにまどかが頷くと、メディアはまるで母に抱かれた子供のように安らいだ顔になる。

 私も自然と微笑みを浮かべていた。

――ありがとう……

 それを見届けた直後に私は意識が薄れる。ああ、戻るんだとすぐに理解でき……









 そして、気づけば私はまどかと並んで崩壊した衛宮邸の前に戻っていた。

 え? なんで、ここに?

 突然すぎて理解が追いつかない。

「ま、まどか、今起きたのっていったい……」

 声をかけようとして、

「遠坂、鹿目!!」

 士郎が家から飛び出してきた。

「せ、セイバーが!!」

 セイバー?!











 そして、まだ原型を保っている奥の道場でセイバーは寝ていた。

「気づけばここにいたんだ。令呪も戻っている」

 士郎が腕の令呪を見せてくる。確かに失ったはずの令呪が刻み込まれていた。

 なんだ、まるでキャスターがいなかったかのような……でも、家は吹き飛んだままだし。

「まどか、説明してくれるわね?」

 私の言葉にまどかは頷いた。














 そして、まだ寝なければならないはずのセイバーを含め、私たちはまどかの話を聞くこととなった。

「凛さん、ごめんなさい。私は一つ凛さんに嘘をついていました」

 嘘?

「私の英霊としての真名は確かに名無しです。でも、一応存在します」

 まどかは目を閉じる。そして、

「私の真名は『円環の理』、鹿目まどかという少女が全ての宇宙、過去と未来に存在する全ての魔女を生まれる前に自分の手で消し去りたいという祈りから生まれた存在です」

 再び開いたまどかの瞳は金色に輝いていた。










~~~~
キャスター編終了、と同時にまどか正体晴らしです。
さて、円環の理の説明どうしよう?



[27467] Fate stay Magica 第十六話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/07/19 08:25
 それからまどかは話し始めた。彼女がいったい何なのかを。

「私が死んだこと、それがすべての始まりでした」

 始まり?

 まどかの死後、暁美ほむらはキュゥべえと契約し、まどかと出会う前までに時間を巻き戻したという。

 また魔法に等しき現象ね。キュゥべえっての魔術師から見れば喉から手が出るような存在ね。

 そして、時間を巻き戻したほむらと共に魔法少女連合を組み、ワルプルギスの夜に挑み、なんとかワルプルギスの夜を街から撃退したものの、マミは意識不明の重態で、まどかもほむらもボロボロだったという。

 でも、生き残れたと喜ぼうとした直後、まどかは苦しみだしたという。

 魔力を使いはたし真っ黒に染まったソウルジェム。それを見た時、まどかは理解したのだという、魔法少女が最期になにに成り果てるのか……

「魔力を使い果たし、極限まで濁ったソウルジェムは、グリーフシードになるんです」

 な?! グリーフシードになる、それって、つまり……魔女になるということ。

「あ、あんた、消滅するって言ってたじゃない!!」

 まさか、この子は私に嘘を言ってたって言うの?

 それが、ちょっとだけショックだった。

「あ、いえ、嘘ではないんですけど、半分嘘というか……うう、私もキュゥべえみたい」

 なんてまどかは悩みだす。

「とりあえず、話を続けますね……ほむらちゃんは私が魔女になった直後にまた時間を遡りました。そして、その世界で私たちに魔法少女が行きつく先を訴えました」

 しかし、その訴えは届かなかったらしい。

 それはそうだろう。いきなり自分がそんなものにいずれなるなんて信じられないし、信じたくないだろう。

 だが、運命は残酷だった。その世界では魔法少女になっていた美樹さやかが魔女へと変貌したという。

 必死に呼びかける仲間たち。だが、叫びは届かず、さやかはほむらに倒されたという。

 結果的に仲間のせいでほむらの言葉が真実だと知り、マミが錯乱、仲間の一人杏子のソウルジェムを撃ち抜いたという。

 ソウルジェムは魔法少女の魂。撃ち抜かれた杏子は当然死亡した。そして、次の標的となってしまったほむら。まどかはほむらを助けるために、マミのソウルジェムを射抜いた。

 この子、セイバーの時といい結構シビアな選択ができるのね。

 そして、真実を知ったまどかももう嫌だと諦めたが、ほむらに説得され、ワルプルギスの夜に挑んだ。

 結果、ワルプルギスの夜を退けたものの、二人ともソウルジェムは濁りきったらしい。

 だけど、まどかは最後にひとつだけとってあったグリーフシードで、ほむらのソウルジェムを回復させ、二つの願い事をしたのだ。

 「過去に戻り、自分がキュウべぇと契約する前に止めてくれ」と。そして、魔女になりたくないから自分を殺してくれるようにと。

 それからほむらはまどかとの約束のために、この子が魔法少女にならないよう時間を遡ったという。

 時にはまどかが大切なものを助けるためにほむらの静止を振り切って契約をしたり、魔女に殺されたり、最悪の魔女になることを知った魔法少女に殺害されたこともあったという。そのたびにほむらは再び時間を何度もやり直したという。

 その過程で彼女は知ってしまった。キュゥべえの目的を。

 キュゥべえの本当の名前をインキュベーター、外宇宙からやってきた生命体だったという。

 その目的は、宇宙の寿命を延ばすために熱力学第二法則に縛られないエネルギーを採取するためであり、自分たちが発明した「感情をエネルギーに変える技術」を用いることで、第二次性徴期の少女たちが絶望し魔女となる際に発生する、莫大なエネルギーを回収するという魔法少女のシステムを作り上げたという。

 なんて、おぞましい……

 士郎はくそっと悪態をつき、セイバーも怒りを露わにしている。でも、まだ途中だ。

「それで、結局どうなったの?」

 そして、まどかは続けた。最後にほむらのたどり着いた世界でなにがあったのかを。

 今までと同じように消えていく仲間たち。そして、聞かされた魔法少女の真実。

「全てを知った私は、ずっとずっと考えて、叶えたい願いを見つけました」

 叶えたい望み……それが、全てに関わるんでしょうね。

「最期に私が願ったのは、全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を生まれる前にこの手で消し去ることです」

 ……なんですって?

 もし、もしもそんな願いが叶ったのなら、その意味を理解し私はぞっとした。

 私は……なんていうものを召喚したんだ?!

「あんた、自分がなにを願ったのかわかってるの?!」

 知らず知らず私の声は悲鳴に近くなっていた。

「お、おい遠坂どうしたんだよ?」

 私の声に士郎が戸惑いの声を上げる。

 こいつ、わかってないのか、いや、当然かもしれない。

「いい、士郎、今のまどかの願いはね、もう時間干渉なんてレベルじゃないわ。それこそ因果律を組み替えるのに等しい行為。そんなことが叶うなら……『自分』なんて存在を保てない。未来永劫、魔女を滅ぼす概念になるということよ」

 私の言葉に士郎はえっと声を漏らす。

 セイバーも目を見開いている。

「英霊の座に近い、いえ、それよりも上位かもしれない。世界の法則に、言い換えれば神そのものになるってことなのよ」

 そういえば聞こえはいいけど、死の方がよっぽど生易しい。

「あんた、それでよかったの?」

 私の問いに笑顔でまどかは頷く。

「はい。ただ、私はみんなに希望を信じてほしかったんです。魔女と戦ってきたみんなが、希望を信じた魔法少女には最期まで笑顔でいてほしかったんです。それを邪魔するルールなんて変えたくて、壊したくて、だから、願ったんです」

 そういって笑うまどかの顔には欠片の後悔も存在しなかった。













 そして、願いを叶えてからの話をまどかはしてくれた。

 願いを叶えた結果、まどかはその存在が一つ上の領域にシフトし、魔法少女たちが『円環の理』と呼ぶ概念へと成り果てた。

 そして、多くの魔法少女が魔女になる瞬間に現れ、彼女たちの穢れや呪いを浄化し安らかな眠りを与えて行ったという。

「私はたくさんの魔法少女を看取りました。メデューサさんも、メディアさんもそのうちの一人です」

 そうか、だからあの二人を知っていたんだ。

 それから、まどかはセイバーを見る。

「もちろん、アルトリアさんも」

 アルトリア、それがセイバー、いえアーサー王の本当の名。

 まどかの言葉にセイバーは身を強張らせる。

「あなたは、私のことも知っているのですか?」

 はいと頷く。

「だから知っています。みんなの願いは尊いものでしたとってもとっても、大切なものでした」

「ですが、私は……」

 セイバーがなにかを言おうとして、

「間違ってません」

 きっぱりとまどかは断言した。

 セイバーが驚いたようにまどかを見る。

「アルトリアさんの願いは間違っていません。誰かのために頑張れるのはすごく大切で尊いものです」

 セイバーは信じられないものを見る目でまどかを見つめている。

「私の知るアルトリアさんとセイバーさんは違うかもしれません。でも、私は誇ってほしいんです。セイバーさんの選んだ道を」

 それからまどかは士郎に向く。

「そして、士郎さんも考えてください」

「俺?」

「……その、士郎さんってすっごくマミさんやさやかちゃんにそっくりだって私思ってるんです」

 だから、心配でってまどかはつぶやく。

 ああ、確かに、話を聞く限り似ている気がする。

「士郎さん、誰かのためにがんばるのはすっごくいいことだと思うんです。でも、気を付けてください。そして、思い出してください。士郎さんが傷つけば悲しむ人がいると言うことを」

 そして、話は終わった。

 セイバーは再び深い眠りに落ち、士郎は悩むように顔を伏せていた。










 あ、そういえば、

「なんでセイバーがここに戻ってるの?」

 肝心なことを聞き忘れていた。

 今ので魔女を円環の理に導いたとも取れるけど、それでは私たちの記憶が残ってたりするのは変だ。

「そういえば、なんでだ?」

 と、士郎も聞いてくる。

「えっと、私の宝具『円環の理』でメディアさんは『英霊の座』に行く前に私の方に導きました。聖杯戦争は英霊の座にいる英霊をコピーして召喚しますから、円環の理にいるメディアさんは召喚されなくなります」

 そうか、行先を変えることで聖杯戦争に召喚されなかったことにしたのか。それなら、キャスターの起こした行動は全部なかったことに……って、

「それじゃあ、なんで私たちの記憶があるのよ? それに、七騎揃ってないのに聖杯戦争が続いてることになってるのよ?」

 その問いにまどかは悩み、

「私がいるから……でしょうか?」

 はあ?

「えっと、どうも、私の起こしたことに関してはなかったことになってないみたいなんです。だから、もしかして、私を通して聖杯は「キャスターは倒された」って認識しているんじゃないでしょうか? すいません、曖昧なこと言って、こういうの初めてですからよくわかりません」

 うーん、まどかにもわからないって……まあ、それで納得するしかないか。確かに衛宮邸半壊はそのままだし。

 しかし、私たちは知らない。キャスターがいなくなったのに聖杯戦争が続く本当の理由を……







~~~~
いえ~、なんか説明これで大丈夫なのと思う今日この頃。
そして、セイバーや士郎も。別にした方がよかったかなあと。
でも、こういう話をするのもこのタイミングしかないですし。う~。



[27467] Fate stay Magica 第十七話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/07/26 10:50
 それから、私はセイバーと士郎の問題を解決するために一度、家に戻り、セイバーの不調を解決する手段が他にないか調べていた。

 まどかが家を吹き飛ばしたことを責められたくないから逃げたのではない決して。

 だが、特に収穫もなく、衛宮邸に戻り……士郎が誘拐されたのを知った。

 たく! あのバカ!!

「あの、士郎さんはいったい誰に……」

 と、まどかが聞いてくる。

「魔力の残滓からこれは……イリヤスフィールね」

 よりにもよってあいつのところか……どうする?

 たぶん、士郎は無事ね。なんか、イリヤはずいぶんあいつにご執心みたいだし、いきなり命を奪ったりはしないだろう。

 でも、対してこちらは救出するとはいえ、セイバーは限界だし、まどかもキャスター戦の消耗から完全に癒えているとは言えない。

「お願いします、リン、マドカ、図々しい頼みとはわかっていますが、どうか士郎を救う力を貸してください!」

 と、セイバーが頭を下げてくる。そして、

「凛さん私からもお願いします!」

 まどかまでそんなことを言い出した。

 あー、たく、仕方ないか。どうせ、バーサーカーとはいつか戦わなくちゃいけないんだし……腹を括るしかないわね。

「ええ、士郎を助けに行きましょう」


 









 そうして私たちはイリヤの本拠地である城のある森に訪れ、彼女が城から出た隙に城の中に潜入した。

 この森と城はなんでも第一次聖杯戦争の時にアインツベルンの当主が当時の遠坂の当主の協力で丸ごと買い取ったらしく、文字通りイリヤスフィールのテリトリーと言って良いだろう。

 慎重にいかないとね。

 そして、士郎の居所を探って行って、

「動くな!」

 なんて人影が飛び出したのと、セイバーが、

「士郎!」

 と、その相手、士郎がセイバーに押し倒されたのは、ちょっと笑うと同時に安心した。











 そして、私たちは城から脱出しようとして、イリヤスフィールとバーサーカーにお出迎えされることになってしまった。

 出て行ったのはフェイク。実際はとっくに私たちの潜入がばれて待ち構えられていたのだ。

 あー、うん、イリヤの言うとおり、本拠地だったらそういった備えがあるでしょうね。細心の注意は払っていたつもりだけど、イリヤの方が上手だったわね。

 しかし、どうすればいい? 先も言った通り、セイバーは現界してるだけで精一杯。まどかもあの矢をバーサーカーに撃ちこめるかどうか……

 私は必死に頭を回してこの状況を打破する方法を考えて、まどかが私達の前に出た。

「まどか?」

「凛さん、私の宝具を使って時間稼ぎをします。その間に脱出を」

 なっ?!

「あんた、まさか」

 私達を逃がすための犠牲に、

「大丈夫です」

 そして、まどかに、いや、その前の空間に魔力が集まる。それは、どこかサーヴァントの召喚に似たものを私は感じた。

 いったい?

「来て、『私の最高の友達』(ほむらちゃん)!」

 まどかの呼びかけとともに、彼女は現れた。

 黒く長い髪の鋭利な美貌を持った少女。何度も夢に現れた彼女は、

「暁美、ほむら」

 私は自然と彼女の名前を呼んでいた。

 彼女は髪をかきあげながらバーサーカーを睨む。

「あいつを倒せばいいのねまどか」

 どこからともなく拳銃を取り出しながら自分の役目を尋ねるほむら。

「倒せなくても、みんなが脱出できればいいかな」

 と、まどかは答える。

「わかったわ。なら、早く行きなさい」

 ほむらの言葉にまどかは頷く。

「いきましょう凛さん」

 そうね。この子がどれだけの実力の持ち主かは話を聞いただけでわからないけど、まどかが足止めできるって言うなら、信じよう。

「鹿目いいのか! 友達なんだろ?!」

 だが、士郎がそんなことを言い出した。

 たく、こいつは。

「あのね士郎」

「余計な心配よ。邪魔だからさっさと行きなさい」

 私が士郎に言う前にほむらが言い放った。

「だけど、バーサーカーは」

「知ったことじゃないわ」

 なお士郎が言い募ろうとしたが、ほむらはばっさり切り捨てる。

「いつまで言い争ってるの?」

 イリヤが私達を睨む。

「誰も逃がさないんだから、行きなさいバーサーカー!」

 イリヤの指示にバーサーカーが雄叫びを上げて、突撃しようとして、その足元で爆発が起きた。

 爆発自体ではダメージを受けたようには見えなかったが、足元にできた窪みに足を取られバーサーカーが勢いよく倒れる。

「行きなさい!」

 その言葉に弾かれるように私達は士郎を引っ張り走り出した。












 城からだいぶ離れたが、いまだに幾度も響く爆発音。

 相当派手にやってるみたいだけど、いったいどんな戦いかたを?

「まどか、本当によかったの?」

 つい、私は聞いてしまった。

 あの子はまどかにとって大切な友達のはずなのに。

「大丈夫です。ほむらちゃんは強いですから!」

 と、まどかは心配のかけらもない笑顔で答えた。













 

 ほむらは愛銃の弾を全弾バーサーカーに撃ちこむ。が、欠片の傷もバーサーカーにはつかない。

 すぐに拳銃をしまうと、続いて機関銃を取り出し、イリヤと軸線を合わせ乱射した。

 が、当然のようにバーサーカーは割って入る。もちろんほむらもそれは予想済みではあった。

 神秘の欠片もない現代兵器ではバーサーカーの守りは突破できないが、マスターを守らせることで少しでもバーサーカーの動きを制限するためだった。

 だが、バーサーカーはそれを意に介さずほむらに迫る。

「■■■■■―――!!!」

 迫る斧剣を避けるが、代わりに機関銃をバーサーカーに粉砕されてしまう。

 だが、その直後にほむらは彼女だけに許された力、時間停止の魔法を使用。

 止まった時の中で、彼女だけ動く。

 まず、バーサーカーを包囲するように爆弾を設置。それから、バーサーカーから距離を取ってから時を動かす。

 動き始めた時間、バーサーカーの足元の爆弾が同時に爆発した。

 その爆発ではバーサーカーにダメージは与えられない。だが、彼女の策は別にあった。

 床が破壊され、バーサーカーが階下に落ちかける。

 咄嗟になんとか淵に掴まるバーサーカー。

 そんなバーサーカーに容赦なくほむらはバズーカで追撃をかけ、ダメージはなくともその爆発でバーサーカーは下に落ちた。

「まだよ」

 そう呟き、ほむらはその孔からバーサーカーを追った。










 いったいどれだけ戦っただろうか、朝日が差し出した頃には、かつて城だったものは無惨な瓦礫の山と化していた。

 そして、そんな惨状を作った片割れであるほむらは、息を切らしながらバーサーカーを睨み対峙していた。

 あれから、彼女は一度だってバーサーカーの命を削ることはかなわなかった。神秘を持たない現代兵器ではバーサーカーを殺すことは不可能であった。

 しかし、RPGの弾幕、仕掛け罠、時には閃光手榴弾というバーサーカーにダメージを与えることのできないはずの現代兵器を駆使し、最狂と謳われた彼相手にここまで戦った事実は驚嘆に値する。

 だが、その彼女もすでに限界に達していた。

 時間停止の多用で魔力は残り少なく、ほぼ全ての武器を使いきり、あとは切り札を一枚残すのみ。

「ふん、なかなかやるわねあなた。まさか、そんなものでバーサーカーをここまで足止めできるなんて思いもしなかったわ」

 イリヤも純粋に目の前の少女に感心していた。

「でも、遊びはもう終わり。やりなさいバーサーカー!」

 満身創痍のほむらにバーサーカーが迫る。

 対し、ほむらは切り札を切った。

 ほむらの意思に従い、それが威容を顕にする。

「タンクローリーよ」

 ほむらの意思に従い走り出すタンクローリーはその質量を武器にバーサーカーへと突貫する。

「■■■■■■■―――――!!!!」

 バーサーカーはそれを真っ正面から受け止めた。

 だが、ほむらにとって、止められることはすでに折り込み済み。

 本当の目的は、

 爆発するタンクローリー。

 大きな火柱が上がる。

 それでもバーサーカーを傷つけることは敵わない。だが、すでに目的を達していたほむらはその爆発を目眩ましに、まどかの待つ場所へと全速で向かうのだった。















 なんとか、事前に逃げ込む予定だった廃屋で、限界となったセイバーを助けるために、士郎の魔術回路を移植することになった。

 それは、私が考えていた最後の手段。下手すれば士郎の魔術師としての人生が終わる。

 だが、士郎は躊躇なくそれを選択した。ここを生き残るためだと言って。

 そして、回路の移植のための準備をしていたら、まどかは真赤になって廃屋の外に逃げ出してしまった。

 あー、あの子には少し刺激が強すぎたかしらね。

 結果だけ言えば士郎の魔術回路はセイバーへ宿った。それは同時に士郎の魔術師としての力を失ったということだったが、本人はあまり思いつめた様子はなかった。

 意外と大物なのかしらね。そして、

「まどか」

 私たちが隠れている廃墟にあの子、暁美ほむらが現れた。

「ほむらちゃん!!」

 まどかが駆け寄る。

 その彼女はぼろぼろだった。大きくはないが、決して小さくない傷が体中に残っている。

 バーサーカー相手にここまで時間稼ぎしてくれたなんて……とんでもない少女ね。

「ありがとうほむらちゃん」

「私からも礼を言うわほむら」

 するとほむらはぷいっとそっぽを向く。

「別に、どうってことないわ」

 照れてるのかしら? なら、冷めてるように見えて意外とかわいいところがあるのね。

「じゃあ、また」

 と、まどかが手を差し出す。

「ええ、また」

 そういってほむらがまどかの手を取るとほむらは光となって消えた。

「さてと、最低限準備は整った。バーサーカーを迎え撃つわよ」

「はい!」

「ああ!」

「ええ」

 そこで、私たちはバーサーカーを迎え撃つこととなった。

















 そして、イリヤとバーサーカーが現れた。

「ふーん、逃げるのやめたんだ」

 と、イリヤが小ばかにするように笑う。

「ああ、ここで決着をつけようイリヤ」

 士郎が答える。

 セイバーが剣をバーサーカーに向ける。

 宝具は無理でも戦えるだけ回復してくれて助かったわ。まどかだけじゃ勝てるかどうかわからないし。

「そう、なら……行きなさい、バーサーカー!!」

 バーサーカーが迫る。セイバーが飛び出す。

 対し、まどかはじっと動かない。 集中しているのだ。宝具を使うために。

 セイバーの剣とバーサーカーの斧剣が幾度も交差する。あまりに強大なバーサーカーの暴風を掻い潜り、なんとか、セイバーは命を繋いでいる。

 一つでも手を誤れば容易くその力はセイバーを、そして、後ろにいる私たちの命を奪うだろう。

 まだ、まだなのまどか!

 そして、

「行きます。これが、私の宝具『魔法少女連合』(マギカ・カルテット)!!」

 真名解放、そして、まどかの後ろに、私たちの知る術式とは全く異なる魔法陣が展開される。

 そこから、五つの影が現れた。





~~~~
バーサーカー戦です。
ほむらって能力値は低くても、絶対最強クラスです。だから、ここまでバーサーカーを足止めしていただきました。
次回、魔法少女連合による巻き返しが始まります。



[27467] Fate stay Magica 第十八話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/07/29 09:55
 現れたのは、四人の魔法少女と一匹の獣。

「まどか、お待たせ」

 さっきとは違う、リボンで髪を結び、その手にまどかと似た弓を携えたほむらが小さく笑う。

 その肩にはあのキュゥべえという白い生き物。

「助けに来たよまどか」

 青い髪の少女、さやかが剣を片手ににかっと笑う。

「鹿目さん、今度は私が助ける番ね」

 黄色い髪の大人びた少女、マミがマスケット銃を片手に優雅に微笑む。

「はっ、そんなの関係ないね。友達だから助けるんだろ?」

 と、槍を担いだ赤い髪の少女、杏子がポッキーを咥えながら笑う。

 それを、まどかは嬉しそうに笑う。

「ほむらちゃん、さやかちゃん、杏子ちゃん、マミさん、みんな、来てくれてありがとう!」

 それからキュゥべえがほむらの肩から降りる。

 はあ、なんとかなったわ。

 なんとか、踏ん張ろうと足を踏み直す。足元の砕けた宝石の残骸がじゃりっと音を立てる。

 ソウルジェムの濁りはある程度私も肩代わりできる。

 だから、事前に宝石を使いブースト。その魔力でできる限りまどかの宝具使用をアシストした。

 たく、お陰で取って置きの宝石もストックがだいぶ少なくなってしまった。

 まあ、でも、これを切り抜けられるなら十分な代償ね!

「って、キュゥべえは?」

 なんて、マミが呟いて思い出した。

 なんでか、あのどぐされなんちゃって使い魔もいたけど、どこに……あ、いた。

 イリヤの目の前に。

「やあ、僕はキュゥべえ。僕と契約して魔法少女に、きゅっぷい!!」

 ぐしゃっと、バーサーカーに踏み砕かれていた。

 バーサーカーが足を上げると、そこにぐちゃぐちゃになったキュゥべえ。

「まったく、僕を殺すなんてどうかしてるよ。無意味に潰されるのは困るんだよね。勿体ないじゃないか」

 そして、どこからかもう一匹のキュゥべえが現れてその死骸を食べた。

 話には聞いてたけど、実際見るとあれだなあ。

 まどかたちは慣れているのか、それを無視して武器を構える。

「行こう、みんな!」

「ええ」

「りょーかい!」

「おう!」

「ええ!」

 五人の魔法少女がそれぞれの武器を片手に駆け出した。












「はあ!」

「せえい!」

 さやかと杏子が一気にバーサーカーに迫り、剣と槍を振るう。

 杏子は持ち前の身のこなしを活かしてひらひらと、対しさやかはギリギリでの回避。

 まどかもそうだけど、二人とも訓練を受けたように見えない。それでも、バーサーカーの攻撃を避け、攻め込めるのは、彼女たちも数多くの修羅場を潜り抜けてきたからだろう。

 そこにマミがマスケット銃による援護。

 撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。弾切れになった銃はすぐに投げ捨て、次々とそばに突き刺した装填済みの銃を取り、撃ちこむ。

 それらは、狙いたがわずバーサーカーに突き刺さるが、堪えた様子はない。やっぱり、バーサーカーの守りは強力か。

 ほむらもまどかに似た弓を射るが、それもだ。

「はあ!」

 そこにセイバーが切り込む。

 援護があるお陰か、先よりも深く踏み込んでいるように見える。より重さの増した斬撃にバーサーカーの巨体も少しだけ揺らめく。

 そして、セイバーに意識を向ければ、さやかと杏子の攻撃に曝され、そっちに意識を向ければ、マミやほむらの援護が突き刺さる。

 取り敢えず、互角に戦えている。でも、これからどうなるのか。

「やあ! と、うわ!!」

 そう考えたとき、さやかが飛び出し、深く踏み込んで斬りかかる。

 が、バーサーカーの体に剣が弾かれ、逆に体勢を崩してしまった。

「さやか!」

 杏子とマミの援護が入るが、それを一顧だにせず、バーサーカーはさやかに斧剣を振るう。

 そして、なんとか回避しようとしていたさやかの右の腕と足を斧剣がぐしゃぐしゃに引き裂いた。

「な、大丈夫か!?」

 その光景に士郎が飛び出そうとして、ってあんた!

「止めなさい!!」

 なんとかそれを私と、魔力を温存していたまどかが押し留める。

「あんた死ぬつもり?!」

「でも、あの子が!」

 そんなこと言って状況をまったくわかってない!

 無鉄砲で人助けが趣味とは理解してたけど、ここまで考えなしだなんて思ってなかったわよ!

「足手まといのあんたが割って入っても犬死によ!」

 それだけじゃない。こいつを庇って他の子やセイバーまで危機に陥る可能性だってあるのだ。

 それすらわからないの!?

 すると、セイバーたちを援護していたほむらがこっちに来た。そして……士郎の頬を叩く。

「な、なにするんだ!?」

 そんな士郎を刺すような目でほむらは睨む。

「あなた、いい加減にしなさい。命を懸けるのと命を捨てるのはまったく違うわよ」

 見た目は私たちよりも年下だけど、トーンを落とした声は十分な迫力があった。

 士郎もぐっと息を詰まらせる。

「それに、さやかちゃんは大丈夫です!」

 と、まどかが訴えると同時に、

「うおりゃあ!!」

 倒れ伏していたはずのさやかが飛び出す。

 その半身は傷一つなくなっていた。まどかよりも再生が早い!

「さやかちゃんはその祈りでどんな怪我もすぐに治せるんです!」

 そして、膨大な魔力を帯びた巨大な剣がバーサーカーを両断する!

「■■■■■ーーー!!」

 バーサーカーはすぐにその傷を治癒してしまうけど、これで一回削った!

 しかし、命を失ったことにすら頓着せずにバーサーカーはさやかに向かって斧剣を振るう。

 だが、今度はその身を黄色いリボンと鎖ががんじがらめに拘束する。

 マミと杏子だ。

 あっさりとバーサーカーはその拘束を引き千切るが、さやかが離脱する時間は稼げた。

 だが、それだけで止まらない。

 マミが巨大な大砲を呼び出し、両手で構える。

「まだよ、ティロ・フィナーレ!!」

 それが火を吹き、バーサーカーの顔面を噴き飛ばす。

 二回目、残りは六!

 ここだ、ここで押し切るしか勝機はない!!

「お次はこいつだ!」

 そう叫んで、祈るように両手を合わせた杏子の後ろから巨大な、バーサーカーも上回る大きさの槍が現れる。

 それが、龍のように鎌首をもたげて、顎を開く。その上に杏子は乗って、槍を構える。

「行けえ!!」

 龍が走る。

 それをバーサーカーが真正面から斧剣で迎撃しようとして、

「はあ!」

 セイバーの一撃に体勢を崩され、さらに、マミのリボンが斧剣を縛り上げる。 そのまま、龍は無防備なバーサーカーの胸を貫いた。

 これで、三!

 バーサーカーが胸を貫く槍を引き抜き、捨てる。

「なにをやってるのバーサーカー! もういいわ、遊びは終わりよ! 狂いなさい!!」

「■■■ぉ■o■■――――――!!!!!」

 なっ!? あれだけの力で今まで狂化してなかったっていうの?!

 私たちはバーサーカー、いや、ヘラクレスという英雄の強大さは理解していたつもりだった。

 だが、一つ大きく見誤っていた。

 その強大さ故に、すでに彼は理性を失うのを引き換えに強大な力を奮っていると。だけど、違った。そう誤解してしまうほど、ヘラクレスは強大だった。

 そして、その言葉は正しくバーサーカーの動きは、より鋭く激しさを増した。

 変わらず技術の欠片もないただの暴力。だが、圧倒的な力の前に技術なんて無意味と突きつけられる。そう、どれだけ力を持とうとも人間が災害になすすべがないのと同じように。

 その暴力の前にすでに、さやかと杏子は近づくことも叶わない。

 ただ、セイバーだけは立ち向かう。強大な敵に立ち向かう彼女の姿はまさに英雄に相応しい姿だ。

 古今東西、多くの英雄たちは自らより強大な敵に立ち向かった。ただ、一度のチャンスに己が全てをかけて。

 まさに、これは神話の再現……いえ、違う。そうだ、私達は、その神話を越える!

 そして、その時は来た。

 膨大な魔力を編んだ矢をまどかとほむらが構える。

 今日、三度目の宝具解放! 倒れそうになるのを必死に耐える。正直、これ以上はまどかもだが、私ももたない。

 決めなさいよまどか、ほむら!!

 バーサーカーが雄叫びを上げながらまどかたちに迫る。自らの命を脅かすものに感づいたのね。

 だが、再びマミと杏子の拘束がバーサーカーを押し留めようとする。しかし、それも狂化したバーサーカーにまるで意味をなさない。

 それでも、

「行かせないわ!!」

 マミの背後に現れた大量のマスケット銃が一切に火を噴く。

「やらせるかよ!」

 距離を開けながらも杏子が多節棍やフレイルでバーサーカーを打ちすえ、

「うりゃあ!」

 さやかが呼び出した剣を投げつける。って、それ形状からして黒鍵みたいに使うもんじゃないでしょ!

「はあ!」

 そして、セイバーの斬撃についにバーサーカーの体がぐらつく。

「いくよ、ほむらちゃん!」

「ええ、まどか」

 そして、二人が申し合わせ、矢を放つ。

 空中でその矢は絡み合い、バーサーカーに迫る。そして、体勢を崩したバーサーカーにその矢が突き刺さった。

 弾ける魔力、光の中にバーサーカーが飲み込まれて消える。

 やった!

 ほむらの矢はまどかに匹敵する魔力が籠められていた。それでバーサーカーを何回殺せるかわからないけど、同時にまどかの矢も入った。

 なら、バーサーカーの命を八回削りきった!!












 だけど、その光の中から野太い腕が突き出された。














「ほむらちゃん!」

 咄嗟にまどかはほむらを突き飛ばすが、代わりにその腕に捕まってしまった。

 そう、バーサーカーの腕に。

 そ、そんな。

「驚いたわ凛。まさか、あなたのサーヴァントが七回もバーサーカーを殺すだなんて」

 七回、ですって?

 さやか、マミ、杏子の三人が一回ずつバーサーカーを殺した。なら、まどかとほむらの攻撃はバーサーカーの命を四回しか削れてないって言うの?!

 いや、四回でも十分な回数ではある。でも、まどかの矢は以前四回もバーサーカーの命を削っている。なら、四回以上のダメージがないとおかしい……

 そこまで考えて一つの可能性に気づいた。まさか、そんな……

 私の考えに気づいたのか、イリヤスフィールが笑う。

「気づいたようね。そうよ十二の試練は自分を殺し得た力に耐性がつくのよ。だから、アーチャーの矢はバーサーカーにはもう効かないのよ」

 そんな……命のストックがある化け物なのに……

 勝てない、その事実に絶望しそうになる。だけど、まだだ考えろ。バーサーカーの命は後一つのはず。なんとかしてそれを削れれば…… 

「それと、もう一つ、誤解があると思うから言っておくけど、そのストックも時間をおけば回復するわ。並みの魔術師なら一生分の魔力をかけて一つ程度でしょうけど、私なら一日で二つ。だから、今のバーサーカーの残りの命は一つじゃなくて五つあるの」

 そ、んな……

 イリヤの言葉に目の前が真っ暗になりそうな錯覚を覚える。

「じゃあ、もういいかな。正直、思った以上にあなたたちも面白かったけど、もうおしまい。潰しちゃいなさいバーサーカー」

「あ、くぅ……っ」

 バーサーカーの腕に掴まれたまどかが悲鳴を上げる。

 たとえ体が半分に断たれてもソウルジェムがあればまどかは死なない。

 でも、その状態から回復するのに時間はかかるし、なによりもソウルジェムの濁りが……

「まどか!!」

「畜生、まどかを放せ!!」

 ほむらたちがバーサーカーを攻撃するけど、まったく効いてない。イリヤの言葉が正しければすでに彼女たちの攻撃に耐性がついてしまったのだろう。

 だが……突然、突風が起きた。

 その源を向けば、セイバーが光り輝く剣を持っていた。まさか、宝具を使うつもり?!

 でも……その顔は苦渋に染まっていた。

「ふうん、セイバーずいぶん苦しそうね。もうそうしているだけで限界かしら?」

 イリヤの言うとおりだ。とてもじゃないけど、今のセイバーは宝具なんて使えない。もし撃てたとしても、セイバーはその身を維持できなくなるだろう。

「万が一撃てたとしても、それで、バーサーカーの残りの命を全部削りきれるかしら?」

「ぐっ!」

 そして、セイバーが片足をつく。最期の希望も潰えた。

 もう、本当に打つ手がないの?

「ばいばいアーチャー」

 イリヤが残酷に笑って……

「────投影開始(トレース・オン)!!」

 え?

 その声に振り向こうとして、赤い外套を纏った士郎がバーサーカーへと向けて疾走する。

 その手には黄金の装飾に彩られた目も眩む輝きを放つ一振りの剣が握られていた。







~~~~
バーサーカー戦中盤です。
次回、スーパープリズマシロウタイムです。
……自分で書いといてあれだけど長い名前。



[27467] Fate stay Magica 第十九話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:64d2bf50
Date: 2011/08/03 23:05
 士郎が黄金の剣を振るう。

 とてもじゃないが、実戦に使えるように見えないその剣は振り抜くと同時に砕けてしまった。

 しかし、それでも、その役目は全うしていた。

「■■■■■■――――?!」

 バーサーカーの腕がずれる。士郎が振り抜いた軌跡を境に。そして、重力に引かれて落ちるバーサーカーの腕とまどか。

「けほ、こほ!」

 やっとバーサーカーの束縛から逃れたまどかが、久し振りに吸い込む酸素に咳き込む。

「まどか!」

 ほむらが駆け寄り、まどかをこっちまで引きずってくる。

「大丈夫まどか?!」

「は、い。でも、士郎さんが」

 私の問いに息も切れ切れに答えながら士郎に視線を向ける。

「投影開始(トレース・オン)!!」

 赤い外套を纏った士郎が、今度は二振りの剣を造り出す。

 それを構え、バーサーカーに立ち向かう士郎。

 なんでいきなり……と考えて、一つの可能性が浮かび上がった。

 ばっと後ろを見れば、そこにキュゥべえ。

「てめえ、あいつと契約したのか?!」

 杏子がキュゥべえに槍を突きつける。

「まさか。僕に何のメリットもないんだからするわけないよ」

 と、杏子の恫喝に動せずキュゥべえは答えた。

 確かに、よく考えればキュゥべえの目的は魔法少女が絶望することで発生するエネルギーの回収。

 たとえ契約したとしても、まどかが宝具を解除すればキュゥべえはこの世界に干渉できなくなる。つまり、エネルギーの回収はできない。

 自分にとってなんのメリットが生まれないから、契約をする必要すらないと言いたいのだ。

 ならなぜ?

 士郎の剣はバーサーカーの斧剣を巧みに流したが、砕け散ってしまう。

 と同時に士郎が距離を離す。

 その時、その背に確かに見えた。髪を纏め、士郎と似た姿をした銀色の髪の少女。

「イリヤ?」

「イリヤちゃん?」

 私とまどかの呟きに『イリヤ』が笑った気がした。













士郎side

 どうすればいい? どうすればあの子を助けられる?

 考えるけど、答えは出ない。なにか手はないのか? その時だった。

「もう、お兄ちゃんらしくないなあ。お兄ちゃんは考えるよりも行動でしょ?」

 え? あり得るはずのない位置からのその声に振り向く。

 そこにいたのは、

「イリ、ヤ?」

 ふりふりの衣装を着こみ、魔法少女風のステッキを持ったイリヤだった。

「うん、魔法少女プリズマイリヤ、ただいま参上!」

 なんてイリヤがポーズを決める。

「あ、いや、な、なんでイリヤが二人いるんだよ?!」

 見ればバーサーカーのそばにやっぱりイリヤが立っている。

 なんで? どうして? まさか、イリヤが作り出した幻影?

「細かいお兄さんですねえ。まあ、このイリヤさんはあのイリヤさんとは別人……とは語弊がありますね。簡単に言えば、世界の違う同一人物とでも言いましょうか」

「いや、それでも分かり辛いから」

 ついステッキにつっこんでしまった。

「ややこしくなるから、ルビーは黙ってて。で、いいのお兄ちゃん。このまま何もしないの?」

 そうルビーと呼んだステッキを嗜めてからまっすぐに俺を見るイリヤ。

「そりゃあ、助けたいさ。でも、俺には力がない」

 戦う術だった魔術を失った。そんな俺があの場にはいけない。

 そうだ、あの子が言っていた。命を懸けるのと命を捨てるのは違う。

 なんの策もなくバーサーカーに立ち向かうのは勇気ではなく無謀。それは命を懸けるなんて言うのもおこがましい。

「なら、私が手伝うよ」

 イリヤはポケットから一枚のカードを取り出して、そのカードを俺に差し出してくる。

 えっと、『Archer』?

「この力の根元はお兄ちゃんと『同じだったもの』だから、お兄ちゃんも使えるよ」

 俺と同じだったもの?

 イリヤの言っていることも、この状況もとても理解できないけど、ここはこのイリヤを信じるしかない。

 カードを受け取って……俺の中に膨大なイメージが流れ込んできた。

 それは『あいつ』の背中。正義の味方になるために戦い続け、何の見返りも求めないまま戦い続けて……最後には、助けた人々に裏切られて死んだ英雄の生き様。

 それともう一つ。

 イリヤや切嗣、アイリ母さんにリズやセラと暮らす俺。

 遠坂やルビアたちも加わって、ハチャメチャでデタラメででも楽しい日常。

 ……こんな世界もあったんだ。

 切嗣はもういない。アイリ母さんも。でも、

 イリヤを見る。今からでも俺たちは――――

「なれるよお兄ちゃん。だから、お願い。本当は寂しがり屋の私を助けて上げて」

 ああ、イリヤ。

「夢幻召喚(インストール)」

 カードが輝きを放つ。

 そして、俺が纏ったのは『あいつ』の赤い外套。

 お前は俺が嫌いかもしれない。でも、今は力を貸してくれ『アーチャー』!!

『投影開始(トレース・オン)!!』














 弓を造り出して射る。

 ブランクはあったが、それでも狙いたがわず、バーサーカーに突き刺さる。だが、それが効いた様子はない。

「ふん、なにをしたのか知らないけど、潰しちゃってバーサーカー!!」

 イリヤがバーサーカーに苛立つように指示を出す。

「イリヤ!」

 そんなイリヤに俺ができるのは、

「俺がいるぞ!」

 こんなことしかない。

 武器を投影し、バーサーカーの攻撃を防ぐ。

 重いなんて言葉すら生易しい重厚な一撃。『あいつ』はこんな化け物を六回も殺した。改めて尊敬するよ。

 でも、俺の相手はお前じゃない。

「切嗣は、じいさんはもういない。でも、俺がいてやる!」

 バーサーカーの攻撃に剣がまた砕ける。すぐに投影。

 その剣で再びバーサーカーの猛撃を凌ぐ。

「なによいきなり、さっき断ったくせに虫がいいわね!」

 俺の言葉にイリヤが怒気を露わにする。だが、

「違う! イリヤのものになるとか、そんなんじゃない……兄妹として、家族として一緒にいてやりたいんだ!!」

 じいさんだって、イリヤを捨てたんじゃない。なにか理由があったはずだ。

 なら、俺がじいさんの代わりにイリヤの家族になる!

「投影開始(トレース・オン)!!」

 イメージしろ。常に思い描くは最強の自分。そう、俺の敵はバーサーカーじゃない。常に自分だ。自分の心だ。

 疑うな。己も、世界すらも騙しえる完全無欠なるイメージを作り上げろ。

 創造理念を鑑定し、基本となる骨子を想定し、構成された材質を複製し、製作に及ぶ技術を模倣し、成長に至る経験に共感し、蓄積された年月を再現し、あらゆる工程を凌駕し尽くし、ここに幻想を結び剣となす。

 そうして幻想から編み上げたのは夢で見たセイバーの剣。王者が持つに相応しい眩いばかりの黄金の剣。

 できた。最初とは違う。今度こそ完璧に。

 それを構えて、俺は焦った。駄目だ、この剣は俺の手には余る。バーサーカーに勝てる剣を作り出したというのに、肝心の担い手が足らない!

「シロウ、その剣を私に! 私なら使える……私の剣です!!」

 セイバー!

 いつの間にか横にいたセイバーが剣を取る。剣を握る手に、暖かな温もりが添えられる。それに、言いようのない昂揚を覚える。

 目の前にバーサーカーが迫るが、どうでもいい。こうして彼女と肩を並べられる喜びの方が俺にとっては重要だ!

「剣よ! 主に答えよ! 汝の名前は……勝利すべき黄金の剣(カリバーン)!!!」

 剣がバーサーカーに吸い込まれるように突き出され、黄金の輝きが世界を覆った。









凛side

 光が収まると世界は静かだった。まるで今までの死闘が幻だったかのように誰も動かず、言葉を発する事も無い。

 ただ、士郎が作り出した黄金の剣が、セイバーと士郎の手の中でガラスが砕けるような音を起てて消え、世界は音を取り戻した。

「――――よもや、我が十二の命を乗り越える者達が現れるとはな。見事だ、剣の英霊と弓の英霊。そしてその仲間とマスター達」

 と、今まで一度も言葉を使わなかったバーサーカーが口を開いた。そう、狂化し、理性を失っている筈のバーサーカーが、だ。

 先の狂戦士然とした姿からは想像できない、あまりに穏やかな声と瞳。

 その身はゆっくりと光となって消えていく。

「バーサーカー! 消えちゃやだよぉ……!」

 そんなバーサーカーの足元でイリヤスフィールは涙目で訴える。

 その姿は先ほどまで私たちを容赦なく殺そうとした姿とは全く違う、年相応の少女だった。

 バーサーカーはその大きな手で慈しむようにイリヤスフィールの頭を撫でてから士郎を見る。

「少年、先の言葉に偽りはないか?」

 バーサーカーの言葉に士郎が頷くと、バーサーカーは笑った。

「ならば、この子を頼む……」

 そう言い残し、バーサーカーは完全に消えた。

 その膝を屈する事無く英雄に相応しい姿で消えて行った。














「バーサーカーが負けちゃったか。すごいね、シロウ、リン。私には……もう何も無くなっちゃったよ……」

 振り向いたイリヤが寂しそうに笑う。

「いや、イリヤ、それは違う。俺がいる」

 え? と、イリヤが驚く。

「だってさ、イリヤが切嗣の娘なら俺と兄妹だろ? なら、俺がいてやるよ」

 ……は? こいつらそういう関係だったの?

 ま、まあ戦闘中に何か言ってはいたけど、そうか。あれはそう言うことだったのか。

 なら、イリヤスフィールが士郎に執心してたのもそれが理由?

「ほ、本当に?」

「お兄ちゃんは嘘をつかないよ」

 士郎の姿が元に戻ると同時に、士郎の横に、『イリヤ』が現れた。

 その手には……なんであんたがいるのよ? ルビーを睨みつけると、どこかそっぽを向くようにステッキが動いた。

「え? あなたは……」

「イリヤ、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。別の世界のあなただよ私」

 『イリヤ』が笑う。こっちイリヤスフィールと比べて随分と明るい雰囲気だ。

 って、まさか、士郎はあの『イリヤ』と合体してたってこと?

 憑依とか、そういうレベルじゃないわよね。いったいどうなってるのか……それに、

「まどか、あの子も召喚したの?」

「い、いえ、私は……たぶんイリヤちゃんと士郎さんとの『縁』で勝手に私の中から出てきちゃったんだと思います」

 まあそれくらいしか説明できないわね。

「えっと、うちもパパは滅多に帰ってこなかったけど、私たち家族を守るってすっごく大切な理由があったから」

「そうなの?」

「そうなの! 違う世界だけど、きっとあなたのパパも私のパパと同じであなたのことを大切に思ってくれてたから!」

 『イリヤ』がイリヤを説得している。なんていうか、すっごい光景ね。同一人物が同一人物を説得するなんて。

「そっか、切嗣は私のこと大切に思ってたんだ」

「そうそう!」

「そうさイリヤ!」

 と、『イリヤ』と士郎が同時に肯定する。

 ……なんか間抜けな光景にも見えてきた。ほむらとさやかは半分呆れ気味。マミはきらきらとした目で三人のやり取りを見て、杏子は黙って見守っている。

 そして、

「うん、ありがとうシロウ。今からでも私の」

 そう、イリヤが笑って、















「天の鎖よ」















 突然伸びてきた鎖がイリヤを絡め捕る。

「きゃあ!」

「イリヤ!!」

 士郎が叫び手を伸ばすが、届かない。

 そして、イリヤは突然現れた全身を金色の鎧で包んだ男に奪われた。

 なに? いったい誰?!

「おお、久しいなセイバー! 以前会った時から十年、我のことを覚えているか?」

「まさか、そんな……貴方は死んだはずだ……アーチャー!!!」

 セイバーが声を荒げる。

 ア、アーチャー? それに以前あった時から十年って……まさか、前回の聖杯戦争に参加していたサーヴァントの一騎?!

 それは同時にセイバーもそうなのだということなのだろうが、今は置いておく。

 だけど、どういうことだ? 再び聖杯戦争に召喚されたとか? いや、もう今回の聖杯戦争で七騎のサーヴァントは召喚された。

 いや待て。今キャスターの座は埋まっている。ならそこに……いや、それでもおかしい。まどかは確かに『アーチャー』のまま。ならどうなっている?

「てめえ、イリヤを放せ!!」

 士郎が怒声を浴びせるが、『アーチャー』は動じた様子もない。いや、そもそもセイバー以外眼中にないと言うべきか。

「てめえ、その子を放せ!」

 杏子とさやかにマミが躍りかかるが、

「雑種が、我とセイバーの間に割って入るな!!」

 『アーチャー』の一喝とともにその背後の空間が歪み……何本もの剣や槍等の武器の類いが放たれる。

「きゃあ!」

「うわ!!」

 直撃はしなかったものの杏子たちが容易く吹き飛ばされる。

 な、なによあれ?! 一つ一つがまるで宝具のような存在感を放っている!!

「ふむ……十年、積もる話はあるのだが、今日はこの人形を取りに来ただけなのでな。今回はここまでだ」

 と、杏子たちを無視してセイバーとの話を進める『アーチャー』

「待て! アーチャー!」

「我の物になる覚悟があるのなら、柳洞寺に来るがいいセイバー!」

 そう言い残してアーチャーは消えた。

 バーサーカーが消滅してたったの数分の悪夢だった。









~~~~
バサカさん消滅。そして、金ぴか王参戦。
とりあえず、士郎は契約しませんでした。『魔法少女となったイリヤ』の協力の結果です。ちょっと強引かもしれませんが、プリズマイリヤも混ぜたかったのでご了承を。



[27467] Fate stay Magica 第二十話
Name: 空の狐◆f3b7bcd6 ID:d0fa170c
Date: 2017/06/03 21:33
 バーサーカーとの戦闘を終え、私達は衛宮邸に戻っていた。

 帰り道、ずっと士郎はもう少しで和解できたはずだと悔やんでいた。

 今も顔を伏せ、考え込んでいる。仕方ないからそっとしておいて、私たちは無事だった台所で料理を作っていた。

 いや、本来目的を達した以上は私たちは一緒にいる意味はないんだけど、それでも、突然現れたイレギュラーもあるから相談したいしね。

「凛さん、こんな感じですか?」

「ええ、いいわよまどか」

 バーサーカーとの戦いで多大な消耗を私たちは強いられた。だから少しでも体力と気力を回復するために食事の準備をしている。

 それまでに士郎が少しでも前向きになってくれればいいんだけど。








 そして、料理を道場に運び込んでいたら、セイバーを連れて士郎が道場に入ってきた。

「士郎さんもういいんですか?」

 心配そうにまどかが士郎に問いかける。

「ああ、すまない遠坂、鹿目。心配かけた。お、飯もうできてるのか。うまそうだな」

 と、笑うが、その顔はやっぱり無理にふるまっているように見える。まあ、それでもさっきよりはマシと言えるわね。

「そうね。早く食べちゃいましょ」














「ふう、食った食った」

 と、士郎がぽんぽんとお腹を叩く。

 うん、あれだけ食えれば十分でしょうね。セイバーなみに食べていたし。

 それから、士郎は居住まいを正す。

「あー、えっと、食い終わってすぐで悪いんだが、二人に頼みがある。もう同盟の条件であるバーサーカーを倒すって目的は果たしたけど、イリヤを助けるのを手伝ってもらいたいんだ」

 ああ、やっぱりそれなのか。でも、

「士郎、あんたもわかってるでしょうけど」

「ああ、もうイリヤの命がないかもしれないって言いたいんだろ? わかってるさ。でも、それでも生きていたら助けてやりたいんだ」

 と、士郎はまっすぐに答える。

「……わかったわ。まどかもセイバーもいい?」

「はい」

「ええ、アーチャーは強敵です。正直あなたたちがいてくれるのは心強いです」

 まどかもセイバーも頷く。

 ほんと、情が移っちゃったわね。でも、それでいいと今は思える。

「とりあえず、今は情報を整理しましょう。セイバー、あのサーヴァントのことを教えて頂戴」

 私の言葉にセイバーがうなづく。

「正体は知りませんが、彼は、前回の聖杯戦争に参加したサーヴァントの一人で、最後に私と戦いました」

「前回の聖杯戦争のサーヴァントが残っていた……?」

 十年間も現界していたなんて、常識的に考えればあり得ない。だが、バーサーカーのようなでたらめな存在もいたのだから、なんらかの手段を講じればなんとかなるのかもしれない。

「彼はアーチャーのクラスでしたが、弓は一度も使っていませんでした。その代わり、どこからか取り出した大量の武器をまるで矢のように飛ばしてきます。その全てが宝具だ、と彼は言っていましたが……」

 確かにあれすべてに宝具のような威圧感はあったけど、まさか本当に全部宝具だなんて……

 あの態度といい、生前は相当な権力者だったとか?

「そう、ところで……その前回の結末は?」

 そう問いかけた瞬間、セイバーは表情を歪めた。な、なにがあったのよ?

「……私と彼は聖杯の前で対峙していました。私は直前の戦闘で満身創痍、彼は他のサーヴァント、ライダーと戦闘した直後でしたが、傷一つない状態でした。相当な強者だったのですが」

 セイバーすら強者と認める相手に傷一つないって……

「そして、彼は何を思ったのか私に自分のものになれと言い出しました」

 ……はあ? あいつそんなこと言ったんだ。

 そういえば去り際に我のものになる覚悟って言ってたけどそういうことだったのか。

「その後、私のマスターが令呪を二つ使い、聖杯ごと宝具で薙ぎ払ったはずなのですが……」

 なるほど、だから死んだはずだと……ちょっと待て。

「聖杯ごと?」

「……はい。もともと彼が何を考えていたかわからなかったのですが、なぜ聖杯を破壊させたのか理解できません」

 そうか、だからセイバーはあんな顔をしたのか。

「そう……で、まどか今の話で心あたりあった?」

「す、すいません、わかりません」

 と、まどかが謝ってくる。

 まあ、相手が男って時点であまり期待してなかったけど、残念。

「じゃあ次、士郎。さっきのあれはなに?」

 まだ聞いてなかったことを士郎に問う。

 突然バーサーカーと互角の戦いをして見せたけど……

「ああ、あれは一時的に『イリヤ』の能力を借りたんだ。英霊の力の一端を写し取って、自身の存在へ上書きする擬似召喚……つまり一時的に英霊になるってことらしい」

 え、英霊になるって……とんでもない能力ね。

 でも、それは心強い。なにせこちらにサーヴァントが三人いるのと同義なのだから。

「で、あんたのなる英霊ってなんなの?」

 と、私の問いに士郎が目を逸らす。

「どうしたのよ?」

「えーっと、驚かないで聞いてくれよ? あの英霊の真名はエミヤ……俺が英霊になった姿らしい」

 ふうん、士郎が英霊になった姿ねえ。

 …………は? 英霊になった姿?

 セイバーもまどかも目を見開いて驚いている。

「な、なんですってえぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」















 それから簡単に士郎は語った。士郎が辿る結末。

 といっても、どうやら英霊となった士郎の記憶は記憶や精神が摩耗してるせいで相当曖昧だったようで、今回の聖杯戦争の情報は無きに等しかったが、それでも私たちにとって衝撃的だった。

 自らの正義を信じて、理想を追い求めて戦い続けて──最後には、助けた人々に裏切られて死んだという。それでも『士郎』は誰も恨まず、死後にその魂を英霊としてまで、正義の味方になることだけをただ一途に望んだという。

 なんて、報われない。

 セイバーも、まどかも沈痛な面持ちで士郎を見ている。

 ふっと話し終えた士郎が自嘲気味に笑う。

「俺さ、ずっと誰かのために命を使わないといけないって思ってたんだ」

 と、士郎が独白する。

 そうなんでしょうね。だから、あの時も、そして、さっき私たちに協力を頼んだのも……

「でもさ、今は少し考えが変わったんだ。俺は、イリヤや桜にふじねぇ、大切な人や仲間のために戦う。そして、誰かのためじゃない俺自身の願いで正義の味方になるために命を使う。それが俺の祈り、俺の正義だ」

 それは士郎らしいまっすぐな答え、それでも、彼の成長を十分感じさせた。

 誰かのためじゃない。己の意思で命を使う。それが正しいと言えるかはわからないけど、私も納得できる命の使い方だ。

 そしてそれを教えたのは……まどかを見る。

 不思議そうにまどかが見返してきたからなんでもないと笑う。

「そう……ならこれ以上もうなにも言うことはないわ。行くわよ士郎。イリヤスフィールを助けに」

 私の言葉に士郎が笑う。

「ああ!」

 私たちは立ち上がった。 











 そして、私たちは柳洞寺の前に立っていた。そこに禍々しいまでの濃密な魔力が充満していた。それのせいか、空は赤黒く染まってまさに死地を演出している。

 いったいここになにがあるかわからないけど、相当ヤバイものがあるとだけはわかるわね。

「行こう」

 静かに告げる士郎に頷いて、踏み出した。











 長い階段を昇る。ここって柳洞くんや葛木とか武闘派が多いけど、もしかして、足腰鍛えるため長くしてるわけじゃないわよね?

 って、葛木か。キャスターがいなくなってしまった彼はどうなったのだろうと今更ながら思い出した。

 そんな疑問を抱きながら階段を登って、ピンと針積めた殺気が私達を襲う。

「何者だ!?」

 セイバーの声に、そいつは現れた。

「ふむ、あやつらの言う通り現れおったか」

 山門の前に悠然と立つのは、紫の陣羽織を羽織り、身の丈はある刀を持った侍だった。

 サーヴァント?! 残りのクラスからしておそらく……

「アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎、その首を貰い受ける」

 とんっと、佐々木小次郎と名乗ったサーヴァントはこちらに躍りかかった。












 一瞬で接近したアサシンの一閃を飛び出したセイバーが受ける。

「セイバー!!」

「ここは私に、シロウ、あなたはイリヤスフィールを!!」

 セイバーの言葉に士郎は一瞬躊躇ってから対峙する二人の横を走り抜ける。ちゃんと成長してるのね士郎。私とまどかも士郎に続く。

 しかし、佐々木小次郎か……この国では知らないものがいないほどの大剣豪。

 それがなぜアサシンとして召喚されたのかわからないけど、油断は禁物よセイバー!













 そして、境内に入る。

 そこにアインツベルンの森に現れ、イリヤスフィールを連れ去った黄金のサーヴァント……

「アーチャー!!」

 士郎が名前を叫ぶとふんとアーチャーは鼻を鳴らす。

「やはり、面倒だ。聖杯を起動させるためとはいえ、我が雑種の相手をせねばならぬとは」

 と心底退屈そうにアクビをするアーチャー。その人を人と思わない態度、ほんと、腹が立つわね!

 だが、それよりも気になることがある。

「聖杯を起動させるため? どういう意味よ」

 聖杯は聖杯戦争は勝ち残ったマスターとサーヴァントの前に現れると言う。

 それならまどかを倒す意味はあるとわかるけど、現時点でサーヴァントは三騎、いや、こいつを入れれば四騎。

 一人欠けてもまだサーヴァントが残っている以上、聖杯は出ないんじゃ?

 いや、まどかを倒した時点でアサシンをセイバーがもしくはその逆にセイバーをアサシンが倒せば今回呼び出されたサーヴァントは一様、一騎にはなる。

 もしくは、セイバーが言ってたけどこいつとセイバーは聖杯の前で戦ったという。その時に聖杯が起動していたとするなら残り二騎になった時点で聖杯が起動するってこと?

 こいつが言いたいのはそういうこと?

 しかし、なにか違う気がする。そもそもイリヤスフィールが拐われたのはなぜ?

 わからない。情報が足らない。

「その疑問には……凛、私が答えてやろう」

 聞きなれた声に目を向ければ、聖杯戦争の監督役であるはずの、言峰綺礼が柳洞寺の境内の中にある池の前に佇んでいた。

「綺礼……?! あんた、なんでこんなところに……」

 そこまで言って自分の発言が愚問だったことに気づいた。

 サーヴァントとともにいる、ならあいつが、あの黄金のサーヴァントのマスター!

 そしてその後ろには、貼付けにされているイリヤスフィールの姿……ぴくりとも動く事は無く、既に事切れているのであろう事がわかった。

 私の隣りにいる士郎が拳を握りしめ、ぎりっと歯を食いしばる。

 最悪の場合として想定してはいたものの、実際に見るのでは違うだろうし、生きていれば絶対に助けると意気込んでいたのだから。

「お前ら……よくもイリヤを!!」

 士郎の怒声を 綺礼は涼しい顔で流して語りだした。

「そもそも、冬木の聖杯は二百年前アインツベルン、マキリ、そして……お前の先祖遠坂が『根源』に至るために作り出した贋作だ」

 そこから綺礼が語ったのは私たちの知らない聖杯の真の姿だった。

 聖杯の本来の目的は、サーヴァントとして召喚した英霊の魂を一時的に留め、その魂たちが座に戻る際に生じる孔を固定して、そこから世界の外へ出て『根源』に至る事。

 確かに魔術師の最大の目的は『根源』に至ることだけど、まさか、そんなものだったなんて……考え方を変えれば私たちはそいつらに踊らされたとも言えるわね。

 なにせ、別に戦わなくたって、召喚したサーヴァントをその場で皆殺しにしてしまえばいい話なのだから。

 まあ、そんな都合良くいくわけがないからこんな面倒なシステムが出来上がったんでしょうね。 

「そして同時に「願望機」としての役割も確かに持つ。儀式の完成によってもたらされる膨大な魔力を用いれば大抵の願いは叶えることが可能ではあろう。そして、聖杯が起動するには最低で六騎のサーヴァントを生贄としてくべる必要がある。だが……既に聖杯は『この世全ての悪』アンリマユによって汚染されている」

 聖杯が……汚染されてる?

「アンリマユ? なによそれ?!」

「アンリマユとは、過去にアインツベルンがルールを破り召喚した『アヴェンジャー』のサーヴァント。『この世全ての悪』を背負わされた反英雄。その彼が敗れて聖杯に取り込まれた際に聖杯は汚染されてしまった。そして、使用者の願望を破壊活動によって叶えるように変質したのだよ……そう、十年前の大火災もそれが原因だ」

 と綺礼が語る。十年前の火災が聖杯戦争のせいってこいつ自身が言ってたけど、そういうことだったのね。

「それで、あんたはなにをするつもりなのよ。そもそも、イリヤスフィールを浚って殺したのはなぜ?」

 その問いに綺礼が笑う。どこか歪んだ笑みだ。

「私はな、凛、昔から普通の人間が美しく感じたり、嬉しいと思うことになんの価値も見いだせなかった。誰もが醜いと思うものにしか価値を見いだせない。だから、見てみたいのだ。生まれついての悪である私が見つけられなかった「答え」を「この世全ての悪」が出すことを。そして、そのためにはイリヤスフィールが、アインツベルンが作り出した聖杯の器である彼女の心臓が必要だったのだ」

 その告白は、どこか懺悔するようかのように聞こえた。

 だけど……

「そんなことはさせません!」

 まどかが強く断言する。その眼に欠片の恐れもない。

「ああ、セイバーには悪いが聖杯は破壊する! もう二度とあんなこと起こさせない!!」

 たく、こいつらは……

 私は聖杯が欲しかった。別に願いを叶えるためじゃない。ただ、それが遠坂の悲願だったから、私が私であるために欲した。

 でも、そんなのいらない。そんなものよりも、価値のあるものが今の私にはある!

「行くわよ、まどか!」

「はい凛さん!!」

 そう、まどかというこの聖杯戦争を共に戦ったパートナーが!!

 自然と笑みが浮かぶ。相手の能力はセイバーの情報しかない。それでも、なんででしょうね、負ける気が全然しない!

「ふん、不愉快だな。貴様ら雑種ごときが我を倒せると思っているとは……王を愚弄した罪は万死に値するぞ!!」

 アーチャーの奴、ずいぶんと頭に血が昇っているようね。

 その唯我独尊を絵に描いたような態度だけにプライドも高いのかしらね。

「まどか、最初から全力でいきなさい!」

「はい! 行きます、魔法少女連合(マギカ・カルテット)!!」

 まどかの瞳が金色に輝いて魔法少女たちが召喚される。

 さらに、

『お兄ちゃん!』

「ああ、夢幻召喚(インストール)!!」

 マギカ・カルテットの影響下にいる士郎が英霊エミヤに変身する。

 アーチャーの後ろの空間が歪み、燦然と輝く無数の宝具が出現した。

「消えろ雑種ども!!」

 アーチャーの号令にすべての宝具が飛び出す。

 同時にさやかと杏子が飛び出す。

「今度は!」

「前のように行かない!!」

 二人に向かって宝具の雨が降り注ぐ。

 そこに、マミの弾とまどかとほむらの矢がその宝具に向かう。

 そしてぶつかり合った瞬間、まどかたちの矢が撃ち砕かれる。

 それでも、まどかたちはペース配分を考えずひたすら乱射する。一発で駄目なら二発、二発で駄目なら三発。

 宝具が弾かれるまで弓を、引き金を引く。さらに、

 「―――停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)!!!!」

 士郎が目に見える限りのアーチャーの宝具を投影し、撃ちだす。

 そして、いくつかの宝具を弾き、それでできた隙間をさやかと杏子はすり抜け、アーチャーに接近する。

「このお!!」

 さやかと杏子が間合いに辿りついた。アーチャーに向かって剣と槍を突き出し、

「ふん!!」

 空間から出てきた剣を引き抜き、アーチャーが振る。

 さやかの剣が、杏子の槍がアーチャーの剣に触れた瞬間、砕けた。

 さらに返す刃でさやかが切り伏せられ、杏子は距離を取る。

「ふはははは! 大口叩いておいて所詮この程度か?」

 と、腕を組んで高笑いしているその様は……はっきり言って隙だらけ。

 一瞬で傷を治したさやかが起き上がり、切りかかる。

「舐めんじゃないわよ!!」

「む」

 さやかの剣を避け、距離を離すかのように後ろに飛ぶアーチャー。

「ふむ、致命傷だったが……再生能力か。存外しぶといな」

 さやかが駆ける。対し、アーチャーが一つの剣を抜く。

 再び間合いに入ったさやかに対し、アーチャーが剣を振るい、再びさやかの剣を砕いてその足を斬り落とす。

 地面に転がるさやか。だが、すぐに立ち上がろうとして、再び地面に落ちる。

「え? なんで?」

 さやかが自分のない方の足を見る。

 普通だったら足がないなら当然と思うだろうけど、さやかの再生能力は私見だが死徒レベル。

 だけど、その再生が働いていない?!

「これは、不死殺しの剣、死徒であろうとも、これで斬られたならば再生は不可能。雑種には過ぎたものだな」

 そう言い捨て、さやかにその剣を投擲、その腹に剣が突き刺さり、ソウルジェムが砕けた。

 それでさやかは光となって消えた。

「さやかちゃん!!」

「さやか! てめえええええ!!」

 杏子が飛び出そうとして、その胸を貫かれる。

 まどかや士郎に撃ち落とされた宝具のいくつかが、人手によらず宙に浮き背後から杏子を襲ったのだ。

 さらに、槍が、剣がその身を貫く。

 一撃でも直撃を許せば、致命傷を免れることの出来ない魔力に満ちたそれらに杏子が砕かれ消滅する。

「杏子ちゃん!!」

「お前!!」

 士郎が両手に剣を執り飛び出そうとして、先と同じくアーチャーの宝具の斉射に阻まれる。

 必死に宝具の群れを弾く士郎とまどかたち。だが、

 捌ききれなかった宝具の一つ、巨大な槌にマミの頭が砕かれる。

「マミさん!!」

 マミが倒れながら光になって消える。

「まどか、前!!」

 マミがいなくなった分弾幕が薄くなり、いくつかの宝具がまどかに迫る。

 その瞬間、ほむらがまどかの前に飛び出し、腕を広げる。

 そして、その全身を貫かれた。

「ほむらちゃん!!」

「ちっくしょおおぉぉおぉお!!」

 無理に前に出ようとした士郎だが、その身をいくつもの宝具が打ち据える。

「ぐあああああ!!」

 吹き飛ばされ地面に転がった士郎の胸からカードが弾け飛ぶ。

 赤い外套の姿から元の姿へ戻る。それでも、ボロボロの体で地面を這いながら弾かれてしまったカードに手を伸ばすが、そのカードをアーチャーが踏みつけた。

「ふん、そのような贋作程度で我に勝てると思いあがったか雑種風情が!」

 そう吐き捨て容赦なく士郎を蹴り飛ばす。

「さあ、終局だ」

 そう宣言して、アーチャーが手を挙げると、再び空間が歪み、大量の宝具が現れた。

 くっ! どうする、どうすればいい?! どうすれば、こいつに勝てる!?

 なにか、なにかないの?

 まどかの弓も、魔法少女連合も勝てなかった。セイバーが加わったとしても……どうすればいい?

 不意に令呪を使えばという考えが思い浮かぶ。そうだ、令呪は全て残っている。

 令呪とは本来サーヴァントを律するもの。そして、同時に英霊に強制的に命令を実行させる程の強力な魔力の塊。本来は不可能なことも実行させるそれは、サーヴァントの力のブーストにも使える。

 でも、となればどういう命令を、ブーストするって言っても弓を強化しても勝てるとは思えないし、さらに魔法少女を円環の理から呼び出したとしても…………円環の理?

 ……それは、単たる思いつき。失敗する可能性も高い。

 だけど、もうこれしかない!

「まどか!!」

 私は袖を捲る。そして、令呪を翳し、

「あなたの全てを解き放ちなさい!!」

 令呪が一つ消える。

 同時にまどかの瞳が金色に輝いて、莫大という表現も陳腐なほどの魔力が光となって天に昇った。






~~~~
ギルガメッシュ編。ちょっと長くなりました。
次回、またはその次位で終わりかなあと。



[27467] Fate stay Magica 最終話
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:d0fa170c
Date: 2017/06/03 21:27
 光が収まると、ゆっくりと彼女が降り立った。

 私の知るまどかよりも身長も伸び、顔立ちも少し大人っぽくなっている。

 そして、長く伸びた桃色の髪を二つに結び、白い優美なドレスを纏って背中から翼を広げ、慈愛に満ちた微笑みを浮かべるその姿は様に、

「女神……」

 気づけばそう呟いていた。

 それが、全てを解き放ったまどかの本当の姿。一人の少女が絶望を否定するために辿りついた存在。魔法少女たちの希望。

 セイヴァー(救世主)のサーヴァント、『円環の理』

 よかった、もしかしたら駄目かもしれないと思ったけど、うまくいった!

 ゆっくりとまどかが弓を引くと、その後ろに魔法陣が展開する。その先に確かに見えた。

 ほむらがいた、さやかがいた、杏子がいた、マミがいた、イリヤがいた。でも、それだけじゃない。

 キャスターがいた、ライダーがいた、セイバーがいた、ルビアがいた、桜がいた、私がいた、大勢の魔法少女たちがいた。

 それは、まどかが導いた少女たち。今までに生まれ、これからも生まれ、まどかが導き続ける魔法少女たちの全てだった。

「はったりを……消えろ雑種!!」

 アーチャーが吠え、宝具の群れが解放され、私たちに向かって殺到する。

 同時にまどかが弓を放つ。と、魔法陣の向こうから、魔法少女たちもともに攻撃を放った。

 弓が、槍が、剣が、斧が、鉄槌が、大砲が、魔力砲が、魔力の斬撃が、聖剣が、天馬が、宝石魔法が、数えきれない攻撃が共に放たれる。

 それらはアーチャーの宝具とぶつかり合い、蹴散らし、砕きながら迫る。

「な、なんだと?!」

 砕けていく。人の幻想が生み出した至高の武具の数々が、少女たちの祈りの力に打ち砕かれていく。

 そして、

「があああああああ?!」

 全ての宝具を蹴散らして届いたまどかの一撃にアーチャーが呑み込まれる。

 やった!

 そう私は思った。だが……土煙が晴れれば、アーチャーはまだ立っていた。

 黄金の鎧は砕け、全身から血を流しながらも、膝を屈することなく立っていた。

「おのれ……おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ!!!!!」

 アーチャーがその血に染まった艶やかな美貌を憤怒に染め、殺意に満ちた目でまどかを睨む。

「次は倒します。降伏してください」

 対し、まどかは冷静に降伏勧告をする。

 甘いとも言えるけど、確かに降伏してもらえるに越したことはない。アーチャーを倒して、聖杯が完成してしまえば元も子もない。

 だが、

「舐めるなと言ったはずだ雑種ぅ!!!!!」

 アーチャーが空間を歪ませ、イリヤスフィールを捕えた鎖を引き出した。

「天の鎖よ!!」

 その鎖がまどかに向かって伸び、その身を縛り上げた。

 まどかが弓を再び引こうとするが、うまくいかない。まさか神をも縛る宝具なんてあるの?!

「それは神を律する鎖。よもや貴様等如き存在に、これを共に使う羽目になるとは!!」

 そして、再び右手が空間の狭間に潜り込み、奇妙な武器を引き抜いた。刀身に当たる部分が三つの円柱で成り立つそれは、あえて当てはめるなら剣と呼べるだろう。

「光栄に思うがいい。本来ならこれを見るに値するのはセイバーくらいのものなのだからな!!」

 アーチャーの言葉と共にその剣の円柱がそれぞれが独自に回転し始める。迸る魔力に空間が悲鳴を上げる。いや、円柱の周りの空間がその回転に引き裂かれている。

 まずい……このタイミング、おそらくあれは無数の宝具を操るアーチャーの切り札。そして、もし拘束されたままあれを受けたのなら、いくら今のまどかでもただじゃ済まない!!

 まどかは必死に弓を構えようとするが、アーチャーの方が早かった。

「欠片も残さず消えろ雑種! 『天地乖離す開闢の星』(エヌマエリシュ)!!!」

 その力が解き放たれた。空間を引き裂きながら迫る一撃。まどかは反撃も、防御もできない。

「まどか!!」

 私は悲鳴を上げていた。

 だけど、私は忘れていた。まだ仲間がいたことを。

 私の横を、疾風が駆け抜ける。

「アーチャー、私を忘れてもらっては困ります!!」

 セイバー!!

 アサシンを倒したであろうセイバーがまどかの前に飛び出す。

 そして、光り輝くその剣を振り上げ……

「『約束された勝利の剣』(エクスカリバー)!!!!」 

 聖剣の一撃と、アーチャーの一撃ぶつかり合う。

 だが……押されていた。セイバーのエクスカリバーが!!

「ふはははは! 流石だセイバー! だが、我が一撃は何者にも敗れん!!」

 セイバーの足が後退する。

 だけど、セイバーが時間を稼いでくれているうちに、私はまどかに駆け寄っていた。

「たく、しっかりしなさいよ!」

「り、凛さん?!」

 私は驚くまどかの手を取り、弓を引かせる。

 がしゃっと鎖が鳴る。お、重い。でも、このくらいい!!

「行くわよまどか」

「は、はい!!」

 私たちはしっかりとアーチャーを狙い、そして……弓を放った。

 今度は一条の光が走る。それはまっすぐに飛び、今にも打ち負けそうだったエクスカリバーの光を押し、溶け合い、一体となってアーチャーの一撃を砕いていく。

「な、なにい?!」

 そして、驚愕するアーチャーが桃色と黄金に彩られた光に飲み込まれた。



















(死ぬ? この我が、王たる我があのような雑種に倒されると言うのか?!)

 光に飲まれたアーチャーは不思議な感覚に包まれていた。

(だが、なんだこれは? 不思議と心が落ち着く。温かい……)

 それは、まるで陽の光に包まれたかのような穏やかな心地だった。

 その時、確かにアーチャーは見た。光の中で、自分を抱きしめるあの少女を。

(まさか……貴様、我を抱くというのか?)

 自分の問いに答えるように微笑む少女に、アーチャーは口の端を釣り上げた。

(なんという不遜! なんという不敬!! 王たる我を抱くとは……)

 それ以上は言葉にならなかった。気づけばアーチャーは笑っていた。可笑しくて可笑しくて仕方がないと言った顔で。

「ふふ、ふはは、ふははははははははははははははははは!! 気に入った!! 気に入ったぞ、アーチャー!!!!」

 それはただの数度しか他者を認めたことのない彼がまどかを認めた瞬間だった。

 そして、笑いながら、アーチャーは、人類最古の英雄王ギルガメッシュは光の中に消えて逝った。













「ほう、ギルガメッシュを倒したか」

 感心したように綺礼が声を上げる。

 ギルガメッシュ、それがアーチャーの真名か。

「ではどうする? 聖杯を破壊するか?」

「ええ、そうさせてもらうわ」

 私はそう返して、

「待ってください聖杯を破壊するとはどういう意味ですか?!」

 セイバーが声をあげる。

 しまった、セイバーは話を聞いてなかったんだった。

「セイバー、簡単に説明すれば聖杯は『この世全ての悪』に汚染されてる。言峰はそれをこの世に解き放つつもりなんだ。そうさせないためにも、聖杯はこの場で破壊する!」

 足早な士郎の説明にセイバーは目を見開いてから。目を閉じる。

「そうですか。だから切嗣は私に聖杯を破壊させたんですね」

「えっ?」

 突然養父の名前が出て驚く士郎。

 えっと、十年前にセイバーは召喚されたって言ってたけど、まさか、士郎のお父さんに召喚されたっていうの?

 親子そろって同じ相手って、どういう縁……ああ、いや、むしろその縁で召喚されてしまったのか。

 セイバーは聖杯を睨む。

「聖杯を破壊しましょう士郎」

「い、いいのかセイバー?」

「はい、そんな聖杯は、いえ、私はもう聖杯はいらない。もう、王の選定をやり直そうとは思っていません。私は私を信じたものたちのために、己の道を誇り行きます!」

 王の選定をやり直す。つまり、過去を変える。それがセイバーの願い。それも、もういらない、か。

 みんな変わった。たった一人の少女のお陰で。

 私はなんだか誇らしくなった。自分がまどかのパートナーであることが。

 その時だった。ぱきっと何かが鳴ったのは。

 音のした方を見る。すると、イリヤスフィールの体に正確には心臓があるあたりにヒビが入っていた。な、なによあれ……

 そして、ゆっくりとヒビが広がっていき、それが、罅から這い出し……イリヤスフィールが、聖杯が砕けた。

 それは――――黒かった。黒いドレスを纏い、濁った紫の髪がその背を流れている。人が不快になる色で塗りたくったようなそれは、薄かった。まるで二次元のものが無理に三次元に形を成したような奇妙さ。

 そして、その姿は

「まどか?」

 そう、つい呟いてしまうほどまどかに似ていた。まどかが大きく目を見開く。

「おお、遂に、産まれ、た、か」

 綺礼が崩れ落ちる。瞬間、それはまるで木の枝のような触手を伸ばして、綺礼を貫いた。

 貫かれた瞬間、綺礼はどこか満たされた、だが歪な笑みを浮かべて倒れた。死んだ、の?

 それを見た瞬間、

「な、んで、なんでそこにいるのクリームヒルト!?」

 まどかが叫ぶ。そして、それに反応したのか、そいつは私達を見る。

「ひっ?!」

 目があった瞬間、私は悲鳴を上げていた。

 なんだあれはなんだあれは?!

 わからない。なにもわからない。

 ただひとつ理解できたのは、あれが『絶望』であること。

 死の恐怖でもない。本能の警鐘なんかでもない。ただ魂が理解している。あれに勝てるわけがないとわかってしまった。

 そして、それはこちらに向かって大量の触手を伸ばしてきた。

「っ!」

 まどかの矢が撃ち落とし、セイバーがそれを切り払おうとして、剣が砕けた。

 星が鍛えた聖剣がまるでガラス細工のように易々と。

 そして、その身を触手が貫く。セイバーも、その瞬間安らかな笑みを浮かべる。

「ア、アヴァ……ロン」

 セイバーはそう言い残し、消滅した。

「セイバー!?」

 さらに迫る触手に、まどかは背を向けてこっちに向かいながら翼を広げる。

 倒れていた士郎を拾い、私の手を取って空に逃げる。

 さっきまで私達がいた場所に無数の触手が突き刺さる。

「な、によあれ、なんなのよ。あれが、あれがアンリマユなの?!」

「違います。あれは、魔女です」

 静かにまどかが告げる。

「ま、じょ?」

「はい。救済の魔女『クリームヒルト・グレートヒェン』その性質は『慈悲』」

 まどかはそこで一回言葉を切る。

「私が魔女になった姿です」

 なん、ですって?

 まどかが魔女になった姿って……そこで気づいた。

『でも、今のソウルジェムは自然と穢れが小さくなってるんです』

 まさか……

「まどか、あなた前にソウルジェムの回復を不思議がってたわよね?」

「えっ、はい」

 まどかが頷く。

「もしかして、あのソウルジェムの回復は、穢れを聖杯が取り込んでいたからなんじゃないの?」

 まどかが目を見開く。

 そう、汚染されていた聖杯は同じマイナスの存在である穢れを取り込んでたんじゃないのか?

 そして、まどかが力を使う度に少しずつ溜まっていった穢れが聖杯を、アンリマユをまた変質させていったんじゃないのか? 最悪の魔女へと。

「まあ、考えるのは後よ。まどかあいつの能力を教えて!」

 綺礼も、セイバーもなぜあんな顔をして死んでいった?

「クリームヒルトは、この星の全ての生命を取り込んで、結界に、自分の作り出した天国に導きます」

 そうか、だからセイバーは、アヴァロン――――理想郷って言っていたのね。

「そして、倒すにはこの世全ての不幸を取り除かなければいけません。そうすればクリームヒルトはこの世界が天国だと錯覚し、役割を失います」

 そう、全ての不幸を取り除けばいいのね。なら……

 ――――なによそれ。この世の不幸を取り除く? そんなの……不可能に決まってるじゃない!!

「どうしろっていうのよそんな相手! 魔女なんでしょ? あなたの宝具で倒せないの?!」

 まどかが石段の前に降り立つ。

「……さっき試しました。でも、今のクリームヒルトは聖杯の『この世全ての悪』と取り込んだことで魔女とは違うものに変質してしまったようです。同時に、私がかつて戦った時よりもより強大になっています」

 そんな……

 この場で戦えるのはまどかしかいないのに、そのまどかの力でも……

 まどかが背中を向ける。

「凛さんと士郎さんは逃げてください。クリームヒルトは……私が止めます」

 な?!

「何言ってるのよあんたは! ここは一時撤退して作戦を立て直さないと」

「クリームヒルトは十日間でこの星を滅ぼせるんです! いえ、アンリマユを取り込んで、もしかしたら、それよりも早いかもしれません!!」

 十日? たったの十日で?

「だから、止めます。私が、私のせいだから……さようなら凛さん」

 それだけ言ってまどかは飛翔する。

 私はそれを見送り崩れ落ちた。

「こんなのって、こんなのってないわよ!!」

 気づけば私は叫んでいた。

 あの子は死ぬ気だ。最悪相打ちに持ち込むつもりだろう。それが可能かどうかもわからないが。

「もう……おしまいよ」

 自分らしくない弱気な発言を零した。だけど、

「まだ終わりじゃない」

 隣の士郎が呟いた。

「終わりよ……あんなのに勝てるわけないじゃない」

 私は士郎の言葉を否定した。もうただの人間の私たちなんかではどうしようもない。

 だけど、

「いや、まだだ。希望はある」

 希望?

 見上げると、まっすぐに前を見つめる士郎がいた。

「俺が希望だ」















 長い柳洞寺の石段を駆け上がる。

 その先から幾度も世界そのものが揺れたと錯覚させるような振動が大地を揺るがし、そのたびに私たちの足が止まる。

 だけど、急がないと、決着がつく前に!!

 そして、私たちが昇り切ったそこに柳洞寺はなかった。戦いの余波で何もかもが吹き飛ばされていた。

 数千、数万、数億と放たれる触手の嵐がまどかに迫る。

 空も覆う呪詛の具現を、まどかは空に向かって弓矢を放ち、直後空から幾万もの光の矢で弾く。その一射、一射はバーサーカーをも滅ぼしきれるであろう魔力が込められている。

 それは、もはや人の辿り着く事の出来ない高次元の、神のレベルでの戦いだった。

「凛さん、士郎さんなんで?!」

 まどかは一瞬こちらに向いて、余裕がないのかすぐに前を見る。

 答えてる暇はない。あれを捜さないと……私は更地となってしまった周りを見回して、あった!!

 走る。走る。まどかが撃ち漏らした、もしくは、単なる流れ弾か、迫る触手を避け、時に宝石を使ってガードしながら、それを拾い上げる。

「士郎!!」

 私はそれを、『Archer』のカードを士郎に投げ渡す。

「ありがとう遠坂! 夢幻召喚(インストール)!!」

 一瞬で士郎が英霊エミヤに変身する。

 これが希望かと聞かれたら、そうであると言えるし、そうではないとも言えるだろう。

 英霊エミヤでは魔女、クリームヒルトには敵わない。だが、彼女を打倒するために必要なものを一つだけ持っていた。

《       体は 剣で 出来ている      》

 士郎が呪文を詠唱する。

《       血潮は鉄で 心は硝子       

       幾たびの戦場を越えて不敗      》

 この場を打開するための切り札。

《       ただ一度の敗走もなく      

        ただ一度の勝利もなし       》

 世界に広がる呪文。

《       護り手はここに独り

        剣の丘で願いを祈る        》

 そう、これは世界を書き換える禁忌の大魔術。

《     ならば、 我が生涯は守るためにある

      この体は、 無限の剣で出来ていた   》

 その言葉を以って、士郎の“魔術”は完成した。

 瞬間、暗闇の中を炎が走った。

 紅炎は士郎を中心にして、私やまどか、そしてクリームヒルトさえ巻き込みながら円を描くように一周する。 

 明けかけていた夜空も、風も、木々のざわめきもその存在ごと完全に消え去る。

 空は血に塗られたかのような夕焼け、そして大地は夕焼けを受けているように赤く染まって、何処までも続く荒野が広がっていた。だが、再び一瞬でそれらが塗り替えられる。

 今度は冬の森だ。厚い雲が空を覆い、寒く、どこまでも葉を持たない裸の木々と雪の絨毯が世界を埋めている。

 そして、また世界が形を変えた。綺麗な青さを持つ空が広がり、大地は走り出したくなるような豊かな草原が広がり、そこに穏やかな風を受ける無数の剣が抜き身で突き立っていた。

 これが、士郎の心象世界なのか、イリヤなのか、それとも両者の影響でまったく違うのかはわからない。だが、どこか天国を表すに相応しい世界な気がした。

 ────固有結界、アンリミテッドブレイドワークス。

 それは、自分の心象世界を現実に侵食する大禁呪。

 その理は“魔法”に最も近い”魔術”と称され、魔術師にとっては一つの到達点とされている。それを士郎がなした。

 これが……切り札!!

 ここはすでに異界。現実の世界から切り離されたここには私と士郎とまどか、そして、クリームヒルトしかいない。つまり、他の全てを排除することで『世界全てから不幸を取り除く』条件は満たした。

 士郎が崩れ落ちる。それを私は支える。

「長くは持たない……決めろ鹿目!!」

 それでも、士郎は前を見ていた。まどかがクリームヒルトを倒すと信じて。

「はい!!」

 まどかが頷く。その顔にほんの少しだけ笑顔が戻る。

 なんか、それが羨ましい。私はまどかを助けられない。でも、士郎は助けられる。

 いや、そんなことはどうでもいい。ただ、今は信じるだけ。まどかが勝つことを。

 青空をクリームヒルトの触手が覆い、まどかがそれを撃ち落とす。

 だけど、届かない。触手を撃ち落とせはするけど、本体まで矢が届かない。

 まどかの言が正しければ、クリームヒルトは魔女でなくなり、かつてまどかが倒した時よりも強大になっているという。

 魔女として倒せないなら、『円環の理』では倒せず、まどか自身の力で倒すしかない。

 触手を撃ち落とせる以上、それでもまどかの力の方が強いのだろう。だけど、このままじゃ、士郎が消耗しきるのが早い!

 どうすればいい? 再び令呪でブーストして……でも、今の状態のまどかに効くとは思えない。

 考えろ、考えるんだ。あと少しで固有結界も解ける。そうしたら、もう私たちにクリームヒルトを倒す術がなくなる。

 どうすればいい? あれに天国へ案内されるなんて、私は遠慮したいわよ。

 ……天国?

 ふと、思いついた。魔法少女の力は希望の力。今のまどかはそんなレベルじゃないけど、でも、もしかしたら……

 駄目でも構わない。令呪は二つあるのだから。

「まどか!」

 私は令呪を翳す。

「強く思いなさい! この世界は天国なんだって!!」

 二つ目の令呪が消える。

 何かが劇的に変わったわけじゃない。

 ただ、少しだけ、まどかが微笑み、その翼の輝きが強くなった気がする。

 そして、まどかが弓を弾く。と、先よりも矢が強く光を放つ。

 それを解き放つと、クリームヒルトの触手を砕きながら、突き進み、クリームヒルトに命中した。

「もう、いいんだよ」

 まどかの矢に弾き飛ばされながらも、クリームヒルトはまた触手を伸ばす。

 それも、まどかの矢に打ち砕かれ、その身に突き刺さり、その身を砕く。

 クリームヒルトが押され始めた。

『私が助けないと。私が守らないと』

 初めて、クリームヒルトが口を開いた。まどかに似た、でもどこかくぐもった声。

『マミさんも、さやかちゃんも、杏子ちゃんも、お父さんもお母さんもたっくんも、仁美ちゃんも、士郎さんも、セイバーさんも、桜さんも、メデューサさんも、慎二さんも、メディアさんも、言峰さんも、凛さんも……みんな、みんな傷つかない、幸せになれる場所に連れて行ってあげないと』

 次々と出てくる名前に私は涙が出そうになった。

 あんな……あんなものになってもあの子は大切な人たちの、誰かのためのことを考えてる。

 それが、あまりに哀しくて、切なくて、辛かった。隣の士郎も顔を伏せている。

「もういいの。確かに悲しくて、辛いこともある世界だけど、ここは素敵な場所だよ。士郎さんがいて、桜さんがいて、大河さんが、みんながいて……凛さんがいる」

 でも、かつて同じものだったものを真っ向からまどかは否定した。

『駄目、ここは天国じゃない。誰かが不幸になるんだから、だから……』

 それに対しまどかは首を振り、弓を構える。

 極限まで高められた魔力が集う。魔法陣が展開される。

「人が生まれて、育って、死ぬ場所、それが、その全てが私たちの天国なんだよ」

 そして、解き放った。

 桃色の輝きがクリームヒルトを覆い、浄化し、その身体を消し去っていく。

 それだけでは留まらない。固有結界の中を光が満たして……













 私はまたあの奇妙な世界に飛ばされた。

 そして、曖昧な世界の中で、それを見た。

 それは、古い村だった。そこで一人の人間が本来の名を奪われ、『この世全ての悪』を体現する悪魔「アンリマユ」の名と役割を背負わされる姿だった。

 始まりはそれだった。それが、後に聖杯すらも汚染する『この世全ての悪』の始まり。

 なんて身勝手で、なんて救いがない。それこそ人間の悪そのものだった。

 だけど……

――もういい、もういいんだよ。あなたはもうその願いを受け入れなくても。

 まどかはそれすらも受け止める。

――私は『この世全ての悪』だ。みんながそう私を呼んでいる。そう、みんなが私を蔑んで、呪って、疎んじる。それが私の選んだ道だ。皆が善であるために、私は悪であることを受け入れた。

 嗤うアンリマユを、いや、ただの人間だったものを、慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら抱きしめる。

――あなたはそんなものじゃない。あなたは普通の人。ただみんなのために何かをしようとしただけ。『この世全ての悪』なんかじゃなくていいの。だからもういいの。

 その言葉に彼は涙を零した。

――本当にいいのか?

 まどかが微笑むと彼は安らかな笑みを浮かべる。

――ありがとう……

 その言葉と共に私の意識はまた遠くなっていった。
















 また、私はどこかにいた。何処でもない何処か。何時かではない何時か。

 目の前にどこまでも広い青い空が広がっている。私たちは手を繋いで寝転がりながら空を見上げていた。

「これで、終わりなの?」

 自然と私はまどかに問いかけていた。

「はい、アンリマユを、あの人を私が円環の理に導いたから、もう聖杯が汚染された結果はなくなりました」

 クリームヒルトを倒したことで、あれと同化していたアンリマユもまどかは浄化した。

 故にアンリマユはキャスターと同じで召喚されることはない、だから聖杯も汚染されない。

「だから、終わりました」

 それは同時に私たちの聖杯戦争がなくなることを意味する。汚染されなかった聖杯がどんな聖杯戦争を起こすかわからない。ただ、私たちが戦った聖杯戦争とはまた違うものとなるだろう。

 そして、まどかが召喚されたことも。

 今ならわかる。この子が召喚されたのはアンリマユを救うためだ。『この世全ての悪』の元になった人間がその運命を受け入れながらも心のどこかで叫んでいた悲鳴をこの子は聞いたから、だから救いに来た。

 原因となったアンリマユがいないなら、この子が召喚される理由はなくなるのだから。

 ぽつっと二滴の雨粒が青空から落ちて、私の顔にかかる。

 それが、つっと私の頬を流れる。まるで私の涙みたいに。それを私は拭う気にはなれなかった。

「そろそろ、お別れです凛さん」

 まどかが体を起こす。私も体を起こす。

 そして、しゅるっとまどかは髪を留めていたリボンを解く。

「これ、これくらいしか渡せませんが」

 と、まどかがリボンを私の手に握らせてきた。

「なら、私も」

 私もリボンを解いてまどかに渡す。

「凛さん、私、凛さんがマスターで幸せでした。長い、本当に長い時間の先でまたこんな大切な、最高の友達ができたんですから」

 ゆっくりとまどかが光になっていく。

「ありがとう、私もあなたがパートナーで幸せだった」

 まどかが微笑む。私も微笑む。

 そして、まどかが消えるとともに、この世界も消えて行った。


































~エピローグ~

 私は目を覚ました。

「あ~、もう、今日も最悪……」

 そう呟きながら、私はベッドから這い出して、手早く着替える。 

 そして、ピンク色のリボンで髪を結ぶ。周りからは似合わないって言われるけど、いいでしょ別に。

 それから、階下に降りる。

「あら、凛おはよう」

「おはよう母さん」

「おはよう凛」

「父さんおはよう」

 リビングに入れば、そこに私の両親が待っていた。

 聖杯戦争で戦死したはずの父と、それを追うように病気で亡くなったはずの母が。

「ほら、ちゃんと朝ご飯を食べないと駄目よ」

「あ~、はい」

 以前は朝ごはんを抜く主義だったけど、母の手前そんなことは言えなかった。

 すでに席についていた母と父に遅れて席につく。

『いただきます』

 それは、以前の私にはなかった、家族の風景だった。









 食事を終えてから学校へと向かう。

 その途中、

「よう、遠坂」

「あ、おはよう士郎」

 士郎とたまたまあった。

 この士郎も以前の士郎と違う。どの付くお人よしなのはそのままだけど、自分の意見もちゃんと通す。

 これも、あの子の影響が残っているのかもと思ったこともあるけど、士郎がまったく覚えていないことに哀しくなったこともあったわね。

 そして、なんとなく二人で雑談を交わしながら穂群原に向かった。













 放課後、またなんとなく士郎と一緒に帰宅することになったんだけど、

「あれ、なに?」

 校門の前に人だかりができていた。

 その向こうには、金色に塗られたリムジンが止まっていた。

 金色……まさか、

「よおう雑種。久しぶりだな」

 と、リムジンから降りてきたのは、アーチャー、いや、ギルガメッシュ。本当にあんただったのか。親しげというには若干尊大な態度で士郎に声をかける。

 ギルガメッシュの登場に遠巻きにリムジンを見ていた女子がきゃーっと黄色い悲鳴を上げた。

「なんだ、ギルか」

 と、めんどくさそうに士郎が反応する。

「今日、セイバーを呼ぶのだったな。我も行くから馳走を用意しておけ」

 と、なんてことのないように爆弾発言をかましやがった。

 いやいや、すでに士郎がセイバーを呼ぶのは確定なの?

「あ、ギルガメッシュさんこんにちは」

「おお、由紀香か。久しいな。孝太にさっさと貸したカード返せと伝えておいてくれ」

 はーいと三枝さんが返す。いやいやいや、なんだそのやり取りは!!

 それから、リムジンから眼鏡をかけたいかにも秘書と言った感じの女性が「社長、時間です」とギルガメッシュに声をかけることで、去って行った。

「えっと、あんたたちどういう関係なんだっけ?」

「あれ、前も言わなかったか? あいつ、じいさんの知り合いで昔から何かとうちに遊びに来てるんだよ」

 昔はなにかといい兄ちゃんだったなあとか士郎が述懐する。

 なんか、突っ込んだら負けな気がする。聞いといてあれだが、さっさと帰ろうと思って、

「お兄ちゃん、凛さーん!!」

 と、聞きなれた声に振り返る。と、ランドセルを背負ったイリヤがこっちにかけてくる。

 ……その後ろにフォーマルなスーツを纏ったバーサーカーを連れて。

「あ、イリヤ、今帰りなのか?」

 と、普通にイリヤと会話する士郎。

 えっと、なんなんだろうこの状況……

「こんにちはミス遠坂、今日もお美しいですね」

 などとバーサーカーがのたまう。紳士だった。

「え、ええ、ありがとう。あなたもいい服ね」

 と、我ながら妙な返しをしてしまう。

「ええ、お嬢様にお仕えするに相応しいフォーマルなスーツに新調しました」

 ああ、そうなんだ。

 もうつっこまない。もうつっこまないわよ。

 そう決意して、私は帰路についた。













 ああ、なんなんだろう。

 私はソファーの上に倒れこむように座った。

 あの後、幼女なライダーを連れた慎二に、少し黒い桜、若奥様なメディアと葛木に出会った。

 ……これが本当に正常化した聖杯戦争なのか? 別の意味で狂ってしまってないか?

 などという疑問が湧いてくる。

 が、真相はすでに確かめられない。あの子はもういない。そっとリボンに触れる。

「凛、そろそろ時間だぞ」

「ええ、わかっています」

 と、父の言葉に返事を返す。

 そう、士郎と同じく、私も今日、サーヴァントを呼ぶ。

 狙いは最良のサーヴァントセイバー……ではない。できるならアーチャー、そして……

 いや、無理だろうと自嘲する。ああ、だけど……

 私は父にばれないよう儀式の用意をしながらそっとリボンを置いた。













 そして、儀式を進める。

 以前のようなうっかりもない。なにせ母が時計を、時間を入念にチェックしてくれたのだから。

 なお、父は母によってそれを止められてしまい、落ち込んでいた。まあ、同じうっかり癖がある以上、できたらやめてほしかったし。

 しかし、なんか悲しくなってきた。自分が言ったこととはいえ親にまで手伝われたなんて。 

「汝三天の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 手応えは完璧だった。これ以上ないくらい。

 そして、彼女が召喚された。

 ピンクの髪を私が贈った黒いリボンで結び、ゆったりとした優美な白いドレスを纏った女神が……

 自然と私は微笑んでいた。

――お帰りまどか

――ただいま凛さん





~完~




















~~~~
Fate stay Magica完結です。
まどか神の力で世界は平和になりましたちゃんちゃん……と若干ご都合主義なラストですが、やりたいことはいろいろやれました。満足です。
固有結界の詠唱と心象世界の変化は、士郎とイリヤの二人の同化の影響です。あと、答えを見つけた士郎の変化もあります。(士郎と英霊エミヤの固有結界の差みたいな感じのつもりです)
そして、まどかと凛のいる場所はOPでまどかが寝転がりながら猫を抱き上げている姿が元のイメージです。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。



[27467] サーヴァントステータス (8/8修正)
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:c44bbb35
Date: 2011/08/27 18:10
【クラス】       アーチャー

【マスター】       遠坂凛

【真名】        円環の理

【性別】         女性

【属性】        秩序・善


【能力】
 筋力E  魔力A+  
 耐久C  幸運B
 敏捷C  宝具EX




【クラススキル】

対魔力:C 二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。




【保有スキル】

単独行動:C 
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自律行動可能。ランクCならば、一日は現界可能。


不死(偽):C
死という概念に対する耐性。魂であるソウルジェムが存在する限り、肉体を破壊されても死に至ることはない。
しかし、本体であるソウルジェムを物理的に破壊されれば死亡する。また、肉体からソウルジェムを100m以上離した場合、肉体は活動を停止する。


心眼(真):A
数多の世界の因果を、そして、今も、今までも、これからも続く多くの出会いで磨かれた彼女の洞察力。
また、異形である魔女と戦い続けた経験により、危機察知能力も素晴らしく高い。

素直:C(A)
相手の言葉を素直に信じる。
偏見や疑いをかけず、すぐに相手と仲良くなれる。
しかし、幾度もある白い生き物に騙されたことを知ったため、ある程度は相手を疑うことを知ったので、このスキルがランクダウンしている。

強制供給:A
魔法の使用時にマスターから魔力を補充することでソウルジェムへの負担を肩代わりさせるスキル。
ランクAなら、ソウルジェムの穢れを半分以下に抑えることができる。
ただし、溜まった穢れの肩代わりはできない。

うっかり:C
肝心の時にうっかりミスをするスキル。
本来は彼女自身のスキルではないが、いつの間にか習得していた。



宝具
ソウルジェム:[ランクEX]
一つの願いを対価に生み出される魔法少女の魂そのものの宝石。
魔法を使うために必須のアイテムであり、魔法少女の本体。
魔法の使用、持ち主の精神状態で穢れを溜めていき、輝きを失う。定期的に魔女から回収したグリーフシードに穢れを転嫁しなければならない。穢れが許容量を超えるとグリーフシードに変化し、魔法少女は魔女へと転化してしまう。
「魂の物質化」という第三魔法に近しい存在のため、そもそもランク付けが難しい。


円環の理(マドカマギカ):[ランクA]
『魔女』という概念に括られる者の穢れや呪いを浄化し、それに成り果てる前に自らの内に取り込む、魔女殺しに特化した宝具。
聖杯戦争では、対象が英霊の座に行く前まで時を遡り円環の理へと導く。結果として「英聖杯戦争に召喚されなかった」ことにしてしまう。


私の最高の友達(ほむらちゃん):[ランクA]
まどかの最高の友達である暁美ほむらを召喚する。
ほむらのステータスは下記参照。

魔法少女連合(マギカ・カルテット):[ランクA]
円環の理に導いた魔法少女たちを一時的に召喚する宝具。
第四次聖杯戦争時のライダー、イスカンダルの『王の軍勢』(アイオニオン・ヘタイロイ)に似ているが、こちらは固有結界ではない。
とある世界で聖杯戦争に参加したまどかと同じクラス『アーチャー』の投影魔術に近しい。
今回は直前までの魔力の消費とバーサーカーを打倒のために、魔法少女の中からバーサーカーの命を削れる可能性のある四人が選出された。ステータスは下記参照。
本来はもっと大量の魔法少女を呼び出すことも可能。



【サーヴァント概要】
ただの中学生だったが、魔法の使者を名乗るキュゥべえと出会ったことで流転の運命を辿ることとなった少女。
心優しく友達思いで、誰かの役に立ちたいと常に願っていた。
ある事情で多くの因果に囚われており、魔法少女として途方もない資質を持っていた。そして、その資質は世界を変えるほどの願いすらも叶えることができた。
しかし、その願いの代償はあまりにも大きかった。







【暁美ほむら】

【能力】
 筋力E  魔力B  
 耐久E  幸運C
 敏捷D  宝具A


【保有スキル】

単独行動:C 
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自律行動可能。ランクCならば、一日は現界可能。


不死(偽):C
まどかと同じスキル。上記参照。

騎乗:D
現代車両を操る程度の能力。


【宝具】
ソウルジェム:[ランク:EX】
上記参照



ほむほむシールド:[ランクA]
ほむらの左手に装着された宝具。
これのギミックを作動させると、彼女固有の魔法『時間停止』を利用できる。
『時間停止』はシールド内の砂時計の砂が尽きるまでが限度。条件がそろえば時間逆行も可能。
また、内部に大量の武器を隠している。


マジカル現代兵器:[ランクE]
ほむらが調達した大量の兵器。
時間停止を利用し、その物量で持って押し切るのが彼女の戦い方。
神秘の欠片もないため、宝具としてのランクも極めて低い。


マジカルタンクローリー:[ランクE]
タンクローリーを召喚し、敵にぶつける。ただそれだけ。
こちらも神秘の欠片もないため、宝具としてのランクが極めて低い。


【人物概要】
幾度も時間逆行を繰り返し、まどかを悲劇から救おうとしたまどかの最高の友達。
元は病弱で弱気な少女だったが、まどかとの出会いが彼女の運命を変えた。
数多くの経験と悲劇が彼女を強く孤高な少女へと変えてしまった。





【暁美ほむらrevion.Ⅱ】

【能力】
 筋力C  魔力A+  
 耐久C  幸運B
 敏捷C  宝具A


【保有スキル】

単独行動:C 
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自律行動可能。ランクCならば、一日は現界可能。


不死(偽):C
まどかと同じスキル。上記参照。



【宝具】
ソウルジェム:[ランク:EX]
上記参照


ほむほむアロー:[ランク:B]
魔力を束ねた矢を射ることができる。連射可能。
通常時はランクBだが、魔力で強化することでランクをAにすることが可能。

【人物概要】
まどかの祈りによって再構成された世界のほむら。
時間停止能力を失ったが、代わりにまどかの能力を引き継いだのかより実戦的な能力を得た。
純粋な戦闘力で言えば、かつての世界で最強の魔法少女と謳われたまどかと同等かそれ以上。
再構成された世界でただ一人まどかのことを覚えており、いつか彼女と再会するその日まで戦うことを決意した。




【美樹さやか】

【能力】
 筋力C  魔力B  
 耐久B  幸運E
 敏捷B  宝具A

【保有スキル】

不死(偽):C
まどかと同じスキル。上記参照。

再生能力:A
契約時の祈りから全治数か月の怪我もすぐに治癒できるスキル。

痛覚遮断:A
痛覚をなくす能力。上記の二つのスキルと合わせて、ダメージを無視して戦うのがさやかの主な戦い方。


戦闘続行:A
生還能力。瀕死の傷でも戦闘を可能とし、上記のスキルからソウルジェムが破壊されない限り生き延びる。



【宝具】
ソウルジェム:[ランク:EX]
上記参照


さやかの剣:[ランク:B]
魔力を束ねて作る剣。いくらでも作れる。遠距離攻撃の手段がない彼女は投擲武器にすることもある。
通常時はランクBだが、魔力で強化することでランクをAにすることが可能。

【人物概要】
大切な人を救うことを代償に契約した魔法少女。
マミに憧れ、人を守るために魔法を使うことを決意した。ほむら曰く「魔法少女に向いていない性格」
しかし、その相手も自分に振り向かず、少しずつ自分を追い詰めていき、最期は無残な結末を迎えてしまった。




【巴マミ】

【能力】
 筋力C  魔力A  
 耐久D  幸運E
 敏捷C  宝具A

【保有スキル】

不死(偽):C
まどかと同じスキル。上記参照。

エレガント:B
お茶を上手に淹れたりと、優雅さを魅せるスキル。
戦い方も華やかで、見るものを引き付ける。


【宝具】
ソウルジェム:[ランク:EX]
上記参照


マスケット銃:[ランク:C]
魔力を束ねて作るマスケット銃。いくらでも作れる。
単発のため、大量に呼び出し使い捨てする戦法を取る。
遠隔操作もできる。

リボン:[ランク:B]
リボンを伸ばし相手を拘束する。
これは「命を繋ぎ止めたい」という願いが「結びあわせる」「縛る」力として発現した彼女本来の能力。

ティロ・フィナーレ[ランク:A]
普段使っているマスケット銃を魔力で強化したマミの必殺技。
他の魔法少女も武器の巨大化はできるが、マミだけ差別化のため名前を付けた。



【人物概要】
事故で死にかけたとき、「命を繋ぎたい」と契約した魔法少女。
事故でただ一人生き残ったためか、魔女やその使い魔から誰かを守るため戦うという信念を持っていた。しかしながら、精神的には脆い一面もある。
まどかとさやかに魔法少女の覚悟を説いたが、二人の目の前で凄惨な最期を迎えた。




【佐倉 杏子】

【能力】
 筋力B  魔力B 
 耐久E  幸運E
 敏捷B  宝具A

【保有スキル】

不死(偽):C
まどかと同じスキル。上記参照。

幻惑:D(A)
契約時の祈りから発現した眩惑や幻覚のスキル。
彼女本来の能力だが、とある事件がきっかけに潜在意識で本来の願いを否定してしまいこのスキルは使えなくなっている。

【宝具】
ソウルジェム:[ランク:EX]
上記参照


槍:[ランク:C]
柄の部分が伸縮・湾曲・分割が自在な多節棍となっている槍。
使い方によっては分割した槍で敵の拘束を行えるなど応用が利く。
他の少女と同じように魔力で強化することが可能。
彼女の場合、どこか龍を模したかのような大槍を作り出す。その時のランクはA。


【人物概要】
聖職者だった父の話を聞いてほしいという祈りで契約した魔法少女。
最初の頃は人のために魔法を使うことを誇りに思っていたが、ある事件を契機に「魔法は人のためにならない」という信念を持つに至り、以後は「魔法は自分のためだけに使う」という信条で行動している。
だが、そういう性分なのか、意外と面倒見はいい。
食べ物を粗末にするものに怒りを露わにする。



キュゥべえ

【能力】
 筋力E  魔力E 
 耐久E  幸運E
 敏捷E  宝具E

【保有スキル】

不死(偽):C
同じ姿の別個体が複数存在し、全体で一つの意識を共有しており、個体の一つが壊れても別のキュゥべえが現れて役目を果たす
肉体は器にしか過ぎない。


魂の物質化:EX
契約した少女の魂をソウルジェムに加工するスキル。
第三魔法に極めて近い。


【人物?概要】
魔法少女の素質を持つ少女の前に現れて契約を迫る怪生物。
その正体は外宇宙からエネルギーの回収に来た異星人の端末であり、そのかわいらしい外見に反し、中身は人間の感情をまったく理解していないロボットのような存在で、限りなく嘘に近い真実で魔法少女たちを翻弄する。
再構成された世界ではかつてのように人間を騙して利用ことがなくなったためか、ある程度はほむらとも協力関係を気づいている。それでも、人間とは相容れない存在である。




【す~ぱ~しろ~】

【能力】
 筋力D  魔力B 
 耐久C  幸運E
 敏捷C  宝具EX

【保有スキル】

対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けけのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:B
マスターから魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

魔術:C-
オーソドックスな魔術を習得。得意なカテゴリーは強化。

心眼(真):B
修行。鍛錬によって培った洞察力。窮地において、その場で残された活路を導き出す戦闘倫理。



宝具
カード[ランク:A]
英霊の座にアクセスするための通行証。
クラスに応じた英霊の力の一端を写し取り、自身の存在へ上書きする擬似召喚のための触媒。

投影魔術[ランク:E~A++]
自身の固有結界『無限の剣製』から複製した武器を取り出す。
本来の投影とは原理が全く異なる。

固有結界『無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)』[ランク:E~A++]
複製された無数の剣が、さながら墓標のように大地に突き立つ剣の丘の心象世界。内部はあらゆる剣を構成する要素で満ちており、目にした剣を瞬時に読み取り複製、結界内に記憶する。ただし複製品はオリジナルより宝具としてのランクが一つ落ちる。
しかし、これを展開しようものなら短時間で『イリヤ』のソウルジェムが穢れきってしまうので、長くは使うことはできない。



【人物概要】
正義の味方に憧れた青年の成れの果ての姿を借りた士郎。
士郎はArcherのカードを『イリヤ』から借りて一時的に『かつて同じだったもの』である『英霊エミヤ』となった。




【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン】

【能力】
 筋力D  魔力EX 
 耐久C  幸運B
 敏捷B  宝具A

【保有スキル】

不死(偽):C
まどかと同じスキル。上記参照。

ブラコン:EX
お兄ちゃんが大好きで困ってしまうスキル。
このスキルの前に世界の違いなど些細な問題である。



【宝具】
ソウルジェム:[ランク:EX]
上記参照


カレイドステッキ:[ランク:B]
術者の魔力を撃ちだす機能を持つ。
他の魔法少女の武器といろいろと違い、自らの意思を持つという特異性を持つ。
なお、その人格は某割烹着の悪魔と同じでQBとの相性は最悪。


カード[ランク:A]
英霊の座にアクセスするための通行証。
クラスに応じた英霊の力の一端を写し取り、自身の存在へ上書きする擬似召喚のための触媒。























【クラス】       セイヴァー

【マスター】       遠坂凛

【真名】        円環の理

【性別】         女性

【属性】        秩序・善


【能力】
 筋力なし  魔力なし  
 耐久なし  幸運なし
 敏捷なし  宝具なし

【保有スキル】

単独行動:C 
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自律行動可能。ランクCならば、一日は現界可能。

心眼(真):A
数多の世界の因果を、そして、今も、今までも、これからも続く多くの出会いで磨かれた彼女の洞察力。
また、異形である魔女と戦い続けた経験により、危機察知能力も素晴らしく高い。

素直:C(A)
相手の言葉を素直に信じる。
偏見や疑いをかけず、すぐに相手と仲良くなれる。
しかし、幾度もある白い生き物に騙されたことを知ったため、ある程度は相手を疑うことを知ったので、このスキルがランクダウンしている。

うっかり:C
肝心の時にうっかりミスをするスキル。
本来は彼女自身のスキルではないが、いつの間にか習得していた。

神性:EX
概念と化した彼女はすでに神の領域の存在である。


宝具
円環の理(マドカマギカ):[ランクなし]
穢れや呪いを浄化し、それに成り果てる前に自らの内に取り込む宝具。


【サーヴァント概要】
キュゥべえとの契約により、魔女を滅ぼし続けるための概念――――『円環の理』となったまどかの真の姿。
アーチャーの状態ではサーヴァントというカテゴリに当てはめられているため本来のスペックが全く発揮できない状態だったが、凛の令呪により解き放たれた。
本来なら聖杯ですら呼び出せないほどの上位の存在であるが、アンリマユがクリームヒルトへと変貌した結果、対の存在である彼女の召喚も可能となった。





【クラス】       キャスター兼アヴェンジャー

【マスター】       なし

【真名】        クリームヒルト・グレートヒェン=アンリマユ

【性別】         女性

【属性】        秩序・悪


【能力】
 筋力なし  魔力なし  
 耐久なし  幸運なし
 敏捷なし  宝具なし



【保有スキル】
陣地作成:A
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。彼女の場合、彼女の思い描く天国を象った結界を作り上げる。

この世全ての悪:ランクEX
人類に対する絶対的な殺害権利。たとえそれが英霊を指先一つでダウンさせるような超人であろうともアヴェンジャーには簡単に殺されてしまう。


宝具
グリーフシード:[ランクEX]
魔法少女のソウルジェムが穢れきった時に変質する魔女の核。
魔法少女たちは定期的にこれにソウルジェムの穢れを移さなければならない。
最強の魔法少女であるまどかから生まれたこれは、他の魔女と一線を隔す巨大さを誇る。

魔女の結界:[ランク:EX]
この星の全ての生命を取り込んで、結界に、自分の作り出した天国に導く。
何者にも逆らうことのできず、十日もあれば世界を滅ぼせる。

【サーヴァント概要】
聖杯となったアヴェンジャー「アンリマユ」がまどかの穢れを喰らい「六十億の人間を呪う宝具を持ったサーヴァント」から、「全ての命を喰らう最悪の魔女」へとさらに変質した存在。
「慈悲」の魔女でもあり、「この世全ての悪」でもある。
なお、本来のクリームヒルトはまどかに似ても似つかぬ姿であるが、元々「虚無」であるアンリマユが「まどか」の殻を被ってしまったため、まどかに似た姿で顕現されてしまった。






~~~~
他の方に倣ってステータスを別に分けてみました。どうでしょうか?
6/9ステータスとスキルを変更。神性のスキル削除。ゴッドまどかではないという意味でランクダウンさせてましたが、それではわかりづらいかもということでいっそなしに。

7/19ほむらのステータス追記。

8/8円環の理とクリームヒルトのステータス追加。ステータスのなしは数値化する意味がないということです。EXもなんか違うと思いますので。



[27467] おまけ
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:593f6d1a
Date: 2011/09/25 12:03
 ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

 お先にコメントへの返事をさせていただきますが、それの後に候補として考えていたエピローグを載せました。

>モエカスさん
いろいろと考えてますが、一応一つ作りかけがありますので、そのうち出来上がったら、公開させていただきます。

>まほかにさん
しまった凛の父もうっかり属性があった。というわけで直しました。
はい、速攻で地球滅亡が秒読み段階になり、話が組み立てられない&士郎くんたちの固有結界によるクリームヒルトの滅びができなかったので、こういう形になりました。

>宮毘羅さん
これはあくまで個人的な考えですが、確かアンリマユ自身はただの人間だったと記憶してます。

で、それが人間の身勝手な願いによりその身にあらゆる悪業を背負わされ、人間としての名を呪いによって世界から消され「そういうもの」になってしまったというのなら元になった人物から変質、もしくはその人間を核に悪意などが集まった集合意識のようなものだったんじゃないかと思いました。

そして、そういうのになることを受け入れたとはいえ、やっぱり嫌ではなかったのかと。

で、『元になった人物』をまどかが円環の理に導くことでアンリマユ自身の発生をなかったことにしたそんな感じです。

一人称も『アンリマユ』ではなく『アンリマユの元になった人物』という差を出したかったのです。

聖杯の泥がなくてメディアとメデューサを呼べたかは、まどかのおかげです。

まどかは世界の改変をする時、さやかにある程度なら望む結末を与えられるような発言をしています。

故にメディアはキャスターではなく、普通に人間として葛木と出会ってます。僕は改変後は彼女をキャスターとは呼んでません。

ライダーは聖杯の中、つまりアンリマユの中にあった魂を浄化。反英雄ではなく、魔女と戦った英雄として存在しています。

以上です。完全に強引な独自解釈による屁理屈とご都合主義ですので納得できないかもしれませんがご容赦を。

>るーさん
まさか言い当てられるとは思ってませんでした。むっちゃ焦りました。
そうですねえ。Zeroのラストはというか内容はかなり変わってます。まどかたち魔法少女のかかわりがないので書きませんが。
唯一つ、アイリさんは生き残って士郎とイリヤのお母さんやってます。

>えなどれさん
はい! そうです。まどかによって書き換え完了してます。
メディアの神話事態が消滅。ライダー姉さんも英雄としての召喚です。

>無しの顔無しさん
読んでいただきありがとうございます。
しかし、ランサーがまどかを口説きに行く。
あっはっは、な、ナンノコトカナア?

>シュラウドさん
最後までお付き合いありがとうございます。
後日談はまだ無理ですが、おまけを少し載せましたので、見てみてください。

>アナゴさん
最後までお付き合いありがとうございます
教えていただいたイラスト見ました。ちょっと吹いてしまいましたw

>ファスさん
そう、実はかなりヤヴァかったんです。

>海鮮えびドリアさん
ありがとうございます。
ホロウ的後日談は何度も書き直してます。どうもうまくいかなくて。
素敵なステッキはできたら出したいですねえw
まどかって怒るとすっごく怖いと思うんだあ……

>生麦さん
あ、いえ、とりあえず、本編と変わりはありません。
ただ、時間停止は完全な状態で使える状態で、本編の戦闘を見る限り砂がある限りは何度も使えるようなので、バサカ戦は大盤振る舞いしただけです。で、ひと月分をバサカさん相手に使い切ってしまってますが。

>NATUKUMAさん
ありがとうございます! そう言っていただけたらとてもうれしいです。
はい、ゴッドまどかはすごいのです。

>ハルシオンさん
ありがとうございます!
とてもうれしいです。これからも頑張ります。

>キャンディさん
ここまでのお付き合いありがとうございます!













それでは、ここからはもう一つのラストエピソードです。





















 召喚は無事に成功した。これ以上ないくらいの手ごたえ。果たして、誰が召喚されたのか……

 そこに立っていたのはどこかで見たような赤い外套を纏った褐色の肌の男。

 ……あの子じゃなかった。

 私はため息を吐く。いえ、無理であるとは最初から分かっていたけど、ね。

「ふむ、私では不満のようだなリン。まあ、君にとっては彼女以外は外れなのかもしれないが、少し傷つくな」

 と、彼はそんなことをのたまった。

「別に、そういうわけじゃ……え?」

 今、私の名前を呼んだ?

 私は目の前のサーヴァントを見る。この外套……あ?!

 そこでやっと気づいた。目の前のサーヴァントの正体。

 彼はくっくっくと笑う。

「ようやく気づいてくれたか、私が誰なのか」

「あ、あんた……」

 知っているの? と問いかけそうになる。が、その前に彼が表情を引き締める。

「彼女の生き様は私の心に強く焼き付いている。彼女は魔法少女だけではない、私にとっての希望になってくれた。そう、『俺たち』の希望だ」

 そう語る彼の目はどこか遠くを見ていた。尊い何かを見ていた。

 息づいてる。そう感じた。あの子は、こいつの中に、エミヤという正義の味方を目指し、その理想に絶望したはずのこの弓兵すらも変えたと。

「さあ、行こうか我が主よ。いつか、遥か先でまた彼女と出会うために」

 そう言って一人ですたすたと部屋の出口に向かう彼。

「ちょっと待ちなさい『アーチャー』!!」

 私はアーチャーの背を追いかける。

『がんばって』

 そんな声が聞こえた気がした。いや、確かに聞こえた。

 私は笑う。ええ、私は、私たちは覚えてる。決して忘れない。だから戦い続ける。

 いつか、もう一度、あなたに会うまで……















―――Don't forget.Always,somrwhere,someone is fighting for you.

―――As long as you remenber her,you are not alone.

 そこがどこか、それがいつかはわからない。

 だが、二人の少女が向き合っていた。

「私、凛さんがマスターでよかったです!」

 一人の少女が微笑む。

「あったりまえよ! 私も、あなたがパートナーで……よかった」

 そう照れ隠しでそっぽを向きながらもう一人の少女が答える。

 そして、二人はそっと手をつなぎ歩き出す。

 ――――そう、これからも、いつまでも、ずっと。例えこの宇宙が滅んでも、二人の絆は永遠に……









[27467] カーニバル・マギカ
Name: 空の狐◆ca1bb5f2 ID:968c9e7e
Date: 2011/11/15 15:36
 さて、いきなり私たちは教会から呼び出しを喰らった。

 しかも、使い魔はだめでサーヴァントを連れて来いという厳命で。いったいなんなのよ?

 そして、連れてこられた冬木市民体育館で、暗い中なんかの席に座らせられ……

 そして、明かりがつくと、そこはなにかのバラエティー番組のような会場。大勢の観客。

『第五次魔術師大激突! チキチキ聖杯戦争!!』

 と、アイリさんが司会席で輝かんばかりの笑顔でそんなことを宣言する。

 な、なによそれーーーーー!!!???











『はーい、みなさんこんばんわ! 司会のアイリスフィール・フォン・アインツベルンです!』

『言峰 綺礼です』

 あんたが司会か!! いや、監督役だしまちがってないのかしら?

『いよいよ始まりました第五次聖杯戦争、今回はここ冬木氏市民体育館特設スタジオからお送りしています。さーて、十年ぶりに出現した聖杯! その行方がいよいよ今夜決定するのです! 見事、聖杯を手にし、願いを叶えるのは誰か!』

 楽しそうに、本当に楽しそうにアイリさんが進行する。

 ああ、こんな内容だから、父さん生きてたのね……

 カメラが参加者を写す。

「それは俺だ! ふん、せいぜいひと時の賑わいを楽しんどきな!」

 とか言いながらランサーがこっちを、いやまどかをちらっと見る。

 あんた……

「拙者も力の限りを尽くそう」

 アサシンが笑う。あんた、なんで山門から離れてんのよ。

「まどかは私が守るわ」

「ほむら、せめてマスターのためって言ってちょうだい……宗一郎様、見てますか~? 私全力で戦います!」

 ほむらあんたがキャスターなの?! 隣でほむらちゃーんとまどかが手を振ると、ほむらが笑顔を返してくる。

 で、マスターがメディアなのね……

「えっと、その、がんばります……」

「なーにライダー、僕に任せとけ。聖杯は僕らのものだからな」

 なぜかちみっこくなったライダー、そして、その頭を撫でる慎二。なんでさ……

「お嬢様のためにも勝たせていただきます」

「バーサーカー、お願いね!」

 紳士服を着たバーサーカーが丁寧に会釈し、その肩に載ったイリヤがカメラに向かって手を振る。

「士郎! 前回といい、神聖なる騎士の戦を、こんなちゃらちゃらした催しにしてよいはずがありません!!」

「いや、俺に言われても……」

 当然だが、こんな聖杯戦争にセイバーは憤る。ああ、やっぱり前回もそうだったの……

 そして、私の出番。

「えっと、頑張るわ」

「凛さんのためにも頑張ります!」

 もう何言えばいいのかわからなかった。ってか、なんか突き刺すような視線を複数感じるのは気のせい?

 まあ、いいわ。

 でも、集められてこんなことをするってことは、ルール無用のバトルロワイヤルからルール制、もしくはトーナメント制にでもなったのかしら?

「え~、ちなみに、みなさん宝具とか使うの禁止です」

 待ちなさい、それはちょっと待ちなさい! サーヴァント全員がおどろいてるじゃない!!

「だって街とか壊して危ないじゃん?」

「なにを今更!」

 言峰の発言にツッコム私。

「正直事後処理がめんどくさい」

「いきなりぶっちゃけたわね」

 こいつこんな奴だったかしら?

「学校生徒全員衰弱しているなんてどうやったってごまかしきれん」

 泣いてる! あの言峰が泣いてる?! 私の知っている言峰はもういないってこと?!

「中年オヤジの仕事の泣きごとかよ……でも、それじゃあどうやって戦うのよ!」

「えっと、対戦方法は」

 と、アイリさんがどこからともなくボックスを取り出して、出したのは……かるたのプラカード。











かるた

「やああああ!!」

「おおおおお!!」

 ぱしんとまどかがランサーより早く札を弾く。

 たとえランサーの敏捷性とはいえ、初めてのゲームはうまくいかないみたいね!

「へ、やるなお嬢ちゃ」

「犬も歩けば棒に当たる」

「狗って言うな!!」

 ランサーが言峰に文句を言ってる間に、

「はい!!」

 まどかが札を取る。

 ふ、こっちが優勢みたいね。でも、なにこの言いようのない空しさは……

「マッチ一本火事の元」

 それにまどかは……動かなかった。

「……どういうつもりだ嬢ちゃん?」

 訝しげにまどかを睨むランサー。

「その、私はできたら、全力でランサーさんと戦いたいから、さっきの分どうぞ」

 その言葉にランサーはぽかんとしてからへっと笑う。

「いいね嬢ちゃん。そんなこと言ってくれるたあ、俺は嬉しいぜ」

 そうしてランサーはじっくり探して札を取る。

「さあ、ここからが本番だ!!」

 そして、二人は笑顔で一進一退の激闘を繰り広げたのだった。かるたで……

 私たち、なにやってるんだろう……












 そして、競技は続けられ、今度は黒ひげ……って今度は運に任せるんかい!!

「で、なんで俺が黒ひげなんだよ!」

 等身大の黒ひげの代わりとしてランサーが入れられる。

 この競技は三人参加型で、ランサーを飛ばしたら、他の二人の勝利、最後まで飛ばなかったらランサーの勝利。

「しかたありません、クジに従ってくださいランサー!」

 容赦なく刃を突き立てるセイバー。さすが王様。処刑はお手の物ってわけね。

「おおい、やめろー!!」

 ランサーが悲鳴を上げる。

「えっと……ごめんなさいランサーさん!」

「嬢ちゃんまで!?」

 まどかに突き立てられたことにショックを受けるランサー。が、

「見ものではないか雑兵!!」

 突然、尊大な物言いが会場に響いた。

「ぎ、ギルガメッシュ!!」

 げ、いないと思ったらこんな段階であんたが出るのか。

「だが、まどろっこしい! まどろっこしいぞ!! ゲートオブバビロン」

 多数の宝具がその背に現れる。あ、相変わらず圧倒的ね。

「おいおい、宝具とか使うの禁止だろ!!」

「我がルールだ」

 あんたも相変わらずね……

 そして、宝具の雨あられがランサーに襲いかか……

「ダメえ!!」

 ばっとまどかがゲートオブバビロンの前に立ちふさがる。

「ぐう?!」

 慌ててギルガメッシュが宝具の方向を転換。観客席の一角が吹き飛んだ。

 ほむらを始めとした数人が臨戦態勢に入った。

「せっかく、せっかくみんなで楽しくできてるんです! 台無しにしちゃダメです!」

 毅然とまどかがギルガメッシュに投げかける。

 その視線をまっすぐギルガメッシュは受け止めて、ふっと笑った。

「そうだな、せっかくの余興だ。興を削ぐのは無粋というものか」

 そうとだけ言ってギルガメッシュはバビロンを閉じる。

「命拾いしたな雑兵、今回はアーチャーに免じて見逃してやろう」

 その言葉にまどかはほっと息を吐く。

 ギルガメッシュもだいぶ変わったわね。

「嬢ちゃん、あんたってやつは……惚れ直したぜ」

 ランサーの言葉は聞こえなかった。ええ、私には聞こえなかったわ。
















 こうして、熾烈な戦いが繰り広げられ……ついに聖杯が現れた。

「これが、聖杯……」

 それを勝ち残ったまどかが取って、振り向く。

「へ、流石だな嬢ちゃん」

「可憐な花と思ったが、獅子の類だったか」

「お嬢様にお渡しできず残念です」

「おめでとうございます」

「ふ、よい赦そう」

「残念ですが、あなたに聖杯は相応しい」

「まどか……」

 ランサー、アサシン、バーサーカー、ライダー、ギルガメッシュ、セイバー、ほむらがまどかを称える。

 それにまどかは笑顔を浮かべ、私に向き直る。

「凛さん!」

「ええ」

 私たちの願いは……





 次回に続く。











~~~~
カーニバルファンタズム風です。
ミスを習性しました。
なお、前回はトーナメント式で会場が壊れたせいでこうなったということで。



[27467] ランサーと英雄王
Name: 空の狐◆f3b7bcd6 ID:c8e9b849
Date: 2014/03/31 10:59
 まどかを再召喚した翌日、私達は衞宮くんの家に行くことになった。本来なら意味がない行為どころかこれから戦う上でマイナスにしかならないだろう。

 でも、いいかと思えたのは以前の経験のお陰か、それとも、このどこかおかしい聖杯戦争のせいか、まあ、結局のところ、心の贅肉ね。やっぱり悪い気はしないけど。

 父には衞宮邸の偵察とだけ言っておいた。

 そしたら、「絶対に衞宮の人間には負けるな!」なんて、言ってきたけど、前回になにかあったのかしら?

 対し母さんは「なら、これをアイリさんに渡してくれない?」と、母さんにお土産を持たされた。いつの間にか知らないけど仲良くなったみたい。

「って、そういえば、あんたそっちの姿だけど、セイヴァーじゃなくて、アーチャーなのよね?」

 と、まどかに尋ねる。そう、今回のまどかはセイヴァーの姿。

 すらっと伸びた背は私くらいになっているだろうか? そして、以前より発育したバスト。あれ? なんだろうこの敗北感……

「あ、はい。能力はアーチャーの時と同じです。なんでこっちの姿かはわかりませんが」

 そう。まあ、あんなデタラメスペックなんて、私があっという間に息切れしそうだし、こっちの方が助かるわ。

 なんて、考えていたら、

「おおおお! そこの嬢ちゃん!!」

 声に振り向くと、こっちに駆けてくる凶暴なまでの魔力を纏った赤い槍を携えた青い戦闘装束を着込んだ男、ランサー。

 ま、まさか、また初戦はランサーと?!

 私達は身構え、がしっとランサーがまどかの手をとった。

「惚れた、俺と付き合ってくれ!」

 えっ?

「なあ、頼むよ、ちょっとお茶するだけでいいからさ」

 などと、ランサーはなおもまどかを口説こうとする。

「いえ、その……お、お断りさせていただきます。い、今から用事があるので」

「なら、今度でいいからさ! 頼むよ嬢ちゃん」

 私は額を抑える。

 確かに、前回、ランサーはもう少し歳がいっていたら口説いていたって言ってたけど、まさか本当に口説こうとするとは思いもしなかった。

 先の言動からしてランサーはまどかのことを覚えていないのだろうけど、どうも前回の影響か、好みのタイプがまどかになってしまっているみたいね。

 ランサーの熱烈なアプローチにまどかは真赤になって、「じゃあ、また機会がありましたら」なんて約束してしまった。

 まあ、前にランサー倒した時にランサーみたいなタイプなら素敵なんて言ってたし、まんざらじゃないのかも。

 そして、私たちは衛宮邸に向かって……なぜかランサーが着いてくる。

「あんた、なんでついてくんの?」

 私の問にランサーはふっと笑う。

「決まってんだろ? こんないい女を他の奴が放ってくとは思えねえ。だから、悪い虫がつかねえように見守ろうとしてんだ」

 ……すでに悪い虫が一匹ついてるわね。

「……まどか、飛んで逃げるわよ」

「は、はい」

 申し訳なさそうにまどかはランサーを見てから私を抱えて空へ飛翔する。

「うおおおお! 待ってくれ嬢ちゃんたち!!」

 誰が待つか。









 そして、なんとかランサーを撒いて衛宮邸に着いた。

 な、なんか、ここに来るまでだけで体力がかなり削られたわ。

 改めて衛宮邸を見れば、前回と全然違う近代的一軒家。ただし、前回のと同じように結界は張られている。そして、あの金ぴかの高級外車。

 さてっと……

 私は深呼吸してからチャイムを押した。








 結論から言って私たちは普通に客間に通された。

「あの、これ母からです」

「あら、ありがとう」

 と、アイリさんがお土産を受け取ってくれる。

「へー、この人が凛さんのサーヴァントなんだ」

「はい、アーチャーの鹿目まどかです。よろしくねイリヤちゃん」

 普通にまどかはイリヤに自己紹介をする。

 真名を軽々しく明かしてるが、あー、もうなんだかどうでもいいやと思えてしまう。

「初めましてお嬢さん、私はバーサーカー。イリヤお嬢様の従者です」

 と、バーサーカーがまどかに自己紹介する。

 そして、

「お待たせ遠坂」

 と、やっと士郎がやってきた。

 サーヴァントはやはりセイバー。ただ……なんかお菓子食べながら部屋に入ってきた。

「シロウ、おかわり、おかわりはありませんか」

 ……腹ペコキャラ強化したのかしら?

 と、その時気づいた。ギルガメッシュがじいっとこっちを見ていることに。

 な、なによと思ったら、

「さらばだセイバー!」

 と言ってこっちに突撃、そして、まどかの前に立つと、

「我のものになれ雑種!」

 ……ギルガメッシュ、お前もか。

 え、え? と戸惑うまどか。セイバーも「久しぶりに会った上にせいせいしたはずなのに、なにか納得いきませんね」と言って衛宮くんに慰められている。

 さらに……がしゃんと窓ガラスが割れ、ランサーが突入してきた。

「てめえ、人の女に手を出そうたあいい度胸だな」

 不法侵入よねえ。あ、なんか窓の向こうにいる誰かが泣いてるけど、もしかしてランサーのマスターかしら? ご愁傷様ね。

「いや、まどかはいつからあんたの女になったのよ」

 私のつっこみをスルーしつつランサーがギルガメッシュに槍を突き付ける。

「ふ、狗が王の邪魔をするな! この者は我のものだ」

「てめえ、言うに事欠いて狗だあ? 上等だこの金ぴかやろぶ!!」

「なんだ?! うおおおお?!」

 ランサーがバーサーカーに殴り飛ばされ、ギルガメッシュも家の外に放り出される。

「喧嘩は外でお願いいたします」

 とバーサーカーが二人を睨む。真赤になって右往左往するまどか、あらあらと面白そうなものを見つけたと言いたげな笑みを浮かべるアイリさん、顔を赤くしながらも、興味深げに見ていたイリヤ、こんな騒動の中でもお菓子を食べ続けるセイバー。

 どうしろって言うのよこのカオス空間……





~~~~
なんかいきなり書きたくなった。反省も公開もない。


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