国立フレイヤ冒険者養成学園は、大陸北東部に位置するスオカ国の唯一の国営冒険者養成所である。
その特徴は、大陸全土で五つしかない創世期より在るという《門》を取り囲む街カンテラに在り、また500年程昔に大魔導師によって《門》を模して各地に造られた《搭》の一つを抱えている事が挙げられる。
短く切った黒い髪と黒い目、筋肉質で180を上回る大柄な体を黒い服で包んだ全体的に黒っぽい男の名は、アルベルト・ブラックスミス。今期学園の入学者で、ピッチピチの15である。
…………………………………………
《搭》・一階
俺は石造りの迷宮の通路の陰から、忌々しげに部屋を覗いていた。
部屋の反対側の通路の先には、二階へ上がる階段と外へと繋がる転移装置が見えていた。しかし、部屋には反対側の通路近くに朽ちかけた骸骨兵が三体、また通路から見えない部屋の陰に何かが居るらしく、気配察知に引っ掛かっている。
朽ちかけた骸骨兵、分類的にはスケルトンに括られるが、その能力の低さと何より見た目から《半壊スケルトン》と呼ばれている。奴らは通常のそれに比べ、動作にしても移動速度にしても遅く奴らだけならば対処方は幾らでもあるのだが、物陰の敵が気掛かりだった。
「何時までもこのままって訳にはいかんよな」
溜息と共に出た独り言は、時間が無い事を告げていた。
休憩する傍ら部屋を窺う事約10分、そろそろ動かなければ通路を巡回するモンスターに見つかる危険性があった。もし、モンスターに見つかれば部屋の中の奴らも出てきて挟み撃ちになるだろう。それだけは避けねばならない。
俺は意を決して部屋に飛び込むと、すぐさま気配の有った方へと駆け出した。
(げ! マジックプラントかよ!)
事前に仕入れていた情報により、居るかもしれないとは思っていた。
しかし情報では、この部屋で出る敵にパターンの内、半壊スケルトンが三体出るのは5つ。その中の、最悪のパターンだった。
マジックプラントとは、その名の通り魔法植物である。50~200の幅の茎を持ち、6~24枚の花弁を待つ。茎の幅が大きく、花弁の枚数が多いほど強力である。花弁中央より、魔法の矢を放つ。また、花弁の色でその属性を知ることが出来る。根を動かして移動できるが、移動速度は遅い。
俺は気配隠蔽でギリギリまで近付いてから駆け出したので、不意を突いた形になり、戦いを有利に進められるのだが、奴らは性質上、花弁を相手に向ければ攻撃できる。
近付きさえすれば、用意に倒せる相手であるが、相手は既に花弁をこちらに向け、魔力を収束し始めている。
このままでは俺が近付くのが先か、相手が魔法を撃つのが先かという所だろう。そして俺の耐魔力と残りの体力を考えると、直撃すれば即死もありうる。
(間に合ってくれ)
そう願うも、花弁の先の魔力は拳大の球を形どり、今まさに強く輝いた。
(ガード……無理! 回避出来るか?!)
全力疾走の状態から無理に防ごうとしても、防ぎきれないと判断し、思いっきり体を捻った。
直後、左脇腹を白い光を放つ矢が掠めていく。
入学時の支給品である革鎧を薄く傷つけ、革鎧では防げない魔力ダメージが脇腹を切り裂く。
痛みを無視し、右手のショートソードを振り抜くと、確かな手応えと共に花弁が宙に舞った。
無理矢理振るった一振りであったが、速度が乗っていた為か、一撃で倒せたらしい。
急ブレーキを掛けつつ方向転換して見れば、骸骨兵どもが向かってきていた。
骸骨兵の横を抜けようと足を踏み出せば、脇腹に激痛が走った。
(っぐ! 勿体無いけど仕方ない)
もたついて囲まれてはコトだと、腰のポーチから最後の回復薬を一気に飲み干す。
するとすぐさま、脇腹の傷が塞がり、痛みが消えていくのを感じた。
マジックプラントの死体が光の粒子になるのを見ながら、具合を確かめる。これならば大丈夫だと確認し、粒子の後に残された魔石を掴み、狭まる包囲を楽に抜けて、転送装置に飛び込んだ。
あとがき
行間だとか大丈夫でしょうか?
あと、1話の長さってどれ位が良いんでしょうか?
どうも、やかたです。
ファンタジーだとか、迷宮とか、スキルとか、ステータスとか、そんな要素が書きたいです。