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[27315] 【ネタ】地雷オリ主の生きる道 完結
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/05/17 13:48
 皆さん、春ですね。桜が散ってますがまだ春ですよね? 春だと、いいなぁ。




 気が付けば地雷になっていた。

 …………ちょっと待てぇぇぇぇええええええ!!

 おかしいだろ! おかしいだろ! おかしいだろこの野郎!

 何で地雷なんだよ! 何で埋まってるんだよ! どうして踏まれたら爆発しなけりゃいけないんだよぉぉぉおおお!!

 落ち着け、俺。まずは不発弾かどうかって違う! どうしてこうなったかだ。

 ええと、昨日は確か……埋められたんだな。

 ………………What?

 ええと、一昨日は確か……運ばれたんだな。

 ………………Why?

 せ、先月は確か製造される途中だったって何で地雷の記憶しかないんだよ!? どこに行ったんだよ人間の記憶は!

 えぇー? 俺本当に人間だったのかぁ? 先祖代々地雷だったりするのか?

 むぅ、人間の記憶がないということはもともと地雷だったのかも。

 そう考えると……うん? 何だこの振動。まるでキャタピラが駆動しているような……

 カチッ

 ドゴォォォオオオオン!!







 ふざけんなぁぁぁぁあああああ!!

 なんで目覚めて一時間もしないうちに爆発しなきゃってあれ? 爆発したら俺は死ぬはずだよな。だって地雷は命と引き換えに殺戮をする種族なんだから。

 なのになんで。

 まさか、また?

 …………おぉう。俺は別の地雷になっていたようだ。

 まさか、これから爆発したらまた別の地雷になるのか?

 嫌な、人生違った地雷生だなぁ。せめて華々しく爆発したいよ。




 こうして俺の地雷生は始まった。



[27315] 地雷は異世界の地雷になったようです
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/04/23 21:51
 続きを期待した人がいたから書いてみた。







 どうも地雷です。

 地雷になってからというもの、毎日が爆発と爆発と爆発とたまに不発と殺戮の日々を送っておりまする。

 あれだね。不発が一番キツイ。爆発もせずに地雷探知機で探し当てられるまでじーっと地面に埋まってるんだ。最悪だった。

 次にキツイのはクレイモア地雷。人間が吹き飛ぶ姿とかマジ勘弁。

 でも俺は地雷。情けないこと言ってられないのさ。

 今日も今日とて爆発し、また新しい地雷に憑依するのさぁ~。







 む、明るい。クレイモアか?

 それで森っぽいところ、と。

 トラップかな? 誰もかからないことを祈ろう。

 …………。

 …………静かだな。トラップなんだからもう少し回りが騒がしくなると思うんだが。

「……誰も、いないね」

 ん? 誰か来たようだ。声からすると女性……二十代前半か十代後半くらいか。そんな若いうちから兵隊になるなんて。もう少し別の道はなかったのだろうか。

『Please master, and take care. It is a claymore. 』
「え? それって地球の兵器だよね? 何でこんなところに……」
『It doesn't understand. However, the reaction of Lost Logia does from it. 』
「え? じゃあこの地雷がそうなの?」
『Yes』

 何だ何だ? 一人でぶつぶつ言って気持ち悪いな。

「とりあえず、六課で調べてみようか」
『All right.』

 おぉぉぉう! そんな無遠慮に持ち上げるなや! 爆発するぞ! 比喩じゃなくて!

 しなかったからよかったものの……ってかどこへ持って行くつもりだよ。

 まぁ、取りあえず、いろんなものが見えるってだけでいいか。

 久しぶりの娑婆だ。たっぷりと楽しもう。








 はい、何故か続きました。

 今回憑依したのはリリカルな世界のクレイモア地雷。
 リリカル見たことないからおかしいと思うけど、一発ネタだから許してください。



[27315] KOROSUKAKUGOとMAMORUKAKUGO
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/04/23 17:00
 どうも地雷です。

 持っていかれたのは機動六課というところ。魔法があるらしいよ。

 まぁ、地雷に意識があるんだ。魔法があってもおかしくあるまい。

 そして、喋れるようになった。機械音声でだけど、相手に意思を告げることが出来るようになった。

 狂喜乱舞した。久々にした会話は、とても充実したものだった。

 俺をここに連れてきた女性……高町なのはは凄い美人だった。まるでアニメや漫画に出てくるような、人だった。

 そんな人と会話できてテンションが上がりまくったりしたものの、なんとか友好的な関係を築けた気がする。

 まぁ、一週間くらいで爆破してもらうつもりだけど。平和なのはいいことだけど性に合わない。人を殺すことになろうとも、戦場にいた方がいい。

 だって俺は、地雷なのだから。










 六課に来て一週間。そろそろ爆破を頼もうとしたところ、高町さんが相談に乗って欲しいと言ってきた。

 地雷に相談するくらいだから、相当悩んでいるだろう。

 そう思い、快く了承した。

 なんでも、同僚に甘いと言われたらしい。

 どんなことでも話し合いで解決しようとするな、殺傷より非殺傷の方が危険、そして、誰かを殺す覚悟を持て。

 要約するとこんな感じ。

 なんというか、まぁ。

「そんな簡単な事で悩んでいたのか」
「え?」
「結局、高町さんがどうしたいか、だよ」
「わたしが、どうしたいか?」

 そうそう。話し合いをするってのが信条なら、他人に言われたくらいで変える必要はない。むしろ変えてしまったら軽蔑に値する。たいしたものではないって。

「それで、殺傷より非殺傷の方が危険? それはつまり使用者の認識の上での問題だよね?」
「うん。○○君は、非殺傷でも人に攻撃魔法を使えば死んでしまうこともあるって。むしろ非殺傷だからって安心している分、殺傷魔法を使うより危険だって」
「そんなことはないよ。絶対に。だってその理論だと……そうだね。エアガンと実銃だよ。例えば、そのどちらかを人に向けて撃ったとしよう。それ自体おかしいことなんだけどね。で、その撃った弾が運悪く眼に入ったとしよう。その場合、エアガンだと失明、実銃だと死んでしまう。それなのに、エアガンの方が危険かい?」

 どちらも危険だし、死ぬとも失明するとも限らないが。

 しかし危険度で言うと

「実銃の方が、危険」
「そういうこと。まぁ、その前に人に向けて撃ってはいけませんと教育されるはずなんだけど」

 されていないのなら、教育すればいいし。そこら辺は高町さんに任せよう。

「それで、殺す覚悟か。これは俺の意見で、高町さんは自分で考えてほしい」
「……うん」

 それでは、柄じゃないけど語りますか。

「今までいろんな戦場を地雷として渡り歩いてきた俺から言わせてもらうと、馬鹿じゃないかと」
「え!?」
「確かに、殺す覚悟が必要になる場面はある。例えば、ここは警察みたいなところだろう? 犯罪者が人質をとって、その犯罪者を殺さないと人質が救えないとか、そういったとき。でもさ、それは極稀なことなんだ。警察の役目は民衆を守ること、平和を保つこと、平和を脅かすものを捕まえること。断じて殺すことじゃないよ」
「あ……」
「それに、戦場では誰も殺す覚悟なんてものは持っていなかったよ。誰もね」
「そう、なの?」
「戦場で必要なのは、守る覚悟。自分の命、祖国、誇り、名誉、お金、恋人、妻、夫、友人、自身の宝物。それらを、何があっても守ってやるっていう覚悟。みんな必死だったよ。それらを守れるのは自分だけだ。自分にしか出来ないんだって。殺すのは、そのおまけみたいなものさ。殺さないと守れないから、殺すんだ」
「……」
「これくらいかな。後は考えてみなよ。自分自身で。俺やそいつのいう殺す覚悟を決めるのか、別の覚悟を決めるのか。それとも決めることすらしないのか。考えて考えて、決断するといい」
「……うん。ありがとね」

 高町さんはそういうと、どこかへ歩いていった。

 あー、疲れた。やっぱ似合わないね、こういう役目は。ま、何かの役に立てればいいんだけど。

 ……爆破依頼出すの忘れてた。



[27315] さようなら世界。こんにちは世界
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/04/26 20:20
 機動六課というこの場所は、襲撃された。

 相談を受けたときに使っていた音声再生装置は半壊し、殆ど使い物にならない。

 壊れ行くもの達をぼんやりと見つめていると、目の前に銀髪でオッドアイの美形男子が現れた。

「お前か。お前のせいで俺のハーレムが、俺のなのはが」

 なにやらぶつぶつ呟いている。

 聞こえる範囲から推測すると、こいつは厨二病のようだ。それも力を持った。

 きっと強大な力を持っていて何不自由なく、思い通りに進む人生を送ってきたんだろう。恋愛でも、仕事でも。

 だから安易なハーレムを望んでいたし、全員等しく愛せると思っていた。

 ……我ながら素晴らしい推理だ。

 しかし俺と何か関係あるのだろうか?

「お前のせいだ。お前のせいだ。たかが地雷の癖に。地雷に憑依した奴の癖に!」

 男は何かを振り上げる。俺を破壊するつもりなんだろう。

 そろそろ頃合だと思っていたから丁度いい。

 …………ああ、それと一つ。

「地雷を舐めてる奴に、複数人を愛せるわけねーよ」

 何かが振り下ろされ、

 ――――爆発音と共に、男は肉塊になった。

 次は、どんな地雷かね?









 またクレイモアか。二度連続とは珍しい。

「待つネ。魔力反応があるヨ」

 あ? なんだこの似非中国人みたいな喋り方は。

「クレイモア……? これから魔力反応が……いや、シカシ」

 うん? 何で音声再生装置が付いてるんだ?

 まぁ、便利だからいいか。

「あー、こちらクレイモア。いったいどういう状況かな?」
「……喋っタ?」
「おう。最近の地雷は喋るんだよ」

 数秒後、似非中国人の悲鳴が響き渡った。

 はてさて。今回はどうなることやら。



[27315] 超鈴音
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/04/28 23:44
 今回俺を拾ったのは似非中国人こと超鈴音。

 彼女は所謂天才だ。どんな高度な計算でもこなしてみせる頭脳。それは彼女にとっていいことなのか悪いことなのか。

 まぁ、人類の未来について考えているあたり馬鹿なのかもしれないが。

 そんなことを言っている俺はというと、超の話し相手と化している。自分が地雷だということを忘れそうなくらい平穏だ。

 それも、仮初の物なんだろうけどな。

 しかし、仮初でも平穏であるというのはいいことだ。心に余裕が出来る。

 最近は、ゆっくり出来ることが多いなぁ。




「……過去改変についテ、どう思うカ?」
「あぁ? 過去改変?」

 ある日のこと。俺の前に超が現れ、そんなことを尋ねてきた。

 過去改変ねぇ。

「そりゃ、どうも思わんよ。成功したかしていないかすら確かめることの出来ないものに、何かを思うなんてことはない。そもそも不可能だ」

 過去改変は、絶対に不可能だ。過去を変えようとする者にはな。

 それを超に言ってみると、物凄い形相で詰問してきた。どういうことなのか、と。

「世界を変えようとするものに、世界は変えられない。何時も何かの邪魔が入り、結局は同じ道を辿る。世界を変えるのは何時だって変える気のないものだよ」
「そんなことはナイ!」
「そう思うならそれでいいさ。これは俺の持論だからな。一つ例を出しておくと……そうだな。学者達は世界を変えてきた。何度も、何度もな。だがそれは世界を変えてやろうと意図してやったわけではない。そこに謎があったから。規則性が不規則性が原理が不思議が興味があり、知的好奇心が刺激されたから、学者達は偉大な発明をしたり、理論を残してきたわけだ」

 中には変えようとした奴もいるかもしれないが。

「他にもありきたりなことだが、過去を変えたところで今が変わるとは限らないしな。まぁ、過去を変えようと思うのなら、邪魔はせんよ。思う存分奮闘しろ。何なら協力してやろうか? 気になるし。……出来ることは少ないが」

 こんなことを聞いてきたんだ。タイムマシンくらい完成してるんだろ。

 というか、今更俺に何を聞いているのやら。結局は自身で決断するのだから、俺の言葉を聞いても意味がないだろう。

「いいのカ?」
「拾われた身だしねぇ。それにお前は愉快な人間だからな。面白すぎて不愉快になるくらい」
「それハ……」
「一応褒めてる」

 英雄の子孫らしいしね。こう、面白すぎて嫉妬するというか。

 まぁ、爆発するまで見させてもらうよ。

 じっくりたっぷりと穴が空くほどにね。



[27315] 汎用人型決戦地雷CHACHAMARU 製作編
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/05/04 10:41
 本当にタイムマシンを開発していた超。

 それでどれくらい時を遡ったのかは分からないが、俺たちは過去である日本に来ていた。年号はよく分からない。

「ひとまズ、麻帆良という学園都市ニ入学するネ」
「ほぉ……やることは決まってたんだな」
「当然ネ」

 重畳重畳。過去に来て何も考えてませんでした、っていうのは嫌だからな。天才である超がそんなことになるはずがないんだが。

「戸籍とかはどうするよ」
「偽造スル」

 犯罪じゃねぇか。既に不法入国という罪を犯してるけど。

 ま、俺が犯罪だとかどうのこうの言う権利はないか。老若男女問わず殺してきたんだ。大罪地雷ってか。

「そこら辺はお前に頼んだ」
「頼まれタヨ」

 ……ふむ。しかし地雷での生活は長いが身体が欲しくなってくるな。地雷じゃなくなるけど。

 叶わぬ望みだなぁ。








 過去に来て数ヶ月。麻帆良という学園都市の、麻帆良女子中学というところに超は入学していた。

 俺? 俺はまぁ、留守番だよ。地雷出し、好き勝手に触られて爆発したらかなわん。俺は平和な場所を血濡れにするためにあるわけではないからな。

 しかし、この麻帆良はどうしてか違和感があるな。思考を誘導されているような感じがする。超から聞いている魔法かもしれない。

 俺がどうにか出来るわけではないから、考えても仕方ないんだけど。

「戻ったネ」

 お、超が戻ってきた。ちなみに現在いる場所は麻帆良大学工学部の研究室。

 超は戻ってくるなり着替えもせず紙になにやら書き始めた。

「何作る気なんだ?」
「機械人形」

 と、超は短く答え、こちらをじっと見つめてきた。

「な、なんだ?」
「搭載……されるカネ?」
「はぁ?」

 超の話によると、機械人形はある人物に頼まれたらしいのだが、その人物は警戒するべき人物らしい。

 過去改変の邪魔になるかもしれないから、俺を保険として搭載しておきたいらしい。

「地雷の意義がなくなるんだが……」
「そんなの今更ネ。こうしてワタシと喋ってイル時点で、地雷としての機能は殆どナイ」

 その通りなんだがな……。ふむ、ではこうしよう。

「その機械人形に、地中を移動する機能と、ありったけの地雷を詰め込め。ありとあらゆる地雷を搭載しろ。ああ、勿論、勝手に爆発しないようにな。爆発は俺の意思のみで行う」
「難しいコトヲ……」
「やりがいがあるだろう?」
「その通りネ。やってみせるサ」

 こうして汎用人型決戦地雷、名前は茶々丸……いや、CHACHAMARUの製作が開始されたのだった。

 俺とは別に人工知能を搭載するらしいよ。



[27315] 汎用人型決戦地雷CHAHCAMARU 起動編
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/05/08 18:52
「……」
「目覚めたかい?」
「私、は」
「君は汎用人型決戦地雷CHACHAMARU」
「CHACHAMARU……? 私の名は茶々丸だとインストールされていますが」
「いいんだよ、CHACHAMARUで。最強無敵チートガイノイドなんだから」
「はぁ……」
「とりあえず、ご主人様のところへ行こうか」





 CHACHAMARUが完成した。完成したのだが、妙に人間くさい。

 返答一つ一つが人間のようで、感情さえあるように思える。

 俺が搭載されているからだろうか? まぁ、ガイノイドが感情を持ったりするのはいいことだから放置しよう。

 さて、今現在CHACHAMARU……面倒だから以下茶々丸の主人の所に向かっておりまする。

 主人は吸血鬼だよ。ロリ吸血鬼。エターナルロリータ。何時ぞやの地雷を舐めていた人間が好みそうなタイプですな。

「ところで」
「ん? 何?」

 唐突に茶々丸が声をかけてくる。基本的に同じ口で音声を発するように設計されているので、一人芝居のようだ。

「貴方のことは何とお呼びすれば?」
「む……」

 それはつまり俺の名前を教えろということか。

 困ったな……。俺は地雷でしかなかったから地雷以外の名称がない。

 ……地雷也。駄目だ、某忍者漫画のイメージが強すぎる。地雷、爾来、じらい、ちらい? あ、雷地でいいか。

「雷地。雷地って呼んでくれ」
「何処かのフルーツのような名前ですね」
「ほっとけ」

 やっぱり人間くさいなぁ。普通だったらこんなこと言わないだろうし。






 森の中にあるログハウス。ここに茶々丸の主がいる。

「インターフォンを?」
「そりゃ、押すでしょうよ」

 茶々丸が、ダダダダッとインターフォンを連打した。こいつもう人間でよくない? 少なくとも合理的思考をするガイノイドじゃねぇ。

「喧しいわっ! ってん?」
「初めまして、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル様。貴方の忠実なる僕、CHACHAMARUでございます」
「……ああ、超鈴音に頼んでおいた自動人形か。分かった、中に入れ」
「了解しました」

 CHACHAMARUって自己紹介しちゃったよ。別にいいけど。

 しかし、意外と少女趣味なんだね、この吸血鬼。人形やらフリフリな服やらが沢山ある。

「お、この間言ってた自動人形?」
「そうだ」

 茶々丸が眉をひそめる。俺も眉があったらひそめているだろう。

「そいじゃあ、自己紹介。俺は神崎龍也、エヴァの友人だよ」
「はぁ……で、どなたでしょうか?」
「いや、だから神崎龍也ね。エヴァの古い友人」
「古い友人というと、不老不死でいらっしゃるのでしょうか? 我が主エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル様は五百年以上生きておられる方ですので、古い友人と言われると百年以上は生きておられるのですよね?」

 まさか。日本人名の癖に銀髪紅眼のことを除けばいたって普通の人間だぞ、こいつ。

 まぁ、この吸血鬼と友人でいる時点でおかしいわけだが。

「い、いやいや。古いってのは俺主観で、だよ。エヴァにしたらまだまだ新しい方さ」
「はぁ? お前と出会ったのは二百年ほど前の」
「エヴァは黙ってて!」

 ふぅん? どうやら本当に不老であるらしい。しかしどうして隠そうとするのか。

 ……何か、碌でもないことになりそうだな。用心しておこう。

 いざとなったら、この学園都市の一部を灰にしてしまうかもなぁ……。

「というわけで! これからよろしくな、茶々丸」
「はぁ……よろしくお願いします」

 さって、N2地雷の用意しておこうっと。



[27315] 時間が飛ぶのはよくあること。転生者が複数人いるのもよくあること
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/05/14 17:27
 教壇の上に、赤髪の少年が立ち、こう言った。

「今日からこの学校でまほ……英語を教えることになりました、ネギ・スプリングフィールドです。3学期の間だけですけど、よろしくお願いします」

 ……日本の労働基準法はどうなっているのやら。

「マスター。あの少年が?」
「そう。私をに呪いをかけ、尚且つ15年以上放置している男の息子だよ」

 ご主人に話しかける茶々丸と、忌々しそうに少年を睨むご主人。

 別にもう呪いは解けてるんだからいいじゃないか。俺としては神崎とやらの方が忌々しいね。一々付きまとってきやがって。

「と、雷地は言っていますが」
「確かにそうだな。しかし感情というのはなかなか割り切りにくいものだ。機械であるお前達には理解しがたいものだろうが……」

 茶々丸に俺の言葉……神崎云々を抜きにして伝えてもらうと、そう返ってきた。

 ふむ。妻を持っている男と不倫して最終的には捨てられ、15年後にその男の息子と出会ったときのような心情か。

 分かりにくいな。もっと簡単に出来ないものか。

「無理ではないでしょうか?」
「ん? 何がだ?」
「こちらの話です」

 茶々丸に無理と言われてしまった。確かに、この関係を短く分かりやすく表現するのは無理かもしれない。

「まぁ、封印は解けたと言っても魔力はまだ不完全。機を見計らって襲撃するさ」
「了解しました」

 襲撃、ねぇ。もっと穏便に血を吸わせてくれって言えばいいものを……。少年は意外と甘そうだから死なない程度までだったら吸わせてくれるかもよ。

 それ以前に、副担任である神埼が見下した表情で少年を見ているのが気になるけれど。






 少年がこの麻帆良女子中学にやってきて、何事もありつつがなく春休みに突入し波乱に満ちた春休みが終了し、少年が俺たち3年A組の担任になり気色の悪い女子が転校してきた。

 何が気色悪いって眼。こっち品定めするようににやにやとしていた。外見は白髪紅眼だった。

 と、まぁそれはおいておいて。

「27番宮崎のどかか……。悪いけど少しだけ、その血を分けてもらうよ」
「待てーっ!」

 少年が担任になったということで現在駒と魔力を増やしておりまする。

 停電の時に全力でやればいいものを……なんでわざわざ? それに、この学校に留まることは分かっていたんだからもっと速く行動すればいいのに。

「様式美かと。マスターは誇りある悪とやらに拘りを持っていますから」
「そんなものかねぇ。何が悪で何が善かってのは時代や場合によって変わると思うんだが」
「しかし今現在無関係の女の子を襲っていることは、どんな理由であろうと悪だと思いますが」
「違いないな」

 俺と茶々丸はマスターを影から見守っている。いざとなったら呼ぶと言われたので、出番は当分先だろう。

「しっかし、何でこう語り合うのかね? さっさと襲ってしまえばいいものを」
「それも、様式美かと」

 便利な言葉だな様式美。型に嵌ってるって言えるけど。

「……この分だと、出番がありそうですね」
「う~ん、まぁ一般人程度の能力しかないのにご主人が勝てるわけはないな。さっさと助けに行ったほうがいいかもしれん」
「ではそうしましょう」

 じゃぁ、アレの初公開が出来るわけか。楽しみだな。



「と、とにかく! 魔力もなくマントも触媒もないあなたに勝ち目はないですよ! 素直に……」
「それはどうかな少年。もう少し周りに気を配ったほうがいいぞ? まぁ、遅いかもしれんが」

 ご主人と相対している少年の背後に立ち、そう告げる。

「え?」

 驚き振り向こうとする少年をそのまま全力で蹴り飛ばす。回し蹴りだ。

「ふべらっ!」

 当然少年は吹き飛ぶ。なんか手応えが微妙だったんだけど……。

「茶々丸。やりすぎだ」
「雷地がやったのですけどね」

 いやいや、やりすぎってことは……あったようだ。気絶しちゃってるよ。

 別にいいか……血を吸う訳だし。

「とりあえず起こせ」
「……必要ですか?」
「眠っている奴を襲うのは私のプライドに反する」

 プライド、ね。別に殺すわけじゃないんだから、寝込みを襲ったっていいだろうに。起きたら貧血になってるくらいだって。

「という雷地の抗議をそのまま伝えます」
「いいからさっさと起こせ」
「了解しました」

 倒れている少年の身体をゆさゆさと揺する。

「ん……んぅ……?」

 よかった。結構簡単に起きたから深刻な怪我とかはないよね。

「なっ!? え、茶々丸さん!?」
「はい。誕生から臨終まで一生をかけて主人を介護する介護専用ロボット茶々丸です」
「何をぬかしとるかボケロボ!」

 間違ってないような気がする。ご主人基本的には引きこもりだし。毎日その世話をしているんだから。

「茶々丸周囲を警戒しろ。魔法先生にバレると厄介だ」
「了解しました」

 警戒、ねぇ。今現在凄いスピードでやってくる女子中学生一人に、こちらを監視しているのが二名ほどいるんだけど。

 神埼、と転校生か、これは。

「おそらく。教室で確認した生体反応と同じものですから」
「こりゃ、面倒なことになりそうだ」
「……先生が来てから、面倒ではない日々があったのでしょうか?」
「少しなら、あったさ」

 そうやって雑談していて、ツインテールの女子中学生に飛び蹴りを食らったのはまた別のお話。

 …………安全装置ついててよかった! 俺の意思のみで爆発するようになっててよかった!



[27315] 教会裏で
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/05/14 22:27
 いろいろあり、ご主人が少年の血を吸い逃してからはや数日。

 学園にオコジョが侵入してきたりすることもあったが、特に何が起こるわけでもなくただ淡々と時間は流れていった。

 その瞬間までは。

「こんにちは、ネギ先生。それに神楽坂さんも」
「茶々丸さん……」

 俺と茶々丸は教会裏で少年とこの間のツインテール中学生、神楽坂明日菜と対峙していた。

 やれやら、今日はいろんなことが起こるなぁ。風船が木に引っかかって泣いてる女の子はいるし、おばあさんがぷるぷるしながら歩道橋を上っているし、ダンボールに入れられた子猫が河を流れてるし。

 教会裏に集まっている野良猫に餌を与えていたら、二人が出てくる。

 ……もう二人ほど、こちらを監視しているけれど。

「茶々丸さん……あの、僕を狙うのは止めていただけませんか?」
「出来ません……と言いたい所ですが、条件によってはマスターに進言することも考えます」
「本当ですかっ!?」
「はい、先生がこちらの出す条件を飲んでくだされば、ですが」

 茶々丸がそう言うと、少年はツインテール中学生と話し始める。

 この瞬間に襲われたらどうするつもりなのだろうか? まぁ、そんなことはしないからいいんだけども。

「あの、その条件を聞かせてもらってもいいでしょうか」
「はい。一つはマスターに定期的に血液を与えるということです」
「そ、それは」
「安心してください。マスターは意外と甘いので死にはしません。それに、それだけで3-Aの皆様が無事なら安いものではありませんか?」
「た、確かに……」
「ちょっとネギ、そんなこと言って大丈夫なの?」

 そしてまた会話。やれやれ、子供らしいと言えばそこまでだけど、せめて敵対している人物の前では止めようよ。

「そして二つ目は」
「え!? もう一個あったんですか!?」
「……二つ目は、この私。絡繰茶々丸と全力で戦って欲しいのです」

 これは、俺の願いでもあるなぁ。

「どういうことですか?」
「私は、血が滾り燃えるような戦いを、してみたいのです。互いに命を賭け、肉を切り骨を絶ち、相手が動かなくなるまで力を振るう。後先考えずに、ただ相手を打ち倒すことだけを考えたいのです」
「……どうして、ですか」
「理由と呼べるものは、ありません。ただ胸の奥から湧き上がってくるのです。戦ってみたい、と。……流石に、殺生はやりませんが。先生、お願いです。私と全力で戦っていただけませんか?」

 そこまで言ってペコリと頭を下げる。これじゃあ、立場が逆だなぁ。

「……分かりました」
「ネギ、本当にいいの?」
「ええ。ですが、約束してください。あくまで腕試しです。殺し合いなんかじゃありません」
「……充分です。では、マスターの方も何とかして頷かせてみせます。腕試しの日程は、後日こちらから連絡させていただきます」
「分かりました」

 少年はそう言うと、踵を返して歩いていく。ツインテール中学生は数秒こちらを見て、しかし何も言わずに少年の後を追った。

 さて。ここからは俺の出番だ。

「お二人さん? 出ておいでよ。ずっと見てたんだろう?」

 誰もいなくなった教会裏でそう声を発する。

 しかし反応がない。

「反応なし、か。最悪ここら一帯を更地にしてもいいんだけど?」

 そこまで言うと、二人の人物が姿を現した。

 一人は銀髪紅眼。紅い外套を着た男、神崎龍也。

 もう一人は白髪紅眼。ジーパンに白いシャツといった出で立ちの少女、転校生の鈴科百合子。

「さぁ、アンタたちは何をしようとしていたのかな? こんな変哲もない教会裏でこそこそと」

 茶々丸の両手がウィーンと駆動音を上げながらドリルに変形する。

「答えによっては、ここで消えてもらうぜ厨二病患者ども」



[27315] 転生者 戦闘
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/05/15 18:57
 教会裏。俺の発言を聞いた二人はただ黙っているだけだ。

「さぁ、何をしようとしていたんだ?」

 再度そう聞くと、女のほう……鈴科がガリガリと頭を書き、こう言った。

「あのさぁ、同じ転生者の分際で何言ってんの? この時期に教会裏って言ったらイベントしかないでしょ」

 ……転生者? 何だそれは。

「おい、勝手に」
「うっさいわね。別にアンタとは利害関係が一致したから一緒にいただけでしょ? 野菜坊主の襲撃から茶々丸を救う。そっからどっちかに惚れたら手出し無用。そう決めたでしょ? まぁ、その茶々丸が転生者だなんて思わなかったけどね」
「確かにそうだが……」

 何を言っているんだ、こいつは。訳が、分からない。

「もういいや。手に入らないなら破壊させてもらうわ。エヴァには嫌われるだろうけど、そもそもエヴァはそっちの物だしね。どうする? こっちにつくか、あっちを庇うか。オススメは傍観だけど?」
「ハッ。俺は何が何でもハーレムを形成するって決めたんだ(未来の)その一員に傷を付けられてたまるか」

 もう、ここら一帯吹き飛ばそうかなぁ……こいつ等気持ち悪いし……茶々丸の人格データを超のところに送って自爆しようかなぁ。

「止めてください。罪のない人物は殺さない方がいいでしょう」
「「は?」」
「いえ、こちらの話です」

 確かにそうだな……死ぬのは戦場に生きるものだけで充分か。

 神崎の協力はハッキリ言ってありがたい。俺ではこの鈴科とやらは倒せんだろうからな。

 不快でも、ありがたい。

「さぁ、かかってきなさい。最強の矛と楯を敗れるかしら?」

 相手が両腕を広げた瞬間、飛び掛る。

「戯け! 死にたいのか!」

 が、神崎に襟を掴まれ失敗。何だというのだ厨二一号。

「いいか、あいつの能力は超能力。その中でも最強に位置するベクトル操作を今は使ってる。アイツ命中した行動は全て反射して俺たちに返ってくるんだよ!」

 つまり、なんだ。攻撃したらそのまま反対方向に弾かれるということか。いや、押し返されるのか?

 ふむ。

「フンッ!」

 二歩で間合いを詰め、鈴科の心臓めがけて左のドリルを突き出す。

 するとバギンッと音を立てて、腕が折れた。

「ヤバイヤバイ」

 折れた腕を外し、鈴科に投げつける。腕は鈴科に当たると鋼鉄の弾を撒き散らした。

 しかし、それら全ても反射される。

「馬鹿なのかしら?」

 いや、反射される力よりも強い力で押せば何とかなるかと思ったんだけど……無理だった。

「な ん で 忠告したのにやるんだよ!」
「自分の目で確かめた方が確実ですので。というか戦え種馬」
「たっ!?」

 いや、種馬に失礼か? こいつ相手の意思関係なしに犯しそうだし。まぁ、レイプなんてのは戦場じゃよくあることだが。

 しかし、反射ねぇ……。

「あの能力が、発動者の周囲に力場を発生させているのなら、その場で引き戻せば相手に反射されるのでは?」

 おお、そういうことも考えられるのか。しかし、出来るのか? 茶々丸。

「データを基にプログラムを作成、インストールが間に合えば可能だと考えられます」

 それ以前に、相手の力場がどれくらいのものか計測しなければなりませんが、と付け加える茶々丸。

「それ、どのくらいかかる?」
「データがあれば数分で」
「じゃ、試してみっか」
「何を一人でぶつぶつと言ってるのかしら? 精神でもおかしくなった?」
「それはアンタだろ兎ちゃん? 寂しくなって死んでしまえ」
「ええ、いいわ。塵も残さず滅殺してあげるわ」

 おぉ、怖い怖い。

 さて、それじゃカメラを超高感度にして、相手の一挙一動を見逃さないように。

「そこのアンタ。アレに攻撃してくれない?」
「了解した。投影開始」

 厨二一号が何かの呪文を唱えると、黒い弓と矢が出てくる。流石に近接攻撃をするような馬鹿ではないらしい。

 それと同時に鈴科……厨二二号も動き出す。信じられないほどの速さで一号に肉薄し、腕を振るう。対して一合は、ひょいひょいと避け、移動しながら矢を放ち攻撃する。

 ……一号二号と言っていると何処かの研究所で行われる実験体同士の戦闘みたいだな。

 しかし、大体の予測は出来たかな……。

「プログラムの作成を開始します」
「頼んだ」

 さ、後数分。どうにかして狙われないようにしないと。



[27315] 教会裏 戦闘後編
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/05/17 13:46
「プログラム、完成しました」
「おっけぇーい。反撃といきましょうか」

 完璧に倒すってのは不可能でも、まぁダメージは与えられるでしょ。多分。

「神崎ィ! 伏せ!」
「ッ!」

 おお、流石に二百年生きているだけはある。行動が早い。

「あら、何しに」
「テイッ!」

 余裕たっぷりの鈴科に蹴りを放つ。勿論、プログラムに沿った形で、引き戻すように。

 足に手応えを感じ、鈴科が吹き飛ぶ。

「成功、か?」
「そのようですね」

 なら畳み掛けるか。絡繰に気づかれたら勝ち目ないし。

「ラァッ!」
「ぐぅっ」

 勢いをつけて、連続で蹴りを放つ。無論、先ほどと同じように。

 鈴科の方は、両腕でガードを固めて何やらブツブツと呟いている。

 しっかし、何かやけに硬いような気がするんだが。

「ざっけんじゃねぇぇえええ!!」
「うぉ」

 不意に鈴科が叫ぶと、俺の身体が持ち上げられた。相手は俺の身体に触れているわけではなく少しだけ間隔がある。

「私が、この私が! こんなことで傷つくなんてありえねぇんだよ! クソ!」

 鈴科は激しい怒りを顔に浮かべながら、俺を地面に叩きつける。何度も、何度も、思い切り。

 あ、これはヤバイ。麻帆良なくなるかも。

 そんなことを呆然と考えていると、少し離れた場所から神崎の声が聞こえてきた。

「『偽・螺旋剣Ⅱ』」

 瞬間、捻じれた剣が空間を引き裂いた。鈴科は咄嗟に回避行動を取ったようだが、しかし間に合わなかったようで右腕がなくなっている。

「チッ。外したか」

 今のはやはりというか、神崎の攻撃だったようで。助けてくれたようだ。

 外見にしても能力に関しても性格に関しても、おかしな奴だ。種馬だ厨二病だと罵った奴くらい見捨てればいいのに。

「……」

 鈴科は唖然と自身の右腕を見ていたが、不意にこちらを睨みつけると、

「覚えてなさい。アンタたちは私が殺す」

 静かにそう告げ、フッと姿を消した。

 ……予想外に呆気なく終わってしまった。あと腕の一本や二本は覚悟していたんだが……。ま、よしとしておこう。

「立てるか?」
「ええ、まあ」

 神埼がいつの間にか近くに来て、手をさし伸ばしてきたが、それを掴まずに立ち上がる。

「さて、貴方のこと、あの女のこと、教えてくださいますか?」
「…………」
「転生者、とか言ってましたね。そしてあの魔法ではないベクトル操作、それに何処からか出現させた弓と矢と、あの捻じれた剣」
「……わかったよ。説明する」

 この男が語った内容は、俺にとってこの後の生き方を少しだけ揺さぶる内容だった。



[27315] 転生者
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/05/17 13:46
「つまり、神に出会い、漫画やゲーム、小説に出てくる魔術、魔法、超能力などを持ってこのネギま! という漫画の世界に来た。と」
「そうだ」
「で、貴方の目的は?」
「……」

 教会裏から超の研究室に行く道すがら、神崎と話していた。

「言えませんか……。まぁ、いいです。どんな目的であれ、決めましたから」
「何をだ?」
「殺します。貴方も、あの女……鈴科も。今はまだ、出来ませんがね」

 これは、当然ながら茶々丸の意思ではない。俺の個人的なものだ。

「理由を聞いても?」
「分かったからです。貴方も、鈴科も、俺も。この世界にとっては害悪でしかない、存在することすら許されない存在だって」
「何……?」
「だってそうでしょう? 貴方達がここにいるということは、つまりここは全て管理されている世界な訳だ。始まりから終わりまで、全てね。まぁ、ifもあるから一概にはそう言い切れないけれど。でも、これだけは確かだ。俺もアンタも鈴科も、存在する必要性がない。俺たちがいなくても世界は続くし、いたらいたで世界は最善の結末から遠ざかってゆく。さて、じゃあ存在したら世界を悪い方向へ導いていくものは、果たして必要なのかな」

 不必要だ。どんな理由があっても、俺たちがここに存在する必要性はありはしない。

「俺たちが不必要? そんな訳あるか。不必要と言うのなら、そこら辺の一般人だろう」
「違うね。物語において必要性が高いのは上から順に世界、一般人、主人公、ヒロイン、ライバル、悪の組織だ。そもそも一般人がいるからこそ、物語は成立する。主人公やヒロインは特別な存在だ。そう、存在するだけで特別だ。でも一般人はそれよりも特別なんだ」
「待て。物語において最も重要なのは主人公だ。主人公がいなければ物語は始まらない」
「その主人公を見ているのは誰だい? ヒロインか? ライバルか? 主人公に関係する全ての人物か? それとも物語を観測している読者か? 全部違うね。無関係の一般人こそ、主人公を見ている。例えばあるとき主人公がヒロインと街を歩いていた。まるで恋人のように甘い雰囲気を出しながら。だがこのとき、街に一般人がいなかったら? 高層ビルが立ち並び、車も走っている。だが、そこに人がいなかったら? 主人公やヒロイン、その他特別な人物だけの世界だとしたら? そんなもの、物語じゃないよ。物語としての要素が欠落している」
「その特別な人物だけでも、物語は成立すると思うが?」
「そうかな? 物語の中の特別な人物にとって大切なのは成長だ。では成長とは何か。大勢の人と関わることだよ。例えば、世界に危機が迫っていたとして、主人公が、主人公だけがその危機を回避できる。回避させることが出来るとしよう。ここで主人公は悩み葛藤し成長するわけだけど。ここで世界の危機……つまり人類の危機だ。そこに一般人がいなかったら、果たして成長はあるのかな?」

 そんな世界で成長なんて存在しない。確かに悩みや葛藤はあるだろうが、成長に繋がらない。結局は自業自得ということになってしまうのだ。失敗した主人公の所為、その主人公を信じた特別な人物の所為。

 それだけなのである。

「それで、そんなとっても重要な一般人に比べて俺たちは? 先ほども言ったように存在するだけで最善の結末から遠ざけるような俺たちは、本当に必要か?」

 再度言おう。不必要だ。存在すらしてはいけない、害虫だ。

「だから俺は、自身の命と引き換えにアンタたちを殺すよ。そして」

 それが終わったら、二度と人間とは関わらない。一生地雷として生きていく。

「…………ハッ。やれるものなら」

 神崎の声には、少し後悔が含まれていたような気がした。





 超の研究室にて。

「まったク。どうしたらこんなにボロボロニ……」
「超。スペアボディ一つ、N2地雷を大量に搭載したやつ作ってくれ」
「……なニ?」



[27315] 修学旅行
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/05/17 13:47
「ネギ先生」
「茶々丸さん」
「この間のことですが、修学旅行が終わってからになりそうなのですが……」
「そういえば、もうすぐ修学旅行なんですよね~」
「ええ。そういえば、旅行先の京都には紅き翼……先生のご両親の隠れ家があるとか」
「え! ほほ、本当ですか!?」
「マスターが上機嫌に話していたので間違いないかと」
「あ、ありがとうございます! ところで、僕茶々丸さんに父さんのことを話したことがありましたっけ?」
「……ええ、以前一度だけ。では、これにて失礼します」
「あ、本当にありがとうございました!」
「……どう、いたしまして」

 ある朝の日常(?)風景










 さて、そんな訳で修学旅行。既に二日目だが。

 当然、神埼も鈴科もいる。ご主人もいる。

 俺としては、この旅行中に何が起きるか知っているため、ここであの二人を殺したいのだが。

 しかし、どうしよう。殺す手段はあるものの、殺すための展開がない。何より場所もない。

「どうかしたかい? 吸血鬼の従者絡繰茶々丸?」
「いえ、少々考え事を」

 まぁ、それはともかくとしてこの白髪の少年をどうにかしないとなぁ。

「そんな面倒くさそうな顔をしないでくれるかい? 少し傷ついてしまうよ」
「はぁ……。ところで、何のようです?」
「協力して欲しいんだよ。あの神崎龍也を殺すのにね」

 ……何やら、複雑な事情がありそうですな。

「ああ、訂正。神崎龍也だけでなく、鈴科百合子もだね」
「どうして、です?」
「あの二人が、僕らの邪魔になるからだよ」
「貴方方だけでやればいいのでは?」
「そうは、いかないんだよ。彼らを殺しきるには、僕の持っている手札では足りないからね」

 それで、協力を……。

「それで、どうして」
「君を選んだかって? 君があの二人と同種のものだからだよ」
「…………何故分かったんです?」
「こちとら、ただの悪の組織ではないんでね」

 ま、簡単には教えてくれないか。

「分かりました。その提案、受けましょう。あの二人を殺すまでの間、協力しましょう」
「おや、そんな簡単に受けてしまっていいのかい?」
「自分としては、あの二人と自分が死ねばそれで充分ですから」

 そう言うと、白髪の少年は少し驚いたような表情をする。

「自殺願望者なのかい?」
「ええ。一人で死ぬのは怖いので、二人ほど一緒に来てもらいますが」
「傍迷惑なことで。まぁ、僕にとっても利益があるからいいか」
「ところで、お名前は?」
「フェイト。フェイト・アーウェルンクス」
「雷地と呼んでください」

 さてはて。こうして俺とフェイトの協力関係が始まったわけだが。

 スペアボディに変えなきゃな……。

「じゃあ、一時間後にまたここで」
「了解しました」









 宿。生徒達が宿泊する施設に、N2地雷を大量に搭載したスペアボディは存在する。

 当然、安全装置はこれでもかというくらいに取り付けてある。

 茶々丸に頼み、俺の本体をスペアボディに入れて起動させる。

 手のひらをグーパーと握ったり開いたりして動きを確かめる。

「本当に、いいのですか?」
「俺は元々必要のない存在だからな。まぁ、茶々丸は超を支えてやってくれ」
「そうですか。……少しの間だけでしたが、楽しかったですよ、雷地」
「俺もだ。茶々丸」

 そう言葉のやり取りをして、茶々丸と分かれる。これからもう一度出会うことはあっても、こうして会話することは二度とないだろう。

 少しだけ名残惜しい。

「地雷サン? 何処へ行くのかナ?」
「超……。修学旅行はどうしたよ」
「抜け出してきたネ。それより、何をスルつもりかナ?」
「なぁに。ちょっと地雷としての役割を果たしてくるだけさ」
「……嘘、だったノカ?」
「うん?」
「見届けると言ったのは、嘘だったノカ?」
「あー……」

 確かに、そんなことも言ったなぁ。

「嘘になっちまうなぁ。ま、お前なら俺が見届けなくてもしっかりやれるだろ。茶々丸もいるんだし」
「……怖くないのカ?」
「怖いよ。お前達と離れたくない。自由に動き回れる身体を捨てるのは惜しい、平和な時間を手放すのは心の底から怖い。でもさ、駄目なんだよ。俺がここにいちゃ、駄目なんだ」
「私は、貴方に死んで欲しくナイ」
「それは出来ない相談だ、超。俺は、俺のために、俺のエゴのために神崎と鈴科の二人を道連れにする。善悪関係なしに俺の独善的な考えのみで道連れにする。それは、決定事項なんだ。だから、止めてくれるな」
「……そうカ。なら、好きにするとイイ。あの二人は元々存在シナイ人間ダ」
「結構悪人っぽくなったな、お前」
「煩イ!」

 おお、怖い怖い。

 あ、そうだ。これだけは言っておこうか。

「お前と出会えてよかったよ、超」
「…………私もネ」

 そりゃ、よかった。

 さて、それじゃあちょっと早いけどフェイトのところへ行きましょうかね。



[27315] 終わり
Name: 半音◆e0b26219 ID:8d672cfe
Date: 2011/05/17 13:47
「僕が何故転生者のことを知ってるかって? それはね、昔いたんだよ。うちの組織にも転生者が。まぁ、神崎や鈴科のようなバグではなく、前世の記憶のみを持っているだけだったけどね」
「それを信じたの?」
「信じるも何も、転生者だと聞かされたのは彼が死ぬ直前だからね。そんな暇ないさ」
「その人とは、友人だったの?」
「ああ、そうさ。僕がこんなにも喋るようになったのは彼のお陰だ」

 フェイトの協力を受けた日から一日後の夕方。彼からいろんなことを聞かされている。鈴科を知ったのは、麻帆良にいる仲間のお陰、とか。いろんなところに散って活動しているらしい。

 麻帆良でもバレないとなると、かなり優秀なのだろう。

「まぁ、そんな彼も戦争で死んでしまったけどね」
「災難だね」
「しょうがないさ。戦争だもの。……といって。割り切れれば苦労はないんだけど」

 ま、そこら辺とは無縁だな、俺は。親しい友人とかいないし。

「っと、そろそろ時間だね。おいで、環」
「はい」

 フェイトが呼んだのは大きな角が生えている褐色肌の少女。

「この子のアーティファクトなら、周りに被害を出さずに戦える。あの二人を対処するには最適だろう?」
「でも、二人一緒に出来るの?」
「たぶん、大丈夫だよ。無限に広がる空間だからね」

 そんなのでいいのかよ。適当だなぁ。







「え、茶々丸さん!? どうしてそちらに!?」
「こんにちは、ネギ先生。俺が用があるのは、神埼と鈴科だけです。先生は先に行ってもいいですよ」
「それは」
「いいんですか? 速く行かないと手遅れかもしれませんよ?」
「くっ……。茶々丸さん! 後でお話させてくださいね!」

 とある森の中。神崎と鈴科の移動を予測したルート上に俺はいた。

 もうじき来る……いや、もう来たようだ。

「久しぶり、鈴科百合子」
「久しぶり、機械人形」

 白髪紅眼。修学旅行だというのに制服ではなくジーパンとTシャツ。以前無くなった右腕は変わらずにそこに存在していた。

 そして、

「こんにちわ、神崎龍也」
「こんにちわ、自動人形」

 銀髪紅眼、紅い外套を羽織、手には白と黒の中華剣を持った男。

 数秒、誰も口を開かず、沈黙が場を支配する。

「なぁ、今ここで死んでくれないか?」

 最初に口を開いたのは俺。単刀直入に提案してみる。

 結果は分かりきっているだろうけど。

「「断る」」

 仲のいいことで。そいじゃ、まぁ実力行使と行きますか。

「魂レベルで、爆破してやるよ」

 その言葉と同時に、環嬢のアーティファクト、『無限抱擁』が展開され、俺たちの戦いは始まった。


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