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[27180] 【習作・IS】インフィニット・ストラトス -ラウラちゃんと桃色女子-【オリ主】
Name: oyakata◆719bed6c ID:a8ffd639
Date: 2011/04/17 00:12
始めました。いや、初めまして。
「oyakata」と名乗らせて頂きます、しがない文章書きです。
アニメ見て、原作買って、3日間悩んで、ラウラちゃんを嫁にすることに決めました。
まぁ、解り易い程にIS初心者なんで、原作崩壊してしまうような部分があるかもしれません。
何か見つけましたら、「ちっげーよヴァーカ」と指摘して下さると喜びます。ドMですね。
では、軽く作品紹介。

・主人公はオリジナルの女性IS操縦者
・下ネタオヤジギャグ成分を含む
・製作者は「ブラックラビッ党」
・製作者は紳士
・笑いありシリアスあり

こんな所ですかね。
なるべく原作の空気を崩さないようにしていきます。
原作者の弓弦イズル様に敬意を込めて、執筆していきたいと思います。



[27180] ラウラちゃんと桃色女子 第一話「桃色の髪の女の子」
Name: oyakata◆719bed6c ID:a8ffd639
Date: 2011/04/14 01:20
「えー、今日は皆さんに新しい転校生を紹介します」


はて、この光景にはデジャブを感じざるを得ない。
教壇の上に立つ山田先生も、この台詞を言うのに違和感を覚えているように見えた。
と言うか、山田先生はまたフラフラしている。
あぁあれか。この後の部屋割りの編成作業を憂いてのことか。ご愁傷様です。


「では、入ってください」
「はぁい!」


元気の良い声が、廊下から聞こえてきた。
バシュっという音と共に、教室の中に桃色の髪の女子生徒が入ってくる。
おぉ、今度はちゃんとした女子だ。
いや、桃色の髪の毛をした女子を見て『ちゃんとした女子』だと言う感想を言う男は世界広しと言えども俺くらいだろうが。
それでも、男装した女子や眼帯をした女子に比べれば、『ちゃんとした女子』と言えないことも無いと思う。


「なっ―――」


背後から聞こえて声に反応して振り返ると、そこには例の眼帯をした女子ことラウラが桃色の髪の毛の女子を見てその片方しか出ていない目を見開いている。
知り合いなのだろうか。
とか思っている間に、桃色女子(勝手に命名)は教壇に立っていた。


「では、自己紹介してください」
「はい! フィリーネ・エルトゥールです! 好きなモノはラウラさん、嫌いじゃないモノはラウラさん、得意科目はIS整備、苦手科目はIS実習、将来の夢はラウラさんのお嫁さんです!」


唖然。
なんなんだ、今のは?
良く聞き知った名前が多分に含まれていた気がするが、気のせい……では無いだろうな。
振り返ると、ラウラは「私は何も知らない」と言いたげな表情であらぬ方向を見つめていた。
が、頬に伝う冷や汗が、珍しくラウラが焦っていることを表していた。


「え、えぇーと……で、ではフィリーネさん、空いている席にお座りくださ……」
「きゃあああああああああああああああああ――――――――――――――――――――――っ!!!」


ソニックウェーブと言う奴だろうか。
ん? これもデジャブだな。
まぁ、そのデジャブ通り、歓喜の叫びがクラス全体を包んだ。
一瞬発動が遅れたのは、やはり先ほどのフィリーネの自己紹介が原因だろう。


「百合よ! 百合女の登場よ!」
「まさか、ラウラさんを追ってドイツから!?」
「織斑君とあの子でラウラさんを取り合うのかしら!?」


俺が何かすることを前提として話が進められているように聞こえるが、声と声が重なり合って何を言っているのか全く聞き取れない。
ちなみに、この場を収める役目を持っている千冬姉は職員会議が長引いているらしく、まだここに居ない。
困ったぞ、早く来てくれないと山田先生だけではこの場を収集することは不可能だ。


「み、皆さん、落ち着いてください~! はうぅ、織斑先生ぃ~」


あぁ、もう諦めた。山田先生、最近だらしねぇな。
いや、このクラスの女子の勢いが凄まじすぎるのか?
と言うか、何でまたこのクラスに転校生入れたんだ。
分散させろって。


「……あ」
「ん?」


ふと、桃色女子と目が合う。
とてつもなく嫌な予感がしたが、最初から決め付けるのは良くないよな。
流石に、また殴られそうになったら避けるくらいの準備はしよう。


「貴方が織斑一夏ですね?」
「あぁ、そうだ」
「じゃあ死んでください☆」
「は?」


次の瞬間、目の前に銀色の物体があらわれた。
脳内データベースと照合すると、これはデザートイーグルと言う奴じゃないか?
凄いな、片手で構えてる。
片手撃ちって、随分と訓練しないと辛いんじゃ無いのか?
……ってチョット待て。その銃口が俺に向いているんだが?


「うおぉ!?」
「あ、動いたら駄目ですよー」


慌てて飛びのいた俺に、また照準を合わせなおそうとするフィリーネ。
その間に、慌てて走ってきたラウラが立ちふさがる。


「何をしているフィリーネ!」
「あぁん、ラウラさぁん!」


フィリーネはラウラの姿を確認すると、突然抱きついた。
何が起こったのか把握できていないラウラ。
次の瞬間、顔を真っ赤にして膝を突き上げた。
はて、女同士抱きついたくらいで赤くなるのか?
あぁ、きっと怒りで赤くなったんだろう。


「ふぐっ!?」
「馬鹿者、離れろフィリーネ!」


離れると言うより、倒れるフィリーネ。鳩尾に入ったのだろうか、死にそうな表情をしている。
その騒動で、教室内の騒動は収まっていた。
代わりに、いきなり暴力を振るった(ように見える)ラウラに一斉に視線が集中する。
その視線に耐えられなくなったか、ラウラは少し焦った風にフィリーネが手放したデザートイーグルを拾い上げる。


「全く、学園内に銃器を持ち込むなど……ん?」


ラウラはデザートイーグルを持ち上げて、何かに気がついたようだった。
無造作に天井に銃口を向け、トリガーを引いた。
パァン、と言う音と共に出てきたのは色とりどりの紙ふぶきと国旗のついた紐だった。
あちゃあ、と言う表情で半身を起こしているフィリーネに、ラウラは問いかける。


「……これはどういうことだ、フィリーネ」
「い、いやぁ……お茶目ってことで☆」
「ふんっ」
「う゛っ」


ラウラの爪先が、正確にフィリーネの鳩尾を突き刺す。
鈍い音と痛そうな声に重なって、朝のホームルーム終了のチャイムが鳴り響いた。




 ◇




 目覚めると、そこは見知らぬ部屋だった。
自分が寝ているベッドと、それを外部から隠すように視界に広がる白いカーテンの様子から、保健室に居るのだということはわかった。


「……どのくらい寝てたのかにゃ?」
「1時間だ」
「あ、千冬教官」


カーテンを開けて入ってきたのは、以前ドイツでお世話になった教官、千冬教官だった。
黒のスーツがキマっている。うへへ、そそりますのぅ。


「織斑先生と呼べ、馬鹿者が」
「ふぎっ!?」


右手に持っていた出席簿の角が、脳天を直撃。
出席簿と言う武器を最大限生かした攻撃に、予想外のダメージ。
流石です、織斑先生。


「いきなり教室で騒ぎを起こし、場を乱すだけ乱して気絶して私の授業を受けないとはいい度胸だな」
「千冬きょ……織斑先生も知ってるでしょ? 私はISの知識は完っ璧! もう私に座学は必要無いにゃ」
「……まぁ、知識だけはな」
「たはー、手痛いお言葉」
「次の授業は実習だ。お前は特別に私が見てやろう」
「マジですか!? いやー、持つべき物は美人教師ですなぁ、うへへへへ」
「あぁ、感謝しろ」


……ん? 何か千冬教官の目を見ていたら、背筋に寒気が……


「あ、えーと、やっぱり皆と同じメニューでもいいかなー……なんて」
「遠慮するな」


遠慮するな → 断れると思うな → どうあがいても絶望


「……優しくしてね?」
「安心しろ、手取り足取り教えてやる」


あれれ、ぜんぜん嬉しく無いんですが。




 つづく



[27180] ラウラちゃんと桃色女子 第ニ話「桃色女子の特性」
Name: oyakata◆719bed6c ID:a8ffd639
Date: 2011/04/17 04:04
「皆さんオハヨウゴザイマス、フィリーネちゃんでーっす」


ここは学生寮。
IS学園は全寮制なので、全学生がこの寮で暮らしている。
例外なく、私もこの寮で暮らしているのです。
そう、つまりラウラさんと同じ屋根の下で暮らしていることになるのです。


「……なのに!」


IS学園に入学してから1週間。
私はずっと……織斑先生の部屋で過ごしていました。
感想ですか? 「地獄でした」の一言です。


同学年のS・Hさん「気をしっかり持つのだぞ。何があっても挫けるな」
同学年のS・Oさん「そ、それはお気の毒に……何もせず、石像のように耐えるのですわ」
同学年のH・Rさん「想像しただけでも恐ろしいわね……」
同学年のS・Dさん「だ、大丈夫なの? こ、困った事があったら言ってね?」


と、1週間の内に随分と同情を買いました。


「けれど、それも今日まで……1週間! 私は耐えに耐え抜いてきた! そして、今のこのチャンスを掴んだのです!」


今、私はラウラさんの部屋の前で待機中。
いつもは千冬教官に叩き起こされ、そのまま学校に連行。
朝食もままならないまま、仕事を手伝わされ、そのまま教室まで連行。
そして授業。帰りも仕事を手伝わされ、日が沈む頃に帰宅し、そのまま就寝。
なんともスパルタな1週間でした。
けれど、今日に限って千冬教官は早朝に出て行ったようで、机の上に「時間通りに登校しろ」との書置きが。


「これはもう、天が与えたチャンス!」


着替えもせず、寝巻きのまま千冬教官の部屋を飛び出してここまでやってきたと言う訳です。
もちろん目的は、愛しのラウラさんに会うため!
授業中はもちろん、実習の時間も千冬教官に監視されて初日以外ラウラさんとは未だに話が出来ていないのです。
そりゃ、我慢もストレスも限界ですよ!


「いざ行かん! ヘブンへ!」


ちなみに、当然掛かっていた鍵は千冬教官の部屋にあったマスターキーであけました。
犯罪です。みなさんは、真似しないように☆


「ラウラさぁーーーーーーーん!」
「うひゃあああ!?」


扉を勢いよく開き、ベッドまで走る。
見るとベッドが二つあり、片方はもぬけの殻。
もう一方のベッドに、慌てて布団を被る人影が。
きっと愛しのラウラさんに違いない!
これはルパンダイブで飛び込むべき。


「らぁ~う~らさぁ~ん」
「いやああああああああああああああああああああ!」


 どげしっ


「ふぐぅっ」


強烈な蹴り上げを食らい、薄れ逝く意識の中で金髪の美少女を見た。
あれ……ラウラさんじゃにゃい……がくっ




 ◇




「フィリーネ……起きろフィリーネ」
「あぁ、夢の中にまで出てきてくれるなんて、流石はラウラさん……」
「起きろと言っている!」
「ふぐっ!?」


朝の日課(一夏のベッドに潜り込む)を済ませて戻ってくると、困り果てた顔をしているルームメイトのシャルロットと気絶したフィリーネが居た。
面倒くさいので、適当に蹴りを入れて起こす。
すると、面白い具合に飛び起きるフィリーネ。
いつもこのように機敏な反応をしてくれると助かるんだが。


「ら、ら、ラウラしゃん……」
「何だ?」
「ぜ、ぜ、ぜ、全裸……!?」
「あぁ。一夏に会いに行っていたからな」
「「な、なんだってー!?」」


まぁ、今は予め用意していたバスタオルを身体に巻いているがな。
ん? 何故、シャルロットまで声を荒げているんだ?
まぁ、それよりも先ずはフィリーネに聞かなければならない事がある。
千冬教官に直接聞いてもはぐらかされてしまったし、ここ1週間はずっと忙しそうにしていた。
フィリーネを助手として連れまわすくらいだ、何かあったのだろう。


「ところでフィリーネ」
「ひゃ、ひゃい!?」
「何故、IS学園に来れた? 同じ部隊から2人も留学生を出すなど、私は知らんぞ」
「あ、え、えぇと……私の『特性』をですね。ちょいと学園関係者の方にお話致しまして、特例として入れてもらいました」
「何?」


フィリーネには、他の人とは違うちょっとした特性がある。
確かに、その話をすれば学園に編入する事は可能だろう。
だが、それは同時に……


「話してしまったのか?」
「は、はいー……あ、あのもしかして、ヤバかったですか?」
「……いや、お前が良いのなら、私は何も言わん。そうだな、この学園に居れば何か変化があるかもしれん」


フィリーネと出会った時の事を思い出す。
あれは確か、教官がドイツに来て3ヶ月ほど経った頃の事だ。
『高い適正率を持つ人材が見つかった』と報告を受け、私の提案で我が部隊に引き入れようとした。
だが、最初にフィリーネとコンタクトを取ったのは牢屋の中。
そこに居たのは、膝を抱えた幼い少女だった。


「あ、あの、ラウラさん……怒ってます?」
「何?」
「そ、そのその、勝手に秘密喋って、日本まで来て……」
「いや、別にお前の特性については秘密にしているわけでは無い。お前自身の強み、メリットだ。上手く使え」
「は……はい!」


普段から明るく振舞っているフィリーネだが、自分の特性に負い目を感じている部分がある。
そう、フィリーネの特性は『極端に高い適正率』。
測定器が故障してしまうほど高い数値を出すので、暫定的にSとなっているが、実際の数値はわからない。
その事実を伝えれば、誰だろうとIS学園への入学を認めるだろう。
だが、それは同時にフィリーネに多大なる期待が掛かることになる。
それを、フィリーネは嫌っていたはずだ。


「どういう心情の変化なのかは知らないが、この学園に来たのなら相応の努力をするのだな」
「は、はい! お任せください! ラウラさんの為に頑張ります!」
「いや、私の為ではなくフィリーネ自身の為にだな……」


フィリーネは、直ぐに「他人の為」と発言する癖がある。
意図的にしているのか、もしくは自分をないがしろにしているのか。
稀に心配になる。


「……時にフィリーネ」
「はい?」
「先ほどから鼻の辺りに赤いものが見えるのだが?」
「あ、すいません、興奮して鼻血が……」
「何に興奮したんだ?」
「もちろんラウラさんの裸体に―――」


無意識に蹴りを入れて、部屋の外まで吹き飛ばす。
フィリーネは私で遊ぼうとする所があるからな。


「あ、あの……そろそろ時間が……」
「ん?」


同室のシャルロットが、遠慮がちに目覚まし時計を見せる。
見ると、時計の短針が9に近づきつつあった。




 ◇




遅刻ギリギリで教室に駆け込んできたラウラとシャルと軽く挨拶を交わすと、直後に千冬姉が教室に入ってくる。
千冬姉が教壇に立った頃に、教室を覗き込む人影。
1週間前にクラスメイトになった、桃色女子ことフィリーネだった。
もちろん、問答無用の出席簿アタックを食らって席についた。


「今日は授業の前に、来週から行われる授業内トーナメントについて説明する」


千冬姉はプロジェクターを下ろし、名前が羅列された表を映した。
ちなみに授業内トーナメントとは、その名の通り授業時間を利用したトーナメントだ。
説明いらなかったな。


「先ず最初に4つのグループに分け、バトルロワイヤルを行う。そこで勝ち残った者が4名、トーナメント形式で戦う」
「織斑先生、それではあまりにも専用機持ちに有利なのではありませんか?」
「良い質問だな」


箒の質問に、千冬姉はプロジェクターを指差して答える。


「バトルロワイヤルとは、何も全員が敵と言うわけではない。戦闘中、あるいは戦闘前に予め手を組んでおくことも可能だ。つまり……」
「つまり……?」
「専用機持ちは袋叩きにあう可能性があると言うことだ」


唖然としたのは、もちろん俺、セシリア、シャル、ラウラ。
そして当然の如く、この4人はそれぞれのグループに別々に振り分けられている。
これ、確実に詰みじゃないか?
あ。箒と同じグループだ。


「専用機持ちは今週中に仲間を増やしておくことだな……そうだ、エルトゥール」
「ひゃい!?」


考え事でもしていたのか、急に指名されて立ち上がる桃色女子。
訝しげな目を向ける千冬姉とくすくす笑うクラスメイトを見て、真っ赤になって縮こまった。


「放課後、第2アリーナに来い。解ったな?」
「は、はい……」


あれ? 確か、今日は第2アリーナは点検の為に使用禁止だったはずだけど……


「では、授業を始めるぞ」


色々と大事な事をさらっと伝え、千冬姉は授業を開始してしまった。




 つづく



[27180] ラウラちゃんと桃色女子 第三話「私の秘密と私の企み」
Name: oyakata◆719bed6c ID:a8ffd639
Date: 2011/04/20 01:32
 放課後の第2アリーナ。
そこで私は、鬼と対峙していました。


「誰が鬼だ」
「ひでぶっ!?」


ISスーツに着替えて千冬教官の前に立っていた私の頭に、鋭いチョップが飛んできました。
何で考えている事がわかったんだろう……


「さて、では打鉄に乗れ」
「え? い、いきなりですか?」
「早くしろ」


有無を言わさず、用意されていた打鉄に搭乗させられる私。
IS学園でISに乗るのは、これが初めてだ。


「んしょ……と」
「飛んでみろ」
「……はい」


カツアゲですか、と心の中で突っ込んで、起動中のISに浮上命令を出した。
けれど、『予想通り』ISは微動だにしなかった。


「……駄目か」
「うぐぐっ……」


千冬教官は、ため息交じりにそんな言葉を呟いた。
そう。何を隠そう、私はISを動かせない。
いや、最初は動かせたんだけれど……最初の起動以来、何をしてもISが反応してくれない。


「ドイツで最後に見た時と同じだな。あれ以来、一度も動かせて無いのか?」
「お恥ずかしにゃがら……」


私は千冬教官がドイツで指導をしている途中でブラックラビット隊に加わったけれど、一度もISを起動することは出来なかった。
そしてそれは今も変わらず。
ドイツ軍の他の教官は全員諦めたけれど、千冬教官だけは最後まで諦めずに教えてくれた。
結果、私はIS操縦者を離れてブラックラビット隊の技術班として整備を担当することにした。
私を拾ってくれたラウラさん、私の事を最後まで見捨てなかった千冬教官の為に、私はISについて深く深く勉強した。
お陰で、ISの知識だけならば随分と詳しくなった。
けれど、そのままだとラウラさんに付いて日本に行くことが出来ませんでした。
だから私は、自分の特性を使って無理矢理IS学園に入学したのです!


「お手数をお掛けします……」
「やれやれ……無茶な事をする。軍では戦闘できないのならば整備に回ることは出来る。だが……」


千冬教官は言葉を切って、少し考える仕草をした。
たぶん、言葉を選んでいたんだと思う。
私を傷つけないための、言葉を。


「ここはISの操縦及び戦闘を学ぶ場。ISに乗れないことが知れ渡れば立場が悪くなるのは解るだろう」
「解ってます。それでも、私はラウラさんの側でお守りしたかったんです! あと、出来れば一緒の部屋でお話したり食事したり、同じベッドで寝たり……」
「そこまでだ。もういいから降りろ」


私の夢を語らせてくれない千冬教官。
少し残念だったけれど、とりあえず打鉄から降りて一息つく。
……正直、ISに乗るのは1年ぶりだったから、何か変化があるかな~とちょっと期待していたんだけれど……駄目だった。


「やはりお前の性格が原因なんじゃないか?」
「ひ、酷いよ千冬教官!? 私のラウラさんへの愛が原因と!?」


私があまりにもラウラさんを愛している為、ドイツのとある教官が「ISがお前を女と認識していないのでは無いか」と仮説を立てた。
そのお陰で私は何故か料理やら掃除やら、洗濯やら……果ては茶道やら、花嫁修業的な事をさせられまくって女子力を上げさせられた。
まぁ、男でもISを使えるという前例が出た以上、この特訓が全くの無意味だったと解ったわけだけれども。


「まぁ、あの仮説は冗談だとしてもだ……」
「その冗談を真に受けて料理を習うように指示したのは誰でしたっけ……?」
「今だから言おう。あれは私が手料理を食べたかったから覚えさせただけだ」
「にゃ、にゃんと!?」
「まぁ、ISが何故女性にしか反応しないのかは解っていない。それが解らないことには、お前がISを動かせない理由も分からないだろう」
「ちょ、ちょっと待って下さい!? 掃除は!? 洗濯は!? 茶道は!? んで修行の成果とか言って毎日私に千冬教官の家事をさせたのは!?」
「まぁ、とりあえず来週のトーナメントは……」
「ちょっと千冬教官ー!」
「私の事は織斑先生と呼べ」
「では織斑先生! ドイツに居た頃の……」


それから1時間ほど押し問答が続いたけれど、結局千冬教官の口から真実を聞き出すことは出来なかった。
まぁ、何となく騙されていることは解っていましたよ?
意外と楽しかったし、役立たずだった私にも出来ることがあったのは嬉しかったけれど……
納得できなぁぁぁぁぁぁぁい!




 ◇




 液晶の光以外の光源の存在しない、狭い部屋の中央の椅子の上でウサ耳がピコピコ動いている。
時折、「うーん」とも「むーん」とも付かない呻き声が聞こえるが、それ以外に音は無い。


「……見えた!」


と、椅子から突然立ち上がった束は液晶の1つを叩く。
すると、その液晶の映像が切り替わり、ロボットアームのような物体が陳列されている倉庫のような場所が映し出された。


「これにしよう! そうしよう! さぁて忙しくなるぞー! 先ずはぁ~……」


と、何事か始めようと椅子から離れた瞬間、椅子の手すりに置いてあった携帯から着信音が流れた。
ゴッド・ファーザーの曲……と、この説明はいいか。


「もすもす? 終日? 皆のアイドル束ちゃんだよー。やっほーちーちゃん」
「その挨拶はどうにかできないのか?」
「やー、この挨拶は私のテンプレートなのだよ。たった今決めたんだけどね」
「……」


ぶつっ。
切れた。デジャブだった。


「わー、待って待ってってばぁ~!」


再びの着信音。
電話の向こうから、心底疲れた様子の千冬の声が再び聞こえてきた。


「毎度このやり取りをするのは、疲れるんだが」
「やー、めんごめんご」
「……まぁいい。今日は以前話したフィリーネについて聞きたい」
「ふぃりーね? はて?」
「……以前、データを渡しただろう。適正率が極端に高いにも関わらず、ISに乗れなかった女性操縦者だ」
「あー、確かそんなデータがあったような……」


束は相変わらず、千冬・一夏、妹の箒と両親のことしか認識していない。
なので、千冬はフィリーネについてでは無く、データについて尋ねた。
案の定、その手の問題点については記憶していたらしく直ぐに話をすることが出来た。


「あぁ、これかぁー。うんうん、データが残ってたよ」
「そいつの症状、原因は判明したか?」
「やー、ちーちゃんの頼みだから解決させたかったんだけどねー」


束はデータを表示させた液晶を指で突付いて、残念そうな表情をする。


「どうやらISの自己進化プログラムの中に原因があるっぽいんだよ。調べるのは難しいかなぁ」
「そうか……」


心なしか、電話越しの千冬の声も沈んでいた。
その声を聞いて、束は焦る。


「あ、あ、でもでも、その代わりと言っては何だけれどもとあるマシーンを開発してプレゼントするよ!」
「マシーン?」
「そう! 名づけてIS対策兵器『ちーちゃんズ』! 臨海学校の時の情報端末アタックを受けてピーンと来たよ! あの鋭い突っ込み技術を流用して……」


ぶつっ。
切れた。またもやデジャブだった。


「わー、まだ話してるのに……いいもん! 束さん、勝手に作って勝手に送るからね!」


携帯に向かってあかんべえをして、椅子の上に放り投げる。
その後、鼻歌を歌いながら部屋を出て行った。




 ◇




「み、皆さん。落ち着いて下さい」
「ね? ね? いいでしょ? 見せてよー」


読者の皆様、こんにちは。フィリーネです。
今は学校での授業が終わり、放課後の自主練の時間。
場所は第3アリーナの更衣室です。
読者の皆様はご存知の通り、私はISに乗れないのでアリーナに来ること自体、場違いなのですが……
そこにラウラさんが居ると聞けば行かないわけには行きません。
もちろん、観客席に居ても悶々するだけなのでISスーツに着替えてお隣でその勇士を眺めようと思ったのですが……
予想外の事件が起こりました。
クラスメイトによる執拗な『見せて攻撃』です。


「フィリーネさんのISって、専用機なんでしょ? 見せてよー!」
「い、いえ、私のは量産機に自分で装備を追加したカスタム機で、専用機では……」
「ぇえ!? 自分でISパーツを作った!?」
「凄いじゃん、それ!?」
「い、いや、ドイツ軍の技術部でちょっと仕事を……」


しまった。状況が悪化した。
ちなみに、どうしてこういう状況になったかと言うと……
『ボーデヴィッヒさんのISと織斑君のISって、どっちが強いのかな?』
『なんで?』
『ほら、前の学年別トーナメントの時。ボーデヴィッヒさんが織斑君のISを倒した後、エネルギーを充電した織斑君がボーデヴィッヒさんのISを倒したって』
『あ、そういえば聞いた。ボーデヴィッヒさんも織斑君も、エネルギーの残量はほとんど無かったらしいし、織斑君の粘り勝ちなのかな?』
ラウラさんの性格が柔らかくなるきっかけとなったらしい学年別トーナメント。
その試合で、何とラウラさんはあの一夏に負けた。
と、ラウラさん本人が言っていた。
そんな事があるはずが無いけれど、ラウラさんも言っているし、こうしてクラスメイト同士の世間話で出てくるくらいなのだ。
事実なのだろう、と認めざるを得なかった。
それを知った私は、ラウラさんの名誉を保つ為……と言うか、自己満足の為に口を滑らせた。
『まぁ、ラウラさんをサポートする為に作った私のISとタッグを組んでいたら負けなかったけどね!』
その一言で、女子更衣室に居た全生徒が私を取り囲むこととなった。


「そ、その、確かに下着姿の女子生徒はそそるけれどそんなに大勢で詰め寄られると恐いと言うか……」
「え? 何て言ったの?」
「い、いや、何でも……」


見知らぬ生徒同士の世間話に入っていった勢いはどこへやら、私は縮こまって否定を繰り返すだけでした。
とほほ、実はチューンしただけで乗れないなんて言えない……


「ところで、貴方のISは? 待機状態なんだろうけど、どこにつけているの?」
「え? あ、これだけれど……」


私は鞄の中から、普段使わないISを取り出した。それは……


「……猫耳です」
「きゃーーーーーーー可愛いーーーーーー!」


詰め寄っていた女子が、更に詰め寄る。ちょ、圧殺される……!
ぁああぁぁぁぁあ、目の前におっぱいが……い、いかん、ここで騒ぎを起こしたらラウラさんの側に居れなくなる……うおおお生き地獄ううううう!


「ねぇねぇ、早くアリーナに行こうよ! 起動した状態見せて!」
「や、あ、あの……ごめんなさい! 今日はやっぱり調子が悪いからパス!」


私はISスーツのまま鞄を引っつかんで更衣室から逃げた。
うぐぐ、ここが普通の学校だったら……迷わずに手を出していたのにぃ!
え? それもそれで問題? はは、何を言っていますのやら。


「ふぅ、死ぬかと思った……性的な意味で」
「ちょっと、アンタ何してるの? こんな所でそんな格好して」


教室棟の更衣室で制服に着替えようとした所、丁度教室棟から出てきた鈴と鉢合わせした。
鈴とはここ1週間、千冬教官の手伝いに連れまわされている時に出会った。
どうやら千冬教官の事が苦手らしく、出会う度に逃げるように立ち去っていた。


「あ、鈴たん」
「……アンタ、ナチュラルにその呼び方止めなさい」
「だぁってぇ、こんなラブリィな子を前にして正気を保つために仕方ないじゃない」


鈴は、ラブリィだ。
私が男だったら速攻でお持ち帰りしている。
スカートが短く、肩が露出した制服がいい味を出している。殺人的ですね。


「まぁ、呼び方なんてどうでもいいわ。それよりも、どうしてそんな格好してるの?」
「おっぱいから逃げてきました」
「……もういいわ。アンタと話すと時間を浪費している気がする……」


睨むような蔑むような目線を送りつつ、鈴はアリーナへ向かおうとする。
すれ違いざま、私は鈴に声をかける。


「そうだ。鈴たん、ちょっといい?」
「何?」
「一夏って男子知ってる?」
「……知ってるけど?」


あれ? さっきまで飽きれた顔だったのに、いきなり目が鋭くなった気がするよ?


「あ、いや、その……ラウラさんが好意を寄せているって聞いたんだけど、それって本当なのかなぁ~……って」
「え? そんなの本人に聞きなさいよ」
「そ、そんなの聞けないよぉ! 聞いたら認めないといけないじゃん!」
「……私の口から言っても同じだと思うんだけど……まぁ、一言で言うと『ベタ惚れ』よ」
「お、男の方が!?」
「ラウラの方が」
「ォオーノォー!」


砕けました。最後の望み、男の方の片思いと言う推測が。
しかも、片思い……ん? ラウラさんの片思い?


「ってことは一夏が誰かとくっつけばラウラさんは自動的にフリーに戻る!?」
「ん? まぁ、それは合ってるかもね」
「よぉーし! 私の次なる目標は決まった! 待ってろよ! 一夏ぁ!」
「ちょっと待ちなさいよ」
「うにゃ!?」


私がラウラさんを悪漢から救う手段を見つけた瞬間、鈴に胸元を捕まれました。
痛い痛い、今私ISスーツ……


「私もその作戦に入れなさいよ」
「……うぇ?」
「ふふふふふ……ラウラだけと言わず、みんな蹴落としてやるわ……!」


り、鈴が今まで見たこと無いような悪女の微笑みを浮かべている……
何かまずいスイッチ入っちゃったのかな……あれ、もしかして私、巻き込まれてる?




 つづく



[27180] ラウラちゃんと桃色女子 第四話「桃と鈴のポロリ大作戦」
Name: oyakata◆719bed6c ID:a8ffd639
Date: 2011/04/24 01:34
 読者の皆さーん、ブラックラビッ党の精鋭、フィリーネちゃんでーす。
現在位置はラウラさんの部屋の前。手には、私が先ほど書いたラブレターがあります。
え? ラブレターよりも行動で愛を示した方がいい?
へっへっへ、読者の皆さん。据え膳食わねば男の恥って知ってますか?
据え膳になる事も必要なわけですよ、つまりは。
まぁこのラブレター、私が書いたことになってないんですけどね。


 ◇


 数時間前


「いい? 一夏とラウラの仲を遠ざけるための作戦はこうよ」


話し合いの末、鈴と知恵を出し合って目的の為に作戦を立てることになったので、色々と考えたのです。


「先ず、アンタはラウラの部屋のポストに私宛ての手紙を入れるのよ」
「はて? 何故私が鈴たんにラブレターを?」
「『一夏が書いたラブレター』に偽装するのよ」
「な、なるほど!」


つまり、鈴が一夏と付き合い始めたのなら諦める他無い。
そうラウラさんに思わせることが目的と言うことですね。


「でも、鈴たん宛ての手紙がラウラさんのポストに入ってるって、おかしくないですか?」
「そこよ。投函された手紙に気が付いた頃合で、私が出てくるわけ」
「ほうほう」


以下、鈴の一人芝居


「こんな手紙が入ってたんだけどー」
「あーアイツ間違えたのかなー困ったもんよねー」
「もしかして、二人って付き合ってるのー?」
「あちゃーばれちゃったかー」
「そ、そんなー」


一人芝居終了


「的な展開になって、私に手紙を渡さざるを得ないでしょ? そうなれば誰が書いた手紙なのか、真相は闇の中」
「なんてえげつなくて隙の無い作戦だ! 鈴たん流石!」
「おーっほっほっほっほ! 褒めなさい褒めなさい!」


展開が昨日やってたドラマと同じだなぁ、とか言わないですよ私は。
鈴が頑張って考えたんです。えぇ、きっとそうです。


 ◇


「……と言う流れから、私が今、ラブレターを投函しようとしている所です」


正直、こういう騙すような手はあまり好きじゃないのですが、まぁ騙しあいは兵法の基本!
勝てばいいのです!
ってことで投函!


「……それで、その時に……」
「……しかし……」


立ち去ろうとすると、進行方向にある曲がり角から聞き知った声が。
あれれ、ラウラさんとルームメイトのシャルさんの声ではありませんか。
やばい、この廊下、隠れる所が無い!
し、しかたない……ここは奥の手だ!




 ◇




 「ラウラ、お風呂行く? それともシャワーで済ます?」
「今日はそこまで激しく動いたわけではないからな。シャワーで済ます」


一夏とのトレーニングを終え、私はルームメイトのシャルと自室に戻ってきた。
と言っても、私たちは一夏に指導していただけなので、そこまで汗は掻いていない。
シャワーで済ませても問題は無いだろう。


「そっか。じゃあ僕はお風呂行ってくるね」
「うむ」


シャルは着替えを取りに部屋の奥に移動する。
私はそのまま脱衣所に入り、服を脱ぎ始める。
いつも着ているズボンタイプの制服のボタンとベルトを外し、一気にずり降ろす。
眼帯を外して籠に放り込み、いつも右太股に巻きつけているシュヴァルツェア・レーゲンを外してシャワー室に入る。
と、そこに桃色の物体が居た。


「……何をしている、フィリーネ?」
「全裸のラウラさんあざーーーーーーーーーーっす!」
「出て行け」


何故かそこに居たフィリーネの右頬に掠るように蹴りを居れ、半回転。
足の甲で首を引っ掛け、脱衣所に引き寄せる。
そのまま片足で跳ねて脱衣所を出る。
玄関を開けて、足を思いっきり振りぬく。
もちろんフィリーネは吹っ飛んだ。


「ごちそうさまでし―――ほびぃっ!?」


廊下の向こう側の壁にぶつかって、ずるりと床に倒れた。
全く、人の部屋に侵入して何をやっていたのか……
扉を閉めると、背後に驚いた顔のまま固まっているシャルが居た。


「な、何があったの?」
「フィリーネが潜入していた。何か変な物が置いてないか?」
「え? 盗られたとかじゃなくて……?」
「あいつは馬鹿だが、人の物を盗るような事はしないだろう」
「……へぇ、信用してるんだね」


シャルが笑みを浮かべてそんな事を言ってきた。
少し照れくさくなって、視線を逸らす。


「恐らく、誰かに入れ知恵されて何か仕掛けに来たんだろう……ん?」


視線を逸らした先に、手紙が落ちていた。
恐らく、勢いよく開いた扉のポストから落ちたのだろう。
拾い上げてみると、それは……


「……筆跡が明らかにフィリーネだな……全く、あいつは……」
「ところでラウラ、その……服着たら?」
「む?」


そういえば、裸のままだったな。早くシャワーを……


「撮ったぁぁぁぁ!」
「!?」


フィリーネの声が聞こえたので、慌てて振り返る。
するとそこには、カメラを構えたフィリーネが立っていた。
そして振り向いたタイミングで、シャッターを押される。
つまり、写真を撮られた。全裸の。


「……何をしておるか、フィリーネ……」
「ごちそうさまです!」
「くたばれ」


足を振り上げて、顎を撃つ。
脳震盪でしばらく気絶するだろう。
全く、油断も隙も無い奴だ。


「ら、ラウラ、早く扉を閉めたほうがいいよ……」
「そうだな。風邪を引いては敵わん」
「あ、あははは……」


シャルが引きつった笑顔を浮かべている。
何か変な事を言っただろうか?




 ◇




「くっ、しくじったわね、アイツ……」


先ほどまでのやりとりを窓の外から見ていた私は、扉からたたき出されるフィリーネを見て作戦が失敗したと覚った。
次なる作戦を実行するため、私は新しい手紙の作成に取り掛かった。


「ふっふっふ、一夏の筆跡を真似するなんて朝飯前。アイツの字は見慣れてるんだから!」


昼の時間にやってるドラマにしては、良いヒントを得られたわ。
さぁて、やるわよ!




 ◇




「早く来なさいよ」
「ふぐぅ、酷い目に会いました……」


ラウラさんに見つかりそうになり、慌てて千冬教官の部屋から拝借した鍵を使って部屋に侵入。
シャワールームならバレないだろうと思って隠れていたら、何と全裸のラウラさん登場。
感極まって逃げることを忘れていたら投げ出されました。
んで、調子に乗って写真撮ったら顎を砕かれました。
もう本当、散々でした。
んで、目が覚めたら夕方でした。
と言うか、鈴に叩き起こされました。


「それで、私達はどこに向かってるんですか?」
「だから、私がまた手紙を作って渡したのよ。今度は、『一夏がラウラに出した手紙』を」
「へ?」


鈴の次なる作戦はこうだった。
一夏の手紙と偽って、『アリーナ裏で会おうぜ。お洒落して来いよ』と。
当然、一夏はいつまでたっても来ない。
愛想をつかして、次の日から嫌うようになる、と言う寸法らしい。


「そ、それではラウラさんがいつまでもアリーナ裏で待っているって事ですか!?」
「そうね」
「そんなのラウラさんが風邪を引いてしまいます!」
「……アンタ、ラウラがどんな格好してくると思ってるわけ……?」


そりゃ、お洒落と言ったらスケスケデヘヘヘな……
と、言っている間にアリーナに到着です。


「ほら。フリフリの服で、どっちかというと暑そうよ」
「へ?」


アリーナ裏を覗き込むと、そこには、所謂ゴスロリ衣装を着込んだラウラさんが立っていた。
な、なんて破壊力や……!


「ふふっ、可愛いじゃない。でも、いつまで待っても一夏は来な……」
「あれ、ラウラじゃないか」
「「!?」」


アリーナの反対側の角から、一夏が登場。
な、何故に!?


「い、い、一夏。あの手紙は……」
「手紙?」
「あ、アリーナ裏で待つ……と言う手紙が……ポストに」
「俺は通りかかっただけだけど……誰か待ってるのか?」
「……ん?」


ラウラさんは真っ赤になった顔で一夏と話していたけれど、会話がかみ合わないことに違和感を覚えたのか、握っていた手紙を読み直している。


「やば、気づかれたわ! 逃げるわよ!」
「うえぇ!? 今回私何もしてな……ってもう居ない!?」


見れば、鈴はISを起動して既に遠くに飛び去っていました。
ズルイです。


「フィリィ~ネェ~……」
「はっ!? ラウラさんの気配!?」


飛び去った鈴から視線を戻し振り返ると、先ほどまでアリーナ裏に居たゴスロリラウラさんが、真後ろに。
うはぁ、流石ですねラウラさん。私、全く気が付きませんでした☆


「や、あの、私じゃ……」
「しばらく頭を冷やせ」


今度は見事なコークスクリューによって私の身体は半回転の後に草むらに着地しました。ぶふぅ。




 つづく



[27180] ラウラちゃんと桃色女子 第五話「野獣一夏イチコロ大作戦!」
Name: oyakata◆719bed6c ID:a8ffd639
Date: 2011/05/04 02:56
「つ、次の作戦を考えましょう」
「その前に謝って欲しいんだけど鈴たん」
「な、なぁに! 私に掛かれば一夏なんてイチコロよ!」
「ソノマエニアヤマッテホシインダケドリンタン」


前回のラウラさんのコークスクリューでノびた私は、鈴の部屋に運び込まれました。
鈴はばつの悪そうな顔をしているけれど、謝ってくれません。


「次の作戦は至ってシンプルよ! 色仕掛け!」
「……誰が誰にですか?」
「私が一夏に!」
「別の作戦にしましょう」
「なっ、なんだとー!?」


鈴の転入時期を考えれば、色仕掛けして一夏を落とせていればラウラさんが一夏に惚れる事態にはならなかった。
つまり、一夏の好みと鈴の好みが一致していないのだろう。


「私が本気でやったら、一夏なんてイチコロよ!」
「……じゃあ、私がサポートに付きます」
「え?」


こうなったら、既成事実でも作らせて一夏と鈴のカップル騒動を起こしてやるわ!
そうすればラウラさんも諦めるはず!




 ◇




 時刻は午後9時。
場所は一夏の部屋の前。
もちろん、これから夜這いをかける為にわざわざココまで来た。


「ほ、本当にやるの?」
「本当にやるの!」
「あ、明日とかにしない? 今日はもう遅いし……」
「夜にやらなくてどうするの!」
「うぅ……」


鈴はさっきからこんな感じ。
本当は度胸が無い、胸も無い……とかそういうんじゃなくて、普通に女の子の反応だなぁ。
でも、それじゃ駄目!
鈴にはこれから一夏とラブラブちゅっちゅしてもらうんだから!
これも全てラウラさんの為! 私も一肌脱ぐわよ! 物理的に!


「さあ、行くわよ! その柔肌を野獣一夏に捧げるの!」
「うぐぐ……えぇい、ここで決めなきゃ女がすたる! やってやろうじゃないの!」
「ひゃっほう! 気合のレシピ見せてあげるわ!」


と言う訳でガチャー!っとダイナミック入☆室!
この部屋は常に鍵がマッハで全開だと聞いていたので問答無用で来訪です!


「わぁ!? な、何だ!?」


あ! もうベッドの上で寝る直前だったみたいですね。
まだ午後9時なのに、爺臭いです。
若者はもっと健全に! そう、KENZENに! 変態行為に勤しむべきです!
ってことで失礼します!


「織斑一夏ぁ! 今日はアンタに天国を見せてあげるわ!」
「な、何の事だ!? また玩具の拳銃でもぶっ放す気か!?」
「ふっふっふ! アンタにはもっと効く弾丸を用意したわ! カモン鈴たん!」
「え、えぇーい! なるようになれぇ!」


鈴の腰辺りを掴み、そのまま一夏の上に投げる!
状況が掴めないまま、鈴を受け止め、そのまま押し倒される形になる二人。
ふふふ、これで私が横から服装を乱して、写真でも撮れば一夏は社会的に終わる!


「見つかったとき用に、私の服も乱して……さぁ鈴たん! 一気に!」
「や、やめろ! おい、ちょっと待て!」
「ふっふっふ! 今更抵抗しても遅ぉい!」
「……………………………………………………………………」
「……およ、鈴たん? もしかして、気絶してる?」


どうやら鈴は投げ飛ばされて一夏に受け止められた辺りで、緊張のあまり気絶したっぽい。
うーん、可哀想なことしたかな?


「ありゃ、オチてる」
「って、鈴!? お、おい、どうするんだよ!?」
「いやー、まさかここまで純情だとは……」
「……何を、して……居るんだ……?」


おや? どこからともなくマイ女神ラウラさんの声が……?
はぅわ!? 私の背後に顔面蒼白なラウラさんが!?
まぁそりゃ、扉あけっぱなしで中から悲鳴が聞こえてれば誰でも入ってきますよねー。


「い゛……いや、これは……」
「フィリーネ……見損なったぞ……まさかお前も私の嫁を狙っていたとはな!」


やばい、やばいやばい……ラウラさんに見られた!
確かに着崩れた服でベッドの上に居ればそう判断せざるを得ないですよねー!
と言うかそう見えるようにしたんだから当たり前ですよねー!
色々と終わったー! 私終わったー!


「私の嫁を狙うなら、お前も敵だ! 覚悟しろ、フィリーネ!」
「……え?」


……て、敵? ラウラさんが、敵?
そ、そんなの嫌!


「ラウラさん! ご、誤解です!」
「誤解も何もあるか! これからは仲間とは思わん! ライバルとして全面対立だ! 覚えておけ!」


……そ、そんなぁ……
そんなの……そんなの……


「そんなの嫌ぁぁ~~~~~~~!」


私はラウラさんの横をすり抜けて部屋の外に出て、そのまま走り去りました。
ラウラさんに敵だと言われることが、こんなに精神的に堪えるなんて……




 ◇




 一夏の部屋の前を通ったら、開きっぱなしの扉の奥から一夏の声が聞こえてきた。


「や、やめろ! おい、ちょっと待て!」


何事かと慌てて飛び込むと、そこには……ベッドの上で膝立ちになっている制服が肌蹴たフィリーネと、横たわる一夏と鈴の姿があった。


「……何を、して……居るんだ……?」
「い゛……いや、これは……」


またフィリーネの悪巧みか……しかし、これはやりすぎだな……ここは少し気合を入れて叱っておくか……
鈴まで巻き込んで……一夏が何か勘違いしてしまったらどうするんだ。
しかし、フィリーネもあまり長いこと嫁と関わり続けると、嫁の良い部分に気が付いて惚れてしまうかもしれない。
ここははっきりと嫁宣言をしておくか。
フィリーネは、昔からやることがエスカレートする傾向にあるからな。


「フィリーネ……見損なったぞ……まさかお前も私の嫁を狙っていたとはな! 私の嫁をを狙うなら、お前も敵だ! 覚悟しろ、フィリーネ!」
「……え? ラウラさん! ご、誤解です!」
「誤解も何もあるか! これからは仲間とは思わん! ライバルとして全面対立だ! 覚えておけ!」


これでいいだろう。
ラウラさんラウラさんと、いつまでも私に頼りっぱなしになっているフィリーネには良い薬だ。
これで少しでも自分の為に動いてくれたら良いのだが……


「そんなの嫌ぁぁ~~~~~~~!」


いきなり、私の横を通って部屋の外に出て行ってしまった。
すれ違う時……泣いていた?
あのフィリーネが……?


「……解っている。私の為にやっているのだと言うことは」
「ラウラ、これはどういうことなんだ?」
「フィリーネの悪戯だ。すまないな、一夏」


そうだ。嫁にまで迷惑をかけて、少し反省させた方が良い。


「……そっか。よし、じゃあ追いかけなきゃな」
「……え?」
「知ってるか? 悪戯をするのは構って欲しいからなんだと」
「……構って、欲しい?」
「何か、あったんじゃないか?」


……フィリーネが、構って欲しい……?
ずっと誰かの為に行動していると思っていたが、それはまさか……構って欲しいという衝動の現われだったのか……?

「……っ!」
「お、おいラウラ! 俺も行くぞ!」


私は不安に狩られ、急ぎ部屋を出た。




 つづく


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