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[26812] 【ネタ】氷炎将軍とチートオリ主な少女【ダイの大冒険・多重クロスカオス】
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/04/03 20:23
プルプル…
ブルブルブル…
プチン
ビリバリィッ!!

「ふっザけんなああああああああああっ!!」
「あー、やっぱりこうなっちゃったか」

真っ二つに引き裂かれた《ジャンプコミックス・ダイの大冒険9巻》。
左側は燃え尽きて灰となり、右側は凍り付いて粉々になった。

「ミストバーンムッコロス」
「ダメだよー、《こっちの》ミストさんはいい人なんだからー」
「なおさら殺す」
「その《ミストさん》でもないからー」

右半身がツララに覆われ、左半身から炎を吹き上がらせる大柄のゴーレム相手に
まだ幼い少女が必死にすがり付いて歩みを止めようとする。

「ええい、放せって…ナニやってんだテメエはあああああああああっ!?」
「ふえ?」

燃え上がる身体にしがみつけば少女は当然燃える(物理的に)。
あわてて少女を引き剥がしたが、少女の服は焼け焦げ、全身が醜いケロイド状になっていた。
…にもかかわらず、少女は相変わらずのほほんとした様子である。

「んーいつものことだしねー。それに《治癒(ヒーリング)》唱えればすぐに…」
「…《ベホマ(完全回復呪文)》」
「ほえ? …おおー」

氷の右手から暖かな光が溢れ少女の傷を瞬時に癒していく。

「すごーい! いつ回復呪文なんて覚えたの《フレイザード》?」
「ああン!? テメエが事あるごとに火傷も凍傷も気にせず俺に抱きついてくるからだろうが!
 俺はその都度大騒ぎになるたびにバーン様に大目玉食らってんだよ! いい加減隠蔽工作の一つも覚えるってんだ!」
「あはー、フレイザードは優しくていい子だねー。いーこいーこ」
「撫でんなぁ! また焦げるだろうがぁ!」

喧々諤々。

「…というわけで、フレイザードを創るのにがんばってくれたのはミストさんなんだから喧嘩しちゃだめだよ?」
「わーったよ」
「ちゃんと聞いてるー?」
「聞いてるっての。いいから続き読ませろ…なんだこれ、バランのオッサンマジパネェ」
「あはー、今は完全にマイホームパパだけどねー」
「…それもテメエの仕業ってか。滅茶苦茶だな《チートオリ主》ってやつは」
「んー、わたしがやったわけじゃないけど…まあ、間接的にはそうかもねー」

黙々と《ダイの大冒険》を読み進めるフレイザード。
至極のんびりと会話を交わす少女。
ものすごいシュールな光景だった。

「…なあ」
「どうしたのー?」
「この《メドローア(極大消滅呪文)》ってヤツだが…俺にも使えるか?」
「できるよー。うーん原作どおりだと習得に3年くらい掛かるかもしてないけど、今のフレイザードなら半月も在れば完全習得できると思うよー」
「へえ、そりゃ上等…」
「なにせフレイザードのコアには高純度な風水火土の魔法石を使ってー、バーン様秘蔵のオリハルコンに溶かし込んでー」
「…おい」
「《銀鍵守護神機関》と《ゲッター線増幅炉》に一ヶ月づつほおり込んでー」
「…待て」
「《賢者の石》作成用の練成陣で作り上げた特別製だもんねー」
「だもんねー、じゃね…!」
「あ、あとわたしの卵細胞も使ってたんだった。忘れちゃダメだよねー」
「ちょと待てやコラあああああああああああああああああああ!?」

魂の絶叫であった。

「どういうことだオイィ!? 全然聞いてねえぞんなことアァン!?」
「あうー、ブロントさんと兄貴が混じってるよー」

ガックンガックンと少女を揺さぶるフレイザード。
律儀にも両手の炎とツララがちゃんと消えている。

「生体細胞使ったほうが強くなるかなーって」
「かなー、でそんなもん使うんじゃねえよ…とんだ魔改造してくれやがって」

ふう、というため息をついて少女から手を放す。

「…えと、ね? 無意味に魔改造したわけじゃないんだよー? 原作だと空裂斬でコア切られちゃってるから、オリハルコンで頑丈にしたかったし、炎と氷だけじゃ発展性に疑問があるし、ゲッター線とコルレオニスで進化の多様性も欲しかったのと、ホムンクルス技術で闘気も使わせてあげたかったし…」
「ああ、わかった。分かったから、涙目ですがり付いて来るんじゃねーっての。また焦げるぞ」

右手で少女をゆっくり押しのける。
はあ、とまたため息をつくとフレイザードは少女から視線をずらして呟いた。

「…ありがとよ《オフクロ》」
「えへー、フレイザードがデレたー」
「デレた言うなああああああっ!! そして抱きつくなあああっ! 焦げるって言ってんだろうがああああっ!!」

どっとはらい。


****

萌えフレイザードという謎ジャンルが飛んできたので書いてみた。



[26812] 大魔王様が魔改造されたようです
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/03/30 19:04
魔改造バーン様スペック

・霊光波動拳が使える
「針の上で指一本の逆立ちができる? じゃあ今度は単分子ワイヤーの上でやりな」
「…どこから調達してきたのだ?」
「あの娘が持ってきたよ。ポンタだかボンタだかいう着ぐるみ着てね」

『ふもっふ!』

「…なるほど」

・波紋呼吸ができる
「1秒間に1000回の呼吸。あと噴出す油も真正面から無効化できるように」
「なんか難易度メチャ上がってンスけどぉーーーーっ!?」
「彼はこなしたわ、JOJOもやりなさい」
「バァーーーーーンっーーーーーーーー!?」

・死ぬ気の炎が使える
「よくわからんので全身どこからでもカイザーフェニックスが出せるようにしたのだが」
「バーンさん、それはもう《死ぬ気の炎》ではなく《死なす炎》です」

・界王拳が使える
「ははっ、おめえ強えなあ!」
「当然だ! 余は大魔王バーンなり!」

「…あの世が消し飛ぶんじゃないかのう」
「ウホウホ」

・咸卦法が使える
「ふむ、少々手こずったがメドローアの応用でなんとかなったな…む?」
(衝撃波だけで紅き翼全員気絶)

・北斗神拳が使える
「北斗剛掌波ぁ!!」
「カラミティウォールゥ!!」
「百烈拳!」
「爆裂拳!」

「むう…あれぞ次代の北斗を担う者…!」
「違うと思うぞ、トキ」
「このリハクの」
「節穴はもういいから」

・小宇宙(コスモ)が使える
「な…なんだこのビッグでグレートな小宇宙の高まりは…」
「余は開眼せり…真なる天地魔闘の構え…」
「馬鹿め! 一度見せた技が聖闘士に通じるかぁーーーーーっ!」

BACOOOOOOOOOOOOONNN!!

「余の鳳凰の羽ばたきに倒せぬものなどない」
一輝「(あれ、セリフパクられた?)」



四方のどこを見渡しても地平線しか見えぬ程の広大な荒野。
そこに立つ2つの影があった。

「アナタが最近調子に乗ってる《自称・大魔王》のバーンかしら?」

一人は真紅のマントと豪奢なドレスをまとった美しい女性。
その正体は最強の女王竜《リュミスベルン》。

「自称かどうかはともかく、余がバーンだ。貴公がリュミスベルンか?」

もう一人は格闘家を思わせる軽装鎧をまとった端正な顔立ちの男性。
比類なき魔力と闘気をもつ大魔王《バーン》。

「あら、よくご存知ね」
「この世界に来てから嫌でも耳にするのでな。その立ち昇る闘気、魔力。確かに最強と呼ぶにふさわしい」

視線を交わす二人の間に濃密な殺気が立ち込める。

「ならどうするの? 尻尾を巻いて逃げ帰る?」
「笑止! このバーンの覇道の前にあるもの、全て叩き伏せるのみ!」

殺気は暴風となって周囲を満たし―――ここに残酷なる決闘場《真竜の戦い》の場が完成した。

「ならば」
「ここで」

『死ぬがよい!』

二つの《暴虐》が同時に駆け出し…決闘が、始まった。



「あばばばばリュミスの怒りだリュミスの怒りだ怖い怖い怖い怖い」
「あううう、ブラッドさましっかり~」
「この世の終わりだ…ああくそ、せめて嫁さん欲しかった…」
「わ、私でよければいつでも!」
「ユメ! 俺を放すなよ! なぜならメッチャ怖いから! 今俺は命が助かるならゴキブリにだって土下座できる!」
「すごくかっこ悪いけどなぜかキュンとしちゃいました! ブラッドさま!」



天が割れた。地が裂けた。虚空が抉れ。刻が死んだ。
凄まじき暴力の果てに世界から隔絶されたこの決闘空間で大魔王と女王竜は無限に思える時間を全力で戦い続けた。

「くっ…ハァーッ…ハァーッ…」
「が、ふ…ぐううっ…」

女王竜の片羽根は根元よりもぎ取られ、オリハルコンより強靭な鱗も大半が削り取られた無残な姿を晒している。
大魔王の3つの心臓はすでに2つを潰され、切り札の鬼眼の力も枯渇している。
共に、満身創痍。

「こ、ここまで…やるとはね…正直、侮っていたわ…」
「く、くく…光栄だな…そちらもヴェルザーごときとは比べ物にならん強さよ…」
「誰のことかは知らないけど、私を前に他の竜のことなど失礼とは思わないの?」
「そうだな、失言であった。謝罪しよう」

二人の視線が交錯する。
大魔王であることも、女王竜であることも関係ない。
バーンとリュミスベルン。ただ、それだけ。

「バーン、今は私だけ見ていればいいのよ」
「無論だリュミス。今はそなたしか目に入らぬ」

巨大な竜、リュミスベルンがその口内に全力のブレスを集束させる。
立ち向かう魔族、バーンが両手を広げ《天地魔闘の構え》で応える。

「はあああああああああああああっ!!」
「おおおおおおおおおおおおおっ!!」

魔力が、闘気が、竜気が、光が、闇が、
膨大な《力》同士がぶつかり合い、世界が爆ぜた。



「い、生きてる…俺、生きてる…イヤッホウウウウウウウウウ!!」
「よかったです! 本当によかったです! ブラッドさま!」




「…それで、決着はついたのですか? バーン様、リュミス様」
「さて、どうだろうな」
「まあ、そのうちつけるわよ」

玉座の傍らで己の主君に尋ねるミストバーンに、
共に寄り添う大魔王と女王竜はそう答えた。

『おーい、バーン! オラと勝負しようぜー!』

「…また孫悟空?」
「そのようだ…むくれるな」
「だって…ンむっ?」

唇を尖らせたリュミスの口をバーンが即座に己の唇でふさいだ。
ミストバーンの姿はすでにない。

「…今宵は寝かさぬ。準備して待っているがよい」
「…馬鹿」

・最強の女王竜《リュミスベルン》と同格である

どっとはらい。

**

燃えバーンというのも受信したので追加してみた。

ちなみに

原作真バーン<<(超えられない壁)<<悟空スーパーサイヤ人4≒魔改造真バーン≦リュミス

という設定。



[26812] 六大軍団が会議を始めるようです
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/06/26 19:05
魔王軍六大団長

氷炎魔団長 フレイザード
「やっぱりフレイザードはこのポジションだよねぇー」
「引っ付くな! 焦げるって言ってんだろうが!」

百獣魔団長 クロコダイン
「フレイザード、ゲーム貸してくれ」
「今度はなんだ?」
「俺は斧の技が少ないのでな。テイルズでもやって勉強しようと思っている」
「BASARAの信玄でも真似してろや」

超竜軍団長 リュミスベルン
「今夜はバーンと…えへ、えへへへへへ」
「リュミス様、よだれがとんでもないことになってます」

不死騎団長 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
「茶々丸、この締まりのない連中はどうにかならんのか。具体的にはあの色ボケ」
「手遅れかと、マスター」
「はあ…ところでエルザはどうした」
「遊びに行きました」

妖魔士団長 プレシア・テスタロッサ
「あら? リュミスさん、アリシアを見なかったかしら?」
「えへへへ…はっ! コホン、いえ、見てないわね」
「どこに行ったのかしら…」

魔影軍団長 ルーミア
魔影軍団副団長 兼 総合相談役 ミストバーン
「まてまてー」
「わー」
「逃げるのだー」

「団長! 会議時刻には遅れるなとあれほど…アリシア嬢とエルザ嬢まで!?」
「今度はミストバーンが鬼なのだー」
「逃げろー」
「わー」
「ああもう! 闘魔滅砕陣!」
「捕まったー」
「やー」
「すり抜けるのかー」
「団長おおおおおおおおおおおっ!?」

魔軍司令 ハドラー
「(だめだこの魔王軍はやくなんとかしないと)」ort

「あ、バーンおじーちゃんだ!」
「わーい」
「おひげなのかー」

「フォフォフォ、余のひげが好きか、そーかそーか」
「ああおじいさんなバーンも素敵…えへへへへへ」

「やっと集まった…では会議を始めます。議題は魔王軍結成3周年パーティについて」
「ケーキー」
「ゲーム大会だ!」
「待て、漫画喫茶忘れんな」
「バーンと一緒に…えへへへへ」
「鬼岩城の飾りつけを…」
「ファッションショーよ! アリシアの可愛さを全軍に…!」
「お肉食べるのだー」

ハドラー「オワタ」\(^o^)/

どっとはらい。


**


萌えミストバーンとオワタハドラーも追加してみた。
クロコダインはオッサン補正で続投。



[26812] デルムリン島に氷炎将軍がおじゃまするそうです
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/03/30 16:18
デルムリン島

南海の孤島デルムリン島。
モンスター達がのどかに暮らすこの島に子煩悩な一人の父親の姿があった。
彼の名はバラン。この世界における最強の一角を担う《竜の騎士(ドラゴンのきし)》である。
とてもそうは見えないが。

「ディーノ~パパだぞ~」
「ホギャーーーー!」
「あ、あれ? 抱き方が悪いのか? こうか? それともこうか?」
「ホンギャーーーーーーーーーーーー!!」

右に抱え、左に抱え、高い高いをし、百面相を繰り出しても、彼の息子ディーノはいっこうに泣き止む気配がない。

「あーあー、なにやってんだよ親父さんは。ほら、アタシに貸してみな」
「う、うむ。スマン」

あんまりにもあんまりな光景にディーノの守護騎士の一人である少女、
ヴィータがバランから主君たる赤子を受け取った。

「ほ~らディーノ~、ヴィータ姉ちゃんだぞ~」
「キャッキャッ」
「…何が悪かったのだろうか」

ヴィータの腕に抱かれるや否や、即座にディーノは笑顔を見せた。
その笑顔にヴィータの顔も綻ぶ。
仲睦まじい姉弟のような二人にバランも嬉しくなるが、
同時に自分の不甲斐なさに愕然としていた。

「どうしたの、あなた」
「ソアラ…いや、少し、な」
「あっ、ママさん」
「あら、ディーノをあやしてくれてたの? ありがとうヴィータちゃん」
「まーな。親父さんがへったくそなもんだから…」
「ふふ、相変わらずなのね」
「髭が怖いのだろうか? 髪型か? 顔だったら直しようがない…」
「ピィ~…」
「全部じゃねーの」
「ダァ」
バラン「」ort
「ピィィッ!? ピィピィッ!」

【ゴールデンメタルスライムに慰められる恥知らずな竜の騎士の姿があった!】
バランの脳内でそんな声が聞こえたという。
バランの妻、ソアラは夫と息子、そして家族同然の幼い少女騎士の姿を微笑ましく見つめていた。



「ブラスさん、スープの味を見てくれませんか?」

ディーノの守護騎士の一人、シャマルは料理下手を直すべく、
モンスターのまとめ役である鬼面導師のブラスのもと料理修行を行っていた。

「どれどれ…おう、なかなか上達したのう、シャマルさん」
「はい、頑張りましたっ」
「これなら食事を任せても…む!? なんじゃこのにおいは!?」
「ああああああっ!? お鍋かけっぱなしだった~~!!」

慌てて台所に戻るシャマル。
『鍋が! 水が! 窓に! 窓に!』という声が聞こえた気がしたがブラスは無視することにした。

「はあ…料理はもうしばらくワシとソアラ殿でがんばるしかないのう…」



「ふう、今日の開墾作業はこんなところか」

ディーノの守護騎士、ザフィーラはモンスターたちを率いて農地開拓に汗を流していた。

ブホッブホッ
ブルルルルッ

「ああ、お前たちもご苦労だったな」

暴れ牛鳥やマッドオックスの首筋を撫でて労っていると。
桃色の髪の守護騎士、シグナムが気落ちした表情で空から舞い降りてきた。

「ザフィーラ…今戻った…」
「遅かったなシグナム。今日もロン・ベルク殿のところか?」
「ああ…また勝てなかった…」
「魔王軍剣術顧問ロン・ベルク。古今東西、全次元のあらゆる剣術を修めたという達人の中の達人を相手に勝負になるだけマシではないのか?」
「それはそうだが…だが私は!」
「別に思いを告げるぐらい、いつでもいいだろう?」
「#$%’%&’(&(’&%%$!?」

羞恥と混乱のあまり、シグナムの言語は壊滅していた。

「言っておくがバレバレだぞ。ヴィータはおろかバラン殿さえ気づいている」
「…飛天御剣流さえ…飛天御剣流さえあればっ!」
「まあ、がんばれ」
「フタエノキワミ アーッ!!」
「…それは違う流派だ。とりあえずヨーダ師にフォースでも習ってこい」

ちなみにザフィーラはバッチリフォースを習得していたりする。
その後シグナムが《見よう見真似・龍槌閃》を会得するのは少し先の話。



「よっ…と」
「到着ー」

バラン一家の家の前に《ルーラ(瞬間移動呪文)》で姿を現したのはフレイザードとチート少女である。
その手には布製の買い物袋がいくつも提げられ、肉やら野菜やらがこれでもかと詰め込まれていた。
紙テープの値札が張ってあるところから現代の店舗で買ったことがわかるが、
ビニール袋を使っていないところを見るかぎり、魔王軍でもエコは大事らしい。

「うおーい元気かオッサーン」
「遊びに来たよー。ディーノ君元気ー?」
「ピィッ!ピィッ!」
「おうゴメ公。テメーも元気そうだな…左に乗るな、焦げるぞ」



「今日は焼肉ですよ~」
「オフクロがわざわざ日本まで転移して買ってきたんだ。ありがたく食いやがれ」

そして焼肉パーティは戦場となる。

「あーぶー」
「ディーノ! 危ねえから俺の身体に登るんじゃねえ! ったく…」
「霜降り和牛~ロースカルビ~」
「ヴィータ! テメエ俺の身体で焼肉を焼くなって何度言わせやがる!」
「別にいいだろー。手っ取り早いしー」
「ふざけ…オフクロまでナニやってんだコラアアアアアアアアアアアアっ!?」
「おいひー」
「すいませーん、シャーベット作るんで右手お願いしまーす」
「酒の氷が切れた。ひとかけらくれ」
「フレイザード君、鍋作るから溶岩石一つくれんかの。石焼鍋はいい味が出るんじゃ」
「俺を調理器具にすんなあああああああああああああっっ!!」

…フレイザードにとって、であるが。


どっとはらい。


**

バランの詳細が皆さん気になっているようなので書いてみました。
クロス先は車名つながりです。




[26812] 魔軍司令がカウンセリングを受けるようです
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/04/16 17:09
鬼岩城 プレシア診療所

攻撃・回復双方の使い手があつまる妖魔士団は魔王軍の衛生兵も兼任する。
なかでも団長プレシアの開く診療所は彼女の知識と技術により高い信頼度を誇る。
そんなプレシア診療所に今日も患者が一人。

「…で、どうしたの?」
「はあ…最近バーン様にボディを新調してもらったばかりなのだが…胃が…」

魔軍司令ハドラーであった。

「…胃壁に傷はないわ、心因性のものね。安定剤出しておくけど…カウンセリングもしておきましょうか?」
「頼む…」
「それで?」
「…俺はこの魔王軍でやっていけるのだろうか? バーン様の考えに異議があるわけではない。人間をはじめとする他種族との共存…最初は戸惑ったが悪くは無いと感じている。それはいいのだが」
「だが、なに?」
「……軍団長どもが軽すぎる! フレイザードは会議中に漫画読むし、クロコダインは筋トレ中はどんな大声でも反応せん! リュミスベルンはちょっと眼を離すと妄想を始めるし、ルーミアに至っては単なる子供だ! エヴァンジェリンは真面目にやっているらしいが口を開けば『私の勝手だ』だぞ! 俺がお前になんかしたか!? それにプ…」
「あら、私がどうしたの?」
「…プレシア女史は有能で、よくやってくれている、と思う」
「ありがとう、それで?」
「…俺、人望ないのだろうか。いや、そんな気はしていたんだよなあ…最後はミストバーン任せになっているし…よくあいつ等まとめ切れるよなあ…ハハ」
「…重症ね。効うつ剤と睡眠薬も処方しておくわ。はいこれ薬局に持っていって」
「感謝する…」

処方せんを手にフラフラと退出しようとするハドラー。

「と こ ろ で」

ギクリとハドラーの心臓が高鳴る。
しかも二つの心臓か同時に。

「アリシアの成長アルバム見ていかない!? あとこっちがこの間の誕生日に撮ったファッションショーのアルバムなのよ! それからこっちが…!」
「(うわー…目がキラッキラしてるよ…すいませんバーン様…俺、死ぬかもしれません…)」



「う、あ…おおお…」

ハドラーの寝覚めは最悪だった。
気が遠くなるほどプレシアの娘自慢を聞かされたうえ、
憂さ晴らしに百獣魔団のミスティア・ローレライの営業するうなぎ屋で酔いつぶれるほど飲んだのだ。
胃痛、胸焼け、二日酔いのトリプルコンボ。
解毒能力に優れた魔族の体もストレスによる衰弱には敵わなかった。
それでも仕事を滞らせるわけにはいかず、鉄の精神力で体を起こす。
ガシガシと頭をかいて意識を覚醒させると、手に付いた銀髪が目に留まった。

「抜け毛…か。当然といえば当然だな…ハハ」

もうショックを受ける気力もないらしい。
処方された薬を強引に流しこみ、ハドラーは部屋を出た。

「おや、ハドラーさん。ずいぶんやつれたご様子でー」
「…お前か」

フレイザードと常に一緒に居るチート少女。珍しく一人だった。

「よろしければどーぞー」
「? なんだこれは」
「栄養ドリンクと毛はえ薬ですー。お悩みのようなのでー」
「…大丈夫なんだろうな」
「動物実験も人体実験も終わってますよー。少なくとも毒にはなりませんー」
「なら、もらっておこう」



「どこだーーーーーーーっ!! あの小娘はどこだーーーーーーーーーっ!!!!」

銀色の毛玉が猛スピードで突っ込んできた。

「ナンだこの銀色イエティは」
「俺だ! ハドラーだ!」

もさっと毛玉を掻き分けて現れたのはハドラーの顔だった。
髭と眉毛と鼻毛とまつ毛がとんでもないことになっているが。

「ブハハハハハハハハハハハハハハ! ななな、なんじゃそりゃあ!? ギャハハハハハハハ!!!」
「お前だ! お前の持ってきた毛はえ薬でこうなったのだ!」
「ありゃー魔族には効きすぎたのかー…栄養ドリンクとの相乗効果もあったのかなー? とりあえず記念に一枚」

パシャリパシャリ

「あ、俺も俺も」
「写メを撮るな! メール送るな! そこぉ! 新聞配るなーーーーっ!」
「はーいはいはい百獣魔団広報部、射命丸 文(しゃめいまる あや)の《文々。新聞(ぶんぶんまるしんぶん)》ですよ~!」

『号外! ハドラー様毛むくじゃら事件!』

「イエティだろ、これ?」
「いや、ハドラー様だってさ」
「マジパネェ。ムッチャ毛だらけ」
「これがほんとの銀魂だ」
「茶々丸くーん、こいつの座布団全部持ってってー」

軍団長がカオスだと思ったら軍団全部カオスだった。

「不幸だーーーーーーーーーーーっ!!」


どっとはらい。


**


>何で言うか、ハドラー君禿げるんじゃない?
ボルボアさんの感想により神が降臨。
我ながら今回の電波ほど異常なものはないと思う。
あとハドラー様がカミジョー化した。



[26812] 勇者は騎士と共に剣士を育て上げたようです(シリアス?注意)
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/04/01 05:38
森に近い小川のほとり。
カン、カンと木刀の音を鳴らす三人の人影があった。

「せいっ! はっ!」
「ほほう、やるようになったのう、ヒュンケル」
「ん~、ベリーベリーいい太刀筋ですね~」

一人は魔王ハドラーを倒した男、勇者アバン。
一人は骸より生まれながら人を愛する心を持つ地獄の騎士、バルトス。
そしてバルトスの元で健やかに育った少年、ヒュンケル。

「てやぁっ!」
「おおっ!」
「なんと…今のは危なかったですね」

バルトスは四本の手にそれぞれ剣を持ち、アバンと呼吸を合わせてヒュンケルに対峙している。
大してヒュンケルは一人。
剣技のみという制限をつけての戦いだったが、達人二人を相手にヒュンケルの技の冴えはそれを上回ろうとしていた。

「はっ! っとお」
「(間合いを取った? …まさか!)」
「…アバン、ストラッシュ!」
「ぬおおおっ!?」
「どひゃあっ!?」

間合いを離したヒュンケルが放った技。それはアバンの必殺技《アバンストラッシュ》であった。
四本の剣をあわせてガードしたバルトスとその後ろのアバンをまとめて吹き飛ばすほどの威力。
間違いなくヒュンケルはアバンが見出した《地・海・空》の3つの極意を完全に体得したのだ。

「父さん! 先生! 大丈夫ですか!」
「あたたた…いや~、油断しちゃいましたねえ」
「ははははっ! 見事、見事だぞヒュンケル! 流石はワシの息子だ!」

からからと笑う父と師の姿にヒュンケルもつられて笑ってしまう。
曇り一つない、いい笑顔だった。

「今日はここまでにしましょう」
「身体はしっかり休めておけよ。骨身のワシと違って肉体は休まんと動かんでのう、はっはっは」
「はいっ!」

夕食の準備をするべく駆け出すヒュンケルの姿を二人はいとおしげに見守りながら、
三人の出会いの日を思い返していた。

「ヒュンケルは素晴らしい剣士に育ちましたねぇ」
「うむ。エヴァンジェリン殿には感謝してもしきれんわい」



ホルキア大陸 地底魔城

勇者アバンの一撃により絶命した魔王ハドラー。だがその命は大魔王バーンによって復活を遂げた。
一時身を隠すことを選んだハドラーだったが、その途中、
門番であったバルトスを『人間などを育て、勇者をす通りさせた無能な裏切者』として破壊する。
ハドラーは姿を消し、バルトスへの魔力供給も途絶えた。
その仮初めの命はまさに燃え尽きようとしていた。

(ワシはもう…ここまでか…ヒュンケル…)
「ふむ、間に合ったようだな」
「ケケケ。ボロクズ同然ダナオッサン」

バルトスの眼前に現れたのは金糸の髪をもつ幼い少女と、その肩に乗った人語を解す緑髪の人形だった。

(? 何者だこの少女は)
「じっとしていろ。リク・ラク・ラ・ラック・ライラック…」

何かが《繋がる》感覚をバルトスが感じると、消えかけた意識が鮮明になり、崩れ掛けの体がビデオの逆回しのように再生する。

「…っ!? 話せる、じゃと!? 身体も…再生してゆく!?」
「ハドラーから繋がっていた魔力供給ラインを私に移し替えた。後ほど核となる魔力石も持ってくる。そうすればお前は新たな一個の魔法生命体として生きることができるだろう」

そう言うと少女と人形は闇に溶け込むようにして姿を消した。

「父さーーーん!」
「ヒュンケル!」

通路の奥から駆け寄ってくるヒュンケルをバルトスはその4本の腕で抱きとめた。

「父さん! 父さん! 無事だったんだね!」
「ああヒュンケルよ…再びこうしてお前を抱くことができようとは…」

そこへもう一つの足音が近づいてくる。

「バルトス殿! ご無事だったのですか!」
「おお、アバン殿もご無事で!」

アバン。その名を聞いた瞬間ヒュンケルの表情が変わった。

「!? アバン! 勇者…勇者アバン!」
「! 待てヒュンケル! アバン殿は敵ではない!」

幸いにも父は無事だったが、その存在を危うくしたのは目の前の男なのだと、
憎しみを込めてヒュンケルはアバンを睨みつける。

「…ヒュンケル、ですね」
「!? どうして俺の名を…」
「バルトス殿に頼まれていたのです。ハドラーの死後、骸となる自分のかわりに貴方を育ててくれ、と」
「父さん、が?」
「うむ、まことじゃ」
「フフ…その必要はなくなったみたいですがね。ねえお嬢さん?」
「ふん…流石は勇者、ということか」

闇を振り払うようにしてその少女は再び現れた。

「私の名はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。大魔王バーンの元、不死騎団の団長を務めている」
「オレハ従者のチャチャゼロダ。ヨロシクナ骨、チビ、カール」
「(カール…まあ、たしかにそうですが)」
「大魔王バーン! それはハドラー様を助けたという…」
「そうだ」
「何故です? ハドラーの味方なら私たちを助ける理由はないのでは?」
「ふっ…それは《人間と魔族》で争い続けるならば、だろう?」

もはやその必要はない。あるいは無くなるだろうとエヴァは言う。

「私たち人間とハドラーたち魔族…その全ての力が必要だと言うのですね?」
「そうだ。さらに言えば竜族、妖精族…伝説の《竜の騎士》の一族の力もだ」
「なぜそこまでのことを?」

力を併せるのはいい。それはよりよい未来への架け橋となるだろう。
だがエヴァの話し振りはそれは過程に過ぎないことを示している。
地上と魔界。その全ての力を併せてでも成し遂げるべきこととは?
それがアバンの疑問だった。

「詳細はここにある。あとで確認しろ」

投げ渡されたのは一まとめの書類と、水晶玉。

「それからバルトスにはこれだ」

バルトスの胸部に光り輝く球体が溶けるように吸い込まれていく。

「傀儡人形のお前を魔法生命体に変えるマジックアイテムだ、もっとも糧としているのは暗黒闘気だが。
それでも生きるに不都合はあるまい」
「おお…感謝いたします、エヴァンジェリン殿」
「恩義を感じてくれるなら、その小僧に光だけでなく闇の闘気も教えろ。バルトスならできるはずだ」
「それはいったい…?」
「『光と闇が合わさり、最強に見える』のだそうだ。見せ掛けで終わるか真に最強になるか…その小僧次第だがな」

そう告げるとエヴァは背を向けて歩き始める。
その背中をヒュンケルが呼び止めた。

「あ、あのっ!」
「なんだ」
「父さんを助けてくれて…ありがとう!」
「ふ、ただの気まぐれだよ、坊や」
「ケケ、素直ジャネーナ」
「黙れ駄目人形」

せっかく決めたのに最後で台無しだった。



「天界侵攻計画、ですか」
「嘘ではないじゃろう。ハドラー様台頭以前よりバーン様が強兵を募っていたことは魔界の誰もが知っておる」

エヴァの書類には計画の詳細が。
水晶球には魔界で行われた大魔王バーンの演説の映像が記録されていた。

『我、大魔王バーンは天に是非を問う戦いを行う。人と竜と魔。共にあった世界を分けたる理由と、今一度三者が共存できる世界を作るを是とするかをだ。是ならばよし、だが否を言うならば余は戦う。魔界の民に太陽と未来を与えるために。余に呼応せし魔界の兵(つわもの)よ! 余の元へ来たれ!』

映像はそこで終わりだった。
いくばくかの沈黙の後、勇者と騎士は互いに向かい合う。
その瞳に決意を秘めて。

「私は弟子を募ろうと思います。新たな時代の道標となる、次世代の勇者たちを育てるために」
「ワシはヒュンケルと共に各地を巡ろう。世界を検分し、新たな魔王軍が真に正しいのか見極めるとしよう」



夜が開けた。
それは旅立ちにふさわしい晴れ晴れとした朝だった。

「ヒュンケル」
「はい」
「これは卒業の証です。あなたは私とバルトスさんの修行を受け、類まれなる剣士となりました。
その力をあなたの正しいと思うことに使ってください。曇りなきあなたの眼なら、道を間違うことは決してありません」
「はいっ! ご指導、ご鞭撻、今までありがとうございました!」

ヒュンケルの首に掛けられた、虹色に輝く涙型のネックレス。
アバンの実家、ジニュアール家に伝えられてきた秘伝により創られる《輝聖石》で作られたものであり、後に《アバンのしるし》と呼ばれるネックレスだった。
師と弟子の道はここに分かたれた。
けれどそれは、再び出会うための別れだった。

「さて…まずはロモスにでも行ってみましょうか。レイラは元気にしてますかねえ…」

勇者の、剣士の、父親の。
新たなる冒険(クエスト)はこうして始まった―――!!




どっとはらい。


**

ヒュンケル超パワーアップ
エヴァフラグも立てた…のか?



[26812] 六大軍団は通常業務をしています(氷炎編)
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/04/01 01:54

氷炎魔団 執務室

「んじゃ報告頼まぁ」
「はい」

フレイザードの前にいるのは全身青みを帯びたポニーテールの少女《氷の精霊・セルシウス》である。
彼女はなんと《ファンタジア》世界で生まれたセルシウスであり、
ウンディーネとの存在重複に耐え切れず消滅しかけたところをいつもの二人が助けたためここに居る。

「各地方の在来精霊種、及び幻想郷所属の妖精・精霊に関しては友好な関係を築けています。
またディル・リフィーナの精霊種に関してはリウイ王の協力もあり全面的な支援を取り付けることができました」

氷炎、と名づけられてはいるが、氷炎魔団の管轄は精霊種の種族全体に及ぶ。
フレイザードにしても炎と氷が際立っているだけで、実際は全属性の魔法に通じている。
氷炎魔団の実務はこのような他世界を含む精霊種との交渉・外交戦略にある。
精霊種は世界の基盤を担うものであるため、魔王軍のような存在は交流に際し真っ先に協力を取り付ける必要がある。
でなければ有事の際に世界からの力の供給を断たれて全滅しかねないのだ。
無論最終的に軍事力の勝負となれば、全軍団で最も苛烈と言われるその力が敵対者に牙を向くこととなる。

「先の幻燐戦争における協力についてイリーナ妃殿下・エクリア将軍連名による感謝の書状が届いています。お読みになりますか?」
「いや、後でいいわ。つづけてくれ」
「はい。WTG連環世界におけるオーマ理論復興については魔王軍技術班により進行中です。近日中に状況確認と交流を兼ねてブータニアス様の一団が来訪予定です」
「猫の爺さまか、楽しみだな」
「はい、私もです。最後になりますが…悪い知らせです。《ファンタスマゴリア》のスピリット族解放に関して、
ロウエターナルの介入が確認されています。戦闘行動も止む無きことになるかと…」
「…ぁンの腐れども。アカシックレコードから消し去らねえとわからねえようだなぁ?」

ギリギリと拳を握り締めるフレイザード。
膝上で眠りについているチート少女を傷つけぬように温度制御に必死なようだ。

「まあいい。こっちがケリついたら即座に攻め込んでやる。スピリット族の受け入れ状況は?」
「メンフィル王国、魔界直轄領、幻想郷、それから《お母様》の実家の領地において受け入れを行っています。
人種問題なども出てはいません。ただ、スピリット族のほうが高待遇すぎて戸惑っているようですね」
「まあ無理もねえな…報告はそんなもんか? んじゃあ、何かあったら幽香のヤツと検討してから俺に持ってきてくれ」
「はい《お兄様》」

フレイザードの副官を務めるセルシウスは恩人たる二人に強い恩義と愛情を抱いている。
二人をお母様・お兄様と呼ぶのもその思いゆえだった。



「フレイザードー! 勝負だ! 今日こそあたいとアギトが勝つんだから!」

執務室を出たフレイザードに突っかかるのは氷の妖精・チルノと炎の剣精・アギトの氷炎コンビ。

「チルノ…テメエも懲りねえなあ」
「⑨だからしょうがないよー」
「うっさい! 行くよアギト!」
「おうよ! ユニゾン・イン!」

『氷炎妖精! アギチルノ参上!』

右から氷の羽根を、左から炎の羽根を生やし、髪や服の色も見事にキカイダー状態になっている。
団員から《ミニ団長》《少女フレイザード》《ロリえーりん》と呼ばれるチルノとアギトのユニゾン姿である。

「んじゃあ軽くもんでやるよ」
「いじめないよーにねー」
『バカにすんなー!!』

ドッタンバッタンアイシクルボンバーキャーアギチルノサーン
アタイサイキョーベギラマーフィンガーフレアボムズアーレー

『⑨~』
「まあこんなもんだな」
「でもちょっとダメージ入ってるよー? くふふ」
「ああ、まさか《ベギラマ(閃熱呪文)》を覚えてくるとは思わなかったぜ」
「不肖の弟子ってところかなー?」
「んな上等なもんじゃねーだろ」
「フレイザードはツンデレだねー。名は体を現して、なおかつ性格も現すのかー」
「誰がツンデレだコラアアアアアアアアアアッ!?」



どっとはらい



おまけ

『はーい。ラキオスからおこしの皆さんはこちらへどーぞー』

メガホン片手に《ラキオス王国スピリット隊ご一行様》を案内しているのは
毎度おなじみチート少女である。

「…本当に信じられないな。こんな形で戦争に決着がつくなんて」
(ええい何をしている! これだけの大量のマナがあれば我は第三位の神剣にすらなれる! 奪え! 殺せ! 高嶺悠人!)
「ぐあっ…! 黙れバカ剣! 戦争は終わった! スピリットたちも解放された!
 佳織も助かったし、日本にも帰れる! これ以上お前に付き合うつもりはない!」
「ユート…大丈夫?」
「アセリア…ああ、なんとかな。《求め》の奴め、マナを奪えないもんだから必死だ」

『神剣に苦しめられている方はこちらに剣を預けてくださーい。
たっぷり時間をかけて《O・HA・NA・SHI》を行いますのでー』

「…へえ」
(お、おい高嶺悠人? まさか我を預けるつもりではあるまいな?)
「すいませーん、こいつお願いしまーす」
「はーいおまかせくださーい。プレシアさーん、ハロルドさーん。神剣一本ごあんなーい」

「フフフ…なかなか楽しそうな剣ね? 隅々までOHANASHIさせてもらうわ」
「ソーディアン研究も飽きてたからちょうどいいね」

(や、やめろ! 悠人! 私が悪かった!
 もう二度と勝手なことはしないから! だから…だから助けてえええええええ!)
「生まれの不幸を呪うがいい。お前はいい神剣だったが…お前の態度が悪かったのだよ」
「…若さゆえの、アヤマチ」

(イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!)




おまけ2

「技のネリー!」
「ち、力のシアー!」
「力と技の氷精チルノ!」

『今日はみんなでトリプル氷精だ!』

「かわいいわ~。早速いただいたこの《ケータイ》に保存しておきましょ~」
「…暢気なものだな、ハリオン」
「あら~? セリアは気に入らないの?」
「ふん、人間なんて信用でき…」

「あー、ワニのおじちゃんだー!」
「おう、スピリット隊の子供たちか。もうチルノと仲良くなったみたいだな」
「トーゼンよ! あたいは友達づくりもサイキョーなんだから!」

「彼は《人間》ではないわね~」
「…あ、あれは特殊な例だろう」

「ひょえええええっ!? し、死体が動いてる!?」
「ホガ?」
「おいスミス! こんなところをうろつくな!」
「エ、エヴァ様、ゴ、ゴメン」
「おいエヴァ。部下の管理くらいちゃんとしやがれ。悪いな嬢ちゃん、驚かせた…あん?」
ヘリオン「(気絶)」
「フレイザード、お前も人のことは言えんようだが?」
「…うるせえ」

「…え、と」
「うふふふふ~」


**

\あ た い/

フレイザードは戦闘バカではないのです。
求めェ…
書いていて思ったが《まどか☆マギカ》は永遠神剣世界じゃなかろうか?
限定されたマナを奪い合う世界=ソウルジェムで寿命が延ばせる世界



[26812] 六大軍団は通常業務をしています(百獣編)
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/04/01 05:23

百獣魔団 トレーニングルーム

百獣魔団の真価は六大軍団随一の《多様性・汎用性》にある。
陸・海・空の全局面に対して即座に対応できる兵員を擁し、この世界のあらゆる場所で兵員を補給可能なため、
他の軍団との連携によってその戦力を何倍にも高めることができるのだ。
常備傭兵団とでも呼ぶべき彼等には迅速な対応と強靭な肉体・精神が要求される。
ゆえに彼等は日々の鍛錬に余念が無い。団長たるクロコダインは言わずもがな、である。

『…ダイナミックチョップ』
『後で言うんだ…』

「ふむ、次はこの技をためしてみるか…」

《仮面ライダー電王》のDVDを見ながらそんなことを呟くクロコダイン。
しかも見ながらスクワットを続けている。

「997…998…999…1000! ふう、今日はこんなものか」

ズドン! ゴオンッ! ゴドォンッ!

総重量150tのウエイトを外し、用意しておいた熱いおしぼりで全身を拭く。
漢くささ100%な姿だった。

「団長ー、いいでしょうか?」

声を掛けてきたのは百獣魔団の伝令役、鼠の化身ナズーリンである。

「ナズーリンか、どうした?」
「実はうちのご主人が…」
「またか」
「申し訳ない…団長から一発ガツンと言ってやってほしい」



「ああああ、ナ、ナズーリン!  どこ行ってたんですか! 大変です! タイヘンなんです!」
「大変なのはご主人だけだろう」
「どうした、星」
「ク、クロコダイン団長!?」

涙目で腰を抜かして震えるのはナズーリンの主、寅丸星(とらまる しょう)。
その前方で困った顔でみつめる魔獣使いの少女、アリエッタの腕の中には
ライオンに似た猫のような生き物《ライガ》の子供がおとなしく抱かれていた。

「この子怖くない。なのに星は怖がる」
「ガウ」
「まったく…アリエッタに失礼だろう、ご主人?」
「そんなこと言われても…怖いものは怖いのであって…」
「この間はライオンヘッド、その前はキラータイガー、その前はケイロニアから視察に来ていたグイン陛下に腰を抜かすし、あげくベビーパンサーのプックル君まで怖がって…ご主人、君はそれでも虎の化身かい? よりにもよって猫科の動物ばかり怖がるというのはどういうことなんだい?」
「あう…反論できません…」
「そんなことで幻想郷の聖に顔向けできるのかい? そんなことだからご主人はガミガミクドクドガミガミガミガミ…」
「うう…申し訳ありません…」

チョンチョン

「なんだい! 今はご主人に説教を…」
「ホガ」

『きゃああああああああああああああああああっ!!』

「あら、どうかしたのですかスミスさん?」
「エ、エヴァ様いなくなった。探してる」
「それはお困りでしょう、いっしょに探させてください」
「あり、がと。星、いいやつ」
「ナズーリン、そういうわけなので説教は今度に…あれ、いませんね? アリエッタさんも…まあいいか。
では団長、スミスさんを送ってきます」
「う、うむ。気をつけてな」
「はい、失礼します」

そう言って魔王軍の名物《腐った死体》のスミスと連れ立って星は去っていった。

「…やれやれ、肝っ玉があるのやらないのやら」


どっとはらい。


**

獣王ナズーリン? そういうのもあるのか。



[26812] 居酒屋《夜雀庵》は今日も大忙しのようです
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/04/08 01:28
居酒屋 夜雀庵

居酒屋《夜雀庵》通称《みすち庵》。百獣魔団所属のミスティア・ローレライの経営するうなぎ屋兼居酒屋。
その店舗は鬼岩城内の他世界接続ゲートのすぐ近くに存在するため、様々な人物が訪れる魔王軍の名所のひとつである。
メニューも豊富で老若男女、モンスターから人間、果てはロボットや幽霊に至るまで人気が高い。
収容人数5000人を超える広大な店内を超人的能力の店員が行き来し、鉄人料理人たちが猛スピードで調理する。
割烹着で店を切り盛りするミスティアは『おかみすちー』の愛称で呼ばれており、彼女目当ての客も多い。

「わりゃしは父ジオンのみょとにめされりゅであろう~…ぐー」
「シャア、飲みすぎだ。またララァに怒られるぞ」

「オードリーの方が可愛い!」
「いいや、メイファの方が可愛い!」
「…バナージもタクナも何回あの不毛なやりとり続ける気かしら?」
「まあ男の子ってことなんでしょう」
「今日こそケリつけてやる! IS《ユニコーン》起動!」
「やらいでかぁ! IS《プルトニウス》起動!」
『いい加減にしなさい』
『ハイ、ゴメンナサイ』

「姉さんもずいぶん変わったわよね。昔は『プルプルプルプル~』って…」
「やめて! 黒歴史を思い出させないでプルツー!」
「ちなみにここにその動画が」
「マリーダァァァァァァァ!?」
『チョコパフェおかわりおねがいしまーす』
「シスターズの他のみんなは? 10032号ちゃん」
「もうまもなく到着予定です、とミサカはプルフォーに伝えます」
「アンサズーあんたももっと飲みなさいー。とミサカ5902号は強制するのですー」
「いや僕はお酒は…ゴボガボガボッ!?」
「…プルイレブン、彼等は未成年なのではなかったか?」
「いまさらだと思いますよ、ジュデッカさん」

「カミーユはもともと男の名前だってんだよ…ひっく」
「女形やってたからって俺は男なんだよ…ウィッ」
「いいよなアルト君は…シェリルちゃんとランカちゃん、宇宙を代表する歌姫二人に言い寄られて」
「カミーユさんこそファさん、フォウさん、ロザミアさんの三人相手なんてどこのエロゲ主人公ですか?」
「…(ピキピキ)」
「…(ギリギリ)」
「お前なんか阿修羅をも凌駕する勢いで男追い回してりゃいいんだ!」
「手前こそロリ看護婦にケツの穴掘られるのが似合いだってんだ!」

「さあクロコダイン呑め呑め~」
「萃香、今日は悪酔いするなよ」
「にゃにお~、一度呑み比べに勝ったからっていい気になるなよ~。勇儀! あんたも呑め!」
「あっはっは、さっきから呑んでるよ」

あちこちから乱闘まがいの喧騒が聞こえてくる。
当然それを切り盛りするスタッフの忙しさも尋常ではない。

「女将、5番テーブルの注文上がりだ」
「12番テーブル! キムチチャーハン上がったよ!」
「はーい! アーチャーさんは103番テーブルの注文を、ディアッカさんは21番テーブルの大盛海鮮チャーハンをお願いします!」
「承知した」
「了解だぜ!」
「黒子ちゃん、35番テーブルの分を…ってまたミサカちゃんたちのところに行こうとして! ダメですってば!」
「あうう~お姉さまパラダイスを目の前にして蛇の生殺しですわ~」
「女将、78番テーブルの注文だ。それからそろそろ交代しろ、俺も厨房に入る」
「あ、はい総司さん。よろしくお願いします」
「おばあちゃんは言っていた…『料理を「速さとは文化である!」…それはお前の持論だろう、クーガー」
「まあまあ硬いこと言うんじゃないよ仙道「天道だ。どこのバスケットマンだ俺は」」
「い、今のうちですわ! お ね い さ ま~!『クロックアップ/ラディカルグッドスピード』あれ?」
「やれやれ、油断ならんな」
「黒子(ホクロ)ちゃん、俺達から逃れようなんて20年は早いんじゃない?」
「ホクロ言うなですわ! 私は黒子だと何回言わせますの!?」
「なんでもいいから早く料理を運んでくれんかね…『Reformation』…巧か。すまんな」
「別に…次、運んでくる」
「ああ、だがもう少し愛想はよくしろよ」
「テメーに言われたくねえ」

ある意味客より騒がしいスタッフだった。

「繁盛しているようだな、女将」
「あっ、バーンさん! リュミスさんも」
「ふふ、ここのうなぎが美味しいからまた来ちゃったわ」

寄り添いながら歩くバーンとリュミスをカウンター席に案内する。
そんな魔王軍の主たるバーンの姿を見ても皆『あ、大魔王様だ』『リア充パルい』『デレ姫様萌えー』などと言いつつ騒ぎ続けており、まったく敬意が感じられない。
その中にはフレイザードとチート少女の姿もある。

「おにゃかいっぱいでふ…くー」
「右にもたれかかるなっての…寝冷えすんぞ。温度調節してやっから左にしろ」
「んにゅー…あったかいー…」

騒がしい店内を少し困ったように、それでも嬉しそうに見つめるミスティア。
そこへまた、ガラス戸を空けて一人の客が入ってくる。

「いらっしゃいませー。空いているお席へ…あっ!」

それはミスティアにとって、決して忘れることのない一人の歌い手。
炎のように坂上がった髪と、背負われた古めかしいギター。
丸眼鏡をかけた顔にはいくばくかの皺が刻まれているが、それでも彼のほとばしる生命力は老いなど微塵も感じさせない。

「よう、久しぶりだなミスティア」
「バサラ…さん…!」

銀河にその名を轟かす歌手《熱気 バサラ》の来店だった。



**

前後編になってしまった。




[26812] 居酒屋《夜雀庵》でライブが行われたようです
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/04/08 02:54
「はい、どうぞ」
「サンキュ…ん、うまいな」

共にカウンター席に腰掛けて談笑するバサラとミスティア。
有名人の来店に野次馬が集まってくるが、超人店員たちが女将に気を効かせて追い払っていた。

「今度はどんなところまで歌いに行ってたんですか?」
「そうだな、ミッドチルダ星に惑星Zi、名前は知らねえがELSって金属生命体の星にも行ったな。ほかにも…」

熱気バサラは基本的に自分のことを話そうとしない。
無理に聞きだそうとすれば『会話なんて下らねえ、俺の歌を聴け!』となるのがオチである。
しかしバサラのは嫌な顔一つ見せず、嬉しそうにミスティアに話し始める。
その口から流暢に語られたのは、いつも通りの破天荒な強制ゲリラライブの様子だった。



・ミッドチルダ
「レジアス中将! 地上部隊の交戦現場に謎の反応が…!」
「なんだと!? いったいどこの馬鹿が…!」

『魔法なんざ下らねえ! 俺の歌を聴けファイヤー!』

「…なんだアレは」
「…戦闘、停止しました。テロリスト達は白旗を挙げています」
「あ り え ん」

・惑星Zi
「なんだアレ? 新型の飛行ゾイドか?」
「ええい、なんのつもりだ! 戦闘の邪魔だ! メガロマックスの巻き添えになるぞ!」

『メカ生命体でも関係ねえ! 俺の歌を聴けファイヤー!』

「ははっ、面白い奴だな」
「ボンバー」
「バン! 悠長なことを言っている場合では…!」
「トーマはゴミ箱ポイポイのポイ」
「フィーネさああああああああんっ!?」

・ELS母星
『なんだか知らねえがとりあえず俺の歌を聴けファイヤーッ!!』

「馬鹿な!? トランザムバーストなしでELSと交流している!?」
「奴 が ガ ン ダ ム だ」
「刹那ァアアアアアアッ!?」

・その他
『何でもいいからとにかく俺の歌を聴けファイヤー!』



「あはは、相変わらずだねバサラさんは」
「ああ、どれも最高のライブだったぜ!」

満足げな笑顔を浮かべるバサラにミスティアも笑顔を返す。
が…ふいに、その顔に影が差した。

「…ちょっと、羨ましいかな。私はそんな遠くまで行けないから…飛び出せる、勇気がないから」
「…ミスティア」
「あ、あはは、ゴメンなさい、変なこと言っちゃった」

それっきり、しばらく無言の時間が続くと、バサラが先に口を開いた。

「…なあミスティア、一曲歌ってくれねえか?」
「えっ? でも…」
「なんだよ、俺だって歌うだけじゃなくて聞きたい時もあるさ」
「でもでも! お客さんだってみんなバサラの歌が聞きたいだろうし、私は最近鼻歌くらいしか歌ってないからうまく歌えないかもしれないし、それから、えーとえーと…「俺は」」
「ミスティアの歌が、聞きたいんだ。頼む」
「…はい。じゃあ、お先に歌わせてもらいます」

躊躇するミスティアの顔を正面から見つめ、バサラがそう言うと、何かを決意した表情でミスティアは答えた。

「おっ、女将が歌うぞ」
「えっ? 俺熱気バサラの歌聴きたかったんだけど」
「馬鹿野郎、女将は全宇宙でただ一人『熱気バサラが認めた歌姫』なんだぜ?」
「マジかよ! 女将の歌ってそんなにすげえの!?」

テーブルや椅子が除けられ店の真ん中にスペースが出来ると、ミスティアは場所を作ってくれた客の一人一人に礼を言い、スペースの中央に立つ。
自然と店内の照明が暗くなり、気を利かせた誰かがミスティアに天井からスポットライトを当てた。

「バサラさん…ううん《バサラ》」
「おうよ」
「聞いて、くださいね。私の歌…『Sing for Song Bird』」

弦楽器のようなミスティアのコーラスがそのまま前奏となり、
ゆっくりと紡がれるアカペラの歌が広い店内の隅々まで響き渡り始めた。

―――羽根を広げ 高らかに歌う それだけで私ただ幸せだった

―――風に混じる 暖かなノイズ 気付いた時には駆け出していた

やがてバサラがギターを奏ではじめる。それはミスティアの歌にあわせた優しい旋律だった。
バサラはミスティアのこの歌を知らない。ミスティアはバサラのこの旋律を知らない。
それなのに二人の息はまるで何十年も共に歌い、奏で続けたかのように調和を保っていた。

―――揺れる魂 高鳴る鼓動 気付かせてくれた 貴方がそこにいた

―――声を聞いて 声を聞かせて 切なく甘い歌共に歌って

―――『いい歌だな』と言った 貴方の笑顔に 私 そうよ 歌に 溶けてゆくの…

歌詞の光景が眼に浮かぶようだった。
全ての観客は理解する。
『ああ、この歌は二人の出会いの物語そのものなのだ』と。

―――嬉しくなって 苦しくなって 歌うこと 止められない もう忘れられないから

―――時を経ても 姿変わっても 変わらない 色あせない 貴方の歌聞かせて?

ありったけの《思い》を込めに込めた、熱気バサラのそれすらも上回る命懸けの《魂の歌》をミスティアは歌う。
たった一人のために。

―――瞳閉じれば 夕焼けの日の出会い いつでも いつまでも 胸の中に抱いてるわ

―――ねえ 遠く離れても聞こえてるかな? 私の歌 銀河の果てまで


バサラの演奏が止まる。


―――ねえ 優しく爪弾いて 貴方のギター ずっと歌ってあげるから…


そしてミスティアは最後の一小節をささやくように歌い上げた。


『ずっと 歌ってあげるから…』





即席のライブ会場は万雷の拍手と賞賛で溢れていた。

ミスティアの元へバサラが歩み寄る。
すると店内が自然と静寂に包まれていった。

「…バサ、ラ」
「…いい歌だったぜミスティア。俺にもこんなスゲエ歌、歌えねえ」
「そう、かな」

そっと、バサラはミスティアの手を取る。

「また歌ってくれるか? これからも…俺のための歌を」
「…うんっ! いつでも、何度だって聞かせてあげる!」

再び店内は喧騒に包まれた。
二人を祝福する満場一致の拍手の嵐だった。

「今度は俺の番だな…いくぜミスティア! 熱気バサラwithミスティア・ローレライの初ライブだ!」
「いっくよー! ファイヤー!」

『うおおおおおおおっ! ボンバーーーーーッ!!』

「《俺達》の歌を聴けえ! 『突撃ラブハート』!!」

その日は伝説となった。
数日後《文々。新聞》の号外が発行され…そこには笑顔のバサラとミスティアが共に写った写真がトップを飾っていた。


どっとはらい


**

誰得なバサミス。
歌詞がギップリャものなのは見逃してくれるとありがたい。





[26812] 六大軍団は通常業務をしています(不死編)
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/04/16 17:10
不死騎団を構成する人員は吸血鬼・ゾンビ・魔法生命体・ロボットなど、文字通り《死》の概念を超越した者が集められている。彼等は単純に戦闘においても脅威となる存在であるが、それ以上に眼を見張るべき点がある。

「ノヴァ博士ー。どーも最近右脳の反応が鈍くなってるんですが…」
「ふむ、神経が腐りかけている部分が多いですねえ。安物のボディ使ったんじゃないですか?」
「あー、そうかも…記憶野もやられてるかもしれないっす」
「これは岸和田先生の管轄ですね…もしもし?」
『おうディスティ君。どうしたね』
「カクカクシカジカ…というわけで再生槽を使わせてほしいのですが」
『かまわんよ。それとこれを見たまえ! 身長150mの人造人間エヴァンゲリオンver岸和田が完成したのだよ!(モニターに写されたのは坊主頭でブリーフを履いた150mの成人男性)』
「おや? エントリープラグの挿入口が見当たりませんが?」
『肛門から入れる形になる。緊急脱出時には強化装甲ブリーフを突き破って排出される』
「なるほど。すぐに地上に着地するので即座に離脱できますな」
『さらに放屁ガスによるジェット排出なら即座に安全圏に逃れることも可能なのだ!』
「いやいや流石ですなあ先生!」
「(…絶対乗りたくないな、こんなの)」

「すいませーん。コジマ濃度を170%にしたらバイド細胞が死滅しちゃったんですけどー」
「科学技術班だけでは解決できんか…魔法技術班に連絡をとってくれ。Team R-typeにも協力してもらわねば」

「俺今度給料入ったらcv緑川のボディに換えて、実験終わった後『死ぬほど痛いぞ』って言ってみるんだ…」
「死亡フラグはいいからとっとと乗って」
「VOBニ連結したラインの乙女なんざ単なるカミカゼ特攻じゃないか! 死んでも大丈夫だからって十分怖いわ!」
「やってくれたらメンフィルのスゥーティ族オンリーの娼館の無料チケットを…」
「百回でも二百回でもやってやるぜヒャッハー!」

「スカくーん? 束さんだよー。ナンバーズの子たちのIS実働データ取れたー?」
『ああ一通りまとめ終わったところさ、そちらに送ろう。それから白式用のISでいいのが出来たのだが…』
「ほうほう、それは興味深いー…なんかまぎらわしいよね」
『《インフィニット・ストラトス》と《インヒューレント・スキル》…確かにな』

「ドラゴンゾンビ25号の防腐処理に手ぇ抜いたの誰だぁ! 風呂入ったらスカルゴンになっちまったって苦情来てるぞコラァ!!」
「あー、すんません。俺っす」
「確かホワイトグリントの強化実験のパイロットを探してましたねぇ」
「よし、逝ってこい。再生用ボディはランク下げてミイラ男にしといてやる」
「うへーい…次の給料でレアリエンボディにしようと思ってたのになぁ…」

「エルザーッ! エルザはどこであるかー!?」
「ウェストおじちゃん、呼んだ?」
「ぬ、違うのである。我輩が呼んでいるのは…そう! 言わばエルザ(緑)である!」
「人に勝手な注釈つけるなロボ(ゴスッ!)」
「…エルザお姉ちゃん、おじちゃん倒れたよ?」
「殺しても死なないから大丈夫ロボ」
「ふーん。ゾンビのみんなとおんなじだね」

…犠牲や危険を伴う実験がやりたい放題ということだ。


どっとはらい





おまけ

「ヘックシュン! コジマ」
「おいおい、大分コジマ汚染進んでるみてえだな?」
「ああ、そうそろ身体交換してもらわねえとな。まあスタッフにすりゃあ良い研究材料なんだろうが」
「はは、違いねえ…っきし! バイド」
「おいおい、お前こそバイド汚染進んでるぞ」
「あ~、俺はもうちょっと進ませろって言われてルんでな。新型フォースの研究に役立つんだそうだ」
「お~い、お前等今日も一杯やるだろ? どこにする?」
「みすち庵だろ、常考」
「また女将さんの歌聴きてえ…あれは歴史的偉業だぜぇ…」
「そうだな~。は…っくしょ! シロガネ」
『っ!?』
「? どうしたんだ?」

ヴィーッ! ヴィーッ!

『緊急警報発令! 恋愛原子核《Type白銀》の流出を確認! 各部署の隔壁を閉鎖。女性職員は半径1キロ県内から退避されたし!』

「まさか先週の《女将さん告白事件》が原因か!?」
「だろうな、感染していた白銀菌があのラブっぷりで活性化しやがったんだ」
「お、おい、いったい何が起きて…ハクショイ! オリムラ」

ジリリリリリリリリ!! ファーオーファーオーファーオー

「なん…だと…!? 織斑菌まで…!?」
「バカ…な…! 同時感染なんて…!」

『SS級バイオハザード発生! 恋愛原子核《Type織斑》が同時発生! システム《アースクレイドル》起動! 
隔離型ATフィールド出力全開!』

「急げー! 急いでこいつの全身を消毒するんだ! 間に合わなくなっても知らんぞーっ!」
「Team R-type呼んでこい! バイド干渉でこいつの周辺空間ごと書き換えるんだ!」
「いったい何が起こってるんだよー! 誰か教えてくれよーっ!」


**

思いついた分を先に投稿
あとロリウェーイ




[26812] 六大軍団は通常業務をしています(妖魔編)
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/04/16 17:15

妖魔士団 資料室

紅魔館の協力により設置された資料室にはパルプ誌から魔導書に至るまで全次元の知識のほぼ全てが収蔵されている。
管理人は当然というべきか、無類の知識蒐集家たる《七曜の魔女パチュリー・ノーリッジ》が勤めている。
補佐に付くのは紅魔館大図書館と同様に小悪魔。
また来栖川社製のHM-13型やスクライア一族などもその処理能力を買われて資料整理・検索に従事している。

「あっ、ザボエラさん! 今日はどうしたんですか?」
「ちっと調べたい物があってのう、パチュリー嬢ちゃんはおるか?」
「はい! では呼んできますね!」

司書の小悪魔に呼びかけた小柄な老人は妖魔士団の研究者である《妖魔司教ザボエラ》である。
ほどなくして小悪魔に連れられてパチュリーがやってきた。

「あらご老体、なにか御用かしら?」
「ああ、先日とある筋から魔導書を手に入れてのう。解析したいのじゃがどうにも術式が《臭い》。協力を頼みたいんじゃが…」

ザボエラから差し出された魔導書は《いかにも》な怪しい雰囲気を漂わせており、
多重結界で封印されたそれをパチュリーはふわりと眼前に浮かべて観察する。

「シュリュズベリィ教授には? 旧支配者関連はあちらが専門でしょう?」
「もう訊いてみたわい。あの黒眼鏡め、フィールドワークでM78星雲まで行くからあと半年は戻れんとぬかしおったわ」
「付き合わされる学生達も大変ね…この間はレッドキングの剥製作ってたし…」

ため息混じりにそう愚痴るとパチュリーは腕輪型端末を操作し、空中ディスプレイを呼び出した。

「MICA、いいかしら」
『はい、お呼びですか?』

ディスプレイから掛けられた女性の声は、資料室を管理する超高性能量子コンピュータ《MICA》のものである。
蒐集された資料の中には常に封印・解呪処理を行い続ける必要のある危険な書物も存在するため、銀河系の全情報をエミュレート可能な《彼女》はリアルタイムで資料室内の情報を編纂・処理・修正を行い続けており、公私共にパチュリーの相棒となっている。

「これの解析お願いするわ、セキュリティはAで。もしかしたら未発見資料かもしれないから」
『かしこまりました』

MICAの返答と同時に魔導書が量子テレポートで解析施設へと転移した。

「2,3日で結果が出ると思うわ」
「ヒョヒョヒョ、さすがじゃのう」
「ご老体には超魔生物のデータやらなにやらでお世話になっているし、このくらいは別に…」

『小悪魔ー! いるかーっ!?』

「ザムザさん? どうしたん…」

バタバタと飛び込んできたのはザボエラの息子《妖魔学士ザムザ》。
やたらと興奮した様子で一気にまくし立てる。

「資料だ! そこの棚と25番本棚の下から三番目の棚にある本! 全部もってこい!
 クククク、とんでもないものが出来るぞ!」
「は、はい~…今日はいつにも増してハイテンションだなぁ…」

有無を言わせず小悪魔を使い走らせると、今度は携帯でどこぞに電話を始めた。

「キッヒッヒ…これで後は…もしもし、ウェストか?」 
『なんであるか! 我輩はいまスーパーウェスト無敵ロボ28号トワイライトマキシマム~月は出ているか~の製作で忙しいのであるぞ!?』
「氷炎魔団に頼んで風の精霊石もらってこい! 量? もらえるだけもらえばいい! 《アレ》の目処かついた!」
『ままままま、まことであるか!? こうしてはいられんのである! エルザ! エルザーーーーーーーーーーッ!!』
「キヒヒ、電話ぐらい切っていけ。さあ次は不死騎団のマッドどもを呼んでこなければな! 忙しくなるぞ! 小悪魔ーっ! まだかーっ!?」
「はひ~、た、ただいま持って…あわわわわ~!!」

図書館の奥からバサバサと大量の本が崩れ落ちる音がした。

「だーっ! またドジりやがったか! ええいもういい! 俺がやる!」
「も、もうしわけありませぇ~ん」

再びバタバタと騒がしくザムザは奥へと駆け込んでいった。

「…一時期とは比べ物にならんほど生き生きしておるわ」
「よかったじゃない、息子さん元気そうで」
「元気すぎるのも困りもんじゃがのう…」



「邪魔するぜー!」
「邪魔するなら帰ってー」
「失礼しまし…って、違う違う! いつからノリツッコミ上手くなったんだよパチュリー!?」
「最近吉本新喜劇にはまってるの。あと魔理沙、いつも通り泥棒しにきたならやっぱり帰って」

天窓をぶち抜いて飛び込んできたのは白黒魔法使いこと霧雨魔理沙である。

「何じゃあの騒がしい小娘は」
「幻想郷名物、泥棒魔法使いよ。まあ、MICAのおかげで頭に《無能な》がつくけれど」
『霧雨女史による書籍の被害件数は過去30件にのぼります。もっとも全て阻止、もしくは奪還しております』
「…妙なものが幻想郷には生息しているのだな。研究材料にはなりそうもないが」
「あう~窓が~窓が~」
「ひどい言い草だぜ…」

ボロクソな言われように流石に肩を落とす。しかしそれで終わらないのが魔理沙クオリティ。

「それならそれで話は早い! 今日こそいただきだぜ! いきなりマスタースパーク!」
『対魔力結界発動…』
「いや、ここはワシに任せい」
『? 了解しました』
「では…《マホプラウス(収束魔力呪文)》」

放たれた極太の魔力ビームはザボエラの周囲に発生したフィールドに吸収される。

「ほう、なかなかの魔力量じゃ。改良しておらねば魔力飽和でこちらがやられていたわい」
「んな!? 吸収されたぁ!?」
「お嬢ちゃんにはちぃとお灸を据える必要があるかのう? ヒョッヒョッヒョッ」
「ふむ、俺の研究成果を見せるにもちょうどいいか」
「…あんまり暴れないでちょうだい」
「あうあうあ~床が~天井が~本棚が~」

うろたえる小悪魔を尻目にザボエラとザムザはものすごく嫌味ったらしい顔で魔理沙に対峙する。
魔理沙にとってはもう冷や汗どころの話ではなかった。

「超魔生物・爆肉鋼体!」
「超魔義体・テックセッター!」

ザムザの肉体が一瞬にして肉鎧のマッチョになり。
ザボエラが虫っぽいパワードスーツに包まれた。

「え、おま、ちょ」
「超魔ドリル! 100%中の100%! ギガ爆肉霊光ドリルブレイクゥ!!」
「テッカマンウィザード! マホプラウスマスタースパーク&ボルテッカー!!」

『そんなバカなだぜええええええええええええええっ!?』

やたらとたくましい天を貫くメンズなドリルと、マイクを破壊しかねない大声で放たれたボルテッカで魔理沙は星になった。

「…あの二人がいるときに来るなんて、魔理沙も運がなかったわね」
『それはいいのですが…あちらではまた新たな問題が発生しそうです』

「見よ親父! この生物の常識を覆す強さを!」
「ふん。ラダムの技術で創り上げたテッカマン義体を身にまとえば肉体強化なんぞ必要ないわい」
「ならば試してみるか! 魔力に加え霊光波動拳まで習得したこの超魔鋼体の強さを!」

両者の身体から霊気だか魔力だかフェルミオンだか脳量子波だかなんだかよくわからない波動が放たれ、資料室は揺れに揺れる。

「なんでもいいけど外でやってほしいわ。埃がさっきからすごいのよ。けほっ」
「ふえ~ん、本棚バラバラですよぅ~。これ私が全部片付けるんですかぁ~?」
『…セリオさんと茶々丸さんに手伝ってもらうよう連絡しておきます』


どっとはらい







おまけ

『それでは魔導書の解析をはじめます。《機械語写本》サポートをお願いしますね』
「了解です。ではお前たち、整列、番号!」
「いちばん! ねくろのみこん《BASICしゃほん》!」
「にばん! ねくろのみこん《Cげんごしゃほん》!」
「さんばん! ねくろのみこん《JAVAしゃほん》!」
「よんばん! ねくろのみこん《VBしゃほん》!」

「よし、では…こらVB写本! すぐにネットダイブしようとするな!」
「うにー」
「あー、VBずるいー」
「JAVAもー」
「やめろー! デモンベインのマザーデータに変なアレンジ入ったらどうするー!」

「へーくしょん! む、また誰かが我輩の天才的頭脳を嫉んでうわさしているであるな? ああなんて罪作りな我輩…」
「ウェストっちー、エルザちゃん改造していーい? いいよねー。答えは聞かないけどー」
「ちょうどOOユニットの技術を流用したイマジノス型義体の新作が完成したんですよ。早速実験を」
「エルザの貞操とかもろもろが大ピンチロボー!? だれロボか博士にこんな変態ばっかり紹介したのは!? 化学反応ってレベルじゃないロボー!!」

『えっ…と…忙しければ私だけでも大丈夫ですが…?』
「い、いえ! お気になさらず…(クイクイ)…なんだC言語写本!?」
「かーさまー、なんか『ふんぐるいふんぐるい』ってさっきからずっとアクセスしてくる人がいるー」
「Cなだけにクトゥルーとダイレクトリンクしちゃったー!?」
『…外部接続を遮断します。あの、あとは私がやりますから』
「うう…すいません…」


**

>>あの親子が超科学に触れたら、父は強化服で良いかとばかりにアイアンマンに。
>>息子は自分が強くなりたいとばかりにキャプテンアメリカか超人ハルクになってしまいそうではある。

まほかにさんの意見を参考に魔改造したらこうなった。




[26812] 六大軍団は通常業務をしています(魔影編)
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/05/04 19:43
魔影軍団 取調室

魔影軍団を構成する人員は闇・影の精霊種や霊魂などの属性を保有するものが集められている。
それだけなら氷炎魔団や不死騎団に在籍するべきなのだが、彼等は共通するある特性ゆえに一軍団として機能しており、その重要性も高い。
その特性とは《隠密性》にある。

「ミストバーン、こいつはなにをしたのだー?」
「…《盗撮》です」
「んー? スパイなら優秀じゃないのかー?」

夜の闇、生物の影、さらには精神の裏側に。
ありとあらゆる『裏』を自在に蠢く彼等の役目はスパイ活動を始めとした諜報と…

「…団長の下着も盗撮されていました」

…内部監査に伴う風紀の徹底、違反者の処罰・処分にある。

「~~っ!!(///) ゆ、許さないのだー! 食べてやるのかー!!」
「団長、それではご褒美になってしまいます」
「…そーなのかー」

真っ赤な顔でブンブン腕を振り上げて怒るルーミア。
対するミストバーンは全く動じない。

「心配無用です。この手のやつらに有効な《炎の妖精》と《例の男》を呼んであります」
「まかせたのだー。わたしはチルノと遊んでくるのだー」

ふよふよと部屋を後にするルーミア。
そして

『アッッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』

閉ざされた取調室の扉からは絶叫が響き渡った。



取調室の中央。
ミストバーンは拳をギリギリ握り締めながら怒りに打ち震えていた。

「…ホロゴースト、魔王の影、シャドー」
『お傍に』

即座に無数の『影』が現れる。
魔影軍団の中でもミストバーン直属のシャドー族部隊である。

「…ルーミア団長の護衛を倍にする、今後不届き者の痕跡をいっさい残すな。もはや容赦は要らん、発見次第…消せ」
『御意に御座います』

ミストバーンの周囲から気配が消え去る。

「…さて夕飯の支度をしておかなければ。団長の好物のハンバーグにするか」

魔影参謀ミストバーン。
お子様なルーミアの世話をこまごまとこなしてきたせいか、今では立派な《おかん参謀》と化していた。



「アレから数日。ようやく不届き者も減ってきたか…団長、ミストバーン戻りました」

ミストバーンが今日も書類決済を終えて団長室に入ると、
そこには黒いドレスを纏い、腰まで届く金髪をもった女性が団長の椅子に腰かけていた。

「おかえり。いつもご苦労様ね」
「団長…っ! 失礼、今は《ルーミア様》でしたか」
「ふふ、気にしなくていいのに。《子供の私》の世話も大変でしょう、《ミスト》?」

超竜軍団長リュミスにも劣らぬ覇気をもち、魔影軍団の長にふさわしい濃厚な闇の気配を漂わせる美しい妙齢の女性。
リボンによる封印を解放されたルーミアの姿だった。

「いえ、それほどでも」
「またまた…ミストってば昔っから苦労性なんだから」

ルーミアはさも可笑しそうにクスクスと笑い、ミストバーンの語気にも普段は見せない穏やかなものが含まれている。

「六大団長のうち一人だけが無邪気な子供…その隙を囮にして敵対者や反乱分子を引き付ける。うまくいっているみたいね」
「ルーミア様はこと暗黒闘気においてはバーン様をも上回る力の持ち主。罠に掛かった輩が哀れですな」
「その分エヴァには苦労かけてるけどね。私の仕事までエヴァがしたことにしているから…」
「まあ彼女は楽しんでやっているようですし」
「ふふ、それもそうか。あと…気になってるのはハドラーね。子供の私に振りまわされて大変そうだし、今度強化してあげようかしら?」
「…あまり無茶なことはしないで下さいよ」






「はあ…先日はひどい目にあった。結局全身の毛を通常まで剃りおとすハメになったし…」

本日もお疲れなハドラー司令。
ちなみに剃った毛は技術部のカツラ部門に回されたらしい。

「ローレライの歌は名曲だったな。結婚式には奮発したものでも贈ってやるか…俺も嫁さん欲しいな…言ってもむなしいだけか。寝よう」

諸行無常を感じながら床に付く。
しかし、

「…急に力が漲ってきて眠れん! どうなっている…まさかまた小娘の仕業か?」

無論原因は余計な気をまわしたルーミア(大)である。

明けて翌朝。

「うう…徹夜になってしまった…」

頭はフラフラながらも力だけは漲っているというおかしな状態でも仕事に赴く真面目なハドラーだった。

「あ、おはようございます、バーン様」
「うむ、ハドラーか。ご苦労…ブフッ!?」

ハドラーの顔を見たバーンが突然噴き出す。

「? 何か?」
「い、いや…今日も頑張ってくれ…ククク(ルーミアの仕業か)」
「はあ…」

いぶかしみながら歩いていると、ハドラーが完全に苦手認定してしまったチート少女に彼は遭遇してしまった。

「ありゃ」
「ぐ…また貴様か。今度は何も受け取らんぞ」
「ハドラーさん、顔がスポーンみたいに真っ黒になってますよー」
「なああああっ!?」
「鏡どうぞー」
「なんっじゃこりゃあああああああああっ!?」

以前は稲妻のような形だった顔の刺青が顔面全体に広がり、ハドラーの顔は羽根突きで大負けした人みたいに真っ黒になっていた。

「は~い《文々。新聞》号外ですよ~」
「だからやめんかああああああああああっ!!」

再び号外をばらまく射命丸。

「あはははは、真っ黒なのかー」
「(…団長のせいとは言えんよなあ。すまんハドラー)」

ひっそりと心を痛めるミストバーンの思いはハドラーに伝わることはなかった。

『不幸だあああああああああああああああああっ!!』

後日、バーンに直訴してようやく元に戻してもらったそうな。


どっとはらい



おまけ

上条「あれ…? なんか不幸仲間ができた気がする!」
織斑「よし、お前ちょっと顔かせ。この天然フラグ野郎」
白銀「お前が言うな、超級鈍感朴念仁め」
天河「同属嫌悪ワロス。鏡見ろよおまえら」

「バイド細胞持ってこい! あの恋愛原子核どもブッ殺してやるああああああああああああああああっ!?」
「気持ちは痛いほど解るが落ち着け! あとプロシュート兄貴の教えを守れ!」
「しっと団と聞いて飛んできましたが何か?」
「マスク被るな。あと額の《しっと》は漢字じゃないから」


**

ミストバーンも結構な苦労人。

追記
>>イイ男にアッー!されながら、すぐ横で「もっと、熱くなれよぉおおおおおおおお!!!」
>>とか咆哮されるって、どんな地獄やねん。

かになんとさんの指摘で炎の妖精(修造)と森の妖精(ビリー兄貴)を勘違いしていたことに気付く。しかし修造のほうがもっと酷いことになることが発覚。なので放置で。




[26812] 鉄槌の騎士は二代目竜の騎士の記録をつけています
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/05/04 22:43
ヴィータの育児日記


○月×日(闇の書起動・ディーノ0歳)
今日から日記をつけることにする。育児日記だ。
闇の書が起動して、目覚めたら赤ん坊があたし達の主になってた。
なにがなんだかわからなかったが、主のお母さんが女手が一人だけだったので手伝って欲しいという。
初めてのパターンだが、これも守護騎士の役目と考えればしょうがない。
主、かわいいしな。


○月×日(管理局襲来)
管理局のバカが闇の書を渡せと迫ってきた。
危険物だから主ごと凍結封印すると言う。
そうしたら主の親父さんが怒り狂って竜魔人って姿になり、バカどもを跡形もなく消し去った。
怖かった。ちょっとチビった。ザフィーラも驚いていたがそれだけだった。すげえ。
シグナムとシャマルは気絶していた。偉いぞ、あたし。


○月×日(呪い解除)
闇の書はほっとくと危険だと言っていたので、親父さんの知り合いであるバーンさんを訪ねた。
資料室の紫もやしみたいな魔女が3時間ぐらいで闇の書の呪いというかバグ? を解除してしまった。マジパネェ。
呪いが解けた闇の書は《夜天の書》に戻り、ディーノが成長すれば管制プログラム・防衛プログラムも実体化できるらしい。
今まで苦しんできた仲間が救われると思うと、ちょっと泣いてしまった。


○月×日
バーンさんの紹介でザフィーラとシグナムが修行を始めた。
竜魔人の親父さんがよほど衝撃的だったらしい。
シャマルはママさん・ブラス爺ちゃんと料理修行。あんな博打料理はさっさと卒業してほしい。
あたしはほぼディーノの子守専属。
ママさんがいろいろ教えてくれるので最近は慣れてきた。


○月×日
親父さんがディーノをあやせずヘコんでいたのであたしがディーノを抱っこしてあげた。
笑ったディーノはすごく可愛い。
そのあとミルクをあげて、おむつも交換してやった。
主を育てる守護騎士ってのも変なかんじだが、
ディーノが立派なベルカ騎士兼竜の騎士になれるようにあたしも頑張ろう。

「ほーらディーノ、キレイキレイになったぞ~」
「あー、いー、キャッキャ」
「ふふ、ディーノもヴィータちゃんにだっこされて嬉しいみたいね」
「そうだな…私はディーノに泣かれてばかりだが…」


○月×日
フレイザードがちっこい母親つれて遊びにきた。
焼肉うめえ。


○月×日
ディーノが喋った!
一番初めはやっぱりママさんで「まーま」って呼ばれていた。
すごいのはそのあと。
ママさんに抱かれたディーノはあたしのほうに手を伸ばして「ねーね」って言ってくれた!
その次が親父さんの「ぱーぱ」、次がブラス爺ちゃんの「じーじ」だった。
シグナムたちはまだ呼んでもらえなかった。やーい、いいだろー。

「デ、ディーノ! もう一回! もう一回言ってくれ!」
「ねーね、ねーねー」
「えへへ…あたしが『ねーね』かぁ…」
「(あやうくワシが先に『じーじ』と呼ばれるところじゃった…
そうなったらバラン殿、立ち直れんじゃろうのう)」
「ピイッ」


○月×日(ディーノ1歳)
ディーノの成長は早い。
歩きを憶えたら今度は飛行呪文を無意識に使い始めた。
空中でゴメと追いかけっこをよくしている。


○月×日
最近気がつくとディーノがあたしのそばにいることが多い。
ママさんがちょっと焼きもち焼いていた。


○月×日(ディーノ2歳)
今日はママさんたちの結婚記念日。
東京でデートするらしいのでディーノの世話役にあたしが名乗り出た。

「それじゃあ、ディーノのことお願いね」
「すまんがよろしく頼む」
「大丈夫だよ、ブラス爺ちゃんもいるし」
「まーま、いってらったーい」



「じゃあ昼飯まで散歩でもしてくる」
「気をつけての」

森の中を手を繋いでのんびり歩く。
ときどきキラーエイプやキャットバットが気付いて、二人に手を振ってくる。
デルムリン島ののどかな日常の光景だった。

「ねーね、ねーね」
「ん、どうしたディーノ」

袖を引っ張るディーノが指差す方向を見ると、七色の光を放つ純白の巨鳥が群れを成して空に舞っている。
崩壊した世界《イデーン》からデルムリン島へ逃れてきた《不死鳥ラーミア》の群れだった。

「らーみー、らーみー」
「ああ、ラーミアだな。そういやそろそろ産卵の時期か」

そのままラーミアの飛び去る姿を眺めていると、再びヴィータの袖が引っ張られた。

「るーみー、るーみー」
「んあ?」

『おさんぽなのかー』

「るーみー」
「…まあ、確かに『るーみー』だわな」

…魔影軍団長は今日もマイペースらしい。




長くなりそうなので分けます。



[26812] 鉄槌の騎士が新たな夜天の王を育てるようです
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/05/05 23:38
続・ヴィータの育児日記

○月×日(ディーノ4歳)
鬼岩城と何度も行き来しているせいか、ディーノも強さにあこがれるものがあるらしい。
運動も兼ねて軽く稽古をつけてやるとグングン伸びる。さすが竜の騎士ってことだろう。
面白くなってきたので、最近は親父さんと一緒にディーノに稽古をつけている。
目標は歴代最強の夜天の王だ。がんばれディーノ!


○月×日
バーンさんが遊びに来た。恋人のリュミスさんも一緒だ。
早く結婚はしたいらしいけど、今抱えてる問題が解決しないと安心できないらしい。
親父さんたちと酒飲んで帰っていった。王族って大変だな。
あとお土産の『鳳凰の卵のプリン』めちゃめちゃうまかった。
また持ってきてくんないかなー。


○月×日
ママさんに聞いたらママさんはお姫様なので実はディーノも王子さまらしい。
でも国に戻る気はないんだってさ…べ、べつにドレスとか着たいわけじゃないぞ!

「あら、おしゃれは女の子のたしなみよ?」
「マ、ママさん!? 盗み見すんなよ!」
「よかったら今度着てみる? 私の小さいころのものだけど」
「…いいの?」
「ええ、もちろん」
「…じゃあ、ちょっとだけ」


○月×日(お客さん)
グランバニアって国から王様が視察にきた。お付のモンスターたちも一緒だ。
王様自身が魔物使いなのでモンスターの楽園であるこの島を見学したいらしい。
すごく感じのいい人で、あたしもディーノもすぐ仲良くなれた。
王様はディーノに…と言うかママさんによく似てる気がする。
そう言ったら王様もママさんがお母さん(マーサさんと言うらしい)に似てると言っていた。
遠い親戚なのかもなー。
お妃さまもこの島に来たがってたらしいが、妊娠中で遠出は諦めたとのこと。
むしろ引き止めるのに苦労したらしい。どんな人なんだろ?

「がんどーふ? がんどふ!」
「いいとこだみゃー」
「そ、そ、そうだろ。お、俺の言った、とおり」
「スミスはエヴァさんから聞いただけだろー」
「メ…目立ちたがり」
「がんどふ」
「ち、ち、ちがうぞ。教えて、くれたのは、モ、モ、モ…」
「モルグ殿、だったな。不死騎団事務課長の」
「そ、そう! モルグさん、だ!」
「同じ腐った死体でもこうまで違うもんかみゃー」
「スミスもアレだ、技術班に改造してもらったらいいんじゃねえの?」
「がんどふ!」

『みんなー! ディーノ君が案内してくれるらしいからおいでー!』

「スラリン、リュカ殿が呼んでいる。行くぞ」
「へいよピエール。遅れるなよおめーら」


○月×日(実戦訓練開始!)
ブラス爺ちゃんと親父さんの協力で、ディーノはこの世界にあるほとんどの呪文と契約を終えた。
あとは実戦で使えるように練習あるのみ!
あと、ディーノが呪文を覚えたことで夜天の書の蒐集ページが大幅に増え、戦闘用デバイス・シュベルトクロイツが使用可能になった。
従来は杖の形だったけど、ディーノのスタイルに合わせて十字柄の剣の形になっている。
軽く手合わせしていたら、ディーノはもう《バギ(真空呪文)》の魔法剣を繰り出してきた。
親父さんもディーノの才能に驚いていたし、こうなったら歴代最強の竜の騎士も目指そうな、ディーノ!


○月×日
管理局の船がまたきやがった。
今度はきちんと侘びを入れに来たらしい。んなもんに何年かかってんだよ。
船長のクライドってやつはまともで好感持てたが、同乗してた聖王教会ってとこの人間が言うに事欠いて
『夜天の書は古代ベルカの遺産であり、その所有権は教会のもの。ゆえに教会に所属せよ』なんて抜かしやがった!
当然親父さんのみならず守護騎士全員が大激怒。存在すら忘れておいて何言ってやがる!
ディーノの強化で底上げされた守護騎士の力で徹底的にボコってやった。

後日、親父さんがバーンさんに相談したところ、
政治的・経済的に管理局を徹底的に絞ってやることが魔王軍で決定したらしい。
ざまみろ。


○月×日(ディーノ5歳)
先日シグナムがロン・ベルクさんから一本取ったらしい。かなり手加減されていたらしいが。
やたら上機嫌でディーノの手合わせをするとまで言い出した。

「よしディーノ。ちょっと調子に乗ってるシグナムの鼻っ柱叩き折ってやれ」
「んー、がんばる!」
「ふふふ、今日の私は一味も二味もちがうぞ!」
「…どーせロンさんに勝っただけで満足して告白してねーくせに」
「なっ!? なぜわかった!?」
「えー、そうなの?」
「ディーノ、よく考えろ…シグナムだぞ?」
「あー…」
「う、うるさあああああああい!」



「やっ! たあっ!」
「せいっ! ふふ、上達されたようですな…だが、まだまだ!」

ディーノの剣戟をシグナムは危なげなく捌く。
しかしその剣筋に少々驕りが混じっていることをヴィータもディーノも見逃さなかった。

「やっぱ油断してやがるな…ディーノ! やってやれ!」
「うんっ! いくよシグナム! 縛れ、グレイプニール!」
「っ! これはバインド!?」

夜天の書に記録された捕縛魔法《グレイプニール》
《この世界の魔法》にのみ注意を払っていたシグナムはその存在を失念してしまっていた。

「しまっ…!」
「ライデインッ…ブレイクッ!!」
「なっ!? くあああっ!!」

父譲りの必殺剣《ギガブレイク》
《ギガデイン(上位電撃呪文)》の魔法剣で渾身の斬撃を叩き込むそれを、
威力の劣る《ライデイン(電撃呪文)》とはいえ再現し、見事にディーノは勝利を収めた。

「やったなディーノ! シグナムから一本とったぞ!」
「へへっ、ヴィータ姉と父さんとの訓練のおかげだよ」
「親父さんにも報告しような! ギガブレイク再現したなんて知ったらきっと感動で大泣きするぞ!」

ヴィータとディーノは抱き合って勝利を喜ぶ。
一方、敗者のシグナムは落ち着いて見えるが背後に明らかに暗いオーラを漂わせていた。

「魔法に剣術、戦術…まさに二代目竜の騎士にふさわしい成長ぶりだな」
「ああ…まさか一本とられるとは思わなかった。さすがだよ、主ディ-ノは」
「お前もロン殿に一本とって浮かれてなければそうそう不覚はとらなかっただろうが、な」
「うっ…ザ、ザフィーラ…このことはロン殿には内密に…」
「するわけがなかろう。せいぜい未熟を鍛えなおしてもらってこい」
「う…うわ~~ん! 申し訳ありませんロン殿~~~!」


**

シグナムがダメナムに。

>>時期的にクライドさん、ひょっとして死んでないですか?
九尾さんの指摘でクライドの存在忘れずにすみました。
ありがとうございます。

>>不死騎団の案内役、モルグさんは元気ですか?
黄泉傀儡さん、とりあえず名前だけですが何とか出してみました。
スミスとは職場&同属仲間となります。




[26812] 魔王軍は次元世界への対応に奔走しています
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/06/26 19:04
鬼岩城 左肩の間 会議室

鬼岩城の会議室。現在そこに大魔王・バーンにより六大団長を含む魔王軍の重要人物たちが集められていた。
バーンの合図を受け、ミストバーンが議事進行を始める。

「では緊急会議を始める。議題は先日の時空管理局及び聖王教会の所業に対する制裁措置に関してだ」
(ひさびさのまともな会議だ…)
「よし、ミッドチルダ滅ぼそう。星ごと焦土に変えてやる。いや、氷河期に戻してやるか?」
「フレイザードー、あついー」
「食べてやるのかー! エヴァのところからグール軍団も連れて行くのだー!」
「私のクエーサーフレームで星系ごと吹き飛ばしましょう。ふふ、こういうのも久々だわ…」
(…と、思った矢先にこれか!?)

血の気の多い面々が我先にと身を乗り出す。
暴走気味なその光景にハドラーの胃がまた痛くなった。

「そう先走るなフレイザード。ルーミアもリュミス殿も落ちつけ」
「けどオッサンよう! ディーノに二度もちょっかいかけられて黙ってられねえだろうが!」
「そーなのだー! ディーノをさらっていこうなんて許せないのかー!」
「そのための会議だ。そうだろう、ハドラー殿」
「う、うむ。その通りだ(あれ、俺出番ないような…)」
「むう…仕方ないわね」
「まずはプレシア団長、そしてジェイル魔法技術班長に次元世界出身者として話が聞きたい」

そうミストバーンが促すと、全員の顔が次元世界出身の二人に向けられる。

「ええ、けど私たちもディーノ君と同じで管理局の被害者みたいなものだから…」
「個人的な怨みが入りまくった見解になってしまうよ。かまわないかね?」
「ああ、それでいい。パチュリー資料室長、及び魔影軍団諜報部門から次元世界の詳細についての報告は上がっている。ゆえに『生の意見』が聞きたいのだ」

バーンにそう説明され、二人はうなずいた。

「そう、わかったわ」
「では私から話させてもらおうか。そもそも私自身、管理局の暗部から生み出された存在でね…」


《科学者解説中…》


「…以上よ。今にして思えば魔力炉の事故も仕組まれたものだったのかもしれないわ。私に人造魔導士の研究をさせるための、ね」
「改めて考えると、非常に胸糞が悪くなってくるね…今のような自由な発想の全てを制限されていたのだから。当時の私はよく耐えたもんだよ」

そろって苦い顔をする科学者たち。

「かーっ! 裏があるどころか真っ黒じゃねーか!」
「うむ…しかし次元世界の状況を考えると治安維持に必要なのも事実だ。以前起きたデルムリン島襲撃事件は向こうも強行手段だったため、管理局も一部の暴走として関与した人員を切り捨て、当方への保障も単純に賠償問題で済んだが…」
「今回は威圧的だったとはいえ、あくまで『勧誘』。けど管理局が責任を持って行ったことなので、管理不行き届きとはいえ大事にしても、ということですねー」
「ああ、次元世界の混乱は我々としても望むものではないからな」
(…もうクロコダインが司令でいいだろ、これ)

すらすらと答えるクロコダインにハドラーは所在のなさを感じつつも『もうどうにでもなーれ』と言わんばかりに放心していた。

「チッ、面倒くせえ…」
「クロコダインの言うとおりだ。最悪我々が次元世界に侵攻・制圧すれば済む話だが…穏便に解決できるに越したことはない」
「そだよー、気持ちは分かるけど我慢してー?」
「…バーン様とオフクロが一緒になってそう言うんならしゃーねえ、我慢しとくさ」
「うむ、すまんな…フレイザードにはいざという時のために軍備を整えておいて欲しい。先陣を任せるのは魔王軍最大の制圧力を誇る氷炎魔団をおいて他にないからな」
「りょーかい」
「ハドラーもその際は全軍の指揮を頼むぞ。なにせ敵は管理局のみではない…多方面の敵を同時に相手取ることになる。かつて地上侵攻を成したお前の指揮能力を余は高く評価しておるのでな」
「は…ははっ! お任せあれ!」

大魔王直々の信頼の言葉。
それはハドラーの士気を高めるには十分過ぎるほどだった。



「ふむ…では対策としては外部監査組織を承認させる、というのが有効か」
「今まで存在してないほうが異常よ、それって。まあ、まかり通ってたわけだけど」
「では、外部監査組織を認めさせるとともに、我が魔影軍団、及び不死騎団により潜入工作を行い、内部改革を実行ということでいいでしょうか?」

ミストバーンが全員に視線を持って決を採る。
反対がないのを確認するとバーンもうなずいた。

「ああ、それが妥当だろう。また交渉についてだが…」
「管理局地上部隊を主眼に置いたほうがいいでしょう。通称『バサラ・ショック』の影響もあるので好意的に接してくれるはずです」

以前行われた熱気バサラのミッドチルダ(強制)ゲリラライブ。
ミッドチルダ星の住民や管理局員に強烈な反戦イメージとファイヤーボンバーの歌詞を焼き付けたこの事件は各方面から『バサラ・ショック』と呼ばれていた。
余談ではあるが、事件以降ミッドチルダの子供たちの間で『俺の歌を聞けファイヤー!』が大流行していたりもする。

「地上部隊のレジアス中将には私も個人的な繋がりがある、交渉なら任せてくれ」

ジェイルが不敵な笑みを浮かべて立ち上がる。

「それに私はまだ管理局に籍があるしね。公式には行方不明扱いのプレシア女史を表舞台に出すわけにいかないし…魔王軍側からの代表としてはミストバーン殿にお願いできるかな?」
「ああ、任されよう」
「よろしく頼むよ、魔影参謀どの」
「微力を尽くすとしよう…ところで、ジェイル氏の立場は大丈夫なのか? 我が魔影軍団でも偽装は行っているが、さりとて完璧とは言えぬのだが…」
「ああ、最高評議会の脳みそどもにはダミー情報を送りつけてあるし、呼び出しにはIS能力に加え《モシャス(変身呪文)》と魔術迷彩で生体波長まで完璧に変装した私の《娘》の一人…『ドゥーエ』が対応している」
「なるほど、技術班の力か」
「ああ、パチュリー君と束君にお世話になっている。ノヴァ教授などは私がいつ死んでも平気なように専用の擬体と記憶転写ICチップまで作ってくれているよ。私だけでは騙しきれなかったろうが…まったく、魔王軍のみんなには感謝しきれないよ」

『君にはまだ教えていないことがたくさんあるのですからね』と嬉しそうに告げたノヴァの顔を思い浮かべながら、ジェイルは穏やかに微笑んでいた。




「少しいいか? 管理局はそれでいいとして、聖王教会への対応に関してだが…まず、どういったものなのだ?」

聖王教会に関してエヴァが疑問をぶつける。

「そうね…簡単に言えば救世主思想のようなものよ『いずれ聖王が蘇り、ベルカの民を導く』とね」
「もっとも、教会も一枚岩ではないようだがね。そのせいで今回の事件なわけだし」
「上層部はベルカの復権を画策する復権派と、ベルカ崩壊の教訓を忘れないように非戦を訴える穏健派の二つが主流なようだな。また前線に出る騎士たちは単純に聖王を盲信する輩も多い…今回の事件も、復権派に後押しされた騎士の暴走ということになるだろう」

答えたのは科学者二人とミストバーン。
その答えにエヴァだけでなく、バーンも苦虫を噛み潰したような顔になる。

「ま、私のいた世界と似たようなものか…どの世界でも宗教、そして《神》というものは厄介極まりない」
「まったくだ…しかもそれを心底正義だと信じてるものだから始末におえん」

かたや吸血鬼というだけで神の使徒を名乗るものたちに石もて追われたエヴァ。
かたや神の決定で魔界に閉じ込められた魔族の代表たるバーン。

「さすがバーン様とエヴァちゃんは実感こもってますねー」
「現に俺たちゃあ神と戦ってんだろ」
「ふん、そんなものは私が跡形もなく消し飛ばしてやるわ…だからバーン、エヴァ、そんな顔はやめなさい」
「リュミス…ふ、そうだったな。余は大魔王、つねに不敵でなくばならぬか」
「ふふ…優しいな、未来の魔王妃殿下どのは…ありがとう」
「こ、このくらい当然よ。いまさら言うほどのことじゃないわっ」

真っ赤になってそっぽを向くリュミス。
最強の女王竜に向けられる大魔王と吸血姫の視線は感謝と慈愛に満ちていた。



「それで、どのような対策をとる? うかつにつつくと下っ端の騎士どもがまた暴走しかねんぞ?」
「ああ、それだが…今回は放置の方向でかまわんと思う」
「放置? では聖王教会には特に何も?」
「ああ…それよりも管理局に今回の情報を公開させ、教会と民衆・管理局との不和を煽って権威を失墜させたほうが面白いと…ザボエラが」
「ヒョッヒョッヒョッ」

あえて管理局のみを糾弾するが、その失態は教会のものであることを公表する(もちろんディーノや夜天の書についての詳細は隠しておく)。
つまり教会が自身の失態を管理局に押し付けた形になるのだ。しかもその内容は一般市民を強制的に連れ去ろうとしたというもの…評判を落とすには打ってつけである。
それにより管理局内と民衆には教会への不満・不信感が生まれ、教会内部にも自分の組織に疑問を持つものが生まれるだろう…というのがザボエラの策だった。

『さすが。人の嫌がること考えさせたら魔界一の爺さん』

満場一致のこの感想であった。

「ヒョ…って、一言多いわい!!」

HAHAHAHAHAHAHA



どっとはらい




おまけ


会議終了後


「そういえば…熱気バサラはまた次元世界の方に飛んだのか?」
「ええ、いつもどおり『紛争なんてくだらねえ! 俺の歌を聴けファイヤー!』と」

全くブレないバサラの行動に大魔王とその参謀はそろって苦笑する。

「…ミスティアも大変な旦那を持ったものだ。まあ、余人が口出しすることではないが」
「全て理解した上でのあの二人です。心配は無用でしょう」

二人の脳裏に浮かぶのは変わらず夜雀庵の営業を行うミスティアの姿。
その光景に『良妻賢母』というフレーズが想起されるのは間違いではないだろう。

「彼の理想のように歌で全てが分かりあえればいいのだが…現実はどうにも不便なものだ」
「そのための我ら魔王軍、でしょう? バーン様」
「ふ…そうだったな。これからさらに忙しくなる…覚悟はいいな、ミスト?」
「全てはバーン様の御心のままに」

**

「二人とも、少しよろしいか?」
「ミストバーン? 何かしら」
「うむ…次元世界の情報を集めているときに出てきた情報なのだがな、おそらく二人の専門だろうと思い持ってきた。これだ」

そういって差し出された書類はかなりの厚みがある。
二人は嫌な予感を感じずにはいられなかった。

「…拝見させてもらうよ」



「非合法研究所、か。まあ私もいくつか建てていたから解らなくもないが…」
「通常の企業に隠蔽されているものも含めればまだまだ増えると予想される」
「その辺はあなたたち魔影軍団頼みになるけど、一番の問題はこれね…『聖王再生計画』」

古代ベルカの遺跡から発見された聖王の遺物。
そこから検出された聖王の遺伝子からその血脈の復活を試みようとするものだった。

「奪えるだけのデータは全て奪ってきたが…どう見る?」
「すでに胚子の再生までこぎつけているようね。けど、これじゃあ…」
「…なんて滅茶苦茶な塩基配列だ…これじゃ培養層の外に出したら一日だって生きちゃいられない。形を保っているのが奇跡だよ」
「となれば、次に来るのは強化改造か、力の移植か…どっちにしろろくなもんじゃないわね」
「潰すのは簡単だ。しかし、このままではいずれ『聖王』という存在が教会に現れるのは間違いないだろう。それが不完全だろうとなんだろうと、関係なく」

そろって頭を抱えてしまう3人。

「…正直、聖王の力は未知の存在だ。バーン様のためにも、研究することはやぶさかではない」
「見捨てれば聖王の謎は闇の彼方、蘇らせれば問題の種…頭が痛いわね」
「けど、やることは決まっているのだろう? プレシア」
「当然よ。生まれ来る命を見捨てるというのなら…私は死のふちをさまよったアリシアに、そしてその命を助けてくれた魔王軍のみなに顔向けができなくなるわ」
「そうか…ならば」
「ええ。『この子』を助けてあげて、ミストバーン」
「了解した…では、すぐに実行しよう。胚子や遺物ともども、その研究データの一切全てを奪い取って来るとしよう」

そうミストバーンは二人に告げると、音もなくその場から消えた。

「まずは一安心というところかな?」
「そうね…けど、これだけボロボロのDNAを正常に戻すには…」
「…『プロジェクト・FATE』を再始動させるしかないね」
「ええ、いきなり聖王の大魔力を復活させるのは危険すぎるわ…まさかこんな形で再始動させるとは思わなかったけど」

そうつぶやいたプレシアの手には一つの携帯端末が握られており、そこには凍結処理された培養カプセルの画像が映し出されていた。
カプセルの中に浮かんでいるのは、培養液の中でまどろむ金髪の赤子。
翌年、その赤子はプレシアの腕に抱かれ、『フェイト』という名で呼ばれることとなる。

「何年かかるかわからないけど、少なくとも…聖王教会で生まれ、傀儡にされるよりは幸せになれるはずよ…いえ、してみせるわ」
「そうあってほしいものだね…本当に」

そして、そのデータから蘇った聖王…『ヴィヴィオ』と名づけられる少女が誕生するのは今より15年も後の話。

**

「…と、まあ今回はそのような対応ということになった」
「仕方ない、だろうな…管理局が不安定なことは自覚していたが…まさか今回のようなことを看過する事態になるとは…くそっ!」

苛立ちのあまり壁に拳を叩きつけるクライド。
それを見たハドラーは静かに語りかける。

「言っても仕方あるまい。どのような組織であれ、自分の最善を尽くすしか、な」
「…そう、だな」
「まあ、そんなわけで俺が貴公らの対応をすることになった。色々と苦労をかけると思うが、これからよろしく頼む、ハラオウン執務官」
「あ、ああ…よろしく、ハドラー魔軍司令閣下」

緊張して姿勢を正すクライドの肩をハドラーは苦笑しつつポンとたたく。

「そう硬くならなくてもいい。まあ、今日は俺に付き合え。一杯やろう」
「…ああ、ご馳走になろう」



夜雀庵にて

「うっ、うっ…最近さあ、クロノが、クロノが反抗期なんだよぅ~~!!」

(こいつ『も』プレシア女史と同類か…不幸だ…)

「うおおおおお~ん、リンディ~! 早く帰りたいよぅ~!!」

(ダレカタスケテクレ)



「…おいオフクロ、ハドラーのおっさん真っ白に燃え尽きてんぞ。大丈夫なのかあれ?」
「ありゃまー。またバーンさんにパワーアップ儀式頼んでおかなきゃダメかなー?」
「ハドラーのおっさんも冗談ぬきに原作の超魔生物形態より強ぇハズなんだがなぁ…やっぱ『武人モード』にならねえと精神的に脆いんかねえ?」
「苦労人ポジションにはまっちゃってるからねー、いつ武人っぷりを発揮できるやらー」


**

資料室 室長パチュリー私室

「会議での決定は以上よ。理解できたかしら?」
「はい、けど、何か問題が?」
「これまでの暴発の原因がつかみかねるのよ…管理局の立場が悪化するとわかって、どうして暴発しやすい人員を送り込んできたのか…MICA、資料出して」
『はい。4年前のデルムリン島襲撃、実行メンバーは任務前に主要な職から解かれ、言わばいつでも『シッポ切り』が出来る状態で送り込まれて来ています。また今回の謝罪来航においても、隊長のクライド・ハラオウン氏は上層部主流派…管理局至上主義者たちに邪魔者扱いされています』
「あえて犠牲にした…あるいは、されに来た?」
『そう考えられます』
「それだけならよくある話ではあるけど…それを私たち魔王軍相手になぜ、という疑問が残るわ。始末するならもっと簡単な方法があるはずだし」
「…『あいつら』が、関与している…魔王軍の力を図るために?」
「ええ…ミストバーンにも調べてもらってるけど、その可能性が高いと踏んでいるわ。おそらくあなたたちの管轄のはずよ」

『《エターナル》は、ね…』

「フレイザードからも新型兵器『神剣デバイス』の実験にちょうどいいって言われてることだし…お願い、できるかしら?」

「了解です。元ラキオス王国スピリット部隊こと、現魔王軍・氷炎魔団スピリット遊撃部隊、隊長 高嶺悠人」
「副隊長 アセリア・ブルースピリット」
『任務を遂行します』

「ええ、よろしくおねがいするわ」


****

管理局・教会対策はこんな感じになりました。
素人考えのため穴があるかもしれないので、なにか気づきましたらご指摘お願いします。



[26812] グランバニア王とその友人たちの日常風景
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/05/25 05:20
注:今回は作画・いのまたむつみでイメージするとより楽しめます


魔王軍が居を構える世界とは別の次元に存在する山の王国、グランバニア。
長きに渡る王の不在に不安定だったこの国にも、旧王の帰還と新王の即位により活気が戻ってきた。

「よし…と。それじゃあ、今日の案件はこれで終了かな、サンチョ?」
「はい坊ちゃん。お疲れ様でした」

執務室での政務がひと段落し、ゴキゴキと肩を鳴らすのは先日のデルムリン島訪問で英気を養ってきた新グランバニア王、リュカことリュケイロム。
それに答えるのはリュカの父の時代からお側役を担ってきた忠臣、サンチョである。

「もう…サンチョの中ではいつまで僕は《坊ちゃん》なのさ?」
「坊ちゃんはいつまでも坊ちゃんですとも! 本当に立派になられて…」

やれやれ、と肩を落とすリュカに対し、サンチョは涙をハンカチでぬぐい、そのまま鼻水をかむほどに感動を押し隠そうとはしない。
リュカが即位してから、何度となく繰り返された光景である。

「サンチョ、いい加減にしろ。リュケイロム王が困っている」
『まあまあ《坊ちゃん》それは無茶というものですよ』
「シャルティエ! お前もだ!」

救いの手を出そうとした矢先に水を差されたのはリュカの忠臣にして友人、リオン・マグナス。
そのリオンの出鼻をくじいたのはリオンの相棒たる知性持つ剣《ソーディアン》のシャルティエである。

「ええ、ええ、シェルティエ殿の言う通りです! シャルティエ殿にとってリオン君が坊ちゃんであると同様にこのサンチョにとって坊ちゃんはもう目の中に入れても痛くないぐらい…」
『わかります! わかりますよサンチョさん! 坊ちゃんの愛らしさといったらそりゃあもう…』

そして今日も今日とて始まる、二人の過保護なお目付け役による『坊ちゃん自慢』の数々。

「…お互い過保護な保護者には苦労するね、リオン」
「…まったくです」

いつまでたっても子ども扱いな自分たちの境遇に頭を抱える二人の《坊ちゃん》たちであった。



いつまでも止まらないお目付け役たちを放置して、リュカたちは別室で談笑に入っていた。

「先日のデルムリン島訪問はかなりおきに召されたようですね」
「うん、島の子とも仲良くなってね。ディーノ君って言うんだけど、僕と同じでモンスターととても仲がよかった……それとリオン、その口調はやめようよ、背中が痒くなりそうだ」
「一応礼儀としてやっているのですが……了解だよ。それよりもそれはヘンリーの真似かい? やめておけ、あいつは王族のくせにスタンと同じで品性ってものがない、君の格が落ちる」
「はは……相変わらず手厳しいなあ」

苦笑するリュカ。リオンの口元にも笑みが浮かんでいる。

「それより、リオンは元の世界に帰らなくていいのかい? バーン王のおかげで次元跳躍路も確立したことだし…」
「…もう生存の報告には行ったし、この世界に住むことも伝えてある。心配は無用だよ」
「でも…」
「…それにね、リュカ。僕はあの日、次元の狭間に吸い込まれ、この世界に落ちて君と出会ったあの日…そう、君に助けられたあの時に見つけたんだよ、空っぽだった僕が生きる目的をね」

リュカの瞳をまっすぐに見据えてリオンは言葉を続ける。

「誰に利用されるでもなく、自分自身の意思で…君の騎士に、君の剣になりたいと思ったからこそ僕はここにいる」
「リオン…ありがとう」
「…まあそれ以上に、君が王として少々頼りないというのもあるがな。ほおって置くと無茶をしそうで困る。そんなことでは奥さんを悲しませるぞ?」
「だぁぁぁぁぁ…そ、そこで落として来るかい、君は…」
「フフ、ま、精進したまえ。マイロード」
「了解…かなわないなあ、まったく。けどリオン? マリアンさんはいいのかい?」
「なっ!? そ、それはこの際関係ないだろう! スタンか君は!」

主君と騎士でありながら親友でもある二人の話はまだまだ続きそうであった。



「では僕は仕事に戻る…失礼します、陛下」
「切り返しが早いなあ…またね、リオン」

リオンを見送って、さて何をしようかとリュカは城内の散策をはじめる。
するとそこにかかる声があった。

「リュカ、仕事は終わりのようだな」
「父さん。うん何とかね」

リュカの父にして先代グランバニア王、パパスことデュムパポス・エル・ケル・グランバニアである。

「すまんな…本来なら私とマーサが国政を行うべきなのだが」
「モンスター族を相手にする以上はしょうがないよ、母さんは病み上がりだしね。バーン王に頼ってばかりもいられないし」

《ある理由》により母マーサと同様にモンスターとの完全な会話が可能になったリュカは、魔王軍との交流・グランバニアでのモンスターとの共存の両面において、もはや欠くことのできない存在になっていた。

「…ミルドラースのことは、残念だったな」
「バーン王もとりなしはしてくれた…でも、ミルドラースは受け入れなかった。それがあいつの決断だった」

光の教団と呼ばれる組織に拉致された母の救出。そしてその元凶であった魔王ミルドラースの打倒を一年ほど前…ちょうど魔王軍がこの世界に接触・交流を開始した時期にリュカたちは終えている。

「バーン王も言っていたよ、あいつはなるべきだった自分の姿の一つだと」
「闇に生まれながらも、光を求める者、か…」
「光に生まれたものが、闇を内に抱えるように、とも言っていたよ。だからこそ、僕らはがんばらないといけないんだけど」
「双方がともに暮らせる世界、か。難題だな」
「そうだね…でも、それは母さんの望みでもある。やってみるよ」
「…はっはっは! 言うようになったな!」

バンバンとリュカの肩を叩く。
力強いスキンシップが、リュカには心地よかった。




またまた分けます。




[26812] 山間の村の鍛冶屋と勇者と少年と
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/07/27 23:00
ギルドメイン大陸中央北部 テラン王国 ランカークス村

静かな山間の村、ランカークス。そこに一軒だけ居を構える武器屋がある。
常に良質の武器をそろえていることでその道の者には有名なこの店に、今日もまた店主の怒号が響く。

「ポップ! ポップ! どこに行きやがった!」
「たぶん、またあの人の所ですよ」
「ったく…」
「仕方ないですよ、あの子も男の子ですから」
「だからって店の仕事サボっていい理由にはならんだろうが」

店主ジャンクが渋い顔で頭を掻き毟るのを、妻スティーヌはまあまあとなだめる。

「ジャンクおじちゃーん、この武器どこに置くの?」
「重いよー」

そこへ声をかけてくるのは、赤や青、緑と色とりどりの髪をした子供たち。
『ファンタスマゴリア』から移住してきたスピリットの子供たちだった。

「ん? ああ、適当に立てかけといてくれりゃいい」
「はーい!」
「よいさ、よいさ」

自然豊かなテラン王国。当然この地における精霊力も高く、精霊種に近い存在であるスピリット族にとって最高の環境ともいえる。
過疎化の進んでいたテランも、彼女たちと魔王軍によってもたらされたマナ技術によって、自然と文明の融和を目指した国として発展を遂げつつあった。
このランカークスでも、彼女たちのように人々に混じって働くスピリットたちがよく見られるようになっている。

「さ、終わったらおやつにしましょうね。手を洗ったらリビングで待っててね」
「わーい!」
「おやつだー!」
「いこいこ!」

我先にと飛び出していくスピリットの子供たち。

「やれやれ、スピリットのガキんちょどものほうがよっぽど働き者じゃねえか」
「ふふ、またそんなこと言って…本当はあの子があの人に…アバンさんに向けてた憧れの視線が羨ましいだけなんじゃないの?」
「う、うるせえよ! そんなわけあるか!」

真っ赤になって否定するジャンクを見て、スティーヌは息子そっくりな夫の子供っぽさにクスクスと笑う。

「…ロンの所に行って来る。そろそろ新作が出来るころだろうしな」
「はい、行ってらっしゃい」

照れくさそうな顔でジャンクはそそくさと店を後にした。



ロン・ベルクの工房

カーン、カーンと鉄を打つ音が森の中に響く。
工房の中には汗だくになって一心不乱に槌を振るう赤毛の青年と、それを見守る顔に大きな十字傷を持つ魔族の姿があった。

「…ふう、よし」

赤熱した剣を水に浸すと、蒸気が工房内を満たしていく。
そうして造られた剣を水から引き上げると、それは鏡のように美しい光沢を持っていた。

「出来ました!」
「…貸してみろ」

魔族が青年の剣を手に取る。
しばらく剣を眺め…やがて落胆した表情になった。

「駄目だ」
「ええ!? でもロンさん、俺、今回は自分でも会心の出来だと…」
「士郎。いつも言っているだろう、『投影』と同じ要領でやるな、とな」

厳しい眼で青年…『衛宮士郎』を見る魔族…『ロン・ベルク』

「見栄えもいい、切れ味もいい、存在理念も確立している。しかし…」

ロンは士郎の剣に手刀を打ち込む。すると…

「あっ!」

瞬時に罅が刀身全体に広がり、剣はガラスのように粉々になって砕け散ってしまった。

「…肝心のお前の『心』という『芯』が通っていなければ…ただのガラス細工だ」
「はい…すみません」

粉々になった自分の打った剣にがっくりとうなだれる士郎。

「…まだ『エミヤ』のことを気にしているのか?」
「!! それ、は…」
「ふう…まあ、アイツはお前の未来の可能性の一つだ。気にするなと言うほうが無理なのかもしれんが…いいか、アイツはアイツであって、お前じゃない」

そう言ってロンは椅子に座ると、テーブルに置かれた酒瓶を片手で器用に開け、飲み干す。

「『投影魔術』を限界まで極めた先がアイツの『剣』なのだろう。それはそれで一つの完成型だ、俺も否定はせん」
「なら!」
「だがお前は違う。素質は同じでもお前が選んだのは『贋作者(フェイカー)』ではなく『創造者(クリエイター)』だ。他者の念におもねるな、『誰か』の剣を打つんじゃない、『お前』の剣を打つんだ」
「俺の…剣を…」

士郎はじっと自分の手を見つめる。

「お前が『お前の剣』を打てるようになったとき、お前の『投影』は『創造』に進化する。そうなればエミヤなど、ただの『お前の劣化品』だ」

士郎を挑発するようにニヤリと不敵な笑みをロンは浮かべる。

「…ぷっ! ア、アイツが劣化品ですか…そいつは面白そうですね」
「やる気が出たか? ならもう一度だ。いいのが出来たらジャンクの店に並べさせてやる」
「はい!」

威勢良く返事をすると、士郎は再び炉へと向かい、鉄を熱し始めた。
その姿に満足したロンは、静かに工房を後にした。



鉄を打つ音が響く工房の前に立つ、鎧姿の少女。
彼女は工房から出てきたロンを見つけると、不安げな顔で駆け寄って来た。

「ロン殿」
「アルトリアか」

かつてアーサー王と呼ばれた少女、『アルトリア・ペンドラゴン』である。

「どうですか、シロウは?」
「遠坂のお嬢ちゃんに頼まれてのことだったが…なかなかどうして、見込みはある。あれならもうエミヤが語ったような未来を歩むことはあるまい」
「そうですか…よかった」
「にしても、だ。『聖杯戦争』だったか? エミヤがああなったのも、士郎が魔術を知ったのも、元をたどればそれが原因なのだろう? やっかいな儀式もあったものだ」
「そうですね…でも、おかげで出会えた縁もあります。私とシロウや、ロン殿とも」
「縁は異なもの、味なもの…か。士郎の国の諺だったか」
「はい」

二人そろって苦笑をもらす。

「さてアルトリア、お前も今日は俺との鍛錬を希望か?」
「はい、ご都合がよろしければ…ところで、私『も』とは…?」
「そこにいる騎士殿だよ…出て来い、シグナム」
「は…はい」

ロンが鋭い目つきで木の陰を睨みつけると…萎縮した様子のシグナムが沈痛な面持ちで歩み出てきた。

「シグナムではないですか、貴女もロン殿に稽古をつけてもらいに?」
「え、ええ…まあ」
「…ザフィーラから聞いたぞ」

その言葉にビクンッ! とシグナムの身体が震える。

「慢心してディーノに遅れをとったらしいな…俺のしごき方が甘かったようだ。今日は基礎から徹底的に鍛え直してやる」

ロンの瞳は『まさか嫌とは言わんだろうな?』と有無を言わせない気迫でシグナムを睨み続けていた。

「あ、あうう…申し訳ありません…」
「シグナム…しっかりしましょうよ…」

未だにロンから一本取れない自分とは違って、一本取った実績のあるシグナムのあんまりな姿に、アルトリアはなんだか泣きたくなった。



「おーいロン…って、今日もまた凄まじいな」
「ジャンクか。新作の剣なら裏にまとめてある、持っていけ」

手ごろな岩に腰かけ、酒をあおるロンの身体には傷どころか服のほつれ一つない。
それに対し、アルトリアはカリバーンを支えになんとか立っている状態で鎧もそこかしこが壊れており、シグナムにいたってはレヴァンテインは大破し、ボロボロの姿で眼を回してぶっ倒れている。
周辺には真名開放やカートリッジロードによる攻撃と思われる、炭化した木々や抉れた地面が広がっていた。

「魔力放出に頼った戦いばかりしてるからこうなるんだ。実戦経験は豊富かもしれんが、技量が格上の相手との経験が乏しいといういい見本だ」
「は、はい…勉強になります…」
「(気絶中)」
「…シグナムを連れて行ってやれ。そろそろ士郎のほうもひと段落つくだろう、食材は勝手に使ってかまわんから飯でも食わせてもらって来い」
「はい! ではお先に! さあシグナムいつまで寝てるんですか! シロウー! ごはんはまだですかー!」

その言葉を聞くや否や、とたんに元気になったアルトリアは気絶したシグナムを引きずりながら工房の中に突撃していった。

「ふ、色気より食い気だなアルトリアは。色気ばかりのシグナムも少しは見習ったらいいかもしれん」
「もったいねえ…あんないい女、二人も独占して言うことがそれかよ」
「あいにくと俺は色恋沙汰に関して数百年前に枯れちまったんでね…まあ、バーンのような例外もいるがな。いや、それだけリュミスがいい女なのか」
「へえ、噂の魔王妃殿下かい。一度お目にかかりたいもんだね」
「ククク、助平なところは息子と一緒だな」
「なっ!? そんなわけあるか!!」



「へ…っくしょ! 誰かウワサしてんのかなぁ?」

村の大通りを駆けていくはちまきを締めた活発そうな少年。
ジャンクとスティーヌの息子、ポップである。

「ま、いいや。へへ、今日こそは弟子入りを認めてもらうんだ!」

そう言ってポップがやってきたのは村の酒場。
普段は夜にならないと閑散としているのだが、日中である現在も多くの人が出入りしていた。そしてなぜか、村の年頃の女性がよく見られ、しかもその表情はどこか上気している。

普段はきれいな女性に鼻の下を伸ばす、年齢よりもませた子供のポップだったが、今はそれらに目もくれず、店内のカウンター目指し駆け抜ける。

「アバン先生!」
「やあポップ。今日も来てくれたんですか?」

そこにはエプロンと三角巾をつけて楽しそうに料理するアバンの姿があった。



「毎日来てくれますけど、いいんですか? 今日も家の手伝いがあったはずでは…」
「武器屋なんてつまんねーよ! 俺は先生みたいにかっこよくなるんだ!」
「おやおや、私はここで厨房の手伝いをしてるだけなんですけどねえ…おっと、後ろにジャンクさんが…」
「うひぃっ!?」
「…いたら大変ですよ、ポップ?」
「お、脅かさないでくれよ~」

先日ランカークス村を襲撃した巨大ごうけつ熊、通称『赤カブト』をアバンが撃退したことは記憶に新しい。
それを目撃したのはポップを含む村人数名だったが、アバンはそれを誇るでもなく、現在は料理上手な旅人として村の酒場で料理人の真似事をしている。
ちなみにその時アバンは『レアな食材探しでクマ狩りをすることもあるんですよ。その時の経験が活きただけです』とあくまで料理人であると主張していた。

「お願いします! 今日こそ俺を弟子に!」

物語の勇者を彷彿とさせたアバンの姿にポップは夢中になり、アバンが副業で戦士や魔法使いの育成もやっていることを執念で聞き出すと、それ以来ポップは先生と呼んでアバンに付きまとっている。

「料理の修業でしたらいつでもいいですよ?」
「だからそうじゃなくて~!」

こうして何度もアバンの元に通うポップだったが、そのたびにはぐらかされていた。
今日も同様にうやむやにされそうになっていたが…

「…失礼、席はあるか?」
「はい、カウンター席にどうぞー」

一人の男が酒場へと入ってくる。

「っ!?」
「? 先生?」

その瞬間、アバンの表情が張り詰めた。
それは薄汚れたフード付きマントを羽織った男。
フードの隙間からは日に焼けて色あせた金髪が見え隠れしている。
所々傷ついた軽装鎧は、元々は立派な騎士鎧であったことがアバンには見て取れた。そして…

(彼の持つ雰囲気は間違いなく一流の剣士のもの…世が世なら勇者と言われてもおかしくないような、純粋な光の闘気…それなのに、彼の奥底から感じる闇の気配…それもかなり深く、濃い…)

アバンの一番弟子たるヒュンケルがバルトスから施された暗黒闘気の修行。
それと対峙した経験が男の中に感じる『闇』を…ヒュンケルのもつ融和した闘気ではない、不完全な光と闇の違和感を如実に感じ取らせていた。

「彼は…?」
「ああ、あの人? 昨日から宿屋に泊ってるみたいなんだけど…なんか暗い感じだよな。戦士っぽいけど、アバン先生のほうがかっこいいや!」
「…すいませんポップ、ちょっと失礼しますね」
「え?」

そう言ってアバンはポップの元を離れると、無言で食事をする男に話しかけた。

「失礼、少しよろしいですか?」
「…何か?」
「私はアバンと申します。お名前を伺っても?」
「…名は、捨てた。今の私はただの旅人だ」
「そうですか…いえ、なにか只者ではない感じがしましたので、どこぞの高名な『勇者』どのかと…」

「!! 私はそんなものではない!!」

突然男は声を荒げる。
その声ににぎわっていた店内が一瞬静まり返り、何事かと驚いた人々の視線が男とアバンに集中する。

「…失礼した。皆さんも食事の邪魔をしてしまい、申し訳ない」

深々と頭を下げる男に毒気を抜かれ、皆は再び談笑を始めた。
店内に喧騒が戻って来る。

(!! 『勇者』…! そういうことですか…)

『勇者』あるいは『英雄』というものは、羨望とともに妬み、恨みをも受けるものである。戦後ともなればよくて広告塔に、最悪の場合スケープゴートとして戦争の責任をかぶせられ抹殺されかねない。
魔王ハドラーを退けたアバンもまた『勇者』と呼ばれるにふさわしい存在であるが、アバンが故郷カール王国に戻らず、旅を続けているのもそういう事態から逃れるためであった。
ゆえに、男もまた『勇者』と言われる存在であると同時に、それから逃れようとしていることをアバンは理解した。

「…すいません、嫌なことをお聞きしてしまいました」
「いや…」
「こちら、私のオリジナルなのですが、よろしかったら食べてください」

アバン得意の香草をふんだんに使った料理が男の前に差し出される。

「しかし…」
「私の責任もありますから、おごりますよ。お気になさらず」
「…ありがとう」



「先生! 頼むから弟子に!」

途中で離れてしまったため、ポップをはぐらかしそびれたアバンはそれからずっとポップに弟子入りをせがまれ続けていた。
もうこれ以上はぐらかすのも無理と判断したアバンは、一つの方法を試してみることにした。

「しょうがないですねえ…でしたらポップ、宿題です」

アバンの懐から取り出されたのは一冊の本。
表紙には『初級呪文指南 著アバン・デ・ジニュアール3世』と書かれている。

「この本に書かれている魔法、全て習得してきたら弟子として認めてもいいですよ?」
「ほ、本当!? よっしゃー! 絶対覚えてくるよ! 待っててくれよな!」

アバンから渡された本を両手で抱きしめると、満面の笑みを浮かべながらポップは酒場を飛び出していった。

「…本気なのか」
「…メラやヒャドといった初級の魔法書ですけどね。それでも、なんのヒントも無いところから始めた場合、習得は至難の技です」

先ほどまで食事をしていた男から声をかけられる。
肩をすくめ、困ったものだというジェスチャーをとるアバンだったが、その顔はどこか嬉しそうだった。

「私の修行はベリーベリーハードですからね。もしコレが出来ないようなら弟子になっても続かないでしょうし…それに」
「それに?」
「あの子がそこまでして弟子になりたいと言ってくれるなら、師匠冥利に尽きるじゃないですか♪」
「…ふふ、変わった人だな、あなたは」


どっとはらい


**

ポップ編、始まりました。



[26812] 『剣(ツルギ)』にまつわるエトセトラ
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/08/07 20:56
ジャンクの武器屋 ポップの自室

「ぐぬぬぬ…」

アバン直筆の教本を前ににらめっこを続けるポップ。
その傍らには村中の知り合いをまわってかき集めた辞書の類やメモ書きが山と積み上げられている。

「ポップ兄ちゃん、どーしたのー?」
「のー?」

いつも明るい普段と違い、難しい顔のポップの姿にスピリットの子供たちから声がかかる。
平和なランカークス村にいるスピリットたちは、保護という観点も兼ねてか、移住してきた者たちの中でも幼い者が多い。
そのため、村の子供たちの中でも年かさのポップは兄的存在として慕われていた。

「んあ? 邪魔すんなよ。俺はこの本に書かれてる魔法を覚えなきゃならないんだ。くっそ~、何回見ても契約の術式の方法がわかんねえ…」
「どこどこー?」
「読めないー」
「はあ…ま、いいか。気分転換にはなるだろ。ほれ、ここだ」

もう少し集中したいポップだったが、邪険にするわけにもいかず、教本を見せながら説明する。

「『精霊への呼びかけをもって契約と成す』、そのための術式なんだけど…呼びかけの術式は自分で作らなきゃいけないんだよ。師匠がいる魔法使いなら師匠が使ったのをそのまま使うことが多いらしいんだけど、俺にはそんなのいないし…適当に古代語やらルーンやら組み合わせてみたけど、間違ってたらヤバイし…」

ため息と同時に肩を落とす。
苦労して読めない字やわからない単語も調べた末の結果に、ポップが落ち込むのも当然といえば当然の理由だった。

「あ~もう! 弟子入りしたいのにそのために師匠が必要なんてどうすりゃいいんだよー!」

苛立ちにガシガシと頭を掻き毟る。
そんなポップの姿に、スピリットの一人がたまらず話しかけた。

「あのね! それなら、わたしたちで代わりができるかも!」
「あ、そっか!」
「うん!」
「かもかも!」

他の子供たちもそれに追随する。

「へ? どういう…そ、そうか! スピリットは精霊族みたいなもんじゃねえか!」
「うん、だからわたしたちが精霊への呼びかけをすればー」
「呪文が無くても契約できるよー」
「あはははは! やったぜ! これで魔法が覚えられる! サンキューな、みんな!」
「えへー、よかったねポップ兄ちゃん」
「やたー」

喜びのあまり、ポップとスピリットたちは手をつなぎ輪になってグルグル回る。
その顔はみな満面の笑顔だった。



ドタドタと階段を駆け下りるポップとスピリットたち。
その騒々しさにジャンクが怒鳴り声をあげた。

「ポップ! やっと出てきやがったか! お前今まで何を…!」
「悪い親父! コレ終わったら店番手伝うから! ちょっと森まで行って来る!」
「からー!」
「くるー!」
「おやつお願いしまーす!」
「はいはい、行ってらっしゃい」
「おいスティーヌ!?」

しかし引き止める間もなく、ポップたちは店を飛び出していった。
あとに残るのはしかめっ面のジャンクとにこやかな顔のスティーヌのみ。

「ったく。しばらく部屋に閉じこもったと思えばいきなり飛び出していきやがって…ガキんちょどもまで一緒になってなにやってやがんだか」
「いいじゃないですか。ポップはあの子達のお兄さんみたいなものだし…」
「一緒になってイタズラやってただけだろうが」
「それに、あんなにあの子が物事に打ち込むなんて、初めてじゃないですか?」
「…まあ、な。それもいつまで続くやら」
「大丈夫ですよ、きっと」
(本当、頑固ものなんだから)

いまいち納得がいかない様子のジャンクを、スティーヌは心の中で苦笑しつつもニコニコと眺めていた。



村はずれの森のなか、スピリットたちの案内で精霊の力が集まりやすい広場になっている場所にポップたちは集まっていた。

「それじゃあ、頼むぜ」
「うん!」
「がんばるー」

地面に木の枝で彫って描かれた五芒星の中央にポップが立ち、その周囲、星の頂点の位置に赤・青・緑・黒・白の各スピリットたちが立っている。
その周りにも数名のスピリットたちが好奇心に胸躍らせながらこの儀式を見守っていた。

「始めるよー」
「おう」

スピリットたちが各々の永遠神剣を構え、力場の翼たるハイロゥを現出させる。
と、同時に地面に描かれた五芒星が発光を始め…彼女たちに変化がおきた。


『…天地に満ちたる精霊よ、我ら永遠神剣の仔、スピリットの願いを聞き届け給え』


五人の幼いスピリットたちの無邪気な表情が、突然大人びた、神聖な雰囲気を伴ったものに変わり、ポップの知らない言語で『詩』を紡ぎ始める。

それは『聖ヨト語』。

スピリットたちの故郷、ファンタズマゴリアの言語であり、彼女たちが最も強く『世界』に呼びかけるための言葉だった。


『我らが朋友に、その偉大なる力を与え給え。汝らの代行者として、その力振るうことを許し給え』


周囲にはスピリットたちのハイロゥと同じような色とりどりの光の粒が舞い踊り始め、周りのスピリットたちも詩を紡ぐのに呼応して、賛美歌のようなコーラスを歌い始める。
突然感じの変わったスピリットたちにポップは驚きを隠せず、『大丈夫か』と声をかけようとしたが…それは叶わなかった。


『彼の者に、力を。我らの思いを、願いを、祝福を、祈りを、ここに捧げん』


圧倒された。
魅せられた。
その美しい光景に。
その神聖な歌声に。

人が見ることを許されないような、それほどまでの神々しさを持ったその光景に…ポップは言葉を放つことすら忘れ、忘我のままに魅入っていた。


『契約の儀をここに。神剣の願いを、今もたらさん!』


スピリットたちの宣誓を意味するかのごとく、強い語調で紡がれた最後の詩を聞いた瞬間、ポップの視界はまばゆいばかりの光に包まれた。



「う、ん…あれ?」
「ポップ兄ちゃん、だいじょーぶー?」
「じょーぶー?」

視界が回復したポップが最初に見たものは、光の消えた五芒星の上に尻餅をついている自分を覗き込んで心配するスピリットたちの姿だった。
その表情に先ほどまでの神聖さは無く、元の無邪気な子供のものに戻っている。

「お、おう…それより、みんなこそ大丈夫か? なんかさっき、みんなの感じが違ったような…」
「そーお?」
「わかんなーい」

どうやら先ほどまでのことは全く覚えていないらしく、どの子供たちも『?』という顔をするだけだった。

「それより、魔法、使えるようになったー?」
「ん、そうだな…」

そう言われてポップは自分の状態を確認してみる。
すると、先ほどまでは感じられなかった、何か熱い『流れ』のようなものを自分の中や、周囲に感じることが出来た。

「なんか…できそうな気がする」
「試してみよーよ!」
「そうだな! よーし…」

教本に書かれていた通りに、周囲の『力』を集めて自分の中に取り込み、形作られた『魔法力』をイメージに沿って変化させ…放出する!

「《メラ(火炎呪文)》!!」

紡がれた炎の呪文。
その発動と同時に突き出されたポップの掌から拳大ほどの火の玉が飛び出し…数メートルほど飛んで消滅した。

「で…出来た! 魔法が使えた!!」
「やったー!!」
「ばんざーい!!」
「やった! やったぜ! みんなありがとな!!」
「えへへー」
「ぎゅー」

抱き合って喜ぶポップとスピリットたち。
森の広場はちょっとしたお祭り騒ぎとなった。

「へへ…でもまだまだ! 先生と約束したのは教本の呪文全部だったからな! がんばるぜー!」
「ポップ兄ちゃんがんばれー!」
「ばれー!」

力強く拳を握り締めるポップと、それを応援するスピリットたち。

そんな彼らの姿を、森が祝福するかのように優しくさざめいていた…



チャリ

「…あれ? 何だこれ?」

森からの帰り道、ポップは手首の小さな違和感と、かすかな金属音に気付いて立ち止まった。
その原因である手首を見ると、チェーンに繋がれた小さな剣のアクセサリーがいつの間にかぶら下がっていた。

「何だろこれ? …ま、いっか。ちょっとかっこいいし」

特に邪魔でもなかったので、ポップは気にしないことにした。

「ポップ兄ちゃーん! はやくはやくー!」
「はやくこないと、おやつ食べちゃうよー!」
「あ、このやろ! 待ちやがれー!」
「あははー」
「わーい!」

前方を行くスピリットたちを追いかけるポップ。
もう彼の中では、小さな『剣』のことなど忘れ去っていた。


***

ロン・ベルクの工房

今日もまた静かな森の中に剣を打つ音が木霊する。
工房の中では汗だくになって槌を振るう士郎と、それを見守るロンの姿があった。

(…この様子だと今日もまた駄目なようだな。なんとかコイツの意識を別の方向へ…む!?)

何気なく士郎から視線を逸らした先、そこにあるものにロンの目は釘付けになる。

「…士郎、この剣はどうした?」
「え? ああ、それは練習で造ったやつで…」

工房の隅に立て掛けられた一本の剣をロンはとり、士郎に尋ねる。
汗をぬぐい、質問に答える士郎の顔は浮かない面持ちだった。

「切れ味悪そうだし、なんか歪で…やたらと頑丈なんですけどね」

それは何の変哲もない、一本の『ブロードソード』と呼ばれる種類の、幅広の剣。
剣としての形は整っているが、表面に現れる金属の波紋は奇妙に歪み、その刃は薪割りにも苦労しそうなほどぶ厚いナマクラ。
周囲に並ぶロンの打った美しい剣との違いに、士郎は肩をすくませ、顔を赤くして恥じいっている。

「…合格だ」
「…えっ? ええっ!?」

だが、ロンの口から告げられたのは思いもよらない言葉だった。



「どういうことか解らない、と言う顔だな」
「そ、そりゃそうですよ! よりにもよって、そんなみっともない剣がどうして合格なんですか!?」

納得がいかない、といった表情で、士郎は語気を荒げてロンに詰め寄る。

「ククク、お前の剣がアルトリアの剣のように美麗なものになると思っていたのか? 残念だが、この無骨で歪で不恰好な剣こそが『お前の剣』だ」
「そ、そんな…これ、が、俺の剣」

そう言葉を聞いて、士郎の中に生まれたのは絶望だった。

(『アイツ』に負けないようにって、俺は俺の道を進むんだって…そう思って今までやってきたのに、その結果が『コレ』? こんなものが…俺の)

ガクリと膝を突く士郎。
だが、ロンはそれに構わず言葉を続ける。

「投影魔術士、それも剣に特化したお前が打つ剣はお前の心を映す。衛宮士郎という人間の本質をな」

(やめろ、やめてくれ)

「父親の姿に憧れ、それを自分なりに追い続けてきたお前の心は無骨そのもの。
正義の味方という言葉の美しさに囚われてきたお前の理想は歪だ。理想ばかりを追い求め、感情のままに進むお前の姿は他者からはさぞ不恰好に写ったことだろう」

(聞きたくない、聞きたくない! こんな結末なんて、俺は嫌だ!)

まるで聖杯戦争のおりに敵対した神父…『言峰綺礼』と同じ、心の傷を抉り出すようなロンの言葉に、四郎は子供のようにうずくまって震える。

「だが…それでもお前の本質は決して折れない、砕けない。捻じ曲がることはあろうとも、朽ちない、傷つかない」
「…えっ?」

だが、そこから先に紡がれた言葉には、士郎への賞賛と憧憬があるように感じられた。

「この剣を醜いと思うか? それも当然だろう。誰しも己の本質を、その醜い本性など見たくは無いはずだ」

そう言われて士郎は、再度自分が打った剣を見る。そして、今までの自分の行動を思い返してみる。

『正義の味方になりたい』…その思いをつねに抱きながら、将来になんのビジョンも描かず、連綿と人助けをすることを続けていた自分。
己の非力さを自覚せず、ただ守りたいという思いだけでセイバー…アルトリアをかばって傷ついた自分。
未来の自分であるエミヤと対峙し、その道の先に待つものを知った自分。
そして…それでも、己の抱いたものを否定することを、決して受け入れなかった自分。

『それはきっと間違いじゃない…決して、間違いなんかじゃないんだ…!!』

エミヤに言い放った言葉を思い出す。
すると、眼を逸らしたくて工房の隅に追いやっていた剣が、確かに自分自身の写し身であるように思えてきた。

「だが、な。この剣はお前のために生まれたのだ。己を変えたいと願った、お前の望みどおり、お前を変えるために」
「俺の、ために…?」

なにげなくつぶやいた一言。
それに答えるように、ナマクラな剣がキラリと光った気がした。

「…正直に言おう。俺はこの剣を見たとき、お前を羨ましいと思った…いや、むしろ妬ましいとすら感じたよ」
「俺を…ですか?」
「己の心を正確に写し取る剣を打つのに、並みの鍛冶屋が何年修行をすると思う? いや、それどころかそんな剣を一生に一本打てる鍛冶屋がいるかどうかすらあやしい」

そう言うとロンは一息に酒瓶をあおる。

「俺ですら己の使う剣を未だに打てず、四苦八苦しているというのに、お前はそれを一足飛びで成し遂げやがった…嫉妬するな、と言うほうが無理だ」

ギロリと士郎を睨むロン。
その射殺さんばかりの『本気』の目に、士郎は冷や汗を流しながら力ない笑いを浮かべるだけだった。

「どうする? 望むなら…この剣、俺が跡形も無く砕いてやってもいいぞ」

ニヤリと意地の悪い笑み向けられる。
そんなロンに対し、士郎はしばらく考え込んだ後…

「…いえ、この剣は…遺します」

そう、言った。

「そうか…大切にしろ」
「はい」

そのままロンは工房を出ようとするが…扉の前で立ち止まり、士郎の方を振り返った。

「…修行はまだ終わりじゃないぞ、まだまだ店には並べられん代物だ。どこに出しても恥ずかしくないよう、とことん鍛えてやるからな」
「…はい! よろしくお願いします!!」

そうしてロンは工房を出て行った。
あとには、閉じられた扉に向かって深々と礼を続ける士郎の姿があるだけだった。


***

ランカークス村 中央広場

「まてまてー」
「わー」
「こらー、空は飛んじゃダメだろー」
「ごめーん」

村の広場では子供たちが追いかけっこをして遊び、それを周りの大人たちは微笑ましげに見守っている。
どこでも、いつの時代でも見られる光景だが、このランカークスでは、子供と大人のどちらのグループにもスピリット族の姿が見られるという点において、異質さが際立っていた。

そしてそんな平和な光景を遠巻きに眺めるのは…フードを被った金髪の男。

「精霊種、だと…? こんな人里の近くに」

その瞳には驚きと…まるで、失った大切なものを見たかのような羨望と憧憬がないまぜになった感情が映されていた。

「スピリット族、と言うそうです」
「!? …貴方は」
「この辺りは自然が多くて過ごしやすいそうですよ?」

ふと漏らしたつぶやきに答えたのは、いつの間にか横に立っていたアバンだった。

(…どこまでも自然体…私が気付けなかったのもそのせいか)

いぶかしむ彼の心情を知ってか知らずか、アバンはニコニコと微笑むだけである。

「店は、いいのか?」
「昼休みです。お弁当作ってきたんですけど、ご一緒にいかがですか?」
「…では、ご好意にあずかるとしよう」



「いや~のどかでいい村ですね。知り合いの済むネイルと言う村もいい感じですが、ここもなかなか」
「…そう、だな」

ベンチの上にバスケットを広げ、サンドイッチやおにぎりをパクつく二人。
時々通りかかる子供たちに、にこやかに手を振って答えるアバンを、男は羨ましげに見つめていた。

「…質問、してもよいだろうか?」
「ええ、私のわかる範囲でしたら」
「この村でも…テランの王都でも時折『魔王軍』という単語を聞いた。それがモンスターや、魔族との共存を目的として活動しているとも。本当なのか?」
「ええ、流石に野生動物に近いものは無理ですが…知性を持つものとの対話は行われていますし、それ以外も生存圏を侵さない方向で話が進められています。まあ、先日のような事態も当然ありますが…」

水筒からお茶をカップに注いで飲み、一息ついて続ける。

「この国では特に彼女たちスピリットの受け入れを目的として活動しているようです。まあ、『魔王』軍、なんて名前が名前だけに最初はしり込みする人も多いようですがね…数年前まで、『魔王』というのは恐怖の代名詞でしたから」
「…で、あろうな」
「それでも、熱心な彼らの活動は実を結びつつあります」
「…理想的、ということなのだろうな。昔の私は…気づきもしなかった」

男の手に持ったカップがカタカタと震える。

「『魔王』…ただそれだけで悪であると、そう思っていた…そのようなもの、どこにも居はしないというのに」

その胸に去来するのは、後悔か、それとも羨望か…アバンには知る由もなかった。

「…『この世に悪があるとすれば、それは人の心だ』」
「!?」
「エドワード・D・モリスン著…『ダオス戦記』。最近発売された本なんですがね、お気に入りなんですよ」

そう言って一冊の本を見せるアバン。

「…ご存知ですか? 彼女たちスピリットは、自分の生まれた世界で、人間たちによって戦うための奴隷のような扱いをうけていたそうです」
「…!!」
「魔王軍の一人に精霊族を統べる立場の将軍がいるそうですが…彼は彼女たちの処遇を聞くや否や激昂し、わずか一週間でその世界のすべての国を攻め滅ぼし…彼女たちを解放したとか」
「…それで、その世界の人間たちは?」
「共存の意思のあるものは見逃されたそうですか…そうではないものは、皆殺しにされたそうです。やはり、『魔王軍』ということなのでしょう」
「…当然の報いだ」
「…かも、しれません」

二人の目に映るのは、子供たちと遊ぶ幼いスピリットたちの姿。
それは、かつてあった人間とスピリットの確執など微塵も感じさせない穏やかな日常。

「けれど、そんな過去があっても、彼女たちは人と共に生きようとしています」
「…また、いつか裏切られるだろう」
「そうかもしれませんし、そうじゃないかもしれません」

アバンはベンチから立ち上がり、イタズラっぽい笑みを浮かべる。

「可能性は、いつだって無限大です。そうは思いませんか?」

そう言うと、子供たちの輪に向かって駆け出していく。

「おーい! おじさんも仲間に入れてくれないかーい!?」
「いいよー!」
「あそぼあそぼ!」

その光景に男は一瞬キョトンとした表情になり…やがて、口元に穏やかな笑みが浮かんだ。



「…何故だ」
「はい?」

散々遊び倒して、汗だくになりながらも子供たちに手を振って別れを告げるアバンに、男は質問を投げかけた。

「何故、貴方は人を信じられる。裏切る可能性を知っていながら、何故放置できる?」

それは、魂からの問いだった。
男の表情は胸の奥につかえたものを無理やり吐き出すかのように歪み、沈痛さを隠し切れないほどにあらわにしていた。
そんな彼に、アバンは今までかけていた眼鏡を外し、真剣な表情になって答えた。

「…私だって聖人君子じゃありません。人を信じきっているわけじゃあないですよ? でなきゃ故郷に戻らずフラフラなんてしてませんし」
「ならば、何故?」
「しいて言えるならば…自分自身を信じているからですかね」
「自分自身を?」
「ええ…けどそれは自分が絶対に正しい、ということではありません。人は誰も、自分の思うようにしか生きれません。誰かに生き方や考えを強制されたとしても、それに従うか、それとも逆らうかを決めるのは結局自分です。なら、より自分が進みたい道を進んだほうがいいでしょう?」
「…だが」
「ええ、もちろん全てが思い通りに行くとは限りません。裏切りもあるでしょう、絶望も、別れも、悲しみもあるかもしれません。けど、それも全ては己の選んだ道。自分自身の選択による、逃れられない運命です」

かつてアバンは魔王であったハドラーと戦いに望む際、門番であるバルトスからその息子ヒュンケルのことを託された。
ハドラーを倒すことでバルトスが存在を保てなくなることも、そのせいでヒュンケルが自分を父の仇と憎むであろうこともわかっていたが、アバンはヒュンケルのことを引き受けた上でハドラーを倒した。

この世界ではエヴァの介入によりバルトスは生きているが、アバンは全てを覚悟した上で道を選択したのだ。
ヒュンケルから仇と恨まれても、魔王を倒し平和を勝ち取る道を。
たとえその果てに、己の死が待っていようとも。

「『己の進む道を後悔せず、全てを受け止めて進む』…手前味噌ですが、それが私の考える『自分自身を信じる』ことです」
「全てを、受け止める…」

ゆっくりと、噛み締めるようにアバンの言葉を男は繰り返す。

「…ありがとう、参考になった」
「いえいえ、このぐらいのことでよければ」

そう言って、アバンは再び眼鏡をかける。

「よければまた明日酒場に来てくださいね。サービスしますよ?」
「…考えておこう」

そうして、二人は別れを告げた。

日はすでに傾き始めていた…



夕暮れの道を、男は歩く。
1等星が、夕暮れの反対側にもう見え隠れを始める時間だった。

(…あの時、私は全てを受け止められたのだろうか? ただ、こんなはずじゃない、こんな結末など望んじゃいないと…そう、拒絶していただけなのだろうか?)

『逢魔が刻』…魔に出逢う刻と書くこの時間は、男の中の魔性を嫌でも認識させる。

(私は、間違っていた…間違って、しまった。だが、いったい何を、何故、間違えてしまったのか…今でも、答えは出ない。ただ、わかっているのは…この胸の虚しさが、あの時感じた身を引き裂かんばかりの苦しみだけは、間違いなく真実だったこと…)

男は空を見上げる。
空はもう、夕暮れをすぎ、夜の帳を下ろしている。

(ストレイボウ…ハッシュ…ウラヌス…そして…)

男の胸を去来するのは、親友の、仲間たちの面影と、

(アリシア…)

かつて愛した女性の、笑顔だった。




どっとはらい


***

今回は閑話っぽく。
もうちょい続きます。



[26812] 鉄槌の騎士と竜の騎士が仲睦まじく過ごしているようです
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/06/24 02:06
続々・ヴィータの育児日記


○月×日(ニセ勇者、来る)
島に変なやつらが来た。駆け出しの冒険者…いわゆる『勇者見習い』らしかったがどうにも人相が悪い。
偶然島に来ていたフレイザードにちょっと脅かしてもらったらすぐにボロが出た。
希少動物『ゴールデンメタルスライム』であるゴメを捕まえてひと儲けしようと考えていたそうだ。
フレイザードとシグナムに文字通り『焼き』を入れてもらったあと、ロモスの王宮に突き出してやった。
そのまま消し炭にしてやろうかとフレイザードは息巻いていたが、オフクロさんが仏心を出したんでロモスでの奉仕活動に収まった。
そのあとの会話はよくわからなかったけど。

「まあ根っからの悪人ではないですよー、フレイザードも知ってるでしょー?」
「ちっ…けどよ、毎回『原作』が正しいってわけじゃねーだろ。今回だってえらいフライングだぞ」
「これもただのワガママですよー…その責任くらいはちゃんととりますからー…」
「…しょげてんじゃねーよ。わーったよ、ただし、こいつらがまた同じようなことしやがったら問答無用で『焼く』ぜ?」

『ヒイイイイイイイイイッ!?』

「はい、それはかまわないですよー。わたしの見る目がなかったってだけですからー」

『精一杯ロモスのために働かせていただきます!!!!!!』


○月×日
アリシアが妹を連れて遊びに来た。名前はフェイト。昔のアリシアそっくりだ。
プレシアさんはママさんと一緒に子供たちのアルバムを見せ合いしていた。
フェイトを見ているとあたしもディーノが同じくらいの頃を思い出す。可愛い。
あとでママさんにディーノが『妹がほしい』って言ったら、
ママさんは真っ赤になり親父さんは思いっきりむせていた。



「ほらフェイト、あいさつできるかなー?」
「んっ、んー…ふぇいと」

指をくわえたままあたりをキョロキョロ見回すフェイトは、アリシアに促されつつたどたどしく名乗った。

「僕はディーノだよ。よろしくね」
「ヴィータだ、よろしくな」
「うー…でぃー? …びー?」
「ありゃ、まだ名前は難しいか」
「そうかもねー、わたしも『ありしゃー』としか呼んでもらえないし」
「んー…にーたん?」
「えっ? …うん、そうだね。兄ちゃんだよ」

ディーノは一瞬驚くが、不安げなフェイトを安心させるため、にっこり笑って答える。

「にーたん! でぃーにーたん!」
「んじゃあたしは姉ちゃんかな」
「ねーたん! びーねーたん!」

嬉しそうに「にーたん、ねーたん」と繰り返すフェイトに、ディーノとヴィータも微笑みながら返事をする。
そうなれば無論アリシアはむくれる。

「えー、何で何で!? 何でディーノは兄ちゃんて呼んでもらえるの? 何でヴィータは姉ちゃんって呼んでもらえるの!? ずーるーいー!!」
「ありしゃー、よしよしねー」
「うう…なんで妹に頭撫でられて落ち着いてるんだろう、わたし…」
「いーこ、いーこー」

(外見で言えば)最年長のアリシアが最年少のフェイトに慰められる光景は微笑ましくも大変シュールだった。

「フッ、『姉力』の不足が原因だな。姉暦5年のあたしをなめんなよ」
「僕、兄ちゃんになったのは初めてなんだけど?」
「ディーノはディーノだからいいんだ!」
「?」

ヴィータの姉バカもかなりのものである。


○月×日
明日はディーノの6歳の誕生日、みんな準備に大忙しだ。
親父さんは日本の海鳴まで行ってバースデーケーキとプレゼントを買いに行っているし、ザフィーラは島中のモンスターから集まったお祝いの品を整理するため今夜は徹夜と言っていた。
シグナムはブラス爺ちゃんと飾り付けの準備。シャマルはママさんとパーティ料理の仕込みをやっている。
もちろんあたしもプレゼントを用意している。ディーノに内緒でロン・ベルクさんの工房で教えてもらいながら作った、アクセサリにもなるオリハルコンのナイフだ。作るときに筋がいいなって褒められた、へへへ。
フレイザードたちも魔王軍からの参加者をつのっていて、今年も参加者を限定するのに大変だとグチをこぼしていた。
みんなディーノのことが大好きなことがよくわかり、あたしも嬉しい。
例年通り盛大にお祝いしよう。楽しみだなあ。


○月×日(ディーノ6歳)
(この日の日記はペンでグシャグシャに塗り潰されている。何が書かれていたかは全くわからない。かろうじて端の部分だけが被害を免れており、そこにはウェディングドレスを着たお下げの少女と、スーツを着た少年の落書きのようなものが見て取れる)



ケーキの上に並べられたろうそくが吹き消されると同時に、クラッカーがいくつも鳴らされる。

『ディーノ! 6歳の誕生日、おめでとー!!』

「えへへ…みんな、ありがとう」

かくしてディーノの誕生パーティは始まった。

「よしおっさんども、まずは駆けつけ3杯だ」
「受けて立つ、竜の騎士は酒においても最強だと証明しよう」
「この獣王、逃げも隠れもせんぞ、フレイザード」
「うう…また厄介ごとが増えた…こうなればヤケ酒だ! 全部もってこい!!」
「もう…うちの人ったらはしゃいじゃって。これじゃディーノとどっちが子供かわからないわ」
「ま、そんなものよ。子供たち同士で盛り上がってるみたいだし、私たちも飲みましょう」

一部パーティにかこつけての飲み会にも見えるが気にしてはいけない。

「にーたん、おめーとー」
「ありがとう、フェイト」
「バーンおじいちゃんは来てないのかー、残念なのだー」
「あの方は忙しいからのう。このブラスの爺で我慢しておくれ」
「わかったのだー」
「ね、ディーノは大きくなったら何になりたいの?」
「ベルカの騎士か、ミッド式の魔導士かのう?」
「バランさんの後を継いで二代目竜の騎士かしら?」
「んとね…」


『ヴィータ姉のお嫁さん!』
『ぶふうっ!?』


「ダメ?」
「お、お前、それ以前に男じゃお嫁さんにはなれねーよ!」
「そうよね、なるとしたらお婿さんね」
「ママさぁんっ!? なんでノリノリなんだよ!?」
「服飾ならエヴァの担当ね。大丈夫! 最高のドレスを用意してくれるわ!」
「酔ってるだろ!? ママさんもプレシアさんも絶対酔ってるだろ!?」
「ありゃ、守護騎士システムの改良プログラムの作成をパチュリーさんにもう頼んだほうがいいですかねー」
「ククク、そうかもな。どうするよヴィータ、今なら団長権限で俺から頼んでおくぜ?」
「うるせええええええええっ!!!」

その日、パーティ終了までヴィータはさんざんからかわれたという。

「うおおおおおおおんっ!! ディーノが嫁に…許さああああん!! 私を倒してからにしろーーーーーーっ!!」
「親父さんも酔っ払ってトチ狂ってんじゃねーーーーーーーっ!!」

ゴメスッ!!


○月×日
…先日は取り乱した。反省。
ディーノの気持ちは…うん、正直に言えば、嬉しい。それだけ好かれてるってことだし。
それに「お父さんが好き」「お母さんが好き」と同じで憧れとか半分で言っていることだ、気にしてもしょうがない。
でも、もし…ディーノが大人になって、そういうことを考えるようになって…
その時、同じことを言われたら…あたしは、どうするんだろう…


○月×日
ディーノが自分のことを『俺』と言うようになった。
フレイザードやクロコダインが使っているのを見てかっこいいと思ったそうだ。
なんだか少し、さみしい。



「ディーノくーん」
「あ、おねえちゃん。どうしたの?」
「ちょっと気になったものでー。どうして『俺』って使い始めたんですかー?」
「…内緒にしてくれる? 特にヴィータ姉には」
「もちろんですよー」
「ヴィータ姉にふさわしい男になりたいって…そう、思ったんだ。だから、その…」
「口調だけでも男らしくしたい、と」
「うん…まだ形だけだけど、ね」
「やっぱり男の子ですねー。いいと思いますよー」
「そ、そうかな」
「わたしが保障しますよー。これでも一児の母なのでー」
(…おねえちゃんがフレイザードのお母さんってのはわかってるけど、なんだか…なあ)


○月×日(ディーノ8歳)
今日はディーノと海鳴まで買い物に来た。
そしたらやたら所帯じみた女の子と友達になった。
名前は八神はやて。
なんだかディーノと同じ、あったかい感じのする子だった。

「へー、ディーノ兄とヴィータ姉はモンスターの島に住んどるんかー。ええなー」
「よかったら今度案内するよ」
「ホンマに!? やったー! いっぺんももんじゃをモフモフしてみたかったんやー!」
「イエティもいるぞ。あと最近ブラウニーの一族がグランバニアから引っ越して来たな」
「パラダイスやー」

『はやてちゃーん、そろそろごはんやでー』

「あ。おかんが呼んどるー」
「じゃあ、また今度ね」
「じゃあなー」
「バイバイやー」



「…ふわー、ホントに空飛んでったわー」
「…やっぱおさげがあると飛べるんやなー」
「おかーん、また何言うとんのー」
「ちよちゃんは飛ぶねんでー?」
「知らんてー」
「お父さんも飛んどったなあー」
「誰やー」


**



パタリと音を立てて本が閉じられる。

「ふう…ほんとずいぶん書いたよなー」

『育児日記』と書かれたそれはヴィータが今手にしているもので通算10冊にもなる。
それはディーノの成長の記録であるとともにヴィータの思い出の記録でもあった。

(ディーノは変わっていく。どんどん強く…逞しくなっていく)

10冊目の育児日記、それを最後に日記はつけられていない。
もうディーノに『育児』は必要ではないからだ。

(あたしは…どうなんだろう? 変わっていくのか? 変わっていいのか?)

すでに魔王軍からは改良プログラムの報告は届いており、あとは実行するだけ。
夜天の書と切り離された情報生命体となり、自由に生きるのも、
人間と同じように成長し、恋し、命を育み、老い、死んでいく存在となるのも、
すべてはもう自由。

(けど、あたしは…まだ決められない。何も)

「ヴィータ姉、どうしたの?」
「ディーノ…」

ヴィータの前に立つのは、まもなく12歳を迎えようとしているディーノ。
その腕に抱かれていた小さな体は、ヴィータの身長を超えるほどに大きくなり、
内に秘めた魔力も闘気も夜天の王に、そして竜の騎士を継ぐにふさわしく成長を遂げている。

「いや…あたしは、いつまでディーノといっしょにいれるのかな、って…なんとなく考えてたんだ」

竜の騎士一族の寿命は誰も知らない。
戦いにのみ生きてきた彼らは『聖母竜・マザードラゴン』によって生み出される存在で、その死は常に戦いの中だった。
子をなすことも、天寿を全うして老衰死することも過去一度としてなかったのである。
永遠を生きるのか、人より長い生を生きるのか、あるいはその力ゆえに、人よりも短命なのではないか…それが分からないゆえにヴィータの不安も大きく、また決断を下せなかった。

(あたしは…どうしたら…)

「…なんだ、そんなことか」
「え…?」
「俺は、ヴィータ姉といっしょだよ。これからも、ずっと」

ディーノは微笑む。
なにも心配なんかいらないと、そうヴィータに伝わるように。
それは別の未来で『ダイ』と呼ばれた彼が浮かべたものと同じ、
人々に勇気を与える『勇者』の表情だった。

「…そっか」
「行こう! 父さんにまた稽古つけてもらわなくちゃ!」
「…そうだな! 行こうぜディーノ!」

幼き鉄槌の騎士と若き竜の騎士は、手を取り合い歩き始めた。
その未来を知るものは、まだ誰もいない。


どっとはらい



**

ヴィータ編やっと終了。



[26812] 【超番外小ネタ】や が み け
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/06/23 21:58


・ま ほ う

「あ、ディーノ兄にヴィータ姉やー」
「はやてーひさしぶりー」
「元気だったかー?」
「もちろんやー」



「実はなー、わたしも呪文覚えたでー。《メラ(火炎呪文)》!」

ボアッ

「はやてー、それ《百八式・闇払い》だろ」
「炎が青紫な時点でバレバレだよね」
「あうー、せっかくおとんに教えてもーたのにー」


・こ た つ

「おかんがこたつから出てきいへんねん」
「あらら」
「せやからちょお早いけどこたつ仕舞うてん」
「…って、はやてのお母さんが入ってるのに一人で片付けたのかよ」
「パ、パワフルだね」
「そやねん。そしたらおかん『ほなわたしはどこで寝ればええのー?』やて」
「…それは」
「…なんと、言うか」


・へ ー ち ょ

「へーちょ」
「あー、はやてちゃん風邪かー?」
「ちゃうねん、ちょっとムズムズ…へーちょ」
「あははーわたしと同じくしゃみやねー。親子って感じやー」
「わたしこんなくしゃみややわー」

『キングオブファイターズ! セミファイナル!!』

「あー、おとんテレビに映っとるー」

『イオリ ヴァーサス テリー!』
『OK! カモンカモン!』
『妻と娘が見てるのでな…さっさと終わらせてもらう』
『ヒューッ! 俺もロックの見てる前で無様はできねえぜ!』


・ブ ラ ジ ル

「庵くんがんばれー」
「聞こえへんてー、会場ブラジルやでー?」
「そうなん? で、ブラジルってどこー?」
「娘に聞くなやー、ブラジルは…えーと…そうや、サンバや」
「サンバ…あー、浅草! 意外と近いんやね、ブラジル」
「んなわけあるかいー、わたしもよう知らんけどもっと遠くやー」


・や が み け

『バーンナッコォ!』
『ぬうっ、まだまだぁ!』

「あうー、相手の人も強いなあ」
「おとん、負けるなー!」

『もらった! オォーッ!!』
『マイ…ガッート!』

「おお! おとんの鬼焼き決まった!」
「庵くん、かっこええわー」

『ウィナー イズ イオリ!』
『見ているか歩、はやて…クックック、ハッハッハ、ハァーッハッハッハ!』

「おとんの三段笑い来たわー」
「やーん、公共の電波で名ざしなんて恥ずかしいわー」

『…へーちょ』

「へ?」
「あれ?」



どっとはらい



[26812] 【突発ネタ】やがみけ 2
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/07/11 01:58


夕暮れ迫る海鳴の住宅街を歩く人影が一つ。
それは住宅街にそぐわない、ロックンローラー風の装いをした赤毛の男。
ギターケースを肩に担ぎ、チャリチャリとアクセサリーのぶつかる音が無機質に響かせており、鋭い目つきと全身から発するに剣呑な気配に、野良犬や鳥までが怯えて逃げ去っていく。
八神家の前まで来ると、彼はおもむろに扉を開く。

「おとーん、おかえりー」
「庵くん、おつかれさんやー」
「…ああ、ただいま」

八神家の大黒柱、八神庵の帰還であった。



「今回はどうやったん?」
「いちおう決勝戦は見たけど、また黒幕おったんかー?」
「ああ…『また』ルガールだった」
「あちゃー、あのオッサンも懲りへんなー」
「もはやあれは意地だな」

庵が出場している格闘大会、KOFこと『キングオブファイターズ』。
決勝戦の後にスポンサーや黒幕との戦いがあることは関係者の間ではもはや暗黙の了解となっている。
その中でも黒幕件スポンサーとして最多の参加をしているルガール・バーンシュタインは、当初こそさまざまな力を求めてのことだったが、最近は優勝者との力試しのほうが主目的になっているらしかった。
ちなみに収益は十分なので、毎回最終ステージ=戦艦を沈没させても元は取れているようだ。

「おとん、お風呂入るやろー? わたしが背中洗ったるー」
「そうだな、お願いするか」
「あー、はやてちゃんずるいー。わたしもー」
「…待て歩、お前も一緒に入る気か?」
「あかんのー?」
「いや…いけなくはないが…」
「おかーん、そないなことしたらおとんがエッチな気分になってまうでー?」
「はうあっ!? そ、そういわれればー…あうー」
「はやてに言われて気づくなと…まあいいか、歩だしな…」



「そうだ歩、お前宛に手紙が来てたぞ」
「どれどれ…? あ、同窓会の案内や! 主催はともちゃんやて」
「なつかしいな」
「あー、おかんがよく話しとるボンクラーズのひとー?」
「あはは、そうそう。ともちゃんが1号、神楽ちゃんが2号。で、わたしがボンクラーズ3号やねん」
「その順番は何なん?」
「成績だったそうだ…ちなみに、悪い順だ」
「でも、3人合わせれば130点やねんでー?」
「おかーん、足してもしゃあないやろー」
「そうなん?」
「たぶんなー」
「はやて…そこは断定しておけ…」



「そういえばおとん、おかんと学校おなじやったん?」
「ああ、俺が2年のときに歩が転校してきてな」
「いきなりともちゃんに『大阪』てあだ名つけられてん。わたし神戸育ちやのにー…あ、でも生まれは和歌山やで?」
「いや、知っとるからー。和歌山のひいばあちゃんからみかん毎年来てるしー」
「今年もお礼を送っておかないとな…まあ、それはともかく、俺が歩の先輩だったわけだ」
「そうやねん。庵くんはその時からもうKOFに出とったんやけど…わたしはちょお怖い先輩がおるなー、くらいしか知らんかってん」
「おかんはその時からニブかったんやなー」
「あうー」
「んで、そこからどうやって知り合ったん?」

興味津々な様子で、はやては眼を輝かせて二人に訊ねる。

「音楽室の片付けしてる時に、うっかり色々落としてもうて…それで、その時たまたまギターの調整してた庵くんが片付け手伝ってくれたんよー」
「あの時完全に壊れてたのもいくつかあったが…まあ、俺がいたおかげで歩はあまり怒られずに済んだ」
「おとん、他の人からは怖く見えるらしいからなー。先生涙目やー」
「あとでKOFの賞金使って弁償してくれたんやよねー」
「さすがおとん、お気遣いの紳士やー」
「そこから『ああ、けっこうええ人なんやなー』ってよう話すようになってー。あ、勉強も教えてもろたなー」
「ボンクラーズなのには変わりなかったがな。まあ、赤点は取らなくなったが」
「さすがおかん。歪みないなー」
「いやー、照れるなー」
「褒めとらんてー」



「それから一緒に遊びに行ったりするようになったなー。で、たまたまともちゃんたちと会うてー」
「ああ…あの時は歩が俺に脅されてると勘違いして、滝野と神楽が襲い掛かってきたんだったな」
「二人とも勢いあるからなー」
「KOF選手やったおとんに!? ないわー」
「まあ、二人もKOFのことは知らなかったようだしな」
「ないわー」
「そん時やったねー、ともちゃんが『大阪と付き合うってんなら悪人じゃないって信じてやる!』って」
「それがきっかけで本当に付き合い出したんだったな」
「…ないわー」


どっとはらい



[26812] 【見切り発車ネタ】やがみけ 3
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/07/12 00:06
「みんな起きや~、朝やで~」
「歩、だからフライパンと包丁を間違えて持ち出すのは止めろ」
「…あれ?」
「心臓に悪いわー」
「うー、なんでいつも間違えるんやろ。フライパン叩いて起こすのやりたいのにー」

八神家の休日は寝ぼけた歩をはやてと庵が止める事で始まる。



「今日はおかん、同窓会やろー?」
「うん、けどお昼すぎてからやし…それまでみんなで翠屋にケーキ食べに行かへん? 庵くんのKOF優勝のお祝いも兼ねて」
「わーい! 賛成やー!」
「私チーズケーキいっぱい食べたいなー」
「ふふ…誰のためのお祝いなのやらな」
「庵くんもよーさん食べてなー?」
「わたし、あーんしてあげるでー」
「ああ、わかっている…はやても、お願いしておこう」
「りょーかいやー」



商店街を歩く八神家の3人。
はやてを真ん中に、右手を庵が、左手を歩がつなぎ、はやての歩幅にあわせて歩く。そんな仲のよい家族の光景がそこにあった。

「そういえば、次のKOFはまた3人チームやて聞いたんやけど、また士郎さんと恭也くん誘って出場するん?」
「いや、士郎さんはもう一線から退くらしいから、誘うとしても恭也だけだな」
「美由紀ねーさんとかはどうなん? つよいでー?」
「個人大会のときに勧めてみたのだが、興味ないらしい」
「ほんなら、もう一人探してこんとなー」
「まあ、来年の話だ。そう急がなくてもいいだろう」
「わたし、出てみよかなー? 最近はディーノ兄やヴィータ姉に魔法も習ってるから、けっこうつよいでー?」
「シャンユエやレンフェイから一本とってからなら、な」
「…無理やー、あの二人、接近戦無双やんかー」

両手に身体を預けて、ぐったりして引きずられるはやて。
そんな愛娘の様子に苦笑する八神夫妻だった。



喫茶店 翠屋

『いらっしゃいませー』

八神家を迎えるのは翠屋店長、高町士郎とその妻にしてパティシエ、高町桃子。

「やあ、八神くんいらっしゃい」
「テレビ見たわよー! KOF優勝おめでとう!」
「どうも…」

高町夫妻からかけられたねぎらいの言葉に庵は照れくさそうに顔をそむけた。

「庵くん、照れてるんー?」
「別に」
「照れとるよー」
「ふふ、大阪ちゃんにかかると庵くんも形無しね」
「さ、奥の席が空いているよ。どうぞ」



エプロンをつけたはやてと同年代の少女が早足で八神家が座るテーブルに駆け寄ってくる。

「はやてちゃん、いらっしゃーい」

高町家の末娘、高町なのはである。

「あ、なのはちゃん。今日もお手伝いー?」
「うん! 今日はおかーさんにケーキの作り方も教えてもらうんだよー」
「おお、それはおかんと一緒にごはん作っとるわたしへの挑戦やな!」
「負けないよー!」

楽しげに会話する娘たちの姿に庵は口元を緩めるが、歩はテーブルに突っ伏してしまった。

「うう…桃子さんはええなー。わたしそろそろはやてちゃんに料理の腕、負けそうやー」
「…はやても上手になったが、俺はそれでも歩の飯が食いたい。それではだめか?」
「あ、あうー、庵くん、こないなとこで照れるわー」
「おとーん、こないなとこでおかんとイチャつかんといてー」
「あはは、ウチといっしょだねー」


「…不覚だ」
「えへへ、でも嬉しかったよー」



昼食から数時間後、歩は駅前の同窓会会場に向かっていた。
庵はギターの調整に、はやてはなのはと神社で遊ぶらしいので今は一人になっている。
会場は小さな洋食屋。同窓会といっても学生時代の6人組だけのものである。
ちなみにかおりんにも連絡は行ったが予定が会わなかったらしい。合掌。

「えーと、このへんのはずやけど…」

周囲を見回していると、なにやら騒がしい二人組みの女性が眼に入ってきた。

『だからあっちのバイキングのほうがいいって言ったろー?』
『大食いのアンタといっしょにすんなっつーの!』

見まがうはずも無いボンクラーズの滝野智と神楽であった。

「あー、ともちゃーん、神楽ちゃーん」
「お? おおー、大阪ー!」
「久しぶりー!」



「大阪さーん! おひさしぶりですー」

店内で声をかけてきたのは、飛び級で高校に入学したため年齢的にはようやく高校生の社会人、美浜ちよである。

「ちよちゃーん! 相変わらずちっちゃいなー」
「むう! これでも10cmも伸びたんですよっ!」
「まあ、ちよちゃんだもんねー」
「…やっぱりともちゃんは意地悪です」

ぷくーっとほおを膨らませるちよ。
その姿は卒業前となんら変わりなかった。



「いやー、まさか大阪があたしらの中で最初の既婚者になるとはな! 子供も一番乗り!」
「はやてちゃん、かわいいですねー」
「旦那さんも先日KOF優勝したって言ってたよな。おめっとさん」
「えへー、ありがとなー」

歩の家族写真をネタに盛り上がるが…店内の奥で一人、酒と料理をひたすら平らげる人影がある。

「ちきしょー! 男なんてー!」

本来暴走気味の智の押さえ役である水原暦が暴走していた。

「…よみちゃん、どないしたん?」
「またフラれたんだ。そっとしとけ」
「よみちゃん、モテそーやのにー」
「そいつは勝者の余裕かコラ! 大阪のくせにー!」
「ふえー?」
「ちなみに私にはちゃんと彼氏いるぞー」
「えっと…一応アタシも…」
「…まさか、ちよちゃんはいないよな?」
「えと…実は、向こうで知り合った男の子が…ロック・ハワード君って言うんですけど…」

「…キエエエエー!!」

「うわー! よみが切れたー!」
「シュークリームだ! 誰か翠屋のシュークリームを食わせるんだ!」

ドッタンバッタン

「そういえば、ロック君、庵さんに会ったって言ってました」
「今回の準決勝の相手やった人の養子やったっけ?」
「格闘技のことはよくわかんないですけど、実のお父さんが実業家だったそうで…それで、よく一緒に勉強してるんですよー」
「そうなんやー…ところで、ちよちゃんは飛べるようになったん?」
「だから無理ですってー、HGS患者じゃないんですからー」
「はやてちゃんは最近飛ぶようになったでー」

『はぁ!?』



「なあ、榊ちゃんはまだなん?」
「んー、ちょっと遅れるって電話があったから…あ、来たみたいだ」

入り口のベルが鳴ると、たった今話題に上った長身の女性、榊が…

「みんな、お待たせ…」

マヤー「にゃー」
橙「にゃー」
燐「にゃー」
美緒「にゃー、なのだ」

猫と猫娘を大量に連れて現れた。



「あ、あの…美緒ちゃん?」
「おおちよきち! ひさしぶりなのだ!」

飛び級前の小学校におけるちよの同級生で猫又能力もちの少女、陣内美緒は元気よくちよに呼びかけるが、ちよのほうは唖然として二の句が告げなくなっている。

「う、うん…あの、後ろの子達は?」
「迷子なのだ」
「マヤーが連れてきた」
「にゃー」

榊の腕の中でイリオモテヤマネコのマヤーが肯定するように声を上げる。

「らんしゃまとはぐれました…クスン」
「さとりさま~どこですかぁ~」

涙目で榊の服のすそをつかんでいるのは幻想郷の妖怪、猫の式神、橙(ちぇん)と
火車猫の火焔猫 燐である。

「あー、もしかしてディーノ君とこの関係者かー?」
「ふえ? ディーノくんを知ってるんですか?」
「はやてちゃんとよく遊んどるよー」
「よ、よかったぁ~、これであてができたよぉ~」

**

長くなったので続きはまた次に



[26812] 【暴発ネタ続き】やがみけ 4
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/07/14 20:39

海鳴市内 八束神社

「くーちゃんはふさふさやなー。あはは、くすぐったいてー」
「くぅーん」

はやてに抱きかかえられてうれしそうにそのほほを舐める子狐、久遠。

「くーちゃんがこんなに早くなつくなんて…わたしもかなり苦労したのにー」
「あー、おとんの血かなー? オロチ一族は妖怪とかになつかれやすいらしいで?」
「いいなー。くーちゃん、わたしもモフモフさせてー」
「くーん」

なのはも一緒になって久遠のシッポをモフモフとし始める。

と、その時。

「ちぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええん!!! どこだあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」

橙の主である妖狐、八雲藍が号泣しながら上空をカッ飛んでいった。

「くー!?」
「…なんや狐の人が空飛んでったけど、くーちゃんの知り合いかー?」
「くーん」
「違うみたい…」

「うわーん! 私がデパートの揚げ物コーナーの試食に夢中にならなければこんなことにはー!!」

「…なんやダメな人っぽいなー」
「そうだね…」
「くーん」



同時刻、燐の主である覚妖怪、古明地さとりは海鳴商店街を歩いていた。

(外界への行き来が自由になったので、買い物にやって来たはいいですが…お燐とはぐれてしまいました。いつの間にか橙ちゃんや藍さんもいなくなってますし…)

ふう、とため息をつく。

(でも、この街は人々の心の声が比較的穏やかですね。今度こいしも連れて来ましょうか…しかし、私は幼稚園児ではありません! 確かにそう見えるスモックですが!)

さとりの見た目は小学校高学年から中学生ほどだが、薄い水色とピンクを基調とした服装は、見るものにどうしても幼稚園児のそれを想起させてしまっていた。

(少なくとも小学生…自分で言ってて虚しくなりました。やめましょう)

先ほどまで憤慨していたと思えば、今度は突然落ち込む。
旗から見ればただの一人百面相だった。

ドン

「あっ…」
「む?」

意識を内に向けていたため、通行人にぶつかって転んでしまいそうになる…が、寸前で右手を捕まれ、引っ張り起こされる。

「すまん。大丈夫か?」
「い、いえ。こちらこそ不注意で…」

ギターを調整した帰りの八神庵であった。

《迷子か? それにしては落ち着いているな》

そんな庵の心の声を聞いたさとりは、

「ま、迷子というわけでは!」

転んだ恥ずかしさと、事実迷子であることで顔を赤くしながら、ついそう答えてしまう。

「そうか…ん? 俺はまだ何も言っていないが…」
「あっ」
「…覚りの一族か、テレパシーか? まあ、どちらでもかまわんが。それで、あわてて否定するということは…」
「その…連れとはぐれてしまいまして…」
「…それを迷子と言うのでは?」
「うう…」

結局、迷子であることを認めることになるさとりだった。



「うん、うん。ほんなら、さとりちゃんこっちに連れてきてや。はやてちゃんも藍さん連れてきてくれる言うてたし…ほななー」

同窓会会場では歩が携帯で庵とはやてからの連絡を受け取っていた。

「二人とも連れてきてくれるて。よかったなー、橙ちゃん、燐ちゃん」
「はい~! ありがとうございます~」
「ほっ…さとりさま、ご無事でよかった~」

それぞれの主が見つかり、ひと安心する橙と燐。
その表情はなんというか『ほっこり』している。

「榊さんのグルーミングが気持ちよかったみたいですねー」
「はい! すごく上手でした!」
「榊ちゃんは槙原動物病院で助手もしとるしなー。動物の扱いはお手のもんやでー」
「たしかにアタイも気持ちよかったけど…」

燐が視線を向けた先では榊が美緒を撫で回していた。
その顔はまさに『至福』であることを如実に表している。

(幸せ…)

「むー、榊のなでなでは気持ちいいけど、触るまでの顔がこわばって怖いのだ」
「なんだよねえ…一瞬食われるかと思ったよ」
「そうですか? らんしゃまもあんな感じですよ?」
「…だからあんたのご主人は薬師に一回見せたほうがいいってば。主にあんたのために」
「にゃー」
「え? マ、マヤーさんがそう言うなら…」


「マヤーって、猫的にはイケメンなんかなー?」
「いや、知らんよ」
「お、よみ復活」
「またたび嗅がせたらみんな酔っ払うのか? 神楽買ってきてよ」
「やめろっつーの」



数十分ほどして、さとりと藍が猫娘たちを迎えに現れた。

「ちぇえええええええん!! 無事でよかった~~~!!」
「らんしゃま~」
「心配かけましたね、お燐」
「さとりさま~よかったですよ~」

互いに抱き合って喜ぶ2組の主従たち。

「うおー、あの人の尻尾すげえ。本物?」
「おいおい。いくらこの街に人外・妖怪が多いからって丸出しはまずいんじゃないか?」
「くーん…」
「くーちゃんはちゃんと隠せてるもんね」
「くー!」

その後、気が緩んでいたことに気づいた藍はがっくり落ち込んだという…
主である八雲紫は『修行のやりなおしかしら?』とつぶやいていたそうな。


どっとはらい


**

おまけ

八神家の庭にて

「ほなレン姉、ユエおじさん、よろしくおねがいしますー」

中華風の胴着に身を包んだはやてはこぶしと手のひらを合わせ、一礼をする。

「まかしときー」
「庵兄貴と歩ちゃんの娘さんやからなー、あんじょうきばるでー」

それを受けるのははやての近接格闘の師匠である鳳蓮飛(ホウ レンフェイ)と劉弦月(リウ シャンユエ)の二人である。

「ほな、寸掌の修行からいくかー?」
「ああ、待ちぃ。その前に調息や。気ぃ練っとかんと、またぶっ倒れるで?」
「おっと、そやった」
「あははー、その節は世話かけて申し訳ないですー」

互いに笑いあう3人。

「終わったかー? ほなら今日は豪軍(ホージュン)兄ぃ直伝の戴天流剣術でも見せたろかー」
「おお! 弦兄ぃの六塵散魂無縫剣、久々に見たいー!」
「この間の紫電掌もすごかったしなー」
「鍛錬が終わったらおやつにしよなー、今日も肉まんたーんと持って来てるでなー」

『わーい!』


**

遅ればせながらネタ提供いただいたmameさんありがとうございました。
またカミラさんの感想も参考にさせていただきました、ありがとうございます。

劉家は瑞麗(ルイリー)つながり。
同一人物ってわけではないです。



[26812] 【限界突破暴走ネタ】やがみけ5
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/08/03 20:35

八神家は大黒柱たる庵の仕事(バンドマン&KOF選手)の都合上、海外へ行くことが多い。そのため、海外土産などで荷物がよく増える他、庵のファンやスポンサーから届くものも多い。
本日は一家総出で大片付けをしていたのだが…

「つかれたー」
「歩、廊下で寝転ぶな」

体力の無い歩が真っ先に廊下に突っ伏した。

「ひっぱってー」
「まったく…はやてより先にバテてどうする」
「あはは、わたしの体力はおとん似でよかったわー」

ズリズリと仰向けで庵に引きずられる歩。
と、その上にはやてが乗っかり、一緒に引きずられる。

「…はやて、歩に乗るな」
「ええやーん、親ガメ子ガメやー。ラッコかなー?」
「ずるずるー、このまま部屋までよろしくなー」
「やれやれ」

妻と娘のよく似た行動に苦笑する庵だった。



「あ、アルバムやー。昔のおとんとおかんが写っとるー」
「ほう…懐かしいものが出てきたな」
「ほんまやー」

古いダンボールを整理していると、庵たちが学生時代の頃のアルバムの束が出てきた。はやてが見ているのは庵が卒業し、歩が三年になった頃のもののようだ。

「あ、これは庵くんが士郎さんたちと出た時の写真やねー」
「おかんのクラスメートの人たちも写っとるよ?」
「私らの卒業旅行も兼ねてゆーて、庵くんが旅費出してくれたんよー」
「ふえー、おとん太っ腹やー」
「前大会の賞金が手付かずだったからな、それほど大したことでもなかった」

そこには蒼い炎を出して戦う庵や、無手で御神の技を使う士郎、木刀二刀流で戦う当時小学生の恭也、客席から乗り出して応援するともと神楽&それを止めるちよと榊などの写真が収められている。

「恭也兄ちゃんに、草薙さんに、レオナさん…、社さんとゲーニッツおじさんもおるー」
「これは帰りに取った集合写真だな」
「レオナちゃん元気かなー? なんや最近出世した聞いたけど」
「ああ、軍でハイデルン氏の後任を任されたそうだ」
「すごいなー」

そんな会話をしながら、庵と歩は当時のことを思い返していた。

****

・VS草薙チーム

「へっ、まさかお前と戦うことになるとはな」
「…八神と草薙の因縁は関係ない。俺は貴様に勝つ、それだけだ」

赤い炎と蒼い炎をそれぞれの手から放出し、構えを取る二人。
八神庵と草薙京。数百年前から続く、炎使いの一族同士の因縁の対決が始まろうとしていた。

「庵くーん! ファイトやでー!」
「ファ、ファイト…!」
「がんばってー!」
「八神ー! 留年バカなんかに負けんなー!」
「相手はともよりアホだぞー!」
「なんだとー!」

観客席から歩たちの応援が飛ぶ。
一部とっくみあいが起こったりもしているが。

「…というか、すでにお前に勝った気になるのはなぜだろうな?」

八神庵19歳、大学一年生(進級待ち)。後輩&恋人からの応援あり。旅費(全員分)自分持ち。
草薙京19歳、高校三年生(ギリギリ卒業)。会場にいる同級生、全部庵を応援。恋人日本で留守番。旅費KOF事務局持ち。

「…どちくしょおおおおおおおおおおおっ!!!」

敗北した京が真っ白に燃え尽きていたのは言うまでもないだろう。



・VSサイコソルジャーチーム

今回庵の対戦相手となったのは現役女子高生アイドルである麻宮アテナ。

『ア・テ・ナ! ア・テ・ナ!!』

当然と言うべきか、客席からのファンコールはアテナ一色。
庵ですら圧倒されるほどの凄まじい勢いである。

「みんなー! 応援ありがとー!」

アテナが客席に手を振るとさらに歓声が大きくなる。

「凄い人気だなあ」
「ですねー」
「はっ! あたしのほうがよっぽどかわいいっての! デビューさえ出来れば三日でこのともちゃんがトップアイドルに…!」
「はいはい、いいからおとなしく八神の応援してろ」
「八神ー! 頑張れー! アタシらが見てる前で負けんなよー!」
「庵くん、大丈夫かなー」

リング近くの席の歩たちが圧倒されながらも庵に声援を送る。
一方でサイコソルジャーチームのセコンド席からは…

「アテナー! ワイの分までがんばってくれー!」

先鋒の恭也に倒された椎拳崇(シイ ケンスウ)がアテナにエールを送るが…

「ひっこめケンスウ!」
「モゲロ!」
「小学生に負けてんじゃねえ!」

アテナとの交流が多いことから男性ファンにやっかみを受け、石やら空き缶などを投げつけられていた。

「ワイの扱いヒドすぎるー!?」

ちなみに二人の師である鎮元斎(チン ゲンサイ)は酔拳で酔いすぎてしまい、恭也に倒されてからいびきをかいて眠り続けている。

「くっ…すまないね庵くん、会場の雰囲気に呑まれてしまったよ」
「…無念です、あとはお願いします」

リングサイドの士郎と恭也から声がかけられる。
実力では明らかにアテナに勝っていた二人だったが、会場のアテナ一色な雰囲気に圧倒され敗北を喫した。
真剣勝負とはまた違う、公式大会というものならではの事態である。

「…ああ、任せてくれ」

力強く頷き、庵はリングへと進んだ。



「サイコソード! まだまだ! サイコボール!」

アテナの光の剣、そして光球が庵を襲うが、それも危なげなく防御する。

「調子に乗るな…っ! 食らえ《裏百八式・八酒杯…!」

右手から蒼い炎を勢いよく燃え上がらせ、必殺の一撃を叩き込もうとするが…

『BOOOOOOOOOOO!!』

リングを振るわせるほどの客席からのブーイングが飛び、庵はタイミングを逃してしまう。
その間にアテナはすでに体勢を整え直していた。

(ぐっ…!! 先ほどからこれの繰り返し…環境がアウェーすぎる! このままでは…!)

「アテナ、いっきまーす! シャイニング・クリスタル・ビット…!!」

攻めあぐねる庵のスキを付いて、アテナの手に巨大な光球が生成される。

(!! いかん! あの大きさでは防ぎきれん! 避けるか!? いや、間に合わん…!!)

これまでか、と庵が防御を固めた瞬間、

『庵くーーーん!! 負けるなーーーーーー!』

「お、大阪!?」
「大阪さん!?」

会場の喧騒を遮るほどの大声で歩の声援が飛んだ。

「シュートォーーーーーーッ!!!」



アテナの《シャイニングクリスタルビット(最大チャージ)》が直撃し、誰もがアテナの勝利で決着が付いたと思ったが…

「…クッ、クックック」
「!?」

庵は両手から炎を噴出し、光球を真っ向から受け止める成功していた。

「歩にあそこまで真剣に応援されたならば…勝たないわけにはいかんなあっ!!」

アテナの放った光球を、燃え上がる手で握りつぶす。

「遊びは…終わりだっ!! 《禁・千弐百拾壱式・八稚女》ぇっ!!」

地面すれすれを蛇のようにすばやく動き、一瞬にして間合いが詰められる。
そのままアテナの頭が捕まえられ…斬撃の乱舞が始まった。

「泣けっ!! 叫べっ!! そして…死ねえっ!!」

のど元を締め上げ、そのまま炎を爆発させる。
しかしそれだけでは終わらなかった。

「まだまだぁ! 《裏参百壱拾六式・豺華》ぁ!」

吹き飛んだ身体を十字に切り裂き、地面から巨大な火柱が吹き上がらせる。

「止めだぁ! 《禁千弐百拾八式・八咫烏》!!」

さらに追い討ちとばかりに再度乱舞を始め、三度吹き飛ばされたところに炎を纏った渾身の斬撃が叩き込まれた。
全身黒こげでアフロになったアテナがリングの端にポテリと落ちる。
一瞬のうちに繰り出された庵の猛攻に、観客も選手も審判も言葉を失っていた。

「…審判、KOのようだが?」
「え…あ! はい! ウィナー、八神庵!!」

審判が庵の勝利を宣言する。と、同時に、

「クックック…ハッハッハ…ハァーッハッハッハ!!!」

毎度おなじみ、庵の『三段笑い』が静まりかえった会場に響く。
全員ドン引きであった。

「やったー! 庵くーん!」

ただし、約1名を除く。

「…わたし、ときどき大阪さんがすごく恐ろしく感じます」
「わ、わたしも…」
「…俺にも真似できんな」
「さすが八神さん、勉強になります」
「いや恭也くん、アレ参考にしちゃダメだって」

セコンド席でも庵と歩がドン引きされていたが、

「うう…わたし、アイドルなのにぃ…」

やられた当人のわりにはけっこう余裕そうなアフロアテナだった。



・VSオロチチーム

Ω<今大会はオロチ復活のための儀式だったんだよ!!(意訳)
ΩΩΩ<な、なんだってー!(意訳)

というわけで始まったもはやKOFお決まりの真・決勝戦…と、言うか乱闘。
相手はオロチ八傑衆メンバーの七枷社・クリス・シェルミー・ゲーニッツ・マチュア・バイス。
対する八神・御神チームは怒チームのレオナを加えての《チーム・斬撃》となって大乱戦が繰り広げられていた。

「なんやにぎやかやなー」
「お、大阪さ~ん。少しは緊張しましょうよ~」

なぜか巻き込まれることになった歩とちよは、離れたところでそれを観戦していた。

「庵・レオナ、妙に身体が動きやすいだろう? オロチの力が高まっている証拠さ」
「ククク、争いの気は十分に集まった…さあ、オロチ様の復活だ!」

社が大きく手を振りかざすと、周囲に満ちていた《気》が集まっていき…跡形も無く消えた。

「…? あれ?」
「? 何も、起こらないようだが?」
「失敗したの? まあ、そのほうが助かるけど…」
「そ、そんなはずは…」

予想だにしなかった事態にそろって混乱する一堂。
と、そこに、

「庵くーん、なんやおなかの中がポカポカするんやけどー?」
『はい?』

歩の能天気な声がかかり、全員の時が停止した。



『なんかこの娘の中の赤子の方が融合した感じがいいんでこっちにする。あとこの娘も赤子も『黄龍の器』だから、この娘らが望まん限り人類滅ぼしたりしないからヨロ(超・意訳)』

「「「ええええええええええええええええええええええ!?」」」

『あ、あと復活まであと数年かかるからそれまで保護ヨロ。やんなかったらオロチ一族だけ滅ぼすから(超・意訳)』

「「「うええええええええええええええええええええ!?」」」

オロチ、爆弾発言。
なんかもう色々と台無しだった。

「…ということらしいのだが、歩、どこかヘンな所とかないか?」
「なんともないでー。ところで、『こーりゅーの器』って何? ラーメン屋の丼のことー?」



「わけわからねーよまったく! ええいクリス、呑め! 恭也っつったか、そっちのガキも呑め!」
「いや僕らは」
「未成年」
『ガボガボガボッ!?』

「ルガールのアホ~何回戦艦沈没させる気なのよ~ひっく」
「損益計算は私たちにまわってくるんだっつーの! ひっく」
「あはは、秘書やってる二人は大変ねえ」
「シェルミ~、あんたも仲間になりなさい~」
「ざーんねん、これでもライブ活動で忙しいのよ」

「最近娘が可愛い盛りでしてな…あ、これ写真です」
「ほう、実は私も先日、妻から懐妊を告げられまして…楽しみにしてるんですよ」
「そろそろ裏家業も引退時ですかねえ…オロチ様も復活することだし」
「それがいいかもしれませんな。私も喫茶店でマスターでもやるとしましょうか」

決勝戦後、オロチ一族主催による《復活したけど予想の斜め上を行く結果になったよ! な、やけくそパーティ》が開かれ、参加者たちは全員へべれけになっていた。

「なーレオナ、ストームブリンガーで脂肪って吸えるのか?」
「さあ? やったことないし…」
「ならば実験だ! 被験者はよみ! さーやってくれ!」
「わかった…じっとしてて…」
「やめんかともー! 神楽もはなせー!! レオナも悪ノリしてんじゃねー!!」
「暴れるなって、成功すれば一発でやせられるぞ」
「そーそー!」
「出来るわけねーだろー!!」

そんな大騒ぎするオロチ関係者たちの横で、

「ふふふふ…なんか簡単に解決しちゃって、私の一族の存在意義って…」
「俺の炎なんていらんかったんだ…はははのはー」

草薙京と神楽ちずるのオロチ封印の一族二人がたそがれていた。

「ちずるさーん! 京さーん! しっかりしてくださーい!」
「げ、元気出して…」

真っ白に燃え尽きた二人を榊とちよが慰めているが、効果は薄そうである。



「庵くん、大丈夫ー?」
「ああ…ともと神楽にさんざんいじりまわされたがな…」

パーティ会場の外に出た庵と歩だったが、庵は服の所々がボロボロだったり、髪のセットが崩れていたりした。
『いつの間に大阪孕ませやがったこのスケベヤロー!』と言って襲いかかってきたともと神楽によるものである。

「でも、びっくりやなー。赤ちゃんできとったなんて。オロチさんてそんなのもわかるんやねー」
「そういう問題でもないと思うが…そうだ、歩」
「なにー?」

庵は懐から小さな箱を取り出す。

「…順番は逆になってしまったがな、コレを受け取ってくれ」

中に入っていたのは細やかな装飾が施されたシルバーの指輪だった。

「ふえー? えと…もしかして、プロポーズになるん?」
「まあ、な。なんとも味気ない渡し方になってしまったが…」

庵は少し照れくさそうに顔をそむけながら、しかしすまなそうに肩をすくめる。

「本来は大会終了後にちゃんとした形で渡したかったのだが…すまん」
「ええよー、嬉しいわー」

歩はそう言ってにこやかに笑うと、庵の手を取って、その手に包まれるようにして、庵の胸に背中を預ける。

「大事にしてな? 庵くん」
「…ああ」

さかさまの顔を見上げながらそう言った歩に、庵も自然と笑みが漏れた。



KOF終了より数ヵ月後、とある産婦人科にて。

「もう眠ってもうたわー、わたしに似てよく寝る子やなー」
「ふ…確かにそうだな」

そこにはベッドの上で生まれたばかりの我が子を抱く歩と、それをあたたかな眼差しでで見守る庵の姿があった。

「そういえば、名前は考えてあると言っていたが」
「うん、そうなんよー。『はやて』いう名前がええと思うんやけど、どうかな? あ、漢字やと堅苦しいからひらがななー」
「…『八神 はやて』か。ああ、いい名前だと思う」
「せやろー? 男の子やったらそのまま漢字にしよう思っとったんやけど、女の子やからひらがなのほうがいい思ってー」
「何か由来があるのか?」
「うん。わたしな、もっとびんしょうにならなあかんといっつも思ってたんよー。せやから、この子にはわたしよりびんしょうになってもらいたい思って考えたんやー」
「ふふ…歩らしいな」
「むー、それはわたしがトロいいうことかー?」
「自覚してるのだろう?」
「そやけど…むー」

ぷくーっと頬を膨らませる歩に苦笑する庵。

「あー、うー」
「ありゃ、起きてもた」
「はしゃぎすぎたか」

振動で眠気が覚めたのか、歩に抱かれていた『はやて』が目を開け、歩と庵をじっと見つめる。

「わたしらがおとんとおかんやでー、これからよろしくなー、はやてちゃん」
「よろしくな、はやて」
「あー」

父と母のぬくもりに包まれて、はやては嬉しそうに笑った。

****

(『オロチの巫女』か。思えば、八神や草薙のそれより重い宿命かもしれんが…)

その内に地球意思たるオロチの力を宿すはやて。
娘の未来で待つであろう宿命に、庵は思いを馳せる。

「あー、これがウワサの『ゆかり車』? ちよさん、真っ青やー」
「あれは怖いでー、ジェットコースターより怖いでー」

アルバムを見ながら笑いあう妻と娘の姿を見て、庵は己の考えを一笑に付す。

(心配など無用だな。例え何があろうと、俺は家族を守るために戦うまでだ)

「あー、おとんとおかんがちゅーしとる写真みっけー」

はやてにより取り出されたのはあのプロポーズのとき、物陰からこっそり取られていた庵と歩のキスシーンを写した写真だった。
当然犯人はとも。

「なあっ!? 滝野の奴、なんてものを!!」
「やーん、恥ずかしいなー」



どっとはらい




おまけ


『もしもし、歩か?』
「あ、龍にい。久しぶりー、今どこなん?」
『ブラジル、今度南極まで行くつもり。あと送ったやつ届いたか? 本場のタコスセット』
「届いたけど…わたしが辛いのダメやて知っとるのになんであないなもんくれるのー」
『庵さんとはやては平気だろーが。それより庵さんに迷惑かけてないか? 歩はトロいからなー』
「ひどいわー、龍にいこそいつまで世界を回るつもりなん?」
『もうちょっと。まあ、オフクロからたまには帰って来いって電話があったし…そのうち戻るよ』
「あんまおとんの真似せんといてー、おとんから肩身が狭くなるってこないだも電話かかってきたしー」
『わかっとるがな…おっと、油断すると関西弁にすぐ戻るな。じゃあまた電話する。劉にもよろしく言っておいてくれ』
「ん、ほななー」

「龍麻からか?」
「うん。今ブラジルやて」
「こないだまで俺もブラジルにいたんだが…入れ違いになったか」
「龍麻おじさん、今度はどこ行くん?」
「南極行くって言ってたなー」



おまけ2


「あ、今年もゲーニッツさんから冷凍ピロシキ届いたわー」
「わーい! ばんごはんにチンしてなー!」
「写真と手紙も入っとるよ。娘さんと一緒に作ったんやて」
「ロシア語と日本語訳をわざわざ書いてくれている…本当に律儀な人だな」




おまけ3


「ふ、ふふふふ…ついに見つけたぞ、この時代の『黄龍の器』…!」

真紅の服に身を包んだ男が八神家の前で怪しい笑いを漏らす。
江戸時代から『黄龍の器』の力を狙って生き続けてきた男『柳生宗崇』である。

「客家のときのようにうまく行くと思うなよ! つーかなんだあの集団リンチは!!」

ちなみに当時のメンバーは、

陽の武術家・緋勇弦麻。
陰の武術家・鳴瀧冬吾。
戴天流剣術皆伝・劉豪軍、孔濤羅。
御神不破流剣士・不破士郎。
草薙流古武術拳士・草薙柴舟。

その他もろもろ、となっている。

「今度こそ…今度こそ黄龍の力は俺の物だ! ふはははははは!!」

『おい』

「ははははh…は?」
「はやてチャンの家の前でなにバカ笑いしてやがる」
「近所迷惑よ」
「あら? コイツってたしか…」
「ええ、以前オロチ様の力を手にしようとした身の程しらずですよ」
「レオナさんの実父のガイデルが死んだのもコイツのせいだったわよね」
「で、そいつがオロチ様を宿しているはやてちゃん家の前でバカ笑い…」
「処刑確定ですね♪」

柳生の願いむなしく、彼はサプライズで驚かせようと八神家を訪れたオロチ八傑衆に見つかった。

「真八稚女・ЖИССОКОКУ(じっそうこく) !!」
「Арабуру Дайчи (あらぶるだいち )!!」
「Шукумэй・Гэнъэй・Шинши(しゅくめい・げんえい・しんし )!!」
「Дайчи о Курау Гока (だいちをくらうごうか)!!」
「ヘブンズゲイト!!」
「ウィザリング サーフェス !!」

合掌。


**

どうせ戦闘とかしないので大阪を極限まで魔改造。
ちょっと昔話ネタのつもりがなんでこんなに手こずった…



[26812] 大魔王様のとある普通の一日
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/06/26 23:54
鬼岩城 大魔王バーン寝室 早朝

豪奢…というわけではないが、質素でも高級感のあるベッドで眠りに付く銀髪の青年。言わずと知れた魔王軍の統率者《大魔王バーン(若)》である。
その枕元にはディフォルメされたリュミスベルンが時計を抱えている形の目覚まし時計が置かれている。

『オキナサイバーン! アタシヲマタセルナンテナマイキヨ! オキナサ…』

カチ

「…リュミスも何を考えてこんな目覚ましを贈ってきたのやら…まあ、微笑ましいがな」

なめらかな動作で目覚ましを止めると、そのままベッドを出る。
寝乱れた寝巻きの着流しの襟を直すと、軽く伸びをして洗面所へと向かっていった。



「おはようございますバーン様、では本日のご予定を…」
「うむ」

私服に選んでいる羽織を身に着けながらミストバーンから予定を聞く。
時々老人体になることも考えて、最近は和装がバーンのマイブームのようであった。

「…以上となります」
「わかった。ところで、リュミスはまた『アレ』か?」
「はい、本日も奮戦なさっておられました」
「やれやれ…厨房の人間には余の名義で詫びておいてくれ」
「御意にございます。しかし、リュミス様も酔狂な…」
「ソアラ姫やミスティアの姿に感化されたのだろう。ならば余はそれを受け止めるまでのことだ」



「おはようバーン! 今日こそは自信作よ!」
「ああ、おはようリュミス」

専用個室のリビングに来ると、エプロンをつけたリュミスがふんぞり返ってバーンを待ち構えていた。
ところどころに焦げた野菜や肉が付着していたり、指に大量のばんそうこうが貼られていたりするのはもはやお約束と言うべきか。

「さあ! ありがたくいただきなさい!」
「そうだな、ではいただくとしよう」

そう言って席に着いたバーンは、リュミスの作ったあまり見栄えがよろしいとは言えない料理を口に運ぶ。

「ふむ…ふむ…」
(ドキドキ…)
「ほう…いや…むう…」
(ど、どうなの? どうなのよ!?)

やがてバーンは並べられた全ての皿を平らげた。

「ど、どうよ!」
「…正直に言わせてもらえば、まだまだだな」
「そ、そう…」

その言葉を聞いたリュミスは目に見えて落ち込んでしまう。

「だが、上達しているのは確かだな…余人は知らぬが、余には美味であったぞ」
「そ、そうでしょ! そうよね! この私に不可能なんてないんだから!」

さきほどの落ち込みはどこへやら。リュミスは喜びを隠そうともせずに満面の笑みで再びふんぞり返った。

「まあ、見栄えに関してはまだまだ赤点だがな」
「うっ…わ、わかってるわよ…」



鬼岩城 大魔王執務室

いかに有能な者がそろっているとはいえ、それで大魔王の仕事がなくなるわけではない。軍の拡張に加え、統治範囲や交流する国家・団体の増加に伴い、バーンがこなすべき仕事は常人なら殺人級の量と難度になっていた。

「ミスト、次の書類《群》を」
「はっ」

ドザドザッ

執務机の上に大量に置かれる書類。
次の瞬間にはそれが削れるようにして減っていき、隣に決済済みのものが積み上がる。
マルチタスク・鬼眼を含めた三つの目・文字内容すら読み取る鋭敏な気配感知・同時に何本もの手が見えるほどの早業の全てを駆使してバーンは次々と書類を仕上げていく。

「次だ」
「ははっ」

そんなことを続けること2時間弱。
全ての書類を仕上げたバーンはさすがに疲れたのか首をゴキゴキと鳴らしていた。

「お疲れ様でした。では各部署に報告してきます」
「ああ…ミストも無理はするでないぞ」

ミストバーンの仕事はこれからである。
決済の結果を各部署に伝え、次の案件を回収し取りまとめる。さらに、魔影軍団の仕事に加え、ルーミアの世話も行うのだ。
いかに凍結処理したバーンの肉体を持つことで体力無限の疲れ知らずとはいえ、
よく暗黒闘気体が精神疲労しないものだとバーンも感心せざるを得なかった。



鬼岩城 中央広場

「えー? アセリアって鬼ごっこ知らないのー?」
「うん…」
「じゃああたいたちが教えてあげるよ!」
「鬼はどーすんだ?」
「わたしがやるのかー」
「あれ? ユートさんはやらないんですか?」
「ああ、俺はほら、空飛べないし…」
「なんだよー。まだ《トベルーラ(飛翔呪文)》も覚えてないのかよー?」
「ユート…」
「悪いなアセリア。覚えたら参加させてもらうから」
「んじゃルーミアが鬼ね! 大ちゃん、アギト、アセリア、逃げるよー!」

『わー!』

「…アセリアも変わったな。子供たちと楽しそうに遊んでる」
「そのようじゃな」
「わっ!? だ、大魔王さん!?」

無邪気に遊ぶ妖精たちを微笑ましく見ていた悠人は、突然横に現れた魔王軍最高権力者に腰を抜かす。

「はっはっは、そう驚かずともよい」
「そ、そう言われても…って、今日は爺さんの格好なんですね」
「このほうが子供らには受けが良いからのう。それにたまにはこの形態にならぬと、『老獪な思考』というものを忘れそうになるのでな」

現在バーンは長いあごひげが特徴的な老人体になっている。
霊光波動拳など各種の闘気コントロール技を習得し、また保有闘気量も尋常ではないバーンにとって、老人体を若いままで固定するのは雑作もないことだ。
しかし精神が肉体に左右される都合上、若いままだと『原作』のように慢心してしまうことをバーンは誰よりも理解していた。その結果としての敗北を知るがゆえに。

「その…俺、前々から大魔王さんにお礼を言いたかったんです。俺たちを、スピリットたちを救ってくれて、ありがとうございます」
「何、余はあの世界の窮状を見逃せなかったフレイザードの意見を受け入れたまで。礼なら彼奴に言うが良かろう」
「もう言いました。そしたら大魔王さんに言ってくれって…」
「はっはっは。なるほど、ならば余も素直に受け取るしかないのう…それより、貴公こそよかったのか? 戦いを強制されていたとはいえ、本来は普通の学生であろう?」
「はい…でも、日本には自由に帰れるようになっているから佳織を心配させずに済みますし、それに…」
「アセリア嬢のため、かな?」
「!!!(////) え、えと、それは」
「良い良い、男が戦う理由など、惚れた女のためで十分過ぎるわ」

真っ赤になってあわてる悠人を見て、そういえば自分も今ではリュミスのためにと考えることが多くなったか、とバーンは思いを馳せる。

「あ、バーンおじいちゃん!」
「こ、こんにちわ」
「おー! 炎のじっちゃんだー!」
「おじーちゃんのおひげなのかー」
「…おひげ、長い」
「はっはっは、余のひげが好きか、よいよい、存分にいじってゆけ」

『わーい!』

許しが出るや即座にバーンのひげに殺到する子供たち。もちろんアセリアも混じっている。

「じっちゃん! またカイザーフェニックス見せてよ! フレイザードやっつけるのに使うからさ!」
「うん! あたいも見たい!」
「さて、勝てるかのう…? まあ良い、ちょうど新しい術式も開発したのでな。見ているが良い」

そう言うと、バーンの右手から炎が噴出し、たちまち不死鳥が形成される。
そしてそれは意思があるかのように、右手の上に留まった。

「…さて、誰ぞ触ってみる勇気はあるかな?」
「え? 触れるの?」
「熱そうなのかー」
「むむむ…その言葉! 炎の剣精たるアタシへの挑戦と判断したよ! 当方に接触の用意アリ! 覚悟完了! とりゃあーーーーっ!!」
「ええっ!? アギトちゃん!?」

モフッ

「…大丈夫?」
「ア、アギト? 平気?」
「…モフモフだぁ~。あったかい~」

アギトはカイザーフェニックスに恍惚とした表情で抱きつき、モフモフを繰り返している。

「ふふ、『凍てつく炎』を生み出す旧神由来の『可逆の炎(エントロピー・フレイム)』の魔術の応用だ」
「すげえ…」
「…私も、モフモフする」
「あたいもー!」
「わ、わたしもっ!」
「モフるのかー」



鬼岩城 大規模戦闘訓練室

エヴァンジェリンの持つ『箱庭』の技術を応用して造られたこの場所は、戦略級の魔法実験や戦闘の余波が台風並みの者たちの訓練などに使用されている。
そして今回この場所を使用するのは…

「準備はいいか? クロコダイン」
「なに、心配は無用ですぞ」

大魔王バーンと百獣魔団長クロコダインである。
クロコダインは常時身に着けている100t分のウェイトを外し、ロン・ベルク作の新型魔法斧を抱えた本気モード。
バーンもまたミストバーンから凍結体を戻し、格闘家風の衣装に着替えての全力戦闘の構えだった。

「ばぁんしゃま、ごぶうんを」
「う、うむ…」
「いかがなしゃれましゅた?」

そのバーンの足元にはやたらダボダボのローブを引きずる3歳ほどの幼い少女が一人。

「…ミスト、その姿は…やはりルーミアの影響か?」
「…しょのようでしゅ。れいかくはだんちょうのほうがたかいゆえ、じゃくはいのわたしゅがひきずらりぇるのは、とうじぇんかと」

ズーンという効果音を背負いいつつ落ち込む幼女。

「このしゅがたでは、ばぁんしゃまをてだしゅけできましぇん…うう…」
「…クロコダインには悪いが、なるべく早く終わらせよう」

暗黒闘気体を集束して実体化できるようになったのはいいが、ルーミアの影響で幼女の姿になってしまった幼女参謀ミストバーンだった。



「おおおおおおおおっ!!」
「ぬうううううううっ!!」

周囲を揺るがす爆音を響かせながら大魔王と獣王の攻撃がぶつかり合う。

「《ダイナミックチョップ》!!」
「《カラミティエンド》!!」

渾身の一撃同士が衝突し、その反動で両者とも弾かれるように吹き飛ばされ…危なげなく着地する。

「グフフフ…流石は大魔王どの。この程度では揺らぎもせんか」
「フ…クロコダインもさらに鍛えたようではないか」
「お褒めにあずかり、光栄です…なっ。ぬうんっ!!」

クロコダインの右腕が膨張する。
クロコダインの最強技《獣王痛恨撃》の構えである。

「参りますぞ…っ! 《獣王痛恨撃》!!」

大地を抉りながら、すさまじい密度の闘気の渦がバーン目掛けて突き進む。

「(カラミティウォールでは防げんか…ならば!)《フェニックスウィング》!」

灼熱の炎を纏った闘気の掌底が闘気渦に叩き込まれ、その進行をせき止める。

「かかりましたな」
「何っ!?」
「第二の渦! 《獣王会心撃》!!」

左腕が一瞬にして膨張し、そこから第二の闘気渦が放たれた。

「なめるでないぞ! 《カラミティセイヴァー》!!」

超高速で振り上げられた足が空間もろとも引き裂きながら二つの闘気渦をかき消す。
しかしそれで体勢が崩れたのが仇となってしまった。

「ぬっ、姿が…上かっ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

クロコダインの手に握られているのは巨大な斧。それも刃渡り200mをゆうに超えようという、超ド級巨大戦斧。

ロン・ベルク作《ギガントアックス》。

《スクライド》と《勇者王ガオガイガー》からヒントを得て開発されたというこの戦斧は、アルター能力と同じように周囲の物質を分解して巨大な刃を形成し、分解振動波によって対象を両断・消滅させるというというトンデモウェポンである。
ちなみに武装展開時の最大重量は7万トンであり、クロコダイン以外誰も使用はできない。

完全に殺す気な武器を使用しているのは『このくらいじゃ死なないだろう』という信頼の証として目をつぶることにしておきたい。

「お命頂戴! おおおおおおおおおおおっっ!!」

…信頼の証ということにしておきたい。

「…見事! しかし! このバーンがそれで終わると思うな!」

即座にバーンは両腕を天地に向け、最大奥義たる《天地魔闘の構え》をとる。
しかしそれだけでは終わらず、両腕を大きく一回転させ、胸の前で交差した所で止めた。

「大魔王の力、活目せよ!!」

大地に亀裂を刻み、クロコダイン目掛けて飛び上がる。

「フェニックス! ウィング!」

轟音をあげて掌底が斧に正面から打ち込まれる。
それによって振り下ろされる速度が遅くなった。

「カラミティ! エンドッ!!」
「おおおおっ!?」

同じ場所に今度は手刀を打ち込む。
ピシリ、と音を立てて斧にわずかな亀裂が入った。

「カイザァー…!」
「ぬうう…ま、まだまだぁ!!」

打ち込んだ手はそのままに、その場所から炎が燃え上がる。
させぬとばかりにクロコダインも力を込めて振り下ろそうとするが、
先のニ撃で体勢を崩したままでは、バーンが術を完成させるほうが早かった。

「フェニックス!!」
「ぬ、あ、おおおおおおおおおおおっっ!?」

宣言と同時に巨大戦斧の全てが燃え上がり、ある部分は溶解し、またある部分は凍りつく。その温度差を受けて、巨大戦斧は瞬く間に粉々になった。
チルノたちに見せた『可逆の炎』の実践利用法である。

そして息をつかせぬほどの大威力の連続攻撃…言わば『攻め』の天地魔闘。これこそがバーンがリュミスとの戦いにおいて開眼した新奥義《天地魔闘の構え・一気呵成の型》であった。



「グワッハッハッハッハ!! いやー、見事に負けてしまいましたわい!」
「フフフ、さすがの余も肝を冷やしたぞ」
「ほう? ならばロン・ベルク殿によい土産話ができましたな! ハッハッハ!」

事実、もしクロコダインに余力が残っていれば危険だったのはバーンの方だった。
一気呵成の型も従来の天地魔闘と同じく、使用後の隙が存在する。
全く身動きできないわけではないが、魔力・闘気共に全力を注ぎ込むゆえか防御力が大きく低下するため、仕留め切れなければ致命傷を負いかねないのだ。

(まだまだ余も未熟、ということか。ふふ、強さというものは誠に際限がないものよ)



居酒屋 夜雀庵

「いらっしゃいませー! あ、バーンさん! 今日はお一人ですか?」
「うむ、リュミスはプレシア女史他、女性陣となにやら相談があるようでな…さびしく一人酒、というわけだ」
「またまたー。それじゃあ、カウンター席でいいですか?」
「ああ、今日もうまいうなぎを頼むぞ」
「はい! 一名様ごあんないでーす!」

『イエス! マム!』

「…掛け声か?」
「はい…なんだかみんな悪ノリしちゃって…」



大魔王寝室前

(今日もなかなか充実した一日であったな。心残りがあるとすれば、あれからリュミスに会っていないが…まあ、女同士の付き合いを邪魔するのも無粋というものだろう…むっ?)

ドアノブを手に取ると、施錠したはずの扉が開いている。

(侵入者か…? いや、ミストの警護に穴があるとは思えんが…)

「バ、バーン? 戻ってきたの?」
「リュミス? 中にいるのか」
「え、ええ…ミストに開けてもらって…」
「そうか。入るぞ」
「ちょ、ちょっとだけ待って!」
「? かまわんが…」
「すぅ~、はぁ~…い、いいわよ」
「うむ」

ガチャリ

「リュミス…その、格好は…」
「へ、変かしら!? やっぱり似合ってない!?」

現在のリュミスの格好はというと

『ネコミミ+ネコシッポ+鈴つき首輪+エッチな下着』

である。

「ううう…やっぱり似合ってないんだ…プレシアのバカぁ…」

(プレシアの入れ知恵か…だが、これは…)

顔を真っ赤にしてベッドに顔をうずめるリュミス。
バーンはその肩に手を置く。

「…バーン?」
「余は、似合ってないなどとは一言も言っておらぬぞ?」
「ふえ? …きゃっ」

そしてそのままベッドに押し倒す。

「さて、余はこの愛らしい子猫をどう扱えばよいのかな?」
「…いじわるぅ」

(GJ、と言うべきなのだろう、な)


かくして、鬼岩城の夜は今日も更けていく。



どっとはらい

**

オリジナル技《カラミティセイヴァー》はKOFのボス、ルガールのジェノサイドカッターがイメージに近いかと。要するに足でやる《カラミティエンド》です。手で出せて足で出せない道理はないでしょうし。

バーン様の老化⇔若化のメカニズムの疑問が多かったのでストーリーにしてみた。
あと和装バーン様って萌えません?

幼女ミストバーンとかなんて電波を受信したんだ俺は…



[26812] 【夢オチ】やがみけ6
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/08/14 18:00
「はやてちゃーん、いまテレビにはやてちゃんの好きな芸人の人出て…あれ、もう寝てるん?」

歩が部屋に入ると、はやてはすやすやと眠りに付いていた。


「…バーン様はなんで飛ぶのん…?」


…妙な寝言をつぶやきながら。

「ええ夢見とるんやねー。ほなおやすみなー」


**


・だいまおー


「…おー」

地平線が見えるほど広々とした草原にはやては一人立っている。なんとなく『あ、コレ夢だ』という自覚があった。
空を見上げると…

「てんちまとー(CV:金田朋子)」

つぶらな瞳で二頭身にディフォルメされた大魔王バーン(若)が角をピコピコさせながら空を飛んでいた。

「バーン様はなんで飛ぶのんー?」

「だいまおーですけどー」

なんとなく手を振っていたら、振り替えしてくれた。
そしてその後ろからオレンジ色で、猫の顔を縦に引き伸ばしたぬいぐるみのようなものがふわふわと飛んでいる。

「誰やー?」

「俺に聞かれてもなぁー(CV:若本規夫)」

そのまま彼らは空の彼方へ飛んでいった。



・ぽけもん?


「…やて、はやて。朝だよ、起きて」
「ふえ…? あれ、ディーノ兄? なんで家におるん?」

気が付くと自分の部屋でディーノに揺り起こされていた。

「なんでって、今日から一緒にポケモン探しの旅に出る約束だったじゃないか」
「…まだ夢の続きみたいやなー」



「…というわけで、はやてちゃんにはここにある3つの『魔法の筒』から好きなのを選んでおくれ」
「ふえ? ブラスおじーちゃんがオーキド博士なん? で、モンスターボールやないんやね」

机の上に並べられたのは上半分が赤い魔法の筒。何気にカラーリングはモンスターボールと同じだった。

「はやてから選んでいいよ」
「えーっと…」

手に取ると中に入っているモンスターの概要が書いてある。そこには…

その1
バーン だいまおうポケモン
チョップでなんでもまっぷたつにする。カウンターわざがきまればだれにもまけない。

その2
いまじん いじげんまおうポケモン
せかいのはてについほうしてももどってくる。いんせきをよびだしてあたりいちめんをあなだらけにしてしまう。

その3
バラモス(アベル伝説Ver) ゆうごうまおうポケモン
むげんのさいせいりょくをもつ。せいなるちからじゃないとたおせない。

最初からクライマックスなラインナップだった。

「…しょっぱなから伝説級やー、というか、これドラクエモンスターズとちゃうのん?」



「じゃあポケモンバトルやってみよーか?」
「周りの被害が心配やけど、夢やし、まあえーわー」
「じゃあいくよ。行け、異魔神! デルパッ!」
「ほないくでー! バーン様がんばってやー! デルパッ!」


『オリジナルドラクエ漫画最強の魔王は《余/私》だあああああああああっっ!!!』


「…ちゃうねん。これポケモンバトルとちゃう。スパロボとかなんかそんなアレや」

夢だとわかっていてもツッコミを入れたくなる限界突破バトルがはやての眼前で繰り広げられることになった。



・おとうさん


気が付くとまた別の場所にいた。
今度はどこかの岩山らしい。

「…あれ? 今度はどこやー?」
「伝説のポケモンをつかまえにきたんだろ?」
「そうなん? まあええわー」

そのままディーノと一緒に山を登る。やがて山頂が見えてきた。

「あれだ」
「なんやオレンジに光っとるなー」

そこにいたのは。


「ハローエブリニャン」


先ほどの縦長の猫だった。
いつの間にか手にしていたポケモン図鑑を見るとその詳細が書かれている。

おとうさん おとうさんポケモン
サンタさんのしょうたい、おかねはくにからでる。だんがんをはねかえし、マッハ100でとぶ。

「…おー、まいがー」


**


「…で、これが夢に出てきた」

はやてが差し出したのは歩も愛用していた『お父さん枕』である。

「あー、お父さんやったらしゃーないなー」
「そうなん? おとん」
「俺に聞くな…」

親子そろって同じような夢を見る二人に頭を抱える庵だった。



どっとはらい




おまけ

「余はそんなにかわいらしい声ではないいいいいいいいっ!! …む?」
「ん…どうしたのバーン、飛び起きたりして…」
「いや…なにやら妙な夢を…?」
「は? なにそれ」

ベッドの上で混乱するバーンとリュミスだった。


**


>>書の主として魔法を蒐集するかわりに、ポケモンマスターの道を究めてしまいそう。

九尾さんの意見を参考にしたらこんなネタが。
ちよちゃん風バーン様なんて、なんという無茶な電波を受信したんだ俺は…

8/14 フォントサイズの実験をしてみた。



[26812] 六大軍団は通常業務をしています(超竜編)
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/07/24 20:47
超竜軍団 戦闘訓練室

超竜軍団はその名が示す通り竜族やドラゴンライダーによって構成される軍団であり、その戦力は他の5軍団を総合しても上回る。
また、未来の魔王妃殿下たるリュミスベルンを団長に据えているため、魔王親衛隊としての側面も持つ。
精鋭中の精鋭を集めて編成された超竜軍団の訓練内容は凄まじいの一言につきる。

そして今日もまた、訓練室には剣戟の音が鳴り響く。

「せいやああああっ!」
「まだまだ!」

豪奢な装飾が施された大剣を軽やかに振るうのは、蒼髪の少年・リュウ。
鋭角的な軽装鎧を纏い長大な槍を自在に振り回すのは、青肌の魔族・ラーハルト。

「『千切り』! 『微塵切り』! まだまだぁ!」
「力ずくで俺を押さえ込むか…やるようになったな、リュウ!」

リュウの嵐の如き強烈な剣戟を槍で捌くラーハルト。
その顔には少々疲労の色が見えるが、槍捌きはいささかも乱れる様子は無い。

二人の戦いはスピードとパワーの典型的なぶつかり合いだった。
ラーハルトが速度で翻弄し、リュウが力ずくで動きを押さえ込む。
そして現在、勝機を捉えたリュウはそのまま押し切るべく、全力でラッシュを仕掛けていた。

(少しでもスキがあればラーハルトさんは攻めてくる! 何が何でも押し切ってみせる!)
(リュウの剣をまともに受ければ腕がイカレる! この剣戟を全て捌ききらねばならんとはな…!)

傍目からはリュウの優勢に見えるこの戦い。実際にはどちらも余裕が無いのが現状だった。

「リュウー! がんばれー!」

傍らで見守っていた虎人(フーレン)の少女・リンプーの応援が飛ぶ。
その声を受けたリュウの剣戟は勢いを増すが…

(自らリズムを崩したな!)

そのわずかな変化を見逃さず、ラーハルトは槍の柄を思い切りリュウの剣に叩き付けた。

「っ!? しまっ…!」

衝撃でリュウの剣が跳ね上がり、ラーハルトは反動を利用して間合いを離す。
それはラーハルトにとって必殺の間合い。

「もらったぞ…!」
「くっ!」

ラーハルトが槍を後手に構えた瞬間、その姿がリュウの視界から消える。


「『ハーケンディストール』!」


周囲に真空波を巻き起こすほどの超高速の移動・斬撃による攻撃。それがリュウに襲い掛かった。

「うわあああああっ!?」

即座にガードするもその衝撃に耐え切れず、リュウは訓練室の端まで吹き飛ばされた。



「あったた…やっぱラーハルトさんは強いや」
「謙遜することもあるまい…見ろ、俺の槍もボロボロだ。またロン・ベルク殿に怒られてしまう、使い手が下手くそだから武器がそうなるんだ、とな」
「あはは、ロンさんらしいや」

お互いボロボロの格好で笑いあう二人。

「リュウー! だいじょーぶー? めーりん、こっちこっち!」
「せ、急かさないでくださ~い」

二人の下に観戦していたリンプーが駆け寄ってくる。
その後ろ、救急箱を抱えた状態で腕を引っ張られて連れてこられたのは、紅魔館から修行研修中の紅魔館門番、紅美鈴(ホン メイリン)である。

「リンプー。うん、なんとか…ゴメンね、応援してくれたのに」
「う、ううん! リュウはがんばってたよ! それなのに、アタシが邪魔しちゃって…」
「そんなことないって。オレが油断しちゃっただけだから」
「う~、でも…」

しょげてしまったリンプーをなだめるリュウ。
その光景をラーハルトと美鈴は微笑ましく見守る。

「やれやれ。俺も一応怪我人なんだがな」
「リンプーちゃんですから。あ、ラーハルトさんは私がちゃんと看ますよ?」
「ああ、頼む」
「と、いっても気の補充だけでよさそうですけどね。いきますよーっと」

美鈴の手から放たれる淡く輝く光がラーハルトの消耗した闘気を回復させていく。

「…うむ。相変わらず《ホイミ(回復呪文)》よりこれは心地いいな」
「これだけしかとりえがありませんから。これで弾幕ももっと強ければなあ…ないものねだりですけどね」
「まあ、それは幻想郷の価値観だからな」
「格闘戦ならちょっとは自信があるんですけど…」
「それなら…」

そのまま話題は戦闘スタイルの話へとシフトし、二人の話は弾む。とそこへ、

「めーりん! つぎはアタシたちの番だよっ!」

どうやら落ち込みから回復したらしいリンプーから声がかかる。
美鈴との対戦を所望らしかった。

「ふえっ!? あの、観戦だけじゃなかったんですか!?」
「そんなわけないじゃん! さ、勝負勝負! リュウ! 見ててね!」

美鈴を引っ張りながら元気よくリュウに手を振るリンプー。
その姿にリュウも仕方ないといった表情で苦笑しつつ、手を振った。

「はやくはやくっ!」
「ちょ、ちょっと!? リュウく~ん、なんとかしてくださ~い!」
「あはは、まあ頑張ってとしか」
「そんな~」

ふえ~んと涙目になって引きずられていく美鈴。

(まあ、がんばれ)

ラーハルトはそんな彼女にそっと心の中でエールを送った。


ちなみに戦闘結果はリンプーのKO後に美鈴がスタミナ切れでぶっ倒れて終了した。



超竜軍団 執務室

「ん…っとぉ。これで全部かしら?」

書類の『山』の決済を終え、大きく伸びをするリュミス。

「はい、決済の必要な案件は以上ですよ。お疲れ様でした」
「まったく。バーンも少しは私に頼ってくれればいいのに。このくらいの書類、私だって決済できるわよ」

大魔王バーンの仕事量は殺人的なレベルであることは周知の事実である。
今回、リュミスはその一部、『イシュバーン大陸方面』の書類を無理を言って処理させてもらっていた。

「閣下はリュミスさんのことを大切に思ってますから、負担をかけたくないんですよ」
「そ、そんなことわかってるわよ! …あと、急な呼び出しで悪かったわねアトルシャン。せっかくの休日だったのに」
「いえ、気にしなくてもいいですよ。最近は『あっち』も落ち着いてきて、どうせヒマでしたし」

すまなそうな顔をするリュミスに、アトルシャンと呼ばれた赤毛の青年はにこやかに答える。

「それに、俺たちの大恩人であるリュミスさんの頼みを断れるやつなんて、ドラグリアにはいませんよ」

アトルシャンの正体はリュミスと同じく竜族であり、イシュバーン大陸と次元を隔てて存在するドラグリア大陸の生まれである。現地人であるアトルシャンは今回補佐として呼び出されていた。

「なにせリュミスさんはホルス族の秘宝『アヴェスタ』でイシュバーン大陸にかけられた竜殺しの呪い…それをブレス一発で解呪しちゃったんですから」
「あんな不愉快なもの残しておいたら寝覚めが悪いわ。だから吹き飛ばしてやっただけよ」

顔を赤くしてそっぽを向くリュミス。
照れ隠しであることが丸わかりなその仕草にアトルシャンは笑いをこらえるのに必死だった。

「…っと、そうそう。最近はドラグリアとの交流も始まったんですよ。イシュバーンだけじゃなくて『こっち』に来たいって意見も多いみたいです」
「ふーん。ま、いいんじゃない? ただ『私の世界』はオススメしないわ。リュウ君ぐらい強ければ引く手あまたでしょうけど」
「はは…くれぐれも言い聞かせておきます」

リュミスの世界は竜、特にオス竜には特に厳しい世界である。
アトルシャンの顔がひきつるのも当然だった。

「ところで、タムリンは元気? そろそろ出産でしょう?」
「はい、おかげさまで順調です」
「リュカ王のところと同じくらいになるかしらね。覚悟しときなさい、ウチのお祭り好きの連中が結婚式の時より騒ぐわよ?」
「なるほど、そいつは楽しみです」

アトルシャンの妻、タムリンは竜殺しの呪いをかけたホルス族の生まれ、それも王女という家系であり…二人が結ばれるまでには多くの困難があったことは想像に難くないだろう。
そんな二人の結婚式に、魔王軍の面々とアトルシャンの旅の仲間たちが飲めや歌えの大騒ぎを行ったのは当然のことと言える。

「竜族と他種族との結婚はあなたたちが先輩なんですからね? わ、私とバーンの時もよろしく頼んだわよ?」
「ええ、任されました。がっちり盛り上げてみせますよ」

わたわたと顔をトマトより真っ赤にして執務室を出て行くリュミス。
そんな最強の竜の乙女な姿に、アトルシャンはとうとうこらえきれなくなって、無人の執務室で笑い転げることになったという。


どっとはらい


**

やっと六大軍団が終わりました。



[26812] 氷精と剣精のぱーふぇくと魔法教室
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/07/04 03:27
それは唐突なチルノの宣言から始まった。

「メドローアを撃とう!」
「おおう、いきなり何だよ」
「またチルノちゃんてば…」

《メドローア(極大消滅呪文)》
かつて地上を当時魔王だったハドラーが侵攻していた際、最終決戦に備えて大魔導士マトリフが開発した究極の攻撃呪文である。
炎と氷。熱操作という同一の変化でありながら、相反する2属性を相殺することなく融合させ、その反発力より生まれる対消滅エネルギーをもって万物を消滅させるというこの呪文は、習得に天性のセンスが必要とされる。

「バーンおじいちゃんも言ってた! メドローアは最強の魔法だって! ならそれが使えればフレイザードにも勝てるよ!」
「おお流石チルノ! お前って天才じゃね!?」
「ふふーん、もっと褒めなさい!」

その無謀とも言える挑戦に、今チルノとアギトは挑もうとしていた。

「それじゃ早速特訓だ!」
「おう!」

思い立ったが吉日とでも言わんばかりにチルノとアギトは駆け出して行った。
残されたのは唖然とする大妖精ただ一人。

「行っちゃった…フレイザードさんも使えるんだから結局変わらないんじゃないかなぁ…」



訓練室

「まずはユニゾンよ!」
「おうさ! いっくぞー! ユニゾン・イン!」

チルノとアギトが光に包まれ、右に氷の羽を、左に炎の羽を背負ったチルノの姿が現れる。

『アギチルノ! さんっじょー!』

「右から氷の魔力!」
「左から炎の魔力!」

『合成!』

高まった二つの力が胸の前でぶつけられ…ものの見事に消滅した。

「…消えちゃった」
「んー、でもフレイザードはやってたよな?」
「もっかいだ! 今度はもっと強く!」
「よっしゃー!」

先ほどよりも強力に集中させた力が両手にそれぞれ現れる。

『合成!!』

再び氷と炎がぶつけられた瞬間、

\あ つ い !/
/さ む い !\

アギチルノの体が燃えながら凍りついた。



「あついあついあついあついあつい!!」
「さむいさむいさむいさむいさむい!!」

「わっ!? チルノ君とアギト君が燃えたり凍ったりしている!?」

転げまわるチルノとアギトを発見したのは次の研究のアイディアを練っていたジェイル・スカリエッティだった。

「あつかった…ジェイルおじちゃんおりがとー」
「さむかった…ジェイルのおっさんさんきゅー」
「おじ…まだ私は20代なのだが…まあ、君たちに言ってもしかたないか。それで、何をしていたんだね?」
「メドローアの練習!」
「フレイザードに勝つんだ!」

ふんっ、と胸を張って答えるチビ妖精二人。

「いや、だからって普通は逆属性の魔力をぶつけても相殺するだけなのだが…ある意味天才だな、君たちは」
「とーぜんよ! あたいたちってば最強なんだから!」
「チルノは天才! あたしも天才!」

先ほどの光景から察するに、二人はすでに氷と炎の魔力を『相殺せず融合』については成し遂げている。
あとはそれを対消滅エネルギーに変換するだけなのだ。

「興味深いね。パチュリー君に相談してみるか」

戦闘機人の娘たちがいることもあってか、子供の面倒見はよいジェイル博士だった。



資料室

用意されたホワイトボードに、簡単な図柄を交えて説明するパチュリー。
隣では小悪魔が図形モデルを持って控えている。

「つまり逆属性の魔力を融合させるには、その過程で発生する対消滅エネルギーを…」

なるべく解りやすいように丁寧な説明をしていくパチュリーだったが…

\む ず い/

一刀両断である。
すでに二人の頭からはプスプスと煙が発生していた。

「…これだから感覚で魔法を組む天才ってのは…魔理沙といい、この子たちといい」
「彼女は努力型を自称しているが、あの星の魔法を自力で組み上げるのは天才しか無理ってことを未だに気づいていないからね…この子たちもしかり、だ」
「はあ…しかも話を聞く限り、この子たちがやったのって『可逆の炎』でしょ? バーンさんやフレイザードだって苦労した術式なのに…これで⑨でなければ妖魔師団のエリートにだってなれるわよ、二人とも」
「はう…魔力もセンスもない私にはうらやましい限りですぅ~」



不死騎団 執務室

匙を投げたパチュリーに紹介されてやってきたのはエヴァのいる不死騎団。
魔力コントロールが重要となる『闇の魔法(マギア・エレベア)』の使い手であるエヴァなら何か手があるのではと踏んだためだ。

「メドローアを覚えたいだと? …ジェイル、お前の入れ知恵か?」
「残念ながらこの子達の自主的な発案だ。しかもたちの悪いことに実現が可能っぽい」
「ほっといたら事故を起こしかねん、か。はあ…なんでこうも予期せぬところから魔改造が発生するんだ…」

ガリガリと頭をかくエヴァ。ものすごく面倒くさそうである。

「エヴァお姉ちゃんがメドローア教えてくれるの!?」
「いや、私はやるとは言ってな…」
「エヴァ姉さん、お願いします!」
「う…」

完全に信頼しきっている子供の純粋な瞳で見つめられてはたまったものではなかった。

「やれやれ…仕方ない、試してみるか」
「やたー!」
「ありがとー!」
「だああーっ! 冷たい! 熱い! 抱きつくなお前らー!」

「ケケケ、スッカリ丸クナッチマッタナ」
「微笑ましくていいじゃないか」
「ああマスターがあんなに楽しそうに…録画録画」



訓練室

「…じゃあ、とりあえず現時点でどこまでやれるのか見せてみろ」
『はーい』

『ユニゾン・イン! アギチルノ!』

ユニゾンした二人は早速力を両手に集め、融合させ…

\あ つ い !/
/さ む い !\

燃えながら凍りついた。

「…おい、ジェイル」
「何かね?」
「なんであいつらは不完全とはいえ『可逆の炎』なんぞ出せるんだ!」
「バーン陛下が一度見せたらしい…パチュリー君もあきれて突っ伏していたよ」
「あれだけ才能があってなんで二人とも⑨なんだ! 嫌がらせか!? どっかの混沌の!」

混沌「冤罪だ!!」

その後、エヴァは二人にさまざまな術を使わせたり、ぶつけたり、施したり…
ついには『闇の魔法』まで伝授しようとしたのだが…

\む ず い/

結果はパチュリーの時と同様。
二人の頭脳が真っ先に悲鳴を上げた。

「ク、クククククク。こうなればもう、『原作』通りの修行で覚えさせるしかないな…!」
「直接メドローアを受けさせる気かい!?」
「もともとそれしか伝授の方法はないんだ。なに、チルノはもとより、アギトにも幻想郷の『ピチュり復活』の術式はかかっている。2、3回ピチュっても問題なかろう。フハハハハハハハ!!」
「エヴァ…目がイッてるよ」

眼前にあるすさまじい才能。それを開花できない苛立ちがエヴァを完全に暴走させていた。



ホルキア大陸 バルジ海峡近辺

「と、いうわけだ。フレイザードに頼んでは意味がないと言って聞かんのでな。よろしく頼む」
「なんで俺がこんなチビガキどもにそんなことしてやらにゃいかんのよ。大体あのゴーレム野郎だってウチに殴りこみ同然で押しかけてきやがったってのに…」

二人を連れてエヴァがやってきたのは《メドローア》の開発者である大魔導士マトリフの家だった。

「なんかいろいろあるよ?」
「なんだこりゃ?」
「コラァ! ガキども! 勝手に人の家あさるんじゃねえ!」
「おこったー」
「にげろー」

ガラクタ置き場のような所をあさっていたチルノとアギトがマトリフの怒声に逃げ去る。

「ったく…確かに今の魔王軍は人間と敵対しちゃいねーみたいだがな、だからって俺が協力する義理は…」
「ここにメンフィル軍御用達のスゥーティー娼館のチケットがあるわけなのだが…」
「修行始めんぞ。準備しろガキども」
『はーい』

大魔導士マトリフ。
欲望に正直な男だった。



氷炎魔団 執務室前

『勝負だ! フレイザード!』

フレイザードの前に現れたのはユニゾン済みのアギチルノである。

「またかよ…今度は何を覚えてきやがったんだ?」
「ふふーん。見て驚きなさい!」
「度肝抜いてやるー!」

アギチルノの両手に現れる氷と炎の魔力。
それが胸の前でぶつけられ…融合した。

「!! そいつはまさか…《メドローア》か!?」
「そのと-り! これで今度こそあたいたちの勝ちだ!」

自信満々で光の弓を引き絞るアギチルノ。
対するフレイザードは一瞬驚いたが…今は困惑というか、困った表情になっていた。

(…っても、俺、《マホカンタ(魔力反射呪文)》使えるから平気なんだが…まあ、せっかくだ、受けてやるか)
「…よし、来いや」
「いっくぞー!」
「くらえー!」

『《メドローア(極大消滅呪文)》!!』

『凍気と炎を纏って』解き放たれた光の矢をフレイザードは正面から受け止めると…その違和感に気づいた。

(!? 融合が完全じゃねえ! 完全な《メドローア》じゃなくて『可逆の炎』の亜種だ!)

不完全な《メドローア》は瞬時に分解される。

「あー! 防がれた!」
「もう一発!」

再び魔力融合を試みるアギチルノ。しかしそれをフレイザードは慌てて制止する。

「待て! もう撃つんじゃねえ! 今のお前らの力じゃ、次に撃ったら…!」
「ふふーん! 今さらビビっても遅いよーだ!」

忠告を無視して魔力を融合させる。
そして…暴走した。

「あ、れ…?」
「え…?」

「バカヤローがあああああああああああああああっっ!!!」



「…あーくそ。マジ死ぬかと思ったぜ」
「あ…あ…」
「あああ…」

ユニゾンが解除されたチルノとアギトを抱え込むようにしてうずくまるフレイザード。

暴走して四散する対消滅エネルギーを自らの身体でせき止めたため、その全身には穴あきチーズのように無数の穴が穿たれている。
また、あふれ出した『可逆の炎』の魔力を二人に逆流させないように全て取り込んだ結果、フレイザードの内部で左右の身体と逆属性の魔力が発生し、両腕は『内側から』弾け飛んでいた。
無論それで被害が全て防げたわけではなく、周囲の壁や天井にもいくつかの穴が穿たれているが…

「幽香か、助かったぜ」
「ふう…メドローアを相殺できる《マスタースパーク》を撃てるなんて私くらいのものよ?」

クルクルと日傘を回してたたずむ氷炎魔団・樹花霊師団長、風見幽香。
彼女の《マスタースパーク》により流れ弾は全て相殺されている。

「セルシウスもすまねえな」
「お気になさらず、お兄様。ネリーとシアーも…大丈夫ですか?」
「ふえええええええ~ん! 怖かったよ~~!!」
「うええええええ~~ん!!」

泣きじゃくるネリーとシアーをあやすフレイザードの副官、セルシウス。
彼女の防御結界によって炎と冷気の被害も、また食い止められていた。
一歩間違えれば大惨事となっていたが、二人の活躍により、被害は壁の穴程度に収まった。

「あ、あの…あたい…」
「こんなことになるなんて、思わなくて…その…」
「…チルノ、アギト」
『っ!!』

フレイザードの声にびくりと身をこわばらせる二人。

「…強くなるなとは言わねえし、俺に挑戦するのもかまわねえ。だが…周りを巻き込むような中途半端な鍛え方で挑んでくるな」

静かに、それでも強く二人にフレイザードは語りかける。

「わかるだろ? お前らが今回、どういうことをしたのか」

そう言って未だ涙目のネリーとシアーに視線を向けさせる。

「う、うん…ごめんなさい…」
「フレイザード…ごめん…」
「俺は別にいいんだよ、無茶は慣れてるからな。それよりもあいつらに謝って来い」

ポン、と背中を押して二人を送り出す。

「ネリー、シアー…ごめんね…」
「あたしら、ちょうしに乗ってた…ほんと、ごめん…」
「ん…ううん、いいよ。ネリーはくーるな女だから、このくらい平気だから」
「わ、わたしも…こわかったけど、今度から気をつけてくれれば…」

その光景を見て、ふう、と息をつくフレイザード。

「やれやれ。これでちっとは懲りてくれりゃあいいがね」
「大人ねえフレイザード。実際はチルノより年下のくせに」
「ほっとけ」
「お兄様は以前から大人です!」
「はいはい、セルシウスはお兄さんが大好きですもんねぇ~? それにしても派手にやられたわね、私が治してあげましょうか?」
「むきーっ! お兄様から離れてください! 私が治します!」
「しがみつくな! 引っ張るな! おい幽香! どさくさにまぎれて俺のコアに指突っ込むんじゃ…痛てええええええええええっっ!?」
「あらあら、だらしないわよ?」
「だから離れなさいと言っているんです! このドS!!」

そんなやり取りを繰り広げていると…

「チルノ! アギト! ここにいたか!」

ドドドドと轟音を立てながらエヴァが駆け込んで来た。
その表情は『魔法世界のナマハゲ』と呼ばれるにふさわしい、鬼の形相だった。

「エ、エヴァお姉ちゃん…」
「ヤ、ヤバイ、かも…」

チルノとアギトの顔色が真っ青になる。

「貴様らの《メドローア》は不完全だから無闇やたらに使うなとあれほど言っただろうが! 罰として今日はおやつ抜き! 尻も100叩きだ!!」

人形遣いお得意の糸捌きで二人を空中に縛り上げると、そのままズシーンズシーンと足音を立ててその場を立ち去った。

「うえええええええ~ん! ごめんなさ~い!」
「もうかってなことはしないよぉ~!」

その日、不死騎団の執務室からは二人の尻を叩く音がしばらく聞こえていたという。
合掌。


どっとはらい。

**

>>フレイザードはあれだ、炎属性と氷属性それぞれの嫁が押しかけ女房
>>→嫁同士がガチ喧嘩
>>→モゲロ
>>みたいな展開。
壱さんの感想をちょっと取り入れてみました。
片方は炎じゃなくてエネルギーor植物属性っぽいですが。



[26812] 【魔軍司令救済計画】親衛騎団が誕生しました
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/08/10 22:11
鬼岩城 医務室

先日、ついにハドラーが倒れた。
ストレス性胃炎による気絶である。

「無理のしすぎね。まったく、どこまでやればこんなにストレス溜め込めるのかしら」

もちろんその原因の一つは診察しているプレシアである。

「むう…生真面目なハドラーにあのフリーダムな軍団の指揮はきついものがあったか…主にウチの団長とか」

ベッドでうなされているハドラーの横で申し訳なさそうに頭を抱えるのは、彼の苦労を最もよく知るミストバーン。

「何か『癒し』が必要かもしれませんねー、バーン様に相談してみましょー」
「…大丈夫なんだろうな?」
「多分ー」
「…心配だ」

チート少女からの提案に不安を隠せない魔影参謀であった。



大魔王私室

「よく来たなハドラー。まあ、楽にせよ」
「はっ」

数日後、何とか回復したハドラーはバーンの元に呼び出されていた。

「連日の激務、さぞや大変であろう。すまぬな、苦労を押し付けてしまって」
「い、いえ! バーン様のそれに比べれば私など…」
「無理をするな。先日も倒れたのだからな」
「は、はい。ありがたきお言葉」

バーンは何とかハドラーを落ち着かせようとするが、萎縮しているばかりで未だ緊張が解けていない。
内心『だめだこいつ。早くなんとかしないと』と思っていたりする大魔王だった。

「まあ、今回はそれに関連した件で呼んだのだがな…正直、今の仕事は一人ではきつかろう?」
「そのようなことは…」
「無い、と申すか?」
「…ご慧眼、恐れ入ります。しかし! このハドラー、役目を放棄する気は微塵も…!」
「わかっておる、ゆえに…『コレ』を与えようと思ってな」

机の上に並べられたのはオリハルコン製のチェスの駒、5つ。

「フレイザードや茶々丸、エルザ、ナンバーズなど人工生命体の研究成果から生まれたものだ。コレに魔力を注ぎ込めば、その者の魔力の性質に従って魔法生命体が誕生する…簡易の禁呪法というところだな。もっとも、術者にも多大な魔力と資質を要求するが」
「コ、コレを私に!?」
「手駒とするもよし、尖兵とするもよし…お前の自由にしてかまわん。オリハルコンより生まれし魔法生命体5体、お前に与えよう。使いこなせ」
「過分な配慮、ありがたく頂戴いたします!」



ハドラー退出後、そこにはバーンと話し込むチート少女の姿があった。

「…あれでよかったのか? 『原作』の親衛騎団が生まれたとて、多少人手が増えるだけにしか思えんが」
「まあ、どうなるかはハドラーさん次第ですねー。でも、禁呪法の魔法生命体は術者のメンタルに依存しますから、今のハドラーさんならきっといい子たちが生まれますよー。いろいろ苦労してますからー」
「ふふ…フレイザードはそなたの予想とは違った育ちかたをしたようだがな」
「あうー、それは言わないでー」



数日後 魔軍司令執務室

「よし、これで今日の分は終わりだな…」

書類をまとめ、席を立つハドラー。
多少の疲労は残っているようだが、その顔には先日のような鬱屈としたものはなくなっている。

(これも『アイツら』が手伝ってくれているおかげか)

我知らず、口元をほころばせるハドラー
と、そこへドタドタと音を立てて入室してくる人影があった。

「オーヤージー!! 聞け聞け聞け! 聞ーいーてーくーれー!!」
「ヒム! ハドラー様の仕事を邪魔するなと…あとオヤジと呼ぶなと言っただろうが!」
「ぶろーむ」
「シグマうっせー! それよりもさ! 俺、ついにフレイザード兄貴から一本とったんだぜ! スゲーだろー!!」
「ぶろーむ?」
「手加減されてたって? それでも勝ちは勝ちだし兄貴もよくやったってほめてくれたんだぜ! だから問題ない!」

さあ褒めろと言わんばかりにキラキラした眼をハドラーに向けてくる、ハドラーに似た雰囲気を持つ5歳ほどの少年、ヒム。
その後ろでこめかみを抑えているヒムより少し年かさらしきメガネの少年、シグマ。
二人の足元でぶろーむぶろーむと楽しそうに笑っている3歳ほどの男の子、ブロック。

「見つけましたよヒム! また仕事をサボって!」
「げ…アルビナス」
「だからワシは目を離すなと言ったのだ。もはや常習だろうに」
「うるさいですよフェンブレン! わかってるならあなたもヒムを止めなさい!」
「無駄とわかってることだ。やりたくないわい」

眼を吊り上げてヒムを叱り付けるヒムと同じく5歳ほどの少女、アルビナス。
我関せずと面倒くさそうに頭を掻いている細身でロングヘアの少女、フェンブレン。

「シグマ! あなたも一緒にいながらなんですか! ブロックまで連れて…ブロックがヒムの悪いところを見習ったらどうするんです!」
「ぶ、ぶろーむ?」
「そこで私に振るのか!? 年中ヒムに振り回される私の身にもなれ! それにブロックはヒムが無茶しないためのストッパーだ! ヒムをほったらかしてたらリュミス様に挑戦して黒こげで戻ってきたことを忘れたとは言わせんぞ!」
「ミストバーン殿の飯はまだかのう…そう思わんかブロック?」
「ぶろーむ!」
「オヤジー! 褒めてー!!」

ギャイギャイワーワー

彼らは皆ハドラーと同じく銀髪であり、身体の所々には銀色に輝くオリハルコンの表皮が見え隠れしている。
それは彼らが禁呪法で生まれた生命体であることの証…オリハルコンの戦士『ハドラー親衛騎団』である証拠だった。

「…ふふ」

騒ぎ続ける『我が子たち』を見ながらハドラーは笑みを漏らす。

「ヒム、よくがんばったな。だが慢心はするなよ」
「へへへ…トーゼンだい!」
「シグマ、ヒムの呼び方は別に気にしなくてかまわん。まあ、振り回されるのは大変だろうが…お前がいれば俺も安心できる。ヒムを見てやっていてくれ」
「は…はい! 私が責任を持ってヒムを監督します!」
「ブロック、フェンブレン、昼食はもう作ってくれているはずだ。ルーミアのところで一緒に食べてこい」
「まことか!? よし行くぞブロック! 早くせねばルーミアにワシらの分まで食われる!」
「ぶろーむ!!」
「うおー! 俺も行くぞー!」
「あ、おい、ヒム! ああもう…! ハドラー様、では失礼します!」

我先にと部屋を飛び出す親衛騎団(子供)。
あとに残されたのはハドラーとアルビナスのみ。

「まったくどいつもこいつも…!! ハドラー様、すいません…私の力及ばず…」
「そう深刻に考えるな。あいつらも自分のすべきことは理解している…多少は大目に見てやるといい」
「…でも、私、役立ってません」
「アルビナス…?」
「私たち…ハドラー様のために生まれたのに…迷惑かけるばっかりで…ぐしゅ…うええええええええん!!」

やはり生真面目なハドラーに似たのか、アルビナスも責任感が強すぎたらしく…泣き出してしまった。

「…ふふっ、アルビナス。お前は俺の苦労性を一番濃く受け継いでしまったようだな」
「えっぐ、えっぐ…ふぇ? あ…」

涙でグショグショになって嗚咽するアルビナスの頭にポンと手を乗せるハドラー。そのままやさしく頭を撫でると、アルビナスの涙は止まっていった。

「ハドラー、しゃま…ぐしゅ」
「俺はな、お前たちに迷惑をかけられたと思ったことはただの一度もないぞ?」
「ふぇ…?」
「ヒムはひたすらに強くなろうとし、シグマはヒムの暴走を抑えようとしている。フェンブレンはまだ幼いブロックを見守り、ブロックは皆から何かを学び取ろうとしている。そしてアルビナス、お前は常に俺のことを考えて動いてくれている…皆、俺のためにと頑張ってくれているではないか。それを感謝こそすれ、迷惑に思うはずがない」
「そ、それは…あううう…」

ハドラーから告げられた言葉に、気恥ずかしくなってアルビナスの顔は真っ赤になる。

「だから気にするな。お前たちは、お前たちのまま在ればいい。それが俺にとっても喜びだ」
「ハドラー様…はい!」

涙の跡をぬぐって、アルビナスは笑顔で応えた。

「さあ、皆と昼食を食べて来い。早くしないとルーミアが食い尽くしてしまうぞ?」
「そ、そうでした!! で、では失礼します! ヒム! シグマ! ブロック! フェンブレン! 私の分、残しておきなさいよー!」

あわてて食堂に駆け出していくアルビナス。
それを見守るハドラーの表情はやさしかった。


どっとはらい

**

おまけ


「それでだな、うちのクロノが今度…」
「あら、うちのフェイトも…」
(こいつら、他に話はないのか…)

夜雀庵でのクライド、プレシアの親バカ談義。
相変わらずハドラーはそれに巻き込まれていた。

「ところで、ハドラーのところはどうなんだ?」
「みんなイイ子たちばかりだし、鼻が高いでしょ?」
「ん、ああ…写真見るか?」

懐から親衛騎団の写真を取り出す。

「ヒムくんすごいなあ。うちのクロノもこれくらい思い切りがあれば…」
「アルビナスちゃん、もうちょっとおしゃれしたほうがいいんじゃない? なんなら今度エヴァに話し通しておくけど?」
「…まあ、そのへんは任せる」

ちょっと耐性がついたハドラーだった。



おまけ2


ブロックたん


「ぶろーむ?」
「ん? ああ、ブロックちゃんか…いや、ストーンマンのやつらが酔っ払って喧嘩しやがってね、城壁と身体が見分けつかなくなっちゃって…」
「ぶろーむ!」
「任せろって? でも、ここに散らばってるのはでかくて重い石ばかり…」
「ぶろーむ、ぶろーむ」

ヒョイヒョイ

「…あの小さい身体になんであんな力が」
「うい~ブロックじゃないか、どうした~?」
「ぶろーむ」
「んあ~? それならこの萃香さんも手伝ってやろーじゃないか~」

ヒョイヒョイ

「ぅゎょぅじょっょぃ」
「ぶ、ぶろーむ!」
「うぃ~、『ボクは男の子』だって~? にゃははは、確かに『男の娘』だね~」

**

>こーなったら親衛騎団を生み出して親バカとして仲間入りするしかない。
>ブロックの癒しはすごいぜ?

九尾さんの感想を参考にしたらとんでもない電波が…
こんなブロックで大丈夫か?
そしてヒムがアホの子に…



[26812] 親衛騎団のいる風景
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/07/24 22:48

親衛騎団 寝室

「むにゅ…ぶろー…むぅ…」

枕にかじりつきながら何事がつぶやいている幼児。
親衛騎団のマスコット的存在、ブロックである。
どうやら、何かおいしいものを食べる夢でも見ているらしい。と、そこへ

バサリ

「…みゅう?」

布団を勢いよく除けられて床をコロコロと転がるブロック。
眠そうな眼に写ったのはブロックの世話係を自任するフェンブレンだった。

「起きろブロック、朝だぞ」
「…ぶろーむ?」
「ああ、おはよう」
「ぶろーむ!」

元気に返事するブロックにフェンブレンの顔も緩む。

「さ、顔を洗ったら朝食に行くぞ。ヒムなんぞは待ちきれずに厨房に突撃していきよったわ」
「ぶろーむ!」

こうして今日もちびっこ親衛騎団の一日は始まった。



魔影軍団 食堂

親衛騎団の主はハドラーだが、当然家事能力は無い。
そこでお子様団長であるルーミアの世話をしているミストバーンが食事などを作るわけだが…

「うおールーミア! 俺のおかず取るなー!」
「早い者勝ちなのかーあみあむ」
「だーっ! ヒム! だからって私の皿から取るな!」
「団長、おかわりならありますからヒムの分を取らないでください。ヒムもシグマから取るんじゃない」

…食事+(幼児×6)=戦場の法的式が完成されていた。

「ほれブロック、あーんせよ」
「あー…(もむもむ)…ぶろーむ!」
「ふむ美味いか、それはよかった」
「ん? フェンブレン、ニンジン食わないなら俺が…」

ガスッ!

「ぶろーむ?」
「あ…あわわわ…」

テーブルに突き刺さるフェンブレンのピニングソード。
一歩間違えれば腕を切断していたそれに、さしものヒムも真っ青になった。

「ヒムよ…よりにもよってブロックの好物であるニンジンのグラッセを横取りしようとはいい度胸よのう…?」

ヒムに向けられるのは絶対零度の視線であった。

「し、失礼しましたっ!」
「ぶろーむ?」
「ああ、食い意地の張ったアホウが馬鹿をやっただけだ、気にするな。ほれ、あーんせよ」
「あー(もむもむ)」
「美味いか?」
「ぶろーむ!」

先ほどまでの感じから一転、ブロックを見つめるフェンブレンは幸せそうであった。

「おお怖…」
「自業自得だろうが」
「…って、シグマ! てめーいつのまに俺の飯を!」
「油断大敵だ」
「おかわりなのかー」



「ミストバーン、ハドラー様のお弁当を包んでください」
「ん? わざわざ用意しなくても昼になったら私が持っていくが…?」

魔軍司令含む各団長の仕事は忙しく、食堂へ行く時間をも惜しくなることが多々ある。
そのためルーミアの世話ですっかり料理スキルの身に付いたミストバーンによるデリバリーは大変好評だったりする。

「いいから! 今日は私が持っていきます!」

パタパタと腕を振り回してミストバーンに駄々をこねるアルビナス。

「…わかった、ではお前でも持てるように包んでおこう」
「は、はい! ありがとうございます!」

アルビナスの意図を察したミストバーンは普段より早く調理を始めた。

(ハドラーも果報者だな)

待ちきれずにそわそわと身じろぎをするアルビナスを見ながら、そんなことを考えるミストバーンだった。



「兄貴ー! 修行手伝って…げっ、チルノ」
「あーっ! また来たわねこの金属チビ!」

フレイザードの元を訪れたヒムが遭遇したのはおなじみのチルノである。
ちなみに今日はアギトは大ちゃんと遊んでいるのでいない。

「誰が金属チビだこの⑨妖精!」
「⑨に⑨って言われたくないわよこの⑨!」

見ての通り、この二人仲が悪い。
⑨同士の同属嫌悪もあるが、それ以上にフレイザードに相手をしてもらいたいこの二人、『こいつがいると相手してもらえない』と互いに考えているため、顔をつきあわすと…

「勝負だ!」
「勝負よ!」

こうなる。
ある意味、息ピッタリな二人だった。



「あっはっはっは! どーしたのよ、全然届かないわよーだ!」
「ちくしょう! 弾幕なんてずっけえぞ!」

現在チルノが展開してるのは『アイシクルフォール(Easy)』のスペルカード。ただし、弾幕の厚みは数倍に強化されているが。

「くっそう! 安地に入ればこんなもん!」
「入れるもんなら入ってみなさいよーだ!」

相変わらずチルノの真正面に安全地帯のあるこのカードだが、弾幕が厚くなっているためヒムは近づけずにいた。
今はひたすら遠距離で襲い来る弾幕を闘気拳で弾き返して耐えている。

「あっはっはっは! やっぱりあたいってば最強ね! わかったらとっとと帰んなさいよ!」
「調子にのってんじゃねー! こうなりゃもろともだ! ぬりゃー!」

そう叫ぶと、ヒムは全速力で弾幕の中に突っ込んだ。

「え? 自爆?」
「んなわけあるかあぁぁぁぁっ!!」
「わああああっ!?」

弾幕を突っ切って来たヒムは勢いよく飛び上がり…

ゴン

『頭』からチルノの『頭』に突っ込んだ。



『⑨~』

「…まーたやってたのか手前らは。こりねーなあ」

執務室前でぶっ倒れていた二人を前に、フレイザードが頭を抱えることになったのはまた別の話。



魔軍司令 執務室

「さて、そろそろ昼メシの時間か。今日は余裕もあるし、外にでも…」

執務を終えたハドラーが席を立とうとした時、

コンコン

「む、誰だ?」
「わ、私です、アルビナスです」
「どうした? まあ、入れ」
「しちゅれい…いえ、失礼します」

緊張のあまり噛んでしまい、少し恥ずかしそうな様子でアルビナスが入ってきた。
その手には大きなバスケットが抱えられている。

「あの、お弁当をお持ちしました」

そう言って差し出されるバスケット。
中身も出来立てらしく、いいにおいが漂ってくる。

「アルビナスがか? ミストバーンに頼めばよかったものを」
「あの…ご迷惑でしたか?」
「いや、そんなことはない。ありがたくいただこう」

アルビナスの頭をやさしく撫でながらバスケットを受け取るハドラー。
ほにゃりとアルビナスの顔が緩むが、あわてて居住まいを正す。

「あの、それではこれで…」
「まあ、待て」
「?」
「ミストバーンが気を利かせてお前の分も入れていたようでな、よければここで食べていくか?」
「!! はいっ!」


その日、アルビナスは一日中気合がみなぎっており、チルノとの戦いでボロボロだったヒムは珍しく振り回されることになった。


どっとはらい



おまけ


「ぶろーむ」

「シャンハーイ」
「ホラーイ」

「ぶろーむ?」

「シャンハイ!」
「ホーラーイ」


「…なあアリス、あいつら一体なにを話してんだ?」
「さあ? でも楽しそうだからいいんじゃないの? ところで束さん、この技術のこの部分なんだけど…」
「ん~? おー! なるほど! それは新しいアプローチだねー!」
「でしょう? それでこのアイディアなんだけど…ちょっと魔理沙、聞いてるの?」
「あー、天才二人の会話にゃついていけないぜ」

『どの口が言うか』

「え? え? わたしなんか悪いこと言ったか?」
「…ねえ、コイツいっぺんジェイル博士に脳みそ見てもらったほうがいいんじゃないかしら」
「奇遇だね~私もマリマリはウェストっちに解剖でもしてもらったほうがいいと思ってたんだ~」

「命の危険が100連発な感じがするのですが!?」


「…ぶろーむ?」
「シャンハーイ…」
「ホライ(クスッ)」

**

親衛騎団、2発目。



[26812] 【妄想爆発ネタ】ふ ぇ い と に っ き
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/08/08 00:02
○がつ×にち はれ

・にぃとねぇとあそんだ。ざーふぃにのっかってしまをぐるぐるした。はやかった。にぃのママにおやつもらった。おいしかった。

「ざーふぃ、もっかい! もっかい!」
「…フェイト嬢、これでもう何回目だ?」
「もっかい!」
「…ごめんザフィーラ、13回目お願い」
「まあ、かまわんが…」
「ん、あたしらはおやつ用意しとくから」

○がつ×にち はれ

・ありしゃーとちるのとおままごとした。ひむがきてちるのとけんかした。ふれいざーどがふたりをつれてった。もどってきたらけんかしなくなった。ふれいざーどのママにおかしもらった。おいしかった。

「ちょっと! もっとまじめにやんなさいよ!」
「うっせーよ! やってんだろうが!」
「ママもパパもけんかはめー、よ」
「でも」
「こいつが」
「めー、よ?」
『…は~い』
「ば、ばぶー…」
「ママー、ありしゃーがごはんって」
「ふふん、任せなさい! あたいったらままごとでもさいきょーね!」
「うう…なんであたしが赤ちゃん役なの…」
「よしよしねー」


○がつ×にち あめ

・はどらーおじさんがまたママのとこにきた。おなかいたいっていってた。おじさんはよくママのとこにくる。『ひるどら』によるとおじさんがパパかもしれないのできいてみた。あるびなすにおこられた。

「いいですか、ハドラー様はそんなことにうつつを抜かしてはいられないのです。それにお嫁さんにするなら私を…」
「? あるびなすがふぇいとのママなのー?」
「なぜそうなるんです!?」
「ママほっぽらかしちゃめー! めー!」
「だからそうではなくて…プレシアさん! 笑ってないで助けてください! ビデオ撮ってないで!」
「いい記録になるわ~」
「アルビナス…俺の苦労性なんぞ受け継がんでよかったのに…ううっ…」


○がつ×にち くもり

・にぃとねぇとまほうのべんきょうした。にぃはおっきなかみなりをだせる。すごい。ねぇはおっきいかなづちがもてる。すごい。ふぇいとはちっちゃいかみなりしかでない。しょぼん。ふぇいとはおっきいものがもてない。しょぼん。でもにぃとねぇはすごくはやくうごけるってほめてくれた。やったー。

「でぃーにぃたーん! びーねぇたーん! ふぇいとすごい? すごいー!?」
「わあああああああっ!? 危ないからよそ見しないで!」
「誰だー! フェイトにソニックムーブなんて教えたやつはー!!」
「…(こそこそ)」
『シグナーム!! お前かーーーっ!!!』
「も、申し訳ありませぇ~~~~ん!!」
『お前なんてロン・ベルクさんに振られちまえ! このダメナム!!』
「ダダダ、ダメナムですとーーーーっ!?」


○がつ×にち あめ

・なずーりんがおおかみをみつけてきた。けがしてたのでりかんとのみんなやざーふぃがおせわしてる。かわいかった。えさをあげたらゆびをぺろぺろなめてきた。すごくかわいかった。だっこしたらくぅーんってないた。ものすごくかわいかった。ママにおねだりしたらかってもいいっていってくれた。すごくうれしかった。
なまえをつけてあげた。『あるふ』ってよんであげたらわんってへんじした。なかよくしよーね『あるふ』。

「わんっ、わんっ!」
「あはは、くすぐったーい」
「いやいや、フェイトの嬢ちゃんとも相性がいいようで、一安心ですねザフィーラ兄貴」
「ああ、しかしアルフの額の宝石…俺と同じ種族の生き残りのようだな」
「そいつを狙って乱獲されたんでしたっけ? 世知辛ぇ話でさぁね…」
「まあ、そういった種族を守るのが俺たち百獣魔団の役目の一つでもありまさぁね。手伝ってもらってる兄貴には感謝感謝でさぁ」
「気にするな。俺の好きなようにしているだけだからな」
「ザフィーラさーん、団長が直々にお礼をと」
「ああ、わざわざすまんな、ナズーリン」


○がつ×にち くもり

・にぃとねぇとおかいものにきた。みどりやっておみせでけーきをたべた。すっごくおいしかった。こんどママやりにすやありしゃーやあるふといっしょにたべにこよう。それからともだちがふえた。なのはとはやてといっしょにあそんだ。たのしかった。

「ふえー、はやてちゃんもふぇいとちゃんもまほう使えていいなー」
「にぃとねぇがおしえてくれるよ?」
「そやそや、なのはちゃんもいっしょにべんきょーしよ。な、ええやろ?」
「うん、俺は構わないよ」
「あたしもいいぜ。二人が三人になったって一緒だ」
「わーい! やったー!」
「よかったねー」
「がんばろなー」


○がつ×にち はれ

・にぃとねぇがらぶらぶだった。ふぇいとはにぃとねぇがだいすき。だかららぶらぶだととってもうれしい。ママにきいたらにぃはねぇのおよめさんになるんだって。でもほんとうははんたいなんだって。よくわかんない。にぃとねぇに『ちゅーしないの?』ってきいたらふたりともまっかになった。おもしろい。

「ね、どうしてちゅーしないの?」
「そそそそ、そんなことできるか!!」
「えっとね、フェイト、そういうのはもっと大人にならないとダメだと思うんだけど…」
「じゃあおとなになったらちゅーするんだ!」
「そ、そうなのかディーノ!?」
「え、えと、その…」
「あ、あたしは、その…いいけど…」
「えと、その、俺も…」
「ちゅー、するの?」
「ししししし、しないよ!?」
「そそそそ、そうだな!?」
「むー、ざんねん」


○がつ×にち はれ

・にぃとねぇとなのはとはやてとあそびにいった。でぱーとのおくじょうでぱんだにのった。くろこおじさんのほうがおっきかった。おもちゃうりばでぷりきゅあのがちゃがちゃをした。きゅあぶろっさむがでてうれしかった。かえりはみんなでてをつないでかえった。はやてのママとパパがゆうごはんをつくってくれた。とってもおいしかった。

「でぃーのおにいちゃん、おててつなごー」
「めー」
「ふえ?」
「フェイト?」
「にぃはねぇとおててつなぐのー! なのははめー!」
「むー! なにそれー!」
「めーなのー!」
「あはは、わたしでがまんしてなー、なのはちゃん」
「むー…」
「うー…」
「ほらほら、喧嘩しちゃダメだよ」
「ほな、わたし、ふぇいとちゃん、なのはちゃん、ディーノ兄、ヴィータ姉の順番なー」
『はーい』



「え、と…」
「…行こっか、ヴィータ姉」
「…うん」

ヴィータはディーノから差し出された手を取る。

「…へへっ」
「どうしたの、ヴィータ姉」
「なんでもなーい!」
「なんだよそれー」

にやける顔を隠しながら繋いだ手をブンブン振り回す。
それに引っ張られながら、ディーノもまた嬉しそうに微笑んでいた。

「…にへー」
「うれしそうやなー、ふぇいとちゃん」
「うんっ!」
「んー…おにいちゃんもうれしそうだからいいや!」
「にへへー」



どっとはらい


**

またしてもシグナムがダメナムになってしまった。
イジリやすいなあ、シグナム(笑)
ファンの方ごめんなさい。



[26812] デルムリン島の平和な一日
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/08/29 07:35
・ソアラさんの朝

「クルックー」
「クアー」
「うけけめけ」
「バシルーラ!」
「ベホマラ~」

デルムリン島の朝はさまざまな鳥形モンスターの鳴き声から始まる。

「う~ん…っと、今日もいいお天気ね」

昇り始めた朝日を見ながら大きく伸びをする竜の騎士一家のお母さん、ソアラ。
今日もいい一日になりそうな予感がしていた。

「ふっ、ふっ、ふっ…おおソアラ殿、おはようございます」
「おはようございます、ザフィーラさん。今日もジョギングですか?」

ランニング姿で大きな袋を抱え、ザフィーラが帰ってきた。

「ええ、今日は軽く島を3周ほど。こちらは畑で食べごろになっていた野菜です。朝食にお使いください」
「いつもありがとうございます」
「いえ、少しでもお役に立てれば。…ところで、シグナムはまだ部屋ですか?」
「そうですね、まだ起きてきてないようですけど…」
「あいつめ…いつまでしょげているつもりだ。では俺はシグナムを起こしてきますので」
「はい、お願いします」

そう言ってザフィーラは家の中に戻り…中から怒声と泣き声が聞こえてきた。

「シグナム! いつまで布団を被って閉じこもるつもりだ!!」
「ほっといてくれ~! ロン殿に失望された~! 私なんかずっと布団虫でいればいいんだ~~!! うわ~~~ん!!」
「いいから早く起きろ! 朝食に遅れるだろうが!」
「は~な~せ~! わ~~~ん!!」

ドッタンバッタン

「あらあら。恋する乙女は大変ねえ」



「~♪、~♪」

トントンと軽やかな包丁の音が台所に響く。
ソアラが鼻歌など歌いながら朝食の準備をしていると、ズリズリとスリッパを引きずる音が聞こえてきた。

「ふぅぁ~ぁ~…おふぁようごじゃいますぅ…」

寝ぼけまなこをこすりながら現れたのはシャマル。

「おはようシャマルさん。あっ、気をつけて…」
「ふぇ?」

ふらつく足取りのシャマルに呼びかけるが、時すでに遅く、

ゴインッッ!!

「はうううっ!? あう~、またおでこぶつけちゃいました…」

思い切り柱に激突する。
もはや毎朝の習慣になっていた。

「大丈夫? そろそろ柱にマットでも接着しようかしら…」
「はう…いえ、私が気をつければいいだけですので…、あ、朝食手伝います」
「そう? じゃあお味噌汁お願いするわ」
「はい! お任せください!」
「ふふ、お願いね。私はディーノたちを起こしてくるわ」



「くかー」
「むにゅむにゅ…」
「ぴぃ~…」

一塊になって布団に転がっているのはディーノ・ヴィータ・ゴメ。
ヴィータがディーノの頭を抱え、ディーノはヴィータの胸元に顔をうずめる形で抱きついている。ゴメは日によって違いがあるが、二人の頭のどちらかを寝床にしており、今日はディーノの頭の上で眠っている。

「あらあら、今日も仲良しさんね」

時折ヴィータの手がディーノの頭を撫でる。
赤子の時と同じようにヴィータの胸に抱かれるディーノの顔はとても安らいでいた。

「もうちょっと見ていたいけど…仕方ないわよね。ディーノ、ヴィータちゃん、ゴメちゃん、朝ですよ、起きて起きて」

子供たちを優しく揺さぶって起こす。
程なくして、眠そうな目をこすりながら子供たちは目を覚ました。

「ふぁ~…おはよう、母さん」
「むにゃ…おはようです、ママさん」
「…ぴぃ? ぴぃぃ」
「はい、おはよう。ごはんもうすぐ出来るから、顔を洗っていらっしゃい」
『は~い』



「ど、どうでしょう?」
「ふむ…ワシはいい感じだと思うがのう」
「本当ですか! それなら…あ、ソアラさん!」
「おおソアラどの、おはようございますじゃ」
「おはようございます、ブラスさん」

台所に戻ると、シャマルがブラスに味噌汁の味見をお願いしていた。どうやら高評価らしい。

「そうじゃ、今朝森の連中から卵をもらってきたんじゃが、なにかに使えますかのう?」
「まあ、でしたら新鮮なお野菜もありますので、卵で巻いてみましょうか」
「おいしそうですね! あ、そうだ、ソアラさんも味見お願いします!」
「ええ、では一口…うん、合格ですよ」
「や、やったー! これでもうシグナムやヴィータちゃんに残念シェフなんて言わせないわ!」

飛び上がって喜ぶシャマルだったが…

「あの、シャマルさん、お魚が…」
「ああっ、忘れてた! 火を止め…あちちちちち~~~~~っ!!」

…やっぱりどこか抜けていた。

「筋は悪くないんじゃがのう…」
「うっかりが直れば一人でお任せしてもいいんですけどねえ…」



「ソアラさん、このお皿は?」
「それは真ん中に置いてちょうだい、それから…」

ソアラとシャマルがテーブルに食器を並べ、朝食の準備をしていると

「おはよう。今朝も美味そうだな」

一家の大黒柱、バランが起きてきた。

「バランさん、おはようございますー」
「おはようアナタ。昨日はお仕事大変だったみたいだけど、大丈夫?」
「ああ、最近超竜軍団の有望な新人が増えてな…教導も一苦労というわけだ。やりがいはあるがな」

バランはバーンへの恩義もあるため、魔王軍の武術顧問として雇われており、特に超竜軍団の教導を専門に行っている。

「竜の騎士に鍛えられるみんなも大変ね」
「リュミス殿を相手にするよりはマシだと皆言っているよ」
「うわー、想像したくありませんー」

シャマルにはバーンを上回る力で団員を追い回すリュミスが容易に想像された。

「そうそう、今日のお味噌汁はシャマルさんがちょっと頑張ったのよ、楽しみにしてて」
「ふむ、シャマルか…不安が残るが、ソアラが言うなら大丈夫だろう」
「バランさんひどいですよー!」
「ははは、まあ、期待しておこう」



『いただきまーす!!』

食卓を囲んで一家そろっての朝食をとる。
所々にスライムや一角ウサギなどのモンスターが紛れ込んでいるのも恒例だったりする。

「バランどの、食前酒ですが、一杯いかがかのう?」
「うむ、いただこう」
「ギガうまー! やっぱママさんのごはんはサイコー!」
「うふふ、ありがとう。ほら、ごはんつぶついてるわよ」
「ん、ありがとです」
「ヴィータ姉、この卵焼きもおいしいよ。はい、あーん」
「どれどれ? あー…、うん、うまい!」
「む、これは…今朝俺が持ってきた野菜ですな」
「ええ、お口に合うかしら?」
「すばらしいの一言です」

にぎやかな食事風景だった。

「ズズ…おや? 味噌汁のだしを変えましたか? ちょっと変わった味ですが、おいしいですね」
「あ、それは私が作ったの」
「な、なにぃ!? シャマルがか!?」

なにげなく飲んだ味噌汁の真実にシグナムが驚愕する。

「おー、すげえじゃんシャマル」
「ふふーん、これでもう残念シェフなんて言わせないわよ!」
「た、たしかにこれは…」
「シグナムも料理くらい覚えたら? ロンさんに剣だけでアピールってのは、ちょっとねえ~」
「なっ!? よ、よけいなお世話だ! 第一、騎士たる我々がそんなもの覚えなくても…!」

真っ赤になって反論するシグナムだったが、

「あたしもクッキーくらいなら焼けるぞ?」
「俺も男料理だができんわけではないが?」
「…だ、そうだけど?」
「orz」

守護騎士全員からの反撃に真っ青になって落ち込んだ。

「…ソアラどの、よろしければ料理を教えてもらっていいだろうか」
「ええ、いつでもかまわないわよ」

言いづらそうに尋ねるシグナムに、ソアラはニコニコ笑顔でそう答えた。

**

・ふぇいと 襲来

「でぃーにぃたーん! びーねぇたーん! ふぇいときたよー! あーそーぼー!」
「わんっ、わんっ!」

ディーノとヴィータを兄・姉と慕うフェイトは3日に2回のペースでデルムリン島にやってくる。
背中のリュックにおもちゃやゲームを詰め込み、傍らにアルフを連れて準備万端の体勢である。

「フェイトだ」
「元気いっぱいだなー」

最近振り回されぎみなほど元気いっぱいな妹分の姿に苦笑するディーノとヴィータだった。



少し大きめの狼の姿になったザフィーラに3人は乗って森を進む。
その周りをアルフがじゃれつくように駆け回っている。

「わんわんっ!」
「あまりはしゃいでこけるな…」
「わうっ!?」
「言ったそばからこれか、まったく」
「わうっ!」

転んで泥だらけになったアルフをザフィーラは器用に口でくわえて持ち上げて立たせると、前足で泥を払ってやる。

「あはは、あるふたのしそー」
「…フェイトそっくりだよな。こう、走り回ってる感じが」
「だよね…」



「うみだー!」

森を抜けて、デルムリン島の砂浜にディーノたちはやってきた。
日差しも程よく強めで、絶好の海水浴日和である。

「およぐー!」

早速突撃しようとするフェイトの首元をヴィータがひっ捕まえる。

「こーら、ちゃんと準備運動してからだ」
「水着にも着替えないとね」
「わうわうっ!」
「お前もだ、アルフ」
「わう?」



「きがえたー!」
「あちち…やっぱ砂浜は熱いな」

着替えと準備運動を終えた一同が砂浜に並ぶ。
ちなみにフェイトはフリルのスカートの付いた子供用ワンピースの水着。ヴィータはセパレートタイプのスポーティな水着。
ディーノとザフィーラはトランクスタイプの水着だった。
フェイトは浮き輪やシュノーケルまで装着したフル装備である。

「さて、一応用心のためにモンスターたちが見張っているが、だからといって遠くまで行こうとしないように」
『はーい』
「…って、あたしもかよ」
「ヴィータも身体は子供なんだから無茶できんことに変わりはない」
「わーったよ」

見張り役の大王イカやしびれくらげ、マーマンなどを従え、引率の先生状態なザフィーラだった。

「ママがよういしてくれたのー、さめー」

フェイトがリュックから取り出したの大きなサメ型のボート。ただし空気は入っていない。

「おっきいな…ポンプは?」
「? ないよ?」
「人力で膨らませるのかよ…」
「俺がやるよ、ヴィータ姉はフェイトと先に泳いでて」
「ん。じゃあ頼んだぜ」
「びーねぇ! いこいこ!」
「わんわんっ!」
「いってらっしゃーい」

フェイトに引っ張られて海に向かうヴィータを見送る。

「主ディーノ、大丈夫ですか? なんなら俺が…」
「へいきへいき、すぅ~…ぷぅぅ~~~っ!!」
「おお、なかなかの肺活量」
「でしょ?」



・迷子?

「わふわふわふっ」
「あはは、あるふ、いぬかきうまーい!」
「フェイトーあんまり遠くに行くなよー」
「はーい」

フェイトとアルフがヴィータたちから少しはなれて泳いでいると、

「わふ?」
「あるふ、どーしたのー?」
「わんわんっ!」
「ふえー? どこいくのー?」

アルフが岩場に向かって泳ぎ始めたので、フェイトもそれを追いかけることになった。



砂浜から離れた岩場。
そこで一人の少女が膝を抱えてうずくまっていた。

「うう…ここ、いったいどこなのよ…そこら中モンスターだらけだし…帰りたいよ…父様…母様…」

少女の目に涙がにじんでくる。感情の堰がついに決壊しようとした、その時、

「わんわんっ!」
「ひっ!? …モ、モンスター!?」
「だれかいるのー?」
「え? お、女の子…と、犬?」

物陰からフェイトとアルフがひょっこり顔を出した。

「ふえ? だあれ?」
「わ、私はレオ…い、いえ、レナよ」
「ふぇいとだよー。このこはあるふー」
「わんわんっ」
「あ、あの、ここってどこなの?」
「でるむりんとうだよ?」
「デ、デルムリン島…そんな…よりによってあの魔物の島だなんて…」
「むー! みんなこわくないよー!」
「え…でも…」
「『しょーこ』みせたげる! こっちこっち!」
「わんっ!」
「え? ちょ、ちょっと!?」

混乱する『レナ』の手を取ってフェイトはズンスン歩き出し、波打ち際に連れてくる。

「いかくーん! くらげくーん!」

フェイトの掛け声に反応してザバァと海の中から巨大な大王イカと無数のしびれくらげが現れる。
彼らはニョロニョロとその触腕を伸ばすと、束ねてじゅうたんのようにし、フェイトをその上に乗せる。

「ほら、こわくないよ?」
「そ、そうみたいね…あははは…」

その光景にレナはすっかり腰を抜かしてしまった。



「れなねーたん、まいごなんだってー」

そんなわけで、フェイトがレナを連れてやってきた。

「だから迷子じゃないってば!」
「んじゃなんであんなとこにいたんだよ?」
「…ルーラの呪文に失敗したのよ」
「それを迷子って言うんじゃないかなぁ」

ディーノとヴィータのつっこみにレナは何もいえなくなる。

「まあ、それはともかく、元の場所に帰らないと家族も心配するだろう」
「おうち、どこなのー?」
「…パプニカ」

デルムリン島とパプニカ王国のあるホルキア大陸はかなり離れており、それを知っているらしいレナは愕然とする。しかし、

「パプニカかぁ、それならトベルーラで行って帰ってくるぐらいできるかな」
「いや、帰りはルーラが使えるし、すぐだろ。ついでに観光していこうぜ」
「おしろ、みたいー!」
「夕食までには帰らないとな」
「えっ!? そんな反応なの!?」

いたって気楽そうな面々にレナはずっこけた。



「それじゃパプニカへレッツゴー!」
『おー!』
「ちょ…なんでこんな子供たちが平気でトベルーラ使ってるのー!?」
「案内をお願いしたい、乗るといい」
「えええっ!? い、犬が空を飛んでる!?」
「狼だ」
「しかもしゃべったー!? あの、さっきの男の人よね!? どうなってるのこれー!?」

大混乱であった。


どっとはらい


**


某キャラ、フライング登場。
次回に続きます。



[26812] デルムリン島の平和な一日 その2
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/08/20 19:23
・パプニカ王国にて

「とうちゃ~く」
「すごい…ホントにパプニカまで帰ってきちゃった…」

パプニカ城下町郊外の草原に降り立つディーノ一行。
10数分の空の旅を終えて、レナは驚きのあまり放心状態だった。

「それじゃあレナの家まで送っていくよ」
「どこにあるんだ?」

ディーノとヴィータからそう言われたレナはギクリという擬音がピッタリと言わんばかりに身体を跳ねさせる。

「え? えっと…そ、その前に送ってくれたお礼をしたいわ! 街を案内してあげたいんだけど?」
「ん~、レナがそれでいいなら」
「かんこー! かんこー!」
「わんっ!」

冷や汗を流しながら慌てた様子でそう言うと、特に反対意見もなかったディーノとフェイト、そしてアルフが了承した。

「それじゃあこっちよ、ついてきて!」
「あ、まってー」
「わんわんっ!」
「急がなくてもいいのに…」

早足で街に向かって進みだすレナと、それを追うディーノたち。
それに追随しながら、ヴィータはザフィーラにこっそり話しかける。

「…なあザフィーラ、どう思う?」
「なにか隠し事をしているのは確かだな。まあ、どうせ無断で呪文を使ったのを怒られるのを恐れて…というところだろう」
「ま、いいけどな。悪いやつじゃなさそうだし」



パプニカ王国の城下町は港に隣接しており、海鳥の鳴き声や潮の音が止む事は無い。
石畳で整地された町並みは整然と整っており、一種の芸術とも言えた。
通常の店舗以外にも所々に露店や屋台が並び、活気に溢れている。

「へ~、きれいな町並みだな」
「そうでしょう? パプニカは風光明媚なことで有名で、観光に訪れる人も多いのよ」
「でぃーにぃ! おかしうってる!」
「本当だ、おいしそうだな。ザフィーラ、お金持ってる?」
「ええ、大丈夫です。では俺が…」
「ちょーっと待った! ここは私がおごらせてもらうわ! これもお礼の一つよ!」
「いいの?」
「ええ、なんでも買って頂戴!」
「やったー!」

ドンと胸を叩いて宣言するレナ。
というわけで、さっそく近場の屋台に突撃することとなった。

「いらっしゃい…おやレオ、じゃなくてレナちゃんじゃないか。またバダックさんに内緒で抜け出してきたのかい?」
「しーっ! よけいなこと言わないでよおじさん!」
「あははは、この街でレナちゃんのことを知らないやつなんていないだろうに…おや、その子たちを見るのは初めてだね、友達かい?」
「はい! 俺ディーノっていいます!」
「あたしはヴィータ!」
「ふぇいとだよ! このこはあるふ!」
「わんっ!」
「ザフィーラです、よろしく」
「ははは、そうかい。レナちゃんに振り回されて大変だろう? サービスしとくよ」
「おじさん!」
「へ~、レナってそうなんだ」
「はははは!」

レナの日常を垣間見た気がして、みんながそろって笑う。
その間レナは真っ赤になっていた。



「おいひーねー」
「わふっ」
「でしょう? あそこの屋台はおいしいから私もよく行くの」
「ふむ、今度ソアラ殿に頼んで作ってもらおうか」
「ディーノ、鼻にクリーム付いてるぞ…よし取れた」
「ありがと、ヴィータ姉」

クレープに似たお菓子を皆でパクつきながら歩いていると、

「あ~~~~~~~~っ!! 見つけましたぞ姫!!」
「げっ! バダック…!」

大通りの向こうから初老の騎士がすさまじい形相で走りよってきた。

「姫? レナが?」
「あー、そういうことか…」
「なるほど、どうりで家を案内しようとしなかったわけだ」
「おひめさまー?」

バダックと呼ばれた騎士の発言に、みなの視線がレナに集中する。

「あ、えっと…」

気まずくなってレナは口ごもってしまうが…

「おてんばひめー! 『てんくうでんせつ』の『ありーな』みたいー!」
「へ?」

フェイトの発言でキョトンとした顔になる。
ちなみに『天空伝説』は以前リュカが島に来た時に置いていったもので、要するに『ドラゴンクエストⅣ』の物語である。

「本当だ、あははは!」
「言えてる! あはははははは!」
「ぷ…ま、まあたしかに」
「ちょ…なによそれ! なんで笑うのよー!!」

一人だけ何のことか解らず、笑い続ける面々に憤慨するレナ。
そのまま食って掛かろうとするが…

「ひ~~~めぇ~~~~~!! もう逃がしませんぞ~~~!」
「ひえええええええっ!!」

すぐ背後に迫っていたバダックの怒声によって腰を抜かしてへたり込んでしまった。



「いやいや、うちの姫がご迷惑おかけしまして…ワシはお目付け役のバダックと申す。ザフィーラどのと申しましたか? レオナ姫を連れてきてくれて感謝いたしますぞ」

バダックは一同の保護者とおぼしきザフィーラに向かって何度も頭を下げる。
その後ろではレナこと『レオナ姫』がバダックによって作られた大きなたんこぶをさすっている。
しかも涙はアメリカンクラッカーのようにカッチンカッチンぶつかっていた。

「いえ、俺は連れてきただけです。見つけてくれたのはこの子…フェイトです」
「れなねーたん、まいご! まいご!」
「まいごじゃないもん…」

はしゃぐフェイトに力なくツッコミを入れるレオナ。
全く説得力がなかった。

「よしよし、いい子ですのう…まったく、こんな小さい子に世話になるとは…情けないと思わんのですか」
「うう…だってルーラが暴発してあんなことになるなんて思ってなかったし…」
「なっ!? ルーラが暴発ですと! 勝手に書庫に入って魔法の契約をしてしまったのですかぁ!?」
「あ、ヤバ」
「姫~~~~~~~~~っ!!!!!!!!!!!!!」
「ゴ、ゴメンなさ~~~~~~い!!!」

その日レオナに二度目のカミナリが落ちた。



「おしろだー!」
「俺、本物のお城とか見るの初めてだよ。鬼岩城とはやっぱ違うなー」
「あー、ありゃ城って言うかもう、宇宙戦艦だからな。マクロス級の」

荘厳だが落ち着いた佇まいのパプニカ城内を歩くディーノ一行とレオナ主従。
レオナの頭には二個目のたんこぶが痛々しげに乗っかっている。

「しかし、よかったのですかバダック殿? 王城に連れてきてもらうなんて…子供たちの経験にはいいですが」
「なーに、パプニカ王は気さくなお方でな。城もよほどのことが無ければ開放しておるんじゃ。街の子供たちも姫を訪ねてよく遊びに来ておるよ」

カッカッカと笑うバダック。

「ま、おかげで姫を捕まえるのも一苦労ですがのう」
「ぷう…そうだバダック、父様と母様は? 心配かけてしまったし、謝りたいんだけど…」
「ようやく姫もそこまで成長しましたか…今はアルキード王と会談なされておられます。もうすぐ終わると思いますぞ」




パプニカ城の会議室。
そこではレオナの父たるパプニカ王と、海を隔てた隣国であるアルキード王国の王が沈痛な面持ちで会談を行っていた。
傍らではパプニカ王妃が不安げな顔で夫に寄り添っている。

「しかしアルキード王、それでは…」
「…もう決めたことなのですよ、ワシには国を託せる後継者がいない。かといって無能な家臣どもに国を慰み者にされるくらいならば、信頼できる者に預けたい」

そう言って一息つくと、アルキード王はパプニカ王を正面から見据え、告げた。

「パプニカ王、貴方にお頼みしたいのです。わが国の未来を」
「…王権を譲渡し、国を併合する…並大抵のことではありませんぞ?」
「民のために、致し方ないのですよ。ワシも年です、ワシが死ねば後継者のいないアルキードは乱れる。他国にも被害は及ぶであろうし、なにより苦しむのは国民だ」
「ならばせめて、近隣のベンガーナやテランでは駄目なのですか?」
「無理でしょう。テランは最近復興著しいとはいえ元より小国、アルキードを統治しきるほどの人材は質も量もそろっていない。対してベンガーナは国力が強すぎ、我がアルキードを併合したならば行きつく先は…」
「…増長による周囲の国々への侵略、ですか」
「ベンガーナ王はそこまで愚かではなくとも、家臣たちまでそうではないだろうことは…このワシが身をもって知っている」

苦々しい顔をして唇を噛み締めるアルキード王。
その顔を見て、パプニカ王はつい漏らしてしまう。

「…ソアラ王女がいれば、こんなことには」

その、一言を。

「アナタ! それは!」
「も、申し訳ない…ソアラ殿とバラン殿のことは聞き及んでいたのですが…」

何よりもアルキード王の心を抉る言葉を発してしまったことを詫びるパプニカ王。
だが、アルキード王はそれをなんら咎めるでもなく穏やかな…そして悲しげな顔で許した。

「いえ、過ぎたことです…なにより、二人を追放してしまったのはワシだ。全てはバラン殿を疑ったワシの不徳の至り…己の業は、受け止めねばなりません」

魔王ハドラーの脅威が去って間もなくだった当時、竜の騎士たるバランの力は家臣たちに恐れられ…またソアラと恋仲になることで彼が王の座に近かったことも災いした。
嫉妬と恐怖に支配された家臣たちはバランを魔王の配下であると王をそそのかし…そして追放させることに成功する。
次期王位継承者である、ソアラの出奔を全く考慮に入れない形で。

「しかしそれは」
「例え家臣にそそのかされてのことだとしても、その甘言を信じ、実行したことに変わりはない。ゆえに、です。ワシが最後まで王としての役目をまっとうするためにも…此度の件、聞き入れてくださらぬか?」

再びパプニカ王を見据え。そう問いかける。
しばし沈黙の時間があり…やがて、パプニカ王はふう、とため息をついた後、アルキード王の問いに答えた。

「…アルキード王の決心、確かに承りました…ですが、そう性急に事を進めることもないでしょう。もちろん、いざという時は援助させてもらいますので、もう少し時を置きませんか?」
「そう、ですな…申し訳ない、最近、どうにも不安のみが募るもので…」

そうして、会談は終了となった。



「父様! 母様!」
「レオナ…!」
「まあ。怪我もなく、よく無事で…!」

会談を終えたパプニカ王と王妃に向かってレオナが駆け寄る。
その目には、うっすらと涙がにじんでいた。

「レオナ、また無茶をしたらしいね」
「あまり心配させないで、レオナ」
「ごめんなさい…」

すがりつくレオナを優しく抱きとめる国王夫妻。
そんな光景を傍らのアルキード王は微笑ましく…そして、寂しげに見守っていた。

「元気なことだ。ふふ、将来が楽しみですなパプニカ王?」
「アルキード王、からかわないでくださいよ」
「あっ…す、すいません。私、お客様の前で失礼を…」
「よいよい。レオナ王女、親に甘えるのは子供の特権だ。遠慮などしてはいかんよ」

レオナの頭を優しく撫でるアルキード王。
撫でられるレオナは照れくさそうに笑っている。

「おうさまいっぱいー」
「そうだね」
「へえ、もっと偉そうな感じかと思ったけど、けっこう普通だな」
「れなねーたん、なきむしー、あまえんぼうだー」
「ちょ、ちょっとフェイト! そりゃないでしょ!」

フェイトの無邪気な発言にレオナは慌てて訂正を求める。
その様子に国王夫妻も思わず噴き出した。

「君たちがレオナを連れてきてくれたんだってね? ありがとう」
「簡単だけど料理を用意したわ、どうぞ楽しんでいってちょうだいね」
『はーい!』
「父様! 母様! 私みんなを案内してきますね! さ、こっちよ!」
「あ、まってー」
「わんわんっ!」

一同を連れて行くレオナ。

「行こうぜディーノ」
「うん、ヴィータ姉」

その中にいたディーノの姿を見て。

「…!! あの子は、まさか…!!」

アルキード王の瞳は驚愕に見開かれた。



・王と、少年と、少女と


「これどうやって食うんだ?」
「キャビアだな。クラッカーにでも乗せるといい」
「しょっぱー! なんだこりゃ!」
「高級って聞いてたけど…あんまりおいしくないなあ」
「なによ、貧乏舌ねえ」
「でぃーにぃ、びーねぇ、おにくあげるー」
「あはは、ありがとフェイト」
「ん、こっちのがうまいや」

ワイワイ騒ぎながら軽食を食べているディーノたち。とそこへ、

「すまん、少しいいかね?」

アルキード王が声をかけてきた。

「あ、おじーちゃんのほうのおうさまだー」
「こらフェイト、失礼だよ」
「あう、ごめんなさーい」
「いや、気にしなくてもよい…君、名前を聞いてもいいかね?」
「俺ですか? ディーノです」

『ディーノ』…それはアルキードの古い言葉で『強き竜』という意味。
自分の子が男の子だった時つけようと考えていたと、娘に語った名前だった。

「ディーノ、か…よい名前だ。君の、お母さんの名前は?」
「ソアラっていいます」

(やはり、そうだった。ではこの子は…!)

ディーノの漆黒の瞳と、その瞳が写す、強く優しい輝きを見つめるアルキード王。
自身の妻から娘へと受け継がれ、そして眼前の孫へと受け継がれたそれに、熱くなる目頭を、潤む瞳を必死で留まらせる。

「そうか…ではやはり、お父さんの名前はバランかい?」
「はい、そうです…あの、王様は母さんのことを知ってるんですか?」
「あ、ああ…彼女は以前わが国にいた事があってね…すごく、人気者だったよ…みな、彼女を射止めた君のお父さんに嫉妬したものだ」

少し口ごもりながらも、ディーノの問いに答える。
娘であることを漏らさぬよう、細心の注意を払いながら。

「にぃのママのはなし、もっとききたーい!」
「俺も、母さんの子供の頃のこと知りたいです!」
「うむ。彼女はよく森で動物たちを相手に歌っていてな…時にはモンスターまでもが聞きほれて彼女に寄り添っていた…」
「リュカさんのママみてーだ」
「だねー」
「ほかにも…」

そうして、娘の子供時代を孫に語り聞かせるアルキード王。
その顔には、久方ぶりの安らいだ微笑みが浮かんでいた。



「…ふう。いつ以来だろうか、あんなに楽しい時間は」

子供たちから離れ、先ほどまでの楽しい時間を思い返すアルキード王。
と、そこへ、

「…なあ、王様」
「おや? 君は、ディーノと一緒にいた…」
「王様、ディーノの爺ちゃんなんだろ? なんで名乗ってやらないんだよ?」

一人アルキード王の下を訪れたヴィータにより、核心を突く問いが投げかけられた。

「…知っているのか、君は」
「ママさんが言ってた…元お姫様だったけど、親父さんと結婚してから島に来たって。子供のころの服も着せてもらったことがある。すっごくきれいなドレスだった…で、王様のバッジと同じ紋章のアクセサリーがくっついてた」

己の胸に光るバッジに手をやる。
それはアルキード王家の紋章…天を舞う竜を模した紋章だった。

「そうか…それは妻が、死んだあの子の母が手ずから織ったものだよ…そうか。あれを今でも大切にしてくれているのか…それを、君が…」

妻が織った服が、娘の手を経て、孫と共にあるであろう少女の下へ渡る。
不思議な運命の悪戯を感じずにはいられなかった。

「なあ、なんでだよ? きっとディーノも喜ぶのに」
「…出来んよ。ワシは…家臣の甘言に惑わされ、バランを追放した男だ。それどころか、一時は彼を殺そうと部下を世界中に派遣すらした…ワシは、あの子から父親を奪おうとしたのだ」
「だけど、今は違うんだろ!? だったら!」
「ワシは『王』だ。国のため、民のため、勝手なことは出来ん。一度それをやってしまった以上、今更彼らを呼び戻すことも、会いに行くことも、もはや許されんのだ…」

ギリッと音を立てて歯を食いしばるアルキード王。
その顔は、憤怒と、後悔と、悲しみと…さまざまなものに彩られて、どう表現していいのか解らない表情になっていた。

「王様…」
「君の、名は?」

何とか平静を取り戻し、ヴィータにその名を問う。

「ヴィータ…ディーノを守る、夜天の守護騎士ヴィータだ」
「守護騎士、か…ふふ、なにやら仰々しいのに、君がそういうと嘘とも思えん…」

寂しげな微笑を浮かべると、アルキード王はヴィータに背を向け、歩き出す。

「あの子を、ディーノをよろしく頼む。そしてソアラとバランに伝えてくれ、信じてやれなくて、すまなかったと…」



パプニカ城門の前、帰路に着くディーノたちを見送るべくパプニカ王一家とバダック、そしてアルキード王が見送りに並んでいた。

「じゃあ、また遊びに来るからね」
「ええ! それに、こっちからも遊びに行くから待ってなさいよ!」
「あはは、またバダックさんに心配かけないようにね」
「れなねーたん、またまいごになったらめー、よ?」
「ならないってば!」

アハハハと笑いがおきる。

「そうだ、アルキードの王様!」
「う、む? 何だね?」

何かに気付いたようにディーノがアルキード王に駆け寄る。

「今度は王様のところにも遊びに行くよ! 今度は父さんと母さんを連れて!」

輝かんばかりの笑顔でそう告げたディーノ。
アルキード王には、そこに娘たるソアラの笑顔が重なって見えた。

「そう、か…待って、おるよ。ずっと…ずっと、な」

震える声で、そう返答を返す。
こぼれそうになる涙を抑えながらでは、それが精一杯だった。

「では、帰りましょうか」
「またね!」
「ディーノ、頼むぜ」
「うん! じゃあみんな、またね! 《ルーラ(転移呪文)》!」

ルーラを使って飛び去っていくディーノたち。
その光の帯を眺めながら、アルキード王は一人ごちる。

「ソアラ…お前は今、幸せなのだな…ディーノを見ればわかる。あのようにまっすぐに育って…」
「…アルキード王?」
「ど、どうされたんですか!?」
「アルキード王…もしや、先ほどの子が…?」

パプニカ王の視線の先、アルキード王は場所をはばかることもなく滂沱の涙を流し…それでも、その顔はこの上もない喜びに包まれていた。

「パプニカ王、ワシは…もう少し頑張ってみようと思う。遠き地で暮らす、ソアラの幸せのために」
「…お手伝いしますよ、アルキード王!」

アルキード王の言葉に、パプニカ王は力強く答えた。





『ただいまー!』

元気よく扉を開けて帰ってきたディーノたちをソアラは温かな笑顔で迎える。

「おかえりなさい。今日も楽しかった?」
「うん! みんなと一緒にパプニカまで行ったんだ!」
「おひめさまとともだちになったのー!」
「それからね…!」

先を争うように話そうとするディーノとフェイト。

そんな子供たちの話を、ソアラはずっと楽しそうに微笑みながら聞いていた。



・お風呂パニック


「そろそろ夕ご飯だから、その前にお風呂入っちゃいなさい」
「はーい」
「でぃーにぃ! せなかながしてあげるー!」
「ありがとフェイト、じゃあ先に入ってるね」

カポーン ザバー

「ふいー」

ディーノは風呂桶から湯を汲み、頭から被る。
それからフェイトでも扱いやすいように、スポンジとボトル式ボディソープも準備する。もちろんこれらは日本で購入したものである。
ちなみに風呂の湯沸しはメラを一回唱えれば風呂が沸くまで持続される魔力式湯沸し装置搭載型(魔王軍技術班開発)だったりする。

「フェイトー、まだかーい?」
「いまはいるー!」
「バ、バカ! やめろって…!」
「?」

脱衣所のフェイトに声をかけるが、なにやらドタバタと騒がしい。
ヴィータの声が聞こえたような気がしたディーノだったが、気のせいと思ったその時…

「でぃーにぃ! おまたせー!」
「なあああっ! ドア開けるなああああっ!!」
「わああああっ! ヴィ、ヴィータ姉!?」
「み、見るなああああっ!」

勢いよくドアを開けて、フェイトがヴィータを無理やり引っ張りこんできた。
ちなみに、
フェイト:すっぽんぽん
ヴィータ:タオル(小)で前を隠してるだけ
な状態である。
もちろんディーノが反応してるのは真っ赤になって恥ずかしがっているヴィータである。断じてつるぺったんどころかつんつるてんのフェイトにではない。

「びーねぇもいっしょにはいるの!」
「だから引っ張るな! 危ない…わっ!」
「!? ヴィータ姉!」

フェイトに手を引っ張られて転びそうになるヴィータ。それに気付いたディーノは反射的に駆け寄り…

プニ

「あ…」
「う…」

結果、全身でヴィータを抱きとめる形になった。

(ヴィータ姉髪ほどいたら綺麗だないいにおいうわ肌すべすべで気持ちいいなって何を俺は考えて)
(ディーノの筋肉けっこう硬いなやっぱ瞳が綺麗だ意外と男らしくなったかもってあたしさっきから何を)

一糸纏わぬ姿で抱き合う二人は脳内を駆け巡る外部情報に顔から煙が出るほどのオーバーヒートを起こす。
頭がクラクラして心臓がバクバク鳴って、どうにかなりそうになるほど混乱の極致にあったが…

「にぃもねぇもまっかっかー! おもしろーい!」

…フェイトのその声で一気に頭が冷めた。
次いでやってきたのは、怒りの感情。

『…フェイトーッ!! イタズラするなって言っただろーっ!!』

見事にハモったカミナリがフェイトに落ちた。

「きゃー、おこったー!」
「こら、逃げるな!」
「洗ってやる! 隅々まで洗ってやる!」
「きゃー♪」

その日、フェイトは半ばやけくそになった二人によって全身くまなく洗浄された。

「つるつるー」



・ソアラとバラン


フェイト帰宅後、ヴィータはソアラにパプニカ城での出来事を話していた。
もちろん、アルキード王からの伝言も。

「…そう、父上がそんなことを」
「うん…どうしようママさん。あたし、ディーノに黙ってたほうがいいのかな?」

不安げにソアラに問いかけるヴィータ。
ソアラはしばし目を閉じて考えると…優しくヴィータの問いに答えた。

「そうね…いつか解る時は来ると思うけど、今はまだ言わないでおいてくれるかしら…時間が、必要なのよ。父上も、バランも、私も」
「…わかった、黙っとく」
「ごめんなさいね、ヴィータちゃん」
「いいよ、ディーノのためだもんな」
「ふふ…ディーノは幸せね。こんなに大切に思ってくれる子がいつも一緒にいるんですもの」
「そ、それは…ディーノはあたしの主だし…」
「あら、それだけかしら?」
「$#&Z%(’‘*~~~~~っ!!」

イタズラっぽく笑うソアラに抗議しようとするが、すでに羞恥のあまりヴィータの言語は崩壊していた。



「ソアラ…」

ヴィータが部屋に戻ったあと、ドアの影からバランが姿を現す。

「聞いてらしたのね」
「うむ…まさか、そのようなことを言っておられたとは…経緯はどうあれあの国にとって、私はただ一人の姫をさらっていった罪人だ。許されることなどないと思っていたが…」

声を落とし、うつむくバラン。

「私は…君の父上に、何をしてやれる? なにをすればいい? それができるのだろうか…それを、許されるのだろうか?」
「…きっと、父上も同じ事を考えていたのだと思います。悩んで、苦しんで…だからこそ、ヴィータちゃんを通じてしか、言葉を伝えることができなかった」

ソアラは、バランの手をそっと包み込むように握る。

「…人間は、それほど強くないわ。感情のまま先を考えず動くこともあるし、利を選んで残酷な決断をすることもある。時に惑わされ、悩み、間違うこともあります…でも、過去を悔い、反省し、未来に生かすことができる…そんな強さも、また人間だからこそだと、思います」

それは、アルキードを飛び出した自分たちのことでもあり、追放を決定したアルキード王のことでもあり、王をそそのかした家臣たちのことでもあり…
そして、それら全てが、いつか変われることを信じるという、ソアラの思いでもあった。

「いつか、父上にお会いしに行きましょう。今、とても幸せです、と…そのことを、伝えに」
「そうだな…必ず」

始めて出会った時と変わらぬ、太陽のような微笑み。
バランは、それを決して曇らせはしないと、あらためて決意を固めていた…



どっとはらい


**

日常で風呂ネタ書きたかっただけだったのに、なぜかアルキード王メインの話になってしまった。

アルキード王は髪にベタ入ってなかったから、ソアラの黒髪は母親譲りということ…なら、実はディーノの祖母はDQ5のエルヘブンの民で、マーサとはいとこ。名前は車名つながりで、ソアラ(太陽)に対抗して『セレナ(月)』…という裏設定はどうだろう? そうなるとリュカとディーノが完全に血縁関係に…



[26812] 登場キャラ一覧【随時更新・ネタバレ注意!】
Name: 謎のウエイト◆cf6ad728 ID:8bdc6545
Date: 2011/08/04 19:08
登場キャラリスト


* 氷炎将軍とチートオリ主な少女

氷炎将軍フレイザード
原作:ダイの大冒険
・主人公? 名前と身体でツンデレを体現する男

???(チート少女)
原作世界:???
・ヒロイン? フレイザードの製作者。未だに名前が出ていない。


* 大魔王様が魔改造されたようです

大魔王バーン
原作:ダイの大冒険
・魔改造されまくった最強の大魔王。作者の趣味で若い状態が多い。

幻海師範
原作:幽遊白書

リサリサ(エリザベス・ジョースター)、ジョセフ・ジョースター
原作:JOJOの奇妙な冒険第2部

沢田綱吉
原作:家庭教師ヒットマンREBORN

孫悟空、界王さま、バブルスくん
原作:ドラゴンボール

紅き翼(アラルブラ)メンバー
(ナギ・スプリングフィールド、ジャック・ラカン、近衛詠春、アルビレオ・イマ、フィリウス・ゼクト、ガトウ・カグラ・ヴァンテンバーグ)
原作:魔法先生ネギま

ラオウ、トキ、リハク、ケンシロウ
原作:北斗の拳

雑魚聖闘士、一輝
原作:聖闘士星矢

リュミスベルン
原作:巣作りドラゴン
・バーン様の嫁。作者による補正により作中最強の存在になっている。でもバーン様にデレデレ。

ブラッド・ライン、ユメ・サイオン
原作:巣作りドラゴン

魔影参謀ミストバーン
原作:ダイの大冒険
・ほとんど執事状態。魔影軍団補佐としてロリな団長に振り回される苦労人。


* 六大軍団が会議を始めるようです

獣王クロコダイン
原作:ダイの大冒険
・某作品による補正により魔改造された。フレイザードとは漫画やゲームを貸し借りする仲。

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
原作:魔法先生ネギま
・六大団長一の働き者。吸血鬼の友人も増えて充実した毎日である。

プレシア・テスタロッサ
原作:魔法少女リリカルなのは
・親馬鹿ママ。魔王軍の技術でお肌もピッチピチ。

ルーミア
原作:東方紅魔郷
・お子様団長。でもミストバーンより格上の闇精霊。そーなのかー

絡繰茶々丸
原作:魔法先生ネギま

アリシア・テスタロッサ
原作:魔法少女リリカルなのは

エルザ
原作:ゼロの使い魔

魔軍司令ハドラー
原作:ダイの大冒険
・ストレスで胃がヤバイ中間管理職。幻想殺しが本当に発現する日も近いかもしれない。


* デルムリン島に氷炎将軍がおじゃまするそうです

バラン
原作:ダイの大冒険
・地上最強のマイホームパパ。息子が懐いてくれないのが悩みの種。

ディーノ(ダイ)
原作:ダイの大冒険
・原作主人公。原作の不幸のかけらも見当たらない幸せに包まれております。

ヴィータ
原作:魔法少女リリカルなのはAs
・《お姉ちゃん》の立場がうれしくてたまらないエターナルロリ少女。ディーノにベッタリ。

ソアラ
原作:ダイの大冒険
・守護騎士、モンスター含めデルムリン島みんなのお母さん。

ブラス、ゴメちゃん
原作:ダイの大冒険

シグナム、シャマル、ザフィーラ
原作:魔法少女リリカルなのはAs

ロン・ベルク
原作:ダイの大冒険
・剣士という原作設定のせいで全次元最強まで魔改造されてしまった。

ジェダイマスター・ヨーダ
原作:スターウォーズ
・戦闘シーンにみんながびっくりしたリリパットみたいな姿のジェダイマスター。

* 魔軍司令がカウンセリングを受けるようです

ミスティア・ローレライ
原作:東方永夜抄
・おかみすちー。意中のあの人とは銀河を超えた愛を育んでおります。ボンバー。

射命丸 文
原作:東方花映塚
・パパラッチ。魔王軍にいるかぎりネタに困ることは決してない。おおこわいこわい。


* 勇者は騎士と共に剣士を育て上げたようです

アバン・デ・ジニュアール3世
原作:ダイの大冒険
・原作先代勇者。こと在るごとにオチをつけたり技に自分の名前をつけたり、原作1番のカオス発生源。

バルトス
原作:ダイの大冒険
・最高級にかっこいいアンデットお父さん。魔王倒せる勇者とタイマンできる地獄の騎士ってどんだけ強いんだよ。

ヒュンケル
原作:ダイの大冒険
・原作不死騎団長。エヴァの介入とチート師範二人により超絶パワーアップしてしまった。

チャチャゼロ
原作:魔法先生ネギま


* 六大軍団は通常業務をしています(氷炎編)

セルシウス
原作:テイルズシリーズ
・本来セルシウスの存在しないテイルズオブファンタジア世界の出身。妹&娘キャラ。

リウイ・マーシルン
原作:幻燐の姫将軍シリーズ
・魔人ハーフの王様。エクストラシナリオの嫁さんが怖い。子沢山。なんでリスティENDないんだよ。

イリーナ・マーシルン
原作:幻燐の姫将軍シリーズ
・リウイの嫁さん。エクストラシナリオだとラスボスより強い。でも正史だと死ぬ。なぜだ。

エクリア・カルッシャ
原作:幻燐の姫将軍シリーズ・戦女神シリーズ
・イリーナの姉。ラスボスとヒロインの両方をこなした類まれな人。

ブータニアス・ヌマ・ブフリコラ
原作:ガンパレードマーチ
・ガンパレだとそっくりさんの猫。と思ったらやっぱり本物。WTG世界はやりかけ企画が多くてわかり辛い…

風見幽香
原作:東方花映塚
・旧作は詳しくないので花映塚からということに。フレイザードとのコンビは恐怖の代名詞。

チルノ
原作:東方紅魔郷
・⑨(バカ)。ネット上で最も愛されている氷の妖精。あたいったら最強ね!

アギト
原作:魔法少女リリカルなのはSts
・炎のユニゾンデバイス。シグナムよりチルノ相手のほうがシンクロ率高い気がする。性格的に。

高嶺悠人
原作:永遠のアセリア
・自虐気味でシスコンな原作主人公。尊敬と侮蔑と憐憫を込めてソゥユートと呼ばれる。

アセリア・ブルースピリット
原作:永遠のアセリア
・タイトルにもなっているヒロイン。彼女のENDからじゃないと続編に話が続かない。デスコック。

永遠神剣・求め
原作:永遠のアセリア
・通称バカ剣。某インキュベーターみたいにマナ奪えマナ奪えうるさいので性格矯正されるハメに。合掌。

ハロルド・ベルセリオス
原作:テイルズオブデスティニー2

ネリー・ブルースピリット、シアー・ブルースピリット
原作:永遠のアセリア
・わんぱくネリー、おどおどシアーの双子。チルノとは即座に仲良くなった。

ハリオン・グリーンスピリット、ヘリオン・ブラックスピリット、セリア・ブルースピリット
原作:永遠のアセリア

スミス
原作:小説ドラゴンクエストⅤ
・世界一かっこいい腐った死体。魔王軍でもみんなのアイドル。グランバニアから出向中。


* 六大軍団は通常業務をしています(百獣編)

ナズーリン、寅丸星、聖白蓮
原作:東方星蓮船

妖獣のアリエッタ
原作:テイルズオブジアビス

豹頭王グイン
原作:グインサーガ


* 居酒屋《夜雀庵》は今日も大忙しのようです

シャア・アズナブル、アムロ・レイ、ララァ・スン
原作:機動戦士ガンダム
・年代は逆襲のシャア

バナージ・リンクス、オードリー・バーン(ミネバ・ラオ・ザビ)、マリーダ・クルス
原作:機動戦士ガンダムユニコーン

タクナ・新堂・アンダースン、メイファ・ギルボート(ミネバ・ラオ・ザビ)
原作:機動戦士ガンダムムーンクライシス

プル、プルツー、他プル姉妹
原作:機動戦士ガンダムZZ

ミサカ10032号、他ミサカシスターズ
原作:とある科学の超電磁砲

イーグレット・アンサズ他マシンナリーチルドレン、ジュデッカ・ゴッツォ他ゴッツォシリーズ
原作:スーパーロボット大戦シリーズ

カミーユ・ビダン、ファ・ユイリィ、フォウ・ムラサメ、ロザミア・バダム
原作:機動戦士Zガンダム

早乙女アルト、シェリル・ノーム、ランカ・リー
原作:マクロスフロンティア

伊吹萃香
原作:東方萃夢想

星熊勇儀
原作:東方地霊殿

アーチャー(英霊エミヤ)
原作:Fate/staynight

ディアッカ・エルスマン
原作:機動戦士ガンダムSeed

白井黒子
原作:とある科学の超電磁砲

天道総司
原作:仮面ライダーカブト

ストレイト・クーガー
原作:スクライド

乾巧
原作:仮面ライダー555

熱気バサラ
原作:マクロス7
・銀河を動かす無敵のシンガー。度々幻想郷を訪れてはミスティアとセッションしていた。ファイヤー。


* 居酒屋《夜雀庵》でライブが行われたようです

レジアス・ゲイズ
原作:魔法少女リリカルなのはSts

バン・フライハイト、フィーネ、トーマ・リヒャルト・シュバルツ
原作:ゾイド

刹那・F・セイエイ、ティエリア・アーデ
原作:機動戦士ガンダムOO


* 六大軍団は通常業務をしています(不死編)

ディスティ・ノヴァ
原作:銃夢(ガンム)

岸和田博士
原作:岸和田博士の科学的愛情

ジェイル・スカリエッティ
原作:魔法少女リリカルなのはSts

篠ノ之束(しののの たばね)
原作:インフィニット・ストラトス

Drウェスト、エルザ
原作:斬魔大聖デモンベイン


* 六大軍団は通常業務をしています(妖魔編)

パチュリー・ノーリッジ
原作:東方紅魔郷
・喘息魔法使い。団長じゃないのは面倒だから。むきゅー

小悪魔
原作:東方紅魔郷

妖魔司教ザボエラ
原作:ダイの大冒険
・外道じーさん。でも軍師ってこういうものだよね。

妖魔学士ザムザ
原作:ダイの大冒険
・某作品の影響が強すぎる人。ドリル&マッスルって…

ラバン・シュリュズベリィ
原作:機神飛翔デモンベイン
・肉体言語スネーク教授。本作品ではウルトラな国まで講義しに行ったらしい。

MICA
原作:サイバーナイトⅡ(漫画版)
・出演はⅠから。進化しすぎて魔導書みたいに人型フォームまで持っちゃったAI娘。

霧雨魔理沙
原作:東方projectシリーズ
・原作主人公その2な白黒泥棒ジゴロ魔法使い。力こそパワー(違)

ネクロノミコン機械語写本(エイダ)
原作:機神飛翔デモンベイン・軍神強襲
・パンチカード製のデジタル魔導書。なのでいろんなコンピュータ言語の娘を作ってみた。

セリオ
原作:To Haert
・サテライト機能つきメイドロボ。サテライトキャノンは撃てません。


* 六大軍団は通常業務をしています(魔影編)

上条当麻
原作:とある魔術の禁書目録
・恋愛原子核(天然) そげぶの人。

織斑一夏
原作:インフィニット・ストラトス
・恋愛原子核(新種) シスコン(姉)

白銀武
原作:マブラヴオルタネイティブ
・恋愛原子核(元祖) ループ系トリッパー。

天河明人
原作:機動戦艦ナデシコ
・恋愛原子核(旧式) 後の黒い王子。


* 鉄槌の騎士が新たな夜天の王を育てるようです

リュケイロム・エル・ケル・グランバニア(リュカ)
原作:小説ドラゴンクエストⅤ
・公式名=リュカに出世した小説版DQ5主人公。ディーノとは即座に意気投合。当然か。

マーサ
原作:小説ドラゴンクエストⅤ
・リュカの母、色々な面でソアラさんそっくり。王族と特殊部族の関係は男女逆だが。

スラリン、ピエール、ドラきち、ガンドフ、ロッキー
原作:小説ドラゴンクエストⅤ
・リュカのお供部隊。どのセリフが誰が分かるだろうか?

モルグ
原作:ダイの大冒険
・原作だとヒュンケルの副官。本作では事務仕事を請け負っています。

クライド・ハラオウン
原作:魔法少女リリカルなのはAs
・原作の闇の書暴走がないので無事。ただしバランさんと直面したのでSAN値がががががが。

* 魔王軍は次元世界への対応に奔走しています

ドゥーエ
原作:魔法少女リリカルなのはSts

ヴィヴィオ
原作:魔法少女リリカルなのはSts
・この時点ではまだ生まれてませんが名前は出せたので。高町姓を名乗るかは未定。

クロノ・ハラオウン、リンディ・ハラオウン
原作:魔法少女リリカルなのはシリーズ
・クライドの息子と奥さん。よくKYとか腹黒とか二次創作では言われているが、あれだけ無理難題が押し寄せる中でよく対応しきったと思う。

* グランバニア王とその友人たちの日常風景

サンチョ
原作:小説ドラゴンクエストⅤ
・パパスの従者にしてリュカのお守り役。オッサンだけどちょっとオバサンっぽい。

リオン・マグナス(エミリオ・カトレット)
原作:テイルズオブデスティニー
・TODでゾンビ化する前にDQ5世界にやってきた。なのでジューダスにはならない。

ソーディアン・シャルティエ
原作:テイルズオブデスティニー
・リオンのお目付け役を兼ねるレンズ兵器ソーディアンの一本。

デュムパポス・エル・ケル・グランバニア(パパス)
原作:小説ドラゴンクエストⅤ
・リュカの父。アクティブな王様。断末魔の「ぬわー!」が有名すぎる。DQ4のライアンの子孫らしいが「ぬおおー!」って言ってたライアンは松本英孝先生の4コマだけだったような?

魔王ミルドラース
原作:小説ドラゴンクエストⅤ
・DQ5ラスボス。小説版では子供姿で純粋に光の世界を求めているシーンがあった。小説DQ4・5はラスボスの魂の救済が描かれているのが良作の所以だと思う。


* 山間の村の鍛冶屋と勇者と少年と

ポップ
原作:ダイの大冒険
・原作最強の大魔導士にして超人気キャラ。本作ではいったいどんな魔改造をされるのか作者もわからない(笑)

ジャンク、スティーヌ
原作:ダイの大冒険
・ポップの両親。原作では最強の剣の手がかりになったり、最終決戦において重要な言葉をポップに教えていたりとなにげに重要キャラ。

衛宮士郎
原作:Fate/staynight
・原作主人公。英霊エミヤの過去の姿でもある。違う未来を勝ち取るため、ロン・ベルクの工房にて修行中。

アルトリア・ペンドラゴン(セイバー)
原作:Fate/staynight
・アーサー王として有名。おいしいごはんとつわものぞろいの環境にご満悦の様子。シグナムとは修行仲間。

遠坂凛
原作:Fate/staynight
・士郎を半ば無理やり修行に行かせたあかいあくま。
先祖の宿題である並行世界移動を簡単にやってのける魔王軍に、驚くやらあきれるやら。

??????(????)
原作:?????????
・謎の剣士…?


* 鉄槌の騎士と竜の騎士が仲睦まじく過ごしているようです

ニセ勇者一行(勇者でろりん・僧侶ずるぼん・戦士へろへろ・魔法使いまぞっほ)
原作:ダイの大冒険
原作では最後においしい所を持っていく憎めない連中。そしてなにげにでろりんはCV緑川だったりする。

フェイト・テスタロッサ
原作:魔法少女リリカルなのは
・原作ヒロイン? 本作登場時は2歳。お姉ちゃんをなでなでしてあげるいい子です。

八神はやて
原作:魔法少女リリカルなのはAs
・原作の夜天の王。守護騎士がいないかわりに異能を身に着けてしまった。そして天然。へーちょ
・地球意思『オロチ』を内に宿す『オロチの巫女』。将来はオロチとのユニゾンが可能に。

八神歩(旧姓:春日歩)
原作:あずまんが大王
・通称『大阪さん』はやてを庵の娘にするため関西弁の提供元として抜擢。結果はやてまで天然さんに。へーちょ
・双子の兄と同様に『黄龍の器』の資質を持つ…が、意識して使うわけでもないので、本人的には正直どうでもよい。ちなみにその力は娘にも受け継がれた。


* 【超番外小ネタ】や が み け

八神庵
原作:キングオブファイターズシリーズ
・蒼い炎を使う格闘家。ショウファイトとバンドで稼いでおり、その収入はかなりのもの。へーちょ
・実は龍麻・歩たち『陽の黄龍の器』に対する『陰の黄龍の器』でもある。
はやてがオロチを宿せたのも陰陽が混じった『太極の黄龍の器』というべき存在だったため。

テリー・ボガード
原作:餓狼伝説シリーズ
・SNK格ゲープレイヤーにはおなじみのMr餓狼伝説。本作ではMOW版のロンゲVer。サニーパンチは打ちません。

ロック・ハワード
原作:餓狼・マークオブウルブス
・ボガード兄弟の宿敵ギースの息子でテリーの養子。テリーの体脂肪調節は彼の料理にかかっているため、ロックが手抜きするとテリーがチャン・コーハンに…
・父の会社を継ぐために勉強中。現在『ちっちゃい先輩』なちよ先輩と交際しており、よく勉強を教わっている。

* 【突発ネタ】やがみけ 2

ルガール・バーンシュタイン
原作:キングオブファイターズシリーズ
・KOFのボス常連。通称『運送屋』。もうオロチも草薙も研究しつくしただろうにこの上何が目的でKOF開いているのか謎。

滝野智(とも)、神楽
原作:あずまんが大王
・大阪と三人そろってボンクラーズ。だいたいこの二人がはしゃいで大事になる。
被害者は主にちよちゃんと榊さん。


* 【見切り発車ネタ】やがみけ 3

高町家
原作:とらいあんぐるハート3、リリカルなのはシリーズ
・高町士郎…翠屋マスターにして古流剣術御神流の使い手。一線は退いたがまだ現役で十分通用するほど強い。
・高町桃子…翠屋パティシエ。大阪より年上なのだが、なのはとはやてが同年代のためママさん仲間になってしまった。
・高町恭也…長男。とらハ3主人公。アニメと原作の戦闘描写により数々の二次創作において無敵の『KYOUYA』として描写されることが多い。本作ではリリなの世界+とらハ強化なので故障などが無く、KYOUYAに近い。
・高町美由紀…長女(実際は従姉妹、詳しくは原作を参照)。とらハ準拠のデスコックスキル持ち。
・高町なのは…次女。リリなの主人公。とらハなら『なのちゃん』、リリなのなら『なのは様』と極端な呼び方をされる子。本作ではなのちゃん寄り。

美浜ちよ、水原暦(よみ)、榊(榊さん)、かおりん、マヤー
原作:あずまんが大王
・ちよ…飛び級で高校を卒業した天才小学生。本作ではアメリカ留学後なぜかロックといい仲に。アメリカが『ちよちゃんの国』になるのも近い?
・よみ…ともの押さえ役にまわされる苦労人。しかし時に暴走する。残念属性持ち。
・榊…見た目クールな猫好きさん。獣医の道に進んだらしいので本作ではリリなのに出てきた槙原医院で働いてもらっています。
・かおりん…榊さんスキー。結城心一先生の4コマでは大暴走している。
・マヤー…榊さんが飼っているイリオモテヤマネコ。かわいいがすごいカリスマを持つ。

陣内美緒
原作:とらいあんぐるハート2
・遺伝子的には人間だが容姿・能力は猫又というややこしい子。年代的にちょうどいいのでちよちゃんの元同級生ということに。

橙(ちぇん)
原作:東方妖々夢
・猫の式神。主人の力で人方になっているので正確にはまだ猫又ではない。

火焔猫燐(かえんぴょう りん)
原作:東方地麗殿
・通称お燐。地獄の死体清掃屋。今回は橙と遊んでたら主たちとはぐれてしまった。


* 【暴発ネタ続き】やがみけ 4

久遠(くーちゃん)
原作:とらいあんぐるハート3
・狐の妖怪。幼女や大人の女性の姿にもなれるが、本体が子狐である所を見ると800歳というのはまだまだ子供らしい。

八雲藍
原作:東方妖々夢
・狐の妖怪にしてスキマ妖怪の式神。自分の式神である橙に対しては過保護ぎみ。

古明地さとり
原作:東方地麗殿
・サトリ妖怪。『悟り』という字が『小五ロリ』に見えるからって11歳というわけではない。しかし服装は幼稚園児っぽい。

八雲紫
原作:東方妖々夢
・幻想郷を創ったスキマ妖怪。ひたすら胡散臭いという印象があるが、実際は何も考えてないだけかもしれない。

鳳蓮飛(ホウ レンフェイ)
原作:とらいあんぐるハート3
・はやての原型になったとされるとらハヒロインの一人。本作でははやての格闘と料理の師匠に。

劉弦月(リウ シャンユエ)
原作:東京魔人学園剣風帖
・中華な関西弁つながりで出演。さらに苗字つながりでなぜか戴天流剣術まで習得。おかげで実家は無事。柳生? お察しください。

劉豪軍(リウ ホージュン)
原作:鬼哭街
・弦月の実兄で原作における報われないラスボス。本作ではちゃんと『瑞麗』と幸せになってます。


* 【限界突破暴走ネタ】やがみけ5

草薙京
原作:キングオブファイターズシリーズ
・原作主人公…だがライバルの庵のほうが人気っぽい。クローンを作られたり、力を狙われたりと色々大変だが、まず『留年中』という設定をなんとかしてもらったほうがいいと思う。

サイコソルジャーチーム(麻宮アテナ、椎拳崇(シイ ケンスウ)、鎮元斎(チン ゲンサイ))
原作:キングオブファイターズシリーズ、サイコソルジャー
・アイドルと恋人未満の友人と師匠。アテナが設定18歳のままでいられるのもある意味京が留年しているおかげ。

レオナ・ハイデルン
原作:キングオブファイターズシリーズ
・オロチ八傑衆ガイデルの娘でハイデルンの養子。
ボンクラーズと仲良くなったらしい。

ハイデルン
原作:キングオブファイターズシリーズ
・特殊部隊隊長で、レオナの養父。ガイデルとは同期の親友だったらしい。

オロチ八傑衆
原作:キングオブファイターズシリーズ
・ゲーニッツ:風のオロチ四天王。本作では娘を溺愛する神父さん。
・七枷社:大地のオロチ四天王。庵とはバンドのライバルでもある。
・シェルミー:雷のオロチ四天王。どのイラストでも彼女の目元は隠れたまま。
・クリス:炎のオロチ四天王。本来なら彼にオロチが宿るはずだった。
・マチュア:ルガールの秘書の金髪の方。運送技(横)あり。
・バイス:ルガールの秘書のショートカットの方。運送技(縦)あり。
・ガイデル:レオナの実父、故人。以前に暴走したオロチの力を止める為、犠牲になった。

オロチ
原作:キングオブファイターズシリーズ
・ガイアとも呼ばれる地球そのものの意思。地球の霊脈を支配できる『黄龍の器』たる人間は彼を宿すには最適。今ははやての中で休眠中。

神楽ちづる
原作:キングオブファイターズシリーズ
・オロチ封印の力を伝えてきた一族…だったのだが、なんかうやむやにされてしまった。

緋勇龍麻(春日龍麻)
原作:東京魔人学園剣風帖
・原作主人公。本作では歩の双子の兄、はやてにとっては伯父さん。苗字が違うのは高町家と同じで荒事用の名前だから(戸籍は春日になっている)カップリングは決めてないのでご自由に想像してください。

柳生宗崇
原作:東京魔人学園シリーズ
・原作の黒幕でラスボス…の一つ前。やってることは大掛かりなのに目的がどうにもショボく感じる人。オチ要員になってしまった。

緋勇弦麻(春日弦麻)、鳴瀧冬吾
原作:東京魔人学園剣風帖
・歩と龍麻の父と、龍麻の師匠。若き日の弦麻の武者修行を龍麻が真似して世界をめぐっているため、家では肩身が狭いらしい。

春日迦代
原作:東京魔人学園剣風帖
・歩と龍麻の母。もちらん関西弁。歩の『こたつを片付けたお母ちゃん』とは彼女。

孔濤羅(コン タオロー)
原作:鬼哭街
・原作主人公。原作はかなり報われない結末だったが、本作では『瑞麗』と幸せに暮らしている模様。

草薙柴舟
原作:キングオブファイターズシリーズ
・京の父親。息子と違って大活躍したらしい。

* 大魔王様のとある普通の一日

大妖精(大ちゃん)
原作:東方紅魔郷
・二次創作の世話焼き大ちゃん設定。チルノだけでなくアギトも増えたので大変そうです。


* 六大軍団は通常業務をしています(超竜編)

リュウ
原作:ブレスオブファイア2
・原作主人公。竜と人間のハーフってことでディーノにも通じる所がある。2だとまだ技が少ない…

ラーハルト
原作:ダイの大冒険
・原作だとダイの義兄弟でもあった。最終決戦でも通用する速さをもつ相手に勝利したヒュンケルはマジ超人である。

リンプー
原作:ブレスオブファイア2
・格闘虎娘。あと『はいてない(重要)』、作者的には彼女がヒロイン。虎野郎になんぞ渡すか!!

紅美鈴(ホン メイリン)
原作:東方紅魔郷
・歩が『大阪』なら彼女は『中国』。魔王軍で修行中ですが居眠り癖はまだ直りそうもないようで。

アトルシャン、タムリン
原作:エメラルドドラゴン
・竜と人とのラブストーリーといえば作者的にはこれ。漫画版の孫の話の頃にはもう少しいい未来になっているはず。


* 氷精と剣精のぱーふぇくと魔法教室

大魔導士マトリフ
原作:ダイの大冒険
・最強呪文メドローアや重力呪文ベタンの開発者。しかしその実態はエロ爺さん。


* 【魔軍司令救済計画】親衛騎団が誕生しました

ハドラー親衛騎団(ヒム・シグマ・ブロック・フェンブレン・アルビナス)
原作:ダイの大冒険
・ヒム…ポーン(歩兵)の駒から生まれた戦士。格闘少年。ただしややアホの子。オヤジ(ハドラー)大好き。
・シグマ…ナイト(騎士)の駒から生まれた戦士。頭脳派少年。しかしヒムに振り回される。時々つられて熱くなることも多い。
・ブロック…ルーク(城壁)の駒から生まれた戦士。力持ち幼児。やっぱり『ぶろーむ』としかしゃべれない。かわいいは正義。
・フェンブレン…ビショップ(僧正)の駒から生まれた戦士。爺口調少女。常にダルそう。ブロックの姉的存在。
・アルビナス…クイーン(女王)の駒から生まれた戦士。委員長系少女。ハドラーに甘えたいけどしっかりしなきゃとも思っているのでなかなか行動できない。


* 親衛騎団のいる風景

上海人形、蓬莱人形
原作:東方妖々夢
・戦闘用魔法人形。半自立式だったが魔王軍の技術で自立式に。ブロックと仲良し。

アリス・マーガトロイド
原作:東方妖々夢
・魔理沙とはくされ縁の人形遣い。最近はエヴァという師匠も出来、充実した毎日を送っている。



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リクエストがあったので追加。
改善の要望などありましたら遠慮なくお願いします。

6/24:時系列がバラバラなので話数をいったん消します。
要望があれば復活させますので掲示板にお願いします。


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