こんにちは、金子です。
はっきり言って自分でも何書いてるか分かりません、すごく適当です。
架空戦記が好きな人は見向きもしないし、それ以外も普通にスル―すると思います。
もし読んでくれる人がいればうれしいです。
それでは。
1944年八月三日、マリアナ諸島。
そこに現れたのは、人類史上最強の水上航空打撃戦力だった。
正規空母八隻、軽空母五隻を中心とし艦載機総数は千機に迫る勢いである。
さらにその後方には補給にあたる護衛空母群が続き、予備機として四百機以上の艦載機を準備している。
戦場に加わる戦力はそれだけではない。
先年激戦の末に奪取に成功したマーシャル。そこには陸軍の長距離爆撃機を中心に六百機を超える戦力が集結し、決戦兵器である飛行艦隊も一両日中にマリアナに到着する。
揚陸戦力は海兵師団を中心に六万を超える戦力を準備している。
それらの護衛と対地砲撃任務を担当するのは軍縮条約脱退後に建造された六隻の新鋭戦艦群。
その他の巡洋艦や駆逐艦はもはや数え切れないほどだ。
この戦いが初陣となる兵士達は、その圧倒的戦力を見て自らの勝利を確信した。
何者もこの力に立ち向かう術はないと。
だが、これまでに幾度も激戦を潜り抜けてきた彼は違った。
俺達は常に相手に対して圧倒的優勢下で戦ってきたはずだ。
だが、奴らはどんな状況でも俺達に多大な出血を強いてきた。
たしかに今回は、これまでで最大の戦力を集結し、最高の指揮官の下この戦いに臨んでいる。
だが、この程度でくたばる様な連中なら、俺達は去年のクリスマスも家族と一緒に過ごしていたはずだ。
そして、俺達の悪夢は決まってあの報告から始まるんだ…。
『CAP(迎撃戦闘機隊)より報告。目標の数は約二百、なお先頭は『リンドヴルム』先頭は『リンドヴルム』!』
『リンドヴルム』
連合軍に幾度となく痛打を浴びせてきた同盟の悪魔。
マーシャルでもラバウルでも北海でも、俺達はあの悪魔に無数の仲間を殺されてきた。
戦友たちの絶叫は今でも脳裏に焼き付いている。
彼の息子も、この化け物に殺されている。
だが、今度こそ、奴にその所業の報いを受けさせてやる。
ヘルメットの顎紐を結びなおしながら彼は復讐を誓う。
いかなる犠牲を払ってでも奴は俺がこの手で仕留める。
自らが艦長を務める防空巡洋艦、その露天艦橋へと続くタラップを登りながらこれまでに何度も繰り返してきた誓いを確認する。
彼は気が付いていない。
それが、軍人として部下を率いる人間として許されない事だということに。
彼は知らない。
迫りくる『リンドヴルム』その繰り手がいかなる想いとともにこの戦場に臨んでいるのかを。
彼女は機竜『紅龍』の操縦席でこれまでの戦いを思い返していた。
初めてこの子と出会ったのは中学校の修学旅行で訪れたマーシャル諸島マロエラップ島。
二年前の夏、そののどかな島は一瞬にして地獄に変わった。
連合軍による、宣戦布告なしの奇襲攻撃。
逃げまどう私たちは、休暇で基地の外に出ていた兵隊さんに連れられ港のそばの待避壕に逃げ込んだ。
そこにポツンと置いてあったのがこの子だ。
すぐそばにはここまで引っ張ってきた牽引車が止まっていて、運転席の兵隊さんはすでに事切れていた。
その時、外の様子をうかがっていた兵隊さんが「空挺だ!」と叫んだ。
恐る恐る外に顔を出した私が見たのは、ついさっき私たちが着陸した飛行場が空に浮かぶ巡空艦(もっとも動揺していた私は飛行戦艦だと思い込んでいたのだが)がその胴体に抱え込んでいた爆弾を雨のように降らしている光景だった。
外はまるで夕方のように赤く染まっていた。
その時、私は驚くほど素直に「私はここで死ぬんだ」と思えた。
それほどの絶望感をあの光景は私に与えた。
だが、その時奇跡が起こった。
後から考えてみればただの偶然なのだろうが、少なくとも私にとってそれは奇跡だった。
壕の中で轟音が響いてきたのはその直後だった。
驚いて振り向けば、そこには今まで足を折って、寝そべる様な格好で停止していた機竜が動力炉から白煙をあげながら起動していたのである。
みなが呆気にとられる中、私は不思議と落ち着いていた。
なんとなく、この機竜が私を呼んでいるように感じたのだ。
吸い寄せられるように立ち上がった機竜に近づいていく私を不思議と誰も引き止めなかった。
私が近づくとその機竜は、あるで跪くように頭を下げた。
後で聞いた話では、このタイプの機竜は人が乗ってないときは自動的にそういう姿勢を取るようにできているそうだ。
だけど、その時私はこの機竜が『乗ってくれ』と言ってるように感じられた。
吸い込まれるように操縦席に収まった私はそのまま―――
「隊長?」
自分の初陣の回想をしていたら、部下の声で意識を表層に呼び戻された。
「どうしましたか?」
「先遣隊の彩雲から入電『敵艦隊捕捉。戦艦2空母4巡洋艦4、駆逐艦多数。貴編隊より進路160距離40浬。なお、敵迎撃機の襲撃を受けたためこれより退避する。貴隊の勝利を信じる』以上です!」
報告の内容は先遣隊からの情報だった。
どうやら敵は今度こそ完全勝利を掴もうと、総力を挙げてこのマリアナに突っ込んできているらしい。
基地で聞いた情報が正しければ、これと同規模の艦隊がすでに三つ発見されているらしい。
迎撃機の反応もこれまでよりかなり早い。
ふと、出撃前に聞いた与太話を思い出す。
『敵の奴らはこれまで何度もお嬢に求愛してるが、こっぴどく振られ続けている。だから今度こそ求愛を成功させようと必死なのさ』
部隊の中で自分が『お嬢』と呼ばれているのは知っていたが、これはさすがに恥ずかしい。
しかも、話を聞いている若い隊員は真面目な表情でうなずいている。
ついでにその隊員は今まさに自分の前席で通信と航法を担当している少年だ。
つい小さく笑ってしまったら彼が怪訝そうにこちらに振り返ってきた。
それに何でも無いわと笑いを収めながら言うと、納得いかないという表情を浮かべながら仕事に戻る。
その後ろ姿を見ながら、先代隊長の言葉を思い出す。
『お前は生きろ!』
その時はなんで自分だけが生き残らないといけないのかと隊長達を恨んだが、部下を持った今ならその気持ちがわかる様な気がした。
その時、、少年が叫んだ。
「電探に反応あり!距離200!後数分で接触します!」
その叫びに、一瞬で思考を部隊指揮官の物に戻す。
「攻撃機隊、密集陣形!直衛隊は予定通り。制空隊は私に続け!」
次の瞬間、私の機竜を先頭に、機竜と戦闘機の一群が編隊から飛び出していく。
実戦と訓練を繰り返すことで洗練され切った編隊運動。
それにわずかな満足感を覚えながら彼女自身が無線に叫ぶ。
「全員!今日こそ奴らの母艦を殲滅して、この戦争を終わらせるわよ!」
『応!』
彼女の想いは最初から変わらない。
仲間達を守って、一日でも早く元の穏やかな時間を取り戻したい。
変わったところは自分が生き残らなければ、その目的を果たせないと理解したこと。
そして自らの行為がどれだけの憎しみを生み出しているか理解したこと。
それでも、最初の想いは変わらない。
たとえその穏やかな日が、極短い休息の時にすぎないと分かっていても。
彼女は自らの望みをかなえるため、戦場へと突き進んでいった。