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[26348] 【ネタ】strike burst(ストライクウィッチーズ 男主)
Name: sky◆c7c0ace3 ID:f18730c4
Date: 2011/03/05 01:37


 ある日の昼下がり、現在出向している欧州の前線基地に何のアポもなしにカールスラント陸軍の元上官が皇帝からの勅命をもって現れた。
 その内容は、以下の通りである。

【ちょっとブリタニアに行ってくんない?】

「……は?」

 何の予告も通知もなしのことだったので馬鹿げた内容であることは容易に予想できたが、本当に馬鹿な内容だった。
 正式な内容はそれっぽいことが書かれているが要約すればこんなものだ。

「これは決定事項なのだよ、シュヴェーゲリン大尉。元とはいえ、皇帝直属の肩書きを持っていた貴様が断れるとでも思っているのかね?」

 鋭角的なフォルムの眼鏡の奥にあるこれまた鋭い視線がこちらを射抜く。
 齢50を超える歴戦の勇士は、現役の軍人でさえ竦んでしまいそうなほどの威圧感がある。彼の名は、ゲッツ・フォン・エーレンブルグ中将。いまだネウロイとの戦争にウィッチが大々的に投入されるより以前から戦場を駆け抜けた生きた伝説。周囲の金属を同化して自己再生するネウロイにはこれまでの通常兵器が通用しない。そんな中でも撤退戦だったとはいえ、多くの戦友の命を助け、ウィッチたちが前線で戦うのを最後までサポートし続けた男の中の男である。ウィッチが戦闘の主体となったいる現在において男性の歩兵というものは無用の長物と成り果てていた。これからはウィッチーズをサポートすることが男の仕事になっていくだろう。中将は、戦うのは女の子任せ、というのが常識となり始めている現代の風潮を最も嘆いている軍人だと私は思う。

「アフリカのマルセイユ大尉のところには、ヴィッテンブルグ曹長が配属された。貴様には501JFWのヴィルケ中佐のもとに行ってもらうことになった」

 ブリタニアといえば連合軍第501統合戦闘航空団「STRIKE WITCHES」が設置されていることは知っていたが、そこに派遣されることになろうなど思ってもみなかった。いくら軍事に力を入れているカールスラントといえど、そこに属する軍人がすべて優秀なわけではない。確かに対ネウロイ戦争での撃墜数上位者を多く輩出しているように見えるが、それは最も長く激戦区で戦闘を続けてきた国であるというだけだ。どれほどの演習を繰り返そうと実戦に勝る経験はないというのも理解できるが、必ずしもそうではないことを私は知っている。特にウィッチは生まれ持った魔力の量でも基本的な能力差が出る。魔力量が少ないからといって弱いウィッチというわけではないが、魔力量が多いウィッチは優秀で強力なウィッチに成りやすい。そんなウィッチ事情の中でも連合軍統合戦闘航空団に所属するウィッチの実力は当代最高クラスである。
 そんな彼女達の下へ派遣されるということはエーレンブルグ中将の具申がいよいよ人類連合軍上層部に行き渡ったということか。

「すでにここスオムスからは、サルヴァント中尉が派遣されることとなった。貴様は中尉と共に明日の一ニ:00時にここを発ってもらう」

 欧州戦役の最前線であるスオムスのロンデルハイド・サルヴァント中尉。その活躍は耳にしていたが、作戦を共にしたのはネウロイの大部隊が侵攻してきたときが初めてだった。戦闘に参加するようになって2年ほどしか経っていないが、すでに「スオムスの白騎士」と呼ばれるほどの戦果を挙げている。初陣において10機を越えるネウロイを撃墜したとかなんとか。その真偽までは分からないが、先週の戦闘では私が1機を落とす間に5機以上を撃墜していたのでまったくのデマということもないだろう。

「どうした? 了解したのか、反逆罪で射殺されたいのかさっさと選べ」

 それは選択肢とは言えません中将殿。

「アンリ・ガーライル・シュヴェーゲリン。連合軍第601統合戦闘航空団出向の任、謹んで拝領いたします」

 本来の任務を覆い隠すよう文面に書き綴られた内容の端的なタイトルを述べて了解の意を示す。

「よろしい。それと喜べ、601に選出されたウィッチはすべて貴様の同類だ」

 忌々しそうに表情を歪めて言われても喜べません中将殿。
 何事も時代には移り変わりというものがある。一応、世界中でも希少である私の同類で統合部隊を作るというのは間違っていると思わないでもない。
 こんなことを思っているなどと中将に感づかれるだけで銃殺されそうだが、これから我が身に降りかかるであろう政治的判断とやらを想像すると吐き気がする。

「トゥルーデとフラウ、それに女侯爵フュルスティン。カールスラントのトップエースたちのいる部隊に我々など必要ないだろうに……」

 カールスラントでもトップクラスのウィッチたちの何を心配しているというのだろう。エーレンブルグ中将の思惑は分かりきっているが、皇帝陛下までそれにOKを出すということはまだまだ見えないところに政治屋の方々の思惑があるのだろうな。

「政治はどこでも変わらないもんだな」

 遠くの地で戦う戦友の先行きを思い空を見上げる。まだまだ遠くの山々には残雪が見える北欧の景色ともしばらくはお別れだ。カールスラントの領土を奪還するためにはここよりもブリタニアで戦った方が有益でもあるだろう。上層部の思惑はどうせ見えてこないものなのだから、波がくるまでは素直に従おう。

「スオムスの白騎士様がご一緒か。よくスオムス政府が許可したもんだ」

 戦場に咲き誇るウィッチーズ。その影に隠れるようにほそぼそと戦果を稼いできた“私たち”にもとうとう表舞台が用意された。きっと裏の舞台も用意されていることだろうが、世界に散らばる数少ない同胞達と共に戦場に立つ。それで少しは世界を変えられるのならそれは素晴らしいことだと思う。
 自分の魔力を機械によって増幅し、普通では重くて持つことも難しい兵器を軽々と操り、自在に大空を飛行し、ネウロイの瘴気や攻撃をフィールドで遮ることができる天空を駆ける戦乙女たち。人類を脅かすネウロイに対抗できる救国の英雄として民衆の尊敬と憧憬の対象となっていっる。
 そんな華々しい戦果と印象を世界中に広めている魔女達の活躍に隠れて細々と戦い続ける兵士達もいた。魔力持ちは圧倒的に女性が多いものの極稀に魔力持ちの男性も存在する。稀少であるからといって強力な魔力を持っているということはなく、女性ウィッチ同様に個人差がある。女性に比べ男のウィッチは魔力減退が極端に遅いことが通例であり、これは潜在的に保有する魔力の大きさに反比例するところが女性ウィッチとの違いだろう。それ以外の部分に違いはなく、しっかりと訓練すれば戦場に出ることも可能である。しかし、ネウロイとの戦いに参戦している男性ウィッチは少ない。現在のカールスラント軍で4名、世界中でも30名前後しかいない。そんな稀少な実戦級の男性ウィッチを一箇所に集めるというのは政治的にもどうかと思うが、スオムス空軍義勇独立飛行中隊という前例から各地で統合戦闘航空団結成の動きが広まっている中では仕方がないことなのかもしれないが、将来有望なヴィッテンブルグ曹長まで使うというのは行き過ぎていると思う。

「……ま、自分の心配をしないといけないな」



 † †



 スオムスに来てからの半年を過ごしたカウハバ空軍基地を遥か彼方に見下ろすと感慨深さがあった。
 ネウロイのカールスラント本土侵攻直後に魔力持ちの男であるという理由だけで前線から遠ざけられ、皇帝直属の部隊へ転属させられた辺りから雲行きが怪しくなっていた。カールスラント最強の男性ウィッチといえば皇帝直属の親衛隊隊長を務めるハイドリヒ大将であるが,彼を筆頭にカールスラント軍所属の魔力持ちの男にはほぼすべてにパートナーとなるウィッチが選抜されている。どのようなパートナーかは言うまでもないだろう。対ネウロイ戦において要となる魔力は,遺伝的な影響を強く受けるということが通説であり,大戦が始まってからの激戦地であるカールスラントには政略結婚染みた形式が取り入れられた。もっとも実質的にはお見合い程度の強制力しかなく,この制度で結ばれたカップルというのはそれほど多くない。そのような中でもヴィッテンブルグ曹長の存在は一際異彩を放っている。何しろ,この制度が取り入れられるより遥か昔から意図的に魔力持ち同士の婚姻により脈々と魔力を受け継いできた家系の出だ。戦闘経験の差から軍人としての実力はハイドリヒ大将に遠く及ばないが,あと1,2年もすれば男女合わせた歴代最強のウィッチになれる潜在能力がある。カウハバ空軍基地に来る前に受けた基礎空戦研修で一度だけヴィッテンブルグ曹長と一緒に飛んだことがあるが,その魔力量は通常のウィッチに倍する許容量があったことを思い出す。
 そんな偉大な血筋の同僚は遠きアフリカの地へ。実戦可能な魔力を持つというだけで男性ウィッチとして皇帝直属部隊に配属させられ、そこの隊長に無能扱いされてスオムス送りになった私は、今度はブリタニアへ。

「参ったね、どうも……」

 スオムスでの半年間、敵機撃墜数39とそれなりの戦果は出せた。原隊に復帰できることが一番なのだが、カールスラントに戻ってもハイドリヒ大将にまたどこかへ飛ばされることになるだろう。そう考えれば、ブリタニア行きも決して悪いことではない。スオムスに送られたときは一人だったが、今回は友人と一緒の移動。気持ち的に随分楽になる。

「難しい顔をして、これからのことが心配ですか?」

 さわやかな微笑を私に向けるのはスオムス空軍が誇る世界最強の男性ウィッチ、ロンデルハイド・サルヴァント中尉。撃墜数150機を超えるスーパーエース。淡雪のように白い肌と針葉樹のようにチクチクした銀髪を伸ばしているその姿は男装の麗人と言われれば皆が信じるであろうほどに綺麗な少年だ。16歳という若さでありながら戦闘でも実生活でも冷静沈着なスオムス期待の星でもある。

「心配はしていないよ。スオムスの白騎士がともに来てくれるんだ。心配する要素がない」

「アンリがそこまで信頼してくれているなんて光栄です。実は、僕もあまり心配はしていないんです。カールスラントが誇る『悪魔の軍勢レギオン』と共に戦えますからね」

「だから、その通称は止めてくれ」

「ふふ、それでは僕のこともロンと呼んで下さい。その方が僕も嬉しいです」

 からかいを含めた笑みでも嫌味が待ったくないロンの表情は輝いていた。
 ロンから視線をずらすと無骨な輸送機の中に二つの金属の塊がある。ひとつは私の通称の由来であり、愛機でもあるReGタイプA0 悪魔の軍勢レギオン。もともとが地上部隊所属の歩兵だった私は空戦が得意ではない。そのため機動性をある程度殺して可能な限りの重火器を搭載した重装甲機だ。通常のストライカーユニットが履くタイプなのに対して、レギオンは鎧のように纏うタイプである。旋回性能は壊滅的だが基本速度はそれほど悪くないため前衛を他のウィッチに任せ、後方から砲撃の雨を降らせるという戦法を取っている。固有魔法の特性もあり遠距離からの精密射撃は多少の自身がある。そして、銀色の輝きを放つ具足とコルセットが繋がったようなロンの専用機であるギャラルホルン。ロンの凄まじい戦果もこの怪物ユニットがあってこそだろう。本人もそのことを認めており、その整備を自分自身でも行えるようにしっかりと勉強をしているそうだ。
 私たちとともにブリタニアに旅立つ鋼の友人。同じ技術を基に製作された私たち専用の戦闘装備を携え、彼の地で新たに2名を加えて結成される第601統合戦闘航空団。私の新しい居場所。

「僕たちの他に扶桑とリベリオンから1人ずつ派遣されるんですよね? どんな人たちか今から楽しみです」

「そうだな。男でもやれるということを少しは示さないとな」

 そうしなければカールスラントの陸の元上官と空の元上官の両方から殺されかねない。
 そんなことにならないように表向きの戦果を稼ぎつつ、裏方の任務もしっかりこなさなければならない。

「ネウロイだけが敵なら良いんだがな」

 私も含めた男どもの命運が悪くないことを祈るとしよう。





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