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[25847] 【習作】白刃一閃。(東方project・オリ主)
Name: IXIA◆f3e98338 ID:72868372
Date: 2011/02/08 20:36
・東方projectの二次創作です。
・主人公はオリジナルキャラとなります。
・所謂幻想入りものです。
・オリジナルキャラと原作キャラの恋愛描写があります。
・設定の独自解釈や捏造設定があります。




2011/02/06 第1話投稿
2011/02/08 第2話投稿



[25847] 少年は、少女と出遭う
Name: IXIA◆f3e98338 ID:72868372
Date: 2011/02/24 09:27
青く深い森の中、少年は白い少女と出会った。

「そこの人間。 ここから先は天狗の領域だ」

そう、少年にとっては意味のわからない言葉を吐くのは、狼の様な雰囲気を持った白髪の少女。
白い和装を身に纏い、威嚇するように睨みつけ、手に持った剣を突きつける。
けれど、彼の意識が真先に向いたのは、見たこともない服より棘で刺すような視線より眼前に突きつけられた切っ先より、

(――空を……飛んで、る?)

それが当然であるように
そら
に立つ、その在り様だった。

「このまま大人しく立ち去るならばよし。 だが、」

……全く意味が分からなかった。いつから自分がこんな森にいたのかも、目の前の少女が何者なのかも、その言葉も、自分に武器が突きつけられている理由も、
そして何故少女が空を飛んでいるのかも、少年の持つ『常識』では、何一つ説明が出来ない。
だが少女は彼の混乱など関係ないとでも言わんばかりに、一方的に言葉を突きつける。

「それ以上一歩でもこちらに近づいたならば」

そこで言葉を切ると、手に持つ剣を構え直した。その瞳は目の前の人間が何を考えているかなど気にしてもいない。
注視するのは、自らの言葉を受けて相手がどう動くか、といったことのみ。
下手な動きをしたならば、一瞬で斬り殺さんとする意思を見せつけながら……少女は、最後の一言を口にした。

「妖怪の山の一員として、貴様を排除させてもりゃう」

「そこで噛むかっ!?」

思わずツッコミが出た。




                          ========




幻想郷、と呼ばれる場所がある。
日本の何処かに存在する、外界とあらゆる意味で隔離された隠れ里。
そこには、現代社会において忘れられたもの、信じられることがなくなったもの、必要とされなくなったもの。
――すなわち、幻想と呼ばれるものが集まった土地である。

それが何処にあるのかは誰も知らず、そもそも存在自体を知る者すらも限られる。
仮に場所を突き止めたところで、現実に生きる人間の目には、決して映ることはない。
同じ世界の上に在りながら、決して交わることのない異界。
しかし、稀ではあるが現実の世界から幻想郷へと迷いこむ人間も、いた。



もう幻想となった言葉で呼ぶのなら。
それは、神隠しと言われたのかもしれない。



                          ========




状況を整理しよう。冷静になった――というかぶっちゃけ気が抜けた――頭で、少年は思考する。
まず、何故自分はこんなところにいるのか。 周囲を見渡せば森、というより山の奥と言った風情で、そう遠くない所から滝の落ちる音も聞こえてくる。
うっかり迷い込むような場所では無さそうなのだが、けれどもその答えは「気づいたらここにいた」と言うほか無い。
いつからいたのかもよく分からないし、ここに来る直前はどこにいたのかすらはっきりしない。
すわ、まさか記憶喪失とやらかと慌てて記憶を探ってみると、自分の名前は渡辺和那、身分はただの一般学生、昨日の夕食はカツカレーとすらすらと思い出せた。
もっとも、そうなると余計に自分の状況が分からなくなるのだが。


次に目の前の少女が何者か、ということに意識を巡らせる。
気づいたらこんな場所にいて意味も分からず彷徨っていたら、唐突に空から現れ剣を突き付けてきた。
年の頃は、おそらく自分とそう変りないように見える。
服装はまず現代社会では見かけることのないものである。たぶん初詣でも七五三でも成人式でもあんなものは着ない。
(実のところそれは山伏と呼ばれる行者の装束なのだが、和那の知識にそんなものは無かった)
さっきから黙りこくっているが、こっちのリアクションを待っていると言うよりここぞというところで噛んでよほど恥ずかしかったらしく、顔を真っ赤にさせている。これでは白い少女でなく赤い少女である。 ……それはさておき。
明らかに銃刀法違反な剣は多分本物だろうし、犬のような耳があるように見えるのは果たして気のせいか。
――そして何より、空を飛んでいる。これは多分、種も仕掛けも無いのだろうと、何故だか和那はそう感じた。

(……結局のところ、訳が分からないという結論しか出てこないよなあ)

ええいならばこの状況は一体何かと、少女が放った言葉を思い出す。
……色々と理解し難い言葉(天狗とか妖怪とかもりゃうとか)が混ざっているものの、大枠としては要するに立ち入り禁止区域に自分が入りかけたのが原因らしい、と今更に気づく。
そこまで思考が行ったところで、どうやら気を取り直したらしい少女、改めてこちらを睨み付ける。

「……そこの人間。ここから先は天狗の領域だ」
「最初からやり直す気だコイツ!?」

その発想は無かった。

「って言うか何だこの状況、もうちょっとしっかり説明を……」
「このまま大人しく立ち去るならばよし。 だが、それ以上一歩でもこちらに近づいたならば」
「無視してそのまんま続けんな! てかせめてこっち見ろ!」
「妖怪の山の一員として、貴様を排除させてもりゃ……ええい! 引き返す気が無いならば、力ずくで排除させてもらうっ!」
「お前今噛んだろ!? また噛んだろ!? そして逆切れすんなっ!」

もうグダグダだった。色々無かったことにして和那に襲い掛からんとする少女に、あまりと言えばあまりの状況について行けない和那。

「くそ、何なんだ一体!? 気づいたら山の中にいると思えば天狗だの妖怪だの意味分からないことを――」
「煩いっ! そもそも妖怪は人を襲うのが定め、そしてお前が消えれば私の失敗も無かったことに!」
「うわあ私情だ!? 言ってることの意味半分も分からないけど間違いなく私情だ!」

訳は分からないがこのまま立っているのは危険と判断、戦略的撤退を開始。後ろに向かって全力前進。

「って言うか、さっきの場所からは立ち去ってるんだからもう追いかける必要無いんじゃないのかっ!?」
「最早そんなことなど関係無い、大人しく私に倒されろっ!」
「いやまあだろうと思ってたけどさあ! くう、何でこんなとこで空飛ぶびっくり人間と追いかけっこをするハメに……!」

逃げる少年、追う少女。けれども地を這う人間と天を駆ける天狗、どちらが早いかなど言うまでもなく。
そしてその上、

「逃・が・す・かあっ!」
「……え、何そのエネルギー弾みたいなの。 なにくそ舐めるな、そうそう簡単に当たってうわーだめだー!」

少女の放つ螺旋の弾幕が少年に直撃。あっさりと意識を手放すこととなった。




とまあ、これが。現実の世界に生まれ現実の世界に生き幻想郷に迷い込んだ人間の少年・渡辺和那と、幻想郷に生まれ幻想郷に生き現実の世界を知らない天狗の少女――犬走椛の、最初の邂逅だった。



[25847] 山中への不法投棄はおやめください
Name: IXIA◆f3e98338 ID:72868372
Date: 2011/02/08 20:36
気を失った少年の前で、犬走椛はため息をついた。


柄にも無く――あくまで柄にも無く、だ――熱くなってしまったことに自省する。
そもそも、妖怪の山への侵入者というのは決して多くない。幻想郷でも上位の妖怪である天狗に対して真っ向から喧嘩を売るような者は人間妖怪問わず殆どいないし、
うっかり入り込むような者たちには、良心的な神々や人間に友好的な河童などが本当に危険な領域に来る前に引き止める。
そんな訳で、普段来もしない外敵を警戒する退屈な日々を送っており、

「……久々の侵入者だからと言って、気合を入れすぎたのが悪かったか」

そう、悪かった。 変に格好をつけようとして失敗し、どうにかフォローしようとして大失敗。
結果として人間の前で大恥をかくはめになり、それで思わず……
……これ以上考えるのはひとまずやめておく。自己嫌悪がつのるばかりだ。

「問題は……この人間をどうするか、だな」

そう思い、少年の方に目をやる。 ……わりと何も考えずに攻撃したのだが、運がいいのかさほどの怪我は無いように見える。
さて、ならばどうするか。 一昔前ならば天狗に出会ったという時点でその人間の命運は決まったようなものだが、今は襲ったり退治されたりはしても、そうそう容易く殺したり殺されたりするような時代でもない。
冷静に考えてみれば、この人間は結局警告に逆らった訳でも無いのだし。そんな簡単に殺してしまっては、大げさな話人間との関係に大きな影響を与えかねない。
そこまで思考が行ったところで、ふと椛はあることに気づいた。

「む? この人間の服装……」

今更と言えば今更であるが、あまりに変わった服を着ている。その意匠は言うに及ばず、そもそも一体何の材質で出来ているのかわからない。
それにようやく気づいた椛、改めて先ほどの会話を思い出してみる。

「ここが何処だかすら分かっていない様子、その上天狗と言ってもそれを理解していなかった」

それに加え、変わった服。これらの単語を統合すると出てくるものが、椛の記憶にひっかかった。

「まさか。 こいつ、外来人とやら……か?」


――本来幻想郷は外の世界と隔離されており、限られた場合を除き出ることも入ることもできない。
が、しかし。その隔離は(意図的なものかそうでないかは一天狗である椛には分かりかねるが)完璧ではなく、時折幻想郷に紛れ込む人間もいた。
その紛れ込んだ人間の一部は、幸運にも幻想郷と外の世界の境界に存在するとある神社に辿り着き、無事に外の世界へと帰還し、
また他の一部は、人里に住み着き、珍しい知識や技術を持った者として重宝されているという。
だが、残りの大部分の末路は――



まあともあれ、この人間が外来人だとすると話は大分変わってくる。

「そうなると、人里に遠慮などする必要はなくなるが……」

そう、この人間が死のうが喰われようが、『幻想郷』の人間には何の関わりもない。
人と妖怪が共存するためのルールは、あくまで幻想郷の人と妖怪のためのルール。
外来人というイレギュラーはそのルールには縛られず……縛られないが故に、護られることもない。
すなわちこの人間の命運は、ルールもしがらみも関係なく、完全に椛の手の中にある訳だけれど――

「…………」

けれど、と椛は考える。あんな下らないやりとりで本当に殺してしまうというのは、何というか天狗としての格を落としてしまうようなことなのでは無いかと。
それは死人に口はなし、誰に広まるということはありえないだろうが、この場合重要なのは自分の気位だ。
だいたい、繰り返すが警告に逆らわれたわけでもないのだ。 いくら外来人相手とはいえ、言を翻すというのは無思慮にやっていいことではないだろう。
などといったことをつらつらと思考した椛、なんだかもう面倒になってきて、そうして一つの結論を出す。

「……よし。山の麓にでも捨ててくるか」

運がよければ生き残るだろうし、運が悪かったとしてもそこまでは自分の知ったことではない。
そう決めると、椛は少年を担いで空に舞う。 ……面倒事になりそうだし同僚達に気付かれないようにそっとだが。



まあ、色々言い訳はしてみたものの――
結局のところこの犬走椛、幻想郷が成立してから生まれ、幻想郷の中で育った若い妖怪であり。
人を殺したことも人を食らったことも未だ無い、平和ボケした未熟な天狗であるが故。
なんとなくさっきまで会話してた相手を殺してしまうのは気後れするというのが、本当の所だった。




                          ========


「……おーい、生きてるー?」

鼻腔をくすぐるさつまいものような甘い香りと、ぺしぺしと顔をはたかれる感触に、少年こと渡辺和那は目を覚ました。
はて、今までのことは夢だったのか、だとしたらやけに現実離れしていた割に現実感のある夢だったな、等と思いながら目を開けると、

「あ、目が覚めた?」

金色……と言うよりは黄色い髪に変わった帽子を被った少女がこちらの顔を覗き込んでいた。
まだはっきりとしない頭で周りを見回すと、自分の知っている風景でもなければ、さっきまでいた場所とも似てはいるようだがまた違う。
青々としたもみじや銀杏が目立つ森の中で、よく耳を澄ますと遠くに滝の音が聞こえる、ような気がする。

「いやー、びっくりしたわよ。 散歩してたらこんな所に気絶した人間が落ちてるんだもの」
「気絶……っつ、たた!」
「えーと、大丈夫? 見たところそんなに大きな怪我じゃ無さそうだったけど」

だんだんと意識がはっきりとしてくる。
あの白い少女が夢でなかったとしたならば、逃げているところで意識が飛んだことになる。
何かよく分からないエネルギー弾を飛ばして来たような覚えがあるし、あれが直撃して気絶した、のだろう。
さっきのが夢でこれも夢、と思いたいところだが、後頭部に響く鈍痛はそれを許してくれそうにない。
……そうなると、今度は何故別の場所にいるのかという疑問が湧いてくるが、それは一先ずさておいて。

「は、はい、大丈夫です。えっと、介抱してくれたんですか?」

とりあえず眼前の相手に礼を言っておくべきだろう。それに、もしかすると状況を説明してくれるかもしれない。
少なくともさっきの白いのよりは話が通じそうである。
そんなほんの少しの打算もこめた和那の言葉を、少女は笑いながら否定した。

「ううん、私はついさっき倒れてるあなたを見つけただけよ」
「いえ、それでもありがとうございます。こんな所に放置されてたら風邪でも引きそうですし」
「心配すべきは風邪のことじゃないと思うわ」

和那としては割と無難なことを言ったつもりだったのだが、それには苦笑を返される。
あれ、何か変なこと言ったかなーと内心首を傾げる和那、ふと少女が自分のことを足元から頭の先までじっくりと観察するように見ていることに気づく。

「それにしても……」
「え、えーと。どうかしましたか?」
「……ん? ああごめん、ちょっと不躾だったかしら」
「いえ、それは良いんですが。俺の格好、何か変ですか?」
「変……かはともかく、珍しい格好なのは確かね」

珍しい。はてそうだろうかと和那は自分の姿を確認してみる。
黒の学生ズボンにカッターシャツ。以上。
……これを珍しいと表現するのは中々ないのではなかろうか。

食い違い。目の前の少女と自分の間で、何か決定的な食い違いがあることを感じる。
そんな和那をよそに、少女はふむふむと納得したように一人頷いている。
ええいもうこうなったら仕方がない、こっちの状況説明して何か分かることはないか質問してみるか、と和那が思い立った所で――

「ねえ。あなた、名前はなんて言うの?」

何故か満面の笑みで、少女は名前を問うてきた。

「え、名前ですか?」
「あ、こういう時は自分から名乗るのが礼儀よね。 私は秋穣子、豊穣を司る神よ。よろしくね」
「はあ、俺は渡辺和那……って、え?」
「ふんふん、和那くんか。 それでどうしたの、斑鳩が弾幕食らったような顔して?」

何だその例え。いやそれはどうでもいい、今この人はなんと言った? 豊穣を司る神。神? どういうことだろう、何か意味があるのか単純に神を自称するようなイタい子だったのか。
そういえばさっきの白いのも何か天狗だ妖怪だ言ってたなあと思い出すも流石に神はねーだろと言うか何で悪い笑み浮かべてるんですか秋さんとやら。
こんな状況になっても意外と冷静を保てていた和那の脳内が、一気にこっちに迷いこんできた直後レベルまで沸騰していた。

そして、その様子を見てある確信を深める者一人。もとい神一柱。

「あら和那くん、神に会うのは初めて? ふふ、そうよね、あなたが『そう』ならきっとそうだと思ってたわ。
 この幻想郷が外と隔離される前ですら、外の世界じゃ神と会うヒトなんて稀だったもの。
 今となっては、それこそ夢物語に語られる位でしか無かったのでしょう」

そして豊穣の神・秋穣子は、唯一無二の真実に到達した名探偵の様な不敵な表情で、
白を切ろうとする犯人を追及するが如く言葉を続ける。

「麓とはいえ妖怪の山で倒れていたというのに、不自然なまでの危機感の無さ。
 その草でも獣でもない材料で出来た、変わった服。
 そして、神の存在そのものを疑っている、その驚きよう。
 ここから導きだされるのは――」

そして確信と共に、一本の指を和那に突きつけた。



「そう。 和那くん、あなたは外来人なんでしょう?」



すいません秋さん。ドヤ顔で指突きつけられても、そもそもあなたが何言ってるんだがさっぱり理解できません。


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