Battle Report
ナジアル会戦での総力作戦時において全戦力を投入した場合に最前線の保持を行う部隊・及び遅滞行動を帝国軍に取らせる必要があった.
この事から,前線支援部隊・防御線構築部隊・精鋭部隊・懲罰部隊等の候補が挙げられたが,いずれも遅滞行動を行うには継続戦闘力がやや足りない傾向にあった.
そのため,義勇軍第3中隊第7小隊の快足を生かし,前線保持を狙う予定であったが彼等が最前線任務に就くこととなったため,代役として同中隊所属第11小隊の代替派遣を要請.
これの快諾を伴い,ナジアル会戦時後方警戒及び敵勢力対浸透任務として同小隊隊長ヨハン・ヒース准尉を任命した.
ヒース准尉は任務了承後5時間で当該村に向かって出発.
装甲車を用いての高速兵員輸送により,翌明朝に当該村付近に到着.付近に展開していた敵勢力を発見.敵勢力の強硬偵察を阻止に成功.
同日中に村人と自警団の避難を開始.避難先をユエル市とし,自警団とユエル市自警団との連絡を密にして警護輸送を行った.
同日中より敵勢力遅滞行動に向けての妨害工作及び防衛線の構築を開始.当日を含め2日間において構築を行い,これを完成.
構築終了翌日午前より敵勢力と会敵.
敵勢力は剣甲隊,重装歩兵隊,衛生兵,中量級戦車を主に構成され,構成と隊旗より第8重装甲兵隊と確認.
ヒース准尉は機関銃兵1名の負傷者を出すもこれの撃退に成功.
撤退中の同中隊を正規軍第28小隊が追撃.撃滅に成功.
これを持ってナジアル会戦時後方警戒及び敵勢力対浸透任務の完遂を表記する物とする.
William.K Col
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side Melissa.E press
『“ナジアル会戦においての後方警戒任務及び避難民の護衛と保護を命じられ,これを受理.負傷者を2名出すも敵勢力の撃退に成功.撤退中の敵勢力を正規軍の追撃により撃滅に成功.”
要約をしてしまえばこれだけ。文章にしてしまえば短くて1~3行。長ければ…それでも紙1枚程度にまとめてしまう事が出来る。
最前線において華々しく活躍をした部隊と比べ、後方及びに最前線を支える部隊の報告書は皆この様な物である。
けれど、この村を守ったのは“義勇軍”であり、彼ら彼女らの思いはみんな唯一つに集約される。
“ガリアを守る。みんなの生活を守る”となる。ガリア戦役において代替的に報じられた“義勇軍第3中隊第7小隊”。彼等の奮戦ぶりはすさまじく、まさしく英雄と言えるものであった。
そんな彼らの思いも一つに集約する事が出来る。“ガリアを守りたい”これ一つであったように思われる。
このガリア戦役において数々の死傷者、建築物の損壊、資産紛失、列挙すればきりがない物である。
しかし、ガリアを救うために立ち上がった者もいた。このガリアを救うために立ち上がった数多くの戦士たちは“ガリアを守る”この一つの誓いを胸に戦場へと向かった。
その彼らの中には華々しい戦果を胸に飾り街を凱旋したものもいれば、怪我を負い元の生活を過ごす事が出来なくなってしまった者もいる。果てまた故郷と遠く離れ薄汚れ、砲撃痕の残る戦地に冷たく横たわり共に戦った戦友と眠る者もいるだろう。
だからこそ私たちは忘れてはならないと思う。
“ガリアを守る”と言って戦った年齢や性別、果てまた人種さえも関係なく、立ち上がり、泥をすすり、笑い、涙をながした存在がいた事を。
正しく彼等は皆“ガリア”を守った“戦士”であり、“英雄”だったことを。私たちは忘れてはならないのだ。
文責:メリッサ・エルダー』
「っと…」
「タタンッ」
私は記事を書き終えると会社支給のタイプライターの横に置いてある少し大きめのマグカップを取って口につける。
「ぬるい…」
一口口に含んで真っ先に思ったのがこれだ。インタビューの後に会社に報告し、自宅で記事にする文章を打ち始める前に入れたちょっと熱めの紅茶が今ではなまぬるい位の風味がかけらも残ってないクソ不味くなってしまったモノを一気にのどに流し込む。
「まずぅ…」
風味の無いただの色が付いた水を飲むのがどんなに苦痛か…。
私はブラウスのボタンを幾つか外し、インタビューの時に持っていった録音機とメモ帳を持ってベットに倒れ込んだ。
安いベットのスプリングがギシギシと音をたてて軋む。
初めてこっちに来た時、寝転がった時はもっと鳴ってたかもしれない。体重が減ったのかやつれたのか…。
そんな事は些細なことだ。
そう。些細なことなのだ。
“義勇軍第3中隊第7小隊”…。彼らの活躍によってこの戦争は終わったと言ってもいい。いや、一つ分かっていないのが黒い制服に身を包んだ部隊…。彼等も各地の激戦区に姿を現し、正規軍を救い、住民を救った。ただ、彼らの公的記録は残っておらず、ただ噂と、“助けてくれた”と言う事実しかない。
そんな彼らに比べ、話題性も華もない後方部隊へのインタビュー…。“ただの”兵士へのインタビュー。
だけれども、私は聞いた。“ただの”兵士が救った村の声を。
村を救った“英雄のお話”を。
私はインタビューの時に使った録音機をまわしながら目を閉じて文章をもう一回最初から考える。
もっといい表現がないか、もっと印象に残せるようにかけないか?もう一度考える。
日も落ち、すっかり暗くなった外に気を向けながら目をつむって深呼吸をする。
ゆっくりと息を吐き出した時には湧き上がる眠気とにじみ出る疲労に促されるままにベットで眠りについていた。
(あ…。録音機…再生…。止めなきゃ…)
と言うのがわたしの寝る瞬間の記憶。
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ーーどうも。××出版のエルダーです。本日は義勇軍第3中隊所属第11小隊の隊長であったヨハン・ヒースさんにお話を聞きたいと思い、伺いました
ーえ?俺の話?
ーーえぇ。そうです
ーあんたも奇特な人だねぇ…
ー俺の話なんかよりほら、第七小隊の英雄さんに聞いた方が良いだろうに
ーーいえ、彼は他社のアポで今捕まえられていまして
ーえ?人が多く来すぎてアポが取れないの?大変だなぁ…。英雄さんも
ーんで?どこを話せば良いんだい?
ーー南東部の森での防衛戦について話して頂けませんか?
ーえ?南東部の森での防衛戦の話?
ーーはい
ーやれる事をやるだけだし、基本的に罠張って偽装して隠れて指揮官狙いだよ。全部の戦いでね。ほら、俺って突撃兵のみんなみたいにゴツく無いでしょ?だから近寄られたらその時点で終わりなのさ
ーーそういえば小隊の殆どの方は狙撃担当でしたね
ーあぁ。フランクとリーズが機関銃担いで他は殆ど狙撃だったね
ーー何か特殊な意味が?
ーいや、俺には戦略何て言うコジャレた知識が少なくてね。代わりに罠とか待ち伏せとかしか出来なくてね
ーーそう言えばヒースさんは猟師の出身でしたね
ーそうだね。銃の撃ち方と心構えと…。まぁ、他にも色々猟師のオヤジから教わったよ
ーーえっと…。申し訳ありませんが、ヒースさんはダルクス人なのですか?
ーあぁ、この髪色?でも瞳はこの色だろ?自分でも解らんのよ。オヤジが見つけてくれた時は身分を証明できるようなもんは身につけてなかったらしいし
ーーでは、お名前の方は…?
ーオヤジがつけてくれた。旧友の名前を取ったんだとさ
ーーはぁ。ところで義勇軍を解散したらどうされるんですか?
ーん~?ランシールからお呼びがかかってるけど、ブリクサムさんが行くらしいからな。俺はまた山に籠もって猟師でもやるさ。小屋とか片づけなきゃならんし。おやじが残してくれた思い出の場所でもあるし
ーーそうですか…。他にも色々とお聞きしてもよろしいですか?
ーえぇどうぞ。時間はまだまだありますし
ーーそれでは…………
(完)
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拙作を読んでいたき大変ありがとうございました。
作者のsanzouであります。
始めた当初は終わり方だけ見えていただけの作品で、途中どうも自分でも性急過ぎた気がしてなりません。
もともと、嘘予告だけ書き逃げをしてしまおうとかも思っていて、どうも自分のモチベーションが高くない事もあり、見切り発車でありました。
設定をこねくり回すのは好きですが長く続かない性質で、プロローグ、本編とエピローグを足して10話と言う長いのか短いのか分からんような話で終わらせる予定でありました。
設定や、色々な詳細を吹っ飛ばして終わらせたこともあり、大変見目苦しい物であったと思いますが、そこは習作という区切りで見逃していただけたらと思います。
なんだか少々不完全燃焼気味なので随時加筆修正するかも知れません。
時間があればですが
P.S
P.Sの意見は私の物では無く、祖父と話していて妙に頭に残っている言葉です。
今思うに、もっと色々な事を聞いておけばよかったと最近ではつくづく思います。