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[25333] 【完結】我が名はシン・アスカ
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/27 01:02
チラ裏で完結した作品ですが加筆修正して再投稿してます。

シン・アスカ主体。
プラント(デュランダル派)側寄りの二次創作です。
原作好きの方注意。

追記2011/01/27

完結しました。



[25333] 第1話 「瑞夢」 改訂
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/15 15:30
「さんどぉ~ぶゎっぐに~♪」

ども、シン・アスカです。
現在家族の仇である憎くき敵のフリーダムと交戦している。

嘘の情報を流して誘いだすことに成功し1体1のガチンコに持ち込めている。
この日のために数日間も缶詰になってシミュレーションで何度も対策を練りあげたおかげで正面から戦えている。
厳しい戦いだが流れは俺に傾いてる。

とは言ってもライフルを必中のタイミングで撃てば避けられ、接近戦を仕掛けたらビームサーベルの出力の差で競り負ける。
集中し続けてるせいで体力もガンガン削られて苦しくなってきた。
おまけに激しい機動のせいでインパルスのバッテリーも凄い勢いで無くなっていく。

けど相手はスタミナ無尽蔵。
なんてったって核動力ですから!
こっちなんて戦闘開始して15分たってないのにもう残量が半分近くになってるってのに。

これなんてピンチ?


『シン! キラは(ry

艦橋から通信が入ってたんで受信したら俺の心配じゃなく敵を擁護する声だったでござる。
とりあえず聞き流すことにした。
あんなアホなことに対応してる暇なんてねーよ。
戦ってるんだよコッチは!?
敵の擁護してないで助言の一つくらい寄こせ!

「このぉ!!」

本来の許容できる範囲を超えた加速と機動を繰り返し続けているインパルス。
ついに各関節部から警告を知らせるアラームが鳴だした。
このままの動きを続けたら空中分解♪
それでもフリーダムと対峙し続けるために止まるわけにはいかない。

画面には最初の不意打ちのおかげで翼の一部をもぎ取ってやったフリーダムが映っている。
機動性こそ落ちているが動きは変わらない変態じみたものだ。

必死にサーベルを振るいながら思う。

――― こんなに強かったのかキラ・ヤマト。

まるで初めて戦ったあの時のように。
戦いの流れを取られないようしつこく無謀なアタックをかけてもあっさり防がれる。
しかも手加減してるのがわかるからムカつく!

『いい加減にしてくれ! 僕たちが争う必要はないんだ!』
「オメーの返事は聞いてねぇがら!」

心配して声をかけてやるほど俺は弱いって言うのかよ。
かっぺむかつく!

にしてもインパルスの反応が思ったより鈍い!
ザコ相手だと気にならなかったってのに。
もっとカスタムしてもらうよう頼み込むべきだった。

やべ、走馬灯が見えてきやがった。


しかし何度も人生を繰り返すのも疲れる。
ホント宇宙クジラ調査にいかなけりゃこんなことには。





最初の人生は酷かった。
血反吐を吐いて念願の赤服になり新型を貰えるた。
その日は興奮して眠れなかった。
おまけに配属先は新造艦。しかも最初の任務は式典の警備。
楽勝気分で仲間と買い物に行く余裕すらあった。
しかもステラのおっぱいも揉めるという素晴らしい特典もあった。
まさに我が世の春が来た! と感じてたのに。

最後の最後でなぜかルナと付き合った。
あれは間違いだった。
吊り橋効果の結婚が長続きしないってのはマジだった。
多少はアホでも素直なほうが俺は向いていると実感したよハハハ……。

離婚した俺は軍を辞めて傷心旅行で地球に行った。
俺個人の口座はけっこうな額が貯まってたんでちょっと贅沢できた。
幸い、半年たってから建設会社に就職する。
おかげで独身貴族に返り咲くことができ幸せでした。

そんな時、アスラン経由で仕事の話が来た。
とりあえず話をしたいということなんで聞いたらとあるプロジェクトに参加して欲しいというもの。
期間も2ヶ月と短かったし金払いもよかったので引き受けてみたんだが……。


(偶然、宇宙クジラの化石を発掘しちまったよな。作り物とばかり思ってたのに実在するとは)


気がつけば映像いっぱいに映されたビームサーベル。
慌ててパイルダーオフしてなんとか避ける。
正直ギリギリでした。

この野郎殺す気満々じゃねーか。
不殺の文字をどこに捨てやがった!

走馬灯なんて有り難くないもんを懐かしがってる場合じゃない。
気合入れんと本気で殺されてしまう。

「キラ・ヤマト。テメーは俺を怒らせた」
『これで落ちないなんて』
「話を聞けよ」

自分の世界に入り浸りやがってこのナルシスト!
中ボス的な強さしかない俺なんてアウトオブ眼中ですかそうですか。
意地ってのを見せてやる。
やぁってやるぜ!

というわけで。

「こんにちは死ね!」
『え?』

インパルスに設けられたリミットをカット。
たちまち狭いコクピットの中に警報が鳴り響く。

フリーダムがサーベルを振りかざす右腕―――その肘めがけ短距離をサーベルを最速で走らせる。
限界を超えた速度で振るわれたインパルスの右腕は正確に狙い通りの場所にたどり着いた。
出力を上げたサーベルは安々とフリーダムの肘の内側を貫く。
自分の動く衝撃に耐えずインパルスの右肩が自壊する。

キラは瞬時に状況を理解したようだ。
文字通り手が足りない今が止めを刺す絶好の機会。
距離を詰めて無事な方の腕でサーベルを構えようとするが、遅い!

「やらせるかよ!」

残った左腕をフリーダムの首にしっかりとまとわりつかせてチェストフライヤー射出。
推力全開のチェストフライヤーを引き剥がすことが出来ずフリーダムは俺との距離を開いていく。
これが最後のチャンスだ。

「ソードシルエットを早く!」
『安心しろシン。もう射出は終わっている!』

頼もしい相棒の声。
レーダーで確認すると間近まで来ていた。
過去最高の完璧さで素早く合体。
覚悟完了。当方に迎撃の用意有り!
エクスカリバーを胸元に持ちフリーダム目がけて突っ走る。

「にくい~あんちくしょう~の~かおめが~けぇー」
『うわぁあ!』

チェストフライヤーを無理やり引き剥がしたフリーダムは大きく体勢を崩していた。
そして突っ込んでくる俺を見るやいなや無理な姿勢でライフルを乱射してくる。
レールガンやビーム砲が嵐のように迫りインパルスの装甲削り頭がもげる。

「たたけーTATAKE-☆叩け~」

大丈夫、インパルスはつよいこ。
これくらいヘッチャラさ。
回避も減速もしない。最初からクライマックスだ。

「ちねぃ!」
『!!』

核動力といっても所詮はPS装甲。
僅かな抵抗のあと安々と突き刺さる。
エクスカリバーはフリーダムの胸を貫通した。

『キラぁ!』

アスランが何か言ってるけど無視。
運がいいから生きてるよ。

フリーダムはビクンビクンとエレクトしてたがすぐに動きが止まった。
同時に機体の色が灰色に変化していく。

「フリーダムを倒しました」

息を整え百舌の早贄のようにフリーダムを頭上高く持ち上げる。
その瞬間。

『うぉおお!』
『やったぜ、見てるかアイ。あいつがお前の敵を取ってくれたんだぞ』
『急いで動画を上げないと』
『くそ、大穴だったか!』

みんなの歓声が応えてくれた。
ありがとう、こんなに嬉しいことはない。

だが最後、テメーはダメだ。




フリーダムを串刺しにしたまま格納庫に戻った俺を待ってたのは整列した乗組員みんなの敬礼だった。
頭に包帯を巻いり松葉杖で体を支えた痛々しい姿の人たちもいる。
本来ならベッドの上で安静にしないといけないはずなのに。
彼らは共通して目から涙を流して、けれど気丈にも震える唇を真一文字に結んでいた。

全員の視線が俺から後ろににある貫いたままのフリーダムに気付く。
驚いた顔を浮かべる人、射殺さんばかりの眼差しを向ける人たちがいるが華麗にスルー。
大事な人を殺された恨みは分かるけどまだ安全が確認できてない。
放射能漏れの事態にはならなくてもパイロットが生きている可能性がある以上、専門の人以外が近付くのは危険過ぎる。
不満だろうけど我慢してくれ。
なんてことを思っているとようやく艦橋から通信が入った。
すぐに繋ぐと珍しく満面の笑みを浮かべたタリア艦長が映った。

『シンお疲れ様。まさかフリーダムを捕獲するなんて夢にも思わなかったわ』
「レイと一緒に訓練したおかげです。アイツも褒めてやってください」
『そうね……そうするわ』

寂しげな顔を覗かせるが直ぐに元の笑顔に戻るタリア艦長。
その後ろでアスランが『恨みはらさでおくべきか』的なまなざしをワタクシめに向けております。
アンタ自分の出した被害者の目の前でも同じ顔できないのに睨むなよ。

『大金星よ。フリーダムから戦闘データを抽出できればMS開発が進む可能性が高いわ。議長からも祝辞があったから後で確認するように』
「……ありがとうございます」

それから艦橋のクルーたちから入れ替わり立ち代わりに数分間も褒めちぎった言葉を嫌になるほど貰ってやっと通信が切れた。
嬉しかったがそれ以上に疲れた。
もうアスランの視線が怖すぎ。呪われるかと思ったわ。
あと艦長、キャラじゃないテンションのあがり方にブリッジのみんなビックリしてましたよ。
あまり見せない笑顔に何人かが顔を赤らめてたし。
映像のログを取り出して議長に見せたら面白いことにならないかな。

そうだ、忘れないうちにレイと連絡を取らねば。

「レイ、いるか?」
『なにかあったか?』
「もしかするとキラ・ヤマトは生きてるかもしれない。念のため麻酔ガスを流しこんでおいてくれ」

普通は死んでると思うだろうが相手はキラ・ヤマト。
ありえんほどのしぶとさを持っている。
しかも反則級の強さまで兼ね備えるというチートっぷりである。
これだけは何度戦っても変わらなかった。
下手すればGすら超えるかもしれない。

『そこまでするなら爆弾でいいと思うが?』

ボンバーマンじゃないんだからさ。
むしろマシンガンをぶち込んだほうが効率はいいぞ?

「なるべく生きたままにしておきたい。コイツは司法で裁かれるべきだ」
『シン、お前は……わかった。すぐに手配しておこう』

言いかけていたことの予想はつく。

『家族の仇を討たないのか?』

そう言いたいんだろう。

大丈夫だレイ。
心の整理はとっくの昔に終わっちゃったんだ。
憎む気持ちも悲しい気持ちもひっくるめて制御できてしまうんだよ。

でも、何度会ってもお前はイイヤツだよな。


コクピットから降りた俺に向かって仲間たちが一斉にかけ出してきた。
そこのカワイコちゃん、できれば君から飛び込んできてください。

計画通りカワイコちゃんに抱きしめられロマン回路を滾らせることに成功した俺はブリッジへと向かった。
不思議なことに他の乗組員とすれ違うことがなかった。

艦橋はメイリンを除くいつもの愉快な仲間たちが笑顔で迎え入れてくれた。
通信であらかた話終わっていたことを改めて報告し任務完了。
さっさとシャワー浴びて休もうと考えてたらアビーに食堂へ向かえと言われてしまった。
その声に倣って他の面々も食堂へレディーゴー!とまくし立てる。

もしかしてアビーからのお誘いですか?
万が一そうならせめてシャワーだけでもお願いします!
などという我ながらアホすぎる妄想のおかげで目が覚めた。

「おいおいアビー。汗臭いんだからせめてシャワーを入ってからでだろ?」
「うーん……そのほうが時間的にもちょうどいいですね。ただし15分以内で済ませてください」
「わかりましたよーっと。ではシン・アスカ、退室します」

おざなりの敬礼でスタコラサッサと部屋に逃げ帰る。
パパっと服を脱ぎ捨ててシャワー浴びてサッパリした。
半乾きの頭を新しいタオルで拭きながら時計を見れば既に15分が経過しようとしていた。
慌てて服を着こみ扉を出た瞬間、ヨウランとヴィーノが。

「お前らなにやってんの?」
「今日のパーティーの主役を捕まえに来たんだ」
「それじゃあエスコートさせてもらいまーっす!」

そのまま二人に引っ張られ食堂へ連れてこられた。
一歩中に入ると凄く目立つ場所に『祝!フリーダム撃墜記念』と横断幕が飾られている。
大半は端に寄せられ残ったテーブルの上には美味しそうな食事が所狭しと並ぶ。
食堂から見事にパーティー会場へ変貌した部屋は既にえらい騒ぎとなってた。

主賓と書かれた名札を付けられあちこちのグループに顔を出さされる。
おまけに呼んでもいないのに脳内麻薬どぱどぱ出まくりんぐの人たちは入れ替わり立ち代わり俺に酌をしてくれた。
ろくに飯を食うヒマもない。
しかもエアコンが効かないほどの熱気に包まれているおかげで汗も出てきた。
キスをしてもらったりして役得だったけどね。

なんとか捌ききり余裕が出来たんでテーブルの料理をつまんでいく。
結構うまい。今まで食べた艦の料理の中じゃ一番かもしれない。
議長に頼み込んでキッチンシステムを豪華にしてもらったからな。
出される料理もさりげなくいい素材になってて美味かった。
酒は飲めなかったけどしょうがない。
まだアークエンジェルが付近にいる可能性がある以上、警戒を怠るわけにはいかないしな。

壁際に集まった人たちは出された料理を肴に今日の俺の映像を何度も繰り返し見てた。

複雑そうな表情を見せる人たちがなんとなく気まずくて俺はパーティーを抜けだした。

コーヒーをすする。
まずいインスタントでも気分を落ち着かせてくれる。
それにしても今日は忙しかった。
今になって眠気が襲ってくる。
頑張れマイボディ! まだ夜は始まったばかりだぞ。
仲間の痴態を見ずにして眠ってなんかいられるかよぅ。

「ここにいたのか」

その声とともにレイが部屋へ入ってきた。
両手に持っている二つの湯気のたつコーヒーカップの一つを俺に差し出した。
ついさっき飲んでいたインスタントと雲泥の差がある香りが鼻に注がれる。


「既に飲んでたようだな。せっかくだからこれも飲め」
「こんなに旨そうなコーヒーなんだから腹いっぱいだろうが飲ませてくれとお願いするよ」

笑いながら差し出されたコーヒーをさっそく一口。

……うまい。
焙煎したのをそのまま持ってきたのか。
貴重品をわざわざくれるなんて嬉しいなぁ。

「どうだ?」
「決まってるよ。こんなうまいコーヒーは初めてだ」
「気に入ったならなによりだ」

しばらく無言でコーヒをすすり合う音が部屋に響く。
コーヒーの味と香りが高ぶる神経を完全に沈めてくれた。
ちょうどお互いのコーヒカップの底が顔を出しとたところでレイが話を切り出した。

「キラ・ヤマトのことだが。打撲とムチ打ち。あとは足の単純骨折だった」
「うそだろ? 普通だったら死んでたはずだぞ?」
「事実だ。俺もこの目で見るまで虚偽報告だと思ってたくらいだ」

やっぱ生きてたか。
無傷じゃないだけマシなんだろうと割り切るか。
普通なら圧死か焼死してるはずなんだが。

「そういやキラ・ヤマトの処分はどうなるんだ? 妥当なとこだと死刑になるはずだけど」

機動兵器の無断持ち出し、戦争への無許可介入、さらに機密兵器の無断回収及び修理。さらに保持と言い出したらキリがねーな。
こっちとしても初めて捕獲できたことだし今後の憂いを取り除くためにも縄で出来たネクタイを渡して欲しいところなんだが。

「……シン、本国と通信が取れなくなった」

なん……だと?

「タリア艦長の権限で刑の執行は難しく議長に直接の判断を求めようとした矢先に起きた。調べてみると通信システムのハードとソフトの両方がやられていた」
「おいおい。つまりそれって」
「そう、スパイがいる。それもかなりの人数がいるということだ」

こんな時期からスパイ網が完成しきってるのか。
恐るべしラクス軍団。
そこまで実力あるなら政界に行けばよかったのに。
こりゃ急いで始末つけないと奪取される可能性が出てきたな。
だったら俺がこっそり撃ち殺しておくか?
……暗殺されちゃうからやめとこう。

「じゃあ尋問だけでもしとこうぜ。アイツは目を覚ましたか?」
「まだだ。医師の診察によれば明朝には確実だと言っていた」

誰も信用できん状態から困る。
医務室なんて誰が出入りしても問題ない場所だから余計に面倒だ。
とりあえず先手を打っとくか。

「今から身柄を移動しよて営倉に裸にひん剥いて拘束具で拘束しておこう」
「裸にするのはどうかと思うが……それより医師が許さん」
「フェイス権限で行動する。あとアスランには内密に処理しようぜ」
「賛成だ」

迷いもなく同意するレイ。
躊躇するそぶりすらなかった。
ホントにアスランのこと嫌いなんだな。

「じゃあ今から行動な」
「ずいぶんと急だな」
「思ったときに行動したほうがいい。他の乗組員が一箇所に集まってる今だからこそ性急に行動できる」
「そうか。では準備しながら艦長にだけ話を通しておこう。それと艦の見取り図から監禁に適切な部屋も探しておく」
「頼む」

銃と手榴弾、スモークにECCMを取り出して、と。
盗聴器の探知機も忘れちゃいけないよな。
通信で艦長と話をつけたレイがこっちにOKの合図をくれた。

「いくぞ」
「ああ」

俺達は急いで医務室に向かい、到着するなりすぐさま権限を発動し医者に黙ってもらった。
幸いなことに看護師もパーティーに参加していて部屋には医者しかなかった。
渋る医者へレイが艦長の許可と事情を何度も説明していく中、俺はキラの手足を拘束し終わった。

運良く誰ともすれ違わずレイの指示の通りに進み営倉についた。
ストレッチャーから部屋の簡易ベッドに降ろす。
足がギプスで固定されてるんで上半身だけ裸にして拘束具をつける。
さらに足には電子式とアナログ式の手錠4つで固定して終了。
あとはさるぐつわを噛ませて……。

最後の写真を取るのを忘れちゃいかんな。
レイに扉の前で監視してもらっている間に済ませるか。

ひん剥いて写真を何枚も取っていく。
裸のやつも撮っといたから安心してくれ。
下半身だけ裸にしてはい、チーズ!
しかし毎度のことだがキラのウタマロにはビビる。
急いでネットに晒す準備をせねば。



[25333] 第2話 「混沌の先に」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/15 15:35
他の基地を中継してようやく本国へと短い時間だが通信に成功した。
相手が相手なだけにプラントへ輸送して欲しいと命令を受けた。
通信機器の調査を進めつつ指定した基地へ連行するよう言われ従うこととなった。

その際にキラ・ヤマトの処遇を決める方法の一つとして監禁を進言したら通った。
既に実行していることは当然ながら秘密である。
実際、誰がスパイかわからない状況なので下手すれば奪取されてしまう可能性がある。

ということで、現在は全乗組員が用事なく部屋から出ることが許可されてない。
それこそ艦長自身も。
さらに非戦闘員は完全に隔離した。
整備班もおやっさんが判断した信頼できる部下だけが頑張っている。
こうなると警戒するにしても人手が足らないが指定した基地につくまでの辛抱ということで大体の人が納得した。

それからキラの営倉前にはレイが率いる警備兵が陣を張ることになった。
「憎いあンちくしょうを俺の手で裁いてやる!」と叫び出す人もいたそうなので対策として配置したとか。
俺ですら侵入したら撃ち殺されるほど厳重です。

とにかく信頼できる基地まで全速で2日で到着するという。
それから俺はアークエンジェル対策としてブラストインパルスに座りっぱなしだった。
トイレと風呂を除いて常にコクピットの中というのは恐ろしく疲れた。
そんな長かった苦行もあと2時間ほどで終わる。
できればこのまま来ないで欲しいなぁ。

そう願ったのがフラグだったのか、やっぱ来た。
急いで基地に支援をお願いしたらテロが発生して無理との返事。

やっぱりな!

艦長が援軍としてレイとルナを呼ぼうとしたが止めた。
基地の方もテロリストを制圧するのはすぐに終わる。
少なくとも合流すれば同時に叩ける。
だからここを凌げれば勝つ。
レイも危険なポジションだが他に信頼できる人間がいない。
スパイの猛攻を止められるがレイしかいないんだ。
さらにルナも機体がない。
体が戦闘に耐えれるかどうか微妙なところだ。
正直いって出てこられても足手まといにしかならない。

『それじゃ貴方が独りで戦うことになるわ』
「大丈夫です。基地にたどり着くまでなら持たせてみせます」
『……わかったわ。こっちもルナが出撃できるように整備班にがんばってもらう。やり遂げなさい』

大丈夫。
急いでソフトの設定も直したし整備具合もバッチリだ。
出撃前に何度見直したことか。

『ねえ、本当に大丈夫なの?』
「ルナ? なんで通信を」
『バカっ! 心配だからに決まってるでしょ』
「ありがとう。生きてる砲座で少しでも敵の目を引いてくれ。それだけでもありがたい」
『ゴメンね。あのときザクが壊れなかったら……』
「気にするな。今度なにか奢ってくれよ?」
『アンタねぇ……。もうちょっと気の利いた台詞をいいなさい!』

通信が切られちゃった。
笑ってたし大丈夫だろう。


余裕ぶっこいて出撃した。
調子にのって普段使わないブラスト装備を選んでみた。
敵はたった3機だし艦の支援砲撃と組み合わせれば余裕だろと考えてたんだ。

あの時の俺を絞め殺してやりたい。
ストライクは余裕だけどムラサメがしつこいくらい鬱陶しい。
おまけに特別色のムラサメが他の2機の隙を埋めるようにフォローしてきやがる。
もう一機のノーマルカラーが隙を見つけてはミネルバに特攻かけようとする。
ライフル撃ってもきちんと防ぐし。

なによりアークエンジェルはこっちの攻撃を避けすぎだ。
ブラストの射撃をデカイ図体で避けるなボケっ!
少ないチャンスを無駄にさせやがって……ああエネルギーがもったいない。

わかりきったことだがブラストで空中戦はやりづらい。
エネルギーもどんどん減ってく。
虎の子のミサイルも底を尽きた。
ケルベロスも撃てなくなっちゃったよ。
こうなったらジャベリン一本でやるしかない。

『ザフトのパイロット君、凄いねぇ! こんな凌ぐのはキラ以来だよ!!』
「じゃあ早く堕ちてくれ!」

わざわざオープン回線で軽口を叩いてくるコイツ、なんて名前だっけ?
砂漠の虎だったか獅子だったか。

『それは出来ない相談さ。僕たちにとってキラは大事な仲間だ。仲間を取り返そうとするのは当たり前だろ?』
「テロリストのいうことかー!!」
『キラはテロリストなんかじゃない!』

誰だよ微妙に聞き慣れた声はってオーブの姫さんか。
また鬱陶しいのが。

「そうだなカレーだな」
『なっ!? 人の話はちゃんと聞け!』
「安心してください。首相閣下は洗脳されておられても必ず救出いたします」
『私は自分の意志でここいる!』
「余計にタチ悪いだろ。オーブ代表としてどうよ、それ?」

うん、いい子なんだよ。
アホなとこもあるけど頭は悪くないし真面目だし。
融通聞かないとこもあるけど人望も悪くない。
スタイルもいいしね。抱き枕にすると照れて可愛いんだ。
あんときはお世話になりました。

なんて冗談を言う暇もなくなってきた。
本当にヤバい。

時間もないし相打ち覚悟で突っ込むか?
けど相手も読んでし分が悪いな。

『避けて!』
「!? 了解!」

声に反応して機体を右にそらす。
さっきまで俺がいた場所を高エネルギー砲が通過した。

『なんとかザクは動いたわ。支援するからがんばって』
「サンキュー!」

ツギハギだらけの一見するとスクラップなザクがミネルバの片翼に膝を立てオルトロスをこっちに構えていた。
まともに動くことも出来ないはずなのによくあそこまで修理を。
ルナ、おやっさん、ヨーランにヴィーノ。
この機会は無駄にしないぞ。
心意気に応えて見せる。


もう換装する余裕はない。
ルナだけじゃ押えきれない今、いかに早く相手も倒すかが鍵だろう。
ただザクの射撃で牽制してくれてるおかげで相手も慎重になっている。
十分ありがたい援護射撃だ。
残念だけど射程が足りなくてアークエンジェルには届かない。
これ以上は高望みだな。

「ルナ、もう一機をなんとかして押さえててくれ」
『OK。まっかせなさいよ。私だって赤なのよ』

トランスフェイズ装甲を最低ラインに。
コクピット周りを残して灰色になる機体。
残るエネルギーを搾り出してでもケリをつけてみせる。

まず狙うのは弱いカガリだ。
あとは無視してやる。

『カガリ気を付けろ! 君が狙われている』
『わ、わかった!』

素早くこっちの狙いを看破するのは凄いが実行できるか?
なにせトラブルメーカーなお姫様だぞ。
俺だって苦労しまくったんだ。
クーデターの親衛隊経験をナメんなよ!

最後のレール砲をバラけるように撃つ。
簡単に回避される。
推進剤を使い切る気持ちでストライクとの距離を詰める。
そうはさせないとムラサメは俺を狙っているだろう。
賭けになる。
レーダーと勘を頼りにケルベロスの一門で狙い撃つ。
あと2発!

『ぐお!? そこで撃てるのか?』
『バルトフェルド!?』
『よそ見をするな!』

この隙、貰った!
ジャベリンでサーベルを抑えつけた。
盾の上からでも防ぎきれないだろ?
ゼロ距離でごちそうしてやる。

『キャア!』
『カガリ―――!』

バルトフェルドって名前だったな。
そいつが左肩が吹っ飛んだストライクを慌てて支えに行く。
片足が無くなっていてふらついている。
今なら落とせるだろうが……。

下を見るとルナがピンチだった。
接近したムラサメの攻撃を捌き切れてない。
このままじゃ落とされる。

「ルナ、もう少しだけ我慢しててくれ!」
『……シン!』

ガス欠寸前のスラスターを全開で吹かす。
アラームが鳴り止まない。

アークエンジェルの後部エンジンへが見えた。
これ以上近づけないか。

「一つでも落とせれば……」

正真正銘、最後の一発。
当ててみせる!

「いっけぇー!」

回避行動を見せたアークエンジェル。
予想した進路とややズレた。
けどケルベロスの砲撃はアークエンジェルのエンジンの一つをかすめた。

運良くエンジンが暴発した。

追撃する余裕があるわけなく必死になって降下を制御してる。
まさか地上でAMBCする機会がくるとは思わなかった。
エネルギーもカラッポ同然で微妙にしか動かせないのが悲しい。

それでもやりくりすれば無事に着艦できるはず……?

『見事だザフトレッドのパイロット!』

あのムラサメはバルトフェルド! 近づいてくるってことは。

『君は危険だ。今後のことを考えてここで落とさせてもらう!』

ぎゃー!
くそテメエ卑怯だぞ。こっちは死に体だってのに攻撃するなんて。
さすがはテロリスト。やることが違いすぎる。

エンジン、ダメだ。燃料を使ったら着艦できない。
ジャベリンも起動しない、か。
下手に動くとすぐにエネルギーが切れる。
くそったれ!

「ぐぉ!?」

あーっとインパルス君右足が吹っ飛んだーって何いわせんだ!
今度は左足か。
なんで一思いにコクピットを狙わない?
考える暇はないか。
せめてバルカンで反撃を。

『おっと。そんなのは食らってやれないね』

あっさりかわされた。
バルカンの位置が頭にあればもう少しいけそうなんだけど。
仕方ない。
腕を動かして盾で3射目は防げた。
危ね。コクピット直撃コースかよ。
あ、右腕吹っ飛んだ。

あれだけの腕のパイロットが連発して外すなんてことありえない。
たぶん射撃管制装置がいかれてるな。

ちょっと余裕出てきた。
そういえばと下を見ればルナがムラサメにマウント取られてる。
やべ。サーベルを押し込まれてる。
このままだとルナは殺される。

「だからアークエンジェル軍団は嫌いなんだよ!」

正真正銘、最後の推進剤を使ってその場から脱出した。
向かう先は下。
ルナを殺そうとしてるムラサメ。

『ダコスタ君逃げろ!』

後ろから撃たれるが当たらない。
システムが狂ってるから当然だ。
進路クリア。横風なし。進入角OK。
シン・アスカ、突貫します!

まさにザクのコクピットを貫こうとするムラサメの横からインパルスは突っ込んだ。



さよなら僕のインパルス。

コアスプレンダーの中からムラサメを巻き込んで沈む相棒に敬礼を送る。
こういう使い方もできるの忘れてた。
物資が少ない状況でやりたくなかんだよな。

急いで格納庫に戻り半壊したレイのザクに乗って出撃する。
おやっさんから止められたが時間がない。
外に出るとバルトフェルドのムラサメがもう一機を助けようとしてる場面だった。
ルナがオルトロスを撃とうとするのを止めた。

『なんでよ? 今なら絶対に倒せるのよ』
「……上空のストライクを警戒してくれ。頼む」
『っ~~~~! わかったわよ!』

めっちゃ怒ってる。
あとで謝んないとヤバいな。

「元ザフト軍バルトフェルド。聞こえるか?」
『……ああ、バッチリさ。どういう風の吹き回しだい?」
「少なくとも今回の戦闘は終了した。人命救助してる人間を殺す必要はない」
『甘い、甘いよ。甘いすぎるねぇ。僕たちは必ず君たちの前に立ちふさがる。だったら今撃つべきだ』
「戦争にもルールはある。それを順守しなければお前たちの同類になる。それは嫌だ」
『フン。青臭いことを……』

一応、ライフルで狙ってはいるけど大丈夫だよな?
ザクの調子が悪すぎて戦闘できません。
戦ったら今度こそ死ぬ。

『今回は君に免じて引き上げるとしよう。だが忘れないでくれ。キラがいる限り僕たちは諦めないよ』
「了解した。しっかり覚えておく」

バルトフェルドはムラサメを引き上げミネルバの上方に移動していく。
ついでにカタパルトにブラストの上半身を落っことしてくれた。
部品が使えたら御の字な壊れ具合ですね。
ごめんヨおやっさん……。

ザクも構えを解いてムラサメを見送る。
バルトフェルドのムラサメを支えるように横からストライクが肩を貸す。

長い数分間だった。
誰も一言も話さず息を飲んで互いの動向を見守り合う。
3機を収納したアークエンジェルはこっちを睨むように停滞してた。
暫くして空の向こうに消えていった。



[25333] 第3話 「安寧」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/09 23:52
ヒャッハー! 汚物は消毒だー!

ルナのおっぱいにダイブしてるヨウランの鼻の穴めがけてビールを発射してやる。
奥のほうまでビールが入ったのか激しくむせながらのたうち回るヨウラン。
セクハラされた本人はヨウランを指さしてケタケタ笑う。そして服を脱ぎ始める。
汗に濡れた締まった腹とピンクのブラが白日の目に晒されてしまう。
そんな可哀想なことをさせてはならないな、うん。
ここは一つ、シラフの僕が両手でもって隠させていただきます。
今が駆けるとき。目標のおっぱいを補足。ツインハンドライフル発射します!

あと少しでおやっさんに殴られた。

あと少しで我が悲願が達成できたというに。
床に倒れ伏した俺の背中にヨウランとヴィーノが乗っかって動けない。
そうこうしているうちに他の女性陣にルナは連れて行かれてしまった。
oh……jesus。

まだチャンスはある。
豊満な女性のシンボルを必ず鷲掴みにしてやる。
新たな目標を立ててしまった。
それはいいとして背中に乗ってる二人とも、そろそろ退いていたただけたら幸いなのですが?

「いい加減に降りろよ。重くて動けねー」
「よくも友達の至福の時間を奪ってくれたねシン君。どうしてやろうか」
「ヨウランさん、ここは一つバツゲームなんてどうですか?」
「ほほう? ヴィーノ君には何かいい考えがあるのかね?」

激・嫌な予感。
ヴィーノが指を鳴らすと何故かレイが『もしもしボックス☆』と書かれた箱を持ってきた。
お前何してんの?





アークエンジェル軍団の撃退に成功した後、必死こいて半壊のMSを操作しミネルバに戻った。
コクピットから降り疲れた体に活を入れ一歩踏み出した俺の前に並ぶルナとおやっさんを筆頭にした整備員軍団たち。

「お疲れ様」と一人ひとり熱い肉体言語をプレゼントしてくれる愉快な仲間たち。
嬉しさのあまり流れたのは心の汗だ。
疲労困憊の上さらにフルボッコという状態でタリア艦長に報告にいったら驚かれた。
そんなに戦闘が激しかったのかと沈痛な面持ちで声をかけられ「違います」と言えなかった俺を許してください。
あの夜の包容力を覚えさせたあなたが悪いんで俺は悪くない。

今すぐに眠たいが自室で基地につくまで我慢して待機しておくよう命令された。
基地とは目視できる距離まで近付いているが念のためだとか。
たぶん襲ってくることはないと思う。

時間があいた今のうちに隠し場所にあるPCにキラの写真のデータを入れておこう。
どうやって加工すれば面白カッコイイぜ☆な絵になるんだろう。
悩む。
アーサー副艦長が噴出すレベルに加工すれば。
それともアビー副操縦士が「データを寄こせ」と脅してくるレベルにするか?
一般ネタか特定ネタか。どっちに絞ればいいんだろう。

ウンウン唸って考えてたらいつのまにか船が止まっていた。
窓の外を見るとごつい機械や作業服を来た人たちが集まってきている。
もう基地に着いたみたいだ。
しかたないので海苔で重要な部分を隠すだけにとどまる。
この海苔もでかくてインパクトはあるがもっといけるはず……。
帰ったら再編集だな。

元の場所にPCを隠し身なりを整えているとレイが戻ってきた。
目の下にクマが出来ている。
冷蔵庫から栄養ドリンクを渡すと砂漠の中にオアシスでも見つけたかのような勢いで一気飲みした。
本当に疲れてたんだなぁ。

「基地についた。これから交換手続きがあるから集まるようにと命令だ」
「マジかよ。一応準備はしてたけど辛いな。眠てしかたない……」
「俺もだ。とにかく行こう」

愚痴っても仕方ないので素直にレイと艦橋に移動する。
途中でルナとも合流し一緒に行くことに。
まだ戦闘のときのことを根に持ってるのか睨んでくきます。
僕はHAHAHAと乾いた笑いで逃げるしかできません。
艦橋に着くまで針のむしろにいるようだった。

艦橋に着くと微妙にタリア艦長とアーサー副艦長が小物臭のする基地司令官とあーだこーだのやり取りをしていた。
ひとまず挨拶し経緯を見守る。
聞こえてくる内容は主にキラをどう取り扱うべきかで一貫していた。
結局は俺とレイがアーサー副艦長と交えて話し合った案が通った。

アーサー副艦長も影でホッとしていないで胸を張ればいいのに。
なんだかんだで俺達の拙い意見を綺麗に纏めてくれた能力はかなりのもんだよ?
仕方ないから今度いいお店でも紹介するとしよう。

話し合いの結果、キラは基地の施設の修理が終わるまでミネルバの営倉に放りこむことになった。
テロリストが狙ったように基地の収容所を攻撃したせいで入れられないらしい。

砂漠の虎め。ここまで用意周到とは恐れいった。
それで追撃をかけてこなかったのか。
次に会ったら万全の状態で落としてやる。
密かに次の目標を胸に秘め熱血してると嬉しいお知らせが。

なんと酒盛りができるらしい!

え? 未成年の飲酒はいけないって?
ザフトの法律だとOKだから大丈夫。
こういう趣味に寛容なところはザフトが一番だ。
それでラクスにフリーダムを盗まれたんだろうけど今は感謝しておく。

汚してもいい基地の一室を貸し出す上に、ご丁寧にも会場の準備をしておくとのこと。
イヤッホウ! 眠気も吹っ飛ぶぜ。
艦内放送で知らせを流したとたん、艦が揺れた。
どれだけ鬱憤たまってたんだろう。
もしかしてこれも計算して宴会をさせてくれたのか?
なんにしても基地司令官殿もやりますな。
大いに楽しませてもらいます!

退艦許可書を発行してもらった人から順々に会場へと急いでいった。
俺も同じ穴のムジナ。レイとルナを引っ張り急ぐ急ぐ。

会場はかなり広かった。
これなら盛大に騒げるぜと意気込む整備班が会場のセッティングを意気揚々と始め、コック達がキッチンへ急ぐ。
手の空いた者は率先して飾り付けをしているので手伝うことに。

ものの1時間で会場は出来上がり、残すは料理だけだ。
まだ30分ほどかかると連絡があったのでもう一度シャワーを浴びてスッキリすることにした。

広い風呂場で湯船に浸かりリフレッシュして会場に戻ると美味そうな匂いが……ヨダレ出てきた。
人もだいたい集まったところで宴は始まった。



やっぱ現地の酒はうまい!
飯もツマミも最高。
特に魚、鮮度抜群だ。
好きなだけ飲み食いできるなんて幸せすぎる。
寝不足なのも影響して気分は最高にハイッってやつだ!
無愛想なレイも今ばかりは笑いまくってる。

不機嫌だったルナに酒の力を借り拝み倒したら許してくれた。
俺が飯をおごるハメになったが一向にかまわん。

「わかった。そのデートは気合を入れていくよ」
「ちょ、なによそれ! 私は別にそんな気じゃ……」
「俺が勝手に思ってるだけだって!」
「もう! 悪い気はしないけどね……」

照れ隠しにルナは近くのグラスを一気飲みした。
俺も飲んだやつだけどブラッディマリーだったが大丈夫か?

おもしろいから黙ってよ。




そして冒頭に至る。


目を覚ますと女性陣がルナを連行していた。
倒れてる位置からはルナのスカートがベストアングルです。
ミニスカを履く君が悪いのだ。

神秘のトライアングルを満足するまで拝みたかったがヨウランさんの笑顔が怖いんで自重した。
二人とも背中から降りてくれたが両脇をがっちり固められちょっと抜け出せない。
目の前の笑顔のレイが嬉しそうに上に一箇所だけ大きな穴の開いた箱を俺に差し出した。

「中にある紙を一枚引いてくれ。それを実行すれば許してやる」
「『鼻の穴からスパゲティを食え』とかだったらマジで抵抗するぞ?」
「そんなもん見てもつまらんだろ。このヴィーノ様が選んだ罰だから安心しろ」
「余計不安だ」

仕方ない。
俺が悪かったし言うとおりにしておこう。
じゃあさっそく引かせてもらおう。
……これだ。

「うし、引いたぞ」
「ちょっと待ってろ。ふむふむ……『女装して全員に酌をしろ』か。普通のに当たったな」
「あ、俺ちょっと急用思い出したから戻る」

さっと出口までの距離を目測。
大股で8歩か。
人もいない絶交のチャンス。
大きく一歩を踏み出して、コケた。

「くそっ離せレイ! 後生だから見逃してくれー!」
「約束は守るべきだ。気にするな、俺は気にしない」
「おーい、誰かシンに女装させてくれるヤツはいないかー?」
「集めるなー!」
「私、やってみたい」
「アビー!?」

おやっさんまで悪ノリしないでくれよ。
いかん、もう逃げられない。

「やめろマジぶっ飛ばずぞ!」
「男なのに肌がきめ細かいですね。化粧のしがいがあります」
「ビデオの準備できたぞ」
「やめてぇ!」

ああ、もうダメだ。
さよなら俺、こんにちは新しい僕。
父さん、母さん、マユ。
俺は新しい道を逝きます。
どうか見ないで貰えると嬉しいです。

『こんな面白そうな物を見逃すわけにはいかない』

なんで三人とも同じ答えを―――!!





アレですね。抵抗は無駄でした。
バッチリメイクさせられた上に下着まで付けることになるとは……。
下だけはボクサーパンツで納得してもらったがブラジャーとか誰得よ。
ちゃんと詰め物してるのが余計に惨めにしてくれる。
鏡で自分の姿を見て「イケるんじゃね?」と思ったのが一番のショックだった。

「さーシン子ちゃんに酌をして欲しい人は手を上げてくださーい!」

「「「「「「はーい!!!」」」」」

「全員ですね。ではシン子ちゃん頑張って下さい!」
「やればいいんだろチクショー!」



僕は今日、大人になりました。





サバトも過ぎ去り正気を保ってる男衆総出の片付けも終わった。
最後の最後まで女装のまんまだった。
終わって速攻で着替えて自室へダッシュした。
ベッドに倒れこむと凄く気持ちイイ。
化粧臭え。またシャワーに浴びないと。
浴びなきゃ……浴びるんだ。
眠気をごまかしてシャワーを浴びて頭も半乾きのまま俺は眠った。

目が覚めたら昼前でした。
うわー寝過ぎだろ。
隣のベッドでレイは熟睡している。
頭を触ると寝ぐせが凄いことに。
シャワー浴びよ。

人心地つき部屋に戻ると見事に酒臭い。
あーこりゃやべーな。
換気扇を回し、レイの枕元に水差しと薬を置いて部屋を出た。
生きろ……。


ミネルバを降りて艦長のいる部屋に着いた。
警戒態勢で少しピリピリしてる人たちに睨まれる。
物怖じしてないのを装ってタリア艦長の前まで移動した。

「シンじゃない。なにか用事?」
「あの、外出許可が欲しいんですけど出来ますかね?」
「あら。さっそく落としたコとデート? 手が早いわね」
「デートなのは認めます。でもそんなんじゃありませんよ」

大人の余裕でいなされる。
これが熟女の底力か。

「そうねぇ。司令官、部下数名の外出許可は可能でしょうか?」
「近くの町までなら車ですぐの距離ですし問題ないかと」
「と、いうことで許可します」

やけに艦長ニヤニヤしてる。
司令官、アンタらもか。
よくよく見れば俺を睨んでた人たちもニヤけてるし。
今回は本当にデートだけだっての!
別に普通だよな。

無事(?)に許可ももらえたところでルナを誘いに行く。
部屋をノックするとメイリンが出てきた。
なんか睨まれた。

「ルナは起きてるか?」
「今シャワーを浴びてます。あと30分したら来て下さい」
「わかった。あり<ガシャン>う」

……怒るようなことしたっけ?
仕方ない。食堂で軽くつまんでこよう。

食堂で偶然出会ったヴィーノからデータを受け取れた。
すっかり忘れてた。危なかった。
我慢できずにその場でチェックしてみた。

ローアングルで撮影されたカメラの映像の中、様々な色の逆三角が映しだされる。
途中から嬌声が入りカメラが向いたその先にはあられもない姿のルナが。

「パーフェクトだヴィーノ」
「感謝の極み」

札を3枚握らせて別れた。


などという些細なやりとりも終わりルナの部屋の前に再びいる。
予定した時間より20分過ぎたけど大丈夫だろう。

「ルナー? いるかー?」
『シン? 開けていいわよ』

部屋の中にルナしかいない。
よかった。また睨まれるかと思った。

「メイリンは?」
「なんか仕事があるって行っちゃった。それより用事って何?」
「都合着いたら今日、一緒に食事いかないか?」
「へ?」

本人、思い切り忘れてたとさ。
「冗談だと思ってた」なんて言うなよ。男として悲し過ぎる。
冷めた目で睨んでたら慌てだした。
やっぱ忘れてやがったな。

「そんなことより許可とったの?」
「艦長直々にOK貰った。車も使っていいってさ」
「ふ、ふーん? それで何時からいくの?」
「あと2時間くらい後を予定してるけど」
「オッケー! じゃあ2時間後に基地ゲート前で集合ね!」

言い放つと扉を閉じられた。
大急ぎで服を見繕ってるんだろうな。
俺も準備しとこ。



[25333] 第4話 「日常」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/11 13:32
俺は服に対してあまりセンスがない。
基本的に服屋の店員にコーディネートしてもらったのを纏めて買っている。
さらに着こなし方もメモさせてもらっている。
そのメモのとおりに服を着こなして準備は完了した。
副業で肥えた財布と携帯も持ったしいつでも出れる。

約束の時間まで30分前。
そろそろ待ち合わせの場所に用意してもらった車で移動する。

着いた門の前にはルナがいた。
何度も時計で時間を確認したが約束の時間までまだ25分もある。
早すぎじゃね?
そわそわと落ち着かない様子で時計と冊子を交互ににらめっこしてるのが可愛い。

「ずいぶん早いな~」
「そう? 30分前行動は基本よ」

なんでもなさそうに言う割に服は気合入ってますね。
スカートの丈もさらに短くなってるような。
瑞々しい白い肌に映える黒のニーソックス。
いい仕事してますねぇ~。

「それより早く行きましょう。食事の前にショッピングよ!」
「おい引っ張るなよ」

運転席に押し込むな。
暗いより明るいほうがデートも楽しいけど浮かれすぎ。
クスリでもキメたか?
横目でのぞき見ても鼻歌を歌い出しそうなくらいご機嫌なのが顔に出てる。
う~ん。特に親しくした覚えはないはずだが。

汗で透けたシャツを盗撮とか。
靴に仕掛けた隠しカメラにパンツを収めたとか。
格闘訓練にかこつけてあちこち触りまくったとか。
愚痴に付き合うかわりに体を舐め回すように眺めたとか。

碌なことはしてないはずなんだが。

傍目から見れば難しい顔をする男とやたらハイになってる女の怪しい二人組。
道行く人が怯えた顔でこっちを見てることに最後まで気付くことはなかった。


地図に指示してある場所に車を預けてショッピングへ。
おもったより町は繁盛してるらしく商店がたくさん並び活気にあふれてる。
さっそく最寄のよさげなファッションショップへ突撃するルナ。
苦笑いして俺もあとに続く。


いきなりランジェリーコーナーから買うのかよ。
どうてみても罰ゲームです。本当にありがとうございました。

「シ~~ン。これなんてどう?」

真っ赤に燃えた太陽のブラを胸元にもってくるな。
俺はむしろ前に見せてくれたようなピンク系のほうが。
こら、ストライプの上下とか反則だろ。
お前どこで勉強した?

「大胆な彼女ですね? 活発そうなので逆に大人しい感じの服もいいですよ」

店員め。
連れてる女が彼女かどうかなんぞ関係なく男が貢ぎそうな匂いを嗅ぎつけたな。
ぜひお願いします。
もういくらでもつられちゃう。
お嬢様プレイを所望しても断られまくったんだもん
奮発しますんで見事なコーディネートに期待させてください!

「おまかせあれオホホホ!」
「え? なんです、ちょ、どこ連れて行くんですか!」
「服を見繕ってくれるってさ」
「さー行きましょうね~。大丈夫よ彼氏さんが気に入るようバッチリおめかししてあげるわオホホホ!!」

面白そうだと暇そうな店員も寄ってきた。
助けを縋るまなざしを向けてくるルナ。
いと萌ゆるナリ。

「ルナ」
「シン、助け……」
「グッドラック」
「いやぁー!?」

今のうち金を下ろしに行こう。
20万あれば足りるだろ。

「ブラボー! おお…… ブラボー!!」

様変わりしたルナを見た瞬間に叫んでた。
イイ、実にいい。ウィッグでも長髪を見るのは初めてだ。
照れた上目遣いとか指で髪をいじる仕草とか。
パイロット家業で体が締まってるおかげで華奢な感じがしてたまらない。

「店員さんたち。ありがとうございました!」
「こちらこそ楽しませていただきました」

さりげなく渡された領収書は8万だった。
思ったよか安かったな。
レジでニコニコ現金一括払いして元々着てた服が入った袋を受け取る。
なんか店員たちから色々アドバイスを言われては顔を赤くして戸惑ルナの姿。支払いをしてくれた最初の店員さんが手に持ったデジカメでその姿を映してた。
迷うこと無く札を数枚手渡し買い取る。

「今日のことは忘れません」
「たくさん買い物して頂きまして誠にありがとうございました。これは支配人からのメッセージです。お受け取り下さい」

カードには買い物してくれたことへの感謝と支配人のサイン。そしてレストランの名前。

「これって?」

聞くとデートしているカップルの男に支配人が渡すそうだ。
レストランのオーナーは古くからの友人でこのカードを見せれば融通が聞くという。

「ここってネットや雑誌に絶対載せないお店なんです。関係者か紹介がないと入れないんです。いい機会でなので行かれてみてはどうでしょう?」

ここまで押してくるということはハズレはないか。
金も余ってるし行くことにしよう。

「じゃあ連絡をしといてください。今からすぐ行きます」
「かしこまりました」

まだ店員に弄られてたのか。
そろそろ解放してあげてください。

「ルナ~! そろそろ飯に行こうぜ」
「いいけど着替えたいから袋渡して」
「似合ってるよ? 着替える必要ないって」
「恥ずかしいのよ! それに私のキャラじゃないし……」
「ルナ。君は実にバカだなぁ」

殴るなよ。
店員さんたちが驚いてるだろ。
肩口から覗いてたブラは白か。細かいレースが眩しいぜ。

「ここに知り合いは誰もいないんだぜ。いつもと違ったことしたって気にするな。俺は気にしない」
「あんたって本当に鈍感よねぇ。悩んでた私がバカみたいじゃない」

いつもの調子に戻ってきたな。
これでこそルナマリア・ホーク。

「エスコートをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「喜んで」

差し出された手に口づけをする。
ニヤニヤする店員たち。

そしてルナ。いくら知り合いがいないからといって油断は禁物だ。
横からビデオ録画してた店員さんもいるんだぜ?

あとでデータくださいね?

楽しい時間も終わって最高の気分で基地に戻ってきた。
真に遺憾だがルナは服を着替えてしまった。
ウィッグを外し忘れてるあたりがルナらしい。

「さすがに知り合いの前だと恥ずかしい」

お前は俺を萌え殺す気か!


滞り無く基地に帰ってきた。
多少の金はかかったけど楽しかったな。

車を預けルナと歩いてミネルバに戻る。
みんなへのお土産もバッチリ買ったし貴重なデータも手に入った。
こんなに嬉しいことはない。
さっそくレイから配ろうと考えてたらアスランが俺に近付いて来た。
その後方からレイが慌てて駆け寄ってくる。

「二人ともちょうどよかった。これお土産です」
「お前ってやつは!」
「ありがとうございますっ!?」

アスランに殴られた。
めっちゃ痛い。

「ちょっと大丈夫? アスラン、いきなり殴るなんて、どういうつもりなんです」
「ルナマリアどいてくれ」
「今のアスランはおかしいです!」

激昂するルナを宥めてアスランと対峙する。
「怒り心頭なり」と少々逝っちゃってる目のアスラン。

そんなアスランから庇うようにルナは俺の頭を抱き抱えた。
目の前におっぱいがいっぱいだ。
なんという柔らかさ。いい匂いもする。
理想郷はここにあったのか。

しかし女に守られてばっかなのは俺の沽券にかかわる。
非常に残念だがルナの胸の中から脱出しアスランと対峙した。

「殴ったのはキラ・ヤマトを討ったからですか? アスランだってコテンパンにやられて悔しいはずでしょう?」
「……俺は、キラに討たれたことは気にしてなんかいない。お前が戦おうとしなかったキラを無理やり倒したのが許せないだけだ!」

なんでやねん!
仮にもフェイスが手も足も出ずに撃墜されたなんて憤死モンだぞ。
普通だったら俺に感謝とか憎まれ口とか叩くかも知れないけど。
一方的に殴られるいわれなんてねーよ。

レイが俺とアスランの間に割り込んできた。
おでこにはうっすらと青筋が。
切れかけてますね。

「アスランいい加減にしてください。それ以上シンに暴行を加えるなら拘束させてもらいます」
「キラは…お前を殺そうとはしていなかった!いつだってあいつはそんなこと!」

コクピットを狙われたの見てなかったんかい!
もう少しで体がバラバラになってたよ。

「キラもアークエンジェルも敵じゃないんだ!」

「「「その理屈はおかしい」」」

俺とルナとレイ、三人はアスランのその言語に突っ込んでしまう。

「以前に攻撃受けたわけですし。どう考えても敵ですよ」
「ちょっとレイ。アスランどうしちゃったの?」
「わからん。念のため精密検査をうけてもらおう」

ヒソヒソと頭を近づけて話す俺たちを尻目にアスランは頷いて震えております。
もしかして爆発する?

「アスラン。言いたいことがあるなら別室に行きましょう。ここは人の目がありすぎる」

現在進行形で注目の的である。
そこの外野ども、俺がアスランからルナを寝とったとか根拠のないこというな。
昔にメイリンを寝とったことはあるが今はやってない!
それに寝取りキラーは営倉にいるじゃないか。

ふてくされるアスランを宥める。ちゃんと状況を理解させる。
両方しなくちゃならないのが辛い所だよ。
覚悟はいいか。俺はできている。

『報告。パイロットのシン・アスカ、レイ・ザ・バレル、アスラン・ザラの三名は至急、基地司令室に急行してください。繰り返します……』


出鼻くじかれた。



[25333] 第5話 「新たな力」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/12 20:43
「……」
「……」
「……」

シン・アスカです。突然ですが現場の空気が最悪です。
一番年長者で実力派のアスランがふて腐れてます。
同僚のレイまで露骨に不機嫌丸出しです。
どうしたらいいのでしょうか?

議長なんて顔が引き攣ってるんだぞ。
せっかくの新型のお披露目なんだからテンション上げていこうぜ。

「す、凄いですね! これが新型ですか」
「そ、そうだ。ZGMF-X42Sを元に再設計された機体ZGMF-43S。通称デスティニーだ」

おお、俺の意見を取り入れてくたんだ。
睡眠時間削って嘆願書を送りまくったかいがあった。
それにしても
見た目はいつもと一緒ですね。
特別に変わった感じはしないんですが。

「動力部の見直しから始まり部品や武装を一部ザクなどの主力MSと共通化したそうだ。そのため整備性も上がり武装もパイロットの裁量で選択しやすくなっているんだよ」

想像よりも便利になってて感動した。
これでおやっさんに泣かれずにすみます。
いっつもディスティニーで戦ったあと整備性が最悪だと愚痴られまくって肩身が狭かったんです。


「こちらはZGMF-X19Aインフィニットジャスティス。アスラン、君の後継機だ」

相変わらず「トサカに来たぜー!」と叫びたくなるフォルムの機体。
格闘機なのに当たり判定が多いとはいかに。
使いやすいがリフレクターを取り外すのは微妙だった。
たまに撃墜されたし。
機動力ガタ落ちしたあとは空からフルボッコされて惨敗したときもあったなぁ。
あんときはシュミレーターだったことに感謝した。

「レイ。君のMSであるZGMF-X666Sレジェンドはシンのディスティニーとの連携も視野に入れて開発したMSだ」

感慨に浸ってたら話が進んでいたでござる。
いつのまにやらアスランとレイは真剣に話を聞いている。
俺の心配を返して!

「ディスティニーが奇襲をかけジャスティスが斬り込む。二機の隙をなくすためレジェンドが遠距離から援護する。これが理想とするポジションだ」

見事などや顔です議長。
前大戦じゃフリーダムとジャスティスがパクられて少数精鋭のチームワークできなかったらしい。
やっと実現できるんでテンション上がってるんだろうな。

「私は反対です」

レイー!?
いきなりどうしたんだ。
まさかの反抗期か。
中二病はとっくの昔に二人で乗り越えたじゃないか。

「理由を聞かせてくれないか?」

ちらりと横目で視線が来た。
俺も参加しろってんですか。
勘弁して下さい。

「アスランは過去に脱走経験があります。復帰し任務に誠実に対応してたならば私もこのようなことは言い出しません」

迂遠に「お前の信頼ねぇがら!」と言いたいわけだな。
確かにほぼ無抵抗でセイバーをダルマにされて落とされる。
なぜか敵であるテロリストを庇う。
今までが優遇されすぎてたってわけですよ。
わかったかそこの脱走兵。

「ふむ。ではシンとしてはどうしたい? こちらとしてはせっかくの機会を無碍にしたくないのだが」

はーい。無茶振りきましたー。
どっちの意見をとっても角がたつじゃないですか。

「俺としても。残念ですがレイに同意です。信用はできても信頼ができません」

ちょっと驚いた議長。
アスランは地味に傷ついてる。

アンタいきなり人を殴りつけたでしょうが。
これでも大分優しくしてんですよ。
簡単に落ち込まないでください。
だいたい仲の良い友達のほうを取るのは当然じゃないですか。
俺よかキラを擁護してたからこれでお相子です。

再びの沈黙が訪れた。
心なしかインフィニットジャスティスが泣いてるように見える。

なんとか議長の必死のフォローのかいあってレイは渋々、本当に渋々アスランの機体の受領を受け入れた。
本っっっ当に嫌そうだった。

アスランもいいとこあるよ。
結構面倒見がいい、冷静になりきれない、何を言っているかわからない、赤服のTOPだったから技能はいける。
ほら、こんなに沢山あるじゃないか。

あまりにも嫌がるのでインフィニットジャスティスの起動キーはレイに預けられた。
アスランに渡されたのはサブである。
仮に戦闘中に裏切り行為があった場合、特定のシグナルを出すことですぐに起動停止するらしい。
追い打ちにレイが近くにいないとインフィニットジャスティスを機動すらできなくなった。

これらのシステムは昔、フリーダムとジャスティスが奪われた教訓のたまものだそうだ。
と議長はこっそり俺にだけ教えてくれた。
……お疲れ様です。

話も終わり二人はミネルバにもどっていった。
なぜか俺だけ議長に呼び止められお茶会をしてる不思議!

「君にはお礼を言わなければならない」
「え?」

さっきの殺伐とした状況を作り出した原因の一人にですか?
議長、あなた疲れてますよ。

とは言わないのが俺クオリティ。

「私が知っているレイは人見知りしてたんだよ。アカデミーに入学したときも他人とは境界線をきっちり分けてた」
「あのレイがですか」
「そうだ。だが君と出会い生活を共にしていくにつれ我儘も言い出すようになってね。保護者としてこれほど嬉しいこともない」

最後に炎の中、議長の手を握りながら「お父さん!」と叫んでたのは光景。今でも記憶に焼き付いてます。
間違いなく議長はレイのお父さんです。

「だが今回のような事は予想外すぎた。よほど鬱憤が溜まっていたんだろうね……」

事件は現場で起きてるんです。
そりゃストレスもウナギ登りってもんです。
特にキラを捕縛しちゃったからなぁ。
警備のやり取りで疲れてもいましたからね。

「いえ、今回のケースは正当な理由があります。レイは正しいと思います」
「そう言ってもらえると助かる。しかしこうなるとアスランの籍をミネルバに置いておくのも心配だ。かといって本国に返すのもなかなか難しい」

眉間にシワを寄せてウンウン唸り出す議長。
アスランの処遇かぁ。
たいていキラのほうに転がり落ちますんでこのままだと確実に裏切られますです、はい。
綺麗サッパリ切り捨てるのが一番ですよ。
しかしだ。
なまじパイロット技能と頭が切れるもんだから敵に回すと面倒くさいことこの上ない。

「体に爆弾でも埋め込んどきます? ミネルバから10キロ離れたらボンッ……みたいなのでどうでしょう?」
「人道的観点から認められないよ。だが首輪をつけるという案はいいね」
「首輪に人手を割くくらいなら監禁しとくのも手ですよ。もしくは連合側の国に預けるのは?」
「……たまに君の考えからテロリストのような印象を受けるね」
「そうですか? 昔の国はけっこう似たようなことやってました」

自白剤で人格破壊はデフォルトだったみたいです。

あーだこーだと1時間話したが結論は出なかった。
結局は現状維持で収まるみたいだ。
ただ人員が少ないので何人かパイロットを送ってくれるという。
やっと寝不足の日々から開放される。

「議長。その人員って誰なんですか?」
「うん? 君もよく知ってる人物だよ」

胡散くさい笑顔をありがとうございました。



[25333] 第6話 「さまよう眸」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/17 14:26
「ミクに俺のヒットチャートを覚えさせるまで死ぬわけ無いだろ!」

笑顔と共に現れたハイネの一言目でした。
/(^o^)\ナンテコッタイ

原因は分かってる。俺だ。
昔に流行ったボーカロイドなんてソフトを教えなければこんなことには。
ここまでハマると誰も予想できねーよ。
さりげなくオリコンチャート(地球版)200位にランクインしてるのが恐ろしい。
パイロット職しながらこれなら戦争終わったらマジで世界トップ歌手になれる。

「シンには感謝してる。こんな楽しいことを教えてくれただけじゃなく命まで救ってもらった。」

ステラに殺されないようタッグを組んだ甲斐があった。
グフが大破したときは「あーこりゃ駄目かもしんないね」と思ったら当たり所がよくて生きてた。
急いで本国に送還する際に「俺のパソコンを……」とつぶやき続ける姿に敬礼を送ったことを鮮明に覚えてる。

「ちなみに俺のMSは新しく搬入したインパルスだとよ。それよか本国の部下を連れて来たかったが……すまん」
「いいですよ。ハイネだけでも十分頼りになりますって」
「そう言ってもらえると助かる。これから設定しなくちゃならないんで行くわ。あとでみんなで飯でも食おうぜ」

あいかわらずのテンションで安心した。
ところで小脇に抱えているノートパソコンはデータ構築用ですよね?
さりげなく初音ミクのシルエットが刻印されていて不安なんですが。

とりあえず見なかったことにした。



ミネルバのMS構成はデスティニーに俺。レジェンドにレイ。インフィニットジャスティスにアスラン。インパルスそれぞれにルナとハイネの5機構成になった。

ハイネは自分のインパルスの調整が終わってすぐにシミュレーションルームでパイロットを集めてミーティングを始めた。
現在のミネルバは柔軟なフォーメーションが組める機体が揃っている。パイロットの腕も確かで派遣部隊としても十分やっていけるほどだ。
同時に個人主義が拭えないザフト軍の意識改革の布石としてフォーメーションのデータ収集のための訓練も行っていく。

「そのデータとパイロットの腕前により友軍が危機に陥っても戦線を持ち直す、さらには押し返すようにしてくれ」

とハイネは話を切り出した。
全員ぽかーん状態。

「簡単にいえば超万能部隊として活躍しろってことらしい」

ハイネ、笑いながら言う台詞じゃない。

「しかし可能なんですか?」
「少数精鋭って聞こえはいいけど多勢に無勢だと潰されちゃうわ」
「俺もそう思う。せめてあと3人パイロットがいれば」

三人の言い分をうんうん頷いて聞き取り終わると嬉しそうに笑った。

「その通り! そんな部隊は無理だ。だが目標として設定するのはいいことだろ?」

さらに呆れる俺たち。
わかってるなら増員してもらいたい。
前みたいに一人で戦うなんてゴメンだ。


グダグダで不毛なミーティングはかなり早く終わった。
俺達は微妙な空気の中、シミュレーションで自分の訓練を始める。

小一時間経ち俺が出たのを皮切りに男3人も続けて出てきた。
シミュレーターはルナを除けば全員が慣れたもんで、おおよその戦闘ができる程度まで熟成してる。
ザクよりパワーのあるインパルスをルナは今ひとつ扱いきれてない。
ルナには悪いが暫く一人でシミュレーターに篭ってもらおう。
ハイネに聞いておかないといけないことがあるんだ。

ハイネに声をかけ報告することがあるとレイとアスランに話をし二人で食堂に向かった。



「ハイネ、一コーヒーでもどうです?」
「いーねー。ついでにミクの様子も見せてやるよ」

勘弁してくれ。
なんでいつもパソコンを持ち歩いているんだよ。
食堂の空いてる席に座ってコーヒーを待ってる間、ハイネから洗練された初音ミクの歌と踊りを拝聴。疲れを飲み干して質問を切り出す。

「ミーティングの命令。あれって本当なんでしょ?」
「ふふーん? あんな馬鹿げた命令が来るわけないだろ。本気にすんなよ」
「いや、ハイネの目は本気でした」

くだけた表情から一変、鋭い眼つきで周囲を見渡し小声で話し始めた。

「大真面目だ。このままだとザフト軍を維持できない。ただでさえ前戦争で人手が減ったのにすぐに戦争だ。人が足りないんだよ」
「それで組織戦を固めようとしたんですね」
「……個人プレーを悪くいう気はない。俺も好きだしな。でも連合側の数に対応しなくちゃならない。だからこそ対抗するための手段が必要だ」
「それでバランスよく部隊編成できる機体を集中して送り込んできたんですか」

面白くないがな。と言い放ち乱暴に残っていたコーヒーを飲み干すハイネ。その表情が渋いのは不味いコーヒーを飲んだからだけじゃないだろう。

「迎撃用のMSだったフリーダムが還ってきたのは僥倖だった。これで迎撃用MSの開発が一気に進む」
「迎撃用?」
「ああ。マルチロックシステムの開発が難航してたんだ。ザクやゲイツにフリーダムのバックパックを組み込んで数を用意してな。そのためのシステムだ」

あんなシステムで無双できるのはキラくらいだからな。
普通の赤服でも命中率は7割くらいのはず。

「恐らく議長は迎撃体制が整いきれるまで時間稼ぎをしたいんだろう。地球圏で俺たちに注目を集めさせたいんだ」
「だからあんな意味不明な命令まで……」
「俺達が時間を作れば本国が安全になる。そうすれば人員を前線なり民間なりに戻せるんだ。俺は議長の考えを尊重したい」

寂しそうな顔。
馬鹿な命令をしなければならないほど危機的状況なんだな。


「そして生き延びたらヒットチャートを……」

台無しだよコンチクショウ!



ハイネとの頭痛が痛い会話を切り上げ部屋に戻ってちょっと眠った。
正味15分ほどで目を覚ましシャワーを浴びてリフレッシュしてシミュレーターにもう一度向かう。
艦内はキラ・ヤマトがいるせいで戒厳令が解かれておらず行き交う仲間たちはうんざりした顔ばかりだ。

本当なら本国に送るべきだという主張もあったようだ。
襲撃されて奪還される恐れが高いのできないらしい。

・・・・・・そこは「出来ますよ!」と主張する部分では?

たぶんラクス・クラインの威光のせいだろうな。

「なんで戦場でしゃしゃり出た小娘の発言を意識するの? 馬鹿なの? 死ぬの?」

と声に出して撃ち殺されたときもあったなぁ……。


なんて感傷に浸ってたら着いた。
まだルナは続けていたらしく部屋の湿気が凄いことに。
……なんか背徳的な感じがしていいね!

しかし訓練開始から既に5時間は越えている。
あまり根を詰めて疲労を残すようなことになると大変なので止めることにした。

「そろそろ休めよ。まだ仕事があるんだぞ」
「もうちょっとなのよ。もうちょっとでコツが掴めそうなの」
「わかったわかった。最後に俺も付き合ってやるよ」
「ホント?」
「元愛機だったからまかせとけ」

というわけで。
ルナを膝の上に載せてシュミレーターにいます。
疲れて頭が回らないルナは俺の申し出をあっさり受け入れちゃった。
べ、別に狙ってやったんじゃないんだからね!
勘違いするなよ!

「ターンするときはこんな感じで、次はスロットをこう……てな具合」
「えっと……ここでこうして……出来た!」
「上手いぞルナ。基本動作はこれを軸にすればいい。時間がないからフォースシルエットを中心に鍛えとけば後は応用だけだ」
「ありがとう。ん~~~~~~っ……疲れたぁ」

安心して力が抜けたのかルナは体を俺の胸に預けてくる。
いいなぁ。こういうのいいなぁ。
ここで一句。

上から見えるおっぱいの 凄まじきこと山の如し。
シン・アスカ心の俳句

隠しカメラは、ちゃんとあった。
流石はヴィーノ。
あとでパソコンに保存しとこ。
ヨウランに採点してもらわないとな。
今回はいいとこまで行くだろう。

乱れた呼吸も収まってきてルナの揺れる頂き達も沈静化してきた。
俺も十分に堪能できたので満足。
よろめくルナの体を支えて一緒に立ち上がり、備え付けのタオルとドリンクを手渡した。
貪るように一気飲みしタオルで乱雑に頭をかいてさっぱりした表情を浮かべた。

頬を赤く染め心なしか潤んだ瞳に一瞬みとれた。
パイロットスーツっていうのがまたいいよな。

「ありがとうシン。おかげでなんとかなりそうだわ」
「別にいいさ。それよりシャワーを浴びてこいよ。ぶっちゃけ汗臭いぞ」
「もう……そういうこといわないでよね」

あれ? なんか指を絡めてモジモジしちゃったよ。
デレ期、デレ期なのか?
馬鹿な。まだアスランとメイリンを撃墜してないぞ。

甘酸っぱい空気の中で俺は激しく混乱していた。
どうする? どうするよ? 助けてライフカード!

1ちゃらける
2こっちも照れる
3なんとなく肩に手を置く
4いきなりハグする
5奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です。


続く!



[25333] 第7話 「悪夢」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/14 23:41
チラチラとこっちの顔色を伺うルナ。
正直たまりません。
いますぐ押し倒して大人のレスリングにファイッ!といきたいとこだが我慢だ……。
熱いパトスに身をゆだねると大抵破滅するんですよ。
哀しいけどこれ、現実なのよね。

「……風呂に入ってサッパリしてきな。その後にまた話そう」

どうみてもチキンです本当にありがとうございました。
わかってるんだよ。でも仕方ないじゃないか。

やったら出来ちゃって、出来ちゃったから結婚して。
俺の人生そんなんばかりだよ!
たまには純愛一直線もしてみたいじゃない?

だから恨みがましい目でこっち見んなって。
下手にキスの一つでもしようもんなら誰かが入ってくるって。

「おいシン。ちょっとデスティニーの装備のことで相談があるんだが」

今回はおやっさんか。
入ってくるなり動きを止めるおやっさん。
ヌ・レーバーと見られてもおかしくない状況です。
なにせ汗まみれなルナとどこか賢者っぽい俺。

ま さ に 事 後。


でもね、おやっさん、いくら俺とルナを見比べても何もでてきやしませんから。
そのニヤニヤやめください。
ルナも赤面すんなって、て駄目か。

……明日は食堂に行きたくないなぁ。

「わかりました。それじゃルナ、後でな」
「う、うん! またね!!」

さあルナマリア選手、幸先のいいスタートを決めました。
もう言い訳すんなって感じですねぇ。
ほらおやっさんを見てご覧なさい。「わかるわかる」と顔で語ってます。
そうですね。じゃあ今回はルナにアタックをかけるんですか?
いえいえ、まだ時間はあります。

「お前もスミに置けなねーな。おい?」
「だから何にもなかったって言ってるじゃないですか。それよか相談内容を教えてくださいよ」
「しゃーねーなー。デスティニーの出力のことでな」

格納庫の隅っこにある休憩席に対面して座るとおやっさんはなにやら紙を渡してきた。
デスティニーのスペック表だ。

「見りゃ理解できるだろうがデスティニーとかの核動力機は出力が高い。そのせいでビームライフルの部品の摩耗が激しくなっちまうんだ。お前から議長にスペアを優先的に配布できるようお願いしてくれないか?」
「わかりました。あと気になった点はあります?」
「攻撃する装備の関係でレジェンドもドラグーンの予備をいくつか欲しい。インフィニットは動きまわるから関節関係の部品を……これはデスティニーも似たようなもんだな」

動かないと死にますから。
止まったところをズドンとか一度でも経験したら怖くて止まれませんよ。
事実、経験したときは死にましたから。

あとは軽く隊の仕様の確認だけしておやっさんと別れた。
帰り際にもらった今藤武はありがたく頂いときます。


さて議長と面談しております。
部屋に戻る途中でレイから伝言されたとです。
いきなり呼ばれてビックリです。

一緒に軽い食事しながら今後の展開うんぬんを話してもらいました。
よっぽど信頼されてるんだなぁ。
まさかレイと近いレベルの内容まで教えてもらえるとは……。
だが『もう知ってましたよ』などと顔に出してはいけない。消されるからね。

「何か質問はあるかね?」

それよりもルナに「後で」と挨拶してから軽く3時間は経過しております。
議長に呼ばれたから怒られないよね?
うーん。今後はオーブに移動するから上陸許可が欲しいな。
墓参りもしないといけないし。
キラが敵にいないと楽だな~……あれ?

「そういえばキラ・ヤマトはどうなってるんですかね? 詳細を知ってる人が殆どいないんですよね」
「レイにも教えてはいけないと伝えてあったからね。それで君は彼に会ってどうしたい?」
「どうもしませんよ。ただ話をして終わりです」

あとはウタマロの写真を見せるくらいです。

「嘘ではないようだね……。いいだろう、私からレイに伝えておく。時間が空いたら会ってみるといい」

議長の部屋を出て移動する廊下で俺は一つ思いついていた。
キラにただ写真を見せるだけじゃ面白くない。
ここは一つキャラ崩壊する格好をしてもらおうじゃないか。

「生活用品からパンツと網タイツを買わなきゃいけないな……」



ヨウラン経由でブツを手に入れた俺は警備兵の一人にキラのいる部屋に連れてきてもらった。
もちろんアスランには内緒にしてある。

やたら頑丈な鍵がいくつもつけられた部屋の前でレイは待っていた。
連れてきてくれた警備兵はレイと少し話をしすぐに戻った。

持っていたバッグをレイに渡し、次に金属探知機で俺の体を調べてもらう。
武器の所持がないと確認が終わると入室のOkが出た。
ちなみにキラは、頑丈な手枷と足枷で拘束してるとか。

「気をつけろ。相手はキラ・ヤマトだ。脱走のための準備を終えているかもしれん」
「わかった。十分注意する……」

ゆっくりと扉を開け部屋に入る。
……あれ?

「真っ暗だぞ?」
「そんなことはないはず、後だ!」

目の端に肌色のなにかが迫ってくるのが映った。
このままだと当たる。

腹筋に力を込めてしゃがむ。
髪の毛の数本を巻き込んでなにかは頭上を通りすぎた。

「?!」

驚くと同時に体制を崩した相手の顎めがけて頭突きをくれてやる。
恐ろしく大きな音が狭い部屋に響きまわる。
頭が超痛ぇ。
離れた相手を目測。混乱しているうちに接近し組み伏せる。

わずか5秒の間の出来事である。


「うっ……。離せ!」
「やめてよね? 俺が本気になったらアンタなんかが敵うわけないでしょ」

取り押さえたキラの手には小さな金属片が握られていた。
どうやって手に入れたんだよ。
さらに手足の拘束具まで外されてる。

レイはすぐさま隊員たちに迎撃体制を取るよう指示。
俺は自分のベルトを使ってキラの手を縛り上げた。
そして壁に固定してある椅子に座らせる。

暴れようと数分間もがいてたが無駄だと分かったのか急におとなしくなった。

「落ち着いたか?」
「……」
「俺の名前はシン・アスカ。お前の乗るフリーダムを倒した男だ」
「……え?」

キラはこっち見んなと言いたくなるほど凝視してくる。
そんなに意外だったのか?

「言いたいことがあるなら言ってください」
「え? いやその。本当に君が、僕を?」
「Yes,I am」
「なんで英語?」

ノリだ。
言わせんなよ恥ずかしい。


「そんなことは置いといて。キラ・ヤマト。アンタにはMS強奪を始め、いくつかの犯罪の容疑がある。弁護士は雇えないから法廷で頑張ってくれ」
「……僕は犯罪なんてしていない」
「フリーダムを違法に所持してましたよね? あれはザフトのものであり個人に提供したものじゃないんです」
「フリーダムはラクスが僕にくれた剣だ」

言質ゲット。ラクス・クラインは犯罪者……と。

こんな感じで話を進めると出るわ出るわ。
お前らいい加減にしろと突っ込みたい衝動を堪えて会話を録音していった。
ここまでポロポロ暴露してくると思ってなかったんで拍子抜けしてる。
扉の向こうからも呆れた感じの気配がした。
キラ・ヤマトはこういう生き物なんだ。
そう自覚すれば納得がいくぞ。
気にするな。

「アンタがどうやって枷を外したとか金属片を手に入れたはどうでもいい」

ざっと部屋を見渡してもなにもない。
差し入れに紛れ込ませたのか?

「ただ一つ言っておく。お前は俺の家族を殺した犯人だ」
「何を……?」

俺は話した。オーブの戦闘で非難していたこと。
非戦闘地域に突然MSアストレイが侵入してきたこと。
それらを狙って連合のMSが襲ってきたこと。
さらに戦闘境界線を無視して暴れまわっていたフリーダムが砲撃してきたこと。

全てを話し終えた。
何度やっても慣れない。

キラは真っ青になっていた。
まさかよかれと思った行動が裏目にでたとは思ってなかったんだろう。

「嘘だと思うならオーブのトダカ一佐に話を聞けばいいさ。俺はあの人に家族が殺された直後に保護されたんだ」
「そん、な……」

キラのヒットポイントはゼロになった。
今日のところはこれくらにしといてやる。

などと甘いことを言うと思ったか?

「正直、今すぐお前を撃ち殺したい気分だ。だが俺は軍人だ。不当な暴力はしちゃいけない」

肩をビクリとさせるキラ。
今からもっと恐ろしい目に会うんだぜ?

「だからこんなのを用意してみました」

ポケットから写真を取り出し見せてやる。

「うわ!? なんでこ、ん? ……え?」

さっきとは違う意味で顔が青くなっていく。
写真はもちろんキラさんのウタマロである。

「なんでこんな写真が!」
「いやはや。流石はスーパーコディネーター様。いいモノ持ってますね」

改めて見てもデカイよな。
大きさが全てじゃないと分かっていても敗北感がスゲェ。

「こういった写真を取らせていただきます。もしかすると手違いで万人にみられるかもしれません。でも気にしないでくださいね☆」
「うわー!! 誰かーー!! 助けてーー!!!」

超ゾクゾクする。たまんね。

文字通り命がけで抵抗するキラ。
面倒なので首を絞めて気絶させる。
呼吸音と瞳孔から完全に気絶したと断定。
これより作業に移る。




ミッションコンプリート。
いい汗かいた。今日も飯をおいしく食べられるな。
せっかくだからレイも呼ぶ。

「どうしたシン、なにか?!」

ぶふーっ! と吹出すレイ。
なんて貴重なシーン。写真をとればよかった。

「ウケるだろ? せっかくなんで記念写真を撮ろうかと。俺のバッグからカメラを取ってくれ」
「ちょ、ちょっと待て……カメラだ。それにしてもお前はどういうセンスをしているんだ?」
「ムシャクシャしてやった。後悔も反省もしていない」

椅子にキラは座っていた。
ただし股に足を開き右手を頭の後ろから回して左耳を抑え、左の掌は前方に指を揃えた状態で付きだした姿で。

「この左手が苦労したよ。透明で薄い板と糸で上手く支えてあるんだ」
「そ、そうか」

なぜに引く?
殺したほうがマシだったかもしれないのは確かなんだけど生きてるからセーフセーフ。

体制が整っているのを再度確認して俺はキラを写真にとった。
女のパンツを頭からかぶり表情は見えない。
身につけてるものは両端をクロスさせ肩口にひっかけたブリーフ。
最後に網タイツだけ。

最後に撮った写真に台詞を合成させれば出来上がりだ。
どんなことを言わせるかって? 決まってる。

『これが私のおいなりさんだ』



[25333] 第8話 「アスラン脱走」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/16 21:23
写真を撮り終えたら服を綺麗に戻してあげた。
あの姿で放置してたら可愛そうだからね。
俺ってば優しすぎるな。

拘束して気付けしてやる。
始めはボーッとしてたがすぐに状況を理解し自分の体を確かめた。
しっかり服を着ているんで安心したのか安堵の溜息を漏らす。
が、俺の右手のカメラを見た瞬間、動きが凍った。

「もう終わりましたんでお疲れ様でした」
「キラ・ヤマト……生きろ」

俺の言葉に続きなぜかレイがキラを励まして部屋を出た。
不思議なこともあるもんだ。憎んでた相手を憐れむほどの何かを感じたんだろうな。
それよか結構な時間がたっちまった。
写真も加工したいしルナとも会って誤解を徳用に説得しないといけない。
データの保管から先にするか。
まずは部屋に戻るとしよう。

「あ、そうだ。アスランに伝言あるなら……ん?」

言伝でも預かろうと親切に声をかけたのに反応がない。
振り返ってみれば真っ白に燃え尽きたキラがいた。
せっかくなんで写真に撮っといた。
今回はマジ珍光景が見られてて楽しいぜ。


「本当におもしろかったな~」
「シン……なかなかにエゲツないことをするな」
「ゲリラ兵の虐待は禁止されてないからな!」
「そ、そうか」

レイとさっきの出来事を反芻しながら会話する。
時々、達観した眼差しで遠くを見つめるがどうしたんだろう?
まあ重要なことなら俺に教えてくれるだろうからいいや。

<緊急事態! 先ほどアスラン・ザラ並びにメイリン・ホークが脱走した! 至急、MSパイロットは脱走兵を撃破せよ!>

このタイミングで脱走!?

「んな馬鹿な。いくらなんでも逃げ切れないだろ」
「シン、格納庫に急ぐぞ!」

議長はちゃんと生かしてあげようとしてたのに裏切りやがったのか。
やっぱ爆弾を埋め込んどきゃよかった。



既に格納庫にルナとハイネは到着していた。
艦長に何度もメイリンの脱走の事実を尋ねるルナ。
みかねたハイネが近くにあった椅子に無理やり座らせる。

「ハイネ」
「シンか……。話は聞いているな?」
「本当に脱走したんですか?」
「そうだ。バビを強奪し海洋に向かった。メイリンが手引きしたという証言もある」
「……違います。あの子は、妹はそんなことするわけないです」
「ルナ……」
「そうでしょ? こんなの嘘よ。ねえシン、嘘だと言ってよぉ……」

ルナは泣き出した。
大粒の雫が顔を覆った掌からこぼれ落ちていく。

「ルナマリア、お前は休め。ハイネ、俺とシンで二人を追います」
「お前たちのMSならバッテリーの心配がないしな。頼んだぞ」
「「はい!」」

ルナの頭をすこしだけ撫で、その場から逃げるようにデスティニーのコクピットに飛び込んだ。
ハッチが閉まる寸前、ルナが何かを叫んだ。
俺は聞かなかった。



ライフルとビームサーベルだけを手にデスティニーは空を駆ける。
レジェンドはスピードに付いてこれず次第に後方に流れていく。

『シン、先行して足止めを頼む』
「了解」

武装を極限まで削り落とし、かつ核動力を積んでいるデスティニーの全速。
シートに押し付けられ息が詰まる。それでも速度は落とさない。
空気抵抗すら強引にかき分けて衝撃波が海を割る。
そして。

「見つけた」

やっとレーダーにキャッチした。
飛行形態のバビはなかなかに速いがデスティニーに敵うわけがない。
これがインフィニットジャスティスなら逃げ切られていただろう。
セキュリティ機能があってよかった。

「アスラン・ザラ、メイリン・ホークに告ぐ。貴官らには脱走とMS強奪の嫌疑がかかっている。速やかに武装を解除し投降せよ」
『シンか……!』
「アスランなんて馬鹿なことをしたんですか。いまなら罪も軽いから弁護できます。だから投降してください」
『あのままだとキラは処刑される。助けを呼ばなきゃいけないと思ったんだ……親友として見過ごせなかった!』
「な……!? そんなことで、そんなことでみんなの信頼を裏切ったんですか!」

自分の婚約者を寝取られといてそりゃねーよ。
普通なら殴り飛ばしとるわ!
てかアンタ、俺がメイリンを寝とったらマジギレして殺しにきたぞ。
カガリのときなんて誤射を装って後ろからズドンだったし。

「兵士が私情を持ち出して、しかも脱走までして。アナタはザフトの兵士なんです! そんなのは辞表を出してからやってください!」

辞表を出した時点で監禁したけどね。
死ぬよりマシだから勘弁を。

『無理だ。ミーアから議長が俺を排除しようとしていると知らせを受けた。あのままミネルバにいなくても俺は、きっと』

えー? それはないって。
せっかくキラがいるんだよ?
キラを餌にしてやればスランを上手く使い回せるのに殺さないって。
減刑の文字をチラつかせてやればアスランはホイホイノンケでも食っちまったでしょ?

てかミーアって誰だっけ?
厄介なこと教えやがって。訴えてやる!

「無理やりでも連れていきます!」
『シン!』

ビームライフルの威力を最低値にセットして。
そ~れ逃げ惑え~。

バビのくせに避けるアスラン。
しかし運動性能と機体の差で次第に当たる数が増えていく。
ダメージは少ないとはいえ徐々に飛行速度が鈍ってきた。
30発ほど当ててやると反転、こっちに反撃してくる。

まあ無駄なんですけどね。

『っく! 当たらない……?』
「目標をセンターに入れてスイッチ。目標をセンターに入れてスイッチ……」

絶対に近きたくないでござる。
平気で自爆考えるアスランのことだ。
必ずなにかしら俺に取ってアウトなことをしてくる。

『シンやめろ! 踊らされている! お前も!』

は?

『議長やレイの言うことは確かに正しく心地よく聞こえるかもしれない! だが彼等の言葉は、やがて世界の全てを殺す!』
「ごめん。ちょっと意味がわからない」

天才の思考はA→Dと結論づける。B、Dの過程を説明してくれないので凡人には理解出来ない。
という話だけどこれは天才でもわからないと思う。

『俺はそれを……』
『シン聞くな!!』

ここで追いついたレイの待ったコール!
止めちゃらめぇ!
せっかく思考回路はショート寸前だったアスランの頭の中が復活しちゃう!

「解らないけど分かりました。じゃあメイリンだけでも返してもらえます? ルナめっちゃ泣いていたんですよ。アスランが無理やり連れ出したってことにしとけば」
『嫌よ! 私もアスランさんと行くわ!』
『メイリン?』
『私もアスランさんを信じる!』

これだから女ってやつは……!
すっげーイライラする。

『もうダメだ。撃墜するしかない』

レイから無慈悲な提案が来ちゃった。
……どうしよう?
一応、最終勧告だけはしておこう。

「これが最後です。投降してください」

問いかけに答えず反撃を続けるアスラン。
こっちもライフルで牽制しながら攻撃を避ける。
秘匿回線でレイに指示を出し、ライフルからサーベルに武装を切り替えてバビに斬りかかる。
斬りつけてもかすることしかできず致命傷を与えられない。
スペック的に考えて不可能な機動を見せるバビ、怖すぎる。

バビはショットガンでこちらの空間を削りライフルで移動先を誘導してくる。
俺は承知の上で誘導されてやるとバビの胸部の発射口が光を放った。

「無駄だ!」
『なに!?』

ビームシールドで受け止める。
バビ程度の威力じゃ減衰させることも不可能だ。
しかもそれを撃ってる間、バビは動くことが出来ない。
だから。

「レイ!」
『まかせろ』

デスティニーの後ろからレジェンドが飛び出しすれ違いざまにバビの右手を切り落とす。
そのまま通り過ぎバビの背後に周り、180度反転してから背中のドラグーンで左腕と両足をぶち抜いた。

手足が爆発したショックで回路に異常が起きたのかバビの攻撃が止んだ。
俺はトドメに頭部をサーベルで切り落とし胸部ビーム砲も軽く斬りつけて使用不可能にした。
背中のミサイルは近づいたレジェンドが翼ごと切り落とす。

「もう逃げられません。強制的に連れていきます」
『……』

レイは不満そうにしている。
気持ちはわかる。
けど今回はアスランのためじゃないから我慢してほしい。

『……頼む。メイリンだけは助けてやってくれ』
「少なくともそのつもりです。ただアスランは……難しいでしょう』
『なんでよ! なんでアスランさんがこんな目に会うのよ!』
「『メイリン?』」

静かだったいきなりメイリンが突然、大声をあげた。
画面越しにこっちを睨んでくる、うお怖っ。
努めて顔に出さないで淡々と応じることにしよう。
フッ。スタッフコールセンターでの経験がここでも生きるぜ。

『お姉ちゃんに言われたんでしょ? 卑怯よ! アスランさんが欲しいからってこんな手を使うなんて』


……あ? お前なにいってんの?

「ふざけんな! ルナが嫉妬したからこんな手を使った? 思い上がりもいい加減にしろ!!」
『ヒッ?!』

ヤベ。ビビってる。けどこれは許せん。

「本気で、本気で心配してたんだぞ! あんなに泣きじゃくって……艦長に何度も間違いだって進言してたってのに。どうしてそんなことを言えるんだよ!」

嫉妬なのか、それとも劣等感か。
メイリンがルナにいろんな意味でコンプレックスを持ってる話は聞いたことはあった。
けどこんな風にルナに対して考えてたことはなかったってのに……。

『話の途中で悪いね。ちょっと邪魔させてもらうよ』

誰だ? いや、それよりもセンサーに高熱源反応!?

胴体と飛行ユニットだけになったバビを引っ張ってその場を離脱する。
数瞬後、さっきまでいた場所を白い光が通りすぎていった。
電磁波でレーダーが乱れた……!

『これは……ローエングリン! アークエンジェルだ!』
「いつの間に。下からも来るぞ!」

海面ぎりぎりから急上昇して現れたムラサメたちがいっせいにミサイルを撃ってくる。
荷物のせいで避けるのが難しい俺とレイは必死に撃ち落としていく。

その隙にアークエンジェルは戦艦とは思えない瞬発力でこっちに急接近。
あらゆる武装を使ってムラサメ部隊を援護してきた。
ただでさえお荷物を抱えているってのに。クソッ!

「逃げるぞ、殿はまかせろ」
『シン!? この数では……』
「荷物を抱えたままじゃどのみち共倒れだ。それにデスティニーの機動性なら逃げ切れる自身はある!」

そうとも。武装が少ない代わりに圧倒的な速さがあるんだ。
ストライクフリーダムだって追い抜ける今のデスティニーに追いつけるやつなんてそうそういない。

『逃げるのは構わないがね。できれば君たちが手にしてる僕らの友人らを返してからにしてらもうか』

このの声、聞き覚えがあるぞ。
確か名前は。

「バルトフェルドか!」
『大正解だ!』

さっきのムラサメ部隊にいなかった。
なら更に上空か?

急いでミラージュコロイドを散布。
さらにビームシールドで頭上を覆う。

いくつかの射線が目の前を通り過ぎ、一発がシールドに命中した。
姿勢制御と共に上空めがけて遮二無二にライフルを撃ち返す。
手応えはあったが防がれたか。
かまわずライフルの連射を続けると太陽から一機のMSが飛び出してきた。

『いつぞや以来だねぇ、エースパイロット君。今度こそ目的を果たさせてもらう!』

それは朱色に塗り替えられたガイアだった。
まさかガイアで来るとは思わなかった。
けど地上戦用のMSで空中戦を挑んでくるとはな。

「正直、驚いたよ。けどガイアで俺達に勝てると思ってるのか?」
『もちろん……と言いたいところだが厳しいね。宇宙でならやってみせられるんだが』

気をそらそうと話しかけるが無駄か。
ゆっくりとシールドを構えて包囲してくるムラサメたち。
シンちゃん大ピンチ☆

『けど、こうやって多勢に無勢なら引き分けくらいはいけそうだしね』
「……」
『シン、どうする?』
「レイ……」

逃げたいってのが本音だ。
勝てないとは言わないが被害が大きすぎる。
武装が最低限のデスティニーじゃなければ、いや、それでも厳しいか。

『そこでだ! 君たちが保護してるアスランをこっちに返してくれれば見逃そう。僕たちはすぐに家に帰るよ』
「『な!?』」

キラの保護よりアスランを優先した?
んなアホな。
戦力と精神の支えとしてキラのほうを選ぶのが今までのやりかたのはず。
何が何だかわからない……。

「話に乗るか?」
『議長の命令はアスランの捕獲もしくは撃墜だった。ここで撃墜してしまえば』
「しかし渡さないと戦闘になる。この数だと俺たちを無視して基地に行かれる場合も」
『その可能性もあるか……』

迷う。非常に難しい。
議長の命令の優先か、はたまた安全性の確保か。
幸い、インフィニットジャスティスはこっちにある。
戦力の低下は最低限ですむと思えば。

『相談はすんだかな? そろそろ結論を願おうか』

ガイアはライフルをこっちに向けた。
倣って他のムラサメも構える。

「いいだろう。アスランは渡そう」
『……シン』
「レイ、悔しいだろうが我慢してくれ。このまま相手が引いてくれると約束させれば基地に被害は及ばない」
『だが保証はない』

ですよねー。
けど実際問題、選択肢があってないようなもんだからな。
諦めるしかないんですよねコレ。

「なんにせよアスランたちが邪魔なのは事実だ。仮に約束を破ってもアスランを狙って落とせばいい」
『そうする……しかないか』
「ごめん」
『いや、今回はしかたない』

俺は武装を仕舞いVPSを解除した。
レイも続く。

『そうこなくっちゃ。なぁに、僕は約束を守るタチさ。誰にもそれは破らせないから安心して欲しい』

陽気な声と共にガイアは近づいてレイからバビを受け取った。
まったくの無警戒だがなぜか落とす気にはなれない。
勘だけどコイツは約束を守る。

『ありがとう。聡明な決断に感謝する』
「ただ乗組員の一人がアスランと同乗している。彼女だけは連れ帰りたい」
『ふむ? 僕は一緒に来てもらっても一向にかまわないが。さきほど傍受させてもらった様子だとそんな感じだったしね』

どうやって傍受してたんだよ!
おかしいだろ。
まさか水中用MSを使ってたとか?
ありえないと言えないのが怖い。

「一応のケジメだ」
『わかったよ。ただ手短に頼むよ』

こっちも無理だとは思うけどやっておかないと後々問題になりそうなんだよ。
敵さんの希望通り手短にいくか。

「アスラン、話は聞いてましたね?」
『ああ。それでメイリンだが』
『私はアスランさんと行くって決めてるわ。だから、ごめん』
「そっか……」

ルナは泣くだろな。
俺もメイリンを殺さないといけなくなった。
気が重い。

『シン。こんなの言えた義理じゃないけどお姉ちゃんに伝言があるの』
「最後だから言ってみな」
『お姉ちゃん、ごめんなさい。ありがとう、心配しないで……って伝えて』
「わかった、伝えとく」

それだけ言いうとメイリンは通信を閉じた。
ある意味で元凶のアスランよ、メイリンを励ますくらいの甲斐性を見せて欲しかった。

気をとりなおして。
バルトフェルドにOKと伝える。
すると変なことを聞いてきた。

『最後に君たちの名前を教えて貰えるかい?』
「なんでそんなこと」
『ちょっと気になっただけさ。嫌なら構わないよ」
「別にいいけど。俺はシン・アスカだ」
『……レイ・ザ・バレル』
『確かに覚えたよ。ではさらばだ!』

背中を晒して悠々とアークエンジェルへ向かう。
ある程度ガイアが進んだのを確認し、急いで反転。基地へ機体を進める。
ムラサメ部隊の一部が追いかけようとしたがすぐに停止しアークエンジェルに戻り始める。

『どうやら約束は守るようだな』
「ああ。とにかく急いで基地に戻って知らせよう」

並走し警戒しながら移動する。
暫くして危険が少ないと判断し最大速度に設定しなおした。
再びレイを置いて先行すると基地が見えてきた。
だが様子がおかしい。

「こちらミネルバ所属MSパイロット、シン・アスカです。応答願います」
『こちら管制官。基地は先ほどテロリストに襲撃された。被害は軽微なれど貴官の所属する艦にダメージ有りとの報告』
「……! こちらシン・アスカ。了解した」

テロリスト? ミネルバに被害?
馬鹿な、アスラン奪取で動いた連中とさっきやりあったばかりだぞ。



[25333] 第9話 「選びし道」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/17 21:52
「……」
『……』

ミネルバの一部、ちょうどキラを収容してた営倉があった壁面。
そこにおっきな穴が空いていた。

なんということでしょう。
狭く息苦しかった部屋が開放感あふれる空間へと変貌をとげたのです。

まさに劇的ビフォーアフター。
俺もレイも声がでない。

通信からは雑多な怒号を背景に「混乱の鎮圧に協力してくれ」とオペレーターの悲鳴のような懇願が矢継ぎ早に飛ばされる。
気を持ち直すこともできず言われたとおり二人で指示された救援先へと向かうのだった。

数時間たってようやく基地は元の静けさを取り戻した。
テロリストは一部を射殺、もしくは捕縛できたがキラにはやっぱり逃げられたそうだ。
襲撃されたのを聞いて予想はしてたけどこんな方法を取るとは思わなかった。

『ケガ人は少ないようだ。幸い、死傷者もゼロという』
「まさかルナとハイネを抑えられる連中がまだいたとは。甘く見過ぎてたな」
『不幸中の幸いは議長が本国に戻られていたことだろう。ミネルバも数日で直せるようだ』
「そっか……」

もう嫌になるな。
どこをどうすりゃこんなことに……。
今は艦へ戻るろう。

機体を整備班に任せミーティングルームに急いで飛び込む。
艦長、基地司令官、ハイネは俺たちとわかると安堵のため息を吐いた。

「申し訳ありません。任務を完遂できませんでした」
「いえ、こっちも大失態よ。気にしないでちょうだい」

下げた頭を戻すように言われ、そのとおりにする。
全員がどこか諦めた顔をしていた。
俺も似たような表情だろうな。

「まずは情報交換といきましょう」

陰鬱な空気を払うような凛とした響きで艦長は言い放った。


基地のほうのテロ騒ぎはやはりキラ奪還を目的としたものだった。
鎮圧しようとしたMSをどこからかやってきたムラサメたちと金色の知らないMSに一気に鎮圧されたという。
さらに気を取られてる隙にミネルバが爆破された。
騒動に気付いた保安部隊が駆け付けたときにはキラのいる営倉はもぬけの殻だった。
そして敵さんはものの数十分で撤退した。
最後に我が物顔で去っていくムラサメたちの先に、エターナルがいたそうだ。

「貴方達のほうも襲われということは……アークエンジェルとエターナルは仲間同士って考えたほうが自然ね」
「くそっ、やられた。どっちも陽動で本命だったのか」
「く……俺たちが早く行動していれば。申し訳ありませんでした」
「完全にやられちまったな。まさかこんな大胆な手で来るなんて……」

ホントにアスランの体に爆弾埋め込んどきゃよかったと後悔してる。
キラなんて手足の一本くらい切り落としとけばよかった。

「艦長、あんまり落ち込まないでくださいよ。シン、レイ。お前たちもだ」
「そうですとも。幸いにも迅速な対応のおかげで人的被害は極僅かでした。基地司令官としてもお礼を言わせてもらいます。あとの処理は我々に任せてゆっくり休んで英気を養ってください」
「二人ともありがとう。司令官、今日の屈辱を晴らすためにもお言葉に甘えさせていただきます。」

方針は決まった。
もう俺たちに出来ることはない。

「ではパイロット三名は自室に戻って休憩していてください。私は司令官とスケジュールを煮詰めておきます。ハイネ、アーサーに今のことを伝えておいて」
「了解しました。よし、二人とも行くぞ」
「「ハイ!」」

今回の借りはのしつけて返してやるからな。
レイと特訓しないと。

心の閻魔帳にしっかり記録しとく。
見てろよ、キラ・ヤマト。

ウタマロ祭りを開催してやるからな……。



アーサー副艦長に報告も終わり男三人で一息つく。
虚脱感が体を包んで力が出ない。
レイもハイネも俯いて言葉ひとつ話そうとしない。

「これからどうなるんだろう……」

ポツリと口から弱音が漏れた。
やることが裏目に出ると堪えるんだよなぁ。
もっと上手くやれないのかな、俺。

「どうもこうもない。ただ議長の命ずるままに動くだけだ」
「レイ?」
「お、いつになく気合入ってんな」

その言語にハイネは元気を取り戻す。

「俺達は軍人だ。軍人は上の命令を守ってればいいんじゃないか? なあ、シン」
「むろん何も考えるなということではない。命令を順守する。悩みも苦しみも後でまとめて引き取ればいいんだ」
「二人とも……なんだよ、それ」

元気出てきた。
他人から励まされるってやっぱいいよね。

「二人ともありがとう……よっしゃ、がんばるか!」

気合を入れて叫ぶと生暖かい眼差しを向けられた。
何故に?


部屋に戻りさっそくデータを開放準備。
レイとハイネはなにやら飯だとか。
おかげでのんびりとPCを弄れる。

「モザイクの大きさはこんくらいで。あと背景も消してと。OK」

動画、投下開始。
あっという間に増える視聴者数カウント。
コメントも凄まじいものに。


ちなみにこんな感じ

15:名無しの美男子:**/**/**(*) 15:10:07 ID
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!


108:名無しの野獣:**/**/**(*) 18:51:22
やべ、超たまんね☆


801:A・B・E:**/**/**(*) 20:08:08
この若さでこれか……将来が楽しみだぜ。


ちなみにホモ専用のサイトです。



一仕が事終わった。
大絶賛の嵐だったのが嬉しいぜ。

まあ現実逃避もここまでにしとこう。

問題はルナだ。
どうも部屋に引きこもって出てこないらしい。

確かに妹は逃げ出すわ敵に襲われて被害出るわ。
姉としてもパイロットとしてもいいトコなかったもんな。

最後に叫んでた言葉を聞かなかったけどよかった。
聞いて返事してたらビンタ食らったかもしれないしな!

陰鬱とした気分を隠し俺はルナの部屋に来た。
手には今回の秘密兵器。
結婚生活でも荒れたときにこれを使えば大抵はなんとかなったシロモノだ。
これで大丈夫。

「ルナ?」

返事がない。ただの扉のようだ。

「ルーナー。入ーれーてーくーれー」
『シン? ……入って』

すみません、今のは聞かなかったことにしてくれない?
あ、駄目ですか……。


部屋は前に来たときと変わってなかった。
唯一、メイリンがいたベッドの上に服が散乱していたこと以外は。

俺を部屋に招き入れたルナはベッドの上に座っていた。
しばらく突っ立ってると横に座るように言われたんで座った。

「「……」」

重い空気ララバイ。
あれだよ、言いたいけれど言えない空気ってあるじゃないか?
秘密兵器の出番は早そうだ。

「ちょっとキッチン借りていい?」
「……いいけど?」

作ること15分。
あっという間にホットミルクの出来上がり。
電子レンジがあるからもっと早く作れ?
バッキャロー! 鍋で作るから美味いんだよ。

俺は誰に突っ込んでいるんだ?
疲れてんな。

できたてホヤホヤをルナに渡す。
味見したが完璧だった。

「おいしい……」
「そっか」

そして始まる沈黙。
さっきと違っていい感じだ。

「メイリンがなんで脱走したか。ずっと考えてた」

ミルクを飲み干し暫くして、ルナはポツリと話し始めた。

「私もメイリンも始めから赤服を目指してたの。でも受かったのは私だけ。それから少し距離が離れちゃってさ、最後はもうわからなくなってた」

あるある。仲が良かったのに分別付き始めると成績とかが原因で疎遠になっちゃうやつ。
コンパで同じ女狙ってケンカしてたら別のヤツに持ち帰られたときの悔しさといったら、もう……!

「もっと話をしてればよかった。そしたら別の結果になったんじゃないかなって思うの」

大して変わらんかったかもしれないぞ。
メイリンってルナと同じでダメな男を好きになるタイプだし。
あ、そうなると俺もダメ男ってことになるのか。

「だから私、メイリンと会いたい。会って話しがしたい」

じっと俺を見つめるルナ。
その目は今まで見たどれよりも真っ直ぐに透き通っている。

「相手はあのラクス・クライン率いる連中だ。ちょっとやそっとじゃ辿りつけない」
「知ってるわ。今の私じゃ歯が立たないってこともね。けど追いつけないわけじゃない……そうでしょ?」

本気だ。
ルナは心の底から勝つ気でいる。
これが若さか。

不敵な笑みに自身満々の態度。
これこそルナマリア、ルナマリアでございます。
ミネルバの嬢王様ランキング2位は伊達じゃない!

「わーったよ。これじゃ協力しないほうが悪役じゃん……ったく」
「ゴッメーン♪」

全っ然悪びれてねーじゃねーか。
こんな状態なのに楽しいと感じてる俺も同じ穴のムジナだけどな。

「じゃあさっそく練習するか! レイとハイネも読んで話し合いしようぜ」
「オッケー! じゃあさっさと着替えて集合よ!」

お手伝いします!

この言葉を飲み込んだ俺を誰か評価してくれないかなぁ。



[25333] 第10話 「プライド」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/18 21:40
ルナの呼びかけに快く賛同した二人はすぐに集合してくれた。
まず始めないといけないのはインフィニットジャスティスのパイロットだ。
せっかくの貴重な戦力を遊ばせておくわけにもいかない。

俺はデスティニー、レイはレジェンドというのは確定している。
だから自動的にハイネかルナが乗ることになるんだが。

「私をジャスティスに乗せて」

ぶっちゃけるとサブパイロット扱いのルナが手を挙げた。
あまりの事態にサッパリ妖精が頭の中で踊り出す。

「ふーん? 俺を差し置いてジャスティスにねぇ。どういうことか説明してくんない?」

ハイネがご立腹。
長年、最前線で赤服で戦果を上げてきた実績のあるハイネを差し置いてってのは難しいんじゃ。
ルナを後方支援において三人でアタックかけてもかなり強い陣形だ。
無難にいくなら悪いけど一番技術の足りないルナにバックアップになって欲しいなぁ……なんて思うんですよ、はい。

「これが私の我儘だってわかってる。けど最前線でアスラン相手に戦い続けるなら一番いい機体じゃないとダメなの。お願いします、私にパイロットを譲ってください!!」

ルナはハイネの正面に立ち、深く頭を下げた。
ハラハラと見守っているといきなりハイネが笑い出す。

「構わないぜ。インパルスでも十分強いしな」
「あ……ありがとうございます」

マジすか!?
なんて太っ腹なんだ。


「ただ条件がある」
「……なんでしょう?」

さすがにタダでとはいかないか。
でも権利を譲るって言うだけでも相当なもんですよね。

「1週間待ってやる。それで俺と勝負して勝ってみせろ」

世の中そんなに甘くなかった。
それなんて無理ゲー?

「いくらなんでも厳しいのでは? せめてもう1週間は」
「おっとレイ、それ以上言うな。俺だって最新機が欲しいんだぜ? そこを曲げろってからには実力で示してもらわないと納得できん」
「しかし」
「いいのよレイ。当然だわ」

揺るぐことのない決意むき出しでハイネに微笑むルナ。
冷や汗が出そうなルナの笑顔と対峙しても全く動じること無く笑みを返すハイネ。
互いの微笑みを浮かべた顔が急接近。
見てるだけで胃が痛くなってくる。

「じゃあ早速今日から始めよう。期限はきっかり1週間後のこの時間だ」
「望むところよ。私だって赤よ。油断しないでいてくださいね」

火花が散ってるよ……。
あ、レイもビビってる。ちょっと安心。

ところでルナの訓練に付き合う話はどうなるんだろ。
やっぱ無しの方向かな?



幸いなことにミネルバは検査と不備の洗い出しで2週間ほど動けない。
艦長と基地司令官を含む上の人達は別の艦で本国へ出張中。

アーサー副艦長も基地の人たちと今後の話し合いで忙しい。
俺たちパイロットもやることがなく、ボランティアで哨戒を手伝ったりくらいだった。

おかげでルナとハイネが24時間戦えますか? と言わんばかりにシュミレーターと実機を使った訓練に明け暮れている。
俺とレイは二人で体を鍛えたり連携の練度を高めたり細々としたものです。

しかし俺たちの訓練模様を見学する基地の皆様方、なぜに化物を見るような目で見てるんだ?
これくらいは普通じゃなかったっけ?

「よーし。体もほぐれたとこだしシュミレーションでもやるか」
「今日はどうする?」

そーだなー。最近は普通の模擬戦とかだったし。
久しぶりに遊び心を出すか。

「フリーダム2体とジャスティス1体相手にやりあうってのは?」
「……本気か?」
「ほら、どうせシュミレーションじゃん。だったらメチャクチャ難しいほうが後で楽できるだろ」
「後で、か。確かにこれから戦いは厳しくなる。なら難しいくらいが丁度いいか」

あんまし心配しなくても平気だって。
俺たちの腕と機体なら絶対勝てる。
むしろこれくらい凌げないとストライクフリーダムと戦える気がしない。
なんだってあんな機体で戦えるか謎でしょうがないほどの理不尽さを見せてくれるんだぜ。

「そうそう。地道ほど大切なモノはないさ」
「地道か……キラ・ヤマトとは無縁の言葉だな」

おいおいレイ、まだフリーダムにやられたことを気にしてたのかよ。
あれはしょうがなかったっんだって。
逆にザクを使って1対1で数分間も渡り合えたことを誇るべきだ。


「俺もたまに妙に頭が冴えて動きがよくなるときあるんだ。完璧に思ったとおり操縦できるってヤツ? もかしたらキラ・ヤマトは常にあんな感じなのかな」

なんでああなるかは分からんけど便利ではある。
もうパンチラシーンなんてコマ送りでガン見できるんだぜ。
視力も極端に上がる。視力に換算すれば5.0は確実だね。
夏の海は最高のパラダイスさ。

「不思議なこともあるものだ。仮にその力を好きなように使えれば戦いも楽になれるかもしれない」
「うーん。あれって凄く疲れるんだよ。だからなるべくなら使いたくないんだ」

短時間ならいいけど使い続けると頭が痛くなって吐き気もしてくる。
ドーピングみたいなもんだから副作用がスゲェ。
ヘルメットの中で吐いた時なんて……思い出したくもない。

「なるほど。世の中ままんらないな」
「残念だけどそんなもんさ」

雑談しながらシュミレータールームに入った瞬間、熱気が俺たちを包み込んだ。
新たに導入されて合計4台になったが部屋は狭いままで冷房も効きづらい。
だとしても恐ろしいほどの暑さだ。

見れば機械の横に投げ捨てられたゴミとペットボトルの山。
しかも両端の2台の横にだけある。

そーっと中を覗くと鬼気迫った顔の男女が一心不乱に訓練してた。
あと、ちょっと臭い。

「「……」」

レイと二人、邪魔にならないようにがんばりました。




いよいよこの日がやってきた。
無表情で睨み合うルナとハイネ。

「「……」」

黙ったまま、二人ともシュミレーターに乗り込み機体を選ぶ。
互いに選ぶのはもちろん、インフィニットジャスティス。

「手がつけられないとはこのことか」
「俺をルナに手伝おうとしたら本人から怒られたよ」

けんもほろろと言わんばかりの態度だった。
プライドを賭けた戦いに部外者は口出しするなとさ。

気になって二人のシミュレーター使用時間を調べたら両者とも1日20時間前後逝ってた。
こうなるとパイロットとしてのセンスと戦闘経験、それにプライドで決着はつくだろう。

「レイはどう思う」
「やはりハイネだろう」
「その心は?」

俺はちょっとわからないんだけど。
教えて親友。

「どうしても戦いは経験が重要だ。ルナと違ってハイネは指揮官経験も豊富、つまり視野が広く持てる上に勘もいい」

なるほど。それは1対1で重要だ。
ルナも擬似的な指揮はあるかもしれないけどちゃんとしたのは無い。
かなり不利だ。
でもパイロットとして激戦を繰り広げてきたんだ。
少しはハンディを覆せるはず。

「個人的にはやっぱり最古参仲間のルナを応援したい。けど今後を考えるとハイネかな」
「ルナマリアには悪いがな」


戦いが始まる。


画面の中、サーベルを失いつつも足のブレードとライフルで上手に牽制するハイネ。ルナは丁寧で乱れのない猛攻に押され始める。
ルナはシールドで強引に間隙に割り込み押し返し仕切り直すとブーメランとサーベルの二刀流で迫る。

「激戦だ」
「レイ、二人ともジャスティスでよくない?」
「……俺も同じことを考えてた」

無理言えばもう一機くらい手配してくれないかな。
議長に相談できればいいんだけど。
インパルスはそれまでのつなぎってことで。

「本当にもったいないな。やっぱハイネに軍配上がるけどルナもかなり強くなってる」
「ああ、驚きだ。もしかすると今までの不調な戦績は機体のせいか?」

お、そろそろ決着だ。


ファトゥムに乗ってハイネに突っ込むルナ。
一方のハイネは弾幕を張って撃ち落とそうとする。
しかしルナが途中で蹴り飛ばしたファトゥムがシールドサーベルを展開しながら狂ったようにビーム砲を乱射して突っ込んでいく。
運悪く頭に当たり僅かに隙を晒すハイネ。
見逃すはずもなく、ルナが急接近。
よく見るといつのまにかグラップルスティンガーをファトゥムにひっかけていた。
なるほど、ファトゥムは囮と同時に移動のための手段だったのか。

まさかの急接近に慌ててブーメランをハイネは振りかざす。
攻撃の起点を見切り一つはルナの斬撃の軌道上に、一つをルナへと振り下ろす。
けど右肩を切り落とされたもののルナは渾身の蹴りでを放ち、見事ハイネの乗るインフィニットジャスティスの胴体を切り落とした。



……ルナに賭けといてよかった。



[25333] 第11話 「届かぬ罪」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/20 00:05
愛機の選別も無事に終わり準備万端の俺達にさっそく指令が届いた。

内容はロゴスの本拠地を叩く。それだけだ。
ミネルバが修理してんで作戦時期を伸ばしてくれたらしい。
有り難や有り難や。。

というわけでそれぞれが準備で忙しい。
先日の選抜戦の疲れを取るためにルナとハイネは1日潰して休まないといけなかった。
その間に俺とレイは娯楽品や嗜好品を買い集めたり訓練をしたり。
さらには復活した二人が困らないよう作戦資料を作成したりと忙しい日々を過ごすことになった。

その甲斐あって二人は2時間ほどで作戦内容を頭に叩き込み機体の状態を最適にするため腐心することができた。


なかなかいい感じに進んでいたけどちょっとトラブルが起きた。
レイとルナは機体の調整が終わらない。
ルナの場合は仕方ないんだがレイはドラグーンシステムが不調気味らしい。
本来なら全員でミーティングをする予定だったが急遽、俺とハイネだけですることになった。

「てなわけでハイネ、作戦どうしよう?」
「そうだな~」

ハイネの自室にて相談中。
部屋は綺麗に片付いていつでも降りれるようになっている。
なかなかスマートだと感心させられた。

でもマグカップだったりカバンだったりとミクがなにかしらから主張してくる。
ちょっと尊敬したのを後悔した俺の心境を知るワケもなくハイネはさっそく考えを教えてくれた。

「航空地図見ると海から攻めることになりそうだし。俺たちは偵察部隊の情報を元に敵施設の破壊でもするか?」
「大気圏から強襲とかどうです? 燃えません?」
「シン、君は実にアホだな。そんなことしたら普通に迎撃されちまう。せいぜいミサイルをばら撒いて嫌がらせで終わりだ」

しょんぼり。

「じゃあ攻撃部隊と反対方向から攻めて撹乱とか」
「うーん、そんなところか。もしくはコンセプト通りお前が奇襲して撹乱したところに突っ込むか」

とグダグダな会議も終えて艦長に作戦要望案をいくつか渡して終わった。
もうやることないし部屋でゴロゴロしとくか。

「じゃ、俺も帰って休んでますか「ちょっと待てよ。お前に見せたいものがあるんだ」ら……」

ハイネェ……。
手に持ってる初音ミクの痛PCをなんとかしてくれ。
おい、なんでヘッドフォンまで用意してるんだよ。





あっという間に作戦開始日。

今か今かと出撃の時を待ちわびる俺たち。
気分は最高、体調微妙。
ハイネのやつ、4時間も歌を聞かせ続けやがって。
部屋に戻ったら「パイロットなんだから体調に気をつけろ」ってレイに怒られたんだぞ。

『パイロット各自へ。出撃3分前です』

お、きたきた。
特攻隊長シン・アスカの出番だ。

「んじゃ先に逝ってきますね」

『きちんと仕事しといてよ』
『帰還進路は確保しておく。心置きなく行っても大丈夫だ』
『俺は指揮権の確保で少しばかり遅れる。獲物は残しといてくれよ』
「まとめて了解!」

<発進まで残り2分。機体を固定します>

「推進剤満タン。武装に異常なし。動力・サブ動力共に正常稼動中」

<発射まで残り30秒。28,27……>

この緊張感。何回やっても心が震える。
やっぱ男はこういうのに弱いんだよな。

<4,3,……デスティニー、どうぞ!>
「シン・アスカ、デスティニー行きます!」

カタパルトから一瞬で空へ―――。
広がる海。遠くに見える目標。
作戦開始まで乗り30分。
それまでせいぜい暴れてやる。


海岸線接触まで残り10分。
なるべく低空飛行で近づいてるけどそろそろ気づかれる。
その前に先制攻撃といきますか。

高エネルギー長射程ビーム砲の出番だ。
元祖デスティニーより安定して長時間の照射に対応できるよう改造されているらしい。
論より証拠、さっそく実力を見せてもらおう。

「有効射程に突入。チャージ開始」

空中でホバリングして撃つ時が一番怖い。
なんせ無謀で途中で動作を止めるのも苦労する。
ザクで似たような事やればだいたい落とされるし。

相手も気付いたか。
だが遅い!

「エネルギー砲、発射!」

先端から赤いビームが音を割って飛び出し沿岸部に展開していた部隊を襲う。
MSは回避できても車両が反応に遅れている。
数台の迎撃ミサイルを搭載していたジープや戦車を数台まとめて壊すことに成功。

殆ど間を置かず反撃がくる。
高度を上げながら盾を構え回避しながら陸地に向かう。

「この距離ならいける」

敵との距離が目と鼻の先になった瞬間、さらに加速した。
慌ててこっちを追いかけ始めるが無駄だ。
最初から狙いはあくまで中央。
雑魚にかまってる暇はない。


中心部に突入して暴れ回ること5分。
さすがに回避が難しくなってきた。
作戦時間まで残り5分。
撃墜スコアは20を超えて数えるのをやめた。
バッテリーの心配はなくても辛いな。

とうとうライフルがいかれた。
スモークを巻いてその場を離れる。
ライフルから無理やり取り付けたビームガンを構え直す。

落としても落としても一向に減らないウインダム。
早く逃げたい。



アラームが鳴った!
やっと作戦開始か。


俺に攻撃をしかけようとしていたウインダムが次々と火だるまに変わっていく。
落ちていくウインダムたちの頭上をバビの編隊は悠々と飛び、遅れてグフたちが続く。

レーダーに増えていく友軍のマーク。
周囲の敵がザフト本隊に気を取られているうちに急いでその場を離脱した。


小一時間もたつと敵の防衛が元に戻ってしまった。
上手く相手の出鼻をくじけたのに早くに復活されたようだ。
敵の指揮官たちは優秀だな。

しかも空から降ってきた援軍たちは地上からのビームで一掃されてしまった。
俺も混ざってたらああなったのか……ありがとうハイネ。

思考の片手間に目の前のダガー部隊を撤退させても次から次にやってくる。
早く終わんないかなーと考えてたら急に敵が引き始めた。
訝しげに注意してたら何人かが追いかけてった。
そいつらに続こうとしたやつらはハイネを始めとする指揮官たちが抑えてくれる。
それでも行く連中はいるもので、止めることもできず斥候代わりいかせてやった。

暫し後、地面から山が出てきた。しかも3つ。
そう、我らが宿敵メガトロン軍団である。

デストロイの間違いだった。


案の定、先発達は小物らしい叫び声とともにぐしゃっとされた。
おいおい、ステラのときでさえ苦労したのに3体とか反則でしょ。

『二人とも覚えているか?』
「嫌でも覚えてるさ。デストロイってMAだろ」
『あれって反則でしょ』

フリーダムという目眩ましがいたから懐に潜り込めたんだが。
今回はどうすれば……。

『シン、レイ! お前たちがあいつらを引きつけろ。隙をついて近接戦が得意な連中でしかける』
「『ハイネ?』」

まさかの囮をやれ宣言。
死ねと?

『ハイネ、私も―――』
『悪いがこっちも戦力が欲しい。ジャスティスなら切込隊長として申し分ないからこっちな』
『でも、たった二機じゃ』

いいぞルナ、もっと言ってやれ。

『ルナマリア、俺達は大丈夫だ。そうだろシン!』
「ああ、もちろんさ!」

あ。反射的に答えちゃった。
今の無し!

『まかせてください。行くぞシン。俺達の力を魅せつけてやろう』

え? なに? レイがノリ気?
……何が何だか解らない。
おまえ、そんなキャラじゃなかったじゃん。

おかしい。もしかして俺のせいか?
昔に試しに読ませた漫画にハマったのが原因か?
元から変に熱い時があったとはいえ、こんなときに出てくるなよ。

迷う暇もないとばかりにレイが飛び出す。
慌てて追いかける俺。
艦砲射撃のような雨あられの弾幕の中をグレイズすることなく飛んでいく。
ライフルはしっかりと防がれお返しに数百倍の密度でお礼をされる。
しばらく二人で応戦してたが徐々に俺の攻撃回数を減らしゆっくりとレイと距離を取っていく。
すると案の定、火線はレイに集中した。

この隙にビームガンからアロンダイトに切り替え、足元から突撃。
三機の中で反応の鈍い左端の一つに的を絞り膝裏を切り裂く。
バランスを崩し倒れる一機。
他の2体の注意が俺に向く。

『よくやったシン! 行くぞお前ら!』

倒れたやつを援護しようとする2機の一つに地面から近づいていた他の部隊が突撃をかけた。
象に群がるトカゲのように執拗にコクピットや頭部、手足の武器を狙って切り続けるザクやグフたち。

倒れてるやつはルナがコクピットにサーベルを突き立てていた。
残りの一機、仲間に被害を出さないうちに俺が片付ける。

アロンダイトを仕舞い再びビームガンを三連射。続いて高エネルギー砲を放つ。
たまらず防御した。
瞬間、三度武器をアロンダイトを手にデスティニーを加速させる。
上下左右にぶれ、目標を定めさせないように近付く。
あまりの速度にデスティニーの表面が摩擦熱で赤く染まる。

『死ねよぉ!』

オープンチャンネルで叫ぶデストロイのパイロット。
同時に防御を無視し一斉射撃を俺に撃つ。

「お前が死ねよぉっ!」

肩端に命中したビームで装甲が吹き飛ばされる。
けど敵はそこまでだった。


間違いなく、アロンダイトはコクピットに深々と突き刺さった。





試合に勝って勝負に負けた。

ようやくデストロイを倒して施設を確保した俺達に告げられたのは作戦失敗の連絡だった。

肝心のジブリールを取り逃がしてしまった。
戦力をデストロイ討伐に傾けすぎたのが敗因だった。

バビの人たちが追いつこうとしてもウインダムに阻まれてできなかったらしい。
見事な逃げっぷりだったそうだ。

それでも施設や資源を奪えたのは大きかった。
鹵獲したMSで足りない重機は補えたようだし。

他の人たちと一緒に部隊を再編成し、事後処理を片付けていると議長から各艦隊に連絡が入ってきた。

「悪の親玉を取り逃がしちゃったYO! オーブに逃げたっぽいから追いかけようZE!」

要約するとこういうことだ。


加速度的に慌ただしくなるザフト軍。
言うのは簡単、やるのは地獄とはこのことだぜヒャッハー。

それでもおそるべきことに5日で全ての準備を整えることができた。
こいうところはコーディネーターの面目躍如だ。
しかし疲労の色が濃い。
一応、ジブリールを引き渡すよう交渉してるが上手くいかないという噂だ。

ただオーブそれ自体はいらないという。
ぶっちゃけ、取れる資源や人材と背負う厄介ごとを比べると後者の割合がデカイ。
差出人不明の莫大な支援金が振り込まれてるおかげで国庫自体は安定してるが占領すればそれも無くなる。
すると残るのは莫大な借金。
ザフトにそんな体力はない。
せいぜい、他の国に売りつけるくらい。

だったらジブリールだけでいいやって考えなんだが。
やっぱり首を振らないわけで。

もう戦争は確定なんで防衛部隊をいくつか残してまた移動ですよ。

あー、眠い。



[25333] 第12話 「勝利」 訂正
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/25 21:43
始まりましたオーブ戦。


前回と同じように俺が奇襲→部隊で強襲がまたまたハマる。
ちょっとは情報渡しておけよジブリール。
オーブ軍が哀れにも駆逐されまくっているぞ。

周りを見渡す余裕すら生まれちまったよ。

チームワークの習熟度の高い部隊ほど戦果をあげているのが面白い。
サポートしてくれるバビ部隊に低空から支援するディン部隊。
意外にも少数のガズウートによる支援もいい感じに助かってる。

ムラサメやアストレイが蚊トンボのように落ちてくのは爽快だ。
爽快なんだがなぜかイラつく。
パイロット、どんだけ未熟なんだよ。
少なくとも俺が乗ったあの時より性能は上がってるはずなんだけど。
あ、また落とされた。

複雑な気持ちだがここは我慢だ。
先行部隊はオーブ首都までもうすぐ入るとこまで行ったらしいから、あっと言う間に終わるはずだ。

<緊急事態! フリーダムに酷似した機体が我が軍を襲っています! パイロットで可能な者は一時撤退してください>

そういえばこんなこともあったような。
よりにもよって勝ってる時に乱入してくるから……んもう!


迎撃部隊は、核動力の機体を保持してる俺、レイ、ルナの3人でチームを組んでの迎撃になった。
ハイネは前回に逃げられた反省から一部隊を率いて戦場を見張るとのこと。

てなわけで急いで襲われてる仲間がいる場所に行くとそこには死屍累々のMSが。
全部が全部、綺麗に手足だけもがれてる。
激しい戦闘が行われてる先には確かにフリーダムをシャープにしたようなガンダムがいた。

遠くに浮かぶアークエンジェルとムラサメたち。
そして赤いガイア。

「大勢でお出ましだな」
『ゲェっ……あんな大勢を私たちだけで相手するの?』
「女の子がハシタナイ言い方をすんなよ。ただでさえ少ない幻想がなくなっちゃうだろ」
『うっさいわね! 余計なお世話よ』
『夫婦漫才もそこまでにしておけ。来るぞ』

一気に襲ってくるムラサメにストライクフリーダム。
レイとルナが先行してくれた。
なので俺はその場から動かずに高エネルギー砲をスタンバイ。

「シン・アスカ、撃ちまーす」

密集地帯めがけ乱射と連射を繰り返し殲滅してく。
おもしろいように一気に数を減らす敵さんたち。

そりゃ馬鹿正直に向かってきたら回避もできんよね。
レイを振り払いこっちに来るストライクフリーダム。

正面きって相手をするのは前だけで十分だ。
アークエンジェルに大きく迂回するよう動くと予想通り進路に立ちふさがってくる。
俺は無理に突破せず逆にアークエンジェルとは反対に向かう。
予想通り逃がさないといわんばかりに追ってきた。

その間にレイとルナマリアが敵を相手に無双してくた。
あっという間に数を減らしていくムラサメたち。
赤いガイアとオレンジムラサメもきれいサッパリ、ルナに落とされた。

慌てて戻るストライクフリーダム。
そうはさせまいとライフルを撃ちまくる俺。

二人とも、このまま落としてくれ……。
まだまだ敵は多いけどこっちは無傷の核動力三機。
一方の相手は同じ核動力だが一機。

が、もらった。
これなら確実に全ての敵を墜とせる。

少しでも隙を見せるとアークエンジェルに戻ろうとするキラ。
でも俺がアークエンジェル目がけて高エネルギー砲を撃てば防がずにはいられない。
確かに核動力機体のシールドは破れないだろう。
しかし戦艦に傷を与えることはできるからな。

痺れを切らして近付いて来ても瞬発力ならばこちらが上だ。
おまけに地球だからドラグーンも使えない。
デッドウェイトはコッチと同じでも武装が邪魔にならないのも幸運だった。
宇宙で戦うなら殆ど武器なしで戦わないと追いかけるのも面倒だったろう。

「おっと?」

レーダー外から誰かが撃ってきた?
望遠レンズを最大に。

……インフィニットジャスティス?
あれ?
ルナはちゃんとあっちでレイとガンダム無双してるんだが。
ん~?

ジャスティスの援護を受けストライクフリーダムはムラサメたちの援護に向かった。
止めようにもジャスティスの的確な邪魔でできない。

この動き、アスランか?

いや待て。インフィニットジャスティスをもう一機作れるなんて……。
いくらラクスの影響が強大でも資金や技術者をおいそれと集められるわけがない。
一体誰がこんなことを。

仕方ない。なんとかジャスティスをボコってやろう。
そしたらもう一機の核動力が俺達のものに!
ハイネも乗れて戦力アップだ。

『シン! もうやめるんだ!』
「うるさい死ね!」

回線を切った。
やっぱアスランが乗ってたのか。
心置きなくぶっ飛ばせるな!

しつこく通信コールが入ってくる。
シカトして攻撃するとようやく収まった。
アスランもようやくやる気になったのかジャスティス得意の接近戦をしかけてくる。
手の内を知り尽くしてるんで防げる。
防げるんだが攻撃のキレが記憶よりいいような……。

ああ、キラが一緒に戦ってるからか。
これはルナじゃ抑えられない。
無傷で捕獲するなんて悠長なことを言えない。

トータルバランスが高いインフィニットジャスティスはデスティニーと相性が悪いからな。
遠中近のどれも対応できるってずるい。
接近戦だって武器の性能差で不利だし。

でも負けない。
俺も血の滲むような訓練を乗り越えてきたんだ。
シミュレーターに比べても1対1で余力は十分。

手足ぶった切ってお持ち帰りしてやるぜ!

あれよあれよとアスランを追い詰めていく。

いくらキレが増しているとはいえ所詮はアスラン。
かつての仲間という情に流されて実力を発揮できてない。
おかげで割と楽に抑えられる。

ちなみにここ一番だと本人が認識したときは既に手痛い目にあっている場合も多いのが特徴だ。

ちまちまとインフィニットジャスティスの盾の耐久力を落としたり武器破壊を狙ってるが難しい。
アロンダイトを使えれば盾はすぐ壊せそうだが使ったら最後、こっちがダルマにされる。

ただ純粋なサーベルの出力じゃ負けてるんだよな。
あんま切り結べないし。

どうしようかなーと考え始めてると遠くで何か光った。
あれは作戦終了の信号弾か?
結局、アスランは仕留められなかったけどしょうがない。
リベンジはまたできる。

様子見なのかジャスティスが距離を開いた。
今のうちに回線を再接続して二人につなぐ。

「あれ見たろ。さっさと引こうぜ」
『ああもう! コイツ強すぎ……え、撤退するの?』
『キラ・ヤマトがこれほどとは。今は分が悪い。シンの言うとおりに撤退しよう』
「じゃあパターンCで」
『ちょっと待って……準備OKよ』
『こちらも完了した』

全力可動3歩手前でアークエンジェルの真下に移動する。
即座に反応し攻撃してくるアスランとキラ。
俺は分身殺法を駆使してなんとか避ける。

レイがその隙にルナのインフィニットジャスティスと一緒にファトゥムに乗って離脱。
ムラサメたちが追撃をかけるがレイが前を向いたままドラグーンの射撃で迎撃していく。
ファトゥムに2機乗って遅くなりそうだが問題ない。
推進力としてレジェンドのブースターを使ってる。
おかげでレジェンドの単騎で飛ぶよりも僅かに速い。

ムラサメが諦め始めたのを察知し俺も二人に続いて離脱する。
スピードは維持し分身殺法も織り込んでるがストライクフリーダムの狙いが正確になってきた。

何度もひやりとする場面もあったが辛うじて射程範囲外に逃げきることに成功。
追いついた二人に並び悠々と仲間の元に帰る。

連中は追ってこない。
遠くでアークエンジェルが離脱していくのを確認し改めて元の戦闘地域に戻る。

すでに戦いは終わっていた。
なんとかジブリールの確保に成功。
ハイネとバビ部隊が頑張ってくれたみたいだ。

「正直な話、撃ち落としてもよかった。捕まえられそうだったんでやってみたら運良く翼に当たってな。やってみるもんだな」

とはハイネの言。
近接だけかと思ったら射撃の腕前も高いんですね。
流石は長年、赤服で前線を張ってきた人だ。

兎にも角にも目標を最高の形で終えることができて議長のご機嫌がいい。
おこぼれに預かるように作戦に参加した全員に休暇や特別手当を配布してもらえた。

でもパイロットたちは休暇を使う暇が殆ど無い。てかできない。
なにせ未だにラクス・クライン率いる謎の集団が見つかっていない。

オーブを一時占領している最中に襲われないかと不安でノイローゼになる兵士も結構でてきたが杞憂に終わる。

どうやら統治はすれど政治介入はしないと議長が声明を発表したのが項を奏したようだ。
あれをしなかったら襲ってきたんだろうか……きたな。

というように戦闘やその他で疲労困憊の軍を慰安するためザフトは一時大々的にパーティを開くことにした。

交代制での参加とはいえ酒を飲めるとあってみんな大はしゃぎしてる。
同時に街への買出しも認められ某知人たちはゲーム屋目指して突っ込んでいった。ついでに俺も新しいパソコンや欲しい物を頼んでおいた。

なんでもオーブの復興の手助けをユウナ代表から頼まれたらしい。
死にそうになったところをトダカ一佐に助けられたとか。
生き延びた後は人が変わったかのように優秀な手腕を発揮したっぽい。
カガリ代表になっていたら出来なかっただろうという噂を聞いた。

トダカさんに顔を出そうかと迷ったけどやめた。
暫くオーブは戦争に巻き込まれることはないだろうし、全て終わってからでも大丈夫だと考えたから。

短い休暇はあっという間に終わった。
次が最終決戦だ。



[25333] 第13話 「最後の晩餐」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/23 22:52
突然ですが電波です。

冗談じゃなくて。


全世界に向けて議長がロゴスのトップを捕らえたことを映像配信でお届けしてた。
とても悔しそうなジブリールを背景に粛々と今後のプランを発表していくドヤ顔議長。
言ってる中身を平たく纏めるとロゴス系列の企業の情報開示に始まって補償金、共有施設での優先権などなど、これまで地球圏にシェアを独占されていた部門にプラントも食い込んでいくということ。

それとデスティニープラン。
なんでも遺伝子を調べて適合する職業を斡旋するものらしい。
強制力があるのか知らないけどありがたい。
将来に悩んだらそれに就職しやすくしてくれるってことですよね?
貧乏時代を知ってる身としては将来が保証されてるんで大歓迎です!

しかしここで待ったをかけるヤツラがいた。
そう、ラクス率いる謎の軍団だ。

……もうテロリストでいいよね。


いきなり胸のボリュームが激しく落ち込んだラクスを見て「パッド何枚も落ちてますよ!」と叫ぶアホがいるほどの衝撃だった。

<私が本物のラクス・クラインです>

議長の横にいるラクス(巨乳)が激しくうろたえていた。
つまり本当に本物は現在進行形で喋りまくってるほう(並乳)ってこと?
それじゃあ今まで広報活動してきたのは偽物でFA?

スタイルの良さ的に俺は偽物のほうがいいや。


なぜか議長と電波ジャックしての討論大会が始まった。
その隙に発信源を探ろうとするがうまくいかない。

普通はすぐに居場所がバレるはずだけどな。
結局、発信源が特定できないまま討論は不思議なことにラクスが勝利宣言っぽいのをして終わった。

あまりの流れにぽかーんと開いた口がふさがらない。

話を投げっぱなしに帰らないでくれよ。
あと動揺してる兵士。お前らいい加減にしろ。
どう考えてもザフトの軍人である以上、議長の発言が正論に決まってる。

「自分の国の代表を信じない兵士……大過ぎだろ」
「詭弁に惑わされる者がこれほどとは……」

レイと二人で机に突っ伏してしまった。
はあ。明日は月にいかなきゃならないのにこんな調子で大丈夫か?

「もう帰って休もうぜ。機体の調子もみなくちゃいけないし」
「レジェンドもようやく本領を発揮できる。仮にキラ・ヤマトたちが攻めてきても負けはしない」
「頼りにしてるぜ」

またまたテンションの上がったレイ。
楽できるからいいんだけどね。


月にあるレクイエムという兵器もジブリールという人質のおかげで無事に摘発に成功した。
かわりに他の組織と取引があったが概ね平和に終了した。

大きな戦争も一段落。残るはテロリストの掃討。
大事の前の小事を片付けるためにもザフト全軍に向けて休暇が入った。
5日もくれるなんて。議長ったら太っ腹なんだから……んもう!

てなわけでミネルバにも待望の休暇がやってきた。
今回ばかりは全乗組員が休み。

ルナは実家へこれまでの経緯を話に。
レイはタリア艦長と食事へ。
ヴィーノとヨウランも実家で積みゲーを消化しに。
おやっさんは家族に会いに。
ハイネも家族やバンド仲間と楽しく過ごすようだ。

そして俺は一人である。
レイ、ルナ、ハイネに誘われたが邪魔するのもなんなので遠慮しといた。
初日は有名なレストラン巡りをしたが3軒目で飽きた。
帰る途中、目についた食堂で食べた飯のほうが落ち舌にあった。
貧乏性な真実を知り、帰ってふて寝した。

次の日、朝早くに目が覚める。
いつもどおりに厳しい訓練していつも通りに食堂で飯を食ってふと我に返る。

――― 休暇中じゃん!

かといってショッピングするにしてもなぁ。
グダグダとシミュレーターやって終了。

残り3日。
今日こそはとPCのデータをいじることにした。
まず先日に貯めていたキラさんの写真をネットに流出。
顔は隠してるが本人を知る人が見ればバレる程度のモザイクである。

元のファイルをコピーしたディスクを作る。
これはとある知り合いに渡すのだ。
イイ収入源なので小分けしたのを数枚用意してみました。

全ての作業が終わった。
最後にPCに機動パスを5重に設定。
さらに一度でも間違えると24時間機動しないようセット。
最後に起動した日から60日がたったら自壊するようにして完了。

いい仕事したぜ。

部屋から出て、指定されたボックスにディスクを一枚放りこんで、かわりに封筒を抜き取る。
中身はお札が数枚入ってた。


臨時収入の使い道を考えてたらアーサー副艦長を発見。
なにやら黄昏てる。

「アーサーさん、どうしたんです?」
「ああ、シンか。実はな……」

3分も話してもらってなんですが簡単に言えば彼女に振られたと。
遠距離恋愛に長期の音信不通が原因?
俺的には他に男が出来たからっぽいですよ。

「そうかな。でも……」
「あくまでも推測ですよ? それよりもそんな調子で大丈夫なんですか?」
「もちろんだ。残りの休みの内に立ち直るよ」

力のない笑顔で言われても。
しかたない。

「ところで貯金してます?」
「突然なにを……」
「お金に余裕あるんならいい場所紹介しますよ?」
「いい場所? 変なところじゃないだろうな」

心配しすぎですよ。
大丈夫、シン・アスカ嘘つかない。

「ちょっと待ってくださいね……ほいっと」

手帳に住所と金額、そして俺のサインを入れ渡す。

「これは?」
「この住所に行って今の紙を見せれば入れるお店です。カードより現金のほうがいいですよ。額は最低でもその金額を持って行ってください」

行くも行かないもアーサー副艦長しだいですが。
いけばいい夢みれますよ。

「じゃ、俺はこれで」
「お、おい」

引き止める声を無視した。


すっかりやることも暇つぶしもなくなった。
気晴らしに外に出て中華料理を食べる。
大衆食堂って美味いよね……。

そんなこんなで今日も終了。


あと2日。
この日は俺に客人が来てるというので会ってみることにした。
プラントにろくな知り合いはいないはずだが……。

案内された部屋にはすでに待ち人がきてた。
車椅子に乗った男性とそれを後ろから支える女性。
緑髪というなかなか珍しい色。
しかし会ったことないはずだが。

「はじめまして。私の名はユーリ・アマルフィという」
「私はロミナ・アマルフィです」

いかにも上流階級っぽい二人がする挨拶はとっても優雅に感じてしまう。
場違いっぽくて超居づらい。

「実は君にぜひともお礼がいいたくてね。知人に無理を言って会談させてもらったんだよ」
「お礼、ですか? 失礼ですけど初対面ですよね?」
「ああ。もちろんいい大人がこんなことをするのもどうかと悩んだがね。けれど会えてよかったよ」
「はぁ……?」

すごく優しい眼差しを向けられても困る。
もしかして新手の詐欺?

と、いきなり二人が同時に頭を下げた。
何事!?

「君が息子の敵を討ってくれて本当にありがとう。おかげで前に進むことが出来た」
「自暴自棄だった私たち夫婦が立ち直る大きな切っ掛けになりました。心からお礼を言わせてもらいます」

おおうビックリした。
なんだ、ただお礼を言いに来ただけか。
手紙とかでも充分だったのに。

ちょっと引いてる俺に気づかず二人は次々と言葉を継ぎ足していく。
微妙に堅苦しい言い方だけどなんとか聴き解くとキラ・ヤマトが息子さんの敵だったそうで、俺が完膚なきまでに叩き伏せ、かつ捕虜にまでしてくれたのが嬉しかったそうな。
さらにアスランに対しても似たようなこと言われちゃった。

「フリーダムとジャスティス。どちらも国家防衛のために、息子のために私が作り上げたMSだった。が、息子の敵に掻っ攫っていかれ、しかも息子の親友だと思っていたアスラン君にまで裏切られて……」

ヘビィだぜ。
あいつらって碌なことしてねーな。
俺だったら自殺したかもしれん。

「夫は目標を失い呆然とした日々を過ごしてました。でもシン・アスカ君が開発中の機体にあれこれと注文をつけたおかげで現場から復帰の声があがったんです。そしたら技術者魂ですか? それに火がついてしだいに元気になっていきました」

嬉しそうに語るアマルフィ婦人。よくみれば頬はやつれ髪も傷んでる。けど顔は生気があふれんばかりに輝いている。

「つい最近まで飲まず食わずでデスティニーを改修していたものでね。終わった途端に病院に運ばれて最近がやっと退院できたんだよ」

言葉の暴力反対。
地味に心に突き刺さります!

「その甲斐あったようだね。現場の技術者からは『思ったより整備しやすい』と太鼓判をもらえたよ」

よかった。本当にいい事があってよかった。
じゃなきゃ単なる我儘で入院させていた。

1時間ほどの短い時間だったけどアマルフィ夫妻は満足して帰っていった。
あの人達に悪いけど、いいヒマ潰しになって助かった。

玄関まで見送った後、なんとなくデスティニーのメンテをすることにした。
シミュレーションと実戦データの齟齬を無くし処理能力を上げるためいらない部分がないか探していく。
改修しただけあって無駄というものが殆ど無い。
僅かばかり出てくるバグを解消して作業は1時間足らずで終わってしまった。

「やべ、超ヒマで困りんぐ」

適当にワゴンゲームでも買ってみるか。
そうと決めたらさっさと行動。
外着に着替えて財布と携帯を手に外に出た。

ザフトの街並みは綺麗だ。
計算されつくした区画は商業地区と住宅地区などを区別しつつ境目が薄れるように気を使われてる。
ただオーブとか地球の都市と違って味気ない部分もある。
人口が増えづらいのもあって人もなんとなく少なく感じる。

30分さまよってやっとゲーム屋を見つけられた。
意気揚々と店内に入る。
さーてなんかいい商品は……。

絶望した! 品揃えの無さに絶望した!!

知育ゲームばっかじゃねーか!
マジふざけんなよコラ。
オススメ音楽がクラシックとラクスのCDしかないって……あ、ハイネもあった。

とにかくやりたいゲームがない。
だったらとレンタル屋に向かう。
ここだったらいくならんでもさっきのような……。

ま た か。
もう上品な商品はいらないって。
勘弁して下さい。
お下劣なものとかないんですか?
え、ある?

高校生向けポルノとかいい加減にしろ!
肝心な部分が服で隠れてるし。

なんだよ、そっち方面も上品なのかよ。
どおりで俺の地球で得た知識を披露すると引かれることが多かったわけだ。
ムッツリは紳士ですかそうですか。
そりゃアスランはモテますな。
こんなことならもっと早く事情を把握すべきだった。

結局、街中を爆走した2時間は無駄に終わってしまったし。
仕方ない、軽く飯と酒を飲んで帰ってネットでもしよ。


目についたバーに俺は入ることにした。
なかなかイイ雰囲だ。
ちょっと雑然としているところがまたいい。
夕方のせいか客は俺だけみたいで店内はがらりとしていた。

「いらっしゃいませ。お一人様でしょうか?」
「はい。がっちり食べられる物と食後に軽い酒をお願いします」
「身分証を拝見してもよろしいでしょうか?」
「えっと……どうぞ」

ちゃんと飲酒できる年齢だと確認すると人懐っこい笑顔を浮かべマスターは奥の席に案内してくれた。

たっぷりの具が入ったパスタと温かいスープ。
うめぇ。

こんなに食べても太らない。
若さと訓練って素敵。

ふう。
一気に食ってしまった。
上品とは無縁の俺にはお似合いだ。

しかしいい感じのバーだよなぁ。
この薄暗い感じにほのかに聞こえる音楽が気分を落ち着けてくれる。
今後も機会があれば使わせてもらおう。

「そういや開店時間がやけに早いんですが。いつもこんな時間に?」
「いいえ。本日は常連さんたちにコンサートをさせて欲しいと頼まれたんです。忙しい人たちですし最近は客足も遠のいてますから了承したんですよ」
「へぇ~。よかったら俺も聞かせてもらっていいですかね?」
「う~ん……彼らも身内だけでしたいらしいので難しいですかね」
「そうですか、残念です」
「お、噂をすれば」

バーの重いドアがゆっくり開く。
そこにいたのは。

「お、シンじゃないか?」
「ハイネ?」

オレンジ髪をきらめかせギターケースを肩に引っさげたハイネだった。
そしてケースにはやっぱりミク。もう定番だな。

「おいおいおい。なんでシークレットライブなのにお前がいるんだよ? そうか! お前もついに俺たちのすばらしさを理解してくれたんだな!!」
「ちょ、おま」
「いいってことよ。今夜は楽しんでいってくれ!」

「いやーうれしいな!」とはしゃぐハイネを止められない俺の弱さが憎らしい!
チクショウ……とってもチクショウ!

「マスター! 酒のおかわり。今度は強いヤツで!」
「かしこまりました」

もう諦めよう。
飲んで飲んで……飲んでやる。


酔えない。
いくら飲んでも今夜ばかりは酔えそうにない。

あの後に仲間と合流したハイネは俺の紹介をしてくれた。
なかなか気のいい人たちだ。
ただし初音ミクがいる。

世の中ってなんだろう?
哲学っぽい思考で逃げようとしてたらお客さんが入ってきた。
レイとタリア艦長。さらには議長。
なしてこのような場末のバーにいらっしゃったんデスカ?
嬉しそうに俺のところに来るレイ。
俺も会えて嬉しいよ。でも頬を染めるな。

三人ともちょっと酔ってるみたいだ。
ハイネたちも慌てて挨拶してた。
議長はコンサートのことを聞くと同席したいと言い出す。
断れるわけもなくOKを出す。

緊張で味がわからなくなった酒を水飲みラッキーバードの如く流しこみ議長たちのホスト役をこなすことになっていた。
奢りなのは嬉しいんですがマジ勘弁してください。

漫画話で盛り上がりもうすぐ始まるとき、さらに客が。

「あれ? シンと……ぎ、議長!?」

ルナとご家族のご登場です。
少々酒に寄ってテンション上げ上げな議長から相席を勧められ緊張した面持ちで座るホーク一家。
その際にルナが俺の横に座ったもんだから親父さんから睨まれること火のごとし。
違います! 僕たちはただの同僚です! と叫べたらどんなにいいことだか。

いつの間にやら大勢になった観客でもハイネたちは嫌な顔をせず、むしろ嬉々として演奏を始めた。

「からーみあーうーねーつーのー!」

凄く……巧いです。
歌手でデビューしてるのもあるけどパフォーマンスも最高!
俺、ちゃんと貰ったCDを聞くことにするよ!
生だとここまで違うもんなのか。
他の人たちも見入ちゃってる。

曲が終わると盛大な拍手が鳴り響いた。
水で喉を潤し、続いて歌う。

「しってなおもうたいつづくとわのいのち」

ああ……初音ミクね。
ボルテージが上がるバーの中、俺だけ微妙にテンションが下がってしまった。




楽しい楽しい休暇が終わってしまった。
二日酔いで貴重な1日をつぶしたのは忘れよう。


各国と交渉団によるデスティニープランの実行許可は受諾と条件付き受け入れの国が殆どだったそうだ。大成功といっていい結果だろう。

オーブを筆頭に数カ国が首を縦に振らないらしい。
ユウナが代表でもカガリの影響を受けた官僚が同意してくれなかったとか。しかもアークエンジェル組とジャンク屋連合に影響力のあるマルキオ導師が後ろにいるらしい。

何かを決心した表情のレイが俺に教えてくれた。

「もうすぐ議長の考える世界が実現する一歩が始まる……。ザフト自体も念願の平等条約が結ばれる可能性があるんだ。俺は議長の未来を叶えるための礎になる」

Hey Hey Hey……フォー!
そんな重大な決心を俺に話すのは……なぜ?

「俺の寿命は長くない。俺は生まれつきテロメアが短くて老化が早いんだ。薬で抑えていても限界がある」
「嘘だろ。だって、もうすぐなんだぞ。そこまで生きられるなら、戦争が終われば治療を探せる。そうすれば長生きできる方法もきっと!」

未来ではレイのような患者を救える治療法が確立されてたんだ。発表者の名前は覚えてるからそいつらに金をばらまいてやればきっと上手くいく。

「俺は、クローンだ。これは宿命なんだ」
「……諦めんなよ!
 諦めんなよ、お前!
 どうしてそこでやめるんだ、そこで! もう少し頑張ってみろよ!
 ダメダメダメ! 諦めたら周りのこと思えよ、応援してる人たちのこと思ってみろって!
 あともうちょっとのところなんだから!」
「シン?」

面倒くさくて言った。
後悔はしていない。

「悩みを言ってくれたのは嬉しい。希望を教えてくれたのも嬉しい。けどお前がそれを諦めたらどうすんだよ。投げっぱなしはやめてくれよ」

まだ望みはあるはずなんだ。
あと1戦やらかして、そいつに勝てば全て手に入るんだぞ。

アークエンジェルの連中から金をふんだくって治療費に当ててやるさ。

「みんなでブリーフィングするぞ!」
「今からか?」
「どうせ襲われるってわかってんだ。早めに準備しとくに限る」

てなわけで。
第58回パイロットだよ全員集合!
が始まった。

ミネルバと同伴する艦隊のパイロットの皆さんと連携プレーをしようと持ちかけてみた。

鼻で笑われた。

仕方ないんでシュミレーターでミネルバ組vsその他で叩きのめし言う事を聞かせる。
騒ぎを聞きつけた白服が途中で乱入したが問答無用で落としてやった。
プライドを木っ端微塵にされた人たちは死んだ魚のような目で各自の艦隊に戻っていきました。

「レイ、ドラグーンで同士うちを誘うなんてやり過ぎだぞ」
「ルナマリアのサーベルごと両断していたのが原因では?」
「ハイネが調子にのってブーメランだけで戦うからよ」
「シンが一方的に狙撃してたのが間違いだったんじゃね?」



[25333] 第14話 「戦士の条件」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/27 00:57
ついに最終戦が始まる。

現ザフトの最高責任者、ギルバート・デュランダルひきいるザフト軍はとあるポイントに陣を張った。
その場所は特に基地があるわけもないただの宇宙域。

なぜこんな場所に?

大半の人が抱いた疑問はすぐ解ける。
なんと巨大な大砲のような施設が目の前にいきなり現れたんだ。

これはネオ・ジェネシスという兵器だ。

隕石でも落としそうなこの議長はこっそり壊れてたのを修理していたという。
これが現ザフトの切り札である。
だから破壊されると外交的にヤバいので是非とも死守してってね!

と演説していただいた。



「しっかしデカイよな~」

一人でミネルバの展望台から見るネオ・ジェネシスは超でかかった。
これを修理した金を少しでも他に分けてくれたら……と思ったのは秘密だ。

「本当だったら月にコイツをぶち込んだらしいぜ」
「ハイネ」

いつのまに入ってきたのか。
それにしても情報通だよね
流石は俺達の中の最古参の一人、頼りになるなぁ。

「月にいる地球軍の連中は他の派閥が引き取っていったもんで出番はなかったのさ」
「もしあったらコイツがねぇ? そんなに凄いんですか?」
「もちろんよ。ただチャージに時間がかかりすぎるのが弱点だ。そのせいで前の戦争で一度、破壊されちまってる」
「誰がやったんです?」
「ラクス・クライン率いる騎士さんご一行。それに現ザフトで白服はってるのやつの副官だよ」

呆れたように肩をすくめた。
俺も信じられない気持ちだ。

元敵だったやつを副官にできるものか?
議長の口添えがあったからアスランも復帰が可能になったのに。

ところで白服ってなに? またザフトの個人主張の一貫?

「運良くレクイエムって兵器も徴収できたおかげでザフトの防衛力はえらい高まってる。これならどんな国も簡単に攻めて来ない!……はずなんだよなぁ」
「普通そうですよね」
「……実はついさっき宣戦布告された。予想はつくと思うが言っておく。あのラクス・クラインだ」

彼女はいつから一国の首相になったんですか?

「あとオーブも兵士の多くが艦やMSと一緒に脱走しラクス・クラインの元に集まっているらしい。オーブ国首相から「止められなかった」と詫びの通信があった。
「うそん」
「悲しいけどこれ、事実なんだよな」

わかる。

どうせカガリあたりが通信ジャックして呼びかけたのが影響してんだろ?
あとは他の国が輸送の手助けとかしてんだろうな。
あいつらの思想ってよくわからん。中心がラクスの考え一つで決まるから楽できる利点もあるにはあったけど……正直、肌にいまいち合わなかった。


ラクスとは結構相性よかったのに不思議!



それはさておき。

「レクイエムってのを使って一斉になぎ払えばいいんじゃないか?」
「残念だがレクイエムは使えん」
「なんで!?」

せっかくの戦力ですよ?
派手にいきましょうぜ。

「いきなり使われたら大事だからと物理的・システム的に厳重なロックをかけたそうだ。しかも議長自らが赴かないと解けない」
「おい!」
「仕方ないだろ。そもそもこんなに早く反抗する連中がいるなんて思わないって。少なくとも3ヶ月は時間を確保できると踏んでたのに。ひと月足らずで攻め込める軍隊を集められるって誰が思えるよ!」

キレないでください。
俺が悪かったから怒らないで。

「上はあと5日ほどで戦端が開くと予測してる。俺も慣熟訓練があるから時間がない」
「5日!? 早過ぎって、え? 新しいの来たの?」

流石は議長! そこに痺れる憧れるぅ!

「ああ、お前が鹵獲したフリーダムを修理・改修したのを貰えた。これで全員が核動力になったな」

人のトラウマの機体を味方にするなんて。
前から言いたかったんですが、敵を自分の手駒にするのは将棋のルールですよ議長……。




最後の戦い―――。

全ての決着がつく戦いを前に俺の心臓は張り裂けそうなほど強く動いていた。

思えばフリーダムに家族が殺されたことが俺の人生をきめることになったといっても過言じゃない。

だからこそ、このしがらみを断ち切るために俺は、討つ!


……なんてね。
うは、超恥ずかしい。
なにこの次回予告。素面で言えねーっすよ。
でもネタに使えるな。
今度のヴィーノ、ヨウランとの飲み会で使ってみよう。

端末にアイディアをメモして終わるとタイミングを見計らったようにルナが話しかけてきた。
その顔は緊張のせいか人形のように無表情だ。

「シンは戦争が終わったらどうするの?」
「いきなりなんだよ……そうだなぁ。大分後になるだろうけど、旅でもしてみたいな」
「旅?」

金あるし。
レイの治療が出来そうな人も地球にいるからコネを作るためにもいかないといけないから。
議長に相談すればスムーズに渡りを付けてもらえそう。

それが終わったらジャパンに行きてぇ。
ホテルとか凄いサービスいいし、なにより飯が美味い!
しかも手頃な値段で地球のあちこちの料理を食べられるという神秘の国だ。
もちろん、夜のサービスも素敵なのが多かった……。



あ。

俺、ジャパンだとまだ未成年だから酒も飲めないし夜の店にも行けないじゃん。
テンションが下がりまくりんぐ……。

「急にそんなこと聞いてくるなんてどうしたんだ?」
「ぅぇ!? ううん、なんでもないの! じゃ、じゃあ後でね!!」

そう言うとルナはスタコラサッサと持ち場に戻っていった。なんだったんだ?
まさか旅に着いて来るとか……やめてくれ、性欲をもてあましちゃうから。

今から対策を考えないと。メイリンを俺が殺しちゃえば嫌われる、いやいや人としてどうよ、それ。
仕方ない。夜逃げのごとく見事に逃げきってみせよう。
幸いにも荷物は少ない……いける!

考えも纏まったところで最後のブリーフィングといきますか。



ブリーフィングはハイネによる作戦行動の説明から入った。
ちなみにレイは諸用で遅れてる。

「今回、敵の戦力はこちらよりはるかに少数だ。しかも遠征で補給もままならない。一方の我が軍は支援も充実している」
「じゃあ負ける要素なんて一つもないじゃないですか」

ルナの間の手にハイネが大きく頷く。

「そうだ。しかし一つだけ、同時に最大の問題もある」
「……ラクス・クライン」
「シンの言ったとおりだ。彼女が指揮官として君臨している限り早々に引いてはくれないだろう。けれど持ちこたえれば俺達の、勝ちだ」

ガナーザクと偵察型ジンの両部隊は射程ギリギリからの支援を。
スラッシュザクとグフイグナイテッドたちがシールドを支給されたザク達と連携を取って近づかせない。

「また長距離ミサイルとネオジェネシスによる砲撃支援を敵艦隊を射程内に収めしだい発射する。巻き込まれる可能性があるのでネオジェネシスの砲撃終了の合図まで各乗組員は待機命令が出ている」
「それでどこまで撃ち減らせるかが鍵でしょうね」

よくて1割だろうけど戦う身としては十分ありがたい。
どうせアークエンジェルは落とせないはずなんでそこは諦めよう。
少しでもアストレイを削ることが出来ればあとは楽。

「私たちも他の部隊と連携を?」
「いや、それについてはレイから連絡があると聞いているんだが。まだ来ないな」

しかたなくハイネが部隊の展開予想に移ろうとしたときレイは来た。

「遅れて申し訳ありません」
「お! ちょうどいいタイミングだぜ。さっきルナマリアから質問があったばっかりだよ。で、俺達の役目は?」
「はい、我々は一丸となってキラ・ヤマト及びアスラン・ザラの足止めを実行せよと命令を受けました」

確かに俺達じゃないとあいつらは止められないと思う。
自慢じゃないがミネルバ組のパイロットは全員が恐ろしい腕前になってる。
前の戦いでもレイとルナがキラ相手に持ちこたえたのが良い証拠だ。

「別に倒してしまっても構わないんだろう?」
「シン、俺達の腕なら倒せる可能性は高い。しかし議長は確実に勝てる方法を選択肢たんだ。命令はあくまでも「抑えろ」だそうだ」

微妙な空気になった。
信頼されてるからこそ「倒してこい」の言葉のほうがパイロットとしては嬉しい。
でも議長の言うとおり、この戦局は無理に戦わなくてもいいものだ。だから被害を抑えようと無理させない方向に持ってきたんだろうけど。けどさ。

「確実に仕留めるなら4人で囲んで戦えばいい。キラ・ヤマト一人ならばその戦法も取れたはずだった。本来ならばそれで片がついたはずだった」
「マジかよ。せっかく俺のフリーダムのデビュー戦だってのにツイてないぜ」
「私は正直安心しちゃった。キラ・ヤマトって強すぎよ。前の戦いで二人がかりで抑えるのがやっとだったのよ? それに無理に落とさなくても他の連中を落としたほうが楽だわ」

納得しきれないハイネと安堵の溜息を漏らすルナが対称的で面白い。
実はレイのほうも納得しきれてない様子で少々不機嫌だ。
俺も残念7割安心3割な気分だしなぁ。

「ふぅ。愚痴っても仕方ないさ。それよか今の命令をこなせるよう話し合いしようぜ。なにせ明日には連中は攻めて来るんだしさ」

俺の一言でなんとか皆、頭を切り替えられたようだ。
最初と違って不満そうだけど。

「あーあ。生まれ変わったフリーダムでボッコボコにしたかったぜ」
「そんなに愚痴らないでくださいよ。もしかしたら機会があるかもしれないじゃないですか」
「そうだよな、じゃないと休暇の1日潰してデザインしたロゴが無駄になるしな。期待しとくことにするよ」

どんなロゴかは想像できるんで聞くのをやめた。
だからいいって、カバンから嬉々として取り出そうとすんなぁ!

「いいか、このギターの角度がだな……」

俺の言葉をスルーして話し始めるハイネ。
時間がないって言ったのアンタだろ!
おい、二人とも早く止めるんだ。そして俺を助けてくれ。

助けてください!

「俺達がフリーダムを抑える。ルナとハイネはアスランを頼む」
「オーケー。レジェンドとの連携は時間が足りなかったしね。これならバッチリよ」

無視かよ!



[25333] 第15話 「輝く明日を目指して」
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/27 00:58
宇宙を一筋の光が貫いた。

しばらくして遠くで小さな小さな光がいくつも弾けた。

それが大きな戦いの小さな狼煙だった。


厳戒態勢の中をムラサメやメビウスが突っ込んで来る。
惜しげもなく放たれたミサイルたちを俺たち4人は後方に展開していた部隊と協力し撃ち落としていく。
前線部隊は手頃な敵めがけて殺到し瞬く間に粉砕していった。
連携プレーにより死角をなくしたザフト軍の勢いは凄まじく被害を殆ど受けない。
それでも一点に集中して攻撃されたことで防衛ラインに穴が空いた。
すかさず敵の第2波が飛び込んでくる。
アストレイや105ダガーにどこからかき集めたのかウインダムまで次々に小さな点を巨大な穴にするため遮二無二に来る。
負けじとガナーザクの援護を受けたスラッシュザクが数機まとめて切り払い、グフのウィップに薙ぎ払われても引く気配もみせない。
勢いに押され、歪な形になっていく陣形。

一筋の流星のように二機のMSが飛び込んだ。
乱戦の中、まるで自分の家のように少しも減速することなく戦場を駆け抜ける。
すれ違うたびに友軍が削られていく。

――― 来たか。

<新たなMSが2体急接近中! インフィニットジャスティスとフリーダムに酷似した機体です! 担当班は至急、迎撃に向かってください!>

悲鳴のようなオペレーターの叫び声を尻目に淡々と俺達は迎撃に向かった。




『ジャスティス……ハイネか?』
『アスラン、覚悟して!』
『な、ルナマリアなのか!?』

奇襲と同時に言い放ったルナの一撃をアスランはサーベルで迎え討たされた。
ミネルバにいたころは余裕を持って避けられたルナの攻撃を切り結ばなければ対応できなくなったということだ。

『俺も忘れるなよ!』
『フリーダムにハイネだと!? 一体どうやって……っく』

大振りになったルナの隙をついて斬りかかろうとしたアスランをフリーダムの砲撃が邪魔をする。
砲門数こそ少なくなったが代わりに以前よりも敏捷性を増したハイネ使用フリーダム。
オレンジに染まる装甲を翻しライフルを構え、撃つ。
かすることなくヒラリと避け、ハイネに強襲しようとするアスランをルナが遮る。

『そこをどいてくれ! 議長は止めなくちゃいけない。わからないのか?』
『やかましい! そんなに止めたきゃ俺たちを殺してみせろよ裏切り者!!』
『……っ』

あっちは大丈夫そうだ。
それよりもこっちのほうだぜ。

目の前に悠然と佇むフリーダムを止めなくちゃならない。
既にレイはドラグーンの準備を終え、俺もアロンダイトを構えている。
対峙しているだけなのにこのプレッシャー、辛い。

『君たちはどうして議長に従うんだ。あの人の考えは世界を破滅させる、だから……』
『黙れスーパーコディネーター。貴様の存在こそが議長の考えが正しいという結果だ。そんなに否定したければ自殺でもしていろ!』

微かに動揺しているのがわかる。そんなに衝撃的なことだったのか?

『君は……なんで、それを』
『俺はラウ・ル・クルーゼと同じクローンだ。ラウの仇、なにより議長の夢を阻む貴様はここで止める!』

おーい!
レイがいきなり命令違反してどうすんのよ。
俺達の作戦目標は撃破じゃなくて抑えることだぞ。
微妙に蚊帳の外なのが拭えないのがちょっとアレだが俺も急いで戦闘に加わる。

多少の動揺はあったもののすぐさま対応し迎え撃つキラさんパネェっす。
少しでもドラグーンの操作を邪魔しようと斬りかかるが激流に身を任せる水の如く全て受け流されてしまう。
隙を見せようものならアスランのセイバーのようにダルマさんが転んだ状態になってしまう。
常に集中し続けないといけないのが凄くキツイ。
まだ30分も経ってないのに軽く息が上がってきた。

「くそったれ。なんて強さだ」
『ドラグーンはもうすぐ落とせる。頑張ってくれ』
「うぉおおおおお!」

最初っからサーベルにしときゃよかった。
懐に潜り込んでこないように騙し騙ししてきたが見切られかけてる……!
キラのドラグーンはガン無視してても怖い。
斬りかかった瞬間に後ろから……嫌な想像が頭をよぎる。
もう少し、もう少しで戦争は終わるんだ、邪魔はさせない。

『ラクスの言葉を聞けば、きっと君たちも判ってくれる!』
『ぐ……なんという精神力。だが、これで!』
「家族の仇のアンタの言葉なんて信じられるかぁ!」

ドラグーンを全てたたき落としたレイが合流してくれた。
プレッシャーが弱まったおかげで少しだけ余力ができる。
今のうちに武器をサーベルとライフルに切り替える。
レイと二人で組み立てた連携で攻める。

さっきまでの1対1の戦闘と違ってキラも迂闊に手出しできていない。

これならいけるか?



『このままじゃ……僕は……』

ガンガンいこうぜ!
押してる、間違いなく押してるよ。
なんでか知らんがキラのテンションが上がっていない。
いや、本気でやってんだろうけど全力じゃないんだろう。
俺がいつもの中二病状態になってないのに対応できてるのが証拠だ。

「いける、いけるぞ! レイ、このまま押し切るぞ」
『同時に攻撃するか?』
「確実にいこう。ただし隙を見せずに地道にだ」

油断してはいけない。
あいつはキラ・ヤマトなんだ。
味方にしたら頼もしいのに敵にすると鬱陶しいことこの上ないという存在。
まだ慌てるような時間じゃない。

『このままじゃ。ゴメン、ラクス。僕は僕の信念を破る。でも君を守れるなら構わない……君がくれたこのストライクフリーダムで守ってみせる!』

いきなり一人で恥ずかしい告白したかと思ったら動きが変わったでござる。
キレが2倍、俊敏が1,5倍、さらにはパゥワーまで上がってる。
設計上はデスティニーとレジェンドのほうがパワーは上なんですけど。
何をしたキラ・ヤマト。

「どわ!? いきなり強くなりやがった?」
『捌ききれん、まずい押し返されるぞ!』
「チックショー! ええい、諦めるなレイ、ヒッヒッフーと深呼吸すれば活路が見えるはずだ。近所のばあさんが教えてくれたおまじないだから間違いない」
『お前は何を言っているんだ? 少し落ち着け』

ッハ! 俺としたことが混乱していた。
いけない、いけない。こんなときこそヒッヒッフー。よし、落ち着いた。

いくらなんでもエンジン性能に差はないはずだ。
素材だって俺たちと変わらないはず。
残りはソフト?

だとしたらあんにゃろ、システムを書き換えたか入れ替えやがったな。
戦闘してる最中だから後者の可能性のが高いか。
どっちにしても化物と呼ぶにふさわしいチート野郎だ。
けど長くは持たないはず。
スペック以上の性能は必ず無理を生む。
そこまで我慢できれば勝手に引き上げていくはずだ。

それを信じてひたすら耐える。
命大事に本当に大事に。



どれくらい時間が経ったのか解らない。
気づけば最初と同じ構図でキラと対峙していた。

俺は肩で息するほど疲れてる。
少しでも呼吸を整えようとしていると突然、キラは身を翻しその場から去っていった。

「どうなってんだ……? しかし助かった」
『こちらもハイネたちと合流して基地に戻るぞ。そろそろ俺も限界だ』
「ああ、急いで戻ろう」

レーダーを頼りに二人を探すとすぐに見つかった。
あっちも俺たちを探してたようだ。

話もそこそこに俺達は急いで基地に戻った。






急ピッチで補給と検査をしてる格納庫のパイロット控え室。
新しいパイロットスーツに着替え、ドリンク飲んでようやく落ち着いた。

「「「「……疲れた」」」」

全員でベンチや床に寝転んで臆面もなく言い切った。
ここまでとは苦労すると思わなかった。

「アスランの野郎いきなり強くなりやがって。白いスラッシュザクが援護してくれなきゃ危なかったぞ」
「同じMSなのに出力で負けるっておかしくない?」

あっちも同じだったらしい。
ルナの不満も当然だよな。
たぶん後から開発したにしろ全体的に差はないはずなのに。
ドラグーンの操作で精神疲労がたまったレイも頭にタオルを乗せるほどだ。
俺にしたって栄養剤を点滴してもらってるし。


少し休んでリフレッシュし、さっそく戦場に戻ろうとしたらハイネとルナたちがおやっさんに呼びだされた。
俺達は先に行って待っていろとのこと。
言われたとおりに先に出る。

艦外に出る瞬間、視界の端になにか映った。
気になってそっちに顔を向けた。

なんかいる。
ミネルバの両横にでかくて白くて大きいのが……。

「どっかで見たことあるんだけど何だコレ?」
『ミーティアだ。元々フリーダムとジャスティスの補助兵装だった。しかし前大戦で二機の分とも破壊されたはずだ』

生き字引のレイさん流石です。すっかり忘れてた。
それにしてもデカイよな。常識的に考えれば機動性が最悪になりそうなもんだけど。

『見てみろ、二人が出てきた。恐らくドッキングするはずだ』
「どれどれ?」

細長い筒が飛び出してるほの真ん中にある四角い部分がガチャッとなってフリーダムとインフィニットジャスティスがそれぞれガションとくっついた。
筒の内側にあるグリップを二機が握って……お終い。

「地味じゃね?」
『単純なほうが兵器としては強いから仕方ない』
「あれ1機作るくらいならザクとかに予算を回したほうが……」

沈黙。
再びレイは口を開いた。

『あの二機はアマルフィ技師が是非ともにと少ない予算をやりくりして送ってきてくれたそうだ』
「いやー味方がパワーアップして本当によかったよな! これなら今度こそ勝てるぜ!!」

心のそこからゴメンナサイした。


『おーい、こっちは準備終わったから行こうぜー』
『二人とも私たちが牽引するから捕まって~』

ありがたく乗せてもらう。
推進剤は少しでも節約したいしね。


図体から想像できない速さで移動できるのは結構楽しい。
システムの関係上、デスティニーとレジェンドは装備できないらしくてちょっと残念。
友軍が開いた道を進んでいくと白いスラッシュザク率いる部隊がこちらに接近してきた。

『こちらジュール隊隊長、イザーク・ジュールだ。そちらの部隊と同伴してよろしいか?』
『こちら迎撃特化隊ハイネ。軍より許可は得ているか?』
『議長直々に許可は得ている。これが証明映像と通達書だ。確認を頼む』
『……照合完了した。合流を認める』

どういうこと?

『さっきの戦闘でかなり連中を削れたんで余力が出たんだよ。てなわけでウチの隊長さんが是非ともあの連中とやり合いたいと懇願したのさ』
『ディアッカ! 余計なことを言うな!』
『はいはい、すいませんね』

そんな要望を土壇場で決定しないで欲しかったです議長。
裏切り者かと思っちゃったじゃないですか。
けど戦力の増強は頼もしい。


遠くに何か見える。
白いのが2つ。あれは?

『ディアッカ、アスランとキラ・ヤマトが来たぞ。やはりミーティアを装備したか』
『イザーク隊長、そちちらの部隊と俺とでアスラン・ザラを迎え撃つ。残りはキラ・ヤマトを頼む』
「ハイネ?」

確かにそのほうが勝率は高い。でも大丈夫なのか?

『心配すんな。かつての腕きき2人もいるんだぞ。もう一人のパイロットまでは知らんがな』
『フン。シホもなかなかの腕だ。足手まといにはならん』
『てなわけなんで決定な。心配すんな。負けるような戦いはしない』

ハイネぇ……。
そこまで覚悟を決めてるなら止めるほうが失礼だな。

『仲間を信じろ。シン』
『大丈夫だって。私なんて未だにハイネにシミュレーションで負け越してんのよ』
「うん、わかった」

正真正銘、最後の戦いだ。

決着を付ける!





2つの部隊に別れ、俺とレイとルナの3人はキラと衝突した。
さっきよりも強いプレッシャーを放ってきやがる。

心配で繋げっぱなしだった通信から『愛と怒りと悲しみの!』と通信が入ったので切っておいた。

よっしゃ、これで準備よし。
どこからでもかかってきやがれ!

『シン・アスカ。君は全力で叩く!』

初球から名指しで俺狙いだよ。
怒涛のミサイルとビームの攻撃をデスティニー得意の分身殺法で避ける。
レイとルナが隙をついて落とそうと攻撃をしかけるが相手も避ける避ける。

けど3体1という状況。同時に馬鹿でかい図体だ。
キラといえど少しずつ被弾している。

レイのドラグーンの攻撃で大きくよろけたところを俺が高エネルギー砲の一撃を叩き込んだ。
とっさにミーティアを切り離しキラは脱出した。

そこにルナがミーティアの全弾を発射する。
迫るミサイルとビームの大群。

キラは優雅とよべるほど落ち着いた動きでビームに一切当たらず、しかもミサイルを避け、撃ち落とし、時に盾にして凌ぎきりやがった。

身軽になってスピードが増したストライクフリーダム。
二人に目もくれず俺だけ狙って突撃してきたし。

『君が、君さえ倒せば全部終わる!』
「ちょ、おま、話せばわか、うぉ」
『もう流出したものは止められない。だったら元を断って被害を最小限に!!!』

どうもシン・アスカです。
命がけの鬼ごっこが始まってどれくらいの時間が流れたでしょうか?
僕はまだ生きています。
訳のわからんことを叫びながら命を狙ってくるキラの対応に忙しいこのごろ、皆さんは、いかがお過ごしでしょうか。

「ぐうぅぅぉぉぉおおお。死んでたまるかコンチクショー!」
『もう後がないんだ! 敗けられないんだ!』
『援護する、急いで体制を立て直すんだ』
『コッチを無視すんじゃないわよ!』

ドラグーンの乱舞をレイが妨害し、時にはルナが身を呈して防いでくれるおかげで逃げられてる。
人間の反射神経じゃねー変態機動を見せてくれるキラ。
あんな細いMSのどこにそんな耐久性が?

「危ね! けど耐え切ったぞ」
『……逃げ切られるなんて』

再びレイの手によりドラグーンは破壊された。こっちもミーティアがやられたけどな。
廃棄したミーティアを壁にしてキラと対峙する。
観察したストライクフリーダムの残る武装はライフル二つとサーベルとバルカン。あとは胸の砲塔っぽいやつ。

俺達は俺達はなるべく近づかないようにして攻撃することにした。
あっという間にミーティアは破壊され障害物がなくなる。
でも3機で囲んで得意の空間軌道を封じることに成功してた。

千載一遇のチャンスにドラグーンも含めて一斉にライフルで攻撃。
しかし当たらない。

3体1の状況下なのに相手もよくやる。
ただいい加減に疲れてきたのか少しずつ回避するタイミングが際どくなってきた。
一気に終わらせたい気持ちを堪えてひたすらに射撃のみで押しこむ。

黙って嬲られるわけもなく、キラも二つのライフルで反撃してくる。
しかしこちらも核動力機体だ。
シールドを貫通できるわけがない。
逆に攻撃を受けなかった1体が冷静に対応するだけだ。

機会を伺ってルナと交互にアタックしかけたがダメだった。
ただアチラも警戒した様子で守る姿勢に入った。



戦闘を始めてから15分。
俺達も連戦で疲れているがキラのほうが辛いだろう。
やはり動きの精細さが欠けてきている。

そろそろ動く。合わせて俺も。

『……負けられないんだ!』

動く気配を感じ俺は中二病状態へ移行する。
視界がクリアになり周囲から得られる全ての情報をなんなく処理できる。
デスティニーの指先で生卵を壊さず持つことだってできるはず。

スラスターを最大に燃やしキラが突っ込んでくる。
負けじと俺も出力を最大まで上げた。
アロンダイトとサーベルがぶつかり合い火花が燃える。
一刀のこちらに対して相手は二刀流。
しかし一撃を各部スラスター全開でぶん回し攻撃させないようにしてやる。
おかげで腕から「ヤバいから落ち着け」とアラームで抗議が入ってくるが無視。
俺自身も加速するGに体がギシギシ言うが歯を食いしばって耐えた。



何度も打ち合う中、嫌な予感がした。
もしここで仕留められなきゃ終わる―――そんな予感。
信じて残る力を振り絞る。



変に力んだせいだろう。
ちょっとだけ、本当にちょっとだけ操作に余計な力が入ってしまった。
少しだけアロンダイトを振りぬく距離が伸びる。

普通なら気付かない操作ミス。
しかしキラにはばれていた。

キラがアロンダイトの峰に自分のサーベルの柄を当てた。
外から加えられた力のせいで腕が流され体制が大きく崩れる。
キラからアロンダイトは絶対に届かず、しかし一足で踏み込める距離を取られた。

「あ、死んだ」

キラの乗っている機体の胸元に光が集まるのがわかる。
ゆっくり流れる灰色の時間の中、やけに冷静になっている俺がいた。

あれはシールドごと俺をぶち抜く。
けど避けきれる距離じゃない。
体制を直すヒマもない。
詰んだ。

頭の別の部分はこの瞬間を打破できるものを探していた。
バルカンはチャージしてるビームの余波で命中しそうにない。
なにかビーム系の飛び道具はないか。

ライフル―――間に合わない。
高エネルギー砲―――間に合わない。
サーベル―――届かない。
ブーメラン―――抜けない。

―――!!

一つだけあった。
一か八かだ。
死ぬにせよ生きるにせよ試してやる。

デスティニーの右手をアロンダイトから離しシールド発生装置をキラの乗る機体の胸元に合わせる。
ストライクフリーダムの胸元にシールドを発生させる上限値を大幅に超えたエネルギーを注ぎこむ。
俺、うまくいったら神様信じる。

「頼む……」

シールド発生装置から細いビームを発射。
光る相手の胸元めがけ撃ちこんでやった。
細いビームはチャージしてるエネルギーの余波にかき消されつつ、それでもほんの少しが銃口の中に飛び込んだ。


そして。


まずキラの乗る機体の胸元から歪なビームがたくさん飛び出した。
次いで大きく爆発した。

左手に握るアロンダイトでコクピット覆った。
右手のパルマフィオキーナをかざした。

一瞬だけ掌はビームを支えられたが一瞬で紙のように突き破られた。
右腕、肩を一瞬で吹き飛ばされ、突き抜けたビームは背中のウイングユニットまで巻き込んでいく。

コクピットが激しくシェイクされ段々と意識が遠のいていく。

衝撃で霞む意識の中、誰かの声が聞こえた。

ああ、これは―――だ。

もうねむい。おきてなきゃいけないのに。おきて―――。



「っは!?」

気づくとデスティニーのコクピットの中。
慌ててレーダーで確認すると敵の反応が遥か遠くにあった。




戦闘は、終了していた。




『目を覚ましたか! 機械だと異常はないようだが大丈夫か?』
『心配させないでよバカ!』
「あつつ……。頭がどっか切れてる。うわ、ヘルメットが壊れてら」

役に立たなくなったヘルメットを脱ぎ捨てると赤い血がいくつも宙を舞う。
吸引ホースで吸い取って緊急キットの止血スプレーを頭にふりかけてやる。
消毒済みのガーゼで血をぬぐい取りながら今の状況を教えてもらった。


キラが戦闘不能になったのを見てレイとルナでトドメを刺そうとしたところに敵の部隊の一部が攻撃をしかけてきた。
手間取っている間にハイネたちから逃げ出したアスランが被弾を無視してキラを回収して逃げて行ったという。

そのまま敵は後退。
攻撃の要の一つを失ったのがよかったんだろうと言ってくれた。

しかし二度の敗戦でラクス・クラインのカリスマはかなり下がった。
大きな攻勢に出るとしても時間がかかるだろうと議長は判断。
すぐさま終戦宣言を世界に向け発表したそうだ。

ラクス・クラインたちが動けない間にデスティニープランの有用性を世界に認めさせることができれば連中が蜂起しても支持者は少なくなる。
プラントと地球圏の融和のために既にアイリーン・カナーバ議員に協力をお願いしたところ喜んで承諾してもらえたそうだ。

多少の技術の譲渡に目を瞑りとにかく、プラントの国力回復に向け動き始めるため関係者が忙しなく動いているという。

皆がまとめて教えてくれた。

「戦後処理もまだなのに気が早いなぁ」
『政治というのはそんなものだ。結局、利益という名のパイの配分をいかに多くするかでケンカするだけ。やることは子どもと一緒だ』
『いーねーレイ。猪なシンにも分かりやすい説明だ』
「誰が突撃バカだ!」
『アンタよアンタ』

お前ら。人が動けないのをいいことに好き放題いいやがって。
ルナにだけは言われたくない。

『イザークも大変だろうなぁ。隊長さんだから書類とかもたんまり来るぜ?』
『なっ、ディアッカ逃げる気か!?』
『隊長、私も手伝いますから』
『すまんシホ。後で飯でも奢らせてもらう』

あっちも苦労人かぁ。気が合うといいな。

『よーし。今日のところは帰ったらパーティーして馬鹿騒ぎして明日の昼まで寝るぞ!』
『いい考えね。せっかくだからジュール隊の皆さんもどうですか?』
『話せる女は好きだぜ。俺は賛成に1票。いいだろイザーク隊長?』
『……今日くらいは構わん。ならば俺が行きつけの店を紹介してやる。感謝するんだな』

あれよあれよと決まっていくな。
人でいっぱいのモニターの隅でレイも嬉しそうに笑っている。

「俺はおやっさんに頭を下げないといけないだろうなぁ」

デスティニーはボロボロだ。
右肩が根元からもげて背中のウイングユニットも半分しかない。
左手はアロンダイトを握ったまま戻らなくなっていた。
アロンダイトも半分から折れてしまっている。

残った手足も爆発の影響で電気系統が壊れたのか、まったく反応してくれない。
スラスターもうんともすんともいってくれない。

完璧にスクラップだ。
修理するにしても凄い時間がかかる。

俺も頭は切れてるし体中が痛い。
口の中は血の味でいっぱいだ。


それでも気分は充実していた。
初めてキラ・ヤマトと正面からぶつかって勝てたからかな。
やべ、顔がニヤける。

『何がそんなに嬉しいんだ?』

聞いてきたレイに俺はこう返した。

「勝って生きてるからに決まってるだろ」



[25333] 我が名はシン・アスカ あとがき
Name: v&w◆480fbd7e ID:915498b1
Date: 2011/01/27 01:01
約1ヶ月の短い間でしたがお付き合いいただき誠にありがとうございました。

チラ裏からの期間も数えれば3ヶ月ほどかかってしまってます。
1話の長さを考えればもっと早くできるだろとツッコまれもしましたがこれが限界でした。

批判もありましたがそれ以上に応援が本当に嬉しかったです。

なんとか外伝を書いてみたいと思いつつ時間がないという状況。
もし待ってくれるならノンビリ待ってください。

本当にありがとうございました!


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