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[25198] (習作)彼の二つ名は【青銅】(ゼロの使い魔、ギーシュ憑依)
Name: アマツ◆206c40be ID:70f93ce2
Date: 2010/12/31 15:37
世間一般が感じている大学生の印象とはどのような物だろうか。
一日中大学にも行かず、ごろごろしている。徹夜で麻雀、パチンコ。
あと付け加えるならば毎日バイト三昧で、飲みサークルで馬鹿みたいに酒を飲んでいるとか。

これから紹介する、始まる彼の話はそんな一般的な大学生の話。
ただそれに補足として、彼はパチンコや麻雀を好まないため一切していない。
そして自分の趣味の時間を作るため、バイトは夜から明け方までの深夜バイトをしていた。

更にこれが一番大事なのだが―――彼はサークルではなく、ガチ部活のガチ武道をしている。

大学にはあまり行かず、空いた時間には最寄りの道場で鍛錬。
大学の部活の時間になれば大学に赴き、同級生や上級生を遠慮なくボコる。下級生は面倒を見る。
付いたあだ名がランボー二世、劣化シュワちゃん、列車に乗っていない最強コック。

自分のいる地区どころか、全国区で見てもレベルの高い人間。
それが彼に付けられたあだ名の由来だった。

そして今日は彼が心待ちにしていた全国区の大会の日。
だというのに彼は寝坊をし、開会式の時間に目覚めるという始末。
逸る心のままに公共の交通機関に乗らず愛車のCB1300SFに乗り、直接会場へと急ぐ。

この時の彼の行動がこれからの運命を左右する事と知らず。
奇運、悪運、良運。それが果たしてどれかはわからない。
だが普通の運命のレールから大幅に逸れ、違う路線に乗り移った事は間違いない。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

かじかむ指を叱咤し、右手のアクセルを引き絞る。
持て余し気味なパワーは即座に法定速度を振り切りそうになるが、ギリギリの所で速度を緩めた。
1300CCという化物じみたエンジンを積む愛機は唸り声を上げ、周囲の景色を置き去りにして前へ前へと進んだ。

「ああーもうっ。なんで今日に限って寝坊するかな!?」

がなりつつも、周囲の情報を頭に入れて法定速度ギリギリでバイクを走らせる。
それもこれも、昨日は早く寝ようと思ったのに寝れなかったせいだ。
理由は単純明快。始めて闘う全国の猛者達にドキドキワクワクしていたから。

身体を傾け、大重量の車体で方向転換する。
電車では確実に間に合わないが、バイクだとおそらく試合前ギリギリに会場の到着できるはずだ。
ていうかそう信じてる! このまま試合に遅れたら、監督はおろか大学からも何を言われるかわからない!

だが間に合うか、合わないかは非常に微妙な時間。
身体をアップする時間はとてもじゃないが取れそうにない…と、そんな事言っている時間じゃないか。
僅かでも時間を稼ぐため、点滅し始めた信号。交差点へ半ば強引にバイクを突っ込ませる。

「あ」

対向車が、別車線から、来ている。
向こうの車の運転手と目が合う。驚きから目を丸くし、次いで固く目を閉じてハンドルを切っているのが見えた。
酷くスローモーションな感覚。アクセルを離すべきか、握りしめるべきか――――

暗転。目の前が真っ暗になり、次に目に飛び込んできたのは冷たいアスファルト。
どうやら悩んでいる間に接触し、地面に放り出されたようだ。

ああ、これはもう駄目だ。客観的に思う。
全身は麻痺してしまっているのか、ピクリとも動かない。
だが目の端にうつる弛緩した身体の節々は見たこともない方向に折れ曲がり、白い物が突き出ている。ひょっとしなくても骨だろう。
おまけに紅い水たまりが広がってきているのも、かすれ始めた視界に映った・

なんだか寒いな。
痛覚や身体の触覚は感じられないが、本能的な寒気を感じてゆっくりと目を閉じる。
これが最後かと、どこか冷静に思いながらも、ゆっくりと瞼を閉じた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(おれ、は、いった、い)

次に目を覚ました時、全身を襲う鈍痛から目を覚ました。
特に背中から腰椎にかけての鈍い痛みが酷く、思わず顔を顰める。

(どう、して、これだけで、済む?)

未だ目を開けられていないから未確認だが、確かに自分は死ぬ程の大怪我を負ったはずだ。
混乱した頭だから確実とは言えないものの、下半身不随。もしくは身体の機能に何処かしら異常が出ていないとおかしい程の。
だが手足の感覚も確かにあるし、酷いと言っても柔道で投げられて受身を撮りそこねた程度の鈍痛しかないのはおかしい。

「ぐ……ぅ…」

直接肺から息を出すイメージで深く深呼吸し、目を開く。
胸の辺りに感じる息の吐き出し辛さと痛みは予想済み。
うっすらと目を開くと、自宅とは違う天井が見える。病院だろうか?

「こ、こは、一体?」

「おお、目が覚めたか!? 身体は起こせるか? まだ痛みは残っているか?」

呟いただけのつもりだが、それに答える声が聞こえた。
その切羽詰ったような声を聞いたが、医者にしては落ち着きがないな。
だがおそらく医者だろうと辺りをつけ、ベッドに手を付いて上半身を起こす。

「それでどうだ? お前は体を鍛えていないから心配していたのだ」

…誰だ、このオッサンは?
目の前には見たこともない見事な金髪の中年が、心配気な顔でこちらを覗き込んでいた。
医者だとすると何処に運び込まれたというんだ。えらく国際色が強い病院だな。

それに体を起こして始めて気づいた事だが、ここは病院というには少々おかしい。
清潔と言えば清潔だが、病院と呼ぶには少し清潔さに欠ける室内。
それに不必要とさえ思える程の装飾品がそこかしろに置いてある。

「お前が階段から転げ落ち、頭を強く打ったと聞いた時は心臓が止まるかと思ったぞ」

「階段? 何の事だい? たしか僕はバイクに乗っていて、交通事故に会ったはずだよ?」

「ばいく? お前はいったい何を言っているんだ?」

どうも話が咬み合わない。
ひょっとして、このオッサンは何処かの病人と間違えているのではないだろうか。
だとすればなんともザルな病院だと言わざるを得ない。

「ギーシュ、本当に大丈夫か。
腕の良い水メイジを呼んでいるから、少し待っていなさい」

「…ちょっと待ってくれないかい? 僕の名前はギーシュなんかじゃない。
僕の名前は●△■◇だ。間違わないでくれたまえよ?」

「なんという事だ! ギーシュ、可哀想に! まさか記憶が混乱しているのか!?」

ちょっと待ちなさいと、そのオッサンは手鏡を渡してくる。
その手鏡に写る自分であるだろう人間の顔に絶句する自分に、焦ったようにオッサンは告げた。

「これは一体、誰だい?」

「何を言っている。お前は私の息子、ギーシュ・ド・グラモンだ!
自分の顔も見忘れたというのか?」

そこには口をあんぐりと開け、信じられないという顔をする金髪の少年の顔が写っている。
丁度俺と同じ顔をしているような顔で。ぺたぺたと顔を確かめるように触ると、その少年の顔にも同じように手が這う。
信じられない事に脳内のキャパシティが超えたのか、立ちくらみに似た目眩を感じて、そのまま意識を手放した。



[25198] 魔法学院入学(偽)
Name: アマツ◆206c40be ID:70f93ce2
Date: 2011/01/07 18:27
トリステインの中でも有数な貴族、グラモン。
その力や能力は軍部によって発揮され、幾人もの有力な人間が輩出されていた。
現に今のトリステインの元帥もグラモンの当主である。

もし戦争が起こればグラモン領の領民を率い、一番に馳せ参じるのがグラモン。
しかしながら戦争も起きなければ国は平和そのものだ。
長い平和は領民達の気を緩め、悪い言い方をすれば平和ボケをしていた。

だがそんな領民たちの間で最近『ある噂』が流れていた。
平和ボケした領民にとってその噂は己の身を心配すると同時に、領主の一族の事だ。
それなりに善政をしている領主のため領民に好かれているのである。

『グラモン様の四男が階段から転げ落ちて、記憶喪失になったらしい』
『四男って誰だっけかな?』
『馬鹿、ギーシュ様だよ。それより記憶喪失て本当か?』
『メイドの姉が言っていた。確からしい。幸い、怪我はないらしいが』

実しやかに流れるその噂は凄まじいスピードで領内を網羅する。
そんな事とは知らず、本人は自室でのほほんとしていたのだった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

金髪の青年、ギーシュは一人ワイングラスを転がしながら、深紅の液体を喉へと流しこんでいた。
ベランダから見る景色は既に暗く、夜の帳が落ちている。
三階の自室から広大な領地を見下ろし、ギーシュは一人ため息をつく。

「やれやれ…どうしてこんな事になってしまったというのだろう」

ワインの芳醇な味わいが喉を通り、アルコールに少し頭がぼんやりとする。
アルコールで誤魔化さないと、とてもまともではギーシュの身の上について考えられないためだ。

「知識や思考の仕方は僕そのものみたいだね。
ギーシュとしての記憶はあるにはあるみたいだが…本当に知識としてしか理解できないようだ」

まずしたのは己が誰かという事。
それは外部や周囲から取り込む情報について言うならば、間違いなくギーシュ・ド・グラモン。
だが彼の記憶や意識からすれば間違いなく別の人間。

「暫定的に言うならばギーシュの体を持った別人、というところのようだね」

普通に考えればあり得ない事だけどね、と呟いて彼は続いてワインを口に含む。
他人が言うなら一笑に付しただろう。だが自分の身に起こった事ならば話は別だ。
なんとも厄介な事になった。いや、最後の記憶が現実世界で事故ならば助かったのだろうか。

「それにしても…本当にまさかだよ」

クックと苦笑いをしてギーシュは暗くなった空を見上げる。
そこには幾多の星々が輝き、二つの月が煌々と光りを放ち浮かんでいる。
彼がいた世界では月は一つ―――しかし、彼の目に写る月は二つ。

「異世界…それにゼロの使い魔なんて。
神様がいるならそんなややこしい事をしなくてもいいと、君も思わないかい?」

誰とはなしにギーシュは暗がりに話しかける。
独り言のそれは、誰かに話を聞いて欲しいという彼の願望があったのかもしれない。

ちなみに頭の中と口調が噛み合わないのは、ギーシュとしての体の癖のような物。
一度なってしまった悪い癖は無意識にしてしまうように、意識して直せばその間は普通に話せる。
ただ自然体に話そうとすれば、ギーシュは以前のギーシュと同じような口調になってしまうのである。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

翌朝、ピッタリとしたパンツスーツを履いて、大きく胸元の空いたシャツを着て中庭に出る。
困った事にこのシャツ、上のほうのボタンがついていないのだ。
アホかと言いたい。こんな無駄な改造しやがって。仕方なく、胸元は空けたままだ。

「さて、と。ここなら誰も見ていないかな?」

周囲を見渡して、確認する。
これからする事はなるべく誰にも知られたくない。
結果によってはギーシュという存在が不良品という烙印を押される事になる。

「ライト!」

記憶の中にある、魔法を使うためのスペルを読み上げる。
手にはギーシュの杖と思われるバラを模した物をちゃんと持っている。
使った呪文はライト。記憶にある通りなら、杖の先が光るはず。

「コモンは一応使えるみたいだけど…なら、これは?」

想像とは違い、手に持った杖の先はちかちかと明滅する。
それならばと初級の土メイジの基本、錬金を使おうと杖を石へと向けた。

「錬金!」

イメージは石が青銅に変化するイメージ。
しかし石は魔法を発動したにもかかわらず、相変わらず無骨な石のままだった。
つまり今のギーシュは魔法が上手く使えないのだ。

仮説として立てた理論はある。
魔法とは即ち想像力の力。精神力を原料に、世界に超常を顕現する力。
つまりギーシュには何の変哲もない石が青銅に変わるというイメージが頭に思い浮かばないのである。

「全く、石が金属に変わるだって? 非常識な…。
物質の原子を変換しているのかい? 全く、デタラメな事だよ」

はぁと力なく肩を落とすギーシュ。
初歩の初歩とも言われる錬金を失敗する、記憶喪失とされる自分。
ギーシュとしての知識から、それはとんでもなく重要な欠陥扱いされると予感していた。

「気づかれる前にどうにかしないといけないね」

今日も今日とて精神力が尽きるまで錬金を繰り返すギーシュ。
だがその効果は一向に成果を出さず、疲れはてて終わるのみになっていた。
そしてギーシュがドットの魔法を失敗するという話は、すぐに当主の耳に入るのだった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

グラモンの当主は悩んでいた。
息子であるギーシュの目が覚めたのは嬉しい、だが手放しでは喜べない。
記憶喪失、それに伴う魔法の失落。

かつてギーシュはドットとは言え、ラインに手が届こうとしていた。
しかし今のギーシュはドットの魔法すら使えないのだ。
これでは到底、春に予定していた魔法学院にも通わせられない。

それは名門の意地。
優秀な軍人を輩出し、命よりも名誉を重んじる家柄故か。
そんな状態のグラモン家の者を魔法学院に出せば、裏でどんな事を言われるかわからない。

「ショック治療をするか」

体に尋常ではない過負荷を負わせ、強制的に記憶を思い出させる。
コモンマジックは使えるようだから、魔法を使えなくなったわけではない。
つまり記憶さえ呼び戻させれば以前と同じ状況に戻るに違いない。

「アンザス」

「はっ、ここに」

チリンと呼び鈴を鳴らすと、壮年の男性がすぐさま当主の傍に現れる。

「ギーシュをここに」

当主は男性にギーシュを自分の部屋に呼び出すように伝える。
男性は畏まりましたと一礼し、すぐさま部屋を退出するのだった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「父上、ギーシュ参りました」

「来たか。そこに立ちなさい」

魔法の訓練をしていたギーシュは男性に呼ばれ、すぐさま当主の部屋へと直行した。
その顔は暗い。ギーシュ自身、良い事で呼ばれた事に薄々感づいているからだ。

「呼んだ理由はわかっているか?」

「若輩の身であるので、未だ理解しておりません」

「ならば回りくどい言い方をせずに言おう。
ギーシュ、お前は錬金すら使えなくなっているようだな?」

威厳のある当主から言い放たれた言葉にピクリとギーシュの体が硬直する。
緊張した面持ちのまま、ギーシュは是と返事を返すのだった。

「お前が一命を取り留めたのは嬉しい。
だがそのままでは春に予定していた魔法学院へと通わせられん」

「なっ…父上、それは本当ですか?」

ギーシュに動揺が走る。
それはそうだ。このままでは魔法学院に入れないと悟っていたからこそ、ギーシュは必死に魔法を訓練していたのだ。
この世界において魔法学院に通うのは現代でいう大学に通うもの。言わば箔をつける行為。

何故かギーシュとなってしまった元の人だが、ギーシュはギーシュで仕方ないのだ。
拾った命を前向きに生きようとしていたところにこれである。
財政的に厳しい貴族の四男、しかも魔法学院すら出ていない。お先真っ暗コースなのだ。

「だが通わせないとは言っていない。
お前が魔法を使えるようになれば、魔法学院に中途入学できるよう便宜を図ろう」

しかしそれは当主からしても同じこと。
自分が当主の代にそんな事をすれば、名誉に傷をつける事になる。
もっともギーシュの親としての親心も多分にあるが。

「ギーシュ、お前に軍に入隊させる事を決めた。
そこで厳しい訓練を積み、はい上がってこい。記憶を取り戻すのだ。
もし万が一魔法が使えなければ、一生を下士官で過ごすと思え」

「は…?」

「入隊させるのはメイジではなく、一般人の部隊だ。
それで一生を終わりたくなければ、意地でも魔法を使えるようになれ」

「え!?」

流石にこれはギーシュからすれば想定外だったらしい。
目が点になる。しかも入隊させられるのは一般人の部隊らしい。
当主からすれば当然だが、魔法の使えない息子を軍の内部とはいえ晒すのは汚点になる。

こうしてギーシュの軍人化が決まった。
予定では魔法学院に通うはずだったのに、春からは使い捨てと言われている一般人の部隊に配属。
混乱するギーシュの頭の中ではどうしてこうなった? という言葉がグルグルと回っていた。

次回、ギーシュ軍隊入隊編。
嫌な上官に、ギーシュの体のため女にも格闘で負ける始末。
悔しさに打ち震えるギーシュの明日はどっちだ!?

「え、本当に始まるのかい?」


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