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[25165] 【習作】通りすがりのじくうけんし (ネギま!×TOP&TOE要素+オリ主)
Name: しゅりと◆705b40f2 ID:6b87a2f4
Date: 2010/12/30 02:36
初めまして、しゅりとと申します。
SS投稿は初めてのド素人ですが、よろしくお願いします。

このSSは原作知識を持ったオリ主が、テイルズオブシリーズの中からファンタジアとエターニアの能力等を付与されて、現実からネギま!の世界へ飛ばされるお話です。

シリアス成分薄目で、ほのぼのした感じで書いていきたいと思います。

TOPとTOEの中からちょこちょことネタを使う予定なので、原作をやっている方は楽しめるかもしれません。



よってこのSSには以下の成分が多く含まれますのでご注意を。


・オリ主最強

・独自解釈

・厨二

・原作知識持ち

・原作キャラとのフラグ

・ご都合主義

・作者の自己満足


無理な方はブラウザバック、大丈夫な方はそのままどうぞ。
作者は自他共に認めるドMなので、厳しい感想も問題ありません。
むしろお願いします。
そのほうがモチベーションもあがると思うので。
それではよろしくお願いします。





[25165] 第1話
Name: しゅりと◆705b40f2 ID:cc32c781
Date: 2010/12/30 02:33
気づいたら闇の中にいた。嘘は言ってない。

俺は部屋でTOEをやってたはずなのに……

フェイクにブルーアース決めてた所だったのに……

いやいや考えることが違うだろう、確かに経験値もったいなかったけど。
……ともあれ先ずは現状確認しておこう
あたりを見渡してみる

暗い

何も見えない
下も上も真っ暗、辛うじて足が地についているということはわかる。
パニックになりそうな頭を静めて考えてみる
普通の大学生の俺にはついていけないですよ……
夢?明晰夢ってやつか?
いやいや、それにしては感覚がリアルすぎるだろう
さっきから体になんともいえないふわふわした感じがする
……これはあれか、死後の世界とかそういうやつか。
まわりは暗いし、音は無いしそれぐらいしか思わなかった。
死んじゃったかー、まぁしょうがないかなぁ
まだまだやり残したこと沢山あったんだけどな、主にテイルズで。
冷静でいられるのが不思議だった。俺、こんなにマイペースだったっけか?
とか考えていると、いきなり空間にスポットライトみたいに光が点いた。

「はーい、こんちわー神様でーす。藤咲 悠人君……であってるかな?間違ってたら大問題なんだけどさ」

出てきたのは白いローブを着たオッサンだった
いやいや、いきなりなんですか?春先に現れる痛い人ですか?
それになんで俺の名前知ってんの?
顔はかなり胡散臭いし、髭は生えてるし、下手しなくても通報レベルの風貌だろ
訝しむ俺を見かねてか、目の前にいる自称神は微笑を浮かべながら

「いやぁごめんね、ちょいと手違いおこしちゃってさぁ、いきなりだけどこっちの世界に転移してもらったよ。」

などと抜かしやがった
うわぁ……理不尽……
え、なに?自分手違いで転移されちゃった系なの?

「他に何系があるか知らないけどそうなんだよね。つきましてはお詫びに他の世界へ行ってもらおうかなーとか思ってるんだけど……いいよね?」

何を言い出すかと思ったらよくある転生モノのSSで聞いたことあるような設定持ち出しやがったよ……
他の世界?異世界でもあんの?

「異世界っていうか君もよく知る世界だよ。ぶっちゃけネギまの世界ね。」

神様もネギま知ってるんだ……
って、漫画の世界に入れんの?しかもネギまの世界?……ktkr!

「簡単に説明すると、君達人間が作り出した漫画とかゲームとかの作品には世界があるわけだよね。それらは君達が認識できないだけで、ちゃんと存在してるってわけ。某煩悩爆発歴史ADVで言うところの『外史』と言われてるやつだね。まぁ、お気に召してくれたようで何よりだよ。そうじゃないとお詫びにならないからね。」

恋姫の設定まで持ち込んでくるとはね、神様もなかなかお好きなようで
まぁ俺も人のこと言えないけど
それにしても、ネギまの世界か……
今まで何回妄想してきたことか……
SSでもこんなのばっかりみてたよ。
そしてこういう設定のSSにありがちなのが……
もちろん能力とかつけてくれるんだよね?ね?

「ちょっと厚かましくなってきたのが気になるけど、もちろんそのつもりだったよ。どんな能力がいい?」

それはもちろん……


テイルズシリーズの能力ちょーだいな!


自分で言っといてなんだけど厨ニ臭ぇ……
でもテイルズ好きだし、かっこいいし……

「テイルズシリーズかぁ、んー全部の作品の能力はちょっとキツイから、一作品ぐらいなら良いよ。」

1つかぁ……TOPも捨てがたいし、TOEも……いやいやTODでも……
ごめんなさい、ちょっと時間かかりそうです

「……決めれないんだったら二つぐらいでもいいよ?」

さすが神様太っ腹ぁ!
やっぱり……TOPとTOEかなぁ
初テイルズだったTOPには思い入れあるし、TOEはさっきまでやってたし……

「まぁ今回はこちらが全面的に悪かったからね、少しぐらい融通は利かせてあげれるよ。それにテイルズは僕も好きだからね」

この神様、俺と似た趣味なんじゃないだろうか
あ、なんか武器とか無いの?丸腰でもファラの体術があるからいいけど、不安かなぁ

「こんなこともあろうかと!ちゃんと武器は用意しといたよ。はいカタログ。」

どれどれ……おお!エターナルソードにエルヴンボウにBCロッド……etc
TOPとTOEの最強クラスの武器……よっしゃ、これで心配は無い!

「防具は流石につけて出歩くわけにもいかないからカットしといたよ。あとグルメマスターとか称号関係もつけといたから詳しくは向こうに着いてから取説読んでねぇ」

最初は胡散臭いとかいってごめんなさい。
実はやり手なんですねあなた。

「責任感じてるしねぇ、ちょっと頑張ってみたよ。まぁ向こうに行っても頑張ってくださいな。ちなみに、身体能力とかはある程度強化して送るから安心してね、性別は変わらないよ。」

TSモノじゃなくてよかった……
さすがに性別が変わるのは抵抗がある
あのーちょっと聞きたいんだけど元の世界の俺ってどうなってんの?

「ちょっと言い辛いんだけど、『最初からいなかった』事になってるんだよね……」

……そっか、別に対して未練があるわけでもないからいいんだけどさ
聞いちゃうとしんみりするもんだな。

「ほんとにごめんね。でもこちらとしても最高の条件で転移させてあげるからそれでチャラにしてください。……そろそろ時間のようだ、君を送るとするよ。」

送るってどうやって?また転移しないといけないのか?

「ただ転移させてもつまらないから、ちょっと君向けに趣向を凝らせてもらうよ。」

ニヤリと大きな笑みを浮かべて、神様は言った。
趣向?
それに俺向けって……なんかいやな予感しかしないんだけど

「まぁまぁ多分この先会うことも無いだろうから付き合ってよ、一回やってみたかったことがあるんだよねぇ。君は合わせてセリフを頼むよ。」

セリフ?
何をするかわからんけど付き合ってやるか……

「ではでは……ゴホンッ」


‐天光満つる所我は在り‐


その一言で全てを察した。
……確かに俺の趣向にぴったりだけどよ
俺がダオス役かよ……。やたらと渋い声を出す神様を見て、俺は苦笑した。


-黄泉の門開く所汝在り-


-出でよ、神の雷-


「何?……それは!?」

「これで最後だ!『インディグネイション』」

「そんな、そんな馬鹿な!?……うわぁぁぁぁ!」

荒れ狂う雷の一撃を食らった瞬間、俺はダオスよろしく光の玉となって、消えた。












〜あとがき〜

はいはいテンプレ乙

最初からやってしまった感がありますが、お気になさらず。
生暖かい目で見守って下さい。

まだまだ描写が甘いので、書き直しが入ると思います。






[25165] 第2話
Name: しゅりと◆705b40f2 ID:78153ba0
Date: 2010/12/31 03:59
-藤咲 悠人-

次に気がついた時、視界には雲ひとつ無い綺麗な星空が広がってた。
そして背中には地面の冷たい感触、結構な時間仰向けになっていたようだ。
立ち上がって自分が倒れていた辺りを見ると、自分がいた所を中心にして円形に草が無くなっていた。
体に痛みは無い。どうやら、転移は無事に済んだようだ。
次に自分の周りを見渡してみると、ものの見事に木しか存在していなかった。
どうやらここはどこかの森の中らしい。
だが、幸いなことに遠くには明かりが見えている。転移して早々迷子にはならずに済みそうだ。
……こんなことなら神様にどこに送られるか聞いとけばよかった。
SSでありがちな転移先といえば、魔法世界か京都の関西呪術協会の近くか麻帆良学園の近くって所だろうが、まだ検討がつかない。
少しげんなりしたが、後の祭りだろう。
まぁどこに転移されても人のいる所につけばなんとかなる。
とりあえず明かりを目指して進んでみようとして、ふとズボンの右ポケットに手を突っ込むと、小さなメモ帳が一つ入っていた。
表紙は何も書かれておらず、一枚ページをめくってみるとそこには


《付与された能力の使い方》


とページの一番上に書いてある。
そういえば、神様に能力もらったんだったな。忘れてた。
不可思議な事が立て続けに起こったせいか、俺の頭はまだついていけてないようだ。
だってほんの少し前までは普通の大学生だったんだぜ?いくらゲームや漫画が好きであろうと、現実に起きたのなら話は別だ。
まだまだ頭がうまく働かないが、ずっと考えても仕方がない。
気を取り直してメモ帳を見てみよう。


1、術技の発動

・術技に対応する武器等を装備して技名を叫ぶ(TPに注意!)


……まさかの音声入力式かよ。
どこぞのスーパーロボットじゃないんだからさ。
じゃあ何?いちいち「魔神剣!」とか「サンダーブレード!」とか叫ばなきゃいけないの?
すごく恥ずかしいんだけど……
確かにネギまの世界じゃみんな技の名前叫んでるけどさ、それは漫画だからこそであって、リアルでやるのはかなりの羞恥心が伴いますよ。
それにTPってネギま!の世界じゃどういう扱いなんだろうか、いわゆる魔力と呼ばれるものなのか?
神様は身体を強化して送るとか言ってたけど、どこが強化されたかなんて全然わからん。
腕も足も筋肉がついたという訳でもないし、腹に力を入れても腹筋が浮き出るわけでもない、元の世界の自分そのままだ。
腹筋も浮き出ない自分の身体に涙が出そうになるが、元の世界では運動も最低限しかしていなかったから仕方が無い。
ため息を一つついて、メモ帳を捲る。
次のページには《装備、アイテムの取り出し方》と書いてある。
これはありがたい。こんないかにも何か出そうな森の中で丸腰とか不安すぎるからな。
えーっと何々……


・マジカルポーチを持って欲しい装備を頭に思い浮かべながら中に手を突っ込むと、思い浮かべた装備が出てきます(例外有り)。戻すときはそのまま入れてください。


ところで、俺のマジカルポーチを見てくれ こいつをどう思う?

すごく……チートです……

思わずくそみそ風になってしまったが、なっても仕方が無い性能だろこれ!
思い浮かべたアイテムを取り出せるとかバランスブレイカーにもほどがあるよ!
マジカルポーチって歩いてたら食材とか装飾品が出てくるアイテムだったような気がするんだけれど。
これじゃ神様に見せてもらったカタログ意味なかったような……
四○元ポケットじゃあるまいし……
あ、でもどちらかと言えば取り寄せバッグだろうか?見た目的にもね。
無駄なことを考えてしまったが、肝心のマジカルポーチはどこにあるんだろうか。
左ポケットに手を突っ込むと布の感触。
取り出すとどぎついピンクの色のしたものが小さく折りたたまれていた。
広げると、TOPでみたマジカルポーチがそのまま大きくなって出てきたようだった。
これって、普通の男子大学生が持つのはちょっと危ないんじゃないか……?
だってウルトラショッキングピンクだぜ?完全勝利の誓いじゃあるまいし。
また別なことを考えてしまった、俺の頭は現実逃避を望んでるらしい。

深呼吸を一つして、次のページ捲ろうとしたその時、いきなり何かが爆発するような音が近くで響いた。
……どうやらさっきから妙に感じていた嫌な予感が、現実のものとなったようだ。
目の前で木がニ、三本ミシミシと音を立てて倒れる。そして出てきたのはそこらに生えている木と同じくらいの大きさをした化け物だった。


『THE 鬼』


くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」!?
突然すぎて俺の頭はまたパニックに陥ったようだ。
こんな時にも現実逃避に走るなんて、なかなか肝が据わってるんじゃなかろうか。
目の前にいる頭に角を生やした方は人間離れした顔をしていて、どう見積もっても俺の身体より数倍はでかい棍棒を持っていた。
腕なんて俺の身長より太いんじゃないだろうか。
そして、視線を下に下げて俺の姿を捉えると

「んー?兄ちゃんもわしを倒しに来たクチか?」

原作通りの関西弁で俺に聞いてきた。いやいや違いますよ。
返事をする事もできないまま、俺は唖然とした顔で化け物を見上げる。
何も出来ない俺を見て、一方的に話しかけてくる

「なんや一般人か、どこから迷い込んだんだか。運が悪い奴やなぁ。……すまんが術者からの命もあるし生かしてはおけんのよ。ま、こんな時に外へ出て来た自分を呪うんやな。」

俺のことはすぐに殺せると思っているらしい。
鬼が近づいてくる。
俺は震える足に叱咤して、その場から逃げ出そうと持っていたポーチとメモ帳を握り締めて、遠くの明かり目指して走りだす。
しかし、向こうはそれを許してくれないようだった。

「逃げても無駄なのになぁ。往生際が悪いで、兄ちゃん。」

俺の後ろにピッタリとついて、やれやれといった感じに話しかけてきた。
俺は鬼の予想外のスピードに驚き足をもつれさせて地面に倒れこんでしまった。
まだ転移されたばかりだっていうのに……
なにか、なにか起死回生の一手を!!

「さ、これで終いや。ごめんな兄ちゃん。」

その巨大で何か金属で出来ているであろう棍棒を俺に当てようと振り上げるのを見たとき、俺は手に握り締められているマジカルポーチに気付いた。
これしかない。
火事場の馬鹿力とも言えば良いのか、自分でも驚くスピードでポーチの中に手を突っ込んだ。
そして思い浮かべるのは時を操る一振りの魔剣。


(エターナルソード!!)


手に何かを握る感触を得て、俺は無我夢中でポーチから手を引き抜き、上に掲げた。
甲高い音があたりに響いて、思わず目をつぶってしまった。
恐る恐る目を開けると、そこには振り下ろされた棍棒を止めたあまりにも綺麗な剣が俺の手に握られていた。

「……なんや兄ちゃん、ちゃんと戦えるやないか。さっきのは油断させるための演技か?」

いえいえそんなことあるわけ無いでしょうに。
さっきまでガチ逃げでしたよ。あれを演技でやるとか無理がある。
それに自分でも何をしたのかよくわかっていない。
だけど、剣を握ったときからなぜか頭が冷静になっている。
思いっきり力をこめて棍棒を押し出して、身体を起こす。
身体が軽い、どうやら身体能力も向上しているようだ。

「綺麗な剣やなぁ、その剣気に入ったわ。西洋剣っていうんは微妙やけど、術者に持っていけば喜ばれるやろ。」

持っていく気かこのやろう。そうは問屋が卸さないぜ。
さっきのメモ帳の中身が本当ならば、このまま技名を叫べば技が発動するだろう。
身体の奥から湧き上がる高揚感に後押しされて、俺は叫んだ。

「次元斬!!」

叫んだ瞬間、身体が勝手に動いて一瞬で空に飛び上がり、鬼が俺を見上げる形になった。
そして剣に青い光が迸り、操られるように振り下ろして、鬼の身体を棍棒ごと真っ二つにしたのだった。









-桜咲 刹那-

今日も今日とて、私はいつも組んでいる龍宮と共に関西呪術協会からの刺客である鬼達を撃退するため、麻帆良学園から少し離れた森の中を駆け抜けていた。
先ほどから鬼と烏族を何体か倒しているが、いつもの襲撃とは何か違うと感じていた。
どこかおびき寄せるような……そう、囮のような感じが否めない。
しかし、烏族を囮に使うとは思えない。烏族は陰陽術師が召喚する中でもかなり力を持った存在だからだ。
考えすぎかと思ったが、常に最悪の状況を思い浮かべなくてはいけない。隣を走っている龍宮に顔を向けてみる。
私と同い年とは思えない長身、そして端正な顔立ち。褐色の肌が夜に似合っている。
彼女は、稀有な魔眼持ちの凄腕のスナイパー。気配には敏感なはずだ。

「龍宮……さっきから何かおかしいと思わないか?」
「私もさっきから疑問を感じていたよ、刹那。……多分私達がさっき戦った奴らは囮だろう。」

やはりそうか……実戦経験が豊富な彼女が言っているのだから、間違いないのだろう。
龍宮は私とは比べ物にならないほど実戦を経験している。
きっと幼い頃から戦いに参加してきたのだろうが、そんなことは聞けない。
誰にも言いたくない過去の一つぐらいあるだろう。私にだってある。
さっきの奴らの中に烏族がいたのには少々驚いてしまった。
彼らの中に私の出自を知る者がいないとも限らないのだ。
……少々長考してしまったようだ。龍宮が訝しげにこっちを見ている。

「一旦止まろう、龍宮。やはり何かおかしい、気配が無さ過ぎる。」
「……そうだな。囮がいるということは、一匹大物が潜んでいるかもしれない。ひとまず高畑先生に連絡を……」

そう言って進路を逆にしようとした瞬間、前方に巨大な気配が膨れ上がった。
間違いない、大物だ。

「嫌な時の勘というのは当たるものだな、龍宮。」
「ああ、どうやらビンゴのようだな。増援を呼んでいる暇は無い。行くぞ!」

気配を感じた方向に向って走り出す、気配の大きさからして、かなりの強者だろう。私達二人で抑えきれるか……?
考えていても仕方が無い。今日は高畑先生と刀子さんも出張っているはずだ。
敵わなくとも二人が来るまで持ちこたえればいいだけのこと。
お嬢様を守るため、私は足に力を込めて走り出した。





走り出して数分、木と木の間に一匹の大きな鬼がいるのが目視できた。
当初考えていた通り、かなりの強さを持っているのが目に見えてわかる。
ふと、何か別の気配を感じて、目を凝らしてみると、なんと一人の人間が鬼の近くに倒れこんでいるではないか!
倒れているのは気も魔力も持たない一般人。どうやら男の人のようだ、震えているのが見える。
そして鬼は何かつぶやいて、棍棒を振り上げる。下にいる人は、動けていない。  
不味いっ!

「龍宮!」
「わかってる!」

龍宮も気付いて、慌ててライフルを構えるが、全て遅かった。
非情にも棍棒が振り下ろされる。私は直視できず、思わず目をつぶってしまった。
絶対に死んだ。何も出来ない一般人に、あの棍棒を防ぐ術はない。
目を開けるのが怖かった。
自分の目の前で、誰かが殺されるという事態に私の思考は停止してしまった。

「……刹那。見てみろ。」
「え?」

龍宮に促されて恐る恐る目を開けると、そこには振り下ろされた棍棒を剣で防いだ人の姿があった。
ここでまたも私は思考を停止してしまった。
絶対に助からないと思ったのに、助かった。
私と龍宮は信じられないものを見る目で剣を構える彼を見ていた。
龍宮でさえ、その場から動けていなかった。あまりの衝撃に目を奪われている。
そして、次に起こった事象はさらに私達の目を釘付けにする。


「次元斬!!」


鬼の棍棒を押し返して、起き上がったと思えば、いきなり何かを叫んだ。
そしてその瞬間、彼は大きく飛び上がり、青く光る剣で鬼を棍棒ごと真っ二つにしたのだった。








-藤咲 悠人-

鬼を真っ二つにした瞬間、俺の身体は酷い痛みに襲われていた。筋肉痛だ。
無理もない。運動なんか碌にしていないのにあんな無茶な動きをすれば、必然的にそうなる。
痛みを堪えながら、右手に持ったエターナルソードを見てみる。
不思議な、そしてどこか惹かれる魅力がそこにはあった。
目の前を見ると、ちょうど消えていく鬼の姿があった。
そういえば、別に死ぬわけじゃないもんな。
真っ二つにしたにも関わらず、目の前の鬼はしゃべりかけてきた。

「兄ちゃんやるなぁ。わいは鬼の中でも位が高いというに……実力を見誤ったかなぁ」

真っ二つにされてしゃべれるとはこれいかに。
不気味すぎて返事できません。

「負けたけど、なんか気持ちええわ。久々に負かしてくれたからかもしれんな。……まぁ機会があったらまた仕合おう。」

そういって、鬼は消えた。
原作でもそうだが、鬼とかってみんなあんな感じなんだろうか。人?がいい。
ふぅっと一息つくと、何か背中に視線を感じた。
また厄介事ですかそうですか。
さっきの鬼を見つけたような感じに恐る恐る振り返ると、そこには二人の女の子がいた。そして驚いた。
刹那!?それに龍宮!?いきなり原作キャラかよ!
サイドテールに白い肌、そして俺を超える身長に特徴的な褐色の肌。間違いない。
思わず叫びそうになるが、必死に堪える。
誰に出会ってもおかしくないが、これで転移された場所がわかった。
……麻帆良学園の近くか。
刹那と龍宮が行動を共にしているということは、これ以外ありえないはずだ。
それにさっきの鬼……多分関西からの刺客だろう。
だがいきなり原作キャラと会ってしまうとは……まさにテンプレ乙と言わざるを得ない。
森の中で刹那達に出会うというパターンはいろんな二次創作で見たことがある。
考えをはべらせていると、二人が近づいて、俺の目の前まで来た。

「……貴様は誰だ?どうしてここにいる?」

龍宮が警戒しながら話しかけてきた。……無理もない。
彼女達からすれば、俺はイレギュラー。怪しむのも当然だ。

「あなたも関係者なんですか?それにしてもあの鬼を一撃なんて……」

刹那も聞いてくる。二人とも目が怖い。
射抜くような視線を受けて身体が硬直してしまう。
冗談を言っても聞いてくれないだろう。

「聞いているのか?黙っているだけじゃわからんぞ!」

だから怖いですって龍宮さん……聞こえてるからそんなに怒鳴らないで……
何か言おうとして、右手にエターナルソードを持っていることを思い出す。
その時ピコーンっと効果音が鳴りそうな勢いで俺の頭は名案を思いついた。

「あの……俺は……」
「「?」」

何か言おうとしているのが伝わったのか、二人は固唾を飲んで俺を見ている。
だが、二人とも自分の獲物に手をかけているのがわかる。
そんなに危ない事する人に見えますか?
まぁいいや……聞けぃ!俺の凄い思いつき!

「俺は……通りすがりの『じくうけんし』だ!!」

ポーズを決めて叫んだ。……音が止んだ。
あたりにセルシウスが現れたかと思うぐらい、寒さを感じた。
もしくはアブソリュートか。
そして感じるのは虫を見るような目をした龍宮と刹那の無言の圧力だった。
……心が折れそうだ。
五秒ほど経って、じっと二人の反応を待ってると、いきなり眩暈に襲われた。
心臓が激しく脈動し、足が震える。
やばいと思った瞬間、俺の身体は地面に倒れ、視界がブラックアウトした。
刹那や龍宮が何か言っている気がするが、もう俺の耳には何も聞こえてこなかった。









~あとがき~

何とか日付が変わる前に書けました。
ことごとくテンプレ通りの内容になっていきそうですが、そうならないように頑張ります。
誤字、脱字があった場合はお知らせください。
作者も気をつけますが、ちょっとどんくさい所があるので……
今回は長めに書いてみました。

※読み返すと誤字脱字がたくさんあったので、修正しました。







[25165] 第3話
Name: しゅりと◆705b40f2 ID:78153ba0
Date: 2011/01/02 15:31
-タカミチ・T・高畑-

昨日の襲撃から一夜明け、僕は今麻帆良学園本校女子中等部の保健室にいる。
今日は休日なので、生徒は学校内にはいない。
目の前のベッドで寝ているのは昨日襲撃された森で刹那君と真名君が発見したという青年だ。
背は僕より少し小さいぐらいで、さしたる特徴も無く、普通という言葉が一番似合っている。
刹那君に背負われて運ばれて来た時、彼の身体に目立った外傷はなく、少しの擦り傷と服についた汚れがついていただけだった。
それにしても……僕ぐらいの体格の男性が刹那君のような女子中学生に背負われてくるというのは些かインパクトがあるものだね。
……もちろん気で強化して運んでいるだろうが。
彼について驚くことが二つある。一つは彼の持ち物……彼が眠っているベットの隣のテーブルにおいてある剣とポーチだろうか。
ひとつメモ帳も持っていたが、中を見ても真っ白で何も書いていなかった。
真名君に彼が持っていたという剣を渡された時、酷く動揺した。
何か得体の知れない力を感じたからだ。
魔力がこめられていると思ったが、そんな単純な物ではない。
形状は両刃の西洋剣と呼ばれる類のものだろうが、刃の背には青く光る紋様が施されていて、装飾剣のような印象を受けた。
一目でかなりの業物ということがわかったが、それ以上にどこか惹かれる不思議な魅力がその剣にはあった。
それは剣を運んできた真名君達も同じようで、ずっと剣を見つめていた気がする。
そしてもう一つ、ポーチのことだが、これは先ほどの剣のような事ではなくて彼のような男性が持つにはあまりにも不自然な色をしていた。
蛍光色のピンク……という表現が一番適切だろうか。
持って街を歩いたらかなりの人が注目するであろうそのポーチだが、中身は空っぽで、少々拍子抜けした。
二つ目は彼の身体から気も魔力も感じないということである。

「ただの一般人……か。」

刹那君達の報告で、彼は昨日現れた鬼の中でもっとも強い者を一撃の元に切り伏せたと聞いたが、にわかには信じられなかった。
僕はもちろん、昨日一緒に出張っていた刀子先生も彼のことは知らなかった。
少なくとも魔帆良の中で彼の姿を見たことはない。
寝ている彼には悪いが、検査をさせてもらった。
すると確かに魔力も気も検出されず、ただの一般人という評価が下されたのであった。
一般人に鬼を倒せるような力はない。立ち向かっても無惨に殺されるだけであるが、彼は違った。
怪しいとすれば彼が鬼を切るときに使ったという剣だが、今のところ疑問ばかり増えていく。謎は深まるばかりだ。
学園長に報告したところ、とりあえず彼が目を覚ますまでは何もわからないと言われたので、さっきからベッドの横で待機しているわけだが……非常に眠い。
ついさっきまで襲撃者を撃退して、そのまま一睡もせずに彼を見ているのだ、無理もない。
刀子先生が交代制でやりませんかと申し出てくれたが、丁重に断っておいた。夜更かしは先生ぐらいの年齢のお肌にキズだから……とは口が裂けてもいえない。
刹那君や真名君には一旦帰ってもらった。彼のことは彼女達も気になるようで、目覚めたら連絡すると言っておいた。
身体に異常はないので、そろそろ目が覚めてもおかしくないはずだけど……
そう思ったつかの間、窓から注ぐ朝の太陽の光を浴びる彼の目が眩しそうに開いた。
僕は警戒しながら、彼を見る。彼が襲って来ないとも限らないからだ。
だがその予想は外れて、彼は天井から視線をそらさず、何秒か経ってやっと口を動かした。

「知らない天井だ……。」

彼は僕の姿に気付かず、呆然としながら空中につぶやいたのだった。









-藤咲 悠人-

目を開けた時、眼前には白い天井があった。そして太陽の光が目に降り注いで非常に眩しい。
確かこういうときにつぶやくべき言葉があったはずだ。それは……

「知らない天井だ……。」

某アニメの第二話のようにつぶやくと同時に頭も徐々に覚醒していく。
ここはどこだろうか。森の中で鬼を真っ二つにして刹那と龍宮が現れたところまでは覚えている。
背中にはふかふかのベッドの感触。枕もちょうど良い柔らかさで心地よい。いいものを使っているようだ。
ふと隣に誰かの気配を感じた。首だけを真横に動かす。

「……やぁ、おはよう。よく眠れたかい?」

微笑を浮かべてこちらを見るダンディズム溢れるオッサンがそこにいた。一目でわかった、タカミチだ。
唐突過ぎて、思わず目を見開いてしまった。会う人会う人みな原作キャラとは……心臓に悪い。
驚く俺を知ってか知らずか、タカミチは椅子から立ち上がり、ゆっくりと話しかけてきた。

「昨夜、君は森の中で意識を失ったのだけれど……覚えているかな?」

好意的な口調で話しかけてくるが、両手はしっかりズボンのポケットの中に納まっているのがわかる。……警戒しているようだ。
刹那といい龍宮といい俺が一方的に知っているだけなので、ボロを出すわけにはいかない。

「はい……覚えています。それで、ここはどこなんでしょうか?」
「ここは麻帆良学園女子中等部の保健室だよ、倒れた君を刹那君と真名君……言ってもわからないだろうけど、女の子二人が運んできてくれたんだ。」

ベッドから半身だけ身を起こしながら返事をする。動いたときにタカミチが一瞬反応したが、何もしない俺を見て直ぐに止めた。何もしませんってば……。

「刹那君と真名君からの報告によれば、君は昨夜森に現れた鬼を剣で切り裂いたと聞いたんだけど……間違いないかな?」
「間違いありません。けれど、無我夢中だったので何をしたのかははっきり覚えていません。」

本当は覚えていたが、嘘をつくことにした。いまさら遅いとは思うが、実力を隠しておいたほうが都合が良いだろう。……直ぐにバレるだろうが。
気も魔力もない一般人が鬼を倒したとなれば、向こうからすれば怪しさ満点だが、今の俺には何も出来ないのでいきなり襲いかかってくることはないだろう。温厚なタカミチならなおさらだ。

「目覚めたばかりで悪いのだけれど、君が目覚めたらこの学園の学園長に連れてくるように言われていてね。君の事はそこで話してもらうよ。」
「……わかりました。あの、一つ聞きたんですけど俺が持っていたポーチと剣とメモ帳知りませんか?」
「ああ、それならテーブルの所にあるよ。だけどこれらはまだ君に渡すわけにはいかないな。とりあえず、ついてきてもらうよ。」

そういって立ち上がるように促すタカミチ。俺はベッドの下にあったスリッパをはいて立ち上がる。
タカミチはドアを開けて保健室を出る。剣やポーチは保健室に置いたままだ。
これからどうしようかと考えながら、俺もタカミチの後に続いて、保健室を出た。





学園の廊下をタカミチの後ろを少し離れてついていく。相変わらず両手はポケットの中に突っ込んだままだ。
少しでも攻撃する素振りがあれば居合拳の餌食になるだろう。もちろんそんなことをするつもりは毛頭ないが。
生徒の姿が見えないところをみると、今日は休日らしい。
これからリアルぬらりひょんである学園長の近衛 近右衛門に会うことになるだろうが、さて……どんな説明をしたら良いものか。
麻帆良に藤咲 悠人という名の人物がいないことなんて直ぐにばれるだろう。
ガンドルフィーニや高音辺りの頭の固い奴らなら直ぐに俺を監禁しようとするかもしれない。
それは非常にまずい。どうにかして衣食住を確保せねば。
そのためなら広域指導員でもなんでもやってやろう。
まずは学園長をなんとか説得しないとな。
考えながら歩いていると、タカミチが立ち止まった。どうやらついたようだ。
こちらを向いて

「さぁ、ついたよ。ここが学園長室。中に学園長がいらっしゃるから、君は僕の後に入ってきてくれ。」

うなずきで返すと、タカミチは扉に向き直りコンコンと二回扉をノックして、扉を開けた。いよいよか……

「失礼します。学園長、彼をお連れしました。」
「ご苦労じゃった。……身体の方は大丈夫そうじゃの。」

リアルぬらりひょんがそこにいた。前に漫画で見た造形そのままだった。本当に妖怪じゃなかろうか。

「はい、大丈夫です。あの、ありがとうございました。迷惑をお掛けしてしまったようで……。」
「それは何よりじゃ。まずは自己紹介といこうかの。わしの名は近衛 近右衛門、麻帆良学園の理事長を務めておる。気軽に学園長と呼んでもらって構わん。君には聞きたいことがあってここに来てもらった。……薄々わかっていると思うがの。場合によっては君の事を拘束せねばならぬが……単刀直入に聞こう、君は何者じゃ?」

初めはゆったりと話しかけてきたが、最後の方は少し緊張しているようだった。
だが、どこか余裕も感じられた。学園最強というのは伊達じゃないらしい。
俺は、さっきから考えていたことを口に出し始める。

「……まず、俺の名前は藤咲 悠人といいます。そして俺はここ、麻帆良の人間ではありません。別の世界から来ました。」

言って二人の表情をみる。少なからず驚いているようだ。

「ふむ……それでは君は魔法世界の人間ということかの?」
「いえ、そうではありません。信じられないと思いますが、今から話すことは全て本当です……俺は旧世界で魔法世界でもない、異なる世界からやって来ました。」

俺の言葉は予想外だったようで、二人の顔は驚愕に染まる。それもそうだろう、いきなり異世界から来ましたとか言われれば誰だって驚く。

「藤咲君といったかの……詳しく話してくれんか?」

動揺を隠し切れない様子で学園長は聞いてきた。

「俺がいた世界はこの世界に対して平行して存在している場所にあって、大部分は同じです。ただ、麻帆良という場所は存在していませんでした。そして、俺はエターナルソード……俺の持っていた剣のことですが、それの力でこちらにやって来ました。言うなれば……『じくうけんし』と言ったところでしょうか。」

はい嘘乙。エターナルソードで第二魔法を顕現なんて出来ませんよ。宝石剣じゃあるまいし。
時間と空間を操るぐらいしか出来ないはず。それでも十分過ぎる能力なんだけどね。
二人は俺の言葉を真剣に聞いている。嘘をつくのは忍びないが、神様云々の話をするよりましだろう。

「異なる世界からの異邦人……か。にわかには信じがたいのじゃが、嘘をついているようには見えんしの……。」
「君が言うことが本当なら、なぜ僕達の世界にやってきたんだい?何か目的があるんじゃないか?」

ずっと黙って聞いていたタカミチが質問をぶつけてくる。流石に黙って聞いてるわけにもいかなくなったようだ。
そして学園長、エトランジェなんていわないでください。永遠神剣なんて持ってませんよ。

「こちらの世界にどうしてやってきたかは俺にはわかりません。俺はただエターナルソードの導かれるまま来ただけですから。」
「剣に導かれるままにか……そのエターナルソードとやらで元の世界に帰ることは出来ないのかい?」
「どうやら、今は機能を失っているようです。普通の剣として使うのなら問題ないようですが。……一つ言っておきますが、俺はあなた達と敵対するつもりは毛頭ありません。今の俺には生きるための要素が欠けています。この世界には俺の戸籍も何もないんですから。」

うう……俺の良心が痛む……。嘘を嘘で塗り固めているけど、まさかここまでうまくいくとは。
自分の演技力を褒めてやりたい。
学園長は俺の話を聞いて少し考えているようだ。戸籍という部分を強調して言ったのでうまく意図を読み取ってくれると助かるんだが……。
俺としてはもう切れるカードはない。大分ごまかしてしまったが、大体のことは喋ったのでこれ以上何か聞かれても困る。
何秒か沈黙が続き、学園長は口を開く。

「藤咲君……まだ、君の事を判断するには時間が足りないようじゃ。一日だけ考えさせてはもらえんかの?幸いなことに明日も休日じゃ。もちろん、寝る場所と食事は用意してあげよう。教員用の寮が何部屋か空いていたはずじゃ。」
「ありがとうございます。素性の知れない俺にここまでしていただいて……。」
「フォフォフォ、構わんよ。君はどうやら信頼できそうな感じがするようじゃしの。まぁ長年の勘という奴じゃ。タカミチ君、彼を寮まで案内してやってくれるかの?」
「わかりました。さ、それじゃあ行こうか。君の持ち物も返してあげよう。」

タカミチに促されて学園長室を出る。俺は事のほかうまくいったと内心ほくそ笑んでいた。
学園長は一日時間が欲しいといっていたが、おそらく内心はもう俺に衣食住を提供する気満々だろう。
そしてそのための条件として広域指導員にでもならせるつもりだろうが……
俺の実力はもう学園長の耳に入っているだろうし、今人材が不足している撃退の仕事にはうってつけだ。
おそらくはここで好条件を突きつけて、後々の面倒な仕事をやらせるつもりなんだろうけど。さすが学園長、強かだ。
別に多少面倒な仕事でも構わない。神様からもらった能力を使えば問題はないはずだ。
まずは生きるための環境を整えるのが最優先。それ以外は後回しだ。
タカミチの隣を歩いて、学園を出る。行きがてらポーチと剣とメモ帳は返してもらった。

「そういえば、まだ僕の自己紹介をしていなかったね。僕の名前はタカミチ・T・高畑。麻帆良学園女子中等部の2-Aの担任兼広域指導員を担当しているよ。気軽にタカミチと呼んでくれ。僕はあんまり口調とかを気にしない主義だから、タメ口でも構わないよ。」
「……わかった。よろしく、タカミチ。」

目上の人にタメ口で話すのは少々憚れるが、せっかくの申し出なので、お言葉に甘えることにした。





他愛のないことを話しながら数十分。寮についた。中々良いところだ。

「さ、ここが教員用の寮だ。中に家電やお風呂等はある程度準備されているはずだ。……使い方はわかるね?向こうの世界と勝手が違うかもしれないけど、説明が書かれているはずだから、わからなかったら読んでくれ。あと、今日はこの寮からは一歩も出ないで欲しい。何かあったら危ないからね。食事に関しては冷蔵庫の中にレトルトのものや台所の下にカップ麺がいくつかあったはずだ、物足りないかも知れないけど、今日のところは我慢してほしい。明日の朝に迎えに来るから、それまで待っていてくれ。」
「何から何まで、ありがとう。助かります。」
「気にしなくてもいいよ。なんたって君は異世界からのお客様だからね。今はまだ明るいけど、君はもう疲れているようだし、ゆっくり休んだほうがいいよ。……それじゃまた明日。」

そういってタカミチは帰っていった。
俺は部屋に入って中を見る。
本当にいい部屋だ。元の世界の俺の部屋の何倍も豪華な気がする。
テーブルにエターナルソードとポーチとメモ帳を置いて座り込む。……思いっきりお腹が鳴った。
そういえば昨夜からなにも口にしていなかったと思い、とりあえずは飯にしようとカップ麺を用意する。
今の時間は……午後の十二時過ぎか。思ったより時間が経っていたらしい。
今のところは順調にことが運んでる。
他の魔法関係者に会えば話は違ってくるだろうが、うまく学園長と話すことが出来た。
明日何を言われるかは行ってみないとわからないが、まずい状況にはならないだろう。
カップ麺を食べながら考える。……中々旨い。
それにしても、なぜあの場面で倒れてしまったのだろうか。
いくら凄い能力を持っていたとしても肉体が伴わなければ意味がない。
二週目で術技引継ぎをしてもTPが足りなければつかえないのだ。
まだまだ確認すべきことはあるが、眠気が俺を襲ってきた。
タカミチの言っていた通り、疲れが出ているようだ。
俺はテーブルに半端なカップ麺を残したまま、眠りについた。









~あとがき~

新年明けましておめでとうございます。
友達と徹マンしてたんで、大分調子悪いですが、何とか書き上げれました。
……親の役満喰らいましたがw
まだあまり話は進んでいませんが、次回も見てくださるとありがたいです。
それでは、皆さんのご多幸とご健康を祈り、新年のご挨拶とさせていただきます。






[25165] 第4話
Name: しゅりと◆705b40f2 ID:78153ba0
Date: 2011/01/07 23:40
-藤咲 悠人-

身体に妙な暖かさを感じて目が覚める。いつの間にか眠っていたようだ。それにしても、また知らない天井を見ることになるとは。
昨日はたしか飯を食っているときに眠気を感じて、そのまま寝落ちしちゃったんだっけか。
まだ重い瞼を擦りながら起き上がり、壁に付いている時計を見る。まだ午前六時を過ぎたところだった。
昨日寝たのは確か正午過ぎだったから……正味十八時間も寝ていたことになる。いくらなんでも寝すぎだろう。
とりあえず体が汗臭いので、シャワーにでも入ろう。寝ている頭を覚醒させなければ。
脱衣所に入って服を脱ぐ。洗面所で見た俺の裸体は見事に平均的な体つきをしていた。こんな体でよくあんな化け物を切れたと心の底から思う。
ため息をつきながら風呂場に入ってシャワーを浴びる。ちょっと熱めにしたお湯が心地よい。
備え付けてあったシャンプーやボディソープを使って体を洗う。段々と頭が覚醒してきた。
風呂場を出て体を拭く。タオルもふかふかしていた。本当にいたせりつくせりだな。
服は流石に今まで着ていたやつしかないので仕方なく着ることにした。
体も綺麗になったし、頭もスッキリした。……とりあえずは飯にしよう。
時刻はまだ七時前。流石にこんな朝早くからタカミチもこないだろう。
昨日に引き続きカップ麺を食べる。味には満足しているが、少々物足りない。まぁ贅沢を言ってもしょうがないが。
カップ麺を食べながら今までの事を整理してみる。
まだ学園長と会ってみないと俺の処遇はわからないが、大して心配していない。こちらは大丈夫だろう。
そして次に今が原作からどのくらい前なのか知る必要がある。神様は原作が始まる時よりも少し前に送るといっていたはず。
そしてタカミチは『2-A』の担任といっていた。壁に貼ってあるカレンダーは四月になっている。
以上から推測するに現在は2002年の四月ということになる。ネギがやってくるのは三学期だから……まだ半年以上はあるな。
それだけあればかなり準備が出来るはず。だが、別に積極的にネギ達に関与しようとは思っていない。あくまでも脇役として生きていくのが良い選択だと思うのだけれど……学園長が何か言い出すかもわからない。まぁその時にならないとわからんが。
正確な月日は後でタカミチにでも聞いておこう。
それよりも神様からもらった能力の方が重要だ。なぜ俺はあの時倒れてしまったんだろうか。技を出すごとにあんな風に倒れられても困る。
そういえばまだメモ帳を全て見てなかったな。なにか重要なことが書かれているかもしれない。
カップ麺を汁まで飲み干して、テーブルの上においてあったメモ帳をめくってみる。
最初のページには以前見たとおり《付与された能力の使い方》と書いてあって、下には『1、術技の発動』と書かれている。
そこで俺はある事に気付いた。森の中で見たときは薄暗くて気付かなかったがページの下の方に小さく

(ただし発動条件はゲームに依存)

と書かれていたのだ。神様わかりづらいですってば。
このことが本当なら、冥空斬翔剣や極光壁等のチート級の技は俺がかなり危険な状態にならないと使えないということだ。
冥空斬翔剣は確かHPが四分の一以下の時で、極光壁はHPが点滅した時だったはず。
……どうやらお蔵入りになりそうだ。
生命の危機に瀕してまで技を使いたい訳じゃない。その前に回復しているだろう。
それに四分の一以下とか点滅とか曖昧すぎる。だいたい点滅ってどんなときだよ。ウルト○マンじゃあるまいし。
よくよく考えれば危険すぎて使えない術や技がたくさんある気がする。
TOPのブラックホール、メテオスォーム、ビックバン辺りの禁呪文はヤバい。下手するとこの辺の地図が変わるかもしれないし。
同様にしてブルーアースもダメだろう。ブルーアース自体は回復だが、出すまでの過程がヤバい。
プリズミックスターズ辺りで地球が滅びてる可能性がある。惑星間の衝突とかしてるんじゃなかったっけか?
召喚術あたりならまだ許されるだろうが、他にもまだまだ危険な術があるかもしれない。
強すぎる力は味方にも危険視される。アムロがZの時に軟禁されたのと同じだ。
色々考えることはあるが、角が立たない程度の術や技を使っていれば大丈夫だろう。
次のページをめくる。前に見たとおり《装備、アイテムの取り出し方》と書いてあるが、案の定下の方に小さく

(持ち主以外には扱えません)
(消費系アイテムは一種類につき一日一個まで)

と書かれてあった。一日一個でも十分な効力を持つものばかりなので、別に不満はない。
そしてこのポーチは俺専用ということか。
試しに何か出してみようかと思い、ポーチの中に手を突っ込む。

「えーっと、定番のアイテムと言えば……アップルグミ!」

手にグニャっとした感触がして、そのまま握りこんでポーチから手を抜き出す。
手の中には赤い色をしたグミが握られていた。一見して普通のグミだが、果たして体力は回復するのだろうか。
意を決してグミを口に含んでみる。味は名前の通りリンゴの味。なかなか果汁がきいている。
噛んでいる限りでは体に変化はない。少し柔らかくなってきたところで飲み込んでみる。
飲み込んだ瞬間、体にスーっと何かが流れていく感じがして、心なしか体の調子が良くなった気がする。
今の自分の体力がどれくらいかわからないが、一番良い状態ぐらいにはなったんじゃなかろうか。グミ凄いな。
上位版のレモングミもあるので、いざという時の回復に使えるだろう。
続いてメモ帳の真偽を確かめるために、再びポーチの中に手を入れてアップルグミを出そうとしてみる。
すると、少し待っても手に先ほどのような感触はこない、一日一個というのは本当のようだ。
さらにメモ帳をめくる、次のページからはまだ確認していない部分だ。そこには前の二ページと同じようにタイトルと説明が書かれてあった。

《TPについて》

・TPはこの世界における魔力や気のようなもの。ただし本人以外感じることは出来ない
・TPはアイテムでしか増やすことができない
・TPを消費しすぎると体に影響が起きます
・TPは寝ると回復します

ふむふむ、説明に則ればTPは魔力と気に似た性質を持ちながらも、他人には感じ取れない不思議パワーといったところか。
そして注目すべきは三番目の項目。森の中で倒れたのはもしかしてTPを消費しすぎたことが原因だったんじゃないか?
俺の予測が当たっているのなら現在の俺のTPは次元斬一発で倒れたことから、最低でも35位しかないことになる。多く見積もっても50位だろうか。
いやいや、いくらなんでも少なすぎやしないか?
神様は身体能力をある程度強化して送ってくれるといっていたはずだ。
そこである考えがよぎる。もしかして……元が弱すぎるからこんなにヘボいんじゃないか……?
考えてみれば俺は元はしがない大学生。特段スポーツをやっていたわけでもないし、体を鍛えていたわけでもない。
そう考えると、強化してもこの程度……というのも頷ける。
これでバカスカ技や術を連発するわけにもいかなくなった。考えて使うようにしなければ。もうあんな風に倒れるのは御免だ。
次に俺は二番目の説明にも注目する。
『アイテムでしか』ということは、俺がどれだけ体を鍛えたりしてもTPは増えないということだ。
そして、テイルズでTPを増やすアイテムといえば……

「セボリーだ!」

思わず口に出して叫んでしまったが、そういえばこれがあった。
『アイテムでしか』と念を押しているのだから、セボリーで最大値を増やせという事だろう。
レッドの方もあるから、一日最大値の15%づつ増えていくことになる。
今のTPがどれだけあるかわからないが、毎日使いつづければいずれMAXまで伸びるだろう。
早速使ってみようと、俺はポーチから『セボリー』と『レッドセボリー』を取り出す。
取り出すときに気付いたが、どうやらアイテムは一個づつしか取り出せないようだ。二個同時というのは出来ないらしい。
一個づつ取り出してテーブルに置く。出てきたのは緑と赤の草。緑の方を手にとって匂いを嗅いでみる……すごい独特な臭いがするんですけど……。
セボリーってたしかシソ科の植物だった気がする。
ゲームではクレス達にたくさん与えていたが、どうやって食べたんだろう。もしかして生?
食べても死にはしないだろうが、そのまま食べるのは非常に憚れる。

「ええーいっ、ままよ!」

手に持ったセボリーを口に含んで一噛み……辛っ!
思っていた味よりも遥かに不味い、そして刺激的な辛さが俺の舌を襲う。
吐き出すのを我慢して台所にむかう。そしてコップに水を入れて一気に飲み込んだ。

「……はっ、はっ」

なんとか流し込むことが出来た。
少しクレス達の気持ちがわかった気がする……いつも大量に与えてごめんなさい。特にクラースとアーチェ……。
何とか呼吸を整えて、テーブルに戻る。そういえばレッドも残っていたんだった……。
げんなりしたが、これも自身の成長のため。大丈夫、モンスターと戦うよりはずっとマシな筈だ。
自分にそう言い聞かせて、レッドセボリーを口に含んで咀嚼する……。今度は水を用意してある。
噛んだことを後悔した。

「ゴホッ!ゲホッ!カハッ!」

先ほど食べた普通のセボリーの三倍は辛い。流石赤といったところか。
舌が痛い、目が痛い。涙が出てきた。
急いで水で流し込む……なんとか落ち着けた。
簡単すぎると思ったんだよなぁ、食べるだけでTPがあがるなんて……とは思っていたけど、ここまで不味いとは。
やはりそれ相応のリスクがあったということだ。
さて、果たしてTPは上昇するのだろうか。ここまでやってなにもありませんでしたは悲しい。骨折り損だ。
じっとすること数分、心に何か余裕が出来たような、不思議な感覚が俺の体に来た。
これはTPが上昇しているということだろうか。
目には見えないのでなんともいえない。数値化してくれればいいのに。
とりあえずこれを毎日続ければ良いということなんだろうが……しんどい。
へこたれていても仕方がない。下の方には何も書かれていないようなので、気を取り直してページをめくることにする。
次に目に入ってきたのは

《身体能力強化について》

・武器を装備した際に身体能力が上がります。丸腰の時は元の世界にいたときのままです
・身体能力の上昇量は現在のTPに比例します

と書かれてあるページだった。なにそれ何処のガンダールヴ?神の左手ですか、どんどん肩書きが増えていきますね。
心の力に比例しない辺りが違うが……ほとんどパクリなようなものだ。
TPに比例するということは毎日セボリーを食べれば毎日強くなれるということだ。
なるほど、レベルアップという概念がないからこういう形になっているわけか。
純粋に修行とかする手間が省けたが、これじゃ死に物狂いで修行している人達を愚弄しているような気が……。
また罪悪感を感じてしまった。まぁ気にしてもしょうがない。俺はこの世界のイレギュラーなんだから。イレギュラー……便利な言葉。
次のページをめくろうとして玄関のチャイム鳴った。
時刻は八時を回るか回らないかの所になる。タカミチが来たようだ。
玄関のドアを開けるとそこには相変わらずダンディなタカミチがいた。

「おはよう、よく眠れたかな?」
「ああ、おかげさまでな。ちょっと寝すぎたくらいだよ」
「それはよかった、じゃあさっそくだけど学園長の所に行こうか。準備はいいかな?」

タカミチの問いにちょっと待ってと言いながら居間にむかう。
テーブルの上にあるエターナルソードをタカミチに見えないようにポーチの中に入れてメモ帳と一緒にポケットへ入れておく。
不測の事態があったときにも対応出来るようにだ。

「わるいな、待たせちゃって」
「いや、気にしなくてもいいよ。……あの剣はいいのかい?」
「いいんだ、別に闘うってわけでもないんだし」
「それもそうか。じゃ、向うとしよう」

タカミチについて昨日通った道を歩く。ふいに嫌な予感が俺の頭をよぎった。これがシックス・センスというやつだろうか?
さて、何事もなければいいけど……。





タカミチの後をついて歩くこと数十分、何事もなく学園長室の前まで来た。
歩いている間にタカミチに今日の日付を尋ねたら、今日は四月二十一日で第三日曜日だそうだ。
やはり俺の予想は当たっていたようだ。ネギがきたら一気に危ないことが増えてくる。
それまで準備を欠かさずに頑張るとしよう。

「さて、着いたよ。学園長!悠人君を連れてきました。……さ、入って」

二回ドアをノックしてドアを開けて俺に先に入るように促すタカミチ。
中に入ると相変わらず立派な椅子に座った学園長の他に三人の姿があった。
あれは刹那と龍宮と……刀子先生?
黒のタイトスカートがよく似合っている。そして大きな野太刀……間違いない、葛葉 刀子だ。
刹那と龍宮はわからないでもない。しかし、刀子先生はなぜこの面子の中に加わっているのだろうか。
そして、なぜ入った瞬間から三人ともこちらを睨み付けているのでしょうか。俺何にもしてませんよ?
ビクビクしながらも気丈に勤めようと、足を進めて学園長の前まで来る。
一歩近づく毎に視線が鋭くなった気がした。

「おはよう、藤咲君。寮の眠り心地はどうじゃったかな?」
「学園長のご厚意のおかげで、よく眠ることが出来ました。少々寝すぎた気もしますが……」
「フォフォフォ、それは良かった。さて、早速君の処遇について話したいのじゃが……その前にわしの隣にいる三人についても紹介しておこうかの。左から順に、桜咲 刹那君、龍宮 真名君、葛葉 刀子君じゃ。先日の襲撃の際に出張っていて、君のことも全て話してある。特に刹那君と龍宮君は君をここまで運んでくれたのじゃが……覚えているかの?」
「いえ、すみません。よく覚えてなくて……」
「まぁ無理もなかろう。ずいぶんと消耗しておったようじゃしの」

とりあえず嘘をつく。段々と悪びれもなく嘘をつくことが出来るようになってきた。
並び立つ三人は相変わらずこちらを睨んでいる。特に刹那の睨み方は他の二人の比じゃない。胡散臭い男とでも思っているんだろう。別に危害は加えませんって。

「まぁ詳しい自己紹介は後にしてじゃな、君の処遇について話をしたいと思う。一晩考えた結果じゃが……君には戸籍と住む場所を提供してあげようと思う」
「学園長!?」

刹那が吼える。おいおい、茶々を入れるなよ。
せっかく良いところだっていうのに。

「まぁまぁ、落ち着きなさい刹那君。もちろん、タダというわけにもいかん。ある条件……というか仕事を手伝ってくれるのなら、今言ったものを用意してあげようと思うのじゃが。もちろん、お給料も出してあげよう」
「願ってもないことです。こちらとしてもタダで提供していただけるとは思っていませんでしたから。それで、どんなことをすれば良いのですか?」
「それはよかった。仕事についてじゃが……一つは先日のような襲撃者、君が倒した鬼とかじゃな、それの撃退。そしてもう一つは、この学園の広域指導員……タカミチ君と同じ事をしてもらいたいのじゃよ。」
「広域指導員というのはなんですか?」
「この麻帆良という所は学園の大きさもさることながら、生徒数も多くての……血の気の多い連中がどうしても暴れたりケンカしたりしてしまうんじゃよ。それらを取り締まるのが広域指導員じゃ。麻帆良も深刻な人手不足での、生徒数に対して釣り合いが取れていないんじゃ。君の実力なら大丈夫だと思うんじゃがの?……鬼を切った時は無我夢中だったそうじゃが、本当は実力を隠しておったんじゃろ?」
「……お察しの通りです。折を見て話そうかと思っていましたが、バレてましたか」

流石学園長といったところか。原作ではどこか抜けているイメージがあったが、中々鋭い。

「フォフォ、年の功という奴じゃよ。それにしてもなぜ正直に言ってくれなかったのじゃ?別に隠す必要はなかったと思うのじゃが?」
「あの時はあなた達が敵かどうかわからなかったものでしたから。隠しておいたほうが何かと有利じゃないかと思いまして」
「なるほどの。まぁきちんと話してくれたし、そのことについてはもう問いはせん。さて……長くなって申し訳ないが、明日から早速仕事に取り掛かってもらいたい。夜の襲撃者の撃退についてはこちらが用意した携帯に連絡をいれるから、失くさないように持っていてほしい」

机の引き出しから携帯を出して俺に渡す。中々良い機種のようだ。

「わかりました。本当にありがとうございます。それにしても、なぜ襲撃者はここに来るんですか?なにか目的でもあるんでしょうか?」
「ッ!?」

刹那が反応した。無理もない。奴らが狙っているのはこのかだからな。刹那ももちろんわかっているのだろう。

「……襲撃者達がねらっているのは、実はわしの孫娘での。関西呪術協会……この麻帆良と微妙な関係にある奴らが狙いに来ているのじゃよ」
「学園長!話しすぎです!」

やっぱり刹那が吼える。そろそろ耳が痛いです。

「刹那君、いいのじゃよ。藤咲君はわれ等を信用してくれたようじゃし。こちらも彼の信用に答えてやらねばいかん」
「ですがっ!……わかりました」

納得いかない顔をしているが、刹那は学園長の言葉に渋々頷いた。

「さて、諸注意があるんじゃが、聞いて欲しい。それは魔法を秘匿することじゃ。一応認識阻害の魔法があるが、聡い生徒は気付いてしまう可能性がある。気をつけてほしい」
「それについては大丈夫です。心得ています」
「そういえば君は魔法世界のこともしっておったな。行ったことがあるのかな?」
「いえ、そういうわけではありません。ただ、こちらの世界に来たときに大体の魔法の常識等が頭に流れ込んできたんです。……おそらくはエターナルソードのおかげかと思いますが」
「ふむ……君がもっていた剣のおかげか。確かに、異世界のものだけあって何か不思議なものを感じたしの、そのようなこともあるかもしれんな。もう一つあるんじゃが、君が異世界から来たということは隠しておこうと思う。そのほうが都合がいいじゃろ。ここにいる藤咲君とわし以外の四人には口外しないようにいってあるから大丈夫じゃ」
「わかりました。俺も口外しないようにします」

剣については少しいぶかしんでいたようだったが、なんとか納得してくれたようだ。危ない危ない。ボロが出るところだった。
もうひとつの注意は俺も言おうと思っていたことなので話す手間が省けて助かった。

「なら、大丈夫なようじゃの。君の住むところじゃが、昨日泊まった場所そのまま……というわけにもいかなくての。違う場所に部屋を用意しておいたから、そこを使って欲しい。今日の分の食費はわしがおごってあげよう。流石にカップ麺ばかりじゃキツいじゃろうし。さ、タカミチ君とそこの三人に案内してもらいなさい。明日からよろしく頼む」
「重ねて、お礼を申し上げます。明日から誠心誠意がんばります」

思いっきり頭を下げて礼を言う。これは本心からだ。学園長、人が良すぎる。それにしても学園長……そこの三人を押し付けないでくださいよ。胃が痛いです。
俺は学園長から封筒に入った現金を受け取って四人と共に学園長室を後にした。





タカミチの隣を歩いて外に出る。後ろにはいまだに三人の射抜くような視線。前を向いていてもひしひしと感じる。
なんでそんなに目の敵にするかなぁ……俺何にもしてないのに。
刹那辺りなら怒る理由もわかるが、後の二人はまったく検討がつかない。
学園長もちゃんとなだめてくれればいいのに……。
しばらく歩いて人気の少ない公園のような場所に来た。
するとそこでいきなり刹那が俺に話しかけてきた。

「一つ問います。あなたはお嬢様を狙いに来た刺客ではないのですか?」

おいおいいきなり何を言うんだいサムライガール。
さっき学園長の話を聞いていなかったのかい?しかもその質問ってかなりお馬鹿だよ。

「もちろん、違う。俺はそのお嬢様が誰かも知らないし、別に君達と敵対するつもりはない。せっかく職をもらったんだ、俺はそれを全うするだけだ」
「……今はその言葉を信じましょう。ですが、もしも裏切ったのなら、私は全力で貴方を葬り去ります」

こえぇぇぇぇ!なにその凄いドスの利いた声!
ちっちゃい子じゃなくても泣いちゃいますよ?俺とかね。
刹那の声にビビりながらもなんとか返事を返そうとする。
しかしその時、思わぬ方向から声が響いた。

「まぁ刹那、そういきり立つな。納得いかないなら実力を示してやったらどうだ?」
「龍宮……そうですね。藤咲さん、私と一つ手合わせ願います。」

龍宮ーーーーーーー!?なに言ってんだよこのやろう!しかもそれに乗るなよ刹那!
俺が断ろうとしたとき、またも思わぬ方向から声が響いた。

「いえ、刹那。あなたは下がっていなさい。この男とは……私と手合わせしてもらうことにしましょう……ふふふふふ」

刀子さーーーーーーーーん!?いやいや、ふふふふふってなんですか?バトルジャンキーですか!
あなた原作じゃそんなキャラじゃなかったでしょうよ!冷静な剣が売りじゃなかったんですか!
俺の頭はパニック寸前。どうやら学園に来るときに感じた俺の第六感は当たっていたようだった。









~あとがき~

今回は能力の説明と悠人の処遇に関してでした。
能力説明についてですがもう少し説明があります。
仕事は臨教か広域指導員かで迷いましたが、結局広域指導員で落ち着きました。
能力説明のせいで前に比べて文章が長くなってしまいましたが……。
次回はVS刀子先生ですが、持ち前のチートを使ってあっさり倒してしまうかと。
まだまだ展開は遅いですが、次回もよろしくお願いします。








[25165] 第5話
Name: しゅりと◆705b40f2 ID:78153ba0
Date: 2011/01/10 22:45
-葛葉 刀子-

私はイライラしている。そう、どうしようもないほどにです。
普段はクールな先生で通っている私ですが、今回ばかりは我慢なりません。
そもそも私がなぜこんなにもイラついているかというと、最近夫と酷いケンカをして離婚したことに他ありません。
お互いを信じて寄り添っていたのに……ずっと、ずっと添い遂げると思っていたのに、まさか離婚することになるなんて……
夫と結婚する前、私は神鳴流剣士として魔を祓う仕事をしていました。
剣の修行ばかりやっていて……自分を磨くことなんて一切考えていませんでした。
ただ、宗家である青山家の鶴子様がご結婚なさったときは羨ましいと思いました。そのとき私は二十台の前半、結婚なんて……とは思っていましたが、心のどこかで憧れが芽生えていたと思います。
そんな中、仕事の関係で出会った彼……正に一目惚れと言っても過言ではなかったでしょう。
彼は関東の人でしたから中々会うことは出来ませんでしたが、なんとか時間の折り合いをつけて会っていました。仕事もなるべく関東のほうにまわしてくれる様にしたりして……
彼も私を好きになってくれて、初めてのデートの日は慣れないオシャレをして出かけていったっけ。今まで疎かだった家事もちゃんと練習して……手料理を披露して『美味しい』って言ってくれて……。
彼はとてもやさしくて、いつも私を受け止めてくれていました。
プロポーズされたときは嬉しくて嬉しくて、幸せの絶頂だった気がします。
晴れて女の幸せを手に入れることの出来た私……そのときは離婚するなんて思ってもいませんでした。
関東から西洋魔術師である彼の元に嫁いで、七年間共に歩んできてどこで歯車が狂ってしまったんでしょう。
予感はあったんです。何かぎこちない感じがすると思っていましたから。
それに私と夫の間には子供を授かることが出来ませんでした。そのことが夫との関係を悪くしていたのでしょう。
けれど一番悲しかったのは、彼が浮気をしていたことでしょうか。それも私より何歳も年下の一般人女性と……。
そりゃ若くてピチピチな女性の方が良いでしょう。でも、七年も一緒に生活してきて離婚はないでしょう!
そんな夫とケンカをして離婚したのがついこの前のこと。彼は浮気していた女性とも別れて魔法世界に行ったと聞いています。大方、麻帆良で私と一緒の仕事をするのには抵抗があったのでしょう。
ついに私もバツイチ……はぁ。
思い返せば思い返すほどストレスが溜まる毎日。
けれど刺客は麻帆良を襲撃しにやってきます。
極めつけは先日の襲撃の際に鬼に『おばさん』と呼ばれたことでしょうか、私はまだ2X才ですよ!たしかに最近お肌にハリがなくなってきましたけど!
もちろん、その鬼には召喚されたことを後悔させてあげましたけどね……ふふふふふ。
そんな感じで、募っていくイライラを解消できないまま過ごしていたわけですけど……
今、絶好の機会がやってきました。
目の前にいるのは、異世界から来たとかいう胡散臭い男。私達を馬鹿にしているとしか思えません。
ただでさえ問題が多いというのになんなんですか学園長は!しかも、広域指導員?いくら人手が足りないといっても流石に浅慮過ぎるんじゃないでしょうか。ついに耄碌し始めましたか。
相手は魔力も気も感じない、ただの一般人。……刹那達は鬼を切り裂いたといっていましたけど。真偽はわかりませんが、どちらにせよ広域指導員が務まるのか私が見極めてあげましょう。
刹那が手合わせを申し出ましたが、そんなことさせるわけにはいきません。
今はただ、私の内にあるこの気持ちを吐き出したいのです。大丈夫、痛いのはちょっとだけですから。
ふふふふふ、目の前の男は私を楽しませてくれるのでしょうか……?










-藤咲 悠人-

俺は焦っていた。原因は目の前にいる女性……刀子先生のせいだ。
唇をニヤリと吊り上げ、笑いながらこっちを見ている。正直言ってかなり怖い。
刹那が手合わせを申し出たときもかなり焦ったが、まさか刀子先生が言ってくるとは。

「あの……俺達が手合わせする必要はないと思うのですが……」
「これから仲間になる人の実力を知るというのは大事なことです。貴方に広域指導員が務まるか見極めて差し上げましょう……決して!決して私怨が絡んでなんていませんとも!」

ダメだ。これは完璧に闘う流れだ。言っても聞く耳持たないだろう。
それになぜかイライラしているのが見て取れる。血管浮いてますよ。
はっきり言って闘うのは御免だ。能力があるといっても怖いものは怖い。俺は基本的にはヘタレなのだ。
俺が黙っていると、刀子先生は懐から御札を二枚取り出して地面に貼り付けた。

「音消しと人払いの呪符です。これなら周りに気付かれることなく手合わせできるでしょう」
「刀子さん、こういうのはあまり……」
「高畑先生は黙っていてください!だいたい怪しいと思わないのですか!異世界ですよ、異世界!私達をおちょくっているとしか思えません!それに先生も実力を知りたいと思っていたんじゃないですか?」
「うっ……」

タカミチ、そこで黙るな。何とかなだめようと頑張ってくれたが、ダメみたいだった。
ヒステリックな人は怖いね。
どうやら俺も腹を括ったようがよさそうだ。

「……わかりました。お相手しましょう。判定はどのようにしましょうか?」
「ようやくその気になりましたか。判定は相手が降参するまでとしましょう。武器・技等は自由。思いっきりやりましょう。後の処理は学園長にでも任せれば済む事ですし」

魔法関係者がこれじゃあ学園長も苦労するわな……。
さて、できれば穏便に済ませたいところなんだが、手早く相手を降参させられる技あったっけ?

「刹那、審判を任せます。さぁ、異世界の技とやらを見せてもらいましょうか!」

叫びながら、刀子先生は野太刀を構える。
とりあえずは俺もエターナルソードを出しとくか……。ポーチ持ってきて良かった。
ポケットからポーチを取り出して、見せつける様に中からエターナルソードを取り出す。
案の定タカミチが驚いている。

「その剣は寮においてきたんじゃないのかい?それにそのポーチは……」
「まぁ異世界の不思議アイテムということで納得してくれ。アーティファクトのようなものだよ」

ポーチをポケットにねじ込みながら、答える。
隠していてもしょうがないし、問われる前に説明した方が良い。

「準備は出来たようですね……。刹那、合図を」

刀子先生は刹那に合図を促す。もうちょっと待ったりしないかなぁ。
お互いに距離をとり、獲物を構える。

「はい。それでは距離をとって……始め!」
「葛葉刀子、参ります!」

言った瞬間、刀子先生は一気に距離を詰めてきた。瞬動でも使ったのだろう。
あまりの速さに驚いたが、俺の体は勝手に反応していた。どうやら武器を持ったことで知覚能力も上がっているらしい。
繰り出してくる野太刀を防ぐ。身体能力が強化されていなければ一瞬でやられていただろう。

「中々やるようですね。魔力も気も使えないと思っていましたが……」
「その辺は聞かないでください。禁則事項ということにしておきます。それにしても……」
「?」
「――その太刀筋、京の深山に秘して伝わると言う神鳴る剣……神鳴流ですね」
「なっ!なぜそれを……」

驚いてる驚いてる。とっさに瀬田さんのセリフ言ってみたけど結構揺さぶることが出来たようだ。

「埒があきませんね。奥義でも使ったらどうですか?」
「言ってくれるじゃないですか。使わないつもりでしたが、お望みどおり使って差し上げましょう。――雷鳴剣!」

辺りに轟音が響きわたる。俺はとっさに距離をとってうまいこと避けることができた。
ちょっと力込めすぎじゃありませんか刀子先生。地面が陥没してますよ。
刹那達もポカーンとした顔でこちらを見ている。刀子さんが激昂しているのが珍しいのだろう。

「上手く避けたようですが、次は決めていきますよ。貴方も何かしてみたらどうです?何かしら技はあるのでしょう?」

いやぁあるにはあるんですが、人に使ったらどうなるかわからなくて下手に使えないんですよ。
でもこのままじゃこっちがやられちゃうし、なにかいい方法は……あ、そうだ!

「やられっぱなしというのも気に食わないですし、一瞬で勝負をつけてあげましょう」
「なんですって……?さっきから防戦一方の貴方が何を言っているんです?馬鹿にするのもいい加減にしてください!」

離れている刀子先生にむかって話しかける。そして俺はおもむろにポケットからポーチを取り出して、中にエターナルソードをしまった。

「いったい何を?まさか降参するなんてわけじゃありませんよね?まだまだ私の怒りはおさまっていませんよ!」
「まぁまぁそう焦らず。見せてあげましょう。異世界の技を」

軽口で答えながら言うが、刀子先生は俺をストレス発散の道具か何かと勘違いしてるんじゃなかろうか。自分で言っちゃっているしね。
そして取り出すのはBCロッド。青い宝石が輝く杖。

「それは……杖?貴方魔法を使えるのですか?」
「いえいえ、魔法ではありませんよ。まぁ似たようなものですが」

さて問題はTPが足りるかどうかだけど……大丈夫かなぁ。
そう、俺が使おうと思ったのは『法術』。ミントが覚える癒しの術。その中で使うのはTP消費も激しい屈指の効力を持つあの……

「貴方が何をするのか知りませんが、安々とやらせる訳にはいきません。次で決めます!」

そう言って再びこちらに向かって走り出す刀子先生。さて、上手くいってくれよ……!

「時を統べる神の御技を……今此処に……!タイムストップ!」

叫んだ瞬間、世界の時が止まった。
刀子先生はこちらに野太刀を振り上げたまま動かない。上手くいったようだ。
タイムストップ……時を止めて相手の行動を停止させる法術。
この世界においてもチート級の効力を持つものだろう。ただし六秒程度だが。
俺は秒数を数えながら急いで刀子先生の背後にまわって手に持っている野太刀を剥ぎ取り、そのまま刃を首に当てる。これで後は動き出すのを待つだけだ。
そして時は動き出す……

「えっ……いつの間に!?」

直ぐに首に当てられた刃に気付く刀子先生。そりゃ驚きますよね、知覚出来ないんですから。

「言ったでしょう?一瞬で勝負をつけると。さ、大人しく降参してください」
「くっ……参りました……」
「そ、そこまでっ!」

刹那が試合を止めた。流石にみんなも驚いてるようだ。あ、刀子先生凄い悔しそう。
他の人には気付いたら俺が刀子先生の背後にいた、という風にしか見えてないだろう。時を止めているのだ、瞬動とか縮地とかそういうレベルの話ではない。

「……驚きました。気付いたら貴方が背後にいた……瞬動というレベルではないですね。それが異世界の技なんでしょうか?何か叫んだように思えましたが……」
「それも禁則事項です。いつか教えてあげますよ」
「どうやら貴方のことを見くびっていたようですね。……少し腑に落ちませんが、貴方の実力を認めます」

ふぅ……やっと終わった。
なんとか怪我することなく降参させることができた。TPも足りたようで何より。けれど少し体が気だるい、TP50消費はきつかったか。
野太刀を返して刀子先生の後ろを離れる。少し名残惜しい。
手合わせを見ていた刹那達もこちらに寄ってくる。

「驚いたな……私の魔眼を持ってしても捉らえられなかったとは……」
「ああ、しかし気や魔力を行使したというわけでもないようだ。あんな現象見たことないぞ」

龍宮と刹那が何か話している。これで少しは信じてくれるといいのだが……。

「悠人君、君が何をしたのか僕にもわからなかった。見たところその杖に秘密がありそうだけれど……。それに何か呪文を詠唱していたのかい?」
「ああ、そうだよ。まぁその辺りは秘密で。そうそう使えるわけでもないしね」

そういってポーチの中にBCロッドをしまう。あ、刀子先生地面になんか言ってる。

「まさか、まさかあんな一方的に……今まで修行してきた私はなんだったっていうの……?それも私よりも何歳も若そうな男に……これが年齢の差だっていうの?うぅ……ファイトよ刀子……。大丈夫、生徒はまだ美人だと言ってくれてるわ……」

地面に跪きながらぶつぶつ言ってる。なんかトラウマスイッチはいった?

「あのー、さっきのはインチキ技みたいなものなので気にしないほうが良いですよ……?」
「慰めてくれなくて結構です。……少々お見苦しい所を見せてしまいました」

スッと立ったかと思うと表情はもう冷静なものになっていた。切り替え早いですね。

「……まだ貴方にはちゃんと自己紹介していませんでしたね。私は葛葉 刀子。麻帆良学園で教師をしています。貴方も知っている通り神鳴流の剣士です。……次は負けません。ほら、刹那達も自己紹介なさい」
「私は桜咲 刹那といいます。麻帆良学園女子中等部2-A所属です。刀子さんと同じく神鳴流剣士です。……刀子さんを倒したのには驚きました」
「私は龍宮 真名。一応魔法関係者だが、学園には雇ってもらう形で仕事を受けている。刹那と同じく2-A所属だ。中々興味深いものを見させてもらったよ」

三人三様に挨拶してきた。なんとか認めてくれたかな。そういえば三人にはちゃんとした挨拶をしていなかったな。
ついでにしておこう。

「俺は藤咲 悠人……まぁ学園長から聞いていると思うけど。一応異世界から来ました。よろしくお願いします」

丁寧に挨拶をする。印象は良くしておかないとね。

「さて、紹介も済んだし、そろそろ行こうか。ここからもうすぐだよ。後の処理は学園長に頼もう」

タカミチに促されて刀子先生が地面に貼ってある呪符を剥がす。中々便利そうだねそれ。
そして学園長は頑張れ。
タカミチが携帯で学園長に連絡した後、俺達はまた歩き出した。





公園から再びタカミチ達に案内されてついたのは、人気の無い場所にポツンと立っているログハウス調の造りをした家。
どこかで見たことがあるような気がする。あれ……これってエヴァの家じゃなかったっけ?

「ここは学園長が敷地内にいくつか持っている別荘のようなものらしくてね、これと同じデザインのものを知り合いもここの近くで使ってるんだけどね。今日からここが君の住まいだよ。」

なるほどそういうことか。エヴァも学園長から家をもらったんだろうか。そして近くにいるのかよ。
エヴァに俺を監視でもさせる気か?確かに適任かもしれないけどさ。
離れたところに住まわすというのは学園長らしい決断だ。さすがに住まわす寮も無かったんだろう。

「こんな立派な一戸建てを使っていいのか?ちょっと居たたまれないんだけど……」
「君は特殊な状況におかれている人だからね。住まわせられる所も限られてくるんだよ。まぁせっかくのご厚意だ。受けないのは失礼というものだよ」
「そういうことなら、ありがたく使わせてもらうよ」

せいぜい小さなアパートとかその辺を想像してただけあって嬉しい誤算だ。中に入ると、家電はある程度設置されていた。わざわざ買いに行かなくても済みそうだ。
刹那達三人も驚いている。彼女達は寮住まいだからあまりこういう家には馴染みが無いのだろう。
俺が辺りを見回していると、タカミチが一枚のカードを懐から取り出して俺に渡してきた。

「明日から広域指導員の仕事が始まるわけだけど、これを渡しておくよ。身分証明書みたいなものだ」

渡されたカードには《学園広域指導員 藤咲 悠人》と書かれていた。

「これを見せれば麻帆良の中なら多少の自由が利くはずだ。あと、携帯電話には僕の番号と刀子さんの番号も入ってるから何かあったときには連絡してくれ」
「わかった、何かあったら連絡するよ。仕事はいつからやればいいんだ?」
「そのことなんだけど、仕事の詳しい説明は明日にしたいと思う。明日の十二時頃にあの大きな木……世界樹というのだけれど、そこの前の広場まで来てくれ。道はわかるね?」
「あぁ、大丈夫だ。今日はもう自由にして良いのか?」
「うん、大丈夫。少し散歩してくるといいよ。麻帆良は広いからね、迷わないように気をつけてくれ」
「了解だ。明日からよろしく頼む」

どうやら今日はもう自由に行動して良いらしい。街にでも行きたいな。お金はもらったし、食料品を買い込みたい。久々にうまいものにありつける。
タカミチ達にお礼を言って別れる。刹那が俺をしきりに見ていた気がするが気にしないことにした。
さて、俺も買い物に行きましょうかね。





その後俺は辺りの散策ついでに街に繰り出し、食料品を買い込みにいってきた。帰ってきたときにはもう辺りは暗くなっていた。ちょっと時間かけすぎたか。
散歩をしていて驚いたのは新しい家から数分歩いたところに同じログハウスが立っていたことだ。
おそらくエヴァが住んでいるのだろう。タカミチが近くにいるといっていたが、いくらなんでも近すぎる。
ていうか学園長、近くに似たようなログハウス作るなよ。
だが、このログハウス中々立地条件が良い。少し歩けば街の中にいけるし、学園もそこそこ近い。
そして中も広いし住みやすいし、かなりの良物件だ。
俺は早速買ってきた弁当を食べる。なにか料理でもしようかと思ったが、おいしそうな弁当屋さんを見つけたのでついつい買ってしまった。
明日からはちゃんと料理するようにしよう。
弁当を食べて一息つく。するといきなり机の上においてあった携帯が着信音を響かせた。画面を見るとどうやら学園長からのようだ。まさか襲撃者だろうか。

「はい、藤咲ですけど。どうかなさいましたか?」
「おお、夜にスマンな。別に何かあったというわけではないのじゃよ。ちと君に伝え忘れたことがあってな。君の戸籍の事なんじゃ」
「戸籍ですか、そういえば用意してくれるといってましたね」
「そうなんじゃよ。そのことなんじゃが、君はわしの遠い親戚という様にしておいたからの。もし誰かに聞かれた時はそのように答えて欲しいのじゃ」
「わかりました。ありがとうございます。それにこんな立派な家まで用意してもらって……」
「フォフォフォ、気にすることはない。余っていた物件だったしの。お気に召してくれたようで何よりじゃ。明日から広域指導員の仕事よろしく頼む」
「了解です。それでは失礼します」

電話を切って机に置く。さて、この世界で生きていくための条件はほぼ出揃った。後はネギが来るまでどう準備していくかが問題だが……それは追々考えていくことにしよう。
俺はその後シャワーに入り汗を流した。一つ気になるのが服だ。今着ている服一着しかないので、非常に不衛生なことこの上ない。
まとまったお金が入るまでは服は買えないか……
学園長にまた頼んでみるかな。
俺は携帯のアラームをセットして、備え付けてあったふかふかのベッドに体を預けて眠りについた。










~あとがき~

というわけでVS刀子先生でした。
タイムストップの詠唱部分は必要ありませんでしたがバーサスから使わせてもらいました。
あと、刀子先生の離婚時期についてですが、刹那が三年生の学園祭の時に最近といっていたので、この時期ではないでしょうが、早めてもらいました。
次回から広域指導員の仕事が始まります。
そろそろ金髪ロリ吸血鬼のあの人も登場する……かな?
それでは、次回もよろしくお願いします。











[25165] 第6話
Name: しゅりと◆705b40f2 ID:78153ba0
Date: 2011/01/18 17:19
-藤咲 悠人-

朝。セットしておいた携帯のけたたましいアラーム音が俺の耳に入ってくる。音量上げすぎだったか。
アラームを止めてベッドからムクリと起き上がる。気持ちの良い朝日が窓からさしこんでいる、外は晴れ。いい天気だ。
部屋の中を見渡す。ログハウス調の綺麗な家、一介の大学生にはもったいない。学園長には家賃か何か払わないといかないな。主に俺の良心の為に。
時刻は午前六時を少し過ぎたところだ。まずは顔でも洗おう。
洗面所で顔を洗う。洗面所も大きく、機能性もバッチリだ。
温かいお湯で顔を洗ってすっかり目が覚めた。さて、集合時間まではかなり時間がある、何をしようか。
ふとメモ帳にまだ続きがあったことを思い出す。
前もその前も誰かが来て全部見れていないんだった。どうにもタイミングが悪いらしい。
テーブルにおかれているメモ帳を取る。タカミチはメモ帳については何も言ってこなかったけど、中身は見なかったんだろうか。まぁ聞かれないほうがいいんだけどさ。
前に見たところまで入念にチェックする。見落とした所は無いみたいだ。次のページからがまだ見てないところになる。あれだけのチート能力に加えてまだなにかあるのだろうか。
ページをめくる。一番上には《称号について》と書かれていた。そういえば神様言ってた気がする。
称号といえばテイルズシリーズではなじみ深いものだ。とるのが難しいのもあれば、ネタ的なものもある。アイテムコレクターとかめんどくさいんだよなぁ。あとミニゲーム絡んでくるやつとかも。
目線を下にずらすと、そこには

・称号はマジカルポーチから取り出せる称号名の書かれた名札をつけることによって効果を発揮する
・どんな効果があるかは自分で確認してください(例:グルメマスター→料理が上手になる&テイルズシリーズの料理が作れるようになる)
・つけても効果のない称号もあります
・一度につけれる称号の数は一つだけ

と書いてある。なるほど、称号をつければ色々便利な効果が得られるということか。そして称号を視覚化するために名札になっていると。
せっかくならどの称号に何の効果が得られるか書いてくれればいいのに。ま、おいおい試していくとしましょうか。
メモに書かれている内容はこれで最後のようだ。しかし、メモ帳の裏には小さく『本人以外には白紙に見えます』と書かれていた。
だからタカミチは何も言ってこなかったのか。これで合点がいった。つくづく便利な代物だ。
とりあえず例にあった『グルメマスター』を試すことにしよう。ちょうど朝食には良い頃合だ。
俺は例にのっとりポーチに手を突っ込んで『グルメマスター』を取り出そうとする。
手に硬い感触がしたので取り出してみる。出てきたのは『グルメマスター』と筆で書かれたような白い名札。それにしても凄く達筆だ。カタカナでもわかる。
素材は何だろうかプラスチックでもない不思議な硬さがあった。えっと、これをつければ良いのかな。
つけるといっても安全ピンがあるわけでもないし、どうやって付ければ良いんだろう。
試行錯誤してやっと付けることが出来た。どうやらそのまま衣服に押し付ければ勝手に張り付いてくれるらしい。これは便利だ。
さて称号を付けたが別段変化はない。料理を作るときに効果が発揮されるのだろうか。
物は試しと昨日買ってきた食材を冷蔵庫から取り出そうとする。おもしろいことにレタスを手に取った瞬間、頭の中にレタスで作れるレシピが浮かんできた。それもテイルズシリーズで出てきたものばかりだ。
ハンバーガーにサンドイッチに野菜サラダ……朝食にするにはサンドイッチが良いだろう。
幸いなことに食パンや卵も買ってきてある。早速作ることにしよう。
台所には必要最低限の調理道具がおいてあった。あとは作るだけなんだが……。
だけどなぁ……サンドイッチなんかで味が変わるか?
ただ挟んで切るだけだし、買ってきた食材も高級な物ではない。正直眉唾物だった。
とりあえずは作ってみる。驚いたことに、自分の手つきが今までとまったく違う事に気付いた。
気付いた、という表現はいささかおかしいが事実そうなっているのだから仕方ない。無意識に包丁を持った手が動いているのだ。どうやらこれが称号の力らしい。
ただ切る動作一つにしても見入ってしまいそうだ。
数分後に出来たのは見た目も綺麗でおいしそうなサンドイッチだった。なんかキラキラしている気がする。
生来不器用な俺はこんな上手に料理をしたことがない。食べれるものは作れたが、見た目が酷かった。
それに比べて目の前にあるサンドイッチはどうだろう。どこぞのホテルの朝食にでてきそうだ。流石熟練度MAXなだけはある。
これで俺も素晴らしき味の世界の住人になれただろうか。
お腹が空いているので早速食べてみる……美味い!
なんだこれは!普通の食材を重ねて切っただけなのに……なんでこんなに美味しいのだろう。
もちろん称号の他ならないだろうが、いくらなんでも違いすぎる。美○倶楽部に招かれない勢いだ。海○雄山の舌でも唸らせる事が出来るのではなかろうか。
たかがサンドイッチ、されどサンドイッチ。凄いな称号。
量はそんなに作らなかったが、非常に満足した。これは夕食も楽しみだ。





食器を片付けた後、非常に気が進まなかったが緑と赤のセージを食べた。相変わらず酷い味がする。今度調理方法でも考えるとしよう。
何回かむせながらも食べ終わり、歯を磨いて一息つく。名札は簡単に剥がすことができたのでポーチにしまっておいた。また料理をするときに使わせてもらおう。
テイルズシリーズの料理が作れるようになったのでレシピのレパートリーが増えた。また食材買いにいかないとな……。
時刻は七時ちょっと過ぎ、十二時まではまだまだ時間がある。
広域指導員も始まるわけだし、装備の確認でもしておこう。
取り締まる相手といえば喧嘩っ早い不良や中武研等の格闘系サークルの連中が相手だろう。
さすがに剣を使うわけにもいかない。TOSみたいに木刀があればよいのだが、あいにくとTOPとTOEでは存在しない。
一番弱い装備でもロングソードである。十分危険な代物だ。ファンタジーな世界ならまだしもここは学園である。危険なものは持っていてはいけない。
あれ……でも刀子先生とか刹那は普通に帯刀してたような……?
……あまり気にしない方が良さそうだ。
思考が少し脇道にそれたので戻す。広域指導員の仕事をするときにはファラの体術を使わせてもらおう。体術なら上手く鎮圧できると考えてだ。個人的にも好きだしね。
でもゴッドウェポンとかは装備できないよなぁ。生徒がどのくらいの耐久力を持っているのかわからないので下手に強力な武器は使えない。最初はレザーアームズ辺りで試してみるかな。
たとえ強い武器を持っていても手加減すれば済むことなんだが、まだ慣れていないので難しい。それに技を叫べば勝手に体が動いてしまうので力に歯止めが利かない。ここは弱い武器を装備しておくのが得策だろう。
武器の方はいいとして、次は頭からすっかり抜け落ちていた『その他』の装備だ。
テイルズシリーズの『その他』の装備は多岐にわたり、様々な効果があるが、その中でも有用なのはフェアリィリングなどといったTP消費を抑える装備だろうか。
他にも装備していて戦闘不能になった時に復活するリバースドールや戦闘中HPが一定時間ごとに回復するホーリィシンボル等もこの世界では破格の効力を持つ品々だろう。まだまだ素晴らしい効果を持つ装備はたくさんあるが。
効果が無いのはミスティシンボルぐらいじゃないだろうか。詠唱時間というものが存在しないため、つける意味がまったくない。TOPじゃ凄く高かったんだけどなぁ。
TOPでもTOEでも『その他』装備は二つまでが限度だったはずだ。おそらくは俺が装備できるのも二つまでだろう。こんなものいくつも装備出来たんじゃバランスが崩れてしまう。
とりあえずはTP消費を二分の一に抑えるフェアリィリングとTP最大値が30%増加するターコイズをポーチから出して指にはめておく。TP消費量が半分になるのは非常にありがたい。あのタイムストップも25消費で発動できるのだ。
セージを食べ続けていればTP消費も気にしなくなるだろうが、今の俺はTP量も少ない。だからTPの最大値を増やすターコイズを装備することにした。まぁ元が少ないので30%なんて微々たる物だろうが、それでも装備しないよりはマシだろう。
それにTPの最大値を増やすことによって、武器を装備した時の身体能力も上がるので一石二鳥というわけだ。……それにしても指輪は俺には似合わないな。俺が指輪に負けている気がする。
その後試しに二つの装備をしたままポーチから三つ目の『その他』装備を取り出そうとしたが予想通り出てこなかった。相手によって随時装備を変えていくことにしよう。
これで準備はバッチリだ。よほどの事が無い限りは大丈夫だろう。
時計を見るとまだ八時を回ったところ。さて、何をしようか。





テレビを見たりしている内に時刻は十一時半になった。そろそろ出たほうがよいだろう。遅刻するのはいけない。マナーは守らなければ。
ポーチを持って家を出る。鍵も忘れず掛けておいた。まぁ盗られて困るものもないが。
人のいない道を歩く。周りには木々が生い茂っている。元の世界で住んでいた場所は街中だったので、あまり自然に目を向けることはなかったし、興味も無かった。だが、こうして歩いてみると中々気持ちの良いものだと気付かされる。マイナスイオンとか出ているのだろうか。
少し歩いて世界樹前広場まできた。途中学園の近くを通ってきたが、結構人が出ていた。皆弁当箱を持っていたりしたので、ちょうど昼休みなのだろう。
それにしても広い所だな。前方に見える階段は大きく、世界樹に向けて伸びている。
世界樹……ファンタジー系のゲームでは割とポピュラーな物だ。北欧神話に登場する架空の木で、九つの世界を内包する存在だったか。ドラクエではアイテムとして登場するし、TOPやTOSでは物語のキーとして登場する。
ネギまの世界でも学園祭の時に重要なファクターとして登場していたはずだ。神木・蟠桃とかいう名前だったはず。
木の内部に強力な魔力を秘めているというが、TOPのユグドラシルみたいに精霊とかがいたりするんだろうか。
ま、なんにせよ世界樹の力が発揮されるのは来年の学園祭の時なので、今はさして気にすることではない。それよりも今はタカミチを探さないと。
辺りを見渡してある事に気付く……人がいない。
おかしい、さっきまでは人の気配はあったのに、今は全然感じない。どうしたものか。
考えていると、いきなり後ろから肩を叩かれた。後ろを振返ると

「うわっ!……ってタカミチか。あんまりびっくりさせないでくれよ」
「ごめんごめん。驚かせるつもりは無かったんだけど。それより、約束どおり来てくれたね。とりあえず階段の上までいこうか」
「それはいいんだが、何でこんなに人っ子一人いないんだ?人払いの魔法でも掛けているのか?」
「ご明察。これから君に紹介する人たちがいるからそのために人払いをしているんだ。本当は校長室でも良かったんだけどね、でもここの方が集まりやすかったから。ああ、もちろん広域指導員の仕事の説明もするよ」
「紹介……?」

紹介ってなんだ?今日は仕事の説明だけだと思ってたんだけどな。
タカミチについて歩く。ってなんだか階段の上に人影が見えるんだが……。
歩を進め、どんどん近づいていく。あれってもしかして……。

「フォフォフォ、よく来てくれたのぅ藤咲君。タカミチ君に聞いていると思うが、今日は皆に君を紹介したいと思ってここに呼んだんじゃ。ここにおるのは麻帆良学園都市各地で常時勤務している魔法先生及び魔法生徒じゃ。皆なかなか時間の折り合いがつかなくてのぅ、魔法まで使うことになってしまったが……」

集団に近づいていくと、真ん中にいた学園長が話しかけてきた。なるほど、周りにいるのは魔法関係者か。
あのグラヒゲは神多羅木だし、褐色の肌で眼鏡をかけているのはガンドルフィーニ、シスターの格好をしているのはシャークティだろうか。他にも幸薄そうな瀬流彦にぽっちゃり体型をしている弐集院、明石教授もいるな。……刀子先生は相変わらずこっちを睨んでいるようだが。
生徒の方だと高音・D・グッドマンに佐倉 愛衣、夏目 萌、春日 美空がいる。なるほど、揃い踏みってわけですか。
学園長は俺を集団の前に立たせて、説明し始めた。

「昨日皆に伝えていた通り、今日から広域指導員をつとめてもらうことになった藤咲 悠人君じゃ。彼はわしの遠い親戚での、最近まで関西の方にいたんじゃが、わしが麻帆良に来るよう頼んで来てもらったのじゃ。もちろん魔法関係者じゃし、広域指導員の仕事だけでなく、襲撃の際には出張ってもらう形になっておる。さ、皆に挨拶を」

促されて一歩進み出る。うわぁ、なんか視線がすごい気になる……。緊張するんだよなぁこういうの。でも、敵意を感じるような視線は少ない、というか刀子先生だけだ。貴方認めてくれたんじゃなかったんですか。
学園長を介しただけあって、急な配属を疑念に思っている人は少ないみたいだ。高音とガンドルフィーニはちょっといぶかしんでいる気がする。原作通りの気質ということなんだろう。

「えっと、ご紹介に預かりました藤咲 悠人と申します。関西の方で仕事をしていたのですが学園長たってとの事だったので、最近になって麻帆良にやって来ました。襲撃者の撃退などで一緒に仕事をすることになると思います。これからよろしくお願いします」

声が裏返らないように努めて挨拶をした。第一印象はしっかりとね。
頭を下げて一礼すると、皆が拍手をしてくれた、なんとか上手くいったかな。

「今日は時間も少ないことじゃし、顔合わせだけじゃ。共に仕事をする仲間じゃ、協力し助け合って欲しい。では、短いが解散とする。午後からの仕事も頑張っての」

学園長が解散宣言をして、人払いの魔法を解いた。解けた瞬間周りに大勢の人が現れて驚いた。魔法ってすごいな。いや、自分の能力も十分凄いんだが、なんというか方向性が違うというか。
周りに人が出てきたのを見て皆それぞれ散っていった。瀬流彦、弐集院、明石教授は友好的に握手をしてから戻っていった。いい人たちだなぁ。それに比べて刀子先生なんかギンッと睨みつけてから帰っていきましたよ。そんなにあしらわれた事が悔しかったのだろうか。
皆いなくなって周りに残っているのはタカミチと学園長と俺だけだ。

「慌しくてすまなかったの。さて、藤咲君。この後のことはタカミチ君に一任してあるからの、彼に色々教えてもらいなさい。ちなみに、今日から新しい広域指導員が入るということは学園都市全域に通達してあるからの。早速今日から頑張って欲しい。それと、襲撃者が現れた時もよろしく頼む。まぁ、そうそう来るものではないんじゃが。……何か質問などはあるかの?」
「はい、わかりました。質問、ではなくてお願いなんですがよろしいですか?」
「なんじゃ?言ってみなさい」
「食事代をもらっておいて厚かましいお願いなんですが、衣類のことでして。こちらに来てからまだ一回も着替えをしていないんですよ。流石に辛いので衣服を買うお金が欲しいのですが……。もちろん給料から差し引いてもらっていいです」
「そういえば、同じ服しか見てないの……。あいわかった。今回もわしが払ってあげよう。給料からの差し引きも無しで構わんよ」
「ありがとうございます!後、質問なんですが給料はどこに振り込まれるのでしょう?」
「ふむ、そういえば口座をもっていなかったの。戸籍は出来ておるし、作るのは問題ないのじゃが……念のため直接手渡すことにしようかの。ちなみに給料は……円ぐらい何じゃが大丈夫かの?」
「そんなにもらえるんですか!?」
「これに襲撃者の撃退に応じて手当てが付くようになるからの、実際はもっと多くなると思ってもらって構わん。……お気に召してくれたようじゃの。それでは、わしも午後から来客があるから戻らねばならん。タカミチ君、よろしく頼む。」
「ありがとうございます!」

俺は周りの目もあるにもかかわらず思いっきり頭を下げてお礼を言った。それほどまでの額だった。学園長、俺には貴方が菩薩かなにかに見えますよ……。
その後学園長は俺に衣類を買うのには十分すぎるお金を渡して、学校に戻っていった。学園長の株急上昇だな。
俺が満足げにうなづいていると、タカミチが話しかけていた。ごめん、正直忘れてた。

「さて、話も終わったことだし次は広域指導員の仕事について説明するよ」
「その前に昼飯食いたいんだけど……」

周りの人は思い思いに昼ごはんを食べている。その姿を見ていたら、さすがに俺の腹も鳴り始めてしまったようだ。

「……そうだね、仕事の話はどこかで食べながらにするとしようか。僕もちょうどお腹が空いてきた所だ」
「どこかいい場所はあるのか?」
「最近オープンしたっていうカフェが近くにあるんだ。そこに行ってみないかい?空いてるかどうかは微妙だけど……」
「いいよ、そこにしようぜ。男二人っていうのはちょっと残念だけどな」
「なら、急いでいこうか、近くに僕の車が止めてあるんだ。それで行こう」

どんな料理が出るかはわからんが、まぁ食えないってことにはならないだろう。
俺はタカミチに隣を歩いて、車を止めてある場所まで向かった。






タカミチの車に乗ること数分、カフェ『イグドラシル』についた。オープンしたてなだけあって客も結構入っているが、俺達二人ぐらいなら座れるだろう。
車から降りて店の中に入る。店員に案内されたのは外の二人用テーブル。ほほう、中々オシャレですな。……どこがと聞かれたら返答に困るが。
まぁ、たいして女性と縁があったわけでもないし、こんな所は入ったことも無い。まさか男と来るハメになるとは。
椅子にすわって、二人して適当にランチを頼んだ。頼み方が様になってるなぁタカミチ。こういう店に良く来たりするんだろう。原作じゃしずな先生と来てたしね。
出されたお冷を飲んで一息つく。風が小さく吹いていて心地よい。
タカミチもお冷を一口飲んで、ふぅっと息を吐くとスーツのポケットから四つ折にされた紙を手渡して、俺に話しかけてきた。

「料理が来る前に説明しておこうか。まず悠人君が広域指導をする時間は放課後から夜の八時か九時くらいまで。ちなみにこの辺りの時間帯がサークル活動とかが活発に行われている時間だから。それと見回る場所なんだけど、はっきりとした範囲は決まっていないんだ。いつもあちらこちらでいざこざが起きているからね。見つけ次第止めて欲しい。でも大体の場所と要注意サークルは今渡した地図に記しておいたから、見回る時の参考にしてくれ。僕の見回る大体の範囲も書いてあるから、よく見ておいてね」
「わざわざすまないな、ありがとう」
「いやいや、構わないよ。正直僕一人だと無理がある部分があって大変だったんだ。悠人君がやってくれると言ってくれて、嬉しかったよ」
「拾ってくれた恩は返さないとな。人として当然のことだよ。それでなくとも学園長には厚遇してもらっているからな」
「まぁいざこざも毎日起きるわけでもないし、気楽にやってもらって結構だよ。あ、注意して欲しいんだけど、あの剣は使わないように頼むよ?流石に凶器は不味いからね」
「ああ、大丈夫だ。俺は器用貧乏でな、体術も使えるからそっちでなんとかするよ」
「それは良かった。ウチの生徒は皆打たれ強いから滅多なことにはならないと思うけど……あんまりやり過ぎないようにね?」
「善処するよ」

まぁ麻帆良の生徒には色々補正が掛かっているみたいだしな。少々無茶やっても軽く流されるだろうと踏んでいる。認識阻害とかその辺あたりの魔法が利いているのだろう。
そうこうしている内に料理が届いて俺達二人は舌鼓を打った。北欧料理はオリーブオイルが利いていて美味いな。……俺が称号をつけて作ればこれ以上の味になるだろうが。
食後のコーヒーを飲み、店を出る。嬉しいことにタカミチがおごってくれた。流石に申し訳ないので、払おうとしたが、「初仕事前のお祝いだよ」と良い笑顔で言ってきたので返すことができなかった。
その後店を出て車を停めてある場所まで来た。タカミチが車に乗り込んで

「今日は初仕事だから僕もついていくよ。四時頃になったらまた世界樹前広場まで来てくれ」
「了解だ。すまないな、昼食をおごってもらって」
「気にしないでくれ。さっきも言ったとおりお祝いだからね。さて、僕も授業があるしそろそろ行くよ。ここから帰れるかい?」
「小さな子じゃあるまいし、大丈夫だよ。地図もあるしな。せっかく学園長からお金をもらったんだし、この辺を見てまわってから帰ることにするよ」
「この辺は色々な店が入っているからね、物がそろうと思うよ。それじゃ、また後で!」

タカミチはスポーツカーに乗って颯爽と学園の方向に車を走らせていった。カッコいいなぁ本当に。
時刻は一時に差し掛かるかどうかのところ。周りには男物の服屋もあるようだ。時間はあまり無いが、買いに行くとしよう。
俺は鼻歌もそこそこに店へむかって歩き始めた。





時は過ぎ、時刻は午後四時。空は少しオレンジ色になってきた。俺は約束した通り世界樹前広場にいた。
あの後服屋にはいって最低限のものをそろえて、ついでに食材もいくつか買って一回家に戻った。
着替えてたりしている内に約束の時間が近づき、今に至るという訳だ。
ちなみに今の俺の服装はジャージである。下は紺で上は白。我ながら飾りっ気のないものだが、機能性という点においてはことジャージに勝るものはないと思っている。
もちろんスーツや私服も買っておいた。だが、流石にスーツを着て体術を行うわけにもいかないのでジャージを買うことにしたのだ。
タカミチみたいに居合拳が使えればいいんだけどね……あれ汚れないし接近戦とかする必要ないし、便利だよね。
まぁこちらにも人間技じゃないような技の数々があるから人の事は羨むのはお門違いというものだろう。他人の芝は青く見えるということだ。
さて、タカミチはどこにいるかな……っと。周りに見えるのは帰宅部であろう生徒ばかり、でもかなり少ないような気がする。それだけ部活に入っている生徒が多いということだろうか。
周りを見渡していると、階段の所にスーツ姿が見えた。あれがタカミチだろう。向こうもこちらに気付いたようで、俺が向かう前に走ってこちらに向かってきた。

「やぁ、さっき振りだね。……それにしてもジャージ姿か、なかなか似合っていると思うよ」

ついた瞬間に服を褒めてくるタカミチ。それは女に言ってやれ。

「男に褒められても嬉しくないけどな。早速行くのか?」
「ああ、もうサークルの活動が始まっている所もあるしね、行こうとしようか。まずは……大学の近くからかな」
「んじゃ、行くとしますか」

あんまり手荒なことはしたくないし、出来れば何も無ければ良いのだけれど……そうも行かないんだろうなぁ。
考えてしまっている時点でフラグが立ったようなものだしな。
それにまた俺のシックス・センスが何かを訴えかけている気がする。さて、何が起こることやら……。





タカミチと共に歩いて麻帆良大学近くの公園まで来た。この辺りは格闘系サークルが結構使うらしく、結構いざこざがあったりするらしい。
案の定俺達二人の目には距離をとって睨みあっている集団がいた。……一方は一人のようだが。

「また懲りずにやって来たのでアルか?」
「うるせぇ!こちとら毎回やられて面目丸つぶれなんだよ!今日こそ勝たせてもらうぜ!」

飛び交う怒号。遠くからでも良く聞こえる。明らかに俺より体格が良い奴らがそこかしこにいるじゃないか……怖いわ。

「一人の方が中国武術研究会……通称中武研の部長古菲君だね。そして左の集団は彼女に挑んでいる挑戦者かな。いつも格闘系サークルの人から挑まれているんだ。古菲君も受けちゃうからこういうことが起こるんだけど、彼女は戦うのが好きみたいだから……多分一般人では最強の部類に入ると思うよ。……僕の教え子なんだけどね」

あれが古菲か。クリーム色の髪と褐色の肌が特徴的だな。なにやら一番強そうな青い胴着を着た奴を挑発しているようだが……。おいおい、体格差どれくらいあるんだよ……。
これで2-A生徒が三人目っと。順調に絡んできてるな。

「おいおい、今にもぶつかりそうじゃないか。早く止めに行こうぜ?」
「それもそうだね。……っと今日は初仕事だし君にやってもらおうかな。お手並み拝見するよ。危なくなったら助けるから」
「ま、頑張ってみるよ……。本当は暴力とか嫌いなんだけどな」

ポーチからレザーアームズを取り出す。ん?タカミチが不思議そうに眺めているな。

「そのポーチにはなんでも入るのかい?魔法世界でも似たような物があるけど」
「いや、なんでもというわけではないよ。条件があってな。それにこのポーチは俺にしか扱えないようになっているんだ」
「だから、前に見たときは中身が無かったのか……」
「そういうことだ」

言いながら手にはめようとするが中々上手くいかない。指輪が引っかかる。非常に邪魔臭い。

「その指輪外したらどうだい?」
「これも異世界の不思議道具でな。つけていないと効果を発揮しないんだよ」
「見たところ普通の指輪に見えるけど僕達の常識は異世界には通じないみたいだね……悠人君は色々もっているんだな」
「もちろん、これだけじゃないけどな。その内見ることになると思うよ」

力任せに手を入れて、やっと装備することが出来た。おお!体が軽い、軽いぞ!
思わずテンションが上がってしまったが、武器を装備すると高揚感も出てくるようだ。普段の俺からは考えられん。
この気持ちは目の前にいる奴らで発散させてもらおうか。今の俺ならいけるはず。
ポケットからタカミチにもらった身分証明のカードを出しながら集団に近づいていく。青い胴着を着た奴が気付いたようだ。

「なんだてめぇは!怪我をしたくなかったら近づくんじゃねぇ!」
「その通りでアル。首を突っ込むと危ないアルヨ」

二人が話しかけてきた。同時に周りの連中も一斉にこちらを見てきた。皆ギラギラしてるなぁ。それにしても、アル口調は初めて聞いたな。なかなか耳に残る。

「いや、そんなわけにもいかなくてな。話聞いてないか?新しく入った広域指導員なんだが……」
「なにぃ?じゃああんたが新しい広域指導員だっていうのか?そんな貧弱そうな体で?弱そうだな」
「確かに高畑センセに比べるとずいぶん弱そうアルネ」

うう……弱い弱い言うなよぅ……。確かにまともに鍛えたことなかったけどさ。そんなにボロクソ言わなくてもいいじゃないか……。
先ほどまでの高揚感はどこへやら。俺のハートは言葉責めに弱いらしい。畜生。

「くっ、弱い弱い言うんじゃない!俺が来たからにはこのいざこざ止めさせてもらうからな!」
「へっ!止められてたまるかってんだ!こちとら古菲に用があるんだよ!おい、お前らあいつを抑えてろ」
「おうっ!」

いかにも小物臭いセリフを吐いて一人体格が良いのをこちらに寄越してきた。やっぱりこういうことになるのね……。
こちらをにやにや見ながら近づいてくる。あー完全に油断しているなありゃ。
俺はナックルを構えて前を見据える。殴りかかってくるみたいだ。けど、刀子先生に比べたら非常にスローモーな動きに見える。
さて……恥ずかしいけどやるしかないか。

「うおりゃー!」
「飛葉翻歩!」

すべるように前方に移動して背後を取る。殴りかかってきた奴には消えた様に見えているだろう。
飛葉翻歩……基本は回避技だが、相手の背後を取って攻撃の起点にしたりも出来る。
俺がTOEでファラを使う時に良く使っていた技だ。お気に入りの技の一つでもある。こういう補助的な役割を持つ技が非常に好みであるのが理由の一つだが、氷の大晶霊セルシウスが使っていた技というのも俺がこの技を好んで使っていた理由である。大晶霊の中でもセルシウスが一番のお気に入りだったからな。初めて戦闘したときセルシウスが近接技を使ってきた時は驚いたものだ。
驚いている所悪いが、手早く済ませますよ。

「飛燕連脚!」

後ろを向いている奴に空中へ向って三連続の回し蹴り。まとめて体が空中へ浮き上がる。おいおい、初期の技でも凄い威力だな……。
殴りかかって来た奴を大きく吹っ飛ばしてしまった。動かない所をみると気絶しているのだろう。
集団の方に向き直ると、皆ポカーンとした顔でこちらを見ている。弱いと思っていた男が体格差のある奴を蹴り飛ばしたのである。それも空中へ。そりゃ驚くわな。

「嘘だろ……?おい!皆先にこっちだ!」
「今の動き見切れなかったアル……あのお兄サン出来るアルネ」

仲間がやられたのを見て残っていた奴等が一斉に掛かって来た。ちょっと人数が多いな……今度は強いの一発いってみますか!

「もういっちょ飛葉翻歩!」

相手全員の後ろを取る。そしてそこからの……

「前に出るからっ!……獅子戦吼!」

二度の掌底を当てた後に両手から獅子の形をした気の放出。まとめてぶっ飛ばしてしまった。地上技→強打技の流れ。ちなみに飛葉翻歩→獅子戦吼はセルシウス戦でよく使われた記憶がある。難易度がハード以上だと獅吼爆砕陣まで使ってくるしな。
うわぁ……調子に乗ってやってしまったけど大丈夫か……?っとなんとか生きているみたいだ。
さて、残っているのは……

「お兄サン強いアル。見たことがない技ばかり使っていたみたいだし、流石広域指導員なだけはアルネ。一つワタシとお手合わせ願うアル!」

一番厄介なのが残っていた。流石バトルマニア。有無を言わさず向ってくるとは。せっかち過ぎやしないか?

「おっとそこまでだ」
「高畑センセ……来てたアルか。邪魔しないで欲しいアル!」
「いやいやそういうわけにもいかないな。戦う相手がいなくなった今、君と悠人君が戦う必要は無いからね。それに君は僕の教え子だろう?目の前で戦わせるわけにはいかないな」

向ってきた古菲の前に来て静止させる。ナイスタカミチ!いい仕事したぞ。
タカミチに止められた古菲はあからさまに不満そうな顔をしている。

「うー戦いたいアルヨ……」
「まぁ諦めてくれ。俺もまだ指導員の仕事があるもんでな。そんなにかまけている時間は無いんだ」
「……仕方ないアルネ。今日の所は諦めるとするアル。でも次に会ったときは戦ってもらうアル!」
「勘弁してくれ……」
「絶対アルヨー!」

そう言って古菲は走って何処かへ行ってしまった。流石に担任がいる前では挑むのを躊躇したようだ。だけど、今後は古菲に見つかれば事あるごとに挑んでくるだろう。
やはり原作キャラと絡むと碌なことがない。付きまとわれるのはキツイって……

「なんとかしてくれないか?担任なんだろう?」
「あはは……ちょっと難しいかな。何度も言っているんだけどね、聞く耳持ってくれないんだ」

女子生徒には甘いのだろう。まぁ仕方ない。でも糸目忍者とかその辺が出てきたら俺は泣くからな。

「気を取り直して見回りに戻ろうか。時間はまだあるしね。他のサークルも一悶着やっているかもしれない」
「へいへい。……タカミチは今まで一人で相手してきたんだろ?尊敬するよ」
「ははは、そんな大層なことはしてないよ。ただちょっとお仕置きしてあげただけさ。それより君の体術の方が凄いと思うけどね。僕でも捉え切れなかった技があったよ」
「あれもまぁ異世界の技ってことで納得してくれ。俺もまだ使いこなせてない部分もあるしな」
「あれでかい……君にはまだまだ引き出しがありそうだね」

一瞬タカミチの目が真剣になった気がした。ヒヤッとしたぜ。この分だとまだまだタカミチを驚かせることが出来そうだ。
俺達は次の見回りポイントに向けて歩き始めた。何も起こらないことを切に願いながら……。









~あとがき~

というわけで広域指導員初仕事と古菲との顔合わせでした。
金髪吸血鬼出るとか言って、でませんでした。すみません。
今回は日にちを掛けてしまったせいか、今までよりも長くなってしまいました。
二つに分けても良かったのですがどうしても区切ることができなくて……。
次回こそ金髪吸血鬼を出したいと思います。
ここまで見てくださってありがとうございました。
よろしければ、感想よろしくお願いします。

※加筆、修正しました。







[25165] 第7話
Name: しゅりと◆705b40f2 ID:78153ba0
Date: 2011/01/29 23:06
-エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル-

私は今麻帆良大学のキャンパス内を歩いている。というのも隣を歩く私の従者絡繰 茶々丸の整備の為に立ち寄った帰りというわけだ。
一年程前に現在のクラスメイトである超 鈴音と葉加瀬 聡美に頼んで製作してもらったロボット……つまりは機械人形だが、ドール契約を結んで仮の魂を込め当面のパートナーになってもらった。魔法もいくらか併用したので、言うなれば魔法と科学の結晶といったところか。身の回りのことを頼んでいるが存外役に立っている。
機械のことは良くわからんが、どうも最新鋭の技術とやらを使っているらしく未だに点検などが必要だそうだ。
人間の技術も進化したものだな。人間と変わらぬ姿の人形を作るとは……。
だが、あの超 鈴音とやらはどうにもキナ臭いな。最初に会ったときも何か感じたが……魔法の存在も知っているようだし一般人ではなさそうだ。まぁ私が関わることでも無いだろう。
それにしても工学部という所は非常に居心地が悪いな。普段は茶々丸の整備などには同行しないのだが、偶には良いだろうと思ってついて行ったのが裏目に出た。
まさかあんなに機械で溢れているとはな。気分が悪くなった。
魔法さえ使えれば茶々丸に頼らず何とかできるのだが……それもこれもあの馬鹿の所為だ。
登校地獄というおかしな呪いを力任せに掛けて居なくなるとは、無責任にも程がある。
おかげでこの麻帆良学園にいるのも今年で十四年になってしまった。不老不死が故の変わらない生活……同じ場所にいるというのは面倒な事この上ない。
面倒といえばじじぃに頼まれている警備員の真似事もそうだが、最近になってもう一つ仕事を頼まれたことか。
内容はある人物の監視。なにやら私の住んでいる家の近くに住まわせるので、何か変わったことがあれば連絡してほしいとのことだ。
訳ありの人物だろうが、わざわざ私に頼まなくても良いだろう。まだ直接見てはいないが、資料と顔写真を見る限りそんなに注意する必要もなさそうだ。藤咲 悠人という名も聞いたことが無い。じじいの遠い親戚らしいが、いったい何を心配しているのやら。
大学を出て近くの公園まで来た。ん?なにやら騒々しいな……。
遠目で見ると、公園の真ん中辺りでなにやらむさ苦しい男達と一人の女生徒が対峙している。ああ、またいつものやつか。
女生徒の方は同じクラスにいる古菲。そして男達は挑戦者だ。また吹っかけられたのだろう。確かに奴は一般人の中では強いからな、血の気の多い麻帆良にいれば挑んでくる奴も多いのだろう。
興味も無いので無視して帰ろうとした時。視界の端に二人の影が見えた。私は見つからないように気配を殺して近づく。
あれは……タカミチと写真の男か。そういえば今日から広域指導員になるとじじぃが言っていたな。集団から離れた場所で何か話している。
そしてポーチのような物からグローブのようなものをはめようとして苦戦している。あれが奴の獲物だろう。何とかはめることが出来たようだ。
だが、ジャージ姿の男からは気や魔力の欠片も感じない。ただの一般人だ。じじぃの奴、ついにボケ始めたか?
ジャージ姿の男は前に進み出て何か呼びかけている。止めに入ったのだろう。ふん、聞く耳持たない連中に何を言うのやら。
喋った後に青い胴着の男が何かを言って集団の中からニ、三人が飛び出してきた。煩わしいと思ったのだろうか、男を無力化するつもりなのだろう。
さて、どうするつもりだろう。あの男に何かが出来るとは思えんが……。
向っていった胴着姿の男達が走りながら腕を大きく振りかぶって殴ろうとしている、そして次の瞬間

「飛葉翻歩!」

ジャージ姿の男が何か叫んだ時にはもう男達の背後に回っていた。すり抜けた?いや単に横からスライドしただけか。だが面白い……一瞬でも私の目を誤魔化すことが出来るとはな。

「茶々丸。今のは視認出来たか?」
「いえ、気付いたときにはもう……」

ほう、茶々丸には消えた様に見えたか。ますます面白いな。

「飛燕連脚!」

また何かを叫んでジャージ姿の男は背中を向けている男に向かって三連続で蹴りを当てる。先ほどから叫んでいるのは技名か?勢いがありすぎて空中に浮かんでいるようだ。ふん、そこそこ実力はあるようだな。気も魔力も行使してないというのが引っかかるが……。
一人やられたことで全員が出てきた。さて、どうする?

「飛葉翻歩!」

先ほどと同じように地面をすべりながら向って来た相手全員の背後を取る。ふむ、残像が見えるな。瞬動や縮地に似ているが……何か違う。

「獅子戦吼!」

今度は他の技名を叫んで二度ほど掌底を当てた後に両手から大きな獅子の形をした何かを放出した。気かとも思ったが、そんな力は感じない。目視できるほど濃いものだというのに。……監視してくれというのはこの為か。確かに訳有りだな。
獅子の形をした何かに吹き飛ばされて、胴着姿の連中は気絶してしまったようだ。残っているのはあのバカだけか。……っとタカミチが止めに入ったようだ。流石に自分のクラスの奴が戦うのは見逃せないか。邪魔しなければいいものを。

「ここまでのようだな。いくぞ茶々丸」
「はい、マスター」

久々に面白いものが見れたので気分が良い。少しばかり興味が沸いた。一度直接会ってみる必要があるな……。じじぃからは会うなとは言われていない。別に構わないだろう。
私達は見つからないように気配を殺しながら、公園を後にした。










-藤咲 悠人-

現在は夜の八時過ぎ。公園での一件の後、何件かトラブルを止めて、家へ帰ってきた。明日からは一人で回って欲しいとのことだ。
今日の手ごたえからして、やはりレザーアームズ辺りの武器が、一般人にはちょうどよいだろうと思う。それ以上の武器は威力が強すぎるだろう。
麻帆良四天王辺りに絡まれたらわからないが、その時はその時だ。
今俺は夜ご飯を作っている。もちろん『グルメマスター』の称号をつけてだ。
作っているのはグラタンだ。今日服を買うついでに買っておいた食材で調理している。
下ごしらえは出来たので後は焼くだけだ。出来上がりが待ち遠しい。
オーブンにグラタンを入れて、数分ボーっとしているとピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
いったい誰だろう。タカミチか学園長辺りだろうか。でも携帯で連絡すれば済むことだし、わざわざ家に来る必要はない。
考えながら玄関まで行って、扉を開ける。
そこには俺がまったく予想していなかった人物がいた。

「こんばんは。藤咲 悠人さんですね?私は絡繰 茶々丸といいます」
「……」

思考が考えることをやめている。フリーズしましたよ。
目の前で感情を感じさせずに喋ったのは制服姿に明るい黄緑色をした髪に突き出た耳カバーをしたロボット……茶々丸だった。
驚いた。まさかここで茶々丸が来るとは。とりあえず話してみよう。

「あ、ああこれはご丁寧にどうも……。えーっと何用でこちらに?」
「はい、私のマスターであるエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル様が貴方を招待する様に申し付けられました」

来ました、来ましたよ。ここでエヴァンジェリンですか。俺がこちらの世界でもっとも接触したく無いと思っていた相手だ。ちなみに次点は超鈴音、アルビレオ・イマがいる。
まぁ住居が近くなってしまったので、会うのは避けられないと思っていたが……ちょっと早すぎる。やはり監視されていたのだろうか。
どちらにせよもう少し心の準備というものが必要だ。

「ああ、隣に住んでいる方ですよね?でも今日はちょっと都合が……」
「マスターは『断ろうとしたら首根っこを捕まえてでも連れて来い』とおっしゃいました。素直に来て頂けると嬉しいのですが」

うわぁ、もう行くのは確定になっちゃいましたか。……決まったものはしょうがない。どうやら昼に感じていた嫌な予感は公園でのことではなくてこちらのことのようだった。

「……わかった。行くよ。だが、もう三十分ほど待ってくれないか?こちらにも準備というものがあるんだ。そうだな……九時になったらそちらに出向くよ」
「現在は八時二十分……四十分後ですね、わかりました。マスターに伝えます。それでは失礼します」

そういって茶々丸は事務的に一礼して戻っていった。
今日はもう何事もなく一日を終われるはずだったのに。最後の最後でこんな大物が残っているとは……。
準備というのは単にグラタンを食べたいが為である。やっぱり焼きたてを頂かないとね。
さて、何を言われるかわからんが、どうやって乗り越えようか……。





グラタンも食べ終わって、約束の時間が近づき、俺はエヴァ邸の玄関にいる。ここまで来る足取りは非常に重かった。
ちなみにグラタンの味は格別で、やはり称号の力は凄いと再認識した。流石にホワイトソースから作るとなるとおいしさが違うな。
持ってきた物はマジカルポーチのみ、ポケットに突っ込んである。装備はフェアリィリングはそのままで、ターコイズを外してクローナシンボルをつけておいた。状態異常を全て防ぐ優れものだ。何が起こるかわからない。流石にいきなり襲い掛かってはこないだろうけど……用心に越したことはない。相手に見えないように首に掛けておいた。下手に勘ぐられるといけないから、手ぶらを装っているのだ。
意を決してチャイムを鳴らす。俺の家と同じようにピンポーンと音が響き渡った。
足音が近づいてくる。落ち着け、落ち着くんだ。大丈夫、下手なことさえしなければ命はつながるはずだ。
ドアが開く。出てきたのは茶々丸。……さすがに出迎えてはくれないか。

「ようこそおいでくださいました。奥でマスターがお持ちです」
「お邪魔しまーす……」

茶々丸に促されて中へ入る、俺の方の家と違って靴は脱がないで入るらしい。ちょっと違和感がある。……ご対面といきましょうか。

「貴様が藤咲 悠人だな。私はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル……『闇の福音』と言えばわかるか?」
「噂は聞いているよ。貴方が真祖の吸血鬼だな」
「ああ、そうだ。『悪の魔法使い』だよ。それにしても、私を知りながら四十分も待たせるとは……中々いい度胸をしているじゃないか?ん?」

こ、怖いぃぃぃぃ!?リビングの椅子に座っている金髪吸血鬼。見た目はお人形さんみたいで可愛らしいが、浮かべた笑みは獰猛だ。根っからのドSだな本当に。

「こちらへどうぞ」

茶々丸が椅子を引いてくれた。喉を一回鳴らしてエヴァの対面に座る。テーブルの上には紅茶が用意されていた。いい香りだ。
俺が黙っていると、それを恐怖と受け取ったのか、再び話しかけてくる。

「今日貴様を呼んだのは夕方のことでな。貴様がどうやってあの動きをしていたのか興味が沸いたのだ」

調子に乗って技を使ってしまったのが裏目に出てしまったようだ。ていうか見てたのかよ。

「……学園長から頼まれたのか?」
「ほう、良くわかったな。バカではないということか。今日見かけたのは偶然だったのだがな。お前があの男達相手に使った技……六百年前後生きてきたがあのような技は見たことも聞いたこともない。それも魔力も気も使わずにだ。瞬動や縮地とも違う一瞬の移動……この茶々丸でさえ動きを見切れなかった。一体貴様何者だ?」

なるほど、怪しんだのは気も魔力も使わずにあれだけの動きをしたという点か。だが、こちらとしてもTPがエネルギーなので説明することが出来ない。正直に話したところで鼻で笑われるだろう。
こちらを見る目は余裕そのもの。さて、どう答えたら良いものか。

「……その問いには答えられないな」
「その様子だと何かカラクリがあるようだな。いいだろう、答えられないというなら実力行使もやむなしなんだが……痛いのは嫌だろう?」

顔に邪悪さが増す。汗が一筋顔の端を伝っていくのがわかる。少し心を落ち着けようと紅茶を飲んで一息つく。一瞬エヴァが反応した気がしたが、気のせいだろう。
このプレッシャー……流石に六百年近く生きてきたキャリアは伊達じゃないということか。このままだと洗いざらい喋る羽目になってしまう。それは避けたい。情報をばらせばますます悪い方向になっていくのが目に見えている。
どうしたらよいか……致し方ないが、ここは俺の持つ原作知識という情報を利用させてもらおう。

「確かに痛いのは嫌だな。だが、こちらとしても教えるわけにはいかないのでね。……ここは一つ取引といこうじゃないか」
「は?この状況で取引だと?貴様ふざけているのか?貴様はただ私に教えれば良いんだ。それに何を取引するというんだ。バカバカしい」
「いいのか?俺は貴方に対してもっとも有効なカードを持っているぞ?……たとえば登校地獄の呪いを掛けた男の現在について、なんてどうだ?」
「なっ!」

エヴァは素っ頓狂な声を上げて顔を驚愕に変える。流石にナギのことを言われたらうろたえるだろうと思って話してみたが、やはり効果は抜群だったようだ。

「貴方が登校地獄の呪いで十四年間麻帆良に閉じ込められているのは知っている。そして魔法が使えないこともな。ナギ・スプリングフィールド……『千の呪文の男』が掛けた滅茶苦茶な呪文が貴方をこの地に縛りつけている」
「き、貴様っ、御託はいい!話せ!何だ、何を知っている!」

先ほどの体制は逆転し、今度はこちらがいかにも何か知ってますという余裕の笑みを浮かべてみる。
だが、俺は別にエヴァを苛めたいわけじゃない。静かに暮らしたいだけなのだ。命の危険なんて真っ平御免だ。

「教えてもいいが、条件がある。だから取引と言ったんだ」
「……言ってみろ」

慌てふためいたのは一瞬。直ぐに冷静さを取り戻したようだ。そんなに上手くはいかないか。

「俺について詮索しないこと。お気づきの通り訳有りなもんでな。あまり調べられたくないんだよ」
「ふん、わかったよ。貴様については詮索しないようにしよう。……あのじじぃと親戚だというのは嘘か」
「ああ、そうだよ。麻帆良にいさせてもらう代わりに広域指導員をやっているんだ」
「あのじじぃめ……面倒なことばかり私に預けるとは。いったいどこからやって来たんだ貴様」
「だから詮索はしないでってば。『千の呪文の男』のこと知りたくないのか?」
「知りたいに決まっているだろう!あいつは死んだんじゃないのか!」
「約束は守れよ。結果から言うと……『千の呪文の男』は生きている」
「何!……そうか、生きているのか」

ナギが生きているというだけでも嬉しいようだ。こちらとしてはなるべく原作知識を使わずに乗り越えたかったのだが……。こうなってしまっては仕方ない。エヴァに取り入って敵対されないようにしよう。
ニヤニヤと口元をあげるエヴァ。正直気持ち悪いです。

「それで?今奴はどこにいる?」
「知らん」
「は?」
「だから知らんって。だけど生きているのは確実だ。保障する」
「何だそれはー!どこにいるかわからなければ意味が無いではないか!」
「まぁそういうなよ。今まで死んでいると思ってたんだろ?」
「う……それはそうだが。しかしなぜだ?なぜ奴が死んでいないと言い切れる」
「それも詮索はなしということで。だが、必ず生きている。こちらには独自の情報源があるんでな。ま、その内わかるよ」
「く……癪に障るが今は信じよう。嘘は言っていないようだしな」

そうだった、エヴァはある程度心を読むことが出来るんだった。あまり余計なことを考えすぎるのはやめたほうがよいだろう。

「ああ、あと一つ。今日話したことは学園長達には伝えないようにな」
「わかったわかった。話さないでおいてやる」
「まぁまぁそんなに睨まないで。せっかくお隣さんなんだから仲良くしようぜ?」
「……ふん、いいだろう。貴様、まだ何かを隠しているな?」
「ギクッ!……おいおい話してあげますよ」
「本当ならここで自白させるくらいに痛めつけてやってもいいんだがな……なんだか貴様は得体が知れないよ。久しぶりだ、こんな感覚は」
「そりゃどうも」

紅茶をぐいっと飲み干して席を立つ。やれやれ。ちょっと話過ぎたかもしれないな。

「それじゃあ失礼するよ。紅茶ご馳走さん。次はこちらがなにかご馳走しよう」
「ああ、それではな」

エヴァにひらひらと手を振って、エヴァ邸から出る。最後になにか悪寒を感じた。疑念たっぷりってわけですか。
一歩外に出てみると、夜の風が気持ちよい。なんせ背中が汗ばんでいるのだ。あーあ緊張した。
出来れば二度と行きたくはないが、そういうわけにもいかないんだろうなぁ。
本当に失敗した。普通に技使わずに男達を倒せば、こんなことにはならなかったというのに。軽率な行動だった。
ナギの情報を与えてしまったので、とりあえずは大丈夫だろうが、エヴァはこちらがまだなにか隠していることに気付いているようだしな……いずれ他の情報も話さなくてはならないかもしれない。
情報を与えたのは性急だったか……。なんなら技の方を見せたほうが容易かったかもしれない。まぁ話してしまったものは仕方ない。これからのことを考えるとしよう。
そういえばエヴァは俺のことを得たいの知れない奴だと言っていたな。TPは感じることが出来ないはずなんだが……。六百年も生きていると感覚も鋭敏になるということか。
流石は真祖の吸血鬼。いくらこちらがチート能力を持っていたとしても油断はできないか……。十七分割ぐらいすれば死ぬのかなぁ。魔眼は無いけど。
考えても頭は詰まるばかり。あまり深く考えないようにしよう。
大丈夫。まだ平和な生活は維持できるはずだ。
自分にそう言い聞かせて、俺は自分の家へと戻っていった。










~あとがき~

というわけでエヴァンジェリンとの初対面でした。
かなり強引に押し進めてしまったので、おかしなところがたくさんあるかも……
そして主人公の口調が安定しない……
素直にエヴァと戦えばよかったかもしれませんね。
それは後々にはいると思います。
今回はかなり短めに。つなぎの様な感じです。
次回は他の魔法関係者とのお仕事になると思います。
それでは次回もよろしくお願いします。

※申し訳ありませんが私事につき執筆が滞っています


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