むかし、むかし、そのむかし、あるふかい森の中に、うたをうたうのが大好きな少女がいました。
少女のうたはとってもきれいで、かぞくはそれをきくのが毎日のたのしみです。
ふしぎなことに、少女のうたをきくときずはいやし、心はおだやかになり、さらに森も元気になるのです。
そのおかげで少女は森のだいこくばしらです。
ある日、七つの人が森でいきだおれになりました。
その人たちは虫のいきなので、少女は美しいうたで彼らをたすけました。
元気になった七人の一人がなのりでて、なんと、彼は近くのくにの王子様です。
彼らは大きなさいなんにあって、今はそのさいなんのひなん解決方法さがしのたびをしています。
「私たち以外にはもっと大勢の人が苦しんでいます。あなたのうたは、きっと彼らを救えます。どうか私たちを助けてください」っと王子様は少女にねがいました。
少女はかぞくの世話をしなければならないから、断りました。しかし、少女のかぞくがこのことを知ると、自分たちのしんぱいはいらないから、あなたの力でもっとたくさんな人をたすけなさいと言いました。
少女はいろいろ考えた後、王子様たちといっしょに行くと決めました。
そして、かぞくに見送られて、少女は王子様たちのくにへむかいました。
少女を連れて国にもどった王子様は、彼女をある高い塔につれてきました。
「この塔の中で歌うと国のどこでも伝えるのです。さあ、これからはここで私たちのために、歌を歌ってください」っと王子様はいいました。
その日から、国は災難から開放されました。人々は毎日元気いっぱいで、国は何の苦痛もないらくえんとなりました。
国から離れた大地には、もうひとつの国がありました。それは魔族の国です。
魔族には魔王というえらい者がいて、彼は人々を苦しめるわるいものです。
彼は人々をさらに苦しめるために、少女を奪うようにと、戦争を起こししました。そのとき王になった王子様は少女が奪われないために、軍を引いて立ち向かいました。
しかし、魔王は強かったのです。王様の軍は次から次へと簡単に破られて、最後、魔王は少女の前に至りました。
少女の目に映った魔王の顔は、恐ろしくて醜かったです。でも、彼女にはわかる、それは優しさを忘れた者の顔です。
少女はそんな魔王に向かって、歌を歌いました。優しさを思い出すための暖かい歌です。
だが、悪さをし過ぎた魔王にとって、その歌はあまりにも痛かったんです。苦しむの魔王は少女の歌を拒むばかりでした。
それでも、少女は諦めなかった。
そして、一条の涙が魔王の目からこぼれた――そう、少女の思いは硬くに凍った魔王の心に伝わったのです。
でも、少女は最後に魔王の涙を拭くと、「よかった」と呟いて、動かなくなりました……魔王の心を取り戻すためには、そのぐらいの対価が必要だったのです。
それから、魔王はどこかへ消え、戦争も魔王の失踪のおかげで、あっという間に終わりました。平和は再び大地に戻ったのです。
そして、皆は奇跡を起こした少女を称えるようにこう呼びました――
『歌姫』