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[24943] (ネタ)Muv-Luv Alternative Tiga(Muv-Luv ×ウルトラマンティガ)
Name: オメガ◆b1f32675 ID:6fa76ed0
Date: 2010/12/26 10:40
  この作品は、マブラブオルタネイティブとウルトラマンティガのクロスオーバーの作品です。

 本当は予告のみで連載予定はなかったんですが、何とか時間の都合がついたことが理由で本編を書かせていただきました。

 まだまだ未熟者ですが、楽しんで読んでいただければ幸いです。



[24943] Episode 1
Name: オメガ◆b1f32675 ID:ae66f944
Date: 2010/12/27 13:48
 それは




 





絶望の闇に包まれた世界で






 


 


光の力を手にして




 






 闇と戦った一人の人間の物語



 


 





 「・・・・ん・・・・ここは・・・・・」

 白銀武が目を覚ますと、そこは一面に闇が広がっていた。

 「あれ・・・俺、何でこんなところに・・・・」

 白銀武は今日の一日を思い出す。 


 確か、いつものように純夏が起こしに来て、それで目が覚めたら隣に変な女が居て、そして学校に行ったらその女と双子の姉ともう一人の女の子が転校してきて、そしてなんか皆を見ていると懐かしくなってきて・・・・・。


 そこまで思い出したとき、武の脳裏にフラッシュバックのようにとある光景が蘇った。




 それは、凄まじい閃光に包まれる一機のロボットの姿




 「・・・・・ぁっ・・・」



 そしてそのロボットに乗っていたパイロットの名前は・・・。

 

 「め・・・・いや・・・・・」

 


それをきっかけに武は次々と思い出していった。




 BETA達が侵略する世界に飛ばされたこと。


 







その世界で出会った自分の友人達にそっくりな人物たちと共にBETAと戦ったこと。









・・・そして最後の桜花作戦で仲間たちを失ったことを。









 「・・・そうだ、思い出した・・・」

 武はそう呟いてうつむいた。今、武の居る場所は上も下も前も後ろも真っ黒な闇に塗り潰されている。その為うつむいて下を見ても、そこには目の前と同じような真っ黒な風景が広がっているだけであった。

 「俺は・・・あの戦いの後・・・あの世界から飛ばされて・・・・元の世界に戻ったはずじゃあ・・・」

 しかし、武の目の前に広がるのは暗闇に包まれた漆黒の空間のみ。間違いなく自分の元々いた世界ではない。ということは・・・・。

 「また、別の世界に来ちまったって事か・・・」

 武は何の感慨もなくそう呟いた。地面に座り込んで目を上に向けても、漆黒の空が広がるのみである。

 「でも、いいか。世界は何とか救えたんだし」

 武は自分に言い聞かせるように呟いた、が、その言葉はどこか空しく聞こえた。
 
 と、突如武の頬に涙が流れた。

 「はは・・・・、何泣いてるんだ?俺・・・。あの世界を、救えたんだぞ?喜ぶ、べきだろ・・・・」

 そう自分に言い聞かせても、涙は止まることはない。そしてその涙に比例するかのように、武の心の中から、徐々にある感情が湧き上がってきた。



 悲しみと


 
 贖罪の感情が。



 「う・・・・ああああ・・・・・」



 武は、ついに膝を折って泣き崩れた。



 彼は、確かに世界を救った。



 しかし、その為に多くの人々を犠牲にした。



 「委員長・・・・彩峰・・・・・たま・・・・・・美琴・・・・・まりもちゃん・・・・・冥夜・・・・・純夏・・・・・」

 武の口から、死んでいった仲間達の名前が零れ落ちる。


 そのたびに、彼の心には、段々と後悔の念が膨らんで入った。




 自分が未来を変えようとしたから彼女達は死ぬことになったのではないか・・・・?

 自分があの世界に行かなければ彼女達は死なずに済んだのではないか・・・?

 自分が居たから・・・。自分が居たせいで・・・・。




 「あああああああああああ~~~~~~!!!!!」




 そう思い至った武はあらん限りに絶叫を上げる。

 そして地面に跪くかのように膝を折り、喉が裂けんばかりに泣き叫んだ。




なにが世界を救った、だ!!!なにが多くの人々を救えた、だ!!!




 結局自分の大切なものは守れなかったじゃないか!!!!




 誰よりも生きていて欲しい人達が救えなかったじゃないか!!!!




 結局、何のために過去を遡った!!!



 
何のためにあの地獄に行った!!!




 さらに絶望を深めただけじゃないか!!!




 武は、絶叫を上げながら泣き続ける。死んでいった人達に贖罪するかのように・・・。




 「・・・力が、無いから・・・・」

 武の口からそのような言葉が零れた。


 
 そうだ、力が無いから・・・。力が無いから彼女たちを犠牲にした・・・。



 ただ、過去を遡るだけじゃだめなんだ・・・・、力が、皆を守れる力が無きゃ、駄目なんだ・・・。



 「力が・・・欲しい・・・・」



 何時の間にか武の口からそのような言葉が出てきた。




 と、其の時




 『・・・力が欲しいか?』




 暗い闇のどこからか声が聞こえた。

 「!?だ、誰だ!!」

 突如聞こえた声に武は弾かれたように辺りを見回す。

 しかし、そこにはただ闇が広がるばかりであった。

 だが、その闇の中から、再び声が聞こえる。

 『そのようなことはどうでもいい。もう一度聞くぞ。



 力が、欲しいか?白銀武』

 

 その声の言葉にしばらく言葉を失っていた武は、しばらくすると返答を返した。

 

 「ああ、欲しいな」

 

 『何故、そう望む・・・』

 

 「俺の・・・、大好きな人達を、・・・守れなかったからだ・・・・、力が無かったせいで・・・」

 

 そう言って武は再び俯いて肩を震わせる。声は、しばらくの間沈黙していたが、やがて武に再び語りかけ始めた。

 

 『もし、力を手に入れたら、何をしたい?』

 

 その質問に武は迷いなく言い切った。

 

 「もう一度あの世界で・・・純夏を、冥夜を、いいや、BETAとの戦いで死んでいった仲間達を救いたい!それだけだ!!」

 

 武の返答を聞いた声はなおも問う。



 『その為に、再びあの地獄を味わう覚悟は、あるか?』



 「・・・ある」



 『力を手に入れた代償を支払う覚悟は、あるか?』



 「・・・・ある!」

 

 武が全ての問いに答えると、声はしばらく沈黙の後、再び口を開いた。


 

 『お前の覚悟は分かった。ならば、お前に与えよう、戦うための力を。そして行くが良い。お前が仲間を失ったあの世界へ』


 


 声が終わると同時に辺り一面がまぶしい光を放った。


 「うっ!?」


 突然の閃光に武は目を押さえるが、やがて光に慣れてきたのでゆっくりと目を開いた。



 と、そこには、巨大な人型の石像が三体立っていた。



 「なっ!?こ、これは!?」



 その石像を見た武は驚きの声を上げた。なぜならその石像の形は、武のよく知っているものだったからである。



 『恐れるな、白銀武』



 武が驚いていると、再びあの声が響いた。



 『この巨人こそお前の求める力を与える存在。さあ、この巨人の前で自身の願いを告げよ。心からの望みを言うがいい』



 声に促された武は、少々躊躇っていたが、やがて意を決して三体の巨人像の前に立った。

 三体の巨人像は、まるでまだ生きているかのようで、今にも動き出しそうであった。

 武は巨人像に向かって、自身の望みを告げ始めた。

 「・・・俺は、前に住んでいた世界から、BETA達が人類達を襲っている世界に、飛ばされた。最初は、自分でも何がなんだか分からなかった・・・」

 「でも、そこで元の世界にいた皆と同じ姿をした人達と共に付き合い、戦っていくうちに、考えるようになったんだ。この世界を、皆を守りたいって・・・・」



  武の脳裏には、仲間達と過ごした思い出が走馬灯のように駆け巡っていた。

 

 「・・・最初の世界では、オルタネイティブ5を止められずに、結局、人類は地球を放棄してしまって、地球に残された俺達はBETAに敗北した。再び過去に遡れたときは少しだけ嬉しかったよ。これで未来を変えられる、地球を救えるって。実際『桜花作戦』は成功、一時的だけど人類は救われた。でも・・・・」

 

 武の瞳から、再び涙が零れ落ちた。

 

 「でも、その代わり俺の仲間達は・・・!皆、死んだ・・・!結局BETAに勝ったといっても、人類の寿命は30年延びたに過ぎない・・・・!!その、三十年の為に、皆は・・・!」

 

 武は涙を流しながら独白した。その目は、涙を流し続けたせいで赤く腫れ上がっている。

 

 「・・・俺は、無力だった・・・!仲間が死んでいくのをただただ見ているしか出来なかった!!俺は、力が欲しい・・・!今度こそ、仲間を、世界を守りぬけるだけの力が!!」

 

 武が叫ぶと、突然武の体が光り輝き、中央の巨人像に吸い込まれていった。

 そして、残り二つの巨人像も、光となって中央の巨人像と一体となった。

 『へ!?ちょっ!な、なにが起こって・・・』

 『白銀武、お前の願いは聞き届けられた。お前は今、光の力を手に入れたのだ』

 『光の力・・・!なら、これは、やっぱり・・・』

 突然の出来事に武は戸惑っていたが、声の言葉に何か確信をしたようであった。

 すると、再び目の前から凄まじい閃光が放たれた。

 『さあ、ゆくがいい白銀武よ、あの世界の、お前の愛した者達の未来を変えるために』

 『へ!?ぬわあああああああああああ!!!』

 三体の巨人像と融合した武は、その光の中に再び吸い込まれたいった。

 





[24943] Episode 2
Name: オメガ◆b1f32675 ID:6fa76ed0
Date: 2010/12/27 13:48
 「う、う~ん・・・・」



 いつの間にか気を失っていた武は、ゆっくりと目を開けて周囲を見回した。

 そこは、どこかのマンションの屋上であった。起き上がった武は、屋上の上から周囲の風景を見回してみた。

 


 

 そこは、かつて自分が始めて現れた町、柊町であった。ただ、前の世界と違うのは、かつて自分が来たときほど荒涼としていないこと、そしてあちこちの建物から火の手が上がっていること、そして、はるか彼方に巨大なドーム状の建造物が存在することだ。



 「・・・ここは、一体・・・」

 『気が付いたか、白銀武』

 武が呆然と町を眺めていると、突如としてあの暗闇の空間で聞いた声が聞こえた。

 「!お、おい!一体ここはどこなんだ!?本当に俺が前に行った世界なのか!?」

 『間違いはない、この世界はかつてお前が行った世界だ。少々時間を遡らせているがな』

 「時間を・・・、遡らせた?」

 『ああ、今は1999年6月5日、明星作戦開始の2ヶ月前だ。そして、遠くに見えるあの建造物は、横浜ハイヴだ』

 「あれが・・・横浜ハイヴ・・・・」

 遠くに存在する巨大な建造物を眺めながら、武は手を強く握り締めた。

 そして声はさらに続けた。

 『そしてこの世界のお前が死ぬ日でもあるな』

 「・・・!!」

 その言葉に武は弾かれたように声の聞こえた方向を向く。尤も、そこには何もない空間しか存在しないが・・・。

 『ついでにいうなら、この時期に鑑純夏は脳髄のみにされてBETAに保存されるのだが、な・・・。・・・白銀武、どうする?』

 「どうする、だと・・・?」

 武は声の聞こえた方向を見つめながら、声の問いにそう聞き返した。

 『今、横浜ハイヴに向かい、この世界のお前と鑑純夏を救出するか否か、だ・・・。お前の力を使えば横浜ハイヴを潰し、二人を救出するのは訳もないだろう。・・・だが・・・』

 「この世界に俺が来る、という事実が無くなる、だろ?」

 武の問い掛けに声は一言も返答しなかった。しかし、武はそれを肯定と受け止めた。



 
 元々武がここに来た原因は、この世界の白銀武を殺された鑑純夏が、自身を因果導体として呼び寄せたことが発端だ。
 
つまり、もしもここで白銀武と鑑純夏を救えば、白銀武がこの世界に来ることも無くなる。尤も、彼自身はこの世界に既にこうして存在しているのだが・・・。




 武はしばらくの間考えていたが、すぐに顔を上げた。その瞳には、固い決意が宿っていた。


 
 「・・・・やるに決まってるだろ!せっかく助けられる命だ!助けなくてどうするんだよ!!それに、俺は既にこうして存在しているし、問題ねえよ」

 『・・・ふっ、了解した。ならば、早速変身しろ』

 「ああ、・・・でもよ、三分間で横浜ハイヴ落とせるか?」

 『何、心配はいらん。この世界でなら三時間は変身していられるだろう』

 「さ、三時間!?随分と長いな・・・。つうかそんなに変身していてエネルギーとか大丈夫なのかよ?」

 驚いて問い返した武に対して、声は面白そうに答える。

 『ふ、問題ない。大体テレビでも三分以上戦っていたであろう?一々気にするな・・・』

 「あ~・・・まあ・・・そうだな、うん」

 声の言葉に納得すると、武は懐から光り輝く棒状の物体、スパークレンスを取り出した。

 『一応忠告だが、三時間以上戦った場合は石像に戻るからな、注意しろ』

 「分かってるっての」

 声を聞いた武は、今一度、スパークレンスに目を落とす。

 「はあ・・・まさか手に入れた力ってのがこれ、だなんてな・・・。まあ、BETA共を相手にするには、丁度いいかもな!!」

 武は再び目を前に向け、スパークレンスを空に向けて振り上げた。



 すると、スパークレンスの先端が二つに割れ、そこから凄まじい光が放たれて、武を包み込んだ。





  鑑純夏side

 「ちくしょおおおお!!こっちくんな!!純夏に近寄るんじゃねえよ!!!」

 「もう止めて!!武ちゃん!!」

 武ちゃんは私の声を無視してBETA達を追い払おうとする。でも、BETA達はそれに構わずこっちに向かってきている・・・。



 このままじゃ、このままじゃ武ちゃんは・・・・・。



 「お願い武ちゃん!!!私の事は放っておいて逃げて!!!」

 「馬鹿野郎!!そんなことできるか!!お前は、お前は俺が絶対助けてやる!!!」

 武ちゃんはそう叫んでBETAに向かって棒切れを振って応戦する。


 
 無茶だよ・・・。武ちゃん・・・。



 死んじゃうよ・・・・。



 私のことは良いから、お願いだから逃げて・・・。



 そうこうしているうちに、武ちゃんの持っていた棒切れが折れてしまった。

 それでも武ちゃんは私を守ろうとBETAに立ち塞がる。

 「くそっ!!純夏!!早く逃げろ!!」

 「いやだ!!武ちゃんが死んじゃったら嫌だ!!だから、だから早く逃げて!!」

 「わがままいってんじゃ・・・」

 と、突然私は武ちゃんに突き飛ばされた。驚いて武ちゃんに目を向けると、そこには私に背後から襲い掛かろうとしていたBETAがいた。

 「た、武ちゃん!?」

 「くそっ!!ただで食われてやるかあああああ!!!」

 私から武ちゃんに標的を変えたBETAに向かって武ちゃんは殴りかかる。



 だめ!!逃げて武ちゃん!!死んじゃうよお!!



 私はただ、叫ぶことしか出来なかった。


 

 「武ちゃああああああん!!!!!」








 
 





 其の時













 凄まじい閃光が放たれて、辺りのBETA達が蒸発して行った。

 「ぐあっ・・・な、なんだこの光!?」

 「ま、まぶしい!!」

 あまりの閃光に私達は目を押さえる。





 



『やれやれ、危うく食われるところだったな。ぎりぎりセーフ、だ』









  と、突然そんな声が聞こえたので、私と武ちゃんは目を開いた。













 そこには、まばゆく光り輝く巨人が私達を見つめていた。







 side out





 かつて,3000万年前に栄えていた古代文明に







 その守護神である光の巨人が存在した。







 しかしやがて古代文明は闇によって滅び去り







 巨人は石像となって眠りについた。







 やがて時が経ち、とある古代人の血を引くものが、巨人の光の力を引き継ぎ、人類を襲う闇と戦い抜いた。







 そして今、この世界において、白銀武は光の巨人の力を得た。







 この世界を覆う闇『BETA』と戦うために。







 その巨人の名は








 『もう大丈夫だ、武、純夏』

 「なっ!?あ、あんた俺達の名前を知っているのか!?」

 『ああ、よく知っている。二人とも、助かってよかった』
 
「あ、あなたは一体・・・」






 『俺の名前はティガ。ウルトラマンティガだ』



 二人は巨人をじっと見つめ続ける。



 不思議と二人には恐れがなかった。



 それは、その巨人の眼差しが優しそうだったから。



 『・・・と、BETA共が来たな、ちょっと行って蹴散らしてくるか』

 「な!?あ、あんた一人で大丈夫なのかよ!?」

 この世界の白銀武は若干心配そうに聞く。それはそうだ。このハイヴにいるBETAは10万を越える。その中には、この巨人並みに巨大なものもいるのだ。


 だが、巨人、ウルトラマンティガは、自身ありげに、こう返した。


 『大丈夫だ。何しろ




 俺は、ウルトラマンだからな』



[24943] Episode 3 (修正版)
Name: オメガ◆b1f32675 ID:6fa76ed0
Date: 2010/12/27 13:48
 
 ティガとなった武が、自身の背後を向くと、そこには、300体はいるであろうBETAの軍勢が迫ってきていた。確認できるだけで、大型種の突撃級が約10体、要撃級が14体、そして自身と同じ大きさの要塞級が4体、そしてその他小型、中型のBETAがひしめき合ってこちらに向かって来ていた。

『やれやれ、随分とまあ大人数で出迎えてくれたな・・・。まあ丁度いい、準備運動代わりにやってやるぜ!!』

 ティガは迫ってくる突撃級を見据えると、自身の右手から青白い光弾を、連続で三発放った。
光弾全てが命中した突撃級は木っ端微塵になり、絶命した。





ティガの攻撃の一つ、ハンドスラッシュである。


威力はティガの技の中でも弱い部類に入るが、それでも突撃級程度なら、三発で倒せるほどの威力がある。



ティガは突撃級を倒したのを確認すると、空高く飛び上がり、要塞級に飛び蹴りを喰らわせる。
ティガの体重が込められた一撃を受けた要塞級は、背後にいたBETA達を巻き込んで倒れこみ、絶命した。そして地上にティガが飛び降りると、地面が深く陥没し、足元に存在していたBETAが悉く、下敷きになった。
ティガが地面に飛び降りると、突然ティガの体が発光し、全身が赤い色に変化した。





ティガの能力の一つ、タイプチェンジ。



劇中ではゴルザ、メルバによって破壊された巨人像の能力を吸収したものだが、今回は武がティガと一体化した際、同じくティガと融合した巨人像の能力を発揮することができる。



まず一つ目が通常形態のマルチタイプ。

汎用性が高い形態で、全形態で最も多くの技を持つ。



二つ目がスカイタイプ

パワー、防御力はマルチタイプに劣るが、他のタイプを凌ぐ圧倒的なスピードを持つ青い形態。



そして現在ティガがなっている形態がパワータイプ。

スピードを犠牲にした代わりに圧倒的なパワーと防御力を得た形態である。



パワータイプとなったティガは、要塞級の尾を掴み軽々と持ち上げる。

『うお、らああああああ!!!!』

そしてその要塞級を自身の目の前に展開している光線種20体に向けて振り下ろした。

今までティガに光線を浴びせていた光線種は、要塞級の圧倒的な重量に押しつぶされて、一体残らず全滅した。ティガは再び要塞級を持ち上げるとこちらに迫ってくる突撃級目掛けて投げつけた。当然その突撃級も潰されたのはいうまでもない。

と、突如二体目の要塞級が、ティガにむけて、強酸性の溶解液を撒き散らす尾を叩き付けた。

攻撃はティガに命中した・・・・・が、

『痛くも痒くも、ねえよ!!』

逆にティガに尾をつかまれ、根元から引き千切られた。



何度も言うようだが、ティガのパワータイプは全タイプ中最大の防御力を持つ。
それでなくてもティガの体表を覆う皮膚は、数多くの怪獣や宇宙人の攻撃に耐え切れるほどの防御力を有している。とてもではないが要塞級の攻撃程度では傷一つつけることは出来ない。



『うおらあああああ!!!』

 ティガは引き千切った尾を投げ捨てると、要塞級を逆さにして、自分の背中に背負いこんだ。いきなり持ち上げられた要塞級は足をもがきながら暴れていた。

 『ウルトラ・・・』

 ティガは要塞級を掴んでいる両腕に力を込める。

 『バックブリーカアアアアアア!!!!!』

 そして背中の要塞級の間接を、逆方向にへし曲げた。
 要塞級は、その力に耐え切れず、その体は間接から真っ二つに千切れてしまった。



 ティガパワータイプの技の一つ、ウルトラバックブリーカー。

 要約して言ってしまうと、相手の背骨をその怪力でへし折る技である、が、要塞級は背骨というものが無いからなのか、それともティガの戦ってきた怪獣より脆いせいなのか、ご覧の通り真っ二つになってしまったが・・・。



 ティガは要塞級の死骸を投げ捨てると、接近してきた要撃級目掛けて、回し蹴りを叩き込む。

 並みの攻撃なら耐え切れるであろう要撃級の外骨格は、パワータイプの凄まじい一撃により粉々に砕け、体内の臓器は致命的なダメージを受けた。

 重光線級のBETAは、ティガに光線の集中砲火を浴びせるものの、要塞級の時と同じく、全くといって良いほどダメージを与えられない。



 『やれやれ、分かってないBETA共だな。本当の光線っていうのは・・・・』

 ティガは自分の両腕を一度広げると、一度頭上に上げた後、カラータイマーにかざす。すると、カラータイマーからエネルギーが、ティガの両手に集まっていく。そして、そのエネルギーが一定量に達したとき・・・。

 

 『こういうのを言うんだ!!デラシウム光流!!』



 両手から凄まじいエネルギーの砲弾が放たれた。



 その砲弾が着弾した時、すさまじい閃光と熱風が吹き荒れた。



 そしてその閃光が晴れたとき、着弾地点から半径50メートル以内に存在していた全ての重光線級は、全て蒸発しており、さらに、50メートル範囲外に存在していたBETAも、消滅こそしなかったものの、体の8割以上が完全に焼き尽くされ、絶命していた。


 
 ティガパワータイプの持つ光線技、デラシウム光流である。

 その威力は、ティガ最大の技であるゼベリオン光線には劣るものの、それでも大抵の怪獣や宇宙人を倒せるほどの威力のある技である。ましてやBETAでは、たとえ要塞級であったとしても防ぎようがなく、喰らえば確実に消滅するほどの威力がある。



 このティガの猛攻によって、残ったBETAは、要塞級二体、突撃級一体、要撃級二体、そして小型、中型のBETAをあわせて合計十体足らずになっていた。
 ここまでの損害をBETAに出すまで、一分もかかってはいなかった。




 しかし、すでに目の前に千を超えるBETAの軍勢がティガに押し寄せてきていた。



 だが、そんな状況になったとしても、武は、ウルトラマンティガは、全く恐れを抱いていなかった。



 『やれやれ、今度は随分と大人数できたもんだな・・・。なら、とっておきをくれてやるぜ!!』



 ティガはいきなりマルチタイプに戻ると、両腕を前に突き出して交差させる。そして両腕を左右に大きく開き、エネルギーを集約させ、腕をL字型に組む。







 『喰らえ!!ゼベリオン光線!!!!』







 そして、凄まじい光の奔流が放たれた。







 特殊任務部隊A-1side


 
 「くそ・・・こりゃやばいな・・・」

 戦術機、不知火のコクピット内部で、鳴海孝之は一人そう呟いた。

 
 
 実際状況はかなり最悪、と言える。



 搭乗している戦術機の脚部は破損、とてもではないが移動することは不可能。さらに言うなら周囲は無数のBETAに囲まれている。さらに味方は自分以外全滅、まさに絶体絶命というべき状況だった。

 「生きて帰るって言ったけど・・・こりゃ無理そうだな・・・」

 孝之はそう呟いて、自分の同期でもあり、自分を想ってくれている二人の女性の姿を思い浮かべた。

 「涼宮・・・、速瀬・・・、悪い・・・俺、ここまでだわ・・・・」

 孝之はゆっくりと目を閉じる。そしてそれと同時に無数のBETAが戦術機に襲い・・・・







 かかることがなかった。







 突如として放たれた凄まじい閃光が、周囲のBETAを薙ぎ払ったからである。

 「な、何い!?な、何が起こった!?」

 突然の事に孝之は度肝を抜かして叫んでいた。それはそうだ。今の今までBETAに囲まれて死ぬ寸前だったのが、突然放たれた閃光でBETAが全滅したのだから。

 「・・・い、一体何がどうなって・・・」

 孝之は混乱して周囲を見渡す。しかし、そこには、かつてBETAが存在していた・・・今は完全に消滅した大地しか目に入らなかった。

 「ま、まさか神様がBETAに天罰下した、な訳ねえよな・・・・?」

 あまりに突然の出来事に、孝之は柄にもなく、そんなことを考えてしまった。
 それほど現実離れした事が起こったのだから仕方がない。
 孝之は、混乱する頭をそのままに、視線を再び前に向ける。


















 そこには、孝之の想像をはるかに超えるものが存在した。











 ティガ(武)side


 『おいおい凄い威力だな・・・、ゼベリオン光線・・・。あっという間にBETAが消滅したぞ・・・』

 自身の放ったゼベリオン光線の威力にティガ・・・武は呆然としていた。



 ティガ最大の武器である必殺技、ゼベリオン光線。

 莫大なエネルギーを消費する代わりに撃てるティガの切り札ともいえる必殺の光線。この光線で倒せなかった怪獣はせいぜいガタノゾーア程度のもので、その気になれば、母艦級も一撃で破壊できるほどの威力がある。
 そして今回ティガは、ゼベリオン光線を左から右に薙ぎ払うように撃った為、ティガを扇形に囲むように展開していたBETAは一体残らず全滅した。


 さらに・・・。


 『ハイヴの壁までぶち破って、ハイヴの外にいるBETAまで吹き飛ばすなんて、どういう威力だよ・・・、全く・・・』

 
 ティガは呆然とハイヴの壁に大きく開けられた穴を見つめていた。



 そう、このゼベリオン光線は、ハイヴ内部だけでなく、ハイヴの壁を貫き、外に展開していたBETAまでも巻き込んだのである。その威力はもはや前の世界の荷電粒子砲を越えるんじゃないか、とティガ自身驚いていた。



 『これからはもう少し撃つのを控えるか・・・』

 『ああ、そうするべきだな』

 と、武の独り言に同調するかのように、武を再びこの世界に導いた声が、再び聞こえた。

 『お、なんだよいきなり?』

 『その光線を撃ったせいでな、お前の変身していられる時間が・・・一時間に減った』

 『なっ、なにいいいいいいいいいい!!!!????』


 
 声の言葉にティガは絶叫を上げた。まあ確かにあれだけの威力の技だから、相当なエネルギーを使うと思ったが・・・・。



 『初めて撃ったせいで威力を調整できなかったのもあるんだろうが、な。まあこれからはあまり乱発をしないことだな。あの技はハイリスクハイリターンだ』

 『ああ・・・そうすらあ・・・・』

 声の忠告に肩を落としながら、ティガは大きく溜息を吐いた。

 『ん?あそこに何やら戦術機があるな』

 『へ?あ、本当だ・・・。しかもあれ、不知火じゃねえか』

 声に指摘されてティガが指摘された方向を見ると、そこには一機の戦術機が足を破損して地面に倒れていた。しかもその戦術機の名前は不知火、かつてティガ、武が乗っていたものと同じ型である。

 『フム・・・どうやら帝国軍の兵士らしいな。白銀武、どうする?』

 『そりゃあもちろん、助けるさ、まあ生きてるかどうかは分からねえけど』

 声にそう返しながら、ティガはゆっくりと不知火に近づいていく。



 すると、いきなり不知火が傍に落ちていたブレードを握り締め、ティガに突きつけた。

 『ほう・・・どうやら生きているようだが、相当警戒されているようだな・・・』

 『みたいだな・・・。しゃーない・・・説得してみるか・・・』

 ティガは、不知火の内部にいる操縦者に、自分の思念を送り始めた。



 特殊任務部隊A-1side


 「な、何なんだ?ありゃ・・・」

 孝之はただ呆然と呟いた。

 なにしろハイヴの破れ目から出てきたものが、あまりに規格外だったからだ。

 それは、全身が光り輝く巨人であった。

 まさか新種のBETAか!?とも思ったが、その姿はあまりにもBETAとかけ離れていた。



 まずその身長だが、せいぜい要塞級程度はあるだろう。体色は銀と赤と紫、胸部には青く輝く宝石のような物質がはめ込まれており、額にも水晶のような物質が存在していた。

 その姿からは、BETAとは違い、どこか神々しい雰囲気が漂っていた。

 と、突然巨人が自身に近づいてきた。

 「なっ!?」

 孝之は、近くに落ちていたブレードを拾い、巨人に向けて突き出した。
 もっとも、このようなものは、巨人にはあまり役に立たないだろうが・・・。
 孝之がブレードを向けると、突如巨人は静止した。そしてしばらく黙ってこちらを見つめていた。


 
 『怖がらなくていい。俺はお前を襲う気は無い』

 「!?」

 突然頭に響いた声に孝之は驚愕して周囲を見回した。

 「だ、誰だ!どこにいる!!」

 『目の前だ、目の前』

 孝之が目の前を見ると、そこにはさっきの巨人がこっちを見つめていた。が、それを見て孝之ははっとした。

 「まさか・・・お前・・・俺の目の前にいる巨人か!?」

 『そのまさかだよ』

 その声の主、巨人は孝之の質問にそう答えた。孝之は、ただ呆然と巨人を見つめていた。

 「お前・・・一体何だ?・・・BETAじゃないのか?」

 『まあその質問はもっともだけど・・・はっきりいうぞ、俺はBETAじゃない。
大体BETAが同じBETAを攻撃するか?』

 巨人の言葉を聞いた孝之は驚きのあまり目を見開いた。

 「まさか・・・さっきの光線は・・・お前か?」

 『ん?ああ。ゼベリオン光線か・・・。まあ確かにそうだけどな・・・。少し威力が調整できなくてな。へたしたらあんたを巻き込んじまったかもしれなかったんだ・・・。すまない、この通りだ』

 そう言って巨人は頭を下げた。それを見て孝之はようやく警戒を解いた。
 その気になれば巨人は自分を潰すこともできるだろう。それをせずにいると言う事は、少なくともこちらに害をなす気が無いんだろう、孝之はそう結論付けた。

 「まあ、とにかく、助けてくれてありがとう、んで、一つ質問があるんだが、いいか?」

 『ん?何だ?』

 孝之は巨人に問い掛ける。

 「あんた、なんて名前なんだ?いや、まあ有るんなら教えてもらえないかな、て・・・」

 孝之は、ちょっと失礼だったか、と考えながら、そう質問した。
 孝之の質問に、巨人はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。

 『おれはティガ、ウルトラマンティガだ』

 「そうか、俺は鳴海孝之、よろしく頼むな」

 そう自己紹介をして、孝之は巨人、ウルトラマンティガに笑顔を向けた。ティガは孝之の自己紹介を聞いた後、周囲を見回した。

 『ところで、あんたなんでこんな危険な所にいるんだ?』

 「ああ・・・俺達の部隊は横浜ハイヴへの侵入とBETAの殲滅を命じられたんだけど、俺達の部隊は俺だけ残して、皆・・・」

 孝之の言葉を聞いたティガはただ沈黙していた。

 『・・・そうか、すまないな、もっと早く助けにこられなくて』

 「いいさ、あんたが気に病むことじゃない」

 巨人の言葉を聞いた孝之は慌ててティガに言った。ティガの言葉が、どことなく悲しげであったから・・・。

 『そうか、ところでいつまでもこんなところにいれないだろ?俺が帝国軍の駐屯地まで送ってやるよ』

 「えっ?いいのかよ?」

 『なに、ものはついでだ。一応ハイヴ内のBETAは掃除したけど、まだいないとも限らないしな』

 「あ、あんた、本当に凄いな・・・」

 ティガの言葉を聞きながら、孝之はそう呟いた。なにしろ帝国軍が何度も侵攻し続けても落とせなかったハイヴを、ティガはたった一人で、しかもこの短時間で落としたのだ。
驚くなというのがおかしい。

 『っと、その前にハイヴ内に二人生存者がいたんだ。その子達も連れてくるから少し待っててもらえるか?』

 「ん?ああ、こっちは別にかまわないけど・・・」

 『なら待っててくれ。すぐ戻る』

 そう言い残してティガはハイヴの内部に戻っていった。その姿を見送りながら孝之は感慨深げに呟いた。

 「ウルトラマンティガ、か・・・・」








帝国軍駐屯地 司令室side

 「な、なんなの、あの巨人は・・・」

 「・・・・・・」

 司令室のモニター前で、神宮寺まりもは驚愕の表情を浮かべながら、そう呟いた。

 一方隣にいる香月夕呼は、ただ沈黙したまま、画面の巨人の放つ光線が、BETAを一掃していくのをじっと見つめていた。

 「たった一撃で、ハイヴの内部だけじゃなく外部のBETAまで一掃する光線を放つなんて・・・、なにがどうなって・・・「・・・くっ・・・」・・・夕呼?」

 圧倒的な力でBETAを殲滅していく巨人の姿に釘付けになっていたまりもは、突如声を上げた親友が気になり、目を向けた。






 そこでまりもが見たものは






 顔に満面の歓喜の笑みを浮かべた香月夕呼の姿だった。

 「くくくくくくくくくくくく、ははははははははははははははははははは!!!!あ~~ははははははっはははははははははははははは!!!!!」

 まりもが見ているのを知ってか知らずか夕呼はまるで狂ったかのように笑い出す。
 ただ画面上の巨人が、BETAを次々と殲滅していく姿を見つめながら。

 「ちょ、ちょっと夕呼!!?」

 「はははははははっはは・・・・・ああまりも、どうしたの?」

 まりもが呼びかけてようやく笑うのを止めた夕呼は、未だに歓喜の笑みが張り付いた表情でまりもを見つめる。そんな自分の親友の姿にまりもは若干、いやかなり引いていた。

 「ど、どうしたって・・・、あなたがいきなり笑い出すから心配になったのよ!またおかしくなったんじゃないかって」

 「失礼ね~、私はおかしくなんか無いわよ。ただ今ちょっと最高にハイな気分になってただけよ!!」

 「・・・なによそれ」

 まりもは夕呼の突飛な言動にげんなりしながら溜息をつく。尤も、彼女の突飛な言動は今に始まったことではないのだが・・・。

 「それにしても・・・いいわ、あの巨人」

 「いいって、何が?」

 夕呼は、質問してくるまりもに対して、「分からない?」と言って続ける。

 「まずあの巨人は確実にBETAと敵対しているわ!大体敵対していないのならわざわざBETA共に攻撃を仕掛けるはずがないからね!!そして地表に展開していた4万以上のBETAを一撃で薙ぎ払うあの光線・・・、その光線を発するだけの膨大なエネルギーをあの巨人が内包しているということだわ!!ふふふふふ・・・・興味深いわ・・・・!!!」

 「いや・・・だから・・・何?」

 夕呼の捲くし立てる言葉にさらにげんなりしながら、まりもは続きを促す。それに対して夕呼は眼を半分狂喜で輝かせながら続きを述べる。

 「ふふふふふ・・・・すなわち、あの巨人とコンタクトを取れれば、人類滅亡のスケジュールは大きく書き換わるわ!!うまくいけば、地表上の全てのBETAを殲滅できる可能性もあるのよ!!!」

 「・・・で、どうやってコンタクトとるのよ?」

 「くっくっく・・・そんなことはこれからじっくり理論を積み重ねて研究していけばいい話よ!!・・・と、その前に、まりも、基地の衛士達に、あの巨人に攻撃しないよう伝えておいて」

 「あ~、はいはい、分かったわよ」

 まりもは、さっさと自分の研究室に戻っていってしまう夕呼に向けて、返事を返した。・・・聞こえているかどうか不明だが。

 「それにしても・・・・」

 まりもが再び画面に眼を向けると、巨人がハイヴからでて不知火に近づいていくところだった。

 「一体、何者なのかしらね・・・この巨人は・・・」

 誰も居ない司令室に、まりもの声が響いた。



[24943] Episode 4
Name: オメガ◆b1f32675 ID:6fa76ed0
Date: 2010/12/26 10:39
 ティガがハイヴの内部に戻ると、そこには武と純夏がもともと居た場所で待っていた。

 『悪い悪い、少し遅くなった・・・て、どうしたんだよ、ぼ~っとした顔して』

 ティガは、目の前で呆然とした表情で自分を見つめている武と純夏に声をかけた。

 ティガの声にはっとなった二人は、慌ててティガに返事を返す。

 「あ、ああ、あんたがBETAを次々とぶっ倒していったのに驚いて、さ・・・」

 「特にあの光線凄かったよね、武ちゃん!!ハイヴの外側まで吹き飛ばしちゃったから!!」

 武と純夏の言葉にティガは表情では分からないが、苦笑していた。
 確かに目の前であんなものを見せられれば、誰だって驚く、いや、驚くだけではすまないだろう。

 『まあいいか・・・。それよりも二人共、そろそろここを脱出するぞ。確か横浜ハイブのすぐ傍・・・でもないけど、帝国軍の駐屯地があるはずだ。そこに送ってやるよ』

 「え!?い、いいのかよ!?」

 『ああ、丁度近くに帝国軍の兵士が居たからな。一緒に送っていけば、無碍にはされないだろうし・・・』

 「あ、ありがとうございます!でも・・・・」

 純夏は礼を言うものの、途中で言葉を切って不思議そうにティガを眺める。

 『ん?どうした?』

 「あの・・・ティガさんはなんで私と武ちゃんを助けてくれたんですか?私達の事もよく知ってたみたいですし・・・」

 純夏の質問を聞いたティガは言葉に詰まった。



 何しろまさか自分は別世界の白銀武です、などと言うわけにもいかないし、助けた理由も、君達が死ぬことを初めから知ってたからです、と答えるわけにもいかない。

 そこでティガは、適当な話をでっち上げることにした。



 『じ、実は俺は3000万年前に日本で栄えた超古代文明の守護神で、まあ、その、少しばかり予知みたいなものが使えるんだ。んで、目覚めてみたら、今、日本がBETAに侵略されてて、お前達も死にそうだって分かったから、横浜ハイブを潰して、お前達も助けようって思ったんだ』

 ティガは多少、というよりかなり苦しい言い訳をした。

 

 確かに超古代文明の守護神であるというくだりは間違っていないが、ティガはそもそも予知能力などというものは持っていないため、後半の部分は完全なでっち上げである。

 普通の状況ならこんな話は信じないだろう






・・・が、






 「すっごーい!!ねえねえ武ちゃん!!凄いねティガさんって!!」

 「おう!古代文明の守護神で予知までできて、それであんだけ強いなんて、かっこいいぜ~!!」



・・・両者とも話をすっかり信じてしまった。

 

 まあ、こんなでかい巨人が、腕から光線出してBETAを倒しまくっている時点で、かなり現実離れしているのだ。予知能力ぐらい信じてしまうだろう。



 『あ~・・・ま~・・・とりあえず帝国軍の駐屯地まで送るわ。と、いうわけで俺の掌に乗って』

 「あ、はい!!」「それじゃあ遠慮なく・・・」

 ティガに促された二人は、ティガの掌の上に乗っかった。ティガは掌を自分の肩に移動させて、二人を肩に乗せる。そしてハイヴの天井の裂け目(ティガが最初に入ってきた場所から、外に飛び出した。



 「うおあああああああ!!!???お、俺達、空飛んでるううううう!?」

 「た、た、武ちゃん!!す、すごいよ~!!もう地上からあんなに離れちゃった!!」

 『おいおい二人とも・・・はしゃぐのは結構だけど、落ちるなよ・・・?

 
 
・・・よし、これくらいの高さでいいか』

 自分の肩の上ではしゃいでいる武と純夏をたしなめながら、ハイヴの上空にでると、地上から約100メートルの地点で静止した。

 「?こんなところで止まって何をするんだ?」

 『何、ちょっと横浜ハイヴにでかい花火でも上げようと思ってな』

 「え?花火?」

 『そうだ・・・・ゼベリオン光線!!』



 二人の質問に答えると、ティガはL字に組んだ腕から再びゼベリオン光線を放った。

 その一撃はハイヴのモニュメントを一撃で吹き飛ばし、最深部の反応炉にまで達した。

 そしてゼベリオン光線の直撃を受けた反応炉は爆発炎上、ハイヴ内部を凄まじい炎で焼き尽くし、そして、ハイヴの内部で生き残っていたBETAは、一体残らず焼け死んだ。



 やがて炎は地上まで達し、空高く巨大な爆炎の柱が立った。



 『・・・ま、こんなところだな』

 「・・・す、すげえ・・・・」

 「よ、横浜ハイヴが、燃えちゃってる・・・」

 平然としているティガとは対照的に、武と純夏は、燃え盛る横浜ハイヴ・・・いや、横浜ハイヴであったものを呆然と眺め続ける。
 
 『・・・さて、そろそろ地上に降りるか』

 「あ、ああ・・・」

 「へ?あ、はい!!」

 二人の返事を聞いたティガは地上にゆっくりと降り立った。



 
鳴海孝之side

「おいおい・・・まじかよ・・・」

その頃不知火の内部で、孝之は呆然と燃え盛る横浜ハイヴを見つめていた。

そして、その横浜ハイヴを焼き尽くした光の巨人、ウルトラマンティガに視線を移す。
 
 「たった一撃で横浜ハイヴを陥落させるだなんて・・・。とんでもない威力だな・・・」

 光線ならば光線級のものを嫌というほど見てきたためよく知っていたが、ティガの光線は威力が桁違いだ。



 もしもあの光線が自分達に向けられたら・・・・。



 もしもティガが自分達が自分達の敵になったら・・・。



 孝之は一瞬そんなことを考えてしまった、が・・・・。

 「・・・はは、何考えているんだか、俺は」

 すぐにその思考を否定した。

 だいたい敵なら自分などすぐに殺されているだろう。

 それに・・・、ティガは自分を助けてくれた。

 自分の命の恩人を信じなくてどうするんだ・・・。

 そんなことを考えていると、いつの間にか目の前にティガが立っていた。
 よくよく見ると肩の上に二人の人間が乗っている。あれがハイブ内にいた生存者なのだろう。

 『待たせたな、それじゃあ行こうか』

 ティガは孝之に声をかけ、不知火を両手で持ち上げて、駐屯地に向け、歩き出した。



 帝国軍駐屯地side


 特殊部隊A-1部隊長伊隅みちるは たった今、諜報部隊から届いた報告に戦慄していた。








甲22号目標こと横浜ハイヴが、突如出現した巨大な人型生物によって陥落し、その巨大人型生物が、ここ、帝国軍駐屯地に接近中だというのだ。








 その巨大人型生物は、今現在、この駐屯地にいても視認できる距離まで接近している。




 その姿は、あらゆる地球上の生物とも、BETAからもかけ離れた、どこか神々しい姿だった。

 しかし、たとえ見た目が違ったとしても、新種のBETAである可能性も否定できないのだ。ここは素直に迎撃体制をとるべきである。




 

・ ・・だが、司令からの命令は、『攻撃禁止、そして待機』であった。






 目の前にBETAの可能性もある生物が迫ってきているのに、なぜ待機なのか。みちるは疑問を隠せなかった。
 確かにあの巨人は横浜ハイヴを殲滅した。しかし、だからといって味方であるという保障はどこにも無いのだ。 
 みちるは歯噛みをしながら、前方に見える巨人を睨み付ける。



 そしてついに巨人は駐屯地まであと100メートルの地点にまで達した。


 
 と、突如巨人は動きを止め、自分の手に持っていたものを地面に下ろす。



 「!?あ、あれは・・・」


 
 それは脚部が大破してはいるものの、間違いなく帝国軍の戦術機、不知火だった。


 そして不知火のコクピットが開き、内部から何者かが出てきた。

 「!あれは・・・」

 その人物は自身と同じA-1隊員、鳴海孝之であった。

 孝之の部隊は、横浜ハイヴでの任務で、連絡が途絶え、本部では全員戦死、という結論に達していた。

 その孝之が生きていた・・・・。この事実にみちるはただ呆然とするしかなかった。
 
 巨人は続いて自分の右肩に左手を近づける。
 よく見ると、巨人の右肩には二人の男女が乗っていた。
 その男女が巨人の掌に乗ると、巨人はゆっくりと左手を地面に降ろした。巨人の左手が完全に地面に降りると、男女は巨人の掌から飛び降りた。

 「ありがとう、ティガ。おかげで命拾いしたよ」

 孝之は巨人にそう礼を言った。隣に居た男女も口々にありがとうと礼を言っている。
 それに対して巨人は黙ってただ頷くだけだった。その後巨人は両手を頭上に伸ばして大きくジャンプし、空の彼方へと飛び去っていった。

 「・・・いっちゃったね・・・、武ちゃん」

 「ああ、でもまたきっと会えるって!!」

 「そうだな・・・。その時は、一緒に戦いたいもんだな・・・」

 二人の男女と孝之は、巨人が飛び去った空を眺めながら、そう呟いていた。

 みちるはゆっくりと孝之に近づき、話しかけた。

 「鳴海」

 「うおっ!?ぶ、部隊長!!な、鳴海孝之、ただいま帰還いたしましたあ!!!」

 孝之は突然話しかけられて驚いたのか、話しかけられた相手が部隊長であるみちるだったからなのか、急いで敬礼をする。隣の男女も同じように敬礼する。
 みちるは苦笑しながらそれを制した。

 「そうびくびくするな。そこの二人もいちいち敬礼しなくてもいいぞ」

 「「「は、はい!!」」」

 「鳴海、貴様はそのまま敬礼していろ」

 「な、なんでっすか~~~!!!??」

 「口答えするな。それより貴様に質問がある」

 みちるはそのまま敬礼している孝之を睨み付けながら質問を始めた。

 「この二人は何者だ?」

 「は、はい!!横浜ハイヴで発見された生存者です!!」

 「貴様が発見したのではないのだろう。救助したのはあの巨人だろ?」

 「は、はい!!」

 みちるの言葉に孝之は素直に答える。みちるはさらに質問を続けた。

 「二つ目の質問だ。貴様、あの戦場でどうやって助かった?他の兵士はどうした?」

 「はっ・・・、他の兵士は次々とBETAに殺されて、俺も不知火の脚部が大破してBETAに食われそうになったんですけど、ティガ、俺達を助けてくれたあの巨人が、光線でBETAを一掃して助けてくれたのです」

 「ふむ・・・ティガというのか、あの巨人は・・・、他の二人は?」

 「あ、はい!俺達もBETAに殺されそうになったのを、ティガに助けられたんです!」

 「私達、BETAに連れてこられて殺されそうになったんですけど、そこに突然ティガさんがやってきて、BETAをやっつけてくれたんです!!」

 三人の証言を聞いたみちるは顎に手を当てて考え始めた。



 この二人を助けたということはあの巨人は人間の味方なのか?



 それとも何か目的があって助けたのか?



 そもそもあの巨人は何者なのだ?



 みちるは色々と考えてみたが、何も答えは出なかった。

 「・・・まあいい。その二人はこの駐屯地で保護しよう。私が上に伝えておく。・・・おい」

 「はっ!部隊長!」

 「その二人を軍のテントに案内して休ませてやれ。あと、念のために医者も呼んでおけ」

 「はっ!」

 みちるの命令を受けた兵士は、武と純夏を軍のテントに連れて行った。みちるはしばらくその姿を黙って見送っていた。

 「鳴海・・・」

 「は、はい・・・」

 「貴様はどう思う?あの巨人、ティガの事を・・・」

 その問いを聞いた孝之はあまりに突然の質問だったためかしばらく沈黙していたが、やがて口を開いた。

 「少なくとも、俺達を、あの二人を助けてくれたので、人類にとって敵ではないと思われます。それに、俺はあいつと話しもしました。あいつは、決してBETAと同類ではありません!」

 「そうか・・・」

 孝之の返事を聞いたみちるはただティガの飛び去った空をじっと見つめていた。



 

 そういえば、部下を助けてもらった礼も言ってなかったな・・・・。





 次に会うときがあったら、言っておきたいものだな・・・・。






 「ところで部隊長、例の明星作戦はどうなるのでしょうか?」

 「ん?ああ、先程司令部から中止の指令が届いた。攻略目標の横浜ハイヴが壊滅したんだ。やる理由も無いだろ」

 「まあそうなんですけどね。でも、今回使う予定だったG弾って、どんなものなんですかね?」

 「さあな、なんでも原爆、水爆を超える威力らしいが・・・。そんなものが使われなくて、良かったというべきか・・・」

 「本当にティガ様様、ですね」

 「馬鹿者!!」

 「うごはぁ!!!」


 
 武side

 「はあ・・・はあ・・・やばかった、あと少しで石像になるところだった・・・」

 帝国軍駐屯地の近くで武は肩を上下しながら息を整えていた。

 『全く、あのゼベリオン光線を使用したとき、お前の変身していられる時間は既に3分程度しかなかったのだ。だいたいハイヴ破壊するのならばランバルト光弾で充分だろうが・・・』

 「いや~、ラストだから度派手に決めようと・・・」

 『阿呆』

 声の叱責に武は頭を掻いた。

 「ところでこの変身って連続で出来るのか?」

 『無理に決まっているだろうが。少なくとも一日は変身できん。無くしたエネルギーの充填期間だ』

 「なるほど・・・」

 声の言葉に武は納得して頷く。ということは、緊急時に変身解除、そしてまた変身は不可能ということか・・・・。まあ仕方が無いか・・・。

 『ところで、これからどうする?今現在住む所も、寝る所も、ついでに食料もあるまい?』

 「それについては大丈夫だ、また帝国軍にお世話になるつもりだから」

 『そうか・・・また、あそこに行くつもりか・・・』

 「ああ、少なくとも現在の状況がよく分かるし、それに、衣食住の心配も無いしな」

 『そうか・・・まあよかろう・・・』

 武は駐屯地に向けて歩き始めたが、突如足を止めて声の聞こえた方向に振り返る。

 「そういえばあんたの名前って何ていうんだ?いつまでも名前知らないと不便だから教えてくれないか?」

 『名前か・・・・、ふむ、確かに知らねば不便であろうしな・・・・』

 しばらく声は考えているようだったがやがて武に返事をする。






 『では名乗るとしようか。私の名前はノア、人間は私を、ウルトラマンノア、とも言うな』






 
 



[24943] Episode 5
Name: オメガ◆b1f32675 ID:6fa76ed0
Date: 2010/12/25 12:34


 「ウルトラマン・・・ノア?」

 武は自分に話しかける姿無き声の主の名前を聞いて、呆然となった。




 
 その声が名乗った名前、ウルトラマンノアという名前について。





 武は幼いころからウルトラマンシリーズの大ファンであり、初代から、最近の作品、ガイアまで全てのウルトラマンは網羅しているつもりだ。

 だが、『ノア』などというウルトラマンは聞いた事も無い。

 武が困惑しているのが分かったのか、声、ウルトラマンノアは語りだす。

 『知らないのも無理は無い。お前達の時代には私は登場していないのだからな』

 「登場・・・していない?」

 『うむ。私はお前たちが住んでいる世界では登場すらしていないウルトラマンだ。お前が知らなくても不思議は無い』

 ノアの言葉を聞いた武は納得した。





 なるほど、確かに番組に登場していないのなら知らなくても仕方が無い。





 だいたいウルトラマンといっても番組に出てくるものばかりでは無いだろう。





 それ以外にも、もっと多くのウルトラマンが存在するかもしれない。





 このウルトラマンノアも、その一人なんだろう。

 

 「なるほど、話は大体分かった。でだ、質問があるけど、いいか、ノア」

 『む?何だ、武よ』

 ノアの返事が聞こえると、武は質問を始めた。

 「あんたがくれたこの力、ティガの力についてなんだけど、俺には古代人の遺伝子は無いはずなのになんでティガに変身できたんだ?」

 武が一番聞きたかったのはそれだった。



 そもそもティガになる条件は一つ。



 変身する人間の体内に古代人の遺伝子があるか、である。



 劇中では古代人の末裔であったマドカ・ダイゴとマサキ・ケイゴがそれぞれティガとイーヴィルティガに変身している。



 武には古代人の血は流れていない、というか流れているはずは無いのである。それなのに、なぜティガに変身できるのか。武はそれが聞きたかったのである。



 武の言葉を聞いたノアはしばらく沈黙していたが、やがて口を開いた。

 『ふむ・・・では武よ、一つ聞くが古代人の遺伝子と、現在の人間の遺伝子は、どういう違いがあるのだ?』

 「え!?いや・・・それは・・・」

 『分かるまい。そもそも古代人の血はほとんどが今の人間に混ざっている。それが他の者より強く出てるか出てないかの違いはあるだろうが・・・』

 「それって、つまり・・・」

 『そうだ、古代人の遺伝子は普通の人間と大して変わらん。お前でも充分変身は可能なのだ。劇中では、たまたま古代人の遺伝子が強く出ている連中が変身していただけだ』



 武は唖然とした。



 それじゃあその気になればティガには誰でもなれるって事か?



 劇中ではたまたまダイゴとマサキだけ変身していただけで?



 そういやラストに世界中の子供達がティガと合体してグリッターになってたっけ・・・。



 武は頭を抱えて項垂れた。

 『まあこの世界ではお前しか変身できるものはいないがな。この世界にはそもそも巨人の石像は存在しないし、ティガそのものもお前と一体化している。他の人間がティガになることは無いだろう』

 「ああ・・・そう、よく分かったよ」

 疑問が解決した武は頭を上げた。



 つまり、もしスパークレンスが奪われたとしても、イーヴィルティガは出現しないということだ。それを知って少しだけ安心した。



 「次の質問だ。あんたはどうやって俺をこの世界に送ったんだ?」

 『ふむ、私にはあらゆる並列世界を移動する能力がある。その能力を使ってお前をまず、ティガの並列世界へ、そしてお前が以前存在した世界の過去、つまり今の時期だが、に送ったということだ』

 「ティガの並列世界?」

 武は再び困惑した。並列世界とはどういうことなのだろうか?送られたのはTV本編の世界とは違うのだろうか?

 『あの世界はティガの本編、お前達の知っているティガの世界だが、それとは別の可能性を歩んだ世界だ。あの世界では怪獣や邪神は現れず、闇の巨人も復活していない。その為ティガの像は蘇ることなく存在していた。そこで私は力を欲しがっていたお前にあのティガの力を与えた、ということだ』

 「なるほどな・・・。大体分かったよ」

 つまり武が送られた世界はティガ本編の平行世界、ということだ。確かに武の世界にもいくつもの並列世界が存在するのだから、ティガの世界にも存在しているのだろう。

 「んで・・・、最後の質問だけど、あんたはどうして俺に力をくれたんだ?そして何で俺をサポートしてくれるんだ?」

 その質問をしたとき、ノアは黙りこくった。まるで、話すべきか話さざるべきか悩んでいるかのように。やがてノアは口を開いた。

 『・・・私は、はるか古の時代から、幾多の宇宙と並列世界を見守ってきた。そして、多くの世界の人間達を見てきた。そして、私は、何度か彼らと共に戦ったことで人間達の限り無い可能性を知り、出来る限り彼等の力になろう、そう考えた』

 ノアは一旦そこで話を切り、再び話を続ける。

 『それから私は、多くの世界を巡り、人間達が多くの困難と、強大な闇に立ち向かっていく姿を見てきた。そして時には私自身も力を貸すこともあった。まあほとんどの場合は必要なかったのだがな。
 しかし、並列世界の中には、人間達の力だけでは、どうしようもない強大な闇が存在していることを知った。それが・・・』

 「BETA、か・・・!!」

 武の言葉にノアは「そうだ」と肯定した。

 『私はこの世界に来て、BETA達を殲滅しようと考えた。しかし、何故かこの世界には、私の肉体そのものを移動させることが出来なかった。何故かは知らないがね』

 話を進める毎に段々と、ノアの言葉に悲しみが混じってきた。
 
『私は、ただ見続けるしかなかった・・・。BETAに人類が蹂躙されていくさまを・・・。
それが何よりも辛かった・・・。しかし、そんな世界に、お前は現れた』

 武は、姿の見えないノアの視線を感じながら黙って話を聞き続けた。

 『白銀武、お前は幾多の苦しみを味わい、多くの愛する人達を失っても、決して歩みを止めなかった。どんなにくじけそうになっても、残酷な現実を見せ付けられても、お前は立ち上がり、戦い続けた。そして、その果てに、オリジナルハイブを陥落させ、多くの人々を救ったのだ・・・。その姿が、私の知っている人間に、よく似ていた』

 「・・・そんなご大層なものじゃねえよ。それに、救ったといっても、寿命をたった30年、延ばしたに過ぎないんだ・・・・」

 武は苦しげに、そう呟いた。多くの人々を救った、人類の滅びを止めた、そんなものは何一つ、彼の心を満たすことは無かった。



 その為に失ったものが、余りにも多すぎたから・・・。



 『分かっている。そして、お前が仲間を失ったことに苦悩し続けたのも知っている。だからこそ、私はお前の力になろうと決めた。幸い、精神体となって、お前を別の並列世界、もしくは並列世界の過去に送ることは可能だったからな。私はお前にティガの力を与えて、この世界の歴史そのものを変えよう、そう考えたわけだ』

 そしてノアは話を終えた。武は、ノアの話を聞き終えて、ただ、沈黙していた。

 『すまない、また、このような地獄に送ってしまったことを・・・』

 「いいさ、これも、俺が望んだことだから。俺は歴史を変える。そして、今度こそ冥夜、委員長、彩峰、たま、美琴、いや、この世界で死んでいった俺の仲間を救ってみせる!
それが、俺の誓いだからさ」

 武はそう言ってノアの声の聞こえた方向に笑顔を向けた。
 
 『ふっ、やはりお前は私の知っている人間に良く似ているな』

 「ん?一体誰なんだ?その人」

 『いずれ語る日も来るだろう。それより今はこれからの事、だ』

 ノアの言葉に少々不満げだった武も、確かにこのまま此処にいるわけにはいかないと考えたのか、話をそれで終わりにした。

 「そうだな、それじゃあまずは夕呼先生に会いに行くかね」

 『その前に提案だがな、白銀武よ』

 「ん?何だ、ノア」

 突然のノアの声に武は踏み出しかけた足を止める。

 『今回は偽名を名乗ったらどうだ?』

 「偽名?何でまた?」

 『この世界では白銀武が生きている。もしお前が白銀武を名乗れば、この世界に白銀武が二人いる、などという事態に成りかねない。今更顔は変えられないが、とりあえず名前だけは変えておいたほうがいいと思ってな』

 確かにノアの言うとおりだ。
 もしも自分が此処で白銀武、とでも名乗ってしまったら、逆にややこしいことになりかねない。名前さえ違えば、たまたま顔が同じ別人とでも誤魔化せる。
 もっとも夕呼辺りは気付きそうだが・・・。そもそも夕呼には自分の素性を話す予定だ。
 だから問題は無いのだが・・・。

 「そうだな・・・。まあ、それは後々考えるとするかね・・・」

 武はそう呟いて、駐屯地への道を歩き出した。








  そこから先は前の世界と同じ通り、駐屯地の門の前まで行き、兵士達に怪しまれていると香月夕呼がやってきて、武がオルタネイティブ4について話すと即、夕呼の私室に連れて行かれた。

 違うのは、此処が横浜基地でない為、部屋の様相が異なることくらいだった。

 「さて・・・、それじゃあ話してもらおうかしら?・・・あんたは何者?なぜオルタネイティブ4について知っているの?」

 夕呼の質問を聞いた武は話し始めた。





 初めてこの世界に来て、結局オルタネイティブ5が発動し、人類は敗北した事。





 二回目のループで再びこの世界に始めてきた時間に戻され、オルタネイティブ4を完遂するために奔走し、幾多の犠牲を払いつつも、ついにオリジナルハイブの殲滅に成功、人類を勝利に導いたこと。





 夕呼は武の話を、黙って聞いていた。そして、話が終わると、大きくため息を吐いた。

 「・・・随分とまあ、壮大なホラ、と言いたいところだけど、あんたの言っていることを聞く限り、どうやら本当みたいね・・・」

 「信じてくれますか?」

 「完全には信じたわけじゃあないわよ。ひょっとしたらよく出来た嘘かもしれない。まあその時は・・・」

 夕呼は言葉を切ると、引き出しから護身用の拳銃を取り出し、武の額に突きつけた。

 「これで、処理するだけだけどね」

 「分かりました。その時にはそれで撃つなり軍法会議にかけるなり、お好きなように」

 武の返事を聞いた夕呼は黙って武を見つめていたが、やがてふっ、と笑みを浮かべて拳銃を引き出しにしまった。

 「ま、いいわ。今日の私はかなり機嫌がいいから。・・・んで、あんたにもう一つ質問があるんだけど」

 夕呼は武を見つめながら、突然真剣な口調で武に質問する。

 「横浜ハイブを破壊したあの巨人、一体何者なのかしら?あんたとどんな関係があるのか、教えてもらえるかしら?」

 武は言葉に詰まった。



 ここで夕呼にティガについて話すべきか、話さざるべきか。


 
 できることなら、今はティガについて周りに伏せておきたい。



 もしも周囲に自分がティガだと知れたら、どういう影響があるか分からない。



 せめて、オリジナルハイブ攻略の際まで秘密にしておきたいのだが・・・。



 「一つ、お願いがあります・・・」

 「ん?何よ」

 「俺が今から話すことは、出来れば周囲に秘密にしておいて貰えませんか?」

 武の言葉を聞いた夕呼は、武をじっと見ながらしばらく考えているようだったが

 「いいわよ、約束しましょう。まあ、内容にもよるけどね」

 そう言って了承した。

 それを聞いた武は話し始めた。




 
 横浜ハイブを破壊した巨人がウルトラマンティガと言うことを。





 そのティガが自分の変身した姿だということを。





 ただ、どうやって変身する能力を得たかは、分からないとだけ伝えておいた。



 「なんというか、まあ、突拍子も無いのもここまで来ると凄まじいわね・・・」

 夕呼はそう呟いてため息を吐いた。まあ幾ら夕呼でも、いきなりこのような話は信じられないだろう。と、いうより、信じろというのが難しい。

 「それで、あんたはまたこの世界に戻ってきて、何がしたいの?そのティガに変身できる能力まで手に入れて」

 武は、夕呼の質問を聞いて、即答した。



 「BETAをこの地上から絶滅させる。一匹残らず殺し尽す。それだけだ」



 武の言葉に夕呼はしばらくあっけにとられていた。が





 「く、くく、くくくくくくくく、あ~はっはははははははははははははは!!!」





 突然高笑いをし始めた。その様子に今度は武があっけにとられた。

 「くくくくく・・・BETAを・・・・一匹残らず・・・殺し尽す・・・・ね・・・くくくく・・・あんた、中々面白いことをいうじゃない」

 「・・・冗談じゃないんですけどね、これ」

 「分かってるわよ、冗談でないことぐらい。だからこそ面白いんじゃない」

 そう言って夕呼は武に向かってにっこりと笑みを浮かべた。

 「いいわ、あんたを帝国軍の訓練兵に編入させてあげるわよ。私の推薦で」

 「!あ、ありが・・・「ただし、その前に試験を受けてもらうわよ」・・・は?」

 武は突然の夕呼の言葉にきょとんとした。



 試験?一体何をやらせる気だ?



 この人のことだからろくでも無いことじゃないだろうな・・・。



 「そうびくびくしなくてもいいわよ。あんたなら楽勝な課題よ」

 夕呼はにこやかな笑みを浮かべながら、武に試験課題を告げた。







 「白銀、ちょっと佐渡島のハイブを殲滅してきて頂戴♪」



[24943] Episode 6
Name: オメガ◆b1f32675 ID:6fa76ed0
Date: 2010/12/27 13:49

 

 佐渡島ハイヴ



 1998年、日本帝国に初めて建設を許してしまったBETAの居城。



 現在、帝国軍にはこのハイヴを攻略できるほどの力は無く、このハイヴの攻略は、帝国軍が果たせずにいる夢であり、悲願であった。



 その佐渡島ハイヴが、今、赤い炎に包まれていた。



 その原因は空から現れた赤い巨人。



 巨人は空から凄まじい速さでハイヴのモニュメントを破壊し、内部へ侵入、その後、紫と赤の混じった姿に変わると同時にL字に組んだ腕から莫大なエネルギーを内包した光線を発射、ハイヴ最深部の反応炉を爆発させた。



 反応炉の爆発はハイヴの内部全体におよび、ハイヴ内の全てのBETAは、一体残らず焼死した。当然その巨人も丸焼きになったと思われた。



 だが




 モニュメントから立ち上る炎の中、巨人はゆっくりとハイヴ上空に舞い上がる。

 その体には傷一つついていない。

 それも当然だ。その巨人の皮膚は、BETAをも凌ぐ強大な怪獣、宇宙人の攻撃に耐え切れるほどの強度を有しているのだ。炎ごときで傷が付くはずがない。

 巨人の乳白色に光る目は、ゆっくりと目の前の残存BETAを見回す。その眼は、この地球を食い尽くそうとする害虫共への怒りと憎悪で燃え上がっているようであった。

 一方のBETAも、自身のねぐらを破壊した巨人を、攻撃対象と認識した。

 そして、地表に展開していた3万を超えるBETAが、巨人に一斉に襲い掛かった。

 その襲い掛かってくるBETAの群れを巨人は、ウルトラマンティガは眺めつつ、右腕を前に突き出し、ハンドスラッシュをBETAの大群に連続で叩き込んだ。

 一発の威力はティガの技でも弱いとはいえ、それでも小型、中型のBETAを5、6体まとめて吹き飛ばす威力は持っている。

 しかしながら、BETAの軍勢はティガの攻撃にひるむことなく、ティガの体に張り付き、その体を食い千切ろうとする。
 一方のティガは、その場から一歩も動こうとせず、ただ、ハンドスラッシュを撃ち続けるだけであった。BETAが自分に張り付いても、張り付くに任せるのみであった。

 やがてティガの全身が小型、中型のBETAに覆われて、その姿すらも見れなくなった。

 ティガはBETAに食い尽くされた、普通ならそう考えるであろう。

 



 が、次の瞬間




 
 ティガの体表を覆っていた大量のBETAが、いきなり発火し、そのまま消し炭になったのである。
 そして、その下からは、全く傷の無いティガが全身を赤熱化させて現れた。

 ティガは全身を赤熱化させたまま、近くにいた要塞級に組み付いた。



 その瞬間、要塞級はティガもろとも大爆発を起こした。



 その爆発に巻き込まれ、小型、中型のBETAはもちろんのこと、突撃級、要撃級といったBETAもまとめて吹き飛んだ。

 

 そして爆炎の中から、平然とした様子のティガが現れた。



 ティガマルチタイプの技の一つ、ウルトラヒートハッグ

 本来は敵に組み付いた状態で全身を赤熱化させ、敵を爆発させる技だが、ティガ(武)は、わざとBETAを全身に纏わり付かせてから赤熱化することで、より多くのBETAを巻き込んで焼き尽くしたのだ。
 無論、使うエネルギーも半端ないのだが・・・。

 ティガは額の『ティガクリスタル』の前で腕を交差させた後、左右に腕を開く。

 その瞬間、ティガの体色が、全身青に変わった。

 ティガの形態で素早さに優れる『スカイタイプ』

 BETAの大型種、中型種には素早いものが存在せず、ほとんどの場合『マルチタイプ』『パワータイプ』のみで充分な場合が多い。しかし、小型種がほとんどの集団戦の場合、この形態は真価を発揮する。

 スカイタイプとなったティガは、右腕から冷凍光線を、遠距離で光線を撃ち続ける光線級に放った。と、突如光線は爆発し、光線級BETAに絶対零度に近い冷気が降り注いだ。
その冷気を浴びた瞬間、光線級は一体残らず凍結した。



 ティガスカイタイプの技の一つ ティガフリーザー

 凄まじい冷気で敵を凍らせ、動きを封じるので主に使われており、キリエロイド、ウェポナイザー等の戦いで用いられた。
 その威力は絶大で、これを使うためにスカイタイプになったこともある。



 ティガは光線級が全滅したことを確認すると、目の前に迫ってくる要塞級に向き直る。

 ティガは胸に腕を交差させた後、左右に開いて頭上に上げる。やがて両腕を腰に置いてエネルギーを集約、右腕を要塞級の前に突き出した。

 『ランバルト、光弾!』

 と、右腕からエネルギーの矢が放たれ、要塞級を貫いた。

 要塞級はそのままガラスのように四散して果てた。



 ティガスカイタイプの必殺技、『ランバルト光弾』

威力は他のタイプの必殺技に劣るものの、それでも要塞級一体は倒せるほどの破壊力は持つ。そして他の必殺技よりエネルギーの消費が少なく、連射も出来るのが特徴である。



ティガはランバルト光弾を連射しながら、大型種BETAを一掃していった。




 そして一時間後




 ティガの圧倒的な力により佐渡島中のBETAは一掃され、佐渡島ハイヴは完全に陥落した。




 『ふう・・・やれやれだ』


 ティガは佐渡島ハイヴを陥落させたことに喜ぶことも無く、ただ地面に座り込んで、空に浮かぶ月を眺めていた。

 『どうした?佐渡島ハイヴを陥落させたことが嬉しくないのか』

 と、突如、ノアの声が聞こえた。

 『ああ・・・、嬉しいっていうよりも、疲れたって感じだぜ、全く・・・』

 ティガ・・・白銀武はノアに向かって若干めんどくさそうに言った。



 実際武は今回かなり疲れていた。



 主に精神的な面で。



 昨日、夕呼に訓練兵になりたければ佐渡島ハイヴを潰してこいという『試験』を与えられたのはいいものの、武はエネルギーが切れているから変身できない、『試験』を一日待ってくれ、と言ったところ、夕呼は『試験』を明日にしてくれると了承してくれた。んだが・・・。

 『・・・なんで俺を牢屋にぶちこむかな・・・、全く・・・』

 そう、武は夕呼に宿泊部屋と言われて牢屋にぶち込まれたのである。一応食事は付いていたが。
 夕呼曰く、武が逃げ出さない為の処置、らしいのだが、だからといって牢屋にぶち込むことは無いだろう、と武は心の中で呟いた。

 『・・・やれやれ、牢屋に入ったウルトラマンなんて、俺くらいなもんだろうな・・・』

 『さて、それはどうかな。案外他にもいるかもしれないぞ?』

 『あ、そう・・・、はあ・・・』

 ノアの言葉を聞き流しながら、武は溜息をついた。


 そして『試験』当日の今日に、ようやく出してもらえたんだが何故かそこには社霞とかつての恩師、神宮寺まりもが一緒にいた。
 夕呼曰く、この二人も自分と同じ試験官だ、と言ってたことからどうやら二人にばらしたらしい。一瞬、夕呼にばらしたのは失敗だったのでは、と考えてしまった。

 その後、午前一時頃にで三人の前で変身して、佐渡島まで来た、という訳だ。

 『まあとりあえず何事も無く終わってよかったじゃないか。佐渡島を落としたことで此処の戦いで死ぬ運命の者は死なずに済むのだからな』

 『まあ・・・、そうだけどね・・・はあ・・・』

 武はノアの言葉を聞いて溜息を吐いた。

 
 確かに佐渡島ハイヴを陥落させたことで、此処で死ぬ多くの命を救うことは出来ただろう。伊隅みちる大尉も、反応炉ごと自爆して死ぬことは、もう無くなったはずだ。

 さらに佐渡島、横浜のBETAを全滅させたことで、後に横浜基地で起こるBETA脱走によるまりもの死、そして横浜基地襲撃事件発生の可能性も無くなった。

 自分はこの手で運命を変えた。その実感は確かに武の中にあった。だが・・・

 『でもな~、やっぱり夕呼先生に話したのは失敗だったかって・・・』

 『今更言っても仕方無いだろう。とりあえずハイヴを破壊したのなら長居は無用だ。早く駐屯地に戻るぞ』

 『分かったよ。んじゃあ、もどるかね』

 ティガはノアの言葉に返事を返すと、佐渡島を飛び立った。



香月夕呼side


 「く、くくくくくくくくくくくく、は~ははははははははははっはははははははははははははははは!!」

 帝国軍駐屯地において、夕呼はモニターに映るティガとBETAの戦闘場面を見て、狂ったように哄笑を上げていた。

 それを傍で見ていたまりもは、若干あきれたような微妙な表情をしていたが、すぐにモニターに眼を移す。

 「これが・・・白銀の・・・ティガの力・・・3万以上は存在したBETAを、一瞬で・・・」

 まりもはただ戦慄していた。



 ティガのその強大な力に



 自分達があれほど犠牲を出しても攻略出来なかった佐渡島ハイヴを一瞬で攻略した圧倒的な力に。



 そして同時に恐怖もした。



 その力が人類に向けられた時の事を。



 まりもは笑い続ける夕呼に目を向ける。

 「・・・ねえ、夕呼」

 「はははははははは・・・なによ、まりも」

 まりもが呼びかけると、夕呼はようやく哄笑をやめ、まりもに顔を向ける。まりもはため息をつきながら夕呼に質問する

 「もしもよ、もしもティガ、白銀が私達に敵対したら・・・」

 「あ~、それは無いわ、大丈夫よ」

 まりもの質問に対して夕呼はあっさりとそう返した。
 あまりにもあっさりとした返事にまりもは唖然とした。

 「大丈夫って・・・何か根拠でもあるの!?」

 「根拠ね・・・、まあしいて言うなら、あいつの執念かしら?」

 「執念?」

 そう、と夕呼は肯定すると、再び画面に目を向ける。その時には既にティガは飛び去って、あとには粉々にされた無数のBETAだった物の残骸、そして赤く燃え上がる佐渡島ハイヴが残されていた。

 それを見て、夕呼は再び笑みを浮かべる。

 いままで地上を我が物顔で蹂躙していたBETA。

 それが今やたった一つの強大な存在によって蹂躙され、殲滅されていく。

 その様を見ているだけで爽快感を感じる。



 これで全てが変わる。



 人類が滅亡するという未来そのものも。



 夕呼がその考えに至ったとき、突然ドアをノックする音が聞こえた。

 「夕呼先生、白銀です。今帰りました」

 「ああ、白銀、待ってたわよ。入りなさい」

 そしてドアが開かれた。


 白銀武side


 「さてと、え~と・・・夕呼先生の部屋は、と・・・・」

 人間の姿に戻った武は、門兵に夕呼の紹介状を見せて、駐屯地の内部に入った。

 それで現在夕呼の部屋を探しているのだが、なにしろ横浜基地とは違ってどこに夕呼の部屋があるか分からない。たまたま見かけた兵士に道を聞いて、10分後にようやく着いた。

 「夕呼先生、白銀です。今帰りました」

「ああ、白銀、待ってたわよ。入りなさい」

夕呼の了承を得た武はドアを開けて部屋に入る。そこには、いつもの余裕ありげな笑みを浮かべた夕呼、そしてどこか複雑な表情でこちらを見つめるまりもと相変わらず無表情の霞がいた。

「まずはおめでとう。あんたに課した『試験』の結果は、合格よ。あんたを練馬区の衛士養成学校に入学できるよう手配しておいてあげるわ」

夕呼はにこやかに笑いながら武にそう告げた。武は内心ほっとした。そしてまた訓練兵としての生活を行うことになるのか、と感慨に耽っていた。

「ただし、条件があるわ」

と、いきなり夕呼が意味深な笑顔でそう付け加えてくる。
武は何か嫌な予感がした。

条件?何かとんでもないことをされるんじゃないだろうな?

武の考えている事を読んだのか、夕呼はにこやかな笑顔で武に付け加える。

「そんなにびくびくしなくても大丈夫よ。あんたにぴったりの仕事をやってもらうだけだから」

「仕事?」

「そっ。私の指示した命令、まあハイヴの殲滅や侵攻中のBETAを殲滅しろっていうのがほとんどだろうけど、それをあんたにやってもらいたいのよ~」

「ちょ、ちょっと待ってよ夕呼!!そんな話私は聞いてないわよ!!」

夕呼の言葉に対して、まりもがくってかかる。夕呼はそんなまりもの態度を見ても、笑顔を崩さなかった。

「そりゃさっき考えたことだもの。言うわけ無いでしょ?」

「ふざけないでよ!!いくら彼がティガに変身できる能力を持ってたとしても、たった一人でハイヴ殲滅に行かせるなんて危険だわ!!衛士学校の教官として、反対させてもらうわよ!!」

夕呼の言葉にまりもは怒りの篭った口調で夕呼の提案に反対する。自分の教え子になるかもしれない人物を危険にさらす可能性のある任務を行わせようというのだ。反対するのも当然である。しかし、夕呼は平然としていた。

「大丈夫よ、まりもも見たでしょ?ティガが佐渡島ハイヴを殲滅する様子を、一部始終。
あそこまでの力があるんだから、他のハイヴの1個や二個、大したこと無いでしょ?」

 「それは・・・」

 夕呼の言葉を聞いたまりもは沈黙した。確かに夕呼の言うとおりだった。ティガの力を使えば大抵のハイヴを破壊することなどわけも無いだろう。だが、それでも危険にさらされる可能性もあるだろう。

 「それで、白銀はどうしたいの?」

 夕呼は武に問い掛ける、が、既に武の心は決まっていた。

 「・・・やります」

 「し、白銀!?」

 「・・・俺は、仲間が、自分の大事な人達を死なせないためにこの世界に来たんです。夕呼先生の言う『仕事』が、それに直結するのなら、やらせていただきます!!」

 武の言葉を聞いたマリモは驚いた顔で武を見つめており、夕呼は満足そうな笑みを浮かべた。

 「決まりね、あんたならそう言うと思っていたわ」

 「そうですか。ところで先生」

 「ん?何よ」

 武は夕呼に、自分が考えていた事を話した。

 「俺、この世界では名前を変えます」

 「名前?なんでよ」

 「この世界ではこの世界の白銀武が存在している。もしも白銀武が二人いたら、色々とややこしくなるから、名前を変えようと思ったんです」

 武の言葉を聞いた夕呼は納得して頷いた。

 「なるほど、分かったわ。それで、名前は既に決めてあるの?」

 「はい、俺は







 円 大吾(まどか だいご)って名乗ろうと思います」

 




[24943] episode 7
Name: オメガ◆b1f32675 ID:3ab934b3
Date: 2011/08/21 12:55
 

 とある並列世界の外側にて・・・。



 『・・・すでにハイヴが5つ落ちた、か・・・・』



 その広大な宇宙空間の中、銀色の巨人はとある一つの銀河系、並列世界を見つめていた。

 その瞳には、その並列世界に存在する地球、そこで戦う一人の青年の姿が写っていた。



 『これでまた未来が書き換わる、が・・・・、本来存在しない異物を無理矢理捻じ込ませた歪みが、そろそろ世界に影響を与え始めたようだ・・・』



 巨人の瞳に写る地球の姿、いや、並列世界全体に、大きな歪みが走る。





 それは世界に出現した異物への反発。





 そして本来有り得ない物が突然出現した事で生まれた、有り得ないはずの歴史の流れ。





 それによって現れる、幾多の異形の影・・・。



 『覚悟はしていたつもりだった、が、まさかここまでとは・・・・』



 銀色の巨人、ウルトラマンノアは、並列世界に次々と現れる歪みを、憂いに満ちた瞳で見つめていた。



 『・・・・白銀、武・・・・・』



 彼は、その世界で戦う、光を得た青年の名前を、ポツリと呟いた。



 白銀 武(円 大吾)side




 『俺は今度こそ守ってみせる、この光で・・・。それが、俺の使命だ・・・!!』




 俺の頭に声が響き渡る・・・・。




 『俺は・・・・戦う!!俺は生きる!!


 生きて、この光を繋ぐ!!!』




 どんな苦しみにも、絶望せず、希望を捨てることは無い、そんな人達の声が・・・。




 『絆・・・・・・ネクサス!!』




 誰なんだ・・・・、貴方達は、一体・・・・・。




 その瞬間、俺の視界が急に白く染まった。







 








「・・・・ん、っああああああああああ~。もう、朝か・・・・」

 目を開いた武は、窓から差し込んでくる眩しい光に、目を眇めながら、ベッドから上半身を起こして大きく伸びをした。

 ふと、横に置いてある時計を見てみると、時計の針は七時少し前、あと少しで朝礼が始まる時間だった。



 「・・・・・・・ってやっば~~~~~~~~!!!!!」



 武は絶叫を上げながらベッドの上から飛び起きると、速攻で服を着替え、顔を洗い、寝癖を整えると部屋から飛び出した。

 (くっそ~~~!!何てこった!!誰も起こしに来ないからついつい寝過ごしちまった!!ああ~、これで遅刻何回目だよ~!!)

 武は心の中で愚痴りながら廊下を走り続ける。



 

 武が『円 大吾』の名前で練馬区衛士訓練学校の訓練兵に任命されてから、もう二ヶ月になった。

 最初は横浜基地の訓練学校とは勝手が違ったために戸惑うこともあったが、前の世界で培った衛士としての経験が功を成し、すぐに順応することが出来た。

 教練についても、前の世界で嫌というほど鍛えられたため、全く苦にならなかった。むしろ前の世界に比べて楽なレベルである。

・・・が、そんな武にも一つだけどうにもならないことがあった。





 それは早起きである。

 BETAの存在しない元の世界にいた頃から、武は朝に弱かった。

 それでも元の世界では鑑 純夏が、ループする以前の世界では社 霞が武を起こしてくれたので、何とかなった。



 が、この世界では、それが無い。

 時折ノアが起こしてくれる時も有るには有るのだが、それ以外の時は大抵の場合、遅刻してしまう。お陰で何度もまりもから説教を喰らったことか・・・・。


 
そして今回も・・・・。



 「すいません!!遅れましたああああああ!!!!」



 「またか円!!!貴様これで遅刻何度目だ!!!」



 いつものお約束、である・・・。








 「全くお前という奴は・・・・、これで遅刻何度目だ!!もはや怒るを通り越して呆れてきたぞ!!」

 「・・・すいません」

 「朝起きるのがそんなにきついのなら、目覚ましをかけるなり、他の奴に起こしてもらうよう頼むなり、方法があるだろうが。もう少し早く起きれるように工夫しろ!!」

 「・・・善処します」

朝礼の後、武はまりもに呼び出され、まりもの私室において、くどくどと説教を喰らっていた。
 このように説教を受けるのは何回目なのか・・・、もはや武自身も数え切れないだろう。
 武は心の中で、今度からは絶対目覚ましをかけようと心に決めた。

 「・・・まあ今回は大目に見ておいてやろう。昨日の戦闘で疲労したのだろうからな・・・」

 「え?」

 武のきょとんとした表情を見たまりもは、じろりと武を睨みつけた。

 「知らないとでも思ったのか?貴様が昨日重慶ハイヴを殲滅した事を。夕呼と一緒にじっくりと見せてもらったぞ」

 「・・・見られてたんですか、全部」

 武は頬を掻きながら少し困った表情をした。



 衛士養成学校に入った武は、しばしばティガに変身してBETAとの戦いに出向いていた。

 一ヶ月ほど前には鉄原ハイヴを、二週間前にはブラゴエスチェンスクハイヴを、そして昨日は重慶ハイヴを殲滅し、そして時折夕呼の依頼によって侵攻中のBETAの殲滅等もやっている。

 これらの戦闘は主に夜に行われるため、武の睡眠時間はかなり削られている。これが、寝坊癖に拍車をかけているわけだ。
 無論、まりももその事は分かっているため、寝坊をしても大抵は厳重注意のみにとどめておいてくれる。そこには、教え子を危険にさらし、BETAと戦わせてしまっていることへの自責の念も含まれているのだ。

 「ハイヴをまた殲滅してくれたことに関しては感謝している。まあ、多少複雑な気持ちはあるがな・・・・。だが、少しは自分の体の事も気にかけろ!!このままだと貴様は本当に体を壊すぞ!!」

 心配そうな表情を見せるまりもに、武は少しばかり頬を緩めた。

 「心配してくれるのは嬉しいです、神宮寺教官。でも、俺はやらなくちゃならないんです・・・!もう、俺の大切な人を失わないためにも・・・・、一つでも多くハイヴを破壊しなくてはならないんです!!」

 「だが、それで貴様が体を壊したら意味が無いだろう!?」

 「大丈夫ですよ・・・。こう見えても体は鍛えていますから、多少の無理は通じます・・・」

 武は心配無いと言いたげに笑みを浮かべながら、まりもの私室のドアに向かって歩いていった。

 「お、おい、円!!」

 「失礼します、神宮寺教官」

 武は挨拶をすると、ドアを開けてまりもの部屋から出て行った。

 「円・・・・・・」

 まりもは武が出て行ったドアを、そのままじっと見つめていた。
 




 





「あっ!!大吾さ~ん!おはようございまーす!!」

 「大吾~!!どうだった?神宮寺教官?すっごく怒ってたでしょ?」

 武が食堂に入ると、そこにはすでに、御剣冥夜、榊千鶴、彩峰慧、珠瀬壬姫、鎧衣美琴の五人が席について食事をしていた。
 ちなみに彼女達はまだ衛士養成学校に今年入学したばかりである。

 この衛士養成学校は、約三年程度の養成期間で、一流の衛士を養成することを目的としている。現在の武と冥夜達は学年にするならまだ一年、いわば駆け出しと言ったところである。
 武は以前の世界で衛士としてかなりの経験を積んできた為、夕呼は、何なら三年に編入させようか、と提案したのだが、武は冥夜達かつての仲間達と一緒の一年からにしてほしいと要請した。そして今に至る、という訳だ。

 「あ~、たま、美琴、いや~、今日も絞られたぜ~」

 「当たり前よ。あんた何度言ってもその寝坊癖治んないじゃない。小言だけで済んでありがたいと思いなさい」

 おどけた調子で返す武に、千鶴は辛辣な言葉を放つ。そんないつも通りな態度の千鶴を見て、武は苦笑した。

 「全く、なんとも生真面目な事で、委員長」

 「だから何よその委員長っていうのは!!意味が分からないわよ!!」

 「ん~、だからその生真面目な所がまるで委員長だから・・・」

 「・・・・的確な表現」

 「ちょっ、彩峰さんそれどういうことよ!!!」

 「・・・・・・」

 怒り狂う千鶴を尻目に慧は黙々と箸を動かしていた。その姿が武の記憶にある彩峰の姿そのままで、武は涙ぐみそうになった。

 「大吾?どうした?」

 そんな武の様子を見て、冥夜は心配して近づいてくる。武はそれに気づくと目をこする振りをして涙をぬぐった。

 「あ、ああ!大丈夫だって。目にすこしほこりが入ったみたいで・・・」

 「そうか、しかしその寝坊癖はどうにかしたほうがよいな。私が起こしに行こうか?」

 「!?い、いやいやいい!!俺目覚まし持ってるから・・・「目覚ましがあっても起きれないのであればなおさら私が起こしに行くべきであろう。安心いたせ、私はこう見えても早起きだ」・・・ああ、はい、分かりました、お願いします」

 結局押し切られる形で冥夜に起こしてくれるようお願いする武であった。「任せるがよい!」と胸をはる冥夜だが、武にとっては冷や汗ものだ。

 何度も言うようだが彼がティガになって戦うのは主に夜中である。今の所は何とか午前二三時頃に帰還できてはいるものの、もしもBETAとの戦闘が激化、あるいはハイヴまでの距離が遠距離になれば、今までどおりの時間に帰れる保証はない。下手をすれば早朝帰宅などということもありえるわけだ。そんな時に誰もいない部屋に冥夜が入ってきたらどうなるか・・・・、まず確実に怪しまれるに決まっている。
 最悪まりもや夕呼に頼って誤魔化してもらうという手も有るには有るが、それは最終手段だ。
 とにかく今日のハイヴ殲滅はさっさと早めに終わらせよう・・・そう武は心に誓った。

 そう、今日はH18ウランバートルハイヴを攻略、殲滅を行おうという計画なのだ。決行は今夜の十一時頃、規模はブラゴエスチェンスクとそこまで変わらないはずだからそこまで困難な仕事ではない。順調に行けば一時頃には帰ってこれるはずだ。

 そう考えた武は心の中で溜息を吐いた。

 何百何千という犠牲を出さなければ攻略できなかったハイヴを、自分はまるで砂で出来た城を壊すがごとく簡単に攻略していく。今までハイヴ攻略に命をかけ、死んでいった人々に少しばかり申し訳がない気がしてきた。

 「あっ!ところでさ、皆知ってる!?」

 と、突然美琴が大きな声を上げたので五人の視線がいっせいに美琴の方を向く。

 「またウルトラマンが現れたって!!今度は重慶ハイヴを攻略したらしいよ!!」

 「またか・・・。これで五つ目だな・・・。突然現れて帝国を解放したと思ったらその後は各地のBETAやハイヴを次々と破壊していく・・・、何者なのだあの巨人は?」

 美琴の言葉に冥夜は複雑そうな顔をしていた。

 横浜ハイヴに現れた巨人、ウルトラマンティガについては、日本中、いや世界中で注目の的となっていた。

 BETAの攻撃にもびくともせず、圧倒的物量をも物ともせずBETAを殲滅、粉砕していく謎の巨人。その正体については世界中で議論の的となっている。



 彼は何処から来たのか?



 彼の目的は何なのか?



 彼とBETAとの関係は?



 今のところ明らかになっているのは、彼が少なくともBETAとは友好的な存在ではないこと、そして人類を攻撃対象と見なしていないことのみである。

 それ以外のことは全くといっていいほど分かってはいないのだ。

 「ん~、でもさ、ハイヴを破壊してBETAを倒してくれているんだからきっと悪い人(?)じゃないよ~」

 「そうですよ!きっとBETAをやっつけるために現れた正義の味方、ですよ~!!」

 「正義の味方、ねえ・・・。本当はどうなのやら・・・」

 「・・・彼の姿は意外とカッコいい・・・、かも」

 美琴と珠瀬はまるっきりヒーローに憧れる子どものような表情で、千鶴はそんな二人を少しばかり冷めた目つきで、慧は完全に的外れな事を各々話していた。

 まさかそのティガが彼女達の側で朝食を食べている寝坊遅刻常習犯だとは思いもしないだろう。
 そう考えた武は一人苦笑を浮かべていた。






 そして朝食後、いつもの通りに講義、教練に明け暮れる事となった。

 武にとってはもう以前の世界で習った事ばかりであったから、講義には簡単についていけた。むしろ逆に色々と質問をされることもある。以前は逆の立場だったのが今では成長したもんだ、と、武は心の中で苦笑していた。






 そして一日が終わり、あっという間に夜となった。

 就寝時間となって寝静まった建物の内部を、武はこっそり歩いていく。

 「・・・まるでどこぞの泥棒になったかのような気分だな・・・」

 『武・・・・、いくら君でも二日連続のハイヴ殲滅は無茶だ。今日は止めておくべきだ』

 外に向かう武に、ノアが心配そうに忠告をしてくる。

 「大丈夫だって。ウランバートルハイヴも鉄原やブラゴエスチェンスクと大差ないんだろ?ならこの状態でも充分だ」

 『それは分かっている。今の状態の君でも、充分ハイヴの殲滅は可能のはずだ。だが・・・・』

 ノアは突然口を閉じた。そんなノアに武は怪訝な表情をする。

 「どうしたんだよ?ノア」

 『ああ、この世界に少し異変が起き始めているからな。何か起こるかもしれないと思ってな』

 「異変?何だそれ?」

 『まだ分からない。だが武、気をつけるんだ。おそらくこの世界は以前の歴史からさらに離れたものとなっていくだろう。何が起きても不思議じゃないぞ』

 「は、何が起きても関係ないさ。俺は、皆を救うために戦う、それだけだ」

 そうしゃべりながら移動しているうちに、武はいつのまにやら玄関口に着いていた。武は下駄箱に置いてある靴を取り出して外に出る。



 「さて・・・、それじゃあ、いくか」



 武は懐からスパークレンスを取り出すと、空に掲げた。その瞬間、スパークレンスから眩い光が放たれ、武の姿を包み込んだ。



 やがて光が晴れると、武のいた場所には、50メートルもの背丈の巨人、ウルトラマンティガが立っていた。



 変身したティガは、両腕を頭上に上げると、空に向かって飛び立った。





 目指す目的地はウランバートルハイヴ。この星を喰らう病巣の一つ。





 だが武、ティガは予想していなかった。





 この世界に起き始めている大きな異変の事を・・・。







 同時刻、モンゴル某所

 かつて遊牧民達が駆け回ったであろうその大地は、今ではBETAに喰い尽くされて見る影もない。

 そして今も、100体程の中型BETAが大地を侵攻していた。





 



 が








 突然辺りに凄まじい地震が走り、BETAは移動を止めた。





 


その瞬間、地面が爆ぜた。







 そして爆ぜた地面の底から、巨大な何かが姿を現した。



 BETAは突如現れたそれを攻撃対象と認識し、攻撃を開始する。



 光線級は一斉に光線を照射し、突撃級はその頑丈な体で突撃する。




 が、それはそれらの攻撃に対してまったくひるむ事もなかった。



 それはBETAを睥睨すると、その巨大な尻尾を薙ぎ払った。

 その一撃で突撃級の、要撃級の巨体が宙を舞う。そして地面に叩きつけられて無残に砕け散った。

 近くにいたBETAを排除したそれは、頭部から光線級をはるかに上回る光線を放った。

 その一撃に、小型、中型全てのBETAは成すすべもなく消し飛んだ。



 『Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!』



 それは、BETAが全滅したのを見届けると、空に向かって高らかな咆哮を上げた。



 そして、それは移動を開始する。




 目指す場所は、ウランバートルハイヴ。





 あとがき


皆さん、どうもお待たせして(?)申し訳ありません!!
就職活動やら例の地震やらでまったく更新ができず、気づけば半年間ほったらかしにしてしまいました!!
・・・まあ色々な批判でへこんでいたのもあるのですが・・・。

とりあえずなんとか更新出来ました。が、次は出来るのか出来ないのか・・・。

色々批判もあるでしょうが、どうかこれからもよろしくおねがいします・・・。



[24943] Episode8
Name: オメガ◆b1f32675 ID:04a458bf
Date: 2011/08/27 06:14

 ウランバートルハイヴ



 かつてモンゴルの中心都市であった場所に建つ、巨大な禍々しきBETAの居城。

 その内部には何万ものBETAがひしめき合っており、内部に侵入してきたあらゆる戦術機を、その圧倒的物量で押しつぶしてきた、まさに難攻不落の要塞である。



 だが、それもこの夜に終わりを告げた。



 『ハアアアアアアアッ!!セヤアアアアアア!!!』



 裂帛の気合と共にパワータイプに変化していたティガは要塞級の死骸を群れるBETAに投げつけた。

 幾体かは何とか逃れられたものの、逃げ遅れた個体は尽く下敷きとなって体液、臓器を地面に撒き散らすこととなった。



 ウルトラマンティガがウランバートルハイヴに到着して約三十分程度、この短時間でハイヴのBETAの六割以上が全滅していた。


 戦法はいつもどおり、まずモニュメントを破壊してウランバートルハイヴ内部に侵入し、反応炉にゼベリオン光線を叩き込み、ハイヴ内部を爆破炎上させる。

 後はハイヴの内部と外でしぶとく生き残っているBETAを掃討するだけである。

 内部は反応炉の爆発でほとんどのBETAが焼け死んでいるため、実質掃討するのはほぼ外部のBETAのみである。

 前の世界の記憶で、佐渡島から生き延びたBETAによって、横浜基地が襲撃されたことが色濃く残っている武は、今此処で、すべてのBETAを全滅させるつもりでいた。

 もはや小型種一体も残さない。一匹残らず絶滅させる。

 その為ティガは、持ち前のタイプチェンジと技を用いて襲い来るBETAを次々と叩き潰していた。

 一方のBETAは、戦況の圧倒的不利な状況に際しても、逃走する個体は皆無だった。と、いうよりも、元々後退、逃走するという思考そのものが存在しないのかもしれないが、全てのBETAが、目の前に存在する仇敵目掛けて、無謀な突撃を繰り返していた。

 結果は言わずもがな。要撃級はその尾節、腕を引き千切られ、突撃級はその強固な外殻を叩き潰され、要塞級はランバルト光弾、デラシウム光流で吹き飛ばされるか、あるいは武器代わりに振り回され、地面に幾度となく叩き付けられた。

 光線級、重光線級も遠距離射撃で援護を行っていたが、戦術機の装甲を易々と破壊するであろう高出力光線も、ティガにはほとんど効力を見出すことができず、最終的には、体内のG元素が尽きて、弾切れを起こす個体が続出した。しかし、大量のG元素を生み出す反応炉は既にティガによって焼き尽くされ、跡形も無くなってしまっている。さらに、元々光線級、重光線級共に遠距離攻撃に特化している為か、動きがかなり鈍重である。この為ティガの攻撃から逃れることが出来ず、次々と殲滅されていった。

 戦車級、闘士級といった小型BETAに至っては、もはやただティガに踏み潰されるか、大型BETAとの戦闘での巻き添えになるかのどちらかでしかなかった。



 もはやBETAには完全に勝機は残されていなかった。彼等に残された選択はただ一つ。







 この場で全滅する事のみであった。







 『ハアアアアアアアッ!!』

 裂帛の叫びと共に放たれる閃光、ゼベリオン光線。

 それが、ウランバートルハイヴに存在していたBETA達の見た、最後の光景であった。

 








午前1時12分 ウランバートルハイヴ、陥落。







 
 
 
  
 『・・・ふう、終わったな』

 『お疲れのようだな、武』

 『ああ、さすがに二日連続でハイヴ攻略はきついな・・・』

 ティガ、武はハイヴの焼け跡で座り込みながら夜空を見上げていた。

 夜空には、幾千幾万もの星が輝いていた。
 
 この星空に輝く星の中には、どれだけの数のオリジナルハイヴがあるのだろうか。

 そして、どれだけの星が、BETAの餌食になったのだろうか。

 そして、この地球以外にも、BETAに抵抗して戦い続けている人々が存在する惑星が存在するのだろうか・・・。

 夜空を眺めながら武はそんな事を考えていた。

 『でもまだエネルギーも残っているみたいだし・・・、せっかくだからもう一つ行ってみるか・・・・?』

 『やめておいたほうがいい。確かにまだ一時間以上は変身していられるだろうが今の君は心身共に疲労している。ここは帰って体を休めたほうがいい』

 ノアの言うとおり、武の体は二日連続のハイヴでの戦闘で、相当疲労していた。このまま戦闘を続行するのは、さすがに危険であろう。

 『ん、そうだな、そろそろ眠くなってきたし、帰るか』

 武はノアの言うとおり帰還しようと、地面から立ち上がった・・・・






 が、その時







 『Gyaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!』







 突如凄まじい絶叫と共に、一筋の閃光がティガに叩き込まれた。


 『グアアアッ!?』


 突然予想しなかった攻撃に、ティガは地面に転倒する。


 『くそっ!!まだ光線級が残っていたのか!?』


 ティガは悪態をつきながら周囲を見回した。と、目の前に信じられないものが存在していた。

 『gyaaaaaaaaaaoooooooooooooooo!!!!!!』

そこには、見たことが無い巨大生物がこちらに向かって敵意の視線を向けていた。



 いや、見たことが無いというのは語弊がある。ティガ、武はその生物を見たことがあった。

 そのティガ以上の巨体、頭と首を覆う鎧のような皮膚、これら全てに見覚えがあった。

 だが、ティガは頭の中で否定する、有り得ない、なんでこいつが此処にいる?こいつはこの世界には存在しないはずだ。

 そう、この巨大生物は本来この世界には有り得ないモノ。ティガと同じ世界にのみ存在する生物。

 かつて超古代文明が栄えた時代、光の巨人達と争った『大地を揺るがす怪獣』


 その名は


 『超古代怪獣・・・・・ゴルザ・・・・?何故、何故こいつがこんなところに・・・・』


 ティガはその怪獣、ゴルザの名を呟きながら、信じられないと言いたげな表情でそいつを見つめた。その隙を、ゴルザは見逃さなかった。

 ゴルザはすかさずティガに接近すると、その頑丈な尾をティガに向かって叩き付けた。

 『グアッ!!』

 要塞級とは比較にならない威力の攻撃にティガは再び膝をつく。ゴルザはさらに、額から高出力の超音波光線を放ち、ティガに追撃をかける。

 『ガアアアアア!!』

 光線級のそれよりも高い威力の光線に、ティガは地面に倒れ伏した。光線が命中した左肩に、凄まじい激痛が走る。そして、その痛みがティガの意識を覚醒させた。

 (グッ!!ぼーっとしている場合じゃないな・・。どうやらこいつは俺狙いらしい・・・)

 ゴルザが始めて登場したのは、確か出現したティガの石像を破壊するためだった。その時は相方として古代竜メルバも存在したが・・・。

 (・・・そいつも存在するの、か・・・?・・・いや、今はこいつをどうにかしなきゃ、な・・・)

 ティガは改めてゴルザを見据えると、ファイティングポーズを取る。それを見たゴルザは、ティガ目掛けて突進を仕掛けてくる。

 『ヌウッ!!』
 
 ティガはその突進を何とか受け流し、背後に回りこむと、ゴルザの背中目掛けて跳び蹴りを叩き込む。

 『gyaaaaaaaaaaa!!!!????』

 予想もしなかった攻撃にゴルザは怯み、後ろを振り向く。

 その瞬間に、ティガはゴルザの顎をアッパーで打ち抜いた。

 『guuuuuuuuuu!!!!』

 ゴルザは怒りに満ちた目でティガを睨みつける。先ほどの一撃は効いた様子が無い。

 『グウッ!』

 ティガは急いで後退しようとするが、ゴルザは追い討ちをかけて額から再び光線を発射した。光線はティガのカラータイマー付近に命中した。

 『グアアアア!!』

 ティガは地面に倒れ伏し、そのまま動けなくなった。その体にはかなりのダメージが蓄積され、さらに今までの戦いの疲労の影響で、体が思うように動かない。

 (ぐっ、くそ・・・、もうこれまで、か・・・・)

 さすがのティガも、もう駄目かと、諦めかけた。

 体中に激痛が走り、どうやっても立ち上がるのに時間がかかる。

 その間にゴルザに追撃を喰らったら、終わりだ。

 もう此処で終わりか・・・・、そう考えた。




 その瞬間、ティガの脳裏に、ある光景がよぎった。




 それは閃光に飲み込まれていく武御雷。




 そして冥夜の最後の姿。




 次に脳裏をよぎったのは自分の腕の中で動かなくなった、鑑純夏。




 BETAに切り刻まれ、最後には人間ですらなくなった、愛しい少女・・・。




 さらに脳裏に次々とよぎる千鶴、慧、壬姫、美琴の最後の素顔、そして戦場で散っていった英霊達の姿。




 そして




 『諦めるな!!』




 誰かの声が、頭で響き渡った。



 (・・・・そうだ)



 ティガは、武は痛む体に鞭打って立ち上がる。

 自分は何の為にこの世界に戻ってきた?

 自分は何の為にウルトラマンになった?

 全ては大事な人達を救うため・・・・。



 この世界に光を取り戻すためだろうがっ!!!

 (こんな所で、立ち止まってられるか・・・・・)

 立ち上がったティガ、武は再びゴルザを見据える。その瞳には何よりも強い決意が宿っていた。

 (・・・・諦めてたまるか・・・)

 武は心の中で叫ぶ。

 (こんな所で、諦めてたまるか!!!)

 ティガは額の前で腕を交差し、パワータイプにチェンジする。そしてゴルザ目掛けてハンドスラッシュを打ち込んだ。

 『gyaaaaaaaaaaa!!!』

 ゴルザは連続して放たれる光弾に悲鳴を上げる。さすがにBETA程のダメージを与えるには至らない、が、これで隙は作れる。

 『オオオオオオオオオオ!!』

 ティガは一気にゴルザに接近すると、その腹部に電撃を纏った拳を叩き込む。

 強烈な一撃にゴルザは後ろに後退する。その隙を逃さず、ティガはゴルザの横っ腹に回し蹴りを打ち込んだ。蹴りが命中した瞬間、命中した箇所がスパークし、爆発を起こす。

 『gaaaaaaaaaaaaa!!!!』

 その激痛にゴルザは絶叫を上げ、横倒しに倒れる。それを見たティガは後ろにバックステップで下がり、両手をカラータイマーの近くに翳し、エネルギーを溜める。そして、溜めたエネルギーが掌の中で球体になったのを確認するとその光球、デラシウム光流をゴルザめがけて放った。

 

・・・勝った!!、その実感がティガにはあった。



 だが・・・・



 『gyooooooooooo!!!!』



 ゴルザは苦し紛れに再び超音波光線をティガ目掛けて放つ、そしてその光線はティガの傷ついた左肩に再び命中した。

 『!?グアアアアアアア!!』

 左肩の激痛から、デラシウム光流の狙いが反れ、光流はゴルザの右肩に命中して、爆発を起こした。

 『gooooooooooo!!!』

 ゴルザは痛みのあまり絶叫を上げるが、左肩の痛みから動けないティガを見て、チャンスと感じたのか、地面を掘って逃走を開始する。

 『!?ま、待て!!』

 ティガは痛む体に鞭打って追おうとするが、地面に潜る速度は、ゴルザのほうが速かった。
 ティガがようやくゴルザの掘った穴の近くに着いたときには、既にゴルザは影も形も無くなっていた。

 『く、くそ!逃がすか・・・『待て!武!』・・・ノア!?』

 なおもゴルザを追おうとするティガ、武を、ノアが制止した。

 『今奴を追っても恐らくは追いつけない。今回は早く基地に帰還して、体を休めたほうがいい』

 『でも!!もし奴が日本に現れたら・・・』

 『奴も深い傷を負った、すぐには行動できないだろう。それに、奴は恐らくBETAとは無関係だ。BETAと連携して襲ってくることも無いだろう。それよりも、君がここで無理をして、斃れたほうが、多くの人を救うことが出来なくなると、私は思うのだが・・・』

 『・・・・・・』

 ノアの言葉に、武は沈黙した。

 確かに、ゴルザもデラシウム光流でダメージを負っている。

 怪獣の回復力は分からないが、そう簡単に治る傷ではないだろう。

 だが、自分の体も先程の戦闘でかなりのダメージを負っている。

 理性的に考えれば、ここは撤退するべきだ。

 そう考えた武はようやく決断した。

 『・・・分かった、今日はとりあえず帰還する。さすがにこの体じゃ、もう戦闘は無理そうだしな・・・』

 『そうか、なら早く基地に戻るとしよう。もう変身していられる時間も残り少ない』

 『ああ・・・・』

 ティガ、武はすぐさまスカイタイプにタイプチェンジすると、ウランバートルハイヴ跡から飛び立った。


 夕呼side

 「・・・まさかティガと一緒にあんなものまで現れるなんて、ね・・・」

 先程までモニターでティガとゴルザの戦闘を見守っていた夕呼は厳しい表情でそう呟いた。

 「戦闘能力は見たところティガと互角・・・、こっちとのコミュニケーションは・・・・、取れそうも無いわね、どう見たって」

 「夕呼・・・、あの怪物は一体、こいつもBETAの一種なの?」

 夕呼の横で呆然と立っていたまりもは、夕呼に質問する。ちらりとまりもの方を向いた夕呼は、再び画面に目を戻すと、質問に答え始めた。

 「まだ調査すらしていないし、今回はじめてみたばかりだから何も言えないけど・・・、BETAではないわね、少なくとも。まあ、これは私の勘も入っているんだけど」

 夕呼は厳しい表情を崩さず、画面に写る崩壊したウランバートルハイヴを見つめていた。




 


 「恐らく奴は、円大吾が、ウルトラマンティガが現れたことが原因で出現したモノ、よ」






 あとがき

 皆さんこんにちは。第八話いかがだったでしょうか。

 今回はvsゴルザ戦となりました。

 もともとは怪獣を出す気は無かったのですが、さすがにBETAを根こそぎ踏み潰していくだけではかなり味気ないし、下手すれば単なるチート主人公無双モノになってしまう可能性もありましたので、ティガに出現した怪獣を限定的に出していくことになりました。

 メルバは?という方も居るかもしれませんが、メルバは後のお話に、ということで・・・。


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