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[24568] 【習作】鬱だ死のうローゼンメイデン
Name: 穏やか◆2d160e8c ID:a2a6e661
Date: 2010/11/26 04:23



――――まきますか まきませんか。


そんなことより死にたい。
ああ、こうしている間にまた嫌なことを思い出す。死にたい。
僕はうすうす気づいてたのかもしれない。
もう駄目なんだと、僕にはもう何も出来ないんだと。
だから繰り返す。死にたい死にたい死にたい死にたい。死にたい。

鬱だ死のう。

衝動的にボールペンでその紙にガリガリと書き殴る。
死のう死のう死のう。死のう。

紙が「死のう」で埋め尽くされる。死のう死のう。
書ききっても死ねなかった。当たり前だ、こんなことで死ねるわけがない。
死にたい。ああ早く死にたい。
これはもう早急に出来るだけ苦痛を感じない死亡方法を探さないといけない。
そうだ、練炭自殺がいい。眠剤飲んでからやれば苦しくないってネットで書いてあった。
あれ?そういえば炭なんてうちにあったっけな。
扉を開け、自室から出て行くジュンは気が付かなかった。


机に放置された紙が妙な光に包まれていることなんて。
ましてや「死のう」の「の」がまきますかの文字に重なって、あたかも丸をつけたかのようになっているなんて。







[24568] 鬱だ死のうローゼンメイデン
Name: 穏やか◆2d160e8c ID:a2a6e661
Date: 2011/03/04 04:06





桜田ジュンは溜息をついた。
死にたい。桜田ジュンは自らを屑だと定義している。
だが例え屑であっても自分自身を客観視するくらいは出来るつもりだった。
それによると自分はまごうことなき屑だ。引きこもりの上に高校生の姉におんぶでだっこの学生ニート。
しかし、こんなことにまでなるとは思わなかった。
借金だ。屑な上につい先日借金までこさえてしまった。
だって知らなかった。ネットや広告通販の商品がクーリングオフ対象外だったなんて。
自分はただスリルを味わいたかっただけなのに。


「死にたい……」


半開きの唇から思わず悪態がこぼれ落ちた。
僕の人生はどうしていつもこういう風になってしまうのだろうか。
思い直してもろくなことがなかった。
そこそこに勉強も運動も出来て可愛い幼馴染みがいた小学生時代をピークとしてあとはだだ下がりの毎日だ。
悪くなる一方だ。むしろ、日に日に手遅れになっている感じがする。
自分がこうして引きこもってる一方で世間にいる同世代の連中は青春を謳歌しているのだろう。
その差はゆっくりと、確実に開いていく。そして、それはどう取り繕っても取り戻せるようなものではない。
今はまだいい。だけどこれからどうなる?5年後、10年後?この苦しみはいつまで続く――?
ああ、これはもう駄目だ。死にたい。死にたい。
一切の柵から解き放たれるかのようにこの世からいなくなりたい。
死にたい。だけど自分で死ぬ勇気ないから誰か殺してくれ。出来るだけ優しく。
一瞬の苦痛もないくらいにすっぱりと殺して欲しい。


「ジュンくーん!!なんかまた変な荷物きたよぅ――!!」


扉の外から姉の声が聞こえる。
それが悪魔の声にも思えた。ほら今もこうして現状はどんどん悪くなっていく一方だ。


「うわああああああああああああああああああああああああああああああ」


「これで今日もう9個目だよー!!」


昨日は7個だった。一昨日は11個だった。
ちなみに今日は後2つ届く予定だ。


「僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない……」


その場にうずくまり耳を手で押さえこんだ。
おまけに布団にくるまって外界の音を完全遮断する。これで世界は隔離されて安全になる。
ここでは誰も自分を責めない。トイレと並んで一番落ち着く安全な場所だった。
昔、辛いことからは逃げて良い、と姉は言った。だからこうするのは決して間違いじゃない。
逃げてばかりの人生。それでいいのか?いいわけがなかった。
だけどこうしていればいつかは終わる筈だ。

別に考えなしにただ逃避しているわけじゃない。
きっと姉がどうにかしてくれる筈だ。

他力本願の考えがまさに屑だと自分でも思うが、それが染みついた習慣でもあった。
桜田のりは万能超人だ。ジュンのぶんの優性遺伝子を全部持っていったのかと思うくらい万能であった。
だから僕の失敗は姉ちゃんが尻ぬぐいをするべきだ。してくれる筈だ。お願いします。
いや、してくれる。まだあわてるような時間じゃない。姉ちゃんなら、姉ちゃんならきっとなんとかしてくれる。
何度でも繰り返すが自分自身でも屑の所行だと感じる。なんて最低野郎だとも思う。
いい加減嫌になってくる。どうしてこういう風に生まれついたのか。
ああ。こうしていつまで姉ちゃんの足を引っ張ってるつもりなのか。姉ちゃんには姉ちゃんの人生がある。
それを僕が引っ張って台無しにしようとしている。
だけどどうしようもない。これが自分だ。
自分が生きていてもどうしようもない。死ぬべきだろう。それが世界のためだ。姉のためだ。
死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。



自虐的に怯えるジュン。これこそが日常であった。
そして、実際になんとかするのが桜田のりが桜田のりたる所以である。







[24568] 鬱だ死のうローゼンメイデン
Name: 穏やか◆2d160e8c ID:a2a6e661
Date: 2010/12/01 00:52





「ジュンくーん!なんか今日も来ちゃったよー!!」


その言葉と同時に勢いよく開かれる扉。
びりり、とガムテープが剥がれ落ちる。完全であるように作られた外界との隔絶はいとも容易く破られた。
勿論ノックなんかない。健康的な桜田家の姉弟関係に隠し事など許されるものではない。
たとえ弟が引きこもりであろうとも明るく接し続ければきっといい方向に行く。
桜田のりはそう信じていて、そして常に実践しているのだろう。それぐらい屑の自分にでもわかる。
呆れた性善説の信奉者だった。自身が仁・義・礼・智と4つ揃った人格者であるが故に周りもそうであると疑わない。
彼女こそが現代に顕現した聖人である。
だが、光が強ければ影も濃くなる。常に姉弟として比べられてきたジュンは余計に自らの卑小さを自覚するだけだった。
姉の善には加減がない。だからこそ、容赦なく扉を開けるのだ。
「ちょ、やめ」と呟くジュンの声はお構いなしだった。


一瞬にして時が止まった。


二人の目線が自然と交差する。
電気も付けずにいたせいか、薄暗い部屋ではパソコンのディスプレイがやけに光って見える。
部屋自体に特に物が増えてるわけではない。引きこもりの部屋なので当然だ。
むしろ姉による強制お掃除が行われているので小綺麗なぐらいだった。余計なお世話だ。
その姉の笑顔が、固まった。空気も止まる。風も、音も。何もかも止まる。
ジュンにはわかっていた。姉は菩薩である。だが、これだけは姉に見られてはいけない類のものであった。
刹那の静寂。失敗した、という大きな後悔と少しの安堵が脳内を駆けめぐる。
姉の来訪が突然すぎてパソコンのディスプレイを隠しきれなかった。
そこに踊るゴシック体の巨大な文字。


『今日から君も練炭自殺★』


再び、目線が交差し反射的に背筋が伸びた。
言い訳の聞かない状況に自然と表情が引きつっていくのが自身でもわかる。


「駄目ぇえええ!!ジュンくんが自殺なんて絶対駄目えええええええ――――!!」


「うわああああああああああ」


「い、いやぁあああああああ!!駄目だよ自殺なんてお姉ちゃん許さないんだから!!」


菩薩が爆発した。
涙と鼻水と涎が飛び出た物凄い形相の姉がジュンの首元を掴みがくがくと揺さぶる。
視界が思いっきり上下した。がくんがくん。シェイクされていく世界。
たまらず口を開く。ぐえ、とカエルが潰れたような声が飛び出た。
どうしてこうなった。何もかもが揺れる。視界の先で、部屋中央に置いた家庭用練炭がぶれたまま残像を残す。
今日こそは、と。今日こそはと思ったのに。
数時間悩みながらも決意した。大安吉日。今日こそが僕の命日だ。
窓と戸口にガムテープを貼って、新聞紙に火をつけて、まさにいざ、という瞬間だった。間が悪いとしか言い様がない。
ああ、気持ちが悪い。揺れる視界が感情をない交ぜにする。
わかっている。全部僕のせいなんだ。どうしようもないんだ。
いっそこのまま死んでしまいたい。


「お姉ちゃんなんでもするから!!ジュンくんのためなら頑張れるから!!」


「うるさいな、もう首くくるしかないんだ、生きてても仕方がない屑なんだ、頼むよ、お願いだから死なせてくれ…………」


「駄目だよぅ!!絶対に駄目だよぅ!!こんな人形使うくらいならお姉ちゃんが慰めてもいいから!!」


「気持ち悪いこと言うなよ……ぇ、へ?人形?」


「うっ、ひっく、コレ」


鼻水だらだらの泣き顔でのりが差し出したのは木製の鞄であった。
一目でただの鞄ではないとわかる。
全体を覆う木の色には濡れたように綺麗な艶があり、見る側から品を放っている。
相当な年代物であろう木製でありながら表面にはひび割れ一つも見あたらない。
そして、留め具のフック一つとっても気配りが垣間見える。鞄の四隅に施された煌びやかな意匠なども驚くほど細やかだ。
素人であるジュンの見立てでも相当な職人物に見えた。
あれ。こんなの頼んだっけ?
とてもじゃないが広告商品で売っているような代物には見えない。
思わず受け取る。手に持ってみると想像以上に重たいことがわかった。
借金の重みがずっしりと腕に伝わる。死にたい。
それを振り切るように鞄を開けた。


「人形」


そこに横たわるのは金髪の西洋人形だった。
真紅の、精緻で華麗なドレスを身に纏った幼女形のアンティーク。







[24568] 鬱だ死のうローゼンメイデン
Name: 穏やか◆2d160e8c ID:a2a6e661
Date: 2010/11/30 03:11





死にたい、と。
日々の生活の中でふとそう思うのはおかしなことだろうか?
べつに死んでしまえば楽になるとは考えてない。
だけど僕にとってこの世の中で生きていくということは死ぬこと以上に辛すぎることだった。
失敗ばかりの自分。いや、本当は自分のことなんてどうでもいい。
他人にどう思われているのか、どれだけの迷惑を掛けているかと考えるとやりきれなくなることがある。
そんな時にふと思うのだ。死にたい、と。
この世界に自分が存在したという痕跡を跡形もなく消し去って、騒ぎもなくひっそりと、誰にも気付かれないようにいなくなりたい。
そうすればしでかした失敗も失意も悩みも全てなかったことに出来る。
時々、そんな風に無性に死にたくなるときがあるのだ。
例えば姉に変な勘違いをされた時とか。


「ひっ、ジュンくんもそういう歳になったんだよね、ごめんねお姉ちゃんわからなくて」


「なに言ってんだ……」


「これってアレだよね、ダッチワイ――――」


「違う!」


何故か、どこか嬉しそうに生暖かい目で見つめてくる姉。
死にたい。


「これってどう見たってアンティーク人形だろ」


「ええ?そうかなぁ……」


疑問符を浮かべて首を傾げる姉に人形を渡す。
手と手が触れ合い、自分の指先がぞっとするほど冷たくなっているのに気が付いた。
気味が悪い。鳥肌と共に怖気が背筋を奔っていった。
古いアンティーク人形なんてものはもともと気味が悪いのが当たり前だがこの人形には全く別の怖さがあった。
手に持ったそれは驚くほど精巧に出来ていた。出来すぎていた。
白磁の肌。細かな顔の造詣。髪の毛の一房から肌の柔らかさまでにいたるまで――――。
あまりに人間に似せられすぎて、まるで製作者の執念が滲み出ているかのようだ。
ここまで忠実に再現した性欲処理人形なんてあってたまるもんか。
あったとして幾らになる。
先日、姉がどうやってか解消した筈の僕の借金の桁がいくつか増えることになるだけだろう。死にたい。


「あ、ゼンマイがあるよ」


「ぜんまい?」


好き勝手に人形を弄くり回していた姉の言葉にはじめて気が付く。
人形が仕舞われていた鞄の底に何か光るものがあった。
姉の掌に転がるほどの小さなゼンマイ。発条仕掛けということはこの人形が動き出すわけか。
アンティーク・ドール。人間と見まがうばかりの精緻で妖しげなオートマトン。
嫌な想像が脳裏を過ぎってますます気味が悪くなった。
まさかこいつ動きだしたら人を殺したりしないだろうな……。
黒死館殺人事件みたく。


「ちょっと待て!下手に触ると壊れるだろ」


ゼンマイを差し込もうとしていた姉から慌ててそれらを奪い取った。


「え、動かさないの?」


…………この人形を動かす?
手が止まる。力の抜けた指先から人形がこぼれ落ちそうになった。
頭の中が煮えて考えが纏まらない中、奇妙な危機感だけが浮かびあがっている。


――――僕は、このゼンマイを巻いていいのだろうか?


どうしてこんなに不安になっているのか理解出来ない。
冷静に考えてみればなんてこともない筈だ。だけど何かが確かにおかしいのだ。
今まで生きてきて数々の失敗をしでかしてきた。
そのおかげで僕はいまや学生ニートで引きこもりの駄目人間になってしまった。
消し去りたい、やり直したい過去なんかそれこそ数え切れないほどたくさんある。
その経験が、頭の何処かで警鐘を鳴らしている。




でも回した。
それはもう思いっきり。だってもう、ぶっちゃけ死にたいんだよ僕。








[24568] 鬱だ死のうローゼンメイデン
Name: 穏やか◆2d160e8c ID:a2a6e661
Date: 2010/11/30 01:27





――――ギリギリ、と回す。



僕の人生はもう底辺だ。
復帰の見込みもない。なら後はどういう風に終わるかというだけ。
それが人形に呪い殺されるという終わりなら「仕方がない死に方」という言い訳が立つかなと思った。
だってそうだろう?そんなのに遭遇したら別に僕じゃなくても死ぬわけであって。
降って湧いた不幸というか。しょうがないよね、って諦めがつくと思った。
たぶん自殺じゃないからから保険金とかも降りるだろうし。



――――回す。回す。



むしろこれが呪い人形であって欲しい。
僕の中でこいつは既に呪いの人形で確定済みだ。変更は認められない。
きっと進退窮まってもうどうしようもない僕に神様がくれた最後のプレゼントだ。
ほら、早く起きあがって僕を殺してくれ。
練炭自殺は姉ちゃんに見つかったことだし、今を逃すといよいよ死ぬチャンスが少なくなる。
文字通りお前が最後の使者だ。
この奇妙な人形が僕の人生の最後を飾ると思うとなかなか悪くない気分だった。
さぁ殺せ。さぁ殺せ。思い切って殺してくれ。



――――回す。思いっきり、回せるだけ勢いよく。



「ジュ、ジュンくん、回しすぎじゃないかな……?」


バキッっという音が聞こえた。たぶん気のせいだ。
不思議なことだが、もう最後だと思うと独りでに目から涙が溢れてきた。
どうして僕の人生はこうなってしまったんだ。
畜生、思えばいいことなんて全然なかった。やり残したこともたぶんいっぱいある。
僕だって本当は死にたくなんかない。
だけどここまで来て今更引けるわけがなかった。



――――息を止め、震える指先に有らん限りの力を込めて回す。



視界が揺らぐ。
目から流れる水滴は一向に止まる気配はなく、ただただ勢いを増していくばかりだ。
くそっ、なんで、どうして!どうして僕がこんなことにならなきゃいけない。
僕がなにしたっていうんだ。人生の何処でなにを間違えた。
たぶん決定的なのは担任だった梅岡のせいだ。あいつだ。絶対にあいつが悪い。
僕がこんなことになって、毎日毎日こんなに悩んで苦しんで。人の目を避けるように生きていくことになったのも。全部全部。僕が姉ちゃんに迷惑かけてるのは全部あいつのせいだ。
くっそおおおぉぉぉあの野郎ぉおおおおおおおお!!
僕の人生をぶち壊しやがってぇぇえええ!!



――――怒りを込めるようにゼンマイを抉り込む。グリグリと。



「ああああああ――――!!いい加減回しすぎなのだわぁ――――!!」


「うわあああああああああああああ」


「きゃああああああああああああ」


何が起こったのかすぐにはわからなかった。
姉ちゃんと共に呆然とし、自分の喉が挙げた奇妙な引きつけ音でようやく我を取り戻す。
次にこれが本当に現実なのか疑い、そして紛れもない現実だということに愕然とした。
今まで生きてきてこんな常識外れの事態には陥ったことがない。
なんせ喋ったのだ。
いや喋ったなんてものじゃない。
抱えてた人形がツインテールを振り回して吠えた。


「ジュ、ジュンくん……」


「…………嘘だろ」


「はぁ……はぁ……はぁ……」


おまけに、なんか涙目になりながら肩で荒い息をしている。
なんだこれ。







[24568] 鬱だ死のうローゼンメイデン
Name: 穏やか◆2d160e8c ID:a2a6e661
Date: 2011/02/27 03:12





「い、いきなりこんな目に合わされるなんて思ってもみなかったわ……」


そう呟いて溜息を吐いたのは発条人形だった。
座り込んで呆然とする姉が眼鏡をとって目を擦ったのはいまだに目の前の光景を現実と認識出来てないからか。
たぶん、僕も似たような顔をしているのだろう。
そいつは何処から見てもアンティークドールにしか見えない。
だというのに明らかにこちらを認識して、あまつさえ自らの意志で動いているのだ。
人形が喋ったのだ。本物の呪い人形だ。ありえない。怖すぎる。
数秒前までは確かに自分の部屋にいた筈なのに今はまるで人外魔境にでも迷い込んだ気分だった。
それとも実は練炭自殺が失敗したというのは僕の思いこみで、これは一酸化炭素中毒が見せている幻影なのだろうか。
現実逃避を試みてみたが現状はちっとも変わってくれない。


「頭がガンガンする……」


「だ、大丈夫?」


姉ちゃんが気遣わしげに声をかけた。
よく喋りかける気になれるなと内心で尊敬する。相手は弱っているとはいえ呪い人形だぞ。


「……ええ、なんとか大丈夫だわ」


「えっと、お水でも持ってきた方がいいのかしら……」


「おいやめとけよ、呪われるぞ」


立ち上がり、部屋を出ていこうとしたのを流石に慌てて止めた。
姉ちゃんはいつもこんな感じで誰かしらの世話をやいている。元来の性格なのだ。お節介の世話焼き。
それが普通の人間相手だったらいくら世話を焼こうが僕はどうでもいい。
だけど、今回の相手は呪い人形だ。
このまま放っておけばあれやこれや世話を焼いていつの間にか魂まで差し出している、なんてことになるかもしれない。


「失礼ね、誰が呪うのよ。私は誇り高き…………あら?」


一目、僕を見た後に人形の視線が更に後方にずれた。
カーテン越しに入った日の光がその横顔に僅かな陰影を作り上げる。
焦点が一瞬ぼやけて少しの間ぼんやりとどこかを見つめるようにした後、再び真っ直ぐな視線になる。
いったい何を見たのか。背筋に冷たい物が過ぎっていった気がした。


「――――お前、名は?」


鋭い言葉が届く。
目の前に立った人形は感情の感じられない、平板な声で言葉を発してきた。
正直、怖い。だけど逆らう度胸もないのでとりあえず答えてみる。


「桜田ジュンだけど」


「そう、じゃあ私は誰なの?」


「…………は?」


こちらを見つめる、どこか熱っぽさを伴った藍色の視線が揺れた。
気が付くと呪い人形は僕以上にひどく戸惑った顔をしている。


「わからないわ」


そう続ける声は掠れたように小さく震えていた。
伺うようにこちらを見つめながらも、それが落ち着かないという風にひどくちぐはぐな言い方だった。
言葉は横柄で、態度もでかいのにまるで借りてきた猫のよう。
人形は自らのブロンドの髪の毛先を確かめるかのように丁寧に指で弄りながら続けた。


「なにも思い出せない」


「思い出せないって……」


「私は誰なの?」


知るもんか、というのが僕の正直な気持ちだった。
だけどとてもじゃないけどそんなこと正面切って言えるわけがなかった。
目の錯覚かもしれない。気の迷いかもしれない。
僕にはその、ろくでもないであろう呪い人形が泣いてるように見えたのだ。








[24568] 鬱だ死のうローゼンメイデン
Name: 穏やか◆2d160e8c ID:a2a6e661
Date: 2010/12/21 19:00





たまに、朝起きてふと思う。
日々が過ぎていくのはなんて早いんだろうか。
気がついたら週が変わり、月が終わっている。だというのに僕が引きこもりを始めたのがつい昨日のことのように思える。
ただ惰性で生きているに過ぎない僕はこうしてゆっくりと世間から取り残されていく。
間違いなく断言だける。このまま生きていることは無駄でしかない。
勉強もせず、働きもせず、ただ浪費と惰眠の繰り返しを続けているだけの屑だ。
一歩を踏み出さなきゃ何も変わらない。
だけど、来年も僕はこうしているのだろう。きっと。
その一歩を踏み出せるのなら元々こうして引きこもりになっていなかっただろうから。
また今日も憂鬱な一日が始まる。
普段ならここらで欠伸を噛み殺しながらネットで怪しい商品を探す作業を始めるところだ。
だが、最近の僕の周囲はそれどころではない事態になっていた。
この家は乗っ取られようとしている。


「はぁ…………」


ベッドの脇に視線をやって、思わず頭を抱えた。
起きたての第一声にしてはどうしようもなくヘビーな話だったが全ては我が家に住む聖人君子が悪いんだと思う。
なんとそいつは「記憶喪失?しばらくうちにいるといいわ!」なんて曰ったのだ。
馬鹿じゃないだろうか。
記憶喪失で行くところがないからしょうがない?
ありえない。だって喋るんだぞ。人形なのに。そんなのに関わったら色々と厄介なことが始まるに決まってる。
古今東西、呪われたアイテムなんてろくなもんじゃないと相場は決まっているのだ。
そして、よりにもよって。
そいつに僕の聖域は日々侵略され続けているのだ。


ガチャリ、と。
ベッドの隣りに置いてあった鞄が開いた。


それを見て僕の心臓が小さく跳ねるのがわかった。
そこから軽やかな足取りで出てくるのは金髪藍眼のアンティーク人形だ。
発条人形なだけあって時間には正確だ。毎日、定時に起きて定時に就寝する規則正しい生活習慣。
ここ数日いつ本性を現した呪い人形に襲われるかと僕は気が気ではなかった。
隙を見せてたまるもんか。
おかげで僕もそれに付き合わされるはめになっている。
健康的な引きこもりとか笑えない。死にたい。


「おはよう、お兄様」


「誰がお兄様だ!」


そして、一番我慢ならないのはこれだ。
こいつは既にあの姉を手懐けていてさも当然のように住み込んでいるのだ。
よりにもよって僕の部屋に!


「あら、のり――――お姉様は今日からここを自分の家と思っていいと言ってくれたわ」


家長の言葉には従うものよ、とまるでなんでもない事のように言う。


「僕は認めないからな!」


「桜田家の住人の3分の2以上が認めているのよ、諦めなさい」


「僕と姉ちゃんと…………残りは誰だよ」


「私よ」


「おい」


思わず後ろ手で突っ込んだ。
いや、これでも僕にも事情はわかるつもりなのだ。
記憶喪失になって自分を失うというのはどういう気持ちなのだろうか。
目の前の呪い人形――――こいつもきっと不安で、すがるものが欲しいのだろう。
だからこそ家族になるというトンデモな手法に縋るのだ。
それに、なんというか。
たぶん違うけど。もしかしてもしかすると。こいつが記憶をなくしたのは僕のせいなんじゃないかという後ろめたさがある。
だからこそ強制的に追い出そうとすることはしていない。
いや、だけど。ほんとに。


「はぁ、やってられない……」


溜息を吐く。
本当にやってられない。常に気を張っているせいか毎日胃がキリキリとしている。
今日も起きてまだ数分も経っていないというのにもう二度も溜息を吐いる始末だ。
もう何もかも放り出していっそ楽になりたい。


「ホントになんで僕の部屋なんだ……」


「お姉様に頼まれたのよ、ジュンくんをよろしくって」


よりにもよって呪い人形になんてこと頼んでんだあいつ。
僕の引きこもりはそんなものに縋るレベルなのか。死にたい。


「さて、話はおしまい。お兄様、朝ご飯を食べに行きましょう」


そう言ってアンティーク人形が振り向いた。
なまじ精巧すぎるせいかその顔は本当に邪気のないただの少女のように見える。
だけど人形が理由もなしに動くわけがない。オカルトとはそういうものだ。
この世に未練があるとか、誰かの魂を奪っているとか何かしらの理由がある筈だ。
いったい本性はどこにある――――?
そこまで纏めて考えを切り上げる。馬鹿馬鹿しい、たとえ呪い人形といえど今は記憶喪失なんだ。
なにかが出来るもんか。








[24568] 鬱だ死のうローゼンメイデン
Name: 穏やか◆2d160e8c ID:d390a3e5
Date: 2011/03/04 03:38





人形と共に朝起きて、人形と共に夜眠る。
それが一日のサイクルに当たり前のように組み込まれていることに桜田ジュンは何とも言えない嫌悪感を覚えた。
端から聞くと、まるで人形遊びに夢中になってしまった幼い少女のような一日であった。
死にたい。実際には食事や息抜きの時間まで一緒にいるのだから現実はそれ以上にファンタジーだ。
おまけに、その生活サイクルにはプライベートな時間が欠片もなかった。
引きこもりのくせに何言っているんだ、と自分でも思うが現に常軌を逸したような警戒網が巡らされているのだからしょうがない。
こめかみを手で叩いて頭痛を振り払う。


「どうしてこうなった……」


その警戒令を発したのは姉である桜田のりであった。
昔から彼女には世話焼きで何かと弟に構いたがる気質があった。その弟自身の是非にかかわらず。
幼少時はそれでよかったのだが、やがて思春期を過ぎ、仕舞いには弟直々に「鬱陶しい」と言われてもその行動は止まらなかった。
むしろ、弟が駄目人間になるに連れてそれらの行動は頻発するようになった。
桜田のりは姉であり、桜田ジュンが弟である限りそれらの行動は彼女にとってあまりに当たり前の行動だったからだ。
彼女は心底から弟のことを思って動くことができる希有な人間である。そこには蔑みや哀れみの感情など一欠片もない。
引きこもりの駄目人間である弟であっても全身全霊混じりっけなしの善の感情で気遣うのだ。
並はずれた姉弟愛があるからこそなせる行動である。
それが、先日の自殺計画露呈事件以降、過剰ともいえる警戒網を敷く原因となった。
家にいるときは常に視界に映る範囲に弟を置き、自分がいない時は新たに家族となった妹に弟の監視を頼む。
おかげで彼にとってプライベートな時間はトイレと風呂だけになってしまった。
自業自得である。姉は弟を失うことを恐れたのである――――。


「――――というわけね」


「知った風な口で冷静に言うな、むかつく」


どこかしたり顔で現状を分析する人形を睨んだ。
思わずそのまま唸り声をあげそうになった。他人事だと思いやがって。
おまけに現在、周囲を取り巻く要因の一つであり、一番気に留めておかねばならない問題の人形からそう言われては憤懣やるかたなしといった具合であった。


「確かにお姉様はやりすぎな所もあるけどお兄様が悪いのよ」


「五月蠅い。誰がお兄様だ」


「自殺なんてしようとするから悪いんじゃない。誰かに習わなかったのかしら?命は大事にしなさいって」


ふふん、と何処か得意気に話す人形。
顔を振るのと同時に、金髪のツインテールが左右に揺れた。
恐るべき事にこの人形が桜田家に予想以上に馴染んでいることを認めねばならなかった。
おまけに監視するという役目が与えられて以来、自分の存在価値を勝手に見いだしたのかこのアンティークドールはずっと上機嫌になっていた。
ただ、監視される方はたまったもんではない。


「僕は、別に。いつ死んだっていいんだ」


「不本意だろうと生きなければいけないわ。そういうことは、せめて己の力で自立してから言うことね」


「うっ」


言葉が詰まった。死にたい。
無機物に命についての是非を問われるなんて不毛すぎる。
なんで人形に命の大切さを説教されなきゃいけないんだ、と心中で小さく呟いた。
だけど言ってることは正しいように思えた。自分は生かして貰っているのだ。かといって勉強するでもなく、働くでもない。
日々を過ごしているだけ引きこもりの駄目人間には己の命をどうこうする権利はないように思えた。
本音を言ってしまえば、僕だって引きこもりなどやめてしまいたい。
まるで、何かが腐り落ちていくかのように毎日が過ぎ去っていく。
そこには充実感や疲れも何もない。楽しくも辛くも何ともない。
こうして家に引きこもったまま日々を過ごしていくと、ただただ時間だけが高速で過ぎ去っていくのだ。
一日が物凄く早く終わる。明日やろうと思っているうちに明後日になっている。


「…………呪い人形になにがわかるんだ」


「わかるわ。私はお兄様に呼ばれたんだもの」


人形は白磁の顔に浮かんだ穏やかな笑みを隠そうともせずに言った。


「呼ばれた?」


「何故かしらね。ここ最近、夜に眠るとお兄様の心の中に行ける気がするの」


「こっ、……それって僕に取り憑いてるわけじゃないよな……」


口にしてみて、それが意外なほどに心当たりがあることに気が付く。
そういうことか。最近、やけに寝苦しかったりしたのはそのせいか。


「もしかしたらそうかもしれないわね。でも、違う気がするわ。私はただ漂っていただけだから」


思わずベッドの方に後ずさりかけた。
気が付くと藍色の眼差しがこちらを迷いなく見つめていた。
視線が絡み合う。人形の視線はいつだって真っ直ぐに透き通っている。
だけどそれは今ほどのものではなかった。
まるで、視線が鋭さを伴って心に真っ直ぐに切り込んでくるようだ。
見透かされた気がした。


「勝手に人の心を弄くるなよ……!」


「違うわ。たぶん本当の意味でそこをどうこう出来るのはきっとお兄様が――――」


言葉を続けようとした人形は突然、足元をふらつかせた。
数歩だけ踏鞴を踏むかのように移動し、誰の姿も見えない窓の外を見上げる。
そして、近づいてくる何かに立ち向かうかのようにその小さな手を握りしめた。


「…………?どうした?」


「なにか、来るわ」


「何」


言い切る間もなく。次の瞬間、室内にけたたましい音が響き渡った。
窓が翳るのとそれはほぼ同時だった。
ぎらりとした光がジュンの顔一面を舐めた。包丁。紛れもないその刃が太陽の光に反射した。
そして、窓外から降り立ったそれらはガラスを破り、足元のほんの二、三歩先に突き刺さった。
割れたガラスの破片が散らばって足に当たる。
その光景の、あまりの現実味のなさに思わず二度見した。
フローリングを深く刺している包丁はびぃぃん、と低い衝撃に揺れていた。


「………ぇ」


それらが、あまりにもいきなりだったから言葉を失った。
部屋にきらきらと舞い散る窓ガラスの欠片。


「な、何っ……なん……!?」


「お兄様」


「ななな、何だよ、これっ……お前の呪いか!?」


「違うわ。たぶん――――敵よ」


一際大きなシルエットが眼前を過ぎった。
黄色く大きなぬいぐるみ。両手に包丁を携えたそれは間違いなく熊のブーさんであった。








[24568] 鬱だ死のうローゼンメイデン
Name: 穏やか◆2d160e8c ID:47586e05
Date: 2011/03/04 07:53





「…………何だコレ」


「あらカワイイ子」


「そんなこと言ってる場合か!ブーさんが!ブーさんが僕を狙って!?」


「落ち着いて」


冷ややかな声が僕を呼んだ。
相も変わらず落ち着き払ったアンティーク人形が僕を見上げている。
理性は言うのだ。こんなおかしいことは現実ではない、と。
だが、既に不思議体験に慣れ始めてしまった感覚がどうしてもそれを本物だと伝えてくる。


「お兄様はどうやら人形を呼び寄せる体質のようね」


「お前が言うなよ!そうだ、同じ人形なんだからお前がなんとか――――ヒィ!?」


鈍い銀色の光が陽光を照り返す。
感情もなく振り下ろされる刃に思わずその場に尻餅をついた。
股の間に勢いよく突き刺さった包丁。慌てて後ずさる。
これまでの現実は指の隙間からこぼれ落ちていく砂のように消えていく。
紛れもなく本物の呪い人形だった。
このくまのブーさんは、目の前にいる押しかけ妹みたいなアンティーク人形とは明らかに違う。


「あなた、名前はなんていうのかしら?」


「………………」


「だいたい窓から入ってくるなんてお行儀が悪いわよ――――あら」


「………………お、おい。大丈夫なのか、って!おい!」


咄嗟に後ろから人形の肩を抱き上げて飛び退いた。
僅かに遅く、袈裟斬りに振るわれた刃が人形衣装の端を切り取っていく。
恐るべき切れ味だった。この前、ネット通販で頼んだマイナスイオンコート特性穴あき包丁にも劣らない切れ味だ。
あれも凄かったけどこっちも凄い。
この勢いだときっと人体もすっぱり切れるだろう。そう、すっぱり、と。
いくら疑ってみても目の前の光景は変わらない。
これまでの常識をぶち壊していくこれは現実だった。信じられない。どうしようもない現実。まるで僕の人生みたいだ。人生いつだって袋小路。
ブーさんがじりじりと距離を詰める。対応するようにすり足でゆっくりと逃げる。
腕の中で髪を振り乱したアンティーク人形が小さく呟いた。


「駄目みたいね」


「明らかに駄目だろ!包丁持った奴相手になんで暢気に会話しようとしてるんだよ!」


「なんとかしろと言ったのはお兄様でしょう」


「そうじゃなくて手段を考えろよ!向こうも包丁持ってるんだし、なんか武器とかないのかよ!」


「武器なんて野蛮だわ」


「ふざけんな!ほんっと役に立たないなお前!」


逃げ場がなくなる。徐々に壁の端に追い詰められていく。
顔から血の気が引くのがはっきりと感じられた。
姉ちゃんは学校。家には誰もいない。いっそこの部屋から逃げだすべきだろうか?
いや、扉を開けている間に背中を刺されるのがオチだろう。
どのみち引きこもりの体力じゃ人形を抱え込んだままいつまでも逃げ切れるわけがない。
逃げられない。そう、ならば立ち向かうしかないのか、それとも――――。
がちがちと奥歯が鳴った。いったい、僕は何を考えている?馬鹿じゃないのか?


「馬鹿じゃないのか」


そう呟いたつもりだったがあまりの恐怖に声にならなかった。もう一度叫ぶ。


「馬鹿じゃないのか!」


かぶりを振ろうとして、それが出来なかった。
アンティークドールを床に下ろすと同時にたたらを踏んだ。足取りは覚束ない。
馬鹿じゃないのか。胸の中で繰り返す。本当に、馬鹿じゃないのか。
ただの引きこもりに何が出来るというのだろう。
がくがくと膝が震える。日に100歩も歩かない僕の身体は既に運動不足を訴えていた。正直、もう泣きそうだった。それでも不思議と身体は止まらなかった。
今から自分のやろうとしている事を想像して、腹の底までが一気に冷えた。


「もうたくさんだ」


「………お兄様?」


「逃げろ」


馬鹿なことを言っているなんて僕自信が一番わかっていた。


「え?」


「僕が引きつける、いいから逃げろよ馬鹿」


怯えきった、小さい声だったがそれは間違いなく僕の声だった。
口にたまった唾をゆっくりと飲み込む。恐怖を振り払うように手を横に小さく振った。
赤いジャケットを着こなした熊のブーさんがこちらを見上げる。
その両手には相も変わらず切れ味鋭い包丁が握られていた。きっと刺される。
それ以上の考えはなかった。


「お兄様!!」


走馬燈だろうか。脳裏に幾つかのシルエットが浮かび上がっては消えていく。
父親。母親。姉ちゃん。そして、小さいときによく遊んだ幼馴染み。入れ替わり立ち替わり現れては消えていく。
最後のシルエットが眼前をゆっくりと過ぎる。
はっきりと思い出した。脳裏に染みついて離れなくなった記憶、学校に行かなくなったあの日のこと。
今ならわかる。あいつが僕のことを庇った時もこんな気持ちだったんだろう。
その声は震えていたというのに、誰よりも格好よくて凛々しかった。
驚け。驚けよ。僕だってやれるんだ。理由なんて説明出来ない。今の僕とあの時のあいつにしかわかる筈がない。
きっと刺されて死ぬ間際で後悔するんだろう。
だけどやっとわかったんだ。彼女が僕を助けようとしてくれたその気持ちが。


両足を奮い立たせてぬいぐるみに立ち向かう。
それが馬鹿なことでも、きっと正しい行動だと今だけは思いこむことにした。






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