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[24405] 【習作】華雄伝【恋姫無双】
Name: 徳川びっくりまん◆60293ed9 ID:83d6c903
Date: 2012/03/15 11:55
初投稿ですよろしく。

かませ犬なかゆうまさんに憑依する話です。
ノリだけで書いてます。

オリキャラが使いこなせないほど出てきます。
そういうのが嫌いな方はご注意ください。
アンチ成分は含まれていませんが、それっぽく見えることはあるかもしれません。

投稿再開します。
ちまちま各話修正したりしつつのんびり更新予定。
なんたって今の家にはネット環境がないのだ!きつい!



[24405] 序章 憑依
Name: 徳川びっくりまん◆60293ed9 ID:83d6c903
Date: 2012/03/15 11:59
華雄に憑依しました。



序章 憑依



トラックに跳ねられて死んで恋姫無双の華雄ちんになりました。
なんとか生き延びるためにがんばってみたいと思います。
ヘタをしたらヤムチャよりかませ犬かもしれない人ですが。

とりあえず状況確認を。
黄巾の乱はまだ起こってない。
しかし董卓ちゃんに仕えてて、主要キャラの背格好から見ると原作開始までそこまで猶予はなさげ。
董卓ちゃんと賈駆ちゃんの年齢からして後2~3年ってところかな?
登場人物は全員18歳以上的なあれから逆算してみました。
あてになるのかわからないけどね。

階級は普通に将軍様でした。ある程度の権力はあるっぽいです。
あれ?結構イージーモードかなって思ったけど、関羽という特大の死亡フラグもあるし前途多難です。
ていうかこのままいくと董卓ちゃん勢力粉砕されちゃうしね。

漢は腐ってます。
つってもこのくらいの時代ではよくある程度の腐敗具合。
恋姫フィルター通してるので史実よりはだいぶマシです。
反乱や異民族の侵入は史実より押さえ気味だし、天災や飢饉に至ってはないくさいです。苛政による民いじめが問題の中心っぽいです。
曹操とか劉備とかもたかが朝廷内の権力闘争で国が弱体化してるからって400年続いた王朝見捨てんなよって話だよね。まあ実際役人の不正やらは結構ひどいみたいですが。やつら普通に賄賂要求してきますしね。
その点、董卓ちゃんは普通に漢の臣やってます。

お仕事は主に異民族の討伐ですね。涼州は羌族の勢力圏と接してるので。
彼らはお腹がすいたらすぐ略奪に走る困ったちゃんです。しかも騎馬民族だから強いんですよねほんと。迷惑極まりないです。
つってもまあ史実と違って、呂布やら張遼やら一流武将が最初からいるので無敵ですが。

あと郭汜とか李確とか牛輔とかゲームにいなかった武将もいました。
全員男だったから描写省かれたんですかね、エロゲーだし。
董卓ちゃんの弟の董旻もいましたよ。姉に似てかわいらしいショタっ子でした。
牛輔は娘婿だったはずですけど、この世界では叔父みたいです。
まあ呂蒙みたいに設定変更されてるのもいるし、このくらいは許容範囲ですよね。

とりあえず当面の目標は董卓勢力の瓦解を防ぐために組織の強化。
具体的には宦官どもの奸計に乗せられないだけの情報力と、諸侯連合軍に負けないだけの戦力は必要です。
あと最も重大な関羽対策ですね。
関羽については汜水関出なきゃいいだけだからそんなに心配してないですけど、やっぱり他国の武将と対等以上に渡り合えるだけの武力は欲しいですよね。
ぶっちゃけ華雄の武力がいまいち把握できてないし。
出てきてさらっと死にましたしね。

まあ適当にがんばります。



[24405] 第一話 現状確認と自己啓発と問題提起
Name: 徳川びっくりまん◆60293ed9 ID:83d6c903
Date: 2012/03/15 11:57
内政もののテンプレとか覚えとけば良かった。



第一話 現状確認と自己啓発と問題提起



どうも、涼州最強のかませ犬、華雄です。
現在は自宅にいます。
なんとも便利なもんで“華雄”の能力、記憶はそのままなようです。
数日生活して、なんとか華雄な自分に慣れてきたところでこれからのプランを練っています。

ぶっちゃけた話、組織全体の強化とか自分には無理っぽいです。
一応ゲームキャラだっつってもたかが一武官なわけで、組織の運営に携わっているわけでもないですしね。発言力もそんなにないカンジ。てかむしろ畑違い。

ここはひとつ内政チートよろしくゴイスーな政策案でも提出して、無理やり運営陣に食い込もう。そう思っていた時期もありました……。
でもね、案なんてまったくありません。現代知識なんて時代が違いすぎて全く役に立たないですしね。
田んぼを休ませることなく作物を作れるやつってなんていうんでしたっけ?
作るものもカブとクローバーしか覚えてません。ていうかクローバーとかこの国にあるんですかね?それ以前にクローバーとか作ってどうすんの?食うの?
正直なんもわからん。

なんとか具体的に思い出せるものは屯田制度くらいですか。曹操がやってたやつですね。
これにしたって民屯だか軍屯だか違いがあったはずですが、よくわかりません。
ていうか軍隊は異民族の討伐で大忙しで畑耕してるヒマないです。結構死にますしね。兵。
そういう意味では異民族の侵略で荒らされて以来手付かずになった土地や、軍役中に死んだ家族のいない兵が持ってた田んぼとかが余ってるんで、屯田に向いてはいると思うんですけどねえ。
屯田やりすぎても塩田になっちゃうとか聞いたことありますけど、まあよくわからないしやらないよりマシですよね。たしか曹操だけじゃなく袁紹もやってたらしいし。
華雄の記憶に内政関連の知識がまったくないので詳しいことがわからないんですよね。まあ折を見て文官さんにでも相談してみますか。
華雄の記憶に文官の顔や名前がまったくないのでだいぶ先になるかもしれませんけどね。
この人何考えて生きてたんだろ。

そういえば普通にありましたよ、派閥的なあれが。前任者の娘で漢から正式な太守の任命を受けている董卓ちゃん派と、前任者の弟の牛輔派で。
ぶっちゃけた話董卓ちゃん派はかなり劣勢です。
地元の豪族とかがほとんど牛輔寄りで、前任者の旧臣たちも歴史に名前が残ってる人たちは中立か牛輔派です。
華雄や呂布や張遼や陳宮ちゃんなんかは董卓ちゃんが跡を継いでからの家臣ですね。
この四人プラス賈駆ちゃんが董卓ちゃん派です。
これらの配下が一定以上の成果を上げていることでなんとか均整を保っているようです。
ていうか自陣営の強化のために抜擢しまくったっぽいですね。
だから忠誠心はみんな高いです。こんな理由でもないと将軍になんかなれませんでしたしね、みんな。
呂布と華雄は異民族系の出自で漢での出世は夢物語。張遼は流れの侠、ぶっちゃけヤクザの用心棒みたいなもんでしたし、陳宮ちゃんにいたってはどう見ても子供ですほんとうにありがとうございました。軍師なんて言ったら鼻で笑われます。よくもまあ引き上げたもんですね。
私なら怖すぎて無理です。賭けにしたってリスクがでかすぎです。
それだけ追い詰められてたってことですかね。

とりあえず私のやることは派閥の統合ですかね。
他の人はともかく華雄は旧臣たちそれなりに親交はあったみたいですし(あくまでそれなりだけど)、結構なんとかなるかもしれません。
勢力内を一本化し、来るべき聖戦(連合軍戦)に向けて富国強兵です。
そのためにはまず屯田制度の具体案化、それを提出して、ある程度の組織内での発言力を持つことです。
別に執行できなくてもこんなことを考える頭があるんだぞ、使えるやつですよーって印象を与えることができれば口出すくらいはさせてもらえそうですしね。
そうなったらもうこっちのもんです。なんたって董卓軍の行く末がわかっている私。その情報はまさに万金にも値します。
賈駆ちゃんは私のことをただの猪武者としか見てないので、ギャップで一気に好印象を持たれるはず!

やることが多すぎてめんどくさいですねえ。
でもまあ華雄の受けた恩も返さなければなりませんし、私自身董卓ちゃんのことを気に入っているのでがんばらないといけませんね。
あんないい子がちんぽ太守の肉欲メイドとか許せませんよマジで。

さてそのためにも今日も張り切って出勤しますか。



[24405] 第二話 華雄の変化
Name: 徳川びっくりまん◆60293ed9 ID:83d6c903
Date: 2012/03/15 11:59
うほ、人材ゲット。



第二話 華雄の変化



「ええい、ちょろちょろと蝿のように逃げまわりおって!うっとおしい」
 屈強な肉体を持つ中年の武将――――郭汜が戟の石突を地面に突き刺し、吐き捨てる。

 郭汜は牛輔派の重臣だが、華雄と同じく個人的武勇に重きをおくタイプで互いを尊重しあっていた。面倒見もよく、部下からの信頼も厚い。華雄も将軍になりたての頃、何くれとなく世話を焼いてもらった覚えがある。
用兵に長けているというわけではないが、爆発力のある苛烈な突撃を得意とする男盛りの四十二歳(独身)である。
 しかしながら機動力は羌族に一日の長があり、現在陽動隊に撹乱されるハメに陥っていた。

 頭に血が上りやすい人物。華雄の記憶通りだな。
華雄は郭汜の人物像に間違いがないことを確認しながら今作戦の上司に駆け寄り
「郭汜殿、隊列が伸びすぎています。一旦陣形を定め直したほうがよろしいかと。今の状況で奇襲を受ければ一溜りもありません」
と話しかけた。郭汜は
「ふん、我が麾下の兵どもはみな強兵。逃げまわるだけがとりえの羌族など恐るるに足らず」
などと猪武者丸出しの言葉を吐かず、
「確かに。そうしよう」
と、少し照れたように素直に同意する。
このあたりも、敵対派閥に属するこの中年男性に好意を持ってしまう理由だった。

 先代から仕え続けたこの人物。温厚であるし、頭もあまりいいとは言えない。
なんとかして牛輔から切り離すことはできないだろうか。
華雄はそう思考する。

「ところで華雄よ、お前が忠告とは珍しい。儂の知っとるお前なら一緒になって羌族を追い掛け回しそうなもんじゃが」
からかい混じりに郭汜が問う。
 華雄は(普通にこれくらいわかるんだけどな。華雄ってやっぱアホだったのか)と思いながらも
「軍中に拾い物を見つけましてね。使えるかどうかはこれから判断しますが、少なくとも現状に危機感を持つだけの頭と、私に直言する胆力はあるようです」
と言った。これは事実だった。配下の兵が、華雄に忠告してきたのである。
興味を持った華雄はその兵の名前を聞き、自身の幸運に感謝した。

「ほう、名はなんという」
可愛い後輩の嬉しそうな様に釣られ、郭汜の口角も上がる。

「はい、李儒というそうです」


 李儒、字は文優。
演技でも正史でも董卓政権のブレーンとして活躍する。
この世界では華雄配下に一兵卒として在籍し、たびたび華雄に諫言していたようだが、華雄に聞き入れられることはほとんどなかった。
“華雄”には「口うるさい理屈屋」としてのみ記憶されており、またそれを態度に出されていた。
 当初は裸一貫から己の舌先一つで成り上がるつもり満々の野心家だったが、現在では策を聞き入れる気のない上司のためにもはや完全にやる気を失っている、可哀想な男である。
今回も聞き入れらることはないんだろうなあ、と思いながら一応言ってみるだけは言ってみたら思いのほかあっさりと受け入れられ、戸惑いを感じていた。
(もうちょっとまともな進言したとき取り上げてくれりゃあいいのに。こんなん猿でもわかるだろうが。あーあー結局今回も出世には繋がらないんだろうなあ)
こんなことを考えていた李儒だったが、郭汜のもとから戻ってきた華雄の口から飛び出した言葉に仰天させられることになる。

「私が、参謀でございますか」
急な事態の展開に呆然とする李儒に華雄は言う。
「今作戦に限りな。出来を見て、本採用か否かを決定する」
 今までの華雄の李儒に対する仕打ちなど知らぬとばかりにしれっと言う華雄に、李儒は
(ありえない。こんな簡単な指摘で参謀だと?ほっほーん。この女、理屈屋に兵を率いることなどできまいと思っていやがるな。大方ビビって辞退するとでも思ってるんだろう。そうなりゃ小うるさい口を塞げるってか?なめんじゃねえぞこのアマぁ)
と思った。しかしこれは出世の大チャンスである。しがない一兵卒から副将格へ。逃す手はない。
兵法は机上でしか知らないが、従軍経験だけは豊富だ。やってやれないことはないはずだ。力を試したいという思いもあるし、それ以上にこの女を見返してやりたい。

「非才の身なれど、華雄隊参謀、全身全霊を持って努めさせていただきます」
そう言った李儒の眼は、甦った野心と華雄への敵対心でギラギラと光っていた。1:9くらいの割合で。

(なによ、華雄ってこんな恨まれるようなやつだったのかよ。明らかに変な気合入ってるじゃん)
という思いを胸に、華雄は重々しくうなづいた。

 華雄の知識により李儒が有能であることがわかっていた故の抜擢であったが、実際のところ、将に似たのか華雄の配下は個人の武力に重きを置いた脳筋揃いであり、こんな簡単な指摘一つできるものはいなかった。
つまり将がまともなら今回の指摘でも十分抜擢の理由になるのである。
華雄はそれに気付いたとき戦慄したという。


 その後の戦闘は李儒にとって驚きの連続だった。
まず参謀として華雄によって郭汜との顔合わせに連れ出された。
董卓軍の中でも格においては華雄よりも遥か上の将軍である。
つい先ほどまで一兵卒であった李儒には雲の上のような存在だった。
緊張する李儒を華雄がうまくフォローしてくれたことも意外であった。

こんな気配りもできたのか。

純粋な驚きだった。
 交戦中も李儒が提案する戦術に華雄は
「うむ。してくれ」
と言うだけで、まるで配下の如く従順だった。
実際にはただ任せっきりだっただけだが。
実は以前の華雄の用兵よりも、李儒の指揮は数段上だったのだ。
これについては華雄もただただ呆れるばかりで、最終的に
(華雄はただのアホだ。記憶はほとんどあてにならん)
と結論づけ、早々に李儒に頼り切ることに決めていたのだ。
これを李儒は粋に感じ、アホ将軍との印象を打ち消し、信頼に足る上司と華雄への忠誠を新たにした。

 華雄の武人としての能力は本物で、猛将と呼べるほどには兵も操れていたので、李儒という頭脳を得た華雄隊は羌族を散々に打ちのめし、作戦予定期間を三分の二に減じさせることに成功した。
これには郭汜も大喜びで、李儒を褒めちぎり、華雄隊の新生を我がことのように喜した。

 この功により李儒は、正式に華雄隊の参謀として採用されたのだった。



[24405] 第三話 凡才のやり方
Name: 徳川びっくりまん◆60293ed9 ID:83d6c903
Date: 2012/03/15 12:06
ブレーンがいるとやっぱ楽だね。丸投げできるし。



第三話 凡才のやり方



いやー李儒くん来てくれてマジ助かってるわー。
なんでもどこぞの私塾の出らしくして、文官にも知り合いがいたっぽくて、屯田制度案が進みまくり。
もうちょい詰めればどこに出しても恥ずかしくない立派な意見書になるね。
あと屯田制度以外に思いついたちまちました案についても知恵を絞ってくれてます。
いやはやほんといい拾い物したよー。
こんな人材ほっといた華雄はほんとアホだねー。

「将軍」

お、噂をすればだ。なになに李儒くん。

「屯田制度についてですが、あとは具体的な空き地を測量し、産出量を計算するだけになりました」

マジで。仕事早えー。さんきゅさんきゅ。
うん?ああ、測量はうちの兵使っちゃって構わないよ。ただ届け出は出しといてね。
名目は訓練とかでいいから。よろしくー。

「了解しました。その他の政策については確かに実用性は高いですが、資金の方が苦しいようです。一応意見書としてまとめておきましたが」

おーマジで仕事早いね。ちゃんと寝てるか?
身体だけは壊すなよ。

「恐縮です。あと、人材募集の件ですが……」

うん。どったの?

「正気ですか?」

なにがよ?

「“唯才是挙”、これは儒教に真っ向から喧嘩を売っています。さらに無闇矢鱈に人を集めては、叛意ありと見做されるやもしれませぬ」

曹操様の十八番、“才さえあれば罪人でもおっけー”。
蒼天航路とかでは非難轟々だったっぽいけど、所詮辺境太守の一家臣程度が施行するくらいじゃそこまで耳目も集めんでしょ。ほら、潘璋とかも荒くれ部隊みたいなの作ってたし。あれは蒼天航路だけなのかな?

「人集めの件に関しては、賈駆に話を通しておくつもりだ。
反発については気にするな。悪評の一つや二つ、逆に箔が付くってもんだ。」

見栄を張る私。

「しかし……」

「ああ、“唯才是挙”にはもちろん異民族も含めろよ。女子供でも構わん。とにかく才あるものを集めよ。」

ていうか逆に女子供が重要なんだよね、この世界。

「……将軍、あなたは、いったい何をなさるおつもりですか」

青田刈りって、知ってっか?



そんなカンジで自分的にがんばってたら賈駆ちゃんから呼び出しです。マジこわい。

「あんた、ずいぶん好き勝手やってるみたいじゃない」

だいぶ怒ってます。プンスカプンスカって感じではなく、あぁん?てな感じでメンチ切られてます。
さらに呂布に張遼、陳宮ちゃんとそろい踏みです。みんな無表情。対応ミスれば速攻で殺が降されそうです。
董卓ちゃんがいないのはまさか純粋な彼女の目を貴様の汚らしい血で汚すわけにはいかん的な理由なのかしら。本気じゃん。
まあこんなにも対応が怖いのは理由があるのです。実は、以前の華雄は董卓派にいながらもこの人たちとうまくいってなかったみたいなのです。

董卓派の生命線は少ない将たちが上げる武勲です。
賊だの異民族だのの首をアホみたいな量挙げることで、董卓派強し、一筋縄ではいかぬという印象を持たせて牛輔派との均整を辛うじて保っていたんです(無茶苦茶な方法だが、それを実行してしまうのが一級の彼女ら)。
が、実のところ、華雄はブッチギリで役に立っていなかったんですねこれが。
個人的武勇に頼った前時代的な戦術でみんなの足を引っ張りまくっていたようで。
なまじ呂布という成功例がそばにいたから諦めきれずに、一般的な現代人の私が見てもお粗末な戦を繰り返していたのです。
そりゃあ距離置かれるよね。もちろん真名交換とかしてません。
賈駆ちゃんに至っては自分がとった策(無名の人物の引き上げ)の唯一の失敗例として目の敵にされています。ていうか普通に嫌われています。相性も悪かったみたいですしね。
さらに終わっていることに、彼女らに相談するのはプライドが許さなかったらしく、牛輔派の郭汜さんに頻繁に兵法を教わりにいってたらしいです。
空気読めないにもほどがあるよね。
そんでもって最近なんかコソコソしてるってんで、いよいよ怪しいってなったみたいです。

まあつまり、私が牛輔派に抱き込まれていらん工作をしようとしていると思われてるわけですね。現在。
……どう言い訳したらいいんだよ。

「バレないとでも思ってたの?」

お前がやってることは全部まるっとお見通しだぜ?おらおらとっととゲロっちゃいなってカンジがすごいです。
まあ私としては別段悪いことしているということはないし、牛輔派と繋がっている事実もないですし、ここは正直に全部ぶっちゃけちゃえばいいんですよね。

「まあ隠すつもりもなかったしな」
ほいっと竹簡を机の上に乗せる。

「なに?これは」
怪訝な表情の賈駆ちゃん。

「牛輔派への武威を使った牽制がいつまでも持つとは思えん。目に見える形の功績が必要だ。内政面のな」
はい?という顔の賈駆ちゃん。畳み掛ける。

「これは私が幕僚と練った新たな内政案だ。施行されればそれなりに財政が改善されると思う。さらに」
数巻の竹簡を追加する。

「財政に余裕が出たら施行してほしい案件だ。雇用対策と軍装備の改善、そして情報操作による地元住民の懐柔策について纏めてある」
実際に軍事行動についたり、屯田制度案を構築するために内政に携わったりした中で応用できそうな現代知識を案件化したものだ。
具体的には鐙と蹄鉄の実用化についてと、軍組織と切り離した警察組織の設立と民営化による雇用増と治安改善策。
そして自信作である立て札を用いた政府広報。つまりは新聞だ。これが流行すれば情報操作が大幅にしやすくなる。現代日本人もテレビに騙されて民主党に票を入れる人が大半だったしね。メディアの情報操作力はハンパないのだ。
この三つをひねり出すのにも多大な労力が必要だった。主に李儒とその学友の。

「性急な人集めはそのためってわけ?」
脳味噌からっぽのはずの華雄がいきなり内政案を出してきたことで、張遼と陳宮ちゃんは動揺著しいが、賈駆ちゃんはすぐさま立ち直したようだ。
呂布は眠そうだった。

「それもあるが純粋に部隊の層を厚くしたいというのもある。私は用兵に関して才が乏しいからな」
自尊心が高かったはずの華雄のこの言葉は効いたようだ。
賈駆ちゃんは屯田制度についての竹簡を流し見る。

「屯田ねえ。たしかに有効ではあるけど、現状でそこまでの移民は見込めないわよ?」
事実だった。飢饉が起こっていない分、この世界の民にはまだ余裕がある。
先祖伝来の土地を去るには、役人の腐敗だけではまだ弱い。しかし、

「おそらく数年後、民を主体とした反乱が起こる。漢王朝打倒を目的とした、大規模な反乱が。それを吸収し、勢力を増強するべきだ」
その土台を作っておくため、早期の導入は効果的なはずだ。この世迷いごとを信じるならだが。

「にわかには信用できないわね。情報源は?」

「天だ」

「なに?」

「天が言っている。反乱は漢王朝の勝利に終わるが、群雄が割拠する時代が来る。先んじて自力を増す必要がある。優位に立ちたいならな」



その後の会話はダイジェストでお送りします。

「正気?」
「正気だ」
「そんな不確かな情報、信用できない」
「ここには三万の黄巾賊が来るらしいぞ。ああ、黄巾賊っていうのは反乱軍の名称だ。正確には黄巾党というらしい」
「黄巾?三万って、そんなの対応できるはずないじゃない!」
「それに関しても策がある。軍師殿の意見が聞きたい」
「ちょっと待ちなさい、あんた、知ってること全部吐け」
「大まかな流れしか知らんし、我々の動きで歴史も変わるかもしれんがいいか?」
「なんでもいいから全部話しなさい!ねね、あんたもこっち来なさい!霞は書記しなさい!いい?一言も漏らすんじゃないわよ!!あと恋、寝るなら帰って寝なさい!!」



というわけで知ってること全部(恋姫無双の三国鼎立までのだいたいの流れ)ぶっちゃけました。
ただの元現代人の現猪武者があーだこーだ悩むより、トップクラスの軍師に任せたほうがいいに決まってるよね。
ある程度の裁量権ももらえたし、万々歳でした。
やったね!



[24405] 第四話 唯才是挙
Name: 徳川びっくりまん◆60293ed9 ID:83d6c903
Date: 2012/03/15 12:19
コーエーの三国志だって、人材集めたもん勝ちじゃん。



第四話 唯才是挙



今日は採用試験です。“唯才是挙”。どんな人材が集まったのかわくわくです。
あわよくば原作メンバーとか来てないかな。

「将軍、そろそろお時間です」
時間の到来を告げてくれたのは李粛さん。案件製作を手伝ってくれていた李儒くんの学友です。
呂布と同郷で仲も良いらしいです。ご飯を一緒に食べているのをよく見ます。すらっとしたできる人オーラを出してる女の人です。
屯田制度の施行を賈駆ちゃんから任されてしまったので、担当する内政官チームのリーダーに抜擢してみました。
女性なのに原作で出番がなかったのは文官だからなのかな?その他大勢的な?

「よし、行くか」
実力審査はすでに終わっています。
李儒くんと李粛さん、あと副将の胡軫の手によって。また丸投げしておきました。権力って素敵。
胡軫は普通におっさんでした。正史では上司だったんですけど、この世界では副将です。
やっぱこの世界って演義ベースなんですかねえ?

私がしなければいけないのは人格面の審査。つまりは面接ですね。
さすがにこればっかりは人任せにはできません。ていうか純粋におもしろそうですし。
就職活動を思い出すなあ。

「一番、入れ」
李儒くんが就活生を招き入れます。

「性は高、名は順」
はいそうですいきなりのビックネームなんです。ちょっと緊張します。
手元の資料によると(賈駆ちゃんに借りた諜報員を使ってある程度の身元調査はしました)、以前は并州で武官として勤めていたらしいですが、厳格すぎる性質で他者とたびたび衝突し、口論になった同僚を殺害して出奔したらしいです。
一人目からナチュラルにお尋ね者ですね。わかります。
追手もダース単位で死傷者を出したそうな。
まあそのくらい史実の関羽や徐庶もやってますしね。全然許容範囲です。
武官時代の成績も良いし、この場に堂々と現れる胆力もなかなか。無愛想すぎるきらいはあるけど、たいした問題とは思えませんね。

「同僚とよく衝突してたようだが、逃亡生活で少しは処世術を身に付けたか?」

「以前よりは」

無愛想なのは変わってなさそう。ていうか事前に身辺調査されてるのは織り込み済みなのか。有能な野戦指揮官、っていうイメージだったけど、頭もいいのかな?
まあどっちにしろこんなビックネーム逃す手はないよね。仮に同姓同名の別人だとしても、それならそれで頭角を現すことなく埋もれていくでしょ。出身地的にビンゴだとは思うけど。

その後いくつか質問を交わし、答えに満足する。

「いいだろう、採用だ。華雄隊へようこそ」

重々しく拱手して退出する高順。人見知りなのかな?




以下ダイジェストでお送りします。

「魏越です」
「下着ドロだって?」
「下着を愛しています」
「私に勝てたら脱ぎたてをやるぞ。李粛の」
「ちょ」
「うおりゃあああああ!!!!」

「薛蘭といいます」
「傭兵?」
「経験は豊富であると自負しております」
「普通すぎてつまらんな」
「殺した敵の皮を剥いで木に吊るすのが趣味です。あと強敵だったものは頭蓋骨を採取します」
「なんだプレデターか」

「李封と申します」
「退役軍人で脱獄囚なんだって?」
「ただ村を歩いていたら難癖を付けられ、理由もなく投獄されました」
「んで護送中に逃亡、か。きっちりと役人も殺してるな」
「たまたま投げた石にあたり、崖に落ちていきました」
「潜伏期間中は山に篭ってたのか」
「罠には自信があります。役人の私兵をたびたび撃退しました」
「ランボーか。ちょっとわかり難いな」

「成廉だ」
「食い逃げ常習犯か」
「違う。あまりにもまずい飯を出すもので、金を払う価値もなかったのだ」
「ふむ、ちょっとこのお茶を飲んでみてくれ」
「この茶を煎れたのは誰だあ!!」
「やっぱりか」

「魏続です!」
「お嬢ちゃん何歳?」
「12歳です!」
「ふむ、簡単に略歴を言ってみて」
「8歳で家族を殺されたのでふくしゅうしました!それからは旅人をおそってくらしてきました!」
「山に捨てられたのが?」
「5歳です!」
「家族は?」
「狼!」
「殺したのは?」
「じもとのりょうしです!」
「それで村一つ潰したの?」
「しばらくごはんに困りませんでした!」
「マジかよ」

「拙者、宋憲と申す」
「流れの武芸者か」
「師から受け継いだ武を試しております」
「お前の行く先々で家畜の牛が消えてるんだが」
「戦う相手が、欲しい」
「ちなみに視神経は首通ってないから」

「侯成っす」
「痴漢かあ。なんか魏越と被ってるなあ」
「いやいやいや、俺の守備範囲は9歳以下です。二桁いっちまったらババアですね」
「わかりやすい変態だな」
「フヒヒ、サーセン」
「あーお前の額の”2”って刺青そういうことか」

「……曹性」
「また無愛想なやつだな。地元では仙人って呼ばれるほど有名な猟師だって?なんだって仕官してきたんだ?」
「犬が、いねえからよ」
「邪眼持ちのフクロウとか殺さなかった?」




「ふう、さすがに疲れたな」
経歴がやばいのはまあいいんだけど、人格がアク強すぎだろ。
やっていけるのかな私。

「先行きが不安でたまりません」
李儒が言う。さすがに他の面々も疲れが見える。
ていうか正気か?って目で訴えてきます。
私は上司だからまだマシだけど、こいつらは同僚だもんなあ。また苦労することになるんだろう。ごめんね。

申し訳ない気持ちでいっぱいになっていると怒声が聞こえてきた。
受験生の待機室からだ。
受験生同士が喧嘩しているみたいです。おもしろそうなので行ってみましょう。


 待機室で一人の男と二人の男女が睨み合っていた。
一方は筋骨隆々でちじれた髪をそのまま伸ばしたライオンのような巨躯の男。
もう一方は斜視のいかにも危ない異常者然とした痩せぎすの男。それと、その背後に佇む女性。スレンダーな美女だが、その目は猛禽類の目だった。
 三人の諍いを、少し離れた壁に寄りかかりながら見ている、地味だが美形なチンピラ風の優男がいた。彼はその争いに興味がないらしく、見事にやる気のない目をしていた。


「てめぇ、もういっぺん言ってみろ」
 ライオンのような男がドスを効かせた声で唸る。

「何度でも言ってやるぜチンカス野郎。人和なんて阿婆擦れの色狂いだ。きっと公演のたびに役人に股ぁ開いてんだろうぜ」
 斜視の男がせせら笑うように返す。

 斜視の男を食い殺しそうな目で見ていたライオンのような男の目が正気を失ったように憎悪に燃える。
そのまま斜視の男に襲い掛かろうと身を沈ませるが、鷹の目の女が静かに臨戦態勢で斜視の男のそばに移る。足運びだけで相当な達人であることが伺える。ライオンのような男も、その身から滲み出る気配から卓越した武人であることがわかる。
斜視の男はニタニタした笑いを浮かべている。挑発したままの姿勢であったが、その手には光り物が握られていた。面接にあたり武装は解除されていたはずだが。

「やめよ」
 殺し合い一歩前の場に華雄の声が響く。
一同が一斉に華雄に意識を向けるが、目線は相手から離れなかった。

「貴様ら、ここがどこだかわかっているのか!!」
 胡軫が叫ぶ。華雄は彼を手でさえぎり、一同に近寄る。
李儒と李粛はあまりの事態に立ち尽くしたままだ。

「名を名乗れ」
 三人は再三の問いかけにようやく臨戦態勢を解く。

 まず口を開いたのは斜視の男だった。
「性は楊、名は奉。河東の白波賊を率いていた。そこの女は徐晃。俺の部下だ」
 視線を向けると徐晃は静かに拱手する。

 続けてライオンのような男が口を開く。
「性は周、名は倉。山賊だ」
言うが早いが周倉はまたも楊奉を睨みつける。

「お前は?」
 一人我関せずと壁にもたれかかっていた優男に華雄は声をかける。

「裴元紹。周倉の相棒だよ」
 冷静にこちらを観察しながら気の抜けた拱手をする。

「お前は暴れる気はなさそうだな」
 胡軫が言う。裴元紹は肩をすくめ、やはり気の抜けた声で返す。

「オレ天和ちゃん派なんで」




結論だけ言うと全員採用しました。
男三人は全員張三姉妹のファンでした。さすが史実では黄巾党。
張三姉妹は未だ全国を旅しているらしく、そこまでの求心力はないらしいです。
それだけに現時点からのファンである三人はその情熱たるや、ものすごいものがあります。
ちなみに徐晃ちゃんは楊奉に惚れてるくさいです。
まあ北郷一刀がハーレム作っちゃうような世界ですから不思議ではないんですが、あんなのにねえ。
ちなみに原作メンバーはいませんでした。
郭嘉とか程昱とか趙雲とか諸葛亮とか龐統とか期待したんですけどねえ。
まあ結構いい人材が集まったのでよしとしますか。
先行きがとんでもなく不安ですけどね。
そこらへんは李儒くんとかにがんばってもらいましょう。
がんばれ李儒くん超がんばれ。



[24405] 第五話 結果と責任
Name: 徳川びっくりまん◆60293ed9 ID:205a4d58
Date: 2012/03/15 12:38
どうしてこうなった。



第五話 結果と責任



 薛の旗を掲げた別働隊が、本隊を押し込んでいた張繍隊に側面から襲い掛かる。
別働隊は騎兵で構成されており、数は五百。これは華雄隊に所属する騎兵のすべてだった。

 張繍のもとに伝令が走る。
「防衛陣第一陣、突破されました」
「薛っつたら薛蘭か。ぽっと出の分際でなかなかやりやがる」
馬の扱いに秀でる羌族と散々争ってきた涼州兵である。経験に裏打ちされた騎兵対策は、隅々まで浸透されていたはずだった。

「これが鐙ってやつの効果かい」
 華雄隊の新装備の性能に興味を持っていかれた張繍は、粘り強い抵抗を続ける華雄隊本隊を見つめる。
奥深い用兵をするようになった。それは認める。
だが、側面の防衛を指揮するのは長年共に戦塵にまみれてきた胡車児である。彼の豪傑が指揮する部隊の防御力は、董卓軍内でも随一だった。
抜けるのは精々董卓軍最強の将・徐栄か、抜群の戦巧者である樊稠か、爆発力のある郭汜ぐらいだろう。以前の討伐出兵で千万・阿貴を単騎で討ち取った呂布や、郭汜の弟子(のようなもの)である華雄ならばあるいは、と思うところもあるが、最近の華雄は郭汜ゆずりの蛮勇を奮わなくなって久しい。それに、華の旗は目の前の本隊にある。
 十中八九、負けはない。

 張繍は自慢の副将の腕を信頼していた。
別働隊は封殺できる。別働隊との連携を断たれた本隊は、痩せ細り、潰れる。
張繍は勝利を確信した。

 別働隊の先頭、五十騎が錐のように鋭くなり、さらにスピードを上げる。
五十騎が、華の旗を掲げる。
五十騎の先頭は華雄だった。

 陣が突破されるを、張繍は見ていた。
郭汜ゆずりの蛮勇は健在で、さらに猪口才な工夫をこなすようになっている。
しかし、総帥が前線で、しかも少数の兵を率いるとは。

「まともじゃねえな」
 張繍は笑みを浮かべる。
勝利への鍵、張繍軍の防衛陣を突破できるのは、華雄しかいない。だから出る。
単純明快だが、兵法に真っ向から逆らう行為だ。
これが愚考か英断か、張繍は判断が付かなかったが、嫌いではなかった。
だから、本隊の指揮を幕僚に任せ、張繍は本陣に迫りつつある五百騎に、麾下の精鋭を率いて向かっていった。



華雄に憑依してから二年が経ちました。
屯田制度は施行され、割と効果を挙げています。
私なんかは今のところ数が少ない流民にしか適応できないし微妙だなあと、提案者なのに思っていたんですが。なんと賈駆ちゃんは流民だけではなく捕らえた賊まで帰農させちゃいました。
目から鱗ってこういうことですね。たしかに賊は他州とは比べ物にならないほどいますし。もしかして曹操とかもこうやって施行してたのかもしれませんね。さすが一流軍師です。

内政チートものでおなじみの鐙は華雄隊でのみ実験装備され、実用性を証明しています。騎射ができるようになるだけではなく、踏ん張りが利くので馬上槍がかなり強くなりました。
ぶっちゃけうちの部隊最強です。羌族にも余裕で勝っちゃう。馬の質でまだ微妙に負けてるけど。
まあそのうち全軍に配備されることになりそうなので、すぐにみんなと並んじゃうんでしょうけど。
蹄鉄は鉄の産出量的に無理らしいです。残念。

政府広報ですが、涼州は異民族と共存しているような地帯なので、識字率が非常に低いんですね。立て札出しても誰も読めなかったりします。
だからまずは民の教化から始めなければいけないんですが、人手が全然足りない。
記事を書くにもそんなバラエティなこと書ける人なんていそうにないですし、アイディアはいいんですけど土台がないってことでちょっと棚上げです。残念。

それ以外にも賈駆ちゃんは色々やっているようです。時々意見を聞きに来ます。
施行はほとんど李粛さんに丸投げている模様。
私も思いついたものはとりあえず賈駆ちゃんに話してみてますが、現時点で使い物になるものは少なそうです。お金って大切ですよね。

人材面はだいぶ好転しています。
積極的な人材登用に加え、思いつきで漢中から流れてきた五斗米道の医師たちで医療師団を作ってみました。
つってもまあ最初は三人ばかりの医師を食客として手厚く保護してできる限りの研究援助をしていただけなんですけど、医術の良き理解者と認識されたらしく(この世界でも現時点では医術はあまり重視されてなかったぽいです)、あれよあれよと言う間に漢中の指導者張衡に紹介されてやたらと感謝されてしまい。なんかいけるかも?と思って医術の効果と漢中医師団の実力を賈駆ちゃんに力説して、漢中医療師団の経営を認めさせちゃいました。

董卓ちゃんは五斗米道の教義を犯すことなく、医師たちは患者の貴賎を問わず多くの人々の命を救っています。それにより董卓ちゃんの徳は大きく高まり、涼州中で評判になっています。やったね!私の名前全然入ってないけどね!

現在までに採用された唯才の士たちは、諍いや再犯などで死んだり刑死したり、普通に戦争で死んだりして五分の四くらいにまで減ってしまいましたが、残りの人たちはそこそこ役に立っているみたいです。

周倉、楊奉、高順はそれぞれ裴元紹、徐晃、曹性を副将に一軍を任されるようになりました。
高順と曹性は無愛想同士相性がいいようです。
それとは反対に魏越と侯成は変態同士だというのに相性が悪いです。
片や布に興奮する異常者、片や全国の親御さんの敵と罵り合っています。
そんな二人は軍全体から汚物と見做されています。
正直きもいです。
みんな嫌がったので高順隊で引き取ってもらいました。
この二人に耐えられる高順と曹性はすごいと思います。

狼少女魏続ちゃんは呂布に懐いてたのであげちゃいました。
動物的な女の子だから呂布も可愛がっているようです。
今頃陳宮ちゃんとしのぎを削っていることでしょう。

宋憲は張遼に腕試しに突っかかってボコボコにされてから張遼隊預かりです。
本人の意思で一兵卒から入隊して、そろそろ士官になれそうなカンジです。
ことあるごとに張遼に対戦を挑んでは負け続けているらしいです。

成廉は軍隊の粗食に耐え切れなかったらしく、内政官として糧食関連の部署にまわされました。
今度新政策として行われる異民族との交易の食料部門担当官になるそうです。
現代知識的な栄養観を教えてあげたらえらく喜ばれました。
領民の栄養対策や新しい携帯食料の案も出してるみたいです。
この前実験作を呂布と魏続ちゃん、陳宮ちゃんと一緒に食べさせてもらったのですが、普通においしかったです。

李封は賈駆ちゃん麾下の諜報部隊に配属されました。
たまに家に来て情勢とかを色々教えてくれたりします。
筋がいいようで賈駆ちゃんがお礼を言ってきました。
本人も楽しそうです。

薛蘭はうちの隊のエースです。
最近頭蓋骨コレクションが五十を超えたと喜んでいました。
そんな彼の家は幽霊が出るともっぱらの噂です。
隊の者が何人か見たそうです。
私は絶対に彼の家にはいきません。

お気づきでしょうか。
多くの人材が多方面へと配属されています。はい。
最初は華雄隊でのみ活用しようと思っていたのですが、思いのほか人材不足だったらしく、賈駆ちゃん主導で広く配属されることになりました。私の推薦ということで。
はい、私の推薦です。ここで最初に戻ります。”五分の四が諍いや再犯などで死んだり刑死した”。
華雄隊内のみでならいくらでも揉み消せたのですが、多くが他所に流れてしまっていたので、揉み消すことができなくなりました。
さらにさらに”唯才是挙”が大々的に公布され、受け口が私ということが広く知れ渡り、私の悪名は鰻登りです。さらに仕事も増えてサボれなくなっちゃいました。
最初は丸投げしてたんですけど、ついうっかり李儒くん過労死させそうになっちゃって……。怒り狂った李粛さんに追い掛け回されて死ぬかと思いました。なんであんな強えんだよ李粛さん。文官ちゃうんかい。

んでそれからいくらかは悪評を緩和できるかと思って汚職役人を次から次に処断しまくり、家財をボッシュートしていたらさらにボロクソに言われるようになりました。
全部国庫に返還しているんですが、噂では私が懐に入れてることになっています。なんでやねん。
調べてみたところ、処断した役人の親族が悪評をガンガン広めているらしいです。なんてこったい。
反対に賈駆ちゃんは屯田政策で流民を保護していることや大胆な政策、高い内政手腕が評価され、賢臣と呼ばれ人気者です。

董卓ちゃんは大徳の君、賈駆ちゃんは比類なき賢臣、私は邪教(五斗米道)徒や異民族を従え罪もない民草をいびり倒す残虐非道の悪魔将軍。
そんな噂が中央にまで広がっているらしいです。
人生は「こんなつもりじゃなかった」の繰り返しですね。ふぁっきん。


「やるじゃねェか華雄。負けたぜコンチクショー」
 模擬戦相手の将が声をかけてくる。
金髪をリーゼントにして革ジャンを着込んでる若い男だ。
名前は張繍。牛輔派の重鎮、張済の甥である。

「次回は私としようよ、華雄」
 華雄に後ろからしなだれかかっている女性は樊稠。
黒い着物の裾からガーターベルトが覗いている、むせ返るような色気を醸し出す妙齢の女性。こう見えて抜群の戦巧者である。

 この二人は華雄を通して董卓派に入った元中立派だ。
張繍は若手のホープ、樊稠は実力派の将軍として一定の影響力がある。この二人が董卓派に入ったことの意味は大きい。中立派の代表ともいえる二人が董卓派に入ったことで、残りの中立派もその多くが董卓派に入ることになり、力関係は均整した。
さらに董卓自身の名声が高まったことにより、董卓派はだいぶ有利になってきている。
 組織の一本化への、大きな一歩だと言えた。



うーん、原作開始までにはなんとかしたいなあ。



[24405] 第六話 牛輔という男
Name: 徳川びっくりまん◆60293ed9 ID:83d6c903
Date: 2012/03/15 12:39
変化する涼州。



第六話 牛輔という男



「納得がいかんのだ」
 二人の男女が一室で話し合っている。
一人は華雄隊生え抜きの軍師、李儒。
もう一人は董卓軍内政官で李儒の恋人、李粛だった。

「屯田を発案したのも華雄様、人材の発掘、育成に尽力しているのも華雄様だ。それだけでなく他にも様々な献策をなし、結果を残しておられる。
なのになぜそれらの功績が明るみに出ず、全て賈軍師様の功績となっているのか。挙句施行に関する全ての悪名を擦り付けられて、なぜ華雄様は依然としておられるのか。私には理解できぬ」
李儒が苦虫を噛み潰したように言う。

「華雄様は有名税とおっしゃられていましたね。凡百の言にとらわれず、正しいと信じた道を進んでおられます。あれこそ大器というのでしょう」
 李粛も華雄の推挙により、出世を果たしていた。たとえその出世と華雄と賈駆の手懸ける改革で忙殺されかかり、やっとの思いでとれた休みで久しく会っていない恋人との逢瀬を楽しもうとしたのに、なぜか延々と華雄の愚痴を聞かされ続け「仏の李粛」の異名を持つ彼女の頑丈な堪忍袋がストレスでマッハでも、華雄に対する尊敬は変わらなかった。
しかし目の前で堂々と他の女の話を繰り広げている空気の読めない恋人は別である。彼女の中で李儒の株は、彼が一言「華雄」というたびに下がっていった。つまりは大暴落である。

「それにしたって、度が過ぎておられる。今や華雄様は、行政府以外の土地では、悪鬼のごとく恐れられているのだぞ」
 そんなこととは露知らず、李儒は己の株を下げ続けていった。このままでは不渡りを出す日も近いだろう。


 臧覇は処刑場に来ていた。
今日は七人が処刑されるらしい。大半が唯才ということで登用された者たちだった。

 唯才是挙制度は主に才あれど資金的人脈的に難があり仕官が難しい人物を召し上げて人的不足を補おうという華雄の案であった。
しかし何を間違ったのか前科者お尋ね者現役犯罪者といった社会不適合者の応募も相次いだ。
華雄の方としても当初の予定としては自隊内のみでの採用だったので、問題が起こってもすぐさまもみ消せると踏んでおり、これらの者の採用を軽い気持ちで許可していた。

 実際のところ華雄隊内のみで施行しているころは何の問題もなかった。問題は起こった端からもみ消され、起こした人物もまた内々に処理されていたのである。
これにより登用された者たちは軍役に耐えられるよう調教され、華雄の指導の下更正されていった。

 これに目をつけたのが賈駆である。
彼女はこれを人材不足に喘いでいた董卓政権の打開策として大々的に施行したのだ。
責任者として指名されたのは発起人の華雄である。限定的とはいえど一定のノウハウを持ち、また人材不足の主な理由である数々の新政策の発案者でもあり、日々ワーカホリックぎみにイモリの黒焼きやらニンニクやらを齧りながら新政務の施行に向けて東奔西走する賈駆に罪悪感を持っていた華雄は首を縦に振らざるを得なかった。

 そうして施行された唯才是挙制度であるが、士官者の身元調査や実力検定の徹底、さらには研修制度の設定とフォロー等々、華雄以下幕僚たちは精一杯働いた。
そんな華雄たちを悩ませたのが採用者の乱暴狼藉だった。元が社会不適合者であった者たちの一部は、手に入れた権力を新しく与えられた玩具のように無邪気に振り回したのだ。
面接では猫を被っていたのかもしれないが、史実の董卓も権力を握った途端に暴君になったというし、涼州の武辺者にはもともとそういった傾向があるのかもしれない。

 華雄はこの事態を重く見、かつて自隊内で行っていたことをそのままスライドさせた。つまりは処刑である。
ただ殺すだけではなく、公開処刑という手をとった。もはやもみ消せる範囲を大きく超えていたので、逆に見せしめにしたのだ。
自らが選抜した者の不祥事ということで一時問題にされたが、そこは持ち前の太い神経と一級の軍師の頭脳を借りて乗り切った。
悪人といえども人の死に胸を痛める董卓の非難と賈駆の「もっとうまくやれ」との小言を受けたが、現状これ以上うまくやる策がないことと取締りの副産物として治安が向上していることを理由にそれ以上の干渉はなかった。
 こうしたことにより華雄は人の命を簡単に奪う人非人としてさらに恐れられるようになっていった。

 臧覇が来ていたのは上記の理由により月に一度大々的に処刑が行われる処刑場であった。
処刑場は一切の取り仕切りを志願して任された薛蘭の演出でおどろおどろしい雰囲気に包まれていた。
パフォーマンスの意味合いが高い公開処刑ということで、華雄の発案で視覚効果の高いギロチンが使用されることになっていたが、何を思ったか薛蘭はその全てを人を材料に作った。
罪人はその足を白骨化した手足で固定され、胴体は幾重にも組み重ねられた肋骨で台にとどめられ、手と頭を幾人かの屍が抱きとめているような形で作られた板によって挟みこまれる。薛蘭なりのジョークなのか、罪人の顔が固定される場所にある頭蓋骨には女物の化粧がされており、唇にあたる部分には大げさな紅がひかれていた。
薛蘭の丁寧な処理と組み立てで作られたそのギロチンは、ほとんど芸術的といっていいほどに美しく、それ以上に禍々しかった。
ギロチンの周辺にも趣向が凝らされている。頭をボールのように持った首なし死体、腸を体に巻きつけポーズをとる死体、手と足が逆に縫合された死体などがユーモラスに罪人を囲むように配置されていた。
これは余談だが、華雄が責任者として完成した処刑場に最初に訪れた時、「なにこの人体の不思議展」と呟いたと言う。

 そんな処刑場での処刑は、強烈なインパクトと処刑器具の珍しさにより、そもそもほとんど娯楽に無縁であった民に最高のエンターテイメントとして受け入れられていた。
民衆は罪人の首が飛ぶごとに拍手喝采し、集団の熱狂と血の狂気に浸り、イベントが終わるとそそくさと解散し日常に戻った。
今日は臧覇もその一人である。

 臧覇の父は名を臧戒といい、県の獄掾(牢獄の役人。割と下っ端)をつとめていた。
臧覇が十八歳の時、太守が正当な理由もなく自分勝手に死刑を行なおうとしたが、臧戒はこの横暴に対し法を根拠にして強く諌めた。
太守はこの反抗を大いに恨み、臧戒を捕縛、役所まで連行した。その護送の数は百を超えていたが、臧覇は臧家の食客数十人を集め、護送の集団が山を通過する際に襲撃。見事父を奪い返し、太守を殺害後、涼州へ逃亡。牛輔のとりなしにより亡命し、以後牛輔の親衛隊を率い勇戦。働きが認められ正式な将軍となり、牛輔の用心棒的な役割を担うことになった。

 ではなぜ牛輔派の有力な将が、董卓派の中でも重要な位置を占めるようになった華雄主催の処刑場に来ていたのか。
別にただ街をフラフラしていて行き着いただけである。
将軍といえど休日には酒くらい飲むし、なんとなく憂鬱で何もしたくなかったり、手持ち無沙汰に街を散歩することだってある。
この日臧覇は特にやることがなく、酒場で朝からゆるゆると酒を飲み、何を買うでもなく市場をひやかしたり、小腹が空いて屋台で買い食いをしたり、景色のいいところをただ歩いてみたりしているうちに、偶々処刑場に辿り着いただけであった。
 そんなわけでとりあえず今日の分の処刑を見物し終え、役人が死体を回収するのを視界の端に写しながら、晩飯は何を食おうかと考えているときだった。牛輔にバッタリと出会ってしまったのは。

 牛輔と目が合って臧覇は非常に嫌な気持ちになった。
それというのも臧覇は牛輔によって父と共に助けられてから長きにわたりその下で働いてきたので、牛輔がどういう人物なのかを深く理解していたのだ。牛輔は臧覇が今まで出会った人物の中でダントツに最低の人間だった。人間にちょっと似た猿や馬を含めてもダントツに最低だった。

 臧覇が牛輔に出会ったのはまだ先代の董君雅が健在だった頃だが、そのときからすでに老人のような顔をしていた。
しかしその老け顔は立派だった。眼光鋭く鼻筋は通っており、刻まれた皺の一本一本にいたるまで知性の苦悩の痕が感じられるような顔だった。

 董君雅の弟だった牛輔は占いを狂信し、ほとんどすべての判断を占いに委ねていた。占いで誰とも会ってはならないと出たら幾月でも引き篭もり、逆立ちが吉と出たら気を失うまでそのまま過ごし、全裸で過ごせと出たら逸物をブラブラさせながら登庁し、凶を運ぶ人間と出たら親しく交際していた者でも容赦なく殺した。
その占いも胡散臭い古文書や易者のものを自己流でブレンドし、コトコト煮込んで熟成させたけったいなシロモノで、出る結果全てが滑稽でまた過激だった。
そのような珍妙奇天烈なものを真面目くさった立派な顔で行うものだから、当然周囲は戸惑い、牛輔を狂人と判断した。

 侮蔑の目で見る周囲に構わず牛輔は奇行を繰り返していたが、あるとき一大転機が起こった。羌族と胡族が連合して襲来したのである。
董君雅の軍は陽動作戦により戦力を分散され、わずか五百の兵力で本拠防衛を行わなければならなかった。援軍も望めず、三千の羌・胡族の連合軍が迫り来る絶望的な状況下で、活路を切り開いたのは牛輔だった。
 牛輔はおそるべきことに本拠の守備兵力の全てを率いて野戦に出たのだ。しかし、誰もが無謀と思ったその奇襲は成功し、全ての敵将を戦死させた。全て、である。
その用兵は奇妙なもので、あらかじめ全ての敵将の位置が分かっており、それを討つことのみに目的を収束させたようなものだった。
帰還した董君雅が牛輔に「なぜ君は敵将の位置を尽く予測できたのか」と聞いた。牛輔は「占いに出たので」とのみ答えた。

 以後牛輔の占いを笑ったり諌めたりするものはいなくなった。ますますもって牛輔の占いは狂乱の影をより濃くしていった。
畜生の皮を生きながら剥ぎ、血の滴垂るそれを城下に貼りつけて回ったり、六本の弦と四本の弦を付けた首から下げる形の琴と複数の銅拍子と鼓を複合させた楽器を作り矢鱈と五月蝿い曲を弾いて騒いだ。

 料理にも狂気を発揮し、人間の頭部を切断、中身をくり抜き良く洗い、同量の水と米、細長く切った根野菜と油揚げに調味料を少々詰めると焼いた石と共に地中に埋め、蒸し焼きにしたものや、人肉を轢き潰し刻んだ玉ねぎを入れ焼いたものを野菜などをドロドロになり完全に濁るまで煮込んだ羹にからませて食した。
またそれを宴会などの時に訪れた人間に勧めるのである。牛輔の周囲にまともな人間は寄り付かなくなったが、そのかわり涼州中の狂人が集まった。
 臧覇はそんな上司の下で働いているのだ。その心労は並大抵のものではない。少なくともたまの休日にまで顔を合わせたいとは絶対に思わない。

「臧覇殿ですか。こんにちは」
 牛輔は凶悪・凶暴な本性に反して非常に丁寧な話し方をした。立派な顔に厳粛な表情を浮かべている。それが崩れたところを臧覇は見たことがなかった。
できればこのまま気付いていないフリをして立ち去りたかったが、声をかけられてしまったので何か言わんと具合が悪いと思い、注意しながら言葉を返した。
「あ、牛輔様ですか。いっやー全然気づかなかったなあ、ほんと。え、あれですか、牛輔様もあの、処刑をご見物で?いっやー偶然ですねえ」
「あなたの言う処刑とは先程行われた儀式のことですか。私は魂を見ているのです。つまりは死を見ています。知っていますか、魂というものは抜け出る時が一番美しい。具現化された死の美しさを私は見ているのです。もしくは私は私の視覚を通して死を具現化しているのです」
 全然意味が分からない。

「あ、そーなんですか。いやあボクも見たかったなあ。いや、でも、さすがですねほんと、なんて言うかやっぱり牛輔様ほど徳を積まれた方はやっぱ違うなー」
「徳ですか。私の所持する徳はどのような特質を持つのでしょう。私の道徳性は死を具現化することができるのでしょうか。ならば魂を見たいあなたは私と魂の残光を食べるべきです。腕によりをかけましょう。魂の残光を逃してはなりません」

 どうやら牛輔と飯を食うことになってしまったようだ。臧覇は処刑場に来たことを深く後悔したが、事此処に至っては逃れることはできぬと腹を決めた。
しかししばらくしてさっきまで死体を片付けていた役人が血の滴る大きな袋を牛輔に手渡したことで、臧覇は目の前が真っ暗になった。

「では参りましょう」
 臧覇は真面目くさった顔で言う牛輔についてトボトボと歩いていった。



[24405] 第七話 史上最大の反乱
Name: 徳川びっくりまん◆60293ed9 ID:6ea26fe6
Date: 2012/03/16 09:43
原作、開始。



第七話 史上最大の反乱



 馬元義は不第秀才(郷試に合格していない秀才 )だった。当時の朝廷は、銅臭政治と呼ばれるほど賄賂がまかり通る悪政をおこなっており、官位を金で売ることすらしていた。
卑賤の生まれである馬元義には、コネも金もなかった。実力だけでは、出世できない時代だった。
鬱屈した感情は、彼を反体制的な思想に染めていった。彼は、力を求めた。

 ある日馬元義は張角という女性を中心とした集団が急速にその勢力を拡大しているという噂を聞き付け、接触した。それは期待していたような反政治団体ではなく、ただのアイドルバンドとそのファンだった。
 馬元義は落胆の色を隠せなかったが、よくよく内情を探ってみると演奏・歌唱の秀逸なこと類を見ず、その歌は享楽的な生き方を肯定するような内容で、生きることに苦痛をおぼえている者たち、すなわち王朝に失望し続けていた民草にとって強大な支持を得ていた。
陶酔も隅々まで行き届いている反面、その性質ゆえバンドメンバーとファンとの距離がある程度離れており、組織としてはまったく機能していない。そのくせ官民問わずファンは多く、その勢力圏は州を跨いでいる。バンドリーダーの張角もカリスマ性があり、御輿として申し分ない。
 彼は即断の人である。ただちに県尉に通報した。
当時無許可の集団行動は禁止されており、案の定県尉は人をやり集会を厳しく取り締まった。無論その罪科は首謀者と思われる張角以下三人の少女に問われることになる。予想外に多くの人数が集まっていたことに面食らうも、役人は職務を全うしようとする。勿論人数について馬元義は虚偽の報告を行っており、派遣される役人が少数であることはわかっていた。
 張角たちが連行されるのを皆が固唾を飲んで見つめる中で、馬元義は叫んだ。
「張角様をお助けしろ!我らの手で張角様を守るのだ!役人ごときなにするものぞ、みな、我に続け!!」
この瞬間、民は暴徒と化した。

 扇動が成功に終わった後、馬元義はファン内で主導権を握る事になった。彼は主な支持層であった民衆を兵力に変え、各地の実力者たちに声をかけた。
その結果、冀州鉅鹿郡を本拠地として、豫州潁川郡の波才、荊州南陽郡の張曼成、その他各地の豪族、民衆、匪賊といった者たちが参加を約束した。
 彼はさらに陰陽五行思想に基づく「蒼天已死 黃天當立 歲在甲子 天下大吉」(蒼天すでに死す、黄天まさに立つべし。歳は甲子に在りて、天下大吉)といったスローガンを用意し、張角を天公将軍、妹の張宝・張梁をそれぞれ地公将軍・人公将軍と称した。乱の参加者には、黄巾を身に着けさせるようにした。これらは民衆の支持を得るための広報活動で、落日の漢王朝に失望していた民には大いに受けた。
馬元義は反乱準備の最終段階として、中常侍の封諝、徐奉を内応させた。
 馬元義は優秀な人物だった。この反乱のプロデューサーとして、獅子奮迅の働きをした。彼は根っからの革命家だった。
 しかし、彼は朝廷に潜入し密議を交わしているとき、部下の唐周の裏切りにあい逮捕され、翌日に車裂きの刑に処された。
馬元義の無残な死は各地の同志の憤激を呼び、これを皮切りに史上最大の反乱、黄巾の乱は起こったのである。

 渠帥(各地のリーダー)は、三十六の「方」という単位を組織した。「方」とは将軍号のようなもので、大きい方は一万人以上、小さい方でも六、七千人がいた。約三十六万人の大反乱である。みな黄巾を着け、同じ日に決起した。
 安平国と甘陵国の人は、それぞれの王である劉続と劉忠の身柄を拘束して、反乱に参加した。王民までもが呼応したのである。
 反乱軍は、洛陽を目指した。


 霊帝は仰天した。やっとの思いで財政を回復させ、これからは行政に意識を割ける、と思うようになった矢先のことだったからだ。
 即位したとき、財政が厳しすぎて政治どころではなかった。桓帝が、国庫をゼロにしてしまったからだ。
前漢皇帝を祭った県ですら、税を取り立てないといけないくらい、国庫は困っていた。たかが県の税収なんて知れているのに、まるで体面を繕うことなく、徴税を行わせたのだ。
 彼は官位を売った。元手がゼロなのに、馬鹿見たいな金額で売れた。どれだけ寵愛している者でも、霊帝はタダで任命しなかった。安くても代金を取った。
宮廷の中で模擬店をやったのは、モニタリングのつもりだった。購買者がどういう心理なのか、価格はどういう動きをするのか、調査するのが目的だった。市場のルールどころか、社会常識がない宮女が品物を奪い合って、失敗したが。
 それでも霊帝は諦めなかった。財務担当皇帝として、霊帝は前例がないほど有能だった。

 収支の面倒を見るだけでも、常人のキャパシティを越えた仕事だ。宦官は、完全に政治を代行してくれるから、忙しい霊帝には便利だった。
ただ、宦官は愚物だった。帝の行動を真似て、賄賂政治を行なったのである。霊帝は国庫を富ませることに全力を尽くしていたが、宦官は自らを富ませることに執着した。
 都の知識階層たちは、自分たちを清流派、宦官を濁流派と呼び、宦官に積極的に戦いを挑んだ。宦官は、皇帝が発する文書の全てを、見たり書いたり変えたり出来る。皇帝に権力が集中する制度下では、勝つ方法はなかった。
 国が富んだ代わりに、民は貧しくなった。
桓帝は気前よく、財物を与えたり、税率を下げたりしてた。だから飢饉が頻発しても、民の大規模な反乱までは起きなかった。しかし霊帝は救済策を拒んだから、民は限界に来ていた。堪忍袋ではなく、生命が切れそうだったのだ。

 霊帝は黄巾党のプロパガンダに対抗し、自らを無上将軍と名乗った。その後の対応についても、非凡なものがあった。
まず河南尹の何進を大将軍に任じて、兵を率いて洛陽城内に駐屯させた。さらに党人(党錮の禁で弾圧された、宦官勢力に批判的な清流派士大夫たち)が黄巾党に合流することを警戒し、これを赦した。
必死に溜め込んでいた朝廷の馬、武具を供出し、歴代の将軍の子孫および、吏民で戦略に明るい人を推薦させて、官軍に加えた。
 準備を全て整えた上で、北中郎将の盧植を、鉅鹿郡の張角の本拠地に派兵し、左中郎将の皇甫嵩と、右中郎将の朱儁は、頴川郡・南陽郡の平定に向かわせた。


 原作の始まり。それは後漢王朝滅亡までの、カウントダウンを意味していた。




[24405] 登場人物紹介 ※超ネタばれ
Name: 徳川びっくりまん◆60293ed9 ID:205a4d58
Date: 2012/03/15 12:50
登場人物紹介 

注意:滅茶苦茶ネタばれです。
   登場していない人も含みます。
   そのまま登場しない可能性もあります。
   設定が変更される可能性も十分あります。
   主に暇つぶしと作者が混乱しないために書いています。



【董卓派】

華雄
我らが主人公。憑依者。
兵法と内政知識を目下勉強中。
華雄の能力と記憶を受け継いでいるがほとんど役に立っていない。
呂布に憑依したかったなあと思ってる。
特技は仕事の丸投げ。
賈駆に新政策施行に関する悪評をすべて引っ被され、とんでもない悪人と噂されている。そのことについて本人は周りに強がっているが、実は地味に凹んでいる。


董卓
儚げな美少女。
羌族のある族長たちが面会に来たとき牛を潰してもてなしたり、朝廷から与えられた褒美を全て部下に分け与えたりしてたら評判が良くなり、父の後を継ぐことになった。漢の臣としてがんばってる。
実は武の才能があり、一般兵くらいなら片手で捻り殺せる。
最近では漢中医師団の活躍により、大徳の君と評判。本人は恥ずかしがってる。


賈駆
三国志トップレベルの軍師。
華雄の語った未来知識を、疑わしく思いながらもある程度は信用している。
でも子飼いの諜報部隊に華雄の監視はさせてる。
張繍とは幼馴染。
新政策の施行により比類なき賢臣と評判。本人は華雄に対して罪悪感を持っている。


呂布
不思議系腹ペコ天然天下無双少女。華雄10人くらいなら軽く殺せる。
自宅の動物園に魏続が加入した。


張遼
神速将軍。
関西弁。服がエロい。


陳宮
ちびっこ軍師。呂布大好きっ子。
新参の魏続にちんきゅーきっくをかましたところ、殺されかかったので本気でビビってる。


楊奉
元白波賊頭目。地和ファン。
斜視で異常者っぽい痩せぎすの男。
白波賊の稼ぎの大半を張三姉妹に貢いでしまい、追い出された。
周倉が嫌い。


周倉
元山賊頭。人和ファン。
筋骨隆々でちぢれ毛がライオンの鬣のように伸びている大男。
山賊の稼ぎの大半を張三姉妹に貢いでしまい、追い出された。
楊奉が嫌い。


高順
無愛想な堅物。無口。
用兵がべらぼうにうまい。
個性的な正、副将軍たちに囲まれ、没個性的な自分に悩んでる。


張繍
若手最ホープ。
金髪リーゼントに革ジャン。
叔母に惚れてて叔父殺害を虎視眈々と狙っている。
賈駆とは幼馴染。


樊稠
黒い着物とガーターベルトがエロい美女。
先代から仕えている。
実はレズビアンで快楽殺人者。




【牛輔派】

牛輔
董卓の叔父。
狂人。占い大好き。あと焼肉や鍋も大好き。


郭汜
牛輔派筆頭三将軍の一人。
董卓軍内でも重臣。華雄を後輩として可愛がっている。
比較的常識人。でも李確とはおホモだち。


李確(本編未登場)
牛輔派筆頭三将軍の一人。
董卓軍内でも重臣。郭汜とおホモだち。
いい歳なはずだがロリショタな外見。
華雄と郭汜の浮気を疑ってる。


張済(本編未登場)
牛輔派筆頭三将軍の一人。
董卓軍内でも重臣。同僚がホモと変態と野人で悩んでる。たぶん一番常識人。
美人な嫁さんが唯一の癒し。でも甥っ子に狙われてる。不幸な人。


徐栄(本編未登場)
董卓軍最強の将。
縮れたドレッドヘヤーを持ち、鋼のような筋肉に覆われた暴虐の王。
怒ると顔に通っているはずのない血管が浮き出て雷光が散る。
人を折りたたんで遊んだり、人の頭を握り潰したりするのが趣味。吃音。


郭萌(本編未登場)
郭汜のパシリだが下克上を狙っている。
でも基本ビビりなので成功する兆しはない。


臧覇
元侠者。
下っ端役人の父が身の程をわきまえずに太守に諫言し、怒りを買って捕まってしまったので臧家の食客数十人で奪い返し、ついでに太守を殺して亡命したのを牛輔に拾われた。
牛輔の用心棒的存在。


李暹(本編未登場)
李確の甥。故人。
徐栄の前でくだらない駄洒落を言って頭を握り潰された。


李利(本編未登場)
李確の甥。故人。
徐栄の前で屁をこいて頭を握り潰された。





【副将格な人々】

李儒
華雄隊生え抜きの軍師。
有能だがそれゆえよく華雄に仕事を丸投げされているかわいそうな人。
実は李粛と付き合ってる。裏設定として精力絶倫だが、本編で触れることはない。
基本不幸。


胡軫
華雄隊副将。
実力は可もなく不可もなく。
妻子持ち。最近娘が自分と変わらない歳の彼氏を家に連れてきて凹んでる。
悩めるマイホームパパ。


李粛
内政官。李儒の学友。
呂布とは同郷で仲良し。魏続と陳宮とも仲良し。人が良くて優しい女性。
実は李儒と付き合ってる。しかし華雄のせいで出世し、そのため多忙でなかなか会えずにやや欲求不満ぎみ。
実は元ヤン。


魏越
高順隊士官。
下着を愛する変態。
これまでに華雄、張遼、呂布の下着を盗み、それぞれ全治一ヶ月、一ヶ月半、半年の負傷を負っている。
なので従軍期間は同期の唯才の士より八ヶ月半短い。


薛蘭
華雄隊士官。
敵の皮を剥いだり頭蓋骨を収集するのが趣味。
透明にはなれないしプラズマキャノンも撃てないが、三段伸縮式の槍と手甲から出る伸張する鍵爪状の刃物と鉄製の仮面は持ってる。


李封
賈駆配下の諜報員。
トラップ作成名人。ゲリラ戦も得意。
マッチョ。


成廉
食通。内政官。
息子に飯のことで妻をいびり殺したと思われ恨まれてる。
ことあるごとに因縁をつけてくる息子を食の知識で散々にこき下ろして高笑いをあげる大人気ない人。
立場を利用して至高のメニューを求める。


魏続
呂布隊士官。
5歳で山に捨てられ狼に育てられた狼少女。
呂布動物園に加入。毎日楽しく暮らしている。
陳宮は非常食と思ってる。


宋憲
張遼隊士官。
たびたび張遼に勝負を挑んでは負けてる。
必殺技は紐きり。健康優良野郎な兄がいるらしい。


侯成
高順隊士官。
重度のペドフィリア。きもい。
額に”2”という刺青が入っている。
董旻にいたずらしようとして死罪になりかけるが、その場の機転で他人に罪をなすりつけ生き長らえた。


曹性
高順隊副将。
高順と同じくらい無愛想。弓矢の名人。じじい。
昔嫁ともののけ退治をしたが、その際に嫁は死亡。
そのせいで残された一人娘とは不仲らしい。


徐晃
楊奉隊副将。
スレンダーな美人だが猛禽類のような目をしている女性。
楊奉に惚れてる。実は華雄よりも強い。


裴元紹
周倉隊副将。天和ファン。
周倉とは幼馴染。
地味に美形。


董旻
董卓の弟。ショタっ子。
武官見習いというあやふやな地位。
姉に狂気的な愛情を持つ。いわゆるヤンデレ。


胡車児
張繍隊副将。張繍隊随一の豪傑。
ペルシャ系異民族出身で瞳が青く、眉が濃厚でホリが深く、熊の毛皮を纏い、鹿の角をあしらった兜をかぶり、鳥の頭蓋骨で作った数珠を首にかけ、全身に刺青を入れたバーバラスな外見だが、圧倒的なルックスの濃さに反比例するように存在感が薄い。
ディフェンスに定評がある。


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