<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[24230] 舞HiME 後日譚
Name: 一兵卒◆86bee364 ID:e2f64ede
Date: 2010/11/11 22:49
※舞HiME終了後の話です









かつて、チャイルドと呼ばれる異形の物を手にし
己の大切な人の力を、そして、その者の命をかけて戦った少女たち。
そんな彼女たちの戦い【蝕の祭り】を乗り越え、新しい学年にと進学する。

戦いは終わっても、彼女たちの生活は進んでいく。




舞-HiME 後日譚①結城奈緒編

~シスター奈緒の懺悔室~



私の名前は、結城奈緒。
赤毛の耳までかかる髪をしたそこそこの容姿を持っている女の子。
あの戦いの後、シスター紫子(真田紫子、かつてはチャイルドの力を持つHiMEの一人)の産休のため、アンドロイドである無表情お化けの深優・グリーアと生意気な子供、アリッサ・シアーズとともに、この風華学園にある教会に従事する羽目になっていた。

「それでは、結城奈緒、後はお任せします」
「はいはい、さっさと帰って子供をあやしてあげんなさい」

 さっさと帰れという口調で私がいってやれば、深優は目を細める。

「その言葉は、アリッサお嬢様を馬鹿にしているという風にとらえますが?」
「してない、してないから、早く帰んなさい」

 いちいち、あのアンドロイドは突っかかってきて面倒な奴だ。私はため息をつきながら、授業終了後のタイミングである16時から、18時までの時間を教会の懺悔室に閉じこもり、様々な迷える子羊……の相談を受け付けなくてはいけないという面倒な仕事がある。深優・グリーアは、物事を正確に、計算し、可能性をパーセンテージで現すということもあってか、紫子に感情をもう少し学んでから懺悔室担当にするということが決まり、結果、自分が、この面倒な仕事を引き受けることとなったのである。

 狭い部屋の中、イスに座り、誰かが来るのを待つ。
 しばらくすれば、誰かが部屋にと入ってくる。狭い仕切りがされているその部屋。向こう側にいるであろう迷える子羊に、私は話を切り出す。

「『迷える子羊……今日はどうなさいましたか』……簡潔に、言ってね」

 私は、向こう側にいる奴に淡々と答える。

『どうか、私の罪を聞いてください』

 その声は、どこか聞いたことがある。


『私、実は……彼がいて。それで、その……すごい好きなんです!好きなんですけど、最近、なんだか……物足りないっていうか。刺激が足りないっていうか。嫌いじゃないんです!好きなんですけど、なんていうか……もっとその人に触れたいというか、一緒にいたいって思っちゃって。彼の名前は、カズ君っていうんですけど』

「……」

『なんでなんでしょうか?日曜日とか、休みの日にデートをしているとき、手をつないだり……帰り際の駅の前でき、き……き、キスをしたりとかぁ……は、恥ずかしい!恥ずかしいんですけど、で、でも……そ、それだけじゃ、なんだか、足りなくて、胸が高鳴るんです』

「……(イライラ)」

『ドクンドクンっていっぱい音が鳴って、痛くて、苦しくて、カズ君のことを考えると、どうにもなくなっちゃうんです。キスとか、手をつないだりとか、そういうのだけじゃ、その胸の高鳴りが、止まらなくなっちゃってて……』

「……(イライライライラ)」

『こんなこと、カズ君に言ったら、きっとカズ君困っちゃうって思うんです。それに、私、こんなこといったら嫌われちゃうんじゃないかって、他の友達も、カズくんのことを知っているし、相談なんてなかなかできなくて、それで、それで……』

「……(イライライライライライライライラ)」

『「アカネちゃん、そんなに顔を赤くしてどうしたの?」って、この前聞かれちゃって、何も言えなかったんです。私、自分が何か変な病気にもかかっているんじゃないかって、一体どうしたらいいのか……』





「エッチすれば?」





『え?』

「だから、エッチすればいいじゃん」

『え?え……っち?』

「キスとか、手をつないでるだけじゃ、男は喜ばないよ。だから、そこはホテルに連れて行ってもらって、しっかりとやることやれば、満たされるよ。そんじゃ、それで」

『え!?そ、そ、そんなの……』

「っさいなぁ、こっちはあんたのノロケ話を聞くところじゃないんだよ!それに~~、そこまで固くなに、拒むなら、私がそのカズ君、寝とっちゃおうかなぁ~」

『や、やめてくだい!人権侵害です!!か、カズ君は、カズ君は……私が!』


 バタンと部屋から出ていき、走りさっていく音。

 日暮あかね……。

 延々とノロケ話を聞かされるのは勘弁してほしい……だいたいウブすぎる。あんな純粋な恋に恋しちゃっている!みたいな女は今の世の中、絶滅危惧種だろう。




 再び入ってくる次の迷える子羊。



『あの、俺っ!実は、ある女の子が好きで!』

「……」

『そ、その、あれ、あれなんだ……。向こうも俺にはある程度気があるらしいことは分かっているんだ、なんせ、俺に、の、ノー下着姿をさらけ出したことがあったぐらいだから。い、いや、それはミスだな。きっと事故だったんだなと思う!』

「……」

『と、とにかく、残り、後二年間でなんとかこう、つ、付き合うためには俺はどうしたらいいのか教えてほしい!』

「……お答えしましょう」

『おお!お願いできるか!?』


私は、少し間を開けて口を開ける。



「あんたが、一番恐ろしいものと感じるものを想像して。それを片手に握る薙刀で真っ二つにできる奴がいるとする。その相手を倒せるほどの度胸があるなら、頑張りなさい」



『は?』

「これは忠告、下手なことをしたら命がないわよ、本当に……命を失った私が言うのだから間違いないね」


 唸りながら、部屋を出ていく男……武田。

 だいたい、この手の話は多い、玖我なつきが好きだ~なんていう輩には、己の相手をしている奴がどれだけヘタレであるかをよく伝え、そしてそれでも引き下がらない奴には、彼女に好意を持つことにより、寿命を縮めるということを教えてやっている。事実だからだ。






『シスター、お金貸してほしいんだけど~~』
「生徒に金を借りに来るな!自称17歳のアホ教師!」

『奈緒ちゃん、今日の食事はなににする?』
「あ、あおい?えーと……カレーで」

『奈緒ちゃん、今度のカラオケ同好会の日程なんだけどさ』
「なんで、わざわざここに話に来るのよ!!」

『奈緒、ここで寝ていいか?』
「帰れ」





「あ~~~~!!まともな相談がこない!!」

 私は、部屋の中で愚痴りながら、壁にもたれかかる。むしろ私が相談を受けてほしいくらいの気分だ。どいつもこいつも、ここを何だとおもっているのだろうか。金をたかる杉浦碧、一緒の寮の部屋である先輩、瀬能あおい。カラオケ同好会、部長の鴇羽舞衣。そして美袋命……。


 コンコン……


『すいません……お話、聞いてもらってもいいですか?』
「どうぞ」


 私は面倒そうな声をだしながら、その相談者、迷える子羊の話に耳を傾ける。今度、あほな相談だったらこのまま、向こうに行って殴ってやろうかという気持ちで…。



『私、好きな人がいたんです』

「……」

『とっても好きなお兄ちゃん……じゃなくて、男の人で。大切で、何度もアタックしたんですけど……その人、好きな人がいて。ふられちゃったんです』

「……」

『でも、私……あきらめられないんです。でも、お兄ちゃんは、彼女がいるし。私がお兄ちゃんのことを想っていたとしても、それは決して叶わないこと。だけど……私、お兄ちゃんを見ると、どうしても、気持ちが高鳴って。こんな気持ち……私、きっとお兄ちゃんは迷惑に想うとおもうんです。私、どうしたらいいのかなって』

「なるほどね」


 私は少しの間をおいて、口を開ける。


「その相手に、自分の体を差しだせばいいのさ」

『え?』

「男なんて、所詮動物。そういう奴には、言ってもわからないんだから、行動でしめしてやらなくちゃ」

『そ、そんなことできないです!だって……』


 私はため息をつきながら、壁の向こう側の人物を想像しながら


「好きな奴って、そんな簡単にあきらめきれないから、好きなんでしょ?」

『……』


「だったらさ?やるだけやってみればいいじゃん。自分の気持ちが届くまで、いや、自分の気持ちが相手に受け取ってもらえるまで、必死に足掻けばいいじゃん。そうしたら、きっと、少しはいい結果がでてくるかもしれないよ」


『……わ、私頑張ってみます!』



 そういって部屋を出ていく女……宗像詩帆。

 私は、懺悔室の部屋の中で笑みを浮かべる。誰かのために夢中になること。それは、面倒なんだろうけど、すごく大変なこと……それはあの、蝕の祭りとかいう出来事でいやというほど思い知った。あの宗像詩帆は、少しばかり、臆病になっているだけ。


「ふぅ、そろそろ時間かな。今日も仕事した~~」


 私は背伸びをしながら部屋を出ていこうとした。そこで新しい懺悔のものが部屋にと入ってくる。私は内心舌打ちをしながら、イスにと座り直す。



「はい、迷える子羊さん。なんの相談?」

『実は……うちと仲良くなってくれへん子がいるんやけど、赤毛の可愛らしい子なんやけど』



 血の気が引く『音』がした。



「……いや、あきらめたほうがいいんじゃない?」

『もっとスキンシップがしたいんどすなぁ』

「いやいや、やめておいたほうがいいと思う!」

『やっぱり、うちから積極的にいったほうがええどすなぁ』

「人の話聞いてないでしょ!!」



 コンコン……。

 私の部屋の扉にするノックの音。



「え?」

『どうせなら、外で面と向かって相談、聞いてもらえへんやろうかぁ?シスター?』

「え、ちょ、ちょっと、あ、あの、か、神はそういうことは言ってなくて……あ、ど、ドア無理矢理開けようとするんじゃないわよ!藤乃!」

『うちは迷える子羊どすぇ?』



「だ、だから懺悔室はいやなのよぉ~~~~~~~~!!!!!!」














[24230] 舞HiME 後日譚②
Name: 一兵卒◆86bee364 ID:e2f64ede
Date: 2010/11/14 21:32







風華学園を襲う謎の怪物。
その背後で糸を引く謎の組織。

脅かされる、生徒たちの生活を守るために、今!私たちは立ち上がる。

その名前は……。

『HiME戦隊、ヒメレンジャー』





舞HiME 後日譚② 杉浦碧編

HiME戦隊ヒメレンジャー!!
最終話『結成!HiMEレンジャー!』







風華学園屋上にて……。

非常勤講師、担当科目社会の杉浦碧のもとに集められた精鋭たち。
長い髪の毛をまとめながら、碧は、その手にどこから持ってきたか分からない鉄パイプを握りながら、その場にいる生徒たちを見る。

「今日、集まってもらったのは、ほかでもない!!」

 碧の開口一番の台詞に、周りにいる生徒たちは頭の中に嫌な想い出が甦ってくる。それは、蝕の祭り前……HiMEの力を手に入れようとしたシアーズ財団との戦闘後に碧が対オーファン戦に、皆の力を集めようという名目で作られた……。

「HiME戦隊の結成よ!!」
「うわぁ……やっぱり」

 あきらかに嫌な表情を浮かべる結城奈緒。

「そこ!嫌な声をあげない!」

 鉄パイプを奈緒のほうにと向けて注意をする非常勤講師。その様はとても教師とは思えないものである。碧は話を続けていく。

「私たちはHiMEの力を失った。それは今までの生活で大きな変化をもたらすこととなるだろう。例えば、HiMEの力で裏組織の調査なんていう物騒な真似!!」

 思わず顔をそむける玖我なつき。

「さらにいえば、その力で夜な夜な男を騙し歩き、お金を巻き上げていた不良少女!!」

 奈緒は頭に手をまわして、特に動じることなく聞いている。

「果ては、愛するものを守るために、たった一人で学園を守ろうとした男装女子!」
「……」

 顔を真っ赤にする尾久崎晶。

「そんな君たちの生活は、HiMEの力を失ったことで大きく変わることとなるわ!きっと、今までやってきたことのツケが回ってくるかもしれない」
「一理ある……かな」

 話を聞いていた鴇羽舞衣が頷く。

「だから!ここは、そんな私たちが互いが互いをカバーし合うことで、この学園生活をより有意義に過ごそうと、そう思い、私はここにあらためてHiME戦隊結成を発表しようと思うのよ!」

 碧は鉄パイプを握る手を高らかにあげて大きな声で告げる。周りにいる元HiMEメンバーたちは顔を見合わせる。元HiMEメンバーといっても、ここにいるのは、学園を卒業した藤乃静留、産休中の真田紫子をぬかしたメンバーである鴇羽舞衣、玖我なつき、美袋命、宗像詩帆、結城奈緒、日暮あかね、菊川雪之、尾久崎晶……そして、リーダーである杉浦碧の計9名である。

「全員揃ってHiMEレンジャー!私たちの力が合わされば、敵なんかいないわ!」
「おおお!さすが碧、かっこいいぞ!」

 命は、嬉しそうな表情で手を叩いて碧のHiME戦隊結成を歓迎している。それに対して他のメンバーは皆、困惑顔である。

「それじゃ、早速……ポーズを決めるわよ!」
「はい~?!」

 突然の碧の言葉に舞衣が声を上げる。
 舞衣だけではなく、雪之や晶は、苦笑いを浮かべ、奈緒となつきは、既に帰ろうとしている。一人、命だけはとても楽しそうに、目を輝かせていた。

「なにいってるのよ、チームなんだからポーズくらい決めなきゃダメでしょうに」
「冗談。アニメじゃあるまいし。それにそんなアニメの中の出来事も、もう終わったんだからさ」

 奈緒はそういって、その場を立ち去ろうとする。

「そういうことだ、すまないな碧」

 そこで、なつきの足が止まる。この状況、どこかであったような気がする。そうデジャブ……確か、以前もこのようなことがあってなつきと奈緒は帰ろうとした。だが、そこで……。

「あっら~~いいのかなぁ?2人とも。このカラオケ大会のときの写真が大衆の目にさらされても」

 それは、カラオケ大会時に仮装した、なつきは眼鏡娘のスカート姿、奈緒はリオのカーニバル衣装姿の写真である。

「「うわあああ!!!」」

 悲鳴を上げる奈緒となつきの悲鳴を後ろにしながら、舞衣はため息をつく。

 そんな中、雪之の携帯が鳴った。

「はい、はい……わかりました。すぐ現場に向かいます。執行部員を非常招集をかけて、運動系の部活、サークルにも声をかけてください」
「どうしたの?雪之ちゃん?」

 舞衣の問いかけに、雪之は眼鏡を輝かせる。舞衣が見た雪之は、いつものよわよわしい彼女ではない。どこかしっかりとした、鋭い表情を彼女はしていた。

「風華学園内に、不審人物が数人、侵入したとのことです。すいません、先生。執行部部長として、指揮をとりますので…私はこれで」


「ふ、ふふふふふふ……」


 雪之の言葉に、笑みを浮かべる碧。その不気味な表情に、一同が碧を見る。

「アハハハハハ!これぞ、千載一遇のチャンス!私たちHiME戦隊の力を見せるときよ!」


「「……え?」」
「お~~!!」

 驚きの声をあげるメンバーに、一人嬉しそうに手を上げる命。
 ……もはや、誰も碧を止められるものはないない。







「こちら、杉浦碧……。司令部、雪之ちゃん!各員配置についてる?」
『……こちらHiME戦隊司令部、菊川雪之。各員配置についています』
「対象は?」
『バイク数台で、学園に侵入。執行部員の制止を振り切り、学園内で暴れています』
「そうこなくっちゃ。正義のヒーローの出番がないものね!」

 トランシーバーを執行部から強奪、もとい拝借した碧は、司令部である雪之に声をかけながら、どこか嬉しそうに、鉄パイプを片手で回しながら、地面に突き立てる。

「HiME戦隊!出撃!!目標を殲滅するわよ!」
『杉浦先生、殲滅じゃなくて確保です!』

 モヒカン頭の暴走族の一団が、風華学園内を走り抜けていく。彼らは皆、鉄製のバットを持ち、近づくような生徒たちには、バットを振り回し威嚇する。執行部員たちや体育会系の部員たちも、その暴走するバイクに、バット相手では近づくことができず、逃げ惑うことしかできない。

「あははは、逃げろ逃げろ!」

 口元に赤いマスクをした男達は、笑いながら、生徒たちを追いまわす。そんな暴走族の一団の前、逃げ惑うものたちの中、一人、立っている少女。彼女の手には、剣道の竹刀が握られている。

「なんだ?あれ?」

 不良の一人が声を上げる。

「HiME戦隊、美袋命!舞衣のラーメンのため……いくぞ!!」

 顔を上げた命は、竹刀を、地面に引きずるように走りながら、バイクにと突っ込んでいく。竹刀は地面に擦りつけながら火花を散らしている。バイクに乗っている不良たちはたまったものではない。突っ込んできた命に、そのまま、吹っ飛ばされ、バイクは、学園の校舎にまで吹き飛び爆発する。

「あ~~~~~!!!」

 命は、竹刀を握ったまま、他の不良たちのほうを見る。

「ひいい!!!!!」
「な、なんだ!?あのガキは!!」

 一目散に、ジリジリになって逃げ出す不良たち。

『命ちゃんの攻撃により、目標はジリジリになって逃走を開始しました』





 逃走した不良たちは、走って後ろから命が追ってきていないかを確認しながら走っていく。すると建物の影のところで、誰かとぶつかる。

「きゃ~~~ぁ!」

 甲高い声を上げながら腰を落とす奈緒。
 不良たちは、その容姿の可愛らしさに目を輝かせる。

「へ、へへへ、ついてるな、俺達」
「ああ、この子、盾にしてここから脱出すれば問題ないぜ」
「え、あ……こ、こわ~い」

 奈緒は、怯えながら、腰を落としたまま、身を震わせている。不良たちは、息を荒げながら奈緒にと手を伸ばす。

「チェイサー!!!」
「ご、ごめんなさい!」

 背後から現れた日暮あかねと宗像詩帆の握るイスと机で頭を叩きつけられ、そのまま前のめりに倒れる。奈緒は、立ち上がりほこりを払いながら

「ったく、本当……、男って馬鹿なんだから」
「って、結城奈緒……あんた、なにして」
「決まってるでしょ?女の子を酷い目にあわしたんだから、慰謝料をもらってるのよ」
「せ、正義のヒーロー……」

 あかねは、詩帆と言い争いながらも、揚々と財布を取り上げている奈緒を見て、先ほどの不意打ちと言い、とてもじゃないがヒーローとは程遠い、ということを感じていた。




「こんなことで、オレの忍術を使いたくはないが、これも巧海のため!忍法、隠れ蓑術!」

 尾久崎晶は、火薬のはいた噴煙を発生さえ、学園の一部が噴煙に包まれ……。

「なんだ?歯ごたえのない連中だ」

 髪の毛をなびかせながら、不良たちを単体でのしてしまう玖我なつき。




『目標を次々と確保しています。ですが、学園内にも被害が……』
「くぅ~~~!!敵もなかなかやるじゃない!」
『いや、侵入者の被害というよりかは、むしろ……あ、目標が学園内から外に逃げようとしてます』
「ふふ、待ってたわよ!!この碧ちゃんの活躍の場を」

 碧は、前もって、このために入口を固めており、たった一つ出入り口を開けてそこで待機しておいたのである。碧は、台車に乗り、坂道に仁王立ちしている。その背後にいるのは舞衣である。舞衣はため息をつきながら、碧を見上げている。

『杉浦先生!目標、学園校門接近!』

 バイクに乗り、逃げ惑う不良たちの表情は既に怪物に襲われたかのようなものとなっていた。

「学園を脅かすものたち!」

 バイクに乗っている不良たちが、碧のほうを見る。碧は鉄パイプを向かってくる不良たちに向けて、大声を上げた。

「HiME戦隊、レッド、この杉浦碧、十七歳が教育的指導をしてあげるから覚悟しなさい!!」

 碧は、振り返り舞衣に合図を送る。舞衣は、頷きながら、台車を押す。台車は改造が施されており、さらには、ここまでの道が坂道になっているためか、一気に速度をあげてバイク隊にと突っ込んでいく。

「うわあああああああああ!!!」

 バイクに乗っている不良たちはまっすぐ突っ込んでくる台車に驚き、速度を緩める、ブレーキをかける。碧は、そんなことはお構いなしとばかり……。




「とっかぁぁぁぁぁぁぁぁんんん!!」




 爆音が学園内に響き渡る……。








「みんな!お疲れ!!」

 碧は、集まったHiME戦隊のメンバーにねぎらいの言葉をかけながら、上機嫌である。

「やっぱり、私たちの力が結集すれば、どんな敵だって相手にならないね~」
「うむ!私たちの力が集えば、誰だろうと怖くなどないぞ!碧!」
「ま、まぁ……腕がなまるよりかは、こうして少しでも実践経験を積むというのも……」
「晶君!?」

 最初から乗り気であった命だけでなく、なんとなく楽しかったらしい晶までもが、照れながら頷く。碧は、他の黙っているメンバーを見ながらニヤニヤとした表情を浮かべている。

「さぁ、このままみんなの力を結集して、正義のため学園のために頑張るぞ!」

 笑顔の碧であったが、そんな碧の前にいた一同の顔が固まる。

「あっれ?みんなどうしちゃったの?まるで、鬼でも見たような顔して~~」

 そんな碧の肩をたたく手。

「あ?なんですか~?もしかして、早速HiME戦隊のファン!?いや~、まいっちゃったな~」

 振り返った碧の前、そこには、笑顔の風華学園理事長、姫野二三がたっている。その笑顔の表情は、満面の笑みだが、どこか影がある。

「杉浦先生、先生の活躍、とてもよかったですよ?」
「あ、はあ……」
「まさか、学園の校舎を一部破壊、炎上、学園校内での庭の火災なんて、とてもじゃありませんが、真似できないです♪」
「ほ、ほら理事長。アニメだったら、そんな翌週の回になったら何事もなかったかのようになって……そ、それに、それは私だけのせいじゃなくて、み、みんなも」

 振り返ると、既にそこには誰もいない。

「あああ!は、薄情者~~~~~!!!!」

「杉浦先生?もう少し活躍の話をぜひ、理事長室でお話伺わせてもらっていいですか?」

 背後から聞こえる声に、碧は、背筋から冷や汗が流れるのを感じた。



 HiME戦隊 完










[24230] 舞HiME 後日譚③
Name: 一兵卒◆86bee364 ID:e2f64ede
Date: 2010/12/07 22:50







舞HiME 後日譚③ 玖我なつき編

静かな、つきの下で





卒業式が終わり、花見、そしてカラオケ。
舞衣のいい加減なプランの中、私達はみんな連れて行かれる羽目となったわけだ。
カラオケが終わり、皆、それぞれの帰路につくころには外はもう暗くなっていた。

「じゃぁな、舞衣!剣道の試合きちんとこいよ?」
「うん!じゃぁね!祐一」

そんな二人のやり取り。

「お兄ちゃんのばかぁぁ!」

詩帆が楯にプロレス技をかけている。
私と静留は笑いながら振り返り、通いなれた道を歩いていく。



詩帆や黎人にはわるいが
やはり舞衣と楯はお互いのことを一番に考えているんだな。
あれが人を『好き』になるということ。
まだ私がよくわからないもの。

私はそんなことを思いながら歩いていく……。


それにしても……。

「……静留?」
「なんどすか?」
「そんなに引っ付かれていると歩きづらいのだが……」
「うちはかまいまへんぇ?」
「いや、お前がよくてもだな……」


 静留は私の腕に手を回し、ベッタリ引っ付いて歩いている。私は小さく息をつきながらも、その静留の行為をやめさせることはしない。先ほどのカラオケでもずっと私に抱きついてきていたのだが、私は振りほどこうとはしていない……それにしても……こいつは。

 私は内心、静留のそんな行動を微笑ましくおもっていた。
 昔なら力ずくでやめさせようとしただろうけれども……今は違う。


 今は……こうして彼女がいてくれてよかったと思う。感謝してる。


 私がこういう風に友達というものをつくれるようになったのは静留のおかげだから。静留がいなければこうはならなかったはずだから。

「なつき?」

 静留が私のほうを見る。
 暗い夜道だが、月の明るさで彼女の顔がよく見える。
 いつもと変わらぬ綺麗な表情。


「なんだ?」

「今までいろいろありがとな?ほんまに……うち、なつきと出会えてよかったどす」


静留は笑顔でそうつぶやく。
これからはもう静留とは学校ではあえなくなる。
彼女は近くの風華大学に通うことになる。
近くと言っても、今までのように毎日会えるということはなくなるはずだ。



――――いつも、あるとおもっていたものがなくなる。



花見をする前、私と静留は生徒会室にいた。

迫水に授業日数が足りないと言われ、静留に出会ってそのままここにきたのだ


「なつき、卒業式きてへんかったやろ?」

部屋に入って開口一番彼女は私に言った。

「あ、あんなものに出なくても私が祝いたいのは静留だけだからいいんだ」

静留はその私の言葉を聞いて笑みを浮かべ

「うちは卒業せぇへんでもいいんどすぇ?」
「ば、バカ!」

先ほどの迫水での前でのやり取りを思い出す。
静留ならやりかねない。


彼女の入れたお茶をのむ私。
そんな私を見つめる静留。

「ここにくるのも、これで最後やね?」
「……そうか。なら、私ももうここにくることはないかもしれないな」

それから私達はお互いを見たまま言葉もなく、ただお茶を飲んでいた。







月明かりに照らされる静留。

「たまには、なつきがきちんと授業でてるか見に行きますさかぃ!安心してな?」

いつものと変わらぬ笑顔でそういうと静留は私から視線を外し、前を歩く。



いつもと……同じ表情で。

違う!

静留、お前は!!



私は静留の手をとる。
静留の手は震えていた。

「離して!」

静留は大きな声で私のほうに振り向きもせずに言う。


「イヤだ!」


私もそんな静留の声に負けずに大きな声を出して静留に言う。


「なんで、お前はそうやって自分の感情を抑えようとするんだ?」
「……」
「そんなに私が、信用できないか?」
「うち……なつきに、嫌われたくないっ!」


私は静留を強引に振りかえさせ、抱きしめた。

「な…つき」

静留の濡れた声が聞こえる。


「お願いだ。静留……私にまで隠さないでくれ。一人で抱え込まないでくれ」

「なつ……き…うち、うちな?」

静留の手が私の背中にまわる。
つよく私を抱きしめる静留。



「うち……なつきと離れたくない!大学行っても……どこにいっても、なつきと離れるなんてうちは嫌や!!」



静留の心の声。
今まで必死に隠していたんだろう。
私の前で泣きたくない。
そんなことを考えて……。
私は静留を抱きしめたままそっと離れ、静留を見つめる。
静留もまた、私のほうを見つめる。



「一緒に暮らそう?静留?」


「な、なつき!?」


静留の瞳から涙がこぼれる。
頬をつたり流れる涙は止まることを知らず流れ続ける。
だけど、その視線は私から離れない。


「風華大学からうちからはそんなに距離はないし、お前がよければ・・いや、すぐに私の家に、来て欲しい」


「うち……夢でも見てるんやろうか?こんな、こんな幸せなこと。そうや……きっとこれは夢……夢どす」


私はもう一度、静留を包む。
静留の涙がとまるのには、まだ時間がかかりそうだった。



静留の身体は温かった。
私が包んでいるのに、逆に私が包まれているような感覚。

人ってこんなに温かったなんて私は知らなかった。
いや……人だからじゃない。

静留だから……。
私の大切な人だから。




私はようやくわかった気がした。

これが舞衣と楯が互いに寄せた想い。
『好き』というものだっていうことに……。




私は私の胸の中で涙を流す静留を感じながら夜空を見つめる。

その夜空にあるのは私達を照らす大きく白く輝く月。










感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.01810097694397