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[23218] 龍騎士~魔物を狩る者~
Name: ユー◆833da89e ID:edac7a35
Date: 2010/11/03 11:00
この小説はコロコロ人が死んじゃいますしグロテスクな描写もありますのでそういうのが不愉快な方、苦手な方は避けることをお勧めします。
もし見てしまった方はすぐに退却してください。



[23218] 1話 龍騎士
Name: ユー◆833da89e ID:edac7a35
Date: 2010/11/03 11:15
2010年… 現在もなお科学は発展を続けている… しかしこの科学の時代にも解明できない事がある。悪霊達は常に我々の日常に潜んでいる。だがそんな恐怖から我々を救う者達がいる。その者達は古代より悪霊達を鎮めてきた。彼らは獣騎士(じゅうきし)と呼ばれている。これは悪霊と若き獣騎士達の壮絶な戦い描いた物語である…






キィィィィィン!! ガキィィィィン!! キィィィィィィィィン!!

剣が交わる音が響く。

二人の男が剣と剣をぶつけ合っている。

一人はまだ若くもう一人は白髪が生えており老人だ。

若い男は黒髪で身長は180cmと言ったところだろうか

この若い男こそこの物語の主人公である辰巳龍二である…そしてもう一人の老人は龍二の育ての親である鮫島五郎である。

獣騎士は霊達との戦いに備えて日々厳しい鍛錬を積んでいるのだ。

暫くするとその音はやんだ…

そして老人が喋る声が聞こえる。

「龍二そろそろ時間だ。今日の修行はここまでだ」

龍二が剣をスッと振ると剣は青い炎となり一瞬で消えてしまった。
獣騎士は自分の意思で剣をいつどこでも取り出せたり消したりできるようになっているのだ。

龍二は下に落ちているブレザーを着ると一言…

「師匠行って来ます」

龍二の高校生活が始まった。

龍二は悪霊達との戦いを重視して小学校と中学校を経験していない。
今日から転校生と言う名目で東京都内の高校に編入する事になっている。
何故小学校や中学校に通わなかった龍二が編入できたのかというとコネ…つまりコネクションである。
実はその高校の校長はかつて龍二の父・新次郎に悪霊から救われた過去があり龍二が息子だとわかると編入させてくれたのである。

龍二が登校する最中自分と同じ制服を着ている二人の男がこちらも同じ制服を着た四人組に脅されているのが見えた。
どうやらカツアゲされているようである。
龍二は無視して通り過ぎようとしたがどうやら四人組の一人に見つかった。

「おい!ちょっと待て!ここを通るんなら通行料払え」

龍二は一瞬声のした方を向いたが相手にせず再び歩き出す。

「ちょっと待ちやがれ!!」

四人組の男達はあっと言う間に龍二を囲んでしまった。

「お前見ねぇ顔だな」

「会った事がないんだから見ないに決まってるだろ」

龍二が切り返すと四人組はゲラゲラ笑い始めた。

龍二はため息をついて言った。

「そこを退け…遅刻しちゃうんでな」

龍二がそう言うと四人組は眉間に皺を寄せながら言った。

「だったら金払えやぁ!」

龍二は冷静に切り返した。

「払いたいのはやまやまだが…お前らみたいな下衆野郎に払う金がないんでな」

「何だと!?」

龍二の目の前の男が龍二の顔を目掛けて殴ろうとした…
さっきまで脅されていた二人の生徒も目を背けた…

が…


相手の拳を龍二は片手で掴んでいる。

そしてその男と腕を捻った。

「あぁっ!!痛ぇぇぇぇぇ!」

腕を捻られた男は手を押さえている。

「テメェェ…」

後ろにいた男が殴りかかろうとしたが龍二は後ろを振り向かず脚を後ろに振り上げた。

「ぐげぇ!?」

その蹴りは相手の胸元にヒットしてその男はフッ飛ばされた。

そして残りの二人が一斉に殴りかかろうとしたが持っていたバッグで腹部を殴られた。
四人組の不良達は地面に寝そべって痛がっている。
獣騎士は人間のままでも厳しい修練を積んでいるため常人では相手にならない。
これでも手加減したほうだ。

その光景を脅されていた生徒は目を丸くしながら見つめた。

「大丈夫だ骨は折れていない…多分な」

そう言うと龍二は再び歩き出した。

脅されていた二人の生徒うちの一人が龍二の腕を掴んで言った。

「もしかしてうちの学校に転校してくるのって君?」

「あぁ…そうだ」

「俺は古田藤次って言うんだ!でこいつが井本拓也。さっきは助けてくれてありがとな」

「辰巳龍二だ…別に助けたわけじゃない」

表情一つ変えずに挨拶する龍二。

「ところであいつらは何者だ?」

龍二はさっき二人を脅していた四人組の方を見た。
四人組はまだ痛がっている。

藤次が言った。

「あいつらはこの高校の不良だよ…毎日あそこで弱そうな奴を見つけて金を獲るんだ…渡さないと殴られるから皆渡すんだよ」

「お前ら悔しくないのか?あんな連中の言いなりになって…何故戦わない?」

すると藤次と拓也は下を向いた。
そして藤次が言った。

「俺達は君みたいに強くないから…それに喧嘩したら先生達に怒られちゃうし進学とかに不利になっちゃうから…」

実は龍二は高校に行くことを最初は拒んでいた。
しかしこれから更に己を強くするためには行かなければならないと五郎に諭されたため嫌々ながらも行く事になったのだ。

「俺達が近道を案内するよ!さぁこっちだ!早くしないと遅れちゃうよ」

藤次と拓也に連れられ高校に到着する。
そして校舎内に入り階段を駆け上がる。

「ここさ」

そこにまだ20代の女性が通りかかる。

「君達!遅刻分前だよ!あっ!君が転校生の辰巳龍二君?」

「あぁ…そうだ」

「私が担任の加賀恵です。宜しく」

人の良さそうなこの女性はこの高校の教師・加賀恵である。

教室に入ると話をしている者、机に顔を伏せて寝ているもの、ふざけてじゃれあっている者、勉学に励む者と様々だ。

担任である加賀が教卓の前に来るといきなり静かになった。
そして加賀が喋り始める。

「今日は転校生を紹介します。どうぞ自己紹介して」

「今日からこの高校に転校して来た辰巳龍二だ」

周りから一斉に拍手が起きる。

加賀の指示によって決められた席に向かうその途中に空席が二つあった。
普通なら風邪や何か用事があって休んでいるものだと思うが龍二はそうは思わなかった。
何か胸騒ぎがしたのだ。
この高校に入った時から邪気を感じていたのだ。
とりあえず指定された席に座った。
左右共に女子が座っている。
左の席の女子が龍二の方を見るので龍二もその視線に気づく。

「何か用か?」

その女子は首を横に振った。

「いや別に…あっ!えっ…と…私、小川美咲って言うんだ。よろしく」

「あぁ…」

右の席に座る女子もこっちを見ながら何か呟いている。

「辰巳…龍二だと?…まさかね…」

その言葉は龍二には聞こえていない。

「お前も何か用か?」

「私は白鳥理恵よろしくね」

龍二は理恵の顔をジッと見つめる。

「ど…どうかしたの?…辰巳君?」

龍二は首を捻りながら言った。

「どこかで会った事あるか?」

龍二は理恵の顔をどこかで見たような気がしたのだ。

「さっ・・・さぁ?」

理恵も首を捻る。









そして昼休み…

龍二は拓也と女子二人とトランプをしている藤次に声をかけた。

「藤次…ちょっといいか?」

「えっ?何?お前も入れてほしいの?」

すると残りの女子二人はクスッと笑いながら顔を見合わせた。
この二人の女子、麻生彩と杉本早苗と言ってクラスでは有名な仲良しコンビである。

「辰巳君もやろうよ!」

「そうだよ!多い方がおもしろいし」

龍二は少し呆れたような顔をして言った。

「折角だが遊んでいる暇はないんだ…また誘ってくれ。ところで今日休んでる奴が二人いるようだがしつら何故休んでいるか知ってるか?」

すると藤次が言った。

「あぁ…確か昨日から二人共高熱が出て休んでるよ。多分肝試しするとか言って夜中まで遊んでたからな」

「肝試し?」

龍二がそう言うと彩がニヤッと笑った。

「辰巳君は知らないだろうけどこの高校には昔から七不思議の言い伝えがあるの」

龍二は眉間に皺を寄せて真剣な顔つきで聞いた。

「七不思議?どんな七不思議だ?」

彩は頷いて話を進める。

「へぇ…辰巳君ってこう言う話に興味あるんだぁ」

彩の話によると一つは誰もいない筈の音楽室からピアノの音が聞こえ飾ってあるベートーベンやモーツァルトなどの肖像が動き出すと言うもの
二つ目は理科室の人体模型が動き出す。
三つ目は家庭科室に現れる血まみれのエプロンをした女性が包丁を持って襲いかかる。
四つ目はトイレに花子さんが現われる。
五つ目は倉庫に収容されている骸骨が動き出す
六つ目は体育館のボールが勝手に動き出す。
どこにでもありそうな話だが龍二は真剣に聞いた。

「はい!これが七不思議」

「おい!これじゃ六不思議じゃないか?後一つは何だ?」

すると彩も真剣な顔をして言った。

「さぁ?…何だろうね?わかんない…最後の一つは謎なの。でも聞いた話によると七不思議を全て経験しちゃうとあの世に連れていかれるとか…」

「成る程な…邪魔したな」











そしてその日の夜…




美咲は今度の期末試験に向けて居残り勉強をしていた。



もう辺りは真っ暗である。

「さぁそろそろ帰ろっと」

電気を消して帰ろうと歩いていると音楽室からピアノの音が聞こえる。

美咲は恐る恐る音楽室の中を覗くと誰も弾いていないのに勝手にピアノから音がしている。

美咲は絶句した。

するとピアノからいきなり


ガァァァァァァァァァァァァァン!!


と言う大きな音がした。

思わず美咲は悲鳴をあげてしまった。

「キャァァァァァァァッ!!」

一目散に走って逃げ出した。

しかし走っても走っても何故か昇降口に辿り着かない。

普通なら昇降口に着いている筈だが何故か辿り着いた場所は何故か理科室。

「嘘でしょ!?どうなってるの!?」

美咲はパニックになっていた。

そんな美咲に追い討ちをかけるように理科室の扉がバァァァァァァァァン!!と開いた。

中から人体模型がゆっくりと近づいて来る。

「キャァァァァァァァァァ!!」

美咲は再び大声を出した。





その頃、龍二は高校の前まで来ていた。

「さて…一仕事してくるか」

そう言うと校舎内に入っていく。

この時、龍二は凄まじい邪気を感じていた。

すると音楽室に着いた。

「何で音楽室が?」

龍二は音楽室の扉を開けるとピアノが誰もいないのに響いている。

そして後ろを振り向くと飾ってあった音楽家達の姿があった。

龍二はいきなり首を絞められ体が宙に浮いた。

「ぬおっ!?」

しかし龍二の手の中に青い炎が現れ剣に変わった。

龍二はその剣で自分の首を絞めている手を叩き斬った。

声にならない声を出し蹲る音楽家達のゾンビ達…

「オラァァァァ!!」

剣でゾンビ達を一掃した…がゾンビ達は再び何事もなかったかのように立ち上がった。

「どうなってんだ!?」

少し龍二は考え込んだ。

そして閃いた。

「俺の勘が正しければ…ハァァァァァァァァッ!!」

龍二はピアノを剣で一刀両断した。

するとゾンビ達は消えピアノの音も鳴り止んだ。

静かな音楽室に戻った…

だが時間はない…

勿論、この邪気の中に人間がいる事はわかっている。

龍二は走った…

次は理科室に着いた。

「確か人体模型だったな」

扉を開けると人体模型が近づいてきた。

「オマエ…ノ…カラダ…ホシイ…」

「生憎お前にやる体は持ってないんだ」

体をくれないとわかると人体模型は龍二に向かって飛び掛ってきた。

しかし龍二はあっさりと一刀両断した。

人体模型の体が真っ二つになり床を転がった。

そして次の七不思議は…

龍二は風の如く走る…

「家庭科室か…」

家庭科室に入ると血まみれのエプロンを着た女がいた。

「ワタシ…ノ…リョウリ…ニシテアゲル…」

「出来るもんならやってみな」

龍二は剣を構えた。

血まみれの女は不気味な笑い声をあげた。

そしていつの間にか龍二の目の前にいた。

それには龍二も驚いた。

だがそんな暇はない。

その女は包丁を振りかざした。

龍二はそれを間一髪で交わすと包丁を持っている手を切り落とした。

そして一閃した。

その女は煙のように消えていった。

龍二は走って次の七不思議の場所へ向かう。

次の場所はトイレだった…

「花子さんか…」

龍二は何かに吸い寄せられるように三番目のトイレに入った。

そこは真っ暗闇の中で自分の姿以外何も見えない。

すると一人の女子高生がこっちを泣きながら睨んでいる。

龍二は剣をその女子高生向けた。

「お前が花子さんか」

その女子高生は涙ながらに訴えた。

「俊一…どうしてレミに酷い事するの?どうしてレミを殺したの?どうして道連れにするの?」

「俺は俊一じゃない…大人しく成仏するんだな」

その女子高生の霊の顔は美少女から見るも無残な化け物へと変容していた。
目は剥き出し肌が茶色くなっている。

「シュンイチ…ドウシテワタシヲコンナフウニシタノ?」

もうさっきまでの人間らしさは残っていない。

飛び掛ってきた女子高生の霊の腹に剣を突き刺した。

「グゲャャャャャ!!」

女子高生の霊の顔が元の美少女の顔へと戻った。

「私を救ってくれたのね…君…名前は?」

「俺の名前は…辰巳龍二…悪霊を狩る獣騎士だ」

その霊は苦しそうだが顔は笑っている。

「俊一は私みたいに一筋縄じゃいかない…気をつけてね…」

その霊は浄化され煙のように消えた。

龍二は呟いた…

「悪く思うな…悪霊を退治するのが俺らの仕事だ…成仏してくれよ」

龍二は再び走り出した…

そして辿り着いたのは倉庫だった…

龍二は人間の気配を感じた…

龍二は扉を開けた。

中には五体の骸骨が美咲を囲んでいる。

「お願い…誰か助けて」

美咲は目に涙を浮かべている。

「お前らの相手は俺がしてやる!そいつから離れろ!」

「えぇ!?辰巳…君!?」

いきなり龍二が剣を持って現れたので美咲は驚く。

骸骨は一斉に龍二の方に向かってきた。

「雑魚は失せろ!」

足技だけで骸骨を一匹残らず一掃した。

どうやら骸骨の体は脆く龍二の蹴りだけでバラバラになった。

龍二は美咲の方へ向かう。

「辰巳君…何で?…どう言う事なの?」

「小川美咲と言ったか?つくづく運が悪いようだな」

状況が理解できない美咲。

「話は後だ。先を急ぐぞ」

だが美咲はしゃがみこんで動かない。

「どうした?時間がない」

「動きたくない!!だってあんな化け物が出てきたら…もう…嫌!!」

龍二はため息をついた。

「このままだと俺ら二人共もうこの空間から出る事は出来くなる」

「そんな…」

「死にたくなかったら勇気を出せ…心配するな必ず俺が守る」

今までの恐怖が美咲に襲いかかる。
だが生きるには龍二の言葉を信じるしかない。

龍二は美咲に手を差し伸べた。

美咲は龍二の手を握った。

「俺の手を放すな」

そして美咲と手を繋ぎ走り出した。

次に着いたのは体育館…

「勝手に動き出すボールか…絶対俺から離れるんじゃないぞ」

龍二は集中して目を閉じた。
辺りの邪気を感じとるためである。

「そこだぁ!!」

剣を横に振り切るとバスケットボールからプシューっと空気が抜ける音がした。

しかし次から次へとバスケットボールやバレーボールが飛んでくる。

斬っても斬ってもボールが次々に飛んでくる。

バコッ!!

「ぐわぁ!!」

バスケットボールが龍二の顔面を直撃した。

「美咲!隠れてろ!!」

そう言うと美咲は慌てて物陰に身を隠す。

「クソッ!!これじゃキリがない!こいつの本体は何だ…もしや!?…ウォォォォォォォッ!!」

龍二はボールの飛び出してくる体育館備品倉庫にボールを剣で受け流しながらながら向かった。

そしてそこにあったのは空気入れだった。

「元凶はこれか…」

剣で空気入れをぶち壊すとさっきまで体育館に浮いていたボールが地面に落ちた。

「梃子摺らせやがって…」

龍二は備品倉庫を出て美咲のもとに向かった。

美咲は地面に伏せている。

「もう大丈夫だ」

美咲は立ち上がって安堵の表情を浮かべた。

「私達助かったの?」

すると龍二は険しい顔をして言った。

「まだ七不思議は終わってない後一つ残っている。俺にも最後の七不思議がどんなものなのかはわからない」

すると体育館の真ん中に青白い顔をした男子高生が現れた。
勿論この男子高生は霊である。


「おもしろくないなぁ…お前いったい何者?」

龍二は怒りに満ちた鋭い目でその霊を睨みつけた。

「お前が俊一かぁ!?」

「そうだよ…僕が俊一だよ」

「レミと言う奴を知っているな?」

「あぁ…あいつね…俺がいながら他の奴と付き合ってたからさトイレで顔を切り刻んだんだよ…そして俺とあいつは心中した事になってる。そして俺はあいつを現世へと閉じ込めたんだ。ギャハハハハハ」

「お前ぇ!!許さん!!ウォォォォォ!!」

龍二は霊に向かって走った。

「俺はあいつらみたいに雑魚じゃないぜ?」

龍二が振りかざした剣を受け止めると腹部に強烈な蹴りを入れた。

「ぐおぉぉぉぉ!!」

その蹴りによって龍二は吹っ飛ばされて体育館の壁にぶつかった。

「ぐぅ…」

立ち上がれない龍二をその霊は髪を掴み再び蹴りを入れた、

また龍二は吹っ飛ばされた。

龍二は何とか立ち上がり時計を見た。
後、数十分でこの空間から出られなくなってしまうのだ。

「後、10分…マズイな…こうなったら…」

龍二は目を瞑り剣に気を集中させた。
すると剣から青い炎が出た。
その炎は龍二を包み込んだ。

龍二の姿は青くメタリックなボディーに龍のような顔をした騎士に変わった。

その姿を見て美咲は絶句した。

「嘘…何で!?」

そう美咲の頭に今でも昨日のように現れる記憶…
一年付き合っていた恋人を獣騎士に殺された記憶。
その獣騎士の姿はぼやけているのであの獣騎士かはわからない。
だが彼女にとって獣騎士は誰よりも憎いものなのである。


「これが獣騎士か」

変身した姿に驚く霊…

「だが…俺の相手じゃない…何!?手が動かない!?」

何とさっき龍二が浄化した筈の女子高生の霊が手足を摑まえている。

「レミィィィィィ!!貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」

「さあ…早くこいつを倒して!」

「お前…何でまた出てきたぁ!?お前…これで本当に成仏できなくなったぞ!?」

「いいの…さあ早く」

龍騎士の剣が青い炎で包まれた。

「オリャァァァァァァァ!!」

龍騎士の青い炎が霊を直撃した。

霊は声にならない奇声を発して消えた。

龍騎士の手から剣が消えた…

そして龍騎士の体は青い炎に再び包まれた。
炎が消えると龍二の姿が現れた。

龍二は美咲の方へ向かう。

「この事はくれぐれも黙って…」

美咲は泣きながら龍二を突き飛ばし体育館から走り去った。

龍二は美咲の去った方向を見つめる事しか出来なかった。

そんな龍二を理恵が物陰から見ていた。

「やっぱりあの龍二だったか…」

理恵の言葉の意味とは…



結局最後の七不思議は最後の悪霊だったのだ…

何故最後だけ伝わらなかったのかと言うと運悪く全ての六不思議を体験した者は最後の悪霊に殺されると言う事だったのだ…
七不思議を経験すると生きては帰れない…
だからこの高校は七不思議の最後の部分を知るものはいないのだ…
あなたの高校にももしかしたら恐怖は潜んでいるかもしれません…





続く






















[23218] 2話 満月の夜に
Name: ユー◆833da89e ID:edac7a35
Date: 2010/11/03 17:44
空に満月が出ている深夜二時…

女性が一人で歩くには遅い時間だ…

女性は仕事帰りなのだろう…

後ろから殺気を感じた女性は気持ちが悪くなり駆け足で逃げるようにその場を去ろうとした。

しかしその女子が後ろを振り向くと…

「イヤァァァァァァァァァァッ!!」








鮫島五郎の家の扉が開く…

龍二が帰ってきた。

「ただいま…」

五郎が龍二を迎える。

「お疲れさん」

五郎は目を丸くした。
何故なら龍二が霊を連れ帰ってきたからだ。

「龍二…お前!?…」

龍二は少し不機嫌そうな顔をしながら言った。

「こいつは成仏できなくなった可哀想な霊だ…俺の悪霊退治の手伝いをしてくれた。だからこいつを住まわせてやってくれ」

五郎は戸惑いの表情を浮かべる。

「しかしだな…」

レミは五郎を見つめる。

「へぇ!御爺ちゃんも私の事が見えるの?」

「お…御爺ちゃん!?」

龍二は五郎の肩をポンッと叩いた。

「まぁ…そう言うことなんで」

五郎は欠伸をしながら自分の部屋に戻った。






次の朝…


朝食はご飯と味噌汁そして魚の煮物が並ぶ。

龍二はムシャムシャと口に頬張る。

よく食う子は育つ…そんな言葉がある…龍二は16歳ながらもうすでに身長は180cmある。

龍二の食べる姿を見てレミが見つめている。

「何だ?レミも食べたいのか?」

龍二が聞くとレミは何度も首を縦に振る。

「じゃあこれを食べろ」

龍二は残っていた魚の煮物の一つをレミにあげた。

「うわ~久しぶりの食事!いっただきま~す!」

煮物を一口食べた。

だが味がしない事に気づいた。

「ちょっと!この煮物味が全然ないじゃない!」

煮物を見ると全然減っていない…

レミは思い切って煮物を丸呑みした。

しかし食べた筈の煮物が手に戻っている。

「何で!?」

龍二は呆れた顔で言った。

「当たり前だろ…お前の肉体はもうないんだから」

レミは少し残念そうな顔をした。

「ご馳走様」

自分の部屋に戻り制服に着替え玄関に向かった。

龍二は五郎とすれ違った。

「それじゃあ行って来る」

「気をつけるんだぞ…最近この辺りで不気味な猟奇殺人が起こっているようだ」

その言葉に龍二は目が鋭くなった。

「悪霊か?」

「それはわからん」

「その事件…調べてみるか」

龍二はそう言って玄関を出て学校に向かう。

龍二は高校に行く途中、民家を通る…

歩く龍二の肩を誰かが叩いた。

龍二が後ろを振り向くとレミがいた。

「何の用だ?家で大人しくしてろ」

レミは少し悲しそうな顔をした。

「だって私達パートナーでしょ?」

龍二は無表情で再び歩き出した。

「パートナーになった覚えはない」

「ひっど~い」

レミは少し頬を膨らませた。

龍二は少し歩くスピードを速めた。

「ねぇ…龍二…一生のお願いがあるんだけど…」

「一生って…お前の一生は終わってるだろ…まぁいい…で何だ?そのお願いってのは?」

レミは一つの民家の前に止まった。

「この家がどうかしたのか?」

龍二が聞くとレミが話した。

「うん…ここはね私の家なの…私が死んでもう20年くらいになるんじゃないかな…」

「で?俺に何をしろと?」







家の中で白髪交じりの女がずっと仏壇の前に座っている。

「レミ…あんたが亡くなってから何にもやる気が起きないよ…私も良い歳だしそろそろあんたのところへ行くよ」

その女性の目の前が光った。

白髪交じりの女が目を開けるとそこにはレミが立っていた。

「レミ…レミなのかい?ずっと寂しかっただろう?私も直ぐにあんたのとこに行くよ」

レミは首を横に振った。

「お母さん…私寂しくなんかないよ…だから長生きして。まだ私と会うにはまだ早いよ」

「レミ…レミィィィィィィィ!!」

「私もう行かなくちゃ!お母さん元気でね」

そう言うとレミの姿は消えた。

その一部始終を窓ガラスから龍二は見ていた。

暫くするとレミが現れた。

「もう…いいのか?まだ時間は少しあった筈だ」

するとレミは顔は笑っているものの目から涙をこぼした。

「いいの…これで…」

「レミ…言いたくないがお前は浮幽霊だ…もうあの世には行けない…どうするつもりだ?」

レミは俯いた。

「わかってるよ…そんな事は…」

龍二はその家を離れるために歩き出した。

歩いている途中警察が集まっている現場を見つけた。

良く見てみると知っている顔があった。

彼は木島実と言うベテラン刑事だ…
実は彼と新次郎は小さい頃からの幼馴染だったのであるのだ。
かつては不可思議な事件を新次郎を新次郎に紹介したりしていた。

木島も龍二の視線に気づきこちらにやって来た。

龍二はお辞儀をして言った。

「お久しぶりです…木島のおじさん」

木島も直ぐに新次郎の息子だとわかったらしい。

「新ちゃんの生意気息子がこんな大きくなったか…お前も騎士の仕事をしているのか?」

龍二は頷いた。

「ところでこの事件最近起こっている猟奇殺人ですか?」

朝に五郎から聞いた事件の話をする。

すると木島は腕に手を組んだ。

「あぁ…この猟奇殺人は謎があってな…」

「謎?」

「当初凶器は鋭い鉤爪での反抗かと思った…だがどうやら傷を調べたところ人間の爪だったんだよ…そそれにその殺害された者達は肉を食いちぎられている…まるで獣に食われたかのようにな」

「そうですか…では急ぎますので失礼します」

「お前も十分用心しろよ」

「はい」

そう言って龍二は再び歩き出した。

レミが龍二に喋りかける。

「ねぇ…さっきの事件もしかして霊の仕業?」

「霊ではないな…邪気や怨念のようなものは感じなかった…まだ確証はないが話の状況からして狼男の可能性が高いな」

レミはクスクス笑い始めた。

「狼男なんているわけないじゃん!」

龍二は少しニヤッとした。

「いるんだよ…今の時代は少なくなったが狼男は存在する」

「信じられないなぁ~狼男なんて…龍二は狼男実際に見たことあるの?」

「まだ師匠が現役だった頃一度な…だがあんまり覚えてないな…それきり狼男は現れなくなったし俺はその頃まだ小さかったからな」

そんな話をしているうちに高校に着いた。

「レミ…くれぐれも入ってくるんじゃないぞ」

「はぁ~い」

少しレミは残念そうな顔をした。

龍二は教室に入った。

「おはよう!龍二!」

「おはよう辰巳君!」

「おはよう!」

「おはよう!」

藤次、拓也、彩、早苗が「おはよう」と声をかけてきた。
それに龍二は「おぉ」と答える。
龍二が席に座ると四人が近寄って来た。
彩が喋り始めた。

「龍二君って幽霊とかお化けとかに興味あるんじゃない?」

龍二は少しギクッとした。

「何故そう思う?」

「だってこの前七不思議の話真剣に聞いてたから…」

藤次がその会話に割り込む。

「そこでだ!龍二!お前をゴースト&ミステリー研究部にスカウトしたい」

「何だ?そのゴースト&ミステリー研究部ってのは?」

「それはだな…」

ゴースト&ミステリー研究部とは世界の怪奇事件や幽霊・妖怪などだけではなく未解決事件や凶悪事件をを調べる部活である。
藤次によると今日の深夜に最近猟奇殺人犯が出没しているからその犯人を捕まえよう!という事らしい…
えっ!?何で龍二は止めなかったって?
勿論止めたさ
「馬鹿な事はよすんだ!」と言ったけど「俺達はヒーローになる!」って聞かないもんだから仕方なくこの四人についていく事になったのだ。


龍二は家に帰ると早速、五郎に狼男について聞き込みをする。
どんな奴が来ても対応できるようにまず戦う前に相手がどんな奴なのか知らべておくのだ。
これは獣騎士にとって当たり前である。

「師匠ちょっと話が…」

座禅を組んでいた五郎が立ち上がった。

「狼人間の事か?」

「何故それを?」

五郎はため息をつきながら喋った。

「最近の事件を聞いたとき薄々そう思っていた…新次郎が仕留め損ねた最後にして最強の一匹が残っていたからな」

五郎は引き出しの中から日誌を取り出した。

「これは!?」

その日誌には今まで父・新次郎が戦ってきた悪霊やモンスター、妖怪などの特徴が細かく記されていた。
龍二はその日誌の狼男の部分を隅から隅まで読みつくした。
どうやら狼男は首を切られない限り不死身なようだ。
鋭い爪を持ち恐るべき怪力の持ち主とある。
何とか最後一匹を追い詰めたが結局取り逃がしたらしい…
しかし新次郎の獣騎士としての腕は全獣騎士の中でも五本の指に入ると言われるほど凄い。
その父が後一歩まで追い詰めたのに取り逃がす事は有り得ない。
何かあったのだ…
父が殺せなかった理由が…

五郎はしみじみと語りだした。

「お前の父が残したものだ…お前が一人前になったら渡すように言われていた…と言ってもお前はまだまだだがな」




五郎の頭の中にあの日の光景が蘇る…

それは15年前の夜だった…

「ご無沙汰してます…師匠」

「どうかしたのか?こんな時間に」

その夜、新次郎はいつもにもまして険しい顔をしていた。

新次郎はいきなりこう切り出したと言う。

「師匠…もし私に何かあったら龍二をお願いします」

唐突にそんな事を言われても五郎は彼の心情を理解できなかった。

「新次郎…お前何を言ってる?」

新次郎はその質問には答えず話を続けた。

「後、これを…」

そこで新次郎は五郎に日誌を渡した。

「これは!?」

「私が今まで戦ってきた魔物達の詳細が詳しく記してあります…これを龍二が一人前になったら渡してほしいのです」

五郎は嫌とは言えずその日誌を受け取った。

「では…師匠…また会いましょう…失礼します」

そう言って新次郎は一礼した。
その一礼に五郎はありがとうとさようならの両方の意味を感じ取った。

そして新次郎は師匠に背中を向けて歩き出した。

五郎は新次郎の寂しそうな背中を見て新次郎は死を覚悟しているように見えた。
獣騎士になる者は誰でも死ぬのを覚悟しなければならない。
しかし新次郎の悲壮な決意は五郎にも伝わってきた。
今、新次郎を呼び止めても彼は立ち止まらないだろう。
この三日後、新次郎はこの世を去った。





深夜1時…

綺麗な満月が顔を出している…
狼男が現れるにはもってこいだ。

「師匠…行って来ます」

「くれぐれも油断するな」

龍二は大きく首を縦に振った。
そして玄関を出た。







その日の深夜二時のとある公園…


明日は休みとはいえ高校生がこんな時間に出歩く事は普通無い。

龍二が到着すると藤次、拓也、彩、早苗が来ていた。
全員意気込んでいる。

藤次は鼻息を荒くしながら言った。

「俺達で絶対犯人捕まえようぜ!!」

意気揚々と歩き出した龍二以外の五人…

少し歩くと凄まじい殺気を感じた。

立ち止まって辺りを見回す龍二…
その時、龍二は気づいた…
もう囲まれてしまっている事に…

「しまった…囲まれてしまっている…師匠…話が違うじゃないか」

全員を守りきるには…

龍二は呪符を五枚取り出した。

「臨兵闘者皆陣列在前…悪しき者から彼らを守りたまえ」

小さな声で呪文を唱えるとその呪符は紫色に光り五人の背中に張り付き五人は紫色の球体となりどこかへと消えた。

龍二は一度深呼吸をした。

「出て来い!いるのはわかっている!」

すると五人の男女が現れた。

見た目は普通の人間だ…

しかし目が黄色く光っている…

まるで闇で獲物を狙う野獣のように…

男女が四人並んでいたが一人の女性が一歩前に出た。

「中々いい男ね…食べ応えがありそうだわ」

龍二は表情を崩さず言った。

「仲間を増やしたのか…辰巳新次郎と言う獣騎士に痛い目にあわされてる筈だ…おとなしく浄化しろ…抵抗すれば痛い目にあうぞ」

するとその女は獣のような表情で龍二を睨んだ。

「お前ら獣騎士…いや人間は私の家族、親友を奪っていった…人間を喰らわなければ私達は生きてはいけない!お前ら人間もそうだろ!生き物を喰らっているではないか!?そのくせ自分達が喰われたら私らを根絶やしにするなどと言い出す!お前ら人間はいつも自分勝手だ!自分達さえ良ければそれで良いと思ってる醜い生き物だ!」

龍二は唇を噛んだ。
確かにこの女の言う事も一理あると思ったからだ。
龍二は思った…
もしかしたら父も同じ事を思いその罪悪感から狼人間を逃がしてしまったのかもしれないと…
しかし情けをかけるのは獣騎士にとっては命取りになる可能性が高くあるまじき行為である。

「言いたい事はそれだけか?とっととかかって来い」

そう言うと一人の男の体から毛が見る見るうちに生えていった。
顔も次第に狼のような顔になっていく。
数秒後には半狼半人の姿になった。

他の四人はまだ狼人間にはなっていない…

龍二のお手並み拝見と言ったところだろうか…

狼人間は龍二の方へ向かっていった。

そして鋭い爪を龍二に振り下ろした。

それを龍二はあっさり交わすと狼人間の腹部にパンチを入れた。

だが龍二のパンチが効いていないようだ…

「どうやら半不死身と言うのは本当のようだな」

狼人間は休む間を与えず攻撃を続ける。

何とか攻撃をかわし続ける龍二…

狼人間は龍二の腹部目掛けて体当たりした。

「うおっ!!」

龍二は木の茂みに吹っ飛ばされた。

狼人間は今がチャンスとばかりに龍二が吹っ飛ばされた場所に飛び掛った。

その光景を見て残りの三人が不気味な笑みを浮かべる。

そしてリーダーらしき女が言った。

「あの獣騎士口ほどにもないわね」

ゆっくりと龍二が飛ばされた場所に向かう。

その場所に向かっていると足下に狼人間の首が転がってきた。

それに驚く三人…

龍二がゆっくりと茂みの中から姿を現した。
手には剣を持っている。

まずリーダーであろう女そして男女二人は遂に狼人間になりその姿を現した。

龍二は狼人間達の方向に走った。
また三匹の狼人間も龍二を迎え撃った。

鋭い爪と龍二の剣が激しくぶつかる。

お互い一歩も譲らない…

攻撃し防いでかわして…

そう言った攻防が続いたがさすがの龍二にも疲れが出てきた。

いくら龍二でも狼人間三匹を一人で倒すのは至難の技だ。

鋭い爪が龍二の胸を切り裂き頭突きをくらわした。

「グオッ!!」

龍二は少し後ろに吹っ飛ばされた。

龍二は何とか立ち上がる。

そんな時聞き覚えがある声が聞こえた。

「だらしないなぁ龍二…」

龍二は唖然とした。

龍二の目の前に立っていたのは理恵だった…

「お前…なんでここに!?」

すると理恵が持っている鞭から白い炎が現われ理恵を包みこんだ。

理恵は白いボディーをした白鳥の獣騎士にへと姿を変えた。

理恵も実は獣騎士だったのである。

龍二も立ち上がり目を瞑る…

青い炎が龍二を包み込み龍騎士に姿を変えた。

「龍二はあのリーダーを倒して。私は後の二匹を相手にするから」

「あっ…あぁ」

勢いに押されて返事をしてしまう龍二…

白鳥騎士は二匹の狼人間に攻撃を仕掛けた。


龍騎士は狼人間のリーダーと睨みあった。

龍騎士の剣が青い炎に包まれた。

龍騎士と狼人間は同時に走り出した。

「ウォォォォォォォォォッ!!」


「ガァァァァァァァァァッ!!」

勝負は一瞬でついた。

龍騎士の剣が狼人間の首を切り落とした。

最強と聞いていた狼人間との決着はあっさりとついた。


そんな龍騎士に白鳥騎士が声をかけた。

「龍二お前強くなったな…」

二人は装甲を解除し元の姿に戻った。

普段は大人しく丁寧な言葉遣いだった理恵のタメ口に龍二は少々驚いた。

「龍二は私の事覚えてないようだね…私は忘れた事ないのに」

その言葉に龍二は戸惑った。

どうやら理恵は龍二のことを知っているようだ。

龍二は必死に記憶を探った。





続く































[23218] 3話 死の配達人
Name: ユー◆41761a6e ID:5da33b29
Date: 2012/10/27 13:27
とある古びれたアパート…

コンコン!

ドアをノックする音が聞こえる。

暫くすると中から髪はボサボサで髭を生やした中年男性が出てきた。
酷くやつれている様子だ。

「誰だ?」

「はい!私、夢を届けようと言うプロジェクトをしております西田と申します。おめでとうございます!あなたは夢を叶える対象者に選ばれました!」

「はぁ?…」

中年のやつれた男は状況が理解出来ずポカンとしている。
西田と言う男は一枚の紙を取り出した。

「これに願い事を書いてください。必ずあなたの願い事が叶います」

やつれた男はムッとした表情で言った。

「馬鹿にしてるのか!?あんた宗教の勧誘か?とっとと帰ってくれ!」

そりゃいきなり願い事が叶いますと言われても信用できるはずがない。
すると西田は言った。

「駄目もとで書いてみてくださいよ!必ず叶います!」

やつれた男は頭をクシャクシャと掻いた。
イライラしているようだ。

「わかったよ!書きゃいいんだろ!」

やつれた男は西田から奪うようにして紙を取った。
そしてドアを勢いよく閉めた。
その男はとりあえず願い事を書いてみた。

「今すぐ三億円が欲しい」…と

実はこの男、リストラされ家賃の滞納も溜まっている。
やつれた男は願いを書いた後、苦笑いして寝っ転がった。

「あの野郎…もしこれが嘘だったたら訴えてやるからな」

その瞬間押入れの中からドサッ!という音がした。
まさかと思い押入れの中を見てみると黒いバッグがあった。
そのバッグを開けると何と三億円が入っていたのだ。
やつれた男は呆然と三億円を見つめた。

「ウ…ウソだろ!?」

願い事が叶ったのだ…

しかしその男はそれから二日後の夜に体中切り刻まれた姿で発見された。
更に心臓が抉り取られていたと言う。









狼人間を倒した龍二と理恵…

龍二は理恵の記憶を探した。

すると龍二はハッ!と思い出した。

「まさか…理恵…あの理恵なのか?」

理恵はため息をついた。

「やっと思い出してくれたか…私は龍二が転校して来たときから気づいていたのに」

「まぁ…そう言うな。それにしても11年ぶりか…まさかお前と一緒の高校に通う事になるとわな」

「私だって龍二を見たときビックリして大声だしそうだったよ!」

龍二と理恵はお互いフッと笑った。
実は理恵の父も獣騎士で五郎とは親交があり一緒に悪霊退治をしていた事があった。
二人はその時に出会ったのである。
理恵の父親が亡くなってから中々会う機会がなくなってしまったのである。
龍二は小学校に行かなかった為、親友はおろか友達すらいなかった。
また理恵もその当時、人見知りで内向的であった為友達は少なかった。
そんな彼らだが何故か気が合った。
確かに合った回数は7、8回程度だったが龍二と理恵は親友と言える仲だった。

理恵はゆっくりと歩き出した。

「じゃっ!また明日!お休み!」

「おぉ!」

龍二もその公園を後にした。





そして月曜日…

龍二が教室に入ると藤次、拓也、彩、早苗が四人で話をしていた。

「俺さぁ昨日、犯人を捕まえるために公園に行った筈なんだけど何故か気づいたら自分の部屋のベッドで寝てたんだよな」

藤次がそう言うと拓也、彩、早苗も驚きの表情を見せる。

「えっ!?それ僕もだよ!?」

「私もよ!?」

「不思議よねぇ…」

龍二は喋りかけられないようにする為にそそくさと席に着いた。
彼らをベッドに寝かせた張本人で説明が面倒くさいからだ。
まだ朝礼が始まるまで後、10分ある。
理恵はまだ来ていないようだ。
左の席を見てみると美咲が勉学に励んでる。
龍二はこの前に言いそびれた事を言おうと声をかけた。

「ちょっといいか?」

すると美咲は悲しそうな…いや…龍二に怒りの眼差しを向けた。

「見てわからないの!?今、忙しいの!」

「す…すまん」

再び美咲は勉強を始める。

「じゃあ…昼休みに体育館の裏側に来てくれ…話がある」

美咲は龍二の言葉を無視して勉強を続けた。




そして昼休み…

龍二は体育館の裏側で待ったが残り五分になっても美咲は現われない。
龍二が諦めて立ち去ろうとした瞬間美咲が現われた。
龍二は美咲が現われるやこう言った。

「来たか…この前の件についてだが周りには喋らないでくれ」

この前の件とは美咲が七不思議を体験した出来事である。

「話すわけないでしょ!言ったところで誰も信じてくれないわよ」

そして美咲が言った。

「私の話も聞いて!」

「話?何だ?」

美咲は声を震わせながら言った。

「何でケンちゃんを殺したの?」

その言葉に龍二は眉間に皺を寄せた。

「何でケンちゃんを殺したのか聞いてるの!早く答えて!」

美咲の目から涙が零れ落ちる。
龍二は困惑した。
何故ならケンちゃんという人物に心当たりはないからだ。

「ちょっと待て!ケンちゃんって誰だ?俺はそんな奴知らないし人間を殺した事なんてない」

美咲は大粒の涙を零しながら言った。

「惚けないでよ!一年前の十月二十八日…ケンちゃん…川井健太は殺された!」

「だから何で俺が!?俺は川井健太って奴も知らない…それに一年前は別の場所に住んでたから有り得ない。誰かと勘違いしてるんじゃないのか?」

美咲は龍二の胸倉を掴んだ。

「ケンちゃんを殺したのはあれは間違いなくあなたが変身したあの騎士の姿だった!」

龍二は驚きのあまり言葉を失った。
獣騎士が人を殺めたという話は今まで聞いたことがない。

「何とか言ってよ!辰巳君!!」

龍二は下を俯いたままだ。

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン!

昼休み終了のチャイムが鳴った。

美咲は龍二の胸倉から手を放した。
そして龍二の顔を睨み教室へ戻ろうとした。
龍二は美咲に声をかけた。

「待ってくれ」

美咲は龍二の方を振り向かずに足をとめた。

「お前の大事な人を奪った獣騎士は俺じゃない…俺がその騎士を見つけてみせる!だから…俺を信じてくれ!俺はやってない!」

美咲は無言のまま再び歩き出した。
龍二は美咲の後姿を見つめる事しか出来なかった。





その日の帰り道…


校門のところに理恵が立っていた。

「よっ!」

「おぉ…」

龍二は元気なく返した。
理恵は心配そうな顔をした。

「何かあった?元気なさそうだけど?」

「俺の事はどうでもいい…ところで何か用か?」

龍二が聞くと理恵は話し始めた。

「今、時間ある?ちょっと付き合ってほしいんだけど?」

すると龍二は素っ気無く答えた。

「わかった」



そして龍二が連れてこられたのは理恵の家だった。

「久しぶりだね。龍二が私の家に来るの」

「そうだな…」

理恵は新聞をを持って広げた。

「これを見て」

龍二が見るとその新聞には内臓を抉り取られる事件が続出していると書いてある。

「殺された人達の家から怨念が感じ取れた。これは間違いなく霊の仕業よ…そこで龍二にも手伝ってほしいの」

龍二は少し頷きながら言った。

「わかった」

理恵は気難しい顔をしながらいった。

「この悪霊、次に襲う人が全く読めないの。邪念は感じ取れたけど僅かしか残っていなかったしどんな霊なのか想像もつかないわ」

龍二は考え込んだ。




その頃…

「私、夢を届けようと言うプロジェクトをしております西田と申します。おめでとうございます!あなたは夢を叶える対象者に選ばれました!」

「えっ?」

「これに願い事を書いてください。必ずあなたの願い事が叶います」

「はぁ…」

勢いに押され紙を美咲は受け取ってしまった。

西田の目がキラリと光った。

理恵の家に電話が鳴った…

「はい、もしもし」

その電話の相手は龍二だった。

「理恵…お前に頼みがある」

「頼み?」

「俺は今日の朝一番でお前が怨念を感じたっていう家に調査に行こうと思う」

「で?頼みって?」

「だから…今日俺は学校を欠席すると伝えておいてくれ…頼んだぞ」

そこで電話が強引に切られた。

「えっ?ちょっ…ちょっと!?龍二!?」

理恵は少し不機嫌そうな顔をした。

「もぉ!昔っから全然変わってないんだから!」

だが理恵は口ではそう言っても心の中ではちょっぴり嬉しかった。
龍二がまだ幼かった頃と変わらずあの゛龍二゛である事が嬉しかったのだ。
理恵は支度を済ませて高校へと向かった。








龍二は理恵から怨念が感じ取れたという家に調査に来ていた…
勿論、勝手に入ってはいけないのでこっそり忍び込む。
部屋に入ると微かに怨念のようなものが感じ取れる。
しかし普通悪霊が人間を殺した現場ならばもっと強力な怨念が残っていても良いはずだ。
龍二は部屋を徹底的に調べた。
そして部屋の片隅で一枚の紙を見つけた。

「ん?」

手にとって見てみるとその紙切れには「ここに願い事を書いてください」と書いてある。
その紙からは凄まじい怨念が感じ取られた。
そしてその紙はまるで焼かれたかのように黒焦げになって龍二の手から消えた。

「これは!?…」

龍二はこの紙からある魔物の仕業だと考えた。
だがまだ確信は持てない。
とりあえず龍二は一旦自宅に戻る事にした。






その頃、高校では…

何故だか美咲の元気がない。
授業中にも身が入っていない様子だ。
そして昼休みになり美咲は普段から人が殆どいない屋上に上がった。
心配になった理恵も美咲を追いかけて屋上に上った。
美咲は屋上から街を眺めるように遠くを見つめている。
そんな美咲に理恵が声をかけた。
こう見えて美咲と理恵は幼稚園、小学校、中学校、そして高校と同じであり結構仲が良いのだ。

「美咲どうしたの?元気なさそうだけど?」

すると美咲がため息をつきながら話した。

「辰巳君が休みなのって私のせいかもしれない」

「何でそう思うの?」

「あんな酷い事言っちゃったし…」

「酷い事?」

美咲は下を俯きながら言った。

「理恵ちゃんは獣騎士って知ってる?」

理恵は美咲が七不思議の悪霊に襲われた時の事がトラウマになっているのだろうと考えた。

「知ってるよ」

美咲はまだ俯いたままだ。

「信じてもらえないかもしれないけど実はケンちゃんは獣騎士に殺されたの…」

「えっ!?」

理恵は驚いた。
美咲の彼氏が獣騎士に殺されたなんて事は無論初耳である。

「辰巳君が殺したって言う証拠はないのに人殺しみたいに言っちゃって…」

「美咲…落ち着いて聞いてほしいの」

美咲が理恵の方を見る。

「実はね私もその獣騎士なの」

「理恵ちゃんが…そんなの嘘だよ…」

理恵は取り乱しそうな美咲の肩を抑えた。
そして美咲の目を見つめた。

「美咲ちゃん…私の目をよく見て!私が川井君を殺したと思う?」

美咲は目を真っ赤に腫らしながら言った。

「思ってないよ!思うわけないじゃん!」

理恵は優しく微笑んだ。

「私を信じてくれるんなら龍二も信じてあげて」

「えっ!?」

「龍二は無愛想で冷たい奴に見えるけど本当は根は優しくて傷つきやすい奴なんだよ…それに実は龍二とはまだ私が小さかった頃に何度も会った事があるの…龍二は絶対に人を殺したりはしない!だから龍二を信じてあげて」

美咲は俯いたまま軽く頷いた。
理恵はそんな美咲と肩を組んだ。

「さっ!教室に戻ろ」

二人は教室に戻った。

席に座ると美咲が理恵に思いついたように言った。

「今日ね駄目もとでケンちゃんを生き返らせようと思うの」

「美咲何言ってるの?」

理恵は美咲が言っている意味がわからなかった。

「この前ね夢を叶えようプロジェクトって言う人が来てね紙に願いを書くだけで叶っちゃうんだって!」

「何か胡散臭い…宗教の勧誘とかじゃなくて?」

その時理恵はまだこの時美咲の言葉を真剣に捉えてはいなかった。






そして今日の授業も終わり理恵は自分の家に帰った。
時刻は七時三十分…
龍二がコーヒーを飲みながら理恵の部屋で待っていた。

「遅かったな…随分待ったんだぞ」

龍二が素っ気無く言った。

「あのねぇ…龍二…今度の期末試験いつあるか知ってるの?」

龍二はコーヒーを飲み干し言った。

「試験?何とかなるだろ…それより例の事件の犯人がわかった」

理恵の表情が真剣になった。

「犯人の正体は天邪鬼だ」

天邪鬼とは仏教では人間の煩悩を表す象徴として、四天王や執金剛神に踏みつけられている悪鬼である。

「調べたところによると最近「夢を叶えようプロジェクト」とか言う怪しい奴がうろついていたらしい」

理恵の頭の中に美咲の言葉が過ぎった。

{この前ね夢を叶えようプロジェクトって言う人が来てね紙に願いを書くだけで叶っちゃうんだって!}

「龍二!美咲が危ない!」

「何だと?」

「今日その「夢を叶えようプロジェクト」の人から紙もらたって言ってた…それに今日ケンちゃんを生き返らすんだって言ってた!」

龍二の目が見開く…

「あのバカッ!おい!理恵!あいつの家に急ぐぞ!」

「うん!」

龍二と理恵は家を飛び出した。








「美咲…会いたかったよ…」

「私も会いたかったよ…ケンちゃん…」

人通りのない公園のベンチで肩を寄せ合う二人…

「これからはずっと私の側にいてくれるよね?」

「あぁ…勿論さ」

どこからか声が聞こえた。
それは龍二の声だ。

「いい雰囲気のところ悪いな」

そこに龍二と理恵が現われた。

美咲と健太は立ち上がった。

龍二が鋭い目つきで言った。

「美咲…悪い事は言わん…そいつから離れろ…」

美咲は龍二に言い返した。

「私からまた彼を奪うの!?もう離れない!離れたくないの!」

今度は理恵が諭すように言った。

「美咲!本物の川井君が悲しんでるよ!」

「えっ!?」

理恵は正気に戻った。

「ケンちゃんじゃない!あなたいったい誰なの!?」

「何言ってるんだよ?僕は川井健太だよ」

美咲は龍二と理恵の顔を交互に見た。
まだ迷っているようだ。

龍二は美咲を一喝した。

「目を覚ませ!そいつはお前が愛した男じゃない!そいつの顔を良く見てみろ!」

美咲が再び健太の顔を見た。
もう…そこにいたのは健太ではなかった…
頭には角が生え髪は白髪で顔は全体が皺くちゃで黒く黄色い目が光っている化け物だった。

「イヤァ!!」

美咲は龍二と理恵の方へ逃げた。

「アト…モウスコシダッタノニ…」

龍二の手に剣が出現した。

その剣を美咲に見せた。

「この剣はこの世に蔓延る悪霊や妖怪、魔物を斬る為の物だ…決して人を斬る道具ではない」

「えっ?」

わかりづらかったのか美咲が困惑した表情を浮かべた。
それを理恵がフォローする。

「要するに龍二は美咲の彼氏を殺してないって言いたいわけよ」

理恵は俯いた。

「天邪鬼!人の夢を弄んだお前を許すわけにはいかない!」

龍二は目を瞑り剣に気を集中させた。
すると剣から青い炎が出た。
その炎は龍二を包み込んだ。
龍二は龍騎士に姿を変えた。

「オマエノボンノウはナンダ?」

「俺に煩悩などない!」

龍騎士の剣は青い炎に包まれた。
龍騎士は天邪鬼に向かっていった
天邪鬼は黒い邪気の塊のようなものを龍騎士に放つが剣で防がれてしまう。
最後の邪気を放ち終わったとき既にもう龍騎士は目の前にいた。
龍騎士の剣が天邪鬼の体を切り裂いた。

「ジュウキシ…オソルベシ…」

天邪鬼の体は真っ二つになりそして煙のように消えていった。

そして龍騎士の体は青い炎に再び包まれた。
炎が消えると龍二の姿が現れた。

龍二と美咲は暫くお互いの顔を見つめあった…





古より人間の心を読み悪戯を仕掛けると言われる天邪鬼…
もしかしたらあなたにも近くにもいるかもしれませんのでご注意を…
















[23218] 4話 「わたし…きれい?」恐怖の蘇生
Name: ユー◆41761a6e ID:5da33b29
Date: 2012/10/27 21:19
皆さんはマスクをした若い女性が、学校帰りの子供に「わたし…きれい?」と訊ねてくる。「きれい」と答えると、「これでも?…」と言いながらマスクを外す。
するとその口は耳元まで大きく裂けていた。
「きれいじゃない」と答えると鎌や鋏で斬り殺されると言う都市伝説をご存知だろうか?

これを聞いてピン!と来た人も多いだろう…

そうこれは1979年の春から夏にかけて日本中を恐怖に陥れ社会問題にまで発展し日本でも有名な都市伝説の一つ「口裂け女」である。

1979年8月、それまで全国を席巻していたこの噂は急速に沈静化しその後、完全に日本から口裂け女の噂は聞かなくなった。

しかし2010年…全国に口裂け女が現われたと言う噂が再び広がっていた…




勿論、口裂け女の噂は龍二や理恵の耳にも入っていた。

最近は悪霊の活動が盛んで獣騎士達は退治に追われており噂に付き合っている暇はない。

しかし噂だけとは言い切れない事件が起きた。

ある小学校から帰宅する途中だった男子小学生二人が口裂け女を見たと言うのだ。

子どもの見間違いの可能性はあるがその二人の小学生と一緒に下校していた女子小学生が行方不明になり勿論、警察も必死に捜索したが見つからず姿を消した四日後に自宅の前で惨殺されているのを発見されたのである。
その女子小学生の口は耳まで裂かれていたという。

その後も同じ事件が相次いだ…

新聞やマスコミは「口裂け女復活か!?」「口裂け女の恐怖再び」などと言う見出しで大々的に伝えた。

最近では小学生や中学生だけではなく高校生にまで被害が出始めていた。

しかも龍二の高校の近くの高校からも被害は出ている。

口裂け女の噂は龍二の高校中に広まっていた。

現在高校の授業中…

するとこの高校の校長である島野が教室に入ってきた。

そして龍二を呼び出した。

連れて行かれた場所は進路相談室…

龍二が進路相談室に入ると木島が椅子に座っていた。

木島が鍵を閉めろというので理恵は鍵を閉めた。

そして龍二は用意されていた椅子に座った。

そして龍二は座るや否や言った。

「何か用ですか?…木島のおじさん」

「お前の耳にも少なからず口裂け女の話は耳に入ってる筈だ」

「確かに聞いてはいますが口裂け女なんて本当にこの世に存在するのでしょうか?父の日誌にも口裂け裂け女の事など書かれてはいません」

木島は煙草を吸いながら言った。

「確かに俺もただの都市伝説だと思っていたが自信がなくなった」

「それはどういう事です?」

「俺が見ちまったんだよ…巨大な鋏を持っている口裂け女を…俺の部下の一人は連れて行かれちまった…」

「それは口裂け女の格好をした模倣犯では?…」

確かに模倣犯と考えるのが普通である。

「ありゃ人間じゃねぇよ…ある奴がビビッて銃を乱射したんだがピンピンしてやがった…極めつけは俺の部下を背負って逃げたんだがその逃げ足が速すぎる…あんなのボルトでも勝てねぇぜ…」

木島はその時の事を思い出してか手や足がガタガタ震えている。

「頼む龍二!俺の部下を救ってやってくれ!それに俺の部下以外にも人質がいるんだ!頼む!」

木島は龍二の目の前で土下座をした。

龍二は口裂け女退治に協力する事になった。

龍二が教室に戻ると休憩時間となっていた。

クラスの間では口裂け女の話題で持ちきりだ。

拓也が戻ってきた龍二を茶化す。

「龍二!説教されたのか?」

龍二は面倒くさそうに答えた。

「そんなんじゃない…」

すると拓也はつまらなそうに席に座った。

自分の席には美咲が座っていた。

「退け…邪魔だ」

美咲は龍二を無視して理恵と喋っている。

「おい!」

龍二は少しキツメに言った。

すると美咲は龍二の方を見てニヤリとした。

「そういえば辰巳君、由香里と遊園地に行くって約束したんだって?」

「龍二…まさか…そういうのがタイプなの?」

理恵まで龍二を茶化すと龍二はそれを慌てて否定する。

「バッ…バカ言うな!あれは…元気付ける為に言っただけだ」

すると美咲は意地悪そうな顔をして言った。

「へぇ~それ知ったら由香里悲しむだろうなぁ」

「龍二最低ね…」

「お…お前らなぁ!…今度暇な時に行くと伝えておけ」

龍二は怒りを何とか押し殺した。

そんな龍二を見て美咲と理恵がクスクス笑う。






その日の放課後…

龍二は足早に高校を出ようとしたが理恵が校門の前に立っていた。

「ねぇ龍二、今日久しぶりにご飯でもうちに食べに来ない?」

龍二は立ち止まって無表情で答えた。

「そんな暇はない」

そして足早に立ち去る龍二…

そんな龍二を見つめる理恵…

「まだ怒ってんのかな?短気な奴」

実際、龍二は口裂け女を探しに行く為に断っただけで別に怒っているわけではない。






夕方…一人の男子中学生が家に帰宅する為に歩いていた。

するとその小学生の目の前には髪が長く赤いコートと白のパンタロンを履いている女性が立っていた。

その男子中学生が口裂け女だと気づき逆方向に逃げようとしたがあっと言う間に回り込まれてしまった。

ブルブル震えて怖がる中学生に口裂け女は聞いた。

「わたし…きれい?」

その中学生は恐怖のあまり何も喋れない…

しかし口裂け女は中学生に聞き続ける。

「わたし…きれい?」

少年の目からは涙が零れ落ちる。

その間にも口裂け女はゆっくりと中学生に近づく。

徐々に口裂け女と中学生の距離が縮んでいく。

その時…

口裂け女の前に龍二が立ちはだかった。

そして龍二はその中学生に一言…

「逃げろ」

と言った。

まだ少年はそこに突っ立っている。

龍二は怒鳴った。

「早く逃げろ!」

その少年はようやくその場を走り去った。

龍二は口裂け女を睨みながら言った。

「お前が口裂け女か?」

「わたし…きれい?」

「連れ去った人間は何処だ?」

「わたし…きれい?」

「連れ去った人達は何処にいるかと聞いている!」

「わたし…きれい?」

龍二は少しイラついた様子で言った。

「お前ふざけてるのか!?」

「わたし…きれい?」

龍二が何を言っても口裂け女は「わたし…きれい?」しか言わない。

龍二は話にならないと感じたのかこう吐き捨てた。

「きれいかって?冗談は顔だけにするんだな」

口裂け女の表情が変わった。

目つきが鋭くなり殺気に満ちている。

そして遂にマスクを外した。

マスクを外すと耳まで裂けた口が現われた。

そして

「お前もこうしてやるぅ!!」

と言った。

すると口裂け女の手に鎌が出現した。

そして龍二に目がけて突進してきた。

龍二は冷静にそれをかわすと腹部に蹴りを入れた。

だが…

また直ぐに鎌を振りかざした。

龍二はそれをバク宙でかわした。

次から次に口裂け女の攻撃が続く。

だが龍二はそれを冷静にそしてバク宙、バク転、前宙などを駆使してアクロバティックにかわしながらその間にもパンチやキックで応戦した。

しかし素手での攻撃は全く効いていないのか口裂け女は痛がる様子がない…

龍二は素手での攻撃を諦め剣での勝負に出た。

すると口裂け女の持っていた鎌が大きな鋏に変形した。

それには龍二も驚いた。

「随分便利な凶器だな」

そう言っている間にも口裂け女は鋏で龍二を攻撃した。

龍二も剣で応戦した。

キィィィィィン!!

しかし競り合ったが龍二は押された…

「何て馬鹿力だ!?…」

口裂け女の力は凄まじく今まで戦った魔物の中でもトップクラスだ…

龍二は口裂け女の腹部を思いっきり蹴った。

すると口裂け女が少し怯んだ。

その隙に龍二は目を瞑って気を剣に集めた。

そして剣から青い炎が出た。

その炎は龍二を包み込んだ。

生身では敵わないと思い龍二は龍騎士に姿を変えた。

すると口裂け女が持っていた巨大な鋏が巨大な斧に変わった

そして目にも見えないスピードで龍騎士に攻撃してきた。

「うおっ!?」

さすがの龍騎士も攻撃をかわす事が出来なかった。

龍騎士のボディーから火花が散る。

「何てスピードだ!?目に見えない!」

そしてまたボディーから火花が散る。

「ぐわあっ!!」

口裂け女のスピードに龍騎士はついていけない。

「くっそ!舐めやがって…今まで手加減してやがったのか!」

そして口裂け女の攻撃で龍騎士は空中を回転しながら地面に叩き落ちた。

剣も手放してしまった。

そして口裂け女が龍騎士の上に乗った。

巨大な斧から鋏に再び変わっていた。

鋏を口裂け女は龍騎士に突きつけた。

このままではマズイと思った龍騎士は手に鉄の塊のような物を取り出し口裂け女に投げつけた。

するとそれが当ると口裂け女の身体からジューと言う音がしたかと思えば煙が出ている。

口裂け女は苦しそうにしているが直ぐに立ち上がるとその場を立ち去った。

走るのが異常に速い…

木島刑事の言うとおりである…

あっと言う間にその姿は見えなくなった。

龍騎士の姿から龍二に戻っていた…

龍二はゼェゼェ…言いながら口裂け女の逃げた方向を見つめる事しか出来なかった。

龍騎士の前に現われた口裂け女は龍二が相手をしてきた魔物の中でも三本の指に入るくらい強い…

龍二は帰宅すると狂ったように剣の修行を始めた。

口裂け女に圧倒された悔しさと不甲斐なさ…そして何より人質をより戻せなかったと言う罪悪感…

こうしている内にも口裂け女は新たに標的を探ているかもしれない…いや…もう次の犠牲者が出ているかもしれない…

しかし今の自分では口裂け女には敵わない…

全ての怒りをぶつけているかのように龍二はひたすら剣を振った。

そんな龍二を五郎とレミは心配そうに見つめる。

「ねぇ…龍二…あれからご飯も食べずにあのまんまだよ?あれじゃ身体がもたないよ…」

レミがそう言うと五郎はため息をつきながら言った。

「ああなってしまったらあいつは誰の言う事も聞かん…暫く放っておけ」

そういうと五郎はその場を後にした…

レミも五郎の後を追ってその場を去った…

数日間、龍二は高校にも行かず自宅に引き篭もりただひたすら剣を振った…

数日間も龍二が高校を無断欠席したので美咲と理恵は心配した…

その日の下校中…

「辰巳君来ないね…もしかしたらあの時、私達がからかったのを怒ってるんじゃ…」

美咲が俯きながら言うと理恵はそれをフォローした。

「ダイジョブだって!龍二はクールに見えて短気だけどあんなことを根に持つような奴じゃないよ」

その一言に美咲は救われた気がした。

近くに公衆便所がある…

「ごめん美咲…ちょっとトイレ行って来るから待ってて」

理恵はそういうと駆け足でトイレに向かった。

数分後…理恵がトイレから戻ると美咲の姿がない…

「あれ?」

理恵が当りを見回したが美咲はいない…

不思議がる理恵の携帯電話が鳴った…

美咲からの着信だった…

理恵は電話に出た…

「美咲どこにいるの?待っててって言ったのに」

理恵は少し不満そうに言った。

すると電話から美咲の痛々しい声が聞こえた。

「理恵!助けて!口裂け女が…」

そこで電話が途切れた。

理恵は確信した。

美咲は口裂け女にさらわれた…

しかし何の手掛かりもない理恵にはどうすることもできない。

理恵は龍二の自宅に向かった。

龍二の家に着くやドアをドンドン!と叩いた。

中からは龍二が出て来た。

何にも飲まず食わずだったらしく少し痩せたようだ。

「どうした?そんなに慌てて」

「どうしたもこうしたも美咲が口裂け女にさらわれたの!」

龍二の形相が変わった。

「何だと!?」

龍二は舌打ちした。

理恵を家に上がらせ口裂け女についての過去の新聞記事を調べる。
美咲が何処に連れさられたのか見当もつかないからだ。
これでは助けに行く事もできない。

探し始めて二時間が経った時、理恵が声をあげた。

「龍二これ見て!」

その記事には母親が娘の口を耳元まで切るという記事だ。
その記事によるとある姉妹がいて、美人の姉がいつもほやされ、落ち込んでいる妹を見て、母親が姉の口を耳元まで切ってしまったとある。

「成る程…もし口裂け女がこの口を切られた姉の怨念だとしたら…」

「そう…この口裂け女は自分の住んでいた自宅をアジトにしている可能性が高い」

「それがわかれば美咲の居場所も分かるってわけか…」

「でもその自宅をどうやって見つけるかよね」

「それなら心配ない…木島さんって言う刑事に聞いてみる」

そう…龍二には木島という強い味方がいる…







美咲は目が覚めると口にガムテープを貼られ手足は縄で絞めらていた…

美咲が目をやると子ども数人女子中学生一人、自分と同じ高校生の男女が二人そしてもう一人大人の男性がいる。
制服を着ているのでどうやら警察のようだ。

口裂け女が高校生の男子のガムテープを解いた。

口裂け女は巨大な鋏を取り出した。

その男子高生は声にならない声で叫んだ。

「やめてくれ…やめて…やめろぉぉぉ!!」

しかし無残にも口裂け女はその男の口を耳まで裂いた…

「ぐやぁぁぁぁぁぁ!!」

飛び散る血…

美咲は目の前で何が起こったのか理解できなかった…

目を見開かせてパチパチした…

心の中で願った。

{辰巳君助けて!}

口裂け女は鋏で心臓を一突きしてトドメを刺した。

美咲は目を瞑った。

今はそれしか出来なかった…

口裂け女はその男子中学生の息がないことを確認すると男子中学生を背負ってどこかへと行ってしまった。

おそらくその男子中学生を自宅の前に運ぶ為だろう…

美咲は必死に縄を解こうとしたがきつく縛られており解く事が出来ない。

どうしていつも自分ばかりこういうめに遭うのだろうと思った。

もしかしたら自分はもう助からないかもしれない。

希望を失いかけた時、部屋に龍二と理恵が入ってきた。

龍二と理恵は人質のガムテープと縄を解いていく。

そして龍二が美咲のガムテープと縄を解いた。

美咲は龍二顔を龍二の胸に埋めた。

「辰巳君!!…怖かった…怖かったよぉぉ!」

涙が止まらなかった…

龍二はそんな美咲を優しく抱きしめた…

「泣くな…さぁ…ここから出るぞ」

美咲は頷いた。

理恵の先導で人質を口裂け女のアジトから脱出させた。

しかしそう上手くはいかない…

逃げる途中で口裂け女が立っていた。

こっちを睨んでいる…

「理恵…こいつらは頼んだ…口裂け女は俺が何とかする」

「わかった」

理恵は頷くと人質を逆方向に避難させる。

すると美咲が去り際に言った。

「辰巳君!負けちゃ駄目だよ!」

龍二は深く頷いた…

逃げたのを確認すると剣を出現させた。

いつの間にか口裂け女が目の前に来ている。

「さぁ…決着をつけようか」

龍二は目を瞑って剣に気を集め龍騎士に姿を変えた。

果敢に口裂け女に突っ込むが案の定、口裂け女のスピードについていけず押されている

口裂け女のスピーディなー攻撃を浴びる。

龍騎士は父のことを思い出していた…

「こういうとき…父さんならどうする?」

目に見えないスピードを持つ魔物相手に父ならどうしたのか考えた…

そしてハッと思い出した。

日誌帳に書いてあることを思い出した。

{目に見えぬ敵は目で感じるな。五感を使え」

「成る程…そういうことか!」

龍騎士は目を瞑った…

神経を集中させた…

目は瞑っているが口裂け女の姿が見えた気がした。

「そこだ!!」

龍騎士の刃が口裂け女を切り裂いた。

「あっ・・・あう…あ…」

口裂け女はバタンとその場に倒れ砂のようになり姿を消した。

龍騎士は勝った…






噂…それは信じるか信じないかはあなた自由だ。
しかし火のないところに煙は立たぬと言うことわざがある。
そのことを是非憶えていてもらいたい…




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