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[22592] 【ネタ】プリンセスラバー!主キャラ変え再構成物 (注)2周目再構築中
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/12 04:11
 読者の方どうもお初に掛かります!よくいらっしゃいました、私名前の通り自堕落トップファイブという者です。他の方々のSSを拝見させて頂きますと、まずはSSについての紹介をしないといけないみたいですね。

 このSSはジャンルで言うならばギャグに属するSSです。そしてプリンセスラバーとはエロゲーの一つで、ホームページ行って貰うと桃色世界が広がっています。ただ僕の描く話はせいぜいがキス止まりなので安心して下さい。そしてムラムラされたのなら購入して、いくらでも興奮して頂きたいと思います。ちなみにアニメ化もされてるそうですね、聞く所によるとハーレム物だそうで。

 では原作と何が違うのかと申せば「主人公有馬哲平」のキャラクターが違います。他の設定は出来る限りいじらず、主人公のみを変えようと試みた小説となっております。したがって売りはオリジナリティよりも主人公の個性と言った所でしょうか。ですので原作の主人公が好きだったり、オリジナルなシナリオを展開する事を期待される方には少々ガッカリな作品かもしれないです。

 基本方針はゲームを進めながら並行してSSを手掛けて行く形を取りますので、オリジナルとどう異なるのかを楽しむと言った事も出来ます。読者の方々の少しでも多くの人に笑いを提供出来るように、思考錯誤しましたので存分に楽しんで頂きたいものです。

 ちなみに原作を知らなくても話は分かるように書いたつもりです。ですので「プリンセスラバー何て知らねぇよ」という方はオリジナル小説とお考えになってお読みください。ただ元ネタとしてプリンセスラバーを採用してますので、興味が湧けば各自お調べになってください。


 最後に作者はSS成る物を書いた事が無く、誤字脱字、そして違和感などがございましたら遠慮なく感想に書いて頂きたいと思います。それで少しでもSSが改善に繋がるのでしたら有難い限りなのです。それでは長くなってしまいましたが、あらたなプリンセスラバーの幕開けと言う事でご挨拶とさせて頂きます(礼)

・・・ 

屋敷の使用人やらコック長だの家庭教師の人だの紹介が済み、堅いディナーを終えた俺はようやくの休息に長いため息と共にベッドに寝ころんだ。スプリングという奴だろうか、程良いバネの感覚に心から休める環境を何の苦労も無く得られた事が今でも信じがたい。

俺は両親と共に事故に会い、俺だけが生かされた。

新しき父もとい祖父の鉄心に俺は養子という形で引き取ってもらうことになった。幸か不幸か俺は結果として大企業の御曹司になった訳だ。両親を失う代わりに巨額の富を得た、ということになる。

鉄心、お爺ちゃんは俺は両親の想いが俺を生かしたと言った。当時は何言ってんだこの爺さん空気読めよ的な素っ気ない対応で窓の外を眺める俺であったが、今は何となくその意味を考える余裕があるのだ。

確かに交通事故で生き残れた事は僥倖であるし、そこに何らかの意味がある。生かされたのか単なるラッキーボーイなのかはこの際置いといて、やはりこれはチャンスと言えよう。しかしやはり両親の喪失は今でも俺の心に楔を打ちつけている。とりたてて甘えていた訳ではないが俺は親父ともおかんとも仲が良かったんだ。

 今屋敷のベッドで寝ころびながら右手を顔の上に掲げて手のひらを眺めていると、生きている実感が希薄になっているのを感じる。終わりは始まりというが、あの事故から俺はスタートを切れているのか。突然の大富豪屋敷に連れてこられたせいか、どうも現実味が湧かないらしい。いきなりの両親の他界、豪邸、メイド、違う世界にトリップした気分だ。
 コンコン

「ご主人様、もうお休みになられてますか?」

ごく控えめなノック音とともにメイド兼世話役の優さんが声を掛けてきた。ノックされるほど大した立場でもないので、俺は背筋を伸ばしてベッドの端に上半身を起こして腰掛けた。
「優さん?ああどうぞ、どうぞ。」
「失礼いたします。」
優さんが俺に背中を見せないように半身でドアを閉める。徹底して礼儀というか宮廷作法だなぁ。見えない壁を感じるぜ!そしてそれと同時にほろ苦くも優しい香りが漂ってきた。う~ん、マンダム!このカフェイン臭によって目が覚めるねっ!

「おお!コーヒーですか!何かすいません、色々してもらっちゃって。あとご主人様!?正直照れるんでてっぺーでいいっすよ。俺ご主人様って柄じゃないし何か俺も緊張しちゃうんで。」

慣れない対応にまごついている俺にも優さんは柔和な笑みを返してくれた、が少し困った表情を浮かべ
「お心遣いありがとうございます。しかしなりません。ご主人様。私はあなた様に仕えるメイド。親しき仲にも礼儀ありですよ。」

穏やかにしかし、言うべきことはしっかり伝えるこれ以上ないクレーム処理に惚れ惚れしそうになる。何となくコーヒーをテーブルに置く優さんを見ているとやはり薄い壁のような物を感じてしまっていた。

丁寧にコーヒー諸々を置いた優さんの表情は余り芳しくないもので、どこか俺を心配しているご様子。
「新しい環境には、なかなかなれませんか?」

「あー、適応能力は人並みにあると思うんで、じきに慣れると思います。っていうかメイドとかいきなり付けられても何かやっぱ他人行儀になっちまいますね。やっぱいきなり親しくするとかは人間社会に置いてちっとばかり厳しいと思いますよ。もうちょいお互いの事知った上じゃないと軽はずみな発言とかできないし。」

と、俺は至極当然の事を言ったつもりだったが、優さんはハの字から一転間逆の形に変え、俺をたしめるように
「主がメイドにそのような態度でおられては困ります。特に客人の前などではそのような言動をなされてはご主人様の品位を疑われてしまわれると同時に、そんな態度をさせている我々使用人にも叱責が飛ぶことになります。」

ふむ、大人しい従順系の子かと思いきや、案外言うことはしっかり言うもんだ。流石爺ちゃんの眼鏡にかなっただけある。

「分かった、何か俺も気遣い過ぎてた感は否めないし堅苦しいのは苦手なんよね。気は遣わないように心掛けるけど問題あるような発言してたら、その時は注意してくれ。俺も勢いとその場のノリで行動しちゃうお調子者なもんで、ストッパー役になってもらえたら助かるし。そんじゃ再度改めましてこれからよろしくな、優。」

俺は手を差し出して握手を求めた。やっぱ仲良くなるためには握手は基本だろ、米国紳士的な思考に基づいての行動だった。案の定優さん改め優は面喰らった様子だったがそれは一瞬の事で、すぐに察して俊敏にかつ、おずおずと手を握って来た。少し照れくさそうだったが。

「はい、かしこまりました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」

最後にはにっこりと会心の笑みだった。俺はその笑顔に世界の真理を見、また女性特有の匂いプラス手のひらの柔らかさに心は天井を突き抜けていった。うっひょう!柔っこい!良い匂い!ナイス笑顔ええ顔!オーマイグッドネス!

「あ、あの、そ、そろそろ放していただけると嬉しいのですが・・・。」

赤面した面持ちで迷惑困惑混乱状態と見える優さんからお声が掛かった。俺はと言えば認知症の老人のごとき顔で彫像のように石化していた。しかしフェアリーあるいはキューピーボイスでふと我に返り自分の非礼を恥じ、バックステップによってベッドに飛び乗り苦虫を潰したような顔を毛布にめり込むほどこすりつけて謝った。

「ごめん、久方ぶりの他者との、しかも女性との接触なんで余りの衝撃に自分を見失う所だった。本当に、ごめんなさい。」
「いいい、いえいえ、そ、そんな謝らないで下さい。べ、別に私も嫌とかではありませんので、はい。」
お互い湯気を頭から登らせながらたどたどしく詫びあった。

ちょっとしたハプニングはあったものの、その後は穏やかなものだった。俺がゆったりとコーヒーの香りを楽しんでいると優さんが声を掛けてきた。

「そういえばご主人様は何をなされていたのですか?」

もうご主人様の呼び名固定化されてんのかな~って思いながらも、訂正するのもめんどいのでそれでいっか~と思いながら返事に困った。や、だって何もしてないって言うのためらわないですか?とりあえず無難に過去を思い出してたと言ってみた。

「昔、ですか?あ・・・ご主人様は、一か月ほど前にっ!申し訳ありません!」

なんか謝られた。嘘は言ってないけど、こんな反応されると仮病使って学校休んだ事を思いだすから止めてほしい。ていうか爺ちゃん、何言った。何でこんな哀れんだ目で見られてんの俺。
「ちょーいちょいちょい、何を爺ちゃんに吹き込まれたか知らんけどさ。ぶっちゃけ普通の人よか幸せなくらいよ?両親居なくなったけど、マンモス企業の息子になれる。こんなこと一般的にはほぼ天文学的な確率っつーか、ほとんどあり得ない話でしょ。」

「いえ、ですが不用意な発言であったことを心からお詫び申し上げます。」

深々と頭を下げられ俺はどうも調子が狂うと頭をガシガシ掻き、話題転換を測ろうと策を必死で練っていると

「ご主人様、いえ、鉄平様はお優しい方なんですね。」

先の料理の話に変えようかと口を開いた時での発言だったので、口を開けたまま硬直してしまった。どうもこう直球で来られると精神が乖離する感覚に捉われるな。

「い、い、いや~、それほどでも。」
多分俺はタコも真っ青になるくらい真っ赤な顔だと思う。とりあえず俺は優さんにご主人様呼びを変えてもらえたことに嬉しかったりする。俺の稚拙なフォローが上手く行ったようでなにより、そしてふと疑問に思う事があった。

「爺ちゃん何て言ってた?あ、俺のことだけど。」
「哲平様とそのご両親が一カ月前に交通事故に遭われて逝去された、と。」
見てるこっちが苦しくなるような顔を張り付けてか細い声で優は答えた。ってそんだけ?

「はい、そのように。」
どうやら思っていた事をそのまま口にしてしまったらしい。何という淡泊さ、ふうむ一流の人間というのは無駄を嫌う感じだけど本当なのかもしれんな。というか興味無いだけか。自分の趣味とかには没頭してそうだもんな、あの爺さん。

「そっか、まぁおかげで優にも会えたし別に嫌なことばっかじゃないよ。それに爺ちゃんが俺に『お前は両親によって生かされた』って言って貰えたし。両親は爺ちゃんを目指してたみたいだから俺が爺ちゃん超えてやる!なんちゃって。」

最後の方言ってる自分が恥ずかしかったのでそっぽを向いて言った。ちらっと優を盗み見ると優しく微笑んでくれていた。何かこうして見るとお姉さんみたいな雰囲気に思えてきた。良く笑う人に悪い人は居ない、というのは俺の人生における一つの指針である。

「哲平様のそのご意思が本当のものでありましたら、必ずや叶いましょう。影ながら私もお力添えさせて頂きます。」

何か時代劇の夫婦みたいな会話で笑えた。
「どうか些細なことでもお申し付け下さい。私の喜びは哲平様の満足をもってのみ得られます。」

付け加えるように優は言った。ので俺も誠意ある気持ちを込めて答えた。
「何、俺の満足?それじゃー優、俺たちは今をもって上下の高さを等身にする!意味が分かるか、対等な立場を望んでいる!」

ここぞとばかりに仁王立ちになり、目力を込めて俺は言い放った。交渉の基本は無理であろう相場から入るのがスタンダードだと聞いた覚えがあった。そこで俺は無理難題をメイドに送る事にしたのだ。やはりというか予想通り優は目を白黒させた後恐慌状態に入った。

「そ、そんな・・・。私ごときが哲平様と対等だなんて・・・。なりません、そのように自分を貶められては!」

何か初めてだった、怒られ口調なのに褒められてる感じ。つーか、別に自分を卑下しての発言じゃないし。俺は諭すように言った。

「まず最初に言わせてもらうと、優こそ自虐的過ぎ。容姿端麗、成績優秀、才色兼備何て言葉が似合う程の資質を持ち合わせて置きながら、どこまで平身低頭なんだ。謙虚さは日本人の美徳とされているが、行きすぎた気遣いは逆に相手を不快にさせると言う事を知っておいてほしい。会って間も無い俺にこんな事言われるのはおかしいかも知れないけど、優はもっと自分に自信を持っていいんじゃないかと思うんだよね。教育やらお目付けを俺にしてくれるんならもっとドシンと構えてくんないと。俺はパワハラとかセクハラするような人間嫌いだし、当然なりたくない。だからやっぱ下手に俺を甘えさせるのは逆効果だと思うんだよ。お互いのためにもより対等に近い関係の方が望ましいんじゃないかな?」

俺がそう言うと優は唖然としたまま瞳が緩み始めた。半分恍惚とした表情になっている。目頭を熱くしてる様子がはたから見てよく分かる。これだけで本気で俺のことを考えてくれている証拠だ。優は目を閉じて沈思黙考を数秒間行った後、深く頷いてみせた。

「かしこ、いえ分かりました。哲平様できうる限り親しみやすい口調で話すようにします。ただ、丁寧語だけはご容赦下さい。メイドとしての責任がありますので。そして安心いたしました、あなた様なら必ずや祖父鉄心様の後を継ぎ、超えることも決して夢ではないと確信いたしました。」

だいぶ尊敬語を外した発言になったので最大限譲歩してくれたということだろう。俺もそれだけで十分だった、会ってまだ幾ばくも経っていないのに態度を突然変えれるはずもないんだ。ただ妥協してくれたことがただ嬉しかった。最後の方の過度な期待はなるべく背負わないようにするのが上手いストレスの受け流し方です。

「いや、これにて一件落着と言った所か。やー物分かりの良い人は本当助かるわ。」

と言った時優の姿を見失った。何と!ま、ままままさか俺幻影と喋ってたというのか?!と足元を見るとそこにはたして優は居た。何か落としたのか?いや、視線は完全に俺の股間に向かっている。ま、まさか俺の隆起がバレた?!や、まだ俺の機体は出撃前故に、格納庫もといパンツ内でしっかり縮こまっているはず。

「どした優、俺にはどうも下半身に意識が向かっているように思えるんだが気のせいか?」

優は頬を染めながら言った。
「?務めを。」

へー、務め。最近のメイドって高性能というか体張りすぎだろう。マクラ稼業までこなすとは、俺のマラもビックリ仰天。・・・って何だって?その時すでに優が俺の股間をまさぐっていた。
「ぶ、ぶぶぶぶ無礼者~~~~!!」

多分呂律がろくに回っていないだろうから。「ぶれいりょろー」と聞こえたはず。ズボンに手を掛けるすんでの所で悲鳴を上げながら後ろに吹き飛んだ。咄嗟の事とは言え腕だけの力でこの瞬発力、人間ってすげぇ。火事場の何とかを今垣間見た気がする。尚も迫ってくる優を片手で制しながら俺は荒い息を付きながら言った。突然の腕力の駆使のせいで軽く手がぷるぷる震えていたが。

「ま、待て。とりあえず落ち着け。理性ある人間なら落ち着け、寧ろ俺が落ち着くのを待て!」

すると優は至極当然のように言い放った。
「私は哲平様の伽役も仰せつかってるんです。私で女の扱いに慣れて下さい。人の上に立つお方は心得ておくべきとのご意向でしょう。」

どこのホストの先輩だよ言った奴は。あの爺さん何ちゅうことを。冗談で言って良い相手と悪い相手がいるってのを少しは理解してくれよ。冗談じゃなかったらより悪いわ!俺は大仰にため息を付き心拍数の安定化を図った。幸いにも自他共に認める生粋のメイドである所の優は俺のタイムに文句も言わず付き合ってくれた。付き合う前にいきなり突き合いを求められるとは・・・世界観がどうもずれてんのかもしんねーなこりゃ。

「もう一回聞くが、俺の下の世話って本気で言ってんの?

「はい、不慣れなもので至らない点もありましょうが、どうぞご指南下さい。」

不慣れなのにどんだけアクティブな人なんだろう、この人。女の人ってもっと何ていうの、ムードを大事にするとかって思ってたけど俺の思い違いなのか?

「待て、指南する所はそこじゃない。それ以前の問題だこれは!会っていきなり同衾なんていくら俺でも警戒するし、朝起きたらすまきされそうな展開を容認する訳ないでしょ。い、一体突然何しちゃってんのマジで!」

すると優ははっとした表情になり、ついで悲壮感漂う表情で俺を見つめてきた。

「私では、駄目でしょうか?」

半ば涙目で懇願されて一瞬理性が揺らぎそうになったがもう気持ちは固まっているので耐えることができた。

「駄目か良いかで聞かれれば、そりゃうん。嬉しい誤算だよ、そりゃ。でもやっぱ行きずりの女みたいな会って間も無くいきなりっていうのは控えたいんだよな。というかこれから一緒に生活共にすんのにそんながっつくなよ、寧ろ逆だろう普通!俺が襲ってキャー嫌―!なら想像もつくけどまさか求められるなんて微塵も思ってなかったから心の準備が出きてない、って童貞理論で悪いけどさ。」

言い訳とも取れなくもない、自己弁護する俺を尚も内心を探るような瞳で優は俺を見ていた。
「し、しかし男性の方は、その溜まる・・・と理解してるのですが?」

「溜まる分貯蓄できるような仕組みになってんの男ってもんは!よく我慢した方がより気持ちいいって言うでしょ、あれと同じだって。」

「それではどうしても私にはお情けを頂戴することは無いのでしょうか?」

ガン告知を受けた患者みたいな顔で俺にすがってくる優を見てると不思議に思えてくる。

「何か俺には理解出来ないほどの食いつきなんだけど、俺の性欲をそんなに満たしたいの?」
「はい、哲平様がご満足されればそれで。

「満足って・・・。俺ぁ素直な気持ちいきなり尽くしで余計なこと考えてる暇無い上にこれでもかって言うほどの特上の待遇を受けてんだ。今はとりあえず満足してんだよ。それに純情チェリーボーイみたいな事言うみたいで恥ずかしいけど、この人なら良いって思える人に出会うまでは守っときたいんだよな。俺は体の繋がりって言うより心で繋がりたいと思ってっからさ。だから、うん純粋に俺を求めてくれた優の気持ちは嬉しいけどやっぱもうちょっと互いを知ってからの方がお互い満足できると思うんだよな」

「・・・分かりました。気持ちが変わり次第いつでもお相手致します。気持ちが変わってもらえるよう精進して参ります。」

「ごめんな、なんか。女に恥かかせるなんて最低!って肉食系の女子から非難殺到しそうなエピソード作っちゃって。性経験なんてロクに無いから他の男のテクとかとは比べ物にならない気がして恥ずかしいんだよな。」

最後の方はモゴモゴ言いながらの弁解だったが優は安心したような顔になり、ゆっくりかぶりを振った。

「いいえ、私が突然言い出したばかりに哲平様にご迷惑をお掛けする結果になってすみませんでした。ちなみに私も男性経験はありませんのでどうぞご安心を。」

優はその後何事も無かったかのように部屋を後にしていった。いや、言葉通り何も無かったんだけどね。

本当最近の女の子は積極的というか怖いもの知らずというか、とりあえずアグレッシブだなぁ。俺自身こんなんだから浮ついた話とは程遠い奴だったけど何かもう魔法使いになることはなくなりそうな予感だ。不安と期待の葛藤に喘ぎながら実は俺最大のチャンスを物に出来なかったんではないかと悶々とした夜になった。

とりあえずもっと地に足を付けこれから頑張って行くしかないか!

―続く―

はい、どうもこんにちは、自堕落トップファイブです!ちょっと行間空けたのと言葉遣いに気を回しながら修正してみました。っていうかやっぱ関西弁と標準語混ざるとニワカっぽいですね~(苦笑)もう関西弁使うのは無しだな、こりゃ。

僕は感情移入して読むタイプなのでやっぱ自分と感性があった主人公の方が読むのが楽しくなるものです。僕にとってのおもしろいキャラ、もしくは素敵なキャラを具現化したのがこのニュー有馬哲平君と言えるでしょう。つまらないあるいは、駄目だこいつと思われた方は申し訳ありませんが今後の期待はできないので諦めて下さい。

ちなみにオリジナル主人公というより、キャラが変わった本来の主人公を起用しているのでオリジナル要素は特にありません。分かりにくい併記で申し訳ありませんでした。

こうすればああすればいい、また単純な感想もお待ちしています。こんな駄文のために時間を割いていただいて感謝感激雨あられでございます(謝)



[22592] プリンセスラバー!登校校舎に馬と姫出現
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/19 01:55
 今俺はリムジンという高級車で学校に登校しているらしい。第三者視点なのは余りに場違いな車の内装っぷりに俺の魂は完全に抜け切っていて、今の俺は抜け殻的存在なのである。

多分車の隅のホコリと一緒に同化して社交ダンスでもしてる頃だろう。何て事を脳内で考えながら居心地の悪い車内を満喫していた。ほこりと同化してるなんて発想、まさにどうかしてるとしか思えない。ふふ我ながら非生産的な事を考えておるわ。

今朝のニュースの眼鏡アナウンサーのインテリ顔を見ながらジュースを飲んでいるが内容が頭に入らないわ味が分からないは利用してる意味すら分からない。とりあえずそこにテレビあるから見て、ジュースあるから飲んだ的なマロリー先生が山に登る理由と同じなんですね。

 リムジンから降りるとまた巨大な建物に身を震わせた。いえ、武者震いです。
「ここが私立秀峰学園。本日より哲平様が通われる学び舎です。」
「こ、ここが・・・。」
私立秀峰学園-日本でも三本の指に入る有名校だ。その中の頂上にそびえたっているらしい。東京都内の一等地に広大な敷地を構え、立地面においても日本では最高レベルだ。最低レベルと最高レベルの差は知らないがとりあえずだだっ広いんだ。ちなみに秀峰とは高く美しくそびえる山々だそうだ。マロニー先生も勇んで登るに違いない!そこに山があるから!イエーイ!はぁ、ついていけるんだろうか。勉強・・・。は、ということは山だけにテストではヤマを張れば何とかなるとか?!ククク、俺はとんでもないことに気付いたのかもしれない。

「にしてもテレビでしかお目にかかれない学園に俺が通うことになるなんて・・・。人生なにが起こるか分かったもんじゃないな。」
「私はあまりテレビを見ませんもので・・・。どのように取り上げられていたのですか?」
「日本の礎を担う若者を育む、いわばブレイン寺子屋!って感じ?俺には縁もゆかりも無い場所なもんだから詳しい事は興味無くてすぐチャンネル変えちゃった、テヘ。」
しかし何だろう、自分で口にした途端、俺は足に、いや体全体に大気の重力をいつも以上に感じた。こ、これがプレッシャーって奴か!!
「ロクに試験も面接もなしに堂々と敷地をまたぐ俺はもしや侵入者として認識されないだろうか・・・。尻ポケットに護身用の輪ゴムをこしらえるべきだったか・・・?」
「?・・・編入当初は些細なご苦労もあるかと思いますが、哲平様であれば溶け込むのは容易でしょう。」
そう言われれば何となくそんな気分になってきた。まったくお世辞が上手い奴は嬉しいぜ!俺は軍人並みに手と足を45度大きく上下し、威風堂々と足かせの鎖を引きちぎる思いで振り上げ・・・って、どこに?自慢じゃないがぼかぁ方向音痴だよ?という顔で優を見ると察してくれたようで
「まず職員室で説明を受けていただきたいのですが、よろしければご一緒いたしましょうか?」
俺は間髪いれずに首を上下にせわしなく動かした。だって不安なんだもん。知らない人ばっかりの所なんて引っ込み思案の僕にはとてもとても。怖いよう、心細いよう。
「って優、学園今日からじゃないの?」
「はい、私の編入手続きは2週間前に済ませました。」
「まじか!んで学年俺より上下どっちよ。」
「2年生です。」
「小学?」
「見えますか?」
「見た目より若く見えるって言われない?」
「言われません。」
「そっか、俺より年下になるんだな・・・。」
「同学年です!もう話を聞いて下さい!」
「ああ、ごめんごめん!俺なりのお世辞だったんだって、やー学校でも一緒なんてちょっと俺安心したー!って組も一緒なの?」
「もう、哲平様なら大丈夫ですってば。組は同じ7組ですので微力ながら哲平様の学園生活を支えさせていただきます。」
「な、7組!クラス多いな~、流石は名門学園。しかもラッキーセブンと来たかぁ。良いことあるやもしれんなぁ、むふふ。」
「必ずや幸運が訪れられますよ、うふふ。」

 何て事を話している内に気付けばリムジンは走り去っていた。防壁となる高級車が無くなり俺たちは格好の注目の的だ。四方八方からの視線包囲網、まだ俺はこの奇異の眼差しに快感を覚えられるほどのM属性じゃない。45度に曲がった足を素早くそして可能な限り優雅に戻し直立不動の態勢を取った。無理な体勢を取っていたためか、膝が少々笑っていたが誤差の範囲内である。にしてもリムジン出勤は高貴な方々にも僅かばかり珍しいようである。とそろそろ歩き出そうとした時

「ヒヒヒーーーーン!」

こ、これは・・・う、馬だとぉ?!英語で言う所のホース!競馬で大人気大活躍しているあのお馬さんのいななき声が聞こえた、ご丁寧にパカラ音まで聞こえるじゃありませんか。そして振り返るとそこには・・・シンデレラに出てくるカボチャの乗り物!?

「ば・・・馬車(馬鹿)なぁぁぁ」

咄嗟に思いついた俺のダジャレの寒さで自身に鳥肌を立てながら前方の馬車を視界に捉えた。清潔感漂う馬は精錬された無駄のない鳴き声を我々の耳に届け、淀みなく門前に横付けされ申した。うーむ時代劇調にならざるを得ないでござるな。そして馬車から気品ある動作で降りて来られたのはまさしくお姫様でござった。

「お嬢様、お手を」

拝借してイヨーとか言うあれじゃねぇんすよ。割れ物注意と張る必要性すら感じない見たまんまガラス細工及び陶芸品を扱う仕草で手を引くご老体とお姫様!もうこの学園でパーティーするんじゃないの?っていう所作に俺は思わず口をアングリと開け呆然と眺めていた。エクトプラズムこんにちは!

「ありがとう、じいや。」

ゴクリ、奴ぁ、一体全体何者なんだよ・・・。どう考えても貴族というか、公家というか天皇のヘモグロビンが体内に流れてるに違いないだろう・・・。中世ヨーロッパへ帰れ、ファンタジー魔法使いの国へ戻れ、ここは近代国家日本なるぞ!何と心得る、ええ?心は常に鎖国状態である俺にそんなイギリスにかぶれるなどあろうはずもなし!俺はマゲしか愛せずマグロしか魚類は食さない漢と書いておとこって呼ぶ男なんだぜ?ちょび髭は帰れ!伸ばすなら板垣先生くらいまで伸ばすのが日本に入国する条件というものだろう全く!

俺は錯乱して一人問答をしていた。さぞや口からのブツブツ音にも熱がこもった事だろう。その間にも燕尾服の老人に手、というか手袋を取って現代の地に足を踏み入れられたご様子のお姫様。あーあ、もう戻れない!もうあの頃の栄光は帰って来ないんだよ?!あの苦しくも美しく楽しい魔法ダンスやら、仲間達との日々には戻れなくてもいいのかい、ねぇいいの?バラタ王子や、ヴィスルミトラー妃も心配するかもしれないよ?今なら間に合う、さぁ戻るんだ!俺はさらに混乱して仮想世界に飛び込んでいかんとしていた。

「ありがとう」

にっこりと背景の粒子を全てバラに変えるほどの威力の笑顔で俺を現実世界に引き戻した。何という、フレグランススメル、香るはずのない距離だと言うのに雰囲気だけで貴族臭がここまで風に乗って流れてくるじゃありませんか。

「あのお方は・・・」

俺の視線に優も気付いたのか同じ方向に視線を投げかける。

「すんごい存在感みなぎってる人だな、あれ。中世の人?」

「・・・はぁ。」

意味が分からないのかそれとも何言ってんのコイツ?的なため息なのか区別しずらい見事な中間生返事を投げ返してくれた。周りの連中もさも当然のように異世界の住人を容認しているみたいだし・・・。

!!!

やはり俺が違う世界に入り込んでしまったんだ!!何とかの使い魔みたいにタクト振り回されて床に額こすりつけてゴマを磨る生活が始まるんだ・・・。

俺は今後のストレス社会を見据えてしまい、肝腎への負担が増加したことによる痙攣を引き起こし始めていた。

「ご、ご主人様!ど、どうかなされましたか!?ご主人様?!」

優が最早哲平より本能的にご主人様に言葉を磨り変えてしまうくらい俺の全身の揺れは激しかったらしい。しかし悲しいかな、俺はご主人様と呼ばれることにより、よりストレスを倍加させてしまったのである、南無。ガタガガタガタガタガタ・・・・

「ふふっ♪」


ピタ


その名無しのお嬢スマイルにより、どこぞの名医も驚くほどの手際で俺の震えを止めてみせた。その笑みは例えればそう昨日の高級料理に舌鼓を打ったあの感覚と勝るとも劣らない五臓六腑にしみ渡る多幸感とも言えば良いのか・・・。俺の肝腎もさぞやご満悦に違いない。桜で言えば満開の状態だ。しかし本当に何者なんだ・・・。

しかもその視線は俺じゃないのにも関わらずの威力、こっちを向いていればもう俺脱皮しちゃうかもしんない。その笑みは馬っころに向いておりご褒美なのか何なのか首筋をなでてあげていた。

「お疲れ様、ヨサクちゃん、キヲキルちゃん。」

ネーミングセンスはともかくキヲキルって雄でいいんだろうか、太郎と花子で良いじゃねーか。悪態をつきそうになったが、患者が医者にたてつくのは恩を仇で返す行いということでぐっとこらえた。※気付けば馬車付近まで聞き耳を立てに行動していたのだが、いかんせん無意識のために自覚しておりません。

「ぶるるっ!」

ヨサクだか、キヲキルだかってああ!与作は木を切る?!本当どうでもいいや畜生!!がよだれをまき散らすオノマトペを周囲に振りまいたので俺は華麗にスウェーでいなしてみせた。遠方より優が不思議な物体を見るような表情を見せた気がするが気のせいだろう。

「うぅ、また呼び名を改められて。いい加減一つに・・・。とはいえ与作はともかくキヲキルはあまりに不憫。」

老紳士が俺の気持ちを代弁するかの如き姫の暴言を戒めていた。
なぁるほどぉ、あいつら散々戒名しまくられた不満が募ってのよだれまき散らしだったのか。俺はなんだかあの架空よだれを避けてしまったことを少々気の毒がしたので気持ちだけでも憐憫の念を馬Aと馬Bに送っておいた。ごめんな、馬夫と馬子・・・。

「日本文化への敬意の念を忘れては駄目よ、じいや。」

馬への愛情を忘れた天真爛漫姫が何とも見当はずれな言葉をじいやに返答していた。

「無論、であるからこそ、じいやが提案したトウキョウとタワーを採用していただきたいかと。」

 ブラボーあの姫にあのじいや有りとくらぁ。姫が姫ならあの爺さんも相当脳参ってるご様子。嫌がらせにトウキョウトッキョとキョカキョクって名前が今日本で一番旬な名前ですよ。何て言いたくなってきた。舌を噛め、舌を噛むことすらできない口輪を付けた馬の代わりにお前らが舌を噛め、全く。

「日本文化はフジヤマ・・・」

 気付けばインチキ日本文化論を説き始めた厚顔無恥姫はこの際置いておくとして、どうも奴はこの学園に置いて名物的キャラになっているのかもしれない。最初こそは物珍しさにジロジロ見ていく連中もいただろうが、ほぼ毎日同じネタをやるが故に観衆に見捨てられたのかもしれないな。芸人の道はかくて茨の道よなぁ・・・。
「うぅ、国王より授かった名馬がハラキリでは陛下が嘆かれます。」

どうも聞けば以前はハラキリなどという、日本人が知ったらいじめの対象か、よくて不登校児の誕生しそうな名前を名馬につけていたらしい。FUCKYOUというシャツを海外に着て行った人の結末を知っている俺としては嘆かわしい話である。

気付けば俺は馬車の後方で盗み聞きを働いていた。はっ、い、いつの間にこんな場所に来ているんだ俺は・・・。どうもヨサクとヲキリサクの名前に興味をそそられて気付けばあんな場所にまで行っていたのか。あわわわ、瞬間的に優の居た場所に目をやると優が腰に手を当て首を左右に振っているではないか。俺は疾風の如き速度で彼女の元に駆け寄り馬車の内装が気になって近くに行ったのであり、決してやましいことは何も無いとやましさと嘘の塊の空事を懇切丁寧に説明した。やたらに哲平様を信頼しておりますから、と繰り返しているのは寧ろ信頼されてない証と見て間違いない。今後気をつけますです、はい。

そんな事をしてる間に女生徒に囲まれて黄色い歓声を浴びせられながら笑顔で対応しているご様子。ふぅむ、どうやら芸人から女優に転職?というより貴族が平民と同じ敷居に位を下げてきた、と言った方がしっくりくる気もする。まぁ異世界の住人なのだから現世の我々からすればさぞや珍しかろう。なーんて素直に外国移籍の女性って分かっていてもあえてそういう認識をしたがる俺こそ亜種なのだろうか。

つーか同年代とは思えない程の発育の良さというか、髪の色は良いとしてスタイルチートだろ、もうあれ。高根の花どころか雲突き抜けた山頂の花に見えてきた。

しかし運が良いのか悪いのか女生徒にヘーゲルだかヘンゼルだか言われたお姫様がこちらの方に目を向けておられるではないか。最早距離など有って無いに然り、俺はヘビに睨まれた蛙の心持で地面に立つ一本の樹木として形成された。

軍隊である所の兵長程度の俺が元帥クラスの高潔な人に会うともはや二の句が継げない程の精神状態に陥るのである。AV見るのは好きでも実際会いたいかどうかって言われれば別にって感じじゃないですか?!そこは割り切ってるっていうか何と言うか、俺は何だか不釣り合いな気分になって凄くかしこまっちゃうんだよねっ!

「あらっ」

何て感じの事を読唇した時には完全に標的と化していた。どうしよう、もう別に悪い事してないのに帰りたくなって来た・・・。

(続く)

どもども、とりあえず行けるとこまで行ってみました自堕落トップファイブです。何ていうか色々自分のネタとかを挟むと偉い分量になってしまい、実質全然進んでないんですよね・・・(汗)まぁ暇つぶし程度というか気軽に読んで気軽に見捨てられると思いますんで、楽しんでいただけた方が一人でもいらっしゃればそれだけで書き手の僕としては嬉しく思います。一度やられた方は結構主人公以外の登場人物の言動丸映ししてる事多いので見比べてみるのもまた一興かと思います。
それではここまで読んで頂き本当感謝感激雨ふらしでございます(礼)

~追記

感想欄を数人の方から受け、こんな文でも読んで貰えるんだ!という喜びとエセ関西人の称号を受けそうなトップファイブでございますが、今後続きはチラ裏板の方にて投稿させていただこうかと思っております。

この俺がエセ関西人、どういうこっちゃ、って何でやねーん!うわエセ臭ぇ!

ほんと、頭悪そうな文章でお目汚しすいません(滝汗

ちなみに当初オリジナル主人公って意味でオリ主付けたんですが、名前一緒の主人公なんで別にオリジナルじゃないんですよね(照)

という一番最初の投稿でご指摘頂きました。その節はどうもすいません、言われるまで全く気付きませんでした。今後は有間哲平のキャラが変わり所により周囲の反応を変えていくという手法を取ることになるので、ご理解のほどをよろしくお願いいたします(土下座)

あと読みづらいかつエセ関西人うぜぇとの事で評価Fクラスの1話はまた日を追って書き直そうと思いますので許して下さい!消したくて消したくて、もう恥ずかしい!それではまたお会いしましょう!もっと関西オーラが出せれば関西人キャラで行けるのに俺にはその技量がまだない・・・orz

1話は無事改装いたしましたのでもう恥ずかしくありません!イエーイ!



[22592] プリンセスラバー!新キャラ根津ポジティブ属性持ち
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/19 09:58
 校長からまで手厚い愛情を注がれ、俺は担任と教室に向かいながら考えていた。何ゆえにここまでちやほやされているのか、真っ先に思いついたのが祖父鉄心の学園への莫大な寄付だろうか。そこで俺に媚を売る事で鉄心のご機嫌とりをしてるんじゃないだろうか。

しかしそうすると先の姫様が俺に関心を寄せてきた所に疑問が生じる。学園とあのお姫様がなんらかのコネクションが無い限り俺の情報が漏れるはずがない。まぁあっても不思議ではない雰囲気の人物ではあったが。

ともすれば優か?あいつが2週間前に編入手続きを済ませていることがやけに引っかかる。先に俺の事を伝えておいて、俺が学園へ自然に溶け込むように配慮してくれたのではないか。ふむ、その可能性も考えられるな・・・。そう考えたら別に俺にとって何の弊害も無いし、寧ろ感謝してしかるべき行い。

両親との愛別離苦の後遺症とでも言うのか、どうも最近疑り深くなっている節があるな。そんな事を考えている内に気付けば俺は教壇の上に登らされ、担任から自己紹介を促された。

「有馬哲平です。えー福井県から来ました。趣味は・・・」

俺は詰まった。俺の趣味、本当の事を言えば、エロゲ、麻雀、ネトゲ、AV鑑賞・・・。
男としてはまず正常な趣味と言えるがこの場で言えば間違いなく地雷にもほどがある。
スタンダードに、興味は全く無いが一般的な回答を試みた。

「趣味は読書に、Ab・・・・映画鑑賞です。」

あ、あぶねぇ!!脳内で考えてる事と言わんとしようとしてた言葉が似てるもんだから無意識の内に好きな方を答えようとしてしまった。ブイと言いきっていたら間違いなく沈没してたな。なんとか不沈艦の地位は守ったと見える。

背中に冷たい汗を一筋流しながらは俺は何とか、趣味まで言い切ったのでこれでよしと思いよろしくと締めくくった。

生徒たちの反応はと言うと、初め俺の存在を興味無さそうに眺めていたが、有馬と発言した途端目の色を変えた。有馬有馬とシュピレヒコールされるもんだから、俺は何となく実は田中です、と訂正したくもなった。いや、有馬であってるけど。何かここまで注目浴びるの恥ずかしいんだもん。俺って元来だ夫だからどうも、こういう場でどっしり構えられないなぁ。いずれ慣れるんだろうけど玉の輿とかお零れ狙って近づいてくる輩の事を考えるとちょっと気分が沈んだ。

案の定というか予想的中で担任の教師は鉄心のコネを期待してるのか、クラスの連中に俺の補佐をするように要請していた。全く馬鹿げた事を言うおっさんだ、そんな事をして俺が楽しい学園生活を送れることに何の意味があるんだ?俺を楽しませるのではなく俺が楽しむ努力をしない限り俺の才能やら資質が開花することはないだろう。俺は寧ろ生きる力を損なう行為ではないかと感じた。

その後は根津とかいう優男がゴマすりに寄って来たのを引き金に連中は一つの波となって俺の席に押し寄せてきた。有馬様有馬様と、俺の中身より俺の爺ちゃんしか見てないような発言がいちいち癪に障って仕方が無かった。

よく母親が言っていたが、若い内は苦労は買ってでもしろなんて言葉を思い出した。それに比べてこいつらの俺に対する蜜にたかる蟻のような態度。正直いくら成績が優秀であるとは言え、こうまで打算さを前面に押し出して来る連中と仲良くする気は一切俺にはなかった。

「父が代議士の!」

「お目を掛けて頂いて・・・」

あ~はいはい、本当聞けば聞くほどどうでもいい。もう俺はお願いしますすら言うのがかったるくなってきたので一人一回よろしくと言うことに決めた。すると最初にデバった根津君は何を勘違いしたのか、自分を生涯の友として覚えてくれと言いだした。俺は辟易とした気分に頭を押さえながら

「あ~はいはい、障害者の友達の根津君ね、主に脳の。どうもよろしくね、うん。後近いよ君。」

と精一杯の皮肉を言って突き放したつもりだったが、どうも彼のツボに入ったらしく

「はっはっは、有馬さんは何とウィットに富んだ方なんだ!この根津一本取られましたな~!」

寧ろ奴のテンションを更に増長させるばかりで、もう手の施しようが無い所まで勢いに乗せてしまった。というか何を言っても良い方に解釈するもんだから最早この結果は必然だったような気がしてきた。血液型なんてしょうもないものを聞いてきたので今の小学低学年でも笑わないであろう
「クワガタ」

と言っても大受け、しかも星座占い的に俺との相性はばっちりらしい。俺がクワガタと同類とでもいうのだろうか。さらには星座まで聞いてきたので

「人に星座を聞く時は正座して聞けと親に言われなかったの?」
という無茶ぶりに対してもにこやかに対応、そして良い姿勢、この従順っぷりに俺は鉄心の影響力の強さを垣間見た気がした。

そしてここでも真面目に答える気が全くない俺は

「今日の星座は銀座かな。昨日はひざで一昨日はピザだったよ。」

と回答としては最早0点とも言える返答をした。しかし根津(君付けする気がなくなった)にはどんな珍回答もパーフェクトらしく。

「ブラボー!今回はそう来ましたか、いや即座にその切り返しをする辺り有馬さんの能力の高さを示している!」

何て言って一人で大はしゃぎだった。何てマラカスが似合いそうな奴なんだろう。とりあえずどうしようもない男だった。どうしようもない事に俺も正直褒められて悪い気はしなかった。やっぱ俺もどうしようもない男かもしんない。

周りのお嬢様やお坊ちゃん達は流石にこのやり取りを見て唖然としているご様子。そんな中でも優は意に介さず

「哲平様は慣れない環境に少々戸惑っています。お気遣いよろしくお願いします。」

何て言ってくれた。おおう、流石パーフェクトメイドの称号をお持ちの方は違う。
この発言こそ素晴らしい発言だと俺は思うが、根津にはどうも違ったらしい。

「む!?藤倉さん、失礼ながら申し上げましょう。人間関係の構築には第一印象が大きく影響を及ぼすものです。」

言ってることは真っ当なんだが、奴はその印象を必要以上に良く見せようと奮起したせいで、逆に俺が距離を置いたという事実に気付いた方が奴のためだと思った。が、別段そこまで根津と仲良くする気も無かった俺としてはこのまま沈黙を貫く事に決めた。

「根津様の印象はしかと哲平様に刻まれたのではと。」

うん、主に悪い方に。しかしこれでどうにか場が収まりそうだとホッと一息付くと根津は

「まだまだ話し足りません!」

などと駄々をこね始めた。本当にめんどくさい奴だなコイツも・・・。

「これから同じ釜で飯食うことになるんだから、話す機会なんていくらでもあるだろう。」

「何と!有馬さんは私と同じ食卓を囲んでいただけるのですか?!それはありがたい申し出です!」

「ちょ、飛びすぎだっつーの!ええい、話を飛躍させるのだけは一級品だなあんたも!つまり同じ組になって一緒に居る時間が増えるんだから話す機会増えるっつってんの!」

「いやはや一級品などと私にはもったいなきお言葉!ところで有馬さん、急な編入で学内のことなど分からないでしょうから私がご案内させていただきましょう」

図々しさもまたピカいちな根津は最早断定口調で話をガンガン進めていく。そこに女性徒の介入も加わり場は混戦状態に入った。優に案内してもらう気しか無い俺としては、もうこいつらはガン無視することに決めていた。あ~早く帰りてぇ。

                                    続く

どうも皆さんこんばんは!いつも読んで頂いて恐悦至極!自堕落トップファイブです。
とうとう新キャラ根津君が現れました。根津君のキャラはなかなか良いんですが、いかんせんネタが酷いので何とか駄洒落連発で場を引き立たせる事にしました。こうして見ると自分の文章も稚拙だな~って実感しますね。この後だ~れだを喰らうんですが、いったんここで話を切って次回につなげようと思います。
それでは皆さんごきげんよう、今日も未熟な文章をこんな所までよんでいただいてありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!出会いそして疾走
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/19 17:28
 どうする?!この局面をどう乗り切るんだ有馬哲平よ!

何か俺は彼女に後ろめたい所があるのか、ええ?いやあろうはずも・・・馬車の付近で盗み聞きを働いた事か?し、しかしあれは健全な男性なら誰しもやることじゃないか!(※しません)というかちょっと待て、もうちょっと冷静に分析してみろよ。

そもそもまた登校初日の俺になぜ彼女が俺の方をみるというのか。なぁ諸君、普通そんなことありえるはずないだろう?だからだ、俺ではなく別の学生に視線を投げかけているに違いないじゃないか!ハハッ、何だそんなことか。ふぅー安心安心。

「・・・ウフッ♪」

ズキューーーーーン

一陣の風が、突風となり俺の体躯を突き抜けて行った。今のが戦場なら確実に致命的な一撃をお見舞いされているに違いない。多分どこぞの紛争地帯に彼女を連れていけば易々と一個小隊潰せるんじゃないだろうか。

とりあえず俺と彼女の直線状にいる誰かに微笑みかけたというのは疑いの余地が無い。だがここで油断してはならないのが、俺に笑いかけてもらっているんではないか?という勘違いである!

最近余りにも男として美味しい話が次々と舞い込んでいるのである。そろそろ運気も下がって来るとうのが俺の予想である。したがってここはもうちょっと様子、というかもうさっさと職員室に行けばいいんじゃないかと思わないでもない。しかし俺の足は俺の意に反して地面に根を完全に張ってしまったようでテコでも動こうともしないのである。

そこで俺はある行動に出た。まず勘違いであるということの確認である、首だけを限界まで曲げ眼球もまた限界まで寄せ、後方確認を行ったのである。うん、とても広いグラウンドの土、そして染み一つ感じない艶を保った校舎、実にマーベラス!掃除が行き届いてるなんて感心じゃないか。でも人の掃除はいいんだよ、人は。何で誰もいないんだよ!

なんちゅうこっちゃーーーい!こら完全に俺に的を絞っておるじゃないかーーい!

俺は内心で断末魔をあげ、また首の悲鳴を聞きながらも元の位置に戻せず、鼻歌を歌いだした。すなわち、僕はあなたの邪魔をする気は一切ないのでどうぞさっさと移動してくださいアピールである。

「如何なさいましたお嬢様?・・・む。」

OH・・・声から察するにお嬢様の異変を察したじいやまでどうやら俺を異物として認識したような声色になっとるじゃないか。ど、どうする。コマンド逃げるを選択出来ない以上襲う、戦う、説得する、死ぬ、アイテム、くらいしか道が残されていない!

まず襲う?色情魔のように?いやいやいや、今の状態ですら相当不審なのにいきなり飛びかかっていったとしても相手も想定の範囲内ということで瞬殺されるのが落ちだ。そもそもあの爺さん拳法とか普通に用いてそうだし、お嬢様も護身術の一つも会得されてる可能性が高い。さらにはすでにスナイパーによって俺の脊髄に照準を合わせてるという可能性も否定できない。

そして戦う?皆の者勘違いしないで欲しい、ここは騎士道を貫いて正々堂々たる勝負という意味である。足が動かない時点で不戦勝な気もするが決意すればあるいは・・・!しかし襲うと同じ理由で現時点では結局却下である。

勝てば官軍とは言うが幸いにも勝てたとして国家の馬借りれるようなプリンセス、まず間違いなく国を挙げて俺を殺しに・・・あわわわわ。そして襲った理由は自己防衛のため、何もされてないのに?完全に頭がおかしい奴だ。麻薬服用の疑いがあるとみて御用の身になること間違いないだろう。

説得、ふむ妥当だな。しかしそもそも何を材料に説得を試みろというんだ。親の後ろ盾が無かった場合俺の能力は全てにおいて平均ないしは平均を下回るというのだぞ。相手が得になるように説くからこその説得なのだ。

それから・・・死ぬ?!何で、どうして、何があなたをそこまで追い詰めたの、ねぇどしてなのっ。・・・いくらなんでも最終奥義にもほどがあるだろう。

大体この状態で死ぬって言ったら舌を噛み切るくらいしかない訳で、それこそ相当の歯力を必要とする訳で。中途半端な思いじゃ駄目なんだよ!死のうと思ったもののやっぱり死ぬの怖い、だから無意識に手加減して噛む結果口から鮮血をまき散らして倒れた謎の男という、よもや今後学校に行かず引きこもりになる以外に道は無い。

逆に成功したとして、優や一国のお姫様に一生消えないトラウマを植え付けてしまうことになるんじゃないか?どっちみち没だ。

となると・・・アイテム?俺には小型麻酔銃だの、火力底上げ靴やら、はたまた変身グッズなんて持ち合わせていないし、護身用に輪ゴムを採用する男なんだよ?そ、そんな男が一体何を持ち合わせてると・・・はっ!?

俺はその瞬間天啓が閃いた!いるじゃあないか、おあつらえ向きな奴が・・・。

本人が聞いたら間違いなく柳眉を逆立てそうな発想だが、ここは優お姉さんを頼りにさせてもらうとしよう。

「ah・・・ You come on.You come on.♪Hey so say You.Yey♪」←注(優こっちに来て下さいというアピールです)

とりあえず演歌から洋楽ぽいノリの鼻歌にチェンジしてさりげなく優を誘いだすことにしてみた。しかし肝心の優は全く俺のYou=優 ということにシフトチェンジできておられないご様子。お、お前このままじゃ36計逃げるしかなくなるじゃないか!

「あなた・・・」

最早俺には時間が無かった。もう姫から召集の声を掛けられようとしているのである。今回の失策は次への布石、必ずや次は上手くやってみせよう。とにもかくにもこの現状を打破せぬことには俺に未来は無い。

仕方が無いので俺は苦肉の策が全く相棒に伝わらない事に失意の念を抱きながら、最小限の動きで優の制服の裾をクイクイッと引っ張った。

「・・・?」

今度は流石に彼女も察してくれたらしく、首をわずかにかしげてこちらに疑問の意を表した。俺は正直に八方美人じゃない本物の美人と話した事が無いし、語学に明るくも無いので国際交流も絶望的、引いては品格もまだまだ未熟故ヘンゼルさんとは話しをしたくありません。などと言えるはずがなかった。

ここでお得意の嘘八百で乗り切ることに決めた。

↓ここからは小声の会話となります
「優、実は俺今日朝から胃の調子が悪いんだ。」

「・・・え?!だ、大丈夫なのですか?」

「しーっ大きな声を出すんじゃない、腹に響くだろう。」

「す、すみません。」

「だからだ、ちょっとあちらのお嬢様の相手をするのにはいささかモチベーションが足りておらんのだ。」

「・・・はぁ。」

未だに俺の言わんとする所の意味を測りかねてるような返答に軽く絶望を覚えながらも、俺は懸命にそして迅速に言葉を繰りだした。

「だからだ、ここは優があの人の相手をしてる間に俺がトイレを見つけそして用を足す。そして優は俺がこの場から去った理由やら、世間話に華を咲かせてくれればいいんだ。」

「なるほど。ですが哲平様、お手洗いの場所はご存じではないでしょう?」

「だからと言って二人して逃げたら感じ悪いだろうっ。そしてその訳を話してから行くなどという時間も猶予も俺には残されてはおらんのだ・・・。」

「っ、そこまで具合が悪いのでしたら私もご一緒にっ・・・。」

「それはもうその辺の人に聞いてなんとかっ・・・」

「ですが・・・」

「だから・・・」
↑ここで小声終了です。

全然迅速じゃなかった、むしろ口論を始めた俺たちに姫様も小声で「あのぅ~・・・」何て言っていた。このままでは本格的におかしい人たちと思われる!俺はやはり強硬手段に出るしかないと決断を下した。
「それじゃ、優!あとのことは任せたぞ~!俺はちと用事があるのでなっ。」

最早健常者のそれと変わらないくらい颯爽と過ぎ去った俺を見た優は、何となく俺の真意を把握したのかもしれなかった。だって去り際優の方を見るとため息してる感じの顔がチラっと見えたんだもん。

さて俺はとりあえずうろうろしていると、幸運にもトイレを発見して何で大しかねぇんだよ。と愚痴をこぼしつつも様式トイレで小用を足し、出た瞬間に女生徒に悲鳴を上げられ、
女専か(女性専用の物を示す :例えば女性専用車両にも対応可)!と思いながら「あたし、こんなナリでも女なのっ!オホホ」とか叫びつつ逃げた。

我ながらポカ続きだな~何て思いながら、受付を発見したので職員室までの道のりを無事聞く事ができた。職員室に委縮しながら入った俺を待っていたのはまたしても好待遇だった。

「君が有馬君か!よろしくなっ!」

とか若い男性教師にシェイクハンドされ、抱擁までお見舞いされた。ゴツゴツしててゴワゴワでした。正直鬱陶しいにもほどが・・・。と思っていると校長まで出陣なされ、学園全体でサポートとか言いだす始末。

俺と違う誰かと勘違いしてんじゃないかと、猜疑心バリバリで目をいつも以上に細目にして周囲を警戒したが、どうも俺であっているようだ。

何もかもが上手く行き過ぎている・・・。俺は得体のしれない恐怖に見舞われた。

これは何か・・・やばいっ!

続く

はい、どうも皆さんこんばんは!自堕落トップテンです。

いやいや、どんなゲームなんですかコレ(爆笑)
実際こんなことあったらどんな奴でも僕のハンドルネームのようなキャラになりますて!(自堕落になりますよねっ!)
しかしそこは僕の愛するキャラ有馬哲平君は警戒心を簡単には解きませんよっ!

ストーリーとかは僕は知らないので同時並行でSSを作成しております。
したがって後付けの設定とかが出てきた場合のちぐはぐはそのつど修正をしていこうと思いますのでご了承のほどをよろしくお願いいたします。全然進まないSSで本当申し訳ないです!それでは皆さんまたお会いしましょう!!



[22592] プリンセスラバー!哲平VS姫→哲平完敗おっぱい乾杯
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/19 16:27
 俺をおきざりにしてクラスの人々は社交部とかいう胡散臭い部活に俺を引きいれようと団結し始めていた。余りに俺が気のない返事をしていたものだから個人で責めるより複数で押し寄せた方が得策との考えからだろうか。あの根津でさえ女性陣の中に組み込まれ(それでもひと際目立っていたが)俺に社交部入ろうぜエールを送っている。

ここまで来ると本当にこいつらが一流の企業戦士としてなりえるのだろうかと彼らの今後の将来が心配になってきた。というのもここ秀峰学園は国家公務員や銀行員、医者、弁護士、不況に喘ぐ若者やしがない会社員諸々が羨むような役職に収まる人材を育てているのである。というより寧ろそれらの職の親が我が子に英才教育を施してるだけとも言えるが。見方を変えればここまで自身のプライドを捨てて常に自分の地盤を固めようと邁進する姿は評価できるのだろうが・・・。

「どうにもこうにも、ここまで人間性が酷いと喋る気にもなんねぇや。」

俺は一人ごちると、ちょっと外の空気を吸いに席を立とうとしたその時だった

「だ~~れだっ♪」

・・・な、何?今までいくらこいつらでも人のパーソナルスペースまで踏み込んで来ることは決してなかったはず。寧ろ俺に気に入られようと必死に体裁を整わせる節さえあった連中だ。つまり今俺の両目を塞いでいる、声から察するにこの女はどうも外部の人間らしい。

普段の俺なら馴れ馴れしいぞ貴様、やんごとなき我に気安く触れるなど極刑をもって始末する。ちょっと便所裏来い、おらぁ!と言うのだが、相手が誰かすら分からないので一瞬対応に困ってしまった。

しかもちょっと待てコイツ、完全に、当てとるじゃないか、ええ?何がって乳だよ、乳!いくら平均的に男性は皆助べえと言われているとはいえ、色仕掛けで俺を落とそうなぞ片腹痛い話よのう。にやけるんじゃない、俺!今そんな顔したら自身の尊厳と誇りを汚すことに他ならないのだぞ!

そしてこの状態が後数秒ほども続こうものなら、そろそろ俺の息子が目を覚ましてしまうじゃないかっ。まだ朝じゃない、いや寧ろ夜じゃないから寝ていなさい。君は根っからの夜行性なんだから!お前が起きていいのは付近にティッシュがあり、かつ周囲に人影が見当たらない時だけとこの前約束したじゃあないか。

一人ふくらはぎをつねり出した俺を見て背後から双丘を押し当てながら視界を妨害している女は、俺の苦労をよそに忍び笑いを漏らしていた。本当、何この人こんな公共の場で破廉恥な行いするなんて信じられないわっ!プンプン 気分である。

いや二人っきりの時いきなりこれやられたら俺だいぶ海綿体垂れ流しそうだけど。

ともあれ俺は彼女の質問に答えるどころか、最早それどころの状況じゃなかった。物理法則の関係上自分との聖戦が始まっていたのである。

ところがどうにもタイムリミットが来たようで、俺の眼球に蛍光灯の光が突き刺さって来た。俺はねっとりとした汗を全身に感じながらもたれ、たら面積比が広がるので前方の机に向かって突っ伏した。

「つまんないの、一回で当ててくれるくらいでないと運命を感じないわ。」

一回どころか何回当てて来たか分からない痴女は俺に向かって自分勝手な文句を言いだした。俺はまたもや突然の幸福に身を焦がし、一人机に顔面をこすりつけ身悶えしていた。

しかもその幸福は地味に続いており、俺が前傾姿勢を取っているにも関わらず、その女も一緒に張り付いているのである。誰の許可を得て俺の肩にアゴ乗せてやがんだ、てめぇぇ!とは当然言えず、俺の顔は朱色どころか血液の色まで染まっていることだろう。

俺は子リスの如き弱々しい声で

「あの、皆さんが見ておられるのでもうそろそろ・・・」

とだけ発言した。もう俺の下半身に潜む奴は机の下をノックせんとばかりに立ちあがり始めていた。あ、駄目、これはもう立ち上がれる状態じゃないわ。俺の決して日中は息子を昂ぶらせないという不退転の決意は初日にして破棄されてしまった。こいつ何なんだよ、俺になんの恨みがあってこんなことするんだよぅ。

そんな俺の心中を察しているのか、知ったこっちゃないのか、劣情女はゆっくりと背中から離れ自己紹介を始めた。俺も流石に背中で聞くのは失礼と思い、アゴで右に主舵を取り目だけ後ろに向けて話を聞いた。軽く目は充血していることだろう、悲しみで。

「なんちゃって♪シャルロット=ヘイゼルリンクよ。あなたのお話は聞いているわ。会うのをとても楽しみにしていたの。」

何が何ちゃって、だ。ホステス顔負けの接客態度で俺に接しておいて単なるお茶目で済ませられるか。あれはもう公序良俗の域を超え公然猥褻に抵触しているんだぞ、君。俺はジト目でねめつけるように睨みつけたが柳にそよ風もいい所だった。言いたい事は億を超える勢いだったが、この際最も聞きたい事を聞くことにした。

「何カップ?」

「・・・え、よく聞こえなかったので大声でもう一度お願いできるかしら?」

余りに淀みなく聞き返されたので多分本当に聞こえてない、と信じたい。が余りに純粋な瞳で聞かれたので同じ発言をするのは躊躇われた上に、周りの視線も少々冷たい物となった気がしたので違う質問に切り替えた。

「だから、誰に俺のこと聞いたの?」

あくまで俺はそれしか言ってないかのように不機嫌を装ったが、内心ヒヤヒヤしながら聞いた。眼前のお姫様改めヘーリン(ヘイゼルリンク短縮)は

「あなたのお爺様に決まってるじゃない。」

とさも当然のようにお答えになった。つーかよく見りゃこいつ校門前に居た中世女じゃねぇかよ。あんなプロポーションを持ちながら軽々しく押し当てるのはいただけないな。男に変に気をもたせる行為であり、男を野獣に変える威力を持つことをご理解して欲しいものだ。俺が気弱なもやし系男子だから良かったものの、全くそら恐ろしいや。

俺が一人俺って本当紳士だよな、と悦に入ってる間に優はまたしてもごくごく自然にヘーリンと話し始めた。ってちょっと待ておい、これだったら俺今朝逃げたのおかしくね?いや表向きは体調不良だけどさ、嘘だけど。同時に奴もそのことに気付いたらしく

「そう言えば体調の方はもう大丈夫なの?」

と俺の安否を気遣ってきた。俺は仮病も仮病、痛いのはさっきつねったふくらはぎくらいというものの見事に健康児なので

「あ、ああ。何とか持ち、直した、かな?は、はは。」

とじゃっかん頬を引きつらせながらどうにかそう答えた。本気で心配してくれてる人にこんなこと言うのは胃がキリキリしますねっ。良かった~何て嬉しそうに笑う彼女を見ていると暗黒面に突き落とされそうな気がしてくる。

ともあれどうも優がヘーリンに事前に話を通してくれたみたいで俺の事はどうやらご存じの様子だ。何か今までの連中より姫様の方がよっぽど話をする気になるんだから、第一印象って本当に大事だと思った。だよね、根津君!

チラッと奴(根津)の方を見れば何やら関心したように

「ヘイゼルリンク様・・・!さすが有馬さん、ヘイゼルリンク様とも親交が!?」

と相変わらず薄っぺらい驚きとも褒め言葉とも取れる事を言っている。もうやっぱお前は黙ってろ。俺は取りあえず気を静めることが出来たので通常の座り方に姿勢を正した。ただまぁ頬杖は付いているためあまり正せてはいないが。

そして哀れにも根津はヘーリンに名前すら覚えられてないらしく、奴の十八番血液型口撃によってヘーリンに野次をとばしていた。何でもB型は基本的に性格が悪いらしい。じゃあお前もB型だよ。全く聞いてすらもらえてないようだったが。しかし俺は自分に被害が無いので傍観の構えを取っていたのだが

また例のふにゃふにゃかーーーーーん!

もう、本当、止めてくれる?それ、お前、いくら、なんでも前面に押し出し過ぎだろう、物理的にもコミュニケーション的にも。俺は瞳孔を開き口をパクパクさせ、ちょ、おひ、くぬ、ぬほっだのと悶絶していたが、そんな俺を見てお姫様も大満足だ。

「んふ♪赤くなったー。哲平って案外可愛らしいわ。よしよし。」

俺をチワワかプードルのような小型犬と勘違いしとるんじゃあるまいな、こやつ。俺はブルドッグの顔面を持ち、土佐犬の肉体、ドーベルマンの俊敏性、果てにセントバーナード並みの攻撃力をもつ益荒男なのだぞ!ここで舐められたら今後のイニシアチブは全て奴に握られるに違いない、ええい負けてたまるかぁ!

「カーーーーーーーーーーツ(渇)!!」

俺は盛大な叫び声、もとい奇声を上げて勢いよく立ちあがった。
突然の殿下のご乱心に民衆は肩を震わせ、悲鳴を上げる者もいた。俺はぜぇぜぇ肩で息をしながら
「いいか、よぉくその手入れの行き届いてそうな耳を全開に広げて聞けホステス女、俺はマスコット的存在でも胸に抱かれてキャッキャされるベイビー世代でもないんだっ。いつまでも・・・。」

と捲し上げようとした瞬間頬に柔らかい感触が・・・

「ちゅっ♪」

俺は砕け落ちるように椅子に崩れ落ちた。俺はさめざめと涙を流しながら乙女のように

「もう、やだ・・・。シクシク」

とつぶやいていた。しかし当の本人はニコニコしながら

「ただの挨拶じゃない。おかしな哲平、クスッ。」

とか言っている。駄目だ、俺の倫理観が音を立てて崩れ落ちていく。一体俺の愛した大和撫子はどこへ行ってしまったんだ。恥じらいを捨てた女のそこに魅力はあるのか・・・?

俺は一人悄然と黒板を眺め、純愛エロゲのヒロインを頭に浮かべていた。

「後で案内してあげるわ。そうね、昼休みにでも。」

今にもヨダレが垂れ落ちそうな俺を全く気にも留めずヘーリンにしっかりとイニシアチブを取られていた。

しかし俺が返事をなかなかしないのでいいでしょいいでしょ、ね?ね?と子供のように揺さぶってくるため人形の首よろしくカクカクさせられていた。結果それがイエスサインと受け取られ

「良かった、これから仲良く・・・」

とまるで終わりる気配の無いヘーリンであったが、思わぬ助け舟が入った。じいやが姫を保護しに来られたのである。
「もう過保護なんだからっ。それじゃあ私行くわ。それじゃ哲平また昼休みにね!」

と気付いたらどっかに去って行った。俺はもう機械的何か言われればにはぁ、そうすか、なるほろとインコ返信を繰り返していたので全く話を聞いちゃいなかった。

俺はそのまま痴呆老人の面構えのまま、周囲を気にせず昼休みまで一人脳内で楽園をスキップしていた。

-続く-

どうも、皆さんこんにちは!自堕落トップファイブでございます、恐縮です!さてようやく学校生活が始まりました。自分が文章にすると長くてかなわんですな、いや全く。

しかしシャルロット嬢は現代ではあり得ないほどの美貌とそして親しみやすさがありますよね。SSを書きながら、こんな奴存在しね~よwwなんて一人笑ってしまいました。それがエロゲの良さでもあるんですがね。しかしいくらハードボイルドが売りの哲平も女の武器出されちゃ勝てませんよね(笑)

さてさてお次は学校案内編ですか!次はどんな展開になる事やら、それでは皆さんごきげんよう!シィーユーアゲイン!センキュー!(礼)



[22592] プリンセスラバー!聖華が切れたのは有馬お前の聖華(せいか)っ!なんちゃって
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/22 06:47
園内の午前の部はつつがなく進行して気付けば昼休みだった。程良く空腹を覚えていた俺はこれ幸いと優の席にすっ飛んでいった。

「さーて優、飯食おう、飯。もう俺腹ペッコペコ。何か嫌な事あったみたいであっちの世界に飛び立って色々消耗したんだよねっ。気力とかENとかさ!」

と昼休みにテンション上がる頭の悪い奴の典型を目の当たりにしても優は、冷静な態度を崩しはしなかった。というよりピタッと時が止まったように見える。それは何を意図しての対応なのか分からないが俺は不思議に思ったので

「?どうした、弁当忘れたの?」

「!・・・あ、あぁなるほど。ご自身のお弁当を取りに来られたので?し、しかし学食で良いとおっしゃっていたのでは・・・?」

「いや、俺のじゃなくって優の。飯食うんでしょ、一緒しない?」

「は?あ、しかし哲平様、あ、あの、シャルロット様との・・・。」

と、みるみる内に優の目つきが険しくなって行く。おおう、完全にギア入れ変わっとるじゃないか。これは事の次第によっちゃ俺の存亡に関わるな。ここは優よりシャルリン(シャルロット=ヘーゼルリンクの略語)の元に行った方が無難と見えるな。何の約束なのかはさっぱり分からんが。

「もしや、哲平様。シャルロット様とのお約束を放棄なさるおつもりではありませんね?」

凍結しきった鋭い視線に肝を冷やしながら

「あ、や~ウソウソ。覚えてたけど、滅茶苦茶覚えてたよ。そうこれがウィットって奴だよ、根津君の言ってた。うん、ただシャルロット様の教室が分からないからさ、ね?」

「そんな甘えた目をされても駄目です、全く。人とのお約束は上に立つ者の絶対条件でもあるんですよ。そんなことでは困ります。3年4組がシャルロット様の教室となります。」

「あ、ああ。ありがとうな優。そんじゃちょっと行ってくる。」

俺のふくらんだ気分がどんどんしぼんで行くのを感じた。やっぱ怒られるの嫌だもの。そんな俺の心情を察したのか

「哲平様。」

呼ばれたので振り返ると頬を僅かに染めながら

「本当は大変嬉しかったです。またお昼ご一緒して下さいね。」

なんて優に言われたもんだから、俺は初めて自転車に乗れたちびっ子のようにルンルン気分で教室を後にした。単純だよなぁ、俺。

そして俺が出ていく瞬間にある女生徒が「有馬哲平・・・」と呟いたのを耳にすることは当然無かった。←後の金子

3年4組シャルリン不在。んだよ、ドタキャンかよ、用事も事情も知んねーけど許せねぇ。自分の事は完全に棚に上げ、3年4組入口付近で呪詛を俺は唱えていた。こんなことなら優と飯食った方が何倍も良いじゃないか。

数分程出て来る学生、それも上級生に八つ当たりのメンチを切ることにも飽きた俺は、胃袋からの再三に渡る催促に押し切られ、誘われるように学食に赴いた。想像通り学食も大変麗しい内部構成となっており、窓のガラスに光を屈折させることで適温を保っていた。冬なのに寒くない不思議!

正直空腹が先行し過ぎてどうでも良い俺は、あ~はいはい、すごいすごい、わー豪華ながくせいしょくどー。と適当な褒め言葉を口ずさみながら熊のようにノッシノッシ闊歩した。

食堂では学生証を見せれば何でも食べていいらしい。俺写真写り悪いから恥ずかしくて目の所線入れてモザイク入れてんだけど大丈夫なのかな・・・。後ずっと尻ポケットに入れていたせいか妙に歪んでいるし。うーむ。いくら有馬の名を使っても偽装と疑われても仕方のない程の傷み具合。一体何がここまで彼(学生証)を傷つけてしまったのだろう。やっぱ手裏剣代わりに的当ての練習に使用したのが不味かったのだろうか。いやまさかな・・・。

販売機はあそこか、おうおう人がわんさか湧いておるわい。何となくそんな事を思いながらひん曲がった学生証を取ろうと右腕の指で尻付近を探っていると

「ぬろっす!」
背後からタックルを喰らった。何、え、敵襲?!馬鹿な!こんな人目の付く場所で闇討ちを、はっ、なるほど木を隠すのは森とは言うがそういうことかぁぁ!有名人は辛いぜぃ!

「そぉい!そう簡単にたま(命)は取らせはしないぜっ!」

と勇敢な発言をしながら不審な動きを伴って敵軍を人目見ようと反転した。そこには

「It is girl?!」

俺は目を疑った。よもやあのような豪快なタックルをかます婦女子がいるとは思っていなかったのだ。てっきり目のぎらついた番町クラスを想定しての行動だっただけに途端に自身がしおれていくのを感じた。折角やっと熱血的展開が来るかと思ったらまたこんなんかよ・・・ハァ。

「いたたた・・・ちょっとあなた、気を付けなさいよ。」

と言われて姿勢を正そうとし、その時ハタと気付いたら指が変な方向に!?え、何これあり得ない方向に曲がってるんですけど!

「ほんぎゃーーー!」

いきなり悲鳴を上げる俺をタックル女は呆然と見ていたが、指をブンブン振って異常を伝えると、彼女も察してくれたらしく

「何、指を捻ったの?無理な動きするからよ、こんなもんは・・・」

瞬く間に俺の指をむんずと掴み・・・え、何ちょっと止めてそっとしてあげて、あ、駄目そんな無理やり

「フンッ!!」

メキャアアア!!ボキボキボキッ!

「ギャアアアアア!!」

指が普段全く発さない音声と今日幾度目になる俺の断末魔が学食内に轟いた。

皆一様に何事かとこちらに振り向いたが、目の前の指へし折り女を視界に捉えるやいなや、何事も無かったようにめいめいの昼食を再開した。どいつもこいつも他者の不幸を見て、我が身の幸福さに酔いしれる愚民どもめ・・・うぅ、痛いよぅ。

気付けばさながら俺は年貢を納める農夫で、むこうが領主もしくは地頭みたいな構図になっていた。俺は右指を押さえ膝を地面にひざまずき、涙をポロポロ流している。何と言う情けない姿。どんな女でも100年の恋は冷めることだろう。

向こうは泰然自若、威風堂々、更には得意満面の笑みを浮かべこちらを見下ろしているではないか。言葉の意味通り見下されている・・・!こ、こ、こんのクソアマッ!

「社交部代表・鳳条院聖華、直々の忠告ですよ。お礼と謝罪はどうしたんですか?」

上が上なら部下も部下というか何と言う傲岸不遜な態度だ。俺の怒りも頂点に達し、臨界点目前の表情で睨み返した。相も変わらず涙はとめどなく流れてくるが。余りの痛覚によるショックで涙腺が完全に弛緩仕切っておるのだ。

「なんです、その顔は。あなたがこんな人の出入りが激しい所に立っているのが悪いんですよ。」

この綱紀粛正の一環で叱責しているかの如き振舞い、その実単なる横暴だというのに本人はどこ吹く風だ。それを言うならお前らの前方不注意じゃねぇか、ああ?俺は痛みと怒りが同時に煮えくりかえって声が上手く出せない状態に陥っていた。言いたいが上手く言葉を発する事ができないのである。とりあえず口からヒューヒュー怒りの吐息が常に漏れ出していた。

尚も説教を続けそうな女幹部とは別にもう一人付き人がいたが、そいつは何やら俺を知ってる風味な表情で違う意味で呆然とこちらの様子を伺っていた。正直そこまで気を回す余裕は無いので人畜無害娘はこの際どうでもいい。とりあえず目の前の勝気女共どうしてくれよう・・・。

俺がそろそろ本物のタックルってもんを見せてやろうかとグッと腰を沈め掛けた瞬間、絶妙なタイミングでボスが説教を続ける幹部に声を掛けた。

「まぁまぁ、そのくらいにしておきなさい。注意をしていなかった私たちにも少しは落ち度があるのを忘れては駄目よ。」

どうもこの場を取り仕切ろうとしているらしい。俺はその言葉が冷水となって沸騰した俺の脳に直撃した。くっ、謝っては無いが、自らの非を多少なりとも認めた相手に対して武力行使に出るのは男として情けないのではないか?それも相手は非力な女3人、いくらなんでも大人げ無いにもほどがあるだろう。しかも指は未だに電流が走ったように痺れているが元の姿に戻ってくれている。荒療治ではあるものの俺の指を元の形に戻してくれたのだ。

自分を納得させる事へ最大限の力を費やしたため、どうにか心も落ち着いてきた。そして顔を再び上げて立ち上がろうとした瞬間見た。汚れなき純白の黄金トライアングルを。俺は2,3回ほどまばたきを繰り返し、これが嘘でも夢でも無い事を確認した。

不思議な事に一つの美しい作品に心を奪われたような感動を覚え、劣情というよりは芸術品を鑑賞するような気分だった。俺は、俺は恐らく一般人のほとんど到達できないであろう未踏の地まで足を伸ばす事ができたのではなかろうか・・・!この世には知られていないことがたくさんあり、常に未知なる部分を解明しようと試みて人類は日進月歩してきたのだ。俺は今学者で言う所の新発見による高揚感を覚えていた。

実に、いい!やはりガッツリ見せられるより、ギリギリ見えるくらいが芸術だ!!

俺は心の中で叫んでいた。そして網膜に焼き付けるために左目を相手の顔に向け、右目を下方向に向けるという神業を成し遂げようとしていた。幸いにも相手は気付いていない。ここで注意して頂きたいのが、相手に気付かれた瞬間にこの美学は消滅するということをお忘れなく!

しかし口うるさい幹部女の罵声によって結局立たされた。こいつ本当どうしようもねぇな。無粋な奴め、ブスなら掛けることもできたけど、結構可愛いから言えないじゃないか!

俺が不満そうに立ち上がるのを見て、タックル女改め聖華先輩はどうも見当違いに解釈してくれたらしく

「そう悪し様に責め立てないのよ。ごめんなさいね、脅すつもりはないの。」

「いや、俺が悪かったし。ええ、指ありがとうございました。そんじゃ。」

俺は見るもの見れたしもうこの女に用は無い、という思いで辺りを見回して食券販売機を探し始めた。そんな俺の態度を見てまた女幹部には失礼な行為に捉えられ、頭に角を生やし俺への文句を囃し立てた。聖華嬢はその様子をなだめながら
「まぁまぁ、そんな急がなくてもご飯は逃げないわよ。あなたここに慣れてないみたいだけど一年生?」

どうもお喋りしようというハイソサイエティお嬢特有の気まぐれと好奇心が、どうも俺に向けられたようだ。俺はもう嘆息しながら振り返り

「いえ、2年っすけど、今日転校してきました。」

もう腹が減りすぎて口調が雑になっていたが、幸いそこは指摘をされずに済んだ。

「転校生?それなら出入り口でマゴついてるのも無理無いわね。多少の失礼は多めに見てあげるわ。」

「・・・はぁ、どうも。」

空腹によりいつもの2倍は猫背になっている俺の体を、聖華さんはさりげなく下から上へ視線を移して行った。そして開口一番

「校則違反よそのシャツ、学園指定のものではないわね。」

もう俺は勘弁してくれよ・・・と内心泣き言を吐きながら

「はぁ、すいません。以後気を付けます。」

「いいのよ、身だしなみはとても大切だもの。本校に籍を置くものなら気を配っている方が自然であり正しいわ。」

自然とか正しさとか何でもいいから飯食いたいんですけど。いつまで続くんだよ、この茶番。視界がぼやけながらも覇気の無い返事を律儀にも俺は返していた。その他にもシャツだ襟だベルトといった身だしなみをチェックされて服までめくられたが、俺はもう倦怠感からなされるがままだった。

「うーん、47点、って所かしらね。」

何その平均点ぎりぎり下回る感じの点数。滅茶苦茶不愉快なんですけど、散々下らないお喋りに付き合った結果が過半数を下回る数値に俺は戦慄した。その後何か減点方式でその点数になった経緯と駄目だった箇所を列挙されたが、この俺が聞く訳があろうはずもなかった。しかし言われた時には絶えず首肯の仕草は見せていたので向こうは喜色満面の表情で得意そうにべらべら喋っていた。

「今の話を参考にして今後も精進なさい。ん。」

と手を伸ばされた。ああ、握手ね。俺は一刻も早く終わらせたい心境だったのでさも老人ように小刻みに振動させながらも(空腹のため動く力が低下している)手を差し出しどうにかハンドトゥハンドに成功した。あちらは緊張で強張って手を差し出して来たと勘違いしたようで、これまた大人の女性面を引っ提げている。

「改めまして、鳳条院聖華よ。聞き覚えは・・・ないでしょうね。一連の態度を見るに私の知名度もまだまだみたい。」

知名度・・・?何か致命的な勘違いしてるようなんだけど、俺がまだ飯食ってないから元気無いという風に一連の態度を見てはくれないものだろうか。とりあえず名前メモしとくか・・・忘れたら怒られそうだし。

「はいはい、鳳条院聖華さんですね、今メモしときますよ・・・ええ。」

俺は尻ポケットからメモ帳を取り出し胸ポケットからボールペンを取り出し、鳳条院聖華と殴り書いた。

「ち、ちょっと待ちなさい!あなた、それ?!」

「・・・は?」

ふと見ると俺の学生証だった。しもうた、何か薄っぺらい物だとは思っていたが、これはこれは。どうも左ポケットにあるメモ帳と間違えてしまったようだ。やはり曜日毎に入れる場所を変えるのは不味かったようだ。そして俺も脳に栄養が周っていないためにメモ帳と学生証を見間違えたという不運な事故としか言えないな。しかしもう書いてしまった後なので俺は何事も無かったかのように定位置、尻ポケットに学生証をねじ込んだ。

「・・・プッ」
「プ?」
何やら変な擬音が口から聞こえたので俺は聞き返した途端

「アハハハハ、あなたって何だかおかしな人ねぇ。普通の人はもっと私たちと対面したら委縮するっていうのに。転校生君、君は全くマイペースなのか大物なのか、はたまた頭の弱い子なのか、とにかく私は気にいったわ。」

「せ、聖華様!このような者のどこが・・・。」

「私も信じられません。そのような賛辞を与えるに値しますか、その人が。」

順に聖華さん、幹部、付き人の順に言葉を発した。つーか全然人畜無害じゃねーな、あいつ。むしろ害虫レベルの発言だな。俺は人畜無害娘改め、害虫女と認識を改めることにした。

「転校生君、確か田中君だっけ。あなた見どころあるから私が校内の案内をしてあげようか。あ、そう言えば食事の方がまだだったのかしら?」

キュピーン!め、め、飯!!俺は水を得た魚のように生き生きとした表情になり

「はいっ!田中です、ご飯まだなんです。肛門と脳がくっつきそうなくらい飢餓状態なんですっ!」

俺は耳と尻尾が生えた人懐っこいワン公のように聖華先輩の手をとりブンブン振り回した。

「お、落ち着きなさい!わ、分かった。分かったからまずは食事ね。ふふっ、本当忙しない人ね、田中君は。」

そしていざ行かん、楽しいお食事の始まりだよっ!と俺の胃が上下左右に踊り狂っている。主に喜びで。ひゃっほう、飯だ飯だー!

「お待ちください、聖華様。」

ピクリッ俺のまぶたが当然小刻みに痙攣し始めた。俺の胃袋様も胃液をまき散らす寸前だよこりゃあ。

このタイミングに横やりを入れるだぁ?空気読めないってレベルを超えてこりゃ文字も読めないレベルだな、ええ?おい。どこの文盲野郎だ、と般若の表情で発言者を睨みつけた。害虫女のあだ名は名ばかりじゃないみたいだなぁ、もう俺の胃袋さんは完全に警笛を鳴らしっぱなしだっつーのによ。今さら何を待てってんだ?

「どうしたのかしら、金子さん?」

害虫女の名前は金子(かねこ)と言うらしい。くそどうでもいいから早く要件を言えってんだ。

「聖華様、あの者は田中、などという者ではありませんし、施しを与えるに値する人でもありません。」

散々な言われようだった。つーか何俺を知ってる風装ってんの(金子)キンコ、俺あんた知らないんだけど。

「別に俺の名前なんて何でもいいじゃねぇか。とにかく俺の空腹を満たす方が先決なんだよ、一刻を争うんだよ。つか、俺もう行っていい?」

「待ちなさい。」

今にも駆けだして行きそうな俺を聖華先輩が肩を掴んで引きとめた。そして害虫女改め金子に向かって聞いた。

「あなたらしくないわね、金子さん。悪気の有無に関係なく人を無闇に蔑むような発言はあまり感心できないわね。」

「失礼いたしました。」

「してこの転校生君の名前あなたは知っているのね?」

「ええ、どうやら私の名前すら覚えられておられないようですが同じクラスです。」

「そんな理由で苛めるのはいくらなんでもかわいそうよ。大目に見てここで自己紹介でもしておいたら?」

チッ、また飯延期パターン入っちゃったじゃないかよ。田中太郎でも田中ふにゃ太郎でも田中ふにゃちん野郎でも何でもいいんだよ、俺ぁ。

「あーどうも有馬哲平です、はい、もういいっすか。行きますよ俺。」

完全に投げやり口調で完全に相手の紹介を聞く気など無いように後ろに回れ右しながら名前を述べた。

「ま・ち・な・さ・い。」

今度は先の待ちなさいとは違う、地を這うような声色だった。え、何この展開怖い。

「有馬?金子さんこういうことだったの。そ~う。」

勝気なそして頼りがいある大人の女性から、目狐系悪女に進化した聖華さんは金子の頭をよしよしした後、怨念を込めながらゆっくりと蠕動してきた。うわぁ、俺心霊系苦手なんだよぉ、こぇぇぇ。生き霊の類ならもっと別の湿気の多い所に行けよ、もう。何でこんな場所でなんだよぉ。

金縛りにあったように硬直した俺の両肩を聖華先輩の爪がめり込むくらい握りしめた。何のドッキリだ、何のドッキリだこれ!完全にパニック状態の俺。

「有馬・・・有馬百貨店その他諸々で名高い『あの』有馬の御曹司様。この解釈は正しいかしら?」

ん、いきなりリアルな話題振ってきたな。お爺ちゃんがどこまでテリトリー広げてんのかそこまで知んないけど多分そうなんだろう。

「は、はぁ・・・多分そうじゃないっすかね。」

そう言った瞬間

「ふっっっっっっっざけんじゃないわよぉっ!!!」

今度は聖華先輩の轟音が鳴り響いたのだった。え、俺何かした?

―続く―

はい、お疲れ様です!自堕落トップテンです、指が疲れてますこんばんは!いやはや、今回はいつもに増して長文になってしまいました。しかもそんなに面白くなかったら本当ごめんなさいねっ。にしてもまたしても新キャラが出てきましたね。といってもまだまだプロローグの段階なのですが。ツインテール勝気娘の聖華って所でしょうか。顔合わせからしていきなりこんな恫喝されても、ねぇ?親と息子をセットで考えてしまう人はどうも好きになれないんですが、いかがでしょうか。まぁ生活に影響を及ぼすくらいやられたんなら仕方無いんでしょうかね、恨むのも。

さて次はどんな展開になることやら!同時進行の上、自身でネタを作りながらの創作となるので少々遅いですが気長に待っていただけると幸いです。それでは皆さんまた会える時を楽しみにしております!(謝)



[22592] プリンセスラバー!哲平VS聖華 今回ばかりはやってやる!
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/22 06:51
聖華さんは明らかに音量調整を間違えるほどの爆音ボイス、さながら某ゲームで言う所のバインドボイスが放たれた。飛行機の離陸時のようなキーン音が耳を貫き、それだけでなく今なお口角泡飛ばす勢いでまくし立てていた。俺の胃袋も完全に縮みあがっている。

「あんたが有馬の小僧と知っていたら、世話なんか焼いてやらなかったわ!返しなさい、あんたのために割いた貴重な時間を!」

何ちゅう理不尽な事をお言いになるんだ、この女は。そもそも俺の昼食の貴重な時間を散々奪っておきながら何言ってくれちゃってんの?空腹と共に腹の底からふつふつと再度怒りの念が湧きだしてきた。

俺さっきは耐えたけど今回はもう行きますよ?ねぇ、これ切れるとこでしょ、いきなりタックルして、自己紹介したら爺さんの事で切れられ?え、何この理不尽な流れ、クックック笑えるじゃあないか、ええ、おい。そうかそうか今日のメインディッシュはこれって訳か、怒りのなっ。俺はもう解放する事に決めた、自分の気持ちを。なおも罵倒し続ける目障りなパンチラ女をもう敵と認識し、眉間にこれ以上できないくらいしわを寄せて溜まった鬱憤を吐き出すことにした。

「・・・おい。」

「何よ、まだ私は・・・」

「さっさとこの手離せっつってんだよ!」

俺は先輩の手を力付くで振り払った。そして俺は切れていた、もう猛禽類がここに出現したのと同義である。だがそれもこれもこの女が招いた結果であり、寧ろ俺はよく耐えたと自画自賛したい。

女(聖華さんと言う気が無くなっている)は多少怯んだものの、それもほんの一瞬の間だけだった。

「何よ、あんたのお爺さんは礼節を教えないどころかか弱い女性に手まで上げることまで許しているの。成金って悲惨なだけじゃなくて最低ね。」

「そうよ、聖華様がお怪我をなされたらあなた何かに責任取れもしない癖に!」

「男の人は口で負けそうになるとすぐ暴力、野蛮です。」

一人では劣勢と感じたのか、今度は手を組んで聖華→幹部女→金子の順にコンビネーションを取る事で俺にたたみ掛ける戦略に出たようだ。はん、そんなハト鉄砲にも劣るぬるい弾じゃ俺の防弾チョッキは貫通しねーよ。

「うるせーよ、散々人の肩に手乗せといて、ああ?最低なのは都合の良い時だけ女性の権限を行使するてめーだろうが。」

「なっ・・・!」

「それからそこの2名さんよ、話したいことあるならもっと前に出て自分だけで喋ってくれや。金子さんだっけ?俺にはあんたの声がよく聞こえんのんだ、言いたいことあるならハッキリ俺の目を見ていったらどうなんだ、ええ?」

「「・・・!」」

結局中堅クラスの連中もちょっとこっちが強気に出れば閉口しちまう。弱い犬ほど良く吠えるなんて聞くが、勝てると思った相手じゃないと言いたい放題言えないんだろうな。身の安全の確保が先と言うかのように大樹聖華の背後に回る両名。そしてそれを守ろうと仁王立ちする主。やー良い主従関係じゃない、俺には関係ないんですけどねっ。

「大体さっきから何だ、さっきからおたくら言いたい事べらべらべらべらべらべらべらべらと。本当そんなに一方的に喋りたいなら一人1個ずつ人形持ってそいつらに喋ってろってんだ。俺に発言させもせずにキャンキャン吠えてんじゃねえや!それからさ正直逆だよぎゃ・く。おめーの時間が無駄になったんじゃねーの、寧ろ飯食う時間奪われたの俺だよ、被害者は俺、加害者あんた意味分かる?」

完全に目の座ってしまった俺に自身の眉間を指差され、半ば唖然としている様子のボス女、ちょっとっていうか案外ビビッてんのかもしんない。
突然の反撃に頭が付いていっていないのだろう、唇を震わせながら懸命に何かを堪えるようにこちらを凝視している。へんっ、もう正直俺はここまで我慢したんだから、別に容赦することも可哀そうだの温情の気持ちも一切持つ気無いけどな。

「そんでさらに言わせてもらうと、まだ俺成金じゃねーし。俺色々あって爺さんに最近引き取ってもらったばっかだし。んで気持ちまだ小林だし?」

その言葉を聞くと相手の怒気はみるみる内にしぼんで行くのを感じたが俺は止まらなかった、いや止めようにも止められなかったんだ。

「んでいきなり豪邸に済ませてもらいーの、メイドは付きーの最近俺だって訳分かんないことだらけなんだよ。それによ俺爺ちゃんに何かしてもらった記憶なんてこれっぽっちもねぇな。用意して貰ったのは金だの物だのばっかりで、愛情だ考え方は両親から全部受け継いだって思ってっから。あんたらにはあんたらの事情があるのは知ってるよ、だから俺からあんたらに何か言ったってんなら素直に謝るさ。でもよ今は違うだろう?鳳条院さん、あんたが勝手に先走って俺を親の仇みたいな態度でがなりたてるその姿勢が気にいらないってんだよ!最近縁が出来た爺さんを引きあいにそこまで文句言われる筋合い、俺にはないんだよ。」

そこまで一気に喋ってしまうと俺は深呼吸した。少しクールダウンしようとの考えからだった。俺はいったん頭を下げた。

「言葉は過ぎたかもしれないので、それだけは謝ります。すいませんでした。でもこれだけは覚えておいてください。俺は有馬の家柄の者ではありますが、決して富を築き上げた鉄心ではありません。俺は有馬」

ここで一旦切りもう一度息を吸い

「哲平ですから。」

俺はここまで言うと一人であ~やべっ、腹減った~と呟いた後フランクに話し掛けることにした。

「んじゃ俺飯食いますんで社交部?でしたっけ、あれ入った際にはよろしくです!」
とウインクしながら人差し指と中指を頭の斜めに向け、さわやか系の挨拶をして食券を買いに行くことにした。あんだけ激しく口論した場所で飯食うのは気が引けるけど俺の空腹を満たせる場所は今の所ここぐらいだからな。長居する気もないしそんな時間も無くなって来ているのできびすを返そうとすると、

「あ、あの・・・」

とか細い聖華姫の声が聞こえた。首だけを捻り要件を促した。

「私たち、そんな経緯知らなくて、その、本当にごめんなさい。」

としおらしく謝って下さった。多分後ろ二人も同じ気分なのだろう。先輩にならってぺこりと頭を下げていた。もう俺は十分ですよ、という風に手をヒラヒラ振りながら食券を求めて歩を進めて行った。


「ここのカレー美味からい、これこそカレーだ・・・。ムグムグ」

俺は一人遅めに昼食を取っていた。人も大方教室に戻っているのか、残っているのはまばらで俺としては非常に過ごしやすい環境となっていた。

「そうでしょう、ここのカレーは日本が誇る一流のシェフによるものですからね!僕が勧めた通り見事なお味でしょう?!」

根津がいなければ・・・。ストーカーになってんじゃないかというタイミングで聖華先輩と別れたのと入れ違いの形で食堂に姿を現したのである。奴は偶然ですね、運命ですね、と鼻息荒く力説していたが、俺は食券のメニューと睨めっこしていた所、勝手にカレーを押しやがったのである。勧めたも何も押しちゃってるじゃねーかおめーよぉ!

と内心愚痴りながらも実質カレーの味は絶品なので文句も言えず、黙ってスプーンでカレーをすくっているのである。

「にしても驚いたな~。」

何この質問して欲しそうな前ふり、こっちチラッチラ見んのやめてくんない。食いずらいし。うわ~すんごい催促してるよあの顔。カレー不味くなるからこっち見んなって言いたくなる。

「あ、何が?」

もうめんどくさいので奴のシナリオにしたがってやることにした。俺って本当優しいよな。

「いや、だって代表がしおらしく歩かれる姿なんて初めてだったものですから。」

「代表って誰の事だよ。」

「さっき激しい剣幕で罵り合っておられたじゃないですか。」

俺は一瞬スプーンの動きを止めた後、鼻で笑いながら

「いいんだよ、あの手の手合いは付け上がらすとうるせーんだから。一回ガツンと言わないとずっと舐められちまう。男はな、一度舐められたらお終いなんだよ。」

「おお、なんだかいつになく男らしい発言ですね~。有馬さんってそんなキャラでしたっけ?」

お、お前一体俺をどんな奴だと・・・。そりゃまぁ確かに?ふざけた人生ふざけた行動、全てを面白そうか面白くなさそうで行動の指針を取るのは否定しないが・・・。

「俺ぁ喧嘩は弱いけど、口だけは達者なんだよ。おかげさまでな。」

「いやいや、本当にあの代表にあそこまで言われたのは恐らく有馬さんが初めてなんじゃないかな~。そう考えると有馬さんの偉大さは単にお父上の後ろ盾だけじゃないように私は感じたんです。」

「お、いいこと言うね根津。そうそう、俺は哲平なんだよ。あの俺越しに爺さんばっか見てる連中と喋るのは虫酸が走るからな。俺の親友を謳うならよ、しっかり俺を見て話せよ。」

俺は今初めて根津を友達と認めても良い気がしたので、スプーンを置いて手を差し出した。

根津は呆気に取られた表情を見せたが、すぐに破顔一笑し俺の手を離すものかとしっかり握りしめた。

「・・・で、何で腕相撲式の握手?」

「ふふっ、男らしい発言の有馬さんにはこちらの方が似合うと思いましてね。」

「やるな、今のは結構ウィットに富んでたよ。」

その後俺たちは笑い合った。が、結果カレーが裾にベッタリ付いたのを根津のせいにして散々謝らせたのは言うまでも無い。いや、本当に根津のせいなんだけどな。あのまま腕相撲始めたのあいつからだもん。俺が根津の首を締め上げてギブギブ言わせていた時

「あ~こんな所に居た。んもぅ、教室まで迎えに行ったのよ。」

今さら感たっぷりの状態でシャルリンが出現した。おせーよ、来んの。

「ねぇ、ご飯食べちゃったの?私まだなのよ。一緒に食べようと思ってたのに、クスン。」

「ああ、大丈夫まだ残ってるから。ハイ」

俺は自然に皿をスライドして開いてる席にシャルリンを促した。俺は善意のつもりで差し出したというのに

「そんなのよりもっといいのがあるから一緒に行きましょ♪」

何てさりげなく拒否られた。何なんだよ、コイツのスルースキルの高さは。俺のカレーどうすんだよ。後根津お前俺の服洗濯しとけよな。俺はさりげなくカレーがベッチョリ付いた服を根津に掛け、カレーの容器も根津にプレゼントし

「寒いだろ、貸してやるよ、洗って返すんだよ。それから何かシャル嬢がどっか連れてってくれるらしいから行ってくるからあとよろしく。カレーは俺の奢りだ、じゃあな。」

「有馬さん、ここ・・・学生全員タダなんですけど。」

根津が何か言ってた気がするが俺に対する謝辞の言葉だろう。俺はシャルリンに腕を引っ張られながら食堂を後にしたのだった。

ハックッション!ヘックショイ!・・・うぅやっぱ一枚脱ぐだけで全然体感温度が違うもんだなぁ。

「ちょ、わりシャル嬢、何か着るもん貸してくんない。寒くてしょうがねぇや。」

「ええ、やだぁ哲平何でそんなに薄着なの?」

「男としての修行の一環だ。しかしどうにもやり過ぎの域に達してしまっていてな。このままでは体調不良に成りかねん。健康と体力は男の資本だからな。やはり無理は良くないわ、うん。」

「へ~日本の男性も大変なのね~、いいわっ特別に貸してあげる♪」

うーむここまで懐かれるのも何か裏がありそうで怖いけどあったかいからいいや。


その頃哲平さりし食堂では・・・

「父上が仰っていた有馬哲平とはあの者か。鳳条院に対しても臆することなく逆に攻めに転じたことは評価できるがやはりそれだけだな。口だけの何とも軟弱そうな者だ・・・。一体父上はどのようなおつもりで・・・」

謎の女が一人誰ともなく呟いているのであった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは!自堕落トップファイブです!今回はちょっと原作と大幅に違ってしまいました。ここで負けるか勝つかっていうのはえらい違いですよねっ。負けた場合の事も考えてみたんですが、あそこまで罵倒されて何もしないってのは軟弱貧弱脆弱~~~~~!って思ったんで俺の愛する有馬哲平魂を見せてしまいました。次からの修復が少々困難になって参りましたので、随時修正を重ねて参りたいと思います!

そそそそ、そしてとうとうあの人が参入するかもしれない!楽しみだわぁ、イエイ!
本日も駄文をここまで読んでいただき本当に感謝の気持ちで胸いっぱいです!(謝)



[22592] プリンセスラバー!屋上で生死をさまよう食事
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/19 23:46
シャルリンに連れて向かった先は屋上のベンチだった。しかしそこは秀峰学園予算たっぷり使ってこれ以上無いくらいゴージャスに仕上げてらっしゃる。普通屋上って何もない町中の恋人と夕日に当てられながら柵に持たれて良い雰囲気、とかじゃないですか。

それがここと来たら・・・ベンチに緑化活動まで盛んだなんて・・・。これはね、いわゆる風情が無いと言って差し支え無いと俺は言っていいと思う。それどころかこの楽器を演奏してる連中は一体なんなんだ畜生!こ、こんなイギリス製屋上の学校絶対嫌だとしみじみ思った。

まぁ今回はシャルリンの昼食時だからこそいるんだろうけど。うっわ、寒そう。屋上なので吹きっ晒し、当然冬の塊とも言える寒風が俺たちを包み込む。手かじかんでそれどころじゃないんじゃないのあの人。え、ちょっと小刻みに震えてるけど本当大丈夫なの?俺は一人のバイオニストのお兄さんの震えを心配そうに見つめていると、お兄さんはそれに気付き弱弱しく笑みを返してくれた。なんだか心が痛いよ、お金のためとはいえ過酷な世界に見えてきたよ。

そんなお兄さんとのやり取りなどいざ知らずじいやに着席を催促されるシャルリン。料理が冷めたという優しさ溢れるたしなめられ方をされてるし、これぞハイソサイエティ!屋上で料理作らせるなんて上流階級でもさらに一握りなんじゃないかいっ?

「とんでもないことになってるな・・・。」

俺は周りのシェフやバイオニストの方々を見回した結果の感想を一人ごちた。

「聞こえたぞ、小僧。」

何か聞こえた気がしたけどあの紳士の権化である所のじいやがまさか俺にそんなことを言うはずが・・・

「聞こえておらんのか、小僧!」

「!?」

え、俺かよ!な、何なんだよ。いきなり何切れてんだよ、前の話では俺切れすぎたからちょっと自重したいんですけど・・・。俺はおそるおそるじいやの方を見ると、残念ながら小僧は俺のことであったと確信を得てしまった。

「な、何でございましょう・・・?」

もう気弱ボーイを隠そうともせず手を揉みながら必死に頭を低くして話を聞くことにした。

「お嬢様の素行に何ら問題でも?貴様のようなどこの馬の骨ともわからぬ小僧になんの許可を得る必要があるか!」

ほ、吠えたー!え、このじいさん見かけによらず体育会系のノリの人なの?穏やかホッホッホキャラの人じゃなかったの?くっそ、身内に厳しいタイプの奴かよ。何てめんどくせーんだ・・・。どうせシャルリンにはゲロ甘なのは収集済みよ。見てろ

「シャル嬢、何かあの爺さん俺のこと目の仇にしてくんだけど・・・俺別になにも言ってないのに。クスンクスン」

「じいや、哲平に意地悪言わないの」

「はっ、しかし・・・」

それみたことかー!ハッハーこれは愉快痛快爽快だー。睨んでも無駄無駄ぁ!こっちに最強の盾がいるんだからよぉ、ふっふーん、おお怖い目だこと。べろべろばー。シャルリンがこっちに振り返った瞬間生まれたての小鹿の如き弱弱しい顔つきをする。うーむ何て極悪非道なんだろう、俺。

「哲平は私がとってもお世話になっている有馬お爺様のお孫さんよ?毛嫌いする理由があるかしら。」

はぁ、まぁ色々あるんじゃないんすかねぇ。主に俺がこの無茶苦茶なランチ風景をうわぁみたいな感じに引き気味になる態度とか。

「毛嫌いなどはしておりませぬ。」

毛どころか根毛から嫌ってきそうな目つきで俺を睨んでおいて一体何を言ってるんだろう。とにかくあの爺さんがたまに俺を見るために目を開く瞬間が一番のホラーです。クワッッッッ!心臓に悪いから止めて本当。その数だけ俺もアッカンベーで返してるから一応イーブンと言っていいのかもしれない。

「仲良くしてあげてねって、直々にお願いされたのよ。お世話になった分だけお返ししないと家名に傷つくわ。」

はぁ、やっぱそういうこと。お願いされたって多分優の事言ってんだろうなぁ・・・。何かそういうの本人である俺の前で言うの不味いとか、そういうこと考えたりしねーんかなこの人。もう今の発言だけで食欲無くすんですけど。家名より何より俺の心傷ついたんだけど。

「家名に傷がつくのはじいやが一番嫌な事でしょう?クスクス」

「敵いませぬな、このアルフをやりこめることばかりお上手になられて。」

ふむ、今の発言から推察するにアルフじいやんをやりこめるために家名を出して来たと捉えてまず間違いなさそうだ。あ、何か俺安心しちゃってる?いやいや、だって何か単純に仲良くなりたいっていう気持ち少しくらいあって欲しいじゃない。ねぇ?何か利害が一致するから一緒にいる、とか何か寂しいじゃないですか。

よーしよし、ちょっとくらい俺に興味を持ってるとみても良さそうなんで気力は回復したよ、一応。おっと、邪推しないでよ?俺は別にただ仲良くなれそうかどうかでの興味あるなしを考えたんだからね?従ってそこに恋愛感情の介在は別に含まれていない!と思う、うん。

まぁシャルリンとじいやの談笑を邪魔する気も加わる気も全然無いので、バイオニストから一番離れていて、一番風が来なそうなベンチを探し回ることにした。バイオリンの音が煩いって訳じゃないけど、やっぱ距離的にある一定の距離を取った方が良い音程に聞こえる気がするからだ。至近距離からギーギーやられて煩いからというのも決して否定しないけど。程良い位置を確保することが出来た俺は先のカレーによってこれまた程良く満たされているため半分寝掛けていた。

間の悪いことに俺の睡魔がほとんど俺の視界を塞ごうとする頃にシャルリンが隣に来て俺を揺さぶり回した。

「もう、哲平ったらここに何をしに来たのかしら?」

珍しくシャルリン怒ってるぅ。眠ぅ、でも何かやばそうだよなぁ。

「いやいや、起きてるってぇ、どしたぁ、じいやとのお話は。」

最早寝起きみたいに間延びしきった声で返事をした俺にシャルリンはそれでも起きたと認識してくれたようで

「ごめんなさいね、じいやが失礼なことばかり言って。」

脳がほとんど寝ているため俺は感情の赴くままにしか発言出来ない状態になっていた。

「あーどうなんだろう、失礼なこと言ったっけかなぁ。まぁシャル嬢が言うなら言ったんじゃなあい。」

「でも哲平のお爺様に世話になったからという理由だけじゃないのよ。私哲平に会えるの本当に楽しみにしてたの。本当よ、命かけるわ。ウソだと思うなら言って。」

「ウソだぁ。」

「えー酷-い!どうしてーねーどうして嘘だと思うの?」

ことさら強く肩を揺さぶられるもんだから俺の首は稼働出来る限界まで上下に揺れていた。

「だって命掛けるって言った奴で、今まで本当に掛けた奴いないんだもぉん。」

「・・・ぅ。」

ピタリとシャルリンの手が止まった。しかも止まるだけでなく手を離しやがったもんだから俺は顔面から地面に墜落した。

グジャアアアア

「ブルアアアア!!」

「ああ、ごめん、哲平大丈夫?!」

「ぅ、ぅ・・・い・・・一体俺はどう、なったんだぁ・・・?」

俺の顔面の傷は擦り傷程度の上何故か救護班までスタンバイされていたので気付いたらバンソーコやら消毒液をつけられていた。おかげで完全に目は冷めた。

突然の出来事に目は冷めても頭は覚醒しておらず顔面を空に向け口をてアーーっとして呆けているとシャルリンがおずおずと寄って来た。どうせさっきの墜落事故は操作ミスが原因なのぉ、とかそんな話なんだろぉ?と思っていたので俺は相変わらず空に目を向けたまま飛び回る何か良く分からない鳥だか、飛行機雲を目で追っていた。

「哲平・・・。」

「何」

「あの・・・ごめんなさい。」

「もういいよ、やったことだし。」

「いえ、そうじゃないの。あ、いえ、それもあるけど。」

話が見えないというか、時間の感覚無いんだけど。

「哲平私ね、やっぱり死にたくない。」

・・・!?

俺、もしかして死ねとか言ったの!?と、ととととととんでもないことじゃないか。俺の体中から汗どころか組織液まで流れ始めた。こんな話をもし、じ、じいやにでも聞かれていたら・・・?

チラッ

「ギラァァァァン!!」

ワアアアアアアオ物凄い睨んでるぅ!あの人あんだけ離れてても聞こえるなんてお嬢様の体に盗聴器仕掛けてんじゃねぇのか?とりあえずここは穏便に話を進めなくては・・・。もし本当にシャルリンが死のうものなら、言うまでも無く

ゴクリ・・・チラッ

「ギロオオオオオオオオオオ!!」

うおおおっ、これはマジとかいて真剣な目だぁぁぁ!一目散にこの場から逃げ出したい思いに駆られたが、その場合屋上を出た瞬間に首筋にナタあるいは、射殺されるのがオチなのはどんな人でも容易に想像できるだろう。ど、どどどどうすんだよ。あ、まず話を聞かないことには始まらねぇか。シャルリンの方にもう一度目を向けると

「Zzz」

「・・・」

「スースー」

「おい・・・。」

こんな短期間で寝れるとかどんだけ睡眠不足だったんだって話だ。
仕方が無い、ここは女性には効果絶大と言われる例の技を見せるしか。

「食べてすぐ寝て豚になるー、ブーブー養豚場楽しいな、腹さばかれ豚カツにー♪バラ肉、角煮、生姜焼き、スペアリブも素敵だね~♪」

俺は女性に取って暗黒子守唄を耳元で囁き続けた。他にも肌が荒れるや、油テッカテカコースもあるが、豊満な乳をお持ちのシャルリンにはこれが一番効くはずだっ。

「豚カツは嫌っ!」

ガバァっと目覚めた。ブラボーハラショー!いやぁ恐ろしい子守唄だ、これは。俺は歌詞を胸ポケットにしまいこみながら一人呟いた。

・・・

「だから、死んでもいいから哲平と仲良くなりたいって言ったけどあれは違うの。」

事の詳細を聞けば何でもない事だった、なんだそんな事かと俺は嘆息した。そんな話されたような気もするけど記憶が曖昧すぎるので断定できるほどではない。どうも俺はその後じゃあ死んでとでも言ったのだろうか、何とチャレンジャーな男なんだ俺は。しかし謝ってどうするつもりなんだろう。俺としてはもう何でもいいんだけど。目だけで続きを待っていると

「だって私まだ何もやれていないし、もっと自分の人生を楽しみたいもの。」

コクリ、俺はとりあえずそうですねという意の元頷いた。更に、だから?と目で聞いた。

「だから、私やっぱり口なんかで言うよりやっぱり行動しなきゃダメだと思ったのよ。」

んなもん当然だろうと思わないでもないが、お嬢様的には自分で気付いた事に誇りをお持ちのご様子でちょっと胸を張って仰られた。チラッとじいやを見るとハンカチで目を拭っておられるご様子。本当過保護だな、と呆れ顔で見ていると俺に気付いた瞬間に阿修羅が乗り移ったかの如き殺人フェイスになった。もう七変化見てるみたいだよ、畜生。

「だから哲平、これから仲良くしましょう、ね?じいや、哲平の席を作って頂戴。」

今まで散々慣れ慣れしく接しておいて改めて仲良くしましょうと言われてもこっちは「はぁ」ぐらいの生返事しかできなかった。最早今まで仲良くできてなかったと思っているんだろうか。そしてじいやはじいやで俺の気の無さそうな返事に対し

「小僧、何だその返事は!お嬢様と親しくされないつもりか!」

と叱責を飛ばすが、俺としては「いや、これ以上どう親しくなれと?」的な気分が払拭されていないのである。しかしそんな事を言おうものなら今まで俺の鉄壁の守りだったシャルリンが俺の元を離れじいやに付くやも知れぬ。鬼に金棒、国士無双状態になってしまうので避けたい。

「いえ、今後とも親しくさせていただく次第!」

と軍隊並みに規律正しい言葉でハキハキと答えると、じいやは鷹揚に頷いていた。ああ、やっぱそういうキャラなのね、あんた・・・。

俺のカレーはまだ胃に残っていたがまだ食えないという訳では無かった。そして隣でシャルリンは「うーん♪」だの「あーん♪」だの口の中で笑顔を作り、美味しいアピールを欠かさず行いながら食っている。どんだけめんどくさい食い方なんだよ、と思った。多分暗に、一緒に食べましょうと言ってんだろうなぁ・・・。でもぶっちゃけそこまでの食欲もないんだよなぁ。根気良く俺は演奏聞いてる振りをしながら受け流していると、とうとう

「ね~え、食べたい?」

と直で聞いてきた。すかさずじいやの眼光が俺を貫く。もうやめてこのパターン!

「あ、ああ、俺、今はちょっといいか・・・

その時じいやの唇を見てしまった。

「し・ぬ・か?」

うおっ!何と言う恐ろしいこと口にしやがんだあのじいさん!そしてあの目を見るに嘘を言ってる訳じゃ無さそうなのもまた怖い。

「食べます。」

俺は見た瞬間即答していた、いやせざるを得なかった。じいやもじいやで俺に対する圧力の掛け方が徐々に手慣れて来ているのは気のせいじゃないはず。

最初こそは・・・

最初こそは幸せだったさ、うん。何がって?いや、シャルリンは俺が見た食べ物をアーンしてくれるんだよ。大体好物だから美味しいし、シャルリンみたいな美人にやられりゃそりゃ満足感もひとしおだ。でもね、俺の胃袋だって、限界は来る・・・んだよ?ゲフッ

「はいっ、哲平。アーン♪」

キタァァァ!この仏の如き笑みと共に獲物を捉え俺にエサを与えようとする仕草。俺はもう気付けば「はいっ」の部分で口を開けるように手懐けられていた。もう俺自身フォアグラになるガチョウみたいな気分になっていた。咀嚼する力も無ければ、飲み込む力もそして格納する場所も無い。冬眠前のリスみたいな頬になり、口は最早うめぼしだ。食っても食っても減らないこの現象はもう悪夢としか言いようが無い。爺さんは最初の方こそ

「お嬢様にご足労お掛けするまでもなくこのアルフめがっ。」

と言って奇跡のじじいと学生のコラボを作ろうとしたが、俺はここで全ての力を使い止めてくれ、そんな事したら俺はもう2度とお嬢さんと仲良くせんぞっぉぉぉ!と言ったのが運の尽きで、そこからはひたすらシャルリンにアーンを連発されていた。

俺も苦肉の策で同じ状態にシャルリンを追いこんでやろうとアーンをやろうとしたが、シャルリンの口前10センチ程度の所でじいやが必ずナイフ持参で止めに入る。目で何してくれちゃってんの爺さん?と聞くと、小童風情がお嬢様の口内を覗かれるなど30年は早いわ!!みたいな顔された。

もう昼に食ったカレーは大腸の後方部にまで推し進められ、麺類などは場所が無いから鼻の中から吸引するというグルメ芸人魂を見せた。最終的にあの寒そうにされていたバイオニストのお兄さんが俺が死にかけている事を知らせていただきどうにか一命を取り留めたのである。じいや姫ばっか見てないで仕事しろ・・・。そして食わせていた本人真っ先に異変に気付け・・・。俺はその後使い物にならない体になったので、タンカで保健室に運ばれ放課後まで仮死状態を保ったのであった。


―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは!今日はシャルロット嬢とのお話ですねっ。この人たちは結構分かりやすいので表現しやすくて助かります。姫は天然で爺やは軍人系ですね。

やっぱいつかのように切れる哲平より、ギャグに走る哲平の方が俺は好きですね。皆さんはいかがでしょうか、それではまたの続きは次回ということでさようなら~♪
今日もこんな所まで駄文に目を通して頂き誠にありがとうございます(謝)



[22592] プリンセスラバー!初パーティお馬ゴッコ作戦!(注:哲平異常なテンション)
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/11 02:03
※作者が夜更けに書いたために哲平が異常なテンションになりますがこちらの不手際です(謝)

 「哲平様、哲平様」

控えめに、しかししっかり脳髄に響くこの声は・・・

「・・・ゆう・・・か?」

「ようやく起きられましたね、もう放課後ですよ。」

「・・・と、俺どんくらい寝てた。」

「正確には申し上げることはできませんが、少なくとも午後の始まりから居なかったとすると大体5時間半程度でしょうか。」

「・・・って!今何時だっ?」

俺は慌てて布団を引っぺがし、優がお腹すいているんじゃないかと思い時刻を尋ねた。優は俺の心情を察し、ことさらゆったりとした動作で首を振り

「ご安心ください、まだ6時を少し回った所ですよ。」

と優しく伝えてくれた。6時か、ふぅむ天災テレビ君が始まるんだけどな。あれ子供向けかと思いきや結構うんちく豊富で面白いんだ。漢字の読み方とか俺地味に分からない時あるし。

「・・・っと、もう体の調子は大体万全だな。やー良く寝た。」

しかしそんな俺を見ても優はまだ物憂げな表情を浮かべていた。

「あの哲平様、ヘーゼルリンク様から何か酷いことでもされたのですか?」

ああ、そっか昼休みから消えたんだからそういう発想になるよな普通。

「いや、まぁされたと言えばされたけど、でも合意の元だからあんまり文句言えた義理じゃないな。」

食べ過ぎて倒れたというどうしようもない理由なので俺は恥ずかしくなって右手で髪を掻く振りをしながら優に顔を見られないように話した。それでも苦い顔を解こうとせず俯き加減に

「私がヘーゼルリンク様に頼んだばかりにこんなことに、哲平様本当に出過ぎた真似をして申し訳ありませんでした。」

と、これまたどうしようもない理由で謝ってくる堅物メイドが一人。俺は何だかどうしようもない理由への受け取り方が優と俺で差がでかすぎる事に笑えてきた。だって俺はばかばかしい、あー恥ずかしい。優は、私のせいで哲平様が、嗚呼なんということでしょう。意味が真逆な気がしないですか?

「クッ・・・ハハハハッハッハ。」

突然笑い出した俺に涙目で顔を上げた優。俺はそんな優を見ながら

「お前俺がこんなに楽しそうに笑ってんのにまだ気にする必要あるか?」

と無邪気に言ってみた。それが功を奏したようで、優もぎこちなくも笑った。

「おう、笑え笑え。お前素材は良いのに楽しそうな表情が少ないんだよ。もっと笑えばもっと人生は楽しい物になるんだっ!」

俺はオペラ歌手のように両手をめいっぱい広げて気持ちを伝えた。ボディランゲージ大きくした方がより気持ち篭ってる気がするんだよな。

優はそんな俺の様子を数秒眺め、ようやく心からクスリと笑い

「哲平様は本当に暖かいお方ですね。」

とまたも直球を俺のハートにぶつけてきた。そういう褒め言葉はオブラートに包めと。

俺は「暖かいお方」と言われる瞬間にはもはや掛け布団を頭から被ってネコが4本の足をたたんで座る姿勢になり、お腹痛-いと照れ隠しモードに入っていた。

そんな様子を優はクスクス笑っているようだったが、その顔を一目見たくとも顔が赤い俺の顔は見せたくないという葛藤が生まれていた。そんな時だった。俺の携帯が鳴り響いたのは。
学生服の上着に無造作に突っ込まれた携帯を俺は布団の中でもぞもぞ取り出し、発信者の確認をすると好々爺と書かれていた。

・・・誰だ?

・・・ああお爺ちゃんね。ネタで好々爺と入れたものの、普段電話とかメールを一切送りも送られもしない間柄なので一瞬誰だか分からなかった。どう見ても海千山千とかの方が合いそうではあるが。まぁいいや、とりあえず要件聞くか。

「はい、もしもし。」

「哲平出るのが遅いぞ、何をやっとった。」

怒ってる口調じゃないけど、こちらへの非難を孕んだ言葉だな。

「いや、お爺ちゃんから電話なんてどんだけ凄い話聞かされるかと思って緊張したんだよ。」

さっき出なかった理由は間違いなくそういう類のものではないが、しかし別にこれも嘘ではなかったので罪悪感は一切湧かなかった。

「そうか、しかしもうお主とワシは父と子。そう構える必要も無い。まだ学園じゃな、急ぎ家に帰れ。着替えを済ませておくようにな。」

「・・・ハ?」

本当いつも突拍子無いから対応が遅れちまうんだよな。俺が全く現状を把握出来ていない様子が伝わったのか

「今日はワシが懇意にしている連中にお前を紹介する場を設けておいた。」

「はぁ、そりゃわざわざどうも?」

別に頼んでも無い突然の招待に俺も自然、疑問口調での感謝の言葉を口にしていた。

「気にするな、今日はお前に引き会わせたい者がおるからの。ワシも今日は何とか都合をつけよう。」

まぁ主催者が来ないパーティーって一体何なんだよと思いながらああ、そう。と何となく返事をしていた。別にそれ以外話す事は無いのでさっさと電話を切られたし、こっちも切った。

ま、いっか。考えてもしょうがないよな。ってパーティーって!!とうとう俺も上流階級?!うっひょう、こいつぁすげぇや!!俺は布団の中で一人水揚げされた直後の魚のようにピチピチ跳ねていた。それを異常の物と感知した優がすかさず押さえこみに入り

「て、哲平様。いかがなされたのですか!?」

と、これまた本気度MAXの顔で心配してくれた。俺はとりあえずピースサインとニヤケ面をセットで優に送り返した。それを見た途端優は椅子に脱力して座り

「もう、心配するので突然妙な行動を取るのは控えて下さい。」

とちょっとキレ気味だった。が、止めるつもりはない。そして俺は優に伝えねばならないことを思い出した。

「そうだ、優。俺早く帰らないと!何でもパーティーがあるんだって、パーティ!くぅ、とうとう、俺も、貴族社会へ、進出かぁ。お爺ちゃんも、粋な事、やってくれるじゃないっ。」

と、興奮を抑えきれずスクワットを行いながらやったが、物足りずヒンズーも付けてスクワットをしていた。優はそんな俺を見ても全く動じることなく

「では迎えの車を急がせなければなりませんね。」

と淡々とした口調で答えた。俺としてはキャースゴーイ!的なイエローボイスを求めていた訳でちょっと悲しかった。こういう所どうにかなれば優完璧なのになぁ。ま、優には優の味があるってことかなぁ~?

スクワットに熱が入り始めた俺をよそに優は俺に背を向け携帯を耳に当て迎えを呼んでいた。俺はパーティーでも汗キラキラさせた方が好印象になるかもっと思いより一層肉体を酷使することに専念していた。

「Hey タクシー!どう?」

着替えが一通り済んだ俺はポーズを決めながらタキシードとタクシー、どう?を必死で掛けようとしていた。Heyの部分で右手を限界まで上げ、タクシーと言いながら両手を前方に投げ出し、どう?の部分でタキシードの襟を掴んでこれタキシードだぜ!アピールだ。

しかしオーディエンスである所の優は無表情でこちらを眺めるだけで全くもってクスリどころか眉毛すら動かない。クとキの中間を狙わないと分かって貰えないのだろうか。だ、駄目だ。こんなことでは俺はパーティー会場で血の海に溺れることになる・・・。

俺はタキシードを全身に包み、自分の能力の低さに辟易としながら両手両膝を付いて慟哭の声を上げた。

「哲平様、せっかくの着付けが台無しになるで地面に膝を付けないで下さい。」

ピシャリと優に言い切られ、頭を垂れながら小声ではい・・・と弱弱しく立ち上がった。

どうをdo?に変えた方がよりウィットに富むか?など思案を巡らせながら入口の門前まで優と歩いてきた。優は先ほどの仏頂面から一転して天使のような笑みを込めて

「いってらっしゃいませ。」

と言った。俺はとっさに一指し指をビシィっと優の顔目がけて指差した。当然優は何の事か分からず俺の指と俺を交互に見て、目をパチパチさせる。俺は
「ずっとさっきの顔だったらどんな男も落ちる!!じゃーなっ。」

と言ってリムジンにウサギのような身のこなしで飛び乗った。これであの顔の頻度増えればいいのになぁ・・・と思いながら。そして勢い余って反対側のドアに頭から突っ込み頭部を思いっきり強打したが、入ったドアはすでに閉まっていたのでなんとか優にはばれずにすんだ。くそ、慣れると狭く感じるなんてなんと贅沢なっ!俺は脳への衝撃で吐き気を感じていたが、楽しいパーティーを夢想することにより気力充実を図った。

「哲平様、哲平様」

「・・・んが。」

案の定俺は眠り呆けてしまい。アホ面を余すところなく顔どころか全身で表現した格好で眠っていた。優の言ってた着付けなんてなんのそのだ。無骨な男の手が俺の体を遠慮なく揺さぶる。くわぁ!犯されるぅ、怖い!ガバッと身を起こした俺を見て運ちゃんと見える気の良さそうな男が安心したように額を右腕で拭いながら

「到着いたしましたよ、どうぞこちらへ。」

俺は俺で頬に流れ出たよだれをタキシードの右腕で迷い無く拭き取りながら勇み足で出陣した。寝たから元気いいんだよねー、今の俺はールンラルンラララーン♪

正装のせいか睡眠のおかげか、見慣れない場所に来たせいか、とにかくいつも以上にテンションが高かった。散々運転手に絡みまくり、どうやら来月子供が生まれるらしい所まで聞いた。頑張れよ、山城さん!俺はあんたを応援しているよっ!

東京のとりあえず細長のでかいストーブみたいな建物が今回の俺の戦場らしい。

「それではちょっと駐車場に止めてくっからよ、哲平ちゃんまたなっ。」

「おう、山さん今日はありがとう。また話そう。今度は酒付きで!」

お互いハッハッハ、と大笑いを浮かべ合いながら別れた。俺としてはもうこのまま運ちゃんと酒飲んでた方が楽しそうに見えてくる。

「さて・・・行くか!」

先ほど案内の者が行くという山さんの言葉は文字通り突き抜けていた俺は颯爽と建物の中に飛び込んで行った。入ると煌びやか豪華絢爛、うっほう、でかいシャングリア、あれ直撃したら即死だろう!何て前転しそうなノリ、実際はできないのででんぐり返りで会場内を動きまくる俺。たまに開脚前転を披露する辺り読者サービスもバッチリだ!

俺が一人壁にぶち当たったり、グルグル回転していると

「有馬さ~~~~ん!」

と何やら最近聞きなれた声が聞こえたので俺は背筋しながらそちらの方に視線をよこした。

「お、根津、お前も来てたの!」

俺たちは暗黙の了解で根津が馬となり俺が騎手となって会場内を徘徊した。

「いやぁこんな広い所で食ったり飲んだりでしょ、凄いねぇ!」

「ハッハッハ、有馬さんは謙虚な方だこれしきのパーティーいくらでも出来るではありませんか。」

ピクッ俺は乗っていた態勢から前傾姿勢を取りそのまま奴の首に腕を回し締め上げた

「あ、あ、あり、ありま、ざぁぁぁん?!」

悪かったな、元庶民で、という怨嗟を孕んだこの攻撃なのだがもちろん根津は分かろうはずもない。しかしその根津の言葉は俺にではなく周囲に影響をもたらしていた。

どうも俺たちが注目を浴びている気がするぞ。まさか、とか、そんなはず、みたいな声も途切れ途切れに聞こえてくる。そりゃそうだろうこんなお馬さんゴッコして馬の首絞めるような男があの鉄心の息子だと一体誰が信じるというんだ。息子になった有馬哲平ですら実感が湧いておらぬというのに。

ここは俺が有馬一族では無いとアピールした方が気楽だと即座に判断した。というのも俺の父鉄心が世話をしてやった連中なんだろ?じゃあ俺を可愛がるに決まってるじゃないか。俺はそんなことより今の馬を可愛がる方が楽しいのだよ、分かるかね君。

徐々に人がこちらに集まりだしているので、ここで俺たちは自らの頭の悪さを前面に押し出す事に決めた。実際根津は俺の従いたくなさそうだが、俺の意見に逆らえないように互いの立場を認識し合っているため、双方の合意の元である。

「あ、ありまー!こ、こいつは困ったぜ!」

「ど、どうしたぁ!ボランゴ!エサのニンジンが足りなくなって来たのかぁ?!」

「へ、へぇそうでがんす、あっしもうニンジンが無いと力が出なくて出なくて。」

「ありま、そいつぁ困ったもんだ。ようしそれではニンジンを求めて旅にでようじゃないかぁ!」

「へ、へい。親分の行く所ボランゴありだっしゃーーー。」

「「ハーーーッハッハッハ」」パカラパカラパカラ←口で言ってる

・・・

・・・

「あれが有馬様のご子息であられるはずがない・・・。」
「そうだ、有馬様に対する冒涜行為すら行っているんじゃないか?」
「し、しかし彼らもまた有馬様に目を掛けられた者のご子息のはず・・・。」
「う、うむどなたかは存じ上げないがそっとしておくのが一番かもしれん。」

俺は廊下に出て連中が一つの塊からまた前後左右に移動して行く様を見て一人忍び笑いを漏らした。隣で俯いている根津に

「おい、みろよ。やっぱありまとあれまを掛けた俺の術策に掛っておろうが。ええ?」

と肘を奴の肩にぶつけながら話しかけるも、根津からの応答が途絶えている。再度根津の顔を見ると、どうにも具合の悪そうな顔をしている。

「ど、どうしたそこまで酷く襟元を引っ張った覚えも、尻をひっぱ叩いた覚えもない。一体どうしたというんだ。俺たち友達だろ?!」

「・・・いだ。」

「何?」

「もう、私はお終いだーーーーーー!!」

突然の友からの絶叫に俺は驚愕の念を隠せなかった。い、一体どうしたというだ根津、俺を一人占めできるというのにどこに不満を感じると言うんだ。

「私は有馬のお爺様の友人の方々とも多少親交があるのですよ・・・。」

「・・・まぁ、お前俺とそいつらどっちが使えるかって言ったら俺だろうが。そこはもうスッパリ諦めろって。」

というか散々俺の馬となって会場を歩きまわってた奴がどの口で言うのだろう。

「そ、そんな有馬さん人ごとだと思って!!彼らは自慢では無いのですが、噂を一日で千里ほど駆け巡らせる勢いの方々なのですよ」

「馬鹿野郎!」バチーーン!

俺は根津の頬を引っぱたいた、友愛と親愛の想いを持って。

「お前、噂なんかで自身の認識をコロコロ変えちまうような薄っぺらい奴と金輪際関わる必要なんてないんだ!それを気にしてしまうということは色んな奴に媚を振りまいて誰かれ構わず尻尾を振ってるからそんなことになってしまうんだよっ!だから気にするな、お前は堂々としていればいいんだ。お前の人間性を見込んだ本物だけを頼れ、俺のように、いいな!」

「ば、ばびばざん(あ、ありまさん)!!!」

「根津!!」

俺たちはお馬部隊はエントランスホールを出たすぐさきのロビーで男泣きをしながらお互いの体をひっしと抱きしめ合った。ここに本当の友情が生まれたのである。もちろん俺が有馬鉄心の息子とは未だばれてはいない。



―続く―

はい、どうも皆さん夜遅くにこんばんは!自堕落トップファイブです!恐縮です!いやー話を進めていけば行くほど本筋とずれていきますねっ。だって本編おもしろくないんですもん(汗)

それよかこっちの方が絶対面白い!何て言い切れる自信はまだそこまで無いですがそれでも俺が読むならこっちの方が好き、かな。面白いじゃないですか、有馬君!それに根津はもっと駄目さを前面に押し出した方が良いと思うんですよ、ギャグ要員なんだし。

一旦ここで切らないと文量が相当なものになっていると思うので次回につなげたいと思います。根津君のキャラが違い過ぎて不快になった人ごめんなさい!って元々本編に登場する根津君も鬱陶しい奴なんですけどねっ!尚余りに本編と食い違いが大きすぎる場合は修正を加えていくのでご了承くださいませ。それではこんな所まで読んでくれた最高な人達ありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!ファン・ホッセン卿出現迫りくる魔の手
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/20 08:13
 あれから俺たちの背中には翼が生えた。そう自由という名の翼が!名誉も地位も富もいらない、ただ僕たちは自由が欲しいんだーーーーー!

「いや、やっぱもらえるなら・・・名誉と地位、富欲しいですぅ。」

「ばっか野郎(バシッ!)根津、お前まだそんな甘ちゃんな事言ってんのかっ。」

「だ、だって有馬さん貰えるなら貰ったっていいじゃないですかっ。」

「だ・か・ら・お・ま・え・は・あ・ま・ち・ゃ・ん」グイグイグイグイー
↑根津の襟を掴んで前後に一字毎に揺さぶっている。

「だ・っ・つ・う・ん・だ・よ!!!!」グイグイグイグイグイグイーーー

「ば、ばびばっばあああああああああん!」(あ、ありまさああああん)

俺と根津はもっと親交を深めようと価値観の違いをも埋める努力を図っていた。

まず根津は目の前のニンジンにすぐ喰らい付くほどの手が軽い奴だ。しかしまず本当にそれがニンジンなのか、はたまた仕掛けはないのか、毒物は入っていないかを一旦考えるというのが人間と言う物だ。従ってまず根津には無欲になってもらうことにした。

「いいか、根津!お前に本当に必要な物は全部お前の中にあると知れ!」

「でも僕お金なんて入ってないですよ、それに名誉や富も・・・。」

「こんの馬鹿たれがーーーーーーーーー!」バチチチーーーン往復ビンタの音

「オブブブブブッ!」グシャア、←根津が床を転がる音

「お前散々俺から話を聞いておいてまだそんなことを言ってやがんのかっ!」

「だから、お前自身の能力が高まれば、魅力があれば、自ずと周りもそれにあわせて高級になると言っておるんだっ!」

「・・・」←根津は感動している。

「有馬さんって、時々カッコイイ事いいますよね。」

「このトンチキがーーーーー!!!」ゴリゴリゴリゴリ
ゴリゴリ音は頭部を両サイドから握り拳で内側に向けてめり込ませている音である。

「あびばばーーーーーん」(ありまさーーーん)

「ったく、欲深い上に一言多いとは、どこまで芸人根性あるんだ、はぁはぁ。」

「でも今の話聞くと有馬さん、あんまり高級な印象ありませんよ?」

ピクッ・・・・←有馬の耳の動き

ビクッ!←根津の両肩の動き

「・・・」

「あ、あれ、有馬さん?」

「ああ、そうだよ。どうせ俺は元庶民、そして庶民的感覚が抜けきらない半端者だよ。」

俺は高級そうな絨毯の上に大の字になって寝転がり、根津は隣で体育座りになった。

「そ、そんな有馬さん。いつもみたいに『うらぁ』とか『こいつぅ』ってやる流れじゃないですか・・・。一体どうしちゃったっていうんです?」

「へへっ・・・根津俺は実の事を言うとさ、お前や他のクラスの連中に嫉妬してんのかもな。」

「なっ、馬鹿なっ!」

「嘘じゃねぇよ、だって俺はどうあがこうともリムジンを軽トラのように扱っちまうだろうし、高級なダイヤだって草野球のボールに代用する自信がある。」

「!!!」

「な・・・?俺は元々下級層的な価値観でしか物事を推し量れないのさ。だから富はそこそこ名誉はいらない、地位何それ美味しいの?ってな具合なんだよ。いいか俺は面白ければなんでもいい男なんだよ。」

「そ、それでは私に全てを捨てろと言ったのは・・・。」

「ああ、もしかしたらお前は俺が興味無い物を求めるのが羨ましかったんだ。」

「・・・有馬さん」

「・・・ん?」

「こっち向いて下さい。」

「何だ(バチーーーーン!)・・・よ?」

「痛いですか、でもねあんた自身で勝手に落ち込むはいいよ。でも本当にあんたにほれ込んだ俺まで巻き込むような事は言うなよ!俺の前では有馬さんのままで居て欲しいんだよ俺は!」

「クッ、熱くて臭くて、熱血で、むさくて、グッ、う、うれ、嬉しいこと言ってくれるじゃないか・・・。」

「ごめん、ごめんよありまさん。本当ごめん!!」

根津はそのまま俺に抱きついて来たので俺は両手でしっかり受け止め背中を優しく撫でた。

「いや、お前の言う通り。俺には俺の、お前にはお前の良い所が必ずある。駄目な所は互いに支え合い、注意し合い、時には本気で殴り合ってもいいんだ。それが親友ってもんだろ?」

「あ、有馬さん・・・あんた本当にカッコイイ事時々言うね、グズッ。」

「けっ、こいつめ。そこは素直に褒めとけばいいんだよ。」ペシッ←軽く頭をはたく音




「き、君達~、も、盛り上がってる所いい、かな?」

俺たちはエントランスの余り邪魔にならない端の方で男談義を醸していたのだがどうも迷惑になってしまっていたのだろうか。堅い笑顔を張り付けた、推定30~40くらいの紳士がにじり寄ってきた。ところで誰だ、この髭男爵は。本物の髭男爵には失礼になるほどの少量のヒゲ量なので子髭男爵と戒名する。俺はすかさずアイコンタクトを相棒に投げかけた。根津は少々呆気に取られた様子で目の前の子髭紳士を見つめていた。

「あ、あなたはフォン・ホッセン卿!」

ったく一体何人なんだよ。そしてホッセンって何という気分になりながら俺はホッセン狂の方を見た。(誤字では無く彼の認識に基づく漢字です)

俺らが彼の存在を認めたと分かるやいなや彼はすぐに人懐っこい顔を近づけて来て

「いやぁ~遠目から見させてもらったけど本当にカッコよかったよ、君達。」

とウインク付きの称賛を頂いてしまった。俺は本音トークしていたというのも照れ臭いので

「い、いやぁ今度学園で友情をテーマにした演劇をするもんですから。それに向けての練習を、なぁ?」

と咄嗟に嘘を付いていた。俺と本気で語り合ったおかげか、相方も俺の意図を察してくれたようで

「そ、そ~うなんですよ。どうもいつも締りが悪くなってしまうというか。何を伝えたいのか分からなくなるんですよねっ。ハ、ハハハ。」

流石根津、もう今の発言で完全に親友クラスにジョブチェンジを果たしたよお前は。俺たちの付く必要の全く無い虚言を信用したホッセン狂は少量の髭を摩りながら天井を見上げながら何やら思案している模様だった。

俺達はその間に熱い契りの握手を熱く交わしていた。

そして何やら黙考を始めるホッセン狂。俺は思わず違和感を嗅ぎ取り、隣に居る根津に耳打ちを開始した。↓ヒソヒソ声です

「お、おいこのおっさんは一体何者なんだよ。」

「さ、さぁしかしかなりの武の道を極められているとか。」

「おい、俺から仕掛けたとは言え嘘がバレたら沈められるんじゃねえか?!」

「だ、大丈夫ですよ。そもそも嘘を付いた事でホッセン卿にはなんら影響何て無いでしょうし。」

「なんだろうな、最近そういう安易な『大丈夫ですよ』がやけに怖いんだが。」

「まぁまぁそんな警戒されなくとも・・・ってアッ目開いてますよ!」

俺達は一旦やり取りを即座に解除し瞬く間にお互いの距離に戻った。諜報要因には持ってこいの俊敏さだ。ホッセン狂は何やら妙に真面目な面構えな顔で俺とそして根津を見ている。この目完全に何かを感じ取ってる目だろおおおおっ!

「・・・達なら大丈夫かな。」

何やらボソリと呟いたがこっちは何のこっちゃ分からないからもう俺が猫なら全身の毛を逆立てている所だ。逆に根津は期待感のある表情でホッセン狂に熱視線を送っている。本当俺達何て言う反応の違いだ。

「君達、これから何か用事でもあるのかい?」

唐突に子髭は切りだしてきた。俺の中では早くも黄信号が点灯している。行くな、止まれ、やばいぞっ!やっぱやばいよなっ!だろっ相ぼ

「いえ、何もありません!」  う?←哲平の口の形

俺は隣を向いて同意を求めようと口を開いて固まった。こんの馬鹿がぁぁぁぁ!俺はもう腹をくくるしかなかった。必要とあらば切腹の覚悟もしていた、根津の。え、俺?介錯を担当するに決まってるじゃないですかっ!親友の介錯なんて本当嫌ですよぅ、ウルウル。

「いやね、うちの娘二人もこの会場に来ているんだがね?」

何やら不穏な空気を根津の3手先前くらいから読み取っている俺は完全にこの言葉に腰を落としてスタートダッシュを切れる構えに入っていた。

だって考えてみろよ。武の達人の娘→凶暴 に決まっとるじゃないか、ええ?そんなの誰だってお断りだ、バチバチほっぺたを叩かれて喘ぎ声を上げるのは隣で愛想笑いを浮かべている馬鹿(根津)だけで十分だ!

「どうにも周りの人たちとなかなか話しをしようとしなくてねぇ。先の話を聞いた所君達まだ学生だろ?丁度娘も同じくらいの年代なんだよ~。」

ハッハッハ、と愛嬌ある顔を張り付けても無駄だ、どうせあれだろう。ゴリラと人間のキメラか、あるいはあんたと同じくらい髭を脇に生やした女が出てくるんじゃないのか?もう俺は根津より前には歩こうとせず、会話を聞くだけにして女が視界に映った瞬間逃げる覚悟を決めていた。介錯?知らん、勝手に死ね!

しかし外交面に関しては本当に根津は優秀だった、合いの手の絶妙さ、言葉のチョイス、淀みない丁寧語、まさに八面六腑の働きをこなしてくれている。クック、おかげで俺は逃げれるのだからな・・・。ありがとうよ、根津、本当にお前は良い親友だった。俺が墓場に行くまできちんと記憶に刻みつけておいてやる。だから安心して逝っていいんだぞ。俺は前で楽しく談笑している二人の背後から真っ黒い空気を背負いながら、邪悪な笑みを浮かべて慎重に付いて行った。そしてもう俺が二歩足を進め掛けた時のことだ。

幼女「あっ!お姉ちゃん、お姉ちゃん。あの人じゃない?パパが・・・」

女性「ん・・・?」

俺は次の瞬間足に力を込めた!


―続く―

はい、どうもー!皆さんこんな時間までお務めご苦労様です!自堕落トップテンです!恐縮でございます!さてもうほっとんど出てらっしゃるんですが、シルヴィさん来ましたっすよぉぉぉぉ!そして俺の愛する哲平は危険をリサーチして逃げました(笑)一体この先どうなるのか!?書きながらネタを考えてるので作者も考えておりません。その時のフィーリングで作っておりますのでっ!それでは皆さんごきげんよう~♪こんな駄文をいつまでも見捨てずに見てくれる読者の皆さん大好きです!(謝)
 



[22592] プリンセスラバー!不器用な騎士シルヴィアいざ推参!
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/21 08:21
 グイーーーッ!

「!!」

「どこへ行こうというのかな~。有馬、哲平君?」

気付けば俺はホッセン卿によって右腕がガッチリ繋がれていた。
・・・
何ぃ!ほ、捕獲されただとぉ?!ば、馬鹿などうして、だ、誰だ誰がリークしたんだ!
しかも、ど、どどどどうして俺の名を?!俺は即座に思い当たる情報漏洩人物が居たので首と腰を高速で回転させて左斜め前にいる奴の顔を下から覗きこんだ。

「一体ど、どうされたんです?」

俺は尚も疑いの眼で奴の瞳を凝視し続けるものの、奴に全く動じる気配が無かった。いや、根津じゃない?奴は一体何の事かすら察していない。俺の右腕が既に捕獲されているが故に妙に操られているかの如き動きになっていることすら気付いていない。

「ハッハッハ、僕も相当見くびられたもんだね~。」

「いえいえ、どうぞこの手を離していただければ全く見くびりませんとも、ええ。」

「君は一体どこに行こうとしていたのかな~?」

「ちょっと夜景の見えるレストラン、もとい夜景を見に行こうと。」

「大丈夫、パーティーが終わった後いくらでも見に行けるじゃないかぁ、ハッハッハ。」

声の爽やかさとは違い掴む手はもはやヒグマのごとき腕力で俺が両足を引っかけて、はがそうとしても離れることはなかった。

「全く君も照れ屋さんなんだね~。そう警戒せずとも我が娘は食べたくなるほど可愛いから安心してくれたまえ。」

「そ、そんな親視点の目から言われても困る~~~~!」

俺は顔を左右にブンブン振り、イヤイヤと抵抗したが気付けば娘2人と見える女が目の前に立っていた。俺は視界にすら入れたくない感じで薄目にしてぼやけさせてみたが、そこまで線の太い女性では無かった。そこでもうちょっとピントを合わせることにした。そこには騎士コスプレ女と、リアルドールみたいな本当に可愛らしい娘さんがいた。

「・・・」←唖然としている哲平

「どうだい、哲平君。どうだいうちの娘たちは、いやー本当に目に入れても痛くないくらい可愛いもんだよ。」

手は相変わらず繋がれていたが、もう片方の手で俺の背中をバシバシ叩きながら自慢げに紹介するホッセン卿。実の所俺もここまでの奴が出てくるとは思っておらず半ば放心気味になっていた。ちなみに俺の名前を知られていたのはこの騎士女が俺を一度見た事があるため、ホッセン卿にそれを伝えたらしいとのこと。どっちみち俺に逃げ場なんて存在しなかったということだ。

そして内の相方根津の姿が見当たらない。キョロキョロ周りを見渡してもどうも見つからない。どこ行ったんだあいつ・・・。そんな俺の行動に気付いたホッセン卿は

「ああ、根津君かい?彼ならシルヴィと少し話をした後何やら君を恨めしそうに見ながらどこかへ立ち去ったよ?」

「まずすいません、シルヴィって誰すか?」

「おおっとこれは大切な事を忘れていたね、マリア、シルヴィご挨拶なさい。」

ハーイッ、とチビっ子持ち前の元気さで俺の前にトテトテ歩いて来たのがマリアらしい。

「えへ♪初めまして、マリア・ファン・ホッセンです!」

「お~元気いいなぁ~、俺有馬哲平よろしくっ!」

気付いたら右手は解放されていたのでマリアと右手で握手し、左手で頭を撫でて上げた。エヘヘヘ~とか言う姿は確かに色々な意味で威力があった。

「うんうん、マリアも哲平君に懐いてくれたようだねぇ、何よりだよ。」
ホッセン卿は親らしい発言をしきりに頷きながら繰り返していた。

まぁ俺としてはどうでもいいが、とりあえずこの幼女を愛で過ぎると変な嗜好性に目覚めそうになるのでもう一人の渋面女と向き合った。この女は愛嬌も可愛らしさもへったくれも無い奴でせっかくの美貌を表情と目つきで台無しにしている。

俺も相手の面構えを見た瞬間にくるりと回転しそうになるがすんでの所でホッセン卿に見事止められた。

「まぁまぁ哲平君、シルヴィもそんな所に一人でいないで君からも言ってあげてくれよ。」

その時ワインだか、シャンパンだか何かしらを飲んでいた飲兵衛女は頬を僅かに染め、僅かに酔った目でその時初めて俺の姿を視界に捉えた。俺も大概社交性に関して人にとやかく言えるほどの技量もやる気も無いが、この女はそれ以上だ。以上というのは俺より酷いと言う意味なのでお間違えなく!

ワインを上品にクイッと飲み干した後、テーブルに置きこちらに数歩近づいて来て

「言う、とは?」

何にも聞いてないというどうしようもない奴なんです。俺ぁ何でこんなやる気の無い奴とご一緒して楽しくやる努力をしなきゃなんねーんだ。そんなことなら一人奴のようにウイスキーだのカルピス飲んでた方が楽しいや。頬がひくひくし始めた俺は、もう撤退しようかなこの女の態度のせいにして、と思い始めていた。

しかしそこは流石父親と言った所か、ホッセン卿は全く気にする仕草すらなく

「自己紹介だよ、自己紹介。出し惜しみするものでもないだろう?」

「出し惜しみなどしておりません。」

言われてから明らかに気の無いため息を付いたかと思へば、こちらへ向き直り

「初めまして有馬殿、シルヴィア=ファン・ホッセンです。」

その娘の自己紹介には流石の父ホッセン卿も嘆息物らしく
「父は、堅苦しいのはどうかと言ったばかりだよ・・・。」
とお嘆きになられた。全く何と言う無礼者なのだろう。

俺も負けじとため息にさらに両手広げ、手のひらを上に向け両耳にセッティングした後左右に首を数回振った後自己紹介を行った。

「初めまして、シルヴィア殿、有馬=哲平です。」

気持ちは英語表記にしたが恐らく向こうには全く伝わって無いだろう事を考えると唇を噛む思いだった。そして向こうはどうやら俺の態度に不満らしくホッセン卿と口論を始めた。

ふふん、怒れ怒れ、俺は何かあのシルヴィアだっけ、あいつを怒らせるのは楽しいのだ。

俺はふと思ったことを甲論乙駁してる二人に投げかけた。

「あのさ、シルヴィアさん、だよな。それコスプレ?」

二人はピタリと動きを止めた。凄い、色んな意味で効果がある言葉だったのか、コスプレ。

ホッセン卿はまたアゴに手を当てながら

「どうなんだろうねぇ、確かに日本で言えばコスプレというのに当たるんだろうが。我々にとっては礼装だからね。」

へぇ~礼装って言っても偉くゴツゴツしてんだなぁ、女性の体のラインとか見せる気なくね?それ。俺がシゲシゲとシルヴィアを見てると

「すまないねぇ、シルヴィアは女らしさを尊ぶ気持ちが欠如していてね。いくら頼んでもドレスすら着てくれないんだ。」

ふーん、まぁいいんじゃないの、着たいもの着とけば。と俺は別に興味無いので適当にそうですねぇと相槌を打っているとどうやら話を聞いていたらしくセルヴィアが

「当家の礼装は相手を尊ぶ気持ちから身にまとうものであり、明確な意味があります。」

と訳の分からん事を言い出した。俺は顔面クエッチョンマークを形成し、とりあえず相手に自分の言ってる事を他者目線に出来るように言ってみた。

「当家の礼装は相手を尊ぶ気持ちから身にまとうものでありぃ、明確な意味がありますぅ。」

普段こんなこと言わないものだから甘えた声になってしまったが、シルヴィアにとっては不届き者と映ったようで白い目でジロリと一瞥なされた。ふん、そのような眼我には通じんよ。ホッホッホ

「ね?そうだろう、そうだろう。社交会場に剣を佩いて来るものかね。」

「まぁ何か殺伐としてるよなぁ。剣とか危ないだけでしょ、ていうか銃刀法違反だし。大体何に使うんだよ。」

「無礼な!皇帝より授かりしこの剣は一族の誇り。公の場にて外す訳にはいきません。」

「一族の誇りとか言ってる時点で威嚇してるんじゃね?」

尚も食いつく俺にシルヴィアは剣をブンブン振りながら

「威嚇、威圧してるつもりは露ほどもありません!」

と叫んでいた、あっぶないあっぶねぇし、マジで!言葉と行動が全く結びついていないよ。威嚇どころか殺されそうだ。俺が剣を見て怯んでいる姿を威嚇の塊のような行いをしたシルヴィアは俺の喉先に剣先を突きつけ

「如何です、有馬殿。ファン・ホッセンは騎士の一族。代々、受け継がれてきた誇りを佩いて参るのは失礼でしょうか。」

得意げにアゴを上向きにし、何やら俺に質問してらっしゃるご様子。うーん、そうさなぁ。

「まぁ失礼です。剣先相手に向けてる時点で。」

ピシャリと言っておいた。痛い所を突かれたシルヴィアはワタワタと剣を納め

「た、確かに今の行為は失礼だったのかも知れませんが、佩くことを申しあげているのですっ!」

少々指摘を受けた事が恥ずかしいのか声を大きくして主導権握ろうとしてるぅ、可愛い奴だなぁ。まぁ結局の所俺の言いたい事は変わらない訳で

「いや、何回も同じ事言って悪いけどさ。剣ってさ、社交場に置いては危ないだけなんだよね。百害あって一利もございません、したがって持ってるだけで失礼と思います。」

「な・・・っ!」
まさか真っ向から否定されるとは思っていなかったのか金魚の如く可愛らしいお口をパクパクしてらっしゃる。そんなはずは、だとかあり得ないなどとごにょごにょ言っているが、とりあえず続けて言ってみるか。

「そもそもさっきみたいに人に向けるのは危ない、その辺に置いてたとしても切り口に気を付けないと危ない、取り扱いが危険な物を一般人の近くに置く事って失礼っていうよりも危険じゃないですか?そして怪我なんてさせようものなら失礼どころじゃありませんて。」

チラリとシルヴィアの方を見ると物凄い勢いで枯れそうな顔になっていた。あの凛とした表情は一体どこに消えたんだよ。もしかしたらよほど剣が好きなのかもしれない。俺は余りに弱ってしまった枯れヴィアちゃんが可哀そうになってきたので、一つフォローを入れることにした。

「でもま、剣もそれだけ大切に扱って貰えれば幸せだろうな。それにご先祖様も喜んでるよきっと、そこまで思ってもらってて。」

パァァッ、目に光が宿りそして、体内の血液に赤血球が帰って来たようだ。そうだろう、そうだろう!と分かりやすく喜ぶもんだから俺は思わず後ろを向いて吹きだしてしまった。た、単純だなぁ、そして頑固だなぁ。まぁ俺も喋ってみた所なんかやりやすい奴だと分かってきたので折衷案を出す事にした。

「ま、シルヴィアさん人に迷惑掛けなきゃ失礼になんないって事で一つ。」

「あ、ああ!その通りだとも。騎士道に乗っ取って決して民を傷つけることなどあり得ません。」

剣を上に伸ばしポーズを決めながら熱い決意を語るシルヴィアを見てると何か妙に応援したくなるというか父性愛が湧いてくるというか。不器用なんだよなぁ、しかも単純だし。

「どうだい、うちの娘は?」

ホッセン父ちゃんが俺に娘の評価を聞いて来たので

「面白い奴だと思いました、嫌いじゃないですよ、ああいうの。」

と素直な感想を述べた。するとホッセン卿は目を一度大きく開け、驚いた後見てるこっちが恥ずかしいくらい喜んでいた。若い人だなぁ、この人も。

「いやぁ、そりゃあんだけ逃げようとしていた君がだよ?うちの娘を気にいってくれたなんてこんなに嬉しいことないじゃないか!」

気に入ったとは言ってないけど、まぁ別に否定するのも野暮だし別にいいか。

と、会場の入り口が妙にざわめきだしたと思ったら鉄心の爺さんが黒服を引きつれて入って来た。俺は爺さんの姿を見つけると軽い敬礼で挨拶をし、爺さんもまた首肯によって挨拶を返した。俺達の関係はいつだってこんなもんだ。だが俺はこれくらいの方が楽なんで実は結構感謝していたりもする。好き勝手やらして貰えるし、口うるさく無いし、顔怖いのぐらいだよ、難点は。

それから俺はホッセン卿からどれだけうちの娘が可愛いかという話を聞かされていた。

「いやぁ~あの時はシルヴィアが転んでしまってねぇ。」

どうも海に行った浜辺での出来事らしい。

「「お父さぁぁぁん、足噛まれたぁぁ~~」って泣きながら走って来るんだよ。転んだ怪我なのにね。噛まれたって言ってるんだ、可愛い上に面白くないかい?」

「やーそれいつくらいの話なんです?」

「そうだなぁ、あれはまだシルヴィアが10歳くらいだったかなぁ」

「一回それくらいの時の写真見てみたいですけどね。」

「おお、いいよ?家においでよ、シルヴィアとマリアの写真はもう家に入りきらないくらい取っているんだ。いや、誰かに見せたくて見せたくてしょうがなくてねぇ、はっはっは。」

そんな話を二人でしていると真っ赤になった成人シルヴィアが猪のように突進してきた。

「ち、父上昔の話を人に話すのは止めて下さいとあれほど!」

何だかんだで親子仲良いよなぁ、あの親だと俺は色々安心できるんだが。そしてシルヴィアは私照れてますを全く隠す気がない顔の赤さでホッセン卿に食いつくもんだからその顔を見るだけで笑える上に、あのシルヴィアが噛まれたぁぁぁとか言ってんの想像して、また笑える。気付けば俺はニヤニヤとセルヴィアの方を見ていた。その視線に気付いたシルヴィアはツカツカとこちらに歩み寄り

「あ、有馬殿!父上が話すことは全て事実無根!根も葉も無い話ですからっ!」

「父上噛まれたぁぁぁぁ」

「あ、あ、あ、有馬殿ぉぉぉぉ!」

「わ、たっ、け、剣は出すんじゃない!!そして振るな!」

口げんかで敵わないと分かるとすぐ剣に頼る奴だな全く。面白いからいいか。

それからシャルロットが大声で俺の名前を呼んで恥ずかしかったり、爺ちゃんの知り合いの人に散々声掛けられたりで色々あった。宴もたけなわというか慣れて来た頃に、ホッセン卿はマリアを連れてどこか消えた。俺は別に大してやることある訳でもないので、シルヴィアをいじろうと思って周囲を見回した。おろ、何あいつどっか行くみたいだ。ていうか歩くスピード早いんですけどこの人。ストーカーも楽じゃないな。

何やら別の会場に足を踏み入れたシルヴィア、俺も入ろうかと思ったが足を止めた。や、誰もいないんだもん。俺シルヴィア追ってきたの丸わかりは恥ずかしくないですか。とりあえず様子見て何かやばい感じだったら戻ろうと思いながら偵察を続けた。

ボソボソ言ってて結局何言ってんのか分からんし、何か思いつめた顔してんだけど。ああ、俺ああいう顔嫌いなんだよね。やっぱ美人は笑うからこそ映えるんだって。と言う訳で突貫いたします。とと、向こうもこっち向いて歩いてきた。

「?!」

「そんな驚くなよ。何してんの?」

「いつから、そこにいたのです?」

「はて、お前さんを追いかけて来たものの誰一人居ないホールにポツンと居る所へは入りづらく、でも物憂げな顔してるようだから元気づけようと思って入ったらこっちに向かって歩いてきた、まぁそんなとこかな。」

「・・・」

え、何すかこのジト目。そんな一人でやらしい事してた所を見られた訳でもあるまいにどんだけ過剰に警戒してんのこの人。

「んじゃ、こっちの番。何してんの?」

「お話するような事は何もしていません。」

「何もしないのにこんな所に来る奴います?」

「・・・っ。」

ハハハ、ぐぅの音も出ないでやんの。大方思い出にふけってたとかそれくらいしかなかろうに。

「悪かったな、誰だって人に言いたくないことの一つや二つあるもんな。でもま、俺は誓ってシルヴィアさんがここで何してたかは知らん。」

「そ、そうですか・・・。貴公こそここで何をしているのですか?」

「あれ、言わなかったっけ。俺尾行してただけなんだけど。」

その言葉にすぐさま騎士様は敏感に反応して剣に手を伸ばし始めたので

「わー待て待て!俺はただシルヴィアさんが早足にどっか行くから気になったんだよ。」

「お手洗いだったらどうするつもりなのですっ。」

「そんなんだったら方向ですぐ検討付くからきびすを返したでしょうな。」

「そ、そうですか。」

照れるんだったら最初から聞かなきゃいいのに、自分で言って自分で照れてりゃ世話ねぇな。全くどんだけウブなんだよ。

「き、貴公は今回のパーティーの主役のはず、その貴公が抜けてきてどうするのです。早く戻られよ。」

「主役ねぇ、あの場に主役もへったくれもあったもんじゃないってのはあの場に居たなら分かるでしょう?皆めいめいに好き勝手くっちゃべってるだけだよ。俺は俺のやりたいようにやるだけだな。」

「で、あるならば私もやりたいようにやらせて頂く。貴公は会場に戻られよ。」

「ワハハハハ、何にも話聞いてねぇのなあんた。何で俺が会場に戻らないといけないのよ。」

「・・・ハ?」

「さっき俺はやりたいようにするって言ったばっかじゃないか。俺はシルヴィアと喋りに来たんだからシルヴィアのやりたいようにやったらええじゃないか。」

「な、何故私にそう付きまとうのですかっ貴公は!」

「そりゃー面白いからに決まってる、後笑った所を見てみたいからってのもある。」

「ど、どういうことです?」

「まー前半はまんまの意味でシルヴィアさんいじり、いや喋り易いんだよなぁ。んだけど、あんま笑った所見てないから何とかして笑わしたいって感じかな。」

シルヴィアはやれやれと言った風に頭を振りながら
「そのような事をして頂かなくても結構、一人の時に笑ってますのでどうぞ会場の方に行かれたらいかがか。」

俺はどうも不思議に思ったので
「え、何。俺がいちゃ不味いようなことし始める気~?エンガチョ~」

「ええい、私はもう帰るんですっ!分かったでしょう。貴公はだから・・」

「じゃ行くか!」

「ハ・・・?」

「え、家帰るんじゃないの?」

「貴公は付いて来られるおつもり、なのか?」

「どうせ会場に居ても暇なんだからシルヴィアの家でアルバムいじった方が楽しそうじゃない。」

「そ、そんな物いじらせないし大体入れません!」

「何だよ、いけずだなぁ。やっぱ家で変な事一人でやる気なんじゃないの~?」

シルヴィアは俺の言う意味に気付いてしまった顔を真っ赤にし

「な、なっ、なっ、そ、そんなことしません!」

「何想像したのか知らないけど顔真っ赤です。」

「~~~~もう会場に戻ればいいんでしょう?戻れば!」

何か半ばヤケクソ気味に吠えたけどまぁ家に行く途中で巻かれでもしたらめんどいから会場の方が楽だよな。俺はプレイボーイよろしくさぁ手を繋ごうじゃないか!的な感じで両手を差し出し

「選べ、君に選択権を与えようじゃないか。」

といきなり訳の分からんことを言い出した。当然シルヴィアは唖然としたままとりあえずシルヴィアから見て右、そして俺から見て左を恐る恐る指差した。

「おk、ここに合意は生まれた!」

ガシィ!俺はシルヴィアの強張った指を強制的に開き手を繋いだ。

「な、ななな何をされるか!」

「今自分で選んだじゃないか。」

「わ、私は決してこのような事をされるとは思ってなどいなかった!」

「では何故俺の真意を尋ねないのだ。それは貴公の過ちと言うものではないかね?」

「グッ・・・。」

結局俺達は仲良子よしお手手を繋いでホール会場に戻ったのである。ええい、腕を振るな!と何度言われたか分からない。俺達は戻りながら身の内話なんかも少し話した。

「やーシルヴィアさんみたいな騎士様と手を繋げるなんて平民の俺としては光栄だなぁ。」

「平民?いやあなたは上層におられる身でしょう?」

「ああ、そういやそうだった。どうにもいまだ慣れねぇやね、自分が金持ちになったなんてのは。突然宝くじで6億当たっても俺ぁきっと同じ生活送りそうだ。」

「貴公はご自身の処遇に不満を持っておられるのか?」

「ちょっと、一旦ストップ。」

ピタリと俺が足を止め急停止したためシルヴィアはバランスを崩しかけたが、どうにか壁に手を押さえて止まることに成功していた。

「ど、どうされたのです?」

「あの貴公ってデフォ?ああいや、普段から使ってる表現なの?」

「いえ、公の場ないしはこの礼装を来た時と決めているつもりですが。」

「礼装ならこの場はしゃーないかなぁ。」

「なるほど、確かに貴公とは呼びなれておられないのか。それに私もあなたと同じ学び舎に籍を置く身。ここで互いに呼び名を決めるのも悪くない。」

「お、話が早くて助かるねぇ。俺のこと哲平でいいんで、シルヴィアでいい?」

「いえ、シルヴィで結構ですよ。学年も同じです、お許しがいただけるなら私も口調を改めさせていただきましょう。」

「俺なんて散々言いたい放題言ってんのに今さら口調どうこうに文句言わないわ。好きに喋ってくれりゃいいよ。んで俺の処遇、だっけ?」

「え、ああそうです。あなたは突然の引き会わせや、重荷を背負わされることを少々不満に思っておられる節があったもので。」

「ん、まぁ重荷は不満だけど出会いに関して言えば全然。寧ろ満足してるけどな、何かちやほやしてくるのは鬱陶しいけど。」

「ですが景色が一変してあなたはそれでも前向きなのですね。」

「前向き?後ろ向き?どっち向いてるとか分かんねーよ。ただ俺は面白そうだと思った方向に進むだけ。だってあんた、こんなこと言ったら怒られるだろうけど、正直シルヴィアに会うの回避しようと試みた男なんだよ?」

「え、そ、そうなのですかっ?」

「ああ、ホッセン卿に娘紹介するとか言われてね。いやいや騎士だか武士だかの娘とかさぞや無骨で筋肉隆々のデカブツが出てくるもんだと思ってさ。結局ホッセン殿になんなく捕獲されたけど。」

カラカラと笑う俺を見て、シルヴィはクスリと笑った。

「あなたには全く気負いを感じられない。私には少々羨ましい。」

「まぁ気にすんない、それがシルヴィの長所でもあるかもよ?知らんけど。」

シルヴィはフッと笑い

「そうですね、ありがとう。」

今日一番のシルヴィの笑顔だった。

―続く―

や、やった!!出来た嬉しい感動、イヤッホウ!どうも自堕落トップテンです!

僕はこのシルヴィアに手こずった。いやそれはもう半死半生にすらなりました。いえね、一度哲平は逃げようと試みたじゃないですか。そうなると印象ガラリと変わりますよね。そしてシルヴィってツンデレじゃないですか、感じ的に。どんな対応になるか分からないんですよねっ!そうすると必然的に逃げるのに失敗して本編と同じ流れにするしか無くてですね。結局色々軌道修正したのがこの駄文であります!

いやはや、哲平が逃げるのと同時に私もこのSSから逃げたくなりましたが、どうにか峠を越えた気分になっております。

それでは皆さんまたお会いしましょう!今日もこんな所まで拙い文章を読んでいただき本当にありがとうございました!!(謝)



[22592] プリンセスラバー!社交部行くor行かない?
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/21 11:12
 その後俺とシルヴィは二人して会場に戻ったのだが、シャルロットに俺は強奪された。
もうぶっちゃけシャルロットは前回の食害事件で手痛い目を見た俺としては今日はシルヴィ、今日はシルヴィと連呼していたのだが、シルヴィがいらない気を利かせたために俺はあえなく連行されたのである。さらにシャルロットには

「そんなに私よりシルヴィアがいいのぉ?私悲しいわ、クスン」

と胡散臭いそして鬱陶しい泣き言まで言われ、謝りたくも無いのに謝らされる俺。何よりタルかったのが、その後のリッチ面した者どもからの紹介挨拶だった。それはもう俺は心身ともにやつれ果てたものだ。頬はこけ、明日の矢吹もビックリするくらいの真っ白な目をしながらの対応だった。奴らは気の遣い方を間違っているというかアピールすることに精一杯で俺の心根など一切お構いなしだから困る。俺は今度から「こちらこそよろしくお願いします」と小型録音機をポケットに持ち歩くことに決めた。

俺はその後シルヴィに場内で合流することはなかった。

屋敷に入り、これまた市民プールみたいな浴槽に身を沈めた俺は泳ぐかタオルクラゲにするかを思案した後、両方やる事に決めた。泳ぎながらのタオルクラゲ!分からない人のためにタオルクラゲを説明すると、湯に濡れたタオルを広げある程度水を切る。そしてそのまま風呂の湯に掛けるように置くと・・・あら不思議クラゲだぁ!熱の水蒸気とか何かそんなアレなんじゃない、知らんけど。

まぁそれを普通に湯船につかったままでは無く泳ぎながらやろうというのだ。ふ、これはファンキーだぜっ。俺はある程度まで切れたタオルを手に、湯の中に体は沈め、そして手は頭上、一気に浴槽の壁面を蹴った。

ザバァァン!

思った通り水面は時化の如く荒れ、クラゲどころの騒ぎじゃないが俺はそれでも波の流れを掴もうとした。俺ならやれる、成せば成るんだっ!俺の心は完全にサーファーだった。その時

メキャア

「ほうっ?!」

俺はどうやら一人エキサイティングしてる向こう岸まで辿り付いてしまったらしい。見事な突き指だった。もう指が縮んだ気さえする。俺はそのままタオルを投げ捨て風呂の中で悶死ししていた。

色々な意味で疲れた楽しいお風呂からあがり曲がらない右の中指に気を遣い、頭を振りながら自室のドアを左手であけ、右かかとで閉めた。

俺はやっとベッドに着いたという開放感から当然のように両手を広げてダイブした。ベッドによる良いバウンドっぷりに慌てて両手で体を支えようとした時、例の中指の保護を怠ってしまった。

「ぬぁ!!」

いまだ触れると激痛がするその指を左手で死守しながら俺は布団内部に身を滑らせた。俺は右手中指をフーフーしながらしばし身を縮こまらせていたが、徐々に睡魔が俺の体を弛緩させ、細切れにしていった。最後にはフーフーしているつもりが中指をしゃぶりながら寝ており、朝起きたら完全にふやけきっていた。

おしゃぶりをしていたせいか、母親の声を聞いた気がした。

「どんな悲しいことがあっても受け入れるのよ。そして明るくしていればきっと良い方に進むからね。強く正しく前向きに生きてくれればお母さん、何も望まないわ。」

分かった、任せとけおかん。俺はいつだって明るくそして馬鹿な生き方を貫いてやるん・・・だ・・・グゥ

11月8日

蒸気を上げながら俺は突っ伏していた。今は放課後だ。最初が肝心と言うのと周りが優等生揃いのため、俺も感化され必死に授業中教科書にかじりついていた。覚えることも応用することも山ほどあり、完全にオーバーヒートを起こして酸欠状態だった。

「む、むずい(難しい)。」

俺は目だけで周囲を伺うと皆飄々とした態度で帰り支度だの部活の準備だのをしていた。慣れとは凄いなぁ、皆タフだなぁ。俺は脳へのインターバルのため小休憩を取っている状態だったので素直に尊敬してしまった。そんな時

「有馬さん、さようなら」

「さよなら~。」

俺は内心どちらさん?とか思いながらも聞くほどの興味も関心もないので、前方に伸ばしていた方の片方の腕を上に上げて普通に帰りの挨拶をした。

ふと気付けば優が相変わらず慇懃な佇まいで俺のすぐ傍に来ていた。

「哲平様、本日は如何なさいますか?お帰りになるのでしたら、すぐに迎えの車を寄こしますが。」

まだもう数十秒ほど休む予定だったので、全く脳が活動しておらず俺はあーだのうーだの漏らしながら思案していると

「有馬さ~~~~~ん!」

いつかの馬(根津)が駆け寄ってきた。やばぁい、今日の俺はそんなに元気じゃないよぉ?

「まさかお帰りになるつもりではないですよね?」

「お前今俺の姿見て分からんの?完全に朽ち果てておろうが。」

「今日こそはお付き合いいただきます!無理を押しても。」

「え・・・結構今までお付き合いしてた気するんだけど、昨日とか・・・。」

「何をおっしゃいます、昨日はあのままホッセン卿に譲ったではありませんか!どうやら有馬さんを娘に紹介するとかで、私はだから渋々立ち去ったのです!」

あ~、あ~そういうこと。君昨日はホッセンの旦那からすれば単なるお邪魔虫だったの。そいつは可哀そうだ。ふあ~ぁ、眠てぇ~。俺が目をこすりながら口を左右にムニャらせていると優が

「根津様とお約束ですか。では、私は先に失礼いたします。」

普段の俺であるならばすかさず止めるのであろうが、いかんせん脳からのシナプスが途絶えていた。俺は言語処理が出来ておらず、お疲れ~と適当に挨拶していた。そのまま俺は足の不自由な方のように根津に支えてもらいながらどこぞへ連れて行かれた。

「んで、どこ行ってんのぉ?」

「で、ですから、先ほど社交部と言ったではありませんか!」

背中から聞こえた俺の声に根津は息を切らしながら答えた。あの後もはや足を動かすのも億劫になって、廊下に寝ころんだ俺を根津が背負って移動しているのである。この質問も根津が言うには4回目だそうだ。何やら熱い吐息を撒き散らしながら舞踏会だなんだと息まく根津の声は、俺を程良く安眠妨害するのだ。そのため仕方なく黙らせるための質問が先のそれなのである。とりあえず俺はへ~ふ~んと業務処理をこなしていた。

最初の質問のせいでまた舞踏会の話の下りが始まってしまう訳でこれは無限ループなのであった。社交部の部室とやらに向かう道中集計28回目の舞踏会の話に差し掛かった時、

「哲平~~~。」

俺はもう反射的にへ~ふ~んと返事を返していたが、背後からの声に違和感を感じ薄目を開け後方の誰かを顧みた。そこにいたのは食害女のシャルロット姫でおわした。何故かシャルロットは不機嫌気味に

「ちょっとあなた、哲平をどこに連れて行くの?哲平は私と遊ぶの!」

これで豊満な胸の持ち主なんだよ?どう考えても発言だけは幼稚園児と大差ないのだが。

「おや、ヘイゼルリンク様。いえ、私は社交部の部室へ有馬さんをお連れしているのですが。」

その瞬間シャルロットはまぁ、と驚きの声を浮かべた後同行する事になった。お前も社交部かいっ、と思ったがもう俺は目を瞑ることにした。しかしシャルロットはそもそも俺が根津に背負われてることが不思議になったようで

「ねぇねぇ、根津君。哲平具合でも悪いの?」

と聞いていた。そう俺具合悪いの。だから変に足揺すったり背中に指で字書くの止めてくんない?

「いえ、単に眠いだけかと。」

「プッ、何それ、アハハハ哲平おもしろ~い。」

根津がいらんこと言ったせいでシャルロットからのちょっかいに足の裏をくすぐるまで加わり始めた。ふん、俺の神経も今は睡眠モードよ、効かぬ、効か、き・・・クフ、あ、そこ駄目、

「ワハハハハハハ、くらぁ!」

俺の恫喝の声を浴びても全く動じることなくコチョコチョ~とか言いながら足の裏に指をこすり付けるこそばし女。もう俺はめんどくさくなって好き放題させていたら気付いたら寝ていた。そして

ゴロゴロゴロドカーン!

俺は全身の痛みと浮遊感を感じながら目を覚ました、根津どんだけ乱暴に俺をおろしてんだ!と文句を言おうと根津を見ると一緒に俺の横で倒れていた。

「だ、大丈夫?!」

階段の上から俺達を見下ろしながらシャルロットが俺達の安否を尋ねてくる。どうやら階段で足を踏み外したみたいだな。根津の容体を確認した所呼吸も乱れて無いし、幸い大きな怪我はなさそうだ。

「あ、ああ俺は何とか。でも根津が気を失ってる。ちょっと医務室連れていきたいから案内してくれ。」

俺は慌てて頷きながらシャルロットに先導されながら怪我人を運んで行った。


「んじゃ後のことよろしくお願いします。」

俺達は保健医に根津を預けて部屋を後にした。さて完全に目が覚めた訳だがどうするか。隣りを見るとシャルロットが僅かにふくれっ面になりながら

「もう、突然寝ちゃうし。ちゃんと後で根津君に謝っておかないと駄目よ。」

と粛清されたので、俺は頭を掻きながらわりぃ、そうすると言っておいた。帰る前に一回便所でも行くかと方向転換した俺に

「ね、ね、折角起きたんだし社交部に行きましょうよ♪それから学園も案内してあげる!」

と、目をキラキラさせながら言われてしまった。う~む、今日は家で積んでるエロゲをやろうかと思っておったのだが。どうすっかな・・・

→めんどいからパス

→ま、いっか、そこまでやることないし。

―続く―

はい、どうも自堕落トップファイブです!いやはや本編では初の選択肢が出て参りました!とりあえず本編の方で鬱陶しい根津がめんどくさくなったのでこっちも保健室送りにしときましたが、シャルロットとの絡みを考えるのがだるかっただけと言いましょうか。

とりあえず行く方向で話を進めていくつもりではありますが、外伝的に他の選択肢の時も作るのはありかと思っていたり思わなかったり。

それでは今日もこんな駄文に目を通して頂き本当にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!暇だし社交部行くか (注意事項有り)
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/07 15:26
 どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!お呼びじゃ無いと言われるかも知れません。しかしまず注意事項があるんですよ、はい。

 感想を読まれた方はご存じかもしれませんが、哲平がうざいと思われ始めるのは恐らくこの辺りからだと推測されます。その理由としては態度が「ふてぶてしい」ということでしょうか。とりあえず身の程をわきまえない中二病な哲平となっています。耐えられない方は「シルヴィアと哲平」まで飛んで下さい。

 恐らくそこから作者が改心し始めたと思われるので。やはりヒロインが中心となるエロゲーに置いて、主人公が女性を虐げるのは不愉快ですよね。まぁ作者が聖華にガツンと言えて悦にひたり調子こいたというのも大いに関係ありますが(汗)

 つまらない小説だとサジを投げられるのは構わないんですが、「この哲平うぜぇ、もう止めた」と思われるのは悲しいものです。だからこそこうして注意書きを付けている訳ですが。お会いしたのも何かの縁、作者としては読者の皆さまに楽しんで頂きたいだけなのです。

それではヒロイン愛好家もしくは、今までの哲平が好きな方は「シルヴィアと哲平」までお飛びになって下さい。鬱陶しい哲平を見る覚悟が出来た方に関してはもう何も申し上げる事はありません。どうぞご堪能下さいませ!

・・・

 俺が右指の親指と人差し指を90度にしてアゴに当てて選択肢を選んでいると、隣りで思慮の心を失われたお姫様が力の限り俺を揺さぶっていた。

「ねぇったら、ねぇー!私の話聞いてるの~?」

ブンブンブンブンブン!!

どこにそんな力があるのか、俺はメトロノームのように左右に揺れていた。まぁ、いいか。エロゲなんて別にいつでも出来るような気がする。気がするのではなく実際いつでも出来るのだが、俺に取ってエロゲをプレイする時間がいかに大切かは画面の前におられる君達にも程良く理解できることだろう。

「わ、わぁーった。分かったから止まれ。ドウドウ!ドウドウ!」

「え、行ってくれるの?哲平が居たら社交部がもっと楽しくなるわ。」

俺はどうにか暴れ馬姫をなだめることに成功した。そして世辞なのか本音なのか喜色満面の顔で言われると照れるから止めて欲しい。俺が入ったら楽しくなるとか、今までどうやって共同体に溶け込んでいたのか、甚だ疑問に感じる話だ。

「さぁさぁ、早く行かないと哲平が苛められちゃうかもしれないわ。行きましょう。」

まだ入っても居ない俺を苛めるとかどれだけ獲物に飢えている部なんだろう。そしてごく自然に恋人歩きになる傲慢さだけは見習いたいと思う、時と場合によるけど。どうでもいいけどいちいち腕に胸を当てながら横を歩くこのホステス姫は一体どういうつもりなのだろう。俺がチラリと「お前そんなんで(胸当たってるけど)いいの?」みたいな顔で視線を投げかけるといつだってニッコリ笑顔が帰ってくるのである。よくこれまで隣りのニコニコ女が男に暴行及び猥褻行為で汚されなかったなと、この世の奇跡にただ感謝した、アーメン。そして俺には女は生涯未知なる生き物だろうと、首を傾げながら目的地に向かって足を踏み出していった。

俺達は長年連れ添った老夫婦のような睦まじさ、ではなく歩みの遅さだった。亀と言い換えても問題無さそうだ。積極性は向こうが80こっちが20なのでそこまでの適度な距離ではないと思う。だいぶ侵略されているのが分かるように俺は植民地支配を受けた気分だった。俺がやっと左からの乳圧に慣れてきた時

「あ、そうだわ!どうせならシルヴィアも誘いましょう?哲平には紹介の必要無いわよね?あの子も私の大切な友達なの。」

洋風レストランでの料理の話からいきなりシルヴィの話に飛ばれて、一瞬それどんな料理と言いかけた。俺が理解した時にはもう、ね、いいでしょ、ね、ね!の状態だった。歩みと違いウサギ並みのトークスピードに、もはや俺には選択の余地が無いと言って差し支えないだろう。正直俺はどっちでも良いからどっちにせよ、あーいいんじゃない、と答えるであろうが。

「つーか仲良しなんだったらシルヴィでいいじゃないか。俺でさえシルヴィで良いって言われたんだぞ。」

そのシャルロットは途端乳圧を倍近くくっつけて頭を俺の肩にグイグイ押しつけ出した。何なんだよ、何なんだよ、畜生。何サービスなの、人に見られるという羞恥心、恥じらいを失った女は危険だ、これは他の男にも尻尾を振るに違いない!あなただけなのぉほど信用できないものはないんだ、これは罠だ、計略だ、詐欺だ、工作だ~~~~!

と自身の精神を何とか猜疑心によって、平常まで保つことが出来た。女曰く

「シルヴィアとそこまで仲が良いなんて、哲平私を差し置いて悲しいわ。私のこともシャルって呼んで!」

要約するとこういうことを言っていた。ホステス業界も大変なのか、それとも同僚に獲物を取られるのが悔しいのだろうか。まぁシャル嬢からシャルだったら短くなるしいいか。

「あいよ、シャル。これでいいか。」

ニパァ うわぁ、幼子の笑みだぁ。童心に帰るくらい嬉しいものなのかね。シャルロット改めシャルは、一層元気に歩み出した。周囲からたまに来る敵愾心が背中やら脇腹に突き刺さって来る。俺に殺意を向けるな、知らんがな、俺も何でこんなことしてもらえてんのか分からんのだ。

屋上、中庭、その他諸々を周り案内される道中、通りすがりの男性諸君一人一人に違うんですこれは違うんです、という首振りサインを送っている内に気付けば俺は道場前に誘導されていた。一体俺は何人の反感を買ったんだろうと考えると、俺の胃が酸を吐き出し始めていた。

とりあえず今の場所を確認しようと建物を見ると「武道場」と書かれた看板が眼前にあった。ぶどうで思い出したけどストレスにはブドウ糖がいいんだっけ。ああ、あの甘いの食べたいなぁ。ブドウ糖はさて置いて道場は三階建て、俺達は二階に今いる。一番手前の戸を開くと

「マルシェ!」

盛大なくしゃみ的掛け声が聞こえた。何それポルシェの盗作か何か?俺は興味無いので欠伸を噛みしめながら目をこすっていた。俺の目の前では男女がステッキを持って左右に動いていた。これがフェンシングという奴らしい、フィッシングさえ興味無いのにフェンシングなんて見たことすらない。俺は練習の内容には露ほどにも興味が無いので、目的の人物を早速探し始めた。

シャルはよく来るのかもう見つけたみたいなので、俺もその視線を参考にさせてもらうことにした。いたいた、うわ、なんかエロい。というか社交会の時あれで来ればよかったんじゃないかという気分になる。とりあえずユニフォームがピッチピチだ。うむ、ああしてみると奴も女だったんだなぁと、二つのふくらみを見ながらしみじみ思った。俺が何となしに練習風景を見ていると

「試合形式の練習が始まるみたい。えっとね、学園の部活がやってるようなのは『フルーレ』って区分でね。」

ふむ、確かに練習とは思えぬ本気度で細身の男がシルヴィを殺す勢いで剣を突いている。が、シャルが言うにはシルヴィも全国レベルとか何とからしいから難なくさばいている。チン、チン、言わせながら互いの剣をこね合っている。何かじれったいな、さっさと喉元グサーッととどめを刺しゃーいいんだよ。

俺が、そこだ、そこ!とかエキサイトしているのをシャルはクスクス笑いながら

「あのね、哲平。剣を払ってからでないと相手を攻撃しちゃいけないルールなの。」

じれったさの原因はそれだったか。確かにそういう視点で見直すといちいちチンチン音鳴らしながら払ってるわ。もう俺は目で追うのが疲れる上にたまに見えないので適当に頭だけ見ることにした。俺の早すぎて見えね~よ・・・という呟きがシャルに届いたのか

「目まぐるしく攻守が入れ替わる、このスピーディさがフェンシングの魅力ね。私は大好きよ♪ハラハラしちゃう。」

練習のようなので別にどっちが勝ってもいい気がしたので全くハラハラしない、今は全然同意できないが、円滑なコミュニケーションのためにうん、そうだね、ハラハラするねと俺は言っておいた。

どっちみちシャルは試合形式の練習に見入っているため聞こえないだろうが。こういうのは訓練だからね、興味なくても相手の待っているボールを送れるか。それは常日頃から気を付けないといけないんだよ。俺は聞かれなかった事に対する悲しさを紛らわせるために言い訳を募らせていた。

細かい所を見なくなっていた俺には二つの「大」が左右に揺れてるようにしか見えなくなっていた。俺は退屈しのぎに指毛の本数を数えている時隣りから拍手が起こった。俺も一応気の無い拍手を4回ほど送っておいた。さぁて小指に生えていたのは34本、薬指は一体何本生えているんだ、ゴクリ。そんな俺を放置してシャルはシルヴィにエールを送っていた。奴はシルヴィの一番のファンらしい。ファンに一番もクソもあるか。俺はあぐらを掻いて左手を時計を見るような姿勢で毛の本数を数えていた。ま、一番のファンらしいシャル姫に任せとけばいいだろう。

俺が道場の入り口付近で右手の指毛に移ろうとした時、シャルとシルヴィが目の前に突っ立っていた。案外遅かったな、少々立て込んだらしい。俺はすっくと立ち上がり

「っし、行くか。」

とさっさと外に出て行った。華やかなのが二人来たせいで視線を完全に独占してたんだよ。決して挨拶をおろそかにしたんじゃない。二人が外に出てきたので

「おう、シルヴィお疲れ、まぁなんだ凄かったぞ。」

ろくに見ていなかったためにとりあえず曖昧な褒め言葉にしておいた。

「・・・ありがとうございます。」

褒められ慣れてないのか、何を言えば良かったのか分からなかったのか、とりあえずやたら間を置いてからシルヴィは返事を返した。シャルはその様子を見て頬を膨らませていたが、俺の知ったことか。

「それじゃ靴に履き替えて下駄箱前ねっ!」

シャルは俺の視界からシルヴィを奪うかのように手を取って走りざまに俺に言い放った。シルヴィは完全に後ろ走りになっており、遠目にも慌てているのが分かり、頭から汗が飛んでいるように見えた(漫画的に)。

奴が何をあんなに急いでいるのかは知らんが今日の俺は来賓みたいなもんだから、別に急ぐ必要も無いだろう。俺はズボンのポケットに両手を突っ込み欠伸をしながらガニ股でのそのそと下駄箱に向かうのだった。


―続く―



どうも皆さん、こんにちは!自堕落トップテンでございます、恐縮です!今回は案外早くキリの良い所まで進む事が出来て「あれ、もう?」みたいな気分であります。シルヴィの所が滅茶苦茶長く感じましたからね。

にしても今回は根津を保健室送りにして良かったと思いましたね。本編でもほとんど喋って無いんですよ、彼。自堕落的根津はもっとネタキャラなので使い勝手が良いもんですから、どうしても使いたくなってしまう。そういう意味で早くフェードアウトしたおかげで早く進めることができたんでしょうね!

それでは皆さんまたお会いしましょう!本日もこんな所まで駄文に目を通して頂いて本当にありがとうございました!!(謝)



[22592] プリンセスラバー!聖華と仲直り、その成果はいかに・・・
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/22 13:10
 社交部の部室は一軒家だった。しかし俺は別に驚きはしない、この程度全く想定の範囲内よ。これが下からジェットで飛んだら驚いてやる。

「最近建て替えしたばっかりなんだって。綺麗でしょ。」

シャルがそんな事を言った。俺は綺麗じゃない所をこの学園で見てないので比較対象を失っていた。したがってまぁ綺麗なんじゃない?という決断を下し、ああ、とだけ返事をしておいた。何やら部員と思しき女生徒が俺達を見つけ

「あら、シャルロットさん、ごきげんよう。」

「ごきげんよう♪」

普段顔を見せないために挨拶されてないシルヴィ、顔忘れられてんじゃねぇの?と俺はちらっちらシルヴィの方に視線を送ったが全く意に介した様子が見られない。

「お久しぶりです。」

周りの面子が全員挨拶するもんだから俺も釣られてごきげんよーと小声で言いながら本命の会釈で挨拶を行った。部員の女はどうやらシルヴィの事を知っていたようだ。シルヴィの挨拶を聞いて驚いてシルヴィの方を見た後嬉しそうに

「シルヴィアさんまで。お二人が揃っていらっしゃるなんて、お久しぶりですこと。そちらの方は・・・。」

どうやら後ろでしゃがみ込んで、葉っぱをいじくってる俺を気に掛けてくれたようだ。挨拶は済ましたから俺としてはもう他に言うことないんだけど。俺は農作業中に話しかけられた農夫みたいな仕草で葉っぱをいじりながら顔を90度スライドさせた。うっと言った具合に部員の女は1歩ほど後ずさった。見ただけで怯むとは失礼な奴だな、俺そこまで怖い顔してる?

「後で紹介するわ、中で待っててくださる?」

「・・・?そうですか。」

各人にそれぞれ丁寧にするのもめんどいだろうから集めて一度に紹介した方が効率的だろうな。多分そういうことを言わんとしたのだろうか。

何でもいいけどこいつらの口調どうにかなんねーのかな・・・。もう俺入る前からじん麻疹まみれだよ。シャルのように挨拶を俺にやれって言われても俺無理よ?ちょりーっす!って挨拶とかになるに決まってる、もはや別の組織が出来上がる勢いだ。そもそもごきげんようからして、小声になるような男なのにこの先やって行けるんだろうか・・・。
俺がそんなこと考えてる間にシルヴィが何やらシャルに思う所があったらしく

「気を持たせるものですね、シャルロット殿。今の言い回しでは歓迎し難い想像を掻きたててしまうだけでは?」

「心の準備は大切よ。部の皆にも、哲平にもね。」

俺は葉っぱをはぎ取って中央脈を残して、周りの葉身を毟り取りながら言った。

「シルヴィ心配しなくても大丈夫だ。俺はシャルとシルヴィと仲が良い、これだけで俺を歓迎しない奴はいないと見て間違いない。」

シャルは満面の笑みとなって俺の両手を取ってブンブン振り、シルヴィは赤くなりながら横を向き、別に仲が良い訳では、などと呟いていた、このツンデレが。シャルが俺の腕を離した後、後ろポケットに突っ込んでおいた中央脈だけになった葉を取り出し、葉柄の部分を口に加えブンブン振り回していた。背後から人の気配を感じたので振り返ると

「・・・あ。」

いつぞやのツインテールがいた。俺は頭の後ろで組んでいた手をほどき、中央脈も横の茂みに吹き出して

「来ちゃいました。よろしくお願いします。聖華さん、でしたよね。」

と挨拶をした。聖華先輩は少し気まずそうだったが、俺が普通に接してくるため固いながらよろしくね、と挨拶してくれた。俺としてはあの時の事は過去の物として扱ってるけど、聖華先輩はどうやらまだ引きずっているようだ。左右後方にいる付き人も俯き気味に会釈を返してきた。俺はこの態度が気に入らなくて、長いため息を一回付いた後

「よし、お前ら一回一列に並べ、縦に。俺に向かって縦だぞ。」

突然の俺の言葉にビクッと宙に浮く三人、シルヴィもシャルも何事かと固唾を飲んで様子を伺っている。俺は少々話が長くなるかもしれないので二人に先行っておくように言っておいた。どちらも後ろ髪を引かれるようにこちらをチラチラ見ながら部室に入って行った。

戸惑っていたものの、俺に引け目を感じているためか、どうにか俺に向かって聖華→幹部→金子 の順に並んだ。俺は深く頷いた後先頭にいる聖華先輩の前に成人一人分入る距離を開けて近づいた。近くで見たら物凄い顔が強張っていた。

「聖華さん、どうしたんです?」

「え、な、何が?」

「この前会った時あなたはそんなんじゃなかったでしょう?」

「だ、だって。」

「俺がこの前のこと気にしてるように見えますか?」

フルフルと弱弱しく首を振る聖華先輩。それを見た俺は

「じゃあどうしてあなたがそこまで俺を怯える必要性があるんです?」

と尋ねると

「だ、だって私、と、とんでも、無い事を・・」

最後は嗚咽気味になり、泣きそうになっていた。俺はうーんと考えた後

「確かにあなたは大層酷い事を俺に言った、だから俺はその分怒り返したじゃないですか。それに人の顔色を伺いながら喋る聖華さん、はっきり言って似合いませんよ?さらに言うなら社交部の代表がこれから入って来る部員に引け目を感じていていいんですか?」

涙に濡れた瞳を俺に向けながら目でどうしたらいいの?と聞いているようだったので

「今日を限りに普段通りに接して下さい。俺の望みはただそれだけです。俺はこれからもやりたいようにする、そんな俺を叱ってやってください。お互いのためにね。」

最後は笑いながら言った。聖華さんも涙を流しながら微笑み頷いたのだった。それを見た俺はうっしと言いながら手を差し出した。

「今日は逆になりましたね、有馬哲平です、よろしくお願いします。」

「・・・鳳条院聖華、よ、よろしく。」

俺は最後ニカッと笑うと手を離し、聖華さんの前へ歩み出て次の奴に対面した。距離が聖華さんと近かったので聖華さんの肩をポンポン叩きながら

「もうちょっと前へ行って貰えます?それか、行ってもいいですよ。」

と言うと聖華さんは弾かれたように部室に入って行った。

俺は俯いて緑髪で目を隠している幹部女と聖華先輩の時と同じような距離を取った。

「おう、こんちわ。」

とりあえず挨拶をしてみると、か細い声で最後のにちわくらいしか聞こえない程度の挨拶が帰って来た。俺はこれを聞いて笑った。

「ハッハッハッハ、この前とはえらい違いだなぁ。君この前食堂で会ったよね?」

と俺が聞くと僅かに首を縦に振った。俺はさっきとは違い少々気持ちを込めて

「声を出せ、そして俺の目を見て話せ。」

とドスの聞いた声を出した。幹部女はひぅ、と喉で声を上げ、そして顔も上げたが恐怖で引きつっているようだった。俺は出来るだけ人懐こい顔で話を続けた

「そういや、前は名前聞けなかったよな。名前は?あ、俺の名前分かる?」

「・・・あ、有馬、て、哲平様、です・・・。」

正直に言うと様なんて付けなくてもいいんだが、それよりも大事な事が聞きたい。

「して、君の名は?」

「竹園、エリカです。」

「ふむふむ、じゃあ竹園さん、学年は?」

「2年生です・・・。」

「おお、同学年か。金子さんとは違うクラスなんだよね?」

「は、はい。」

まぁ暗に俺と違うクラスということが分かった訳で。ま、これだけ分かったら基本十分なんだよね。

「よーし、そんじゃ本題だ。下を見るな、下を。下見てないと辛いのか?」

竹園は本題と言った瞬間に下を見たので俺は注意しておいた、目を見ないと本当に話が通じているのかどうかが分からんからな。竹園が俺の目にロックオンしたのを確認した後

「どうしてそんなに俯いているんだ?そして俯く必要がある?」

「・・・わた、私もその、有馬様に、酷いこと、も、申し上げたし。」

本当大樹が居ないと弱々しい奴だな~。言葉遣いも完全に上司に対する者になっとるじゃないか。

「そうか、酷い事か。俺何言われたか忘れたんだが、何言ったんだ?」

傷口をえぐるような発言だが、やはり何が悪いのか自身で認識出来ているかを確かめておきたい。しかし、待てども待てども返事が返って来ない。

「どうした、自分に非があったからそういった態度じゃなかったのか?」

俺は痺れを切らして詰問調で問い質した。

「悪くも無いのに俺に対してへりくだったような口調、同学年なのに敬語、はっきり言おう不愉快だ。」

俺が目を見て言った瞬間、またしても喉元から声が出るような音を竹園から聞いた。俺はどうやら竹園と歩み寄れる感覚を喪失していた。完全に彼女は俺に対して畏怖の念を覚えているから。

「悪くなかったと思うならそれはそれでいい、ただ今後俺と接する時にそういった似合わない話し方や敬語を使うなよ。後、聖華先輩がいる時といない時の態度を変えるのも止めろ。俺は言いたい事も言えないような奴と仲良くする事は出来ない、行け。」

俺はアゴで部室に促すと、竹園は一層下を向きながら駈け出して行った。さてラストバッターか。もう3人目だから向こうも何言われるか分かっているだろうが・・・。

俺が金子の前に歩み出ると以外にも金子は強い目つきで睨んで来た。コイツは単独になると強くなる奴なのか・・・?

「すまなかったな。名前覚えてなくて。」

まさか俺がいきなり謝って来るとは思っていなかったのか、少々戸惑いながら

「・・・それは、いいけど・・・。」

俺は金子の媚びない態度を割と気に入っていたため、もしかしたら親しくなれるんじゃないかと思っている。そんな事を言いたい訳ではないだろう?という疑惑の眼差しが飛んできているので

「いやなに、いつも三人だから個人的にきちんと挨拶できないものかと思ってな。それにお前らの態度前と違ってたのも気に掛ったし。」

「・・・よろしく・・・。」

明らかによろしくする気の無い声で言われても俺は納得しないよ?

「金子さぁ、別に無理しなくてもいいんだよ?さっきの竹園だって俺あいつと仲良くする気全然しないからそういう話もしなかったし。逆に言えばお前も俺を拒否する権限あるんだよ。どうしてここの連中は自分の思った事とは違うような行動を取るかなぁ。」

俺が頭をガシガシ乱暴に掻きながら言うと金子は憮然とこっちを見ながら

「別に・・・嫌だなんて・・・言ってない。」

ふーん、ま、元からこういう態度なだけってことなんかね。こいつはこいつで色々あってこういうキャラになったんだろう。とりあえず俺は仲良しサインとして手を差し出した。

金子はおっかなびっくりと言ったようにおずおずと手を握り返してきた。俺は精一杯笑いながら

「金子、よろしくな。」

と言った。金子は別段感情を発露することなくよろしくと返してきた。こんなもんか。っし、俺は休憩~っと。俺はそのまま近くの芝生に寝転びながら手を金子にヒラヒラして行っていいぞ~相図を送った。すぐさま金子は主ともう一人の付き人を求めて走って行った。それを確認した俺はまた葉をちぎって中央脈だけ残した後、両手をマクラにし口に葉柄を加えながら空をしばし眺め休息を取った。

5分ほど寝ていると足音が近づいて来て止まったので見上げると

「有馬君、いつまでそうしてるの?行くわよ。」

と聖華さんからお声が掛かった、流石代表実践が早いや。へへっ、俺は気分が良くなって勢いよく立ちあがり尻の葉っぱを一瞬で払いのけて歩き出した。

部室に入るとテーブル大に椅子が周りを取り囲んでおり、観葉樹林なんかも点在していた。俺は別段怯むこともなくのしのし歩いて行き、シルヴィの隣の椅子に雪崩れ込んだ。礼儀もへったくれも無い俺の行動に皆一応に閉口しているようだったが、シャルはクスクス笑い、シルヴィはやれやれと呆れ顔を見せていた。

何やら先ほどまで茶を飲んでいたようでテーブルの上には茶が乗っかっている。俺はシルヴィの茶をぶん取ると猫舌なのでフーフーし始めた。シルヴィは何を勘違いしたのか顔を真っ赤にし

「有馬殿、そんなことはしなくていい!」

と声を荒げ始めた。何言ってんのコイツと思ったが、ああ取られたと思ってないのか。俺はシルヴィにまだくれと言ってないことにようやく気付いたので

「シルヴィこれくれよ。」

と言った。しかしシルヴィは目を瞑りゆっくり横に振るので、俺は普通に飲んだ。シルヴィの顔は今度は違う意味で赤くなり立ちあがって

「あなたの目は節穴なのですか!」

とがなり声を上げた。おーうるせぇうるせぇ、俺は右人差し指を右耳に突っ込みながら何か分からん高級茶を飲んでいた。そこに竹園が出現して、これまた完全に俺が視界に入らないように目をそらしながら

「ハーブティーです、どうぞ。」

と言うので、おう、と返事を返しながら恐らくシルヴィのハーブティーをグイグイ飲んでいた。そしてシルヴィが俺のハーブティに手を伸ばして来たので、当然のように右手で先に奪い取った。憤怒の形相で俺を睨むが俺はハーブティーによる幸福感のために全く効きません。そして俺は飲み終わった空のコップを差し出しているシルヴィの手のひらの上に丁重に乗せて上げた。

「俺の気持ちだ、受け取っておけ。礼はいい。」

俺は紳士のような発言をしながら2杯目のハーブティーをフーフーし始めた。シルヴィはブルブル震えているので俺は上着を脱ぎシルヴィの顔面に投げつけてあげた。

「寒いんだろ、着ておけ、謝辞はいい。」

フッと気障な男のように髪の毛を右手で払った後2杯目を口に含んだ瞬間

「有馬――――!」

と殿抜き声の怒声が聞こえたと思ったら先の上着が俺めがけて突っ込んで来た。今の俺は完全にノーガードもノーガード、寧ろハーブティーを飲んでいるためエマージェンシーだ!避けようにも音速の域で投げ返された弾丸上着の直撃を喰らい俺は顔面全体にハーブティーの津波に襲われた。回避できるはずがなかった。

ばっちゃああああん

「どわっちゃあああああああ!」

どたああああああん

俺は回避しようと後ろに全体重を掛けたことで椅子が後方に倒れ、頭を強打するは目やら鼻に熱湯並みの液体が入るはで部内を転げまわっていた。社交部の人は皆一様にして笑っていたのを転がりながら確認した俺は、一人ガッツポーズをしていた。

その後数秒で立ち直った俺はシャルから受け取ったタオルでササッと顔の紅茶を薙ぎ払い、そしてシルヴィの椅子を掴んで立ち上がり、何事も無かったように再び同じように椅子に腰を下ろした。シルヴィは目を瞑りツンと前を向いているが流石に気の毒な気分になったらしく

「す、すまなかった。今回は私も悪かったが、あなたも悪い。」

俺はにんまり笑いながらシルヴィの肩をバシバシ叩きながらおめぇもやるなぁ、と言いながら全く気にしていない事をアピールした。それによって一層場が和やかになったのは言うまでも無い。何となく世間話が始まっているので俺も何か話すかな。

・部活のことを聞くか、社交部ってそもそも何だ?
・社交部のこととか別にどうでもいいか。

―続く―


はいどうも、皆さんこんにちは!自堕落トップテンです、今日も頑張っています!えらく本編とは違うのでもし違和感を感じた場合は申し訳ないですね。しかしまぁあの聖華を野放しにするという選択肢は僕の中に存在しないので今回は完全にオリジナルになりました。ぎこちないまま進めて行くのもありなのかもしれませんが、やっぱここは一旦仲直りしときたいじゃないですか!出来れば皆仲良しにしたいですねっ!

それとちょっと伸ばしました。というのも聖華軍団との話の後すぐに選択肢が来たもので・・・。そのため哲平を部室内に入れてから区切ろうと思いました。

それでは皆さん今日もここまで駄文を読んで頂き本当にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!社交部?そんなもん知るか
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/22 13:30
 部活とか別にどうでもいいわ。どうせ礼義作法だとか身の振舞い方とかその辺だろう。それより俺は聞きたいことを見つけだした。

「シルヴィ、そういやフィッシング部何だよな?」

俺はその時真横からシャルに小声でフェ、フェ、と連呼されていたので

「そういやフェンシング部なんだよな?」

と言い直した時には時すで遅し。盆から水が垂れ流し状態だった。シルヴィはジト目でこちらを見ていたがほどなくしてため息をつき

「そうだが、何か?」

「俺にはいまだにあれの勝ち負けの定義が分からないんだが。剣道みたいに面だの胴だのあんの?フルーレだっけ、相手の攻撃まず止めて反撃なんでしょ、早い話耐久勝負なのあれ?」

ふむ、とシルヴィは一度思案した後

「いや、有効面と無効面がある。そして有効面を相手より先に突けば勝ちですね。」

「なるほど、ね。あの参りましたっつーのは有効面突かれた訳ね。」

「そういうことになります。」

ふーん、そりゃ早く終わらしたくてセコセコ動くよなぁ。と俺はあの大になって揺れるシルヴィを思い出していると

「そっちに掛かりっきりのおかげで、社交部にはほとんど顔をださないけどね。」

「なんだ、言いたい事があるならハッキリ言え。」

聖華さんがチクチク言うもんだからシルヴィもちょっと怒ってる。しかし今の発言で言いたいことが分からないのはどうかと思うんだよ。

「いや、シルヴィ言いたいこと今ので分かれよ。部に出ろって言ってんでしょ。」

俺がそういうと聖華さんはうんうん頷きシルヴィは歯を噛みしめ

「一体あなたはどっちの味方なのですっ。」

と怒る相手を間違えている。俺は未来永劫俺の味方です。

「いや、どっちの味方でもないし。ただまぁシルヴィはフェンシング頑張ってんだし、その辺大目に見てあげてもいいんじゃないの?」

と今度はシルヴィを擁護してあげることにした。今度は逆にシルヴィが胸を張って頷いて聖華さんが目を細める番だった。ソッポを向きながら

「分かってるわよ、でもたまにしか顔を出さないのに大きい顔するのは止めて欲しいってだけよ。」

まぁシルヴィ存在感あるもんなぁ・・・お国柄もあるんだろうが、何か隊長っぽいし。シルヴィに憧れてフェンシング部に吸い込まれた連中もさぞや多かろう。その辺はちょっと同情の余地があるな。

「大方有馬君をよろしくってお父様に言われて来たんじゃないの?」

「お前の勘ぐりこそ、低俗にも程がある。自らの名を貶めるぞ。」

どうしてこうこいつらは名前だの父親だのをすぐ出して来るんだろうか。親の権威を借りることほど情けない話は無いと平民根性の俺は思ってしまうんだが。

「何ですって!」

そろそろ聖華さんが噴火しそうなので俺は背後に回って

「はーい、そこまで~。」

「ちょ、有馬君離して!私はまだ話が・・・。」

「いえ、今日はもうタイムアウトですよ、聖華さん。今日の撤退は次への布石にして下さい。」

「どうしてよぉ~!」

「先に口出して言ったのはあなたなんだからあなたが引くのが道理ってもんです。それにこれ以上は冷静に話し合えそうに無いと俺は判断します。いいですね?」

俺に十字固めを喰らいながらもがいていた先輩だったが、俺の手を掴む手の力が緩んだので俺も解放することにした。

「・・・何よ、これじゃまるで逆じゃない。」

ポツリと一言口にする聖華さん。

「は、何がです?」

「私が有馬君に迷惑掛けてるって言ってんの!私代表なのに!」

地団駄を踏みながらキーキー悔しがる目の前のサル女をどうすればいいのだろうか。

「まぁまぁ、今日はたまたま俺が紳士な日だっただけですって、野獣の日は止めてくださいよ。」

「な、何よそれ、有馬君が本気で襲いかかって来たら止められるはずないじゃない。」

何ちょっと頬染めてんの、アンタ。そもそもそういうこと言ってんじゃねぇし。

「有馬殿、軽率な発言は控えて頂きたい。あなたにはご自身の自覚が足りな過ぎる。」

おおっと、何やらシルヴィま白い目で睨みながら、そんなこと言い始めたじゃないか。何よ、突然敵同士で手組むなんて俺聞いてないよ。だが話をねじ曲げて解釈する曲解連中どもなどに後れを取る俺ではない。

「軽率な発言はこの場に置いてはしてないし、した覚えも無い。例えが悪かった自覚はしてるがね。」

俺は怯むことなく胸に腕を組みながら言い返した。

その後顔に両手を当て、目を瞑って一人俺に襲われるシーンに、何やら嬉しそうに身悶えしていた先輩だったが何かに気付いたようにガバッと顔を上げた。突然の行動に俺もシルヴィも先輩の方に視線を移した。

「そうだわ、こんなことしてる場合じゃないんだわ!もっと大事な話があるのよ。」

勝手に自己完結して手をパンパン叩きながらさぁさ、皆聞いて、なんて言うのを見てると確かにあの人が代表で間違いなさそうだ。俺とシルヴィも居住まいを正し椅子に座りなおした。

「そろそろ確認しておかないといけないのよ。皆さん分かってるわね?舞踏会の件で。」

俺はそれを聞いた時ふと思ったことがあったので、シルヴィにこっそり話しかけた。

「おい、シルヴィお前やっぱ舞踏会でも剣振りながら踊んの?剣舞って奴?」

「いえ、私も普通に皆さんと踊るだけです。私を剣の塊の女みたいな発言は止めていただきたい。」

「いや俺今まで剣振るってるシルヴィしか見てないし、実際似合ってんだもん、やっぱ。」

「・・・!コホン、ま、まぁ考えておきます。」

何を考えるのか俺の節操の無い脳では理解できなかったのだが、どうやら照れているらしい。俺達は出来る限り迷惑がかからない程度の声量で話していたつもりだったが、どうやら聖華さんには不愉快だったようだ。

「コラッそこお喋りしない!しかもよりにもよって有馬君、あなたまだ入ってすらいないというのに大層なご身分じゃない。」

全くシルヴィアなんかと、等と言う呟きは俺には聞こえなかったが、俺はサーセンしたーと適当に謝罪の言葉を述べながら突っ伏したので聞こえなかった。隣りに居たシャルの目には俺がいじけた風に写ったみたいでよしよしと背中を摩り始めていた。

聖華さんの声のトーンは明らかに落ち確実に怒ってる声だったので、皆緊迫感と低姿勢を保ちながら話を聞いていた。俺は突っ伏しよだれを垂らし、シャルはその背中を撫で、シルヴィは全くいつも通りそうだが。俺は別に寝ている訳ではなく今日の頭がい骨はやけに俺には重いため致し方ないのである。最後のいびきについては特に理由は無い。

やけに声が近いと思ったら聖華さんは俺の耳元で要件を口にしていた。あらまぁ、わざわざ代表様がこのような所までおいでにならずともよろしいのに・・・。つーか耳痛いしうるせーよ。

「だーかーらー、社交部の仕切りで、クリスマスの日に舞踏会をやるの!有志参加の、聞いてんの有馬君!?」

ぬぁ、俺の名前出なかったか今?俺はのそりと身を起こし大あくびを一発かましながら首を大仰に縦に振った。聞いてる聞いてる、クリスマスのその日に予定があるかどうかだろ?
あるに決まってんじゃねーか、何たって聖夜と書いて性夜の日だ。その日のために等身大の女性フィギアを仕入れる予定なんだからよ。下界に用はねぇんだ、こちとら。

俺がチラリと聖華さんの方を見るとまだ虚言の容疑が晴れないらしく、腰に手を当て眉毛をヒクらせておられる。

「分かりやすい説明、ありがとうございました。」

俺はペコリと慇懃無礼の代表みたいな社交辞令を先輩に送った。当然先輩の目は烈火の炎に包まれ俺の襟を掴むと、これでもかと言わんばかり揺さぶり出した。

「これはねー、年に一度の社交部の見せ場なのよ!失敗なんて許されないの、分かってんのアンター!!」

俺は声をまともに発する事も出来ず分かってますってと言おうとしているのに

「ワ・・・カッ、カッ、ッテ、マ、スッテテテ!」

と壊れた機械音を発していたのである。その後数分間俺の全身は隈なくシャイクされ、意識が朦朧として来た所で椅子に投げ返された。俺は煙を頭から上げながら力尽きたように椅子に収まった。先輩はゼーハーゼーハー言いながら肩で息をしているようだ。

シルヴィはそんな聖華さんの様子を見かねたのか

「まだ一カ月以上も先の話では無かったか?あまり早くから気持ちを高めては、本番まで維持できないように思う。」

そうだ、俺の膀胱もパンパンにしてクリスマスを楽しみにしているんだ。今はこの大事な体に傷を付ける訳にはいかないのだぞ貴様!全くなんという仕打ちなんだ。

そのシルヴィの発言で聖華さんは態勢を立て直し、キッと睨みつけながら

「気持ちもあるけどそれよりも具体的な問題よ。当日の運営スタッフ、会場準備!その他諸々で人手が足りなくなるかもしれなくって!」

ヒトデが足りないならサンゴでも呼べばぁ~という下らない俺の発言は完全に無視され、場は聖華さんによって支配されていた。

「・・・例年は、どのような形を?」

今まで沈黙を守っていた金子が声を発したため俺は信じられないような物を見る目で発言者の方へ振り向いた。そんな態度が金子にはご不満だったようで

「・・・何?」

「い、いや・・・別に。」

というやり取りを行ってしまった。こいつは一体どういうタイミングで会話に参入するか分からないから俺はドギマギしてしまうんだぜ?

「各部活に協力してもらったり、ボランティアを集めたりかしらね。」

そんな俺の戸惑いなど関係なく事態は前へと進んで行った。俺は完全に部外者気分なので、舞踏会が打とう会になろうと講演会になろうとどうでも良かったのだ。先輩すまんなぁ、あの爽やか純情ボーイは俺のかりそめの姿。本来の俺は今のようなちゃらんぽらんにして、破天荒を具現化したような男なのである。

俺はしみじみ聖華さんへ過去の行いを一人で水に流そうと奮起していた。そんな俺をよそに聖華さんは何やら親指の爪を甘噛みし、痛みを耐えるような顔をなさっていた。

「でも極力部外者は招き入れたくないのよ。社交部の品位を貶めるでしょう?だからできるだけ社交部のメンバーで運営を進めたいのが私の気持ちなの。」

あの・・・もう俺を招き入れた時点で社交部の品位は没落いたしましたが・・・その辺はお考えになっておられるんでしょうか?もうその辺を加味すると聖華さんの今のあの表情はコメディにしか見えねぇよ。俺は聖華さんを憐れみの目で見つめていると、シルヴィが

「しかし人手の不足は、努力で補えるものではあるまい?」

とこれまた真っ当なことを言い出した。すかさず聖華さんは臨戦態勢に戻り

「だから、例年より早めに準備を始めようって言ってるのよ。時間の都合を付け辛い人もいるでしょうけど。」

俺はすかさずここぞとばかりに同意の声を挙げた。

「そうだ!俺だってクリスマスは家で内職をしなければならんのだ。前もって行動しようとするその心意気やよし!流石は部の代表、代表の鑑だよ、アンタは!」

手をバチバチ叩き鳴らしていた俺だったが

「有馬君はちょっと黙ってて!」

「有馬殿、どうかお静かに!」

二人の一喝によって即座に撃沈されることとなった。何だよ、畜生。俺ぁお客様なんだよ?何でこんな、こんな酷い扱いを受けているんだろう。クスン。これまた不肖な我が子を慰めるようにシャルが俺の頭をなでなでした後

「それで哲平は何のお仕事をすればいいの?」

と俺の求めている答えとは真逆の言葉を発した。俺は稲妻に撃たれたように飛びはね

「き、き、き君は何を言っておるのだねっ?」

俺はもはや錯乱し上官が部下の突然の謀反を起こされた時のような口調になった。

「だって、人手が足りてないのよ?部外者ならともかくもう部の一員である哲平には何かやってもらうのは当然じゃない♪」

俺はもう白目を向き口を全開に開け、手をダラリと下に伸ばしたまま固まった。駄目だ、コイツには何を言っても無駄だ。俺は仕方が無く品位格式という武器を用いて聖華さんに交渉を試みた。

「聖華さん!俺ぁ見ての通り風格はさながらリーマン転落ホームレス、態度は職人気質、仕事ぶりはミジンコも驚くサボリっぷり、そもそも品位に関して言えば下ネタ一発ピン芸人にさえ遅れを取らない男なんだよ?!そんな俺をあろうことか上流階級のそのまた上流である舞踏会などに・・・」

と言った時には聖華さんは既にこちらへニッコリ微笑んで

「考えておくわ♪」

とどっちとも取れる発言を俺に送るのであった。俺はピシリとヒビが入ったまま硬直し、そのまま椅子の上でスリープモードに入ったのだった。まぁだるけりゃ蹴ればいいんだけどな。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは!自堕落トップテンでございます!やっぱり仲直りしておいたおかげで話が滑らかになりましたねぇ~。そういう意味では良かったように思いますよ僕は。また金子と竹園に関しては余りキャラ把握出来ておりませんので、何か違う!と思われた方、申し訳ありません。それではまったりと更新続けて参りますので今後もよろしくお願いいたします。

本日もこんな所まで駄文を読んでいただき私感謝のためにむせびないております!!(謝)



[22592] プリンセスラバー!社交部でシルヴィがバックグラウンド?
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/22 06:11
 「では、お休みなさいませ。哲平様」

俺は先のスリープモードから気付けば本当にスリープしなければならん状態になっていた。驚愕の余り俺はまた別世界に飛んだのだろうかと、自分の頬をつねったりビンタをしていた。優が怪訝そうにこちらに視線を飛ばしてくるので慌てて俺は

「お、おう。お休み優。」

と返礼した。尚もこちらを気にした風な優だったが、俺の普段の行いが良いのか大丈夫と判断したようで一礼した後、ひっそりと立ち去って行った。俺はその後記憶喪失らしい自分の今まで行動した事を紙に書くことにした。

椅子にもたれて・・・

迎えの車呼んで・・・

風俗の前で駄々こねて・・・

家に帰ってエロゲ「K線上の魔王」やって・・・

とそこまで書いた時俺の携帯が鳴った。恐る恐る発信者を見ると案の定好々爺並びにご隠居からだった。そういや皆鉄心鉄心言ってるけど、実は一心なんだよな・・・。もういいかその辺のことは。(作者のミスです、申し訳ない!!)

とりあえず鉄心爺さん(戻す気はない)からの電話なので丁重に切った。俺はまた再び机に向かったが、また後方から着信音がけたたましく鳴った。俺はムスッとした表情で布団の上の携帯をもぎ取ると。

「はい、哲平ですが何か?」

と寝てたんだよ、くそ!的な声をことさら強調して言った。爺さんには全くその配慮が通じなかったようで

「何で切るんじゃ!!」

と向こうは向こうで切れていた。俺は切れてると携帯を切るを掛けて再度切った。すると切った瞬間また鳴った。今度はすぐには取らず数分待った後にようやく取った。俺は取った後も沈黙を破らずじっとしていると

「・・・すまなかった。」

とどの辺のことを言ってるのか分からないが、謝罪の言葉が送られて来た。そのため俺は何故か傲慢な気持ちになり、うむ・・・とか言った後

「んで、どうしたのお爺ちゃん。」

「ウム、学園の方はどうかと思ってな。」

「そんな用件を言うために安眠妨害してきたの・・・?」

俺は寝ていた訳でもないが、余りにもつまらない質問が来たために思わず寝ていた気分になりそう発言した。俺の怒気は流石のもうろく爺さんにも伝わったようで

「いや、すまなかった。だが社交部には・・・(ブチ!)」

俺は最早躊躇も戸惑いも無く勢いよく携帯を切り、電源まで切った。何が社交部だっつーんだよ。これ以上無いくらい興味の薄い話題だったため俺はフシュルーフシュルーと舌を出しながら携帯を布団に叩きつけた。バウンドして地面に転がった携帯を足で引っかけてテーブルに乗せた後、俺は尻を掻きながら寝る準備に入った。しゃーねぇ、寝るか。起きてたら起きてたで色々問題ありそうだしな。

その後優を通して爺さんに働いた無礼をとことん折檻されたのは言うまでも無い。へいへい、生徒会に入るために社交部ね、頭の片隅には置いておいてやるよ。

・・・

「哲平様、いつまで寝ておられるのですっ!」

最近優が俺に対して厳しいよぅ、誰か、誰ぞおらぬか。わしゃ眠りたいのじゃ。昨日寝る準備に入ったものの寝れないものだから暗闇の中PCの所に行き「信成の野望」をやっていたせいで全然寝てないんだ・・・。あと少し、もうちょっとで日本の半分の領土が我が手中に・・・グゥ・・・

「哲平様!!!」

布団はおろか、俺まで持ち上げられ地面に強制着陸させられた。い、一体どうしたと言うんだ優。これまでのお前はそんな子じゃなかったはずだ、もっとお淑やかにして清楚、淑女たる居住まいを決して崩そうとしなかったじゃないか。そ、それがどうしてこんな金剛仁王像みたいな立ち振る舞いにして、憤怒の形相を張り付けるようになってしまったんだ。俺は女のヒステリーに怯え、アルマジロのように震えながら丸まった。そんな俺を不登校になった我が子を見つめる母親のように物憂げな表情となった優が

「哲平様、申し上げます。もう行かねば遅刻ですよ?」

その瞬間俺は目が点になり、韋駄天になった

「馬っ鹿野郎!!!それを最初に言わんかぁぁぁぁぁ!」

自分の大寝坊は棚にあげ俺は煙を巻きあげながら優を引っ掴んでリムジンに特攻した。飯?ああ、今日の大気中の酸素はいつも以上に美味いわ、ううん、この窒素コクがあり喉越しに来る!これでいいか?

リムジンに発車直前のバスに間に合った学生のように飛びこみ、俺は両耳に手を当て、遅刻しないことをただ祈った。隣りで優がクドクド文句を言うのを塞ぐためにもこの手は外せないんだ。畜生、もうさっさと学園に着いちまえよ・・・。

グイッ

何やら俺の両手が強制的に開かれた、何、何なの?

「おはようございます、哲平殿。お元気そうでなにより。」

両手を掴まれ顔面の前にいるのはシルヴィだった。何故貴様がここにおるんだ。という気持ちになったがそれより、顔が近くて端正整った面貌に意識を奪われ言葉を失ってしまった。

「あなたは有馬の次期当主の身でありながら一体全体何をやっておられるのです?」

暗黒の闇を背後に控えた優しい笑みで俺に問いかけてこられるシルヴィア騎士団長。俺は、あ、あはは、と固い笑みを込めながら咄嗟に優等生チックな嘘を付いた。

「い、いやぁ昨日は勉学に勤しんでいてね。どうにも今朝は瞼の調子が良くおらなんだ。ワッハッハ。」

「おや?お爺様からは安眠妨害されて不機嫌だったとお嘆きの言葉を頂戴したのだが?」

な、何ぃ!そんな情報操作が俺の預かり知らぬ所で行われていただとっ。俺は脂汗をダラダラと額から流し笑顔のまま固まった。

「つまり、貴公は寝るというのは嘘で勉学に励んだ、と?」

「そ、そう~だよ、よく分かってるじゃないか。本当に出来る人間と言うのは人の見ていない所、影で努力を行うものなんだ。いや、剣で相手を細切れに出来る人は違う!」

「嘘、ですね。」

「それに対する確かな証拠が無ければ立件されないよ、悲しいことにね。」

「しかし一連のあなたの態度から察するに大方遊戯に没頭され、気付けば寝てなかったと推察しているのですが?」

「さぁ~ってどうだったか、俺にとっては勉学は遊ぶと同義だから分からんな、ハッハッハ。」

俺達はその後も互いの上げ足やら弱い所をチクチクと乳繰り合うのに専念した。

「クッ、言葉の言い回しだけは一流のようだ。」

どうやら水の掛けあいはこれにて終了らしい。と、同時にリムジンも停車した、なるほど到着したのだな。そして俺はシルヴィがまたこちらに近づいて来るのを察し、身構えていたが

「父より話は伺いました。本日から社交部へ正式に所属されるのですね。」

柔和な顔で語るシルヴィに思わず俺はへ?という顔をしてファイティングポーズのまま固まった。

「放課後に迎えに伺います。部まで同行いたしましょう。」

と笑顔で言った後颯爽と走って行った。俺はそのままの姿勢で止まっていたのだが、背後からの緩やかな力を感じ振り向くと優が懸命に俺を前へ押している。

「何やってんの?」

「哲平様、遅刻なされてもいいのですか!!」

うおっとう、そういう展開でしたね。急がねば、飯すら食っていないというのに遅刻までするなんて骨折り損だもんな。俺は優を引きつれて下駄箱に猛ダッシュするのだった。

―続く―


はい、どうも皆さんこんばんは!自堕落トップファイブです!最初にいきなりなんですが、僕のハンドルネーム自堕落トップファイブだったんですね(照)余りに適当に決めたため何やらトップテンだったりトップスリーになってた話があったように思えるのでお詫び申し上げます、どうでもいいですか、そうですか!(爆笑)

今回リムジンにシルヴィ乗せて行きましたがこれは違和感大丈夫なのか少々不安ですが、一応これで行ってみます。それではまたお会いしましょう。

本日も駄文をこんな所まで読んでいただき誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!祝入部、そして聖華のヤキモチ?
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/22 06:00
 今は放課後、そして場所は社交部部室である。俺は正直に言えば全身を倦怠感に包まれ、全くもって土気色の表情で憮然と立っていた。その隣りではシルヴィが立ち、誇らしげな顔と名誉ある役割を成し遂げ、澄み渡るような声を携えて周囲に聞こえる音量で要件を発していた。

「ということで、私シルヴィア=ファン・ホッセンの推薦をもって、有馬哲平殿の入部を認めて頂きたい。」

言い終えた後は鼻から息が出てそうなくらいの晴れ晴れとした表情だ。はっきり言おう、俺は嫌いな物が「面倒事」と「厄介事」ときっぱり公言出来る男だ。というか嫌いじゃない奴が居たらそいつはドMに違いない。従って非常にありがた迷惑にも程がある推薦なのである。この様子では即座に俺が舞踏会の参加資格を会得することになるが・・・

「代表がいらっしゃらない間にそのようなお話を進めてしまってもいいのでしょうか?」

という社交部員Aが言うように問題が生じているのである。そもそものんびり部員の集まりである社交部がいち早く俺を部に引き入れようとしている事自体が異常なのだ。俺は生命の息吹を先の部員Aから頂き一命を取り留めた。

「後で了解を取っても同じよ♪シルヴィアの推薦があるし、なんなら私の推薦も付けちゃうわ。」

ドグサァ!

俺の心臓に架空のツララが突き刺さり俺はヒザをガックリ割りながら、胴体に視線をよこした。一人でグフッ・・・とか馬鹿な、などと呟く俺は非常に奇妙な生き物に違いあるまい。

にしてもどうしてこのお姫様はこう致命的なタイミングで致命傷を与えるのが上手いのだろうか・・・。武士の情けというかとどめを刺すなら一息という宮廷作法を知らずの内に習得しているらしい。チッ、俺も焼きが回ったもんだ・・・とそんな調子でヒザと一緒にクツクツと笑っている所を

バチーーーーン

ズザザザァァァ←哲平が転がる音

何やら分からんがいきなりタイガー覆面も顔負けのビンタを頂戴した。俺は声を出すことすら無く一目散に観葉植物の植木鉢に頭を載せ、仰向けの状態で完全に沈黙した。

「シャ、シャルロット殿突然どうしたのです?」

流石のシルヴィもシャルの突然のご乱心に脳が付いて行っていないようで恐る恐る尋ねていた。シャルは力加減間違えちゃった、テヘ♪と自身の頭を小突きながら

「たいこばん、ってこういうのじゃなかったっけ?」

とどうしようもない事を言っていた。もう俺に殺意があるとしか思えない発言に俺は血を吐く代わりにヨダレを撒き散らしながら首をずらし、全身を完全に地面に横たえた。

流石に自分の尻くらい自分で拭く程度の常識は備え付けてあるらしく、シャルは俺の右手を引き上げて、周りの者に一緒に椅子まで運ぶよう頼んでいた。俺は顔に縦線が幾重も走り完全に昏睡状態に陥っているため、何をされていたかは分からなかった。

起きた時には皆によろしくシュピレヒコールを受けていた。根津も胸元でよろしくよろしくとむせび泣いていた。もう俺実は入りたくないんです、などという状況では完全に無くなっていた。俺は仕方が無いというか、別段そこまで嫌な連中が居ないから良いかという気分になり

「あー再度改めまして有馬哲平です。今まで皆さんご覧頂いたように品格は地平線の彼方に置き去りにしてしまったような男なので、精進してまいりたいと思っています。どうぞよろしく。」

と、立ちあがって何度目になるか分からない自己紹介をして、椅子に座って頬をかいた。どうも周りには謙虚な態度に映ったようで好評を博した。結局聖華代表も何だかんだ言って俺を受け入れているのは周知の事実なので、すんなり俺は入部することになったのである。

シャルが皆俺を受け入れたことに感激して俺に抱きついてきた。ええい、もうちょっとお主は人目を気にしろというに!

「社交部にようこそ。うふふっこれでもっと楽しくなるわ♪」

あれだけ激しいビンタをして来たとは思えない暖かい言葉に俺は警戒心を隠しもしないで、はいはい、よろしく、とあくまでそっけなかった。結構痛かったんだよ、畜生。あ、まただよ・・・また何か嫌なフィールドになりそうな予感だよ・・・

「シャルロット殿、周囲の目、そして哲平殿がまだ部に馴染んでおらぬ内から部員に不信感を抱かせるような行いは慎まれよ。」

と、静かにしかし厳かにシルヴィが叱責を飛ばした。ほらな、やっぱこの展開になった。うわぁ、声っていうか目が怖いんですけど・・・。奴の目はそれはそれは、眼球内でマグマが飛び散っているかのような怒りを孕んだ目なんですよ。

「は~~~い♪」

どうしようもない駄姫であるシャルは相手の言いたいことを全く理解も改めもする気が無い調子で俺の二の腕にガンガン豊満な物を押しつけてくる。俺はそろそろこの辺が潮時だろうと、色々なエロゲやらラノベ的主人公を参考にして行動を起こした。

「そこまでだ、シャル。今回の一件に関して俺はシルヴィに賛成だよ。」

俺は少々前かがみになりながら、シャルの腕を出来る限り優しく解いた。シャルは当然拒否られたと感じて不満のようで

「え~~、嫌なのぉ?」

と猫ちゃん的甘え口調ですり寄って来たが、すかさずアイアンクローで無言の迎撃を行った。

「い、痛い痛い。酷いわ哲平!」

「やっかましい、言って分からん奴には武力を持って制するしかなかろうが。仲良くするというのも行きすぎれば周りに不快な感情を抱かせる。そのようなシルヴィの言葉をきちんと理解した上で今後振舞いなさいっ。」

俺は妹に説教する兄のような心持でシャルに言い放ち、シャルも自分の非を認め、小さい声で周囲に謝った。俺はその後彼女の綺麗な髪を撫でてあげたのは言うまでも無い。シルヴィはこの行動も少々不服そうではあったが腕を組み傍観の構えを取っていた。

ウフフ♪とご機嫌に戻ったシャルが皆に向かって提案を出した。

「ねぇねぇ、折角哲平が部員になったのよ?今度歓迎パーティーをしましょうよ。」

おおう、たかが俺が入っただけでパーティーとは。一昔前の俺ならダチの家でゲームのカセットと菓子、そして漫画をそれぞれ持参して好き勝手やるのを宴と評した物がパーティーだというのに。きっとこいつの言うパーティーはシルヴィと出会ったあのような場の事を差すんだろうなぁ。

「流石シャルロット殿、名案だ!早速週末にでも?」

我先にと勇んで根津が乗っかっていった。しかしこいつの先陣が常に崩壊することは、俺の中ではいまや常識となっていた。一人の部員の女性が俺に向かってもじもじしているので口を開くのを待っていると

「あ、あの有馬さんご趣味は?不躾なのですけど・・・私ピアノを嗜んでおりますの。今度発表会を行いますので、よろしければ・・・。」

ああ、やっぱりな。どう見てもコイツが本命だろう。競馬だったら確実にこの女性の馬券を買うに違いない。穴馬だったとしてもだ。俺は架空の馬券を握りしめて胸ポケットに挟まっていたボールペンを右耳に挟みこみ事態を見守っていた。

根津にもその気持ちがあったのだろうか、この女性を推し始めたので事態は完全にピアノの発表会に行く流れだった。最終的に一国の姫まで参加表明したのだから、億の民衆でさえ手に負えないことだろう。俺は何を得た訳でも儲けた訳でも無いがガッツポーズをしながら右耳のボールペンを胸ポケットのねぐらに返した。

「は~い、私も一緒に行きたい。ね?いいでしょ、発表会の後は皆でディナーにしましょうよ。」

俺の中では午前の部だったら一体どうするつもりなんだ?という気持ちが湧いていたが、周りの皆は一様に頷いてしまっている。しかも発案者である結城とやらの生徒までも首を縦に振っているのだから、まぁ大丈夫なんだろう。

俺はどうせ断っても食い下がられる事は既に理解しているので、黙って見ていることにした。事実俺はパーティーに参加するかどうかの有無を答えていないのに、既に頭数に入れられている今の現状がそれを物語っている。また説得するというのも相当のエネルギーがいるしな。温存できる時温存しておいた方が良いというのが俺の今までの経験で学んだ人生処世術である。ふとシルヴィが安堵と思しきため息を付いた。

「ふぅ、どうやら上手くやっていけそうですね。私も肩の荷が下りた思いだ。」

俺の肩に自身の荷物を乗せた女はやり遂げた顔でのたまった。ふん、もう済んだことにとやかく言わないけどな。俺はシルヴィには聞こえない程度に口の中で舌打ちをしながら、脇腹を掻いていた。その時ドアが勢いよく開け放たれる音が聞こえたのでそちらを向くと

「私が居ない間に何好き勝手やってんのよ!!」

俺としては救世主が参上なされた。ヒーローだ、ママ、ヒーローが来たんだよ。そうさっ、我らがビッグボス聖華の旦那を抜きに勝手に入部なんてのは言語道断だ!さぁ追放だ、追放だ~い。さぁて俺は帰り支度~っと。

俺は帰る前に心の中で今こそと感謝の気持ちを込め、聖華に何発もの太鼓判を押しまくっていた。しかし俺の意図した答えとは反して聖華の怒りの方向性が何やら違っていた。

「何勝手に有馬君を私の居ない間に入れてんのよ!これじゃまるで私が歓迎してないみたいじゃない!!」

俺は自身の持つハンコの代わりに丸めたハンカチを空中でピタリと止めた。い、今なんとおっしゃったのかな・・・?ハ、ハハ、俺もだいぶもうろくしたようだ。俺はゆっくりそして慎重に今度こそは聞き逃すものかとばかりに聖華ライダーに目を向けた。

「い、一体どういうつもりなのよ。説明次第ではただでは済ませないわよ。代表である私を除いて、勝手に紹介を済ませてしまうなんて。前代未聞だわ!」

何やら怒る方向性がはぶられて悲しいわ、クスンみたいにしか聞こえなくなった。全くもって前代未聞の理由で息を荒げているヒーローの実態を目の当たりにした俺は、丸めたハンカチを広げ鼻をかんだ後近場のゴミ箱に叩きつけた。バーロー、ヒーロー?サンタ?んなもんはこの世には存在しねぇ、そこにあるのは金と権力をかさに掛けたゴミクズばかりよ。

俺は一人勝手に世の中の不条理に辟易しながら、自己紹介する気なんてさらさら無いようにテーブルに突っ伏した。当然この態度に聖華の怒りの炎は火力を増し、右足を勢いよく踏みならすことで部室を揺らした。

「言っとくけどね、有馬君。あなた入ってはい、お終いじゃないのよ。代表である私にそのような横暴な振舞い、この私が許すと思っているのかしら?」

「社交部代表に相応しい、毅然とした振舞い、見事です・・・聖華様。」

俺は机に埋めた顔を皆に見えないように邪悪色に染めて微笑んだ。ふん、お子様な理由で俺を非難罵倒するアホや、それを崇高する奴はこの際放っておく。しかし俺にとっては渡りに船な話になってきとるじゃないか。上手く聖華を挑発すれば部を追放されるやもしれぬ。社交部<エロゲ、ネトゲ、自分の時間 の思考である所の俺に今の状況は非常に都合が良いのだ。

「なんのお話~?私あんまり付いていけてないみたい~。」

シャルがのんびりと場違いな事を悪びれもせず言っている。ああ、付いて来なくていい。寧ろお前は俺の背中に拳銃だけでなくしっかり弾丸まで打ち込むような奴だからな。この際大人しくしておくんだ。そんな事を俺が思っているというのに

「分かりやすく説明してほしいわ」

と何やら俺の方を見て笑っている。俺は当然ガン無視だ。大方俺の後ろの壁にでも愛想を振りまいているんだろう、俺の知ったことか。それでも真面目で優しい聖華さんは

「だから!チッ、シャルロットさんだって同罪じゃないですか!」

と罪の内容さえ定かでないことを申されていた。もうちょっと、もうちょっとで俺は追放してもらえる、クック。俺はまだ自身の出る幕ではないと自覚していたため、周囲を警戒しながら事態を見守っていた。そこへ騎士団長が颯爽と斬り込んで行かれた。

「大した剣幕だな、鳳条院。お前の望みは社交部の2分化か?」

!?

違うだろ、そこは有馬哲平の追放というべきだろう。何俺その他と聖華軍団で分けてくれちゃってんの。俺は辛抱出来なくなったので

「い、いやここでは俺が不届き者として追放というはな・・・」

「「うるさい!」」

聖華&シルヴィの同時討ちを喰らい俺は冬場の草木のように縮こまった。なんだってんだよ、畜生。しかも聖華姫、俺を追放する気実はそんなにないじゃねぇの?未だ見ぬ春を待ち侘びる俺を差し置いて二人は罵り合っていた。

「私が職員室に呼び出される隙を付いて出し抜けに有馬君を取ろうだなんて!騎士の家系に生まれておきながら、その誇りとやらは時代と共にホコリを被ってしまわれたのかしら?」

「お前が職員室に行っていたなどというのは初耳だ。単にお前が居なかったから話を進めただけにすぎない。邪推をするのは止めてもらおう。」

「どうとでも言えるわよね。でも、そうそうあなたの思うがままに事が運ぶと思ったら大間違いよ!」

何だよ、有馬君を取るって、わしゃ物か、ええ?ここにいる有馬君は哲平君の物に決まっとるじゃないか。

「お前の言い分は個人的感情に依るものだ。有馬殿の親交を我らが先に進めていた、それが気に食わないだけだろう?それが公平な見方か?私には社交部の代表にあるまじき態度と見えるがな。」

「・・・っ」

何やら聖華さんが土俵の端に押されている風景が目の前で繰り広げられていた。正直俺との親交云々に関しては、その辺のノミにも劣る話題だと個人的に思うが。このまま一方的にシルヴィにまくられるのかと思っていたが、そこは流石に聖華の子分が黙っちゃ居なかった。

「社交部に所属するためには部員全員に、そしてきちんと皆の前で挨拶する事。」

朝礼で社訓を最初に発する町工場の社長みたいな言い方をしたのは竹園だった。流石に聖華の前では強い、というか強がっているな。俺はすでに俯いた奴を見ているので必死に体を大きく見せようと息まくニャンコにしか見えなくなっていた。そして次鋒はやはり金子だ。

「聖華様は・・・必要な段階を踏まれていないことを指摘してらっしゃっています。」

その言葉を受けた聖華は今や百人力という勢いで

「そうよ・・・。ゴホン、よく私の意思を代弁してくれたわっ!」

と、人海戦術を駆使してどうにか互角にまで持ち込んでいた。議論の内容がもう少し濃密なら俺もどちらかを援護しようと思うが、いかんせん粒ほどの興味も抱かないので俺はテーブルに突っ伏した態勢のまま屁をこきながら尻を掻いていた。

「社交部の仕切りは高くあるべき!そのために正式な自己紹介なくして入部は認められないわ!」

この言葉に俺は両耳を立てた。何、入部認められない、だと?俺はダラけていた所、主人の帰還に気付いた犬のように上半身を起こし、目をキラキラさせてハッハッと息を吐きながら聖華主人からのエサを待つ室内犬と化していた。さらには竹園の援護が入り

「面通し、即日入部なんて聞いたことがありません。」

す、素晴らしいコンビネーションじゃないか、ええ?全くその通りだとも諸君、仮入部期間が半日程度の俺に選択の余地なんてあろうはずがなかろうが。もう少し考える時間をくれれば、部室には目もくれず放課後ショットガン直帰の男になり果ててやるわ。

俺は幾度にも渡り首を縦に振り、尻尾があるように尻を振りまくり竹園にも媚びを売っていた。向こうは怯えた目でこちらを見ていたがもうどうだっていい。

「私は入学初日に勧誘頂いて、以後、籍を置き続けている。」

俺は即座に反逆者たるシルヴィに牙を向き、獰猛犬のようにウーウー言いながら唸り声を上げた。我の血には今狂犬の血が流れておるのだ、俺に触れると水が怖くなるぜ、ヒャッハー!

「私も転校してきたその日から~」

今度は亡命姫シャルからの反発に、俺は伏せのポージングから犬歯を見せつけ一触即発な顔で愚か者を睨みつけた。

「シャルロットさんは特別会員でしょう!シルヴィアさんは・・・えっと。」

何やら主人の様子がおかしい!俺はどうにかして挑発して聖華の背中を押すことができないか、左ポケットの手帳をパラパラめくり出した。

「シ、シルヴィアさんだってきちんと皆に挨拶したじゃない!有馬君の挨拶は皆の前できちんと行われてしかるべきよ!」

またしても俺のどうでもいいイントロダクションの下りに話題が戻り、俺は手帳を丁寧にポッケに戻し犬小屋、ではなく椅子の上に力無く座った。聞けば聞くほど話の方向性が俺の目指す終着点からかけ離れていきよるじゃないか。俺が最早しわがれた老婆のような顔で事態の収束を望み始めていると

「まぁまぁもういいじゃない。哲平、もう一度自己紹介しましょうよ♪」

やっぱりな、最後の介錯はいつだって君だ、シャルロット姫。俺は呆然と顔を上げたまま周囲の顔を見回した。皆期待の眼差しで俺の決断を待っている、しかも自己紹介すると言うちゃちな理由で。俺としては思惑が遥か遠い宇宙の彼方にまで吹き飛んで行った惨劇の後なので、完全に朽ちかけていた。

そもそもさっき一人ずつしっかり挨拶したのに何を言っとるんだ、聖華軍団は・・・。俺はどうとでもなれという風に三顧、ではなく三個の安っぽい礼を各人に送った所で事態は一気に終焉へと向かったのだった。なんだったんだろう、本当・・・。

―続く―

はい、どうもこんばんは、自堕落トップファイブでございます!何かちょっとグダグダになってしまった感がありますが、一応締めることが出来たので投稿いたします!本編では何で入れたんじゃー!ですが、ここでは何私の居ない間に入れてんじゃー!ですね(笑)この違いがどう今後影響をもたらすかは、今の僕には分かりませんが、その時々で考えて参りたいと思います。

それでは本日もこんな所まで駄文に目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!衝撃の事実に哲平太陽に吠える
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/22 10:56
「何~~~~~~~!!!」

「も、もう煩いなぁ哲平。いきなりどうしたのよ。」

「シャル、それは本当の事なんだろうな・・・?」

今は昼休み、例のトラウマの傷が癒えない内からシャルの昼食でのことだ。シャルは突然の叫び声をあげた俺に、迷惑そうに両耳を塞いで文句を言った。だが、俺はそれどころではない。俺は衝撃の事実に驚き、そして怒りに打ち震えていた。

「ば・・・馬鹿な・・・そんな設定聞いてねぇよ俺は。」

「え~知らなかったのぉ?クスクス」

俺の気持ちなどをよそに頭を撫でて来るシャルはもう完全に俺の視野に入っていない。俺はうずくまり自分の行って来た行為に対してひたすら後悔するばかりだった。

「まさか、聖華さん、いや聖華が同級生だったとは・・・。」

そう、自己紹介を済ませ部員になったというのにそんな事柄を今知ったのだ。俺は今までの行い、そして先輩に対する敬意をどれだけ無駄に払ってしまったことだろう。聞けば目の前で笑ってる姫様こそが俺より上級生だと言うじゃないか!何たる、何たることだっ!!

俺は立ちあがり、コブシを握りしめ太陽に向かって熱い気持ちをぶつけんとしていた。今まさに、社交部に一切気を遣う相手が居なくなったのと同時に、聖華にガツンと言おうと決めていたのだ。

・・・

バァンッ!

いた!奴は果たしてそこにいた。部室の特等席と呼ばれるそこに女王の如き姿勢で収まっている。ふん、同じ年と思えばどうということあるまい。今まで散々舐めた態度取ってくれたじゃないか。向こうはいつも通り挨拶を投げてきたが、俺はその言霊を払いのける仕草をし開口一番に

「貴様、たばかったなああああああああ!」

と、向こうからすれば何を言ってるやら分からんことを口走った。窓ガラスを割らんとするくらい怒声が突然響いたので聖華も取り巻きもその他部員も、驚き慌てているようだ。

「な、何の話よ。有馬君何怒っ・・・」

「聞けば聖華さん、否聖華、俺と同学年だったそうじゃないかっ!」

向こうは何今さら?という表情でこちらを見たがこっちは違う、全然違う、天と地ほどの差が生じているのだ。

「いいか、ことの重大さを全く理解していないようだから懇切丁寧に説明してやる。」

向こうがゴクリと息を飲み込んだのを合図に俺は話し出した。曰く俺は今までのお前の立ち振る舞いから完全に上級生のそれと勘違いし、気を遣って接していた。曰く俺に対して時間を返せなどという痴れ事に対してすら上級生と思っていたから何とか耐えた。という今までどれほどお前のために精神を摩耗させたかということを一つ一つ、その時の仕草表情まで再現しながら説明した。

全部話終わった後には、俺の気持ちはだいぶ吐き出せていたので後は謝罪の言葉を待つのみとなっていた。どれ、今にも泣きそうな顔を拝見してやろうじゃないか、ん?と、俺がじっくり見ていると、聖華は下を見てプルプルしていたかと思うと・・・

「アハハハハハハハハハハハ!」

大爆笑された。俺は折角綺麗に終わると思っていた話が何やら泥沼化しそうな気分になり、非常に胸糞悪い思いになっていた。俺はゆらりと頭をそして下半身を揺すりながら

「何を笑っていやがるんだぁ、このクソアマァ」

と亡霊のように逝った目で睨んだ。しかしその態度すらもおかしいらしく未だにテーブルを叩き鳴らしてヒーヒー言っている似非上級生。俺はもう色々喪失した気分になり聖華に背中を向けて鼻を鳴らしてどっかと腰を下ろし、テーブルに不機嫌そうに頬杖を付いた。もう話なんかしてやるか、アホーという暗黙の意思表示のつもりだった。

部室内では聖華だけでなくシャルやシルヴィ何かもいたがとても話す気になれないし、寧ろ自分の醜態が恥ずかしくて出て行きたくなっていた。シャルやらシルヴィが気にするな、面白いなどとちょっかいを掛けてくるが俺はもう反応する気力さえ起らなかった。くそ、面白くねぇ、笑わせるのはいいけど笑われるのはムカつくんだよ・・・。内心自分の気持ちを吐露しながら、自分のイライラを鎮めるのに、精神内を奔走していた。

俺はようやく周りからちょっかいが無くなり喧騒とした中一人座る感覚に慣れて来た頃

「よっ!」

俺の視線の前に口を「お」の形にした聖華と目があった。広げて伸ばした手を顔斜め前に置いている辺り挨拶なのだろう。ふん、何がよっ、だ。散々馬鹿にしてもう知らない!俺の心は完全に乙女に支配されたかのように、下に突っ伏した。もうどう接して良いやら分からなかったのかもしれない。

聖華は尚もクスクス笑っているようだったが、お邪魔するわね、と俺の返事を待たずに言いながらすぐ隣りの席に座った。俺はもう頭の中は真っ白で恥ずかしいやら自分に対する憤りやらで、何も考えられなかった。そんな中聖華はポツリと一言漏らした。

「私、安心したわ。」

俺は両手の殻の左の側面を外し聖華の表情を見ようとした。すると両手の指を絡め前へ伸びをしていた聖華と目が合った。凄い優しい顔でこちらを見ていた。照れ隠しに俺は即座に逆側を向いた。

「何が?」

俺は場の雰囲気に耐えれそうもないし、今のやり取りの恥ずかしさを紛らわせるように声を発していた。

「有馬君、いえ哲平でいいかしら?」

俺は顔を見せたくないので左手を上に上げ親指と人差し指で丸を作って返事とした。それを見て安心した聖華は続けた。

「だって哲平、他の皆には凄い馴れ馴れしいのに、私に対しては遠いんだもん。」

多分話し方のことを言ってるんだと思った。距離的な意味で無く、心の方だと察した。

「だからね、私嬉しいんだ。最初有馬の人間って分かった時そりゃあ殺したいくらい腹が立ったけど。でも私にあんなに面等向かって言ってくれたのは哲平が初めてだったの。怖いけど暖かい言葉だったなぁ。だから私、仲良くなりたいってずっと思ってたの。」

何やら告白されそうな展開すら感じる今の話し口調に俺は不穏な物を感じざるを得なかったがまだ行けるだろう、多分。俺は身をムクリと上げて椅子に深く座り、両手をポケットに突っ込んだいわゆるヤンキー座りになった。一種の威嚇行為だと自己判断するが、向こうには強がりにしか見えないそうでまたもやクスクス笑っている。

「俺ぁ怒ってんのに、聖華、あんたは喜んでる。報われねぇや、畜生。」

俺は前方遠くを見ながらやっとの思いで発した。しかし聖華は頬杖を付きニヤニヤ顔で

「ウソばっかり、頬緩んでるわよ?」

と、小生意気な反論をしてきた。俺は慌てて右を向いて顔を見せないようにしたがもう逆効果でしかなった。これは役者が違うな、と俺は上空に息を吐き出し

「まぁ・・・よろしく頼むわ。」

と一言だけ言って前を向いたまま、左ポケットに突っ込んでいた握り拳を左に差しだした。恐らくニッコリ笑ったであろう聖華は

「んっ。」

と言いながら拳に合わせて拳をくっ付けて来たのだった。この時こそ本当に心が通った瞬間だった。

―続く―

はい、どうも!お疲れ様です!自堕落トップファイブでございます!これは完全にオリジナルの内容ですね(汗)作者が聖華を哲平の先輩と勘違いしていたから生まれたこの話。僕的にはもうこれ聖華ルートだと思わざるを得ない。しかしまぁその辺は気にせず気持ちシルヴィルートから進行させて頂こうと思います!それではまたお会いしましょう!

聖華のキャラが本編と違い過ぎて続き書くのむず~~~~~~~~~~!!

本日もこんな所まで駄文に目を通していただき誠にありがとうございます!!(謝)



[22592] プリンセスラバー!俺に付きまとって得すんの?
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/23 08:13
 俺はこの数日の違和感を確かに感じていた。いや学園には溶け込めていると思うし、交友関係もまずまずな物だ。言いたい事言える相手もいるし、それを受け入れる度量のある連中もいる。しかし最近どうも「聖華」の様子がおかしいのである。

「じ~・・・。」

とまぁあんな風に見られてたらどんな愚鈍な奴でも違和感気付くよな。何やってんだ、アレ?何やら聖華は俺の挙動を見ているようなのである。俺が手招きとは真逆の動き、シッシッと手で追い払っても

「・・・コホン」

とわざとらしい咳払いをしながら、教室内に侵入してくるのである。分からない、コイツの狙いは一体何なんだ・・・?俺が不審人物を見るような目で見ていると

「私だってねぇ、こんなこと好きこのんでやってんじゃないわよ。」

と、好きこのんでじゃないと出来ない事をしながらそのような弁解をされるのである。怖かろう?非常に、不気味であろう?俺は思わず寒くも無いのに身震いをしてしまった。一日二日程度なら俺も気を揉まず済むんだ。でもな、もう一週間以上続いてんだよ?こんな慢性的無自覚ストーカー女を怖がるなと言う方が無理な話だ。

慣れとは恐ろしい物で、正直俺はそこまで怖くないし、半分受け入れ始めている節もあるが。だって別にナタ持って振り回して来たり、弓やら鉄砲で狙撃してくる訳じゃねぇしな~。自身の身に何ら危害を加えられない限り俺は別にどうでもいいやね。俺は今日も良い天気だなぁ~と思いながらふあぁ~あと欠伸をした。すると隣りの女の目が光った。

「哲平、あんた今欠伸したわね?」

ありゃ見られた。つーか今まで散々やってきたけどその時に言わなかった時点でもう改善されね~よ、残念なことにな。

「おう、したからどうした。」

俺は全く気にする風でも悪ぶれる風でもない口調で答えた。するとその態度を見た聖華は目を三角にしてがなり声を上げた。

「アンタねっ、これから社交部員になろうってもんがそんな腑抜けたことしてんじゃないわよ!」

おぉ~こぇぇ、ったくこれだから委員長キャラは嫌いだってんだよ、全く。隣りで尚もマシンガンの如き勢いで説教を始める聖華をよそに俺は鼻ちょうちんを作らんとしていた。

グィィィ

「てててて、も、もう何ぃ?」

いきなり耳たぶを引っ張られれば流石の俺も反応せざるを得ない。すると説教女は怒り一色の顔で

「人の話くらいちゃんと最後まで聞きなさい!」

と母親のような事を仰った。俺はもう不良息子よろしく、右手の小指で耳をほじくりながら「へ~い」と気の無い返事を繰り返していた。

「社交部は生徒の代表!シンボルなのよ!全員学園中の尊敬を集める人材である必要があるの。」

何やらさぞ目標の高い事をおっしゃっておるわ。はん、尊敬を集める人材ぃ?んなもんがそうそう集まるかってんだよ。年食ってもそう居ないってのに、小娘風情が一体全体何を言っているのだろう。俺の心には全く響かない上に反発さえしていた。俺はふ~ん、と適当に頷いていた。

「いつも一人でぼ~っとしてるし・・・クラスに友達いないの?」

ふん、余計なお世話だ。俺のテンション上げてくれるような奴が居ないだけだっつーの。根津は最近俺に慣れて来たせいで、そこまで頻繁に絡まなくなって来てたしな。奴も奴で人脈が広そうだ。俺は数人の本音友達がいりゃそれで十分なんだよ。

ふぅ、何かめんどくさくなってきたな。気付けば取り巻きもちゃっかり後ろに控えとるじゃないか、竹園、金子。俺はここらで自分の心に耳を傾けることにした。

・うぜぇ、だるい、帰りてぇ・・・
・そろそろ反撃いっとくか。

―続く―

はぁい、どうも皆さん自堕落トップテンです!何やら聖華との距離感がまた離れた感じになってしまって違和感を感じるかもしれませんが・・・。どうも先の哲平に呼び名が変わったオリジナルストーリーのおかげで一気に縮め過ぎた感がありますね、どうも。あの時は互いに気分も高揚してたということで、これが聖華の普段と考えていただければ幸いなんですが・・・。さて、それでは皆さんまたお会いしましょう!っていうか短っ!!

ちなみに以前お話していた通りシルヴィアルートに進み、次にシャルロット、聖華、最後に優という流れで行こうかと。気分屋な者で先に言った所で変更する可能性は多いにあるでしょうが、一応予定としてね。

本日も駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!耳ざわりなツインテールを黙らせろ
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/23 15:39
 うざい、黙らせるんだ哲平!

ですよねー、いや、俺もそう思ってたんすよ、自堕落さん。いっちょやりますかね。

「さて哲平、申し開きがあるなら言ってみなさい。」

ちょうど良い感じの好球が投げられて来たじゃないのよ、これ。もう場外まで飛ばしてやっから覚悟しとけよ。

「おう、さっき学園中の尊敬集めるっつったよね?」

「そ、そうよ!何か文句ある?!」

「つまり俺もその学園中の生徒の一人って訳だ。悪いんだけどさ、俺は正直に言って自分が一番可愛いと思ってっから別に誰も尊敬してないんだわ。あんたも、シルヴィもそしてシャルもうちの爺さんも偉人でも誰も彼もな。」

「なっ・・・!」

聖華は俺の言葉を受けて口を開閉させていた。当然だろう、自分は学園中の生徒に尊敬されたいと思ってんだから。

「でも尊敬されたいなら、まず自分を尊敬しなくちゃ、な。」

俺は笑いながら自分の薄い胸板を握り拳で叩きながら言った。聖華は俺を驚いたように見、その後そっぽを向いて

「ど、どう言う意味よ。」

「んにゃ、言葉通りの意味だが、俺にはどうも聖華が自分に言い聞かせてるように聞こえたもんでね。さっきの尊敬何とかって奴。それに俺、誰かに何かを教えたり教授出来るような立場も資格も、そもそもやる気がねぇし。思った事をそのまま伝えるのが精一杯なんだよね。付け加えるなら尊敬はしなくても参考にはするしな。」

俺は上空に「う~ん」と背伸びをし

「人の振り見て我が振りって奴あんでしょ?確か直せ、だったかな。どんな人からでも学べる所、あるんじゃないの?俺は聖華から山ほど学べんだけどな~。ま、どう思うかはお前さん次第、任せるよ。」

ワハハーと一人で笑いながらもう話す事は無いと思い次の授業に備え机に突っ伏した。俺は暗に「人にとやかく言う前に自分を磨けや」と言ったつもりだった。その後俺は寝てしまって聖華がどう思ったか知らんが、まぁ何か思って貰えれば幸いってとこよ。

気付けば授業終わってら、やべー授業なんも聞いてねぇよ、俺。優に後で借りるか、いつもすまんなぁ。

11月24日

「起立、礼。」

俺はいつも気付けば周囲から出遅れ、立たずに礼をしていた。他にこういう奴いないかなーと探すが未だに同類を見つけたことがない。戦時中に置いて俺は確実に上半身を裸に剥かれ、棒やら鞭やらで殴れていることだろう。このウスノロが!

自分に渇を入れ直した所で俺は優の肩をポンポンと叩きながらお疲れ、と挨拶をして金子を引きつれて教室を出た。最近はもうすっかり馴染みになっている社交部だ。

口うるさいのは相変わらずの聖華だが、言いたい事は直接言う態度を良しとする俺は全く苦にならない。本編の主人公はなんとなよっちいんだ、等と言いながら後頭部で手を組み鞄を持ちながらノッタラ歩いた。どうせ急いだ所で聖華が来るのは遅いんだ、こっちもゾウリムシの歩みの方が互いのためだろう。たまに金子の尻を撫でようとするものの、いつ気付くのか寸前で鞄にガードされるのもお馴染になってきている。ふ、と俺は「やるなお主」的な笑みを浮かべて機嫌よく歩いた。

俺達二人は聖華の教室前に辿り着いて俺が左右どちらの足でドアを蹴り開けてやろうかと考えていると

「・・・このような場所で一体何をやっておられるのですか?」

とたしなめ声が届いたので、俺は今蹴ろうとしていた右足を引っこめた。俺は気にすることなく

「いや、ただ教室に入ろうとしていただけだ。」

と答えたが、騎士団長ことシルヴィア隊長にそのような言い草が通用するはずがなかった。

「ならば何故足を前に突きだされていたのですか?」

俺がそれは・・・と言おうとした時に

「有馬さんは、教室のドアを蹴ろうと・・・していました。」

金子が余計なひと言を言いやがった。俺は内心で舌打ちをしながら次の言い訳を放った。

「ドアへの挨拶だ、これは一種のマナーと言ってもいい。」

したり顔で戯言を言い放った俺に4つの白い視線が突き刺さった。俺は右人差し指を矢印代わりにして上に指指したまま、ダラダラ汗を掻いていた。俺はもう自分の非を素直に認めた方が将来の自分のためと考え頭をガシガシ掻きながら

「わーったよ、俺が悪かった。ドアの人、どうもすみませんでしたねぇ。」

とドアノブに向かって謝罪の言葉を叩きつけるように言った。金子は憮然としていたが、シルヴィは尚細い目で

「有馬殿はそのすぐ言い訳を言う癖を改めた方がよろしいかと見受けられる。」

と常識人の発言を口にした。ふん、んなこた誰より彼より俺が知ってんだ。でもよ、嘘を付く事で笑いを取れることもあるということが分からんのです、偉い方には。俺は体張ってんだ、プライドだって質屋に売ってやらぁ、それくらいの心意気で嘯いてんだよ?

「はい、以後気を付けます。」

心の中で思った事とは当然違うことを口に発しながら俺は、しっかり謝ったのだった。皆なら評価してくれるはず、きっと・・・精神的に血の涙を流し、居ない誰かに、自分が高く評価される事を願った。

「して、鳳条院と待ち合わせでも?」

どうやら俺の始末書は済んだらしいので今の状態について尋問を受けた。はい、そうですと素直に言えばいいのに俺と来たら

「待ち合わせが無ければ来てはいかんと言うのかね?」

これまた厄介事を引き入れるような発言をしてしまっていた。この馬鹿、どうして、どうしてそういうことばっかり口にしちゃうの!俺は内部紛争が勃発するのを感じながら、言ってしまったものはしょうがないという気持ちになっていた。しかし喜ばしいことにシルヴィは俺の扱いに慣れて来たようだった。

「鳳条院との待ち合わせであれば私も行きましょうか?今日は私も顔を出す気でしたから。」

あらやだ、あらこの子ったら。大きくなったわねぇ、成長したのねぇ、立派になったわぁ。内部紛争の末に生き残ったのが哲平おばちゃん軍団のようだった。何がどうしてこんな結果を生んでしまったというんだ・・・。しかし俺もおばちゃんのその感情には同意だ、本当大人になったなぁ・・・あのすぐ噛みつく駄犬のお前はもういないんだな・・・。

「有馬殿?」

「あ、ああ助かる。そうしてくれ。」

俺は一人で哲平おばちゃん軍団と井戸端会議を脳内で行っていたものだから反応が遅れてしまった。いかんいかん。おばちゃんと話している内に俺は変な気分になってきた。とりあえずここは目の前にいるシルヴィに意見を求めてみるのもそう悪い話ではない。

・聖華俺を人間と見てくれているかなぁ
・社交部に入る意味ってあるのかなぁ

おばちゃんと俺一体どんな話したんだよ、我ながら・・・。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんちは!自堕落トップファイブです!いやぁ人が増えてくると雑になってくる人も結構いるもんですねぇ。特に根津とか金子、竹園辺りは書くのがめんどいくらいなんですが・・・。まぁそんなこと言ったらお好きな人に怒られるので、口をつむぎますけどね。今結構選択肢のシーン増えて来てるんで、やっとエロゲってる気分になって参りました。

僕の書く哲平いかがでしょうかね?丁度20まで行ったので皆さんに聞いてみたくなりました。テンション高かったり低かったり、やる気無かったり、急に男らしくなったり、余りこういう奴!って言いずらいでしょうかね。何にせよ基本やる気無いけど面白そうだったら即行動、こういう奴を目指して哲平を書いているんですよ。僕としてはその話その話でどれだけ面白さを引き立たせれるか、その一点のみに集約してSSを書いています。だからいかに哲平を面白いと感じていただけるか、それだけなんですね。たまに哲平がカッコイイこと言うのは僕が思ってる魅力的な考え方と思っていただければ幸いですね。

話それますが、皆さん「それは舞い散る桜のように」をご存じの方おられると嬉しいです。僕はあの主人公「桜井舞人」が大好きでしてね、あんな主人公、もとい王雀孫さんを尊敬しているので、頑張って自分の知ってる表現を駆使しているつもりです。足元にも当然及んでいないでしょうが・・・。色々参考にさせて頂いた部分も大いにありますし、自分の未熟さを痛感させられる次第です。

皆さんの温かいお言葉のおかげでどうにかここまで書きあげることが出来て、結構嬉しかったり。いや、全然シナリオ的にまだまだ続くんですけど、丁度キリの良い20話なのでね。そういうことで僕の気持ちを喋ろうかなーって気持ちになってしまったんですよね。感想お待ちしていますし、そういう反応を元に活力を頂くのでこれからもよろしくお願いいたします。

今までも、本日も、そしてこれからも皆さんと一緒に馬鹿笑いしたいと思っていますのでどうぞご贔屓に!長々とこんな所まで駄文を読んで頂き本当にありがとうございました!!(謝)



[22592] プリンセスラバー!聖華による査定開始、ルート分岐点?
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/23 14:06
「隊長、質問。」

俺が敬意を払ってそう言ったのにシルヴィの焦点は俺を捉えていなかった。何このつれない態度。俺はシルヴィさ~ん、と小声で言った途端

「有馬殿、何か?」

とワンテンポ遅れて返事を返して来たのでおわっと驚いてしまった。何、最初からそう反応しろってんだよ。・・・あ、もしかして隊長という呼び名が気に入らないのかな?

「騎士団長殿折り入って話が・・・」

ツイ・・・

もう違う遠くの景色に焦点を合わせていらっしゃる。シルヴィアという名前をそれなりに気にいっているみたいだな、こいつも。単に呼び名が気に入らんだけかもしれんが。

「冗談だ、シルヴィ。お前にとって、社交部ってどんな存在?俺からすればフェンシングだけで十分に思えるんだが。」

「即答しかねる質問ですが・・・そうですね。」

人差し指を曲げて思案されればされるほどF○teのアレにしか見えなくなり俺はポケットの中で録音にスイッチを入れた。こいつには胸はあるは声はある、かの女性には無い物を全て持ち合わせているのではないか?食欲はどうか知らんが・・・。一層今日のプレイにも熱が籠もることだろう、クックック・・・。(分からない方申し訳無い)

「強いて言うなれば・・・安らぎ、でしょうか。私にとって社交部の部室は憩いの場なのです。」

「ふ~ん、剣振りまわってる時癒されてないの?」

「そんなはず無いでしょう、あれは相当の精神や体力を擦り減らす行為です。いつも神経をとがらせている訳にも行きませんから、私には良い息抜きなのです。」

なるほどね、まぁ何となくそんな気がするわ。シルヴィが社交部の部室に居る姿って、俺には一仕事終わらせて来ました的な匂いプンプンするもんな。戦の後の宴っつーか?まぁ何かそんなようなアレよ。俺が一人でふむふむ頷いていると

「何故そのような質問を突然?」

至極当然の疑問を投げかけて来た。ふーむ哲平おばちゃんとの話と言っても他人には精神異常者にしか映らんだろうしなぁ。

「何だろうなぁ、俺にとって社交部は寧ろ窮屈っつーか、針のむしろっつーか?何かデメリットしか無い感じなんだよ。態度やら口調やら品格、品行方正を目指してんでしょ。俺そういうの苦手だから不安になってきてなぁ。」

俺は出来るだけ自分の気持ちを正直に白状することにした。シルヴィには極力嘘を言わない方が、結果的に良い方向へ流れる可能性が高いのである。思惑通りシルヴィの片方の目がじゃっかん開き

「安心しました。」

という肯定的な評価を得る事ができたのだ。まぁそもそもウソを日頃からつく行いを常習していることが問題なんだけどな。ウソも方便?ま、そんな所で勘弁してよ。

「有馬殿なりにご自身の立場を考えてはいることが、再確認できましたから。」

行雲流水、そして無欲恬淡を矜持にしている俺としては何とも的外れな解釈をなされたようだ。しかし別に俺の損になるようなことはなかろうと、適当に肯定しておいた。はぁ、そりゃどうも。

「考えてさえいれば、おのずと答えも出ましょう。」

正直に言えば俺の考えの地盤は固まっていた。しかし「面倒そうな事言われたら、適当に回避しよう」とどうしようも無い事を思っていたので、口が裂けても自身の回答を言う訳にはいかなかった。澄み渡る笑顔で良い事を言われているのに、邪な事を考えている自分が恥ずかしくなり痒くもないのに後頭部を掻いていた。

シルヴィは自分の言いたい事を全部言ったらしく一度きびすを返したが、もう一度くるりと振り返り

「それに、私の意見より、考え果てた自らの答えを尊ぶべきではありませんか?」

と提言なされた。うむ、自分の意見を大事にするよ、うん。だから面倒事、厄介事は極力押し付けないで下さい。母がハンカチで目の涙を抑える情景が浮かび、悪い方で泣かれているんだろうと悟った。しかし俺は自身の成長そして未来の栄光よりも、今この瞬間の笑いを優先する男なのだ。したがって切磋琢磨の真逆、無為徒食になることもやぶさかではない勢いで邁進しようと思う。

俺は入学当時の学生ちやほやされながら思っていた自身と今の自分を見比べると、えらい違いだと嘆息した。新しい環境に入ったばかりは自他に厳しいものの、慣れてしまえばすぐに頭のネジが緩んでしまうようだ。俺は過去の自分とそして、自分を生んでくれた両親にお詫びの念を込めて一礼して謝った。

その礼を自分に対する物と受け取ったシルヴィは深くそして鷹揚に頷いていた。・・・別にいいけど、確かに感謝の気持ち少しくらいあるし。

「哲平―!逃げようってんじゃないでしょうねっ、今日も部活よー!」

聖華から徴兵の声が掛かり、俺は「うーい」と返事をした。何この体育会系の誘い方。もう既に品位の底がしれてんだけど。まぁ公の場ではスイッチが切り替わるように淑やかになるんだろうけどさ。とりあえず陸上部とかの方が似合ってるよ君。

・・・

社交部に居る時間は「無駄」と言っても良かった。俺は一人見えないように携帯でテトリスをしていた。たまに聖華に見つかり既に三発の鉄拳を頂いた、ご馳走様です。どうも表情に出るようで失敗した時、苦渋の表情に満ち聖華曰く「バレバレ」らしい。

たまに耳を傾けると聖華の金切り声とシルヴィの冷徹な声しか聞こえてこない。あとは周囲の溜め息や、もうどうでもいいよねーと言った非生産的な声などだ。その非生産的思考には全面的に同意な俺としては、頷きながら次のステージに進もうと指をセコセコ動かしていた。

何やら議題は例によって例の如く舞踏会だった。もはや俺からすればマンネリ以外の何物でもないこの話題も、聖華にとってはいつまでも色褪せることは無いらしかった。しかし風化によって原型を失ったような劣化議題に、耳を傾ける俺では無かった。

まぁいくらなんでも奴らの話を全くもって何も聞いてないと、諸君に思われるのも後味の悪い話だ。一応の一連の流れを総括した上で、要約して内容をこの紙面上で独白しようじゃないか。

どうも聞く所四つの勢力に分かれているようだ。

一つ目、社交部の誇りとやらで社交部のみで舞踏会を成し遂げたい聖華部隊。
二つ目、そんなもん無理に決まってんじゃねーか、馬鹿じゃね?シルヴィ隊。
三つめ、いつも通り外部から人材派遣してどうにかすりゃいいじゃん隊。
四つ目、特に意見無いけどこの紅茶美味しいわねぇ、シャル隊。

俺はもう中立軍並びに参加する気すらなかった。というかシャル隊なんて参加してねぇだろ。俺もシャル隊に加入しとくわ。とりあえず今の所シルヴィ隊と聖華部隊が激しく口角泡を飛ばし合っていた。泡飛ばしてるのは聖華ばっかりだけど。そしてシルヴィ隊っていうか単独なんだけど。あいつの部隊の大部分、今遠征行ってて(フェンシング)ちょっと今一人なのよ、うん。あ、クソミスったぁ、また最初からだよぉ、はぁ・・・。

「とにかく学園に提出する期限は来週なの。今決まって無い部分はなるべく早く解決しましょう。」

「は~い♪」

真面目な顔で舵を切ろうとしている、聖華船長と緊張感が微塵も感じられないクルーのシャル。あいつ本当どうしようもねぇな、クッキーに手を伸ばしながらどの口で返事してんの?俺は戦友の不始末を嘆きながら一層今の業務(テトリス)に熱中した。結局今日の運航は針路方向を決めることすら出来ずイカリを海に投げ込むのだった。え、マジで?

・・・

ハフゥ~と息を吐きながら首をコキコキ鳴らしながら俺は部室を後にしていた。いやぁ、同じ態勢でいるというのもなかなかクルもんだなぁ。ご老体のようにのろのろ腰を手の甲で叩きながら歩いていると、背後から聖華に声を掛けられた。

「哲平、あんたこの後真っ直ぐ帰るだけ?」

「いや、これから用事が

「ウソはいいから付き合いなさい。」

早かった、コイツいつの間に俺の事をここまで見抜くようになったんだ?これでは影から俺を見ていたあのストーキング行為も馬鹿にはできんじゃないか。しかしこんな事ですんなり引きさがる俺では無い。俺はかの有馬家の哲平ぞ!あ、言ってみただけ、ごめんなさい。

「失礼なツンツンツインだな、本当に俺に用事があったらどうお詫びする気なんだ。」

俺がそう不機嫌そうに言い放つと

「あんなゲームをひたすらやり続ける男にそんな用事ある訳ないじゃない。大体今ので今日用事無い事言ってんじゃない、行くわよ。」

何言ってんの?みたいな目で弾き返された、俺はその事(テトリスの事)に関しては一切強気に出れないので黙って口をつぐみ、同行してやることにした。そこへ温和な表情のシャルが追いついて来た。

「あら、哲平。聖華さんと遊びにでも、行くの~?」

そんな偶然を装っても無駄だ、白々しい。完全に息切れながら言ってる癖に何が「あら」だ、完全に追いかけてきとろうが。俺はそう思いながら目の前の爆乳女に冷淡な視線をよこした。

「そうだ、拉致されて調教されて、もうあれやこれや大変だ。」

俺がお得意の嘘八百を言うと聖華は羞恥と激怒のような感情をないまぜにしたような顔になり、悲鳴のような釈明を行っていた。

「な、な、何言ってんのアンター!そんな訳ないでしょう、そして遊ばない!これは哲平の審査の一環なの。」

へい、ツンデレ一丁ですね、かしこまりましたお客様。こちらに活きの良いツンデレでしかもツインテールでございますよ?ええ、本当に身が引き締まったプリップリのトロットロ!ご満足いただけると思うんですがねぇ・・・俺は内心市場にいる商売人のような気持ちになり、天然物にして現地直送、生粋のツンデレ女を眺めていた。これ絶対商品価値高いだろう。シャルは「頑張ってねぇ~」と気の無い言葉を俺に送りのんびりと歩いて行った。

「熱心な事だ。」

その一言が俺を商人から学生へとトランスフォームさせた。声と内容からしてシルヴィか。

「フンッ、放っておいて貰えるかしら。」

はぁ、こいつらっていうか一方的に聖華が噛みつくんだよなぁ。そういう態度がシルヴィを刺激するっつーのに、なしてそういうもの言いをするのかねぇ。俺としちゃ呉越同舟の場なんぞに居合わせたくないんだが・・・。と俺が思っていると、シルヴィはさっさと姿勢正しく帰って行った。実に賢明な判断、そしてご協力(俺の心の安寧という点で)感謝します。

「せ、聖華様、私たちも同行しましょうか?あ、有馬さんと二人きりだなんて・・・。」

ふん、こそこそ言ってんのは竹園か。ったく感じ悪いったらありゃしねぇ。俺が付き合ってあげてる立場なのに誘った側の心配するなんて、そりゃねぇよ。断ってもよろしくてよ?俺が迎えの電話呼ぼうかと携帯を探し始めた時

「ちょっとした用よ、気にしないで。それに哲平はそんな奴じゃないわ。」

聖華がそう返答したので、俺の気分は結構、いやかなり上昇した。俺は満足げに鼻を鳴らしながらズボンのポケットに両手を突っ込み直した。竹園は聖華の言葉に安心したようにホッと息を付いた。まぁ俺と一緒に居なくて良くての安心なんだろうけど、邪推しちゃ不味いかね。

「社交部代表としての務めなら立ち入るべきではありませんね。お先に失礼します。」

「・・・それでは。」

金子の控えめな礼を最後に二人は仲良く並んで帰って行った。なんと言うかいつもながら思うけど金子は存在感無いわ。ま、こっちも二人っきりになった訳だが先方はイチャイチャする気は一切無さそうだ、そりゃそうだ、ワッハッハ。はぁ、めんどくさぁ。

「さて、立ち話も嫌ね。かと言って個室であんたと二人っきりになるのも色々問題だわ。」

どうせ変な想像掻き立てておられるようだが、君のようなまな板ツンデレに発情する俺じゃあねぇんだ。常日頃シャルのボディランゲージ(主に胸)に耐えてきた、俺の心頭滅却術を甘くみてもらっては困る。しかしこんな事言われっぱなしも癪なので

「だったら付き人に居てもらったらいいだろ。」

「あんたのやる気を確かめるための時間なのに、第三者四者連れてどうすんのよ!私と哲平だけの時間にするのは当然の判断じゃない。」

・・・ああ、そういう時間なの。そもそもそれを今知った時点でやる気無さ過ぎるだろう、俺。そんな事はおくびにも出さず共感の意を込めて頷いているが・・・。この思った事と行動が違うからこそ、俺のようなロクデナシでも社会に曲がりなりにも適応出来ている気がする。

「寧ろこの私が時間を割いている事を感謝しなさい。」

まともに取り合うと腹立つし疲れるだけなので、俺はもうあざーっすと言うに徹した。ツンの時期は本当鬱陶しいだけのクソアマでしかないな、やっぱり。デレる保証すら無いこいつに価値はあるのだろうか、俺はそんな疑問を自身に呈し始めていた。

「何ボケっとしてんのよ、ほら来なさい!」

このちょっと頬染めて俺を呼ぶこれ、デレ、でいいの?うーん、まぁいいか。その内そういう場面に出くわすだろう。とと、その前に

「ちょい待って、迎えもうちょっと良いって連絡する。」

その言葉に聖華は憤然やるかたなしと言った具合に

「若い内から送り迎えなんかさせてたら、足腰がダメになるわよ。」

「いいんだよ、もうダメになってんだから。」

「ぜんっっぜん良くない!」

怒られてばっかりだった、デヘヘ。やっぱり俺ちょっとMかもしんない。あ、でも確か優が防犯の意味を込めてとか言ってたなぁ。俺みたいな毛糸小僧や一国の姫は危険だろうけど聖華は大丈夫なんだろうか。

・・・あ、大丈夫だわ。こんな全身からトゲが出てるハリネズミみたいな女襲う奴いないわ。俺は目の前の剣山女を見ながら安堵のため息を付いた。俺の視線と溜め息に目ざとく気付いた聖華は

「・・・何よ、その目。気に入らないわね。」

「いや、そのままのお前で居ろよ。俺が安心するから。」

「・・・!ば、馬鹿言ってんじゃないわよっ!」

何やらツンデレスイッチが入ったようだが、俺にもう心配事は何も無かったのだった。俺は何やら腹を立てておられるようなので、ツイン女に称賛の言葉を送った。

「いやはやしっかり自立している女性とはかくも魅力的なものよなぁ。」

「っ!安いおべんちゃらなんかで私を落とそうったってそうはいかないわ!」

何を言っているんだろう、この水平線女は。何を考えているかが語るに落ちた女は更に何やら喋っている。

「寧ろ、下降よ下降、垂直落下、減点五!心にも無い事を平気で言える奴は下等人種と相場が決まっているのよ。」

垂直落下した割には五点しか引かれないというのはどういう心証の変化なのだろう。多分十点満点か何かだろう。もはや俺は下等人種に区分されたので投げやりだった。好きに言わせとけばいいか・・・。ちょい照れ気味の顔ってことは今度こそ?と思いもしたが、下等人種の言葉を引きずっている今の俺にそんな余裕などありはしなかった。俺はぞんざいに携帯を掘り出し、さっさと電話で用件を伝えるのだった。

・・・


その後俺達は学園付近の公園に足を運んでいた。というか誘導されただけなんだけどな。俺はと言うと性懲りも無く、風船ガムを聖華にばれないようにクチャクチャ口内で噛みながら聖華の後を歩いていた。2回ほどバレてガムを包んだ包み紙がポケットに入っている。
風船さえ出さなければバレないのだが、風船を作らないなんて風船ガムに失礼だよな。

赤やら黄色やらに染まった秋の移ろいを眺めながら並木道を歩く俺達。こいつの真意は本当に俺のやる気を見極めるだけなのか?という疑念がどうしても消えなかった。今に至るまでの俺の行動を見れば一目瞭然、百聞一見に如かずだ。一切やる気の欠片すら無いじゃないか。自身の身が何故安泰なのか不思議に思いながら首を傾げ、その時に風船を膨らませた瞬間脇腹を蹴られた。

俺がむせながら「す、すみません」と三度目の謝罪の言葉を吐きながら、ガム処理を行った後も聖華はその場から動こうとしなかった。どうやら目的の場所についたようだ。そしてこれから自分の身がどう処分されるのか気を揉んで待っていた。彼女は開口一番

「明日の土曜、なんか予定ある?」

・・・

何?予定、それはどういう意味をもって発言した言葉なのだろう。俺としては処刑の日くらいにしか取れないが。余りに突然の死刑宣告に俺が言葉も無く右往左往していると、どうやら彼女は痺れを切らしたらしい

「あんの、ないの!」

「あ、ありません~~~。」

俺は崩れ落ちるように申告した。気持ちはもう走馬灯だ。死の準備とか、切腹衣装の事とかを考えていた。

「?何泣いてんのあんた。」

ご自分の言葉がどれだけ人をどん底に落としているか分からないって幸せだよなぁ。これだからハイソサイエティたる上級階級どもは嫌いなんだ。俺はグッと悲しみに耐えながら

「っ、何でもない、続けてくれ・・・。」

振り絞るように声を出した。突然俺のキャラが変わった風に感じた彼女は怪訝な様子で見ていたが、まぁいいわと一言置いてから

「明日、学園に来なさい。」

と一言申された。あの学園でかいでかいと思ってはいたが、まさか死刑台並びに断頭台まで完備されていたのか。俺はそのような恐ろしい校舎に何も知らずに通っていた事実に、今さらながら恐怖を覚え身震いしていた。

「話は聞いてたでしょ?早く、舞踏会の企画案を固めないといけないの。」

ドターーーーン!

俺は盛大に後ろに倒れ、聖華をさぞや仰天させたことだろう。な、何どうしたっていうの、何ていう声を聞きながら俺は笑った。

「んだよ、そんなことかよーーーーーー。」

テンションの上がった俺はムクリと起き上がり、大きく深呼吸をしていた。俺の無事が確認出来たことで聖華は話を推し進めていた。こいつもこいつで俺の扱いに慣れて来ているな。

「だから明日は一日学園に通い詰めないといけない訳。」

「ああ、一日でも一年でも今の俺ならやってやる。」

ふん、と呆れたように聖華は笑った後

「調子に乗るんじゃないわよ。明日あんたの働きぶりを拝見させてもらうんだから。内容いかんによっては追放も無い訳じゃないんだからね。」

釘を刺されるように言われたが、俺には寧ろ抜かれた感覚にしかならなかった。別に俺追放でもいいんだもんなぁ。俺はいつもの適当返事で軽くいなしていた。

「それとこの事は他言無用よ。」

と付け加えるように言われた。俺にはちょいと分からない質問だったので

「公園に来た事なのか、明日学園に行く事どっち?」

というと目を二等辺三角形にして

「んなもんどっちもに決まってんでしょー!何で公園にあんたと二人で来たか聞かれたら結局本当のこと言うしかないじゃない!」

とエコーが聞こえるくらいの声量で返された。まぁそれもそうか。もう俺の中ではツンデレに分類されている聖華なので、一緒に何かをするっていうのが恥ずかしいんだろう。俺は別にどうでもいいので、あいよ、と返事をしておいた。そして何やら疲れた感じの溜め息を聖華は吐きだした

「あんたには気品ってもんが無いからねぇ・・・。」

まるで出来の悪い息子に対するみたいな言い草だった。まぁ無いけどな。俺がはぁ、まぁ、などと曖昧に返答していると

「自然に醸しだせるようになって初めて、気品と言うのは備わるのよ。」

何やら恥ずかしい事を周りの風景に星を浮かべながらうっとりしながら言うので

「自然に醸しだせるようになって初めて、気品と言うのは備わるのよ。」

同じ事を言ってどれだけ恥ずかしい事を言っているのかを伝えた。互いに笑顔のままきらめき合いながらのこう着状態が続き

「あーんーたーはーーー!」

気品の欠片も無い声と野蛮な行動を持って制裁を受けた、すなわち首を絞められた。一つだけ言わせて、あんたも気品ないよ。ゼーゼー肩を怒らせていた聖華だったが

「・・・コホン、そ、そんなあんたでも社交部に入りたいって言うなら熱意を見せなさい。昼過ぎに社交部よ。」

何事も無いように場の進行役を買って出ているがその顔は赤い。やはり自分のしでかした蛮勇処分に羞恥心を覚えているのだろう。人間味ある奴じゃないか、はっはっは。

「そんじゃ明日絶対に遅刻すんじゃないわよ!」

と競歩選手の如き猛スピードで、ツインテールを上下に揺すりながら去って行った。

「や~れやれ、ほんと元気なお嬢様だこと。」

俺は頬を掻きながら、あの姿を見て自身も歩いて帰ることに決めた。

・・・

その後帰宅した時には優に叱られるどころか泣かれるわ、俺も普段使わない足で歩いたためにひっきりなしに足がガクガクしているわで、惨憺たる結果になった。でも俺はリムジンで帰るよりは心はスッキリしたような気分だった。そして更には明日学園に行く、車はいらないなんて言うもんだから、優は完全に疑いの目で俺を見ていた。無機質な声で

「学園に何の用です。」

と無表情の顔で聞く物だから、俺は背中に刀を突きつけられた心境になりながらも

「明日進路の事で先生に呼ばれてね。」

と本当のような嘘を普通に答えていた。優は本当ですね、本当なんですねと縋りつくような目で聞いて来るが、俺は幾度も頷いた。日頃の行いの賜物なのかもしれない、この豪胆さは。俺なら不倫楽勝なんじゃないかという邪念を頭から振り払い、さっさと寝ることにした。今日はもう殊更に疲れたんだ・・・。

俺は体がクタクタ故に深い眠りについたためか実に不快な夢を見た。

「呆れさせてくれるわね、有馬!野良犬みたいな目で私を見ないでよ!」

シャルにえらい事言われた。ああん?てめ、こら、野良犬の何を知ってそんな事言ってんだ?お父ちゃんの庇護の元ぬくぬく育てられた温室育ちが舐めた口聞いてんじゃねぇぞくらぁ!野良犬はなぁ、生きる全てを自分で補いそして自活してんだ、貴様の何兆倍も尊いわ。つまり野良犬の目を持つ俺は少なくともお前よりは尊い!ドゥーユーアンダスタン?と言い返したいのだが、声は当然向こうには伝わらない。

次に現れた幻影は聖華だった、友好的な態度だが正直気持ち悪かった

「うふふ、あなたのお爺さんには目をかけていただいているの。これから仲良くしてね。」

・・・嫌・・・かな。うん、理由は特に無いけど、とりあえず生理的に無理。

俺はうぅ~うぅ~と唸り声をあげながら床に就いたそうな。めでたくない、めでたくない。

尚その後俺の枕元で携帯が鳴りっぱなしだったのに気付いたのは朝になってからだった。

・・・

「着信件数42件・・・。」

今朝俺は途方も無い数字に目を疑いながらも、留守番サービスに入れられた用件を聞かんとしていた。もう10回くらい掛けて出なけりゃ出ないだろ。どんだけ辛抱強いってか根気強いんだよ、っていうか暇なんだよ爺さん・・・。

ピッ

「この馬鹿も(ブチッ!)・・・」

いきなりの怒声に咄嗟に携帯を耳から遠ざけながら切ってしまった。これはどうも穏やかな雰囲気じゃ無いことだけは確かだ。まぁ散々出ない俺に、いきり立っている気持ちは理解できなくもないが。良い子ちゃんの俺が11時24分という時間に起きておる訳がなかろうが、少しは薄い頭で考えんかい。俺はこれから自身に対する責苦に耐えるだけの心の準備を整えてから、再度携帯を耳に押し当てた。

それはもう8割方俺への非難、愚痴、文句ばかりでネガティブ台風が吹き荒れていた。ったく、何で朝からこんな思いさせられんといかんのだ。そう思いながら俺は突撃リポーターのように直撃区域で身を縮こまらせながら、暴言の嵐に耐えていた。要約するとこういうことらしい。

シルヴィと明日オペラに行け。

・・・だけかよ!一行どころか一行の半分にも満たない発言を、どんだけ時間かけて喋ってんだこの爺さん。時間を見れば38分も喋っていたらしかった、話し相手がいないのかも知れない。俺は言葉の暴力によって体が半分ほど爺さんに持って行かれた気分になった。大げさに溜め息を付いて布団の上に大になって仰向けに寝ころんだ。

俺ははっと身をガバリと起こし今日の予定を思い出した。おいおい、何勝手なこと言っちゃってくれてんの、あの爺さん・・・。聖華との一件を脳裏に浮かべながら空中で大口開けて笑う爺さんに、俺は舌打ちを連射した。頭をガシガシ掻きながらこれからどうすっかな~と考えた。


・爺さんのご機嫌取っといた方が良い。シルヴィとオペラ鑑賞。
・シャルにでも相談でもするか?
・聖華との約束が先約なんだから学園に行くべきだろう。


―続く―


はい、どうも皆さんこんばんは!自堕落トップファイブでございます!今回はやけに長くなってしまいましたね。どうも区切りの良い所までなかなか進みませんで申しわけない。聖華が典型的なツンデレという感じですかね、どうもオリジナルを書いてしまった僕としては何やら物足りない気もするんですが・・・。まぁルートに入ればえらいことになるでしょう。まぁ今回はシルヴィちゃんに流れるんでグッと堪えて頂きたいが、聖華ファンの方には。それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこんな所まで駄文に目を通して頂き誠にありがとうございました!!(謝)



[22592] プリンセスラバー!シルヴィと暇潰し決定
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/25 07:22
 俺はもしかして人生の岐路に立たされようとしているのではないだろうか。この三択ってどう考えても、ねぇ?俺は先で手招きしている三者三様の顔ぶれを見ながら、前方に三差路を控え決断を迫られていた。俺としてはどれもこれも一長一短な気がするので選ぶのに窮する話である。

ま、昨日の爺さんの声色からしてこのまま逆らってたら俺の身が危ういかぁ?ふーむしゃーんめぇ、ここはシルヴィの待っている道を選ぶとするかぁ。俺は今日の行動を決めた所で思いっきり背伸びをした。オペラに関して興味はさらさら無いが良い子守唄になりそうだと考えたら、少々胸も躍る話だ。

俺は早速嫌な仕事からこなしてしまおうと、携帯を手に取り番号を押した。

プルルル、ガチャ

「何か用?」

大方寝坊でもしたんでしょ、この馬鹿。みたいな声のトーンで、もはや言わんとする事が分かる不機嫌さの声をもって聖華は出た。しかしそれよりさらに下のステップを申し上げねばならん俺としては、一瞬息を詰まらせてしまった。まぁ越えねばならん山だ、ここはやるしかなかろう。俺は特技と自称している口八丁を用いてこの場を乗り切ることにした。

「実は昨日は突然のお主からの約束にすっかり先約の事を忘れておってな。」

「はーー!!、先約ぅぅぅ?」

「ああ、そうだ。だからこそこうして早朝にわざわざ電話したんじゃないか。今日はすまないが行けそうにない、悪いな。」

「・・・本当なんでしょうね、朝になって『だるいからいっか』みたいな理由でばったり今日もしどこかで出会おうものなら・・・」

一層ドスとそして殺意の籠りまくった声で彼女は言った。

「殺すわよ、いえ、殺しきるわ。」

自身に言い聞かせるように繰り返さなくてもいい。ふん、学園に拘束される缶詰女がほざきよるわい。オペラ観賞会の俺とどういう天の巡り合わせで遭うっていうんだ、ええ?とりあえず俺は万が一遭ったらみじん切りにされることは間違いなさそうなので、再度すまんかったと言って電話を切った。もしや社交部追放されるかも?何て思ったが何やら向こうもショックを受けていたようなので、手放しに喜ぶ気分にもなれなかった。

「ふぅ~~~~。」

俺は一仕事終えた気分になり下半身はベッドに投げ出し、上半身だけ身を起こした状態で天井を仰ぎ大きく息を吐きだした。もう気分は一日の終わりだったが、これでオペラにも行かなければ本当に見下げ果てた男になる。俺はベッドの上にいると再び寝そうになるので側面にまで転がって行き、クルリと体を回転させながらベッドにもたれる姿勢になった。そういや何時からだっけ、オペラ・・・。

うわぁ、また聞かねばならんのかよぉ、と内心うんざりしながら携帯を見た。話長い上にボロカスに言われ、その合い間合い間に重要な事を言うもんだから結局また一から聞くハメになってしまった。俺は電話対応にはメモは必須だと改めて実感したのだった。

・・・

「哲也、哲也ぁ、あっ、あっ、あぁぁぁぁ~ん!!」

オペラの開演時間は午後2時からなので午前中は全くのノープランだった。そこで俺は最近ネット通販を駆使して購買した「ファンタジーラバー」とやらをやることにした。どうも俺の今の境遇に似ているのと登場人物も酷似しているので、後学のために買ったのだ。目の前のキルヴィアと呼ばれた女は、あられもない声で画面上で喘ぎ声を喚き散らしていた。

シルヴィにやけに良く似た女はアヘ顔を隠そうともせずよがり声をあげている。う~むどんだけ乱れてんだよ、一皮剥けば女と言うのもどれも大差ないのだなぁ。

「なんと言う淫乱な女なんだ・・・。やはり尻までいじるのは世間では常識なのか?」

俺は一人で呟きながらマウスをカチカチクリックしていた。この主人公ファントム哲也は普段は小心者で、ヒロインの一人にボロカスに言われながらも耐えるような男だ。その癖マクラシーンになると途端に一匹の野獣になるどうしようもない男だった。俺はこんな奴が果たしてこの世にいるのだろうか、などと独り言を漏らしていた。しかし寝技及び手技を含めた実技の方は大したものだったので参考にしていた。イヤホンを片方の耳だけに付けいつ来るとも知れない侵入者に怯えるようにやる感覚がこれまた刺激的だ。

その後数発ほど自分の煩悩を体外に放出し、俺は出発する事にした。ふぁ~あ、今日はオペラ会場で良い夢が見れそうだわい、桃色的な意味で。俺が尻の少し上辺りを手で掻きながら入口まで行くと

「行ってらっしゃいませ、ごゆるりと楽しんでいただきますよう。」

何とも丁寧な見送りじゃないか。俺は優の頭にポンッと手を置き、おう、行ってくると一言返し前方のリムジンに乗り込んだ。手はしっかり洗いましたので念のため。

「お待たせしました、こちらがファン・ホッセン様のお屋敷です。」

「ういっす、どうもありがとう。」

俺は車から半身を出しながら屋敷を見上げると運転手の言葉通りだと思った。家じゃなくてこれは屋敷と言うにふさわしいな、うん。俺が両手をポケットに突っ込んでぬしぬし歩いて行くと、前方からロリマリアが懸命に走って来た。

「いらっしゃい、お兄ちゃん!」

いつの間に兄になったのか、そしてここまで懐かれたのかは知らんが俺はようとニヒルな笑みを浮かべて頭を撫でた。人見知りすることなさそうだよなぁ、この子・・・。ああっといかんいかん、変な気分になって来た。俺は首を振ってペド根性を雲散霧消させ、シルヴィの行く末を尋ねようと

「・・・」

思ったらマリアの背後にいつの間にかシルヴィは居た、何故か貴族の正装っぽい服装で。何やら警戒の感情が顔にありありと浮かんでいる。え、何俺やっぱそこまでヤバイ顔でマリアちゃんに接してた?俺は自分で歯止めが聞いていない自身のロリ愛に震撼した。

「手間をおかけしました。」

何やら未だぎこちない言葉で俺に労いの言葉を掛けてくるシルヴィ。俺も心持マリアから半歩距離を取った。何に対して機嫌が悪いのか知らんが、女には何やら月に一度妙な物が来るそうなので俺は気にしないことにした。

「こんちわ、今日はよろしく頼むわ。」

俺は社交的な挨拶を伴ったというのに奴は未だ無言のプレッシャーをこちらに放ち

「銃刀法がどうしても気になるようですね。今日くらいは父に誇りを父に預けてくれと懇願されました。」

全くもって接点すら持とうとする返答ではなかった。何なの、感じ悪ぅ・・・。剣持ってないからって俺のせいじゃないし、案外大人げないんだなコイツも。それから奴は一変して表情を申し訳なさそうにし

「父が無理に申し出たのでしょう?貴重な時間をこのような形で浪費させ申し訳ありません。」

と、全く別の話題についての非礼を詫びて来た。挨拶すら出来ずに違う所に気を回すのはいかがなものか。まさか「手間をかけました」が欧州流のグリーティングではあるまいな。気にするほどの事でも無いので俺は話を合わせることにした。

「まぁ父親に振り回されるのはお互い様のことよ。そちらはどうか知らんが、俺は昨日の夜突然知らされたんだ。俺の憎むべき相手は爺さんのみよ。」

俺はそう言いながらシルヴィの謝罪を一笑した。シルヴィも安心したように笑い

「そうですね、考えるのはよしましょうか。お互いの為にも。」

同意の意を示してくれたのだった。その後のシルヴィのやる方ないような溜め息を受けてマリアが

「デートなんだから、もう少し楽しそうにするの♪ごめんね、お姉ちゃんたら照れ屋さんで~。」

お姉ちゃんの脇をぐいぐい肘で押しながらそうフォローしてきた。ふーん、やっぱそっちはデートっていう認識の元のセッティングなのね。はぁ政略結婚の匂いが鼻につくなぁ。俺も思わずシルヴィに習って溜め息をつきそうだったが、マリアの手前ぐっと堪えた。

「私は照れてなどいない。有馬殿同様、私も親の思惑に振り回されて迷惑しているだけだ。」

ふ~ん、迷惑、ねぇ?俺は何やら不思議に思ったので疑問をぶつける事にした。

「いや、迷惑なら断ればいいんじゃないの?」

するとシルヴィはキッとこちらを睨んで

「断れるものならとっくに断っている!しかし勝手に話を進められて有馬殿までこの屋敷まで赴かれてしまえば申し訳が立たないだろう。双方の父にも有馬殿にも。」

「え~俺結構楽しみにしてきたのに、しょうが無く行くような態度なら家で余暇を過ごしてた方がマシだなぁ~。」

そんな俺の発言にマリアが敏感に反応した。

「お、お姉ちゃん、そんなこと言ったらお兄ちゃんに失礼でしょ!ほらほらそんな顔しないで、楽しくデートするのっ。」

「ち、ちょっとマリア!」

妹に背中をグイグイ押され俺の眼前間近まで迫ったシルヴィは頬を少し赤らめながら

「え、あ、いや、その、すまない。わ、私も別に嫌ではないが、その・・・~~~~さっさと済ませてしまいましょうか!」

最後は真っ赤になった顔で笑顔になってズンズン門の所まで歩いて行った。マリアはクスクスおかしそうに笑いながら

「お姉ちゃん、慣れてなくて照れてるね。お兄ちゃん照れ屋さんなお姉ちゃんをちゃんとエスコートしてあげてね。」

と姉のような発言を妹から賜ってしまった。俺はおう、任せとけと言いながらシルヴィの後を追うのだった。

「行ってらっしゃい、本当のお兄ちゃんになったら今度はマリアも一緒に連れていってね~!」

何やら遠くから妙な事を言われた気がするが、聞き返すのもめんどいので俺は手のひらをヒラヒラさせながら歩いて行った。

・・・

「ハッハッハ、マリアも言うようになったなぁ。」

「お父さんあの二人上手く行くかなぁ。」

「哲平君だ、きっと上手くシルヴィを手懐けてくれるさ。」

「うん、そうだよねってお父さん!そんな言い方したらお姉ちゃん可哀そうでしょ!」

「はっはっは、ごめんごめん。」

そんな親子のやり取りを俺が聞けるはずもなかった。

―続く―



はーい、どもども、自堕落トップファイブです!シルヴィルートっぽい雰囲気漂ってますねぇ。まぁそういうシーンはスキップするつもりですが、今回はギャグとして少し混ぜさせていただきました!下品、死ね、帰れ、という言葉はどうぞ飲み込んで下さいねっ。僕のSSに品性を求めるのはお門違いも良い所なので(大笑い)それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこんな所まで目を通して下さって誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!シルヴィとオペラ観賞会
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/25 02:32
 リムジン内の空気はそう芳しくない物だった。シルヴィは先ほどから窓際に肘を付いて物憂げに風景を眺めているものだから、おちおち話しかけもできやしない。もの静かな排気音のみがBGMとなり、俺は携帯で2chで過去のスレを見るのを止めてシルヴィに声を掛けた。

「なぁ、やっぱお前俺とオペラとか行きたくなかったんじゃないか?」

この質問も何度目になるのか、俺は再び聞き直した。シルヴィはこちらを見ようともせず

「いえ、そのようなことは決して。」

とコレの一点張りだ。俺は溜め息をつき再び文字の海へと素潜りを開始した。しかし文字の海中で俺はどうしてシルヴィがこのような態度なのかと首を傾げていた。乗り始めた時からそうだった。俺が軽いジャブやら変化球を投げても、全部排気ガスと一緒に流れるような素っ気ない返事ばかり。コイツはコイツで面倒くせぇ奴だなぁと俺は再確認させられざるを得なかった。

もうかったるくなった俺は海の中で宝石やら貴金属並みのネタを収集するのに没頭することにしたのだ。そうして30分余りリムジンに揺られてようやく目的地に到着した。大した面白い情報も得られず、俺としてはただドブに捨てたような時間だった。

何やら広大な土地に、そしてそれに合わせるように立ち並ぶ高級車。ライトは付いていないが俺の目にはセレビーム(セレブなビームの略語)が点灯しているように見えた。入口付近には中年のホスト崩れや、若づくりに励んだ努力を惜しげも無く見せるドレス姿の女性やらが蔓延っていた。俺は以前のパーティーを経験しているので全く気後れすることなく、おら、邪魔だよ的なオーラを発しながらズンズン歩いて行った。たまに出現する黒服のボディガード的な奴を見た瞬間、近くの柱に身を寄せ道を譲っていたが。

さきさき進んで行くシルヴィにどうにか追い付いた俺は、今まで一般人以下の振舞いを行っていたのに関わらず、何故か場内では特上の場所にあてがわれていた。視界は抜群で演劇者の細かい表情や仕草さえも視界に納める事ができるだろう。途端に紳士な気持ちが湧きあがって来たのだが、もういまさらと思いどっかと座ることにした。

「はーじゃらー、みよー♪」

うわっ、気持ち悪っ、俺は一瞬にして顔が引きつった。おいおい、何だよあの気持ち悪い声・・・。あんな寝心地の悪そうな声聞いてたんじゃ、いくら寝るのが得意な俺でもいくらか時間が掛かる。今でも訳の分からん言語を操りながら、一応俺と同じ分類分けされるサピエンス集団の劇が始まっていた。ああ、駄目だ片頭痛が酷くなって来た、こりゃあ寝るどころの話じゃないわ。英語も分からない俺にあの謎の異星語が分かろうはずがない。俺はとりあえずフィーリングでどうにか彼らの伝えんとしようとする内容を掴もうと、両手を耳に当て目を瞑り耳を澄ますような姿勢になっていた。

数分ほどそうしていたがもはや俺にはポルターガイストにしか聞こえず、同調するようにカタカタ揺れ出していた。そんな様子を見かねたシルヴィが小さく舌打ちをした後

「我慢ができるのなら、貧乏ゆすりは控えていただけますか?振動が周りに伝わります。」

と言い方は質問調だが、断定的な顔を持って指摘して来た。へいへい、どうせ俺は低級霊でごぜーますよ、すいませんねぇ。俺はもう聞き続けることを止めて、目を開けわりぃと言いながら揺れを止めた。

「まったく・・・父上も有馬殿と私を二人きりにしてどうしようと言うのだ。間がもたぬ。」

俺に聞こえないように言ったのかは定かではないが、その呟きはバッチリ俺の耳に入っていた。はぁ、コイツこんなことになりながらまだそんなこと言ってんのかよ・・・。俺はこいつこそ自身の身をもう少し自覚する必要があるのではないかと身を案じていた。

その後最後まで意味が分からなかった何かの劇が終わったようで、青い衣装の青年が舞台の袖を引くと同時に幕が降りていった。俺の内部では余りのつまらなさに野次やら座布団血しぶきその他諸々が飛び交っていたが、周りに合わせて澄ました顔をしていた。

そして何やら優雅な背景音が俺の鼓膜を通して流れて来たので、今は恐らく小休憩の時間なのだろう。コーヒーブレイクの名の通りシルヴィは何やら飲んでいた。俺は何も言わないのもアレだと思ったので

「おい、シルヴィ。」

「・・・!コホッ・・・何か?」

俺が声を突然掛けた上に飲んだ直後に話しかけたせいでちょっとむせていた、面白い。その直後シルヴィは何かを察したようにコップを俺の手の届かない所に両手で隠しながら

「先に言っておきますが、あげませんよ。」

と野盗に対する態度で俺から金品(コップ)を守ろうとしていた。ふん、貴様の口が付けられたお古なんぞ誰が欲しがるか。

「そうじゃない、お前さっきのオペラ面白かった?」

俺は客観的な意見を聞く意味でとシルヴィに感想を求めてみた。シルヴィはもう一口飲み物に口を付けた後

「そうですね、なかなか興味深い話でした。途中のホルンの演奏も素晴らしいものでしたし、特に不満はありません。」

ち、優等生な回答を・・・。何が興味深い話だ、全く理解出来ていない田夫野人な俺には面白くも何ともない返答だった。しかし真面目に返事をしてくれた奴に無礼な対応もできず

「そうか俺も丁度同じことを思っていた所だ。」

と何食わぬ顔で知ったような事言った。向こうは明らかに分かってないだろお前、という半目で睨んで来たが知った事か。あいにく幼稚園での音楽発表会と、中学校での学生コンクールくらいしか経験の無い俺には歯が立たない情勢だった。

そして俺は間を持たせるべく無い知識を総動員して

「そうか、しかし歌を交えたミュージカルがオペ

「有馬殿が仰っているのは明確なミュージカルです。」

俺は最後まで言わせてもらうことすらなく切断された。耳を澄ませば周りのクスクス音すら聞こえてくるじゃないか。俺はただ転ぶのだけは避けようと反撃に転じた。

「という冗談を真に受けるシルヴィ、お前にはユーモアさが足りない。」

「残念ながら粗野なユーモアは存じ上げていない、私にあるのは知的ユーモアのみですから。」

とこれまた一枚上手の発言を喰らい俺は轟沈した。くそ、いつの間にこんな言い回しを体得したんだこいつは。何よりこの優越感に浸ったような顔。俺はうぬぬぬと言いながら歯をぎりぎり噛みしめた。小癪な奴め、どうしてくれよう、どう料理してくれようぞ、恨みはらさでおくべきか、この無念をどう晴らしてくれようか・・・。俺の渋面に気遣ったのか単なる気まぐれなのか、なにやら指導のお時間が始まった。

「オペラとミュージカルの相違点は用いられる歌そのものですね。」

ああ、そう言えばオペラの声って何か人間の出せる限界の声みたいだよな。ミュージカルって普通に歌だわ。俺の捉え方はあながち的外れではないようで

「オペラはベルカント唄法で歌われる、オペラ歌謡。大してミュージカルは独特の発声法を取らないより大衆的な歌を用います。」

ふ~ん、何か良く分かんないけどやたら震えたようなあの喉声がオペラ歌謡なのか。何やらこの後も唄法やら時代だの色々言われた気がするが一向に脳に入ってこないので、割愛させてもらう。とりあえず色々言われて思った事は一つ

「良く知ってんなぁ、そんなこと。地味に博識じゃないの、君。」

「・・・幼いころから見てきているだけにすぎません。ほら、第二幕が始まりますよ。」

照れ隠しも内包したような顔で、もうそれ以上は話す事は何もないとまたシルヴィは前を憮然と見だした。俺としては同じように見てたとしてもさきのような口調で誰かに教授することは出来ないぞ。胸を張って言えるくらいだ、情けない気にもなるが。つまり見ていたとしてもそれを言葉として表現する術を知らなければ、意味をなさないということだな。どっちにしろ博識だよ、お前さんは。まぁ向こうに話す事が無いのであればこちらも何も言うまい、あふっ、ふぅ俺もだいぶ慣れて来たから寝れそうだ。

その後俺はグォーグォー不快音を周囲に撒き散らしながら、天国でオペラに参加していると

ぎゅううううう、ビクンビクン!←ふくらはぎをつねられて跳ね上がる哲平

「有馬殿・・・いびきが駄々漏れなんだが・・・?」

「やかましい、俺のベルカント商法(認識に違いによる誤字)にケチを付ける気か貴様。」

と寝ぼけながら教養の無さを露呈しまくっていた。シルヴィは追撃の言葉を発しようとしたが頭に手を付き首を振りながら

「あぁ、もうしっかりしろ。騎士が易々と取り乱すな!」

俺には全く聞こえていないが何やら自制なさっていた、自重すべきは俺何だが。生真面目なシルヴィの心意気のおかげで俺は安らかな床に着けたという訳だ、感謝しなければならんだろう。寝てたからそんなこと知ったこっちゃなかったが・・・。俺は自分の愚か者ぶりに言葉を失いながらこの場でいたくシルヴィに感謝することにした、ありがとう、僕のナイト様!

ビクッ!

俺は夢の中で独自のベルカント商法により怪しげなツボを老人に売ろうと躍起になっていた所、警察にバレ捕まらんとしてた。そして牢屋に入れられ、鉄格子を両手で掴み「こんなのオペラじゃなーーーーい!」と叫んだ所で目を覚ました。

俺は自身のぶざまな居眠りでまた隣りの真面目女にどやされやしないかと、恐る恐る隣りを横目で見た。幸運にも俺の意識が落ちる前と同じ姿勢でオペラ鑑賞モードになっていた。俺は助かったぁ、と腹に向けて息を吐き出し、目の前にいる謎の集団に目をやった。

何やら胸の前で両手を組んでいる女を取り合っているのか、二人の男が汗を飛ばしながら剣を振り合っていた。別に好きでも無い女(実際どうかは知らないけど)を取り合うなんて実に気の毒な役回りなこって。俺は別にどっちに鉄の塊が突き刺さろうと興味はとんと無いので、後頭部の後ろで両手を組んで椅子にもたれ傍観していた。当然お行儀の悪い事をシルヴィお母ちゃんに怒られ、舌を出しながら居住まいを正した俺であった、テヘ。

「何とも華やかなものだ・・・。」

シルヴィ母ちゃんは不良息子の教育に疲れたのかそう漏らした。しかしその響きは現状への不満というよりも、義憤のような響きに聞こえた俺は思わず「どうした」と聞いてしまっていた。振り向いた顔にはハッキリと怒りが現れ、騎士たる誇りをその身にしっかり纏っていた。

「戦いとは、あのような優美なものではない。」

あたかも戦場を駆け巡った戦士のような発言だった。しかし余りにも真剣味を帯びた口調だったので、俺は茶化す気も指摘する口も持たなかった。俺は何を言っていいのか分からず、ばつが悪そうに頬を掻きながら

「ま、まぁ所詮娯楽だからな。そう気にするなよ。」

とこの刺々しい雰囲気を払拭しようと、オペラのフォローをしたのだが効果は無に等しかった。尚も苦々しい顔で両手を一層強く握りしめているシルヴィ総督は

「こうとも、戦いとはこうとも華麗に見せるべきものなのか・・・本当の戦いとは。」

ゲームやら漫画に影響を受け過ぎた中学生みたいな発言に聞こえないでもない。もう俺には手の施しようが無いレベルまで病状が進行した上に、そもそも聞いてもくれないので溜め息で返事とし、さらにはお行儀を粉砕して後だらしなく椅子に寄りかかることにした。思った通り自分の世界に入ってしまわれた熱血女は俺の品の無い座り方には目も触れず、一人ブツブツ言っている、ちょっと怖い。

「もっと禍々しく、陰惨で、醜い物だ。」

誰か知り合いでも死んだんだろうか、俺はそうだねぇ~などと能天気極まりない同意の言葉を返しながらこの場をしのいでいた。短いようで長く感じた剣戟タイムも終了を迎え、背伸びをして隣りを見てもまだシルヴィは辛気臭い香りを漂わせていた。

オペラ鑑賞が終わった後一般人(それでも上流層)と肩がぶつかり喧嘩を売った所、用心棒が出現したため俺はトムソンガゼルのように逃げ回り会場から飛びだしていた。俺がいちゃもんを付け始めた辺りからシルヴィは素知らぬ顔で出ていったので外で合流した。

「ご無事で何より。」

何食わぬ顔で形だけの労いの声を掛けられたが、俺は返事をする余裕が無く両ひざに両手を付きながら肩で息をしていた。こ、怖かった、後から来たおっさん。俺達は再び車に乗り込みタクシーに乗るテンションで「駅前まで、時間無いから急ぎでね」と運転手に声を掛けていた。

運転手はシルヴィア様もそれでよろしいので?と尋ねたが、俺が奇天烈な行動を取るのはいつもの事なので、呆れながら一息付き運転手にお願いしますと声を掛けていた。

―続く―


はぁい、どうも。自堕落トップファイブでございます!何やら駅前などと行くことになりましたが、僕にも何故行くやらさっぱりです!はっはははは、ノリが全てネタが全て、書きながらどうにかして行くしかないですよねっ!それでは皆さんまた会いましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂きまして誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!シルヴィアと哲平
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/25 03:32
「ヘイ、そこの彼女俺とオペラない(オペラ見に行かない)?」

女子トイレから手をハンカチで上品に拭きながら現れたシルヴィに俺は開口一番そう言った。せっかくエスプリに富んだ発言をしたというのに

「それ以上近づかないで下さい。」

と距離を取られてしまった。まっ、酷い、そんな虫けらみたいな目で俺を見て。いくらつまらないと思ったからって、そのようなむごい事を人様に言うような子に育てた覚えはありませんよ!お父さん悲しいっ、俺はエレガントに両手を広げながら

「へ~い、どうしたんだい、シルヴィア?いつもの初々しいそして可憐な君に戻っておくれよ。」

とアメリカンコメディアンみたいな口調で一歩近づいた。すると彼女は人ごみに紛れるように後ずさった。本当にどうしたというんだ・・・俺といるとそんなに恥ずかしいんだろうか。ま、まさか惚れた?ちっ、可愛い奴だな本当に。俺はシルヴィの内気な一面に惚れ勢いよく突進した。

「僕もだよ、シルヴィ!!」

何も言われた訳でもないのに相思相愛のテンションになっていた俺は、シルヴィになだれ込むように両手を広げ襲いかかった。

「私に、近寄る・・・な!」

「な」の部分で空気を切り裂くような蹴りを俺に突きだし、もろに腹部で愛を受け止めた俺は美しい放物線を描きながらゴミ箱に突き刺さった。ゴミ箱に頭部から刺さる時に引っかかったのか、被っていた馬の被り物が俺の足元に転がっていた。さっきシルヴィがトイレに入った時を見計らってシルヴィのプレゼントにしようと買ったのだ。結局俺がずっと被っていたが。

「本当にあなたは一体何がしたいんだ・・・。」

シルヴィは溜め息をつきながら、俺が定住するゴミ箱から少し離れた休憩イスに身を預け俺の復活を待っていた。

そう俺達は今駅前付近のデパ地下にいるんだ。いやだってせっかくお外に出た上に、お日様もまだ地下で眠りについていないんだ。これは何かして遊ばねば気が収まらんだろう。俺のその発言にまたか、と言ったような幾度目になるやら分からない溜め息をシルヴィはつき

「そのような理由のために・・・、本当にあの運転手には申し訳ないことをした。」

急げと俺が言った故に意味も無く速度を上げさせられた運転手の事を言ってるんだろう。いいじゃないか別に、時間は有限と言う意味では急いだ所で得はあろうが損はない。まぁ無意味に急がされて精神を疲弊させたという点では悪いと思ってはいるが。俺はあだや疎かに「本当に悪い事をした。」と謝罪した後、サムシングを求め地下内部を先陣切って行進し始めた。

歩み的にはのろい俺なのですぐさまシルヴィに並ばれたが気にせずきょろきょろしていた。そんな俺をシルヴィはやれやれという感じで見ながら

「本当にあなたは気まぐれな御仁だ。にしても駅前の地下など歩いても目新しい発見などないでしょう?」

「ふん、無粋な事を言うな。興味の目を持ってすれば全てのことに発見が見いだせるのだ。」

俺は一つのカップルについっとアゴでシルヴィに見るよう促した。公害と言っても問題なさそうな程ラブ臭を周囲に広めながらいちゃついている。シルヴィは全く興味が無さそうにあれが?という目で見たが

「あれに近づく、ああ言う奴らの会話が実際面白いんだ。皆一様に距離を置いているが、俺から言えば分かってない。あれほどネタの詰まってそうな奴らをどうして放っておくことが出来ようか、俺には出来ない。」

反語を用いた俺独自の論理展開にさっぱりついて行けてないシルヴィは、はぁ、と相槌を打ちながら俺の後ろについて来た。案の定どうしようも無い会話をカップルはしていた。

「おう、馬子欲しいもんはあるか!今日は大勝ちしたから好きなもん買っていいぞっ」

「やぁん、もう牛夫ったら素敵ぃん!いつも100均で全てを賄うのが俺の人生って言ってるのにぃ。」

「馬鹿言え、ある時に使う、溜(貯)まっている時に出すというのが人間というもんだ!さぁさぁそんな無駄口には俺っちお仕置きしちゃうんだぜ?」

「んもう、牛夫ったら一昨日もしたじゃなあい(はぁと」

むちゅぅぅぅぅ

いきなり人目も憚らず熱い接吻をする馬鹿ップル。途端にラ物質(ラブ臭の主成分である物質の造語)の濃度が濃くなった気がする。むせ返るようなラブ的刺激臭に鼻をつまみながら、背後から会話を盗み聞きする俺にシルヴィは呆れ果てていた。俺は笑いを押し殺しながらシルヴィに振り返り

「・・・ブフッ、クフ・・・な?」

「いや・・・な?と申されましても。」

「あのカップル俺の見立て通り最高の面白さだっただろうが。」

「は、はぁ私には分かりかねますが。」

「まず表現が上手い『100均で人生を賄う』だぞ?しかもこの大言壮語にしてその日暮らしっぷりを隠しもせず大っぴらに言われた後にキス出来るか?そしてお仕置きと言いながら実際したいだけという欲望まみれの発言。さらには毎日してるのかと思わせ、実は最後にしたのは一昨日。もはや非の打ちどころがない!」

俺は研究者のようにエア眼鏡をクイクイ上下させながら熱い気持ちを語った。しかし未だにシルヴィには理解しがたい研究内容のようで、難問にぶつかったような険しい顔で首を唸っていた。俺は助手の真摯な姿勢に満足し

「悩め悩め、悩んだ分だけ力になるんだ。」

と綺麗事を言った。そうして俺達はその後も周囲をフラフラ彷徨った後またしても地上に頭を出すことにした。普段引きこもっている俺はいつも以上に歩いたことで体力を相当浪費したので、自販機でジュースを買ってベンチで一休みすることにした。俺は先に座らせていたシルヴィの所におーい、と駆け寄りこっちを向いた所で剛速球でホットのコーンポタージュを投げた。俺にとっては剛速球でもフェンシングみたいなスポーツで鍛えておられる騎士様にはスローボールほどでしか無いらしく、難なく受け取られてしまった。

「ありがとうございます。」

ホッコリした感謝を述べられた。「キャッ怖い!」的な反応を一瞬でも期待した俺は、バツが悪かったので

「・・・悪かった俺の奢りだ。」

と言って最初から奢るつもりだったけど、当初ワリカンを考えていたかのような発言をした。俺達は並んでベンチに腰をおろしそれぞれの飲み物をただ嚥下していた。そんな飲む時間を堪能した俺は

「・・・フゥ~~。あー今日は良く動いた、なぁシルヴィ?」

「ええ、おかげ様で。やはりあなたが何を考えているか私には到底理解できませんが。」

「ふん、小娘風情に易々と俺が解読されてたまるかい。それでいいんだよ、他人の考えてることなんぞ誰にも分かりゃせん。自分自身の気持ちさえ分からんっつーのに。」

俺の最後の言葉にハッとしたようにシルヴィはこっちを見た。ん、俺何か変な事言った?

「あなたは・・・有馬殿はどうして私と行こうと思われたのです。」

唐突な質問な上に爺さんのご機嫌取りという理由だった俺は、息が詰まってしまった。

「他にも誘う人はいるはずなのに、一体どうして私を選んだのです。」

何やら初めてご指名を受けて戸惑うシルヴィのようだったが、俺としてはそこまで重く考えさせる気はなかった。俺は飲み干した空の缶をゴミ箱に放り投げ

「面白そうだったから、じゃ駄目か?」

と一言だけ言った。シルヴィはそれでも不安そうな顔を拭うことはせずにチビチビ飲んでいた。こいつらしくないな、と俺は思った。そうしてシルヴィが飲み終わるのを待っていると

「私は父の言われたように女として大事な物を置いて来てしまった。だからあなたを楽しませることは出来ない。今日だって有馬殿に対してたくさん辛く当たってしまった。」

何やら懺悔地味たことを話し出した。悲しいことは全部吐き出させた方が良いだろうと俺はじっと夕日を眺めていた。

「私は自分の気持ちを上手く口にする事が出来ないから、気付けばこのようなもの言いになっている。男性経験もろくに無いしどう喜ばせていいかも分からない。」

俺も女性経験はエロゲー以外に全く無いから全然気にしちゃいないけど、どうしたもんだかなぁ。このまま放っておくと泣き出しそうな気配になってきた。それにやっぱシルヴィって威風堂々が似合うっつーか、叱ってる顔や澄ましてる顔の方が似合ってんだよ。なおも俺に対して自身の不甲斐なさを語るシルヴィを止めることにした。

「私は

「シルヴィ、自分をそう責めるな。そもそも俺自体今日一日を振り返ればろくでもない人間だったんだ。お前が自分を責めれば責めるほど俺も首を絞められているような気分になる。」

「そ、そのようなことは決して!私はただ

「まぁ聞け。第一俺が誰かを選ぶ云々で話を進めていたみたいだが、俺はそこまで深く考えていない。(これは嘘じゃない)だから『選ばれた』使命感なんて感じる必要はないんだよ、お前さんは。そして俺自身女性経験なんぞ全くない、だから今日みたいにシルヴィに叱られ呆れられまくるハメになるんだ。寧ろ迷惑を掛けたのは俺だろう。エスコートどころかただ腕引っ張って振り回していた俺にちゃんとこうして最後まで付いて来てくれたんだ。俺は非難どころか、感謝謝罪したいぐらいなんだよ。ありがとう。」

そこまで一気にまくし立て俺はベンチから腰を上げ尻に付着したゴミを両手で払い

「ちょっと歩こうぜ、尻痛くなっちまった。」

呆然とこちらを眺めているシルヴィに声を掛けた。返事が無いので俺は置いてくぞーと言いながら歩いて行くと、慌てて缶をゴミ箱に捨てる音が聞こえた。

シルヴィはいつものように並走するのではなく、俺の少し右後ろに控えめに付いて来ていた。俺はシルヴィがまだ何か悩んでんのかと思ったが考えても仕方がないので、普通に話しかける事にした。

「そういや俺もシルヴィのことな~んにも知らねーわ。」

「・・・突然、何ですか。」

声のトーンはいつも通りだが、今日一日を振り返ればやはり沈みがちな声だった。

「お前にとっちゃ当たり前のことかも知んないけど、俺に取っちゃ凄い一歩なんだよ。誰かの事を知ろうなんて言う心の変化はな。」

ちょっと照れくさい発言だったと自覚してるが、どうにかシルヴィを元気づけようと俺も必死だったのかもしれない。俺の後ろで息を飲む気配を感じた。おお、分かってくれた・・・って?シ、シルヴィさんどちらに走っていかれるのかな?突然のシルヴィのばく進に俺は唖然としつつも、その先を見た。どうやらチンピラが老人から金を巻き上げようとしているようだった。

シルヴィはご老人の前に立ち、悠然とチンピラの前にその身を晒した。ヒーローの引き立て役になり下がったごく潰し共は皆突然の訪問者に目を見合わせあっていた。しかし相手が女と知るやいなや、舌を出しながらシルヴィの周りを取り囲むようににじり寄った。

「ご老人を相手にそのような不貞行為。挙句金品を巻き上げようなど恥を知れ!」

「なんだぁ~?てめぇも俺達と一緒に遊びたいってかぁ、いいんだぜぇ、へっへっへ。」

「おいおい良く見りゃ可愛い顔してんぜこいつ、俺達も大歓迎さぁ!」

「こ、こ、これは輪姦の流れですね、ウハ、おkwwww 拙者分かりマス、ムハ。」

「舐めた口聞いてくれてんじゃない?久々に活きの良い獲物に俺の腕も唸るってもんだ。」

チンピラとシルヴィの会話を耳に入れながら俺も近寄っていったが、何やら変なのも混じっているようだ。

俺が着いた時には既にチンピラとその他はゴミのように連なっていた。何と言う早業、あれだけ調子に乗っていた連中も完全に伸びてしまっていた。一人恐らく自身を拙者とかぬかしていたデブは何やら気持ち良さそうな顔をしていた。

「もういいんじゃよ、お嬢さん。その辺にしておいてやりなさい。」

老人の一言によって一人一人無理やり立たせて説教しようとしていたシルヴィの動きが止められた。自分がどんな目に合わされようとも他人を思いやれるこの爺さんは本当に大した物だと感心させられた。

シルヴィの怒りはまだ全く収まっていないご様子だったが、どうやら堪えることにしたようだ。被害者が許すというなら第三者のシルヴィには手出せないよなぁ。シルヴィの折檻から解放された腕白共は、我先にとクモの子を散らすように去っていった。

老人からお礼にと、飴を大量に貰いながらシルヴィは安堵のため息を付いていた。そしてふと気付いたようにこちらを見る目はもう普段の彼女そのものだった。だが発言には諦観の気持ちが含まれていた。

「お分かりいただけたでしょう。私はこのように暴力によって物事を片づけてしまう女なのです。」

別にそんな事以前から知っていた俺としては、改めて説明してもらう必要は無かった。しかしシルヴィは俺が言葉も無く立ちつくす様を、苦虫を噛んだような顔をして見ていた。そして決意を目に宿した表情をもって彼女は言った。

「しかし改めようとは思っていません。これは己が望んであろうとしている姿なのです。」

気に入らないのならもう今後近寄るな、俺にはそのようにも聞こえる言葉だった。決別されようとも自分の道を選択することの出来るシルヴィを、神々しいとさえ俺は思った。だがか弱いシルヴィを一度目の当たりにしてしまった俺としては強がりにしか映っておらず

「ま、いいんじゃない?」

と軽口で返していた。シルヴィにとってこの反応は想定外の返答らしく目に炎をともし始め

「そんな事言いながら、内心凶暴な女だと思っておられるのでしょう!私に口うるさく言われるのが嫌ならもう今後関わらないでいただきたい。」

はぁ、怒ったり沈んだり呆れたり悩んだり負の感情に関しては多彩な表情になるよなぁ。ったく笑えよ、笑えってんだよ、俺としてはそんな事を考えていたので

「いーや関わるね、別に俺は口うるさく言われるの嫌じゃないし?大体強烈な蹴り入れられてゴミ箱に刺さってた男に言うセリフじゃないよ、それ。」

ニヤニヤ顔で俺がそう言い返すとさらにシルヴィはヒートアップし

「有馬殿がどう思っていようと私は、私は。」

また自分を貶める発言が来るかと俺は思っていたが全く別の言葉だった。

「軟弱者は嫌いだっ!!」

ズガーーーーーーーーーーーン

軟弱者の塊と自負している自分には重い一撃だった。っていうかいきなり矛先を俺に変えるなよ・・・準備整ってないよ全く。俺が突然のダメージに咳き込んでいると、シルヴィが俺の隣りを横切りながら猛ダッシュしていった。俺がどこで道を間違えてこんな結末になったんだと、頭をガリガリ掻いていると、先のご老人が歩み寄って来て

「ホッホッホ、今時珍しいほど勇ましいお嬢さんだねぇ、彼女かい?大事にしてやりなさいよ、ハイ君にも。」

と咄嗟に何か差し出され手のひらを出すとキャラメルが数個降って来た。老人は彼女の走った先を眺めながら

「ほんに素敵な子じゃ。きっと君の支えになってくれるじゃろうなぁ、ふっふ。」

預言者みたいな言葉を貰ったが俺としては同感だったので

「本当に俺にはもったいないくらいの女性ですよ。まだ友人未満ですがね。」

俺と老人は二人でしばし笑い合った。俺は自分の内面の変化に少々戸惑いを覚えたが、今日のシルヴィの姿を見てもうしばらく奴に付きまとってみようと気持ちが固まっていた。俺には無い、何やら大事なものを彼女は持ち合わせているようだから。俺は携帯で時刻を確認するとポケットに携帯を突っ込んで今日の夕飯を思い浮かべならのそのそ帰路に着いた。

・・・

その後ホッセン邸ではシルヴィが壁に手を付き頭を垂れていた。

「い、一体私はどうしてしまったのだ。有馬殿に呆れられようとでもしたというのか?」

壁に頭をゴリゴリ押しつけながら

「何て短慮で幼いんだ、私は・・・!」

ひたいが赤くなりそうな程押しつけるシルヴィだったが、そうして数秒押しつけた後顔を上げ

「・・・それでも有馬殿は私を受け入れてくれるような素振りをなさってくれた。」

呆然と壁と向き合いながら呟いていた。またシルヴィは下を向き痛みに耐えるように目を瞑り

「どう、接すればよいのだろうか・・・私は・・・。」

未だに自己の思いが固まっていないようにボソボソ言っていたが、ハッと突然何かに気付いたように顔を上げた。ハの逆字になった目で己に言い聞かせるかのように

「見失うな、己を、信念をそして誇りを・・・そして進むべき道を。」

最後は結局いつもの彼女に戻っていた。意思の補強がどうやら完了したらしい。しかしいつもの笑顔で彼女の心に、父親ホッセン卿がダイナマイトを仕掛け穴を開けんとしていた。

「父上の思い通りに・・・お、思い、通りには・・・」

開通間近な気がするのは俺だけではないはず。

・・・

家路に着いていた俺だったが予想通り道に迷ったので結局迎えの車を呼んだのだった。どうしてこう未だ一人立ち出来ないのだろうか、赤ん坊魂の自分に叱責を飛ばしながら屋敷を跨いでいった。どうせ誰も居ないだろうと思って小声で適当にただいま~と言っていると

「おかえりなさいませ。」

「はい、ただいま!」

唐突な出迎えの言葉に旅館の女将みたいな返事を返していた。俺は優に嘘を行っている手前引け目を感じ、鼻の頭を掻きながら目を反らしていた。そんな俺を知ってか知らずか

「お疲れ様でございました。」

背後に後光を指すほどの笑みで俺に労いの言葉を掛ける優。今の気持ちは悪霊の俺にとってその顔は余りにも眩しく、危うく成仏しそうになっていた。俺は涙を出そうになる双眸に右腕を当て役者のように感謝の言葉を言った。こうやって本音をふざけながらでないと言えないのは、俺の悪癖なのかもしれない。

俺はふと気付いた事があったので

「もしかしてずっと待ってたの?」

「はい、それが私の役目でございますから。」

「・・・」

俺のような放蕩息子のために地縛霊の如くここに突っ立っていたなんて・・・。普段からウソを付く俺も、流石に申し訳ないという思いが全身を駆け巡っていた。俺にだって誇りはある、ごく微量の。それはウソは付けども面白い方に展開させる時だけ極力使おうという物だった。したがって面白いどころか放課後から数時間ひたすら屋敷の入り口で立たせる、なんてのは洒落にもならない話だった。

全ての諸悪の根源である俺は口を真一文字につむぎ黙って優に頭を下げた。ウソ偽りない俺の正直な気持ちだった。優は気にする風でもなく俺の頭が上がるのをじっと待ち、いつもの澄ました顔で

「お気になさる事はありません。哲平様はご自分のなされたいようになさって下さい。」

「ああ、自分のしたいようにする。だから優すまなかった。今後遅くなる時や用事が出来た際は、必ず連絡を入れるようにする。」

優は初めての親孝行に感動した面持ちでお気遣いありがとうございます、と一言言った。謙虚どころの話ではない気がした。滅私奉公の彼女が気の毒にすら俺は思ったのだ。年頃だというのに使用人及び目付き役・・・人の世はつくづく平等じゃない。

俺はいたたまれなくなったので風呂が沸いているという優に感謝の意を込めて

「俺が入る前に優、お前が先に風呂に入れ、これは命令だ。疲れた体を少し休めて次に備えるようにしてくれ。上がったら呼んでくれ、部屋にいるから。」

何やら後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた気がするが、そうでもしないと俺の気が済まないのだから振り返る事無く自室に戻る俺だった。

―続く―


はい、どうも皆さんこんばんは!自堕落トップファイブでございます。シルヴィの言葉は何やら僕の胸にも少なからず影響を与えたような気がします。手前勝手に始めたこの小説、非難、罵倒、叱責それら全てを容認し涙を堪えながら先へ進めて行くと言うのがけじめだと思いました。直せる所は改善し、やはり自分では面白い、変えれないという所は野放しにする。このような方向で今後も先へ進もうと思います。

そもそも面白さ、等と言う物は千差万別にして十人十色でございます。したがって自身で面白いという理由で、他の人にも評価してもらおうと言うのは驕りというものでしたね。笑える人は笑ってあげてください。笑えない人は理由を明確にした上で提言として僕に野次を飛ばして上げて下さい。つまらないと言いながらもここまで読んでくれたツンデレの読者の皆さんにも僕は感謝の意を込めて終わりの挨拶とします。

尚少々ワガママと評価されている哲平ですので今後は抑えめにし、今後も精進いたしたいと思っております。

本日もこのような駄文に目を通して頂いて本当にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!哲平に課せられた最終課題
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/25 07:57
 土曜日にシルヴィと散々遊んだので俺は日曜日は部屋どころか、布団からすらほとんど出ることなく過ごしていた。その癖食事の時間には飛び跳ねていの一番に食べる辺り、その日の俺はどうしようもなかった。とは言うものの布団を甲羅にしてずっと寝ていたという以外は、普段通りの生活なのである。それはそれで酷い話ではあるが。

月曜日はとある政治家の誕生日だったらしく当然のように狩りだされた。俺なりのお祝いとして大量のクラッカーと打ち上げ花火を持参していった。しかしそんな学生のノリが通じるはずもなく、場の雰囲気に飲まれ俺は一人外で花火をぶっ放していた。ゴミはきちんと回収しましたので念のため。俺はろくに顔すら出さず、最後の最後に現れ「本日はお誕生日本当におめでとうございます。」と一言だけご挨拶して、ゴミ(花火)の詰まったリュックサックを片手に帰って行った。花火は祝砲のような意味も込めているので遊んでただけじゃないんだよ?

家に帰って使わなかったクラッカーを連発していた所、当たり前だが優に叱責され、俺は布団の中でこっそり残り物を打ち鳴らしていた。結果クラッカーの快音によって目が冴え翌日の授業に支障をきたしている、と言う訳なのである。

放課後になり俺が数匹のコトリを頭上に泳がせながら、頭を回していると

「哲平様、本日も社交部の活動にご参加ですか?」

と優に今後の予定を尋ねられた。鳥は瞬く間に飛び散り、俺がハッと優の方に目を向けると、いたく心配した表情でこちらを見ていた。自分の不始末はいつもの事だが、こうして心配されると胸が痛い物だ。俺が返事のために口を開こうとすると

「哲平、迎えに来たわよ~。社交部に行きましょう。」

母性愛に満ち溢れた声でシャルロット姫からお声が掛かった。俺は自分の言う言葉を先に言われたので、身支度を整えながら

「ってな訳で行ってくる。」

「はい、体調にはくれぐれもお気を付け下さい。今日は精のあるものを用意させましょう。」

はぁ・・・本当に内助の功というか支えて貰ってんなぁ俺。こうも献身的に支えの手を差し伸べてもらわれるのは初めての経験だ。優にはどうしても馬鹿な事を言うのを抑えてしまうよ。

「ありがとう、優も無理せずしんどかったら休むんだぞ。家では楽にしてくれていいんだ。」

このように素直な哲平になってしまうのだった。自分の口から出たとは思えない優しい響きに驚いたが、優も感謝の意を唱えて教室を出ていった。その後シャルに連れられ部室に向かうのだった。

シャルは好きな花言葉や、習い事の話を嬉しそうに話していた。基本的に話すことが好きなのだろう、歩みと違い流暢に日本語を早口で話すシャルに俺は相槌を打つのに精一杯だった。所々日本文化に対する解釈の間違いがあったりしたが、当然指摘する時間は無い。普段部室ではそこまで周りと喋りまくる訳では無いシャルが、俺にこうまで打ち解けてくれるのは純粋に嬉しかったりする。にしても富士山と東京タワーを同じみたいな扱いにしたら・・・泣いてるぞ富士山。

そんなこんなで俺達は無事社交部の部室に辿り着いた。俺としてはそれよりも以前一方的な理由から聖華との約束を蹴っていたので、五体満足に部室から出ることが出来るかが心配になっていた。恐らく俺が向こうは俺がオペラに行っていることなど露ほども知らないだろう。だがどこからかその情報を仕入れられた時には、俺は確実に埋葬されるかホルマリン漬けされるに違いあるまい。俺は万が一の事を考えゴクリと喉を鳴らしながら部室のドアを開けた。

部室内には一年生二人がちょこんと行儀よく椅子に座って談笑していた。学年を判別したのは見た目が幼いとか、俺が特別目を付けているからという訳ではない。社交部のルールによるもので、部室の鍵を当番制で一年が先輩より開ける事になっているからである。よくよく見れば幼いように見えなくもないが、じろじろ見るのも失礼な話なので俺は自席に腰を下ろした。

それからすぐに後輩は俺とシャルに挨拶を丁寧にし、ドリンクの注文を承ろうとして来た。シャルは普段通り紅茶を頼んでいたが、俺はそこまで厚かましくできない。何故なら実質一年どころか数カ月にも満たない期間しか入部期間が経っていないのだ。いわば新参者だと言うのに我がもの顔して飲み物を注文するのもおかしな話である。俺はトンチを聞かせ

「ああ、お構いなく。しかし差し支え無ければ突っ込みでも入れていただければね。HAHAHA」

最後は米笑で済ましていたが、一年生もなかなかの豪の者のようで

「何でやねん、でございますか。畏まりました、それでは、何でやねーん、ウフフフ。」

何ともお上品に、似合わない関西弁を駆使しながら俺にペチリと優しく突っ込むのだった。俺の気持ちまで汲み取るは場の雰囲気を更に和やかにするはで、素晴らしい心遣いだった。

「間違えてコーヒーを入れてしまったので、有馬様よろしければどうぞ。」

と自分のせいにしてまで俺に対しにこやかにコーヒーを出すこの一年生は、将来絶対に大物になる。俺はチップとしていつも持ち歩いているビー玉をその一年生にあげることにした。本当にその一年生は出来た子で嫌な顔どころか喜色満面の笑みで感謝の言葉を述べたのだった。俺は名も知らぬ下級生の今後に幸あらんことを深く神に祈った。

そうして各々で雑談話に華を咲かせていると、遅まきながら部員が一人また一人と集まって来た。シルヴィもその一人であり、妙につやつやしているのは部活後の汗のためだろう。風呂上がりの色気みたいな物があり、男である俺はちょっと見とれてしまったが慌てて目を反らした。

「遅くなりました。」

「へぇ~・・・いつもは顔すら出さないのに遅くなりました、ですって。」

「部員が部活に顔を出すのは当然のことだ。」

「哲平が入ってからやけに顔出すようになったじゃない、あなた。」

・・・

いつもの通り聖華がシルヴィにちょっかいを掛け哲平やら有馬殿が飛び交う事になるが、もういつもの事なので何も言うまい。俺は一人ルービックキューブをカチカチ移動させていた。しかし例の優秀な一年生が今日は上手く止めに入っていた。

「ファン・ホッセン様、お茶は如何ですか?」

「ハーブティを頼む。」

聖華もすっかり毒気が抜かれたようでフンッとそっぽを向いて席に座っていた。俺はこのやり取りを見て唸っていた。やるなぁあの一年生。神域の気配りの一年生は当然俺にもお茶のおかわりを尋ねて来られたが、俺は丁重にお断りした。そう議論が白熱することもないので一杯飲めれば基本十分なのだ。大方人が出揃いさて話し合いが始まるかと言う所で

「すいません、ハァハァ、お、遅くなりました!」

社交部の一員とは思えない慌ただしさで根津が飛び込んで来た。しかも何が可哀そうって別にそこまで待たれていなかったという点だな。根津は足を絡ませながらヨタヨタと俺の横の席に座り

「有馬さん、申し訳無い。委員会の都合上どうしてもご一緒出来なかった。」

何も言っていないのに事情を説明し出した。俺ってそんなに根津と一緒に行動したい奴って思われていたのだろうか。とりあえず俺は何を言えばよいか分からなかったので

「お疲れ、よくぞ生きてここまで辿り着いたな。俺は嬉しいぞ。」

と一人の兵士が奇跡の生還を遂げた時に告げるように、根津の肩に手を置きながら言った。疲弊具合からしてこれくらいがちょうどいいのかな、と。向こうもそのような心中だったらしく

「いえ、この根津。有馬さんのためならどこまでも!どのような困難があろうとも馳せ参じる次第です。」

教養の無い俺はその「はせさん汁」とは一体何なのかと思ったが、何やら嗚咽を漏らし始める根津には到底聞けそうも無かった。困難があってもはせさん汁があればやって来れると言う事だろう、多分。

「にしても有馬さんもだいぶ社交部に馴染んでらして来ましたね。」

感涙が止まり、いつも通りの根津に戻った彼はそのような事を言い出した。シャルもその考えには同じ考えのようで

「本当にね~、根津君なんて最初皆から無視されてたんだから。何だか喋り方がおかしいって、おかしいでしょ、ふふっ。」

「そ、それは違います。きちんとした話し方をしているのにあなた方が・・・ああ思いだしたくない!うぅ、有馬さん社交部に入られてこれほどの短期間で皆と親しくなるなんて。私羨ましくてしょうがない。」

何やら根津が入部した当時には一悶着あったようだ。俺自身聖華と未だいさかいがある身なので、そこまで他人事の話でもないけど。聖華も同じ気持ちらしく

「ちょっと待った!哲平をまだ入部と決めた訳じゃないわ!」

「え~でも部の皆と仲良くやってるし♪それに聖華さんも哲平と仲良く作業したり

「あ・れ・は審査のためにやってるんです!」

こうなってしまったら誰も手を付けられない。いや関わると噛まれるもんで。飼育員のシルヴィさんに任せるしか我々には手段は無いのです。

「勘違いしないで欲しいわね!」

「お前の素行を考慮すればそのような判断になるだけだ。」

「まだ哲平を入部させるのはいささか早計なのっ。」

「いつになったらその時期とやらが来るのかお聞かせ願いたいな。」

「・・・!あのね、あんたらはそう簡単に入部させようとするけどね。哲平の日頃の行いを知っていればそんな軽々しい事は言えないはずよ。」

「・・・それに関しては同意見だが。」

「一度入れてしまえばそう易々と追放出来ないわ。だからこそ本当に社交部員として相応しいかをしっかり吟味する必要があると私は言っているのよ。」

「いつまでも処遇が決まらない有馬殿が気の毒とは思わないのか?」

「そ、それはそうね。その点に関しては申し訳ないと思ってるわよ。ただ今後部に相応しい品位を持つ可能性があるかを、私自身の目で見極めたいの。だから時間が掛かるのは当然でしょう?社交部のあり方を考えれば当然の考えだとあなたにも分かるでしょう。」

「代表の考えに口出しをする気はない。ただ入れるにせよ、入れないにせよどちらかを早急に決めて頂きたいとだけは申し上げておく。」

俺は何やら事態が深刻なのを察して姿勢を正していた。俺入部されていなかったのか、未だに。その時点で驚きやら喜びが湧き起こったが、どっちにせよ宙ぶらりんな状態であるに変わりはないだろう。俺の入部に関する生殺与奪の権利は聖華に預けられているのだ。

シルヴィの一言にこのままでは確かに不味いと聖華も感じていたのか

「分かったわよ、最終試験をしてあげる。」

唐突な一言に俺は顔を上げて聖華の方を見ると

「哲平、あんた主導の元何かやってもらうことにするわ。それで最終的な判断とさせてもらいます。」

習い事も特技も何も無い無教養な俺に何やら過酷な事を言われた気がする。俺はこのお嬢様がたを満足させられる自信などあろうはずが無かった。しかしシルヴィの方をチラリと一瞥し、その後シャル、根津の方を順に見ると完全に「君なら出来る!」的な目で見られていた。

「私もこのままずるずる引っ張るのはごめんなの。」

真っ平ごめんなのはこっちも同じだが、俺としては後腐れ無くこの部を去る最後のチャンスなのかもしれなかった。しかし以前と違い余りふざけて滅茶苦茶にやってやろうという気分は起こらなかった。先の期待もあるだろうが、やはり俺は俺で社交部をそれなりに気に入っているのかもしれない。それに社交部を辞めてしまうとシルヴィとの接点が無に等しくなってしまう。俺はこの前あいつの事を意識して近づこうと決めたのだから、ここでこの部を去る訳にはいかないのだ。

「そんで、何すんの?」

「そうねぇ、ふふっあんた主催でパーティーを開催して貰うってのはどうかしら?」

何なら断ってくれてもいいのよ、オーラで伝わるもの言いで言って来た。小悪魔な笑みをこちらに差し出してくる聖華に負ける訳にはいかない。俺は無駄口は叩かず聖華の言葉を一言一句聞き逃すまいと、しっかり聖華の顔を凝視した。

「名案でしょう?舞踏会の予行演習と、あなたの歓迎会も兼ねられるわよ。」

何やら自分の発案に自画自賛しているようだが、俺としては何でも良い。俺はすぐさま数少ない自分が参加したパーティーを思い浮かべながら、構想を練り始めた。

「社交部全員を満足させる事が入部条件よ。その時は潔くあなたを歓迎してあげるわ。」

「名案・・・です。社交部の一員となれば・・・そのくらい、出来て・・・当然です。」

「最終判断の条件としては申し分ありませんね。」

金子、竹園の賛同と共に周囲からも賛成の声が広がり始めていた。俺としても今さら条件変えられたら困るから有難い話である。いつもはバッサリ斬るシルヴィまでもが賛同の声を挙げたのだから反対の声は出ようはずもなかった。おっと大事な事を聞いてない。俺は挙手して質問した。聖華はいつもと俺の態度が違う事に気付いているようで

「はい、哲平君」

「そのパーティーはいつ開催するんですか?」

「そうね、今週末くらいでお願いするわ。」

「分かりました。」

俺達は教師と生徒の間柄になっていた。俺はもう無駄な事を考える余裕も無ければ時間もないのだと分かった。ならば後は最善を尽くすだけじゃないか。てっきり俺がまた暴れるとでも思っていたのだろう。聖華は面喰らった顔をしたが、俺の態度に嬉しそうに頷いたのだった。その後舞踏会云々の話を進めていたようだったが、俺は思考の海に身を潜らせていたのだった。やってやろうじゃない。

―続く―


はい、どうも自堕落トップファイブでございます!こんな続き気になる表現で終わらせといて何なんですが、毎度の如く続き考えてないんですよねぇ(汗)僕は基本オリジナルを読んで色々いじくりながらSSを書く手法なので、読まないことにはどうにも・・・。また哲平もちょっと真面目風味にしようと心掛けて書きましたが、どう目に映ったのかは読者様にお任せする所です。というか今までが今までな奴なので今さらと言われるかもしれませんが。何にせよ今後も適度に先へ進めて参りたいと思いますので暇つぶしに読んで頂ければ幸いです。

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!哲平のパーティー構想
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/26 00:02
カリカリカリ
「・・・駄目だ、違うな。」
ビリビリポイッカリカリカリカリ・・・

今俺がいる場所は図書室だ。テスト直前でしか使った試しが無いこの場所だが、思案するには持って来いの場所と言える。俺はA4のルーズリーフを取り出して思いつくままにパーティー内容を書き連ねている。

「何か違う、駄目だ次。」

俺は8枚目のルーズリーフをゴミ箱に捨てた所で時計を見た。もう外の景色は夕刻の時間を超えようとしている。時刻は6時前、俺は携帯を取り出し家に電話を掛けた。そして優にもうしばらく遅くなるから先に食事にしててくれ、と一言用件を言って切った。俺はもう一度頭の鉢巻きを締め直して机に向かうのだった。

計10枚程度に色々書き殴ったルーズリーフを見ながら、俺はどのようにしようかと頭を捻らせていた。空からステンドガラスを突き破って主催の俺が登場する、なんてのはなかなか良い案だと思っている。しかしそうするとチャーターの準備や修繕費、はたまた落下ポイントまで考えねばならず俺としては何から解決すれば分からなくなっていた。その他にも桜吹雪や、シャンパン砲など何の意味があるのか分からない物まで含めて多彩な案は出揃っていた。しかし奇をてらい過ぎた感は否めず、実際には出来ないであろう荒唐無稽な物がほとんどであった。

「もうちょっと具体性、主に流れを掴みたい。そのためにも第三者の意見が必要だ。」

あれから30分が過ぎ俺は椅子の背もたれに身を預け一人ごちた。自分の案は単発系のネタに過ぎず、どの局面で使うかを考えるとなるとパーティーの骨組みをまず作る必要があったのだ。俺は万が一のためにとシルヴィの携帯番号を聞いておいて正解だと思った。

「有馬殿が電話を掛けてくることなど無いと思っていた。」

「ああ、俺も無いと思っていたがそうも言ってられん。シルヴィ折り入って俺の頼みを聞いてくれ。」

「どうされたのです。」

「今学園でパーティーの構想を練っていたんだが、どうも上手く流れを組む事が出来んのだ。色々案を書いてみたんだが単発のパーティージョークばかりが思い浮かぶ。」

「なるほどそれで私に、ですか。・・・しかし申し訳ないが私もパーティー主催は経験が無い。」

俺は駄目か、と思いながら謝辞の言葉を述べ切ろうと思っていたが思わぬ提案を出された。

「しかし妹なら良いアドバイスを言うかもしれない。一度宅まで来られますか?」

俺にとっては非常に魅力的な話だ、飛び付くに決まっている。

「願っても無い申し出だ。もう一度俺の考えをまとめてから行く事になるからちょっと遅くなるぞ。」

「お待ちしています。」

そこで電話を切った。さてせっかくわざわざ話を聞いてくれると言うんだ。中途半端な気持ちで行くのは悪いよな。俺は無い知恵の全てをフル稼働させて10枚を1枚に纏め始めた。

・・・

俺は近場のコンビニでおにぎりを頬張りながら迎えの車を待っていた。時刻は7時半に差し掛かろうとしていた。当然家に帰るのはもっと遅くなるので優に連絡の電話を入れた。こういう時優の物分かりの良さがありがたいものだ。運転手も優から既に話を聞かされているのか、俺の行き先を聞いても何も尋ねることなくホッセン邸へと向かったのである。
俺は突然の脳の回転で疲れていたのでしばしの安息を車のシートにもたれ取るのであった。

運転手により起こされだいぶ疲れがほぐれた俺は首をコキコキ鳴らしながら、ホッセン邸を前にしていた。軽いストレッチをして適度に脳を活性化させた後、まとめ上げたルーズリーフを片手に気合を入れてお邪魔した。気持ちは家庭訪問の気分だ、立場は全くの逆だが。

「お待ちしておりました、どうぞお入り下さい。」

屋敷のインターホンを鳴らししばし待っていると、使用人と思われる女性が快く中へ通してくれた。門前払いは無いと分かってはいても、このような豪邸をお邪魔するのは未だに慣れないものだ。前回は外部までしか拝見できて居なかったので今回はもうちょっとステップアップしたことになる。いつもなら俺はきょろきょろ内装に目を動かすのだろうが、今日はルーズリーフの中身を再確認していた。私室と思われる部屋の前で使用人は立ち止ったので、ここが目的の部屋であることが分かる。規則正しくノックの後、俺を率いて更なる個人空間に通されることとなった。

中にはマリアとシルヴィが二人で話をしていたようだ。どちらかの部屋であることに間違いは無いが豪華絢爛過ぎて俺には個室にすら思えなかった。共同部屋としても差し支えなさそうだ。マリアはにっこりとシルヴィは泰然と挨拶をそれぞれ送って来た。俺は夜分遅くにすまない、と一言詫びの言葉を入れてから早速ルーズリーフを見せる事にした。

俺のルーズリーフには大まかな流れを上半分に書き、もう半分には面白いと思われるネタを箇条書きに書き並べたと言う物だった。俺のみみずの張ったような字を二人で真剣な顔して見られると異常に恥ずかしい。幾ばくか眺めていた二人だったが目が下に映った所でマリアが吹き出した。それに釣られシルヴィの口元も震えていた。

「アハハハハ、お兄ちゃんこれじゃサーカスじゃなあい。」

猛獣火の輪くぐりの事を言ってるのだろうか。俺としては外せないクリーンナップの一つだったのだが。

「それにこんなもの誰が喜ぶのですか。」

シルヴィの指差すのは「有馬哲平盛り」だった。女体盛りの俺バージョンだが、確かに言われてみればその通りだ。その時は素晴らしいアイディアに思えたのに人に言われるととんでもない話に思えるから不思議だ。その後も色々指摘は受けたものの概ね駄目だった。

「とりあえず奇抜な発想力だけは認めます。」

というのが全体的なシルヴィの評価だった。それ以外の構想力及び流れは酷いらしい。しかし意外や意外マリアからのなかなか評価は高い物もあった。

「でもでも、コレとかコレ、私には面白そうだなぁ、ウフフ♪」

エビ食い競争や、これ何て食べ物?に目を付けるなんて俺は結構嬉しいよ、うん。やはりエンターテイメント性が高い方が良いと言う所だろうか。シルヴィもそれは有りかもしれませんね、と言いながら頷いている。そうして俺達は三人で色々パーティーについて話し合った。

マリアは気持ちが大事で楽しませればいい、と言った。しかし俺としては全員を楽しませるためには、ある程度の規律や礼節を守らないと許さない人物が居る事を知っている。聖華部隊にはある程度上品で面白い物で無いと効かない気がするのだ。俺としては「聖華先生のマナー教室」という題目で自尊心をくすぐる作戦で行こうと思っている、15分程度で。マナー教養の無い俺が先陣切って色々質問すればすぐに時間は経つだろう。

元々アイディアだけは山のように用意していたため新しく出ることはあまり無かった。しかしたまに飛び出すマリアの案「菓子祭り」などは俺はメモ帳に記したり、シルヴィから有難いお言葉を頂いた時にも書いておく事にした。そうやって話し込んでいると

「ただいま~、お、誰かお客様かい?」

と一家の大黒柱が帰宅なされた。外から賑やかで無邪気な声がどんどん近付いて来る。

ガチャ

「おやぁこれはこれは哲平君じゃないか!いや~本当に来てくれたんだねぇ、こんばんは。マリアも空気を読みなさい、もしマリアが邪魔してるようなら僕が連れて行こうか?」

「ノックもせずに何を勝手に好き放題喋っているんですか、父上!邪魔をしているのは今のあなたに他ならないと言う事を理解して下さい。」

「どうもこんばんは、お邪魔してます。所でホッセン卿、折り入って相談が・・・。」

俺はこのチャンスを逃す物かと、パーティーに散々参加してそうなホッセン卿に相談することにした。しかし何やら大きな勘違いをなさっているようで

「!・・・とうとう式の日程についての相談かい?僕は今か今かと待ち望んで・・・ぐわば!」

シルヴィに重い一撃を喰らい、悶絶されているホッセン卿だった。時間が惜しい俺としては未だむせているホッセン卿に近寄り一通り事情を説明した。流石に真面目所は押さえているらしく途端に真剣な顔で一緒に考え始めてくれた。大物は切り替えが早いな、本当に。強力な助太刀も加わり、実りのある話ができたように思う。

俺は去り際何度も感謝の言葉をホッセン家族に送り帰ったのだった。俺が家に帰る頃には零時を軽く回ってしまっていた。ここまで真剣に物事に向き合うのはいつ以来だろうか。俺は疲労の代わりに充足感を得てゆっくり休むことにした。布団の中で俺はじっと闇を見ていた。結果が全てと言われるかもしれない。だけど俺は今日の事でどのような結果に終わろうとも満足出来る気がした。明日も、それ以降もこの調子で頑張ろうと覚悟を決め目を瞑ったのだった。

―続く―


どうも、皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!何やら哲平が真面目でつまらない?まぁ今はそれどころじゃないということでしょうか。真面目にやってても発想は相変わらずなんで、そんなに大差ないでしょうが。本当どんなパーティーになるんでしょうか。俺だって良く分かりませんよ、そんなパーティー参加した事も無いのに(苦笑)それでは哲平が上手く行きますようにと気持ちを込めながら挨拶とさせて頂きます!

本日もこのような駄文に最後まで目を通して頂きありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!哲平の本気
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/26 17:30
 俺こと有馬哲平主催のパーティーは明々後日と大分間近に迫っていた。当然俺の本気度も今回ばかりは違い、俺は言葉を極端に発する事が無くなった。喋る時間よりも、何かを書くか話をじっと聞くか、とりあえず筆を持たない時は全てに興味を持つようにしていた。アイディアというのは閃きで突然思い浮かぶのである。数秒前に思いついた「友食い競争」という二人で協力して食べ物をどっちのチームが早く食べるか競う、というのを思いつき即座にメモしたのだ。しかも気付いたのは隣りでお喋りをしている女子生徒の二人からなのだから日頃の生活も侮れないものだ。

また俺は放課後一人町に出かけエンターテイメント性の高い建物、ゲーセンやオモチャ売り場、ゲームショップなど、どう我々に興味そして楽しさを提供しているのかなどを調べに行ったりしていた。そのためほとんど社交部に顔を出さなかったが、準備と考えられているのか咎められる事は無かった。シャルは大層悲しそうだったが。

シャルで思い出したが、俺はあれから頻繁にシルヴィの屋敷にお邪魔するようになった。ホッセン卿に大層気に入られたのもあるが、何より経験が多いだけあって意外性や面白さ、そして何より実用性のある提案やネタの提供量が多いのである。更にシルヴィは俺のやり過ぎるのを止めるストッパーになり、たまにマリアから思いがけないアイディアさえあるのである。俺の構想はシルヴィ邸で練り上げられたと言っても過言ではあるまい。

そして読書量の増加に伴い、睡眠時間が減っていた。ネットで調べ物をするのを含めると最近は活字に向きあう時間が非常に長くなっていた。余り知られていないが珍味な料理や、ゲテモノなのに実際食べてみると非常に美味な料理。世間には知られていない無駄知識。はたまたマナーについて尋ねる際について自身で前もって理解しておこうなど、内容は多岐に渡っていた。面白そうな物、使えそうな物は全てメモする習慣を身につけていた。

俺は喋らないのにやたら文字を書くようになっていたので、周囲から失声症なのではないかと言う流言飛語まで飛びかうようになっていた。しかし俺はそんな言葉に腹が立つ所か、伝言ゲーム的なボードに書いて何かして出来ないかと頭を捻らせることに精一杯だった。俺は全ての授業でもパーティーに何か使えないかと考えるようになっていた。

本当に喋れなくなるのではないかと、不安に思った俺は根津と漫才でもしようかと暇を見つけては立ち稽古をするようになった。上手く行けば使えば良いし、出来なければそれはそれで良いのだ。やっておいて損は無い、根津は結構機転や発想が柔軟なので案外向いているのかも知れなかった。

そのような一日を今日もしようと「トリビア大全集」を読みながら休み時間を過ごしていると聖華が教室に入って来たようで

「ああ、哲平、いたいた。今週の日曜がパーティーよ、延期とか言っても聞かないんだからね。」

俺は既に聞いた情報だと即座に把握したので「ああ」と一言言って口を閉ざしたのだった。別に自分の知っている内容を二度も繰り返される必要はない。そもそもメモ帳にも赤でしっかり記してあるのだ。俺はメモした内容を重複させないように、家に帰ってからも整理を欠かさず行うようにしていた。したがってこのように同じ内容であった場合全く聞かないようにしている。ただ表現方法や言葉の言い回しが違った場合は、何か閃く可能性があるので聞くが。そしてそのような聖華の言い草にシルヴィは呆れながら

「口を開けば憎まれ口だな、お前は。発破をかけにきたのではないのか?」

「そんなんじゃないわよ!」

「嘘ばっかり~。哲平が部活に来なくって心配してたくせに♪」

「逃げるつもりじゃないかと様子を見に来ただけよ。」

俺はこれらの会話を心の中で何回も繰り返し復唱していた。そしてシルヴィの言葉に素早く敏感に反応した。「発破」・・・を「掛ける」?葉っぱ?葉っぱをかける?それだ!俺はすかさずメモ帳を取り出し「バツゲーム」欄に「葉っぱまみれ」を書いた。ゲームには何らかのペナルティが必要だと言う事で面白いかつ恥ずかしい罰ゲームを書いているのだ。この葉っぱまみれとはこの季節枯れ葉が良く集まると思うので、皆から一斉に枯れ葉を注がれ埋もれて貰うと言う罰だ。その他にも「ベイビー口調」や「パイ投げ」、「常にガニ股」、「語尾地獄」など、罰になるか微妙な物を含めて色々罰を用意していた。

じっとしていた俺が突然高速でメモをし始めるのを見て有馬発破隊は何やら困惑していた。俺はメモし終わると晴れ晴れとした顔でシルヴィにお礼を言った。俺はシルヴィに助けられてばかりいる気がするな。向こうは何の事を指すのか全く分かっていないようだが、説明するのも億劫だ。それにやっぱりこういうのは本番まで隠してやるからエンターテイメントというものだろう。俺はただ感謝の意を述べるに留まるのだった。

その後聖華の言葉の「急あつらえ」から「急熱らえ」に誤変換した俺は「ロシアンお茶一気飲み(一つだけわさび大量混入)」を思いついたり、シャルの「期限」から「どれか賞味期限切れにつき(一つだけ賞味期限切れ)」賞味期限切れを引くと罰ゲーム、を思いついたり感謝の念は絶えなかった。やろうとするアイディアが増えれば増えるだけ選択肢が増える。そうすれば代案が効く、この安心感こそが心に余裕をもたらすんだ。だから直前になって焦らないように時間がある内にこそ、出尽くす勢いでアイディアを掘り出す必要があると思うんだ。

俺は目の下にクマが出来ようが眼ヤニが付いていようがお構いなしにひたすら周囲に目を向け、気を張って金曜日の放課後まで生活を続けていった。この瞬間だけでも真剣にならなければ俺の見せ場がいつ来るとも分からないんだ。

ここまで全力でやっているおかげか、不安は全く無く成功して笑う俺の姿しか映らなくなっていた。俺は授業中意識が朦朧としていったが何とか聞こうと白目を開けて聞いていた。後に教師が言うには気を失うようにして寝ていたという。しかし授業の数分寝たおかげで今日もしっかり夜中情報収集が出来ると俺は笑ったのだった。


―続く―


はい、どうも自堕落トップファイブでございます!や、自分で色々考えて出した結果がコレなんですけどね(笑)そして問題はこれらを上手くまとめあげることが出来るかって感じですね、作者が。やってみんことには分かりませんが、どうにかなるでしょう多分。今まで結構そんな感じだったので何やかんやでやって行こうと思っています。それでは皆さんまたお会いしましょう!次はパーティー本編になるのかな?

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!運命の日、彼の命運やいかに
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/26 18:17
哲平主催パーティーの進捗状況は自分で言うのもなんだが、良い手際だったので滞り無いと言えた。ただ根津との漫才はやむを得ない事情のために中止せざるを得ないことが、少々残念だった。というのも互いがほとんどボケの特性を兼ね揃えた人間だ。ダブルボケで「ワニを買いたい」や「俺、社交部止めて山賊になる!」など複数ネタ合わせをした。しかしどうにも鋭いボケに緩い突っ込みのため、締りが悪いのである。テンポもなかなか良かったと自負しているが、どうも突っ込みとなると噛んでしまったりするのだ。人気コンビ「笑いご飯」のようには到底なれない俺達だった。

そして根津も俺に真っ向から突っ込みを入れるのが厳しいとの事で、自然俺が突っ込み役に回っていた。しかしいかんせんネタの完成度や俺の突っ込みの火力が弱火なため、無念のリタイアとなってしまったのである。漫才らしく似合わない関西弁でのネタ作りがこの悲劇を生んだのかも知れない、などと後に振り返りながら俺はそう声を漏らしたそうな。

しかしその他の準備に関しては大方仕上がっている。最後までやるかどうしようか悩んでいた「聖華先生のマナー教室」だったが、何やら本人に話した所やる気マンマンになられたので、30分程度に伸ばして行うことになりそうだった。聖華のあの様子を見ていると1~2時間でも問題が無さそうだが、実に白けたムードになりそうなので分の悪い賭けに出る訳にいかない。

今回の一件に関しては爺さんに感謝せねばなるまい。というよりあのお方が居たからこそ、俺如き凡夫でもパーティーなどという高貴な催しを開催出来るのである。その節はどうも~と子会社の社長みたいな挨拶をすると「気持ち悪いから止めろ」とバッサリだったので、今は普段通り接している。だって、ねぇ?こんだけしてもらって「おら、爺さん意味も無く電話してきてんじゃねぇ~よ、ああん?」とか言ってたらどんだけやりたい放題なんだって。俺は若さ控えめ、暴投少なめに最近自分をセーブするようにもなっていた。

明日がパーティーの日だ。場所、内容、そして気持ちは万全に整っている。俺はこれがどのような結果に終ろうとも、潔く聖華の方針に従うと決めていた。これだけやって駄目なら、今後も同じような事になると俺は思うからだ。それならば一層の事、今回死ぬ気でやって上手く行けば自分への自信というのも付くじゃないか。「俺はやれば出来る子」何ていうのは出来ない、やらない、やる気無い発言だと思っている。やれるかどうかというのも一つの才能なんだ。「じゃあやれよ。」という発言に尻込みしてしまうようでは今後やる可能性は無いと言ってあながち間違いはないだろう。

実際俺はシルヴィにもう惚れているのかも知れなかった。あの気丈な生き方を強く憧れるようになっているのだから。でも好きになるのなんて初心者な俺は、自分の気持ちを憧憬の気持ちとして捉えるように心掛けた。というより好いた惚れたと認識すると途端に「シルヴィに好かれたいから」とシルヴィ的には軟弱な発想になってやしないかと不安になるからだ。だからこそ人生の師としてシルヴィに師事を乞う事にしたのである。今までの無礼がある手前、本人には言わず隠れながらそう思っているに留まってるが。

・・・いかんいかん、明日が決戦の日だと言うのに何シルヴィへの熱い気持ちを独白しているんだ。今はそれよりも体を休め己の体を万全にし、体調を整える方が先決じゃないか。俺は別に惚れてる訳じゃないんだ、ただ強く尊敬できる生き方を見て俺もああなりたいだけなんだ。自分で何故言い訳を言う必要があるのかと不思議に思いながら一時の休息を取るのだった。

・・・

明朝、ガバリと俺は跳ねるように飛び起きた。やばい、俺寝過したんじゃね?大丈夫なの、時間は、時計はどこ、ああ何も分からない!ここは一体誰なんだああああ!錯乱しながら縦横無尽に右往左往する俺。この場面だけ見ると本当に異端児にも程がある。

ガンッ!←テーブルの角にヒザを思いっきりぶつける音

「~~~!!!」

痛みに堪えることに必死で声すら出せず俺は激痛に身を委ねた。おかげで目やら気分も治まって来た。時刻は4時半、新聞配達員にでもなれそうな時間帯だった。最近寝る時間が余りに短時間過ぎたため体の方が順応してしまっているようだ。結局2時間しか寝て無いのにやけにスッキリしている。俺は早速タキシードに着替え鏡の前で身繕いを行った。

タキシード姿で机に座すのもおかしな風景だが、俺にとっては別段恥ずべきことでもない。それより何より今回のパーティーをベストにするためにももう一度今日の流れを頭に叩き込む必要があるのだ。俺は普段タキシードなどという紳士服に身を包む事が無いので、今日は一日中着ていようと思っていた。今振り返ればいつも以上に緊張感のある食事だった。こぼしたらえらいこっちゃ!という気持ちで食すのでカトラリーをつまむように持ち終始一貫プルプル震えていた。後ろでシェフも違う意味で震えていたが気にしない。そして更に違う意味を持ってお目付け役に叱られたりもした。す、すいません、へ、へへ、慣れないもんで。

俺は午前中は部屋をパーティー会場と見立てて一連の流れを声に出しながら部屋の内部をグルグル周っていた。そしてこれではまだ足りぬと昼食後すぐに会場に真っ先に到着し誰も居ない広大な場所で、一人同じようにイメージトレーニング兼練習試合をしていた。

午後4時全ての準備を終えた俺は会場の石段に腰を下ろし空を眺めていた。不思議な物だ。勉学に関して俺はハッキリ言ってここまで本気で取り組んだ事が無い。いつもテストの日になって初めて教科書を広げ声を大にして音読ばかりしていた。結果最初だけ強く印象に残っておりどうにか20点付近の点をものにしていたのである。こんな俺がここまで頑張る日が来るなんてな・・・。フッと俺は自嘲に近い笑みを浮かべた。これは相当シルヴィにお熱なのかもな、何て考えがよぎったのだ。気付けばシルヴィの事を引きあいに出している時点で手遅れな俺だった。

「いよっしゃー!一丁やったろうじゃないか!」

俺は天を突くように声を張り上げ、選手控え室と化した会場で息を整えるのだった。絶対に勝鬨の声を上げてやる・・・。

・・・

時間通り集まった面々を迎えたのは哲平の、殴り書いたような下手くそな字が刻まれた立て札だった。

「声が掛かるまで開けないで下さい。哲平」

「何これ?」

当然の疑問を最初に発したのはやはり社交部代表だった。シルヴィは大まかに話の流れを哲平と作り上げたので一人笑いを押し殺していたが。一同が会場のドアの前で待たされまだかまだかと思い始めていた頃、パーティー開始となる哲平の声が内部から聞こえて来た。

「社交部の方々の、ご入場~!」

その言葉にドアが勢いよく開き、進路方向にバララララと赤い絨毯がひかれていった。そして電気の付いていない会場の一部が明るくなり盛大なファンファーレと共にオーケストラが社交部一同を迎えた。彼らにとって予想外過ぎる入場シーンだったようで、皆顔を見合わせながら恐る恐る内部に入って来たその瞬間

 パチパチパチパチパチパチパチパチ

誰も居ない(オーケストラ部隊は演奏中)のに大量の拍手が降ってくるものだから動きも止まろうものだ。その気持ち汲み取ったと思われる手を叩く仕草をした等身大マネキンが数個ほど左右に居たが、あまり効果は無かった。しかし怒涛の拍手の割に余りに数が足りて無いマネキン達はシュールな笑いを醸し出していた。ご丁寧に一人一人おでこに名前が書いてあり、入口付近で佇んでいるマネキンはピエールらしかった。

予期せぬ出迎えに社交部御一行は例外無く驚いていたが、シャルや根津の笑い声をきっかけに皆笑いながら中へと入って行った。掴みはバッチリのようで何よりだ。これ以上の歓迎の仕方を俺は思いつかなかったのだ。その後オーケストラ部隊は一礼して場内を後にした。

しかし先の声を発した本パーティーの主催者の姿が見当たらず、皆きょろきょろと辺りを見まわしていた。というのも歩いていく方向と自分たちの立ち位置のみにライトが照らされ周りがよく見えないのだ。その時パッとライトアップされ哲平の姿が前方に晒されていた。タキシード姿の彼の威風は堂々たるもので凄くこの場を楽しんでいる様子にも見えた。恭しく右手を腹部にて折り曲げ頭を下げる哲平

「ようこそお越し下さいました。本日はこの有馬哲平のために割いて頂いたお時間。誠心誠意、粉骨砕身の気持ちでお返ししようと心を据える次第です。さぁさ、そのような場所に立たれずともどうぞ各自席にお付き下さい!」

俺はここで一つハプニング的な意味を込め、根津に頼みを聞いて貰っていた。本当俺の頼みを嫌な顔一つせず聞いてくれる彼に心から感謝の意を唱えたいと思う。皆が座り根津も見計らって仕掛け椅子に座らんとしていた。座ったその時

バキィ!!

激しい音と共に根津の椅子の足全てが綺麗に外向けに折れ、そのまま下に落ちた。丁度後ろに体重の掛かった体育座りのような態勢に根津はなっていた。何事かと思い一様に根津の方を見ると根津は何やら体育座りになっているので、聖華部隊すら吹き出していた。その後笑い声をBGMに形だけの謝罪と共に俺は根津に新しい椅子を用意した。その時感謝の言葉を言いながら。お前が居なければ成り立たなかった笑いだ、誇っていいよ。その後全ての照明に明かりが灯された。

根津の援護も有り完全に緊張感が無くなり、一転して和やかな談笑が始まった。俺はそれを見計らって次のシナリオを進めることにした。

「皆さま、私の不手際によって少々お見苦しい所をお見せしてしまいましたね。謝罪の意を込め最上のおもてなしをさせて頂きましょう。」

俺がパチンと指を鳴らす仕草(鳴らせない)でもって料理の合図をした。ガラガラと台車と共にありとあらゆる料理に皆目を爛々と輝かせていた。なんせ料理もお出しするのでぜひ空腹になってご参加下さいと言っていたのだ。しかしその台車達は一同に匂いを振りまくだけ振りまいて出て行った。皆物欲しそうな顔でこちらを見て来るので

「皆さん私の言った『空腹』の状態のようで、私感謝感激する次第です。食事の時間にしても良いんですが、ただ食べるのも面白くない。ここは一つゲームをしませんか?」

俺はしませんか?などと言いながら断定的な気持ちで発言していた。反論の声があったとしても完全に聞き流して先に進む次第である。俺の言葉と同時に今度はディッシュカバーによって料理が隠された台車が運ばれて来た。皆興味深そうに見ている。

「さて皆さん、空腹はより食事を美味しくするものです。ぜひゲームに勝ち先陣を切って楽しく料理をしていただきたいものですね。」

俺はにこやかに話しかけながら話を進めた。

「こちらには皆さんと言えどそうそう食べた事も無い食材を用いて絶品の料理が入っております。そして皆さんにその名前を当てて頂いた方のみ差し上げるという形のゲームですね。残念な事に当てることの叶わなかった方には残念賞ノドアメをお配り致しますので、どうぞ指を加えながら悔しがって下さい。」

突然のゲーム展開に軽く付いて行けてない人も居たが概ね理解して、やる気にみなぎらせていた。そこまで食べた事の無い奇跡的な食材は爺さんにも手が余るようで、実際にはそこまで難しくない。ただ名前が珍しかったり食べた事がある程度にしか分からないはずだ。俺は一人一人にホワイトボードとマジックを配り一皿ずつ回答して貰うようにした。そして正解者にはディッシュカバーを取りその食材を堪能して貰おうという訳だ。食い意地の張った奴はいないと思ったが、念のため力士3人分食う量くらいは一応ストックとして用意させてある。

最初は分かりやすいフカヒレだったので皆仲良く食べていた。ここも重要な所で最初から飛ばし過ぎると楽しめない人がどうしても続出してしまう。だからある程度お腹に納めて貰う意味でも簡単で尚且つ高級な食材を出す事にしていた。計10品の珍味にして高級な食材を厳選して出していた。大体3品目くらいまでは一般人でも答えられそうな食材にし、4~7品目で超高級、8~10品目に関しては普段なじみのない食材を使った料理を題材にしていた。8~10品に関しては材料を調達する事から厄介でしかも目玉が飛び出るほど高い。あまりの希少価値故に。そのため流石に爺さんの手を持った俺でも2人分の量が手一杯だった。恐らくその金で俺が買えると思ったほどだ、人身売買やら臓器を売る意味で。

しかしは流石は社交部員の方々と言うか、ほとんどの人が4~5問程度正解していたので最後は完全に娯楽ゲームと相なっていた。元々が知的好奇心の高い彼らなので、興味深そうに食材を目にする姿は司会の俺としても気分がいいものだった。俺は満足げにお腹を膨らませた彼らを横目に次のシナリオに進めんとしていた。

「いやはや、流石は社交部の方々と言いましょうか。私にはどうにか1,2問正解が限度という所なので感服いたしました。そんな私に今日は聖華先生が時間を割いてマナーをご鞭撻していただけるそうです。皆さんもよろしければご一緒にどうですか?自らのマナーが本当に正しいかどうか、照らし合わせる良いきっかけにもなるかと。それでは先生本日はお忙しい中ありがとうございます。それではよろしくお願い致します。」

「はい、よろしくお願いします。それではまず始めに・・・」

教師役として聖華の気分も上々だった。上手く自分を下げながら周りを持ち上げ俺は聖華のマナーをしっかり聞き、駄目生徒の役を演じた。聖華に度々注意を受けるたびに皆は頷いたり、メモを取っているようだった。聖華部隊も両手を組み凛々しい聖華の姿に、改めて尊敬と感動の気持ちで一杯のようだった。俺はどうにかここまで成功に進んでいると、内心で安堵のため息を付いた。

その後も俺は思考を凝らした策をシナリオ通り淡々とこなしていった。元々準備だけは嫌というほどやって来た俺だ。流れに乗れば後はやる事をやればよいだけなのである意味楽だった。一つの皿だけ突然火を噴いたり、ダーツ罰ゲームの旅をやったり、様々なゲームやらイベントをこさえて終始皆の感情の発露は豊作だった。聖華もこのような場で無粋な事は言わず純粋に楽しんでくれたのも感謝だ。マナー教室で俺に対する評価も変わったのかもしれないが。あいつがバツゲーム、「イエス様ダンス」(イエス様YES!と叫び連呼しながら、コサックダンスを30秒する)をしてくれた時は俺も笑った。まさか本当にやってくれるとは思わなかった、しかも真っ赤な顔してたし。シルヴィにパイ投げをかましたり、散々自分も笑っていたのもあるだろうが。ほとんど出て無いシャルロットはどうしたって?ご心配無く今手を叩き、大口を開けてコサックしている聖華に指を指して笑っているのがその姫様だよ。

最後は上品もへったくれもないシャンパン砲を各自ぶっ放しての終了となった。俺達はシャンパンの匂いに酔いどれながらも肩を叩きあってひたすら笑い合うのだった。俺が正式に社交部に入部出来たのはよもや確認するまでもないだろう?

―続く―

はい、どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!いや~自分で書いておきながら笑ってしまいました。流石は哲平というか、やる時はちゃんとやってくれんだよ!って気分に少々誇らしくなったり。まぁ一応一段落付いたって所ですか。まだオリジナルの方はパーティーすら始まっていない状態で、こんな所まで書いてしまったのです。また色々問題があれば変える方向ですが、今の所この内容に僕は満足ですかね。それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂いて誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!完全に堕ちた哲平、君にフォーリンラブ!
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/26 17:28
 俺は特別お世話になったと言う事で菓子折りをち、ホッセン家族に感謝と自身への打ち上げの意味を込めてまたお邪魔になっていた。もう使用人とは顔見知りの間柄になっており、いちいち事前に連絡する必要すらなかった。俺は柔和な笑みと共に屋敷内へすんなり通してもらえている。

ホッセン卿とマリアにパーティー内容を告げると、二人して笑い転げていた。もっと俺が緊張して結構格式ばった形式になるんじゃないかと、二人で話していたかららしい。余りにも計画通りに俺がパーティーをやった事を知らされたホッセン卿は笑い過ぎて涙が出ていた。涙を人差し指で拭いながら

「い、い、いやぁ~僕もそのパーティーにはぜひ参加したかったよ~。」

という俺にとっては最上の言葉まで頂いてしまった、誠に恐悦至極なり。マリアも同じ想いのようで

「マリアもお兄ちゃんのパーティーには絶対に参加する~!」

と腕をバタバタさせながらアピールしてきた。本当に家族に恵まれてるよな、シルヴィは。俺は本当に家族になりたいと思いながら、出来る限り妹に接するような仕草でマリアの頭を撫でてあげるのだった。シルヴィも俺のマリアに対する接し方に満足のようで優しい微笑みでその様子を眺めていた。

その後マリアのねんねの時間が来てしまい、ホッセンパパは目を擦るマリアを引き連れ出て行く時に小声で

「僕はいつだって公認だよ。哲平君、シルヴィの事は任せたよ。」

何てボソリと耳元で囁きウインク付きの親指を立てて去っていった。そ、そんな事言われたら変な想像しちゃうじゃないか、止めてくれよ。俺は断固としてプラトニック・ラブを貫く構えを崩さないぜ?ドキドキ・・・はぁ、シルヴィ何ていつも通りなんだ、俺ばっかり頭おかしくなっちまう。俺は勝手に場の雰囲気に耐えられなくなり、お手洗いと嘘付きながらバルコニーに向かった。

俺は一人手すりに身を預け、夜空を眺めていた。どうしよう、俺もそういうのちょっとは興味あるけど、と言っても友人になりたてって感じじゃないか。いくら何でもがっつき過ぎっていうか、優さえ振り切った俺がどうしてこんなに悩む必要があるんだ。そうやって悶々と俺が一人で脳内会議を開いていると

「あなたは人の家でお手洗いに行く時、バルコニーに来られるのですか。猥褻物陳列罪、公然猥褻、並びに器物損壊罪で訴えますよ?」

悪戯な笑みを浮かべながらシルヴィは俺の横に並びながらそう言った。こうして俺に冗談まで言ってくれるんだ。俺もそれなりに心を開いてもらっているのだろうか。俺は少々ナイーブになっていたので小声で「ごめん、嘘だった」と言ってまた星を見始めた。シルヴィももう何も言わず、ただ俺が何かを喋るのを待つかのように隣りで俺と同じ姿勢をしていた。

「シルヴィ、今日のパーティー、悪かったな。」

俺は話を変えようと全く違う話題で謝罪の言葉を口にしていた。シルヴィは予想の斜め上を行く俺の謝罪に頭を傾けながら

「?・・・いえ、父上やマリアも言っていたように有馬殿のパーティーは素晴らしかった。私に謝ることなど何も無いように思うのですが。」

「シルヴィやお前のお父さん、お国柄のパーティーを強く推薦してたじゃないか。その期待に添えなかったことに謝っているんだよ。」

シルヴィは俺が謝るのは寧ろお門違いであるというようにブンブン頭と手を振り

「いえ、私の手助けと分かれば鳳条院の口もさぞ尖るに違いありません。有馬殿の意思を持って自らの手で道を開かれた事に私は尊敬の念さえ抱いているのです。私にはとても立派に見えていましたよ。あなたは誇っていい。」

俺は完全に心臓を鷲掴みにされた気分だった。ああ、もうこれは惚れるわ。こんな今までで一番優しい顔で一番気持ちが揺らぐタイミングで言われたんじゃ、いくら硬派な俺だって落ちるわ。俺は紅潮した顔を背けながら蚊の鳴くような声でありがとうと礼を述べていた。もう嬉し過ぎて手すりに寄りかかっていなければ、立っていられないほど俺は足に来ていた。俺は人に認められる、それも好きな人に。その事に今まで味わった事の無い正体不明の感情を覚え、気付けば手すりに顔を押しつけ涙を流していた。錯覚かもしれないが俺は今日この喜びのために、両親に生かされた気さえしたんだ。

「あなたは本当に訳の分からないお人だ。」

今まで同じ事を何度も言われた俺だが、その時の声はまるで尼のような慈愛に満ち溢れ、全てを包み込むような響きで俺の脳に届いたのだった。俺から全てのわだかまりが抜け落ちるかのような感覚に俺は襲われた。今までの無礼や不躾な行い、全てを謝罪しようと今この場で生まれ変わらんとするように涙と共に皮膚を剥くかのように声を押し殺して俺は泣いたのだった。

一通り泣き終わった俺は真っ赤な目を隠そうともせずシルヴィに向き合った。シルヴィも俺が決意を込めた目で自身を見つめられていると分かり、真剣レンズを眼に装着した。俺は言った。

「俺に分からんのは俺にこのような高揚感を与えるシルヴィの方だ。」

好きと言ってしまうのは簡単だが拒否されるのを無意識に怖がった俺は、持って回った言い方をしてしまっていた。当然男女間に関しては鈍いシルヴィに伝わるはずもなく

「・・・何の事を仰っているのか分かりかねますね。具体的な話をして頂きたい。」

「いや、今日はこのぐらいにしておこう。俺が俺で無くなるのが怖いんでね。俺だって自分の気持ちを持て余し気味なんだ。もうちょっと自分と向き合えてから再度話し合うことにしよう。」

「よく分かりませんが、有馬殿がそう仰る以上私に言うべき言葉はありません。もう良い時間ですが、そろそろお帰りになられますか?」

「そうだな、夜も気付けば更けてしまっているな。夜分男女変な勘繰りを父上にされるのも嫌だろうから、俺はさっさと帰るとしよう。」

最初と違い、今度は俺が悪戯小僧の顔してシルヴィにウインクを送った。流石のシルヴィもこの一言に気付く物があるらしく顔を爆発させた。

「な、なななな、何を仰っているのです!そのような世迷言が言いたいのならどうぞお引き取り願いたいっ。」

口調は怒っているように見えるが照れまくりの顔なんだから、迫力が全くない。俺はいつもの調子を取り戻し大笑いをしながらホッセン邸を後にするのだった。

―続く―

どうも皆さんこんにちは!自堕落トップファイブでございます!ありゃりゃこれまた完全にオリジナルな物語になってしまい申したなぁ(汗)でもこれはこれで哲平の魅力を伝える一話になるのではないかと思います。オリジナルの方はシルヴィの剣舞に見とれておる様子ですが・・・。僕としてはシルヴィの格好良さよりも哲平を前面に押し出したい考えですので、シルヴィの剣舞が出る可能性は低い、かな?まぁこの先どういうシナリオ運びになるのか作者自身も分かりませんので何とも言えません!それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!クラスで二番通達に哲平涙目
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/07 11:40
 少々前後してしまって申し訳ないが、シャンパン砲の後の話を少しさせて頂こう。俺は主催としての責任からそこまでも無かったが、シャルからのたび重なる砲撃の直撃を受けた聖華は完全にえらいことになっていた。

「つぅえぇっぺぇ、やっは、アンタおもひろいからにゅうぶでいいわひょう、アハハハたのしい~、う~い。」

きちんとした口調というか現代語訳するとこうだ。

「哲平、あたなはやはりとても面白いお方ね。だから社交部に正式に入部でいいわよ。私何だかとても楽しいわ、オホホホ。」

まぁ少々ニュアンスの差異はあれ、大体こういうような事を仰ってたんではないかと。その後金子と竹園に散々絡みながらそれぞれの肩に手を回しつつ、二人に介抱されながら帰ったのだった。俺は最後まで気を緩めることなく丁重にお見送りしたのだが。

翌日前後不覚になった事をかなり自責したのか、聖華は一日学園を休む暴挙にも出ていた。俺はかなり戸惑ったが次の日には何食わぬ顔で社交部に出現し、俺の鼻っ先にビシリと指を突きつけ

「あんたのパーティー確かに楽しかったし、その手腕と社交部入部は認めるわ!でもねっ、それとこれとは舞踏会になんら関係ないんですからね!覚えておきなさいよ。それとやり過ぎ厳禁、全くとんだ災難だったわ。」

どうも二日酔いによって学園を休んだらしかった。彼女も社交界に出入りする身なのでそこまで下戸では無いらしい。シャンパンの度数は10%だったと思うが浴びるように喰らってたしなぁ。

俺としてはパーティーモードは既に解除済みなので、いつものようにだらしない返事を返すのだった。俺はシルヴィに近づくために社交部にいるのであって、舞踏会なんて興味無いも~ん。

しかし有難い事にあのパーティーの一件以来、聖華がそこまで俺に目を付ける事は無くなっていた。俺が不思議に思ってその事を聞くとそっぽを向きながら

「あんたやる時はやるってこの間見せてもらったから私としてはもういいの。でもあんまり日常生活がだらしなかったらその時はビシバシ言わせてもらうわよ!」

との事らしかった。何やら俺に対する評価はプラスに転じたみたいなので、俺としては何ら不満は無い。寧ろ今後口うるさく言われる事が減少すると思えば美味しい話でさえある。俺はその時ばかりは元気よく聖華に返事をしたのだった。

また変化は社交部内だけに留まらなかった。

「社交部に有馬グループを担うご子息有馬哲平殿がようやく加入?!」

どこぞの女性誌の見出しにもなりそうな文面に俺は思わず目を疑った。何故に俺が社交部に入部しただけでここまで世間を賑わす事になるのだろう。改めて自分の組織の大きさに身の危険を感知せざるを得なかった。

また俺はシルヴィの前で泣いたあの日から、他人にえらそうな態度を出来るだけ止めるように心掛けていた。というのもやはり今さらながら振り返ってみると情けない態度に見えるのである。聖華軍団に大昔心中で思った「弱い犬」に自分が見られる事に耐えられそうになかったのだ。

不真面目さは相変わらず一人前の俺だから、常日頃のやる気はてんでない。今日も月曜だというのに金曜日の時間割で登校したので、余所のクラスの知り合いに教科書その他を借りに行っている最中だったのだ。しかしそこまで親しく無い奴だったのに、今日に限ってやけにフレンドリーに教科書を差し出して来ると思ったらこういうことだったのか・・・。

フレンドリーに話しかけて来るのは教科書を貸してくれた野比君だけじゃない。他の生徒だって何やらにこやかに話しかけてくるじゃないか。生来疑り深い俺は彼らの下心ばかりに目が行ってしまう男だが、挨拶位はしっかり送り返すようになっていた。と言っても、ごきげんよう、こんちわ、どうも、のいずれかだったが。

そして教室に戻り俺の机の上は手紙やら封筒がごった返していた。いつ入れられてるのか分からないが、俺が登校して鞄の中身を机の中に入れようとしたらそれらがぎっしり詰まっていたのである。とりあえず邪魔だからどけようと机の上に手紙類を置き、ふと気付けば金曜日の準備をしていたと分かり、そのまま教室を出て行ったのである。我ながら行きあたりばったりにも程がある行動である。

俺は改めてこんもり山を形成している手紙達をスライドさせて鞄の中に流し込んだ。このぞんざいな態度のイメージアップを図るために「君達は後で読んであげるからねぇ。」と優しく微笑みながら詰める姿は、少々危ない人かもしれなかった。俺がようやく授業の準備を整え、席に付くと同時に普段喋らない連中からも挨拶やら応援の声を寄せられる事となった。

人生で一度はちやほやされたいと思った時期はあったものだが、今の俺は面倒臭がりな怠け者類に属しているので厄介極まりない状況だった。しかし自身では改心したと思っているので投げやりな対応も出来ず、苦笑いを張り付けながら応対するハメになっていた。俺は寧ろ遠目にこちらの様子を羨望、悲しみ、誇りなどをごっちゃにした顔で伺う優の方が気になっていた。そう言えば最近俺と余り接する機会無いもんなぁ・・・。

と言いつつも朝学校に登校する時とか家に帰った時、食事を取る時などほとんど一緒にいるのでそこまで過度に心配する必要も無いのだが。結局俺は散々周囲から暖かい声を全身に振り掛けられ、寝る時間すら無く授業を迎えた。いや、寧ろこれからが睡眠タイムか?俺はよほど真面目な人間になりかけてたんだなぁ、と自分を褒めながら授業中眠りに付くのだった。

その後体たらくにも程がある俺は全授業を眠りの王子として存在し、起きていたのは昼休みのみという救いようのない男になり下がっていた。だが俺はそんな自分が好きなんだ・・・とか言いながらまたお休みの時間(午後の部)に差し掛かったのだった。

家では外を元気良く駆け回る小学生の心で引きこもった。オンラインのネットゲームにどっぷりハマっている俺は、電脳世界で敵をバッタバッタとなぎ倒しているのだ!背後からの着信音に気付き俺は両耳に付けるイヤホンを外し携帯に出た。もう最近は同じ相手なので確認する必要さえなかった。

「爺ちゃんどうしたの?」

「ヴィンセントから聞いたぞ。シルヴィアとまずまずな関係になっておるようじゃな。」

「うん、それなりにはね。俺の本命シルヴィなんでそこんとこよろしく。」

「ふん、ヴィンセントの言った通りになるやもしれんな。」

「へぇ、ホッセン卿何か言ってたの?」

「うむ、シルヴィに旦那が出来る日が来るなんて嬉しい、とな。」

「へへっ、あの人も飛ばすねぇ。まぁ俺は焦らず一歩一歩進むとするよ。」

「それで良い、ではな。」

「またね。」

俺は携帯を切った後再び画面に向かうのだった。趣味に没頭するのは男気溢れると信じて止まない俺は今の行いを全く恥じていなかった。何より興味の無い勉強をやらされてると思うなら寝る方を選ぶ男なのだ。シルヴィは尊敬するが媚びを売るように自分の生き方を変えようとまでは思わなかった。俺の個性を持ってしてそのままシルヴィに近づく、これが俺の選んだ道だった。そこで壁に当たった時はその時に考えるとしよう。まずはやりたいことやんなくちゃ、人生楽しまないとねっ!俺は居ない誰かにウインクを投げながら心の中で思った事を白状した後、またしても敵をなぎ倒す作業に入ったのだった。

・・・

「哲平、あんたご来賓の方々にお送りする招待状の文面出来てんでしょうね。」

俺は以前渡したような気もするが下手に刺激して怒られるのも嫌なので下手に出る事にした。一度やった事を同じようにすればいいだけの話だし。

「え、あ、ごめん!渡した気したけど自信無いからもっかい作り直すわ。」

「あんたいつも適当な事ばっかり言ってるからやったかどうか分からなくなるのよ。今度からちゃんと自覚を持って発言するようにしなさいよね。」

思った通り怒るよりも呆れるの方に流れてくれたみたいだ。俺は子分のように、へへへ、すいやせん姐さん、と手を揉みながら招待状の文面を再び作る準備に入っていた。そこへ俺にとっては嬉しい予想外の一手が入ったのだ。

「有馬殿は以前、鳳条院にその事を報告したのを私は見ている。」

何と俺は夢でも見てるんでは無いだろうか、シルヴィが俺を庇ってくれているじゃないか。俺は両手を胸の前に組み滝の涙を流しながらその光景に酔いしれていた。

「何よ、哲平を庇う気?躾ってのは最初が肝心なんだからっ。甘やかせば何でも良いってもんじゃないわよ。」

俺はその言葉に回し車を走り回るハムスターのように、急いで文面を書き始めた。しかしシルヴィは尚も俺に手を差し伸べてくれるようで

「落ち度を素直に認めるのも度量の一つ。自分の机でも探してみたらどうです?」

と追撃を聖華に喰らわせていた。ダメージの蓄積量もなかなかの物らしく聖華は後ずさりながら、弱々しくシルヴィに威嚇していた。俺としては変な諍いは真っ平ごめんなので、もう文面を書き終えようとしていた。俺の持つ筆はハツカネズミの如くすばしっこい動きで紙面を走り回りながら、あっという間に書き終えたのだった。

「はい、出来たー!一丁上がり、これにて一件落着、はい握手握手!」

俺は二人の間柄を取り持ち、円滑なコミュニケーションを取り計らった。シルヴィは渋々、聖華は気まずそうに互いの手を握り合っていたがどうにかこの場は治まったと一安心だ。その後字が汚いと聖華姐さんに叱責を受けたが通りすがりにボソリと「ありがと」と言われたのでチャラってもんです。

その後も生真面目聖華ちゃんは何やら学期末試験だの終業式だの不穏な単語を連発していたが、柔らかい俺の心には届かずひたすら四方八方に跳ね返っていた。俺とシャルは顔を見合わせテスト嫌ねぇうふふ、そうねぇうふふ、とただ肩を組んで仲良く笑っているのだった。さらに聖華の怒号の勢いが増した事は言うまでも無い。

僕は下から一番目指すからいいんですっ、ウフッ。その後も聖華からの非難は轟々と吹き荒れていたが、俺はシャルロット姫という上質な防空壕に身を寄せていたので、一切火の手は届かなかった。

尚も俺の首根っこを掴もうと両手を怒らせながら、金子の次の2番は最低取りなさいよ!と吼えていた聖華であったが無論俺に聞く耳など持たなかった。しかし俺がシャルに身を寄せているのをムスッとした顔をした愛しのシルヴィが何と聖華に肩入れし出した。

「ええ、確かにそうですね。全くその通りです。鳳条院の言う通り社交部の誇りとして、ぜひとも有馬殿には優秀な成績を修めて頂きたいものだ。」

俺は思わぬ言葉に思わずシルヴィの方へ目を向けると、何やら鼻を鳴らしながら不機嫌そうにそっぽを向かれておるではないか。俺はこの時初めて自身が何やら致命的なミスを犯したことに気付いたのだった。俺はそっと安全地帯(シャル)の元を離れ汗をダラダラ流しながら、右手の親指以外の指を口に突っ込んで泣きべそをかいていた。そしてシルヴィはなおも冷たい目で俺を人睨みした後「出来ますね?」と最後の一撃を加えて来た。愛すべき人の一撃に俺はもはや完全に退路を断たれてしまい思わず

「・・・はい。」

と涙声で返事をよこしているのだった。やりたい放題に生きていた俺が惚れた途端になんと脆弱になってしまったんだ。今日からまた机に齧りつかねばならんじゃないか。俺は心なしかやつれたように自覚しながら心の中で「やるか・・・。」と再び決意の意を表明したのだった。

―続く―


はい、どうも皆さんこんにちは!自堕落トップファイブでございます。どんなに駄目な奴でもやらなければならない時に立ちあがれるか、それが重要だと思いますねぇ。僕の哲平はそういう思いを込めて書きあげています。何だかんだ言っても根が善人なので、誰かのために自分を律して頑張ろうとする様は僕には少々かっこ良く見えたりします。ともあれどう感じられるかは読者の皆さん次第なのでこれくらいにしときましょうか。それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂いて誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!またしても死に物狂い?哲平の勉強乱舞
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/27 06:15
 「おお、シルヴィ、愛しのシルヴィや!どうして、どうして俺にこのような過酷な試練を与えるのだ。一体どうして!」

俺は両手を広げ天を仰ぎながら演劇家のように声高らかに叫んでいた。目の前に積み重なった参考書と現実から逃げ出さないように、椅子にヒモで縛っているので座った体勢でだ。俺はその状態を数秒ほどキープした後両手をだらりと下ろしながら椅子にもたれた。

俺は何やら悲しくなって来ていた。意識した途端にこうも立て続けに我慢や苦悩が連続で津波のように押し寄せて来るのだ。一体何が楽しくて人とは恋愛などするのだろうか、などと柄にも無い事さえ考えていた。こんなに苦しいなら愛などいらぬ!などと言う言葉を飲み込み、俺はまた机に向かうのだった。好きなんだからしょうがない、やるしか無いならやって散ろう、そう考えていたのだ。

いつか言ったと思うが俺の人生振り返って30点が大台という低レベルさで、クラス2番を目指そうなど完全に夢物語な話だ。楽器を触った事の無い人間がオーケストラを演奏しようとするような物だ。そもそも勉強の仕方が分からないのである。この程度勉強すればどのくらい取れる、と言った感覚がそもそも無いので結局片っ端から覚えるしか方法が無かった。

従って莫大な量の暗記をするハメとなり、俺はもう絶望的な気分になっていた。現実逃避のためにパソコンによる仮想世界に逃げようとも思ったが、俺は先回りしてすでに優の監視下にパソコンを預けてしまっていた。使う用途と本当にそれを有言実行しているかを優の監視の元でやると、優と決めてしまったのだ。勿論有益な目的のみ使用すると定めてしまったのでネットゲームなどできようはずもない。俺は頭を抱えどうしてこんな事に・・・などと悶え苦しんだ。興味も無ければ面白くもない学問をしていると、しきりに睡魔が襲ってくる始末だった。

面白いことに関しては積極的だが、こと興味の無い勉学に置いてはカラッキシの知識量だった。期末の試験なのに基本中の基本から始めないといけない俺に、どう高得点を取れというんだ。全ては日頃の行いが悪い自分のせいなのに、何やら理不尽な仕打ちを受けている気分になるから不思議だ。そんな事を思いながらも教科書を音読する辺り、俺も案外真面目なのかもしれない。俺の睡眠時間はまたしても1時間を切る日々になるのだった。

1日で一番キツイ時間は食後だ。この時間が生活の中で最も睡眠欲求が高まるのである。しかも何やら校内放送で社交部の召集命令が掛けられておるではないか。シルヴィに会える点では嬉しいが、眠過ぎてそれどころではなかった。

俺は部員としての責任からかシルヴィへの愛故にか、壁伝いに病人の如き歩みで社交部部室を目指した。社交部の部室に付く頃には完全に瞼が閉じており、一瞬だけ内部を様子見すると椅子すら空いてない。俺はもう植木鉢に腰を下ろしたのだった。観葉植物の枝をへし折りながら崩れるように座る俺に、やはりというか当然罵倒の声がした。だが痛覚やら音声認識の感覚がもはや無いに等しい今の俺はレム睡眠状態に陥っていた。

義務感から瞬間的に覚醒を果たし、内容に耳を傾けると「舞踏会」の話だったので俺はもはや拍子抜けどころか魂まで抜けて即座に夢の世界に旅立った。丁度その時タイマー設定していた睡眠学習が左耳のイヤホンから入って来て、経済学の音読が始まっていた。昼食べてすぐ寝ることは織り込み済みだったのでこうして準備しておいたのだ。

「哲平様遅刻ですよ!」

ビクッ!

俺はその一言で飛び上がった。周りを見渡すと誰も居ない部室だった。どうやら俺は落ちていたようだ。尻に枝が突き刺さり、結構痛かった。何やら顔もヒリヒリするし誰かが俺を起こそうと往復ビンタでもしたのだろうか。同じように昼休みが終わる手前に設定していた優目覚ましで起きた俺は頬を両手でバチバチ叩きながら次の授業に向けて教室に走っていったのだった。

・・・

放課後、皆舞踏会に向けて色々思案しているようだが、俺だけ一人離れた席で参考書を広げ食い入るように見つめていた。全然今の内容まで追いつけていないのだから、悠長に雑談などしてる場合でも無いんだ。俺をこんな所まで追い詰めた女がすぐ間近に来ている事すら俺には声を掛けるまで気付かなかった。

「最近、熱心ですね。勉学に励むのは感心ですが、根を詰め過ぎると却って効率が落ちますよ。」

俺の態度が真面目なのは嬉しいが体調を心配するような口調でシルヴィは話しかけてきた。普段の俺としては飛び跳ねるほどに嬉しいのかもしれない。だが焦燥感に駆られている今の俺にそのような甘言は全く耳に入って来なかった。反射的に「ああ」と返事をしているのだった。しかし俺はその時ハタと気が付いた。どうして俺は気付かなかったんだろう。もっと効率的な方法がそもそもあるじゃないか。

心なしか肩が沈んだように見えるシルヴィを見据え俺は話しかけた。

「なぁシルヴィ、お前勉強得意か?」

「何です、唐突に。」

「いや、俺勉強ってそんなにしたこと無いんだよ。」

「・・・あなたは一体どのようにして今までテストを受けてきたんですか?」

「いや、テストの日に適当に教科書読んで赤点取って追試受けて来た。」

「・・・。」

シルヴィは完全に絶句している様子だった。

「だからシルヴィ、俺はこうして寸暇を惜しみ勉強してもまだ足りないんだよ。さっきお前言ったよな、効率が下がるって。なら逆に効率の上がる方法を俺は教えて貰いたいんだよ。俺はテスト前に勉強なんてしたことないから分からないんだ。最短の道を行かないとクラスで二番なんて逆立ちしたって取れそうにないんだ。」

「・・・え?」

シルヴィの目に驚きの色があった。俺は怪訝そうにその表情を眺めた後

「だってしゃーねぇだろ、社交部の誇りに関わるんだろうが。」

ブスッとした俺の一言を受けシルヴィはきまりが悪そうに顔を背けた。俺がここまで低い知能指数の持ち主と思っていなかったのもあるんだろう。そしてまさかそこまで自分の発言に応えようと俺が行動しているのにも少なからず驚いているようだ。それでも一度返事を返してしまった以上ベストを尽くそうと俺は決心していた。だからプライドも捨てるし頼れる物は頼ろうと思っているのだ。シルヴィに馬鹿だと思われるのは恥ずかしいやら情けない。しかしそれは一時の恥であり、一生の恥ではない。後々期末で下から数えた方が早い奴とバレた時の方がもっと死にたくなる。

そして俺はシルヴィを結構世話を焼くタイプだと判断したのだ。妹もいるし騎士団長という風格なので完全に姉御肌の持ち主なのだ。断られる可能性も考えれば一種の賭けとも思えたが、俺にはシルヴィが断る姿を想像出来なかったのだ。だから俺はシルヴィに勉強を教えて貰おうと思いついたのだった。

「私は人に物を教えるのは得意ではありませんよ。」

「俺もただ教わるのは得意じゃない、見て技術を盗むのが得意だから大丈夫だ。」

「それなら安心できそうだ。」

「あぁ、それにシルヴィは適度に緊張感を保つには持って来いの人材だからな。」

「・・・怖い女で悪かったですね。」

「いやいや、私生活におけるメリハリがきちんと出来ているという意味でだよ。」

「・・・ふぅ、そういう事で納得しておいてさしあげましょう、今日の所は。」

「ハッハ、そりゃ助かるな、それじゃ勉強の方頼むな。また家に通うようになるが。」

「ええ、それは一向に構いませんがご自宅の方にはちゃんと連絡して置いて下さいよ。」

「ああ、それは勿論承知の上だ。」

そんな会話をし俺はまた参考書を読み耽った。俺は完全にシルヴィを意識しているため心の中ではドギマギしていた。そしてシルヴィは元の席に戻るかと思いきや、隣りの席で姿勢正しく何やら俺の方を見ておられるではないか。俺はその視線に耐え切れず

「・・・何?」

「いえ、有馬殿に事の顛末を聞かせて頂いた所、どうやら私にも責任の一端があるようです。だから極力傍にいるので何か分からない事があれば遠慮なく申して下さい。」

俺は突然のラッキーハプニングに弱い男なので思わず自身の頬をつねっていた、痛い。遠慮などする気はさらさら無いので、今に至るまで疑問だらけだった教科書を彼女の前に晒して勉強を教えてもらうのだった。そんな様子を部員達は「あいつら出来てんじゃないか。」という期待と悲しみの籠った目で見ていたと、羨ましそうに根津に後日聞いた。学年最下位男がクラス2番という革命的な試みを行っているんだ。嬉しいよりも死に物狂いさの方が先立つわ、嬉しいけど、でへへ。

それにしてもシルヴィは謙遜して「教えるのが上手ではない」と言ったが、俺からすれば最高級な教え方に思えた。そもそも以前は聞く気すら無かったのだから、聞く話全てが目新しく革新的に聞こえるのである。したがって俺はおおっ!とか、なるほど!などと言った感嘆調にならざるを得なかった。そして折り目正しい彼女なので教え方も非常に丁寧だ。一つ一つ抜け穴が無いように順序立てて説明してくれるため不安が無い。また俺は俺で分からない時即座に聞くので、要点の抜け落ちる心配が無かった。

それからしばらくしてシルヴィは自身を鍛える修行に向かった。(フェンシング部)俺は礼を言いながら、今まで聞いた事を一からおさらいしようと最初のページに目を移していた。

「ったく、必死なのは分かるし少しは認めてあげるけど。社交部は勉強部屋じゃないわよ。あんたも少しぐらいは議題に参加してもらいたいわね。」

呆れ時々褒め、という具合の発言に振り向くと聖華が俺のすぐ近くに立っていた。鍵を持っている所からみるとどうも閉館のようだ。俺は照れ臭そうに頭を掻きながら立ちあがると

「悪いな、俺は日頃の行いが良くないからこれでも足りないくらいなんだ。もし目障り立ってんなら図書室にでも行くけど。」

「べ、別にそこまで言ってないわよ。ただねぇ、あんた極端なのよ。もうちょっと舞踏会にも関心持ってもらいたいって私は言ってんの。」

「まぁおいおいね。昔の人は言いました。二兎追う者一兎も得ず。それじゃお先~。」

「全く・・・屁理屈だけは学年上位ね。クスッ」

最後何が面白いのか口を歪ませておられる聖華姐さんだが、俺には気を掛けてる時間などあろうはずもない。ポケットから英単語帳を開きながら迎えの車を校門前で待つのだった。

―続く―

はい、どうも皆さんおはようございます。自堕落トップファイブですこんばんは!何やらまたしても哲平に困難が襲いかかってしまいましたねぇ。僕の哲平は馬鹿だけどやる時は頑張る奴なんで。またしてもオリジナルとは方向性が違ってしまい、舞踏会についての話はほとんど入っておりませんね。300人来るだの来賓うざいだのそういうのは、実際舞踏会の日に改めて表現しようかと思っています。

彼の頑張り的に「またどうせ成功なんだろ」ムードが漂っておられるかもしれませんね。しかしそれを納得させるだけの頑張りを稚拙な文で表現して参りたいと思っております。やったらやった分だけ報われる、現実そんなに甘くないかもしれませんが、SSだけでも夢を見させてもらいましょう!それでは皆さんまたお会いしましょう。

本日もこのような所まで駄文に目を通して頂いてありがとうございました!



[22592] プリンセスラバー!ホッセン卿?いいえ、お父さんです
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/30 18:04
 何か久しぶりだな・・・こうやって時間を無為、と言えば失礼だがゆったり過ごす時間を過ごすというのが。俺は缶コーヒーを一口煽りながら赤く染まった夕焼けに目を向けていた。あの後俺は英単語帳を開いてブツブツ言っていた所、ホッセンパパに捕獲されたのだ。

いつも通りの接し方だが、どこか真剣味の帯びた口調で「用事がある」と仰られた。俺は当然無碍に断る訳にいかないかないので、迎えを遅らせ家の方にも連絡を入れた。そして気付けば男二人ベンチに腰かけ、何をするでもなく時間の流れに身を任せているのである。

日本の良さを自分の国と比較しながら話すホッセン卿。俺はそこまで日本人たる誇りを持っていないので何を言って良いやら分からなかった。ただ日本人と結婚させれば幸せになるなんて、安易な発想に移るのだけは止めて欲しいと願っていた。

「ホッセン卿、俺はあなた方の暮らして来た環境を詳しく知りません。ただ日本には日本の、そしてフィルミッシュ公国にはフィルミッシュ公国の良さや汚点はあると思うんですよ。だからそうやって自国の事を麻薬だの内紛だの、響きの悪い表現ばかり使わないでいただけますか?日本だって賄賂だの隠蔽だのどうしようも無い連中が蔓延っているんですから。」

「ハハッ、これは一本取られたな。まるでシルヴィに叱られているようだよ。」

「俺もシルヴィには色々世話になってますからね。尊敬してますし。」

「親としては嬉しい言葉に尽きるけど・・・尊敬、だけかい?」

「・・・いえ、多分俺惚れてると思いますよ。これは勝手な自己診断なんですがね。」

それから時が止まり俺はもう一度ぬるくなった缶に口を付けた。そこで何やら隣りで鼻をすする音が聞こえたので俺は隣りを向いた。何故かホッセン卿は泣きかけていた。

「・・・どうしたんです?」

「い、いや。すまないね、見苦しい所を見せてしまって。今でも見せているのかもしれないが、グスッ。哲平君、僕は嬉しいんだよ。君は僕の事をどう思っているのか分からない。もしかしたら政略結婚させようとする酷い父と映っているかもしれないな。」

実際そう思っていた事もあるので、反論の余地が無かった。

「だけどね、僕は誓ってそれだけの理由でシルヴィと君をくっつけようとしている訳ではないんだよ。君は凄く魅力的な男だよ、哲平君。有馬鉄心さんの息子と言う事を差し引いてもね。面白い発想、言動、それに何よりひたむきなんだよ。自分の心に素直に行動出来るというのは、当たり前のようで非常に難しいことなんだ。だからこそ僕はパーティーの一件以来、君にこそうちのシルヴィを娶ってもらいたいと思ったんだよ。」

俺は突然の絶賛に気恥しいやら嬉しいやらどう返答して良いか分からず、曖昧に「は、はぁ」と言いながら頬をポリポリ掻いていた。

「哲平君、君の気持ちが本心だと言うのなら幾らでも僕は力になろう。何なら今からお父さんと呼んでくれてもいい。」

俺としてはホッセン卿という堅苦しい敬称は勘弁願いたい所であったので、この機に乗じてお父さんに鞍替えすることにした。

「いいですよ、お父さん。それに俺はただ手をこまねいているだけの男ではありません。シルヴィはどうも俺にクラスで二番の成績を修めて欲しいそうです。ですがこと学問に関しては下から二番目な俺なので、以後シルヴィにつきっきりで手取り足取り勉強を教えて貰う約束をしたんです。ですからまた今後もそちらへお邪魔になることになりますよ。」

その言葉(手取り足取り以降の発言)を聞いた途端ホッセン卿(以降お父さん)はマリアのように万歳して喜びと驚嘆の意を全身で表していた。その後俺の両手をガッシと掴み

「いい、実に素晴らしい!君の行動力にはいつも惚れ惚れするよ。勉強のみならずどこまでも突き進んじゃっても一向に僕は構わないからねっ。」

そんな鼻息荒く娘を俺に売り込もうとせんで下さい。もう俺としては惚れこんでいるので別にそこまで言われなくても重々承知の上ですから。しかし俺は自分からシルヴィを行為に誘う気はこれっぽっちも無かった。互いの合意の元、納得し合った上でと俺は自分における童貞条約に定めているのである。従ってそれまでは健全な関係を構築しつつ信頼し合えるような間柄になれれば、俺としては満足なのであった。・・・と、ん?何か持たされた。

長方形でしかも何やらカートンだ。サイドに徳用品と言うテープが張ってある。何だこりゃ、英語でごちゃごちゃ書かれていて俺には良く分からない。俺の訝しげな視線を受けてお父さんはにんまり笑った。

「コンドームだ。流石の哲平君でも2週間は持つだろう!しかも、何と光っちゃうタイプだよ?」

俺はその言葉を聞いた瞬間、ピシリと亀裂が入った。というか何と明け透けな人なんだ。聞けば緑とピンクに光るタイプがあり、どちらにするかで迷ったそうだ。もはや俺としてはそれ以前の問題なんだが・・・。

にしても公園に行くまでブンブン振りながら歩いていたのはよりによってコンドームだったのか。こんな豪放磊落な人からよくもまぁ礼節や格式を重んじる娘(シルヴィ)が育ったもんだ。マリアもぜひとも今のまま純情可憐に育って行って欲しいものだ。

俺はサイズの大きさ故に「そんなもんさっさと仕舞って下さい」とも言えないわ、自身で鞄にすら入りきらないものを渡されたわで狼狽した。しかし目の前で嬉しそうに握手をしているお父さんの顔を見ているとどうでも良くなって来た。

「在学中はさぞや活躍する事だろう。卒業後はいくらでも妊娠させてくれたまえ!」

とんでもない事を何と言う爽やかな顔で仰るんだこの御仁は。俺は固い表情とぎこちない口調を持って感謝の言葉を述べた。その態度にお父さんは爆笑しながら俺の肩をバンバン叩き

「おいおい哲平君!固くなるのはシルヴィとの行為の時だけでいいんだよ?ハーッハッハッハ。僕にそんな事言わせるなんて全く君も人が悪いなぁ、フッフッフ。」

勝手に自分で思いついて一人で笑って、なんてやりたい放題な人なんだ。俺以上に豪快な発言に思わず俺も釣られて笑ってしまっていた。そして俺は勢い良く立ち上がり

「分っかりました、この有馬哲平。あわよくばお嬢さんにこいつらで覆われた物をプレゼントして差し上げますよぉーー?イヤッハー!」

俺はお父さんのテンションに乗っかって高らかにコンドームのカートンを掲げ、勢い良くライブのノリで宣言していた。その俺の発言にお父さんはベンチ内で左右に体をねじって笑い転げていた。そして泣き笑いしながら「その粋だー!」と一緒に夕日へ向かって叫んでいた。本当の家族になった際はさぞや毎日が賑やかになりそうだ・・・。そうして俺達が二人して肩を組んでイエーイ!とテンションが最高潮に達しようと言う時

「父上、有馬殿を変な世界に連れ込むのはお止め下さい。」

何やら俺達の話の中心人物が登場された。だがノリノリになっていた俺達はもはや酔っ払いに等しい絡み方になっていた。

「いやーこれはこれはシルヴィじゃないかぁ、ハハハ。いやいや何、たまには男同士本音で語るのもまた美しいものじゃないかね、なぁ哲平君?」

「いやこれ全くその通りです、お父さん!僕をこんなにも認めてくれるなんて包容力の大きいお方だとシルヴィも恵まれているなぁと話していた所でさぁ。」

「・・・お、父・・・さん?父上、本当に有馬殿に一体何を吹き込んだのです!!」

「そう剣幕になるものじゃない娘よ。にしても、ふふっ、どうかねシルヴィ。本音で語り合った男というのはこうも心を開いてくれると言うのが良く分かるだろう?君もいちいちそんな素直じゃない態度を取らずさっさと股をひら・・・ゴバァ!」

「父上の仰ることはいちいち品というものが無い。全く有馬殿はこのような場合じゃないというのに。父上に連れられるのを見て、付いてきて正解でした。ああ、しかも父上、変な物を有馬殿にお渡ししたのですか。」

父親に強烈な一発をお見舞いし、さぁそちらのゴミをお渡し下さいという雰囲気を出しながら、手を差し伸べてくるシルヴィ。ちらりとお父さんに視線を投げかけると当然ブンブン首を左右に振っていた。

「渡すんじゃない、決してそれを渡してはいけないよ!我が息子よ。」

そんなテレパシー染みた声が脳裏に届いたような気がした。だから俺はここは義理の父親の権威や顔を立てる事にした。

「これは君のお父さんからうちの爺さんへのプレゼントだ。決して俺への贈り物では無いよ。」

本当なのですか父上?という目でお父さんをねめ付けると、お父さんは必死の形相で今度は打って変わって、首を上下に振り同意の意思を見せた。しかし俺の影響を受けたのか疑り深くなった彼女は

「ほぉ~、それならば無礼に当たる物をお渡ししていないかどうか確認させて頂きましょう。鉄心様にお渡しする品となればさぞ気品のある物でしょうから。」

これを言われると俺としては正直どうしようも無い気がしてきた。またしてもチラリとお父さんに目をやると両手をクロスして絶対に渡すんじゃないというサインを出して来た。俺はそのサインを受けバッターボックスに立つ心持で息を整えた。

「そう疑ってやるな、見ろ、お父さん泣いてるぞ。そもそも爺さんと君のお父さんは気心の知れた仲というのはシルヴィも十分承知のはずだろう?今さら献上品を娘に確認して貰うなど親の面目が立たないと思うのだが、いかがかな。」

シルヴィは頑なな俺の態度と自身の泣き笑いを浮かべて頷いている父親を交互に見比べた後、溜め息をついた。

「・・・まぁ良いでしょう。そうまでうちの父の尊厳を守って頂いた事に感謝させて頂くこととしましょう。それと父上、この後お話がありますので、動かずにそこに居て下さい。それでは有馬殿、私は今日も宅でお待ちしております。」

俺は背後からの怒声や打撃音を耳に入れながら今日する勉強に向けて考えをまとめ始めていた。父親との関係は良好だし、後は俺自身が魅力的にならないといけないな。俺は「良し」と自分に活力を与え、迎えのための携帯を取り出すのだった。

―続く―


どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!こうして執筆していくと哲平が徐々にですが格好良い主人公になって行っている気がします。僕の色眼鏡で見ているからかもしれませんが。当初は駄目男とやる男のギャップを作ろうとしていたんですが、どうも最近駄目さを出している暇がありませんね。あまりにも格好良くするのは僕の不本意とする所なのでサジ加減がなかなか難しい。今回はホッセンパパのおかげで笑いポイントを稼いでいる気がするので複雑な気分です。それではまたお会いしましょう!

本日もこのような所まで駄文に目を通して頂いて誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!ホッセン姉妹、有馬家にて合宿
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/30 15:37
ダダダダダダダ、バダーン!

「哲平様、起きてらっしゃいますか!」

「ど、どうした。最近早起きだから起きてるけど。」

いつもの優らしからぬ躍動感たっぷりな動きで、俺の部屋の扉が開け放たれた。ノックや開閉の時間すら惜しいと言った様子で俺に優は詰め寄り

「私では対応が出来かねますっ、哲平様にお客様が参っておりますよ。」

う~む、この慌てっぷりは何やら微笑ましいじゃないの。ドジっ子メイドみたいな感じにあわあわしてるのが実にいい。にしても、休日の朝っぱら俺ん家来る人いたっけか。俺は机のスタンドを切り、適当に整頓した後首を捻りながら客人に会うため部屋を出て行った。

・・・

「おはようっお兄ちゃん!」

「おはようございます、有馬殿。」

「・・・」

何やら俺は錯乱というかまだ夢の中にいるのだろうか。夢見心地、とまでは行かなくとも幻想的な世界が目の前に広がっている。客人と言うからさぞや高名な方だろうと思えば学友とその妹さんではござらんか。いや、十分位の高い方達なんですけどね。

「・・・して今日はこのような朝早くから我が家に何ようで?」

俺は何かとんでも無くえらい事をしでかした可能性を考慮して気持ち下から尋ねた。しかし向こうは向こうで困った顔を浮かべている。妙な空間を打破したのはやはりマリアだった。少々困り笑いを浮かべながら

「実はね、パパがお仕事で数日家を空けちゃうの。だからその間お兄ちゃんに預かってもらいなさいって。」

そんな・・・犬猫の世話みたいに軽い口調で言われても。まぁあのお父さんだから上手く言い包めたんだろうけど。俺だったら厄介払いされた気分になるかもしんない。恐らくこれはお父さんの計略で、シルヴィと親密になれと言う事だろう。強引というか豪快というか、押しの強い人だなぁ、相変わらず。

シルヴィは最初の挨拶以降、喋らず何やらお加減がよろしくないご様子。あの調子を見るに彼女も突然言い渡されたのだろう。唐突な申し出、本当に俺みたいな行動だな。そして俺の顔を見据えながら

「有馬殿は今日の事を知らされていたのですか?」

と何やら心配そうに尋ねて来た。本当の事を言えば全く知らされてない。しかしここで事実確認をハッキリさせた所でお父さんの都合が悪くなるだけだ。ある意味恩を仇で返すような気がしたので、俺はお父さんと口裏を合わせる事にした。

「いや聞かされてたが、もう少し先の話だと思っていたんで。だからまた別の用事で来たのかと思ったんだ。ようこそ有馬邸へ、俺含め皆歓迎するよ。」

俺は両手を左右に広げながら、歓迎の意を表明した。シルヴィはそれでも芳しくない気持ちのようで

「父の勝手な都合に付き合わせる形になってしまい申し訳無い。」

ペコリと親の代わりに頭を下げていた。客人に頭を下げさせるなんて、当主失格でしょう。俺は両手と顔を左右に揺らしながら即座に否定した。

「いやいや、寧ろ俺も願ったり叶ったりなんだって!だってわざわざ毎度勉強でお世話になっているんだ。恩返しの一環として君達を預かるんだから何ら気に病むことはない。申し訳ないと感じるならこの家で是非ともくつろいで頂戴な。そうすりゃ俺としても満足なんでね。あ、それから勉強の方もまたご教授の程よろしく頼むわ。」

俺はシルヴィが気にしないよう精一杯の舌先三寸を用いて弁明した。俺が眼前で両手を合わせ、片目を瞑って勉学の指導を頼んだ所でシルヴィの頬はやっと緩んだ。

俺はこの広い屋敷に住んでたおかげで臨機応変に対応できたのだ。一般家庭のワンルームマンションレベルだと一体どう後始末付ければいいんだ。そういう意味で爺さんに心の中は感謝の気持ちで一杯だった。マリアは俺に可愛らしい抱擁をしながら

「今週末だけよろしくね、お兄ちゃん!」

「ああ、こちらこそよろしく。壊すとかいたずらしなけりゃ好きにしてていいよ。」

「んもぅ、私そこまで子供じゃないもん!あ、そうそうパパからお兄ちゃんにって。」

はい、と手渡されたのは茶封筒だった。のり付けされてる訳でもそして重みも全然無かった。俺はチラリと中を覗こうとフラップの部分を上に曲げると、のり代の部分に

「一人の時に見てね!」

との伝言が記されていたので俺はそのままフラップ部位を元のように折り曲げてポケットに突っ込んだ。コンドームをくれる程の猛者なのでどんな凶暴な物が入っているのかある意味楽しみだ。厚さ的に大人のおもちゃの線は消えているが。とりあえず入口前でずっと立たすのも何なので、優と一緒に今後使用する部屋へ二人を案内した。

・・・

「美味しい!ねぇお兄ちゃんこれなぁに~?」

「それはね、うーんと、何だ、こりゃあエビかねぇ?」

「そちらは『オマール海老』となっております。」

俺はお行儀の方に必死過ぎて料理についてさっぱり知らなかった。したがってマリアのこれ何て食べ物にてんで答える事が出来ず、このように一緒になって料理長の話を聞く始末だった。口に入れば何でも良いという雑種魂の俺としてはさしたる問題ではないのだけど。今後雑学として活躍する可能性は大いにあるので、一応脳にインプットするようにしていた。

「ふぅ~、満足満足♪」

マリアは子供らしい元気溢れる様子でお腹をポンポン叩きながらそう声を漏らしていた。俺もマリアに釣られてなかなか限界まで腹に詰まってしまった。やはり食卓というのは賑やかな方が楽しいよな。マリアは元気良く立ち上がり

「お兄ちゃん、お屋敷探検してい~い?」

「マリアッ!ちょっとは遠慮して大人しくしてなさい。」

シルヴィの言葉には耳を傾けず、目をキラキラ光らせながら俺に聞いて来た。この目はどう見ても「いいよね?」という肯定しか望んでいない光を伴っているじゃないか。

「ああ、いいぞ。というか迷子になったらすぐ電話入れるんだぞ。最初俺も迷って自分の部屋に戻れなかったんだ、ハッハッハ。」

ワーイ、と言いながら一目散に部屋を飛び出していった。うーむ子供はアレくらい元気な方が可愛いもんだな。下手に大人びた子どもより好感を持てるというか。俺は隣りで母親のように首を振っているシルヴィに目を向けた。もはや母親としての貫禄がある彼女は妖艶漂う大人の色気がたっぷりだった。おおう、目が眩しいっ。

「やっと二人っきりになれたね、シルヴィ。ふふ、これからは大人の時間だよ?」

「そうですね、あなた。私もこの瞬間を今か今かと待っていました。」

「であるならばシルヴィ、もうこれ以上会話の必要は無いかな?」

「ふふっ、せっかちですね。あなたという人は・・・」

桃色ぉ、桃色ぉ、ファンタスティック、これが俺の望んだ世界・・・!

・・・

「さきほどから何を一人でブツブツ言っているのです?」

「!?」

俺はどうにも新婚夫婦モードに切り替わっていたらしい、一人で。不審そうにこちらに目を向けている所を見るに、俺は相当自分の世界に浸っていたようだ。俺はただちに自分を取り戻し

「いや、こっちの話だからご心配なく。そんじゃ俺はまた勉強してくるか~。ノルマまでまだまだ先なんだわ。何かあれば遠慮なく申し出てね。ごゆっくり~。」

そうして俺はまた部屋に閉じこもり始めた。しかしいつもはのんべんだらりと勉強しているのだが、今日はそういう訳にもいかなかった。マリアが遊んで遊んでとせがんで来るからだ。正直俺も遊び相手が出来て嬉しく、いつもより急ピッチで指を動かした。

マリアに俺が一人で楽しんでいた忍者屋敷的部分を披露したり、かくれんぼをしたり思っていた以上に楽しませて貰った。何やら童心に返ってしまい、口調までアホ丸出しになる失態もあった。だが遊ぶからには馬鹿にならんといかんですよね。終始マリアは楽しそうで俺も純粋に心から楽しんだように思う。時々シルヴィや優に二人して大目玉をくらったが。

今は夕食後に三人してババ抜きをしている。午後のノルマは昼過ぎに怒涛の勢いで終わらせたので後は寝るだけだ。俺は残念ながらポーカーフェイスにしようとしてジョーカーを引くとジョーカーフェイスになる男なので最弱だった。しかし二人はそんな俺と一緒にしながらも楽しめているようだ、喜ばしいことですね。

「にしても私お泊りなんて初めて!」

上がり~!とテーブルの上にカードを放りながらマリアは嬉しそうに言った。姉にも同意の声を求めたが

「気疲れの方が先立つので、何度もお邪魔するのは厳しいですね。」

と気疲れした笑みを浮かべてそう返した。マリアは膨れっ面になっていたが、すぐニヤニヤ笑いを浮かべ

「そんな事言っちゃってお姉ちゃん、お兄ちゃんと一緒だから緊張してるんでしょ?」

「してません、そういう父上みたいな発想は止めなさい。有馬殿にも変な誤解を招くでしょう?」

あまりの即答ぶりに俺は照れてますって言ったようにしか聞こえなかった。しかしそのような指摘は火に灯油を注ぐに等しい所業なので俺は、ジョーカーを一番取り易かろう場所にセッティングするのに心血を注いでいた。当然シルヴィはそれを避けて、別のカードに手を掛けんとしていた。俺は早業でその取ろうとしたカードをババと取り換えたが、即座に見切られ見事にかわされた。俺もこれで7敗目になろうとしているので必死であった。

渾身の力でシルヴィの掴んだカードを離さない俺。お互い表情は一向に変わらなかったが手元の指は震え合っていた。俺はここで交渉に持ち込もうと決心した。

「お客さん、そちらのカードよりこちらのカードの方が優良物件となっておりますよ?」

「・・・いえ、私は是非ともこちらのカードにしたいのですが?」

「皆さんほとんどの方が最初はそう仰るんです、その結果として『ああっ、向こうにしておけば!』という悔恨に満ちた声を漏らすハメになるんですよ。私はプロだ、さぁ、安心してこちらのカードをお選び下さいませ。全くのノープロブレムですよ。」

「ふふっ、プロならば潔く客の声に従ったらいかがか。見苦しいですよ?」

「ふふっ、プロ意識を持っているからこそ引けない局面もあるということですかな。」

互いに譲れない気持ちを抱え俺達は互いをライバルのように不敵な笑みを漏らし合った。しかしもとより欠陥物品を売ろうとする悪徳業者の俺に、勝てようはずもなかった。

「なかなか楽しませてもらいました。」

勝ち誇った口調で俺に弔いの言葉を掛けるシルヴィ。俺は形だけは悔しがったが、皆で楽しめたので不満は一切無かった。マリアも役者二人を見て大いに笑いながら

「やっぱりお兄ちゃんって面白い!」

とお褒めの言葉まで頂いた俺だった。実際そう言ってくれるのはマリアくらいなもんだよ、嬉しいねぇ、身に沁みるねぇ・・・。俺はトントンとカードをテーブル上で揃えながら、もう慣れてしまったカードを切りながら目で「もう一回する?」と両名に聞いた。

答えは相反する物で、マリアは肯定、シルヴィは否定だった。マリアは当然ブーブー言いだした。

「え~どうして、お姉ちゃんもう一回しようよぅ!」

「いえ、今日は夜も遅い。これからしばらくお世話になるのです。いつでも機会は訪れるでしょう。それに有馬殿も我々を迎えて疲れも貯まっておられるはず。今日は部屋に戻って寝ることにしましょう。」

自分を律して相手を気遣う立派な発言に俺はちとうっとりしたが、まぁ寝ると言ってるのに無理強いはすまい。

「いやいや、俺にはこの屋敷は広すぎる。二人が来てくれたおかげで毎日が楽しくなりそうだよ。二人も疲れただろうからゆっくり休んでよ。それじゃマリアもまた明日ね。」

俺が二人を部屋のドア出た所まで見送るとマリアがまた小悪魔な笑みを浮かべて

「あれぇ、お休みのキスしなくても

「しません!マリア、後で覚えておきなさい・・・。」

マリアの言葉を最後まで言わせる事無くシルヴィはマリアはたしなめていた。マリアは怒られているのにニッコニッコ笑っていた。本人曰くこんなに会話が弾む事が嬉しいらしい。

その後少々頬を染めたシルヴィにお休みの挨拶をして俺は、机に向かって行った。寝る前に学習すると翌日の学習に繋げ易い上に、程良く睡魔が襲ってくるので一石二鳥なのだった。俺は筆箱に手を掛けた時にはたと気が付いた。おお、そう言えばまだ見て無いわ。

ガサゴソとポケットをまさぐり、俺は茶封筒を取り出した。そのまま逆さにするとスタンダードなコンドームと共に「正しいコンドームの付け方」と「絶頂、悶絶体位特選」と見出しに書かれた、恐らくコピーされたと思われる紙が落ちて来た。露骨だ、もう俺がシルヴィに手を掛ける事を前提としたプレゼントに、しばし俺の時が止まった。そしてコンドーム指南書に目をやろうとすると、小さいメモ書きのような紙の切れ端が目に映った。そこには

「Good Luck! 哲平君、吉報を期待しているよ!
君のお父さんより」

俺は言葉を発することもなく静かに茶封筒にそれらを戻した。吉報=保健体育の実習であるため、俺としては何とも重い期待であった。どうにもらしくない、行動力あるならばこのままシルヴィの部屋に突撃してなんぼではないのか?自問自答を繰り返したが、やはり俺もお父さんと同じくしてシルヴィの幸せを渇望しているんだ。

俺はカートンのコンドームが置かれている棚に茶封筒を一緒に置く事にした。落ちないようにテープでカートンに張り付けることにした。

テストが差し迫ったこの時期、今はそんなふしだらな事を考えていい場合じゃない。まずはシルヴィに俺と言う存在を認めさせ、対等な関係を築かねばならない。そのためにも目先の欲望に負けていい訳ないじゃないか。俺の将来の彼女、シルヴィはもっと気高い心を持っているのだから。・・・本当に彼女になってくれればいいけどな。

俺はそんな事を胸に抱きつつも内心ドキドキしながら勉強に取り組むのだった。シ、シルヴィにやらしいこと・・・ぬああ、頭がクラクラする。いかんいかん、心頭滅却心頭滅却!ろくに勉強できずに、気付けば寝て朝になっていたことは必然と言えるだろう。俺ってば本当ムッツリ男子なんだから!


―続く―

はい、どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!いや、良かった、今回は僕の好きな哲平を出す事が出来た、めでたいめでたい。にしても原作(エロゲ)の方は妹のマリアもいる前でいきなり告白してましたね。あまりの急展開に思わず吹かざるを得ませんでした。え、ここでかよっ!っていうテンションになりましたね。僕は基本的にいつも行動を共にして気付けば愛が芽生えてた展開が好きなのです。と言う訳で哲平のシルヴィへの告白は結婚しようなどといった、プロポーズになるのではないかと。勢いの大切さは今までのSSで良く理解していたつもりですが、ここで気持ちを吐露するのはいささか時期尚早では・・・と。もう何でもいいから続き書け、まずはそれからだっ!って自分で書きながら思ってしまいましたので、この辺で失礼しますね(笑)それではまたお会いしましょう。

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!シルヴィの想い、哲平の想い(微シリアス)
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/30 23:40
 俺は今日シルヴィをデートに誘わんとしていた。突拍子も無く、自己鍛錬どころか何女にうつつを抜かしてんだと非難されるかもしれないな。しかし実は一応の訳がある。あの後数日間はそれこそ一分一秒を大事にし、期末に向けて俺は励んでいた。しかしあまりにも緊張状態、加えて寝不足が続いてしまったのが原因なのか、俺は一度体調を壊したのだ。

無病息災くらいしか取り柄の無い俺としては、多大な心へのダメージもあった。シルヴィにもそちらに行けそうにないと連絡を入れると、彼女は既にこの結果を予測していたようで

「・・・やはりそのようにお体を壊されましたか。日々あまりに自己研さんされるストイックな姿勢に心配してはいたんですが。私としては全く無問題です、しかしこれでお分かり頂けたでしょう。根を詰め過ぎた所で体に支障を来たせばその分多くの時間を削られるのです。健康であってこその学問であることをお忘れなく。それではお大事に。」

電話を切られた後俺は、枕に頭を沈めながら物思いに耽った。今後のこと、シルヴィの事自分の事。遮二無二突っ走って来たけど、結局俺は何がしたいんだろう。シルヴィに嫌われたくないばっかり考えて行動して来たせいで、自分の軸を失っている気がしたのだ。

互いが切磋琢磨出来るような関係、それがプラトニックな間柄では無かったか。成長しているのは俺ばっかりというか、彼女の隣りに並べてすらいないのだ。そう考えていくと自分の不甲斐なさにばかり目が行ってしまい、胃がムカムカしてくる。考えれば考える程自身とシルヴィの関係が師弟であり対等でない、自分が望む関係とはかけ離れていたのだ。

自分ばかり与えてもらうばかりじゃ駄目だ。俺からもシルヴィに何か伝えれるものはないだろうか。俺は早速新たな協力者であるシルヴィのダディに時間の都合を付けて貰った。最初は茶化していたお父さんだったが、俺の内情を語った所快く承諾してくれたのだった。

そして俺とお父さんはこ洒落たバーで話をする事になった。学生身分である俺がこのような場所に来るはずもなく当然戸惑った。しかしお父さん曰く

「悩みを打ち明けるにはもってこいの場所だろう?」

との事らしかった。俺は学生ということで弾かれるんではなかろうか、などと内心ヒヤヒヤだったが別段そんなことは無かった。控えめでかつリッチさを出す音楽や、周りの社会人を見て目の前のウーロン茶を飲む自分が何と幼いことか。俺は情けない自分に憤りを覚えながらも、ポツリポツリと気持ちを吐き出して行った。

このような場では流石のお父さんも大人の侠気を出していた。目を細めアルコールを少量ずつ摂取しながらじっと聞いてくれていた。何も言わないから聞いてくれていない訳ではなく、適度に相槌、首肯でもって反応を示してくれるのでそのような心配は全く無かった。

俺はあらかた自分の気持ちを吐露した所で茶を半分ほど飲み、反応を伺った。お父さんは過去の辛い出来ごとに身を寄せているのか、普段見せないような遠い目をしていた。海の先の故郷に想いを寄せているお父さんだったが、ゆっくり話をし始めた。

麻薬を売るためにコキ使われる年歯もいかないストリートチルドレン。内紛のストレスから強姦やら強盗、殺人その他諸々の凶悪犯罪が後を絶たない現状。一向に改善されない国内に反発し、集団で警察を襲撃する民衆。その話の全てにおいて日本では想像すらできない凄惨な話だった。感覚がマヒし、遊び感覚で人に銃を向け発砲するなんてのはあり得るのだろうか。俺はこれほどの深い闇を内部に抱えながら、それでも陽気さを振りまいて来たお父さんに畏敬の念を抱かずにはおれなかった。

湯水の如く次から次へと流れる自国の肥溜め以下の話をしているにも関わらず、その声の音程は全くと言っていいほどぶれなかった。冷静かつ客観的にありのままの様子で伝えるからこそ、より痛々しく響き俺は人間不信にさえなりそうだった。それでも何とか話を聞くことが出来たのは穏やかな声で淡々と話してくれたからかもしれない。

俺は最後まで聞き逃すまいと両腕を握りしめながら聞き続けた。そしてこの世の地獄のような世界を語ったお父さんが望むのはたった一つだけだった。

「娘達には祖国を忘れて日本で幸せになってもらいたいんだ。」

偽善と罵られるかもしれないが、それでも一心に娘たちの幸せを願うお父さんの気持ちは確かに父親のそれだった。そして切望にも懇願にも似た表情で俺を見つめてくるんだ。俺はこの想いをしかと受け継ぎ、娘さんの幸せを絶対なものにしなければならないと思った。

だがそれは俺やお父さんの一方的な願いに他ならない。シルヴィにはシルヴィの理念や理想、引けない信念があるはずだった。そしてそのように自己肯定感をしっかり持っている彼女だからこそ俺は惹かれたのだ。俺はお父さんの言葉に深く頷きながら、一つの行動に出ようと心に決めていたのだった。

・・・

「有馬殿、一体今度はどう言った風の吹きまわしなのです?」

シルヴィは俺の隣りを歩きながらそんな事を聞いて来た。俺が突然フェンシング部に誘いに行った行為の事を指しているのだろう。俺は自分の目論みがちゃんとあるが、それは先に言うよりも手順を踏んでシルヴィに知ってもらいたいと思っていた。だから俺は

「なぁに、たまには息抜きをしないと行けないと言ったのは自分の方じゃないか。俺は一人で息を抜くよりも、誰かと一緒に過ごした方が安らぐんだよ。という訳で俺のためと思って今回は付き合ってあげてくれ、唐突に頼んで申し訳ないけどな。」

「全く・・・申し訳無いと本当に思うなら、もう少し前もって連絡するという行為を習慣づけるようにして頂きたいものだ。」

「ハハハ、そりゃそうかも知れないな。でもシルヴィ、いきなりだから変な方に思考を回す暇が無くなるという利点はあるんだ。俺も男だからな、前もって色々考えてたら気付けば最終的に行き先がホテルになりかねん。だからこうして突発的に思いついた時にすぐ誘ってるんだよ。それでもまぁ、シルヴィが迷惑だと思うなら今後は気を付けるとしよう。」

「・・・減らず口を。私は有馬殿を信頼しているのですから、邪推をするような事は致しません。迷惑とまでは行きませんが、予定が狂うという点に置いての懸念があるだけです。そちらにも色々思惑がおありなのでしょうが、出来る限り事前に知らせて頂きたい。」

「了解、そんじゃ一日前くらいで頑張ってみるとするかぁ?」

「それでは今日とあまり変わらないではないですか。せめて一週間前とかには出来ないものですか。」

「ふーむ、やれるにはやれるんだろうけど。あんま綿密に計画とか立てたくないんだよな。大まかにプラン立てて大まかに行動する。期待もしないけど落胆もしない軽いノリでやりたいんだよ。何日にデートしよう!とか言われたらシルヴィも構えるだろ?」

「・・・今日はそういう目的で誘ったのですか、あなたは。」

「まぁそう言った一面も否定はしないが、今日は結構重要な用事があるんだよ。今後の方針を決める上でも大事なイベントになるかもしれないな。」

「なるほど、そしてその目的地が駅前周辺にあるというのですね。」

「そうそう・・・っと、確かこの辺に・・・。あったあった、あれだ。」

俺はそうしてシルヴィと話しながら目的地「寿司天国魚まみれ堂」の前で足を止めた。ふざけた店の名前をしているが味は確かで、しかも値段もそこそこ安い。商店街の一角にひっそり佇んでいるその店は、風景と同化して存在感がもはや無いに等しかった。しかもその店の店長が黒人のためかあまり繁盛している様子も無かった。客や周囲の人が敬遠しているのもあるし、少々店長にも問題があるのだ。

そもそも俺が何故このような穴場スポットとも呼べる店を知っているのかと言うと、パーティー主催の時に色々町を出歩いていたからだ。俺は腕っぷしは骨粗しょう症並みの脆さであるが、度胸だけは船乗り並みだ。だから俺は面白そうだと判断した店には突貫していたのだ。この店も「魚まみれ堂」というネーミングセンスに惚れ込んで暖簾を潜った訳である。

そして入ったら入ったでこわもてだが、人の良さそうな主人とも仲良くなった訳だ。最初は結構怖そうに見えたが話してみれば案外気さくな人なのだ。アモディと名乗った店主は板前の格好をしているのに筋肉質であった。これは何かあると、俺はもはや興味や関心が頂点にまで達し、この店に通い詰めたのだ。そうして色々話した結果、この店がどうしてあまり客が来ないのかを納得したのだった。

ともあれ俺はこの黒人の店主にシルヴィを引き会わせたいというのが目的である。まぁ寿司という食べ物を知っているかどうかも気になるが。俺はシルヴィを引き連れて、少々立て付けの悪い引き戸を開けて中に入って行った。

「へ~い、アモディ来たよー。哲平だよー。」

俺は店長(以後アモディ)とは親しくなっておりアモディ、哲平とお互い呼び合っていた。アモディはいつものスタイルで魚類を捌いていた。俺の顔を見るとニカッと笑い、白い歯を見せながら

「ヤァ、哲平。いつもアリガトウ。君のおかげでうちやっていけてるヨ。」

いつ聞いてもクセのある日本語だ。この片言日本語が何となく俺は好きだった。俺はガラ空きのカウンターの中央を陣取り

「いつも通り適当にお勧めを握ってくれる?ああ、それと前言ってた新しい客も連れて来たよ。」

「シルヴィア・ファン=ホッセンです。今日はご馳走になります。」

「Oh、あなた外国の方デスカ。私ヴィント・ウィル・アモディ、デス。以後お見知りオキヲ。」

「今日はさ、シルヴィ。君に彼の話を聞いて貰いたくてここに来たんだよ。アモディ、具合が悪くなって来たり、感情が昂って来たらすぐに休んでいい。それに以前言ったけど無理に話す必要も無いからね。」

「HAHAHA,それは分かってマスよ哲平。自分の事は自分が良く分かってるつもりデスから。にしてもどこから話せばいいのか分かりませんデスね。」

アモディはカンパチやタイを二貫ずつ俺とシルヴィに出しながら困った顔を浮かべた。そして相変わらずランダムな寿司ネタだ。とりあえずシルヴィに苦手な魚介類を聞き、それ以外を出すように頼んだ。そしてシルヴィは寿司を食した事が無いようで、シャリとネタを別々に分解して食べていた。

俺は魚まみれ堂の客が来ない時間帯を選んで店に入ったので、俺達はゆっくり食べ話す事が出来た。とは言えこの店の客はほとんど常連だし、固定客のみと言えるほど新規の客が入って来ない。何にせよ黒人が寿司を握るという異色さも、俺から見れば魅力溢れ過ぎなんだけど。そして何より店に従事しているのはアモディオンリーなので、わんさか客が来ても対応出来ない。したがってのんびり時間を潰すくらいの気構えで無ければこの店に来てはならないのである。

とりあえず俺は先にシルヴィの祖国への気持ちをアモディに聞いて貰う事にした。

「フィルミッシュ公国の復興に向けて私は精進したい。内乱や国政の悪化にもう国民は耐えられない。私が立ちあがり、再建に向けて貢献して参りたいのです。父上は祖国を忘れろなどと言うが私は決して諦めません。」

シルヴィ、違うんだよ。お前のお父さんはもっと深い暗部を知っているんだ。しかしそれでも自分の娘の幸せを願っているだけなんだよ。理想はあくまで見上げる物であり、決して手の届く範囲にあるような物を指すのでは無いんだ。シルヴィ、君の理想は余りに高く途方も無く険しい。歩めば歩むほどボロボロになる君をどうして父親が望むだろう。知らずに幸せになれればそれに越したことないじゃないか。君のお父さんも国の平和を望み、そのために行動すればするほど辛い現実を目の当たりにしたんだ。過酷な世界を実際目にしたからこそ、娘には知らずに幸せに暮らして欲しいと願うんじゃないか。それが親というものだろう?

俺は心の中でお父さんの気持ちを代弁したい気持ちでいっぱいだった。しかしお父さん自ら話していないというのに、第三者の俺が話せる訳がない。それでは今まで耐え忍んで来たお父さんがあまりにも報われない。だからこそ俺はアモディの話を聞かせたいと思ったのである。アモディはシルヴィの希望、やる気に満ちた発言をじっと聞いていた。そしてその誇り高き姿を眩しそうに目を細め

「あなたはとてもまっすぐデスね、シルヴィアさん。人の醜さ、汚れを知らないというのはとても素晴らしいことデス。ワタシはとても汚れてしまった人間だから羨ましいデス。」

「いえ、あなたは料理の腕も素晴らしいし、とても話しやすい方だ。そう自分を卑下されずとも・・・」

「違うんデスよ。ワタシはたくさんの人殺してきたのデス。戦争だからというのはただの言い訳に過ぎマセン。」

「な・・・。」

流石のシルヴィもこれには驚いている。俺も最初聞いた時は驚いたが、アモディの軍人当時の写真を見せて貰ったら納得するしか無かった。彼は自国での内戦やら戦争の道具として働き、そして戦闘能力も強かったので多くの人を殺して来たそうだ。料理人を目指していたその手を殺人に使ったことで、自分の手がいつも人の血で真っ赤に見えるそうだ。俺としては板前のアモディが全てのアモディなので、過去の話を聞いても大変だったな、程度で流していた。

「私たち兵士は戦争という理由で無意味に人を殺せマス。ただ殺したいだけという理由で殺された人もたくさんいマス。ワタシは上からの命令で無抵抗な人を一度に火炎放射器で焼き殺しマシタ。今でも叫び声が脳に響く時がありマス。夜には悪夢としてその光景が映し出されマス。そのため今でも大人数の人を見ると震えて、悲鳴を上げてしまうノデス。私の放つ炎によって丸焦げになる人達に見えるのデス。だから私の店にはたくさんのお客さんは来まセン。たくさん来たらその場で帰って貰ってるのデス。おもてなしどころじゃありまセンから。」

そう、彼は一度に5人以上の集まりを見ると異様に怖がった。だから本当に重要な用事以外は外に全く出ない。客が重なって5人以上入って来た時の怯え、悲鳴を上げながら奥の部屋に逃げて行った時の光景は未だに俺の脳裏に焼き付いている。どうもPTSD(心的外傷後ストレス障害)と言うものらしかった。彼は今日本で安心な生活を送れているはずなのに、未だに戦争の影に怯えている。

俺はシルヴィがどれほどの覚悟があるのか知らない。しかしアモディの話を聞けば分かるだろうが、平和のために血を流してでも戦うという覚悟を安易にして欲しくないんだ。勝てば官軍かもしれない。でも勝ち残ったとしてもその醜悪な記憶は、今後の生活を酷く脅かす記憶として脳に植え刻み込まれることもあるんだ。殺戮は人の心を蝕み、知らずの内に正常な機能を失わせていく。

国民のために武力行使を行い、彼らにトラウマを植え付けてはならない。だから誇りのためとか、信念のためであろうとも出来れば剣を持つ発想を止めて欲しかった。本当に国民のためを思うなら、まずは争いの鎮静化を図る事が先決だと俺は思う。

聡明なシルヴィだから無益な血を流そうとはすまい。しかし妙に意地を張る所があるので、実際元兵士の生き様を聞かせたかったのだ、俺としては。こんなにも人の良いアモディが戦争によって人生を棒に振らされようとしているんだ。同じような戦争の犠牲者を増やさないためにも、シルヴィはアモディの姿をその目にしかと焼き付けて貰いたい。アモディが自己嫌悪に陥りそうになっているので、俺はこの辺で切り上げる事にした。

「アモディありがとう、もういいよ。辛い話させてしまって悪かった。それから寿司は世界にも匹敵するほどの腕前だ、美味かったよ。今日は貴重な話も聞けたしちょっと多めに出すわ。」

俺は渋るアモディにいつもの倍ほどの金額を渡しまた来る、と言ってその場を後にした。何かあった時のためにお金を貯めておいて良かった。俺がシルヴィに声を掛け引き戸に手を掛けた所で、シルヴィはアモディに深々とお辞儀をして感謝の言葉を言っていた。それを見たアモディはいつもの柔和な顔で

「いつでもお越し下サイ。私はいつでも待ってマス。年中無休がこの店の売りの一つなのデス。」

新規のお客さんに歓迎の言葉を投げかけるのだった。

シルヴィはアモディの話を聞いて何を思ったのだろうか。アモディの話を険しい顔つきで聞いてたくらいしか俺には分からなかった。しかし俺はこれでシルヴィがどんな道を選ぼうとも付き添うつもりでいた。ただし俺自身が納得できない場合は当然衝突させてもらうけど。

俺は魚まみれ堂から出てシルヴィの方を振り向くと、突然シルヴィは頭を下げて来た。

「いきなりどうしたの。」

「いえ、有馬殿。この度は貴重なお話を伺う機会を設けて頂いて、感謝の念が絶えません。」

「頭は上げてくれよ、俺だってシルヴィには散々世話になってんのに、そこまでされたら俺の立場が無い。それに貴重な話をしたのはアモディだからな。」

「それでも私はあのような人物を知る機会などありませんでした。だからこそ有馬殿に一言感謝の言葉の一つも言わねば気がすみません。」

「うん、まぁそんなに感謝されると照れるけど。実りのある話として聞いて貰えたようで何よりだよ。」

「ええ、どれほど私の見識が稚拙か思い知る事が出来ました。もっと広い視野で物事を推し進めて行かねば、彼のように重い十字架を背負わせる人が多く出る事になるでしょう。」

俺はこの一言で彼女はきっと正しい方向に進むだろうと漠然とだが確信した。俺の言わんとする事を自分で気付いてくれた事がなにより嬉しい。国民の救済を考えれば、はなから武力の発想がおかしいんだ。誰もが争いではなく恒久的な平和を望み永続的な自立社会を願っているはずだ。だからこそ避けれるのであれば、軍事力や戦力は無くていい。視野を広げて行ってくれれば喧嘩腰の態度では無くなり、冷静沈着な判断が出来ることだろう。

気付けば俺はわしゃわしゃシルヴィの頭を撫でていた。シルヴィもこの展開は予想できて無かったようで

「な、ななななな、何を、有馬殿?!」

最後の方は軽く裏返った声を発して驚いていた。俺は有頂天になって満面の笑みで

「本当に頭が良いな、シルヴィは!」

と大きな声で彼女を褒め称えるのだった。

・・・

「哲平君、シルヴィとは着実に睦まじくなっているじゃあないか。」

電柱の陰からこっそり二人を覗くのはヴィンセント・ファン=ホッセンその人だった。彼は満足そうにしきりに頷きながら

「あと一歩、あと一歩という所だね。シルヴィ陥落のために不肖ヴィンセント、哲平君のために一肌でも二肌でも、最終的には全裸になろうとも加勢しようじゃないか!」

二人には聞こえない、しかしその仕草は大きく小さな声でヴィンセントは決意を固めていたのだった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブでございます!どうしよう、自分で書いてて笑える所が全然ありませんでした。でもたまにはシリアスな話とかしてみたくなったんですよねぇ。それに僕シルヴィパパのキャラ気に入っているので、どうしてもヴィンセント父ちゃんのキャラを立てたかったというか。後完全にオリジナルのキャラが登場してしまいましたね。アモディという名前は適当で特に誰かを参考にしたとかもありません。そんなに政治に詳しくもないのにごちゃごちゃ書いてしまい、お見苦しい部分あろうかと思います。その辺どうもすいませんでした。それではまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで読んで頂いて誠にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!舞踏会、心も躍って急接近?!
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/30 17:30
 気付けばテストは終わっていた。ほとんどシルヴィに勉強を教えて貰ったおかげで、分からない問題がとんと見当たら無かった。習慣というのは凄い物で、テストが終わったというのに知らず内に勉強椅子に座る男になっていた。また正しいバイオリズムの元、徹底的なまでの反復学習で俺の能力は段違いに上がっていた。学力に関しては周囲と並ぶか、あるいは一歩リードしているかもしれない。夜中にゴソゴソしなくなるだけで、こんなに優等生になるとは。俺はちょっと前のだらけきった自分を省みて感慨深い気持ちになっていた。

そんな俺でも金子に勝てたのは僥倖としか言いようがなく僅差で奇跡的に勝っていた。運も実力の内とは良く言ったものだ。テスト一回程度で今までの汚名が返上出来るとは思っていないので、この調子で張り切って行こうと思ってたりする。

それから社交部の皆さんは当然俺がクラスどころか学年で3位になった事に驚愕していた。ちなみに上にいたのは聖華とシルヴィだった。シルヴィは当然の結果(哲平が学年3位の事)だ、と言いながらも喜びと感動が顔一面にありありと浮かんでいた。聖華ですらやれば出来るじゃない、と若干興奮気味に褒めてくれたのだった。まぁ底辺から上層部まで突き抜けて行けば驚くわなぁ。とりあえず俺としては一山超えたのは確かなのだ。

次に待ち構えているのは例の「舞踏会」だった。何やら来週にあるらしい。手伝いも上の空で勉強方法考えたり暗記するのに忙殺されていた俺は、どういう状況かがまず掴めない。荷物を運ぶくらいなもんだろう、きっと。俺はテスト終わりの余韻に浸り、覇気の無い顔でぼ~っと部員達の会話を聞いていた。あ、やばい、テストに魂吸い取られたかもしんない。

しかしそんな俺でも舞踏会を知らせる垂れ幕を作って、屋上から垂らしたり、入口に案内用の看板を作ったり、意外に手伝っていた。材料費とかは全く考えなくてもいいから楽でいいもんだ。学園のドンみたいなもんだもんな、聖華姐さんは。シルヴィも裏番長みたいなもんだし、そう考えると社交部最強だな。

「ほら、哲平。あんたもボサッとしてないでこっち手伝って!」

聖華から声が掛かったので俺はすぐさま覚醒して救援に向かったのだった。ま、動き回ってる方が俺の性に合ってんだけどね。その後ホッチキスダンスをしたり適度にふざけながら、仕事もこなす俺だった。

・・・

終業式があり、そして通知表を渡された後に今日メインの舞踏会が開催される。通知表と言っても在学して短期間しか経っていない俺にとっては何ら関係の無い紙きれである。終業式での校長の話はあまりにも退屈な上に無駄に長かった。日本共通なのではないかとさえ思えるくらいだ。暇すぎて

「校長今日も好調、硬調な口調で生徒は硬直、寝てたら校長超紅潮、生徒更張、校長今日も不機嫌最高潮。それでも俺は後凋、活動候鳥、気持ちを強調、日々単調。女は高調、クラゲも腔腸、男は剛情、ウグイス黄鳥、時刻は後朝、気分は上々、気流は大上昇。教頭次は校長、二人で共闘、いつでも協同・・・」

「コウチョウ」という単語をどれだけ言えるかラップ調で延々一人ブツブツ言っていた。こういう時電子辞書役に立つよ。漢字に変換してないとどのコウチョウか分からなくなりそうだ。最後はコウチョウの単語無くなってキョウトウになってたし。

・・・

本日のメインディッシュ、やって来ました舞踏会。字だけ見ると舞って踏む会となるため、当初通勤ラッシュのような感じなのだろうか何て思っていたりする。

さて舞踏会のために紳士淑女の方々がぞくぞくといらっしゃった。俺達社交部員は手分けして彼らを誘導していた。俺主催のパーティーとは違い、礼儀作法に則って相手をせねばならず精神がごっそり削られる作業だった。元々人見知り貴族な俺に金持ちの相手などは、気を遣って仕方が無い苦行であった。しかし愚痴を零しても始まらない上に、今後このような場は増加傾向にあると思われるのだ。従って早い段階から彼らに慣れ親しまねば、息苦しい人生が待っているのである。

俺は普段使わない頬筋を使ったせいか、何やら顔の調子がよろしく無かった。そのためテンションも一オクターブ下がっていた。それに反するように根津のテンションはウナギ登りのようで、声もオクターブが上がりっぱなしだ。何やら彼は今日運命的な出会いをするそうだ。ふーん、頑張ってね、ってこの興奮すると異様に顔を近づけて来るのは一体何なんだ。というか近いというよりも触れ合ってるな、もう鼻の頭当たってるじゃないか。根津は俺が露骨に嫌そうな顔をしているというのに、距離が近過ぎて気付けないようだった。唾飛ばしまくってるし、舞踏会ってそんなに良いもんなの?

あらかた参加者を内部に引き込んだ所で聖華より式辞が始まった。ああいう大人数の前で淀みなく喋れるの、凄いよなぁ。聖華の話によると俺にとっては一回目だが、これまでのを含めると今日で51回目の舞踏会だそうだ。俺としては50回目って言われたら文句無しなんだけどなぁ、中途半端な数字よりキリの良い数字の方が嬉しくないですか?

「これで300人か、これじゃあ俺が想像してた通勤ラッシュのイメージ通りだな。」

俺はこの混みっぷりを見てそう独り言を漏らした。これじゃあ誰か足の爪割られたりしないだろうかと心配になってくる。特に女性が履いてるあのハイヒール、あんなんで踏まれたら刺さるんじゃないだろうか。俺は足の甲にハイヒールのかかとの部位が突き刺さった所を想像して、思わず片目を瞑ってしまっていた。おお、痛そう。思わず足をさすってしまうな、意味もなく。

その後俺は運営スタッフの一人であるので、食物を運んだり、ダンスさせられたりで何やら忙しかった。俺としては暇を持て余すのではと危惧していたので、嬉しい誤算と言えなくもない。ただ俺の事を向こうは知ってるが、こちらは顔すら思い出せない人が多々居て反応に困る。しかも明らかにそっちの方が年上なのに俺を「有馬様」なんて呼ばれるもんだから、首の後ろ辺りがムズムズする。俺は聖華に事前に教わっていた通りに丁寧に接待するようにしていた。俺も社交部としての自覚ってのがあるってことだ。

丁寧にし過ぎてやたら気に入られたり、結構別次元で困った事もあったが概ね不手際は無かったように思う。女性のアピールが凄かった時はどう断ろうか悩んだりもした。ていうかダンスの終わるタイミングがなかなかどうして難しい。そもそも最初まさかダンスする側だとは思っていなかったので、何やらレッスンして貰った。その女の人がやけに押しの強いお方で、しきりに体を密着させるからもう大変。ダンスに慣れて来てループし始める時に終わろうとしたが、万力のように手を離さないし。結局俺は奥義お手洗いを用いて離脱したのだった。さながらホストのような気分になったが、大方有馬の冠(財産)に目が行ってるだけだろう。

俺はふとシルヴィがどういう状況なのか知りたくなったので会場内を探し回る事にした。あれだけ目立つ彼女もこうも金持ちの群れに囲まれては探すのが厄介だった。途中にダンスに誘われて、断れずダンスしちゃってる自分も情けない。しかし仕事に私情を挟む訳にも、という気持ちがどうしてもあったのだ。たまに面白い人も居るからそれはそれで楽しいんだけどさ。

俺はどうにかダンスから解放されそれとなくシルヴィを探していた。依然として彼女の姿を視認する事が出来ない。あれぇ、もしかして外かなぁ。俺がそう考え始めた時

「先約がありますから。」

凛とした声が俺の鼓膜を通して脳に響いていった。おっと、この声はまさか?

「やほー、シルヴィ。そっちはそっちでぇ?!」

俺は「そっちはそっちで大変そうだ」と言い切る前に驚き混乱してしまった。声はシルヴィだが容姿がいつもと違う。何とも女性らしい艶やかなドレスを着ておるじゃないか。

「有馬殿、何ですかその失礼な反応は。私だって似合わないと言う自覚はしてます。」

むくれながらいじけるシルヴィ可愛過ぎるだろう。俺はもはや全身に電流が走るような衝撃を感じていた。そしてバッチリ似合ってるから、似合ってるんだよ、シルヴィ!

「いやいやいや、似合ってる。似合い過ぎてる、俺としては満点だよ。というかもうパーティーというもの全てそれ着て参加して欲しいわ。」

「全く、そう言ったオベッカはもう聞き飽きました。私は一刻も早く礼装に着替えたいくらいだ。」

「ふーむ、もったいない話だよなぁ。世辞とか抜きにして良く似合ってるし、どうしてパーティーでそういうの着ないのかが不思議でならない。まぁ言い寄る男が増えそうだからやっぱ俺が参加してない時は礼装でいいや。」

「・・・?良く分かりませんが舞踏会だけです。このようなドレスに身を包むのは。」

「それでいいそれでいい、他の男にそんなフェロモン振りまかれたら俺としても気が気じゃないし。」

「さっきからあなたは一体何を言っているのです?」

「ん?シルヴィの身と俺の身両方を案じてるって話かな。」

「どうして私がドレスを着るとあなたが心配

「あ~それよかダンス誘われた?」

何やら核心を突かれそうになったので俺はここいらで話を変える事にした。こんなゴミゴミした所で告白は無いだろう、いくらなんでも。シルヴィは疲れたように溜め息を零し

「ええ、もう数えきれないくらい頼まれました。全く、終わりが待ち遠しいものだ。」

「社交部の一員を語るなら愛嬌振りまいて、使い回されにゃならんだろう。俺も渋々だけど数人のレディの手を取ってダンスして来たよ。」

「・・・それはそうなんですが、私にはどうもこういうのは苦手だ。」

潔癖症なのかしら。何かこの態度見てると俺が節操なしに思えてくるじゃないか。え、部活動的には俺の行動間違ってないよな?何かシルヴィ見てたら途端に自分の行いに自信が持てなくなってくる。誘われたら普通に応対してたし、俺。まぁ何やらシルヴィは周りの紳士集団とは踊りたくないようだ。じゃ、ここは俺が先陣切って躍らせていただくとしよう。派手に散ろうぜ!

「そんじゃシルヴィ、俺と踊らない?練習ということで踊っておけば分からんでしょ。」

「・・・」

「あ~、嫌ならいいよ。俺としちゃ踊れないのは残念だけど、踊りたくないのに躍らせても・・・」

「私でいいのですか?あなたは。」

「勿論、というかぜひ踊りたいね。」

「で、ではよろしくお願い出来ますか?」

「喜んで!」

ふっふ、言っておくが俺は結構踊りには慣れたんだ。今ならばエスコートも出来るってもんだよ。俺と踊り始めた直後の事だった。シルヴィは俯きながら何やら言っている

「・・・そい」

「何だって?」

「来るのが遅い!」

ビクッ!突然の非難の声に俺の上半身はのけ反った。そんな至近距離で怒鳴るなよ、かなりビビったわ。というか遅いと言われましても・・・。時として女は理不尽だと言うが、俺は当然謝るしか無かった。

「ご、ごめん。遅くなった理由は先の通りだけど。」

「哲平が来るまでに二桁の方々を断った苦痛は計り知れない。」

・・・ん?何やら違和感があるな、どういうことだろう。

「・・・どうしたのです、哲平。」

突然俺が踊りを停止させた物だからシルヴィも心配してるって、て・・っぺい、だと?

「はい、哲平です。シルヴィさん唐突にどうしたんすか?」

俺が確認を取るとシルヴィは真っ赤な顔をして目を反らし

「お、踊りをしているのだから友人以上の方が正しい在り方というものでしょう。」

俺今日結構色んな人と踊ったけどあれは社交辞令って事でノーカウントにしよう。

「なるほど実に正しいね、うん。全くもってその通りだとも。今後とも哲平でよろしく。」

「え、それは

「そぉれ、手が止まってるよ。今は踊らないとね。両手掴んで俺が暴漢に見られては困る。」

いかん、柄にも無く俺も照れてるねぇ。そんな急に下の名前で呼ばれたら、頬も熱くなろうというものだ。俺は着実にシルヴィと親密になっているよー!俺は会得した踊りをシルヴィに教授しながら心は天国に昇っていた。今ならきっと俺成仏できるな。さっき柄にも無くって言ったけど思い返したら、結構な頻度で照れてるわー、ハッハッハ。

俺がこれ以上ない位楽しそうに踊るもんだからシルヴィにも感染したらしい。珍しく彼女も微笑みを携えて踊っているんだ。急速に心の距離が縮まっていく感覚が嬉しくて仕方が無い。

「哲平は不思議な人だ。他の人とは違って自然に接する事が出来る。」

「そいつはどうも。そしてシルヴィも自然体の方が良いと思うよ。変に固い口調よりもさ。」

「変とは何だっ。わ、私だって嫌われていないか心配なんだ。」

「ハハハ、安心してよ。脳みそを他人から移植して来ない限り永劫シルヴィを嫌う事はないから。」

「フフ、それは私も同じことです。」

その後俺達はひたすらずっと一緒に踊っていた。何やらあらゆる視線を全方位から感じ取ったが、全く気にならなくなっていた。臭いセリフだが、シルヴィしか目に入って無かったってか?キャッ恥ずかしい!そして後日シルヴィから聞いたんだが爺さんやお父さんも見ていたそうだ。お父さんのドヤ顔がムカツクと騒いでいた。俺はようやくシルヴィと真横に並んだ気がした。長かったが、今やっとスタート地点に立てたって感じか。先は長い、ぼちぼち行きましょう。


―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!地味に、地味にズレが広がってる気がするんです。というのもですね、もう既に濡れ場が2度ほど発生しておりましてね。うーむ、肉体的接触をしていない以上その距離をどう縮めたものか、と。うちはプラトニック哲平ですんでねぇ。その辺上手い事表現しないで、いきなりシルヴィとのカップリングとかは避けたいんですよねぇ。とりあえずそういうやらしいシーンを抜きにして、哲平とシルヴィを近づけるように工夫はしてみたんですが。違和感があればその辺修正しようとは思います。それではだらだら言い訳ごめんなさいね、またお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!日常再開、様子がおかしいシルヴィ
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/30 19:34
「ん~・・・っと、ふぅ~何か一段落付いたって感じ?」

テストに舞踏会、比較的規模のでかいイベントを終えてしまった俺は、何やら倦怠感に近い気だるさを全身に感じていた。ちなみに最初の艶めかしい声っぽいのは背伸びしてるだけです。周囲の優等生の方々は普段と全く変わり無いと言うのに。俺だけキャラがコロコロ変化してる感じが否めないな。日々成長しているのか、あるいは退化しているのか。それは分からないが、その時々の感情を大事にしたいもんだ。

とは言え舞踏会以降シルヴィを見て無いんだが、一体これはどういうことなんだ?心を通わせあえたような気になったのは実は俺だけだったのか。独りよがりな誇大妄想はいつもの事だが今回ばかりは信憑性あると思ったんだけどな。哲平って呼び名まで変わってたんだし。まぁいいや、フェンシングにお熱なのかもしれない。

最近俺もマリアと「さかなの海」というゲームを一緒にするようになって暇じゃない。このゲームはスキューバーの主人公が魚類を中心とした海中生物とスローライフを送るゲームである。通信して皆で出来るため、俺とマリアは毎晩海の中で楽しく行動しているのだ。

今日はイソギンチャ君とお話をしようなどと考えてる内に、気付けば皆席を立って礼をしていた。相変わらず俺は皆が座ると同時に立って礼をする、というスローライフを送っていた。ガヤガヤと話しながら皆自分のペースで教室を出て行く。俺も社交部に顔出すか、もうそんなに用事無いけどあそこのまったり空間は居心地が良い。もうお馴染になっている社交部なので、優にはいちいち説明をする必要が無かった。俺が軽く手を上げ、また晩にな、と言えばそれで事足りるのだ。

俺がのそのそナメクジ歩行で教室から出るとシルヴィに出くわした。おお、久しぶりだ。というか電話の頻度が上がれば上がる分顔を会わせる回数減るんだよな。俺はフランクに挨拶をして近況を聞いたりした。思うんだけどシルヴィの態度が妙にぎこちないのは、俺の被害妄想でよろしいのかな?何やらシルヴィの血色がよろしく、目線が定まって無いのも気のせいでいいのかな?まぁ深くは考えまいて。

「舞踏会から会うの久しぶりよなぁ。忙しかったの?」

「え、あ・・・そんな所です。」

「そんな所って厳密にどういう?」

「・・・っと、その、厳密・・・フェ、フェンシング!それで忙しかったんです。」

「そっか、フェンシング大変なんだな。体調の方だけは気遣ってね。」

「・・・ありがとう。」

こんなんです。何このぎこちない会話。俺の滑らかな口調台無しもいい所じゃないの。フェンシングって言うのも今思いついた感凄いんだけど。まぁシルヴィも照れてんだろうねぇ。哲平じゃなくて有馬殿に戻ってたし。やっぱこれは距離感掴めなくて戸惑ってんだろう、きっと。シルヴィは俺が憐憫とも儚い小動物を見るような眼差しに気付いたのだろうか

「私も有馬殿に用事があったのですっ!」

虚勢というか強がりというか、唐突にボルテージが上がったシルヴィ。どんな用事なんだろう、まぁテンパってる彼女の用事は小用なんだろうと予想してみる。

「今日は社交部に行かれるので?」

大正解、二つの意味で。一つは小用も小用、いつも俺行ってるやないかーい、って気分。もう一つは、ええ、社交部に行きますよ。という意味での正解だね。

「うん、今日も、社交部に行くつもり。」

何かいつも行ってないけど今日は行くの?みたいな雰囲気を払拭するために「も」の部分を強調した。動じる様子は微塵も感じられなかったが。その代わりにちょっと萎んだ表情になっていた。俺は自身のお誘いセンサーがビンビン反応しているのを受け

「あ~いや、今日はどうしようかな。行ってもやる事ないしな。」

即座に行かない風な態度で反旗を翻した。俺の言葉に顔面にパッと花を開かせたシルヴィは

「であるならば有馬殿。私では無く父上の申し出なんですがね?私と―

「あ~哲平とシルヴィアだ。お~い、一緒に部活に行きましょう?」

俺はずっこけた。うおおい!このタイミングで来るんかいっ。いやこのシルヴィの溜め誘いからして何かあるとは思ったけど。まさか外部からの遠距離攻撃たぁな。そしてシルヴィも横やりが入る事は想定してなかったようで

「こ、これはシャルロット殿。ええ、我々も今しがたその件について話していた所です!ねぇ有馬殿?」

ねぇ?って言われても・・・。や、あながち間違いでは無いけども。行かないという真逆の予定さえ気にしなければ。しかしそんな発言はあの訴えかけるような眼差しで見るシルヴィを見れば言えようはずもなく

「あ、ああ、まぁ、そうなる、かなぁ?」

言葉を濁しつつも肯定の方に傾く俺だった、愛ゆえに。しかし俺は父上云々の下りの後の話が気になったので

「ああ、シャル、ちょっと先行っててくれる?シルヴィに聞きたいことあるんだよ、俺。・・・うん、勉強の事で。」

「聞きたい事」の辺りからシルヴィから熱視線が送られて来たので、思わず嘘を付く俺。下手な事言うと折檻喰らうもんでねぇ、致し方ないんです。俺尻に敷かれてんなぁ、気持ちいいけど。

シャルは一緒に行く!と駄々をこねておられたが、そこはグッと堪えてもらった。万が一シルヴィの誘いが重大な用事だった場合、色々不味いだろうし。シルヴィはシャルに変な誤解を招かないか、と言う事にヤキモキしていた。うーん、その心配する仕草が余計に周りへいらぬ誤解を伝播させているのではなかろうか。それはさて置き

「てっ、有馬殿。聞きたい事とは一体何なのですっ。」

「まま、そう急かしなさんな。シルヴィいいの?父上の申し出とか何とかは。」

急いでいるため咄嗟に「哲平」と言いかけたようだ。もうちょっとだったのに!腕をグイグイ引っ張りながら社交部に行きたがるシルヴィだったが、俺の言葉でピタリと動きを止めた。その後思案顔になり、真顔になったかと思えば

「先の発言はお忘れ下さい。」

何やらもういいらしい。とりあえずそんな真顔でこっち見るの止めて欲しいわ。俺何も悪い事してないのに責められてる感じ。あと端正な顔立ちの人の真顔って意外に怖いんだよね。俺達はそれだけの会話で用件を済ませてしまったので、余裕でシャルに追いつくことが出来た。

俺達を待っていたのか、元々そういう行動なのか、シャルは花壇に咲く花の匂いを嗅いでいた。彼女がいつも社交部部員の誰よりも遅く参上する経緯を垣間見た気がする。それといくら綺麗な花が奥にあってもガッツリ花壇の中に入らない、軽く足跡付いてますよ。目的完遂のために周りが見えなくなる所は俺に通ずる物があるな。

珍しく俺がシャルをたしなめても彼女は喜ぶばかり。シルヴィが言うとしょんぼりする。ちょっとシルヴィ傷ついてる、まぁ愛の鞭って事で一つ我慢して下さい。それでも立ち直りの早さはシャルの美点の一つで陽気に話し始めた。シャルから会話のイニシアチブを取れるとは思っていないので、俺とシルヴィの交代制で相槌を打っていた。たまにシルヴィとシャルの日本文化ボケが入るのはいつものこと。こういう所で突っ込みの練習をしとかないとね。

やはり話を弾ませながら歩いて行くとあっという間に感じる。気付けば俺は定位置の椅子に身を委ねている。根津がハワイだのグアムだのに行った話を延々聞かされて、俺としては精神疾患を患いそうだった。シャルを見れどもクッキーに夢中だ。なればシルヴィと思っても素知らぬ顔で談笑中。頼みの綱の聖華団長殿、と視線をやっても優雅に紅茶を啜っている。誰一人として我関せずを貫き、俺は友人Aの相手を一人でする事になったようだ。記憶障害になったようで、ハワイの話をしてる彼は一体誰かと疑問に思い始めていた。

俺がもはや聞くだけの鏡像になり、根津の言う言葉をオウム返しをするようになっていた。根津はどうもスイッチが入ったようで、その事に気付かずひたすらまくし立てている。そんな俺達のやり取りが鬱陶しいのか、俺が哀れになったのか、金子が根津に引き金を引いた。

「たかがハワイで。」

その途端、根津の動きが一時停止した。恐らく脳内で「たかがハワイ」を何度もリフレインさせているのだろう。俺は根津の魔術から解放され、状況把握に努めた。うん、根津震えてる、金子優越感に浸ってる、すなわち金子VS根津ですね。俺は銃撃戦の流れ弾を喰らわないように、ボス(聖華)の隣りに座った。聖華に「何よ?」と問いかけたが、俺が指で金子と根津を指し示すと口を閉ざした。

それから彼らは何故か相撲の話に発展していた。そこで俺は手近に有った団扇を持ち、それを軍配団扇としながら

「君達、モンゴル金子、ハワイ根津のどちらが優勢か相撲で決めたらいいじゃないか。僕がぎょう―おぶぁ!」

僕が行司やってあげる、と爽やかに言おうとした所で強烈な張り手を金子にお見舞いされた。相手は俺じゃないだろう、無抵抗な市民に銃を向けるなんて、これが兵隊の実態か!

俺は審判として致命的な損傷を受けたので、休息を取るためにザ・母性たるシャルの元へ行くことにした。違うんだ、シルヴィ、君も凛々しく美しい。しかしバラには棘があるように君もツンツクしているんだ。したがって休もうと近づけば近づくほどに、俺の全身が穴開きチーズのようになってしまうんだよ。分かっておくれ、シルヴィや!

死にかけの俺がシャルに膝マクラされる瞬間俺は思いのたけをシルヴィに向けて放った。膝に頭を乗せようとした時に俺がみたシルヴィの目には殺意しか籠って無かった。

「やっぱいいです、ごめんなさい。」

「えぇ~、別に私はいいのにぃ♪」

シャル、君の魔性っぷりは俺の生死に関わる程だ。危うく横たえた体に剣が突き刺さる所だったよ。俺は猫のように甘えてくるシャルを適度に放置しながら、右腕を枕にして横向きに突っ伏した。丁度この姿勢だとシルヴィがよく見えるんだ、エヘヘ。そしてシャルが何やらフォークを俺の方に・・・ん?

「はい、哲平。あ~~ん♪」

俺は反射的に口を開きかけた・・・が閉じた。唇に刺さるフォークとナッツ入りチョコ。

「もうっ、哲平駄目じゃない。ちゃんと口開けなきゃ。」

俺の唇の隙間にグイグイフォークを突っ込みながらブー垂れるシャルロット姫。俺はもうシャルの背後からこちらを見ている眼光から目が離せなかった。待ってくれよ、ここまで俺の落ち度は膝マクラくらいしか無いじゃないか。俺に対してその憤怒の形相は完全に筋違いというものだ。

ある一説によると、これは「ヤキモチ」と呼ばれる女性の独占欲からか、あるいは家庭を守るために備わっている能力らしい。そしてその度合いに関して個人差があるそうだ。シルヴィも漏れなくヤキモチモードに移行されたようだ。しかし彼女のヤキモチは下手すれば串刺しの計になりかねん。

ってちょっと待て!良く考えたら、ヤキモチ焼くほど俺好かれてるってこと?!うおお、これはテンション上がって来る!

「あ~、ん♪」

俺が嬉しさのあまり口を開けた隙を付いてフォークが口内に突き刺さった。シルヴィの怒りの視線も全身に隈なく突き刺さった。俺はもはや味を感じていなかった、恐怖ゆえに。

「ね?哲平、美味しいでしょ。」

このシチュエーションを言うのか味の事を言うのか図りかねる質問だ。しかし俺は早くこの事態を一刻も早く鎮めたい一心で、ぎこちなく頷いた。するとシャルは嬉しそうに頬擦りをしてきた。

「・・・」

これは不味いんじゃないだろうか。いや、もう完全に怒りから失望に変遷を遂げようとしている!ようやくスタート切れたのに。スタート切って同時に靴ひもとアキレス腱も切ってそのまま病院送りなんてあんまりだ。いやいや、俺は引きずってでもゴール目指してやるさ。

俺はそんな事考えながら目の前にフォークが来たら口を開けてひな鳥になっていた。無意識化の行動まで文句言われても僕知らないよっ!そしてシルヴィが何故にあのような般若顔になっているのかと言うと

・膝マクラ
・あ~ん
・頬擦り

ぐらい?少なっ、そしてしょぼっ!ヤキモチとは言え理不尽に思えて来た。しかもあ~ん、もそこまで言うほどの物でも無いんだ。よーし、それを分からせるためにシルヴィにもしてあげよう。

俺はムクリと上半身を起こしシャルに

「美味かった、シャルありがとう。シルヴィが凄く物欲しそうに見てるから俺があ~んをしてあげようと思うんだ。だからちょっと貰っていい?」

「え~、それじゃあ私がしてあげる!」

「分かってないなぁ、こういうのは異性からされた方が気分いいもんなんだって。」

「そうなのぉ、それじゃあ仕方ないわね。はい、優しくねっ♪」

俺がシルヴィの席にチョコを持って現れると、シルヴィは怒りだか恥ずかしさからかタコさん顔だった。その目は釣り上がっており、ちょっと内心怖かった。

「あ、あ、あ、あなたは何を言っているんです?」

ああ、これは怒って無いわ。いや、正確には怒りよりも恥ずかしさが勝ったのかな?とりあえず口も上手く回らないようで、頭もそこまで回って無い様子だ。俺はもうごちゃごちゃ言われる前にケリを付けようと思い

「はい、シルヴィ、あ~ん。」

とシルヴィの口元にフォークを差し出した。うわぁ、凄い、人間って羞恥心で湯気本当に出るもんなのか。シルヴィは頭と耳から湯気を出しながら静止している。俺はこのままでは埒が明かないので

「シルヴィ『あー』って言ってみ、『あー』って。」

その言葉はシルヴィの脳に届いたようで僅かばかり口を開いた。その瞬間俺はすかさずチョコレート付きフォークを、彼女の口の中に押し込んだ。彼女は口の中にある物体を呆然と咀嚼し飲み込んだ。

「どうよ、大したことないでしょ?」

俺の発言が引き金となったのか、バネ仕掛け人形のように跳ね上がるシルヴィ。風圧凄くて前髪ちょっと揺れたんですけど。

「よ、よよよよ用事があるのでお先に失礼しまひゅ!」

最後かみっ噛みになりながら、上品さの対極にある闘牛の如き猛々しさで出て行った。それを皆は呆けたように見ていたが聖華が俺の席の傍にやって来て

「あんたもねぇ、からかうのはほどほどにしときなさいよ?後でどうなっても知らないんだから。」

「ああ、何か分からんがやり過ぎたみたいね。」

「ほらっ、今日はもうやる事も無いしさっさと謝って来なさい。」

「姐さんのお気遣いには本当いつも助けられてるわ。それじゃお先に失礼します。」

「ふん、言葉よりも態度行動で返して貰えれば言う事は無いわ。また明日ね。」

俺はその言葉を聞き、他の部員に会釈をしてシルヴィの後を追うのだった。


―続く―

はい、どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!シルヴィのヤキモチたまらんすねぇ(笑)結局哲平流されるままにされてたけど。まぁ僕としては転んでもタダでは起きない精神で、今後も哲平を動かして行く予定なんで。ダンス一回一緒に踊ったくらいでここまで親密にならね~よ、と思わないでもありません。しかしその穴を埋める技量が僕には無いみたいですねぇ。違和感を感じられても笑って流せる、そのような方でないとこのSSゴミ以下の価値になるかもしれません。自虐しても始まらない、頑張って続き書きますか!それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!シルヴィの謝罪
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/30 23:24
 俺はシルヴィの後を追うために急ぎ足で社交部の部室から飛び出した。そしてシルヴィに追いつくために校門に向かおうとすると

「哲平、哲平!」

シ、シルヴィの声が聞こえる?まさか、し、しかし確かに俺を呼ぶシルヴィの声が。というか小声なのでそこまでハッキリ聞こえた訳じゃないんです。俺のシルヴィへの愛から生まれた幻聴なのかもしれない。俺は前後左右きょろきょろ見回した。・・・と、おや?

茂みから何やら黄金ヘヤーが覗かれておる。あれは間違いなくシルヴィアの人!もっとしっかり隠れられるはずだが、俺に気付いてもらうために少しだけ身を晒しているようだ。俺は犬のように飛び跳ね、お座りの状態でシルヴィの横に並んだ。シルヴィもしゃがんだ状態だったので、目線の高さは同じである。

「どうしたの、こんな所に隠れて。」

「いや、他の者に見られていると思うと上手く喋れない。だからこうして気付かれにくい場所を選んであなたを呼んだのだ。」

「まぁ、心得た。それとさっきはちょっとやり過ぎたみたいだった、ごめんなさい。」

「・・・いえ、私も少し嬉しかったのでいい。でも人目は気にして欲しい。」

聞きましたか、皆さん?「嬉しかった」だって、これはもう来てるだろう。俺としては心の中でラッパ吹き鳴らしていた。おめでとうございます!あなた方は相思相愛、今後も気持ちを通わせ美しい関係を築いて下さい。はい、誓います!

「・・・哲平、聞こえてる?」

「おおっと、ごめん。今ホワイトアウトになってた。何の話だっけ?」

「恥ずかしいから何度も言わせないで頂きたい。今日本当はあなたに用事があるという話だ。」

「やっぱりあったのか、そりゃまたどういう?」

「いえ、どうしても父上が哲平とお話を今日したいというので。だからディナーに哲平を誘うつもりだったのだ。都合が悪ければ別の日を指定して頂きたい。」

バァァン、バァァン

トランペットに続きシンバルも追加された。俺はまた幸福の波が襲って来るのと同時に猜疑心も湧き出ていた。何だこれは、俺がテストだ舞踏会だって頑張った神からの褒美なのか?俺は幸福感と不安感併せ持った不思議な感情を持て余していた。しかし返答が無いのが悪い意味に取られたようで

「突然の申し出だ。別の日が良ければその日にでも・・・

「ああ、いや違うんだ。日時に関しては一切問題無い。というか俺自体が突拍子も無く誘うような男なんだ。そんなに気を使って貰わなくていいよ。」

「それなら迎えの車を呼ぶので校門まで行こう。」

「そうさな、こんな所に居ても始まらんな。それに俺も家の方に電話しなきゃね。」

俺達は互いに電話で用件を告げ校門まで一緒に歩いて行った。俺は別に話す事もないので吹けない口笛を何とか吹こうとしていた。そしてシルヴィはそれにしても・・・と言って話し始めた。

「やはりシャルロット殿に掛かれば哲平も頬が緩むんだな。」

「んーどうなんだろ、自分としちゃいつも通りなんだけどな~。」

「遠目に見ていたが、あの顔は極楽の顔だった。」

「そらねぇ。シルヴィも認めると思うけどシャルって美人だろう?そのような女性にあのおもてなし受けてにやけない奴居ないと思うな。ゲイだのホモでもない限り。それかシャルが好みじゃないとかな。」

「ふんっ、一般論で逃げようとして。何にせよ私の顔色を伺って行動するのが気に入らないと言っているんだ、私は。」

「あーそれは確かにあったかなぁ。でもシルヴィ滅茶苦茶睨んでたんだもん。顔色伺って無かったら俺刺されてんじゃないかってくらい。」

「それこそ被害妄想というもの。邪念があるから私の表情を伺うハメになるんだ。」

「う、上手い事言うねぇ。邪念がある事に関しては正直言い返せないかもな。にしてもシルヴィやけに突っかかる物言いじゃないか。俺がシャルにあ~んとか頬擦りされるのがそんなに気に入らないの?」

「気に入る訳ないだろう!あんな公の場で見せつけるようにされれば、誰だって虫の居所が悪くなるというものだ。」

「でも怒ってんのシルヴィだけだったよ?それにシャルのあの態度はいつもの事だし。」

「・・・それは」

「それは?」

「・・・そうかもしれない。」

俺も結構意地が悪い言い方してるかもしれない。シルヴィが不機嫌になる理由なんてとっくの昔に見当付いてんだけど。それでもシルヴィ自身で気付いてくれたらそれに越した事無いんだよねぇ。俺を異性として気にしてくれてるんだろうけど、自覚症状があまり無いようなんだよな。にしてもヤキモチ焼かれるほど好かれるとは俺も成長したよなぁ。

それから俺って理不尽な誹りを受けて流せるほど人間出来てないのよね。だからやってないならやってない、って言わないと駄目だと思う。シャルもあれで俺に好意を向けてくれてんだ。俺としては喜ばしい事だし、あしらうような真似は避けたいんだよな。や、以前結構酷い扱いしてた気するけど。何だろう、シルヴィに思いっきり泣いてから、感謝とか謝罪の気持ちが強く持てるようになった気がするんだよ。客観的に自分を見れるようになったというか?まぁそういう訳で出来る範囲で他人からの好意を無碍に蹴りたくないのよ。

俺が社交部楽しく出来るのはシャルのおかげでもあるんだ。だからシャルには出来るだけこれから優しく接して行こうと思ってるんだよ。シャルの悪ふざけが過ぎた時はちゃんと叱ろうと思うけど、今日のは許容範囲っていうかいつものことだ。だからあれしきの事で目くじらを立てられてたんじゃ、今後も繰り返される可能性が高いんだよな。

だから俺は今ハッキリ、シルヴィに認識して貰いたいんだよ。その程度で怒るのは理不尽なのではないかって。まぁさっきからシルヴィも黙々と歩いている所を見ると反省タイムなのかな?言いたい事を言わないとな、そういう意味ではシルヴィも俺に真正面からぶつかってくれるから嬉しいや。もう校門に到着しようかと言う時だった

「・・・すまなかった。」

俺の耳にのみ聞こえる声量だった。それでも俺としては大満足だよ。俺に響けば十分じゃないか。シルヴィは何やら自分を責め立てているのか俯いていた。俺はシルヴィの頭を撫でながら

「今回は俺に分があったかな。でもありがとう、自分の非を認めてくれて。素直に間違いを認める事が出来るのは凄いことだよ。俺もシルヴィの前で享楽的な行いは控える事にしよう。俺だってシルヴィに不愉快な思いをさせるのは不本意なんだ。」

俺はそこまで言って一息付いた。それから前方を見据えながら

「誰でも間違いはあるんだ、それを潔く認めれる人間が先に進めるんだよな。俺だって間違いだらけの人間だ。だからシルヴィ今日の事は気にせず、俺が何かしでかしたら叱責をかましてやってくれ、な?」

最後は彼女の頭を軽くポンポン叩きながら言った。我ながら調子に乗った発言に思えたが

「それは私も同じこと。今日のように提言の言葉を頂きたい。そして哲平あなたはやはり立派な人間だ。普段ふざけているかと思えば聖人のように良い事を言う。日頃のひょうきん者のあなたは周囲を楽しませるために作っているとしか思えない。」

俺は照れくさそうに笑みを返すだけだった。心の中でこう思ったけど恥ずかしくて言えるかい。

「俺を変えたのは、シルヴィきっと君だよ」

うっわ、気持ち悪い!自分の心の中で思っておきながら何だけど。こんな気障ったらしい発言墓場にさえ持っていきたくない。俺は自分の中に湧き出た、こっ恥ずかしい言葉を振り払うために頭を左右にブンブン振った。

俺達はほどなくして到着した車に乗り込みホッセン邸へと向かうのだった。

・・・

車内にての会話になるが

「哲平、言い忘れていたが父上は意外に洞察力がある。」

「ふむ、その洞察力が我々にどう関係が?」

「その洞察力と邪推が結びつき我々をからかう可能性が高いということだ。」

「なるほどなるほど、からかわれるの嫌だからお父さんを押さえろ、と?」

「いや、そこまでは言わない。ただ心構えだけはしておいて欲しい。きっと色々根掘り葉掘り聞いてくるだろうが・・・。」

「大丈夫だって、俺そもそもお父さんと結構親交あるしな。というより俺がお父さんと意気投合する可能性の心配をした方がいいよ?」

「・・・くれぐれもマリアの目があることをお忘れなく。」

こういう会話をしていたのだった。俺としては貰ったコンドーム一個たりとも消費してないことを、どう説明したものかが悩みの種だ。やって無い事を説明するの結構疲れるしなぁ。シルヴィの話を聞くと、嘘を言った所で見抜かれそうなんだよな。マリアの存在もあるし、大人の分別がある事を期待するしかないよなぁ。


―続く―


はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!哲平が最近カッコイイ!どうしよう、僕も惚れそうだ。って読者の皆さんはどう感じられるか分からないんですけどね。本編では丁度キリの良い所のため、少々短いですがここで切らせて頂きます。

最近シャルルートの事を考えて始めているんですがね。シルヴィに泣いたから感謝云々って言う表記してるじゃないですか。つまりそう言った改心イベント作らないと傲岸不遜な態度の哲平のままな訳です。う~む、皆さんから酷評のあいつをまた書かねばならんのか。そう考えると何やら頭が痛い話ですね。それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!シルヴィがメインディッシュ?んな訳ない(このSSに置いて)
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/31 10:38
 「ワーイ、お兄ちゃんいらっしゃい!」

もう俺にとっては馴染みの場所となりつつあるホッセン邸。そしてほぼ毎日来てた時期もあるので、俺としては第二の故郷と認識している。このように熱い抱擁でマリアが迎えてもらえるんだ。暖かい家族だよなぁ、寒いのに暖かい何て不思議なものです。

「やぁ、マリア。会うのは久しぶりだねぇ。「さかなの海」じゃ毎日会ってるけど。」

「アハハハ、本当にねっ。お兄ちゃん、ゲームの中でも行動ハチャメチャだから毎日面白いよ。」

「あんな不思議な世界に居たらこっちも不思議な行動したくなるってものよ。」

「ふふっ、だからってタコさんを頭に絡ませたり、自分からタコさんのお家(タコ壺)に入ったりするのはどうかと思うな。」

「あれはコミュニケーションの一種なんだ、魚類に対する親愛の証なんだよ。」

俺とマリアはゲームの話に花を咲かせながら家に向かった。俺は何か忘れているような気がして入口のドアの前でふと立ち止まった。おっと、そ、そう言えばシルヴィアちゃん一言も喋って無いけど、お加減はいかがかな・・・?俺は恐る恐る背後を振り返ると

「・・・(怒)」

怒ってます、非常に怒っております。こうも立て続けにヤキモチシルヴィを見せつけられても。俺はまたしてもシルヴィのご機嫌取りをせねばならなくなった。マリアもシルヴィの様子に気が付いたようで

「あ~お姉ちゃんヤキモチだぁ!」

コ、コラ。そんな刺激を与えるんじゃありません!そして本当の事も言っちゃうなんて。時として子供は無邪気に人の傷をえぐるから怖い。シルヴィも嫉妬やら怒りに恥ずかしさまで追加されて顔真っ赤だ。シルヴィは常日頃結構顔赤くするけど、実は色の濃さがその都度違うんだよ。今回の濃度は結構行ってますね。う~ん、10段階で考えるなら7,8と言った所か。

「てっ、有馬殿、ゲームばかりしていては駄目だろう!」

「は、はいぃ!すいません!」

シルヴィは何やらとりあえず俺に矛先を向けることにしたようだ。どうもここでも有馬殿で統一なされるようです。にしてもこれ以上噴火されては怒気マグマが飛び散ってくるので、ここで鎮火活動に必死だ。しかし照れ隠し切れのシルヴィが珍しいのか、マリアはルンルン気分で姉をいじる気満々だ。ま、待てマリア。姉いじりは俺が居ない時にしてくれる?君がいじればいじるほどお姉さまからのマグマ汁で俺の皮膚が焦がされるんだ。俺結構皮膚ただれるんじゃないかなぁ、ヤケドで。

「エヘヘヘヘ、お姉ちゃん、もしかして私にヤキモチ焼いてるのぉ?」

何ちゅうことを!何ちゅうことを本人に言っとるんだ!ああ、プルプルしとるじゃないか。アレ(シルヴィ火山)の消火活動する俺の身になってくれたまえよ。

「有馬殿何をグズグズしている、さっさと先に進まないか!後がつかえているんだっ。」

「は、はいい!」

妹にヤキモチ焼いてるなどとは言えるはずも無く、俺に対しこうして野次のようなマグマ弾を飛ばして来る訳だ。マリアめ・・・ゲラゲラ笑っていい気なもんだよ。そして別に広い通路なのに何で縦一列になって進んでんだよ。横に並べばいいじゃないか。ああ、シルヴィ

「お姉ちゃん、顔、赤いよぉ?ウフフフ♪」

と言う事で顔見られたくないのね。あ、マリアそろそろ来るよ。君もどうやら調子に乗り過ぎたみたいね。いくらなんでもお姉ちゃん、俺ばっかり攻撃する訳じゃないんだよ。

「マ、マリア!!いい加減にしないかっ!」

「ゴ、ごめんなさ~~~い!お兄ちゃん、お姉ちゃんが怒ったぁ!」

「おお、よしよし。僕たちはいつだって怒られる運命なんだ。何したって怒られる星の元に生まれたのかもしれないね。」

俺は飛びついてくるマリアをそのまま抱き上げ、肩車をして歩いて行った。シルヴィも心なしかトボトボ後ろで歩いている。大人げない自分をまた責め始めているんだろう。

「お~い、シルヴィ後ろ歩かなくても隣り歩けばいいじゃないか。そんな所だと一緒に話せないだろう?」

「・・・だってマリアと楽しそうに話していたではないか。」

「悪い悪い、ちょっと盛り上がってしまったんだよ。マリアもほら、お姉ちゃんにきちんと謝りなさい。」

「お姉ちゃんごめんね、私も三人で仲良くお話したい!」

マリアは俺の頭に手を付いて頭を下げた。シルヴィはその様子を見て安心したように笑い

「有馬殿、幾度も見苦しい所見せてすまないな。」

「いえいえ、自然体のシルヴィが見れて俺としては嬉しいけど。なぁマリア?」

「うん!お姉ちゃんがあんなに真っ赤になるなんてここ最近見てないかも。」

「ハハハ、そりゃ珍しい物見れてマリアも喜ぶ訳だ。シルヴィそういう訳だから感情はもっと素直に出せばいいんだ。周りもきっと楽しんでくれる。」

「・・・これ以上馬鹿にされるのは勘弁願いたいな。しかし楽しく会話する事になんら異論は無い。」

こうして俺達は三人で仲良く談笑しながら通路を進んで食堂に向かうのだった。それにしても俺、ホッセン家族に溶け込み過ぎだろう。

・・・

「やぁ哲平君!この日をどんなに待ち侘びた事か。」

お父さんは会った瞬間からこのテンションだった。何かしら充電したのでは無いかと思えるほどのハイっぷりに、こちらはたじたじである。ちなみに料理はまだ出来ておらず我々は応接間のような場所で談笑をしている最中だ。

「お父さん、お久しぶりですね。バーで語り合って以来ですか。」

「そうだね、あの時は僕もどうかしていた。雰囲気に流されて余計な事まで喋った気がするよ。」

「いえ、お父さんのおかげで僕も色々決断する事が出来たんですよ。その節は感謝しています。」

「決・・・断?」

俺の一言でお父さんの目が怪しく光った。ああ、ヤバイ。どうも地雷を踏んだらしい。

「してどうだった?」

「と、申されますと?」

「フフ、焦らしてくれるじゃないか哲平君。娘の具合だよ、何発やった?」

「・・・」

おおう、予想はしていたがこれは酷い。俺は以前のシリアスパパを見ているから良いものの、今の発言だけ聞くとスケベ親父以外の何者でもない。俺でさえ彼が娘の事を本当に愛しているのか心配になってきた。マリアがトイレに立っていて、この場居合わせて無い事だけが救いと言えるかもしれない。あと何が凄いって

チャキン・・・

シルヴィが居る事だよな。あ~あ、発動しちゃった。地雷どころか起爆装置を完全に押しちゃったよお父さん。シルヴィが完全に剣持っちゃってますね、こりゃあ。シルヴィが居るのに今の発言を堂々と言えるのは、ある意味英雄だと俺は思う。いかん、シルヴィの咆哮が来る。皆、耳を塞げぃ。

「あ、あ、あなたという人はーーーーーーー!!」

「シルヴィー、ち、違うんだよ?父は、父は冗談で、弁明を、イタタタタタ!て、哲平君!」

いや・・・いくらなんでも今の発言は。どう考えても百パーセントお父さんが悪いです。袖手傍観の構えで行かせて貰いますよ、悪いですが。品の無いパーティージョークは時として反感を買うと言う事を、身を持って知って下さい。

・・・

「ねぇパパ、どうしてボロボロなの?」

マリアが帰って来た時にはパパは袋叩きにされた後だった。と言ってもやはりシルヴィも彼の娘、体躯を傷つけるようなことは無かった。ボロボロになっているのは全身の衣服のみなのである。もう原型を留めていないそれは、一つの斬新なファッションと化していた。

お父さんは愉快そうに笑いながら

「いや~、ハッハッハ、パパシルヴィに怒られちゃった。」

アハハ、ウフフとマリアと笑い合ってはいお終い、だった。ここまで立ち直りの早い人も珍しいんじゃないだろうか。それからお父さんは髭をさすりながら

「にしてもマリア、シルヴィが最近妙に女らしくなったと思わないかね?乙女のようにそわそわしている時さえあるじゃないか。」

「まだそのような痴れ言を!」

ああ、いかん。また食って掛かろうとしておる。俺は今回はシルヴィを止めるために羽交い締めを決め、お父さんに向かって首を振っていた。これ以上刺激すると本当に切り身にされますよ。マリアはそんな父の言葉を受け

「ん~」

小首を傾げた後難しい顔をして

「よく分かんない。」

と一言言った。普段のシルヴィはやはりいつも通りに見えるらしい、マリアから見ると。彼女は本心を語っただけだろうが、今の発言はファインプレーだ。シルヴィの怒りの震えが静まったからね。俺も脇から手を離し、シルヴィは存分に胸を張りながら

「それご覧なさい。マリアも日々生活を共にして正しい目で私を見てくれている。だというのに父上は色情の目で私を見る。嘆かわしいにも程があります。」

やれやれと言う風に額に手をやり首を振るシルヴィを余所に、お父さんも落胆の表情を見せていた。

「マリアちゃんにはまだ早かったね~。レディとして一人前とは些事から全体を推察出来ることだよ。」

「邪推しかしていない父上が言うな!」

「マリア、レディだもん!」

おおう、麗しの姉妹が力を合わせて悪・・・いやお父さんに立ち向かっておる。二人の剣幕にお父さん左に全身が傾いてるよ。俺としては想像していた以上に姉妹とお父さんの会話が弾んでいるため、あまり口を挟めなかった。見てる分だけでも十二分に楽しいけどね。お父さんはシルヴィには目もくれず、マリアに優しく笑いかけながら

「怒らせてすまないね。いいかい、マリア。シルヴィの生活を今後よく観察してごらん。そうすれば―

「父上、マリアにいつまで下らぬ知恵を授けるおつもりです!有馬殿が退屈しておられるのが見て分かりませんか?」

え、俺結構興味深そうに聞いてたつもりだったけどそう見えた?お父さんは俺が退屈している事よりも別の事に洞察されたようだ。

「分かるかい、マリア。今シルヴィが「有馬殿」と声を発する時、本当にごく僅かなタイムラグが生じている。この事から考えると普段「哲平」ないしは「哲平殿」と呼んでいる可能性を示唆しているね。僕はこういう変化の事を言っているんだよ。」

なるほど、今のは分かりやすい例えだ。というかシルヴィ口をパクパクさせてたら図星丸出しじゃないか。マリアはふ~ん、と言いながら姉を好奇心の目でじろじろ見ていた。

「ある事無い事言いたい放題言って!もう父上には構ってられませんねっ。」

シルヴィはいじられるのが耐えられなくなったようで、颯爽と部屋を出て行った。部屋を出た直後に顔だけ覗かせ

「言っておくが逃げるのではありませんよ!料理が出来ていないか厨房を覗いて来るだけです。」

俺達三人はにこやかに笑顔を振りまきながら見送った。シルヴィが出て行った後は当然大爆笑だ。

「アハハハ、お姉ちゃん逃げた~~~~!」

「あれはあれで可愛いもんだろう?哲平君、ワーッハッハッハ!」

「ハッハッハ、お父さんに掛かればシルヴィも小動物に見えてきますよ。」

「パパ分かったーーー!」

「ん、どうしたんだい、マリアちゃん?」

「お姉ちゃん、お兄ちゃんに照れてたんでしょう?」

「ザッツラーーーイ(That's right)!!」

お父さんは両指の人差し指を拳銃のようにマリアに向けウインクも一緒に放っていた。実に楽しそうだ。そのままの勢いで俺とお父さんはハイタッチを交わしていた。それにしても彼らは完全に俺とシルヴィが出来てると信じてまるで疑う気配が無い。実際の所で言えば、ダンスを長々と一緒に踊っただけなんだけどな・・・。

マリアはとても嬉しそうに左右に振り子の如く揺れながら

「ねぇねぇ、お兄ちゃんいつ結婚するの~?」

「マリアちゃん、野暮な事を聞くもんじゃないよ。慌てなくても近日中には、ね?」

「いや~、ハッハ、それはどうか分かりませんが。少なくとも僕がしっかり足を固めないことには、ですかね。」

「え~それじゃあ私が粘土で固めてあげる!」

「ハッハッハ、優しいなぁマリアは。僕も結婚の道が見えてきたかなぁ~?」

この時また突然お父さんの顔が真面目になると

「シルヴィが、最後の砦かい?」

と、ある意味全てを物語る鋭い指摘をしてきた。砦・・・障害と言い換えてもいい。しかしシルヴィはあれがシルヴィで、いつも通りのシルヴィでいいんだ。だから俺はあまり陥落とかそういう表現を使いたくなかった。俺は別に占領したい訳じゃないんだ。シルヴィの砦に俺の居場所を空けて欲しい、ただそれだけなんだ。俺はお父さんの言葉にゆっくり首を振り

「最後の砦は「自分自身」ですよ。」

と一言言った。お父さんは少し驚いた様子だったがにっこり笑い、ありがとう、と返事を述べた。少ない言葉数の応酬だったが、俺達は色んな意味を込めて送り合った。シンパシー染みた想いを秘めながら俺はお父さんとガッチリ握手を交わしたのだった。その後俺達はシルヴィに呼ばれ食堂に足を運ぶのだった。

お父さんとマリアを先頭に置きながら俺はシルヴィと並んで歩いていた。シルヴィはひそひそと小声で

「哲平、すまない。父上が不躾な発言ばかり申して。」

「な~に、寧ろ楽しませて貰ったよ俺は。」

「それならいいが、彼らはおだてた分だけ調子に乗るから気を付けて欲しい。」

「本当俺と一緒だ、ここの家は本当に居心地がいい。」

「・・・(照)」

何やらまたしても紅潮した顔になっているようだが、それ以上俺達は会話をせずに真っ直ぐ目的地に向かうのだった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!いやはやこの直後にアハンウフンイベント入る模様なのでね。そのため一旦切らせてもらいます、もちろんそれ(濡れ場)は書きません。そして書けば書くほど哲平が男前になる感じがたまらない。もう正直最初の方の哲平見たくないんですが、僕としては(笑)何やらようやく終盤に差し掛かっている感じですか?とは言え、体術シーンの数を考えれば終わりは当分先の方でしょうが。それでは今回はこの辺で失礼します、またお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!マリアにイタズラ?それは早いよ哲平君!
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/31 12:57
 シルヴィは震えていた。ショックと怒りで。まさか自身の妹に手を出されるなどと想像すらしていなかった。少し所用で部屋を出て、戻った時には

「そこが気持ちいいんだ。」

「そうそう、そこ敏感だから気を付けてね。」

「上手い上手い、マリア才能あるよ。」

など、何やら卑猥な事をさせてる感たっぷりに哲平の声が漏れているのだ。自分に近づいたのはマリアが目的なのか。そう考えるとシルヴィは悔しくて涙が出そうだった。もうシルヴィの中では哲平をどう処刑するかしか考えていなかった。心は熱く、思考は冷たく、シルヴィはフェンシングの試合前のように気持ちを切り替えた。入った瞬間の光景を見たらどうなるか、彼女自身でも分からないだろうが・・・。

バァァァァン!!

けたたましいドアの開閉音が鳴り響き、シルヴィが見た物は

「ゲ・・・ゲーム?」

・・・

俺とマリアはソファに並んでゲームをしていた。俺達は当然驚き一色に染まった表情だ。突然野獣のように入って来られたら誰だって驚くだろう。俺は何やら例によってシルヴィが勘違いしたのだと判断し、事の詳細を説明した。

「・・・申し訳無い。私の早とちりだ。」

実際の所、俺とマリアはただ「さかなの海」をやっていただけだった。マリアがどうしても「サキイカ坊や」と仲良くなれないと嘆いていたのだ。彼は小心翼々と言った調子なので、体を触られるのを極端に嫌うのである。しかしいつも泳ぎ回っているため、ろくろく話も出来ないのだ。と言う訳でまずは上手に捕獲する所から指南していた。

彼は俺達を外部の生物、外敵とみなしている。その割に優しくされればすぐコロリと落ちるので、慣れればすぐに親しくなれるんだ。とは言え優しくするためには話が出来る段階に持って行く必要があり、そこが厄介な壁となる。上手く捕まえるために彼が嫌がるポイント、喜ぶポイントを教えながらマリアとゲームをしていたのだった。

シルヴィの勘違いの内容を聞いた俺は吹き出してしまった。いやいや、マリアよ?小児性愛と言っても間違いなさそうな容姿に俺は興奮しないって。大丈夫、大丈夫、俺はシルヴィみたいな女性100%しか興味無いから安心してよ。俺は未だ立ったまま項垂れるシルヴィの前にしゃがみこんで、下から親指を彼女の感面に突き出し

「そういうこともある!」

と元気付けるのだった。もう確認する必要ないよね、俺とシルヴィの関係は。俺は連続したシルヴィのヤキモチを見てそう実感したのだった。俺達はその後少しの間カードゲームをして楽しく遊んだ。楽しい時とは瞬く間に過ぎ去る物で、気付けばなかなかに夜が更けていた。俺は上着を肩に担ぎながら

「今日も楽しかった、いつも楽園の一時をありがとう。」

「いえ、こちらも急な申し出を快く引き受けて頂いて感謝している。お気を付けてお帰り下さい。」

「お兄ちゃんならいつでも大歓迎だよ!また来てねー。」

それぞれの挨拶をして俺は部屋を後にするのだった。部屋を出るとお父さんが神妙な顔をして俺を待っていたようだった。

「哲平君、いくらなんでもマリアちゃんだけは我慢して欲しい。」

「ハハ、お父さんもそのような事を仰るんですか。心配なさらずとも俺はシルヴィ一筋ですよ。」

「フフ、君ならそう言ってくれると思ったよ。もう少し成長すればマリアちゃんもゴーサイン出せたんだけどなぁ。いやはや、シルヴィに刺殺されそうだから慎もう。」

「ええ、賢明な判断です。いつ刀の錆にされるやも分かりませんから。」

俺達はそんな言葉を交わしながら入口に向かって行った。最後俺が家のドアを出る時の会話になるが

「お父さんもお体の方気を付けて下さい、日々寒いですから。」

「ああ、哲平君もね。今日は唐突なディナーお誘いにも来てもらえて嬉しかったよ。いつでも来てくれたまえ。」

「用が無くてもいいんですか?」

「ふふ、今さら何を遠慮することがある?もう君は僕の息子みたいなものじゃないか。」

「ハハ、本当お父さんには敵わない。それじゃあ近い内にまた来るとしましょう。」

俺は肩にお父さんの手を回されながら、慣れ親しんだ会話をし寝屋に帰って行くのだった。


―続く―


はい、どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!今回短すぎると思い、どうしようか悩んだんですがここで切ります、日付も変わりますしね。にしてもオリジナルの方も今回は結構面白かった。というのもやはりヴィンセントさんが良い味を出しておられるんですな。

今回の話どうしようか、結構困りましたよ。元々が面白い物を下手にいじって愚作にしたてあげても、ねぇ?いやいや、元々駄作にして駄文を書き連ねている我が身なんですが!にしたって自分である程度納得して笑える作品じゃないと皆さんに申し訳が立たない。ふざけた内容でふざけた文章書いてますが、心はいつだって真剣なんです!ってな訳でまたしてもシルヴィさんが餌食になってしもうた訳で・・・。こんなのシルヴィじゃない!という非難の声がありそうだ、すいません(謝)

いつだったか、オペラの内容がまんま同じというお言葉を頂戴したのもあります。自分で何とか内容を変化させようと無い頭を捻るんですがねぇ。やはりというか当然というか、行った事の無い場所の解説などは出来ない訳で・・・。僕は基本細かい心理描写を売りとしている所があるので、あまり経験の無い話になると途端に稚拙な文体になります。じゃあ最初から書くな!ああ、すいません、ごめんなさい、言い訳でしたぁ(泣)それではこの辺で失礼しましょうか!

本日もこのような駄文に目を通して頂き誠にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!ファーストステップ完了
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/31 16:04
ゴゴゴゴ・・・

「な、何だこの溢れ出る気は・・・!大気が歪んでおる。」

俺は今朝いつも通りゆったりと朝食に向かい食堂の前で立ち止まっていた。扉から威圧感がするなどというのは、もはや異常事態にして緊急事態。俺は自身の先見の明を頼りにこういう時こそ腹式呼吸と思い、息を整えていた。

「鉄心様が見えておられます。」

優の一言で俺は一気に脱力した。爺ちゃんか、通りで家中が震えている訳だ。あの人の放つオーラは無機物さえも融解させそうだからね。とは言え、俺にとっては道楽爺さんくらいにしか映っておらず呑気な気分になっていた。何故って言われても慣れとしか言えないよ、電話対応酷かったけどお咎め無いし。気分が通常に戻った俺は気楽にドアを開け中に入って行った。

「おはようございます!」

「おお、哲平。おはよう、今朝から元気そうで何より。」

「へへっ、元気が無くなったら俺取り柄無いもんで。にしても家に来るなんて珍しいですな。」

「なに、近くを通りかかったものでな。休息がてら立ち寄ったのよ。にしてもお主最近堅実に勉学を取り組んでおるそうじゃの。優から聞いた、その調子でな。」

「がってん承知!やれる事やって行こうと思うよ。一回きりの人生なんでね。」

「ふむ、しばらく見ぬ内になかなかの面構えよ。少し前までは小癪な小童だったお主がのう・・・。男子三日会わざれば刮目して見よとは良く言った物よ、フフフ。」

「まさかお褒めの言葉を貰うなんてね。爺さん病気とか言うオチは止めてよ?まだ全然恩返せてないんだから。」

「ぬかせ、ワシはまだまだ現役よ。貴様が有馬の名を背負うまでおいそれと死ぬ訳にはいかぬ。・・・にしても哲平よ。」

「何でございましょう。」

「昨晩はシルヴィアの家で夕食を馳走になったそうだな。」

「そうだね、料理も美味いし、あの人たちはとても温かい方々だ。とても良くしてもらったよ。」

「うむ、あやつも多忙の中お主のために時間をよう割いてくれておる。当然礼は言ったのだろうな?」

片目を大きく開け威圧するように聞いて来る爺さん。おほっ、これは結構怖いわ。ちゃんとお礼言っておいて良かったよ。

「もちろん言ったって、そう睨むない。いくらアウトロー気取りな俺でもそこまで無礼は働きませんって!」

とは言え最近は本当に真面目に生活を送ってるんだけどね。アウトロー気取ってた時期もあったので、ウソではない。

「ならば良し。」

締めの言葉はいつも通りだった。この言葉を聞くともう会話を続ける気が無くなるから不思議なものだ。しかしながらそれは俺個人の問題であり、爺ちゃんはまだ話があるようだ。

「哲平、ヴィンセントはフィルミッシュ公国を担う世界でも屈指の傑物よ。あやつから学ぶことも多かろうて、しっかり耳を貸すんじゃぞ。」

どうも俺の認識と爺ちゃんの認識に食い違いがあるんだが。この齟齬は一体どこで生まれたんだろう。恐らくお父さん、仕事顔と家庭顔って使い分けてんだろう。そして今爺ちゃんが誇らしげに話しているのは、国益のために死力を尽くすお父さんなんだろうな。俺もお父さんとバーで話していたから分かるけど、切り替え早い上に極端にキャラ変わるんだよな。こうして考えてみると俺お父さんに似てるんじゃなかろうか。

「聞いておるのかっ、哲平!」

「あ、はい、聞いておりますとも!」

「全くお主は・・・褒めた途端こうじゃからのう。つくづくお主は掴み所の無い奴じゃ。」

「耳の痛いお話で・・・。」

「ふん、まぁ良い。シルヴィアと今後も二人して力を合わせ精進せい。」

「お任せあれ!」

俺達はこうして久しぶりの親子の会話をかわしたのだった。部下と上司みたいに見えるけどな。

・・・

二人してと言われたが学問は己との闘いよ。入れる気無けりゃ脳に入って来ないし。次の目標はシルヴィを抜く事である俺としては、気を抜いてる場合じゃないんだよね。不思議な物で、あるラインを超えれば勉学が苦痛じゃなくなるんだ。下地を整えるまでが大変だがそれさえ完成すれば案外すんなり入って来る。だから俺は目、耳、口、指は勿論の事、鼻息まで荒くし、使える五感をフルに使って授業を受けている。授業内で反復出来る回数などたかがしれているので、そこは自己復習で補うしかない。

勉強始めた当初は寝不足で授業どころじゃなかったが、今では寝不足が日課になっているので苦では無くなった。食眠によって睡魔を抑える術も身に付けたし。一日2時間程度しか寝てないとどうしても、昼過ぎに限界を迎える。それを緩和させるために昼食後、すぐさま寝るのである。時間にして30分程度だが、これが案外馬鹿に出来ないもので慣れるとスッキリした顔で授業に挑めるのだ。最初は寝過したりしていたが、優目覚ましによって起きる工夫をしている内に体が順応したらしい。これが俺が勝手に名付けた食後の睡眠、略して食眠である。

それにね、皆さん聞いて驚け見て嘆け、今日はなんと俺、シルヴィに昼食後膝マクラして貰ってるんです!ワーイワーイ!逢瀬のように人目を忍ぶ所はいつも通りなんだけど、まさかこのような馳走があるとは、心も満たされるってもんです。おかげで目覚ましの必要も無く安眠出来るという訳。本人曰く日頃から精進してる俺へのご褒美だそうで。

ただ俺が寝ている間暇なんじゃないかと尋ねた所彼女は

「哲平の顔を見ていると時が経つのを忘れてしまうだろう。」

な~んて照れながら言うんですよ?!もう完落ち(「完全に俺落ちた」の意)ですって!もう都合の良い解釈と取られたっていい、僕達は、僕達は恋人同士だーい!

俺はだらしない顔をしていただろうが、こんな嬉しい展開喜ばずにいられるかい。しかしシルヴィは何やら物憂げな顔をして

「昨日の父上による非礼、申し訳無い。」

ポツリと零した。・・・うーむ、今日は眠れそうにないな、残念だけど。次の機会に期待するとしてもうちょっと正面から向き合うか。俺はシルヴィのヒザから非常に名残惜しいが頭を上げ、胡坐を掻いてシルヴィの目線の高さに合わせた。

「非礼?あの場は無礼講のような物だし、俺はそんな事気にしないよ。」

「しかし父上の言動は目に余る物がある。筆頭貴族としての誇りをないがしろにした発言や行動が多すぎる!」

「ま、型破りな御仁であるのは否定出来ないかな。だが過酷な仕事をすればするだけ、その分はけ口も必要になるのではないかな?」

「それは裕福な者の驕りに過ぎない、今でも困窮に喘ぐ民が祖国にいるというんだ。彼らを野晒しにして、家庭で放蕩話など・・・陛下もさぞや嘆かれるだろう。」

「国に莫大な利益をもたらしているんだ。どこに嘆く要素があるというんだろう?」

「・・・確かに私は父上の仕事に対する真摯な姿勢に敬意を払っている。しかし家庭におけるあの態度はどうしても容認できない。」

なるほど・・・ね。真面目で国想いのシルヴィなら、やはりお父さんを怠惰に捉えてしまうようだなぁ。実際の所どうなのか分からないが、バーのお父さんと鉄心の爺さんからの話を総括すると、相当の苦労人だと俺は思うんだよ。

とは言え、お父さんあなたも報われないお人だ。やっぱ言いたい事は早い内に言っとかないと修正するの大変ですよ?何やら娘さんはお父さんの事を不誠実な人物と評価してるようだし。腹を割って話さず上っ面だけの会話ばかりして、やおら家族愛を構築しても駄目ってことなのかもしれない。俺がそんな事を一人で思っている内に

「私が平和なこの国で安穏と生活している事が罪に思えてくる。」

な~んて事まで思ってしまわれている。あらあらお父さんの望みと真逆な考えじゃないの。あらゆる国の人と話して貿易に関してはプロフェッショナルなのかもしれない。しかし娘達との接し方は、シルヴィに関して言えば逆効果になっちゃったようだ。俺は少々、お父さんが不憫に思え長い溜め息を付きながら

「なぁ、シルヴィ。こうも考えられないかな?平和とは何かを知るために平和な国にいる、って。」

「平和などと言う物は学ばずとも理解しています!」

「それは表層的な物だろう。具体的に何がどう作用して、どのように平和のサイクルが回ってるかと言った所まで理解して今後実行に移せる?」

「そ・・・それは・・・」

「な?案外分かったような気になっているだけなんだよ。だからシルヴィ、本当に本国の救済を考え、国民を救う心根ならだ。お前さんも現状の愚痴だの父上の文句垂れてる場合じゃないよ。今この環境でしっかり学べる状況下に君はいる、それに感謝してしっかり学ぶのが筆頭貴族の娘としての使命ってもんじゃないかな?」

「・・・」

「平和な国にするために平和な国の事を理解する。これって重要な事だと思うよ、俺は。」

俺がそこまで言うと彼女は弱々しい笑みを浮かべた。そしてそのまま頭を下げた、何か最近頭下げられる機会多い気がする。俺は軽くその倍以上彼女に謝っているだろうけど。

「本当に哲平は見違えるように成長している。私はいつも叱られてばかりのようだ。日頃から哲平に叱責している自分が情けなくなってくる。そんな大事で単純な事も自分で気付かないなんて。ありがとう哲平、そしてごめんなさい。」

「成長出来たのはシルヴィに泣いたからかな。今の俺作ったのはシルヴィなんだよ。俺の生みの親であるシルヴィにそんな顔されると悲しいわ。過ちは笑ってすまそう、そして次回に繋げればいいじゃないか。俺は今までそうやって来たつもりだよ。」

俺は授業があるので立ち上がりながら、未だ倒れ横座りのシルヴィに向けて手を差し出した。彼女はまだきょとん顔だったがはにかみながら俺の手を取るのだった。そして俺の顔に近づいて来て・・・

「え?」

何やら唇と唇が触れ合う感触がした。俺はもはや何が起こったかすら理解出来ていない。何がどうしてどうなったぁぁ!呆けた顔でシルヴィを見ると普段滅多と見れない茶目っ気な顔をして

「不慮の事故、と言う事にしておいて欲しい。感謝の印として私の初めてをあげよう。」

とマグニチュード8レベルで俺の心臓を揺り動かす発言を申したのだった。

呆然自失といった具合に俺は夢遊病の如き歩みでシルヴィと校舎に戻っていったのだった。彼女は彼女で、やはり照れくさいようで会話は一切なかった。そして俺の脳がまともになったのは5限の終わる頃だった。まともに聞いてなくて優のお力添えを借りたのは言うまでもない。これがキスって奴か・・・唇触れ合うだけでどんだけ心臓揺り動かしてくれてんだよ。俺はその後顔の火照りを冷ますのに苦労したのだった。


―続く―


はい、どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!コメディ要素が日に日に減っている感が否めませんな。そしてその代わりにシルヴィとのラブラブ感というか?まぁ哲平はいつも通りの彼を心掛けておるんですがね。今回はちょっと美味しいシチュエーションとして作ってみました。自分で書いてて何なんですが、シルヴィ可愛いっすね。ていうかエロスが無かったらこうなるだろうってのは作者の妄想の産物なんですがね?まぁ、皆さんの目も僕と同じように映って頂ければ幸いなんですが。それではこの辺で失礼します!

本日もこのような駄文に目を通して頂き誠にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!祝シルヴィア哲平カップル成立
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/10/31 22:14
 どうも皆さん、哲平・ファン=ホッセンでございます。ああ、いえいえ有馬シルヴィアの方がよろしいかな、今の日本ではHAHAHA。それはさて置き、またですよ。また何やら様子がおかしいんですよ、うちのシルヴィアちゃんが。

「・・・(見)」

視線を、視線を感じる。何やらいつにもまして熱っぽい視線だ。そして俺が何かと思い見返すと

プイッ(照)

とまぁ、このような事になっているんです。これだけなら可愛いもんなんですがね?

「有馬殿、勉学で分からない所はおありか?」

「有馬殿、お昼をご一緒しよう。」

「有馬殿、社交部に参ろうか。」

「有馬殿、お茶を入れよう。」

「有馬殿、この茶菓子はなかなかに美味だ、お一ついかがか。」

「有馬殿、今日は宅に来られるおつもりか?」

「有馬殿・・・」

・・・

うーむ、相変わらず誤解対策に「有馬殿」何だが、いつにも増して積極的というか何と言うか。とりあえず常に俺の真横にいるんですよね、彼女。俺は嬉しさよりも薄ら寒い思いがあってね?一体これはどう言った心境の変化なんでしょうな。何より有馬殿の効果がほとんどないんですよね、シルヴィと俺の距離が近過ぎて。またシルヴィがガッチリ俺をガードするためにシャルさえ俺に寄せ付けない。あの泰然自若としたシルヴィは一体どこへ行ったんだ。

もう何だろうこの嫁のような守り方。何も言ってないけど放たれるオーラから「私の夫に近寄らないで!」と言っているかのようだ。しかし俺の隣りにいるシルヴィは。話し口調や仕草は全くいつも通りの彼女なのである。今さらパーソナルスペース云々で拒絶する事は無いが、突然の変化に対する内心の程を知りたいと思うのは当然だろう。

そう思い俺がシルヴィにどうしたの?と聞くと

「何でもないが、私がここにいると何か問題でも?」

という反論のしようの無い言葉が帰って来る。問題なんて一切ございませんよ。妙な違和感以外は。ここは一般論でちょっと揺さぶってみるか。

「いや、公衆の面前とかでそういう行為恥ずかしいんじゃないの?」

「我々は何も恥じるような行いなどしていない。ただ隣りに並んで座っているだけではないか。」

うーむ、言われてみればその通りだった。ただ隣りに並ぶだけで俺は何で動揺してんだろう。何やらシルヴィの好感度が高まっているのは間違い無い。し、しかし俺がシャルや他の女性部員に話しかけた時の気疲れ凄いんですよ。何で取りとめも無い話してんのに顔色伺ってんだろうって自分でも思うけど、シルヴィさんたまに眉毛動かすの止めてもらえる?

「シ、シルヴィ?君もせっかくの社交部なんだ。他の部員と交流を―

「私がいると迷惑なのですか(涙)」

うおっ!これは強力な技を用いて来た。女の最大の武器と呼ばれるのを、まさかあのシルヴィが使ってくるとは。涙を出されたんじゃ俺の完敗だ・・・。俺は諦めたようにゆっくり左右に首を振るのだった。

皆この異常に気付いている、いや、気付かない訳が無い。普段は寧ろ遠い位置にお互い座っていた俺とシルヴィが、今日に限って隣り合わせに座っているんだ。青天の霹靂と言った具合に皆顔を見合わせ合っている。シルヴィは皆の態度を知ってか知らずか、いつもよりも優しい態度で俺に接してくる。口調だけはいつも通りだけど。

いつもは憩いの場となる社交部部室だが、今日は何やら緊張感があった。それは俺に女性部員が近寄る度に、シルヴィからガンともメンチとも言えぬ威嚇を受けるからなのだろうか。部員(女限定)が寄ると俺と話す顔のままピタリと止まり何も言わなくなる。そして俺と部員が話し出すと横目で見ているのだ。見てない様なフリしてるけど眼球動いてますって!その仕草が異様なプレッシャーを放ち、部員達は逃げるように撤退して行く訳だ。

俺は何やらヤクザな嫁を貰った気分になって来た。女と喋るだけで首が飛びそうだ。何より貫禄があり過ぎてどうにも・・・。恐らく他の部員に対する態度をたしなめた所で

「被害妄想だ」

という一言で切り捨てられるだろう。したがって言っても無駄なんだが、それにしてもこの雰囲気はよろしくない。俺としては楽しい社交部を願うだけなので迅速な打開策が求められる。そして隣りの女性をどうにか出来るのは今の所俺だけと思われるのだ。はぁ、やっぱまた話し合いって流れしか無い、かなぁ。俺は席を立ちながら

「ちょっとお手洗い~。」

と言いながら入口へ歩いて行った。シルヴィの前を通る時に一枚のメモをシルヴィにだけ見えるように落として行った。後ろから有馬殿!と呼ぶ声にも答えず俺は外に出て行った。メモの紙切れは俺が何かあった時(シルヴィ絡み)のために作っておいたのだ。紙には

「5分後外へ」

という言葉を書いている。ま、体裁を気にするシルヴィへの配慮と言った所か。今日の彼女を見る限りその必要性も無さそうだが、念のためってことで。

・・・

「一体どうした、突然呼び出して。」

俺とシルヴィは以前シルヴィが身を隠していた場所でまたしても会話をしていた。

「それは俺のセリフだって、突然どうしたの?やけに距離近いの気のせいじゃないよね。」

「・・・」

「話しにくい事?」

「・・て・・・たは・・・だ・・・なく・・・」

何やらブツ切れで聞こえてくるが何を言ってるのやら俺にはさっぱりだ。

「悪い、日本語で頼める?」
 
「だって、あなたは魅力的だから見てないと不安なんだ。だから仕方なく・・・。」

ふーむ、どうにもこうにもままならんねぇ。これは俺の行動にも問題あったかな?ここでハッキリした態度見せずに、他の女にデレデレしていると愛しのシルヴィがヤンデレ化する恐れもあるじゃないか。ヤンデレとは相手を思う気持ちが強すぎて、殺してでも手に入れたくなった女性のバーサーカーモードである。

もう機は熟してるのかもしれないな。頭をポリポリ掻きながらシルヴィの前に向かい、なおもブツブツ弁解染みた事を言うシルヴィの両肩をガッチリ掴んだ。

「安心しろ、シルヴィ。俺はお前の事が好きだ!愛してる!嘘偽りは一切ない!」

俺は顔真っ赤にして言い切った。もう一回言ってと言われないようにバッチリ聞こえる声で言ったと思う。隠れて話しているというのに誰か居れば間違い無く耳に届くぐらい声を張り上げた。無論彼女の眼は大きく見開き、口の大きさも定まらないご様子だ。そして彼女は

「ほ・・・ん、当、なのか?」

かろうじて聞き取れる言葉を発した。俺は大きく頷きながら

「大丈夫だ、俺は誰にもなびく事は無いし、シルヴィ以外の女に興味は無い。だから安心して自分のしたいようにすればいいんだ。寧ろ俺はシルヴィの気高い志に惚れたという一面もあるんだ。俺はシルヴィの隣りを歩くために自己研さんしているんだ。」

俺は精一杯の気持ちの丈をシルヴィに投げかけた。自分の臭いセリフに眼球が飛び出そうな気分だが、それでも相手に伝わる言葉を投げねば意味が無いんだ。俺達は互いに顔を真っ赤にしながら顔を見つめ合った。シルヴィ特有の凛々しさも今はなりを潜め、今ここにいるのは年相応の少女だけだった。俺は彼女の心を振り回している事に申し訳無くなって来て頭を下げた

「いつも唐突で本当に申し訳ない。しかしこの気持ちは君に泣いたあの日からずっと変わらない物だった。今日シルヴィの態度を見て俺は今気持ちを伝えないと、お互いの生活に支障をきたすと判断したんだ。だからシルヴィ誓ってこの気持ちは決して安易な物じゃあない!」

俺がシルヴィの肩を掴んでいる手に体温を感じた、ハッと顔を上げるとシルヴィは愛おしそうに俺の手に頬擦りをしていた。これは、破壊力がある。しかも幸せそうに涙を流すなんて今までのシルヴィから想像出来る訳が無いだろう?俺は石像になり、顔真っ赤なので赤像としてその場で固まった。シルヴィは今までに見た事のないような穏やかな笑みを浮かべ

「もう私も迷わない、哲平私と共に生きてくれ。」

と言われたのだった。男前過ぎる発言に思わず笑った俺だったが

「ああ、これからもよろしく、シルヴィ。」

今さらながらの意思の疎通を図ったのだった。それから誇り高き俺の好きなシルヴィを取り戻し、彼女は堂々と部室に戻ったのだった。その手は俺こと有馬哲平の手をしっかり掴んでいた。

―続く―


はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!もう何か終わった感凄いんですよ、これ(笑)オリジナルの方はですね、どうにもシルヴィが恐慌状態になっており何やらグダグダです。

僕の哲平も馬鹿さが減り垢ぬけた感じで、完璧過ぎるのが逆につまらないですね、僕としては。いや、内容自体には概ね満足なんですよ!ただ馬鹿っぽさが好きと仰って頂いた方には申し訳なさで一杯です。それでも精一杯の馬鹿さを出そうとしたんですけどねぇ。シルヴィの隣りに立つためにはどうしても能力アップを図らんといかんのです。

あとですね、オリジナルの哲平と色々かけ離れ過ぎて(言動やら性格)色々逸脱しちゃってるんですよね。したがいまして、とりあえずもうちょっとオリジナルの方を先に進めてみて話を構築出来そうなら続けて参ります。グダグダ悩んでるようなのが延々続くようならここで打ち切らせて頂きます!それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文に目を通して頂き誠にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!歩み出す二人(シルヴィルート完結)シリアス風味
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/07 20:03
俺達は互いの想いを交錯し、そして気持ちを通じ合う事に成功した。その結果として当然ながらシルヴィや俺の生活を大きく変える事となった。

まず何よりシルヴィに照れが消えた。どうも俺に対する気持ちを誇りとすり替えたたらしい。したがって

「有馬哲平が好きで何が悪い!」

というノリになっていた。悪くないけどそんなに声荒げないで下さい。ああ、後哲平で思い出したけど、学校で普通に哲平と呼ぶようにもなっていた。ノリはさっきと全く一緒なので割愛します。その割に別に学校でいちゃつく訳でも無く会話は全く通常通り。

シルヴィもシルヴィで思う所があるのか、最近学問に没頭しているようだった。日本の歴史に大いに興味を持ち、近代史とか古文を真剣に読む彼女は結構格好良かったりする。出来る女って感じなんだよな、シルヴィが本呼んでると。文武両道を体現したよう女性がシルヴィなんだ。俺も負けていられない。出来る男ってか?

俺達は社交部に置いても以前と変わらぬ距離を取っていた。そして俺が気を遣って、シャルや他の部員とそこまで距離を近づけないように努めていた。たまにシャルが強引に体を押しつけた時などは当然膨れっ面になる。しかしあれはシャルからの猛烈アタックであり、防御し切れなかった点以外は俺の責任にならないだろう。ま、そんな事言いながらその後シルヴィに頭下げまくってんだけど。

それからシャルで思い出したが、目に余る行動を見ると哲平は自分の物だと主張するようにもなっていた。この辺は以前のシルヴィには見られなかった行動である。その行動も照れが一切無く堂々とした態度で言うものだから、相手は大概委縮してしまうのだ。シャルも二度ほどきつく言われたはずなんだが、効果は薄い。

俺も勉強のコツが掴めて来たのか、別に誰に何を聞く必要も無く自主学習が出来るようになっていた。そしてそんな余裕からか、フィルミッシュ公国の周辺地域や世界情勢を調べるようになっていた。いずれ必ずこの知識が役に来る時がくるはずだ。そして来るべき時に能力を発揮せずして何のための伴侶なんだ。シルヴィが国を復興しようと言っている、とても個人の力だけでは成し遂げられない。だからこそ俺が傍に付いてサポートしなければならないんだ。俺はそう決心しながらネット環境があることに感謝した。

俺達は皆と同じ学生でありながら、将来が見えはっきりと行動に移している。それが果たして成功するとも分からない。だが結果として朽ちようとも、シルヴィへの気持ちだけは変えてはならないんだ。愛するこの想いを打算に変えないためにも、彼女が一体何を求め何を望むかを今後も考えていこうと思う。

俺とシルヴィはいつだって対等なんだ。最初優に言った言葉を今こそもう一度言える

「俺は愛する女とは対等な関係を築きたい」

とね。今回シルヴィと対等であるために本当に頑張らないと行けなかった。しかし今振り返ってみれば感謝の気持ちしか無いな。クラッカー鳴らしたり、学生証をメモ帳代わりにするような男のままの人生は想像もつかないからな。ふふ、我が事ながらおかしい奴だと思うよ。そんな俺が今のように脱皮出来たのはやはり彼女シルヴィのおかげだろう。

とと、何やらエピローグのような語りになっているな。まだまだ先は長い、寧ろこれからなんだ、俺とシルヴィの二人三脚の人生はね。卒業までには必ず成績追い越してやる、シルヴィ指くわえて悔しがれよっ!俺は一人で声を張り上げ、目の前の文字の海に飛び込んで行ったのだった。

―終―



エピローグ

俺は通訳としてシルヴィの右腕となり、時としてネゴシエーターとしても活動している。フィルミッシュ公国に置いて、まず何より職が無いのが一番の問題であり、そのため金が無く食に困る、やり場の無い怒りから犯罪へ。これが一番簡略化したサイクルだった。とりあえず急務としては、財源の確保と国内の活性化だろう。観光スポットの強化や仕事の手配をしようにも、そもそも国政悪化による国民の反乱が酷くてそれどころじゃなかった。

正義感の強い我が嫁は紛争地域や飢餓に喘ぐ国民の元へ頻繁に出向いているようだ。俺も彼女の気持ちを汲み取り、何も言わないが、根本的な解決にはなっていない。俺達は自分が思っているよりさらに無力な人間だと、何度思い知らされたか分からない。

そのため向かったはいいが大勢の人間に罵倒されたり、乞食の嵐に会ったりするのも日常茶飯事なのだった。俺達は毎日疲れ切った顔で帰って来るが、自分で選んだ道なんだ。俺は労いの言葉は掛けるが、留めたり阻止するような事は一切しなかった。ストレスから俺に矛先が向くことすらあったが、俺はじっと耐えるようにしていた。

俺も毎日テロ組織との交渉、海外のお偉い方との交渉が続き、休まる暇などあろうはずもない。それでも俺は今の生活に不満は無かった。心の支えがあるだけで多忙な一日などどうと言う事は無い。俺の体よりも国民に踏みつけられる彼女の心の方が心配だった。

シルヴィはいつまで掴めない命を追い求めるのだろうか。全ての国民を救済、等と言うのは絵空事だというのは既に分かっているはずだ。それでも彼女は手を伸ばし続けるんだ。だったら、俺は彼女が倒れないようにしっかり体を支える以外無いじゃないか。彼女の心はまだ挫けちゃいない、夫である俺が先に降参する訳にはいかないだろう?

時として互いを激しく罵り合ったり、冷戦状態になったりする。しかし仕事に行けばスイッチが入り、また元通りになる。気付けば仲良し夫婦になっているんだ。シルヴィも家を空ける事が多いので俺は家事も覚えた。使用人?そんな贅沢を妻が許す訳ないじゃないか。俺達は小さい家に小さくまとまって生活している。シルヴィが仕事で休みの時は、当然俺が家事料理全般を受け持つ。そして「あなたの料理はいつも焦げている」と叱られるのもお馴染だ。

それでも、それでも毎日が充実しているんだ。これ以上望むのは奢侈と言う物だろう。何かが解決されれば次にまた問題が生じる。それの繰り返しだ。一生俺達は社会の歪と闘って行かなければならないだろう。だけど誰か救えた時のシルヴィの笑顔を見れば救われる。それだけで俺は生きていけるんだ。だからシルヴィ、どうか無理だけはしないでくれ。それが俺のたった一つの願いだよ。俺はお前の傍でないともう生きていけないんだから。

―完―


はい、どうも自堕落トップファイブです!何やらえらいシリアスになってしまった(汗)別に最初からこういうシナリオを展開しようなどとは思って無かったんですけどね。そもそもここまでSSを続けるとすら思って無かったです、はい。シルヴィと哲平くっつけるに当たり、哲平を奮起させた方が格好いいと思ってやった結果がコレです。凄い良い夫になってる感じなんですが。妻の幸せを一心に願うその心は美しいもんです。

さてオリジナルの方はシルヴィをデートに誘うと言った能天気な展開となっております。そこで外伝として、学園生活の合間にデートだの何だのをしたという感じで話を作ろうかと思っております。僕の作りしシルヴィを気に入られた方のためにここでシルヴィ終わりと伝えるのも申し訳無いので。しかしながら一応シルヴィ×哲平のお話はこれにて終了ということでお願いします。

また外交だの世界紛争だの大して知識も無いため描きようが無く、結構苦戦を強いられました。しょぼい文章で申し訳ないとこの場を借りてお詫び申し上げます。職が無くて食が無くて犯罪ってどんだけ短絡思考なんだよ!溜め息しか出ない表現ですが、今の自分の限界がそれです・・・。それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文に目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、仕切り直しのデート約束
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/08 08:05
 目覚めると俺は優と結婚して幸せな家庭を築いておりましたとさ。めでたしめでたし。

・・・

納得出来るかあああ!と言う訳でどうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!最初の一文が物語っている通り、何やら選択肢のポイントを間違えたようです。哲平パーティーよりさらに前の段階まで戻らないといけない事に気付きまして。

やけに共通の話が多いのと、優との絡みが多いは不思議に思っておったんです。そして極め付けはセーブする時に優のデフォルメが表示された事ですね。いや、こればっちり優ルートじゃないかと。あんだけ爺さんに啖呵切っといて結局優と結ばれるって何だ。

これは流石にいかんと言う事で一旦戻ります。時系列的にはただ遡るだけですね。ですので聖華と学校で会う約束蹴る所ですか、あそこまで帰ります。色々失敗しまくる作者で申し訳ないです(涙)

したがってプリンセスラバー!2週目、の題の最初から始まるようになりますのでご注意くださいね。上から順番に読んだ人には全く関係の無い話ではありますが。分からない人のために説明しますと「哲平パーティー再び」から「俺は理性ある人間だから」まで書き上げた所違うルートと発覚。そこで前に戻った、こういうことですね。リアルタイムで読んで下さった読者の方々にはご迷惑をお掛けしたこと深くお詫び申し上げます(謝)

それでは参ります、気を取り直してシャルルートへ突き進んで行きましょう!

・・・

「哲平、明日シルヴィアとオペラに行け。」

ブツ、ツーツーツー

何やら唐突な電話と思ったら用件言うだけ言って切られた。明日は聖華の姐さんから呼び出し喰らってるというのに。突然のオペラと姐さんとの約束って・・・。という寝ぼけ眼で聞いて直後に寝てしまった俺だった。

翌朝俺は考え寝起きの頭で考え抜いた。まぁここは第三者の意見でも聞いてみるのもいいかな。俺はシャルにオーディエンスの電話を掛けることにした。

掛ける事10コール目、もう出ないかと思った時に彼女は電話対応に応じた。俺はもう切るノリでいたため、一瞬声が詰まってしまった。

「お、俺だけど、俺俺。」

もう聞きようによっては金銭を要求しそうな言葉を出した俺だったが、シャルは別段気にする風でもなく

「あ、哲平?初めて電話してくれたわね。今丁度お風呂に入ってた所なの、出るの遅れてごめんね。」

「・・・え、今裸?」

「アハハハ、そんな訳無いじゃない。もう、スケベ~♪」

「何だ違うのか、いや何、慌てて素っ裸で飛び出て来たのかと思ったんだよ。」

「そんな事しなくても折り返し電話掛けたらいいだけじゃない、ふふ。」

「それもそうか、まぁ忍耐強く待ったおかげで出れたって所かな。」

「そうそう、哲平偉い偉い。」

どうもシャルは俺を子供扱いしたがる傾向があるんだよな~。ガキっぽい所あるのは認めるが、そう丸ごとお子様扱いは何やら複雑な心境だ。そして喜んでしまったら色々終わってる気がするし。しかし今回ばかりはシャル母様のご意見が聞きとうございます。

「シャル、実は相談なんだが・・・」

俺は聖華とシルヴィの件について掻い摘んでシャルに説明を施した。シャルは鼻から息を吹き出し、明らかに機嫌を損ねた感じだ。いや、まぁ、俺がだらしない行為を働いた事に対して憤りを覚えておられるんだろうけど。

「哲平、駄目じゃない。予定を立てる時は無理の無いように立てなくちゃ。」

何やら金融機関からお金を借りる際の注意点、あるいは夏休みの宿題の事で叱られてる気分になった。俺は子供のように下唇を噛みじっと耐えるように聞いていた。何も言わない俺の反応を落ち込んだように受け取ったようで

「そんなにしょげなくても大丈夫よっ。大丈夫、私に名案があるの!」

「え、本当?!」

俺はサンタを信じる純粋無垢な子供のように無邪気に声を出し、立ち上がった。

「私とデートしましょう♪」

そのまま俺は大の字でベッドに倒れた。名案・・・迷案にも程がある。何も解決してないどころか、どちらか一方よりなお悪いどちらにも迷惑掛かるんじゃないのか?何の解決にもならないと悟った俺は虚ろになっていた。

「最初から私と約束があった事にすればいいのよ。そうすればどちらにも門が立たないわ。ね、名案でしょ♪」

ふむ・・・その論法で行くとシルヴィとオペラ行くのも同じ発想で聖華に断りの電話入れれるんだけどね。しかし今の発言を聞くとふざけただけの発言じゃないようだ。そして俺自身オペラに関心がさほど無いためシャルと遊びに出かけるのも悪くないんじゃないかと思えて来た。

「皆には私が上手く言っておいてあげる!だから行きましょう、ね?」

グラリ、もう俺の心は完全に傾いていた。楽な方に流れるのは人間の常なのです。だって断りの電話入れるのって相当な精神力を使うんです。聖華にそんな電話入れようものなら、ゴミだの糞尿だのホコリカビ以下だの散々な事言われることさもありなん。やはりそうなるとシャルののほほん口調で仲介して貰えるに越した事はないんだ。

シルヴィとの件に関しては唐突な話だから無理、と言えなくもないが。それでも爺さん直々の電話を貰いながら断るのは、爺さん直々の教育的指導が来る可能性があるじゃないか。やはり波風立てずに一国の姫に任せられるのであれば、それが一番賢明な処置だと思う訳だ。以上言い訳でした、本音は怒られるの怖いんだもん。

「ごめん、じゃあ悪いけどお願いします。」

俺は自身の尻拭いを他人に丸投げする情けなさから敬語になっていた。シャルはそれよりも暇が潰れる事が嬉しいようで

「良かった~、今日は一日予定が無かったの。駅前で待ち合わせをしましょう。一時くらいに公園ね♪」

「・・・待ち合わせどっちだよ。そしてどこの公園なんだよ。」

「あ、ごめんごめん私ったらもう嬉しくって、ウフ♪駅前ね。」

「分かった、それじゃあまた明日って事で。」

「遅刻しちゃ駄目よ~?男の子は10分前行動しなきゃマナー違反なんだから♪って哲平?!」

「女の子も遅刻はマナー違反じゃないの?」

「そんなことよりっ、明日って学校じゃない。今日の午後1時でしょう?」

「・・・そうだった。もう俺も色々狂って来てる。」

「ふふ、心配しなくても大丈夫よ。私に任せてっ、それじゃあ昼にね。駅前だから忘れないでね!今日は楽しくなりそう、ウフフ♪」

「了解です・・・。」

もう引け目あるから下手に突っ込めないわ。遅刻しないように気を付けよう。それに午後1時の待ち合わせに遅刻っていかなる理由も通らないだろう。ってどこ行くんだろう?

「シャル、一体どこに

「予定が決まったらまた電話するわねっ。」

プツッ、ツーツーツー

身のこなしの早すぎて俺の疑問が解消されなかった。あ、いや解決したのか?未定ということで。ツーツー音と一緒に「う」をつけて鬱―鬱―鬱―と一人で呟く俺だった。行くからには楽しむしかないよな。何にせよ昼までに感謝の気持ちを込めて、高級なクッキーでも買っとくか。俺は昼まで時間を潰すついでにシャルへの謝礼品を買いに駅前に赴くのだった。

―続く―

はい、どうも皆さんいつもありがとうございます、自堕落トップファイブです!いやいや選択肢まだ前があったのすっかり忘れてました。「さっきの全然分岐点じゃねーし!」と一人で突っ込み入れながら前に戻りましたよ。そんな訳で仕切り直しと行きましょうか。3話ほど書いた2週目ですが、それはそのまま使います。ただ前に話を組み込んで行くという形ですね。しかしそうなるとシャルへの葛藤に違和感が生じる可能性があります。その気持ちの変動だけ変えるという方針で行きましょうかね。それではこの辺で失礼します。

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、やはりそなたは美しい
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/03 13:46
約束の時刻が迫り、俺が駅前の周辺をぶらついていると何やら人溜まりが出来ていた。

「何だぁ、ストリートライブでもやってんのかな。」

俺が後ろから背を伸ばして覗いてみるとシャルが椅子に座って本を読んでいた。左右に直立したボクサータイプの男性が控えているため、皆近づけないようだった。少し横に視線を送ってみると、声を掛けたと思われる数人の突撃部隊が貝塚を形成していた。

「・・・うわぁ・・・行きづら~い。」

ここに颯爽と現れるのが理想の男性なのだろうが、ここに集まる集団のアベレージは地味に相当高い。自信に満ち溢れ、容姿や服装に気を配るイケメンばかりだ。それを抜いて冴えない自分がシャルに声を掛けようものなら、誰かが発狂して俺を刺すんじゃないか?

しかし時刻がもう待ち合わせの時間間近になっているため、考えている暇などなかった。とりあえず前に突き進んで行き一番前まで行こうとすると

「は、何お前?順番ちゃんと守れよな。俺だってそう言われてやっとの思いでここまで来たんだ。」

「ったく新参者はこれだから困るぜ。マナーを知らない奴が多すぎる。」

「気持ちは分かるけどたぎる想いは俺達も同じなんだ、ここはグッと堪えてくれよ。」

何やら人気ライブのチケットや新発売のゲームを買う人たちみたいな発言だった。新参者って言ったってあんたもついさっき気付いてここに来たんじゃないの?俺はそんな非難を浴びながらもどうにか前方に向かって進んで行った。髪の毛やら服やら引っ張られる始末だ。

シャルも何やら騒がしい周囲に気付いたようで顔を上げた。そして揉みくちゃにされる俺を見た所で

「あ、お~い哲平!こっちこっち♪」

と実に清々しい笑みで分かり切った事を言って来た。その瞬間俺の方向軸にいる連中が一斉に動き出した。

「やぁこんにちは、僕が君だけの哲平だよ。」

「な~に、そこのモヤシ共よりも俺こそが真の哲平。」

「天に選ばれし哲平とはまさしく俺のことよっ、レプリカ共は消えな!」

「分かってない、分かっちゃいないよ君達。そこまでにしときな、俺が哲平なんだから、さ。」

「ハハハハ、自他共に認める哲平とはまさに俺の事だ!やぁ姫君会いたかったよぉ!」

「今この瞬間自分が哲平で本当に良かったと思います。哲平ですが何か?」

自称なのか、詐称なのか、はたまた本名なのか分からないが哲平が山のように生産されていた。オリジナルである有馬哲平はシャルに近づくことさえできない。あっという間にシャルは飢えた男達によって囲まれていた。俺は客観的に見てやはりシャルは是が非でもお近づきになりたいほどの、朱唇皓歯な女性であると再認識させられたのだった。

俺が目の前の激動に唖然としていると、哲平達が次々飛ばされて行った。人が少なくなってくると分かるが、シャルが男に指を差して首を振ると護衛が腕を振るって排斥していたのだ。最初こそ勢いはあった物の、先人達の行く末を見てしまった哲平候補達は竜頭蛇尾となってたじろいでいた。最後はシャルがチラリと視線を投げかけると慌てて逃げて行ったのだった。最終的に俺だけが残されていた。

シャルはあれほどの事があったというのに、元気良く座っていた椅子から立ち上がり

「遅くなっちゃった、ごめんね♪」

と言ったのだった。そして一言二言男達に言うと男達はどこへか去っていった。俺は何も出来なかった自分が恥ずかしく小さい声で謝っていた。そして気付けばシャルにあげようと思っていた献上品を取られている失態ぶりだ。シャルは俺の両手を包み込むように優しく握り、聖母のような声で慰みの言葉を掛けてくれた。

「でも来てくれたじゃない、怖かったでしょ?偉い偉い。」

時として子供のような仕草なのに、こうして失敗した時には母親になるんだ。男がメロメロになるのも分かろうものだ。俺は頭を撫でられ照れくさくなったので別の話題を投げかけることにした。

「あれ、今日一人?」

「・・・?当たり前じゃない、デートなんだから。」

何だろう、爺やが物影に潜んでいないか改めて心配になってくるな。サバイバル豊富そうなあの人なら、気配なんていとも簡単に消せそうだし。そしてもし今の光景見られてたら明らかに減点されている事だろう。俺が周囲に目を配らせているとシャルが弾んだ声の調子で話しかけてきた。

「それにしても私こうして普通に待ち合わせしてみたかったの。」

「そ・・・そうか。」

断言していいですか。アレは断じて普通じゃない。あれほどの夥しい数のナンパ男が集まるなんて事がそうそうあってたまるか。駅前とは言え彼女のフェロモンを嗅ぎつけ、県外から来たハイエナも中にはいるんじゃないか?

彼女の中に置ける「普通」とは外で同年代の男性と待ち合わせする事なんだろう。先の集団を見れば分かるように外には危険がいっぱいだ。やはりそう簡単に自由に街へ出向けないんだろう。

「今日は存分に楽しみましょう。私ずっとず~っと憧れてたの!」

そう言いながら何事も無いように腕を絡めて来るシャル。俺は先の集団と自分を見比べて、一体どうしてこうも差が出来るのか不思議でならなかった。これは棚からぼた餅レベルじゃあない、最高級の花びら餅クラスの幸運じゃないのか?先ほどの様子から類推するに誰かれ構わず媚びを売るという訳じゃないようだ。だがそれは一般人だからという可能性も否定できない。

ここで安易に落とされるなよ、俺。有馬の権力を牛耳る腹積もりかもしれない事を忘れるな。財産権力は別にどうでも良いけど一度信用した人に裏切られるショックは計り知れないものだ。それはある意味不慮の事故死よりも苦しい物かもしれない。だからこそここは冷静に正しく是々非々の立場で今日を挑もうと思う。

俺は爺さんの後ろ盾以外魅力の無い我が身に喝を入れながらシャルと並列で歩いて行くのだった。不思議な物で俺はこの瞬間にシャルを守るためにしっかりしなければ、とも思い始めていた。シャルを狙う輩が多いのを目の当たりにしたのが原因なのかもしれない。もしシャルがただの世間知らずなお姫様だった場合、俺がしっかり大切に愛でようと思ったのだ。誰にも汚れさせないように、爺やの後を引き継ぐ想いだった。

と言いますか、右腕に当たるこの感触を誰にも渡したく無い邪念もあるけれど。締りの無い顔を何とか圧縮し、俺は右腕の神経を遮断しながら隣りの姫を守る決心をしたのだった。


―続く―

はい、どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!う~ん、シャルが終わったら次は急遽優ルートに行きましょうかね。どうもシャルに対しての関心が、既にここから始まったような表現をしてしまいましたし。恐らく哲平パーティー以降の話は3周目に回しそうですね。経験則ですが、恐らくこの展開を進めて行くとシャルにパーティーの相談した時の反応が違いそうなんですよ。であればもう一から話を作った方がやり易いですよね。それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、頼られてるのはこの僕、哲平です
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/03 17:38
 俺はそれとなく自分の幸福値が最高点に達している腕を一瞥した。

「・・・えらいことになっておる。そして見るんじゃなかった。」

見てはならないと分かっていても見てしまう。ある種怖い物みたさと同種の思いから目にしてしまった。その光景は余りに扇情的で俺の脳内では理性派と煩悩派との戦場となり内部抗争が勃発した。

「やいやい、貴様ら。姫の胸様の谷間を見て興奮しているのではあるまいな?」

「はん、男として興奮するのは必然よ、当然よ、義務なのよ。寧ろ興奮しないのは失礼に値しおるわ。我々はお主達と違って不能ではござらんのでな。」

「何おう!紳士たる振舞いを侮辱する暴言、今すぐ訂正せよ!」

「カッカッカ、図星を突かれたから奴ら慌ててやがるぜ、なぁ皆!」

「お、おのれ~~、皆の者出会え出会えー!奴ら一人残さず皆殺しだ!」

「望む所よ、心を開放した我々の力今こそ示さん、やってしまえ!」

・・・

「哲平どうしたの、ぼ~っとして?」

「あ、いや、ちょっと自問自答をしていただけだ。」

「ジモン・・・ジトウ?」

「そう、ジモンとジトウ君の事で頭を悩ましていてね。」

「へぇ~哲平ったら友達想いなのね、私そういうの好きよ、ウフ♪」

その瞬間シャルからの圧力が増大した。拮抗していた勢力争いに今亀裂が入ってしまった。

「ま、不味い。奴ら(煩悩兵)の士気が一気に上がっておる!」

「ハッハッハ、上手い飯に美しい女、そして楽しい日々!俺達はもう誰にも止められんぞ!」

勢いづいた煩悩兵士の怒涛の攻めにより、瞬く間に兵力が落ちる理性組。

「で、伝令!理性組の一部が離反している模様!尚も煩悩化して寝返る兵が増える一方です!」

「何だと!?我らほどの力を持ってしても奴らの勢いを抑える事は叶わんのか。しかし今は郊外の地、ここで完全に我らが滅びれば最悪の結末に終わる。無念だが一時停戦の申し出を行うことにする。」

理性組長は苦渋の選択を遂行したのだった。このまま自我崩壊を果たし肉欲に溺れてしまえば、今後報復の機会は二度と訪れない。ともすればここは戦略的撤退とした方が優位と判断した結果だった。いつか必ずや寝首を掻いてやると腹を固めながら、唇から血が出るほど噛みしめる組長だった。

俺は7,3で本能が脳を制し理性が瓦解した事を受け、右腕への感触を堪能する事にした。締結の条件として右腕と下腹部の開放、そして今後の決定権は我ら煩悩組にあると言う事らしい。そのため俺の皇太子もムクムク成長を遂げたので、左腕がポケットに突っ込んでポジショニングの役割を担う事となった。

鼻歌を歌いながらご機嫌な様子のシャル姫だったが唐突に

「でも何だか緊張しちゃうわね、こうしてこの町を歩くのは初めてなの。」

こういう言葉を聞かされると何やら気の毒に思えてくる。外に出ることすら叶わないのも一国の姫たる所以なのだろうか。先のように護衛を付ければ心配なかろうと思わないでも無いが、やはり危険な外部に肌を晒す事を咎められているのだろう。金持ちは羨ましいと思っていた俺だが、一転して不憫な気分になってきた。って実は俺も金持ちの一員なんじゃないか?じゃあアレか、容姿端麗と言う事が色々問題なのだろうか。

俺が無言で頷きながら話を聞いているとシャルは気にする事無く話続けている。

「こうして外に出歩く事が出来たのは、哲平が私を誘ってくれたおかげなのよ。」

「いや、誘われたのはどっちかっていうと・・

そこまで言おうとしてシャルの顔を見ると有無を言わせない満面の笑みだった。背面にダークマターと思える塊によって背景が歪んで見えていた。俺は一筋の汗を右耳のすぐ傍から流しながら前を向き

「何でもないです。」

と言うのが精一杯だった。シャルはその一言に満足したように俺の腕を強く抱き抱えるのだった。もう流石に慣れて来たというか、俺の腕の一部と思えばどうという事は無い。

別段どこへ行くともなく俺とシャルは腕組みをしながら彷徨い歩いた。俺としては別に目新しい風景でも無いが、シャルは歩く事そのものが楽しいようだ。時折スキップしたりして俺の足を踏みつけたりしていた。俺は文句の一つでも言ってやろうかとシャルの顔を見ると、汚れなき無垢な笑顔なので結局口を閉ざすのだった。やはり顔立ちの整った人の心からの笑顔というのは癒される物だ。俺は暇と感じる事無く横目でシャルばっかり見ているのだった。

ドンッ

そんな事してるから人に当たったりも・・

「おい、ちょっと待てよ。お前人に当たったら謝れよ、ああ?」

うわぁ、絡まれた・・・。俺はゆっくり振り返り

「すいませんでした。」

と言ってさっさと前に行こうかと思いきびすを返すと

ガシッ

うわぁ、肩掴まれた・・・。何、もう謝ったから許して欲しいんですけど。

「謝罪の気持ちがあるならさぁ、ねぇお兄さん。お金ちょうだいよ、お・か・ね。金無けりゃそっちのお姉さんでもいいよ。」

気付けばその男性の背後に3人ほどの仲間まで来ていた。男達は一様に下卑た笑いを浮かべながら距離をゆっくり詰めて来た。ああ、最初からそういう狙いなの。シャルの方をチラリと見ると俺の腕にしっかりと掴まって気丈に男達を睨みつけていた。いや、まぁこんなに頼りにされたら頑張るしかないでしょ。と言っても用心深い俺なんで準備だけは人以上にやってますけどね。

「あれ、いいんですか?恐喝の容疑で現行犯逮捕してもいいんですけど。」

俺は胸ポケットから警察手帳を出した。用意というか何と言うか父の知り合いの警官から貰った品なんだけど。大抵コレを見せたら

「あ、ハハ・・・やだなぁ。冗談ですよ。な?」

「お、おう。そ、それじゃあ僕達急ぐんで・・・。」

とこそこそ逃げて行く訳だ。この手帳は定年退職されたおじさんから貰った物で実際本物なんだ。父にサンタのプレゼントで正義になりたい、と書いたらコレがでかい靴下に入っていた。今では俺のお守りみたいになっている。

実際コレを今のように用いたのは3回だがいずれも外敵から俺の身を守ってくれている。父に守られてる気がするので、俺は外に出る時は必ず持ち歩くようにしていた。でも権威に頼ってばかりの自分が情けないので、率先して脅しに使ったりは絶対しない。

シャルが何も発さないので怯えていると思った俺は

「な、分かったかシャル。こんな風に変な虫が付くんだからそう易々と

「哲平すご~~~~~い!!」

ぎゅうううう!

「うぬぅぅぅぅぅ!!」

そう易々と肉体を絡ませるんじゃないよ?と言おうとした所で最大限に絡ませて来られた。俺は拳王のような我慢声で理性の崩壊を何とか食い止めた。そもそも楽天的な彼女が怖がるという方がおかしな話だったんだ。

「この国のお話で言う『白馬に乗ったおじ様』みたいだったわ!」

全然嬉しく無い、おじ様って何だよ・・・。天然ボケというか勘違いな発言だったが俺の緊張を解すには丁度良かった。ああいうごろつきは何度会っても慣れない物で全身がガチガチだったんだ。俺はもう訂正するのも止めて笑顔で言ってあげた。

「ああ、白馬に乗ったおじさんだとも。今ならカイゼル髭もたくわえちゃうぞ!」

「ワーイ、今日はもう一安心ねっ♪」

俺達はより一層密着して歩いて行くのだった。一回のデートでここまで親密度上がるなんて。恋愛に関して狐疑逡巡な俺は、どうしても手放しで喜べ無かった。俺にとって遊びで女性を弄ぶというのは悪だからね。こう振るとか相性が悪いとかでお互いの心が離れる別れ話を巷で聞くけど、最初の段階で良く見ればいいのにと思うんだ。俺はくっ付いてから相手を知ろう、じゃないんだ。知ってからくっ付くという感じだろうかね、だって別れた後って気まずくなったら嫌でしょう。「お前実はそんな奴だったの」なんて感情を好きな女に使いたくないし。

あれ、そう言えば俺まだ感謝の言葉言ってなくないか?くぅ有馬哲平お前は一体何をやっておるんだ、感謝の心を忘れた人間に成長は伴わないのだぞ。俺は「今日はありがとう」というタイミングを図りかね、チラチラとシャルを伺っていると

「なぁに、哲平。そんなにジロジロ見てぇ。もしかして私に夢中?」

「うむ、五里霧中の境地にして無我夢中でシャルを見てた。」

「アハハ、なぁにそれ~。でも私に夢中なの?嬉しい!」

口を開く事が出来たのでここで感謝の言葉を行くしかないよな。

「シャル、今日はありがとう。俺一人だったらあの二人(聖華&鉄心)から絶叫の声をあげさせる所だったかもしれないから。本当に助かったよ。」

「ふふっ、気にしないで。誰も嫌な思いしなくて良かったじゃない。それに私が一番得してるのよ?」

「得って、今日外に出る口実が出来たこと?」

「もう、そんな悲しい表現しないで。口実じゃなくてデートっていうれっきとした理由じゃない。哲平は本当に照れ屋さんなんだから、可愛いわ♪」

むぎゅうううう

「あうあうあうあう。」

慣れて来ているとは言え、勢い良く抱きつかれると匂いまで飛んで来るから困る。脳に直接響く馥郁たる女性の香りは俺を惑わせる。さっきからポケットにいる左手も大忙しだった。

俺は何とか自身のアイデンティティを守るべく会話の転換を図った。

「ところでシャル、我々はどこか行きたい所はあるかな?エスコートする身失格な発言だが、俺は特に考えて歩いてない。」

「え・・・と、そうねぇ、・・・・う~ん。あ、ヤダ緊張して来ちゃった。」

何やら難しい顔を作りながら唸るシャルロット姫。

「昨日の夜からずっと考えてたのに・・・。」

もう俺としては恥ずかしくて言えない理由としてラから始まりルで終わる、男女の睦言場所しか頭に浮かんでこなかったので

「もしかしてシャル、ラから始まってルで終わる場所じゃないよな?」

俺がそう確認を取ると人差し指を口元に当てて彼女は空を見上げて考え出した。数秒考えていた彼女だったが

「アハハハハハハ、哲平そんな訳無いじゃない。本当に面白い事言うのね。」

・・・ハハ、やっぱりそうだよな。いくらなんでも一回目のデートでしかも初っ端からラブホなんて行かないよなぁ。

「ランドセルなんかに入って私達何するのよ、フフ♪」

「・・・そうだね、狭いしね。」

俺は安心というか虚脱感というか不思議な気持ちになっていた。邪念が一切無い彼女がラブホなんて言う行き先を思いつく訳ないじゃないか、俺のアホ。

「で、どこか行きたい場所あったんだっけ?」

「ん~ん、忘れた!」

ズテーン!俺はすっ転んだ。何この人、素敵過ぎるんですけど。もうここまで引っ張って何も無いその事が、お笑いの精神を既に会得されているとしか・・・。俺は真正のコメディアンとしての素質を持つ彼女に対し敬虔にも似た想いを抱いていた。

俺が呆れた顔で見ていると勘違いしたのか、シャルは珍しく頬を赤く染め

「だって、私こういうの初めてなんだもん。」

とちょっと拗ねたように言った。あまりの威力に強風とも狂風とも言えぬ空気の異常な流れを肌で感じていた。俺は名も知らぬ波動によってのけ反らされていたのだ。何この子。か、可愛いじゃないか。俺は未知なる高揚感に打ち震えていると彼女は俺に向かって言った。

「だから、哲平が決めて!」

選択権は全て俺に委ねられたのだった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!遅々として物語が進まなくて本当に申し訳ない限りですね(汗)進む時はのぞみの如き速さで駆け抜けて行くというのに。皆さんに楽しんでもらうためにオリジナルの物語を考えているから、こうして進まないというのもあります。

話は変わりますが、やはりシルヴィルートの最初における哲平改めて見るとどうしようもない奴ですね。もう一回書き直そうかな、と考える程に。あいつのせいで先の話を読む気が無くなり、去られた方がいると思うと何やら悲しいです。

懺悔タイムのような形になりますが少し言い訳をしましょう。最初の方の哲平はお笑い系で行こうとして皆さんになかなかの好評を頂きました。聖華に出会ってボロカス言われた時に変化が起きたんですよね。こう何でしょう、強気な態度もまたカッコイイと勘違いしたというか。ワイルドさは満ち溢れているんですが、幾分中身が伴ってないだけに中二病になっているんですよね。中二病特有の面白さはあるんですが、どうもクセが強いというか。結果いきがってるヤンキー哲平となり、皆さんにうざい奴と認識された訳です。

時間がある時にでもまた内容を変えて行きたいと考えています。風を通してもう一度見直すとうざかったので(苦笑)そう考えると振り返る機会を与えて下さった方々へ感謝の念が絶えません。この場を借りて感謝の意を述べたいと思います。本当にありがとうございました!それではこの辺で失礼します。

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2週目、疑惑と慕情の狭間で
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/05 13:50
ドドドドドドドドド

ハァハァ、ど、どうしてこんな事になっているんだ?背後を顧みると粉塵を巻き上げながら爺やが走って来ている。距離はなかなかに遠いというのに、どうして憤怒の顔がハッキリ見えるんだ。今まさに大魔神がその(じいやの)身に宿り姿をより大きく我々に見せているのだ。俺はいつから走ったのか忘れたが、何にせよ走りにくいったら無い。

「哲平、ファイト!哲平、後少し!」

背後からチアーガールの声が聞こえるよ。足が痛い~、なんて泣き言を言いながらペタンと座りこむ奴があるかい。とんだお嬢様にして困り者のお姫様だ。俺は背中に当たる柔肉の感触のおかげでどうにか走り続けているのだった。そして後少しで一体俺達はどこに辿り着くんだ。

「待たんかクソ坊主がぁぁぁ、お嬢様をどこにさらう気なんじゃああああ!」

「うひぃ、何でだよ、何なんだよ、畜生ぉぉぉぉぁあああああぁぁ!!」

さらうも何も、そっちのお姫様からのお誘いなんだよ。俺に非難の声が飛んで来るのは間違ってる、思考回路おかしいんだって。お嬢様を当てないように俺の下半身に向かって投石をされるのも、追いかけ回すのも爺やさん、あんたの思い違いなんだよぉぉ

チュイン、チュイン!

近くのアスファルトに石が跳弾する音を聞きながら、俺達はデートから気付けば借り物競走をしている。借り物は当然「シャルロット姫」に決まっている。駅の周辺を一周し、俺も爺さんも息を切らせながらヨタヨタ走っていた。

「じいや、頑張って!あともうちょっとよ!」

こ、この娘は何やってんだ。俺はぎょっとした顔になり後ろを見ると活気づいたじいやが奮起して一層早く走って来るじゃないか。

「お、お、お前、な・・・何やってんだよぉ!」

「だってぇ、じいやも一生懸命走ってるんだもの。」

俺達(俺とじいや)は死に物狂いでリアル鬼ごっこ中だというのに彼女と来たら。俺はもう限界がとうに来てるのでどこか隠れる店を探しながら走っていた。あの交差点曲がったら手頃な店に入って身を隠そう!

小さい目標を立てた事で俺の疲労感が軽くなった。しめた、今が好機走れぇ!俺は交差点を渡り、人の気配が全くしない「寿司天国魚まみれ堂」へと飛び込むように入って行った。

店の内部に入ると人は一切おらず、今日はもう閉店なのかと不安になった。俺達の気配を感じ取ったのか、奥の部屋から人が出て来た。

「イラッシャイ!」

うおっ、こ、黒人だ。元気良いし筋肉隆々だな、この人。2メートルはあろうかと思われる大男だったが、笑顔は人懐こい感じだったので恐怖はあまりなかった。シャルを下ろし、カウンターに二人で座る俺達。

俺が座ると同時にお冷とおしぼりを置いてくれた。体格の割に置き方が丁寧なのもポイント高い。俺は何を頼もうか困ったので

「メニュー表とかってあります?」

「ソーリー、私字下手なので置いてないデス。ゴメンナサイ。」

「ああ、いやいや謝らなくてもいいんですけど。どういうのがあるんです?」

「今だとヒラメ、マダラ、クロマグロ、ブリ・・・」

ずらずらっとお勧めの魚の名前を列挙されたが俺にはどれも良く聞こえてしまう。そこでシャルにも意見を仰ぐ事にした。

「シャル何か食べたい寿司ある?」

「寿司ってお寿司の事よね?じゃあ、サーモン!」

「かしこまりマシタ。そちらの方はどうしマショウ?」

「えーっと、じゃあ店長のお勧めを貰おうかな。」

「はい、腕によりを掛けて握りマショウ。」

シャルは寿司の存在を知っていたようだが、食べるのは初めてらしく興奮していた。

「哲平、美味しい、美味しいわよ、コレ!!」

分かった、分かったからパンパン肩を叩くんじゃない。作法的には駄目だろう、この行為。それからも旬な魚をランダムで俺は出してもらった。どれもこれもほっぺたが落ちる程の味で、どうしてこの店が流行らないのかが謎に思えた。シャルも自分が食べてみたかったネタを頼んでいたが、俺の寿司を見て店主に色々聞いていた。店主の対応は非常に丁寧で、俺達にネタに付いて教えてくれたりした。

シャルも寿司ネタ情報など知る訳が無いので、興味津津の様子で話を聞いていた。そんなシャルの姿に胸を打たれたのか店主はサービスでプリンまで出してくれた。

「このプリンはサービスデス。はい、そこのお兄さんニモネ。」

ニカッとスマイルを浮かべながら出してくるこの黒人さんは本当に良い人過ぎるだろう。聞けばこの店を一人で経営しているらしい。俺達は二人で話してこの店の活性化に協力しようかと申し出たがブンブン首を振られた。

「ワタシは5人以上の集団を見るとオカシクなるから増えなくていいんデス。」

まぁ無理強いする気はないから別にいいけど。また来ても良いか聞くと嬉しそうに首を縦に振るのだった。よく分からんが大人数は苦手なんだろう。シャルも別れ際に握手をブンブンしながら

「あなたのお寿司と~~~っても美味しかった!私もまた来るわね♪」

「はい、ありがとうございマス。ワタシはいつでも待ってマス。年中無休がこの店の売りの一つデスカラ。」

と満面の笑みで答えるのだった。俺達は満腹の上心も満たされた気分になって出て行った。

「は~美味しかった、哲平また二人で行きましょうね!」

「そうだなぁ、良い店を見つけたな。ほとんど人来ないし穴場中の穴場スポットだ。」

その後俺達はとりとめの無い話をしながら、何となくフラフラ歩いて行った。俺はふとじいやが追いかけて来た事を思い返したので

「そういやシャル、やっぱりじいやから逃げて来たの?」

「え~違うわよ、ちゃんと伝えたわ。」

「伝えてあのマラソンはおかしいでしょう。」

「・・・伝えたもん。」

「いじけても駄目、どうやって伝えたの?」

「『家を出ます、大丈夫だから心配しないで』って。」

「それで何て言われたの?」

「・・・何も。」

「心配しまくってる感じだったのは俺の見間違い?」

「ちゃんと書き置きしておいたのに、どうして追いかけて来るのかしら。じいやったら本当に心配症なんだから。」

俺はその発言を聞いてシャルの頭にゲンコツを落とした。ポカリ

「痛い、何よぉ、哲平レディをぶつなんて酷いわ!(涙)」

「ったく、俺が相手だからいいものの。そんな掛け落ちみたいな伝言残してんじゃないよ。」

「だってぇ~。」

「いいか、シャル。幸運にも俺が善人の血を通わせてるから、シャルは今五体満足でいられるんだ。もし俺が危ない人だったらどうするんだ。」

「哲平だから付いて来たんじゃない、危ない人なはずないわ。」

「だから・・・万が一俺が危険人物だったら

「哲平は危ない人じゃないでしょう?」

うくっ、その上目遣い止めてくれる?俺は確かに危ない人じゃないですけど。危ない人だったら色々やばいから気を付けなって話をしたいだけなんだよ、ぼかぁ。

「だ、だから!変な奴にほいほい付いて行っちゃ駄目って言いたいのっ!」

俺は照れ隠しも込めて少々声を荒げて言い放った。シャルは一度目を見開き、その後柔和な笑みを浮かべ

「大丈夫よ、私だって人を見る目くらい養っているもの。私、哲平じゃなかったら付いて行って無かったわ。ふふ、ありがとう心配してくれて♪」

いつものように抱きつかれる俺。何か調子狂うなぁ、どうしてこうもドストレート何だろう、彼女は。こうも真正面から哲平特別宣言みたいな事するのは止めて欲しい。こうやって男は女に溺れて行くんだろうなぁって思う。さりとて嘘にも思えない表情でさらりと断言する彼女が不思議だった。

・・・彼女は一体俺の何を知ってこんな事を言えるのだろう。

どす黒い感情が俺の中で湧き起こり、善良な俺の血を流していく錯覚に囚われた。その間にもシャルは俺の腕を愛おしそうに掴み、鼻歌混じりに歩いている。不信感を彼女に抱きながらも、現在危害を加えられていないために何も行動できない蟠り。そもそもどうして彼女に疑念を抱く必要があるのか、やはり判断材料が少ないからと俺は結論付けたのだった。

俺達はその後町中を散歩して胃の消化に努めていた。彼女は景色を楽しむ余裕が生まれたようで、風景を見渡しながら楽しげに歩いていた。さらに楽しさを皆で共有したいのか、周囲の住民にも話しかけていた。

「こんにちは、今日も良いお天気ね♪」

「まぁ、お買い物の帰り?ふふ、お料理頑張ってね!」

「ごきげんよう、どこに向かわれているんですか?」

この人見知りしない人懐っこさは天性の物かもしれない。俺は彼女が一人見知らぬ人に話しかける度に心が浄化されていった。短期間で人の本質を知ろうなど土台無理な話だ。今日は彼女に対して好意的な感情を抱いたと言う事で満足しようじゃないか。そう思いながら一人頷いていると

「キャッ!」

シャルが短い悲鳴の声をあげた。な、何だ、俺は咄嗟に身構え彼女の方に目を向けると

「ワンワン!はふはふはふはふ」

セントバーナードと思しき大型犬が彼女にまとわりついていた。リードを引きずっている所を見ると、ご主人と生き別れになったようだ。

「うふふふ、くすっぐた~い。よしよし♪」

そのワンコは彼女の下半身を重点的に舐めまくっていた。というか股間の匂いを嗅ぐのは色々想像力たくましい俺にはちと刺激的過ぎる。俺はあまり露骨に見ないように上方に目を向け右手もポケットに差し込んで、左手の救援に向かわせていた。チャックを引きちぎらんとする勢いで暴れる物だから、押さえつけるのに必死だ。そうしている内に名も知らぬその犬は服従のポーズを取り、シャルに腹をなでさせていた。

「ジョーーーーン、ジョーーーーーン!」

どこぞで飼い主の遠吠えが聞こえるではないか。その声を聞き付け腹をなでられているジョンは立ちあが、らずシャルのなすがままに撫でられうっとり顔だ。そういう快楽に流される奴、俺嫌いじゃないよ。俺が暖かい気持ちでその光景を堪能していると

「ジョオオオオン、探したよ、ジョオオオン!」

飼い主がジョン目がけてヘッドスライディングして来た。このくそ寒いのにTシャツと短パンって。皮膚がかなり頑丈なのか、怪我一つせずにジョンに巻き付きながら転がっていくジョンとその飼い主。上手い具合にシャルを巻き込まなかった事だけは感謝する。

ジョンは飼い主との邂逅を喜ぶどころか「キャインキャイン」言いながら痛がっていた。有り余る愛情もされた側からすれば不快にしかならんよなぁ。

「嗚呼、可愛いジョン、僕のジョン、愛しのジョン、皆のジョン、世界のジョン!」

飼い主は濃厚なキスの雨をジョンに与えながら感動の証を我々に見せつけていた。俺は顔を引きつらせてあの犬、可哀そう・・・と思っていた。ジョンは必死の抵抗を見せていたようだが、飼い主の体育会系の肉体にしっかりホールドされていた。シャルはそんな無残なジョンを見ても

「良かったわね、お家の方に出会えて♪それじゃ行きましょっか。」

俺の手をリードにしながらまた歩きだすのだった。ポジティブにもほどがあるだろう。後ろからジョンの悲しげな泣き声が聞こえてくるが許せジョン、俺も無力な人間の一人なのよ。

・・・

気付けばもう夕刻、お子様が遊び終わり帰宅に向かう時間になっていた。俺達は公園のベンチに腰を下ろしゆったりと過ごしていた。いつもは喋りっぱなしのシャルも今日はもうタネ切れになったようで、目を細めて景色を見ていた。そうしてどのくらい時間が経ったか分からないが、遠くから屋台の存在を知らしめる声が聞こえた。

「い~しや~きいも~。美味しいお芋は心を潤す。い~しや~きいも~おいも。」

メロディー口調でのんびりテープを流しながら屋台を転がす老人。俺は折角だから焼き芋をシャルにも買ってあげることにした。

「・・・?どこ行くの?」

突然立ち上がった俺に不思議そうな眼をしてこちらを向くシャル。

「ああ、ちょっと待っててもらえる?少ししたら帰って来るから。」

俺はサプライズ的な意味と、ちょっと試してみたくなって曖昧模糊な返答をした。シャルはデートの待ち合わせを思い出したのか不安そうな顔になって

「早くよ、出来るだけ早く戻って来てね?」

縋るような眼をしてシャルは俺に懇願してくるのだった。俺は初めカマを掛ける意味も込めて5分ほど物影に隠れて、彼女を観察してみようと思っていた。しかしこの表情が贋作とはどうしても思えない。俺は彼女の心の奥底を覗く想いで数秒ほど彼女の目を見つめていた。そんな俺の態度が彼女の心をより不安定にしてしまったようだ。彼女は思いっきり立ちあがって

「私も行く!今の哲平放っておけないものっ。」

と声を荒げて俺の腕を離さないように掴むのだった。この必死な動作を俺を逃がさないためと取るか、安否を気に掛けてくれていると取るか。俺はフッと笑みを浮かべながら言った。

「ああ、行こう、シャル。あそこの屋台で焼き芋を売ってるんだ。」

「ええ、行きましょう♪」

馬鹿馬鹿しい、つい先ほど好意的に受け取ると思ったばかりじゃないか。何も結論を先急ぐ事は無い。これからの生活でシャルと接する機会は山ほどあるんだ。俺に悪意や下心が万が一あるなら、必ずボロを出すはずだ。それがどんなに些細なことでも。今はシャルの愛らしい仕草や表情に感動を覚えよう。この百面相とも言える感情表現豊富なお姫様は、人の心に温もりを与えるのだから。

俺はつくづく曲がった人間だと自分を揶揄しながら、屋台へと歩きだしたのだった。

―続く―

はい、どうもこんにちは、自堕落トップファイブです!体調が何とか持ち直したので続きを書いてみました。哲平の疑り深さはこの僕を表す物かもしれません。人と積極的に関わろうとしないのは傷つきたく無いからに他なりません。哲平の趣味は僕の趣味、そんな内向的な趣味(ネット麻雀、エロゲ、ネトゲなど)に身を委ねるのもそう言った物が起因していると思われます。元々無精な性格だし本当に好きってのもありますけどね、エロゲに麻雀とかは。

自分語りは鬱陶しいと思うのでこの程度に留めますが、哲平がなぜこうも潔く受け入れないのか。それは単純に良い関係を壊したくない、傷つくのが怖いためです。シャルが好きな方にはイライラした文章になったかもしれないので補足として説明させて頂きました。それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで見て頂いて誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2週目、姫の冬心に春を与えよう
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/06 10:12
 俺達はベンチに座ってめいめいに焼き芋を頬張っていた。無邪気な様子でシャルはサツマイモに舌鼓を打ち、美味しさのあまり2個目をねだって来た。しかもシャルが焼き芋をあまりに絶賛するのでお爺さんも感銘を受け、3個目をタダでくれる結果になった。

俺はシャルの腹の具合よりも臀部から放出されるメタンガスの心配をしたが、そこは淑女の嗜みと言う事で炸裂音は響いて来なかった。時折彼女がもじもじしているのを見過ごすのも紳士たる嗜みになるだろう。お腹をさすりながらご満悦の彼女をしり目にそれにしても、と俺は喋りかけた。

「焼き芋の季節ももう終わりだ、もう冬が間近まで迫って来てるなぁ。」

寒風に身をよじらせながら、俺は吐息を手のひらに浴びせそう漏らすと、彼女の表情に影が射した。俯いて何やら一点をじっと見つめるようにポツリと呟いた。

「もう冬・・・。」

俺にはその言葉の意図する所が分からなかったが、様子から見るに過去何かあったのかもしれない。不謹慎な話だが、その様子は俺に安寧をもたらしていた。何故ならようやく彼女の裏側の闇に当たる部分を覗き見る事が出来たように感じたからだ。天真爛漫で活力に満ち溢れた彼女にも、やはり辛い過去や思い出はあるんだ。

俺は別に知りたいとは思っていなかった。ただ、そう言った裏側の表情を見せたシャルに安心したんだ。弱みや疵瑕の無い人間なんているものか。羨望や嫉妬の思いがあったのかもしれない。狭量な自分に嫌気が刺す思いだったが、何やら沈んでる彼女を慰めようと肩に手を回し

「ああ、もう冬だ。でも悪いことばかりじゃない。こうして寒さをしのぐために温もりを共有することだって出来るんだ。」

都合の良い釈明にも思えたが彼女は嫌悪感を見せる事無くその身を俺に預けてくれた。彼女の顔はまだぎこちなかったが、こちらを向いた時の表情は幾分和らいだように思えた。そして俺に質問を投げかけた。

「ねぇ、哲平は冬、嫌い?」

今までの彼女の反応を見ると、明らかに冬に対して良い印象を抱いていないのは明白だ。したがってここでは同意の意思を示すのが順当だろう。元より家を甲羅にして引きこもる亀仙人の俺は、春夏秋冬に好き嫌いなどないのである。寒けりゃ暖房、暑けりゃ冷房ただそれだけだ。

即座に好き、嫌い、どちらかと言うと好き、どちらかと言うと嫌いの4択が俺の脳裏に浮かんだ。そこで俺は嫌い、でも冬には冬の良さがあるという妥協した回答を用いることにした。

「ん~あんまり好きじゃないな。でもさっきも言ったように冬にも楽しいこと多いよ。」

「・・・そうなの?」

「ああ、そうとも。冬だけだ、雪なんて降るのは。雪合戦やカマクラ、土手でソリだって出来るんだ。それに寒い分お互い近づいて心の距離を縮めることだって出来るぞ?」

「・・・それが日本の冬、なのね。」

未だに表情の硬い彼女に俺は焦りに似た想いを抱いていた。折角一緒に遊んだというのに沈んだ想いを秘めさせたまま帰したくない。それはこの俺の沽券にも関わる問題なんだ。

「シャル、サンタって知ってるか?クリスマスにプレゼントをくれる人。」

「え、あの赤い?」

「そうだ、そのサンタクロースだよ。彼だって冬にしか現れないんだよ。」

「えっ、そうなの?」

「ああ、動物と違い彼は低温にならないと活動出来ない生き物なんだ。夏場は夏だけに夏眠(かみん)を取っているんだ。」

「そ、そうだったの・・・。」

「ふふ、そしてあの赤いのは実は返り血でね。」

「まぁどうして?」

「それは冬になると正義のヒーローとしても活躍していて、悪の組織をぶっ潰すんだよ。その血を浴びても目立たないように赤い服を来ていると言われているんだ。彼はプレゼントだけでなく、子供たちに夢や希望そして平和も与えているのさ。」

「・・・」

俺の与太話に耳を傾けている彼女だったが下を向いてプルプル震えだした。あ、あれ実はこれが真っ赤な作り話と知って気分を害したのか・・・?俺は怖くなり下からシャルの顔を覗こうとして

「プッ、アハハハハハハ!」

爆笑された。俺は予想外の動きに対応出来ず、顔を離して距離を取ってしまった。

「ど、どうしたんだ。そんなに俺の作り話が面白かったの?」

「うん、それもあるけど妙にリアリティあるからそれもおかしくって、フフ♪」

「あわよくば嘘のような本当の話に仕立て上げたかったんだけど、な~んだ知ってたの。」

「ええ、今回たまたまサンタさんは知ってたわよ。とは言っても哲平の話が嘘から出た実にならない保証はないけどね。」

まぁ即興で作ったにしてはそれなりな設定に出来たとは思うけど。にしてもシャルの笑顔を取り戻す事が出来て本当に良かった。サンタさんありがとう。俺がホッと胸をなで下ろしていると

「哲平は本当に思いやりがある人ね。」

と優しい口調で言われる物だから、声に詰まってしまった。

「な、何突然。」

「だって私を元気づけようとしてくれたんでしょう?」

「・・・まぁ。」

「ほら、やっぱり思いやりがあって優しい素敵な男性じゃない♪」

一気に頬が赤くなっていくのが自分でも分かる。いかん、完全に手玉に取られている。俺より一枚も二枚も上に明け透けなんだ。俺は表立ってそのような発言をさらりと言える程軟派な男じゃない。羞恥心を隠蔽するためにわざと不機嫌な顔をし

「・・・約束。」

「・・・え?」

「約束、俺が今度冬の良さを教えてあげる。」

と小指を差しだしたのだった。シャルは俺の小指がどういう意味を示すか分からないようで俺に直接質問して来た。

「どうすればいいのかしら?」

「こう小指と小指を絡ませて・・・」

俺はシャルの指を取り、指きりの原理や意味を手取り足取らず教えた。シャルは針千本なんて死んじゃう、と怖がっていたがその顔は嬉しそうだった。俺もその姿に気を良くしまたベンチに座り直して前を眺めるのだった。

「・・・絶対約束だからね。私の二度目の冬は来ないんだから。」

その声は俺の耳には届かず舞い落ちる紅葉と共に下に落下して行った。シャルはそれからテンションを立て直し、いつもの早口で最後まで楽しそうだった。初デートにしてピロートークのような睦まじさで俺達はしばし公園で一時を共にしたのだった。こうして俺達のデートは幕を閉じた。

―続く―

はい、どうもこんばんは、自堕落トップファイブです!もう前回でデート終わりにしようと思ったのですが、何やら雲行きの怪しいシャル姫だったので急遽作りました。ちょっと短くなって申し訳無いです(汗)哲平と同じく僕もちょっと安心しましたよ、シャルのあの物憂げな表情を見て。完全無欠過ぎるお姫様は逆に畏怖の念を禁じえませんて(笑)

例によって僕は今後の展開を考えても無ければ知りもしません。その時々で閃くままに小説の続きを書こうと考えています。それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂いて誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、俺も社交部の一員です、よね?
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/06 15:03
「行ってらっしゃいませ。どうぞお気を付けて。」

「行ってきます。」

今日は何やら誕生日パーティーらしい。どうも凄い政治家の方だそうで、日本の基盤を支えておられているそうだ。日本にとって、国民に取っては尊敬すべき存在であり、敬愛して然るべきお方だ。だが今までの人生に何ら接点の無い御仁をどう慕えと言うんだ。俺としては興味も無ければ楽しみでも何でもない。極彩色の群れを横目にしながら、高級料理を舌で味わうくらいしか退屈しのぎが出来ないのである。そして悲しいかな、俺の舌は有馬家料理人のおかげでだいぶ肥えてしまっているんだ。ともすれば自然、憮然とした顔付きにもなろう物だ。

しかし歳を取り面の皮が幾分厚くなっている彼らは、俺との距離を無にして迫って来る。俺の名前などほとんど呼ばれることなく、爺さんの息子として寵愛されるばっかりだ。無論内心ではメンチを切りまくりの俺だが、当然そのような応対が出来るはずがない。そもそも呼ばれた事その物が光栄あることらしい(言われた)。今現在の不快感を発散して今後の人生を棒に振るのも誠にもったいない話だ。俺は顔面を愛想で塗り固め、人面獣心としてのなりを潜めながら彼らと親しく話したのだった。

今の誕生日パーティーは月曜日の放課後の話だ。エリートな上勤勉な彼らは、多忙や忙殺など日常茶飯事の事だろう。そのため午前1時になっても明朗快活な姿を崩すことなく機嫌よく話し続けられるんだ。俺はもとより庶民風情故に、そのような時間まで活動した場合次の日に響くんだ。3次会まであわや突入するかと言う時に俺は帰れたものの、帰宅時刻はもう午前2時半だ。それから色々やってたら午前3時過ぎ、もう次の日学校休もうかとさえ思った。

と言う訳で俺が今こうして机と一体化しているのはやむなしと言えるだろう。こんな状態で来ること自体が俺って優等生じゃないかと自画自賛してしまう。授業中もどうにか目をこじ開け、机にへばり付きながらノートを取っていた。途中で何度か意識がブツ切れになるので、見返すと内容が飛んでいる。誰かに見られた時用の暗号化されたノートみたいだった。そして自分でさえそのノートの解読不可能という始末である。

数回に渡る居眠りのおかげで目が冴え、放課後自分のノートを見返してプルプル(自身への憤りで)震えていると優が話しかけて来た。

「哲平様、今日も社交部の方にご参加ですか?」

顔がちょっと心配した感じになっているのは、やはり学校生活の態度が緩んでいるせいか。優は俺の心配をしてくれるのは有難いんだが、どうにも回りくどい。社交部に参加するかの有無が本命じゃないのが丸分かりと言うか。そもそも心配させるなと言われればそこまでなんだが。俺が頬をポリポリ掻きながら「今日ちょっとだらけて心配させてごめん。」と言うべきか悩んでいると

「哲平、社交部行きましょう~♪」

とシャルが呼びかけて来たのでこりゃ渡りに船とばかりに俺は頷いた。そして優にシャルの方を促し、俺が親指をシャルに向けて笑う事で行く事を示したのだった。優はコクリと頷いて同意した後

「今日は精の付く物を作らせましょう。」

何も言って無いのにこの気配り。まぁ確かに見たまんま無気力少年の学生態度を見せられればなぁ。俺としては食事云々より宴会接待の延長料金に関して思案した方が良い気がする。根本的な部分を改善しない事には対策として成り立たないしな。それにしても有難い提案に違いないので俺はお言葉に甘える事にした。

「うん、ありがとう。」

「いえ、お気になさらずに。それでは精を出して頑張って来て下さい。」

やるな、精の付く料理だけに精を出し切って来いと言う事か。なかなか上手い事言うじゃないか。俺は優に親指を突きたてシャルと共に社交部の部室に向かって行った。

・・・

「哲平、優さんと仲いいわよね。」

ちょっと導入部分からして嫌な感じしかしない質問をシャルの口から発せられた。俺はこれから行われる詰問や尋問を想像してゴクリと喉を鳴らした。

「まぁ、それなりにな。」

「専属のお目付け役だったっけ?」

「あ、ああ、その解釈で間違い無いです。」

「ふ~ん・・・目配せで意思疎通出来る程の仲なの。」

「いや、待て何か勘違いしているようだが、あの程度なら誰だって出来る。」

「でも私哲平と目だけで会話した事無いわ。」

「目で会話なんてほとんどの場合出来て無いもんだって。」

「でもさっき優さんとしてたじゃない。」

「あれはいつもの事だからちょっとした仕草で分かるように取り決めてるんだ。」

「・・・本当?」

「そうそう平日はほぼ毎日確認するのが日課だし、言葉で確認するよりも動作で確認取れれば早く済むだろう?」

「・・・もする。」

「え、何?」

「私も哲平と毎日確認するっ。」

ギュウウウウウ!

「ふぬぅ!そ、そんなに気張る事じゃないって!」

こう気持ちが昂って来たら胸を惜しみなく押しつける行為止めて欲しいものだ。男としては嬉しいが、理性的には辛いんだよな。そういう恋愛感情が一定域を達してからするような行為を軽々しくするなと何度言えば・・・。ていうか

「毎日何を確認するんだよ。」

「・・・それは、その。」

ズテーン!勢いだけで言っただけでしたってか。何張り合ってんのか分からんがどうにも取り決めごとを俺としたいらしい。ヤキモチと仮定するなら俺も相当シャルに気に入られたのかも分からんね。

「しかし何だ、ちゃんと礼儀として声を出し合って疎通した方がいいんだぞ?」

「どうしてぇ、私とは出来ないのぉ(泣)」

「や、違う。だってそれは話すのだるいから動作で、っていう怠け者根性から来てるんだ。だからそういう行為は出来る限り控えた方が無難だろう。」

「でもそれって私が失礼と思ったらの話でしょう?」

「ま、まぁ言われた側が全く気にしてないなら問題無いかもな。」

「全然失礼じゃないわ、寧ろ嬉しいもの!」

「・・・とりあえず俺と以心伝心したいのは分かった。」

俺達はこうして部室に着くまでの間「どう気持ちを動作で伝えるか」について話しながら歩いて行った。結局首の振りと目線の動きなどで判断すると言う事になった。シャルの気分は上々になり「これからの学園生活がより楽しくなるわ♪」とウキウキしているようだった。俺はこの事からやはりシャルが優に張り合ってるんだと思わざるを得なかった。

「誰それと話をするな」と言わないだけマシと言えばマシだな。そう考えれば可愛い物なので放っておくことにしよう。エスカレートして束縛し出したらその時はその時で対処を考えれば良い。そもそもまだ俺達はデート一回きりの関係なので付き合う以前の問題だ。

・・・

ともあれ何事も無く社交部部室に辿り着く事が出来た。というより普段通りなんだけど。中に入ると部員の一年生が2人行儀よく椅子の上に座していた。社交部の決まりとやらで一年生がいの一番に入って鍵を開けておかないといけないらしい。俺は2年なのでやらなくて良いけど、何やら申し訳無い気分だ。俺入部期間はそこにいる彼女達より短いだろうし。

「ごきげんよう。ヘイゼルリンク様、有馬様。お茶をお淹れしましょうか?」

したがってこのように飲料物の確認に対して俺はノリノリで返事など出来ようはずがない。だって俺はまだ生まれたてホッカホカのひよっ子社交部員なのだからっ!と言う内部の叫びを俺は消波ブロックの上に立ち、超波された海水を背景にしながら喚声の声をあげるのだった。ザッパーン!

シャルはいつものように優雅に返事をしていた。

「ありがとう、紅茶をお願い。」

「畏まりました、有馬様はいかがなされますか?」

「いや、俺も一緒に淹れに行こう。俺も1年みたいな物だし。誰も居ない時に自分で淹れれるようにしたいし。」

「え、そんな気を遣って頂かなくても・・・。」

「え?使って無いって、寧ろ遣ってるのは君達でしょう。さ、行こう行こう。」

俺はぐいぐい下級生の背中を押しながらキッチンの方に足を運んで行った。とは言え台所に当たる部分は女性の戦場と呼ばれる所だ。当然俺が詳しいはずもなく、部員の方に指導されることとなった。

下の棚に缶にテープで名前が張って保管されている。おそらくこれが紅茶なのだろう。ストレート、フレバリー、ブレンドきちんと枠組みが決まっているようだ。違いなどはさっぱりだが名前を言われればどうにか淹れる事ができそうに思えた。別の区画に何も置かれていない場所があった。

「ここだけ空いてるな、人気なの?」

「そうねぇ、ゴールデンティップは希少価値が高くておいそれと入荷出来ないし。」

一年部員に聞くつもりだったが気付けばシャルがいた。俺は寧ろそっちが今度気になってしまったので

「あれ、さっきの一年生どこ行った?」

「はい、ここにいます。」

声の方に引き寄せられて視線をずらすと、一年生は台所の入口付近で様子を伺うように立っていた。あれ何であんな所にいんの?

「え、もしかしていきなり俺実践編とか?正しい淹れ方とか知らないんですけど。」

「うふふ、私がいるじゃな~い♪」

シャルがしなを作りながらクネクネ擦り寄って来た。ええい、恥ずかしい事するんじゃない。一年生が目をパチクリさせとるじゃないか。一年生二人もコクンと頷いているようだ。聞けば先輩に教えるのは気が引けるのでシャルに頼んだ所大喜びされたらしい。

ミルクティーとストレートティーの淹れ方をそれぞれ教わった。俺はティースプーンを缶に突っ込みさっさとポットに入れようとした。

「哲平、ストーーップ!」

普段聞き慣れないシャルの激しい口調に、俺は思わずティースプーンを缶の中に戻した。

「え、何何、違うの?」

「やってる事はあってるけど分量を考えて無いのが問題ね。」

俺はその後シャルロット先生の助言を賜りながら、危なっかしい手つきでどうにか自分のストレートティーを淹れる事が出来た。葉っぱの大きさで量が違うと言われても現物のコレは粉になってるから分からんです。それからシャル先生?ガッツリ後ろに回らなくいいですから。あなたが俺の手を取る度に、両方の弾性に富む膨らみが男性の性を刺激しまくりですけど。何やら視線が気になって仕方が無い、見れば一年生も何やらひそひそし始めておるじゃないか。

俺はミルクティー講座に突入した講義を一時ストップさせる事にした。

「シャル、ストーーップ!」

今度は逆の立場に成り変わる俺とシャル。シャルはきょとん顔でこちらを見て

「・・・?どうしたの、哲平。分からない所があるの?」

「いや、懇切丁寧で非常に分かり易いため我々一同(俺&股間の皇太子)感謝する次第であります。」

「良かった~ちゃんと教えれて、それじゃあね次は・・・

「ちょちょちょ、ちょっと待って!」

「?」

「僕、シャルロット先生の洗礼された無駄の無い紅茶捌き見たいなぁ。」

「えへへ、じゃあやっちゃおうかしら♪」

簡単に乗せられ自分で紅茶を淹れ出すシャル、俺は安堵のため息を内心吐きながら彼女のスムーズな動きに魅了されていた。普段一年坊や使用人にやらせているから残念な動作かと思いきや、タイムラグが一切無い。止まる事無く鼻歌交じりに紅茶を淹れる姿に何やら憧憬の念を抱いてしまった。ああ、俺もこんな嫁さんいれば幸せだろうなぁ、みたいな。

そうして俺達は一年生の分も含めて練習がてら紅茶を淹れたのだった。自分と淹れると普段よりうま味増量された気分になったが、周りの反応がどうなるか不安だった。俺が俯き気味に紅茶を飲むフリをしながら目を三人に配らせると、普通に全員俺の方を見ていた。シャルは指で丸を作り、一年生はそれぞれ拍手と首肯で返してくれた。俺はやっぱり恥ずかしいので慌てて紅茶を飲むのに専念するのだった。

「遅くなりました。」

気付けば時間も程良く経っており、部員がぞろぞろと集まってきた。フェンシング帰りのシルヴィもいつも通りきびきび入って来た。うーむ、シャルと行動していた分あの動き見てるとちょっと怖い。やっぱり俺のんびり屋タイプなのかも知れない。

シルヴィにはそこっ、デレデレしない!とか言われそうなんだよね、勝手なイメージですけど。あれ、それじゃ聖華とキャラ被っちゃうわ。ん~シルヴィは気付けば後ろに立っていて、出席簿の角で後頭部を狙い撃ちする感じなのかもしれない。俺がそうやってぼ~っとシルヴィを見ていると

「・・・?有馬殿いかがなされました?」

唐突に質問されたので俺は背筋を伸ばし

「いえ、寝てません!起きてますっ。」

「それは分かるが、何やら私の方を見ておられたので・・・。」

「あ、いや、その、部活大変そうだな~って感心してたんだよ。」

「ありがとうございます。私としても騎士としての誇りを保つ鍛錬のような物なのです。」

「あ、ああ、そうなんだ。」

何とか話をうやむやに出来て良かった。シャルがちょっと拗ねた感じに見えるのは気のせいに違いない。だって俺達まだそんなんじゃないもん。部室の中心部にて事を構える気まんまんで腕組みをしていた聖華がゆっくり口から嫌味を吐き出した。

「へぇ~、ろくすっぽ部活に顔すら出さなかったシルヴィアさんが殊勝にも『遅くなりました。』はぁ~そ~お。」

俺とシルヴィの顔を交互に見合わせながら一人納得しておられるご様子。俺とシャルは互いに目を見合わせながらチビチビ自身の飲み物を嚥下していた。もう何度目になるか数えるのも億劫ないつもの小競り合いが始まったのだ。部室が闘技場となり聖華VSシルヴィア戦を観客として眺めるのだった。

「にしても有馬さん本当に社交部に馴染んでらっしゃいますよねぇ。」

いつ入ったかさえ分からない根津によって唐突に試合は中断された。ナイスなのか空気読めと叱るべきなのか迷う所である。根津によって何度試合中止になったか分からないが、結構な確率で集中砲火を選手から浴び轟沈している。そういう意味では豪胆さに置いては社交部随一かもしれなかった。あまり皆から相手にされなくとも爽やかな笑顔を振りまく肝っ玉だけで、彼はここ社交部の一員を果たしているのである。

今回は根津のタイミングが良かったようで二人の興も冷めたようだ。しかし厄介な事にまたしても矛先が我が身に向いてしまっている。観客席に居ていきなり指名された気分は、正直ショックがかなりでかかった。

シャルは俺が褒められたのに自分の事のように笑いながら

「本当にね~、ウフフ♪誰だか知らないけどあなたの言う通りだわ。」

「私自身も自分が誰だか分からなくなって来た・・・。社交部に入部して間もない有馬さんの方がよっぽど存在感あるではありませんか。ここの小説でも最近殆ど出ないし。」

何やら最後の一文は世界観を悟ったような事を言っていた。ていうか俺主人公なのに存在感無いっておかしいだろ。それはさて置き今の根津の発言に聖華姐さんの片方の眉毛が釣り上がった。

「根津、あんた今何て言った?」

「・・・え、ね・・・ず?私は根津なのか!」

自身の両手を見ながら震え、中二病のような訳の分からん痴れ事を言い始めた根津。奴は一体どこに向かって行こうと言うんだろう。

「そんなのはどうでもいいの!」

「どうでも言いとは何ですか!」

「ああっ、もう!どうでも良く無くて良いから、有馬が入部って今しがた言ったわよね?」

「・・・はぁ、誰がどう見ても入部されてるとしか思えないのですが。」

「いつ有馬が社交部に入ったのよ!」

「「「えーーーっ!!」」」

俺含めるその場にいる全ての人間が驚きの声をあげるのだった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!何やら二周目と言う事もあり話の内容を作るのに手間取ってしまいますね。今回は根津はシャルに名前覚えてもらってないパターンで行ってます。まぁ原作通りですか。紅茶の淹れ方云々は生兵法にも程があるので、もし違ってたら申し訳ありません。それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂いて誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、社交部的な試験をやりましょう
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/06 16:33
「な・・・何よ皆してその反応は。」

部室に響き渡る驚愕の声に流石の肝っ玉聖華姐さんの肝を幾分か冷やしたようだ。俺としても驚きだ。と言う事は聖華から見ると俺はシャルにへばりつくコバンザメみたいな物か。うーむ実際へばり付かれるのは俺な訳で、色々ややこしい。

皆よりは大して声を出していなかったシャルが一等立ち直りが早かった。緩慢な動作で手のひらを口に当て上品に笑いながら

「聖華さん、哲平はもう社交部の一員じゃない。この前だって一緒に作業を・・・

ジロリと聖華の眼光がシャルを貫き、シャルはしおしおと椅子に座りこんだ。おお、よしよし下より平和主義の僕達では太刀打ちできないんだよ。うん、よく分かる。俺はシャルの傍に行き頭を撫でながら慰めていた。

「とにかく!有馬はまだ社交部としての資格はありません!」

俺はその時閃いた。

「シャル、えらいことに気が付いた。」

「え、どうしたの哲平?」

「資格はありません、と聖華が言っただろ?」

「うん。」

「つまりこういう事だぁ!」

俺はバサァとテーブルに紙を広げて「資格は有馬選」と書いた。すなわち、有馬選ぶ?

「と言う訳で有馬は選ばれた、という解釈で

「良い訳あるかぁ!!」

バキィ!

「ぶほぁー!」

「て、哲平―!」

俺は聖華姐さんのアッパーカットを喰らい椅子の上で限界までのけ反っていた。突っ込みはもう少し加減と言う物を考えろと何度言えば・・・。

そんな俺を捨て置き、シルヴィが果敢に聖華に挑んで行った。もう頼みの綱は君しかいないんだ・・・。俺はシャルに介抱されながらどうにか椅子に座り直した。

「待て鳳条院、私は納得がいかない。どうして日々社交部へ真面目に出席している有馬殿の入部が決められないのだ。そしてお前と取り巻き以外は皆嫌悪感を示していないように見えるが?」

「ええ、有馬が真剣に社交部に入りたいという熱意だけは汲んであげるわ。熱意、だけね。」

そんな熱たっぷりの視線でこっちを見ながら熱意だなんて、照れるから止めて欲しい。俺も君からの熱意しかと受け取った、あのアッパーカットなかなかだったぜ!俺はピースサインを聖華に送ったがそっぽを向かれた。嗚呼、麗しのツンデレラ姫、いつになったら俺に心を開いてくれるんだい?やはり目覚めのキスとやらをせねばならんのだろうか。

「・・・ったく、見なさいこの振舞いを。元気良くピースサインをするのが社交部部員としての正しい在り方なのかしら?」

お、怒られた。酷いもんだ、いくら社交部の一員だからっていつもいつもお堅いのはしんどいじゃないか。こちらが友好的な態度に出てるというのに、対外政策の見直しを考えて頂きたいものだ。俺がしょんぼりして広げた紙にのの字を書いていると、シャルが頭を撫でてくれていた。こう考えると俺とシャルって実に相補的な関係になっていると思えてくる。

「まぁ資格無しとまでは言わないわ。でもふさわしいとまでも言えないの。」

俺はその一言で俺の心臓に毒矢が突き刺さりそのままテーブルに伏せてシクシク言っていた。酷い、私を弄んだのね、都合の良い男だったのねぇぇ!シャルは頭から背中を撫で始めキッと聖華をねめつけ

「それじゃ哲平の社交部入りを認めないの?」

普段のシャルとは思えない凛とした声だったので、俺は思わず顔をあげて母なるシャルの御身を見た。まるで息子の難病による闘病生活を決意するかのような顔立ちじゃあないか。いや健康体の俺がこんな事言うのおかしいけど。もう目から弱アルカリ性イオン水が止まらないよ、ぼかぁ、ウルウル。

「今の発言だと結局の所入れるとも入れないとも断定していないではないか。」

シャル切り込み隊の援護もあり、何やらこちらの方に風が傾いてる感じだ。

「別にどっちつかずの対応を望んでやってる訳じゃないわよ。ただコレという決定打が未だに見当たらないの。」

「有馬殿が入部するか否かのか?」

「そうよ!だからまだ思案してる最中なのに社交部員面するのは止めて頂戴。勘違いされたら困るから今ハッキリ言っておきたかったのよ。」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。」

俺は堪らず声をあげた。社交部面に関しては別にいいけど、いつまでこんな状態が続くのか分からないのは困る。いちいち俺が部員か否かでもめ事は勘弁だよ。

「その決定打とやらはどうやって判断するというんだ。それが分からない以上今後どう身の振り方を考えれば良いのか分からんじゃないか。」

俺がそう質問すると周りは一様に頷いていた。俺の言い分が正当なだけに聖華は若干たじろいでいたが、コホンと咳払いを一つして

「・・・分かったわ、最終試験をしましょう。」

おま・・・今まで散々引っ張っておきながら今になって最終試験・・・って。俺は思わず口をアングリ開けてしまっていた。それもそのはず、日常生活でポイント稼ぎしようと考えていたのだから。テスト関係は前日にならないとエンジン掛からない俺なんだよ?もう今死刑宣告されたに等しい気分だった。

「俺が呆然と聖華を見ていると彼女は小悪魔的な笑みを浮かべていた。」

「何一人でブツブツ言ってんのアンタ?最終試験はあんたが主催のパーティーを開いもらうって事でいいわね?」

俺の頭が真っ白になっている間にどうやら一度言っていたらしい。復唱してもらって助かったなこれは。しかし俺の脳はとろけ切っていたため聞き間違いを犯していた。手を挙げて質問をする俺。

「はい、有馬。」

「あの・・・俺主催のパンティーって・・・・ゴボァ!」

「パーティー!!」

「正確に急所を突くその精密性、さ、流石です、グフッ。」

「・・・はぁ、まぁいいわ。分かった有馬?」

俺は崩れ落ちながら親指を天井に向け同意の意を示していた。聖華はうんうん縦に振りながら

「ふふ、我ながら名案だわ。これなら舞踏会の予行演習と有馬の歓迎会も兼ねれるじゃない!」

「まぁ、歓迎会素敵♪」

シャルも歓迎会という響きだけであっさり聖華サイドに移って行った。相変わらず俺の背中をさすってくれているが。竹園と金子もお得意のおべんちゃらで、聖華を引き立てるのに精を出していた。とは言え俺もどちらかと言うと子分属性なので気持ちは良く分かるけど。ま、彼女らと俺の違いを強いてあげるとするならば?やはり褒めてからけなすというオチを作る事だろうか。や、中傷にならない程度のフランクな感じを目指してますけど。

とにもかくにもまたして俺は人生のターニングポイントとなる場面に出くわしたのである。しかもどうも今週末にやるんだって、これは酷い展開だと口から妄執の煙をもくもくと立ち昇らせる俺だった。何と言う雲行きが怪しい何て物じゃない、視界に広がるのは雲のみだ。

もう既に俺の話題は打ち切られ、舞踏会の話をなされていた。企画やら場所とか決めないといけないのか・・・。ま、期待されてないからほどほどに頑張ろうか。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!いやはやどうも3回目にある同じ場面を描くのも意外に難しいものです。そして少し先に進めてみたんですが、シャルに相談する場面に関しては全く同じ内容なんですよね(汗)3回目の部分を削り2回目に調整を図りつつ今後を進めて行こうかと考えています。優ルートは家でまとめるという選択肢ですしね。問題としてはパーティーどうするか・・・。

後やっぱり哲平のノリが一番最初に戻ったような気がして僕としては嬉しく思ったり。これくらい馬鹿丸出しの方が僕の性分には合ってる気がします。正し人を傷つけ無いに限る、と言った所でしょうか。それでは皆さん、またお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで読んで頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、哲平パーティー再び
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/06 16:32

にしても参ったな・・・俺主催のパーティーか・・・どうしたもんだろう。ここは誰かに相談した方がいいよねぇ。意固地を張ってどうにかなる事態じゃないんだし。聖華姐さん?いやいや怒られそうだよな。シルヴィ、うーん、あの寄せ付けないオーラが何とも。ここは無難にシャルロット姫にお聞きした方がよさそうだ。

俺がそう思いシャルの方に目をチラチラやっているとギロリと聖華に睨まれた、ハハ、こ、怖い。愛想笑いで手をヒラヒラ返すものの一向に懐柔されないのは流石です、姐さん。やはり参加するのは皆さんなんだから、ここはどうすれば楽しくなるかを聞くのはありだろう。

しかし今聞いた場合、便所裏来いの流れに突入しそうな目で聖華が見ている。どんだけ目付けられてんだろう、俺。その後もチクチク嫌味を言って来るものだから、こちらはツンツン脇を突いたりして仕返ししたら思いっきり蹴られた。酷いや!俺どちらかと言うとS気質だと思ってたのに、変な性癖に目覚めたらどうしてくれるんだ。

つつが無く部活動が終わり、蹴られた尻をさすりながら部室を後にした。おっと忘れちゃいけない、シャルに用事があるんだよ。シャルを探すとあっという間に見つかった。というか自然に視界に入っているんだよな、彼女の場合。目立つというか、あんな道のど真ん中歩いてたら、どんな目悪い奴でも何かいる!程度には認識出来るだろう。

俺はシャルの傍まで行って顔を覗いてみると、完全にあっちの世界に逝ってる顔をしていた。どういう顔かって言うと、目が太線になって空を見上げてるんだよね。多分角膜に妖精が飛んでるのかもしれない。俺は何やら邪魔してはいけない気分になったので、そのまま傍観することにした。・・・あ、

ガンッ

木の幹にもろにぶつかっていた。うわぁ木の葉が落ちて来る程の勢いかぁ、タンコブ出来たんじゃないか?イタタタタと言いながら、こちらを振り向く顔のシャルは涙目だった。俺の顔見るやいなや

「もう、哲平!傍にいたのなら教えてよっ。」

「いや、だって、何か楽しそうにしてたし。邪魔するのも悪いかな~って。」

「そりゃあ楽しかったけど、でも当たる直前に止めるのが紳士の嗜みよ!」

楽しいと言い切れる辺り彼女は誠に大物であるな。にしても何をやっていたのか気になる。

「にしても目瞑って何やってたの?」

「今日のクッキーと~っても美味しかったのよ?目を瞑ったら味を思い出して幸せになれるの。」

何と言う安上がりな幸せ・・・彼女はド貧民であったとしても幸せを教授出来るに違いあるまい。ん、俺は何やら用事が・・・そ、そうだった!

「シャル、実は用事があるんだよ。」

「え、なぁに~、哲平まだ帰りたくないの?ウフフ、お・ま・せ・さ・ん♪」

ドッパーン!

俺は何やら言葉の津波に飲み込まれた。彼女は、彼女は一体何を言っているんだ?!俺は全身水浸し(汗まみれ)になって震えあがった。実際の所分からんが、シャルはどうも美人局の匂いがしてならないんだよ。気付いたら背後に黒服やら屈強な男がいそうで怖いんだ。俺はお得意の警戒心を出しながら、踵を浮かしジリジリとシャルと適度な距離を保った。シャルは鼻歌を歌いながら素知らぬ顔だ。そしてポンッと手を叩きながら

「そうだわ、哲平。屋上だったら二人きりになれるわ!」

「ま、待ってくれ。あの爺やも軍人的な意味で怖いがシャル、君も逆の意味で怖い。」

「え~、どうしてぇ?」

「悲しそうな顔をされてもだな。いいかい、シャル落ち着いて聞いて欲しいんだ。」

「慌ててるの哲平じゃない、ウフフ、おかしな哲平♪」

「ふぅ~・・・あのな、シャル客観的にだ。客観的に考えて欲しい。君は容姿は美しい!そして家柄もバッチリ、国レベル!この事から考えられるに、利用価値高すぎる!分かるかな?」

「ん~、哲平のお役に立てるってこと?嬉しい!」

ガクリ、俺は肩とヒザ両方を落とした。分かっちゃいない、この子はてんで分かっちゃいないんだ。何やら俺はこの姫様の行く末が非常に心配になって来た。家の鍵空けるってレベルのセキュリティの低さじゃない。もう鍵どころか窓も全て全開になっている程の不用心さじゃないか。この無警戒さこそが俺の心に不安を与えているんだが・・・。もう彼女に警戒するのも馬鹿らしく思えてくる。何より感情表現が素直だし。あれがかりそめの姿なら真性の悪女と見て間違いあるまい。

「哲平、どうしたの?」

気付けば彼女に頬をツンツンされていた。ひょほおおお!俺は突然の接近に驚き後ろに飛び退いた。その勢いで木の枝に後頭部を直撃させ、悶絶していた。

「アハハハハハ、哲平面白~い。もうお猿さんの真似なんてするからぁ。」

元々サル頭なんですよ、こちとら。おお、痛い・・・。話が全然前に進まないのもこの姫様の術中にはまっている証ではないかっ。刻一刻と期限は過ぎて行くのだから早く話を終わらせねば!

「シャル、俺はちょっとした事を聞きたいだけなんだ。だから屋上にも人目に付かない所にも行かないし、用心棒も呼ばなくていい。」

「ええ、なになに~?」

耳を寄せて来るシャル、仕方なく俺は口を近づけて行くと

「やぁん、くすぐったぁい♪」

顔を赤らめて距離を取られた。これは震えざるを得ない・・・怒りで。こんなキャッキャウフフな展開を求めてんじゃないんだよ、ぼかぁ!

「シャルゥ、そろそろ温厚な僕も怒る気分になるかなぁ?ウフフフフゥ」

背後に亡霊やら怨霊やらをまとわりつかせながら俺自身もシャルにまとわりついて行くと、流石の彼女もヒヨっていた。

「ご、ごめんなさい哲平!それでどうしたの~?」

俺はその場で憑き物を即座に振り払うと、早速メモ帳を取り出しながらパーティーに付いて聞いてみた。シャルの楽しいパーティーというのは豪華で美味しくて楽しい物という漠然とした回答だった。一応メモ書きはしておいたが、これでは抽象的過ぎるな。やはり具体的な案が一つでもあれば、そこから切り崩して行けるというものなんだが。

・・・

え~結果から申しますと、惨敗です。姫様引っ張るだけ引っ張って教えてくれませんでしたな。何だったんだよ、今までの下りは・・・。もう今日の話没ネタとして無しにしちゃくれませんかね。アイディアは豊富にあるものの、それは教えないそうだよ、トホホ。それを教えたらシャルのパーティーになるんだって、一理あるじゃないか。反論を挟む余地が無いからこその惨敗なんですよね。

でも有難い根性論を頂戴したんだよね。君なら出来る!やれば出来る!きっと出来る!何をやろうとするかをまず決める段階なんですけど。方向軸すら決まってないのにゴールテープ持たれて周囲を回られても、こちらとしては当惑するしか無いよね。ゴールは一体どっちなんだよっ!

俺が泣きべそ掻きそうになってる所で、彼女は空に向かって俺のためにお願いしてくれたんだ。哲平、これは俺に課せられた試練なんだ。人の手を借りてやらず、己の手で打開しないでどうする?参考意見も聞けないの、と思わないでも無いがこの際デモーニッシュに自身の限界に挑戦するしか無いやなぁ。うーっし、まずは情報収集よ。家に帰って調べてみるかな。

―続く―

はい、どうも皆さん二度目なんで何も言いませんが、自堕落トップファイブです!今回の哲平そこまで酷い行いしてない、と思うんですがどうなんでしょうかね。まぁそこまで神経質に読者さんの顔色伺うのも情けない話ですが、やはり気分良く読んで貰うのが作者として本懐なのでね。僕としては今回の哲平嫌いじゃない、というかいつもの哲平ですね。前回は何やら奮闘しておりましたが、寧ろアレこそちょっと頑張り過ぎた感あります。

あれは恐らくうざい哲平の不名誉を返上しようとしていた時の話でしてね。今回はそこまで深刻に頑張ろうとはしないですが、それでもやれる事をやる哲平にしようと思います。それでは皆さん新たにシャルルート始まりましたが、またよろしくお願いしますね。それでは失礼します!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、全てはシャルロットのために
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/07 10:19
俺は帰宅した後、頭に「根性!」と書いてある鉢巻きをして机に向かっていた。この鉢巻きを付けるのも実に数年ぶりという気がする。しかも勉強以外の何かのために、ああそうそう神輿担ぐ時に付けたんだった。まぁそんなのはどうでもいいや。それよりも・・・

「煌びやかな会場、美味しい食事、素敵な音楽、楽しい時間・・・。」

俺はシャルが言っていた言葉を復唱しながらコツコツと紙面をペン先でノックしていた。前3つはすぐに解決するんだ、手配を頼みさえすれば。問題は中身の「楽しませ方」これなんだよな。そして内容が決まらなければ食事の出し方や音楽の種類も変わってくるだろう。やはり骨格に当たる部分だから最初に決めなければならない気がする。季節は冬だろ、冬にまつわる何か・・・。

・・・あ、そう言えばシャルが冬としての楽しみ方をしたいとかって・・・

・・・

見えてきたかも知れない。俺はパソコンに向かって検索し始めるのだった。

・・・

「ほ、本当にソ、ソレを実行されるおつもりなのですか?」

優は完全に顔を引きつらせながら俺の書いた計画を見て確認して来た。俺は自信たっぷりに頷いた。旬な味わい方をするのもまた趣きが合っていいと思うんだ。そんな俺の姿に優は苦笑し

「畏まりました、必要な物はこちらで手配するように呼びかけましょう。どうぞ何なりとお申し付け下さいませ。」

「ごめんね、厄介な内容にして困らせちゃって。」

「いえ、この発想は哲平様だからこそ出せた案でしょう。そして何より実行しようとする気概に胸を打たれました。私は今とても嬉しい気持ちで満たされていますよ。」

ほんわかと微笑むものだから俺も俄然やる気が出て来た。俺は今パーティーを超える大イベントを考案したのだった。さぁって、やる事が決まれば後は準備に取り掛かるだけだ!一丁やりましょう。俺は手のひらに握り拳をバチンと当てて気合を入れ直すのだった。

今週末と言う事で急ピッチで作業が行われた。というか俺も現場に向かい手伝ったりしたので学校を休んだりしていた。当然その事で鉄心の爺さんにもお咎めの言葉を頂戴したが、事情を話すと豪快に笑って最後は許してくれた。爺さんにも俺のパーティー内容を伝えると

「そんなパーティー思いついてもやろうと思うのはお主だけじゃ。ったくワシの力が無かったらおおよそ叶わん構想よの、ふっふ。」

と何やらご機嫌の様子だった。息子が率先してパーティーを開催する事が嬉しいのかもしれない。それに自分の力を遺憾なく発揮出来たのも。最後には

「哲平よ、有馬の力を存分に見せつけい。」

とのお言葉を頂いた。まぁ確かに凄さは伝わるかもしれんな、あのパーティーは。もう明後日に迫ったパーティーだ。あっちへこっちへと走り回ってる内に一日が過ぎる物だから早いものだ。俺はもうほぼパーティーの準備が整ったので学校へ行く事にした。実に2日ぶりの登校だった。

着くと同時に体の心配を多くの生徒に心配された。まぁ多少体は重いがいつもこんな物だから命に別状は・・・って健康だって。優が俺の事を病欠扱いしてくれたようだ。その事については朝に感謝と謝罪の言葉を伝えておいた。

俺はようやく質問と労いの言葉が収まったので一息付いていた。いやはや日常というのは違う日々を過ごした後に振り返ると本当にありがたいものだ。平穏無事、これって当たり前だけど感謝しないと駄目ですよ、はい。俺が一人物思いに耽っていると

「あ、居た!」

と聞きなれた声が聞こえて来た。聖華とシルヴィとシャルのお三方ではござらんか。何やら懐かしいね、本当に。今までなかなかに過酷な環境下に晒されていたせいか、年老いた老人みたいな口調になってしまう。ずかずかと俺の席まで聖華は歩み寄り

「てっきり逃げ出したのかと思ってたわ。最近学校で姿を見ないものだから。」

「ああ、パーティーの件なんだけど。一日早めて土曜日にして貰えない?」

「何よ、パーティーの延期なんて許す訳・・・え?」

「多分クタクタになるから次の日休みの方が良いと思って。ちなみに午後1時からね。」

「・・・どう言う事?」

「それで会場は・・・」

「「「・・・本当に?」」」

珍しい事に三人ともが同じ疑問を感じたようだった。シャルは一人だけワクワクした感じだけど。

「うん、それでちょっと準備に手間取ってたんだよな。まぁそういう訳なんで部員に伝えとってね。それからちゃんと防寒の用意は万全にするように。」

何やら俺に言う事がある感じでやってきた聖華だったが、呆然とした顔になっていた。シルヴィがポンポンと肩を叩くとようやく我に返り

「・・・分かった、ちゃんと伝えておくわ。それじゃあもう行くわ。衝撃のあまり頭から言う事飛んで行ったわ。」

疲れたように首を振りながら出て行く聖華。シルヴィは聖華の様子に溜め息を付き

「気を悪くしないで頂きたい。彼女はあれで有馬殿の心配をしていたのです。」

「ねー、いっつも部活始まる前にきょろきょろしてたもんね♪」

「にしても有馬殿、よくもまぁこの短期間でそのような大それた催しが・・・。」

「いやまぁ、爺さんの臣下達にも大分手伝って貰ったしな。」

「ふふ、哲平はやっぱり素敵な男性ねっ。」

「・・・シャルロット殿、有馬殿が照れているようだからその辺に。」

「あら、本当だわ。うふふ、哲平は照れ屋さんだったわね。それじゃあ私たちも行くわ。哲平また時間がある時は社交部に来てね!聖華さんだけじゃなくて、皆待ってるんだから。」

「ええ、本当に。有馬殿が居ないと根津も寂しがっている。そ、それに私も少しはその・・・モゴモゴ。」

人指し指をツンツン合わせながら言いたいこと言えないこの可愛い生物はなんだ。

「シルヴィア、行くわよ~。」

「そ、そ、それでは有馬殿またお会いしましょう!」

シャルの呼びかけにシルヴィは素早く反応して脱兎の如く出て行った。はぁ、何かシルヴィの初々しい態度が眩しいよ全く。やっぱ乙女たる姿としてはシルヴィが満点にして大賞だ。シャルは俺の頭を自身の胸部に埋没させたり、真っ赤な俺の頬っぺたをツンツンしたりやりたい放題だったな。ああ、恥ずかしいったらありゃしない。俺の股間におわす煩悩陛下も上下に動いて頷いておられるわ。

・・・

俺は当日の早朝、行き慣れたパーティー会場へ優を含め付き添い3人と一緒に向かっていた。会場と言って良いのか迷う程の山小屋に俺達は到着した。長野の北アルプスの一角にあるこの山小屋付近を爺さんに頼んで貸し切ってもらったのだ。まずはこの会場の地を真っ先に快適な温度にしとかなくては楽しい物も楽しく無くなる。そのため俺達は午前中暖炉に火を灯しそして料理の準備に取り掛かった。

内装に関しては優が感性を存分に発揮してくれたため、実にエレガントな仕上がりになっていた。音楽として優しい気持ちにさせるオルゴールを流している。あまり激しいサンバやロックな音楽は雪神様の怒りに触れ、雪崩が起きるかもしれんと思ったからだ。

優や料理人の方に残りの料理支度は任せるとして俺はカマクラの様子を見に行くとしよう。部員全員が入れるスペースを確保できるサイズのカマクラとなるとかなり巨大なカマクラになる。そのため学校を休み朝から晩まで爺さんの側近と一緒にエッホエッホと作っていたのである。作って見るともはや一つの巨大な洞窟みたいになっていた。崩れないように外壁を雪で塗り固めるとそれなりの厚さが必要になるのだ。

カマクラの中に暖を取るための薪ストーブを配置し、折り畳みの椅子を並べてみることにした。実際は椅子など座らずベタ座りで構わないと思うのだが、一応の目安を知っておきたい。確か参加する部員が18名だったから・・・。俺はカマクラの内外を行ったり来たりして椅子を並べるとやはり一つでは無理で、せいぜい8,9人と言った所か。ふむ、念のため予備として同じサイズをもう一つ作って置いて良かったな、やはり。9人ずつどうにか座って頂こう。

山の気候は変動し易いと良く耳にするので油断は出来ないが、今は青空が広がっている。俺は良し、とひと声掛けてから椅子の乗った台車を押して山小屋の方に戻って行った。もうそろそろ部員の皆がせっせと登って来る頃合いだろう。

・・・

「・・・こ、こんなパーティー聞いた事無いわよ。ていうかこれはもはやパーティーじゃないわ。」

ゼーゼー言いながら悪態を付く聖華。それでも喋る元気があるだけ他の皆より大分マシだ。一年生に関しては着いた途端に山小屋に雪崩れ込んでいた。後元気なのは

「いや~・・・まさかこのようなパーティーになさるとは。予測不能ですね、有馬さんの考えることは!」

根津はいつにも増して元気だった。疲れを知らないというか、普段の精神的苦痛に比べれば、自然の猛威など彼にとってそよ風程度なのかもしれない。

「すご~い、日本の雪山って話では聞いてたけど素晴らしいわ!」

一番最初に倒れてそうな人物シャルロット姫も奇跡的に元気だった。防寒具に身を包みながら無邪気に雪を手袋ですくっている。そして彼女をおぶって来た爺やは奥の部屋で屍になっている。あの歳でどんだけ無理してんだよ、爺やのシャルへの愛は計り知れないものがある。まぁ流石に馬車で雪山はなぁ、途中で馬の足滑らしたら大惨事だし。何より通りにくい道も所々あったので、籠の部分に枝とか突き刺さってた可能性も・・・。

「・・・ふぅ、流石に少々疲れました。」

いつも以上に異彩を放つ礼服で参上なされたシルヴィ。言葉と裏腹に実にいつも通りな表情だ。部活後の方がもうちょっと疲れてる気がしないでもない。それから上にオーバーコート羽織ってるけど体温的に大丈夫なんだろうか。とりあえず時間としては30分くらいオーバーしてるようなので人数確認の点呼を取った。よしよし、どうにか皆揃っているようだ。

そうして数分間、室内の暖かさに皆安らかな顔付きで体力回復を図っていた。皆が小屋の席に各自着いた所で初めの挨拶を行った。

「皆さんごきげんよう、はるばる遠くからよくぞこの会場まで来て下さいました。今日のパーティーは雪山で存分に自然と戯れるという趣向で行きたいと思います。お日柄も良く好環境なのでたっぷり堪能できるでしょう。」

俺がそこまで言って優に合図を送ると彼女は鍋を持ってきてくれた。鍋はふた鍋用意してあり、石狩鍋とよせ鍋をチョイスした。

「皆さんお疲れでしょう、美味しい物を食べて元気を充電する。まずはそれからですね。」

そう言って手を合わせるように促した後「いただきます」と言ってからめいめい食材を取り食べ始めた。やはり皆ここに来るまでに相当緊張したのだろう。今は喋り方も仕草も年相応になっていた。リラックスしてよりお互いの事を知ることが出来るなんて素晴らしいじゃないか。

シャルも俺の隣りに座りハフハフと鮭の切り身を一生懸命食べていた。

「どうだ、シャル。日本の冬では鍋をよくする。こういうのもまた良いもんだろう?」

俺は周りの和気藹藹とした社交部の連中に目を配らせながら言うとシャルは楽しそうに頷いていた。

「部室も良いけど、こっちの方が楽しいわ!それにこのお鍋とっても美味しい!」

「俺も軽く手伝ったが、大部分は優ともう一人の料理人の方に頼んだからな。」

今もなお我々の様子を見ている優と料理人含む3名の方に目を向けると会釈をしてくれた。シャルはとっても美味しい!と元気良く伝え、彼らは満足そうに頷いていた。俺はシャルが食べ終わるのを待ち他の連中の様子を見ることにした。

聖華部隊はいつも通りに見えるがやはり普段より幾分か表情が和らいでいるように見える。金子が竹園に料理の具を本気で説明しているのが妙に気にかかるけど。聖華は二人の様子を見ながら一人で白菜を齧っていた。俺は聖華の傍まで近づき

「どう、楽しんでる?」

「ふん、パーティーと宴会の区別ぐらい付けて欲しいもんだわ。」

「あら、お気に召さなかった?」

「・・・こういうのもたまにはいいわ。」

「そうか!」

「いつもこんなんじゃ駄目なんだからね!」

「了解、まぁ今日は存分に楽しんでくれよ、折角の機会なんだしさ。」

「言われなくても分かってるわよ・・・・・ありがと。」

最後が妙に聞きとりづらく、聞こえなかったが気にせず俺はシルヴィの様子を見に行く事にした。シルヴィは珍しい事に根津と喋っていた。

「だからそれは根津の被害妄想だと言っているだろう?」

「だって、名前すら覚えられて無いのに私がいるってどういう事なんですか。」

何やら根津はシルヴィに自身の不遇を訴えているようだ。真面目なシルヴィは懸命に彼の心の傷を癒そうとしていた。

「名前すら覚えていないと言ったか、私はしっかり覚えているし他の者もまた同様だ。シャルロット殿が少し特殊な方だというのは根津、君も知っているだろう?」

最後の一文は根津の耳元でこそこそ囁くように言っていた。何やらシャルがどうとか言っているが仲が良さそうで何よりである。他の面々も思い思い日々の事や悩みや楽しい話、普段なら言えないような事でも環境の違いからか、この場でなら言えるようになっていた。俺はシャルが食べ終わったのを見計らって次の計画に移ることにした。

「はい、それじゃ今から雪合戦やりたいと思います。参加は自由ですが、外に出る場合必ず携帯を身に付けるようにお願いします。それから出来るだけ単独行動は避けて下さい。救助が遅れる可能性がありますのでね。何かあれば僕の携帯に電話を入れて下さい。それでは雪合戦する人外行きましょう。」

雪合戦は誰かしら参加しない人が出ると思っていたが、有難い事に全員参加してくれた。こんなに物分かりの良い人たちで俺は何て恵まれているんだろうと感動したくらいだ。ここでもシルヴィが猛烈に強く雪玉の回避率が異常だった。直撃は皆無に等しく、かすっただけで舌打ちが返って来る。この動きにくい場所でどんだけ身のこなしが素早いんだよ。

気付けば皆でシルヴィ目がけて雪玉を投げまくっていた。本来ならいじめになりそうな行為だが、千人力のシルヴィには丁度良いハンデであった。最後には俺が司令となってシルヴィにいかに雪玉を命中させるかというゲームにすり替わっていた。

「よ、よ~し、ちょっとここいらで終わりにしよう。」

俺は雪まみれになりながらどうにか皆をまとめる発言をしていた。雪合戦は結局俺が全ての元凶とシルヴィに思われ、シルヴィから苛烈な攻めを徹底的に喰らい続けた俺は最後は雪の中に埋もれていた。流石に慌てたシルヴィによって救い出された後に先の発言である。まぁ死にかけたが発掘された時に皆笑ってたし、もういいや。皆は小屋に戻って行こうとしているが俺はそれを留めた。

「あ、いやこれから行く所があるから付いて来てくれます?」

小屋の裏側に当たる部分にあるドーム状の物体を見た時、皆驚嘆の声を出していた。

「こ、これ有馬が作ったの?」

流石の聖華もこれには仰天している。凄く気分が良いです、はい。

「そうとも、と言っても爺さんの知り合いと一緒に作った合作だけどね。」

自分だけの力ではとてもじゃないがこれほどの大作は1週間未満では無理だ。例えコツを掴めたとしても2週間以上は掛かってしまうだろう。俺達がカマクラの中に入ると既に火が灯されていた。9人に分かれ配置に付く社交部一行。先ほどの雪合戦の話で盛り上がっていると、優と他2名によってトン汁と餅が運ばれて来た。一足早いが正月気分を楽しもうかと。冬でもこんなカマクラに入れる事なんてほぼないだろうし。

シャルは餅を限界まで伸ばして遊んでいるようだった。またしてもシャルに近づき

「これが冬の名物カマクラだ。とは言っても作るのが大変だからそんなに見れないけどな。」

「哲平、ありがとう。私とっても嬉しいわ。大好き!」

シャルはいつも以上に熱烈な言葉と共に抱擁をしてきた。や、まぁそんなに喜んでもらえて何よりです。餅食うもっちゃもっちゃ音が無ければより一層感動的だ。目にうっすら涙を浮かべて演出はバッチリなのに、頬が膨らんでるのがなぁ・・・。まぁシャルらしくていいか、ハハ。俺はシャルの後頭部を撫でながら成功を実感出来たのだった。

俺達は一時の間カマクラで休息を取り、そろそろ日が落ちる時間になって来たので撤退することにした。流石にこの場所で夜を明かすのはいささか不安があるだろう。帰る頃には再び爺やは復活し、シャルを背負うポーズで迎えていたが、シャルはぶんぶん首を振った。

「私、哲平と一緒に帰る!」

との事らしい。爺やはその瞬間頬がこけ、大口を開けてわなわな震えながら俺を睨みつけていた。結局最後尾で護衛する役割になっていた。いや俺のせいじゃないし。結局途中からは俺が背負って(ねだってきた)爺やが荷物持ちになってたけど。本当シャルにはどうしても敵わないんだろうな、俺と爺や。

帰りは暗くなりはじめて視界が悪いので集団行動で山を下って行った。時折聞こえると獣の遠吠えはなかなかに怖く女性陣もビクついていた。おかげで男性陣の鼻の下は伸びまくりだ。俺なんかはいつもの事というか常日頃からそんな状況なので、縋って来るシャルの頭をよしよししていた。

気丈に振舞っていたシルヴィと聖華だったがやはりか弱い婦女子、俺の服をガッシと掴んで歩いていた。シルヴィの力が強力で、引っ張られた勢いでこけそうになったりもした。しおらしく謝る彼女が珍しくついつい許してしまっていたが。聖華も口から出るのは強がりばかりだが、声が震えまくりなので見てて微笑ましい。

山道を下り視界が広がった途端に前後に居たシルヴィと聖華はすかさず距離を取った。後ろにいる連中がビクビク歩いている様子を、高みの見物しようと決め込んだようだ。シャルは俺の背中で安らかに眠ってしまい、後は爺やに任せる事となったのだった。こうして俺のサバイバルなパーティーの終わりを迎える事となった。聖華のあの反応から見て手応えありと見てまず間違いないだろう。次は舞踏会だっけ、あれを今度は頑張るか。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!いやはや今回はパーティーとしては駄目なんじゃないかとさえ自分で思いますね。そりゃ優の顔も引きつるわ(笑)でもこういうアットホームなノリもたまには良くないですか、な~んて。

例によって外出しない男の妄想話なので「雪山舐めんな!」という気持ちになられた方には謝罪したいと思います。すいません、体は不動、心は能動な僕なのでご勘弁して頂きたい。ともあれどうにか3パターン目のパーティーを無事終わらせる事が出来てホッとしています。本編でもしかしたらシャルに冬の良さを教えるシーンがあるかもしれませんが・・・。その時はまたフィーリングで乗り越えて行こうと思っています。それでは皆さんまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂いて誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、テスト?そんなものもあったね、そう言えば
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/08 00:34
月曜日俺が教室に入って席に着こうとした時に机上に何やら紙が置かれている。

「何だ・・・?」

「社交部入部を認めてあげる!感謝しなさいよ
社交部代表」

口で言えば良いと思うのだが、俺が遅刻する直前に現れたのが原因だろう。俺の席付近で腕組みしながら、仁王立ちされる聖華の姿が容易に連想される。その姿を想像してクスリと笑いを零しながら、俺は丁寧にその紙を畳んで鞄の中に入れた。

聖華姐さんの直筆だ、これは何よりの入部の証になるだろう。万が一駄々をこねたとしても目の前に紙面を付き付ければ万事解決だ。・・・って

ドドドドド

「どわっ、雪崩?!」

俺は机の中にぎっしり詰まっていた物が椅子を引いた途端に零れ落ちて来たので、思わず身を引いた。椅子で無理やり抑え込むってどんだけ詰めてんの。何やら奇怪文書や不幸の手紙の類ではなく、激励やお祝いの言葉が綴られているようだ。誰だよ、俺の誕生日を勝手に捏造しちゃった愉快犯は・・・って社交部入りおめでとう・・ございます?

俺が一つの手紙を拾い上げ黙読していると気付けば人だかりが周囲に出来ていた。手紙や封書を這いつくばりながらかき集めている俺としては、何やら見世物になった気分で気恥しい。どうも話しかけて来ないのでこれ幸いにと、俺は大きさごとに揃えて手紙類を収納していると

「あ、あの有馬様。これよろしければどうぞ!」

「私もお祝いの手紙を書きましたのでどうぞお暇な時にでも読んで下さいまし。」

「つつつつつつまらない物ですがっっ!」

「やぁやぁ、有馬君なら当然だろうけど僕からもはい、プ・レ・ゼ・ン・ト!有馬君ならプレジデントって言った方が喜んだかな?ハッハッハ!」

示し合わせたかのように差し出される手紙や贈呈の品々。卒業証書を授与するように一人一人受け取っていると、教壇で先生が貧乏ゆすりをしながら傍観していた。叱責じゃなくて待つ辺りがやはり皆の反応が真っ当だと判断しているのだろうか。

ちなみに大統領とプレゼントを掛けた彼からの贈り物はアロハシャツを着たキューピー人形だった。着眼点に恐れ入る。しかも着てるのは上だけで下は素っ裸、ワーイ!・・・とりあえず目が怖いんですけど。

人生には3度モテ期が来るそうな。俺もついこの間自分の名前入れて調べてみたら、2歳、8歳、15歳だった。もう死のうかな、とその時思ったけど生きてて良かった。俺は柔らかい挨拶を女生徒達と交わしながら、そのような事を考えていた。まれに男子生徒に

「俺の、俺のまみ子を返せよ!ぅ、ぅぅ、グス、もう俺達お終いだぁ・・・。」

と八つ当たりを喰らい、泣き付かれたもした。俺とその玉木君と名乗った彼とで、一緒にまみ子の元へ走ったものだ。ちなみに俺はまみ子さんとやらと面識は一切無いのであしからず。まみ子さんあんた彼氏泣いてるよ、身近にある大切な物を容易に捨てちゃあいけないよ。俺もつい最近その事実を知ったんだけどさ。

と言ったんだが、まみ子さんはどうやら完全にラリラリ状態で俺に身を呈して猛アタックを仕掛けてきた。俺も玉木君に殴られるはまみ子には泣かれるは踏んだり蹴ったりだ。人生ままならないものですね。結局まみ子は俺がどうしても落ちないと分かり、大変ショックを受けている所、玉木君に介抱されて帰って行った。思い込みの激しいのもどうにも困ったものだ。

そんな事もありだいぶぐったり帰宅した俺だが、一応手紙達を見ておかねばなるまい。時間を割いて書いてくれた文面に目も通さないのは失礼に値すると思うから。俺がそうして手紙を読んでいると

プルルルルルル

携帯が鳴っている。ああ、もうそんな時間か。あまりに定時に掛かって来るものだから一日の指標となっていた。時刻は午後8時爺さんからの電話だった。

「先日シャルロットと話をしたが、だいぶ懐かれておるようじゃな。」

「そうさな、懐き懐かれの関係に最近なってるかもね。」

「・・・ふぅむ。」

「含みのある声漏れ出てますけど、どうかしたの?」

「いや、あれも異国の地で寂しい思いをしていたのかもしれん。本心から喜ぶ表情は久方ぶりに見たのでな。今思い出しておった所よ。」

「へぇ、俺の前では常にニッコニッコしてるシャルがねぇ・・・。」

「ふん、わしも様々な人間と接してきたから分かる。あれは内心では怯えておるよ。人に嫌われないように愛嬌を振りまいておる。」

「・・・。」

「仮面を外しあれの素顔を見られたのであれば哲平、それはお主の力よ。ただ・・・」

「ただ?」

「・・・あまり深追いはせぬことだ。」

「奥歯に物が挟まったような発言だね。シャルに何か問題でも?」

「答えを先急ぐでない。そう焦らずとも日々暮らしておれば、彼女の内情や琴線に触れることもあろう。それではな。」

「ちょ、待っ

プツ、ツーツーツー

「一体何なんだろうね、本当に度し難いお方だ。」

俺はポリポリ頭を掻きながら携帯を見ながら呟いた。偉い人の考える事は俺には分からん。ただまぁ性行為は控えろってことか、そんな物は端から承知の上よ。というか童貞条約で定めてるしね、双方における合意の下、慈悲の心を持ってのみ行う、とね。

にしても最近爺さんと話す機会増えて来ているとは言えやはり緊張する。喉がカラカラだ、コーヒーでも一杯飲みに行こうか。俺は読んだ手紙をレターケースに立て掛け、残りの分を机の上に重ねて置き部屋を出て行った。寝るのは大分遅くなったが俺は多くの人の想いを胸に抱き、多幸感に満たされながら寝る事が出来たのだった。

・・・

「有馬、ご来賓の方々にお送りする案内状の文面はもう出来た?」

あ、あれぇ?俺の記憶が正しければ渡したはずだが・・・。どうにも真剣な顔で言ってくる聖華の目に、嫌がらせの光は籠っていない。これがせせら笑いを浮かべていよう物なら新人いびりと見て間違い無かったのだが。ああ、俺が渡した奴が酷過ぎて捨てられた?多分新しく作り直せと言う事なのかもしれないな。

「あ、至急取りかかりますです、はい。」

「ったく、期限が迫ってやる事もまだまだあるんだから急いでよね。」

「ああ、だから機嫌も・・・あ、いえ、やりま~す。」

あまりに血走った眼で聖華に見られたのでこれは不味いと鞄をゴソゴソ漁る俺だった。俺が口にペンを咥え、書類をテーブルの上に並べていると

「・・・私は先日、有馬殿がその事を報告しているのを見たのですが。」

俺はぎょっとしてシルヴィの方を見た。もう済んだ事を蒸し返されても、場の雰囲気が悪くだけじゃないか。

「庇おうったってそうはいかないわよ。やるべき事をさせずのうのうと居座られたら治安は悪化する一方なんだから。」

「だからそう決めて掛かるのがお前の悪癖だと言っているんだ。確証を得た上での発言ならともかく、身辺を調査した後でのその発言なんだろうな?」

あーあー、もう完全に敵愾心むき出しにしちゃってるよ。新人ってのはコキ使われてなんぼなんだから多少の嫌がらせなんて覚悟の上なんだって。

「シルヴィ、ありがとう、もういいよ。そもそも考えて欲しい。彼女は社交部代表なんだよ?信賞必罰、公明正大、破邪顕正の心を持つあの聖華さんだ。自身の発言に責任を持っておられるに決まっているだろう?ねぇ、聖華姐さん?」

「・・・ぅ、ま、まぁね。」

「と言う訳で俺は案内状の作成に取りかかるので、口論されるなら外でお願いしたい。」

「代表殿は甘えが過ぎる。」

シルヴィは痛烈な批判を口にし、折り目正しく着席するのだった。当然聖華は牙をむこうと口を開きかけたが、俺が見ているのに気付き渋々口を閉ざすのだった。さぁてそれじゃあやりますか。

「難しい話はいいじゃない、それよりも楽しみましょう♪」

気を引き締めた所でいつものほっこり顔でのんびり口調のシャルの声が耳に入り、気力が急速に抜き出て行った。人生焦ったって良いことないもんねー、うふふふ。

「見て、窓の向こうの景色が寂しくなって来たわ。」

シャルが指差して窓の外を見ると禿げ散らかした木がちらほら見える。俺も頷きながら

「う~ん、哀愁ただよってるね~。ペーソス感たっぷりだね~。」

「もう季節は秋を通り越して冬なんです!冬景色になるのは当たり前でしょう?」

「風情や情緒の無い若者はこれだから・・・」

俺が呆れたように発言すると

「あんたも同年代でしょうが!」

と聖華お得意の電撃突っ込みを頂いた。俺とシャルが老夫婦のように紅茶を手に眺めていると聖華が呆れ声を出していた。

「終業式まで一カ月を切り、学期末試験も控えているんですよ?そんな悠長に構えていてどうするんですか。」

シャルに向かい駄目な社長夫人をたしなめる秘書みたいな事を言っていた。残念な夫人のシャルはやはりどんまいな回答をしていた。

「テストは嫌い~・・・。」

気持ちは非常に良く分かる。俺からすれば紙の無駄遣いとしか思えない所業だし。テスト期間の間だけはヤギ飼えると思う、エサは紙で。金子がシャルの補佐を担当する事になったようで

「ヘイゼルリンク様は留学生の身なので、成績を問われたりしないかと・・・。」

俺はこの言葉にピンと来たので

「転校生の身であるこの有馬哲平は

「成績は問われます。当たり前でしょう。」

ピシャリと金子に即答された。補佐するのはどうもシャル限定のようらしかった。もう今の俺はシャルの夫みたいな雰囲気醸してるんだから、一括りにしてくれたっていいじゃないか。

「皆遊んでくれなくなるから嫌いなの。あ、でも今回は大丈夫かしら、ね、哲平♪」

ひっしと抱き付かれながら俺もまんざら悪い気分でなく

「ふっふ、困った子猫ちゃんだ。よ~し遊園地にでも・・・

「あぁりぃまぁ?」

「・・・はまた今度にしようか!」

「えぇ、そんなぁ。行きましょうよ♪」

「見てごらん、今と~っても不穏な空気が漂ってるね、全てはそう言う事だよ。」

「大丈夫、私何にも感じないから!うふふ♪」

俺は聖華部隊に囲まれながら汗をだらだら流していた。テストに関してはどうでもよろしいが、何やら敵意が全身を貫くのは精神衛生上良くない。聖華はすぅ~っと俺の顔の前にピースを差しだして一言。

「二番よ。」

「・・・下から?」

ドゴォ!ゲンコツを喰らった俺。

「痛い・・・。」

「上からに決まってるじゃない!あなたのクラスには金子さんがいるから1番は免除してあげるからせめて2番は取りなさい!」

俺は金子に向かって縋るように言った。

「金子テストの日全部休むんだ、俺は学校に行って名前だけ書いて、あと全部寝るから!そうすれば下からツートッ・・・ウググ苦しい。姐さん?絞まってる、こ、呼吸が・・・コホッ。」

「有馬ぁ・・・あんた永眠なら今すぐさせてあげるわよ?」

俺は聖華による絞首刑から解放されようと脂汗を流しながら弁明に努めた。

「い、いやだなぁ、へへへ、姐さん冗談でさぁ。あ、本当に死にそう。」

それから泣きっ面に蜂という感じでシルヴィにまで釘を差された俺。シャル相変わらず気分良くニコニコしてるし。まぁやるだけやってそれから考えよう。

「分かった、有馬。社交部の品位を落とすような点は取るんじゃないわよ。」

「ハッ、お任せあれ!」

俺は元気良く敬礼するのだった。俺がこんなにやる気に満ち溢れているというのに、シャルがじゃれついてくるおかげで台無しだ。決して女にうつつを抜かしておる訳ではございませぬ!聖華の返事はやはり溜め息だった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!ああもう完全にギャグ路線に走り出しておりますね。懐かしいというか郷愁を感じてしまいました、今回の哲平に。本来最初から最後まで通してこのキャラクターで行こうと思っていたのに。いや、何も言うまい。失敗により気を付けるべきポイントが分かったと言う事で良しとしましょうか。

とはいえこの哲平がお気に召さない方もおられるかもしれませんね。その場合根本的に僕と笑いの焦点が違うと考えられますので、このSSは唾棄して下さい。今回の哲平は僕にとって理想に近いキャラなので。駄目な奴だけど駄目じゃない、笑い追求型それが有馬哲平の全てにしたいのです。そんな僕自身も大概ろくでなしなのでSSの中だけでも輝きたいものです。それでは長々と話してしまいましたが、この辺で失礼します!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2週目、舞踏会に向けて本格始動
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/08 00:25
「社交部の方は放課後部室まで来て下さい。繰り返します・・・」

俺が食堂で昼食を取っているとそんな放送が流れてきた。ん、何事だろう。入ってまだ数日しか経っていない俺が言うのもおかしな話だが、社交部部員全員に呼び掛けるというのは珍しいことなんじゃないか?俺は空になった丼を返却口まで持って行きながら黙考するのだった。

放課後になり、部室に向けていつも通りのろのろ歩いていると

「あらっ、哲平じゃない。お~い!」

陽気な声と満面の笑みでシャルがこっちに向かって走って来る。俺達二人が揃えばもう何も怖くないぜっ!聖華に「このノロマ!」と怒られるそうな程ペースダウンを果たし、俺とシャルはちんたら部室へ向かったのだった。

歩きながら話していて分かったが、シャルも6月に秀峰に入ったらしい。つまり舞踏会の事を知らないそうだ。ダンスとかその辺大丈夫なのかと心配したが、その辺は無問題のようだ。上流層としての嗜みとして備わっているスキルなんだろうか。

「ごきげんよ~っす。」

「こんにちは~ってあら、皆さんお揃いで。今日はどうしたの?」

その言葉は俺の足元を滑り易くしたようで俺はすっ転んだ。俺は立ちあがりながら

「え、シャルあの校内放送聞いてなかったの?」

「聞いてなかったけど何か不味かった?」

「いや、何ら問題は無いが・・・それで部員がお揃いというだけの話だよ、うん。」

「コホン、ま、まぁ校内放送したのは間違いないわ。そしてそうまでして皆に集まって貰う理由もあるのよ。」

聖華はシャルの天然を流す事にしたようで、本題の話に移って行った。ちなみに出席率が良すぎて座る椅子が無い。シャルは満席の光景に当惑しながら

「座る所が無いわ~。」

と俺の裾をクイクイ引っ張りながら訴えかけて来る。いや・・・俺も無いし。え、もしかして俺が椅子になれってこと?俺がそんな人権侵害を受けるハメになるのか、と戦慄を覚えながら視線を動かすと・・・あっ

「一つだけ空いてるじゃないか。シャルあそこに座ったら?」

「哲平はどうするの?」

「立っとくに決まっとるじゃないか。椅子無いんだから。」

「・・・。」

「ほれっ、日本にはレディーファーストという概念が備わっとるんだ。何も気に病む事など無い。部の進行を妨げないためにも早く席に着きなさい。」

「哲平!」

「な、何よ?」

「先座って、早く!」

シャルの剣幕に押され俺が席に座るとシャルがヒザの上にのしかかってきた。こ、これはいつもと全然感触が違うぅぅ~~。

「ま、ま、待てシャルいくらなんでもお前、発展途上の幼子じゃないんだから!」

「こうすれば二人で座れるじゃな~い♪」

「す、座ってていいから尻を揺するんじゃないっ。」

下手に刺激を与えたら魔王がお目覚めになってしまうじゃないか。

「そこいちゃつくのは止めなさい!全く、大事な話があると最初に申し上げたでしょう?」

聖華の怒声によって俺達は動きを止め、結局その二人座りのまま話を聞く事になった。とは言え前方はシャルの背中しか見えず、ハッキリ言って視界は悪かった。話だけ聞くと舞踏会に参加する人から返事が届いているらしかった。OG、OBとやらが来るんだって。おじ(OG)さん、おば(OB)さんの事なのかしら。そう考えると途端に間抜けな響きに聞こえてきた。

(注)ちなみにOBとはOld Boyで男性の卒業生、OGとはOld Girlで女性の卒業生を指すそうです。哲平の解釈逆になっていますが、あながち間違いとも言えないから困る。とは言え卒業された方々はまだお兄さんお姉さんくらいの呼び名になるでしょうが。

ともあれ何やら300人も参加するらしい。根津情報によると昨年は100人程度だったそうだ。うわぁ、今年は豊作なんだなぁ、良かったじゃないか社交部。俺が一人で感嘆の声をあげていると

「今年はOB、OGの参加が異常に多くて・・・。そのご親類の方々も一緒にいらっしゃるから。」

「・・・どこかの誰かが甘い砂糖菓子に見えるのではないかと。」

聖華の嘆きの声に金子が俺の方をチラリと見ながら、そんな事をボソボソ言っていた。そんな甘ったるい角砂糖坊やではござらん!

「悪いが金子、俺は甘納豆やコンペイトウと言った糖分たっぷりな男では無いぞ。強いて菓子で分類するとするならば!カカオ100%ビターチョコだっ!」

バーンと言った架空の効果音が聞こえそうな勢いで俺は言い放った。その立ち振る舞い顔付き、動作全てにおいて猛々しく、ますらおぶりの演出はバッチリだった、はず。ちなみにシャルを上に乗せたままなので座ってます。

誰一人何も言わず静まり返る部室内、俺は左手を腰に右手を大きく横に広げたポージングのまま彫像になっていた。そんな中シルヴィはいつものように

「そう言えば有馬殿のお爺様も来られるのでしたね。」

動き出す部員達。俺も周囲に合わせ、何事も無かったように振る舞う事にした。とんだ大恥だ、もうやらないことにしよう。シャルは下の俺が突然声を張り上げた物だから硬直してしまっていた。シャルに対しては心臓に悪い行為だと思ったのでごめんなさいと謝った。

「多分来るんじゃないの?」

俺は気を取り直し平静を装って答えると、聖華は苦虫を噛み殺したような顔になった。

「あなたのお爺さん急用で来れないとか無いの?」

「さぁ~・・・どうなんだろ。俺もそこまで関わってないからなぁ。とりあえず体調を崩した所は見た事無いな、今の所。」

「はぁ、あんたとお爺さん台風みたい。行く先々で周りを引っ掻き回すんだもの。」

俺は何やら不思議な気分になっていた。今初めて自身が台風みたいと言われる事で台風の気持ちが分かった気がしたんだ。

「台風って可哀そうな奴だったんだな・・・。」

「・・・何言ってんのあんた。」

「いや、考えても見ろよ。ただ通るだけで皆の嫌われ者だ。友達になろうと歩けば歩くほど皆に煙たがられる。そう考えればどれだけ不遇な扱いを受けてるかと思うと・・・なぁ?」

「屋根の瓦だの木だの看板だのを吹き飛ばすような奴に憐れみなんか抱くか!」

「言われてみればそうだな。ハッハッハ、やっぱ自業自得だわ。・・・え、俺そんな事したっけ。せいぜい細い枝をへし折る程度の非力な俺が?」

「違うわよ、周りの皆があんたに気に入られようとゴマ擦りするから、今回の舞踏会が大規模になったって話。」

それ完全に俺無罪で冤罪っていうか、そのことで責められてる俺って寧ろ被害者なんじゃ・・・

「代表殿の口から愚痴などあまり聞きたいものでは無いな。」

しかしシルヴィの牽制によって聖華は口を紡ぐのだった。そして今日の本題は急遽運営スタッフを外部から募るという話だった。そんな苦々しい顔せずに感謝して然るべきだろうに、傲慢な態度で誰も来なかったらどうするんだ。そんな外部からの救援を呼ばなければならない状況を作った俺としては、静かに見守るしかない訳ですけど。

「皆さんにも負担を掛けると思いますが、その時はよろしくお願いします。」

殊勝だ・・・しおらしい言葉を発する聖華姐さんは何やら萌え成分を感じるんだよ。いわゆるギャップ萌えという奴?ともあれ部員各自決意の籠った目で頷いて行くので、俺もしっかり頭を下に下げた。

「有馬はご来賓に粗相が無いようにだけ気を付ける事!それが一番心配なのよ。」

おおっ、これこれ、やっぱ姐さんは説教が似合うなぁ、くぅ~俺もテンション上がってきた。

「ハッ、砂糖菓子の異名を頂いた有馬哲平、どんなコクがあり苦みがあるコーヒーであろうとも頭から突っ込んでマイルドに致します!」

敬礼と共に元気良くそう発言すると聖華は俺の額にチョップを喰らわせながら

「そういうのが粗相だって言ってんのー、この馬鹿―!」

「ありがとうございます!」

一部の業界ではご褒美になる罵倒を受けながら、俺は舞踏会に向け気持ちを固めていったのだった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!いやー自分で書いてて何ですが、哲平は馬鹿です、阿呆です、だがそれが良い(笑)やはり前向きな馬鹿ほど、見てて楽しい物は無いと書きながら思いますね。

さてようやく共通から解放されると思うと気分が楽になります。オリジナルの話を作るのは結構大変ですし、皆さんにつまんね、と思われたくない見栄もあります。辛いけど書くのはやはり達成感や、書きながら話を進めて行く内に面白くなるのが楽しいからですね。はい、そんなもんどうでも良いから先進めと自分で思ったのでこの辺でお暇しましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂いて誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、ダンスの指導はシャルロット先生に決まり!
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/08 10:29
 何やら聖華姐さんに見込みがあると思われたのか、俺はなかなかにコキ使って貰っている。看板作ったり、案内状の作成、そして今しがた終えた運営案の教師への報告。何にせよパシリであっても、部員として活動出来ているのは有難いことだろう。だって、ねぇ?

「有馬は役に立たないから皆で手分けして頑張りましょう!」

一同「おー!」

みたいなテンションになってたらどうですか?これは酷い、もう俺いたたまれないにも程があるだろう。部員として戦力になってる事はとても喜ばしいことなんだよ、うん。俺が報告案の書類を何とはなしにパラパラめくっていると

「だーれだ!」

むにゅうううう、これは良い乳だ!

「夕張メロン!」

「ブー、残念でした♪そもそも人名ですらないじゃない。フフ、おかしな哲平。」

いや、分かってたけど言わずにおれなかったんだ。そんなたわわん果実を押し当てられて、ちゃんと脳を機能させろと言う方がおかしい。そしてシャル、何でも良いから目から手離してくんない?

「は、は・・・は・・・。」

ん、俺の首に鼻を押し当てて何やってんだ。歯がどうかしたのか?

「クシュン!」

「ぬわっしゅ!もろに俺の首に掛かってるよ、手も当てずに何やってくれてんのっ。」

シャルの口から発射された分泌液が俺の首元に飛び散った。慌ててシャルがハンカチで自身の唾液を拭き取りながら

「ごめんね、哲平。てっきり止まるものだと思ったのよ。」

「シャル、これからはしっかり『だ~れだ』をやる前に手洗いうがい、それにくしゃみを済ませること、いいね?」

「は~い♪」

俺の訳の分からん言い分も素直に返事をするシャルは本当に良い娘だ。今後同じ事を繰り返すとしても、だ。そして何やらシャルはにんまり笑いながら

「哲平、もしかして~?」

「・・・何?」

「私の事考えてた~?ウフフフフ♪」

額を連続でツンツンしながら、何やら確信があるのか嬉しそうなシャルロット姫。確かに考えてはいたが、別に不純な事ではないので俺は動じない。

「というか・・・何で?」

「だって、私がくしゃみをしたって事は誰かが噂をしたってことじゃない♪」

ね?と言いながら俺のほっぺたをつつくシャル。はて噂とは内心で思うだけで成立する物だったろうか。まぁシャルが嬉しそうだし、そう言う事にしとくか。シャルは飽きたのか、一歩離れて普段の距離を保つことにしたようだ。

「それで哲平、先生と何のお話してたの?もしかして留年とか?」

サラリと酷い事言われた気がするが、日頃の行いが悪い分怒る気も起きない。遅刻や居眠りで、生活指導やら担任に呼び出されたりしてるのを彼女は知ってるからね。何で俺が酷い事言われてんのにシャルを庇うような事考えてんだろう。

「いや、今日はそういうのじゃない。これが何か分かる?」

俺が運営案の書類束をかざすと彼女は驚きの表情になり震えだした。え、何、これってそんな魔力詰まってんの?

「て、て、哲平、いくら何でもそれは不味いわ。」

「どうしたんだ、これが何に見えるんだシャルには。」

「テストのために回答用紙を盗み取るのはやり過ぎよ~~~!」

シャルは慟哭の声をあげながら俺の襟を掴み、揺さぶってきた。俺どんだけ駄目な子に思われてんだよ。

「ちょ、ま、ま、待て。シャル、お、お、落ち着け!」

揺すられながらもどうにか制止の声をあげるが、一向に収まる気配が無い。早く部室にも戻らないといけないのに、本当に勉強もやらねばならないというのに。未だ悪事を働いたドラ息子に泣き付く、このシャルママを何とかせねばならない。いや何も悪い事してないけどな。俺は秘策を思いついたので試してみる事にした。

「シャ、シャル、愛してる!」

ピタリ・・・おお、何と言う効果。俺も必死故にそこまで恥ずかしく無い。シャルは何やら真剣な表情でこちらをじっと見つめ、手を差し出してきた。

「愛してるのが本当なら渡せるはずよ。愛する人にそんな悪い事はさせないわ!」

正義感溢れてる所悪いけど、いや見て貰った方が早くていいや。俺が普通に手渡しすると、シャルは満足そうに頷き、書面を見ると・・・顔を赤くしていった。まぁ恥ずかしいよなぁ。シャルはプルプル震えながら下を向き俺に舞踏会運営案の書かれた書類を返却して来た。

「・・・ご、ごめんなさい。」

それは実にか細い声だった。普段から心配掛けて悪いな~って思ったけど。俺は下を向いているシャルの頭をクシャっと撫で

「全然気にしてないって。」

と慰めると、途端にシャルの顔が元気を取り戻した。もう演技何じゃないかと思う程の立ち直りの早さだ。シャルは俺が持っている書類をしげしげと覗きながら

「それにしても舞踏会の準備って大変そうねぇ。」

とても第三者な意見ありがとう。君も準備する側だと言う事を危うく忘れそうになる所だよ。まぁ社交部の華やかさを担当される看板娘として存分に役に立ってるけどな。あとムードメーカーでもあるし、妙な安心感があるんだよ。俺は自分を納得させるだけの理由をでっち上げ普通に接する事にした。

「うん、結構大変。パーティーは出るだけなら楽なんだけどな。仕切る側ってのは色々動き回らないといけない分やっぱ労力いるねぇ。聖華も家にまで仕事持ち帰ってるって話だよ。」

「それじゃあ、舞踏会は素敵なパーティーになるわね。フフ、楽しみ♪」

駄目だ・・・これは完全に参加者目線になっておられる。この発言から手伝う気がほぼ無いというのが確定した訳だよ。常日頃舞台の中心でスポットライトを浴びてるが故に、裏方の仕事をやるという発想が無いのかもしれない。適材適所と言う奴だ、シャルは本番で存分に盛り上げ役になって貰えばいいか。俺が準備に関してシャルを2軍に左遷しようと考えていると

「ダンスパーティーは久しぶりだわ。」

一人で何やら思考に浸ってるかと思いきや、こちらを向き両手を掴み顔の高さまで持ち上げながら

「ね、哲平約束しましょう?」

「いいけど、何の約束?」

「一番にダンスを踊るパートナーよ♪」

「・・・え、でも社交部って接待とか、料理とかの持ち運びやるんじゃないの?」

「でもダンスパーティーなんだから踊るのは当然よ。ね、だから一緒に踊りましょう?」

「ま、まぁ踊るのは構わないけど・・・。」

「やったー、本当よ、きっとだからね。それからね、休憩もお喋りしたりするのもず~っと一緒!」

休憩やお喋りって完全に職務怠慢にして、部員としての仕事を放棄してるじゃないか。そもそもそれ以前にもっと根本的な問題がある。

「ちょっと待って。まず事実確認しときたいんだけど、俺は踊れない。」

「え、習わなかったの?」

「うん、フォークダンスレベルしか知らない。」

「ふぅん・・・ふふ、じゃあ私がダンスの先生になる、という訳ね♪」

「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。」

「私たちが舞踏会の主役になりましょう。」

・・・それは正直勘弁願いたい。俺そもそもそこまで目立ちたいと思ってる訳じゃない。身内レベルで笑いを提供出来ればそれでいいんだよ。

「シャルが主役、俺が脇役、それで行こう。」

「だ~め、パートナーなのに脇役なんておかしいじゃない。どんな恋人達にも負けない、素晴らしいカップル。プリンスとプリンセス。」

何やらうっとりした顔で仰っているがどうしたもんだろう。

「待て待て、恋人達にも負けないって、恋人になれて無い時点で負けじゃないの?」

「もう、何言ってるの哲平。私達はとっくに相思相愛じゃない♪」

「・・・あれ、そうだっけ?」

「さっき言ってたじゃない、『愛してる』って。うふふ♪」

あ~・・・言ってたけど、もうそっちは俺を愛してくれてたのね。最初からそのキャラだったから、どう好感度が上昇していったのかさっぱり分からん。俺が衝撃の事実を知らされボケッとシャルの顔を見ていると、シャルが不安そうな顔になった。

「もしかして、嘘・・・なの?」

うっすら目に涙さえ浮かべ確認をしてくる彼女を突き放す男が、果たしてこの日本に何人いるだろうか。悪いけど俺はそんな少数派には入れないわ。俺は慌てて首を横に振りながら

「あー嘘じゃない嘘じゃない。思いとしては断じて嘘は言って無い。」

「じゃあパーティーの主役になりましょう?」

ニッコリ笑顔で俺の眼前に顔を寄せて来るシャル。俺は両手で彼女の顔を防ぎながら、愛想笑いを浮かべ油汗を流していた。何が何でも俺を中枢部に駆り出したいご様子だ。俺が答えを渋っているとまたしても涙を浮かべ始めた。もう畜生、涙腺絶対調整出来るだろ、これは!

「私と、踊るのが嫌、なの?一緒に舞台の中心で熱い時間を過ごすのがそんなに嫌なの?」

本音を言えば舞台裏で設営係を志望したいんだが、そんな事言えば彼女との間に深い溝が出来るに違いない。そして踊る云々に関しては異論は無いが、表舞台に立つのが嫌なだけなんだよ。写真では中央より少し右で斜め上くらいで写りたい男なんだよ。シャルがじっとこちらを見つめ・・・一粒の涙が落ちた。

「やりましょう!」

俺は、俺は、俺は駄目な奴だ!薄志弱行な自分が情けなかったがやはり女と地頭には勝てないと言う事だ。まぁ乗せられ易いシャルの事だ。さりげなく舞台から引きずり下ろして行けば気付かないだろう。結局自分を納得させる事に専念する俺だった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!シャルもなかなかに面白いキャラになって参りました。アドリブで言葉を変えてみると思いこみが激しい感じになってしまいましたが(汗)ただ純粋なのですぐ謝る姿は可愛いですよね。それではまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、葛藤の末の保留
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/08 21:41
 俺は疲労困憊だった。恐らく有馬哲平主催雪山パーティーよりも疲弊し切っていた。俺はやはりアクティブスキルの方が高いんだ、きっと。脳の酷使によって右左脳それぞれが外に出ようと、頭がい骨内でもがいているおかげか割れるように頭が痛い。目が覚めたらテスト終わってくれれば良いのに。

そしてテストが近づくに伴い、普段以上に品行方正になる生徒一同。そのため俺も怠けるような姿を晒して、場の雰囲気を乱す事が出来ないのだ。よって常に気を引き締めねばならず、精神的疲労が蓄積されていくのである。とは言え2番は無理でもクラスの上位に位置せねば聖華に何を言われるやもしれぬ。家に帰っても教科書を開くしか道は無い。

テストだけではない、舞踏会の準備まで重複するのだからたまらない。分かってはいた事だが、いかんせん動くよりも書類と向き合う事の方が多いのだ。ひねもす活字にまみれた生活を送っていれば厭世的な気持ちにもなろうものだ。やはり人間は動かねば、というか何でもほどほどがいいんだよ。

「有馬、呼んでるのが聞こえないの!?」

「は、はぁい、ただいま~。」

センチメンタルな俺に喝を入れる声が響き、背筋を伸ばして俺は活動を開始するのだった。

・・・

そんな先行きの暗い生活を送る俺にも安らぎの一時があるんだ。

「それじゃ、哲平始めましょう♪」

シャルははしゃぎながら俺の手を取ってくる。今は放課後、シャルにダンスの訓練をして貰っている最中だ。コツさえ掴めば案外踊れるもので、基本はだいぶこなせるようになってきた。舞踏会に置いて今回踊ろうとしているのはパーティーダンスのため、そこまでの技量は必要無いそうだ。いわば初心者向けということか。

そもそも動き自体は大したことじゃないんだが、相手に合わせるのが難しい。そして足運びが上手く行かず、気付けばシャルにタックルをかます始末だ。それでもやはり勉強ばかりしてムズムズしていた肉体には程良い運動になる。俺の要望で掛け声は「すが、わらの、みちざね」にして貰った。当初はアン・ドゥ・トロワだったんだが、「アン」の部分が艶めかしく不埒な事を夢想する不届き者の俺なのだった。にしても最初は何となく億劫に思えていたレッスンだったが、今では一日で一番の楽しみになっていた。

シャルにしてもダンスを踊るのがとても好きなようで、凄く楽しそうな表情をしているんだ。あの表情を見るとどれだけ癒される事か。彼女と一度踊ってしまうと並大抵の相手では、物足りなくなってしまうんじゃないだろうか。

「はい、今日はこれでお終い。帰りましょう♪」

しっとりと汗ばんだ顔でシャルは爽快な笑みを浮かべながら終わりを告げた。最初は気付けば晩まで励んでしまい、夜遅くに帰っていた。しかしシャルは爺や、俺は優にテストや防犯云々の事で説教を喰らい、夕飯までには帰るようになったのだ。それに最近は俺もダンスが上達して来て、反復練習に入っているからこれと言って問題は無い。

爺やがいつものように「手ぇ出してねぇだろうな、ああん?」という目で睨みつけて来るが、今日も愛想笑いで返す俺。シャルは愛らしい仕草で手を振って来るので俺も振り返し、お帰りの見送りをするのだった。そもそも爺やに俺とシャルが踊る事を知られた時の反応は凄かった。暴風のような罵声の嵐。

「貴様のような小童より相応しい男など地球上に数えきれぬほどおるわ!!」

そ、そんなん言われても。俺は知らんがなと思いながらもペコペコ頭を下げていると、シャルが爺やに詰め寄ったおかげでどうにか場は治まったのだ。その後も俺は爺やに心の奥底まで覗くような眼光に貫かれながら、毎回挨拶を交わすのだった。

俺は迎えの車を待つ間、気付けばシャルの事を考えている自分に驚きを覚えた。そして今になっても爺さんの「深追いするな」という言葉に引っかかりを覚えていたのだ。爺さんの言葉を真に受けるならば、俺の知らないシャルの姿があるのかもしれない。しかしそれはいつになったら俺の前に姿を見せてくれるのだろう。

根明で無警戒過ぎると言って良いあのお姫様のどこを疑ればいいのか。寧ろ警戒心の無さを心配して保護すべき存在じゃないのか?俺は迎えの車に乗り込みながら、もう一度原点に立ち返ってみる事にした。

そもそもだ・・・シャルが他の男に胸を押し当てたシーンを見た覚えが無い。俺の見て無い所での行動は知る由も無いが。

「・・・やはり今までのシャルの行動を鑑みると、俺に絞っているとしか考えられんな。」

ともすれば真実の愛なのか、それとも腹に一物持っているかのどちらかしかあり得ない。あれで俺の預かり知らぬ所で男をはべらしてたら衝撃過ぎるだろう。それともあれか、単なるお友達としてのコミュニケーションなのか?俺は深く目を閉じ、今までのシャルを思い浮かべた。

だ~れだ!うふふ♪

はふはふ、哲平これお~いし~♪

哲平はやっぱり素敵な男性ね♪

大好き!

脳裏に浮かぶのは満開の笑顔で好意を全開で俺の名を楽しそうに呼ぶ姿ばかりだ。何故、何故なんだ・・・。もう俺の氷の猜疑心がほとんど溶かされている。シャルの暖かさを求めるようにすらなっているんだ。しかしここまでの展開があまりにも都合良すぎじゃないか?

俺は彼女に対して勘繰りの意を持って接していた。彼女は最初から俺に心を寄せる素振りを見せて来た。一体全体この差はなんだ。そして他の数ある男の中から俺を選んだのは何故なんだ。初っ端のデートの男の群れを思い出し頭を抱えて悩んだ。

だからこそ不安なんだ・・・人生はそこまで順風満帆に行くものではないんだ。

俺はその時もう一人の爺さん、爺やの言葉を思い出した。

「軽挙は自らを滅ぼすぞ。」

・・・実はあの爺さんがシャルの気に入った男を消してるんじゃないだろうな。警告だの忠告だの言ってたし、どうにもきな臭い。シャルの美貌で目がハートになる男なんて星の数ほどいるはずなんだ。にも関わらず未だそれらしい影が見当たらないのは、どうも爺やが一枚噛んでいるとしか考えられない。

考えれば考えるほど深みに嵌まっていく気がしたので、俺は一旦ここで中断する事にした。俺が一人で盛り上がった所で何になるというんだ。実際シャルと向き合うと決めたなら、その時二人で話した末に決断すればいいじゃないか。恋愛ビギナーの俺が完璧を求めるな。振られても捨てられても、それは代えがたい経験として残ると思えばそれでいいんだ。

俺は自己完結して優にただいまと帰宅の挨拶をするのだった。

・・・

「分かった?有馬、そういう訳だから設営自体は業者に任せる事になるの。」

社交部で聖華の下に配属された俺は、今業者に関する話をお聞きしていた。まぁその道のプロに頼んだ方が、作業としても効率良いというのは流石の俺でもわかる話だ。そして我ら社交部部員が監督権を掌握し、彼らを自在に操る必要があるという話である。したがって的確な指示を与える能力がここでは求められている訳だ。今まで聖華姐さんの言葉に唯唯諾諾と従って行動してきた俺にはなかなか難易度の高い要求に思えた。

「それは、経験者の私がやるとして。」

聖華は俺の不安顔を不機嫌そうに見ながら言い放った。・・・何かすいません。とは言え気分的には大分楽になろうと言う物、親分の仰せのままに!拙者馬車馬のように働きますよ。聖華はそのような俺の安堵顔が気に入らないのか、頬を両サイドに引っ張りながら

「安心してんじゃないわよ、あんたにもやって貰う事はし~っかりあるんだから。」

「はひ、もひろんでふ、聖華ねえはん!(はい、勿論です、聖華姐さん!)」

俺の頬から手を離した後、聖華はフンッと鼻から息を吹き出し

「専門技能を持つ人達の手を借りるって事は、要求を正確に正しく伝えないといけないの。私だっていつもいるとは限らないんだから、あんたもしっかり見て学ぶ事、いい?」

俺は勿論敬礼しながら元気良く返事をした。勉強するより見て理解する方がどれだけ楽か分からん。俺の返事に気を良くした聖華は人指し指を立てながら、片目を瞑り

「ただし業者に頼むからって言い値や定価は避けるようにしなさいよ。」

「ふむふむ・・・言い値定価避ける・・・言い値良いね、これもメモっとこ。」

「そんなもんメモらんでいい!それだとあんた、言い値で頼んじゃうでしょうが!」

大事な話だと思われるので俺はメモを取りながら聞いていた。駄洒落への向学心が旺盛な俺は駄洒落ゾーンを設けており、そこに書こうとしたら姐さんから額にデコピンを喰らった。まぁメモらなくても覚えれそうだな、よしいいや。というより天下の秀峰学園も案外吝嗇なんだな。そう何度も無い舞踏会だから、気前良くじゃんじゃん金を回すのかと思ってたよ。部員に金銭感覚を正しく持つようにと制限しているのかもしれない。

「出来る限り運営は私たちの手で進めて行くのよ。舞踏会はあくまで私達社交部が先導して行うんだから。」

胸を反り実に悠然とした口調で聖華は高らかに宣言した。俺はその言葉に感激し、聖華姐さんに握手をお願いしようと思った。がその両手は腰に添えられており、やむを得ず俺は姐さんのサイドに伸びたツインテールを掴み

「姐さん、俺は感動しました!必ずやこの有馬哲平、身を粉にして舞踏会に向け尽力する次第であります!」

俺がブンブン髪の毛を上下に振っていると、姐さんの頭も上下に揺れていた。

バキィ!

「ヘベレケ!」

俺は当然姐さんの怒りの鉄槌を受ける事となり罵倒を浴びせられたのだった。聖華もこんな風に接する奴がいないのか、少し嬉しそうな顔に見えるのは俺の見間違いなのだろうか。

・・・

「・・・ふわぁ~~。」

・・・おや、どうやらお日様の光を浴びて日向ぼっこに勤しんでおられたお姫様が起床なされたようだ。ほとんど目を閉じた状態で左右に揺れながら

「ねぇ~てっぺ~難しいお話、まだ終わらないのぉ~?」

聖華は悩みの種がまた増えたというようにこめかみを指でグリグリ押さえながら

「・・・運営の準備を手伝うでもなし、一体何のご用なんでしょう、シャルロットさん?」

その声は丁寧でありながら皮肉と侮蔑のが渦巻いた言葉だった。だが悲しいかな、シャルの心には届かない。

「これから哲平と約束があるの♪」

パッと目が開き嬉しそうに報告した。聖華は目をパチクリさせながら

「あら、有馬とデートの約束?」

「いやぁん、デートだなんてぇ、えへへ♪」

両の頬に手を当ててクネクネせんでいい。完全に誤解されとるじゃないか。シャルの様子を見た聖華姐さんは半目で俺を睨み

「へぇ、有馬あんた随分余裕があるようじゃない。何なら今の倍仕事量増やしてあげましょうか?」

俺は全力で顔を揺さぶり申し開きを行った。

「いや、違うんですって!舞踏会に向けてのダンスを教わってるだけだよ。」

俺の言葉に納得したように聖華は下に溜め息を吐き出した

「・・・あぁ、そう言う事。」

シャルは身悶えから復活したようでクスクス笑いながら

「哲平ったら下手っぴで、もうと~っても可愛いのよ♪」

・・・あれ?自分では上出来だと思ってたあの踊り、見る人が見れば下手だったのか。何やら俺はショックな事を聞かされた。

「まぁ・・・あまりダンスが出来そうには見えないわね。」

聖華姐さんも人が悪いや、そういうのは内心でこっそり思うだけに留めて置いて欲しい。俺はムンクポーズになって叫び声は出さずに呆けていた。俺は蚊帳の外で俺が下手で可愛いと連呼するシャルとニヤニヤ顔の姐さん。

俺が戦意喪失したのを受けて姐さんは戦力にならないと判断したようで、シャルとダンスの練習に行けと命令を下した。有馬家の者のダンスが酷過ぎたら、社交部の品位を貶めることになるそうだ。お、俺そこまでの落ちこぼれダンサーだったのか・・・。

そうして俺は肩をがっくり落としながら、とぼとぼ出て行くのだった。慌てたシャルは俺の隣りで懸命にフォローしてたようだが、もう空々しく聞こえるよ、うん。とは言えここまで言われて全然踊れないのも癪だ、頑張って踊り狂うとしよう!

「・・・って、有馬ちょっと待ちなさい。」

俺が気を取り直そうとしたら姐さんに呼び止められた。俺が首を傾げて振り返ると

「あなたとシャルロットさん、もしかして舞踏会一緒に踊る気?」

「あったり~♪」

シャルはご機嫌で返事をしたが、聖華は何やらアゴに手の甲を当ててじっと考えるようにしていた。

「・・・それが本当なら大騒ぎになるわね。有馬、あんた覚悟だけはしときなさい。」

「ドンパチ騒ぎになったら真っ先に死ぬ俺ですが、覚悟だけは任してちょうだい。」

「哲平は死なないから大丈夫!」

俺とシャルはそう言葉を残して部室を後にし、ダンスのレッスンに励むのだった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!いやぁ切り所が難しい。無駄に話を広げ過ぎて冗長になるのもあり、どうにも本編と同じ感覚で切れない作者で申し訳ない。

ともあれまだ哲平は悩んでます。というか悩まない方がおかしいと思うんですよね。ゲームとはあれほどの人材に虫がくっ付いていない方が異常でしょう。そういう心の葛藤を今回は特に重点的に書いてみました。エロゲの方は「何か好かれてるラッキー♪」程度で、すぐに狙いを定めるようですね。そんなに安易に決めてしまっていいものか。という訳で哲平は作者の気持ちを代弁して貰う形になっています。

しかし何やら舞踏会一緒に踊る事で一波乱起きそうなので、そこまで神経質に考えなくても良さそうですが。それでは今回はこの辺で失礼します!

本日もこのような駄文のために目を通して頂いて誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、確信を得たのでもう迷わない
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/09 04:27
 哲平はダンスの練習が終わったらまた聖華さんがいる部室に行ってしまった。シャルロットは哲平が聖華に取られたりしないかと心配になった。

「・・・哲平は物じゃないんだから。きっと叱られるわ。」

哲平が怒る姿を想像しながらクスリと笑い、お仕置きとして自分の頭を軽く小突いた。どうして彼の事を気になったのか自分でも分からない。ただ気がつけば彼の傍に居て、そして彼もまた自分を受け入れてくれた。自分を王女としてではなくシャルロット=ヘイゼルリンク、として。

「もう、全然踊り足りないわ。聖華さん、どうして哲平ばかりコキ使うのかしら。」

シャルロットはもしや聖華が哲平と一緒に居たい口実を作っているのかと思い始めた。しかし日頃の様子を見ていると、どうも主人と下僕みたいな関係になっているので腑に落ちない。ツンデレの心得を知らないシャルロットには全く解せない心情であった。そのため最終的に彼女は気にしない事に決めた。

それにしても彼の事を思うと自然に頬が緩んでしまう。今日は彼と歩いた街を歩いてみようか。記憶が風化しないように、色褪せないように体に沁み込ませよう。

「でもきっとじいやに止められるわよね。」

どうしようか、前までなら駄々をこねて歩くのだろうけど付いて来られるのは嫌だ。哲平と話をするようになって、これから起きる事を予測して行動する事が少しは出来るようになって来た。哲平が言うには「危機管理能力」という物らしい。ふふ、私ったら哲平の色に染まって来てるのかしら。

結局シャルロットは下校する生徒に頼んでじいやに手紙を渡して貰う事にした。生徒は重大な使命を受けたような態度で、ハキハキと行動していた。大抵シャルロットの素性を知れば皆大仰な態度になる。やはりそう言う意味で有馬哲平とは良くも悪くも特異な存在なのかもしれない。

じいやは手紙の中味を読み颯爽と校舎の中に入って行った。その隙を見て私は物影から身を乗り出し、馬車の中に置き手紙を残しておく事にした。

「じいやへ、ちょっと街を歩くので心配しないで下さい
シャルロット」

こんなおてんばな真似をするのは彼女自身初めての事かも知れなかった。それでも彼女は自分自身の力で街を堂々と闊歩してみたかったのである。

「じいやにはすれ違いになったと言って謝ろうっと。」

シャルロットはこんなにすんなり事が上手く運ぶと思っていなかっただけに気分が良く、スキップをしながら歩いて行った。実際には楽しいのは最初だけで段々足取りは重くなっていった。考えてみれば彼女は一人で街を歩く事など無かったのである。

後ろを見てもじいやは見当たらない、当然だ、騙したも同然で自分はこうして外を歩いているのだから。シャルロットは歩いていても罪悪感、寂莫感、虚無感を感じるばかりで何も楽しい事など無かった。ああ、どうして自分は一人で街を歩こうなどと思ったのか。その時はあんなに素晴らしい考えだと思ったのに。

哲平が居た時はもっと楽しかったのに・・・。

夕暮れ時、通行人の少ない侘しい町中を歩いていると自分の足音、影が怖くなる。影が延びたりしないか。足音が増えたりしないか。話し相手が居ないからか、悪い想像ばかりが頭をよぎってしまう。やはり自分は臆病で一人だと何も出来ないのかもしれない。

シャルロットは自分が気持ちが沈みそうになっているのに気付き慌てて頭を振った。

「駄目駄目、こんな事じゃ哲平に呆れられるわ。」

そう、哲平は今だって聖華の指示を受けて動き回っているんだもの。私はダンスの指導で哲平を余計疲れるような事してるんじゃないかしら。代わってあげれるなら代わってあげたいけど、やった事無いもの。それに難しい事分からないし、忙しいのに慣れて無いから逆に迷惑を掛けてしまうわ。

またしても彼女は否定的な方向に進んで行っているので慌てて髪の毛を振り乱した。

「もう、どうしてこうなっちゃうのよ。」

知らず内に自分に叱責を零してしまう。自分から笑顔や大らかさを取ってしまったら何も残らないって分かっているのに。やっぱり哲平が居ないと駄目ね。早く明日になればいいのに、そうすればダンス一緒に踊れるわ。でも・・・

「しつこいって嫌われたりしないかしら・・・。」

今のシャルロットの思考回路はどう転んでもマイナスにしか偏らないのだった。宮殿に居れば誰だって彼女の心情を察し、存分に甘やかしてくれたものだ。しかし哲平は、時に優しく時に厳しい態度だった。だから自分が気に入らない存在だと知れば即座に捨てられるかもしれないと思ったのだ。哲平に甘えたような態度を取る彼女もまた必死さの表れかもしれない。

彼女は以前哲平に「愛してる」という言葉を思い出し、一人ほころんだが、すぐ不安な顔付きになる。すぐ近くにいないとどうしても後ろ向きな考えになってしまう。それにまだ自分の言葉ではっきりと伝えていない。彼は察しが良いけど惚ける節があるから直接言わないと効果が薄い。

「私と哲平って恋人同士なのかしら。」

一人で呟いて顔が熱くなる。声に出して言うとなんと甘露な響きなのだろう。哲平は私の事をどう思っているか全然分からない。誰にだって優しいし、面白いし、自然に接している。だからこそ不安になる。自分だけが哲平の特別になりたいのだから。だって私哲平の事好きなんだもの。

「時間も無いし・・・私、負けないわ!」

拳を握りしめ、決意を新たにし馬車に戻るシャルロットだった。聖華、シルヴィア、優、それに社交部の部員に限らず、学園の女生徒、周りにライバルは山のようにいる。本妻になるべく哲平の心を掴み取る気でいるようだ。そうして街角を曲がろうとした時、自転車が飛び出して来た。

キキー

「キャッ!」

慌てて後ろに飛び退いて避ける事が出来た。やはり外は危険が一杯だわ。咄嗟に避けれた自分がちょっと誇らしい。

と自らの身が何事も無く良かったと一息付いた瞬間、背後からの動きに対応出来なかった。

―――私、本当に轢かれるの?

・・・

俺は頭が真っ白になった。今目の前の人は何を言ったんだ?テストの日で俺の聴覚がおかしくなったのかもしれん。

「・・・良く聞こえなかったんだけど、今なんと?」

「だから、シャルロットさんが交通事故で災難だったわねって言ったのよ。」

聖華の口から出る言葉を上手く認識する事が出来ない。テスト前日だから気を遣ってダンスの練習なしになったかと思えば・・・。交通事故、あの馬2頭が突然暴れ出した末の悲劇と言う事なのか。何にせよ残りのテスト所の騒ぎじゃあないぞ、これは。俺はパニックになり、あわあわ言いながら左右を行ったり来たりした。

「落ち着きなさい、大事には至ってないし普通に登校して来てるわよ。」

「!・・・それを最初に言ってくれよ。病院先聞こうとしちゃったよ。」

あの太陽のような希望の笑顔が失われる事になってはいけないんだ。ようやく俺も心に決めようとしている人が不幸に遭うだなんてあんまりだ。俺は駆け出して行きたい衝動に駆られた。しかし今の段階で行ったとして、俺に何が出来るというんだ。せいぜい心中お察しいたしますという、社交辞令程度の挨拶しか出来ないじゃないか。今はテストが先決だ、良い点を取らないと社交部としての品格が・・・

「・・・あ、ちょっと!」

そんな事を思いながら聖華を横切って走って行くのだった。もし俺がシャルの立場だったら心配して貰いたい。ならば行くしかなかろうが!本当に俺が好きという気持ちがあるのならば、俺の顔を見せるだけでもそれは救いになるんだ。それに俺だって心配でたまらないんだ。だって俺だってシャルが目の前から消えるなんてのは考えたくも無い未来なんだ。だから俺は――――

「シャル!」

「あ、哲平!やっぱり来てくれた♪」

ズザーーーー

扉を開けた俺を迎えたいつも通り過ぎる彼女の言葉に、思わずヘッドスライディングしながら近づいた。

「何だよ、シャル。そんなに心配するひ・・・つよ・・・う。」

俺はそんなに心配する必要無かったじゃないか、と言う言葉を最後まで言う事が出来なかった。立ち上がろうとした時、彼女の椅子に立て掛けられた松葉杖を見てしまったから。

「良かった、うふふ。今日は素敵な一日になりそうね♪」

「・・・俺は残念な一日の始まりになったよ。」

俺はゆらりと立ち上がりながら呆然と言った。守るべき大事な天然記念物に傷が入ってしまった悲しさは計り知れない。俺は一体何をやっているんだろう。俺はヘナヘナとしゃがみ込み、シャルの机の上にアゴを乗せた。溜め息をハフ~と吐いて気を落ち着かせ

「聖華から話は伺った、どうしてそうなったの?」

「うん、ぼーっとしてたら轢かれちゃった。」

「・・・じいやは肝心な時に何をやっとるんだ。」

俺が憤然やるかたなしと言った顔で愚痴をこぼすと、シャルは慌てて首を振り

「違うの、じいやは何も悪く無いのよ?私が一人で歩きたいって言ったから。じいやにこっぴどく怒られちゃった。」

実際に怒られた理由として騙した事が大半であったが嘘は言って無い。

「それで怪我の調子はどうなの?」

「足、捻挫だって。」

俺は口を開けて呆然としてしまった。・・・それ本当に事故なの?歩いてて段差に気付かず踏み外して捻った、と言われるのと大差無いじゃないか。

「相手の人が避けてくれたから、でもちょっと引っかけちゃったのよ。」

シャルよりも避けた人の安否が少し気になったが別にいいか。この調子だとチャリ辺りだろう。何にせよ俺もじいやに毒されたのか過保護になっとるじゃないか。そしてシャルの話によると、そのじいやがシャルに怪我を負わせた罪を感じて鬱気味らしい。まぁあの爺さん感情の起伏激しそうだからその内復活するだろう。その後もシャルは相手のおばさんを怪我させた事を申し訳無さそうに話していた。やっぱり相手は自転車だった。

「何か全然元気そうだし、教室に戻るわ。」

俺が立ち上がりながらそう言うと、シャルは朗らかに笑いながら

「心配してくれてありがとう、それじゃあまた放課後ね♪」

ピタ、俺は動きを止めギギギと機械のように首を回して

「・・・まさかとは放課後、ダンスの練習をすると言うのではあるまいね?」

「そのまさかよ。」

「駄目!」

「本当は昨日もしたかったんだけど、皆に止められて行けなかったのよ。」

「その皆の内に俺も参入する。シャル、大人しく足を治すのに専念しなさい。」

「哲平までお医者さんと同じ事言って。足なんてすぐに治るわよ。」

「医者が駄目と診断した時点でシャル、君の敗北は決まっておるのだよ?」

俺が両手でペケマークを作りそう申告すると、シャルは深刻な顔付きになっていた。

「・・・酷い。」

いかん、本格的にグズり始めてしもうた。参った、こうなると女は手ごわいんだ。

「哲平は・・・私と舞踏会で踊りたくないの?」

「勘違いをしているようだけど、逆だよ。踊りたいからこそ今は回復に専念して欲しいんじゃないか。今無理して悪化して、本番足引きずってるシャルを俺は見たくないんだよ。」

「私楽しみにしてたのに、哲平と素敵なパーティーにしたいだけなのに。」

「ああ、素敵なパーティーにしたい。そのためにもコンディションを整えるのも重要な事だ。ベストな状態で本番を迎えるのも、素敵なパーティーにするために必要な事じゃないか。」

「・・・でも。」

「大丈夫だ、練習しないとは言って無い。それにここだけの話、俺もレッスンの時間嫌いじゃないから。一緒に踊らなくていいから指導はして欲しいんだよ。シャルの教え方分かり易いしさ。」

俺はシャルに笑顔が戻るように出来るだけ優しく話しかけた。シャルは儚い笑みを浮かべて

「哲平はやっぱり優しいわ。」

そう言った時予鈴が鳴ったので俺は扉の方に向き直り

「そう言う訳だから一応放課後な、ああ、足辛かったら無しの方向で。」

と手を挙げて伝えると

「哲平。」

シャルが呼びとめて来た。俺は首を90度曲げ目だけを向け話す体勢を取り、先を促した。

「あのね、私。」

シャルらしくない、彼女はもじもじしながら言い淀んでいる。そのため小声の可能性もある事を考慮して俺は向き直り、シャルの席近くまで行ってしゃがみ込んだ。

「どうした?」

「私、哲平と踊りたいの。舞踏会、哲平とどうしても一緒に踊りたいの。」

いつもの穏やかな目では無く、真剣な瞳で訴えかけて来るシャル。俺は普段と違い切実な感情が混じっている事を瞬時に察した。これは、シャルの本心と見て間違いないだろう。俺は腹のそこから湧き起こって来る正の激情を感じた。言葉で言い表す事が出来ない程の至福の感情だ。こんなにも慕ってくれている姫に俺は何を勘繰る必要があったんだ。ハハハ、もう笑いが止まらない。

破顔一笑と言った具合で俺は満面の笑みを浮かべ、シャルの頭を撫でながら

「ああ、俺もだ!」

と言い放った。シャルはようやく安心したようにニッコリ笑うのだった。やっぱりシャルは笑ってる表情が一番映える。それでこそシャルロット=ヘイゼルリンクだよ。そうして俺は教師が入って来ると同時に、教室を飛び出して行ったのだった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!今回はシャル視点を書いたんですが果たしてどうなのか。というか本編と似たり寄ったりな内容でつまらなく思ったら申し訳ないです。一応コンセプトは哲平のキャラが変わってて内容が変わるという趣旨ですのでね。出来る限り違う感じにしたいんですが、あまりに逸脱し過ぎると終着点が変わり過ぎて、並行してやる意味がなくなってしまうんですね。エロゲの方が面白いという方は僕のSS何ら価値無くなる訳でして、はい。

ともあれようやく哲平もシャルに対して気持ちを固める事が出来ました。シャルが時間無いとか言ってんのは祖国に帰るんでしょうかね。まぁその辺詳しく知らない訳なんですが、この先問題が生じるようであればまたちょこちょこ文章変えようと思います。それではこの辺で失礼しましょう!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、シャルとのカップリング成就
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/09 16:34
 シャル・・・どうやら俺も君の虜になっちまったようだ。世に蔓延る数多の男共と同じように俺も君に堕ちて行くんだ。とは言え、俺は俺だけどな。まぁともかく先の出来事を思い浮かべるとニヤニヤが止まらない。良かった、いや本当に良かった。

ポンポン

ん、何やら頭を突かれている。俺が振り向くとそこには伸縮自在のさし棒を持たれる監督教師がいらっしゃった。俺はたるみから教師に目を付けられたと思い引き締めたが

「君の名前は有馬、哲平、じゃなかったかね?」

「よくご存じで、ありがとうございます。有馬哲平であります。」

「・・・ほぉ、名前欄の生徒は明らかに君では無いようだが?」

俺はふとテスト用紙を見ると「シャルロット=ヘイゼルリンク」と名前を書く所に記していた。俺は早業で流れるように消し

「い、いや・・・はは、女にうつつ抜かしてる場合じゃありませんね。」

と言いながら赤面するのだった。教師はニヤリと笑った後俺の肩をポンポン叩いて、内情を察してくれたようだった。それはそれで恥ずかしいな、畜生。俺、完全に恋愛末期だ・・・。

そんな精神状態で受けたテストの出来など考えるまでもなく破滅の一途を辿っている。しかし俺に取ってテストなどもはや、意識の外側に飛んで行ってしまっていた。生きるために必要なのは愛だよ、愛!俺は問題用紙を丸めて自身の手をバシバシ叩きながら、熱弁をテスト終了後一人で振るっていた。

熱が冷め始めた放課後色んな意味で終わったテストを乗り越え、俺はシャルといつもダンスの練習をしていた屋上に向かった。来て無ければ帰ろう、明日もテストあるし彼女もじいやに言われて帰ったかもしれない。

俺が屋上に入った時すぐに視界に入ったシャルはさめざめと泣いていた。いきなり感動的なシーンを迎えるとは思っておらず、心の準備も何にもしてない。どうしたんだろう、とりあえず俺は駆け寄って顔色を伺う事にした。

「どうしたの、何か辛い事でもあったの?」

「ううん、一人で待ってると悪い方に考えちゃって思わず泣いてたの。」

「何、悪い方ってどんなの?」

「哲平が聖華さんとデートしたり。」

「ないない、聖華姐さんは俺にとって棟梁みたいな存在だから。」

「もしかして来ないんじゃないかと思ったり。」

「俺から誘ったような物なのに俺が来ない訳ないじゃないか。どんだけ鬼畜王子なの、シャルにとっての俺は。」

「ううん、来てくれるって信じてるのにそう思っちゃう自分が悲しくて・・・グスッ」

個人のメンタル部分は各々で解決するしかない。だから他人がとやかく言う事じゃないんだ。俺はただシャルが泣きやむまでずっと背中をさすってあげていた。シャルは普通の人より非の打ちどころ無い訳でも完全無欠でも無いんだ。こうやって一人になると寂寥感から涙する普通の女の子なんだ。

俺は一体シャルの何を知って高嶺の花だの思っていたのか。見てみろよ、このか弱い姿を。どっからどう見ても一般女子学生だ。そして変に特別視されるのを彼女が望んでいるとも思えない。だからこそ俺はどんな美人や異国の人でも普段通りに接しようと心掛けているんだ。

俺はこの辺りでそろそろシャルと向き合い、互いの心の内を曝け出した方が良いと思っていた。曖昧な態度は彼女の精神を不安定にさせるだけだ。彼女が笑顔になるのであれば、俺の出来る限りの力を持って不安を拭い去ろうじゃないか。立ったままシャルの背中を撫で続けていた俺だったが、シャルが泣きやんだ頃を見計らい

「シャル、隣りに座ってもいい?」

シャルは一瞬呆けたようだがすぐに頷いた。俺は椅子をシャルの真横にくっ付けて、同じ進行方向に向いて座った。俺の勝手な推測だが泣き顔はあまり見られたい物じゃないだろうと思っての行動だった。それに対面よりも隣り合わせの方が心の距離も近づく気がするんだ。俺はシャルの隣りに座り、しばし頭の中を整理しながら前を向いて座っていた。シャルの弱い側面を目の当たりにしたせいか、俺はいつになく穏やかな気分だった。シャルは何も発さない俺の肩にゆっくり頭を乗せて来た。それをきっかけにして俺は話しかけることにした。

「なぁシャル、白状すると俺も悪い事ばっかり考えてたよ。」

「・・・どうして?」

「シャルが不安になるのと同じように俺も不安だったんだよ。最初のデートの時、大人数の男に囲まれたの覚えてるか?」

「ええ、哲平を名乗る人が多くて困ったわ、ふふ♪」

「そうだよ。本名かどうかは定かではないがもし偽名として用いたのなら、君はそこまでしてでもお近づきになりたい女性なんだよ。だからつい最近ぽっと出の俺がシャル、君とデートに行ける事がもはや奇跡なんじゃないかとさえ思うんだ。」

「・・・私、そんな立派な女じゃないわ。」

「立派かどうかは別にして、魅力的な女性である事はあの大量の有馬哲平集団が物語っている。それに比べ俺はじいやに小童だの若造だの言われたい放題じゃないか。シャル、俺は不思議でならないんだよ。一体俺の何が君を魅了したのか皆目見当が付かなくてね。てっきり有馬の財産狙ってるんじゃないかとか、シャルの好きになった男じいやにことごとく消されてんじゃないかと邪推してた。」

俺の言葉を聞きながらシャルはクスクス笑っていたが

「哲平は何でも話しちゃうのね。だからとっても気持ちが楽になるの。王女という地位が私の周りにいつも付きまとって、皆私と距離を置いてしまうのよ。だからその率直な態度に好感を抱いたの。それにそもそもじいやから男性は皆野獣って聞かされてたから、殆ど会話すらした事無いわ。そんな折に鉄心お爺様が哲平と仲良く頼むとおっしゃられたの。お爺様の息子さんが野獣なはず無いと思って、きっと気楽に話しかけられたのよ。だからこんなにたくさん話をするのは哲平、あなただけよ。」

この巡り合わせは鉄心爺さんのおかげと言った所か。なるほど、黒幕は鉄心の爺さんか。となると深追い云々は一体何なんだ。

「どうだ、俺は野獣だったか?」

「・・・ううん、カバみたい。」

「それは何だ、馬鹿と掛けてるとか言うオチじゃないだろうな?」

「アハハハ、違うわよ。ただ何て言うのかしら。カバっていつもゆったりしてるでしょ?頭の上に小鳥を乗せたりしているし。でも決して小鳥を追い払ったりしないでしょう?居ても居なくても変わらずそこに居る、そういう姿が哲平に似てる気がするの。」

「・・・そういう解釈ならカバでいいや。」

「うふふ、別に悪い意味で言ったんじゃないのよ。気を悪くさせたのなら謝る、ごめんなさい。」

「いや、あの気だるそうな感じも俺に似てる気するし。あとシャル、何でも言うついでに言わせて貰うけど。」

「なぁに?」

「俺シャルの笑った顔好きなんだよな。だから今日みたいな泣く顔とか見たくないんだよ。」

「・・・え、え、哲平もう一回!」

ガバッと身を起こして俺の顔を真正面から見つめるシャルの目は真剣そのものだった。何であんな恥ずかしいセリフを2回も言わないといけないんだ。

「シャルの泣く顔は見たく

「その前!」

「俺はシャルの笑った顔が、好きなの!」

言った瞬間凄い勢いで抱きつかれた。もうヤケクソ気味に言った俺も結構疲れた。泣いた顔は見たくないと言った側からボロボロ泣きだすシャル。この涙を咎めるほど俺も無粋じゃない。どう考えても嬉し涙に決まっているだろう。だから俺はそのきめ細かいサラサラの長い髪を掬うように撫でていた。シャルは表をあげ、こちらを向いたその目は涙で充血していたが満面の笑みだった。

「えへへ、返事を返さないといけないわ。哲平目を瞑って。」

俺は言われるがままに目を瞑り、瞬間何をされるかに気付き目を開いた時にはもうシャルの顔が目前に迫って来ていた。当然避けれるはずもなく触れ合う唇。俺はもはや呼吸も忘れて硬直していた。シャルはちょっと頬を染め、膨れっ面になりながら

「もう、ちゃんと目瞑ってないと駄目じゃない。私も恥ずかしいんだから。でも哲平今のが私の返事よ♪」

予測できた事態とは言え、実際来ると相当の威力だ。完全に中枢神経持ってかれてる。俺はガクガク頭を揺らす事で肯定の意を示した。シャルはそんな俺を見て大笑いしている。

ひとしきりからかわれた後、俺達はいつもの関係に戻っていた。というよりシャルが元気を取り戻したって感じだけど。ただ俺の内部に変化をもたらしていて、ちょっと胸が当たったくらいで動揺する事が無くなった。どうも鋼鉄の心臓になったのかもしれない。晴れて相思相愛になった俺達は、いつも以上にくっ付いてじゃれ合いながら帰る時間まで時間を共にするのだった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!なかなかにいちゃつきシーンというのも表現するのが難しいものです。とは言え、どうにか心の隙間を埋める事が出来たのではないでしょうか。長いようで短い感じですが、とにかく感慨深いものがあります。

早いもので気付けば60話行ってしまいましたね。一か月でどんだけ頑張ったんだよ、と自分で思わざるを得ません。10月の中旬くらいですかね、その辺に突如やろうと決めて始めたこの小説。その他板で書いて大不評でした。とりあえず読みづらい、チラ裏行ったらと言われこちらに来た訳です。

そうしたら皆さんの温かいコメントや時にありがたい指摘を賜りながらどうにかここまで進める事が出来たように思います。以前方向性があるのか、という言葉を今考えてみますとやはりヒロイン皆が幸せになって貰いたいですね。そして多くの読者の方が「哲平の良さ」を知って貰えれば嬉しいです。このSSにおける哲平は僕の分身と言っても過言じゃないんですから。

しかし僕はまだまだ若輩者にして未熟者です。以前のどこかのように調子こいてヤンキーになるお調子者の作者です。迷走し始めた時は注意して頂ければ幸いです。一度言われてかなり落ち込みましたが、今となっては感謝の気持ちで一杯です。ラリ(自分に酔ってる)状態になると自分では気付けない物で、客観的に物事が見れなくなるんですね。本当に読者の皆さまに何度助けられたか数えきれない。今後もどうぞよろしくお願いします。それでは少々後書きが長くなりましたが、この辺で失礼します!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、元気出してよ、俺のプリンセス!
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/10 17:57
 時間は有限な物、物心付く頃から誰だって知っているいわゆる常識だ。そして楽しい時間なら尚の事過ぎて行く速度が速く感じる物だ。相対性理論だったか、詳しい事は知らないけどそう言う事じゃないの。俺はシャルともっといたいという歯がゆさが、澱となって心の底に沈澱しているのを感じた。もう俺もシャルにご執心と言った所なのだろう。

 シャルも同じ想いを持っているのか、いつもより積極的に俺の腕を取り頭を寄せながら隣りを歩いている。俺達は校門のお別れ場所まで可能な限りゆっくり行進した。そんな中シャルがポツリと声を漏らした。

「お別れ、したくない。」

 最初俺は彼女が何の事を言っているのか分からなかった。何回も心の中で復唱しているとシャルの素性を思い出した。

――――シャルは留学生

 咄嗟の事に俺は声が出なかった。泣き顔を見たくないという俺の意思を汲んでか、シャルは顔を強く俺の腕に押しつけてきた。動作で分かる、きっと半分以上くしゃくしゃの顔なんだろう。ようやく心が通じ合った所で祖国に帰る、この愛する女性に何と声を掛ければ良いのか。俺の薄っぺらい人生経験は何の役にも立ちやしない。思いのまま直接的に訴えかける以外に手段を持たない俺だった。

「シャル、悪い事は起こった時に考えれば良いじゃないか。今ある幸福をなげうってまで考えるような事なのかな?」

「・・・でも私王女として、祖国に、うぐっ、帰らないと、行けないのよ。」

「それはいつ頃の話なの?」

「この冬が終わったら・・・。」

流石にこの言葉は重かった。この冬って今季節的に冬、ですよ?期限はもうすぐ傍まで来ていると言う事か。俺は今何が出来て、どうすれば彼女の隣りに居座る事が出来るのか。渦巻く周囲の思惑や、事態を飲み込めてないせいか即座に良い案は浮かばなかった。ただ爺さんの言っていた意味がようやく飲み込めた。なるほど、そう言う事ね・・・。

俺は下駄箱の所で停止した。泣きじゃくるシャルを見てじいやが俺に斬りかかるのを恐れたというのもある。しかし何よりこのまま別れる訳にはいかないじゃないか。全てにおいて最後の締めというのは清々しく無いと悲しいだろう?

シャルはハンカチで賢明に自身の涙を拭おうとしていた。しかし一度訪れた傍流の悲哀はなかなか収まらず、次々と彼女の目から紅涙を絞らせていた。もっと単純に考えよう、彼女は俺と別れたくない。そして俺も彼女に同意見だ。となればどうすればその願いが叶うのかを考えればいいんじゃないか。今は悲しみから身を竦めている彼女の震えを止めねば話が先に進まんな。

俺は未だ涙を流す少女を強く抱きしめた。シャルは尚も体を小刻みに揺らし、えずきながら

「こんなに辛いなら、グス、いっその事哲平の事を好きにならなければ良かった。」

 などという事を言った。俺にっと何ともショッキングな発言だが、それは愛情の裏返しによる言葉だと分かるので堪える事が出来た。尚も加速度的にネガティブシンキングに陥っていく彼女は

「今でもこんなに辛いのに祖国に帰ったら塞ぎこんでしまうわ。いっそのこと、この気持ちを無しに出来れば良いのに、うぅ・・・。」

 うーむ、何と言う非生産的な意見だ。ともあれ両親と生き別れた俺には別れ耐性が付いているのか、そこまで戦々恐々とはしなかった。まぁシャル自身こういった辛い経験との遭遇が、今までにあまりなかったのかもしれない。などと達観している場合じゃない。このままではなし崩し的に俺が振られる展開になりそうじゃないか。

「ごめんなさい、私が全部悪いの。私が哲平の事を好きになってしまったから。」

 俺の予想とは裏腹にシャルは自責の念を抱き始めたようだった。すかさず俺は彼女の背中にある自身の両手を脇に回し、否定的な事を口から漏らし続ける彼女の脇をくすぐった。突然のくすぐり攻撃にビクンと体を跳ねさせ、堪らず笑うシャル。

「て、哲平、もう、くす、ぐったい、アハ、ウフ、アハハハハ。」

 俺はシャルが笑ったのを確認した後、両肩を両手でガッシリ掴み

「シャル、案ずるな。俺はお前の側に居る、俺だって一緒に居たいんだ。どんな方法を取る事になってもその想いは変わらない。そしてシャル、今俺達がするべき事は悲嘆に暮れる事じゃない。現実を直視する事だろう?二人で話し合って建設的な意見を出し合おう。そして二人で未来を切り開けばいいじゃないか。だから泣くのはそれからにしよう、まだ俺達は何もしていないんだ。」

 俺はそう語った後シャルからそっと離れ、頭を撫でてあげた。シャルの涙はもう止まっており、口を真横に結び決意の眼差しでしっかりと頷くのだった。それからシャルは顔をほころばせ

「・・・本当ね、泣くのはいつでも出来るわね。私ったら一人で困って馬鹿みたい。そうよね、もう私一人じゃないんだもの。・・・ふふ、哲平の言う通りだわ!」

 と言ってクロスアームのポーズを決めてやる気に満ち溢れた顔をしていた。そんなシャルに感化され俺もまた意気軒昂な気分になり

「よっしゃ、良い目だ!これから俺達は一心同体にして一蓮托生だ!」

「おー!」

俺達は右手を高らかに挙げて、二人で幸せになるための決意表明を行った。その伸びた右手の突出している人指し指に、シャルは背伸びして両手で握りしめ鬨の声をあげた。もうシャルの顔には生気が蘇り、その笑みは太陽のように輝いていた。そうして将来を約束し合った我らは互いの肩に手を回し、お花畑を走り回るように校門に向かって行くのだった。そんな仲睦まじい俺達を見たじいやが嫉妬し、俺に関節技を決めて吼えたのはまた別の話である。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!今回はちょっと短いですね。やはりガバチョシーンを省くとどうしても量が少なくなってしまいます。そしてエロいシーンを見る度に停滞してしまう。スキップを駆使してとっとと先に進むのが得策なのでしょうが、やはりヒロインの本来の姿を知る上で見た方が良いのかな、と。

シャルが元気無いのはやはり我々視聴者の求める所では無いですよね。勿論僕にとっても、うふふでえへへなシャルロットちゃんが愛らしゅうございます。という訳で今回は哲平がシャルを元気づけると言う所に力を注いで書き上げました。それでは今回はこの辺で失礼します!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂いて誠にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、テストが駄目なら舞踏会?
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/11 15:49
「さて、来週はいよいよ舞踏会の日です。皆さん、振り返って満足の出来るような舞踏会にしましょうね。テストは終わりましたが、引き続き気を引き締めて下さい。」

 聖華が担任教師みたいな口ぶりで皆に語りかけていた。それと「気を引き締めて下さい」の部分で底冷えするような目で睨まれた。い、いや・・・ハハ、まぁ、ねぇ?そりゃまぁ俺のテストはうん、公言するのも憚れる点数ですけど。それでもどうにか半分くらいの点は取れたんだ。

ちなみにテストの時に醜態を晒したあの教師はテスト返却時、とても生温かい目で俺を見つめていた。そんな全てを悟ったような顔で俺を見つめられても困るんだ。別に俺シャルに入れ込んで成績下がった訳じゃないよ?寧ろ世紀的な大進歩を遂げたくらいなんだ。

 ともあれそれはそれ、これはこれ。舞踏会に必要な技能は学力じゃあない。演技力と接待能力じぁないか!俺は自身の雪辱をはらすべく強く拳を握りしめたのだった。それにしても部員の方々が時に勝ち誇った顔をしているのは何だ。まぁ下を見る楽しさを否定する気は無いが、それにしたって本人を目の前にして楽しまなくてもいいじゃないか。視線が合うと後ろを向いて肩を震わせる所作は僕の自律神経を逆なでするんだよ?

 ・・・敗者に持つ口は無し。俺が逆上すればするだけ、今度は同情に満ちた眼差しで見られること請け合いだ。元よりテストの点など取れて当たり前の彼らと同列である事がおかしい。俺は全く自慢じゃないが、30点行けたら夢見心地の男だったんだ。それが50点というビッグウェーブを巻き起こしたんだから、もう大願成就達成みたいなものだ。よって他者と自分を見比べて喜ぶなどひよっ子もひよっ子、まだ人生においてはいはい覚えたてくらいのレベルと言えるだろう。

 こうしていつものように俺はお得意の自己暗示を用いて自己陶酔に酔いしれた。こうでもしなければ苦境を乗り越えて楽しく生きる事は出来ないのです。そんな俺の頭を撫でてくれるお優しいお方、シャルロット姫。

「いいじゃない哲平、もう済んだ事なんだし。それよりも舞踏会頑張りましょう?」

 いつものニッコリ笑顔で聖母の優しさで接してくれるシャルだが、地味に俺より点数は良かった。学年は違えど、僅差とは言え留学生にすら日本のテストに敗れる俺って・・・。シャルは俺が慈悲の言葉に感激したと勘違いしたようでとても嬉しそうであった。くそう、せめて次はシャルだけには・・・ああ、次無いのか。負のスパイラルに突入する俺だった。

「有馬、今回は仕方ないわよ。転校して来て色々大変だったんだものね。次頑張りなさい。」

 などと優しいお言葉を掛けてくれる聖華姐さんでは無かった。彼女はスパルタなのだ。鞭とハイヒールが似合う女なのだ。黒のバタフライ眼鏡に黒のガーターベルトに黒い発言が・・・

「有馬あんたに言ってんの、聞いてんの!?」

「は、はひぃ!とっても良くお似合いです!」

「・・・たく何考えてたのか知らないけど、ボケっとしてんじゃないわよ。い~い、テストで完全に社交部の品位を貶めてくれたあんたは、人一番舞踏会に貢献しなさいよ?」

鼻があわや当たるかと言う至近距離まで接近し、ドスの聞いた声でそう言った聖華。俺はというと聖華からのフローラルな香りに、ちょっとどぎまぎしていた。くっ、良く見て見れば姐さん顔立ち整ってるし美人じゃないか。俺はシャルに対して罪悪感が湧いたのですぐさまシャルに抱き付きながら、聖華に向かって

「貢献する、貢献するから!俺を惑わすのは止めてくれぇ。」

悲鳴のように叫ぶ俺を不思議そうに見ていた聖華だったが、何か思い当たる節があるのかニヤリと顔を歪めた。シャルも危機感を持っていたようで、俺達は強く合体し融合を果たしていた。そんな様子の俺達を見た聖華は興ざめしたように呆れ顔になり

「全く・・・いちゃつく暇があるなら単語の一つでも覚えろっての。」

むくれながら聖華はいつも通り悪態を付くのだった。それから大きく盛大な溜め息を一つ吐いた後にフォロー染みた事を言ってくれた。

「まぁいいわ。あんたは看板や資料の作成報告、その他諸々頑張ってたしね。今回だけは大目に見てあげる。ただし舞踏会の本番に何かやらかしたら承知しないわよ。」

 最後はしっかり杭を打ち込みつつ、何やら俺を良い意味で評価して貰えたようだ。何か一つだけでも頑張ろうと、聖華の手伝い懸命に手伝ってて良かった。日々の奉仕活動が実を結んだ瞬間だった。俺は教祖を崇めるクリスチャンのように、聖華様を憧憬の眼差しで見ていると

グイイイ

「いててててて!」

 近年稀に見る腹部の激痛に思わず自身のパートナーに目をやった。すると不機嫌そうに眼を閉じ、鼻を鳴らしてそっぽを向いておられるじゃないか。鍵を開けるように俺の脇腹の肉をグイグイ回している。シャ、シャルロット姫?

「シャル、いくら俺の肉をひねったとてエンジンは掛からん。一体どうしたというんだ?」

「私に抱きついて他の女性に目が眩むだなんて!」

グイグイグイグイ

「ち、ちぎれる、ちぎれちゃうよう!その肉片は僕に取って必要な物なんだよ?」

「じゃあ言って、私しか見ないって。」

「・・・こ、ここで?」

「そう、ここで♪」

俺は羞恥心と恐怖心、恥辱心に精神を圧迫され言えようはずが無かった。しかし期待と希望に満ちたシャルの表情が俺の心に揺さぶりを掛けて来る。そこで俺の取った行動は一片の氷心の境地になり、婉曲に婉曲を重ねる愛の囁きを一意専心彼女に伝える事だった。

周囲から見ればただいちゃつく男女にしか映らないようで、実に白けたムードが漂っていた。だがシャルを説得するのに専念している俺は気付かず、必死に彼女に心を砕いているのだった。シャルもシャルで俺の視線を独占出来た事が何やら嬉しいようで、実に生き生きした目で見つめ返してくる。もう、これは完全な馬鹿ップルだっっっっ!

「他の人は、プログラムのコピーを。ホッチキスで止める箇所もあるので、その度ごとに説明しますね。」

 もう聖華は呆れるを通り越してしまわれたらしい。以降我関せずの立場を貫く事にしたようで、他の部員を引き連れて別途の仕事に向かわれた。気付けば俺達は二人部室に残されているのだった。・・・汚名返上どころかどんどん失点が積み重なっていっている気がする。俺の懐でごろごろ鳴くお姫様を余所に、俺は遠い目をして物思いに耽っていた。俺は正しい道を歩んでる、よな?

・・・

 家に帰宅し、夕飯を済ませて自室で一息付く。どうにか今日も何事も無い一日を過ごせたと安心する。両親が去ってから毎晩寝る前、一日の出来事を記すようになっていた。死んで何も残らないのは悲しい、だから俺は自分の生きた証として日記を書き連ねる。出来るならシャルと共に生活する事を書けるようになれば良いが・・・。

「・・・にしても結局舞踏会にかこつけて問題を先延ばしにしてんなぁ。」

 俺は思わずため息を付いた。大層格好付けた割に自分も現実から逃げている矛盾。成長と共にしゃらくさい言い訳ばかり上手くなってしまった気がする。しかしその話題をシャルに振ろうとすると

「哲平、まずは舞踏会を成功させましょう。それが最優先事項よ♪」

 とはぐらかされてしまうのだ。男としてもっと踏み込んで話しかけるべきなのか。その時はシャルの言い分も一理あると思い、身を引いた俺だったが今思い返してみると疑問に感じる。しかしシャルも考えあぐねているのかもしれない。まだ時機は熟していないのか。

そもそも俺自身ももっと考えをまとめて、それから話し合わないと意味がないな。俺はシャルとどうすれば一緒にいられるかを、ルーズリーフに箇条書きで書き出す作業に入るのだった。そして俺はもっと王女と肩を並べるだけの男になろう。最上の男になる必要は無い、ただシャルの隣りに居ても違和感の無い程度の品格があればいいんだ。

どのくらい時間が経ったのか、ふと時計を見ると日付が変わっている。不味い、明日は舞踏会の本番なのに欠伸何てしようものなら、聖華から口の中に何を突っ込まれるか分からんぞ。それにシャルに見合う男だと大口を叩いて、その大口を開けて欠伸だなんて馬鹿にも程がある。明日はキリリとした顔でインテリスマートボーイを演出しよう。

・・・どうせすぐメッキが剥がれてボールボーイないしは雀ボーイになり下がるけどな。

そんなどうしようもない事を考えながら俺は床に着くのだった。それじゃ明日はシャルに教えてもらったダンスの成果を見えてやるか!聖華に?いやいや舞踏会に参加する人達に。でもやっぱ恥ずかしいから隅の方にさりげなく移動しよう。お休みなさい・・・。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!どうも勢いに乗って書く時は8000字とか書くもんですから、余計に短く感じるんですよね。今回は3500字程度です。とは言えキリの良い所まで書いた方がタイトルも付けやすいのでここで切ります。もう正直飽きたわ、というくらい同じシーンを見てるのでテンションも淡泊になって来ました。

やはりこう新鮮味が失われると発想が貧困になって来ますねぇ。以前の哲平に見られた破天荒な行動が激減したように思います。それはもう生活に慣れて落ち着き、精神的に安定したと言う事にでもして下さい。哲平と作者は連動してまして、作者自身がSS投稿に慣れたように、哲平もまた学校に登校するのに馴染んだと言う事ですね。こんな言葉遊びばかりのアホな作者ですが、今後ともお付き合い頂きたいと切に願うばかりです。それではこの辺で失礼します!

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂いて誠にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!2周目、シャルwithダンス?イェア!
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/11 21:29
 別にそこまで待ち望んでいた訳じゃない。でも今までの練習がふいにならないために気合は入れないといけない。俺は試合前の高揚感を抱きつつも舞踏会がある日、自分に喝を入れながら登校するのだった。

 オードブルとして終業式や通知表が渡される恒例の儀式がある。高齢つながりで話を進めると、校長の話はもっと短縮出来るだろう。持って回った論調と強調法さえ気を付ければ、皆背筋を伸ばして聞くんじゃないだろうか。

 とはいえ寒い体育館で校長の寒い話を聞かされる我々生徒一同は、身を縮こませかじかんだ手を擦り合わせながら話を聞いていた。寒い話と言うのは決して下らない話を指して言っているんじゃないんだ。毎年言ってるであろう使い古された話題を、表現変えて言ってるだけだから問題な訳だ。せっかくのネタが同じ物ならもっと簡略化したって罰は当たらないと思う。

秀峰の学園トップの座に冠する勝ち組校長様に、俺は何知った風な口聞いてんだと思わないでもない。それでもやはり退屈空間を凌ぐためには、相応の工夫が必要になると思うんだ。結果話を聞きながら批評めいた事を心の中で展開する俺だった。

・・・

 滑らかに進み過ぎて特筆すべきポイントが無いのは流石秀峰学園と言った所か。俺が校長への意見を内部で捻出している内に、気付けば校門付近で外部の人を誘導する場面に切り替わっていた。近くでは竹園と金子が同様にして、内部へ参加者をいざなっているようだ。

 もちろん参加者が俺だけなら金子、竹園の迎えの言葉はきっと

「・・・来なくても良かったのに仕方ないからお入り下さい、トン汁野郎。」

「時間がもったい無いからとっとと入りなさいよ。たく聖華様はどうして私たちにこんな役回りを・・・。」

 と素敵な言葉をくれると思うんだ。う~ん、そんなに歓迎されると僕嬉しさから涙で視界が歪むなぁ。無論それは俺に限った話でOB、OG、その親縁の方々には実に慇懃に対応し、その心は一視同仁である二人だった。竹園は愛嬌のある笑みでハキハキと行動し、金子は慎ましく丁寧な対応をしていた。互いの長所をフルに活用するとはやはり優等生、力の出し所をきちんと押さえているようだ。俺は別に特に気にする風でも無くごく自然に応対するのだった。

 たまに例によって有馬家の息子と言う事で目を付けられ、高級扱いされた。勝手に付加された地位や身分で褒められるのは、そんなに喜ばしい物でも無い。何せ何の苦労もせずに称賛を受けるのだから、きまりが悪いったらない。

 にしてももしや社交界に参加するためには高級車が必須課題なのかと思う程、どれもこれも大物揃いだ。BMW、フェラーリ、セルシオ、ダルシム、ジャガー、シーマなどなど。ここ一帯は犯罪グループにとっては金山に見えるだろう。さぞ車上荒らしが横行し、祭りと化すに違いない。当然秀峰警備に抜かりは無く、至る所に警備員が配置されている。

 ただ戦車や自家用ジェット機、あげくにガンデムに乗ってご来賓なされた方々は門前払いを受けていた。駐車する場所が無いし、驚いた住民に警察に通報される恐れがあったからだ。機動戦士ガンデムに乗り颯爽と出陣された初老の男性は、撤退を余儀なくされた時、大きなガンデムの手で頭を抱え込み断腸の思いを露わにしていた。そしてその後激昂した彼はファンファンネルなる兵器を披露なされようとしたので宥めるのに大層苦労した。

 尚もバルカンだ粒子砲だと騒いでいる彼はもはや始末に負えない。皆で格好いい、素敵、渋い、などと言った賛辞をひたすら呈し続け、最後は参加者まで加わって拍手喝采をしていた。コックピットにいる彼はようやく気持ちを鎮めたようで、鷹揚に頷きガションガション言わせながら巣に戻って行った。俺達は暴風が去ったと皆で歓喜の声をあげていた。

 ようやく一息付いた頃に自分の持ち回りが落ち着いたらしい根津が歩み寄って来た。

「有馬さん、いよいよですね!私苦節数年、今この時のために日々忍従して参りました。自身の血の猛りを抑えきれず今朝も血尿が出るくらいですよ、ふふ。」

 何やら周囲を不安にさせるような発言をサラリと言い、尚も猛りが収まらないのか鼻血と血の涙を流して感涙している。もう血塗れにも程がある。俺は運命の出会いをするらしい彼の行く末だけが気遣われ、お大事に・・・とだけ労いの一言を掛けるのだった。

「嗚呼、早く来ないかな僕のマイエンジェル。そして運命の人よ。」

 尚も血を垂れ流しながら、独自の固有結界を展開し始めた彼に一体何を言えば良いのか。とりあえず思う事は出血多量で死神に首を狩られ、リアルエンジェルと旅立たないかが心配だった。

 根津も自身の身に付着した血痕を隅々まで消し去り、ドラマティックな出会いを求めて風を切って舞踏会の会場に入って行った。中に入るともう人の海となっており、今さっきまで一緒に居た根津すら見失った。

 俺としては好都合でダンスの恥ずかしさが薄れるだろうと内心ほくそ笑んだ。それよりも寧ろ、シャルと相まみえる事が出来るかどうかが不安になって来た。こんな事になるならお互いの集合場所を事前に定めておくのが利口なやり方というものだ。自身の失態に毒付きながら、俺は視線を一面に広げ特に目立つであろうお姫様を捜索し始めた。

 どこにいるかは定かでないが、今マイクを通して脳裏に響くこの声は聖華の物だろう。今は開会の挨拶を行っているようだ。挨拶の途中に動き回るのは至ってマナーに反する行為かもしれない。だが俺の迎えをいまかいまかと待つシャルを思うと動かずにはおれなかった。俺は細心の注意を払い、腰を低くし視界の邪魔をしないように歩を進めた。一歩進む度に10人程度の新たな顔ぶれを視認し、そろりそろりと移動していた。

 吹奏楽部の演奏と共に一気に周囲の流動性が増した。俺はこれで探すのが余計に手間になると困ったがはたと気が付いた。・・・そもそもシャルの捻挫は直ってない。足を痛めてる奴がこんな中央付近に好きこのんで立つ訳ないだろう、馬鹿なのか俺は。

 無駄足を踏んだ自身の不甲斐なさを嘆きつつ、俺は壁伝いにシャルの姿を探す事にした。きっと満足に歩けない足だからどこかにもたれていると推測したのだ。4面ある内の入り口の側面でシャルは壁にもたれるように立っていた。俺が真っ先にシャルの捻挫に気付いて、壁周辺をしらみ潰せば数秒で見つかる位置だった。結果オーライだ、もう何も考えまい。

 しかし彼女の顔は思わしくない表情だった。足の痛みだけでなく満足に踊れない自分を責めているのだろうか。下手に様子を見ると臆病風が吹きそうになる俺なので、見つけた勢いのまま彼女に向け突貫していった。垂れた頭の傍から肩へ手を回し、麻薬を売る売人みたいな恰好で彼女にくっついた。これで他人だったら俺は島に流されるかもしれない。

 しかしひと際にじみ出るその美の化身を俺が見間違えるはずがない。愛情補正まで加わるのだからもう負けなしだ。俺はシャルから負の感情を発散させるためにフランクに話しかけた。

「ヤッホーレディ、こんな所で一人で立ちんぼして。お兄さん悲しいな。無理せず別室で休むか、僕が主導の基踊るか二つに一つだよ。」

 シャルは俺の軽薄な発言には答えず、俺の首元に頭を寄せて来た。そして目を瞑りながら

「・・・捜してくれたのね、私それが嬉しくて。今何も考えられないくらいに。だから、もうちょっとだけ、ほんの少しで良いからこうさせて。」

 俺はその万感の想いが詰まった言葉を聞き、優しく頭を撫でる事で肯定とした。シャルはどんな想いから一筋の涙を流したのかは分からない。だけど俺がシャルを迎えに来たと言う事が最善なら今はそれでいいじゃないか。

 無限のように感じる淡い一時だったが、シャルはその瞼をゆっくり上げ、上目遣いでこちらを見つめ

「・・・足、痛くてちゃんと踊れないかもしれない。」

 親に叱られるのを怖がる子供のように怯えた声でそう言った。よかろう、俺を父と思いたければそれで良い。散々良い乳を拝ませてもらった俺は今こそ報いる時だと確信した。俺はニカリと少年のような無垢な笑みを浮かべ

「エスコートとは相手の全てを包み込む大きな度量が無いとな。大海は芥を択んじゃいけないんだよ。」

 言いながら俺は自然にシャルの腰に手を回して行った。俺はその時遠方から俺達を見つめる注視の視線に気付き、そちらを伺うと鉄心の爺さんだった。俺はウインクを付けて返事を投げ返してあげた。もう吹っ切れてるんだ、今さら止めたとて詮無き事よ。爺さんは目を瞑り、俺達の関係を肯ずるかのようにゆっくり頷くのだった。会話をした訳ではないが俺の耳にはハッキリと爺さんの声が聞こえたような気がした。


―お主に不退転の決意があるならもうワシは何も言うまい。哲平よ、好きに生きろ―


俺はろくに話した事の無い爺さんとようやく心が繋がったように感じ不覚にも目頭が熱くなって来た。俺はそのまま爺さんに向かって一礼するのだった。俺に体躯を預けていたシャルは不思議そうに首を傾げている。俺は彼女を支えて踊る任務があるんだ。

シャルの足が万全で無いためか、お世辞にも優雅な踊りとは言えなかった。しかし俺はこのダンスは上手さよりも暖かさがあると肌身で感じていた。人に見せるとかではなく、パートナーと心を通わせ合う。俺はダンス本来の本質を見抜けた気がした。そのためかシャルを宝石のように丁重に扱い、ひたすらに笑顔を浮かべ足に負担掛けさせないように分別の上に分別を重ねるのだった。

―シャル、俺は君の事を腹の底から愛している―

 爺さんに倣い、俺は行動を持ってその愛情の深さを伝えんとしていた。想いが通じたのか分からないが彼女はまたしても嬉し涙をハラハラ流し

「私、哲平を好きになれて本当に良かった。」

 そう一言渾身の笑みで言うのだった。俺はもうその瞬間彼女の顔しか見えなくなり、自分すら蚊帳の外になった。俺もつられ涙を流しながら笑みを返し

「それは俺も同じ事だ。」

 その一言を掠れた声で返すのが精一杯だった。





―続く―




 はい、皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!ギャグとラブシーンの切り替えがなかなか難しかったですが、今回はこれで良しとしましょう。というか誤字脱字は換算せずに考えるとなかなかに良い出来栄えです。自画自賛でお恥ずかしいですが。もしかしてマンネリ打破のために書き始めたFate小説が功を奏したのかもしれませんね。Fate好きな方は慎二に焦点を当てたSSも暇潰しがてら見て頂ければ幸いです。

 それにしても言葉だけではなく振舞いや動作で愛を伝える姿も、紳士的で結構格好良いと思うんですがどうでしょう。哲平は馬鹿だけど相手を思いやるために手段を選ばない馬鹿なのです。少なくとも作者はそのように書こうと努力して来ました。読者の方に少しでも僕の意図が届けばこれに勝る幸せは無いでしょう。それでは今回はこのくらいで失礼させて頂きます。

本日もこのような駄文をここまで目を通して頂いて誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!3周目、レッツショータイム!
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/03 13:31
 視界が狭い・・・人がぶれて見える・・・残像が見える・・・。

「ふわぁ~~・・・眠い。」

連日に続く夜ふかしは実に次の朝に響いている。俺の午前中は真冬のゴキブリみたいに能力が著しく低下していた。それでもやらねばならんのです。だって社交部楽しいからね。二度目の欠伸を噛み殺しながら瞼を擦り、俺はぼやける視界をクリアにしようとしていた。

あ、そうだ次の授業クリアファイル要るって言ってたな。一応出しておくか、有馬・・・哲平、と。名前もちゃんと書いてね、あ、これ違う、寧ろファイルですらない。ていうか学校に持ってくる必要すらない。「サプライズの全て」という本の裏側に俺は丁寧に名前を書いただけだった。ああ、全然クリアじゃないよ、思考。

一気にやる気の無くなった俺は緩慢な動作で先の本を鞄に直し、机に寝そべった。はふぅ、火照った頬には気持ちいいなぁ、机の冷たさ。俺はそのままの姿勢で気付けば2時間目の授業にまで突入していた。俺って教師から見放されてるんだろうか・・・。何も言われないのもまた危機感を煽られるものだよ。俺はそのまま呆然と黒板を見ていると

ガララ・・・

「失礼します。」

おや、教室に失礼します・・・?職員室と間違えたレディが入って来られたようだ。ハッハッハ、可愛いじゃないか、ドジッ子という奴かい?俺、そういうの嫌いじゃないよ。

「有馬は・・・いたいた。何あんたニヤニヤしてんの、気持ち悪い。」

グサッ、うぐぅ、何たる暴言を・・・ドジッ子がツンデレって凄く腹立たしい話だ。それ以前に聞き覚えのある声だった。何やら俺に用事があるようで、聖華の譲さん。ドジ属性など微塵も無い方でした、ハハ、いや失敬。しかしこちらとて寝起きで気分は爽快、気持ち悪いと言われた分だけ反撃しようじゃないか。

「ふん、突然の訪問にして気持ち悪いとはご挨拶だ。頬を緩める事すら許されぬこの身に何かご用でも?言っておくが金は無い、カツアゲは余所でやって下さい。」

「だれが恐喝してるってのよっ!違うわよ、明々後日に差し迫った有馬主催のパーティー出来るかどうか確認に来ただけよ。有馬なら逃げる可能性もあるからね。」

「軟弱者としては定評があるようだ、嬉しく無いけど。逃げないって、大体どこに逃げるっていうんだ。鳥籠にいるインコのような俺に逃げ場なんて無いよ。」

「どうだか、有馬は虎視眈々と隙を狙って逃げる覚悟だけはしてそうだもの。言っておくけど完全に目を付けてんだからね。」

「その辺にしないか、鼓舞しに来たというのに委縮させてしまってどうする。」

見かねたシルヴィが助け舟を出してくれた。

「憎まれ口叩かれれば誰だってこうなるわよ。」

「憎むつもりは毛頭無いけど、気持ち悪いと口を叩いて来たのはそっちだけどな。」

「そういうのを減らず口だって言ってんの!」

「まぁまぁいいじゃない。哲平違うのよ、聖華さん最近哲平が部活に顔出さなくて寂しいのよ、ね~聖華さん?」

シャル、君もそろそろ発言に灯油を混ぜるのは止めてくれないだろうか。聖華の勢いが増すだけなんだよ。

「全っ然!こっちは清々してるわよ。ただ伝達した以上最後まで見届けたいだけです。」

聖華姐さんは喜怒哀楽が激しいから「!」多用してるなぁ。俺は自身の結果よりも聖華の血管の方が心配になるよ、なんちゃって。

「ったく、またニヤニヤして・・・。本当に大丈夫なんでしょうね?」

「まぁ潜水艦に乗った気になっててよ。どうにかやってみるからさ。」

「なんで沈む前提なのよ・・・。」

「ハハハ、空と広がる海だけじゃつまらない。俺は海中をも見せてあげようと言うんだ。」

「・・・フッ、その分じゃ心配の必要は無さそうね。行きましょう。」

「それでは有馬殿、失礼します。」

「哲平、またね~♪社交部にも来てねっ。」

聖華は不敵に、シルヴィは慇懃に、シャルは朗らかに、それぞれの特徴を残して去っていった。聖華は一度教室を出る時にふと足を止め、こちらに顔を向け

「あ、そうそう。会場と時間、その他諸々の詳細が決まったら連絡しなさいよ。」

「は~い。」

俺はちびっ子のように手を上げて返事を返すのだった。聖華は目を閉じながら溜め息しか出ない様子だったが。一応やる事は決めてるけど、後は練習が必要なんだよな。俺は腕まくりをしつつ授業の合間を縫って練習を始めるのだった。

・・・

今日は俺がパーティー主催の日である。明々後日の癖にどうしてこうも時間というのは瞬間的に進むのか、練習の成果がどこまで見せられるか見ものだけど。聖華に成果を?ふふ、これはふと気付けば面白いじゃないか。時刻は7時、昨日は11時には就寝したからおめめもパッチリだ。何せ今日は社交部の連中にお披露目する日なのだ、万全な体調で無ければなるまい。

優も俺の元気そうな艶顔を見て驚いていた。最近俺の寝起き酷かったもんなぁ。やつれ果てた面構えに最近優も心配してたようだし。今日はいつも以上ににこやかに挨拶をされた。そして楽しい朝食を済ませ、俺は弁当を持って会場に向かう事にした。やはり現場で練習した方が成功確率も上がろうってものよ!

・・・

「ふ~・・・疲れた、よし休憩!」

良い時間になって来ていた。後一時間もすれば社交部員の方々も来られるだろう。俺は自分の練習が本当に成功に導かれるのか、不安だった。でもやることはやったし悔いは無い。勝率1割を切ろうとも俺は最後までやろうと心に決めていた。俺は頬をバチバチ叩いて自身にある弱腰に檄を飛ばし、勢い良く立ち上がり上半身を左右にねじった。失敗するなら前のめりでないとね!

「ごきげんよう、やる気は十分みたいね。」

どうやら時間が来ているようだ。聖華に声を掛けられた。俺はシュタっと手を挙げ

「ごきげんよう!今日はいつにも増してお洒落だねっ、大人びてるよ。」

聖華は僅かに頬を緩め掛けたが、顔を背け

「そ、それより準備は整ってるんでしょうね?」

照れ隠しのように話題を振って来た。ああ、準備はバッチリだ、元よりこっちとしてはそこまで準備いるようなものが無いもんで。

「ああ、バッチリだ。俺は皆を出迎えた後、用事があるからそのまま中で待ってて欲しいけど。」

「・・・あんた、まさか」

「逃げないって!何、その疑心に満ち溢れた眼差し。敵前逃亡するなんて俺の致す所じゃないって!ったく、俺もとんと信用が無いんだもんなぁ。」

俺は鼻っ柱を人差し指で掻きながら道化染みた発言をしていた。その様子を腕組みをしながら聖華は見つめ、ニヤリと口を歪めると

「期待してるわよ、有馬様。」

普段言わない言葉でシニカルな笑みと皮肉の籠った声で仰られた。嫌われたもんだ、俺も、ハハハ。

「ま、泥船に乗った気分で楽しんでよ。」

「はなから期待なんてしてないわよ、ただ精一杯力を出し切りなさい。」

「どうにも、有難いお言葉なことで。死力を尽くしましょうかね。」

「有馬殿、今日は何かと大変でしょうが私は楽しみにしてます。」

「哲平のパーティー、哲平のパーティー♪」

期待してないと言った人以外は皆どうも期待されてるようで・・・。俺の肩に掛かる重圧凄いなぁ。大方揃ったかな?それじゃ俺も準備に入ろうかな。

「優、悪いけど誘導任せたわ。俺はちょっと準備があるもんで、奥入ってる。」

「畏まりました、ご武運を。」

俺は皆の不思議そうな視線を背後に感じながら一人場内の奥、準備室に向かうのだった。

・・・

「どうぞ皆さま、お飲み物とおつまみをご用意いたしております。お好きな物を小皿に取り分けお席に付いて下さい。」

社交部員が優に連れられ場内に入るとお菓子などの軽食、後飲み物に迎えられた。中央に大きなテーブルがポツンとあり、それを取り囲むように椅子と小さいテーブルが置かれている。そして入口付近にバイキング形式と思われる、色とりどりな先の飲食物が並んでいるのだった。彼らはこのようなパーティーが珍しいようで物見高そうに辺りを見回していた。各自思い思いの品を手に席に着いていく。何が始まるのかワクワクしている様子がこちら(舞台裏)からも良く分かる。

俺はもう特殊メイクというかペイントを顔面に施し、出る準備は既に出来ている。今日の俺はもう有馬哲平ではないのだ。今日はピエロになり、とことん馬鹿になってやろうと決めていた。上手くいくかはやってみなければ分からないが、気持ちだけでも負ける訳にはいかないんだ。

皆が席に着いた所で優がマイクを持ち開演の言葉を述べた。

「お待たせ致しました。本日は有馬家主催のパーティーにようこそいらっしゃいました。今より哲平様が皆さんを楽しませるよう、骨身を惜しまずに何か催しをされるそうです。私も存じ上げておりませんが、どうぞ楽しんで貰えれば幸いです。それでは哲平様よろしくお願いします。」

俺はその言葉と同時に軽快なステップを踏んで飛び出した。そして俺の顔面ピエロを見てある人は吹き出し、ある人は笑い、ある人は呆然としていた。さぁやろう、これからがショータイムだ!

「はい、皆さんこんばんは!今より私は有馬の哲平ではございません!道化師として戒名させて頂きます。名前はそうですね『あれは哲平』なんてどうでしょう。英語にすれば『That is 哲平』。長いんで短縮して『ザッペイ』とでもしましょうか、ハッハッハ。」

そう言った瞬間に手を開き、そこから鳥を飛ばす俺。皆一様に驚いた顔をしている。

「ふふふ、道化師としての嗜みという奴ですかね。皆さんせっかく今日集まって頂いたんだ。手品でもお見せしようと思います。今日のために訓練してきたんですよ。なかなか有名所を集めて来たので、知ってる人がいるかもしれません。僕の手品下手だったら笑ってやって下さい。」

俺が後方に置いてあるアタッシュケース(手品セット)を取りに行く時、ちらりと皆の様子を伺った。皆唐突な俺の手品ショウに戸惑いながらもざわざわ話し合っている。これからが正念場、というか緊張の連続だな。シャルはニコニコしながらこっちを見ているが。俺も彼女のように笑みを絶やさずやらないとな、今日はマジシャン兼ピエロなんだから!

「お待たせしました、それではまずはですね『リングスルーマジック』をお見せ致しましょう!」

リングスルーマジックとはかなり有名な輪ゴムマジックになるね。まず輪ゴムを親指、人差し指に通す。それを両指で作るので二セット出来る訳です。それを綱引きのように引っ張り合うのだが、あら不思議、通り抜けてしまうという訳ですね。短期間で出来るようになるのは苦労したが、今ではなかなかの成功率だ。

人前でやるのは勿論初めてなので、かなり内心緊張していた。しかし笑みを絶やさずに何とか手慣れた感じでやると、皆拍手をしてくれた。シャルには大受けのようで何よりだ。皆感心したように手を叩いてくれるのは純粋に嬉しいものだ。

俺はこれで終わるのではなく、種明かしも説明しながら実際皆にやってもらうことにした。それの方が退屈せずに済むし、時間の経過も早いからである。一応マジックは6つ用意しているが、良い時間になれば終わればいいかぐらいの気持ちだった。

一つのマジックに付きその都度小休憩を挟んだりしたのでマジックは計4つで終わりを迎えた。ちなみにやったマジックを列挙すると
・風船飲み込みマジック
・コップの底を通り抜けるハンカチマジック
・生卵を立てるマジック

生卵を立てるに関してはマジックと言えるか定かでは無いが、単に食塩をまいて置くだけで立つのだ。そこで見せるだけでは面白くないと思い、実際に部員の方々にタマゴを渡して置けるかやってもらった。当然立てれない彼らは悔しがる。そして俺はあらかじめ少量の塩をまいた机の上にタマゴを乗せる、あら不思議!なぜ、どうして?コールが起こる。

問題形式で時間を取って相談してもいいから考えてもらうようにした。金子がもしやと思いテーブルを触ったらバレて皆なるほど、と言いながら笑っていた。結果は上々だったのだ。他のマジックにしても皆それぞれ興味深そうに、楽しそうに聞いたり見たり実践していた。どうにか俺は満足して貰えたとホッと胸をなで下ろしたのだった。

最後俺が深くお辞儀をして終わりの合図とした後、俺は笑顔と大量の拍手を返事として頂いた。ちょっと涙腺緩み、メイクが取れさらにピエロになったことだろう。聖華にも

「豪華客船、とまでは行かないにしてもまぁまぁの船旅だったわ。」

「ありがとう、君達が興味を持って臨んでくれたからこそ今日が良いパーティーになったんだ。俺だけの力では成し遂げれなかったよ。」

俺はもう一度皆に頭を下げるのだった。そのままシャルに頭を優しく撫でられたが、不快感は一切無かった。手の動きから優しさしか伝わって来なかったから。俺は今社交部の一員として認められたのだった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんにちは、自堕落トップファイブです!今回は手品路線で参りました。手品サイト見たレベルで出来るみたいな感じ出してる自分が恥ずかしいです(汗)僕は露ほどもやったことありませんが、パーティーのサプライズ的な物を考えてたら浮かんだだけですね。手品のタネ明かしやら何やらはモロパクリにしかなりませんので、ネット環境ある皆さんならすぐに見つける事が出来るでしょう。

まぁオリジナルは何やら感動的なBGMの無駄遣いな気がしないでもない普通のパーティーだそうで。社交界を全く知らない僕が、思考を凝らしたパーティーを作ってていいのだろうかと疑問視してしまいますね。二回目の哲平パーティーと言う事もありなかなか大変でしたが今回はこれで良し。ということでまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで読んで頂き誠にありがとうございました!(謝)



[22592] プリンセスラバー!3周目、当たってるよ?当ててんのよ!
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/03 13:31
「いや、認めて無いから。」

えええええ!そ、そんなぁ聖華姐さん。感動を、俺達の感動を返せよ!俺は口を開けて白目を剥いていた。というかあの流れで結果駄目だって誰が思うんだよ。口からはもうヨダレ駄々漏れだ。

「プッ、アハハハハ。有馬、本当にからかいがいがあるわ。冗談よ冗談♪」

俺は赤い鼻がポロリと落ちた、目玉も落ちれば面白いのかもしれないが残念ながらゾンビではない。視神経さえどうにか出来ればあるいは、いや見えなくなったら嫌だけど。ピエロとしては美味しいフリなのだろう。しかしいくらなんでもタチが悪いったら無いよな。

「じゃあ入部って事でいいの?」

「いいわよ、でもね有馬。あんたのパーティーは面白いけど品が無いわね。」

「手品の品では代用効かない?」

「そう言う事言ってんじゃないわよ。真面目な話なんだから茶化すのは止めなさい。社交部に求められるのは面白さじゃないわ。品位、格式、節度、そう言った礼節を重んじているのよ。だから有馬は社交部に入ってこれらを徹底的に鍛えて貰うわ。嫌とは言わせないわよ。あんたは社交部に入りたいから最終試験受けた。だから郷に入った限り郷に従って貰う。」

「そんな念押さなくてもしっかりやりますって。社交部の方針には何ら異論は無いよ。ただ雑談の時とかは勘弁して欲しいな。常日頃から気張り詰めてたら俺喋れなくなっちゃうわ。」

「・・・ったく、これから社交部部員になろうって者がそんな弱音を吐かないの。そもそもあんた普段から気緩みっぱなしなんだから、張り詰めるくらいが丁度いいじゃないの。」

「本人に向かって何という本当の事を言うんだ。デブにデブって言えば傷つくだろう!」

「傷つく位なら痩せなさい。あんたも自分で気にしてるんなら今後、改めることね。」

「く、上手く切り返しよるわ。分かった、気を付けるけど可能な限りだ。」

「ま、今はいいわそれで。おいおい慣れて貰うとしましょ。私もビシバシ言うつもりだし。」

「鞭とか振るうのは無しよ。後暴力も。」

「場合によるわ、叱って駄目なら殴るしかないじゃない。」

「専制政治に屈する訳には行かない。俺は一人でも立ち向か・・・ぶほぉ!」

「とまぁ、こういう事よ。」

「おぶ、ぐふ・・・分かり、易い例を、どうも。ゴフゴフ・・・」

「はぁ、あんたと話していると終わりが見えないわ。帰るわ、ごきげんよう。」

「ごきげんようって言うならもっとご機嫌良く言ってくれよ。楽しく生きなきゃ損ですって。」

「・・・たく楽観的というか、呑気というか、あんたと私足して2で割ったら丁度いいんでしょうけど。ごきげんよう、有馬君(ニコォ)」

「うわっ、気持ち悪っ!ごはぁ!」

「あんたが言わせたんでしょうが!ふん、もう帰る!」

「す、すいません。咄嗟の事につい・・・ごきげんよう。」

はぁ、思ったことついつい口突いて出ちゃうんだよな。品性も落ちる訳だよ。そこにシャルとシルヴィがやって来た。

「哲平、面白かった!私に聞いたのが良かったのかしら、ウフフッ♪」

「いや、本当に。有馬殿がまさかあのような特技をお持ちとは知りませんでした。」

良かった二人は満足しておられるようだ。シャルは何やら違う方に満足の意も籠っているが。というか君何もアドバイスしとらんじゃないか。星に願ったあれの事言ってんの?

「いやいや、君達も楽しんでくれたから良くなったんだ。受ければ頂上、受けなければ麓にまで辿り着くかさえ分からない。今日は雰囲気が良かったんだ。その一端を担ってくれたのは君ら二人だからね、感謝してるよ。」

シャルは感謝されたのが嬉しいのか、腕に絡みついてきた。また始まった、もう夜悶々して寝れなくなるから止めて欲しい。俺は意識的に左腕を壊死させ、シルヴィに頭を下げた。シルヴィは首を振りながら

「いや、それでも有馬殿のお力です。我々は別に演技をしていた訳ではない。私もつまらない物を高評価する気など全く無かったのです。他の者にしても皆審査員として、今日のパーテイーに参加したはず。だからあなたはもっと胸を張って下さい。道化はもっと陽気で無いといけませんよ。」

最後はちょっと茶目っ気を出した発言で釣られて俺も笑っていた。シルヴィと仲良く話をしていたせいがシャルが頬を膨らませて

「私だってちゃんと哲平のショー見てたわよ~!」

腕どころかホールドに移行して来た。ぬおあああ、これはキツイ。苦しいとかではなくて
リビドー的にキツイ。つまり理性が溶かされる。い、いかん顔やら頭が色々近いせいでフェロモン臭が・・・クラクラして来た。

「シャル、みへは(見てた)のは分かった。だから、ちょっと・・・ね?」

もう脳がやられて上手く喋れなくなる俺。胸が当たり過ぎて色々やばい、とは言えず「ね?」に全てを込めた。しかしそんな物で理解してくれるならシャルに苦労はしない訳で。

「嬉し~~~~~!」

ギュウウウウウ

「ちょあああああ!!」

理性が本能に負け始めておる!不味い、皆の者、ここは踏ん張り所じゃあ!このままでは下腹部に熱が籠ってしまうんだ、それだけは避けねばならぬ、避けねばならぬぞぅ!脳にある全ての力を無心に注ぎ込む事にした。無にすると微量な粒子に抱かれ俺は宇宙の中心にいるんだ。ふふ、何も恐れることはない、俺は・・・俺が宇宙だ!

・・・

シルヴィは戸惑っていた、止めるべきかどうかを。哲平が苦悶の表情を浮かべているようにも見えるが、第三者的にはいちゃついてるようにしか見えない。またシャルも悪意がある行為では無いので止める理由も無い。しかしシルヴィは止める事を敢行する事にした。何やら哲平が白目を剥いてブツブツ言い始めたからである。これは流石に不味いと思ったのだった。

「シャ、シャルロット殿!その辺にしておいた方がよろしいかと。」

「えぇ~、どうして~?って、哲平どうしたの!」

「・・・フフ、コスモ、俺は大自然の一部・・・皆俺の物・・・ハハ。」

もう完全に何言ってるのか分からない俺。その後シルヴィに一発ビンタを喰らって目を覚ました。左頬には綺麗な紅葉が咲いております。

「やぁ、見苦しい所を見せたようだ。」

「本当よ、突然寝ちゃうんだもん!」

「「・・・」」

俺とシルヴィは黙った。未だ何故俺があのような状況になったか分からない彼女に、恐れとも呆れとも知れぬ感情を抱いて。俺はポツリと呟いた。

「・・・帰ろう。」

「・・・そうですね、明日も学校ですしね。」

俺とシルヴィは憔悴し切った声だった。シャルは相変わらず弾んだ声で

「楽しい時間って経つの早いわよね~。でも明日からも頑張りましょう!」

シャルが右手を挙げたので俺とシルヴィも弱々しく手を振り上げるのだった。

・・・

俺は家に帰るとベッドに飛び込んだ。やはりシャルは色んな意味で疲れるな、俺には。服着てるから耐えられてると考えると尚恐ろしい。裸体で来られた時には俺、もう下半身捨てて逃げるわ。優は話し合えば納得して貰えた。しかしシャルは意思疎通を図る事がまず難しい。これは大きな壁だろう。好意を抱いて貰えるのは嬉しいが、短期間で好意過多の状態の彼女に俺は違和感を感じるんだ。

俺はシャルの事をほとんど知らないのに、そこまで受け入れる事は出来ない。彼女も彼女で一体俺のどこに気に入り、どうしてあのような行いを恥じらう事無く実行出来るのか。女性経験何てエロゲくらいでしか知らないけど、あのパターンの奴はいなかった。基本は何かしらイベントを共同で行ってから始まる物だ。だというのに彼女は初対面の時から何やら俺に好意を向けてたじゃないか。実は俺の記憶に問題があって、過去にあったか?分からん、しかしそれくらいじゃないとあの行動に辻褄が合わない。

もう俺は一人で混乱していた。シャルとの距離を悩みまくっていた。シャルを素直に受け入れられない自分が苦しかった。もう俺の内部で異変が起きていたのかもしれない。

コンコン

「哲平様、起きてらっしゃいますか?」

優か、一度頭を切り替える意味で助かったかもしれない。

「うん、起きてる。まだ興奮してるみたいだ。」

「失礼いたします。左様でございますか。本日は本当にお疲れ様でございました。」

「いや、優も俺のパーティー手伝ってくれてありがとうね。最初って肝心だからさ、優じゃなかったら上手く行かなかったかもしれない。」

「ありがとうございます、私にはもったいないお言葉です。お力添え出来たようで嬉しい限りです。」

「いや、ハハ、まぁ何はともあれ一件落着って感じよね。」

「はい、これで哲平様は社交部の誰からも認められた事になります。鉄心様もお喜びになられることでしょう。」

まぁ俺別に爺ちゃんのためにやった訳じゃないけどな。無粋な発言は控えるけどさ。聖華チームに認めて貰ったかは微妙な所だ。ボスの聖華が認めたから、不承不承って感じで竹園と金子も付き従った形だしね。まぁ言うまい、下手に口論する気も元気も今日は無い。俺は軽く頷きながら、聞き流す事にした。さらに優は瞳を潤ませながら

「哲平様の日頃の努力、私は知っておりました。だからこそ私は自分の事のように嬉しく思っているのです。」

俺の代わりに泣いてくれてんだ、良い子だよなぁ。情緒豊かってのは素晴らしいですよ。

「しっかり見守ってくれる優がいたから俺は無理出来たんだろう。ありがとうな、これからもよろしくな。」

「もちろんです、それが私の課せられた使命なのですから。いえ、個人的にも生きがいですが。」

染めんでいい、頬は染めんでいい。ただでさえ、シャルで頭悩ましてんのに。これ以上いらぬ煩悩を刺激されてはかなわん。俺は今日は天然ジゴロみたいになってる気がしたので素直に寝る事にした。

「あ~・・・優、悪いけど今日は流石に疲れたわ。明日もあるし休ませて貰っていい?」

優はハッとしたように手のひらを口に当て

「も、申し訳ございません!粗相をしてしまいましたね。哲平様ごゆっくりお休み下さい。」

「粗相とは思って無いけど悪い、そうさせて貰うな。じゃあまた明日。続きあるなら明日また言ってちょうだい。」

「かしこまりました、それではお休みなさいませ。」

「お休み~。」

「哲平様、明日の夜お話がありますので、失礼します。」

「朝、じゃなくて・・・夜ね。了解。」

込み入った話なのかな?明日の事は明日に考えるか。俺は実際そこまで寝る気無かったけど、実際布団に入って横になると途端に睡魔に襲われた。やっぱ緊張時間長かったせいか、筋肉が一気に弛緩したんだろうな。俺はそのまま眠りに着くのだった。

―続く―


はい、どうも自堕落トップファイブです!いかん、全然進んでない。何やら話するのに力を入れ過ぎたようです。会話を結構続けれる時は続けようとしたら、こんなんになってしまいました。面白ければ幸いですが、つまらなかったらすいません!とりあえずシャルの内情がハッキリ分からない今は哲平はシャルと距離を取る方向で行きます。それではまたお会いしましょう!

本日もこのような駄文をここまで読んで頂き誠にありがとうございます!(謝)



[22592] プリンセスラバー!3周目、俺は理性ある人間だから
Name: 自堕落トップファイブ◆d6d23546 ID:8c53522d
Date: 2010/11/03 13:31
 パーティー晩の夜、優が言ってた話は一体何なのか。俺は分からないが、彼女は思い詰めた顔をしていた。俺は優にもっと自分の人生を大事にして欲しいと願うばかりだ。俺の世話が生きがいと言われても困るし。俺が居ても居なくなっても変わらぬ彼女であり続けて欲しい。俺は寒さから布団の外へ身を出すのは苦痛だったが、何とか上半身だけ乗り出して外気に慣れようとしていた。

うっし、いつまでもこんな事してても始まらん!もう今日は既にスタートしているんだから。俺は掛け布団を足で蹴り上げ、元のように布団に掛けながら起きるのだった。俺が疾風のように食堂に向かおうと思い立ったが、すぐ思いとどまった。

「・・・お前は起きんでいい。」

俺は下半身に目を向けながら一人ごちた。流石に昨日は色々刺激的な体験が多かったためか、息子は張り切っている。俺はとりあえず勉強椅子に座って、国語辞典でも見る事にした。「穴」だとか「甘える」と言った初級程度の単語にも俺の我が子は大喜びだ。いちいちその単語を見るたびに跳ねるからどうしようもない奴だった。動かしてるのは俺だけどな。

そんな最悪の状態の時に

「哲平様、おはようございます。」

ノック音の後に優が優雅に入って来た、優だけに。おいおい、これはちょっと不味いんじゃないか?寝間着姿の俺が何故か勉強椅子に座ってる光景を見て、優は目をぱちくりさせている。

「・・・どうされたのですか?」

うむ、朝立ちと言う奴でね、ハッハッハ。など言えようはずがない。俺は下半身の一部を見せないように足を組みながら

「い、いや気になる言葉があった物だからちょっと辞書を見ていたんだ。」

洞察力がなかなかに鋭い彼女にはちとこれは苦しいか?しかし彼女の判断材料も限り無くゼロに近いんだ。こ、これでどうにか行けるはず。俺の思惑通りなのか、はたまた彼女が俺に合わせてくれたのかは分からないが

「朝食の準備は整っております。用意を済ませて頂けると幸いです。」

俺は心の中で額の汗を拭っていた。ど、どうにかこの場をやり過ごす事が出来たか。彼女は丁重に礼をして部屋を出て行った。やはり夜に何回か世話をしてやらねば、朝奇襲を掛けて来るな。俺は日々の日課を怠った事を悔いながら立ちあがろうと

ガチャ

「申し訳ありません、伝え忘れていた事が・・・」

「・・・」

「・・・」

止まる俺達、息子は元気良く上下に動いて挨拶をしている。テントが揺れ動いているので、どんな唐変木でも分かろうものだ。

「え~っと、故意?」

「いえ、この場合業務上過失に当たります。」

冷静に切り返す辺りは流石なんだが。しかしこのタイミングばかりは俺を謀ったとしか思えないんだ。もう俺の中で羞恥心を振り切ってしまい、逆に堂々とした態度になった。臆面もなく下半身の一部分を盛り上がらせた状態で

「して、用件とは如何なものかな。」

「いえ、今日鉄心様に呼ばれているので、学園の方に行けそうにないのです。」

「なるほど重要度的には上位にランクインしているな。」

「ありがとうございます。」

「分かった、しかし幼稚園児でもなし。一人で学園に行くなど造作も無い。しかも送迎の身なんだからなおさらだ。もう学園にも慣れたし大丈夫だよ。」

「それにしても、学園に向かう直前でも良い話でした。申し訳ございませんでした。」

「気にしないでいい、それじゃ着替えて食事に向かうとしよう。」

「はい、それでは私も鉄心様の所へ行って参ります。」

「行ってらっしゃい、気を付けてな。」

「哲平様も。それでは失礼しました。」

バタム、暴風は去った。何食わぬ顔で会話をしていた俺だがその顔は真っ赤だ。愚息が彼女の言葉に反応して頷く度にチラチラ見られていた。醜態にも程があるだろう。にしても爺ちゃんどういうつもりで優に召集掛けたんだろう。考えて分かるとも思えないけど、気になるもんだよ。俺は息子の頭をはたきながら服装を整えるのだった。この馬鹿たれが!

・・・

「なぁ一体どうしちまったっていうんだ?もうお日様は出ているんだ。そろそろおねむの時間だろう?」

優が居ない俺は一人、腹に張り付いている分身に話しかけていた。今日はいつにも増して駄々をこねるコイツをどうにかしないと流石に不味いだろう。午前中でこの状態なんだ、午後にはどうなるか分かったもんじゃない。そうでなくとも最近ラッキーエロスが舞い込んで来る生活なんだ。いつどんな弾みで俺の異変に気付かれるか分かったもんじゃない。特にシャル何かに気付かれようものなら・・・

「あ~~~哲平、発情期だぁぁ、ウフフ♪」

ブルル、うーむ、恐ろしい。公衆の面前で言われた時には俺はさぞ絶壁に立たされることだろう。朝からして崖っぷちな俺だった。俺は脳内会議でスクラムを組み、掛け声を張り上げながら学園に入って行った。オー、エイ!オー、エイ!勝つぞっ、オー!・・・何にだよ。

・・・

俺がこのような状況下であるに関わらず、事態はより深刻化していた。何やら俺の名前が知れ渡っており、やけに挨拶だの会話を求められるのだ。もう下駄箱に着いた時点からして、カリスマ溢れる蓋が閉まりきってない自身の靴箱。何の嫌がらせかと思えば、手紙だの文通の山で俺の靴がもはや見えない有り様だ。俺は驚愕のあまり停止した。嬉しさが無かったと言えば嘘になる、確かに嬉しい。しかし何故このような状態の時に?今日に限って俺は平穏無事に過ごしたかったのだ。まさか全て同一人物の仕業かと思い、5,6枚手に取って見たが、どれも筆跡も違えば名前も違っていた。今日俺の休まる時は無いと確定したも同然だったのだ。

何度も言わせて貰うが、残念ながら俺の息子は絶倫モードになっている。もはや俺の意思とは別に活動を行っているソレは、母体を求めて頻繁に跳ねていた。何がどういう経緯で俺の名が知れ渡ったのかは分からないが、俺の悪性腫瘍と化した股間を見られたら学園生活は崩壊間違いなしだ。秀峰に来てからやけに波乱万丈な生活になっていると、俺は溜め息を漏らすしかなかった。

不幸中の幸いというべきか、俺の細かい所作から全てを読み取る優が居ないのだけが救いかもしれない。というかもう今朝の一件からこの事態を予測しているだろうけど。思い出したら頭が痛くなって来た。俺は頭を抱えてしゃがみ込みたい衝動に駆られたが、人の目がある校舎内でそのような蛮行を行う訳にはいかない。これでも俺は社交部員の一人なんだしね。

そもそも前かがみでこそこそ歩いている時点で、社交部としての風格なんかあったもんじゃない。俺はこの姿勢を「謙虚さ」と見られるように、後頭部を右手で押さえながら歩いて行った。何人の生徒に声を掛けられたか分からない、教師にすら激励の言葉を頂きながらの移動だった。

しかし俺はようやく分かってきた。なるほど社交部に俺が入部した事が、学園内で流布しているようだ。手紙の中味も読んで無いが入部に付いての檄文だろうか。俺としては社交部ののんびりした雰囲気が好きなだけで、ちやほやされたい訳では無かった。エールを送られるのは有難いが、いかんせん今俺のコンディションがよろしくない。気付けば俺は自分が体調不良気味な態度になっていた。一部の体調が絶好調過ぎて、本体である俺の体調を崩したと思えばいいか。

「有馬様、頑張って下さい!私応援してますっ。」

「ハ、ハハどうもありがとう。」

「有馬様、握手して頂けませんか。私これでも幸運の持ち主なので良い運気を与えれます。」

「あー、今はちょっと急ぐんで・・・」

「有馬さん、おはようございます!社交部入部おめでとうございます、流石ですねっ!」

「ど、どうも、何が流石か良く分かんないけど。」

「有馬君、君ならば社交部に入ると思っていたよ。期待しているからね!」

「あ、どうもありがとうございます。そ、それじゃ・・・」

「有馬様!私と・・・」

「有馬さん!よろしければ・・・」

老若男女問わずひたすらこんな会話ばっかりだった。これは逆に疲れるというか、もう何かそっとして置いて欲しくなる。名無しの方々はどうにも自身の売り込みなのか、なかなかに根気強く接してくるから困る。「急ぐんで・・・」と言ってそのまま去る人はほとんどおらず、尚も「有馬」コールを送って来る。何やら不正を働いた政治家みたいな気分になって来て、悲しいやら恥ずかしくなって来た。そりゃあ手前勝手な理由で先を急ぐんだけどさ、もうちょっとこっちの内情も察して欲しいもんだよ。

俺は堪らず右手は後頭部、左手を開いて揃えた状態で鼻の前で縦向きにしながら前傾姿勢で教室へ走って行った。報道陣となった生徒達は数人ほど付いて来たが、ある程度は分散に成功したのだった。やけに遠く感じた教室に辿り着いてからも同じ状況に変わり無かった。

元々人見知りで仲良くなってから口が回る俺としては、耐えがたい時間の連続だった。言っておくけど、俺と仲良くなってもそんなにメリット無いと思うんだよ。自分で言っててなんだけど、俺の意見なんてどなたにも届きそうにないんだもんなぁ。そんな俺の想いなど露知らず、皆ここぞとばかりにアピールや声援を俺に送って来るのだった。

俺としては不快指数がそろそろ限界に達していたのだが、表情や仕草に出す訳にいかなかった。聖華に社交部の心構えを説かれたばかりだし、それに学園内で悪い意味で目立つ訳にはいかない。悪い噂には尾ひれがつく物だし、広がる分だけ居心地が悪くなる。だから余計な事をせずじっとしているしか方法はない。社交部の後ろ盾があっても、教室内でいじめられたのでは楽しくないじゃないか。俺はやはり通うからには楽しい学園生活が良いんだ。というより下手に動くと俺の部分肥大がバレてしまう可能性がある。それだけは避けたい、笑い者はお断りだ。笑わせるのと笑われるのは似て非なるものなんだ。まして品位を貶めるような笑いは、社交部に対する冒涜じゃないか。

俺はやっとの思いで成功した俺主催のパーティーを棒に振りたくなかった。だからこそ今は悲しみ、苦しみ、辛い思い全てを内部に秘め笑顔で応対しているんだ。それに今後社交界でこういう機会は必ずや訪れる上でも、やはりここは越えねばならない山だった。

・・・

俺は部屋に着いた途端に崩れ落ちた。今まで張り詰めて来た緊張の糸が途切れたようだ。今でも怒張しているそれを呆然と眺めながら、今まで良くバレずにすんだと安堵のため息をつくのも道理だろう。俺は今日の夜中に全部出しきる気持ちで夕食に臨むのだった。

夕食を終えた俺はもう喜色に満ち溢れている。待ちに待った時間なのです。皆の者、待ち侘びたお楽しみタイムだよ。長かった、いや実に長く感じたわ。昨日の今日でいきなり社交部に泥を塗ってあわや追放になりかけたんだ。今日はその反省も意味も込めていつもの倍やってやる!俺はそう思いパソコンの前へ移動した所で

コンコン

「哲平様、昨日言った通りお話があります。」

俺はパソコンに笑顔で向かい合ったまま凍りついた。この、このタイミングでか?もう後は残務処理を済まして寝るだけという今このタイミングで来るのか?俺の息子は忍耐のあまり泡を吹きそうになっていた。もう速攻で用件聞いてさっさと出して寝よう。俺は悩む前に迅速に聞いた方が得策と判断した。

「ああ、どうぞ。」

「失礼いたします。今日はご一緒出来ず申し訳ありませんでした。」

「いや、それは全然良いけど。それでどうしたの?俺としてはちょっと急ぎの用があるから、出来れば手短に頼みたいんだけど。」

「はい、実は哲平様の用事のために参ったのです。」

「・・・はい?」

俺は我が耳を疑った。俺の用事=自己処理、というのを把握した上での今の発言か?

「悪い、耳が遠くなったのか良く聞き取れなかった。もうちょっと鮮明に言って貰っていいかな?」

「はい、ですから哲平様の猛りを鎮めに参ったと申し上げているのです。」

「俺の・・・たけ、り?」

「朝から酷く我慢なされてる事でしょう。私でどうぞ発散して下さい。昨日も申し上げようと思ったのですが、やはり社交界に身を置かれる以上女性の体に慣れる必要があります。今日を機に私で存分に慣れて頂いて結構です。寧ろお願いします。」

立て続けに何やら桃色話をされてパニックになる俺。社交界に居て何で女を知る必要があるのか全く理解できないんですけど。俺が状況整理のために息を整えてる事を良い事に、優がまたしても俺のすぐ傍に身を寄せて来た。何やらこの展開デジャブなんですけどっ!

「ちょ、ちょちょちょっと待てぇぇぇ!」

俺が素っ頓狂な声を上げながら、両手で股間を隠しながらバックステップをしていると

ピリリリリリ

電話の着信音が鳴り響いた。俺は優に目線を送り出る事を伝えると、優も黙って頷いた。最近は定時に電話が掛かって来る事が多いんだ。

「はい、もしもし。」

「哲平か。」

「哲平の携帯電話に掛けておいて何言ってるんでしょうか。」

「ふん、優が出る可能性もあるじゃろうが。」

「その優に襲われるんだけど、もしかして爺さんの仕業?」

「うむ、今後お前が生きて行く上で必ず役に立つはずじゃ。優で慣れろ。」

この人は確かに凄い人でお金もたくさん儲ける程の能力を持っているんだろう。だからと言って唯唯諾諾として全てを聞き入れる事が、良いとは決して限らないと思うんだ。爺さんには爺さんの考えや方針があるように、俺だって生き方や矜持は持ち合わせているつもりだよ。だから俺はこの発言を真に受ける事は出来ない。優の方をチラリと見ると固唾を飲んで見守っている。俺は呼吸を正しながら、気持ちを整えハッキリ言った。

「残念だけどそれは出来ません。」

「・・・何じゃと?」

「俺は出来ないと申し上げた。例えあなたが有馬グループの総帥としての命令だったとしても。」

「お主、その発言がどういう事か分かっておるのか?」

「失礼な発言だとは重々承知の上だよ。でも爺さん、俺はどんな理由であれ軽々しく女を抱く気なんて無いんだ。俺は本能のままに生きる動物じゃあない。理性ある人間だからね。」

「生意気言いよるわ。優に不満があるとでもいうのか?」

「いや、無い。だけどそれは日常生活に置ける不満が無いというだけでね。不満があるのは易々と体を差し出して来る行為その物かな。俺は連れ添って歩いて行くと決めた女だけを抱くと、自身で決めているんだ。安易な気持ちで同衾するつもりは無いんですよ。」

「・・・」

「俺に対する心遣い、配慮、そして援助は感謝の気持ちで一杯です。この恩義は必ず返すつもりだけど、爺さんの人形になる気は無いんだ。それに有馬を背負う人間として自らの意思で持って判断するのが爺さんとしても望む所なんじゃない?」

俺はそこまで言ってから唾を飲み込んだ。俺はある意味最高権力に逆らったも同然なんだ。どんな処罰があるか分かった物じゃないんだ。しかし電話口の向こうで爺さんが頬を緩める気配を感じた。それから長い溜め息をついた後

「いつ以来だったか、反論されたのは。哲平にこれほどの肝が据わっておったとはのう。嬉しい誤算よ。フッフッフッフ。」

「・・・あのぅ。」

「良かろう、抱く女はお主が好きに選ぶが良いわ。元よりわしには関係の無い話よ。それより日々切磋琢磨し、有馬の名を背負うに足る人物になるよう努める事だけは怠るな。」

「あ・・・ありがとう。何か良く分からないけど助かったみたいで嬉しいよ。全然肝据わって無くて心臓ドキドキしてた。」

「そんな事は震える声を聞いておったわしが一番知っておる、ハッハッハ。」

「ハハッ、そうだよな、んじゃまぁそういう事なんで切るよ?」

「ああ、その前に哲平。」

「どうしたの?」

「パーティーの一件は優から聞かせて貰った、良く頑張ったな。」

「・・・ありがとう。」

それで俺達の通話は終わった。俺は携帯をテーブルの上に置いて優に頭を下げた。優の目は充血してほとんど泣いている状態だったんだ。

「ごめん、優が駄目とか魅力的じゃないとかそんなんじゃないんだ。ただ俺は優の事を専属メイドくらいの認識しか持っていない。だからさっき言った風に愛する女として見る事は今の所出来ないんだ。勘違いしないで欲しいんだけど、『今の所』だからね?これから一緒に生活していく中で愛情が芽生えたその時は、俺からアプローチを掛けるよ。電話でも言ったけど俺は悦楽や快楽の虜になって落ちぶれたくないんだ。元々落ちぶれてるかも知れないけどさ、自分の軸だけはしっかり守りたいんだよな。」

優は大きく首を横に振った後

「いいえ、哲平様は何も悪くありません。私の身勝手な申し出たせいで、多大なご迷惑をお掛けした事が申し訳ないだけです。それに私は哲平様のご意思を尊重する身、何ら気に病む事はございません。寧ろ私は嬉しいくらいなのです。強く自分の意見を持ち発言する事は当主として非常に望ましいお姿。今後も意中を胸の内に留めず、仰るべき時は仰る哲平様でいて下さいませ。」

そのような言葉を述べ一礼をした後彼女は部屋から出て行った。気付けば俺の息子も就寝してしまったようだった。本当、気まぐれだよな・・・。俺はもう一度彼女の出て行った方向に頭を下げて、寝る準備に入ったのだった。

―続く―

はい、どうも皆さんこんばんは、自堕落トップファイブです!こう似たような場面に出くわすと、どうしても前回の事を思い出して比較してしまいますね。前回は笑わせに走るような発言をしていたような気がしますが、今回は結構真面目な感じですね。やはり締める時はしっかり締めないと3枚目になると思うんですよね。朝立ちして必死に隠そうとしてる時点で3枚目と言われればそうかもしれませんが。

後オリジナルと僕の描く優は少々キャラ違いますね。オリジナルの方が生真面目な感じですか。ノックせずに入るとかあり得ませんからね。ですから本来の優が好きな方には申し訳ないです。哲平の引き立て役にして申し訳ありません。優ルートの時にはたっぷり話を書くつもりですので(汗)それではこの辺で失礼しますね!

本日もこのような駄文をここまで読んで頂き誠にありがとうございました!(謝)

注意:2週目の最初に戻っています!


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