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[21922] MapleStory:Zero 第0話『Aran』
Name: Maple◆604b9788 ID:05cbd376
Date: 2010/09/15 12:59
 森が燃えていた。恐ろしい形相のドラゴン達が暴れまわっている。白髪を逆立たせた少年が凶悪なドラゴンの群れの中を走っている。
「どこだ、どこに居るんだ!?」
 少年は何かを探していた。必死に声を引き絞りながらドラゴン達を黄金の鉾で薙ぎ払い続ける。ブラックロードと呼ばれる森の奥深くまで来ると、遠くに泣き声が聞こえてきた。ドラゴン達が犇く中、小さな子供が木の枝にしがみ付きながら泣いていた。
「待っていろ!!」
 少年は子供の直ぐ下で子供を狙う不気味な竜の骨が居た。スケルゴサウルスと呼ばれる、自分が生きているのか、それとも死んでいるのかすら理解していない凶暴なアンデットドラゴンだ。
「邪魔だッ!! ローリングスピン!!」
 少年は旋風を巻き起こした。スケルゴザウルスを遠方に吹き飛ばし、少年は木を一気に登った。
「ア、アラン……?」
 子供は助けに現れた少年の顔を見て上ずった声で呟いた。
「遅くなってすまない」
 アランと呼ばれた少年はすまなそうな顔をして頭を下げた。
「うう……、アラン、怖かった……。早く、ヘレナ様の所に帰りたい」
 子供は泣きじゃくりながら言った。アランは頷くと、軽々と子供を抱き抱えて木から飛び降りた。
「ア、アラン! 右腕から血が!」
 アランに抱き抱えられた子供はアランの腕から血が流れている事に気がつき声を上げた。
「そう言えば、アランは怪我をして体を休めていたんじゃないか! それなのに、僕を助けに……」
「気にする事はない。このくらいの怪我、大した事はない。それより、帰りは戦闘を極力控えて迅速に戻りたい。少しの間、静かにしていろ」
「う、うん」
 子供を黙らせると、アランは足に力を集中して森の中を凄まじい速度で駆けた。ドラゴンの群れを迂回しつつも来た時よりもずっと早く森から抜け出した。
 ブラックロードの森を抜けると、巨大な飛行艇がアランと子供を待っていた。飛行艇の窓から一人の若い女性が顔を出した。
「アラン! はぐれた子はどうだった!?」
「ヘレナ! 子供は無事に保護した! 急いで出発するぞ!」
 ヘレナに怒鳴るように言いながら、アランは子供と共に飛行艇に乗り込んだ。
 飛行艇が離陸すると、森の中から様々な種のドラゴンが飛び出してきた。
「まずいわ、ワイバーンの群れよ!」
 女性の金切り声が響いた。アランは飛行艇の窓に駆け寄ると、外の光景に愕然とした。氷結の力を持つブルーワイバーン、炎熱の力を持つレッドワイバーン、そして、呪いの息を吐くダークワイバーンの群れが空を埋め尽くしていたのだ。
 飛行艇の中は阿鼻叫喚の騒ぎだった。頑強な造りの飛行艇も無数のワイバーンの群れの前では瞬く間に落とされるだろう。そうすれば、地上で待ち受けるドラゴン達に食い殺されてしまう。その恐怖に誰もが絶望した。
「アローレイン!!」
 暴風の吹き荒れる音とドラゴン達の咆哮の中で尚響く声がアランの耳に届いた。窓の遥か上の方、飛行艇の甲板にヘレナが立っていた。その手には黄金の竜を象った弓が握られている。ヘレナは矢を放っていた。光輝く矢がワイバーンの群れの上空に一直線に飛んでいく。
 矢は閃光の豪雨となった。ヘレナの放った矢はワイバーンの上空に到達すると一気に爆発した。無数の光の矢が降り注ぎ、次々にワイバーンの群れを射抜いていく。羽根を千切られ、頭蓋を貫かれ、胴を寸断されたワイバーン達が骸となって地面に落下していく様子にアランの近くに居た女性が顔を背けた。
 ヘレナはアローレインを四方八方に放った。飛行艇はその間に高度を上げていく。危険空域から離脱すると、ヘレナが飛行艇の内部に戻った。アランは披露したヘレナに水を持って行った。
「大丈夫か、ヘレナ?」
「ええ、ありがとう、アラン」
 アランが声を掛けると、ヘレナは疲れた笑みを浮かべて言った。
「ビクトリアアイランドに着くまで時間がある。今の内に休んでおけ」
 アランの言葉にヘレナは首を振った。
「いつまた、ドラゴン達が襲いかかってくるか分からないもの。気を抜くわけにはいかないわ」
「しかし……」
「大丈夫よ。エリニアの飛行場に到着したら、ハインズ様が宿を用意して下さっている筈だから。それまでの辛抱よ」
「ヘレナ……。分かった」
 アランは言っても聞かないだろうヘレナの様子に溜息を吐いた。飛行艇には大勢の人々が居るが、遠距離の強力なモンスターを倒せる実力を持った者はヘレナしか居なかった。近距離ならばアランも戦えるが、近距離まで近づかせるわけにもいかない。結局はヘレナに無理をさせる事になる。アランはそれがどうにも歯痒くて仕方がなかった。
「それにしても、最近のモンスター達の凶暴化は一体どうしたんだろうな……。以前はドラゴン達もリブレの奥深くの住処から出る事は無かったのに」
「分からないわ。ただ、風の噂で、暗黒の魔法を使う何者かがモンスター達に暴れさせているって聞くわ」
「……ヘレナ。俺はビクトリアアイランドに到着したら、旅に出ようと思う」
「アラン……」
「何かが起きている。そして、その奥に潜む根源が居る。俺はその根源を倒し、この世界を平和にしたい」
 アランの言葉にヘレナは溜息を吐いた。
「どうせ、止めても行くのでしょう?」
「ああ、止められても行く」
 ヘレナはアランの握る黄金の鉾に顔を向けた。
「マッハ」
 ヘレナが呟くと、黄金の鉾は光を放った。オレンジの光が人の形を象った。
「マッハ、アランをお願い」
 ヘレナは黄金の鉾の精霊であるマッハに言った。マッハは肩を竦めた。
『アランのお守りは骨が折れそうだ』
 マッハはアランが睨むと黄金の鉾の中へと消え去った。
「ヘレナ、俺は大丈夫だ。何者にも負けはしない。だから――ッ!?」
 突然、窓の方から悲鳴が響いた。アランは黄金の鉾を握り締め、窓へと駆け寄った。
「どうした!?」
「大変よ、アラン! 空賊のレッサーバルログよ!!」
「なんだと!?」
 アランは慌てて飛行艇の窓を閉じるように叫んだ。そのまま、足早に甲板に続く階段へ向かった。ヘレナも弓を握り締めて立ち上がった。
「ヘレナ、相手はレッサーバルログだ。俺一人で行く!」
「何を言ってるの!? あまりにも危険過ぎるわ!!」
「もう、レッサーバルログ達はすぐ近くまで来ている。お前は接近戦は不得手だろ」
 ヘレナに待っていろと怒鳴るように言うと、アランは一気に甲板に躍り出た。そこは想像を絶する光景が広がっていた。
 空賊レッサーバルログ。オシリアとビクトリアアイランドの間の空域のどこかの浮遊島に拠点を持つと言われている悪魔だ。モンスターの凶暴化以前からその邪悪さと凶暴さに人々は苦しめられ続けた。
「この船を落とさせるわけにはいかん!!」
 10体もの骸骨の肩当てに蝙蝠の様な翼、二つの角を持つ凶悪な形相の悪魔にアランは恐れる事無く立ち向かった。黄金の鉾、マッハを振り回し、バルログに襲い掛かる。
 獰猛な雄叫びを上げ、アランを敵と認識したレッサーバルログが邪悪な光を口から吐き出した。アランは足に力を集中して回避すると、マッハを振るった。
 マッハを振るった回数が100を越えた頃、アランの体は程好く温まった。マッハを体を回転させながらスイングし、一気にレッサーバルログ達を吹き飛ばした。
「フェンリル!!」
 真正面でよろけているレッサーバルログに狙いを定め、アランはマッハを突き出した。マッハから紫の光が溢れ出し、光は狼を象り、レッサーバルログの体を引き千切った。
 仲間が無惨に殺された事に他のレッサーバルログ達は獰猛な雄叫びを上げた。怒気が空気を震わせ、その恐ろしく鋭い爪を振上げた。
 アランは足に力を集中して殺したレッサーバルログの死体の上に跳んだ。背後に迫る残り九体のレッサーバルログにマッハを向け、下から上に振り上げた。
「ファイナルトス!!」
 マッハを振るった衝撃が冷気を帯び、まるで氷の塊が地面から生える様に現れ、レッサーバルログ達を浮かせた。無防備を曝したレッサーバルログに対し、アランは一気呵成に攻めた。200を越える攻撃を受けて尚も凶暴に吼えるレッサーバルログ達にアランは最後の力を振り絞った。
「コンボテンペスト!!」
 振るったマッハから強烈な冷気が発せられ、レッサーバルログ達の体は見る見る内に氷結していく。
「止めだ!! ファイナルブロー!!」
 マッハを気迫と共に振るった。巨大な熊の様な光のオーラがレッサーバルログを斬り殺した。全てのレッサーバルログを討伐し終えたアランは疲労を感じ、床に膝をついた。その時だった。
「アラン!!」
 ヘレナの声が響いた。ハッとなり、顔を上げると、上半身だけのレッサーバルログが最後の力でアランに呪いの光を放った。アランは吹き飛ばされながら、ヘレナの放った矢がレッサーバルログを絶命させるのが見えた。
「止めを刺さずに気を抜くとは、俺もまだまだ……だな」
 飛行艇から落下しながらヘレナが何かを叫んでいるのが聞こえた。アランは叫んだ。
「ヘレナ!! 必ず戻る!!」
 そして、アランは意識を失った。ただ、意識を手放す前に一瞬だけ幼い声が聞こえた。
「フリエン!! あの人を――」


MapleStory:Zero
第0話『Aran』

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次回、MapleStory:Zero
第1話『Pulido』
オニックスドラゴンと共に生きる村の子供プリドとオニックスドラゴンの子供のフリエン。
一人と一匹が旅に出る事で物語りは始まる。


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