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[21560] 【ネタ】一人で強くてニューゲーム(バハラグ)【一発】
Name: 鵜◆a171d6e0 ID:3200a8a0
Date: 2010/08/29 19:32

 その日の朝、カーナの女王であるヨヨは最近には無かったすっきりとした朝を迎えていた。


 各国との間に平和協定が結ばれて戦争は終結したものの、戦禍によって荒廃したカーナを復興することは
戦争以上の労力と根気が必要な仕事である。
 彼女は女王としての職責を疎かにすることはその最期以外には無かったが、仕事とそれ以外の事情からくる
ストレスを酒で晴らすようになっていった。


(何かが……おかしい……何が……?)


 彼女は酒に強いわけではない。慢性的に悩まされるようになっていた二日酔いが無いのは歓迎すべき事態である。
 だが、彼女は現在の状況に違和感を感じ、落ち着かない気分でいた。


(あれ?私はここにいるわけがないのに。)


 ヨヨは頭を軽く二度振り、眠気を覚ますと見慣れた自室を見渡す。カーナの職人が一つ一つ丹精を込めて作った落ち着いた色彩の
使い慣れた家具が並んでおり、そこには何もおかしなところはない。……そう、見慣れた自室の光景だ。


(判った。この部屋がまだ存在しているのがおかしいのよ!あの時……この部屋で……まさか、私だけが生き残ったの?)


 最悪の想像に、ヨヨは身を震わせた。だが、同時にそれは無いと考えていた。あの理不尽な力に対抗することは人間には無理なのだから。
それが例え彼であっても……


 落ち着きを取り戻した彼女は、ベッドに腰掛けて先日までのことをゆっくりと思い出していた。




 彼女は最期の時以外は、女王の職責を放棄したことは無かった。だが、最期のそのとき、彼女は公人としての立場を
完全に捨てて私情を優先したのである。


 カーナの滅亡……それがヨヨの運命の分岐点だったのは間違いない。国を滅ぼされて蹂躙され、両親を殺され、自身は囚われの身となり、
幼馴染で恋心を抱いていたビュウの生死は不明。
 そんな彼女をグランベロス帝国への復讐心と憎悪だけが支えていた。


 ヨヨは彼女の世話係をしていたパルパレオスからグランベロス帝国の情報を収集しながら、彼の語る戦略論、戦術論を利用して
帝国を打倒する手段を模索していた。帝国の将軍達の能力、性格などの情報を整理した彼女は一つの考えに至る。


 サウザーとパルパレオスが倒れれば帝国は崩壊する。


 無力な彼女がそのための手段として選んだのが、皇帝の右腕であるパルパレオスの篭絡、彼らに相打たせること……ともすれば溢れ、
灼熱に身を焦がしそうになる憎悪と怒りを笑顔の仮面に隠し、パルパレオスに甘える演技をしながら、彼女は帝国相手に一人戦う決意を心に秘めていた。


(でも、ビュウが助けてくれたのよね。あの時は嬉しかった。抱きしめたかった。)


 ヨヨは思い出して目を閉じ少しだけ幸せそうに笑う。彼女は、帝国との戦いには楽観視していなかった。寧ろ確実に
負けるとすら思っていた。そのため、自分に篭絡されつつあるパルパレオスという切り札のカードを放すわけにはいかなかった。


 自らの心を切り刻みながらことさらにビュウに冷たく当たる日々。
 すべては国のため、帝国を分裂させて戦力を低下させ、仲間たちを……ビュウを死なせないためと自分に言い聞かせ、
敵も味方も全ての者を欺いて、吐き気を堪えながら好きでもない……いや、全ての仇である相手と愛を語らう日々。
 戦いには彼女の思惑通りに勝利し続けたが仲間は自分に対して白い眼を向け、ビュウの心は離れていく。


(考えてみたら当たり前ね。でもあのときは、すべてが終わればまたビュウと愛し合えると信じてた……。)


 グランベロス帝国を滅ぼし、神竜たちやアレキサンダーを巡る戦いに目処がついたあの日、ヨヨはビュウをようやく抱きしめることが出来た。
パルパレオスがようやく用済みとなったからだ。だが、返ってきた体の反応は明確な拒絶。

 彼女は慌てなかった。これからの平和な時には長い時間があり、ゆっくりと誤解を解いていけばいいと考えていた。
 そして、いつかは結婚し……ビュウは救国の英雄であり、敵国の将軍と通じていた自分よりも国王として誰もが認めるだろうと。
 幼いときの約束は果たせると。


 まず、邪魔なパルパレオスをサジン、ゼロシンに命じて暴徒を装わせて暗殺した。国を治める器を持った人物が全て死に絶えた
グランベロスは混乱の極みにあるが、彼女の心は少しも痛むことは無い。ただ、報告でそれを事実として受け止め、
両親の墓に復讐が終わったことを報告しただけだ。彼女にとってはその程度の出来事。


 平和な時代が始まり、ヨヨは女王として多忙となる一方で、ビュウはオルレスの騎士と呼ばれるオルレス中の平和を見守る役を引き受け、
王宮に顔を見せることは少なくなった……いや、避けていたというべきだろうか。
 何度も呼び出したにも関わらず、彼は王宮にだけは立ち寄らなかった。


 そんなある日、カーナの城下町で薬屋を営んでいたフレデリカがふらっと王宮に現れる。


 病気がちでひ弱でありながら、それでもあの厳しい戦いを最後まで戦い抜いた彼女をヨヨはそれなりに好意を抱いていたため、
久しぶりに会うこともあり、帰ろうとしていた彼女を自室に招いて侍女に紅茶を用意させて談笑していたが、彼女の話す内容はヨヨに衝撃を与えた。


「お会いいただき有難う御座います、女王陛下。私はもう…一般人ですのに…ごほっ…」
「戦友に会うのはおかしいことじゃないでしょう……大丈夫?無理をしてはいけないわ。それにしても、久しぶりね。」
「あ、はい。今日は体の調子もいいですし……王宮に皆さんに……どうしても自分で報告したかったから……。
私、結婚するんです。一週間後にカーナの教会で。」
 長い髪を三つ編みにしたゆったりとした神官服を着た穏やかな雰囲気の女性、フレデリカは顔色こそあの戦いの中の時と
同じであまり良くないが、幸せそうに笑った。


「そう。おめでとう。フレデリカ。それで相手は?」
「それが……ビュウさ……じゃなかった。ビュウなんです。マテライトさんも大笑いで祝福してくれましたし、センダックさんは……
ちょっと泣いてましたけど。あはははは……」
 センダックの様子を思い出したのか、苦笑するフレデリカ。だが、ヨヨにはそんなことを気にする余裕はなかった。彼女の言っている意味がわからず、問い返す。


「え……ビュウ?」
「はい。結婚は私がこんな身体ですし、彼の幸せを考えると出来ないと諦めてたんですけれど、ビュウはそれでもいいっていってくれたんです。」
 少し涙ぐみながら彼女はそう続けた。ヨヨは笑顔でその言葉を受けながら、フレデリカに対して心中では、グランベロス帝国に
囚われているときに帝国に対して感じた以上の激しい憎悪と嫉妬を抱いていた。


 自分は、想い人を助けるために文字通り身も心も生贄として捧げたというのに、彼女は何も失わずに彼を得ようというのか。
 ビュウのため、仲間のために自分がやってきたことはなんだったのだろうか……。


 私、あんなに頑張ったのに。どうしてっ!


 ビュウも……約束を忘れてしまったのだろうか……私と一緒に教会に入ってくれるって……。


 そして、同時に理解する。彼が今、彼女の恋人として傍にいてフレデリカとしていることを想像するだけでも、怒りがこみ上げ、
やるせない気分になり、悲しい思いをするこのことは……。策略のためとはいえ自分が彼に目の前でしたことだということを。


 彼は私が他人と教会に入っていくのを目のあたりにしても、最後まで自分の職責を投げ出さずに歯を食いしばって戦い抜いた。本当に強い人。


 だけど私には、ビュウが他の人と一緒に教会で愛を誓うなんて認めることは出来ない。彼は私のもの。例え誰であろうとも、そんなのを見るくらいなら──。


「おめでとう。ビュウは私の大事な幼馴染なの。幸せにしてね?」
 ヨヨは完璧な笑顔でフレデリカに、内心で死の宣告を告げた。


 結果、教会に入る直前にフレデリカはサジンに暗殺され、サジンから黒幕がヨヨであることを伝えられたかつての仲間達は……


 ヨヨには正確な情報は伝わらなかったが、恐らくはラッシュとトゥルースあたりが暴発したのだろう。帝国の将軍と通じたヨヨを憎む、
帝国に地獄を見せられたカーナ国民の義勇軍とカーナ国軍とでカーナを二分する戦いとなり、激戦の中ビュウは少数人数でカーナ城に潜入。
城を守るマテライトとセンダックを倒し、


(埃と血と涙でぼろぼろになりながらビュウはこの部屋に来て、私と二年ぶりの再会を果たした……。昔と同じように触れれば
倒れそうな身体で、それでも強い意思の篭った瞳で私を見つめられて……。あれが夢なわけはない。私はこの部屋でわざと
アレキサンダーを暴発させてビュウと一緒に……。助かるわけが無い。それならどうして?)


 考えても答えは出ず、腰掛けていたベッドから立ち上がるとそこで始めて視点が普段と異なることに気づいた。


(部屋が大きい?いや、身長が……体が小さくなってる?)


 ふらふらと姿見の鏡へと近づく。そこには十歳程度の頃の──ビュウと始めて出会った頃の自分の姿があった。
暫くは呆然としていたヨヨであったが、ある可能性に気づくと、寝起きのネグリジェ姿のまま部屋を飛び出した。竜騎士見習いたちの
訓練場が見える場所へと……そして、目的の人物を遠くから発見すると、再び部屋へと戻りベッドへと身を投げ出すと
堪えきれないように嗤い始めた。


「くっ……ふふふ……まさか、こんなことが……あはは……」


 あの出来事は悪夢だったのか──いや、そうではない。


(何故ならアレキサンダーはまだ私の中にいる。魔力も以前のまま。これは奇跡なのね。私とビュウが一緒になれないなんて、
神様も認められなかった、ということかしら。)


「今度こそ、間違えない。今度こそ、幸せになるの。誰の血をどれだけ流してでも。」
 濁った目をしたヨヨはベッドに顔を押し付けながら暫くの間、嗤い続けていた。




あとがき


妄想が浮かんだので慣れないSSを書いてみた。書きたいことが書けてるかは微妙。
続きは書けません。
誰か上手く書ける人に期待。

ヨヨ様は頑張っていい女にしようと思ったんですがさっぱりで、ただパルパレオスがさらに涙目になっただけでした。

反乱に関してはありえるんだろうか。
ただ何が起こってもマテさんとじーさんは姫様に味方する気がするのでこんな感じに。

サジンとゼロシンはおともだちです。
フレデリカはいい子。

名前間違えてたので修正。有難う御座います。
wiki見て書いたのに間違えて涙目。



[21560] 【ネタ】空の二人(バハラグ)【短編】
Name: 鵜◆a171d6e0 ID:ba168a57
Date: 2010/12/04 02:52

 私は暖かい日差し受けながら青く澄んだ空を巨大なドラゴンと共に空を飛んでいた。二度と見ることはないと
思っていた美しい景色を静かに楽しむ。
 ドラゴン──神竜バハムートは私の体調を気遣っていたわるようにゆっくりと飛んでくれていた。


 私は身体が弱い。最早余命は幾許もないくらいに。だから戦争が終わった今となっては空を翔けることなどありえないと考えていたのである。
 バハムート様からの誘いには光栄に思いつつ、一度はお断りさせてもらった。それでもどうしてもと言われた。何か話があるのだろう。


 静かに時が過ぎ、胸が暖かくなって涙が溢れる。
 私は空が好きだ。彼と僅かな時間でも同じ夢を胸に戦う事ができた場所だったから。物思いに耽る私にバハムート様は会話を急かさなかった。
 ゆっくりと大空を悠然と飛び続けてくれていた。


「ありがとうございます。バハムート様。」
 気遣いに感謝し、礼をいう。本当に空をもう一度見ることができて良かったと思う。


『我が無理に誘ったのだ。礼はいらぬ。』
「ビュウさんはよかったんですか?」
 今日はビュウさんはいない。本来バハムート様に乗ることが出来るのはオレルスの騎士である彼だけのはずだ。
 だけど、バハムート様は楽しげな様子で答える。


『女同士の内緒話……というやつだ。男がいては無粋だろう。』
 落ち着いた荘厳な声で語られる予想外な言葉に一瞬混乱してしまったが、意味がわかると少し笑い緊張をとくことができた。


『我はお前に興味がある。』
「はい。」
『お前はビュウを好いている。』
 ストレートな言葉だけど、間違いはない。


「私はビュウさんのことが好きです。」
『ビュウはお前を番にしたいと言った時お前は返事を保留にした。それが不思議だ。何故だ?人間は他の人間を害しても、
好いている人間を欲するのではないのか?』
 心底不思議そうな声。バハムート様は何故そんな風に思われるのだろうか。それはあまりにも悲しくはないだろうか。


「私はビュウさんに幸せになって欲しいのです。だから悩んでいます。」
『ビュウもお前が好きだ。それなら番になることはお互いに幸せではないのか?』
 そう、普通はそうなのだ。ビュウさんからプロポーズをされたとき、どれほど嬉しく、幸福を感じただろう。
 私も素直に受けることができたなら、それはどれだけ幸せなことだろう。私だけの幸せを考えるなら即座に返答できたのだ。


「幸せだと思います。ですが……私の死は目の前にあって、それはもう避けることはできません。私が私の幸せを望めば、
彼が前を向いて歩くことの妨げになるかもしれない。」
 バハムート様は暫く沈黙していましたが息を少し吐くと、


『やはり、短いか。』
「……はい。」
『我はお前たちの女王の中からお前たちを見ていた。女王はお前のことは特によく見ていた。』
 その言葉に頷く。ヨヨ様からの視線はよく感じていた。気のせいだとも思っていたけれども憎悪に満ちたあの目は
気のせいということは絶対に無い。
 他の者の、薬の副作用の激痛に耐えながら吐瀉物を延々と吐き続ける私への蔑みの視線とも違う、あれは何かに対する純粋な憎悪だ。


『薬を使って無理に戦場に立ち、ビュウを助けて最前線で命を削りながら戦い続けていた。』
「本当は、体に負担が掛からない後方の医師として志願したんですけどね。ビュウさんに会うまで。」
 苦笑する。はじめはただの憧れだった。無愛想だけど強くて優秀で頼りになる彼に対する。それが本当の恋心に変わったのは
彼が本当に好きだった人と再会したときだったのは皮肉としかいいようがない。


 ヨヨ様を救出した時の子供のような無邪気な笑顔。それを初めて見たその時、失恋と同時に私の恋が始まったのだから。
 そして、徐々に笑顔を失っていく彼に私もまた心を痛めることになる──。


『お前の行動は報われるとは限らなかった。地獄の苦痛が何度も待っていることも解っていたはずだ。何故あのようなことが出来たのだ?』
 その質問に、私はくすりと笑って自信を持って答えた。


「私がしたかったから。」
『……?』
 理解できないといった感じに呻いたバハムート様に言葉を続ける。


「見返りを求めてたわけではないのです。ただ──いつかビュウの本当の笑顔をもう一度見たかったから。
そのために私にできる何かをしたかったから。そして──。」


「どうしようもなく、不器用で優しい彼が好きだったからできたんです。」








 我は少女──背中に座るフレデリカの表情を見ることが出来ないことを悔やんだ。
 彼女は我が中にいた、光り差さぬ闇の底のような女王とは違って光り輝いているように思えたのだ。


 他人のために何かができること。それがいつも正しいとは限らない。彼女は彼に何かを望んだわけではなく、彼のために……好きな男に
己の短い人生を捧げて幸せになってもらう道を選んだのだろう。それを独善だと否定することは我には出来ない。
 彼女は彼女自身の道を自ら選び、命を賭けて迷うことなく真っ直ぐに進んだのだ。


 ビュウと共にあるために、彼の乗騎たるサラマンダーを力づくで蹴落とした我とは違う。自分のためではなく彼女はビュウのことだけを考えている。
 我は自らを恥ながらも我が彼女のためにできることを考えていた。


 思いついたのは一つの話だ。


「バハムート様?」
『あるところにある女がいた。その女には好きな男がいて相思相愛だった。だが、女は復讐と男と仲間の命のために全てを欺いた。
──その結果、復讐は果たされたが後に残ったものは蔑みと傷ついた己自身と好いた男だった。』
 そして、心を歪めて心の中の神龍達を追い詰めてその暴走を招いた。唯一残った光は思い出だった。


 その思い出は彼女自身の手で既に引き裂かれてしまっていた。
 救いがない一つの話だ。


『偽りは結局何も生まなかった。我は己を偽り、傷つく者をもう見たくはない。』
「バハムート様……」
『様はいらぬ。フレデリカよ。お主と話せてよかった。我はお前がどのような決断を下したとしてもそれを友人として支持するだろう。』


「ありがとう。バハムート。私も話せてよかった。」
 我にとって二人目の人間の友人は楽し気に笑っていた。






あとがき



やっぱり続きを思いつけなかったので短編を投稿。
時系列的には前回のちょっと前くらい。


バハムートとフレデリカの会話です。誰得。


ビュウとフレデリカの話とかも考えましたが、書かなさそうです。
想像を文章化する機械が欲しいです。


一作目の感想、本当にありがとうございます。


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