六課から私たちは出撃します。
「なのは、ブラスターモードのことだけど無理は」
え? ブラスター?
……ああ!
「大丈夫だよフェイトちゃん。使う必要はないし」
私はハロを取り出します。
「ハロ、レイジングハートよろしくね!」
『All Right』
「ドッキングモード、ドッキングモード!!」
私たちは光に包まれる。そして、光が収まると、私の新しい姿。身体のあちこちにアーマーがそうちゃくされ、左肩側に背中から伸びるアームで接続された特徴的なバインダーが装着されました。
本邦初公開! 平行世界で科学者だったユーノくんと協力してもらって人間サイズまでダウンサイジングに成功した新型GNドライブに、スカさんと一緒に私用に再設計してくれた特殊バインダーを装着した姿、名付けて『クアンタフォーム』!!
「え? す、すごいねなのは。それならブラスターじゃなくても……」
フェイトちゃんが驚きに目を見開きます。うん、納得してもらえて私もうれしいよ。
「フェイトちゃんとバルディッシュも頑張ってね。私の代わりにマダオの頭冷やしておいてね」
「う、うん」
そして、私たちはゆりかご組とアジト組に別れました。
聖王のゆりかごが見え、私はそばにいたヴィータちゃんを抱えます。
「へっ? なのは?!」
私のいきなりの行動に戸惑うヴィータちゃん。でも、敵も多いし、説明するよりもさっさと突撃なの。
「イナズマアアアアアア、キーック!!」
高く飛び上がり急降下、ゆりかごまで一直線に飛ぶ。
でも、まだ! 両足に術式を展開します。
どうも、私はそれぞれの世界での「私」のふりができるように、そこの「私」が持つ能力の一部を模倣できるみたいでした。だから羽入ちゃんも気づけたし、変身もできたの。
しかも、他の世界でもその力は健在。さすがに『境界を操る程度の能力』は完全には無理だけど、隙間の中にものを入れとく四次元ポケット的な使い方は大丈夫でした。
で、これもそのうちの一つ……本来はロボット用の技だけど!
「アンド、断鎖術式ティマイオス、クリティアス解放! アトランティス・ストライク!!」
両足の時空間歪曲機構を解放、軌道上のガジェットをなぎ払い、ゆりかごの装甲に私という鉄槌が突き刺さる。
あっさりと装甲は破壊され、私たちはゆりかごの中にエントリーしました。
そのまま床に降りる。
「ふう、結構AMFが強いみたいだね。大丈夫ヴィータちゃ」
「大丈夫じゃねーーーー!」
涙目でヴィータちゃんが怒鳴る。えっ? でもヴィータちゃんに怪我は……
「ちゃんとやる前に説明しろよ! 敵よりお前の方がこええよ!」
そんな……私は突入の手間を省いただけなのに……
『ヨワムシ、ヨワムシ!』
うるせえとハロに怒鳴るヴィータちゃん。
そしてヴィータちゃんはふうっと息を吐く。
「まあいいや、あたしは動力を叩く。なのははヴィヴィオを迎えに行ってやってくれ」
「うん。あ、そうだ」
私は懐から一枚のカードを取り出す。
「んっ? なんだそりゃ?」
ふっふっふ、これはね……
「来たれ!」
私の意志にカードが反応し、アーティファクトが生成される。それは手のひら大の人形。でも、もちろんただの人形なんかじゃない。
「レイジングハート!」
『All Right!』
待機状態に戻るレイジングハート。さらにそれが私の手にあるアーティファクトに吸い込まれる。
すると人形が大きくなり、形が出来上がる。
赤い宝石のような瞳と理知的に見える眼鏡、凛とした雰囲気を漂わす顔、金色の髪は高い位置で結って、私のバリアジャケットと似たデザインのメイド服を纏った私と同じくらいの歳の女の子に変わる。
「えっ、あっ、レイジングハート、なのか?」
その通り! 本邦初公開、私のアーティファクト『共に在りし従者』!
効果は見ての通り、それだけではただの人形だけど、意志を持つ道具を組み込むことでその肉体になるというもの。同時に複数出すこともできるよ。
「念のためにゆりかご内の探索をお願い。もしメガネ見つけたら代わりに殴っておいて」
「了解しましたマスター。ところで例の約束……」
ああ、そのこと。
「大丈夫なの。フェイトちゃんに話は付けてあるの」
「ありがとうございます。ふふふ、待っててねバルディッシュ……」
レイジングハートがバルディッシュが好きだったって知った時はびっくりしたの。
おかげでこのアーティファクトの効果を知ったら、レイジングハートが狂喜乱舞したっけ。
「やっぱり似たもの同士……って、デバイスはどうすんだよ?」
私たちのやりとりにヴィータちゃんはぽつりと呟く。
ああ、それなら……
「この子がいるの」
スカートの中に手を入れて抜き出す。
それは、ある世界で手に入れた槍型の永遠神剣『願い』
「よろしくね、願い」
『はい、主』
位や力は第四位だけど、上位永遠神剣並みの確固とした自我と理性のある珍しい永遠神剣。
ユートさんもこの子くらい求めが大人しかったらって言ってたっけ。
前に威力を落とすためにレイジングハートで神剣魔法使ったけど、それは逆に威力落ちたし、加減に気をつけなきゃね。
「……もう、あたしは行くからな」
『ガンバレ、ガンバレ!』
そう言ってヴィータちゃんはハロに見送られながら、さっさと行ってしまった。
ヴィータちゃんどうしたのかな、ちょっと元気ないみたいだけど。
「では、私も」
と、一度お辞儀をするレイジングハート。
「うん、レイジングハートお願いね」
『ネーサンガンバレ、ネーサンガンバレ』
ハロ、ちょっとうるさいの。
そして、私はガジェットをなぎ倒しながら、ある通路を曲がって、砲撃が飛んできた。
けっこう威力ありそうだけど、私は前面に張ったGNフィールドの壁で砲撃を防ぐ。
でかい大砲を抱えたナンバーズの子、ディエチが驚くけど、今まで見た世界でこのくらいは結構いたよ。それに、あの世界のディエチはもっと強かった!
「オーラフォトンビーム!」
かなり手加減したビームで、ディエチの攻撃を押し返して、ディエチのイーノスカノンを破壊します。
うーん、非殺傷とかできないから、武器破壊やってみたけど大丈夫かな?
ディエチのそばまで行くと、私を睨むディエチ。あ、よかった。まだ元気見たい。
「ごめんね。これが終わったらシュークリーム作ってあげるから」
そして、私は再び中枢を目指した。
玉座の間のドアを破壊する。
そこにあの腹黒眼鏡の立体映像とヴィヴィオがいました。
『あーら、ようやく来ましたか』
それからなんかクアットロが言ってますが、まあ、一言。
「うっさい小悪党」
『こ!』
「まったく、ずいぶんこの世界のクアットロさんはつまらない俗物になってるんですねえ? せっかくの眼鏡属性まで捨てて、一度、自分の方向性を考えたほうがいいんじゃないんですか?」
私の言葉に真っ赤になるクアットロ。
『ふ、ふん! 陛下出番です!』
ほら、やっぱり自分ではなにもできない小悪党。
少なくとも私のいった世界でのクアットロさんは……クアットロさんは…………
だめだ、クアットロさんも人任せだった……
ま、まあ気にしないでおきましょう!
そして、ヴィヴィオが聖王に変身しました。
「あんたなんか」
「やっぱり綺麗だねヴィヴィオ」
ヴィヴィオが何か言おうとしたけど、言わせません。
出鼻をくじかれたヴィヴィオが口ごもります。
「でも、せっかくの綺麗な顔も涙で台無しだよ?」
だから、
「私があなたの、そしてこの世界の涙を拭ってあげる」
私は飛び出しました。
ヴィヴィオがどこからともなく取り出した剣で斬りかかってくるのを受ける。
くっ! 流石に聖王は一味違う! それに、なんでか御神の技を使うし! って、そういえば、ヴィヴィオ、他の世界の私に稽古してもらったって言ってたっけ?
ま、まあ今はそんな余計なことを考えずに!
私はヴィヴィオの剣を弾いて距離を取る。怪我がないように助けたいけど、そこそこ力があるから加減も難しいし……
さらにヴィヴィオが二本の小太刀を巧みに操って斬り込んでくる。
御神の技、その歳でここまで上手に使えるんだ。少し母親として誇らしいけど、今はマイナスにしかならないよ。
「一気に決める!」
さらにヴィヴィオの力が膨れ上がる。
仕方ないの。私もここは全力を出して一気に終わらす!
『トランザム!!』
私とヴィヴィオの声が響く。
えっ? ヴィヴィオもトランザム?! もしかしてこの前見たので学習しちゃったの?!
赤く染まったGN粒子と魔力が玉座の間に乱舞します。それはすごく綺麗な光景
なんだろうけど……そうは言ってられない!
同時に動く。ヴィヴィオの迫る小太刀を受けて私は蹴り。防がれる。
バスターで牽制して、避けられる。接近したヴィヴィオの剣を受けて、壁に叩きつけられる。
その時、声が聞こえました。
『上等だあ!!』
血まみれになりながらガジェットの大群に立ち向かう姿。
ヴィータちゃん!
『数が多すぎる!』
必死に指揮する親友の姿。
はやてちゃん!
『もう、ダメかな』
三人の戦闘機人に追いつめられている様。
ティアナ!
『く、ティア……』
囚われた親友を助けようとするが、阻まれている。
スバル!
『違う、違うよお!』
『君だって間違ってるのがわかってるだろ?!』
必死に一人ぼっちだと思ってる女の子に訴える二人。
エリオ、キャロ……
『戦うつもりはない』
一人の騎士を止めようとする二人。
シグナムさん、リイン……
みんな、戦ってる。だけどこのままじゃ……
『私は……』
赤い糸の檻に捉えられた親友の姿。
フェイトちゃん!
『助けて……ママ』
そして、目の前の泣いている子。
ヴィヴィオ!!
「させ、ないーーーー!!」
その声に気づけば私は叫んでいた。
肩のバインダーが動き、私の背中に回る。そして、太陽炉が私のリンカーコアと直結。バリアジャケットの一部がパージされる。そして、
『クアンタムバースト』
ドライブがさらに強く、粒子を、光を放つ。
赤いトランザムの光と違う、優しい若草色の光が溢れだしました。
光の圧力に押されてヴィヴィオが離れる。その時、声が聞こえました。
『変われなのは。変われなかった俺の代わりに……』
うん、わかってるよティーダさん。
「そう、未来を創るために、私たちは変わるんだーーーー!!」
ドライブに蓄積された高濃度圧縮粒子を全面開放する。
未来を創るための光が世界を満たしていく。
緊急事態ということで戻った無限書庫で僕は見た。GN粒子が世界に満ちるのを。
『い、一体なにが起きてるんだ?』
「すごく、綺麗」
アルフが光に見惚れ、モニター越しにクロノの困惑した声が聞こえる。
なにが起きているか、か……
「……純粋なるイノベイターの脳量子波が、ツインドライヴと連動し、純度を増したGN粒子が人々の意識を拡張させてるんだ」
なのはが言っていた新しい力を呟く。本来はアリシアが言うセリフだけど、
「完全な進化を遂げたんだね、なのは。君こそが、真のイノベイターだ」
『ユーノ?』
クロノが僕を見て目を見開く。
なのはに聞いた時は驚いたっけ。僕も、そのうちそうなるんだって。
クロノの反応からもうなっちゃったみたいだけど……なのはと同じものになれたんだという喜びが胸に溢れる。
「クロノ、これはなのはが旅先で見つけた、本当にお話するための力だよ」
そこでぱらっとページをめくる。
なのはと共に調べた古文書、その一説にくすっと笑ってしまう。賢者の石、それは使用した人物に別の世界の知識を与えたりパラレルワールドの同一人物と入れ替えるというもの。
「だけど、それの本当の力は、全てをハッピーエンドに導くためのデウス・エクス・マキナになれる人を生み出すための力なんだ」
この光……なのはの命の光……
そして、聞こえる。みんなの声が。聞こえる。みんなの思いが。
「なんだこの不可思議な現象は? 念話とは違う、脳に直接声が……」
見ればトーレたちも戸惑っている。今なら!
私は密かになのはに渡された切り札を使う。
「バルディッシュ!『運命』フォーム!」
『Yes,sir!』
バルディッシュが強臓式(アインゲヴァイデ)武剣『運命』へと変わる。がんっと燃料代わりのカートリッジを叩きこむ。
『運命とは囚われぬものである――――』
仮発動でバルディッシュから伸びる闇の刃がスカリエッティの糸の檻を断つ。
「しかたありません、お嬢様御覚悟!」
トーレたちが私に向かってくる。
私も走り出す。バルディッシュを振るい、セッテが避けかけて、
『運命とは逃げられぬものである――――』
『避ける』という運命を断ちきり、セッテに一撃を与える。
「なっ!」
驚くトーレが距離を離そうとするけど、
『運命とは離れ得ぬものである――――』
トーレを逃がさない運命を作り、打ち倒す。
そして、二人を倒したことを確認し、スカリエッティに向かう。
「ああ、欲しかったなその力!」
「違う!」
この男が欲しかったのはそんなのではない。
「あなたが欲しかったのはもっと違うものだ!」
スカリエッティが動揺に固まる。あの時、確かに聞こえた。この男の本当の思い。
「誰かに認められたいなら、もっとやり方があったはずだ!」
そう、この男は本当はただ認められたかった。
ただ、知らなかっただけ。こんなやり方しか。だから、
『運命とは自ら手繰り寄せるものである――――』
「これからやり直せ! 二度は言わない、忘れるな!!」
私は全力でバルディッシュを振った。
レジアスに、かつての親友と相対した瞬間にそれは起きた。
「な、なんだこの光は?」
俺は突然の現象に戸惑う。空間を満たすように輝く粒子、そして頭の中に届く声。
だが、なにより俺を戸惑わせたのは……
「体の痛みが……」
先ほどまで俺を苛んでいた痛みが幻のように消えたことだった。
そして、戸惑う俺にその声が届く。
−−ドクターのために!
その声に俺は動いた。
レジアスの後ろに回った副官が舌打ちしつつも、その手にある爪をレジアスに突き立てようとする。
だが、その爪を槍で弾き、そのまま組み伏せる。
「なぜ、助けた?」
レジアスの声が届く。
「もう、わかったからさ」
先ほどから聞こえている。レジアスの抱く苦悩、葛藤、そして、俺のようなものを生み出した悲しみ。
ナンバーズの一員であるドゥーエを捕縛する。そして、遅れてアギトとあの騎士が現れる。
「旦那……」
「終わりましたか?」
頷く。さて、ルーテシアを助けに行かなければな。
「安心してください。彼女は私の部下が保護します」
そうか、今は思考が伝わるんだったな。
「そうか」
なら、後始末だな。
俺は槍を構え、だが目の前の赤い騎士は背中を向けた。
「どういうつもりだ?」
「ここには、もう敵はいません。私は仲間たちの応援に向かいます」
言葉と共に、騎士の思いが伝わる。
死ではなにも償えない。生きることが償いだと。
それは飾ることのない彼女自身が生きる理由でもあった。そうか、ならば、
「俺も、手伝おう」
それが、せめてもの償いになるだろう。俺も部屋を出ようとして、
「なぜ始末しない?」
声に振り向けば、俺を睨みつけるドゥーエ。
「もう、こりごりなのさ」
俺はそれだけ答えて部屋を出た。
「なのはちゃん?」
突如、ゆりかごから溢れ出した綺麗な光に心を奪われていたらなのはちゃんの声が聞こえた。
いや、なのはちゃんだけじゃないたくさんの声、そして……
『うらあ!』
ボロボロのヴィータが脳裏に届いた。
「ヴィータ!」
助けなくちゃ。私の家族を!
気づけば私はなのはちゃんに貰ったベルトを腰に巻いていた。
「変身!」
そして、ベルトにパスをセタッチ。私は魔法使い電王に変身する。だけどまだや。
掲げた手にケータロスが現れる。私はすぐにそのスイッチを順に押した。
『ヴィー、シャー、シグ、ライ、リイン!』
五つの光が私の周りに現れ、私の中に入る。
『超クライマックスフォーム』
と、まずはメインのヴィータに変身する。そして、騎士甲冑が変化し、右腕にレヴァンティ、左腕にクラールヴィント、胸にバルニフィカス、背中に夜天の書と翼が装着され、変身が完了する。
ばっとポーズを決める。
「あたし、参上! って、えええ! これどうなってる?!」
ヴィータが驚きの声を上げる。
「あら、みんなと合体してる?」
「ここは? 私は確かゼスト殿と……」
「わっ、リインに羽が生えてるです!」
みんなびっくりしとるなあ。事前に聞いてた私もびっくりだけど。
「わはははははは、強いぞスゴいぞかっこいー!! でもやっぱ気持ち悪い」
『最後のメンバーはお前かよ!!』
なんでマテリアル……しかもフェイトちゃんのやないか!
「気にすんなよー! よーし、あいつらに僕らの力見せてやろうじゃないか!」
元気にライが叫ぶ。
『ま、まあライの言うとおりや! いくでみんな!』
『はい!』
「おう!」
ヴィータがパスを取り出し、ベルトにセタッチ。
『Full Charge!』
リインの翼を広げて高く飛び上がる。
「必殺! あたしたちの必殺技!」
私にはなぜかわかった。ティアは大丈夫だって。
なら、目の前の子を!
私はコマンダーを出す。
「レオドライブインストール!」
私の右足にレオサークルが装着される。
「チンク姉の仇!!」
私じゃなくてなのはさんだよ。それに死んでないしって言いたいけど……ただ今は、君たちを止める! それから教えて上げる。
あたしたちがどんなことをできるかを!
ごめん。少し痛いけど……
そして残りのカートリッジを全弾ロード。リボルバーナックルとマッハキャリバーが、レオの鬣が高速回転する。
「レオサークル、ファイナルアタック!!」
私は足を振り抜いた。
世界が光に満たされる中で私は顔を上げた。
聞こえる、なのはさんの声が、スバルの声が、ヴァイスさんの声が!!
私は自分に渇を入れる。まだ、まだなにも終わってない!
「ハロ!」
『リョウカイ、リョウカイ!』
いつから居たのかわからないオレンジハロが姿を変える。
重音を奏でて私の腰の後ろに、ハロが変形した十のホルスタービットが装着される。
私はそのまま歩き出す。
「お、やっと出てきたっすか」
「終わらせるよ」
「ええ」
三人が私を取り囲む。だけど、私の心は穏やかだ。
「そうね、終わらせるわ。クロスミラージュ! ハロ!」
ばっとビッドが展開される。
私は兄さんほど狙い撃てない。だけど、マルチタスクには自信はある!
行くよ、やるよ!
「乱れ撃つよぉ!!」
私は引き金を引く。
『なあ?!』
ナンバーズが回避しようが関係ない、外れようがなにしようが、当たるまで撃ち続ける!
そして、私たちがいたビルは瓦礫となった。
目の前の子から寂しい思いがわかる。
私はそっと目を瞑って、心で語りかけた。
わかるよその気持ち。でも……
あなたの周りにも、あなたを大切に思う優しい人たちがいる! あの紅い子と槍の人が!
私は彼女を止めると強く思う。
「ヴォルテール!」
ヴォルテールを呼び出す。そして、
「ライコーオー・イデア!!」
『おおおおお!!』
私の呼びかけにライコーオーがライコーオー・イデアとして雄叫びを上げる。
『行くぞキャロ!』
うん、ライコーオー! ヴォルテール!
光が溢れる中でガリューの主への一途な思いが伝わってくる。
もう、失わない。今度は護るって……
でも!
「ダメなんだよ、間違えたとわかってるなら、間違ってるって言ってあげなくちゃ!」
僕も間違えた。だけど教えてくれた人がいる。
ハラキリトラと共に現れた腕輪が光る。ばさっと背中に何かがかかる。
「叩き込む、君に! その向こうにいるあの子に!」
自然と知らない言葉が出てきた。
でも、そんなことはどうでもいい。絶対に止めてみせる!
そして、高濃度圧縮粒子を解放しきって私は降り立つ。
そこに呪縛から解き放たれたヴィヴィオが泣いていた。
「ママ……私は」
「ヴィヴィオ」
何かを言う前に私は笑いかける。
大丈夫と伝えたいから。そんなの関係ないからって伝えたいから。
いろんな世界にヴィヴィオはいた。そして、多くの世界でヴィヴィオは私にとって大切な子だった。
「大丈夫、そんなの関係ないから。ずっと一緒にいよ、ヴィヴィオ」
私はドライバーを取り出し、腰に装着する。
「行くよユーノくん。変身!」
『JOKER!』
腰を見ればダブルドライバーが現れた。思ったより遅かったなあ。
「ごめんクロノ、アルフ、後はお願い」
「えっ?」
僕は立ち上がりサイクロンのメモリを取り出す。
「変身!」
『CYCLONE!』
僕は腰のドライバーにサイクロンのメモリをインサートする。
メモリが消えると同時に僕の意識は……
サイクロンのメモリが現れる。私はメモリを押し込んでジョーカーのメモリを差し、横に広げる。
バリアジャケットが緑と黒のカラーリングに変化して、私の右目が翡翠色に、髪の右半分がクリーム色になる。
そして、私は魔法使いWに変身しました。
「やあ、ヴィヴィオ」
「パパ?」
私の口からユーノくんの声が出てきたのにヴィヴィオが驚く。
『今、助けてあげるから』
ユーノくんを取り込んで飛んできたエクセリオンメモリをキャッチしてドライバーに装着する。
<XELION!>
そう、この力で私たちの心と体も一つになる!
『はあああああああ! やあ!!』
バリアジャケットの中心にクリスタルサーバーが現れる。
これこそW最強の姿、サイクロンジョーカーエクセリオン!
クリスタルサーバーが輝く。
「なのは、検索を完了したよ」
OKユーノくん。
『スターライトビッカー!』
クリスタルサーバーからスターライトビッカーを生成する。そして、一つのメモリを取り出す。
<STAR!>
星の記憶を内包するメモリ。その力は複数のメモリの力を収束させる力。
『はっ!』
スターライトビッカーでヴィヴィオの体をスキャン。レリックを表にさらけ出す。
そして、スターライトソードを抜く。
<STAR! MAXIMUM DRIVE!!>
『スターブレイク!!』
星の力で私たちはレリックを両断……できなかった。刃が弾かれる。
あれ? なら……これは!?
ソードを戻して四つのメモリを取り出す。
<CYCLONE! MAXIMUM DRIVE!!
HEAT! MAXIMUM DRIVE!!
LUNA! MAXIMUM DRIVE!!
JOKER! MAXIMUM DRIVE!!>
次々とビッカーにメモリを差して、再びソードを抜く。
『ビッカーチャージブレイク!』
四つのメモリの力が宿った刃で、今度こそレリックを私たちは破壊した。
変身を解く。ユーノくんと分離して、前を見ればうずくまったヴィヴィオ……もしかして、なにかあった?!
「ヴィヴィオ!」
私たちは駆け寄ろうとして、
「待って!」
ヴィヴィオに止められました。
ピタッと私たちは足を止めます。
「ちゃ、ちゃんと自分で立つよ。だって、ママたちと約束したから」
ヴィヴィオが立ち上がる。ヴィヴィオ……いつの間にそんなに強い心を……
そして、一歩、二歩とこっちに近づいてきます。
「ただいま。ママ、パパ」
「ヴィヴィオ!」
私はヴィヴィオを抱き締めます。よかった、ちゃんと助けられてよかった……
「おかえり、ヴィヴィオ」
ユーノくんはそんな私たちを優しく抱き締めてくれました。
さて、もう少しヴィヴィオの成長を喜びたいけど、そろそろ……
『必殺! あたしたちの必殺技!! クライマックスバージョン!!!』
轟音を立てて玉座の扉が砕け散りました。
「ヴィータちゃん!」
超クライマックスフォームになったヴィータちゃんが突入してきます。
「助太刀に来たぜ、ってもう終わってたか」
若干残念そうにヴィータちゃんが呟きます。
うん、もう大丈夫だよ。
「マスター、ナンバーズ二名確保完了しました」
と、両脇にディエチとメガネを抱えたレイジングハートが、続いて入ってきます。
「ご苦労様レイジングハート」
私の言葉にレイジングハートはいえっと笑います。
『えっ? この子レイジングハートなんか?! はあ、エラく美人さんやなあ』
「ふわー、綺麗です」
「凄いぞ綺麗だぞー!」
口々にはやてちゃんたちが誉めてくれます。
「みんな、さっさと脱出しようよ。ほっとけば本局の次元航行艦が……」
ああ、そのこと。
「大丈夫だよ。今、ミッドの郊外に着陸させるところだから」
『えっ?!』
みんなが驚きます。ああ、言ってなかったの。
「邪魔なメガネはレイジングハートが確保してくれたから、その後でゆりかごの権限は私に移行させたの」
いやあ、こんな時に私が聖王家の人間の世界に行った時にゆりかごの仕組みを調べておいてよかったの。
ガジェットに関してもすべて機能は止めたし。これで、この事件はひとまず終了だね。
『先に言えーーーー!!』
ヴィータちゃんたちの叫びが響きました。
ふう、終わった、後は瓦礫の中から三人を探して……
がらっと何かが崩れる音が聞こえ、振り向けばナンバーズの一人が、その手のブレードを振りかぶって……
どんっと横からの攻撃で倒れた。
横を向くけど、誰も……いえ、いました。
ヴァイスさんのヘリが。
なんとなく、ぐっと親指を立てたヴァイスさんが見えた気がします。
ありがとう、ヴァイスさん。
「うわ、ティアやり過ぎ」
と、スバルがこっちに歩いてくる。
「う、うっさい。三対一なんだから、しかたないのよ」
で、でも確かにやりすぎたかもね……
「まあ、いいや。なのはさんから連絡、ゆりかごは止めたって」
そっか、さすがなのはさん。
さて、私たちはあの子たちを捕縛しておきますか。
ふう、なんとかなりました。
ルーテシアちゃんを抱えてます。
「キャロ! 大丈夫?!」
と、そこでエリオくんの声が聞こえて振り向きました。
「うん、エリオ……くん?」
そこにいたのはエリオくんじゃありません。褐色の肌に長い黒髪をスペード形の髪留めでポニーテールに纏めた綺麗なお姉さんでした。
「えっと、キャロどうしたの?」
そして、その口からはエリオくんの声……
「え、エリオくん、なんだよね?」
「? そうだけど……とりあえず、なのはさんから連絡があったよ」
そう言ってエリオくん? は気にせずこっちに近寄ってきます。
「エリオくん……ちょっと自分の身体確認してみて」
? と頭の上に浮かべていそうな顔をして、エリオくんは自分の身体を見まわして……
「どうなってるのこれー!?」
やっと気付いたみたいでした……
にしても……私はぺたぺたと自分の胸を触ります。
なんかさびしいなあ……
そして、郊外にゆりかごを止めて、外に出ました。
「なのは、ユーノ、ヴィヴィオ!!」
そこにフェイトちゃんが待ってくれてました。よし、予定通り。
じゃあ、後始末だね。こんなものあったっていいことないから。
「レイジングハート!」
「了解」
レイジングハートがデバイスに戻ります。
私はその先端を向けて、
「トランザム!!」
本日二度目のトランザムを発動。
溢れる膨大な魔力を一点に集中して……
「スターライトブレイカー!!」
最大魔法として解き放つ。
それは狙い外さずゆりかごを飲み込んで……砲撃が終わった頃には跡形もなくなっていました。
ふう、これで、終わりかな……少なくとも聞いていた限りの事件はこれで終わりです。
と、考えていたら、
『なのはさーん!』
みんなの声が聞こえました。
その声に振り返れば、みんながこっちに向かって走ってきています。
あっちこっちぼろぼろだけど、みんな笑顔です。
よかった。みんな無事だったんだ……
「みんな、お疲れ様!!」
こうして、後にJS事件と呼ばれる事件は終了しました。
~~~~
NANOHAさんだけじゃなくてMINNA無双でした。
これが、これこそがやりたかった!
まあ、今日はこんなところで、それでは!