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[21475] 【完結】平行世界のなのはさん~ユーノくんの不幸~ (おまけ『覇道神なトーマくんとカラカラメグルif後日談』追加)
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:e29fd50e
Date: 2012/08/11 19:01
 こんにちは空の狐です。

 この度『裏切られたなのはさん』の再掲載をさせていただきました。

 多くの方からの再掲載を望む声が上がりとても嬉しかったです。ありがとうございました。

 これからも僕の作品を読んでいただければ嬉しいです。それでは!







 高町なのははその日、六課の仲間とロストロギアの回収任務についていた。

 回収対象のロストロギアは『賢者の石』という赤い小さなエネルギー結晶。詳しい能力については現在ユーノが調べているところだった。

 そして、なのはたちは問題なく、その石を発見した。

「あったこれだね」

 なのはは遺跡の奥に安置されていたその石を取り上げる。

「でも、賢者の石って本当にあるんだね」

「なのは知ってるの?」

「うん。地球では魔法関係のお話によく出るよ。こう手と手を合わせて」

 そして、なのはが手をパンと合わせると……眩い光が当たりを覆った!

「きゃっ!」

 あまりの光になのはと石が見えなくなる。

「なのは!」

「なのはさん!?」

 そして、光が収まるとそこに……エプロンを付たなのはがそこにいた。

「……なのは?」

 いきなり親友の服装が変わったことに驚きながらもフェイトはなのはに声をかける。

 だが、かけられた方のなのははきょとんと首を傾げた。

「……あなたは誰?」

 その一言にフェイトたちは固まった。











 とりあえず、なのは(?)を連れて六課に戻った前線メンバー。

 なのは(?)は突然の事態を飲み込めず頭の上に大量の?マークを浮かべているように見えた。

「あー、なのは、さん?」

「あ、はやてさん、なにがどうなってるんですか?」

「はやてはわかるんだ……」

 複雑そうにフェイトは呟く。

「一応確認しますけど高町なのはさんであっとりますよね?」

「? うん。そうだけど、どうしたのはやてさん?」

 はやては質問してから悩む。

 まずはなにを聞くべきか。目の前の相手が自分の知る親友でないとはわかたっが……

『はやて、少しいいかな?』

 そこでモニターにユーノが映る。

「にゃ?!」

 なのはが目を丸くする。

『例のロストロギアの効果がわかったんだけど……』

「ほんまかい! いったいどんなのや?」

 そして、言いにくそうにユーノはその効果を告げた。

『門ていうのを開けて、使用した人物に別の世界の知識を与えたりパラレルワールドの同一人物と入れ替えるって効果らしい』

 沈黙が部隊長室を支配する。

「なんやてーーーー!?」








 ひとしきり叫んでからやっとはやては落ち着いた。

『……じゃあ、僕はもう少し詳しく調べてみるから』

「あ、逃げるなユーノくん!」

 はやてが呼び止めようとするがさっさと消えるユーノ。

 このへたれ! 淫獣! となにもない虚空を罵るはやてを尻目にフェイトはなのは(パラレル.ver)に向き直る。

「えっと、なのは、さん」

「あ、はい。えっと」

 ああ、そういえば名乗るのを忘れてたと今更ながらフェイトは思い出した。

「フェイト・T・ハラオウンです。こっちのなのはとは幼なじみの友達です」

「あ、はい。フェイトさん、私は高町なのはです。って、ハラオウン?」

 なのは(パラレル.ver)が首を傾げる。

「どうしたの?」

 なのはにさん付けされたことに苦笑を浮かべてから問い掛ける。

「あ、知り合いに同じ名字の人がいて」

 その言葉にフェイトとはやてはピクリと反応する。

「もしかして、リンディかクロノって名前?」

「あ、はい。クロノくんたちもこっちにもいるんですか?」

「うん。私の母さんとお兄ちゃん」

 その言葉になのは(パラレル.ver)が目を丸くする。

「でも、なのはさん随分冷静だね」

 ふとフェイトが呟く。

 いきなり異世界に放り出されたにしては反応が薄い。

「あの、その、信じられないかもしれないけど昔魔法の力に関わったことがありまして」

 その言葉にフェイトはまた少し驚く。意外と近い世界かもしれない。

「なのはさんってなにをしてる人なのかな?」

「えっと、今は調理師学校通いながらお母さんに色々教わってます」

「へえ、翠屋を継ぐのが目標かな?」

「はい。って翠屋もあるんですか?!」

「うん。たまに私も遊びに行くよ」

 なのは(パラレル.ver)が驚いていると、はやてがはあとわざとらしく息をつく。

「なあ、そろそろ私しゃべってええ?」

「あ、ごめんはやて」

 慌てて謝るフェイトにいいよといいつつはやてはなのは(パラレル.ver)に向き直った。

「なのはさん、まだ詳しいことがわかってないんでいきなり異世界に放り出されて気の毒やけど、しばらく私らの保護下にいてもらいます」

「あ、はい。わかりました」

 そこではやては一息切る。

「それでは、そちらとこっちの違いを確認させてもらいます。ちょっと話してもらえへんかな」











「イデアシードにレイジングハート」

「似てるようで微妙に違うね」

 こっちはジュエルシードだしとフェイトは呟く。

 割と近いみたいだと確認してから細かい確認をする。はやてを知っているのなのは(パラレル.ver)以下なのちゃんの世界のはやてが妹のヴィータとともに翠屋の常連だからだそうだった。

 一方なのちゃんはフェイトと自分の胸を見比べて、手でお椀を作ってなにか頻りに頷いていた。

「なのはさんは現在魔法の力はないんですね?」

「あ、うん……だから教官さんはできないよ? 私、その……戦いかたなんて知らないから」

 わかってますとはやてはなのちゃんに頷く。

「あと、対人関係なんやけど、さっきクロノくん知ってるみたいやったけど、どういう関係ですか?」

「にゃ? そ、その……です」

「えっ?」

「その、恋人です」

 なのちゃんの言葉にフェイトとはやては唖然とした。

「さ、先聞いといてよかったわ」

「うん。なにも知らずに会わせてたら大変だったね」

 二人はうんうんと頷きあう。

「あ、あの、なにか問題が?」

「ああ、そのな……こっちではクロノくんとなのはちゃんはただの友達なんよ」

 えっとなのちゃんが零す。

「その、お兄ちゃんは姉さん……エイミィって人と結婚してるんだ」

「そう、なんだ」

 哀しそうになのちゃんが顔を伏せる。やはり異世界とはいえ自分の恋人が他の女と結婚してると聞くのは辛いのだろう。

 はやては気まずそうに頬をかく。

「えっと、じゃあこっちのなのはちゃんの交友関係なんやけど、さっきモニターに写ってたユーノくんっていう人からなんやけど」

「はい」

 その瞬間、はやての目が光った。

「こっちのなのはちゃんの恋人や」

 その発言にフェイトがはやてに振り向く。

「そ、そうなんですか?」

「そうや、もうそばで見てると恥ずかしくなるくらいアツアツでな、近いうちに家族三人で同じ家に」

「はやて、嘘はダメだよ」

 フェイトの言葉にちぇーっとつまらなそうに口を尖らせるはやて。

「確かにユーノと距離は近いけどまだ友達だから。まだ、ね」

 暗く笑うフェイトになのちゃんはこっちの私って大丈夫なのかなと少し不安になった。

「そう、まだ二人はくっついてないまだチャンスはある」

 その言葉に、なのちゃんはこっちの自分に会ったら絶対に色々お話しようと決意する。

 とにかく身近にライバルがいることだけでも知らせないとと。








 そして、簡単にこっちについて説明してからなのちゃんを隊舎に案内することとなった。

「ここが、私たちが使ってる隊舎です。しばらくの間はここにいてもらいます」

「はい」

 三人が向かうのは隊舎に入ると、そこで多くのメンバーが三人を出迎えた。

「えっと、高町なのはです。少しの間ですがよろしくお願いします」

 頭を下げるなのちゃん。

「なのはさん、本当に別人なんだ」

 そこで、とてとてと一人の女の子がなのちゃんに近づく。

「ママ、大丈夫?」

 その一言になのちゃんは固まった。

「ママ?」

 ぎぎぎと首を傾げながら聞き返す。

「フェイトママ、なのはママどうしたの?」

「えっとね、なのはママはね」

 その会話になのちゃんの視界は真っ白に染まった。










「そ、そうですか! こっちの私がこの子の保護者なんですね!」

「そうやそうや、さすがに女の子同士はないよ!」

 はやての説明になのちゃんが胸をなでおろす。

 それから、ヴィヴィオに向き直るなのちゃん。

「ごめんねヴィヴィオちゃん、私はあなたのママとは違う人なの」

「そうなの?」

「うん、でも、ヴィヴィオちゃんのママはすぐに帰ってくると思うから、それまで我慢できるかな?」

「あい……」

 頷くヴィヴィオにいい子だねと頭を撫でるなのちゃん。その姿は確かにみんなが知る『高町なのは』だった。









「お、おいしい」

「うまいわこのシュークリーム」

「ギ、ギガうめえ」

 なのちゃんのシュークリームの美味しさに驚く前線メンバー。

「まだまだなんだけど、そう言ってもらえたら嬉しいな」

 嬉しそうになのちゃんは給仕をする。

 数日も経つとなのちゃんは隊舎で料理を振る舞うようになっていた。










「えっと、クロノくん……なんだよね?」

「ああ、君が他の世界のなのはか」

「はい」

 対峙する平行世界での恋人。そして、

「よりにもよってハーヴェイか……」

 実はハーヴェイは、こっちのクロノが昔使った即席の偽名でいわゆる黒歴史だったりする。

「まーまー。ハーヴェイくん」

 平行世界の自分の話を聞いて落ち込むクロノを慰めるエイミィ。その姿は年期の入った夫婦そのものだった。








「えっと、はじめましてユーノ・スクライアです。って、なんか変な気分だな」

「高町なのはです。そうなんですか。一応知ってる相手なはずですもんね」

 ユーノと会うなのちゃん。

「あの、ユーノさんってこっちの私どう思ってるんですか?」

「え? それは、大切な友達だよ」

 その返答に本格的にこっちの私と話さねばと誓うなのちゃん。








 そして、ユーノの調査によってロストロギアの使い方が判明、なのちゃんを元の世界に戻すこととなった。

「あの、短い間ですがお世話になりました」

 隊舎前に集まった六課のメンバーに頭を下げるなのちゃん。

「ええよ、ええよ。こっちも楽しかったしな」

「頑張ってねなのは」

 なのちゃんに微笑むフェイトとはやて。

「シュークリームおいしかったです!」

「その、色々ありがとうございました」

「楽しかったです!」

 フォワード陣もなのちゃんにお礼を言う。

「その、あっちの僕に頑張れと伝えてくれ」

「はい」

 クロノも恥ずかしそうになのちゃんに頼む。

「なのちゃんママ」

 いつの間にかそういうふうに呼ぶようになったヴィヴィオがなのちゃんの足に抱きつく。

「ヴィヴィオちゃん。ちゃんとママの言うこと聞くんだよ? ピーマンとか好き嫌いしちゃだめだからね」

「あい」

 しゃがんで頭を撫でてあげながら、一つ一つ確かめるようにヴィヴィオに言い聞かせるなのちゃん。

 そして、立ち上がってヴィヴィオから離れる。

「それでは、お世話になりました!! みなさんのこと忘れません!」

 そして、なのちゃんは賢者の石の正しい使い方。戻る世界をしっかり思い描きながら両手を合す。その動作に反応して石が光を放ち……








 なのちゃんは扉以外なにもない場所に足を付けた。そこに、服以外同じ顔のなのはが立っていた。

「こんにちは私」

「にゃはは、やっと戻れるんだ」

 ふうとため息をつくなのは。なのちゃんはふふふと笑う。

「私の世界どうだった?」

「うん、いい世界だったよ。なんか、ずっといてもいいかなって思ったのですが」

 そう言って笑うなのは。

「やっぱり私の世界はこっちだなって思えた」

 そっかと頷くなのちゃん。

「頑張ってね」

「そっちもね」

 そうやり取りを交わし、お互い前に歩きして、相手の後ろにある扉に向かいすれ違う二人。

「あ、そうだ」

 思い出したように扉に入る前になのちゃんが振り向く。

「告白するなら、早くした方がいいよ?」

 ぶっと吹きだすなのは。

「にゃあ、善処します」

 引きつった笑みを浮かべながらのなのはの返答に満足そうに頷くなのちゃん。そうして、二人は同時に扉へと飛び込んだ。






 数日後、なのちゃんはクロノと一緒に兄恭也が率いるFC翠屋の応援に来ていた。

「そっか、そんな世界だったんだ」

「うん、ヴィヴィオちゃんかわいかったんだ。私も子供欲しくなっちゃった」

 その発言に苦笑するクロノ。

 仲睦まじく二人はグラウンドにやってきたすると、

『おはようございます、なのはさん!!』

 一糸乱れず並んだFC翠屋のメンバーが二人を出迎えた。

「にゃあ!? お、おはようみんな……今日はがんばってね」

『はい、ありがとうございます!!』

 そして、百点中百点を上げたくなるほど綺麗な礼をしてからメンバーは自分たちのポジションに散って行った。

「こ、これどうなってるの?」

「なんだなのは覚えてないのか?」

 そう言って近づいてきたのは、最近奥さまである忍との間に二人目のお子様ができた恭也お兄さん。

「少しばらばら気味だったメンバーに喝を入れてから熱心に指導してたじゃないか」

 その一言になのちゃんは頭を抱える。

(あっちの私なにをしたのおおおお?!)









 一方、六課。

「法皇テムオリン! ここであったが三周期目え!! あれ? ここどこ?!」

 光の中から飛び出したのは、白を基調にした戦闘衣装を着こみ、赤い宝玉の付いた杖を持った少女。

「また違う子が出てきたあああああ!!」

「どうすればいい? どうしたらなのはが戻ってくるの?!」

 慌てふためく六課メンバー、その様子にきょとんとする第二位永遠神剣『不屈』を持った魔王なのはだった。








 そして、どっかの世界。

「ふえええええ! どこ? ここどこなのお?!」

「あれ? なの、は?」

「ママ? でもなんか違う……」

 周りに今まで感じたこともないような力を持つ存在に囲まれて慌てるなのは。ユーノとヴィヴィオも普段のなのはとの違いに困惑している。

 エースオブエース高町なのはの平行世界旅行が終わるのは…………今しばらくかかるようである。







~~~~
勢いで作った今は反省しているが後悔はちょっとだけ。
ただ、なのちゃんの口調とかが、少し不安。
最後らへんでなのはがにゃあとか使ったのは、なのちゃん世界でなのちゃんの振りをするために癖を付けたためです。



[21475] エターナルななのはさん
Name: 空の狐◆49752e86 ID:e29fd50e
Date: 2010/09/03 20:59
「えっと、ここはどこ?」

 ナノハは戸惑っていたいきなり門が開いたと思ったら、突然知らない場所に出たのだから。

 改めて周りを見る。わりと近代的な建物、その前に集団があってこっちを見てる。そして、その集団を見て、夫である相手を見つけてナノハは近づいた。

「ねえユーノくん、いきなり何がどうなってるの?」

「え? えっと、い、いきなり聞かれても」

 聞かれたユーノも言葉に困窮する。よく見れば、神剣も持っていない。たぶん違う世界の同一人物らしいとナノハは判断する。

 それから、彼女はかつての親友も見つけたけど、自分を知らない、もしくは覚えてないということはわかってるから少し哀しい気持ちになりながら無視しようとして、

「なのは、だよね」

 と、声をかけられて振り返った。

「フェ、フェイトちゃん? 私の名前を?」

「え? う、うん」

 フェイトが頷くとナノハは抱きついた。

「フェイトちゃん!!」

「わ、なのは?!」

 突然のナノハの行動に慌てるフェイト。

「ありがとう、違う世界だってわかってるけど、私のこと呼んでくれてありがとう!」

 親友に再び名前を呼んでもらえた。それは、ナノハの叶わない望みだったはずだった。










 賢者の石で召喚されたナノハは隊舎で色々と話をすることとなった。

「ふーん、こっちの私ずいぶん面倒なことに巻き込まれてるんだ」

 ナノハはうんうんと頷く。

「そうなんですよ。えっとナノハさんでいいですよね?」

「あ、そうだ、ちゃんと自己紹介しないとですね」

 そう言ってこほんとナノハは咳払いする。

「私は魔王なのはです」

 その言葉を聞いた瞬間、全員その場から引いた。













「なるほど、魔王というのは剣の持ち主に与えられる称号なんですね」

「そうだよ。だから、別に私は世界を滅ぼしたりしないよ?」

 みんなが引いてから慌ててナノハは説明した。エターナルの存在も「永遠神剣というものの管理とそれが起こす問題を解決する集団」と嘘の交じえた説明もした。

 ちょこちょこ、「本当に魔王になってた」など、「前から私怪しいと思ってた」などというささやきが聞こえたものの彼女は無視する。

「でも、どうしようかはやて、また違う人が出てきたら大変だよ?」

「うーん、そうやなあ」

 どうやってこの世界のなのはを連れ戻すかを考え始める。

 現状、賢者の石は一週間ほど力を貯えないと使用できないこともわかっている。

 となると一週間ごとになのはが出るまで何度も賢者の石を使うということになるが、さすがに異世界から来た人間を一週間も滞在させるわけにもいかないし、なにより上からなにを言われるかわからない。

 それに、これ以上は新人の訓練にも支障を来す恐れもある。

「あ、それなら、私と『不屈』が手伝いますよ。できるよね不屈」

『All Right』

 本来エターナルは世界に干渉してはならないルールだが、下手に転移をさせて世界を乱すよりはと手伝う約束をするナノハ。その言葉にはやては涙を流しながらお願いした。









 そして、さっそくナノハによる訓練が始まる。

「この程度でへこたれないの! ほら立って! 諦めたらそこで終わりなの!!」

『は、はい!!』

 長い戦いの経験、そして、いろんな世界で得たものを少しでも叩きこもうとするナノハ。

「く! あたしも負けられねえ!!」

 なぜか教官のはずのヴィータもナノハの訓練に参加していた。











 そして、緊急出撃でも、

「神剣の主として命ずる! マナよ、我が声を聞け。オーラとなりて我らに不屈の力を与えよ! デターミネイト!!」

「わ、温かい」

「なんか、力が湧いてくる」

 マナの加護に驚く新人たち。

「マナよ、我が声に応えよ。一条の流星となって、彼のものたちを貫く力となれ! ディバインバスター!!」

「ディバインバスター? でも、なのはさんよりでかい!」

 エターナルの強大さに驚く新人。

 光が収まるとガジェットたちは消し炭一つ残っていなかった。








「ん~、ヴィヴィオはかわいいねえ」

「ママだっこ~」

 はいは~い、とヴィヴィオを抱きあげるナノハ。

 自分の娘と違うとわかっているが、ついつい同じ感覚で甘やかしてしまうナノハ。

「そっちでもヴィヴィオがかわいいの?」

 無限書庫に帰ろうとしてナノハに捕まったユーノを見ながらフェイトが苦笑気味に尋ねる。

「だって、ユーノくんとの大切な子だもん」

『……え?』

 ナノハの世界ではヴィヴィオは、なのはとユーノの間にできた子であることを知ったフェイトとユーノ。









「で、聞くけどこっちの私はただ、大切な友達なの?」

「う、うん。そうだよ」

 フェイトにこの世界の自分とユーノの関係を尋ねるフェイト。

「ダメなの! そんなんじゃ時深さんにキングオブヘタレって言われちゃうの!」

「そ、そんなこと言われても!」

「フェイトちゃん! こっちの私はユーノくんをどう思ってるの?!」

「……やっぱ、大切な友達なんじゃないかなあ?」

 とりあえず、ナノハはユーノからアプローチするように仕向けることを心に決めた。









 そして、一週間がたち、再び賢者の石が使えるようになった。

「その、楽しかったよありがとう」

 ナノハは笑う。

「いや、お礼を言うのはこっちの方や」

「ありがとうナノハ」

 ナノハの協力によって賢者の石は調整され、燃費は非常に効率化されていた。おかげで一週間待たず、二日程度で再使用できるほどである。

 また、なのはを戻すためにも安定性も上げるのにも尽力してくれたのだ。

「ユーノくん、少し自分に自信持ってね」

「う、うん」

 ユーノが頷くと、ナノハは賢者の石に歩み寄る。

「じゃあ、みんなさよなら」

 そう言って賢者の石をナノハは発動させた。







 そして、光が収まると。

「こんにちはなのです」

 年は十歳前後で幼い、青っぽい黒髪を持った可愛らしい少女がいた。

「今度は完全になのはちゃんと違うううウウウウ!!」

「ナノハ! ちゃんと安定性上げたんだよね?!」

 オヤシロさまの巫女、古手梨花が召還された。







~おまけ~


 はやては学校帰りに『翠屋』と呼ばれる喫茶店に来ていた。

 学校で友人がおいしいと絶賛したシュークリームがどんなものなのか興味を抱いたのだ。

「いらっしゃいませ、ご注文はって八神さん?」

 席についたはやてがメニューから顔を上げると、そこに友人の友人である高町なのはがいた。

「あ、高町さん? 高町さんってここでバイトしてるんか?」

「ううん、ここの店長が私のお母さんだからお手伝いしてるんだ」

 へえ、とはやては驚く。

「じゃあ、高町さんは将来このお店を継ぐんかな?」

「うーん、それはまだ未定なのですが」

 それからなのはが桃子に呼ばれるまで二人は世間話を続けた。

 思いのほか会話が弾み、クラスメイトの意外な一面を見れてちょっと得した気分になったはやては、それから幾度も翠屋に通うこととなる。

 これが、二人の出会いだった。





~~~~
カオスエターナルのなのはさん。
続いて召喚されたのはリカちゃま。さて、次はどんななのはさんを呼ぼうかな?
感想に「はやてとどういう風に知り合ったのか」とございましたのでおまけで書きました。
おまけのストーリもちょっと続くかと思います。



[21475] 梨花ちゃんとなのはちゃん
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2010/09/09 17:25
 そして、梨花ちゃまは首を傾げる。

「みぃ、ここはどこなのですか?」

「ああ、ここはな」

 はやてが慌てて現れた梨花ちゃまに事情を説明する。

「そうなのですか~。では、二日間よろしくお願いします」

「え、えらいあっさり納得したなあ」

 あまりに呑みこみの早い梨花ちゃまに首を捻るはやて。

「だって、僕はオヤシロさまの巫女さんなのです。それに、二日ならリミットぎりぎりだから問題ないしね」

 後半はよく聞こえなかったが、よくわからない理由で胸を張る梨花ちゃん。その姿に……ツンデレガンナーが鼻血を吹いた。

「はう~っ、かぁいいよ~!お持ち帰り~!!」

「ティ、ティア?!」

 突然の相棒の奇行にスバルは驚きの声をあげるしかなかった。








「みんなで遊ぶのですよ」

 と、訓練の合間にフォワードメンバーに提案する梨花ちゃま。

 率先してティアナが参加して、それから他のメンバーも参加する。

 次々とその萌落としと、実は堅実かつ狡猾な策略で勝利を掴む梨花ちゃま。

「また、上がりなのですよ。にぱ~☆」

「はう~、梨花ちゃんじょうずじょうず」

 鼻血を流しながら梨花ちゃんに恍惚の顔を向けるティアナ。

「ティア……」

 あまりの相棒の変貌に涙を流すスバル。










 そして、出動になぜかついてきた梨花ちゃま。

「あう~、僕がなにかしたのですか? こわいですよぅ……」

 涙目でぷるぷる震えながら敵を見つめる梨花ちゃまに敵は「萌~!!」と吐血、もしくは涙を流して「俺、なにやってるんだろ?」 と泣きだすものまでいた。

「ええい、こんな餓鬼にお前らなにしてんだ!」

 だが、その精神攻撃(?)を耐え、梨花ちゃまに攻撃しようものなら……

「はう~、ダメだよぉ、そんなことしちゃあ」

「ぐああああ!!」

 神速の『レナぱん』もとい『ティアぱん』が顎を打ち抜く!

「私よりも早い……」

 相棒の神速の攻撃に自分の存在意義を見失いかけるスバル。

 そして、その隙に、

「これが私の全力全壊!!」

「えええええ?!」

 掴んだキャロを『超級覇王沙都子弾』改め『超級覇王キャロ弾』の弾として撃ちだす梨花ちゃま。それでほぼ敵を制圧してしまった。

 以後、キャロはなのはに微妙な距離を取る様になったとか。






「やっぱりなのはちゃんなんやな……」

 梨花ちゃまの決め台詞を聞いて独白する部隊長。







 そして、再び賢者の石を使いなのはの召喚を試みる六課。

「せめて『なのはちゃん』が出てくれればいいんやけど」

「そうだね……」

 半分投げやり気味にはやてが呟く。

「ではさよならなのです!」

 ぺこっとお辞儀するりかちゃま。

「じゃあね梨花ちゃん!」

「ううう、梨花ちゃん」

 ヴィヴィオはブンブン手を振り、ティアナは相棒たちに押さえられながら涙を流す。

 ティアナがお持ち帰りしようとして、召喚の邪魔をさせないため、スバルやヴィータたちに阻まれているのだ。

 そして、賢者の石が発動し、梨花ちゃんが光の中に消え、新たな少女が現れた。それは、綺麗なブロンドの髪に、翡翠と紅の虹彩異色の少女。

『ヴィヴィオ?!』

 全員が驚く中、女の子はきょとんとしていた。

 そして、きょろきょろと一同を見まわしてから、ぱあっと笑った。

「パパ~」

 そして、とてとて走ってユーノに抱きついた。

『パパあ?!』

 全員が素っ頓狂な声を上げる。

「……もしかして、なのはとユーノが結婚した世界から来たその子供とか?」

「……ありえるわな。でも、それだと目が説明できないわ」

 こそこそと黒いオーラを出しながらフェイトとはやては相談する。

 そのオーラに当てられ少し背筋が冷たくなるユーノ。

「こんにちは。お名前は?」

 とりあえず黒いオーラをねじ伏せたフェイト。

 困惑するユーノに変わって話しかける。すると、

「あれ? フェイトおばあちゃん?」

 女の子の言葉にピシッと空気が固まった。








「君のお名前は?」

 しくしくと隅で泣き始めたフェイトを置いといて、はやてができる限り優しく問いかける。

 その頬は今にも吹き出しそうにピクピク動いていた。

「なのは・スクライアです!」

 元気にピシッと手を挙げながら答えるなのはちゃん。

 だが、その名前に全員困惑する。なのはの名前とスクライアのファミリーネーム、どのような経緯の子か想像できないのだ。

「えっと、なのはちゃんのパパとママは誰かな?」

 はやてが念の為聞いてみる。

「ユーノパパとヴィヴィオママです!」

 それを聞いた瞬間、はやてと、いつの間にか気を取り直したフェイトがユーノの肩を掴んだ。

「さあ、キリキリ吐いてなユーノくん」

「えっ?!」

「流石に犯罪だよユーノ……」

 ドロドロとした情念混じりの目を向けるフェイト。

 痛い、掴まれてる肩がすごく痛い。

「ちょっと待って! 僕じゃない! 僕じゃないんだあ!!」

 そしてユーノは二人に連行されてしまった。









 げっそりとなったユーノとフェイトたちが戻ってからなのはちゃんにみんなは色々お話を聞く。

「パパとママはすっごい仲がいいんです! 近所でも評判のおしどり夫婦で、特にパパは周りから『ロリコン』なんて言われてるんです!」

「なのはちゃん、それ褒め言葉やない」

 とりあえず、小学生の勘違いを突っ込むはやて。

 なのはちゃんはどうやら普段の定位置であるらしいユーノの膝の上に座っている。

 一応、この世界がなのはちゃんのところのユーノと違うことは説明したもののパパはパパということらしい。

 すると、くいくいとヴィヴィオがユーノの袖を引っ張る。

「ヴィヴィオってユーノくんとけっこんするの?」

「ヴィヴィオ……」

 無邪気な笑顔を向けてくるヴィヴィオに、なんとなく泣きたくなったユーノだった。

『まあ、しますね』

 と、なのはちゃんの首にかけられていたレイジングハートがちかちか光った。

『レイジングハート?』

『はい』

 全員の注目を浴びながら答えるレイジングハート。ほとんどの人間がいたんだという顔をしている。

『それでは、マスターが何者なのかは私から説明させていただきます』

 そして、レイジングハートは語った。なのはちゃんがやってきた世界で、高町なのははある事件で帰らぬ人となってしまったこと。

 その事件の後、ユーノがヴィヴィオを引き取り、フェイトやはやての助力を得ながら必死に育てたこと。

 そして、ヴィヴィオは十八歳の誕生日に、ユーノに告白し、その一年後、二人は結婚。生まれた子供に二人の大切な人の名を贈ったことを語った。

「そうなんだ……」

 ユーノはしんみりと将来の娘になるかもしれないなのはちゃんを見つめる。

『もちろん周りからロリコン司書長、犯罪者と罵られ、『ヴィヴィオちゃんをVividに愛する会』に命を狙われましたが』

「そうなんだ……」

 今度は涙を流しながらユーノは答えた。









「ママのほうがちいさい~」

「えへへ~、なのは~」

 親子というよりは姉妹のように遊ぶ二人。

 特に二人はザフィーラの背に乗るのが好きなようで、一緒にのっかる姿があった。ザフィーラも嫌がらず、むしろ率先して二人を背にのせていた。

 そのほのぼのした姿に、

「はう~っ、かぁいいよ~!今度こそお持ち帰り~!!」

 と、再びツインテールが暴走しかけ、『ティアぱん』で何人も沈められながらも、他の六課メンバーに取り押さえられる一幕もあった。








 そして、フェイトは……

「あの、レイジングハート」

『なんですか、サーフェイト』

 それから、意を決して聞くフェイト。

「その、私ってそっちではどうなったの?」

『ユーノに幾度もアプローチをかけたものの、友達としか認識されず、最近、孤児院を開き、そこの院長になりました』

「……そう」

 その後、出撃したフェイトは……

「プラズマザンバーブレイカー!!」

 リミットは外さない範囲で大技を使い、八つ当たり気味にガジェットを薙ぎ掃う。

「ユーノのバカヤロおおおおおお!!」

 乙女の叫びにライトニングだけでなく六課の全員が涙を流した。ただ、ユーノだけはなんで自分が罵られたか理解できないでいた。






~おまけ~

 白い空間に彼女はいた。目の前に資料で見せてもらった高町なのは。ただ、あちこちがぼろぼろで少し背が伸びてるように見える。

 さらに、聞いた話よりもずっと大人っぽい雰囲気が漂っていた。

「運命なんてこの手で撃ち抜けるの」

 なのはが、梨花とすれ違う時に一言呟いた。梨花は足を止める。

「そうなのですか。私は何度も運命に倒れました。そして、本心では誰よりも希望を信じていませんでした。では、あなたは?」

 かつて羽生に指摘された事を話す。その言葉になのはは微笑みながら答える。

「諦めないよ。不屈の心で絶対に元の世界に帰るから」

 なのはの答えに梨花も笑う。

「わかりました。それでは」

 そして、二人はお互いに扉をくぐった。









「梨花!」

「羽入、どうしたの?」

 戻ってきて早々、興奮した羽入が詰め寄ってきた。

「どうしたのじゃないのですよ! 僕は驚きました! いったいいつの間にあんな力を手に入れたのですか?!」

 梨花は羽入の言葉に、もしかしてと思った。

「あの『山狗』どもを一人で殲滅するなんて!! それに、たった一ヶ月の間に圭一を導きこの村に新しい風を吹かせた! 本当は諦めてなかったのですね!!」

 ああ、と思ったと同時になのはが行った数々の事象が梨花の中に流れ込む。と、同時に喜びがこみ上げる。

 もう、あんな地獄のような運命はないのだと。

(ありがとうです。なのは)

 そして、梨花は心の中でなのはにお礼を言うのだった。

 だが、羽入の言葉に一つだけひっかかった。

「……一ヶ月? 二日じゃなくて?」

「なにいってるんですか? 何日もしっかりと準備を行ってから動いたじゃないですか」

 その時、梨花は理解した、あのなのはがどんな目にあっているのかを。



~~~~
どうも、梨花ちゃまと並行世界ななのはちゃんです。
なお、梨花ちゃんの発言からもわかりますが、現在のなのはさんは……
次回はリクエストにあったキャラの誰かを出そうかと思っています。



[21475] かなみちゃんと受難ななのはさん
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2010/09/12 10:16
 そして、再び再びなのはの召喚を試みる機動六課。

「さあて! なのはちゃんは帰ってくるのか!! 運命の瞬間です!!」

「わー、パチパチ」

 だいぶツッコミも適当になってきたフェイト。

「ママ、じゃあね!」

「なのはちゃん、じゃあね!」

 なのはちゃんに手を振るヴィヴィオ。

 ティアナは「駄目だ私、落ち着け私」とぶつぶつ呟き、なのはちゃんのお持ち帰りをしようとする心を封じる。

「みんな、さようならあ!!」

 そして、なのはちゃんは光の中へと消えていった。





 なのはちゃんは扉だけがある白い空間にいた。

 そして、その目の前に少し目じりに涙を貯めた高町なのはがいた。

「今度は帰れるのかなあ?」

 と、とぼとぼと扉に歩み寄るなのは。

「あ、あの!」

 そこで、なのはちゃんは慌ててなのはに声をかけた。

「ん? なに?」

「あの、高町なのはさんですか?」

「うん」

 頷いたなのはに、なのはちゃんは、笑顔でなのはに抱きついた。

「おばあちゃん!」

 なのはは娘のヴィヴィオより少し大きい子におばあちゃんと呼ばれたことに複雑そうな顔をする。

 でも、すぐに気を取り直し、その頭を撫でる。

「あ、あの、おばあちゃん、お願いがあるの!」

「なに、なのはちゃん」

 優しく笑いかけながらなのはちゃんと目線を合わせる。

「だっこしてください!」

「うん、はい」

 そしてなのははなのはちゃんを抱き上げる。

 なのはちゃんは嬉しそうになのはに体を預ける。

「えっと、おばあちゃん。なのはね、おばあちゃんの名前もらえて、すごく嬉しいよ」

「そっか、ありがとう。なのはちゃん」

 なのはちゃんの言葉に嬉しそうにその頭を撫でるなのは。

『がんばってあなたのマスターのサポートをしてくださいよ』

『そちらこそ、私みたいにマスターを死なせないでくださいよ』

 と、デバイス同士も言葉を交わす。

 そして、なのははなのはちゃんを地面に降ろす。

「じゃあね、なのはちゃん」

「うん、なのはおばあちゃん」

 そして、二人は扉をくぐった。







 なのはちゃんが消えた後、そこに一人の女の子が立っていた。

「あれ? カズくん?」

 弱肉強食が横行する大地、ロストグラウンドのインナー。その地で今日を生きる少女、かなみがそこにいた。

「また、なのはちゃんですらないのな」

「なのはって一体……」








「魔法ですか」

 はやての説明にかなみは目を丸くする。が、それ以上の驚きを見せない。

「君も納得早いんやね」

 何度もリアクションが小さい相手が来たせいか、はやても張り合いを感じずにいた。

「そ、その、私が住むところにも似たような力がありますから」

 と、かなみはアルター能力を説明する。

「もしかして、かなみちゃんも持ってるのかな?」

 冗談めかしてフェイトは聞く。

「な、ないです」

 プルプルと否定するかなみ。

 だが、本人は気づいてないが、一応彼女もアルター使いである。

 余談だが、かなみの姿に再び「はう~」と暴走しかけたツインテールは即座にシャマル印の薬で眠らされたとか。










『夢を、夢を見ました』

 そして、彼女はその晩、夢を見ていた。

 見たこともない異形の腕を持つカズマ。

 彼に対峙する、白い衣服と桃色の翼を広げる槍のような杖を持った女性。

 かなみはすぐにわかった。それが六課の人が言う高町なのはだと。

「てめえ! かなみをどこにやった!」

 悪鬼のごとき形相でなのはに殴りかかるカズマ。

 なのははその攻撃を翼と同じ桃色の壁でカズマの拳を阻む。

「落ち着いて! 私はただ話を」

「うるせえ! かなみの声でムカつくことばかり言ってんじゃねえ!!」

 それを阻み、カズマはさらに拳を振るう。

「どうしてかな、私はお話したいだけなのに」

 カズマの攻撃の前にその音はあまりに小さい。だが、

「少し頭冷やそうか!!」

 そして、カズマと激突するなのは。

 シェルブリッドが大地を割り、なのはの魔法が空を撃ち抜く。

 そして、互いに最後の一撃を決めようとして、だが、その時に確かにカズマには聞こえた。

「かなみ?」

 困惑するカズマ。

 かなみはアルター使いじゃないはずなのに。だが、それでも、彼がかなみを間違えるわけがなかった。

「ああ、わかったよ。もうやんねえよ」

 そう言ってアルターを解除するカズマ。なのはもバリアジャケットを解除する。

「じゃあ、お話聞かせてもらえないかな?」

「なんでだよ」

 なのはを無視しようとするカズマ。だが、なのはは諦めず粘り強くカズマに話し掛け、最後はしぶしぶだがお話することを許させたのだった。









 そして、かなみは目を覚ます。

 夢に出てきたなのは、それが本当になのはかわからない。カズマがあんな姿になるのも知らない。

 だけど、と少しかなみは思った。自分が本当に彼女と同じ存在だったら、自分も少しは彼女みたいに全力で相手に自分の意思を伝えようとする人になれるのか? と。

 なれるかはわからない。だけど、その未来が魅力的にかなみには思えた。










「それでは、みなさん、お世話になりました!」

 かなみが綺麗にお辞儀をする。ティアナは「落ち着け私、落ち着け私」と右腕を押さえながら唱えている。

「かなみちゃん、元気でね」

「はい、キャロちゃんもがんばってね」

 友達には近い関係になったキャロと握手を交わし、かなみは元の世界に帰る。

 この六課との交流が、彼女がカズマ以外の人間に心を開く理由になったかはわからない。

 なのはとカズマの出会いがなにをロストグラウンドに与えたかはわからない。

 だが、それでもこの出会いはきっと何かをもたらしただろう。







 

 かなみが消えて現れたのは、エプロンを付けて髪を下ろしたなのはだった。

 また、なのちゃんを呼んでしまった!? と一同が戦慄する中、なのはは、んっ? と首を捻る。

「あれ? みんなどうしたの?」

 なのはの問いかけに、とりあえず自分たちのことを知っている世界から来たらしい。そう判断しはやては意を決して、

「あのな、なのはちゃん」

 と問いかけた瞬間、なのはが動いた! 一瞬でフェイトに近づきそのお腹に触れる。

「な、なのは?!」

 突然のなのはの行動にフェイトは顔を真っ赤にする。

「フェイトちゃん……」

 目を大きく見開き、なのははフェイトの肩を掴む。

「お腹の子、どうしたの?」

『へっ?!』

 なのは以外の全員が素っ頓狂な声を上げる。

「なんで? なんで大きくなってたお腹が凹んでるの? ユーナやユートも弟や妹ができるって喜んでたのに!」

 なのはの言葉にフェイトはもうなにがなんだかわからなくなっていた。

「あ、あの、なのは?」

 ユーノが声をかけると、なのはが泣きそうな顔を向けた。

「あなた、フェイトちゃんの付き添いに行ってたよね。どうなってるの? 」

『あなたぁ!?』

 本日二度目の合唱が響いた。











「なるほど、平行世界だったの」

 ある程度落ち着いてから、なのはは説明を受けて納得した。

 さっきの行動は、まあ、言ってみれば火事の時にマクラを抱えているようなものだろう、となのはは語った。実は相当うろたえていたらしい。

 一方フェイトは「私の赤ちゃんかあ……」と頬を緩めながらちらちらとユーノに熱い視線を贈っていた。

「でも、なんでユーノくんが付き添いやっとるの? フェイトちゃんの旦那さんは?」

 全員が一切になのはを見る。フェイトの旦那になる人物、確かに気になるだろう。

 そして、なのはは苦笑気味に頬をかく。

「フェイトちゃんの旦那様もユーノくんだよ」

『な、なんだってえ!?』









 なのはの爆弾発言の後、はやてはなのはにいろいろと尋問し始めた。

「なあ、なんで二人ともなんや?」

「その、二人ともユーノくんのことが好きだってわかったから……」

「本当に?」

「……実は二人して酔っ払った勢いで関係を迫りました」

 と、恥ずかしそうに告白するなのはさん。

 その言葉に翌日、ユーノの泊まっている部屋の前で、全身からぷんぷん酒の匂いを漂わせながら、アルコール中毒で倒れたフェイトがいたと言う。

「じゃあ、あたしは?」

「ゲンヤさんと結婚してたよ」

 それから、スバルとギンガを食事に誘い、「新しいお母さん欲しくない?」とゲンヤを外堀から埋めようとして、懐が寂しくなったタヌキがいたとか。










「さてっと、みんなに私のシュークリーム食べてもらおうと!」

 そう言ってなのはは張り切って翠屋二号店自慢のシュークリームを振舞った。

「わあ、おいしい」

「この前のなのはさんとも違うね」

 世界が違えばシュークリームも違う。六課のメンバーは喜んでそのシュークリームを頂く。








 そして、一日だけ教導官に戻ることにしたなのはは、新人たちを引っ張る。

「みんながんばって!!」

 と応援しながら、アグレッサーを勤めるなのは。往年の実力はなくとも体力は欠片も衰えてなかった。いや、むしろ体力だけなら現在より上かもしれない。

「な、なのはさん、随分元気ですね……もう教導官引退してるんですよね?」

 訓練で元気に動き回るなのはにへとへとになったティアナが尋ねる。

「だって、翠屋って割と忙しいし、夜はユーノくん激しすぎるし」

 その発言にユーノは『夜の教導官』という不名誉なあだ名が与えられることとなった。









「へ~、私の子供ユートって言うんだ」

 なのはの話に嬉しそうに笑うフェイト。

「うん。ただね……」

「ただ?」

 なんでなのはが暗い顔をするんだろうとフェイトは首を傾げて、

「最近、ユーナがマテリアルのあの子に似てきてるんだ」

「……そうなんだ」

 頬を引きつらせて笑うフェイトだった。

 余談ではあるが、フェイトが次に産む子は、女の子で青髪だったという。









~おまけ~

 なのはちゃんが帰還した翌日、なのはちゃんは久しぶりに両親と一緒に寝ることにした。

 嬉しそうに二人と手を繋ぐなのはちゃん。

「ははは、ごめんねあんまり一緒にいられなくて」

 ユーノが申し訳なさそうに笑う。リンディもそうだが、彼もほとんど老けた気配がない。

 そして、ふとなのはは両親に尋ねた。

「あのね、パパ、ママ」

「なあに、なのは」

 それから、意を決して二人に問いかける。

「おばあちゃんに会えて嬉しかった?」

 なのはちゃんの言葉に二人は複雑な顔をする。

「……うん、そうだね。私はお母さんに会えて嬉しかったよ」

「僕も、また会えて嬉しかったよ」

 そっかあとなのはちゃんは笑う。二人が嬉しかった。なら、こんな突飛な出来事もよかったと思った。

「さあ、明日は遊園地行くから早く寝ようね」

 ヴィヴィオが大切な愛娘の手を握り返す。

「はーい」

 そして、なのはちゃんはゆっくりと眠りの世界の住人になった。








「ねえ、ユーノさん」

 なのはちゃんが眠りにつくと、ヴィヴィオが夫となったユーノに話しかける。

「なに? ヴィヴィオ」

 ユーノの返事に、ヴィヴィオは少し悩んでから聞いた。

「今もママのこと愛してるの?」

 その問いにユーノは言葉が詰まった。そして、

「……そうだね、正直に言えば今でも、なのはの存在は僕の心で大きなウェイトを占めていると思う」

 その言葉にヴィヴィオは、やっぱりと思うとともに、なんでこんな質問したんだろうと後悔する。

 泣き笑いのような表情を浮かべるヴィヴィオ。

「だけど」

 そう言ってユーノは手を伸ばしてヴィヴィオの目じりを拭う。

 そして、その顔を自分のそばに引き寄せ、その唇を塞ぐ。

「今、僕が一番愛してるのはヴィヴィオとこの子だよ」

 顔を離してから、ユーノはヴィヴィオに微笑む。その言葉にヴィヴィオも微笑む。

「うん、ありがとう。ユーノさん」

 そして、ユーノとヴィヴィオも布団の中で手を繋ぐ。

 ……もしも、娘がいなかったら、きっとこの後に二人はハッスルしていたことだろう。










 一方なのはさん。

「あちこち行ったけど、楽して帰れる場所だとは思ってないの」

 目の前の異形を睨みながら歩む。その手にJと書かれたメモリ。

「行くよユーノくん!」

『ああ、なのは』

 ばっとなのはは構える。

「変身!!」

 その手にあるメモリのスイッチを押す。

<JOKER!>

 そして、腰のバックルに現れたメモリと共にそれを挿入する。

<CYCLONE!>

<JOKER!>

 その身に黒と翠のバリアジャケットを纏ったなのは。

『さあ、お前の罪を数えろなの!』

 高町なのは、私立探偵。今日も風都の平和を守る。






 かなみが去ってからだいぶ正気に戻ったティアナは膝を抱えて部屋の片隅にいた。

「あ、あの、ティア、大丈夫?」

「ほっといてよ。どうせ私なんか……」

 ここ数日の暴走にいじけるティアナ。

 ユーノの予想により、召喚時に平行世界のティアナの精神の影響を受けたのだろうとフォローされたが、ティアナにしてみれば、そんなものに影響を受ける自分の精神力が悲しくなってしまっていた。

「ティアナさん元気出してください!」

「ほら、ゲームしましょうよ!」

 そうキャロとエリオが提案し、かわいい絵の描かれたカードを見せた瞬間、ゆらりとティアナは立ち上がった。

「はう~、そのカード、絶対取るんだからあ!!」

 ティアナ・ランスター、まだしばらくの間は、完全に平行世界の影響から脱することはできないらしい。

 その後、真っ赤になって相棒に「忘れなさい!」と鉈を持って迫ったという。




~~~~
リクエストにありましたかなみちゃん登場です。
まあ、メインがむしろなのはとカズマの邂逅になってしまいましたが……
もう一人の平行世界のなのはさん、以前僕が作った『ユーノくんの受難』からのゲスト出演です。思わずやってもうた……
今回も楽しんでいただければ嬉しいですが、あまりやるとマンネリ化しそうだし、もう一話か二話でご帰還いただこうかな?



[21475] 衛士ななのはさんと斬魔ななのはさん~加筆修正~
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:b50a47bc
Date: 2010/09/16 23:53
 −−−−これまでのリリカルなのはは

『あなたは全ての魔法使いを破壊しなければならない』

『ここどこ?』

『法皇テムオリン! ここであったが三周期目え!!』

『こんにちはなのです。にぱ~』

『フェイトおばあちゃん?』

『これが! 俺の! 自慢の拳だあ!!』

『フェイトちゃんお腹の子どうしたの?』

『変身!』

 世界の破壊者高町なのは、いくつもの世界を巡り、その瞳はなにを見る?」

「妙なナレーション止めてね、はやて」

 二日酔いでガンガン痛む頭を抑えながらフェイトはつっこむ。

 現在六課は恒例となったなのは召喚の儀式を始めている。

「じゃあ、フェイトちゃん、ユーノくんと頑張ってね!」

 なのはは手を振りながら賢者の石が生み出したゲートを潜る。

 フェイトはユーノのそばでなのはに手を振って見送る。

 そして、光が収まると……

 ピッチリとしたボディスーツのような装備を纏ったなのはがいた。









「フェイトちゃん、ユーノくん困ってるから……」

 そこでなのはは首を傾げた。

 さっきまで自分は横浜基地のシミュレーター室に向かってた筈なのに、いつの間に屋外に出たんだろう。

 そして、さっきまで意中の相手に体を擦り寄せていた部隊の仲間がいない。いや、いることはいるけど見たことない制服に身を包んでいる。

「あれ?」

 A−01部隊所属、ポジション、砲撃支援の高町なのは中尉は首を捻った。









「どうも、なのはちゃん、でいいんやよね?」

「あ、はやてちゃん、どうしたの? 今日は確か新型OSのテストだったよね?」

 なのはは困惑しながらはやてに問いかける。

「うん、そのこと含めてお話しよか」

 そして、六課隊舎内ではやてに説明を受けるなのは。自分が別の世界にやってきてしまったこと。魔法のことに驚く。

 なにより、自分が教官をやっていることにも。神宮寺教官、あなたのような人なのでしょうか? と、なのはは考えたが、この世界に狂犬はいないのである。

「ま、魔法ですか……そんなのがあるなんて」

「うんうん、そのリアクション、私は嬉しいで」

 満足げに頷くはやて。

「はやてちゃん、なにか違うです」

 思わずリインが突っ込む。

「あ、リインフォース大尉……あれ? 小さい……」

 まるで妖精のようなリインフォースツヴァイを見て、自分の知る相手との違いに違う世界ということを強く認識するなのは。

「あ、リインフォースもいるんか?」

「はい、副司令直属の研究チームのメンバーです」

 衛士ではないリインフォースの意外な役職に驚くはやてたち。

 余談だが、リインフォースは香月副司令の元で衛士を補助するAIシステム、『インテリジェントシステム』を開発し、なのはは『レイジングハート』と呼ばれるタイプのAIのテストを任されることとなる。








 一方フェイトはなのはの強化装備に戦慄していた。

 あの水着のようにぴっちりと身体にフィットし、どこか艶めかしい印象を与えるデザインは、薄さで勝負のフェイトにとって寝耳に水だったのだ。

「バルディッシュ! なのはのあの装備を参考にソニックフォームデザイン変更! それと、ラバー部分は半透明に!! ふっふっふ、これなら例えフェレットも狼に!!」

『サー、落ち着いてください』

 フェイトの暴走を諫めるバルディッシュ。

「てか、ソニックフォームの方がお色気って感じやないか?」

「私、わかったんだよ! ただ肌を晒すだけが戦い方じゃないって!!」

 はやての言葉に高らかに唄うフェイト。どうやら彼女は新たな境地に目覚めてしまったようである。









「お、おいしい」

 涙を流しながら料理を頬張るなのは。

「そ、そんなにおいしいんですか?」

 スバルの問いかけに頷くなのは。

「三食食べられるから贅沢言えないの。それに、おばちゃんの料理はおいしいけど、やっぱり合成食材って不味くて……」

 世界の差に複雑な心境になる六課メンバー。








「そっか、リインフォース元気なんか」

 違う世界とはいえいなくなった大切な家族が元気に生きているそのことにはやては純粋に喜んだ。

 できれば、会いに行きたいが、なのはみたいになったら笑い話にもならないので止めておくが。

「にゃはは、そうかも。それにこの前なんかPXで、訓練生の子が正規兵の人に殴られた時なんかね『貴様等は私の大切な人になにをした?!』ってすごく怒ったんだ。大尉があんなに怒ったの見たの初めてかも」

「そうなんか?」

 リインフォースの意外な発言に驚くはやて。

 どうやら祝福の風は恋愛原子核に射とめられたらしい。







 出動について行くなのは。

 一人ヘリから下りずに、後部ハンガーで借りたデバイスを構え、スコープを覗き込む。

「シュート!」

 対AMF用のヴァリアブルバレットがないが、それでも、はるか遠くの標的を見事に撃ち抜きフォワード陣の援護に貢献してみせる。

 その狙撃は、そばで見ていた本職のヴァイスも唸らせたと言う。






「なのはの世界で私ってどんなことしてるの?」

 さすがに半透明は許されなかったフェイトだが、それでも衛士強化装備を纏えてご満悦のようすだった。

「えっと、フェイトちゃんは私の部隊の仲間で、強襲前衛のポジションで、部隊の先陣を切る役で、それと、私とユーノくんをかけたライバル」

 その言葉に、フェイトはなのはの肩を掴む。

「なのは、そっちの私に頑張ってって伝えてね」

「うん」











「ええ加減帰ってこないんかなあ……」

「きっとなのはも頑張ってるよ」

 零式強化装備に似たバリアジャケットを纏ったフェイトが笑う。

 そして、再びなのは帰還のための儀式が始まる。

 はやてはこれでも帰ってこなかったら風水師やイタコ、とにかく考えられる限りのオカルト関係の力を借りようと誓った。

「それでは、お世話になりました!」

 光の中に消えるなのは。

 そして、七度目のなのはの召喚。光の中から表れたのは……地に伏しながら、必死に手を伸ばすなのはだった。

「フェ、フェイトちゃん、ご……」

 そして、そこで最後の力を使い尽くしたのかパタッとその手が落ちた。

「衛生兵ーー!!」

 はやての叫びに慌ててシャマルはなのはの体を見ようとして……

 ぐぎゅるるるるげるぐぐ~……

 盛大な腹の音が響いた。

 乙女が発したと思いたくない音に、その場の全員が気まずげに押し黙る。

 そして、

「食堂に連れて行き」

 やっと、はやてはそう指示を出したのだった。









「はあ、助かったの」

 スバルたちに負けないぐらいの量を食べてなのはは一息ついた。

「よく食べたね……」

 呆れ気味にフェイトが呟く。

「にゃはは、食べれる時に食べないとね」

 と笑うなのは。それから、あれっと、首を捻る。

「フェイトちゃん、今日は「働けよ」ってお説教なし?」

「……さてなのは、少しお話しようか」

 なのはの発言にいろいろと戦慄するフェイト。










「平行世界なんだ」

「そうなんよ」

 はやての説明に納得するなのは。

 なのはの世界にも系統は違うが魔術はあるためにあっさり受け入れられる。

「まあ、二日で帰れるからって、どうしたの?」

「ユーノ、くん?」

 ユーノが話しかけるとなのはは目をパチパチと瞬かせる。

 そして、

「成長したらこんな感じになるんだ! うう、こっちも捨てがたいけど、ちっちゃい方も……」

 と驚いてから、妙な葛藤を始めるなのは。

 ちっちゃい方もという発言からフェイトはエリオたちに、「いい、あのなのはにはあまり近づいちゃだめだよ」と言い含めたそうな。

「僕ってそっちではどんなのなの?」

 つい、葛藤するなのはに問いかけるユーノ。

「魔道書の化身で私のパートナー」

 ついに本になったかと唸る一同。ユーノは少し落ち込んでいた。

 フェイトも聞いてみる。

「私は?」

「教会でシスターしてて、孤児院の真似事みたいなことしていて、いつも私にご飯たかられてるかな」

 余談だが、このなのはの世界のフェイトはシスター以外にも、夜な夜な謎の正義
の味方としてスカリエッティの破壊ロボ撃退に勤しんでいる。

「そうなんだ、ってなのは何してるの?!」

「探偵」

 たかるだの、働けって説教されるだの、親友の数々の発言からまさかのニートかと思いフェイトは尋ねるが、とりあえずニートではないことに安心する。

「なら私は?」

「八神財閥の総帥で、私の雇い主だよ」

 他、シグナム、ヴィータ、シャマルはメイドである。

「あれ? ザフィーラさんは?」

 ふとそのメンバーの中に知り合いが一人欠けていることに、なのはは気づく。

「ああ、ザフィーラならそこやよ」

 とヴィヴィオを背に乗せた狼モードのザフィーラを指す。

「ザフィーラさん犬なんだ……」

「犬ではない!」

 つっこむザフィーラ。

「ザフィーラが気になるの?」

「背中を任せた相手だからね」

 その言葉に、自分の活躍する世界を知ったザフィーラが、仁王立ちしながら腕を天へと突き上げて目から魂の汗を流す姿を六課の何人かが見たという。









 そして、出撃でも……

「クトゥグア、イタクァ!!」

 二丁の拳銃で次々と敵を屠るなのは。左のリボルバーの弾丸が縦横無尽に走り、右の自動拳銃が多くの敵を粉砕する。

 さらには、

「フォマルハウトより来たれ! 風に乗りて来たれ! クトゥグア、イタクァ、神獣形態!!」

 神獣を召喚し、一瞬でガジェットの空中戦力を一掃した。

 その姿にたった一日だけだが指導してもらうティアナがいたという。

 ただ、さすがにイブン・ガズイの粉薬などの調合のために『二百年くらい前からあるお墓ないかな?』と探し始めたのは、ティアナも引いたという。







 そして、ヴィヴィオ。

「はあ、かわいいなあヴィヴィオ……」

「えへへ、ママ~」

 幸せそうにヴィヴィオを抱きあげるなのは。

 そばでフェイトはなにもしないように見張っていた。すごく心配だから、ヴィヴィオの貞操が……

「ユーノくんとの子供できたらなあ、でも、魔道書って子供できるのかなあ……」

 変な心配をするなのは。

 だが、このなのはは知らない。

 別の世界で神になった自分とユーノの間にできた子であるヴィヴィオが、セイクリッドハート・トゥーソードを駆って自分の前に現れることを。








~おまけ~

 はやては妹のヴィータを連れて翠屋にやってきた。

「ここのシュークリームってすっごくおいしいんやよ」

「へえ? 楽しみだなあ」

 嬉しそうなヴィータの手をひっぱり、お店の扉を潜る。からんからんと鈴が鳴った。

「やっほう、なのはちゃん!」

「あ、はやてさん」

 友達の姿を見とめ、声をかけるはやて。

 あれ以来、学校でもちょこちょこ一緒に話したり、遊びにいったりして二人は友達になっていた。

「あれ? その子は?」

 なのちゃんははやての横の赤毛の女の子に気づいた。

「あ、私の妹、ほらヴィータ挨拶して」

「ヴィ、ヴィータです。はじめまして……」

 ぎこちなく挨拶するヴィータ。その目はどこか、目の前の相手を品定めするような色があった。

「なのはです。よろしくねヴィータちゃん」

 くしゃくしゃとヴィータの頭を撫でるなのちゃん。これが、この世界の二人の出会いだった。









 元の世界に帰還したなのは。

 彼女がいたのは、基地の裏にある高台だった。今、朝日が昇り始めている。

「あれ?」

 なのはは首を捻る。戻ってきたんだろうけど、なんでこんな場所に……

 そこで、気づいた、左右から一人ずつ誰かが近づいてくるのに。ユーノとフェイトだった。

 いきなり現れた二人になのはは困惑する。いったいなにがあったんだと。

「あの、なのは、なんで僕を呼び出したの?」

 ユーノが問いかけ、なのははこっちに来ていた自分がユーノを呼び出したことを知る。

 そして、フェイトはなのはに歩み寄って、ユーノに聞こえないくらい小さく声をかけた。

「その、なのは、ここで決着をつけるって本当?」

 フェイトの言葉を聞いた瞬間、なのはの中にこれまでの記憶がなだれ込んできた。

 甲二十一号作戦、スサノオ弐式、桜花作戦、そして、その直前に生き残ったら決着をつけようとフェイトと交わした約束。

 それらの記憶を得たなのはは一度目を瞑る。そして、

「うん、決着をつけよう」

 フェイトにそう伝え、ユーノの方に振り向く。

「ユーノくん」

「ユーノ」

『私たちはあなたのことが』

 そして、朝日の中、二人は告白した。






~~~~
マヴラブな世界と斬魔の世界からなのはさんです。
きっと、はやても恋愛原子核にやられているはず。
もう少し引っ張っていいって言ってくれる人もいたけど、もう数話くらい引っ張ろうかな?



[21475] ノキアさんと裏切られたなのはさん
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:b50a47bc
Date: 2010/11/24 22:36
「高町なのは帰還できるかクーイズ!」

「いえー」

 はやてに付き合いめんどそうに右手を突き出すフェイト。

「①なのはちゃんが帰ってくる ②別のなのはちゃんがくる ③なのはちゃんじゃない子がくる。さあ、どれ?!」

「①で」

 当たり前だが彼女は親友の帰還を信じているのだ。答えは?しかない。

「それではなのはさん答えお願いします!」

「にゃはは、じゃあねー」

 なのはは手を振りながらゲートを潜った。








 そして、出てきたのは、携帯を持ったかわいい女の子? だった。

「あれ? お兄ちゃんどこ?」

 兄を探すの人物の名はノキア。

 カラミティステップ、デスマキナ、二つの異名を持ちつ携帯使いの男、カシオの弟妹だった。









「はじめまして。君の名前はなんて言うの?」

 フェイトはノキアに話しかける。

「あ、ボクはノキアです。はじめまして。あの……ここはどこなんですか?」

「うん、今から説明するから」

 フェイトはノキアを隊舎に案内する。

 その間、ティアナは「疼くな私の右手!」と必死に自制していた。










 簡単に今の状況をノキアに説明したはやて。

「へえ、ボクたちの魔法とは違うんだ」

 ノキアはデバイスを使った魔法に興味を示した。

「にしても携帯で魔法なあ?」

 はやてはノキアの携帯を見る。

 ノキアの世界では魔法は携帯を通し、ゼノリアルネットワークから落として使う。

 高い魔法に至っては情報量は絶大でとてつもないパケット代が発生し、使用限度額まであるという。









「ノキアちゃん、一緒にお風呂入らない?」

 はあはあと、荒くなりかける息を力尽くで抑えつけながら、ティアナはノキアを連れてシャワーを浴びようとした。

 なにせノキアは普段はホームレス生活。実はここ数日水でしか洗ってないという。ヴィヴィオとスバルもそれに付き合う。

 そして、ご満悦の様子でティアナはシャワー室にノキアを連れ込んで……悲鳴を上げた。

「ティ、ティアどうしたの?!」

 悲鳴を聞きつけ、外に待機していたスバルは慌ててシャワー室に入る。

 ティアナは尻餅をついたまま霰もない姿で、ノキアを指差して、

「ぞぞぞ、ぞうさん、ぞうさんがついてた!」

 はあ? とスバルはノキアを向いて、同じように悲鳴を上げた。

「あはは、やっぱりびっくりする?」

 実は、現在のノキアは男の子だったのだ。







 そして、シャワーについていったヴィヴィオが証言した。

「ノキアちゃんのぞうさん、エリオくんのより大きかったよ」

「ああ、そうなの」

 ヴィヴィオの言葉に真っ赤になるエリオだった。










 そして、出撃時に、

「ボクも行く」

 と、ついていくノキア。

 曰わく兄カシオが「恩も売り物。売れる時に売る」という考えだからであるそうな。

−−ぐらびてぃれんず

 光学系の攻撃をねじ曲げる魔法を使用し、ガジェットの攻撃を防ぐノキア。

 だが、ガジェットの攻撃の余波で飛んだ石つぶてが命中してひっくり返ってしまう。

「ノキアちゃん!」

 慌ててフォワード陣が援護に入ろうとして、全員の背筋に悪寒が走る。

 ゆらりと幽鬼のように立ち上がるノキア。フォワード陣は彼女の正面から全力で離れる。

 そして、

「うちに逆らって、ただで済む思うなこのあほんだらどもーー!!」

 携帯を向けた方向に太陽のような輝きの魔法が解き放たれる。

 ころなばーすと。地上に太陽のコロナを召喚する魔法。ひらがなで可愛らしくしてるが凶悪な魔法である。間違っても水平及び地上に撃ってはならない。

 一瞬で、ガジェットは消し炭も残さず消滅した。










「ノキア、ちゃん?」

 ノキアの豹変に戸惑うフォワードメンバー。

「うちはな、頭に衝撃を受けると表と裏が反転するんや」

 と説明する。余談だが性別まで変わるのだが、この特性は、カシオのミスが主な理由である。

『えっと、ノキア、ちゃん?』

 戸惑いがちにノキアに話しかけるはやて。

「あんたがうちらをここに呼んだ狸やな。魔法のパケット代とうちをここに呼んだ分の慰謝料払ってもらおか」

 と言ってノキアはパケット代を見せようとして……一機だけ残ってたガジェットに叩き潰された。

「ノキアちゃん!」

 スバルとティアナがガジェットを破壊する。

 そして、ノキアを助けようとするスバルたち。そこに大怪我を負ったノキアが……いなかった。

「あー、びっくりした」

 そう言って普通にパンパンと埃を払って立ち上がる表ノキア。

「あ、え?」

「大丈夫なの?」

 戸惑いがちにティアナが問いかける。すると、ノキアは笑いながら言った。

「ボクはお兄ちゃんの魔法だから」

 そう、ノキアはカシオが作り出した『魔法』だったのだ。

 ちなみに、頭部に衝撃があると、ノキアの人格や性別が変わるのは、カシオがノキアの設定時に好きな属性を全部入れた上で、性別の項目をチェックし忘れたためである。

 そして、彼女の具現化の月額パケットは六千万円である。これが、二人の極貧生活の理由の一つだったりする。









 そして、戦闘終了後、

「これ、もう一人のボクが言っていた請求書です」

 はやてはふーんと請求書を見て固まった。

 予想よりゼロが多かったのだ。

「あ、な、ノキアちゃん。これマジ?」

 はやては震える指で請求書を指差す。

「はい! それにお兄ちゃんも世の中金って言うから、びた一文負けません!」

 その後、街の一角を吹き飛ばしたことを理由になんとか、請求書の金額を値切ることはできたが、それでも八神家は手痛い出費をする羽目になった。







「なのはちゃん帰ってきたくないんかな?」

「そんなことないと思うよ……」

 はやての呟きをユーノは否定する。

 だが、いい加減帰ってきてほしいものであるのは全員の共通認識である。

「それでは、お世話になりました」

 ぴょこんとお辞儀するノキアを全員で見送った。

 そして、ノキアの代わりに光から出てきたのは姿はなのは。

 だが、彼女は膝を抱えてボロボロと大粒の涙をこぼしていた。

「な、なのはちゃん?」

「なのは?」

 いきなり泣いているなのはの出現に戸惑うフェイトたち。

 そして、しばらくして異変に気付いたのか、なのはは顔を上げた。

「なのは、どうしたの?」

 フェイトに声をかけられると、再びなのはの表情が崩れる。

「うわあああああああん! フェイトちゃーん!!」

 なのはは泣きながらフェイトに抱きついた。

「な、なのは?」

 突然の親友の行動に戸惑うフェイト。

「ごめんね。ごめんねフェイトちゃん。私フェイトちゃんのことちゃんと理解してあげられなくて……」

 そこまで言ってなのはは再び慟哭する。

 フェイトは、ただ静かになのはが泣き止むまでその背を撫で続けた。

「なのは、もう平気?」

「うん、ごめんねフェイトちゃん」

 まだしゃくりあげながらもなのははフェイトから身体を離す。

 そして、周りを見る。

「えっと、なんでみんないるの?」

 そこでやっとなのはは首を傾げる。

「なのは、よく聞いてね。この世界は……」

 そして、なのはにフェイトは現状を説明した。

「平行世界、そうなんだ……」

 戸惑いがちになのはが口を開く。

「うん、今ユーノに協力してもらいながらなのはを連れ戻そうと頑張ってるんだ」

 ユーノの言葉になのはの肩がぴくんと反応する。

 そして、ゆっくりと人ごみの中からユーノを見つける。

「ユーノ、くん」

「やあ、なのは」

 と、いつも通りの柔らかな笑顔を浮かべるユーノ。

 なのはは立ち上がり、ユーノに向かって走り出し、そして……

「ユーノくん…………ばかあああああああああ!!」

 涙を流しながら強烈な右ストレートを食らわせた。

「きゅーーーー!!」

 貧弱なフェレットはそれに耐えきれずに倒れる。

 だが、なのははそれだけで止まらなかった。マウントポジションをとると、その顔と叩き始める。

「ユーノくんのバカ! 浮気者! 女ったらしい!!」

 いくつもの罵詈雑言をびんたとともに叩きつける。

「お、落ち着いてえななのはちゃん! このユーノくんは違うんや!」

「離して! 今のうちに罰を与えるのお!!」

 はやてが慌てて救出したが、すでにユーノは気絶してしまっていたのだった。









 そして、シャマルにユーノを治癒させながら隊舎で話をする。

「私の世界では……私はJS事件の後、ユーノくんと結婚しました。フェイトちゃんは、なぜか辺境の世界に言って音信不通でした。クロノくんたちもたまに連絡が来る程度だったらしいの」

 ぽつぽつとなにがあったか語るなのは。

「でも、私はユーノくんとヴィヴィオにアルフさんで幸せな家庭を作ったの。そのうち、私もユーノくんとの子供ができたの」

 なんか一人違う人が混じっていたが全員スルーした。

 実は、八神家とフェイトとユーノ以外、アルフはユーノの使い魔と思っているので半分はおかしいということにすら気づいてない。

「ユーナって名付けたその子は元気に育ってくれて、十六で局に入った」

 その時にはなのはは教導官を止めて、ユーノの秘書のようなことをしていた。

「それで、あの子が局入りして一年くらいかな? 友達って言って一人の男の子をうちに連れてきたの」

 なのは曰く二人は友達という雰囲気ではなく、明らかに恋人のような雰囲気を漂わせていたという。

 なのははそのことを祝福した。なによりも、

「その子の名前はユート・T・ハラオウンって名前だったんだ」

 えっ、と全員が声を上げてフェイトを見る。

「えっと、もしかして……」

 フェイトの問いになのはは頷く。

「その子は、フェイトちゃんの子だったの」









 なのははそこから歯車が狂ったと言う。

 久しぶりにあったフェイトは明らかに動揺し、二人の交際に反対したという。ユーノもどこか様子がおかしかった。

 そして、なのはは色々と調べたのだった。フェイトのこと、ユートのこと。わかったのは、ユートはフェイトが辺境の世界に住居を構えて、すぐに産んだこと。ユートは私生児だったということ。

 ここまできて、全員まさかとその答えを想像する。その想像を助けたのは以前この世界にやってきた、自分だけでなく、フェイトと一緒にユーノと結婚したなのはさんのこと。

「そのことから、まさかと思ったの。でも、二人を信じたかった」

 そして、なのははユートのDNAを調べた。結果、ユートの父親は、

「ユーノくんだったんだ」

 じとおっとユーノに視線が集まる。

 頬を引きつらせるユーノ。

「それって、まさか……」

「ユーノくん、フェイトちゃんと浮気してたの」

 なのはの言葉にユーノに対する非難の視線が集中する。

 痛い。視線がすごく痛い。特に女性陣。

「フェイトちゃんは自分がユーノくんに迫ったっていってたけど、それも本当なのか……」

 フェイトも頭を抱えていた。まさか未来の自分にそんな結末が待っているなんて……

 フェイトが二人の前からいなくなったのは、二人に迷惑をかけないためだったのだ。

「別にね、ユーノくんが浮気してたのはいいの。まあ、前からフェイトちゃんが少しユーノくんを気にしてたの知ってたから」

 だけど、と前置きする。

「これじゃあユーナとユートくんが可哀そうなの。だって、好きな相手が知らなかったとはいえ兄妹だったなんて……」

 まず、結ばれない。重婚は認められてるが、近親婚は従兄弟からである。

 そして、なのはは立ち上がるとユーノに迫った。

「わーん! ユーノくんどうするのお!!」

「ぼ、僕に言われても!!」

 胸倉を掴まれながら弁解するユーノ。

 それから、誰も助け舟を出さなかったため、ユーノはなのはをなだめるのに苦労したという。








~おまけ~

 ユーノはやせ細りながら廊下を歩いていた。すると、目の前になにかが現れた。

 それは、真っ黒なローブに身を包み、どこかで見たような仮面を付け、そして、その手にS2Uとデュランダルを携えていた。もう、隠す気ないだろうといいたくなる。

「……君は本気だな」

「わかってるようだな」

 くぐもっているが聞きなれた声が聞こえ、ああやっぱりとユーノは思った。どこから聞きつけたかは知らないが、彼がここにいるということはそういうことなのだろう。

 だが、その殺る気満々な殺気も、今のユーノにとってはそよ風同然だった。

 そして、黒尽くめの男、クロノが構える。

「妹を傷つけるものには、然るべき報いを……」

 そうの呟きとともに、クロノは飛び出した。









 そして、十分後、クロノは涙を流して地面に倒れていた。

 数々の魔法を防ぎ、バインドで避けながらユーノが行ったこと。それは、

「ありがとうフェイト」

『ううん、気にしないでユーノ。これでクロノが頭冷やしてくれたらいいんだけど』

 フェイトと通信を繋げ、モニター越しに『クロノのバカ! もうお兄ちゃんって呼んであげない!』が決め手だった。

 シスコンを倒す最終兵器は、護りたいものである妹なのだった。








~~~~
グリードパケット∞の主人公カシオの妹であり弟のノキアです。

別の世界なのに、ゼノリアルネットワークにアクセスできるのか? という突っ込みはできたらなしで。



[21475] ゼロノスななのはさんと御神ななのはさん
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2010/10/19 22:13
 再び、再び新たななのは召喚が試みられる。

「さあて、今回はなのはちゃんの帰還と別人が出るを出し抜き、一番人気は別の世界のなのはちゃんだあ! 」

 はやての言葉を聞いて、フェイトは後でお話する相手を捜さなければと決意する。

「では、なのはちゃんよろしくお願いします!」

「うん……」

 頷いてなのはは両手を合わせ、ゲートを潜ろうとしてから、一度振り向く。

「ユーノくん、こっちの私を絶対に私のようにしないでね」

「はい……」

 ユーノは申し訳なさそうに頷く。その肩をフェイトが苦笑気味に叩いた。

 そして、なのははゲートを潜り……光が収まると頑丈そうなアーマーを着込んだなのはが現れる。

「来てフェイトちゃん!」

 その言ってなのはは腰のベルトからカードを取り出し、裏返して黄色い面を上にして再び挿入する。

「えっ?」

 するとフェイトが引っ張られて、なのはの中に入ってしまった。

『えっ?!』

『ライトニングフォーム』

 驚く一同の前でなのはの姿が変わる。茶色の髪が金色に染まり、サイドポニーはツインテール、瞳も赤く。そしてアーマーも重厚なものから軽量なものへ。

 そして、『変身』が終わると『なのは』は慌てだした。

「えっ? えっ? なにがどうなってるの?!」

 その声と仕草は間違い無くフェイトのものだった。









『フェイトちゃんどうしたの? いつもならここで「最初に言っておきます」って決めゼリフ言うのに!』

「そ、そんなこと言われても……」

 そこでやっとなのはは気づいた。自分がさっきまでいた場所と違うことに。

『あれ?』

 そう呟きながらなのははベルトを外す。と、ベルトからカードが出て消滅してしまった。

「八神さん、どうなってるの?! また私にパスを無駄遣いさせたの!?」

 はやてを見つけると、すぐに詰め寄るなのは。

「お、落ち着いてやなのはちゃん」

「い、一体どうしたんだよなのは?」

 その言葉になのははヴィータを見て、あれっと首を捻った。

「ヴィータちゃん、いつの間に『ヴォルフラム』の外でも実体化できるようになったの?」

「はっ?」

 なのはの疑問にヴィータは首を傾げるしかなかった。









「なるほど、時間を駆ける船ですか」

「そうなの。私は失われたはずの時間を航行していた『アースラ』で魔法使いゼロノスとして、私の世界の八神さんは『ヴォルフラム』で魔法使い電王になって時間を守るために戦ってました」

 再び隊舎でなのはのやってきた世界の説明を受けて、頷くはやて。

「あ、そういえばなんで私はなのはの中に?」

「フェイトちゃんは私の世界では、私の契約イマジンだったからそのせいかも」

 フェイトの疑問に答えるなのは。もちろん、はやての契約イマジンはヴォルケンリッターである。









 そして、再びの緊急出撃に同行するなのは。

「贅沢は言ってられないの!」

 なのはは腰に装着したベルトにカードを入れる。

『スターズフォーム』

 魔法使いゼロノスに変身するなのは。

「最初に言っておきます、私はかーなーり強い!」

 腰のレイジングハートを組み立てガジェットに立ち向かうなのは。

 バスターモード、ザンバーモードを的確に使ってガジェットを打ち倒す。

『Full Charge』

 そして、バックル左上のスイッチを押してからカードを取りだす。それを、レイジングハートに装填すると、先端にエネルギーが集中する。

 それは、スターズフォームのなのは最大技、ディバインバスターEX。

「いっけえ!!」

 なのはが引き金を引く。

 集中したエネルギーが解放され、ガジェットは跡形もなく粉砕された。








 変身を解き、カードが消滅する。

「ただいま戻りました」

 そして、全員が六課に戻って、

「あれ? なのはさん?」

「いつ賢者の石使いましたっけ?」

 ルキノとシャーリーが首を捻る。

『へっ?!』

 はやてたちが驚き調べたところ、六課の一部の人間が、今朝行われたなのは召喚を忘れていた。

「どうなっとるんや?」

 なのはは話さなかったが魔法使いゼロノスは変身するたびに、他者から装着者の記憶を奪うものなのである。







「こんにちはヴィヴィオちゃん」

 なのはがヴィヴィオに笑いかける。

「こんにちは」

 ぺこっとヴィヴィオが頭を下げる。そんなヴィヴィオになのはは笑う。

「こっちでは小さいんだねえ。私の世界では同い年くらいだったのに、いきなり小さくなっちゃって」

 しんみりと思いだす。時間の影響と聞くけど、どうしてだろうと考えるなのは。










「今度こそ、今度こそなのはちゃん帰ってきとくれよ」

「はやての頑張りは無駄にならないよ。きっと」

 未だに賢者の石を使えるのは上に掛け合っているはやての努力の成果である。

 ユーノにシャーリーやマリーもその努力に報いるため、懸命に賢者の石の研究を続けている。

「じゃあ、みんながんばってねえ!」

 ぶんぶん手を振ってなのははゲートをくぐる。

 新たに召喚されたなのはは、真っ黒の装束、背中側の腰に二振りの小太刀を差して、タバコ……いや、シガーチョコをくわえていた。

「だー! なのはちゃんってなんなんや?! 何者なんやー!!」

「は、はやて、落ち着いて」

 錯乱するはやてを宥めるフェイト。一方のなのはは状況を把握しきれないのか目を白黒させていた。








「えっと、高町なのは……さんですよね?」

「あっ、はい。そうです。あの、ここはどこなんですか? それになにがどうなってるんですか?」

 なのはの問いにユーノは頷く。

「簡単にですが今の状況を説明させていただきます」

 そして、ユーノは簡潔にここが異世界であること。この世界のなのはが事故で別の世界に飛ばされて自分たちはなのはを連れ戻そうとしていることを説明した。

「はあ、そうなんですか」

 なのはは平静に頷き、そのリアクションの薄さに説明いらないかと考え、

「異世界!? そんなのあるんですか?!」

 なのはは大声で驚く。そのワンテンポ遅いリアクションに全員が滑った。








「魔法ですか……霊能力があるくらいだからあってもおかしくはないけど、びっくりです」

 はやてたちの説明を受けて目を丸くするなのは。

 そんななのはにはやては満足げに頷いた。

「そのリアクション嬉しいよなのはちゃん」

「だからなんか違うってはやて」

 はやてにつっこむユーノ。

「なのは、さんはなにをしてる方なんですか?」

 ちょっと興味を抱きフェイトは尋ねた。

「えっと、ボディーガードをしてます」

 意外な役職に驚く一同。

「へえ、ボディーガードなんだ」

「うん、お兄ちゃん直伝の御神の剣でがんばってるの!」

 そういってなのはは胸を張った。実際、恭也並みに表裏問わず有名なのである。








 そして、なのはの体さばきに興味を持つシグナム

「高町、一手手合わせ願えるか?」

「え? いいですけど……」 

 そうしてなのはが承諾し、二人の模擬戦が決定した。

 なにもないフィールドで二人が向きあい、お互いに武器を構える。なのはは訓練用の模造刀。シグナムは殺傷力を落としたレヴァンティ。

「永全不動八門が一派、御神真刀流小太刀二刀術表、高町なのは参ります」

「ヴォルケン・リッターが烈火の将シグナム、参る!!」

 二人の剣がぶつかり合う。

 火花を散らす剣と剣。めまぐるしく動く攻防。

 激しく、早く、そしてどこか美しい剣舞に誰もが目を奪われていた。

「うわあ、なのはママすごおい」

 目をキラキラさせながらヴィヴィオは呟く。

「すごい……」

「あのなのはさん魔法使ってないんですよね?」

 御神を知らない純粋な魔法世界出身者たちは、純粋な体術だけで戦うなのはの動きに圧倒される。

 そして、一瞬のようで長い攻防の均衡が崩れ、ぎんとシグナムによって刃を弾かれなのはがバックステップで離れる。

「ふ、やるな高町。以前お前の兄と手合わせしたが、互角、いやそれ以上だ」

「にゃはは、ありがとうございます。シグナムさんも烈火の名の通りすごく強い剣です」

 お互いの称賛の言葉にお互い笑う。剣士同士通じ合うものがあるのだろう。

「だが、次で最後にしよう」

「ええ」

 そう言ってお互いに構える。なのはは奥義を使うために刀を鞘に納める。対してシグナムは最も信頼する技、紫電一閃の構え。

 誰もが固唾を飲む中で二人は動いた。

 なのはは動く。神速を使い、誰も追いつけない領域に踏み込む。

 速さは力。届かない速度に力は意味をなさず、そして、速度は如何なるものにも届かせる力になる。

 傍から見れば瞬間移動。だが、シグナムとて歴戦の剣士。その動きに反応しレヴァンティを振るう。

「紫電……一閃!!」

 シグナムも最高の技の冴えと自負できる一撃。

 だが、なのはの動きはそれを超えた。

 憧れの兄から受け継いだ奥義之六『薙旋』の四連撃。

 一刀目で軌道を逸らさせつつ、シグナムの背中からの一刀、さらにそこから二連撃を叩きこむ。

 なのはの剣に弾かれるシグナム。派手にシグナムは地面へ叩きつけられた。

 慌てて駆け寄るなのは。

「あ、あの大丈夫ですか? 手加減し忘れちゃったんですけど……」

 心配そうになのははシグナムを見る。だが、シグナムはふっと小さく笑う。

「大丈夫、ではないな。将としてのプライドはボロボロだ」

 シグナムの言葉になのはは苦笑を浮かべる。

「だが、いい勝負だった。礼を言うなのは」

 シグナムが手を差し伸べると、なのはも笑顔を浮かべる。

「あ、いえ、こちらこそありがとうございました!」

 お互いの力を認め合った剣士同士の姿に戦いを見ていた全員が拍手した。







「すっごかったよ、なのはママ!!」

「にゃはは、まだいないはずの娘に会うなんてちょっと複雑」

 なのははぽりぽりと頬をかいて苦笑する。なお、このなのはに子供ができるのはもう少し後、依頼で運命の相手と出会ってすぐである。

「えっとね、シグナムさんがこうずばーって来たら、ママはこうすぱーって」

 ヴィヴィオが一生懸命なのはの動きを真似して見せる。

 最初は微笑ましくそんなヴィヴィオを見つめて、なのはは一つ気づいた。

「ヴィ、ヴィヴィオちゃん、もう一度今のお願いできる?!」

「なのは?」

 なのはは慌ててヴィヴィオに頼む。フェイトがいぶかしげに首を傾げるが、なのはにとってこれは重要なことであった。

 なにせ、ヴィヴィオが今した動きはなのはが神速を使っていた時の動きであったのだから。

「はーい」

 ヴィヴィオは頷くと、再びなのはの動きを模倣して見せる。ところどこと間違いはあるが、それは確かにあの時なのはがした動きだった。

 そして、なのははがしっとヴィヴィオの肩を掴んだ。

「ヴィヴィオちゃん、私のところで修行しないかな? きっと誰よりも強い剣士になれるから!!」

「ちょっとなのは」

 フェイトが止めるが、なのはは気にしない。そんなことで今の彼女は止められない。

「ママより?」

「うん」

 なのはは頷く。目の前の原石はきっと自分を超える輝きを見せるはずだと確信が持てた。

「じゃあ、やってみるー!」

 そして、なのはは元の世界に帰るまで、できる限りヴィヴィオに簡単で基本的な指導を、そして、自分がいなくなってからも大丈夫なように、ノートでヴィヴィオに教えることをこの世界の自分に残したのだった。




~~~~
今回はゼロノスななのはさんと御神のなのはさんでした。
ゼロノスな世界では電王ははやて、イマジンたちはヴォルケンズです。ただし、僕の中では一人だけ違うのが混ざっています。それはそのうち明かす予定。
そして御神のなのはさん。
シグナムと名勝負は出す時から考えていたこと。楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、また。コメント楽しみにしています。



[21475] とある世界のなのはさん
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2010/10/25 06:44
 私は紅茶を一口頂きます。

 うん、葉が本来持つ甘味と渋みが完璧に引き出されているの。

「ノエルさん美味しいです」

「ありがとうございます」

 ノエルさんは特に表情を変えずにお茶菓子を起きました。

 むう、私の世界ではもう少し表情が豊かだったのに。ちょっと寂しく感じます。

 はあ、みんな元気かなあ。

「ねえなのはちゃん。今、元の世界を思い出してたでしょ?」

 ニヤリと忍さんが笑う。にゃはは、忍さん鋭い。

 現在、私のいる世界の私はこの海鳴学園の中学生で忍さんと同級生。忍さんは私がここの私とすり替わったことに気づいて、いつの間にかお茶会をしています。

 部屋にたくさんのコスプレ衣装があった時は驚いたの。ブログまで開いて所謂ネットアイドルまでやってて、戸惑い気味ですができる限り同じように更新しています。

 冗談でバリアジャケット姿をアップしたらすごい反響でびっくり。一応デザイン残しておこうかな。

「でも、異世界ねえ」

 忍さんが笑います。この忍さん、実は吸血鬼。いくつかの世界の忍さんも『夜の一族』とかいう吸血鬼みたいな存在だったっけ。

 その忍さん、なんでも最近赴任してきたユーノくんのお父さんに、ここから出られなくなる呪いをかけられて封じられてしまったそうです。

 ただ、聞いた限りはその人お兄ちゃんそっくりなような……ううん、お兄ちゃんはそんなはっちゃけた人じゃないの!

 そのユーノくんはユーノくんで不安。何度か魔法らしいものを使っているのを見て不安になります。

 はあ、バレたらフェレットってわかってるのかなあ? なにかとヴィヴィオがフォローしているけど、やっぱり不安……

「だいたいどのくらいで回るの?」

 うーん、どのくらいって……

「世界によってまちまちですねえ。数年いる世界もあれば一週間程度の世界もありますし」

 ここに来てまだ一週間。

 いろんな世界を回れるのはいいけど、もう少し時間に関してはっきりしてくれたらなあ。

「そういえば、今度修学旅行よね?」

 ああ、そういえば。場所は京都。

「楽しんできてね」

 そういって笑う忍さん。確かに楽しみなの。でも、なんかありそうな……







 そして、その予感は的中。新幹線内では妙な事件が発生。旅館ではやてちゃん誘拐未遂事件にユーノくんの偽物発生事件で私の堪忍袋の緒が切れました。

「アコースウゥゥゥゥ!!」

 目標の居場所をWASで見つけ出した私は、完全武装で強襲しました。

 バインドで簀巻きにした犬のアコースくんにレイジングハートを突きつけてお話しします。

「バレたらフェレットで本国強制送還なのわかってるの? ねえ、私の言っていることそんなに間違ってるかな?」

「はい……」

 横でユーノくんとヴィヴィオが怯えてますが気にしません。

「とりあえず、こんな事件を起こした反省文を書いた上でユーノくんのコピーと一緒によろしく!」

 まあ、ちゃんと言い含めたからこれで平気だと思うの。

「なのはさんって魔法使えたんですか……」

「びっくり」

 ユーノくんとヴィヴィオが目を丸くしてます。ああ、説明しないと。

「私は別の世界からこっちの私と入れ替わってきたの。だからここの私はたぶん魔法使えないかな」

 少なくとも部屋にはおもちゃのステッキくらいしかなかったの。

 でも、私の発言に二人は驚きます。

「えっ? 魔法世界とは違うんですよね?!」

「ここの高町さんはちゃんと帰ってこれるの?」

 と矢継ぎ早に問いかけられます。ああ、もう!

「一度に聞かれると答えられないの!」

 ごめんなさいと謝る二人。よろしい。

 とりあえず、余程のことがない限り、私はもうなにもしないと言って、私は部屋に戻りました。

 平穏が一番なの。








 だけど……

「私呪われてるのかな?」

 はあとため息をつきます。

 再び誘拐されたはやてちゃん。調べたところでは主力はほぼ壊滅。浚われたはやてちゃんはリョウメンスクナノカミとか言うものの復活のために利用されてるとか。

 まったく……

「世界はなんでこんなに忙しいの……」

 私は突撃しました。









 エリスさんと蓮飛ちゃんが暴れる中に突っ込む。

 鋼糸を使って軌道上にいる数体一気に縛りつける。

「むう?!」

「なに?」

 悪いけど、眠ってもらうの。

「ディバインバスター!!」

 一気にバスターで吹き飛ばした。

「むっ? 高町?」

「え? なのはちゃん?」

 私の参戦に二人が驚く。

「ごめんなさい、先急ぎます!」

 そのままバスターで作った包囲の穴をくぐって私は直進した。 








 妖怪の群れを突破し、一気に本陣に切り込みます。

 そこに、リインフォースさんにはやてちゃんを奪還された……そういえば名前知らないの。まあ、でも今回一番会いたかった相手。

「なんや。もう復活したんや。もう私らは止められ」

「黙れド三流」

 私の言葉に口を噤む。はあ、私は額を抑えます。

「まったく、こんなくだらないことで私の周りを乱さないでほしいの。折角今回は中学生生活をエンジョイしてたのに」

 私のくだらないの一言に真っ赤になる相手。

 左手を向ける。今まで訪れた世界で気に入った、世界を、人を、私の大切な者を泣かせる相手に向ける言葉。

「さあ、あなたの罪を数えなさい!!」

 私はレイジングハートを構える。

「はっ! 威勢のいいこと言ってこの力がわから」

 かつて訪れた世界でいつの間にかあった剄脈から剄を発生させて拳を振るう。

 私の拳から放出された放出されると破壊力を持った衝撃波へと転じた剄に殴られたリョウメンスクナノカミが森に倒れる。

「な……い?」

 尻すぼみになる言葉。

「借り物の力で威張るな」

 起き上がろうとするリョウメンスクナノカミ。巨大に見合わず早い。まあ、でも……

「マナよ、我が声に答えよ。一条の光となりて、彼のものどもを薙ぎ掃え。オーラフォトンビーム!」

 リョウメンスクナノカミの腕を右肩(?)ごと消し飛ばす。再び倒れ、大きな水しぶきが上がる。

「なんや、なにがどうなってるんやあ?!」

 慌てる相手に対し、私は少し残念がっていた。本当は上半身ごと消し飛ばすつもりだったけど、流石に神剣じゃないから出力が上がらない。

 まあいいや。

 私はその真上に飛んで魔力を集める。

「待て!」

 待たない。テロリストには譲歩しない。これは国際常識なの。

「スターライトブレイカー!!」

 星の光が泉の半分ごと吹き飛ばした。

 ふう、すっきりした。

「じゃあ、あとお願いしますね」

 となぜか来る気がしていた忍さんに後のことは丸投げする。

「はいはい。面倒なところは押し付けるのね」

 苦笑する忍さんと交代しました。








 私が降り立つとみんなが笑顔で迎えて……くれなかった。

「し、死ぬかと思った……」

「ママ怖い吹き飛ばさないで消し炭にしないで」

 確かにやりすぎたかも。まあ、それは置いといて、

「どうも、こんにちは」

「へえ。データはないけどずいぶんと危険な存在だね」

 眉をひそめた白い少年が私を見返す。

「ふっ!」

 抜き打ちのディバインバスターだが、防がれる。

「こんなのが効くとでも?」

 思ってないの。

 神速で少年の後ろに回り込む。目を見開く少年。

「これは!!」

 私はレイジングハートを槍だけどうちの流派の小太刀に見立てて振るう。

「ぼこぼこにされたユーノくんの分なのーー!!」 

 奥義之六『薙旋』の四連撃で斬り飛ばす。

「っ?!」

 湖面に叩きつけられる。水しぶきが上がり、少年が消える。

 まあ、このくらいでやられるとは思わないけど、さすがに私と言うイレギュラーがいるから後退したと思うの。

 そして、私はすぐにユーノくんのところに駆け寄る。と、ヴィヴィオの服が石になって砕けていた。

 ……中学生だけど、私くらいありそう。っと、それは置いといて、私がジャケットを被せるとびくっと肩が震えてから、身体に被せられたものに気づいて笑う。

「ありがとう、高町さん」

 そして、忍さんが『おわるせかい』で文字通り終わらせた。








 それからはやてちゃんがパクティオーして、石化が進行するユーノくんを治療して一安心。

 私は爪を噛んでそれを見守ってました。ユーノくんとキス、ユーノくんとキス……

「た、高町さんって強いんですね」

 憧れるような目で私を見るユーノくん。もっとそのきらきらな目を私に向けて。

 と、別れていた私たちが集結し互いに無事を確かめ合う中、嫌な予感がよぎった。そして、私は忍さんの背後に潜む陰に気がついた。

 同じく忍さんの向かいでヴィヴィオ達と喜んでいたユーノくんも同様に。

『忍さんっ!!』 

 忍さんを突き飛ばし自らを楯にしようとするユーノくん。

 数本の石槍が伸び、ユーノくんに迫る中、私は神速で割って入った。そして、なにかが刺さる音が響いた。

「なのはさん!」

「なのはちゃん!!」

「高町さん!!」

 絶叫が響き……私は少年に手を突き付け、

「ディバインバスター!!」

 今度こそ、ディバインバスターをゼロ距離で直撃させた。祭壇の一角ごと吹き飛ぶ少年。ざまあみろなの。

「なのは……さん?」

「うん? どうしたの?」

 私は振り向く。

「あ、いえ、今直撃……」

 ああ、そのこと。

 自動で展開していたプロテクションを消した。

「ぎりぎり間に合ったから。ありがとうレイジングハート」

『All right』

 そして、私はみんなと合流しようとして、光に包まれた。ああ、もうなんだ。

「な、なんですか?」

「うーん、お別れが近いみたい」

 そんなとヴィヴィオが洩らす。

「えっと、なのはちゃん、短い間だったけど楽しかったよ」

 ありがとう忍さん。そして、忍さんの言葉に気を取り直したのか、みんなが次々と別れの言葉をかけてくれる。

「高町さん、またいつか」

「ヴィヴィオ、元気で。ユーノくんと仲良くね」

 途端に真っ赤になる二人。

「えっと、なのはちゃん、助けてくれてありがとうな。そっちでもがんばって」

「はやてちゃんも、がんばってね」

「さよなら高町」

「はい、エリスさん」

「じゃあねなのはちゃん」

「うん蓮飛ちゃん」

 そして、最後にユーノくん。

「あの、なのはさん、ありがとうございます。もっとお話ししたかったです」

「うん、いいのユーノくん。あ、でもちょっと来て」

 戸惑い気味にユーノくんが近寄ってきます。時間がないの。

「アコースくん!」

「はい!」

 そして、私はユーノくんにキス。パクティオーしました。現れるカードを取って離れます。

「じゃあね~」

 そうして、私はゲートに飛ばされた。さて、次は帰れるかな? それとも別の世界かな?







 私はパクティオカードを見る。『世界を渡る白い魔王』と書かれたカードに苦笑する。

 まあ、魔王でもいいけどね。

「さあ、かかってきなさい勇者フェイト!!」

 私は勇者であるフェイトちゃんとその仲間たちを迎え撃った。




~~~~
旅先でのなのはさんの活躍の回です。
とりあえず、チートになっているなあ……
実はチートと唄われるラカンさんとも絡ませたかったけど、まあ、今回はこの程度で。



[21475] Wななのはさんとコスプレイヤーななのはさん
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2010/11/02 22:25
 なのははフェイトに一晩かけて書ける限りヴィヴィオに伝えたい内容を書き記したノートを渡す。

「えっと、ヴィヴィオちゃんに教えることはここにできる限り書いたから」

「うん、任せてなのは」

 フェイトは頷いてノートを受け取る。それからなのははヴィヴィオの手を握る。

「じゃあ、がんばってねヴィヴィオちゃん」

「うん、なのは先生!」

 名残惜しくなのはは手を離すと、両手を合わせてゲートをくぐる。

「じゃあね」

 光の中に消えていくなのは。

 そして、入れ替わりに現れたなのはが手に持つスティック状のなにかのスイッチを入れてポーズを決める。

「行くよユーノくん! 変身!」

<JOKER!>

 力ある声、ガイアウィスパーが響き、沈黙。

「あれ? ユーノくん?」

 首を捻りながらなのははポーズを取るのを止める。

 そして、目の前にいるユーノたちを見て……目を見開き、一瞬でなのははユーノを抱えて距離を取る。

「な、なにするのなのは?!」

「なにをするじゃないよ! なんで八神はやてたちがいるの?!」

 え? 私? とはやては自分を指差す。

「な、なのはちゃん、いったいなに言ってる……」

「惚けても無駄なの! またユーノくんを利用して、海鳴を死の町にするつもりなんでしょ?」

 そこまで言ってはやては理解した。

 どうもそのなのはが来た世界ははやてが敵だったようである。

「しかたないの、こうなったら!」

 なのはは新たに先ほどまで腰につけていたものと細部の異なるものを取り出し、腰に装着する。

「変身!」

 そして、さっきのスティックをそれにインサート。

<JOKER!>

 瞬間、風が巻き起こり、なのはは黒のバリアジャケットを纏っていた。

「魔法使いジョーカー、さあ、あなたの罪を数えなさい!」

 なのはは飛び出す。その間にフェイトが割ってはいる。

「待ってなのは!」

 突然割って入った相手に慌ててブレーキをかけた。

「えっと、フェイト姫?」

「へ?」

 なのはの言葉にフェイトは戸惑うのだった。








「あー、ここ平行世界なんだあ……」

「今回もあっさり納得したなあ」

 はやてはため息をつく。いったい平行世界のなのはちゃんたちはどんな人生を送ってるのだろう? と考えてしまう。

「にゃはは、前に世界を旅する魔法使いにお会いしたので」

 その魔法使いの名はななせ。全ての魔法使いを破壊する存在と呼ばれる人物である。

「ところで姫ってどういうこと?」

 フェイトはさっきから気になっていたことを尋ねる。

「あ、フェイトさんは海鳴では知らない人がいないくらい有名な歌姫でみんなが『フェイト姫』って呼んでるの。この前は紅白にも出てたよ」

 この後、はやての策略により、フェイトの歌声がミッドで一大ブームを巻き起こすこととなる。








「えっと、ヴィヴィオ……ちゃん?」

「こんにちはヴィヴィオです」

 ヴィヴィオがぺこっとお辞儀する。

「なんか大家のはずのヴィヴィオちゃんが年下って不思議な気分」

 なのはの世界ではヴィヴィオはなのはの師匠であるオリヴィエの娘であり、なのはの開く探偵所の持ち主だった。

 むーとなのはは唸る。

「うさぎでつっこまないよね?」

 しょっちゅうプレートを持ったウサギで叩かれていたなのははそんなことを呟いた。






 そして、ガジェット出現の報になのはもフォワードメンバーとともに出動する。

「変身!」

<JOKER!>

 魔法使いジョーカーに変身するなのは。

「さあ、あなたの罪を数えなさい!」

 ポーズを決めてなのははガジェットに突撃する。

「やあ! はあ!」

 パンチやキックで戦うなのは。だが、さすがに空中戦力はそれでは無理である。

「なら!」

 なのははJのメモリーを引き抜き、銃の意匠のTが描かれたメモリーを取り出す。

<TRIGGER!>

 新たなメモリーをインサートし、フォームチェンジ。

「魔法使いトリガー! はっ!」

 胸に固定されていたトリガーマグナムで、宙のガジェットを的確に落とすなのは。

 さらに現れるガジェットⅢ型に再びメモリーを交換。

<METAL!>

「魔法使いメタル!」

 背中から引き抜いた棒術武器メタルシャフトでアームを流し、敵を薙ぎ掃う。

 さらにはのはは再びジョーカーに変身し直し、もう一度メモリを抜いてもう一つのスロット、マキシマムスロットにメモリをインサート。

<JOKER! MAXIMUM DRIVE!!>

「ジョーカーキック!」

 黒い光を纏ったなのはのキックがガジェットⅢ型を粉々に粉砕した。









 幾度目になるか数えるか億劫になるくらいに繰り返されたなのは召喚。

 いつになったら帰ってくるんだと全員疲れ始めていた。

「なのは、じゃあね」

「うん、私は海鳴を護り続けるから、みんなもがんばってね」

 別れを告げ、なのはは賢者の石が作るゲートをくぐる。

「魔法のパティシエななせちゃんただいまさんじょ……う……」

 ウェイトレスと魔法少女を足して割ったような衣装を纏い、キラッとポーズを決めたなのはが現れた。

 そして、彼女は周りを確認する。さっきまで新しい衣装での撮影をしていた自分の部屋じゃない。どう見ても屋外。

 さらに目の前の見知らぬ制服を纏う集団の中に、クラスメートらしき人物が何人かいることを認めた。

 それを認識し、彼女は自分の密かな趣味がバレてしまったと思い、

「い、いやあああああああああ!!」

 現実に絶望して絶叫した。








「お、落ち着いて……なのはちゃ、ぶふう!」

「は、はやて笑っちゃ悪いよ」

「せ、せやけど、く、くくく」

 腹を押さえて笑うのを耐えるはやて。

 その姿になのははいじいじしだす。

「ばれた、ばれちゃった。周りに秘密にしてたのがばれちゃった……」

 そのいじけ始めたなのはの肩をフェイトが叩く。

「えっと、なのはさん……で合ってるかな?」

「え? そうだけど……」

 となのはは答える。

「少しお話しよっか?」








「平行世界? 魔法? あっはっは、そんな冗談で誤魔化されないの」

 はやてやフェイトの説明を笑い飛ばすなのは。まあ、普通ならそうかもしれないが……

「フォトンランサー」

 フェイトが空中にフォトンランサーを作り出し、なのはは目を見開く。

「これで信じてもらえないかな?」

「う、うん」

 戸惑いながらもなのはは頷く。トリックとも疑ったが、それはないだろうと予想した。

 なによりも、平行世界だというなら、元の世界に戻れば実害はゼロ! と思えば少しだけ気が楽になった。

 ふうっとため息をつく。

「魔法かあ、まさか本当にそんなのがあるなんて……」

 そう言ってなのはは悩みだした。余談だが、彼女が元の世界に戻ってすぐに魔法の存在を受け入れるが、それはこの時の経験のおかげである。





「えっと、こんにちはユーノ・スクライアです」

「え? 先生?」

 ユーノの自己紹介に驚くなのは。なにせ、彼女の知るユーノは自分より小さい少年であるのだから。

「へえ、ユーノ先生やってるんだ。結構似合いそうだね? 私にも勉強教えてくれたし」

「あはは、そうだね。フェイトは教えがいがあったよ」

 そう言って笑う二人。

「でも、こっち十歳で先生ですよ?」

 なのはの発言に二人は固まった。








「ふーん、十歳で先生、すごいなあ」

「私も驚いたよ。飛び級で教師になった天才少年って聞いてたけど、どう見ても小学生にしか見えない子が教壇に立ったんだから」

 なのはがユーノのことを話す。

「特にクラスメイトのヴィヴィオちゃんと八神さんのところに同居してるんだけど、そのことでテスタロッサさんがいろいろ言ってるんだよね」

 へえっとフェイトはユーノを見る。そのユーノはヴィヴィオと遊びながら汗を垂らしていた。

「その、ヴィヴィオちゃんが子供、立場が逆なんだね」

 なのはは笑う。すると、とてとてとヴィヴィオは走り寄ってきた。

「パパ~、今度のなのはママのお洋服かわいいね。私も着てみたいな」

 笑顔でヴィヴィオが質問してなのはは固まった。

「……ママ? パパ?」

 慌ててフォローするフェイト。

「あ、あのね、別に実子じゃないよ? 単になのはが保護責任者で、別の世界のなのはの影響で最近ユーノをパパって呼びだしただけなんだよ?」

「あ、そうなんだよかったあ」

 十九歳でもう子持ち?! と、魔法の世界ならあるのかもと恐怖しかけたが、フェイトのフォローにほっとするなのは。






 そして、今回のなのはは全くと言っていいほど戦闘力はなく、隊舎で待機していたのだが……

「バリアジャケット、なんかずるいの。これならデザインだけでいろんな格好を……」

 いつも新しい衣装を仕立てるために月のお小遣いの大部分を消費するなのはにとってバリアジャケットはかなり羨ましいシステムだった。

 だが、同時にあまりに簡便過ぎて、コスプレイヤーとしてどうかな? という思考と衝突する。

 そして、うーんうーんと悩んでから、

「とりあえず、試してみよ」

 借りてきたデバイスでさっそく前からしてみたかったコスプレを実行するなのはだった。






 一時間後……

「えっと、次はこっちで、ああ、こっちもいいかも! うーん」

 完全にバリアジャケットの簡便さに嵌ってしまったなのはだった。





「ふっふっふ、やっぱり私の見立てに狂いはなかったの」

 嬉しそうに笑うなのは、その目の前には……

「ううう、なのは、もうこの格好やめていいかな?」

「も、もう少し待って! えっと、とりあえずカメラカメラ……」

 プログラムした悪の女幹部風の衣装を着せたフェイトの姿を写真に収めてご満悦の笑顔を見せるなのは。

「わー、かわいい! ありがとうなのはママ!」

「ふっふっふ、やっぱり似合ったの」

 続いてヴィヴィオにフリルたっぷりの服を着せるなのは。

「えっと、なのはさん、これはちょっと……」

「そんなことないの! すっごーく似合ってるの!!」

 スバルにスクール水着にどっかのメカニックデザイナーが描いたようなアーマーを追加した格好。

「ちょ、なのはさん待って!」

「逃がさないの!!」

 さらに相棒のティアナにセーラー服に鉈を持たせる。

「な、なのはさんちょっとすーすーするんですけど」

「大丈夫似合ってるから」

 白いドレス風の衣装をキャロに着せて、

「ちょ、僕はいいです!」

「遠慮なんて不要なの!」

 キャロとおそろいのデザインだけど黒くなった服を片手にエリオを追いかけまわす。

 ばれたならばれたで自分の欲求を満たそうと、開き直ったなのはさんだった。






~~~~
以前少しだけ顔見せした世界のなのはさんたちです。
どうでしょう?
ネギまのちうはいいんちょたちの服装を正してたので、他人の格好もコーディネイトしたがっている部分もあるかななんて自己解釈です。
余談ですが、はやては赤いあくまの格好をさせられました。



[21475] 奴隷? ななのはさんと星光さん
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2010/11/10 23:32
 どうしてなのはは帰ってこないのか、むしろ帰ってこないんじゃないか? と思い始めた六課メンバー。だが、諦めるわけにもいかずにまたもなのは召喚を試す。

「じゃあねなのはちゃん」

「はい、お世話になりました」


 ぺこっとコスプレ用にいただいた簡易デバイスとともにゲートをくぐるなのは。

 そして光が収まると、煌びやかなドレスを纏ったなのはが現れた。

「え? あれ、ここ……六課?」

 そのなのはは戸惑うように首を捻った。








「こんにちはなのはちゃん」

「はやてちゃん? なにがどうなってるの? なくなったはずの六課があるなんて……」

 その言葉にはやてはもしかしたら少し未来から来た存在かもしれないと予想を立てる。

「えっと、なのはちゃん少しお話せえへんか?」









「そうなんだ、平行世界、しかもまだ六課があるなら過去なのかな」

 はやての説明に頻りに頷くなのは。

「未来かあ、私らどうなってるんかなあ?」

「そうだね、すごく気になるよ」

 ちらちらとユーノを見ながら呟くフェイト。

「で、なのはちゃんってそっちではなにをしとるの?」

 ドレスなんてものを来ているなのはにもしや、シンデレラストーリー?! なんてはやては予想していたが……

「あ、私は……」

 なのははそこで、ユーノを見てからうーんと悩んでから、答えた。

「ユーノくんの奴隷です」

 なのはの言葉に全員が沈黙し、そろっとユーノが入り口に向けて物音を立てずに逃げようとする。

 だが、がしっとはやてとフェイトに腕を掴まれ、逃げられなかった。

「ユーノくん、まさか、君、なのはちゃんを……」

 はやての頭の中にはフェレット状態でなのはに襲いかかるユーノの姿。

「なにもしてないよ? 僕はなにも知らないよ?!」

「ユーノ! なんてことしてるの! 私もユーノの奴隷にして!!」

「誤解だよフェイト! あと、さりげなくとんでもないこと言わないで!!」

 そこであははとなのはは笑う。

「大丈夫だよフェイトちゃん。フェイトちゃんもだからね」

「あ、そーなんだ」

 とフェイトは笑いながら手を離す。

「ちょっと待て!!」

「じゃあ、きりきり話そうかあ」

 そして、隊舎裏に消えたユーノ。少しして上がった悲鳴を全員聞かなかったことにした。








「で、まあどういうことなんや?」

 たっぷりユーノを絞ってからはやては改めてなのはに尋ねた。

「話すと長くなるんだけど」

 そうしてなのはは語った。

 自分のいた世界で管理局がある事件で崩壊したこと。

 その後捕虜となったなのはは、辺境の地で奴隷として売られることとなったこと。その情報を入手したユーノがなのはの身を買ったこと。

 その後、クロノが作ったレジスタンス組織に合流した二人は新政権に立ち向かい、新たな管理局設立に尽力したこと。

「そうなんか、私たち負けるんか……」

 未来のまさかな事情にはやては意気消沈とする。なにせ六課の設立理由の大部分はその未来をなくすことだったのだから。

「うーん、いっちゃ悪いけど、はやてちゃんのはどこか独り善がりなところもあったからねえ」

 レジアスという上の人間が敵側に繋がってるという予測をさっぴいても、事態の中心になる『陸』を信じずに、自分たちと繋がりの深い『海』の本局に頼る。自分たちだけで敵を押しとどめようという過剰な自信etc.etc.……

 今思えば相当問題があったなあとなのはは思っている。そして、なのはの指摘にはやてはさらに肩を落とす。

「自分たちだけでなんとかしようとしないこと。なにより、一番問題なのは人材の強化、まずはそれだよ?」

「はい、おっしゃる通りです」

 深々とはやては頭を下げた。その後、根気よく他の隊の人間と話し、AMF対策を進めていったそうな。

「でも、新しい管理局作ったなら奴隷制は違法なんじゃないんですか? それに、そもそもユーノ先生ならなのはさんをそんな立場にしないんじゃ……」

 ふと浮かんだ疑問にティアナは首を傾げる。

「さすが、新管理局内で五指に入るストライカーになるティアナ・L・グランセニックなの」

「え? あ、そんな……って名字変わってますよ?!」

「しかもオレのっすか?!」

 さらっと暴露された未来の関係に慌てる二人。余談だがこのことが切っ掛けにぎくしゃくしながらも二人は付き合いだしたと言う。

「な、なにがあったんですか?」

「残念だけど、私もよく知らないの……て、あれ? 二人ってこのくらいから付き合ってなかったっけ?」

 ぶんぶんと首を振る二人になのははしまったと苦笑した。

 奴隷生活の間に二人がくっついたため過程をほとんど知らないのだ。余談だが、なのはが知らない間にかくっついた人は他にもいたりする。タヌキとか。

「まあ、奴隷はもう違法なんだけど……ユーノくんは、奴隷の身に落とされて汚された私も受け入れてくれて、ずっと一緒にいてほしいって言ってくれて、私はそれがすごくうれしくて」

 一部自分の本音を言われてしまいユーノは恥ずかしそうに俯く。それからなのはは胸を張って告げた。

「だから、今の私は身も心もユーノくんの所有物なの」








「そ、そういえばなんでドレスなんて?」

 さっきから気になったのはその格好。ドレスのような服を着ていることだった。

「あ、今度ある新生管理局一周年記念パーティー用にユーノくんが買ってくれたの」

「ふーん、でも高そうだなそれ」

 決して安いものではないが、ホテル・アウグスタでなのはたちが着てたドレスよりもずっと高く見える。てか、どう見ても装飾の宝石、全部本物だろ?

「そりゃあ、ユーノくんお金持ちだからね」

「へえ?」

 意外な言葉にはやては興味を示した。

「私を買った時のお金だって自費だし」

「……いったいいくら?」

 人に付けられた値段を聞くなんて失礼だと思いながらもはやては問いかけた。

「えっと、確か……」

 なのははおぼろげに自分に付けられた額を告げる。

 そして……

『高っ!?』

 そのあまりの額にユーノを含めた全員が驚きの声を上げる。

 なにせ、それだけあれば三代遊んで暮らせるくらいの額だった。

「い、いったいどうやってそんな額を……」

「えっと、たまたま発掘した遺跡の埋蔵金で一攫千金だったかな」

 うわーとユーノは呟く。それじゃあただの墓荒らしじゃないか。いや、考古学者は見ようによっては墓荒らしではあるが……

「私は?」

「ユーノくんがフェイトちゃんの捕まっていた研究所の責任者を買収して、手に入れた施設の情報から助け出したよ」

「未来の僕ってどんな人間?!」

 現実的ではあるが、ちょっとせこい手口にユーノは突っ込む。

「まあ、ええやないか。それで未来は幸せなんなら」

 そう言ってはやては苦笑いするのだった。







「ねー、ママーどれいってなに?」

「ヴィヴィオ奴隷ってのはね」

「話しちゃだめだからね! 聞いちゃだめだからね!?」

 ぶーっとヴィヴィオが頬を膨らます。

「ユーノパパのけちー」

 けちと言われようがそこは護らねばならないのである。そして、なのはがぼそっと。

「ヴィヴィオにも手を出した癖に」

「未来の僕ーーーー!!」

 なのはの呟きに、ユーノは未来の自分を殴りたい衝動に駆られたのだった。








「ねえ、なのは、ユーノってなにしたら喜んでくれるのかな?」

 なにか未来のことからユーノが喜ぶことを知ってるかもしれない! と期待してフェイトは尋ねる。

「え? ユーノくんが喜ぶこと?」

 なのはは途端に赤くなってもじもじする。え? 私変なこと聞いた? っとフェイトは戸惑う。

「えっとね、ユーノくんは……」



……//
え、そんな……//
でね……//
わわ……//
……するんだよ//
そ、そんなことまで……//
……//






 真っ赤になりながらフェイトは顔を上げる。

「そっかユーノはそういうのがいいんだね!」

「そうだよ、がんばってフェイトちゃん!」

 がしっと二人が硬く握手を交わす。

「うん、なのは! ……でも、一人だと練習できないよ」

「そこはバナナでね」

 怪しいレクチャーをフェイトさんに始めるなのはさんだった。






 

 そして、またまたまたまた……以下略)なのはさんの召喚を試みる六課。

「なんか最近これが楽しくなってきたんやけど」

「気持ちはわかるけど、なのはを連れ戻さないといけないんだからね」

 はやてをいさめるフェイト。その手にはなのはさんが残した『ユーノくんを喜ばせる方法百選(こっちの私と仲良く使ってね)』があった。

「ヴィヴィオ、きっとあなたのママは、なにがあってもヴィヴィオを助けてくれるから」

「あい」

 ヴィヴィオの眼を見てヴィヴィオに訴えかけるなのは。

 そう、きっとこの世界の自分は、ちゃんとヴィヴィオを救えるとなのはは直感していた。

「じゃあね、みんな! 負けないでね!」

 ぶんぶん手を振ってなのはさんが光を潜る。

 そして、新たに現れたのは……なのはのバリアジャケットとデザインは同じだけど、色調が暗く、なによりも違うのは短い髪とどこか冷たい印象を抱く瞳の女性。

「……ここは?」

 慌ててフェイトたちが構える。

「な、なのはちゃんのマテリアルやないか!」

 フェイトたちを見るマテリアル。と言っても記憶にあるマテリアルと違い、順当になのはくらいに成長した姿ではあるが。

「フェイト、はやて、どうしたのですか?」

「なのはのマテリアル……だよね?」

 フェイトがマテリアルに問い返す。

「? なんのことでしょうか? 私は高町セイですが……」

 そこ言葉に戸惑うフェイトたち。

「少し話そうか」

 はやてはなんとかそう提案したのだった。







「そうですか、平行世界なんですか」

 若干驚きの混ざった声でセイは呟く。

「そうなんよ。で、君はどんな世界の子なんや?」

「どんな子と尋ねられましても……」

 とりあえず、自分たちのことを話すセイ。

 セイはなのはの双子の妹であること。なのはと同じようにジュエルシードに関わり、ユーノたちと知り合ったことを話した。

 また、フェイトやはやてが言う二人のマテリアルも二人の姉妹であるという。

「私はなのはと同じく教導隊に所属しています。教育方針はなのはと違いますが、お役にたてるかと」

 その言葉にほっとするフェイトたち。

 だが……







「まだですよ」

「ちょ、まってくださ」

「敵は待ちませんよ」

 実践方式で容赦なく新人たちをしごくセイ。

 そのやり方は『限界? 突破するためにあるんだよ』と言わんばかりのものだった。

「これくらいで根を上げてはだめですね。やはりなのはの教え方は甘い」

 と、思考に沈んでいたら、エリオが急接近する。

「はあ!」

「なかなかの突きですが、まだ甘いですね」

 たくみにルシフェリオンを操り、エリオを撃墜する。

「な、なのはさんと全然違う……」

 接近戦も純粋な体術で対応するセイに戦慄するスバル。

「いかなる状況にも対応できなければ、本当に強いとは言えませんよ?」

 セイは別にこの世界のなのはの教え方を否定する気はない。だが、純粋に穴があると認識していた。

 得意なことで弱点をカバーするといえば聞こえはいいが、それでは対応力におのずと限界が生じる。如何なる状況も臨機応変に対応するためにも鍛えるのが彼女の考え方だった。

 そのため、ある程度だが義兄、恭也に接近戦の手ほどきもちゃんと受けている。

「世界が違うとこうも違うのですか」

 実はセイの世界のなのはもセイと同じように恭也から手ほどきを受けている。

「さて、それではそろそろ終わりにしましょうか」

 セイはルシフェリオンを構え直し、足元を蹴った。







「模擬戦は終了、後で今回の反省文を報告書として提出。以上です」

 そう言ってセイは隊舎に戻ろうとする。

「あ、セイお姉ちゃん」

「やあ、セイ」

 ヴィヴィオと、ヴィヴィオと遊んでいたユーノが顔を上げる。

「こんにちはヴィヴィオ、ユーノ」

「こんにちは」

 ぺこっとヴィヴィオがお辞儀する。

「はは、いきなり召喚されただけなのに、ご苦労様」

「あ、いえ、このくらい大したことありません」

 にこっとちょっと頬を赤くしながらセイが笑う。

「笑った……」

「あんなふうに笑うんだ」

 始めてみたセイの純粋な笑顔に驚く新人たち。

 セイはその視線に若干頬を赤くしながらもこほんと咳払いをする。

「そ、それではユーノ。また」

「うん、じゃあね」

 そうしてユーノの前からそそくさと歩み去るセイだった。








「ねえ、そっちの私の所にもマテリアルがいるんだよね?」

「うちのマテリアルもなんやね?」

「はい、二人ともお二人の双子の姉妹となっています」

 フェイトとはやてに問われて答えるセイ。

「ふーん、どんな感じなの?」

「あの子は子供のまま成長した感じですね。いっつも騒がしくて、よくユーノに抱きついたりして……まったく羨ましい」

 ぼそっと呟くセイにフェイトが首を捻る。

「なんでもありません。あなたの言う王も同じですかね、まあ若干丸くなっていると思いますが」

 と、セイは自分たちの世界の話しをするのだった。








「最近はなのはとも協力するようになりました。フェイトとライ、二人に連携されては一人では抗しきれないので」

『はあ……』

 いつの間にか、セイの話はフェイトとライも入れたユーノを巡る戦いの話しになっていた。

 余談だが、なのはが接近戦を覚えたのも、大部分の理由がこれであったりする。








~~~~
奴隷? ななのはさんと星光さんベースの双子の妹セイちゃんです。
奴隷の方はどんな目にあったかはご想像にお任せします。まあ、僕は物語はハッピーエンドが信条ですので、こういう形ですが。
セイちゃんはマテリアルが成長した感じでイメージです。
なお、セイちゃんの世界の王は、姉の足のおかげか割と心配性な子です。



[21475] フルメタななのはさんとスクライアななのはさん
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2010/11/19 22:04

「それではお世話になりました」

 見送りに集まった六課メンバーにセイは一礼する。

「はは、こちらこそありがとうね」

「セイお姉ちゃんじゃあね!」

 ぶんぶんとヴィヴィオが手を振る。その微笑ましい姿にセイが微笑む。

「ええヴィヴィオ。ただ、ちゃんとピーマンは食べるんですよ」

「あい……」

 しゅんとヴィヴィオが頷く。

「では、私もなのはが戻ってくることを祈っています」

 それだけ残してセイがゲートを潜る。

 そして、新たに現れたのは長いバレルを持つライフルを構えた、体にぴったりフィットした黒いパイロットスーツらしきものを纏ったなのはだった。

「……あれ? ここどこ?」

 そのなのははスコープから目を離すと首を捻った。

「あー、なのはちゃんちょっとええかな」








「平行世界……そんなものがあるんだ」

「口ではそういうけどあまり驚いとる気がせえへんな」

「確かに」

 なにせなのはの顔は若干目が丸くなった程度なのだから。

「やあ、ラムダドライバなんてとんでも兵器そばにあると、なんか納得できて」

 よくわからないが、どうやらこのなのはも特殊な事情の持ち主だとだけは、その格好からすぐに全員がわかった。

「で、あなたはどんなことをしてるんですか?」

 フェイトの問いにうーんと悩むなのは。

「本当は機密事項だけど……まあ、別世界だしいいかな?」

 そして、なのははこほんと一回咳払いする。

「私は極秘の対テロ傭兵組織『ミスリル』の作戦部、西太平洋戦隊陸戦ユニットSRT所属、コールサイン『ウルズ6』高町なのは軍曹です」

 見ててほれぼれするくらい綺麗な敬礼を決めるなのはだった。







「ねえ、そっちでは私ってなにしてるの?」

 フェイトが気になって訪ねる。

「えっとフェイトちゃんは私とよくコンビを組んでるよ。で、最近は日本の学校に通い始めたり、試作機を押し付けられたり」

 と、色々ともう一つの世界のフェイトについて話していた。







 なのはがフェイトに語っている頃、ユーノはそっと六課から去ろうとしてた。

 ここにいたら一生いじられることは理解できたのだ。それにそろそろ書庫に帰らないと、仕事が滞る。

 だが……

「ちょい待ちユーノくん」

 ガシッとユーノの肩をはやてが掴む。

「ちょ、はやて、僕はそろそろ書庫に戻りたいんだよ」

「ダメや。なのはちゃん見捨てるんか?」

 うっ、とユーノは唸る。

「でも、あまり書庫を空けとくのも……」

 その言葉にはやてはニヤリと笑う。

「それなら大丈夫や。少し前から君は有休になっとる」

「えっ?!」

 ばっとはやてが書類を出す。確認すれば確かにユーノの有休届け。

「い、いつの間に?」

「いやー、レティ提督がユーノくん全く休まんから、ここらで消化させてって頼まれてな」

「どうやって届け出を……」

「司書さんたちが快く出しとくれたわ」

 外堀がどんどん埋め立てられていく。というより逃げ道はなかった。あとは普段あまり使わない自宅くらいだが……

「で、後はユーノくんが仕事せえへんように私らが見張ることになっとるからな」

 いい笑顔ではやてはユーノを引きずられ、それも叶わなかったのだった。








「へえ、私、ユーノの護衛なんだ」

「うん。端から見てるとお互いすごく不器用でね、見てて楽しいよ」

 楽しまれてもなあとフェイトは苦笑する。

「でもなんでユーノを護衛してるの?」

「知らない。少佐も機密事項だから教えてくれないし、まあ実際二回も身柄を狙われて、私たちの窮地を助けてくれたからなにかあるのは本当みたいだけど」

 となのはは首を振る。

「でね、こっちのフェイトちゃんすごく面白いんだよ。初日にね、よく難民の子と遊んだりしてたから、好きなものは『子供』とか言ったり、男の子からのラブレターを果たし状と思ってフル装備で迎え撃ったりして『彼女にしたくないアイドル』なんて名付けられたり」

「そうなんだ……」

 なのはがやってきた世界の自分がどんな生活を送ってるのか激しく気になるフェイト。そこに、

『はーい、フェイト。元気にしてる?』

 ぱっとモニターが開きリンディの声が響く。

「あ、母さん」

 なのははリンディの顔を見ると、

「あれ、リンディ少佐?」

 と反応した。

『へ?』

 なのはのいた世界ではリンディはアースラの陸戦コマンド指揮官であり、フェイトの育ての親でもあった。








 ガジェット戦、なのはは来た時から持ってたライフルでフォワードのフォローをしていた。

「ウルズ6よりロングアーチへ、ライトニングへの援護射撃を開始します!」

 安定感の悪いヘリから見事にガジェットのセンサーを狙う。

 その技術は、魔法というアドバンテージを入れても自分より上とヴァイスを認めさせるほどだった。

「すごいっすねなのはさん」

 ヴァイスはほれぼれするほどの技術に心底感動していた。

「にゃはは、このくらいの腕なら大勢いるよ?」

 そう笑うが、「あんな技術力のある操縦兵はあれ以来会ったことがない」と、近接戦では世界でもトップクラスの腕を持つフェイトをして、そう言わしめるほどである。





 この事から、たった一日だがティアナに精密射撃のレクチャーを頼まれたのだが、

「こう、がしっとしてぐらぐらしそうになるところを、ふもっふふもっふって」

「すいませんなのはさん。抽象的過ぎてわかりません」

 あまりに感覚的な説明にティアナには殆ど理解できなかった。

「なるほど、じゃあ、そこはこうぐわっと」

 唯一同じ狙撃屋出身のヴァイスだけは理解できたのだった。




「こんにちはですなのはさん」

 とリインが声をかける。

「あれ、大佐? でも小さい……」

 リインを見て目を丸くする。

「え? リインってそっちではそんなに偉いんですか?」

「うん、そうだよ? それに私たちが使ってる潜水艦の設計もしちゃうくらいだし」

 わあーとリインが目を見開く。

 それ以来リインはデバイスの知識を集めるようになったとか。









 何度やってもなのはが帰ってこない。

 そのことに六課のメンバーは少なからず参ってきていた。

 本当に帰ってくるのか、そもそも本当にこのやり方で帰ってくるのか、などという疑問すら浮かんでいる。

 だが、止めるわけにもいかずに再び召喚が試みられる。

「それじゃあ、お世話になりました」

 なのはは一度お辞儀してから手を合わせゲートを開いた。

 そして、改めて出てきたのは、本を片手にメガネをかけたなのはさんだった。

「あれ? ここ六課?」

 そして、気づいたなのはが首を傾げた。

「今度は美由紀さんぽいなのはちゃんやな」

「うん、もしかしたら割と近い世界かも」

 こそこそとフェイトたちが相談する。

「あ、ユーノくんなにが起きたの? 私無限書庫で仕事してた筈なんだけど」

 と、ユーノに問いかけるなのは。

「えっと、なのは?」

「なあにフェイトちゃん?」

 ユーノの隣に立っていたフェイトの呼びかけに、なのはは満面の笑みで答えるが、その目は欠片も笑っていない。

 なにがあったんだろうと思いながらフェイトは問う。

「無限書庫で仕事してるの?」

 フェイトの問いになのはは、へっ? と声を上げる。

「だって私無限書庫の司書長だよ? フェイトちゃん知ってるでしょ?」

 なのはが無限書庫で司書長……

 どういう世界なんだろうとはやては疑問を抱き尋ねてみた。

「あの、高町なのはちゃんでええんよね?」

 と、問いかけた瞬間なのはがもじもじしだす。

「えっ? そんな、もしかしてはやてちゃんそんなにユーノくんと私がお似合いだって思ってくれてたの? 嬉しいな~」

 顔を赤くしながらえへへっと笑うなのは。

 この一言にまさかとはやては思う。

「なあ、なのはちゃん。君のファミリーネームはなんなんや?」

 はやての問になのはは首を傾げる。

「えっと、なのは・スクライアだけど、いきなりどうしたの?」

 はあ、とその一言にはやてはため息を吐き出す。

 どうやら、またもちょっとではなくかなり違う世界らしい。

「なのはちゃん、少しおはなししよか」








「平行世界? へえ、そんなのがあったんだ」

 ふむふむとなのははしきりに感心する。

「まあ、あったんよ。で、あたしらは事故で旅立ったなのはちゃんを呼び戻すために努力しとるんや」

 はやての言葉に大変だねとなのはは相槌を打つ。

「私とユーノくんが逆の世界なんだ」

 となのはは笑う。

 そう、このなのはが来た世界ではユーノは高町優乃でなのははなのは・スクライア。

 なのはが無限書庫司書長でユーノがエースオブエースの世界だった。

 うーんとなのはは悩む。

「私は戦うのはできないかなあ。でも、データもらえたら少しは手伝えるんだろうけど」

『ぜひお願いします!』

 全員がすぐになのはにお願いする。

 なにせ無限書庫司書長が二人、まさに鬼に金棒だった。








「ねえ、フェイトちゃん、こっちのユーノくんってどうなの?」

「どうって?」

 なのはの問いにフェイトは首を傾げる。話を聞く限り性格はこっちとほとんど同じ。ただなのはの全力全壊の信念をもっているくらいだ。

「その、色々フラグ立ててない? フェイトちゃん以外にも、アリサちゃんとかすずかちゃんとかヴィータちゃんとかリィンとか」

 なのはの問いにフェイトは頬をひきつらせる。

 なるほど、なのはと立場が逆ならありそうだなあと。

「う、うーんこっちのユーノはそう言うのないかなあ?」

 少なくともユーノはそんなに……とまで考えてフェイトは気づいた。

 こっちのユーノは自分となのはとヴィヴィオにフラグ立ててるなあと。

「うん、ないよ」

 なんとか言葉を飲み込むフェイト。言ったら言ったらでヒドい目に遭うのは明白だから。

「よかったあ。ならこっちの私に頑張ってもらわなくちゃ」

 と笑うなのはにフェイトは引きつった笑みを浮かべるしかなかった。








「ふーん、ユーノくんそんなにフラグ立てとるんか」

 なのはの話を聞いていたはやてが興味を示す。

 さりげなくフェイトに視線を送ったがぷいっとそっぽを向かれてしまった。こっちはこっちでフラグ立てるだけで回収せえへんからなあとはやては笑う。

「そうなの。アリサちゃんとすずかちゃんは幼なじみで、ヴィータちゃんはライバル心から恋心、フェイトちゃんは助けてもらった恩が愛情に変わったって感じ」

 それはなのはも一緒なんじゃと言いかけて、フェイトはその一言を飲み込んだ。

「ユーノくんが鈍感なせいで余計に質が悪くて」

 あれで分からないのはおかしいよ。と、なのはは笑う。

 まあ、こっちの世界もそうだなあとフェイトは考える。

 少なくともあのヘタレは鈍感星から来た鈍感星人とか、穏やかな心で覚醒したスーパーフェレット人なんて言われても信じられるとフェイトは思った。

「ママー」

 と、そこでヴィヴィオがなのはに抱きつく。なのはは嬉しそうに笑う。

「こっちじゃ私がママなんだ」

「あ、やっぱりそっちじゃ違うんか?」

 うん、となのはは頷く。

「ユーノくんがパパでフェイトちゃんがママ。なんかフェイトちゃんの勝ち誇った顔がすごくムカついたのは覚えてるの」

 ギリギリと歯軋りをしながら悔しがるなのは。

「フェイトママ、なのはママ怖い……」

 その様子にヴィヴィオは怯えてフェイトに抱きつく。

「大丈夫だからねヴィヴィオ」

 よしよしと優しくヴィヴィオの頭を撫でるフェイト。

 と、ちょうどドアが開いてユーノが部屋に入ってきた。

「なのは、賢者の石のデータ持ってきたよ」

 はいっとなのはにデータを渡すユーノ。

 そこで今度はユーノに抱きつくヴィヴィオ。

「パパ遊んでー」

「ヴィヴィオ、今パパはお仕事してるからまた後でね」

 とヴィヴィオの頭を撫でるユーノ。その様子を見ていたなのはは途端に難しい顔で考え出す。

「確かミッドは多重婚オーケーだったはず。ならいざとなったらユーノくんにハーレム作らせて、私が第一婦人に!」

 怪しい計画を練りだしたなのはを全員がスルーした。

 ただ、ヴィヴィオだけは「ハーレムってなあに?」とフェイトに聞いたそうな。






~~~~
今回はフルメタ&司書長ななのはさんです。
最初素直にクルツ君出すか悩みましたがこんな感じにしました。
司書長ななのはさん、ユーノくん、なんつうかエロゲな主人公? と、自分で思ったりして。
ふと思ったけどだいぶ続いてるし、とらは版とかに移すべきなのかなあ?
ふも、ふもっふ。ふもるる、ふうも。(それでは、また。次はなにかな~)



[21475] カラカラメグル
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:b50a47bc
Date: 2010/11/25 00:11
 今度こそなのは帰ってきて! と誰もが願った。なにせ地上本部警備の日が近づいてるのだからそれには流石に平行世界から来た人には頼めない。せめて近しい世界なら。

 そして、司書長×二の力は伊達じゃない! と信じ召喚が試みられる。

「じゃあねみんな。ユーノくんがフラグ立てないように気をつけてね!」

 そう言ってなのははゲートを潜る。

 そこに白衣のなのはさんがいた。

「あれ? ここどこ?」

 なのはが首を傾げる。

「また違うんか……」

「元気出してはやて」

 がくーっとはやてが膝をつき、フェイトがその肩を叩く。

 さて、一体どんな世界から来たのか、白衣着てるし、もしかして科学者か? と予測するはやて。

 そして、なのはは困惑しながらはやてたちに向き、目を見開いた。

「ユーノ、くん?」

 ユーノを見た瞬間、なのはは最初は驚いて目を見開き、そして、泣きながらユーノに抱きついた。

「ユーノくーん!」

「わ、なのは?!」

 いきなりなのはに抱きつかれてユーノは慌てる。

「ユーノくん、ユーノくんなんだよね? 他人の空似なんかじゃないよね?!」

 なのはが一方的にまくし立てる。

「な、なのは落ち着いて……」

 ユーノはなんとかなのはの腕から逃げようとするが、なのはの力が強くてそれもかなわない。

「は! まさか夢とか?」

 そう考えた瞬間なのはは白衣のポケットからドライバーを取り出す。

 全員がそれで何をするのかと疑問に思っていたら……なのはは躊躇せずに逆手に持ったドライバーを自分の太ももに突き刺した。

『いっ!?』

 なのはの突然の暴挙に全員声を上げる。中にはなのはが刺した箇所を抑える人間までいた。

「痛い……夢じゃない!」

 刺し傷から血が流れるのを無視してなのははまたユーノに抱きついた。

「ユーノくんがいる。夢じゃなくてユーノくんが……ユーノくん。嬉しいよユーノくん」

 泣きながらなのははユーノを抱き締め続けた。









「へえ、ここ平行世界なんだ」

 足の傷の治療を受けながらなのはははやてたちの説明を聞く。

 もちろんその間も片時もユーノを離さなかった。

「あのさ、なのは、そろそろユーノ離してあげなよ」

「やだ」

 きっぱりとなのははフェイトの言葉を拒絶した。

「その、僕もそろそろ離してもらったら助かるんだけど……」

 と、ユーノからもなのはに頼む。

「ユーノくんがそう言うなら……」

 ユーノの頼みになのはは悲しげな表情でしぶしぶユーノを離す。

「で、なのはちゃんはどんな世界から来たん? なんかユーノくんにご執心やけど……」

 はやてはとりあえず、このなのはがどんななのはか確認することにした。

 さっきからの行動でこのなのはがかなりヤバいのは理解できてはいたが。

 はやての問いに俯くなのは。

「……じゃったの」

「へっ? なに?」

 はやてはよく聞こえなかったため聞き返す。

「死んじゃったの、ユーノくん」

 なのはの答えに空気が重くなった。

 特にユーノは自分が将来死んでしまうと聞いて、どんな顔すればいいのかわからないと言った顔になる。

 ぎゅうっと手を握り締めるなのは。

「浚われそうになったヴィヴィオを庇って、全身傷だらけになってもヴィヴィオを護ろうとして、死んじゃったの……」

 なのはがぽつぽつと語る。そのたびにぽつぽつと涙が零れる。

「私、ユーノくんがいなくなってから好きだったって気づいたんだ……いなくなってからなんて私、私…………」

 泣き続けるなのはをフェイトがぎゅっと抱き締める。

「辛かったよねなのは、苦しかったよね」

 フェイトの胸の中でなのはは涙を流す。

「フェイト、ちゃん……うう、あ、うあああああああああ!!」

 なのはの慟哭が六課に響いた。








 泣き止んだなのははフェイトに笑みを見せる。

「ありがとうフェイトちゃん」

「ううん、このくらい平気だから」

 なのはに微笑むフェイト。

「で、今なのはちゃんはなにしとるの?」

 なのはの事情はわかったものの、それと白衣は別物。いったいなんでそんなものを着ているのか?

 一つだけ、はやては答えを思いついたが、なのはに限ってないと思いつつも、気になって問いかけた。

「うん、ヴィヴィオを連れて海鳴に帰ったんだ」

 なのはは特に気負わずに答える。

「そっか。でもヴィヴィオは狙われてるんやなかったの?」

 はやての問いにフェイトはちょっと非難気味の目を向ける。だが、

「ああ、それなら大丈夫なの」

 なのはは笑って答えた。明るい様子にちゃんと逮捕されたのかと安心しかけ、

「犯人は私が皆殺しにしたから」

 なのはの言葉に全員が我が耳を疑った。

 スバルに至っては自分の聴覚センサーが誤作動を起こしたのかと疑った。だが……

「なのは?」

 フェイトが震えながらなのはに声をかける。だが、なのはは笑いながら続ける。

「私からユーノくんを奪っておいて、のうのうと生きているなんて……そんなこと赦せるわけないでしょ?」

 誰もが絶句するなか、なのはは笑いながら同意を求める。

「ねえユーノくん、ちゃんと仇はとったよ。ユーノくんを私から奪った人は、同じくらい苦しめてあげたんだから」

 なのはは深い奈落のような瞳でワラッタ。








 そして、なのはの相手をユーノとヴィヴィオに頼んでからフェイトたちは集まる。

「なあ、フェイトちゃん、あのなのはちゃん……」

「言いたいことはわかるよはやて」

 フェイトは気づいていた。なのはの目、それが自分の母であるプレシア・テスタロッサと同じ狂気に駆られた瞳だと。

「こういうのは嫌やけど……気を付けないとな」

 あのなのはは何をするか分からない。それが二人の共通認識だった。

「うん、でも何ごともなければいいんだけど」

 だが、彼女たちの願いが叶うことはなかった。










 再度のなのは召喚、集まった一同の前でなのはは笑う。

「みんな、元気でね。ユーノくんも」

 なのははユーノに差し出す。

「うん、なのは」

 ユーノはそれが握手のためと考えて手を差し出し、

「これからよろしくね」

 へっとユーノが声を上げた瞬間、なのははユーノの手を掴み、自分に引き寄せる。

 そして、空いてた左手でユーノの腹を叩く。

「な、なの……は、な、んで?」

 そのままユーノはなのはの腕の中に倒れ、その彼をなのはは小脇に抱える。

「ユーノ?!」

 なのはの奇行にフェイトはすぐに走り出した。

「レイジングハート!」

 すぐになのはがレイジングハートを構える。

「バルディッシュ!」

 遅れてフェイトもバルディッシュを携える。

 ぶつかり合うデバイスとデバイス。

「なのは、なにするつもり?!」

「なにって、ユーノくんを連れて帰ろうとしただけだよ?」

 フェイトの問いに、なに当たり前のこと聞いてるの? と言いたげになのはは答える。

 がっとバルディッシュを弾いて、賢者の石に向かうなのは。

「させるかよ!」

「なのはさん止まってください!」

 そこにヴィータのアイゼンとスバルが割ってはいる。

 流石にこの二人相手に接近戦をする気にならないのか、なのはは後退する。

「邪魔しないでヴィータちゃん、スバル」

 なのははそう言って、桜色じゃない、血のように紅く染まったバスターで牽制する。

「止めろ高町!」

 だがそこにシグナムが斬りかかる。

 舌打ちしながら距離を離すなのは。

「なのはさん!」

 さらにエリオとフリード、そしてティアナが加わる。

 流石のなのはもこの人数ならと、フェイトは考えて、

「仕方ないなあ。ブラスターモード、リミット1リリース」

 あっさりとなのははブラスターモードを選択し、ブラスタービットを四つ展開した。

 そう、このなのははシグナムたちと違い、リミットの枷はない。使うことに躊躇がなかった。

 はやてはそれに一筋縄ではいかないと認識する。

 なぜならなのははただ賢者の石へたどり着けばいい。対して自分たちは賢者の石に近づけずに、人質のユーノを気にしつつなのはを止めなければならない。

「しゃあない、みんなリミットリ」

 はやてが隊長陣のリミットを解除しようとして、後頭部に一撃を受けた。

「えっ?」

 薄れゆく意識の中、はやては自分を撃ち抜いたなのはのシューターが飛び去るのを見た。

「はやてちゃん、ダメだよ。それはもう少し後まで取っとかないと」

 実は最初からなのはは隊長陣のリミッターを解除されないように、先にはやてを始末しようと、シューターを仕掛けといたのだった。

「主!」

「なのは、てめえ!」

 はやてが倒れたことに激昂してヴィータが突っ込む。

「邪魔」

 対してなのはは手加減なしのバスターでヴィータを撃ち抜いた。その目はかつての友達を見る目ではなかった。

 単にヴィータを邪魔者としか認識していない目。

「それと、シャマルさんも」

 レイジングハートを向ける先には旅の鏡を使おうとしていたシャマルがいた。

「エクセリオンバスター」

 そして、鏡を使う直前にエクセリオンバスターが直撃し、シャマルは気絶した。

「あと、七人」








 戦いは熾烈を極めた。

 リミッターを外せない隊長陣も、フォワードメンバーも、ブラスターモードのなのはを相手に一人一人倒れていった。

 そして、ついにフェイトだけが残った。

「なんで、どうして?!」

 フェイトが叫びながらなのはにザンバーで斬りかかる。

「どうしてって、私はただユーノくんを取り返したいだけなのに」

 と、なんでもないように答えながらなのははフェイトに答える。

「そのユーノは違う! なのはの知ってるユーノとは」

 フェイトが否定する。だが、

「同じだよ。優しいところも、笑い顔も、子供の面倒を見るのが好きなのもみんなみんな私が好きだったユーノくんのまま」

 愛おしむようにユーノを見つめるなのは。そして、なのははフェイトに問いかける。

「ねえ、なんでフェイトちゃんは私を邪魔するの? 私はただユーノくんと幸せになりたいだけなのに」

 なのはの問いにフェイトが叫んだ。

「私もユーノが好き! だから連れてかせられない!」

 それは遠回しにアピールしていたフェイトが初めて叫んだ正直な心。

 なのはは驚いて目を見開く。

「そうだったんだ。なら、私の世界のフェイトちゃんも喜ぶかな?」

 まあ、渡さないけどとなのはは断りを入れる。

 微妙にずれた答え。フェイトはすでに理解していた。このなのはが止まらないことを。だから、

「私がなのはを止める!」

「無理だよフェイトちゃん」

 フェイトが斬りかかろうとして、ブラスタービットのバインドに拘束される。

「くっ?!」

 身動きが取れなくなったフェイトの横をなのはは悠々と通る。

「じゃあね、フェイトちゃん。元気で」

 そう言ってなのはは賢者の石に向かう。

「ユーノ! ユーノォ!!」

 フェイトが暴れるがバインドは欠片も緩まなかった。









(……ノ、ユーノ……)

 ユーノはぼんやりと意識を取り戻した。

(この声、フェイト?)

 意識がはっきりしない。だがぼんやりと彼は賢者の石を見た。

 その時、ふとユーノは思い出した。

(ああ、そういえば、なのはと一緒に解読した最後の一節、結局わからなかったっけ)

 だが、なぜか今のユーノは答えに至っていた。

(確か……)

 その答えにユーノは小さく笑った。

(なんだ、なのはを連れ戻すのってすごく簡単だったんじゃないか……)

 そう簡単だった。だって、

 ぱんと手を叩く音。そして石が光り出す。

「ユーノくん」

 その声を聞いた瞬間、ユーノは思いっきり息を吸った。そして、

「なのはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 全力全開でその名を呼ぶ。

 そして、声は届いた。

 体が強く引っ張られる。一瞬でユーノはなのはの腕から救い出された。

「ただいま、ユーノくん」

 そして、ユーノを助け出したなのはが、この世界のなのはがユーノに微笑んだ。










<なのはside>

 やっと、戻ってきました……

 あれからどの位たったのかわかりません。でも、ノンビリ感慨に更けてはいられないです。

 状況はなんとなくわかります。私の目の前に現れた私が脇に抱えていたユーノくんを助け出しました。

「えっ? なの、は?」

 そのままフェイトちゃんの横に降り立ちます。

「ただいまフェイトちゃん。元気だった?」

 私の言葉に、フェイトちゃんの目尻に涙を浮かべます。心配させちゃったかなあ。と少し申し訳なく思います。

 でもまずは……フェイトちゃんを縛っているバインドをディスペルします。

 それから、私は私に向き合います。

 どんな子かわわかります。だって彼女の世界に行ったことがあるから。

「あ、あ、ユーノ、くん、ユーノくん……」

 彼女は頭を抑えてふらっとこっちに向きます。

「返して」

 血走った目でこっちを睨む彼女。

「ユーノくんを返せ!!」

 ごめんね、そういう訳にはいかないんだ。

「行こうユーノくん、フェイトちゃん」

 私の言葉に二人が頷きました。







 彼女がレイジングハートを向けます。

「エクセリオンバスター!!」

 前の私なら少しきついけど……

 展開したエルダーサインでバスターを弾く。

 驚く彼女に対して、身体強化をかけてから、神速を使い一気に接近し後ろに回り込む。目を見開く彼女。

「あなたの歪み、私が断ち切るよ」

 振り向こうとする彼女の手を掴み、高く投げ飛ばす。

 そして、レイジングハートを向けられる前に再び接近、穂先を叩いて射線を逸らす。

 そのまま、私は彼女の背に手を回して抱きしめる。

「私はあなた」

 かつてフェストゥムと接触した時の感覚を思い出しながら、目の前の私に同調する。少しでもお話しやすいように。

「あなたは私」

 でもあくまで接触は一部。彼女は私だけど私じゃない。あまり深く潜れば精神崩壊を引き起こしかねません。だから、するのは呼吸を合わせる程度。

 流れ込む彼女の思念、叫びの感情。あまりに強い感情に顔をしかめる。でも!

 後ろからユーノくんたちが近づくのがわかる。頃合いかな。

「トランザム!」

 そこで私は切り札を使った。私から溢れだす膨大な光が私たちを包み込んで……








 気づけば私たちはユーノくんと初めて会った公園にいました。

「ユーノくんが、ユーノくんがいない、いないよ」

 目の前には泣きじゃくる私。

「いや、ユーノくんがいないなんて嫌……」

 彼女の悲しみが痛いほど私にも伝わってくる。

「私も、私も少しだけわかるよ」

 私はそっと彼女の肩に手を起きました。

「一緒で当たり前になってた。その当り前がどれだけ大切なのか後でわかったんだ」

 彼女が顔を上げます。

 たくさんの世界を私は巡りました。ユーノくんもたくさんいました。だけど、どのユーノくんも、私じゃない、その世界の私や他の子を見ていた。少しだけそれが辛かった。

 きっと彼女にも私の気持ちは伝わっている。ここはそういう場所だから。

「辛かったよね。悲しかったよね。でも、いなくなっても大切なのは変わらない。きっとユーノくんも」

 そっと私は彼女を抱きしめます。彼女はしゃくりあげながら泣きます。

 しばらくそうしていたら、後ろから足音が近づいてきました。振り向けばユーノくんとフェイトちゃんがいます。

「ユーノ、くん」

「や、やあ、なのは」

 ぎこちなく笑顔を浮かべながらユーノくんが手を上げて答えます。

 途端に、彼女は赤くなります。

「にゃあ、へ、変なところないかな?」

「大丈夫、ほら、顔拭いて、ユーノくん待ってるから」

 私が顔を拭いてあげると彼女は顔を俯かせながらもなんとかユーノくんに向き合います。

「え、えっと、ごめんねユーノくん。フェイトちゃんも、いきなりあんな事してごめんなさい!」

 ばっと頭を下げて彼女は謝ります。

「ううん、いいよなのは」

「そうだよ私たち、もう気にしていないから」

 二人が彼女に笑いかけます。きっと二人も彼女の思いが分かってあげている。

 ユーノくんが誰よりも好きだったこと。自分が気付けなかった恋心。だから居なくなってから気づいてしまった彼女の絶望を。

 そして、彼女は恋する乙女のように顔を真っ赤にして口を開きます。

「そ、その、私、ユーノくんのことが好き! 大好きだよ!!」

 彼女はずっと言いたかった言葉を、言えなかった言葉をユーノくんに贈ります。

 ユーノくんは少し恥ずかしそうに顔を赤くしてから、とびっきりの笑顔を浮かべます。

「ありがとうなのは。僕も、僕もなのはのこと好きだから」

 ユーノくんの言葉に私は嬉しそうに微笑みました。

「やっと……やっと言えた、やっと、ユーノくんに好きって……」

 そして、私はまたポロッと涙を零します。純粋な喜びの涙。

 彼女を縛りつけていた一つの楔がなくなった瞬間だった。

 そっとユーノくんが彼女を抱き締めます。

「良かったねなのは」

 フェイトちゃんも嬉しそうに笑います。

「うん、ありがとうフェイトちゃん」

 よかった。泣いてる子を助けられて。

 嬉しくて私も笑ってしまいます。

 そして、世界が輪郭を失っていって……








「ほら、私」

 私は彼女を一歩前に押し出します。

「えっと、みんなごめんなさい」

 頭を下げて彼女はみんなに謝りました。

「ああ、ええよ気にしなくて」

「まあ、今回だけは多目に見てやるよ」

 みんな笑って彼女を赦してくれました。

「うん、ありがとう」

 彼女も笑いました。

 そして、未だにゲートを開いたままの賢者の石に向いて歩を進める。その途中で私とすれ違います。

「ありがとう私」

「ううん、そっちもがんばって」

 うんと私が頷く声を聞いた直後、後ろで強い光が瞬き、すぐに収まりました。

 私はふうっと一度息を吐きます。そして、

「みんな、ただいま!」

 みんなのところに向かいました。







~~~~
カラカラメグルのなのはさんと帰還したなのはさん。
ちょっとヤンデレ風味です。
帰還したなのはさんはチート扱の力を発揮しましたが、まだこれは彼女の力の一端です。
その力で、僕が与えられなかった救いをなのはさんに与えていただきました。
なんとなく、リクにあったいくつか見てたら連鎖的にこのコンボができあがってましたw
次回から、NANOHA無双が始まります。



[21475] デウスエクスマキナななのはさん(前編)
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:b50a47bc
Date: 2010/12/04 21:52
「みんな、ただいま!」

『おかえりなさい!!』

 みんなが私の帰還を歓迎してくれる。

 にゃはは、私も帰ってこれて嬉しいなあ。

「ママー!」

 と、ヴィヴィオが抱きついてくる。

「ヴィヴィオ! よかったあ元気そうで!!」

「あい! 元気です!」

 あれ? なんかヴィヴィオ変わった気がするけど、私がいない間に色々あったのかな……

 変わってくれたという喜びと寂しさに、ぎゅっとヴィヴィオを抱きしめる。

 ごめんね。私の不注意で会えなくなって。

 でも、これからは私がずっといて上げるからねヴィヴィオ。

「うわーん! なのはちゃん、なのはちゃんやあ!!」

「わっ! はやてちゃん?」

 と、続いて泣きながらはやてちゃんが抱きついてきた。

「よかった。ほんまによかった!」

 心配してくれてたんだよね……

 もし私が逆の立場だったら、いてもたっても居られなかっただろうし。

「うん、無事に帰ってこれたよ。心配かけてごめんね」

 うんとはやてちゃんが頷いて離れる。

「なのはさん!」

 とスバルにティアナ、エリオやキャロが駆け寄ってくる。

 みんな!

「心配しました!」

「無事でよかったです」

「その、安心しました!」

「ほっとしました」

 四人が口々に私の帰りに喜んでくれる。ああ、やっぱりいい子たちだ。

 みんなの未来のためにも、私が経験したことを少しでも多く伝えないと!

「みんな、心配かけてごめんね。でも、明日からまたビシバシ行くよ! 特にヴァイスくん!」

「えっ? 俺?!」

 自分を指差すヴァイスくんに、私は頷く。

「君はしっかり鍛え直すよ! ティアナを悲しませない為にも!!」

 ティアナがえっ?! と顔を紅くします。

 あ、そう言えば、二人ってもう付き合い始めてたかな? うーん、よく覚えてないや。

 でも、代わりに私は今まで行った世界のヴァイスくんを思い出します。

 「未来への水先案内人、このヴァイス・グランセニックが承った!」と特攻したこと。

 瀕死のヴァイスくんが、脱落したフォートレスのプラズマ砲にストームレイダーを接続して、「狙い撃つぜえ!!」ってラグナちゃんが巻き込まれたテロの首謀者と相打ちで倒れたこと。

 特に後者はティアナと結婚した直後。危うくティアナが新婚早々に未亡人になるところだったよ。

「だからしっかり鍛え直すよ!」

「だから、理由教えてくださーい!」

 言ったらダメなの。未来を知って遠慮しあったらゴールが変わるかもしれないから。







 そうやって久しぶりに会ったみんなとの交流会を終えてから部屋に戻ります。この部屋も久しぶりだなあ。

 と、感慨に耽っていたら、

「なのは、おかえり」

「おかえりなさいなのは」

 とフェイトちゃんとユーノくんが迎えてくれてました。

「ただいま、ユーノくん、フェイトちゃん!」

 なんか、私は二人を見て帰ってこれたんだと強く思えました。

 久しぶりにあった私たち。いろんな世界の二人のことを話します。

「でね! フェイトちゃんが」

 ヴィヴィオははやてちゃんが預かっているから遅くまで話せます。

 でも、なんとなく二人がここにいた理由はわかります。

 だから、キリがいい所で話を止めました。

「えっと、フェイトちゃん、ユーノくん、その……」

 あう、いざとなると恥ずかしいです。

 と、フェイトちゃんが私の肩に手を乗せます。

 うんとフェイトちゃんが頷きます。それだけで、今の私たちは十分相手の考えを理解できました。

「えっと、ユーノくん」

「ユーノ」

 私たちはユーノくんに向き合います。

『私はあなたのことが好きです』

 そして、二人一緒に告白しました。長くかかっちゃったけど、やっとユーノくんに言うことができました。

 ユーノくんが顔を紅くします。

「あ、その……僕なんかでいいの? 二人にはもっとお似合いの相手がいると思うし、なのはは帰ってきたばかりだし」

 はあ、どの世界のユーノくんも大体は自信がなかったりしたけど……

「ユーノくん、私たちの気持ちはわかってるでしょ?」

 ほんの少しだけだけど触れ合った心。きっとユーノくんにも私たちの思いは伝わっている。

「それに、ユーノなんかじゃないよ。そんなユーノだから私は、ううん、私たちは好きになったんだ」

 そっとフェイトちゃんがユーノくんの手を握ります。

 ユーノくんは困ったように笑顔を浮かべます。

「その、ありがとう。僕も二人のことは好きだよ。こんな僕でよかったら……付き合ってください」

 ユーノくんの言葉にフェイトちゃんは微笑みます。私も嬉しくて笑顔を浮かべます。

 そして、私たちは……









 翌日、私たちは隊長室に向かいます。いろいろ話さないといけないからね。

 はあ、昨日はなかなか濃厚な一晩でした。そのおかげなのかユーノくんとフェイトちゃんは寝不足みたいで酷い顔をしてます。

 私は平気だけど、うーん、なんで? ユーノくんは徹夜なんてしょっちゅうだし、フェイトちゃんも前線張ってるから体力あるはずなんだけど……

 一方はやてちゃんは隊長室に入ってきた私たちを見てほっほうなんて怪しい笑みを浮かべます。

 えっと、別にいいじゃん! やっと、やっとユーノくんに会えたんだから!!

「ごほん、ではなのはちゃん、話してくれへんか? これから私たちがどうすればいいのか」

 はやてちゃんの言葉に気を取り直し、私は頷きます。

 そして、私はいろいろとこれから起こることを元に修正するべきところを伝えます。

 まず、手薄になったところを狙われる六課に残すメンバーは、ザフィーラさんとシャマルさんだけじゃなく、シグナムさんにエリオとキャロ。

 ギンガもスカリエッティに狙われてることから、なるべく私たちから離れないように注意する。

 今夜警備に出るから、今はそれくらいしかできないけど、頑張るよ!

 あ、そうだ!

「はやてちゃん、お願いがあるの」

「なんや? なのはちゃんのお願いは、できる限り優先するで?」

 さすが部隊長は太っ腹! いや、女の子に取って太っ腹は誉め言葉じゃないけど……

 こほんと私は咳払いします。

「六課が解散したら、私、管理局辞めるから口添えお願いね」

 と頼みました。

「ああ、そのくらいなら……えっ?!」

『えっ?!』

 みんなが驚く。

 あれ? 私変なこと言った?

「な、なのはちゃん、なんでや?」

 なんでやって……

「いい加減休みたいんです」

『うっ!』

 ふうっと息を吐き出します。

「十五年間たまにお休みできたけど、殆ど戦いの日々だったの」

 ほとんどの世界で私は戦い続けてました。

 鬼械神で戦った世界、ちょっと未来の世界で戦った世界、私が戦闘機人でスカさんと仲良しだった世界……ほんと、いろんな世界を巡ったの……

「じゅ、十五年?」

 そうなの。

「どうもこっちと時間の流れが違ったみたいで、それこそ何年もいた世界があったんだ」

 よくエターナルの戦いを四年間も生き残ったと自分でも関心してしまいます。

「だから、いい加減休みたいんです」

 私は切実な思いを語りました。

「わかったなのはちゃん、ようわかったよ」

 みんなが泣きながら頷いてくれます。わかってくれて嬉しいの。









「ところで、十五年ってことは今なのはちゃんは」

「はやてちゃん?」

 それ以上言う気なら……

「ごめんなさい……」

 それでよし。

 まあ、色々私はズルしてるけど、女の子として歳を色々言われるのはいい気がしないの。









 そして、地上本部警備のためのブリーフィングのためにみんなに集まってもらいます。

 ああ、そうだ、それと、

「みんな、お土産あるよ」

『へっ?』

 私の言葉にみんなが目を丸くする。えっと、まずは……

 隙間に手を突っ込んで荷物を取り出します。やっぱり便利だね『境界を操る程度の能力』って。

「はい、まずスバルはギアコマンダー、次にティアナにはオレンジハロ、キャロはライコーオーでエリオにはハラキリトラね」

 と私は預かっていたものをみんなに渡していく。

『ヨロシク、ヨロシク!』

「あ、えっと……よろしく、ね?」

 ティアナが戸惑いながらハロに答える。

「ライライライライライ(あなたが私のパートナーか。私はライコーオー。これからよろしく頼む)」

「あ、キャロル・ルシエです。この子は私のドラゴンのフリード、よろしくね」

 ぺこっと雷蔵みたいに小さくなったライコーオーと自己紹介するキャロ。

「わわ、すごいすごい!」

 スバルはコマンダーから出てきたレオサークルたちに驚いて、

「よろしくエリオさん」

「あ、よろしく……」

 エリオもハラキリトラにちょっと戸惑っている。

 うーん、もう少し落ち着いてから渡すべきだったかな?

「あの、なのはちゃん、それって……」

 ああ、説明しないと!

「私が行った世界のみんなが持っていたものなんだけど、気づいたら私が持っててね」

 ほんと、いつの間にかなんだよねえ。

「帰ってきたら渡そうと思ってたんだ。あ、はやてちゃんの分もあるよ?」

 私の言葉にはやてちゃんはああ、そうなの? とちょっと戸惑っている感じ。

 はやてちゃんのは凄いんだから。あ、もちろんフェイトちゃんもね。

「さてっと、明日から地上本部警備だけど、六課にはシグナム副隊長とエリオとキャロは残ってもらいます。手薄になったところを攻められるかもしれないから、頑張ってね」

『はい!』

 うん、いい返事。

「これが終わったら今まで見れなかった分、色々教えたいから、みんな張り切って行こう!」

『はい!』

 うんうん、気合い十分だね。

 さてっと、そうしたら、どんな修行されよっかなあ? まずは雪山かな。ブリッグスみたいな雪山にナイフだけで放り込んで『全は一、一は全』は何かを探させようかな? それとも、なのはって書いた石を探させるか……

 これからのことを考えると色々楽しくなってきました。







 そして、地上本部に向かう時にヴィヴィオが見送りに来てくれました。

 ううう、やっぱりヴィヴィオはいい子だよ。

「ママ、頑張ってきてね!」

「うん、ヴィヴィオ」

 私はヴィヴィオの頭を撫でてあげます。

 あ、そうだ!

 私は一つ思いだして隙間に手を突っ込みます。

 ああ、あったあった。それを引っ張りだします。

「はい、ヴィヴィオに新しいお友達、ハロだよ」

『コンニチハ、コンニチハ!』

 赤ハロをヴィヴィオに渡す。これも平行世界でもらったもの。

「あ、こんにちは! ヴィヴィオです!」

 ハロを見たヴィヴィオが笑顔を浮かべる。

 うん、ハロ、ヴィヴィオをお願いね。









 そして、地上本部が襲撃されました。本当に聞いてた通りの展開だなあ。

 で、まあエレベータとか使えなくなってしまって、みんなががんばって開けようとしてるんだけど……まどろっこしいな。

「退いてください」

 私の言葉にいぶかしげにエレベーターを開けようとしていた人たちが退く。

 私は拳を構え、

「破!」

 ドアを粉砕した。

 唖然となる人たちを尻目に私はシャフトを降りました。

 そして、すぐにスバルたちと合流、レイジングハートを受け取って地上本部を襲撃するガジェットを迎撃します。

 今回、ギンガはスバルたちと一緒にいるし、まあ、安心して……

「ギン姉!」

 スバルの叫びに振り返ります。見ればギンガが地面の中に……セイン!

 しまった『ディープダイバー』を失念してた!

 とぷんと地面が波打つ。それを見た瞬間、

「ディバインバスター!」

 セインが潜った場所から少し横にずらしてディバインバスターを撃つ。

 そこにできた大穴を潜って下に潜れば目を丸くしたセインだけじゃなくてチンクもいる。あれ? ノーヴェとウェンディがいない……別行動かな?

 まあいいや。それはまたの機会にってことで、

「テロ幇助にその他もろもろの疑いで、あなたたちを逮捕します。抵抗してもいいよ?」

 そして、私は二人に向かいました。







 結論から言って、二人を逮捕するのすっごく簡単でした。いや、本当に。

「ISディープダイバっ!?」

 セインが地面に潜ろうとする。すかさず、神速を使い急接近、潜る前に足を掴んで無理やり地面から引っこ抜きます。

「こんにちはセイン」

 にっこりと私は笑いかけます。

「ど、どうも」

 引きつった笑みを浮かべながらセインが答えます。うーん、女の子はもっとスマイルスマイル。

 そこに、チンクがスティンガーを投げようとするのを感じたから、セインを振りまわして盾にします。

「うわあ!?」

「くっ!?」

 慌ててチンクがスティンガーを投げるのを止める。

 隙あり!

 私は手を離して、チンクに向かってセインを投げつける。

「うわあああああ?!」

「なあ?!」

 二人がぶつかって地面を転がる。

「ディバインソード!」

 それを纏めて薙ぎ掃いました。ディバインソードの残滓が消えると、そこに気絶したセインとチンク。うーん、つまんない。

 まあ、そんな感じで、二人の捕縛に成功。ギンガが浚われるのを防げたし、本局を襲撃したガジェットもかなり落とせました。

 これで、他の世界で聞いてた未来から少しは変わるかな?

 そんなことを期待していたら、

『な、なのは……』

 フェイトちゃんから通信が入りました。

「どうしたのフェイトちゃん、顔が真っ青だよ?」

 い、いったい何があったの?

『今、隊舎から連絡があったんだけど、ヴィヴィオが、浚われたって……』

 え?








 隊舎は少しだけダメージがあるものの健在でした。ここだけは、変えられたかな。

 でも、怪我人が何人も出て、ヴィヴィオも浚われてしまいました。

「なのはさんごめんなさい、ごめんなさい……」

 キャロとエリオが泣きながら謝るけど、二人のせいじゃないよ。

「ライライライライライライライ(すまない。私も何もできなかった)」

『なのはゴメン、なのはゴメン』

 浚われる時そばにいたって言うライコーオーも謝ってくる。

 ううん、だからいいって。ライコーオーは今、ほとんど力失くしてるからしかたないよ。ハロだって、戦闘用じゃないもん。

 私は黙ってヴィヴィオにプレゼントした人形を拾い上げました。

 ただ、私の認識が少し甘かっただけだから。
 









 隊舎裏で私は物思いに更けてました。

 たくさんの世界を渡って少し自信過剰になってたかもしれない。それに……

「なのは、どうしたの、こんなところで」

 ユーノくんが声をかけてきた、ってあれ?

「無限書庫に帰ったんじゃなかったの?」

 そう聞いた途端にユーノくんの眼が遠くを見る。

「まだ申請した有給が残ってるってアルフに追い出さて、そしたら、六課が襲撃されたって聞いたから慌てて来たんだ」

 そうなんだ……

 ユーノくんが隣に並びます。

「フェイトに聞いたよ。ヴィヴィオのことを考えてた?」

「うん」

 はあ、ヴィヴィオが浚われないように戦力を割り振ってもらったのに……いや、別にシグナムさんたちを責める気はないよ?

 ただ、

「このままにはしておけないね」

「……なのは?」

 くっくっく、と私は笑います。

 他の世界では助けてもらったから大目に見てあげようと思ってたのにね、そう来るならこっちももう手加減しないんだから。

 全力でこっちのスカリエッティはしっかりと頭を冷やしてもらうの……

「えっと、ほどほどにねなのは」

 うん、ユーノくん。ほどほどにブッ飛ばしてくるから。

 でも、やっぱり一番心配なのは……

「あの子、泣いてないかな? 酷い目にあってないかな?」

 他の世界に行った時、ヴィヴィオを始めとした誰もヴィヴィオがどんな目にあったかを具体的に教えてくれませんでした。

 ただ、ゆりかごを起動させるために誘拐されてから、聖王として私と戦ったということ程度。

「ねえ、ユーノくん、大丈夫だよね? ヴィヴィオ、助けられるよね?」

 もし、私の改編のせいであの子が酷い目にあっていたらと思うと、胸が締め付けられます。

 どれだけ世界を回って、いろんなものを見たからと言って、そんなことに耐えられるほど、私は強くありません。

 怖い、怖いよ……

「大丈夫だよ、なのは」

 そこで、ユーノくんはぎゅっと私を抱き締めてくれました。

「きっと助けられるよ。だって、あの子には、なのはとフェイトと」

 そこで一度切ってユーノくんは笑います。

「僕がいるから」

 ああ、やっぱり。

 私は心が温かくなります。

 ユーノくんの声をまた聞けたから、私は帰ってこれた。

 ユーノくんとまた会いたいと思ったから、私は諦めなかった。

 ユーノくん、あなたがいるから私は……

「ありがとうユーノくん」

 私も笑います。

 そして、そっと、私たちは唇を重ねました。







「ずるいよなのは! ユーノ、私もーーーー!!」

 木の後ろからフェイトちゃんが飛び出しました。

「フェイトちゃん?!」

「フェイト?!」

 どうやら、隠れて様子を見ていたらしいです。ずんずんとこちらに近づいて、がしっとユーノくんの頭を押さえて唇を奪います。

 うー、フェイトちゃん、できたら空気読んでよ!!

「と、冗談は置いといて」

 ユーノくんとキスをしてからフェイトちゃんは振り向きます。

 あ、冗談なの? でも、ちゃっかりキスしてるし。

「ユーノの言う通り、私たちの娘はきっと大丈夫だから、助けにいこう!」

 ぐっとフェイトちゃんが拳を握ります。

 私は胸が熱くなります。

 フェイトちゃんの思い出があったから私はここを忘れなかった。

 フェイトちゃんとまたお話できると信じてたから、私は絶望しなかった。

 そして、私が会いたかったフェイトちゃんがここにいる。

「ありがとうフェイトちゃん」

 私はちょんとフェイトちゃんの頬にキスをしました。







 

 そして、六課が健在な為にアースラの出番はなくなりました。

 ちょっとそれは残念だったかも。いや、出番がないには越したことないんだけど、久しぶりに見たいなあなんてちょっとだけ……

 そして、隊舎で私たちは放送を見ました。聖王のゆりかごの目覚めを高笑いするスカリエッティを。

 本当に腹が立つ。その顔で悪役っていうのが。

「ねえ、フェイトちゃん、私、たくさんの世界に行ったんだよ」

「なのは?」

 私が何を言いたいのかわからないのかフェイトちゃんが少し戸惑う。

「その中には善人のスカさんがいたんだ」

 私の言葉にみんなが注目します。

「そのスカさんは本当は自分の技術を人助けに使って周りから認められたかったんだって。だけど、上の人間がそれを許さなかったんだって」

「上? なんのこと?」

 フェイトちゃんの言葉に首を振ります。上については最後までスカさんは教えてくれなかったな。

 ただ、スカさんに命令して犯罪をさせていた連中っていうことだけは聞いてます。

「だからさ、きっとこのスカリエッティは歪んじゃったんだ。認められたいのに認められないってことに」

 正直、スカさんの環境じゃ歪まないのがおかしい気もするけど、

「その歪み、私たちが断ち切ってあげようね」

 とりあえず、今はそれでいいかな。





~~~~
帰還せしなのはさん、準備段階です。
完全○○○○○無双は次回です。
でも、ちゃっかりチンクとセインは捕獲してるあたりやっぱりパワーアップです。



[21475] デウスエクスマキナななのはさん(後編)
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2012/04/27 08:14
 六課から私たちは出撃します。

「なのは、ブラスターモードのことだけど無理は」

 え? ブラスター?

 ……ああ!

「大丈夫だよフェイトちゃん。使う必要はないし」

 私はハロを取り出します。

「ハロ、レイジングハートよろしくね!」

『All Right』

「ドッキングモード、ドッキングモード!!」

 私たちは光に包まれる。そして、光が収まると、私の新しい姿。身体のあちこちにアーマーがそうちゃくされ、左肩側に背中から伸びるアームで接続された特徴的なバインダーが装着されました。

 本邦初公開! 平行世界で科学者だったユーノくんと協力してもらって人間サイズまでダウンサイジングに成功した新型GNドライブに、スカさんと一緒に私用に再設計してくれた特殊バインダーを装着した姿、名付けて『クアンタフォーム』!!

「え? す、すごいねなのは。それならブラスターじゃなくても……」

 フェイトちゃんが驚きに目を見開きます。うん、納得してもらえて私もうれしいよ。

「フェイトちゃんとバルディッシュも頑張ってね。私の代わりにマダオの頭冷やしておいてね」

「う、うん」

 そして、私たちはゆりかご組とアジト組に別れました。

 








 聖王のゆりかごが見え、私はそばにいたヴィータちゃんを抱えます。

「へっ? なのは?!」

 私のいきなりの行動に戸惑うヴィータちゃん。でも、敵も多いし、説明するよりもさっさと突撃なの。

「イナズマアアアアアア、キーック!!」

 高く飛び上がり急降下、ゆりかごまで一直線に飛ぶ。

 でも、まだ! 両足に術式を展開します。

 どうも、私はそれぞれの世界での「私」のふりができるように、そこの「私」が持つ能力の一部を模倣できるみたいでした。だから羽入ちゃんも気づけたし、変身もできたの。

 しかも、他の世界でもその力は健在。さすがに『境界を操る程度の能力』は完全には無理だけど、隙間の中にものを入れとく四次元ポケット的な使い方は大丈夫でした。

 で、これもそのうちの一つ……本来はロボット用の技だけど!

「アンド、断鎖術式ティマイオス、クリティアス解放! アトランティス・ストライク!!」

 両足の時空間歪曲機構を解放、軌道上のガジェットをなぎ払い、ゆりかごの装甲に私という鉄槌が突き刺さる。

 あっさりと装甲は破壊され、私たちはゆりかごの中にエントリーしました。

 そのまま床に降りる。

「ふう、結構AMFが強いみたいだね。大丈夫ヴィータちゃ」

「大丈夫じゃねーーーー!」

 涙目でヴィータちゃんが怒鳴る。えっ? でもヴィータちゃんに怪我は……

「ちゃんとやる前に説明しろよ! 敵よりお前の方がこええよ!」

 そんな……私は突入の手間を省いただけなのに……

『ヨワムシ、ヨワムシ!』

 うるせえとハロに怒鳴るヴィータちゃん。

 そしてヴィータちゃんはふうっと息を吐く。

「まあいいや、あたしは動力を叩く。なのははヴィヴィオを迎えに行ってやってくれ」

「うん。あ、そうだ」

 私は懐から一枚のカードを取り出す。

「んっ? なんだそりゃ?」

 ふっふっふ、これはね……

「来たれ!」

 私の意志にカードが反応し、アーティファクトが生成される。それは手のひら大の人形。でも、もちろんただの人形なんかじゃない。

「レイジングハート!」

『All Right!』

 待機状態に戻るレイジングハート。さらにそれが私の手にあるアーティファクトに吸い込まれる。

 すると人形が大きくなり、形が出来上がる。

 赤い宝石のような瞳と理知的に見える眼鏡、凛とした雰囲気を漂わす顔、金色の髪は高い位置で結って、私のバリアジャケットと似たデザインのメイド服を纏った私と同じくらいの歳の女の子に変わる。

「えっ、あっ、レイジングハート、なのか?」

 その通り! 本邦初公開、私のアーティファクト『共に在りし従者』!

 効果は見ての通り、それだけではただの人形だけど、意志を持つ道具を組み込むことでその肉体になるというもの。同時に複数出すこともできるよ。

「念のためにゆりかご内の探索をお願い。もしメガネ見つけたら代わりに殴っておいて」

「了解しましたマスター。ところで例の約束……」

 ああ、そのこと。

「大丈夫なの。フェイトちゃんに話は付けてあるの」

「ありがとうございます。ふふふ、待っててねバルディッシュ……」

 レイジングハートがバルディッシュが好きだったって知った時はびっくりしたの。

 おかげでこのアーティファクトの効果を知ったら、レイジングハートが狂喜乱舞したっけ。

「やっぱり似たもの同士……って、デバイスはどうすんだよ?」

 私たちのやりとりにヴィータちゃんはぽつりと呟く。

 ああ、それなら……

「この子がいるの」

 スカートの中に手を入れて抜き出す。

 それは、ある世界で手に入れた槍型の永遠神剣『願い』

「よろしくね、願い」

『はい、主』

 位や力は第四位だけど、上位永遠神剣並みの確固とした自我と理性のある珍しい永遠神剣。

 ユートさんもこの子くらい求めが大人しかったらって言ってたっけ。

 前に威力を落とすためにレイジングハートで神剣魔法使ったけど、それは逆に威力落ちたし、加減に気をつけなきゃね。

「……もう、あたしは行くからな」

『ガンバレ、ガンバレ!』

 そう言ってヴィータちゃんはハロに見送られながら、さっさと行ってしまった。

 ヴィータちゃんどうしたのかな、ちょっと元気ないみたいだけど。

「では、私も」

 と、一度お辞儀をするレイジングハート。

「うん、レイジングハートお願いね」

『ネーサンガンバレ、ネーサンガンバレ』

 ハロ、ちょっとうるさいの。









 そして、私はガジェットをなぎ倒しながら、ある通路を曲がって、砲撃が飛んできた。

 けっこう威力ありそうだけど、私は前面に張ったGNフィールドの壁で砲撃を防ぐ。

 でかい大砲を抱えたナンバーズの子、ディエチが驚くけど、今まで見た世界でこのくらいは結構いたよ。それに、あの世界のディエチはもっと強かった!

「オーラフォトンビーム!」

 かなり手加減したビームで、ディエチの攻撃を押し返して、ディエチのイーノスカノンを破壊します。

 うーん、非殺傷とかできないから、武器破壊やってみたけど大丈夫かな?

 ディエチのそばまで行くと、私を睨むディエチ。あ、よかった。まだ元気見たい。

「ごめんね。これが終わったらシュークリーム作ってあげるから」

 そして、私は再び中枢を目指した。










 玉座の間のドアを破壊する。

 そこにあの腹黒眼鏡の立体映像とヴィヴィオがいました。

『あーら、ようやく来ましたか』

 それからなんかクアットロが言ってますが、まあ、一言。

「うっさい小悪党」

『こ!』

「まったく、ずいぶんこの世界のクアットロさんはつまらない俗物になってるんですねえ? せっかくの眼鏡属性まで捨てて、一度、自分の方向性を考えたほうがいいんじゃないんですか?」

 私の言葉に真っ赤になるクアットロ。

『ふ、ふん! 陛下出番です!』

 ほら、やっぱり自分ではなにもできない小悪党。

 少なくとも私のいった世界でのクアットロさんは……クアットロさんは…………

 だめだ、クアットロさんも人任せだった……

 ま、まあ気にしないでおきましょう!

 そして、ヴィヴィオが聖王に変身しました。

「あんたなんか」

「やっぱり綺麗だねヴィヴィオ」

 ヴィヴィオが何か言おうとしたけど、言わせません。

 出鼻をくじかれたヴィヴィオが口ごもります。

「でも、せっかくの綺麗な顔も涙で台無しだよ?」

 だから、

「私があなたの、そしてこの世界の涙を拭ってあげる」

 私は飛び出しました。










 ヴィヴィオがどこからともなく取り出した剣で斬りかかってくるのを受ける。

 くっ! 流石に聖王は一味違う! それに、なんでか御神の技を使うし! って、そういえば、ヴィヴィオ、他の世界の私に稽古してもらったって言ってたっけ?

 ま、まあ今はそんな余計なことを考えずに!

 私はヴィヴィオの剣を弾いて距離を取る。怪我がないように助けたいけど、そこそこ力があるから加減も難しいし……

 さらにヴィヴィオが二本の小太刀を巧みに操って斬り込んでくる。

 御神の技、その歳でここまで上手に使えるんだ。少し母親として誇らしいけど、今はマイナスにしかならないよ。

「一気に決める!」

 さらにヴィヴィオの力が膨れ上がる。

 仕方ないの。私もここは全力を出して一気に終わらす!

『トランザム!!』

 私とヴィヴィオの声が響く。

 えっ? ヴィヴィオもトランザム?! もしかしてこの前見たので学習しちゃったの?!

 赤く染まったGN粒子と魔力が玉座の間に乱舞します。それはすごく綺麗な光景
なんだろうけど……そうは言ってられない!

 同時に動く。ヴィヴィオの迫る小太刀を受けて私は蹴り。防がれる。

 バスターで牽制して、避けられる。接近したヴィヴィオの剣を受けて、壁に叩きつけられる。

 その時、声が聞こえました。

『上等だあ!!』

 血まみれになりながらガジェットの大群に立ち向かう姿。

 ヴィータちゃん!

『数が多すぎる!』

 必死に指揮する親友の姿。

 はやてちゃん!

『もう、ダメかな』

 三人の戦闘機人に追いつめられている様。

 ティアナ!

『く、ティア……』

 囚われた親友を助けようとするが、阻まれている。

 スバル!

『違う、違うよお!』

『君だって間違ってるのがわかってるだろ?!』

 必死に一人ぼっちだと思ってる女の子に訴える二人。

 エリオ、キャロ……

『戦うつもりはない』

 一人の騎士を止めようとする二人。

 シグナムさん、リイン……

 みんな、戦ってる。だけどこのままじゃ……

『私は……』

 赤い糸の檻に捉えられた親友の姿。

 フェイトちゃん!

『助けて……ママ』

 そして、目の前の泣いている子。

 ヴィヴィオ!!

「させ、ないーーーー!!」

 その声に気づけば私は叫んでいた。

 肩のバインダーが動き、私の背中に回る。そして、太陽炉が私のリンカーコアと直結。バリアジャケットの一部がパージされる。そして、

『クアンタムバースト』

 ドライブがさらに強く、粒子を、光を放つ。

 赤いトランザムの光と違う、優しい若草色の光が溢れだしました。

 光の圧力に押されてヴィヴィオが離れる。その時、声が聞こえました。

『変われなのは。変われなかった俺の代わりに……』

 うん、わかってるよティーダさん。

「そう、未来を創るために、私たちは変わるんだーーーー!!」

 ドライブに蓄積された高濃度圧縮粒子を全面開放する。

 未来を創るための光が世界を満たしていく。







 緊急事態ということで戻った無限書庫で僕は見た。GN粒子が世界に満ちるのを。

『い、一体なにが起きてるんだ?』

「すごく、綺麗」

 アルフが光に見惚れ、モニター越しにクロノの困惑した声が聞こえる。

 なにが起きているか、か……

「……純粋なるイノベイターの脳量子波が、ツインドライヴと連動し、純度を増したGN粒子が人々の意識を拡張させてるんだ」

 なのはが言っていた新しい力を呟く。本来はアリシアが言うセリフだけど、

「完全な進化を遂げたんだね、なのは。君こそが、真のイノベイターだ」

『ユーノ?』

 クロノが僕を見て目を見開く。

 なのはに聞いた時は驚いたっけ。僕も、そのうちそうなるんだって。

 クロノの反応からもうなっちゃったみたいだけど……なのはと同じものになれたんだという喜びが胸に溢れる。

「クロノ、これはなのはが旅先で見つけた、本当にお話するための力だよ」

 そこでぱらっとページをめくる。

 なのはと共に調べた古文書、その一説にくすっと笑ってしまう。賢者の石、それは使用した人物に別の世界の知識を与えたりパラレルワールドの同一人物と入れ替えるというもの。

「だけど、それの本当の力は、全てをハッピーエンドに導くためのデウス・エクス・マキナになれる人を生み出すための力なんだ」








 この光……なのはの命の光……

 そして、聞こえる。みんなの声が。聞こえる。みんなの思いが。

「なんだこの不可思議な現象は? 念話とは違う、脳に直接声が……」

 見ればトーレたちも戸惑っている。今なら!

 私は密かになのはに渡された切り札を使う。

「バルディッシュ!『運命』フォーム!」

『Yes,sir!』

 バルディッシュが強臓式(アインゲヴァイデ)武剣『運命』へと変わる。がんっと燃料代わりのカートリッジを叩きこむ。

『運命とは囚われぬものである――――』

 仮発動でバルディッシュから伸びる闇の刃がスカリエッティの糸の檻を断つ。

「しかたありません、お嬢様御覚悟!」

 トーレたちが私に向かってくる。

 私も走り出す。バルディッシュを振るい、セッテが避けかけて、

『運命とは逃げられぬものである――――』

 『避ける』という運命を断ちきり、セッテに一撃を与える。

「なっ!」

 驚くトーレが距離を離そうとするけど、

『運命とは離れ得ぬものである――――』

 トーレを逃がさない運命を作り、打ち倒す。

 そして、二人を倒したことを確認し、スカリエッティに向かう。

「ああ、欲しかったなその力!」

「違う!」

 この男が欲しかったのはそんなのではない。

「あなたが欲しかったのはもっと違うものだ!」

 スカリエッティが動揺に固まる。あの時、確かに聞こえた。この男の本当の思い。

「誰かに認められたいなら、もっとやり方があったはずだ!」

 そう、この男は本当はただ認められたかった。

 ただ、知らなかっただけ。こんなやり方しか。だから、

『運命とは自ら手繰り寄せるものである――――』

「これからやり直せ! 二度は言わない、忘れるな!!」

 私は全力でバルディッシュを振った。








 レジアスに、かつての親友と相対した瞬間にそれは起きた。

「な、なんだこの光は?」

 俺は突然の現象に戸惑う。空間を満たすように輝く粒子、そして頭の中に届く声。

 だが、なにより俺を戸惑わせたのは……

「体の痛みが……」

 先ほどまで俺を苛んでいた痛みが幻のように消えたことだった。

 そして、戸惑う俺にその声が届く。

−−ドクターのために!

 その声に俺は動いた。

 レジアスの後ろに回った副官が舌打ちしつつも、その手にある爪をレジアスに突き立てようとする。

 だが、その爪を槍で弾き、そのまま組み伏せる。

「なぜ、助けた?」

 レジアスの声が届く。

「もう、わかったからさ」

 先ほどから聞こえている。レジアスの抱く苦悩、葛藤、そして、俺のようなものを生み出した悲しみ。

 ナンバーズの一員であるドゥーエを捕縛する。そして、遅れてアギトとあの騎士が現れる。

「旦那……」

「終わりましたか?」

 頷く。さて、ルーテシアを助けに行かなければな。

「安心してください。彼女は私の部下が保護します」

 そうか、今は思考が伝わるんだったな。

「そうか」

 なら、後始末だな。

 俺は槍を構え、だが目の前の赤い騎士は背中を向けた。

「どういうつもりだ?」

「ここには、もう敵はいません。私は仲間たちの応援に向かいます」

 言葉と共に、騎士の思いが伝わる。

 死ではなにも償えない。生きることが償いだと。

 それは飾ることのない彼女自身が生きる理由でもあった。そうか、ならば、

「俺も、手伝おう」

 それが、せめてもの償いになるだろう。俺も部屋を出ようとして、

「なぜ始末しない?」

 声に振り向けば、俺を睨みつけるドゥーエ。

「もう、こりごりなのさ」

 俺はそれだけ答えて部屋を出た。










「なのはちゃん?」

 突如、ゆりかごから溢れ出した綺麗な光に心を奪われていたらなのはちゃんの声が聞こえた。

 いや、なのはちゃんだけじゃないたくさんの声、そして……

『うらあ!』

 ボロボロのヴィータが脳裏に届いた。

「ヴィータ!」

 助けなくちゃ。私の家族を!

 気づけば私はなのはちゃんに貰ったベルトを腰に巻いていた。

「変身!」

 そして、ベルトにパスをセタッチ。私は魔法使い電王に変身する。だけどまだや。

 掲げた手にケータロスが現れる。私はすぐにそのスイッチを順に押した。

『ヴィー、シャー、シグ、ライ、リイン!』

 五つの光が私の周りに現れ、私の中に入る。

『超クライマックスフォーム』

 と、まずはメインのヴィータに変身する。そして、騎士甲冑が変化し、右腕にレヴァンティ、左腕にクラールヴィント、胸にバルニフィカス、背中に夜天の書と翼が装着され、変身が完了する。

 ばっとポーズを決める。

「あたし、参上! って、えええ! これどうなってる?!」

 ヴィータが驚きの声を上げる。

「あら、みんなと合体してる?」

「ここは? 私は確かゼスト殿と……」

「わっ、リインに羽が生えてるです!」

 みんなびっくりしとるなあ。事前に聞いてた私もびっくりだけど。

「わはははははは、強いぞスゴいぞかっこいー!! でもやっぱ気持ち悪い」

『最後のメンバーはお前かよ!!』

 なんでマテリアル……しかもフェイトちゃんのやないか!

「気にすんなよー! よーし、あいつらに僕らの力見せてやろうじゃないか!」

 元気にライが叫ぶ。

『ま、まあライの言うとおりや! いくでみんな!』

『はい!』

「おう!」

 ヴィータがパスを取り出し、ベルトにセタッチ。

『Full Charge!』

 リインの翼を広げて高く飛び上がる。

「必殺! あたしたちの必殺技!」








 私にはなぜかわかった。ティアは大丈夫だって。

 なら、目の前の子を!

 私はコマンダーを出す。

「レオドライブインストール!」

 私の右足にレオサークルが装着される。

「チンク姉の仇!!」

 私じゃなくてなのはさんだよ。それに死んでないしって言いたいけど……ただ今は、君たちを止める! それから教えて上げる。

 あたしたちがどんなことをできるかを!

 ごめん。少し痛いけど……

 そして残りのカートリッジを全弾ロード。リボルバーナックルとマッハキャリバーが、レオの鬣が高速回転する。

「レオサークル、ファイナルアタック!!」

 私は足を振り抜いた。









 世界が光に満たされる中で私は顔を上げた。

 聞こえる、なのはさんの声が、スバルの声が、ヴァイスさんの声が!!

 私は自分に渇を入れる。まだ、まだなにも終わってない!

「ハロ!」

『リョウカイ、リョウカイ!』

 いつから居たのかわからないオレンジハロが姿を変える。

 重音を奏でて私の腰の後ろに、ハロが変形した十のホルスタービットが装着される。

 私はそのまま歩き出す。

「お、やっと出てきたっすか」

「終わらせるよ」

「ええ」

 三人が私を取り囲む。だけど、私の心は穏やかだ。

「そうね、終わらせるわ。クロスミラージュ! ハロ!」

 ばっとビッドが展開される。

 私は兄さんほど狙い撃てない。だけど、マルチタスクには自信はある!

 行くよ、やるよ!

「乱れ撃つよぉ!!」

 私は引き金を引く。

『なあ?!』

 ナンバーズが回避しようが関係ない、外れようがなにしようが、当たるまで撃ち続ける!

 そして、私たちがいたビルは瓦礫となった。






 目の前の子から寂しい思いがわかる。

 私はそっと目を瞑って、心で語りかけた。

 わかるよその気持ち。でも……

 あなたの周りにも、あなたを大切に思う優しい人たちがいる! あの紅い子と槍の人が!

 私は彼女を止めると強く思う。

「ヴォルテール!」

 ヴォルテールを呼び出す。そして、

「ライコーオー・イデア!!」

『おおおおお!!』

 私の呼びかけにライコーオーがライコーオー・イデアとして雄叫びを上げる。

『行くぞキャロ!』

 うん、ライコーオー! ヴォルテール!








 光が溢れる中でガリューの主への一途な思いが伝わってくる。

 もう、失わない。今度は護るって……

 でも!

「ダメなんだよ、間違えたとわかってるなら、間違ってるって言ってあげなくちゃ!」

 僕も間違えた。だけど教えてくれた人がいる。

 ハラキリトラと共に現れた腕輪が光る。ばさっと背中に何かがかかる。

「叩き込む、君に! その向こうにいるあの子に!」

 自然と知らない言葉が出てきた。

 でも、そんなことはどうでもいい。絶対に止めてみせる!









 そして、高濃度圧縮粒子を解放しきって私は降り立つ。

 そこに呪縛から解き放たれたヴィヴィオが泣いていた。

「ママ……私は」

「ヴィヴィオ」

 何かを言う前に私は笑いかける。

 大丈夫と伝えたいから。そんなの関係ないからって伝えたいから。

 いろんな世界にヴィヴィオはいた。そして、多くの世界でヴィヴィオは私にとって大切な子だった。

「大丈夫、そんなの関係ないから。ずっと一緒にいよ、ヴィヴィオ」

 私はドライバーを取り出し、腰に装着する。

「行くよユーノくん。変身!」

『JOKER!』








 腰を見ればダブルドライバーが現れた。思ったより遅かったなあ。

「ごめんクロノ、アルフ、後はお願い」

「えっ?」

 僕は立ち上がりサイクロンのメモリを取り出す。

「変身!」

『CYCLONE!』

 僕は腰のドライバーにサイクロンのメモリをインサートする。

 メモリが消えると同時に僕の意識は……








 サイクロンのメモリが現れる。私はメモリを押し込んでジョーカーのメモリを差し、横に広げる。

 バリアジャケットが緑と黒のカラーリングに変化して、私の右目が翡翠色に、髪の右半分がクリーム色になる。

 そして、私は魔法使いWに変身しました。

「やあ、ヴィヴィオ」

「パパ?」

 私の口からユーノくんの声が出てきたのにヴィヴィオが驚く。

『今、助けてあげるから』

 ユーノくんを取り込んで飛んできたエクセリオンメモリをキャッチしてドライバーに装着する。

<XELION!>

 そう、この力で私たちの心と体も一つになる!

『はあああああああ! やあ!!』

 バリアジャケットの中心にクリスタルサーバーが現れる。

 これこそW最強の姿、サイクロンジョーカーエクセリオン!

 クリスタルサーバーが輝く。

「なのは、検索を完了したよ」

 OKユーノくん。

『スターライトビッカー!』

 クリスタルサーバーからスターライトビッカーを生成する。そして、一つのメモリを取り出す。

<STAR!>

 星の記憶を内包するメモリ。その力は複数のメモリの力を収束させる力。

『はっ!』

 スターライトビッカーでヴィヴィオの体をスキャン。レリックを表にさらけ出す。

 そして、スターライトソードを抜く。

<STAR! MAXIMUM DRIVE!!>

『スターブレイク!!』

 星の力で私たちはレリックを両断……できなかった。刃が弾かれる。

 あれ? なら……これは!?

 ソードを戻して四つのメモリを取り出す。

<CYCLONE! MAXIMUM DRIVE!!
 HEAT! MAXIMUM DRIVE!!
 LUNA! MAXIMUM DRIVE!!
 JOKER! MAXIMUM DRIVE!!>

 次々とビッカーにメモリを差して、再びソードを抜く。

『ビッカーチャージブレイク!』

 四つのメモリの力が宿った刃で、今度こそレリックを私たちは破壊した。







 変身を解く。ユーノくんと分離して、前を見ればうずくまったヴィヴィオ……もしかして、なにかあった?!

「ヴィヴィオ!」

 私たちは駆け寄ろうとして、

「待って!」

 ヴィヴィオに止められました。

 ピタッと私たちは足を止めます。

「ちゃ、ちゃんと自分で立つよ。だって、ママたちと約束したから」

 ヴィヴィオが立ち上がる。ヴィヴィオ……いつの間にそんなに強い心を……

 そして、一歩、二歩とこっちに近づいてきます。

「ただいま。ママ、パパ」

「ヴィヴィオ!」

 私はヴィヴィオを抱き締めます。よかった、ちゃんと助けられてよかった……

「おかえり、ヴィヴィオ」

 ユーノくんはそんな私たちを優しく抱き締めてくれました。







 さて、もう少しヴィヴィオの成長を喜びたいけど、そろそろ……

『必殺! あたしたちの必殺技!! クライマックスバージョン!!!』

 轟音を立てて玉座の扉が砕け散りました。

「ヴィータちゃん!」

 超クライマックスフォームになったヴィータちゃんが突入してきます。

「助太刀に来たぜ、ってもう終わってたか」

 若干残念そうにヴィータちゃんが呟きます。

 うん、もう大丈夫だよ。

「マスター、ナンバーズ二名確保完了しました」

 と、両脇にディエチとメガネを抱えたレイジングハートが、続いて入ってきます。

「ご苦労様レイジングハート」

 私の言葉にレイジングハートはいえっと笑います。

『えっ? この子レイジングハートなんか?! はあ、エラく美人さんやなあ』

「ふわー、綺麗です」

「凄いぞ綺麗だぞー!」

 口々にはやてちゃんたちが誉めてくれます。

「みんな、さっさと脱出しようよ。ほっとけば本局の次元航行艦が……」

 ああ、そのこと。

「大丈夫だよ。今、ミッドの郊外に着陸させるところだから」

『えっ?!』

 みんなが驚きます。ああ、言ってなかったの。

「邪魔なメガネはレイジングハートが確保してくれたから、その後でゆりかごの権限は私に移行させたの」

 いやあ、こんな時に私が聖王家の人間の世界に行った時にゆりかごの仕組みを調べておいてよかったの。

 ガジェットに関してもすべて機能は止めたし。これで、この事件はひとまず終了だね。

『先に言えーーーー!!』

 ヴィータちゃんたちの叫びが響きました。








 ふう、終わった、後は瓦礫の中から三人を探して……

 がらっと何かが崩れる音が聞こえ、振り向けばナンバーズの一人が、その手のブレードを振りかぶって……

 どんっと横からの攻撃で倒れた。

 横を向くけど、誰も……いえ、いました。

 ヴァイスさんのヘリが。

 なんとなく、ぐっと親指を立てたヴァイスさんが見えた気がします。

 ありがとう、ヴァイスさん。

「うわ、ティアやり過ぎ」

 と、スバルがこっちに歩いてくる。

「う、うっさい。三対一なんだから、しかたないのよ」

 で、でも確かにやりすぎたかもね……

「まあ、いいや。なのはさんから連絡、ゆりかごは止めたって」

 そっか、さすがなのはさん。

 さて、私たちはあの子たちを捕縛しておきますか。







 ふう、なんとかなりました。

 ルーテシアちゃんを抱えてます。

「キャロ! 大丈夫?!」

 と、そこでエリオくんの声が聞こえて振り向きました。

「うん、エリオ……くん?」

 そこにいたのはエリオくんじゃありません。褐色の肌に長い黒髪をスペード形の髪留めでポニーテールに纏めた綺麗なお姉さんでした。

「えっと、キャロどうしたの?」

 そして、その口からはエリオくんの声……

「え、エリオくん、なんだよね?」

「? そうだけど……とりあえず、なのはさんから連絡があったよ」

 そう言ってエリオくん? は気にせずこっちに近寄ってきます。

「エリオくん……ちょっと自分の身体確認してみて」

 ? と頭の上に浮かべていそうな顔をして、エリオくんは自分の身体を見まわして……

「どうなってるのこれー!?」

 やっと気付いたみたいでした……

 にしても……私はぺたぺたと自分の胸を触ります。

 なんかさびしいなあ……










 そして、郊外にゆりかごを止めて、外に出ました。

「なのは、ユーノ、ヴィヴィオ!!」

 そこにフェイトちゃんが待ってくれてました。よし、予定通り。

 じゃあ、後始末だね。こんなものあったっていいことないから。

「レイジングハート!」

「了解」

 レイジングハートがデバイスに戻ります。

 私はその先端を向けて、

「トランザム!!」

 本日二度目のトランザムを発動。

 溢れる膨大な魔力を一点に集中して……

「スターライトブレイカー!!」

 最大魔法として解き放つ。

 それは狙い外さずゆりかごを飲み込んで……砲撃が終わった頃には跡形もなくなっていました。

 ふう、これで、終わりかな……少なくとも聞いていた限りの事件はこれで終わりです。

 と、考えていたら、

『なのはさーん!』

 みんなの声が聞こえました。

 その声に振り返れば、みんながこっちに向かって走ってきています。

 あっちこっちぼろぼろだけど、みんな笑顔です。

 よかった。みんな無事だったんだ……

「みんな、お疲れ様!!」

 こうして、後にJS事件と呼ばれる事件は終了しました。







~~~~
NANOHAさんだけじゃなくてMINNA無双でした。
これが、これこそがやりたかった!
まあ、今日はこんなところで、それでは!



[21475] ~エピローグ~
Name: 空の狐◆6f2a5b2b ID:b50a47bc
Date: 2010/12/12 07:48
 事件が終わり六課が解散して半年。はやては部屋でため息をついた。

「はあ、毎日忙しいなあ」

 そう呟いてそばに置いてあった手紙を取る。

「『結婚します』か……」

 そこに親友たちの幸せそうな笑顔。

 なんだろうか、一人置いてかれた気分になる。

 まあ、アリサやすずかもまだだが……

『アリサちゃんに彼氏できたんだよ』

『ちょ、すずか! あいつはそんなんじゃないって! それにすずかだって先輩と!!』

 この前話した内容を思い出してしまう。対して自分は浮いた話一つなく、毎日仕事。

 やっぱり一人だけ置いてきぼりにされている。

「よお、八神」

 そこで部屋に人が入ってきた。

「あ、ナカジマ一佐」

 はやては顔を上げる。

「どうしたんだ暗い顔して」

 はやては黙っていたが、ゲンヤは机に置かれていた手紙を見て、ははあと笑った。

「なるほどな。一人置いてきぼりにされたと思ってんのか」

「言わんといてください……」

 的確に心中を言い当てられはやてはまたはあっと息を吐く。

「はは、まあお前も若いんだ。そのうちいい相手ができるさ」

「そうですかねえ……」

 諦観混じりに呟く。

「ああ、俺がもう少し若かったら口説いてたかもな」

 ゲンヤにとっては軽口だったが、その言葉にピクッとはやては反応する。

「本当ですか?」

「は?」

「今の話」

 自分で言っといて恥ずかしいが、これでいつも通りになるなら構わないかとゲンヤは考えていた。

 だから、はやての言葉に頷いた。

 だが、

「なら」

 そして、はやては顔を赤らめながらゲンヤに頼む。

「私を口説いてくれませんか?」

「はっ?」








八神はやて

捜査官として数々の難事件を解決。後にはやて・Y・ナカジマとなり、地上と本局の仲を取り持ち、管理局の抱える問題の一部を解決する重要人物となる。









 訓練校の教官になったゼストは昼になり、食事をしようとカバンに手を入れ、顔をしかめた。

「むっ」

「どうしたんですかグランガイツさん?」

 隣の机の職員が声をかける。

「いや、いつも入れているはずの携帯食がないんでな」

 しかたないから食堂で済まそうと考えて、

「グランガイツ教官、お客さん来てますよー」

 と、教え子に呼ばれた。

「客?」

 なぜかにやにやと笑う生徒を不思議に思いながらゼストは立ち上がる。そして、部屋を出ると、ドゥーエが待っていた。

「お前か」

 現在ドゥーエはゼストが保護観察を担当していた。

 なぜかはわからないがドゥーエが強く彼を自分の担当に願い出て、希望通りにならない限り協力はしないと言ったためだった。

「はい、お弁当。家にいつものがあったから忘れたと思ってね」

 とドゥーエが弁当を差し出す。

「ああ、すまないな。助かる」

 とゼストはドゥーエの弁当を受け取る。

「別に、量を多く作っちゃったからしかたなく、よ」

 顔を赤らめてそっぽを向くドゥーエ。

 それだけと言い残して、ドゥーエはずんずんと訓練校の出入り口に向かう。

「ありがとう」

 その背にゼストは礼を言った。

 ピタッとドゥーエは止まり、くるっと顔を赤くして振り返る。

「いい! 私が作ったんだから味わって食べなさい!」

 その様子を職員、訓練生問わず微笑ましそうに、あるいは羨ましそうに見ていた。

 余談だが、実は携帯食はドゥーエがこっそり抜いていたことを記しておく。







ゼスト・グランガイツ&ドゥーエ
原隊に復帰せず、訓練校の教官となり若い世代の育成に尽力する。
彼の教え子は彼の精神を受け継ぎ、地上の平和を護ることになった。
また、ドゥーエは初めて姉妹以外の人間に興味を抱き、司法取引を受けて管理局に協力。自らの保護責任者にゼストを指名した。
後にドゥーエ・グランガイツとなる。









 司法部の決定で降格した、レジアス・ゲイズ少将は自身の部屋で今後のことを考えていた。

 アインヘリアルはあっさりナンバーズに破壊され、ナンバーズも現メンバー以外の増産はなくなった。

 地上の平和のためと考えて進めた二つは頓挫してしまった。ならばどうするかと考えて、

「こんにちは」

 と軽い挨拶とともになのはが入室した。なんとなく、扉の向こうが異次元に見えたのは気のせいだろうか?

「高町一等空尉? どうやってこの部屋に」

 アポを取った覚えのない相手の出現にレジアスは目を見張った。

 しかも、彼女はこちらから許可がない限り開かないドアを開けたのだ。

「私にセキュリティーは意味ないの。っとそんなことより」

 とそういってなのはは懐からディスクを取り出す。

「報告にあったと思いますが、私はいくつかの世界を回りました。これは、私が今まで回った世界でのデータです。なにかに役立ててください」

 となのはは一方的に用件だけ告げて机にディスクを置き、背を向ける。

「なんのつもりだ?」

 レジアスは疑った。すでに局を辞めたはずの彼女が、なぜそんなことをするかを。

 するとなのはは笑って答える。

「単に平和でいて欲しいだけです」

 それだけ言って部屋を出るなのは。

 一人になったレジアスは少し悩んでディスクの中身を見た。

 そして、少し後に特殊型デバイスによる、武装隊の増員及び質を高めるための計画が立ち上げられた。








レジアス・ゲイズ
JS事件後、降格。
だが、なのはから送られたデータを元に局員の質の向上を図り、成功し地上の平和を確固なるものとする。
さらに管理局の抱える問題に立ち向かい、発展に貢献する。









「……ふん」

 彼、ジェイル・スカリエッティは変わり映えしない独房を眺めながら鼻を鳴らす。

『二度は言わない! 忘れるな!』

 そして、あの時の一言を思い出して、彼は監視員に近寄る。

「君、ネゴシエイターを呼んでくれないか?」







ジェイル・スカリエッティ
本人いわく『気まぐれ』で管理局に少々だが、協力姿勢を見せるようになる。
後にその悪行と功績により次元世界に名を残すマッドサイエンティストとなる。
間接的にだが、これが監獄組のナンバーズが協力姿勢を見せるきっかけとなった。










「ライライライライライ(こっちだ!!)」

「うん、ライコーオー!」

 ライコーオーに誘導されエリオは走る。

 そして、

「自然保護隊です! 大人しく投降してください!」

 密猟者たちの捕縛に成功した。





「ライコーオーとエリオくんお手柄だね」

 フリードに乗りながらキャロが笑う。

「ううん、キャロとフリードが誘導してくれたおかげだよ、ありがとう」

「ライライライライ(ああ、二人のおかげで追い詰められた)」

 エリオとライコーオーの言葉にキャロは嬉しそうに笑って、フリードも鳴く。

 と、その時、二人の元になにかがやってきた。

「これ、ルーちゃんのインゼクト?」

 と、すっとインゼクトは二人の前に一本の花を置いていく。

 それに二人は笑う。

「ルーちゃん元気なんだね」

「そうみたいだね。また会いに行こうか」

「うん!」







エリオ・モンディアル&キャロ・ル・ルシエ
六課解散後、二人とも自然保護隊に所属。
竜騎士として密猟者の摘発や自然保護業務にあたっている。
エリオはいつの間にか得たケンプファーの力とは折り合いを付けた様子である。
また、キャロもライコーオーを含め、三体のドラゴンの主となり、エリオとともに龍騎士として一躍有名となる。








 ティアナは次元航行艦クラウディアから彼氏であるヴァイス・グランセニックに通信を送っていた。

『なら、予定通りにこっちにこれるんだな?』

「はい、航行は順調だから大丈夫です」

 そうかとヴァイスは笑い、ティアナも笑う。

 この航行が終わったらデートの約束なのだ。予定外のことは起きて欲しくはなかった。

「では、また」

『ああ、ティアナ』

 ティアナが通信を切ろうとして、

『いや、ティア』

「えっ?!」

 ちょうど切ってしまったために聞き返すことはできなかったが、確かにティアと呼ばれた。

 そのことにティアナは小さく震え、やったあ! と喝采をあげた。

「あ、ティアナ」

 部屋を出ると直属の上司であるフェイトと会った。

 そのフェイトはいつも以上に幸せそうな笑みを振りまいていた。

「あ、フェイトさん、どうしたんですか? ずいぶん嬉しそうですけど」

 自分のことを棚に上げてティアナは尋ねた。

「えっ? あ、この航行終わったらユーノとなのはとね……」

 心の底から嬉しそうに笑うフェイト。

 ああ、そういえば言ってたなと思い出すティアナ。

「なにもなければいいんですけどね」

 とティアナは呟いて、クラウディアが揺れた。

「な、なに?!」

 すぐに警報が鳴り響いた。

『所属不明艦から攻撃を受けました! 各員戦闘配置!!』

 あまりのタイミングの悪さにフェイトとティアナは俯く。

「どうして、なんでこんなタイミングで……」

 そして、次の瞬間、阿修羅のオーラを纏い、二人はセットアップしていた。

「ティアナ・ランスター、乱れ撃ちます!」

「私は世界で二番目に怒らせちゃいけない人間だ!」

 三分後、所属不明艦は完膚無きまでに叩きのめされた。








ティアナ・ランスター
現在、フェイトの補佐官となり夢の執務官への道を駆け上がる。
同時にヴァイス・グランセニックとの付き合いも順調に進んでいる。








 ある火災現場、少年は妹を抱えてさまよっていた。

「お兄ちゃん……」

「大丈夫だよ。きっと助けが」

 音がした。何かが崩れる音が。

 少年は振り向く。そこに倒れかかった柱が……

「クロックマネージャー!!」

 その時、声が届いた。凛とした綺麗な声。

 気づくと少年は一人の女性に抱えられていた。

「がんばったね。偉いよ」

 そう言って少年の頭を撫でる。

「レオ、もう他に人はいない? なら、この子たちをお願い」

 少年は彼女のそばに来た白いライオンのようなものの背に乗せられる。

 無機質に見えるその背は意外と優しい暖かさがあった。

「出口まで一直線だからね!」

 そう言って笑う彼女に少年は安心した。






スバル・ナカジマ
正式に特別救助隊へと転属。新たな相棒たちとともに事故に巻き込まれた人々を救い続ける。
なお、データウェポンが質量兵器かどうか議論されたものの、プログラムである彼らは使い魔に近いものとして決着がついた。









「うーん、バル」

「ま、待てレイハわ、私は……」

「ふふふ、そんなこと言って久しぶりだからあなたも期待して」

「ちょ、ま、なんだその肉食獣のような目は……ぐあああああ!!」






レイジングハート&バルディッシュ
なのはのアーティファクト『共に在りし従者』で肉体を得た二体。
後に二体の間にはヴィヴィオのデバイスとなるセイクリッドハートが生まれることとなる。


















 そして、ある晴れた日。

 聖なる鐘が鳴り響き、この日、夫婦になった三人を祝福している。

「おめでとう、なのはママ、フェイトママ、ユーノパパ!!」

「おめでとうございます! なのはさん、フェイトさん!」

 祝福の言葉に彼女たちはとても幸せそうにほほ笑む。

「みんな、ありがとう!」

 白いウェディングドレスを纏ったフェイトが幸せそうに笑う。

「私たちはずっと、ずっと幸せになるよ! ね、ユーノく、ううん、あなた」

 なのはが夫となったユーノに微笑む。

「うん、なのは、フェイト」

 そして、ユーノは自分の花嫁たちを抱きしめる。







なのは・T・スクライア&フェイト・T・H・スクライア&ユーノ・スクライア
晴れて三人は夫婦となり、末永く幸せに過ごすこととなる。
そして、これからも、なのはたちは歩き続ける。人生と言う名の旅の道を。

































 平行世界のなのはさん~ユーノくんの不幸~ 

         ~Fin~











~~~~
平行世界のなのはさん完結です。
ここまでお付き合いしていただき、ありがとうございました。




[21475] キャラ設定 覇道神なトーマくん追加
Name: 空の狐◆194a73d1 ID:b50a47bc
Date: 2012/08/11 21:52
なのちゃん

原作:とらいあんぐるハート3 りりかるおもちゃ箱

高町家に『もし士郎が死んでいたら?』のifの世界の住人。(その他細かい部分が違う)

かつて人の記憶を吸い取るイデアシードを巡る戦いで、レイジングハートを携えイデアシードを集めるクロノと対立、それとは別の形で出会った彼と絆を育んだ。

ただし、実力行使も辞さないなのはと違い、戦闘など争いごとは苦手な平和主義者なため、もっぱら戦闘は親友である久遠に任せていた。

現在、翠屋を継ぐために張り切って調理師学校に通っている。






魔王なのは

原作:永遠神剣シリーズ

『高町なのはがカオスエターナルだったら?』の世界の住人。第二位永遠神剣『不屈』の担い手。

異世界ファンタズマゴリアに召喚され、人質となったユーノを救うために、第五位永遠神剣『心』と共に望まぬ戦いに身を投じることとなる。その過程で多くの出会いと別れが彼女を大きくしていった。

そして、母の虐待、亡き姉へのコンプレックスで神剣に心を呑まれ、テムオリンの人形となったフェイトを救うため、そして仲間たちを護るために時の迷宮に赴く悠人にユーノと共に無理やり同行した。

なお、夫となったユーノは第三位永遠神剣『求道』、二人の娘であるヴィヴィオが第三位永遠神剣『聖王』の担い手。







古手 梨花

原作:ひぐらしのなく頃に

古手神社の一人娘で、雛見沢村御三家・古手家の最後の一人の少女。綿流しの祭りでは巫女役を務める。

冷静さと神秘性を兼ね備えた少女で、愛くるしい印象を受けるが、その実、狡猾。周囲を煙に巻くのが得意なタヌキ。

古くから雛見沢で信仰されるオヤシロさまの生まれ変わりと称される少女だが、オヤシロさまそのものである羽入を知覚しており、コミュニケーションをとることができる。

幾度も悲劇を経験し、そのたびに羽入とともに世界を繰り返し悲劇を塗り替えようとしてきた。

現在、なのはの手で全ての原因が一掃された世界で年相応の少女に戻ることができ、彼女に深く感謝している。







なのは・スクライア

原作(?):Arcadia『司書長と聖王』

『もし、ユーノとヴィヴィオが結ばれたら?』の世界からやってきた少女。

この世界では高町なのははある事件で帰らぬ人となっており、ユーノとヴィヴィオが自分たちの間にできた子に大切な人であるなのはの名を送った。

天真爛漫で無邪気な少女。デバイスなど歳の割に機械に興味がある。

無限書庫を遊び場に育ったため、本が好きで、母ヴィヴィオとともに司書たちのアイドル的存在。






由詑 かなみ

原作:スクライド

ロストグラウンドと呼ばれる無法地帯で生きる少女。

便利屋として有名であるカズマを諌め、ヘコませる事が出来る唯一の存在。

本人は気付いてないが、ロストグラウンドでたまに生まれるアルター能力者であり、他者の思考にアクセスするハート・トゥ・ハーツというアルター能力を持つ。







なのは・T・スクライア

原作(?):Arcadia『ユーノくんの受難』

『なのはとフェイトがユーノと結ばれたら?』の世界の住人。

この世界のなのははユーノと一緒に飲みに行き、酔った勢いで関係を迫り、恋人同士になった。

その後、フェイトもユーノと関係を持ったことを知り、大喧嘩の末に三人で家族になろうと提案した。

ユーノとの婚約を機に管理局を辞め、結婚後に翠屋二号店を開いた。現在一児のお母さん。

目下の悩みは娘のユーナが自分のマテリアルに似てきていること。







衛士な世界のなのはさん

原作:マブラヴ

『マブラヴ世界になのはがいたら?』の世界の住人。

A-01部隊の一員で、砲撃支援のポジションにいる。珠瀬みきと極東一位の座を争う狙撃技能を持つ。

フェイトとはメンバーであるユーノを巡った恋のライバルであり親友。

なお、一応ポジションが声優ネタ。







斬魔世界のなのはさん

原作:斬魔大聖デモンベイン

極貧生活を送る私立探偵だったが、八神財閥の依頼で魔道書の探索の依頼で運命が変わった人物。

魔道書『ネクロノミコン』とその精霊であるユーノと出会い、鬼械神『レイジングハート』を駆ってマスターテリオンが率いるブラックロッジと対決した。

本人は気づいてなかったが、閉じた輪の世界で幾度も邪神の策謀の前に敗北している。だが、最終的にユーノとともに邪神のシナリオをその輪とともに破壊した。

現在、新たな世界で八神財閥に雇われ、魔道探偵として活動している。







ノキア

原作:グリードパケット

歩く災害として忌み嫌われる「カラミティ・ステップ」と呼ばれるカシオの片割れで、妹であり、弟。

二重人格であり、二重性別で頭を叩かれることで人格と性別が変わる。

この珍妙な現象は彼女(彼?)がカシオの具現化した魔法であり、具現化した時の設定ミスのせいである。

なおカシオはノキアの存在維持のために月に6000万円ものパケット代を払っていて、彼らが億越えの幻想をいくつも倒しているのに極貧な理由の一部を占めている。





裏切られたなのはさん

原作:なし

『ユーノと結ばれたけど、ユーノがフェイトと浮気していたら?』の世界のなのはさん。

JS事件後、晴れてユーノと結ばれたなのはさん。二人の間に娘も生まれ、幸せで充実した日々を送っていた。

だが、娘であるユーナが一人の青年を家に連れてきたことから全てが壊れた。

ユーナが連れてきたのはフェイトの息子であり、彼の父親はかつて一晩だけフェイトと関係を持ったユーノだった。

親友と夫の裏切りに人間不信になりかけている。また、娘と、その彼氏の未来に重い憂いを抱えている。






ゼロノスななのはさん

原作:仮面ライダー電王

フェイトと契約し、未来の自分から預けられた時間を航行する船『アースラ』とゼロノスカードで時間を乱すイマジンたたに立ち向かったなのは。

時間を、人の記憶を護ることに強い使命感を持つが、同時に自分の記憶が周りから失われていくことに苦悩している。

最初、ユーノのことは「頼りない人」というイメージだったが、次第に強く惹かれていく。

決め台詞は「私はかーなーり強い」








不破 なのは

原作:なし

『もし兄に憧れて御神の業を納めたら?』の世界のなのは。

運動能力はそこまで高くないものの、努力でその壁を乗り越えた。

現在、かつての兄と同じくボディーガードを生業にしていて、不破の名は仕事の時だけ名乗っている。

ボディーガードの仕事の過程で知り合ったアリサ・バニングスとは親友。

イデアシードなど魔法には関わったことがない。







Wななのはさん

原作:仮面ライダーW

海鳴で師匠であるオリヴィエの後を継いで私立探偵を営む傍ら、ガイアメモリ犯罪に魔法使いWとして立ち向かう。

相棒であるユーノに淡い恋心を抱いており、ユーノがフェイトを気にかけているのを知って焼餅を焼いたりしたこともある。

ミュージアムとの戦いでユーノを失ってからは一人で町を護るために戦っていたが、再びユーノとコンビを組んでからは以前以上に積極的になった。

現在、フェイトとヴィヴィオとはユーノを巡る恋のライバル。







コスプレイヤーななのはさん

原作:ネギま!

聖祥学園中等部に在籍する少女。

中学生と思えないクラスメイトたちから少し距離を置いているが、友人であるアリサ・バニングス曰く、本来は面倒見がよく他人をほっとけないと称される。

コスプレが趣味だが、それをアリサ以外にひた隠しにして、ネットアイドルとして活動している。

魔法などオカルトの存在に懐疑的だったが、召喚された先の魔法が思ったより現実的だったため、現在はその存在を受け入れている。

BJをコスプレイヤーとしてどう見るか悩んでいたが、その簡便さに嵌り込んでしまった。







奴隷ななのはさん

原作:なし

『もし、管理局が敗北しなのはが奴隷になったら』の世界から来たなのはさん

管理局敗北後、捕虜となったなのはは奴隷として人権を奪われた。

その後、辺境の地でオークションにかけられていたところをユーノに救い出された。

最初の頃、デバイスに触れることすら拒絶してしまっていた彼女だったが、親友であるフェイト、そして、ヴィヴィオを助け出す時に勇気を振り絞って戦った。

その後、奴隷制がなくなってからはフェイトと一緒にユーノの妻ということになっている。






高町セイ

原作:なし

『なのはに双子の妹がいたら?』の世界の住人。

見た目、中身はほぼなのはのマテリアルだが、プログラムではなくちゃんとした人間。

性格は違うが姉のなのはとは仲がいい。ただ、ユーノに関しては譲らない。
教導方針はなのはと若干違う。





フルメタルななのはさん

原作:フルメタル・パニック

極秘の対テロ傭兵組織『ミスリル』に在籍するなのは。

かつてテロで家族を失い、復讐のために傭兵となった過去がある。

狙撃のセンスは生身、AS問わずに部隊内一で『銃口から出た弾の軌道を完璧にイメージできる』という稀有な才能の持ち主。

親友であり相棒であるフェイトの恋を、からかいながらも応援している。






なのは・スクライア

原作:なし

『もし、なのはとユーノの立場が逆だったらの世界』のなのはさん。

この世界ではなのはがスクライアの人間でユーノが高町家の人間。

事件の過程で知り合ったフェイトは親友兼恋のライバル。

現在、フェイトに数歩リードを許してしまい、少し焦りを見せている。

なお、この世界ではすずかとアリサがユーノを追ってミッドに移住している。






カラカラメグルななのはさん

原作(?):Arcadia『カラカラメグル』

『ユーノを殺され、狂気に走ったなのはの世界』

聖王教会でも異端視される過激派によりユーノを殺されてしまったなのは。

そして、彼女は精神に深い傷を負ったヴィヴィオの面倒を見ながら仇を探し出し、復讐を遂げる。

その後、管理局を離れた彼女は、ヴィヴィオを連れて地球へと帰り、ユーノを取り戻すための研究に明け暮れるようになってしまった。




デウスエクスマキナななのはさん

原作:あえて挙げるならこの作品

幾多の平行世界を旅して多くの経験と力を手に入れたなのはさん。

十五年間の旅の経験は伊達ではなく、間違いなくこの世界最強。

実は、本編登場の世界以外も回っていたため、彼女が体験した時間ははやてたちにとって予想外だった。

まだまだ切り札は隠し持っている。

「私の切り札は百八式まであるの!」



覇道神なトーマくん
原作:神様シリーズ(主にDies irae)
八神はやて率いる聖槍十三騎士団と戦い神の領域へと達したトーマくん。神咒は『永遠の刹那』
抱く渇望は『楽しかった刹那を永遠に味わいたい』
はやてを斃した後、共に生き残ったスバルと暮らしながら新世界の女神となったリリィを護るために修行をしている途中。
流出位階に達しているものの、それを封印し、緊急時は創造で戦っている。


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とりあえず、今まで出したなのはさんたちと平行世界の住人の設定です。
これから投稿するたびに追加する予定ですので、たまに覗いていただけたら嬉しいです。



[21475] 裏切られたなのはさん・後日談
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:b50a47bc
Date: 2011/01/27 19:49
 私たちが結婚して一年ほどが経ちました。

 ゆったりと私たちはは平穏な日々を謳歌していたら、

「ママー、お腹の音聞いていい?」

 と、ヴィヴィオが頼んできました。

「ん? いいけど、まだ大きくなってないし、なにも聞こえないと思うよ?」

「でも、おねがい」

 仕方ないなあと、私はお腹に耳を当てやすいように座り直す。

 そして、ヴィヴィオがお腹に耳を当てる。

「どう? なにか聞こえたかな?」

「んーん」

 少し残念そうにヴィヴィオが耳を離す。

「なら、フェイトママに聞かせてもらったら?」

 と、煎れたてのコーヒーを持ってきてくれたユーノくんがだいぶお腹が目立つようになったフェイトちゃんを見る。

「あ、フェイトママ、また赤ちゃんの音聞かせて!」

 いいよーとヴィヴィオの頼みにフェイトちゃんはヴィヴィオを迎える。

 はあ、いいなあフェイトちゃん、私より早かったんだもんね。いや、勝ち負けなんてないけど、なんとなく。

「にしても子供の名前どうしよっか? 私の子は女の子だから、私とユーノくんの名前を取って、ユーナかな……ってどうしたのフェイトちゃん?」

 私がユーナって言った途端にちょっとフェイトちゃんとユーノくんの表情は引きつった。

「あ、その、ちょっと思い出してね……」

 フェイトちゃんが誰を言いたいのか考える。

 うーん、ユーナって名前はたくさんいたし……

「その、ユーノが私と不倫していたって世界」

 ああ! と私は納得しました。

「どうなったのかなあの世界?」

「すごく心配なんだけど……」

 と、途端に暗くなる二人。まあ、それしか二人は知らないからね。

 うーん、どうしよう?

 ……そうだ!

「なら、会いに行ってみる?」

『へ?』

 二人がぽかんと口を開けるのでした。









 私は『隙間』からそれを出します。とある世界で手に入れた巨大ロボット『アストラナガン』を。

 それを、フェイトちゃんとユーノくんはあんぐり口を開けて、ヴィヴィオはわーっと目をキラキラさせながら見ています。

 黒を基調とした細身のフォルム。大きな翼。そして、血のように赤い双眼を有する鋭角的な頭部。うん、正直、機械で作られた堕天使っていうのがぴったりだもんね。

「久しぶりにお願いねアストラナガン」

 と、私が声をかけると、答えるようにセンサーが光った気がしました。








 機体に乗りこんで各種チェック……問題なし。よし!

 まあ、本来はこういう使い方はいけないんでしょうけど、今まで頑張ったからこれくらいは許してくれるよね?

「じゃあ、いくよみんな!」

 と、本来一人乗りのコクピットに頑張って乗り込んだユーノくんとフェイトちゃんとヴィヴィオに声をかけてから私は転移を実行しました。









 転移は成功しました。ミッドの郊外でステルス機能を全開にして降り立ち、すぐに隙間へとアストラナガンを仕舞い、私たちはそこから歩きでこの世界の『スクライア家』に向かいました。

 そして、『スクライア』の表札のある家に着きました。

 道中、この家の住人そっくりな四人がいるからなのか、周りからじろじろ見られています。

 フェイトちゃんとユーノくんは恥ずかしそうだけど、こんなの気にしてたら他の世界を旅するなんてできないの。

 ピンポーンとチャイムを押すと、はーいと返事がすぐに返ってきました。

「はい、どちらさまですか? って、あなたは……」

 少し待つと、ドアが開いて『私』が出てきました。

「久しぶり。私」

 と、私は久しぶりにあった彼女に笑顔を返しました。









 家に上がって、私たちはお茶を出してもらいました。

「その節はどうもありがとうございました」

 と『私』が頭を下げてきます。

「ううん、どうってことないよ。で、あれからどうなったの?」

 と、私が聞くと、『私』は笑顔を浮かべました。

「おかげでみんなと幸せに暮らせてるの! ユーノくんとフェイトちゃんとも仲直りして、一緒に暮らせるようになったし、ユーナとユートの問題も解決したからね」

 そっか、よかった。と、思ったら俄かに騒がしくなりました。

「ただいま、なのは母さん、誰か来てるんですか? え?」

 と、入ってきたのは、ユーナとユート。そのユーナの腕にはかわいらしい赤ちゃん。

「い゛? なのは義母さんが二人いる?!」

 と、ユートが顔を引きつらせる。

 ふーん、その反応どういうことなのかなあ?

 それから、二人も入れてOHANASHIすることになりました。

「ああ、なるほど、あの時入れ替わったなのは母さんでしたか」

 と、ユーナがすぐに納得してくれた。

 ユートもすぐに理解したけど、居心地が悪そうだった。

「なあ、母さん……といっても違うんだっけ? でも、とりあえず母さんって呼ばせてもらうから。同じ顔が二つっていうのびっくりじゃないか?」

「うーん、少しわかるね」

 と、異世界の息子と話すフェイトちゃん。

 それから、ユーナの腕の中で寝る女の子を見つめるフェイト。

「その子って」

 ああ、とユートが嬉しそうに笑う。

「俺とユーナの娘。名前はアリス」

「いい名前だね」

 フェイトちゃんは嬉しそうにほほ笑んで、

「って、ちょっと待って。二人は兄妹なんでしょ? その、結婚とかは無理だったんじゃ……」

 と、ユーノくんがつっこみを入れた。

 しーんと静まる部屋。そして、

「いったい誰のせいで苦労したと……」

「ほんと、空気読めないよなうちの父さんは」

 ゆらりとアリスを『私』に預けたユーナとユートが立ち上がる。その手にはデバイス『ルシフェリオン』と『グラム』が……

「ま、まあまあ、落ち着いてこのユーノくんは二人のお父さんとは別の世界の同一人物だから。それに大丈夫だよユーノくん!」

 ぐっと私は親指を立てる。

「二人に邪魔な障害は私が排除しといたから」

 そう、二人が結婚できるように私は……この世界の管理局のデータベースを改竄したんです!!

 いやあ、苦労しました。レイジングハートや願いにアストラナガンにとにかくその時使える手全てを使ってユートのDNAデータを始めとした各種データを改竄。その上で、もしなんらかの理由で修正された時のために、自動で書き換えるプログラムまで入れたんです。

 さらに精神ケアを始めに、身近な人に口裏を合わせてもらったり、考えうる限りの問題の対処法などを置いていったんですから。

 まあ、二人が無事に結婚したならちゃんとそれらは機能してるんだね。

「そ、そうなんだ」

 と、ユーノくんがちょっと表情を引きつらせながら納得してくれました。








 そして、私たちが帰る時、三人が見送りに来てくれました。

「ちょっと心配だったけど、よかった」

 とフェイトちゃんが笑います。

「うん、僕も少し安心した」

 とユーノくんが苦笑気味に笑います。

「じゃあね、こっちのなのはママとユーナさん、ユートさん!」

 と、ヴィヴィオが手を振る。

「それでは、ヴィヴィオ姉さん」

「じゃあ、ありがとうなのは義母さん。俺たちがこうしてられるのもあなたのお陰です」

 ありがとうユート。そう言ってくれて私もうれしいよ。

「じゃあね!!」

 そして、私たちは元の世界に転移した。








 四人が巨大ロボットとともに消えるのを確認してから私たちは家に戻りました。

「まさか遊びに来るとは思わなかったね」

 と、私は二人に笑いかけます。

「ええ、おかげでお礼を言うこともできました」

 と、少しユーナが嬉しそうに笑う。

「だな、今の俺たちがいるのもあの人のおかげだし」

 そうだね。

 あの私のおかげで、私はまたあったユーノくんとフェイトちゃんを許すことができた。

 そして、今ではみんなで幸せに暮らしている。

 まあ、ちょっと問題の解決法がどうなのかとも思ったけど、私の大切な娘が幸せでいてくれるなら、そんな些細なことは目をつぶっていいし。

「ただいまなのは」

 と、ユーノくんがちょうど帰ってきました。

「みんなただいま」

 と、フェイトちゃんも。

「おかえりなさいユーノくん、フェイトちゃん!」

 私は大切な人たちに微笑みました。






~~~~
一応、あの世界がどうなったのかということで。
他にも気が向いたら別の世界の話書こうかな?
実はアストラナガンを駆るなのはさんを書きたいからっていう部分もあったりして。
アリシアは僕は彼女の代わりに幸せになってくれたらって思ってつけたんですけどね……指摘された通り、よく考えると不吉なんで変更しました。



[21475] 没案&オリ主な世界
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:b50a47bc
Date: 2011/02/10 20:45
例えば、心が擦り減るまで世界をメグル末にオリ主にあったなのはさん。


 それは笑っていた。大口を開けてゲラゲラ(主観イメージ)と。

「やった! 俺はオリ主になったんだ! 待ってろよなのは、フェイト! 俺が君たちを救う! そして、ユーノたち男を排除して俺だけのハーレムを!!」

 そして、それはユーノくんの頼れるいい兄貴分の振りをしました。

 それからプレシアさんによりジュエルシードが地球に散らばると、ユーノくんを置いて、一人で地球に来ます。そこで、この世界の高町なのはに接触。見事にユーノくんのポジションを強奪しました。

 それから、一人でジュエルシードの探索という名の散歩に出たとき私は行動を開始した。

「ディバインバスター」

「ぎゃあああああ!!」

 私のバスターに撃ち抜かれるそれ。

「い、今のはディバインバスター?! な、なぜ……」

 私はそれの前に降り立つ。

 それが驚愕に目を見開く。

「な、なのは?! しかも、ストライカーズ仕様? な、なんで……」

「私は別の世界の高町なのは。世界を変えるあなたを赦さない」

 私の発言にそれは敵意の籠もった目で私を睨む。

「なぜだ! 俺は少しでもこの世界をよくしたいだけだ! その代わりにハーレムくらいの役得があってもいいだろう?!」

 つまらないことを言うなあ。

「あなたの一番の罪、それは私とユーノくんが出逢わないようにしたこと」

「な、なに?」

 意味がわからないといいたげなそれ。

「ユーノくんが別の子が好きになるのはいいの。それはそれで一つの結果だから。でもね、私とユーノくんが出逢わない世界は認めない。絶対に」

 私は額に手を当てて笑う。

「出逢わないくらいなら、そんな世界なくなっちゃえ」

「く、狂ってる……」

 怯えのまじった目で私を見るそれ。

「そうだよ狂ってるよ? でも狂人は狂人らしいやり方で否定するから」

 私はレイジングハートを向ける。

 それは踏ん張って立ち上がる。

「ふざけるなあ! ここで終わってたまるかあ!!」

 膨大な魔力を解き放つそれ。

 実はSランクあるんだっけ。まあ、そんなの関係ないけど。

 槍状に集めた魔力をそれは投げる。

「神槍グングニル!」

 高速で迫るそれを掴み、握り潰す。

「なあっ?!」

 今の一撃に自信があったのか、目を見開いて驚くそれ。

 私は手を向ける。

「ちい!」

 とっさに何重のプロテクションを張るそれ。でも意味はない。

「オーラフォトンビーム」

 放たれたオーラフォトンが易々と防御を貫き、その肩を穿つ。

 悲鳴を上げて転がるそれ。

 まったく、少しでもいい世界? 笑わせるの。それだけの力があるなら自分だけで解決するでしょ? 第一、私とユーノくんが出会わないだけでその世界はすでに無価値なの。

「終わりだよ。まあ、安心して。君がいなくなった後は私が説得したユーノくんが来る筈だから」

 私の言葉に憎悪の宿った目を向ける。

「スターライトインパクト、昇華」

 跡形もなくそれは消滅した。

 ふう、すっきりした。さて、次の世界に行こっと。










 私はジュエルシードを探しに行って戻ってこない空気くん(件のオリ主でエアと読む)を探します。

 どこいったのかなあ?

『マスター、魔力反応です』

 と、その時でした。レイジングハートが魔力反応を感知したのは。

 もしかして!









 私がそこに向かうとクリーム色の髪の男の子がいました。

「ふう、空気兄さんはどこかな?」

「空気くんを知ってるの?!」

 私は思わず声をかけてしまいました。

「君は誰? ってレイジングハート?!」

『ユーノ?』

「レイジングハート知ってるの?」

『はい、彼は空気の弟分です』

 へー。空気くんの。

「レイジングハート、空気兄さんは?」

『我々と別れてジュエルシードを探しに行きましたが行方不明です』

 そんなとユーノくんが呆然と呟きますが私はその手を取ります。

「一緒に探そうよ。そしたらきっとすぐに見つかるから」

 と励ましてみます。

 ユーノくんはうんと戸惑い気味に頷きました。










 それから、二人で空気くんを探しますが、ユーノくんはチラチラと私を見ます。

「どうしたの?」

「あ、いや、なのはってお姉さんいる?」

 ? 質問の意図がわからず首を捻ります。

「いるけど、どうしたの?」

「あ、いや、やっぱり違うよね。なのはは兄さんに会うまで魔法知らなかったんだよね」

 頷きます。ユーノくんはだよねと返します。

「何日か前に知らないお姉さんにあったんだけど、なのはそっくりだったんだ」

 へえ。

「そのお姉さんの言葉のお陰で、兄さんを手伝おうって思ったんだけど……兄さん」

「大丈夫だよ。空気くんは無事だから、ね?」

 うんとユーノくんが頷きます。もう、早く見つからないかな空気くん。















考えていた最終回PARTⅠ

 こうして、後にJS事件と呼ばれる事件は……終わりませんでした。

 アジトの一部が爆発する。

 な、なに?

 そして、そこから、見たこともない生き物が近づいてきます。

 あえて近いものを上げるならガリューです。

 だけど、それはもっと禍々しい。

 鎧のように全身を包む甲殻、太くパワーを感じさせる腕、ぎらりと光を放つ爪と体中から生えた棘。

 力のために全てを棄てたような生き物がそこにいました。

「気をつけたまえ。あれはナンバーズとはまったく違う。強力な力を持つ者たちの遺伝子を掛け合わせ、極限まで能力を上げた窮極の生命体だ」

 捕縛したスカリエッティが笑う。

 窮極の生命体……

「ふーん、そうなんだ」

 窮極ねえ?

 私の言葉にむっとしたのかスカリエッティがこっちを睨む。

「ふん、どうやら君は聞いてた情報とずいぶん違うみたいだが、私でもあれは制御できない。君らなんかではあれを止められまい」

 スカリエッティが笑う

「止めるよ」

 私は笑う。

「この程度の苦境なら何度もあった。それに、今はみんながいる。みんながいれば怖いことなんてない!」

 スカリエッティは笑みを消して聞いてくる。

「……君はいったい何者なんだ?」

 私はカードとバックルを取り出します。

「通りすがりの魔法使いなの! 覚えといて!! 変身!」

 バックルを腰に装着。自動的に伸びるベルト。そこにカードを入れて閉じる。

『マジシャンライド・ディケイド!』

 私は魔法使いディケイドに変身する。

 そして、集まったみんなと並びます。

 私はレイジングハートを向けて、

「いくよみんな!」

 走り出した。









 窮極と豪語するだけはありました。

 パワーもあるし、頑丈。それにスピードもあります。

 みんな攻撃するけど応えた様子がない。

 うーんどうしよう? なんて考えてたら三つ叉に分かれた雷の砲撃が迫り、なんとか避けます。

 今のフェイトちゃんのトライデントスマッシャー?!

 どうやら人様の技まで真似してるようです。

 さらに八つの誘導弾。アクセルシューターまで!

『アタックライド・ブラスト!』

 空中の誘導弾を強化したバスターで落とします。

 だけどそこで接近を許してしまいました。

 身体強化をかけて攻撃を受ける。けどパワーが強くて後ろに飛ばされる。

 くっ!

 さらに向けられた手からバスター。避けようとして、後ろにははやてちゃん。

 射線を重ねられた?!

 迎撃するしかないとカードを挿入しようとするけど、間に合わない!!

 そこで誰かがバスターを切り払いました。

 えっ?

『アリサちゃん?!』

 そう攻撃を防いでくれたのはアリサちゃんでした。贄殿遮那で魔法攻撃を打ち消します。

「私だけじゃないわよ!」

 そこで、新しい影が割って入る。

「妹に傷はつけさせん!」

 相手と斬り結ぶのは神速を使う御神の剣士。

 お兄ちゃん!

 さらに、お兄ちゃんを八つ裂きにしようとする窮極の生命体の腕にどこからかの砲撃が当たり、軌道がずれる。

「ダイレクトカノンサポート……すずかちゃん!」

「こんにちはなのはちゃん」

 両腕に身の丈はある大砲を抱えたすずかちゃんが笑います。

 みんな、集まってくれたんだ……

 胸が熱くなります。

 これなら!

 私はケータッチを出します。

「一気にいくよ!」

 みんなの上にカードが実体化する。

『シャイニング! クイーン! スーパークライマックス!』

 それだけじゃないの! コンプリートフォームのちょっとした応用!

『ニューデンオウ! ジェネシック! ヴィクター! メサイア! ポゼッション! イデア! レイム! バンプレイオス! カオス!』

 カードがみんなの目の前に降りる。

『ファイナルフォームライド・ディケイド!』

 カードが後退し、すり抜ければみんなが新しい姿。

 とまどうことなくみんなが動く。

「夢想封印!」

 色とりどりの封印の力を発し、攻撃するティアナ。

「ヴォルテール! フリード!! ライコーオー!!!」

 三体のドラゴンの同時砲撃。

「コスモノヴァ!!」

 莫大なプラーナを集中した四つのエネルギーが解き放たれる。

『はっ!』

 すずかちゃんとアリサちゃんが手に持つ剣で斬り込む。

「うおりゃ!」

「はっ!」

 ヴィータちゃんのハンマーが殴り跳ばし、ザフィーラさんの剣が斬る。

「メサイア、凌駕発動!」

 遺伝詞を見る目と純皇を持って切り裂くヴィヴィオ。

「はああああ!」

 ヴィクター化のパワーで打ち抜くエリオ。

「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……ウィータ!!」

 ヘルアンドヘブンアンリミテッドで砕くスバル。

「天上天下念動……無双剣! 運命斬り!!」

「オーラよ、我が敵を打ち砕け! はあ!!」

 そして、フェイトちゃんの無双剣とユーノくんの『求道』が両断し、

『ファイナルアタックライド・ディ・ディ・ディ・ディケイド!!』

「やあああああ!!」

 複数のホログラムカードを潜り、それらのエネルギーを纏った私のキックの直撃に、みんなの攻撃でボロボロだった窮極の生命体は爆発したのでした。

 全員が並ぶ。終わったんだ。全部。









PARTⅡ

 みんなが脱出したことを確認し、私は両手を広げます。

 それに応じて『隙間』が開く。

「みんな出てきて」

 私は呼びかける。そして、出てきてくれました。

 隙間から鬼械神レイジングハートが、アストラナガンが、ゼオライマーが、マークザインが、ナイトオブゴールドが、天竜神が、ダブルオークアンタが、魔法使いW・CJXが、魔法使いゼロノスが、カオスエターナル『魔王なのは』が、英霊タカマチが、10th−Gの力の担い手が……

 多くの私たちがいました。

「みんな、行くよ!」

『スターライトインパクト!』

 鬼械神の必滅奥義が、

『インフィニティシリンダー!』

 アストラナガンの窮極兵器が、

『メイオウ!』

 ゼオライマーの全てを分子に返す力が、

『光と闇の舞!』

 天竜神の幻惑攻撃が、

 ナイトオブゴールドのバスターランチャーが、


『いけえ!』

 同化したルガーランスの一撃が、

『トランザム!』

 ライザーブレイカーが、

『マキシマムドライブ!!』

『やああああああ!!』

 ビッカースターライトイリュージョンが、

『フルチャージ!』

『はあ!』

 フォトンランサースターライトシフトが、

『レイジングハート! タイタニックランス!!』

 概念核を最大解放した力が、

『天地照らす星の光(スターライトブレイカー)!!』

 宝具が、

『スターライトレイ!』

 神剣に導かれた星の力が、

「スターライトブレイカー!!」

 私自身の一撃がゆりかごを飲み込み、全てが終わりました。








オリ主世界のなのはさん

 その後、二人はジュエルシード探しに平行して空気を探すものの結局見つかることはなかった。

 闇の書事件の後も、なのはは空気が戻ってくると信じ、他の二人のようにミッドに行かず、地球に留まる。

 ユーノも幾度も地球に戻り、なのはと共に空樹を捜し、そのうち、かつて出会った女性そっくりに成長したなのはと交際。そして、ゴールイン。

 二人の間に出来た息子には空気の日本語読みの一部を取り、空と名付けられたと言う。








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没ネタです。
他にもみんなが巨大ロボットに乗る案もありました。
(八神家がヴァルザガードやスバルが電童、ギンガがオーガ、エリオとキャロがサンダーフェロウとか)



[21475] 洗脳少女テンプテーションなのは
Name: 空の狐◆84dcd1d3 ID:b50a47bc
Date: 2011/03/03 14:25
「ん~~!!」

 朝、私はぐっと伸びをします。

 ふう、昨日はすごかったの。と、ちょっと思い出してへら~っと笑みが零れてしまいます。

「あ、おはようなのは」

「あ、うう……なのは、おは、よ……ん!!」

 と、先に起きてたユーノくんと、そのユーノくんにその豊満なウォーターメロンを責められるフェイトちゃんが挨拶をしてきます。

「おはよう、ユーノくん、フェイトちゃん。でも、今は『なのは』じゃないでしょ?」

 私の言葉に二人が、顔を紅くします。

『その……おはようございます『ご主人様』』

 ん、よろしい。私は二人のご主人様、うふふ。

 心のどこかが軋むのを聞きながら私はその言葉に陶酔した。









 訓練でみんなを扱いてから、お昼の自由時間を迎えました。

 私の楽しみの時間です。さあて、私に誘導されたみんなはどうしてるでしょうか?

 こっそりとよくティアナが特訓をしている場所を茂みに隠れながら覗き込みます。 

「んん、ふあ、ヴァイスさん……」

「ティアナ……」

 そこに、濃厚なディープキスをするヴァイスくんとティアナ。さらに、

「ひう! し、シグナムさん、いきなり胸を触らないでください!!」

「そう言うがな、お前はサイズ気にしていただろう? 成長期にちゃんと揉んでやらないとな」

 と、シグナムさんは、はやてちゃんのようなことを言いながらティアナの成長途上の胸を揉みしだきます。

 その後はお約束、我慢できなくなったヴァイスくんによって二人は野外でおいしくいただかれることに。

 途中で見るのをやめて、次は訓練所。

 そこではスバルが真っ赤になったエリオの頭の上に歳の割に大きい胸を載せていました。それを嫉妬と羨望の交じった目で見るキャロ。

「あ、あのスバルさん、頭の上に乗っかってるんですけど!?」

「あはは、載せてるんだよ~」

「羨ましい……ぎりぎり」

 ふふふ、こっちはこっちで楽しそう。

 あんまりにスバルが私に懐いてくるもんだから、ちょっと意識を逸らさせるために「エリオを意識してみて」って言っただけなのに、ここまでなるんだ。

 自分で自分の力が怖いなあ。

 そして、自室に戻れば待っていた四人が私を見てぱあっと笑顔を浮かべました。

「なのは!」

「遅いよなのは」

「うふふ、なのはちゃん、遅かったね」

「遅い! なのは!!」

 ユーノくんが嬉しそうに、フェイトちゃんは少し不機嫌そうに、ふんわりとすずかちゃんが笑って、ぷんすかと不機嫌そうにアリサちゃんが文句を言ってきました。

「ごめんね。みんながどうなったか見てきてたんだ」

 と、笑います。

「そうなんだ。みんな楽しんでたでしょ?」

「なのはちゃんのお陰だよね」

「ふん、百歩だけ譲って認めてあげるわ」

「さすがなのはだね」

 口々に褒めるみんなに私は微笑む。

 心がみしみし音を立てるのを無視しながら。











 私がその『力』に気づいたのは小学生になってでした。

 お父さんが大怪我をして、家族が忙しい時淋しさからつい「誰かなのはといて」と言ったら、必ず家になのは以外の人がいました。

 お母さんはお店があるから流石にいなかったけど、お兄ちゃんかお姉ちゃん、バイトの誰かが必ず。

 これだけなら、ただ私の小さな我がままを聞いてくれたと取れるでしょう。

 それから、小学校に上がって、ある女の子が大人しそうな子からカチューシャを盗った時も、「やーめーなーさーい!」と言えばその子は渋々と女の子に返しました。

 現在、その子たち、アリサちゃんとすずかちゃんとは大の仲良しです。

 それから何度か、私が何かを言う度にその通りになりました。学校で何気なく呟いたこと。喧嘩する相手を仲裁すればすぐに止めること。

 そして、気づきました。なぜか私の言葉には人を従わせる力があると。

 最初、アリサちゃんは笑ったけど、冗談ですずかちゃんとキスしてと言ったら本当にしようとして、止めるのに苦労しました。 

 以来、アリサちゃんによって私の力は『女帝の声(エンプレスヴォイス)』と名付けられ、コントロールのための訓練を三人でしました。

 その過程である程度自分で意識すれば力を押さえられること。言い方で『命令』にならないよう気を付ければいいことがわかりました。

 そして、私はしゃべり方に気を付けながら生きることになりました。

 結果、私が我がままはを言えば、みんな従ってしまうから、あまり言わないようにしていたら、遠慮する子どもと周りから思われるようになりました。

 でも、それが嫌で、世界が変わって欲しいと思いました。素直な言葉でお話できる相手が欲しいって。

 そして、それは叶いました。

 異世界から来た魔法使いの男の子、ユーノくんと私は出会いました。

 ユーノくんはどうしてか、私の『女帝の声』が効かなかったんです。

 嬉しかったです。ユーノくんには正直に、ありのままにしゃべることができたんです。

 だから、ユーノくんのお手伝いをしました。その途中で出会ったフェイトちゃんも私の力が効きづらく、絶対にお友達になると決めました。

 そして、ジュエルシード事件を解決し、闇の書事件と過ごすうちに、私が自然と接することができる相手、そういうのもあるんでしょうが、私は二人が何よりも大切になりました。

 特に、ユーノくんのことは異性として意識もしてたと思います。

 そして、私はある日、ユーノくんに告白しようと思って無限書庫に訪れました。命令なんかじゃない。純粋にずっと私のそばにいてとお願いするために。

 誰もいない、まだ未開拓エリア付近でユーノくんとフェイトちゃんがいました。

 私は普通に声をかけようとして、ユーノくんの雰囲気がおかしかったからちょっと様子を窺っていました。そしたら、

「フェイト、僕と付き合ってくれないかな?」

 え?

 ユーノくんがフェイトちゃんに告白をしていました。

「うん、いいよユーノ」

 と、フェイトちゃんが返します。

 う、嘘……

「なのはが驚く顔が楽しみだね」

「うん。なのはに知られないように気を付けないと」

 二人が私の隠れていた書棚の横を通ります。楽しそうにお話しながら。私は何もできず、それを見送りました。

「はは、ユーノくんとフェイトちゃんが……」

 告白すらできず、私の恋はオワッタ。素のままの私でいられる人は、ユーノくんはフェイトちゃんを選んだ。

 あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは……

 その日、私の中の何かが壊れました。











 翌日、私は二人を呼びました。

「なのは、どうしたの?」

「なにかあったの?」

 二人は不思議そうに部屋に入ってきました。

 私は躊躇いませんでした。

「ユーノくん、フェイトちゃん『私を愛して』」

 籠められるだけの魔力を籠めて『女帝の声』を私は使いました。

「は、い」

「はい……」

 結果、耐性のある二人ですら、私の支配下に陥りました。











「ふふ、ずるいんだもん二人とも。私を置いて二人だけで幸せになろうとしたんだから」

 私は二人を抱き締める。

「ごめんねなのは」

「ごめんなさい」

 二人が謝ってきます。でも、いいんです。もう、二人は私しか見れないから。

 まあ、かわいそうだからたまに二人を愛し合わせたりしてあげてますし。これでいいんだ。










 その後、私は『女帝の声』をフルに活用しました。

 はやてちゃんの夢の機動六課の設立、メンバーの勧誘からなにまで。上の五月蠅い人たちも黙らせるのだって楽でした。

 さらに、どうせならと地球にいたすずかちゃんにアリサちゃんも呼んで、ついでにお兄ちゃんたちにも『女帝の声』を使いました。

 まったくお兄ちゃんも酷いよね。ずっとそばにいたお姉ちゃんとフィアッセさんの気持ちに気づかなかったんだから。

 今頃四人で楽しんでるのかなあ?








 そして、私は今の生活を満喫しています。

 周りのみんなも幸せになるように思考を誘導して、今ではみんな幸せそうです。

 ヴァイスくんにはティアナにシグナムさん、エリオにはキャロとスバル、はやてちゃんとギンガにはゲンヤさん。ザフィーラさんにはアルフさんにリーゼ姉妹。

 ふふふ、もうね、我慢しないの。自分がしたい通りにするの。

 にゃははははははははははははは……

「ねえ、それで満足なの?」







 私は上空から『私』を観察していました。

 可哀そうな『私』。たった一つの勘違いで全てを狂わせてしまったのだから。

 でも、私はもう遅いとわかっていても聞いてみました。

「ねえ、それで満足なの?」

 『私』が私を見て驚きに目を見開きます。

「ねえ、本当にそれで満足なの?」

 私の言葉に『私』が怯えた目を向けます。

「ま、満足だよ? だって、ユーノくんもフェイトちゃんも私のものになったんだもん! あ、あなたがなんなのかわからないけど、邪魔しないで!!」

 そう。

「なら、一つだけ教えてあげる。あなたが勘違いしてたことを」

「勘違い?」

 私の言葉に眉をひそめる『私』


























「ユーノくんとフェイトちゃんは付き合ってなかったんだよ」





















 教えてあげました。

「え?」

 『私』が呆けた顔をする。

「ユーノくん、あなたにするプレゼントを選ぶのに付き合ってって意味でフェイトちゃんに付き合ってって言ったんだよ? 本当はあなたに告白するつもりだったんだよ?」

 私は続ける。本当のことを。

「う、嘘だ……そんなの嘘だ!!」

 『私』が小さく首を振る。

 そう思いたいんだね。でも、それが

「本当のことだよ」

 私は憐みのこもった目で私を見ます。もう戻れない。もう二人を元に戻せないから。

「わ、私、わたし……あああああああああああああああああああ!!」

 泣きだす『私』

 私はそれを見てゲートを開きました。

「じゃあね、お幸せに」

 そして、別の世界に転移しました。










~~~~
なんとなく、最低系オリ主を見てて、逆になのはさんが洗脳能力持ってたら……なんて想像したらこんなのに。
次はリクであったスクライアななのはさんとかいこっかなあ?



[21475] 乙女座なあの人が六課にやってきた
Name: 空の狐◆d4bde1b7 ID:593f6d1a
Date: 2011/09/25 22:34
 さて、私がやっと六課に帰ってきたのですが、ひとつ問題が置きました。

 いきなりヴァイスくんが倒れたのです。

「ヴァイスさん?!」

 慌ててティアナが駆け寄り、ヴァイスくんを助け起こす。

 そして、ゆっくりヴァイスくんが目を明け、途端に私は逃げなければと考えていた。

 ナゼかはわらないけど、今のヴァイスくんはヴァイスくんじゃないとわかったから。

 そして、それは私にとって天敵に近いものだと。

「ここは……どこだ? 私は、すでに涅槃にいるのか?」

 と、疑問符を浮かべ、周りを見て、アルトで止まる。

 そして、ガバッと跳ね起きたと思ったらアルトの肩を掴み、

「アルト、敢えて、言った筈だっ! 死ぬなと!」

 などと叫ぶ。

 その言葉にアルトは戸惑う。

 そして、私は彼が何なのか理解できた。

 に、逃げなければ。と、思い背を向けて、

「会いたかった、会いたかったぞガンダム!」

 一瞬で回り込まれた。む、無駄に早い……

「生きてたんですね」

 私は視線を逸らしながら返す。

「言ったはずだ。これは死ではないと。それに私は粘着質で我慢弱い」

 得意気に答えるヴァイスくん。

 そう、今のヴァイスくんは、乙女座のセンチメンタリズムな彼になっていた。














 で、今度はヴァイスくんの中身が入れ替わってしまったとわかり、隊舎で説明をします。

「ほう、ここは別の世界か。いささか信じられんが……この状況、そうなのだろうな。ふ、異世界でも君に出会えるとは、乙女座の私にはセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられない」

 と、私たちの説明にヴァイスくんは納得する。

 なんだかティアナの視線が痛い。

「ここまで追いかけてこなくても……」

 かつて別の世界であった時のしつこさを思い出してげんなりしてしまいます。















 そして、緊急アラート。

「ヴァイスくん、お願いできる?」

 はやてちゃんの要請に、

「『望むところだ』と言わせてもらおう」

 出撃するヴァイスくん。

 そして、戦闘中、ヴァイスくんが突撃してきて……

「人呼んで、ヴァイススペシャル!! 」

 がしゃんと、ヘリがブレイブに変形する。

「ヘリがなんでブレイブになるのーー!!」

 私はついツッコむ。

 そして、擬似太陽炉のN粒子を噴出しながらブレイブはガジェットに挑む。

 飛行型のⅡ型の集団に対しては変形して引き寄せたと思えば、急制動をかけてトライパニッシャーの掃射で一掃する。相変わらず無茶機動を……
















 さらに、なぜか殺人事件の捜査依頼が六課に届いて、ばっとヴァイスくんは仮面を付けた。あ、あれは!

「この捜査は私武士仮面が請け負った! 干渉、手助け、一切無用!!」

「ディバインバスター!!」

「あふうん!!」

 全力全壊のディバインバスターでぶっ飛ばした。

「あ、あのなのはさんなにを……」

「ここで性犯罪起こされるわけにいかないの」

 はあはあと私は荒く息を吐く。

 そう、武士仮面は……ペドフィリアなのだから。

















 そして、賢者の石が利用できる日になって、

「はっはっは、それでは世話になった」

 と、笑いながらヴァイスくんが別れを言う。

 ああ、疲れた……

 いろんな意味で私はほっと溜息をついたのでした。














『へえ、そんなことがあったんだ。でも、ヴァイスさん帰ってきたの?』

 と、無限書庫のユーノくんとお話ししていて、

「えっと、そのあとヴァイスくんが帰ってきたかって……」

 ちらっと後ろを見る。

「来い、侍被れ、本物の剣術を見せてやろう」

 シグナムさんに二本の刀を指に挟んで突き出すヴァイスくん。

 どうやら、ヴァイスくんが帰ってくるのはもう少し後見たいです。





~~~~
そういえばヴァイスくんの中の人は乙女座のあの人と思い出して書いてしまいました。
最後のはラインバレルの森次さん.verです。マンガは好き。アニメ? 知らないなあ。
後悔も反省もないです。




[21475] 覇道神なトーマくんとカラカラメグルif後日談
Name: 空の狐◆ca1bb5f2 ID:c8e9b849
Date: 2012/08/11 19:01
 賢者の石、それは様々な世界と繋がるゲートを開くもの。そして、今日も、

「さあ、なのはちゃんが帰ってくるか期待の瞬間です!!」

 はやてがそんなことを宣言し、それに周りがはあっと脱力する。

 テンション上げようとしてくれるのはいいけど、最近なんか疲れてしまったのだ。

「にゃはは……と、とりあえず、なのは行きます」

 そしてなのはが両手を合わせて賢者の石を起動させる。

 ゲートが開き、なのはが消えた後にいたのは、一人の少年だった。

「あれ? どこだここ?」

 少年が首を捻る。

「また違うんかい……」

 がくうっとはやては脱力する。

「なのはさんじゃないんだ……って、トーマ?!」

 スバルもがっかりしかけて、目の前の少年が知り合いだと気づいて声を上げる。

「ス、スゥちゃん?」

 トーマもスバルの存在に気づいて……それからはやてを見て、目を見開く。

「八神はやて? なんで、あんたがここにいるんだ?」

「へ?」

 トーマの一言にはやては首を傾げる。なんでここにいるなんて問われても……

 瞬間、トーマは動く。誰も反応できない速度で庇うようにスバルの前に立つ。

「形成-時よ止まれお前は美しい」

 聞いたことのない呪文を唱え、その手に武器を作り出す。

 それはギロチン。罪人の首を刎ねる執行者の刃。その先をはやてに向ける。

「まさか、もう一度作るつもりなのか? グラズヘイムを。だったらここで、あだ!?」

 そこまで言いかけて、後ろからスバルに頭を叩かれた。

「な、なにするんだよスゥちゃん」

「うん、まずは落ち着こうかトーマ」

 にっこりとスバルは笑ってトーマに釘をさした。















 そして、やっと落ち着いてトーマははやてと話をすることができた。

「で、ここは俺の知る世界じゃなくて、あんたも俺の知る八神はやてと違うと」

「うん、そうやよ? だからできればそんな風に敵視されとうないんやけど……」

 あははと笑うはやてをトーマはじっと見てから、ふうっとため息を吐く。

「確かに俺の知る八神はやてとは違うみたいだ。信じましょう」

 その言葉になんとか誤解が解けたとはやてはほっとする。なんとなくだが、目の前のトーマと戦うことになったら機動六課では勝てそうにない気がするからだ。

「ま、まあ、誤解が解けた上で聞きたいんやけど、トーマくんの世界の私はいったいどんな人間なんや?」

 あそこまで敵視されてる自分。いったい何をしたんだろうと気になった。

「いいですけど……俺の知る八神はやては聖槍十三騎士団首領、永遠に闘争の続く世界を作ろうとしたんだ」

 そう、彼の世界のはやては、己の法を流出させて、北欧神話に語られるヴァルハラのごとく、彼の世界において人は戦い殺し合い、死してもなお蘇りまた永劫の闘争を繰り返すそんな世界を作り出そうとした。

 それを阻止し、日常に帰るためにトーマはその戦いに臨んだ。

「……うち、また悪役なんかい」

 そのことにはやてはがくうっと平行世界の自身の役目にがっかりするのだった。










 それから幾人のメンバーと会うごとにいろいろとトーマは反応する。

 なにせ異世界とはいえ、敵も味方もこの場では志を同じにするものとして集まっていたのだから。

「へえ、なのはとユーノはいないんだ」

「ええ、俺の知る限りその二人は。フェイトさんとランスターは黒円卓を裏切って俺に手を貸してくれました」

 その話にそっかあとちょっと残念そうに頷く。余談だが、この世界のフェイトはティアナの兄、ティーダと相思相愛ながらスカリエッティの策略で殺し合う羽目になってしまっていた。








 そして、六課の出撃になぜかトーマも参加する。

「スゥちゃんが怪我したりするのは嫌だからね」

 その一言にスバルの乙女心がきゅんとしたとかしないとか。

「創造、美麗刹那・序曲!!」

 フェイトすらも超えかねない速度で戦場を縦横無尽に動き回り次々とガジェットを屠るトーマ。

 だが、数があまりにも多く……さらに海上の方から敵の増援が来るという報告にトーマは、

「一気に消し飛ばす! シーク・イートゥル・アド・アストゥラ・セクゥェレ・ナートゥーラム !!」

 呪文を唱えるとともに、天から隕石が降り注ぎ、それが海上に広がっていたガジェットたちを薙ぎ払った。

「術の制御はもう少し練らないとなあ。まあテストは上々っと」

 結果に満足そうに頷いて、

『やりすぎやあああああああああああ!!』

 いくつもの隕石が降り注いだことで沿岸に津波が迫り、それなりの被害が出てしまっていた。









 それから、トーマが元の世界に帰る日が来た。

「それでは、お世話になりました」

「うん、そっちの私によろしくねー!」

 ぶんぶんとスバルが手を振り、それにトーマが笑顔を返してゲートをくぐる。

 そして、次に現れたのは……

「貴方たちが真の益荒男ならば……その魂、私が抱いてあげましょう!!」

 弓を引き絞り、男らしく宣言するなのはが現れた。

「また違うんかい……」

 しくしくとはやては泣いた。













カラカラメグルif後日談

 元の世界に帰って何十年も経ちました。

 帰ってきた私は今までの研究を全て破棄して、ヴィヴィオのために全ての時間を使いました。

 失くしたものは戻らない。返ってこない。それを私はわかったから、だから、今生きているあの子のために。母としてヴィヴィオにできることを。

 そうして、あの子は元気になって、魔法にも触れられるようになって、そして、管理局で執務官になりました。

「一人でも多く、私みたいな子を生まないために頑張る」

 そう笑顔で答えて。

 そして、そのうち、かつて聖王家と関わりのあった覇王家の末裔、アインハルトさんとあの子は知り合って、ゴールインしました。

 私のできなかったことをあの子がしてくれたのは嬉しかったなあ。

 そのうち孫もできて、みんなかわいくて……

「おばあちゃん行ってきます!」

「まーす!!」

「うん、行ってらっしゃい。気を付けてね」

 学校に行く孫たちを私は見送ります。

 そうして私だけの静かになった家で、私は椅子に腰かけました。

 すると唐突に声が聞こえました。

『なのは、今幸せ?』

 それは私の大好きな彼の声。ユーノくんの声。

 その声に、私は、

「うん、私、すっごく幸せだよユーノくん!!」

 天国にまで届けと願いながら答えました。







~~~~
今回はDiesなトーマくんです。いや、だってなんかトーマって蓮炭に似てる気がして……
なお、リリィはすでに流出して第五天として全ての命を抱きしめています。


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