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[21186] 【チラ裏から・処女作・駄文】「マギステル・テレッテ」(ネギま×P3)
Name: 鉄兎23号◆f955939b ID:c8c9cd0d
Date: 2010/09/21 21:53


皆様始めまして鉄兎23号です
テレッテの活躍が見たくなり、勢いで書いてしまいました(汗)

設定ですが
・P3FES終了後で真田、桐条は卒業済みです
・チドリ復活イベントは発生しておりません
・主人公補正によりテレッテがかっこよくなります……多分
・ハーレムにはしない予定です




それでは、駄文になりますがどうぞ生暖かい目でお付き合い下さい



鉄兎23号



[21186] 第一話
Name: 鉄兎23号◆f955939b ID:4d3b3e3f
Date: 2010/09/21 21:46


8月中旬
辰巳ポートアイランド北部ポロニアンモール


「あっぢぃ~」

1人の青年がそんなことをボヤきながら喫茶シャガールから出てきた

「ゆかりっちは夏期講習で、天田少年は友達と宿題……先輩達は誘いずれぇしなぁ」

少年は歩きながらそう呟いた

「はぁ、暇なのは俺だけかぁ」

補足として記すが、彼も夏休みの課題というものがある
だが、正しき男子高校生としていまだ終わっていない、断じて彼が怠け者なのでは無く
終わらないのが正しいのだ!……多分。

「アイツみたいにヒトカラでもするかな…いやでも、一人でカラオケって恥ずかしくないか?
アイツはよく行ってたみたいだけど…オレにはそんな勇気ねえよ……はぁ、ん?」

またもブツブツと呟きながらカラオケの前を通り過ぎようとした時、彼の目に留まるものが在った

「ドア?……だよな?こんなとこに店なんかあったか?まぁいっか」

知らない間に店でも出来たのだろうと結論づけて立ち去ろうとした時、頭の中に聞き覚えのある声が響いた

…順……平……

「っっ!? 今の声は!?」

聞き覚えのある、そしてひどく懐かしく感じる声

「どこだっ!?」

こ…ちだ…順平…

「ここか!?」

聞こえてくる声に導かれるように、先ほど通り過ぎたドアを思い切り開け放った先に居たのは

「お待ちしてお「なんだこの部屋? ぬおわっ! 妖怪!?」

真っ青なエレベーターと怪奇長鼻爺だった……

「お客人、落ち着い「くそっ!まさかシャドウ!?またニュクスが来るのか!?」

「いえ、ですから「アイツの守ってくれた世界なんだ、負けられねぇよ!
うおぉぉぉぉ! ペルソナァァァ!」

「いや、ちょ「くっそぉぉぉ!召喚器がなきゃだめなのか!?こうなったら真田先輩直伝のゴッドハンド(小)で…」

「順平……落ち着いて…」

「へ?」

長鼻に殴りかかろうとした時、不意に肩を叩かれた。

「久しぶり、順平」

そこには共に戦った仲間が居た、自分を導いたリーダーが居た、奇跡を起した英雄がいた。





「ゴッドハンド!!(小)」

「ぺすぅ!!」

「ははっ、アイちゃんに偉そうな事言ったけど、まだまだオレも未練があるんだな……
 だけどそれじゃ駄目だ!!前に進むって決めたんだ!!オマエになんか負けてらんねぇんだよ!」

青年はその目に宿る決意の色を濃くし、纏う雰囲気はまるで歴戦の戦士のように変わる。

「いや、順平ちが「ゴッドハンド!(小)」はぶっ!」

……大いに勘違いしながら

「ゴッドハンド!ゴッドハンド!ゴッドハンド!」
「うぼっ、ふがっ、のすっ」

打撃音がだんだん水袋を叩くような音に変わる頃、ソファーの横から1人の女性が歩み寄ってきた。

「ドローペルソナカード、メギドラオンでございます♪」

すべてを無に返す強大な力
もちろん対象は

「うわぁぁぁぁぁ!?」
「なんで僕までぇぇぇぇ!?」



数分後

「はい、すいません。ちょっと調子に乗っちゃたと言うか、ついうっかりといいますか」

「へぇ、順平は久しぶりに会った親友を殴っといてうっかりですませちゃうんだ、へ~」

正座する青年と向き合いながら額に血管を浮かべる青年がそこにいた……

「コホン、宜しいですかな?」

「ああ、イゴールすまないエリザベスも」

エリザベスと呼ばれた女性が微笑みながら

「いえ、貴方様のためですから」
「いや、一緒に吹き飛ば…「貴方様のためですから」……はい」

パワーバランスはエリザベス>青年Aのようだ……

「って、そんな事よりも!なんでオマエがここにいるんだよ!」

「そんなことよりも、順平」

青年は部屋の中心に置かれたソファーに腰掛けた

「どうやら何者かがシャドウを悪用しているみたいなんだ」

「なっ?!タルタロスと一緒に消えたんじゃねぇのかよ!」

「どうやってシャドウを呼び出してるのかは解らない、しかしシャドウの反応が微弱ながら感知されているんだ」

先ほどとは打って変わって真剣な面持ちになる。

「危険が伴なうから、できる事なら僕が対処するべきなんだけど。
 ……無責任になってしまうが、今の僕は……」

「お客人、ワタクシからもお願い致します、これはこのお方だけでなく我が主からの依頼でもございます。
 もちろん報酬の方もご用意させていただきました」

時間にしてほんの数分、誰一人として言葉を発しない。


「わ~ったよ、色々聞きたいこともあっけど、ゆっくり聞けそうも無いしな」

「いいのか?」

「まかせろよ、リーダー」

そう言って目には輝きを、口元にはニヒルな笑みを浮かべた。

「そうか、じゃあはいコレ。プレゼントとアイテムもいくつかこの袋に入れておいたから使って。指示は必要に合わせて出すけどそれ以外は基本自由だから」
「我らからの報酬もすでに貴方様にお渡ししております」

「えっいや、ちょっ、まっ」

「じゃあ順平、後よろしくね」

そう言って紫のバックパックを渡し、指示を出しながらグイグイと入り口の方へ背中を押して行く
すると、ちょうどよくエレベーターが停止するのが感じられた。

「あぁ、言い忘れてたけど、今から行ってもらうのは異世界?ってか平行世界だからよろしく。
 でも安心して、ちゃんと帰れるから、いっそのこと子供作ってから帰って来てもいいよ」

「えっ?なにそれ?! ちょっとまてよ! オイ! 謀ったな! シ○ア!」

「じゃあ順平、良い旅を」

最後にそう言い放つと、ドアを開け放ち思いっきり蹴飛ばした。

「うおっ! ってなんで床が無いのっ!? 落ちるぅぅぅぅぅぅ、オマエ覚えてろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

そのまま彼の体と意識は闇の中へ吸い込まれて行った。



















「ふう、少しすっきりしたな」

どうやら先ほどのゴッドハンドを根に持っていたようだ。

「しかし良かったのですか?」

辺りが静かになったのを見計らってイゴールが尋ねる

「なにがだい?」

「貴方様が直接赴かれた方が、事態の収拾も容易だったのでは?」

「……確かに“ユニバース”を使えば簡単だよ」

「ならば何故?」

すると儚げな、今にも泣き出しそうな顔して

「それが、順平のためでもあるし、世界のためでもあるんだよ」

「と、言いますと?」

「順平のアルカナは魔術師、示す意味は?」

「どんな状況からでも、未来への一歩を踏み出せる時、すべての物事の始まりや新しい状況、無限の可能性。
 また、出会いも表しますな。」

「そう、彼には新しい一歩を進んで欲しいんだ。
 そしてあの世界に無限の可能性を与えて欲しいんだ」

「そうでしたか……」

「まぁ、ぶっちゃけ面白そうってのが本音だけどね」

「……ハァ」

悪戯の成功した少年のような笑みを浮かべて告げた青年に
イゴールは深いため息で返し
エレベーターはまた上昇を開始する
生贄の如く闇に落とされた者を置き去りにして
 



[21186] 第二話
Name: 鉄兎23号◆f955939b ID:4d3b3e3f
Date: 2010/08/15 22:02


第二話



ある所に一人の青年が居た。
彼は類まれな力を手にし、仲間と共に戦った。
時には友と反発し、挫折も味わった。そして真の絆を築き……失った。

青年は、英雄と比類する力を持ちながらも英雄の特異すぎる力を前に自らを平凡と決め付けていた。
英雄と共に戦い、支える事が出来るのも、また英雄だけだと気づかずに……


そんな、英雄たりえる青年は今……

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

星の輝く夜空を、落ちていた……汗

「だぁぁぁぁ! なんでだぁぁぁぁ! くっそぉぉぉぉ、バラしてやるバラしてやるぅ! ゆかりっちに風花に桐条先輩にアイちゃん! 
全員に言いつけてやるぅぅぅ!!」

落とした張本人に呪詛を吐きながら……かなりみっともないのはここだけの秘密だ。
そんな、嫉妬もまじったことを叫びながらも伊達に場数をこなしてはいない、すぐに現状を理解し解決にかかる。

「この高さじゃ受身……は無理だよな? なんかねぇのか!?」

バックパックを開き、その中に無造作に手をつっこみ現状を打破するための道具をさがす。
その間にもだんだんと地表が迫って来て、焦りが増し探す手の動きが大きくなる
すると、指先に硬いものが触れた。

「くっそ、ジェムとかばっかかよ。これは!? ……へっ、プレゼントってこれかよ」

そう言って、バックから取り出したそれは鈍く光を反射する銃。

精神を研ぎ澄まし目を閉じ、ゆっくりと持ち上げ、こめかみの辺りに固定する。
不安は無い、何時もなら呼ぶことの出来ない時間帯。しかしなぜか分かる、今この時この場所で答えてくれる、自分の呼びかけに現れてくれる。
理屈ではなく魂が教えてくれる事実。

眼下に迫る木々まで残り数十メートルとまで迫ったところで、閉じていた目を開きもう一人の自分の名を呼ぶ

「来い! トリスメギストス!」

銃声が夜空に響き、打ち抜かれた順平の頭から血の変わりに青いガラスのような物が弾け飛び、それらが螺旋を描きながら頭上へと集い形を作っていく。
まるで炎のように真っ赤な衣装に身を包み、金の翼をもった希代の錬金術師ヘルメス・トリスメギストスがその姿を現した。

そして順平の体を掴むと落下していた軌道から滑空へと変え、地面と残り一メートルと迫った時には低空飛行へ移行し徐々に減速すると闇夜にその姿を消していった。





???


順平の落下数分前、北西に2kmの林に多くの人影があった

「くっ! 情報より数が多い!?」

しかしながら人影に目を凝らすとそのほとんどが異形の輩であり、太刀を構える一人の少女を取り囲んでいた

「塵も積ればなんとやら、か」

そう呟くはフードを目深にかぶり顔を隠す男性、声からは初老のような印象も受ける。

「ふ、此度こそ闇の福音を捕らえてくれよう、なかなか粘るようだが私としては君みたいなのは邪魔なのだよ」

そう言い放ちブツブツと何事か呟き始める

(詠唱か!?まずい!)

フードの男の動作を感じ取り、神速をもって間合いを詰める

「ぬぅ!? しまっ!?」

「奥義! 斬岩け……!?」

男を切り伏せようとした時、強大な魔力を感じ取ってしまった。
(なんだこのでたらめな力は!?エヴァンジェリンさんとは違う……)
今まで感じた事の無い力を半ば不意打ちのように知覚してしまい、一瞬思考してしまう。
傍から見れば、瞬き一度程度。
しかし、命を賭けた場ではその一瞬は値千金、今まさに切り伏せられようとしている者からすれば、喉から手が出るほど欲しい時だった。

「ぬうぅぅ!」

男は必死に身を捩じらせ太刀から逃れようとするが、一瞬は一瞬でしかない。
左手を犠牲にする羽目になってしまった。
だが、それこそが男の狙いであった。

「くっ!?」

少女はその整った顔に苦悶の表情を浮かべる、異形の輩は何度も切り捨てて来たが、今回は人間。
しかも予期せぬ形である、そもそも今回は適当に切り結び、時間を稼いだ所で包囲する予定であったため大きな外傷をつける気はなかった。
そして二度目の隙、これを逃がすほど男は愚かで無かった。

「我が血肉を持って召喚する!彼の者を討ち滅ぼせ!出でよミノタウロス!」

切断された左手を高々と持ち上げ足元に浮き出た、いわゆる魔方陣に落とす。
すると地面に描かれていた陣から黒い霧と共に体長は3mほど体は黒く不自然に隆起した筋肉、顔には仮面のような物をつけ、頭部には二本の角をもつ異形が姿を現す。

「ぐうぅ!」

その身からあふれだす威圧感だけで押し潰されそうになる、脚が震える、耳鳴りが止まらない、本能が逃げろと警鐘を鳴らす。
(ここで引いてはお嬢様に危険が迫るかもしれない、私が食い止めて見せる!)

「でやぁぁぁぁ!!」

重圧に負けそうになりながらもその額に向け太刀を振り下ろす

「なっ!? ふぐっ!!」

しかし、異形の者ミノタウロスは防ぐ素振すら見せずにそのまま額で受け、右手を振るう
気も魔力も、何も込めていないただただ単純に力を込めて振るっただけの右腕。

彼女も少女とはいえその実力は確かなもの、紙一重で避けようとするしかし僅かに指がわき腹に掠った。
ただそれだけで、彼女は後方へと飛ばされ数本の木をなぎ倒し、一際大きな杉にぶつかりその勢いをようやく止めた。

「がっはぁ!」
(掠っただけと言うのにここまで!? 非常識にもほどがある! 今の衝撃で腕と脚もやられているな……
 戦うどころか立てるか?)

「くっくっくっ、いい眺めだなぁ。
 私の腕を切った罰だ! 小娘!! 痛いじゃないか!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!」

「!? あぁぁぁぁぁぁ!!」


男は切られた左腕を押さえながら、少女の腹を蹴り上げる。
痛みを堪えきれずに悲鳴が夜空に響く

「このまま終わらせてなるものか! よくよく見れば中々に整った顔立ちだな……
 丁度いい、実験に使ってやる」

そこで言葉を区切ると、男は下卑た笑みを浮かべ耳元で呟いた

「内容は、そうだな……ミノタウロスと人とのハーフの作成だな。
 だが、その前に楽しむのも悪くあるまい」

そういいながら、少女の胸元に手を伸ばす

(お嬢様、申し訳ございません。このような下衆に辱められるくらいなら……できることならもう一度一緒に笑いあいたかった……)

生きながらの屈辱よりも、死を選ぼうとしたその時だった

「テメー! 何してやがる!」

視界に突然割り込む者がいた。




その人は青年だった、帽子を被っていて夏らしい格好をしていて、自分を辱めようとしていた人物を自分の代わりに殴り飛ばしてくれた。
まるでその姿は……



「あ…なた……は?」

「しゃべんなって、ちょっと待てよ」

すると彼は肩から掛けていたカバンから何か丸いものを取り出し、私に投げて寄越した。それは体の中に溶けていき痛みが引いていくのが分かった。

「あ…りがとう、…あな……たは?」

「オレか?ヒーローってとこかな?」

そう言って青年は子供のような笑みを浮かべた

「糞餓鬼がぁぁぁぁぁ!!」

先ほど殴り飛ばされた男が顔を抑えながら怒りの表情を見せる。

「殺してやる!殺してやる!殺してやる!ミンチにしてすり潰してやる!
 ミノタウロス!やつらを生かして置くなぁぁ!!」

「ま~た懐かしい奴だな」

「逃げ…て……! このままだと貴方も、ぐっ!」

「あ~、ほらほらまだ動いちゃ駄目だって」

立とうとしてよろめいた少女の肩を抱き寄せ、木の根元へ寝かせる

「まぁ、何とかなるっしょ。オニーサンを信じなっさ~い」

「そ…んな……こと」

「まぁまぁ、刀かりるぜ~」

そうして太刀を肩に背負う姿を見ながら少女は気を失った。





























「……つ……」

「せ……な……」

自分を呼ぶ声がする

ここはもしかしてあの世なのか?

きっとお嬢様を守れなかった自分は地獄だろうな……

「刹那!!」

一気に思考が覚醒した

「龍宮……か?」

「大丈夫か!? 無事なんだな、何ともないか?」

「あ、ああ……」

なんだろう、龍宮はもっとドライな気がしたんだが

「龍宮、何かあったのか?」

「何かあったのか?! はぁ……、お前はコレを見て何も無いと思うのか?!」

そう言って、龍宮は自分の後ろを指差す

「??」

龍宮の影に隠れていた景色が目に飛び込んできた時、訳が分からなかった。
先ほどまでは確かに学園都市の郊外付近の森にいたはずだ、何度も巡回しているから知らない場所など殆どないはずだ。

「ここは……?」

いつの間に移動したのかと辺りを見回すと、自分が横たわって居た所を見て驚愕した。
この樹には見覚えがある、ここは確かに先ほどの場所……龍宮の後ろをもう一度目を凝らしてみて、さらに混乱した。

「な……なに……が……?」

「おい!?どうした?やはりどこか怪我を?」







私の周り以外は、一面が焼け野原となっていたのだから。



[21186] 第三話 前編
Name: 鉄兎23号◆f955939b ID:e52e58ca
Date: 2010/09/21 21:55
第三話








時は深夜

場所は学園から離れた森の中

「はぁっはぁっ!……クソッなんだってんだよ?!」

息遣いを荒くし、駆けるのは青年

「対象を再度視認、交戦を再開します」

「よし、そのまま追い込め」

追うのは長いライムグリーンの髪をなびかせる機械仕掛けの少女と
月夜に輝く金髪を風に舞わせる黒衣の少女

さらに二人とも一般的には十二分に美少女に分類される


「了解、第二兵装で対応します」

「だぁぁぁぁっ?! マシンガン?! 誰かー! 警察ー!」

叫びながらもジグザグに走ったり、物陰を利用したりと未だ致命傷になるような傷は無い


「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!帽子に穴開いたー?!」



身なりはすでにボロボロになっているが……汗

そもそもなぜ少女二人に追い立てられるという、
ソッチ系の趣味の人ならば垂涎ものの状況になったかと言うと少々時間を遡る



































「まぁまぁ、刀借りるぜ~」


おそらく少女の物と思われる野太刀を担ぎ順平は後ろを振り返りながらそう告げる
視線の先には先ほどまでは居なかった無数の異形達が集まって来ていた。


「いや~、オレっち大人気だね、これどうしたらいいの?」


あまりの数の多さに冷や汗をかきながら後ろの少女に尋ねる


「……」


「反応が無い、ただの……って違う!」


……一人ボケツッコミが出来る辺り意外と余裕があるみたいだ


「ったく、女の子気絶するまでいたぶるなんて趣味ワリーぜ、おっさん」


先ほど乱入した時以上に目を鋭くし、フードの男を睨み付ける


「ふん! 私の邪魔をしたのだ、気絶程度で済ますものか!辱め、ありとあらゆる拷問を行い、
 生まれてきたことを後悔させてやるさ!その前にまずはお前だ!」


言い終わると同時に残っている方の手を振り降ろすと
それに合わせて先ほどまで静観していた異形達が一気に順平へと襲い掛かる


「クズ野郎が……許せねぇ……許せねぇよテメェ」


その言葉に被せる様に四体の異形が順平に襲い掛かる
大きな衝突音が辺りに響き、他の異形達は構えていた武器を下ろす者、構えだけを解く者、
各々が青年の死を確信し気を抜いていた。


「ふん、あっけない物だな」


その表情に嘲笑の色を濃くし、死体を確認しようと歩み出す。


「くっ……?!」
「なぁっ?!」


初めに異変を感じ取ったのは襲い掛かった四体の異形
自らの急制動と衝撃による土煙で相手は見えないが、確かに自分達の武器は当たったはず


しかし、振り下ろそうとした途中で棍も大太刀も動かない。
手に感じた衝撃は、人間を潰した感触でも裂いた感触でもなく、
とてつもなく硬い物に思い切り振り下ろしたような痺れのみが伝わってきた。


だんだんと土煙が晴れていく中、そこには野太刀を手に異形の攻撃を受けきっている青年の姿があった。


「テメェは許せねぇ、って言ってんだよ!!」


叫ぶと同時に太刀を振り上げ、強引に異形の手を撥ね上げ
その流れで横なぎに一閃し、まとめて切り伏せる。


「ふぅ、頑丈な刀で良かったぜ」


もし砕けていたらなどという考えは浮かばなかったのだろうか、などと言う疑問はさておき

仕留めたハズの人物が平然としてるのは相対する者からすれば、かなりの衝撃だろう


「ちぃぃっ、少しはできるかっ! 行けっ!」


次こそは、と異形の群れに指示を飛ばし
念の為に自分の前にミノタウロスを呼び寄せる


「雑魚には構ってらんねぇんだよ!」


腰のホルダーから召喚器を取り出しこめかみに押し当てる


「はっ!気でも狂ったか!」


「ペルソナァァァ!!」


銃声と共に順平のペルソナ、トリスメギストスが呼び出され月夜にその姿を現す


「なんだと?! 召喚か?! しかしなんだこの魔力は?!」


トリスメギストスがその金色の翼を広げ光を反射し輝く


「マハラギダイン!!」


順平の叫びと同時にトリスメギストスから力が開放され
辺り一面を業火が襲う、異形達も空に逃げる者は空と共に焼かれ、仲間を盾にした者はまとめて炎に包み込まれ、大木の陰に逃げ込んだ者はその目で業火を見ることなく炭へと変わる


偉大なる錬金術師の炎は敵であろうと森の木々であろうと、無慈悲に
しかし、平等に死という結末をもたらした。






「なんだ、この魔力は?! まるで闇の福音、いやそれ以上だ!」

幸運にもミノタウロスの影にいたお陰か、熱に喉や皮膚をやられたものの今だ動けるフードの男は
一瞬で150M四方に展開していた40あまりの異形が塵すら残さず消え去った事実に戸惑っていた。




ジャリッ


「っ?!」

恐る恐る見上げた先には、全てを燃やし尽す赤い巨人を使役した男が太刀を担ぎ男を見下ろしていた

「……まだやんのか?」

冷徹な目で睨みつけ、そう告げる
しかし、冷徹な外見とは裏腹に彼の心中は
(えぇぇぇ~?! なに?! なんなのあの威力!! おかしいっしょ?!美鶴先輩とかはコンセントレイト
 使って威力上げてたけど、アレはないっしょ?!マジこえぇって?! え?! 副作用で死んだりしない?!
 そういえば燃え尽きる前の蝋燭は良く燃えるとか、セミは短命だからやかましいとかって、妹ちゃんが不気味
 な笑いで言ってた事あるけど……えっ?! 死亡フラグなの?!)

かな~りみっともないのは良い子の秘密だっ!


「クソガキめぇ……!!」

「その、クソガキにやられてんのは誰だよ、おっさん」

「ちいっ!!」


苦し紛れに土を掬い目を狙い投げる、しかし訓練された戦士にはそのような小手先の技など


「のわっ?! 目がぁ!目がぁっ!」


しっかり効いたみたいだ……汗


「札よっ!逃せっ!」


順平がのた打ち回っている間に懐から札を出し、体の下に陣が現れ男の体は掻き消えた


「くっそ逃したか……」


未だに痛む目を擦りながら、先ほど気を失った少女の下へ歩み寄って行き


「あっそうだ」


少女まで残り数メートルの位置で突然立ち止まり片手を掲げ、もう片方を腰に当て


「テレッテッ【ズギュンッ!!】って?」


勝利のポーズを取ろうとした時に聞き覚えのある音がした、主に仲間のロボ娘が使う武器に似た音が


「ちっ!最後の一発だったんだが……」


「へ?……おわっ?!」


突然の出来事に思考が停止し、復活した時に見たのは首から落ちたネックレスの無残な姿だった


「こっちだ!刹那から離れろっ!!」


声のする方に顔を向けるとハンドガンを両手に構えた同年代くらいの女性が茂みから飛び出して来た


「へ?! ちょっと待っ?!」

「今のも避けるか?!」


こちらに近ずきながらの乱射をなんとか勘で避けた順平だが、どこぞのタルンダ先輩とは違い正面から銃に立ち向かおうとは
思わない


「らぁっ!」


マガジンを交換する隙を狙い(それでも十分に異常な反応速度だが)
銃を蹴り飛ばす


「なにっ?!」


マガジンリロードの隙など当の昔に克服し、今では神速をもって行うまでに昇華した技術をあっさりと看破された事に
綺麗な顔立ちが驚愕に歪む


「これまでか……」

「はぁ、やっと?!」


やっと落ち着いて話ができると思った矢先、体の側面に衝撃を感じ
気づいた時には順平の体は宙を舞っていた。


「申し訳ございません、結界に拒まれ対応が遅れました」


順平を蹴り飛ばした脚を下ろしながらライムグリーンの髪が美しい機械仕掛けの少女が謝罪する


「いや、私も先ほど見つけた所だ。何はともあれ、助かったよ」


すると不意に月が遮られた


「ふっ、魔眼すら騙しとおす結界か……興味深いな」


金色の髪をなびかせ黒衣の幼女が二人の上に現れた


「ああ、なかなかの使い手だ気をつけてくれ」

「ふん、この光景を見れば分かるさ。それより桜咲刹那は生きてるのか?」

「なんとか止めを刺される前には乱入できたようだ」

「この焼け野原で生き残るとは……評価を改めねばな」


関心した声を出す金髪幼女
それを聞いた女性は口元を僅かに持ち上げ


「ふっ、心配か?珍しいな」

「いや、どうやら私の客らしくてな
 ご丁寧に吸血鬼用の結界に閉じ込められたよ」


忌々しそうにそう呟きマントを翻す


「後は私と茶々丸に任せろ、場合によっては封印を解除させる。
 桜咲刹那を連れて離れていろ」


そういい残して二人は夜空へと飛び立って行った
残された女性は少女の脇へ膝を付くと


「すまない……いくら魔眼と言えど、見つけられなければ意味がないな……
 もっと、強くならなくてはな……」


呟き、下唇を噛み締める
血が滲むがそれも気にならない


応援が遅れたばかりにボロボロになってしまい、後もう一歩で殺されていたかもしれない
戦友を見下ろしながら彼女は決意を固めるのであった。


「さて、早く動かなくてはな
 身内に巻き込まれてはシャレにもならない」






























「対象を確認、攻撃を開始します」

「茶々丸!遠慮はするな!私の命を狙った事を後悔させてやれ!」

「イエスマスター」






冒頭に戻る



「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!帽子に穴開いたー?!」

「ちぃっ!すばしっこいな」

「なんで攻撃されなきゃなんねぇんだよぉぉぉ!!」

「ふっ、この不死の魔法使い
 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルに喧嘩を売った事を、死んで後悔するがいい!!」

「だからエバなんちゃらって誰だー?!」



青年の声は夜空に響き渡って闇に消えて往く
皮肉にもその日は、いつもより大きな‘満月’が輝いていた。




[21186] 第三話 後編
Name: 鉄兎23号◆f955939b ID:a882e3c8
Date: 2010/09/21 21:45


第三話 後編











「氷爆!」



少女がそう唱え両手に持ったフラスコと試験管を投げつける
二つの容器に入っていた液体が空中で混ざり合い化学反応のように反応を起こし周囲へ氷の爆発が広がる



「のわぁぁぁ!?」


爆風が広がり、順平の服を端から凍らせつつもその勢いは止まらずに体を木に打ち付ける



「つつ……ブフーラか?」


腰をさすりながらもしっかりとした足どりで立ちあがる
だが、その視線の先には先ほどから自分を追い立てる二人の少女
片方は自分に銃を構え、もう片方はなんと空に浮かびながらこちらを見下ろしている


「ふん、なかなかにタフだな。
 だがいいのか?いい加減に本気を出さねばこのまま氷漬けになるだけだぞ
 もっとも、抵抗しようが許しを請おうが貴様は生かしてはおかん」


依然、順平を見下ろしたまま
少女エヴァンジェリンは冷酷に、ただただ事実を伝えるように
感情を込めずにそう告げた


「い、いや~……なにを怒ってらっしゃるんでしょう?そんなに睨まれても……オレッチお手上げ侍!」


氷のような眼差しに、京都で体験した処刑という名の拷問時に見た女性陣の目つきがフラッシュバックしてしまい
一層戦意を失い、襲われているはずなのに何故か下手に出てしまう順平……
彼の中ではもはや、女性とは戦っても色んな意味で勝てない対象としてインプットされているようだ。


「はっ、惚けおって!私を狙えば良いものを……わざわざ関係ない者を襲っておいて、我が身が危なくなったら知らぬ振りか……悪の風上にも置けぬな!それならいっそのこと、無様に命乞いでもすれば楽に死なせてやったものを……
 貴様にはこの闇の福音を狙った事を後悔し、殺せと哀願するまで苦痛を味あわせてやる!茶々丸!」


エヴァンジェリンは怒りを露わにしもう一人の少女へと指示を出す


「イエスマスター」


ライムグリーンの髪が美しい少女、茶々丸が順平へと銃口を向ける


「どわっ!?ちょっ待てって!闇のなんたらって何だよ!?オレは無実だぁぁぁぁ!!」


木を登ったりジグザグに走ったり、またもや命を賭けた鬼ごっこが開始された














「マスター、このまま行くと学園結界の外に出ます」

「ちっ、逃すかっ!」


茶々丸の後ろを飛んでいたエヴァンジェリンが空を切る様に加速し、順平を逃すまいと前に回り込む。


「なぁっ!?」


今まで何とか逃げ回っていた順平だが、突然目の前に現れたエヴァンジェリンに驚き、その脚を止めた


「くっくっく、逃げ回る振りをして結界の外に出ようとするとは……
 なかなか演技派じゃやないか、ええ?」


先ほどから情けない声ばかりを出していた間抜け面に、出し抜かれかけたと思ったエヴァンジェリンはさらに機嫌が悪くなり


「いやいやいや!?全然そんな気は無くてですね!?」

「ええぃ!御託は聞きあきた!今こそ、その首掻き切ってくれる!」

「ちょっ!?待てって!」


もはやイラつきがピークに達したエヴァンジェリンは、順平の言葉に耳を貸す事も無く
文字通り、首を切り裂こうと爪を伸ばし襲い掛かる

しかし、順平も愛する人に授かった命を投げ捨てる訳にもいかず
躊躇いながらも両手で太刀を握りなおし、エヴァンジェリンの攻撃から身を守ろうとする


二つの影がぶつかり、二人の力が拮抗したように見えたその時
この場で唯一冷静さを保っていた者がその声を上げた


「マスター!侵入者が……後ろです!」

「むっ!?」


先ほどまでは冷静だった少女が急に大声を出したことに違和感を感じ、切り付ける力を利用し順平の頭上を一回転しながら飛び越え、茶々丸の横に降り立った。


「ヤツの増援か?」

「状況からしてそう考えられますが……」

「ん?どうした?」


突然の制止に幾分か冷静になったエヴァンジェリンが茶々丸が言い淀んだことを疑問に思い、問いかける


「いえ……生命反応、感知できる魔力反応、共に微弱でして……いわゆる瀕死の状態です。
 この状態で援軍に来る意味がありません」

「大方タカミチあたりにやられた残党が迷い込んだのだろう」

「いえ、結界の外からの進入です……
 1時の方向!来ます!」



茶々丸に言われた方向に顔を向けるエヴァンジェリン

二人が同じ方向を見ているので、戦闘中にもかかわらず同じ方向を見てしまう順平


この場にいる全員が一点を見つめる中、闇の中から人影が現れた




「闇……の……福……」


闇の向こうから現れたのは先ほど逃げたはずのフードの男だった
しかし、その足取りは重くフラフラと今にも倒れそうで、その目は何を見るでも無くただ虚空を見つめ
ブツブツと何かを呟いている


「茶々丸気をつけろ、何かがおかしい」


茶々丸にだけ聞こえるように小声でそう呟き
自らも精神を集中させ、体に魔力を廻らせていく

その瞬間だった

今までうつろな表情でふらついていた男が何かに反応するように、急にエヴァンジェリンに向き直り


「マスター!」


油断したわけではない、むしろ相手を警戒していた
だが、予想外の行動と順平にも注意を払っていたほんの僅かな隙を付かれていた

目の前には男が片腕を振り上げ、今まさに振り下ろさんとしていた。


「しまっ!?」


しまった、そう言い切る前に視界が横にぶれる
何者かに付きとばされた、気づいた時に目にした物は

男の手がライムグリーンの髪がなびく少女に、襲い掛かろうとしていた






「おらぁ!」


茶々丸に男の手が触れる寸前、順平が男に対して体当たりした
ほんの僅かに軌道のずれた手は、茶々丸の左腕から腰にかけてを引き裂いた
男はそのまま近くに生えていた木へと衝突した


「茶々丸!!」


左腕は千切れ、体もかろうじて繋がっているような状態の茶々丸へとエヴァンジェリンは駆け寄る

「マスター……ご無事ですか?」

「ああ、お前のお陰で無事だ。損傷はどうだ?」


「……メモリー、コア、共に無傷です。ボディさえあれば戦闘も可能です。
 しかし、今は歩行、戦闘行為は困難です」

「そうか」
(茶々丸としての死はメモリーとコアの破損、それが免れただけでも御の字だ
問題はこの後どうするかだが……)

「おいそこのヒゲ面」

「ひどっ!?ヒゲってオレ!?」

「貴様以外に誰がいる、……なぜ助けた?あのまま放っておけば私を殺す事もできたぞ」


エヴァンジェリンは疑問に思っていた、なぜ自分を殺すために他者を巻き添えにするようなやつが
わざわざ従者を助けたのか、確かに茶々丸は戦え無くなっているが
もしかしたら運良く無傷で助かっていたかも知れない、そうなれば自分の分が悪くなり
下手をすれば自分が死んでいたかもしれない、それがエヴァンジェリンには理解できなかった。


「まぁ、女の子を守るのがヒーローの役目だからな」
笑いながら順平は答えた


「は?それだけなのか?」


「へへっ、まぁな。それにオレッチ、エバなんちゃらも闇のナントカも知らねぇって」


「うん?私を殺しに来たのではないのか?」

「だぁから違うって、全然信じてくんねぇんだもんなぁ」

「では、一体なにをしに「ちょっとまった」?」


突然話の腰を折られたエヴァンジェリンは順平を怪訝な目で睨みつけるが
彼の見ている方向を見て納得がいった、先ほど順平が吹き飛ばした男がこちらを見つめている

いや、こちらへ視線は向いているが見てはいない
虚ろな瞳が一瞬動いたかと思うと、突然男は苦しみ出した


「なにが起きている?」

「おいおいおい、マジかよ……」


男が苦しみだし、頭を抱えたかと思うと……粘性の高い液体のように男の体は崩れ
さっきまで立っていた場所にはコールタールのように黒くてドロドロとしたものが残った

かつて一度だけ見た、人間がシャドウに食われる瞬間
心を食われた人間は動く気力も話す気力も、生きる気力も無くなる無気力症になってしまう


自分たちが命を賭け、大切なものを失ってまで戦って抗い続け
消し去ったハズの無気力症、その犠牲者が目の前に生まれた

様々な思いを抱きながら、そこに生まれた黒い水溜りを見つめる順平


そして、その液体から白く太い手が現れた瞬間、すさまじい威圧感が二人を襲う


「ぐっ!?上位の悪魔召喚か!?」

「なぁ、さっき使った凍るやつとかまだ使えるか?」

「まだ使えるには使えるが、2~3回程度だろうな」

「じゃあ、ソッチの子運べるか?」

「それくらいなら、出来るが……戦う気か?見たところ上位の悪魔くらいはあるぞ?」


二人が会話をしている間に、手だけでなく全身を現していたそれは、体から滲みでる禍々しさとは反対に純白の体を持つ隻腕のミノタウロスだった。
順平は帽子を被りなおし、太刀を握りなおす


「あぁ、コイツなら初めてじゃないし。相性も良いからな
 それに言っただろ?かわいい女の子を守るのがヒーローの役目なんだよ」

「ふん!それより、何か知っているようだな……」


順平のかわいいを聞いて若干頬を染めるエヴァンジェリン


「まぁいい任せたぞ、終わったら話を聞かせてもらう。いいな?」

「オッケーオッケー、いくらでも聞いちゃってオレッチいくらでも答えちゃうぜ?」


そう言い放つとエヴァンジェリンは茶々丸を抱え空へと上って行く



「闇……の……福……音……」

「まだ言ってんのかよ、それってあの金髪の子だろ? ほんとおっさん趣味わりぃな」

「クソ……ガ……キ……!」

「おっさんに覚えられててもなぁ……まぁ怨みはねぇけど、行くぜ!」













一気にミノタウロスへと駆ける

近づいてくる順平に対しミノタウロスは乱雑に手をふり下ろす
駆けぬく速度をそのままに、ギリギリで腕を避けた順平は体勢を崩したミノタウロスの腕目掛けて太刀を振り下ろした

「だりゃぁぁぁ!!」

隙を付いた順平の一撃はミノタウロスの残っている腕を肘から切り落とした



「ふん、やはり先ほどまでは本気では無かったか。
 しかし何者だ?上位悪魔ほどの腕を一刀で切り落とすなど容易ではないぞ……
 む?距離をとったか、なにか大技でも使う気か?」

上空からは順平の人物像を掴み切れずにいたエヴァンジェリンが、眼下で繰り広げられる戦いを見ていた


「うっし!ちゃっちゃと片付けちまうか」

腕を切り落とし、返す刀で横一文字に切りつけた順平はそのまま後ろに跳び下がり
痛みに怯んでいるミノタウロスを睨みつけながら、腰のホルスターに手を伸ばし召喚器を取り出す。

「ペルソナァァァ!!」

この世界に来て三度目の召喚、3mはありそうな赤い巨人がその姿を現した

「アギダイン!!」

唱えた瞬間にペルソナから以前とは違う力強さをまたも感じた

(なんだ?こっちもいつもと違う?)

順平がそんなことを考えていると、トリスメギストスから力が解き放たれ業火が真っ直ぐと標的に向けへと飛来する

突き進む炎の奔流はミノタウロスを捉え、あっというまに消し炭へと変え近くに生えていた木々もまとめて焼き尽くした
収まった後には、ミノタウロスの残骸と燃えカスすら残らずに消え去った木々の根だけだった


(だから何でだよ!?威力ありすぎて怖ええって!これは新手の嫌がらせなのか!?)


本日二回目の心の葛藤を終えた辺りで飛んで行った少女の事を思い出し辺りを見回してみる、すると丁度空中に浮かんでいる少女を見つけた


「お~い!もう大丈夫だぞ~!」

太刀を置き、両手を大きく振ってアピールをする
するとしばらくして気づいたのか、もう一人の少女を抱え降りてくる

丁度、順平の目の前に降りたところで

「よーし、もう怖くないぞぉ。お兄さんが「貴様! 今のは一体何なんだ!? あれほどの魔力をなぜ人間が扱える!? いや!! それよりもあの赤いのはなんだ!? ゴーレム……いや! 召喚術か!? ならばどこで手に入れた!? 教えろ! 今すぐ! さぁ! 早く!いや、よこせ!」 おぶふぅ!」

突然押し倒され、襟首を掴まれた上に
少女とは思えない力で思いっきり前後にシェイクされ後頭部を地面に打ち付けられながら、興奮したエヴァンジェリンに質問攻めされる順平

「答えぬか!?ならば貴様の体に聞いてやろうか!?」

「ちょっ……タンマッ……襟が伸びっ……る……うぷっ」

そろそろ順平が限界を迎えようとした時、救いの手が差し伸べられた


「マスター、そんなに揺らしては答えられないと思われます」

「うん?」

少し正気に戻ったエヴァンジェリンの手にはビロビロに伸びたタンクトップと顔色の悪くなった順平がいた……


「うおっぷ……リバース侍……」

「それと、学園長から連絡で、学園長室に来るようにとの事です。もちろん、そちらの方もご同行願えますか?」

「ちっ! 詳しい話は向こうで聞くぞ! 着いて来い!」

「ちょぉ! 横暴! 強引! ハイハイ! 弁護士を要求しまーす!」

「いいから来い!」

「アウチッ!」

少女に思いっきり足の甲を踏みつけられ涙目になりながらトボトボと後ろを着いて行く順平

がんばれ順平!負けるな順平!明日はきっといい日になるさ!









[21186] 第四話
Name: 鉄兎23号◆f955939b ID:85c7c1ee
Date: 2010/08/22 10:15






第四話












鳥や木々も寝静まる深夜
日本最大級の学園都市、麻帆良学園の中等部にそれは居た

ずるずると引きずるような音を立てながら蠢き、まるで人の苦しむ様なうめき声を上げる声が一つ
その正体は……





「遅いっ!」

「エヴァちゃん……そんな事言っても、茶々丸ちゃんケッコー重いって。あ、ワリ」

「いえ、事実ですので構いません。
 ですが順平さん、私はあのままでも問題ありませんでしたが?」

「いやー、さすがに女の子放置するわけにはいかないっしょ」


茶々丸を背負いながら歩く順平だった
背負いながらと言っても、さすがに300キロをおんぶするのは難しいようで
半ば引きずる形になってしまっているが


「なれなれしく呼ぶなっ!というか……なんかお前たち仲良くなってないか?それに茶々丸、いつの間に名前を?」


さっきまで戦っていたものとは思えない風景に思わず聞いてしまうエヴァ


「いやだってエヴァちゃん、先にずんずん行っちゃうから道わかんねーし
 夜暗いし、路地裏怖いし。
 そしたら茶々丸ちゃんが道順教えてくれてさ、いやーまさにお助け侍?」

「順平さん、おそらくマスターは自分だけ名前を教えて貰ってない事に拗ねていると思われます」

「あっそっかー、ごめんなー。オレ伊織順平ってんだ
 順平って呼んでくれていいぜ?」

「違うわっ! このボケロボ! それに貴様なぞヒゲで十分だ!」

「ひどっ! ヒゲには男のロマンが詰まってるのに!」

「やかましい!氷漬けにしてやろうか!?」

「大声出してどうしたんだい、エヴァ?」


まるで仲良し小学生の喧嘩の様な言い合いをしていると
目の前にあったドアが開き中からナイスミドルな男性が現れた


「ふん、タカミチか
 連れて来たぞ、こいつがそうだ」


タカミチと呼ばれたナイスミドルは順平を見て一瞬、以外そうな顔をして
すぐににこやかな顔に切り替え、近づいてきた


「やぁ、初めまして。 高畑・T・タカミチ、タカミチで構わないよ。よろしく」


言うと同時に右手を差し出す高畑、それに合わせて慌てて茶々丸を左手で支え、右手を差し出し


「伊織順平っす、順平でいいっすよ」

「学園長がこちらでお待ちだ、茶々丸君は僕が預かろう」


すでにプルプルし始めた順平の左手を見て苦笑いを浮かべつつ茶々丸を受け取る


「いやー、助かったっす。 かっこつけたのは良いんすけど、そろそろ限界だったんすよね」

「いやいや、なかなか大した物だよ? あの距離を運ぶのは僕でも辛いさ」

「ええい! なにをしとる! 早くしろ!」

「わりぃわりぃ」

ドアの前で待ちきれない子供のように地団駄を踏んでいたエヴァを見て
若干ほのぼのしたまま、ドアノブに手を伸ばし軽く引くと----


「フォッフォッフォ、ようこそ麻h」

パタン

ドアを閉めた

「なぁ、エヴァちゃん……やっぱり妖怪っているんだな」

「お前の言いたいことも分かるが、一応人間だ……怪しいがな」

「えぇっ!?うそぉっ!?……マジで?」

「順平君、残念ながら本当なんだよ」


「えっ!?君たち聞こえとるよ!?ワシ、そんな扱いじゃったの!?」


まぁ、そんなコントをやりながらも中に入り
エヴァは当然のようにソファへ、順平は学園長のと相対する位置へと歩みより

「えーと、オレ伊織順平って言います」

「フォッフォ、名乗られたからには返さずには措けんの。学園長をやっとる近衛近右衛門じゃ
 さて、唐突じゃが……君は何者じゃ?」


先ほどまでの柔和な笑みとは打って変わって、鋭い眼差しとプレッシャーを放つ
それに釣られて順平の表情も硬くなる、そして沈黙がその場を支配し実際には15分しか経っていないが体感では1時間にも感じられた頃、その口を開いた


「別の世界から来た……って言ったら信じます?」


先ほどまでのふざけた態度とは一転して、順平はこれまでの経緯を説明した


「はっ!? 異世界だと!? それがどれほどの事か分かっているのか?
 仮にそうだとして、一個人の力で行き来できる問題では無いぞ!?」

「だよなぁ、オレだって信じれねぇもん」

「ふむ……すまないが証拠となる物はあるかの?」

「後は……これくらいっすね。ホントはバックの中に色々あったんすけど、さっきの森に置いて来ちゃったんで」


そう言って、ホルスターから召喚器を取り出して机の上に置く
ゴトリ、と硬く重い音が部屋に響く


「拳銃かね?それなら左程珍しくは……」

「いやまて、そういえばお前さっきもそれを使っていたな?魔法の杖代わりか?
 それにしては悪趣味な使い方だったが」

「いや、これは召喚器って言って。 ペルソナを召喚するんだけど
 あっペルソナってのはもう一人の自分で、それがえーっと……」


何とか説明しようとするが、自分でも何となくでしか分かってない事を他人に伝えるのは案外難しく
なかなか上手く言葉に出来ずにいると、中々話の進まない事にイライラしていたエヴァが

「ええい!! まどろっこしい!! ヒゲ! こっちに来い!」

突如ブチ切れ、ソファから立ち上がり順平の下へ歩み寄ると
腕を掴みソファへと引っ張って行く


「へ?うわっとと」


突然呼ばれ、不意打ち気味に引っ張られてよろめきながらも何とかソファに着地する


「これから貴様の記憶を覗く、嘘が無ければ問題あるまい!」

「エヴァ!それはいくらなんでも!」

「あ~大丈夫っすよ、タカミチさん。
 まぁ、ちょっと恥ずかしいっすけどそれで信じて貰えるならお安い御用っす」

「そ、そうかい?」

「そうか、どれどれワシも拝見しようかの」

「学園長、楽しんでませんか?」

「いやいや、学園の平和のためじゃて」


明らかにさっきとはノリの違う学園長に高畑がジト目でつっこむが
その効果は薄いようで、嬉々としてエヴァの横に立つ


「えーっと、じゃあ一年前の4月くらいから見てもらえば早いと思うっす」

「ふむ、エヴァ準備はよいかの?」

「大丈夫だ。リク・ラク・ラ・ライラック……」


エヴァが呪文を唱えると三人を光が包みこみ
二人の頭に、順平の一年間が早送りの映像の様に映し出された

影時間、ペルソナ、シャドウ、タルタロス、終わりの時、立ち向かう仲間、ニュクス、そして大事な仲間との別れ、そこで終わったと思ったら、空回りする時間、仲間との対立、死してなお世界を守る英雄、エレボスとの戦い……
全てを見終わった二人の目には涙が滲んでいた


「なんと……なんと、このような事が実際にあったとは……君達は……まだ若い、その肩に世界を背負った と言うのか……我々大人のなんと不甲斐ない事よ……そのせいで彼は……すまぬ、真にすまぬ……」

「ふん……ヤツならば、異世界に送るなど容易なことか……」

「いやいやっ!? 頭あげて下さいって!別に学園長さんが悪い訳でもないし。
 違う世界の話なんすから。それに……世界がどうとか、ってんじゃないっすから」


そこまで言うと順平は言葉を区切り、窓の外に輝く月を見つめた


「う~ん……話が見え無いんだがどうなったんだい?」


唯一良心の呵責から順平の記憶を見なかった高畑が、話に付いて行けずエヴァに耳打ちする


「ナギと同等、いやそれ以上の英雄の一人がヤツだ。
 そして、アイツのパーティのリーダーは今や創造主・神と並ぶ力の持ち主だ」

「……それは本当かい?」

「ジジィを見てみろ、あれが答えだ」


未だ順平の手を握り締め、涙の止まらない学園を見て
まるで嘘のような事が事実だと分かり、高畑は彼に対する認識を改めるのであった



「ズズッ……それで、これからどうするのかね?」

「いやー、指示があるとは言ってたんすけど
 まだ何にも無いんで、考え中っす」


ようやく落ち着いた学園長と順平は今後についての話を進めていた


「ふむ、君さえ良ければこのまま学園に留まってくれないかの?
 住居も戸籍もこちらで用意しよう」

「いや、ありがたいっすけど。
 さすがに、そこまでされるのはちょっち気が引けるなー、なんて」

「うむ、それでなんじゃが
 この学園には色々と貴重品などが眠っておっての、今日のように曲者が侵入することが多々あるのじゃ
 そこで、彼らを撃退するのに手を貸して欲しい。 なに、君の腕前なら遅れは取るまいて。どうか、この学園の子供達にも手を差し伸べてくれんかの?」


そのまま、学園長は頭を下げた


「ちょっ!頭上げて下さいって!そんなんでいいんだったら、まかせて下さいよ」

「おお、やってくれるか。 では高校の3年に編入と言う形で「待て」 エヴァ、どうかしたかの?」

「学生の身分で、あれほどの魔力があれば有名になっていてもおかしくない、どうせ戸籍も無いんだ。いっそのこと歳も誤魔化して教員にした方が都合も良かろう」

「ふむ、それもそうじゃの」

「いやいやいや?オレ勉強なんかろくにできねっすよ!?」

「うむ、それについては心当たりがあるから気にせんとも大丈夫じゃ」

「おい、ジジィまさかキサマ……」

「フォフォフォ、楽しくなるとは思わんかね?エヴァンジェリン」

「ふっ確かに、退屈はしなさそうだな」


楽しそうに笑いあう二人を見ながら順平と高畑は一抹の不安を抱えるのであった


「さて、とりあえず仕事に関してはまた明日となるが。次は住居じゃな
 確か、女子寮の管理人室が空いておったと思うんじゃが……」

「いや、こいつの身柄は私の方で預かろう。 何せ、助けられた恩もあるからな」
 (ふっ、英雄と同程度の力を持っている上に接近戦が得意でなかなかのタフネス、しかも魔法も使える。まさに従者としてのスキルは完璧だ!この私にこそ相応しい!コイツを従者にしてしまえば もはやナギにも遅れを取らんわ!……だが、そのための壁は厚いか)


記憶の中で見た、彼への最高の愛を示した少女を思い浮かべ苦い顔をするエヴァ


(あんなものを見せられた後では無理やり契約もできんな……)

「(ふむ、なにか企んどるようじゃが……)わかった、では任せたぞい
 では伊織君、詳しくはまた明日連絡するからの彼女の家で厄介になってくれんか?」

「そっすねー、断るのもアレなんで。 よろしくエヴァちゃん」

「気安く呼ぶな……と言いたいがどうせお前は覚えられんだろうから特別に許してやろう。
 いいかっ!特別だからなっ!」


ハイハイわかりました、なんだとー!などと言い合いながら二人そろって学園長室を出て行く


「学園長、この後はどうするおつもりですか?」

「うむ、記憶を見たから言える事じゃが……彼に危険はない
 一見軽く見られがちじゃが、なかなかに思慮深く慈愛の心も持ち合わせ取る。
 さっそく木乃香と見合いでもさせてみるかの、フォフォフォ」

「はぁ、貴方って人は」





















学園長室から出た二人はエヴァの家へと向かって歩いていた


「伊織、お前はこちらの世界についてよく知らんだろうから説明してやるから良く聞け」

「おっ!サンキュー、エバっち」

「それはやめろ! まったく、薄々気づいてはいるかも知れんが
 この世界ではいわゆる魔法が存在している」

「おおっ!マジで!?すげー!?じゃあ、『魔法少女エバっち』ってことか」

「確かにそうだが、それはやめい!
 コホン、まぁ細かい話はまたにするがとりあえず一般人には秘匿だと言うことは覚えておけ
 それにお前の力はこの世界では異質だ、出来るだけ使用を控えろ。もし使う場合、他の者の前ではただの召喚とでも言っておけ」

「まぁ、なんかやたら威力上がってるから使いづらいんだけどなー」

「ああ、恐らくそれは魔力の濃度が違うせいだろう。 予測でしかないが、お前達の世界は影時間の時に僅かに存在していた魔力がこちらでは大気に充満してるからだと思うが……心当たりはあるか?」

「おっ!?言われてみれば、影時間でも無いのにペルソナ出るもんな。なるほどなー」

「……言われるまで気づかないのもどうかと思うぞ」

「あぁっ!見下したっ!今、見下した目で見ましたねっ!?」

「ええぃ!やましいわっ!……ホラ着いたぞ」


グダグダ話しながら歩いていたためあっという間にエヴァの家に着いた順平
指差された方向を見ると、森の中に豪華とはとは言えないがそれでも綺麗にまとまった庭、清潔感のある佇まいなど、中々高評価な家が見えた


「おぉっ!?ログハウスってやつですか!いいねいいねー、オレっちテンション上がってきたよー!」

「いいから入れ!」

家の前で興奮していた順平を蹴飛ばし、早く家に入るように促す

「あたた、お……おー、中は意外と……」

「なんだ?文句でもあるか?」

「いや、意外と言うか予想通りと言うか……いだっ!とてもすばらしいと思います!ハイ!」

「そうだろう、そうだろう」


外見のシンプルさとは裏腹に、内装の一転ファンシーなインテリアに順平が戸惑っていると
つま先にエヴァの踵が食い込んで黙らせた


「まぁ、とりあえず今日はそこのソファででも寝てろ」

「おっ、ありがと」


毛布を渡されソファに横になると、一日で色々あったせいかすぐにうとうとと眠くなってくる


「今日はゆっくりと休むといい、明日からはそうもいかんがな」

「えっ!ちょっ!何それ!?気になるんですけど!?」


捨て台詞を残して立ち去ったエヴァの背中に言葉をかけるが無視され
眠さも限度を迎えた順平は、そのまま睡魔に身を任せて

深い深い眠りへと落ちていった。



[21186] 第五話
Name: 鉄兎23号◆f955939b ID:15145627
Date: 2010/08/30 05:24










第五話















伊織順平は夢を見ていた

世界の全てが漆黒に塗りつぶされた世界、上も下も無くどこまでも続く闇の世界

その中で自分の体だけがスポットライトに照らされたように浮かび上がっている

落ちている訳でもなく、立っているでもなく、ただその場に居るだけ。

夢にしては感覚が鋭敏すぎる現状に違和感を感じた順平は周りを見回してみると、不意に光る物体が横切った。

突然の事に驚き、今目の前を横切った物の正体を確かめようと目を凝らすと、淡く光を放つ赤い蝶が闇の中を進んでいた。

何となく後を追いかけてみる事にしたが、蝶は自分よりも僅かに速い速度で飛び続ける

いつの間にかゆっくりと歩いていたのが早歩きになり、駆け足になり、今は全力で追いかけている

理由は無いが、漠然とした焦燥感が順平を襲い、あの蝶を捕まえなくてはいけないと思い追い続けている

どんなに走っても距離は縮まらない上に闇が体に纏わり付いて足取りも重くなっていく

このままでは追いつけないと大きく踏み込み、手を伸ばしながら飛び込む

もう少しで届くと言う時に強烈な閃光が周囲を包む、眩しさに目を閉じる瞬間に広がったのは辺り一面の花畑と赤い髪の一人の少女

少女の口が微笑みを作り、優しい眼差しで順平を見つめる

「チドリ!」

……順平

消える視界の隅で彼女が自分の名前を呼ぶのを順平は確かに見ていた



























順……平……

お……き……

順平……


誰かの呼ぶ声がして、徐々に意識が覚醒する
目を開けると昨夜の話し合いの時から姿の無かった茶々丸が居た

「おはようございます、順平さん」

「んお、おはよ」

大きく伸びをして固まった体を簡単にほぐしながら答える
順平が起きたのを確認した茶々丸は、朝食の準備があると言い残し奥の部屋へと姿を消す

(やっぱ簡単には忘れらんねえか……まぁ、忘れたくもないけどな)

夢で会った少女を思い出し、胸に手を当て深くため息をもらす
守れなかった大切な人、自分の全てで守ろうと思ったが、自分のためにその命を捧げ自らの命を散らしていった最愛の人に想いを馳せると。 
不意に視界が滲むが大きく頭を振り頬を両手で叩き気合を入れなおす

パチン、と小気味いい音が響くとそれに気付いた茶々丸が顔を出し


「どうかされましたか?」

「いんや、なんでもねぇよ。うしっ何か手伝うぜ」

「そうですか? ではそこのテーブルを拭いて頂けますか」

「あいよっ」

茶々丸が手に持っていた布巾を渡すと、順平は鼻歌を歌いながらテーブルを拭き始める
すると、タイミングよく二階からエヴァがパジャマ姿のまま降りて来た


「うん?伊織、手伝いとかお前のキャラじゃないだろう?何してるんだ?」

「おっ!エバっちおはよっす、まぁ泊めてもらったからなー、手伝い侍?」

「おーい、茶々丸。今日の朝飯は何だー?」

「スルー!? 聞いといてスルーってどんなツッコミよ!?」

「朝からやかましい奴だな、TPOをわきまえろ……と言うより、知ってるのかTPO?」

「ヒドッ! 流石に知ってますよそのくらい!? 茶々丸ちゃーん! エバっちがいじめまーす!!」

「だからその呼び方をやめろっ!」

「あぁマスター、楽しそうで何よりです」

朝から元気な二人を見て、朝食をトレイにのせた茶々丸が内蔵カメラの録画機能をオンにしつつ
配膳をする

二人の言い争いが一息つく頃にはテーブルの上に純和風の朝食が並んでいた


「おほっ、うんまそー!いっただきまーす!」

「ふんっ!……いただきます」

「どうぞ」


三者三様ながらも手を合わせて朝食に手を伸ばす(茶々丸だけは形のみ)

うまー!とか味の文明開化やー!叫びながら食べていた順平の手がピタリと止まる


「何か苦手な物が御座いましたか?」

「いや、そーじゃねぇんだけど……」


自分の料理に何か問題があったのかと思い、茶々丸が聞くが順平はそれを否定する


「何か普通すぎてなー、世界が違うってのがピンとこなくてな」

「なんだそんな事か、ならば目の前に世界の違いが居るぞ」


話を聞いていたエヴァが箸を置き、椅子の上に立ち上がり順平を指差し


「その垂れ下がった目をしっかりと見開け! 大事な事を右から左へ聞き流すその耳をかっぽじって聞け! 私こそ600年生きた吸血鬼の始祖! ドールマスター、闇の福音、不死の魔法使い! 最強最悪の魔法使い! エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだっっっ!!」


ふっ、決まった……とエヴァが余韻に浸っていると


「えーっと、エバっちの学校ではそういうのが流行ってんの?」

「なっ!! ちがうわー!! ホントだー!」

せっかくの名乗りを一言で台無しにされたエヴァは順平の首元を掴みガクガクと揺らす


「伸びる伸びるー!わかった信じますから!信じるからやめてー!!」


昨晩も同じような事をされていたので、順平のタンクトップのライフはすでにゼロである


「ん? て事は、エバっちは結構なお婆ちゃん?」

「やかましいわー!!」


順平の顔面にエヴァの喧嘩キックが炸裂し、顔面に足の跡を付けたまま順平は目を回している


「む、バカに付き合っていたらもうこんな時間か、茶々丸急ぐぞ」

「はい、マスター」


頭の周りでピヨピヨとひよこが回っている順平を無視して早々に食卓を片付ける茶々丸と再び自室へと戻っていくエヴァ



数分後



「起きろ!」

「おふっ!」


先ほどから目を回していた順平にエヴァのデコピンが炸裂する


「いつつつー、何か理不尽な暴力を受けた気がする……あれ?エバっち、なんで茶々丸ちゃんと同じ制服着てんの?」

「そ・れ・は! 私が中学生をやっとるからだが、文句あるのか!?」

「いえっ! めっそーもございませんっ!」


文句があるなら殺す!と言わんばかりの眼力をもって睨み付けるエヴァに順平はあっさりと白旗を振る


「学園長から順平さんに諸連絡があるそうなので、学校まで一緒にどうですか?」

「おっサンキュー! ここ広いから一人じゃ辿りつけそうにないもんなー」


体に付いた埃を払いながら立ち上がり、ソファーに掛けておいた帽子を手にする


「これもボロボロになっちまったなー、服もビロビロだし……」

「どうぞ。 既製品ですのでサイズが合うか分かりませんが、男性物のYシャツです」

「おぉ!気が利くなぁ、茶々丸ちゃんはいいお嫁さんになれるな」

「い、いえそんな……私は機械ですから」


それだけ言うとそそくさと玄関で待っているエヴァの下へと行く、順平はその去って行く背中を懐かしそうな目で見ながら受け取った黒のシャツに袖を通して二人の待つ戸口へと歩みだす








それから数十分後







場所は変わり学園長室


「はよざーっす、伊織順平入りまーす」

「ホッホ、おはよう。よく眠れたかいの?」


軽く挨拶を交わしながら、学園長に促されソファに座ると紙の束と携帯電話を渡された


「ふぉふぉふぉ、今の時代携帯が無くてはふべんじゃろ。さてと、それがこの世界での君の戸籍じゃ。年齢は大学を飛び級した事になっとるから20歳になっとるからの」


渡された紙を確認してみると、知らない親の名前と知らない住所になっており外国の大学に通っていたことになっていた
その欄を見て一瞬固まった順平


「と言っても、授業ではなく担任の補佐の副担任をしてもらうから授業をしろとは言わんよ。せいぜい書類関係とか雑務が関の山じゃろ、本題は別じゃ」


急に雰囲気が変わり、鋭い眼差しに変わる
新しい資料を順平に差し出し、それを受け取ると学園の全体図に様々な書き込みがされた地図だった


「まず君には夜間警備員とワシの孫の護衛を頼みたい」

「孫っすか?」

「うむ、ワシの孫の木乃香なんじゃが……生まれつき膨大な魔力を持っておっての、これを狙う侵入者もおるんじゃ。まぁ、基本的には侵入者を対処してくれれば問題ないし、何かあったらもう一人護衛がついとるからよっぽどの事がなければ大丈夫じゃ。さて、これが夜間警備の配置図じゃ、君には西側の警備に当たってもらう」

「この赤丸で囲ってあるトコっすか?さすがに広過ぎないっすか……」

「いやいや、いくらなんでも一人では無いぞ。何名かで分散してもらっとるからの、そろそろ来る頃だと思うんじゃがの」


するとタイミングよくドアがノックされ二人の人物が入ってきた


「噂をすればなんとやらじゃな、彼が同じエリアで別のチームをまとめとるガンドルフィーニ君じゃ。 それと、孫の護衛をしてもらっとる桜咲刹那君じゃ。二人ともこちらは伊織順平君じゃ、まぁワシの友人みたいなものじゃ」


ソファから立ち上がり紹介された二人と握手を交わす順平
ふと、少女に見覚えがある気がしてじーっと見てると昨晩襲われていた少女だと思い出す


「おっ! 昨日のおでこちゃん! もう怪我大丈夫か?」


いきなり声を掛けられ、きょとんとする刹那だったが順平の子供のような無邪気な笑顔を見た時に自分を助けてくれた(自称)ヒーローだと気付き慌てて姿勢を正し


「あっ! あなたは! 昨晩は危ないところを助けて頂いてありがとう御座います」

「ほっ? すでに面識があったのかの?」

「いやー、昨日襲われてたとこにたまたま居合わせたんで」

「ほう、では君が? 刹那君でも苦戦する相手を倒した上に龍宮君からも逃げ切ったそうじゃないか、ぜひ一度手合わせしてもらいたいね」

「いやー、勘弁っすよ。それにほら、今は武器もないんで」


目の前にいるアフリカ系の教師の発言に冷や汗を掻きながら脳裏には同じ寮に住んでいた某牛丼先輩が浮かぶ


「おお、忘れるとこじゃった。伊織君におあつらえの得物が倉庫にあったからの、用意しといたんじゃ」


学園長は机の脇に立て掛けておいた大きな包みを魔法で浮かせ順平へ渡す
包みを受け取り、巻いてあった布を取り除くと中からは全長で2メートルほどで刀身の幅は40センチの片刃の西洋風の大剣だった、多少の知識があればこんなのは装飾用だと言うかもしれないが普通の世界ではないこの世界。
魔法による術式が組み込まれている、例えば硬度は普通の金属の数倍はあり、一度登録してしまえば遠くからでも呼び寄せることが出来たりする。
残念ながら後者の機能は仮契約の普及に伴ない意味の無いものになってしまったが。


「おお! かっけーすね! いいんすか? こんなんもらっちゃて」


どうみても自分の体よりも大きな剣をはしゃぐ様に振り回す順平を刹那とガンドルフィーニは唖然と見ている


「あ……そう言えば、昨日刹那ちゃんの刀借りっぱなしだったな。タカミチさんに預けたんだけど」

「あ、はい。 今朝、高畑先生が届けて下さいました……というより、重くないんですか?見たところ気で強化してるわけでもなさそうですし」

「んー、前使ってたのもこんぐれぇだったしな」


そうですか……と呟き、この人はどのように戦うのだろうか? などと考えていると、自分の気絶している間に焼け野原となっていた原因が目の前に居ることに今更気付き、詳しく聞こうと思っているとチャイムが鳴り響いた。


「フォフォ、もうこんな時間かね。ガンドルフィーニ君、刹那君も今日は終業式じゃぞ遅れんようにな。
伊織君は残りの書類にサインしてもらえるかの?」

「うーっす」
「わ、わかりました」


刹那はしぶしぶと言った様子で学園長室から立ち去り、順平はその後細かい打ち合わせで3-Aの副担任になることや基本的な魔法や気に関しての説明を聞いた後、学校を後にした

















一方その頃、2-Aでは





「ちょっとちょっとー!エヴァちゃんに茶々丸ちゃん!今朝一緒に登校してきた男の人だれー!?」

「あ! 私も気になってたー! 彼氏?彼氏?」

「まさか三角関係!? 二人とも仲がいいとは思ってたけど、まさか本妻と愛人!?」



「……ちがうわー!!!!!!!!!」

















その日の夜、学園長から給料前借りして服やらベッドやら買って帰って来た順平にエヴァのとび蹴りが炸裂した事は書かなくとも想像がつくだろう


「なんでだぁー!!!!」

「うるさい死ねー!!!!」

「あぁ、マスターがあんなに元気に」































~あとがき~


コメント下さる皆様ありがとう御座います
仕事の関係上、なかなかすぐには更新できませんが、読んで下さる方が居るなら最後まで書きたいと思っております。
また、当方まったくの素人なのでアドバイス等がありましたら言って頂けると幸いです。

さて、次回からはやっと原作本編に入れるかな?



[21186] 第六話
Name: 鉄兎23号◆f955939b ID:4c94310f
Date: 2010/09/05 01:17















第六話
















終業式から月日は経ち、新学期を控えた日の早朝
麻帆良学園郊外の森の中に、二つの影が交差する

一つの影は少女、もう一つの影は青年
少女は野太刀、青年は身の丈よりも大きな大剣をその手に持ち、二,三度切り結ぶとそのまま鍔迫り合いとなる

一瞬のこう着の後、二人は後ろへと距離をとる
しばしお互いの動きを観察していた二人だったが。少女、桜咲刹那が太刀を居合いの形に構えなおし体内で気を練り上げる
青年、伊織順平は刹那から今までより強い力を感じ取り、大剣を握り直す

瞬間、二人は同時に走り出した


「神鳴流奥義 斬岩剣!!」

「オラァ!!」


巨大な鉄の塊が衝突した様音が響き、二人の斬撃はその余波で土煙を上げる
土煙が晴れ、二人の姿が露わになると刹那の握っていた太刀はその手を離れ、傍らに落ちていた
一方、順平はに二撃目の構えを取っている


「……参りました」

「うしっ、今日はこんなもんだろ」

「ありが……とう……ございました」


肩で息をしながら桜咲が礼を言う
実は夜間警備を通して少しながらも打ち解け、自分よりも実力があると思われる順平に休みの間こうして稽古を手伝ってもらっていた
もちろん他のSSのように最初は順平に勝負を挑んだりしたがここでは割愛


「しかしながら伊織さんは相変わらず太刀筋が無茶苦茶ですね」

「まぁ、ちゃんと身に着けたもんでもねぇしな」


息を整え愛刀の夕凪を鞘に収めながら、今日の手合わせで感じた事を伝える
痛いところを突かれたと、苦笑いしながら話す順平を見ながら刹那は


(太刀筋は無茶苦茶だが、独学であそこまで強くなるとは……どれだけの死線をくぐってきたのだろうか……)

「そんなことより、オジョーサマとはどうよ?」

「ひぇっ!?」


思考に没頭していたところに、不意打ちのように声を掛けられ驚きのあまり変な声が出てしまい恥ずかしさからか、頬を赤く染める


「いや、その、あの……」

「あーうん、なんか分かった……」

「すみません……」


なぜこのような会話をしているかと言うと、数日前に遡るが……














茶々丸に買い物を頼まれ、休日の街で片手で紙袋一杯になった荷物を持ち空いているもう片方の手で茶々丸に渡されたメモを見ながら順平が歩いていた


「えーっと……他に買う物は、おっとと」


手元のメモを見ながら歩いていたため、周囲が見えなくなっていたところに小学生くらいの双子が軽くぶつかっていった


「ごめんなさーい!」

「おねえちゃーん!前をちゃんとみるですー!あわわごめんさいー!」

「いいって、いいって。 ほれ、お姉ちゃん行っちゃったぞ? 次は気をつけろよ?」

「ごめんなさいですー!お姉ちゃん待つですー!」


袋から落ちた髭剃りを取りながら、髪を二箇所でかわいらしくまとめた少女に双子の姉と思われるツインテールの子が走り去った事を告げると、最後に軽く誤りながら走り去って行く


(がきんちょは元気がねーとな、天田少年もアレくらい可愛げあってもいいのになー……ん?なんだありゃ?……刹那ちゃんだよな?)


二人の後姿を眺めながら生意気な短パン少年の事を思い出していると、路地裏に身を潜めている刹那を見つけた


「うーっす、何してんだー?」

「ふぇっ! あぁ、伊織さんですか驚かしゃないで下しゃい……」

(噛んだ……)
(噛んだって思われてる……)


静寂が二人を包み、まるで永遠とも思える時間が過ぎた


「コホン! わ、私はお嬢様の警護をしていたところです」

「あ、あぁ……なるほどー(誤魔化した……)で、オジョーサマってどこよ? こんなとこに居んのか?」


路地裏の雰囲気からか、かつて不良に絡まれたときに目にしたいかにもギャルっぽい姿を想像してしまい、だったらやだなーなんて考えていた順平だったが


「いえ、お嬢様はあちらのファミレスにて友人とお食事中です」


刹那が指差した方向を見ると、確かにファミレスで食事をする三人組がかすかに見えたが
肉眼で詳細が見えるほど近くはなく店に丁度その一組しかいなかったためにかろうじて分かるくらいだった


「いや、護衛って遠すぎね? 聞いた話じゃタメで昔からの付き合いなんだろ? 隣にいりゃあ良いじゃ……はっ!」


呆れ気味に素直な感想を告げていた順平だったが、突如何かに気付いたように目を見開く


「も、もしかして!?」

(まさか私の事が気付かれた!? この人もきっと私の事を避けてしまう……)

「嫌いなの? 護衛なんかのせいで私の人生がーって、私の青春返しやがれー! とか思ってたり? はっ!? もしくはいじめられてる!? 実はオジョーサマがリーダー格で、私の半径100メートルに近づくなって言われてるとか!? こえー、女こえー」

「ち、違いますっ!! 私はお嬢様のことをお慕い申し上げていますしっ! お嬢様もこんな私に声をお掛けになってくださいます!」


想像と違う答えに拍子抜けした刹那はついつい声を荒げてしまい、順平はいきなり大声を出された事にビックリして紙袋から果物ナイフが落ちた


「わりーわりー。つかそんなに好きなんだったら、なおさら近くに居ればいいんじゃね?」

「それはっ! できません……」



「……ハーフってやつだからか?」

「!?(なぜそれをっ!)」


無意識に竹刀袋から夕凪をすぐに取り出せるように構える


「わりーな、実は学園長から聞いてたんだわ。 そんで力になって欲しいって言われてな……あんま気にすんなよ、そんなのカンケーねぇって」

「っ!? あなたに何が分かるんですかっ!? 今までずっと異端とされ、迫害されてきた者の気持ちが……化け物の気持ちが貴方には分かるんですかっ!?」


今まで誰かに相談することもできずに一人で抱え込んでいた闇を、最近現れたばかりの男にいきなり気にするなと言われ、刹那は激昂した。
烏族の者からは異端児、不幸の象徴とされ蔑まれ、人間からは穢れた者、醜い生き物と迫害されて生きてきた刹那にとって、その辛さを知らない人に言われたくない事。
偽善の一言、そう感じてしまった。


「わかんねーよ。」


順平はいつもの軽い話し方からトーンを変え、真っ直ぐに刹那を見つめる。
それは刹那を落ち着かせるためだったのかもしれない、だがしかし今の刹那にとってどのような言葉も態度も意味が無い、特大の地雷を踏んでしまったのだから。


「だったら!!」

「でもな……」


そんな事を言うな、と続けようとした刹那の言葉を先ほどよりも一層トーンを落とした、と言うよりも悲しそうな声で順平が遮る


「大事な人を守れなかった、って気持ちは痛いほど知ってんだよ……だから、あんな気持ちは誰にも味合わせたくねぇんだよ……」


悲痛、その時の順平の表情を表すならばこの言葉だろう
付き合いは短いが、見た感じや言動からよくいるチャライ人だろうと思っていた順平の普段とは違う表情。その顔には悲しみだけでなく、後悔や苦悩が入り混じっていた。
そんな順平を見て、もし自分がお嬢様を守れなかったら……そしてその時近くに居れば守れたとしたら……と考えると胸の辺りがズキンと痛んだ


「それに、普通じゃねえってんなら。 オレだってそうだぜ?」

「へ?」


そう言うと先ほど落とした果物ナイフを拾い、パッケージから取り出し大きく頭上に掲げると
自分の手に振り下ろした


「なっ! 何をしてるんですか!? 早く止血を!」

「あー、大丈夫だから落ち着けって。 ほれ、見てみろよ」

「何を呑気に言って……え!?」


突然の行動に驚いて、制服のポケットからハンカチを取り出して止血をしようと順平の手を取った刹那は目の前の現象に目を丸くした
明らかに数針は縫う怪我だったのにもう引っかき傷程度になっている、唖然としている間に傷は消えてしまい、もはや傷跡すら残っていない


「回復の魔法とかです……か?」


今まで見た事のある回復魔法を超える治療速度にまだ衝撃を受けている刹那が問いかけるが順平はいつもの能天気な口調に戻り


「いんや、生まれつきってわけじゃねぇけど体質みてぇなもんだって。 これだって普通の人からすれば異常だろ? でもな、これのおかげで仲間を助けられた時だってあったんだぜ? 刹那ちゃんのハーフがどういうのかは知らねぇけど、大切な人を守るための特別な力なんじゃねぇの?」

「異常では無く、特別な力……ですか」

「そっ! だから前向きに行こうぜ!」


いつもの無邪気な笑顔を見せながらサムズアップする順平
その笑顔を見ながら、普段誰にも言えない悩みを打ち明ける事が出来た刹那は妙に清清しい気分になり、順平に言われた”特別な力”でいつか木乃香を隣で守り抜こうと自分の心に強く誓う


「今すぐには、無理かも知れませんが……また、このちゃんと呼べる日が来るように……私も前に進んでみようと思います!」

「うしっ! 頑張れよ! なんか手伝えるならおれっちも手を貸すからよ!」

「はい! よろしくお願いします!」



















時は戻り


「あーうん、なんか分かった……」

「すみません……」


アレだけ見得を切ったのに未だに挨拶を交わせるくらいに、しかも緊張を隠すあまりにそっけない態度になってしまって前よりも若干ぎこちなくなっている。進展してない現状に申し訳なさそうに頭を垂れる刹那だったが、不意に頭の上に何かが置かれたので顔を上げると


「まぁ、気にすんなよ! 刹那ちゃんは刹那ちゃんのペースで進めればいいって」


見上げてみると順平が刹那の頭の上に手を置いて、いわゆるナデナデをしながら優しそうな目で見つめていた


「はっはひっ! が、頑張ります! あっあの! 私、朝食の準備があるので失礼します!」

「おっおう!また後でなー!」


耳まで真っ赤にしながら土煙を巻き上げて物凄い速度で走り去る刹那を見送る順平だったが、自分の腹も悲鳴を上げ始めたので今日の朝食に思いを馳せながら帰宅の準備をすませてエヴァの家へと急ぐのであった












数時間後、学園長室の前にはデザイン性の高いカスタムスーツとネクタイもせずにボタンを数個開けた紺色のシャツ、大きめのバックルつきのベルトにチェーンまで付けた順平が今まさに学園長室に入ろうとしていた


「はよざーっす」

「おお伊織君、おはよう。 今日からよろしく頼むの、今担任の方が向かっておるから待っててくれんかの?」

「うーっす、担任はどんな人なんすか?」

「ふぉふぉふぉ、見てのお楽しみじゃ……きっと驚くぞ?」


片方の眉毛を持ち上げ、楽しそうに笑う学園長を見て何か嫌な予感がした順平が詳しく聞きだそうとした時にドアをノックする音が部屋に響いた


「ほっほ、来たようじゃの」

「ちょお! まだ心の準備が!」

「失礼します。学園長、お呼びになったそうですが?」


順平が慌てているとドアが開き、10歳前後の外国人少年が入って来た


「あんだよ、びっくりさせやがって~」


初等部の生徒が来たのだろうと、ため息を吐きながら深くソファに身を沈める


「いやいや、伊織君。 彼が担任を勤めてくれているネギくんじゃぞ?」

「は? え? まじで? どう見ても小学生じゃ……」

「マジじゃ。10歳じゃが一応、大学卒業程度の語学力があるしの。 それに、記録上ではオックスフォードを飛び級で卒業しておる」

(記録上って……まさか?)


学園長の言葉に引っかかる物があった順平が疑いの目でジーっと学園長を見ると


(うむ、魔法関係者じゃ)

「(いや、そー言う問題か?) 何でもありだな、おい……」


視線を受けて考えてることが分かったのか大きくうなずく学園長、それを見て魔法以上にこの学校の異常性に頭を抱える順平


「あのー学園長、こちらの方は?」

「おお忘れておったの、今日から君のクラスの副担任をしてくれる伊織順平君じゃ。 伊織君、こちら担任の」

「そうだったんですか、ネギ・スプリングフィールドです、ネギと読んでください。至らぬところもあると思いますが宜しくお願いします」

「お……おお、よろしくなオレッチも順平でいいぜ」(これで天田より年下とか……しっかりしすぎだろ最近のがきんちょ。てか……さすがにコイツは復讐とかしねぇよな?)


見た目は子供なのに自分よりもしっかりしているように見えるネギにフェザーマン大好きっ子を重ねてしまい、まさかこうなった原因も一緒じゃねぇよな?等と考えながらも表情には出さずににこやかに握手する。


「ふむ、ネギ君は来てもらって早々で悪いんじゃが。 そろそろHRが始まるのでのう、細かい事は道すがらでも良いかのう?」

「あっ! もうこんな時間でしたね! それでは伊織先生、ご案内しますから着いてきて下さいね」

「さんきゅ、じゃ失礼しましたー」


ネギに先導されながら順平が学園長室から出て行く


「ほっほ、人知れず戦い世界を救った英雄からネギ君は何を学ぶのかのう。 いやはや、まだまだ死ねぬのう」


二人が立ち去り、一人きりになった部屋で誰に聞かせるでもなく子の成長を見守る親のように微笑ながら学園長が呟く















「伊織先生は若く見えますけど、おいくつなんですか?」

「若いって、ネギ少年から見れば大体はオッサンっしょ? つーか、順平でいいって言ってんだろ?」

「あうう、実は今朝失礼な事して怒られたばかりだったから……日本の人は礼儀に厳しいって言うし……」


確かにいきなりパンツ消したり、スカートを捲られたりしたらどんな大和撫子でも怒ると思うが、しかし本人に悪気が無いため、被害に遭っている少女Aもマジギレと言うほどではない……はず
そんな事を思い出して落ち込んでいたら、突如順平に頭を押さえつけられガシガシと乱暴に撫でられた


「んな事気にすんなって、おれっちなんか失敗ばっかよ? オマエぐらいの年だったら、たくさん失敗してその分怒られて成長すりゃいいんだよ」

「う、うん!」


今まで父性というものに触れたことの無いネギにとって、年上の男性からこのような対応をされるのは初めてであり。
子供扱いをされている、ちょっと恥ずかしいなどの様々な感情が入り混じっていたが、何よりも単純に嬉しかったのである。その為……


「ね、ねぇジュンペー……」

「ん?どしたネギ少年?急にモジモジして、トイレか?」

「ちっ違うよ! あ、あのさ……お兄ちゃんって呼んでもいいかな? なんかジュンペーに撫でて貰ったら、もしお父さんやお兄ちゃんが居たらこんな感じなのかなって……嫌だったらやめるけど……」


捨てられた子犬のように潤んだ目で上目遣いで見上げながら、お願いと言う名の脅迫を敢行するネギ
ついうっかりその可愛らしさにキュンとしてしまい、心の中で『違う!オレはノーマルだ!』と魂の戦いを繰り広げる順平だったが、父が居たらと聞いた時に理解してしまった。
ネギがしっかりしている理由はきっとそこにある、かつて天田もそうだったように目の前の少年も孤独に耐えてるのかもしれない。


「いいぜ、いくらでもなってやるよ。 だけどそう呼ぶには学校の外で生徒のいない時にしとけよ? わかったかネギ?」

「わかったよ、お兄ちゃん!」


再び、しかし今度は先ほどとは違い優しく撫でられて全身から喜びを表しながら元気よく答えるネギに、わかってねぇと苦笑いしながらデコピンをお見舞いして廊下を再び歩き出す二人、傍から見ればまさしく仲の良い兄弟にしか見えなかった。






二人はとある教室のドアの前に居た


「それじゃあおに……ジュンペー!僕が呼ぶまでここで待っててね!」


またもや兄と言いそうになるのを訂正したはいいが呼び捨てになってしまうネギ、それもどうなんだと思いながら教室に入って行くネギを見送る


「「「「「「3年!A組!! ネギ先生ーっ!!」」」」」

「おわっ!?」

「えと……改めまして3年A組担任になりましたネギ・スプリングフィールドです。これから三月までの一年間よろしくお願いします」

「「「はーい! よろしくー!!」」」

「それと今日から副担任の先生が変わります、それじゃあ、おに……伊織先生どうぞー!」

「「「「おぉぉー!!!」」」

「また……私の情報網に引っかからなかった……」



クラスの元気の良さに苦笑いしつつもドアを開き、教室へと足を運ぶ。クラス中の視線が一身に浴びせられ、過去に転校した時に思いっきりすべった事を思い出し、今回は普通に行こうと決意しながら教壇へと進む


「どもども、今年から副担やる事になった伊織順平っす。基本はネギ少年のフォローだけど、わかんない事あったら聞きに来てくれてオッケーだかんな」


普段の言動で三枚目キャラとして扱われているが、顔に関しては美形とは言えないが整っている上に服装には気を使っているために黙っていればそれなりに見える
『かっこいいかもー』とか『えー、あたしはパスかなー』『あの人、どっかで見たですー』『あれ!?この間エヴァちゃんと茶々丸ちゃんといた人じゃない?』等、教室がざわつきはじめたところで一人の少女が立ち上がった


「麻帆良報道部、突撃班!朝倉和美です!質問いいですかー?」

「おっ?どんどん聞いちゃって、おれっちどんどん答えちゃうから」

「じゃあ早速! ウチのクラスのエヴァちゃんと一緒に歩いてる姿が目撃されてますが関係は!?」

「えーっと、遠縁の親戚でな。 家がでかいっつーから世話になってんだ」


事前に打ち合わせしておいた内容を述べる


「ふむふむ、ちょっと怪しいですがいいでしょう。それと目撃情報からおそらく伊織先生だと思うんですが、桜咲さんとの密会はホントですか!?」

「密会て……剣の稽古に付き合ってやっただけだっつーの、ホントそういうのどこから広まるの……なんか怖いー」


順平がふざけながらも剣の稽古と答えた時に数人の生徒がピクッと反応した、その中にはカンフーバカや忍者バカも居たが何時もの事なので割愛
反応した生徒には普段は動じない近衛木乃香とエヴァも入っていた、もっとも二人の理由はまったく違うもので
木乃香は最近になって挨拶するようになったが、よりギクシャクしてしまっている親友が一緒に稽古するほど仲がいいのなら何か知っているかも知れないので今度聞いてみようと思い
エヴァに至っては

(毎朝どこに行くかと思いきや……おのれ桜咲刹那め!このままでは私の計画がずれてしまうではないか!)
実際に見ていれば健全な稽古なのだが、朝が弱いエヴァは居ない事は知っていても後を着けたりなどは出来なかったため、不純な物と決め付けていた
(順平……後で処刑だっ!)
順平が知らないうちに生命の危機が迫っていた
そんな本人はそれ以降も様々な質問が繰り広げられ、過去の失敗談から何故かスリーサイズまで聞き出されてしまいすでに疲労困憊となっていた


「まだあるの? オレ、ガス欠っすー」

「えーっと、次はー女性関係について!彼女とかどうなんですか!?」

「!?」


その質問を受けた瞬間、頭の中で赤髪の少女がフラッシュバックしてした
よく見なくては分からない程だったが、深い悲しみの色にその目が染められる


「ちょっと前にな、色々あって別れちまった……そもそも付き合ってたかも定かじゃねーしな」


あくまで明るく振舞うが、それでも何名かにはその発言が強い悲哀によって紡がれた物だと感じた
一番近くに居た上に、他人の心情の変化に鋭い朝倉がまずい質問をしてしまったかと思った時

「ネギ先生、今日は身体測定ですよ。3-Aのみんなもすぐ準備してくださいね」

「あ、そうでしたここでですか!?」

「うーし、じゃ質問はここまでだな。さっさと着替えちまえよー」


ネギに外に出るぞ、と目配せをして二人で連れ添いながら外に出る






「しっかし元気なクラスだなー、ネギ」

「うん! みんな元気一杯でいい人ばっかりなんだ! お兄ちゃんもすぐに仲良くなるよ!」


キャイキャイと聞こえてくる黄色い声を背に、ドアの前でいかにも疲れましたと言った風にへたり込む順平が両手を振り回してクラスの事を話すネギを見て
やっぱりまだまだ子供なんだなーなどと思っていると、廊下の向こうから少女が走ってきた


「先生ーっ! 大変やーっ! まき絵が…まき絵がー!」

「何!?まき絵がどーしたの!?」

「わあぁぁー!!」

「うおぉぉ!? ゆかりっちより……」

「まき絵が桜通りで倒れてたって! それでさっき保健室に!」


中学生とは思えないなかなかボリュームのある裸体を目の前にして、うろたえてしまう順平だったが倒れたと言う単語を耳にしてやっと現実へと意識を引き戻した


「はっ!?とりあえずこっちはオレが見てるからネギ行ってこい!」

「わ、わかったよお兄ちゃん!」

「ちょっ! ネギ、待ちなさいよ! 私も行くから!」

「のわぁっ!? とりあえず服! 服!」

「へ?」
「あ……」
「あれ?」

「「「「「「……キャーーーーー!!!」」」」」



ネギが保健室へ向かおうとした時に何名かの生徒が一緒に行くと身をさらに乗り出すが、未だに下着姿なのを忘れていたらしく順平に言われワンテンポ遅れて気付く
もしこの場に居たのがネギのように年端もいかぬ者であれば皆も気にしなかったのだが、順平のような年頃の男性に見られるのは恥ずかしいらしくわなわなと体が震え始め、その中にいたツインテールの少女の右ストレートが炸裂した


「ふごうっ!?」


顔面に思い切り拳がめり込み、勢いをそのままに吹き飛ばされ空中で錐揉み回転した後に廊下に顔面から着地しそのまま滑走して行った


「ふっ、いい右だ……グッジョ……ブ」


そう言い残すとネギの走り去る足音をBGMに順平は意識を手放した




































~あとがき~
毎度毎度このような駄文をお読みいただきありがとうございます
せっかくなので、順平に新スキル「ナデポ」なるものを継承させてみました

稚拙な文ですがこれからも付き合って頂ければ幸いです



[21186] 第七話
Name: 鉄兎23号◆f955939b ID:05c3cae5
Date: 2010/09/21 21:42







第七話













太陽が沈み、満月が夜空に輝く晩
月光を受けて美しく輝く桜並木の陰に蠢く影が一つ


「へくちっ! ううっ、やっぱりまだ夜は冷えるなぁ。 帰ろうかなぁ……いやいや! 確かにまき絵さんからは魔法の力が感じられたんだ、先生として犯人を捕まえなくっちゃ!」


3-A担任教師のネギ・スプリングフィールド、彼がこんな時間にコソコソしているのには理由がある
今朝の事だが、クラスの教え子の一人佐々木まき絵が桜通りで気絶しているところを保護されたのだ
運の良い事に外傷も無く、女子寮エリアのため悪戯された形跡も無い。それだけであれば疲れて寝てしまったのだろうと思うかもしれないが、ネギのような魔法使いには彼女の体から微かな魔力の残滓が感じ取れた。

自分以外の魔法使いが身近に居るとは思っていないネギは、この不可思議な事件を探るためにこうして張り込みを行っているのだった。

今日はもう現れないのだろうか? そう思い始め、時計を確認しようとしたその時


「キャアアア!」
「悲鳴!? こっちか!」


女性の悲鳴が響き渡った。悲鳴の聞こえた方向に振り向き、隠れていた草陰から身を乗り出すと黒衣を纏った者が今まさに少女に襲いかかろうとしていた。


「あれは! 宮崎さん!? ま、待てー!」


杖に片足を乗せ、地面スレスレの低空を滑るように飛び魔法使いと思わしき不審者の下へと近づく


「ぼ、僕の生徒に何をするんですかーっ!風の精霊11人縛鎖となりて敵を捕まえろ、魔法の射手・戒めの風矢!!」

「もう気付いたか、氷盾……」


ネギが魔法の矢を放つが、その全てが弾かれて闇へと霧散していく


「僕の呪文を全部はね返した!?」
(や、やっぱり犯人は……魔法使い!?)


「ふふっ……なかなかの魔力だな……」


ネギの魔法の矢が弾かれたときの衝撃波で魔法使いの帽子が宙に舞い、その素顔が露わになる。
気絶していた宮崎のどかを抱えるようにしながら注視していたネギは、その下から現れた犯人の顔に衝撃を受ける


「えっ……き、君はウチのクラスの……エ…エヴァンジェリンさん!?」

「フフ……新学期に入った事だし改めて歓迎の挨拶と行こうか先生……いや、ネギ・スプリングフィールド。10歳にしてこの力……さすがに奴の息子だけはある」

(奴の息子って……お父さんの事を知っている!?……でも今はそれどころじゃない!)
「な……何者なんですかあなたはっ! 僕と同じ魔法使いのくせに何故こんなことを!?」

「この世には……いい魔法使いと悪い魔法使いがいるんだよネギ先生。」


そう言い放つとエヴァは懐から二種類のフラスコを取り出し、魔力を込めながらネギへ投げつける


「氷結武装解除!!」

「うあっ!」


咄嗟に魔力の障壁を作りレジストするも、杖も呪文詠唱もない状態では完全ではなくネギの袖とのどかの
服の大半が一瞬で凍り砕け散った


「宮崎さん大丈夫!?……ってわぁっ!?」

「何や、今の音!!」

「あっ、ネギ!!」


先ほどのどかを見送ったが何か嫌な予感がしたため追いかけて来たツインテールの少女、神楽坂明日菜とそれに付いて来た黒髪の少女、近衛木乃香が大きな物音のした方向、エヴァとネギの元へ走って来た

二人の姿を見つけたエヴァは闇に消える様にその場を後にする


「あっ待て!! アスナさん、木乃香さん!! 宮崎さんを頼みます!!
身体には何ともありませんから!! 僕は事件の犯人を追いかけますので、心配しないで先に帰ってください!!」


「ネギく……うわっはや!?」

「ちょっと、ネギ!!」


明日菜の制止も聞かずにスプリンターも真っ青な速度で走り去るネギ


「木乃香!! 私も追いかけるから、本屋ちゃんの事お願い!!」

「へ!? アスナー!?」


明日菜もありえない速度でネギの走り去った方へと後を追い走り去って行く
しばし走り去る友の後ろ姿を見つめていた木乃香だったが

「そんなー、どないしたらええんやー!?」

「おーい、何してんだー?」

「!?」


ほぼ全裸状態で気絶しているのどかと二人残されて途方にくれ、頭を抱えていたところ突然声を掛けられて驚き、声のした方に振り返ると


「あっ、伊織せんせー!」

「なんだ、近衛か……って、うお!? 何で裸!?」

「あっ! み、見たらアカンえー!」

「と、とりあえずこれ着せとけ!」


道の真ん中で何事かと思い声をかけた順平、もしや不審者か?と思いきや自分のクラスの生徒であったために安堵し、じゃあ何をしてたんだろうと覗き込んでみると生まれたままの姿の少女が目に入り、とりあえずと自分の上着を差し出す。


「って、えーっと……宮崎じゃねぇか。 何でこんな事に?」

「なんかなー、今噂になっとる桜通りの吸血鬼に襲われたみたいなんよ。ネギ君が助けてくれたみたいなんやけど、犯人追っかけて行ってもうてな、明日菜もその後を追っかけて行ったから困ってたんよ」

(吸血鬼ってエバっちか? それとも他にいんのか? まぁ、何にせよこのままは不味いよな……)

「とりあえず宮崎を医務室まで運んじまおうぜその後でオレもあいつらの事追っかけてみっからよ」

「ありがとなー、ウチひとりじゃどうしようも無かったんよ」


よっこいせ、と少々爺臭い掛け声と共に宮崎をいわゆるお姫様抱っこの形で抱え上げ、今さっき歩いて来た方向へと踵を返す順平とのどかの鞄を持ちその後ろを付いて行く木乃香
しばらく雑談などをしながら歩く二人だったが木乃香がふと表情を曇らせ、前を歩く順平に声をかける


「なぁ、伊織先生はせっちゃんと仲がええの?」

「せっちゃん? ああ、刹那ちゃんか。 仲が良いって言うか、朝も言った通り稽古に付き合ってるだけだって」

「そうなん? ……あのな? 何かウチのこと言ってへんかった? 昔は仲良かったのにこっちで再開してから昔みたいに話してくれへんよーになってな……うち、なんか嫌われるような事したんかなぁ?」


俯きながら今にも泣き出しそうな声を出す、表情は見えないがもしかしたらその目からは大粒の涙が流れているのかもしれない


「んなことねーよ、刹那ちゃんは近衛のこと大好きだって言ってたぜ? ただ、今は話しかける勇気がたんねーだけなんだよ。だから、近衛の方からも歩み寄ってやりゃあすぐに昔みてぇに仲良くなれるさ」

「ホンマに?」

「おぉ! ホンマのホンマ、おにーさんを信じなっさーい」


いつもの軽いノリで顔だけ振り向かせて、木乃香へその笑みを投げかける
そのおかげか、先ほどまで曇っていた木乃香の表情は柔らかく、いつも通りの笑顔を取り戻していた


「うん!したら早速明日からせっちゃんに猛アタックやー!」

「ははは、お手柔らかにな? ……それに、大切な人の手はぜってー離しちゃだめだぜ? ……後悔すっからな」


先ほどまでの会話ではふざけたり、おどけながらも常に笑顔を見せていた順平だったが、今朝の質問の時に女性関係を聞かれた時のように暗く沈み、どこか影のある表情を見せる


「……伊織先生は「おっ、着いたな。まだ先生も居るみてぇだし、大丈夫だろ。んじゃ、オレはあいつ等の方に行ってみっから後よろしくな」

「え!? あっ、うん! ありがとなー」


過去に何があったのか聞こうとした時にタイミングが良いのか悪いのか医務室に着き、のどかを預けて走り去ってゆく順平の背中に礼を言いつつも
最後に見せた表情が心に引っかかっていた木乃香はいつか聞けたら良いなと思いながら目の前のドアをゆっくりとノックする












同じ頃、麻帆良学園内のとある建物の屋上にて


「悪いが死ぬまで血を吸わせてもらう……」

「うわーん! 誰か助けてー! お、お兄ちゃーん!」


木乃香にのどかを任せた後にエヴァに追いついたネギは持ち前のスピードと魔法学院で覚えた魔法を駆使して武装解除を行い、追い詰めていた
だがしかし、突然現れた茶々丸に軽くあしらわれてしまい、今まさに吸血を受けている真っ最中である


「コラー!! この変質者どもーっ! ウチの居候に、何すんのよーー!!」

「甘いです」

「なっ!?」


二人の不意を打つ形で割り込んだ明日菜だったが、その華麗なとび蹴りは茶々丸によって止められ大きく弾かれる
本来であればエヴァと茶々丸はこのとび蹴りに吹き飛ばされていたはずなのだが、順平と初めて出会った夜に大破した茶々丸を見た開発者がショックを受け、更なる改造を施していたのである
角も無ければ赤くも無いが、戦力は3倍UP!by茶々丸の母A(本当は3割程度)
しかし、驚くべきは明日菜の身体能力だ、弾かれて体勢を崩したものの空中で何とか持ち直し、エヴァに捕まっていたネギの襟首を掴み二人との距離を取る
ガードした茶々丸も衝撃で大きくよろめき、追撃のチャンスを逃がしたためエヴァの横で構えなおす


「あっ! あんた達ウチのクラスの……ちょっどーゆーことよ!? まさかあんた達が今回の事件の犯人なの!? しかも二人がかりで子供をいじめるような真似して……答えによってはタダじゃ済まないわよ!」

「はっはっは!……タダじゃ済まないだと? おもしろい事を言うな、お前のような世間知らずの小娘に何ができる? そこまで言うならかかって来い小便臭いクソガキが、ミンチにしてくれる」
(マスター、展開していた障壁が一瞬で突破されました、魔力が感じられない点から魔法無効化能力の可能性が64%です気をつけて下さい)
(わかった、ジジィが孫娘と住まわせるくらいだ、何かあると思ったが……厄介だな) 


残忍な笑みを浮かべ、伸ばした爪は月光を反射しまさに闇の福音に相応しき威圧感を放ちながらも、茶々丸の報告に内心では苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる


「なっ!? 小便臭いですって!? もう怒った!! 絶対ぶちのめす!」

「ふふっ……事実を言われたからとムキになるな、バカガキ」

「このっ!?」


口喧嘩では勝てないと見た明日菜がエヴァに飛び掛ろうとし、エヴァと茶々丸はそれを迎撃しようと構えた時

金属を無理やり引きちぎるような、あまりにも不自然で不快な音と共に明日菜とエヴァ達を分けるように、屋根に大きな亀裂が走った
何が起きたのか分からずにその亀裂を唖然として見ていた明日菜だったが、いつの間にかエヴァとの間にある壁のようなものに気付くと顔を上げ、その目を驚愕の色に染めた

土煙の中に3m強はある巨体が悠然と立ち、まるで燃えているようなほど赤いその体は月の光を受けて一層煌き、二人を分けるためのまさしく壁として君臨していた


「なっ!? なによコレ!? ちょ、ちょっとネギ!?」

「あ、明日菜さん……離れてください、ゆっくりと、けして慌てないで、ですが迅速にお願いします……」


突然あらわれた異形に驚き、どうしたらいいかとネギに問おうと後ろを振り向いた明日菜だったが、目に飛び込んで来たのは先ほどまで泣きじゃくって居た少年が大量の油汗を掻き、その足と手を震わせながら小さな杖のような物を異形に向けている姿だった


「どーしたのネギ!? どっか具合で「明日菜さん! 早く僕の後ろへ!」え……あ、うん……」


今まで見た事のない同居人の切羽詰った表情と気迫に気圧されて、言われるままに後ろへと下がる
その時にも目線を外さないのは、野生の勘で目の前の異形の力を感じているのかも知れない


「ちっ、トリスメギストスか……厄介な奴が乱入してきたな……茶々丸、今日は引くぞ」

「はい、マスター」


明日菜がネギの後ろへと移動したころもう一方のエヴァ達は乱入者の正体に気付き、二人共その場を後にする
そして、二人が闇にその姿を溶け込ませた頃、立ちふさがっていた巨人トリスメギストスは空間に溶け込むようにその姿をかき消した


「……っはぁ!はぁはぁ……明日菜さん、無事ですか?」

「わ、私は大丈夫だけど……あんたこそ大丈夫なの!? すごい汗よ!?」

「そう……で、すか……無事なら……良かったです……」

「ちょ!? ネギ!? ネギ!! ……まったく、無茶しちゃって……やっぱ、男の子か……」


警戒していた相手が居なくなった安心感からか、明日菜の無事を確認すると同時にネギはその意識を闇の中へ深く深く沈めてゆく
そんなネギを見ながら理由は分からないものの、自分の事を必死になって守ろうとしてくれた少年の姿を見て明日菜は彼への評価を改めるのであった……

そして、今宵も夜が更けてゆく……様々な思惑をその胸に抱きながら……



































気絶したネギと、それを介抱する明日菜を見つめる影が一つ……
しばしの沈黙の後、その者が呟く


「あれ? ……オレっちやり過ぎ侍?」
































あとがき

どうも作者です
このような稚拙な文を待ってくれている皆様、更新が遅れてしまい申し訳ありません……
コメントに対する返事もなかなか書けない状態ですが、いつか時間を見て返させて頂きます

さて、今回は読んで下さっている皆様に質問なのですが
私自身もっと多くの方に呼んで頂き、様々な意見を取り入れたいと考えております
そのため、赤松板に移動しようかと考えておりますがいかがでしょうか
それとも、もっとこちらの板にて技術等の向上を行った上でまた再考すべきでしょうか?
よろしければご意見お待ちしております

それでは、今回も駄文にお付き合いいただきありがとうございました。
どうぞ次回更新時もよろしくお願い致します(次回は1週間以内を目標にしております)







































[21186] 第八話
Name: 鉄兎23号◆f955939b ID:c8c9cd0d
Date: 2010/11/14 04:35










第八話













「こらーっ! ネギ坊主もう八時よ! いーかげん起きなさい!!」

「何か……カゼひいたみたいで……」

ネギとエヴァが深夜の戦いを繰り広げた翌日、ネギは吸血鬼に命を狙われるという人生初の経験に盛大にビビり仮病を使ってまで学校に行くのを拒否していた

「昨日怖い目にあったのはわかるけどね--先生のくせに登校拒否してどーするのよホラッ」

「あ~んパンツだけは!! パンツだけは許してくださいー!」

無理やり明日菜に服を着替えさせられて中学生とは思えない力で肩に担がれ、そのまま強引に学校へ連行されて行くが、実際に命を狙われているネギからすればたまったものではない。

「お……おろしてください~! エヴァンジェリンさん達がいたらどーするんですかー!」

「学校で襲ってきたら校内暴力で退学にしちゃえばいーでしょ」

「そんな簡単な話じゃ……それにあの時現れたゴーレムも居ますし……」

「あの赤いのそんなにやばいの?」

「はい……おそらく召喚獣だとは思うんですけど……あんなのマギステル・マギでもなければ倒せないですよ」

「でも、あの時助けてくれたんなら味方じゃないの?」

「うー……でも、他に魔法使いがいるなんて聞いてないですから……」

本当は生徒も含めて数えれば学園所属の魔法使いはそれなりに居るのだが、試験のためにネギには一切伝えられていなかった。
そんな事を話ながら担がれていたネギだったが、気付けばもうすでに教室の前まで来てしまっていた、さすがに明日菜もこのまま入ったら不味いと思ったのか周囲の視線が痛かったのか、ネギを下ろして手を引きながら教室へ入っていく。
当然ながらエヴァに会う事を恐れていたネギだったが、いざ教室に入ってみるとそこに吸血幼女の姿は無く安堵の息をもらす。

「マスターは学校には来ています、すなわちサボタージュです」

「わ、わあっ!?」

「……お呼びしますか先生?」

「い、いやとんでもない!いいです、いいですぅ!!」

突然現れた茶々丸に驚きつつもエヴァがサボってる間は会わなくていいのでまた一つ息をもらす
その頃、原因となったエヴァはと言うと……

「へくちっ! 誰か噂でもしてるのか…?」

朝から屋上にエスケープして惰眠を貪ろうとしていた
下校時間になるまで寝てしまおうともう一度壁に寄りかかろうとした時、何者かが屋上のドアを開けて入ってきた。
寝なおそうとしてるところに現れた乱入者に少々恨みがましい視線を投げかけると、ドアの影から昨日の吸血を邪魔した伊織順平がキョロキョロと周りを見渡していて、その視線がエヴァに止まると軽く手を振りながら近づいて行く。

「よっ! エバっちサボりかー?」

「ふん、吸血鬼は昼だと眠くなるんだよ。 そっちこそどうした? 昨日は帰って来なかったじゃないか、てっきり質問攻めになると思ってたんだがな」

「いや、それがさー」

ニヤリと口の端を持ち上げて、昨日の夜ネギと自分の間に割り込んできた順平のペルソナ、トリスメギストスを思い出す
てっきり家に帰った後に今回の一件について聞かれるだろうと思っていたエヴァだったが当の本人、順平は帰って来る事は無かった。ペルソナを発動した時の魔力はやはり異常なものらしく、駆けつけたガンドルフィーニチームによって学園長室に連れて行かれ、朝の今になるまで尋問を受けていた。
もっとも、学園長と高畑の説得により大事には至らなかったのだが、突如現れた巨大な魔力保有者に警戒しない訳にはいかず、皆が順平を今までと違う目で見るようにもなっていた。

「てなわけで、ねみーからオレもちょっちサボり」

「だから使うのは控えろと言っただろう。 頭の固い連中がそうやすやすと受け入れる訳がないんだ」

自身も経験があるのか、やたらと説得力のある言葉を呟く。どこか遠くを見つめるエヴァの横にため息をつきながら順平が横になるとそれを視界の隅に収めながらエヴァが口を開く。

「で、聞かんのか?」

「聞いちゃっていいの?」

「教える気は無い……だが今日は特別サービスだ少しだけ話してやろう、あれは何年前だったか……」

思い出すようにポツリポツリと話始める、ネギの父親でもあるサウザンドマスターに助けられて、しばらく一緒に行動していた事
そのサウザンドマスターに想いを寄せていた事は言わなかったが、話しているときの表情や雰囲気からエヴァにとって大事な人なのだろうと順平には理解できた。

「そして、私はヤツに戦いを挑んだが負けてしまってな……魔力も封じられた上にこの学園に縛りつけられているのさ。しかも、サウザンドマスターは10年前に死亡……もはやこの呪いを解ける者はいない、それから数年はまさしく絶望だったな」

昔の事を語るエヴァの目には涙がうっすらと滲んでいた

「んだよソレ、じゃあ一生このままかよ!」

「だが、解呪の方法が一つだけ残っていた。ヤツの血縁である坊やの血液を大量に手に入れればおそらく……」

「だから昨日……てか、大量の血って! ネギだってまだガキだぞ!? 下手したら死んじまうじゃねぇか」

エヴァの発言に驚き、寝ていた姿勢から上半身を起こして目の前に佇むエヴァを見つめる

「関係ないさ……と、言いたい所だが。ガキを殺すのは趣味じゃないんでな、加減はしてやるさ……もっとも、それで死んでしまっても責任はとらんがな」

「びっくりさせんなよ……だから学園長も手ぇ出すなって言ってたのか」

「ちっ、ジジィめ気づいておったか……だが手を出すなとはどういうことだ?」

「なんかネギ坊主の試練なんだとよ、他の先生達もこっそり監視してるってさ。もうやめたほうがいいんじゃねぇのか?」

「この私をうまく使う気か……それならばなおさら止められんな、私は何よりも舐められる事は我慢ならんのでな。それで……貴様はどうする? その気になれば今すぐ私を火ダルマにできるだろう?」

順平から伝えられた事実を聞き、獰猛な笑みをその幼い顔に浮かべているが、声は弾んでおりまるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のようであった
ふと、顔を隣で座っている順平に向けて今後の動向を問う。敵に回れば厄介この上ないが、もし味方に引き込めれば文句なしの戦力となるだろう……それこそ学園を全て潰して無理やりに封印解除も狙えるかもしれない。

「正直、わっかんねぇ。……15年だろ? オレの人生の4分の3じゃねぇか、そんな長い時間って言われても実感わかねぇよ。……けど、ダチもみーんな入れ替わっちまって、全員が自分の事覚えてねぇなんてツレェよ……でもよ、だからっつって誰かを襲って傷つけて良いわけじゃねぇし……」

「辛いだと? そんな事いくらでも言えるさ。所詮他人事なのだからな……それに、私は悪い魔法使いなんでな」

最後の一言をまるで自分に言い聞かせるように呟き、先ほど順平が入ってきたドアへと歩きだす。
どうしたんだ? と視線で訴える順平に侵入者だ、と簡潔に答えてその後ろ姿は建物の中へと吸い込まれて行った。
しばらくエヴァの後ろ姿を見つめていたが、その小さな背が闇に溶け込んだのを見届けた後に大きく手足を伸ばし大の字になる。

「他人事って……つれねーの……最初の頃のアイツみてぇだな」

ぼそり、と誰にも聞こえぬように呟いた言葉は青く澄み渡った空に消えて行き、いつの間にか順平から定期的なリズムを刻む寝息が聞こえていた。




時は過ぎ、日が暮れ始め辺りは茜色に染まりつつある放課後の屋上に複数の人影が動いていた。
一つは体を横にして寝そべっているが、他の人影はその人物に近づき手を伸ばす。

「せんせー、もう学校終わったでー」

エヴァと別れた後も誰にも起こされ無かったため、屋上では順平がまだ眠っていたが何者かに揺すられて徐々に意識を覚醒させる

「んお? ふあぁあ……近衛じゃねぇか、って今何時だ?」

「おはようさん、もう5時過ぎとるよー、ネギ君や明日菜も探しとったで?」

「やべっ! 寝すぎた……明日怒られるなーこりゃ……はぁ、わりぃなワザワザ起こしに来てくれたのか?」

「んーそれもあるんやけどな、昨日のお礼せなって……ほれほれ」

木乃香の影に隠れていたのと順平が寝ぼけていたために分からなかったが、重なる形で木乃香の真後ろに宮崎のどか、その両脇に綾瀬夕映、早乙女ハルナが居てこちらを見ていた。
まだ少し寝ぼけているのか、順平がお礼ってなんだっけ? と首を傾げていると、申し訳なさそうにのどかが後ろ手に持っていた紙袋から服を取り出して、順平へと差し出す。

「あ、あの……これ、ありがとうございました」

「昨日運んでもらったお礼しとらんかったからな、上着も借りたまんまやったし」

「先生やるじゃーん? 教え子とのラブ狙い?」

「正直教師としてはどうかと思ってましたが、人間としては合格ラインなのです」

順にのどか、木乃香、ハルナ、夕映の発言だが約1名かなり失礼な事を言っているのだが、当の本人はまさしく唖然と言う表現が当てはまるように目も口も大きく広げただ一点、のどかの事を見つめている。
さすがに何かおかしいと思ったのか、ハルナを筆頭に木乃香たちが何事か聞こうとして身を乗り出すがた時に我に返った順平がそれを手で制すると

「い、いや……悪い、知り合いに声が似てたからつい……」

「そーなん? ビックリするほど似てたん?」

「ああ……ちょっとこっち来てみ?」

手招きする順平に誘われてのどかがにじり寄るように近づくと、耳元でボソボソと話始めた。

「え!? それを言うんですか?」

「そそ、さぁいっちょーやっちゃって!」

何かが始まるのを察知したのか、いつの間にか一緒に来ていた友人達は床に座ってのどかを見つめていた、どうしようか悩んでいると順平も友人達と一緒になって座り見守っている。お礼を言いに来ただけなのになんでこんな事に……などと思いながらも覚悟を決めたのどかが大きく息を吸い込み

「オラクル、発動します!!」

「やっぱ似てる……」

「先生、これはどんな意味があるのです?」

「あー、ダチのひとりがコレをいうとだな何かが起きるんだよ……」

順平が言わせたのはかつての仲間である山岸風花がサポートのために使っていたスキル、オラクルの声真似だ。
味方を全滅寸前に追い詰める事もあったが、起死回生のチャンスももたらしたことがある。

「何かって……迷信どころの話では無いですね……バカですか? っていうか、バカですね?」

「2回も言った!? いやいやホントだって! ダチの浮気がバレた時なんか何故かコレだけで瀕死状態だったからね?」

「大事なことなので2回言いました。大体ありえませんです、人の想いが他人の肉体に干渉するなど夢や御伽噺じゃないんですから」

年下の女の子に順平が論破されてるのを尻目に、未だ恥ずかしがっているのどかの元へ木乃香とハルナが駆け寄る。

「なーなー、言いながらどんな事思っとった?」

「え!? ……恥ずかしいなぁって……あと、何でこんな事するんだろーって」

「つまりのどかは伊織先生にムカついてたのね!? これで何かが起きればホントのはず……なんだけど、そんな都合の良いことないよねぇ」

「近衛ー! デコっちがオレの事いじめるよー!」

「デコ!? 誰がデコですか!? このヒゲ男!?」

あははーなどと呑気に3人が笑っているところに夕映と言い争っていた順平が涙目になりながら近づいて来たので振り向いた瞬間、順平以外の全員が視界の隅に影を見た。

「だからヒゲには男のロマンがって、「ゴッ」うぶげらはっ!!」

「「「「あ……」」」」

まさしく一瞬の出来事、突如飛来したこぶし大のコンクリート片がワシの欠片は108あるぞと言わんばかりの猛スピードで順平の頭部に命中したのであった。後に残されたのは衝撃に負けて粉々になったコンクリート片だった物と、先ほどまでバカみたいな話をしていた教師だった者、その2つを見て取り残された4人が言えるのはたった一言だけだった。

「「「「ホントだったんだ(や)(ですね)……」」」」
















あとがき

すみません……ほんと、すみません
投稿を止めた訳ではないのですが、仕事がただいま修羅場になっておりますので投稿が不定期になってしまいます・・・



[21186] 第九話
Name: 鉄兎23◆5e2ee5b3 ID:39ba5222
Date: 2011/06/22 23:14


















第九話






















勉強と言った束縛から解き放たれ、ある者は部活動へ、またある者は自宅や街へと繰り出す頃
人気の無くなった麻帆良学園中等部前に授業を終えて帰路に着くネギの姿があった。

「今日も無事に終わって良かったなー、またエヴァンジェリンさんいなかったし」

他の生徒や教師が聞いていたら確実にアウトな発言をブチかますが、ネギ本人からすれば自分の命を狙っている相手なのだから仕方ないのかもしれない。
未だに解決する気配を見せない問題を抱え、まだ10歳程度なのにやたらと哀愁漂う背中になっている。

「はぁ……明日菜さんはお兄ちゃんの事も怪しいなんて言い始めるし……でも、エヴァンジェリンさんと一緒に暮らしてるって事はやっぱり……
 あぁ、どうしたらいいんだろう」

まるで、平日の昼間にブランコを漕ぐ中年のように煤けた背中のネギに後ろからとある人物が近づいて来た

「うーっす、ネギ。お前も今帰りかー?」

「あわわ、おっお兄ちゃん!? どうしてここに!?」

話をすれば何とやらか、仕事を終えて帰る途中の順平と偶然にも遭遇してしまい、必要以上に慌てるネギ

「いや、なんつーか落ち着け? オレも丁度帰るトコなんだよ、途中まで一緒にいこーぜ」

「え、えーっと……ゴメン! ボク急いでるから!」

「いやっ、ちょっ。……って、足はやっ! あーあ、行っちまったよ。てか、エバっちの事だいぶ切羽詰ってんなー」

引き止めようと伸ばした右手をワキワキと動かしながら、走り去って行く背中を見送り。
まさか自分が疑われているとは思っていない順平はネギの様子がおかしいのはエヴァに襲われたからだと考え、今後どうしたものかと思考をめぐらせるものの

「……ダメだ、わかんねぇ」

普段とは違い頭を全力で回転させて考えてみるが、やはり細かい事に思考を巡らせるのは苦手なのかあっという間に脳がオーバーヒートしてしまい、頭から煙が立ち昇ってくる。

「つーか! こういう頭脳労働ってオレじゃなくてリーダーとか桐条先輩の仕事っしょ! おれっちは戦士タイプなんだから血湧き肉踊る肉弾戦とか、皆のための守備とか壁とか身代わりと…か……ヤベェ、なんか悲しくなってきた」

八つ当たりに今はいないS.E.E.Sメンバーの悪態をつくが、同時にかつてリーダーに「順平はタフだから」「オートで回復するからまだ大丈夫」「死神だ! 散開!」などと人身御供にされた記憶も蘇ってしまいそのまま地面にへたり込んでしまう。
まさにズーンと言う効果音が似合いそうな光景である。

「チドリ……オレ、もう駄目かもしんねぇ……」

人間、悪い事を考えないようにすると色々と思い出してしまうものである。
さらに落ち込み、もはやへたり込むというよりも行き倒れの旅人のように天に向かい手を伸ばし、今は亡き恋人の名を呟く。
そんな事で頼られても困ったものだ

「順平さん? どうかされましたか?」

摩訶不思議な動きをする順平を見て帰宅途中の生徒達が避けて歩く中、一人の少女が声をかける
聞き覚えのある声にふと視線を上げると、先日から共に暮らしている二人の少女の一人、茶々丸が買い物袋を持ちながら順平を見下ろしていた。

「おぉ……茶々丸ちゃんか、いやちょっと自分のタフネスに落ち込み侍だったとこ……」

「はぁ……? そうなのですか?」

「んな事より、茶々丸ちゃんは買い物の帰りか? せっかくだから荷物持ってくぜ?」

「あっ、いえコレは……」

「まーまー、荷物を持つのは男の役目ってね。ん? 何だこりゃ?」

半ば強引に茶々丸から受け取った袋に視線を落とすと、どこか見覚えのある缶詰が視界に入り注視していると
表情は変わらないが、どこか気まずそうにした茶々丸がおずおずと答える。

「実は……」





*     *     *     *     *     *







先ほどの場所から歩いて20分ほどの広場に順平と茶々丸、二人の姿があった
二人は同じ目的でその場に向かい、二人で一緒に同じ事をしようとしていた。ただ一つ違う点があるとしたら

「かぁわいぃぃぃぞうぅぅぅ!」

順平が思い切りオーバーリアクションで子猫を抱きしめたまま地面を転げまわっている事だろう

「おーよしよし、なるほど茶々丸ちゃんはこいつらにメシをやりに行くとこだったんだな」

「あ、はい。 最初はこの子だけだったのですが、徐々に増えてしまって……今ではこんなに集まるようになってしまったのです」

順平のリアクションに唖然としていた茶々丸だったが、指に付いた猫缶の残りを舐めとる猫の舌のざらつきでようやく我に返る
質問に答えながらも子猫を撫でるその横顔は、とても機械仕掛けの人形とは思えないほどに柔らかい表情をしていた。

「ふぅーん。やっぱ茶々丸ちゃんは優しいコだなぁ、ゆかりっちにも見習って欲しいぜ。いや、ゆかりっちの場合優しくしたつもりでコロマルに毒物食わせようとしてたしなぁ……悪気がねぇ分、たちが悪いっつーか」

「あの、順平さん。 優しいと言うのは私がでしょうか?」

「風花も看病と称してアイツを毒殺しようと……んあ? いやいや、それ以外にいねーっしょ」

「ですが……私はガイノイドです。 ハカセ特製のAIを積んでいるとはいえ、感情といったものは持ち合わせていないのですが」

先ほどまでとは打って変わって俯きながら寂しげな口調で自らの事を話す、戯れる子猫たちも雰囲気が変わったのに気付いたのか
茶々丸の足元へと集まると心配したような鳴き声をあげ、顔を覗き込んでいる

「んだよ、そんなことで悩んでんのかよ。あー…なんかデジャヴってんなー」

順平はため息をつきながら近くのベンチへと腰を下ろす、そんな順平の様子を見て少しムッとした目で順平を睨みつける茶々丸
確かに自分の悩みやコンプレックスをそんな事で片付けられては本人も立つ瀬がないので当然と言えよう
しかし、当の本人は涼しい顔で、いやむしろ悪戯の成功した近所の悪ガキのような笑みで茶々丸の視線を受け止める

「ワリーワリー、茶々丸ちゃんをバカにしたわけじゃねぇんだけどさ。でもよ、そんな風に怒れるっつーのは感情があるって事じゃねーの?」

「……そうかも知れませんが、そういう風にプログラムされているだけなのかもしれません。 機械に、心を持つ事は許されませんから……」

胸に手を当て、まるで自分に言い聞かせるように呟き目を伏せた
その足元では相変わらず子猫達が心配そうな鳴き声をあげ続ける
二人はしばし沈黙するが、順平がゆっくりと語り始める

「初めて会った時は、美少女と間違えちまったんだよ。 先輩とナンパしてさ、まぁ見事に玉砕されちまったんだけどな」

「はぁ……?」

「まぁ、最初の時は話してても不自然っつーか、スッゲェ固かったんだよ、融通もきかなくてよ正直浮いてたな、ありゃあ」

膝の上で気持ちよさそうに目を細めている猫を撫でつつ、遠くの方を見つめる
突然語り始めた順平に驚くが、遠い昔の思い出話を聞かされているようでつい耳を傾けてしまう

「だけどよ、みんなと一緒に過ごしてたらさ何時のまにか溶け込んで、怒ったり笑ったり泣いたり茶々丸ちゃんみたいに悩んだり、終いには恋もしてたなありゃあ」

「はぁ……ですが、そのお話と私にどんな関係が?」

「最後まで聞けって……アイちゃん、アイギスって言うんだけど、あいつは茶々丸ちゃんと一緒でまぁ……いわゆるロボってやつなんだよ」


茶々丸は突如頭を殴られたような衝撃を感じた
実際に殴られたわけではないが、彼女の精神的なショックを例えるならば正にそれであろう

麻帆良の科学力は学園外の企業よりも数段上、しかも茶々丸は天才と言われる超とトップクラスの魔法使いエヴァンジェリンが生み出したガイノイドである
まさか自分以外に同じような悩みをもつ存在が居るとは思わなかった上に、今悩んでいる内容をすでに解決し、恋までしていると言うではないか


「その方は今どこに?  宜しければお会いしたいのですが」


茶々丸にしては珍しく、慌てた様子で順平に詰め寄る


「ちょ、待てって、ワリーけど今は会えねえんだわ」

「そう……ですか」

「ワリーな……でも、どうしてもってんなら今度頼んでみてやるよ、まぁ何時になるかはわかんねぇんだけどよ」


茶々丸の悲しそうな表情を見て言ってはみたが、本当に会わせる事が出来るのか順平にも不安であったが(まぁ、頼めば何とかなんだろ)などとかるーく考えていた


「そ、そんな、私こそ無理にお願いしてしまって申し訳ございません。
いけない、もうこんな時間でしたか、私は夕飯の支度があるのでもう帰りますが、順平さんはどうされますか?」

「オレはこいつらともう少し遊んでから行くわ、茶々丸ちゃんのメシは美味いから楽しみにしとくぜー」

「わかりました、今日は順平さんの好きなハンバーグにしますね」

「マジで! やっりぃ、茶々丸ちゃんのハンバーグは絶品だからなぁ……やべ、思い出しただけでヨダレが」


服の裾で口元を拭う順平を見てクスリと笑うと、何時の間にか日が暮れて少々暗くなってきた夕闇の中、晩の支度のため足早に自宅へと帰って行く

暫くその後ろ姿を見つめて居た順平だったが、茶々丸が角をまがり見えなくなったところで、頭だけを後ろに向け、言葉を発した


「やっぱエバっちも気になってたのか?」

「なんだ、気付いていたのか」


順平の視線の先、ちょうど木の影が重なり一層闇が深くなっていたところからフッと姿を見せたのは、茶々丸のマスターであるエヴァンジェリンであった


「まぁ"別荘"で散々しごかれたからなぁ、これくらいの距離なら何とかなー」


順平の言う別荘とはエヴァンジェリンの所有している魔法の空間の別称である
その中の一日は外の世界の一時間であり、その中ではエヴァンジェリンも封印が効かないため、腕試しと称して春休みの間に何度も模擬戦を行っていた

その時にトリスメギストスに組み込まれたペルソナ、メーディアの能力を聞いたエヴァが可能性を見いだし、感知能力を鍛えた結果、ある程度の探索は使えるようになっていた
と言っても、かつてのサポート役であった風花のように広範囲でもなければ精度もそこまで良いわけではないので、やたらと勘が良いと言うぐらいである
それでも自分の周囲や殺気に対して以前よりも敏感になったため、本人は重宝していたりする……主に『エヴァンジェリンの小さな従者』に関してだが

話が逸れてしまったが、やはりエヴァも日頃自分の世話を焼いている従者が気になるのか、途中から二人の会話を聞いていたらしい


「すまないな……この時代の技術を織りいれて生み出してしまったために、姉達とは違うと思っているらしくてな……
 私からすれば茶々丸もチャチャゼロも変わらぬのだがな、いかんせん本人がアレでは何を言っても聞かぬだろう」

「あー、確かにチャチャゼロは感情っつーか、色々ぶっ飛んでるからなぁ……だからってあいつと比べなくたっていいのによー」

「生まれが生まれだからな、自分を個として見る事に慣れておらんのだろう」

「茶々丸ちゃんは茶々丸ちゃんだろ?」

「その考えがありがたいのさ、あの能天気な3ーAの連中もそう思っとるだろうが。
 人形使いの人形と知った上でその考えをするヤツは珍しい、大抵のヤツは物として見るからな」


そんなこと無い、と順平が言おうとすると手を前に出して待ったをかける

「お前の言いたい事も分からないワケではない、ただそんな奴はほんの一握りなんだよ。
だから、その……ありがとうな、それと昨日はすまなかったな、ついカッとなってしまってな」


腕を組み直し、顔を背けてまるで謝っているようには見えないが、エヴァなりの感謝と謝罪だったのだろう。
普段言い慣れていない為に顔をほんのりと朱に染めて俯く姿は、大きなお友達からすれば庇護欲をそそられるものだ。
だが、残念ながら順平にその気は無い為に、エヴァの口から予想外の言葉が飛び出て来た事に驚き口と目を大きく開き、盛大な間抜け面を披露していた。


「な、なんだキサマ! せっかくこの私が感謝してやっているのにその顔は!」

「いや……エバっちが謝るなんて、しかも『ありがとう』!?
あぁ夢か、そうじゃなきゃ明日は月が落ちてくるもんな、あー早く起きなきゃ「フンッ!」 がふっ!」


余りにも予想外のために夢だと決めつけ現実逃避する順平だったが、
エヴァの鋭く重いボディブローによって強制的に現実だと認識させられ身悶えることになってしまった


「ぐおぉ……ヒデェ、ちょっとしたお茶目だったのに」

「やかましい! この私が感謝してやってるんだ! ありがたく思え!」

「なんでそんな上から目線なんだよ……あっウソウソ、やったーうれしいなー」

「分かればいい、よし帰るぞ! 今日はハンバーグだ! おい、何をニヤけている、間抜けな顔がさらに見るに耐えなくなってるぞ」

「いやー別にー? ハンバーグで喜べるなんてエバっちもお子様だなー、なんて思ってねぇぜー?」

「なっ!? うるさいっ! ハンバーグが好きで何が悪い! ええいっ! ニヤニヤするのをやめろ!」

「うーっし、お子様なエバっちがガマン出来なくなる前に帰るぞー」


先程のボディブローのお返しとばかりにエヴァをからかっていたが、少しでも言い返せた事に満足したのか茶々丸の作るハンバーグへ思いを馳せ、
ベンチから立ち上がりさぁ帰ろう、としたその時
先程までうるさいくらいに反論していたエヴァが、急に静かになったので顔を向けて見れば、顔を俯かせて小刻みに震えているではないか
ちっとイジメ過ぎたか? などと考えていると、何時の間にかエヴァの震えは止まり、不意を付く勢いで急に顔を上げた
その顔はとびっきりの笑顔のように口の端を目一杯持ち上げてはいるが、決して笑顔というワケではなく、順平を見据える目はまるで獲物を狩る肉食獣の物であった


「いいだろう……キサマの肉をミンチにしてハンバーグにしてやるわ!」

「い、いやぁぁぁぁ!!」




ちなみにミンチに関しては順平が別荘で身に着けた《ダイナミック土下座》と茶々丸の援護により大事には至らなかったが
腹の虫が収まらないエヴァは目覚まし時計を止めると言うみみっちい仕返しを行い、溜飲を下げていた。
























皆様どうも作者の鉄兎23です
このような駄文をお読み下さっている皆様、更新が大幅に遅れた事をこの場を借りて謝罪致します。
理由としましては書いている途中に話しがまったく出来上がらずにずるずると長引いてしまった事です。
勢いで書き始めたものの、読み物を書くと言う事の難しさを痛感いたしました。
しかし、せっかく始めたので何とか最後まで書き上げたいと考えておりますので、何卒生暖かい目で見守ってあげて下さい。(キャラクターの動かし方が難しいのでどなたかアドバイスを頂けたらと思います・・・)

また、話しは変わりますが先日の大地震の際、私自身も福島に用事で出かけており、惨状を目の当たりにしました。友人の中には家を失った者、家畜を処分した者と様々でした。彼らからの伝言ですが「どうか忘れないでほしい」との事です。
避難のため上京した時にまるで地震など起きてなど居ないかのように世界が回っていて大変ショックだったそうです。今回の事を忘れない事、それもまた復興への第一歩かもしれませんね。被害に遭われた方々の復興を心よりお祈りしています。


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