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[18999] 報われない男の物語(女王騎士物語)「勘違い系・オリ主」【21話裏更新】
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:85e90122
Date: 2016/03/18 17:55
Prologue

朝起きてカーテンを開けると淡い光が俺を包み、窓を開けると心地よい風が吹いて小鳥達も囀っていた。
そんないつもと同じ光景が今日はやけに俺を優しく包んでくれる。そうそれもそのはずだろう…
何故だって?
それは…
今日は俺が待ちに待った日、女王騎士試験の日だからだ。お正月よりも楽しみにしてたよ。
もう~い~くつね~ると~女王騎士試験♪みたいな感じで…
まぁお年玉がメインだというのは言う必要はないのだろう。
そして俺のこの悲しい運命ともおさらばできる。
だが、それも最後なんだ。これでやっと…


ニートになれる!

~前書きという名の言い訳と注意~
はじめまして羽付き羊というものです、初心者なので変な部分もありますがよろしくおネガいします。
物語名前の通り女王騎士物語の2次です。
オリ主ですがチートではありません。
オリキャラも多少は出現予定。
女王騎士物語の中では並の実力。
しかし持ち前の能力によって補正されます。
他にも多少のマイナー?なネタを散りばめています。
基本的にギャグテイストです。
ネタばれです。
再構成ものです。
オリジナルの解釈を持っています。
そしてラッキー補正と引き換えになったものがあります。
感想とか批判とかOKです。厳しいものでもドンとコイ!その事を踏まえて頑張るつもりでいます。
以上の事を不快に思われない方は引き続きお読みください。


追記
一応言っておきますが、コラボはネタであるので完全なクロスではありません。オリジナル要素はありますが……
だいたい、外国編のみに使うネタなのでその辺りのご理解を願います。
ハーメルン様とこの度マルチ投稿してモチベーション上げたいと思います。
新しい話が来月中にはできると良いなぁ……



[18999] 1話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:85e90122
Date: 2010/05/22 02:45
1話『数が少ない時の2倍より多い時の2倍の方がいいよね』

俺の名前はディファイ=R=ボルト 19歳。容姿は肩に掛かるか掛からないかの黒髪で茶色の目、身長は176ぐらい体重は70?かまあその辺。目つきが悪く、口下手な男が俺、ボルト家の嫡男でありニヤニヤ動画のユーザーだ。そんな俺が騎士になんてなりたいと思うはずもなく、平和にのんびり過ごして一生を送ることを決めていた。
しかし、親父が親戚の六大公爵家のバンニール家のカルマが優秀であるということが俺が6歳の時に判明してしまい、負けず嫌いな親父はそれを聞いて嫉妬してしまった。
そして俺に女王騎士になれと言ってきた。

「カルマ君は関係ないぞ?だって約束しちゃったから仕方ないじゃん。」

と言ってはいた。親父の事だから、酒の席で適当な事を言ってこんな事になったのだろう…、バンニール家と遠い親戚だからってそんな意地張るのは本当に困ります。
だって俺は騎士になるのはイヤだもん。何故ならアルちゃんねるでも女王騎士の給料は凄いらしいのだが、休みが非常に少ないし死が付きまとうという事を既に知っていたからだ。
名誉や栄誉なんていらない。俺は何より命が惜しいのだから。
そう考えて俺は断ろうと新聞を読んでいた父親に話しかけたのだが…

「親父、俺は…」

「何だ、ディファイ、うん?女王陛下の正装ドレスVerのフィギアって女王騎士になればもらえる?なんじゃそりゃ?」

「父上、私はこの国の剣となり盾となり民の平和を導きましょう!」

「おう…やってくれるのか、ディファイ!!」

因みに親父は俺が騎士になれば、家宝である変な玉を俺にやるとか言ってたけど…全く欲しくない。

「この玉は好きな時代に一度戻れる事ができるのだ!」

「…親父、病院いこうか」

「私は正常だ!」

というやりとりがあったりもしました。
そんな玉があるのなら女王様に献上したりしてモット良い身分にしてもらうだろうに…
残念な親父だ、全くを持って…
それは置いといて、今考えるとなんておろかな事をしてしまったのだろうか…あの時は絶対にもらってアルちゃんねるで自慢してやるんだという事しか考えていなかった。
しかし、駄菓子菓子、カルマ君にもらえばよくね?という結論に至ったのだ。まぁそれに気付いたのが7年以上たった今という悲しい現実もあるのだが…
というか欲しいけど俺には合格できないしたぶん死ぬ可能性のほうが高い!
色々と勉強や鍛練したからこそ分かるのだ、俺にはムリということが。
そもそも俺は一応は貴族の生まれなのだが、潜在マナが六大公爵家と違ってそんなにない。言ってみたら一般レベルよりは上ですかね?みたいな感じだ。

それでこの試験が通る訳がない。だって六大公爵家のルカ君でギリギリ通るかどうかって話ですよ?あの子と僕のマナの差は約1.25倍です。
っへ?意外に少ない?バカいっちゃいけないよ、1と1.25じゃ差はないかもしれないけど1000と1250の違いは大きいんですよ。
例えると、う~ん…あれだよ100円と125円はさほどだけど100万円あるより125万円あったほうが嬉しいだろ?そんな感じだよ。でも俺は125円あっても嬉しい。

貴族だけどおこずかい制じゃなく報酬制なので俺は必死なんだ。だって貴族だからバイトはしちゃいけないし、俺を女王騎士にならせる為に俺の教育費全てつぎ込んでるから俺には金があまりないし、何か親に申し訳なかったんだよ。善意という名の偽善ではあるが…
 おこずかいが報酬制のおかげで俺は女王騎士の知識やらマナの出し方やコントロールは学校で上位である。そうゲームや漫画やボックスの為に俺は頑張ったのだ!
そのおかげか俺は学校の順位は上から数えた方が早かったりする。自分の夢を叶える為というのじゃ理由は違えど頑張れるという事なのだ。
少し話がそれたけど、ようはある程度マナ量が増加したら差がけっこう開くよってことだ。しかも今ではもっと差が開いているだろう。だって測ったの5年前だもん。
それに俺がニートになるとはいっても23歳までだ。そこからはちゃんと家業継ごうと思っているんだ。まさにニートの鏡だと自分では思う。いや~自営業って素晴らしい。親父マジで感謝しています。
そんな事を考えている内に説明を受けた。何かクルタナという剣の柄?だったけ、まぁそれに精神エネルギーであるマナを込めて剣の刃が出たら合格ということらしい。
やった、なんか辛い思いをしなくても不合格できるじゃん!

一応受けて落ちたという形式が必要な為並んでます。まぁ落ちることは分かりきっているんですがね。俺もねここまで育ててきてくれた親に受験もしないような薄情な事できません。だが命はもっと大事なんで落ちます。これは決定事項です、はい。それに実力的にも無理です。もし仮に俺が女王騎士になったとしても、こんな考えの持ち主に民間人の誰が助けてほしい?ないでしょうよ。

待つ間に回りの受験生達を見ることにした。個性的な格好の持ち主が非常に多い事にまず驚いた…まずロボットがいたし、そして変な生物がいた─化け物?妖精?表現の仕方が分かりません…
俺もマントとかしてるけどさ、もういいや突っ込んだら負けだよね?
それにしてもなぜ最近はマントが流行しているのだろうか?よく分からないが流行なんてそんなものだろう、ギターの侍もそうだったはずだし…
そして順番を待つ事、数十分やっと俺の番になり、クルタナにマナを込める事になった。
その間に

「ルカお前もやってみろ。」

というイージス君の声がしたんでおそらくは合格したんだろう。おめでとうイージス君。立派な女王騎士になって俺達の平和を守ってください。

「では行くぞ…始めっ!」

その号令がかかったその時俺はこう思ったんだ。
“まぁここで落ちた方が楽だよな~、親父には悪いけど俺ニート志望だし…ここはマナを出さずにやりすごすかな~”
と…
そして目を閉じて時間を過ぎるのを待っていた…
(ざわざわ)

金は命より重い!

的な事をざわざわしていたので想像してしまいました。でもアレは覚醒フラグとか疑心暗鬼フラグの時の胸のざわつきを表現しているんだと俺は密かに考えていたりします。

とか思っていると凄い衝撃が俺にふりかかった。それはものすごい衝撃でした、まるで初めてドラグエをしたようなそんな感じの…あのはぐれメダルを倒した時の感動は忘れる事ができませんね…

まぁ実際は台風並の強風がいきなり吹いて俺にあたった感じでしたが。
何とか体勢を崩さずにそのあまりにもものすごい衝撃にその方向へ目を開けてみると、そこには異常というか異様な光景がありました。って…うわっ、バカでかいマナ!!なんだよ、カルマ君のマナか?

それはビルの様なデカイマナの剣でした。マナ量で言ったらチート級ですね、はい。まぁどうでもいいことなんだけどさ。

何故にハート型?

あり得ないでしょ、だってさ明らかに
…そんな事よりあれだよ俺ならデカさよりもカッコよさだな。
“同感だ、ここならば、地上を焼き払う憂いもない!”
って感じの剣を出すな。
そうそうこんな感じで…
…気付いたら手にそんな形の剣が出ていました、まる。

「ほほぅ?なんと伝説のカリバーンを模した剣か、ここまで精巧なものをクルタナで出すとはな。」

っておい!俺は何をしてるんDAAAA!!!
アホか俺は…何合格しちゃってるんだよ!社長もビックリだよ!?ブルーアイ○をやられた社長よりもビックリだよ!!!

「こんなモノを出すつもりはなかったのに…」

クッソたれがぁぁ!俺は何にも出すつもりはなかったんだっての!
というか出しちゃいけなかったんだよ~、もう泣いてもいいですか?

「ほう?どうやら今回は面白い奴がたくさんいるな…」

そりゃあ~あんだけバカでかいハートなんざ出す奴がいるくらいですからね~
さてと仕方ない次の試験で落ちますか~
切り替えの速さには定評がある俺ですからね。にしても次の試験も痛くありませんように…

To be continued…

Side 試験官A
俺の担当してる組は才能のない奴や才能に溺れて努力していないようなやつばかりだ。まぁカルマ・バンニールは別格としてジョニーとかいう奴やキゾークとかいう奴等は素材としては面白いし努力も認める。

しかし、ただマナを出すだけというのは血筋だけで出せたりする。そもそも女王騎士になりたいならマナという本質をもっと知ってからこいと俺は思うわけだ。

マナの量は仕方ないにしろマナコントロールの努力はできるはずだ。
実際、潜在マナの量だけが多くても仕方ないだろ?そんなもんコントロールできなかったら宝の持ち腐れなんだから。

そんな中でディファイ=R=ボルトという奴は異質差を放っていた。誰もが必死に力を込めている中奴は目を閉じて精神を集中させていた。

(ほう?中々見ごたえのありそうな奴じゃないか?)

マナというのは心の力である。しかし、ただマナを出すだけなら才能が少しでもあるならバカでもできるしかし、奴は心をコントロールしているようだった。

マナは誰にでも存在している大なり小なりそれは間違いない。言うならこれはタダの憧れで女王騎士に入ろうとする無知な輩を排除する為の儀式である。それでも素質のある奴なら欲しいからこんな風になっているのだが…しかしバカならいらない、次の1次試験が筆記であるのはそんな理由がある。

そんな事を考えながら見ていると残り15秒というところまで来た。そろそろ時間いっぱい、奴は未だ精神を集中させる為か目を瞑っていた。しかし流石にこの時間までマナのカケラを出そうともしないのはおかしい。

(…もしかして見かけ倒しなのか?)

ふとそんな事が頭を過る。

だがそんな時バカでかいマナを出す奴がいた。あれはありえない大きさ的にも形状的にもそして何より色彩的にも…

その強大なマナに奴も驚いたのだろう。

目を開けてその光景を見ていた。
そしてその瞬間、残り1秒というところで奴は剣を出した。しかもあの伝説の剣とまで言われるカリバーンだ。ここまで精巧なものは隊長クラスのマナコントロールを持っているか、ずっとその剣を見続けてきたかのどちらかだ。マナの性質もその剣を見る限り覚悟や知性も滲み出ている。

どちらにしろただ者ではないらしい。

「ほほぅ?なんと伝説のカリバーンを模した剣か…ここまで精巧なものをクルタナで出すとは」

と正直な感想を言ってやったのだがソイツはこう吐き捨てた。

「こんなモノを出すつもりはなかったのに…」

こんなモノ?一体どういうことなのか?これ程出来栄えのものは中々できないぞ?それとも…
まさか…そういうことなのか?
アイツはこれ以上に精巧なカリバーンを出そうと思っていたのか!?それがあのバカでかい剣をみてしまって動揺してしまったという訳か…
まぁあんなモノを見せられたら多少なりとも動揺はするな…それが関わる程精巧なものを作り出そうとしていたなんてな。
どちらにしろ見ごたえのありそうな奴だ…

「ほう?どうやら今回は面白い奴がたくさんいるな…」

思わずそうこぼしてしてしまう程だった。
コイツはやるな、後で王にでも教えてやるか…
そんな事を思いながら俺は久しくなかった人に対する興味が湧いた。


突発的にやった5話までしかストックがないorz



[18999] 2話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:85e90122
Date: 2010/05/22 02:46
2話「意地があんだよ…男の子にはなぁぁぁぁぁ!!!」
拝啓ミスターポぴっと、どうやらこの試験は実戦のようなのでここで私は敗退します。今までありがとうございました。
と言いたいところなんだが…


一次試験のペーパーテストは、とりあえず書くだけ書きました。テストを受けている時に睨みつけられ、あの雰囲気に飲まれてしまい普通に真面目に受けていました。
なんというチキンな俺…
自分でも恥ずかしいけど仕方ないよ、だってチキンなんだからさ。
まぁ確実に俺は異常にチキンですね、だって試験で寝てる奴がいましたもん。そんなに余裕だったのかな?
それより驚いたのは隣で試験受けていたイージス君がいきなりペンを自分の太ももに突き刺していた事です。あの時何故か笑ってたのが怖かった…たぶん一時的にマゾになったんだろうと俺は予想しています。
そんなこんなで次は体力試験しかもバトル形式という事を聞いて非常にビビっています。
ビビりすぎて顔引き攣ってます。
そのあまりのビビり様に他の受験者も引いていました。
発表された中のメンバーを見た時さらに泣きそうになりました。
俺のメンバーの中にはなんとあのルカ君がいたんです!
あの子何か俺のことをもの凄く誤解してるんだよね…
何か学校ではカルマ君に認められた唯一の男とか呼ばれちゃってるからたぶんそのせいだろうなぁ~、何故かって?こっちが聞きたいです。いや本当に…
ボコボコにされるのは嫌だからどうしたらいいかな?
そうだ!俺がルカ君の攻撃を受け止めたけど場外に落ちて負ければいいんだ!そうすれば親にも何とか言い訳できるし、なれなかった事を悔しがる振りしながら親に謝ればいいんだ、どうしよう…こんな完璧な作戦を考えられる自分の頭が、こ・わ・いなんてね♪
「ディファイさん、僕は例えアナタにでも負ける訳にはいかないんです。」
ルカ君がいきなり俺に向かって真面目な顔で言ってきた。
どうでもいいけどいきなり話かけないでくれないかな?ビクッとなるから…
無防備な状態で急に人に話しかけられとよく起こる現象だが、かなり恥ずかしいから止めて欲しい限りである。
「私には関係ない話ですね…」
どうせ俺適当に場外に落ちて負けるしね~まぁルカ君は頑張ってね。とか言いたかったんだが口下手なので俺は言えなかったんだ…
こんなヘタレな俺を許して下さい。
それにしても目上の公爵家の人間と話すのは敬語を使わなくてはいけないのがしんどい。それに私とか自分で言うのが何か恥ずかしい。何故だろう?一応慣れているハズなんだあけどな…いくらたっても恥ずかしい。
あれだな、学校のトイレで大きい方をする時の心境だ。生理現象とは言え知り合いにばれたらすごく気まずい雰囲気になるあれだな。慣れている相手なら「またお前かよ~」とかになるけどちょっとした知り合いなら「ああ…」みたいな感じになるもんな。うん。
そうだよねルカ君?
「その言葉、後悔させますよ。」
その言葉は静かではあるが少しの怒声も含まれている。ディファイには分からなかった。だから彼がこう思ったのも無理はなかった。

─小説とかならこう書くんだろうが俺は俺だし、しかもこんな感じで進んでいってしまったからもう後には引けないんだ…反省はしている後悔はしていない。だがルカ君これだけは言わしてくれ。

トイレの下りはダメだったかい?








Side 一族復興を目指す貴族
C闘場第3組
筆記試験の次の体力試験で、僕はとてつもなく悪い組に入ってしまったようだ。カルマ=バンニールに唯一認められた男として女王騎士学校でも有名なディファイ=R=ボルトと戦う事になってしまったのだから…
「ルカ…お前の組にあの“仮面”がいるとはな…」
そうイージスは僕に言ってくる。“仮面”とはディファイさんの二つ名である。あまりに実力を隠す姿はまるで正体を隠す“仮面”のように見えるからだ。
「そうだね…でも例え誰にも負ける訳にはいかないよ、例えあのカルマを倒したことのあるディファイさんが相手だとしてもね…」
“仮面”
彼にその名がついたカルマとの模擬戦はあまりに有名だ。
カルマの上段突きを何かに躓いたように避けてそのままカルマの心臓部分に目がけて剣を突き刺した、カルマは避けようとしたのだが足を踏まれて回避ができなくなってしまい負けた。あの剣が軽いプラスチック制のでなければカルマでも危なかっただろう…カルマも避けられるとも反撃されるとも思わなかっただろう、あれは凄い。タイミング読ませてからわざと外すなんて芸当は普通にやってもなかなかできるものではない、それをあのカルマ相手にやるなんて…
しかし審判である先生はディファイさんの反則負けにした、騎士になろうという者が姑息な手を使ったという理由で…でもその勝負を見ていた生徒はカルマの負けだと思っている。
カルマ自身もそう思っているらしく
「兄貴のあんな悔しそうな顔は見た事がない…」
と弟のジェダが言っていたから間違いはないだろう。
そしてあの時の反則負けを言われた時も先生に何も言わずに悲壮な顔をしてうなづき謝罪していた。
「まさかこんな事になるなんて…私が悪いです。」
と言っていた。あの時の言葉の意味はたぶん「(少し本気を出したら)まさかこんな事になるなんて(拍子抜けです)…(買い被っていた)私が悪いです。」という事なのだろう。

バトル形式だという事がわかりディファイさんは不気味に笑っていた。
「あれって顔引き攣ってるだけじゃねぇの?」
とエルト君が言っていた事に僕とイージスは苦笑いしてしまった。確かにマナ量にしても運動能力にしてもエルト君にディファイさんは敵わないだろう。しかし彼の凄さはそんな処には存在しない。
彼の凄さは洗練された剣術やその智略にあるのだ。

「う~ん?俺にはよく分からないな…」
「お前には分かるまいな…」

とイージスが呆れたように言っていた。

「っるせぇ!」

とエルト君が口を膨らませながら怒っていたけど、実力を知らなかったらそんな評価になるのは仕方ないとは思う。見た目にはそこまで強いと思えない人なのは確かだから。
ある程度覚悟を決めなければいけないだろう。この人に勝つには相当苦労するはずだから。

「ディファイさん、僕は例えアナタにでも負ける訳にはいかないんです。」

と自分を奮い立たせる為にもディファイさんに話しかけたのだけど…

「私には関係ない話ですね…」

本当に興味のなさそうな声で吐き捨て、僕の顔を見据えていた。
それに少し苛立ちを感じた。まるで僕なんか目じゃないと言われたみたいで腹がたったんだ。そして何か言いたそうに彼はこちらを向いたので僕はこう言った。

「その言葉、後悔させますよ。」

僕も僕なりに技術を磨いた。体力もつけたし勉強にも励んできた、学校の成績ではディファイさんには勝っている。
そして何より僕はグラム家復興の為にもシェリーの為にも負ける訳にはいかないんだ!




[18999] 3話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:16f4a756
Date: 2010/06/08 15:24
第3話「五台でもロケットですよね?はいわかります」
夢を─夢を見ていました─夢の中の俺は───
一本でも人参、二束でもサンダル、三艘でもヨ~~ット、四粒でもゴマ塩…次は何だったけ?五が分からんとです!五体でもロボット?いや何か違う…

はい、そんなどうでもいいことを考えている僕の名前はディファイです。何か3話もやってるけど面倒な名前だよね。ディファイって、ボルトかディファでいいよと思う。ディファイの最後の“イ”って言いにくいんだよ…マジで


─とか思って現実逃避をしていました。

まぁルカ君にあんな発言をされてしまったのですが、さっさとこの場から退場したい俺としてはどうでもいい話です。
そんな事を思っていると
「始めっっ!」
という掛け声がかかったのでその号令と同時に斜め後ろへジャンプしてみた。
理由は簡単でとりあえず場外に落ちる感じの場所は端っこが良いだろうという考えだからです。そして着地した瞬間、真横に人がたくさん飛んでいて、残り4人と人数が激減してました。

いやありえないっしょ!
何がどうしたんだ?
とか思っているとルカ君が驚いた表情で俺を見つめていました。

どうやらルカ君が最初に俺狙いで来て突進したらしい。しかも大技で…
確か技の名前は「グラムスラッシュ」とかいう家名が付いてた恥ずかしいもの。

これが自分の名前の「ボルト切り(笑)」とか「超ボルト切り(爆)」とかの名前なら軽く死にたくなる。まぁでもルカ君は六大公爵家だから逆に立派な感じがするから不思議です。

で、驚いていながらもルカ君は俺意外の残り2人を場外まで「グラムスラッシュ」でぶっ飛ばしていました。人ってあんなに飛ぶんだねってぐらい飛ばしていました。スマシスのホームランコンテストか?とか思うほど。


そしてこの場に2人だけ。


──2人だけ?

やべぇ…自分から勝手に落ちられるシュチエーションじゃない!
理想では場外負けする感じの場所まで自分から移動して剣でガチャガチャして実力で場外に落ちる感じだったのに…まぁ俺の剣技の実力じゃあ本当に精一杯頑張っても良くて5位くらいだろうな。なのに既に残り2人…


こうなればルカ君相手に痛くない感じで負けるのがベスト!
とか思ってると凄い勢いで俺の方に突っ込んできました。

ちょっと真正面から突っ込んできたらダメでしょ!?
後ろに飛んでも痛いじゃないか!普通に上段切りとか悪くても突きだろう?突っ込んできたら後ろに避けた方が俺のダメージ倍プッシュじゃん!


横に避けようかな?いや、ここはジャンプで回避だ!
俺が膝に力を溜めこんでジャンプの体勢に入った時。

「読んでましたよ!」

ルカ君は急停止したかと思うとジャンプしてきた。
どうやら俺がジャンプして身動きできない状態で真上から止めを刺そうという事らしい。下に向かうルカ君の力に上へ跳躍しようとしてる俺の力を合わせるとものすごく痛い事になる。

ルカ君、それってドSだよね?

と思いながらも縮めた膝を伸ばそうとしているので回避は無理。

勝利は既にルカ君の手中に収まった。という感じになった…


─はずだったんだけど、マイマントが闘技場の石の繋ぎ目にひっかかてしまってジャンプできなかった。
凄い丈夫なマントだったらしく全然破れなかったが俺の体勢を後ろへと崩すのには十分な出来事であった。
そして俺は綺麗にバク宙。その時何かにぶつかった感じもしたけど理由は分かりません。

「何だと!?」

と誰かのボイスが掛かりましたが自分でもまさかこんな場でバク宙するなんて…大体俺は実力的にはバク転までです。バク宙はこれで成功したのは2回目だよ…
バク宙が決まったあとに場外に落ちたので負…

「勝者ディファイ=R=ボルト!」

という言葉に反応して台上を見るが誰もいなかった。そして何故かルカ君が場外にいました。

「流石ですね…僕の完敗ですよ。」

というルカ君のボイスがかかりました。何故か場外にいたので驚きです。
どうすればいいのだろうか?こうなってくると結構危険な感じがする…この試験に受かる可能性が!
こうなりゃあ最終手段を行うしかない。

「ルカ君、私と次に会う時は騎士の高みで…」

とりあえずこんな感じの言葉を言っておいた方が落ちるのはザコキャラやモブキャラの必須能力、名付けて脱落フラグ。これを使えば落ちる事はまず必至だろう。
よし頑張って落ちるとするかね。

というか今思うとトイレの下りは俺の考えであって口に出してないよね?
何で怒ってたんだろ?まったく分かんないよぃ?


Side 女の子疑惑の貴族様

今回の試験でカルマと同率で合格に一番近いと言われる男、ディファイ=R=ボルト。奴は俺にとって未知数の存在だ。
私はカルマの模擬戦を見ただけでは奴の真の実力は分からなかった。アレが本気なのか、それとも1割の力しか出していないのかすら分からない。マナ量は私達六大公爵家に及ばないのだが、洗練された技術に幾重にも考えられた智略には私では勝てないだろう。
だからこそ単純な実力の違いが分からないのだ。実力は基本的には総合力。何かが弱くてもそれを補える強さがあればいいのだ。しかし、全く異なるジャンルの能力だと実力は測りにくいのだ。しかしそれが今回私と同等と言っても過言ではないルカがボルトと勝負する。これで奴と俺の差が少なからずだが分かるはずだろう。

「ルカの一撃で終わるんじゃねぇの?」

とエルトがつまらなそうに言っていた、確かに不意をつけば出来なくもないだろう。実際ルカはそれを狙っている。しかし何が起こるのかは分からない。奴は何せ“仮面”なのだから。

「決着がつくまでは分からん。」

「ん?お前ならルカが絶対勝つって言うと思ってたのにな。」

「ルカならここは必ず通る、だが1位かどうか分からん。」

「へぇ~、ボルトってそんなに強いのか?」

「…見ていれば分かる。」

そして勝負が始まった。ルカはまずボルトを狙いにいった、不意をついての一撃で倒そうとしたのだろう、しかしボルトは予め知ったいたかのように避けた。しかもルカの一撃を他の受験生達に効率よく与える位置に誘い込んで…

その事に一番驚いていたのはルカ本人だ。それもそのはずだろう、自分の策が見抜かれたのだから。
本当に恐ろしい奴だ…
おそらくルカの攻撃対象がボルト本人だと奴は感じ取ったのだろう。明らかに敵意をむき出しだったのだから分からなくもない。そして突っ込んでくるのをルカの構えで感じ取ったのだ。
が、避けるのが普通に考えて限界だろう…それを他の受験者に誘導するなんて事普通は思いつかない…

「…流石としか言いようがないな…」

「凄いけど…、何か微妙?」

エルトはまだ納得がいっていないようで首をかしげていた。

「ふっ、だからお前は甘いんだ。ここからよく見てろ。」

「へいへい。」

策を見抜かれて多少動揺していたルカはボルトと一対一の場を作る為に他の受験生を場外へと追いやった。その間ボルトは静観していた。どうやらルカが他の受験生を倒すのを待っているらしい。奴はルカが剣を揮う事で動揺が落ち着くのを待っているのは目に見えて明らかだった。

(一対一なら正々堂々と戦うのか?)

ボルトはカルマと同等以上の存在である。それは騎士学校にいた奴なら全員知っている。だが身体能力自体はお粗末なもので、それをカバーする為に色々な知恵を使っている。
その知略で身体能力の差をカバーしている、だから正々堂々戦うのはまずあり得ないのだ。

そう考えている内に、ルカはボルトに向かって突っ込んでいった。ボルトを場外に落とすつもりに見せかけて何かを仕掛けるのだろう。
ボルトは角にいるので避けるか受けるかしかない。避けるという選択を奴は取ったようでボルトは誰もが分かるようにジャンプしようと足に力を溜めていた。

「読んでましたよ!」

とルカはジャンプの体勢に入りそうなボルトの上へと跳躍した。そう俺がルカでもそうしていただろう、そのタイミングで。
これでルカの勝ちは堅いと思った。そうこの場にいた全ての人間が…
しかし、その考えは奴の前では浅はかなものでしかないのだ。
ボルトは上へと跳躍はせずにその場でバク宙したのだ。
そう…ボルトの上へ来るルカを蹴り飛ばして。
ルカを場外に落とした後でボルトも場外へと着地した。

「何だと!?」

思わず私は叫んでしまっていた。
見事なまでのタイミング、ルカの狙いさえもその作戦に含まれていたということだろう。
ルカの落下のタイミングに自身のバク宙のタイミング、その全てが完全にそろわないとこうはならないだろう…
さらにルールを完全に把握している、最後までステージに落ちなかった者の勝利というルールの盲点をついた作戦。さらに一歩間違えれば自滅というのにそれを実行する度量。
奴はどうやら私より遥か高みにいるのだろう。
奴に勝たなければ女王騎士になれるなんて思えない。
やはりこの試験で私が追うべき背中は奴だ。

~あとがき~
今回は勘違いバトルものを書きましたが描写が下手すぎて自分で笑いましたOTL
しかも別にルールの盲点でもなんでもない事は自分自身で分かっています。なんかすいません。手直ししまくりで投稿遅れ気味になりそうです。まぁそれでも頑張ります。次の更新は今月中にはしたいです。



[18999] 4話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:57d96fca
Date: 2010/07/16 08:04
4話「敬語で話すキャラって知的な悪役が多いと思ってみたり。」

オッス、オラ、ディファイ。前の戦いで何か勝っちまってニートになりそこなっちまったぞ、父は喜びそうだけどオラはそういうのはキレぇなんだ…まぁでもまだ落ちないと決まった訳じゃねぇからなんとかなっかな?という事で今回もいっちょやってみっか。


体力試験が終了した後、
「今回は負けですが次は絶対勝ちます!」
と宣言されました。その時、ルカ君の隣にいたメイドさんからもの凄く威圧的な目で見られたのは何でなのでしょうか?
親の仇を見るような目で見られることなんて俺してません!…たぶん。

まぁそんな事を考えていると何故かルカ君が隣にいて次の体力試験の組の奴を一緒に見ようという感じになりました、よく分かりませんけどね~
早速フラグを折られて正直テンション下がる一方です。
謎すぎる…あれかな?”次の試験で戦う時は”とか”女王騎士になった後に”とかに受け取られたのかな?
そうなら残念すぎる気がします…

「次はカルマの組とエルト君の組ですね。」

ルカ君はエルト君のステージを見るとメイドさんがニッコリと手を振っていた。それを笑顔で返すルカ君は正に清純な貴族だと感じました。
女の子とあんな感じで仲良くなれるなんて、そんなのニヤニヤ動画なら「それどこのギャルゲ?」とか言われそうである。
どら焼きは主食にならないからと言って上書きできないのに、ルカ君にはそれができる…まさに思い通りである訳でとても羨ましい。

「あのメイドの子って確か昔グラム家に居た子でしたよね?」

今はジェダ君の従者なはずだが…
見たことがあったので思わず聞いてしまった。

「はい、シェリーと言います。」

「ああ!!シェリーちゃん!?通りで記憶にあると思った訳ですね。」

昔、ジェダ君が好きだった子だ。いや、確かカルマ君の話を聞く限り現在進行中で好きなはず。けど、その割にジェダ君は兄弟そろってツンデレだからついつい厳しく当たってしまって好感度が下がる一方で困ると言ってた。カルマ君は「俺はツンデレなんかじゃない!」って言ってました。

でもア~タ誰がどうみてもツンデレですから!残念!

「お前等なんかに負けるわけにはいかねー!!」

俺がもう2度と話題に出そうにない一発屋芸人のツッコミを心でしている間に試合が始まっていたらしく、何か熱血主人公的に説教している奴がいた。
何やら主人公的な空気を醸し出しているので相当なチートの持ち主だと簡単に想像できました。
それにしてもこの状況はジェダ君、完璧な悪役じゃん…フォローは流石に無理だよ?いくら何でも「俺は六大公爵家だから言う事聞け。」的な事を言って…しかもそれ完全に負けフラグ建ててるし…
それしてもその負けフラグを建てさせたあの子はたぶん相当フラグに愛されているな…気になる…


「…イージス君とルカ君と一緒に居た人ですよね?一体アチラは誰なんですか?」

「ああ、ディファイさんは知らないですよね。この試験で仲良くなったエルト=フォーエンハイム君です。あの大きなハート型のマナを出した子って言った方が分かりやすいですかね?」

「あの子がそうでしたか!?それは驚きですね。」

なんと羨ましい才能…何か本気で漫画の主人公みたいな奴だな、絶対俺みたいな人間がなれることのないタイプの人間だ

「飛行船でガーゴイルを一緒に倒した時も相当なマナでガーゴイルを粉砕してましたからね。」

「ガーゴイルを!?」

まず飛行船でガーゴイルってどういうシチュエーションよ?しかも倒すとか…ねぇ~わ。どこのオリ主だよ?ったく、俺みたいな微妙に戦えるモブキャラなら戦って血祭りにあげられるのがオチだしな~
主人公補正とか半端ないだろうし…でも俺はパンピーで十分です。早く帰って社長で天国と地獄をみないとな~
アレを見ないと1日が始まらないんだよね~。
べ、別に、中毒なんかじゃないんだかね!?1日に20回しか聞かないもんね!
ああ~早く帰ってみたいな~。Ip○dに入れてるけど、やっぱり日々変わっていく職人さんの技術をみたいんだよ。

「ガーゴイルを倒すなんてそのエルトという方もルカ君と同じ才能に恵まれておられるんですね。」

「ディファイさんにそう言われると僕も嬉しいです…」

顔を赤らめてるルカ君超可愛いんですけど!だが君はれっきとした男の子なんだよね…小さい時に一緒に大浴場入ったときに既に負けていたのは今でもトラウマです。
因みにトラウマってギリシャ語らしい…何故英語を使わないのかそれはおそらく何となくかと思います。

「私は実力の全てを持ってこの試験を受けるつもりですからルカ君も頑張ってくださいね。」

「僕はこの試験を合格するつもりですから。例えまたアナタが敵として当たっても勝ちますよ。」

ルカ君の気合いは鬼気迫る物がある。それは試験に臨む覚悟としては良いものなのだが、余裕が全くない…それは受験生にとってあまりよくないものである。
でもそれはルカ君の今現在の状況を考えると仕方ない事なのだ。
ジ―クさんが陛下を攫ったという今の現状はグラム家は没落の危機に面しているのだから…
まぁ一般では女王様は今は床に臥せっておられるという事になっている。
何故家系が貴族であって公爵家の人間でも騎士団の人間でもない俺がそんな事を知っているかといえば、何故か親父が女王騎士関係の情報良く知ってるかです。まぁそれもそうだろう。週1であの人が親父に会いに来る訳だから仕方ない…

「ルカ君なら合格できますよ。でも時には力を抜く事も大切ですよ?」

ルカ君の家の状況を知っていてルカ君が血の滲むような努力を見た事があるのでそう言っておいた。俺自身彼には合格してもらいたいこういう人にこの国を守ってもらいたいと常々思っているからです。

「…はい。そうかもしれませんね。」

そう言ったルカ君は何故か何処か遠く見ていた。しかし、ふと何かに気付いたようにこっちを向いた。
何だろう?俺が言ったらやっぱり変なのか…

「あのディファイさん、前にも言ったと思いますけど、敬語は辞めていただけませんか?年上の人に敬語を使われるのはあまり好きではないので…」




おべべ!?




いや間違った、何!?敬語をやめろだと?そんな事できる訳ないじゃないか!!!
いくらルカ君の頼みとはいえそれは無理だ。
六大公爵家のグラム家の次男、今は没落しかけだといえ、俺の実家が相当お世話になった六大公爵家や女王騎士の方々に敬語を使わないとは罰があたる。俺の養育費や生活費やボックスや漫画の代金は元々はこの人達が国を守って頑張って働いて稼いだお金だ。その恩を感じているからこそ俺は敬語を使っているのだ。だからこれはボルト家に生まれたからには守らなければならない掟。俺は小さい時はあまり理解できていなかったが今ははっきり理解できる。だから無理だ!

「ルカ君の頼みでも無理ですね…これは私なりの敬意ですから…」

しんどいけど、恥ずかしいけど、これだけは譲れないね。敬語で話す事自体は恥ずかしいけど、嫌いという訳でもないんだよ。

「超エルト斬り!!」

そんな事を思ってたり言ってたりする内にジェダ君の組はそろそろ終わりそうだった。
それにしたって、自分の名前を使うだと?これは正に熱血な主人公、まさしく王道の主人公を地でいく存在だな。

「俺はこんなところでまける訳には…」

あっ、ジェダ君負けた…後で様子見に行くかな。カルマ君がこっちを見ている。てかイージス君に勝ってるし…流石だな~。けど、まぁケガしてたから妥当かな?

んで何?「悪いがジェダを宜しく頼む…」だって?
分かってるよ、にしてもカルマ君はジェダ君に対して敢えて悪役を演じるのは何でなんだろう?
小さい頃はクーデレだった癖に…
まぁいいか、とりあえず治療室に連れていこう。ザキヤさんにも会えるしな。









Side アイスだと美味しい名の使い捨てキャラ


あっしはこの体力試験で恐ろしい噂を聞いたんす。たった一撃で六大公爵家を倒した男がいるというあり得ない噂を。
あっしはここの国の地方のトナリ村という場所の出身でやんす。村では神童と言われて大人も俺にかかれば負けなしだったんすよ。だからこの国で一番強くて名誉のある騎士である女王騎士になろうと思いここにやって来たんす。
女王騎士といえば六大公爵家が統括しているのが今の現状でありんす、公爵家の子息は絶対に女王騎士にならなくてはならないというものなのでやんす。
その為の努力は血が滲み、肉を焦がし、心を燃やすという程の苦しい鍛練というのがよく聞く話でやんす。しかもその才能は天才クラスであり普通の人間では勝てる訳はないというのが現実でやんす。
そんな六大公爵家の人間を倒す人間がいる?そんなの信じられる訳ないでやんす!

「おい、今グラム家のルカと話てる奴って一撃で倒した奴だろ?」

「ああ、ディファイ=R=ボルトだろ?正直な話、俺もあの試合を見なければザコだと思っていたぜ。」

「なにせ相手を傷つけずに場外に落とすなんて高等技術を使ったんだからな。」

「騎士学校出身らしいからな…貴族学校よりも難関だといわれる学校の…」

「その学校の奴に聞いた話だと、カルマにも勝ったことがあるらしいぜ?」

「マジか!?おいおい、そんなに強い奴には見えないぜ?」

「実力を隠してんだろ?能ある鷹は爪を隠すって奴だよ。何せ奴の2つ名は”仮面”だからな。」

「”仮面”?なるほどな、確かにピッタリの2つ名だ。」

何てことでありんす……
やはり奴はこの試験で要注意ということでありんすね…

「おいおい、公爵家自ら敬語を使うなって…どんだけ凄い奴なんだよ?」

何と!アッシのグループにいたルナハイネンという六大公爵家の一人なんか唯我独尊を地でいく存在でやんす。そんな公爵家の一人に敬語を使わすなんて…

この試験は奴の一人勝ちかもしれないでやんす…








~あとがき~
プロットで試験編終了時にとてもややこしい事になってきた…
因みに原作知っている人は分かっているとは思われますが、原作とはある部分が決定的に違います。それがプロットの大幅修正の理由です。因みに2クールで終了の予定です。(話数的に)まぁOVA(番外編)含めるかもしれないのでまぁ30話ぐらいの予定です。
それにしてもハーゲン=ダッツォって酷い名前だよね?今回勘違いsideは短めです。申し訳ない…



[18999] 5話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:09939ee5
Date: 2016/02/28 17:46

その名を冠するモノは誰でも愛してしまう魅惑の魔物。

男はそれに全てを求める。自分にはないそれを求める為に…

女はそれを欲する。自分の魅力を引き立てる為に…

そう、それは誰もが求める一つの正義(おっぱい)だから。

                         母なる正義 著 オパー=アイ
                         第三章~唯一の正義~一部抜粋


兎に角それはものすごかった。お姉さん好きな俺には堪らなかった。アレこそ正義なる存在だと思ってしまう程であった。
最強にして無敵の存在、それがそこには詰まっていた、それはおっぱい!
おっぱい!

ビバおっぱい!

…すいません自重できませんでした。



ジェダ君の様子を見に行くため運ばれた医療室に行くと案の定ザキヤさんが治療していました。医療用の聖騎装を使いジェダ君のケガをほとんど完治状態にさせていました。
さすが女医騎士!

カルマ君が俺にジェダ君を頼むと言ったのは昔から医療本やら何やらを読み漁っていたからです。何としても死亡フラグを軽減させる為に頑張っていた為わりかしそちら方面の知識はあります。実際、ケガの手当てしょっちゅうしてます。主に自分の。別に過去に病気で死んだ友人や、医者に助けられた訳ではありません。医者が好きという訳ではありませんというか逆に嫌いです。歯医者嫌いです。
虫歯嫌いです。知覚過敏嫌いです。歯周病嫌いです。でも親知らずがもっと嫌いです。
逆恨みだが、嫌いです。助手さんは例外です。
でも普通の医者は好きです。女医さん大好きです。女騎士より女医の方が絶対需要ありますしね。

まぁとにかく、医療系の道に進めばあの乳…
ゴホン、基、ザキヤさんのおっぱいを毎日見れる!

「うん?お前は…“ディファイ”じゃないか」

おっぱ…基、ザキヤさんに話しかけられた。でも会うのは6年ぶりぐらいかな?最近実家のホテルにも遊びに来れないほど忙しかったみたいだしね。
実家の事を言い忘れていたけど俺の実家はホテルなんです。まぁ貴族が経営しているホテルなんで一般のホテルより敷居が少し高い方なんだけど、騎士試験の日は予約がいっぱいになります。理由はよく分かりませんが、“願かけ”らしい。よく女王騎士の人が来るからだという理由からではないかと思います。
親父にも理由は分かってないからな~
まぁそのおかげで女王騎士の人は多少の縁があったりする。六大公爵家の人も実家から近いのにわざわざ試験の日は家に泊まる。不思議で堪らない…
俺はこの試験期間中はホテルが満室で忙しい為手伝いたくないのでばあちゃん家に逃げ込んでました。
まぁ少し話はそれたけどザキヤさんも実家のホテルに泊まる騎士さんの1人で、俺の事を多少は知ってくれていたという訳だ。

「ジェダ君の様子を見に来たのですが…流石ですね。もう治療終わってましたか。」


「まぁな、それにしてもディファイお前の“噂”は良く聞くぞ?」

“噂”?俺なんか噂になるような事した…しましたねつい先程…忘れてましたよ…

「クルタナにカリバーンを出したんだってな。シーケン=カンエーに聞いた時は驚いたぞ。」

そっちか!?
まぁアレは偶々だから凄いとか言われてもね…
「アレはお見苦しいところをお見せして申し訳ありません。」
あんなラスト何秒かで決めるなんてね。後ろがつっかえて迷惑になるというのに…本当に申し訳なかったです。

「ははは、聞いた通りだな。今も昔もお前は変わらんな~」
手を口で押えながら軽く微笑みながら声を出すザキヤさんはドストライクでした。
ミットを構えた処にすっと入ってきました。
ラーメンOPPAI、ははのんき。という感じでした。

「ところでお前まだ医療系の本とか読んでるのか?」

「はい。最近は脊椎とか骨髄損傷の本とか読んでますね。中々これが難しくて…」

まぁ、ケガをした時のケアもあるのだが、実は医者になればナースさんとうはうは天国じゃね?とか思って勉強してた時期もあり、その時割と人間の身体の神秘というものに触れて意外に面白かった為読んでいる。ただ言っておくが専門書じゃない。子供用の学研の漫画だ。しかも結構昔の本、アレ面白いんだ。いやマジで。

何だよコイツもオリ主向きの力があるじゃねぇ~かよとか、努力キャラかよとか思っている人がいるが俺にはそんな設定ありません。ただ面白いことや死ぬのが嫌とかそういった本能で生きている人間なのです。

「ふ~ん、まだあの時期からずっと勉強しているのか?」

「ええ…」

「医療系の聖騎装(エンチャント・ギア)は精密なマナコントロールが必要でな…お前が女王騎士になれば私より優秀な騎士兼医者になれるかもな。」
ザキヤさんは微笑みながらそう言ってくる。俺に気があるのか?と思ったりしてみるが、左手の薬指の指輪が近寄ってくるなと俺に語りかけてくる。

「はは、私みたいな人間がアナタみたいな立派になれますかね?」

というかなれませんけどね。この試験は俺の実力じゃまず受からないから。
因みに俺のマナコントロールは自慢じゃないが凄いらしい。容量自体が少ないし、騎士学校ではこれが重要なテストで出たりするのでおこづかいの為に血反吐が出るくらい練習しまくった。
初回限定版は譲れないし、新作フィギアも買わなくてはいけないから…
そのおかげか俺はマナコントロールにおいてはルカ君、イージス君、カルマ君以上だと言われている。
まぁ、実際は容量が少なすぎるのであんまり意味がない…
ハンター×ハンタ○とかを見てくれたら想像つくだろう。相手は纏の状態でも俺はそれが練の状態みたいな感じ。これじゃ勝ちの目ないだろう?

「なれるさ、お前ならきっと…な。」

何か悟っている感じで言われた。謎すぎる…

「お前が女王騎士になれたら私が直々に指導してやる。」

嬉しいんですが…何だろう嫌な予感がするよ?
死亡フラグを建てさせられた気がするよ?どうなる俺?
まぁいいや、これから試験明日までないからとりあえずニヤニヤ動画見ようっと。





あっ、ジェダ君にフォローするの忘れてた…



side正義の女医さん

バンニール家のジェダとか言う奴の治療を終えた際に久しく会っていない人間に出会った。
ボルト家の嫡男のディファイだ。
最近任務やら内政の仕事やらが忙しくて中々行く機会がなかったが、奴の噂を聞くたびに心が躍った。曰く、天才カルマよりも腕が立つ。曰く、騎士学校で一番マナの扱いが長けているなど、私にとっては嬉しい知らせだった。
女王騎士をしながら医者という仕事をしている私は同期の奴に“甘い”と言われる。医者として助けられる命をみると助けたいと思ってしまい、敵に情けをかけてしまう時もあるからだ。今の処は大丈夫だが、その見逃した連中が牙を向け女王様の脅威になってしまう可能性を同期の連中は懸念している。
まぁその通りだろう。私もこの“甘さ”は捨てたかった。
そんな時私は休暇でボルト家のホテルに泊まった。天気が悪く空が黒かった事を覚えている。その日に私はディファイに出会った。
まだ幼かった奴は学研の医療漫画を見ながら勉強していたのでそれが気になり何気なく私から声をかけた。



「医者もしているんですか?凄いな…需要が2倍…」
ある程度の自分の話をするとディファイはその事に興味を持ったようだった。最後の言葉の意味が分からなかったが、それでも私は話を続けた。

「まぁ、医者は辞めたいと思う時もあるがな…」

「騎士より医者の方が凄いのに…」

ふと奴がそう言ったのが耳に聞こえて驚いた。普通コイツのように10歳ぐらいの年では女王騎士に憧れるし、このアルシリアの国では騎士の方がはるかに待遇が良い。それなのにコイツはそう言ったのだ。

「何でそう思うんだ?」

私は不思議に思いそう言うと少し困ったようにだがしっかり答えた。
「え~と、だってですね…だって人を壊すのは誰でもできますけど治すのは限られた人しかできませんから」


その言葉は私に衝撃を与えた。いや分かっていた事を再確認させられただけなのだが、それでも私の心に深く響いた。
忘れていたのだ、周囲の言葉のせいで私が目指していた本質を。女王騎士になったのは女王様や民を守る為だけではない。民だけを治療するだけではない。無用な戦いで流れる血を防ぐためだ。綺麗ごとかもしれない、無理なのかもしれない。例え相手が敵だとしても更生させて国の役に立つかもしれない。しかし死んでしまえば残るのは虚しさや復讐等といった負の感情になる。その根本を変える為に騎士になり医療の道に進んだのだから。

「ははは、確かにそうだな…そうだった。忘れていたよ。」

「??そうですか…」

私はコイツの事が気になったボルト家の嫡男であるコイツだが今、医療系の本を読んでいるという事は将来医者志望なのかもしれない。だがコイツの父親はコイツを女王騎士にさせたいと思っているのは噂で聞いていた。

「お前は将来何になりたいんだ?医者か?それとも女王騎士か?」

「僕ですか?そうですね…できるなら両方した…」

奴が言いかけた時雷鳴が轟いた。近くに落ちたようで奴の言葉が最後まで聞こえなかったが言いたい事が分かった。

奴は「両方したいです。」と私に言ったのだ。

幼いながらも医者の重要性を分かりながらそれでいて女王騎士を目指す。小さいながらもしっかりとした信念を持っているコイツに私は素直に凄いと思った。

「なれるさ、お前ならきっと…な。」

あれから9年、思った通り奴はここまで来た。しかも同僚のシ―ケンの奴や前評判を聞くかぎりあのカルマ以上の存在になっていると聞く。だが奴は昔も今も信念は変わっていない。
コイツが女王騎士になったら私がコイツを直々に育ててやりたい。医療の道に進ませるのも良いだろう。しかし奴も騎士になりたがっているという事は私の目指した道に足を踏み出そうとしている。
この道は険しいが奴なら大丈夫だろう。
頑張れ。お前ならできるさ。
まず始めに教えるならこの指輪型聖騎装はがいいな。アイツが騎士になったらまずコレの使い方から教えてやるかな。













~あとがき~
さてチラシの裏からスクエ二板に移すかどうか…まぁ8話を突破したら考えます。
勘違いは別にその場面だけで起きている訳ではないという話。学研のよくわかる漫画シリーズ?だったけかな?それ好きでした。アレは面白い。






[18999] 6話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:0f01fd4b
Date: 2010/07/16 08:05
6話「俺が飛ばせるのは嘘だけじゃないぜ!」



Side 熱血サングラスハゲ

飛んでいる飛行船の上で私はふと思考にふけっていた。もうすぐスタート地点の海の上に着く。
今回の試験は過去に比べてもとても厳しいものである、前回に比べるとその厳しさは倍率は10倍といったところだろう。
元来この女王騎士試験の2次は死が付きまとうものである。一度の試験で多くて大体6名程度が二度とこの世に帰って来れない。2次試験でも生きて帰れる程度の奴しか基本的に試験は受けさせない。これは当たり前の事だ。試験の合否を判断するのにイチイチ時間をかけたくないし、人が死ぬのはやはり後味が悪いからである。女王様を守るだけが我々の仕事ではない。民を守るという事も重要な仕事の一つだ。まだ騎士になっていない受験生にもそれは通じる。
まぁそれでも死ぬ奴は死ぬのだが…
しかし我々と同じ土俵の上に立つのなら、心を鬼にしなければならない。死ぬのも生きるのも自己責任なのだ。
今回は毒を用いた試験。解毒薬を制限時間内に作れば合格というものしておいた。それには難関のチェックポイントの課題をクリアしなければならない。さらに解毒薬の薬の総数も決めている為最高人数は決まっているという試験だ。
上からの命とは言え流石にやり過ぎだと抗議もしたのだが、「国を守る為。」と言われてしまえば何も言えない。そもそも私は内政やら何やら細かい事はあまり好きではない。
女王騎士は女王陛下に命を捧げている身。実際の内政は女王陛下がするのだ。
その内政のサポートをするのが代々六大公爵家の面々なのだ。しかし、女王陛下不在の為少しだが不穏な空気もこの国に見え隠れするのも現実だ。
娘であるアルマ姫はまだ陛下が生存されておられる可能性もあり即位できない。そもそもまだ即位できる年齢に至ってないのだが…

まぁ今はそんな事を考えても仕方ないだろう。今は試験に集中しなければ…

それにしても今期の面々は中々面白い奴がいる。
バンニール家のカルマ。奴の実力は頭1つ飛び出している。合格確実と言っても過言ではない実力の持ち主だ。
次にイージス=ブリュンヒルデ。ブリュンヒルデ家の長男で実力も上位、さらに胸に秘めている正義は本物だと思っている。
ルカ=グラム。……兄の実力が弟にも備わっているとするのなら相当の実力者のはずだろう。
この他にもジェダ=バンニールやジョニー=C=パッドなど才能に恵まれた人材も豊富である。

だが私が今最も注目しているのは2人。

エルト=フォーエンハイムとディファイ=R=ボルトだ。

まずエルト=フォーエンハイムだが、今の段階では到底この試験は受からないだろう。しかし奴には何かを感じさせるものがある。
先程の口頭試験でも、難関な騎士聖典や女王騎士法などもスラスラ答え、どれだけ真摯に女王騎士になろうとしていたかが伝わってきた。受付で見せた潜在マナの大きさも奴の器を感じさせるのだ。
なんにせよ楽しみな奴である。

そしてディファイ=R=ボルト…
奴はこの私をして真価を測りきれない。受付の時のあの精巧なカリバーンにしても、体力試験の時もルカ=グラムに勝利を収めている。しかもほとんど力も技も見せずにだ。今後も奴には目が離せないだろう。
それに奴の“噂”は“昔”から良く耳にしていた。
時計をみるともうすぐ時間になるので試験の説明を始めた。

「今回の試験ではコレを使う。」

と水槽の魚に毒の入ったカプセルを食べさせる、すると魚は死んだ。
コレに動揺を隠せない受験者の面々。さらに過酷な試験内容を説明すると、「理不尽だ!」と文句を垂れる。
国や姫を守ろうとする騎士が自分の命をかけないでどうする?
どれだけ身体を鍛えようが技を磨こうが、精神力がなければ任務を達成できない。そもそもマナという心の力を使う時点で臆病者は騎士にはふさわしくない。
受験生の面々が動揺する中、目で直ぐに毒薬を渡せといってきた奴がいた。そうディファイ=R=ボルトだ。毒薬を渡してやるとつまらなそうに毒薬を見ていた。
何を考えているのか全く分からない。そんな事を思っていると奴は欠伸をすると同時に毒薬を飲んだ。

「な!?」
「え?」
「嘘だろ?」
「ボルトさん!?」

他の受験生は愚か、私達試験官も正直驚きを隠せなかった。
毒薬を飲めばもう試験を受ける以外に助かる見込みはない。そう説明したばかりの状況であっさりと欠伸と同時に毒を飲んだのだ。
まるで自分の命に興味がないかのように…
自分の命を簡単に捨てられる…それはつまり自分よりも優先させられるものがあるということだ。
しかし貴族の嫡男であるディファイ=R=ボルトが何の躊躇もなく飲むなんて…
奴の実家は貴族として上流の方に位置する。普通に暮らしている上流貴族ならここは辞退するはずなのだ。しかし何のためらいもなく毒薬を飲んだ。
確かザキヤの話では奴は医者も目指していると言っていた。となれば命の尊さを良く理解しているということになる。
となればこの試験に元々命を懸けるつもりでおり、この程度の事では信念も覚悟も揺るがないということなのだろう…

もうこの時点で既に合格点だ。
他の受験者にもコイツのようになってもらいたいものだ
「今この受験者が飲んだ毒は自力で解毒薬をつくらないとないぞ。」
まぁ先程言って分かると思うがもう一度言っておいてやった。

「早く始めてくれませんか?」

もう始めたがっている…ならばもうやるしかないだろう。

「ははは!!コイツと同じように覚悟があるのなら私について来い!」

大きな窓を開けて、そう言うと私は海に向かって飛び降り海面上を走った。
そして島に着き、受験生を待っているとぞくぞくと受験生達がやって来た。しかし目の前には崖。
まずこれを登らなければ何も始まらない。

「ここら一帯はすべて天然の崖でな。海をいくらか廻ったところでそう変わらんぞ?」

と受験生に言っておいてやる。

「どうやらこの崖を登るしかないようですね…」

「そうだな…崖付近を回ったとしても時間がかかりそうだな。」

公爵家の2人は崖の上を登ることを選択したようだった。それもそうだろうそういう風にしてあるのだから。

「ボルトさんはどうするんですか?」

「急がば回れというでしょう?私は廻ります。」

「ええ!?王=道さんの話を聞いてなかったんですか?」

「正気か!?」

「はい、正気ですよ。ルカ君やイージス君は好きにしてください。」

そう言った奴は一人だけさっさと歩いて行った。
残った2人は顔を見つめ合い、結局メイドが来るまでどちらに行くかで迷い、崖の上を登ることに決めたようだった。
実は、海へ廻るというルートは崖を登るルートより簡単になる可能性がある。もちろん基本的は難しいルートなのだが、抜け道に気付けば簡単に第一チェックポイントに行くことが可能なのだ。
どうやらディファイ=R=ボルトはそれに気付いたようだ。

もうコイツは私達と同レベルの観察眼はありそうな気がする。
この試験はもっと面白くなりそうだ。




んちゃ!私はディファイだよ~
ほよよ?次はディファイにラピュタみたいなフラグが建つんだって!でもたぶんすぐに破壊されちゃうよね~
だって運命破壊(フラグブレイカ―)だもん。
次回「ラピュタ的な事が起こってもフラグが建たないのはコレいかに」
だよ!お楽しみにね

~あとがき~
にしたいですけど本編Aパートどうぞ



あの後、ジェダ君の様子を見に行ったが、普通に寝ていて話しかける事もなかったので、帰ろうとしたらカーテン越しにイージス君が治療中だったらしい。
声を掛けようとしてカーテンを開けようと思ったら、とてつもなく嫌なオーラを感じたので開けなかった。
カーテン越しに挨拶したらイージス君は隙間からなんか恥ずかしそうにコッチを見ていた。何でだろう?
因みにエルト君は完全に爆睡してたのでそのままスル―しておきました。

もうやる事が何もなかったので、ばあちゃんの家に帰ると俺はニヤニヤ動画を見まくった。
何か聞いた話だと下手(合格)したら1週間ぐらいニヤニヤ動画が見れなくなるらしいので徹夜で見た。
んで一次試験の結果を張りだしていたので見てみたらなんと突破しちゃってた…
心の中で泣きましたとも、俺の死亡フラグが目に見えて大きくなっていく。塵もつもればやまとなでしこなのだ。
因みに
○○様が出る幕ではありません。ここは私が…
とか
俺この戦争が終わったら結婚するんだ。
とか
パインサラダを食べちゃった
とか
この仕事が終えたらまとまった金がはいるんだ。
とか
やったか?
とか
俺の○○は108式まであるぞ!
とか
セ○クスの前のシャワー
とか
殺人犯がいるような部屋に一緒にいられるか!
とか
勇者よその程度か?
とか
正義の騎士としちゃベタすぎ(ry
とかのフラグは一発でアウトです。これを回避できるのはマク○スのあの方ぐらいとアルちゃん仲間が言ってたが、俺はマク○スをみた事がないのでわからない。
正直フラグうんぬんかんぬん言ってる俺だけど、自分の中でフラグとは心の予防線です。コレをしてなければ大丈夫だろうという小さな願望なのですよ。

「女王騎士団、団歌斉唱!」

「女王陛下の旗の下~、我等は集う~、絶対正義の名の基に民を平和へ導こう~…」

何やら上から歌声が聞こえたので空を見上げると空中に浮きながら歌を歌っているエルト君にそれを一緒に浮かびながら聞いている王=道隊長がいた。

うん、俺この中でやってける自信が無くなった。

───飛行船の上でルカ君に話を聞いたところあまりに字が汚いので口頭で再試験でああなったとの事だ。体力試験はトップだから筆記試験の答えが正確ならOKだということらしい。
おかしいね…
普通いくら体力試験が上だとしても試験の字が汚いならその時点で不合格は決定なんですよ。騎士学校で一度徹夜してテストに臨んで82点は取れたテストが「字が読めません」と赤い字で答案用紙が帰ってきて結果は47点。流石に泣きました。
それを考えるとなんて運がいいのだろう。それにしても先生が汚い字でも丁寧に書きなさいと言ってたのはこういう時に下手な結果が出ないようにする為だと思うと先生はすごいなと思う。
うん、社会に出た時に重要な事を教えてくれる学校はとても大切だ。
皆!学校に行こう!

──ディファイの愛がニートを撲滅させると信じて…
 
 
 
「今から2次試験の説明を始める!」

と思って現実逃避をかもして逃げ出そうとしている俺に現実は酷く冷たい。
説明を聞いているとデス・トライアスロンとの事でチェックポイントを通ればどんなルートでも良いらしい。魔境の近くや荒野の真ん中にもあるとの事。
やばいね。俺もう死んじゃうね。
さらに毒薬を飲み、チェックポイント毎にある解毒薬を集めなければならないとのこと。
もうあれだね。狂気の沙汰どころの話じゃないですよね。アカ○さんですらこんな事やらないよ…いや、あの人ならやるな…
あの人は本当にチートだから…
まあ一般ピーポーである俺はもうねここでリタイアですね。両親も命が係わっていると分かれば許してくれるだろう。
王=道隊長に目で俺はリタイアしますと訴えると、当たり前のように毒薬渡された。
何その私は言われなくても分かってます的な顔は?
俺は飲む気は全くないよ?可能性ゼロだよ、じぇ~ろ。
それにしてもカプセルね、これ飲んだ振りして受ける奴とかいるんじゃないの?粉とかにしておくべきだと俺は思うんですけどね。
それにしても今日は眠い…
昨日は少しニヤニヤ動画見すぎてあんまり寝てないんだよね。あ~あ、あくびが出るわ。

「へ、へっくしゅん」

っごっくん…

っへ?ちょっ、おまっ…ビックりして飲んじゃた?毒薬飲んじゃった!?死ぬよ、俺死んじゃうよ?クシャミした奴!お前が俺を殺したのと同義になっちゃうんだぞぉぉ?
くしゃみしたのは誰だ!?
…何てこった、試験官だよ…こんな時にくしゃみしないでくれよ。頼むよ…
まぁでも今なら助か…
「今この受験者が飲んだ薬は自力で解毒薬をつくらないとないぞ。」

おい…待てよ、飲んじゃったら試験に受かるしか助かる道ないって…どんだけ鬼何だよこの試験は!?お前等本当は人体実験とかやってるだろ?

「早く始めてくれませんか?」

自分の命が危ないのは嫌ですから、さっさと始めてください。こうしている間にもう命の灯がどんどん消えかかっていくから。カルマ君と一緒にいればたぶん何とかなるから、早くして。

「ははは!!コイツと同じように覚悟があるのなら私について来い!」

大きな窓を開けて、そう言うと海に向かって飛び降り海面上を走っていった。
いやいやあり得ないでしょう…マナ?いやあれは片方の足が沈む前に逆の足を出して前に進んでいる言わば曲芸なのよ。
そして俺はカルマ君が薬を飲んで飛び降りた後をついていった。
だが俺の身体能力でカルマ君と一緒にスタートして間に合うはずもなく、ゆっくり平泳ぎしながら海岸まで泳いで行った。

島に着くと当然カルマくんは崖を上っていた、しかし俺には登る事は大変困難な崖があった。
まずこれを登らなければ何も始まらないのだが登れない。

「ここら一帯はすべて天然の崖でな。海をいくらか廻ったところでそう変わらんぞ?」

と王=道隊長は言う、しかし俺は登れない。ちょっと試しに登ってみたけどやっぱり登れない。

「どうやらこの崖を登るしかないようですね…」

「そうだな…崖付近を回ったとしても時間がかかりそうだな。」

ルカ君とイージス君は登るらしい、俺は登れない…でも言うのは大変恥ずかしい。「俺登れないから担いで上まで運んでくれない?」ってこの状況で言えるはずもない。

「ボルトさんはどうするんですか?」

ルカ君が登るんだったら一緒に登りませんか?みたいな感じで聞いてくる…いや登れないんだってば。

「急がば廻れっていうでしょ?私は廻ります。」

「ええ!?王=道さんの話を聞いてなかったんですか?」

「正気か!?」

驚いている…いや俺だって登りたいんだけど登れないんだよ。崖とか俺のトラウマが詰まってるんだよ…

「はい、正気ですよ。ルカ君やイージス君は好きにしてください。」

もう俺を放ってさっさと登ってください。頼みますから。
まぁなんとかなる事を祈るしかないわな~…
 
って、ちょっと横に入った処に抜け道あるじゃん!ラッキー!!


~あとがき~
はい今回はちょっと趣向を変えてみましたがどうでしたか?
因みにラジオ風のネタの方は反応がないので投稿しようと思っていたネタが没りましたwww
まあそういうもんですね。
死亡フラグって長年の歴史の中から誕生していますけどパインサラダは知りませんでした。ステーキは知っているんですけどね。
これから月1ぐらいになると考えていただけると嬉しいです。




[18999] 7話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:22dc5c9e
Date: 2010/08/01 10:43
7話「ラピュタ的な事が起こってもフラグが建たないのはコレいかに」
 
ラン、ランララ、ランランラン、ランランラララ♪
金色のなんたらかんたらに…は確かナウシ○だった気がするんだけどさ。
借り暮らしのアリエンティを見たいを思います。アリエンティって面白い名前だよね?
え?アリエンティじゃない?…
…トイ・ストリー3は見たいです。ガチです。
一応言っておくがワザと間違ってるんだからね?
さてリリカルディファイSAGA OF QUEEN KNIGHT始まります。


ラッキーなのかどうか今考えると良く分からない抜け道でイノシシが襲ってきました。普通のイノシシでも大概強いんだけどね。俺がやっとこさ倒せるレベルなのに、体長2m近くあるバケモンが襲ってきたんですわ。

「プギャ嗚呼ああぁぁぁぁぁア!!!」

というバカでかい鳴き声で俺の戦意をどんどん刈り取っていく…

「俺の力を舐めるなよ!」

と自分に言い聞かせるように剣を抜く。心臓バックバックですけどハッタリかましてやったんだ。
何故かって?何となくだよ?

だって小さい箱と大きい箱どっち選ぶ?とか聞いたら大概の人は選ぶ理由は何となくだぜ?まぁ一応心理的要因が絡んできたりもするんだがそんなことは知らない。

「GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!」

さらに興奮させたようでちびるぐらいビビった。

ご、ごめんなさい
と土下座するとイノシシはそのまま岩の岸壁に突っ込んでいった。

すごい音がした。バットで思いっきり頭を殴られたような鈍い音が辺り一面に轟く音が…

するとイノシシがピヨっていた。不思議な事に鳥がピヨピヨするのが目に見えました。
そうそう因みにね本当にものすごい衝撃が頭にくるとね星がピカピカするんだよ?
まぁ漫画みたいに本当にあんな感じじゃないんだけどね。ピッカピッカに光るんです。電気が走ったという表現が近いのかどうか微妙だけどね。ただ本当に星が見えます。経験者は語るという奴です。


「ディファイさん…大丈夫ですか?」

とシェリーちゃんが俺の心配をしてくれる。

「今日の晩飯だね。」

と取りあえず年長者として安心させるために笑っておきました。二コポになればとも狙いましたが…無駄だったようです。変な感じで笑われました。
シェリーちゃんが何故こんな処でルカ君やジェダ君とか一緒にいないかと言われればまぁ3時間前まで遡りやす。

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3時間前

泳いで少しのとこから抜け道を発見したのでそこからとことこ歩いて行くと断崖に囲まれた場所に着きました。
途中に湧水があったのでそれを横に落ちていた太めの木を削ったりして水筒にしました。
とりあえず飲み水確保。サバイバルというので水は貴重な資源。喰い物より順位は必然的に高くなっていく。水があれば一週間はなんとか生きていけるからだね。

その時頭の上に何か木の枝が落ちてきた。
そして上を見ると
なんということでしょう。

メイドin the sky!!

ってなんじゃそりゃああああ!?
おおっと何かメイドが降ってきたよ!?
どこのラピュ○だよ!!って言いたいところだけど残念ながらその落下スピードは半端なく速くてそんな事をいっている場合ではなかった。
とりあえず目の前でリアルなトラウマにならないように全力でその子を助けようと腕を広げた。
その時彼女は俺の腕に落ちずに背に落下してきた。その時足が頭に直撃。一瞬意識が飛びました。ピッカピッカになりました。

「ぐひゃ…」

と思わず零してしまったのは仕方ない事だと思う。いや仕方ないに違いない。
落ちてきたメイドを見てみると普通に可愛らしい女の子だったので驚いた。これは本気でラピ○タフラグか?と思いながら女の子を横に寝かした。とりあえず動かさない方が良いだろう。水筒の水で俺のマフラーの生地をハンドタオル程度の大きさに切り額に乗っけた。
その時に顔をよくよくみるとシェリーちゃんでした。
「…シェリーちゃん?」
アリエンティ!!『なしてこないな田舎におるんじゃ?』という気分になりながら目が覚めるのを待っていると、

「…う、ううん、ア、ナタはディファイ、さん?」

と言って目を擦りながら起きてきた、衣服が少しボロボロで結構ケガをしていたのに動こうとするのでそれを静止する。

「どうしてアナタがここに?」

「アナタが上から落ち…降るってきたんですよ。」

受験生に落ちる滑るというのは禁句です。危なく言うところだった…

「私、行かなくちゃ…ルカ様が待ってるから…」

と言いながら動こうとするシェリーちゃん。いやいや上見えないぐらいな床から落ちてるなら相当あぶないからね?

「あっ…」

そう言いながら倒れるシェリーちゃん。言わんこっちゃない…言ってないけど…

「傷を見せてください。」

そう言いながら懐にある緊急医療セットを出す。塗り薬やら包帯やらなのでそこまでかさばらないの携帯に便利なのでよく持っている。海に落ちた時にも濡れないようにしっかり防水加工済みの袋から取り出す。

「わ、私はそんなもの別にいりません!!」

何で怒ってるんだろ?ああ、男と女2人だから警戒しているんだな?
失敬な!俺は20歳以上の女の人にしか興味があんまりないんだぞ?多少はあるけどさ、ジェダ君の想い人を好きになりません!大体ここは全年齢対象だからね?そんな事する度胸はないよ。

「ケガが化膿して酷くなる前に見せてくれないかな?」

所々擦り傷やらなんやらがあって中々やばい、学研の漫画が役に立つ時がやってきたようだ。

「で、でも…」

そ、そこまで信用がないとは…結構ショックなんですけど…
ええい、こうなりゃヤケじゃ!水筒の水をぶっかけて、塗り薬をぬる。

「ん、ぐっ…」

染みてるようだ、無理もないだろう。だがここで放っておくと余計に酷くなるので今治しておく。そんで包帯巻いてあげた。

捻挫やら内出血をしていた、しかもくるぶしがかなり腫れている、しかも青黒い。
ある程度は歩けるらしいが剥離骨折とか骨にひびが入っている可能性もあるのでこれ以上試験は無理だろう。

その旨を言おうとするとイノシシが現れたんです。

で冒頭に戻る。

まぁ、一人なら確実に逃げていたんだけど、怪我人をほっぽり出して逃げるような人間にはなれずに、覚悟を決めて格好つけようとして失敗する訳だったんですよね。

しかも、俺のお腹が鳴ってしまって格好がつかないという訳ですよね。まぁそのままイノシシを丸焼きにして美味しく頂きました。
ただ、やっぱり丸焼きにして正解だと思いました。内臓とか取る度胸ないしね…
火種はシェリーちゃんが持っていたのでそれを使いました。

食べながら、それとなくケガの状態を話して。これ以上先に進むのは無理だという事を説明しておく。


「ここでリタイアして下さい。」

「でも私は!っつ…」

大きな声を出したせいかケガが傷んだらしく、足をおさえていた。

「ケガが酷くなって命が無くなったら本末転倒ですよ。リタイアした場合は何とかなるとおもいますしね…」

いまさらだが何とかなるだろう。考えてみると誓約書も何も書かなかったので死んだのならそれは多額の賠償金を得られるというのは一応この国の法律だ。
大体この国の民の命を奪うような事はないだろう…たぶん。
どうでもいい話なんだが俺の親父はこの試験の期間の間多額の保険金をかけている。抜け目のない親父だ、まぁ俺でもそうするから文句は言えない…
それにしてもどんな親子関係なのだろうか?俺達は。
普通に「250万カネーを保険金でかけておいたから死んでもいいぞ?」なんて言う親は良い親なのかどうかはわかりません。
まぁ息子として親父が蓄膿症と聞いた時はそっとお墓を建てておいた。
石だけつんで崖の上においてある。誰がどうみても墓だろうと思っている。
まぁあれで死ぬ人は滅多にいないのだけどね。

「俺も一緒に行くから。それならいいでしょ?」

「え!?でもそんな事をしたらアナタが…」

「“騎士たるもの献身の心を忘るるべからず”それが例え試験でも同じですよ。」

うわ~、自分で言っててもクッセ~。正直俺がこの子の側だったら普通にひくわ。
にしてもリタイアできると思ったらこんなに口が動くものなのか?何という保身の塊なのだろうか俺って。てかシェリーちゃんだと敬語が時々抜けるね~。何でだろうね?一応その年で奉公しているから尊敬に値するはずなのに…ああ、何か妹みたいだからかな?
なつかしいな…今どうしてるんだろう?

「ルカ君の為だと思えばいいんですよ…」

と昔の事を思い出しながら臭いセリフを言っている俺…自分のキャラがよく分からなくなってしまった。

「いやお前はリタイアしなくていい、俺がその子を引き取ろう。」

ん?誰?
聞いたことのある声がするのでその方へ向くと仮面をかぶっている人がいた・


「俺は通りすがりの…」

仮面ライダー?
ていうか声で分かるんだけどねジ―クさん?

「仮面の騎士だ…」

…うわぁ、この人何処かへ行方知らずになったはずなのに何してるの?
まぁ何かしら理由があるのは知っているけどさ…詳しい話を聞いていないからよくわからないんだけどね。

「アナタは一体?」

あまりの出来事にとりあえず、呆然としている俺。何で仕えたことのある人の声に気付かないの、シェリーちゃん?

「俺は女王騎士だ。」

そこに元をつけておくべきではないのだろうか?しっかし、何故ここに?

「何でここにいるんです?ジー…ムググ……」

名前を言おうとすると口を塞がれた。口でじゃないよ?一応言っておくけど手ですよ?

(お前…何で俺の事が分かった?)

(いや、声聞いたらすぐ分かりますって普通…)

(この仮面かぶってたら分からんだろう!?)

(いや、分かりますって…)

(と、とにかく今はシェリーには言わなくていいからな?後で事情を説明しておくから。)

(ルカ君には?)

(…アイツには、時期が来てから俺が説明する。)

(分かりました。)

「何をこそこそ話しているんですか?」

小声でボソボソ話しているとシェリーちゃんからのボイスが入りました。

「まぁちょっとね…」

と誤魔化しながら俺は言うとジ―クさん、基、仮面の騎士は勝ってにイノシシの肉を食っていた。あの仮面顔半分し隠れていないのに、それでバレナイと思っているのが不思議です。

「まぁ、それは置いといてケガしてるなら俺が面倒見てやるよ。」

と肉をうめぇうめぇ、言いながらそう言っていた。

「ここでコイツに迷惑かけるのはよくないだろう?」

いや、迷惑どころかリタイア大チャンスなので喜ばしい事なんですけど?

「そう…ですね、分かりました。ここでリタイアします。ルカ様に会ったらシェリーは無事だと伝えてくださいね。」

「女王騎士になれよ。お前になら任せられるから…な。」

何だこの展開?俺はリタイア出来ない感じの展開になってませんか?これ?
やっべぇ…このままじゃ初めてできそうな尊敬されるフラグが奪われる!というかリタイアできなくなっちゃう!

「じゃあな、お前とアイツにならこの国を任せられるぜ!」

「ちょっと!」


…行っちゃたよ、この国の人何か俺と気が合わない人ばっかりなんだよね…
正直な話さ女王騎士になりたいと思ってる奴等だらけのこの場で気が合う人間なんているわけがないけどさ、それでも悲しい…
それにしてもまたリタイアチャンス逃しちゃった。まあいいや、とりあえずイノシシを食べておこう。

あれ、おかしいなしょっぱいぞ?




Side 狙撃メイド。

私はもう命の終わりを覚悟していた。ルカ様を庇う事ができて私はもう十分だった、けどやはり病気の母の事が気になる

そして私は意識を手放した

「…シェリーちゃん?」

ルカ様でも手も足も出なかった男。ディファイ=R=ボルトがそこにいた。
私は正直この人があまり好きではない。あまり物事に関心のないような顔がその理由の一つだ。

「…う、ううん、ア、ナタはディファイ、さん?」


「動かないほうがいいですよ?」

そう言いながらディファイさんは木でできた水筒から水を渡してきた。その表情はいつもの無関心な顔ではなく、本当に人を心配そうに見ていた。


「どうしてアナタがここに?」

「アナタが上から落ち…降るってきたんですよ。」

そうだった私はルカ様を庇って…ディファイさんが助けてくれた?
いや、この人はルカ様が言うにはカルマさん並に容赦がない人らしいからそんな事をするわけがない。気まぐれで助けたんだろう。

「私、行かなくちゃ…ルカ様が待ってるから…」

私は歩こうとするが足に激痛が走って倒れてしまった。

「傷を見せてください。」

ディファイさんはそう言いながら懐にある緊急医療セットを出していた。どうやらケガを見てくれるようだった。でも私はこの人の事があまり信用できていない。ジェダ様と仲が良いし、実は悪い人ではないか?と前々から疑念に思っていたからだ。

「わ、私はそんなもの別にいりません!!」

と声を荒げてしまった。そんな私の様子を不思議に見ながら、でも顔をみてしっかりディファイさんは

「ケガが化膿して酷くなる前に見せてくれないかな?」

と言った。あまりに真剣な表情に私は少したじろいでしまった。

「で、でも…」

不服そうな表情でいきなり水を傷口にかけられた。

「ん、ぐっ…」

染みた。やはり傷は中々酷いようだった。それはそうだろう、あんなところから落ちたのに生きているのが奇跡なのだから。これぐらいのけがで済んでよかったのだから。
ディファイさんは容赦なく塗りぐすりを塗って包帯を巻いてくれた、どうやら慣れているようですぐ終わった。

その時だった、イノシシの化け物が現れたのは…

「プギャ嗚呼ああぁぁぁぁぁア!!!」

というすごい鳴き声で私の戦意を刈り取っていく。ケガで動けない…、もう終わりだった。せっかく助かった命なのにもうここで潰えてなくなるのかと泣きそうになる。

「俺の力を舐めるなよ!」

とディファイさんは剣を抜いた。何故?私をおとりにしたら逃げ出せるのに…いくらディファイさんでもあんな大きなイノシシに1人で私というお荷物がいて勝てる訳がない。

「GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!」

さらにイノシシは興奮したようで後ろ足をけりながら突進するする為に溜めていた。

イノシシはものすごい勢いでディファイさんに飛びかかっていった。
するとディファイさんはしゃがみこんでそれを避けた。
そのままの勢いで岸壁に突っ込むイノシシ、ブレーキがかかる訳でもなく頭から自分の突進を壁に返され、そのままイノシシは絶命した。

「ディファイさん…大丈夫ですか?」

と一応無事かどうか聞いておくと、

「今日の晩飯だね。」
と笑っていた。

この人はレベルが違う…
ルカ様に勝ったのもうなづけるぐらいの強さだ。私を助ける為ではなくイノシシを食べたかったから偶々私は助かったのだろう…

イノシシを食べながら、ディファイさんは私のケガの状態を説明してくれた。

「ここでリタイアして下さい。」

「でも私は!っつ…」

大きな声を出したせいかケガが傷み、足をおさえてしまった。でも私はルカ様を女王騎士にするお手伝いがある。例え命が果てようとも…

「ケガが酷くなって命が無くなったら本末転倒ですよ。リタイアした場合は何とかなるとおもいますしね…」

そう言いながらディファイさんは笑う。受験生が少なくなるから笑っているのかな?
そんな事を考えている私は次のディファイさんの一言で後悔することになる。

「俺も一緒に行くから。それならいいでしょ?」

「え!?でもそんな事をしたらアナタが…」

「“騎士たるもの献身の心を忘るるべからず”それが例え試験でも同じですよ…ルカ君の為だと思えばいいんです…」

ああ…私は何てバカだったのだろう、この人の本質を見もしないで勝手に恨んで…大体私を助けてくれたのは、この人じゃないか…明らかにこの人がいなければ私は死んでいた…それなのに私は何か裏があるのだと勘違いして…
イノシシも私に向かう可能性があったからワザと声をかけて注意を自分にそらしたのなんてすこし考えたら分かったはずだ。

その時だった。仮面の騎士が現れたのは…

どうやら仮面の騎士とディファイさんは知り合いだったようだ。仮面の人は女王騎士らしい。

「ここでコイツに迷惑かけるのはよくないだろう?」

と仮面の人は言ってきた。
確かに…こんな人こそ女王騎士になるにふさわしい人、私のせいでリタイアさせる訳にはいかない。

「そう…ですね、分かりました。ここでリタイアします。ルカ様に会ったらシェリーは無事だと伝えてくださいね。」


私は仮面の人におぶられて、その場を後にした。

「ああ、そうそうその毒薬はさ、実は人間相手だと1週間後にちょっとした麻痺がくるだけなんだ。だから別に解毒薬いらないんだぜ?だから大丈夫だ。」

と仮面の人はそう言いながら笑っていた。私はその声と何故か懐かしく感じる背中に安心したのかそのまま眠りについた。


ルカ様が合格できますようにと願いを込めながら…




---------------------------------


「寝ちまったか?無理もないか…解毒薬に関しては“前回の試験”までならそうだが…今回は集めておいた方がいいかもな…」

仮面の騎士はおぶっているメイドのすやすやとした寝息を聞きながら微笑んでいた。
仮面の騎士は前回の試験の受験者であるから事の多くを知っている。だが今回ばかりは少し様子がおかしい。
そう彼の本能が告げていた。

陛下の失踪後初めての試験

魔黒装

魔黒騎士

それぞれが悪い方向へ向かっている。だからこそ彼は今回のシェリーの事でディファイを信頼した。自分の事よりも相手を尊重できる心を持つ器を持つもの…それは言葉では簡単だが中々できることではないからだ。

(ったく、まさか一発でバレルとはな…)

先程の事を思い出したのか頬笑みは苦笑いへと変化していた。

(まぁエルトの奴も相当育っていたみたいだし…アイツ等が居ればなんとかなるかな。)

そんな事を考えつつ、仮面の騎士は歩いて行くいつの間にやら雨が降ってきた。マントをメイドが濡れないように被せて少し急ぎ足で仮面の騎士は歩いた。

「まぁ、俺が持っているから大丈夫だけどな…シェリー、すまなかったな。もうすぐだから待っててくれよ…」

そう呟いた彼の表情は決意に満ちていた。

~あとがき~

一応言っておきますが、勘違いされるパートは毎回シリアスを入れているつもりです!(キリっ)
どうでもいいことですがね。

ディファイさんはラッキー補正しかかかっていません。結局シェリーさんはルカLOVEのままです。恩はあっても恋になるかは別ものですからね。
さて次からスクエ二板に移動してもよろしいでしょうか?
感想に「まだ早い」とか「いいんじゃね?」とか書いて欲しいです。
まぁ気が向いたらでいいので感想ください。




[18999] 8話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:baf035f0
Date: 2010/08/06 11:53
8話「解毒剤か?欲しけりゃくれてやる…探せ!俺のはやらんぞ!!」

富、名声、力、まぁたくさん欲しいものはあるけれど、とりあえず富だけは欲しい、後は引きこもって暮らしていけるのがBESTな訳ですね。
でもひきこもりは全然楽しくないらしいので、ある程度は働くようにするべきです。ニートはダメだと思います!
だから、命だけは助けてください……
頑張って働きますから!
─いや、嘘じゃないって週1で働くから。
え?週5は働け?
ごめん、やっぱり考えさせて……
 
 
 
 
あの後少し雨に降られて、洞窟で一晩を過ごした。サバイバル形式なら体力の温存は必須なのである。まあ洞窟というより横穴と言った方が正しい感じの穴でしたけどね。
そして翌朝一番に第一チェックポイントに着くと誰もいなかった……
 
あれ?
何で誰もいないかは分からないが、取りあえず奥に進むとその場から撤収しようとしている女王騎士の人がいた。
 
「え?まだ受験者いたの?」

驚いたようにそう言われた。いや俺の方が驚きなんですけど?なんでチェックポイントに人がいないのよ?

「い、いや、あのねこの第一チェックポイントはもう私しか試験官はいないのよ。一応確認の為にね残ってたんだけど…どうしようかしら、もう受験生アナタだけなのよ……」

「いや、サバイバルと言われて特に時間制限も言われてなかったので7日までに辿りつけるようにしていたんですけど…」

そりゃあ数が限られているとかは確かに言ってたような気はするけどさ、分かりやすい感じにしてくださいよ?コッチは命がかかってくるので慎重にならざるを得ないでしょうよ!?
それで何?ここでリタイア?なら解毒剤はもらえるなら全然OKですけど…

「あ~、隊長……あのまだ受験生がいたのですが…ええ、そうですねもう後には来ないかと…リタイアさせますか?えっ、残りですか?そうですね、予想より人数が少なかったので後6つほどは残っています。」

電話して上に確認している試験官の人、何か会話の予想がつく感じで喋っている。悪い感じで予想が的中しそうでとてもイヤなのだが…

「ええっと、アナタはサバイバル形式という本質を理解しています。なので特別にここの試験は通過できます。」

やったね!

みたいな感じで渡された。
べつに解毒剤なくても第一チェックポイントは通過できると試験官に言われた。ただ次の試験は本来2人1組で組むらしい。だから1人で進むことになるのはフリになるので特別サービスに解毒剤を渡されたということらしい。
いや、本来2人1組ならさ、絶対2人1組じゃないとクリアできない試験があるってことだよね?これだけ渡されたって嬉しくないんですけど?


「では頑張ってね。」

テレポートして消えた。

「どうすればいいの?」

そんな俺の言葉は残念ながら誰も答えてくれなかった。
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10分程呆然としていたけど、毒が全身に回ったらおわりなので、とりあえず先に進んでから考えようと思い、進んでいった。
進んだ先は真っ暗やみの洞窟だった。トラップだらけだったけど、マナコントロールが得意な俺はマナ感知も得意なので、楽勝でクリアできた。真っ暗闇でも“凝”を使えば大丈夫だということです。
しかし、途中で人骨あったので泣きそうになりました。
これを見ていると、法律とか隠蔽してそうな集団な気がするので、リタイアできるか不安になりました。そういった万が一がある為に、俺は頑張って無理なとこまで進もうと思う。

洞窟を抜けてとにかく歩いて行くと何やら声が聞こえてきた。

「く、4人が相手ではファンタティック・パエールも使えない…」

「けけけ、おいおい俺達から逃げられるとでも思ってんのか?」

ベタすぎるシチュエーションに良く出くわす。これが女の子なら良いのに、何故に男なのか…
明らかに逃げているのを追いかけている男達の4人組。騎士道精神は何処に行ったのやら……
こういう奴等は大抵受からないのだろう。まぁ命が掛かっているのに騎士道精神うんぬん言ってる場合じゃないよな。
げっ、こっちに来たし!こっち崖で行き止まりなんだけど!!?

「ア、アナタはディファイ=R=ボルト…」

あれ?何で俺の事知ってんの?

「な、アイツはディファイ=R=ボルトじゃないか?」

「奴が相手じゃ、俺達も危ういぜ…」

「だが、どうする?解毒薬が無ければ俺達死ぬぜ?」

「同盟の他の奴らを呼ぶか?」

「いや……戦うしかないだろう。相手が“仮面”であろうともな!」


“仮面”って何さ?
そう言えば俺の事“仮面”とか言ってる奴が居たな~。
もしかして自作の“仮面ライダー”のコスプレがバレタのか!?
いやコレは小さな時からやってきたことだけど、絶対バレナイようにしてたのに……
クウガのコスプレ…

「よし、行くぜ!!」
とか言って襲いかかろうとしている面々。何で俺も襲うのよ?
とりあえず剣を抜いて威嚇する。

「どうでもいいんですけどね…」

溜息を吐きながら構える。隙だらけの構えで…俺は剣術苦手なんだよな。

「俺に手を出して無事に生きられる度胸あるのか?」

ハッタリ作戦、言葉はポンポン出てきます。心臓バックンバックンです。まぁイノシシの時程ではないにしても、普通に4対2は不利だって。

「ん…か、構うもんか!!」

そうだ、そうだ!!
とか言って襲う気満々の男4人。というか俺は関係なかったはずなのに、何故か俺が狙われている件。
襲われていた方の人間を見ていると、全身がケガだらけで動くのもつらそうである。
実質4対1じゃん……
こうなってくると、ハッタリ作戦よりすり替え作戦の方が有効だろう。

「大体、先に進んでからの方が効率良いんですよ?」

剣を構えるのを辞めて地面に刺す。剣は意外と重いのでずっと持っていたくないからである。

「何を言ってる?」

と不思議そうに聞いてくるリーダーっぽい男。よしかかったかな?

「今集めた所でまた奪い返される可能性があるでしょうが…」

「…まあそうだな。」
「なら最終チェックポイントで待ち伏せとかしている方が確実に効率良いでしょ?」

言われてみればそうだな…みたいな感じになってきた4人組。よしとりあえずかかりそうなんで俺の事を少し強いと勘違いしているっぽいので強気でいこう。
まぁ、十中八九ルカ君を倒したせいだろうが……

「第一ここで戦うなら……」

と言いながら刺していた剣を抜いて、俺が戦うぜ?という雰囲気を醸し出す。
まぁここでやられたら負けるんだけど。
あれ?これってひょっとしたらミス?
やべぇ……

「それもそうだな…よし先に進むぞ!」

「「「おおう!」」」

あきらめてどこかに行った。
冷や汗ダラダラだったのだが、上手くいったようでなんとかなった。

「あ、ありがとうございます。」

と言ってくる小デブの男。そういえば居たね。自分のことで必死すぎて一瞬忘れてたけど…

「大丈夫ですか?」

何か会話がないので当たり障りのない感じで聞いてみた。

「は、はい。でも良かったですか?あんな事を教えても…」

とか聞いてきた。いや、とりあえず目先のことを何とかしてからじゃないと死にそうになるからね?後の事を考えてたらやってけないんですよ。

「……最終チェックポイントに行ける実力があるなら意味はあるかもしれませんね。」

まぁ、そういう事ですわな。最終チェックポイントに着く前にリタイアするかもしんないしね。

「成程……流石は“仮面”と言ったところですか…」

“仮面”のコスプレは今は関係ないでしょう?

「別に関係ないですよ。それよりアナタのパートナーは?」

パートナーいないなら俺と組んで欲しいんですけどね。何せずっとぼっちで心細いんですよ……
シェリーちゃんがいると思えばジ―クさんが連れていっちゃうし…

「さっきはぐれたみたいですね…」

はぐれたのか?ならちょうどいいじゃないか!

「では、私ははぐれたパートナーを探しにいきます。」

誘うとしたら言う前に断われた。
なんてこったい…
はぁ~残念だな。

「ありがとうございました。」

俺の方を見ながらそう言って先に進もうとしている。崖の向こうへ……

っておい!!

「おい、そっちは!」

「大丈夫ですよ、では…ってわああぁぁぁぁぁぁ………」

一歩踏み出して前に進もうして崖に落ちていった…
だから言ったのに…
俺の方を見ながら、崖に落ちて行くとか滅茶苦茶に罪悪感を感じるんですけど…
お、俺のせいじゃないよね?
……ごめんなさい。


Side ファンタスティックな貴族様

崖から真っ逆さまに落ちていく私…
ここで地面にぶつかったらいくらなんでも危ないなと思いながら落下していくと落下地点に人が居た。
そのままの凄い勢いでぶつかってしまった。

「痛ぇ!!」

「エルト大丈夫か?」

「何すんだ!…ってパエール?」

胸倉を掴まれながら前の男を見るとそれはエルト君だった。

「……そうか、そんな事があったのか。」

崖から落ちてきた経緯を話すと分かってくれたようだった。

「それにしてもボルトが、そんな事を言うなんてな。」

とエルト君が少し怒った風に言った。それも仕方ないだろう。ディファイさん程の実力があればあの4人ぐらいなんとかなりそうなもの…ただそれは私が居なかった場合だが。

「エルト、お前の気持ちも分かるがボルトは恐らく効率を考えたのだと思うぞ?」

「効率だ~?そんなんもん関係ないだろう!?悪い奴はぶっとばす!それが女王騎士だぜ!?」

と興奮気味なエルト君。しかし、これは彼が真摯に試験を受けようとしているからなのである。だがディファイさんもそうしようとしているのだ。


イージス君はそれに気付いているらしかった。


「良く考えてみろ。ボルト1人なら余裕に勝てるが、今回はパーエルくんが居たのだぞ?」

「そうです。エルト君、ディファイさんは私の今後の為にやってくれたんだと思います。」

「え?どういうことだ?」

エルト君はまだ良く分かっていないらしい、まぁ彼の考える事は普通に考えても分からないから仕方ないだろう。

「ボルトは恐らくあの4人組を使って同盟を組んでる他の奴等に今は無駄な戦いをさせないようにしたんだ。」

「同盟?」

「エルト君、解毒剤をもらっていない受験生が固まっているのは言いましたよね?」

「ああ…まぁそっちの方が1人でいる奴等に対して効率いいからじゃないからだろ?」

「ということは解毒剤の持っていない受験生達はとりあえず解毒剤の“一部”である第一チェックポイントの物を奪おうとしますよね?」

「まぁ、そうなるな…」


「解毒剤の種類はたくさんあるだろう?それをブレンドしなくては結局効果は得られないな?」

「だから何だよ?俺には分かんねぇ~ってば!」

「そこでボルトの言った言葉を思い出してみろ。」

「“最終チェックポイントに行けば効率よく解毒剤が横取りできる”…だから何だよ?」

「所詮は効率を考えて結成された同盟だ。ボルトの言っている事は良く考えてみたら確かにそっちの方が効率がいいだろう?」

「…ああ!?成程な、そうなると同盟の奴等にその事が伝わって無駄に戦いが起こらないってことか!」

「それもありますが、最終チェックポイントに着くまでは先に進もうとする人間が増えるでしょうね。だけどよく考えてもみてください。そこに行くまでには試験が多く残っているでしょう?」

「そこで脱落者も増えるな。同盟と言っても所詮は負けた奴等の集団だ。試験となればクリアできるのはわずかだろう…」

「大体、負けた奴らの実力じゃ、そこまで辿りつけるかあやしいものだしな。人数が多い所で変わりねぇわな…」

「私を助けてくれたんだと思います……ボロボロだった私を助けると同時に他の受験者に数の不利がないように…」

「そうだろうな、パエール君の事がなければわざわざそんな周りくどい事をする訳がないしな。」

「…凄いな、ボルトって……自分の事じゃなく人のことまで考えて正々堂々と女王騎士試験に挑もうとしてる…」

「ああ、奴はこの試験が数の利で騎士道精神の持ったものが負けるのが嫌だったのだろうな。」

「……っへ、面白いなイージス。」

「ああ全くだ。」

イージス君とエルト君達は喜んでいた。それもわかる。ディファイさんのような実力者が正々堂々と戦っているのだから。

「パートナーを探すのはもう無理そうですね…」

崖の方を見ると登りにくいので登るのは難しいので上には行けない。最初の崖はまだ登れていたが今回のは無理そうである。

「なら俺等と来るか!」

「そうしてくれ。まだその事が伝わってない同盟の奴等の他にも違うグループがいるかもしれないしな。」

「すいませんが、お願いします。」

この試験どうやら厳しいだけのものではないらしい。
こんなにも正々堂々受けている仲間がまだいるのだから…


あとがき


今回は会話文多目です。
ディファイ(何もかんがえてない)
主人公組「ディファイはすごい!」
ディファイは何の事か分からず否定
主人公組「謙遜しちゃって…」
なんという悪循環wwww
まあ勘違いした4人組もディファイが言うならそうだろうという勘違い。
勘違い怖すwww

あと感想の欄が次の20件をクリックできるという感激!!!どうもありがとうございます。その為急いで書きました。移動の件は試験終了時にもう一度聞こうとおります。



[18999] ラジオでやってみた
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:57d96fca
Date: 2010/07/07 08:52
番外編
ラジオ風ネタシリーズ





「最近知覚過敏になったみたいで歯がすごく痛いんですよ。」

「私、知覚過敏と虫歯の違い分からないんですけど何が違うんですか?」

「虫歯と知覚過敏の痛みの程度はほとんど同じなんです。知覚過敏は歯の表面上には何もなってないのに冷たいものが染みる奴で、虫歯は初期段階は知覚過敏と同じ状態ですけど進行すると温かいものでも痛くなっちゃうんですよ。」

「へぇ~凄いもの知りですね。私見なおしちゃいました!」

「見直すって?僕の事最初にどう思ってたの!?」

「え?ちょっと変な人かな~って…」

「何それ!ショックなんですけどぉぉっぉぉぉぉぉぉお~~~~~~~~~~~~~~~~」

「うるさいですよ。」

「す、すいません………」

ではタイトルコールはいりまーす




「ルカと、」
「シェリーの、」
「「報われない男の情報局~」」


「皆さま、おはちわーす。ルカ役の蔵務 流華です。」

「みなさん、どうも御清聴ありがとうございます。シェリー役の命戸 詩絵里です。」

「さて始まりました。ルカとシェリーの報われない男の情報局、まだ略称は決まってないので略称誰か考えてくださいね。」


「この番組はリスナーの皆さまと一緒に作る番組です。」

「なのでリスナーの皆さまのリアクションが少ないとすぐに終わってしまうかもしれないので本当によろしくお願いします。」


「さてこの番組は何をする番組なのかと言いますと、報われない男の物語の情報をどんどん流しちゃおうという感じの番組です。」

「そうなんですがぶっちゃけそこまで物語の話はありません!普通に申し訳程度ということになりそうですね。」

「そうなんですよね。だから知り合いの人とかに適当に『このwebラジオ面白いよ』って勧めて欲しいですね。」

「そうですね。ところでラジオの最初と言えば司会のあだ名とか決めるんですけど、命戸さんと僕はこの現場意外ではあまり話す機会アロマせんでしたよね?」

「はいアロマせんでした。」

「…噛んだのを突っ込まないで敢えてスル―ですか!?そこはしっかり突っ込んでほしいんですけど!」

「え?噛みました?ゼンゼンワタシワカラナカッタデスヨ。」

「…棒読みですか。」

「ふふふ…まぁ実際この現場以外であまりお話する機会がなかったですよね。初めて会ったのが違う番組のガヤ録りの時でしたよね?」

「そうそう、まぁ休憩時間中に少し喋ったぐらいで、その後少し絡んでって感じですよね?」

「はい。そんな感じであってますよ。」

「そんな2人がこのラジオの司会ですからね…ホントに監督は何を考えているんでしょうね?」

「蔵務さんがすこしMなので、私が選ばれたってディレクターさんに聞きましたけど?」

「ええ!?」

「まぁ二人ともラジオ番組経験したことあるんで別にいいかと思ってて言ってました。」

「監督、それは適当すぎませんかい?」

「蔵務さん話がズレてきてますよ?」

「そうでした、すいません。僕って命戸さんの事を何と呼んだ方がいいんでしょうかね?友達とかには何てあだ名で呼ばれてます?」

「私は、詩絵里とかしえぴょんとかシエーリとかですね…蔵務さんは?」

「僕は流華とかルルンカとかカル―とかですね。」

「…普通ですね。」

「…普通ですよね。」

「じゃあ僕は詩絵里さんって呼ぶことにします。もっとコミニケーションが取れるように!」

「じゃあ私は蔵務さんて呼びますね。」


「アナタ、本当にドォSですね…今までもそんな気はしていましたけどこれで確信しました。」

「まぁ話変えましょう。もう何か面倒ですしね。」

「はい、僕もあきらめました!あの詩絵里さん、僕達もう7話まで一応収録終えているんですけど、現場には慣れてきました?」

「ようやく慣れ始めたかな?って感じですね。結構この報われない男の物語ってベテランさんの声優さんが多いので新人の私は勉強になるんですがついて行くのに精一杯なので…」

「ああ~確かにベテランさん、多いですもんね。イージス役の声優の乙姫 戦さんとかエルト役の朱陣 硬歩静さん、王=道役の 禿野 蔵さん、こうしてさっというだけでも層々たるメンバーですもんね。ボルト役の上鳴さんなんてアドリブ満載で有名ですし。」

「そうなんですよ。しかもそのアドリブが面白いし、監督はすぐ採用しちゃうでしょ?本当に凄いですよね。」

「はは、5話の冒頭なんかアドリブ過ぎでしょう。真剣な顔で言うから笑いを堪えるのが大変でしたもん。」

「私もあんな風になれるように頑張りたいです。」

「できますよ、たぶんリスナーの皆さんもそう思っているはずです。」

「そうですか?それなら嬉しいですね。」

「おおとだいぶ話がそれて時間も少なくなってきたので本題に移りましょうか。」

「はい、という事でこのwebラジオのコーナーのお手紙大募集中です!」

「みんなディファイなんだ!!のコーナーでは皆さんの勘違いエピソードを大募集!僕もこんな事を勘違いされた、人の勘違い話などを送って下さい。」

「騎士道まっしぐら!のコーナーでは皆さんの騎士精神を送ってください。私で言うなら例えば、ショートケーキのイチゴは最後まで取っておくとかの拘りですね。そんな他人にはどうでもいいと思うけど自分は譲れない拘りをどしどし送ってください。」

「ルカ様(シェリーさん)教えて?のコーナーでは僕達がリスナーの皆さまの質問に答えちゃいます。けど答えられいものにはノーコメントですよ。」

「出来る限り答えますが…先の話とか私達が言っちゃうと事務所から怒られるので…」


「この他にも新コーナーの案がたくさんありますが、とりあえずこれでやってみようという感じです。」

「第0回という事でまだ募集をするだけですので今回は短めです。」


「「またね~」」











「“一回だけよ?”このコーナーは毎回リスナーの皆さまの言う事を司会の僕達が一度だけ聞くコーナーです。今回は初回なのでじゃんけんで勝った方が負けた方の言う事を聞くという負けたもん勝ちじゃんけんです。」

「ではさっそくしましょうか、さいしょっから!!」

「私がパーで負けたので流華さんが私のいう事を聞くことになりました。」

「…何故?この人凄すぎ…」

「では…アナタが一番笑えると思う自作の一発芸を教えてください♪」

「ええ!?無茶ぶりすぎ…」

「ではどうぞ!」

「合衆国ニッピョン!!」

ふふふ、噛んでるし…

っはははは
はははは

「ひひひひ…ふふふうっふふ…に、ニッピョン乙。ぶふふふふ…」

「し、死にたい…」





あとがき
因みに声優の名前はネタです。
ネタばらしせずとも意味が分かってくれるとおもっているので敢えて書きませんがイージスは少し捻りました。
因みに分かる方は分かるかもしれませんが最後のネタは僕が今まで聞いたラジオ番組の中で一番好きなラジオ番組です。





[18999] 9話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:d58b7c1b
Date: 2010/08/14 10:13
9話「ロボットといえば、ドラ○もんかガ○ダムのどちらかを思い出すけど、どっちがロボットらしいのか?と言われれば後者を選びたくなるのは何故だろう?」
 
 
 
こんにちは、ボク、ディファイです。
そろそろ命の限界を感じ初めています。なんやかんやで今日で4日目ですからね。
とりあえず合格は二の次に命が助かるように頑張りたいと思います。
うふふふふふ……
因みに原作コミック4巻105~190ページまでだよ。
 
 
 
 
第2チェックポイントまでの道のりが割と長く思ったよりも時間がかかってしまい今や4日目の昼……

なんとか命があるだけ嬉しいけど、そろそろ毒が微妙に廻り始めた気がする。
そろそろ急がないと非常にヤバいと思うが、急がば廻れという昔の言葉を信じてしっかり3食飯食って、7時間は寝てます。
ただ2日目の夜は寝るまでに時間がかかった。だってあの断末魔っぽい叫び声が耳から離れないんだもん…
でも、なんとか大丈夫だと思う、シェリーちゃんみたいなパターンもあるわけだし。
とか思っているとすぐ寝れた。

まぁ、そんな事を考えている内に第2チェックポイントの祭壇まで来た。
人影があったので目を凝らしてよく見るとなんとそこには落ちていったあの小デブの男がいたんです!


ゆ、幽霊?
俺は幽霊は信じないけどUFOは信じる派だったのに!

「ディファイさん!」

やべぇ、俺を恨んで逝ったに違いない!
ええい、こうなれば悪霊退散じゃ!
剣を抜いて小デブの幽霊に向かって斬りつけようとする俺、けど一歩先に小デブの悪霊を成仏させようとしていた男がいたのだが恐怖の為に目に入らずに、その男を結果として斬りつけてしまった。

「ぐ、ディファイ=R=ボルト……」

とすんごい顔しながら倒れていった。致命傷ではないとはいえ悪い事をした…
すいませんでした。

「助かりましたよ…私はリタイアした人間だというのにそれを信じてくれなくと襲われていたんです。」

あれ?
なんか生きているっぽい?
ということは結果としてセーフという事で良かったのかな?
あ、あぶねぇ~

「……結局パートナーは見つからずですか?」

と言ってとりあえず誤魔化そうとしている俺って…

「はは、まぁそんなところですかね…」

おや?でもリタイアしたっていう理由はパートナーがいないからだろう?それにこの祭壇なんか台が2つあるし…
という事は何かしら2人でしないといけない訳だな。
ということは……一人じゃ先に進めない?



OhoooooNOooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!!







いや、待てよ…そこにいるじゃないか!
リタイアしたのだって一人だからだろ?という事は俺と組めば利害一致でオールオッケーじゃん!

「なら私と組みますか?」

「へ?」

と驚いている様子だが、そんなのは関係ないね。こちとら命(タマ)かっかとんじゃい!

「いや、私も1人でこの試験は手厳しいんですよ。ならパト―ナーがいない者同士で組みませんか?」

「でも私は、解毒薬がないんですよ…」

……マジで?
パクられたか?
でも一緒に行かないと先進めないし…そっちの方が死ぬ可能性高いしな…
ぐぅ…こうなりゃ賭けじゃい!

「なら私のを差し上げましょうか?」

「な、何を言ってるんですか!?」

驚いているようだ。まぁ当たり前だろうな。
言っている本人ですら正直迷いに迷っているんだしね。

「一緒に行く方が私も貴方も都合がいいでしょう?」

「でも…足手まといにしかならないと思いますよ?」

「そんなの関係ないですよ。独りより2人の方が何かと便利ですしね。」

というと何かワナワナ震えていた。
涙目にもなっていた。不思議でたまらないけど、まぁよくわかんないのでスルーしておく。
震えが収まり、行き方を教えてくれた。どうやら、この祭壇から本当のチェックポイントに行くにはこれに台にマナを込めなければならないらしい。そのために必要な腕輪があるらしい。
というか腕輪がない…なんという罠。
あの試験管、うっかりにも程があるぞ!?
倒れている男からとりあえず回収して自分の物にする。
自分の命がかかっているので勘弁してね?

「それじゃあ行きますか。」

マナを込めて台が輝きだす。どうやら別のところへワープする使用らしい。
とその瞬間、小デブの男は台から飛び離れた。

何してんのよ?

「嬉しかったですよ、でも私はもう無理です。エルト君やアナタのような人が騎士になるべきですよ…」

とかいい笑顔してないでお前も来いよ!まだ解毒剤渡してないからって信用してないな?
渡すから、ぼっちはいやなんだよ。流石に4日も独りだとさみしいんだよ!!!

「では…」

また一人ぼっちだよ…

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ワープしたのを確認したのを見ながらパエールは独りでつぶやいた。

「一度リタイアしようと思った人間がまた復帰なんてずうずうしい真似なんてできませんよ…」

そういいながら懐にあった自分を待っている彼女の写真を出し、それを見る顔は不思議と柔らかい表情だった。

「マリアンヌ……ごめん。でも後悔はしてないんだ。エルト君にしたってディファイさんにしたって足手纏いにしかならない私の事を気にかけてくれたんだから。」

満足そうな笑顔をしているが、頬に一筋の雫が流れた。

「…ただ、もう一度、一目でいいからキミに会いたかったよ……」

彼の言葉は誰に届くことはなく空へと消えていった。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------

……もうぼっちは嫌だと思ったそばからこの結果というのは流石にテンションが下がるのですが…
そう思いながら前を見るとロボットがいました。

ロ、ロボットォ!?
しかも兵士チックのロボットだし!

なんという卑怯な事なんだろうか…あり得ねぇ~

ぬわっ!
危ないな…
って剣で切りつけた地面えぐれてるし!
それなんてチートな能力?
とりあえずどうしたら…
うん?何かマナを使って動いている雰囲気を醸し出している…という事は全力で避け続けてマナが切れるまで待てばいいんだ!

そうとなれば話は早いんだが…俺が持つかな?
結構、体力を使ってるから足元がフラフラでやばいんですけど…


「分かっている。お前の倒し方なんてな!」

とか言ってロボット相手にビビらせよとしている俺はたぶん変人。

とりあえずダメもとで伐りつける!!
そう思い思いっきり剣を横に一閃しようと思うが先程剣をふるっているので筋肉がちょいやばい。サバイバルで休めていないし結構限界値である。
剣が手からスポッと抜けて思いっきり壁に向かっていった…

ね?思った通りでしょ?
やっぱり無理でした。
剣に壁が突き刺さっているから、それを引き抜こうとしようとダッシュで向かう。

「合格だ!」

と試験官の人の一言が…

「……お前のような合格の仕方は初めてだ。流石はギルバートさんの息子といった所か。」

とか言っている覆面の人。
何だろう?合格する要素なんて一つでもあったかな?
それにしても親父全く関係ない気がしてならないんだけど…

で、次の試験は楽勝でした。花を取りに行くだけで終了という不思議なもの。
楽勝だったけど、花から解毒剤の一部を精製するので2日もくった。まぁ体を休めたりしていたのが主な理由です。

いやね、俺も急いだ方がいいと思ってたけど試験管の人がね結局7日まで過ぎないと解毒剤作れないとか言われたら、それは焦る気もなくなるってもんですよ。

それでも時間に余裕を持ってクリアしたいので最終チェックポイントの手前もう少しというところ。イリュード遺跡に着いた。

「俺は悪くねぇ!」

「騙されるお前らが悪いんだろ?やめろぉおぉっぉぉぉ!!」

とか言っている人達、まあおそらく幻覚をみて錯乱状態になっているのだろう。
病は気からだしね。しっかり休むべきでしょうに…
最終チェックポイントの時計台まで後少しなんだしね。



とか思っているとルカ君達が何か騎士の人と戦っているのが見えました。


「負けるかよ!」

とか言っているエルト君。
おそらくこの場では完全武装した人間である騎士の人相手にどうやって逃げるかを試されているのだろう。
女王騎士たる者強大な敵を恐れていけないとか言っている人もいるけど、状況を把握して逃げるのも必要だしね。
だって死んだら国を守るどころじゃないもん。まぁコレは持論だけど。というかとりあえず解毒剤をなんとかしないと、死んだら意味ないし

……うん?
てか仮面被ってるのアルマ姫様じゃない?
おいおい、仮面舞踏会みたいな仮面で顔隠しきれてない…

「トルネードセイバー!!」
ああ、声が完璧姫様だわ。
何やってんの?
つうか、なんで精霊剣使えているの?おいおい、俺なんかそんなもん使えないって!流石はマナの保有量といい才能といい姫でなければ騎士でもトップクラスになれるって親父が言ってたな…

ルカ君達が何かアイコンタクトしている。何かするのかな?
というか俺普通に見物しているけどいいのかな?
というか今高見の見物決め込んでいるとまた独りぼっちになる気がしてたまらない!
よし、俺も少し参加してみるか、当然逃げるけど一緒に逃げたらオールオッケーだろ。

とか思いながら俺がルカ君達に近づこうとすると、エルト君が姫様に向かって突っ込んでいった。

「え?」

もちろん、姫様もビックリして一瞬気が動転。まあ逃げるだろうからね。普通は…
ボゴっ、
嫌な音がしたかと思うと、地面が弱っていたらしく、そのまま姫様もエルト君も穴に落ちていきました。

「エルト!」

「エルト君!!」

とか心配しているイージス君にルカ君、うらやましい限りです。

俺?

もちろん絶賛、落下中ですよ。

「ディファイさん!?」

「ボルト!?」

いや~、突っ込んでいったから止められなくて間を置いてから自分から落ちていくとかねぇーわ。

まぁそんなこんなで落下した所が地下の水流で3人仲良く流されていました。
エルト君が姫様を助けてなんとかはい上がったので、俺もはい上がりました。いや~流石に姫さまを放っぽりだすなんてできないからね。
ただ姫様は気絶中。

おい!と突っ込みたいのを抑える。この家系は本当によく気絶するな…

「どうするんですか?」

エルト君にとりあえず聞いてみる。まぁ置いていくとか言われたら俺が背負うしかないんだけどね。

「ほっておける訳ないだろう?」

「まぁそれは当然ですよね。」

相手はこの国の姫様ですから。

「試験管でも放っておくことなんてできないしな。」

アレ?この子気付いてないの?あんな仮面じゃ隠している内に入らないってのに…


「それじゃあ行こうぜ!ボルト。」

う~ん、まぁいいか鈍いのもこの子の持ち味の一つなんだろう。
エルト君が姫様背負って地下洞窟から抜ける為走る。

「う、ううん。」

「気付いたか?」

不味いな、
これはキャー痴漢よ!
とか言って殴られるパターンだ。

籠手が光ってそのまま光の弾丸がエルト君に命中した。

「ぐぎゃ!」

姫は黙って光弾の篭手ですね。分かります。

まあ経緯を話すと納得してくれた。そろそろ時間もないと思っていたが、何か後1時間程は余裕があるらしく、少しの間休憩をとることにした。まぁ急いだ方がいいがエルト君は催したらしくその間だけということになった。

「どうしたんですか?」

姫様が何か喋りたいっぽかったので聞いてみた。

「アナタもしかして…仮面の中をみました?」

「いえいえ、見ていませんよ。」

「そうですか、ならいいのですが…う、っぐ……」

と足を抑える姫様、流された時にやられたらしい。

「姫様、足を挫いていらっしゃるんですから無理なさらずに…」

「そうですが……って、正体バレてる!」

「え?隠しているつもりだったんですか?」

その事に逆に驚く俺。なんでこの国の人間はあんな軽装の仮面でバレナイと思っているのだろうか?

「なんかすいません…」

少し申し訳なくなったので謝っておいた。

「いいえ、ばれたなら仕方ないですよ、ディファイさん、お久しぶりですね。」

「5年ぶりぐらいなのに良く覚えていましたね?」

凄く驚いた。もう時間がたっているのにまだ覚えてもらっていたのは結構嬉しい。

「忘れないですよ。一緒に3人で遊んだのは楽しかった思い出ですもの。」

「そうですね、なつかしいな……」

「そうですね、お母様がいた時は楽しかったのに…」

「あれ?まだ帰ってなかったんでした…あっ。」

げ、まだ言ってなかったのかあの人……てっきりそろそろ言ってるかとおもっていたのに。


「……え?“まだ”ってどういう?」

姫様の顔が話しなさいよと言ってくる。やばふぃす!

「ああ~結構やばかったな。じゃあお二人さんそろそろ行こうぜ。」

なんというKY(空気読める)!

「そうですね。行きましょうか。」

「………」

おうおう、凄い目で見てきますね。まぁコレを言ったら俺が怒られるからさっさとこの場から離れたい。

(……後でしっかり話してもらいますからね?)

……俺、死んだかも。

一緒に走っていくと何か凄くいい感じで2人で話していた姫様とエルト君。まぁ年齢近いし背負ってるしね。


ボゴボゴ…


ん?何か変な音が…
とか思っているとモンスター。
しかも強め。
姫様が騎士装つかって手伝おうって言っているのにエルト君はそれを拒否。試験だから手出しは無用とか言っている。

「私が相手します。2人は先に進んでください。」

「何言ってんだ!?2人でやったらいいだろう!」

「女王騎士聖典慈愛の章、第32節、第4項!」

「“守る者がいるなればそれを徹底して守るべき!!”……ボルトお前。」

「先に行ってください。」

「分かった。待ってるぞ!」

つうか姫様連れてどっかに行ってください。じゃないと俺の命が割とやばいんだよ。

死亡フラグたてたけど、ばれて実際に殺されるくらいならフラグ経てたほうが何倍もマシだっての。

「……行ったか?そういえばコイツ、変にちょっかいかけなければおとなしいモンスターだって授業でならったな。」

普通にそのまま帰ろうとするモンスター。

「驚かしたか?ゴメンな。じゃあ巣に帰っていいぞ。」

そのまま帰っていくモンスター。無駄な血を流さずにすんで良かった。
つうかこのモンスターって地上に出て餌を狩って、地下の巣に持ち帰る奴だったな、という事は地上につながっている可能性は十分?
よし、ならついていこう。

地上に出ると鐘の音がなっていた。アウトかな?とか思っていると期限ギリギリで間に合ったらしい。しかし時計台の中に巣をつくっているとは……

「ボルトはいないのか?」

とか聞いているイージス君。

「っく、ボルトは…」

とか言ってなんかきまずい雰囲気。出るに出れない。
おーい、俺はここにいるよ~。
誰も聞いてすらいねぇ……
カルマ君とかジェダ君は気付いているのにね~、仕方ない干し肉でもくっておこうかな。



Side 試験管の面々とかその辺の人達。

「おい、姫様はどうだった?」

「少し怪我をなされているようだが無事だ。」

「まったく姫様にも困ったものだな…」

「本当だよ…」

という4人、彼らは騎士団でも姫様を守る側近ロイヤル・ガードだ。
穴ぼこに落ちていった3人の無事の確認をしつつ、姫様に万が一がないようにつきっきりでいる。
「私たち2人は報告に向かうからお前ら、後は頼むぞ?」

「おう、任せときな。」

2組に分かれるらしく。そのまま警護にあたるのは男2人であった。

「全くお転婆な姫さんだ。」

「ああ、毎回の事といえ今回ばかりは心配したな。」

という2人、雑談をしながらも一切、微妙な気配を見逃さないのは流石だと言える。現に凶暴なモンスターは粗方倒していた。

エルトが席を立ち時間を潰そうと1人が話題をふった。

「エルト=フォーエンハイムっつたか?奴もなかなか見どころあるじゃないか?あのロボット壊したって話だぜ?」

という髭のあるムサイ男。オヤジというか親方という表現がよく似合う男がそういった。

「そうなのか?なかなか面白いな…だが、やはりディファイには及ばんだろ?」

と返す男はキザな雰囲気をしている。おにいさんという表現が良く似合う男だ。

「あ?なんでだ?」

「知らないのか?アイツ、マナで操っていた本人を見極めたらしいぞ?」

「なっ!?本当か?」

「ああ、ドローセルマイヤー本人からの報告だ。何でも剣を投げつけられたらしい。ギリギリでよけたが危なかったらしいぞ?」

「何というか流石はギルバードさんの息子ってとこか?いや、そういうのは本人に失礼か…」

「まぁな、ギルバード=R=ボルトの実子って事で皆特別扱いしてるのかと思えば、そういう事でもないらしいしな。」

そう言いながらアルマ姫の様子を見るのを忘れない。声も聞き洩らさないように集中もしている。

「…ばれてるな?…という事は姫様だという事が分かったから穴から落ちたのを助けに行ったってことか。」

「そうなるな、アイツ自体は先の試験の内容を理解していたが、姫のピンチになるとすぐに助けに行ったって事になる」

「……もう合格でよくないか?アイツレベルの人材なんていないぞ?まぁ落ちはしないとは思うがな。」

「贔屓はいかんからな。特別扱いはディファイの嫌うことだ。父親の事に関しては受験生の一部しか知らないって話だ。自分が貴族だと名乗りもしないしな、だがそれでもアイツは警戒されている…それ程の実力者ってことだな。」

そんな事を言っている内に聞き捨てならない会話が聞こえた。

「あれ?まだ帰ってなかったんでした…あっ。」


「……え?“まだ”ってどういう?」

姫様も騎士の2人もその“まだ”という言葉に驚きは隠せない。なぜなら女王陛下が行方知らずなのは女王騎士と六大公爵家の面々しか知らないからだ。外交にも関わる大変重要なこの国のトップシークレットなのだ。
それが幾らボルト家での長男でも知っているはずはないのだ。

「どういうことだ?」

「分からないな、だが何かを知っているようだな。っち、邪魔が入ったな。」

「まぁいい、この試験が終わってから聞けばいいだろう。」

「そうだな…」

エルトがトイレから戻ってきて先に進む事になった。姫様をおぶりながら走るエルト、それに並走しているディファイ。出口までもう少しというところでモンスターが出現した。

「おいおい、モグランゼミじゃないか?受験者レベルだとキツイな。」

「おっ、奴さん男だねぇ~、エルトの野郎姫さんを頼らずに倒すつもりだぜ?」

と喜ぶ親方風の騎士。高見の見物といきたいところだがモンスターが5匹現れた。

「ドラゴン系のモンスターか…テ―オバルト!お前は姫様の方を頼む。」

「ああ。」

2手に分かれる。エルトは姫様をおぶったまま、出口に向かって走っていったのでそちらを追いかける。

「ディファイって奴はつくづく好い男だね~、俺が女なら惚れてるよ!」
そう言いながらドラゴンを全滅させる親方風の騎士、ルドルフ。彼の強さはその屈強な体を生かした力技。その彼にかかればドラゴンを倒すのなんて赤子の相手をするような程容易いことだ。

「じゃあ俺も行くかな。」

そう言うと彼は時計台へとむかっていった。
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エルトが時計台までの制限時間ギリギリで着きそうな頃、ルドルフはテ―オバルトに追いついていた。

「ルドルフ、ディファイの奴はどうした?」

「まだ着いてないのか?」

「ああ、まさかモンスターにやれたのか?」

「それはないと思うが…」

と少し不安そうなルドルフ、ここで負けるような人間ではないと思いたいがまさかあの他にもモンスターがたくさん出るとなると流石に聖騎装をつけていないディファイでは危ないのだ。

(置いていったのは間違いだったかな?)

そして時間いっぱいギリギリでエルトは着いたがそこにディファイの姿はいなかった。

「…不合格か。」

「……残念だが仕方ないだろう。」

そうは言っているものも残念な気持ちを抑えられない2人。

「ボルトはいないのか?」

とエルトに向かって聞いているイージス。

「っく、ボルトは…」

と悔しそうに顔をゆがめるエルト、その表情ですべて分かってしまったイージス達や他の受験生達。
だが、2人程は全くその事に関しては無関心な様子だった。

「イージス、貴殿程の人間がディファイという人間を見誤るとはな…」

と言っているのはこの試験で合格確実だと言われている人間1人であるカルマ=バンニ―ルであった。

「けっ、何時ものことだ……ディファイ(主役)は遅れてくるんだっての。」

そういうのはジェダ=バンニ―ル、カルマの弟でありディファイをよく知る男の1人だ。
普段は兄弟の仲がそこまでよろしくないのだが、この男の事に関しての事は息がピッタリ合うのだ。親戚であり、仲間であり、親友であるのだから。

「でも、ボルトは……!」

というエルト、それを見て俯く姫。しかしそんなことは関係ないといった風な2人。

「はっ、流石は駄犬だな。馬鹿は馬鹿だと思っていたがディファイの力を見ていながらそんな事を抜かすとはな。」

と嘲笑うジェダ。その事にたいして怒るエルト。

「何を怒っているんだ?事実だろうに…」

とカルマもジェダに賛同する。いつも無口なこの男が他人の事でこんなに喋るのは珍しい。
それほど信頼してるのだろう。


「何でそんな事が言えるんだ!?」

と吠えるエルト。しかしその言葉はしっかりと返される。

「「何故かって?ディファイはそこにいるからだ。」」

そういいながら2人が指示した方向には自分で作った猪の干し肉を食べているディファイがいた。

「……食べますか?」

そんな事を言っている彼。
何時もの強い彼の姿がそこにはあった。


~あとがき~

この主人公はことごとく無駄なフラグは建てません。私自身も書いていて驚きます。コイツはなんて一般人向きな奴なんだろう…
そろそろシリアス要素も入れていこうかな?と思いますが自分がシリアスを書くと最強ものにしかならないんであまりしたくありません。やはりバランスが大切ですね。
一応お知らせ
免許とるまで更新はないと思います。
11月には更新を再開できるとは思いますし、たぶんまとめて更新になる可能性大ですね。
まぁこんな事を言いつつちゃかり更新してそうな気もしますが一応報告しておきます。

今回の量は多すぎだと自分ではおもいます。つ、疲れた…



[18999] 10話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:8e7ba965
Date: 2010/09/15 10:06
10話
「いや~フラグ建てた覚えなんてまったくないんですけどね~」

今回の試験は俺の思ったのはと全く違った結果となりました。
いや~まさかあんなフラグが建っていたとは…まあとりあえず始めます。
キミはフラグを感じた事はあるか!?


「ディファイさん!無事だったんですね!」

「ボルト!大丈夫だったのか?」

ルカ君とかイージス君とかに言われているのだが元々大丈夫だったんですけど?何でそんな事を言われているのか分からないです。

「大丈夫ですよ。」

猪の干し肉を食いながら後ろの石柱でカッコよくポージングしている俺。そういえば伝言を預かっていたのでルカ君に伝えておいた。

「ああ、そういえばルカ君、シェリーちゃんから伝言があるん…」

「シェリーからですか!無事だったんですか!?」

ガス!
ガス!

首を思いっきり揺さぶるには、勘弁してください!
当たってるから!後ろの壁に後頭部が当たってるから!
格好良くポージングしてたのは謝るから!

「ルカ!落ちつけ!」

「あっ…す、すいません」

イージス君のナイスフォローがあったので脳みそに異常はないと思います。
……タンコブになっている、雪だるまさんになっている。
何でこんな目に逢わなければならないのだろうか?

「で!シェリーの伝言って何ですか!?」

「無事ですから安心して試験を受けて下さい。との事です。」

まぁそんな感じのニュアンスの言葉を言っていたと思う。まぁ別に多少違っていた所でいいだろう。


「良かった…生きてくれてたんだ…」

そのままへたり込むルカ君。心配していたらしい。まあそうだろうな。好きな女の子の事を心配しない人間なんていないしね。ただやりすぎには注意して下さい。痛いのは嫌いです。

「とある人がそのまま介抱してくれていたのでリタイアという事ですが恐らくは無事だと思います。」

ただ毒の事が気になる。たぶん大丈夫なはずだけど…まぁジ―クさんならなんとかしてくれるだろう。

「お前無事だったんだな、あ~あ、心配して損したぜ。」

エルト君が鼻を手でこすりながら言ってきた。まぁ結局何もしてない訳だからね俺。というか姫様を抱えたままゴールしたアナタに拍手を送りたい。

「試験が終わり次第、あの事についてお話があります。」

エルト君の隣にいた姫様にそう言われた。

「……分かりました。」

まぁ何とか誤魔化せるだろう。

「これで俺達も女王騎士か~」

そうなの!?
俺何も言い訳考えてないよ?エルト君!?ど、どうて…じゃなくて、どないしよう……

「いや、まだ試験が残っているぞ?」

「えっ!!マジで!?」

よ、良かった…
これでまだ考えられる余裕がある。下手な嘘でも吐いたら…考えたくもない。

そんなことを思っているといつの間にやら王=道隊長が最終試験のルールを説明するところだった。

「次で最終試験だ。」

う~む。それにしても見事な禿である。俺、将来脱毛してきたら潔くスキンにしてカツラかぶるのが夢なんだよね。
これって何かのフラグたってる?たってたらおいちゃんビビるよ?

「最終試験まで残ったのは29人…」

と隊長が言おうとした瞬間に、1人毒が回りきったのか倒れてしまった。
おいおい、無理して速くきても意味ないじゃん。なんここの試験てすごい不公平感もあるようなないような…まぁいいか。
考えるの面倒だし。

「28人かちょうどいい2チームに分かれてもらおう。今の状態のままでな。」

死ぬよ?死んじゃうよ?アナタは人が目の前で死んでいく姿を見ていたいのですか?

「勝ったチームがそのまま女王騎士となる。いいな?」

はい出た。完全に運任せのパターン。理想はイージス君とかルカ君とかカルマ君とかジェダ君とかエルト君と一緒のチームだな。もしこれで全員違うチームなら俺はたぶん死ぬ。

で運命のくじびきの結果、イージス君、ルカ君、カルマ君と…キャロルちゃんと一緒になった。

「ディファイ=リ=ボルト!私と一緒なら合格間違いなしよ。良かったわね?お~ほほほ。」

うん、何度も言ってるのにミドルネームを何故間違えるのかよく分からない。まぁ正直まんま何故か“アール”というのは俺も謎ですけどね。確かミドルネームってアルファベットだけどその理由は全部言うと何か長いから短くしたっていう話ですからね。

「よろしくお願いします、キャロル嬢。」

まぁ一応挨拶しておけば問題ない。この子は苦手だ。理由はよく分かっているけど思い出したくない。
因みにジェダ君とかエルト君は別チームです。
移動する間に色々な人と喋った。
ルカ君と話していて左手に何か黒いのが付いていたので聞いてみた。

「そういえばルカ君、その手の黒いモノは何ですか?」

「コレですか?コレは、うぐっ…」

「だ、大丈夫ですか?」

「僕も良く分かりませんが、魔黒装という邪悪なものだと…」

厨二病…
まぁそういう時期もあるから仕方ないよ。
というか最初に見た時そんなもの付けてなかったよね?

「何を言ってるんだ!そんな事は絶対にさせない!」

それを聞こうとしたら一人で叫んでいた。毒が頭に廻ってきてしまったのか…
なんか近づきにくいオーラを出していたのでイージス君のところに行ってみた。

「もう最終試験か…長かったがカルマやボルトと一緒ならまぁ負けはないだろう。」

「イージス君にルカ君もいますもんね。まぁ頑張りましょうね。」

俺を含めてくれているイージス君の優しさに半端ない。それにしても何だろう?妙に色気を感じるのは?俺はガチホモではないはずなのに…

「ああ、私も公爵家の跡取りとして絶対受からなければならないからな。」

「アナタならできますよ。そういえば昔はディファイって呼んでくれてたのにどうして最近ボルトって言うようになったんです?」

「!そ、それはだな……あ、あれだよアレ。」

「アレって?」

何故に動揺している?全く訳がわからない。しかも何か怒って顔が赤いしね。俺怒らせるようなことしたかな?

「そういえば最近妹さんに会ってないけど元気にしてますか?」

「……ああ元気にしてるぞ。」

アレ?本格的に怒ってない?世間話をしていたつもりなのに……よく分からんね。
よし、怒られる前に逃げよう。

「じゃあ頑張りましょうね。」

「ああ。」

で何かこちらをずっと見てくる全身黒でコーディネートされた。黒づくめの男の子にも話してみた。

「何でこっちをずっとみているんですか?」

変なモノでもついているなら取っておきたいので一応聞いてみた。

「……別に何でもない。」
じゃあ何で見てたの?と聞きたいが何かあまり近づきたくないオーラを醸し出していたので聞くのを辞めた。

「シモンズだ、これからよろしくな。」

「ディファイです、よろしくお願いします。」

以外と礼儀正しい感じなので一応挨拶と自己紹介しました。相手が名前を言ったら返すのが礼儀ですからね。

次にカルマ君と話した。

「ディファイ…お前とは同じチームか…誕生日に試験とはお前も大変だな。」

「まぁ誕生日だからなんとかなるならいいんだけどね。」

カルマ君とは長年の付き合いなのですよ。因みに今日は俺の誕生日20歳です。もうこの時点で20歳未満ではないのですが受付時の年齢らしいので大丈夫とのこと。まあ確実に分かりにくいです。

「まぁ頑張ろうね。カルマ君となら大丈夫だと思うけどさ。」

まぁなんとかなるだろう。それがカルマクオリティーなのだ。

「…俺はお前と戦いたかったがな。」

「え?」

「イヤ、何でもない。」

何か言ってたけどよく聞き取れなかった。

「では始めっっ!!」

そう言うと試験官はささっとどこかへ行こうとしていた。あれ?見て行かないの?
とか思っていると「マナで分かる」とか俺の方を見て言ってきた。

どうでもいいけどそれで大丈夫か?

とりあえずコールがかかったので皆作戦を考えるのだろうと思っていたら何かカルマ君が先行して行ってしまった。

「カルマ!」

「おい!!」

とかなんとか言っている人がカルマ君を追いかけて行ってるのだけど、まぁ俺はその場で作戦を考え中。

「ボルト!カルマを追わないのか!?」

「速く行かないと!」

焦ってるルカ君にイージス君、まぁ焦る気持ちも分からなくもないがカルマ君が先行したのは事実チームに俺がいるからだろう。
後処理専門ですからね。俺は……


「カルマ君が敵陣に1人で突っ込んでいるのは敵にとっても予想外でしょうから、慌てているでしょうね。」

「ああ、そうだな……成程そういうことか、全くいつもお前には驚かされる……」

「ははは、流石は“仮面”と言ったところですか?」

何か勝手に理解してない?まだ作戦もなにも考えてないけど。

「じゃあ行くぞ!ルカ!!」

「はい!!」

とか言って先に進んでいった。残ったのはシモンズ君だけ……うわ何か空気悪いから嫌だなココ。

「……ふ~ん、成程な。お前って狡賢いんだな。」

とか言ってシモンズ君もどっかに行ってしまった。

そして1人になった俺はどうしてたかというとね。
 
 
 
 
 
 
 
 

雨が降ってきて肌寒かったけどまぁなんとか頑張っています。
え?そういうことじゃない?
まぁ俺は後方支援してましたよ。
カルマ君がエルト君とバトッっていたので心の中で応援という後方支援をとっていました。
お~、カルマ君と渡り合っている?なんという才能。まぁカルマ君今は確実に本調子ではないとはいえ、これは凄いな。

エルト君の剣とカルマ君の斧が交差して弾かれ、互いに自分の武器を一瞬手放す。そしてその武器が相手の方へとゆっくりと向かい相手の武器を取りお互いがそれでまた戦おうとした。

その時だった。黒い何かがカルマ君を捕えたのは…
その黒い何かはカルマ君のマナを吸い取っていく。

「テメぇをずっとぶっ殺してやりたかったんだよぉ!!」

とジェダ君が叫んでいたのを見て、その黒い何かはジェダ君の腕に付いていたものだということが分かった。

何やってんの?
兄弟喧嘩でもしていいこととダメなことの区別ぐらいは教えたのに…
カルマ君が横たわっている。死んではいないようだが、マナの残りの残量的には結構危ないかな?


う~む、どうやらあの2人。いや、バンニール家には大きな擦れ違いがあるようだ。
それにしたってやりすぎじゃないか?
兄弟喧嘩してるな~で収まる話じゃないよ?

とか思っているとジェダ君は大暴れしてました。兄貴に勝って気分が高揚しているんでしょうかね?
皆で止めに入り試験は一時的に中止になりました。

エルト君やイージス君、ルカ君を筆頭に応戦しているとカルマ君が立ちあがりジェダ君の黒い何かを一瞬ではぎ取って自分の物にしていました。

っておい!何してのよ?

「ほう、コイツは良い。力が漲ってくるようだ…」

とか言ってるカルマ君、それを止めようと他の名前も知らない受験者達が一斉にカルマ君に攻撃を挑んでいく。

だけどカルマ君にその攻撃が届く前に何やら物凄い爪っぽいものが受験者達に襲いかかり受験者のマナを吸いつくそうとしている。

とその時俺の目の前に20cmぐらいの蜘蛛が!!
俺は思わず剣を投げた。
その剣がカルマ君の左手に向かって一直線。このままだとぶつかるけど大丈夫だろう。カルマ君だし。

その結果はまぁ他の受験者達はミイラの一歩手前みたいな感じになってました。命に別状はないとはおもうけど割と危険な状態。
まぁ人は死んではいないようだし、ここは年長者として軽めの説教をするべきだろう……
カ、カルマ君が怖いという訳じゃないからね!?

「ディファイ…お前か。」

いやいや偶然ですからね。そんなに怒っちゃやーよ。

「俺はお前に勝ちたい…」

へっ?何いっとるんばい?

「俺とカルマ君じゃあ勝負になりたたないよ?」

負けるの俺に決まっとるがな。そんな分かりきったことを…

「その言葉に俺がどれだけの屈辱を受けていると思っている……!」

あっれぇぇ?
何でこんな状況に陥ってんだ?
益々怒ってるって意味不明すぎる…

「もっと吸い取りたかったがまあいいマナは満ち溢れている。」

何故にそんなチートを俺にぶつけてくるんだ!?

「あの模擬戦の時も、練習試合の時も、子供の時の喧嘩も!俺はお前に勝てたことがない!」

模擬戦は俺の反則負けだしさ。
練習試合も反則負けだし。
子供の頃の喧嘩なんて俺のが大きいんだから勝つに決まってんじゃん…
というか負けたら俺の立場なくない?

って!何か手を出して攻撃しようとしてる!?

「手を出すな!」

というか爪を出すな!


「エルト…ここはディファイに任せよう。本人も手を出すなと言っている。」

「ああ、だけど危なくなったらすぐ助けるぞ!」

うええ!?
いやアンタ、それ誤解だからね?
死ぬ死ぬ、俺死んじゃうよ~

「邪魔者はいない…始めよう。俺とお前のどちらが強いのかをな!」


土下座しても許してくれそうもない。
ルカ君の言ってた厨二をしっかり理解しておけば……ドス黒いマナ、おいおいコレは感情的に言えばマイナスのオーラを醸し出しているぞ?
ということはガチでやらないとマジで死の危機?

泣き叫んでももう意味ないし、もうこうなりゃ腹をくくるしかないな…
騎士学校総合12位の実力を見せつけてやる!
………1位はカルマ君だけどね。

にしても流石の俺でも腹たつぞ?
俺のが弱いっつ~の!!

何か爪で直接攻撃してきた。左腕に少々のダメージ。
おどれなんばしよっとね?
痛いのは嫌いだっつ~のによ!

「何してくれんだよ…カルマ…」

口も悪くなるというものだ。もう六大公爵家とか関係ない!実力が上?そんなのしったこっちゃない。
もうムカついた!
とりあえず一発ぶん殴ってやる。
顔面にワンパン決めてやる!!

「テメェ…一回殴られないと解らねぇみたいだなぁ~?おい。」

もうブチ切れ。イチイチ昔の事を持ってこられて、勝負したいとか意味分かんない。しばく!!
顔面にワンパンブチ込む!

「コ、コイツは、ハアハア…俺の、獲物だ!寄越せ!」

何か微妙に復帰してきたジェダがどうのこうの言ってきたけど、鬱陶しい。

「口の聴き方をまずは直せ…お前は黙ってろ。」

俺のが口悪いけどね。でもムカつくから仕方ない。思いっきり睨みつけるとおとなしくなったのでもういいだろう。

「後でやるから今は黙って見てろ…」

ワンパン入れたらすぐチェンジするから。
流石に俺もムカつくんだよ。明らかに俺のが弱いのはカルマは知ってるはずなのに!
兄弟喧嘩に毎回巻き込まれる俺の身にもなれよって話だ。

「ディファイ、行くぞ…」

「来い!!」

避ける、避ける、全力で避ける。
右手の爪を槍のように伸ばして突いてきたり、それを分散させてくる。
マナのエネルギーを使い伸縮自在で俺目掛けて爪を伸ばしてくる
マナから攻撃を感知して避けるけどタイミングがシビア過ぎて薄皮が一枚、二枚と切れていく。
一発もらえば致命傷だし、何より痛いの嫌いだから避けてマナを尽きるのを狙う。

避けるという事に関して言えば定評があります。
まあ当たればほとんどお終いなんだけどね。
某魔王さんのように砲撃しながら「お話を聞いてってば!」とできたらどれだけ楽なのだろうか?
遠距離砲台羨ましすぐる!
相手が興奮状態な場合は話なんか聞いてくれる訳ないからね。そうしたくなる気持ちは分かる。

「流石だな…」

カルマは爪を俺に向けながら、一時的に攻撃の手を緩めた。

「いい加減諦めろ!」

俺は死にたくないので諦めてくれ。
それとハンムラビ法典でいうタリムの法を実施させろ!
半分でもいいわい!
気にくわんものは気にくわんのじゃ!!!!

「女王騎士になりお前と対等な立場になるのもいいが…その前に一度でいいからお前に勝つ!」

いや試験とかでも勝ってるじゃん?
実技とか余裕で勝ってるじゃん?

「対等だあ~?何言ってんだ?」

対等な訳ないし俺のが確実に弱いんだからさ。カルマ君の発言は時々意味不明すぎるので嫌だ。

「俺とお前は対等なはずはない…そんなこと分かってはいる。分かっているんだ!!」

なんだよ?何かよく分かんないけどさ…
カルマ…
俺とお前は小さい頃からの付き合いだよな?
例え、対等じゃなくても俺はこう思ってるんだぜ?

「対等以前に親友だろうが!?」

そう思ってたのが俺だけなら悲しすぎる…

「………」

「親友だから今のお前は許せない!」

とか言ってる俺、親友と思っているのに訳のわからんことで切れられるとか本当に耐えられない。

「お前に勝ちたいだけだ、俺はな!」

とか言ってカルマ君の猛攻が始まりました。避けきれないつ~の!
しかしマナが尽き始めたらしい。
それに何か攻撃に迷いが生じたというかなんというか…

しかし、俺は雨での泥濘で足を取られ滑った。

はいGAME OVER
とか思っていたけど偶然にも滑った土がカルマの目に入ったらしく、攻撃が緩んだ。

誰がこの機を逃す?
という訳でカルマの顔面に

まっくのうち!!まっくのうち!!

………ワンパンどころか思いっきり連打してしまった俺って大人げない人ですね。
殴ってすっきりして冷静に考えてみるとまぁ黒歴史にしたいぐらいあのセリフとか恥ずかしかったね。
殴られて倒れたカルマ君の顔はあんまり腫れていなかったけど。何か青くなってた。……ゴメンね?

「…やはり負けたか。」

そういうカルマ君の顔は悔しさも見えてたけどすっきりとした表情も見えていた。

「そんなモノを使うからだよ、カルマ君の強みは冷静な状況把握能力でしょ?」

強がりです。でも当たっている部分も多少はありますぜ?強引な力技を使ってはいたけど今回はそれに頼り過ぎていた感があったのも事実。

「強引な力技よりもそっちの方がいいと思うよ?まあその力を制御できて冷静になれたらもう勝てる気はしないね。」

軽口を言ってしまった…
いや本当にその通りじゃん!?

「いや、俺は借り物の力ではなく、実力でお前に勝つことにした。」


そう言いながら起き上ってきたカルマ君。

「ていうか勝ち負けにこだわるのは辞めた方が良いよ?大切なものを守れればそれだけでいいんだって俺の知り合いのおば…おねえさんが言ってし。」

「それがお前の強さか……勝てない訳だな。」

と苦笑しながら起き上るカルマ君。そして手を差し伸ばしてきたのでこちらも手を差し伸ばして仲直りというかなんというかよく分からない感じで握手する。

というかひと段落ついたけどこれって試験どうなるの?


「ひひひ、くだらねぇ友情ごっこか?三文芝居にすらなりゃしね~よ。」
とか思っているとシモンズ君が薄笑いしながらそう言って現れた。

「まあでも、いい人材がいるねぇ~?宿主が3人、いや2人か…コイツはもう使えなさそうだしな…」

ルカ君を見ながらそんな事をいう黒衣を纏う謎の少年がワケワカメな事を言ってきた。

「応えるもの(アンサラー)帰ってこいよ。」


『ああ、この宿主はもう闇が薄い…これでは我もいる意味がないからな。』

そう言うとルカ君の身体から何か黒いものが出て行きました。

「じゃあ行くとするかね…」

そう言ってシモンズ君の肩から腕みたいなものを出してきた。そしてその場にはアンデット系のモンスターが蟻の巣の前の蟻みたいに群がっていた。

「行け。」

その号令と共にモンスター達は一斉に受験者を襲いだす。しかし倒れている奴等には攻撃をしないという行動を取っているという微妙に紳士的なモンスター。

「本体をやれば終わりだ!行くぞエルトォ!!」

「おう!!」

とか言って応戦しているけど、数のせいで劣勢を強いられている。

「じゃあ行くとしますか。」

そう言って俺をカルマ君を肩から出した腕で持ち上げようとする。
俺は運よくそばに転がっていた剣を持ち腕を攻撃!!

「コ、コイツまだ俺に楯突くだけの力が残ってたのか?」

当たり前じゃ!
解毒材まだ飲んでないっつ~の!死にたくないんだよ!?
そりゃあ必死になるっつ~の!
まぁ避けられたけどね。

「ちっ、仕方ないか……」

何かよく分からないけどやべえ。黒いマナが精製され俺に攻撃をしようと何かしらの魔法を使おうとしているシモンズ君。

「コイツは俺の獲物だ…渡さねえよ!」

とその時ジェダ君が右腕が使えないので左腕で攻撃していた。
ジェダ君が大ケガしてるのに頑張ってる。
兄貴のカルマ君に隠れてはいるが本来実力的には上位クラスなのである。

まあ兄貴への執着心が邪魔してるんだよね。
真っ向勝負でカルマ君に勝てる人なんてほとんどいない。

女王騎士の人でもマナなしじゃあ、簡単には勝たせてもらえないのにさ…
だいたい常に冷静に状況把握をしているカルマ君は隙を見つける能力が半端ない…
剣を使うものにとっては一撃が致命傷なのも事実。
だからカルマ君は強いのだ。まぁ今回は俺が偶々”まっくのうち”しただけでカルマ君が負けを認めてくれたのでなんとかなったけどね。

「うがっ…」

予想外の攻撃をくらって倒れるシモンズ君。しかしカルマ君は肩の腕に捕えられていたので投げ出されました。しかも洒落にならない下が見えない崖の方向に…

「カルマ!!」

咄嗟に投げ出されたのを見てカルマ君の左腕を見事にナイスキャッチ。しかし手を離したら真っ逆さまにダイブしてしまう。

「離せ!じゃないとお前まで崖から落ちるぞ!?」

と言っているカルマ君。いやココで手を離したら俺、絶対に一生後悔するからね?それは嫌です。
大体俺の数少ない親友を放っておけるわけないし。

「何言ってるんだよ?親友助けるのに命ぐらいかけるよ。」

だって一人ぼっちって怖いんだよ?
まあテンションがおかしいのもあるけどさ。それでもほっとけないんだよ。
仲直りしたしさ。

「ディファイ…」


まあそんなことを言って格好つけても腕の筋肉さんがギリギリすぎてピンチです。

「カルマ君、早く上って…」

踏ん張るので限界値だから!
引き上げるのは絶対無理だから!!

「…さっきマナを使いすぎて今は腕が動かないんだ……」

はああ~~!?何その訳のわからない状況は?
こうなれば仕方ない……
 
 
 
 
火事場のクソ力じゃあぁぁぁ!!!
 
 
「ぬがががぐぎゃあぁ~!!」

腕一本でカルマ君を崖の上までひっぱり安全を確認した瞬間にもう力が……

力がなくなり崖から落ちて行く俺。


「ディファイ!」

とカルマ君の声とかしたけどもう遅い落ちて行くだけな俺。試験に落ちて崖から落ちるなんて笑えもしない。
あ~あ、格好つけちゃたよ…
これで俺死ぬのかな?

怖いな、死ぬのは…

俺の人生一体何だったんだろう?

ゆっくりと目を閉じてただ落下するのを待つ。

だが急に落下している感じがなくなった。

「…大丈夫か!?」

と声がした方を向くとそこにいたのはエルト君とカルマ君だった。
カルマ君が俺を手でしっかりとキャッチしてエルト君がカルマ君の脚を持ちながら剣を断崖に刺して落下を防いでいた。

「……ギリギリで」

と苦い笑いする俺。

「皆で正々堂々と勝負して女王騎士になろうぜ!」

というエルト君…俺が女なら惚れてたね。

「お疲れさん。」

という声がした方向を向くとそこにはシモンズ君が…

「そして残念でした!」

と言ってシモンズ君が剣を抜いて全員が落下していった。

その後の事は覚えていない。
ただ女王騎士には俺はなれなかったことは理解できた。

「悪いようにはしね~よ。一応は恩人の息子だからな。」

というシモンズ君の声が耳に入ったのを最後に俺は眠りに落ちた。


side 今期試験で一番合格が近いと言われている人

最終試験……
とうとうここまで来たとのと思うのと同時に私は物足りなさを感じていた。
最難度の位置に属するアルシリアの国家試験である女王騎士試験、そこに私が求めていたのは強者。

私は幼小の頃から強さというものに憧れを感じていた。それは子供の頃に喧嘩で負けたというのが理由でもある。
理由は今考えるととてもくだらないものだった。巷で人気の女王騎士フィギアで私は王=道隊長を当ててしまい、ダブっていたので捨てた。それを見たディファイが捨てるならゴミ箱に捨てろというのに気が障ったのが発端だ。
私は小さいながらも当時では負け知らずだったので傲慢に育っていた。そして負けるはずがないと思っていたのだがあっさりと負けた。

悔しかったのも事実だが、それよりもディファイという人間の事に興味を持った。
2歳上の親戚の人間の子。というものが私より強い人間、に書き換えられたのもその時だった。
その後は仲直りもして弟のジェダとも一緒に遊んだりもした。
騎士学校に入った頃はよく3人で騎士になろうと誓ったものである。

しかしある事件を機に3人で遊ぶことは少なくなった。ジェダがいれば私は遊ばず。私がいればジェダは遊ばない。
3人の仲に亀裂が入ったのもその時だ。だがディファイという繋ぎがいたおかげかそれ以上の悪化はなかった。

そして私は騎士学校において首席を収め、女王騎士に一番近い男とも呼ばれるようになった。
だが私は反則勝ちということになってはいるがディファイには負け続けている。実戦では卑怯だとかそんな事よりも勝ったという事実の方が優先される事が多いのだ。
私は悔しかった。ディファイは私にとっては強さの象徴とも呼べるものだが、それを超えらない自分に腹が立つのだ。そしてそのイライラを感じながらもう最終試験…戦えるならディファイと女王騎士になる前に戦いたかったがもうそれも叶わない。

そんな事を思い出している間にディファイがこちらの方を向いてきた・

「ディファイ…お前とは同じチームか…誕生日に試験とはお前も大変だな。」

誕生日に試験とはコイツは本当に女王騎士になる為に生まれてきたような人間だな。

「まぁ誕生日だからなんとかなるならいいんだけどね。」

と苦笑いしながら俺に話しかける。それにしても普段のディファイは属に言うオタクなのにこういう時には輝いてみえるのだろうか?
まぁオタクだから弱いとかいう問題ではないにしろ不思議だ。だがコイツの強さは私が一番身近で見てきたから分かっている。だから女王騎士になる前に戦ってディファイという壁を超えたかった。

「まぁ頑張ろうね。カルマ君となら大丈夫だと思うけどさ。」

そう言われた時、つい本音が出てしまった。

「…俺はお前と戦いたかったがな。」

「え?」

「イヤ、何でもない。」

思わず出た本音だがディファイに分からなかったようだ。

「では始めっっ!!」

その声と同時に私は敵陣へと攻め込んでいった。静止を促す声もあったが、ディファイが後方にいるという安心感かもあり私は一人で突っ込んでいった。
ディファイなら私が敵陣にいくという事で敵チームの虚を突いてバラバラになったところ
を攻め込むという作戦を考えるだろう。もしくはこれ以上の作戦を考えてくれるだろう。

しかし敵陣に突っ込む前に前方からいくつかのマナが感じられた。3……いや4人のマナ。しかしまだ私には気づいていないらしく私は奇襲をしかけたのだが、1人だけそれを受け流した奴がいた。


第一チェックポイントで簡単に倒したエルト=フォーエンハイムだ。

「今の攻撃を受け流すとは、この短期間で腕を上げたようだな。」

「っへ、お前に負けた時の俺のままでいると思ったら一瞬でお前を倒せるぜ?」

マナを感知できるようになった時点で相当レベルがあがったのは間違いはない。中々楽しめそうだ。

攻撃を当てるものガ―ドの上からなので中々倒せない。しかも毒が回っているいうのに動きが良い。
武器でも攻撃が同時に交わり、互いの武器が弾かれ宙に舞う。
互いの武器が入れ替わり攻撃をしようと思った時。

黒い何かに攻撃された。

一瞬なんのことかわからなかったが、その攻撃はジェダからのものだった。

「テメぇをずっとぶっ殺してやりたかったんだよぉ!!」

その言葉に私はジェダとはもう関係が修復が困難な関係になっていたようだった。母の事が原因でもあるだろうし私や父に認められたかったのだろう。
そんな事をおもいながらドンドンマナを吸収されていく。

その時思った。

こんなところで死ぬくらいならもう一度ディファイと戦いたかった。いや、違う、ディファイを私は倒したい。

そう思うと僅かに残った力を振り絞りジェダの腕からその黒いものを剥ぎ取っていた。
そして自分の身体の一部にそれが装着された。

「ほう、コイツは良い。力が漲ってくるようだ…」

気分が良い…自分の我慢していたものがなくなったようだった。

そして誰かれ構わずにこの黒い武器を使い周りの受験者のマナを吸い取ろうとした。

もうすぐで死ぬかもしれないと思うがマナを吸い取りたいという欲望に勝てずにマナを吸収していく。

その時この武器の腕めがけて一本の剣が真っ直ぐに飛んできた。マナを吸収するのを止めて剣を薙ぎ払う。その剣が飛んできた方向をみると悠然とディファイが立っていた。

「ディファイ…お前か。」

そうだ、私はお前に勝ちたい。いくらたっても勝てなかったお前に……!!

「俺はお前に勝ちたい…」

「俺とカルマ君じゃあ勝負になりたたないよ?」

私の言葉に当たり前だというようにその言葉を投げかけてきた。その言葉は私が一番よく分かっていることだ。だからこそ腹が煮えくりかえる。

「その言葉に俺がどれだけの屈辱を受けていると思っている……!」

不思議そうな顔をするディファイ。それがまた私の怒りを増加させていく。

「もっと吸い取りたかったがまあいいマナは満ち溢れている。」

マナは満ち溢れている、もう私はディファイと戦うという欲望から逃れなれない。

「あの模擬戦の時も、練習試合の時も、子供の時の喧嘩も!俺はお前に勝てたことがない!」

子供の頃からずっとお前に対して私は劣等感を持っていた。もうこの気持からは逃れられずに黒い武器をディファイに対して向ける。しかし他の奴等が私に向かって攻撃をしようとしてる。邪魔だ…殺したい。

「手を出すな!」


ディファイがそれを静止する。自分以外の奴が相手すると足で纏いになると感じたのだろう。


「邪魔者はいない…始めよう。俺とお前のどちらが強いのかをな!」

そういうと同時に私はディファイに向かって攻撃をした。しかし掠る程度のダメージしか与えられなかった


「何してくれんだよ…カルマ…」

ディファイの口調が変化した。子供の時の喧嘩のディファイの怒った姿。
ディファイが本気を出す時の口調だ。

「テメェ…一回殴られないと解らねぇみたいだなぁ~?おい。」

静かにそして怒気を含んだ口調。本気の姿で戦える…それは私にとって嬉しいの一言に尽きる。

「コ、コイツは、ハアハア…俺の、獲物だ!寄越せ!」

とジェダが入ってきた。あの時に気絶させておけばよかった…攻撃をしようと思ったのだがディファイがジェダを静止させた・

「口の聴き方をまずは直せ…お前は黙ってろ…後でやるから今は黙って見てろ…」

すぐに倒せると思ったのだろうか?そうはせない今度こそ勝つのは私だからだ。

「ディファイ、行くぞ…」

「来い!!」

そこから私の猛攻が始まった。しかしそれを薄皮を掠める程度のダメージしか与えられない。マナ感知が優れいるディファイにとっては避けるのはたやすいだろう。


「流石だな…」

思わずそう言ってしまった。それこそ私が認め、倒したいと思った男だ。

「いい加減諦めろ!」

その言葉には余裕はみれない。もうマナがほとんどない状態なのだからそれは仕方ないと言えるだろう。

「女王騎士になりお前と対等な立場になるのもいいが…その前に一度でいいからお前に勝つ!」

勝ちたい、そして肩を並べたい。その欲望が今の私の全てだった。

「対等だあ~?何言ってんだ?」

その言葉に私は怒りを感じた。

「俺とお前は対等なはずはない…そんなこと分かってはいる。分かっているんだ!!」

理解はしている。しかしそれが納得できるという訳ではない、肩を並べていたい。劣等感なんて持っていたくはないのだ。

「対等以前に親友だろうが!?」

その言葉に私は驚きを隠せらなかった。親友……私には友人というものがいない。それは私並の資質を持った人間がいないということもあるが、それ以上に私は人に心を晒すことが苦手で怖かったのだ。

「………」

「親友だから今のお前は許せない!」

思わず黙ってしまった私にディファイはそう言った。親友だから許せない……
その言葉に私は戸惑いを感じてしまった。
だが、私は勝ちたいという欲望には勝てずに結局はディファイを攻撃をするという手段に出たいた。

「お前に勝ちたいだけだ、俺はな!」

さっきよりも攻撃により力を入れて攻撃をする。防御をほぼ無視した攻撃すらディファイは避けた。しかし雨で抜かるんだ土に足を取られたディファイ。

今がチャンスだ!

しかし視界が真っ暗闇に覆われた。おそらくは滑ったと見せかけて土を目にかけてきたのだろう。

そして意識の外の攻撃に一瞬戸惑ってしまった私は結局ディファイの術中にはまってしまったのだ。

そして顔面を殴打される。何発も何発も、反撃を許されなかった。一発一発のパンチの重さはなかったがそれが積み重なればすごい威力になることはゆうまでもない。
私は力尽き、倒れてしまった。

「…やはり負けたか。」

やはり負けた………
悔しかったが親友と言われた事に嬉しさも感じていた。子供の時からの劣等感から解放されたようだからかは分からないが悔しさもあるがすこしすっきりとした気分もするなんとも複雑な気分である。負けて悪い気分にしかなったことがなかったが今回はそこまで悪くない。

「そんなモノを使うからだよ、カルマ君の強みは冷静な状況把握能力でしょ?」

そう言うディファイの顔はいつももと変わらないものに戻っていた。

「強引な力技よりもそっちの方がいいと思うよ?まあその力を制御できて冷静になれたらもう勝てる気はしないね。」

「いや、俺は借り物の力ではなく、実力でお前に勝つことにした。」

借り物の力で勝っても嬉しくはない、今の私にはもう劣等感なんて抱く必要がない。大事な親友だからこそ本当の実力で勝ちたいのだから。

「ていうか勝ち負けにこだわるのは辞めた方が良いよ?大切なものを守れればそれだけでいいんだって俺の知り合いのおば…おねえさんが言ってし。」

誰の言葉かは分からないが勝ち負けにこだわるのではなく自分の大切なものを貫く力がディファイにはある。それが奴の強さなのだろう。

「それがお前の強さか……勝てない訳だな。」

寝ていた身体を起こし、私は自然と手を差し出していた。
ディファイも自分の手を差し出して私達は握手を交わした。
憑きものがおちたようだった。今まで気にしていた自分がいかにバカだったかということもよく分かった。


「ひひひ、くだらねぇ友情ごっこか?三文芝居にすらなりゃしね~よ。」

いきなり薄笑いしながら出てきた黒衣の男。何やら怪しい雰囲気を持っていた。

「まあでも、いい人材がいるねぇ~?宿主が3人、いや2人か…コイツはもう使えなさそうだしな…」

そう言いながらグラムの次男の方を見て何かを言うと腕から私と似たような武器を回収していた。どうやら奴も持っていたようだ。

「じゃあ行くとするかね…」

そう言うと肩から腕みたいなものを出し、その場にはアンデット系のモンスターが蟻の巣の前の蟻みたいに群がった。

「行け。」

その号令と共にモンスター達は一斉に受験者を襲いだす。

「本体をやれば終わりだ!行くぞエルトォ!!」

「おう!!」

そう言いながら応戦しているが数のせいで劣勢を強いられているエルトとかいう男とブリュンヒルデ家の者。

「じゃあ行くとしますか。」

そう言って私を肩から出した腕で持ち上げた。私はもう立つのがやっとぐらいにまでマナを消耗していた為に抵抗できなかったがディファイは攻撃して逃れていた。

「コ、コイツまだ俺に楯突くだけの力が残ってたのか?ちっ、仕方ないか……」

黒いマナが精製されディファイに攻撃をしようと魔法を使おうとしている黒衣の男。

「コイツは俺の獲物だ…渡さねえよ!」

ジェダ君が左腕で攻撃していた。あのケガで動くとは我が弟ながらよくやるものだ。アイツとはまだ話をしていない。弟だから分かってくれているという甘えがあったからだろう。
母の事も父の事も話さなければならない。それが今の私にできるジェダに対して兄としてできることだろう。


「うがっ…」

予想外の攻撃をくらって倒れる男。肩の腕に捕えられていた私は投げ出された。崖の方向に…

「カルマ!!」

咄嗟に投げ出されたのを見たディファイが私の左腕を見事に掴んだ。だが、手を離したら真っ逆さまに落ちてしまう。

「離せ!じゃないとお前まで崖から落ちるぞ!?」

ディファイは身体的には弱い。それはいつも見ていた私がよく分かっている。だからディファイは技を磨き、マナのコントロールを鍛えていたのだから。しかも毒のことやサバイバルのこと、さらに先程の私との戦闘でもう動くのも精一杯だろう。このままだと親友が私のせいで落ちてしまう。それが私には嫌だった。

「何言ってるんだよ?親友助けるのに命ぐらいかけるよ。」

「ディファイ…」

その言葉に私は目頭が熱くなった。親友と言ってくれたディファイが言葉ではなく本当に私を大切にしてくれていることが分かったからだ。

「カルマ君、早く上って…」

そういうディファイに私は腕を上げようとするが力が入らない。先程の戦闘でもうマナが空になったようだ。

「…さっきマナを使いすぎて今は腕が動かないんだ……」

このままだとディファイまで落ちてしまう、そうならば私がこの手を離せばいい。そう思い行動に移そうとした時私の身体は上へと持ち上げれていくことを感じた。

「ぬがががぐぎゃあぁ~!!」

叫びながらディファイは私は上へ引っ張られ崖の上まで辿り着いた。
礼を言おうとディファイの方を向くと力が尽きて崖へと落ちて行くディファイの姿が見えた。

「ディファイ!」

掴もうとしたが間に合わず落下していくディファイ、私は思わず何も考えずディファイの後を追って飛び降りた。落下しているディファイの服を掴んだが、この後が問題だ。最悪私が下になろう。そう思っていると私の足が何者かに掴まれた。

エルトだった。そしてえるとはもう片方の手で剣を使い崖に剣を差しながら落下のスピードを弱めて行き、なんとか落ちてもギリギリたすかりそうな位置で止まった。

「っへ、お前等見てらんね~ぜ。」


「礼を言うディファイを………親友を助けてくれてありがとう。」

「気にすんな。俺の同僚になろうとする奴が落ちていくのをほっておける訳ないだろう?」

そんなやり取りをした後にディファイが気づいたようだった。

「…大丈夫か!?」

そう言う私にたいしてディファイは、

「……ギリギリで」

と苦い笑いしながら言っていた。

「皆で正々堂々と勝負して女王騎士になろうぜ!」

そういうエルトに私は感謝した。こういう前向きな奴は毛嫌いしていたがコイツは好きになれそうだ。

「お疲れさん。」

という声がした方向を向くとそこには黒衣の男が…

「そして残念でした!」

と言ってが剣を抜き全員が落下していった。
その後の事は覚えていない。
ただ親友を守れたかどうかだけが気になった。









~あとがき~
お久しぶりです。羽付き羊です。
更新待って頂いた方ありがとうございます。一応メドがたちそうなので更新しました。
う~む、今回はカッコつけさせすぎたかな?覚醒(笑)の状態なのでいつもの数倍強かった。
とりあえず次回からは過去編に入っていきます。ワンピースではなくナルトぐらいの過去編の長さを目指していますがどうなんだろう?

期待を裏切っての女王騎士にはなれませんでしたのパターン。

プロット段階からそうでしたけど原作読んでない人には少しいきなりすぎた感が否めませんね。すみません。まぁ読んでいる人でもたぶんいきなりすぎだとはおもいますが…

今回は全部シリアスだぜ!と思っている私はたぶん異端者orz
今回は実質2話分!今回は勘違いsideはなしです。短編ありますけど蛇足すぎるので辞めました。
5巻分丸ごとです。

正直な話、タイトル名の由来はこの部分とラストの部分で決めていたり…
ハッピーエンド?
何それ?美味しいの?
ということはありませんけどね。
ではまたの機会に!
ノシ!

~追記~

一応見たいという人もいたので更新しました。
少しヤンデレっぽいカルマ…キャラ崩壊まではしてないとは思いますが原作とは結構違いますね…



[18999] 原作を知らない人の為のネタ
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:8e7ba965
Date: 2010/09/11 14:00
「原作を読んでいない人の“それ何?”のコーナー」


「お久しぶりです。ルカ役の蔵務 流華です。」

「おひっさ~、シェリー役の命戸詩絵里です。」

「今回は特別コーナーです。そもそも魔黒装って何?という声が多く上がってきそうなので一応説明しておきましょう。」

「基本的には原作読んでいる人向けに作ってたのでルカ君の魔黒装やジェダっちの魔黒装っていつ付いたの?って分からない人向けのコーナーです。」

「まぁ読み飛ばしていただいても全然OKですが未読の人の為の説明ですね。」

「そもそも原作の女王騎士の読み方って分かっている人いるんですかね?」

「ああ……そうですね。元ネタ知らないとまんま“じょおうきし”って読んでしまいそうですもんね。」

「あれ正式には“クイーンナイト”って読むんですよね。まぁどちらでも全然いいんですけど予備知識ですね。実質コミックの表題は漢字で“女王騎士物語”でルビが“じょおうきしものがたり”。で下にSaga of Queen Knight って書いているからまぁ“クイーンナイト物語”とかいう人もたまにいます。」

「どうでもいいことなんですけどね。まぁ今後も使わない本当に無駄な予備知識。トリビ○に失礼なくらいです。」

「まぁそれは置いといて本題に入っていきましょうか。」


「そうですね。そもそも魔黒装というのは邪悪な聖騎装っぽいものと考えて頂いて結構です。負のマナを込める事で扱えるというものです。」

「というかそもそも聖騎装の話もしていませんでしたね?」


「ああ!そうでした!!
聖騎装というのは女王騎士だけに使う事の許された武器や防具等の名称です。マナを送る事によって使用可能です。一番よく使われるのは“忠誠の十字架(クイーンクロス)”と呼ばれるものですね。」

「“忠誠の十字架”はマナを込めることによって“女王の剣(クイーンセイバー)”となります。しかしセイバーという名前とは裏腹に使用者のマナの性質によって大剣、長剣、刀の他に槍とかツインランサーとかになります。一番使われる武器です!しかしここにいたるまでその説明すらなし!本当にすみません…」

「という事ですね。それで何故ルカに“応えるもの(アンサラ―)”が装備されているのかといいますと…」

「原作見るかwikiで見てください」

「そうですね。それが一番ですよね…ってカバ!何の為に説明していると思っているんですか!?」

「原作購入してくれるように促すのが私達のお仕事じゃないんですか?」

「それはそうですけど…」

「まぁ説明してもいいんじゃないんですか?どうでもいいですけどね。」

「やる気がなさすぎる…出番がもうあんまりないからって…」

「何言ってるんですか?カヅキ=チナンも私してるからいいですよ別に。」

「僕もパエール役もこなしていますからね。この漫画は声優が被っているキャラも多いですからね。何せ出番が少ないキャラの方が多いですからね。」

「そうなんですよね。困ったっモノですよ全く…」

「ははは、それはそうとそろそろ本題に入って良いですか?」

「もうどうでもいいです。どうぞ…」

「投げやりすぎですよ!?…まあいいか。シェリーちゃんが落下してきた事件がありましたね?」

「はい。」

「アレはルカ君をかばって落下してきたんですよ。その事でルカ君はとても気が滅入っています。そんな時に魔黒騎士と戦って闇の面に落ちてかけな時に装着させられます。まぁあの時点で無事かどうかを確認する事はできないですからね。」

「ジェダ君はよく分かんないんです。けどいつの間にかに誰かに貰っていました。そんな感じです。」

「うろ覚えですからね。仕方ありません。シモンズ君に貰ったような感じでもありますけど。イマイチよく分かりません。それは今手元に原作がないから!」

「おい!って私はボケる側なのに……原作未読の人で用語が分からない場合説明しますけど、原作見た方がやっぱり楽しいと思います。」

「ではここで終わりのお時間ですまたの機会に会いましょう。」


「「さようなら~」」




[18999] 11話【過去編突入】
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:ef978b57
Date: 2010/09/19 10:39
過去編
11話
「オリ主の過去には悲しい過去が隠されているのが大体のssのパターンらしいね」

俺は誰かを庇って…それで…どうなったんだ?
落ちたのか?良く分かんない。


─夢を
─夢を見ていました。夢の中の自分は過去を振り向く為に必死になっていました。
走馬灯という経験を初めてしたから。

女王陛下10周年パレード。それは俺の初恋の相手がいた。その名はアルテミス女王陛下。子供を生んでいるのにあの若さにあの美貌は当時13歳だった俺を何かに目覚めさせるのには十分な衝撃だった。

俺はその時に一瞬この人を守りたいな…とも思ったのだが人妻ということを思い出して家に帰って風呂場で泣いたのは今でも俺の黒歴史の一つである。

一応は女王騎士の学校に通っているが成績は上の下程度、さらに段々女王騎士試験のハードさに気付いて夢を見るより現実を見て家を継ごうとも考え出してもいるがまだ諦めもつかずに親父も「受かんないと思っても一応は受けろよ。」と言われたので一応は受ける予定である。

まぁそんなある日、何故かホテルに陛下の馬車が女王騎士つきで来た。ホテルのバーで飲んだりしたらしい。

親父と陛下はどうやら何かしらあって友人となっていたらしい。その何かしらの事を聞くと親父もきっかけが全くよく分かっていないらしい。

「う~ん?俺もイマイチ分かってないんだが……一応は女王陛下が小さい時に一度会ったのが切っ掛けといえばきっかけだな…」

そう言う親父、でも六大公爵家の人間なら分かるが貴族の中なら中流なボルト家がそんなに王族と仲良くなれる理由がそれ?
納得ができない。
言ったら悪いが別に親父の顔がイケメンとかでも何かがめちゃくちゃ優れている訳でもないし……
そう親父に聞くと詳しい経緯を教えてくれた。

「何か俺が道歩いているとな、石に躓いて荷物を抱えて走ってた変なおっさんと一緒に倒れたら礼を言われたんだよ。」

「なにそれ?意味分かんないよ?」

「そうなんだよ。しかも命の恩人とか言われているんだよ……何でだろうな?だから俺もよく分かんないだよな……いまさら聞けない雰囲気を向こうは醸し出してるしさ。」

「いや、本当に意味分かんないよ?」

「まぁ俺本人が分かってないからな~。そうそう思い出した。その後おっさんがブチ切れて、俺に斬りかかろうとするんだよ、切り捨て御免の時代でもないのに……いや~アレはビビった、本気でビビった。」

「そんなにキレなくてもいいのにね?で全治何カ月のケガ?」

「うん?いやケガは無かったよ。女王騎士の人が追ってきてそのおっさんを倒したんだよ。流石は女王騎士って感じだったな。」

そう言った後親父は思い出したかのように続けて話した。

「よくよく考えればその後に何かいきなり陛下が紐で縛られてたのを女王騎士の人が紐を切ってその後に礼を言われたな……」

「何かよく分からないね?」

「まぁ礼を言うのはコッチの方だったんだけどな。動揺しすぎて無理だった。いきなり女王騎士に誘われて陛下に礼を言われて頭こんがらがったからな。まぁ騎士の方は適当にごまかしたな。だって俺自分の命を守るのですら危ういし、普通に死ぬぞ?」

「まぁ俺も死ぬかもしれないけどさ…」

「大丈夫だ、弟がいる!」

「俺が死ぬかもしれない発言をしている時にその発言はおかしくない?」

「…その発言を深く後悔しながら彼は天を仰いで息子のこれからの人生をただ祈っていた。」

「そんな地の文のようなセリフ良く言えるね?」

「まぁそれを言うな重い冗談だ、お前が女王騎士になるかもって話を陛下に言ったら連れて来いって言われたから城まで行くぞ。」

「世間一般的にたぶん重い冗談っていうのは皮肉に入る気がするんだけどね、で何時行くの?」

「今日、てか今すぐに。」

「マ、マジですか!?」

「昨日の酒の席での話で今思い出した。急げ!遅れたらヤバい!」

という訳で速効で正装に着替えさせられ、カルマ君とジェダ君との遊びを予定が入って無理になったという事を告げて今現在、城まで歩いている途中である。

貴族だが馬も何にも使わない。まあ歩いて30分程度のところでそんなの使うのは勿体ないというケチくさい理由ですが。

「いきなりすぎだね。走らなくていいの?」

「ギリギリだけどなんとかなるだろう。まぁ素直に謝ったら許してくれるし、たぶん陛下二日酔いだから遅い方がいだろうしな。」

適当人間……
俺は確実にこの父親の方の血を色濃く受け継いでいるのだと改めて感じた。

「今日の晩飯ってやっぱり俺が作るの?」

「まぁたぶんお前だな、帰りに業務用の店でも行くか?」

「それにしても家ってケチだよね。食材の余りが出ないからシェフの人に作ってもらうのは何か違う気がする。って意味分かんなくない?」

「いやそれはアーニャが自分で家族の分のご飯作りたいっていうのが本当の理由だぞ?」

「やっぱりか……うん母さんらしいね。」

「まぁ俺は普通に良い嫁さん貰ったと思うよ。」

親父はお見合い結婚らしいがそれ以上は何も言わない。普通に仲は良い方だと思うのだが…まぁ色々あったらしい教えてくれないのでそれ以上は知らない。でも母さんは割と病弱なのでその治療費で結構お金を使ってもいるらしい。

「でも母さん実家に戻ってるじゃん」

しかし現在絶賛喧嘩中である。

「それは言うな…くそあの時に新作の料理が不味いというべきではなかったな…」

と後悔している親父。まあでも思わず言ってしまったのもうなずける。

「でもアレは確かに不味かったもんね…」

あの料理は正直に言って焼き肉の焦げすぎて炭になってしまった肉を食べた方がマシだ。もうそれで癌になっても良いくらい。

なんというか…こう食べた瞬間にジャリを食べたような食感に混ぜ過ぎ危険といったぐらいに混ぜた調味料。
味醂に醤油に豆板醤、マヨネーズ、辛子、ソース、料理酒、ワイン、日本酒、タルタルソースにうどんつゆ、たべれるラー油に味噌、ゆず味噌、ポータージュスープに、カレー粉、イチゴジャムにブルーベリージャム、砂糖、塩、片栗粉……などなど取りあえずキッチンに入った時にそれが全部一度にメタメタに入れられていた。
いや、なにそのカオス?と思ったのだが、喰わして貰っている身なので言えない。そんな中親父が一口目で「え?ゲロンパ?」と言ったので口論して実家に帰って行きました。まぁ1週間もしたらすぐ仲直りするからいいや。どうでもいいけど喧嘩して仲直りした3ヶ月後に弟ができたって言われたけど、なんか関係あるのかな?

「母さん、時々よく分からないもの作るからな…」

「いつもは普通に美味しいのにね…時々イ○○ス料理に浸食されるからね」

「ああ~お義父さんになんて言おう…」

頭を抱える親父は中々面白かったからあの事は言わない、爺ちゃんはあの料理が不味いとはっきり言ってくれる親父になんだかんだで感謝しているということを…
確かに母さんが作ってくれる料理はたいていは美味しいんだが、時々当たりが存在する。そんな料理を食べた時不味いという本音を爺ちゃんは出せない。娘が怖いからである。2,3日あまりの不味さに熱を出したことのある爺ちゃんは本当に可哀想だった。

「親父、頑張れ!(でも爺ちゃんはもっと頑張れ!!)」

そんな話をしている間に城まで着いた。
門番の人に親父が挨拶してる。

「どうもお久しぶりです。ギルバード=R=ボルトです。陛下と会う約束をしているのですが…」

「ギルバードさん!お久しぶりですね。今回も何かの事件ですか?大変ですね。」

「ギルバードさん、今度は何するんですか?ギルバードさんが出るとなると相当な事件だなこりゃ。」

「いや、普通に息子に会いたいと陛下が言うものですから息子を連れて会いに来たんですよ。」

「そうなんですか?ギルバードさんの息子なら将来はロイヤルガードかな?いやもしかしたら七大公爵家になるかもしれませんね。ハハハ。」

「いやいやもしかしたら“帝王”のエクソードさんみたいになるかもよ?ナハハハ~」

何これ?親父って実は凄い?
いやあり得ない。母さんにいつもヘコヘコ謝ってるしな。これはたぶん何かの勘違いだな。間違いないだろう。
だって親父は俺と腕相撲同じぐらいの強さだもん。

「アハハハ、じゃあ私はこれで。」

「「はい、また今度。」」
乾いた笑い声の親父、完全に面倒くさいからもうどうでもいい時の笑い方だ……
開門した門をくぐり抜けて門番の人達が見えなくなるところまでとりあえず歩いていく。

「親父……大変だね。」

「本当に面倒だよ。あの人達いくら言っても何か俺の事凄い奴みたいに言ってくるんだよ。何せ俺は臨時の女王騎士みたいな扱い受けてるっぽいしな。」

「何それ!?初耳だよ?」

「だってお前の生まれる前に3回しかしたことないからな。それに俺は弱いから後方支援専門だしな~」

そんな事を言っている親父、まぁ正規ではないらしいのでまぁどうでもいい。本当にいつも思うが、家の親父は変なコネを持ち過ぎていると思う。
そんな会話をしている内に途中でトイレに行きたくなり「トイレに行く」事を告げて1人で歩いたのだが…

「迷った…」

(速くしないとこの年で洩らしちゃうじゃんか~)

と困っていると変な場所を見つけた、どうやら隠し部屋らしい。貴族は隠し部屋とか作っているという事も聞いた事がある。

ならば隠しトイレもあるのでは?と思いそこに入って奥に進むと小さな女の子居た。

「誰?」

怯えたようでその声色や表情からは不安の色がぬぐりきれない。そんな中俺は我慢が出来ずにこう一言。

「…トイレ貸してください」

「えっ?」

その表情は驚きしかなかった。それが俺とイルマ姫の出会いであった。
──因みにトイレは洋式でした。豪華なので出るものが引っ込んでしまって時間がかかった…

~あとがき~

勘違いsideは過去編の場合は話を進めながらするのでご了承ください。3~4話で過去編は終了予定。
最近チラ裏でもPVみれる事が分かりました。1話につき大体5~6000程度見て貰っています多くの人に見て貰って嬉しいんですが欲を言えばもうすこし感想が欲しいですね。まあ作者の我がままなので見流して頂いて別にかまいませんよ。ただモチベーションは上がります。
どうでもいいですがこのPVって多い方なんでしょうかね?よく分かんないです。




[18999] 12話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:bcb4f8f8
Date: 2010/09/27 15:13
12話
「俺にそんなキャラ設定はない!!……と思いたい今日この頃」

ボーイミーツガールとはよく言ったものである、物語の始まりは大抵はそこから始まる物が多い。それが恋愛の対象になるのはよくある話である。しかし俺に関して言えばそういうフラグは全くないのだ。それが分かったのが7年前のイルマ姫に会った時がそうだと言える。
さて今回の報われない男の物語は

・ディファイやっぱりディファイ
・イルマちゃんの嬉しい出来事
・ギルバードとアルテミス陛下
の3本です。

お楽しみにね


トイレが終わりお礼を言うと何かよく分からないけど話をされた。どこから来たのとか、年齢の話とかジ―クさんの話とかとにかく一杯。
何でジ―クさんの話をしたのかと言うとこの前、

「女の子が喜びそうなものって花かな?」

と聞いてきたので俺が

「歳によるでしょう、小さい子ならぬいぐるみとか、若い女性なら貴金属とか、それ以上の人になると花が喜ぶらしいですよ。この前母さんが言ってました。」

とか言うと

「そんなに言うならお前一緒に来てプレゼント選び手伝ってくれよ。」

みたいな話になってそれでプレゼントを選んだのがオーダーメイドのぬいぐるみだった。男2人でああでもない。こうでもない。もっと可愛くとか言ってたのでそのぬいぐるみの事はよく覚えている。それがイルマ姫の部屋に大事そうに飾ってあったのでこの子プレゼントか!と思って聞いたのがきっかけです。
話が弾んでいたのだけど、陛下が待っている事を思い出したのでその場から女王の間の行こうとしたのだけど場所が分からないのでイルマ姫に聞いたら案内してくれとのことなので一緒に行きました。

それで陛下と親父が談笑しているところに2人でくると陛下が凄く驚いていた。何でも人見知りが激しい子なので仲良くしていたのに驚いたようだった。
そこでイルマ姫の友達になって欲しいと女王陛下に頼まれた。あの目で見つめられると断るものも断れないだろうと思います。断る気はないですけど。

人妻でさえなければと何度思ったことか……

そんなこんなで暇な時には必ず遊びに出かけていた。カルマ君やジェダ君は女の子と一緒に遊ぶのが嫌なのか分からないけど誘っても来なかったのでジ―クさんが任務についていない時には2人で遊びに行った。
まぁジ―クさんはイルマ姫の事を「放っておけない」とかなんとか言ってたけど単純にロリコンなだけだと思ったりもしたが楽しかったのでそんなに突っ込んだ話はしなかった。

ただ任務で遊びにこれない日も多く2人で部屋でだべって遊んでたりもしたけどイルマ姫の話は大抵ジ―クさん関連のはなしばかり……

アルマ姫とかとも一緒に遊んだりもした時にはよく分からないけど物凄く疲れた……
お転婆すぎるから本当に大変。イルマ姫はインドア派に対してアルマ姫は超アウトドア派。似ているのに何故こうも違う?とよく思ったものだ。

まぁアルマ姫にもイルマ姫はよくジ―クさんの話をしてました。
それに任務に帰った後、ジ―クさんにイルマ姫が話しかけるとすっごく良い笑顔になってもいました。

はは~ん?そうか分かったぞ?
流石に鈍いと言われている俺でもこうあからさまだと分かってしまうね。

「イルマ姫ってジ―クさんの事好きでしょ?」

2人で遊んでいる時に言ってみると

「ええ!そ、そんなこと…」

「あるでしょう?」

「うう…ディファ君のいじわる!」

そう言いながら、ほっぺたを風船のように膨らませている姿はロリコン好きには堪らん姿だと思う。実際お姉さん好きの俺でも危なかった。攻略できないのに攻略しようとする哀れな人間になるところだった。

「それに姫って言うのはやめてよ!友達なんだから姫って呼ばないで!!」

「じゃジ―クさんの事好きって認めたらやめるよ?」

俺ってこんなにSッ気があったのか…自分でも驚くほどです。好きな子ほどいじめたくなる小学生でもないだろうに…

「うう…ずるい!」

「ごめん、ごめん。」


それにしても俺ってこんなキャラだったけ?






 
 
 
 
 
 
 
____________________________________________________________


最近は嬉しい事がよく起こる。この前何でかよく分からないけど来てくれたジ―クとは仲良くなれた。大きなぬいぐるみのプレゼントも貰えた。
ずっと前までは私は一人でここで遊ばなくちゃいけなかったから本当に嬉しい。時々アルマ姉さんとか母さんも来てくれるけど、ほとんど一人ぼっちだった。
だから遊んでくれる相手が欲しかったからディファイ君に会えて良かったと思う。

ディファイ君と会ったのは偶然としか言いようがない。
最初に会った時はビックリしちゃった、ここに来るには隠し扉を見つけなくちゃいけないから女王騎士の人でもここの部屋を知っている人は少ないんだけど…

「…トイレ貸してください」

まさかトイレを借りにここに来るなんて信じられるはずがなかった。けどあの時のディファイ君我慢しすぎて一周回って冷静な顔だったけど、思いっきりモジモジしていたから面白かった。

その時に少し話してみて面白い子だったからすぐに仲良くなれた。

ジ―クも話やすいけど結構年齢が離れているけど、ディファ君は年齢は離れているといっても精神年齢はそんなに離れていなし、私とも話を合わせてくれるのから一緒にいて楽しかった。

本当はあんまり他の人と遊んだりしたらダメなんだけど、やっぱり1人で遊ぶのは寂しい…だからディファ君がお母さんの所に行くと言っていたので案内するのとお母さん
に偶にでいいからディファ君と遊べるように頼もうとした。

けどお母さんはそんな事を言う前にディファ君に私と一緒に遊んでくれるように頼んでくれた。

嬉しかった。私は生まれた頃からマナが不安定らしくて他人といると悪影響が出ると言われて1人で遊んでばかりいた。


その時は寂しかった。
お母さんは忙しくてほとんど遊んでももらえないし、姉さんも女王を継ぐ為に色々な稽古をして私とはあまり遊んでもらえなかったから……
そんな時にジ―クが遊んでくれたけど任務とかで忙しい時は私は1人ぼっちだった。

だからお母さんがディファ君と遊んで良いって言ってくれたときはホントに嬉しかった。

「お母さん、ありがとう!大好き!!」

思わずお母さんに抱きついてしまった。ディファイ君とかギルバードさんとかいたのを忘れたのでそれを思い出した時少し恥ずかしかったけど、お母さんは私の頭をずっと撫でてくれたからそれが居心地がよくて離れられなかった。

でもお母さんがディファイ君に一緒に遊んでくれるように頼んだ時にディファ君は、

「陛下に頼まれるは光栄な事ですが、恐れながら私は姫とはもう友達だと思っているので…姫と遊ぶのはとても楽しいですから。」

と言っていて私は凄く驚いた。だって私はお部屋ばかりで遊んでいてディファ君ぐらいの歳の子はお外で遊びたがるのにディファ君はそれでも私と遊ぶのは楽しいと言ってくれた。ディファ君は本当に優しいと思う。

その時に色々な遊びもしたりした。

ディファ君の友達の話も聞いた。
六大公爵家のブリュンヒルデ家のスージーちゃんと遊んだとか。そのお兄ちゃんのイージス君は妹仲が悪いのか分からないけど絶対一緒にはいないとか。
ルナハイン家のキャロルちゃんには何でかよく分からないけど鞭でよく叩かれるから苦手だとか。
そんな外のお話もしてくれたりもした。
ディファ君は料理ができると言っていたので料理も教えてもらった。
ジ―クに私が作った不格好なクッキーをあげる時は緊張した。でもディファ君は

「ジ―クさんはイルマちゃんのなら食べてくれるよ。このクッキーは形が悪いけどイルマちゃんの想いが入ってるからね」

と言っていた。その通りでジ―クは美味しそうに全部食べてくれて私は嬉しかった。
最近は本当に嬉しいことばかりだ。
そんな感じで半年が過ぎた。昔とは考えられない程今は幸せだ。

……でも私は不安なの、私みたいな子がこんなに幸せでいいのかな?お母さんにも姉さんにも私のせいで迷惑かけてばかりなのに…

「イルマちゃんが幸せじゃなかったらアルマちゃんも陛下も幸せじゃないと思うよ?ここだけの話だけどね、陛下、親父によく相談してるよ?『イルマは我慢しすぎているから心配だわ。』って。」

ディファ君はそう言っていた。ディファ君は冗談とか意地悪はよく言うけど嘘は吐かないから本当の事だと思う。

けど私はお母さんに心配されるような悪い子だ。
そうだ、それならお母さんに心配されないような良い子になればいいんだ!

「ううん?心配するのは親なら普通なんだけど…まぁでもイルマちゃん何か危なっかしいから何かあったら俺にも相談してよ?」

とディファ君は言っていた。ディファ君は秘密にしてと言ったら秘密にしてくれるから相談しやすい。
「ジ―クが好きな事は秘密だからね!」と言ったら本当に秘密にしてくれたし。

それにしてもディファ君は不思議だな。何だろう?
よく分からないけどディファ君は何か普通の人とは違う気がする。ギルバードさんもそうだけど。
何が?と聞かれたら分からないけど不思議な感じがする。

「イルマちゃん、今日は何して遊ぶの?」

ノックの音がしてディファ君の声がする。

「ええとね、ぷよぷよはどうかな?」

まぁいいや、今度考えよう。

……………………………………………………………………………………………


私としてはイルマもアルマと同様に大切な娘の1人であり自慢すべき娘である。それは誰にどう言われようとはっきりと自信と誇りを持てる。
だからこそ正直な話、マナが不安定なだけでイルマを隔離するのは私自身反対しているのだが、それが「イルマの為だ」と言われてしまえば私には拒める事はできなかった。
ただイルマは聞き分けの良すぎてしまう娘だから「分かった。」と言い、「嫌ならいつでも言ってね?」と言っても「私の為だもん、お母さんのせいじゃないから…」と泣きそうに笑って答えてくれた。
そんな娘が女王の間に連れてきた少年、ディファイ=R=ボルト、それに私は驚いた。イルマは滅多な事であの部屋から出ようとしない。案内するならいつでも騎士を呼べるようにもしてあるのでイルマ本人が来るのは今までなかった。経緯を聞けばディファイ君が迷ってあの部屋についてそれで仲良くなったらしい。
イルマの顔をみればその子ともっとお話とかをしてみたい事はすぐ分かった。

「ディファイ君、イルマの友達になってもらえないかしら?」

と私が聞くとディファイ君はこう答えた。

陛下に頼まれるは光栄な事ですが、恐れながら私は姫とはもう友達だと思っているので…姫と遊ぶのはとても楽しいですからね。」

そう言ってくれた。
この子の目には何の嘘もない。本当にそう思っている目だった…
子供でも打算的な人間はいる、王族の人間だからとかそんな理由の人間が多いのは私が生きてきた中で何度も嫌という程経験してきたから分かる。
しかしディファイ君はそうではなく本当にイルマと一緒にいて楽しいと思っているのだ。

当然、悪影響を受けるかもしれない恐れもあったが、ディファイ君がギルバード=R=ボルトの実子だという事を聞けばそれは何の問題もないと思われる。

何故なら私が子供だった頃、誘拐されたのを体を張って助けてくれた人の息子だからだ。

あの時、女王騎士の目を盗んで遊びに出た私は不覚にもその時、どこかの国の隠密に誘拐されたのだ。当時、私は世間知らずで美味しいからと勧められた饅頭を食べた。まさかそれが睡眠薬入りだとも知らずに…
それにしても遅効性で10個以上食べてやっと効果が表れる仕様の奴なんて芸が細かいと思う。

「あれは大人が食べれば一口で一晩はぐっすり寝る薬だぞ?」

とかなんとか捕まった後に嘘を吐いていたのは良く分からないが……

まぁともあれ、そんな私を抱えて逃げている男にギルバードは体当たりをして誘拐犯を止めた。

大人と子供…
しかしそれでも誘拐された私を助ける為に身体を張って助けてくれたのだ。

「ありがとうございます」

「私は何にもしていませんよ?」

と言う少年。私の顔はこの国の民なら誰でも知っているので何かその礼を求めるのかとも思ったが彼はそれをしなかった。
それに私は感動した。だからこの人にお礼をしたいと思ったのだ。

「今度、城に招待しますね」

「はい?」

「その時に改めてお礼をさせてください」

「お礼なんて、滅相もない!私は本当に何もしていないので…では!」

「あっ…」

その場から走ってどこかへと行ってしまった。

「彼は何者なんですか?」

と私の側近の女王騎士が聞いてきたがそんなの私にも分からない。しかしお礼をしていない事実がそこには残った。そこで私は女王騎士にあの少年を探すように頼んだ。

翌日、簡単に見つかり私の方からその少年の実家のホテルに出向いていった。

「な、何でアルテミス姫様がこんな処に?」

と少年は驚いたようだった。私は単にお礼を言いに来てその事で何かできないかを聞きに来たのだと説明した。

「姫様、申し訳ないのですが、私はお礼をされるような事をした覚えはありません。仮にそうであってもそれは当たり前の事をしたはずですから。お礼なんて要りませんよ?」

私は驚いた。少なくとも何かを要求されるかと思ったのに命を助けたのにそれが当たり前の事だと言えるこの少年。私はこういう人に女王騎士になってもらいたい。

「ならせめて女王騎士になっていただけないでしょうか?アナタのような人にこの国を守って頂きたいのです。」

「ひ、姫様?それは…」

「黙ってください。私はこの人に聞いているのです。」

「はい。」

思わず口に出てしまったが私は本当にこういう人に女王騎士になってほしいのだ。
昨年終わったばかりの女王騎士試験。たぶんこの人の年齢は13歳ぐらい。試験を受けてもらうのが良いとは思う。しかしこの国は大変不安定な時期にある。女王騎士も負傷や死亡などして人数が足りないのも事実。ならばこういう人を育てた方が将来的にこの国の平和になるのではないかと思ったのだ。

「……確かにこの国自体を守るのは大切な事だとおもいますし女王騎士なんて名誉すぎることだとは思います。」

「では!」

「しかし、私はこの家の家名を継ぎそして子孫を残さねばなりません。それはこの国の未来へとも繋がっていくことだと私は考えています。今このアルシリアは外国からの攻撃もあり不安定なのも分かっています。でもこの国はアナタやその隣にいる女王騎士がいる。だからこそ私達民は安心して暮らして行く事ができるのです。」

「……そう…ですか。」

少し期待していたのが、それは無理なことだという事がわかり残念だった。でもこの人の言う事には一理ある。だからこそ私はこれ以上は何も言えなかった。


「ただ、私のような人間でも必要なら頼って下さい。それが今の私が唯一できる約束です。」

「はい。また機会があればここに来ると思います。その時はよろしくお願いしますね。」


「はい、私は無理ですが、もしも将来2人以上子供ができたらその中の1人を女王騎士になるように育ててアナタを守るようにします。」

「その時はお願いしますね。でもお礼をしないと……」

だが命を救ってくれた恩を返さねばアルシリアの名が廃るというものだ。

「…なら約束して下さい。」

「この国が永久に平和になるように努力してくれると。」

「……はい。分かりました。」


お礼とかなんとか言ってる私が愚かに思えてしまった。この人は女王騎士でもなんでもないのにこの国の事を思ってくれている。それが嬉しかった。
その日の帰り道に女王騎士は私に話かけてきた。


「姫、あの少年は本当にこの国を思っているのですね…」

「そうですね。私たちもあの人との約束を無碍にしないように頑張りましょう。」

「はい。」


…………………………

王女を助けた貴族の息子が報奨を受け取らず、「国を良くしてくれ」とだけ言ったという事実だけが女王騎士の中で噂となり、そこで彼の父親が経営していたホテルが騎士達やその親戚や家族などが泊まったり、その事を聞いた受験者達が物珍しさや願かけでそのホテルに行ってみたりして有名になるのだが、それはまだ少し先のお話である。


そのホテルの名前は「憩の郷」。なぜか、すこしあっちの方を想像してしまう名前のホテルだった。



~あとがき~

イルマ姫とは普通に仲良しです。前回の親父のことに関してはまぁこういう事ですね。
まだ姫だったころにあんな勘違いをおこしている親父って……
さて過去編もあと残すところ後2話の予定。
まぁ楽しんで読んでもらえば幸いです。



[18999] 13話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:eaa7a1f0
Date: 2010/10/03 00:22
13話
「どんな栄光であろうともそれに本人の意思と関係があるかどうかは無関係だったりする。」

今回は、裏で暗躍する男の話。
王国を乗っ取りを企む男に狙われた陛下。それを救えるのは彼しかいない。
約束のお面は事件を起こす。
身体はおっさん、頭脳は厨二、その名はギルバード=R=ボルト!
 
 
 
 
 
 
ギルバード=R=ボルト。
その名は女王騎士で知らない者はいない。
最強にして最高の騎士と言われ、味方からは“頂点を極めし女王騎士”と慕われ、敵国から“帝王”と恐れられたエクソード=カルバティン=アルシリアの右腕と言われた男だ。
今でも語り草になっている話がある。それはギルバード一人で敵国2000人の兵を倒したという話だ。当時、一番安全だと思われた場所が敵国からの攻撃にあい、女王騎士達は倒れていった。
しかしその中で立っていたのはギルバードただ一人。
応援に駆け付けにいった時には敵は全て倒れ、ただ一人彼だけが悠然と立っていたのだ。
味方は気絶していて1対2000でかすり傷程度しかなかったという事実。
さらにはその横に巨大な龍が息絶えていたのだからその凄さは計り知れない。
この他にも色々な話があるが、彼は正式な女王騎士ではない。マナの量は普通の女王騎士程度である。絶対的な力を持っている訳でもないのにその功績は輝かしいものばかりだ。
その為、彼は女王騎士達の憧れでもあった。エクソードのような無敵の強さはないのに、一騎当千以上の実力。
それは誰でも彼になれる可能性があるという事だ。それは女王騎士達への原動力になっている。
だから親しみと敬意を持って女王騎士達は彼の事をこう呼んだ“希望の騎士”と………
 
  
   
「…っていう話が私が女王騎士さんの人に聞いた話だよ。」

イルマちゃんがそう語っていた事に俺は呆然としながら話を聞いていた。

「いくらなんでも嘘だよ。親父だってアレだよ?俺と腕相撲同じぐらいなんだよ?」

「ええ?でもお母さんも同じような事言ってたよ?」

「いやいや、俺の方が親父の事は知ってるからさ。陛下も何かしらの誤解をしてるんじゃない?」

あの親父を見て信じられない。まぁ100歩譲って腕相撲は手加減しているとしても門番の人の方が腕ごつかったし、家で煙草吸いながら、「増税するの?マジ勘弁して…おこずかいがカツカツだよ?」とか独り言もしているのを目撃しているのでまぁ信じられない。
この城が巨大ロボットに変形するぐらい信じられない。


「そうなのかな?」

「そうだよ。」

そう問うイルマちゃんに俺はすかさずこう答えた。
しかし何故に親父がそんなポジションにいるのだろうか?詳しい話はよく分からないので何とも言えない。

「う~ん?でもこれ本当の話だからね?ギルバードさんに一度聞いてみたらどうかな?」

イルマちゃんはまだ納得できていないらしい。まぁ陛下からそういう話をされたからそれが嘘だとも言いにくい話である。

「分かった。今度聞いてみるよ。」

俺も年上だから頭ごなしに否定するのはよくない事だというのはしっかりと理解しているのでそう言っておいた。
それにしたって俺の親父はどういう経緯でこうなったのだろう?また聞いてみるか…


…………………………………………………………………………………………………………

ディファ君がギルバードさんの話をあり得ないという表情で見ていたのはとても不思議だ。だって、全部本当の話だし、お母さんから聞いた話だからというのもあるけど、それ以前に昔の資料に残っているのだから。
だって流石に私も一人で2000人はお父さんでも“女王の剣”だけでは無理だと思うもん。
それを龍も一体倒すなんて、幼い頃の私ですら信じられなかった。
それを見たお母さんが頬笑みながら、当時の写真と資料を幼い私に見せてくれたのだ。
龍が倒れているだけの写真しかみせてくれなかったのは、私の事を考えてくれたのだと思う。
でもその龍だけでも普通の女王騎士だけでは倒せるものではなかった。「お父さんでも少し難しいと思うよ?」とお母さんが言っていたのには驚いた。
お父さんは“頂点を極めた女王騎士”とまで言われるのに。そのお父さんでも難しいものをギルバードさんは倒すなんて……
でもディファ君はそんな事全然知らないらしい。何でだろう?普通にギルバードさんが武勇伝とか語ってそうなのに……

「そうそう、今日ってイルマちゃんの誕生日でしょ?はいこれプレゼント。」

そんな事を考えている私にディファ君は持ってきた大きなカバンの中から私にエーデルワイスの花束を私にくれた。

「さっきアルマちゃんにも花束あげたけど、これは母さんがあげろっていった奴ね。んでこれが俺からのプレゼント。」

そう言ってまた大きなカバンから取り出したのはボロボロのお面だった。

「このお面って…」

「これはね、クウガのお面だよ。俺が小さい頃の子供雑誌の付録に付いてきた奴。結構ボロボロだけどね。」

すごく年季の入ったもので、耳にかける輪ゴムの部分が何回も何回もちぎれており、それをセロハンテープで修正しているのが分かる。本当に大切なものだという事がよく分かった。

「これ、イルマちゃんにあげる。」

「え?大切なものじゃないの?」

私は驚いた、ディファ君は自分のコレクションを自慢したりするけど本当に良いって思った人にしかコレクションは貸さないのだ。アルマ姉さんには誤魔化して絶対に貸さない。お転婆すぎて壊されそうだからと言っていた。私には貸してくれるのを姉さんに自慢したこともあった。
そんなディファ君でも人に自分の大切なものは絶対にあげなかった。一生懸命おこずかいを貯めて買ったと言っていたから当たり前である。
そんな中で一番大切だと言っていたのはこのクウガのお面。
小さな頃初めて自分でおこずかいを貯めて買ったと言っていたものだ。

「うんとね……実はね、こうしてイルマちゃんと家の中で遊ぶの本当に楽しいんだ。家の中で一人で遊ぶよりイルマちゃんと一緒に遊ぶ方がずっと楽しいし…だから俺の宝物あげる。ボロボロで悪いけどね。今度ちゃんとしたものをあげるからね。」

そう言いながらそのお面を私にくれた。

「あ、ありがとう!」

大切なものをくれるような友達だってディファ君が認めてくれた訳だから本当に素直な気持ちで嬉しかった。

「まぁ本当は魔法少女系のものあげたかったんだけど……お店でそれを買う勇気がなくて…ごめんね?」


「うんうん、私この前ジ―クにもらったぬいぐるみ貰った時みたいに嬉しいよ!」

「ありがとう。待っててね大きくなったら、もっと凄い仮面作るから!」

「うふふふ、分かった。楽しみにしてるね。」

自分の大切なものをくれたディファ君の心が嬉しかった。私はディファ君の友達で良かったと思う。優しいし面白いし、でも偶に意地悪するのは止めてほしいかな…
でもそんなディファ君が友達で本当に良かった!
そういえばエーデルワイスの花言葉って“楽しい思い出”だったけ…
そういえばお母さんが部屋に来ちゃいけないって言ってたけど…どうしようかな?これ自慢したいな~。
ちょっとならいいよね?

…………………………………………………………………………………………

私はレヴァンデイン卿を女王の間に呼んでいた。
何でも新型の聖騎装ができたらしい。
普段は女王騎士にそのまま渡すのだが、何でも私がこの前の襲撃にあって万が一にでも女王騎士がいない場合の自己防衛用らしい。
まぁ用心にこした事はないので、私はそれを受け入れた。何でも他の女王騎士達が「そんなものはいらない!!私達が陛下を守れないとでも思っているのか!!!」と怒っているらしく、しかし私の事を案じてくれて作ってくれたレヴァンデイン卿の事を思って秘密裏にして呼んでいた。2時間程前に昔話に花を咲かせていたギルバードさんを帰したのはそれが理由である。

「レヴァンデイン卿、それがそうなのですか?」

私は金色に輝くその聖騎装をみてそう言った。

「はい、これが陛下専用の聖騎装、いや“女王装”とでもいいましょうか?」

それには何故か魅力を感じた。理由はよく分からないが、あの色と艶…それに私は魅力を感じてしまったのだ。

「これは、陛下の身体能力自体の向上もそうですが、何より安全を重視する為に防御力を重視しております。例え“女王の剣”で貫かれても平気です。」

私はそれを聞いて、本当にこのレヴァンデイン卿は私の身を案じてくれているんだと思い嬉しくなった。色々黒い噂を耳にする時もあるが、やはり女王騎士として私を守ってくれようと努力してくれているのだろう。

「ならさっそく試着してみますね。」

服の上からでも付けられるし、下から付けても違和感のないデザインに色々考えてくれているんだなと思いながら私は金色に輝く女王装を身に付けた。

「ひひひ、装着なさいましたね?陛下?」

その瞬間、私は闇に呑まれそうになった。

「な、何をしたのです?」

「いや、ただアナタの欲望をさらけだしてあげたくててですね?気持ちいいでしょう?」

段々と黒くなりだす女王装。

「いや~、ここまで来るのに10年かかりましたよ。邪魔なエンチャント博士はもういないし、バルドのバカもこの世にいない。」

そう黒い笑みを浮かべるレヴァンデイン卿。

私は気付かなかった、まさかレヴァンデインが私を裏切るなんて…
確かに当時の総括部門長であったエンチャント=ギア―ド博士とは仲違いがあったのは知っていた。
不慮の事故による死だという報告をすっかり信じていてしまった。私のミスである。
その時にバルト=フォーエンハイムが行方不明になった事もよくよく考えれば繋がっていた。

「ア、アナタは私をどうするつもりですか!?」

「な~に、ちょっと闇に呑まれてもらうだけですよ?死にはしない。ただアナタの自我がなくなって私の思うがままになるだけです。」

「そんな事をしてどうするつもりですか!?」

「どうって?簡単な事ですよ。私の研究成果を陛下に分かってもらいつつ私がこの国の影の支配者になりたいだけです。」

何て事だろう…こんな事になるなんて思ってもみなかった。私はただ民が平和になるようにと他国から侵略を防ぐべく為に武器を作らせていたのに……それが仇になって返ってくるなんて…

「誰か!誰か来てください!!」

私は必至で叫んだ。女王騎士を呼ぼうと椅子の下にあった緊急用のアラームを鳴らそうとするが音が出ない。

「陛下……私が聖騎装の総括部門長という事をお忘れでないですか?騒音遮断用聖騎装を使っていますし、私が先程緊急アラーム用の回線を切ってきましたから、誰も来ないですよ?」

憐れみ、そして薄笑いをしながら私を見るレヴァンデイン卿。
私はこの人の思うどおりにされ、民を騙し、裏切り、平和であったアルシリアをまた戦乱に招くの?
それだけは絶対嫌だ。何のために私の夫が死んだのか、それはこのアルシリアを平和に導く為だ!
そういった強い意志によりなんとかマナを抑えている。

「無駄な事を……」

そう呆れたように言うレヴァンデイン卿。
その時に扉が開いた。



「陛下失礼します。イルマ姫の件なのですが……へ、陛下!!!レヴァンデイン卿!陛下に何を!?」

ジ―クが来てくれた。

「っち、邪魔が入ったか。まぁいい私は陛下が闇に染まりきった姿を後で見るとしようか」

「待て!」

「そんな事を言ってる場合かな?陛下はもうそろそろ闇に呑まれてしまうぞ?」

「っぐ……お前はグラムの名にかけて俺が倒す!!」

「ひっひひ、言ってろ、グラムのガキ。」


「陛下、私が今この魔黒装を壊します!」

そう言いながら女王の剣をこの黒い聖騎装ごと切ろうとするジ―ク。
しかしそれは跳ね返りジ―クの左目に襲いかかった。

「うぐ……な、なんという硬さ…」

左目を抑えながら何とか致命傷をさけたジ―ク、しかし思った以上に状況は悪いらしい。

「ひっひっひ、陛下、先程言った防御力の話は本当ですからね?絶望に苦しみながら闇に堕ちてください。ひっひっひ…」

そう言いながら扉から出るレヴァンデイン卿…

「っく、陛下今から人を呼んできます。少しお待ちください!」

そう言ってジ―クは部屋から出ようとする、しかしもう私がこの黒い聖騎装を抑えらる時間はあまりない……なら答えは決まっている。

「ジ―ク!私が今この暗黒装を抑えている間に私をこれごと貫きなさい!」

「し、しかし!」

戸惑いを隠せないジ―クだが時は一刻を争う。

「速くしなさい!私がこれを抑えている時間はあまり長くありません!!」

「…分かりました。このジ―ク、アルテリーナ=アルテミス=アルシリア陛下の最後の命を御受けいたします。」

そう言いながらジ―クは腰につけていた剣の聖騎装を抜いた。


今この場にいるのがジ―クの他にもいたのならまだ可能性があったのだろうけど……
もう諦めるしかないのだろう…
心残りは山程ある、しかし私が死ぬ方が国が助かるのなら仕方ないだろう。
せめてあの人がまだ生きてくれたなら……
そう思うと泣きそうになる。
走馬灯のように昔の事が思い出される。
そういえば、子供の頃に一度誘拐されったけ。あの時はギルバードさんが助けに来てくれたな……

アルマ……
あなたにはまだ色々教える事が残ってたのにごめんね?お母さんもうダメみたい。あなたには色々苦労かけると思うけど、大丈夫よ…イルマがいるから…
 
 
イルマ……
あなたに私は何もしてあげられなかったわね……本当にごめんね?
お母さん本当はアナタと色々御話とかお化粧の事とか色々教えてあげたかったけどそれももうできないみたいだわ。でもね大丈夫。あなたにはアルマがいるから…



アナタ…今私もアナタのところに逝きますね。
 
 
でも本当は生きていたい。でも叶わぬ願いなのだろうな…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
ジ―クが涙を流しながら私にむかって剣を突き刺そうと動こうとしたその時、扉が開き一人の男がこう言った。

「陛下、ギルバード=R=ボルトただいま参上いたしました。」

私の願いは小さな頃誘拐されていた絶望感から救ってくれた彼に届いた。

~あとがき~

誰も突っ込んでくれなかったので陛下の名前がアルテリーナだという事をすっかり忘れていた愚かな私を許して下さい。
アルテリーナ=A=アルシリアのミドルネームがアルテミスという事にしてください。なんという勘違い…
まぁ原作はクイーン=アルテリーナですけどねorz
何故このような勘違いをしたのだろうか……
さて今回は親父のターン、これから繋がる過去と現実みたいな感じです。
煽り文でいえば「“希望”は彼に託された……!」ですかね?まぁ楽しみながら読んで頂ければ幸いです。
最近、次回へと繋ぐ感じのワクワク感を出したいと思っているのですが…どうでしょうか?暇な時にでも感想くれたら大変に嬉しいです。




[18999] 14話【過去編終了】
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:70a4347b
Date: 2010/11/25 04:25
14話「説明キャラって一作に一人は本当に必要だよね。」


おかしいな、最近俺より親父の方が目立っている気がする…
家の親父って不思議だよね。ていうかさ最近の俺って…正直目立ってないよね?
まぁニートなんてそんなものだろう。まだ違うけどね…
今回も面白カッコいいぜ!
 
 
 
 
 ギルバードが城へ再び向かったのは偶然だったとしか言いようがない。昔話に花を咲かせていた時にふと自分の家の家宝の事を陛下に言うと、

「そうなんですか?一度見て見たいですね…」

と言っていたのが理由といえば理由である。
別に今すぐに見たいとも言っていなかったが、明日は妻と久しぶりのデート。その後は色々とお楽しみである。もしかしたら娘か息子ができるかもしれない。その後も色々とホテルでの仕事や買い出しや改装などで忙しく、2,3日は陛下に会えない。だからギルバードはまだ時間がある今の間に家宝である“過去玉”を見せようと思ったのだ。

「それにしても“過去玉”って変な名前だよな~」

ギルバードの祖父から大切にしている“過去玉”好きな時代に行き来できると言い伝えられている品物。
その家宝である“過去玉”をスーパーの袋に入れているギルバード。
実のところギルバードはこの玉の言い伝えを信じていない。それもそのはず、実際普通の野球の玉ぐらいの大きさで素材は水晶っぽいけど何かしょぼい感じがするのだから仕方ない。
まぁそれでも一応家宝という事なのでギルバードはできるかぎり大切にしている。まぁただ頑丈なので落としても割れないどころか傷ひとつ付かないのでまぁ適当になくさない場所に置いていた。
元々の名前は祖父が言っていたのが本物な事は間違いないのだが、祖母が「“過去玉”で良いんじゃない?」と言っていてそれをそのまま覚えている。ギルバードの父も「“過去玉”でいいだろ?親父は少し頭がおかしい人だから。母さんの話の方に合わせた方がいいぞ。」と言っていたのでそうなった。祖父無き今では誰も本当の名前を覚えていない。ただ一応祖父の日記に正式名称が書かれているが身内は誰も見たがらないのでたぶんずっとこのままの名前で後世に呼ばれていくのだろう。

ギルバードは再び門番に会い挨拶して女王の間に向かった。この時ギルバードは
「今日の晩飯はカレーだって言ってたから良かった…」
と思っていたらしい。

そして女王の間の前扉を開け、畏まって礼儀正しく挨拶しようと前を向いた瞬間。
 
 
あれ?来る場所間違えた?
 
 
と思った。と後日、息子に話していたとの事。それもそのはずだろう、陛下が意味不明な黒い何かを装着していてそれにジ―クが涙を流しながら剣を陛下に向けていたのだから…

そしてギルバードは挨拶をする事を忘れていた事を思い出してとりあえずこう言った。

「陛下、ギルバード=R=ボルトただいま参上いたしました。」



…………………………………………………………………………………………………………

何このシチュエーション?意味不明すぎて困るんですけど…

「ギルバードさん!」

「ギルバードさん、来てくれてのですね…」

何やらグッドタイミング的な感じで入ったらしいけど、俺にとってもグッドタイミングなのか?
うんそれは間違いなくバッドなタイミングだね。

「ギルバードさん!!陛下を、アルテリーナ陛下を助けてください。」

状況把握できていないのに助けろって言われても困りますです。はい。
大体、俺今丸腰だからね?そんな俺に何をしろっていうのよ?

とりあえず、何か変な物を陛下が身につけていてそれで陛下が苦しそうってことは分かる。
いつもの陛下は緑色のマナなのにそれが嫌感じの黒色のマナになっているしたぶんこの装備を破壊したらいいのだろう。

「マナが黒いな…」

そう言いながらとりあえず家宝を下に置く。家宝でも傷つかないから気にしない。

「それは!」

何か驚いたように目を見開くジ―ク君。なんなの?

「悪しきマナを飲み込むと言われ、そのマナを浄化するというオリジナルの聖騎装“宝珠”!!」

オリジナルって元祖って事だよね?
何でそんな物実家にあるのよ?
まぁでもトイレの前に飾っていて臭いの落ちが良い理由はそれだろうな…
ていうか何でその事をジ―ク君は知っていて俺は知らないのだろうか…

「そうか…ギルバードさんはレヴァンデインの企みに気付いてコレを持ってきたんですね…」

いやいや、偶然だから!
ていうかレヴァンデイン卿が何かしたの?
そもそも全然把握できていない人間に何を言っているの?

「ギルバードさん…」

陛下も何か尊敬っぽい眼差しで見るのは止めて…




「しかし、未だにその効力があるのかは…分かっていないから危険ですね。もしかしたら悪しきマナが増大する可能性もあると前に読んだ文献に書いてありましたし…」

なんじゃそりゃ?
流石は爺さんの宝物だな。役に立ちそうで完全に裏目に出る可能性があるって…
ていうか文献って何よ?そんなジャストな文献がこの世に存在するの?ご都合主義感が半端ないんだけど?

「私はこの国の女王です。もしコレに失敗した場合、私は闇に落ちるでしょう…失敗する場合があるのなら私はここで死を受け入れます。」

「陛下!」

声を荒げるジ―ク君。何ていうか俺は完全に蚊帳の外。なんだこの状況?

「もし失敗したら、命を懸けてこの国を救ったエクソードに私は顔向けができないのです!」

「う、くっ……」

その言葉に言葉が出なくなるジ―ク君。それにしたって話がややこしすぎる…まぁでも陛下が死ぬとか言うのを辞めさせなきゃな…
アイツとの約束だし。

「陛下…失礼と分かって言いますが、それは違いますよ?」


「何がですか?」

何か微妙に怒ってる感を滲みだしている陛下。まぁ正直このくらいの修羅場は潜ってきているんだよ。
まぁ思い出したくないものが山ほどあるけどね。まぁとにかく話を続けよう。

「アイツが死んだのは、この国が大切だからというのは事実です。しかしこの国が大切だという理由は何でだと思いますか?」

「それは……」

考えている陛下、まぁこれは喋る前に俺の方から言っておいた方がいいかな。

「陛下とアルマ姫とイルマ姫がいるからですよ。」

「!」


「私も結婚している身ですからアイツの気持ちが痛い程分かります。」

死んでいったアイツに顔向けできないとか言われても、アイツは何の為に死んだかと言えば陛下の為だし。
それにしたってあの大戦は酷かった。でもアイツがいたから今のアルシリアはあると言っても過言ではないしな。
ならアイツの守りたい人を俺のできる限りで見守るのが俺の役目だろう。
まぁ痛い程というのは言い過ぎだけど…

「助かる可能性があるのにそれをしないのは間違いではないですか?アナタは確かにこの国の立派な女王です。しかしその責任全てを一人で背負い込むのは止めてください。」


「しかし…私はこの国を守らなければ…」

「そうですね、しかしアナタが死ねばこの国は混乱にいたるでしょう…」

「………」

「ジ―ク君がいる。女王騎士もいる。アナタを信じている民がいる。その責任の少しぐらいは分けてもいいんじゃないですか?」

陛下は悩んでいるらしい。大人になりこの国の女王になって大胆な行動ができなくなったのだろう。しかし、あとひと押しで行ける!

「アルマちゃんもイルマちゃんも母親がまだ必要ですしね。」

そう言うと陛下はハッとした表情になった。
よし勝った!
何に勝ったとか良く分かんないけどとりあえず勝った!
それにしても俺のセリフは超臭い。今思い起こせばかなりの厨二病…泣きたくなるのでげす。

陛下は決心を固めたらしく俺にこう言った。

「分かりました。私の命、ギルバードさんに預けます。」

よし分かったのかならジ―ク君に頼んで……

って俺ですか!?

この状況では断れないですよね?
あの時のセリフに俺は含めていなかっただろうに…
うう…仕方ない、陛下も命を懸けているんだ!男なら受け入れるしかない!
 
 
男に生まれたくなかったよ……


「このギルバード陛下の命預かります!」

そんなこんなでとりあえず玉にマナを込めてみる。
使い方はよく分かんないけど何か反応したのでいいだろう。
はは適当すぎる程に適当。大体ジ―ク君に使い方教えて貰おうとしたのにさ。

「ギルバードさん急いで!」

とか言って急かしてくるから仕方ないよね。
んで陛下に向かって玉を投げる。
すると玉が見事なまでに輝かしい光を放った。

『な、何だ?我がマナが吸収されているだと!?』

とか言う黒い聖騎装。
ていうか喋れたの!?その事実に驚きを隠せないです…

『我は魔王装(ダークロードギア)、全ての者は我に逆らえるはずがないのに…な、何故だ!?』

そんな事俺が知る訳ないでしょうに…

『だが、この女のマナを吸いこんでいる我にこんな仕打ちをすればこの女もタダではすまんぞ?』

そうなの?ていう事はピンチじゃない?

「私はアナタなんかに負けない!平和に暮らす民の為に、私を信じるギルバードさんにジ―ク、女王騎士達の為に、そして何よりも…愛しい娘達の為にも!!」

そう言って黄金のマナを放つ陛下。軽くドラゴ○ボールの「クリリンのことか~~!!!」を思い出したくなる状況。

『何だと?我が抑え込まれていく…力も無くなっていく…』

魔王装の黒いマナが段々と消えていくのが目に見えて分かった。
よし!このままこの玉でマナを全て吸収して…

 
 うん?
いや、ちょっと待てよ?でもこのままなら陛下のマナも全て吸われるってことにならないか?そして陛下も消えて…

や、やべぇ!!
でも俺なんも武器持ってないし…うん?ジ―ク君いるじゃん!君なんで傍観決め込んでるの?そういう場合じゃないでしょう!

「ジ―ク君、今だ!あの魔王装だけを撃ち抜け!」

と叫んでみるとジ―ク君はハッとした感じで剣を構えた。
まぁ俺が命預かるとか言っているのに結局は人任せという事はまぁ御愛嬌ということで。一応格好だけ玉を操っているフリをしているけど、マナ込めて、玉投げた後は玉がオートでしてくれてるので何もしていない。

「は、速く!これ以上は持たない!!」

演技しているが大根役者並に大げさすぎる…

「はい!」

そう言いながら女王の剣ではない方の剣を取りだしてマナを込め出した。

「正義の味方の陛下を助けるシーンにしてもベタすぎるシチュエーションだな……だが、これだけは言っておくぞ魔王装、『正義は必ず勝つ』ってな!!!」

そう言いながらマナを込めた剣で陛下に向かって走っていくジ―ク君、今度の顔は先程とは違って勇ましさが滲みでてた。

「受けてみよ!陛下を蝕む邪悪なものよ!」

『小僧が!我を舐めるなよ!』

魔王装が最後の足掻きとばかりに黒いマナのビームっぽいのを出してくるがジ―ク君はそれを華麗に避ける。
うわぁ…何か主人公の憧れの人っぽいポジションだな~
そんな事を思っている内に懐まで潜り込んだジ―ク君。

「我が命続く限り正義は陛下と共にある!!喰らえ!グラム家の秘技!!『グラン・グラム!!』」

目に見えない程の速さで陛下を斬るジ―ク君…
っておい!陛下斬ったら意味ないだろうが!
と思ったらどうやらちゃんと魔王装のみだけ破壊していた。そういえばルークさんが「グラム家の秘技は人を殺さず、相手の戦意のみを刈り取る技だ。」とか言ってたっけ。という事は鎧破壊の技なんだね。

『我が負けただと…だが我は死なない。また機が熟せばこの国を…世界を乗っ取ってやる!』

「そうはさせない。俺や陛下、ギルバードさんがいる限りな!」

そこで俺の名前が入る理由を聞きたい。そんな事を心の中で思っていると何個かに分かれて魔王装が飛び散っていった。

『これで勝ったと思わぬ事だ。我には協力者がいる。ではまた会おう。』

さっきまで負けたとか言ってたのに捨てゼリフが完全に負け惜しみというのは何故だろう?

ていうか陛下大丈夫なの!?

駆け寄って起こしてみると、マナを使い過ぎて気を失っているだけだった。

「ふう、まずは一安心ですね。」

何言ってんの?ついさっきレヴァンデイン卿が何とかとか言ってたの君じゃん!?レヴァンデイン卿が今来たらピンチじゃないの?


「ここから出よう。レヴァンデイン卿が来たら厄介だ。」

「そうですね、陛下を連れて逃げましょう。」

「な、陛下が倒れている!?」

そんな会話をしている内にやってきた女王騎士の人、来るタイミングが凄く悪いのは一体何で?

「うっ、今俺の親父や信頼できる王隊長もいない…」

「陛下を連れて逃げてくれない?ここは俺が何とかするからさ…」

まぁレヴァンデイン卿にバレテないはずの俺がいればなんとかなるだろう。陛下をこのままにすればやばいっぽいし。まぁまだ状況よく分かってないんだけどね。

「…分かりました。アナタの家にて合流しますね!」

とかいって颯爽に窓ガラスを割って逃げたジ―ク君。
何故俺の家?もっといい場所が他にもあるでしょうに…

「ジ―ク!?陛下を連れてどこへ?」

全く状況が分からないで来た女王騎士。困惑しすぎて困っている。俺も状況がそんなに分かってないので困ってます。

「ギルバードさん!一体何が?」

「……俺も良く分からなんです。今しがた着いたばかりなんで…」

嘘は吐いていません。ここ重要です。

「ジ―クが陛下を攫ったのだ。」

「レヴァンデイン卿!?」

この人、何時の間に出てきたの?

「恐らく陛下のマナを悪しき事に使おうとしたのだろう…私がいながら陛下を連れ攫われるとは…」

とか言いながら悔しそうな表情をしています。
うわ~、何かこの人凄く怖いです。ただ何で悪いのかとかは全く分かってないので生理的に無理な感じです。

「今すぐ城内全ての女王騎士に伝えよ、ジ―クを探し出し陛下を救い出せ!尚この事は国民には伝えるな、国家機密だ。」

「は、はい!直ちに!」

そう言って女王騎士の人が走りだした。
まぁ俺の家に来るらしいんだけどね。

「ギルバード殿。この事はくれぐれも内密に…」

「分かっていますよ。他の六大公爵家の人がいないのに…大変な事になりましたね。」

「ええ。では私はこれから忙しくなるので後日に…っち。」

そう言ってどっかに行くレヴァンデイン卿。
俺を見てちょっと舌打ちしてたけど、何でなんだろう?
それにしてもこれから面倒な事になりそうだな。ちょっとアイツにでも相談しようっと。
って待てよ?て言う事は明日のデートは中止?
……うわ~、離婚の危機だよ………

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時は少し遡り一人の少女の話へと移る。
少女はただ母親に会いにいって自分が友達にもらったプレゼントを自慢しようとしていただけだった。心躍らせながら扉を開けるとそこで見たのは母が信頼していた人間に斬りかかられていたという場面。それで母は倒れた。思わず扉の中の光景をみるのを辞めた。なぜなら少女はその光景を信じる事ができなかったからだ。

「…ジ―ク?」


幸福から一転して絶望に転落してしまった。
そこで見たのは嘘だと信じたかった。
そして意を決してもう一度扉の中を見ると今度は母を連れて逃げる姿だった。

「何で……一体どうして?」

おもわず少女はそこから逃げた。その場所にいるとその光景から逃げる事ができなきなってしまいそうだったから。
ただ逃げたひたすらに逃げる間に少女の頭の中でぐるぐる回った。
  

 約束を守らなかったからだ
  
 私が良い子じゃナカッタカラだ
  
 ジ―クは私の事嫌イダッタンダ
  
 ゴメンナサイ、ゴメンナサイ
 
 ワタシハワルイコナンダカラ シアワセ二ナンテ ナレナインダ

そうグルグルと頭の中に呪文のように浮かんでいた。

そしてこの行動が一人の少女の運命を決定的に変える出来事になるのはまだ誰も知らない。
アルテリーナ陛下とイルマ姫が行方不明になったと全ての女王騎士とギルバード達に伝わるのは、その翌日のことだった。


あとがき
お久しぶりです。覚えているかな?羽付き羊です。
更新約2カ月ぶりです。
何か申し訳ない気分です。まぁ一応更新できない的な事は言っておいたのですが11月まで。
忙しかったんです。としか言えません。
本当に申し訳ありません。

さて今回の御話で一応過去編は終了です。
うん。自分で考えているルートが2つあるので困ります。
まぁどっちが綺麗に終わるかどうかで迷っているんですけどね。

ではまたの機会に

それと前回のコメント返し遅れます



[18999] 15話 【第二部】
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:f6afed32
Date: 2010/12/07 11:53

15話
「俺達の戦いはまだまだ続くぜ!って話を聞いたら最終回だよね。」
 
 
 
「…やっと、やっと終わるんだな…」

アルシリア城内を走りながらジ―クさんはそう呟いた。

「ああ…」

「ええ…」

「そうですね…」

「……」

エルト君とアルマ姫、陛下がそう返事を返す。カルマ君は黙ってうなづいた。それに対して俺はこれまでの事について振り返っていた。
あの崖から落とされた後、ジ―クさんに助けられた俺とカルマ君はアルテリーナ陛下に会った。
そこで話を聞いたらレヴァンデイン卿から襲われてマナを失いジ―クさんと一緒にマナが回復するのとレヴァンデイン卿を打ち破る力を蓄える為にトアル村に逃げ込んでいたらしい。
その話を聞いた俺とカルマ君はジ―クさんや陛下の元で修業をした。
1年間が過ぎる頃、風の噂でアルシリアがエルムガンド公国に攻撃すると言うではないか、そこにレヴァンデイン卿が一枚噛んでいるのではないかと思った俺達はトアル村の人達の造った飛行戦艦と俺用の聖騎装とカルマ君専用の聖騎装を携えて出発をした。

そしてエルムガンドで見たのは最悪の光景だった。
女王騎士達がヤパーナやワールーク、エルムガンド、ギスカーン、マクノイスの国々の騎士達に戦争を仕掛けている姿だったのだ。
さらに大きな映像で映しだされたイルマちゃんの変わり果てた姿だった。


「あははは、死ね!我に仇なす存在は皆死んでしまえ!!」

そう言うイルマちゃんを見る女王様は辛そうだった。
しかし、そうも言ってはいられない状況であった。俺達は各国々の王族達を守るべく戦争へと踏みだした。
しかしその結果は惨敗。結局誰一人として救える事はなく女王騎士や暗黒騎士達に王族達を攫われてしまったのだった。

「っく…今までの修行は何だったんだよ!!」

「ディファイ…」

そう叫ぶ俺にカルマ君は声を掛けようとするが上手く言葉が出てこないらしかった。
しかしそんな事をしている間にアルマ姫にピンチが訪れていた。アルマ姫は各国の新人騎士の大会に出ていてこの戦争の事は何も知らされていなかったらしいというのを後々聞いた。
ロイヤル・ガードの人達ですら姫とエルト君を逃がすので精一杯だったらしく、死んでいってしまったらしい。

「俺が生来を懸けて一生守ると決めた人に手を出すなぁぁぁ!!!!」

そこでエルト君が自分の真の力が目覚め、暗黒騎士達の幹部をバッタバッタとなぎ倒していき敵は一端逃げたようだった。

しかし空を浮かぶアルシリア城の主砲がエルト君とアルマ姫達に牙を向けようと動きだした。

エルト君はもう力が出ないらしく、アルマ姫を抱きしめて庇おうとするだけの力しか残っていなかった。
そして主砲がエルト君達に向かって発射されようとするその刹那、一人の男が現れた。

「若い命に後は任すかな…後は頼んだぜ、ディファイ…」

それは俺の父、ギルバードだった。

「何やってんだよ!!親父!?そこから逃げろよ!」

「逃げれたら苦労はしねぇよ。ここで俺の全てを懸けてコイツ達を守る。エクソードとバルトとの約束だしな…」

「頼むよ、逃げて…逃げてくれよ」

「おいおい、泣くなよ。お前はボルトの血を受け継いでるんだぜ?じゃあな母さんのところに行ってくるわ…」

親父は光弾の篭手に自分の全てを込めたマナを主砲に向かって撃った。しかしそれは無残に押し返され親父は死んだ。エルト君とアルマ姫を救って…

「お、親父ぃぃぃ!!!!!!」


結局この戦争で活躍した暗黒騎士達はアルシリアの主要騎士になった。そしてアルシリアも神聖アルシリア帝国という名前に代え、その初代王女にイルマちゃんが即位した。

俺は復讐に燃えた、親父を殺したレヴァンデイン卿を倒す為に…
そして7年の月日が流れ、力を蓄えた俺達はアルマ姫を中心に反乱軍をたちあげたのだった。どうやらマナの回復しきっていないアルテリーナ陛下よりもアルマ姫の方がマナもあり、さらに今まで頑張ってきた成果を取りたくないという事でそうなったというのを後々聞いた。
そして戦いをしている間に俺達はアルシリア城まで辿り着いた。しかしそこでアルシリア城が巨大ロボットになって俺達を襲って来たのだ。

「何だコレ?どうやってこんなのと戦えばいいんだよ?」

と叫ぶエルト君。

「定石としては内部からの破壊だが…」

と言うカルマ君。しかしどうやって侵入すればいいのかが全く分からない。と考えていると胸の扉が開いた。そこに居たのは血だらけのルカ君だった。

「兄さん、ボクはこんなやり方間違っていると思うんです…どうかこの国を救ってください…」

そう言って倒れるルカ君を受け止めるジ―クさん。

「……許さねぇ……絶対に許さねぇぞレヴァンデイン!!」

そして奥に進んで行くと暗黒騎士達の幹部がそこにいた。
しかもなんとジェダ君がそこで不敵に笑っていた。

「兄貴ぃ待ってたぜぇ!!」

「何でお前が暗黒騎士なんかに!」

そう言って戦い出す兄弟。暗黒装の力を使って互角以上の勝負をするジェダ君だったが、お互いに最後の力を振り絞った攻撃に倒れるジェダ君。

「くははは、力を求めてこの様だよ…兄貴にただ勝ちたかっただけなのにな…」

「……こんな事しなくてもお前はいつかは俺を超えていただろうに…」

泣きそうな声でジェダ君にそう言うカルマ君。

「…ははは、本当は俺さ兄貴と親父に追い付きたかっただけなんだよ。何でこんな事になっちまったの…か、な………」

琴切れたジェダ君。それを抱きしめるカルマ君。

「…泣いている暇なんてないなディファイ。先に進もう!!」

ジェダ君の亡骸をその場に置いてさらに先へと進む。その間に他の幹部は他の仲間たちが倒してくれたらしい。


そして諸悪の根源であるレヴァンデイン卿がそこに待ち構えていた。

「ははは!俺は自分自身を暗黒装へと変えたのだ!!そんな俺にキサマ等ひよっこが勝てる訳などないわぁ!!!」

といいながらロボットになったレヴァンデイン卿が襲ってくる。

「ここは俺に任せてくれないか?」

俺は皆にそう告げた。ジ―クさんやカルマ君には悪いけど俺はコイツは許せないのだ。

「…負けたら俺が倒すぞ。」

「…ああ任せた。」

そう言って剣を鞘に戻すカルマ君にジ―クさん。

「何人で来ようが変わらないわ!!!」

そう言って襲ってくるレヴァンデイン卿。一撃の攻撃が重くてさらに速いというやっかいなものだったが、俺にはボルトの血が流れている。
代々ボルトの血というのは後継者に力が渡されていくというものだ。
そして親父という後継者が死んだ今、俺にその力は渡っている。

「喰らえ!!!ボルト・バースト!!!!!」

そう叫びながら俺はレヴァンデイン卿を倒した。

「……ワタシが負けるとはな、でももう遅い、この城に取り込んだイルマはもう助からないぞ?ははは!!!洗脳したかいがあったわ!!」

と言いながら自害するレヴァンデイン卿。

そしてイルマちゃんを救う為に今この城を走っているという訳だ。
そして女王帝の間に着くとそこにいたのは城と合体したイルマちゃんの変わり果てた姿だった。

「イルマ…」

顔を覆うように言う陛下。
俺も正直見ていたくなかった。何故なら昔のイルマちゃんを知っているからだ。
ジ―クさんもアルマ姫も顔を下に向け涙を流していた。エルト君はただ呆然とその姿を見ていた。

「…私がこの城の核…イルマごと破壊します。」

「「「陛下!?」」」

「お母様!?」

その言葉に驚きを隠せない俺達。

「この城は破壊しないと巨大ロボットのまま今も民や他の騎士達、国を破壊しています。そんな事をこの子にさせているのは私のせいです。」

「……分かりました。」

「おい!ディファイ何を言って…?」

「今一番辛いのは陛下だよ…陛下に任せよう。」

そういう俺の言葉に皆納得したらしく俺達はその場から離れていった。イルマちゃんは核にされているのでそれを破壊したら爆発する。つまり陛下は死ぬ覚悟だった。

そして城は爆発して沈んだ。

「なんで報われないんだよ…」

そうエルト君が漏らす言葉に俺は痛く共感していた。しかしこれでも物語は終わらないらしい。
アルマ姫が死んだはずのレヴァンデイン卿が連れ去っていったのだ。

「ははは!ワタシがわざわざ本当自分の自分を出すと思っていたのか?馬鹿どもめ!!さぁこの魔王装をどうぞ、アルマ姫…」

「やめろぉぉぉ!!!」

エルト君が叫びながら言うが間にあわずアルマ姫は何と“与えし者”になった。

『何だかまだ力が出ぬな…あそこで力を蓄えよう。』

そう言いながら暗黒マナの溜まっている塔へとアルマ姫は飛んでいった。

「離せ!!俺が今からアルマ姫を連れ戻すんだ!!!」

そういうエルト君だがこの戦いでもうボロボロなので皆が止めていた。すると神々しく光りながら剣が飛んで来た。

『おいおいディファイ。何してんだよ?』

「お、親父?」

なんとそこに現れたのは死んだはずの親父だった。

『まぁ今は死の世界から連絡してんだが長くは持たん。聞けボルト、この剣は今のお前なら使いこなせるはずだ。これが過去玉の真の姿だ。』

「これが?」

神々しく光る剣を手に持ちながら俺はそう言った。

『ああ、この国を…いや世界を頼んだぞ。』

親父はそう言って消えた。エルト君にも光る剣が渡されていた。これならいけるはずだ。
1週間で傷を癒した俺達は戦いの場に臨もうとしていた。

「今から世界…いやこの報われない物語に終止符をうちに行くぞ!!」

「おおう!!」

と返す反乱軍の面々。そうだ俺達の戦いはまだまだ続くんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
       
 
 
 
 
 


「……っていう夢を見たのか?」

俺の夢の内容を言うとカルマ君は「すごい夢だな」と言いながら昼ごはんのA定食のサバ味噌を食べながらそう言った。

「まぁね、っていうかツッコミどころありすぎて何が何やら分からないしね~」

俺も鰤のセット定食の鰤の照り焼きを食べながらそう言った。あ、ごはん粒飛んだ。

「まぁ巨大ロボットが一番のツッコミどころじゃないか?」

「いやいや、ボルトの家系うんぬんの話でしょう。それか親父が凄く格好いいのと母さんまだ生きているとことか。」

「俺としてはジェダが嫌だな。あり得そうで怖い。」

そう言いながらカルマ君は本当に嫌そうな顔でほうれんそうを俺に渡してきた。ほうれんそう嫌いだもんね。カルマ君。

「いや何で俺が出てこないのかが聞きたいんだけど?」

とシモンズ君がすき焼き定食のシイタケを俺に渡しながらそう言った。

「だって、出てこないんだから仕方ないじゃん。」

「何だか除け者のされた感が半端なくて嫌なんだけど…ていうかレヴァンデイン卿悪役すぎじゃね?」

とか言うシモンズ君、俺に聞かれても困る。だって夢だもん。

「そういうな、シモンズ。ディファイはデスフォレストに明日行くからそういう夢を見たんだろ。」

「ああ、明日からだったけ?」

そういう事を思い出させて欲しくはなかった。
そうなのだ。明日はとうとう暗黒騎士の修行の一環としてデスフォレスト。通称“死んだ方がマシな森”に行かなければならない。
なぜこんな事になったのかというとそれは崖から落ちた時に遡る…


あとがき
本編より夢ネタの方が長いという…
原作知っている人なら普通に分かるのではと思いますがアレです。リアル○○○です知らない人は「女王騎士物語」「最終回」とググれば分かります。まぁ読んだ方が分かりやすいですが…
あれですね。鬱展開まっしぐらですね。今考えてみてもアレは…
さて次回から記事数が20を超えるという事なのでスクエ二板に移動したいと考えておりますがその辺りをお聞きしたいです。暇な時に感想に“まだ早い”とか“いいんじゃね”とかを頂いたら幸いです。




[18999] 番外編「10万PV突破記念」
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:c7ab5471
Date: 2010/12/24 03:07
番外編

「命の恩人になってみたいと思う人は少なくないはず」

あんな事いいな♪できたらいいな♪の歌と
愛と勇気だけが友達さ♪の歌ってさ
アンアンのところだけ聞くとどっちがどっちか分からなくなるよね。
さて今回の御話は親父の話。でも親父本人の話じゃないんだって。
では耳の穴かっぽじってよく見ろ!
…い、今のなし!
 
 
 
  
 
時はあのジ―クの女王陛下誘拐事件から少し、いや結構遡る。

とある町の中で盗賊が出た。しかしその盗賊達は何1つ盗まずにその場で全員御用となった。

「うう、俺達がキサマみたいな男一人に負けるなど…」

30人はいるのかと思える程の人数の盗賊達が全員地に伏せている中で、頭らしき男がただ一人地上に立っている男に言った。
その男は煙草を咥えていたのを手へと持ち替えて白い息を吐きながらこう言った。

「あん?テメェ俺を誰だと思っていやがんだ?」

そう言う男は倒れている頭の方へと向かい、しゃがみこんでその顔を覗いた。その目は絶対的な強さからくる自信に漲っていた。

「俺はカミナ、カミナ=マクドール、アルシリアの女王騎士だぞ?」

そう話す彼の顔に盗賊の頭は正義の強さというものを見たという。


アルシリアの城内の一室で2人の騎士がお茶を飲みながら1人の男の話をしていた。


「カミナの奴、また単独行動か?ったくよ~それで物品とか壊されても困るっつ~の。」

そう言う上官の女王騎士はカミナの友人である女王騎士に愚痴を言っていた。

「能力はロイヤルガードクラス以上なんですが素行が悪いのが難点ですね……今回は偶々一人で飲んでいた時にその酒場に盗賊が来たとの事です。」

友人の騎士も少し困ったような顔でそう答えた。

「盗賊捕まえたからいいようなものの、普通に勤務時間内に酒を飲むって…」

頭を抱え込みながら「信じらんねぇ~。」と呟く上官の騎士。それを見たカミナの友人の騎士は乾いた声で笑いながら、お茶を啜っていた。

「今が戦争でなければ色々お仕置きしてやるんだがな。そう言う訳にもいかんだろ、アイツは戦闘力に関してはお前ぐらいに優秀だ。そんな奴を今の時期に失うのは痛い、」

少し真面目な面持ちでそう言う上官の騎士に友人の騎士はこう答えた。

「そういう事なら罰を兼ねてこういう任務はどうですか?」



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「龍退治だぁ?」

その事を聞いたカミナは友人の騎士に「マジで?」みたいな感覚で疑問を投げかけた。

「そうだ。最近アルシリア近郊でよく見られるドラゴンを退治して欲しい。」

その事に平然として答える友人の騎士。その事に不満を思ったらしくカミナはこう答えていた。

「んなもんよりも、敵国へ攻め込む事が大事なんじゃねぇの?今戦争中だしよ。そんな事する暇あるなら他の事しようぜ~。」


と不貞腐れるらしくそう言っていた。

「民を守るのも大事な任務だ。それにそのドラゴンは巨龍らしい。もしかしたら竜王種かもしれないぞ?」

「竜王種ねぇ~、まぁ仕方ねぇわな。それぐらいの奴なら俺かお前じゃねぇと相手になんね~か。新人で強いのは俺とお前ぐらいだし、今回の酒の件もあるしな。」

カミナは耳をかっぽじりながらそう言った。どうにもそんなにやる気がないらしい、それもそのはずで過去にカミナはドラゴン10匹程を一瞬の内に倒しているのだ。

「まぁぶっちゃけて言うと酒の件の罰みたいなもんだ。お前が好きそうなものをわざわざ選んできてやっただけありがたいと思えよ?」

「やっぱり?まぁな俺も勤務中に酒飲むつもりなかったんだけどさ~、客引きのネェちゃんの言葉に唆されてよ~」

そう言いながら誤魔化すように笑うカミナに友人の騎士はこう言った。

「ったく、いつもの事とはいえお前のその性格時々羨ましくなるよ……それと竜王種に関して一応忠告しておくと、竜王種舐めていると痛い目に会うぞ?」

友人の騎士が真剣な顔で言うのは滅多にないので、どういう事かわからず疑問を投げかける。

「ん?あんなのちょっと強いトカゲじゃん。竜王種は倒した事はねぇけどよ。」

というカミナであったが実際は倒したことはあるしかし、本人がその竜が竜王種だったという事をしらない為のこの発言である。

「俺も一匹だけ倒した事があるけどな、普通のドラゴンの100匹分以上の強さはあるぞ?正直に言えば2匹なら俺も危なかったな。」

「……へぇ~、少しはやる気が出てきたぜ」

カミナの目に鋭さが宿った。どうやらやる気がでてきたらしい。

「まぁ報告上では一匹だけだから何とかなるとは思うけどな。」

「なんじゃそりゃ?それなら女王の剣1本ありゃ十分だな。」

「まぁお前なら大丈夫だとは思うが一応装備はしっかりしておけよ?いざという時に命を守るのが装備だからな。」

そう友人に言われてカミナは安心させるかのようにこう言った。

「分かってるって、エクソード。俺を誰だと思っていやがる?“龍殺し”のカミナだぞ?」

しかし友人は嫌な予感が拭えずにいたようで、カミナに対してこう言った。

「本当か?これでもお前に死なれたら俺はお前を殺した奴を殺さなくちゃならないくらいお前の事が気に入ってんだぞ?」

「何だよそれヤンデレって奴か?俺の女じゃねぇのに気持悪い事言ってんなよ。大丈夫に決まってるっつ~の。」

「それならいいけどな……」

友人として心配していると分かっているが、そんなに心配されるのも嫌だったのでカミナは頭を掻きながらその場を離れようとする。その時に一言相手の顔を見ずに歩きながらこう言った。

「あっ、そうそう。この任務さっさと終わらせて戦線に復帰するからよ、お前がヘタこいてりゃ俺がお前の活躍全部取っちまうぞ?」

後ろを振り返ろうともせずにスタスタと歩く姿はいつもと同じカミナだった。

「ふっ、口が過ぎる奴だな…」

そう言いながらも安心そうな顔をする友人。
しかし、心配そうにする友人の予感が当たっているとはこの時は誰も思ってもいなかったという。


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翌日、アルシリアの王都から少し離れた場所にあるアレ―タ荒野にカミナは来ていた。ここに巨龍がいるとの報告がきたとの事。
装備も十分である中、“龍殺し”の異名を取るカミナにとってはさっさと終わらして戦線に帰ろうというやる気で満ち溢れていた。

「さ~て、大きなトカゲちゃんはどこかな?」

そう言いながらふと空を見上げると曇天の空から雷鳴が轟いた。
とそこに現れたのは竜王種の1つ雷龍のベルキュロス。全長18m。

「さて…お前が今回の獲物か?」

「ビッシャ~!!!!」

大きな羽を上下に動かしながらカミナの前に着地すると大きな咆哮をあげた。
威風堂々としたその姿はまさしく竜王種の名にふさわしい姿だ。

「なるほどねぇ~、竜の中でも六大巨龍で有名なベルキュロスが相手とは…相手にとって不足はねぇ~わな。」

カミナが“龍殺し”という2つ名がついたのは、竜王種を相手にしてケガ一つすら負わずに勝利したからである。そもそも竜王種というの名の付く竜はエルムガンド公国の王のパートナー竜だったものである。
現在ではその風習は消えたがそもそも王のパートナーにふさわしい知能と能力を持っている竜がいつの間にかそう言われるようになったものだ。
初代から15代までの龍は竜王種と言われているがそれ以外はいくら優秀でもその名では呼ばれない。そういう制度を作ったのは15代の王だといわれている。
その竜王種を簡単に倒した事から付いた名前が“龍殺し”である。
しかし、今回は竜王種の中でも頭一つ分飛びぬけているベルキュロスが相手だ。
いくら彼でも簡単には勝たせてはもらえないだろう。

「行くぜ!蛇公ォォ!!!」


カミナは“忠誠の十字架”を取りだしマナを込めながら、目標に向かって一気にかけ出す。
マナを込め終わると現れたのは大きな一振りの刀。全長2mはあろうかという太刀だ。

「ビッシャ~!!!!」


竜の爪の攻撃や尻尾の攻撃を避けながら竜に乗り頭まで来るとその刀を竜に向かって一気に振り下ろす。

ガキン!
という鈍い音がしたと思うとその刀は弾かれた。どうやら鱗が異様に硬いらしい。
その弾かれさらに上へと空中に投げ出された。その後すぐにベロキュロスの口から雷撃が放たようと溜めが入る。
まともに食らえば大ダメージは必至。しかしそこは“龍殺し”の異名を取るカミナ、そのモーションを見るやいなや、聖騎装の光弾の篭手を上の口に向けて発射。
ベルキュロスは雷撃を放つ瞬間にそれをやられてしまい、自滅。しかしダメージはほとんどないが怒っているようだ。

「歯ごたえある蛇公だ。ったくよぉ!!」

着地をすると同時に再びベルキュロスに向かって攻撃を仕掛けようとしたその時だった。
轟風と共に大きな何かが現れたのは…

「ぐぅ……動けねぇ。」

あまりの風の強さに彼は身動きが取れなくなった。
その何かはベルキュロスの横にと着地した。現れたのは風龍の竜王種、リンドブルムすら従えると恐れられる。漆黒の風、アレース。

「ゴォギャ~!!」

「おいおい、2匹相手じゃあ流石に…きついぜ?」

そうは言いながらも顔はまだやる気満々だ。この負けん気とどんな状況でも活路を見出す力がカミナの最大の持ち味である。これなら5分5分。何とかいける。そうそのはずだった。

さらに地中から現れた巨龍が現れるまでは…
もう1匹、あまりの火力で爆発するかのような火炎を吐く事で有名な爆龍の異名を取るドラギリアス

「ブバオ~ン!!」

猛炎を吐きながらカミナの逃げ道を防ぐドラギリアス。

「おいおい、いくら何でもこれじゃあ無理だぜ?」

そこから始まったのは竜によるリンチだ。
雷撃を避けようにもそのすぐ後に暴風が吹き荒れ思うように動けない。さらに爆炎が降り注ぐ。
そんな中でもなんとか傷を与えてはいるが少量。全員に均等なダメージを与えるのではなく、一番やっかいなアーレスから倒そうとするも、その前にドラギリアスやベルキュロスが立ち塞がり、どうしようもない。
満身創痍になりながらも微かな傷しか与えられない。
絶対絶望という言葉が彼の中にあった。
しかし彼は生き延びなければならい理由があった。もちろん友の為でもあるがそれ以上の理由があった。

「こんな俺にもな、待ってくれてる女がいんだよ!」

左腕を雷撃が包む。もう左手は動かない。しかしまだ右腕は動く。
右手で刀を振りおろそうとすると今度は爆炎が右手を覆う。刀が地面へと落ち、もう両腕が動かない。
普通ならもう死を認めるはずだが、彼は絶対認めない。
なぜなら彼は生き残らればならない。まだ両足が動く。動くものがあるなら突き進む。
逃げようにも逃げれないなら勝つ!ただそれだけだ。

「俺を誰だと思っていやがる!」

血反吐を吐きながら叫ぶカミナ。刀の柄を口で咥えるとドラギリアスに向かって駆け出した。
流星群のような爆龍の放たれる爆炎を避ける。無数の数の雷撃を紙一重で交わす。風竜の放つ風すらもつっきりながら前へ、前へ、ただ前へとひたすら進む。
そしてドラギリアスの目にその刀を差した。

「バギャオ~~~~ン!!」

その目は血が流れて痛がっている様子が分かる。
しかし、カミナは力が尽き、その場へと倒れる。

「ははは、ダメだ。流石に力が出ねぇや。」

一矢報いたがただそれだけ、それ以下でも以上でもない。
竜を怒らす。ただそれだけの結果しか“龍殺し”は得られなかった

「すまねぇ…ヨーコ。もうダメだわ…」

初めて吐いた本音の弱音、そして彼は一飲みで龍に喰われた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
カミナは気付くと仰向けに寝かされていた。空か真っ青。雲もなく良い天気だ。
先程までと違い良い天気である。どうやら天国に来たみたいだ。

(そうか、俺死んだのか…龍に喰われて丸呑み、“龍殺し”の最後が“龍殺され”とはな…)

そういう風に思いながら手を動かそうとすると痛みで動かさられなかった。

(アレ?おかしいな痛いが戦っている程の痛みじゃねぇ…指が動くし…)

その事に疑問を持ちながらカミナは首を横に動かすと一人の男が座っていた。

「気づきましたか?」

そう言いながら薬草を煎じたモノがあったり、薬草で巻かれたカミナの腕が見えた。
そして驚く事に、爆龍のドラギリアスが腹を掻っ捌かれて死んだ姿がそこにはあった。

「ア、アンタがこれをやったのか?」

「……そんな事どうでもいいじゃないですか。」

否定する気も肯定する気も彼にはないようだ。しかし、この状況で彼以外が誰にこの龍を倒したと言えるのだろう。彼の横にある剣はドラギリアスの血で濡れている。しかもそれは単なる剣ではない。カミナの“女王の剣”だ。しかし形状は違っており普通の剣程の大きさの洋剣だった。それはこの男のマナで変化したものだという事が分かる。

「他の龍は?」

そう他にもいたはずの龍がここにはいない。その疑問をこの男にぶつけた。

「…私が気付いた時にはいなくなったようですね。」

溜息を吐きながらさも残念そうにするこの男を見るとこの男の実力を見ると同時に龍が逃げたという事だろう。それしか答えはない。

「これ飲めます?」

そう言いながら煎じた薬草をカミナに見せる。どうやらこの男がカミナを救ったらしかった。ケガの治療までして…
まずあのケガの状態からなら確実に1日もそのままだったら死んでいたはずだ。しかし腹の中にいた俺をどうやって救ったのか謎である。そう考えていると風が風下の方へと流れ胃液の臭いが男からした。

「ははは、あの龍の胃液に浸かってたから臭いですね~。」

そう笑いながら言っていた。どうやらこの男はドラギリアスの腹へ自分から入り、カミナを救ったらしい。

(おいおい、マジかよ?そんなに大胆な奴には見えないぞ?)

そう思いながらもカミナは薬草を飲もうと身体を起こそうとするが上手く起き上れない。

「大丈夫ですか?」

そういいながら男はカミナは起こして薬草を飲ませた。
カミナは薬草を飲んだ後ボロボロので辺りを見渡すと敵国の騎士が気絶している姿だった。しかもその少なく見積もっても1000人は超えているだろう。2000人ぐらいかもしれない。
俺が戦っていた時にはドラゴンしかいなかった。そうなるとこれをやったのもこの男という事になる。
しかしおかしい戦線はデーカ―イ岩場だったはず、ここはアレータ荒野だ。となると敵が奇襲をここに仕掛けたという事になる。
それによくみればアルシリアの騎士もいる。民間の騎士や女王騎士すらも倒れている中でこの男は掠り傷程度しか負っていない。まぁ返り血はたっぷり浴びてはいるが…

「…アンタ一体何者だ?」

そう問うカミナに向かって、男は笑いながら答えた。

「私はギルバード、ギルバード=R=ボルト。それ以上でも以下でもないですよ。」

その男の姿にカミナは誠の騎士を見たという。
 
 
 
 
 
ケガを負ったカミナは病院のベッドの上で寝ていた。

「命の恩人って奴だよ、俺はギルバードに頭が上がらない…」

「ギルバード=R=ボルト、アルテリーナ様を助けた事で有名な男だな。」

御見舞に来ていたエクソードはリンゴを器用にウサギにしながらそう言った。

「まさか一人で倒すなんてな…俺ですらあの龍3匹相手で一杯一杯だったのによ……」

「ああ、どうやらレベルというか根本的に何かが違うようだな…」

リンゴを剥き終わったらしく、カミナは一口でそれを食べる。

「ああ!せっかくウサギにしたのに…せめて写真ぐらい撮らせてくれても…」

「ていうか普通は何等分かに切ってウサギにするんだよ、何で一個丸ごと彫刻みたいなウサギにすんの?」

いじける友人にカミナはシャリシャリを音を立てながらそう言った。

「物を入れた口で喋るなよったく、まぁ別にいいか…それにしても本当に無事で何よりだ。」

「まぁな、まぁ命があって良かったよ。女王騎士は引退する事になっちまったけどな。」

ハハハ、と笑いながら言うカミナに友人の顔は残念そうな悔しそうなそして泣きそうな顔をしていた。

「そんな顔すんなよ。腕は動くようになっても一時的な麻痺状態は一生治らないって医者に言われたんだ。ベロキュロスの雷撃にはそういう毒もあったんだってよ。」

そう完全に治ったとしても毒で一瞬でも動かないとなってしまったら、命に係わる。それが女王を守る任務をする女王騎士ならその一瞬でも気が抜けない。そうなれば確実に引退をしなければならないのだ。

「……その命大事にしろよ?」

友人はそう言った。命があるだけマシなのだ。そう言わざるをえないだろう。

「ああ、俺はギルバードがいなければ死んでいた。こうなっている事だけでも本当にありがたい事なんだぜ?」

カミナは笑いながら言っていた。実は引退については戦争を終えてからと生死の境を彷徨った時に考えてもいたらしい。守るべき人の顔を思い出し、それを守れないと思ったまま死んでいくはずだったのを救ってくれたのだから当たり前だと言える。なぜならカミナにとって“死”から“生”への“希望”を見出させてくれたのは本当にありがたい事だった。

「…そうだな、さしずめ“希望の騎士”といったところかな?」

「…そりゃいい名前だな。」

カミナは窓を見た。そこにあったのは“希望”を見出した時と同じような真っ青な空が広がっていた。





あとがき

PV10万突破記念の親父の番外編。何気に人気の親父。少年漫画の主人公の父親って凄い強い人か、一般人のイメージしかない。この人は一般人です。
竜王種の設定は完全なオリジナルです。風の竜王種とかなんとか原作に書いてましたがぶっちゃけ理由書いてないんでオリジナル設定でいきました。まぁ普通に考えれば火、土、水、風、雪、雷とかの属性で一番強い竜だと思いますけどとりあえずこの設定でいきます。
巨龍の名前はどっかで聞いた事のある名前を適当に書いてみました。モンハンとデュエマと他は思い出せない。
書いてて思った事は「親父……そりゃ“希望の騎士”って言われるわ」ですね。
それと聞きたいことがありますがこの話の勘違われsideって欲しいですか?
一応後々の話でこの辺りをチョロっと書くつもりですが詳しくは書かないので聞いておきます。詳しく読みたいなら書きますが、まぁその辺りを本編で書いてからという事で。
因みにこの番外編を読んで作者はグレンラガン好きだという事が分かる人には分かります。
感想100話突破記念の番外編は一応作っていますが。まぁ後4話ぐらいはかかりそうな予感。

では次は本編でお会いしましょう。





[18999] 16話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:100df033
Date: 2010/12/19 00:39
16話
「それはピッコ○さんと○飯だから許される修行内容だと思うのですけど…」

ディファイです。そろそろネタも切れた頃とです。
ディファイです。自分でもこんなに古いネタやる理由が分からんとです。

とまぁ暇潰しに一発屋のネタをやってみてますが、朝にやってた時のポケ○ンのCMって一発屋の宝庫だった気がするんだ……



あの崖から落ちた後、何かシモンズ君が俺とカルマ君を連れていったらしい。
らしいというのは俺があの後体力を使いはたして丸3日爆睡していてその事をシモンズ君はから聞いたからだ。
その時に解毒剤も投与されたので生きてここにいるという訳ですね。

「イノチノオンジンカンシャエイエン二。」

とか言おうとしたけどシモンズが邪魔しなかったらまぁたぶん受かったであろう女王騎士試験に落ちたのであんまり感謝できなかったので言わなかった。
まぁ落ちて良かったといえば良かったんだけどね。
元々落ちる前提で受けてたし、命もあるしね。
まぁでも親父の驚く顔も見たかった気もするし…うん何かアレだね、期待してなくて何かそれができそうな時ってアレだねテンションのアップダウン激しいよね。

例えでいうとビンゴ大会で「はん、こんなの当たるわけねぇっての」とか思っててさ、司会の人に「リーチの人いませんかぁ?居たら手を上げてくださ~い」とか言われて手を上げてみたら自分だけで心の中では(うわ、コレ行けるんじゃね?お米券1万円分ゲットじゃね?)とか思っている状態で結局他の人に取れた心境。しかも自分は結局無駄にトリプルリーチとかしてもビンゴにはならないっていう状態……

考えただけでゾッとするね…


とまぁそんなこんな考えている内に何日か過ぎて傷も癒えたので家に帰って溜まったニヤニヤ動画を見ようとして帰り支度を始めていたら引きとめられた。
何で?と思っているとシモンズ君がカルマ君と俺を呼び出して2体のフィギアを取りだした。

「そ、それは!!!!!!!???」

「何だコレ?」

俺はあまりの驚きように心臓が飛び出すかと思った。
カルマ君は子供の頃しか集めていなかったらしく反応が薄い。

「受け取れ。」

そう言われて受けとったフィギアを詳しく見るとやはり間違いはなかった。
あの市場には出回っていない事と数量が極限に少なく、ネットでは都市伝説とまで言われている。あの女王陛下Ver.黒色武装だった。
何とまぁ驚いた事に一応はあの試験に合格という扱いになっているんです。コレを貰えたという事は。
シモンズ君に聞いてみたところあの試験は魔黒騎士の選抜試験でもあるとの事。ジェダ君とかカルマ君とかルカ君に着いてたアノ訳分からん武器の使い手を育ててアルシリアの秘密部隊になるのが目的とか言ってた。
なるほど。
だから紋章は貰えない代わりに、「女王様を手元に置いていつも敬うように」という名目で渡されるフィギアだけが貰える訳か。
まぁコレを貰えて今までの努力は結ばれたんだなぁ~とちょっと思ってしまっても仕方ないだろう。まぁでも正装Ver.をあきらめた訳ではない。ルカ君かイージス君辺りに貰おう。

そういえば、シモンズ君は俺より年下に見えるんだけど、魔黒騎士としてのキャリアは先輩なんだよね?一体どうやって入ったんだろう?
女王騎士試験は5年に1回だけなのに…

「そういえば、シモンズ君はどうやってこの部隊にいるんですか?」

「ツークリック詐欺に騙されて。」

「え!?」

「冗談だ。」

俺が驚くと真顔でそう言った。一瞬信じた俺がバカだったんだろう。

「貴族でも公爵家でもない人間で魔黒騎士としての才能がある人材という事でここの部隊のイゥエンていう奴に誘われて入った。」

普通にそう言うシモンズ君。さっきから思っていたんだけど試験の時と少し性格変わってない?

「そうだったんですか……でも何で女王騎士じゃなくて魔黒騎士になろうと思ったんですか?」

「さぁ?その場のノリだよ。別に悪い事する訳でもねぇし。……親父の事についてそんなに聞かれないしな…」

とか言ってた。後半は聞こえたけど意味分からなくてスル―した。スル―検定1級の俺を持ってすればたやすい事だった。

「それとお前、ここの部隊は上司とか以外は先輩でも敬語とか使わなくていいからな、まぁ本人が使いたいなら使ってもいいけどよ。ここの部隊アルシリア以外の国の奴も結構多いから触れあいも兼ねてフレンドリーな部隊にしたいんだ。」

何それ、流石は裏の組織という事か?たぶん違う気もする…
でもそう言う事なら俺もあまり敬語は使うまい。

それはそうと女王騎士でいう忠誠の十字架的なものが魔黒騎士でいえば魔黒装らしい。正式名称は知らない。シモンズ君は覚えていないらしい。

「まぁ魔黒装についてはそれぞれ専用の武器が与えられるからよ。正直な話さ、誰でも持ってる闇のマナを増幅させて使う武器だから闇のマナで使い過ぎるとやべぇぞ?そこんとこは契約次第だけどな。」

「契約とは何だ?」

カルマ君がそんな事を聞いていた。というか今の今まで何で黙ってたんだろう…そう思って何気なくカルマ君の手をみたら陛下がパン1、ブラ1になっていた。
……貴方何しているんです?
お年頃なのは分かるけどそれはどうかと思うよ?

「盗聴器とか監視カメラとかそんなのがないかを調べていただけだ。」

俺の視線に気づいたカルマ君はそう言った。そういう事にしておこうじゃないと色々面倒な気がする。

「ああ武器との契約だ。」

そしてシモンズ君は何もなかったかのように話を進めていた。この人マイペースだな……
それにしても武器との契約?
なんじゃあそりゃ?

「魔黒装、まぁ俺のような幹部に渡される特別製の魔黒装は『生きて』いるんだよ。」

ああ、だから喋ってたの…
って生きているの?マジで?

「まぁカルマは知っているだろう直に使った訳だからな。」

「まぁな。」

そう返すカルマ君。てっきり自分の闇の部分が喋る感じの厨二だと思っていた俺の予想は外れていたらしい。

「でコイツ等は知能もあるんでね。ややこしい書類仕事も丸投げにして頼るのも契約次第って訳。なぁ?」

『ちょっと待て、それはまずガン○ンで掲載している女王騎士ストーリーの11巻を買ってからだぞ?展開が熱くなってきたんだからな!!』

「まぁそういうな、泣き虫ペダルのが先だ。ウエルカムレースで眼鏡君と、うっほ、良い男とリアルにはあんな関西弁で喋るのは少ない大阪人とのクライムバトルの熱さがすげぇんだからそれ後回しな。御堂君何時から出るんだろう…」

『ちょっ、おま…』

何これ?こんな感じだったけ?もっとこう威圧的で怖い感じがしたはずと思ったんだけど…

「うん?不思議そうだな…まぁそう思うだろうな。基本的にコイツ等、魔黒装は自我が凄い。でも一度手なずけたら思いのままに動かせる。ただ時々本性が現れるのが面倒なんだ。こっちまで少しひきずられちまう。」

やれやれみたいな感じで言うシモンズ君。なるほどだからあの試験の時と今では雰囲気全く違うのか。

『因みに俺はコイツがガン○ンを立ち読みしたときに気になった女王騎士ストーリーを買ってもらうという事で軍門に下った訳だ、何という孔明。』

そう淡々に言う魔黒装、因みにコイツはシモンズ君が試験の時に使っていた奴でコレを使うと腕が4本になる。名前はコンドラクタ―というらしい。

……魔黒装、凄く欲しい。そしてなんだかリリカルでいうデバイスとかいう奴に似ている気がしてならない。というかガンガンって立ち読みできないはずなのに…

「いや、どっかのクソガキが本の紐解いてたから暇潰しで読んでた。んで店の人に怒られて買い取りになった。」

「シモンズ!!何どうでもいい話をしているんだ!?」

そう言いながら扉を蹴破って入ってきたおっさん。

「ああイゥエンか?ちょうどよかった今から俺コンドラクタ―に操られて町で泣き虫ペダル買ってくるけどお前は何か欲しいのある?」

『魔黒装のせいにするのはどうかと思います、けど11巻買ってくれるなら別にいい。』

「なら『貴方に届いて』の6巻で……って違う!!ちゃんと新人の教育をしているのんだろうな!?」

どうやらこのおっさんはイゥエンというらしい。

「俺としても歳近いし友達になったから分かっている事はちゃんと教えてる。大体ここの部隊あのネェちゃん以外歳喰い過ぎなんだよ。」

「それは仕方ないだろう。文句ならレヴァンデイン卿に言ってくれ。」

扱いが悪いなこの人。それにしても何時から友達になったのだろうか?まぁ俺としては大歓迎なので全然OKなのだが。

「なら良いが…」

「じゃあ行ってくるわ。」

「ああ、3巻ぐらいセットで買って来てくれ。」

1500カネ―を財布から取り出してシモンズ君に渡すイゥエンのおっさん。何か喋った事ないけど何となくこの人はこの呼び方で良い気がする。

「カルマに、ディファイとか言ったな?」

そう言いながら俺達の方を向くイゥエンのおっさん。

「ここの部隊は厳しいぞ?覚悟しておけ!」

…何か説得力があんまりない。というかシモンズ君のあんなゆるい感じを見せられたそう思っても仕方ないだろうと思います。

『じゃあイゥエン、俺等行ってくるから後は頼んだぞ。』

コンドラクタ―はそう言ってシモンズ君と一緒に本屋に行ってしまった。

「はぁ~、元祖の聖騎装を使われて闇の部分が薄れてからコイツ等変わりすぎだろう…」

そう漏らすイゥエンのおっさん、元祖の聖騎装?訳のわからん事をいうおっさんだ。

「今でも闇の部分が強いのは俺が使っている以外はルーラーとかアンサラ―とかしかいないしな。……訓練は明日からだ。今日はもう解散。」

何だかやる気がなくなったようにそういうおっさんの目を見ると死んだ魚の目をしていた。一体何があったのか気になるがまぁどうでもいい。おっさんの死んだ目の理由を聞いたところで俺のプラスにはならないだろうし。
 
 
そんなこんなで2週間訓練で魔黒騎士のなんたるかを教わった訳なんだけど俺、魔黒装使えなかったんだよね。

魔黒装を使えない魔黒騎士って一体……

普通にマナの量が足りていないとかいう訳でもないのだが、なんかこうドス黒イ感じのマナを出せないと使えないんだって。
しかも何か良い感じの魔黒装はそれなりに共鳴し合える仲でないと使う事が不可能らしく、俺はシモンズ君の持っている系統の魔黒装と相性が悪くて使えなかった。

あの時イゥエンのおっさんがカルマ君と戦っているの時の直感で「コイツは魔黒騎士にふさわしい!」とか思って選ばれたとか。しかもマナの雰囲気しか分かっていない状態で……
見当違いも甚だしいです。

という事であのイゥエンのおっさんが

「お前は“デスフォレスト”にでも行ってこい。」

とか指導を投げ出されて行く事になった訳ですよ。
家に帰りたい、仕事したくない。というか家に帰るのは正式な魔黒騎士にならないと無理らしく、それまでは寮生活という事らしい。研修期間は3年とのこと。

イゥエンのおっさんの愚痴をシモンズ君に言うとシモンズ君は試験時におっさんのしていた事を教えてくれた。
イゥエンのおっさんはルカ君とかジェダ君とかに魔黒装を与えた張本人らしい。普通は誰でも持っている闇の面を増幅させるとか言ってたけど……俺さ、別に闇に落ちるとかの厨二病持ってないし、生きるだけで一杯一杯だしさ、そんな厨二臭い設定誰でも持っているとか仮定の話で連れてこられてもね~
カルマ君とかシモンズ君は家庭の事情で暗黒面ちょっと強そうだけど。俺はあんまりないしな、というか悩みは基本的に一晩寝たらどうでもよくなるからな。

因みにニートになるという思いは何故か暗黒面にはならないらしい。そんなバカな…



シモンズ君が言っていたが魔黒騎士はレヴァンデイン卿の直属の部隊らしい。ジ―クさんや陛下を探すしたり女王騎士が実戦になれる為に色々悪い事をするフリしたり、女王騎士の名誉の底上げ的な事をする組織とのこと。でも基本的には秘密諜報機関らしい。

……まぁアレだな、実家に帰れたらダブリー、一発、ライジングサン13面だろう。
何が?と言われれば困る。答えられないから……


でやって来ましたデスフォレスト。イゥエンのおっさんの魔法的な何かでワープして来た親父に聞いた通称“死んだ方がマシな森”
食糧や環境にも恵まれている豊かな森なのだが、まずここに来るまでが60kmにおよぶ樹海が存在する。まず迷って入ったらまず自力での脱出は不可能。さらにこの森に入ると毒蛇とか毒蜘蛛とかうようよいる。奥に進むと狂暴な野生動物とかいるモンスターもいる。
極めつけはここはあの龍で有名なエルムガンド公国の付近に存在しているせいかどうかは知らないが“竜王種”がアホ程いるらしい。
ここに行けというのは“死んでこい”と同義なんです。まぁ死ぬ思いをして暗黒面を作ろうとしたとかなんとか。
おっさん適当か!?と抗議しようと思ったら魔法で飛ばされた。バシルーラ的なものを使われて飛ばされた。監視もしていないのに死んだらどうするつもりなんだろう…

「というか、何故に魔黒装も聖騎装もなしで普通の武器で1か月もここに居なくちゃいけねぇの?」

一人でそう漏らしたが返事はない。
ただの屍のようだ。と言ってみたくなる程暇だ。
それにしても不思議な事に毒蛇とか毒蜘蛛とかモンスターがまるでいない。

オカシイ

そう思った瞬間だった。突風が吹き荒れたと思うと森の隙間というかそんな感じで木がまるでいないところにドラゴンが登場。
しかも巨龍です。ラスボス登場です。4代目竜王のパートナーで漆黒の風という異名を持っているアレースさんです。

こんな詰みゲー、誰がやりたいよ!?

心の中で号泣しているとドラゴンが口を開いた。はい何か出て死ぬフラグ。

『お主、もしかしてあの時の人間か?』

はい?


あとがき

どうも羽付き羊です。チラ裏からスクエ二板にやってみたものです。なにとぞよろしくお願いします。
スクエ二板移してから第1段、だからといって前のノリが変わる訳でもないんですがね。
今回からほとんど原作の設定を借りたオリジナル展開です。したくはないけど最終回がアレなんで色々設定足さないと無理な状態になってきたのでそういう感じになります。
まぁ基本ギャグ系か、のほほん系で押していますが、ちょこっとシリアスになったりするかも。
次回更新は1月以内にはしたいです。おそらく番外編を更新すると思います。
ていうかまだ番外編半分しかできいない件。感想の多さが予想の遥か上を行ってしまった。
それにしても魔黒騎士はほのぼのしている気がしてならない……何故だ?



[18999] 17話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:16082e8a
Date: 2010/12/24 03:12
17話「嬉しいのか嬉しくないのか良く分からないフラグを建ててしまった時の反応は困るの一言に尽きる。」

とりあえずこれだけは言っておこう。
皆!お米食べろ!
 
 
 
『お主、あの時の人間か?』

はい?

意味分からない事をテレパシー的何かで言うドラゴンだな…
俺は龍を生で見た事ないし、聞いた事があるのはイルマちゃんからと……
…親父?
そういえば親父から聞いた話でアレースって出てきたな……
確か、後方支援組に行く途中の場所で敵兵が出てきたから女王騎士の人達を呼んだけど、人数があんまりいなかったんで親父も戦う感じのハメになって劣勢で味方が全員倒れていく中、3匹のデカイ龍が来て敵兵を全員薙ぎ払ったとかなんとか。
そんで1匹の龍に喰われて何とか腹を掻っ捌いて出てきたとかいう妄言を聞いた気がする。

『いや、どうにも若いままの気がする。さては息子か?そうかそれ程の時が流れたか……』

自己完結している大きな龍さん。そして何かマナが変化する。怒りをぶつけてくるかのようなマナだ。

『我が友の恨み今ここで晴らさせてもらおうか!』

咆哮を上げて強烈な風を巻き起こす、俺は空中に浮きました。
正直本当に死を覚悟しました。

『冗談だ。』

空中から地上へと無事着地した俺にそういってくる巨龍。
――はい?冗談?

『いや、礼を言おう。あの龍は実は悪龍でな、ワシ達も困っておったんじゃ。我が種族はアレース、名はサイスじゃ。』

いや、あの龍って何よ?ああ腹を掻っ捌かれて死んだ龍か。
というか、冗談なんて必要なのか?正直マジで竜王種何かにそんな事されたら普通に死んじゃうからね?

『あそこで暴れておったから、呼び出して始末しようと思ったんじゃ。』

ふ~ん、どうでもいいけど俺何にも喋ってないのに…

『邪魔な騎士が1人おってな、ワシの嫁に手を出したから一応倒してやった。悪龍の方も人間を食べたかったらしくて喰っとったわ。』

勝手に話を進めて行くサイスさん。というか懐かしいな的な感じで昔話をされても俺本人は当事者じゃないからよく分かんないからね?

『まぁそれで戦っておったら人の戦争に巻き込まれてのう…様子見てたんじゃが、うっとうしいから飛ばしてやった。』

おいおい、何してんですかアナタは!?

「そうなんですか……」

としか言いようがない。ツッコミ?んなもん怖くてできないから。

『まぁそれで悪龍に喰われたんじゃ、お前の父親。』

話の流れが見えてこないよ?どうして喰われた俺の親父。

『んで悪龍が腹を掻っ捌かれて死んだという訳じゃな。』

う~む、とりあえずまとめてみると。
・悪龍を呼び出して2匹の龍で倒そうとした。
・先にいた嫁さんに騎士の人が手をだした。
・で怒った龍と人間が喰いたい悪龍とで3匹による人間リンチ。
・騎士の人喰われる。
・んで悪龍倒そうとすると、人間が戦争みたいな感じになった。
・ちょっとの間様子見してたけどうっとうしいからまとめて吹きとばしたりしてた。
・んで悪龍が親父を食べた。
・で悪龍が親父に腹を掻っ捌かれて死んだ。

……うん、まとめたのはいいけど俺には全く関係ないという事しか分からないね。

『テレパシーでありがとうと伝えたんじゃが……どうじゃ?』

「ああ、伝わってますよ。俺もその話は父に聞いていたので。」

そういえば、何でお礼言われたのか全く分かんないとかも言ってたな。
成程、そういう理由だったのか。

『それはそうと、お主は何故こんなところにおるのじゃ?』

首を傾げながら聞いてくサイスさん。リアルドラゴンにそんな事をされる日が来るなんて……
一応は修行の一環としてということをしっかり言っておきました。

『悪しきマナを使う?……それはお主には無理じゃのう。』

ええ!?何で?そんなバカな事があるっていうのか、生き残ればあの魔黒装を使えるかもしれないというのに…

『お主はマナの質的に無理な身体になっておる。遺伝子レベル……いや、魂レベルでの話じゃの。』

「……魂?どういう事ですか?」

『それはワシには分からぬ事じゃ、お主からそういう事を感じられるだけだからのう…』

う~む。何があったのだろうか?魂レベルとか言われても困るな。一体何がどうなっているのか俺じゃあ分からない。たぶん親父も知らないだろうし……
魂の共鳴とかなら某死神職人漫画でわかるんだけどな~。

『お主、鍛えたいからここに来たと言っておったの?』

「え?そうでしたけど…」

もう過去の話、だって魔黒装を使えないならそんな事する必要ねぇもん。

『まぁ鍛えたいならワシが少し手伝ってやろう。ダテに“漆黒の風”と呼ばれておらんわ。』

「いや、けっこうです。」

『遠慮するな、任せておけ。』

「いや、でも……」

『それともワシじゃ不満とでも言うのかのぉ?』

「よろしくお願いします、師匠!!!」

この状況断れるとでも思う?無理だからね。
という事でサイスさんのとこで修業することになりました。一端サイスさんの巣へ向かう事になったけどここから巣へは遠いらしいのでサイスさんで移動する事になりました。

背に乗って巣に行くのかと思っていた俺が大きな間違いだったらしい、口に咥えられて空中移動。あの大きな口を開けられた時は死んだと思った……

ちょ、ちょっと漏らしたし小さい方とはいえ成人男性が漏らすとは……恥ずかしすぎて死にそうです。

『何か匂うな。まぁ気のせいかのぉ?』

それは言わないで頂けると大変嬉しいです。

洞窟の巣へと着くと他に龍が2匹居た。
1匹はベルキュロスでした。そう言えば嫁さんて言ってたな。銀色の鱗で覆われていて目は青色、西洋風なドラゴンだけどスレンダーで2つの足で地面に立っている。なんというか綺麗だった。フィギアとかで良く買ってたけど実物大にしたらこんなにカッコいいのか……でも怖い。

『あら、アナタその人って…』

『いや、その人の息子じゃよ。』

『そうなの?懐かしいわね。あの後、色々ありましたもんね。』

『そうじゃの、今は平和になったが昔は大変じゃったの~』

俺の事そっちのけで昔話に花を咲かせている2匹。というかマジで怖いんですけど?

「パパ、その人間は餌なの?」

ととても物騒な事を言ってくるもう1匹の龍。
鱗が金色で目も青くて美しい西洋風のドラゴン、でも身長は4mと巨龍にしては小さめでした。どうにもここの夫婦の子供らしい。
げ……まさか俺は騙されたのか?喰われるのか!?

『ベル、人間何か食べたら腹を壊すぞ?というかベルは草木しか食べないじゃろ?』

ふぅ、なら大丈夫そうだな。にしても物騒な事は言わないで欲しい、かなり本気で。
後で聞いたというかテレパシーで送られたことはどうにも人間を食べる龍というのは人間で言うと超ゲテモノ好きという事らしい。という事で食べるのもいるにはいるが少ないという事らしい。

『大体、お前の面倒みてもらうんじゃからそんな事は言うな。』

その衝撃的な一言は全俺に衝撃を与えた。ビビるどころの話じゃない。俺を餌発言した龍の面倒?
お前何言ってんの?正気の沙汰とは思えませんよ!?

「人間になんて面倒を見てもらう必要なんてない!!」

とか言ってぷいっと違う方向を向いてどっかへと歩いていった。そう言えばあの龍だけは人間の言葉を喋っていた。何故にテレパシーじゃないのだろうか…
まぁその日はそんな感じで終わりました。で次の日からは生き地獄。
思い出したくない程の修行をされました。

もう思い出したくない……

台風みたいな風の中で雷を避けろとか無理です。10回直撃してからもう数えてないし、龍の涙で身体回復とかさせないでいいから!!

竜巻の中で精神集中?カマイタチが襲ってくるのもあり?
馬鹿だろ!?お前等ただのドSだろうが!!

と言いたいけれども言えません、リアルに逆らったら死にそうで……

走馬灯?んなもんもう数えてないし。

お花畑?もうアルシリアどころか世界丸ごとお花畑だよ!

三途の川?行ったり来たりでラブ○ゴンより距離多いちゅうの!

それを考えると御守は楽だったな……
最初はそりゃあ俺よりデカイ奴のおもりって何よ!?とか思ってたよ。
何度も噛みついてきたり、引っ掻かれたり、挙句の果てには龍の口からの電撃を浴びせられたり……
毒とかはないって言ってたけど、普通に死にかけたからね?
でも、あの修行した後にこれくらいならまぁいいかな?と思えるぐらいになった訳ですよ。
まぁ女の子という事で花の冠とかをベルに被せてあげたり、一緒に昼寝したりとかもしました。そんなこんなしている内にちょっとずつ仲良くなっていきました。
今ではベルも俺の事を“ディファイ”と名前で言ってくれるようになりました。
その背中に乗って空を飛んだり、モンスターに襲われているのを助けてもらったりした。竜王種と竜王種のハーフはレベルがチゲぇ、咆哮だけで相手を追っ払ったりとかマジでやばい。
仲良くなった切っ掛けは分からないが何時の間にやら俺を見ると笑うようになった。まぁあれだけ面倒見てたからそれぐらいになって貰わないと困るけどね。

朝起きてはサイスさんと奥さんのバオウさんの特別メニュー、昼にちょっとベルと遊んでおやつ時からサイスさんの特別精神集中メニュー。で晩飯時にベルと遊んで、夜にちょっとバオウさんの身体機能アップメニューというなのモンスターからへの全力疾走。そんで就寝時に龍の家族と一緒に就寝。休みなしです。
龍の涙というチート回復薬のせいで色々めんどかった……

修行に少しだけ慣れたかな?と思うその頃には身体に無数の傷が……これじゃあお嫁に行けないの…

因み最終的な結論から言うと何かしらんが精霊剣を使えるようになりました。雷属性の“ボルトセイバー”と風属性の“トルネードセイバー”何でも龍と仲良くなったら使えるらしい。でも威力は一般的なものよりは弱めだったりする。それでも普通のモンスターぐらいなら一応倒せます。
まぁバオウさんとサイスさんに訓練されというのが主な理由ですけどね。

そして1月が過ぎ無事に生き残る事ができました。明日で魔黒騎士のみんなが待つあの平和なところに帰れます。
そんな夜の事、ベルが俺に向かって涙目で話しかけてきた。

「ディファイ…行っちゃうの?」

「ああ、また機会があったらここに来るよ。」

うん、まぁあの修行さえなければ来てもいいかな、一応ここのモンスターも龍以外はなんとか倒せるレベルになったしね。

「いやだよ、ワタシディファイの御嫁さんになるんだもん!」

へ?一体何時の間にそんなフラグが建っていたの?正直自分でも分かりません。

「それはお前が大きくなってそれでも俺の事が好きなら考えるよ。」

「……うん、分かった。」

と言ってとりあえず誤魔化しておきました。
龍にモテても困る件。擬人化でもできるなら話は別だ……いやその理屈はおかしいな自分でも思う。
そんな暖かい眼で見るのは止めてくださいバオウさん。
娘はやらんぞ!的な目で見られても困りますよサイスさん。ポポロクロイ○でもあるまいし。そんな話は聞いた事がない。
それにしてもピエト○時代しか知らない俺だが、あの蛇倒した後どうなったんだろうか?
たぶん妖精属のあの子と結婚したな。俺的には白い騎士さんと弓使いさんのカップルが好きでした。
それにしても何でこんなに好かれているんだろうか?
因みに龍が大人になるのは凄く速いが大人になってからの老化するスピードはものすごく遅いらしい。因みにこの子は今5歳。人間的に見たら13歳ぐらいとの事。
いや犯罪ですよね?人間的にも犯罪ですよね?

ロリでもねぇじゃん!!

ペドじゃん!!!!


ただ後2年もしたら大人の龍として認められるらしい。
――2年の間に他に好きな人、というか龍ができる事を祈るばかりです。そうして最後の夜はあまりの出来事が起こったせいで眠れずに朝焼けを洞窟の中で見ながらという感じで過ぎて行きました。因みに龍一家は爆睡してました。

そして朝になり、いつものようにサイスさんの取ってきた野菜や果実を食べて、帰る支度をしていました。
どうにもアレースのサイスさん、ベルキュロスのバオウさん、で子供のベルの一家総出で見送られる事になっていたらしく、俺はベルの背に乗せられて移動する事に……
そして無事に最初に来たところへ戻ってきました。

「ディファイまた来てね……」

涙目になっているベル、どうしよう龍の涙目ってリアルに凄く怖い。慣れてきたとは言え物凄く怖い。一緒に行くとか背に乗ってた時言ってたが、「大きくなってからまだ好きなら連れてってやる。」と言ったらおとなしくなった、早く好きな龍ができて欲しいものである。

『また来なさい。アナタは認めてあげても良い人間なんですからね。』

というバオウさん、まぁあんな修行がないのならまた来ます。

『二度と来るな!と言いたいがまぁ偶になら俺にだけ顔を見せに来いよ?ただ娘はやらん!!』

いや貰う気なんてないんですけど。それを言えるような状況じゃねぇ……
リアルドラゴン凄く怖いし、アナタ竜王種ですから余計怖い、俺なんて一捻りだもん。

まぁでも本当に時間があればまたこようかな?龍でも何でも好かれているのは嬉しいしね。でも結婚だけは勘弁してね?
修行するならもう来ないけど。
あ、おっさん来た。
――ベルお願いだからぺろぺろするのは止めてください。君の舌凄くビリビリするから。


Side 魔黒騎士の古株さん

今回、試練という名目でディファイをデスフォレストに向かわせた俺だったが、正直な話コイツは死ぬと思っていた。
シモンズやカルマがディファイの事を凄く優秀な人間だと言っていたが、魔黒騎士としての才能がまるでなかったからだ。
シモンズは何か勘違いしているようだが、魔黒騎士というのは闇を操る騎士。それが元祖の聖騎装によって破壊されておかしくなった、その後に魔黒騎士になったシモンズはそれを知るよしもないのでまぁ信じないのも仕方ない事かもしれない。
俺が何度もその事を言っても納得しないし、この前もアイツの部屋でその事を言ったら、

「寝言は寝て言え。俺を誘う時の話と180°話がチゲぇだろ。それより『貴方に届いて』その巻だけなかったぞ。にしてもアイツ勝手に俺のPでネトゲーすんなよな。」

とパソコンを触りながら言っていた。俺はその事を聞いて溜息が出るばかりだった。何で欲しい巻だけ売りきれなんだ!

そんな感じのシモンズを見てかカルマも俺の話を聞こうともしない。まぁいい俺にはルーラーもアンサラ―もいる。人間で味方はレヴァンデイン卿だけか…
レヴァンデイン卿は忙しいらしく魔黒騎士の現状を報告しても「そういう冗談はよせ」というばかり、というかコンドラクタ―がレヴァンデイン卿に会うと借りてきた猫のように元の感じに戻るからだ。他の魔黒装もしかり。
どうやらレヴァンデイン卿に本体をいじられるが嫌でそうしている節がある
そして俺は魔黒騎士の任務で仮面の騎士と戦ったりしているのだがコイツがやっかいで中々倒せない。最近では仮面の女騎士も現れているのだから手に負えない。
そうして任務に明け暮れている間に1ヶ月の月日が流れた。
それでディファイの屍で拾ってやろうと思い一応約束の日時に指定の場所に来てみた訳だ。
そうしてまず目に入ったのはデカイ何かだった。
それが巨龍だと認識できるまでには少し時間がかかってしまったのは仕方ない。何故なら3匹もいたからだ。普通に考えて俺でも負ける。1匹ならなんとかなるかもしれないが3匹はキツイ。そう思って俺が魔黒装を取りだして臨戦態勢に入ろうとした時、ディファイがその中にいるのが目に入った。
ディファイはその中で悠然と怯える様子もなく立っている。しかも巨龍もそれをどうするでもなく立っていた。
しかもよくよく見るとそれは竜王種だった。
あり得ない……竜王種はあまり人に懐かないことで有名な龍のはずだ。それがディファイを囲んでいて何もしないどころか懐いているようだった。
驚いた。コイツは一体何者なんだ?
そして一番驚いたのが、まだ子供だが初代エルムガンド公王をして最強の龍と言わせしめた“龍獅子”の異名を持つアルべロスがいたからだ。
竜王種と竜王種のハーフであるアルべロスはまず身体能力が非常に高い。何せ伝説レベルの龍。口伝だけしか残っておらずその破壊力は俺達の魔黒装よりも上という事ぐらいしか分かっていない。
その龍がディファイに舌を出し顔を舐めている。
コレは龍が完全にその人間に対して心を許している証拠なのだ。
俺はコイツの事を見誤っていたのかもしれない。闇のマナが使えずとも最強の龍を従える男を。






あとがき
番外編が大変ややこしくなってしまったので本編を先に更新。
勘違いsideは少なめです。
番外編はスージーちゃんの話と女王騎士の話。
おそらく混ぜこぜで出します。
因みにベルは竜王種ではございません、何故なら従えていた公王がいない為です。
ディファイもレベルアップしました。スクワイアクラスのレベルです。しかし主人公クラスは愚かモブキャラの騎士と同等レベルです。精霊剣使えても身体能力は低いままなので。
では次こそは番外編でお会いしましょう。




[18999] 18話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:b2f2e67e
Date: 2011/02/08 15:07
18話
「本格的にオリジナル展開に入ったアニメってどうなるんだろう?某テニスの漫画は酷かったけど。」

もうネタが尽きてないか大丈夫か?
大丈夫じゃない問題だ。ネタなんてもうないんだよね~。
という事で始まります。




「……という訳で、お前には任務を言い渡す。」

どういう訳かは知らないが、朝起きていきなり呼び出されている。寝ぼけていたのであんまり内容が頭に入って来てないんですけどね。

「アルシリア以外の国を見て回って来い。一人でだ。」

何故に!?魚のように口をパクパクさせながら驚く俺。おかしい、俺がここに居たら何か不都合でもあるのかな?
よく分かんないです。せめて1週間は休ませてからにして下さい!

修行が終わって無事に帰ってきた時に、身体の傷の事とかカルマ君とかシモンズ君から色々聞かれた。けど思い出したくないので

「色々……、本当に色々あったんだ。」

と言うと納得してくれる感じで聞かなくなった。空気を読んでくれたのだろう。まぁそれを言う前に自慢したくてボルトセイバーとかトルネードセイバーとか見せたけど、関係ないと思う。
傷だらけでとても痛い人に見えそうなので長袖、長ズボンがデフォな格好になりました。
マントも着用しています。でも顔にある頬の十字の傷だけは隠せないのが辛い。しかも片方ならまだよかったものの、両方だから恥ずかしいのなんのって。
そんな感じで2ヶ月ちょっと訓練とか色々してたら冒頭の感じになってしまった訳なんですよ。
何でも
・訓練してても緊張感がない。
・余裕な感じがしてならない。
・ぶっちゃけ俺の事舐めてんのか?ゴラァ!?
という事で一人で行って来いって感じになった。だって龍と訓練している時よりは命の危険性がまるでないもん。仕方ないじゃん。
まぁそういう言い訳するのも面倒臭いし、まぁ一人で旅行だと思えばまぁ良いだろう。
期間は半年。適当に呼び出す時もあるのでその時は帰ってこいとの事。

ふふふ、そして俺は素晴らしい聖騎装をもらった。その名も

コスプレイヤー!!

効果の程はまた使う時にでも説明します。とりあえずテンションテラテラです。
因みに魔黒装が使えないので例外的に聖騎装をもらえる事になったんですよね。
とは言っても“忠誠の十字架”とかは貰えない。あくまで機密部隊なので、バレたらダメだからとの事。
なので武器は魔黒騎士のもので、俺でも使える専用のモノらしい。まぁぶっちゃけ聖騎装の色を黒に変えたものと思ってもらえればいいと開発部の人に言われた。それってどうなの?

―――でやって来ましたエルムガンド公国。
今回はイウェンのおっさんの魔法を使わずに、徒歩で来ました。物凄く時間がかかったけど、仕方ない。だって任務の資金が足りないとかで全然お金ないもん。


「さてと、どうしようかな?」

団子を食べながら考える。途中にあったこの店、何か忍たまを思い出すので興味が注がれて食べてしまっている。まぁ仕方ない。それにしても俺一応は貴族なんだよね?
おかしくね?みたらし団子美味くね?
まぁそんな事を考えていても始まらないので任務の事を考える事にしよう。
今回の任務は他国の国の情勢を聞くことだ。まぁ内部に潜入するのは無理なんで国民の人とかの話を聞く感じになると思う。
とは言え、国に入ろうとするにしても手続きがいるんで面倒臭い。
入ってしまえばこっちのものだけど、こんな時に空を飛べる動物が仲間にいれば難なく潜入できたのにな。
団子をもぐもぐ食べておかわりと頼もうとしたその時だった。
雷鳴轟き、嵐が吹いたのは。

「あんれ?今日は風が強い日だベな。」

店のおばあちゃんが中からそう言う。そういう問題なの?
因みに雷が店の四方6mに12ヶ所落ちているんだけどね。耳が悪くてあんまり聞こえないみたいです。店の屋根の瓦何枚か風で落ちてるし。
でも注文は口の動きを読んで分かるとのこと。凄いおばあちゃんです。
すると金色に輝く鱗、6mぐらいの巨体。そして綺麗で洗練されたフォルムの見た事のある生物が俺の前に着地した。

「あっ!やっぱりディファイだ。」

ディファイ=R=ボルトは~、一匹の金色の龍であるベルと~、エルムガンド公国の手前の~、お茶屋で~、出あった~。
という感じのウルルン気分になりながらベルと出会った。不思議世界発見!

じゃなくて何でいるの!?


「Nanでkおnnなとkおろniiruの!?」

若干意味不明な言語になりかけたが、何とか伝わっているらしくベルは答えてくれた。

「ママがね、可愛い子には旅をさせろって言ったから色んな国を回ろうとしてたところなの。」

「よくサイスさんが許してくれたね?」

「パパ?嫌がってたけど修行させる為に一人で5年間ぐらい旅するのが龍では普通の事らしいし。死んだら死んだ時だよ。」

男前な回答をしてくれるベル。流石は竜王種のハーフです。

「でさ、も、もしよければ何だけど旅に付き合ってくれないかな?す、少しでも良いんだよ?」

正直な話移動手段が欲しかったので全然OKというかこっちがお願いしたいぐらい何だけど、正直人里にいるのは辛いだろう。というか一応俺は機密部隊なのであまりにも目立つベルは残念ながら連れていけない。

「ベルは大きいからね、目立っちゃうでしょ?それさえなければいいんだけど。」

と言いにくいがその辺りの事を説明しておく、一応修行していた時に機密部隊にいるとか言っておいたので分かってくれるはずだろう。

「その辺なら大丈夫だよ。」

そう言うとベルの辺りは煙に包まれる、どうやら古代魔法を使ったようだった。まさかの擬人化フラグなのか!?

果たして一体どういう人間になっているのだろうか?
最近やっているように人間の姿をしているけど龍みたいなそんな感じの?あのツンデレボイスになってしまうのか?
いやいや、もしくは人間では今13歳ぐらいとか言ってたから人間の歳の状態になるのか?
それとも5歳とか言ってたから5歳くらいの子供になっているのか?
それともどんでん返しで20歳以上のおねえさんになっているのかもしれない。想像は膨らんでいくばかりだ。
とりあえず髪型は金髪に間違いないだろう。時々思うのだが、金髪の人の眉毛って金色なんだったけ?下のアレはどうなんだったけ?見た事ないから分かんないな。
俺の家族全員黒髪だし。そういえば擬人化代表と言えば何があるのだろう?ポケモン?いやいやアレは公式ではないから除外の対象だ。
それにしても公式で擬人化といえば何がある?リリカルぐらいしか思いつかないぞ?
そういえば犬が人間になっていたな、あの青色の犬、赤い色の犬もいたような気がする。あれ、狼だったけ?どっちか忘れたな。
まぁとりあえずどうなったんだろう?
煙が晴れてそこにいたのは……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ワンワン!」

「ですよね~」

当然のように犬だった。まぁ犬の種類は分かると思う、まぁヒントを出せばベルの鱗は金色です。尻尾を左右にちぎれんばかりに振る。しかも子犬なのでめちゃくちゃ可愛い。どうにも龍の実年齢が犬の姿で反映しているらしい。
やばい。お腹をめちゃくちゃさすりたい。

「まぁ人里に居る時だけは犬の姿になるね。」

とベルは犬だけで人の言葉で普通に話してくる。なにこの可愛い生き物。もらっていい?

「その姿なら大丈夫だね。」

そう言いながらも俺はお腹をさすりたい衝動が手に現れているらしく、もの凄くプルプルしている。

「あの~すいません。この辺りで雷鳴が轟いたのを聞いたんですが知りませんか?」

我慢できずに手を伸ばそうとした時、誰かが後ろでそう言ったので振りか返ってみるとそこにいたのは何かエルムガンドの騎士っぽい人でした。しかもカッコいいドラゴンも一緒。

「落雷にも限度がありますよね。私も驚きましたよ。」

実際ケガするかと思った、あの修行のせいであんまり雷とか嵐とかビビらなくなったけど、それでもいきなりアレは驚きます。

「……そうですか、ケガがないようで何よりです。」

何か良い人っぽい。しかも気品に溢れているで貴族な気がする。

「ありがとうございます、それにしてもそのドラゴンよく懐いていますね。」

「コイツは小さい頃から一緒なんですよ。な、ファイアーランス。」

「ガオ。」

そう言って頷くドラゴン、それにしてもカッコいいドラゴンだ。フィギュアに出たら即買いのレベルだ。

「竜王種ではないんですけど、それでも私はコイツが好きです。」


「はは、なら強くなりますねアナタは。」

「え、何故です?」

「確かに竜王種は力も凄いですし、強いとは思います。だけど竜王種だから凄いという事ではないとおもいますからね。」

「それは一体どういう?」

「相棒の絆が何よりの力ですからね。何ならアナタのドラゴンを認めさせて竜王種にも負けないと言う方が私は凄いと思いますよ。」

実際そっちの方がカッコいいと思う、だって竜王種って人が勝手に決めたものだし、育てに育てた自分の相棒が竜王種に勝つとかいうシュチエーションとか燃えるしね。

「……ははは、そんな事を言われたのは初めてだ。」

そう苦笑いする騎士の人、あれ?俺何かおかしな事でも言ったかな?
まぁ別にいっか、それより満喫どっかにないかな?ペットも連れていけるような所がいいな。何か考えてたらネトゲーのモン狩りしたくなってきた。


「そろそろ私は行こうと思います。」

そう言ってベルと一緒に歩こうとすると呼びとめられた。何故に?

「あの~、名前を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」

「私のですか?別に名乗る程大した者じゃないんですが……」

何で名前聞かれているんだろ?全く分かんないよん。

「私はリューガと申します。アナタは?」

……先に言われたわ言うしかないじゃん、まぁ減るようなモノでもないし、言っておくか。


「ディファイです。ディファイ=R=ボルトと言います。」

「ボルトってあのホテルのですか?」

何で知ってるの?外国でも有名なの俺の家って?泊まりにきたことでもあるのかな?

「まぁそうですね。」

「ディファイ、行くよ!」

何かしらんがベルが少し怒っている、何で怒っているのは分からないが怒るとあの雷風をまき散らすのでベルに従う事にする。犬が喋って驚いているリューガさんは放っているけどまぁ別にいいだろう。

「あいよ。」

魔法の効力が切れたのか、自分で解いたのかは分からないけどベルは元の姿になって俺を背中へと乗せる。乗せられた時に少し爪が肩に刺さったけど、気にしない。気にしてたら生きていけない。

「んなっ!?」

と驚くリューガさん、ごめんベルが怒ると後が怖いんだ。

「じゃあ機会があればまたどこで会いましょう。」

そう言うと同時に、ベルが上空へと急上昇で音速を超えたかと思えるスピードで飛んだ、
もちろん俺は失神しました。
という訳で龍1匹、人間1人の奇妙な旅が始まったわけです。
あ、エルムガンド公国行ってないや。まぁ意識なかったから仕方ない。


Side 某腹黒王子


国境付近を一人で見回りしている時に雷鳴が轟いた。快晴なのにも係わらずにだ。そうなってくると野良ドラゴンが暴れているのではないかという疑念が生まれてくる。
私はこの国の騎士でもあるし、公子でもあるのだからそういう不穏なモノは徹底的に排除するべきなのだから。
そう思い、雷が轟いた方向へ向かうと落雷しました誰もが認めるような場所を見つけたのでそこにファイアーランスの背に乗って向かった。
そこに居たのは全身黒を纏った男が見えたので話を聞こうとそこに降りた。

「あの~すいません。この辺りで雷鳴が轟いたのを聞いたんですが知りませんか?」

そう言うと男は振りかえり私を見つめた。後ろ姿しか確認していなかったので気付かなかったがこの男、両の頬に十字の傷がある。しかもその傷は龍に付けられた傷だった。今までに何十もの龍の爪による傷を見た事があるのだから間違いない。この男はどうにも只者ではないようだ。

「落雷にも限度がありますよね。私も驚きましたよ。」

アレ程の雷で驚くだけ?普通の人間は取り乱してもおかしくない何せ12ヶ所も落雷しているのだから。平然でいられるこの男が異常なのだ。

「……そうですか、ケガがないようで何よりです。」

私は少し警戒しながらも、周囲にドラゴンが居ないかどうかを確認する。しかし、どうにもその気配はない。どうやらもうここには居ないようだった。しかしこの男の事が気になる、もう少しこの場にとどまることにしよう。

「ありがとうございます、それにしてもそのドラゴンよく懐いていますね。」

と男がファイアーランスを見てそう言った。私の騎龍なのだから当たり前だし、むしろコイツは竜王種ではないので正直あまり好きではない。コイツのせいで父上は私を認めてくれないだろうから。

「コイツは小さい頃から一緒なんですよ。な、ファイアーランス。」

「ガオ。」

そう言って頷くファイアーランス、コイツは竜王種だったらと何度思った事か小さい頃から一緒だったしそれなりに愛着もあるのだがやはり竜王種ではないという事がネックになってしまう。忌々しい限りだ。

「竜王種ではないんですけど、それでも私はコイツが好きです。」

そうは言うが内心は全く逆だった。今度の新人騎士大会になる前には新しい騎龍が欲しい限りだ。まぁでもコイツ並の騎龍は竜王種しかいない。いうなれば準竜王種という存在がコイツだからだ。

「はは、なら強くなりますねアナタは。」

その事を知ってか知らずかこの男はそう私に言って来たのだ。あり得ない、この国の人間でないはずの、しかも龍と戦った事のあるはずのこの男がそう言った事に私は驚きを隠せなかった。

「え、何故です?」

そう言った私と私の騎龍を交互に見ながら男は話を続けた。

「確かに竜王種は力も凄いですし、強いとは思います。だけど竜王種だから凄いという事ではないとおもいますからね。」

「それは一体どういう?」

「相棒の絆が何よりの力ですからね。何ならアナタのドラゴンを認めさせて竜王種にも負けないと言う方が私は凄いと思いますよ。」

―――絆か、何とも甘い事を言う男だろうか、しかしそう思った事等一度もなかったな。ファイアーランスを竜王種にする、か……何とも面白い話じゃないか。竜王種より強い普通の龍を操る人間か。そんな事ができるのならわたしは国民からも他の騎士からも完全に父上を超えていると思われるではないか。

「……ははは、そんな事を言われたのは初めてだ。」

思わず苦笑いをしてしまう。そう言えば私がファイアーランス自体は嫌いではない。コイツの血統だけが嫌いだったのだ。というかそれ以外は私はコイツの事が大好きだった。その事を忘れていたのだと思うと思わず苦笑いをしてしまったのだ。

「そろそろ私は行こうと思います。」

そう言って子犬と一緒に歩こうとする男を呼びとめられた。この男の正体が気になったからだ。

「あの~、名前を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」

「私のですか?別に名乗る程大した者じゃないんですが……」

名前を教える気はなかったようだが、先に名乗れば教えてくれる可能性はぐんと上がるので先に自分の名を名乗った。

「私はリューガと申します。アナタは?」

少し渋い顔をしたが男は名前を教えてくれた。

「ディファイです。ディファイ=R=ボルトと言います。」

ディファイか、覚えておくとするかな……うん?
ボルト?
R=ボルトだと!?
あの剣一本で竜王種の中でも上位であるドラギリアスを殺した血筋の人間か!?

「ボルトってあのホテルのですか?」

アルシリアに訪れた際に、アルマ姫に教えられた話でその事を知ったのだが父上にそんな事があったのかを聞くと

『ああ、それは事実だ。何せアルシリアの援軍として助けに入った際に、私は見たんだ。一人の男が血まみれで人を背負う姿とその後ろにあるドラギリアスが死んだ姿を。』

と言っていた、その男が騎士にもならずにホテルの経営をしているとアルマ姫から聞いた時は耳を疑ったものである。

「まぁそうですね。」

やはりか。この男が龍に傷つけられたのもそれで分かった。龍と戦う方が好きなのだろう。おそらく本能がそれを求めているのだ。血を、戦いを。
しかし、そうなると先ほどの発言が分からない。何故あんな事を言ったのだろうか?
龍と戦う人間がそんな事を言うなどと……

「ディファイ、行くよ!」

下から声がしたかと思えば子犬が喋っていた。子犬!?

「あいよ。」

そうディファイが言うと、子犬を中心に煙が包まれる。そうして煙が晴れた時に現れたのは金色の鱗を纏い、翠色と蒼色を足したような目、西洋の龍でありながら、東洋的美しさを兼ねそろえている。そう、あのアルべロスだった。

「んなっ!?」

「じゃあ機会があればまたどこで会いましょう。」

アルべロスだと!?
“龍獅子”の名にふさわしい程の堂々とした風格。
禁忌の存在か……しかしまだ覚醒しきれていないようだ。
あの龍は危険だ。人の醜い部分をよく知っているはずなのだから。
初代エルムガンドにして最強の公王、リュ―ドラゴンが「最強、最凶、最恐の3つ全ての称号はあの龍にこそふさわしい。あの龍に係わるな、係わりたいのなら死ぬ覚悟を持て、自分だけではなく国民全ての死を。」と言った事がある程の龍でもある。
そうかあの“三界龍の宴”はそういう事だったのか。
それを手なずけているあの人間……一体何者なんだ?



あとがき
番外編ェ…難しすぎて書けていない。時系列的な問題で。
あれこれいじっているんですけど思うようにいかないんですね。
一応できたら投下しますが、何時になる事やら。
遅れてすみませんでした。時間はかかりますが完結はさせようと思っています。まぁ必殺技はありますので最悪の事態はのりきれるかと思います。




[18999] 19話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:19504c6e
Date: 2011/02/22 19:02
9話「賞金稼ぎって聞くと海賊狩りを思い出したりするけど、船長いつのまに4億いってた?」

某フラグメイカ―のツンツン頭の男の人とかを見ていっつも思うのはフラグの乱立は死亡フラグですという事です。
そして今回は俺がそのふざけた幻想(遅い更新速度)をブチ殺す!……つもりだ!




『アナタ様のような立派な父親を持つお方とウチの息子じゃ釣り合いませんよ。』

――僕と遊んでくれないの?――

『あの子と遊んだらお父さんに怒られたんだって。』
『ええ?じゃあ、あっちの砂場に行こ~』

――何で僕と遊んでくれないの?――

『お前、調子に乗んなよ!!』

――何で殴られるの?僕何かしたの?――

――もういいや、友達なんていらないや、一人の方が……――

『俺の勝手だろ、別にいいだろう?』

「……夢、か。」

嫌な夢を見てしまったのでふと目を覚ます。ココ何週間は野宿ばっかりで疲れが溜まっているせいなんだろうか?昔、本当に小さい頃の記憶を思い出してしまった。

「きゅるるる、もうディファイったらそんな立派な角生やして……」

ベルが寝言でそんな事を言っていた。一体全体どんな夢を見ているの? 
寒いのでベルが丸まって寝ている中にいるので保温性バッチだけど、潰されそうで怖いんだよね。まぁ大丈夫だって言ってたからそのはずなんだけど……
ああ……眠たくなってきたもう一眠りしようかな。
今度はあの夢じゃなくて、あの夢の続きが見たいな。いい夢みたいから……
 
 
 
 
前回、意識がブラックアウトして顔がビリビリするので目を開けると、ベルが申し訳なさそうに舌をペロペロ舐めていた。何であんな事をしたのか?と聞くと、

「あの人から嫌なマナ感じたから…」

とか言ってた。龍はそういうのに敏感らしいのでたぶん間違っていないだろう、いないだろうが、アレは止めて欲しいです。そんな事を言うとベルは、

「だってディファイ、自分の秘密バラしそうになったでしょ?もう自分の秘密を簡単に人に言ったらダメだよ!」

と言っていた。
なんのこっちゃ?訳わからんぞ。
よくわからないのでその話を聞き流しつつ、次にどこに行くのか聞いてみると、ベルの希望はヤパーナがいいとの事、知り合いがどうにもそこにいるらしい。

「従姉なんだけど、ジンオウガのラウザルク姉さんが『旅に出るなら途中にでもよっておいで。』って言ってたんだ。」

とのこと、別に拒否する理由もないのでそこに行く事になった。
その後数週間、ゆっくり空を飛びながら魚を釣ったり、山菜取ったり、ベルは木を丸ごと一本食べてた。「一本で満足。」とか言っていた。それで満足してくれなきゃ困るよ……
そんなこんなの旅の途中で、銀色の泡っぽい生物的な何かが素早く動いて消えたり、オレンジ色の道着の人が「ありゃ?ここじゃねぇな。」とか言っていきなり現れていきなり消えたり、「アンタの魂頂くよ!」とか言っている鎌持っている女の子を道中に見たりしたけど別にどうでもいいと思う。何か漫画とかで見たような気がするけど実際に居る訳ないから勘違いだろうしね。

そしてようやくヤパーナに着くであろうその前の日の夜、嫌な夢を見た訳なんだけど、どうにも夢の内容そんなに覚えてないんだよね。だって嫌な夢って覚えていても仕方ないしさ。
で次の昼にヤパーナに着いた。入国検査なんてベルがいれば山の中に着地してちょちょいのちょいだぜ。まぁ普通に空を飛んで逃げてきたんだけど。
そんなこんなで俺達はまず野宿の疲れが溜まっていたので、宿を探す事に、山の中をうろちょろするとイノシシに襲われたりした。凄い勢いで突っ込んでくるのでビビった。猪突猛進にも程がある。でも前回で化けイノシシを倒した事のある俺からすれば楽勝だぜ!とか思っていると普通にベルが爪で一刺しであの世に逝かれてしまった。

「晩御飯これでいい?」

「……はい、それでいいです。というかそろそろ擬犬化した方がいいと思うよ?」

「それもそうだね。」

そう言って犬になる、相変わらず可愛い。何で子犬ってこんなに可愛いんだろう?
どうでもいいか。
とりあえず肉をこんがり焼いて持てるだけ持って移動するが、まだ人里が見つからない。また野宿コースか?と思っていると、何やら騒がしい音が聞こえた。
そう思っていると、目の前に飛び込んできたのは旅館!!
やった!とりあえず風呂入って寝よう!
ああ、でもペットいると無理かな?
とか思っていると、何か鎧付けた猫とか洋服着せた子ブタが旅館の中に入っていった。なら大丈夫か。
そんなこんなで受け付けに入ると、「ハーイ」とか言われたので「ハロー」と返した。
んで「クエストは何を受注するの?」とか言われた。意味が分からないです。
ここ旅館じゃないの?と困った顔をしていると、

「アレ?お泊りの方ですか?私勘違いしちゃったようですね。テヘ。」

頭の上に拳をポカンと叩いて舌を出す受付の人。
どうでもいいから風呂入りたい。もうそういうのいいから風呂入りたい。大体もっとお姉さんじゃないとアナタ若すぎるんですよ。

「お風呂に入りたいんですけど、あと泊まります。とりあえず3泊ぐらいでお願いします。一番安い部屋で。」

「温泉は無料ですよ~、料金は3泊72zです。」

z?GTじゃなくて?はっきり言って不明なお金の単位です。

「あの~、カネ―に換算するとどれくらいですか?」

聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥というか、下手したら食べ逃げならぬ、泊まり逃げするハメになるので聞いておく、それにしてもホテルの息子として生まれた俺だけど、旅館も案外いいな。ヤパーナ風が最近巷を騒がしているらしいし、継ぐ時にこういうのを入れてみてもいいかもしれないね。

「カネ―ですか?ええとちょっと待って下さいね。」

全然関係ない事を考えていると受付のヒトはそう言ってカタカタと慣れた手付きでパソコンに何かを入力していた。

「そうですね、1zが約50カネ―ですので、3621カネ―ですね。比較的お安いかと思われますがいかがでしょう?」

「あ、それでお願いします。」

いや安すぎじゃね?そんなもん即決だってばよ。
因みに今手元にあるのは2万カネ―。
残金を考えるとそろそろ仕事した方がいいかもしれない。俺ニート希望だったはずなのに……
まぁとりあえずお風呂に入ってから考えよう。という訳でペット同伴で入れると言うことなので温泉に入った。ベルが、

「え、お風呂に一緒に入るの?は、恥ずかしいよ。」

とか言ってた。常に全裸で空飛んでいるような種族がそんな事を言うのに驚きを隠せない。
とは思うものの、「全裸乙。」とも言えないので困った顔で苦笑いをしていると、

「あれぇ?ディファイはこう言われると照れるって聞いたのになぁ~?」

とか言っていた。バオウさんの仕込みですね分かります。娘に何を教えているんですか……あの龍。
そんなこんなで一緒に風呂入って飯喰って寝んねした。因みに混浴だったけど、男のヒトとおばあちゃんばっかりでした。期待してた訳じゃないけど、何だか虚しい気分になりました。

朝起きてベルとまた風呂に入ろうとすると、掲示板みたいなところにゴツイ鎧着た人とかガンダムみたいな鎧の人とか、にゃんこ達が集まってました。
何書いてあるんだろうか不思議に思ったので、その人達がいなくなってから掲示板を覗いてみると、賞金稼ぎの掲示板ぽかった。
そろそろ旅こ…ゴホン、基、旅の資金が尽きるので仕事探しをしていた俺にはモッテコイの仕事だったのでそれを受ける事に決めた。だけど、何かギルドとかに登録しないと受けれない依頼が多いらしい。
でも簡単なものなら別に普通に登録していない人でも受けられるというのを受け付けの人に聞いたので別に難しい依頼を受けるつもりもないので登録しないで受けられる依頼を掲示板で探していく。

「賞金200万ジェニー?いやいやこれは通貨が違う。」

グリードアイランドの情報って何さ。

「これ何かどう?賞金首500万エンの…あっ通貨が違う。」

賞金首とか危なすぎるでしょ?それになんだよ「おい、丸々」って……

「ゼニ―は使えないよね?」

それは電子通貨の方です。

「何でこんなにややこしいの?」

ベルが唸っている、まぁややこしいのでそう思うのは仕方ないと思う。

「ここはカネ―も使えるんだけど基本的に狩人さん達がこの辺に多いから狩人さん達の通貨がzだからそれで基本的にzを使ってるんだって、でもこの国は島国だし、降りるとすぐ海だから他の通貨も流通しているらしいよ。換金所も近くにあるのはそういう事みたい。」

風呂場で男の人から聞いた話だけどね、風呂に入る時はスッポンポンと決めているんです。どうでもいいけどね。青いクマを倒したり、ウサギみたいなクマ倒したりしてお金を稼ぐのがここの地域では一般的だったりするとかしないとか。システムがモン狩りに似ているな、まぁモン狩りで倒すのは基本的にモンスターペアレントだけど。モンスターペアレントを倒す(説得する)事で特別に金一封がでるんだよね。でも上位のネグレクトが強すぎてやばい。どうしたら子供を登校させられるんだろうか?やっぱり他の教師と一緒に会議を開かないといけないのかな?教育委員会とPTAがやっかいすぎるんだよな、アレ。

「あ、ティガさん寒い所に住んでるって聞いたけど、ここにいるんだ。」

ベルがギルド専用の方を見てはしゃいでいた。どうやら知り合いらしい。

「あ、これ悪龍の方だ。ティガさん目の色がオレンジだもん。」

どうやら写真が貼ってあったのを見てそう言っていたので龍違いらしい。
まぁ竜王種ではないから知らないけど、ベル曰くめちゃくちゃ強いらしい。キレたら怖いが普通にしていると優しいらしい。でも肉食らしいよこの辺りの龍って基本的に。アルシリアの龍は基本的には草食でこの辺りの龍は肉食が多いんだって、人を食べる龍もいるとかいないとか、逢わないようにするしかないね。

「あ、ディファイ、コレ何かどう?」

掲示板に書かれている依頼を見ると、特に危険がなさそうなのでFランクの下のGランクの任務だし、まぁ大丈夫だろう。人探しなら誰でもできるってことかな?見つけた場合は1万zもらえるらしいしね。ベルがいるからすぐ見つかるだろうし。

「そうだねこれにしようか。神都サガの近くだし丁度いいや。」

情報収集のお仕事もしないといけないしね。

「そう言えば、ラウザルク姉さん。サガの近くに住んでいるって言ってたよ。」

そうなのか、なら一石三鳥だね。と言う事で神都サガの巫女姫さんから捜索依頼が出されている行方不明の少年を探す事になった。
ん?巫女姫って何か聞いた事があるような?どこで聞いたんだっけ…思いだせない。
まぁたぶん巫女の中で一番凄い能力持っていて美人だから姫と呼ばれているんだろう。まさか王族な訳あるまいし……
王族が直々に依頼するなら親衛隊とかでしょ?ならたぶん前者で間違いないでしょ。

「すいません、この依頼を受けたいんですけど……」

受付の女の人に言うと少し驚いた顔して、何かを思い出したっぽい顔もして「ああ、そうですね。アナタですもんね。」とか言っていた。
俺が弱いという事をこの受付の人は分かってくれているらしい。なら受けられるだろう。

「はい登録完了です。登録料はこの依頼に関しては入りません、ではご武運を……」

とか言っていた。良く分からんがまぁ何とかなるだろう。ベルと一緒に馬車ならぬ、よく分からないダチョウみたいな奴が引く乗り物にのって依頼者のところに行く俺であった。
――この乗り物酔わないよね?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「あ、あの人あの依頼受けちゃったの!?」

受付の女性の片方が驚いた顔でその事をもう片方の受付の女性に聞いた。

「はい、OKしましたよ。」

清々しい程の笑顔でそう返す女性に呆れた顔をする女性、それもそのはずであるあの依頼はギルドに登録していない人間でも受けられる事は受けられるが、難易度はAランクのそれより、いやSランクのそれより高いとされるG級の依頼を受けたからである。

「何であのG級の依頼をOKしたの!?」

あの依頼がギルドの登録をせずとも受けられるには理由があった。それは引退した狩人でもいいから腕利きの人材でなければ依頼を成功させるのが難しいからである。何せヤパーナは島国である。正式にギルドに登録しない人間も多数いる。その中に腕利きの人間も存在するのも事実。そこで実力が示されたのなら受けられるというものである。それは「装備」、「身体能力」、「技術」、などの様々な要素をクリアした事で初めて受ける事が可能な依頼がG級と言われるものなのだ。
それを、あの軽装の両頬に十字傷を付けていて子犬なんかを連れている人間をどうして受付けたのだろうかがこの女性には分からなかったのだ。
因みにこの地域では「負け犬」、「勝ち猫」という言葉が存在し、その事から縁起物として猫が好まれてお供になっている。

「いや、それがですね番台さんがあの人の身体を見た時に龍に傷つけられた傷があったらしいんですよ。しかも無数に。」

「番台さんが?」

番台さんは温泉の番台の事で、数え切れない程の狩人の肉体を見ている。そしてその事が影響してかどうかは分からないが、番台さんは狩人の実力が分かるのだ。しかも外した事は過去数件で、ここ十数年はどの依頼までこなせるかどうかまで言い当てる事ができるのだ。

「ええ、番台さんが『アレ程の傷を負って尚生きている、おそらくよっぽどの実力者だにゃ!』って言っていたので。」

「番台さんが言うならそうかもね。でもあそこの依頼って凄腕の狩人でも受けないでしょ?“爆龍”と“雷狼竜”の2匹が居るのは有名だからクエストに書いてないし侍ナイト隊、忍者ファイター隊、しかも狩人隊まで捜索してるけど見つかってないし……」

このヤパーナという国においての騎士は「カタナソード」を使う一撃必殺の使い手が侍ナイト、「ニンジュツ」という魔法を駆使する暗殺能力に長ける騎士が忍者ファイターである。
この国は主にその騎士団達が平和を守る為に存在する、対“人”用の騎士達だ。獣や竜等も相手にすることも時々あるが、その機会は少ない、何故ならこの国には狩人という対“獣”用に訓練された人間が多く存在し、また違う部隊が存在する、それは騎士部隊ではなく狩人部隊とされ、色々な武器を使い獣を狩るのだ。それが狩人部隊だ。その三隊が探しても見つかっていないという現状。それほど今回の任務は難しいのだ。

「神都サガに近いですけど、誰も近づきませんしね。あそこの孤島。」

「複雑だし、一度迷えば抜け出せないからね。“霊園”。ギルドの配給が出せないしね。毎回出る“爆龍”と“雷狼竜”と戦うのは損だしね。」

雷と嵐がほぼ毎日のように存在する地域、孤島“霊園”その過酷な環境でさらに手ごわい竜や獣等もいるのだから迂闊に手が出せない。いくら人探しといえど、一人の為に部隊全てを使う訳にもいらないのだ。だからこそのギルドに所属しない人間が受けられる数少ないクエストに入っている。

「でもあそこでは“雷狼竜”は神の使者と言われているし、おとなしくて人を襲わないから狩るのは禁止されてます。というか狩れませんけどね。強すぎますもん。4人がかりでも勝てない事で有名ですし。」

「それもあるけど、何であそこが危険だといえば400m以上の龍もいるのよ?エルムガンドの“竜王”よりデカイ化け物竜、ラヴィエンテ。滅多に出ないけどアレが出たらもう終わりだからね、天災だもん。人が近づくのが愚かなのよ。」

竜には“竜王種”と言われる種が存在する、しかしそれは基本的には人が従えさせることのできる竜なのだ。それ以上の龍の方が多いのも事実。確かに“竜王種”は強い。しかしそれが一番強いという訳ではないのだ。

「う~ん、大丈夫かしら?見たとこ、武器持ってなかったから、魔法使いだけど基本的にドラゴンは魔法効きにくいし……」

心配そうに言う女性、それも無理はない話だ。武器と言うのはここでは大変重要な要素の一つなのだ。魔法を使うものもいるにはいるが、どうにも魔法耐性がドラゴンにはあるらしく、属性魔法ぐらいしか効果はあまりみられない。しかも属性魔法は少量のダメージしか与えられないパターンが多いのだ。

「なんとかなるんじゃないですか?番台さん信じましょうよ。」

「それもそうね。」

もう一人の受付けの言葉とこれ以上心配したところでもう遅いという事で女性は吹っ切れたようだ。

「あっ、狩人さん来ましたよ。」

お金は先払いだからもう心配しないでいいし、今は目の前の仕事に専念しよう。

「「ハーイ」」

こんな会話があった事など当然この物語の主人公らしき男は知る由もなかった……

あとがき
2クール目指してたけど3クールになりました。予想外です。今回は前編みたいなもんです。基本的にどこの国へ行ってもコラボがあります。そろそろ伏線回収しないと原作みたいになるのに、まだまだ伏線張るって愚かすぎると思いながらも突っ走ります。
次回は3月までにできたらいいかなと思います。
番外編?気にするな幻想だ。



[18999] 20話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:f23bcadb
Date: 2011/08/07 19:22
20話「俺の知り合いの知り合いの龍がこんなに強いわけがない。」

ディファイ=R=ボルトが命じる……
女王騎士物語よアニメ化になれ!!
……誰に言えば叶うの?


とりあえず目的地近くに着いたらしいのでダチョウから降りた。お尻が痛い程度で済んで良かったと思っていると、船に乗り込まないといけないというのを受付けの人が言っていたのを思い出したので船を探して歩いていたら何か巫女さんに呼ばれた。

「こっちじゃ、こっち。ギルドから話は聞いておる。」

と言うので完全にこの人が依頼主であろう、何だか美人な人だ。うん、後7年後辺りが凄く楽しみだ。

「この度依頼を受ける事になりました。ディファイと申します。」

「よく来てくれたの。お主に依頼を出したのはこのワラワじゃ。」

辺り触りのない会話を話しながら、本題に入ろうとする。それにしてもこの人、見た事あるような、ないような……
まぁそれを言うと前にエルムガンドで会ったリューガっていう人も見たことがあるような気がするんだよね。パソコンだったかな?う~ん、どうだったけ?

「早速じゃが、今回の依頼の内容はアスカ=ヤマトの捜索じゃ。それ以上の言葉はいらんじゃろう。宜しく頼む……それにしても何故犬を連れておるんじゃ?」

俺の隣にいるちっこい犬の姿のベルを見てそう言う巫女さん。何故って言われても…この子いないと俺の命の危険レベルが3からイキナリ80になるという驚きのレベルアップを果たすからなんですけどね。

「何故かと言われれば……この任務に必要不可欠だからですね。」

まぁ実際空を飛んで探せば見つかりやすいだろうし、ベルは鼻がよく利くので行方不明者探しにはもってこいだろう。臭いがあればだけどね。

「そうか……まぁお主なら大丈夫という話を聞いておるのでな、頼むぞ。アスカのみならずこの国に仕える民を行方知らずのままにするのは心許ないのでな。」

巫女さんは俺の目をしっかりと見てそう言い放つ。何だかその言い方だと王様っぽいよね。だから巫女姫とかいうあだ名が付いてるんだろう。

「はい。」

人を心配しているのは悪い事じゃないもんね。しかも行方不明とかなら尚更心配だろう。
行方不明者探すのって大変だもんね。山とか海とかで遭難する人も少なくないし、そういう時に探すのって非常に難しいらしいから。

「うむ、ではソナタに任せた。この船で“霊園”に向かってくれ。」

という訳で船に乗り込み人探しに行く事に、この依頼を終えたらとりあえずコスプレイヤーを使って潜入捜査をしよう。流石にそろそろお仕事しないといけない気分になってくる。
それにしてもニート期間が一度もないとか何の冗談だ?

「おい、兄ちゃん。そろそろだぜ。」

船員さんの言葉で現実に戻ってくるとそこに見えたのはデッカイ島。
そういえば何故アスカって人が行方不明になったかというのを船員さんから聞いてもないのに教えてくれた。この船員さんは自分が一方的に話すのがお好きな様子である。
一様依頼の事なので聞くと何でも“霊園”と言う場所で訓練していた時にいなくなったとか。騎士団の一員らしくてそこで何らかの実戦訓練をしていたらしい。そこで天災があったせいで騎士団がバラバラになってアスカという人だけ行方不明になったとか。
でも行方知らずになっても普通集合場所とか決めているものなのでそれを聞いてみるとどうにもその集合場所に戻ってこないらしい。一ヶ月も……
足か何かをケガしていて帰ってこれないのだろう。幸いにも“霊園”という場所には水は豊富にあるらしいので命は何とかあるだろうとの事。
しかし騎士団達が探しても中々見つからないので依頼を出したらしい。
確かにこの“霊園”とやらはデスフォレスト以上に広そうだ。依頼を出したのもうなずける。

「兄ちゃん、今日は比較的に穏やかな雨しか降ってねぇぞ。良かったな。」

とか言う船員さん。何でも普段だったらゲロ吐いてもおかしくないくらい船が揺れる嵐に逢うらしい。嵐とか雷とか週6は確実にあるのがこの“霊園”という島だとか。
そういう事もあって行方不明者を探せないのだろう。
船から降りて、無事に島に上陸して一歩目を踏み出そうとするときにふと思った。

「見つけたらどうすれば良いですか?」

すっかり失念していた。見つけて俺も迷子になったら意味ないじゃん。しかも雨とか嵐とかなら煙で合図出せないし。

「じゃあ頑張れよ!」

という声がかなり遠くの方から聞こえる。あれ~何でそんな所に?
待っててくれる訳でもなかったの?
どうやって俺は帰るのだろう。というか普通初めて依頼を受けるんだからそのシステムを教えてもらわないと分かんないじゃん!

「ディファイ行かないの?」

愕然としながら地面にへたり込む俺にベルがそう言った。
いやいや、帰り方が分からない。というか帰らないと思ったらテンション下がるでしょ?
ベルは少し抜けているんだから……ていうかいきなり龍になってバレたら色々めんどくさいのに……
うん、ベル?
ベルいるじゃん!!

「行こうか。」

まぁベルいたら何とかなるだろう。因みに雨で臭いが流されてるので臭い大作戦は使えないという事が分かったのでベルが上空から、俺が地上から探すことになった。

「口笛吹いてね、そしたら飛んでくるから。」

とベルが言っていたので安心して分かれて探す。
とりあえず森の中を探す事にして、騎士団の人達を途中で見つけて情報収集しようと思ってたんだけど、人が全然いない。
捜索しているんだったら結構いそうなもんだと思っていたのだが全くいないのだ。
う~ん、何でだろう?
不思議に思いながらもあてもなくただ山道の坂を下っていく俺。途中に石ころに躓いてバランスを崩し地面がぬかるんでいるせいもあり、滑った。凄く滑った。
どれぐらいかと言うとこれ以上下がありませんという位の所まで滑るかと思った。しかも、途中に人が一人ぐらい落ちてもおかしくないくらいの穴の中にすっぽり入った。
さらに穴に落ちたら落ちたで試験の時みたいに地下の川っぽいところに落ちて流された。何とか自力で這い上がる事に成功する俺。

「一体全体どんなピタゴラスイッチが起こったんだ?」

ビショビショの服をとりあえず絞りながら溜息が出た。何が起こったのか自分でもよく分からないし説明できない。とりあえず山で滑ったら溺れそうになったんだとしか言いようがない。そんなバカな……
現状の把握をしようと思い辺りを眺めてみると洞窟っぽい。まぁとりあえず試験の時になんとかなったのでどうにかなるだろうと思い、ビショビショのカバンからイノシシの肉を食べる。濡れたら不味いな、やっぱり。ミズミズ肉が美味しいとか聞いたんだけどなあ?

食べていても、進まない事には始まらないという事で川の流れに沿って歩き始めてみる。それにしても行方不明者を探しに来て俺が迷子になるってどう?
ミイラ取りがなんとかな状態だなとか思っていながら歩いていると何か大きなモグラが死んでたり、蛇がいっぱい死んでいた。
何これ怖いんですけど?
とか思っていると剣を松葉杖的に使っている人をみかけた。どうやらこの人が倒したらしい、裸足だったので足を見ると凄く腫れていたので骨折しているのが分かるぐらいだった。

「大丈夫ですか?」

ボロボロで見かけ的に全然大丈夫じゃないけどとりあえずそう言った。大丈夫ですか?って便利な言葉だよね。

「あ、アナタは救援の人ですか?」

振りかえってそう言った人の顔を見ると、アスカ=ヤマトその人でした。

「はい。」

返事すると安堵の表情を浮かべるアスカ君。どうにも不安だったらしい。そりゃこんな処でずっと一人だったらそうなるよな。
後はベル呼ぶだけなんだけど、外に出ないと呼ぶに呼べないし……
とりあえず外に出ようかな。

「肩を貸しますよ。」

「すいません、足が折れているみたいで……」

限界値らしく声を出すのも辛い状態らしい。歩きながら話を聞くとどうやら俺と同じ感じでこの洞窟に落ちたのだとか、しかも落ちた先にはモンスターが山のように居たのでそこで生死を懸けたバトルを繰り広げていたらしい。進むとモンスターが現れるのでキリがなかったらしくここまで来るのに凄く時間がかかったとか。逃げたり、隠れたりもしていたらしいのでそりゃあ仕方ないな。

「それは大変でしたね……」

俺なら完全に死んでます。よく生きていられたな、この人凄い。どれぐらい凄いかって言えば、某対決テレビ番組で2分の1の確率で8連敗の先生並みに凄いと思う。うん?この例えってバカにしているような気がするような……気のせい?
そういう会話しながら歩いて行くと洞窟の出口が見えた。

「何とか帰る事ができそうですね……」

と言うアスカ君。出口近くまで行くと地震が起きたかのように錯覚する程の凄まじい咆哮が轟いた。

「アイツが、アイツが来る……」

と言いながら震えだすアスカ君を見る俺。ガタガタと歯を鳴らしながら心底怖がっている。
そんなに怖がられたら俺も怖くなるんですけど…
そんな事を思いながら出口をまた見ると、大きな口に烈火の如く燃え盛るような赤い鱗、2本の大きな牙をむき出しに出しながら涎を大量に垂らしながら俺達を見ている爆龍こと、ドラギリアスさんがいました、まる。

「マジで?」

ば、爆龍って、爆龍ってアンタ、勝てるわけないでしょう?ベルいないし……
逃げたいという衝動に駆られ、スタコラサッサと逃げようとしたけど、アスカ君が足をケガして逃げるに逃げられない。
腹をくくるしかないようだ。逃げたらアスカ君を置いて行くことになる。ケガ人を見捨てるような人間に育った覚えはない。見捨てたら生きていてとても嫌だと思うのでね。とっても逃げたい。めちゃくちゃ震えてきた……
脚が笑ってるし、心臓の鼓動が速くなるし…でも逃げる訳にはいかないな。
修行だと思って何とかするしかない。

「私を置いて逃げて下さい。もう助かりようがない……」

アスカ君は悟ったかのように諦めたようだ。しかしな~。
逃げても助かる保障ないし、それならベルが来るまで戦うしかない。口笛を吹けば飛んでくるって言ってたからな。さっさと吹くか…
うん?くちぶえ……?
俺口笛吹けないじゃん!

『メシだ、メシだ!メシの時間だぁぁぁぁ!!!!』

という凄い嫌な予感しかしないテレパシーを送ってくるドラギリアスさん。いや話合いをしようとか思ったけど無理だねコレ。やるしかねぇ……覚悟を決めろ、死んだら死んだ時だ。いや死にたくないなやっぱり…
とりあえず時間稼ぎするしか方法はない。生きてここから逃げ出す為にも!!
ビビりながら小さな逆十字を懐から出す。

「我、忠誠を誓いしモノ、今ここに汝の全てをさらけ出さんとするモノなり。我に力を貸せ、“忠誠せし剣”(ナイトセイバー)!!」

逆十字が黒い光を放ち、長めの片手剣程の大きさになった。小太刀的な感じの剣。因みに黒い光は仕様らしい。発明した人曰く、「だって白いと負けな気がしない?」との事、誰に負けた気がするのかよく分からないけどね。

「アナタは一体?」

とか言っているアスカ君に俺は曖昧な笑顔を返す。足折れてるから戦力になりえないもんねアナタ……
アイマイミーマイン、自分でやるしかねぇ!
ケガ人ほっぽり出して死なれたら目覚めが悪いにも程があるし。とりあえずアスカ君から離れないといけないな。
仕方ない、正式名が“ボルトセイバー”とはいえ、自分の名前が付くから極力使いたくはなかったけど…炎に風は効かないしね。雷はまだマシだし本当に仕方ない。

「種族ベルキュロス、名をバオウ、その者との契約により稲妻の力を我に力を与えよ“ボルトセイバー”!!」

稲妻が剣に宿る、俺はまだ契約の詠唱破棄せずに精霊剣を使う事ができないのでこういう状態になってしまっている。普通と比べるとしょぼいけどね。まぁこの状況で恥ずかしいだの何だの言ってられないかんね。ドラギリアスは俺の方を凝視しているのでそのまま一気に洞窟から飛び出てアスカ君から離れる。それにしても自分の家名を他人の前で言うハメになるとは、生き恥じだ。でも、死ぬか生きるかなら、俺は生き恥さらしてでも生きてやる!!
『ゲハハハ、クワセロォォ!!』

そう言って火炎の玉を吐きだす。土砂降りの雨の中であんなもん吐いてくるとかあり?とか思いつつ、距離を一気に離れる。あの攻撃は一撃でも喰らえば死んでしまってもおかしくない。というか攻撃しようにも攻撃できないので速効精霊剣を切り替える。

「種族アーレス、名をサイス、その者との契約により我を守護せよ!“トルネードバリア”!!」

防御魔法的な精霊剣、トルネードセイバーの応用って感じです。攻撃には使えないし威力もへっぽこだがマナコントロールだけは得意な俺には攻撃を晒すように風を操るぐらいならできるんだ!火炎の玉を風でどうにか逸らす事に成功する。それにしても何時死んでもおかしくないなコレ…

とりあえずまた詠唱して攻撃しますよ?的な事を相手に思わせていないと一気に攻めきられてお終いな気がしてならないのでまた“ボルトセイバー”を使う。それを見て相手の火炎も近距離での攻撃ではなく遠距離、中距離での攻撃でしかしてこない。それを見る度に切り替えて“トルネードバリア”を使う。
正直に言えばベルが来るまでの時間稼ぎみたいなもんですよ。こんだけドンパチしてたら気付くだろ。たぶん。

『メシが……ちょこまか動くなぁぁぁぁあああ!!!』

しかし攻撃しても逸らされてばかりなのでキレてしまったドラギリアスが突っ込んでこようとする。イノシシのように真っ直ぐに猪突猛進。“トルネードバリア”をドラギリアスと自分自身の間に生み出し、擦れ違い的な事を起こす。コロの原理的な感じで、避ける事に関して定評あるからね。そのまま大木に突っ込んでいく。そしてそのまま動かなくなった。

「終わりか……」

と呟く。
しまった!フラグを建ててしまった!これはヤバいぞ…強くなって復活フラグだぞコレ。
尻尾がピクンと動きドラギリアスは大木を噛みつぶした。俺の方を振り返って目がマグマの如く真っ赤になっていた。
そして耳を潰されるのではないかと思うぐらいの咆哮……

『く、喰いコロス!痛ぶってコロス!!四肢を喰い千切ってコロス!!!』

怒り狂っているようだった。怖すぎて少しチビッタ。
さっきの数倍かと思えるぐらいの速さで突っ込んでこようとするドラギリアスに向かってきて俺に後数mで当たるマナもさっきの“トルネードバリア”で空っぽでもう使用できない。オワタ!
というところでドラギリアスに落雷が落ちた。
金色の鱗を纏った龍が俺の前に現れたのだ。

「やっと来たか。遅いよ。」

と文句の一つも言いたくなる。でも来てくれてありがとう!!

「口笛吹いてって言ったじゃん!危なかったよ?」

だって吹けないもんは吹けないってば。ようやくこれで終わりかと思って安心していると火焔の玉がベルに向かって吐きだされた。

「ベル!!」

「ふん!!」

俺のかけ声に反応してベルは轟風を起こしてその火焔の玉を火焔を消して弾き返す。

『譲ちゃん、まだ経験が少ないなぁ?』

落雷で焦げた鱗が煙を出しながら平気そうに俺達に向かってそう言ってくる。

『それだけじゃオレは倒せない。』

さっきと違って怒っている様子ではなく冷静になっているようだった。お前ラスボスか何かか!?と心の中で突っ込んでしまったのも仕方ないだろう。

「ディファイ、コイツまだ力が残ってるみたいだよ……」

俺もうマナ空っぽだよ?ベルの攻撃も効かないし……ベルは子供だからそう簡単に何回も攻撃できないし。逃げようにもアスカ君ドラギリアスの後ろにいるから逃げられないし…
しかも落雷した後はエネルギー不足で人を背負ってまだ飛べないってベル言ってたし…
本格的にオワタ!!
火焔の玉が連弾で俺達に向かって吐きだされる。ベルが風を起こすが何個か突きぬけて俺に向かって玉が!

「ディファイ!!」

そして火焔が俺の目の前数十cmというところまで来た。
思わず目を瞑り痛みに備える。ていうか死ぬ可能性高くない?
そして轟くような衝撃音がした。しかし俺自身に当たなかった。
オカシイと思い目を開けると長い尻尾的何かが俺の目の前にいてそれが火焔を受け止めてくれていたようだった。
尻尾?

『私の縄張りで何しているのかしら?』

「ラウザルク姉さん!!」

現れたのは巨大な狼だった。やべぇマジで死ぬかとおもった。あ、完全に小便漏れた。強めの雨だからバレナイからいいか。某霊界探偵漫画でもそう言ってたし。

『あん?何だよ年増に用はねぇよ消えうせろ。ババア!』

というドラギリアス、どうやら仲がよろしくないらしい。それにしても龍でこんな罵り合いとかしてるんだ。とか思ってしまったのも仕方ないだろう。たぶん。その間にアスカ君を連れて逃げようと忍び足でアスカ君に近づく。

『だ……まだコ…』

テレパシーなのに聴き辛いってどういう事?

『あん?何だって年増?』

挑発にも程がある。というか年齢分からないから何ともいえないけどね。

『……誰が年増だコラ?』

そのテレパシーが頭に鳴り響いた時、背筋が凍った。雨だけのせいではない寒気がしすぎて半端ない。恐怖による威嚇。

「ディファイ!危ない、ラウザルク姉さん怒ってる!!」

ベルの声に反応してアスカ君をおんぶしてスタコラサッサ。するとラウザルクさんの回りに電気が集まりだした。電気と電気が反発しあっているような音、その音がどんどん大きくなっていく。
一瞬その音が消える、嵐の前の静けさのような……そう思っていると口が開いた。
そして数十キロは聞こえるであろう咆哮。その回りには凄まじい電気が迸る。うわ掠った!!

『死んで詫びろ。』

「で、出た……姉さん得意技だよ。ラウザルク姉さんの雷での身体強化、凶暴性と雷の付加ダメージが数倍上がるんだよ、早く離れて!!」

だから名前がラウザルクなの?
とりあえず思いっきりダッシュ。アスカ君は今この光景を見て口をあんぐり。うん、俺もそうなるのは分かる。と思っていたら被電して気絶してた。
何かゴメン。
電気の充電が終わったらしく、狼の巨体が加速する。4本の足を鞭のようにしならせドラギリアスへ距離を一気に詰める。
火炎の玉を吐きだしているドラギリアス。しかしそれは簡単に避けられる。
地上戦では歩が悪いと考えたのかドラギリアスは翼を広げて上空へ逃げようとする。
それを見たラウザルクさんは尻尾を上空へと向かって突きだした。
尻尾からパチパチと音がする。パチパチと擦れるような音からバチバチという激しい音になり電気がみるみる大きくなっていく。そして尻尾から電撃が放たれた。
それが直撃したドラギリアスはそのまま地上へと落下。しかしドラギリアスもやはり竜王種というだけあってすぐに体勢を整えて攻撃しようとする。だが、それよりも早くラウザルクさんは攻撃を始める。爪で相手を引き裂き、落雷の攻撃。尻尾を使った電撃攻撃。何よりその攻撃が常に同じ個所しか狙っていない。

『ははは、お前に足りない物、それは、情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ、速さ、そして何よりもぉぉ』

ドラギリアスも反撃しているがそれが当たるどころかかすりもしない。そしてラウザルクさんが一瞬攻撃の手を休めた。それを見たドラギリアスが距離を開けて体勢を整えようとする。

『年齢が足りない!』

その言葉が頭に鳴り響いたと同時に距離を取っていたドラギリアスに一気に近づいてその加速したスピードと電撃で強化した爪を全体重をかけて相手に突き刺した。

「それを言うなら経験だよ?」 

ベルがナイスなツッコミを入れてくれましたが、ラウザルクさんには聞こえてない。
まぁ結論だけ言うと、フルボッコでオーバーキルでした。ドラギリアスは倒れて動かない。

『ふぅ、全く失礼です。』

とにかく分かった事はこの龍は怒らせてはいけないという事です。

「ラウザルク姉さん、久しぶりだね!」

『アレ?ベル何でこんなとこにいるの?』

「き、気付いてなかったの?」

『縄張りに入ってきたのがいるから注意しようと思ってね。』

「そ、そうなんだ。」

ベルの声色が引き攣っているのはまあ仕方ないよね。
それにしてもアレースさんとかと比べても同じぐらい強くね?
そういう血統なのかな……

『ベルがお世話になっているようで、』

挨拶してきた。怒らせなければ普通ということですか…それなら良かったです。

「いえいえコチラこそベルには助けられてばっかりで……」

極々普通の話なりつつある。まぁそれはそれでいいけどね。助かったし。
とか思っていたら何か顔を近づけてジロジロ見てきた。
最近、あんまり龍に顔近付けられてもビビらなくなったのって凄い進歩だと自分では思うんだけど。

『アナタは不思議な人ですね。邪悪な欲望を感じない。』

「え?そうですか?」

欲望に満ち溢れている俺に何故そんな事を?
普通に平和に暮らして嫁さん貰って子供3人ぐらいに囲まれて孫の顔を見て死ぬというのが人生の目標。後は普通に漫画とかアニメとかゲームをできたら最高ですね。こんなもう人生として最高レベルの欲望を持つ俺が何故にそんな事を言われるのだろうか?

『普通の人間には誰にでも欲望があります。“金”が欲しい。“異性”にモテたい。“権力”が欲しい。色々ありますが、アナタには平和に暮らしたいという思いが根底にあります。それは普通誰もが持っている願いです。本能という奴でもありますしね。邪悪な欲望とは言いませんから。』

そういうものなのか?
おっぱいおっぱい言ってたりもするけどそれも本能という事なのだろうか?

『それにベルが懐いている時点でアナタの心は醜くない事は分かってますしね。』

普通に一緒に遊んでるだけで懐いてるんですけどね。まぁそう言われて悪い気しないからいいけど。

『食欲、性欲、睡眠欲、これは本能の部類です。本能だけの存在が欲深い訳ではありません。』

まぁそう言う解釈の仕方もあるのだろう。ただ性欲丸出しの奴は犯罪者になる可能性が高すぎるので邪悪な部類に入ると思うのは譲れないです。

「ディファイ、この人大丈夫なの?」

ベルが俺の背中で気絶しているアスカ君を心配そうに見る。

「息は安定してるから大丈夫だと思うよ。」

まぁケガ酷いけど何とかなるんじゃない?
息はしているし、骨折だけでは死ぬ可能性は低いからね。でも早くちゃんとした所で見た方がいいな。とりあえず応急処置をしておくか。それにしても学○シリーズって凄い役立つな…

「なら、そろそろ行こうか?」

「ああ、でも病院に着いたらベルもラウザルクさんと話したい事もあるだろうからここに戻っていいよ?」

どうせ1週間ぐらい潜入調査の予定だし。漫画喫茶で色々することあるしね。

「………」

何か凄い悲しそうな顔でこっちを見てくるのは何故?話したい事あるんじゃないの?

「まぁ、1週間はいる予定だからそれまでには帰ってきてね。」

「!!うん分かった!でも今日だけ姉さんのとこに泊まるね。」

何か今度は凄い笑顔になった。どういう理由で機嫌が変化したんだろ?

『ではアナタはもう行ってしまうのですか……もう少しお話をしたかったのですが残念です。』

「すいません。この人の手当てをしないといけないので…」

龍の涙とかも効かないし仕方ないだろう。

『では一つ私からアナタにお願いがあります。』

「何ですか?私の出来る範囲の事なら何とかしますけど。」

できる範囲と言えば限りなく小さい範囲何だけどね。

『ベルを宜しく頼みます。』

うん?よく分かんないけど、結婚的な事でなければ何とかしてみます。

「はい。分かりました。」

一応笑顔で応えておいた。返事する時にスマイルって大切だと思うんだ。何となくそう思っただけだけど。

「んじゃ、行こうか。」

「うん。」

翼を大きく広げて飛び立とうとするベルにラウザルクさんが何か言ってた。

「大丈夫だよ。絶対。」

『気を付けてね。』

「何の…」

話?と聞こうとしたら急加速で真上に急上昇、何も言えなくなります。因みにアスカ君をおぶっている状態なのでうっかり落としそうになった。

「うん?何か言った?」

「……とりあえず安全飛行でお願いします。」

はいよ。という返事を返すベル、とりあえずこれで無茶な事はしないだろう。
もう聞こうと思ってた事も忘れたし。
もう疲れたから、とりあえず病院にアスカ君を連れて行って宿で寝よう。そこに異論はないだろう。あれ?そういやどこで降りたらいいのかな?

―――――――――――――――――――――

『行きましたか……』

久しぶりに会った従妹を見送りながらラウザルクは呟いた。

『それにしてもあのディファイとかいう人、何か不思議だわ。』

何が不思議かと言われれば分からない、感じたマナは人のモノである。しかし何かがおかしいと思えて仕方ない。真っ白な紙に白に限りなく近い灰色の点があるような違和感を感じるのだ。
この時代に生きる人間のマナも感じる、しかしそうでない何かのマナも感じるのだから。

『まぁ考えたところで分からないわね。』

考えても分からない、しかも調べる術もないのが現状なら考えても仕方ないという答えに辿り着くのは仕方ないと言えるだろう。

『ベルも人間を受け入れるようになった、ディファイという人間がよっぽど好きなんでしようね。』

ベルは人間が嫌いだった。何故嫌いだったかと言えば、人の心の醜さ、汚さ、卑劣さがベルに直接聞こえてくるからだ。
ドラゴンはそういう力が多少なりあるがベルはその力が強い。しかもベルは伝説とも言われる金色の鱗を持つドラゴンであるし、その鱗の美しさもある為、小さな頃に人間に誘拐されろうになった事が幾度かある。
その頃はまだ力がない状態だったので何もできずにタダ誘拐される時に人間のドスグロイ感情を感じ取ったのだ。結果的に誘拐はサイスとバオウの手によって阻止されたが、それは小さなベルにとっては根深いトラウマになっているのだ。
もちろん誘拐を企んだ人間の記憶を消しているし、いないという記憶を植え付けたせいで、その噂はデマとなっている。しかしベルの記憶からは消せない。記憶は消せたとしても、そのトラウマは心の奥底には存在するし、下手に消してしまえば人を嫌いなものと思ってしまう。それはベルにとって良い事ではないのは間違いない。だがベルは心を閉ざし、人間を嫌った。
このまま一生人間を嫌いなまま、もしかしたら人間を殺してしまうのではないかと心配していたのだが、それが久しぶりに会ってみたらどうだ。
ディファイという人間に懐いているではないか、彼が何をしたのかは分からないし、想像もつかないがベルが人間を見て笑っているのだ。
テレパシーでサイスから聞いてはいたのだが生で見て本当に驚いた。
ラウザルクは嬉しかった、彼女が何を言っても人間は嫌いと言って譲らなかったベルが懐いているのだから、しかしそれと同時に不安もあった。

『あのまま封印が解かれなければいいのですが……』

封印が解く鍵はディファイが握っているのだ。できればこのまま封印されていて欲しいがどうなるかは分からない。ベルが認めたのは彼だから。だから『ベルを宜しく頼みます。』と言ったのだ。
そしてベルにも気を付けるように言っておいたのだ。

(「大丈夫だよ、絶対」)

『……まあ後で色々話を聞こうしから。』

その言葉を思い出しながら、ベルが帰ってきてから今晩の晩御飯の時にでも詳しい話を聞こうとラウザルクは思うのであった。

――――――――――――――――――――――――――――

「それにしてもよく寝てるな~」

夕方頃に島から無事に帰ってきた俺達はアスカ君を病院に連れて行き、検査とか治療とか寝ている間にしてもらった。
医者曰く、「結構危なかったけど、割と良い感じの応急処置してあったから大事にはならないね。」とのこと。

「起きる気配ないね。」

「そうだね。報告だけして宿探す事にするから、ベルは遊びに行って良いよ。」

「分かった。けど今日の晩だけだからディファイも無茶しちゃいけないよ?」

俺が無茶を自分からすると思ったら大きな間違いである。大体無茶するような厄介事に突っ込んでいく事は自分からした事は……あった気もするけどカウントはしない!
と言う訳でとりあえず温泉にあったのと同じマークの建物があったのでそこに入って報告しておいた。
受付の人は

「え!?一人で帰ってきたんですか!!?」

とか驚いてたけど割とどうでいい。何かごちゃごちゃ言ってたけどコッチは非常に疲れていて眠たいので宿を取って寝た。何でも温泉の時に過払いがあったのでそれを立て替える代わりでタダらしい。同系列の店とは言えラッキーである。それで一応シャワーだけ浴びてそのまま寝た。
 
 
 
目が覚めると何か何か外がザワザワしてた。朝からにぎやかだなとか思いながら、そう言えばお金の受け取りの話を聞いていなかったので、もう一度受付に行くと何か依頼人の巫女姫さんとベルがじゃれて遊んでいた。因みにベルはお腹をさすられて眠たそうな顔をしていた。何してんの?

「おう、依頼の事じゃが成功したらしいのぉ。一応成功報酬じゃ。」

ベルのお腹から手を話して懐からお金を取りだした。ベルは気持ち良すぎたせいか寝ていた。本当に何をしてるんだ?
そう思いながら渡されたのは10万zだった。アレ1万zだったのに間違ってない?

「すいません、成功報酬は1万zですけど?」

「それはお礼じゃな。受け取ってくれんか?」

はい?お礼って言われてもな…だって元々は1万zって書いてあるのにそんなの関係あるのかな?正直貰えるもんは貰っとけと思う部分もあるが、貰ったらやっかいな事になりそうな感じがするので嫌だ。上手い話には裏があるとも言うしな。
出会い系でよくある3000万円の遺産相続とかの話は引っかかる奴がいるのか?とか思う。だって明らかにバレバレじゃん。ホントにそうならカイジは苦労しないだろう。何百万の借金で地下での労働とかアホらしくなるだろうしな。

「お礼なんて要りませんよ。私は依頼を成功させただけですから。」

受け取ったら何をされるか分かんないしね。良い人そうだけど金銭関係の事はトラブルの元なのでそこはしっかりしておかないと。

「……そうか、お主がそう言うなら無理をして渡す訳にはいかんのお。」

とか言って1万zくれるのかと思ったら、10万zという御札だったので後で崩して貰う事になった。

「なら取りあえず我が城に招待させてくれんかの?」

我が城って我が家って事で良いんだよね?まぁ普通に自分の家を我が城とか言う時もあるし深くは突っ込まないでおこう。まぁ家に行く=御持て成し?だろうし……ならいいかな?ベル居るからとりあえず逃走手段はバッチシだしね。

「そう言う事なら……分かりました。」

という事でとりあえず寝ているベルを抱っこしながら牛車ていうのに乗った。
車の中ではアスカ君の現在の状況の話とかを聞いた。
どうにも命に別状もなく今日はアスカ君も来るらしい。
……昨日の今日の話でよく来ようと思ったな。どれだけ頑丈なんだよ。ていうかそこは安静にしておくべきじゃね?

「さあ着いたぞ。」

と言われて外に出て家を見ようとするとベルが起きて俺の顔に向かって抱きついてきた。そのせいで前が見えない…

「ベル!ちょっ、前見えないから!!」

「私がいない間にどこ行こうとしてるの!?」

「巫女姫さんの家だって!」

「家で何をするつもりなの?ナニをするつもりなの!?」

最後のイントネーションが何かおかしな感じだったのは気のせいだと思う。というかその言葉は小さな子が言っちゃいけません!!

「何って、家に招待されたからだって。大体ベルがいるのに何をしようって飯ぐらいしかないだろう?」

「……本当に?」

それ以外に何があるのかコチラが聞いていいですか?ただ怒ってる相手にそれを言っても逆効果な気がするので言わないけど……

「本当だって、いい加減離れてくれる?」

「それもそうだよね。分かった。というかココどこ?」

「知らない人に着いていっちゃダメでしょうに……」

そりゃあ寝てたのもあるから仕方ないかもしれないけど……それにしてもデッカイ玄関だな~、家の外観はベルで分からなかったけどね。とりあえずいいとこのお嬢さんという事は分かった、こりゃ本物の姫さんかもしれないね。

「それじゃあ支度があるのでしばしここで待ってくれんかの?」

そう言われたのでおとなしく待っていると、包帯ぐるぐるのアスカ君が現れました。

「どうもあの時はありがとうございました。」

「いえ、私は別に大した事してませんよ。」

リアルに大した事してないしね。俺なんて時間稼ぎしてただけだし。

「私がこうして生きていられるのはアナタのおかげ何ですから、謙遜しないで下さいよ。」

別に謙遜なんてしてないんだけどね。まぁ否定するのも肯定するのも面倒臭いからどうでもいいや。お金貰えたし。

「そういえば、サクヤ様にはお会いになられましたか?」

とか言ってくるアスカ君。

「サクヤ様?」

誰の事だってばよ?疑問の言葉が漏れ、その言葉にアスカ君は少し驚いている。

「ヤパーナの姫様の事ですよ。あれ?おかしいな、サクヤ様が出迎えるっていう話だったのに……」

本物の御姫様が出向かてくれるとか普通あり得ないからね?

「いや巫女姫さんという人に連れられてきましたが、サクヤ様にはまだお会いしてませんよ。」

俺の勘違いではないし、たぶんアスカ君の勘違いだろう。全く、王族にそう簡単に逢う事なんてできる訳ないじゃないか、確立的も低いでしょうに……

「巫女姫?ああそれがサクヤ様ですよ。何だお会いになっているじゃないですか…」

What do you say ?
思考が一瞬停止状態。御姫様が何だって?巫女姫っていうのがサクヤ様で、サクヤ様はヤパーナの御姫様って事ですかい?
あれ???
とか思っていると戸が開いた。

「待たせたの。そういえばまだお主には名を言っておらんかったの、我が名はサクヤ、このヤパーナの姫じゃ。」

とか思っていると正装の巫女姫さんが現れました。
ええええええ!?正装じゃないから気付かなかったけどそういえばそうだ!!
やべぇ……実は潜入捜査がバレタのか?いやまだしてないけど。
何と言う情報網。王族の人に逢っちゃいけないんだって、一応は不法入国しているんだから俺。コレはやばい!

「ベル……」

俺はベルの方に向いて目力で緊急事態を伝える。
全・力・逃・亡と

「仕方ないね。」

そう言ってベルは煙をまき散らしながら元の金色の龍に戻った。

「な!?」

「アルべロスじゃと!?」

とか2人が喋っていたがそんな事は気にしてはいけない。背中に乗ってとりあえずまあ全速力で逃げる!

「待って下さい!」

待てと言われて待つ馬鹿がいるか!?
という訳であばよ、とっつあん!
うん?
ちょっと待てよ?お金貰ってないじゃん!!うわ~でもそんな事言ってられないしな…マジ最悪だ~

「じゃあ全速で行くよ!!」

べ、ベルさん?また音速を超えるつもり……
ですよね~
俺はまた意識がブラックアウトになった。とりあえず次に行く場所は決めて言っておいたので良いだろう。
マクノイス魔法皇国に。
まぁ天井壊したから修理代ってことになるのかな?あのお金……
あ、靴忘れた。

Side 原作で唯一の王族でないのに騎士代表に選ばれた人(原作主人公は除く)

「行ってしまったのぉ~」

「ちゃんとしたお礼をしたかったのですけど」

もう米粒程の大きさになってしまった命の恩人を見送る事になってしまった私とサクヤ様。
私自身がお礼として持ってきた1月分の給料袋とサクヤ様が懸けてくれた依頼金のどちらも受け取ってもらえないなんて…

「それにしても、あのアルべロスを従わせるとはどんな実力者だというのじゃ、あのディファイと言う男は……」

驚きを隠せていないサクヤ様、無理もないだろう伝説上の龍として伝記のみに伝わっている龍で災いと幸運のどちらかをもたらす存在と言われていた存在を従わせる男を自身の目で見たのだから。

「ディファイさん、ですか……」

そう言えば名前を聞いていなかったな、そういう名前なのか……
あの時私はあのまま死んでいくと思って覚悟を決めた。
だがあの人は私を置いて行かなかった。
それが私には不思議で堪らなかった。ケガ人を置いて普通の人間は逃げるだろう。それが知り合いでも仲間でもなんでもない存在なら尚更だ。
しかしあの人はそれをしようとしなかった。
それどころかあのドラギリアスに立ち向かっていったのだ。
マナの量的に言えば私以下のはずの存在が私が歯も立たなかった存在にたち向かう姿はどこか変であり止めてほしくもあったが何よりも嬉しかった。
置いて逃げろと言っているのにそれをしないディファイという男が輝かしく見えたのだ。
あの人が何を考えてそうしたのかは分かるはずもない、それでも置いてけぼりにされずに残って戦ってくれて嬉しかったのだ。
そしてあの人は“逆十字”のアクセサリーを剣に変えてドラギリアスに立ち向かった。
噂に聞いた事がある聖騎装でアルシリアの女王騎士の“女王の剣”だと最初は思ったが雰囲気というか何かが違っているように感じてならない。
“逆十字”という事自体がまずあり得ないのだ。逆さまにした訳でもない本当に“逆十字”のアクセサリーを武器に変えたのだ。

『アナタは一体?』

その問いかけにあの人は気付いていないらしくそのままドラギリアスに向かっていった。
立ち向かう時に属性を極めたとまで言われる精霊剣を使ったのだ。しかも精霊剣を2つも…おそらくアルシリアの中でもトップクラスの存在なのだろう。
ドラギリアスが雷属性の剣を見て距離を取り接近戦に持ち込みたくないらしく、遠距離から火炎の玉を吐くとあの人はタイミングを完全に合わせて風属性の精霊剣を使い防御に徹した。
絶妙すぎるマナコントロール。
切り替えの速さがコンマ1秒単位だ。それは練度の高さが窺える。
これはセンスよりも練習量がなければできない芸当である。
無駄なマナ等一つもない。属性が同じなら分からないでもないのだが。しかし全く異なる属性をあの速さで切り替える事ができるのは大変難しいはずなのだ。
それを難なく成功させるあの人は何者なのだろうか?
そしてあの人はドラギリアスを上手く大木に突っ込ませた。
終わったかのように見えたのだが、ドラギリアスをさらに興奮させてしまったらしい。
今度はどう相手するのかと思いあの人の方を見ていると、ただそこに立っていた。
突っ込んでくるドラギリアスに微塵も避ける気配のない男。

「危ない!避けて!!」

そう思わず叫んでしまったがもう衝突するのは時間の問題である。
その瞬間を見たくない為に私は思わず目を閉じた。
すると衝突音の代わりに落雷の音がした。何事だろうと思い目を開けると見た事もない金色のドラゴンがそこに現れた。

「ア、アルべロス?」

エルムガンドに次いでヤパーナも龍が多い国である。その他にも幻獣などもたくさんいるが、ヤパーナの伝記に書かれているのでも極々マイナーな龍がそこにいた。
“龍獅子”アルべロス。
このヤパーナで存在する最強にして不滅の龍ラヴィエンテ。これはヤパーナに住む民なら知っている龍である。しかしアルべロスは違う。知る者は極一握りだ。何故なら災いと幸福のどちらも運ぶ龍と言われるからだ。
ある伝記では3つの国を一晩で無に帰したと言われ、またある伝記では3つの国を災いから守ったと言われる。
しかしそのアルべロスでもまだ子供であるらしく、ドラギリアスを仕留めきれてはいなかった。
私達を助けに来たのかどうかは分からないが、どうにもこちらに攻撃をしかける様子はないようであった。しかしドラギリアスはあの人に狙いを定めて獄炎の炎を吐きだした。
その速さは私では到底反応できる速度ではなかった。
今度こそ死んでしまう。
そう思い目を瞑ると爆炎が弾ける音がする。明らかに炎が何かにぶつかった音であった。恐る恐るではあるが私は目を開けると今度はこの島の中でも上位の存在である“雷狼竜”であるジンオウガがいた。

「ジ、ジンオウガ!?」

この島のジンオウガは普通の個体であるジンオウガよりもはるかに強い。
そしてジンオウガが現れた時点で私は本当に死を覚悟した。
何故ならこの3匹の龍がいる時点で逃げるの事も戦う事も不可能である私が助かる訳がないからだ。
そして、ジンオウガが戦闘態勢に入り、その時に雷が被電して記憶を失った。
 
 
 
 
 
 
 
「……病院?」

目が覚めるとベッドの上だった。
最初は真っ暗だったので、死んだから地獄にいるのではないかと思っていたがどうにも足が滅茶苦茶に痛いし、看護婦さんらしき人がうろちょろしているのを見たので病院に間違いないだろう。
そしてそこで自分がここにいる理由を聞いた。するとあの人が私を連れて病院に連れてきたのだとか。
そこで聞いた話では色々な手続きを何もしていなかったらしく、しかも勝手にクエストから帰ってきたりしたので依頼金を払うかどうかがギルドが困ってしまったらしい。
そこでサクヤ様にギルドから連絡が入り、「なら勝手にこっちで支払おう。」という結論になり、まぁ御持て成しと依頼金の支払いを兼ねて招待することになったらしい。
サクヤ様には迷惑をかけてしまったな……
主従関係なのに守るどころか守られしまっている感じがするのはこの国の騎士として情けない話だ。
そして翌朝にサクヤ様が見舞いに来られた。一応の事実確認として私に聞きに来たらしいのとギルドが“霊園”を調査に行った結果が出た事を伝えに来たらしい。何故ギルドが調査に行ったかのといえば、討伐クエストで実際に討伐した場合はその対象の獲物が死んだ場所に行き確認するのは当然の事であるが今回のクエストは捜索クエストであるからその必要はない。なら何故そこに行ったのかと言えば、『勝手に帰ってきたから』である。
通常のクエストでは終了後にギルドの休憩所に依頼終了や依頼放棄を選んで帰る為の船やら台車やらを待つのが流れなのだが、それをせずに帰って来たというのがギルドにとっては謎だったかららしい。何故なら“霊園”の通行手段は船“のみ”だからである。“霊園”はマナが乱れている為に移動魔法やその類の道具が使えない。
それなのに船を使わずに帰ってきたのが謎だったので、調査に出たとサクヤ様が説明してくれた。

「それでお前はどうやって帰ってきたんじゃ?」

「それが、その~、ジンオウガの電撃を喰らって覚えてないんです……」

「そうか、覚えてな…ん?ジンオウガ?」

「はい、“爆龍”ドラギリアスに襲われてしまい…そこでアルべロスやらジンオウガが現れて……」

「はあ?何でお前はその3匹に囲まれて無事に生きておるんじゃ?」

サクヤ様が呆然としながらそう言った。
そういえば何であの状態から生きて帰れたんだろう?生きている方がおかしな状態で…

「分かりませんね……」

「まぁ、とりあえず依頼金の支払いも兼ねてその男を呼ぶから何か分かるじゃろ。」

そういう事であの人を城に呼ぶ事になった。城に呼ぶだけでは何なので軽く持て成す感じにするらしいとのこと。
そして私は本人に礼を言っていないので自分でしっかり礼を言いたかったので医者に無理を言って数時間だけ外出許可を得た。
城で礼を言って、何気ない会話をしているとあの人の顔色が段々と悪くなってきた。
何で悪くなってきたのかは分からないが、そしてサクヤ様が現れると冷汗だらけになっていた。
大丈夫ですか?と声を掛けようとした時だった。連れていた子犬から煙が包まれ、そして晴れて現れたのは、あの時見たアルべロスだった。

「な!?」

「アルべロスじゃと!?」

私もサクヤ様も驚きの声しか出ずに固まってしまっている間にあの人はアルべロスの背に乗り逃げるかのようにこの場を立ち去ろうとしている。

「待って下さい!」

そう叫んだが、止まろうはせずにそのままアルべロスと共に飛び立ってしまった。天井を壊して。そして冒頭に戻るわけだ。

「それにしてもアルべロスを従える人間だったとはの。ならお主が生きているのも納得できる。伝説の龍を従えるんじゃから逃げるぐらいは出来るだろうし。ただその存在が吉と出るか凶と出るか…」

「大丈夫じゃないですか?悪い人には見えませんでしたし。」

「そうだといいがの……」

大丈夫だと思う、何故ならこの国に伝わる伝説にはこう書かれている。
“金色の龍のみ現れし時、世は災いと幸運どちらも起こるだろう。しかし、金色の龍の背に乗りし人現れたるは、災いを幸運に変える”と書かれているのだから。



ただ、翌日にドラギリアスが死んでいたという情報が入り、実は逃げるのではなく勝っていた事が分かり、テンヤワンヤしたのはまた別の話である。



あとがき
久しぶりです。色々忙しかったので更新遅れました。申し訳ないです。
次回はマクノイス。
それにしても最近睡眠不足レベルが半端ない



[18999] 番外編「感想100突破記念」
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:bdcf1021
Date: 2011/08/01 12:43
番外編
感想100件突破記念だったもの

「物語は主人公が居なくても進むものっていう話らしい。」

このお話はディファイがマクノイスに行く途中の時の御話です。


最近よく思うんだが、某超次元サッカーの始まりはキャプテン羽異だよね?雷11は反則が多すぎない?ていうか宇宙人設定って何?脇役以下のモブが主人公よりキャラ投票で投票されているって何?
大人の事情ですか?分かりません…
て事でとりあえず番外編始まります。

魔黒騎士の根城であるとある場所のある一室で2人の男が話していた。

「シモンズ、ではこの任務お前に任せたぞ。」

「へいへい、任せろって。それよりイゥエン、お前何かやつれてないか?」

報告書を整理しながら任務を言い渡し、後ろを向いて机に書類を入れるイゥエンの姿を見ながらシモンズはそう言った。

「……まぁ色々あってな。ディファイの奴め…何であんな事に?」

ふと溜息を吐くイゥエン。まぁそれも仕方ないことではあるのだろう。あんな事があったのだから。

「ああ、ディファイが暴れた事か?まさかヤパーナでクエストを受けるとはな~、しかもG級。」

「それだけならまだ良かったが……何でよりにもよって巫女姫と接触しているんだ?アルシリアとは親交が深い国なだけあって情報操作には骨が折れたぞ……」

まぁつまりはディファイがアルシリアの出身だとバレる可能性が非常に高い事がディファイの事後報告で分かったのだ。一カ国に付きマナフォンで情報を送るという契約の元にそうしているのだが、その情報を送られた時、イゥエンは目が飛び出そうになったとの事。
アルシリアでは何故かは分からないが今出来る限りの手を尽くしてディファイを探しているのだ。その事についてはよく分からない。どうにもアルマ姫とロイヤルガードの4人しか知らない事らしい。六大公爵家のレヴァンデイン卿ですらその情報は分からないらしい。
噂ではどうにも何かしら大切な情報を持っているとの事なのだが………

「まぁアイツは基本的に何を考えているのか分かんないからな~」

「……それが問題なのだがな、私が出した命とはいえこんなややこしくなるとは……」

ディファイに対しての2人の共通認識は“訳が分からない”だ。
マナも少なく身体能力も低い。それなのに他の女王騎士の受験者は全員が揃いに揃ってディファイの事を高く評価していたし、魔黒騎士の適正があると思ったら闇のマナが使えなかったり、デスフォレストに行って傷だらけとはいえ無事に生還したり、その時にアルべロスと一緒にいたりと本当に訳が分からない存在なのだ。

「まぁお前も疲れてるなら休んどけよ。1週間も情報操作のせいで寝てないんだろ?目が死んでるぞ?」

流石にイゥエンの様子を見て心配したシモンズがそう言った。この2人実は暇な時に一緒にラーメンを食べに行ったりするぐらいには仲が良かったりする。

「そうさせてもらうとする。流石に限界が近い……」

そう言い終わる前に椅子に座って机にうつ伏せになって鼾をかきだした。

「ったくよぉ~、めんどくせぇなぁ。」

そういいながら自分の黒衣のマントを掛け布団の代わりにイゥエンにかけるシモンズ。

『ツンデレか?』

「そんな上等なもんじゃねぇよ。ただの気まぐれだ、男同士でツンもデレもいらん。」

コンドラクタ―に問われてそう返すシモンズ。部屋から出る際に扉を静かに閉めるのも忘れないのは彼の想いやりが窺える。
そして任務の準備にとりかかる為にまず予備の自分の黒衣のマントを取りだす為に部屋に戻ろうとするとある人物に声をかけかれた。

「お前が動くとは珍しいな、何の任務だ?」

声の主はカルマであった。3日程前に言われた任務をこなしてきたのであろう。かすり傷程度のものはあるにしろ、服はボロボロで今にも破けそうである。

「ああ、お守だとよ、新人女王騎士の。イゥエンがディファイの後始末してるから俺が行く破目になったんだよ。めんどくせぇ。お前は任務どうなってんだよ?」

「ああ、仮面の騎士達の情報を聞いて行ってはみたがもういなかった。どうやらガセ情報を掴ませられたみたいだな。」

肩を竦めながら残念そうにするカルマを見ながらシモンズは鼻で笑った。

「ははん、どうせそんな事だろうと思ったぜ。でもそれだけじゃねぇんだろ?」

その言葉を聞いてカルマは僅かに眉をひくつかせた。どうにもシモンズはそういう事に関しては鼻が良く利くらしい。

「……代わりに今はどこかの国に潜伏しているとかと言う話だ。俺の予想ではエルムガンド公国辺りか、ギスカーン辺りだと睨んでいるが…」

「ふぅん、なるほどねぇ。ヴァレリーにエルムガンド辺りに行ってもらうかな。アイツ最近サボってばっかだからな。」

顎を掻きながら考えるシモンズ、正直に言えばシモンズは頭がよく回る。イゥエンも回る方だがシモンズの比ではない。しかしシモンズ自身があまりそういった事をしたがらない為にイウェンが参謀役みたいになっていたりするのだ。

「お前の任務が一番楽そうだけどな。サボってばかりのお前が言えるのか?」

カルマは思わずそう言ってしまうのも無理はない。普段のシモンズはサボり魔なのだ。しかしやることはしっかりやる。その事からイゥエンもシモンズには信頼を寄せているのだから

「それは言わないで欲しいね。天下りみたいな奴よりはマシだろ?まあ確かに今回の任務は一般人を操る感じにするし、それをバイトの募集にしてたら以外に結構来ててな。」

「なんだそれは?」

悪巧みを考える時の笑い方をするシモンズにカルマは呆れた。バイトの募集とか普通はしないだろう。

「いや、日給1万2000カネ―ってまぁ割といいと思わないか?だって実働20分だぜ?」

「その代わり危険なんだろ?それくらいは当然だろうな。」

「いや、危険度は低いけどな……まぁ次の日は疲れて動けなくなるだろうからこの値段にしたんだがな。」

「成程な。」

納得するカルマ。いったい何を納得したのかはよく分からないのだが、彼等の中では繋がったらしい。

「んじゃ行ってくるわ~。」

そう言ってシモンズは準備にとりかかろうとした。その時一通のメールが彼に届いた事を思い出した。

「そいうや、妹様が花買って来いとか言ってたか?何の花だったけかな?」

それを思い出そうとするが生憎そのメールの内容はうろ覚えであり、そのメールが入っている携帯もイゥエンの布団になってしまっているマントのポケット。

「まぁお気に入りの花でも買ってくっかな、バラだったけかな?そんな上等なもんじゃなかったな…」

独り言をしながら迷うシモンズ。しかし深く考えても出てきそうにもなかったので諦めたらしく
「まぁいいか、適当に買ってくるか。」

と呟き、任務へと出かけたのであった。
その時にバイトの募集で使っていた広告が部屋から1枚外へ飛んでいった。

日給12,000カネ―。
先着順。
体力仕事なので体力ある人を募集します次の日は筋肉痛で絶対動けません。保障します。
実働は30分以内です。命の心配は要りません。安全に確実に稼げます。もしこの条件で働きたい人は2週間以内に090‐××××-××××まで連絡ください。


彼がその後、任務を成功させて久しぶりに実家に帰った時に妹に色々言われたのはまた別の話である。
そしてシモンズがエルトと戦おうと思っていたら、小さな人形使いの女王騎士と戦うハメになり、色々勘違いされて恨まれるようになったのも別の話である。

「俺、今年厄年だったけ?」
と彼が呟いたのは誰にも聞かれなかったらしい。


所は変わって、女王騎士の訓練所。本日の訓練を終え従騎士は身体を休めたり、趣味に浸るそんな中でエルト=フォーエンハイムは一人残って訓練を続けていた。

「エルトの奴、また訓練か?」

「はい、そろそろ休憩を入れても良い頃だとは思うのですけどね…」

廊下を歩きながらルカとイージスは最近訓練に没頭している友人を心配していた。無茶をする奴だという認識は試験の前からあったのだが、女王騎士になってからはそれに輪がかかったように訓練に没頭していたからである。

『ディファイとカルマが俺の目の前で連れ去られたんだ……』

と言っていた。彼は2人を自分の手の届く距離で助ける事ができなかったのだ。そのせいで彼は何より強さを求めていた。もう2度と手が届く距離で助けらない事がないようにと…

「悔しかったんだろう、自分の力が足りなかった事が。」

「そうだと思います。エルト君はそういう人ですから。」

明日のエルトの任務はアルハイムと一緒の任務だったはずだ。自分達が一緒じゃないし、今のエルトは無茶をしすぎるので心配なのだろう。

「ただ何でディファイさんの情報をアルマ姫は求めているんでしょうか?」

「うん?それはお前も噂で聞いているだろう?」

「ディファイさんは陛下の情報を知っていたとかいう噂でしたか?それならギルバートさんの方が知ってるんじゃないですか?」

アルマ姫は今現在ディファイの行方を力を入れて捜索している。あくまで噂だがディファイは女王陛下の居場所を知っているという事から捜索の力を入れているらしいとのことだ。

「まぁその通りなんだが、ギルバートさんがその情報を知っていて私達女王騎士にその情報を教えない訳がないからな。」

ギルバート自身も女王陛下の居場所を独自に探しているという話は女王騎士全員が知っている話であるし、その情報はホテルに泊まった騎士達が確かなものだと報告している。
聞いた話ではあるが、今日は陛下はアルシリアの西部の場所にいそうだ。とかいう話を偶然聞いたらしい。その場所に陛下はいなかったが代わりに変な仮面の女騎士が現れたとかいうどうでもいい情報が流れたのは有名な話だ。

「それもそうですね。」

「それにしてもギルバートさんは凄いよな。六代公爵家でもないのに色々知っているし…」

「まぁ伝説の騎士と言われるエクソードさんの右腕と言われてた人ですしね。何たって“希望の騎士”ですし。」

実績としては現六大公爵家の家長とほぼ同等以上と言われているのがギルバート=R=ボルトの存在。まずギルバートがいなければ負けた戦いは多く。噂でしかないが陛下とギルバートは昔恋仲だったとかというものもあり、影響力だけで見ればこの国でもトップクラスの存在である。
まぁそれでも一般人という事なのに国家機密レベルの情報を知っていたりするのはどうなのだろうか?という話が一つも出ないというのはおかしいが、その事に気づく人間がいないのだから仕方ないだろう。

『ディファイは生きています。保険金かけた意味がなくなって残念な限りですよ。』

と王=道隊長がディファイの行方不明の事を報告した際にそんな事を言っていたという話だ。息子を信じているからこそ発破をかける為に保険に入ったり、行方不明で生死不明なのに保険の申請を行わないという彼の行動は女王騎士から見てもディファイが生きていると確信しているのが分かり好感度がさらに上がっているという話もある。
まぁでも、実のところ王=道以外にディファイが行方不明という事が知らせられたのはすぐの事だったのだが、その情報源がとても有力なので本気で保険金を悪ふざけでかけるべきではなかったと思い、妻に言うべきかどうか3日ぐらい迷っていると、ディファイ本人から無事だということ確認できたので、ほっとして吐いたセリフだった事はギルバートしか知らなかったりする。

「まぁギルバートさんもディファイとカルマの無事が確認できないのは辛いと思うしな。」

「そうですね。本来なら合格確実だった人材を2人も失うなんて女王騎士団にとっても痛手ですし。」

ディファイにカルマの2人はロイヤルガードから見ても既に従騎士(スクワイア)のレベルはあったのだ。“天才”カルマに“仮面”のディファイ。この2人を失ったのはとてつもなく痛手なのは間違いなかった。

「まぁ、それ以上の人材に私達がなればいいだけの話だがな。」

「……イージス、アナタはまた自分を偽るのですか?」

ルカの言葉にイージスは立ち止った。少し怒気を含んだ声でその言葉に対する返答をした。

「……何を言っている?私が何時自分を偽った?

「今現在ですよ。心配しているなら責めて僕にだけにでも言ったらどうです?アナタの事情を知っているのは少ないんですから。」

「くだらんな、事実を言ったまでの話だ。心配等しても何も生まれん。」

「なら話を変えましょう。アナタは何時になったら自分を曝け出せるんですか?キャロルを見ても分かるでしょう?別に女性だから騎士になれないという訳でも、弱いという訳でもないという事ぐらい…」

「それはそうだろう。男とか女とかそんな事は些細な事だ。」

先程のまでの怒気は既に無くなっていた。どうやらルカの話をある程度自分でも分かっているようである。

「なら!」

「しかし私は受け入れたのだ。私がそれを望んでな。曝け出すとかはないコレが“今」
“の自分なのだからな。そういう訳でできる限りはこのままでいくさ。」

「そう、ですか…」

ルカはその言葉を聞いてもう深くは聞く気がなくなったようだ。

「じゃあ部屋に戻る、明日も早いからな。お休みルカ。」

「はい、おやすみなさい。」

そう言って2人は分かれて自分の部屋に戻る為に歩き出す。その時イージスはふと言葉を漏らした。

「……やっぱり、初恋というのは報われないものなのかなぁ。」

その言葉はただポツリと漏れた今の“彼”にできる本音。誰も気付く事ができないからこそ彼は“今”の自分を曝け出せていた。

(……ただ、もう一度会えたなら、私はワタシになって“ディファイ”と呼びたいな。)

それが今の“彼”にできる精一杯。それが報われる日がくる事を頭ではないと思いつつ、後ろ髪を束ねている赤色のリボンを触りながら、心の奥底で願っていた………

追加分

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

くしゅん!……誰か俺の事を噂してるな。くしゃみ一回って良い噂だったけ?覚えてないからまぁ自分の都合の良いように考えるべきだな。うん。

「ねぇディファイ。す、好きな女の子っているの?」

「うん?居たけど……」

まぁ好きな女の“子”ではなく好きな女の“人”というのが正しいだろう。ていうかあの人今何してるんだろうか?噂じゃあ仮面の女騎士とか言われてるらしいけど。ていうか実家にその仮面の姿で来た事あるから噂でもないんだけどね。

「今は別にいないな~。」

「そ、そうなんだ!!」

ベルはガッツポーズしそうな感じのハイテンションになっていた。「私にもチャンスが…」とか言ってたけど、まぁどうでもいいや。ていうか諦めようよ、種族の壁は大きいと思うよ?

「じゃ、じゃあ気になる女の子とかはいるの!?」

「うん?いるには……いるね。」

気になる女の“子”か……そういえば最近スージーちゃんに全く会ってないな。
別に好きとかいう意味じゃないし、気になるという程でもないんだけど。どうしてるんだろう?
イージス君から結局聞けなかったしな~。

「そ、その子はどんな子なの!?」

ベルがこの話に喰いついてきた。そんなに興味があるの?

「そうだな~あの子は……」

そう言いながら俺はスージーちゃんと出会ったあの日の事を思い出していた。
 
  
  
 
 
 
俺がスージーちゃんの事を知ったのは7歳の時、曾祖父の葬式が終わった時だったと思う。
まだ子供だった俺は、葬式の後片付けの手伝いが終わると親父と母さんが曾祖父さんと生前縁があった人との対応で忙しく、何か六大公爵家の人とかも来てたので俺は一人で遊ぶ事にした。
カルマ君とジェダ君と一緒に遊ぶのも良かったけど流石に葬式で一緒になって遊ぶのは場違いだという位は分かっていたので、一人で遊ぶ事にしたんだ。

『ディファイ、お前が頑張れよ。』

というのが曾祖父との思い出の中で一番思い出に残っている言葉だ。何で俺“が”頑張るのか“も”じゃないのか?とか不思議に思ったのでよく覚えている。
曾祖父は享年113歳と長生きだった、小さい頃の俺はお年玉が少なくなるのともう遊べないのが残念だったと思っていた。7歳の子供だからというのもあるが、それ以上に曾祖父が死んだとは全然思えなかったからだと思う。正直な話、今でも曾祖父がひょっこり帰って来そうな気がしてならない。
しっかり亡骸を見ているのにも係わらずだ。
俺の名前を付けたのも曾祖父であるらしい。てっきり親父か母親辺りが付けたと思っていたけど曾祖父が「この子の名前はディファイにしてくれ」と言ったので決まったらしい。
何でこの名前なのかは曾祖父しか理由を知らないらしい。まぁどうでもいいけどね。

まぁそんなこんなで一人で遊ぼうとしていると、裏庭で女の子が一人泣いていた。

「どうしたの?」

「父上がいないの……」

その女の子はどうやら迷子になったらしかった。ちょうど葬式が終わって親しい人だけで集まってたときなのでたぶんその女の子の親御さんも忙しかったんだろうと思う。

「そうなんだ……じゃあお兄ちゃんと一緒にお父さん探す?」

声をかけてしまったので面倒を見なければいけない気分になったので女の子にそう聞くと。

「……探してくれるの?あ、ありがとう……」
 
涙を自分のハンカチで拭いてお礼のつもりなのか笑顔でそう答えてくれた。
当時の俺がペドならおそらくやられていただろう……それくらい眩しかった。
まぁ普通に当時も今も普通のお姉さん好きな俺はその笑顔が単に女の子らしくて可愛いな程度にしか思わなかった事を覚えている。
そんな感じで手を繋いで一緒に歩いてお父さんを探すことにしたのだが、名前が分からないと探しようがない事に気付いたので女の子の名前を聞くことにした。

「そういえばお名前は?」

「えっとね、イ―…じゃなくて!!ブ、ブリュンヒルデ!」

いきなり名字を言う女の子、正直何故に名前を聞いたのにいきなり名字が出るのか不思議で堪らなかったのだが、俺も7歳だったという事もあったし、その名字は有名だったのですぐにお父さんが見つかりそうだったので、深く聞かないことにした。

「そう、たぶんお父さんのいる場所分かったから行こうか?」

六大公爵家とかが集まっている部屋は確か、騎士の間だったけ?
そういえば、六大公爵家と親戚になったのは曾祖父の時からだったけ?俺の親父の時代から皇族と仲良くなったとはいえ、曾祖母がバンニール家の3女とかいう話をばあちゃんから聞いた覚えがある。そんで六大公爵家の人とかも馬が合ったらしく、色々やらかして今に至る的な事を聞いたような…
まぁどうでもいいか。

「ありがとう!!」

素晴らしい笑顔でそう返事してくれる女の子。
そして曾祖父の事を慈しんで話しているらしい部屋の前まで行くと今度はカルマ君とジェダ君が居た。カルマ君はジェダ君の面倒を見ていたらしく、一緒にあっち向いてホイで遊んでいた。

「また私の勝ちだな。」

「兄ちゃんすげぇ!!何でそんなにつおいの?」

「ふふふ、それは俺が強いからだ!」

「すげぇ!やっぱり兄ちゃんすげぇ!!」

ジェダ君……そりゃあグーを出す時に口が「よし次グ―だ。」とか小声で言ってたら分かるよ。しかも負けた時に次に向くところを目線で確認してるとか……
その様子を見ているとカルマ君が俺と女の子に気付いたらしく、不機嫌そうな顔をして話しかけてきた。

「ディファイ、誰だソイツ?」

明らかに声色が不機嫌である。何で不機嫌なのかは全く分からないけど、そのせいで女の子は後ろから俺の服をギュッと握ってくる。まぁ不安で堪らないのにいきなりそんな怖い感じで来られたら誰だって引くだろう。

「迷子になったんだって、ジェダ君と同い年くらいかな?」

とりあえずそう答えると、カルマ君は納得したようだった。

「あ!ブリュンヒルデのとこの女の子じゃねぇの?」

「ああ、言われてみれば……」

2人は女の子を知っているらしくそう言っていた。六大公爵家は何故かは知らないが割と歳の近い子供が多い。知っている限りで言えば、カルマ君にジェダ君、時々ホテルに泊まりにくるルカ君にジ―クさん。他にもブリュンヒルデのこの子とか、ルナハイン家の女の子とか、カミュ家の男の子とかも歳が近い。そのせいもあって子供通しで色々遊ばせたりするらしい。
まぁ仲が良いかは別だけど……

「うぅ……」

と言って女の子は俺の後ろから離れようとしない。というか涙声になっている。

「カルマ君……何かしたの?」

初対面じゃないからこその嫌悪感を醸し出しているので、まぁ何かがあったのだろう。その事を聞こうとすると。

「そ、そういえばジェダあっちに父上の聖騎装のフィギアがあったぞ?」

「マジで!行こ、早く行こ兄ちゃん!!」

「ああ、じゃあまたなディファイ。」

「またね~ディファイ兄ちゃん!」

そう言ってさっさと違う方向へ行ってしまった。一体何をしてこんなに嫌われたのだろうかめちゃくちゃ気になったが、女の子の方を向くとそういう状況でない事に気付いた。

「うぇ、うぅぅ……」

女の子は今にも泣きそうになっている。
何でこんなことになっているのかはイマイチ分からないけど今泣かれたら俺が泣かしたことになってしまうので、どうしようか困りながら何かいいものがないかとポケットの中を探していると、母が髪の毛を切るのを嫌った俺に後ろ髪が鬱陶しいからこれでくくれという理由で渡されたリボンがあった。

「いいものあげるから泣きやんでくれる?」

失くしたとか言ったらたぶん、髪の毛切りに行かないといけないな、当時の自分は凄く髪が長かったので母親からリボンを渡されこれで後ろ髪をくくっていた。でも基本的にくくるのが面倒臭いと思っている俺は母親に言われるまでリボンを使わずにポケットに入れていた。さっきの葬儀が終わるまではくくっていたけど、何か男なのにリボン使うのが恥ずかしいので葬儀が終わるとさっさと取ってポケットに突っこんでいたのだ。
そのリボンを女の子にあげると女の子は、

「もらっていいの?」

と戸惑いながらもそのリボンが気に入ってくれたようで、マジマジとそのリボンを見ながらそう言った。

「いいよ、ほら、顔がベタベタだよ?これでチーンして。」

ティッシュで鼻をかませてあげた。
当時から俺の周りには年下が多く、ホテルでも迷子の面倒とかも見ていたというのもあってそこそこは面倒をみる事ができた。7歳なので一緒に遊んであやすくらいしかできなかったけど。

「あ、ありがとう。」

顔を赤くさせモジモジしながらしっかりとお礼の言葉を女の子は言った。

「お。お兄ちゃん。」

「うん?」

顔が赤くまだ恥ずかしがっている様子が見えるものの、どうにも何かを俺に伝えたいらしくまだ舌足らずの声で俺に向かって話しかけてくる女の子。

「父上には泣いた事秘密にしてくれる?」

どうにも泣いたことが父親にばれたくないらしく、上目使いでそう俺に聞いてくる。ていうかその歳で上目使いをマスターしているのはヤバいよな?と今では思うがその当時はそんなこと全く考えていなかったので素直にうなづいて、

「いいよ。じゃお兄ちゃんがそのリボンを渡したのも秘密にしてくれる?」

って言っていた。

「うん!約束だよ?」

「2人だけの約束だね。」

そう言って約束をした、でこの後にブリュンヒルデ卿が凄い勢いでやって来て、俺に向かってもの凄く怒っていた。

「あんな笑顔を私にも見せてくれた事がないのに!!」

とか言ってたけど当時の俺にそんな事をいうのは頭がおかしいと思います。
でその後、女の子の名前がスージーちゃんだというのを聞いたり、実はもう一人兄がいる事を聞いたのに絶対に兄妹一緒にいることがなかったりと言う話もあるのだが、まぁそれはスージーちゃんの話とはまた別の話なので割愛しよう。
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「そういえばこの話秘密だった。」

思い出話をしようと思っている内にどんどん昔の事を鮮明に思い出した。約束をしていたのは覚えていたのだが、それがどんな内容だったかはうろ覚えどころの話じゃなかったので正直助かった。まぁそれでもベルに言ってしまったので約束を破ってしまった。まぁ2人の秘密ではなく2人と一匹の秘密になってしまったのだが……勘弁してもらおう。まぁ一匹増やしてはいけないとは言われてないしな。
……まぁでも今度あったら謝っとこ

「ディファイ!わ、私も鼻をチーンして!!!」

そんな事を思っているとベルが興奮して俺にティッシュペーパーを渡してきた。

「ごめん、そんなに大きなティッシュ持ってないんだ。」

残念そうな表情のベル。でも本当にそんなにデカイティッシュはないんだよ。ていうか犬になったら良い話なのだがそれを言うのも面倒だし、ベルもその気分ではないので言う必要はないだろう。しかしあまりに残念そうだったので、

「なら俺これ言ったことを秘密にしてくれるのを約束してくれる?」

と言ってみると

「うん!それがいい!!」

と凄く喜んでたので良いだろう。たぶん。
そういえば、イージス君のリボンって俺がスージーちゃんにあげたリボンと同じ色してるような気がするんだけど、はて?

あとがき
感想が一つもない……だと?
つまりどういうことだってばよ?
という気分になりました。方向性がいいのか悪いのやらそれが分かりません。orz



[18999] 21話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:cc928e3a
Date: 2016/03/18 17:54
21話「これが俺の全力全壊なので少しも頭を冷やしたくないでござりまする。」

おおディファイよ情けない。ネタがないとは……
ないもの強請りは良くないと思います!
という事で今日も行ってよう!(やってみよう!!)

 
 
俺の目の前に今まで一番の強敵が現れた。ソイツは俺と互角に戦い、そして互角の勝負を繰り広げている。

「この戦いは歴史に残るな……」

「ああ、ここまでの戦いは今までに見た事がねぇ~よ。」

ギャラリーが興奮した様子で俺達の戦いを見ているのは仕方ない事なのだろう。ここまで均衡した勝負も珍しいのだから……

『全力全壊!星光の殲滅!!』

「出たぜ、さっきのコンボ技!これは勝てないだろう!?」

コパ、コパ、コパ。

「バインドが解かれる一瞬で目押しだと!!」

「ありえねぇ!!けどダメージも受けてるぞ!?これで終わりか?」

「ギリギリ生き残りやがった!!だけど相手の体力ゲージは半分以上だぞ?時間切れで“白い悪魔”の勝ちだな。」

「いや、待て!“腹ペコ王”が動くぞ!?」

「なっ!アレは上段ガードをさせてからの下段攻撃のコンボ技か!?」

「違う!アレは究極のハメ技だ!!幻の0フレーム不可避技……」

『“約束された勝利の剣”』

『Winer 2p !! 』

『お腹が減りました……』
 
 
 
うわわああああああああああああああああああああ!!!!

「俺はこの戦いを忘れないぜ!!」

「勝った方も負けた方もどっちが勝ってもおかしくなかったぜ!」

ディスプレイに表示されたと同時に湧き上がる歓喜と驚きの声。
何か勢いで胴上げされそうになっているんだけど?
何故こうなったかと言われれば、とりあえずマクノイスに着いたんだけど王族とか貴族とかの情報が全くと言って良い程見つからないのでゲームセンターで情報収集中していたんだ。遊んでた訳じゃないよ?別に3クレで好きなゲームができるというのに釣られた訳じゃないよ?
大体こうなってしまったのには理由がちゃんとあるんです。

前回の失敗を踏まえてとりあえず顔がバレると危ないと判断した俺は、ベルに擬犬化してもらった後にコスプレイヤーを使って変装しようとしたんだよ。

「HENSHIN!」

鏡に向かってカッコよくポージングをして遊んだりするのは御愛嬌ということで。

「それってコスプレって奴?」

「まぁ間違いではないけど…」

何か微妙な空気になったので仮面ライダー的な何かになろうと思ったけどここでなったら変な人だと思われてしまうので止めたんだ。
そしてマクノイスは魔法の国だと言う事と昔ネットで見た動画を参考にその国の普通の格好をしようと思ったんだ。
因みに今のイメージは魔法の国という訳で杖持ってローブで帽子をかぶってます。
そして町を歩いてみると気付く新事実。

「何あの人?」

「ママ~あの人何であんな格好してるの~?」

「見ちゃいけません!」

なんということでしょう。普通の格好してる人のが多いというこの事実!!
その後ネカフェでアルちゃんねるを駆使して調べた結果、動画は女性の儀式の正装用らしく今の俺の格好を言ってみれば、巫女さんの格好をしている男の変な人である。
男の娘っていう顔とか体型してないんだぜ?
おかしな話だろ?笑えよべジータ……
結局コスプレイヤーを使っても両頬の傷を隠すだけでいつもの感じの格好になった。そして喫茶店とかネットとかで情報収集していて王族関係の情報は完全に極秘扱いになっていて調べようがなかった。分かったのはミサ皇女は素敵な女の子、アザラ―ク皇子は少しインドア派の人。という事ぐらいしか分からなかった。
これ以上の情報収集は不可能だという事が分かり、暇潰しにゲーセン……ゴホン、基、忙しいながらも僅かに掴んだアザラーク皇子がインドア派だという情報でゲーセンによくいるのではないか?という推察とマクノイスの文化レベルを調査する為にやって来た。
それで好きなゲームが1コイン3クレで遊べる事にヒャッハ―していると、2階から歓声が聞こえてきたので、様子を見に歓声のしている方へ向かうと格ゲーをしていた。

「アレはバインドからの“星光の殲滅”!?嘘だろ?0.5フレとか言われてんのに!?」

「うわ~強い。これで30連勝だぜ?」

神業コンボだと!?
何か猛者がいるようだ、俺も一応はストーリーモード魔力モードをクリアした身。ここで勝負をしなくては男ではない!!

「俺が挑戦させてもらっても構わないかな?」

「お客様、ペット連れでのご来店はご遠慮しているのですが……」

「え、あ、いや、これは、その、あ、アレですので……」

「ですがお客さま……」

急に店員さんがやって来てベルを外に連れ出そうとする。まぁゲーセンにペット連れてきちゃいけないしね……精密機械壊されても困る訳だしね。外でベルに待っててもらおうにも俺の頭から貼りついて離れないのでどうしようもない。
そんなやりとりをしていると猛者の男(とは言ってもガタイは普通の男の人)が店員に、

「………構わない。彼と勝負させてくれ。」

「分かりました。では失礼させてもらいます。」

と言って退けさせた。何この人テライケメン!因みに俺の言うイケメンとは顔の事ではないその滲み出るオーラや性格の事を言う。別名“優男(ヤサオ)”とも言うがまあそれは置いといて……

「アナタは強そうだ。」

「貴方の方もね。」

さぁ、始めよう最初で最後の本気の勝負!!
あ、でも俺の使うキャラはそれとは違うわ……



……という訳で冒頭に至るという訳である。
因みにこのゲーム“魔力戦争Ⅳ”は格ゲーに分類される。目押しとかハメ技とかもあるんだがこのゲームを語るのにはキャラクターの量が異常に多い事が必要不可欠だろう。しかもキャラクターによってコマンドが全く違うし、ボタンが8個もあるという玄人好みのゲームである。
しかしキャラクターがぬるぬる動く姿や原作の表現を超えたと言われるほどの必殺技のクオリティーの高さ、着せ替え要素など色々な要素がある為3年前のゲームなのに未だに根強い人気を誇るゲームなのだ。
因みに俺は親父がホテルのゲームコーナーに導入していたので、お金をかけずに遊びまくった事もあり、結構強いと自分で思っている、ただ公式の大会等には学校があったりしたせいで行けてないので井の中の蛙状態なのかもしれないので何とも言えなかったのだが、おそらく結構強いと思って良いと思う。
そしてその後に何回か勝負した訳だが4勝4敗1分という結果となった。世にも珍しい相撃ちとなったのはそれだけ実力が均衡していたからだろう。そして試合を通じて仲良くなり、そのまま意気投合して昼飯をおごってくれる事になった。
お金がないので正直助かった。自分の預金通帳から落とすのは趣味だけで十分です。大体ブラック企業かよって話だよ。こんだけ一生懸命に働いているに手当てが異常に少ないのは……何が「お前の情報操作で金掛かってんだから仕方ないんだ!!」だよ。俺別にそんなに酷い事してないはずだぞ?
ていうか普通に良い事しかしてないしな……文句を言われる筋合いは皆無のはずなんだけど。

「私はディファイと申します。いや~、それにしても強いですね~」

「私はアザラークだ……貴方の方もね。」

軽く名前だけ自己紹介をして、目の前のジャンクフードを食べながら、褒め合う男共、傍から見ていたら超キモい……
まぁそんなの気にしてたらコスプレなんざできないから別にいいんだけどね。

「そんな事ないですよ。“白い悪魔”はかなりの玄人好みのキャラでゲージレベルが上がらないと使えない技が多いのにそれまでのゲージ回収の上手さはもう脱帽ものですよ。」

そしてあのゲームの話で盛り上がる。実際、俺の目の前の男、アザラーク君は相当強い。原作コンボと言われるバインドからの“星光の殲滅”という神業をできるとは、俺も相当驚いた。実際に初見ではかわせなかっただろう。試合を観戦していなければ俺が負け越しているだろう。

「何を言っている?“腹減り王”は玄人でも使わないようなキャラ。確かに一撃必殺は魅力的、しかし範囲が狭すぎるし常にゲージが減っている状態だから使いにくすぎる、体力が1の状態じゃないと使えないのをあそこまで使いこなすとは……」

まぁその通りなんだけど、俺はそのキャラしか使ってなかったんだよね。原作好きすぎたおかげでこの“腹減り王”をここまで扱えるようにしたてのだから。大体このゲームをプレイする人間てのは2種類で、好きなキャラを使っている奴と勝つためにマイナーキャラを使う奴に分かれる。
因みに初心者用のキャラは『スターダスト魔女』の“メルル”とかいうキャラだったりする。このゲームは有名なキャラ程使いづらく、マイナーのキャラ程使いやすい仕様らしい。
玄人好みは“高速脱ぎ女”だったり、“英雄の息子(ラッキースケベ)”だったり、“赤き魔本の主(鰤喰い魔)”とかだったりする。因みにどれも使う人間はいるにはいるが、使いこなすレベルの人間には逢った事はない。ゲームバランスの関係上、極端に防御力が低かったり、HPが低かったり、ゲージの回収がしにくかったり、溜まりにくかったりとするからだ。
俺の扱う“腹減り王”の“約束された勝利の剣”はゲージがマックスの時でHP1の時である時にしか使えないのだが、発動さえすれば一発逆転の技である。しかし扱うのは難しい。というかHPを必ず1に出来るとは限らないし、常にゲージが減り続けるキャラなので10戦に1回使えれば恩の字の究極技である。
因みに“白い悪魔”の“星光の殲滅”はある程度難しいが普通に出せない技ではなかったりする、ただ溜めのモーションがかかる為に相手がピヨッた時にしか使えない技とも言われているのだが、難易度SS級のテクニックと言われるコンボが存在する。それが“魔王からは逃げられないのだよ”と言われる通称“原作コンボ”である。ダメージ必須で半分以上のダメージが削られるのは確定の技だ。目押しした所で全てのダメージを無効化できる訳ではないので凄いダメージを喰らうという技。最高3/4のダメージで防御しても3/5のダメージ、目押ししてようやく半分という技だ。

「全く話の内容が理解できないよぉ……」

ベルが俺にしか聞こえない小さな声で呟いた。ごめんね、でも初めて見つけた人間の“魔Ⅳ”の猛者だからテンション上がって自重できないんだよね。
そんなこんなで盛り上がりまくっているとアザラーク君がコレクションを見せたいという事なので家に招待されることになった。

「……凄いデカイ家だな~」

ゲーセンから歩く事約15分。隣にデッカイ城がある横にアザラーク君の家はあるらしい。その時点でたぶん城の要人的な何かの息子だと思われる。そうじゃないとこんなデカイ家に住める訳ないし……
実は皇子だったりとか言われたらビビるけどね。まぁ皇子なら本邸である城に住んでるはずだから違うだろう。
家に上がると“魔力大戦Ⅳ”のトロフィーとかが飾ってあった。やはり相当強いらしい。
トロフィーとか見ているとその横に凄い存在感を醸し出す精巧なフィギアがあった。

「こ、コレは“魔Ⅳ”の全国大会に出れば貰える“白い悪魔”の大人バージョンじゃないですか!」

「分かるか?」

分かるに決まってんじゃないか!!コレは市場に出回ってないし、オークションにも出ない代物でもしオークションに出たらウン十万は下らない代物だ。しかも、その横には女王騎士フィギアの先代女王陛下アルテリア様の若いVer.がある。コレは女王騎士フィギアの1stシーズンの激レアもの。俺も一応持っているがそれはアルテリーナ様に譲った後の奴なので、それ相応の御歳の姿だ。これもレアなのだがコレに比べれば月とスッポンみたいなものだ。他にも、魔法少女もののグッズやら魔法バトルもののグッズやらがたくさんあった。やべぇ、ここはお宝の山だぜ!!

「ディファイぃ~~暇だよ。早く帰ろうよ~」

テンションが上がり過ぎて気付かなかったがベルが頭の上から小声で泣きついてきた。時間を見て見ると結構な時間が経っていた。アレだな、ベルの状態は俺も経験した事がある状態だよコレは。子供の頃母さんが俺の服を買う為に俺を連れて服屋に行った時の状態だよコレ……
流石に2時間はしんどかったのかな?寝てても良かったのに。

「夫の趣味を知り、理解するのが夫婦円満のコツって母さんが言ってたから……」

小さな子犬が円らな瞳で俺を見てくる。
というか何故そこまで俺の評価が高いのか気になるんですけど?
…よし如何に種族の壁を超える事が難しいかを説明しなければならないようだ。大体一応貴族の嫡男だから子供は欲しいんだよね……
龍と人間でどうやって子供を作れと?コウノトリさんに頼むしかねぇだろJK。
まぁ別にベルが嫌いな訳じゃないし、その辺がなく一緒にいるだけでいいなら全然いいんだけどね。というか好かれているのに自分から遠ざけるのは俺にはムリなんだよ。
そんな事を考えているとアザラーク君の携帯が鳴った。

「何用だ?……何?キメラだと?」

何か色々巻き込まれそうな予感がするのは何故?


追記分


電話の内容はどうやらお仕事の話らしく、先程話していて分かったのだが何でもこの国の騎士団に所属しているのだとかでマナ魔法もバッチリ使えるらしい。
因みにこの国において、というかこの世界において全てのエネルギーの源はマナである。そしてそれは生き物なら誰にでも持っているものである。持っている量の大小はあるが、蟻にしたって雑草にだってマナはある。その中でも一番マナの保有量が多いのが人間や神聖な生物だと言われている。コレは未だによく分かっていないが、仮説として思考や感情を持つ生物にマナが呼応するのではないかとか遺伝的にマナが受け継がれるとか言われている。まぁ詳しい話は良く分からんからなんとも言えない。

そしてマナはどんなエネルギーにも変換できる。例えば属性等に変換するのはどこの国でも多いし基本である。氷、雷、風、火、土等が有名なところであろう。
しかしマナはその多様性から国々によって発達の仕方が大きく違うのだ。

マクノイスでは身体から離れたマナを研究しているのでマナの発動を封じる魔法やより効率よくマナを使う為の魔法陣などの技術が発達している。そして生物を魔法生物とする為の研究もしているらしい。

ワールークではマナが貯蔵できる事に目を付け、個を強化するのではなく軍として強化しており統率力は世界一である。

ギスカーンは人体内部のマナに目を付け、身体能力の向上をさせており、武術の国で有名である。

ヤパーナは武器を身体の一部として使う技をマナを用いてより強化することに成功させ、刀剣術等では右に出る者はいないとされている。

エルムガンド公国は生物にもマナがある事に目を付け、ドラゴンなどのマナの保有量の高い生物を操っており個でみると世界で一番強い騎士団を持っているが、数が少ない。しかしその騎士一人一人のレベルの高さから“眠れる龍”の国と言われている。

そして俺の母国のアルシリアは各国のいいとこ取りをしようとしているけど、あんまり上手くいっていないが一通りはできる人材が豊富である。それが各国でもトップクラスの騎士団と言われる女王騎士団という訳だ。器用貧乏という解釈で良いと思う。
まぁアルシリアは各国からの侵攻を受けやすいというデメリットと共に各国の技術も入ってきやすいというメリットがあるのでこうなったらしい。まぁでもそれでも本当に大事な事は教えてもらえないので独自で研究した結果よく分からん事になって今に至るということらしいのだ。
話はそれたが要は、この国で新たに作った魔法生物であるキメラが、暴れているらしく、その任務の内容的に新人に任せられるものでもないが対処できるであろう他の団員達は他の任務で忙しいらしいので、アザラーク君がこの問題を対処するらしい。

「今日は客人が来ているのだが……そうか父上が。」

電話越しにそう言うアザラーク君に少し残念にそうに見えたけど、仕事なら仕方ないと思ってしまった俺はニートになりたいという気持ちが少し鈍って来ている事に驚きを隠せない。
「ニート王に俺はなる!」と心に誓った事を今全力で否定しているというのか?少しづつ社会の歯車的な思考回路になっているのか?何か嫌だなぁ~

「スマナイな用事ができた。俺が行かなくてはならないようだ。」

「よろしければ私も同行しましょうか?」

「いいのか?」

「別に構いませんよ。」

「ふむ……そうかなら頼もう、よろしく頼む。」

面倒くさいことに巻き込まれたくないのだが、それとは別に趣味が合う人自体とネット以外で通じるのは初めての事だったので協力することにした。
………出てきたお菓子が超高級茶菓子だったり、お茶とかも高いと言われているヤパーナ茶の中でも最高級の“ギョクロ”と言われているもんを飲んだりしたから、後で「何もしてない」とかいちゃもん付けられても困るからという訳ではないよ?
 
 
 
 
そう言う事で現場の魔法研究所に着きました。俺はアザラーク君と一緒に入れば無問題とのことなので、守衛の人にその事を説明してもらうことになった。

「アザラーク様、お待ちしておりました。」

「ああ、ああええあういあ。」

へ?
急に訳の分からない言語を吐きだすアザラーク君に驚いた。
その後の会話は、

「おうあ、おあいおおいうあおおうおうああ。」

「分かりました。ではその御隣の人も御一緒ということですね?」

「おおいうおあお?」

「そこの子犬もですか?危険ですよ?」

「おおあいあい。」

「そうですか?分かりましたではお通りください、くれぐれも気を付けてくださいね。」

何故会話が成立している!?
なんとなく雰囲気では分かるがまったくアザラーク君の言葉が意味不明なんだけど?
雰囲気的には「ああ待たせて悪いな。」「そうだ、隣のコイツらも同行者だ」「この犬もだぞ?」「問題ない」的な順で話しているとは思うけど子音がねぇ……

「うん?どうした。」

いやどうしたもこうしたもないいんですけど!何で今は普通に喋れてんのにあんな言語になってるの?そういう暗号なの?

「アレは暗号か何かですか?」

「ああ~…そう言う事か。いや、あれ緊張すると思った通りの言葉が出ないんだよ。恥ずかしながらね。」

何じゃそりゃあ!?言語障害なんて目じゃねぇぞ?
俺もそれなりに言葉は伝えるのは苦手だけどあんな事にはならないぞ!?
しかし騎士の人も何故それで理解できるんだろうか?テレパシー的な何かを送っているのかな?
まぁいいや考えたら考えた分だけ損しそうな気がしてならないからどうでもいいや。
内心全然そんな事思っていないのだが「それなら仕方ないですね。」と言って、さっさと問題を片づけようと心に誓う俺であった。
 
 
 
 
 
 
道中にそんなことがあったが破壊されまくっている大きな部屋までアザラーク君に案内されると、そこには5~6メートルぐらいのデカイライオンに羽が生えたような怪物がそこにいた。
そう、この怪物こそが、魔獣“イービルキメラ”マクノイスでも有名なキメラである。その姿から名づけられた名前は恐ろしい程の威圧感を放っている。しかし生来からくる性格はおとなしいのだが、一度怒ると凄まじい力とマナで相手を撃退してくる。
一般人には到底どうにもできない怪物なのだ。しかしながら下級クラスの騎士なら数人で十分対処できるレベルなのでそこまで問題ないのだが、

「何だかただ腹減って怒っているだけっぽいな。」

イ―ビルキメラを見ると腹が減りすぎてダダこねている子供のようにしか見えなかった。ていうか実際スーパーとかで子供が
「このおもちゃ買って買って!!」
とかいう感じで地べたに仰向けになりながら暴れている姿と同じような姿で暴れているのだ。
まぁイ―ビルキメラがそれをやるとスカジャン着てそうな人がダダこねている感じですっげぇ怖いんだけどね。
主食は電気。しかし最近は研究所が電気をどこまで無い状態で生きられるかを研究していたらしく、お腹が空きすぎて暴れているらしい。
それならさっさと電気渡せよとかおもっていたのだが、マナを電気に変換する装置がイ―ビルキメラが暴れたせいで壊れてしまったらしく、仕方なく応援を要請したとのこと。
マナを直接エネルギーとして変換できないイ―ビルキメラは電気をマナに変換しているらしい。詳しい話は専門家に聞かないと分からんから何ともいえないけど、普通の生物は食事と睡眠等で自分のマナを精製している。マナは直接エネルギーとして吸収できないのだが偶に例外的にできる奴がいる。例えるなら魔黒装をつかう奴だ。マナを食糧と認識することによって可能になったとかイウェンが言ってたけど、その辺の詳しい話は分からん。何故ならマナの研究は各国日々されているがまだまだ全てを解明できていないのだ。その不思議エネルギーの事を俺が全て説明できる訳がないだろ?
因みにイ―ビルキメラは電気を食糧としているので、少し特別な枠に入るが例外にはならないらしい。まぁ食糧をマナに変えているのが普通な訳だからそうだろう。

「ガルルル……」

イ―ビルキメラは今暴れるのを止めているが、目がラリっているので相当に頭がおかしくなっているのだろう。このまま暴れて外に出られたら被害も半端なさそうだからな、まぁ今アザラーク君しかいないし、面倒くさい事をさっさと終わらせてまた遊びたいので技を使わせてもらいますか。

「すいません、ちょっと作戦があるのですが。」

「うん?」

「私は雷属性のマナを使えるので、少しの間アイツの動きを止めて貰えませんか?」

「別に構わないが、私も雷属性のマナ魔法ぐらいは使えるぞ?」

「役割分担した方が早く終わるでしょう?」

「………ふむ、確かに一理あるな。ならそれで行くか。」

と言う事で作戦実行ということになりました。

「大気に存在せし大いなるマナよ、我が手となり彼の者を縛りつけよ。“フィジカル・ディバインド”!!」

普通に詠唱できているアザラーク君、詠唱は別ということなんだろうか?まぁ俺しか今いないから分からないけど。
そのアザラーク君の完璧なマナ魔法でイ―ビルキメラは見えない何かの力で拘束されている。
ここまで完璧なマナ魔法はイウェンのおっさんでも無理だろう。あの人のマナ魔法も中々に凄いんだがそれよりも上を行くレベルだ。才能の塊だねこりゃ。そりゃあ1人で依頼任せられる訳だわ。なら俺もさっさと終わらせますか。

「ありがとうございます、ではこれで終わりにしましょうか。『種族ベルキュロス、名をバオウ、その契約により稲妻の力を我に力を貸し与えよ“ボルトセイバー”!!』」

電撃を帯びた剣で切りつける訳にはいかないので、軽く当てる。
そしてビリビリと感電するイ―ビルキメラ。
どうにもこの前戦ったドラゴンのおかげで技のレベルが少し上がっているっぽい。経験値美味しいですってことらしいね。

「ガ~ルル~ル~~~~♪」

そして気持ちよさそうに鳴き声をあげるイ―ビルキメラ。すっかり満足したらしくオレに向かって尻尾を振ってきている。しかもペロペロ舐められてるし、なんというか懐かれたっぽい。

「ふぅ、これでしばらくは大丈夫だと思いますよ。しっかり餌さえあげてれば大人しくしているらしいので。」

ベル曰く、
「『電気さえ貰えばきっちり仕事するぜ?その代わり貰えなければ暴れてしまうけどな!!』って言ってたよ。コラ!私以外がディファイを舐めちゃダメ!」
との事なので大丈夫だろう。
そしてベルお前はまたペロペロするつもりだったのかい?犬の時ならいいけど龍の時はだめだからね?
まぁ今回は精霊剣のレベルが上がったおかげでなんとかなった。恥ずかしい名前の精霊剣のおかげだ。
因みに契約なしで使う“ボルトセイバー”と契約した“ボルトセイバー”だと契約した方が断然に威力が高い。これは契約した生物のマナを借りる事が可能だからと言われている。
契約しないでも精霊剣は使える。まぁ人によって大なり小なりの努力と才能がいるけど。
因みに俺は契約しちゃったので契約しなくても使えるかどうかは契約を破棄するまで分からない。まぁ俺の場合は契約したにも関わらず俺自身のマナの総量が少ないので詠唱破棄すると途端に“プチボルトセイバー”になってしまうので未だに詠唱しているけどね。
契約に関してはあの龍の訓練中に無理やりされました。龍と仲良くなるとは契約の事なんですよねはい。
しかし、契約するのには結構面倒なのでする人が少ない。ていうか普通の人、ていうか俺みたいな理不尽な理由で契約すること以外はほぼあり得ないと言って良い。
まぁ理由は色々あるんだけど主に契約するデメリットに比べてメリットは少ないから。
威力は確かに高いけど、その分詠唱しないとほぼ意味をなさないし、その間に対処されやすいという理由が一つ。まぁそれだけだと1.2倍の威力も出せるから契約した方が良いと思うだろう。まぁその他にも理由があるんですよ。
次に七大巨龍しか契約できないらしい。らしいというのはバオウさんが言ってた話では契約そのもの自体はどの種族でもできるらしいのだがそれを知っていて尚且つ契約可能なマナを持つのが七大巨龍なのだとか、七大巨龍といっても普通知られているのは六大巨龍だけどね。
『マナの量で言うならアルシリアの女王ぐらいなら行けそうな気もするけどね。結局龍の涙が必需品だから無理だと思うわ。』
とバオウさんが言ってたから間違いないと思う。
因みに巨龍自体の絶対数が少ないので契約できる人も少ないとかなんとか。しかし探し出すメリットもあるのも事実。
しかし最後の契約すること自体がデメリットの塊なのだ。
まず契約する生物に認められること。これは生物の出す試練を乗り越えないと契約者に認められない。生物とは言ったが同種の種族とは契約できない決まりがあるらしく、人なら人と、龍なら龍とは契約できない。しかし、ドラゴンに関しては同種族以外なら契約できるので龍と竜なら契約可能だ。だが、基本的にドラゴンは他種族とは仲が悪く契約しない。サイスさんとバオウさんは変わり者なのです。
因みに巨龍は単独で子供を産む事が可能らしいよ?分裂とかじゃなくて良かったけどビックリした。
自身こそが最強の遺伝子だと思っているからこその単一生殖なのだとか。
まぁ話が面倒なので全部は話さないけどとりあえず七大巨龍というか巨竜王種はオカマとかオナベとかオコゲとかでもない、凄い生物なのだ。

 
次にマナの性質一致。マナの属性は遺伝やら育った環境により培われる。その属性のマナに対して一致する種族の生物でないと契約できない。風の精霊剣を使えるように契約するなら風のマナを使える生物でないと何の意味もないということだ。
そして最後、この最後が非常にやっかいなので現時点では契約対象者は俺を含めて歴代で百数人しかいないらしい。サイスさんとバオウさんが契約したのは俺が2人目とのこと。
これは極めて少ない。なんせ契約の概念ができてから数千年の間で百数人しかいないのだから少ないてか少なすぎる。そしてその内容とは『31日以内に999回契約した生物のマナを貰うこと。』である
これが簡単だと思った人も多いはずだが、実際問題これのせいで人間の契約者は現段階で世界でも数人以下と言われている。ていうか俺しかいないかも知れないとかなんとかサイスさんが言ってた。
まぁこれは簡単に言った場合というか詐欺紛いの情報です。超高校級の詐欺師も真っ青なレベルで。
俺も最初は「そんなんでいいなら契約します。」とか言ってしまったのですわ。
そして本当の条件は
“30日以内に契約する性質のマナを自分の身体に999回その性質のマナを与えて貰うこと”なのだ。
つまりその属性のマナを自分の身体で受け止めろってことらしい。雷属性なら電撃攻撃を風属性ならかまいたち攻撃を1日に33回受け続けなければならない。死ぬか生きるか微妙なラインで。俺の場合は2属性なので1日66回。多すぎても少なすぎてもダメらしくきっちり1日33×2回で31日の合計999×2回らしい。最後の一日は9×2回だけどね。それでもやべぇよ?
正直に言おうか?
アレはただの拷問だ。訓練=契約できるまでという図式だったらしく激しく死にかけた。いや実際何回か死んだんじゃねぇの俺?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

『大気に覆いし揺れる雷よ……詠唱面倒くさい、落雷!』

「おっぺぴぎぃぃ!!」

『全くこれしきの事で心臓が止まるとはのう、情けない。焦げ臭いし。』

『あらあら血が出すぎちゃったみたいにねぇ?ショック死かしら、ビクンビクンしてるわよ?焦げ臭いし。』

「や、やりすぎじゃない?焦げ臭いけど。」

『大丈夫じゃよ。龍の涙さえあれば死にはしないかあらのぉ。心配症じゃのベルは。』

『そうよ、まぁ後30秒以上に与えなけらば確実に死んじゃうけど大丈夫よ男の子だもん。』

「ええぇぇ!?早くあげないとダメじゃん!ていうか精神的に死ぬんじゃないの!?」

『大丈夫、大丈夫一応加減して……あっ、心臓止まってない?』

「えええぇぇ!?殺すような加減はダメだよ!!」
 
 
 
 

うっすら記憶に残っている光景がこれだったような気がするんだけど……
……うん、たぶん俺の記憶違いだよね。そういや2日目の時やたらとバオウさんが焦ってたような気もするし、両頬の傷もあの時に出来た傷だったな。雷撃?かまいたち?
ナニソレオイシイノ?
そして生き地獄の一ヶ月は俺の契約しますという言葉尻を捕えられて始まった。

「おっぺぎぃぃ!!」
「はにゃあ~ん。」
「あべし!!」
「ち~ば~!!」
「俺を殺しても第2、第3の俺が…」
「殺せよ!いっそ殺せよ!!」
「我生涯に一片の悔いなし!」

最初の1週間はこんな感じで意識を失くした。そして龍の涙をぶっかけられて意識を取り戻してまた攻撃されるという繰り返しの日々だった。避けるのもダメ、身構えて防御するのもダメ。ダメダメづくしで嫌になるよね~
……いや俺も途中で止めようとしたんだよ?流石に当初の目的と違うというか俺のニートの夢を叶える前に死ぬとか何の冗談だよとか思ったよ?しかも慣れたら慣れた分だけ気絶しなくなるから痛くなるという拷問だから当たり前じゃん。
でもバオウさん曰く、『一応決まりだから死ぬか生きるしか選択肢ないぞ?』とのことだった。
もう仕方ないんだから。
 
 
 
 
 
 

………と言うとでも思ったかクソ野郎、つうかクソドラゴ~~~~~~~~~~~ン!!!!
これにくらべりゃ魔黒騎士の訓練なんて小学校の組体操だっつの、女王騎士試験なんて幼稚園の御遊戯だっつうううの!!ボケがぁぁぁ!!!!!
と全力で叫びたかったあの頃の俺は間違っていない。
でも最後の方は

「神様助けてくれ。」
「こんなじゃ逝けねぇじゃねぇ~かよ!」
「いかれてる。皆いかれてるよ~」
「死に申したぁぁ!!」
「死がペカったか。」
「俺の歌を聞けぇ!!」
とか若干ふざけるくらいの余裕もあった。しかしもう2度と思いだしたくもない。正しく生き地獄を味わったのだから。まぁこの頃にはレベル的に最強クラスの根性というか精神力をゲットしていたと思います。カンストしたんじゃないの?と思うくらいには。
因みにベルに「最初もおかしいけど最後の方は完全におかしいよね。」と言われた。
いや本当に慣れって怖いよね。
因みにこれ以外にも契約方法がある事にはあるらしいのだが、それはほとんどあり得ないので除外する。だって契約生物との間でできた子供は契約対象とか普通にあり得ないじゃん?
だからこそ人間での契約対象はここまで少ないらしい。
話は逸れたがまぁこれで終わった事だし、すっかり日も暮れたので宿を探すとしますか。
その事を告げようとアザラーク君に話しかけようとすると、研究所の傭兵の人が先にアザラーク君に話しかけていた。

「お疲れ様でした。アザラーク皇子。私共ではああも簡単にはいかなかったでしょう。」

「いいううあ。ああ、おんあいあおいうおおあええおあうあああ。」

「それもそうですね。それにしてもこの方は一体誰です?」

「あああ?ああおんあいあいあおう。」

「アザラーク様がそう言うなら構わないですけど……今後はこんな事がないように以後気を付ける次第です。」

会話を聞いている内に冷や汗がダラダラ、脇汗でぐしょぐしょになった。灰色のTシャツならヤバかったが黒いのでモ―マンタイ。心の中はもう無理たい。
アザラーク“皇子”だと?
マクノイス皇国史上で最も華麗なマナ魔法を使う皇子と言われているあのアザラーク皇子だと!?
驚きながらも何とか表情に出さずに何時にも増して仏頂面を醸して誤魔化しながらも内心では不法侵入がバレルのではないかとビビりまくりです。
いかに逃げるかを頭を超フル回転させながら、やっぱりベル?と思っていると馬の声が聞こえた。羽が生えた馬の馬車が俺達の前に降りたのだ。
そしてその中から美人な女の子が降りてきた。
何か見た事があるようなっていうか確実に見た事がある顔の人である。
極秘扱いの情報の中で顔写真や写真やらは民衆に曝け出すからか普通に出回っていたあの写真。俺がネカフェで色々してた時についでに調べた皇族の写真で見た人だった。

「お兄様お疲れ様です。お父様から言われて来たのですが問題なさそうですね。」

ミサ皇女!?
ネットでしか見た事しかないが本物は美人だな……じゃなくて、うわぁコイツは予想外だぞ、てか俺皇族に高確率で遭遇しすぎだろ。アザラーク皇子に至っては公の場での露出が非常に少なく、その代わりにミサ皇女がたくさん出ているので各国の王族やその側近の騎士達ぐらいしか顔を知らない皇子様がこんなところにいるとは……
名前で分かれよって言うかもしれないが、それは無理なお話だ。毎年子供に付ける流行りの名前ってあるよね?有名人の名前を自分の子供に付けようとするやつ。
マクノイス魔法皇国は皇族の名前を付けてはイケないとかいう決まりはないので結構な多さでアザラークとミサという名前が多い。アザラーク君とミサ皇女の命名された年の子供になるとアザラ―ブとかミサリィとかのややこしい名前を含め人口の1.3割を超えるとかなんとか。まぁ昔で言う太郎とかその辺の名前ってわけ。もしくはジョンとも言う、丞太郎では断じてないのです。

あはははこりゃあ無理ゲーだわ。さっさと逃げた方が良さそうだわ、今後の為には捕まった方がいいのかもしれないけど目先の事に走る俺にはムリなお話なので。

「ベル、ジンギスカン喰いに行こう。」

「えええ!?早くない、今日は宿にも泊まらないの?」

「犬が喋ったぁぁぁぁぁぁ!?」

「いやミサ、猫も喋る地域があるらしいから別におかしくはないぞ?」

さっさとトンズラをする為に予め決めていた逃走するよ?という隠語を使う俺に、意味が分かってるのか分かっていないのかすら判断できないベル。そしてパ二クるミサ皇女に至って冷静なアザラーク皇子。
割とカオスだ。

「割と本気でお願いします。」

「仕方ないなぁ~もうディファイは私がいないとダメなんだから~~~」

俺がそう頼むと凄く上機嫌な声を出す。
何か勘違いしてない?いや確かにベルがいるといないとでは凄く効率変わってくるのは確かだけどさ。
そんな事を考えている内にベルは子犬化を解除しドラゴンの姿に戻る。

「な、な、な……」

「“龍獅子”!?まさか『黄金の龍と漆黒の騎士』!?」

流石にアザラーク皇子も驚いたのか、それ以上の言葉はなかったので。こちらとしても助かる次第だ。

「また逢いましょう、そして決着はその時まで取っておきましょう。」

とりあえず去り際のフラグを残すのは忘れない。
因みにこのフラグは「言った方がその相手と戦う前に負ける。」というフラグ。
まぁカッコつけてみたかっただけの話しだから気にしないでねフラグさん・
さぁ、行くんだベル、風の如く!魔黒の騎士だからバレルとやばいよ!?
ベルの背に乗り耳元で呟く、こそばゆそうな顔をしているけど緊急なので仕方ない。
何故逃げるか?
ふっ……密入国って結構な罰金と懲役喰らうんだぜ?

「『風の如く』って音速って意味?了解。」

いや、そういう意味じゃないんだよ!?
ベ、ベルさん?お~い、ベルさ~ん?聞いてますか?

「お腹も空いたし取りあえず美味しそうな木が生えてるとこまで本気で行くね~」

……結局はブラックアウトになるのがオチなんですね、分かりますが納得はできません!!
次はどこに行くんだっけ?確かジンギスカン食べに行くんだったかな?
そう思いながら意識は暗転していくのだった。

あとがき
と言う事で不思議王子さんでした。
久しぶりの投稿なんでsage投稿ということです。
約1年ぶりの更新ですね。色々忙しい時期なのとネタが思いつかないのとでめちゃくちゃ遅くなりました。
まぁ何年かかるかは分かりませんが完結させますのでこんな作者ですがお願いします。
因みにプロット通りだと40話までには完結です。
感想返しは勘違いsideと一緒に1週間以内に投稿予定。誤字脱字訂正と、1話からやり直そうとか思って力尽きたのも良い思い出です。




[18999] 21話裏
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:09939ee5
Date: 2016/03/18 17:55
私、ミザ=マクノイスの兄であるアザラーク兄様は口下手である。
どれぐらい口下手なのかと言うと親しい人間や本当に心を許した人間でないと会話が出来ないくらい口下手だ。
口下手というのがお兄様の代名詞と言っても過言ではない。
そんなお兄様のことを私は決して嫌いという訳ではない。
お兄様は魔法に関して言えばこの国の誰よりも詳しいと言える知識の量を持っているし、魔法の実力も皇子であることを抜きにしてマクノイス始まって以来の天才だと言われるくらい凄い兄を嫌いになろう理由がないからだ。

――しかし、しかしだ。

「ミサ、どうした顔色が優れないようだが?」

「あ、アザラーク皇子!ここにいらしたのですか、実は折り入ってご相談があるのですがよろしいでしょうか?」

「あんあ、いっえいお」(何だ、言ってみろ)

何で部下にまで口下手になるんですか!
いくらなんでも人見知りが過ぎませんか?

「実はですね、王直々に話があるそうなのでお連れしてこいとのことなんですが……」

「ああっあ、いあいうおうあええうえ」(分かった、今行くと伝えてくれ)

「分かりました」

そしてこんな母音だらけの言葉を解読するスキルがほぼ全兵士が持っているし……
そこが不満というか何かお兄様と話すのは新しい言語を習得するぐらい難しいみたいな事を言われてないか不安だわ……

まぁ私もそのお兄様語を理解できる時点でアレだとは思うけれど。
因みに魔法を使って言葉を翻訳している訳でもない。慣れで分かるらしいとのこと、いや私が言うのも何だけどそれおかしいよね?



そんな日々が過ぎて行くある日、兵士の方からお兄様と初対面で仲良くなった人がいるという話がありそれが信じられなくて様子を見に来た。

何でも意気投合しているらしくお兄様の大事なコレクションが入ってる倉庫代わりの屋敷に招待までしたとか。
お兄様のコレクション、またの名を『王家の財宝』をまさか初対面の人間に紹介しよう日がくるなんて…

因みにお兄様が勝手に『王家の財宝』って言ってるいるだけでマクロイスの財宝とは無関係なのは言わずもがなである。

我が王家の財宝は金品の類いではなく、書物や魔法具等がとり揃っており、それも凄く扱いにくい魔法具やら解読不能な書物まで存在している。
"宝石の種"と呼ばれる魔法具は願い事を歪んで叶えることができるやら、専門の解読屋が数百通りの解読ができるがそれが全てフェイクと呼ばれる"アンノウンコード"と呼ばれる書物など、歴史的に価値がある物や危険な代物を保管している。

あれ?
これただの危険物倉庫じゃ……

……ゴホン、因みにお兄様は自分で働いたり、ゲームの大会などでコレクションを集めているので本当の意味でお兄様の実力で勝ち取ったコレクションらしい。

私はそのコレクションの屋敷まで行ってみたが何故かお兄様達はいなかった。
メイドに話を聞くとどうやらキメラが暴れているらしくそれを鎮圧する為に出掛けたようだ。
お兄様は普段の様子からは考えられない位の強さを誇るマクノイスの魔法騎士。
キメラごときに遅れを取るなどはあり得ないのでそれは心配していなかったのだが、どうしても早くお兄様と仲よくなった人を見ておきたかったのだ。

――お兄様が騙されている可能性もなくはないし……

そんな心配があったので魔法の馬車を使って移動した時に望遠鏡を使うと、そこで目にしたのは何時もの数十倍は楽しそうなお兄様だった。

「お、お兄様のあんな楽しそうな顔見た事がないわ!写真、写真を撮らないと!」

私は慌ててカメラを探してワールーク制の超高性能カメラで一心不乱にシャッターをきった。

「ふぅ……はっ!とりあえずお兄様のところに行かないと……」


私は地上に降りて、お兄様の隣に立っている黒髪の男を見た。
普通の男の人だな……
オーラというかそれすらも普通であり変な人という事もないだろう、子犬を連れているしなんだかなついてる様子を見ても悪い人には思えないし……

そんな事を思っていると子犬が喋った。
ドラゴン以外の生物は人の言語を理解できたとしても喋れるというのは聞いた事がなかったからとても驚いた。
後からお兄様に聞いたら「ヤパーナでは猫が喋るので別に不思議な事はない」らしい、流石はお兄様博識ですね。
しかしそんなお兄様も子犬がドラゴンになったのは驚いたみたいだ。

「まさか黄金の龍が現れるなんて…」

子犬がドラゴンになっていた事に驚いていた訳じゃなかったみたい……
流石はお兄様そこはお見通しだったのですね!

「お兄様、"龍獅子"ってなんなんです?普通のドラゴンではなさそうでしたけど……」

「"龍獅子"は異名で本当の名前はアルベロス。エルムガンド公告でも伝説と言われるドラゴンだ」

「なるほど……だからお兄様は驚かれたんですね?」

「それもそうだが、アルベロスが人の言うことを聞いていた事に驚きを隠せなかったんだよ。私もまだまだだな」

「え?ドラゴンは人の話が分かる程賢いではないですか、何故驚かれたのです?」

「そうだな、まずはそれを説明するにはこの話をしないといけないな……」

そこでお兄様が私に話したのは黄金の龍の御伽話だった。



昔々、一匹の龍はとある森の深くでずっと一人で遊んでました。
龍は何故一人でここにいるのかいつからここにいるのかも分からないまま一人で遊んでました。

そんなある日、黒い鎧を来た兵士が現れました
すると男は龍に向かって
「一人で遊んでないで僕と一緒に遊ぼうよ」
と言いました。
龍は一人でずっと遊んでたものですから二人での遊び方が分からず困ってしまいました。

「どうやって遊べばいいの?」

すると男は答えました。

「一緒に空を飛んでみようよ!僕は飛べないから背中に乗せてくれない?一緒にいたらきっと楽しいよ!」

龍はモノは試しと男を乗せて空を飛びました。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり、雲の上を飛んだり、虹のはじっこを見つけに行ったりもしました。

すると男はとてもはしゃいで嬉しそうに笑いました。
そんな男の様子をみた龍は自分もなんだか嬉しい気分になりました。

「龍くん凄いね!僕の名前はアルベルト、君の名前は?」

「僕に名前はないんだ、気付いた時からずっとここに一人だったから……」

「じゃあ僕が名前を付けても良いかい?」

「え、いいの!?つけて!つけて!」

龍は自分の名前をくれるという言葉にえらく喜びました。いつも一人だったから本当に嬉しそうです。

「じゃあねぇロスってのはどうかな?」

「ロス?凄くカッコ良い名前だ!やったぁー!!」

ロスとアルベルトは一緒にたくさん遊びました。
どんな時も二人で遊んですっかり仲良しさんになりました。

そんなある日、たくさんの兵隊達が森に現れてアルベルトを探しに来ました。
アルベルトとロスが遊んでいる姿を見られたから来たそうです。

「ロスは隠れてて、僕に用事があるみたいだから行ってくるよ」

「大丈夫?帰ってこれる?」

「うん、約束するね」

そう言ってアルベルトはロスと離れて兵隊達のところに行きました。

それからいつまでも経ってもアルベルトは帰って来ません。
不安に思ったロスはこっそりアルベルトの匂いを辿り、兵隊達のいた国へと入って行きました。

アルベルトの臭いを辿って行くと大きなお城についたので隠れて臭いを辿って行きました。
すると、そこにいたのは動かなくなってしまったアルベルトがいたのです。

「龍を殺せば助けてやると言ったのにバカな男だ」

動かなくなったアルベルトに一人の兵士がそう言いました。

ロスは怒り狂いました。
それは国を燃やし、海を割り、山を砕く程の怒りでその国は滅んでしまいました。

ロスは一週間泣き続けました。
雨の日も嵐の夜もずっとロスの泣き声が響き続けました。
そんな時、神様が現れてロスとアルベルトを一緒にしてくれました。
そんな悲しい悲しいお話です。



「これはアルベロスに関する逸話であるが実際の史実でもあるらしい。
人に取って黄金とは特別な存在である。
その当時、龍の毛皮や牙等はマナを豊富に内包されている為乱獲されていた。
その為黄金の龍の存在は権力者からすれば喉から手が出る程欲しいもの。
権力や地位を誇示する為には必要であったのだろう。

そんな時代、黄金の龍の噂を聞いた一人の騎士が討伐に行ったが帰って来なかった。
その騎士の名前はアルベルト。
その当時は黒い鎧を身につけていた事から"黒獅子"と言われ、最強の騎士と名高かったがドラゴンとの共存を望んでいたとといわれている。

国に忠義はあったのだろうがそれ以上にロスに愛着が湧いたのだろう。
ドラゴンとの共存を望む彼にとっては殺したくないと思うのも仕方ない事だ。

痺れを切らした王が兵隊を遣いにやりアルベルトを連れ帰ったは良いが、どうしてもロスを殺せなかったという。
王はそれならアルベルトの知人を殺していくと脅しをしたのだが、ロスをどうしても裏切れないアルベルトは結果的に自害した。

ロスはそれに怒り狂って国を滅ぼした。
それなりに大きかったこの国は一晩で誰も住めない土地へと変貌してしまったという。

そしてロスはアルベルトの死体を食べてどこかへと行ってしまったらしい。
それがアルベルトとロス、アルベロスと呼ばれるようになった話だよ」

「ぐすん……なんて悲しいお話なんですか!」

龍と人間の友情と人間の愚かさが分かる話ですね。

「だから基本的には人間嫌いなドラゴンという認識なんだけどね……不思議と彼にはなついていたから驚いたんだよ」

「でもお兄様、多分種族が同じでも個体が違うなら人になつくのもあり得る話ではないのですか?」

私は普通に疑問に思った事を言ったのだがお兄様は苦笑いしながらもその疑問に答えてくれた。

「それがアルベロスは前世の記憶を受け継ぐドラゴンってのが定説なんだよ」

「え?前世の記憶をですか?」

そんな事が有り得るのだろうか?

「まぁそういう説があるって話だから本当かどうかは分からないけどね」

でもお兄様がその説を信じているという事はなにか根拠があるのだろう。
だとしたらあの男の人は一体何者なんだろうか?

……それにしてもどんな事も知っているお兄様は流石です!


あとがき
何年振りかの更新でございます。
ひっそりやっていくんですけどね!
このおとぎ話風の話が直ぐにできるだろうと思っていたら案外難しくてここまで時間がかかりましたね。
とりあえず完結したらageで更新しますのでよろしくです。



[18999] 22話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:a6a8c82c
Date: 2017/05/13 19:17

「んで、アルシリアにいる筈のお前が何でこんなとこにいるんだ?」

ギスカーンにやって来て有名なジンギスカン料理店で食べているとジン王子に捕まってしまいました。

いやフラグ回収とか以前の問題ですわ。
ペット同伴で料理を食べれる美味しい店があるって聞いてそこで飯を食べてたら普通に遭遇してしまった。
まぁジン君はちょっとオツムが弱いから何とでもなるだろう。

「いや……美味しい店があると聞いてたんで来ちゃいましたね」

「だろう?ここ俺の経営してる店なんだわ」

やっぱりめちゃチョロいわジン君。でも君王子だからもうちょっと警戒心持ってないとダメだと思うよ?

因みに何でこんなにジン王子ことジン君と俺がフレンドリーなのかと言えば、ギスカーン帝国は実家の仕入れ先で何故か爺さんの代でギスカーン帝国の皇族が厳選した食材を仕入れる事となり、繋がりがあるのだとかで実際にギスカーンに行って食材を食べに行く機会があった時に仲良くなった。
今考えても皇族直々に食材の説明ってやっぱりおかしいと思う。

「コンバートさん元気にしてるか?」

「元気すぎて困っちゃう程には元気だよね」

「いやぁ、お前の祖父のコンバートさんには俺のじいちゃんの代から色々とアドバイスして貰ってるし気になってなぁ」

俺の家系はどうにも皇族との繋がりが出来やすい家系らしい。
自分で言ってて何を訳の解らん事を……と思うが事実なので仕方ない。

爺ちゃん本人曰く、そんなに凄い事をしてる訳ではないらしく、自分の思ってた事と違う認識で相手が勘違いして結果的に爺ちゃんが凄いみたいになるらしい。
その結果が今のジン君と俺がフレンドリーになっているのと繋がっているのだ。

「そう言えば新人騎士大会でしたっけ?アレにジン君出場するらしいじゃないですか!凄いですよね」

「え?何で知ってるんだ?」

本気で驚いてるみたいだが、その事に俺が驚いたわ。

いやだってねぇ?

"ジン王子新人騎士大会出場おめでとう割引"って書いてあるからそれぐらい誰だって分かるよ。

全品20%とオフだから財布に優しいから別に良いんだけどさ。

「ははは……まぁこの店で知ったんですよ本当に凄いですね」

「まぁギスカーンの新人騎士じゃ俺の足下に及ぶ奴がいねーからなぁ当然だけどよ」

自分に自信満々な所は相変わらずだなぁ……

「くぅぅぅーん」

おや?ベルがもうお腹いっぱいで眠たいらしいな。それじゃそろそろお勘定でも払っておいとましますかね。

「ん?お前金払うつもりかよ!?」

財布出す俺を見てジン君は俺の手を握った。

え?どしたの?

「水臭い奴だなぁ、ここは俺の店っつっただろ?んなもん無料で良いに決まってんじゃねーか」

キュン……



は!?

今、俺は男にときめいてたの?いやぁ皇族って怖いわー

「コイツの卓、全部俺持ちで良いからな」

「分かりました。ジン殿下」

「殿下なんて柄じゃねーよ、ジンで良いって」

「流石にそれは不敬ですよ」

「バカ野郎、国民あっての皇族だぞ?敬われる様な事は俺はまだしてねーからな、ただのジンで良いっつってんだよ」

「ジン皇子……」

ヤバい、ジン君の好感度がストップ高なんだが。バカだけど。

「んじゃあゆっくり食べていってくれや!俺は今からエルムガンドに出発なんでな!」

「今からですか?まだ新人大会までは1ヶ月は先ですよね?」

ここから1週間もあれば馬で寝泊まりしながらエルムガンドまでは余裕で到着できる。
ましてや皇族のジン君であれば馬よりももっと良い神獣クラスの騎獣がいてもおかしくないから不思議な話だ。

「何言ってんだよ、ギスカーンの料理をたらふく堪能する為に決まってんだろ!その国によって味の方向性を変えて行かなきゃチェーン店なんざ夢のまた夢だぜ」

「流石ですぜ!ジン皇子」

「俺等の大将はやっぱり漢だねぇ!」

店員の人達やお客さんがジン皇子を称えている。

いやあんた新人騎士大会に出る為に行くんだよね?
チェーン店出す為にエルムガンド行く訳じゃないよね?
やっぱりバカだなジン君は。
でもそういうバカは嫌いじゃないよね俺。

「アルシリアに店を出す時は言って下さいね。微力ながらお手伝いさせてもらいます」

「微力な訳あるかよ頼むぜ兄弟!」

そう言って出された右手を俺は握った。

「何これ?」

小声でベルが呟いたのは仕方ないと思う。
その場のノリって大切なんだよ。
覚えておいて損はないんだよベル?



ギスカーンでは特に何事もなく終わった。
いやまぁジン君に会っている時点で何事もない訳じゃないけどまぁ実に平和に終わったのだ。
実際調査してみた結果もさほど大した事はなかったしね。

残す所はワールークだけなんだけど、別に行かなくても良いと思ってるんだよね。
まぁ仕事だから行った方が良いとは思うんだけどさ必要性がないんだよなぁ……

そんな事を考えながらベルを連れて歩いていると誰かに見られている気配を感じた。

……この気配は間違いない。気配を感じた場所に向かって短剣を投げるとキンッという金属に跳ね返される音が帰ってきた。

「……やはり貴様か、仮面の騎士よ」

そこに現れたのは現在俺達、魔黒騎士と敵対している仮面の騎士。
つまりはジークさんだ。

「……ディファイ、お前が魔黒騎士に堕ちていたとはな」

「ここで会ったが運の尽きよ仮面の騎士、いや裏切り者の憐れな男よ」

「お前を正気に目覚めさせてやる」

「ふ……やれるものならやってみるが良い!」


「「決闘だ!!」」





















「だぁぁぁまた負けたぁ!!」

そう言ってカードを投げ捨てるジークさん、いやカード痛むから大切にしてあげてよスリーブ入れてるとは言えさ。

「いやぁジークさん相変わらずヒーローデッキ好きですよね」

「なんだよ俺が現役でやってた時なんてシンクロがギリギリ出てぐらいだぞ!

ここまでの会話で分かるとは思うが、俺達がやってたのは決闘は決闘でも決闘デュエルの方である。
昔からだけどこの人とは俺と会ったらデュエルしたがる。
それもシチュエーションに滅茶苦茶こだわりがあるらしく、俺が敵役でジークさんが正義の味方じゃないといけないのだ。

俺もどうかとは思うのだが歳上のお兄さんが駄々っ子の様にごねる姿を見てしまって以来ずっとこうなってしまっているのだ。

「あれからエクシーズとかペンデュラムとか色々召喚方法増えましたからねぇ」

リンク召喚?なにそれ美味しいの?

「ペンデュラム?それってデジモンの振る奴の事じゃねーの?」

やっぱり古い人だなぁ……
今の子はデジモンがドット絵だった頃すら知らないんじゃないだろうか?
デジモンワールドは神ゲーってはっきり分かんだかね!

「そにしてもお前も魔黒騎士として潜入調査とか大変な役目だよなぁ」

「まぁそうですね」

確かに潜入調査は凄く面倒臭い限りである。
なんで各国に行った潜入調査なんてしなくちゃならんのだ。
俺はあくまで数年ニートとして暮らしたいだけなのに……

「そういや女の仮面騎士様は一緒じゃなかったんですか?」

いつも一緒に行動している方が見当たらないのでそうジークさんに聞いてみた。

「各国の不穏要素を調査してるぐらいだし今回は別行動だな」

まぁあの方は正直護られる様な器じゃないぐらいには本来強いからなぁ……

「で何か不安要素とかあったんですか?」

何気なく軽い気持ちで聞いたのだがジークさんは急に真面目な顔になった。
え、まさか不安要素あったの?

「ディファイ、ワールークの事は知っているな?」

「……はい」

「こればっかりは俺達でも流石にどうする事が出来ない事案だ、色々と暴動が起きそうになっている」

「え!?まさか……」

「そうだ……リンク召喚ってのが出て来てカードの価値が暴落しているらしい」

そっちかーい!
いやワールークと言えば機械で有名だけどカードゲームの聖地でもあるのだ。
だからネットでワールークの事は大抵分かるし、なんかネット知り合いのバル君ってのがワールークの内情に詳しいから別に行かなくても良いと思っている訳なのだ。

なんだよシリアスになるかと思ってちょっとビビったじゃんよ。

「あ、そうそうディファイは知ってると思うけど」

ん?他に何かあったけ?
リンク召喚以外は特に問題はなかっと思うけど……

「近々、世界大戦が起きるぞ」

……そんな話は聞きたくなかったでござる。


正義の味方(仮)side

伝えるべき事は伝えてディファイと別れた。

久し振りに会ったというのにディファイはまるで変わってはいなかった。
流石に魔黒騎士になったという話を聞いて驚いたが、アイツは恐らく女王騎士にそのままなった場合は魔黒騎士の動向が掴めないというのを計算したのだろう。

やはりギルバードさんの血筋だな慧眼っていうのか?そこがズバ抜けている。

それにしても魔黒騎士内部の潜入調査なんて骨が折れる事をよくやれるな年下を尊敬するなんて思ってもみなかったぜ。

シェリーの事にしてみてもルカの事にしてみても今に思えば計算通りだったのか?

もしディファイが試験を受けていなかったと思うと考えてみるだけでも恐ろしい。

あの時にシェリーが無事だと言うことをルカが知らなければその責任でルカは闇に堕ちていた可能性は充分に考えられるし、そのまま魔黒騎士になっていた可能性すらある。
しかしそうはならなかった。

あの時にディファイがいたからだ。
不思議な話だがディファイがいなければ色々と不都合になる場面も多かったのは間違いない。
いて欲しい時に何処からか現れる。
そんな奴なんだディファイという男は。
まるで俺の目指している正義の味方そのものだ。

年下に負けていると思うと少しばかり悔しいと思ってしまうのは俺がまだ不甲斐ないからだと思う。

だから下らないとは分かっているが遊びでディファイに悪役をやって貰って自尊心を護ってる所がある。

アイツが本気で嫌がってるなら辞めようと思っているのだが、結構ノリノリでやってくれる。

案外そういう事も好きらしい、ルカはこういうノリが分からないからなぁ……
デュエルとかも全く興味を示してくれなかったし……

まぁルカはルカで真面目だしピュアだから仕方ないんだが尊敬だけの眼差しを向けてくるのは正直嬉しい反面、息抜きが出来ない。

立派な兄だという姿を見せてやりたくなるのが兄貴という生き物だから仕方ないんだよ……

別に嫌いという訳ではなくむしろ好きだからこそという部分が強いんだよなぁ……

さてそんな弟が平和で暮らせる為に今日も魔黒騎士の拠点を潰すとしますかね。
近々起こる大戦の為にも戦力は削っておかないと行けないし、何よりディファイに負けない正義の味方になるためにもな!



[18999] 23話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:a6a8c82c
Date: 2017/05/13 19:18
「うっひゃぁードラゴンがいっぱいだ!」

ゆらりと揺れる馬車の中でエルトは興奮していた。
エルムガンドに初めて来たというかアルシリア以外の国自体に初めて訪れ外国というものに興奮しているらしい。
いや、それよりも男としドラゴンに憧れない者はいないからそこに興奮しているようだ。

「うふふ……そうですねこのエルムガンド公国は別名『龍の国』と呼ばれていますから」

口に手を当てながら微笑むアルマは王族らしく気品に溢れている。
そんな彼女の姿にエルトは顔を赤くした。
彼等がなぜエルムガンドにいるのかと言えば話を少し遡らならければならない。



女王騎士試験になんとか合格したエルトであったがディファイやカルマを助けられなかった不甲斐なさを感じた為に訓練を積んだ。
もう二度と自分の前で仲間を失いたくないという想いを胸に秘めて。


とそこまで言えば凄くカッコ良いのだが、このエルトという男はずっとシリアスが続かないのである。
確かに助けられなかった自分を責めてはいるが、まだ彼等が死んだと決まっていない以上ある程度の自分の為に遊んだりもするし、相変わらずアルマ姫の事になると暴走する部分があったりする。

勿論、彼等を探してはいるが手掛かりが全くと言っていいほど掴めないのだ。

時折脳裏そのせいで後悔の念が生じて無茶苦茶に訓練している所がルカとイージスに見られた事により少し勘違いされてる部分もあるようだが三つ子の魂百までと言われる様にこの男の根本的な部分はあまり変化はしていなかった。

それはそれとして、彼等の事はまるで誰かが意図的に隠しているかのように見つからなかった。

当のエルト本人はそんな事には気付きもしていないのだが……

そんな日々の中で魔黒騎士と言われる謎の敵との交戦があったり、聖霊剣を会得したり仲間との中を深めたりと色々あったが姫との仲はあまり進展しなかったと本人は思っている。
だが、本人の知らぬ所で好感度は上げており従騎士、いや男性として少し意識されているのだが……残念な事に気付いていない。

まぁ結果として従騎士の中ではムードメーカーでありながら世界新人騎士大会に出るための新人女王騎士内のトーナメントで優勝してここにいるのでエルト本人の成長には良かったのだろう。
本人の目標にも確実に近付いているのだから。



「あはは、お恥ずかしい所をお見せしました」

まるで借りてきた猫の様ではあるが好きな人の前ではそうなってしまうのは道理である。

「うふふ、初めてのエルムガンドですもの仕方ないですよ。私もここに初めて来た時は同じ反応しましたもの」

(姫様と同じ……)

こんな会話が普通に出来るようになっただけ成長したとも言えるのだろう。

そんな時に外から叫び声が聞こえた。

「うわぁぁドラゴンが暴れてんぞぉ!」

その声を聞いて直ぐ様エルトは馬車から飛び降りた。
そして周囲を確認すると叫び声の通りに龍が暴れてそのままこっちに向かって突っ込んで来たのだ。

「おい兄ちゃん危ねーぞ!」

その声を聞いて聞かずかエルトは|首にぶら下げていた|忠誠の十字架《クイーンクロス》にマナを込めた。

「うん、これくらいなら大丈夫だろ」

誰に言った訳でもない一人言だったがその言葉には自信に満ち溢れていた。

「ロングウイップ!」

龍が突っ込んで来ると同時にエルトは忠誠の十字架を長い鞭へと変化させ一瞬にして捕縛したのだった。

|王《ワン》=|道《タオ》隊長が得意とする万里剣と言われる技の応用である。
忠誠の十字架はマナを込めるとその所有者の求める姿に変化が可能である優れものだ。
例を出せば剣、槍、弓、手裏剣の様な物にでも変化出来る。
そして込めたマナに応じて大きさも変化可能なのだ。

「いやはやお見事ですね、流石は女王騎士と言った所ですか」

その言葉を発した人物の方向を見ると龍に乗っている人物が一人。
その人物の後ろには数匹の龍が捕縛されていた。

「すいません、先ずは謝罪からさせて頂きます。この度は私達が逃がしてしまった龍を街に被害なく捕まえて頂きありがとうございます」

そう発言した男の顔は毅然たる姿に気品も兼ね揃えていた。

「リューガ皇子が謝る必要なんかありませんよ!私の不注意でまだ人間に馴れてない龍を逃がしてしまったのを捕まえて頂いたんですから!」

「いえ、私が取りこぼしてしまった結果がコレです。謝罪しない訳にはいきませんよ」

話を聞く限りで言えばよく出来た人間なのであろう事が伺える。

「いえ別にこっちも被害なかったんで構いませんよリューガ殿下」

そう返したのはアルマ姫側近の女王騎士であるロイヤルガードのルドルフである。
巨漢で髭面であるので厳つさが滲み出ているが、

「そう言って頂けると助かります」

「リューガ皇子?お久しぶりですね!」

待ちくたびれたのかアルマ姫が馬車から降りるとリューガと呼ばれた男へと近付いて行った。

「お久しぶりですアルマ姫」

そしてリューガは近付いたアルマ姫の右手へと口付けをしたのだった。

(何と羨ましけしからん事をぉぉぉぉ!?っていうか知り合いだとぉぉぉ!?)

エルトは人生で一番焦っていた。
女王騎士試験でもこんなに焦る事はなかったのに……
そんな彼が何故焦っているかと言えば皇子と言われる相手に花の咲いた様な笑顔を向ける姫様に焦りを感じているからに他ならない。

「はっはっは!いやぁお似合いですなぁ」

「もうルドルフ!リューガ皇子に失礼ですよ!」

「いやいや麗しきアルマ姫とお似合いとは嬉しい限りですよ」

そんな社交辞令としか思えない会話ですら今のエルトのからしたら動揺させるに十分に値する。

(ぐぬぬぬぬ……お似合いだぁ!?そんな事俺が許す訳ねーだろう!)

物事を冷静に考えられる事すらできない。恋は盲目とは昔の人は上手く言った物だ。

(でも……もしアルマ姫がコイツの事が好きなら俺は……)

そして盲目だからこその迷いがエルトに生じていた。



新人大会が始まるまであと2週間程はあるが、皇族が全員揃ったという事で顔合わせを兼ねたパーティーが行われる事になった。
エルトは皇族ではなかったが、出場騎士として参加できる事になり姫の護衛も兼ねて参加していた。

「いやぁ久しぶりだなぁアルマ!ほれ肉でも食うか?」

「相変わらずですね、ジン皇子」


「アルマー!久しぶりなのじゃ!」

「キャッ!……もう!サクヤ様急に抱きつかないで下さい」


「ふむ、息災の様で何よりだな」

「バルトハルト殿下もお元気そうで何よりです」


「おいあいういえう。ああおあいえいえおうえいえう、アルマ姫」

「お久しぶりです。またお会いでき光栄です。アルマ姫と兄上は申しております」

「アハハハ、アザラーク皇子もミサ皇女もお久しぶりです」

そしてアルマ姫は色々な同世代の皇族に絡まれていた。

「何かウチの姫って慕われてますね」

エルトはその様子を見て喜ばしく思った。自分の国の姫様が慕われているのは当然嬉しい。

「嬉しい限りじゃねーか、まぁ俺等の爺さん位の世代じゃ仲が悪かったりするが親父の世代からは友好的になってるな」

「そうなんですか?」

「ん?そういやお前は田舎から来たんだったな、詳しくなくて当然か……よしこの際だ説明してやろう」

エルトは武力に関して言うならば従騎士レベルでもトップクラスであるのだが、訳あって世間知らずな部分があり国内国外問わず情勢については詳しくないのだ。

「まずは現在同盟を組んでいるアルシリア王国、エルムガンド公国、ヤーパナ、ワールーク帝国、マクロイス魔法皇国、ギスカーン帝国の6大国で新人騎士大会をするのはお前も知っての通りだな」

「そうっすね」

「でだ、その国同士が同盟を組むまでは国家間で戦争がよく起こっていた訳なんだよ」

「戦争……」

「そこに喉から手が出る位に欲しい資源があれば戦争が起こるのは仕方ねぇ納得はできねぇがな。
そこで言えば地理的にアルシリア王国ってのは他の5国を行き来する際に一番重要な土地なんだから当然ちゃ当然だけどな」

アルシリアという国は極めて危険な場所で国として成りったっていると言っても過言ではない。
何故なら他の国に囲まれており、国境には女王騎士達が何名か配置されているとはいえ厳しいのには代わりないのだから。

「まぁ今はお前も知っての通りアルテリーナ陛下の行方不明っていう機密があるんだが、実際にこれが他国にバレでもしたら普通は非常に不味いんだが……実はボルト家のおかげで暫くは安泰なんだわ」

「ボルト家っすか?」

「ん?いくらバカのお前でも知ってると思ってたんだが」

「バカとは失礼な!まぁ確かにあんまり詳しくないっすけど……


口を尖らせて怒る姿は子供にしか見えない。実際にまだ20歳も過ぎてない子供なのだ。

「はははは!まぁそう怒るな、でもホテル経営で有名なのは流石のお前でも知ってるだろ?」

「女王騎士御用達のホテルって有名だよな!いやー近くで生の女王騎士に会えるとか興奮したぜ!」

普段の慣れない敬語を頑張って使っているが時折、興奮するといつもの言葉使いに戻ってしまう。
そんな姿に心を緩ませながらテーオバルトは続ける。

「歴史的にも100年以上続いてるらしい由緒正しいホテルなんだが……そこのホテルってお前も泊まった事があるって言っただろ?なら何か気付かないか?」

「え?いや普通にすげぇ便利なホテルだなぁって思ってた位だけど……」

「何がどう便利だったか覚えてるか?」

「んーと、まず産地がギスカーンの野菜と肉のうめぇ料理が注文して直ぐに食べれたり、マクノイスの最新技術の格ゲーができたりがビデオ?とかで女王騎士の式典の様子が見えたり、ワールークでしか手に入らない筈のカードパックが買えたりとか、そんな感じかなぁ」

「目の付くとこがお前らしいな……そして、それがそのままボルト家の凄さに繋がる訳だ」

「え?」

「考えてもみろよ、ワールークでしか買えない物が何でそこのホテルで買えれる?マクロイスの最新技術が詰まったゲームなんて高度な魔術の術式が詰まってる。そんなものがアルリシアっていう他国で何で出来る?ギスカーンにしたって産地直送とかそうできない。ビデオってもワールーク帝国から借り受けたもんだって聞いたぜ?」

「それって普通に凄いよな?」

「普通じゃねえよ異常だよ。アルシリア王国ですら知らねぇ情報も扱ってるし輸送ルートも確保してるってことだからな、各国からも信頼されてるし、ボルト家に害をなそうと考える国なんてほぼねぇ。ありゃ言ってみりゃアルシリアの中にある一つの国だ「憩いの郷」っつう名前のな」

「……」

「そのおかげでアルシリア王国が直ぐに危険に晒される事はない訳だ。ボルト家様々だわマジで」

テーオバルトは複雑そうにそう言った。確かに女王騎士として国を守る立場の筈なのに、守る筈の存在に守られているのは内心色々と思う事があるのだろう。
エルトもその言葉に少なくない衝撃を感じた。

「別にそれが悪いって訳でもないし尊敬もしてるんだがな、ボルト家の"始まりのクウガ"、"革命のコンバート"、"英雄の半身ギルバード"っていや女王騎士の中だけじゃなく世界的に有名だしよ」

「ギルバードさん以外はあんまり聞いた事ないっすよ?」

因みにエルトはギルバードの事は"英雄の半身"という二つ名でしか知らない。なのでディファイの事もボルト家という事を知らなかったのである。

「ギルバードさんが凄いのは間違いないな今でも俺等の世代じゃ憧れの女王騎士よ。
まぁ色々理由があって今じゃそのホテル経営してるけどな。
それよりも、今の聖騎装の大本を作ったと言われるのがクウガさんその人だ。それまでは机上の空論と言われてたマナに関する色々な事を変えていったんだよ。それに各国に出歩いて色んな人達を救ったりしてるし。本当に偉大な人だったよ」

「そんなにすげぇ人なんだ。会ってみてぇなぁ……」

純粋にそう呟いたエルトにテーオバルトは悲しそうな表情を浮かべた。

「残念ながら亡くなっているんだわもう10年近く経つ」

「……そりゃ残念だ」

「コンバートさんならまだ会えるがな、あの人もクウガさんに並んで色々と世界を発達させた人だよ。聖騎装の忠誠の十字架を作った人でもあるしなありゃ正しく革命だよ」

忠誠の十字架は簡単に言えばマナを質量に変換させる道具である。
幾らマナがあるとしてもそれに重さは存在しない。
そう言われていたのを変えたのがコンバートその人なのだ。
世界的に100年分は科学を進めたとも言われている事からその凄さが分かるだろう。

「とまぁ、そんな感じでボルト家の人達の尽力によって今じゃ世界的にアルシリアとは友好関係な訳だ……って何だ騒がしくなってきたな」

テーオバルトが説明を終わる頃にアルマ姫が驚きの表情を浮かべ、そして周りもざわついていた。

「聞いてませんよ!?今回の新人騎士大会が騎獣を使う物なんて!」

そのアルマ姫の言葉でエルトもテーオバルトも驚き、そして何故騒がしいのかという理由も分かった。



「うーむ、何故アルシリアだけに情報が行ってなかったのだろう……」

エルムガンド公国の王であるリューファイナルがそう呟くのも無理はない。
何せ全て書簡で送っており返事も来ていた。それなのに何故かアルシリア王国だけが伝わっていないのだから。

「コレがその書簡です」

アルマ姫から渡された書簡を見ると改竄された部分があった。これはアルシリアを害そうという悪意に満ちている事が分かる。
この新人騎士大会は各国の現状の兵力を確かめる様相もある為、どこの国も力を入れている。

その国の騎士のレベルが低いとなると同盟を破棄され侵攻される場合もあり、更に言えば他国から侵攻され易いアルシリアにとってこれは死活問題なのだ。

「流石にコレはキツいだろ」
「ふむ、だが今からアルシリアから騎獣を送ってもらうにしても騎士との連携が取れるかどうか……」
「アルマ……」
「ううあいいおおあいああ(難しい問題だな……)」

それぞれがアルシリアの圧倒的不利を懸念している。
その中で一人だけ考え込んだ様子でエルトへと歩み寄った人物がいた。

「エルト君と言ったね?」

「そうだ……です。リューガ皇子」

「君が良ければなんだがドラゴンを騎獣にさせるつもりはないかい?良いのであれば僕が手伝わせて貰うけど」

「はい?そりゃそうできたら助かりますし嬉しいですけど。何でそっちにメリットがないことを?」

言葉が理解出来なかった訳ではないがその意図が分からずにそのまま疑問の言葉が出た。

「君とは正々堂々と闘いそして潰したいんだよ」

「な!?」

(気付いてないと思っているのかい?君もアルマ姫が好きなんだろう?)

("も"って事はアンタもか!?)

(まぁね、といっても幼い頃からの片想いだけどさ)

リューガはアルマに優しい表情を向けた。

(だからアルマ姫が君の事を気に掛けているのが正直な話気に食わなくてね)

(ぐぬぬぬぬ……)

(それにメリットなら公の場で君を、いや……女王騎士を倒したらアルマ姫を妃に迎えれるだろう?)

リューガが言っている事が無茶苦茶なのはエルトでも分かる。だが確かにリューガはアルマの事が本当に好きなのは分かった。
なら女王騎士としても男としても答える言葉は一つしかない。

「お願いしますよリューガ皇子、そして後悔して下さい。女王騎士の標語の意味をその身体でね」

「よし交渉成立ってとこかな?父上という事なので明日から私はエルト殿と一緒にドラゴンを探しに向かいます。異論はありますでしょうか?」

「ない(ていうか決まるの早いなおい )」

そうしてこの騒動は一端ではあるが終局したのだった。




アルマがバルコニーに一人で出歩いた事を気に掛けたエルトがその後を追うと彼女は不安そうに何かを考えていた。

「アルマ姫、どうされましたか?」

そのアルマの様子にエルトは思わず声を掛けた。

「エルトですか……いや私が不甲斐ないばかりに貴方にまで迷惑を掛けて申し訳なく思っていたのですよ……」

「そんな、今回の件はアルマ姫のせいじゃないですよ!」

「そうでしょうか?私が母上のようにしっかりしていればこんな事が起こる事もなかったでしょうし、仮に起こったとしてもリューガ皇子の手をわずらわせざに解決できたでしょう……現状で言えば母上が不在なままのアルシリアですし、万が一にでも同盟が破棄されればアルシリアの平和は壊されますからこんな事があったとなると……」

「不安なんですか?」

「不安で不安で仕方ないですよ……アルテリーナ陛下とアルマ姫では格が違うと陰で言われてるは知ってますから……」

今にも泣きそうなアルマの顔を見てエルトは直ぐにでも慰めてあげたい気持ちになった。

貴方のせいじゃない。

気にしなくても自分達がいる。

もっと自分達を頼ってくれ。

そんな言葉を掛けたかった。しかしその言葉だけでは今のアルマの不安は拭えないないだろう。
ならば自分の思いの丈を全て話そうとエルトは行動に移った。

「姫様、歯をくいしばって下さい」

「え?」

その言葉を聞いた瞬間エルトはアルマに平手を挙げた。
ポンッという軽い音ではあるがエルトはアルマに初めて手を挙げたのである。
これまで小さな石が彼女の前にあれば拾い。毛虫でも出れば遠くに放り投げた様な過保護のような行動をしていた彼の行動にアルマは固まった。

「このエルト=フォーエンハイム、アルシリアの姫君であるアルマ=アルシリア姫に仕える身でありながらの無礼を承知で申し上げます!
私は貴方がアルシリアの姫だから仕えている訳ではありません。あなたが……貴方がアルマという一人の姫が自分よりも民の為に何ができるかと日々考えていき行動に移しているからこそ心身共に仕えているのです!
だから……だからそんな悲しい事は言わないで下さい、貴方は!アルマは一人なんかじゃない!俺達が、女王騎士がついているんだから!」

「エルト……」

自分より泣きそうな表情で訴える彼の言葉にアルマは自分がいかに情けないのかを察した。
ここまでの事を騎士にさせているのは自分のせいであるし情けない気持ちもまだある。
しかしそんな気持ちが吹き飛ぶぐらい彼の気持ちが言葉が嬉しかった。

「先ほどの無礼、このエルトの首が必要ならば差し上げます」

彼の覚悟も伝わった、目がアルマの瞳から離れないし話そうともしない。
自分の命を懸けてアルマの目を覚まそうとしているこの騎士を無下にできる訳がなかった。

「そうね……首はいらないけど罰を与えます」

彼女は真剣な表情で指を一本立てた。

「そんなに言うならばアルシリアに優勝トロフィーを持って帰るまで貴方の帰国を許しません!でも私の護衛は国に帰っても続ける事」

「姫……?」

「うふふふ、勝ってくれるんでしょ?この命令は必ず守ってもらいますからね、頼りにしていますよエルト」

つまりは優勝するのを信じているという事を彼女は自分の信頼する騎士に言っただけだった。
それがエルトにとってどれだけ嬉しい事かは言うまでもない。

「はい!この命果てようがアルシリアに、いえ貴方に優勝を捧げます!」

「命を散らすのは許しません。貴方はずっと私を護ってもらわなくちゃ困りますからね」

「姫……」

姫と騎士の約束がここに成立した瞬間だった。




「うわぁ皇族に手を挙げるとかよくやるわ……漢らしいけどなありゃ姫さんに骨の髄まで惚れてんなぁ」

「だろうね、ここは年長者としてアドバイスの一つや二つを……」

二人の様子を監視する影が二つある。

「おいD、分かっているとは思うが女王騎士達や王族との接触は厳禁だからな」

「勿論だって、|Θ《シータ》……てかこのコードネーム意味ある?」

「雰囲気が大事なんだよこういうのは!」

「うーん、なんだか締まらないなぁ」

漆黒のローブに姿を隠し、手練れだらけの厳重な警備体勢が敷かれているこの場で誰にも気付かれる事なくいる事の凄さは驚くべきである。
……会話の内容は別として

「俺達の任務はなんだか分かっているんだろ?」

「それは勿論だってコレは絶対にしなくちゃいけない事だから」

「そう俺達の任務はアルシリアの癌を滅亡させる事だからな」

彼等はアルマ姫とエルトの姿を瞳に写した。





[18999] 24話
Name: 羽付き羊◆8e2fe20f ID:5ceabaff
Date: 2022/11/16 00:15

第24話「泥を啜って勝てるなら血ヘドも骨も持っていけ」

 

エルトはリューガ皇子に案内されて騎獣を探していた。

 

最高峰とも言われるドラゴンの上位種から小さな赤ちゃんのパートナーとして人気の騎獣まで紹介するという何とも漢気溢れる事をされたのだが、その漢気むなしくエルトはそんな騎獣達と相性がとてつもなく悪かった。

 

「……ここまで騎獣と相性の悪い人間は中々いませんよ」

 

リューガが頭を抱えるのも無理はなかった。

理由は恐らく圧倒的な潜在マナの力に騎獣が怯えていると推測は出来たがそれは数日でコントロール出来る様な簡単な物ではないのである。

それに本人も騎獣の乗り方がドが付くほど下手な事も災いしていた。

 

「いやまだ時間はある。諦めるのは全部をやった後でも遅くはねぇ」

 

しかしエルトは諦めなかった。

ディファイとカルマを助ける事を諦めなかった、彼は出来ないことが諦める理由にはならない。

 

「ならば……最終手段です。貴方には相応の覚悟があるようですので【竜の路地裏】に連れて行きましょう」

 

その覚悟に応じる様にリューガも覚悟を決めた。

 

「ん?何だそれ」

 

「【竜の路地裏】とは様々な野生のドラゴンが集まる場所です。それこそ竜王種の様な騎獣を見つける可能性すらあります。ただ……」

 

「危険って事だよな?……可能性があるなら俺はそこに懸けるぜ。絶対無敵究極正義は伊達じゃねぇってとこみせてやるよ!」

 

「その言葉信じてみましょう」

 

実際に危険度で言えば相当なものであるし、いくら本人も了承しているとはいえ招待しているからには来賓扱いとなるので、新人戦以外の場所且つ招待者が同行している最中にケガをされたりするとエルムガルド公国的には非常に不味いのである。

しかし、同じ位に主催なのに不手際で連絡が出来ておらず相手の国が新人騎士大会に参加出来ないとなればそれもまた大問題であるのだ。

 

いくら王族、皇族だからと言って不義理をしていれば外交は悪くなるのである。特に均衡している国同士なら尚更なのだ。

 

 

 

(……まぁ、それとは別にこのエルトとは正々堂々と潰したいという気持ちもあるからな)

 

リューガ皇子は自分の龍を龍王種として認めさせるという事を決めた頃から心に余裕が出来た事もあり、大分心持ちに余裕が出来た結果である。

 

(さてさて、御手並み拝見としますかアルシリアのNo.1従騎士スクワイアの実力とやらを!)

 

 

 



 

 

そんなこんなで竜の路地裏に来た一行であったが、なんとそこのボス龍をエルトは手懐けたのである!

 

なんと御都合主義な事であるのか、女王騎士試験の二次試験の時に助けてあけだ風の竜王種であるリンドブルムがパートナーになってくれた。

 

「ありがとな!えーーーと……」

 

「ギィ!」

 

「コイツの名前はギィだ!」

 

「鳴き声が名前って犬にワンって付けるようなもんだぞ!?風の龍王種にそんな名前付けるな!バカ野郎!」

 

こんな一悶着があったりしたが、なんとかなったのである。

 



 

「なぁDディー?ここの国の名物ってなんかあったけ?」

 

「うん?確か竜王様のシッポ焼きが美味しいって聞いた事あるよ」

 

「え?ここって竜王の尾っぽ切ってんの?クレイジーな文化だなぁ」

 

「なんか鮫の歯みたいなもんで定期的に生え変わるんだって、んでそれが熟成されてすげー美味しいらしいよ」

 

「んじゃあ後で一緒に食べようぜー」

 

「あいよー」

 

暗躍する怪しい陰らしき人物たちは時が来るまで観光していた。

 

「最後の晩餐になるかなぁ……」

 

「縁起でもねぇなぁ、まぁその為に今は休息しねーとなぁ」

 

 



そして1週間が経過し、 始まった新人騎士世界大会である。

 

 

『なんと完全に同着だぁぁぁあ!!』

 

 

実況の声通り、エルトとリューガの完全同着!

 

「まじかぁぁぁ……」

 

「……剣を取れ、エルト=フォーエンハイム」

 

「へ?」

 

「恋に同着1等賞は存在しないだろう?ここで白黒はっきりさせようじゃないか!」

リューガ皇子としてはここではっきりさせたいのである。

 

「面白ぇ……やってやろうじゃねーか!!一騎打ちだぁ!!!」

 

こうして、騎騎討ちが始まった。

 



 

「有り得るのか?ここまでのレースで完全に疲労しているはずなのに何故ここまで動ける?」

 

すっかり観戦モードになった参加者の1人であるワールーク公国のバルトハルト王子であるが、ここまでのレースは非常に過酷な物であった。騎獣に乗ってレースするのかと思えばある区間は騎獣を担いでレースしたりと中々にふざけた内容があったりと体力的には非常に過酷であるものであった。

しかし彼等はまるでスタートする前の様子で剣戟を繰り広げているのである。

 

「そりゃあアイツらが賭けた物がそれぐらい大切だって事なんだろうよ」

 

ギスカーンのジン皇子は2人の様子を見ながらバルトハルトにそう伝えた。

これは欲しい物を得る権利を自らの手で勝ち取る為の、好きな女に好きだと伝える為の資格を得る為だけの戦いなのだ。

 

そこに身分の差は存在しない。何故なら二人がそれを善しとしないからだ。

身分があれば護れる訳ではなく好きだから護れる訳でもない。

 

結局は力無き者が欲しい物を得られる事は困難である。

ならば力さえあれば良いという訳でもない。

心の強さこそが、想いの強さこそが力となるマナがあるこの世界において決闘はある意味一番公平な戦いなのだ。

 

 

(……ふふ、足がまるで鉛みたいに重くて動かない)

 

 

(酸素が足りなくて視界が狭くなってきやがった)

 

 

((だが絶対に負けない[ねぇ])))

 

二人の剣はガギインいう鈍い鉄の音が鳴らした。

 

 



 

「……くっ」

 

アルマはもう見てられなかった。自分の騎士が傷付く姿と自分の幼い頃からの知り合いが傷つけ合う姿を見ていたいと思う様な人間ではないのだ。しかし彼等が戦っている姿を何故か見ないでいる方が失礼な気がして目を背けられない。

 

「漢のプライドか……」

 

ジェダは彼等の姿を見て自然とそう言葉を漏らした。

 

「え?」

 

不思議そうにするアルマにジェダは言葉を続ける。

 

 

「好きな女性に好きだと伝える為の権利をあの二人は何よりも欲しいのですよアルマ様、お互いを認めてもそれでも好きな気持ちだけは譲れない。ならば互いに納得できる答えは一つ、それが相手に勝つ事なんです。バカみたいですよね……でも嫌いじゃないですよ俺は」

 

ジェダらしくもない言葉ではあるが、そう思わず本音を言ってしまう程の戦いであるのだ。そしてこの戦いを見る上で言葉を濁して伝えるのは何故か彼は嫌だった。

 

「しっかり見てて下さいよ。これが本気の漢の覚悟ってやつです」

 

「はい……」

 

 

そして試合は更に過熱していく。

自分の武器を使い、マナを使い、知恵や経験、知識を使ってもお互いに倒れない。

もう武器も防具も壊れているのにお互いに負けを認めようとしない。

 

 

「 こっから先はただの喧嘩だ!女王騎士とかエルムガンドの皇子とかは関係ない、一人の漢と漢の喧嘩だぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

「望むところだエルト=フォーエンハイムゥゥゥ!!」

 

 

 

先程まで繰り広げられていた高度な技の応酬とはうって代わり、子供の喧嘩の延長戦のようになっていた。

 

只の喧嘩で意地と意地のぶつかり合い。

しかし、だからなのだろうかこの戦いとも言えない拙い喧嘩を誰も目を離すことができなかった

 



 

 

血の味がする。

口の中がゴリゴリと音を立てていると思えば、欠けた奥歯で口の中がズタズタになっていた。

 

それでも前へ

倒れるなら相手よりも後に覆い被さる様に倒れてやろう。

 

そう決意し、また彼は腕を振った。

 

 

 

 

頭の中が真っ白だ。

何も考えたくないし、出来ることならこのまま目を瞑って寝たい。

 

しかしそんな欲求よりも、目の前にいる男の前よりも早く倒れる訳にはいかなかった。

 

拳を通じて解り合えた。

どんなにアルマ姫に対して誠実な想いなのかも知ることができた。

 

だからこそ前へ

そして彼は拳をあげた。

 



 

日々重ねた想いは両者共に同じであるがこそ譲れない、いや譲りたくないのだ。

闘争心は留まる事を知らず、瞳の奥の炎は燃え盛り、相手を倒す事にしか考えられない状態だ。

 

別にこの戦いに勝てばアルマと恋人になれるとかそんな事はどちらも思ってはいないし、ましてや彼女にそれを強要する気持ちは彼等には欠片もない。

 

ただ一人の女性を好きになり、その人を幸せにできるのに相応しいと胸を張って言いたい。

 

その為の、ただその為だけの闘いなのだ。

 

 

(コイツなら俺以上にアルマ姫を幸せにできるかも知れねぇ)

 

(権力に屈しないコイツならば私がいなくてもアルマを護り抜く事ができるかも知れない)

 

お互いがお互いを認めている。

剣や拳を通じて相手の事はなんとなくだが理解できるのだ。だが……

 

((だがそれとこれとは話が別だ!!))

 

これはお互いの意地と重ねてきた想いを吐き出す戦い。

 

「まだやれる」と心が訴えかけているこの状態で全てを出し切ったと言う様な男にはなりたくないからこそ彼等は足掻く。

 

自分の用いる力と経験、技術、そして想いの全てを吐き出すまでは意地でも止められないのだ。

 

そして何より……

 

(コイツに……)

 

(お前に……)

 

((みっともない所を見せたくない!!))

 

お互いがお互いの顎を拳で捉える。だが彼等は倒れはしない。

それが彼等の誇りを現しているようだ。

 

 



 

「魂が震えるとはこの事か……」

 

いつもは澄ました顔をしているバルトハルトもこの光景を見て何も思わない訳がなかった。

 

男が男と真剣勝負をしている事に対して普段は何とも思わない。

ワールークの騎士である彼にとってそれは日常だからだ。

意地があって欲しい物は自分の手で勝ち取るのは当たり前の世界で生き残ってきたのだから当然だろう。

 

………しかし、しかしだ。

 

ならば何故こんなにも気持ちが心が動かせられるのだろうか?

それはお互いの用いる全てを全力で出し切って更に上へと昇ろうとしているからではないだろうか?

 

 

「へっ不細工にも程があるぜ、こんなガキの喧嘩以下の戦いなんざ……でもすげぇな」

 

武術に関してはこの場にいる中では一番詳しいと言えるジン皇子が気付けば拳を強く握りしめながらそう言った。

 

「何が凄いのか、妾に教えてはくれぬか?」

 

サクヤもヤパーナの姫とはいえ、この勝負の熱さを肌で感じ取っていた。だがなぜこうも心が震えるのか理由は分からないのだ。

 

「……んとなぁ実際問題、どんな風に効率良く人を倒せるかってのが戦いの基本だ。最初の戦いは事実そうだったしな自分の持てる技術と経験を使った戦い。そこまでは分かるか?」

 

「うむ」

 

「疲れ果てても武道を極めた者ならばその動きが勝手に出てくるもんだ。それが自分の血肉になってんだからな。実際、アイツ等もたまにカウンターを合わせたりしてるだろう?それがその証拠だ」

 

ジンにとっては武とは日常であり、それが自然に出るほど修練している。

 

「ただ、もう指一本も動かすのすら辛いこの状況で精神力だけで戦ってるのがすげえんだ」

 

そしてそれがどれだけ凄いことなのかも理解しているのだ。

 

 

「でもな、だからこそ、ここにいる全員がアイツ等をすげぇと思えるんだよ。息が整わない。両肩で呼吸していて視界が縦にブレていく。視野も狭くなる一方で最早周囲の事を見れる余裕すらない。そんな状態で闘争心は目に見えて上がってくなんざあり得ねぇ‥‥いや普通は無理だ」

 

 

エルトの顎をリューガの拳が捉える。

鈍い音がしたと思えば今度はリューガの鳩尾にエルトの蹴りが突き刺さる。

両者は一歩も譲らない。

 

 

「アヤツ等は限界がないのか?」

 

サクヤ姫がふとそう呟く。

 

 

「限界なんて当の昔に越えてらぁ」

 

「……」

 

「あれだけのレース戦の後にこれだけガチでやりあえるだけ異常ってもんだぜ。まぁ同じ男としちゃ嫉妬する位にはアイツ等"漢"らしいよな」

 

「ふむ……なるほどな」

 

「だがもう決着みたいだな」

 

ジンは格闘家としての腕はこの中で郡を抜いてる。そんな彼にはもう決着が付くと理解できたが勝者については全く見えていなかった。

 



お互いの拳が同時に入り両者ともに倒れた。

 

(泥の味がする……血の味が混じってもう訳が分かんねぇ……だけど泥を啜って血ヘドを吐いてアイツに勝てるなら!)

 

 

脚も手も動かないなら口を使って相手の所へ進むのみ

 

 

「すげぇカッコ良いな……」

 

その不格好な姿は何よりも美しく尊いモノだ。

同じ男として産まれ、好きな人の為にここまで出来る自信があると心から言えるだろうか?

 

だからこそ魂を揺さぶられる。ここまでの事をしてまでも欲しい存在など一生を探しても見付かるか分からない。

 

力を振り絞って両者は立ち上がった。

 

「これで終わりだぁ」

 

 

リューガの渾身の拳がエルトの額に突き刺さる。

 

 

「俺の頭は石頭なんでね!」

 

エルトはそれを受けてボディに向かって拳を突き立てる。

 

「うらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

その拳を受けてふらつくがまだ倒れないリューガ。

 

「まだだ……」

 

 

「あれを受けて倒れねぇのか!?」

 

 

ジンは驚きを隠せない。あの状態なら意識を断つのが当然の一撃を受けてまだ倒れないその精神力はもう賞賛の域を超えている。

 

 

「なにがそこまで……いやそれは無粋か」

 

気づけば立ち上がっていた。もう座って居ることなど出来るわけも無い。ここまでの勝負になるとは思っていなかった。

 

(しかし、これ以上は……)

 

もう勝負の行方はジンを持ってしても分からなくなった。

 

 



 

 

気を失いそうになる、限界なんて当の昔に越えている。

それでも動けたのはエルト=フォーエンハイムが相手だからだ。

 

そんな奴に気持ちの良い一撃を貰ってしまった。

だが立たなければならない。

それが自分が認めた漢に対しての意地であり礼儀である。

 

言わなければならない言葉を吐き出すまでは脚が砕けようとも立たなければならない。

 

「ごばぁぁぁあ……!!」

 

血を吐き出し胃袋の中の物も全部出た。

王族がこんな惨めな姿を晒していたら国民は付いてきてくれないだろう。

 

 

「リューガ皇子!もう良いんです!寝て下さい」

 

誰かの泣いてる声が聞こえる。

そんな甘い言葉を掛けられる価値が今の自分にあるのだろうか?

 

「キュー……」

 

ファイアーランスの……相棒の心配そうな鳴き声が聞こえる。

 

そう心配するな、まだやることが残っているだけだ。

 

なんとか気持ちを保って前を向けば、傷だらけの男がいる。

 

 

その男は押せば今にも倒れそうなのに目だけギラギラに燃え盛っている。

 

ふぅ……

 

「はぁ……はぁ……」

 

整わない息を無理矢理整える。

この言葉を言わなければ、俺は後悔するだろう。

 

 

「俺の負けだエルト……」

 

敗北したのにも関わらずこんなに清々しい気持ちになったのは相手がコイツだったから。

だからこそ今にも気絶しそうな意識を堪えたのだ。

 

 

 

お互いに緊張が切れて仰向けに倒れた。

 

 

 

「うぉぉぉぉ……」

 

その小さな拳を天に掲げる。

声にならないその叫びは大好きな大切な人へと届くように。

 

 

 

 

 

 

あとがき

何年ぶりかの更新です

そして勘違い成分0ですいません。

とりあえず後7話ぐらいで終わりの予定。

あともう1話したらディファイ出てきます。

……何年先になるのだろうか




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