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[18619] [一発ネタ]天使への返信[転生もの]
Name: 29◆752cebb3 ID:716ac877
Date: 2012/10/07 13:04
「知らない……」
 気がつくと、なぜか白い世界にいた。となれば、ここはこの台詞を言っておかねば。
「気がついたようだな」
 言う前に見事に遮られました。orz
 まあいい。それよりも聞いておかなくっちゃ。
「あのぉ、ここはいったい」
「ああ、ちょっとすまない。答える前に一つ質問させて貰うが良いね。君は、気がつく前の事を覚えているかな」
 頭に響くようなこの声は……まさかして、ひょっとして、もしかして……
「ひょっとして、死ん……」
「ああ、最後まで言わずとも、その通り。まあ、質問に答えて貰ったことになるかな」
 やっぱりこれはテンプレ。
「じゃ、あなたは神様か何かですか」
「啓典の民の言う神ではないので、何かの方に当たるかな。覚者と呼ばれている」
「各社?」
「君が今想像しているのとは異なる。"目覚めた人"と言う意味だ」
 目覚めた人……よくわからんけど、神様みたいな存在だと思えばよいのか。
「で、その神様みたいな方がいったい?
「私の方から説明いたします」
 みたいな存在の後方から、女性とおぼしき存在が進み出てくる。
「えーと、あなたは? 神様みたいなお方の部下みたいな存在ですか? それとも、マリア様みたいなお方?」
「覚有情と申します。覚者様が神様みたいな存在とすれば……性別は異なりますし、差異も大きいですが、マリア様みたいな存在というのが近いかも知れませんね」
「マリア様みたいな存在、略すとマリみたですね」
「いえ、根本的に違います。で……」
「では、改めて、ここにはボク以外誰もいないんですが、ボクはどこにいるんでしょうか」
「略すと、ここは誰ボクはどこと言う事ですね」
 言葉を遮った仕返しだろうか変な略し方をしたマリみたさんが指を鳴らすと、同時にウインドウが開くように画面が出現した。
「あなたは今、輪廻の輪から外れた状態になっています。」
 テンプレきた−!! とワクテカしまくりなところに、神様みたいな存在、略してみたいな
「あなたが想像しているのとは若干異なります。別に、ミスでとか楽しみでとかそんなわけでこの場所にと言う事ではありませんし、生前の行いに感動仕手というわけでもありませんので」
 ちょっと残念。
「通常であれば、天国と地獄と呼ばれる場所へ輪廻するのですが、あなたの場合、本来起きえない事が起きてしまったのです」
「起きえない? 解脱とか言うやつですか」
「いえ、それであれば問題ないのですが、魂が留まると言う、不自然きわまりない状態へこのままだと陥りそうだったので」
「留まると言うと、幽霊とか」
「そのようなモノだと。まあ、幽霊の類は残骸の一部が色となったモノですが」
「とにかく、そういうわけで、君には通常とは異なるが、転生というモノをして貰うこととなった」
「えーと、特典とか」
「本来なら、むしろ消去すべき対象なところ、転生することで再度輪廻可能と言うだけで特典といえるのですが……」
「よろしい、君の言うところの特典だが、流石に三つもとなると手に負えない。せめて一つだな」
「その転生先ですが、危ない世界ですか?
「いえ、あなたの言う"ギャルゲー"の世界と思っていただければ」
 ギャルゲーか。型月とかマブラブとかあるけど、まあ大概のはあっても味付け程度だろう。あんまりよく知らないけど。
「それなら一つで充分です」
「で、どのような特典が欲しい」
「なでポ・にこポで」
 ある意味、ギャルゲー世界なら究極のスキルだよね。なでなでだけで女の子の好意勝ち取れるなんて。コレなら、最悪戦等とかでも、仲良くなった女の子が助けてくれるはず。……ちょっと情けないけど、まあ死ぬよりはましでしょう。
「うーん、流石ににこポは如何南無のでしょう」
「うむ、確かに。微笑むだけで好意というのは、心を操る術に値する」
 拙い、最近の二次創作のお約束、踏み台・咬ませ犬系のお約束だから意識してなかったけど、確かににこポだと、単なる洗脳以上に強力かも知れない。にこっとするだけで最低限以上の好意が得られるんだから、その後の進め方さえ間違えなければ、これくらい強力なスキルは無いか。
 だが待てよ。
「えーと、流石に無理でしょうか。にこポ駄目ならせめてなでポを」
 そう、なでポなら、少なし相手の頭を撫ぜると言う好意を行うため、最低限の行為を持たれないと成立しないはず。って、好意と行為が逆だ。
「なでポですか。まあ、それなら問題ありませんね」
「確かに、にこポは拙いが、それならば問題無いな」
「じゃあ、それでお願いします。ところで、転生のお約束とかは……」
「安心して良い。足下が、云々は無い」
「そうですか」
「単に、背後の"窓"に吸い込まれるだけだ」
「なんだって−」
 背後を振り返ると"旅の扉"もどき。そこへ吸い込まれていくのに気がついた。

 流石に、赤ちゃん時代はキングクリムゾン!!

 今、俺は大学生。
 確かに、ギャルゲーの世界に転生したらしい。
 どう考えてもブラコンな可愛い妹に、勝ち気な眼鏡っ娘な委員長タイプの幼なじみ。そんな素敵な彼女たちに囲まれる主人公
 ……の友達。
 だがしかし、忘れて貰っては困る。特典内容は、まさしく逆転ホームランなスキル!!
 ……のはずでした。
「どうしたんだい」
「いや、何でも……」
「どうでもいいけど、あっち行ってくれないかい。ボクは、そこのプラトーと話があるんだよ」
「そうです。ファーはこれからお兄ちゃんとデーとしなければなりません」

 ……よりによって、ReAngelの世界でした……



[18619] [【一発ネタ】大魔砲峠【リリなの?】
Name: 29◆752cebb3 ID:1f238e48
Date: 2011/01/01 00:03
 槙原動物病院は喫茶店翠屋を市街地に距ること約20分、近道の公園から大通りへと入って、その繁華街のなかにある、一区画がそれです。
 いま、その動物病院にたどり着いた少女、高町なのはは異形の物体におそわれるフェレットを抱き上げるとともに、宝石を受け取るのでした。
「その…何がなんだかよくわかんないけど、一体なんなの!?何が起きてるの!?」
「君には…資質がある。お願い、僕に少しだけ、力を貸して」
「資質?」
「僕は、ある探し物のために、ここではない世界から来ました。
でも、僕一人の力では思いを遂げられないかもしれない。
だから、迷惑だとわかってはいるんですが、資質を持った人に協力してほしくて…。
お礼はします、必ずします!僕の持っている力を、あなたに使ってほしいんです!
僕の力を…魔法の力を!」
「魔法…?」
「お礼は、必ずしますから!」
「お礼とか、そんな場合じゃないでしょ?
 どうすればいいの?」
「これを!」
 いきなり動物から人の言葉で話しかけられ、魔法という非現実的なことを告げられた上に宝石を渡されたことから混乱の極みにある彼女は、あまりの急展開に思考を一時的に停止し、現実に対応するだけの状態にありました。そのためフェレットから赤い球を受け取ったなのはは、よくわからないながらもフェレットとともに呪文を唱え始めたのです。
「それを手に、目を閉じて、心を澄ませて。
僕のいうとおりに繰り返して
 いい?いくよ!」
「うん…!」
「我、使命を受けし者なり」
「我、使命を受けし者なり」
「契約のもと、その力を解き放て」
「えと…、契約のもの、その力を解き放て」
「風は空に、星は天に」
「風は空に、星は天に」
「そして、不屈の心は」
「そして、不屈の心は」
『この胸に!
この手に魔法を!
レイジングハート、セット、アップ!』
「Stand by Ready. Set up」
 いきなり宝石から人の言葉が聞こえ、同時に光の波があふれるように宝石から放たれます。その輝きに、おそってきた異形はひるみ、いったん後退するのです。
「なんて魔力だ…。
落ち着いてイメージして!君の魔法を制御する、魔法の杖の姿を!
そして、君の身を守る、強い衣服の姿を!」
 イメージ……
 彼女は、一瞬悩んだ後、彼女の考えるもっともふさわしい衣服を、彼女の考えるもっとも強い魔法使い、いや、魔法少女の姿を想像します。
「成功だ!」
 そこには、一人の魔法少女がたたずんでいました。聖祥大学付属小の制服に似ているようにも見えますが、上半身を覆う白い上着以外は静脈の色を思わせるどす黒い赤色な点が異なります。さらに、帽子でなく彼女の頭を飾るのは、目をかたどったマークが印象的なバンダナです。
「ふぇー?これ何ー?」
「きます!」
「Protection」
「おそいの」
 ユーノの声に反応するレイジングハートですが、なのははそれより早く反応していました。ユーノは焦る心をなんとか抑えつつ、彼女に魔法の説明をおこないます。
「僕らの魔法は、発動体に組み込んだ、プログラムと呼ばれる方式です。
そして、その方式を発動させるために必要なのは、術者の精神エネルギーです。
そしてあれは、忌わしい力の元に生み出されてしまった思念体…。
あれを停止させるには、その杖で封印して、元の姿に戻さないといけないんです」
 ……ですが、なのはは聞いていませんでした。
「とにかく、倒せばよいのね。いくよ」
 言葉とともに、一直線にその思念体と呼ばれる存在に駆け出すのです。
「え”?!」
 彼の驚きはある意味当然といえます。まさか、思念体相手に呪文を放つことなく飛び出していくなんて、誰が考えるでしょうか。
 走り出した彼女は、思念体の目前でいきなり跳び上がり、片足を脇下に、そして逆足で首を刈り取るかのように振り上げると、そのままぶら下がるような姿勢となり、その勢いのままくるりと回転すると、相手の腕を極めるように肘に当たる部位をぐいぐいと締め上げるのです。そう、いわゆる腕挫十字固と呼ばれる技です。
 あまりの展開に言葉を失っているユーノの前で、その思念体は勢いを失い、だんだんと陰のように姿が薄れています。
「どうすればよいの」というなのはの声に我に返ったユーノは、慌てて説明します。
「えーとさっきみたいに体を強化するのなら心に願うだけで発動しますが、より大きな力を必要とする魔法には、呪文が必要なんです」
「呪文?」
「心を済ませて。心の中に、あなたの呪文が浮かぶはずです」
「Protection」
「リリカル・トカレフ」
「封印すべきは、忌わしき器!ジュエルシード!」
「ジュエルシード、封印!」
「Sealing Mode.Set up
 Stand by Ready」
「リリカル・トカレフ、ジュエルシード、シリアル21、封印!」
「Sealing」
「これが、ジュエルシードです。レイジングハートで触れて」
「Receipt number XXI」
「あ、あれ?終わったの?」
「はい、あなたのおかげで…。ありがとう…」
「ちょっと、大丈夫?ねぇ!」
 フェレットを抱き起こしながら、周囲の状況に気がついた、田中ぷに……もとい、高町なのはさんは、冷や汗を浮かべます。
「もしかしたら…、私、ここに居ると大変アレなのでは…。
とりあえず…、ご、ごめんなさ~い!」
 果たして、彼女の目指す世界はいったい何なのでしょうか。
 読者、一染の好憎に執し給うこと勿れ。至嘱。



[18619] 【習作2】徴税官にならなかった男 (前編)【ゼロ魔】
Name: 29◆752cebb3 ID:85d4a7b5
Date: 2010/05/10 14:57
  序 前書きに変えて

 以下の話は、私のPCに突然届いたメールに添付されていたものである。
 初めて見たときは、新手のSPAMメールかと思ったが、確認してみると以前開設していたWEBサイトへの投稿作品だと気がついた。ただ、そのサイトは閑古鳥が鳴いて久しいことから、先月閉鎖したばかり。今更いただいても、いやそれ以上にせっかくの頂き物を誰も見てくれないではないか。
 そう思って、返信しようとしたところ、当面インナーネットへの接続が困難であること、そのため場合によっては投稿サイトへ転載をしてほしい旨の記述があったことから、今回投稿させていただくことにしました。
 メールでは手記を元にした実話系とあったが、あまりに荒唐無稽のためフィクションであると判断し、こちらへ投稿させていただきました。
 読んでいただければ、メール主同様に投稿者も幸いです。

 (1)

 これで何度目になるだろう。
 トリステイン王国の凋落は誰の目にも明らかだが、誰も彼もが見て見ぬふりをしている。残念ながら、傑物と言ってよい鳥の骨とて大差ない。衰えゆく国力で最大限の成果を引き出そうとしているその能力は、彼を嫌うものでも認めるところだが、いかんせん新たにするという能力に欠けている。
 そう、トリステインに今必要なのは、現状をいかに変えるかと言うことなのだ。
 その思いが、私を駆り立てた原動力だった。
 残念ながら、私にはその権力がない。
 幾ばくかの自尊心とともに再度言おう。私には権限が無かった。
 だから今回も、彼、ジェーブル卿の行う改革を羨望と嫉妬とともに眺めるしかなかった。

 卿は、バーガンディ伯爵の弟に当たる。まだ年は若いが、バーガンディ伯爵およびその婚約者の実家であるヴァリエール公爵の引き立てもあり、早くもその実力を認めさせてきている。
 一例を挙げれば、彼の発案による大砲の大量生産である。砲亀兵がそれぞれ二門引けるように車輪をもうけられたそれの新しい点は、何と言っても別の砲部品をそのまま使用できるーー卿は互換性と呼んでいたーーを持つ点であろう。だが、それ以上に見落とされがちながら重要な点は、別の場所で同じものを大量に作りそれを組み立てるという発想である。
 そして、それこそが私が働きかけ、結局果たせなかったアイデアだった。
 さすがに、互換性という一歩踏み込んだところにまで思い浮かばなかった。その点は、やはり賞賛すべきだとわかっている。だが、それ以上に、私に力さえあればという思い、そう嫉妬心を押さえることが出来ずにいる。
 こんなことなら、徴税官へ推挙されたときに受けておけばよかったとも思う時もある。あからさまな左遷であったが、上役たちも適当に実績の無い人間を推挙しただけらしかったので、小さいながらも実績を何件か積み上げた上でこのままがんばらせてほしいと断ったのだが。

 私は、卿の進言で多量に作られ出した紙に書かれた上申書を握りつぶした。不愉快だが、私の提案した方法よりもずっとこの紙の方が優れていることは認めざるを得ない。せいぜい私に出来た追加の提案は、紙用に限らず材木として森林を使用した場合には当事者が植林することを法令で定める、こと位だ。
 しかし皮肉なことに、この提案のおかげで徴税官への推挙が完全に取りやめとなったのだから、何が幸いするか本当にわからないものだ。
 もっとも本音を言えば、こんな些細な提案で無く、大きな提案、そしてその提案を実現するために行った折衝を認めてほしいものなのだが。
 そんなことを思いながら、私はくずかごに握りつぶした紙を投げ入れた。数年前までなら、皆、ぎょっと目をむくような行為だが、すでに王宮周辺では皆なじんでしまっている。ぽんと放り投げた紙くずは、皆がよくやるように、くずかごから外れてころころと転がる。
 苦笑して立ち上がると、くずかごに紙を入れ直そうとして、ゴミに紛れていたその案内を見つけた。なにかと思って手に取ると、それはどうやらメモらしい。いくつかの単語や数字が並んでいる。
 それを眺めていた私は、いくつかの単語に目がとまった。
『アルビオン』『反撃』『遠征』
 私の次なる行動は、普段の私を知るものからすれば信じられないほど早かったであろう。

 (2)

 実のところ、私は軍務についた経験はない。今まで下級宮廷貴族として働いてきたのだから当然といえる。
 だが、ラインとはいえ一応貴族だ。それ故、軍務への志願は比較的すんなりと通った。言い換えると、宮廷での私は、いてもいなくても大差ないレベルと言うことなのだが。
 幸か不幸か、私の配属された部隊はミス・ゼロと呼ばれる特務機関のエージェントの護衛を務める部隊だった。そのため、前線にある程度近く、さりとて真っ先に殴り合う部隊という訳でもない。その上、一番槍こそ無理だろうが掃討戦等ではそれなりに活躍出来そうであるという、ある意味手柄を立てるには恵まれた位置といえた。何しろ一番槍ともなれば確かに手柄は立てやすいだろうが、同時に手柄を誇ることも出来なくなる可能性が高いのだから、それを考えると私にとって最適と思えてくる。
 だがそれ以上に、前線で力をふるうことの多いミス・ゼロをうまく守れた場合、彼女の父親からの感謝と、うまくいけば後ろ盾になってもらえる可能性がある。彼女の正体がルイズ嬢だと言うことは、護衛として接していればすぐに見当つくことだ。
 同時に、初めて彼、私にとって羨望と嫉妬と尊敬と憎しみとそのすべてを捧げる存在である、ジェーブル卿と直接会う機会を得た。
 彼は、外見は全く普通の少年と言ってよい。だが、兄とヴァリエール公爵家の長女が破談になった今でも公爵家と昵懇にしており、何より、ミス・ゼロが率いる部隊の参謀役であり、遠征軍の指揮官からも一目置かれる存在であった。
 何度か、私は彼に作戦を上申した。そのたびに彼は丁寧に対応し、彼が総司令部に提案した作戦を教えてもくれた。その案は、私の考え出したものより確かに優れていると、素直に認めざるを得ないものだ。
 またその際に、彼がルイズ嬢だけでなくその学友たちやさらには平民たちにすら慕われていると言う事実を何度となく目撃することとなる。
 役者が違う、私は本心からそう感じた。同時に、一種ゆがんだ幸福感を感じていたのも事実だ。
 我が感情のすべてを捧げると思い定めた人物が、想像以上の存在だったのだ。中途半端な存在でなくよかったという安堵感。つまり、少なくとも私は、超一流を相手に選ぶだけの人を見る目を持っていたのだ。
 そんな存在に、力量を認められた。それは私の思い過ごしでは無いはずだ。認めもしない人間に、作戦を教えてくれたりしようものか。
 歪んでいるかもしれないが、少なくとも自分を大きく感じられるというのは悪い気持ちでは無い。 

 戦場はおおむね我が軍の快進撃という形で進んでいた。その事件が起きるまでは。
「報告です。傭兵たちが裏切りました」
 いきなり、司令部のテントに駆け込んできた伝令兵は、驚愕すべき情報を我々にもたらした。
「ロサイスじゃ無いぞ」
 彼の狼狽する姿など見たのは初めてで無いだろうか。意味不明なことをつぶやきながら、頭をかきむしる姿など、想像だしなかった姿だ。
 だが、そのおかげで私は冷静になれ、「伝令兵、詳細を伝えろ」と、まず必要な情報を入手するという対応を行った。護衛部隊の所属とはいえ、何度も提言等で訪れそこそこ顔なじみとなっている私が冷静に対応したおかげで、司令部の皆は私の言葉で落ち着きを徐々に取り戻してくれたようだ。
 一瞬、幕僚という訳でも無い私の言葉に怪訝な表情を浮かべたものの、確かに必要なことと思ったのか情報を伝える。
「はい。本隊に属する傭兵たちが原因は不明ですが、総司令部に攻撃をかけ、総司令および参謀総長以下幕僚全滅です。
 現在、ハルデンベルグ侯爵が指揮を引き継ぎ、軍をまとめよとしておりますが、一部の部隊がレコンキスタへの参加を表明し、状況が全く把握出来ない状況です」
 言葉を失った、とはこういう状況なのであろう。誰もが言葉を発しない。私は続きを促した。
「で、我々はどうすればよいのだ」
「はい。未確認情報ですが、これを機にアルビオンが逆襲を仕掛けてくる気配があるとのことで、総司令代理からミス・ゼロに依頼です」
「命令でなく、依頼なのだね」
 彼の言葉に、伝令はうなずくと、人払いをと告げた。
 私は、ミス・ゼロとその使い魔、そして彼だけ残し皆にテントから出るようつげ、敬礼とともに本来の任務、部隊の護衛を行うべく後にした。



[18619] 【習作2】徴税官にならなかった男 (後編)【ゼロ魔】
Name: 29◆752cebb3 ID:85d4a7b5
Date: 2010/05/10 15:53
 (3)

 細かい内容はわからない。だが、一切理由は不明ながら、ミス・ゼロ率いる部隊が殿として敵部隊を足止めすることだけは私にもわかった。そして、彼、サイトという平民の少年がルイズ嬢を逃がそうとし、彼女が拒否していることも。
 結果、彼らはジェーブル卿とサイト君を残して撤退することを決定する。唯一の反対者は、すやすやと寝息を立てていたため、それ以上の反論を行えなかったようだ。
 烈火のごとく怒りを爆発させていたさすがの彼女も、背後にいた私の眠りの魔法によってあっさりと夢の国に旅立っている。彼女の性格を読んだ上で、事前にジェーブル卿から言い含められていたことだ。何度も打ち合わせに参加し、それなりに会話もすることでなじんでは居るが仲間ではない。居ることに対し違和感無いが他人でしかない私をうまく用いた作戦は見事だといえる。
 私は、任務に忠実であることを心がけている。宮廷でも、少なくとも任務に忠実でないという中傷は受けたことがない。もっとも、任務に付随する役得を否定出来るほど高潔では無いのもわかってはいるのだが。それ故、軍務についても任務に忠実であろうとした。
「では、反論は無いね」
 卿の言葉に、一斉に皆がうなずく。同席を許されていた私は、彼の言葉と同時に、ルイズ嬢の時同様眠りの魔法を使った。
「何しやがる」
 驚いたサイト君が、いきなり立ち上がると背中の大剣を抜いた。
「ジェーブル卿はお疲れのようだ。そして、何よりもこれからの国政に大切な、失うわけにはいかないお方だ。
 従って、卿の代わりに私が残ることにする」
「だって」
「お忘れかもしれないが、私は護衛部隊の隊長だ。護衛部隊とは、ミス・ゼロとその参謀をお守りするのが本義。違うかな」
 私はおどけた調子で続けた。
「それに、手柄を立てるよい機会だ。そうだろ」
「……あんた……
 だが、俺についてこられるか」
「何、ガンダールヴの後についていけばいいだけだ。道があるなら、かき分けていくより楽なものだよ」
 私は、部下たちを呼び出すと、二人の眠れる貴族を守って下がるように命じ、自らの装備を取りに戻ることにする。

 神の左手、ガンダールヴ。
 それは確かに凄まじいものだった。
 押し寄せてくる敵兵のまっただ中を突き抜ける彼の後ろには道が出来、押し寄せる波は彼のふるう剣で崩れ去る。
 魔法も使わぬのに、戦いながらにも関わらずフライの魔法以上の速度で突き進む少年。
 その後ろを突き進む私は、せいぜい彼の討ち漏らした敵から身を守りつつついて行くのが精一杯であった。
 だが、何事にも終わりがある。
 ついに敵司令部、というところで、ついに彼の足が崩れてしまった。
 じりじりと迫ってくる敵兵に必死に剣を振るう少年。
 私も必死に彼を助けようと魔法を使うが、それも限界がある。
 ついに傷つき倒れ、その場から動けなくなった少年を背負うと、私は今までで最大の速度で飛び去った。

 (4)

 森の中へと逃げ込めたのは、まさしく僥倖以外の何ものでなかった。
 時折さっと吹き込む心地よい風が、肌に浮いた汗を払ってくれる。先ほどまでに熱気が嘘のようだ。
 だが、背負っている少年の不規則な呼吸音が、事態の深刻さを物語っている。水の秘薬を持たないため、つたない私の魔法で何とか持たせているというのが現状だ。本来であれば、安静にさせるべきーーせめてレビテーションで浮かせて運ぶべきーーなのだろうが、追われる身ではそれもかなわない。
 一瞬身構え、杖を向けるが、どうやら向こうも驚いているらしい。
 なぜだか、私は信じても良い気がしてきた。いきなり出会った、人類の宿敵ともいるエルフだというのに。
 そう、信頼しない理由なら山ほど思いつく。
 だが、それがどうしたと言うんだ。
 今まで、理論を重視してきて結局どうなったか。論理立てて考え、下調べし、根回しして、その結果得たものはなんだったか。なによりも、何故私がこんな場所で少年を負ぶって歩いているのか。
「頼みがある」
 私は、杖を腰に戻し、両手を軽く上げて攻撃する意志の無いことを示しつつ、目の前のエルフの少女に声をかける。思ったよりも、声はしっかりしていた。理性的な様で感情に流されやすい私にしては、実に意外なほどに落ち着いていると自分でも思う。
 そのおかげか、彼女は緊張を解いた風で、ゆっくりと肯いた。こうやって良く見ると、あどけないと言う表情の役似合う、実に可愛らしい少女だ。豊満すぎる肉体と良い、エルフでなければ男達が放っては置かないだろう。
 何ともこの英雄の少年とお似合いでないか。私は、自然と自分の顔が綻んでいくのを感じた。そして、彼女なら大丈夫と確信した。
「この少年を助けて欲しい」
 背負った少年を、木漏れ日の降り注ぐ柔らかな下草に横たえる。字義通り満身創痍の彼は、意識を失っているにもかかわらず軽くうめいた。彼をいたわるような、草原のにおいとともに心地よい微風が吹き込んでくる。
 逡巡する彼女に、私は軽く頭を下げる。実際、ぐずぐずしている暇はない。彼が大半を打ち払い、私もそれなりに戦ってきたとはいえ、まだ追っ手は残っているのだ。たった一人で軍団を壊滅させた英雄を駆り立てる猟犬たちは、そのあぎとを閉じてはいないのだから。
 そんな彼女を後押しするように、一陣の風が梢をざわめかせる。同時に私は、傭兵達の着込む鎧が立てる激しい音が森へと近づいてきていることを聞き取った。
 私は、胸元から袋を取り出し、はっと身構えた少女に対しつきだした。
 よく分からずに固まっている少女の手に無理矢理硬貨のつまった袋を押しつけると「よろしく頼む」とだけつげ、先ほど歩いてきた森の入り口へと向かった。
 この戦いがはじめての実戦とは思えないほど無数の傷で装飾された杖を取り出し、軽く一降り。
 水のラインという、あまり直接戦闘向きとは言い難い私だが、傭兵であればそれなりにあいても出来る。
 持って生まれた性分だが、自分で自分をこう納得させていた。
『別に全滅させずとも、彼を逃がせば我々の勝利だ』
『だが、私はどうなる』
『英雄を助けた謎の貴族、実にそそられる称号だと思わないか』
『……まつりごとでなくいくさで名を残すと言う事意外は、概ね同意する』
 私は、こん限りの雄健を上げると、森の外に現れた傭兵達の群れに向かって突っ込んだ。

 (5)

 以上が、チェレンヌ卿の手記を元に編纂した話のすべてである。ただし、他人に見せるのを前提とした形態をとった手記ではなかったことから、後で知り得た情報や彼が本来知り得なかった情報を元に加筆修正を行っていることをお断りしておく。
 手記は、ド・オルニエール卿を助けたティファニア嬢に彼自身の手で硬化の入った袋とともに手渡された。そして、そのまま彼らを守るように森の外へと打って出て、そのまま戻ってこなかったという。
 本来財務官僚として王室に杖を預けていた彼がアルビオン戦の戦没者名簿の一隅を占めるに至った経緯は、この手記に記されていた。
 読者の方に、はじめてこの手記を読んだときの私の気持ちを分かっていただけるか、正直自信がない。
 彼が独自で考え出したトルステインの問題点とその改善策を、たった一人で10年以上かけて根回しを行い、完成直前迄持っていった。残なんなことに、彼の改善案は日の目をみなかった。なぜなら、彼の手記でも述べているように、別の人物の出した案が、彼の根回しの上に乗っかって採用されたのだから。
 その案を出し、あたかも自力で採用を勝ち得たかのごとく錯覚していたのが、私であった。
 実際、根回しがほとんどすんでいるところに、彼よりも彼よりも身分の高い人間が同じようなことを言えば、抵抗などほとんど無くて採用されて当然である。しらぬは当人ばかりなりで、そのときの私は、自分の案が優れているからだとうぬぼれてしまっていた。時折折衷案として出されたものこそが彼の根回ししたものであるなどと気づきもせずに浮かれていた私を、いったい彼はどんな目で眺めていたのだろうか。
 だが原作では、彼は単なる徴税官、税の徴収でしかなかったはず。そう思って調べたところ、彼の根回しを拒んでいたのはリッシュモン卿であり、それも単に賄賂が少なかった為だ。それが、私という異分子が入った影響でリッシュモン卿を動かすことができ、その結果、やさぐれてちんけな徴税官としてでなく、陰に隠れた凡人として、この地に埋もれてしまうところだった。
 事柄をひっかき回し、結果中途半端な期待を持たせた上で地にたたきつけるような真似をしたのが私だと知ったときの、あのやるせない感じ。さらに、本来彼の功績となるべきことを横取りしていた形になったのを知ったときの、冷水を浴びせかけられたような気持ち。単に彼の策をつぶしただけでも後味は悪かったであろうが、出てきた事実はそれ以上。知らなかったとすませられれば楽だったのだが、十分に準備したと考えていたにもかかわらずミョズニトニルンによる反乱を完全には防げなかったこともそうだが、残念ながら私の精神はそこまで図太くはなかった。それに、私の不手際から原作同様に足止め役をさせてしまったサイト、いやド・オルニエール卿を助けてもらった恩義もある。
 お気づきのように私は転成者だ。前世では、それなりに、いろいろと苦い目を味わってきた。それ故、チュレンヌ卿の気持ちを、完全では無いにしろ分かることが出来たように思う。
 それだけに、彼の最後の望み、英雄談の登場人物になりたいという夢を叶えてやりたい。いや、叶えるのが私の義務だと感じられ、ついには脅迫概念にすら近づいてしまった。
 すでに半ば以上忘れていた日本語で、手記を元にこの物語を書き記すのは大変な作業となってしまった。だが、下記終えた時には、ティファニア嬢を背に戦いに向かうチェレンヌ卿同様に、やり遂げたことからくる一種の爽快感を感じている。
 こうして完成した文章を、ド・オルニエール卿に確認していただき、彼の元いた世界へと送り込んでいただくことが出来たのは、実に幸いであった。
 最後に、この物語を読んでいただいたすべての読者に感謝を。

初稿:H22.5.10



[18619] [一発ネタ1]仕事の書[オリ主]
Name: 29◆752cebb3 ID:c11206d3
Date: 2010/05/10 14:57
まえがき

以下の内容を含みます。

・オリジナル要素があります。

・主人公は最強ではありません。

・原作主人公は登場しません。

・文章が稚拙で少ないと感じられるかもしれません。(作者の能力不足)

それでも問題ないという方だけお願いします。

誤字・脱字・その他があれば、ご指摘をよろしくお願いします。



キキー、ドガン


「何だ、ここは」


さっきまで、大学からの帰り道を歩いていたはずなのに、気がつくと、白い空間に浮かんでいた。


「ひょっとして、トラックに引かれた?」


何となく思い浮かんだ言葉を口にする。


「そうだ」


突然、白髪の老人が現れる。
なんとなく、威厳があるような気がする。勘違いかもしれないが。


「ひょっとして、あなたは神様?」


「よくわかったな」


なんとなく言ったのが正解だったらしい。
でも、これってひょっとして。。。。。。


「俺、どうなったんです」


「そのことだが。。。。。。

まずは状況を説明すると、君は横断歩道中、居眠りをしていたトラックにハネられて死亡した」


「(まさか、やっぱり)」


「その際に、実に言いにくいことなんだが。。。。。。

申し訳ない。ちょっとした手違いがあってな」


「ひょっとして、別人を死なせた?」


「ああ、悟りが早くてたすかる」


「なんてことしてくれるんです」


「まったく、もうしわけない」


「(よし、これは)
 じゃあ、生き返らせてくださいよ」


「あいにくなんだが、あれだけ肉体がぐちゃぐちゃだとわしの力ではどうしようもなくてな」


「勝手にころしておいて、なに勝手なことをいってるんです」


ぽかぽかぽか。


「わ、わ、乱暴はやめてくれ。
わかっておる、わかっておる。
そこでだ、お詫びといっては何だが、転成してもらおうと思っておる」

「で、どんな世界だ」

わくてかして、自称神の言葉を聞く。やっぱ、好きなアニメの世界とかにいけるのかな。ほんと、わくてかだぜ。


「そうだな、端的に言えば、二次創作とかいう世界にあたるかな」


「漫画かアニメの世界に。。。。。。ってやつだ。
で、どんな世界?」


「好きな世界を選ばせてやれれば良いが、まあそうもいかんのでそれは許してほしい。あ、マテ、一応二つの世界から選ばせてやるから、げんこつをつくるな。
で、その世界だが、リリカルなのは か ネギま!? 何だが、どちらがよい」


どっちかっていうと、なのはかな。でも、リンカーコアなしなんてことになると、冥王さまに関われないじゃないか。

「リリカルなのはの世界でお願いします。
なあ、ところで、このまま転成ってことはないよね」


「ん?
べつにこのままでかまわんだろ」


「勝手に殺したんだから、わびの一つもつけるのが筋ってもんだろ」


ぽかぽかぽか。


「わかった、わかった。わかったから、そんなに殴らんでくれ。
 では、おわびを兼ねて能力を与えるからそのままじっとしておれよ」


「おお、頼むぜ。よし、待ってろよ、まずは。。。。。。」


「では」


パチ


音と同時に、彼は


消滅した。


彼の言葉を遮るようにしてただ一度指をならしただけで、神を名乗る存在を残して、一切が完全に消え去った。光すらも。

「いい加減、もうよろしいのでは」
 先ほどとは姿だけでなく口調も変え、神と名乗った存在は手を広げ、呼びかけた。
 闇でもなく、光でもなく。ただ空間としか呼べない場所に存在する唯一は、どこかに訴えかける。そこには、先ほどまでの情けなさを伴った人間くささは一切なく、神々しいとかまがまがしいとか言った言葉が内包する薄っぺらい部分を人々に感じさせるだけの、一種超越した何かがあった。
「何を言う。再び挑んできたのは、おまえの方であろう。
 のう、サタンよ」
 サタンとよばれた存在の背後に生じた存在から、声と表現するのが一番近いのであろうものが発せられた。凝視しても人の目にはゆらぎとしか感じられないが、確かに『そこに在る』
 サタンが超越した存在だとすれば、それは確かに『そこに在る』
「確かにそうですが。
 ですが…… だからといって、それが殴られて良い理由になりません」
「別に殴られたとて、人が虫に殴られたようなもので、おぞましさ位しか感じまい」
 確かにそれは事実だった。痛がって見せたのは、人間たちのいう演技にすぎない。最初から演技にすぎないし、そもそも人が虫に対する感情以上のものがあるか怪しいこともあり、人間たちのいう安っぽい誇《プライド》だのといったものは一切なかった。だが。
「そういうことを言っているのではありません。
 ……ようやくわかりました。これは私への罰なのですね。
 ヨブの時の」
 自らに似せて人を作られた存在が、まさに人間くさくにやりと笑ったのをサタンは感じ取った。


あとがき

この掌編は、ハインラインのヨブにインスパイアされ、ヨブ記の記述をベースにした二次作品となります。
( ヨブ及びヨブ記は原文でなく日本語訳を参照しております )
記述者はSSと認識しておりますが、SSのカテゴリーに当てはまらない場合はご指摘をお願いします。
また、宗教的・政治的目的を意図したものではありませんが、宗教的・政治的懸念があると感じられた場合についてもご指摘をお願いします。


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