<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[18270] 【習作】リリカルな穹
Name: take◆bdb8c177 ID:973614b1
Date: 2011/03/11 04:15
注意書き

リリカルなのはの二次創作です
目指せハーレム?
オリ主ものです
駄作ですが、それでも平気だと思う人だけ読み進めてください


初投稿です。こういった妄想?を文章に纏めるのも初めてです
ふとした思い付きと気の迷いから書き始めてみましたが
……ぜんぜん思ってた形に纏まらないorz
いろいろ書けてる人がうらやましいです
遅筆のため更新の遅い作品になると思いますが
何らかの結末まで書き続けるつもりです
誤字脱字等ミスも多いかと思いますが、どうぞよろしくお願いします


2011.3月
半年振りに投稿を再開しました
1~6話の一部表現、違和感のあった描写などを修正しました



[18270] 01 魔法との出逢い
Name: take◆bdb8c177 ID:973614b1
Date: 2011/03/09 16:42
01 魔法との出逢い



私は親一人、子一人の家庭で暮らしていた

父さまは私が物心つく前に亡くなったと聞いたけれど
余所の子に変な娘と苛められたこともあったけど
優しい母さまが一緒だったから幸せだった
母さまはいろんなことを知っていて、教えてもらうのは面白かった
お父さまの話やお惚気とかも聞いた
小さなアパートの1LDKでの二人暮らし
小学校に入ってからは友達もでき、いっぱい遊んだ
楽しかった




…………それを喪うまでは

強盗が私の家を襲った
住んでいる人が少なく、それなりに良い暮らしをしていたように見えたから
たったそれだけの理由だった

「……生きてね」

そう言い遺して、母さまは死んだ
その事件で私も右目を失った




私は母方の祖父の家に引き取られた
海鳴という海辺の街、そこにある古武道の道場
爺さまはその道場主だった

爺さまが葬儀の時、死んだ母さまに向かってただ一言

「……馬鹿者が」

そうポツリと呟き、しとしとと降る雨の中
傘も差さずに私の手をとったまま
空を見上げ立ち尽くしていたのをぼんやりと覚えている

爺さまは厳しかった
私が無気力になって何も喋ろうとしなくても、構わず普通に接した
また、最低限自分の身を守れるようにと私をしごいた

一年くらいの休学を経て小学三年生となり、新しい学校に通いはじめてからも
殆ど無気力、無反応だったと思う
ほっとけないと構ってくれる子も居て、少しだけ前を向けた気がした

お昼のご飯粒で小鳥の餌付け?みたいな事もするようになった
ちょっと怪我をしているみたいで、あまり飛ぼうとしなかった子
餌をあげるようになってからは、私に気づくとピョンピョン近づいてくるようになった




そして、それに遭遇した

何かよくわからない、のたうつような動きをしている影の塊のようなモノ
それに襲われている小鳥

自分と母さまに重なって見えた

何を考えるでもなく身体が動いた
気がついた時には、身を盾にして吹き飛ばされていた
これで母さまのところに行けると思って、
でも、母さまの最期の言葉が思い出されて、爺さまの稽古を思い出して
身体が勝手に動いて受身を取った
それでも、受けた衝撃に一瞬意識がとんだ

小鳥の弱った鳴き声で意識が覚めた
自分を助けてくれた母さまのことが頭に浮かんだ
守れれば母さま褒めてくれるかな、とか
母さまとの思い出とかが頭に浮かんで
気づけば立ち上がって、傷ついた小鳥を庇う様に襲ってくるナニカに対峙していた

殴りかかっては弾き飛ばされ、なんとか立ち上がり、
弾かれ、突っ伏しては、また立ち向かう

「…………チカラ……力が欲しい」

思わず言葉が漏れた

「うあああああああぁぁぁぁああぁぁーーーーーーーっ!!!」

首にかけていた母さまの形見のペンダントを握り締めて叫んだ
理不尽に命を奪おうとするモノ、ソレに遭遇してしまったというコト
それらに対する抗いの叫び
胸の奥でドクドクと脈打つ鼓動が、握り締めた形見のペンダントヘッドに篭った温もりが
一つに重なった気がした

『呼んで』

声が聞こえた気がした。どこかから人の声が

『力を、抗うことを望むなら、呼んで』

何が起きようとしているのかなんてわからない
けど、このまま死ぬのは嫌だった
母さまが「生きて」といってくれたのに
爺さまが身を守れるようにと、いろいろ教えてくれたのに
せっかく助けたいと思うことができたのに
また理不尽に飲み込まれるのは嫌だったから
だから叫んだ
抗いの力を求めて

「来てっっ!! ワタシの……私の力っ!!!」

握り締めた拳の中のペンダントヘッドが熱を発した気がして
私は光に飲み込まれた

『近接戦用ブラット【ファルケ】 解放』

本を象ったペンダントヘッドがページをバラバラと開いて
光の円陣がページの上に浮かぶと、その中から小振りな刀剣が現れた
私はその柄を引っ掴み抜き放つと、感情のままに体当たりするようにして、その刃をナニカに突き立てた

「おまえなんかぁぁぁぁ! どっかにいっけええええぇぇぇぇっ!!」

突き刺した所にまた円陣が浮かび、光を放った

『封印【ズィーゲル】 敵性体に対し封印処理を実行します』

そして気がついたとき、私は片手で傷ついた小鳥を抱いて
もう片手に小太刀を握って座り込んでいた




傷ついた小鳥を抱いて、打ち身だらけの身体を引きずって家に帰った
爺さまは道場の方に行っているのか、母屋には誰も居なかった

ファルケ?とかいうらしい小太刀は、ナニカを倒した後
ペンダントの発した光る円陣の中に飲み込まれ、消えてしまった

「…………いったい何が起きてるのよ」

自分の部屋に辿り着きへたり込んでしまった穹の呟きに、答える声があった

『はじめまして、新しいマスター』

「訳わかんないモノに襲われて、ペンダントが喋って、光って、剣?が出てきて
もう、何が何だかわかんない…………叫びながら部屋から飛び出して
盗んだバイクで走り出したい気分……できないけど
あー、えっと、あなた?が、さっき助けてくれた、の?
………あの……あ、ありがとう
…………私は小鳥遊たかなし そら……あなたは?」

蒼穹を思わせる澄んだ蒼色の本を象ったペンダント
その中央に埋め込まれた剣?もしくは翼を象った十字架のような装飾が
語りかけてくる声にあわせてチカチカと点滅する

『私は機能拡張式汎用デバイス、銘を【フリューゲル】、主が羽ばたく手助けとして作られ
かつては貴女のお父上、ソウヤ・タカナシと共にありました
よろしくおねがいします、マスター』

「父さまと共に?じゃあ、あなたは父さまの形見でもあったんだ………
ねぇ…………さっきのは何だったの? デバイスって何なの? さっきの影みたいなのは? それに……」

『魔法を行使しました。魔法とは行使者の意志に基づき、魔力を用いて、望んだ効果を得る技術です
デバイスとは、その魔法の行使を補助するための、主の力となる道具です。
マスターには魔法を扱える才能がありました。
その力を求める強い意志により、休眠状態にあった私は目覚めました。
先ほど襲ってきたモノについては、詳しいことはわかりません
私はかなり長い間休眠状態にあったため、情報が足りません』

「……魔法…………傷ついているこの子、助けられない?」

『……スキャンしました。傷が深く、流れた血が多すぎます。治療したとしてもそう長くはもたないと思います』

「…………せっかく守ろうと思えたのに、守れたと思ったのに……何か、何かできないの?」

『……正確に言えば治療ではありませんが、使い魔契約を行えば、また自由に動き回れるようになるかと』

「使い魔? 契約?」

『マスターの魔力で生きる、マスターのために生きる生命として生まれ変わります
自由に生きていた小鳥を主に従う存在に作り変えてしまうことになります
ですから、厳密には助けたとは言えないかもしれません』

「動けるようになっても、私から離れられなくなる……でも、それでも助けたいから……助けたいと思うから
私は……私の身勝手でこの子を助ける。だから手伝ってフリューゲル」

『了解しましたマスター。儀式場展開【エントファルトゥング・ツェレモニー・プラッツ】 儀式法陣を展開します。』

その言葉とともにフリューゲルのページが開き、二つの魔法陣が小鳥と私を中心として展開する
何かが私から小鳥に流れていくのが感じられる。これが魔力?

『今のマスターには儀式に必要な魔法の知識が不足しています。なので、成功するかどうかは
マスターの助けたいという思い次第です。意志を強く持ってください。
魔法を成功させるという意志を、必ず助けるという意志を』

「わかった…………この子は絶対に助ける。助けてみせる」

胸の奥で何かが脈打っている気がする
力が、魔力が、魔法陣へ、小鳥へ流れていく

『呪文省略。未使用領域を処理リソースとして解放。術式構成の不足分を解放領域で補足
魔力バイパス構築開始、素体の解析、損傷部位の修復、再構築…………』

長いような短いような、時間の感覚が曖昧になって、
慣れない魔法に魔力と体力を喰われてクラクラになって
そして……
魔法陣がひときわ強く閃光を放った

『契約【フェアトラーク】……儀式終了ですマスター。お疲れ様でした』

小鳥が居た所には、穹よりもさらに小柄な少女が丸くなっていた
ベースとなった小鳥の名残らしく、耳元と背中にちいさな羽根が生えている
少女はゆっくりと身体を起こすと、瞼を開けた
穹を目にすると、勢い良く抱きついてきた

「おはようございます、ごしゅじんさま」

舌っ足らずな声でそう言って、身体を擦り付けてくる少女に穹はほっと息をついた。
今まで張り詰めていた気が抜けると、疲れきっていた身体がずしりと重く感じられ
彼女は生まれたばかりの使い魔を抱きしめたまま、深い眠りの中に堕ちていった






[18270] 02 新たな日常へ
Name: take◆bdb8c177 ID:973614b1
Date: 2011/03/13 15:30
02 新たな日常へ



目を覚ました時には、いつもの登校時間はとっくに過ぎていた

自分と使い魔の少女に毛布が掛けられているのに気づいて
爺さまになんて説明しよう……と頭を抱えた
――きっと自分から説明してくるのを待っているんだろうけど…………どうしよう




学校は休んでしまうことにして、抱き枕にしてしまっていた使い魔の頭をそっと撫でて呟く

「まずは、この娘の名前を考えないと……」

………気が重いことは後回しにして
辞書を引っ張り出してうんうん唸りながら考える
――母さまが死んでから、初めてかもしれない……こんなに楽しく感じられるのは



「うん……あなたの名前は奏(かなで)。蒼穹に奏でられる鳥の歌声」

「はい、ごしゅじんさま」

「……それから、ご主人様って呼ばれるのはちょっと変な感じなので……
えぇっと………私のことはお姉ちゃん、で」

「……お、おねえちゃん?」

「あーもう、かわいい……」

思わず抱きしめて頬ずりしてしまう

『マスター、一先ず身繕いをした方がよろしいのでは?昨日はそのまま寝入ってしまいましたし』

「そうね、奏の服も用意しないと」


箪笥や押入れの奥を引っ掻き回し、昔の服を引っ張り出してお風呂場へ
爺さまはもう道場の方に行っているらしく、顔を合わせずに済んだ……先延ばしになっただけだが

昨日の擦り傷に若干しみたが、さっぱりしてから今後の事を考える


「爺さまはともかく、他の人に対しては騒ぎにならないように、どうにか誤魔化さないと……
あと、あの襲ってきたモノについて何かわかった?」

『使い魔については元となった動物の姿を取れるので、それで何とかなるかと
それから、襲ってきたモノの正体はコレです』

フリューゲルのページから浮かび上がる蒼い石。ぼんやりと光っており、表面に何か文字らしきものが読み取れる

「これって宝石?」

『莫大なエネルギーを内包しています。襲ってきたのは暴走したエネルギーの塊のようなものです』

「危ないものなんだ・・・今の私たちにできることは何があると思う?」

『まずできることとしては――』




話し合いの結果

・蒼い石に刻まれた数字から、これ一つとは限らない
 また、最近街で騒ぎが起こっているのに関わっているかも知れないので
 見つけた場合、被害を防ぐためにもできる限り回収する
・騒ぎが原因不明のまま、すぐに収まっていることからも
 回収している人が居る可能性がある
・騒ぎになるのはゴメンなので、魔法関係はできるだけ秘密とし
 他人が居る時は奏には小鳥の姿をとってもらう
・魔法の練習を行い、最低限自分の身を守れるようになる

ということが決まった




それから、フリューゲルは結構器用なデバイスらしく、
各ページにさまざまな機能を割り振ったり、追加したり、モノを収納したりできる、とのこと
……物の持ち運びとかにも便利に使えそう
また、埋まっていないページは処理リソ-スとして利用でき、未熟な技能を補うことも可能らしい
使い魔の儀式の時には、これを利用して補助してくれていたらしい

それから、武器として特化フレームである近接戦用ブラット(刀)【ファルケ】と
儀式魔法用シュトック(杖)【ドロッセル】の二つを格納していて
私に合わせて、使いやすいように改良していくと言っていた
必要に応じて、状況に合った新しいフレームを造ることもできるそうな
現在、【ファルケ】はナイフというには大きく、剣というには短いが
今の私にちょうど良いサイズの直刃の小太刀、
【ドロッセル】は飾りっけの無い、シンプルな造りをした杖となっている。

身を守るための鎧である騎士甲冑も設定したし、自分が今使える魔法も確認した
今できる準備はコレで全部完了




「とりあえず、明日はちゃんと学校に行かないとね。奏もついてくる?小鳥モードでだけど」

「うん、いく」

「………後は…………爺さまに説明しないと……」

『ファイトです、マスター』

「…………うん」



道場の方へ顔を出して、爺さまに
大事な話がある、と話を切り出した

「……こういうことがあったの。だから……この娘を家に置いて良い?」

「やっとまともに話すようになったかと思えば、厄介ごとか
……………………ふん……好きにせい」

「爺さま、ありがとう」

「じっちゃま、ありがとう」

「フン」

「……それと、魔法なしでも自分の身ぐらいは守れるように、
危険から逃げれるようになりたいから……また稽古をつけてください」

「……早朝稽古に顔を出せれば、相手くらいはしてやる」

「うん」


こうして、私の新しい日々は始まった








彼は思う
過ぎてしまった日々を、これからの日々を
嬉しそうに、ほんの少しだけその無表情を緩めた孫娘が
妹分を連れて部屋を出ていくのを見ながら

「…………やはりお前の娘だよ、穹は……お前同様厄介ごとや要らんことに巻き込まれる」

部屋の隅にある仏壇に向かってぽつりと呟く

「あの小童に出逢えたお前のように、その中で何かを得ることができればよいが…………」

聞くものの居ない独白は、部屋の空気に溶けて消えた








―ある日の出来事―


爺さまとちゃんと話をするようになってから数日後
私が奏と風呂から出たら、珍しく爺さまとフリューゲルが居間で話をしていた

「そうか、あの小童も為すべきことを果たしてから逝ったか……
娘と孫を置いて逝ったのだから、中途半端なことでは許さぬつもりであったが………そうか」

『はい、あの方と共に在れたのは私の誇りです』

「父さまの話?」

「うむ」

「母さまからいっぱいお惚気とか聞いたけど、爺さまやフリューゲルにとってどんな人だったの?」

「わたしも、おねえちゃんのおとうさまのおはなし、ききたい」

「……そうじゃな、まずはあの小童がわしの前に初めて顔を出した時の話を」

………………

…………

……

そうして、家族の時間は過ぎてゆく






感想の指摘どおり、主人公の使う魔法はベルカ式寄りなので
魔法関連の語句は独語辞書から単語を引っ張って来てます
デバイス台詞の翻訳の方は勉強不足で早々にあきらめてしまったので
基本的に日本語で書いてます……ご了承ください

それから、穹が魔法について知らなかったのは
物心付く前に父が死んで、フリューゲルの方は休眠状態に入ってしまっていたため
話すならフリューゲルが起きてから
また、この世界で穏やかに生きていくのには過剰な力でもある、とも考えていた母が
話す前に強盗事件で死んでしまったからです
また、惚気話の際に、冗談のように話しては居ましたが
穹がホントのこととは捉えてなかった、というのもあります

後日談?を入れても短めですが、キリがいいので今回はここまでです
主人公の両親の話もいずれはきちんと書きたいと思ってます
……早めに書かないと、設定のずれとかが出てきそうな気もしますが



[18270] 03 学校と新しい友達と
Name: take◆bdb8c177 ID:973614b1
Date: 2011/03/13 15:31
03 学校と新しい友達と



窓から差し込む朝日で眼が覚めた

「うん、今日も良い天気みたい」

顔を洗って着替え、道場へ
爺さまに挨拶をして、他の門下生に混じって体力づくりを
まだ技を覚えるには、体力も基礎もできていないそうなので、基礎訓練を反復する
単調な稽古に気が抜けると、爺さまに怒られる……ちゃんと見ててくれるのが分かって
怒られたのに少し嬉しくなって、時間いっぱい頑張った
学校があるのに、朝から朝からけっこう疲れてしまった

軽くシャワーを浴びて汗を流し
朝食までの間、卓に突っ伏して、ぐてーとする
稽古に付き合ってくれた奏も、背中に抱きついて、ぐてー
……行儀が悪いと怒られた

爺さまと奏と三人での朝食を終え、かばんを背負う

「奏、おいで」

と、小鳥に姿を変えた奏を頭に乗せて、首にフリューゲルをかけて部屋を出る

「爺さま……行ってきます」

「ぴぃーっ」

「うむ、行ってこい」


バスに乗って一日ぶりに私立聖祥大付属小へ
登校中、なんか妙に注目されてる気がしたけど
考えてみたら、頭の上に小鳥を乗せた、片目に眼帯つけた女の子がいたら、そりゃ目立つよね
……鏡見てて思ったけど、今の私は感情があまり表情に出ないようだから
無表情気味ってのも追加されているし
注目され続けるのも嫌だったので、早足で校内へ、そして教室に入る


「おはよう、穹ちゃん」

「……おはようございます」

いつも声を掛けてくれている高町さんの挨拶に答えた瞬間、教室の空気が固まった
何か変な事をしただろうか、と首をかしげていると

「は、はじめてちゃんとお返事が返ってきたの~~!!!」

……あれ? ちゃんと返事したことって一回も無かったっけ?
高町さんだけじゃなく、他の人達もざわついている

「アンタ昨日休んでいたみたいだけど、どうしたの? 一昨日まではまともに返事もしなかったのに
それに………頭の上には小鳥も乗せてるし」

「………ちょっと小鳥助けを……あと、体調不良で」

「小鳥助けって……何やってるのよ」

「…………怪我してたこの娘を助けただけ」

「でも、いくら助けて……懐かれている?からといって、その、学校にまで連れて来るのはどうかと思うけど」

「そう?……じゃあ、ちょっと外で遊んでて」

「ぴぃっ」

そう言って、奏を掌の上に移して窓から外へ

「ずいぶん懐かれてるのね……」

まあ、奏のことはおいといて
ちゃんと周りを見れるくらいに心が回復したからには、言うべきことは言っておかないと

「……今まで、ほとんど無視しててごめんなさい
それと、こんな私に声を掛け続けてくれて、ありがとう」

「えっと、いいの。私達が好きでやっていたことだから」

「そうよ」

「気にしないでください」

「どうして喋らなかったか聞いても良い?」

「……嫌なことがあって、他の人が信じられなくなってたし、興味も持てなくなってて
心の内に篭って………それで周りを見ようとしてなかったから……でも、もう大丈夫」


そして今まで喋らなかった分、たっぷりとクラスメイトに質問攻めにされた
バニングスさんが助けてくれなったら、朝稽古の疲れもあって、授業前に力尽きていたと思う
奏については、怪我をしてて逃げれないところを野良犬に襲われてたので助けた、と誤魔化しておいた
その他に喋らなかった分も、ばれずに済んだと思う…………表情に出ない性質で良かった

改めて自己紹介して、今まで根気よく声を掛けてくれていた主要メンバー三人と
それぞれ名前で呼び合うことになった
高町なのは、アリサ・バニングス、月村すずか
ちなみに、高町さん改め、なのはのお家は翠屋という喫茶店をやっているそうな
おいしいお茶菓子が食べれるとのことなので、今度買いに行こう

他のクラスメイトも、ぼんやりとしか覚えてなかった名前と顔を再確認・・・人数が多くて頭がパンクしそう
授業内容は余り覚えてなかったけど、一応板書をある程度はノートに取っていたようで
全然付いていけない、なんてことは無かったから一安心




午前の授業が終わって昼休み、四人でご飯を食べていると奏が花を咥えて戻ってきた
私の頭の上に着地すると、髪に花を挿してくれる

「ありがと……奏」

「ぴ」

「ずいぶん賢いのね? このこ」

「……うん、奏は賢くて良い娘」

「奏ちゃん、って名前なんだ」

「賢いといえばユーノくんもよね? なのはちゃん」

「ユーノくん?」

話を聞いてみると、ユーノくんとは三人が拾ったフェレットだそうな
頭も良く、言葉を理解しているような行動もとったとか

「へぇ、そんな仔もいるんだ」

「今度逢わせてあげるね」

「でも……奏が襲われそうな気がする」

「……だ、大丈夫よきっと」

「ユーノくんはそんなことしないよっ」

「奏ちゃんは空に飛んで逃げれますし、もし襲いそうだったら
ユーノくんには篭の中にでも入ってもらうことにすれば大丈夫だと思います」

奏もだいぶ三人に慣れたみたいで、後の方では撫でられても逃げようとしなくなった

また、翠屋に行かない?と誘われた……が、残念ながら
今日の放課後は病院に行くよう爺さまや先生に言われていたので
次の機会に参加する、ということで
三人と別れ、海鳴大学病院へ

主治医、カウンセラーとお話をして、メンタル回復のきっかけとなった奏とは
できるだけ一緒にいたほうが良いだろう、というお墨付きが出た
――よし、これで大抵の場所で一緒でも文句を言われる心配なし

ただ、奏は元が野生だったせいか、病院の空気は好きではないようで
お話の間、ずっと逃げたがっていた……ごめんね

診察室を出ると、同い年くらいの女の子が車椅子に乗って移動しているのが見えた
あの娘、どこかで見たような気が……どこだっけ?




帰り道、家の傍でまた車椅子を見かけて
ああ、ご近所さんだったのかと納得した
……でも、車椅子に乗った女の子が一人だけで居るって……変じゃない?
親御さんとかは居ないのかな?
何だか寂しそうに見えて、ついつい声を掛けていた

「こんにちは?」

「えっ?」

「……一人?」

「う、うん、そうやけど……あなたは?」

「多分、すぐ近所に住んでる小鳥遊穹。この娘は奏
何か寂しそうに見えたから、つい」

「えっと、私は八神はやてって言います
…………寂しそうやった、か……すんません。気を使わせてしもうたみたいで」

「年は同じくらいだと思うから、そんなに畏まらなくていい
それに私が勝手にしたことだから、謝らないで……別の言葉の方が嬉しいから」

「?…………あっ、あの、ありがと」

「うんっ」

「ぴぃっ」

ちょっと頬を赤らめてお礼を言うところはとっても可愛い
奏も同意する、と頭の上でパタパタ羽ばたいた

「せっかくだから送っていくね?家はどこらへん?」

「えぇっと…………じゃ、じゃあ、お願いします。家はそこの角を……」

………………

…………

……

「うん、家の場所も覚えたし、今度遊びに行くね」

「ほな、期待して待っとくわ」

家に着くまでいろんなことを喋った。家族のこととかは結局聞けなかったけど・・・
到着するころにはすっかり意気投合?してしまった
それにしても、胸に対する情熱には眼を見張るものがある
あの年で末恐ろしい……

『マスターもかなり女の子好きですし、五十歩百歩な感じですが』

「何で知ってるの!?」

『今日一日の学校での態度を見てれば、すぐにわかります。対応が違いすぎです。
一見どちらも無表情ですが、男子に対しては硬い態度を崩さず、最低限しか口を利かないのに
女子、特に可愛い娘への対応は甘々で、ほんの少しですが表情も緩んでいましたから
聡い人ならすぐに気づくと思います』

「……だってだって、女の子って
………可愛くて、柔らかくて、あったかくて、いい匂いがして、気持ち良いんだもん」

『マスター…………変態ですね』

愛機の容赦無い言葉に、かなり凹んだ







どうにか三話です……
魔法少女+友人二人&クラスメイトとのまともな交流開始です
ついでに未来の第三の魔法少女とも

主人公が女の子好きになったのは、強盗が嫌な感じのおっさんだったからです
……その辺も、いずれきちんと書くつもりです
爺さまは、自分のことを家族として想ってくれていると、この一年でわかっていますが
その他の男は基本的に苦手、特に強盗と同年代の中年男性には近づくのも嫌なくらい
話の中で女の子好きな性癖が治らなければ、主要な女の子を堕とすハーレムル-トへ(笑)
………治るどころか悪化していきそうですが



[18270] 04 見回りと新たな出逢いと
Name: take◆bdb8c177 ID:973614b1
Date: 2011/03/11 01:50
04 見回りと新たな出逢いと


ここ数日、放課後になると街を歩き回っている
あの蒼い石はいくつくらいこの街に落ちたのだろうか?
奏にも上空から捜してもらっているが……


お目当ての石ではなく……中年の親父に絡まれている少女を見つけてしまった

――嫌なものを見つけてしまった………とりあえず、蹴るか

相手の背後、というより殆ど足元から
斜め上?に向かって捻じ込むように蹴りを叩き込んでみた

クリティカル!
ロリコンは内股で蹲って悶えている

追い討ちをかけますか?
→はい
  いいえ

もう一発蹴った
膝をつき前のめりになっていたので、一回目より蹴りやすかった
うん、威力も上々

ロリコンに絶大なダメージ
ロリコンは倒れた

ピクピク痙攣している変態は放置して、絡まれていた少女に問いかける
おお、かなり可愛い娘だ……
綺麗な金髪を頭の両側で尻尾みたく纏めてるのが、黒系の服に良く似合ってる

「……大丈夫?」

「…………え、えっと」

「変態は滅んだから、もう心配無いよ」

「あ……あ、あの………み、道を、尋ねていただけなんです」

「…………え?」

「別に襲われていたとか、そういうことでは…………」

「そうだったんだ…………でも、あの男はちょっと変態っぽかったから問題なし、うん」

『(マスター・・・本当ですか?)』

「(うん、何かこう、邪念センサーにビビッときたし)」

『(邪念……マスター自身が邪念の塊のような気が
ああ、同属嫌悪ですか?)』

失礼な……若干嫌悪感というか、筋違いな私怨も混じっていたかもしれないが

「…………」

あ、ちょっと過激だったかな?引いてるっぽい空気……無表情気味だし、怖がらせちゃったかな?
でもでも、こんなに可愛い娘なんだから、男に任せるなんて勿体無い
ここは私が道案内を

「ところで、道を尋ねてたって、何処に行こうとしてたの?
この人はもう動けないだろうし、責任とってそこまで案内するよ」

残念ながら、ここには「誰のせいだ!」とツッコミを入れてくれる人はいなかった

「あ…………は、はい……お願いします
行こうとしていたのは………」

金髪の娘が行こうとしてたのは、高級マンションの並ぶ街の一角
結構裕福な家の娘なのかな?それとも知り合いが住んでるとか?

せっかく知り合ったのだからと自己紹介
取り留めの無いお喋りをしながら、夕暮れの中を歩き出す

…………昏倒している中年男は放置したまま




「ふーん、フェイトはお母さんのお使いで来たんだ」

……お母さん、か

「穹?」

「ううん、大丈夫………なんでもないよ」

「でも……」

「なんでもない……夕日がちょっと眩しかっただけ……そう、それだけ」

「穹は……お母さんが」

「いいの……ありがと、フェイト」

優しい娘だ……きっと良いお母さんなんだろうな
ちょっと羨ましいかも




「それじゃ、ばいばい」

「うん、ありがと」

「また、逢えるといいね」

「うん……またね」

何事もなく目的地に到着
また逢えることを期待しながら、フェイトと別れた
結局どんな用事なのかは聞けなかったけど、用事が済むまではこの街に居るみたいだし・・・
あれ?学校とかはどうしてるんだろう?
…………今度逢ったときにでも聞けばいいか





「(それにしても、何もなかったね)」

『(はい、残っている石が全て回収されている可能性もありますし)』

確かに、他にも探している人?がいるっぽいし……

最近起きた不可解な事故、事件について調べて
動物病院の事故現場や、大きな樹が生えたという場所に行ってみた

どちらの場所でもフリューゲルが魔力の残滓を感知したから
あの石が関わっているんだと思うけど……
動物病院では塀や道路が穴だらけになっていて
樹が生えたという場所では、木の根の跡?がある以外には何も残っていなかった
特に樹の方は、すぐに消えてしまったという話だから
誰かが対処しているのは確実、というのがフリューゲルの考えで、私も同意見

他に回収している人がて、何も起きないなら、この見回りは無駄骨折りなのかな?
……でも

「(そうだね………やっぱり事件なんて起きないほうが良いよ)」

「ぴぃっ」

「奏、おかえり(どうだった?)」

「ぴ(なんもなかった)」

『(明日のこともあります。今日はここまでにした方が良いかと)』

「うん、帰ろう。(……ごめん、探索魔法がうまくできないせいで、奏に見回りばかりさせて)」

「(へいき。おねえちゃん、しんぱいしすぎ)」

「ありがと……よし、お菓子を買おう」

『(マスター?)』

「翠屋?だっけ、なのはのお家のお菓子は美味しいって話だし
奏と爺さまの分も……爺さまって、甘いの大丈夫かな?」

「(ほんと? やった!)」

『(心配でしたら、甘さ控えめなのを見繕ってもらえばよろしいのでは?)』

「そだね、そうしよう」





少々遠回りになってしまったが、美味しいそうなお菓子を買えた
あと、なのはのお父さんは爺さまの知り合いらしい

「君も何か武道の類をやっているのかい?」

といきなり聞かれたから吃驚した。道場をやっている爺さまの孫だと言ったら

「ほう、あの鉄心さんのお孫さんか……」

と、意味深な言葉が返ってきた……
試しに道場で一勝負!とか言い出したりして………まさかね

あと、驚いたといえば、なのはのお母さんが凄く若々しかったこと
なのはのお姉さんと並ぶとパッと見、姉妹のよう……

優しそうな母親と一緒に暮らしているなのはが羨ましかった
……やっぱり、母さまが居ないのは寂しいよ





帰り道、ポツリと呟く

「ねぇ……フリューゲル」

『何でしょう?』

「……魔法で、死んだ人と話すことってできないのかな?」

『マスター…………』

「できることなら生き返って、傍に居て欲しいよ
…………それが無理なら、お話しするだけでも」

『それは………できません』

気づけば涙が零れていた
心の内に塞き止めていた想いが、涙と共に溢れ出してしまう

「っく……寂しいよ………
……母さまが居ないのが……うぅ……
……もう逢えないのが………声を聞けないのが・・・
……抱きしめてもらえないのが…………頭を撫でてもらえないのが……
……哀くて………辛いよぉ……」

『マスター……魔法は万能の力ではありません、残念ながら』

「うん………わかってる、これが我侭だって
でも……でもぉ…………」

『悲しい時は思いっきり泣いてしまえば良いと思います
前に歩き出すのはそれからでも…………
たとえ疲れて立ち止まることがあったとしても、
また歩みだすまで、私は常にマスターの傍に在り、支え続けましょう』

「おねえちゃん…………かなでもずっとそばにいるから……」

「うん…………うん………」

結局、私は家に帰り着くまで泣き続けていた

「天国の母さまが心配しそうだから……もう泣かないつもりだったのにな………」

『マスター……』

「うん……もう大丈夫。ありがとね、二人とも」

うん、いつまでも弱音ばっかり吐いてられない
私は理不尽が来るならそれに抗って
可愛い娘とイチャイチャして
幸せになるって決めたんだから
死んだ時に、母さまに楽しかったよって胸を張れるような
そんな生き方してやるって

そのためにも……
まずはお風呂で奏と洗いっこ♪










四話です。今回はかなり難産でした
気づくと、自分が書こうとしていた話からずれている……何故だ
まだ四話目なのに、主人公の性格が暴走気味に
このままだと、書いてる自分の手にも負えない展開になりそうな気が……

それから、フェイトが主人公達の念話に気づかなかったのは、無差別送信とは異なり
相手指定での念話は指向性が高い、という設定で書いているからです
拡声器と電話?みたいなイメージで。公式では違うのかもしれませんが

穹と奏で蒼穹……そんなつもりはなかったんですが、確かにそう読めますね
……名前に関わる話でも書くことがあったら、採用させてもらうかもしれません



[18270] 05 再会と三つ巴?
Name: take◆bdb8c177 ID:973614b1
Date: 2011/03/09 17:42

05 再会と三つ巴?



「それじゃ爺さま、行って来ます」

「いってきます」

「うむ」

今日はすずかの家でお茶会
可愛いお出かけ着に着替えて、家を出る
すずかの家の場所は知らないので、翠屋に行ってなのはと合流

高町さんちのお兄さんも一緒らしい
なんと、すずかのお姉さんの忍さんと恋仲だとか

バスに乗って月村邸へ
メイドさんなんて初めて見た……本の中だけの存在じゃなかったんだ
大きなお屋敷に若干気後れしながら門をくぐる

それにしても………凄い猫屋敷

「どうも、お邪魔します」

「いらっしゃい」

「遅いわよ?」

「お待たせなの。それで、この仔がユーノくんです」




穹の頭の上で奏は戦々恐々としていた

なのはさんがかごからだした‘ふぇれっと’に
おねえちゃんはきょうみしんしん、みたいだけど
てーぶるのまわりのねこが、ねこが…………こっちみないで
そのめは‘えもの’をみるめ……

「(お、おねえちゃ………た、た……)」

ねんわでたすけをよぼうかとおもったけど……なにをしてもおそわれそうで
う、うごけない……(汗)
へびににらまれたかえるって、こんなきもち?
あ・・・あの‘ふぇれっと’とかいうこも、やっとまわりにきづいたみたい
ひやあせながしてる、あは、あははは……
とりあえず、みちづれかくほ
こういうとき、なんていうんだっけ?………ようこそじごくへ?




穹達は和やかに言葉を交わしているが
猫さんsに狙われる立場の奏とユーノは、いつ襲い掛かられるか気が気でない

(ペット限定で)張り詰めた空気が、我慢し切れなかった一匹の子猫の行動によって、弾けた

テーブルの上に居たユーノは五、六匹の猫に追われて、
テーブルや椅子の下、なのは達の膝の上など、部屋中を駆け回って逃げまわる
奏は飛び掛ってきた数匹を避けて舞い上がり、上空へ避難

給仕をしようとした部屋に入ってきたファリンさんが
ユーノと猫さんsに脚を取られ、こけそうになったのをなのはが支え
それに気を取られて、若干高度を下げてしまった奏に子猫がテーブルの上から飛びかかり
その仔とぶつかってしまったお盆から、いくつか茶器が落ち
穹がそれをギリギリで掬い上げ、すずかが猫さんsを叱り、アリサがユーノを摘み上げて救助

すずかに叱られてやっと猫さんsがおとなしくなり、ほっと一息

一騒動収まった後
恭也さんと忍さんは、さっさと別の部屋へとイチャイチャしに行ってしまったので
年少組は明るいテラスへ移って、談笑開始

その時
空気が震えた
それは魔力資質を持ったものにしかわからない波動
蒼い石=ジュエルシードが発動した徴(しるし)

「「っ!!」」

穹と奏が
なのはとユーノが
ほぼ同時に同じ方向へ視線を向けた
その瞬間、庭の向こうの、小さな林になっているところで閃光が立ち昇った

「何なの、あれ?」

「光の……柱?」

魔法について何も知らず、それゆえ
ただ起きた現象について疑問の声を上げる二人の少女

「(ジュエルシード!?まずい、近すぎるっ!)」

「(これじゃ、すずかちゃん達に……)」

親友を巻き込みたくない、という思いから
また、知られることで嫌われるかもしれない、という恐れから
咄嗟には動けない一人と一匹(?)

「(……行こう)」

「(うん)」

『(了解です。マスター)』

たとえ相手に厭われることになったとしても、
自分に良くしてくれた相手を喪いたくないと
すぐに動き始めるのは一人と一羽、そして一機

「ごめん、ちょっとすることができたから、フリューゲル……行くよ?」

そう言って、走り出す

「フリューゲル、結界構築……奏は皆を」

『了解、隔離領域【シュペルング・ベライヒ】』

「ぴっ(うん)}

「「「えっ!?」」」

結界によって隔離され、林の中の光の柱も、穹の姿も見えなくなってしまう
アリサとすずかは、純粋に人の姿が消えたことに
なのはとユーノは、一般人だと思っていた穹が魔法を使用したことに
それぞれ驚きの声を上げた

「(あの娘、魔法を…………ってそれどころじゃない。ジュエルシードを!)」

「あっ、ちょっと待ってよ」

しばらく固まっていたユーノが我に返り走り出し、それを慌てて追いかけるなのは
一人と一匹の姿も結界の中に消えてしまった

「……いったい何が起こっているのよ~~~!!?」

置いてきぼりをくったアリサの怒号が空に響いて、消えた



先行する穹は、魔力光とともに蒼みがかった騎士甲冑を纏う
動きやすいように、上衣は袖なしで、長めのスカートには深いスリットが入っている
胸元に装甲、手首まで覆えるくらい大き目で、頑丈そうな指貫グロ-ブ、脚にはゴツいブーツのような装甲靴
女の子らしいところと言えるのは、スカートと襟についたリボンぐらいか
そんな本格的な戦闘用装束となって
走りながら、今は左手首から下げられているフリューゲル、そのページから得物を抜き放つ

「フリューゲル、【ファルケ】を……(あと、奏は皆を守って)」

『近接戦用ブラット【ファルケ】展開』

「(わかった、おねえちゃん)」

奏も舞い上がり、蒼い宝石の発動地点とお茶会の場所の間を遮る様に位置を取る
ほんのりと淡い青緑色をした魔力光をその身に染み出させながら、その意識を臨戦態勢へ

後を追うなのは達も、驚きで半ば思考停止状態になりつつも
穹に倣って、バリアジャケットと杖を用意する

戦闘準備万端で到着したそこには

………………

…………

……

猫が居た
林から頭一つ抜き出て見えるほど巨大な・・・子猫が

「…………………………」

空気が凍った

「待ってよ穹ちゃ…………」

追いついてきたなのは達も固まった
その場に居た全員の心情を一言で表すなら

――何これ

「これって……何なの?」

「えっと……子猫の大きくなりたいっていう願いが……正しく叶えられたんじゃないかと」

なのはとユーノの気の抜けるような会話
初めて戦った時のようになるのではないかと
気を張っていた穹は、脱力感にため息をついた

「とりあえず、封印しよう。フリューゲル、【ドロッセル】を」

『了解』

【ファルケ】を収めて、杖を構える
そして、封印のための魔法を

『接近警報!』

「っ!?」

放とうとした瞬間に、巨大な子猫に金色の魔力が放たれた

「もう一人魔導師が!?」

ユーノが驚きの声をあげる
放たれた魔力は電撃となって、穹となのはにも襲い掛かる
とっさに盾【シルト】を張るが、衝撃に耐え切れず弾き飛ばされる

「誰!?」

戦いの舞台となった林の傍に立つ電信柱の上
そこに立っていたのは、
身体にフィットするようなデザインの黒いバリアジャケットをまとった
金髪赤眼の少女

「フェイト?」

「穹!? どうしてここに?」

最近知り合った少女が現れたことに驚く穹
フェイトもまた穹がこの場にいることに戸惑いの声を上げる
が、首を振って、気を取り直したように言う

「ごめん、たとえ穹でも渡せないものがあるから……いくよ」

「どういうこと? 渡せないものって? もしかして……」

「キミはこれが、ジュエルシードがどんなに危険なものなのか、わかっているのか!?
それに渡せないって、もともとジュエルシードはスクライアが発掘したもの」

「いったい何がどうなっているの? 穹ちゃんはあの娘と知り合いなの?」

間にユーノとなのはが入って言葉をかけるが、尽く無視される

「フェイトも石を集めてるの? それがお使いなの?」

「…………なにも話すことなんて無い」

「話してくれなきゃわかんない」

「人の話を聞いてっ!」

「言えない……穹、退いて」

「危ないものをフェイト一人で集めるの? 訳を話してよ
手伝えることがあるなら……」

「…………穹には関係ない」

「友達になれたと思っていたのは、私だけだったの?」

「ねえっ、二人とも!?」

「…………」

「……何か無茶しようとしているなら、止めるよ………フリューゲル!」

『【ファルケ】展開』

再びの抜刀
相対するのは
蒼き魔力の翼を広げ、小太刀を構える蒼衣の騎士と
杖から鎌状に、金の魔力刃を延ばす黒衣の魔導師
疾る風と迸る雷
二人はぶつかり合い、鍔迫り合う



そして……

二人の会話に置いてきぼりをくった白き魔砲少女は

「……だ・か・ら、人の話を聞いてってばーーっ!!」

二人まとめて桜色の魔力砲撃で撃ち墜とした




「………なんて恐ろしいことを」

傍で見ていたユーノは、恐怖にその身を震わせた

また、結界外からその様子を垣間見ていた、幼き使い魔は
後に語った

「…………お、おねえちゃんたちが……ぴんくいろのひかりのなかに……き、きえてしまうかとおもったの」

と…………




「酷い目にあった……けふっ」

「……びっくりした」

「ふ、二人が話を聞いてくれないのがいけないの……」

バリアジャケットや騎士甲冑からプスプスと煙を上げているし、顔も煤けてしまっていたが
極太のピンクの閃光の中から無事生還? して、ほっと一息

なのは自身も、自分の砲撃があれほど広範囲を吹き飛ばすものだと思っていなかったため
二人の間を分かつつもりで撃った結果に少々顔が引きつっている
この砲撃は、主の意を汲んだレイジングハートによって
魔力の密度が薄く、威力の抑えられた威嚇仕様に変更されていたため
砲撃を受けた二人の実際のダメージは、少々魔力を消耗した程度で済んでいた


三人と一匹(?)が座り込んでしまっている、そのすぐ傍で
すっかり忘れられていた巨大子猫が、ズシンズシンと楽しげに歩き回っているのに気づき

「…………はぁ……」

と、そろって大きなため息
穹が気を取り直して言葉を発する

「……とりあえず、あの猫をどうにかしよう」

………………

…………

……

「リリカル、マジ狩る、ジュエルシードシリアルⅩⅣ、封印」

戦闘の意図のない相手に対し、こちらは魔導師が三人(と一匹?)
封印自体はあっさりと終わった

が……

「……それを渡して」

「いったいどういうつもりなんだ、君は!?あれの危険性を理解して言ってるのか!?」

「どうして戦ってまで欲しがるの? お話して」

「……言っても意味がない」

問答無用で杖を向けるフェイトと
場合によっては捕らえてでも話を聞こうとしているユーノ
杖先を下げて、ただただ相手との会話を求めるなのは
緊迫する空気の中、なのはの杖の先に浮かぶジュエルシードを掻っ攫ったのは穹

「穹!?」

「穹ちゃん!?」

「フェイトもなのはも一旦退いて……私は部外者だけど、どっちとも知り合いだから
二人の言い分を聞いてから渡すね」

「穹、それを渡して」

「嫌、襲ってくるなら私は逃げる」

「穹ちゃん、それはユーノくんのものなの」

「そのフェレットの?……まさか、なのはを巻き込んだの?」

「え? ……そ、それは……」

「っ!」

穹がなのはとの会話に気をとられた瞬間、フェイトが動いた
穹の掌の上の蒼い石=ジュエルシードを、その俊足を活かして掬い上げ、離脱を試みる

「フェイトッ!」

「ごめんね、穹……時間がないの」

「(――っ!)」

黒き杖の先端から強烈な閃光が放たれ、それが収まった時には
少女は結界内から姿を消していた








五話目にして親友二人に魔法バレ……ちょいと早過ぎな気もしますが

書きながら思ったんですが、月村邸は小動物系の使い魔にとって鬼門ですね
一般人にばれない様に振舞うと、逃げる以外に選択肢がない
そして、なのはさん、早くも魔砲少女の片鱗を見せております(笑)

今回はあまり主人公の暴走がなくて一安心……いつまで大人しくしててくれるのやら


毎回、好意的な感想に励まされています。ありがとうございますm(__)m
今後もよろしくお願いします
少々リアルの方が忙しく、しばらく更新が滞るかもしれません
申し訳ありませんが、気長にお待ちください



[18270] 06 親友と魔法バレと
Name: take◆bdb8c177 ID:973614b1
Date: 2011/03/09 17:50
06 親友と魔法バレと



海鳴、その一角にある高級マンション
その屋上に金髪黒衣の少女が舞い降りる

「フェイト!大丈夫だったかい?」

「心配ないよ、アルフ。ほとんど攻撃は受けてないから」

心配して駆け寄ってくる赤髪犬耳の使い魔、アルフに答えながら、思う
こないだ初めてできた友達?の少女のことを
あまり表情が変わらないらしい少女の、一生懸命な言葉
自分を心配してくれている、そのことを思って、ほんのり嬉しくなって
でも、彼女と敵対していることに、少し後ろめたくなって
そして、最近構ってくれない母のことを連想してしまい、表情を曇らせる

ううん、きっとジュエルシードを集めきれば、母さんもまた笑ってくれる・・・
私は母さんの娘なんだから・・・母さんの手伝いくらい、ちゃんとやり遂げなきゃ

そう言い聞かせる

物思いに沈む主を、赤き使い魔が心配そうに見つめていた




そして
上空からそのやり取りを見つめる瞳が一対





「ふぅ・・・フリューゲル、結界解除」

『了解です』

今日はもう、これ以上の戦闘はないだろうと、ほっと一息
そこに、なのはとユーノが迫る

「穹ちゃん!どうして魔法が使えるの!?それに」

「君はあの金髪の娘と知り合いなのか!?」

「……えぇっと」

「穹ちゃん!!?」

あまりの剣幕に一歩後退
なのは達が一歩迫る
また一歩後退
一歩迫る

…………

……

『ひとまず、テラスに戻るのは如何でしょうか?
アリサ様とすずか様も、お二人のことを心配なされているでしょうし』


フリューゲルの助け舟に、なのはが乗ってくれて、安堵の吐息
なのはと共にバリアジャケットを解き、子猫を抱いて林の中を引き返す
そのまま、先ほどの戦闘で再会したフェイトのことに思いを馳せ
今は此処に居ない奏に、念話を通して声を掛ける


「(咄嗟に奏に声を掛けたけど……間に合ったかな?奏、そっちはどんな感じ?)」


上空からフェイト達を見つめていた瞳の持ち主は、奏だった
彼女は結界の外に居たために、フェイトの撹乱の影響をほとんど受けず
穹の言葉に応じて追跡していたのだ


「(えっと、もうひとり、あかいかみのひとがきて、ふたりになった。
なんかおはなしてるけど、とおくてきこえない)」

「(気付かれたくないから、あんまり近づき過ぎないようにね?
……悪いけど奏、しばらくフェイトの見張りをお願いして良い?)」

「(まかせて……おわったら、またけーきたべたい)」

「(うん、いいよ。それじゃ、お願い)」

赤い髪の人、か……仲間?家族?…………どんな人なんだろう?




考え事をしているうちに月村邸に戻ってきた
そこには…………怒れる鬼神、もとい仁王立ちのアリサが待ち構えていた


「さて、尋問を開始するわ……被告人二人は前へ」

テラスのテーブルセットが法廷のごとく並べられ
庭の芝生に正座させられた私達に、裁判長?のアリサが宣告した
なにこの迫力・・・アリサって一般人だよね?
なんか、極道(実際に会ったことはないけど)もかくや、という表情をしている
……悪いけど、たぶん元凶の、そこのケダモノに生贄になってもらおう
うん、今のアリサに逆らうのはマズイけど、ものすっごく厳しくなりそうな尋問は遠慮したいから
仕方がないよね?

挙手して発言の許可を求める

「ん、アリサ」

尋問し始めようとしたのを遮った私に、アリサがギロリと、気の弱い子供ならトラウマものの視線を向ける
……怖すぎる。ちょっと、声が震えてしまったかもしんない

「……何か?」

「そこのフェレットもどきが、多分一番事情を分かってると思う。だから、できればその仔から」

「へ~~~?キミ、何がどうなっているのか知っているの?」

「き、きゅ~ん」

「ひ、ひどいよユーノくん!見捨てないでっ!!」

「きゅ~~~(無理無理!無理だよ!あの人怖すぎる!!)」

「薄情者~~~~!!」

鬼神の視線に、ただのフェレットのふりして、何とか難を逃れようとしていた小動物は
必死の形相のなのはに首を絞められ、ガクガク揺さぶられている
あ、前足でなのはの手を叩いてる。降参?って、あ、力尽きた

「なのは、なのは、その仔が死んじゃったら、説明役が居なくなっちゃう」

「え、あ……ユーノくん!?」

「げほっ、がはっ、えほえほ、ぜ~は~ぜ~は~……し、死ぬかと思った」

「じゃ、あとはよろしく」

「え?」

「ほ~~~アンタ、喋れたんだ……それじゃ、洗いざらい吐いてもらわね?」

「あ、ぅわあーーーーーっ」

合掌

チーン



「……ふーん。つまり、自分でできることをやろうとしたけど、果たせず、仕方なく
魔法の資質のあったなのはに力を借りていた、と」

アリサの確認の言葉に、過酷な尋問に疲れ果てたユーノが答える

「はい……僕の力不足のせいで、なのはに迷惑を」

「もうっ、それはいいの。私は自分で、自分の意思で、ジュエルシードを集めるって決めたんだから」

「ま、アンタたちの事情は大体わかったわ……判決は………………有罪」

アリサの言葉に応えて、すずかがユーノを手早く縄で縛り上げる

「えっ?」

「どこから縄を……」

そして、縄の端を握るアリサが蓑虫状態のユーノを、風斬り音がするほどの速度で振り回し
十分に勢いがついたところで、パッと縄から手を放した

「あ~~~~~ぁぁああああ~~~~ぁぁぁぁ~~………」

ドップラー効果のついた悲鳴を残して森の方へすっ飛んで行くユーノ
それに気をとられ棒立ちになったなのはを、すずかが縄でぐるぐる巻きにしていく

「あ、え? 何?」

「ごめんね、なのはちゃん」

巻きついた縄を勢いよく引かれ、なのはは独楽のように回転させられ目を回してしまう
縄が解けきったあとも、まだよろよろと回っている
ふらいついて倒れそうになったなのはを、アリサとすずかが抱きとめる

「馬鹿なんだから、もう……少しは友達を信用しなさい」

「そうだよ、なのはちゃんが一人で抱え込まなくても良いんだよ」

抱きしめられ、親友からかけられる言葉に、へにゃりと表情を崩し、嬉しそうな顔を見せるなのは
親しい友人同士で作られるその輪の中に、入りたい、けど、入っていいものか迷う穹に

「ほら、アンタも来なさい」

「ん」

その言葉に、ほんの少し表情を緩めると、三人目掛けて思いっきり跳び込んだ




「……で、穹はどうして?」

抱きついたり、寄り掛かったりしあって、女の子の身体を堪能(主に穹が)しながら、会話再開

「私は、奏が襲われてたから……たぶん、そのジュエルシードの暴走体とかいうのに
助けようとして、でも、できなくて……
それで、父さまの遺してくれたフリューゲルに助けてもらったの……フリューゲル、自己紹介を」

『初めまして、なのは様、アリサ様、すずか様
私は機能拡張式汎用デバイスのフリューゲルと申します
どうぞよろしくお願いいたします』

「へーー。穹ちゃんのデバイスは、本の形なんだ……でも、さっきは剣とか杖を持ってなかった?」

「あれは、普段はフリューゲルの中に仕舞ってある」

「仕舞うって、その中に?杖とか結構長さがあったけど……入れれるものに制限とか無いの?」

「本来の大きさが、このくらい」

待機状態から起動

『書物形態【ブーフ・フォルム】』

小さなペンダントヘッドから、百科事典サイズに
表紙の四隅には装飾の金具、中央には剣十字の両手が翼になった、そんな紋様が施されている

「たぶん、学校の勉強道具なんかは全部入ると思う」

「……ちょっとした旅行の時とか、荷物が多い時とかに便利そうね」

「せっかくの魔法を使って、それは……」

アリサのなんというか、即物的な?考え方にすずかが苦笑している

「今入ってるのはこれとこれ」

「水筒と……救急箱?」

「ああ、怪我すると危ないから、なのね」

「うん、私は治癒魔法、まだちゃんと使えないから」

そのまま魔法を話の種に、女の子らしい姦しいやりとりへ



「(……な、なのは…たすけ……)」

「あ、ユーノくんのこと、すっかり忘れてた」







何とかかんとか、六話です
今回も大人しめ・・・嵐の前の静けさ?
これからは、更に原作ブレイクな流れになりそうです

>なのはさんが大暴走
>魔砲少女
書いていた時は結構ノリノリで、Asの時に鉄槌の騎士さんを同様の台詞で攻撃してるから大丈夫♪
と思ってましたが、今回は攻撃されてたわけじゃないのに……
なんか原作本編よりも相当危険なキャラにしてしまった気が(汗)
…ということで、前回の砲撃を含め、内容を少々修正しました



[18270] 07 備えあれば……
Name: take◆bdb8c177 ID:4e81e24f
Date: 2011/03/11 04:15

07 備えあれば……



さて、蓑虫状態で猫の玩具になっていたユーノを救出し
情報交換と今後の相談に移る

「……次元震?」

「そう、ジュエルシードに内包されているエネルギーの量は莫大過ぎて
本格的に暴走した場合、世界における災害、地震みたいな次元震が起こってしまうんだ」

「その、次元震ってのが起きたら、どうなるの?」

「少なくともこの街は消し飛ぶことになると思う」

「す……少なくとも、ですって……」

「だから、ジュエルシードをきちんと封印するまで、気を抜かず
衝撃を与えたりしないように注意すること」

魔導師初心者がなのはだけなら、大抵の場合傍に居る自分が助言、助力すれば済むが
知識のない穹が一人の時に何かあったら、洒落にならない事態が起こりかねない
そのため、ユーノは自身が知りうる限りのジュエルシードの情報を二人に語った

「……それにしても、ほんとにアンタ考古学者だったのね」

「アリサちゃん、信じてなかったの?」

「いや、だって、ねぇ……いきなり魔法がどうの、って言われても
手品や腹話術のほうが、まだ信じられるじゃない」

「………夢がないね、アリサ」

「なんですって……」

「それより、こんな危険物なのに探査魔法で見つけれないって……
やっぱり、皆で手分けして探すしかないのかな?」

結局、見つけるには足を使うしかない
そんな結論に落ち着こうとした、その時

「話は聞かせてもらったわ!!」

バーーーンと開け放たれる扉
この屋敷の主、月村忍がテラスに降臨した
苦笑する恋人、高町恭也がその後に続く

「お、お姉ちゃん…………」

「……どこから聞いてたの?」

「ふっふっふっふ、ほとんど最初からよ!」

「この家のプライバシーはどーなってるのよ!!」

「あれだけ騒いで、気にするなと言う方が無理よ
実際、かなりまずい事になっているようだしね」

「話を聞いた限り、確かに対応できる能力のある人間は限られるんだろうが
探すだけなら問題はないんだろう? 少しは家族も頼れ」

「……お兄ちゃん」

「とりあえず、そのジュエルシードとやらを生物と接触させなければ良いのよね」

「あ、はい、その通りです
機能を発現させるような、意思を持った存在と接触しない限り、暴走が起きる可能性はかなり低いです
ジュエルシード単体での暴走思念体も、この世界への落着の衝撃によるものと推定されるので
これだけ落下から時間がたった今となっては、新たに発生することは無いと思います」

「これでも色々と伝があるの。探すだけでも任せなさい
見つけた場合は、人や動物が近づかないように警備員を配置して隔離
騒ぎにならないように工事でも装うから、安心なさい」

頼もしい兄と姉の言葉に、場の空気が明るくなる
が、魔導師二人と一匹は黒衣の少女を思い浮かべ、表情を翳らせる
戦闘もこなせる魔導師が出てき場合、封印を行えない非魔導師だけでは
ジュエルシードの確保はほぼ不可能だからだ

「……でも、もう一人、別の魔導師が………」

「ジュエルシードを奪おうとしているのか? だが、願いを叶える能力は不完全という話では?」

「機能が不完全なことや、その危険性について知らない、信じてないのかもしれません
もしくは、内包しているエネルギーを何かに流用しようとしているのではないでしょうか」

「う~ん、対処しようにもどうにもできないわね
見つけるだけ見つけて、なのはちゃん達に封印してもらうしかないわ
他にできそうな人は居ないの? 出来れば学校は休ませたくないけど……」

「魔力の回復はまだ不完全ですけど、発動前のものなら封印できると思います
でも、不測の事態があったときのために、バックアップが居るほうが望ましいです」

「………じゃぁ、奏に行ってもらう」

「え、奏ちゃんに?」

「……奏は私の使い魔だから……手伝ってくれると思う」

「使い魔? そんなのまで居るんだ」

「穹……さっきの‘助けようとして、出来なくて’って………」

「………普通のやり方では間に合わなかった……だから」

「…………そう」

「そういえば、その奏ちゃんはどこに?」

「……ちょっとお使いに」




「それじゃ、捜索は私達が担当して、発動前のもの発見したら
放課後はなのはちゃんと穹ちゃんに、二人が学校に行っている間はユーノ君と奏ちゃんに封印してもらう
発動してしまった場合は、学校を早退してもらうしかないわね」

「「「はい」」」

「アリサちゃんとすずかちゃんも、なのは達を支えてやってくれ」

「はい」「わかりました」

「それじゃ、私達はもう動くけど、皆はゆっくりしていって
ノエル、ファリン……後のこと、よろしくね」

「「はい、畏まりました」」

ジュエルシードの封印や暴走体との戦闘などを考えると
二人に無理をさせる訳には行かない
失敗すれば街そのものが消し飛びかねないのだ
そのためにも、早急に捜索の手を構築する必要がある
二人はそれぞれが協力を求めるべき相手にどのように説明、説得をするか
思考を巡らせながら歩き出した




「(奏……聞こえる?)」

「(おねえちゃん? なにかあったの?)」

「(フェイトの隠れ家は見つかった?)」

「(えっとね、おうちがいっぱいある、おっきいしかくいいえにおりてった)」

――やっぱり、あの時案内した高級マンション街のどこかに潜り込んだんだ
   今すぐには動けないけど、今度お話しに行こう

「(ありがとね。ちょっと別のお仕事をお願いしたいから、一度戻ってきて)」

「(わかった)」

残った皆との会話の合間に、奏との念話を終え
ユーノに問いかける

「……ねぇ、覚えてたら便利な魔法ってどんなのがあるの?」

「あ、私も聞きたい……あの時みたいなのはもう嫌だし」

なのはが言っているのは、大きな樹が出現した時のことらしい
ぶっつけ本番で探査、遠隔地への封印の両魔法を使用して、なんとか事件を長引かせずにすんだ、とのこと

「えーと、まずバインド系かな。使いこなせればかなり応用が利くから
そこまで行かなくても、動き回る相手の行動を制限できるし、覚えていて損は無いよ
暴走体相手にも有効なはず。それから……」

そんな感じで魔法の先輩から、夕方まで講義を受けてから家に帰った
戻ってきた奏も遅れて参加、暴走してしまった時の対応方法について素人ながらの相談も
アリサやすずかを置いてきぼりにしてしまった気がする……今度なんか埋め合わせしないと
と思っていたが、後日聞いてみると
意外にも、現実にある魔法と空想の中の魔法の違いに楽しんで聴いていたらしい

ただ、ユーノとなのはの使う魔法と私と奏の使う魔法はタイプが違うんだそうな
確かユーノのはミッドチルダ式で、私のがベルカ式だったかな
そのせいで、便利な魔法やそれらの使い方を教わっても、そのまま私には当てはめれない
でも、フリューゲルの中にも似たような使い方をする魔法がいくつか入ってたし
どういう魔法が必要か相談すれば、それに合わせて一緒に術式を考えてくれる
細かい構成はフリューゲル任せだけど、奏・フリューゲルと一緒の共同作業は楽しい



熱中しすぎて夜更かししてしまい、翌朝の早朝練習に遅刻……朝っぱらから爺さまに説教されたorz



「全く何やってんのよ」

一日の始まりから怒られたし、奏も居ないし、で凹んでいると
アリサに問いただされ、訳を話して呆れられた
なのはも「にゃははは……」と苦笑している
ショボーンと更にテンションを下げると、すずかが頭を撫でてくれる

「よしよし……」

「……私の味方はすずかだけ」

そのまま抱きついて甘える
すりすり……あぁ、いい匂い………ふぅ……やっぱり女の子って良いなぁ…………
そのまま胸元に顔をうずめるように、すずかを堪能する
抱きつかれ、甘えられてるすずかも、そのまま頭を撫で続けてくれて
私はそのまま首元に……


「だぁーーーっ!! 何よこの甘ったるい空気は!」

アリサによって阻止された

「ちょ、ちょっと、アリサちゃん……」

「……ちっ………………アリサがいじめるから、すずかから優しさを貰ってただけ」

「アンタ、今舌打ちしなかった!?」

「気のせい」

「……もう、二人とも」

「でも、ちょっとお父さん達みたいな桃色な空気が見えたような……」

話を聞いてみると、高町夫妻は子供が三人も居る熟年夫婦にもかかわらず
新婚の空気を失っていないそうだ…………恐るべし

と、ちょっと周りが騒がしい気がして、耳を傾けてみると

「なぁなぁ、やっぱりあれって……」「小鳥遊って女子の方が好きなんだな」「ホモじゃなくて……何だっけ?」
「話すようになっても、男子はほぼお断りしてるしな」「これはマジなんじゃね?」などなど

『(やっぱりバレましたね……マスターの百合属性)』

「(……うっさい)」

フリューゲルの愉しげな念話にイラッとしながら応えていると
と、周りの会話を耳にしたらしいアリサが私の前に仁王立ちする

「……穹、アンタをアタシが正しい道に導いてあげるから、覚悟しなさい」

「嫌」

「嫌って、アンタねぇ……」

「……でも、穹ちゃん、何でそんなに男の人が嫌いなの?」

なのはの口にした素朴な疑問に、少し表情が硬くなったのが自分でも分かった
不意討ちに近いその台詞に、あの事件の情景を思い出してしまう
普段は思い出さない様に気を張っていた分、きつかった
周囲の音が遠ざかり、血の轟々と流れる音しか聞こえなくなる
胸が苦しくなって、眼を瞑り、机に突っ伏す

「……ら!!」

「………ちゃんしっかりして!!」

「穹ちゃん!!」


と、周囲の音が戻ってきた
気付くと、すずかとなのは、アリサに抱きしめられている
心配そうな顔で覗き込んでくる三人に、気が緩んだのか
半ば泣き笑いのような表情を向ける

「………ありがと……」

「穹ちゃん……私…………」

「……ううん…なのはのせいじゃない…………いつか、いつか話すから」

「……うん」


クラスの空気も沈んでしまい、クラスメイトの一人が呼んで来た先生によって保健室行き
養護教諭にもカウンセリングを受けることを勧められ、結局この日は午前中のうちに早退することに……
家への道を歩きながらぽつりと呟く

「……ダメだな、私」

『(マスター……気を落とさないでください)』

「…………」

このまま家に帰っても、穹にはすることが無いため
余計なことを考えて、更におちこんでしまうのでは、と心配したフリューゲルが提案する

『(……そういえば、少々やっておきたいことがあったので
遠回りになりますが、寄り道してもよろしいでしょうか? マスター)』

「……何をするの?」

『(作業をしていれば少しは気も紛れると思いますし……備えあれば憂いなし、ですよ)』

「?」




そして、フリューゲルの勧めで訪れたのは、郊外にある廃材置き場
古くなったテレビや大きな棚、PCなどが無造作に積み上げられている

「……ここで何を?」

『今後、【ファルケ】や【ドロッセル】で対応できない事態に陥った時に備え
新しいフレームを構築するための材料調達です』

「………えっと、泥棒さん?」

『ここにあるモノ達は、不要とされて燃やされたり埋められたりするのを待つのみです
ならば、私達が一部でも有効活用してあげた方が良いと思いませんか?
勿体無いじゃないですか……こんなにあるというのに、全部捨てられてしまうのは
中にはまだ頑張れる部品も混じっているでしょうに……』

「……うん………わかった
それじゃあ、使えそうな部品があるのを教えて」

『まず、そこのTVから見てみましょう……解析【アナリューゼ】
あら、中々質の良い部品を使ってますね。筐体を【ファルケ】で抉じ開けましょう』

「うん……」

【ファルケ】の刃を突き立て、バキリとTVや電子レンジ、ラジカセ、PCの筐体を開き
使えそうな内部の回路やスピ-カー、加熱装置といった部品を取り出し
フリューゲルの空いているページにどんどん格納していく
電化製品だけでなく、金属製の棚のフレームなども標的になった

「……ねぇ、フリューゲル、あそこの棚は頑丈そうだから、槍とかの柄に使えないかな」

『いいですね、アルミ製のパイプですか
……補強して使えば、軽くて頑丈なフレームが造れそうです』

夢中になって、廃材の山を駆け回る
気付けば、沈んでいた心は晴れ上がっていた

「ありがとね……フリューゲル」

『いえ、マスターが元気なってくれて良かったです』

「それじゃ、帰ろうか……もうお昼だし」

『はい』






なんとかかんとか、半年振りの新話投稿です
今後も更新がかなり不定期なものになりそうですが
気長にお付き合いください m(__)m


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.024391889572144