それは、胡蝶の夢
そこは、まほろば
ゆえに彼らは旅をする
在るべき場所に戻るため
――――某日某所――――
「やはりこちらから修正するのは骨が折れますわね」
「そうかい……どれくらいかかりそうだい?」
「そうですわね……このままでは軽く見積もっても2~3年」
「なるほど、“このままでは”、ね」
「ええ、このままでは、ですわ」
「で?どうすればいいんだい?」
「あら?まるで対応策があるかのように言いますわね?」
「女狐が、そのくらい用意してあるんだろうに」
「……ふぅ、昔はあんなに可愛く素直でしたのに、どうしてこんなのに育ってしまったのかしら?」
「確実にあんたのせいさね。で?対価はなんなんだい?」
「今回はいりませんわ」
「…………今度は何を企んでるんだい?」
「あら心外、こんなに可憐な乙女が何を企むと?」
「ハッ!何が“乙女”だい、あたしの数十倍生きてる存在がナマ言うんじゃないよ」
「あら、“可憐”は否定しないんですのね」
「揚げ足を取るんじゃないよ――――それで?あたしは何を?」
「ふふっ、別に貴女は何もしなくてもいいのですよ?」
「あ?どういうことだい」
「簡単なことですわ、“あなたは”何もしなくていい……強いて言うなら心配でもすればいいのです」
「だからどういう――ああ、なるほどそういうことかい」
「そういうことですわ」
「しかし、それは対価なんじゃないのかい?さっきはいらないなんていっておいてずいぶん早い変わり身じゃないか」
「いいえ、これは交換条件ではなく必要条件ですの」
「必要?」
「修復するには、彼方と此方を因果で結ばなければならない、けれど私一人の因果では一方向ということもあり、先ほども言ったように2年はかかってしまう」
「――けれど此処から向こうへ因果を繋げば双方向の繋がりとなる……かい?」
「むぅ、やっぱり可愛くありませんわ。あぁ、昔は舌足らずに『おねーちゃん』なんて慕ってくれてたのに……」
「あの頃はあんたがそんな胡散臭い奴だとは欠片も思わなかったからねぇ」
「うさっ……コホン、そうですわねぇ、此処の生徒に常に騒ぎの中心になるような人物はいますか?」
「逃げたね……ああ、とびっきりイキのいいのが居るよ、憎たらしいくらいのがね」
「それくらいのほうが面白いというものですわ」
「あんたらしいねぇ、【紫(ゆかり)】?」
「ええ、これが八雲の紫ですもの。それじゃあ頼みましたわよ、【藤堂 カヲル】学園長?」
それは、二人の黒幕
そこは、学び舎の一室
ゆえに二人は画策する
己が望むものを手にするため