<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[16318] 私の幼馴染みは魔法使い!(※30路童貞とは何の関係もありません)
Name: えくすり◆95c85b80 ID:9aebbd29
Date: 2010/02/10 01:32
 
はじめまして。
 
この物語は
 
・日本の近未来を題材としています。
・剣と魔法のファンタジーな物語も題材になっています。
・ほとんど日記調でいきたいと思ってます。
・魔法が直接的に出てくるのは結構後になると思います。
・世界の危機はなかなか訪れません。
・15歳未満にはやや刺激的な文章がある可能性があります。
・主人公はおにゃのこですが作者は男です残念ですね。
 
とまぁこんな感じです。続くかどうかわかりませんが、お付き合い頂けると幸いです。
 
テスト板で適当に書いたのでチラ裏に移動しました。
 
ある程度書いたら今度はオリジナルに移動するつもりです。



[16318] 1年目2月
Name: えくすり◆95c85b80 ID:9aebbd29
Date: 2010/02/09 20:53
 
≪如月さつき≫
 
2XX1年2月14日(火)
今日はバレンタインデーだった。にも関わらずあろうことか今日は県下一の進学校である私立帝開高校の受験日でもあったわけだ。
 
受験自体は大して難しいものでもなくて、『第二初等数学』で小問の1題が解けず、『ドイツ社会』の歴史科目で年号を1個埋められず、『日本語』で出た漢字の書き順の問題に若干不安が残る程度だ。
 
さすがにこれで落ちることはないと思う。5科目5000点満点で悪くても4950点くらいだろう。
 
それより驚いたことは受験者に私の幼馴染みである草壁直哉が受験していたことだ。
 
この前の期末テストで学年360人中180位というなんとも平均的な順位を記録していたヤツには少し荷が重すぎるのではないだろうか。ちなみに自慢ではないが私の順位は1位である。
 
ヤツは「おっ、お前もここ受けるのか! 落ちないように頑張れよ!」とか抜かしてくれやがったけどそれはこっちのセリフだ。
 
どうしてこの高校を受けたのかを聞くと「ふふふ……知りたいか?」とか聞いてきたのでスルーしておいた。どうせ落ちるだろう。
 
明日は面接がある。疲れたから早く寝よう。
 
2月15日(水)
面接は集団面接だったが、柄にもなく緊張してしまった。途中で噛んだ。二回も。
 
『出身校が同じだから』という理不尽な理由で受験番号がくっついて、そのせいで同じ集団で面接を受けることになったヤツはいつもとは違ってやけに真面目だった。
 
面接のときだけはしっかりするだなんて意外だった。いつもは破天荒なヤツだから面接のときも
 
「本校を受験した理由はなんですか?」
 
「そこに高校があったからです。」
 
とか言うのかと若干期待していたんだけどな。
 
まあどうせ落ちるんだから気にしないでおこう。
 
それにしても昨日後輩からもらったチョコが多すぎて処理に困る。家の前で集団で待ち伏せされるなんてたまったもんじゃない。私は女だぞばかやろー
 
2月16日(木)
みよこが「受験どうだった?」って聞いてきた。「もう私はダメかもしれない……」と答えるとあたふたしだした。うん、可愛い。
 
みよこは近くにある県立の進学校に通うらしく、来る受験日のために猛勉強しているようだ。私も滑り止めに県立は受けるが、十中八九大丈夫だろう。
 
ヤツは帝開高校を受けたことを教師以外に話していないらしく、休んだ理由を誤魔化していた。
 
「さつきと一緒に部屋で話をしたんだ。」とか言ってたけど私が帝開高校を受験したのをみんなは知っているので、まさかヤツがそんなところを受けるというところまで考えは至らず、ただのサボり扱いされていた。日頃の行いのせいだ。
 
ちなみにこの中学から帝開高校を受験したのは私、ヤツ、ネクラな学年2位の3人のみだったから結局最後までヤツは怪しまれていた。 
2月17日(金)
久しぶりに剣道部に顔を出してみた。「先輩!」と叫んで走ってくる後輩たちは実に可愛いものだ。
 
顔を出しただけで稽古はせずにすぐに帰るつもりだったけど呼び止められて終わるまでいさせられた。
 
帰りに後輩と一緒にパフェを食べに行った。おいしい。このパフェを作ったのは誰だぁ。
 
もうすぐこのパフェを食べられなくなるというのはなかなかに痛いものがある。
 
2月18日(土)
かなり昔に週休2日制で休日になった土曜日がやってきた。
 
どうでもいいことだが、一時期急激な科学発展(47科学革命)により仕事・勉強の超効率化が可能になり、『仕事も学校も週休6日制にしよう運動』とやらが起こった。
 
しかしいつの世にも知恵が回るものはいるもので、下級階層の人々の財産を目に見えにくい形で超上流階層が尽く奪っていき、運動は次第に収まって行った。
 
私の夢はそんな超上流階層になり、セレブな生き方をすることである。玉の輿は狙わず生涯独身でもいいと思っている。
 
そのため今日はセレブレティーな生活(またの名を引きこもり生活)を送ることにした。
 
2月19日(日)
起きたら昼の2時だった。お母さんにめちゃくちゃ起こられた。そんなんじゃお嫁に行けませんよだって。
 
「頭が痛い。」と言うと、「寝すぎなだけでしょ。私の方が頭が痛いわよ。」と返された。
 
「あ、お母さんも寝すぎなんだー」と答えると頭を叩かれた。頭が痛い。
 
毎回思うんだけど私のこういうところをみよこや後輩たちが見たらどう思うんだろう。
 
お母さんがその後も説教して来たので今度は生理でお腹が痛くなったことにしてみた。
 
「お母さん、お腹痛い。」
 
「頭を叩けば治るかもしれないわね。」
 
「私はどこのテレビだ。違うの生理なのお腹が痛いの。」
 
「私はあなたの進学のせいで懐が痛いわ。」
 
「あはは。うまいこと言うね~ 腹筋痛い。」
 
「別にうまいことでもないわよ。片腹痛いわ。」
 
「うー」
 
見ての通り毎週週末はこんな感じだ。うちのお母さんは毎週日曜日の午前中にパートに行っているため、帰ってきても私が寝てることがとてもすごく不満らしい。
 
今日の晩ご飯は『山本系24番和風ハンバーグ』という私の大好物だった。
 
和風ハンバーグに『山本系』とついているのは、料理が初等化学、心理化学、栄養学を併せて完全に学問化され、体系化されたためだ。
 
山本系は栄養を度外視し、おいしさを追究したためなかなか頻繁に食べるものではない。
 
普段はアレウス系という栄養的にも経済的にも味覚にも優しいものを食べる。だがアレウス系には結構な割合で『自分の味覚に合わない』ものが存在する。昔で言う『料理』がアレウス系だ。
 
他には橋本系という味覚にも栄養にも優しいが値段が庶民には全く優しくない体系や、メルセデス系という安くて一口で食べ終わる料理(いわゆる錠剤)の集大成である体系も存在する。
 
余談だけど料理が体系化されるにつれて数々のお店が潰れ暴動まで起きたことがあるとかないとか。
 
2月20日(月)
卒業式まで残すところ1ヶ月となり、みよこが卒業旅行をしようと言い出した。
 
どこ行くのって聞いたらやっぱり東京だった。リニアで2時間かければ行ける場所に卒業旅行って……まぁみよこだから仕方ないけど。
 
2月21日(火)
帝開の合格発表の日がやってきた。教師に呼ばれて職員室へ。ついでにヤツも呼ばれていた。
 
ヤツはやはり「お前何かしたのか」と言われていたが日頃の行いが(ry
 
職員室へ行くと案の定合格のお知らせだった。筆記4995点+面接410/500点で主席だとか。私すごい。
 
ヤツは得点3821点+面接420点でなんと合格者1000人中1000位だった。
 
ギリギリ合格になったことも驚いたが、意外ととれている得点と私より面接点が高いことに驚いた。
 
先生は「何をしたんだ。魔法でも使ったのか。」と言っていたがヤツはいつものように「計画通り」と言って笑うだけだった。ヤツは何世紀も前の流行語っぽいものを好んで使いたがる。
 
ネクラ2位がどうなったかを聞くと落ちたらしい。へぇ。
 
職員室から出て同時に教室に着きみよこに合格の報告をするとみよこは大層おはしゃぎになった。自分のことのように喜べるみよこは幸せな子だ。
 
ヤツは「俺帝開高校受かったぜ!」とか言っていたが、「嘘乙wwww」とか「じゃあ俺ハーバード大学受かったwww」とか「じゃあ俺はむしろ神」とか散々な言われようだった。
 
2月22日(水)
休み時間中にみよこたちと話していたら噛んだ。「さつきでも唇噛むんだね。」と笑われてめちゃくちゃ恥ずかしかった。てゆか私を何だと思っているんだ。
 
2月23日(木)
ヤツが休んだ。ヤツの友達によると『異世界アリアクーにあるミケーネ大陸を救うために明日1日休む』とのことらしい。いつものことだ。
 
先生によるとただの風邪だとか。
 
2月24日(金)
「ミケーネ大陸はどうなったんだ?」と聞かれたヤツは「ただの魔物の暴走だった。ミバル帝国の奴らめ、くだらんことで呼びやがって!」と何やら憤っていた。
 
くだらんことで休むお前はなんなんだ。ゲームで学校サボるなよ。
 
2月25日(土)
久々にみよこと遊びに行くことになった。みよこ曰く息抜きらしいが、君は先週も息を抜いていたじゃないか。息はしないと死んじゃうんだよ。
 
アイス販売店で『山本系8番抹茶アイス』を食べているとヤツが店に入ってきた。こちらには気付いてないらしい。
 
みよこと一緒に見ていると「予約してた草壁ですが」とか言っていた。しばらくすると『アイスがたくさん入ってそうな箱』を30個ほどもらっていた。
 
「代金は既に頂いておりますので指紋認証だけお願いします。」なんて言われていて私は一応の幼馴染のヤツの奇人ぶりに頭が痛くなった。決してアイスが冷たいから頭が痛くなったわけではない。
 
みよこは「あんなにたくさんの箱を落とさずに持つなんてすごいねぇ」とか言ってて私とは違う感性の持ち主なんだと再確認させられた。
 
2月26日(日)
また今日も叩き起こされた。「やぁー 布団返してー」と言うと起こしに来たのはあろうことかヤツだった。
 
「橋本系の1番バニラアイス手に入ったんだがお前食うか?」と言われたので全力で頷いた。
 
高速で食べ終わり、ヤツの分も盗んで食べたら涙目になっていた。私の安眠を妨害したからだ。
 
「断言しよう。お前は絶対に嫁に行けない。」と言われたがそんなことは知ったことではない。
 
2月27日(月)
またヤツが休んでいた。「ミバル帝国で内乱が起こった。あのバカ帝め。」だとか。
 
先生はヤツはインフルエンザで休んでいると言っていた。昨日の夜は元気だったから間違いなく嘘だ。
 
2月28日(火)
学校でもらったプリントをヤツに届けに行くことになった。やたらとヤツの友人どもが羨ましがっていたけどまぁ羨ましがるのは私の美貌ゆえに仕方のないことだ。
 
ヤツの家に行くと見知らぬ外国人美少女がいて2人でゲームをしていた。「初めまして。ミバル帝国の皇女でマリア=ディ=ミケーネ=ミバルと申します。どうぞお見知りおきを。」と言われた。
 
こいつ……外国人幼女を洗脳しやがった……
 
話を聞くと友人の子どもをしばらく預かることにしたらしい。「誘拐して来たのか」と聞くと「こんなやつ誘拐して何の得になるんだ。」と反論され、幼女とヤツの痴話喧嘩に発展した。
 
ヤツに外国人の友達なんていたのを初めて知ったため少しびっくりしたが、私もヤツの家にたまに遊びに行くことにし、幼女と戯れる計画を立てた。
 



[16318] 1年目3月前半
Name: えくすり◆95c85b80 ID:9aebbd29
Date: 2010/02/09 23:04
 
3月1日(水)
学校が終わりダッシュでヤツの家に向かった。家に入ると、ちょうど幼女はアレウス系のドーナッツを食べているところだった。
 
「これすごくおいしい!」
 
と輝かしい笑顔で言い放ち何とも言えないほど和んだ。
 
そこで「よう……マリアちゃんはドーナッツ好きなの?」と聞いた。好きならいくらでも買ってあげますとも。
 
「わたしはお菓子は何でもすき!」と言うので明日は私の好きな抹茶アイスを食べさせてみよう。
 
3月2日(木)
抹茶アイスを買って幼女に渡してみる。とても喜んだ。あなたが嬉しいと私も嬉しい。
 
ヤツが自分の分はないのかとねだっていたがそんなものはない。ざまぁみろ。
 
しかし幼女が「あーん」をしてヤツにアイスを分け始めた。なんという大誤算だ。
 
3月3日(金)
ふと気になってインフルエンザのことについてヤツに聞いてみたら、インフルエンザにかかっていたと証明する診断書を見せられた。
 
友人に医者がいるんだとか言っていてさらりと流したが、よく考えたらすごくおかしい。私文書偽造罪とかになるんじゃないか?
 
まぁ私が言ったところでどうにかなるわけでもないけど。
 
3月4日(土)
幼女に会いに行ったけど既にヤツと外出したあとだったようだ。肩を落として帰るとお母さんが「あれ、お見舞いはどうなったの?」と聞かれた。
 
「お見舞いじゃない。」
 
「お見舞いじゃなきゃなんなのよ。」
 
「遊びに行ったの。」
 
「あらあら最近毎日ナオくんのとこ行ってるのはそういうことだったのね。」
 
「そういうことではございません。」
 
「いいのよ照れなくて。」
 
完全に勘違いしているようだが幼女のことを話すとめんどくさいことになりそうなのでやめておいた。
 
幼女に会いに行けなくなるくらいならヤツのことが好きと思われる方がマシだ。
 
3月5日(日)
久しぶりに早起きしてヤツの家まで行く。ヤツが朝ごはんを作っていたのでついでに私の分も作ってもらうことにした。
 
とてもめんどくさがっていたが力づくで黙らせた。美少女な幼馴染に頼まれて嫌と言うなんて最低な男ね!
 
昨日どこに行っていたか訊ねると「アメリカまで日帰り旅行に行っていた」らしい。そういう嘘かどうか判別できない嘘はやめてほしい。
 
にこやかにお土産を求めると「この朝食がそのお土産だ。」と言われた。ふざけんな。
 
しかし幼女の寝起き姿が見れたのでそんなことはどうでもよくなった。
 
夕方、家に帰るとお母さんが私の写真を遺影に見立ててお葬式ごっこをしていた。
 
「私の知っているさつきは死んでしまったのね……あの昼まで寝ているさつきが……」なんて言っていた。失礼だろ。
 
3月6日(月)
さすがにインフルエンザで休み続けることができなくなったヤツは普通に登校していた。みんなにサボりだと思われていたヤツだが、インフルエンザの証明書を見せたせいかみんなに謝られていた。
 
「まったく……遺憾の意だな……」とかほざいていたがこっちが遺憾の意だ。
 
先生も単なるサボりだと思っていたようでヤツに対して遺憾の意を表明した。便利な言葉である。
 
幼女はどうしたかを聞くと家でゴロゴロしてるらしい。私もゴロゴロしたい。
 
3月7日(火)
幼女が学校に遊びに来て吹いた。寂しくなったから遊びに来たんだとか。
 
「家で留守番してなきゃダメじゃないか。」とかヤツにしてはやけにまともなことを言っているヤツだが隣でおそらく110番にかけようとしている友人を止めることの方が重大ではないだろうか。
 
しばらくすると先生が大量にやってきて、ヤツはそれっぽい理由をつけてごまかしていた。なぜか中年親父の先生が大量に集まっていたのはきっと気のせいだと信じたい。
 
それにしても幼女が学校に普通に入れちゃうなんてとんだザル警備である。
 
どうでもいい話だが110番しようとしていた彼はPDAを卒業式後まで預かられることになったらしい。ギャグのために学生の命まではった彼は勇者と言っても過言ではないだろう。
 
3月8日(水)
幼女事件はなかなか刺激的なネタで、受験生には少ない一つの娯楽のようなものになったようだ。
 
一部はヤツに蹴る、殴るなどの暴行をしたみたいだが。
 
私も蹴りたいけど私は優等生キャラだからがまんがまん。
 
3月9日(木)
ふと幼女と暮らすには寮は不向きなんじゃないかと気になって、学校でヤツに「高校の寮どこの寮にするの?」と聞いたら大事件に発展した。
 
「さつきちゃんなんでこいつにそんなこと聞くの?」

「マリアちゃんと一緒に住める寮なんてあるのかなって思って。」

「いやいや。こいつの寮って?」

「ああ、俺帝開高校受かったからな。」

「ええええ! お前なんで黙ってたんだよ!」

「前に言っただろボケ!」

「ボケとはなんだカス!」

「カスじゃねぇよバカ!」

「バカって言うなハゲ!」

「は、ハゲ!? 確かに最近ハゲて……じゃなくてふざけんなごるああああああ!」
 
と、この前の110番くんが暴れだしたのだ。暴動は比較的短時間で鎮圧されたが、110番くんは卒業式まで停学にされていた。なんていうか不憫だ……ハゲだし。
 
3月10日(金)
結局昨日は聞きそびれたことをヤツに聞くと「俺は家から通うから」とのこと。
 
家から通うって……まぁできないこともないけどめんどくさそうだなぁ。
 
私は寮でいいや。日曜日にうるさいお母さんがいないし。
 
3月11日(土)
帝開高校に寮の手続きをしに行った。どこの寮にするか現地で確かめるためだ。
 
帝開高校には寮が男女4つずつあり、S・A・B1・B2と家賃に応じて部屋がランク分けされている。
 
S寮(個室・メイドさんまたは執事1人をつけても良い)は上流階級の子どもが陣取り、
 
A寮はやや余裕がある家庭の寮(個室)となり、
 
B1寮は東洋式の一般家庭の寮(2人の相部屋)、
 
B2寮は西洋式の一般家庭の寮(2人の相部屋)
 
となっている。
 
また、入試と学年を上がるごとにあるクラス分けテストでの上位3人は『特別待遇生徒(通称=しょうがくせい)』と呼ばれ、B1またはB2寮分の家賃と学費を免除され、月に5万円の奨学金を得られる。
 
S寮やA寮に行きたい場合はB寮分の上にお金を払うことになるが。
 
住居は住めればどうでもいい私はつまり、働かずしてお金が手に入れられることになる。
 
天才とはいつの世も贔屓されるものである。
 
寮は畳に慣れていたのでB1寮にした。特待生がB寮を選ぶのは珍しいとかで受付のおばさんにやたら驚かれた。
 
部屋は意外と埋まっていなかったので窓際をぶんどってやった。注意事項は特にないが、下着をベランダに干すのは好ましくないんだとかなんとか。まぁ確かに……
 
そのあと寮の1階全てが教師の部屋になっていることを聞いた。「防犯のためですか」と聞くと何かがツボに入ったのかものすごい勢いでむせはじめた。
 
3月12日(日)
今日は公立高校の受験日らしいが既に受かっている私には関係ないので、早起きしてヤツの家に遊びに行った。
 
昨日寝る前にみよこにエールを送っておいたら、「ありがとー 合格してくるね!」と張り切ったメールが届いていたことをヤツに話すと「みよこって誰?」と言われた。
 
「クラスメートの名前を知らんとはなんてこと!」と殴りまくったら「あぁ高町のことか……っ」と言われたので知らないわけではないのかと幼馴染の記憶力が酷すぎるわけではないことに安堵した。
 
でもなんとなく気が収まらないのでヤツがトイレに行った隙にヤツのPDAから「大丈夫。みよこなら絶対受かるから。頑張れみよこー!」とみよこに送っておいた。
 
その後幼女とレーシングゲームをした。うわようじょつよい。
 
3月13日(月)
みよこがめちゃくちゃ笑顔で学校に来ていた。なんかあったんだろうか。受験がよほどうまくいったのか今までにない満面の笑みだ。
 
「みよこ昨日受験どうだった?」と聞くと「たぶん受かったと思うー」と手応えアリの様子で一日中にこにこしていた。
 
試験ごときに私が負けたような気がしてなんとなく不服だったのは秘密だ。
 
3月14日(火)
卒業式まで本当にもう僅かになった。みよこが「私もたまにそっちに行くからさつきもこっちに来てね!」とやたら念押しされた。
 
そこまで念押しすることないでしょうに。
 
3月15日(水)
みよこの合格が決まった。みよこは喜んでいたが前の満面の笑みまではいかなかったようだ。一度合格を確信すると喜びって減るもんね。
 
みよこがヤツのところに行って合格報告していたのが気になったけど自慢したいお年頃なんだろう。というか少しは落ちた人のことも考えようよみよこちゃん。
 
3月16日(木)
卒業式は明明後日の19日。前に言っていた卒業旅行とやらは20日に行くことになった。みよこの他にも女の子が行くのだけど、最初は『彼氏も連れていく。』とか言い出しやがった奴がいて大変だった。
 
卒業旅行に彼氏、しかも高校生の男を連れていってナニするんですか。そんナニナニしたいんですか。
 
3月17日(金)
どうみても卒業です。本当にありがとうございました。
 
先生が泣いていた。
 
「これで胃薬飲まなくてすむんだー」とか言ってた。そっちですか。
 
ヤツは目薬をさしながら
 
「これで目薬さしながらすまなんだー」なんて言っているが意味がよくわからなかった。
 
とりあえず卒業記念にみんなの前でヤツを初殴りしたらみんなが異常なほど驚いていた。おいおい私がそんなに優等生に見えていたのか。
 
3月18日(土)
幼女と外で遊んだ。「おうちに帰らなくても平気なの?」と聞くと「帰る家がないの。」だとか。
 
まずいことを聞いてしまったかもしれない。
 
ヤツが言うには「気にするな。国が滅んだだけだ。」だってさ。そういうジョークは嫌われると思うよ。
 
3月19日(日)
校長がうざい。来賓がうざい。祝辞がうざい。国歌校歌斉唱がうざい。卒業証書授与が最もうざい。
 
チラッと教師席を見ると担任が寝ていた。来賓みてるよー
 
というか卒業式って昔からこうなの? 簡略化しようよ。
 
帰ったらお母さんもお父さんも泣いていた。今まで育ってくれてありがとうだって。そういう気持ちよくわかりません。
 
そういえばヤツはどうしたんだろう。あいつ親いないからなぁ。
 



[16318] 1年目3月後半~入学式
Name: えくすり◆95c85b80 ID:9aebbd29
Date: 2010/02/10 01:24
 
3月20日(月)
東京に行くことになった。リニアじゃないローカル線に乗り、途中でリニアに乗り換えて行くようだ。1000年前にはあり得ないような早さで着く。
 
東京についた私たちは今をときめく原宿に行くことにした。昔は原宿より渋谷の方が大きかったらしい。
 
ぶっちゃけ私は服やアクセサリーに興味はないのでみよこたちについていってるだけだ。たまに着せ替え人形にされるが、恥ずかしがると余計に構われるので恥ずかしさを表に出さないように注意している。
 
途中何回も話しかけられたが伝家の宝刀「彼氏いるのでー」ですたすたと立ち去る。みよこは「こっち見てるけど無視しちゃっていいの……?」となんとも善人ぶりを発揮しているが無視しないと危ないんだよ。
 
みよこについてきた女の子モブAはナンパされたのがよほど嬉しかったのかきゃっきゃっとはしゃいでいる。こういう女は簡単に落とされるんだよねぇ。
 
適当に服を買った私たちはホテルにチェックインし、明日行く遊園地のアトラクションを回る順番の議論に明け暮れた。
 
3月21日(火)
私は枕投げで寝不足ぎみになっているのにみんなはやけに元気だ。最近の同世代は元気がいいなぁ……
 
東京の隣にある大きな遊園地に着き、遊び回る。一瞬レールが外れるあのコースターは何なの。まじで何なのですか。
 
お化け屋敷も行ったけど全然リアルじゃないから怖がることはなかった。かなり前にどこかの遊園地がリアルなお化け屋敷を作ったところ、ショックで死者が出てしまったらしい。そのためリアルなお化け屋敷は禁止という法律ができた。
 
何をもってリアルかそうでないかの基準が曖昧なのはお偉いさんの昔からの宿命である。
 
みよこはこのお化け屋敷でも怖がっていたが。なんだこいつ可愛い。
 
3月22日(水)
最終日。二手に別れて自由に行動することに。
 
私はみよこを連れて秋葉原に繰り出した。コスプレとやらをするためである。
 
みよことなんかよくわかんないキャラのコスプレをしながら秋葉原を歩いていると写真を撮られた。撮ってもいいけどお金取るよと言うと1000円でどうかなと言われた。安いので2000円で手を打たせる。
 
1人撮るとわんさか人が集まる。お昼までいただけなのに20万円も集まったのにはちょっとというかかなり引いた。みよこと山分けしてその場を去る。
 
モブたちがお金を羨ましがり「あたしも秋葉原行けばよかったー」と言っていた。いやぁ……あなたならむしろ罰金もいいところでしょう。
 
3月23日(木)
家族と別れ入寮。同居者はまだ来ていないらしい。
 
驚いたのが食堂だ。山本系は無かったが、アレウス系以外に橋本系が大量に揃っていた。これが格差社会か。
 
食堂で1人で食べているとやたらと男が話しかけてきた。食べているときに用事もなしに他人にいきなり話しかけてくるなんて非常識すぎる。
 
大体その顔でナンパするのかお前は。冗談は顔だけにしろ。
 
「一緒に食べよう。」とか誘ってくるので「私親しい人以外とは食事は一緒に取らない家庭で育ったもので。おほほ。」とはね除けた。
 
しかしこんな風に明らかに断ってるのに言葉通りにとる奴もいる。大体が「俺モテるから~」みたいなオーラ出してるやつである。勘違いキャラだ。
 
そして「ちょっとやめてあげなよ困ってるじゃん。」と乱入してくる『僕は救世主風ナンパ』が更にたちが悪い。「ありがとうございます。」と言ってさっさと撤収させようとすると
 
「大丈夫だった?」
 
と聞いてくるわけだ。別に何もされてないですわよおほほ。「大丈夫ですよ。ありがとうございます。」と答えると
 
「最近ああいうの多いからさ、気を付けなよ。」だって。
 
今現在気を付けてますってんだ。
 
食べ終わったのでさっさと失礼して寮に戻った。
 
早くナンパ避けのためにもヤツが来てほしい。
 
3月24日(金)
同居者あらわる。
 
鳥井 佐奈って言うらしい。学年順位は421位。可もなく不可もなくといったところか。
 
外見は青色のボブカットに青色の瞳でなんだかお嬢様という感じ。B寮だからお嬢様なわけないんだけどね。
 
なんでも自分の学校からは1人しか受からなかったから友達ができるかどうか不安だったとか。
 
私もとりあえず学内では少しはナンパ避けになるアイテムを手に入れたので心が躍る。
 
佐奈を連れて自分も新入生ながら案内をすることに。
 
なんかいろんなことに無駄に驚いてるから可愛らしかった。きっと田舎から来たんだろう。田舎っ子イイ。
 
みよこからメールが来ていた。「学校の様子はどう?」ってさ。「みよこより大人しい子が同居者になった。すごく可愛い。」とメールすると「襲っちゃだめだよ。」と返ってきた。
 
私はどんな目で見られていたんだ。
 
3月25日(土)
主席挨拶がどうとかで1人先に教師たちと顔合わせをすることに。
 
中学のときとは違い私を見ていやらしい顔をするやつはほぼ皆無だった。ほぼ。
 
入学式の組み立てとか何分話せばいいかとかを話してもらった。
 
何分も何分も話すとか嫌だなぁ……しかも報酬なしなんて。
 
3月26日(日)
佐奈に暇かどうか聞いて一緒に主席挨拶の内容を考えることにした。
 
どうせならおもしろい挨拶にしようと散々悩み、意外といい出来になったのではないだろうか。
 
佐奈が微妙な顔をしていたのはきっと気のせい。
 
3月27日(月)
暇すぎる。
 
3月28日(火)
暇すぎたので勉強した。
 
3月29日(水)
佐奈が午後からどっか遊びに行った。
 
私は暇すぎたのでゴロゴロ寝転んで一日を過ごした。
 
3月30日(木)
暇すぎたので佐奈と一緒に挨拶回りを決行。隣の部屋をノック。元気な声が聞こえた。
 
隣の部屋の住人たちもやることがなくて暇だったようで4人でゲームをすることにした。
 
チームプレイにしたら佐奈が弱すぎて負けた。このゲームおんちめ。
 
3月31日(金)
今日も隣人とゲーム。ハイパーニート状態。
 
ゲームの持ち主である南ちゃんが私たちって青春してないねぇと言っていたのがすごく身に染みた。
 
ちなみにみんな彼氏がいなかった。優等生タイプだったらしい。そして恐ろしいことに佐奈以外猫を被っていたんだそうだ。女ってこえー
 
4月1日(土)
明後日が入学式。制服買ってなかったことに気付き急いで購買へ。気付いてよかった。
 
こんなバカ話を隣人にすると隣人たちも買い忘れていたらしい。佐奈はきちんと買っていた。一見抜けているように見えるのに……
 
4月2日(日)
みよこからメール。「私は9日に入学式だよー」だって。嫌がらせですねわかります。
 
4月3日(月)
それは歌えない校歌が流れ主席挨拶のフェイズ、私が挨拶のために壇上に立ったときのことだ。
 
バーン! と勢いよく講堂の戸を開いてヤツが入ってきた。
 
「セーフ!」
 
何がセーフなんだろう。
 
講堂一同はみなヤツを注視し、ヤツはそれを何とも思っていないような感じで自分の席へと向かった。正直言って流石にこれはないわ。
 
私がコホンと咳をすると今度はみなが私を注視する。
 
「まず初めに、私たちのような若輩者のためにこのような式典を開いていただき、ありがとうございます。
 
さて、先ほどばかでかい音を立てて厚かましいことに堂々と席についた不届者は一体誰か……という疑問を持つ方も多いでしょう。そこでその疑問に答えます。
 
彼の名前は草壁直哉。この学年順位はなんと1000位。聞くところによれば1001位と1点差で合格したとか。なんと言いましょうかミラクルというか奇跡ですね。
 
それと私の母校の同級生でもあります。おかしな話ですね。ピンキリが同じ中学出身なんて。
 
まぁそういうわけですので彼に代わり私がここで謝罪申し上げます。教師の方々、来賓の方々、平に、平にご容赦ください。」
 
と頭を下げる。
 
「いやいや、悪いのは彼であって君は悪くない。気にせんで話を続けてくれ。」 
こう言ったのは校長。甘いな。甘すぎるぞ校長! 私はケロリと表情を変える。
 
「では続けますね。と、まぁこのように今現在先生方の私への心象を彼の存在を使って上げたわけです。
 
種明かし致しますと彼と私は友人でして、入学式にちょっとしたパフォーマンスをやろうということになり、彼はノリノリで演じてくれました。いわゆるグルですね。うふふ、校長すみません。」
 
何がなんだかという顔をしている校長。
 
「今のパフォーマンスで何が言いたいかと言いますと、3つあります。
 
1つ、形式や常識に囚われると新たな発見ができない。
 
常識を打ち破り新しいことをする。そういうことができるのは常識で凝り固まってない若者の特権であると私は考えます。よって式典の常識をぶち破ってみました。
 
2つ、人を騙し騙されないようにすること。
 
どんなに綺麗事を言っても人は時に人を騙し、時に人に騙されることがあります。
 
尤も相手を突き落とすような騙しではなくWIN-WINとなるような関係の騙しを行い、自分が不利になるような騙しをされないようにするべきだと私は思います。そのためにも普段から人を適度に疑い、相手のことを理解する必要があります。
 
3つ、人を利用すること。
 
このパフォーマンスは私1人では不可能でした。彼なくしてこの挨拶はあり得ません。その点では感謝しています。少しやり過ぎていたような気がしますが。
 
また、帝開高校は県内トップで、日本でも有数な進学校なわけです。そのため人を利用する方が多いと思います。
 
まとめますと、私はこの学校で常識を打ち破り、騙したり騙されたり利用したり、そして何よりおもしろい、愉快な友人を作りたい。
 
そして日本有数のこの高校で学べることを誇りにして精進していきたいと思います。
 
最後に、このようなパフォーマンスを何の許可もなくしてしまい大変申し訳ありませんでした。罰は受けますのでこの場では一先ずお許しください。
 
以上、新入生代表、如月さつき。」
 
こんな感じで入学式を終えた。パフォーマンスの罰は特になしなんだって。校長が久しぶりに感動したとか言ってた。
 
甘いな、甘すぎるぞ校長!
 
寮に帰って隣人たちと共に爆笑した。このことを知っていたのは佐奈とヤツだけだったので隣人たちも騙されたらしい。私の演技力のおかげだよね。
 
佐奈は渋い顔してたけどガリ勉ばっかの高校なんて嫌だからこれでいいんだよ。
 


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.078435897827148