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[16303] 【習作】サクラ大戦再構成
Name: く~が◆9b59c775 ID:1e9eea2b
Date: 2010/11/06 20:40
「あ~・・・うざってぇ・・・」

とある軍艦の上。
一人の海軍将校の青年が甲板の上でつぶやいた。


陽気な太陽が穏やかな海を照らす。
それに呼応するがごとく、海からは暖かい風が吹く。

男だらけの、男だらけによる、男だらけの生活。

青年が視点をずらせば、風に靡いている下着、ふんどし、シャツ、etc・・・


「くっっくっく・・・」


女っ気一つない軍艦生活。
それを青年は、とても気に入っていた。
様々な経験が青年の頭の中をよぎり、それを思い出して笑い声を上げる。

だが、将校としての仮生活は終わりを告げようとしていた。


勤務地の変換。

教育を受けた将校が誰もが通る、卒業にして巣立ちの時。

それがあと1週間後に迫っていた。









「いいか貴様らぁ~!貴様ら127名!!栄誉ある少尉への道を切り開き、1週間後にはそれぞれの勤務地へ配置されることになる!!」


教官である大尉が怒鳴り声を上げる。
それに、不動の姿勢を持って真摯に聞き入る将校たち。

が、そこに。


「ふあぁああぁあ・・・」
「こら!!大神ぃ~~!!!貴様、それでも帝国軍人かぁ~~!!!」


空気を読まない一人の欠伸。
大神と呼ばれた、ツンツン頭に切れのある瞳。
作業衣から白いシャツが顔を覗かせ、それが教官の怒りに拍車をかける。


「首席卒業間違いなしの貴様が何故だらしないんだぁ~~!!!」

「・・・んぁ?だりぃよ・・・早く陸に着かないんかね?早く旨い飯食いに行きてーんだけどさ」

「き・・・き・・・きさ・・・!!」


怒りに顔を真っ赤にさせた教官が、人波を掻き分けて大神に迫る。
その手には『精神注入棒』と書かれた竹棒が。
周りを見れば、軍曹数人が包囲を狭めようとしている。

「おっと、説教はゴメンだぞ。んじゃあ加山。あとは任せた」
「っておい、大神ぃいいぃ!?」

「加山、貴様も同犯か~!!」

「え・・いぇ・・ちょっ・・・」


さっと身を翻して逃げる大神。
哀れにも名指しされた加山。

あっという間に教官たちが加山を取り囲み、粛清の嵐をぶつけていく。

なぜ大神の方に軍曹が向かわないのか。
答えは簡単、以前大神が返り討ちにしたことがあったのだ。
普通軍隊で言えば上官抗命罪で処罰されるが、行き過ぎた指導をされ、大神が切れ、それで返り討ちにしたことを艦隊司令が知ったことから、教官連中は大神に対して苦手意識を持っていた。
それだけ大神の腕っ節が強いということになるのだが。
それに加えて我流とも言える、独特の『剣術』。
それが更に拍車をかけていた。


同期の者は、いつものことだとばかりにニヤけた表情をそのままに、不動の姿勢を崩さない。


「なんでオレがこんな目にぃいいいいぃ!?」

口ではそんなことを言いながらも、加山は持ち前の素早さを以って教官たちの攻撃をいとも簡単にかわしていく。
忍びの家系も混ざる加山家。
怒りの感情のみの攻撃など、加山にとっては児戯に等しい。


大神一郎。
加山雄一。


後に、帝国を守る一員として名を馳せる二人のほんの一コマである。









Q:「あなたは大神一郎について、どう思いますか?」

このような質問を、彼の同期たちにしてみるとする。


A:「え?大神?ん~・・・あいつは頭も良いし腕っ節も強い。それは認めるけどよ・・・なんつーか、素で付き合いたくない種だな」

A:「くっ、あいつの所為でボクが首席を取れなかったんだ!何故!何故だぁ!!あいつは勉強なんかしてる感じじゃなかったし座学中も熟睡してるし興味なければ居なくなるし適度に女にモテるしそれに気づかないし風呂場で見たイチモツも首席だったし・・・」

A:「あいつは意地悪な時もあるし、口も悪い。物事に対して無関心なことも多かったし、絶対関わりあいたくないって思うことも常だった。でもな・・・困った時には絶対あいつが何とかしてくれたな・・・そしてそれだけの引率力、行動力がある。多分同期全員がそう思っているはずだぜ?」









そんな風に同期に言われている張本人の大神一郎。
大神は、陸に着いてその翌日に学長室に召喚された。

もちろん、首席卒業である大神に対して異動命令を通達する為であった。


「うっし、やっとオレの出番かよ・・・しっかし時間かかったな?他の奴はさっさと教官に異動命令受けてたのによ」


そう、大神だけは教官から言い含められていたのだ。
「お前には個別に通達がある」と。

それがまさか打ち上げも終わり、卒業した気分で一杯の解散式の日とは思わなかった。
しかも江田島帝国海軍学校学長室において。


「まぁいいか・・・ウン・・・ウン!っし!・・・大神一郎、入ります!!」









学長室では。
二人の男性が書類を片手に話し合っていた。


「しっかし・・・この男が霊力の素質あるのか?確かに成績は優秀だけどよ・・・そこんとこどうなんだ?え?ウチの事情も知ってんだろ・・・若い乙女が戦力となる、『帝国華撃団』の隊長としてふさわしいのかね?」

「ふっふ・・・それはどう化けるかはあの若者次第だよ。そう思わんか、米田」

「むぅ・・・」

「若いが故の過ちもあろう。だがそれを乗り越えてこそ隊員たちとの絆が深まるんじゃないのかい?」

「・・・一理あるな・・・けっ、こんな問題児をオレに押し付けやがって!上等だぁ、大日本帝国に大神有りと誰もが言う男に育ててやろうじゃねぇか!!」

「それでこそ我が親友だよ」

「それにしても・・・」


米田が書類を見やる。

そこに書かれていたのは

『 名前  大神 一郎
  年齢  20歳
  出身  栃木県
  
  成績  座学  1/127(点数のみの考察)※授業中はほとんど就寝
      剣術  1/127   ※元もとの経験に本人の性格が上乗せ
      戦術  1/127   ※邪道、外道と言える考察を持つ
      偵察  1/127   ※周囲を置いていき、独断で情報を入手
      射撃  15/127  ※二日酔いの為本調子とは程遠
      格闘  8/127   ※相手の拳が頬に掠り、それに怒って反則の嵐
  


  総合:身体、頭脳共にずば抜けた能力を持つ。しかしながら任務における協調性は
     まるで無し、独断専行が目立つが結果をしっかり残すので協調性の重要さを
     説く指導のみ実施される。
     私時においては、悪道に周囲を巻き込みひたすら邁進する。
     私的時間においては、女子の関係は真っ白であり、そこは軍人としての自覚がうかがえる。

     以上のことから、性格を矯正すれば立派な帝国軍人になるのは間違い無い。

     異動する部隊においての更なる成長、そして上方の『徹底した』指導を願う。


           江田島帝国海軍学校指導教官 大尉 高村 浩二  



「花小路さんよ、お前さんは反対しなかったのかい?性格に難有り、しかも素行も悪いときたもんだ・・・マリアのでぇっきれぇな奴じゃねぇか」

「はは、それについては懸念はしていないよ。マリアはあれで現隊長を務める才媛。案外マリアが大神君とやらを矯正しそうで楽しみだよ」

「まぁ、あんたがそういうならオレは何も言わねぇよ」

『大神一郎、入ります!!』

「お、奴さんが来たみてぇだな。よし、オレは隠れて実物を見ていることにするぜ」

「お、おい米田・・・」

「ほれ、早く呼ばないと奴さん、待ちくたびれちまうぜ?」

「あ、よね・・・ったく・・・。あぁ、入ってくれ」









「お、やっと来たな・・・まぁ楽にしてくれ」

「はっ」


不動の姿勢から足を肩幅に開いて『休め』の体勢をとる大神。

(くっくっく・・・オレの持ってきこのた霊子測定器で量らせてもらうとするぜ・・・おめぇの霊力をな!)

そう米田が邪笑を浮かべて見守る中、大神に対する異動命令は達せられていく。

最初は真面目な表情を浮かべてそれに聞き入っていた大神だったが、次第にその顔から表情が消えていく。

(・・・?何だ?ちっとは反応すると思っていたんだが・・・っと、測定器を・・・!!な、何だこの数値は!?)

「・・・以上を以って、大神一郎少尉を、帝都所在、『帝国歌劇団』へ異動を命ずる!!」

(・・・はっ!?)


ツカツカツカと聞こえる足音、そして閉まるドアの音。
遠ざかっていく足音が消え、米田はごそごそと這い出してくる。


「米田、何も隠れなくても良かったんじゃあないのかい?」

「そう言いなさんな、オレもちょっと気になっちまってよ」

「ほう?」


笑いを隠しながら米田に文句を言う。
だがいつもは茶化すところを硬い表情で受け流す米田に、佇まいを正す。


「オレが元どこに所属していたかは知っているな?」

「愚問を。『帝国陸軍対降魔部隊』・・・たった4人の少数精鋭で降魔戦争を終わらせた伝説の部隊。今の『帝国華撃団』の前身だな・・・何故それを?」

「オレぁそこに居たせいか、少々霊力察知に長けていてな・・・奴さんが来た瞬間に鳥肌が立ったわけだ・・・だからこの測定器で量らせてもらったぜ。だが・・・」

「だが?」

「こいつが全く反応しやがらねぇ。大神に霊力があるのは間違いねぇんだが、こうも反応しないとなると・・・」

「なると?」

「・・・オレにも分からねぇ。この測定器の故障かもしれねぇし・・・。こいつぁ本気で奴を見定める必要が出てきたってことだ。・・・『光武』に搭乗できるかどうか、そして『あいつら』がうけいれるかどうかは霊力の有り無しに大きく関わってくるからな」

「ふむ・・・じゃあどうする?」

「とりあえず、あいつらの中で新入りの、『さくら』に大神を迎えに行ってもらう。それでさくらの印象が悪ければ他をあたる。もし劇場まで連れてきたなら・・・合格だ。徹底的に教育してやる」

「ほう、さくらといえばあの・・・」

「あぁ、『一馬』の一人娘だよ。あいつの真っ直ぐな瞳は人となりを見抜く。真宮寺の、そして『破邪』の血を受け継ぐさくらにはうってつけさね」

「なるほど・・・もしお眼鏡にかなわない様ならウチで面倒を見るとしよう。書類の準備を忘れないでくれ」

「へいへい・・・ったく、隠居して楽して暮らすはずがよぅ・・・」

「はっは、備えるに越したことはないよ、米田」

「分かってらい!」


その後も3人の談笑は続く。
先ほどまで緊張した空気が霧散しているのは、さすが数10年を共に歩んできた間柄である。

その空気を楽しむように、米田ら3人は酒宴へとうつっていった。









あぁ、やっと運命の人に出逢えた。
桜舞い散る歩道の上、私と大神さんが初めての・・・!
絶対に逃がしませんからね、大神さん!?

次回、サクラ大戦 『私と桜と破邪剣聖』

大正桜に、浪漫の嵐!!










あとがき:えっと、皆さんご存知「サクラ大戦」の再構成SSです。私事になるのですが、以前書いていたSSのストックがPCの故障により全消去されてしまうという惨事に見舞われまして・・・w「妻みぐい」は12作分、「リリなの」は8作分・・・外付けHDに保存しなかった自分を恨む日々が続く中、さすがにすぐに復旧していくのも心が折れて心機一転、このようなSSを書いてみることに^^

もちろん、前2作のストックも作り直していきますが、それまでつなぎとしてお読みいただければ光栄です。   

※修正

※指摘に基づき、題名を修正



[16303] 第2話
Name: く~が◆c894d15f ID:021c9e92
Date: 2010/02/09 01:20
【大神】

へぇ、ここが待ち合わせ場所か。
桜が満開、こいつは酒が欲しくなってくるぜ・・・

にしても、んなところに海軍制服で待ち合わせって時点でどうよ?
まぁ確かに分かり易いって言えば分かりやすいか・・・

オレの異動先は帝都・・・まさしくオレの夢が実現したってところか。
今をときめく文明最先端の都市、帝都。
蒸気がふんだんに使われている、今の大日本帝国の中でも都会中の都会。
一度は来てみたかったんだ・・・


ん?


「がっはっはははは・・・いいぞいいぞ~~♪」
「あはは、もっと飲めやこら~!」
「おう、散る桜が少ねぇぞ?誰か揺らせ!」
「おおぅ、そいつはオツなこって♪」
「がははははははは」


今一瞬殺意が沸いたのは気のせいか?
くそっ、招集が無ければあそこはこのオレの席だったはずなのによ・・・
「酒は絶対飲むな」という教官からの有り難いお達しがあったからな・・・。
最後くらいは命令を聞くかと思ったオレが馬鹿だった。

あぁ・・・何か・・・いろいろ苛ついてきたな・・・(ポンポン)
ん?なんだ?るっせぇな・・・こちとら考え中だ、邪魔すんじゃねぇ。

ふむ、ここはこの携帯型一○式蒸気爆弾をあいつらの頭上で・・・(ポンポン)

~~!さっきから何だ一体!

「っだぁああ!!るっせぇなさっきから!ちっとはじっとしとけやこのすっとこどっこ・・・い?」

文句をつけに振り返ったらよ・・・なんてゆーか、正に大和撫子?的な少女がオレを見据えていたんだ。

さっきまでの怒りの感情はどこへやら。
オレは目の前に立つ少女を観察した。

長い黒髪、それを一つに縛っている桃色の付け布。
おぉ、着物まで桃色、袴・手甲は紺色・・・

あらま、腰に差しているのは・・・真剣か?
こんな少女が持つとは帝都は物騒なんだな。
ていうか、廃刀令はどうなったんだ・・・?

そこまで考えた時(約2秒半)、オレの頬に風圧を感じた。









【さくら】

一体どんな方でしょう・・・
米田支配人に仰せつかって、大神 一郎少尉という方を迎えに上野の公園まで来ています。

支配人から頂いた情報によれば、海軍の制服で来られているとのこと。
私は急いで待ち合わせ場所に行きました。


「わぁ・・・ここも桜が満開ね」


私の実家がある仙台でも、これと同じような光景を見ることができる。
ただ違うのは・・・圧倒的な人の多さ、ね。

私と同じ名前の桜。大好きなものの一つだ。

そしてそれを見上げて幸せそうに笑う人たち。
これら全てを守る。そして笑顔を失くさせないことが私達の使命。


でも、戦闘することはできても戦術に学の無い私達ができるのは多寡が知れてる。
その為に、米田支配人は海軍から優秀な人材を引っ張ってこられた。

・・・性格に難有り、って文を見たときに少々、いえ、かなり不安になるけど仕方ない。

先ずは私が、大神少尉を見定めねば!

これからの帝国華撃団・・・あなたにかかっていますよ、大神少尉。


っと、あの方がそうよね。
白い海軍軍服を着こなし、桜と一緒に騒いでいる人たちを眺める男性。

あぁ、やっぱりこの方も私達と同じ・・・
よし、私から声をかけよう。そして連れて帰るんだ。

私達の帝劇に。


「あの・・・大神少尉でしょうか?」

「・・・・・・」



反応が無い。
じゃあもう一回・・・


「あの・・・大神少尉ですよね?」

「・・・・・・」


どうしたのかな、もしかして聞こえてない?
うぅ、上官にあたる人の肩を叩くのはしたくないんだけど・・・

(ポンポン)
(バッ!)

え?
邪魔そうに払いのけられた。
うわ・・・地味に凹むんだけど・・・

よし、もう一回!

(ポンポン)
「っだぁああ!!るっせぇなさっきから!ちっとはじっとしとけやこのすっとこどっこ・・・い?」


うわぁ、吃驚した!
・・・成る程、性格に難有りっていうのはこういうことだったのね。
でもその程度で怯む真宮寺さくらではありません!

キッと睨み返しますが、大神少尉は私のことをじっと見ています。
うぅ、なんだか観察されているような・・・

そして視線が私の・・・私の下半身・・・に・・・?!


「ッ!!」

ヒュオッ!!


とっさに放った平手打ち。
でも・・・


ヒュッ


!避けられた!?
そんな、零距離からの私の攻撃を・・・?


ドオオオオォォォオオオオン!!!


「「!?」」


side out









緊迫する空気をかもし出す二人から少し離れた所において、突如爆発が起こった。

慌てた二人が高台から見てみれば、一体の謎の蒸気人型が上野公園に出現、そして桜の木をなぎ倒したり、人々を襲ったりしていた。

その状況にいち早く我に返った大神。

柵に足をかけて飛び降りようとする。


「ま、待ってください!」

「邪魔だ小娘ぇ!軍人としてあの異形の振る舞いを放ってはおけん!どけぇ!」
「こ、小娘・・・待ってください、あなたは今無防備なんですよ?一回でも攻撃を受ければ死にます!それにあいつは・・・」


そう言って異形を睨むさくらに、怪訝な表情を向けるがすぐに引き剥がす。
と同時に、持ってきた手荷物の中から、先ほどにもあった携帯式爆弾を取り出す。

そして腰に差していた、自らの愛刀である双刀『無銘』を抜き放ち、片方を口にくわえる。


「ダメです!あなたでは太刀打ちできません!もう少しすれば応援が・・・」
「その応援が来るまでの間にここはどうなる!?被害が出ないとでも言いたいのか!?」
「そ、そんなわけじゃあ・・・」
「なら邪魔をするな!・・・皆、オレは帝国海軍少尉、大神一郎だ!こちらの指示に従って速やかに避難してくれ!・・・おい、小娘。避難誘導は出来るな?そしてそれが終わったら応援を呼ぶなりしてくれ!」
「・・・・・・」
「どうした、できないのか?ならばそこでじっとしていろ」
「・・らです」
「あ?」
「さくらです!私の名前は、小娘ではなく真宮寺さくら!」
「・・・そうか、ならば真宮寺。誘導を頼むぞ」
「待ってて下さい、終わったらすぐにかけつけますので」
「・・・・・・」


返事をすることも無く、大神は柵から飛び降りる。
だが、降りる前にさくらに見せた表情は、男臭い笑顔だった。









「こちらです!こちらから外へ逃げてください!・・・あぁ、大丈夫ですか?ほら立って・・・よいしょっと」


さくらは人々を避難させながらも、大神のことを考えていた。


(大神少尉にはまだ言うわけにはいかない・・・私達が『特殊』な事情で集結し、来るべき事態に備えている、なんて・・・)


そう、まだ大神が帝国華撃団に受け入れられたわけではないのだ。
言わば大神はさくらが教官で試験を受けているようなもの。

因みに今のところ、さくらの中では口の悪い粗忽者としての評価がされている。
だが、その後の行動でさくらの評点をグッと上げていた。


(でも・・・ちょっと・・・かっこよかったかな、あの時・・・)


あの『脇侍』を初めて見たはずなのだが、それに臆さずに人命救助を最優先としたあの決断の早さ。
そして引率力。


(絶対失うわけにはいかない・・・待っててください、大神少尉)









「うおらぁああぁあ!!」
ガキィン!!ガッ!!


一方広場では。
大神と異形による戦いが激しさが増していた。

飛び散る火花。振るわれる豪腕。
お互いがお互いを『敵』と認識し、『殺し合い』の最中。

大神が剣を振るえば異形が正確に防御し。
異形が腕を振るえば大神は回避する。


「ちぃっ、さすがにやるな!」


一進一退の攻防。
だが、大神の表情には焦りは無かった。

手元にある小型爆弾。
まだこれがある。

もしこれがダメでも『奥の手』も存在するのだ。


「よし、まずは・・・」


大神は片方の刀を地面に突き刺し、右手で爆弾を持つ。
それから左手のもう一振りの刀の切っ先を異形に向け、牽制する。


異形が動く。


「はぁっ!!」


こともあろうに、大神は切っ先を向けたまま異形に向かって突進する。
もちろん、異形も腕を突き出して迎撃してくる。


「それは・・・読んでたぜ!」
バッ!

間一髪、大神は宙を舞い異形の背中へと取り付く。
そして爆弾の安全環を抜き、異形の隙間部分に投げ込む。

それを確認した後離れるが、追撃の拳が迫る。

ガキィッ!!

それを左手で持っていた刀の峰部分に腕を交差させ、その攻撃を受け止める。
ボキィッ!


「ぐぅっ!?」


鈍い音が響き、大神の口から苦悶の声が上がる。


だが、その瞬間。



ドガァァアアアァアァアアアン・・・!!!


投げ入れた爆弾が火を噴き、、異形の中で暴れ狂う。
さしもの異形もそれには耐え切れず、


ズゥウウウウゥウウン・・・


地響きをさせながら地に突っ伏した。









【大神】

ふぅ、何とかなった・・・か。
だが右腕は・・・痛ぅ、こいつは折れてやがるな。

ちっ、骨折なんかしたのはいつ以来かな・・・
そうだ、あのくそ爺のところでしごかれていた時以来か。

ったくよう、せっかく新品の軍服を着てきたのに台無しだぜ。

何にせよ良かった。一般人にはあまり被害は出ていないみたいだな。
オレぁ自分のことには無頓着だが(自分で言うな)、軍人としての誇りは持ってるつもりだ。
だからあの・・・なんつったっけ・・・なんとか寺の諌めも聞かなかった。

まぁ結果がこれだ。
オレの腕一本でここまでできりゃあ上出来だ。


ザッザッザッザッ・・・

ん?足音が。

振り返れば・・・あー・・・なんとか寺がこっちに向かって走ってくる。


「大神少尉!!」

「んだようるせぇな。でけぇ声だすんじゃねぇよ」

「ご、ごめんなさい。そ、それであの化け物は・・・」

「ん」


顎でしゃくってやる。
そこには原型は留めているがピクリとも動かない異形。


「うそ・・・大神少尉が、一人で?」

「他にどうやるっつ~んだよ」


まぁ信じられないのは分かるな。
殺ったオレですらまだ現実味を帯びていない。

まぁこの痛む右腕が何よりの証拠だな。


「ったく、とんだ道草食ったぜ・・・んで?」

「え?ええ??」

「何驚いてんだよ、オレを迎えに来たんだろ?」

「は、はい」

「そうか、それじゃあ「!危ない!!」」


!後ろから気配!?しまった!
ドンッ!!


「グゥッ」

あ、あんの小娘ぇ!オレを突き飛ばしやがっ・・・小娘!?


Side out









大神を突き飛ばし、自らも回避したさくら。
先ほどの異形、脇侍がその豪腕を地に叩きつけていた。

もし二人の回避が遅ければ、今頃下敷きになっていただろう。

脇侍の攻撃はとどまることを知らず、さくら目がけて次々に繰り出していく。

シャリー・・・ン


さくらは一旦間合いをとると、愛刀『霊剣荒鷹』を抜き放つ。
そして正眼に構え、呼吸を整え集中していく。

隙ありと見たのか、脇侍が突っ込んでくる。だが。

ガキィッ!

『!』

脇侍の関節部分に突き刺さる刀。
横を見れば、左手で投擲した大神の姿が。


「こっちだぁ、化け物!!いさぎよくオレと戦え!!」


残る一刀を向け、大神が吼える。


『ギィッ!』


脇侍が方向変換した時、さくらの集中が完了する。


「やっちまえ!!」


「『破邪剣征・・・桜花放神』!!」


ゴオオオオオォォォォオオオッ!!


桜色の闘気の渦が、脇侍を包み込む。

そして刹那の後


ドガアアアアアアン・・・


脇侍は跡形も無く爆散した。









【さくら】
「大神少尉!大神少尉!!」

大神少尉はあの後、すぐに気を失って地に倒れた。
慌てて近寄り、首を抱き起こして揺する。

ん?右腕に違和感が・・・!!これ、折れてる!?
えっとえっと、骨折の時は何か添え木を・・・桜の枝を折るのは心苦しいけど。

布は・・・私のリボン!これで何とか・・・


「ふぅ・・・」


一通りの処置を終え、他の怪我も手当てをしてようやく一息つけた。
大神少尉はまだ意識が戻らない・・・

あれだけの相手に、刀二振りで立ち向かうなんて・・・えっと、爆弾っていうのかな?
あれを使って止めを刺すっていうのも野生的なものを感じてしまう。
そう、紅蘭の男性的な感じ・・・かな?

ふふっ、もし紅蘭が聞いたら「ウチあんなんじゃあらへん!」とか言って怒り出しそう。


あ・・・今気づいたけど・・・膝枕・・・しちゃってる。

殿方の人に、こんなことするの初めて・・・だな。
お母様はお父様を落としたときに使ったっておっしゃってたけど・・・
でも・・・さっきまで嫌いだったはずなのに、今はこうやって膝枕までしちゃってる。
寝顔・・・じっくりと見るの失礼かな?


「・・・う・・・ぅう・・・」

「!?」


あ、大神少尉、気づいたかな?


「加山ぁ~~~!!きっさまぁ~~!!」
「ひぃっ!?」


ぼふっ・・・


「あ・・・」


お・・・お・・・大神・・・少尉?
ね・・・寝ぼけるのはいいですけど・・・わた・・・わたしの・・・む・・・胸・・・


「いやぁぁぁああああああ!!」

ボグゥッ!!


「ぐぅっ!?」

ドサッ・・・


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

「・・・・・・」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

「・・・・・・」


あ、あれ?大神少尉・・・?
や、やっぱり・・・鞘で鳩尾はまずかったかな・・・

で、でも少尉は乙女の・・む・・・胸に!!
か、顔を・・・うず・・・うずめ・・・


「うぅ・・・恥ずかしい・・・」


そういえば・・・お母様が仰っていた。


『いいですか、さくら。真宮寺の女たるもの、簡単に殿方に己を預けてはダメですよ?』

『はい、お母様』

『もし、意中の殿方に何かしらの『初めて』を奪われた時は・・・『責任』を取ってもらうのです!!』

『せ、責任・・・ですか?』

『そう!その人の側に絶えずいること。そして余計な敵を作る前に既成事実を仕立て上げておくのです!そう、私の初めてを奪った責任はどう取ってくれるのか?と・・・』



「・・・お母様って・・・いけない、少尉は・・・」

「す~・・・す~・・・」

「熟睡してる・・・ふふっ、私の膝枕は高くつきますよ?大神少尉。そして・・・先ほどの胸の件・・・今は私の中で留めておきます・・・もう逃げられませんよ?」

side out



帝都が誇る帝国劇場。
出会い、騒動の予感。支配人、踊り子、売り子、事務員、
そして・・・モギリ!?

次回、サクラ大戦『モギリ少尉ここに爆誕』

大正桜に浪漫の嵐!!









あとがき:まだ感想掲示板の方を見ておりません。皆様のお怒りはもっともでしょうが、何とか復旧に向け頑張っていきます。
今日のトコロはこの辺でかんべんください^^;



[16303] 第3話
Name: く~が◆c894d15f ID:39da937f
Date: 2010/02/09 19:37
大神一郎、真宮寺さくら。

二人の出会い、そして強烈なしばき合い。
大神は左手で鳩尾を擦りながら、そして右手は添え木が。
さくらは案内をしているが、途中チラチラと大神のほうに視線を向ける。


傍から見れば、『けっ、やってらんね~よちくしょう』と捨て台詞を浴びせられそうな二人。
全く会話は無いが、あたかも長年連れ添った夫婦がごとく、帝都の通りをただ歩く。


もし二人の前に、そういう輩が出てきたらそれぞれの違った反応を見せてくれるだろう。


そうこうしているうちに、哀れな子羊が。


「いよぅ、さくらちゃん!今日は彼氏と同伴かい?」

「!」
「?」

「な・・・なな・・・」


顔を真っ赤にして口ごもるさくら。
思わず大神の方をチラ見してしまう。
大神はと言えば、興味なさそうな表情で目の前の男を見つめるだけ。


「このこの~!帝劇が誇る新人スタァのさくら嬢と同伴たぁ、軍人さんも隅に置けないねぇ!」


男は大神に近づき、からかおうと肘でグリグリする。


「何だ貴様は」

「!」


一言。たった一言で男の動きを封じる。
男はすぐに離れて大神を見据える。それに視線を合わせる大神。
だが、それにも負けずに男は気を取り直して更に大神に詰め寄る。


「て・・・照れるこたぁないだろ~。ほれ、軍人さんもほんとは嬉しいだろ?ん?んん?」

「お、大神少尉・・・」

「・・・?」


怪訝な表情を浮かべるも一瞬、大神は再び歩き出す。
それこそ二人を置いて、だ。


「・・・・・・」


スタスタスタスタ・・・

遠ざかる大神一郎。
それを見送るさくら、そして男。


「あ、あの。あの男性は支配人のお客様なんです。お連れするよう言われてて」

「そ、そうかい。邪魔して悪かったね、さくらちゃん」

「い、いえ。こちらこそごめんなさい」

「いいってことよ!また演目決まったら見にいくからよ、頑張ってくれな!」

「は、はい。ありがとうございます!」


会話が終わり、さくらは大神を追いかけ始める。

(んもう、大神少尉ったら・・・少しくらいは嬉しそうにしてくれてもいいじゃない・・・)

心の中で愚痴ってみるものの、大神の態度が変わりそうに無いのを認識し深いため息を吐く。


結果。

大神:無表情(何のことか分かってない)
さくら:照れ照れ(自他意識過剰気味)









【大神】

オレは今、小娘に案内されて帝都を歩いている。
本当ならば歩きながらも観光するはずだったのだが、オレの中ではさっきまでの戦いが渦巻いていた。

あの時、小娘が放った技。
あれは・・・『霊気』の類だ。

なぜあんな小娘が、しかも帝国劇場のスタァだと・・・?

こいつはいろいろきな臭いぜ。

もしかしたらあの小娘だけかもしれんが、一応注意はしておいたほうがいいかもしれん。

くそったれ、帝都を心行くまで堪能する計画が・・・
まぁいい。どうやら今から行くところは敵地だと見積もって行くか。

どんな化け物共が出てくるのか・・・楽しみだぜ。


しっかし・・・さっきの男が言ってた『同伴』って何のことだ?

あいつはただの迎え兼案内係だろうが。
帝都の人間はおかしい奴が多いと聞くがそういうことなのか。


まぁ変人がいるのはいいとしてだ、改めてみるとすっげぇな、帝都。
今までの常識が覆されていく。
まさに、今まで積んで言った積み木が一瞬にして壊され、斧でズタズタにされたみたいな衝撃を受けた。

あらゆるところから蒸気が噴出し、それを原動力にして街が生きている・・・わけか。
しっかしよぅ・・・数10年のうちにこれだけ文明が違ってしまったらどこかしらに『歪』ができてしまうんじゃないか・・・?

あのくそ爺の話にもあったな。
『文明の力はいつか人の身に災厄として降りかかる』

この言葉がオレの頭ン中から離れねぇ。


・・・っと、いつものクセが出た。
せっかく帝国劇場って所に配置されたんだ、まずはそこの仕組みから覚えるとしよう。
軍人稼業はひとまず封印。

一般の生活を楽しむという任務・・・くひひ、笑いが止まらんぜよ。

Side out









帝国劇場。

入り口近くの広間において、一人の幼い少女が熊のぬいぐるみを抱いて走り回っていた。
綺麗な金髪が肩口までウェーブを描き、ピンク色のリボンが更に可愛らしさを強調する。

イリス・シャトーブリアン。呼び名をアイリス。
帝劇において最年少の踊り子にして、特殊部隊『帝国華撃団』において後方支援・援護・回復を司ることになる。


「えへへ、今日だったよね、さくらが新しいお兄ちゃんを連れてきてくれるって」


本日の彼女はすこぶる気分が良いようだ。
先ほど米田の口から、新しい補充人員が帝劇に来ることを聞いていたからであろう。
友達と言ってはばからない『ジャンポール』を胸に、まるで踊るように広場を駆け巡る。


「ん~、でもそのお兄ちゃんってぇ、『霊力』・・・あるのかなぁ?アイリス達と一緒に戦ってくれるとしたら・・・」

「こら、アイリス」

「あ、米田のおじちゃん!」


いつの間にか、アイリスの後ろに一升瓶を持った米田がいた。


「アイリス、いっつも言ってるだろう?『霊力』と『部隊』のことについては誰にも言っちゃダメだってよ。おめぇ達みたいな訳有りを守るため・・・おいら達は頑張ってるんだ・・・分かってくれるかい?」

「はうぅ・・・ごめんなさい、米田のおじちゃん」


米田の窘めに、アイリスは素直に謝る。
それを聞き、米田の顔一杯に笑顔が戻る。


「いいってことよ、これから気ぃつけりゃあいいんだ・・・ほれ、もうさくら達も戻ってくる頃だ。おめぇさんも自分の部屋に戻んな?奴が落ち着き次第、おめぇ達に会わせるからよ?」

「うん、分かった!」

「あぁ、ちょっと待った」


戻ろうとするアイリスを米田が引き止める。


「アイリス、おめぇの力・・・大神って奴には使うなよ?奴ぁ得体が知れねぇ・・・さくらが付いてるから心配はねぇと思うがよ、気ぃつけてな?」

「・・・そのお兄ちゃん・・・怖い人?アイリス、また酷い目にあうの?」

「!!・・・っはぁ、すまねぇアイリス。間違ってもそんな奴じゃねぇってオレが保証するしあんなことをさせるつもりは無ぇ。そこは安心してくれ。な?」

「・・・うん」


アイリスの過去から続くトラウマ。
それを思い出させたことを酷く後悔する。
俯き、唇をかみ締める。

(くそっ、オレってやつぁ・・・)
「おじちゃん」

「ん?」


顔を上げれば、アイリスが笑顔で米田を見つめる。


「大丈夫だよ。アイリス、おじちゃん達がどんなことをしてもアイリス達を守ってくれてるってこと、ちゃんと知ってるから・・・そんな顔しないで?おじちゃんはいつもお酒飲んでふらふらしながら笑ってるのが一番だよ」

「アイリス・・・っ、すまねぇな!ったく、オレ様としたことがアイリスに慰められるたぁ・・・立場が逆転しちまってやがる!うははははは!」

「きゃはっ!だってアイリス大人だも~ん」

「うはは、違ぇねぇ!!アイリスの方がおいらよりもずっと上だ!うはははははは」


広間に広がる笑い声。
米田の眼鏡の奥に光るものが、綺麗に輝いた。









【さくら】

あら?帝劇の中から笑い声が。
この声は・・・米田支配人に、アイリス?

相変わらず仲が良いわね。
外見こそ似てないけど、あの二人には実の爺孫の関係が一番しっくり来る。
血も繋がっていないんだけど・・・私のお爺様が生きていらっしゃったらああなったのかしら?
マリアさんにそのこと言ったら静かに微笑んでいたのを覚えている。

っと、大神少尉に案内をしないと。


「大神少尉、こちらが私達の職場、帝国劇場です!」

「へぇ~・・・さっすが帝都、劇場といえどこの広さは半端じゃねぇな・・・」

「それはそうですよ。客席と舞台、そして私達が生活する寝室、厨房、事務所、売店。
全てがこの劇場の中にありますから」

「ほぉ~・・・」


くすっ、大神少尉ったらあちこちを目を輝かせて見回してる。
ちょっと・・・子供っぽいかも?
新しい一面を見つけた、とワクワクしていると少尉から声をかけられた。


「なぁ、小娘」
「!」


あ、あれだけ名前を教えておいたのに・・・!
あったまきた!!


「おい、聞いてるのか小む「さくらです!!真宮寺さ・く・ら!!」
「あぁ?しん・・・ぐうじ?んでさくら?」

「そうですっ!いい加減覚えてくださいよ、私の名前くらい!」

「いや、正直んなヒマ無かったし」

「っくぅ~~~・・・!そんな訳ないじゃないですか!いいですか、乙女にとって名前を間違えられたり、覚えてもらえないのは非常に、ひ・じょぉおおおに屈辱なことなんです!!分かりましたか!?」

「・・・乙女って誰が?」

「!!」ヴンッ!
パァアアン・・・!


「ってぇ・・・な、オイ!」

「少尉が失礼なことを言うからこうなったんです!少しは反省してください!!」
ツカツカツカツカ・・・

「???」


私は怒って大神少尉を放って歩き出す。
ちらりと振り返るが、ちっとも分かってないわねあの顔!!

更に怒りがこみ上げてきてそのまま私は階段を駆け上がり、自分の部屋に閉じこもった。


「うぅううううぅ・・・」

ボスッ、ボスッ!

枕に八つ当たりするがちっとも気が晴れない。
この感情・・・どうしてくれよう?

Side out









「んだぁ、ありゃぁ・・・」


呆然と見送る大神に、背後から先ほどの二人が近づく。


「おぉい、駄目じゃねぇか、うちの新入りスタァを怒らせちゃぁよぉ」
「おにいちゃん!どうしてあんなことさくらに言っちゃうの?信じらんない!」


責め口調で言い寄る二人に、大神の眉がハの字を作る。
そしてその口から吐き出る言葉。


「おぉう・・・酔っ払いに喋る西洋人形・・・どっかのびっくり屋敷かここは」


ピシィッ!!!

大神はこのとき、空気が張り詰め裂け目が出来るのを察知した。









【アイリス】

こ・・・このおにいちゃん・・・本気で言ってる・・・!?
アイリスの能力の一つ、『リーディング』。
人の心の中をのぞいちゃう、知られたらきらわれちゃう能力。

二度とあんな思いはいやだ。けど・・・
さくらの為に、使ったの。

おおがみ・・・いちろうっていうのか。
でもこのおにいちゃん・・・心で思っちゃったことをそのまま言っちゃうみたい。
アイリスのこと・・・しゃべる西洋人形、って・・・

あ、でもお人形さんにまちがえちゃうほどかわいいってことなのかな?
えへへ、それだったらうれしいな・・・

米田のおじちゃんに言った酔っ払い・・・
うん、アイリスもそれには賛成、かな。
でも、イヤな酔っ払いじゃなくって、頼れる、大好きな酔っ払いのおじちゃん。
このことはアイリスの中では変わらない、ぜったい。

あうぅ、まだこの国のことばになれてないから考えがうまくまとまらないよ・・・

でも・・・このおにいちゃんは・・・
しんらいできる。うん、まちがいないよ!
アイリスの『おとめのかん』はまだ外れたことないんだから!

まだこまった顔で頭を掻いているおにいちゃんに、アイリスからのごあいさつ!


「よろしくね、おにいちゃん?」

side out









【米田】

うはは、こいつぁ傑作だ!
オレとアイリスを見て間を空けずに言い放つ奴なんざぁ見たことねぇ!

アイリスの『挨拶』にも驚ぇた。
あの挨拶は気にいった奴にしかしねぇってこと、オレとあやめは良く知ってるぜ。

普段は人見知りで知らない奴の前だとオレの影に隠れてたアイリス。
それが今回はどうだ。
ハナっから大神のやろうに食って掛かってやがった。

そしてとどめにあの挨拶。

大神よぅ、どうやら『及第点』はもらえたみてぇだな。
オレからすると赤点ぎりぎりだがよ。


「あー、大神少尉、と言ったか」

「んあぁ?おう、オレが大神一郎。帝国海軍少尉だ」

「んじゃあよ、そこ曲がったところに事務所があるからそこで手続きやってくんな?オレぁ用事があるから付いていってやれねぇがよ」

「はっ、アンタに酒飲む以外の何の用事があんのか」

「こいつは手厳しいねぇ・・・ほれ、行った行った」

「チッ・・・」


くっくっく・・・て、帝国軍人が・・・舌打ちまでしやがった・・・
こいつはいろんな意味で規格外な奴だ!
面白くなってきたぜぇ・・・

そうさな、大神にお似合いの仕事・・・仕事・・・

どれが一番面白い反応が返ってくるか・・・


『これ』だ、『これ』にしよう!

奴の驚く顔が目に浮かぶえぜ・・・
クイッ、クイッ


「っと、どうしたアイリス?」

「おじちゃん、何かへんな笑顔してた・・・何考えてたの?」

「こいつぁアイリスと言えど教えらんねぇな・・・直に分かる、楽しみに待っててくれよ」

「おじちゃんがそう言うなら・・・あんまりおにいちゃんいじめちゃダメだよ?」

「おぉっと、釘を刺されちまったぃ・・・くわばらくわばら」


アイリスの心なしか冷たい視線を受けながらも、オレは『総支配人室』へと戻っていった。

Side out









「げっ、あんたぁ・・・」

「よう、大神。さっきぶりだな」


総支配人室。そこでは二人の男が対面していた。

事務所において、着任の辞令を受け取り、それに名前を記入し着任完了の手続きを行った後、事務所にいた藤井なんとか(大神覚え)に案内されて時間ぴったり、総支配人室に向かった。

そして入室を許され、目に写ったのは先ほど自らが『酔っ払い』呼ばわりした男の姿が。


「米田支配人ってのはアンタのことだったのか。チッ、せこい真似しやがって・・・」

「こらこら、帝国軍人ともあろう者が、仮にも目上の者の前で舌打ちなんかするんじゃあねぇ」

「オレが言いたいのはさっきのことじゃねぇ」

「ん、どういうこった?」


予想に外れた言葉を返され、少しばかり緊張した空気が漂う。


「はっは、やっぱりか・・・アンタ、学長室でこそこそ隠れてた奴だな?オレを『値踏み』するその視線・・・間違うはずがねぇ」

「!!・・・何のこった?オレぁただの民間人だぜ?んなところにオレがいるわけ無ぇ」


一瞬言葉に詰まるが、米田は何とか酔っ払いの『仮面』を維持し、返す。


「・・・そうかい、ならそういうことにしとく。んで?本題に入ろうぜ?オレの仕事は?この劇場に異動されたんなら軍事行動はするわけが無ぇ。だとすれば団員の為の補助、力仕事、事務の手伝い・・・いわゆる雑用か。どう使うつもりだ」

「・・・・・・」


だが、大神も然る者。
すぐに話題を転換し、己の有利に話を進めていく。
そして米田が黙り、『仮面』を脱ぎ捨てるのを見て口元を歪ます。


「どうやら当り・・・ではないが遠からずってところか。なら・・・おい、扉の外で聞いてる小娘!おめぇだよ!入って来い!」


米田が黙っているのを尻目に、外で盗み聞き、もとい仕事着を持ってきていたさくらに声をかける。

ギィッ・・・

そして入ってくるさくら。
その手には男性従業員の仕事着が。


「なるほど、これで何とか納得・・・とまではいかないが理解はした。『軍服は来たる時まで着ず』・・・これでいいんだろ?」

「「!!!」」


再び驚愕する二人。
対して大神は、仕事着をさくらの手からふんだくり、広げてみせる。


「あ、あのぉ、大神少尉」
「おい、小娘」

「っ!!」

「怒るんじゃねぇ。オレはこの地に来たからにはもう『海軍少尉』じゃねぇ。これからは呼び方に気をつけろ。いいか?」


大神の言葉に、さくらは怒りを顕わにしようとするが、その意味を考えしばし考え、
そして


「じゃあ大神さん、って呼んでいいですか?」

「はぁ?大神さんだぁ?・・・っく、まぁこの場合はしょうがねぇ、それで泣いといてやらぁ」

「じゃあこれからよろしくお願いしますね、大神さん?」

「あぁ、よろしく、小む「さぁくぅらぁあ!!真宮寺さくらです!」」
「っち、よろしく、真宮寺」

「ぐぅっ・・・」

「くくくく・・・ふっふっふっふっふ・・・うぁっはっはっはっはっは!!!」


二人の掛け合いを黙って眺めていた米田が、急に笑い声を上げた。
すでに先ほどまでの警戒感は霧散している。

怪訝に思った大神が言葉をかける。


「大丈夫か、酔っ払い?飲みすぎて頭でもイカれたか?」
「!お、大神さん!?」

「くっくっくっく・・・いやいや、おめぇさん達、すっげぇお似合いだと思ってな?ふふふふ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・老い先短い老いぼれを笑い死にさせるつもりか?・・・大神よぅ」

「うぅううぅ・・・」

「あ?」


最後の方になって真剣みを帯びた米田の声に、大神が耳を傾ける。

「オレぁおめぇの事を信じる。だからっておめぇさんにオレを信じろなんて言わねぇ。ただよ・・・そのさくら、そしてアイリス・・・他にもまだいるんだが、そいつらだけでも信じてやってくれや・・・例え何が起ころうとも、な・・・・」


真摯に語られる米田の言葉。
大神はそれを全部聞き届け、零した。


「あんたぁ軍隊で言えば大将だ・・・オレぁあんたの命令、願いなら聞いてやらぁ・・・気が向けば、だがよ」









支配人室の外にて。


「おい、真宮寺。オレぁこの服着て何をすりゃあいいんだ?」

「あ、はい。忘れてました。えっと、大神さんには劇場入り口で・・・」

「入り口で?警備か?」

「いいえ。『モギリ』をやってもらいます!」


ドーーーーンと擬音が背後に表れそうなさくらの堂々たる言いっぷりに、大神はため息を吐きこう言った。


「転属願い・・・出していいか?」



さくらが舞う、そしてアイリスが笑顔を振りまく。
そのことごとくをあしらうかのように現る露出狂。
大神を取り巻く、3枚の花弁の三重奏。

次回、サクラ大戦『霊剣人形薙刀舞う』

大正桜に浪漫の嵐!!









あとがき:前作の予告にあった、モギリがオチ要員にw皆さん、石は投げないでください^^;
これまででご理解いただけたと思いますが、次回予告の文が全て描写されるとは限りません。作者の文章力が無いのが原因ですが・・・^^;

たくさんの感想、ありがとうございます。良い評価をしていただき、嬉しく思います。
引き続き、頑張りますのでこれからもお願いいたします。



[16303] 第4話・通常シーン
Name: く~が◆c894d15f ID:2a519efa
Date: 2010/02/11 23:16
タンッ、ダンダン!!

舞台の上で踊りの練習をしている少女が一人。
特徴的な長髪、そして結ばれた桃色のリボン。

いつもの着物姿ではなく、練習用のレオタードを着て必死に振り付けの練習を繰り返す。
その表情は真剣そのもの。

キュッ・・・タン!ヒュオッ・・・キュッ

誰一人観客も居ない中、本番に向けてただひたすら練習、練習、練習・・・。


だが。


ツカツカツカツカツカ  バタン!!!

「ぅおい!真宮寺ぃ!!飯の時間だ、食堂に来やがれ」
ズルッ
「きゃああぁあ!」

ビタン!!


絶妙の時機に大神からの声がかかる。
それにうろたえ、足を滑らせ、尻餅をついてしまうさくら。

「あぅうう・・・」

「ありゃ、何やってんだ真宮寺」

「大神さんのせいでしょうが~!!もう、急に入ってきて大声出さないでくださいよ!
これでも集中してお稽古してたんですよ?」

「知るかんなもん。大体お前が集中とか言う性質か?
演目が始まらん限りオレの仕事は雑用しか無ぇんだからよ、
あんまり手を煩わせるんじゃねぇ。只でさえ骨折が治ってねーのによ」

「ぐっ・・・」


ああ言えばこう言う。
大神が帝劇に来て3日。

大神とさくらの口喧嘩(さくら視点)は日常茶飯事、帝劇の静かな名物となりつつあった。









【かすみ】

私、帝劇事務所で会計をやってます、藤井かすみといいます。
今、帝劇は新たな仲間を招きいれ新しく生まれ変わろうとしています。

大神一郎さん。
帝国海軍から出向されてきた、口悪くも気が利く軍人さん。

彼が来て、この帝劇に活気が宿ったと思います。

例えば毎朝の如く行われる、大神さんとさくらさんの掛け合い。
あれが聞こえてくると、「あぁ、朝がきたんだな」って思えてくるようになりました。

たった3日。たった3日なのに・・・

あ、それとたまになんですけど大神さんが私達の仕事を手伝ってくれる時があります。
米田支配人からは頭脳優秀と聞いていましたが、まさかこれほどとは・・・
伝票をわずかな間に片付け、そして私や由里がやってる仕事も「ヒマだから」と言って
手伝ってくれます。

ふふっ、大神さんって私よりも年下には見えない時もあれば、歳相応以下に見える事も
あるんです。
ぶっきらぼうに見えて、意地悪口調をしているように見えて・・・
本当は、とても優しい。


「って聞いているんですか、大神さん!!」

「だぁ、うっせぇ!さっさと席に着きやがれ、飯だ飯!!」

「もう!後で話がありますから、絶対逃げないでくださいね?」

「オレの知ったことかボケ」

「ぼ、ボケって・・・!!」


ほら、ね?
相手にされていないようでしっかり相手されているの、さくらさん分かってないでしょう?
無関心な人に、そういう態度は取れないものです。

これから先、面白くなりそうですから教えないですけどね?


あ・・・あら、由里の癖が移っちゃったかしら?









【???】

お~ほっほっほっほ・・・帝劇スタァ神崎すみれ、ただ今戻りましたわ~!
米田さんから聞いた話によれば、どこぞの馬の骨を拾ってきたとの話ですが・・・
このわたくしが、しっかりと見定めてあげますわ!

うふふ、わたくしの採点は辛くてよ?


さてさて、まずは事務所に行くとしますか。
あら、かすみさんに由里さん、お久しぶりですこと。


「1週間ぶりです、すみれさん!」


由里さんは相変わらず明るい方だこと。


「お帰りなさい、すみれさん」


比べてかすみさんは家庭的な所が癒されますわ。


「ごきげんよう、由里さん、かすみさん。
一つお聞きしたいことがあるんですけれど、よろしくて?」

「はい、なんでしょう?」

「ここ、わたくしの帝劇に、殿方がお一人職に就かれたようですが、
その方の所在を教えてほしいんですの」

「あぁ、大神さんならさっきまでここでお手伝いしてもらってたんですけどぉ、
『飽きた』って言ってどこかに行っちゃいました」


な、なんてこと!たかだが新参者の分際で『飽きた』ですって!?
わたくしの表情を読み取ったのか、かすみさんが口を開きましたの。


「あ、あのすみれさん?大神さんは私達が頼んだ仕事を全て終わらせてから
そう仰ったんです。口が悪いと思われがちですが、頼まれた仕事はきっちりして
くれますよ?」

「・・・そういうことでしたら追求しないでおきますわ」


その殿方の名前は大神、と言うことですが・・・これは米田さんに直接聞いて
みるべきですわね。


「あら、お仕事をお邪魔しては悪いですし、わたくしはこれで失礼しますわ・・・
ごきげんよう、お二人共」


さて、総支配人室に向かいますか。



「きゃはははは、おにいちゃんこっちこっちぃ~!」

「待てやこらそこの幼女!そいつはオレんだ、返しやがれってんだこんちくしょう」

「や~だよ~、アイリスの名前を言ってくれるまで返してあ~げない!」

「て・・・てっめぇ・・・上等だこるぁあ!!」

「きゃあああああ」

ズダダダダダダダダダダ・・・・


・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・な、何ですの今のは。
あぁ、長旅が祟ったのでしょう、幻覚ですわ幻覚。

あの人見知りするアイリスが見知らぬ男性とあのようにはしゃぎまわるわけが
ないですもの。


いけない、米田さんの部屋へ・・・


「大神さん!アイリス!!どこに行ったんですか、もう!!」


あら、その声は・・・


「ごきげんよう、お久しぶりですわね、さくらさん」

「あ、お久しぶりですすみれさん・・・ってえぇえええ!?す、すみれさん!?」

「随分なご挨拶ですわね、わたくしが居るのがそんなにおかしいんですの?」

「い、いえ。そういうわけでは・・・あははは」


相変わらず、自分に不利と知ると愛想笑いで誤魔化すのは変わっていませんわね。
まぁ1週間やそこらで変わられてても混乱してしまいますが。

それはいいとして。


「ちょいとさくらさん、あなた今、『大神』、とおっしゃいまして?」

「あ、大神さんのこと、ご存知なんですか?」

「米田さんから連絡が入りましたの・・・どこぞの馬の骨を拾ってきた、と」

「ぶっ・・・ちょ、ちょっとすみれさん。そういうこと、大神さんの前で言わないほうが
いいかと」

「・・・さくらさん?あなた随分と偉くなったものですこと・・・このわたくしに意見
するのはトップスタァに輝いてからにしてくださる?」

「あぅ・・・で、でもすみれさん、私が言ったこと、ちゃんと覚えていてくださいね?」


ふむ、さくらさんにここまで言わせる殿方も珍しいですわね。
ふぁんの方で怪しい方がいらしても素で流していましたのに。


「ちょうど良いですわ、さくらさん。その『大神』とやらに会わせていただけるかしら?」

「えぇ!?・・・で、でもいずれは顔を合わすんだからいっそ今のうちに・・・
あぁ、でもぉ・・・」

「何をぶつぶつおっしゃっていますの!?わたくしはそこの長椅子で待ってますから早くなさい!」

「はっ、はい!」

ダダダダダダ・・・


全く、日本女性ともあろう者が足音を立てて走るんじゃありません。
これだから田舎者は・・・

あ、そういえば支配人室に向かう途中でしたわね。
いろいろとありすぎて忘れてましたわ。

はぁ、この神崎すみれ、一生ものの不覚ですわね・・・


「てめっ、真宮寺!お前のせいで幼女に逃げられたじゃねぇか!」

「そんなことは私の知ったことではありません!もう、帝劇の団員の方が帰って
こられたから紹介するって言ってるじゃないですか」

「そんなもん余計に知ったことか」

「!!」


ふ・・・ふふふ・・・
聞きましたわよ、馬の骨のお方。
この帝劇トップスタァ、神崎すみれを・・・知ったことか・・・ですってぇ?

許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ・・・

お父さまに報告差し上げて社会的に抹殺するのが最上ですかしら・・・


「すみれさん、すみれさん」


あ、あら。考え事をしていたらいつのまにかさくらさんの姿が。
そして・・・
その後ろに立ってらっしゃる方・・・この方が「大神」さん、とおっしゃったかしら。

ここは帝劇の先輩として、トップスタァとして器の見せ所ですわね。


「初めまして、わたくしはこの帝劇トップスタァ、神崎すみれと申しますわ」

「あぁ?・・・おい真宮寺、この肩裾露出狂、本当にこの劇場の踊り子なんか?」

「あ、あわわ・・・お、大神さん・・・!」

「誰が天然丸出しついでに肩裾胸まで丸出しの露出狂なんですってぇ!?」

「・・・真宮寺。オレ疲れてるみたいだわ。部屋帰って一眠りしてくる」
「あ、わわわ、ま、待ってください大神さん!すみれさんが自己紹介したんですから、
大神さんも自己紹介するのが礼儀ですよ!」


は・・・は・・・腹が立ちますわね・・・
わたくしも腹を探る社交パーティを数度経験し、それなりに嫌な性格の殿方を見てきた
つもりですが・・・この男!!


「さくらさんの言う通りですわ!さぁ、あなたも自己紹介してくださる?」


ですが何とか感情を抑え、先を促したのです。


「チッ・・・」


!し、舌打ちまで!!
ここまで露骨にされたことありませんわ!!


「しゃぁねぇな・・・アァッ!・・・ウン!!
初めてお目にかかる、元帝国海軍少尉、大神一郎だ。
今は米田のよっぱら・・・じゃなかった、支配人からモギリ、雑用の仕事をしている。
よろしく頼む」

「「!!」」


・・・い、意外ですわね。
この男、元海軍少尉。
それも驚きですけど、さっきまでとは全く違う言い回し・・・
それに瞳の奥に見え隠れしている『激情』・・・

全くわたくしとしたことが、此れほど綺麗に騙されるとは。
物言いに気を取られ、真の姿が見えていなかった。

かすみさんや由里さん、そしてさくらさんにアイリス・・・
意識的、無意識的の違いはあるみたいですがこの男の真の姿を朧げながら認識している、ということですわね。

ならば。


「ふふ、こちらこそよろしくお願いいたしますわ、少尉」


満面の笑顔でこう言うしかないですわね。

それにしてもさくらさん、少尉のこと、じっくり見すぎですわよ?

Side out









大神一郎。
真宮寺さくら。
イリス・シャトーブリアン。
神崎すみれ。

この4人が帝国劇場にて肩を並べた。
その時機を狙ってたが如く、上野公園で脇侍の集団が現れたとの報告が上がり。

そして事態は急速に動き出す。
けたたましく鳴り響く警報。

それに、いち早く反応し作戦室へと急行する米田。
廊下を走り、秘密の入り口から身を滑らせ、作戦室へと滑り降りる途中で
戦闘服に着替えるさくら、すみれ、アイリス。

そして。


「っだぁ!!機械の分際でオレの服を脱がそうとしてんじゃねぇ!!
いてっ、いててっ!オレにケンカ売るたぁ上等じゃねぇか!ぶっ壊してやる!」

ドコォォオオ!!


ドサッ「いてっ・・・何だここは」

大神一郎。


非常時だというのに、作戦室は微妙な空気が流れた。









「じゃあ気を取り直して、だ。何ださっきのバカでけぇ警報は?
何かあったんか?」

「「「その前にさっさと着替えて((きなさい))(ください)!!」」」

「チッ」

「また舌打ちされた!?」

「はぁ・・・」←(米神を押さえる米田中将)


更に5分後。
軍人の習性で3分で着替えた大神は駆け足で作戦室に戻ってきた。

それを確認し、同じく陸軍軍服姿の米田が話し始める。


「よし、みんなそろったみてぇだな・・・大神、いろいろ言いたいことはあるだろうが
後にしろ」

「・・・・・・」


先に釘を差した米田に、大神は忌々しげに頷く。
それを見て口元を歪ませた後、再び話し始める。


「今入った情報によればだ、上野公園に脇侍が数十体現れたとのことだ。おそらくだが、
先日大神とさくらが撃破した脇侍とつながりがあると考えられる。・・・大神。軍人として
聞くが、これをどう思う?」


簡単に状況を説明し、米田が大神に矛を向ける。
それに対し,大神は


「偵察、もしくは陽動だろ」

「ほう、どうしてそう思う?」

「簡単な話だ。あんな化け物を、単体だったとは言え人間がぶっ倒した。あの化け物の
背後に何か居るとすれば、オレ達は未知数なわけだ。ならば数を用意し、時間を稼ぎ、
そしてこちらの戦力を測る。もしくはここが既に突き止められていて、あちらに気が向き
すぎたところを急襲か。ちったぁ考えれば同じ場所に出現した、ということで容易に推測
できる」

「「「・・・・・・」」」


大神の推論に、他の3人は何も口を挟まない。いや挟めないのだ。
それほど大神の推論には説得力があった。


「くっ、さすがは海軍学校首席なだけはあるな。こちらも概ね同じ考えに至った。
だが陽動は可能性が低いな。今回のは偵察だろう」

「ならばどうする?敵はあの化け物数十体。こちらは酔っ払い、元不良軍人、小娘、
幼女、露出狂の5人しかいねぇ「「ちょ、ちょっとおおが(少尉)」」黙ってろ!!
米田『中将』、何か対策でもあるのか?」


名前を言わず、屈辱的なあだ名で呼ばれ激昂するが逆に大神に怒鳴られ、口を閉じる二人。

そして、事情を知る彼女ら3人が窺うように米田の顔を見る。


そこにあった米田の表情は、まるで子供がいたずらを考え付いたかのように輝いていた。









【大神】

あの化け物共、調子に乗りくさりやがって!
ぜってぇぶち壊す!

だがそうは言うものの、オレ『達』には戦う手段が無ぇ。
この前の戦闘ですら、右腕1本の犠牲と裏技を使って何とか倒したんだ。

米田のおっさんの顔、ありゃあ何か隠してるな・・・


促され、更に地下へと降りてゆく。

・・・何だここは・・・?格納庫・・・なのか?
そこに鎮座しているのは・・・色とりどりの人型の機械。

銀、桜、紫。
3体の人型がある。

まさか・・・これを使って戦うってぇのか?


「これこそ我が陸軍が研究・開発し、神崎重工で作られた人型蒸気霊子甲冑、『光武』だ!!」


なるほど、『霊子』甲冑ね?
そうかいそうかい・・・こいつらは全員が選ばれし、『霊気』持ちの集団。
んで、言わばこの劇場は蓑隠れする為の表の顔。
戦闘員はそこで踊り子をすることによっていたずらに情報が漏れるのを防ぐってわけだ。
ならばオレみたいなのをここに配置したのも頷ける。
かぁ、誰が考えたんだか知らねぇが緻密に考えてるじゃねぇか。

オレにあいつらをぶっ壊せ、と。そう言いたいんだな?
上等!あいにく平和な生活にも飽きていたところだ!

溜った鬱憤もとい帝都の平和の為・・・やってやらぁ!!


「それでは大神『隊長』、出撃の合図を!」


ってあぁ!?隊長だぁ?


「待てやこらぁ!オレぁただの戦闘員じゃなかったんか?隊長だなんて聞いてねぇぞ!」

「おう、だから今言ったじゃねぇか」

「ってこら中将。言っていい事と悪いことあんだぞ、あぁ!?」

「それ、大神さんには言われたくないと思います」

「だぁってろ小娘ぇ!オレはいやだぜ、隊長なんてかったりぃのはよぉ!」


オレがこういうと米田のやろう、にやけてこう言ってきやがったんだ。


「大神『少尉』。米田『中将』が命令する。帝国華撃団花組隊長に任命する」

「き、きったねぇぞてめぇ!!」
「しょ、少尉?少し落ち着いてくださいな」
「大神さん、中将に向かってそんな・・・!」


露出狂に小娘!また邪魔するか!


「だからだぁってろっつっただろうが!」
「おにいちゃん!!?」

「んぁ?おう、幼女。おめぇも何かあるんか?」

「アイリス・・・おにいちゃんに隊長、やってほしいな・・・」


はぁ・・・ため息しか出ねぇ。


「・・・幼女。10年はえぇ」
「ひどっ!?」

「だぁ!ら致があかねぇ!!大神、よく考えてみろ。さくらもすみれもアイリスも、全員
一般人だぜ?おめぇみたいに戦術叩き込まれてねぇんだ・・・できることならよう、
オレが行きてぇところなんだ・・・でもオレには霊力が無ぇ・・・頼む、大神。隊長、
引き受けてやってくんねぇか・・・?」


・・・そうか、良く考えりゃあこいつらは『力』の運用すら知らねぇ素人。
言わば一般人と変わんねぇわけだ。
米田のおっさんも霊気が使えない、最上指揮官。
なら・・・適任はオレしかいねぇじゃねぇか。


「分かった・・・オレがやってやらぁ!だがどうなっても知らねぇからな!」


オレにはこう答えるしか無かった、ちくしょう。

Side out









「帝国華撃団花組、出撃だぁ!!あんの雑魚共を地獄に叩き込めぇ!!」

「「了解!!」」


大神一郎の檄を受け、華々しく進み出す三体の光武。

だが


「ん?三体??オレ、小娘、露出狂・・・あれ、幼女は?」
ピコンッ
『アイリスならお留守番だよ?まだ機体ができてないの』

「そうか、ならそこでじっと見ていやがれ・・・敵は必ず殲滅させる」

『うん、おーえんしてるからね、おにいちゃん!帰ってきたらお花見だよ~?』

「何ぃ?よっしゃ、全開全速で片付けるぜ!任せとけ!!うっひょぉお!酒だぁあ!!」


ほろ酔い気分で弾丸列車『轟雷号』に乗り込む大神。

作戦室の二人は、若干不安を覗かせながら見送るのだった。









次回、引き続いて戦闘開始

作戦は?
陣形は?
周りの被害は?
回復物資は?
援護は?

『だぁあ、うっせ~!オレに指図すんじゃねぇ!!』









あとがき:ゲームにおける、アドベンチャーモードを終了、次にバトルフェイズになります。大神がおかしなテンションに・・・wどんどん私の手を離れていきそうな予感が^^;皆様から指摘があるまでこのまま突っ走らせますのでよろしくお願いします。

あと、感想にも書かれていました「表題」は、今のところ考え付いておりません。
インスピレーションが起きるまで、このままを維持していく予定です。

皆様の感想を見て、更にやる気が起こっています。
続々と執筆中です。本当にありがとうございます。

※指摘に基づき、すみれ機の色を修正



[16303] 第4話・戦闘シーン
Name: く~が◆c894d15f ID:eb9efbde
Date: 2010/02/11 23:13
上野公園。

人々が逃げ惑う中、数体の脇侍が縦横無尽に暴れまわっている。

桜の木を倒す。
出店を壊す。
更には公園内の施設に襲い掛かる。

人々は桜見の最中の出来事に、ただひたすら逃げ回るだけ。

そんな中。


「あっ」


逃げ惑っていた親子の内、幼い子供が躓きこけてしまう。


「ケイ君!!」


母親が助け起こそうと、駆け寄ろうとするが

ズン!!


『ギィッ!?』


「ひぃっ!?」

「お、お母さん!」


脇侍が行く手を阻む。
その脇侍は母親の方を見向きもせず、子供の方へと歩を進める。


「やだ・・・やだよぅ・・・」


泣きながら後ろずさるが、脇侍の方が早い。
次第に追い詰められてゆく。


「だれか・・・だれかぁ!!」


母親は半狂乱となって叫ぶが、周りは逃げ惑う人々、そして複数の脇侍しかいない。
二人が、半ば諦めかけたその時。


「「「「帝国華撃団、参上(だこらぁ!!)」」」」


白銀の機体が素早く脇侍の横に回りこみ、深々と日本刀を突き刺す。
と同時に、桃色、紫色の機体が子供、母親を抱えて素早く離脱。


ドガァァアアアアン・・・!!


その数秒後、脇侍は跡形も無く爆散した。









【大神】

よっしゃ、何とか間に合ったか。
にしてもあの列車、ここに着くと同時に上空に弾き飛ばしやがった。
着地の時に人でもいたらどうしてたんだ全く。
さっきは運良く、あの親子からそう離れてないところに着地したから不幸中の幸いだがな。
これは帰ってから上申すべきか。


だがよ・・・
今のオレは、んなことどうでもいい。

この化け物共・・・無力な親子を狙おうとしやがったな・・・?
命を・・・奪おうとしてやがったな・・・?


全部まとめてぶっ潰す!!!


「小娘ぇ!露出狂!相手は数十体、こちらは3体だ。相手が雑魚だろうが被害を最小限に
することがオレ達の仕事だぁ!オレと小娘が最前線。露出狂はオレ達2体の背中を守れ!
お前の武器はその薙刀。それでいいんだな?」

「その通りですわ、少尉。わたくしの武器は至近距離から準中距離まで攻撃範囲のある薙刀。
その陣形、そしてわたくしの役割。しかと承知しましたわ!」

「大神さん、私も同じく了解!」


けっ、初めての実戦のはずなんだがいい度胸してるじゃねぇか。
さすがはあの酔っ払い中将達に選ばれただけあるな。


「よし、いい返事だ!・・・あぁ、言い忘れたが小娘がこの前やったような大技は指示が
あるまでは絶対に使うんじゃねぇ。いいか?」


ちっ、化け物共がこっちに向かってきやがった!


「おるぁ!!」ザンッ!

ドガアアアァン・・・


おぉ、この光武とやら、なかなかすげーじゃねぇか。
機械の力とはいえ、こいつらを一撃でぶっ殺すとはよ。


「な、何故ですの!?こんな下々、わたくしの必殺技で・・・」
「てめぇは出撃前、何を聞いてた!?」
「っ!!」


ふぅ、やっぱここらへんは素人か。


「いいか、今回の敵はあくまで『偵察』の可能性が高いわけだ。とすると後ろにこいつら
よりも手ごわい奴がいてもおかしくはねぇ。だとするとオレたちの切り札を簡単に見せたら
その対策をされてしまうわけだ。
戦いはこれで終わるんじゃねぇ。今から始まるんだ。
初っ端の雑魚共にお前らの大技を見せるにゃあもったいねぇ。そうだろ?」

「・・・分かりましたわ。わたくしの短慮、お詫び申し上げますわ・・・はぁっ!!」

ヒュオッ・・・ドオオオォォン・・・!!

露出狂の正面、つまりはオレ達の背後から迫っていた化け物3体が一気に叩き伏せられた。
ほう、やりやがる・・・今の斬撃、悪くねぇ。
しっかり霊気を篭め、遠心力を利用した攻撃。
力と技を高い技術で融合させていやがる。


「そういうことだ。小娘もいいか!?」

「了解です、大神さん!!せいっ!!」

ザシュ、ザシュ・・・ザンッ!!・・・ドォォオオン・・・!!

小娘に向かってきた化け物1体、小娘の連続斬撃で撃破、か。
こいつは完成された剣術、って感じがするな。
おそらく免許皆伝、もしくはそれに近い腕。


「くっくっく・・・なかなかどうして、頼もしいじゃねぇか!真宮寺!!神崎!!」

「!せ、戦闘中に初めて名前を・・・」
「え、えぇ。こんなものはお茶の子さいさいですわ!少尉、ご指示を」

「よし、まずは正面の敵を叩く!二人共続け!!」

「「了解!!」」

side out









作戦室では。
米田とアイリスの二人が安堵の表情で中継拡大映像を見ていた。


「しっかし大神の奴、なかなかやりやがる。あの光武を初めての搭乗でいとも簡単に操って
みせるたぁ・・・いやはや、世の中分からねぇなぁ」

「むぅ~、おにいちゃんはすごいんだよ!?アイリスちゃ~んと知ってたもん!」

「そうかい、アイリスは知ってたかい」


そう言いつつも、画面下に表示されている霊力値を見る米田。


(相変わらず大神の霊力値は0・・・なのに光武は動いてやがる。一体どういうこった?)


表情を変えることなく、米田は心の中で疑問を浮かべる。
有り得ないからだ、霊力反応無しにも関わらず光武が動くのは。

かつて開発段階の時、神崎重工及び陸軍の霊力を持たない屈強な男で試運転させたが、少しも
反応しなかったのが資料としてあるのだ。

何回も実験し、そしてその当時の霊力測定器により一番の霊力をもったすみれが、若干10歳にして
起動を成功させ、そこから世界中から霊気持ちの能力者を集めたのだ。

大神は色々な意味で規格外過ぎる。

(だが、こういう規格外が時代の先端を切り開く、『英雄』の資質を持っている可能性は高ぇ。
・・・大神、おめぇさんがどこまで行けるか・・・じっくり見せてもらうぜ)


「おにいちゃん、そこだ~!やっちゃえ~!!」

(くっくっく、アイリスが此れほど懐くたぁな・・・)


内心で喜び、驚き、楽しみを混ぜ合わせながら米田は映像に意識を集中した。









【さくら】

大神さんと組んで戦うなんて。最初は不安でいっぱいでした。
だって大神さん、普段から私にいろいろ意地悪言って、私が文句を言っても簡単に流すし。
でも。


「くっく、よく来たな雑魚共ぉ!!うおりゃあ!!!真宮寺、お前そっち頼む」
「了解!」ザシュッ!!

不思議なくらい自然に動ける。
私が大神さんの補助をすることもあれば、私が窮地の時は大神さんが補助してくれてる。


「フハハハハハハハハハ!死ねっ!滅べっ!!地獄に落ちやがれ!!」
ザシュザシュザシュザシュザシュッ!

すごい・・・これが本当に初めて光武に乗った人の動きなのかしら・・・

「てめっ、小娘ぇ!油断すんじゃねぇ!」ザクッ!

「ご、ごめんなさいっ!?」

あぅ、失敗しちゃったらすぐ「小娘」呼ばわりされる・・・
落ち込んだ私を横目に、大神さんが投擲した刀を拾う。

「あ、あぶなっ・・・!」
ヒュオッ!!

後ろから!?
す、すみれさん?

「少尉、わたくしを信じてくださるのは嬉しいのですが、少々隙を空けすぎですわよ?」

「はっは、わりぃな神崎」

・・・むぅ。
いつのまにすみれさんとこんな・・・


「負けてられません!!」

ザシュッ!ザンッ、ザクッ、シュバッ!!


「真宮寺機、12体目撃破!!」

「おぉ、気合入ってんじゃねぇか、真宮寺。神崎ぃ、オレ達も負けてらんねぇぞ!!」

「当然ですわ!」


左手のみで刀を振りかざし、残骸の山を作っていく白銀の機体。
この人なら・・・大神さんなら!!


「真宮寺さくら、見敵必殺!全ての敵を斬り捨てます!!」

Side out









【すみれ】

わたくしの武器は薙刀。
少尉はわたくしの武装を見て即座に、陣形を命令されましたわ。

確かに、刀を武器とする少尉とさくらさんが前衛。
攻撃範囲が刀よりも広いわたくしが後衛援護兼後方警戒。

これにも驚かされたのですけど、わたくし達の『必殺技』の封印命令。
これには最初納得がいきませんでしたわ。
戦場はわたくし達の舞台。
華々しく舞ってこそのわたくし達だと思っていた常識を、粉々に打ち砕いてくださいましたわ。

ですが説明を聞いて、わたくし達がいかに戦場において『素人』か、ということを知らされました。この規模の敵ならば、少尉の仰る通り使うまでも無いでしょう。

そして先ほどから続いている戦闘。
少尉は、左腕のみという制限が有りながらも上手くさくらさんを補助し、そして目の前の敵を斬り伏せています。
左腕のみで此れほどの強さ。ならば右腕もが戻った状態ならば?
二振りの刀を装備しているからには、二刀流を修めていらっしゃるのでしょう。


一番不可解なのは、少尉の攻撃の際霊力を感じられない所ですが・・・


少尉の力、まだまだ奥が深そうですわね。


「神崎すみれ、人生初の桧舞台!華麗に舞ってみせますわ!!」

side out









【大神】

ん~む、さっきから二人の勢いが凄すぎるな・・・
二人とも、戦闘になると好戦的になる性質なんか?

だとしたら指揮官としたら頼もしいんだが普段の対応に困るよな・・・

くそったれ、指揮官なんて下の奴の世話も仕事に入るわけで、だとするとオレの有意義な
自由時間が少なくなるってわけで・・・

あぁクソ!どうも悪いようにしか考えらんねぇぜ、ったく。


まぁそれは後においとくとしてだ、こいつら脇侍つったか。こいつらの目的は何なんだ?
兵士はその戦いに勝つ為に戦い、指揮官はその後のことをも考えて戦術を練る。
これが士官学校で習ったことだ。

これに当てはめると、だ。
この程度の質を複数送り込むってだけで相当な規模の組織が背後にあることが照明されるわけだ。

この機体を作るにしても、やっぱ予算ってのがかかってくる。
そしてこいつらを量産できるってのは相当・・・
しかもこいつら以上に手強い機体が出てくるのも考えられる。
だが出し惜しみや偵察をしてるんじゃなく、総力戦という可能性も・・・
・・・
・・・・・・
くそっ、ヤメだヤメ!!
こういうのを考えるのはあの酔っ払いの仕事だろ。
これくれぇやてもらわないと割りにあわんぜ、ったく。

オレがやるべきは、損害をいかに少なくしてどれだけ効率よく敵をぶっ倒すか。
そして戦場における改善点の上申だ。
あ、あとあまりやりたくねぇが、あの二人の戦闘の後の精神状態も補助しないとな。


うっし、考え事は後だ後!!
今はこいつらぶっ殺すのに集中するか。
あの親子の借りもあるしな。

あ、思い出したらだんだん腹が立ってきた。


「大神一郎!てめぇらをぶっ殺す者の名前だ!!冥土の土産に覚えていきやがれ!!」

side out










脇侍にとって、目の前を集団で切り込んでくる3体の機体が鬼の姿に見ただろう。

わずか一振りで斬り裂かれ、爆散されていく仲間達。
隙を突こうとしても、3機が連携して動いているのでそれすらも叶わない。

時が過ぎる毎に、脇侍の数は減り続け、対して花組の方は傷らしい傷も無い。


残り10体を切り、いよいよ追い詰められていく脇侍達。
だが、『意識』無き機体に、有数の能力者である人が搭乗した光武に敵うはずもなく。


「これでっ!!」

「「とどめです(わ~)っ!!」」


光武1機が脇侍1体を殲滅し、残り3体だった脇侍は全滅。
ここに、帝国華撃団の勝利が確定した。



「っし、敵殲滅を確認!おい、よっぱら・・・じゃなかった米田中将、こっちはあらかた片付けたぜ」

ピコンッ!
『おう、ごくろうだったな大神ぃ。よくやってくれた。初めて光武を動かしたにしちゃあやるじゃねぇか』

『おにいちゃん、さくらもすみれもすごいすご~い!』

「お、幼女も見てたか?約束は守ったぜ?」

『うん、ありがとうおにいちゃん!』

「へっ、ざっとこんなもんだ」

「・・・ちょいと少尉?」

「ん?なんだ露出狂」

「んなっ!?また戻ってますわよ!?・・・まぁよろしいですわ。聞きたいことがあるのですがよろしくて?」

「なんだ?これから酒飲むんだからよ、早くしてくれや」

「では手短に。少尉は本当に光武に乗ったのはこれが初めてなんですの?」

「あぁ?あったりまえじゃねぇか。そこの米田のおっさんに騙されて雑用ばっかしてきたんだ。
出撃する前に急に言いやがってくそったれが。それがどうかしたんか?」

「少尉・・・あなた攻撃する際、霊気を使っていませんわね?」

「あ、それ私も気になってたんですよ」

「あ?何だ、霊気って?んなもん気合と根性があればどうにでもなるだろうが」

「そんなわけはないでしょう!この光武は霊気を持つ人間で無いと操れないはずです!それに『おぉい、すみれ。この辺にしとこうや』米田司令・・・」

『まぁ今回は初陣でありながら見事勝利したんだ!さっさとけぇって花見の準備すんぞ』

「くはっ、これが楽しみだったんだ」

「あ、そうだ大神さん。私達花組がせっかく勝利したんですが、決めポーズ、作っちゃいません!?」

「あ?何だそのきめぽーずって?」

「ですから勝利した後の勝ち鬨みたいなものって考えてください。どうですか?」

「勝ち鬨か・・・おもしれぇ、やってみようじゃねぇか。露出狂もそれでいいよな?」

「ですから何度も・・・はぁ、もう良いですわ・・・勝ち鬨、でしたわね?わたくしもよろしくてよ」

「アイリスもやるやる~!」

「はは、おいらも混ぜてくれぃ」

「ふふっ、アイリスも米田司令もこちらに。・・・それじゃあ行きますよ?」



『勝利のポーズ・・・決めっ!!!』








「ぐぁ~~じんましんが出てくるわ!!やっぱやめぇい!!」







※※※

「オレの秘密・・・しゃべるわけにはいかねぇ・・・そうだろ?爺ぃ・・・」









風が吹く。桜が舞う。そして鉄の礫が雨と降る。
実戦の後の帝劇に、前隊長が姿を現す。
あなたの性根・・・叩きなおしてあげます!!

次回、サクラ大戦『氷の才媛、帰場す』

大正桜に浪漫の嵐!!









あとがき:戦闘シーン、一応上がりました。前々から苦手な戦闘シーンなので、所々おかしい
ところがあるかと思いますが、気になりましたらご指摘願います。

勝利のポーズの際、米田とアイリスが出てきたのは戦闘後に作戦室からアイリスが付近まで
テレポートした、という設定です。
光武搭乗時ならば制限がありますが、2人でならということで出てきてもらいました。
無理矢理かもしれませんがw


ゲームにおける、初めての戦闘のやり方、動かし方、そして作戦(風林火山)については省いております。
どうぞご了承願います。

※指摘に基づき、すみれ機の色を修正



[16303] 幕間(4,5話)
Name: く~が◆c894d15f ID:5a273df2
Date: 2010/02/14 20:28
戦闘が終わり、宴会会場。

夜の闇が深くなろうとしている中、大きな桜の木の下には大きなシートが敷かれ。
そしてその上に鎮座するは、大神一郎含む花組メンバー。
その対面には米田、劇場事務員の藤井かすみ、榊原由里の姿が。

彼らの中央に位置するは、戦闘の後にかすみと由里が用意したであろう料理の数々。


もちろん、大神や米田が大好きな日本酒の存在もあった。


「よっしゃ、それじゃあ今日の初戦闘勝利と、大神の正式な着任を祝して・・・乾杯!!」

「「「「「「かんぱ~~い!!」」」」」」

「んぐんぐんぐんぐ・・・プアァアァア!!・・・・っくぅ~~!
うめぇ・・・こいつの為に頑張った甲斐があったっつーもんだ」

「大神さん・・・親父くさいです・・・」
「少尉・・・あなたハタチだったのでは?」
「すっご~い、おにいちゃん米田のおじちゃんに負けないくらいの飲みっぷりだね~!」

「ふっ、お子様共が・・・このウマさを知らないたぁ人生の損だぜ・・・幼女はいい目持ってんじゃねーか」

「お。大神ぃ、イケるクチじゃねぇか。こいつは結構!ほれ、もっと飲め!!」

「お、米田のおっさんもなかなかじゃねぇか。ほれ、返杯だ」

「くっくっく、まさかこの帝劇に来てこんな堂々と飲めるたぁ・・・大神に感謝だな」

「あ、料理もたくさん作りましたので召し上がってくださいね」
「そうそう、私達が腕によりをかけて作ったんですからね~、味わって食べてくださいよ?」

「おぉ、・・・ングング・・・んめっ!!こいつぁうめぇ!!」

「まぁ・・・嬉しいです」

「アイリスも食べる食べる~」

「ちょいとさくらさん?あなたさっきからずっと由里さん達を睨んで・・・」

「料理裁縫掃除洗濯・・・お母様にあれ程仕込まれたのに、まさか先を越されるなんてっ!」

「さ、さくらさん?」


一部不穏な空気が漂っているが、それぞれが楽しいときを過ごす。

大神は米田と杯を交し合い。
アイリスは果汁ジュースを片手に次々と料理を頬張り。
さくらはどす黒いオーラを漂わせながら大神とかすみ達の方に視線を行ったり来たりさせ。
すみれは隣のさくらに若干引きながらも料理に舌鼓を打ち。

それを見守るかすみと由里は嬉しそうにそれぞれの面々を見つめていた。









【由里】

ふふふ、大神さんたちったらあんなにはしゃいじゃって。

今回の戦闘、私とかすみさんの『帝国華撃団風組』の出番は轟雷号の操縦のみ。
後は大神さんたちの武運を祈るしかなかった。

何せ今回の敵は脇侍と呼ばれる蒸気人型が数10体。
それに比べて花組はわずか3体。
情報収集も仕事である風組は、作戦室への映像中継をする為にその場にはいなかったが、
それでも祈るような思いで戦いを見守っていたわ。

・・・圧倒された。
いつもはぶっきらぼうで文句を言いながらも優しい大神さんとは全然違っていた。
そして、大神さんの脇と背後を固めるさくらさんとすみれさんまで。

うん、まるで大神さんの猛々しさが二人にも乗り移っていたかのように・・・
敵をあっという間に殲滅した。
しかも全く危なげのない戦闘、統率、そして士気。

私も帝撃に入るまで下積みした時があったから、それをいかに難しいか分かってるつもり。

ん~、私の情報だと大神さんは士官学校でも『独断専行』が多かったと聞いてたんだけどな。

ふふっ、この『帝劇の情報屋』の私を欺くとは大神さん、なかなかやりますね!
こうなったら今まで以上に情報を集め、そして汚名を返上してみせます!!


そう、帝国華撃団風組の名にかけて!!


「あの、由里?それ、私も入ってるのかしら?」

「え?ええ!?」


うわ、かすみさんがいつの間にかこっち見てるし!
それに・・・何で思ってたことが分かるの?かすみさんてば、超能力者!?


「さっきから口に出してたわよ?大神さんが気になるのは分かるけど程ほどにね?」


げ、迂闊だった・・・情報屋たるもの、軽々しく口に出してはいけないのに・・・


「か、かすみさぁ~ん・・・この事は内密に・・・」

「あら、そう言えば帝都1番通りに新しく出来たカフェがあったわね・・・そこの洋菓子がおいしいの」

「うぅ・・・きゅ、給料日後で良いですか・・・?」

「あら、私は何も言ってないけど?そう、そこまで奢りたいのであれば奢らせてあげまししょう・・・ふふふ」


うん、今度こそ確信!
かすみさんってば私よりも黒い!!


もう、これも大神さんのせいですよ~・・・

side out









「きゃはははは!さくらぁ、こっち来てアイリスとお話しようよ~・・・
おにいちゃんてば、米田のおじちゃんと話してばっかりで全然アイリスとお喋り
してくれないんだもん」

「ふふっ、大神さんには支配人からの大事なお話があるのよ。あ、そうだ・・・
ねぇアイリス。ほら、料理を取って二人のところに持っていってあげたら?
喜ぶわよ、きっと」

「うん!アイリス頑張る!」


ぐっと両手を握り、力を入れるアイリスを見てさくらの表情から笑みが零れる。

大神が来てからの数日で、アイリスは格段に明るくなった。
以前までであれば、今回のような宴会でも静かに料理を食べ、暇になったら
ぬいぐるみのジャンポールで遊ぶくらいのことしかしてこなかった。

だが。


「おにいちゃん!米田のおじちゃん!はい、アイリスからの差し入れだよ?」

「おぉ、幼女。気が利くじゃねぇか。ありがとな?」

「ありがとうよ、アイリス。ほれ、おいらの膝の上に来るかい?」

「わぁ、やったぁ!じゃあアイリスおじちゃんの膝!」

「くっく、まるで本物の爺孫じゃねぇか」

「へっへ、アイリスとオレぁ付き合いが長ぇからな!」


あのように、歳相応の反応を見せてくれる。

以前のさくら達にとってあの笑顔を見れるのは、何よりの馳走となった。









一方、すみれは。
幾分かかすみと由里の位置に近いところで黙々と料理に舌鼓を打っていた。

その一方で考える。
あのときの大神の光武の起動、戦闘、そしてあの・・・全てが重なったような・・・一体感。

あまりにも普通だったのでついつい流していたが、今から思い返せば不可解な部分が多かった。
だが、今の自分が何を言っても結果論。ならばあの場で情報を収集していた専門家に聞けばいい。
そう考え、すみれはかすみ達に話しかけた。


「ちょいと由里さん、かすみさん。聞きたい事があるんですの」

「はい?何でしょう」

「あなた達はあの戦闘の時全てを資料として集めたハズですわ。ならばご存知でしょう?
少尉の霊力の有無が」

「・・・やっぱり気になってました?あの、この事は本人にも確認取ってないので内密に
お願いしますね?」

「もちろんですわ」


そこから由里に代わり、かすみが説明を始める。


「まずは光武の起動なんですが・・・これについては私達も首を捻ることばかりでした。
大神さんの霊力は、結果から言えば有ります。ですが・・・これはあくまで技術、と言って
差し支えないと思います、大神さんが自分で意識して隠しているんです。
まるで有りはすれど目に見えない・・・例に例えるならば『空気』です。
空気は風などが起きた時に初めて認識できますよね?
あれと同じです。起動の時、ほんの一瞬・・・ですがわずかに察知できました。
戦闘の時も同様です。あれほど激しい行動を取っていたら霊力の垂れ流しになるのは仕方
ありません。ですが・・・大神さんの場合は一定以上に速度を速めたとき。
そして敵に攻撃する際に測定器でやっと微弱な反応が出てくるだけ・・・
これはもう私達の知識を遥かに超えています。どうやったら此れほどの事ができるのか?
それを証明するだけで今の私達ではあと数10年はかかるでしょう・・・
一応花やしき支部の紅蘭にも協力を要請していますが。
私からは以上です。何かご質問はありますか?」

「・・・これほどまでに異質が際立ってしまえば呆れて質問する気も失せてしまいましたわ。
わたくしたちの『隊長』は、性格はアレですが謎多き優秀な殿方・・・。
これが再確認できただけで充分ですわ。後はわたくしが自力で聞き出せばよろしいだけのこと」

「あははっ、それもそうですね~」

「かすみさん、由里さん。これからも『色々な意味』で少尉のこと、探ってもらうことに
なると思いますが・・・その時はお願いいたしますわ」

「あらあら・・・」

「・・・すみれさんってば、結構危ない男の人がお好みだったんですね!?」

「・・・っ!な、何でそういう意味に・・・!」

「分かりました分かりました、大丈夫ですよすみれさん。私達風組、恋する乙女の味方ですから!
絶対情報手に入れてきますね!?」

「だ、だから・・・」

「すみれさん、由里がああなっちゃったら誰にも止められないわ」

「・・・はぁ。それもそうですわね」

「おぉい、跳ねッ毛!二人が作ったんまいメシ、足りなくなったぞ~!」

「あ、大神さん!はいはい、ただいま~~!!!」ダダダダダッ・・・

「例外が一人・・・」

「・・・(油断なりませんわね、由里さん)」





それぞれの面々が、それぞれの思惑を含んだこの宴会もそろそろ終焉の時を迎えた。

米田は一升瓶を抱えて寝込んでしまい。
残った大神は一人、桜を眺めながら静かに杯を傾けていた。


「ここにいたんですか、大神さん」

「ん?おぉ、真宮寺か。どうした?お前にゃまだ酒ははえぇぞ」

「いえ、私は下戸なのを知ってますので・・・それよりも、少しいいですか?」

「ん」


近づいてきたさくらを一瞬だけ一瞥し、また桜に視線を戻す大神。
さくらが横に座る。


「何も・・・聞かねぇんだな、お前ら」

「何をですか?」


少しだけ苦々しい表情を浮かべるも一瞬、また無表情に戻る。


「オレはオレがどれだけ『異質』な存在か、知ってるつもりだ。だが・・・」


そこで隣に寝ている米田に視線を向ける。


「このおっさんといい、お前らといい・・・この帝撃にゃあお人よしが揃ってるみてぇだな」

「ふふっ、否定できませんね。・・・私もその中に入ってるんですか?」

「今のところお前が筆頭格だけどな」

「うぅ・・・大神さん、意地悪です・・・」

「何を今更」


再び二人の間に穏やかな空気が漂う。
大神も酒を飲んで多少酔ってるせいか、いつもとは口調が穏やかになっている。

それを心地よく思いつつ、つい先ほどの戦闘の余韻がさくらの意識を遠のかせる。


「大神さん・・・私ね?・・・私・・・」

「ん?」


コトッ・・・


「くー・・・くー・・・」

「おい、真宮寺?・・・寝ちまいやがったか」


大神は肩口に乗っかるさくらの頭をどかそうともせず、そのまま酒を口に運ぶ。


「お前らが必要とするなら・・・オレぁいつでも戦場に行くし雑用だってしてやらぁ・・・
けっ、オレも相当酔ってるみてぇだな・・・」


すでに宵の時に入ろうとしている中、大神は桜を眺め続けた。









次回、『氷の才媛現る』









あとがき:2日も間を開けてすいませんでした。週末になるといろいろ立て込んできまして^^;

ようやく幕間ということでアップさせていただきました。
今のところの帝撃内の信頼関係がわずかなりともご理解いただけたと思います。
次回話は今のところコミック版にするか、ゲーム版にするか、OVA版にするかで
時間がかかっています。(一応それぞれ30kbは終了)
また間をあけるかと思いますがご容赦願います。

感想板、拝見させていただきました。たくさんの意見・感想ありがとうございます。
機体の色が違うというツッコミを受けてすみれ機のみ修正。
大神機はこのまま白銀でいこうと思います。




[16303] 第5話・通常シーン
Name: く~が◆c894d15f ID:14773f76
Date: 2010/02/16 20:57
「ふむ・・・こいつは銃を扱えるのか。ならば・・・この陣形が基本となるか。
んでこいつは・・・かぁっ、近接戦闘型。なんでこうこういうのが多いかな・・・
まぁオレも人のこと言えねぇが・・・次に・・・コイツ。ほう、中から遠距離までの
支援ができるんか。最後にあの幼女。あんなガキに戦場なんて生臭い場所は経験させたく
ねぇんだが・・・だがコイツは回復と援護を任せられる。
おぉ、こいつらが今の戦力として動けば・・・誰も敵じゃねぇな・・・
くっくっく、楽しみだぜ・・・ん?待てよ?」


先ほどから、資料を見て独り言をぶつぶつと呟く大神。
先だって帝国華撃団花組隊長に任命され、初の戦闘。

そして宴会に突入し、それから幾分か経った頃大神が米田に攻め寄った。


『隊長たるもの、隊員の能力を把握しなければならない』


紆余曲折の議論が展開、江戸弁が飛び交う半ば口喧嘩に近いやりとりだったが、最終的に
大神が言ったのは無理矢理まとめれば上記のことであった。

そこから納得させ、隊員の名簿をもらい先ほどから目を通しているのだ。
だが、大神はそこでふとある事項に目を付けた。


マリア・タチバナ。
年齢19歳。
前歴として、花組隊長を務める。


「こいつぁ・・・使えるな。いざというときにはオレがあぁなって・・・
これならちょっとした異常が起きても素早く対処できる・・・か。
・・・まぁこんなもんか」


気がついてみれば、昼過ぎに始めた資料から様々な陣形・戦術を考えて今はもう夕方。


「ん~~~・・・っ」
パキパキパキ・・・

ぐっと背のびする。すると体の節々から関節の音が聞こえる。


「ちっ、すっかりなまっちまったか。・・・よし、ひと段落着いたことだから真宮寺にでも
頼んで稽古の相手してもらうか・・・ん、そう決まったら・・・」


そう呟き、自分の部屋の隅に立て掛けられている木刀を二振り、手にとって部屋を出る。


「さぁて・・・ついでだ。神崎にも相手してもらうか」









【さくら】

「おう、真宮寺。ちょいと剣の相手になってくれや」


わ・・・私は・・・夢でも見ているのでしょうか?た、確かにお昼寝はしちゃったし、
まだ眠いといえば眠いんですけど・・・

お、大神さんがまさか「稽古の相手になってくれ」って頼んでくるとは・・・

私も剣術の一派を修める者、剣の稽古の申し出は断れません!!


「は、はい!!喜んで!」

「お、おう。そんじゃあ中庭に出るか」

「はい!!」




そう返事し、出てきて相対しにらみ合うこと少し・・・

大神さんは相変わらず二刀を構え、こちらを鋭い視線で見てくる。
まだ右腕の調子が芳しくないのでしょう、わずかに震えているのが見て取れます。


「どうした、真宮寺。オレに遠慮はいらねぇぞ?」

「!いきます!」


そう。相手はあの大神さん。
いくら手負いだからと言って手を抜いたり躊躇するのは失礼だ。

そう考え、私は木刀を構え大神さんにむけて走り出す。


タタタタタタタ・・・ヒュッ!

まずは簡単な陽動。そこから鋭く切り返し、急所である右方から斬りかかる。

ガギッ!!

鈍い音が響き、私と大神さんの木刀が噛合う。

左から気配!

ビュオッ!

薙ぎの一閃が私がいたところを攻撃する。


「どうした、真宮寺!」


まずい!私が引いたのを利用してそのまま距離を詰めてきた!
ならば!

『北辰一刀流・・・夕凪』

変幻自在の直突からの兜割、下からの斬上げ。
これで!

ゴガッ!!

また止められた!?
す、すごい。私が初めてお婆様から受けた時はまともに喰らっちゃって気絶したのに。

バッ!

慌てて間合いを取る。
私は少し息切れしてるのに、大神さんは息切れしてないどころか・・・一歩も動いていない!?


「・・・なるほど。真宮寺、お前の剣はあまりにも綺麗すぎるな」

「えっ?」


ど、どういうことなんだろう?私は免許皆伝まで修め、一応腕に覚えがあるつもり。


「こいつぁ戦場の剣じゃねぇ。平和な時代に技を競い合う、言わば活人剣だ。これじゃあ
オレみたいな小悪党みてぇな奴にゃあ通用しねぇ・・・まぁ体で分かってもらうことにするか」

「!!」


お、大神さんから殺気が・・・まるで戦場にいるみたいな空気が肌を刺激してくる。


「んじゃあ行くぜ!」


えっ!?ぼ、木刀を投げた?


「くっ!」


私は飛んできた木刀を避ける。
打ち払わなかったのは、その後にできる僅かな隙ができるのを知っているから。


「そうくるか」

「!!」


め、目の前に大神さん!?
まさか・・・あの距離を一瞬で!?

ガギッ!

くっ、何とか止められた。
で、でも大神さんの姿が。


「足元が・・・お留守だぜぇ!!」

シュバッ!

「きゃあ!?」ドサッ


あ、足払い?
チャッ・・・


「・・・これで‘詰み’・・・だな」


大神さんが木刀を突きつけ、見下ろしている。

まさか、左腕しか使えない状態で・・・


「・・・私の・・・負け、ですね」


認めよう。私はまだまだ甘いということを。
そして大神さんは・・・遥かな高みにいるということを。


「そこ!そんなところで何をやっているの!?」

「あ?」

「え・・・?この声って・・・まさか!!」


劇場の勝手口からこちらを厳しい目線で見据えていたのは・・・マリアさんだった。


「んだぁ?あの吊り目金髪は・・・おい、真宮寺。あれも団員なんか?」

「あわわ・・・お、大神さん!!何て事を!」

「そこの男!今何て言ったの!?」

「あぅぅ、やっぱりぃ・・・」


そうだった、大神さんはその人の外見を『正直』に言っちゃう癖が・・・
迂闊、今日はマリアさんが帰ってくる日だって知っていたはずなのに。

遅いかもしれないけど、教えてあげよう。


「大神さん、あの人はマリア・タチバナさんって言って、前花組の隊長だったんですよ」

「なに?あの吊り目がマリア・タチバナ!?」


あぁあ、大声で言っちゃ駄目~~~

Side out









マリアはこれ以上無いくらい怒っていた。

帝劇に帰り着き、米田に報告をした際知らされた「新隊長着任」のこと。
これに深く興味を持ち、人となりを知る為に資料を要求した。

米田から苦笑交じりに渡された資料を読むにつれ、マリアの眉間に皺が寄っていく。
なぜこのような問題人物を隊長に任命したのか、それを問いただしたかったが耐えた。
そして、最後に添付されていた上野公園での戦闘記録。
それを見た途端、一瞬にして激昂した。


「米田司令!この男、好き勝手に戦い、さくらとすみれに多大な負担をかけすぎています!
幸い無傷だったからいいようなものの・・・もしこの場に脇侍より強い奴がいたら全滅
してもおかしくないくらいです!」

「かっかっか・・・やっぱりおめぇだったらそう思うか、マリア」

「当たり前です!」


事の重大さを全く認識していないかのように笑って済ます米田に、マリアは不満一杯の
表情で見据える。


「まぁ資料は所詮資料だ・・・おめぇが奴さんを直接見たほうが早ぇと思うぞ?軽々しい
考えはまだ持たないこった・・・今なら中庭でさくらと稽古してるはずだ。中庭に行って
話してみるこった」

「・・・・・・」


未だに収まりがつかないマリアに、米田は片手をちょいちょいと振って退室を促す。


「・・・失礼いたします」


マリアが退室していく。
それを真面目な表情で見送る米田。


「さて・・・吉とでるか凶とでるか・・・マリア、おめぇ次第だぜ」


米田の脳裏には、大神がさくらとの稽古の報告をしに来た時に言われた事を思い出していた。





『米田のおっさん、ちょいと真宮寺と稽古してくるわ・・・あまりにも体がなまっちまってな』

『ほう、おめぇさんともあろうものが珍しいじゃねぇか。自分から稽古を言い出すなんてよ』

『ほざけ、おっさん。オレも軍人なんでな・・・お、言い忘れるところだった、さっき見せて
もらった資料だがよ、あの・・・なんつったか、前に花組隊長をやってた奴がいただろ?』

『・・・マリアのことか?』

『おぉ、それだそれ!!んでちっとばっか提案があるんだがよ』

『・・・言ってみな』

『その何とかって奴、オレみてぇな不良は毛嫌いしてるだろ』

『・・・否定はできんな』

『もしそいつがオレの事隊長と認めなかったらよ・・・オレを外してそいつにやらせてくれや』

『!大神よぅ、おめぇ何言ってんのか分かってんのかい・・・?』

『・・・へぇ、あんたもやろうと思えばそれくらいの気迫だせるんじゃねぇか。
まぁそれは良いとしてだ、この帝撃みてぇな特殊部隊、他には無ぇ。それで良いんだろ?』

『・・・答えは是、だ・・・何せ霊力がある奴なんて限られてくるからな』

『んで、話しを戻すがぽっと出のオレが隊長やるよりもソイツの方が隊員の特性を知ってる分
もっと上手い指揮ができると思うわけよ。そいつぁ確か、銃が武器だったよな?
後方で戦局を見て指揮し、んでもって隊員が危機に陥ったなら補助もできる』

『む・・・むぅ』

『まぁこいつぁ奴がオレを認めなかったら、の場合だ。あまり深く考えんなや』

『・・・しかしだな・・・だが大神よぅ。もしおめぇが否定された時はどうするんだ?』

『その時はオレぁ遊撃隊員にでもなるつもりだ。オレぁ指揮しながら戦うよりも独力で
戦ってたほうが性に合う。むしろそうなってもらいてぇもんだがよ。
あと可能性として敵が搦め手を使ってくる場合も考えられるからよ、そいつも考慮して
おきてぇんだ』

『・・・考える時間をくれねぇか?おいらにも副官がいてよ?そいつが出張から帰ぇって無ぇんだ。
そいつとも相談したいんだが』

『分かったぜ、そん時はどちらかを「隊長代理」とでもしておいてくれや』

『分かった』

『用はそれだけだ。んじゃあな』




「考えてみれば大神の言うことにも一理ある・・・か。ふむ・・・」









【マリア】

あ、あの男・・・私のことを『吊り目』なんて呼ぶとは・・・
このマリア・タチバナ。
かつてこれほどの屈辱を味わったことは無い!

クワッサリー・・・この忌むべき二つ名。
敵からも、そして味方からも恐れられたこの私をここまで・・・


「貴様~~~!そこを動くな!!」


チャッ!

私は即座に懐から愛銃のエンフィールドを抜く。
そして奴に照準をつけ・・・れない!?


「・・・っとぉ・・・おいおい、花組『隊長』ともあろう女が、軽々しく銃を抜くじゃねぇ」

「え!?お、大神さん!?」

「・・・!!」


なんて事。
この男、私が激昂した瞬間に距離をつめてきた!?
そして私の手首を掴んで動けないように強めに握ってくる。

それに、私の聞き間違いじゃなければ・・・


「私が・・・隊長?」

「おう、そうだぜ?吊り・・・じゃなかった、えっと・・・!!タチバナ隊長!」


今度は驚くよりも頭に来たのが正直な所よ。
この男、さくらが名前を教えたにも関わらず私の名前を・・・


「あの、マリアさん?大神さんに名前覚えてもらってるの、花組で誰も居ないんです。
ですからあまり気にされないほうが・・・」


花組の誰もが?

ふ、ふふふ・・・ふふふふふふ。

面白い。是非恐怖という名のもとに私の名前を一番先に刻み付けたくなってきたわ。


「そう・・・分かったわ、さくら。遅れたけどお久しぶりね・・・そして大神少尉。
あなたのことは米田支配人から聞いております・・・噂にたがわぬとはこの事を言うんですね」

「あ?なんのこった?それよりもよ、その銃あまりにも物騒だからしまってくれや。
いつまでも落ち着けねぇ」


大神少尉が言うとおり、私は銃をしまう。


それよりも問い詰めよう、先ほどの話を。

Side out









「オレぁただの一介の隊員だ。詳しい話は米田のおっさんに聞いてくれや」

「それじゃあ納得できません!!」

「そうです!何故私が隊長になるのですか?あなたが任命されたことではないのですか、少尉?」


場所を変え、2階のラウンジへ移動した3人は水掛け論と言って良い会話を繰り返していた。

隊長ではなくなったと胸を張って言い張る大神。
その理由を追求するさくら。
そして内心ホッとしたのを困惑しながらも確認を取ろうとするマリア。


「やかましいですわね・・・何の騒ぎですの?あら、お久しぶりですわね。マリアさん」
「あ、マリアだぁ~。お帰りなさ~い」

「あら、すみれに・・・アイリス?ただいま、さっき帰ったところよ」


突然会話に紛れ込んできた二人に、マリアは返事を返す。


「あ、ちょうどいいところに。すみれさん、アイリス。大神さんが隊長を辞めちゃうって
話になってるんです」

「ど、どういうことなんですの、少尉?」

「おにいちゃん!?どうして?ここ、辞めちゃうの・・・?」


すみれにアイリスと加わり、更に白熱していく追及。

それに対して大神は


「だあああぁ!!うるっせ~なくそったれ共がぁ!んなに聞きてぇんなら米田のおっさんに
聞けっつてんだろうがボケぇ!オレぁもうただの隊員、それかここにはもういねぇかもしれねぇ奴なんだ、
んな奴に機密を聞こうとするんじゃねぇよバカ共が」


久々に罵詈雑言を吐いた。


「「「「・・・・・・」」」」


あっという間に黙る4人。
3人からは尚も追及しようとする視線、1人からは敵視の目線。


「ったくよぉ、んなに文句があるんならさっさと出て行ってやるぜ。言われなくてもよぉ」


そう言い、部屋に戻ろうとする大神。

4人はそれぞれの感情が渦巻き、その場を動くことさえできない。
大神の退陣はもうすぐか、と思われた瞬間。


「ふふっ、駄目じゃない。大神君・・・?」

「あ?・・・げっ、藤枝の年ま「何か言ったかしら?」ぐげげえ・・・は、はなひ・・・やがれ・・・」


音も無く現れた人物。
茶色の長髪を後ろで一つにまとめ、陸軍軍服を着ている艶やかな女性。

大神の『正直』な発言すらも「言わせねぇよぉっ!?」っとばかりに喉を掴んで阻止する。

そして氷の視線と言っていい目線がラウンジにいる全員を貫く。


「おぉ、間に合ったか・・・遅かったじゃねぇか、あやめくん」

「あら、司令。相変わらずご健勝のようで何よりですわ」


米田に取って、前部隊での同僚。
今では帝国華撃団副指令にして心理慈愛すら修める才媛。


藤枝 あやめの登場であった。









「それじゃあみんな揃ってることだし、通達しちまうことにする。大神」

「ぐへぇ、まだ喉がヒリヒリしやがる・・・あ?呼んだか?」


まるで聞いていない大神に、あやめが詰め寄る。


「大神君?」

「・・・ちっ」


舌打ちしつつ、佇まいを正す大神に誰もが驚く。


(あ、あやめさんって言ったわよね?あの人大神さんとどういう関係なの!?)
(少尉があれ程大人しくなって・・・あぁ、わたくしもいつかはあのように・・・)
(あやめったら、あいかわらずの性格しちゃってる・・・アイリスの方が大人なんだから)
(・・・あやめさん・・・)


「それじゃあ通達するぜ。大神、現在時をもって帝国華撃団隊長を罷免する」

「「「「!!!」」」」

「おう、了解だ。んならオレはあの案で動けばいいんだな?」

「その通りよ、大神君。あなたの突拍子も無い発案には相変わらず驚かせられるわね」

「けっ、お褒めに与り嬉しいこった・・・んじゃあオレぁ行くぜ」


コツコツコツコツコツ・・・


「大神さん!?」「少尉!?」「おにいちゃん!?」「・・・」


パタン


大神の部屋が閉まると同時に、4人は動きを止めた。
そして説明を求める視線をもって米田を睨みつける。


「まぁ落ち着けやおめぇら・・・今から説明してやっからよ」




※※※


10数分後。
米田から詳細の説明を受けたさくら達は、理解はしているが納得できない様子を隠していなかった。

それに対し、今度はあやめの方から切り出す。


「心配しなくてもいいわ。大神君はああ見えてきっちり仕事をやってくれる人。
それはあなた達も分かっているはずよ・・・マリア。あなたは隊長の座に就き、
今一度考え直してごらんなさい。
ほら、引っ込み思案だったさくらがあんなに活発的になって。
他人を寄せ付けようとしなかったすみれがあんなに会話するくらい心を許して。
人見知りだったアイリスがあんなに笑顔を見せて。
あなたにも見えてくるはずよ、大神君のいいところ、そして魅力が。
外見ではなく、内面を見抜くこと。これが重要よ?」

「あやめさん・・・」


マリアは、少し考えるように俯きそしてすぐに顔を上げる。


「分かりました、まだ完全には信用したわけではありませんが・・・私なりに、少尉の事
見定めてみようと思います。資料は資料、私は自分の目で見たことで判断します」

「ん、それでいいと思うわよ。(ヴィ~~ッ・・・ヴィ~~ッ)・・・敵が現れたようね、
すぐに作戦室に向かうわよ!」

「「「「了解!!」」」」









次回、引き続いて戦闘開始


二回目にして隊長不在における戦闘。
刀が、薙刀が、ぬいぐるみの幻影、そして巨銃が敵を粉砕する。
だが敵の量に追い詰められる4機。

そして。

「おるぁぁあ!!隙だらけだぜ敵さんよぉ!!」










あとがき:賛否両論、もしくは否定派の方がかなりいらっしゃると思います。
ですが敢えて今回の話からは少々原作から離れて展開していきます。
もちろん、敵の組織は存在。そして???が堕ちる場面も存在します。

サクラ大戦ファンの方、この場を借りて謝罪致します、
自分の妄想で勝手に大筋を変えてしまうことを^^;

あと、私の作品を好きと言ってくださる方々に精一杯の御礼を申し上げます。
ありがとうございます。
これからも気合入れて執筆し続けていきますので、引き続きご愛読願います。



[16303] 第5話・戦闘シーン
Name: く~が◆c894d15f ID:a39404bb
Date: 2010/02/21 01:55
さくら達が作戦室へ向かった後でも、大神は自室から動かなかった。

おもむろに、立て掛けてあった木刀を左手に持ち、それを


「でりゃあ!!」

ガスッ「げっ!?」
・・・ドサッ

天井に向けてぶん投げた。

そして、まるで蓑虫のように落ちてくる加山の姿が。


「けっ、なぁんか変な気配がすると思ったら・・・やっぱおめぇか。
んな所でなにやってやがんだ?」

「ふっ、大神よぉ。帝都はいいなぁ。まだ遊びに行ったことないけど」


まるで他人事のように問いただす大神。
それを受け、あたかも普通に返す加山。

長年阿吽の呼吸で数ある難事を切り抜けてきただけのことはある。


ただ、今が敵襲来の緊急時でなければ。


「大神ぃ。お前が知りたいと思ってる情報、持ってきてやったぞ。親友たるお前になら
どんな苦労でもできるさ」

「・・・相変わらずお前の頭ん中はおかしいな・・・」


どっちもどっちだという声が聞こえてきそうだが、大神は加山から情報が書かれている
紙束を受け取る。
そしてざっと読んでいく。


「この情報はとある筋からのものだ。オレの家系、大神も知ってるだろうが忍びの末裔。
この帝都にはそっちの繋がりが多くてな。んでこの情報はかなり信憑性があるぞ」


そう、ここ帝都東京は、旧式名称は「江戸」。
かつての江戸には、お庭番と呼ばれる腕の立つ忍びが召抱えられていた。
そして明治に時代が移ったとき、バラバラになってしまったのだが情報網だけはしっかり
確保しているのだ。


「・・・そうみたいだな。あの脇侍とか呼ばれる化け物共を生産、そして操る裏の存在。
そして、今回における雑魚大将のおでまし、か」

「ぶっ、くくくく・・・相変わらずお前は正直な奴だな。これじゃあ劇団員も苦労してそうだ」

「・・・いろいろ問いただしたいところはたくさんあるが、ここは抑えておく。んじゃあ
オレも支度に移るぜ。遊撃隊員としての初陣、しっかりかざらないとな」

「おう、大神。オレはお前の影からの支援しかできない。帝都の平和、お前達に任せたぞ」

「まぁいろいろ苦労しそうではあるけどな。んじゃあな、加山。これ終わったら外に遊び
に行くぜ」

「おう、楽しみにしてるぞ」


そのまま、振り返らず格納庫へ走っていく大神を見送り、加山は室内に散らばった紙を集める。
そこには、つい昼方に大神がまとめていた資料があった。


「大神。お前のやり方にはケチはつけたくないんだが・・・」


その資料を懐へしまう。
そして加山自身も支配人室へと向かう。
そこから、司令室へと急行するためだ。


「せめて隊員達にはお前の気持ち、情熱を伝えてやる」









帝劇地下にある作戦室。
そこには、帝国華撃団花組が勢ぞろいしていた。


「そろったみてぇだな。んじゃあ今回の敵について説明する」


そう米田が切り出し、蒸気空間映像を開く。
どこかの寺だろうか?
年代物の建物が並んでいるのが見える。


「場所については寛永寺。脇侍の姿が10数体見える。だが・・・」


ここで言葉を切り、別の方角へと視点を変更させる。


「あ・・・!」

「そういうこった、マリア。敵の数はこれでおしめぇじゃねぇ。際限なくこの装置から
吐き出されるのが推察できる」


そう、視点の端っこには蒸気転送装置とでも言えばいいのだろうか、その装置から次々に
脇侍が出てきているのだ。


「こいつぁ一刻の猶予も無ぇ。すぐに出向き、脇侍の殲滅及びあの転送装置破壊する。
これが今回のお前ぇらの任務だ」

「先ほども言った通り、大神君については別行動を取ってもらっています。
任務は言えないのだけど花組の助けとなるのは確かよ。あなた達は落ち着いて敵の殲滅を
こなしてちょうだい。そして今回マリアとアイリスは初陣なのよね?いろいろと梃子摺る
とは思うけど、さくらとすみれもしっかり頼むわね?」

「「「「了解!!」」」」

「それじゃあマリア隊長。花組に出撃の檄を」

「はっ。寛永寺に被害を及ぼす敵を全て殲滅する!帝国華撃団花組、出撃!!」

「「「了解!!」」









ガシュ、ガシュ、ガシュ、ガシュ
ヒュバッ
・・・ドォォォォン・・・

寛永寺では、すでに脇侍が建物に対して破壊活動を行っていた。
それを影から見てほくそえむ人影が。


「ふっふっふ・・・見たぞ聞いたぞ知ったぞ・・・マリア・タチバナ・・・今回の獲物は
お前に決めた!!お前みたいな奴に平和なんてものは似合わないよ、このボクが
思い出させてあげる・・・そうだろ?クワッサリー」


そして脇侍が更なる破壊をしようと行動に移した時。


「「「「帝国華撃団、参上!!」」」」









「くっ、かなり数が多くなっているわね・・・みんな、これからあの転送装置を目標に、
破壊してから脇侍の殲滅にあたるわよ!」


戦場に到着し、マリアが状況を判断し命令を下す。


「分かりました、マリアさん!前衛は私に任せてください!」


その命令に元気良く返事し、自分の役割はこれだ!とばかりに提言するさくら。


「それではわたくしはさくらさんの背中につくとしますわ」


そして他人の背中を守ると自分から言い出したすみれ。


「さくら・・・すみれ・・・」


あまりのことに、マリアは呆気に取られるしかなかった。
と、そこへ。


『ギィッ!』


背後に回りこんだ脇侍が、マリア機の背中を襲い掛かってきた。


「飛んでっちゃえ~!!」


ポヒュッ、パンパンパン・・・ドスン・・・

その脇侍の機体が花で包まれ、やがて煙を上げて轟沈していく。



「もう、マリア。油断しちゃったらダメだよ?アイリスもお手伝いするから、がんばろ?」

「アイリス・・・」


そしてアイリスまでもが、自分のことを心配して助けてくれた。

ついこの間まですれ違っていたのは何だったんだろう?

そして配置されてわずかな期間でこれだけの統率を見せた大神の特異性。

パァァァン!!
しかし、考えるのは後だとマリアは自分の頬を勢い良く張る。


「それじゃ行くわよ?アイリスは私の後ろについて援護をお願いね。さくら、すみれ機は
前衛を前進、目標は蒸気転送装置!」

「「「了解!!」」」









【さくら】

ふう、ふう・・・
あ~もう、キリが無いわ!
次から次へと脇侍が出てきちゃって・・・このままじゃああの装置を破壊しても脇侍を
殲滅できるだけの力が残ってるかどうか・・・

大神さん、こういうときにでも使っちゃダメ、ですか?

私の技、桜花放神ならば一直線上にいる敵に全て衝撃を与えることが出来る。
それならば敵と一緒にあの装置を破壊することだって・・・できる。
・・・でも。


「はあっ!!数が多すぎますわね、さくらさん、もう少し速度を上げられませんこと?
マリアさんに援護してもらい、一直線に切り伏せていけば良いのですわ」


なるほど、下手に多くの脇侍を相手にするよりも正面だけの脇侍を相手にすれば・・・
でも、私のもすみれさんのも、機体にすこしずつ傷がついてきてます。


「治療ならアイリスにお任せだよ~♪『イリス・マリオね「ダメですわ、アイリス!」す、すみれ?」

「少尉がおっしゃっていたでしょう?こんな下々の居るところで大技は使うべきではない、と。
アイリスの技はとても貴重なもの。敵に露見でもされたら真っ先に狙われてしまいますわ」


そう、そうだ。
作戦室から格納庫、格納庫から轟雷号、そしてここまでに来るまでの間・・・

大神さんが作成したあの書類をみんなで回し読みした。
そこには、陣形や動き、それぞれの隊員の特性を生かした戦術など、あらゆることが
書いてあった。
今回の場合は『緊急事態発生時における基本概論』。
これには、それぞれが持っている『奥の手』の存在の秘匿が最重要事項として書かれてあった。

実例を挙げて書かれてある理由には、私達も大いに納得できた。
だって私達の情報はできるだけ渡さない方が賢明。
それができれば、敵の統率者が現れた時に最大戦力を持って集団攻撃できる。

こちらは被害は少ないに越したことは無いのだ。


「これから真宮寺機、突貫します。マリアさん、援護を!」

「分かったわ!」

再度気合を入れなおし、最短距離を見積もって剣を振りかざす。


「帝都の平和は・・・私達が守ります!!」









【マリア】

さくらとすみれが相互援護しながら突き進んでいく。
私は横から攻撃しようとする脇侍に対して射撃を行う。


「そこぉ!!」ズガガガガガガ!!


それにしても、さくらもすみれも、かなり変わったわね。
人の成長・・・か。これほどの成長が見れるとは、前花組隊長としては本当に嬉しい。

だが、今。

あの大神少尉に代わり再び任命された花組隊長の肩書き。

今、私は以前感じなかった重みを実感している。


たった数日間でここまでの信頼関係を築いてきた大神少尉の後任。
それだけでも気後れしてしまう上に・・・今は。

またあの『夢』を見るようになった。

『クワッサリー』と呼ばれ、あのロシア革命の時期を駆け巡ったあの夢・・・

私の判断が正しければ・・・もっと早く判断できていれば。

ふふ・・・私だけね、あの時から全く成長できていないのは。
大神少尉、あなたならどうしますか?この悩みを・・・


「!さくら、危ない」ガガガガガガガガ・・・ドォオン・・・

「あ、ありがとうございます、マリアさん」

「気にしないで。さぁ、この勢いのまま行くわよ!アイリス、私ももう少し前に出るから
横からの不意打ちに対応お願いね」

「まっかせて~!またきた!え~い、とんでっちゃえ~!!」
パヒュン、パヒュン・・・ズン・・・


アイリスの攻撃見てると戦意が下がるのは気のせいかしら・・・

と、とにかく。今は余計な事を考えてる場合じゃない。
ここは戦場。少しの油断が命取りになる。


「横の敵は私達に任せて!あなたたちの命、私が預かった!!」









【???】

ふっふっふ、なかなかやるじゃないか。
まぁそうでなくては面白くないけどね。

あの装置を狙って脇侍が増えるのを抑える算段か。
でも甘いね。
ボクの狙いはマリア・タチバナ。君なんだから。

今なら攻撃力の高い2機が離れている。近づくにはもってこいの状態だね。
一応2機で固まっているけどあの黄色い機体は後方援護の型と見て間違いなさそうだ。

ボクの愛機、『蒼角』でなじってあげるよ!!


「お~っと、そいつぁ待ってもらうぜ?」


な?い、いつのまにボクの後ろに!?
こ、この男・・・口ぶりはだらしなさそうに見えて・・・!


「な、何だお前は!?」

「オレか?って名乗るとでも思ったかボケぇ!!」ビュオッ!!


あ、危ない!この男、名乗らないどころか急に刀で斬りかかってきた。
ボクはとっさに蒼角の足の裏に隠れる。


「へぇ・・・そいつがお前ぇの機体か・・・お子様には少し早ぇんじゃねぇか?」

「お、お子様・・・ってボクのことかぁ~~!?」

「他に誰がいんだよタコ」


こ・・・この男!
ふ、ふふ、ふふふふふふふふ

決めた!マリア・タチバナの前にコイツ殺そう。
ボクが決めたんだから悪く思うなよ?


『蒼角』の真下に移動し、音も無く操縦席に座る。
そして霊子起動・・・よし、準備完了!

さて、あいつは・・・って・・・えぇ!?


「おいこら、ボンズ!!オレぁこっちだ、悔しかったら追いついてみろやカス」
ペシペシ   ブッ「あ、気合いれすぎたわ」


く・・・くくく・・・1度ならず2度までも・・・しかもお尻向けて・・・


「殺ぉおおおおおす!!!」

「うはっ、お子様が怒った!ε=ε=ε=ε=ε=ε=ε=(ノ´Д`)ノ キャ-----!!!」

「待てや~~!!!」









「はぁ、はぁ、はぁ・・・確かここらに・・・ん?」

大神を追いかけてきた外見お子様が着いたのは、寛永寺からすこし離れた広場。
隅々を見ると、所々に丘や木があってハイキングするにはいいところだ。


「!霊子反応・・・ん?無くなった・・・何だ、機械の故障か・・・ッ!!」
ガキィイイン・・・

「へぇ、よく止めたな・・・褒めてやらぁ」


いつのまにか空中で攻撃態勢を取り、攻撃をしかけてきた大神機の刀をとっさに防御する。


「お、お前!!その霊子甲冑・・・お前もあいつらの仲間なのか!?」

「さぁてな、どっちだと思う?」

「・・・・・・」


それに答えず、黙ってしまう。
そして。


「くっ・・・くっくっくっく・・・此れほどまでにボクの策がズタズタにされてしまうとはね・・・」

「はぁ?策?んなもんあったのか?どう考えてもガキのいたずらに毛が生えたようなもんじゃねぇか」


悪役としてのセリフすらも大神に一笑されてしまう。


「ボクはね・・・此れほど頭にきたのは初めてなんだ・・・ねぇ、今日ばかりは無性に
殴りたくなってきてるんだ・・・この『蒼角』の拳でね」

「へぇ・・・んなギザギザ、誰が考えたんだよ・・・ったくとち狂ってるとしか言えねぇ」

「っ!・・・ならば教えてあげるよ・・・ボクと『蒼角』の力をね!」









寛永寺。
こちらは概ね順調と言えた。

未だに元気に戦場を駆け巡るさくら機とすみれ機。
そして後衛でまとまってその援助に徹するマリア機とアイリス機。

マリアが大神の書類に基づいた陣形を命令すれば即座にその形に動き。
特に問題の無いまま戦闘は続けられていく。

だが。


「あれ・・・?何か・・・光武の出力が落ちてきている?」

「本当ですわ・・・わたくしの光武も」

「本当なの!?二人とも」

「アイリスから見て、二人の機体は何も変わってないよ?」

「米田司令!?」

『あぁ、こちらでも調べた。だがよぅ、光武自体には何も問題は無ぇんだ。あるなら・・・
お前ぇ達自身、だよ』

「ど、どういうことですか?」

『いや、推測はできるんだがあくまでも推測だからよ、はっきりしたことは言えねぇんだが・・・
さっきまでと変わった事の一例として、大神が寛永寺から離れたってことは分かってる。
ただそれだけだ』

『司令、ひょっとして・・・』

『そいつはまだ口外できねぇな。かすみくん、そちらの処置。特に緘口令の方を頼む』

『分かりました』


こういう会話が為されている間も、戦闘は続いていく。
だが、さっきまでの戦意の昂ぶりと言うか、気力の増大と言うか。
それが無いというだけで此れほどまでも違ってくるのか。


なんとも、歯に物が挟まった感触をうけながらも残り3分の2となった脇侍を、次々に
殲滅していった。









「ほらほら、こっちだよ」
ドゴォッ!

「ぐぅっ!」


その頃、大神とその敵、蒼き刹那との戦いは中盤を迎えていた。

機動性を持ってヒットアンドウェイを仕掛ける蒼角。
二振りの日本刀で捌きながらも反撃の隙をうかがう大神機。


「お子様の癖にやるじゃねぇか」
「ボクの名前は『蒼き刹那』って言ったじゃないかっ!」

「んなもんオレが知るか」
「だぁ~~!!なんとも頭にくる奴だな、あんた」


舌戦を繰り広げながらも手を休めない二人。
まるで遊んでいるかのような雰囲気だが、大神の一撃が蒼角の装甲を削る。


「くっ・・・あんたもなかなかじゃないか。でもこちらも急がなくてはいけないのでね・・・
早々に決着をつけてやる!」

「・・・・・・」


蒼角からほとばしる妖気。
その禍禍しさに、黙って刀を交差させ防御主旨の体勢をとる大神。


「はあっ!!」

ヒュン、ドゴォ!!ヒュン・・・ヒュン・・・ドゴッ!!

「ぐっ・・・」


先ほどよりも大幅に上がった速度に対応しきれない大神に、刹那はここぞ好機とばかりに
連続攻撃をしかける。
それを直に喰らう大神機。
次第に変形していき、機体の膝が地に着いた瞬間を狙い、右拳を振りかぶった。


「これで・・・止めだ!楽にしてやる」


大神機へと吸い込まれていく鉄球拳。
だが。


「・・・最後の最後に・・・やっと油断しやがったな、このお子様野郎が」


腕を振り上げ、向かってくる拳に当てて『流す』。
そこに、最大の隙ができた。


「もう一歩も歩けねぇが・・・これくらいはできらぁ・・・喰らえ・・・『狼虎滅却・快刀乱麻』!!」
ズバッズバッ・・・ズガァァァァアッ!!

左右2連斬撃からの2刀を交差させての2段斬撃。
しかも普段顕現させない霊力をふんだんに使ったおまけ付きの一撃。


「こ・・・こんなバカな・・・このボクがこんなところで・・・」


ドォオオオオオオオオオン・・・


蒼き刹那が搭乗する、『蒼角』は跡形も無く爆散した。









ピコンッ

「こちら大神だ・・・」

『!大神か!?そっちの首尾はどうだ?』

「へっ、やっぱり搦め手が狙われてた・・・それよりもだ」

『ん?どうかしたのか?』

「機体・・・予想以上に壊されてな・・・あの幼女、機体回復できただろ?格納庫に
持ってった後に直してくれるよう頼んでくれや・・・オレぁちょいと疲れたからよ・・・
しばらく寝るわ・・・」

『し、司令!?大神さんの機体が・・・上がった資料ですと被弾率8割強、大神さんも
少なからず怪我を・・・』

『分かった、ならここはおいらに任せて風組で救助に行ってくれねぇか?
それと、だ。マリア達にはこのこと「言うんじゃねぇ」お、大神!?』

「只でさえ今戦闘中だろうが。変な不安を植えつけちゃあ意味無ぇだろうが」

『だ、だがよぅ』

「んなら足捻って診察受けに言ってるとでも言っててくれや。それで充分だろ」

『むぅ・・・お前がそう言うならそうするぜ・・・かすみ、由里。お前ぇらもいいか?』
『『了解!!』』









「はぁ、はぁ・・・やっとですわね」

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・す、すみれさん?あともう一息ですよ?」

「はぁ、はぁ・・・分かっておりますわ・・・さすがに霊力もそろそろ限界ですけど」

「帝劇に帰ったら、アイリスがちゃんと治療してあげるからぁ!もう少しだよ!?」

「アイリスの言うとおりよ・・・あと12体。まずは私が射撃でダメージを与えるわ。
敵が怯んだ瞬間に斬り込んで。良いわね?」

「分かりました!」
「了解ですわ」

100を超えようかという脇侍の数。
それもあとわずかになり、最後の仕上げとばかりに斬りかかって行く。


「「はああああ!!!」」

ズガガガガガガ・・・ザンッ!シュバッ!!


「甘い!そこぉ!!」

ズガガガガ!


適切なマリアの援護射撃の下、何の不安も無いまま殲滅していく。
そして最後の1体。


「さくらさん、行きますわよ?」
「はい、すみれさん!」

「「1、2のぉっ!3っ!!」」


先ずさくらが胴を斬り、後ろに回りこんだところですみれが薙刀を振り下ろす。
と同時にさくらが袈裟切り。


大神が残した書類に書かれていた連携攻撃の一部を、最後の脇侍を練習台として試したのだ。

初めてにしてはすんなりと上手くできた喜びが湧き上がり、脇侍の爆散の音がそれを更に
促進する。


「「気持ちいぃ~~・・・」」

「あ、あのさくら?すみれ?」

「うわ・・・どっか飛んでっちゃってる・・・」


勝った。圧勝である。

だが・・・雰囲気的に、微妙な空気がマリアとアイリスを包んだ。









ピコンッ!

『よう、マリア。よくやってくれたじゃねぇか、予定してた時間よりもかなり早い時間で
殲滅完了たぁ出来すぎだぁ。うはははははは!』

「米田司令・・・ありがとうございます」

「アイリスも頑張ったよ~?」

「まぁわたくしの手にかかればあのような下々、大したことないですわね」

「数は多かったですけど何とかなりましたね。後方支援があるとこんなにも違うんですね!」


口々に、今回の戦いについて感想が出る。
しばらく騒いだ後、さくらがマリアにこう提案する。


「マリアさん、この間もやったんですけど戦いの後の勝ち鬨みたいなの、やってみません?
私達花組だけの、ね?」

「勝ち鬨・・・私の国には無いものね。良いわ、やってみましょう」

「それじゃあいきますよ?


『勝利のポーズ・・・決めっ!!!』




「さくら?」

「はい?」

「大神少尉・・・相当嫌がったんじゃない?」

「あ、やっぱり分かります?」

「分かる・・・ような気がしたわ・・・ふふ」









※※※

ちっ、今回の敵・・・やばかったな。
あれと同等、もしくはあれ以上がまだいるとすれば・・・

小娘達の戦闘力上昇の為の訓練もしていかないとやばいか。
最後には・・・『アレ』だけは使いたくねぇし使わせたくもない。
だが・・・いざというときには・・・









南国の風と同時に帝劇にも新しい風が吹く。
沖縄で培われし女戦士が新たに加わる。
拡大する舌戦、上昇する平均身長、エンゲル係数。

次回、サクラ大戦『帝劇の水と油再見す』

大正桜に浪漫の嵐!!









あとがき:今回の戦闘シーンはなかなか難産でした。書きたいことがありすぎて最終的に
いろいろと削るハメに。文章的に矛盾が出てきたところもあり、この2日間はその修正に
追われてましたw

今回アイリスの機体が出撃しました。ゲーム上は紅蘭と一緒に花やしき支部から届くはず
でした(私の記憶が正しければ)。ですが今回の敵の特性を考え、出撃してもらうことに^^;

大神の行動の秘匿化につきましては、エンディングあたりで少し考えていることがありますので
理由はそれまでお待ちいただけたら、と思います。

感想掲示板、見させていただきました。多数の意見、感想ありがとうございます。
できるだけパワーバランスは狂わないようにしていきます。シナリオのオリジナル化には
目をつぶっていただければ、と思います。
これからも宜しくお願いいたします。



[16303] 幕間(5,5話)
Name: く~が◆c894d15f ID:1aa1decd
Date: 2010/11/06 21:45
「おにいちゃんのばかぁ!!!」

ボロボロになった大神機。
それを一目見て、アイリスが放った言葉はこれであった。


「もう、おにいちゃんたらアイリスのワガママ、いっぱい聞いてもらうんだから!」

『アイリス機、霊子起動』

ガシュン・・・ガシュン

単目が光り、黄色の光武が動き出す。
目標は、格納庫隅に鎮座する大神の白銀色の機体。
それに1歩ずつ近づき、アイリスは目を閉じ、集中を始める。

各それぞれの大技は、『溜め』をする必要がある。
戦闘時ともなれば、意気高揚の為『溜め』る必要は無いのだが、今回の作業は必要であった。

霊力が充実する。
アイリスは目をゆっくりと開け、癒しの光を振り掛けた。


『イリス・マリオネット!』


シュウゥゥゥゥゥ・・・

見る見るうちに傷が、へこみが、各機関部が治っていく。


大神が、先にも言われた『緊急時における基本概要』の中で綴っていた事項。
特に狙われやすいのが、回復を司ることになるだろうアイリスだった。


「「「おぉ・・・」」」


格納庫に居た、整備員(紅蘭推薦)がどよめきを漏らす。
それほどまでに、反則的な能力なのだ。

だが。


「でも・・・光武は直せても・・・おにいちゃんのケガが治せないのは・・・」


アイリスは自問する。
何故、光武の修理はできても人の治療はできないのか、と。

大好きなおにいちゃんがケガを圧してまで戦闘に出かけ、そして今回浅くは無い傷を負った。


「アイリス・・・どうして・・・?ジャンポール・・・教えてよ・・・」


アイリスが目蓋に涙を溜めながらもつぶやく言葉は、誰にも聞かれることなく静かに消えていった。









その頃、大神室では。

3人の少女、否、女性がつめ掛け、それを妙齢の女性がニコニコしながら見守っていた。


「大神さん、どういうことなんですか!?戦闘現場にも現れず、やっと現れたかと
思ったら階段から落ちてケガしたですってぇ?どうして大神さんはいつもいつも・・・」

「えぇ、えぇ。さくらさんの言うとおりですわ。今回さすがのわたくしでも少尉を庇い立てする
のは不可能ですわ」

「少尉・・・あなたのこと、見損ないました。いえ、確かにあの資料には感謝しています。
ですが・・・」


「だぁぁぁぁああ!!!うっせぇんだよてめぇら!!キャンキャンキャンキャン耳元で
怒鳴りやがって!!ちったぁ女性としての慎ましさを持てってんだクソが。・・・おい、
何をほくそ笑んでやがる・・・アンタがそういうツラする時は大抵オレに不幸が起きるよな。」

「あら、失礼な。何も考えてないわよ、大神君」

「ケッ」


まさに酒池肉り・・・修羅場。

狭い男の部屋に男女の比率が1:4ともなれば普通の男性ならば「性の!」で暴走するだろう。
だが、帝劇にその人あり、と段々知られつつある大神一郎にとっては、何の関係も無い事だった。

逆に罵声を浴びせ、包帯でグルグル巻きにされている右足、そして頭をガンガン動かし、
威嚇してくるのだ。

それを見るだけで、あやめの顔の笑みが深くなる。
数年前に士官学校で偶然会い、様々な事件に巻き込まれていったあの頃。

それはあやめのかけがえの無い宝物。
それをくれた大神には感謝してもしきれないほどだ。


「ふふ、それにしても大神君たらあの頃と何も変わっちゃ居ないわね・・・
特に女性の扱いに関しては」


ピシィッ・・・!!


あやめの発言により、場の空気が一気に凍る。
あやめの表情はいつもどおりの笑顔なのだが、そこには氷のような冷たさがある。


「ど、どういうことですか大神さん!?」
「少尉!?あなたは士官学校に何を学びに行かれたのですか!?」
「少尉・・・あなたも所詮、男、なのですね」


炎のように熱い視線と、かえでの縮小版のような冷たい視線が一気に降りかかる。


「あぁ?んなことあったっけ・・・オレぁ士官学校、海軍学校と女には無縁だったぜ?」

「あら、あったじゃない・・・わ・た・し」

「・・・はぁ、ボケが加速したか?」


ピシピシィッ!!!


大神があやめの顔を見てため息を吐くと同時に、さらに場の空気が絶対零度に近づく。
さくら、すみれ、マリアの三人は、あやめの顔がまるで般若のように見えた。


「ふ、ふふふ・・・相変わらずいい度胸してるじゃない・・・?私のことをそこまで
バカにした男はあなたが初めてよ?」

「バカになんてしちゃあいねぇだろうが。正直に言ったまでだ」

「!!!それがダメだって言ってんの、私は!!」


一喝。
かつては陸軍降魔対抗部隊の同僚すら見ることがなかった憤怒の表情。

ヘアピンは落ち、まとめられていた髪がばさりと下ろされ、静電気の影響だろうか。
毛先がジワジワと宙を浮いている。


「あ~。思い出した。確か加山と一緒に街に遊びに行ったところにアンタが絡まれてたんだよな。
今考えたらそいつら命が惜しくなかったのかね・・・」

「い、言いたいことはそれだけかしら・・・?」


さらに跳ね上がる圧迫感。
三人娘はすでにあちら側の世界に旅立っている。


「あ、お父様・・・?私、さくらです」
「ふ・・・ふふふ・・・ふははは・・・」
「た、隊長・・・あなたが何故ここに・・・?ハッ、ここは死後の世界!?」


そんな3人が見えてないが如く、大神が返す。


「あぁ、あの時も言ったよな・・・アンタ、髪下ろしてたほうが美人だぜ?」
「!!っ・・・ふ、フフフ。分かれば良いのよ、分かれば。ねぇ、大神君?夕飯は何が
食べたい?私頑張っちゃうかも」

「あ?んなら相当腹減ったから和食で頼むわ。あ、おかずにメザシあったら最高」

「分かったわ。ん、もう。大神君てば本当に正直なんだから!」

パタパタパタパタ・・・パタン


食事の当番なんてのは帝劇の中の職員、もしくはかすみや由里によって賄われているのだが、
それをあっさりと無視するが如く、あやめはウキウキ気分で走り去っていく。

それを見送り、大神は固まっている3人に地下足袋を投げつける。


「さっさとまともになりやがれクソ共が」

ビタン!!×3


大神の無駄に高い錬度の投擲。
ずれることなく3人の顔面に直撃する。


「「「く・・・くさ~~~い(ですわ~~)!!!」」」

「やっと正気になりやがったか。さっさと出て行きやがれ。そろそろメシの時間だぞ」

「「「くっ・・・」」」


3人が3人とも文句を言いたいが、それすら叶わず退室していく。
その途中で、さくらがこう言った。


「大神さん・・・何を隠しているのか、教えてくれるまで待ちます。私、信じてますから」

パタン・・・


「へっ」


ちょっとした違和感を感じたのだろう、さくらの物言いに、そして薄々感じているだろう
他の2人の態度に、大神は嬉しくなってつい笑みがこぼれる。


「まだ10年早ぇんだよ・・・バカ共」









「わぁ、今日は和食なんですね?」

「おいしそうですわ。少し華々しさが無いですけど」

「ふふ、久しぶりの和食ね・・・楽しみだわ」

「わ~い、アイリス、お魚だ~い好き!」


夕食の時間。
食堂には既に、花組4人と由里とかすみ、そしてすでに晩酌を始めている米田の姿があった。


「おぉ、みんな揃ったみてぇだな・・・んじゃあまぁ、マリアの復帰とあやめ君の着隊を
祝って乾杯すんぞ「待ってください!」なんだ、マリア?」


米田の乾杯の音頭をさえぎるかのように、マリアの声が響く。


「あの・・・大神少尉の姿が見えないみたいなんですが」

「ほう。おめぇともあろう者が、大神に惚れたか?」
「「「!?」」」

「い、いえ!そんな訳では。・・・この場に何故いらっしゃらないのか、疑問に感じただけです」


俯いてそう話すマリアに、あやめの方から説明が入る。


「大神君はみんなも知っての通り、本人のほんの不注意でケガをしてしまったわ。これは
今のような事態の時にはもってのほかの事よ。だから大神君が自分から言いに来たわ。
『オレに今回そのような席に出る資格は無い』と。それに、マリア。あなたのことだから
絶対に反感を覚えるでしょうし、せっかくの祝いの席を壊したくないのが一番の理由だと
思うわ」

「!ど、どうしてこういう時に限って・・・」

「すみれ?今回大神君は自分の責任を取って申し出てるのよ?どうしてそれを無碍に
出来るかしら?それに・・・あなた達に教えてあげたかったのかもしれない。
自己自愛が出来ない者は報われることは無い、と。考えても見て、あの大神君がお酒の席
を断ったのよ?どれほどの事か、大体分かると思うわ。
あなた達は今回の事で色々なことを学んだはずよ?
これも大神君からの申し送りだと思っておきなさい。いいわね、マリア?」

途中から、花組隊長であるマリアに言を向けて締めるあやめに、一同は沈痛な表情で
黙り込む。

「ほれほれ、今日は祝いの席だ!パァ~ッと飲もうぜ!」ガタン!!!


「「「!?」」」


米田が場を盛り上げようと声を出した瞬間、玄関の方向から音が聞こえた。


「誰!?」

さくらが側に立て掛けてあった愛刀を持ち、駆け出していく。
それに続いて駆け出す花組の面々。


「バッカ、このくそ加山!てめぇが音立てるから気づかれたじゃねぇか!」
「お、大神ぃ!?そりゃあ無いぜ、お前が急がせたんだろうが」
「てめっ、この期に及んでオレの所為にするかこの野郎ぉ!!」
「・・・大神、故人曰く『心頭滅却すれば火もまた涼し』だ。ここは観念しようじゃないか」

そこには、外出着に身を包んだ大神と加山の姿が。
戦闘前に交わした約束どおり、街へ繰り出そうとしていたのだ。

それを感じ取り、5人の修羅が大神に詰め寄る。


「「「「「大神さん(君)(少尉)(おにいちゃん)?」」」」」

「なっ?女があぁいうツラになったら何言っても聞いちゃくれねぇよ」
「お、大神ぃ!?」

「「「「なんですって~~~!?」」」」

「ちょ、オレはちが・・・」
「加山、後は頼んだ」
「あ、大神さんが!?」
「この下郎、捕まえましたわ!ってあら?」
「こんなところで忍術を無駄遣いするとは~!」
「まだ遠くには行ってないはずよ?みんなで捕まえるわよ!?」
「「「おぉ~~!!!」」」


飛び出していく4人の少女らに、笑みを零す残った面々。


「ま、あいつらにとっちゃああのくらいがちょうどいいのかもな」

「そうですわね・・・私は大神君が持って行ったもの全部食べてくれたから不問にしますわ」

「うぅ・・・あやめさんがいつのまに・・・」

「由里・・・そんなに睨まないの」


主役の居なくなった帝国劇場。
だが、その存在感はしっかりと溢れている。

大神一郎が来て数週間。



いかなる悪をも許さない帝国華撃団は、更なる高みへと邁進中。









次回、『帝劇の水と油再見す』









あとがき:年度末が近づき、更に仕事が忙しくなってきました。
3月には決算が控えています。それに向け、着々と準備をしなくてはいけません・・・

って言い訳ですね、すいません・・・^^;

かなりの日を開けてできたのは60kbくらいの幕間。
次回話、そしてネタ的なクロスの作品はできあがりつつありますので勘弁してください。

仕事の状況にもよりますが、次回更新は土日を逃せば火曜日あたりになるのではないかと
思います。楽しみにしてくださっている人がいらっしゃる限り、頑張っていきますので
これからもよろしくお願い致します。


※指摘に基づき、誤字(かなりの大間違いでしたw)を修正
manaさん、感謝です^^



[16303] 第6話・通常シーン(上)
Name: く~が◆c894d15f ID:764d60df
Date: 2010/03/03 00:52
帝劇総支配人室。

そこでは、老齢の男性と妙齢の女性が向き合っていた。


「あやめくん、次の公演の予定が決まったぞ」

「あら、今回は何の演目なんです?」

「おう、西遊記ってことだ。台本ももう届いている」

「まぁ。それではやはり・・・」

「ああ、孫悟空役は奴しかいねぇ」

「でしたら羅刹女はすみれ、ですわね」

「そういうこった」


台本を読みながらも、二人の会話は進んでいく。
そこには、帝国華撃団司令と副司令の姿は影すら見当たらなかった。


「ですが・・・あの子とすみれの相性・・・相当酷かったんじゃありません?
これではせっかくのこれまでの連携が・・・」


ここであやめが一瞬だけ副司令の姿に戻り、意見を求める。
それに対し、米田がニヤッと笑って対応する。


「心配はねぇとおいらは思ってるんだがよ。あの・・・大神ならうまくやってくれる。
マリアも何だかんだ言っておきながらいざと言う時には大神に頼ってるしよ・・・
あまり心配してねぇんだ。あやめ、おめぇもだろ?」

「ふふっ、お見通しですわね。そう・・・楽しみですわ・・・」


すみれと対を成す、帝劇メンバーが帰ってくるまであと数時間・・・









「ったくよ、折角の休みくらい休ませろってんだ・・・オレぁ只でさえ疲れてんのによ」


ぶつぶつと文句を言いながらも、事務室での手伝いを終え食堂の前を通りかかる大神。
そこでふと、あるものを見つける。


「あれは・・・ククッ、そうだ。いいこと思いついた」


大神が見つけたのは朝食後にそのままになっている残り物。
手伝いに結構な時間を費やした大神は小腹が空いていたのだ。
爛爛と目を輝かせ、火を熾して温め作業に入る。


「これじゃあちっとばかり足んねぇな・・・よっしゃ、倉庫に行って食材でも取ってくるか」


弱火に火を調節し、パタパタと出て行く奥へと入っていく。


「クンクン・・・クンクンクン・・・おぉっ、メシじゃねぇか!いやぁ、あたいって
ホント腹減ってたんだよな~!しかも温めてあるなんて気が利くじゃないの。
・・・誰もいないな・・・食っちまっていいか」


その数分後、狙ったかのようにのっそりと現れた謎の人物。
橙色の短髪をなびかせ、同色のバンダナがそれを押さえる。
明るい色で統制された胴着に拳に巻かれた包帯。

身長はマリアはおろか、大神ですら及ばないくらいの高さを誇る。


「よっしゃ、まず挨拶に行く前に腹ごしらえだぃ!」


桐島カンナ。

無限の食欲と戦闘狂を併せ持つ、帝劇会計係を最も泣かせる女性が帰った。




「よっしゃ、この野菜を炒めて残ってた肉を細切れにして一緒に調理すれば・・・
って誰だてめぇ!?」

「ガツガツガツガツガツ・・・ングングング・・・っはぁ!いやいや、3日ぶりのメシは
うめぇぜ!あたいの大好きな味付けだな!・・・ってあれ?あんた見ない顔だな。
誰なんだい?」


質問に質問を返してきたカンナに、怒気を発しながらも尋問する。


「そいつぁオレが聞いてんだろうが。誰に断って人のメシ食ってんだてめぇはよ」

「へ?これ、あんたのメシだったの?・・・そうかそうか、そういうことなら分かったよ。
この桐島カンナ、食い物の借りはどんなことをしてでも返すのが流儀だ。任せときな、
力仕事でもなんでも手伝ってやるからさ」


見当外れの返答を返すカンナに、青筋浮かべて近寄る。


「おいおい、何をそんなに怒ってんだよ・・・男ならもうちょっと、ど~んと構えて
られないもんかね。あんた、その格好を見る限り帝劇の新しい用務員さんだろ?」

「て、てめぇ・・・上等だこら」


怒気から殺気へ。
海軍学校時代に、船酔いして配食当番の時に鍋の中にゲロった同期を半殺しにした時の
記憶が思い浮かぶ。


「てめぇをノす前に自己紹介をしといてやらぁ・・・元帝国海軍少尉、大神一郎だぁ!!」

「・・・!っは、大した殺気じゃねぇか。へっ、腹ごなしの運動に丁度いいや。
あたいの名前は桐島カンナ。帝国劇場の踊り子だ!」


互いに名乗り合った後、同時に踊りかかる。

軍人VS琉球空手家。


軍配はどちらに上がるのか!?









「ねぇねぇ、さくらにすみれ?おにいちゃん何処に行ったのか知らない?
アイリス、おにいちゃんのお仕事終わった後に一緒に遊ぶ約束してるんだけど」

「あら、アイリス?私もてっきり今はアイリスと遊んでいるとばかり・・・」

「わたくしは部屋で読書をしておりましたので知らなくてよ?」

「何を話しているの、あなたたち」


大神を探しているアイリスに、返しているところにマリアが現れる。
その手には、先日大神から譲り渡された(加山から渡された)資料の束が。
どうやら、図書室で熟読していたようだ。


「あ、マリアさん。アイリスが大神さんを探しているって話なんですけど」

「大神少尉?少尉なら・・・」


『うるああああぁああ!!!』ドゴォッ!!
『せやぁああああああ!!!』ドガン!!


「「「・・・・・・」」」

「な、何かとてつもなく嫌な予感がしますわ」

「わ、私もです・・・」

「あれ?この声ってぇ・・・」

「・・・えぇ、間違いないわ。帰ってきたのね、カンナ」

カンナと最も仲が良いマリアが断定すると、さくらがヘナヘナとその場に座り込む。


「や、やっぱりぃ・・・どうして大神さんたら初見の人とケンカになるのかしら」

「と、とにかく1階へ行きますわよ?あの野蛮なお猿さんに少尉がケガさせられてしまいますわ」

「そ、そうね。アイリス、一応救急箱を持ってきてくれないかしら?私達で一応抑えてみるから」

「わかった~!」


さくら、すみれ、マリアが抑え役に走り、アイリスが救急箱を持ってくる。
先日の100体以上の脇侍との戦闘は無駄ではない統率を見せた。

最も、使うところが間違ってるのが痛々しいが。









【カンナ】

へっへ、こいつぁ強いぜ。伊達に軍人を名乗ってるわけじゃないってか。
この大神一郎とか言ったっけ、技に法則性が無い。

無手での戦闘はどう見ても得意そうじゃないように見受けられる。
でもあたいの流儀には無い行動、戦法でこちらを撹乱し、あたいの防御が下がると同時に
果敢に攻め立ててくる。

もったいねぇ。何でモギリの格好なんかしてるんだろ?
軍人ならあたい達と一緒に戦ってくれてもいいはずだろ・・・


「隙ありだぁこの野郎!」

「あたいは女だぁ!!」

「嘘付けぇ!てめぇみてぇな女がいてたまるかぁ!」


何故だろう?よく人から女性に見えないと言われたことはある。
でもよぅ・・・ここまではっきり言ってくれなくてもいいんじゃないか・・・

なんだか凹むよな~・・・


バシィッ!!

一郎が繰り出してきた拳を腕で受ける。
そしてそのままの状態から間髪入れずに上段回し蹴り。


「はぁっ!!」


ヒュオッ・・・

な、避けられた!?

嘘だろう、手加減してるとは言えあたいの回し蹴りを避けた?
こんなの、あたいの父さんにしかできないと思ってたのに。

大神一郎・・・あんたは一体何者なんだ?


「そこまで!やめなさい、カンナ!!」

「大神さんも落ち着いて!はいはい、こっちですからね」ガシッ ズズズズ・・・
「は、離しやがれ!あいつにゃあメシの借りが・・「ハイハイ」て、てめぇ小娘ぇ!」

「全く、女性としての慎みをもっと持つべきですわね、カンナさん?」


お、おお!?
何かひっさしぶりに見るな~。

てゆーか、お前らいつの間にそんなに変わったんだ?
あたいの目には、お前らが別人のように見えるぜ・・・


「は~い、救急箱持って来たよ?あ、カンナ!久しぶりぃ~!!」

「お、おう・・・」


あまりのみんなの変わりように、あたいは一言しか返せなかった。

そして何より・・・


「はいはい、ご飯は私が作ってあげますから大人しく待っててください」
「食い物の怨みは強ぇからな!?覚えてろ!」


この男。
もっとだ。もっとこの男と戦いたい。
この男なら・・・あたいの全力が出せるはずだ!

Side out









結局。

時間もお昼に近いということで、調理係としてかすみと由里も加わり昼食の準備が始まった。

元々、母親と祖母に厳しく躾けられた和食はさくらの得意分野だ。
それに加え、和洋様々な知識を持っている由里と、味付けに関しては帝都一とも噂される
かすみが手伝い、いつもより倍の量が作られていく。

テーブルには帝劇の面々、そして見慣れない少女も米田に連れられて席についていた。


「・・・あぁ?おい、米田のおっさん。その・・・なんだ。少女誘拐は犯罪だと思うんだが」

「「ブッ」」


大神の発言に、口に含んでいた水を吹くすみれとマリア。


「お、おいおい。んな訳ねぇだろうがよ。この子は・・・っと、紹介は後だ。どうせなら
みんな揃ったところで紹介といくからよ」


ジト目になっている二人、いや興味津々なカンナの視線も浴びながら米田は慌てながらも
お茶を濁す。


「・・・本当に、違うんだな?」

「しつけぇぞ、大神」


大神、という言葉に過剰に反応する少女。
それを大神が目ざとく見つけた。

「えっ、大神!?」

「あ?何だてめぇ。オレぁ子供が相手だからと言って容赦しねアダダダダダダダダダ!」

「何この子相手に凄んでるの?大人気ないわよ、大神君」


背後から大神に近寄り、耳を引っ張り上げるあやめ。
耳は人間の急所。引っ張り上げられたら何も出来ない。


「ててててていてぇって!離せや藤枝の年まぁああああああ!!!」

「何か言ったかしら?」


大神の口はすでに少女からあやめに変えられていたが、あやめは氷のような目を保った
まま、更につねり上げる。


「ぐぐぐぐぐぐぐぐぐ・・・とし・・・まぁ・・・言って・・・ません・・・」

「よろしい」


ようやく開放された大神は、耳をさすりながら若干涙目であやめを見上げる。


ゾクリ・・・


あやめの背中を、何か快感のような波が駆け上がる。


(っ・・・!大神君たら・・・いい顔するじゃない?あぁ、もっと甚振ってその顔が
見たい!まだ苦痛を与えたらまた更にいい表情を・・・!)


自分を抱きしめながら一人悶絶しているあやめに少し引きながらも、少女が米田に聞く。


「あの・・・大神さんってひょっとして・・・」

「ん?何だ、大神のことを知ってんのか?」

「い、いえ。そういう訳では・・・ちょっと聞いたことがありまして」


少女の目は、大神から離れない。


(何か訳ありか)


そう結論付け、米田は並べ始められたいい匂いがする昼食へ、関心を向けていった。









「ようやく出来上がりです、お待たせしました皆さん」

「「待ってました!!」」


さくらが声をかけると同時に、一緒に反応する大神とカンナ。
それにお互い気づき、視線を合わせるがここはケンカよりも食欲だと判断し、箸を
つけようとする。


「まだだ、ちょいと待ってくれや」


だが、米田の一声で中断せざるを得なくなる。


「さきにこの子を紹介しておく。高村 椿、15歳。近々演目をやる段取りがついたんで、
売店の売り子として働いてもらうことになった。ほら、自己紹介だ」


米田に促され、慌てて席を立つ椿。


「は、初めまして。私は高村 椿、15歳です!!まだまだ未熟ですが、やる気だけは
誰にも負けませんのでどうぞよろしくお願いします!!」


パチパチパチパチパチ・・・


ハキハキとした声。
そしてしっかりした佇まい。

誰もが椿を気概は1人前だと認め、拍手する。

だが。

「うわぁ・・・何か変な記憶思い出したじゃねえか・・・」


大神が、椿の自己紹介を聞いてこう呟いたのだ。


「どういうこった?大神よぅ」

「おっさん、あんたならオレの海軍学校の資料見てんだろ?オレの教官だったのに同じ
名字がいたんでな、それで思い出しただけだ」


ふむ、と米田がつぶやいて記憶を手探るように空を見る。
なるほど、確かに高村大尉と言う名前に覚えがある。


「あ・・・あの、それ私の父親です。やっぱり大神さん、本物だったんですね!?」

「え?あ、おお」

「きゃあ!?私、大神さんのふぁんなんですよ~!父さんから大神さんの武勇伝たくさん
聞いて、それで私、ものすごく憧れちゃって!!」

「・・・まさか親娘そろって縁があるたぁ・・・帝国もせめぇな」

「「「むっ」」」


米田の言葉に、若干の反応があったが椿の喋りは止まらない。
憧れの大神が目の前にいるのだ、それは仕方ないと見えた。


だが、いくらなんでも収拾がつかなくなってきた。
いい加減うざくなったのだろう、大神が一喝する。


「じゃかましゃ~!!ピーコラピーコラさえずりやがって!いい加減黙ってメシ
食わねぇか!」

「はい・・・」


しゅんとなって席に座る椿。
場の空気も、どことなく重くなる。


「それじゃあ歓迎会も含めて昼食にすんぞ?オレが音頭取ってやらぁ」


だが、大神が立ち上がることによって全員の意識が大神に向く。


「そんじゃあ帝劇に新しい仲間、そこの・・・なんつったっけ、食欲戦闘狂と、あ~~・・・
梅?だっけか。これからの健闘を祈って・・・乾杯~」

「・・・食欲戦闘狂って」
「私、椿です・・・」


なんとも締まらない音頭になったが、歓迎会は幕を上げた。









「ところで米田支配人。新しい演目が決まったと先ほど伺ったのですが」

みんなが料理を食べ終わり(カンナだけはまだ継続中)、お茶を飲んで一息ついている時に
マリアから質問があがる。


「おぉ、いけねぇ。忘れるところだった。みんな、聞いてくれ。お前ぇ達の新しい舞台が
決まったぞ。演目は『西遊記』。主人公である孫悟空役を・・・カンナ。お前ぇにやって
もらう。そしてその好敵手の羅刹女は・・・すみれ。お前ぇだ。舞台公演開始は2週間後だ。
しばらくそちらの稽古に入ってもらうぜ」


米田からの説明が終わる。


「へっへ、帰ってきていきなりの主役かぁ。おっしゃ、ここはあたいが頑張ってすみれを
引っ張ってやろうじゃねぇの」

「あ~らカンナさん?あなたいつからこの帝劇トップスタァのわたくしにそのような口を
聞けるようになったのかしら」

「へっ、お前ぇみてぇに高飛車なお嬢様をあたいが矯正してやろうって言ってんだよ」

「それこそ余計なお世話ですわ。わたくしこそあなたを野生のお猿に還してあげますわ」

「なんだとぉ!?」
「なんですの!?」


軽口の応酬からあっという間に臨戦態勢に入る二人。

いつもの光景。まさに水と油。
二つは決して混ざることは無い。

このことは、後に大いに影響を与えることとなる。









【椿】

えへへ、ついに入っちゃった。
お父さんにかなり反対されたけど帝国劇場に就職できてよかった。

私のお仕事は売店の売り子。
劇場の踊り子の写真や応援品、その他各種のお土産を売りさばくことが主になる。

そして。

もちろん、『裏』の仕事も把握している。
帝国華撃団の補佐とも言える風組への配置。
私には轟雷号や翔鯨丸の操縦はできないが、かすみさんや由里さんのお手伝いや
情報収集はできる。

僅か3週間だが、帝国華撃団としての最低限の技術、戦闘術は学んだ。
あとは大神さん達の役に立つだけ。

目の前で米田支配人の説明を聞きながら舟を漕いでいる・・・あっ、あやめさんに
引っ叩かれた、私の憧れの人、大神一郎さん。
私はお父さんの部屋に無断で入り、そこで大神さんの異動先を見つけた。
後は話は簡単。お父さんにお願い(肩たたき、晩酌、添い寝)をしてコネで入ることが
できた。


でもさっきのはまずかったかな・・・
大神さんが目の前にいたものだからついつい熱が入っちゃったけど。

高村椿、恋も仕事も一直線に突き進みます!!

Side out









あとがき:すいません、水曜日になっちゃいましたね^^;思ったより仕事が遅く終わり、
PCに向かったのは22時過ぎ。そこから前もって作ってあったプロットを元に、文章を
起こすのに今までかかりましたw

ちょっと長くなったことから、6話通常シーンを2つに分けさせてもらいました。


そして原作からまた道が逸れています。

カンナとの初見、椿の感情の行方。椿の父親に関しては、皆様もお気づきであったと
思いますが敢えて説明を入れてみました。

次回は舞台稽古、敵地侵入のシーン、そして大神の??についてのお話です。
その後に戦闘シーンに入っていきます。


感想にあった、XXXへの道は今のところ不明ですw私に文章作成力があれば挑戦したかも
しれませんがwと言いつつもプロットは少しずつ出来ています。

先回報告した、ネタ的な外伝は皆様の反応を見て掲示するかどうか決めたいと思います。
皆様のご意見、お待ちしています。

最後に、拙い文章ですが読んでくださっている皆様に感謝申し上げます。
本当にありがとうございます。



[16303] 第6話・通常シーン(中)
Name: く~が◆9b59c775 ID:0d200646
Date: 2010/03/10 10:46
帝国劇場。

その関係者の中で、誰が一番単細胞かという質問をした場合、概ね二つに分かれるだろう。

まず大半の人間が決を取るであろう人物、桐島カンナ。
南国沖縄で育った空手家にして、小さい頃から『黒は黒、白は白』という単純極まりない
教えを受け、すくすくと育ってきた。
今や二十歳にまで成長しているが、『三つ子の魂百まで』を地でいく女傑である。

そして、その対抗馬として挙げられるであろう人物、大神一郎。
だが、大神の場合は気を抜く時と真剣な時で激しい差が出てくる。
軍人モードであるとき、そして普段(モギリ)モードで居る時。
口調は全く変わらなく正直な底面も変わることは無いのだが、スイッチが切り替わったかのように
冷静な判断を下すのだ。
それは正に、指揮官としての才能に溢れているといって過言ではあるまい。


更にここで一つ。
片方を慕い、片方を嫌悪とまでは行かないがウマの合わない苦手としている人物。

神崎すみれ。

すみれは元々、神崎重工の社長である父と舞台スタァである母を持つ、箱入り娘。
すみれからしてみれば、自分自身以上の者が周りに居ない状態で幼い頃から大事に育て
られてきたので、カンナみたいな己自身に対して罵詈雑言をただ言ってきてちょっかいを
かけてくるのは非常に腹立たしいものであった。

一方で、大神の方も初見のときは同じだ。自分の事を『露出狂』とまで呼び下し、あまつさえ
帝劇のスタァであることすら疑う目線をくれて来た。
だが、大神に対する嫌悪感もすぐに霧散する。
共に戦場で駆け巡った時の一体感。
そして大神の瞳の奥に見え隠れする底深き情念。

カンナと大神。
すみれにとって違いと言えばこの点だったのだ。

大神が来る前に、総合演習で陸軍相手取り模擬戦闘を行ったことがあるのだが、あの時は
それぞれがバラバラの行動を取るだけであった。

それが、大神が来たことによって改善された各々の戦闘に対する認識。
連帯行動の重要性を知った今、すみれとカンナの関係がどうなっていくのか。
それは、全てこれからの舞台稽古にかかってくると言っても過言ではない。


だが。


「何してやがんだこのアバズレ!そこはあたいが攻撃する場面だろ!?」
「何おっしゃってますのこのお猿さんは!?ここはわたくしが華麗に攻撃した方が映える
というものですわ!」


さっそく罵り合いを始めた二人。
それを見て、さくらが間に入って止めようとする。


「ちょ、ちょっとカンナさん?すみれさんも落ち着いて・・・ほら、もう一回最初から・・・」
「さくらぁ、おめぇどっちの味方なんだ?」
「さくらさん?ぽっと出のあなたにも参考までに聞きたいですわ」

「え・・・えぇ!?そ、そんな・・・」


間に入ったさくらさえも巻き込んで過熱する口喧嘩。
おろおろするだけのさくらだが、カンナがすみれにつかみかかろうとした所ではじきとばされ、
体勢をくずしてしまう。


「あ・・・あららら・・・!?」


ドンガラガッシャ~~ン・・・

崩した方向には背景を彩るセットが。
そこに突っ込み、滅茶苦茶に壊れてしまう。


「「「「・・・・・・」」」」

シーンとなる舞台。


「すみれ、おめぇの所為で壊れちまったじゃねぇか!?」
「何を言ってますの、あなたが掴みかかろうとしたのがさくらさんに当たったからですわ!」
「大体おめぇが台本どおりにやらねえから・・・」
「わたくしは舞台をよりよくするために・・・」


いつしか口喧嘩から頬の張り合い、そして掴みかかってのケンカが始まる。


「あわわ・・・すみれさんもカンナさんも落ち着いて・・・」

「アイリス、もう手がつけられないわ。大神少尉を呼んできて」

「うん、分かった~」


黙ってこれらを見ていたマリアも、ため息を付きつつこの醜態を収めるだけの力を持った
人物を呼んでくるため、アイリスに頼む。
そして己自身も、さくらを手伝う為カンナの方へ歩いていく。


「さくら、すみれを抑えて頂戴。私はカンナを」

「あ、マリアさん。分かりました!」


同時に背後に回りこみ、引きずって離れさせる。

当の二人はまだどつき足りないのか、足や手をジタバタとさせてうなり声を挙げる。


「あ~あ、こんなに滅茶苦茶になって・・・これじゃあお稽古どころの話じゃないわね、
しばらく修理にかかりきりになるわ・・・」


マリアがカンナを抑えたまま、舞台装置を見てこう呟く。


「はぁ・・・しょうがないですね・・・あの、私が壊したんですし私が頑張って」
「御放しなさい、さくらさん!このお猿を躾けてやりますわ!」
「ちょ、ちょっとすみれさん!?」


一瞬の隙を突いたのか、すみれがさくらの抑えを解いてカンナに襲い掛かる。
だが。


スパコ~ン!!
「あうっ!?」


売店の方に置いてあったスリッパがすみれの後頭部に命中する。


「何やってんだこのメス共が・・・」
「良かった、間に合ったよおにいちゃん」


大神一郎、そしてアイリス。

この二人がいつの間にか舞台袖まで姿を現していた。









【大神】

まったく、こいつら何やってんだ?
せっかく雑用の仕事で売店の売り物の運搬作業をやっていたのによぅ。
その途中で幼女が急に現れやがった。

このくそ幼女、この現れ方は心臓に悪いからすんなってあれ程言ってたのによ。
まぁ心の広いオレは幼女の頬を限界まで引っ張ってグリグリするだけで許してやったが。

おいこら、そんな目でオレを見るんじゃねぇ幼女。


そして幼女はまたオレを捕まえ、瞬間移動しやがった。
着いたところは舞台脇。舞台からやかましい声が響いていた。
・・・大体の状況が読めてきたな。
大方、露出か食欲のどちらかがどちらかにケンカ吹っかけたんだろう。

そう思ってオレは運搬途中だったこの・・・スリッパって言ったっけ。
こいつをぶん投げた。

スパ~ン!!「あうっ!?」

おぉ、いい音がしやがる。こいつぁ常に一つ持っとくべきか。


「何やってやがんだこのメス共が・・・」

「ちょっ!?それはあまりにも酷いですよ!?」


小娘が。現実を見ろってんだ。


「あ?見てみろやあの二人のツラをよ。引っかき傷に青アザ、まさに野生じゃねぇか。
んな奴らはメスで充分だ」

「ひ、ひどい・・・」

「少尉、それよりもこの状況を収拾していただけませんか?」


ん?吊り目が何か言ってやがる。


「何でオレが。隊長のおめぇがやればいいじゃねぇか」

「ぐっ・・・お言葉ですが、私には過去にあの二人のいがみ合いの収拾をつけたことは
あっても、お互いの確執を無くすまでにはいたらなかったのです。そこで是非少尉に・・・」


普段と違い、神妙にお願いしてくる吊り目。
成る程、収拾とは言ったもんだがこいつらには昔から手を焼いてるわけだ。
それで少しばかりの期待をオレに、って訳か
しょうがねぇ、ちったぁ協力してやっか。


「はぁ・・・分ぁったよ。ったく、只でさえ搬入作業が滞ってんのにこいつらの世話まで
やらにゃいかんのか・・・ほれほれ、ここはオレに任せてお前らは部屋に戻れ!この惨状が
直るまではお前らには仕事が無ぇんだ、今のうちに休んどけ!」

とりあえずはこの惨状をどうにかしねえとな。


side out










「なあ、少尉。あたいはどうしたらいいんだ?」


各々が部屋に帰る中、カンナが大神に俯き加減で聞いてくる。
今の惨状を作った原因として、何とかしたいという意思がありありと表情に浮かんでいる。


「おめぇも部屋に帰れ。神崎とのケンカについてぁ追及しない」

「な、何でだよ!?」


食い下がるカンナに、大神は言い聞かせるかのように説明していく。


「いいか?最初からウマが合わない奴とは無視するか、ケンカするか、酔っ払って
話し合うことでようやく修正が少しずつされていくもんだ。おめぇらについては
口喧嘩から取っ組み合いまでやってんだろ?んならオレがとやかく言う問題じゃねぇ。
ほれ、いいからここはオレに任せな。何かあったら呼び出して指示すっからよ」

「少尉・・・」


まだ納得がいかないカンナを手を振って追い払い、現状を改めて認識する。


「えーっと、背後の絵に関してはオレぁ何もできねぇな・・・確か事務所に業者への連絡
先があったからそれに任せて・・・あとは大道具関係か。こいつぁ修理すりゃあ使えるか。
これはオレがやるとして。えっと次は・・・」


ぶつぶつと独り言を言いながらも段取りを頭の中で組み立てていく大神。


「よっし、こんなもんだ。となれば・・・道具箱は確か小道具室にあったっけ。取って
くっか」


小道具室へ向かう大神。
それを見つめる1対の瞳。


「大神さん・・・うん、私も何か役に立てれば・・・待っててくださいね、大神さん」





トンカントンカントンカン・・・
ガンガンガンガン・・・

キュッ・・・キュッ・・・


誰も居ない舞台に、修理の音が響く。

そこにいるのは大神一郎ただ一人。
マリア、アイリスも気になって様子を見に来たが、大神はその度にあしらった。

修理をしながらも大神は先ほどのことを思い返していた。
どうしたらまるで水と油のような、正反対の二人を修正できるか。

軍隊では、上官が「黒」と言えば配下は「黒」と考えるしかない
命令は絶対なのだ。。
だがこの場合、すみれとカンナに「仲良くしろ」と言えばそれで終わりなのだが、あいにくここは
乙女が集う帝国劇場。軍隊ではないのだ。
ましてや、年頃の少女達である。繊細な心変わりなど分かるはずが無い。

そして、この手のことに関して全く知識がない大神は、半ば丸投げ状態でいた。


考えてもしょうがない。
状況を見てその都度洗脳に近い精神誘導をしていくしかない。
誰にも気づかれること無く。

そう結論付けていたのだ。


このような物騒な考えをまるで見抜いたかのように、一人の女性が大神に近づく。


「ふふっ、苦労しているわね。大神君」

「あ?」


声をかけられる前から察知していた大神は、驚くことなく振り返りその相手を見つめる。


藤枝あやめ。
当帝国劇場での先任女性。
今の彼女達の心情を最も熟知しているであろう人物のお出ましだった。


【あやめ】

ふう、マリアから事情は聞いたけどまさかここまで確執があるなんてね。
数年前に劇場に招集され、そしてその間ずっとその関係を是正できなかったのだから
自信が薄れるのも分かるわ。

でも、加山君が持ってきた情報によれば、今回の敵は数年前の降魔戦争と匹敵するくらい
危険だということ。
今は小康状態を保っているから良いようなものの、このままの未熟な連携では蹴散らされる
のが見えてるわ。

だから敢えて、マリアに前もって言っておいた。


『もし二人が前回と同様に険悪な状態になったならば大神君に相談しなさい』


その助言は、マリアの誇りを少し傷つけたみたいね。
私に報告してきたときのマリアの表情は痛々しいものがあった。


でもね?


「ふふっ、苦労しているわね。大神君」

「あ?」


この不機嫌さを隠さないまるで子供みたいな反応。
誰にでもズケズケと本心を明かす素直さ。
何だかんだ言って、周りをよく見ている注意深さ。
そしていざと言う時の信頼感。

この相反する素質を持っている大神君には・・・何かこう、絶対的な強さを感じる。

だから・・・


「いい?大神君。あの二人はね・・・」


これくらいの助言で、大神君なら何倍にも成果を現してくれる。

そして。


「さくらさん、大神君のこと、お願いね?」

「あ、あやめさん!?気づいていらっしゃったのですか?」

「愚問ね、大神君はとっくに気づいていたわよ?」

「あぅ・・・私って・・・」


彼の周りの女性達が支えてくれる。
そう信じているから。

Side out









大神が修理を終えたのは翌朝になってからだった。
派手に壊れたセットを持ち前の器用さで直していき、何とか仕上げた。
もちろん、背後の絵に関しては業者を呼んで新しく張り替えるよう由里にも頼んでおいた。


「はぁ~・・・やっと終わったか」

「あ、大神さん。ちょうどいいところに」

「んあ?」


舞台から出て食堂の方向へと歩いていった大神だが、かすみに呼ばれ歩を止める。


「米田支配人がお呼びでしたよ?すぐに支配人室へ来てくれって」

「あのおっさん、今度は何企んでやがんだ・・・?」


どことなく不穏な予感がした大神は、頭を掻きながら支配人室へと歩いていった。









「よう、大神。遅かったじゃねぇか」

「てめぇ・・・ケンカ売ってやがんのかおっさん」


大神が入室すると同時に投げかけられた言葉に、大神の額に青筋が浮く。
只でさえ徹夜作業していて気が短くなっているのだ。
米田の返答次第では本当に殴りかねない雰囲気を醸し出していた。


「はっは、あまり怒るんじゃねぇよ。あやめ君から報告はされている。ご苦労だったな」

「始めからそう言え、クソ親父。んで?何で神崎と桐島までいやがるんだ?」


そう、室内には既にすみれとカンナの姿があったのだ。
双方の表情を見るに、未だに昨日のことが根に残っているみたいだ。


「おう、おめぇら3人にやってもらいてぇことがあってよ」

「やってもらいたいこと?」

「あぁ。実はよ、とある筋から脇侍が盛んに活動してるって情報が入った。何を企んで
いるかは未だ不明だが、おめぇ達にそれを調べてきてもらいてぇんだ」


今回の米田からの指令は、『偵察』。
大神の脳裏に、士官学校での偵察訓練の時の様子が甦る。


「おっさん、オレの資料読んでなかったか?オレぁ独断専行で周りを置いていくくらいの
行動しかできねぇぞ?只でさえ偵察ってのは面倒くさい上に時間が貴重なんだ、
数人で行って行動を遅延するくらいなら単独で動くぜ」


その大神の言葉に、すみれとカンナが反応する。


「あ~ら、少尉。わたくしならば少尉の足手まといにはなりませんわよ?それよりもこの
お猿さんを連れて行くっていうのが納得いかないですわ」

「けっ、そいつぁあたいのセリフだぜ。おめぇみてぇな癇癪女がいたらすぐに敵に
バレちまう。あたいこそ納得できないな」

「何ですって!?」
「何だよ!?」


再びいがみ合う二人。

それを見た大神はツカツカと二人に近寄り。


ゴツン!!!!!×2


「きゃあああ!?」
「どぁいたああ!?」


拳骨を思い切り二人の頭に叩き落した。


「うっせぇえんだよてめぇら二人はよぉ!?米田のおっさんから下された命令は言わば
上官命令だぁ!!二人とも特殊部隊にいる割に全っ然立場を分かっちゃいねぇんだな~?
いい度胸だ、お前ら二人共オレの手でその首叩き落してやらぁ!!・・・米田のおっさん、
こいつ借りるぜ」


帝国劇場に来てからの初めての『ガチ切れ』。
その表情は修羅の如く、そして体から昇る霊気は殺気を帯び。

大神は米田の後ろに飾られている刀を取り、その白刃を抜き放つ。


「ちょっ・・・待て、大神!?」

「おっさんは黙ってくれねぇか。こいつらがズレた認識を叩きなおすには死ぬしかねえ」


米田の制止もなんのその、大神は右手にその刀を硬く握り締めいつでも首をなぎ払える
ように刃を返す。
刀も、大神の霊気に応えるかのように青白く淡い光を灯す。


あまりにもの巨大な霊気。
そしてそれに帯びる殺気。

この二つは、二人の心をへし折るには充分すぎた。


「しょ・・・少尉・・・ほ、本気で・・・」
「ばっきゃろう、まだ感じてねぇのか!?少尉のあの殺気を!?」


一歩ずつ、一歩ずつ・・・大神はまるで小動物を隅に追い詰めるように近づく。


『三歩破軍』。

最初の一歩(一過程)で相手の機先を制し、
次の一歩でその精神をも絶ち、
そして最後の一歩で、相手の命を奪うが如く。

これこそ大神が身に付けた技の中で基本とも言える動き。


真の殺気に中てられ、すみれとカンナの精神は限界近くまで追い詰められた。


「さぁ・・・もう一回聞く・・・どうすんだ・・・命令どおり二人で付いてくんのか・・・
それともオレの手で矯正されるのか・・・どっちだ・・・あ?」


「「つ・・・付いていきます、二人で!!」」


大神の問答に、二人声を合わせて同時に答える。

スゥ・・・


二人を縛っていた大神の霊気が消える。
と同時に、二人の体の緊張が解ける。


「「あ・・・」」

「んじゃあ準備が整い次第出るぜ。相手はあの化け物共だ、油断するんじゃねぇぞ?」

「「りょ、了解!!」」

「おっさん、悪かったな。こいつぁ返すぜ。・・・にしてもアンタも持ってたんだな・・・」

「・・・・・・」

「まぁ詳しいことは言ってくれるまで聞かねぇよ。誰にもほじられたくねぇ過去があんだからな」

「・・・悪ぃな、大神」

「・・・別に・・・」


大神が支配人室を出て行く。

残された二人は自然に顔を合わせる。


「・・・おい、すみれ。少尉って怒ると怖いんだな」

「・・・わたくしも初めて見ましたわ、少尉がお怒りになっているのを」

「ふふっ、それは少し違うわね」

「あやめさん?」


隣室から入ってきたあやめ。
その表情はいつものように笑顔を作っている。


「昨日ね、大神君の所に助言がてら様子を見に行ったの。心配していたわよ?あなた達二人の
仲違いが戦場でどれだけ影響が大きいのかを」

「少尉が・・・」
「あたい達のことを・・・?」

「そうよ。それに気づいている?大神君はあなた達のケンカを止めてるわけじゃないわ。
むしろやれって言っていることを。それがあなた達の意思の疎通の取り方だって
理解しているからよ?もちろん正解かどうかは分からないけどね」


クスッと笑って話すあやめに、すみれとカンナも苦笑いを零す。


「・・・そうですわね・・・わたくしとしたことが、任務の前に己の感情は二の次以下
だってことを・・・いつの間にか忘れていたみたいですわね」

「・・・おう、あたいもだ。考えてみればおめぇとはこれからも腐れ縁が続きそうだし、
ケンカなんていつでもできるってことだ!」

「そっくりそのままお返ししますわ、カンナさん」

「「ふふふふふふふ・・・」」

「あ~・・・お前ぇら。水を差して悪ぃんだが・・・大神、待ってんじゃねぇか?」

「「あ」」


米田に突っ込まれ、気の抜けた声が出る二人。

慌てて支配人室を辞し、自分の部屋に準備をする為に戻る。
そして二人を待っていたのは、劇場出口で般若の表情で仁王立ち、両手にスリッパを装備
した大神の姿だった。









「やれやれ・・・行ったか」

「えぇ。それにしても大神君たら、あんなに感情を出すなんて」

「・・・むしろすみれとカンナが可哀想すぎて危うく止めちまうところだったぜ」

「あれが大神君なりの『心配』の形、なんでしょうね。言わば厳父。娘達に嫌われようが
その命を飽くまで守り通し、表に出さないけどその成長を楽しみにする姿。大神君は良い
両親に育てられたみたいですわね」

「・・・・・・」

「米田支配人?」

「あぁ、何でも無ぇ。そうだな、厳父・・・か。さくら達が知ったらどうなるやら」

「それも含めて、大神君に期待、ですわね」

「違ぇねぇな」


途中で米田が無表情になるが、それも一瞬のこと。

支配人室には、台風通過後の穏やかな空気が流れた。









あとがき:かなり間が空いてしまいましたね。その割にストーリーが全然まとまって
いないという出来損ない振り・・・本当に土下座っす^^;


今回は舞台稽古から偵察に出かける前までで締めました。
少々大神の行動が短絡的とも思えますが、他の展開を考えたら選択肢がコレにw
偵察前に一喝されたことで、これからの偵察行動にどう影響を与えてくるか、
それは次話にご期待ください。


感想掲示板、いつの間にか30超え、そしてPVは30000を^^
愛読いただき、ありがとうございます。

この場面を乗り切れば、明るい展開。そう、紅蘭のお出ましとなります。
それまでは少々シリアスな空気が流れますがよろしくです^^


※指摘に基づき、修正(俊さん感謝です^^)



[16303] 第6話・通常シーン(下)
Name: く~が◆9b59c775 ID:e8e5f217
Date: 2010/03/11 22:39
【米田】

かぁっ、まさかあそこで大神の霊力をお目にかかれるたぁ・・・
あの霊気の顕現。あれは多分、大神も気づいちゃいなかっただろう。

おいらが持つ霊刀、『神刀滅却』。
あれが大神にとっての媒体となった。


まさか・・・あそこまでたぁな。
あれなら大神が敢えて隠しているのも分かる。
足元には、霊子測定器が針を振り切り壊れてやがる。

これらを考慮すれば・・・次回の戦闘で大神の秘密が分かるはずだ。


だが、改めて大神の精神力には脱帽だぜ。
これだけの霊力を身に秘めていれば、精神がとっくに壊れちまっててもおかしくねぇ。
それをあの若さで・・・大ぇしたもんだ。


「かすみ、由里。念のためだ、大神達が向かった洋館に蒸気偵察機を放ってくれねぇか。
・・・ああ、轟雷号もすぐに発進できるようにな・・・あぁ、頼む」


通信用画面を開き、事務所にいる風組に指令を与える。
オレにできることと言ったらこれくれぇだ。

カンナ、すみれ。
いざとなったら・・・大神のこと頼むぜ?


『司令、蒸気偵察機の準備整いました。一三〇〇に予定通りに』

「ああ、頼む」


椿も良い顔してんじゃねぇか。
お前ぇにとっての初仕事、頑張ってくんな。

Side out









「ここか・・・ケッ、いかにも何か出てきそうな風体してんじゃねぇか」

「何か・・・妙な気配を感じますわ」

「あぁ・・・人じゃねぇな、おそらくは・・・」


数10分後、大神率いる偵察組は洋館の裏口に来ていた。
大神としては、何か別の入り口を探して目立たないように潜入したかったのだが、念入りに周りを
調べてみたがそれらしき物は発見できず止むを得ず裏口から入ることにしたのだ。


「・・・おい、お前ら自分の得物は持ってきたか?」


大神が自らの愛刀の鯉口を浮かせながら二人に聞く。


「えぇ、もちろんですわ。神崎家特注の折り畳み式の薙刀を」

「あたいは元々無手での戦闘が得意なんだ。だからこのままで大丈夫だぜ、少尉」


二人の返事を聞き、大神は軽く頷いて再び入り口に目を向ける。


「それじゃあ行くぜ」

「「はい!」」


すんなりと潜入を果たした三人。
だが、洋館ならではの部屋数の多さに、大神は少々眉をひそめるが方針を決める。

扉が多いが、その造りは殆どが木だ。
材質を見てから軽く頷き、大神は精神を集中させる。


「・・・霊気探知・・・2階・・・?から下りて行く気配・・・よし、2階に行くぞ・・・ん?どうした」

「「・・・・・・」」


大神が目を瞑って霊気探知して命令を下していく途中で、二人が訝しげな表情になっているのに気づく。


「しょ、少尉?あなた、この広い建物の中の気配が・・・分かりますの?」


すみれが恐る恐ると言った感じで聞いて来る。


「あ?んなもん霊気がどこにあるか、そしてそれがどこに流れて行っているのかを感じる
だけで分かんだろ、そんなもん」

「・・・はぁ~、少尉って本当にすげぇんだな・・・」


こともなげに解説する大神に、感心した声を出すカンナ。


「ほれ、いつまでもこんなところに居る必要は無ぇ。さっさと動くぞ」

「「ええ(おう)・・・」」


2階に上がる。だが、廊下の所々にも扉が存在し、大神達の行く手を阻む。
そして近くの扉を開こうとするが、カギがかかっているのか開けることができない。


「よっしゃ、こんな扉あたいがぶっ壊して「おバカ。偵察に来ているのに大きい音を立てたら意味がないでしょう」・・・ってそれもそうか。
少尉、どうすんだ?」

「・・・残留霊気はそこにある・・・か。ならば」

「少尉?」

「ふっ」シュッ・・・ヒュバッ・・・

「おっと」スッ・・・


すみれたちとは方向が違う扉に向けて集中していた大神は、その扉に向けて刀を閃かせる。
そして鞘に収め、手を扉に添える。


バラバラ・・・ゴトッ・・・


扉の下半分が2分割され、大神の手の方に倒れてくる。
それを音もさせずに受け止め、地面に置く。


「な、なぁ。すみれ・・・」
「何も言わないでくださる?わたくしも少尉の異常性に少々呆れているところですわ」

「失礼な。人を何だと思ってやがる」

「人外」

「ほ・・・ほぉ~・・・露出、てめぇ良い度胸してんじゃ・・・!ちっ、急ぐぞ!」

「しょ、少尉?」

「詳しいことは後だ、さっさと行くぞ!」

「「は、はい」」


急に顔色を変えて駆け出した大神。

斬り崩した扉を越え、そこから地下に直行している階段を降り、地下室へ出る。


『ギィッ!?』


すると、梯子を上ろうとしている脇侍の姿が目に入る。
急いで上がろうと蒸気をさかんに噴出す。


「けっ、いやがったな。この化け物!神崎!あいつに梯子を上がらせないように牽制しろ!」

「分かりましたわ!」

「桐島、お前はオレと奴の殲滅に当たる。挟み撃ちだ、右に回りこめ!」

「おうよ!」


梯子から少し離れたところにすみれが薙刀を構えて待ち構え、それに向けて速度を上げようとする脇侍。


「はあっ!!」


ズバァッ!

だが大神が脚部に斬りつけ、たたらを踏ませる。


「桐島ぁっ!!」
「おうよっ!!せぇぇぇいっ!!」

ドゴォッ!!

カンナの霊気を纏った拳を受け、部屋の隅に吹き飛ぶ脇侍。


「よし、神崎!オレ達と合流、オレと桐島が攻撃した後の止めをやれ!」

「分かりましたわ!」

「桐島、左右から行くぞ!」

「了解!」


「「はああああ!!!」」

ドゴォッ!ズバァッ!ドドド!ザシュッ!!

「少尉、カンナさん!おどきになって!『神崎風塵流・・・五月雨』!!」


カカカカカカッザシュゥッ!!!

すみれの霊力を込めた素早い6連突き、そして薙ぎ払い。


『グギャアッ!?』・・・ズゥゥゥゥウウン・・・


3人の息をつかせない連携・連続攻撃に、脇侍はたまらず地に倒れ伏した。





初めの戦闘と違い、大神は脇侍の戦闘不能を念入りに調べてから一息ついた。


「ふぅ・・・まぁこんなもんか。桐島、神崎。よくやった。初の生身での戦闘にしちゃあ上出来だ」

「ふっ、このくらい当然ですわ!」
「はっは、少尉に褒められるとちょいとくすぐってぇな」


さっきまで緊張の面持ちだった二人に笑顔が戻る。
大神は刀を納刀し、すみれは薙刀を畳む。
カンナは肩を回して戦闘後の力抜を行う。


「しっかしよう、少尉。あたい達の今回の成果って脇侍1体だけか?」

「いや。その梯子の先に妙な気配を感じる。この脇侍なんて目じゃねぇくらいのヤバい雰囲気持ってやがるぜ」

「な、何ですって!?少尉、何をされてますの!?早く地上に「落ち着け」・・・」


いきり立つすみれを手で制し、大神が答える。


「いいか?脇侍なんて目じゃねぇってさっきも言ったがそういう奴にどうやって生身で戦う?
さっきのはこの雑魚だったからいけたんだ。地上をウロウロしてやがる奴はこいつらを
束ねるくらいの力を持ってる。そしてこの奴らも何体か動いてやがる。・・・おかしいな、
何かを探してんのか?動きがあまりにも雑すぎる・・・周囲に目が行ってねぇっつうか・・・」

「少尉?」

「・・・いや、なんでもねぇ。それより劇場に何とか連絡をつけてぇ所だが・・・ん?」
『そこまでよ!!』


大神が何かを不審がった時、地上の方から凛とした声が上がる。
それを聞き、表情をニヤけさせる大神。


「って来やがったか。はっ、米田のおっさんも準備いいじゃねえか。よし、二人共。
これからタチバナ達と合流し地上にいる敵を殲滅する」

「了解!」
「っしゃあ!!」









【マリア】

二人が少尉と一緒に偵察に出掛けたと聞いた時、微かな不安を感じた。
あの時感じた、大神少尉の霊気。

あまりにも巨大な為、さくら達も気づいたみたいね。


「マリアさん!?今のはまさか・・・」
「マリア!?おにいちゃんが・・・おにいちゃんが・・・」


・・・ふぅ、まずは私が落ち着かないと。
それにしてもこれだけ取り乱しているのを見ると、皮肉にもこちらが落ち着いていくのが分かる。


「あなた達、少しは落ち着いて。今から米田司令のところに行ってくるわ。それまで
軽率な行動はしないこと。いいわね?」


コクコクと頷く二人を残し、私は支配人室へと急いだ。


「なんだ、マリアじゃねぇか。一体どうしたんだ?」


入室と同時に投げかけられたのは、司令のあまりにもゆっくりとした言葉だった。


「司令!先ほど強い霊気を感じました!何かご存知なのでは!?」

「あぁ、そいつぁ大神が無意識に放ったやつだ。あまり気にするな」


気にするな、と言われても!?


「マリア、お前ぇこいつが何か分かるか?」


司令が掲げたのは・・・霊刀?
さくらが持っている刀と同じ匂いがする。


「お前ぇが察したとおり、こいつぁ霊刀だ。ちょいと大神があの二人を一喝した時に
コイツを出しちまってな・・・まぁさっきのはその副産物だと思ってくれればいい」

「そ、そういう問題では!?この劇場からあの霊気が漏れたとなると敵から狙われる可能性が・・・」


そう、私が一番懸念しているのはこれ。
あの霊気を頼りに、敵がこちらの本拠地を知ってしまったらどうなるか。


「そいつぁ心配無ぇ。ここは只でさえ地脈が通っている中でひときわでかい所でな・・・
悪用されねぇ為に霊気を遮断する為の処置が施されているわけだ。地脈のバカでけぇ霊気が
漏れねぇんだから大神のが漏れるわけが無ぇ。納得したか?」

「・・・そういうことでしたら」

「分かったんなら自室に戻って戦闘待機しててくれ。帝国華撃団司令、米田一基が命じる。
帝国華撃団花組、第2級戦闘配置!」

「!!ッ了解!」





自室に戻り、待っていたさくらとアイリスに事情を説明する。
そして私達は地下にある格納庫へと向かった。

・・・驚いた。地下ではもう既にかすみさん達、風組が発進準備を整えている。

私達も負けてられないわね。


『よう、マリア。大神達の偵察先で何か動きがあったらすぐに出動してもらう。準備を
怠るな』

「了解!」


私は愛機の漆黒の光武に身をゆだねる。


「マリア機、霊子起動」
ブゥン・・・ブォン!!ブオン!!


よし、点検完了。全てにおいて異常なし。


『マリアさん、私も準備完了です!!』
『アイリスもだよ~!』

「了解、あなた達はあまり気負わずにゆっくりしておいて」


私は通信を切り、光武に搭載されている大型霊子銃の点検にかかる。


「残弾・・・OK、霊気の収束率・・・OK。これならいつでもいけるわ」

『マリア、例の場所で動きがあった。すぐに出動だ』


司令からの命令が来た!


「了解!帝国華撃団花組、出動!!」

『『了解!!』』


あそこでは少尉達が生身で待っている・・・
すぐに行きます、少尉!!

Side out









※※※
次回、引き続いて戦闘開始


奇妙な行動を見せる敵の群れ。
そしてそれを取り仕切る将級の存在。

『これがあたい達の・・・力だ!!』









あとがき:今回は、上、中の補強として書いたので少々短めです。
次話から戦闘が開始されます。
何かを探すような素振りを見せる脇侍。

まぁ皆さんにはお分かりかと思いますがw

手を加えるかどうかはインスピレーション次第、ですね^^


後、ネタ的なSSがもうすぐ完成します。
40000PV記念という事で更新しますので、もし宜しければご覧ください^^


※指摘に基づき修正(俊さん助かります^^)



[16303] 第6話・戦闘シーン
Name: く~が◆9b59c775 ID:93204d53
Date: 2010/04/10 23:15
【さくら】

「そこまでよ!!」
「「「帝国華撃団、参上!!」」」


着いた・・・けど、ここは・・・?
何か、明治初期から建てられ、そして此れほどまでに寂びれている洋館・・・

こんなところで脇侍達は何をやっているのかしら?


!庭の奥に妖気反応!!


「マリアさん!」

『ええ、こちらでも捕捉したわ。まずは邪魔な脇侍共を片付けるわよ!』

「はい!!」


ここからは余計な思考を持っていたら死んでもおかしくは無い。

ジャキン!!


光武に装備された私専用の刀を抜き放つ。

ん?洋館の端から人影が・・・
あ!大神さん達!!

良かった、無事だったのね。


正直、出撃命令が下る以前からとても心配していた。
敵が潜む建物内に潜入し、そして情報を集める。
すなわち偵察活動。

正直、私だったら上手くやりこなす自信が無い。
それはそうだ、何せそういう特殊な訓練を受けているわけでは無いのだから。

それはすみれさんやカンナさんにも言えること。
いくら武の腕に秀で、そして霊力が高いとは言え何かの手違いで命を落とすことになるのが敵地。

多分、米田司令がお二人に大神さんに着いていくよう指示したのは、敵地での仲違いがどれだけ
命取りになるかということを教える為・・・
そして大神さんに、私達がどれだけ『戦場』という場所を理解していないのかを分からせる為・・・

マリアさんの考えだけどこれが一番しっくりくる。


そして目の前には、大神さん達3人の無事な姿がある。


「大神さん!!」

『小娘か!?オレ達の光武はどこだ!』

「この洋館前に降ろしています!その警護を風組の皆さんが」

『分かった!いくぞ、神崎、桐島!』

『『了解!!』』


ふふ。大神さんのおかげですみれさんとカンナさんの連携も今までとは段違いに見える。

今や帝国華撃団の要であり、大黒柱でもある大神さん・・・
末永く、お願いしますね?


ってやだ、この言葉は場違いだったかしら・・・?

Side out









『少尉、よくぞご無事で!』

『おぉ、タチバナか。おめぇ達こそよくぞ時機を狙って来れたな』

『ありがとうございます、ですが少尉。この話は戦闘が終わった後で存分に』

『おう、頼むわ』


無事に光武へと搭乗を完了した大神、すみれ、カンナ。
3人が加わり、帝国華撃団の陣容が更に濃密になる。


前衛としてさくら、カンナ、すみれ。
後衛としてマリア、アイリス。

そして隙あらば横から食いつかんとばかりに気勢を上げる遊撃の大神。


「さぁ・・・こっからが本番だ。かかってきやがれ!!」










脇侍が光武に攻撃を仕掛ける。
そして、その後方からは大筒を搭載した敵機が長距離攻撃を浴びせる。


「くぅっ!?」

「マリアさん、敵にも長距離射撃ができる機体が!」

「えぇ、ひとまず前方に群がる脇侍をさくら達前衛が突破。『大筒』と呼称しましょうか、
あの敵機を撃破することを第1の目標とするわ!!」

「分かりました!」

「私たちの光武に傷をつけることのできる敵は今のところ居ないわ、援護は私達に任せて
あなた達は存分に打ち倒して頂戴」


マリアが隊員に命令を下していく。


「へっへ、こういうガチンコこそあたいの好きな戦いだぜ!」

「あーら、あまり自分の力を過信してますと足元を掬われますわよ?・・・はぁっ!!」
ザシュゥッ・・・!!


脇侍の1体に掴みかかろうとしていたところに、大筒からの砲弾が降る。
その弾丸を一刀のもと切り伏せるすみれ。


「ヒュウ・・・やるじゃねぇか、すみれ」

「ふふ、いつまでも同じと思ってもらっては困りますわね」


口では軽口を叩きあいながらも、臨戦態勢を強くする二人。
それに対してさくら達の戦意も上がる。


『お前ぇらいつまでくっちゃべってんだ!おらぁっ!』
ズバァッ!!ザシュザシュ・・・ズドン!!

洋館の屋上から姿を現した大神機が、後方に陣取る大筒の直上に降下。
その強靭な2刀をもって次々に斬りふせていく。


『神崎!!桐島!!お前ぇらは水と油。混ざることは無ぇ!だが・・・お互いの性質を
利用すれば強大な力となる!いつもの調子でかまわねぇ、とっとと殲滅してこい!』

「「少尉・・・」」

「もちろん、お二人の周りには私達もいます!怖いものは・・・ありません!!」
ザンッ!ドシュゥッ・・・

「あははっ!アイリス達はとっても強いんだよ?敵さん達なんて・・・え~~い!」
パパパパパ・・・ガツン!!パヒューン・・・

「ふふ、私と撃ち合いをしようとは・・・10年早い!!そこぉっ!!!」
ドンドンドンドン!!ババババババ!!


前と後の絶妙な連携。
解消された、優れた攻撃力を持つ二人の確執。
花組に最早、弱点は無いように思われた。


「「「「「帝国華撃団の名にかけて!!」」」」」

「てめぇら全員・・・ぶっ殺おおおぉす!!!」









良い調子で敵を殲滅していく花組。
脇侍を突破し、カンナとすみれが大神の元へ前進。大筒を撃破にかかる。

さくらは脇侍の元に残り、マリアとアイリスの援護を受けながら確実に仕留めていく。


残りも後わずかになろうかとした時、翔鯨丸の妖気センサーが警報を上げる。


『!?大神さん!マリアさん!敵の妖気反応が増大、そちらに現れます!!』

「ちっ、親玉のお出ましか」

「花組各員へ!敵の出現箇所へ包囲陣を敷く!少尉、カンナ、さくら、すみれで四方を固め、アイリスがすみれ機の後方、私がさくら機の後方に付く。いいわね?」

「「「「了解!」」」」

「了解だ・・・なかなかどうして、指揮が板についてきたじゃねぇか。タチバナ」

「・・・ありがとうございます。!!来るわよ!」


ドン!!!


「あいつぁ・・・まだ生きてたのか?いや・・・色が違う・・・妖気もあいつのとは全然
違う・・・どうなってやがる・・・?」

「少尉?」

「何でも無ぇ。それより余所見すんじゃねぇ、やられるぞ」


大神の低く警戒感を感じさせる声に、すみれは慌てて前に向き直る。


そして、その敵は言葉を発した。


『お前達が帝国華撃団か・・・?オレの兄貴をやっちまった奴はどいつだぁ!!??』


ゴウッ・・・!!


妖気が迸る。


「くっ・・・私達の中に、あなたみたいな機体に乗ってる奴を倒してる者はいないわ。
人違いよ。それに・・・」
ジャキッ!

マリアの砲身が敵の機体に向く。


「あなた達は帝都に仇為す存在・・・ここで仕留める!!」

『くっくっく・・・お前ら人間如き、オレに敵うと思ってんのかぁ!!
白銀の羅刹とこの銀角が・・・皆殺しにしてやる!!』









大神が2刀を振りかぶって攻撃する。それを受け、反撃しようとする羅刹に対し背後から
さくらが斬り付ける。
と同時に、カンナとすみれが呼吸を合わせて同時攻撃を発動。
銀角の脇が空き、そこにマリアが集中緻密射撃を浴びせる。


『くそったれ、うろちょろとしやがって・・・ガァッ!!!』


全方位に銀角からの衝撃波が飛ぶ。


「「「防御態勢!!」」」
「すみれを守って・・・お願いジャンポール!!」

キィン・・・


だが、防御力の高い大神、さくら、カンナの機体は防御体勢に入っていた為ほとんど傷らしい傷もついていない。

そして防御力の弱いすみれ機には、アイリスが後方から衝撃遮断膜を張り無傷状態のままだ。

そして。

「隙有り、よ。そこぉっ!!」
ドンドンドン!!

マリアが煙に紛れて集中砲火を浴びせる。


『ぐぅぅううううっ!!』


ズシン・・・

たまらず、銀角は地に膝を着く。


『クソォ・・・くそがぁぁぁぁぁあああ!!!!』


銀角から迸る妖気が更に上がる。
そして後ろに手を回したかと思えば、その手には鋼鉄で作られた板の周りを刃が高速回転する、大正時代にはあってはならない武器。

チェーンソーだ。

そしてそのチェーンソーに妖気を注入、攻撃力を更に上げる。


『グハハハハ・・・オレがまさか、こいつを使うことになるとは思わなかったぞ・・・
褒めてやる、帝国華撃団のクソ共.』


花組に対し、チェーンソーを振り回して威嚇する羅刹。


「な・・・何て妖気なの・・・」

「こいつ・・・また強くなりやがったぜ・・・」

「くっ、大神さん。このままじゃあ・・・」

「ちぃっ、ひとまず全員防御態勢!!敵の攻撃に備えて!」

『うおらぁあっ!!』

「!ジャンポール、お願い!!」


キィンッ・・・ピシ・・・ピシ


「!!バ、バリヤーが持たないよぉ!!」

『こんなんでオレの攻撃が止められるかぁっ!!』


ギュイィィィン!!!
ザシュゥッ!!ガシィッ!!ズバァッ!!



「「「「きゃああああああ!!!」」」」
「ぐぅっ!?」


アイリスのバリヤーを破られ、大神、さくら、すみれ、カンナ、そしてアイリスに攻撃が届く。



『クックック・・・お前が指揮官か?・・・死ね』


そして包囲を破り行動が自由になった銀角が残ったマリア機に迫る。


「くっ!!はぁっ!!!」ドンドンドン!!!


マリアも己を奮い立たせながら攻撃を仕掛けるが、


『今更そんな攻撃が効くかぁっ!!』


強い妖気に覆われた銀角に効くはずもなく、逆にチェーンソーを振りかぶられる。


「っ!!!」


マリアは死を覚悟し、目をつぶる。
さくら達4機も既に戦闘不能状態だ。援護は期待できない。
やられる・・・
やられる・・・・・・
殺られる・・・・・・・・・


ガキィィィン・・・!!!


「・・・?」


衝撃が無い。
生きている。

だが何故?


目を開ける。

そこには。



「・・・指揮官が諦めた時点でその陣営は負ける。お前ぇは指揮官失格だ・・・
だが・・・よくここまで踏ん張ったな」


白銀の光武。

先ほどの攻撃で一緒に吹き飛ばされたはずの大神機。


光武の全身から霊気を迸らせ。


『ぐぐぐ・・・な、何だと・・・?オレのこの状態の攻撃を・・・受け止めた、だと?』


霊気が通された2刀を交差させ。


マリアの機体の前で羅刹の攻撃を受け止めていた。









【大神】
まさか敵がここまでの力を持っていたとはな。

先だって倒した、蒼き刹那。
あいつの弟、か。

肉親を殺されたとあっちゃあ、あそこまでの激昂も分かるぜ。


こいつをここまで増大させたのはある意味オレの責任だ。

奴の攻撃のたった一撃で、既に4機は戦闘不能一歩手前。
それに加えてタチバナまでやられたらこいつらは帝国華撃団として、一生立ち直れないだろう。

遊撃、ってのはオレからの提案だがこういう現状を認識させられるとやはり、か。

けっ、オレが隊長なんて器じゃねぇことは重々承知。
だが、こいつらが独り立ちできるその時まで、オレが引っ張ってやる!



米田のおっさん・・・あんたの値踏みするその視線、今も感じてるぜ・・・
あまり使いたくねぇがあいにく、この場においては仕方無ぇ。
オレの力の一端、とくと目に焼き付けろ!!


「はぁっ!!」
ガキィン!!

2刀を払い、奴の武器を弾き飛ばす。今のオレの状態なら倒すことすらいとも簡単にできる。

だが、こいつらの成長の為にはこいつらが敵を倒さなくちゃ意味が無ぇ。

ならば。


「霊気拡散・・・僚機掌握・・・。分散密集・・・性質変化。
全ての霊気は不動の形!個々を守る盾となれ!!『山』発動!!」


こいつが爺ぃから受け継いだ奥の手の一つ。
自分自身から霊気を味方に分け与え、その霊気に指向性を持たせる。

今回の場合は防御力増大への指向された『山』。


「うぅ・・・」
「くっ・・・どうなってますの・・・?」
「おにいちゃんの霊気が・・・あったかい・・・」
「少尉・・・なのか?」
「これは・・・光武の出力が上がっている!?」


お、戦闘不能寸前だった4人も意識を戻したか。
蒸気霊力変換機関を活性化させたから多少なりとも回復したわけだ。
無傷のマリアも、光武の変化には気が付いたようだな。


「アイリス!!オレがコイツを抑えてる間に全機の回復を頼む!そして真宮寺!神崎!
桐島!タチバナ!お前らのへし折れた心を戻せるのはこいつを撃破したときだ!全力をもって倒せ!!」

「「「「了解!!!」」」」


さて、オレに出来るのはここまでだ。あいにく、オレの今の霊力じゃ現状維持が精一杯だ。
とても攻撃できるもんじゃねぇしな。


お前ぇ達の力、オレに見せてみろ!!

Side out









【米田】
・・・大神よぅ、こいつがお前ぇの本当の力なのか?
改めて尊敬するぜ、これほどの力を持っておきながら『陰』に向かわなかったその精神力によ・・・

こいつぁ人間が持つには過ぎた力だ。力に飲み込まれ、『陰』に堕ちる奴も少なく無ぇ。

一馬やさくらの『破邪』の力。
花組全員が持つ、霊気の力。

そして・・・大神の、言うなれば『守護』の力。


こいつらが出会ったのは偶然じゃなく、寧ろ必然だぜ。
今なら確信できる。

オレがあの時、駄目出しをして大神を江田島に置いてこようが関係無かったってことだ。


「司令!光武の霊気の出力が5割増、そして防御力が3割増の状態で安定しました」

「大神さんの機体は依然霊力放出を続けています。ですがこれ以上の行動は不可能かと思われます」

「大神さんの霊気、大神機を中心としてほぼ庭全域に拡散。同時に敵機の妖気が押さえ込まれています」


大神よ、此れほどまで分かりやすくしたってことは、オレ達のこと、ちったぁ認めてくれたってことだよな?
ならば・・・


「洋館全域に結界を張れ!翔鯨丸に積み込まれた結界用の即席柱を4隅に落とし、霊気情報を遮断する!」

「「「了解!」」」


オレもお前ぇを認め、全力で援護してやる!

Side out









『ぐ・・・が・・・?何だ、力が・・・出ない?』


呆然として呟く羅刹に、復活した花組が押し寄せる。


「私達一人一人では勝てない・・・でも、仲間がいる!」
ザンッ!!

さくらが先陣を切り、銀角の肩から腹にかけて斬りつける。

「そして守ってくださる殿方がいらっしゃる・・・それだけでわたくし達は強くなれる!」シュバッ!

すみれが対角線上から薙刀を足に払う。

「あたい達は知っている・・・信頼と絆こそが、最大の力だということを!」
ドコォッ!

カンナが上空から勢いをつけて下降し、頭部に拳を叩きつける。


『黙れ!!!お前ら人間如きが!このオレに!!敵うものかぁ~~!!!』
ドンッ!!!

銀角から再び放たれた全方位に向けた衝撃波。

だが。


「クカカカカカ・・・そんなんでオレの『山』は破れねぇぜ!」
キィン・・・

大神が衝撃波を弾き飛ばす。

「ねぇ・・・たたかいなんて・・・もう終わりにしようよ・・・楽に・・・なろ?」
ヒュゥ・・・ジピピピピ・・・

アイリスが念動力をもって銀角を宙に浮かべる。と同時に動きを奪う。

「羅刹・・・あなたには感謝する。お陰で私達は更に、強くなれた!」
ドン!ドン!ドン!

マリアが宙吊りになって動けない銀角に集中砲火を浴びせる。


『クソ・・・クソ!!オレが!兄者の仇も取れずに・・・!!グガアアアァァァァアア!!』


ドォォォオオオオオオン・・・


無防御状態で渾身の霊力を込めた攻撃を受け、銀角は跡形も無く爆散した。




「「「「「勝利のポーズ、決め!!」」」」」









「さて・・・と。今回の敵は私怨とはいえ潜在能力を超えた力を付けて来やがった。加山に頼んで
背後関係をもうちっと詳しく探ってもらわねぇとな・・・」


光武の中で一息吐きながらも、冷静に分析をする大神。

そこへ、


「少尉!あんたの力、すっげぇんだな!!」

「あ?桐島か。さっさと帰還すんぜ?いろいろとやらねぇといかんことが有りすぎだぜったく」

「あのぉ・・・その前によ?」

「あ?何だ?」

神妙に言葉をかけてくるカンナに嫌な予感がしながらも大神は尋ねる。


「あたいと少尉、本気でどっちが強いのか勝負してくれ!」

「はぁ!?何でまた、んなかったるいことすんだよ・・・って待てよ!?桐島、てめぇ。
オレのメシ食ってそのままだったな!?ぶっつぶしてやらぁ!」

「ちょ、大神さん!?カンナさんも止めて!?」

「邪魔だ、小娘ぇ!この戦闘狂には躾ってもんをだなぁ・・・!」

「やっと戦闘が終わったのに、何をしてるんです!?常識をわきまえなさい!!」

「あ!?吊り目、てめぇも躾けてやろうか!?」

「何ですって!?いいでしょう、相手になります!」

「へぅ、ま、マリアさんまで~・・・」

「少尉、わたくしは少尉のお味方ですわよ?」

「あ~!すみれってば抜け駆けだよ~!?」

「あ、アイリスったら・・・どこでそんな言葉を」

「・・・・・・!!」
「・・・・・・!!」
「・・・・・・!!」



翔鯨丸では。


「くっくっく、一度は全滅しかけたのを立て直しただけじゃなく、それぞれの精神まで
叩きなおすたぁ大神も役者じゃねぇか・・・ちょいと荒療治だが、あの手腕・・・
やはり隊長は大神がすべきだな」

「あら、司令はそう思われてます?」


あやめが意見をさしてくるのが面白いのか、米田はあやめに問いかける。


「ほう、ならばあやめはどう思ってんだ?」


その問いに、あやめは。


「簡単なことですわ・・・大神君が隊長であっても、隊長じゃなくても・・・大神君が
居る限り、花組は決して壊れることはない・・・そういうことです」


その答えに、米田は軽く頷きながらにこやかにその情景を眺める。



「そいつはな・・・あいつらがよく知ってんよ」









花組が磐石の態勢をとる中、再び混乱の渦に巻き込まれる。
何故か爆発する発明品、作成するは花やしきが誇るマッド。
知る人ぞ知る、帝劇においてのムードメーカー。

次回、サクラ大戦『戦闘は爆発やで~?』

大正桜に浪漫の嵐!!









あとがき:長い間空けてしまい本当にすみませんでした。
ようやく年度末が終わり、時間が取れるようになりました。
これからまた、続けて書いていきますのでよろしくお願いします。

今回の戦闘シーン、何故か最終回みたいなノリで書かれてますが、終わりではないのでそこはスルーの方向でw
今回の大神の特殊な技については、ゲームをされたことのある人ならバレバレの、例のコマンドです。不評もあるかと思いますが、その時は感想に書くなりして教えてください。
皆さんからのアドバイス、意見がSSの昇華のカギになります。


ネタ的なSSはどうやら不評だったみたいですね^^;
また、そろそろ50000PVに届きそうな感じなので本当にびっくりです^^
15禁ネタは出来上がってますので、もし希望があればキリ番記念として載せたいと思います。


それでは次回作をお楽しみにしてください。



[16303] 幕間(6,5話)
Name: く~が◆9b59c775 ID:bfaa28d4
Date: 2010/04/11 23:21
戦闘が終わり、無事に一人の犠牲も出すことなく帰還した帝国華撃団。

劇場にて、メンバーを待っていたのは演目『西遊記』の稽古だった。


主人公である孫悟空はカンナ。
好敵手である羅刹女はすみれ。


以前のギスギスした空気は何処へやら。

罵り合いの場面は変わることは無かったが、それでも相手に対する礼儀が感じられる。


雑用の休憩で客席から盗み見していた大神が見ていてもそう感じるのだから間違いはないだろう。


「へっ、どうやらオレの心配は杞憂に終わったようだな」

「ふふっ、そうね」

「!っうお、いつの間に「シッ」・・・」


背後から急に声をかけられた大神が驚いて振り向くが、あやめの笑顔で差し出す人差し指で声を出すのを阻まれた。


「お疲れ様、大神君。あなたのお陰で花組の結びつきは一層強くなったわ」

「・・・オレぁ何もしてねぇ。そういうのは本人達に言ってくれや」

「ふふっ」

「・・・チッ」


あやめの、『全て分かっている』と言わんばかりの笑顔に、大神は居心地悪く感じ舌打ちしてしまう。
それを見て、その笑みを更に深めるあやめ。


「それにしても驚いたわ。大神君がまさかあそこまでの力を持っているなんてね」

「・・・・・・」

「何も言ってくれないのね?」

「・・・オレにはあんたらの考えが分からねぇ。普通はああいう力の一端を見たならば尋問してくるのが普通だ。
なのにあんたら・・・酔っ払い中将を筆頭に、相当お人よしが揃ってるみてぇだな」

「それはあなたに対する信頼ととって欲しいわね。さくらやマリア達・・・あの子達も本当は聞きたいと思ってる。
でも、あの子達は力を持つ者の苦悩も知っている・・・出来るだけ、あなたの負担にならないように
考えているのよ」


稽古中の花組メンバーを、慈しむように眺めながら訥々と語る。
大神は、苦虫を噛み潰したような表情でこう言うしかなかった。


「狂ってやがる・・・」









演目お披露目当日。
帝国劇場には開演前から長蛇の列が並んでいた。

告知されたのは遡る事5日前。
劇場事務室には問い合わせの訪問が幾度とあり、更には3日前から徹夜で順番待ちをする者まで出てくる始末。

もちろん、こういう時の処理は全て、大神が担当することとなった。


「てめぇら・・・ここに居座って営業妨害しようたぁいい度胸じゃねぇか・・・あ?」

「うっせぇぞ、モギリ野郎の分際で!オレ達は客だぞ?」

「「そうだそうだ」」

「オレ達は演目開演から終演まで1日たりとも欠かしたことは無いんだ、邪魔しないでくれるかい?」

「おう、そうだ!最前列の席を取れなかったら、ふぁんとしてこれ以上の屈辱は無ぇ!」

「「そうだそうだ!モギリはすっこんでろ!」」

「くくくくくく・・・くそったれ共・・・」ジャキッ


客からの野次に反応してしまい大神が懐から出したるは、マリアの愛銃。
その形相は、遥か未来でマンガとなって出てくるであろう下町出身の某角刈り警官の表情と瓜二つ。
抜銃し、照準をつけると同時に撃鉄を起こすのに一秒足らず。


「おう・・・?10数える間だけ待ってやる・・・その間に消えろ・・・じゃなかったら・・・分かるな・・・あ?」

「「「ひぃっ」」」

「ひと~つ」

「ちょ、ちょぉ待って!!どく!どくから」

「ふた~つ」

「「「ひぃ~~っ!!?」」」


大神の尋常ならぬ雰囲気を感じた熱狂的ふぁん。
一目散に逃げ出す。

それを一瞥し、銃を懐にしまう大神。


「けっ、クソが・・・余計な手間増やしやがって」

「って何勝手に私の銃を持ち出してるんですか~!?」
スパ~~~ン!!

「ってぇ!?何しやが・・・吊り目?・・・ってやべぇ!」

「!待ちなさい!!まだ話は終わってませんよ?ってまた吊り目って言いましたね!?」


背後からスリッパで引っ叩かれ、背後へ振り返り大神が見たのは、憤怒の表情で睨みつけるマリアの姿。
大神の米神から、つつ~と汗が流れ落ちる。


「くっ、かくなるうえは・・・戦略的撤退!!」

「待ちなさ~~い!!」


マリアが右手に銃を象った形を作り、大神に人差し指を向ける。


『スネグーラチカ!!』ドウッ!!

「って馬鹿、んな公衆の面前でんな技だすんじゃねぇ~!!」

「問答無用!!」

「ぐおっ・・・っと」


劇場玄関で霊気弾を大神に向かって放つマリア。
だが、背面越しにその気配を察知し、スレスレで回避する。

幸か不幸か、そこはギリギリ劇場の敷地内でありそこから発生する霊気は、劇場を覆っている結界のお陰で
外部に漏れることは無い。
それを計算した上でマリアは大神に粛清の嵐を打ち続けた。


「そこそこそこぉ~~!!!」

「うりゃっ、とぉっ、くぅっ!?」


大神とマリアの追いかけっこは、様子を見に来たアイリスに二人揃って宙に磔にされるまで続いた。









そんなこんなで多少の混乱も見受けられたが、いざ開演となればモギリの大神の出番である。

いかに早くモギり客を通すかによって流れを悠長にするか。
これすらも、アイリスのお仕置き(?)によって仕事の鬼となった大神にはたやすいことであった。

残像が出来るくらいに手を動かし、一度に3つの入場券をモギるという早業に客はおろか、
風組の面々すら視認できないくらいであった。


「おら、モギられたんならさっさと入れ!今ので119人目か、そこのメガネのおっさんまで1階席で見れる。
そっから後は2階席に上がってくれ!」


手元を見ないでモギりながらも人数を掌握し、エントランスホールで仕分けをしている椿の支援も怠らない。
素早く客に指示を出し、ごった返さないように心がける。


「1幕はもう始まった!2幕開始は10時だ!それまで土産を買うなりして時間を潰してくれ!」


そして、第1幕の開始9時の鐘が鳴った時、まだ並んでいる客の第2幕までの時間つぶしの提案として
売店でお土産購入を薦める。
最早大神一人で5人分は動いている計算になる。


「お疲れ様です、大神さん」

「相変わらずすごいですねー・・・」

「ふふっ、はい、大神さん。お茶ですよ」


一息入れていた大神に、3人娘が声をかけて労う。
かすみはお茶を淹れてきて大神に渡す。


「あー、疲れた・・・ありがたく頂くわ。・・・ズズッ・・・っかぁ・・・うめぇ」

「はい、お手拭もどうぞ?」


椿から、冷たい水で湿らせた手ぬぐいが渡される。


「おぉ・・・って梅。お前売店の売り子だろうが。んな所で油売ってていいんか?」

「もぅ、大神さんへ労いのお世話したかったんですよ!?」

「あ?そうなんか?」

「あぅ・・・ハイ。それと私、椿です」

「・・・あんがとな?充分労われたからよ、自分の持ち場に戻んな?」

「・・・はい!!」


椿がこうも動くとは、大神にも理解できなかった。
そしてお約束とも言える呼び名の間違い。
それにより、椿の表情は沈むが最後の言葉で笑顔が戻り、我知らず大神はほっと息を吐く。


「それじゃあ私達も仕事がありますので戻りますね?第2幕の時もお願いします」

「頑張ってください、大神さん」

「あいよ」



椿が売店に戻り、そして由里とかすみも入場券の仕分けに戻って大神一人となる。


耳を澄ませてみれば、所々で聞こえる歓声、笑い声。


どうやら演目は無事に進行しているみたいだ。


「頑張れ・・・オレにはできねぇ、お前ぇ達だけができる事・・・邪魔する奴はオレが排除してやるからよ」

大神の、劇場を見つめる表情はいつしか穏やかに変わっていた。










稽古の時にもあった、カンナとすみれの息の合ったコントじみたアドリブ劇。
それに脇役であるさくらの天然が場を盛り上げ、マリアが男前な演技で沸かせる。
そしてアイリスが念動力を使った裏技で小道具を動かして抜群の演出を見せ。

最後には。


「はあっ!!」

「きえぇぇいっ!!」


カンッ!ガキィッ!ガンガンガン!!ヒュッ!シュバッ!!


劇としては過分の迫力を見せるカンナとすみれの殺陣。





最初から最後まで客を飽きさせない、それでいて魅了する演目『西遊記』。
開演から終演する3日後まで、劇場内は満員御礼の札を掲げる事となる。









次回、『戦闘は爆発やで~?』









あとがき:思わぬ伏兵(仕事)が残っており、それにかかりきりになってました^^;
あれだけ間を空けたのに、今回は少なめとなりました。本当にすいません。

ストーリーの流れがおかしかったり、こういう外伝が読みたいというリクエストがありましたら教えてください。
できるだけそれに応えていきたいと思います。

次回の更新は、早ければ明日。遅ければ火曜日になるかと思います。
引き続きご愛読していただければ幸いです。


※毎回誤字を指摘してくださる俊さん、本当に感謝です。ありがとうございます^^



[16303] 第7話・通常シーン(上)
Name: く~が◆9b59c775 ID:154999b9
Date: 2010/04/18 23:07
帝国劇場。

その玄関前には、嬉しそうな表情でとある物を磨いている大神の姿があった。


「くう~、やっぱこういうのは男として持っておかねぇとな・・・ついに手に入れたぜ!帝都佐藤輪業特製『じてんしゃ』だコラ~!」


そう、大神が磨いているのは自転車。帝国劇場に配属となって約2ヶ月。
その間に出た報酬の2割をつぎこんで購入したのであった。

大神の、そのうれしそうな表情を影から見て悶えているのが約2名。


「あぁ・・・大神君、いいわその表情・・・うっかりその自転車を壊した時の表情はどうなのかしら・・・はぁ」

「少尉・・・あんなに子供みたいに無邪気に笑ってらして・・・母性本能がうずきますわ~!」

「「むっ・・・」」


あやめとすみれである。

あやめは、大神の喜び→悲しみor怒りの表情を想像して悶え、
すみれは、その無邪気な笑顔が心臓にドストライクらしく、頬を染めてまるで母親のような心境に。

そして案外近くにいる自分と同じ性癖を持っているライバルに気づき、にらみ合う。
が、それも束の間。


「っしゃ、オレの物になったからには名前をつけねぇとな・・・んーと、こいつ確か『じてんしゃ』だったよな?
じてんしゃ・・・自点車・・・自らに点をつけるとなると・・・よし!!今日からこいつの名前は・・・

『犬神号』だ!!」


ズシャァ~ッ!!!×4


「ど、どうしてそんな名前になるんですか!?」
「しょ、少尉・・・あなたは少々ネーミングセンスがおかしい」
「ま、参ったぜ・・・まさかそうくるとはな・・・」
「う・・・アイリス、何も言えないよ、おにいちゃん・・・」


名前を聞いて非常に呼吸が合った状態でずっこけるその他4人。
口々に突っ込みを入れるが、


「ぞくぞく・・・あぁ・・・壊したい・・・壊して絶望に染まった顔を見てみたい・・・」

「まぁ・・・少尉ったら・・・うふっ、お茶目さんですこと・・・このわたくしが頭を撫でてさしあげますわ・・・」


独自の怖い雰囲気をかもし出している二人からすれば些細なこと。
大神の一挙一動を、瞬きもせずに見守る。


「うっし、そんじゃあひとっ走り行ってくるか!」

シャーーーーー!


大神が『犬神号』に乗り、スムーズに発進させる。
シャカシャカシャカシャカシャカ・・・


「ヒャッホオオオオオオゥゥゥゥ・・・!!」

「危ねぇな、前ちゃんと見て走れバカヤロウ!!」
「きゃあ!?」
「どわぁっ!?」


道往く人の迷惑も何のその、大神はひたすら自転車を漕ぎ続けた。









ドッドッドッドッドッ・・・

一台の蒸気単車が道を行く。
乗っているのはチャイナドレスに身を包んだ、女性特有の色気を醸し出す人物。


「あっちゃあ、あかんわ。引継ぎでこんなにかかってまうなんて・・・この李 紅蘭、一生モノの恥や」


帝国華撃団最後の一人、李 紅蘭。

元々花やしき支部でメカニックとして働いていたが、敵の活動が活発になるにつれ、光武の改造や戦力増強の要として
米田が異動させたのだった。


「それにしてもこの大神はんって人・・・一体どんな人なんやろうな?資料見る限りオモロイ人らしいけど」


紅蘭の視線は、前を向いているようでその実向いていない。
遥か彼方、まだ見ぬ大神へと移っているのだ。

確認しておくが、紅蘭は今移動中である。
それも、紅蘭自身が作り出した蒸気単車に乗って、である。

紅蘭が掲げる標語に、『爆発は芸術』という言葉があるように、作るメカには自爆装置をつけることは最早ジャスティス。
もちろん(?)、紅蘭が搭乗する予定の光武にも自爆装置はついているのである。


「ふんふんふ~ん♪」


鼻歌を口ずさみながら、紅蘭の蒸気単車は爆走する。
そして先ほど同様、前を向いているようで見ていない。


「どわぁああああああああああああ!!」

「ほへ?」


ズッ・・・・・・・ドオオオオオオオオオォォォォン・・・・・・


紅蘭の目に、前から爆走する自転車が映るはずもなかった。









傍から見れば、それは大事故であろう。
暴走蒸気単車と、爆走自転車が正面衝突。
それだけならばまだ良かったが、単車の方に仕組まれてあった自爆装置が作動し、木っ端微塵に吹き飛んだのである。


最早生き死にの問題になってくる。

さすがに、誰も声を出すことなく身を竦めるしか方法が無かった。


だが。


「てっめぇ・・・オレの犬神号に突っ込んできやがって!!どこに目ぇつけてんだコラ!!」

「それはこっちの台詞や!ウチが走っとったんは道路の中央、すなわち車道や!さっきのは、あんさんの方が悪いんやろ!?」

「んだとぉ?」

「何や、かよわい女性を脅すんか?」

「「ぬ~~!?」


なんと、大声で口喧嘩を始めたではないか。
外観も、所々煤けているが本人たちは極めて元気そうである。


「ったく、ホンマ今日は厄日やわ!引継ぎ遅れて遅刻確定やし事故るし変な男に因縁つけられるし」

「待てこら!?そいつぁオレが言いてぇよ!折角の下ろしたての犬神号・・・」

「・・・はぁ。ほなウチはこれで行かせてもらうで?只でさえ遅刻してんのや」

「・・・くそったれ、壊れちまったんは仕方無ぇか。また新しいの買うっきゃねぇな・・・あ、オレも戻らねぇと」

「「ん?お前(あんさん)もこっちなの(ん)か?」」

「「・・・・・・」」


そのまま無言になり、歩き出す二人。

それを遠巻きから見ていた人々から声を発する者は居なかった。









帝国劇場手前。


「なぁ、いつまで着いてくんねん?ウチの職場、もうすぐやで?」

「ほぉ、奇遇だな。オレももうちょいだぞ」

「「着いた着いた・・・ってげ!?」」


同じように右折し玄関に入ったのをお互いに見て、素っ頓狂な声を上げる二人。


「あら、ずいぶん遅かったですね、大神さん・・・あら?紅蘭じゃない。大神さん、紅蘭を連れてきてくれたんですね」

「「え?」」


由里から声をかけられ、ようやくお互いがお互いのことを知る。
紅蘭の顔は真っ青に、大神の顔には悪代官の邪笑が。


「あっちゃ~・・・」

「ほれ、何か言うことは?あ?」

「くっ・・・」


しばらくの逡巡の後、紅蘭が開き直ったように大神に着任報告をする。


「花やしき支部から異動してきました、李 紅蘭です!これからよろしくお願いします」

「帝国華撃団花組隊長代理、大神 一郎だ。米田中将の所に案内する。そこで報告をしてくれ」

「はいっ!」

「・・・後でゆっくり話し合おうか・・・特に犬神号についてよ・・・?ひっひっひっひ・・・」

「っ・・・!」









【紅蘭】
「本日付を以って、花やしき支部から本部付になりました、李 紅蘭です。これからよろしくお願いします」


はぁあ~、初っ端からツイとらんわ。

事故ったんはしゃあないけど、まさかぶつかった相手が同じ帝撃の隊長代理やなんて・・・
はぁ、ウチの蒸気単車もめちゃくちゃになってもうたし、隊長はんの自転車も弁償せなあかんか・・・

うぅ、出費が続くと痛いわ。


「くっくっく・・・大変だったな、紅蘭」

「・・・運が逃げてますわ。ほんまツイてない・・・あ、そうや」


米田はんが、いつものように話しかけてくれはる。
ついつい、ウチも愚痴っぽくなるのは勘弁やで。

っと、あかんあかん。

いつまでも私事を悔いてる場合やないで。


「頼まれていた通信機器、『キネマトロン』が最終整備を終えてこちらに持って来ました。
あとで全員に配布お願いします」

「お、ついに出来たか。これでより一層花組の連携に磨きをかけることができるってもんよ。
本当にお前ぇらには苦労かけたな」

「ええですよ、ウチら機械いじりが好きなだけですから」


うん、ウチは発明とか何か作ってるのが一番好きや。
せやから、こういう通信機器の発明・作成や光武の整備なんてウチからしたらご褒美のようなもんやで。


「紅蘭の着任を許可する。それじゃあ部屋に戻って荷解きでもしてくんな?もう荷物は届いているはずだからよ」

「分かりました」


最初からケチついたけど、気分を入れ替えて頑張りまっか。
荷解き終わったら光武を点検せなな。

Side out










「ほぅ・・・これがキネマトロンか。さすがは紅蘭ね、いい仕事するわ」

「そうですね、これさえあれば部屋にいてもお話できますね!」

「アイリス、ねる前におにいちゃんと話そうっと」

「はっは。だがよ、紅蘭のことだから自爆装置でもついてそうじゃねぇか?」

「「「「!!」」」」

「か、カンナさん・・・?皆さん考えないようにしているのですから穿り返すのは止めてくださる?」

「お、おぅ・・・悪りぃ・・・」


キネマトロンを受け取った花組の面々の感想は、自爆装置の有無を除けば概ね良かった。
さっそく周波数を登録し、試運転していく。


「わ、顔まで映る」

「ホントね!?すごいわ・・・」

「それにちっちゃいし軽いからアイリスにも持ち運びできそう」

「とんでもねぇモン作ったな・・・」


とまぁこのような感じ。

そして、件の大神一郎の部屋では。


「あ?き、ね、ま、と・・・だぁあああ!一々横文字の名前付けやがって!・・・っし、コイツの名前は・・・
携帯式通信装置・・・だから・・・えっと・・・あ~・・・くそ、けったいな名前だな・・・
ん?けったい・・・携帯・・・おぉ!!こいつの名前は『ケータイ』!!これっきゃねぇ!!」


まさかのまさか。
遥か未来で広く使われることになるであろう言葉を生み出していた。

大神のネーミングセンスは『多少』ずれているが、大正時代からすれば時代を先取りしすぎたようなもの。

恐らく。

きっと。


後に、隊長代理権限で呼び名を『ケータイ』にしたことで花組全員からブーイングが来ることになるのだが
それは些細な話。









【大神】
さてと。
これでようやく花組全員が揃ったわけだ。

だいぶ前から考えてあった陣形・戦術・戦略。
こいつらが役に立つ時がきた。

えっと・・・あ~・・・名前なんつったっけ。
り・・・こう?

あ~、面倒臭ぇ!『佐藤』で決まりだ!!

佐藤が入ってきたお陰で力でごり押しだけでなく、様々な戦争道具を使えるようになってくる。

例えば、だ。
光武が乗るだけで回復の波動を出す『回復君』。
敵が通ったのを察知し爆発する『自動爆破巻込君』。
敵地に潜入し、情報を上げる優れもの『追尾君』。

他にも色々と佐藤の発明品があるが、今のところ使えるのはこの3つだ。

ただ、戸惑ってしまうのは全てに自爆装置がついてるってことだ。


あいつ、帝劇に自爆装置とか仕掛けるつもりじゃ無ぇだろうな?
・・・要注意だぜ。


っと、話がずれたか。


回復君だけでもあれば今後の戦闘が楽になるのは間違い無ぇ。

だが、こいつの性能を知られてしまえばいの一番に壊されるのが予想されるわけだ。
こいつを囮にして・・・っていうのも戦術の一つだな。


佐藤の戦闘、見たこと無ぇが資料によれば中距離~長距離の援護ができる後衛型か。
これで薄かった後衛の陣容が厚くなる。
タチバナや幼女の負担もかなり無くなるはずだ。


だがな・・・

この前の戦闘でもオレが『力』を分けてやって、ようやく倒せる程度、か。
多分あいつら、光武を乗りこなせるようになるまでの訓練しかやって無ぇはずだ。

ったく、最大霊力はどいつもオレとどっこいどっこいくらいはある。
それが初期くらいの霊力で今まで戦っていたんじゃあ・・・そりゃああの程度の敵にも負けるはずだわな。

ま、頭数で押して勝てるうちはまだいい。
だが、あれ以上の敵がいないとも限らねぇ。

とりあえず訓練を施し、段階を超えたなら次々と試練を課す・・・
んでもって手に入れた力は普段抑えさせておけば、敵もこちらの戦力把握が出来ねぇ筈・・・



「あぁ~~~!!やっぱ隊長代理、面倒臭ぇえええ!!!」


いい加減頭が沸いちまうぜ!
ちっと冷やしに行くか。









あとがき:中途半端ですが前回と同様、区切らせていただきます。次から次へとアイディアが
浮かんでくるのは良いんですが、それを活用できる能力が無い・・・w

予告どおり、更新です。
来週は仕事がぎっちり詰まっており、更新は恐らく週末になるのではないかと思います。


感想掲示板、見させていただきました。好感触の方が多数いらっしゃったので、私としてもとても嬉しいです。
XXXの方は、あやめのSSはまだ未完成です^^;しばらくお待ちいただければw

これからも頑張っていきます^^



[16303] 第7話・通常シーン(中)
Name: く~が◆9b59c775 ID:5ebd24d1
Date: 2010/04/18 19:27
部屋から出てきた大神。

それを目ざとく見つけて声をかけてきたのはさくらだった。


「あ、大神さん!ちょうどいいところに」

「あ?何か用なんか、真宮寺」


首をバキバキいわせながら話す大神に、さくらは眉をひそめて問いかける。


「えっと・・・さっき紅蘭から相談されたんですよ。大神さんと何かあったとか何とかで。荷解き終わってから
すぐ私の所にきたみたいで、相当参ってますよ?紅蘭・・・」

「はぁ?オレが知るわけねーだろうがんなもん。まぁあれだ、腹減ってんだろ?メシ食わしとけば治る」

「それは大神さんとカンナさんだけです!」


どうやら、さくらも大神の性格の影響を受けているみたいだ。
言わなくても良いカンナのことまで口走る。


「・・・オレも大概言われるがお前ぇも大概だな・・・」

「へ?何のことですか?」

「・・・おまけに自覚なしときたか・・・厄介だ」


自分の発言は棚に上げ、さくらの豹変振りに頭を悩ます大神。


「もう、そんなのは置いといて!紅蘭と何かあったんですか?」

「・・・まぁあれだ。ヤツが加害者、オレ被害者。オレから言えんのはそれくらいだ」

「全然分かりませんよ!?」

「分かった分かった・・・そこまで言うんなら、あ~・・・その、りこうら・・・佐藤と話してみるわ」

「さ、佐藤!?それって紅蘭のことですか?」

「あぁうっせ。んで、佐藤はどこいやがんだ?」

「うぅ・・・無視された・・・んんっ、紅蘭なら格納庫に行くって言ってましたよ?」

「そうか」


短く返事し、格納庫へ続く階段へと踵を返す大神。


「大神さ~ん?佐藤じゃなくて紅蘭!後、くれぐれもケンカしないようにお願いしますね~?」


さくらの大声を張った忠告は最早、大神の耳に届いていなかった。









【紅蘭】
あぁ、ウチの愛しの光武達・・・
やっぱり光武の持つ独特の空気て言うんかな、これは何物にも代え難いわ。

さっきまでさくらはんの部屋で凹んでたけど、ここに来たら話は別やで。


うん、ちゃんとみんな丁寧に使うてくれてるみたいやな。
霊子機関部、動力部、そして収束機。
全てにおいて負担が制限内や。





・・・
・・・・・・
・・・・・・ん?ちょお待ってや?
今までみんな、数回の出動とは言えかなりの数の敵を屠ってきたはずや。
だとすれば、この光武のどこかしらに無理な負担がかかっているところが一つや二つあるはず・・・

これも・・・うん、これもや。


一番初めから戦闘に参加しとるはずのさくらはんとすみれはんの光武に至っても、寧ろ綺麗すぎるくらいや。
どうなっとるんや・・・?


・・・そういえば、ウチが花やしきに居る間に由里はん達から依頼が来てたな・・・
確か、隊長はんの光武の出力がどうとかこうとか・・・

あの時確か、何も不自然な部分は無かったんやからウチが本部異動で来た時に詳しく見るって話やったな・・・
最近忙しすぎて忘れとったわ。


よっしゃ、ちょお隊長はんの光武、調べてみよか。


まずは霊子機関部チェック、と・・・
うん、汎用の機能と全然変わらへんな。でも・・・霊気の通りが若干やけど良いみたいや。

えぇと、次はと・・・
動力部やな。
・・・ふむ、操縦席からの神経配線にも傷一つなし、負担も全然かかってない・・・
そして動力伝達の速さがやっぱり、コンマ数秒くらいは速くなってるみたいやな。

霊子収束部は、と・・・
これも異常無し。あくまで機械的に、ってことや。

でも・・・異常や。


戦闘記録を見てみてもさくらはん達以上に敵を殲滅し、尚且つ補助にも奔走しとるのに、異常なしというのは『異常』。



そしてウチが居らんかったのに性能の底上げなんて真似、出来るわけあらへん。
しかも隊長はんが乗ってる光武のみ、や・・・

何物なん?隊長はん・・・


ん?操縦席に何か見覚えがある物が・・・


!!こ、これは!?


「よう、んなところに居やがったか」

「た、隊長はん!?」


うわぁ、吃驚したわ。
隊長はんがいつのまにか光武の下まで来とった。


「何回言やあ分かるんだ?オレぁ隊長『代理』だ。隊長じゃねぇ」

「んなこと言われても・・・」

「んで?オレの光武で何調べてやがったんだ?」


あ、良い機会や。『コレ』の事を聞かな。


「隊長は・・・やなかった、大神はんと呼ばせてもらうで?ウチから聞きたいんやけど、『コレ』、どこで手に入れたん?」


ウチが持ってる物。
これは嘗て数年前にウチが出会い、むっちゃ感銘を受けた代物や。

『携帯型一○式蒸気爆弾』。

小型でありながら上々の威力を持つ、いわば爆発の芸術がつぎ込まれた至高の一品。


「あ?そいつぁオレが爺ぃからもらったやつだ。今となっちゃあ量産はできねぇが思い出深い一品でな・・・
そいつを身近に持っとくことで戦意を高めたりするんだ。後、生身の時に襲われたときの自衛用にもしてるがな」


爺ぃ・・・ってことは、大神はんのお爺さんなん?
あ・・・ウチ、ひょっとして大神はんの傷口広げたんちゃうか?


「あ・・・ご、ごめんなさい・・・ウチ、お爺さんの遺品とは知らんくて」

「あ?遺品??・・・勘違いしてんな・・・まぁ良いか。まぁアレだ、あんま気にすんな」

「えらいすいません」


大神はんが途中、ぼそぼそと何か言ってたけど聞き取れへんかったわ。
あぁ、これから自重せなな。


「にしても、お前ぇこれをどこで見たんだ?あまり世に出ていないはずなんだが」


大神はんが質問してくる。
まぁ当然やな。


「ウチ、2年前にある人に助けられたんよ。上海から日本に来る途中にいろいろあってな?」

「・・・」

「詳しくは言えへんけど、ウチが乗ってた船が海賊に襲われてな・・・もうダメか思うたけど、
その爆弾を持った人が海賊船を沈めてもうて、そして海賊達をしばき倒して・・・後ろ姿しか見えへんかったけど、
あの時の恩は忘れられへんのよ。いつか会ってお礼言いたいんやけど」

「・・・・・・」

「大神はん?」


どないしたんやろ?大神はんの顔色どんどん悪うなってきてるんやけど。


「あ?・・・あぁ、いや。何でもねぇぞ?それよりもだ、オレが教えたんだからお前ぇも教えろ。オレの光武、何かあったんか?」


強引な話の持っていきかたやけど、まぁ流されといたろ。


「向こうに居るときからずっと気になってたんや。大神はん、何者や?この光武の基本性能の底上げといい、
検出されない霊気といい・・・はっきり言って異常すぎるわ」


大神はん、ちょっと難しい表情したけど、ここは科学者として真相を追究せなな。

Side out









【大神】
くっくっく、花組はお人よしが揃ってるんかと思ってたがこれで安心できたぜ。
お人よしばっかりだと、何かあったときにすぐに精神的に潰れる。
この前の戦闘が良い証拠だ。こいつらは精神的に弱すぎる。

本来なら戦争やるのはオレ達軍人仕事。
軍人には夢想的思想なんて無ぇ。だからいつも最悪のことを想定して動ける。
現実は現実。これが全てだ。
今ある現実を変える為、そして守る為に精進していく。

だから・・・こうやって現実を見てその原因をとことん追究してくる気質・・・嫌いじゃねぇ。


だがよ・・・まさか2年前の海軍学校での初めての航海。
その時にオレ達海軍将校含む軍艦『穂波』が民間船を救出したときこいつが居たとは・・・

あのとき確か、オレは配食当番が鍋の中にゲロったのに切れてて鬱憤晴らしにこいつを使って海賊船を沈めたっけ。
あの時は教官共も指導がしつこくて精神的にむしゃくしゃしてたんで、悪い時期が重なったんだ。
んでそれだけじゃあ物足りなくなって海賊共を加山と一緒に半殺しにしてやったんだよな。

さすがにあの時、やりすぎだと艦長に呼び出されて指導された。
海軍的には何も無かった、ということにしてこの事は徹底的に緘口令が敷かれた。
そしてあの時を境に、教官共がオレにちょっかい出す頻度が激減した、と。

あ~、懐かしい・・・
って、こいつにも口止めしとくべきだよな?


「大神はん?ウチの質問に答えてくれるか?」


っと、昔を懐かしんでる場合じゃねぇ。
まずは・・・


「一つ確認しとく。お前ぇ、この間の洋館での戦闘記録、見てないんか?」

「戦闘があったということは聞いとる。あのときは引継ぎ始めたばっかりやったで、詳細は見てないんや」


ふむ、だとしたらオレが使った技も見てないっつーことか。
あれを見てたらさすがに、もっと違う、もっと掘り下げた質問が来たはずだ。

そういえばこいつ、オレ達の光武を整備する専門だと聞いた。
・・・こいつには話しておくべきか?


「ふむ・・・お前ぇを口の堅い科学者と信じて話す・・・聞いてもらうぜ」


あの時、米田のおっさんにも報告してなかったこと。
全てじゃねぇが、こいつにはそのへんも覚えてさせて光武を改造してもらう必要がある。

顔色が変わったな、話の重要性を認識している証拠だ。
良い感じだ。


「まずは・・・」

Side out









結局、大神と紅蘭が格納庫から出てきたのは二人が篭ってから2時間後のことだった。
上がってきた大神の表情は無表情。
そして紅蘭の表情は、若干であるが青ざめていた。

そのことに対して、さくらを筆頭に花組全員。そして最後にはあやめも出てきて問いただすのだが、紅蘭は「言えへん」の一点張り。


大神が話し、そして紅蘭が秘匿に徹した事は、全てが終わった時に判明することになる。









「なぁなぁ、大神はん?」

「あ?んだよ、今忙しいんだ」

「まぁそう言わんと。今から米田はんとあやめはんを入れて麻雀するんやけど、良かったら面子に入らへん?」

「な、何ぃ?麻雀だと!?・・・くっくっく・・・軍人舐めんなよ?船の中でどれだけ稼いできたと思ってやがる」

「ほぉ?大した自信やな。よっしゃ、決まりや」


そして格納庫での1件以来、大神を毛嫌いしていた紅蘭の態度が180度変わり数日経った今では娯楽に誘うまでになった。



それを見て、危機感(?)を募らせたのが他の花組隊員。


「むぅ・・・大神さんたら紅蘭とばっかり・・・」

「ふ・・・ふふふ・・・そう、少尉・・・そんなに賭け事がお好きなんですの・・・そう・・・」

「おにいちゃん・・・アイリスにも構ってよ~・・・」

「な、なぁマリア。こいつら、いつのまにこんな感じになりやがったんだ?」

「さくらとアイリスは最初から、すみれは会って少し経ってからよ」

「あれ?んじゃあマリアは?」

「吊り目と呼ばれる度に殺意が沸くわ」

「そ、そうか」


さくらとアイリスは焼餅を焼き、すみれは賭け事の言葉に反応して良からぬ妄想をしたのか、頬を赤くして両手で押さえている。
マリアは氷のような冷たい視線を大神の後姿に浴びせ、カンナは4人の変わりように若干引く。


「少尉・・・あんた本当に修羅場作るのが上手いよな・・・まぁあたいは見てて楽しいから良いけどよ」


そう呟くカンナの耳に、紅蘭の悲鳴が聞こえる。
どうやら勝負がついたみたいだ。


「しかも紅蘭より強ぇとは・・・すげぇよ」


かつて花組結成時、給料全てを持っていかれたカンナは改めて、大神に敬意を表するのであった。









あとがき:お久しぶりです、ようやく更新です^^
今回の話、何か閑話っぽくなっちゃいましたね^^;
まさかの紅蘭と大神のニアミス。大神はあの性格なので自分からは言い出さないでしょう。

今回の話で先に繋がる伏線を少しばかり張りました。多分皆さんの予想通りの結末になると思いますが^^;


感想、拝見させていただきました。初見の方から思いのほか良い評価を頂き、非常に嬉しく思います。
誤字報告をしてくださる俊さんにも、とても感謝です^^


また、リクエストにあったあやめの18禁SSですが、完成度は50%です。
並行して書いているので、たまにこちらのSSがシモネタになったりするのでその修正に追われているせいか、完成するのは来週末になるのではないかと・・・^^;
初めてのリクエストなので、頑張りますよ!!

それでは次回の更新にて。



[16303] 第7話・通常シーン(下)
Name: く~が◆9b59c775 ID:609a432d
Date: 2010/07/15 22:51
「加山・・・こいつは信用できる情報なんだな?」

「ふ、大神よう・・・それは愚問だ。オレが持ってくる情報に嘘偽りは無い」

「そうか・・・」

「「・・・・・・」」


大神の部屋。そこでは大神と加山が紙束を手に向かい合っていた。


「ぷっ」

「?」

「ぶわはははははははははは!!何だこれ、敵の組織の名前は黒之巣会!?本気でんな名前つけたんかよ!
ぎゃははははははぐえっへ、ごほっごほっ・・・んあ・・・はぁ。がはははははははは」


今回加山が仕入れてきた資料。それは敵の組織の詳細に関するものであった。
入念な調査をし、お庭番だけでは無く加山も参加して自らの足を使って情報を集めてきたのだ。

まず加山は米田の所に資料を持って行き、いくつかの問答を交わした後に大神の私室へと足を運んだ。
残された米田とあやめは、その後入室してきた男に度肝を抜かれたのだが。

加山は丁度新戦術や隊形を考えていた大神に、その資料を渡したのだ。


あとは上記の結果。

大神大爆笑。加山額に汗。


「お、大神ぃ?そこまで笑うことか?」

「あ?ぷっくくくくく・・・く、黒之巣って・・・頭沸いてんじゃねぇか?こいつら・・・ぷははははは・・・」


紙束を凄まじい速度で流し読みしながらも笑いが絶えない大神。
傍から見れば、きちんと内容が頭に入っているのかどうかも微妙である。


(花組から聞いた話じゃあ大神も相当珍妙な名前をつけてまわってるらしいが・・・
感性が違うだけなのか?)


加山は未だに体を震わせて笑いの余韻に浸る大神を見ながらも、大神のセンスについて熟考するのであった。









「はぁ、やっと落ち着いた・・・にしても加山、かなり掘り下げた所まで調べたんだな?
普通有り得ねぇぞ?組織幹部の名前、構成員の数、そして脇侍や大筒等の大まかな生産数・・・誰かが情報を横流ししたとしか思えねぇんだが」

「ほう、よく気づいたな。大神」

「はぁ!?」


今何と言った?とばかりに目を剥く大神。
それに対して加山は、「オレも予想外だったんだが」と前置きして話始める。


「今回潜入したところはな、まかり間違って敵の本拠地だったんだ。まぁその場所はお庭番たちが拠点の一つとして
考えていたところでな。そこにオレともう一人、お庭番の現お頭がもぐりこんだんだが・・・
敵も想定していなかったのかあまり警戒していなくてだな、奥にどんどん進めたんだ・・・まぁ罠の可能性も考えたがな。
進んでいく内に妙な妖気を感じてな・・・そこには恍惚とした表情で何かを組み上げているヤツを見つけたんだ。
・・・
・・・・・・






『ふふふ・・・美しい・・・これは光武に勝るとも劣らない出来だ・・・そう思わないか?そこの者達よ』

『『!!』』

『ふ、そこまで警戒せずとも良い。私は今、機嫌が良いのだ・・・この私の愛機がたった今完成したのだからな』

『加山・・・』
『お頭?』
『どう思う?』
『・・・今のままでは判断できませんね』
『オレの記憶に間違いなければ、だが・・・あいつは・・・』
『?』
『いや、なんでもない。できるならこの男から情報を得たいものだが』
『あまり期待できないですね』
『よし、オレが聞く。加山は記録してくれるか?もし決裂したら即離脱だ』
『了解』


『少し聞きたいのだが』

『ふ、先ほども言ったが私は今機嫌が良い・・・何だ?』

『その機体・・・オレも思ったのだが非常に機体美に優れているな・・・それを設計した者は天才だな』

『!おぉ、分かるか!!ふふふ、聞いて驚け!この機体は私が設計し組み上げた傑物!あの爺ぃの物よりも遥かに優れた機体なのだ!!』

『おぉ、分かるぞ!分かる!で、その爺ぃとは?』

『知れたこと。我が黒之巣会元締め、天海のことよ!』

『そうなのか!で、その美しい機体を作った貴方の名前は?』

『特別だ、教えてやろう。我が名は葵 叉丹!黒之巣会の蒸気兵器は全て私の作り出した物なり!!』

『ほぉ・・・聞きしに勝る天才だ。さぞかし、堕ちる前は優秀な科学者であっただろう』

『む・・・私が人間だった時・・・?・・・うむ、むぅ・・・すまんな、そこまではさすがに覚えていない』

『ふ、あなた程の人だ。さぞかし天海とやらの覚えも良いのだろう?』

『く、普通はそうなんだろうが・・・あの爺ぃ、この私を反魂の術?とやらで甦らせたたしくてな、命の恩人だが知らないが恩着せがましくことごとくこき使う!
この私が下人扱いされるのは甚だ遺憾だ!』

『ほう、やはり苦労しているのだな・・・上の者が愚かだと苦労するな』

『全くだ!おぉ、このようなところで私の苦労を分かってくれる者に出逢えるとはな!』

『ふ、オレも同感だ』

『ん?そういえばお前達は誰だ?ここに来られるのは相当上の者のはずだが』

『!加山』
『了解』

『む、一人出て行ったが・・・さて、お前に聞きたいことがある・・・』






・・・
・・・・・・
とまぁ、そこまでしかオレは現場にいなかったんでな・・・だがオレも驚いたぜ。まさか敵の組織の幹部が情報をくれたばかりでなく
オレ達が離脱するのを何の妨害もしなかったのだからな」


加山が離脱した後、お頭がどう交渉し、丸め込んだかは不明だが詳細な情報を持ち、そして五体満足な形でお頭は生還を果たした。


「・・・何なんだ一体・・・?」

「さぁな・・・オレにも分からん。おっと、司令から花組招集の命を受けているんでな、オレは行く。伝達して周らなきゃいけないからな・・・
大神、お前も落ち着いたら作戦室へ来てくれ」

呆けた大神を一瞥し、加山は花組を招集すべく花組隊員の部屋へと向かった。










作戦室。
そこには、悲痛なのかそれとも困惑なのか、どちらとも取れない花組の面々がいた。
まずは、とばかりにマリアが意見を具申する。


「よ、米田司令・・・この情報が確かなのであれば今からでもすぐに奇襲をかけることが可能になりますが・・・」

「あぁ、マリア。だがよ、こいつが罠だったらということを考えたら気安く行動できねえんだ」

「そりゃあそうだ。オレがこの情報を流した奴なら敵主力を本拠地に引き入れ、情報の数倍の戦力と地の利を以って殲滅。
そして同時に帝劇への侵攻。少なくてもこれだけはやるぜ」


大神の軍人モードに、久しぶりに見る花組メンバーもだが初めて見る紅蘭には少々衝撃的すぎた。


「あ・・・あかん・・・なんやむっちゃ良い男やん・・・(ぼそっ)」

「「!?」」


紅蘭の呟きが聞こえたアイリスとすみれが肩を震わすが、ここは作戦室。
余計なことをして大神を怒らせるわけには行かないと我慢する。


「大神の言うとおり。敵の大まかな規模、そしてその構成する主力の面子、機体の性能などはこれが最低限だと思っておけば良い。
だが問題は目的が何なのか、だ。これが分からねぇことにはすぐに攻め入るってのはできねぇ・・・」

「あいにく、オレ達のような霊気持ちの人間は限られてる。それに対して向こうは雑兵ならいくらでも生産可能・・・
やつらの行動を全て読み、潰し、万全な体勢でいかねぇと数で劣るこちらが圧倒的に不利だ」

「で、でもこれからどうしたら・・・」

「それだがよ。なぁ、米田のおっさん?あいつらが前から出現してきた場所を調べておきてぇんだが。ちったぁ手がかりみてぇなもんがあるかもしれねぇ」

「ふむ・・・だがお前さん達が行く必要は無ぇ。あやめくん、大型蒸気画面を出してくれ」

「はい」


ピコンッ


「良いか?今のところ出てきたのは上野公園、寛永寺、んでこの前の洋館だ。地図で表すと・・・こうなる」


米田が画面をスクロールさせていく。すると彼の地点が点で示され、そして線で繋がっていく。


「この3箇所は何かを囲うようにして点在しているのが分かる。だがもう少し敵の活動場所は分かれば特定もしやすくなるんだが・・・
そして大神の言ってることも分かる。だが、ここで紅蘭の発明品の出番というわけだ」

「ウチの発明品・・・もしかして『追尾君』のことです?」

「当りだ。あれがあればわざわざ貴重な戦力を削ってまで偵察する必要が無ぇからな?
大型蒸気画面に映像を送り続けてくれるたぁ良い仕事してるじゃねぇか」

「あ、ありがとうございます。何や照れるなぁ」

「それだけじゃねぇ。こいつを量産し、帝都中に放てば異変があった時いち早く映像で確認することができる・・・
まぁ犯罪に悪用されねぇように厳重な管理は必要だがな」

「はぁ・・・なるほど、これだったら私達もずっと動きやすくなりますね!」

「アイリス、よくわからないけど、とっても便利ってことだよね?」

「はっは、アイリス、それが分かってれば充分さ。あたいもよく分かんねえし」

「それはそれで問題ですわね、カンナさん?」

「うっせ」


説明を聞いた後、それぞれが口々に感想を言う。
かつて花組結成時、『こんなこともあろうかと!』という決め台詞と共に爆発を起こしていた紅蘭を懐かしく感じる。


パンパン!
米田が少し弛緩した空気を張り替える為に手を叩き命令を出す。


「よし、この情報が嘘か本当かはまた詳しく検証するとして、敵がいつ動いてもおかしくねぇ。しばらくは戦闘待機だ」

「「「「「了解!」」」」」


そのまま花組は待機室へ。そして大神は残った。


「ん?何だ大神。何かあるのか?」

「・・・あんたなら気づいてんじゃねぇのか?資料にもあった『天海』って名前だ。
こいつぁもしかしたら・・・」

「・・・ふむ。考えられるのは約300年前に徳川家に仕官していた天海僧正か」

「・・・オレにはその天海って奴が何してたのかは知らねぇ。だが・・・今の『帝都』の状況・・・
そして前に爺ぃが言ってやがった『過ぎた文明は・・・』
もし奴らが何かをおっぱじめようとしてるんなら嫌な予感がするぜ・・・」









『追尾君』をかなりの数仕立て上げ、帝都に散らせるまでにかかった時間は2日半だった。

この間、花組の面々が何もしなかったと言えばそうでもない。
大神がプライベートでも軍人モードとなり、ここ2週間は上演の予定の無い彼女らに特訓をさせていたのだ。


「いいかぁ!?始めに言っておく。お前ぇらの霊力潜在量はオレの霊力のそれと大した差は無ぇ!」


この言葉に、大神の力を目の当たりにしていない紅蘭以外の表情が驚愕に包まれる。


「何を呆けてやがる?特に幼女。お前ぇの霊力はこの中じゃあダントツだ」

「ア、アイリスが・・・?で、でもアイリス、じょうずに霊力を抑えきれないの」

「だから、それも含めた特訓をやるっつってんだろうが。他の奴らも良いか!?」

「「「「「は、はい!」」」」」


花組全員が元気よく返事をする。
早速、とばかりに大神が訓練室に備え付けられた黒板にスラスラと書いていく。

そこに書かれていたのは。


壱、座禅(無心)
弐、集中(執心)
参、顕現(決心)
肆、増幅(焼心)


ここまで書き終え、大神が座臥して聞いている5人に説明を始める。


「いいか、お前ぇらは確かに上質の、それも特大の霊力を持っている。
だが1項目にある『無心』が中途半端の状態で上辺だけ目覚めているだけに過ぎん。
霊力の増減の顕現は術者の精神の強さに比例する。
よって・・・」


壱、座禅(無心) 〆 
弐、集中(執心)
参、顕現(決心)
肆、増幅(焼心)


カツン、と印をつける。


「まずは基本である座禅をやってもらうか。それで己自身に巣食っている異質の存在を見つけろ。
そして語りかけて叩き起こしてやれ。
他の3つについては座禅訓練が一段落したら教える」


大神がここまでで一端説明を切る。


「あの・・・大神さん?一口に座禅、と言われてもイマイチ理解できないと言うか・・・」


さくらが恐る恐る質問する。


「おう、真宮寺の言うとおり、このまま気ままに座禅を組まれても成果が上がらねぇからな。
それにタチバナや幼女みたく、大日本帝国の文化に疎かったら分からねぇだろうし。
オレがまず手本を見せる。それでどうにかコツを掴め。
一応霊気に目覚めているお前ぇらならそれぞれに見合ったやり方が見えてくるはずだ」


そう言うと大神は、おもむろに床に座り、胡坐をかく。
そして手は印を組むことなく、あくまで自然体で目を閉じる。




シィーーーーーーーン・・・・・・・





大神の周囲から音が消えた。いや、それは適切な表現ではない。
その『空間』だけが異様なのだ。

そしてさくらたち霊気持ちだからこそ分かる。
大神の内面に、恐ろしく巨大な霊力が鬩ぎあっていることを。
そしてその影響により、周囲の空気すら変質してしまっていることを。

どれだけ時間が経ったのだろうか?時計を見てみても1分も経っていない。
まるで数十分経ったような感覚に陥る。
だが、この空間にいるだけで、己自身の何かが変わろうとしているのが分かる。


「「「「「・・・・・・」」」」」


さくらはこの雰囲気に、逆に懐かしみを抱いていた。どこかで、幼い頃に感じたことのあるこの優しいと思える気配に。

すみれは少々取り乱したが、大神の内面に向き合う好機は今しか無いと感じ、笑みを作っていた。その笑みはまさしく、母性からくる笑みだった。

マリアは驚いていた。戦闘中ならまだしも、普段の状態でアレだけの霊力を制御できている大神の精神力に。

カンナは感心していた。カンナの知る限り、この域まで到達した(している)のはカンナの父を除き大神しか知らないことを。そして自分が目指すべき目標であることを。

アイリスは欲情みたいな感情を持て余していた。他のメンバーとは一回り近く大きい霊力を持っているが為の共感。慕情から欲情へ、静かに変わっていくのを不快には思わなかった。

紅蘭は自分と向き合っていた。発明や物作りは楽しい。でも、自分自身を知ることはもっと楽しいのではないかと。自分の本当の力とは何なのか、と。



知らずの内に、5人が5人とも体勢を整えはじめ、息を潜めて座禅の体勢に持っていく。

そしてゆっくりと・・・心の中からあらゆる感情を・・・無くしていった。










【米田】
・・・くっ、何だあいつら!?妙に静かだと思って来てみれば・・・
この異様な気配。これはあいつらが作り出しているってのか!?


大神が座禅を始めたときから空気が変わった。普通、座禅と言えば心を空にし、そして己自身に問いを投げかけ、そして悟りを開いていくというもの。※

だが、あいつらは・・・


霊力に縁が無ぇオレにも分かるくらいに・・・己自身を、そして霊力というものを『理解』しようとしてやがる・・・
常人には無理だぜ。他人を知る以上に自身を知ることは難しいんだ・・・


確かに理はかなっていやがるぜ。
あれを完全に自分自身のものにしてしまえばあいつら、いや大神以外はとてつもない力に目覚めることになるだろう。

だがよ・・・大神。


あの年齢も若いあいつらに・・・お前ぇと同じように制御できると思えるのか・・・?


む、大神が目を開けた。


5人を見回して・・・立ち上がりこちらに向かって歩いてくる。


「おお「しっ!」・・・」


いけねぇ、おいらとしたことが声を上げちまうとこだったぜ。

静かに扉を閉め、大神を伴って隣のプールへと歩く。


「さて、ここなら良いだろう・・・大神よ、お前ぇの考えを聞かせてもらうぜ」

「あぁ、良いぜ」


大神もこちらが尋ねることを予想していたのか、案外すんなりと是の答えをくれやがった。

よっしゃ、なら問いただしてやろうじゃねぇか!

答え様によっては・・・この訓練、全部潰してやらぁ!

Side out









大神は、米田からの質問に次々と答えていった。

曰く、今の座禅の行は自分の力を知る為だということ。
曰く、この段階が終わった時点で5人の精神力は一皮も二皮もむけているであろうこと。
曰く、精神訓練は常日頃からやっていないと意味が無いこと。
曰く、もし暴走の憂い目に遭ったならば自分の力で抑えるのが可能であること。
曰く、最後に・・・全ての訓練が一通りモノにできれば、あとは個人訓練で伸ばすことが可能であり、その時はお役目御免ということ。


米田はそれを聞き、この訓練を正式に認めた。
そして大神を主動に、これらの訓練方法を資料にまとめ、後々の為に作成保存しておくべきではないかと主張した。

だが。


「そいつぁ多分無意味になるぜ?上辺とはいえ、霊力を扱えるってのは相当な低確率だ。むしろ、これだけ集まっているのが異常。何かに手配されたみたいに・・・」


この大神の言葉で、一応後年に作成はするものの秘中の秘ということで厳重に保管されることになる。




ビィ~~~~~・・・ビィ~~~~~・・・


突然警報が鳴り始める。作戦室はすぐ近くにあるので直接着替える大神と米田。


訓練室からはけたたましい悲鳴と着替えの衣擦れの音で充満する。


ダダダダダダダダダダダ・・・バタン!

作戦室の扉を開けると、そこには既に軍服へ身を包んだあやめの姿があった。









「それでは先ほどから入っている情報を伝達します。
10分前に追尾君ハ号が銀座にて脇侍の活動を確認。現在風組が詳細を探っています。
そして5分前に追尾君ト号が浅草にて妖気反応を察知。ここにはイ号、チ号を増援派遣し、別角度からの情報取得を行っています。
敵の反応があったのは今のところこの2箇所。敵の目的が何なのか分からない以上は迂闊に手は出せませんが展開次第ではすぐに急行できるよう翔鯨丸、轟来号も整備完了しております」

「ふむ、ありがとう、あやめくん」


あやめからの伝達を聞き、満足の表情で頷く米田。

一方大神は目を見開いてそれぞれの地点を凝視する。
それに気づいたのか、カンナが大神に声を投げかける。


「少尉?どうしたんだよ。何か怖い顔しちゃってさ。こう言うのも不謹慎だがよ、敵の場所は知れてるんだ、そこまで考え詰めなくても・・・」

「・・・あぁ、そうだな。気のせい・・・だと・・・良いがな」


苦い表情のまま呟く大神。
そこに決断をしたのか、米田が出撃命令をかける。


「このまま敵の思うままにしておくのも癪だ、脇侍が出た銀座に出動してもらうぜ。また破壊活動でもされたら事だからな。今回は未然に防げるはずだ。
浅草の方は敵の動きが出るまで様子見をしておく。何か異論はあるか?」


米田が花組を、そして大神を見る。


「「「「「「・・・・・・・」」」」」」

「ふむ、ならば決定だ。大神隊長代理、出撃命令を」


「・・・了解。帝国華撃団出撃。銀座の脇侍を一掃せよ!」

「「「「「了解!」」」」」



※※※
(オレの考えすぎ、なのか?だが本当だったとすると・・・!!)









次回、引き続いて戦闘開始









あとがき:皆様、お久しぶりです・・・。5月の連休から体調不良で入院し、悪化し、
6月に退院したと思えば職場での地位上昇の影響で忙しさが半端無い状態に・・・^^;
この話を書くのにまさか2ヶ月もかかるとは思いませんでした。

前文を推敲しないまま書き上げましたので矛盾点がいろいろ出てくるとは思いますが、
発見の都度修正していく予定です。
再度ご愛読いただけたら、と思います。


また、リクエストにあったあやめ様18禁SSなのですが・・・
あやめ×大神、あやめ×かえで、あやめ&大神&加山による敵地殲滅があります。
どれもが拙作だと実感していますが、果たして皆様の期待に応えられるかどうか・・・
悩みどころです。



最後に、先ほどもあったとおり、仕事の量が半端なく増えているので更新は亀速になると思いますが、これからもよろしくお願いします。




※座禅の考え方についてはとある宗派の理念を簡単に表現しております。



[16303] 第7話・戦闘シーン
Name: く~が◆9b59c775 ID:a1c0c31a
Date: 2010/09/29 21:11
銀座。
未来において大いなる発展を遂げ、日本有数の都市となる街。

そこへのっそりと現れた数体の脇侍。
手には妙な装置を持ち、あたりをきょろきょろしながらも進んでいく。


ズシン・・・ズシン・・・


現在は深夜の2時を過ぎた頃。そのため周辺には誰も存在していない。

そう、『人』ならば。


シューーーーン・・・ヴヴヴヴヴヴ・・・


小さい羽音で映像を送り続ける追尾君の存在があった。









「よし・・・敵はどうやら行動を開始した直後みてぇだな」


翔鯨丸に搭乗し、作戦室から映像を受信しているのは帝国華撃団・花組の面々。
降下可能地域の手前まで進んだ所で、大神へ紅蘭からの通信が入った。


『大神はん、大神はん』

「あ?佐藤じゃねぇか。何か問題でもあるんか?」

『・・・あ~、名前については戦闘後にじっくり追及したるわ。そうやなくてやな、あの脇侍が持っとる装置なんやけど』


シュンッ


紅蘭の指摘に倣い、映像が拡大される。
脇侍2体が1組となって装置1つを運び、それが5組。
そして。


『良く見てみるとやな、違う装置を持っとるんや・・・多い方のは分かるで?この前使っとった転送装置や。でももう1組が持っとる楔みたいなものは・・・』

「・・・あぁ。これは何か別の用途があるって考えたほうが良さそうだな」

『もしかしてあいつらの武器だったりしてな!』


カンナが珍しく口を挟む。その表情はいかにもその脇侍との戦いを望んでいるかのようだ。


「桐島、もしそうだったら迷い無くお前ぇをぶつけるから安心しろ」

『やりぃっ!!』

『あ~、カンナはんはそれで良いとしてや、もしそれ以外の用途やったら・・・』

「おう、先に潰す。只でさえこちらは向こうの目的が分かっていねぇんだ。事を起こされる前に潰すのが基本だわな。他の奴らも良いか?」

『はいっ』
『ま、わたくしの手にかかればぺぺぺのぺー!ですわ』
『アイリスもがんばる~』
『よっしゃあ!燃えてきたぜ~!』
『ウチの発明品のお披露目や!』


「・・?タチバナ、どうした」


一人だけ顔を曇らせたまま返事をしないマリアに、大神が通信を入れる。


『少尉。ずっと考えてきたのですが・・・このまま、帝国華撃団花組の隊長をやってもらえないでしょうか?』

「はあ?」

『もちろん、私としましても全力をもって少尉を補佐するつもりです。どうか・・・』


悩みに悩んで、そして結論を出したのであろう。マリアの表情からは影が無い。
だが。


「断る」

『『『『『『な!?』』』』』』


たった一言の拒否の返事に、全員から驚愕の言葉が漏れる。


「言っただろう?オレは隊長なんて柄じゃねぇ。確かに最初はお前ぇらが戦争に素人だって事で引き受けた。だがな」


ここで一区切り置いて、再び話し出す。

「普通戦場に1回でも行って生きて戻ってきたのであれば、そいつは戦場経験が無くて知識だけある新兵や将校よりも上だ。タチバナ、オレはお前ぇを推薦するのは前歴も含む、今までの戦い方、そして成長だ」

『少尉・・・』

「それにな、オレのような前衛特化には隊長は向いてねぇ。あくまでも後衛に座し、戦場を広く見渡せる視野を持つ者・・・それが小隊長、いや花組の隊長をやる条件だ」


大神は、特殊能力を除けばただ只管刀を振るうもしくは『●●●』のみ。それに対し、マリアは後衛から指揮及び援護射撃を行い、補助する役割に長けている。特性だけならば紅蘭やアイリスもその範疇に入るのだが、如何せん経験が浅く、そして幼年すぎる。

それを大神は指摘した。


「だが、今回に限りオレが指揮を執る。佐藤を含んだ6人での戦闘はまだやってねぇからな。タチバナ、お前ぇはじっくりと観察しろ。そしてオレが執った指揮で問題点を見つけるくらいのことはやって見せろ。今なら出来るはずだ」

『・・・分かりました。ではじっくりと観察させていただきます』


《銀座上空まで後二〇〇〇》


「・・・そろそろだ。各員降下及び戦闘準備!」

『『『『『『了解!!』』』』』』









銀座・一番街中央通り。その土地は古くから伝わる霊地として、広大な地域に稲荷神社が佇む異地。


ザシュッ・・・ザシュッ・・・

ブゥン・・・


脇侍が運んできた楔。それが今、地面に打ち込まれようとした。が、その時。


「うおりゃああああああ!!」

ザンッ!


『ギィッ!?』


月夜に映える、月光浴びて白銀に輝く機体。

光武。脇侍が持っていた楔を、腕ごと斬り飛ばす。


「よっしゃ、もらったぜ!」
「桐島、ソイツをぶっ壊せ!!」

「言われるまでもねぇぜ!!だりゃあああ!!」

ズガンッ!!


橙色の光武が拳を突き出し、楔に内部衝撃を与える。


ビィィイイイイン・・・ピシィッ


楔全体が震え、打撃部から薄っすらと罅が走る。
そこへ。


「ぶっそうなモンは・・・消し飛んでまえ!!」


バシュゥッ  ズッ・・・ドオォォォォン・・・


緑色の光武が放った1発の誘導弾。それが楔を木っ端微塵に消し飛ばした。


そして数秒遅れて


ザンッ ザンッ ザンッ ザンッ


桃色、紫色、黄色、そして漆黒の光武が降り立つ。


「「「「「「「帝国華撃団、参上!」」」」」」」









【マリア】
なるほど、戦場へ突入の際にはこういうやり方もある、ということなの。

大神少尉は、敵の戦力を分析し、そして一撃目の突入を最低限に絞った。
その編成も納得がいく。

最初に攻撃力に特に優れた少尉、カンナ、そして中距離援護射撃が出来る紅蘭を1組目。
そしていざと言う時の備え、もしくは弐撃目の突入・交戦班として私、さくら、すみれ、アイリスの2組目。
特にアイリスの治癒能力を考慮し、一撃に失敗したときの為の保険としての配慮も、切羽詰った状態ではなかなか頭が回らないものだ。

これは少尉の経験からなるもの、か。


やはり私としては、少尉が隊長に就くのが最善のように思う。だが、それは私が素人としての考えということなのだろうか。
私では、一瞬の判断が必要な場合に上手く指揮できる自信が未だに無い・・・そう、あのロシアでの苦い経験が壁となっているんだわ。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・ん?

おかしい・・・何か・・・違和感がある。

頭が・・・以前とは全然違う・・・閃く。
まるで、上空から戦場全体を見たような感じ。

これは・・・


『全ての霊気は沈静の助け!力を引き出す一助となれ!『林』発動!!』


しょ、少尉?まさかこの状態は少尉が!?

先の戦いの時に感じた、まるで守られているような感覚とは違う。
まるで・・・頭からつま先まで、寝ていたところを起こされたような・・・もどかしくも心地よい感覚。


『タチバナ!オレは能力の発動で動けねぇ。お前ぇはオレの側で戦場を見渡せ!んで良い時機を見計らって射撃援護だ!』


「りょ、了解!」


『真宮寺!敵は少数だ、佐藤と組んで左陣を撃破しろ!』

「了解!」「了解やで!ほな行くで?さくらはん」


『桐島!神崎!お前ぇらの阿吽の呼吸には雑魚共はついてこれねぇ!右陣を撃破だ!』

「了解ですわ~。カンナさん、足を引っ張らないでくださいね?」「へっ!言ってろ、お前ぇこそしくじるなよ!?」


『幼女!お前ぇは霊気を戦場全体に行き渡らせ、『山』の指向を訓練だ!僚機を把握し、それを包むような感覚でやってみろ!』

「う、うん!アイリス、やってみる」


お、驚いた。まさか実戦の中でアイリスの訓練まで思いつくとは。

あの座禅の訓練。あの時、一番少尉の霊力に感応していたのがアイリスだったわ。
それだけ自分の真の霊力に目覚め始めている証拠になる。
霊気の指向。それは段階的にはかなり上に位置していたはず。
それをさせたということは・・・


『タチバナ!ボーッとしてんじゃねぇ!転送装置が新たに設置された!狙撃できるか?』

「・・!っく、やります!」


大丈夫、今の私の感覚ならば普段以上の集中・狙撃ができるはず!


「そこぉっ!!!」ドゥンッ!!!ドゥンッ!!!ドゥンッ!!!


狙撃三連射。狙い外さず目標中央着弾。そして撃破。

よし、この状態ならば・・・!


「素晴らしい指揮です!少尉!!」

Side out









一方、今回出陣の紅蘭と言えば。

「あっはっはっはっは!見える、見えるでぇ~!」


バシュッ バシュッ バシュッ


さくらが斬り進む道を開けるため、只管誘導弾を連射していた。
目標は既に設置されてしまっていた転送装置なのだが、脇侍が次から次へと現れる為、脇侍に向けてのオーバーキルを繰り返していた。

そして、大神の『林』発動で後衛型特有の観察眼が強化され、そして体から湧き上がる霊気に酔いしれていた。
ここで紅蘭の弱点がさらけ出される。
先にも記述したが、紅蘭は初陣なのだ。よって、自分の立場がどんなに有利であろうが、次の瞬間には逆転されるかもしれないことを知らないのである。


「っ!紅蘭、後ろ!?」
「へっ!?」


『ギイッ!?』


最早動くことさえままならない状態の脇侍が立ち上がり、最後の力とばかりに錆刀を振りかぶっていたのだ。

マリアはその時、カンナとすみれの援護射撃に向いていて気づいていない。


「どわあっ!?」ザシュゥッ


脇侍の一閃は、紅蘭の光武の右肩についている誘導弾発射筒を斬り捨てていた。
『林』の効果で、瞬発力も少しながら上昇していたのが命拾いとなった。

ゴトッ・・・


それを見て、紅蘭の興奮していた感情が一気に冷却される。


「ウチ・・・何やっとるんや」


ゴスゥッ!!


再び動こうとしていた脇侍を、紅蘭の光武が拳で止めを刺す。


「きゃああああっ!?」

「!?さくらはん?」


呆然としていた紅蘭が後ろを振り返ると、間隙を縫って出現してきた脇侍10数体がさくらを攻撃しようとしていた。しかも前左右の三方から。


「はあああああ!!!」ザシュウッ!!ザシュッ
ドコォッ!ドカァッ!!

「けほっ・・・」

立て続けに右と前から来た脇侍2体を斬り伏せたさくらであったが、左の脇侍から蹴りを入れられ、そして続けて前から接近してきた脇侍に組み伏せられてしまう。

立て続けにハプニングが発生し、紅蘭の頭の中は真っ白となった。


「さ、さくらはん・・・」

『佐藤ぅっ!!!ボケっとしてんじゃねぇ!!』

「大神はん・・・」

『くっ、やはり『林』は早すぎたか!『林』解除!続けて『山』発動!』


僚機の気配を把握しているからこその指向変換。

いくら『林』と言えど、一回混乱してしまえば役に立たなくなる。あくまでも、平静さを上昇させ、混乱させにくくするだけなのだ。そこで防御力上昇の『山』に切り替える。


「幼女!佐藤を瞬間移動で回収、ここに連れて来い!」

「わ、分かった!!」


そして『山』の訓練をしていたアイリスに、紅蘭を救助するよう命令を出す。


『タチバナ!真宮寺の方へ向き直れ、奴の支援だけに徹しろ!』

『了解!』

『桐島、神崎!お前ぇらだけでそっちはいけるか!?』

『おお、余裕だぜ!』
『右に同じ、ですわ!』

『よし、ならば右陣は二人に任せる!』

『『了解!』』


シュンッ!

『おにいちゃん、紅蘭連れてきたよ?』

『よし、ならばお前ぇは引き続き『山』の発動訓練に移れ、そして時機が来たならば真宮寺機をこちらに移動させて回復する。準備しとけ!』

『りょうかいだよ、おにいちゃん!』


紅蘭を除くメンバーに命令を終えた大神。
そして未だに放心状態である紅蘭機に向きを変える。


『よう・・・どうだ、一人の慢心でひっくり返った戦況を見るのは』

『ウチは・・・ウチは・・・』

『まぁ、確かに戦闘経験の無ぇお前ぇを連れてきたのはこちらにも非はある。だがよ』

『・・・・・・』


まだ俯いている紅蘭に、大神の檄が飛ぶ。


『いつまで呆けてやがるんだ!!!ここは戦場だ、余ったれてんじゃねぇ!!!』
『っ!!!』


ビクリと体を揺らす紅蘭。モニター越しではあるが、かなりの衝撃を受けているようだ。


『いいか、オレ達・・・いや違う。お前ぇ達はこういう時の為に集められたはずだ!藤枝の年増から聞いてたんだろうが!そして今、お前ぇはどういう状況であろうと戦場に立った!それとも何か、お前ぇは遊びでここにいるのか!?』


今度は、睨みつけるように大神の顔を凝視する紅蘭。


『ちょっとは覇気が戻ったようだな・・・で、冷静に見てみろ。お前ぇの周りを』

『・・・・・・』


言われた通り、周りをモニターに映す。


『せいっ!!やあっ!!』

『さくら、あまり突っ込みすぎよ!一度後退して!!』

『くそったれ、何だか敵の数が増えてきてやがるぜ!?』

『あぁもう!!うっとおしいんですわ~~~~!!!ハァッ!!!』

『さくら、あと2かい攻撃もらっちゃったら連れていくよ?』


そして目の前の大神を見やる。すると。


『お、大神はん!?その汗・・・尋常やないで!?・・・はっ、まさか!?』

『こら佐藤。あんまくっちゃべんじゃねぇ・・・オレも軍人だ、これしきでどうにかなると思ってんのか』


大神の顔からはひっきりなしに汗が流れ、そして放出されている霊気にもわずかながらの揺らぎを感じるほどだ。明らかに異常状態が大神の身を蝕んでいるのだ。


『せ、せやかて』
『オレのことはいい。お前ぇがどうするか、だ。・・・いいか、お前ぇは命拾いした今、選択することが出来る。一つ・・・花組を抜け、後方支援に徹すること。二つ・・・この場で気を持ち直して戦闘を継続すること。どちらを選択するにせよ、誰も文句は言わねぇ・・・寧ろオレが言わせねぇ。・・・どうだ』

『・・・・・・』

『・・・じっくり考えろ。それで自分自身で答えを出せ。・・・ちっ、あと2つの転送装置を破壊できていねぇ、か・・・。しかも狙撃させようにも、装置の前に脇侍が重なって立ちふさがってやがる・・・『山』も解除してオレが出るべきか』
『大神はん』

『お?』


大神を真正面から見つめる紅蘭。その眼には脅えはあったが、迷いが無い。


『・・・結論が出たみてぇだな』

『もちろんや。ウチ、どうかしとったみたいや・・・冷静に、ウチの光武なら何ができるか・・・それを考えたら!!』


ジャコンッ!


紅蘭の光武の背中にあるパックが口を開く。


『こんなこともあろうかと!!一○式蒸気爆弾を元に発明したウチの芸術品のお披露目やで~~!!出でよ、重鎮爆弾~~~!!』

『げっ!?花組全員に告ぐ!!至急現在地から離脱だ!!急げ!!佐藤、離脱まで待て!!』


ドシュウッ!!!

紅蘭の光武から放たれた爆弾。光武の霊気を噴射剤として使用、推型の弾道を描き、遥か上空から脇侍が密集している中心地へと投下される。


『って馬鹿!!変な方向に立ち直ってどうすんだ佐藤~~~!!!』

『きゃ~~~!!!』
『みんな、アイリスの側に近寄って!テレポートするからぁ!』
『わ、分かったわ!』
『あ、あのバカ紅蘭・・・ここであの癖を出しやがって・・・!』
『少しでも油断していたわたくしがバカでしたわ~!!』


『テレポート!!!』


そして5機の光武が姿を消した直後・・・



ちゅど~~~~~~~~ん!!!!!


『くっ!?『山』最大開放!!』


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・


爆心地には何も無くなった。そう、何も・・・


『どや!ウチの発明品の威力は!』

ビシィッと光武の指を指し、爆心地に向けて啖呵を切る紅蘭。
だが、紅蘭の傍らでぼこっと盛り上がる土。煤けた白銀の光武が出てきた。
もちろん、大神である。

『さ、佐藤ぉ~~~~~・・・』

『ひぃっ!?大神はん?』


出現を確認するや否や、くるりと方向変換しダッシュを始める紅蘭機。

ガシャンガシャンガシャンガシャン・・・・

『こら逃げんじゃねぇ!!』

『ひぃ~~~、大神はん堪忍やでぇ~』

『誰が許すかボケぇ!しこたま拳骨と説教確定だコラぁ!』









『『・・・・・・』』

翔鯨丸では、米田が呆然とし、あやめが危険な笑みを浮かべていた。


「やれやれ・・・最後は何とかなったが・・・どうにも危なっかしいのは変わってねぇな、紅蘭のやつ・・・ってうおっ!?あ、あやめくん?」

「ふふふふふふ・・・大神君たら、あんな大きな声で私のことを愚弄するなんて・・・ヤキ入れて欲しいのかしら・・・ふふふ・・・あははははは」


「「「ヒイッ」」」


あやめの笑みを極力視界に入れないようにしながら翔鯨丸の操縦をする風組3人娘。
視線を合わせたら確実にしわ寄せが来る。それだけは勘弁だ。


「うふふふふふふ・・・」


あやめの低い笑い声は、大神と対面するまで続いた。









一方、紅蘭を捕まえて拳骨を一発落とす大神。

「あいたたたた・・・ひどいわ、大神はん・・・」

「ちっ、今日のところはこれくらいで勘弁してやらぁ。時間があればもうちょっと説教したかったが・・・だが敵が動いているのはここだけじゃねぇし、とにかく翔鯨丸に戻るぞ」


「「「「「「了解」」」」」」









「はぁ・・・ほんますいません・・・頭が上がらんわ~・・・」


翔鯨丸に回収され、ようやくの落ち着きを見せた紅蘭はようやく事の大変さに気がついた。それもそのはず、自分が『勢いで』打ち込んだ爆弾で仲間が死ぬかもしれなかったからだ。


「ま、まあまあ、結果的には敵を殲滅できてみんな帰還できたんですし・・・」

「さくらさん、あなた本当に甘いですこと!あんな威力の爆弾をわたくし達の頭上に落とされかけたのですよ!?」

「おぉ・・・思い出しただけで震えがくらぁ・・・」

「少尉はあれくらいで済ませてくれたけど・・・紅蘭、あなたがしたことは一歩間違えれば味方の命まで落としてしまうかもしれなかったのよ?」

「アイリス、こんないっぱいの人数でテレポートしたの、初めてだったから不安だったんだよ?」

「・・・ごめんなさい・・・」


口々に出る言葉に、紅蘭の頭が次第に下がっていく。


が、


パンパン

「よし、もうその辺でいいだろ・・・佐藤、次あんな真似しやがったら独房にでもぶちこむからな、そのつもりでいろ・・・いいな?」

「はい・・・」


ここで黙って聞いていた大神が打ち切るように手を叩き、紅蘭に釘を刺す。


「今は帝都上空を哨戒中だ・・・今のところ妖気反応は1箇所残ってるんだからな・・・今のを忘れて、とは言わねぇが気持ちを切り替えろ。いいか?」


「「「「「「了解」」」」」」


そこへ米田と、大神と顔を合わすなり般若の顔となり凍結の笑みをくれたあやめがやってきた。


「おぉ、ちょうどいいところに。これからお前ぇ達の所に行こうと思ってたんだ」

「何でわざわざ?呼んでくれればこっちから行くぜ?」

「ふふ、戦闘待機はもう解かれたわ・・・実はさっきの紅蘭の起こした爆発でね・・・?」


「爆発」という言葉で、ビクリとする紅蘭。
それを見ながら、あやめは言葉を続ける。


「妖気反応が急に不安定になり始めて次の瞬間には消えていたの・・・そして追尾君でしばらくの間哨戒させていたのだけど、異常なしという結論が出たわ」


あやめの言葉に、花組の表情が緩む。


「まぁ今回は紅蘭の暴走があったが、結果として2箇所の要所から妖気反応を消すことができた。浅草の方は油断はできねぇが、追尾君が居る限り先手を打たれることは無ぇだろ・・・お?どうした、紅蘭」


言葉の途中で、手を挙げてきた紅蘭に米田が促す。


「今回のことはホンマにウチの責任です。結果的にどうであれ、ウチのしたことは許されない行為や・・・せやから」

ここで紅蘭は言葉を切り、全員を見渡す。


「せやから、戦場に不慣れなウチを、これからみなさんでしごいてください。もちろん、光武の整備は最優先でやります。どうか・・・お願いします」


そう言って頭を下げる紅蘭。
どんなことを言われようが、許されるまで頭を上げるつもりは無い。
この決意で表情は引き締まっていた。


「佐藤」

「っ」

「しおらしいなんて珍しいじゃねぇか。とてもオレの犬神号を爆破したヤツとは思えねぇぞ?」

「なっ・・・それは話が別や・・・って・・・あ」


バッと頭を上げればそこには、先ほどまでの怒りの表情ではなく、みんなが微笑んでいた。


「これが花組全員の答えだ。・・・どうだ、文句あるか?」


呆ける紅蘭をさくらが抱きしめ。「紅蘭・・・もう無茶したらダメよ?」
すみれが頭を軽くはたき。「ま、あなたでしたらこのようなことも織り込み済みですわ」
カンナが肩をもみ。「爆発は芸術って紅蘭の口癖だったもんな~」
マリアが優しく見守り。「紅蘭、貴方は花組の大事な一員よ・・・諌めるのも仲間だわ」
アイリスが満面の笑みを見せる。「でも良かったね、紅蘭」


「あ・・・」

「分かったか?間違いは大なり小なり誰にでもあらぁ。ましてや初陣だったんだ。さっきは戦場だったから言い方が悪くなったが・・・頑張ったな」

「大神はん・・・」

「だが!お前ぇを鍛えなおすってのは賛成だ。劇場に着くまでの間、この前の続きをやれ!いいか?」

「「「「「「了解!!」」」」」」

「あ~、お前ぇら。ちょっと待てや」


戦闘後にも関わらず、元気に出て行こうとする6人。
それを米田が止める。


「さくら、お前ぇが言いだしっぺにしちゃあ考えが鈍ってんな?『アレ』、やってから行けや」

「あ・・・」


心得たとばかりに、さくらの表情がパァッと笑顔になる。


「それじゃあ紅蘭?音頭を取ってね?」

「ウ、ウチが?・・・ん~・・・ゴホン。それでは、いくで~?」


「「「「「「「「「勝利のポーズ、決めっ!!!」」」」」」」」」









※※※
「ゴホッ・・・ゴホッ・・・」









黒之巣会の活動が鳴りを潜め、帝都に束の間の平和が訪れる。
それぞれに与えられる休日。
ここぞとばかりに重なる思惑。そして・・・。

次回、サクラ大戦『帝都の休日』

大正桜に浪漫の嵐!!









あとがき:どうにも紅蘭が扱いにくい・・・戦闘の描写では尚更ですね^^;これも私の文才と発想が足りない為・・・これからも鋭意努力してまいります^^


前回に引き続き、またしてもかなりの時間が空いてしまいました。
仕事の方がハプニングが続き、それに対応していたらいつの間にか、という感じです^^;


妻しぼりでも紹介しましたとおり、交互に投稿していく予定ですので更に時間がかかる可能性があります。飽きずご愛読してもらえれば嬉しいです。


18禁SSは、あまりにもダメ出しが多かった為、編集するまでお蔵入りとなっている状態です。こちらも気長に待っていただければ^^;


これからもよろしくお願いします。



[16303] 幕間(7,5話)
Name: く~が◆9b59c775 ID:217c2d27
Date: 2010/11/06 21:47
思わぬ事態が起きながらも、無事に劇場に戻ってきた花組の面々。
それぞれが、思わぬ緊張の後のせいか口数も少なく、二言三言会話を交わしただけで寝室へと向かった。


極度に緊張し、それが一気にほぐれた場合どうなるか。
軍人である大神には分かっていた。
大神の脳裏に、帝国陸軍との合同総合演習をやったときのことが過る。


2度と戦場に立てないくらいに精神が堕ちた者。
人を傷つけることに全く躊躇が無くなった者。


それぞれが多様の症状だったが、ろくなものではないのは確かだった。


だからこそ、大神は命じた。

あの戦いの後、気を緩めることなく『精神』の修行である座禅をするように、と。
そうすることにより、自分自身へ問いかけ、精神状態の危険さを知ってもらい、徐々に落ち着かせるつもりだった。

上手い具合に、花組全員が即動してくれたお陰で大神が檄を発する必要も無かったわけだが。


(・・・ふぅ・・・あれがあいつらの精神成長の阻害にならなければいいんだがよ・・・チッ・・・やっぱこういうのは米田のおっさんか藤枝の年増にやらせるべきなんだよな)


サロンにあるソファーに深く座り込み、大神は米神を押さえながらも考える。


(くそったれ、『林』だけじゃなく『山』も使うことになったか・・・頭痛が治まらねぇ。あの爺ぃが言うには初期症状って話だが)


「少尉」

「っ・・・おお、タチバナじゃねぇか。何か用か?」


いつのまにかサロンへと足を踏み込ませていたマリアに、大神はソファーから立ち上がって尋ねる。


「はい、あの戦いの時の少尉の指揮についてですが」

「おう、そう言えばお前ぇに問題点を洗い出すように言ってたっけな。どうだ?お前ぇの指揮官としての目から見ての感想は?」


マリアの表情に、わずかながら翳りが見えるが構わずに話し出す。


「えぇ。私は今までの戦いの少尉の指揮手順を、それぞれ把握しようと司令に頼んで作戦室の映像資料を貸していただきました。そして先の全員が揃ったときの指揮手順・・・はっきり言いまして、少尉の指揮には問題点が多すぎでした」

「ほう?それで?」


なかなか興味深い、と感じた大神が先を促す。


「はい、特に最初の方の人数が少ない時の戦闘。攻撃に特化された味方ばかりで敵の情報もあまり知られていなかった時・・・隊長である少尉が先頭を切って戦闘するのは正気でありません。他の時でもほぼ、少尉は先頭で戦っていらっしゃいました。・・・ですが何が起きても良いように配置される人員、統率。最終的には誰かの脱落者も無く、・・・私には少尉が、それぞれの戦局を先読みしているとしか考えられないのです」


無言のまま、スッと眼を細くしてマリアを凝視する大神。
それによって、マリアは全部が、とは言わないが少なからず当たっていることを確信する。


「私には戦場を先読みし、それを念頭に陣形を決め、戦闘中においても変幻自在に変えることは難しいと考えます。ですので、少尉にはこれらを体得する為の方法を教えていただきたいのです」


ここでマリアは言葉を切り、大神を真っ直ぐ見つめる。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


「・・・タチバナなりに良く観察してんじゃねぇか。ちっと、いや、かなり見直したぜ」


そう言い、大神はサロンから自室へと歩を進める。


「少尉?どちらへ・・・」
「オレの部屋だ。ちっと待ってろ」


そのまま自室へ入っていく。

しばらくすると、大神は何やらを抱えてサロンへと戻ってきた。


「ほれ」

「少尉・・・?これは・・・」


大神から渡された資料の束に、マリアは目を見開いて尋ねる。


「前から作っていたんだがよ、隊長を申し送る時に必要かなと思ったことを書き連ねた資料だ。これにはそれぞれの隊員の特徴や隠し玉、そしてそれぞれを生かした戦術・陣形が書かれている。軍で言えばこいつぁ極秘に値するモンだからな、絶対ぇに無くすなよ?」

「しょ、少尉!?このような物を私に」

「勘違いすんな?オレはお前ぇだからこそコイツを預けんだ。もしさっきの質問で、やっぱりオレに任せようとか、自信が無いとか言うようならコイツを預けようとは思わなかったぜ。お前ぇは自分の力にするため、その方法をオレに聞いてきた。分からない時は聞く。そしてやってみる。それが成長する為の骨子なんだ。それが分かってるお前ぇだからこそ、だ」

「少尉・・・」


マリアが、感極まった声を上げる。
が、そこに注意が入る。


「だがな、これでお前ぇの負担は倍以上になるぜ?只でさえ霊力指向の修行まで行ってねぇんだからよ」

「いいえ、これこそが私の忌まわしき過去を洗い流す絶好の機会です。やってみせましょう」

「・・・いい返事だ。じゃあ確かに申し送ったぜ?タチバナ隊長」

「はい!」


マリアの返事に満足し、踵を返して部屋へと戻る大神。

その後姿を見送りながらも、マリアは先ほどの会話を反芻する。


「私が隊長・・・ん、頑張るわよ」


マリアも歩を進め、自室へと歩き出す。

その表情は、覇気で溢れていた。









【カンナ】

あたい・・・どうにかなっちまったのか?あの戦闘の時の迸るような霊気・・・今でもあたいの体の中で荒れ狂ってやがるぜ。

落ち着け・・・もう戦闘は終わったんだ・・・落ち着け・・・

少し力を入れるだけで・・・あたいの霊気が体からにじみ出てくる。



少尉は・・・どうやってたっけ・・・

ん、そうだ・・・確か。


霊気に逆らうんじゃなく、それを自分が制御するような・・・感じか?

あたいは・・・やっぱり肉弾戦が好きだからな、どうしても拳か足に集中させちまう。
これはこれで良いのか?

な、何だ?体中の霊気が・・・集中していく。
はっきりと見えるぜ、拳に集中しているのが。


こいつぁ・・・やばい。桐島流空手でも気合を篭めて殴る蹴るはやるもんだが、これはそれ以上に・・・出鱈目だ。

やばいやばい・・・落ち着け・・・落ち着け・・・


ここで力に溺れ切ったら最後、あたいは二度と空手家としてやっていけなくなる・・・

くっ・・・少尉・・・あんたぁコレをずっと抑えてやがるのか・・・?
脇侍を化け物扱いしてるがよ、本当の化け物はアンタだぜ、少尉。

普通の精神をしているヤツにゃあこいつは手に余るぜ。


ふぅ・・・ようやく落ち着いてきた。


まだだ、まだ時間はある。
それまでにこの、あたいの中に潜むじゃじゃ馬を飼いならしておかねぇと・・・




はぁ、いつからあたいってこんな考えるようになったんだろ・・・

side out









帝都劇場の屋上。西洋建築技法がふんだんに使われたその建物の屋根の上には、帝劇最年少のアイリスが膝を抱えて座っていた。

その腕には、友達のクマのジャンポールがしっかりと抱えられている。


そんな見るからに可愛らしい出で立ちのアイリスの表情もまた、明るいものではなかった。


初めて感じた、『死』の恐怖。
あの時は無我夢中で動いて九死に一生を得たわけだが、それは同時に、アイリスにあることを思い出させていた。


それは大神が遊撃隊員として動き始めて初めての戦闘。


あの時の大神は、敵の主戦力の機体に只一人戦いを挑み、光武もその身も傷だらけで帰ってきた。
その時大神の光武を、極秘で修理し他の花組隊員への秘匿を図ったのはアイリスであり、司令・副司令であり、大神であった。

あの時も、大神があと少しの所で死んでいたかもしれないという危機感を持たざるを得なかったが、その身に脅威を感じるほどではなかったのだ。
だが今回の戦闘ではっきりと認識し、普通の生活に戻りながらも心はどこか、その辺を彷徨っているような感じだ。
が、そんな目に遭いながらも、大神は次の日には他の隊員とけんか腰に話していたり、実に自然体で過ごしていた。
そのことがどうしても、アイリスには不可解だった。


自分と違い幾ら大人とは言え、命のやり取りを行っている戦場において、果たしてあれほど冷静でいられるだろうか?


「わかんないよぅ・・・どうすればいいの?ジャンポール・・・・?」


アイリスの呟きは、ただ静かにぬいぐるみだけが聞き取っていた。









「あら?お母様からの手紙・・・どうしたのでしょう?」


自室にて、普段と変わらぬ様子で母からの手紙を手に取るさくら。
生身で脇侍と相対したり、最初から戦闘をこなしているだけの経験が不屈の精神を作り上げていた。

小刀で便箋の端を切り落とし、中の手紙を読んでいく。
が、途中まで笑顔だったのだが、ある文面からその表情が蒼くなる。


「え゛・・・何故お母様が大神さんのことを・・・」



『拝啓  
仙台の緑も多くなり、夏への歩みは着々と進んでいるみたいです。帝都の方もそろそろ暑くなってきているのではないでしょうか?さくらさんも変わらずご健勝であることでしょう。
さて、前置きはこれくらいにしておきまして、まずは真宮寺総領でありますお婆様からの伝言です。
【手紙をくれるのは嬉しいが、たまには仙台に帰ってきなさい。私じきじきに剣の上達振りを見てあげましょう】

お婆様なりに、さくらさんのことをとても気にかけていらっしゃるみたいです。帝都にも何人か人を・・・(横線・斜め線が入り、そこからは読めない)

私からはまずは母親として、この言葉を送りたいと思います。
【あなたの意中の殿方は既に数多の女性から慕われている様子。うかうかしていると子孫断絶となりかねませんよ?】
そして女として、この言葉を。
【帝都には骨のある殿方は他にいますか?もしあなたの目に適うようでしたらその方を拉・・・(横線ry)もし帝都でオススメの甘味がありましたらお土産にお願いします】

敬具

追伸:彼・・・大神さんとおっしゃったかしら?胸枕からの鳩尾打突の連続技・・・見事でした。私でもあのような妙技を披露することはありませんでした。次に狙うのは関節技からの股間枕はいかがでしょう?

それではお元気で。

真宮寺 若菜』

「って下話じゃない!?」


いろいろと台無しな手紙を破りたい気分でいっぱいになったが、何とか抑え手紙を元の封に戻し、机の中に封印する。


「それにしてもお婆様ったら何を考えていらっしゃるの!?真宮寺一族の手の者が帝都に・・・あぁ、うかつにも全然気づかなかった・・・」


げんなりとしながらも、さくらはうつろな眼に力を入れなおす。


「これも全部大神さんのせいです!えぇ、そうと言ったらそうなんです!責任・・・ポッ」


うら若き乙女が妄想に入る・・・なんと平和なひと時であろうか。

真宮寺さくら。
周りがどういう雰囲気であろうと我を突き通す、大正桜どころか江戸桜と言ってもいいような精神の持ち主に成長していた。









あとがき:シリアスな展開になりがちになります。どうしてもリアルに考えていくと10~2※歳の女性にとっては仕方無いかと・・・^^;
今回の話で、無理矢理に明るい方向に持っていってますが、あまりにも批判がある場合は書き直しを考えていますので、意見や感想、ガンガン下さい^^

そして前回指摘を受けた場所、特に大神の将校時代の問題行動で首席は有り得ないんじゃないか、上官抗命罪なんじゃないのか、というところは前半は私としても迷いました。首席にするか、おちこぼれにするか。後々パリとかにも行く関係上、無理がありますが首席とさせていただきました。どうかIFの世界と思って勘弁を^^;
抗命罪については只の勉強不足です^^;後々、修正致します。

指摘、ありがとうございました。



[16303] 第8話・アイリスVer.【大幅加筆】
Name: く~が◆9b59c775 ID:217c2d27
Date: 2011/01/05 16:29
「ふむ・・・こっちは何も反応は無いな・・・かすみくん、そっちはどうだ?」

「はい、司令。現在帝都を巡回させています追尾君の監視網にそれらしい反応はありません」

「ふむ・・・」


現在作戦室にて大型蒸気画面の端末を操作しているのは、風組の藤井かすみ。
米田の命を受け、帝都を巡回する追尾君からの情報を洗い出しているのだ。
が、各地の追尾君から送られてくるのは人々の明るい表情に、活気に溢れる街。
先の戦いから3日が経つが、敵組織、黒之巣会が動き出す気配は無かった。

もちろん、油断はできない。水面下でどういう動きをしているか分からないからだ。
逆にこういう状況こそ、気味悪く感じるのは気のせいでは無いだろう。


「とはいえ、このまま戦闘待機が続けばあいつらも鬱憤が溜まるだろうしな・・・よっしゃ、ここは久しぶりに休暇をくれてやるとするか」


この米田の鶴の一言によって、帝国華撃団もとい、帝国歌劇団の休暇が決定したのである。









『帝国劇場休場のお知らせ』

「何だこりゃ?これって何か緊急事態でも起きたんか?それにしちゃ静かだよな」

「大神さんもそう思います?由里さんからこれを貼るよう言われて貼っていたんですが」


帝国劇場の入り口で大神とさくらが貼り紙をを貼りながらも話を進めていく。
何も言われずにこの作業を任され、腑に落ちない表情をしながらも、正面玄関、裏口、柵沿いにチラシを貼っていく。


そんな二人の下に、答えを知る人物が近づいていた。


「きゃはっ!さくらぁ~!!おにぃちゃ~ん!!」

「幼女?」「アイリス?」


異常に感情を昂ぶらせているアイリスに、大神がたずねる。


「何があったんだ?いつもよりも大袈裟に騒いでるじゃねぇか」

「二人ともまだ知らないのぉ?今日のお昼からね、みんなにお休みがもらえたんだって!」

「「へ!?」」


あまりにも唐突な休暇到来に、二人とも気の抜けた返事を返すしかなかった。









【さくら】
こ、これはもしかしてチャンスなのでは!?ほら、初めて会った時から今まで帝都を一緒に歩いたことなんて1回しかないのよ?
しかも上手い具合に大神さんが近くにいる・・・これはもう、私が誘っていいというご先祖様からのお告げに違いないわ!

う、ドキドキしてきた・・・落ち着くのよ、さくら。大神さんにはいろいろと私の初めてをあげちゃってるんだから責任を取ってもらうつもりで・・・いいえ、それはまださすがに早いわ。
自然を装って帝都観光でも・・・


「おにいちゃん、アイリスとデートしよ!?」

「はぁ!?」


ぶっ!ま、まさかアイリスに先を越されてしまうとは・・・!
これじゃあ私が誘ってもアイリスから取っちゃうようで何か大人げ無いし・・・

お、大神さんはどうするの!?


「でーと?って何だ?」


ずっ

くくく・・・いたたた、まさか盛大に尻餅つくくらい滑ってしまうとは。
大神さんのこと、侮っていたわ。


「デートって、こいびとがするお出かけのことだよ、おにいちゃん」

「ほう。お前ぇに恋人がいたとはな。まあこんなんでも劇場のすたぁ候補なんだからな、あまりハメ外すんじゃねぇぞ?」

「え・・・」


うわ・・・アイリス可哀想・・・まさか自分のことを言われているなんて露とも思っていないみたい。


「もう!アイリスはおにいちゃんとお出かけしたいの!」

「あ?だったら始めからそう言えや、ったく。オレで良ければ幼女のお出かけとやらに付き合ってやんからよ」

「やったーーー!!やっとおにいちゃんとお出かけできるんだね!?」


うぅ・・・すっごく悔しいけど、アイリスのあの満面の表情見てたら何も言えないじゃない・・・


「良かったわね、アイリス?たくさん楽しんでくるのよ?」

「うん!ありがとう、さくら!」


その笑顔、反則。

仕方ない、休暇は今日だけじゃないだろうし、まだチャンスはあるはず!



真宮寺さくら、絶対に大神さんと出かけて見せます!!

Side out









【アイリス】
やった、アイリスがずっとおねがいしてたおにいちゃんとのデート。
さくらにはわるいとは思ったけど、これくらいは年下にゆずってほしいな。

えへへ、おにいちゃんはアイリスのこと、子供だと思ってるけど、今はアイリスには『おくのて』があるんだよ?

霊力をせいぎょ?するくんれんで、アイリスはたぶん、みんなより上に行けたと思う。
今日のデートは、それを使っておにいちゃんをアイリスのとりこにしちゃうんだから。

前に衣裳部屋から借りてきた、おとな用の洋服。
これがアイリスのひみつへいき。

今の体は、アイリスの年れいの10歳の大きさだけど、今から『おくのて』を出すよ?


霊力かいほう。
霊気しこう。体を包むような感じで展開させる。
外の霊気と、内の霊気をまぜあわせてからだじゅうを『成長』させるの!

ん・・・んん・・・あ、これやっぱり気持ちいい・・・
体のおくがジンジンするの。
体ぜんぶを成長させてるから、女性としてのかんかくが出てきちゃうの・・・

11歳・・・
12歳・・・
13歳・・・
14歳・・・んん、体がぽかぽかしてくるよ・・・
15歳・・・
16歳・・・
17歳・・・もう少し・・・
18歳。

ここ!ここで霊気指向を止める。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


元の10歳の体とは比べ物にならないほどの容姿。
鏡を見てみると、これが成長した私の姿なんだって思えるわ。

成長させている時に洋服は全部脱いじゃって、今の私の姿は裸。
だからこそ、お兄ちゃんに迫れるかどうかが確認できる。

豊かな胸部。
くびれた腰。
西洋人ならではの引き締まったお尻。
髪はウェーブを描いて長い金髪が腰のところまで伸びている。
眼はサファイアみたいな透き通った青色。
・・・
・・・・・・ん、これなら!


早速大人用の衣装を身に纏う。
うん、ぴったり。
少し胸がきつい気がするけど、これくらいなら許容範囲内ね。



待っててね、お兄ちゃん?
成長したアイリスが、今行くからね。

Side out









部屋から出てきたアイリス(大人)。
上手い具合に廊下には誰もおらず、そのまま中央階段を下りて劇場入り口へと向かう。
その途中に、椿とすれ違うが、


「椿、ちょっと出かけてくるわね?」

「あ、はい。いってらっしゃ・・・え?誰?」


あまりにも普通に挨拶して出て行ったせいで、呆然としたまま見送る椿。
まんまと劇場を出たアイリス(大人)は軽い足取りで、大神との待ち合わせ場所まで行く。


「いた!お兄ちゃんだ。お兄ちゃ~~~ん!!」

「おぉ、幼女。随分遅かったじゃ・・・あ?・・・え~・・・っと・・・どちらさん?」


おそらく、帝劇で初めて大神がさらしたであろう呆然顔を、アイリスが見ることになった。









【大神】
「お兄ちゃ~~~ん!!!」

やっと来やがったか、こんなに待たせるたぁいい度胸してんじゃねえか、あ?
ここはちっと、年上としての威厳を見せねぇとな。
いつまでも幼女に甘く見られるのも癪だしな。


「おお、幼女。随分遅かったじゃ・・・あ?・・・え~・・・っと・・・どちらさん?」


予想外な出来事に、オレは呆然と聞き返すしかなかった。


「もう、分からないの?アイリスだよ?」
「て、てめぇみたいな幼女がいるかボケぇ~~!!!」


我を忘れて叫んだオレは悪くないはずだ。
うん、絶対そうだ。


「うぅ・・・ひっく・・・ひどいよ、お兄ちゃん・・・私、ここまで頑張ったのに・・・」


っておい、泣き出さなくても!
こいつ・・・やっぱ幼女なんか?


「ヒソヒソ・・・やぁね、あの男、あんなかわいい女の子を泣かせてるわよ?」
「本当ね?いくら好かれてるからと言って調子乗りすぎなんじゃない?」
「うっ・・・カワイイ・・・振られたならオレにもチャンスはあるかな」
「バッカ、お前じゃあ逆にまた泣かれるのがオチだよ」
「てめっ、そこまで言うか」


ぐっ・・・ここが天下の往来だってのを忘れてたぜ。
いつの間にかオレ達を囲んで老若男女がヒソヒソと話しあってやがる。


「ちっ、来い!」
「あっ・・・」


とりあえず幼女の手を握り、走ってその場を抜け出すしかオレには方法は無かった。









ふぅ、何とか周りの目が無い所に脱出できたか。
息を弾ませ、オレの手を握って肩を上下させてる、誰もが見ても美少女だと思える女性。
こいつが・・・あの幼女?


「幼女・・・ってここはこの言葉は適切じゃねぇな・・・アイリス?」
「っ!!お、お兄ちゃんが・・・アイリスの名前を・・・」

「バッカ。その姿で幼女も無いだろ・・・他ので呼んで欲しいか?」
「ううん!私、アイリスって呼んでほしいな」


くっ、あの幼女の純真無垢をこの姿でやられたら危ねぇ。
危うく拳を腹に撃ち込むところだったぜ。

改めて見てみると、今の幼・・・アイリスの姿は17,8歳くらいか?
何処から調達してきたかは知らねぇが、大人の服を着てやがる。
よく似合ってやがんな。

まあ元があの幼女だって知ってるから、手を出すことは有り得ねぇが放っておくと帝都のバカな男共に言い寄られるのは目に見えてるな。


しょうがねぇ、今日1日は付き合ってやるか。
ん?ちょっと待て!?
こいつだけは聞いておかねぇと!!


「アイリス、お前ぇのその姿、時間的な制限はあるのか?」

「ん~、前にこの姿になった時は1日くらいだったよ?朝から夜、そして次の日に起きたら元に戻ってたけど」

「・・・もうひとつ聞く。こいつぁ・・・霊気の指向を『成長』に特化させたからか?」

「分からない。感覚だけで指向をイメージしたから・・・」


・・・こいつもまた、天才ってヤツだな。
普通有り得ねぇぜ、指向を『攻撃』『防御』『素早さ』『潜在抽出』以外にできるなんてよ。
おそらく、幼年期から霊気を認知していること、そして大人になることの切望が天文学的な確率でこの能力を作り出したんだろう。

・・・以外と早く、こいつは訓練が終わりそうだな。


「ねぇ、お兄ちゃん?せっかく私達お出かけしに来たんだよ?時間がもったいないから早く行こ?」


こんな笑顔で誘われちゃあ断れねぇわな。
まぁ今日1日だけだ、楽しませてやるとしよう。

Side out









「っし、じゃあ先ずは出店で賑わっている浅草に行くとするか。アイリス、お前ぇには悪いがちと歩くことになるぜ。いいか?」

「うん、私の今の体力なら力使わなくても大丈夫だよ」

「そうか」


とは言え、帝都の中心部から浅草に行くには距離がある。
そこで蒸気バスという乗り物に乗って行くことにしたのだ。


「へぇ・・・これが『ばす』なのか・・・自点車よりも速くて安定性があり、尚且つ大人数でも移動可能・・・こいつぁすげぇモンが出てきたもんだな」

「轟雷号も良いんだけどね・・・あれは急停止した時の締め付けとかすっごく疲れるし」

「バッカ、あんなモン出動以外では絶対ぇに乗りたくねぇ代物だ。出かける度にあんな思いすんのはゴメンだぜ」

「あはは、お兄ちゃん初めての出動の後に米田のおじちゃんに文句言ってたもんね」

「・・・初体験であんな思いさせられたら誰でも文句いうぜ、普通」

「でもお兄ちゃんだけだよね?軍人さんで指揮官にあそこまで文句言えるの」

「ちっ」

「ねぇ、お出かけしてるんだし、もう少し違うお話しよ?」

「あ?おう・・・そうだ、お前ぇ髪飾りをつけて無ぇところ初めて見たけどよ、なかなか似合ってんじゃねぇか」

「え?ホント!?あはは、お世辞でも嬉しいな」

「お世辞なんて言葉誰が教えたんだ、ったく」

「え?由里だよ?大人は誰でも多少のお世辞は言うもんだって」

「あのアマ・・・きっちり指導してやる」

「でもお兄ちゃんの言うこと、本当だって分かってたよ?お兄ちゃんの言葉、本当にあったかいの・・・」

「あー・・・」

「あははっ、お兄ちゃん照れてる」

「照れてねぇよ!ホントに調子狂うぜ・・・」

「大人のアイリス作戦、今のところ大成功だね」

「・・・言っとくが今日だけだぞ?」

「うん♪」

「ホントに分かってんのか・・・はぁ」


なんてことはない普通の会話。
バスの中と言えど、その語らいは傍から見れば仲睦まじい恋人の甘い会話なのだ。
事実、二人の側にいた若い男性もげんなりとした表情を浮かべている。


『次は浅草~・・・次は浅草~・・・』


バスの運転手からのお知らせが備付の出音機からバスの中に響く。


「よし、降りるか」

「うん、楽しみだね」


二人の男女がバスから降りたのと同時に、多数の男性客からため息が漏れた。


「くっそ、やってらんねーぜ。オレ達を尻目にあんな可愛い外人さんと・・・」
「しかもあの男、お兄ちゃんとか呼ばれていやがった・・・恋人で妹属性・・・?何だあの完璧美女は!」
「あの外人の表情見たかよ・・・?あの満面の笑みで幸せそうにしてやがった・・・悔しいけどあの二人、お似合いの連れだよったく」


多少のやっかみはあるものの、大神達二人への評価はそれなりに高いものだった。

ちなみに、『妹萌』の精神はここから始まったと、現場を知る乗客の子孫は語り継いでいる・・・









浅草、『浅草寺』。
「わぁ、すごい数のお店だね!」

「おう、こいつぁ祭りでもやってやがんのか?この人ごみは計算外だったぜ」


大神が頭を掻きながら眉を顰めるのも無理は無い。
先だって戦闘があった爪あとなど何処にも無く、そこには大賑わいの出店、そして人々の笑顔があった。


「私達、この風景を守る為に戦ってるんだよね・・・」

「あぁ。少なくともそれだけは事実だな。お前ぇも誇っていい」

「うん・・・」


しんみりと眺めていた二人。
そこに。


「よう、そこの恋人さん達!良ければウチの店見ていかねぇか?」

「ん?ああ、射的か。久しぶりだな」


声をかけられたほうを見てみれば、そこには木製の空気銃、紙を丸めた弾が置かれている射的店の主人が手を振っていた。
そこに興味津々で近づくアイリス。


「えっと、これをどうするの?」

「お、外人さんは初めてかい?こいつはな、この銃に弾を込めて、あっちに並んでいる商品に中てて落とす。それが成功したらその商品はそいつのモンだ。な、簡単だろ?」


説明を受け、アイリスは銃を手に取る。


「ちょい待てアイリス、おっさん、いくらだ?」

「可愛い外人さんが初めてやるんだ、5回1組、タダで良いぜ!」

「ホント!?ありがとう、おじちゃん!」

「恩に着る」

「なぁに、お嬢ちゃんの笑顔を見れただけでも充分さ!さ、どれでも狙ってくれ」

「うん!よぉ~し・・・」


アイリスが、いつも見ているマリアのマネをして銃を構える。
もっとも、マリアの銃は拳銃型なので、今持っている小銃型小型サイズのとは勝手が違うが。


「ん~・・・えい!」

パシュッ
ビシッ

・・・ゴトッ


カランカラ~ン

「こいつぁすげぇ、大当たり~~!!」


なんと、アイリスが撃った弾は吸い込まれるように彫り物の中心に中り、後方へ落ちていく。


「へぇ・・・やるじゃねぇか、アイリス」

「えへへ・・・やった!」


満面の笑顔を見せるアイリス。

その騒ぎを聞きつけた周りの客が、射的屋を取り囲むようにして集まり始めた。


「なんだ、何の騒ぎだ?」
「きゃ~、あの子外人さん?すっごく可愛い!」
「お、あの子が射的に挑戦してるのか?こいつぁ江戸っ子として見物しねぇとな!」
「江戸っ子関係無ぇし」
「しっ、ほら、また撃つよ」


パシュッ
ビシッ

グラグラ・・・ピタッ


「「「「「「「「「「あぁあ~~~~~~・・・」」」」」」」」」」


惜しいことに、アイリスが撃った2発目は巾着袋に中るも、落とすことは叶わなかった。
周りから一斉にため息が漏れる。


「ひゃっ!?な、何事なの、お兄ちゃん?」

「気にすんな。お前ぇの射的が珍しくて見物してるだけだ」

「うぅ・・・」

「ほれほれ、そんなんじゃあ帝劇のすたぁになれねぇぞ?(ボソッ)」

「っ!!」


結局、アイリスが落としたのは5発中2発。
初めてにしては上出来の成果を挙げ、アイリスはほくほく顔で屋台から離れた。


「あの子、すっごく楽しそうだったわね・・・私もやるわ、おじさん!」
「あいよ、毎度!!」
「あ、オレもオレも!!」
「けっ、ぽっと出も素人が、オレの腕を見せてやるぜ!」


その射的屋は、終日客が途切れることは無かったという。




まだまだ出店は沢山ある。
小腹がすいたと感じ、大神はアイリスを連れて冷凍菓子を売っている出店へとやってきた。


「おっさん、冷凍菓子2つ・・・っと、アイリス、食いきれるか?腹の容量はやっぱ増えてんのか?」

「お兄ちゃん・・・乙女に向かってその言葉は配慮に欠けてると思うんだけど?」

「はっは、何を今更」

「・・・むぅ」


口を尖らせるアイリスの頭を、ぽんぽんと撫でる。
その行為に、かぁっと顔を真っ赤にさせるアイリス。


「ほれ、そんなにむくれんな」

「うぅ・・・」


「あいよ、お待ちどう。そこの外人さん、兄さんの連れかい?別嬪さんだねぇ」

「お出かけの付き添いだ、他意は無ぇ・・・ほれ、アイリス」

「・・・ありがと」


境内近くの石段に座り、冷凍菓子を齧る二人。
それを見て、微笑ましそうに見て行く通行人。

どうやら、どこに行っても注目の的だ。


元々、そういうことを気にしない大神。
そして大神への思いで胸を一杯にしているアイリス。

そんな二人に、恥ずかしさなど微塵も無く、只傍にいる。
それは二人だけの空間。


しばし無言だった二人だが、食べ終わると同時に立ち上がる。


「行こ、お兄ちゃん。まだまだ楽しまないとね?」

「分かった、今日はとことん楽しもうぜ、アイリス」


二人は手を取り合うと、再び出店と人が犇めく、祭りの中心部へと入っていった。










帝都の観光地を、黒髪と金髪のカップルが行く。
その姿は異様に似合っていて、男女問わずその姿を二度見するほどだった。

時が経つにつれ、アイリスと大神の繋がれていた手は、いつしか腕を組むまでになり、それを不自然とは二人とも思わなかった。

大神は、敢えて意識していなかったが、それがアイリスにとって嬉しかった。
何しろ、完全に姿が変わったとはいえ、大神がアイリスをアイリスとして扱ってくれる。

アイスを買う時も、
「おう、冷凍菓子があんぞ?食うか?って食いきれるか?腹の容量はやっぱ増えてんのか?」

と、乙女にとって台無しの台詞すら、大神の日常の会話。
口を尖らせて文句を言っても、心の中では普段どおり接してくれる大神への思いでいっぱいだった。
普段の大神とのふれあいがどれだけ大事か。
この姿になり、大神と接してようやく理解できた気がする。


(私はまだ、10歳の子供なんだね・・・)


何しろ、この姿では気軽に大神の背中にしがみついたり抱きついたりできないのだ。
それをガマンするよりは、元の姿で文句を言われながらもじゃれあった方が合っているような気がする。

でも。


(アイリス、と名前で呼ばれなくなるのは・・・ちょっと残念かも)









楽しい時間はあっという間に過ぎる。
それはアイリスにとっても、そして最初は乗り気じゃなかった大神にとっても同じだった。


「夕焼け・・・今日はもう、終わっちゃったね・・・」

「おう、劇場には晩飯までには帰ってくるように言われてるからな」


最後に寄った公園で、切り株に座りながら二人でポツリ、ポツリと話す。


「楽しかった・・・今日は今まで生きてきた中で一番幸せだった気がする・・・これも、お兄ちゃんのお陰・・・ありがとう、お兄ちゃん」

「へっ、その姿になっても素直さや純真さは全く消えてねぇじゃねぇか。こっちこそ、楽しかったぜ?アイリス」

「うん・・・」

「・・・・・・」


しばらくぼーっと夕日を眺める。
まだ夏にはなっていないが、初夏の気持ちいい風が二人の頬をくすぐる。


「・・・帰ろっか?お兄ちゃん」

「・・・そう、だな」

「・・・?変なお兄ちゃん」


言葉を詰まらせた大神に、アイリスは不思議そうな視線を向けるが、大神は夕日を向いたまま動かない。


「ほら、お兄ちゃん。劇場に帰るまでがデートでしょ?」

「あぁ、そうだな・・・ってでーと?オレと?」

「え・・・お兄ちゃん、気づいてなかったの?」


あまりにもの朴念仁ぶりに、アイリスが深いため息を吐く。


「もう・・・まあそんなお兄ちゃんだからこそ、みんなが好きなお兄ちゃんなんだよね」

「あ?何か言ったか?」

「んーん、何でもないよ」

「チッ」


舌打ちしながら、大神がようやく立ち上がる。
その腕に、アイリスがその腕を絡ませる。


「行こ?」

「おう」


二人立って歩き出す。
そこには、確かに二人の深い絆が感じられた。









「ホントですってばぁ~、綺麗な外国の人が階段を下りてきたんですよぉ~」

「何か信じられねぇな、椿が見たのはほんとに人間だったのか?」

「え・・・カンナさん、どういう意味ですか・・・?」

「ひょっとして・・・幽霊だったりして!!ケケケケケケケ」

「い、いやぁあぁあああああ!!!」バタバタバタバタ

ビシィッ

「いてっ!!すみれ、痛ぇじゃねぇか」

「カンナさん?子供をいじめるなんて大人げありませんことよ?」

「けっ、だってよう、あんな事を言うもんだからあたいも半信半疑でな?」

「あら、カンナさんから半信半疑という言葉が出てくるとは思いませんでしたわ~」

「て、てめぇ・・・言うに事欠いてそれを言うか」

「お猿さんが随分な知恵をつけたことですこと!お~~~っほっほっほっほ」

「くっ・・・にゃろう・・・」


「ただいまぁ~~!!」
「今帰ったぜ~。あ~、腹減った」


食堂内で椿、カンナ、すみれが騒いでいたところに大神とアイリス(大人)が帰ってくる。


「「・・・・・・・」」

「あ?どうした、鳩が首絞められたようなツラしやがって」
「変なカンナとすみれだね~?」

「なっ・・・しょ、少尉が・・・異国の女性を連れきましたわ~~!!!???」

「しょ、少尉・・・まさか、そんな・・・」


取り乱した二人に、大神は手刀をお見舞いする。


ビシィッ   バシィッ


「「きゃあっ(うおっ)」」

「落ち着けや、手前ぇら。おら、自己紹介だ」

「あはは・・・驚かせてゴメンね?私、アイリスだよ?」


「「・・・へ?えええええええええええええええぇえええええっ!!??」」

「きゃあっ」

「やかましいっ」

バシィッ!!


「・・・はっ!ちょ、ちょっとお待ちになって?この金髪女性が・・・アイリスと、おっしゃいました?」

「おう、あたいもそう聞こえたぜ・・・本当にアイリスなのか?」


当然のことながら、聞いてくる二人に首肯する。
最初は信じられないといった表情だったが、落ち着いて話していくうちに少しずつ理解していく。


「はぁ・・・あまりびっくりさせないで欲しいですわね・・・少尉も大概と思ってましたが、アイリスまでも・・・」

「こら、どういう意味だ」

「あら、少尉はご自分が異常だってこと、ご存知ありませんの?」

「くっ・・・」

「まぁまぁ・・・はぁ、それにしてもアイリスの未来の姿が・・・それなんですね?」

「うん、そうみたい。でも、私の願望を想像して指向しちゃったから、少し変わるかもしれないけど」


所々に、アイリスらしい無邪気さが顔を覗かせる会話に、カンナは完全に理解したとばかりに会話に加わる。


「なぁなぁ、アイリス?自分の将来を想像したら、って言ったよな?あたい達にもできるかな?」

「いや、そいつぁ無理だな」

「少尉?何でだ?」

「考えても見ろや、アイリスは今この姿だが実質10歳だ。幼年期ならではの想像力、応用力が働いて信じられねぇくらいの確率でこの能力が生まれたんだ。いわばアイリスだけの能力だな。こいつぁオレでも無理だ」

「しょ、少尉でもかよ・・・」

「ちょ・・・ちょちょちょちょっと待ってくださる!?少尉が・・・アイリスのことを名前で・・・?」

「おう、この姿で幼女っつったら明らかにおかしいだろうがよ。こいつの名字は覚えてねぇからな、名前で呼ぶことになった」


大神の答えに、すみれの肩がワナワナと震えだす。


「ま・・・まさかアイリスに遅れを取るとは!!これは何かの陰謀ですわ~~!?」
ダダダダダダダ・・・


「あ、おいこら!普段走るなっつってるお前ぇが走ってどうするよ、神崎!?」

「あはは・・・ね、お兄ちゃん?」

「あ?」

「また、お出かけしようね?約束だよ?」

「チッ・・・まぁ借りの方が多いしな、約束してやんよ」

「うん!」

「うわ・・・アイリス、本気になってやがる・・・こいつぁさくらやすみれでも危ないかな?」


カンナの呟きもアイリスにとっては何のその。

恋する乙女のアイリス(大人)に、カンナは恐れにも似た感情を持つのであった。


その数瞬後にはけたたましい悲鳴が上がり、先ほどと同じ説明を花組、風組、司令、副司令の前で繰り返すことになる。









あとがき:ようやく、帝都の休日【アイリスVer.】が上がりました。これについては、デートの詳細を詳しく書いていたんですが、作者が空しくなって割愛することに^^;

あとは花組はおろか、風組、あやめとの絡みも考えています。

今までの話の中で、最大容量になりそうな予感・・・^^;


皆様方の、厳しい意見をお待ちしております。



[16303] 第8話・マリアVer.
Name: く~が◆9b59c775 ID:217c2d27
Date: 2011/01/05 16:31
休暇二日目。

戦況はまだ、絶対的安定とは言わないが安定していた。

なので目立った配備も無く、最低限の人数(主に風組)を残し、花組の面々は休暇を満喫しているのである。
そんな中。


「少尉、もしよろしければ一勝負、どうですか?」


意外にも意外、マリアが大神に誘いの声をかけていた。
偶然にも、その時さくらは部屋でとある計画を綿密に立てている最中であり、それを知る由も無い。


「あ?勝負・・・?麻雀でもやんのかお前ぇも」

「ち、違います!図書室にビリヤードがあるのをご存知ですか?」

「は?びりやーど・・・って何だ?」


大神の無知さに、頭を抱えるマリア。
だが次の一言で眼を鋭くさせる。


「その・・・びりやーどってのがどういうのか分からねぇが、図書室にあるアレだったら、加山としょっちゅう勝負してんぞ?結構腕も上がったと思うんだが」

「それならば是非!」

「お、おぉ・・・」


大神にしては珍しく、歯切れの悪い返事。
それほどまでに、マリアの迫力は一味違っていた。


「ほらほら、早く行きましょう。時間は有限なんです」

「ちょ、襟首を掴むんじゃねぇ・・・ぐふ」


暴れようとしたところを、マリアも心得たもの、後頭部に踵をぶつけ、強制的に連行する。

ズルズルズルズル・・・ギィッ・・・パタン


そして廊下は静かになった。








バタン!!!
「よし、これで大神さんとのお出かけは私のものです!!大神さん!?」


そして廊下は再び姦しくなる。









【マリア】

ふぅ、どうにか少尉をお誘いすることが出来たわね・・・
昨日のこともあってか、なぜか動揺する気持ちを抑えることができなかったわ。

アイリス・・・まさか霊力をあそこまで制御できるようになっていたとは・・・
しかも、少尉が言うには、アイリスだけが使え得る、稀少能力の一つだという事。


私達からすれば、少尉の4系統の能力も反則染みているのだけど・・・


それはまた今度考えることにして、今は少尉との勝負に全力を注ぐべきね。
少尉が仰るには、あの加山さんと良い勝負するくらいの腕があるとの事。
加山さんは帝都をあちこと飛び回っているせいか、あらゆる情報に長けている。
もちろん、ビリヤードのことも知っていて当然だと思うべき。

帝都は広い。もしかしたら私以上の腕を持つ猛者も沢山いるはず。
そういう輩達と渡り合っていると思われる加山さん・・・
そして同等か、それ以上の少尉・・・是非とも手合わせしたい。


「っ痛ぇ・・・こら、タチバナ。後頭部は急所だぞ、間違えて記憶飛んだらどうすんだコラ」

「反論は却下します」

「てめぇ・・・」


いけない、これじゃあ話が逸れてしまうわ。
早いとこ勝負をつけ、そして今日の本当の目的である、あれを切り出さなくては。


「それでは少尉、勝負を始めましょうか」

「・・・」

「とは言え、少尉の気性から考えて何も処置しないまま勝負をするのは味気が無いというもの・・・どうですか、もし負けたら、勝った方のいう事を一つだけ聞くっていうのは」


私のこの物言い・・・以前の私では有り得ない・・・
でも・・・心地良い。


Side out










普段のマリアらしからぬ物言い。
普段のマリアは、賭け事などしない。むしろ嫌っている方だ。
それが今回に限っては、話を持ってくる。


「・・・てめぇ、何が目的だ?」

「目的など、それほど大したものでは。そうですね・・・私が勝ったら、少尉に昼食でも奢っていただきましょうか。帝都1番通りに、良いロシア料理店があるんです・・・由里さんからの情報ですが」

「またあのアマか・・・」


普段から見え隠れする風組の存在に頭を痛めながら、大神は気分を切り替える。


「よっしゃ、そこまで言うならやってやるぜ。だがよ、お前ぇが負けたときは覚悟してもらうぜ・・・?」

「ふふ、望むところです」

「・・・は?」

「え・・・?あ、いえ、その、私が負けるなんてこと、ありえませんから」


わたわたしながら明らかに言い訳っぽいことを言いよどむマリアを尻目に、大神は深ため息を吐くのであった。


※※※


カツン!   ゴトッ・・・
カツン!   ゴトッ・・・

カツン!   トン・・・コロコロ・・・


「・・・・・・」
「・・・・・・」


カツン!   ゴトッ・・・
カツン!   ゴトッ・・・


「・・・・・・」
「っ・・・ふっ」

カツン!   ゴトッ・・・


「ふう・・・まずは私が一本取りましたね」

「ちっ・・・加山とはまた違った技法を持ってやがるじゃねぇか」

「少尉こそ、目立った技は無いものの、確実に線を読んで正確に打つ技術、感服しました」


双方ともに、目立ったミスも無く、初撃で4玉落とし、次点の数字に中てるだけで精一杯だった大神の僅かな隙。

それがこの勝負の運命を決めた。


「くそ、タチバナお前ぇ隙が無さすぎだぜ・・・ちったぁしくじってもいいのによ」

「ふふ、私はヒマを見てはここに来てやってましたから・・・これは精神的に荒んだ時、気分を鎮めるのに丁度良いんです」

「オレは負けた時の悔しさしか残らねぇが」

「ふふ、それでも少尉はご自分で鎮める術を知っていらっしゃる・・・でなければ少尉が持つ巨大な霊気の顕現を、制御できるわけありませんから」

「・・・なるほど、お前ぇはこいつを方法として選んだわけか」

「ええ」


大神は感心していた。
マリア・タチバナという、一人の人間の個性。
そしてその個性から徹底的に洗練された思考。

全てを、帝撃の為に。
自分の趣味ですら、霊気を制御する訓練に充てるとは。


現隊長として、今自分に何が出来るか。
いかに、周りの空気を壊さないように心がけるか。


(こいつ・・・自信と責任感を持ってからの成長・・・やっぱ隊長を任せて正解だったな)


言葉には出さず、心の中で呟く。
まだ、高みに行ける。
ならば、自分は褒めるのではなく、叱咤してやれば良い。


いずれ自分は○○のだから。


「良し、この3本勝負、オレが勝ったら課題を3倍に増やしてやる。お前ぇにだったらできるはずだ」

「ふふ、それでしたら勝つべきか、負けるべきか迷うところではありますが・・・私は負けず嫌いですから」

「上等だ」



※※※


10数分後、部屋から出てきた二人。

マリアはにこにこして大神はしかめっ面を作っている。


「ちっ、納得いかねぇぜ。最後の8玉落としでオレのとお前ぇの最終球が一緒に落ちるなんてよ」

「私も初めて見ましたし、規則の方にもそこ辺は詳しく載っていませんので・・・やはり引き分け、が妥当じゃないかと」

「まぁ3本勝負って言ったのはオレだし・・・むぅ」

「ふふ。それよりも少尉、お互いの約束事を交わすんですから、今日のお昼はご馳走になりますね」

「あぁ、お前ぇへの課題3倍増しもな」

「では少尉、劇場入り口に正午待ち合わせで」

「おう」


踵を返し、それぞれの部屋へ戻る二人。

それを。


「うぅ・・・マリアさんにまで出し抜かれた・・・私って・・・私って・・・」


さくらが涙を浮かべながら扉の隙間から見ていたのを、大神だけが気づいていた。









【大神】

さてと、昨日のアイリスに引き続いての遠出、か。
まあタチバナの場合は帝都1番通りと言っていたからそんなに遠くじゃねぇが。

だが帝劇があるのは帝都大通りだからよ、人目が多くて仕方ない。
ここで待ち合わせなんて、やっぱ止めとけば良かったか。


「少尉、お待たせしました」

「おお、そんなには待ってねぇ・・・ぜ?」


へぇ・・・
普段見ることのない服を着てやがる。
毛皮で覆われた上着、そして下衣。

今が夏ってのを考えれば暑そうな格好だが、程よく露出している所が清涼感を感じさせるな。
ふむ、アイリスと違って大人な着こなしだ。


「少尉?」

「おう、悪い悪い。初めて見たがよ、似合ってんなと思ってよ」

「んな!?な、何を・・・」


おーおー、顔を真っ赤にしちゃってまぁ。
あんまり言うと今以上に怒りそうだからよ、さっさと行くとすっか。


「ほんじゃ、その吉田料理店に行くぜ!」

「ちょ、少尉?吉田じゃなくてロシア!!」


タチバナの故郷料理か・・・楽しみだぜ。


Side out









帝都大通りを二人が歩いていく。
片や大神、片やマリア。

大神はともかく、マリアは数度における公演において名と顔を知られている。
劇場では男装の衣装を着こなし、麗人ぶりを見せるマリアの私服姿に、街行く人が振り返る。
その視線を然程気にもしないまま歩くマリア。

対する大神も似たようなものだ。
昨日のアイリスとの遠出のお陰で、注目されても気にならない耐性ができたのだ。
元々自分自身には無頓着な男である、さらに耐性まで付いたとなれば、それこそ急遽劇場の演目に出演が決まったとしても緊張することは無いだろう。


「少尉、少尉は『ポルシチ』という料理をご存知ですか?私の故郷料理なんですが」

「ぽるしち・・・聞いたこと無ぇな・・・」

「そうですか・・・ではシチューはどうです?」

「しちゅー?」

「はい、この前由里さんが食事当番の時に出てきたお料理です。芋やお肉、たまねぎ人参に白い出汁がかけられていた料理ですよ」

「あー、あれか」

「はい、ポルシチはあれのロシア風味と言ったところでしょうか」

「ほー・・・ありゃあ確かに旨かった。そのぽるしちも・・・旨そうだな・・・」

「はい、きっと少尉もご満足いただけるかと」

「そいつぁ楽しみだ」


会話を交わしながら歩く二人。
ロシア料理店がある帝都1番通りまでは、劇場から歩いて10分くらいの距離。
食前の運動として、ゆっくりのペースながらも歩いていく。


「お、おい!あいつ、昨日金髪のかわいこちゃんを連れていたヤツじゃないか?」
「ど、どれだ?・・・くっ、あの野郎とっかえひっかえしやがって・・・」
「で、でもよ、あの金髪美人、帝劇のマリア嬢だぜ?何回か公演見に行って見たことある」
「じゃああの男は帝劇で働いているのか?」
「その辺が妥当じゃねぇか?ちっ、どっちにせよ羨ましいのは変わらねぇがな」
「じゃ、じゃあ昨日のかわいこちゃんは・・・」
「本当の恋人だろ」
「くそったれ~~~!!!何であいつだけ勝ち組扱いなんだ!何故なんだ~~~!!??」


「しょ、少尉・・・?後ろの方がたの様子が変なんですが・・・」

「暑いからな、頭をやられたんだろ。ほっとけ」

「はあ・・・」


血涙を流す異様な集団をよそに、大神とマリアは料理店へと入っていった・・・









店内。
日本の和様とは違った雰囲気が二人を包んだ。

大神にとっては初めて尽くし。
見るもの全てが日本に無いものばかりなのだ。


「お、タチバナ、あれは何ていうんだ?」

「あ、あれは・・・」


まるで子供のように目を輝かせて尋ねてくる大神に、最初は呆気に取られたものの微笑ましさを持って説明するマリア。

更に大神は、木で作られた椅子に腰掛け、日本の仕様とは違った作りのテーブルを撫で回す。
その間に、マリアはポルシチを2人分注文し、ポケットからスリッパを取り出す。

どんどん興奮していく大神。しまいには、壁に飾られた鹿の剥製にまで手を伸ばそうとする。
そしてその瞬間。


スパーーーーーーーーン!!


「ぐぁっ!?」

「少尉、行儀が悪いですよ?」

「ぐぐぐ・・・く、口で注意しろよ、まず・・・」


明らかにあやめと被って見えたマリアに、下手にでる大神であった。


※※※


「ムグムグムグ・・・ガツガツ・・・ンムンム・・・ぷはぁっ!こ、こいつあ旨ぇ!」

「モグモグ・・・んく。そうですか、それは良かったです。ここを紹介した甲斐がありました」

「米と味噌汁の食事も良いけどよ、たまには外国料理を食ってみるのも良いもんだな。やべぇ、こいつはハマるわ」

「ふふふ・・・」


大神の食べっぷり。そして素直な、言葉を飾らない感想を聞いて、マリアは母国が褒められたように感じて微笑みを零す。


最初会ったときは最低な感じの大神。
だが今はどうだろう。

自分から勝負を持ちかけるほどに距離は近づき。
一緒に出かけるほど気持ちは気安く感じ。
そして母国の味を褒められると嬉しくなるほどの好意。

いつからここまで気持ちが育ってきたのか、マリアには記憶にない。


それが当然なのだ。感情は、記憶や論理で解明できるものでは無いのだから。
今、この時。
大神と一緒に食事をし。
他愛もない話をしながら気分を落ち着かせ。

時には暴走しがちな大神をスリッパで諌める。


マリア・タチバナは今、今までに無い充足感を味わっていた。









結局、大神は料理を3回お代わりし、マリアに奢るというのをすっかり忘れるほど満足して劇場に帰ってきた。
マリアも、微笑を絶やさないまま劇場へ。

ホールには、さくらの姿があった。


「ま、マリアさん・・・ですよね・・・?」

「あら、さくらじゃない?どうしたの?」

「え・・・いえ、ちょっと・・・」

「?」


チラチラとマリアと大神の顔を交互に窺いながら、さくらは挙動不審な動きをする。

手は忙しなく動かし、眼は二人に向けたままあっち行って、そしてこっち行って。


「どうしたんだ、真宮寺?お前ぇ本当に大丈夫か?」

「っ!だ、誰のせいだと思ってるんですかぁ!!」

「うおっ」

「さくら?」

「ッ!!」ダッ

「あ、おい!」


ダダダダダダ・・・バタン


「何だぁ、ありゃあ・・・」

「ん・・・少尉、さくらは私にお任せを」

「ん?あぁ、頼んだ。今の分かるのか?」

「ふふ・・・女性ならではの、としか申し上げれませんが」

「・・・・・・・」


にこりと微笑んで、階段を上がっていくマリア。
それを見送り、大神はため息を吐きながら頭を掻く。


「女って・・・面倒臭ぇな・・・」









あとがき:あけましておめでとうございます。約1ヶ月ぶりの更新となりました。
ようやく無事に初商いも終わり、久しぶりにPCに触ったのですが・・・タイピングが遅くなってること^^;
リハビリも兼ねて、アイリスverの加筆もしましたので、そちらも見ていただけたらな、と思います。

また、リクエストにあった、ワンピースとのクロス物、そして幼女アイリスverはそれぞれ、12万PVの時と番外編で更新したいと思います。
後者はまだしも、前者は道程が長いですが・・・^^;


今年も、よろしくお願いいたしますm(__)m



[16303] 第8話・カンナVer.
Name: く~が◆9b59c775 ID:327eb38e
Date: 2011/02/13 22:14
「ふぅ・・・ちっと食いすぎたかな」


マリアとの昼食の後。
大神は帝劇内にある自室へと戻っていた。
ロシア料理を始めて食べ、思いのほか旨くてお代わりを頼むほど。

昼時に、満腹になれば誰だって眠くなるもの。
それは大神とて例外ではなかった。

が。


ドンドンドン!ガチャ
「少尉!!メシ食ったんだろ?あたいと食後の手合わせやんねぇか?」


突如鳴り響くノックの音。
そして確認の合図も無いまま開け放たれるドア。
帝劇一の戦闘狂、桐島カンナに、その眠気を吹き飛ばされることになる。









中庭において、カンナと大神は数メートル離れた位置で向かい合っていた。
カンナは腕を交差させてストレッチを始め、大神は首をコキコキッと鳴らしながら手首を回す。


「桐島、お前ぇとやんのは初対面の時以来になるんだっけ?」

「へっへ、そういうことだな!あたい、少尉と勝負したくてずっとウズウズしてたんだぜ」

「その有り余る力は敵に向けてほしいんだけどな」

「へっ、良く言うぜ。少尉も何だかんだ言って霊気が迸ってるぜ?あたいなんかに見破られるようじゃあまだまだだな」

「かっ、違ぇ無ぇ。んじゃあ早速・・・」

「「行くぜ!!」」


大神とカンナは、同時にお互いに向けて走り出した。



「おらぁあっ!」


先手を取ったのはカンナ。手加減無しの中段回し蹴りを放つ。


「ふっ」


が、大神もそれを見越していたのか、間合いを少し外すことで空回りさせる。
そして間髪いれず、カンナの懐に入ろうと行動を移しかけ、ピタッと止まった。

ビュオッ!!

大神の頭があるはずの位置を、カンナの裏拳が通り過ぎる。
それによって、カンナの体勢が少し崩れかけた・・・が。


「はっ」


大神の前蹴りが入ろうとした瞬間、カンナの体が横に流れ、大神の蹴りを流す。
大神も、然程力を入れていなかった蹴りだったので、すぐさま元に戻し、最初の構えに戻る。


「うらあぁっ!」


更に攻め始めるカンナ。

大神は先ほどとは違い、体をどっしりと落とし受けの体勢を取る。
右正拳突き・・・を陽動とし、上体を低くして足払いをかけるカンナ。


「山っ!」


が、大神の足腰に当たった瞬間、いとも簡単に弾き返されてしまう。
それにもめげず、地面に片手を着き、下半身を跳ね上げることで大神の顎に蹴りを放つ。


「林」


それすらも、大神が顔を少し捻ることによって空を切ることになる。
そのときの大神の眼には、カンナの技のキレ、間合いが細かく、まるで機械のように分析できた。


「火!」


そこまで、防戦だった大神が、ここに来て攻勢に出る。
大神の目の前には、未だ下半身が空に浮いた状態の隙だらけのカンナの体。

急所を外し、腿の中間辺りに掌底を繰り出す。

ドンッ!!


「うわあぁっ!?」


ほんの少し触れただけの感触。
その後に、爆発的な打撃がカンナの太腿を襲う。


ズサァッ


「くぅっ!?」


体勢を立て直し、受身をとって立ち上がろうとカンナが前に視線を向けようとした瞬間。


「!?」


ビュオッ!


己の勘に従ってバック転をしてその場から離脱する。
そこを大神の下段回し蹴りが空を切る。


「風」


その反動を利用し、大神が体を捻ったその瞬間。
大神の足元から砂塵が吹き惑った。


「?」


砂埃が消えると同時に、カンナの目前から大神の姿が掻き消えた。
すばやく辺りに眼を向けるが、大神の姿は無い。


ゾクッ・・・


得体の知れない、カンナの背筋を凍らせるような気配。


「王手、だな」


己のすぐ後ろから聞こえた、大神の声。


「クッ・・・あたいの・・・負け、かな」


無表情で拳を突きつける大神に、カンナは降参の意を示すのだった。










【カンナ】

ちっくしょう、こうも少尉が手強いとは思ってなかったぜ!
あたいの技は少尉に早々に見切られ、息もつかさない怒涛の攻撃。

向き合ってる時には気づかなかったけどよ・・・少尉って攻撃・防御の際、どの時も霊気・闘気に変化が無いんだ・・・あたいの親父でもそんなことできなかったってのに、どんだけ規格外なんだ?


そして、あたいの体捌きを先読みするかのような、少尉の動き。
なんつーんだっけ、・・・お、そうそう、詰め将棋ってのに似てやがんだな。

将棋はあたいは詳しいことは知らねぇけどよ、米田司令やあやめさんが言うには高度な戦略遊戯だって話だ。
先を読み、自陣の戦力を的確に分析しなくちゃあ勝てない、とか言うやつ。
軍人さん専用に作られた将棋もあるって聞いたことがあっけどよ、お眼にかかったことはまだ無ぇな・・・

とにかく、少尉が将棋ってのをやってんの、見たことが無ぇし聞いたことが無ぇ。


親父と同等、と思ってたけどよ・・・少尉、まだまだ底が見えねぇ。敵じゃなくて良かったと、あたいが思うんだ、花組はおろか、帝撃全員の思いだってことは事実だな。


でもよ・・・ここまで圧倒的な力を見せられちゃあ・・・あたいの感情はこれでお終いってわけにはいかねぇんだよなぁ・・・


せっかく少尉から教えてもらった霊気の技、試させてもらうぜ!


Side out









カンナの後ろを取った大神だが、ここでカンナの様子に気がつく。


(・・・?!ま、まさか桐島のやろうっ・・・!)


カンナの全身から少しずつあふれ出してくる霊気。
色をつけるならば、カンナの気性に良く合った『橙』。
その霊気が、徐々にだがカンナの体を覆い始めた。


「ちっ、桐島ぁ!‘ソイツ’を使うにはお前ぇにはまだ早ぇ!鎮めろ!!」


大神がそう叫ぶが、カンナはゆらり、と立ち上がり、大神の方に体を向ける。
カンナの眼を見る。前の紅蘭のような狂気は無いが、それでも正気を少なからず失っているのは確かだ。


「ちっ!」


大神は舌打ちをし、カンナから間合いを取る。
そして己自身の霊気を、内側だけで体全体に浸透させる。
これにより、大神の身体能力は普段の倍以上を誇るようになる。


「少尉・・・あたいの桐島流空手が奥義・・・しっかり受け止めてくれよな」


うつろな声でそう呟くカンナ。
すでに霊気は勢い良く迸り、カンナの背後に虎の様相を描く。


「ちっ・・・分かっちゃいたが、桐島の霊気指向は『火』か・・・風・林・火・山の内最も攻撃力に優れた指向・・・こいつを止めるにゃあ『山』じゃあ足んねぇな」


大神が構えを取る。
その時に、中庭に出てきたあやめが驚いた表情で駆け寄ってくる。


「大神君!?これは一体何事なの?」

「訳はあとで話す。それよりも、帝劇内の結界の強度と秘匿を上げてくれねぇか?このままじゃあ罅入るかもしれねぇ」

「っ!わ、分かったわ!それまで何とか大神君は踏ん張ってちょうだい」

「承知」


あやめが踵を返して帝劇内に戻っていくのを横目で確認し、再びカンナのほうに視線を向ける。


「!」


いつの間にか、カンナが大神のすぐ目の前にまで踏み込んできていた。


「ちぃっ!?」


己の迂闊さに歯噛みしながらも、大神は体内に展開した霊気を強め、足に集中させる。


「風!」


先ほどと同じく、大神の体がぶれ、カンナの拳が空を切る。
が、霊気で強化されたカンナの眼には、大神の辿った軌跡がはっきりと見えていた。


「そこかぁっ!」


ダッ!!

ガシィッ!!


大神が移動した地点に、カンナも野生のような動きで追随。
初めて大神に一撃入れることに成功する(防御済み)。


「ぐぅっ!」


さすがに大神も吹き飛び、しばらく宙を舞った後に着地し、再び


「風!」


縮地を開始。
さっきと違うのは、攻勢に出た点であろう。
カンナもそれを読み取り、追随を止めてその場に構えを取って待ち構える。


「破ぁっ!!」


風の勢いのまま、大神はカンナに急接近、神速の右前蹴りをカンナの腹に向けて繰り出す。

ガシィッ!

カンナの手が、大神の足首を掴む。


「セイッ!」


それと同時に、大神は残った左足をカンナの首に向けて繰り出す。

バシッ


それすらも、カンナに止められ大神は両足をカンナに預けたまま宙を浮いた状態だ。


「シャアっ!!」


すかさず飛んでくるカンナの踵落とし。
横を向いたままの大神の腹に決まる・・・と、カンナが確信した瞬間。


「大神君!!結界の強化、終わったわよ!」


あやめの声が飛んできた、刹那の間。


ゴォッ!


大神の全身から霊気が迸り、掴まれていた足を急速に捻ることによって手をこじ開け、自由になった右足でカンナの踵落としを迎え撃った。


ガシイィッ・・・・!!!


鈍い音が聞こえ、数瞬の間拮抗した足が・・・弾かれた。


ズサァッ!!


弾かれた拍子に間合いが出来、それぞれに着地を成功させて再び対峙する。


「よぅ・・・少々オイタが過ぎるんじゃねぇか?桐島よぅ・・・」


大神が下を向きながらも言葉を紡いでいく。
両手はポケットに突っ込んだまま、そしてゆっくりとカンナに向かって歩き出す。


「っ!?」


対するカンナ。顕現している霊気の量は変わりないが、それでも先ほどよりは安定していない。
霊気の形は心の形。それは、大神がカンナ達に一番最初に教えた言葉。
それが今、カンナの身に如実に現れていた。


「あたいは・・・あたいは・・・あたいの琉球空手は・・・親父の夢なんだ!負けは・・・許されないんだ!」

「ほう・・・ちったぁ正気が戻ってきたようだな。だがよ」


大神が忽然と姿を消す。
それは強化されたカンナの眼を欺くほどの速度。


「お前ぇ自身の霊気に・・・お前ぇそのものに・・・負けてたんじゃあ」



姿を現した大神。そしてその両手には、極限にまで集中された霊気が。


「親父もオレも関係無ぇんだよ!」

『狼虎滅却・天地一矢』


大神の奥義がカンナへと迫っていく。
カンナも反射的に顕現されていた全ての霊気を手に集中、こちらも奥義を炸裂させる。

『桐島流奥義・一百林牌』(すうぱありんぱい)


ドオッ!!


二つの霊気が鬩ぎ合う。

カンナは全霊力で奥義を使ったせいか、そのまま前のめりに倒れてしまっている。
対する大神は無表情のままで推移を見守っている。


パァアアアアアアン!

数瞬拮抗していたが、カンナの霊気が弾かれ、大神の霊気がカンナが立っていた胸部辺りのところを通過。そしてそのまま結界に衝突する。


ギシィッ!!!


大きな音をたて、帝劇が振動に襲われるが強化された結界を破壊までには至らず、そのまま霊気は霧散する。


それを最後まで見守り、

ザッザッザッザッ・・・

歩みを、カンナの元に向ける。


やがてたどり着き、カンナのすぐ側で腰を降ろす。


「はっは・・・やっぱ・・・少尉は・・・すっげぇなぁ」


意識はあったらしいカンナが、ぽつりと話し出す。


「なあ、少尉・・・あたいさ、少尉に霊気の扱い方を教えてもらって・・・心のどこかで、こいつをぶっ放したい、思う存分暴れてみたいって・・・思ってたのかもしれねぇんだ」

「・・・・・・」

「霊気は己自身・・・そう、少尉は言ったよな?あたい・・・やっぱ暴力的で、何かを破壊せずには・・・いられないタチなのかも、な」

「・・・・・・」

「でもさ、今日少尉と全力でぶつかってみて・・・何だかすっきりした感じなんだ。それに・・・この『あたい自身』とも、うまく付き合えそうな気がしてさ」

「・・・・・・」

「はっは、少尉はやっぱ厳しいなぁ。何も言っちゃくれねぇか」


カンナが少し寂しそうに俯いたとき、大神が口を開いた。


「・・・いや、少々驚いただけだ。桐島にも潮らしくなるときがあるんだなってな」

「はぁ?そ、そりゃああたいだって女だぜ・・・?そりゃ無いよ、少尉~・・・」

「はっは、お前ぇ見てるとそういうのはすっかり忘れちまうんだな、これが。ま、今回のことでいい薬になっただろうし、オレからは何も無ぇ。あとは・・・」

「あとは?」

「お前ぇの霊気の制御はまだまだだ。佐藤よりちぃっとばかり上いってるが、な。要訓練だ。いいか?」

「へぇ~い・・・ちぇっ、ちったぁ優しいかと思ったらすぐこれだ」

「はっ、分かりきったことを。あ~あ、ったく。腹ごなしの運動かと思えば霊気まで使わせやがって」

「あぁ、ありがとな、少尉。あたいを受け止めてくれてさ」


最後には笑顔になって大神にくってかかるカンナ。
だが、これはこれで良い、と思ってしまう。


「カンナぁ~・・・無茶しちゃってさ?ちゃんとお部屋に帰ろうね~?」
(少尉・・・あんたぁやっぱあたいの目標だ。絶対ぇ追いついてやっからな!)


驚いて駆けつけてきたアイリスに、念動力で持ち上げてもらって自室に帰るカンナの表情は、今までとはまた違った笑顔が覗いていた。









あとがき:どうも、ご無沙汰しております、く~がです。
『うみ物語』でも書きましたとおり、1ヶ月ほど入院しておりましてようやく、退院するはこびとなりました。

1ヶ月・・・更新できず、本当に申し訳ありませんでした。
仕事に復帰したのは良いんですが、溜りに溜まった仕事の量を見て、もう一回入院してやろうかな・・・と思いましたが、何とかこの更新にまでこぎつけています。


今回はカンナの話を書かせていただきましたが、いかがでしょう?
戦闘描写が苦手な私にとって、入院してた間に考えたことを拙い文章で表すのは大変でした。
矛盾している点、ここはこうした方が、と思えるところがありましたらガンガン指摘してください。


これからもよろしくお願いします。



[16303] 第8話・かすみVer.
Name: く~が◆9b59c775 ID:2f29f8ae
Date: 2011/05/07 19:45
「ぐえっ・・・げえっ・・・」


ビチャビチャと響く水音。
真紅の液体が大神一郎の口から次々へと溢れ出していた。


「ゲホッ・・・ゲホッ・・・ちっ、嫌になるぜ」


ぐいっと口元を拭い、洗面所の置き水で口を漱ぐ。
それから大神はしばらく俯いていたが、ゆっくりと顔を上げる。
対面の鏡が大神の顔色の悪い顔を映し出していた。


「・・・ふぅ、漸く落ち着いたか」


思い出されるのは、つい先ほどのカンナとの模擬戦だ。


「くっくっく・・・なかなかどうして、オレに奥義を使わせるなんざ成長してきたじゃねぇか」


そう、カンナの情緒・霊力が不安定であろうが、その技の鋭さには大神も無意識のうちに奥義を繰り出してしまうほどだった。

本来、大神の霊的戦闘における技は相手に直接刀の霊的斬撃を叩きつける『快刀乱麻』。
それを今回、まだ完全に習得していない飛霊術『天地一矢』を使用。
しかも素手からの発動をしたことで、大神の体に多大な負担をかけていたのだ。

技には、個人個人との相性がある。
例えるならば、飛霊術に長けているのはマリアや紅蘭といった後衛組に限定され、万能系とでも言うならば、霊的斬撃と飛霊術両方をこなし、更には『破邪』の力を持つさくらが挙げられるだろう。
また、光武やその他の霊的戦具の扱いには紅蘭が他の追随を許さないし、『ヒーリング』『バリヤー』『テレポート』と言うとんでもないスキルはアイリスだけのレアなのだ。
そして純粋な霊的攻撃力・防御力を素でトップにあげられるのはカンナ、攻撃範囲の広さならばすみれが挙げられる。


本来、帝撃の女性達がその力を完全に発揮できれば、大神は殆ど歯が立たないだろう。
霊力・剣の扱いに一日の長がある大神が、その限定された場においてその技量を100%に近い形で操れているからこその差なのだ。


(オレの役目が終わる時は近い、か・・・)


静まっていく心臓の鼓動を聞きながら、大神はしばしの間考えにふける。
彼女達がこのまま成長していけば、おそらく近いうちに自分は追い抜かれ、その時は無用の長物となるだろう。そうなれば、帝劇から離れ、純粋な兵役に赴くことになるだろう。

嬉しそうな、それでいて残念そうな複雑な表情が大神の顔を彩る。


「・・・さて!メシだメシ!今日の夕飯は何かね」


足取りを普段どおりに運び、大神は洗面所から出て行った。










(大神さん・・・?)

そして、その後姿を窺う、一人の女性の視線には気づくことはなかった。









【かすみ】

あらあら、誰が運ばれてきたかと思えばカンナさんだったのね。
ふふっ、あの血の気の多さには少し男性っぽいところを感じてしまうわね。

大神さんもご苦労様でした。あのカンナさんの相手を務め、尚あのような至福の表情をさせるような戦いができるのは多分大神さんくらいじゃないかしら?


・・・あら?
大神さんがシャワー室の方に行くわね・・・汗掻いたから一浴びでもしてくるのかしら?


なんとなく、何か違和感が・・・?


気になるわね・・・ちょっと付いていこうかしら。



※※※


おかしいわ、普段の大神君なら私くらいの気配は察することができるはず。
それを気づかないなんて・・・

シャワー室の手前にある洗面所に入っていった・・・「ぐえっ・・・げえっ・・・」!?

そ、そんな・・・?!
いつから?何が原因で?・・・ダメね、いくら大神さんを問いただしてもはぐらかされるか口止めをされるかだわ。


「「くっくっく・・・なかなかどうして、オレに奥義を使わせるなんざ成長してきたじゃねぇか」


・・・えぇ、分かっていたわ。大神さんがどんなにきつく花組の皆さんを扱こうが、それれはあくまで皆さんのことを思ってこそだからってことは。
あくまで他に知らせる、あるいは知られることなくこうやって己を捧げていく・・・

前に、大神さんが怪我で動けなかった時に聞いたことがあった。
あなたは何故、私達の為にここまでしてくれるのか、と。

すると彼は一瞬の迷い無く、こう言った。


『お前ぇ達民間人をあらゆる脅威から守るのが軍人の仕事だ。いかに特殊部隊とは言え、普段は劇場で帝都の笑顔を絶やさない“すたぁ”、言わば民間人と同等だからな。ならオレがやれるのはこうやって体を、命を張ることだけだろ』


実に大神さんらしい。


でも・・・気づいていますか?


大神さんが洗面所から出てくるのを姿を隠し、その後姿を見送る。


花組の娘達・・・いえ、私を含め帝国華撃団全員が・・・あなたを必要としているのですよ?
決して・・・己を軽視しないでください。いつも強気な大神さんでいてください。不敵な笑顔を浮かべ、私達を引っ張ってください。


そして・・・万が一、疲れたり絶望に駆られた時は・・・私達を頼ってください。

Side out









時は既に皆が寝静まっている夜11時。
大神はランプを照らしながら劇場内の見回りを行っていた。

これは劇場に着任してからずっと大神が続けていることであり、その手際はかなり良くなった。が、かといって周囲の注意を怠ることなく、隅々まで点検していく。


「ん?」


廊下の先。サロンの方だ。
そこに人の気配を感じ、大神は歩を進めていった。


そこには。


「あ、大神さん。見回りお疲れ様です」


藤井かすみの存在があった。


「お?珍しいじゃねぇか。明日は炊事当番じゃないんか?」

「えぇ、明日は椿が当番です」

「ほう、そうなんか。梅もなかなかああ見えてメシ作るの上手だからな、楽しみだ」

「もう、いつまで梅、って呼ぶつもりですか?あの子、梅って呼ばれる度に寂しそうにするんですよ?」

「けっ、アイリスならまだ知らず、年頃の娘を名前で呼べるかっ。名字にしても、オレの将校時代を思い出すからな、なかなか」

「まあ」


二人、サロンのソファーに座っての会話。
大神からしたら何てことないが、かすみの方は己が上気してるのを自覚していた。

伝票整理の時は由里がいて、そして戦闘の際は畑違い、演劇公演の時はお互い忙しくて二人で話す機会もそう多くはない。
この二人きりの状況に、かすみは嬉しく思い、かつ恥ずかしくも思った。


「・・・ん?どうした?何か具合でも・・・?」
「ッ、な、何でもないです、はい!」

「・・・?」


訝しげに大神はかすみを見るがそれも一瞬、再び机の上に置いていたランプを手に取り、元の見回りに戻ろうとする。

が。


「・・・っと・・・」


大神が立ち上がった拍子に足元がふらつき、後ろに倒れようとする。


「お、大神さん!!」


それをかすみが素早い対応で立ち上がり後ろから支えようとする。


「きゃあっ」


ドスン


かすみが大神の体重に耐え切れず二人そろって絨毯の上に倒れた。
そして。


「あ・・・」
「つつ・・・ん?」


二人の視線が絡む。
二人はかすみが正座した状態、大神がその膝に頭を乗せるような状態で静止していた。

かすみはこの状況に最初は驚いていたが、見開いていた眼を細め、微笑を作り大神の髪を梳き始める。


「ちょ・・・な、何を」
「しっ・・・」


慌てた大神がかすみに何かを言いかけるが、かすみがその口に人差し指を当ててそれを止める。


「・・・」

「・・・」


しばらくの間、二人は視線を合わせたままかすみが髪を梳き、大神がじっとしているのが続いた。


「ねぇ、大神さん?」

「ん?」


ふいに、かすみが口を開く。


「私・・・それに由里や椿・・・大神さんのお力になれることは少ないと思います。事実、そうでしょうし」

「・・・」

「でも・・・これくらいのことはできますから・・・いつでも・・・甘えてきてくださいね?」


かすみの、母性溢れる言葉。穏やかな視線。柔らかな微笑。

全てが大神の体から力を抜いていく。


「ははっ・・・んじゃあ気が向いたら・・・な」


その大神の物言いに、かすみは僅かに眼を見開くがすぐに微笑み、またその髪を梳きはじめる。


少しずつ壊れていく青年に、癒しの空間ができた瞬間だった。









あとがき:お疲れ様です。ようやく鬱状態から抜け出しつつあるく~がです・・・
少ない分量ですが、生存報告を兼ねて更新しました。

この前の大震災、本当にびっくりしました。私に直接の被害は無いですが、亡くなられた方々、今も避難所で生活を続けていらっしゃる方々をテレビで見て、今何をやるべきか、と真剣に考えさせられました。

私に出来ることは非常に微力ですが、引き続き何かしらやっていきたいと思います。
この更新もその一つです。

稚拙な文章ですので、皆様を楽しませることができるかどうか分かりませんが、頑張っていきます。



[16303] 第8話・さくら・紅蘭Ver.
Name: く~が◆9b59c775 ID:821e2ad7
Date: 2011/05/15 23:32
「ぐふふふ・・・なぁ、そろそろ観念したらどうやろ?」


紅蘭が妖しい笑みを浮かべながら対面の人物に凄む。


「ネタは上がっとるんや。黙っててもしゃあないで?」

「・・・・・・」


胡坐を掻き、腕を組んで眼を瞑る人物に脅迫まがいの説得をする紅蘭。
対して、件の人物の動きに変化は無い。


「かぁ~っ、あんさんも頑固なお人やなぁ・・・ちぃっと、ウチの手伝いをしてくれたらええねん」

「・・・・・・」


それでもその人物、男は動きを見せない。良く見ると、少しばかり体がプルプルしているのが見て取れる。


「なぁなぁ、ウチが発明したこの丸薬、『まるみつ君』をな?これを一粒飲むだけでええねんて。ウチ無理なこと言うてるか?」

「・・・・・・」


このままでは埒が明かないと判断した紅蘭、最後の手段に出る。


「今やったら、ウチだけやで?大神はんがかすみさんに膝枕されて夜をあかしたん知ってるの」

「・・・チッ」









【紅蘭】
いやぁ、ウチも驚いたで。
厠行こうと部屋を出てサロンを通りかかったんは良いんやけど、まさかと思う光景が眼に飛び込んできたんや。

朴念仁で有名な大神はんと、帝劇の母、藤井かすみさんの膝枕状態や。
・・・そん時、ウチの心がチクッとしたのを覚えてるんやけど、それはそれ。今はこんなおもろい状況を逃す手は無いで。

早速、先日から仕上げつつあったウチの発明品、人格修正丸薬『まるみつ君』の実験体として大神はんを選んだ。

最初は聞く耳持たなかった大神はんやけど、ウチが「サロンで・・・一体何があったんやろうな~・・・」という独り言を口にした途端、大神はんの態度が変わったんや。
んでウチの部屋にお越し頂いて、今ようやく『説得』が終わったとこや。


いやぁ、大神はんもなかなか隅におけまへんな。


「・・・佐藤、良いからその『まるみつ君』をさっさと寄越しやがれ。一粒飲めば良いんだな?」

「うん、そやで。一粒で大体3時間くらいの効果があるはずやから、その間の臨床実験てことで頼むわ」

「くそっ、何でオレが佐藤の怪しげな発明品の実験体にならなきゃいけねぇんだ・・・只でさえ危なっかしいシロモンが多いっつーのによ」

「ほらほら、大神はん男らしくないで?ちゃっちゃと飲まんと、ほれ」

「だぁあああ、分かった!ったく」


ぐいっ・・・ごくっ


よっしゃ、ようやく服用したみたいやな。
これはウチの趣味で作った丸薬やなくて、何やったかな、陸軍のお偉いはんからの要請を花やしき支部が受け、それをウチが試作してみるって形を取ったんや。
お偉いはんの名前・・・何て言ったっけ?
京門・・・いや、ちゃうな。京・・・京・・・?え~い、もうええわ!

とにかく、これは服用した人の性格を柔らかくしたり、反対に尖らせたりできる効果がある。大神はんに飲ませたんは柔らかくする薬やな。
大神はんの性格を変えるんは少しの間とは言え、かなりやりたくないんやけど・・・適任がウチの周りには大神はんしかおらんかってん。


でも・・・な?普段あれだけ魅力に溢れている大神はんのことやから、今より仰山の大神はんの表情を見たいっていうのは・・・やっぱ変やろか?


「んっ・・・くぅっ」


お、効果が出てきたみたいや。
ちぃっと確認してみよか。


「大神はん大神はん?大丈夫でっか?」


額を押さえて唸ってた大神はんが、手を放してウチを見据えた。
あ・・・あれ?何や、この澄んだ眼は?

いや、前の大神はんが濁ってたわけやないで?でも、どことなく、険が取れたような・・・


「?オレの顔に何かついているのかい、紅蘭」


・・・
・・・・・・
・・・・・・な、何やて!!??


「お、大神はん・・・もっかい、ウチのこと呼んでみて?」

「?何を言ってるんだい、紅蘭?紅蘭は紅蘭じゃないのか?」


ひょ

ひょ

「ひょわああああぁあああぁああああああああああああああああぁああ!?」

side out









大神が変わった。それは紅蘭の眼にも明らかだった。

普段、紅蘭のことを名字でもなく、名前でもなく、壊された自転車の製造元の『佐藤』と呼び方が定着しているはずの大神が、名前で呼んだのだ。
この異常さは、帝劇関係者は誰もが分かることだ。


これはこのまま大神を野放しにしてはいけない、せめて自分の部屋で一時過ごしてもらわなければ!
なぜか直感的にそう感じた紅蘭は、すぐさま大神に提案を出した。


「な、なぁ大神はん?どやろ、折角の休みなんやし、少しの間ここでゲームして遊ばへん?大神はんが好きな麻雀からオイチョカブ、何でも揃ってるで?」

「ど、どうしたんだ紅蘭?いつもならそんなに積極的じゃないのに」

「ぐふっ」


紅蘭は胸を押さえ、呻いた。心配そうにする大神、その顔はいつもより柔らかく、そして紅蘭の顔を覗き込むように至近距離に近づいてきたのだ。
普段の大神ですらど真ん中である紅蘭にとって、これは心臓に悪すぎた。


「お、大神はん?ち、近すぎるで・・・?恥ずかしいやんか」

「え?・・・あ、ご、ゴメン紅蘭!」

「ぶっ」


さらにヒット!弾かれたように飛びのく大神の動作、そして僅かに羞恥の紅に染まったその表情。
紅蘭は鼻血が噴出そうとするのを必死で押し留めた。


(あ・・・アカン!!!これは本気でまずいで・・・?このままじゃあウチ・・・!)


今にも決壊しそうな紅蘭の理性。
『萌え』という洪水は、紅蘭の『理性』いう防波堤をものすごい勢いで押しまくっていた。
そして、防波堤に罅が入り、秒読み段階に移行しようとしたとき。


バタン!!


「紅蘭!?何があったの、あんな大きな声を出して!?・・・あ、あら?紅蘭、何故鼻を押さえてるの?・・・あれ、大神さん・・・へ?へぇ!?」


出待ちをしていたかのようなさくらの部屋への乱入。
この場は、今まで以上に混沌の世界へと移行しようとしていた。









【さくら】
「ひょわああああぁあああぁああああああああああああああああぁああ!?」


あら?これは・・・紅蘭の声!
何があったのかしら?中庭にまで届く声なんて、只事じゃないわね。

今まで剣のお稽古をしていたとはいえ、紅蘭に危険が及ぶまで気がつかなかったとは。
この真宮寺さくら、一生物の不覚です!!

どのような輩が侵入してきたかは知りませんが、私がいるこの帝劇で好き勝手はさせません!
紅蘭、今行くからね!?

私は霊剣荒鷹を鞘に収め、帝劇二階に向け走り出した。


※※※


あ・・・あら?紅蘭の部屋に入ったのは良いけど・・・誰も不審者なんていないじゃない?
そ、それどころか紅蘭の部屋に大神さんが・・・?
紅蘭は鼻を押さえて呻いているし、大神さんはその表情を僅かに赤くしてる・・・


ま・・・まさか!!??


こんな朝っぱらから定刻違いの営みをしようとしていたのでは!?
そんな、いつの間に紅蘭てば、大神さんと既成事実を作り上げていたの!?
くっ、マリアさんやアイリスばかりに気を取られていたのが迂闊でした、でもどうしましょう?

関係を持ったとはいえ、紅蘭は私の親友です・・・ここは友情よりも愛情を取るべきなのでしょうか?お母様、このような時はどうすれば良いのでしょう・・・?


『さくらさん、関係を持たれてしまったのなら仕方ありません、貴女の左手にある、霊剣荒鷹で口を塞いでしまいましょう。手段は問いません、命さえ取らなければ幾つも貴女の身に叩き込んだはずです』


・・・そ、そうですよねお母様。紅蘭、悪いけど、少し記憶を飛ばしてもらうわね。


「ちょ、ちょちょちょさくらはん!?何で剣の鯉口切ろうとしてんの!?止めてや?!」

「さ、さくら君!?君は何をしようとしているんだ!」


ふふふ、痛いのはほんのちょっとだからね、紅蘭・・・ってあれ?
空耳かしら、有り得ない台詞が聞こえたような・・・


「お、大神・・・さん?」


僅かな期待とともに、大神さんに問いかけてみる。


「・・・ほっ、良かった、元のさくら君だ」

「ぶっ」


ぐっ!?さ、さくら君?!そ、それにその微笑・・・何という破壊力!?
僅かに首を傾げたような姿勢もツボね、これには抗いようが無いわ。
そ、そうなの、紅蘭もこれを至近距離で受けたからあのような感じになったのね?

た、確かにコレは効くわ。お婆様の脳天かち降ろしの竹刀の一撃よりも衝撃を受けたわ。


「な?さくらはんも分かったやろ?」

「えぇ・・・すごいわね、この威力は」


私は大神さんの微笑を直視したまま紅蘭と小声で話すのだった。


Side out









廊下から誰も来ないのを確認し、さくらは後ろ手で扉を閉める。
そして紅蘭の部屋の中央に歩を進め、紅蘭と大神の間に座る。


「ねぇ、紅蘭・・・何故こうなったのか教えてほしいんだけど」

「はいな、今説明したるわ。・・・・・・・というわけで、大神はんは一時的に性格が丸くなってるって状態なんや」


紅蘭がざっと説明し、それに少し質問をしてからさくらは大神に向き直る。


「大神さん?」

「ん?何だい、さくら君」

「「ぐっ」」


二人そろって胸を押さえるのを見て、怪訝そうに大神が問う。


「さっきから二人とも様子が変じゃないか?由里君に言って薬でも持ってきてもらおうか?」

「「いえ、大丈夫ですから(やから)!!」」


どうにも話が進まない。
困った大神は眉毛をハの字に曲げて後ろ頭をカリカリと掻く。


「「き・・・・キタァァァァァァァ!!!!!」」

「どわっ!?」


奇声を上げる二人、そしてドン引きする大神。


「お、大神はん?!ちょっと抱きつかせてもらって良いやろか?」
「あ、紅蘭ずるい!私がやるの!」
「しゃあないな、ならウチは大神はんの膝にやな・・・」
「それもダメぇ!!」


「・・・」


何だコレは。
この場に他の面子がいればその3人の変貌にドン引きしかねない状況に、大神は困った表情でその場に座り尽くすのであった。






そして約3時間後。
さくらと紅蘭が未だに舌戦を繰り広げている中、大神の目蓋が落ちる。
そして、ひと時を置いて開いた大神の双眸には、普段と同じ、不敵な光りが輝いていた。


「だから、これくらいは私の権利として・・・」
「それを言うならウチかて・・・」


「・・・・・・」


ゴツン!!!×2


「「きゃああああ!!」」

「うるっせぇぞくそったれ共!!ちったぁ静かにしやがれボケが!」

「「あ・・・」」


そう、大神から『まるみつ君』の効果が消えうせたのだ。
そしてこの時を待っていたかのように大神の口から罵声が飛ぶ。


「ったく黙って聞いていりゃあ好き勝手抜かしやがって・・・ちぃっとヤキ入れねぇと堪えねぇみてぇだな?」

「「ヒィッ!?」」


先ほどの柔らかい表情から一転、般若のような顔に表情をを引き攣らせる二人。


「よっしゃ、じゃあ佐藤は『まるみつ君』の処分、一粒たりとも残すんじゃねぇぞ・・・あ?んで真宮寺はオレと稽古だ・・・たまには素手での稽古もやっておかねぇとなぁ・・・あ?分かったか?」

(な、なあ、さくらはん。あの大神はんの怒り様・・・まさか全部覚えて・・・?)
(それしか考えられないわね・・・)
「ゴルァ!?何こそこそやってやがんだ、さっさとしやがれ!!」

「「は、ハイ!」」


慌てて立ち上がり、紅蘭は残りの薬を袋に入れて外へ、そしてさくらは着替えに自室へ。
それを見送った大神は、ぽつりとつぶやいた。










「はぁ~・・・あんなに嫌そうにされるたぁ・・・オレはオレのままで、ということか」










あとがき:このサクラ大戦SSを作成するにあたり、私が一番やってみたかったのがコレです。
初期大神を性格改変にし、SSの中で原作大神にしてみたら花組がどのような反応を見せてくれるのか?これをいろいろ妄想し、軽めではありますが紅蘭とさくらのリアクションを描いてみました。

あと数回、原作大神が出てくる予定です。



[16303] 第8話・あやめ回想
Name: く~が◆9b59c775 ID:df067120
Date: 2011/06/21 23:17
カチャ・・・カチャカチャカチャ・・・


「ふう・・・」


作戦司令室。
そこでは、その日休みの米田に代わりあやめが仕事を片付けていた。
とは言えど、今は帝劇は休みの期間に入り、そして帝都の様子は然程変わった様子は無い。
追尾君を作ってくれた紅蘭には感謝しているのは米田を始めとして、作戦室に詰める全員であろう。


そして。


「んっ・・・」

ギィッ・・・


あやめが椅子にもたれかかり、伸びをしながら一方では別のことに想いを馳せる。


「ふふっ・・・あれからもう、3年が経つのね・・・」


あやめの脳裏に甦るのは、降魔戦争が終わり妹と一緒に神戸に観光に出かけた時の事。
あの時間違いなく、己の奥底に燻っていた激情は綺麗に流されたのだ。
あの、大神一郎の手によって。










時は7年前に遡る。


降魔戦争。
それは、遥か昔に日ノ本の奥底に封じ込められた魔物が封印を破り、地上に湧き出た時に起こったものだった。
結界が弱くなっていた神社・寺の御神木は粉々に破壊され、次々に姿を現す降魔。
当時、光武なんて便利な物は無く、人々は己の肉体と武器を以ってそれに立ち向かわなければならなかった。

が、降魔と人との差は絶大だった。

次々に破られ、地に伏せていく帝国陸軍。
蹂躙されてい帝都。
響き渡る人々の絶叫。
当時の帝国陸軍に為す術はほとんど持ちえていなかったのだ。

そんな中、由緒ある家の後継者を中心に少数精鋭の部隊が編成され、これに当ることになったのだ。


仙台の真宮寺家。
東京・浅草の米田家。
東京・銀座の藤枝家。
京都・祇園の山崎家。


それぞれが霊刀・神刀を受け継ぎ、屈強な肉体・精神・そして霊力を持つ者達。
わずか4名で編成された帝国陸軍対降魔部隊が、陽の目を浴びることになったのだった。

わずか4名の精鋭が戦場に一度姿を現せば、その場の形勢は一気に逆転した。
光刀無形が、神剣白羽鳥が、神刀滅却が、そして霊剣荒鷹が振るわれる度に、今まで掠り傷しか負わせることのできなかった降魔を蹴散らすに至った。
その報が齎される度に帝国陸軍の士気は上がり、それまで後退気味だった戦線を一気に持ち直すことになった。
これならば、と、人々は大いに期待をした。
憎き降魔を全滅させるのは時間の問題だ、と。




現実はそう甘くはなかった。
幾度とも無く戦場を駆け抜け、降魔を下して来た4人の体力・精神力は限界ギリギリにまで追い詰められていた。
それでも、4人はボロボロの体を引き摺りながらも出現地点を割り出し、そこに至ったのだ。

だが、そこに到達するまでの間の幾度かの戦闘の後、4人は窮地に立たされていた。
それは再封印の手段が不明だということに気づいたのだ。
それぞれの表情が絶望の色に染まっていく。
あやめの神剣白羽鳥を持つ手は震え、もはや持っているのも精一杯の状態。
山崎の足は止まり、華麗な剣術の冴えは見る影も無く。
米田の老齢ながらの体力は限界まで達し、気力だけで持ち耐えている状態。
一馬の霊気からは揺れの幅が大きく、安定していない。

そして。
4人の目の前に広がる、無数に沸いてくる降魔の群れ。


一人の男は、その光景を見てしばしの間考えに耽る。


『・・・米田さん、あとの事は頼んでいいか?』

『・・・一馬・・・?お前ぇ、何を考ぇてやがる?!』

『なぁに、あいつらを一泡吹かせる手段を考えついたってだけです。・・・山崎少佐、藤枝中尉、ちと頼みたいことがある』

『『・・・・・・』』

『ははっ、了解。なら返事は良いから出来るかどうかだけを首肯で応えろ。数分の間、私に敵を近づかせないことは出来るか?』

『『・・・(コクッ)』』

『そいつは重畳。米田隊長、ちと手荒な手段に出ます。後のことはよろしくお願いします』

『・・・・・・』

『隊長にはいろいろと公私共にお世話になりました。つきましては以後も私の家族に気をかけてもらえれば、と思います』

『・・・一馬』

『まぁ、時間も無さそうですし、私は準備に移ります・・・お二人さん、準備は良いか?』

『『応』』

『待て、一馬!!』

『そいつぁ聞けない命令ですな。生き残ったらお咎めは幾らでも』





『『はああああぁあああああ!!!!』』

『ギィッ!?ギャギャガ!!!』

『ちぃっ、ちとキツイが・・・魔神器よ、我が霊気を吸え!!我の元、結界陣の再構築実施・・・ぐっ!?』

『一馬!?』

『『真宮寺大佐!!』』

『若菜・・・さくら・・・!わが身は英霊となり、いつまでもお前達の側にいるぞ・・・!・・・全霊気最大開放!!』



光。

まるで帝都全体を輝かしたかのような光に包まれ、その中で魔神機が唸りを上げる。
魔神器を中心に巨大な結界が展開され、帝都中の寺社・神社に吸収されていく。
降魔は霊気の波に呑まれ、次々に結界の中心に吸い込まれていく。

そして。


『『『・・・!!!』』』


一層強い光が輝き。


帝都中を徘徊、そして湧き出てこようとしていた降魔は一掃されたのであった。

一人の男の犠牲と引き換えに。









時間は現在に戻る。


「真宮寺大佐・・・」


数年前の回想から我に返り、ひとりごちる。
あの時の心の傷は癒えたとは言え、忘れることはできない出来事なのだ。


「そしてあの後・・・それなりに立ち直るまで3年かかった・・・のよね」


あの時の壊れ方は、我ながら酷いものだったと思う。
妹に支えてもらわなければ絶対に立ち直れなかっただろう。
そう考え、そして次に浮かんでくる男性の顔に、あやめはくすりと微笑を零す。


「大神君・・・知ってか知らずか・・・今となっては確認の仕様も無いけど」


あやめの思考は、また昔の思い出へと移っていった。









3年前。

あやめは妹と共に神戸へと来ていた。
妹からの誘いを受け、気分転換になればと思っていたのだ。
地元東京から船に乗り、大阪を経由して神戸へと降り立った。


『姉さん、こっちよ。ほら、搭乗券はこの鞄に入ってるからね?』

『分かったわよ・・・かえでってば、誰に似たんだか細かい性格してるんだから・・・』

『姉さん?聞こえてるんだけど?』


それが自分の人生の運命を決めるとは知らずに。










『大神よぅ・・・やっぱまずくないか?隊舎から無断で抜け出して?』

『ばっか、加山。オレぁあの爺ぃに眼をつけられてから変な修行ばっかさせられてんだぜ?まさか軍属してからも継続されるとは思わなかったし。ちったぁ気分転換しねぇと持たねぇよ』

『・・・ふむ。オレはその修行が何か知らないが相当な荒行ってのは雰囲気で分かる』

『バッカ、ありゃあ地獄だ地獄。あの爺ぃ、地の底から甦ってきてんぜ絶対』

『・・・はは・・・そこまで言うか大神よ』

ドンッ

『はっ、当然のことを・・・っと、すまねぇ、大丈夫か?』

『ちょっと、どこ見てんのよこのボウズ頭!』

『はぁ!?んだとこら、こっちが下手に出て謝ってんのにその言い様はよ?』

『ね、姉さん落ち着いて・・・あの、すいません。今ちょっと姉さん不安定でして・・・』

『かえで?人を病人のように言うのはやめてくれる?』

『もう!・・・本当にすいません、この辺で失礼させていただきます』

『・・・あぁ、こちらもすまなかった』

『はい。それでは・・・』









「くすっ・・・そうそう、初めて会った時はお互い喧嘩腰だったわね・・・私も不安定だったとは言え、あそこまで噛み付くなんて・・・」


思えば、自分自身はあの時よりは大人になったと自負できる。
でも・・・


「大神君・・・今とあまり変わらないじゃない・・・くすくすくす」


思わず手を口元に当てて笑ってしまう。
昔の面影をそのまま残し、そのまま成長を続けていく大神。


「っ・・・はぁ、やだ。顔が熱くなって・・・」


ポケットから西洋物のハンカチを取り出し、それを顔に乗せて天井を向く。
どこまで思い出したか、暫し考えてから、


「そうそう、あの後面白いように遭遇したのよね」









『ったくよ、あのアマちっと美人だからって調子乗りやがって』

『まぁ落ち着けよ大神ぃ。ほれ、屋台でたこ焼き買って来たぞ』

『お、有り難ぇ。んぐんぐ・・・むっ!こいつぁ美味ぇ!!』

『お、そいつは良かった。・・・んむ、新しい食感だ。新鮮だな』


野郎二人が縁日の屋台でたこ焼きをむさぼっている前を、見覚えのある二人が通り過ぎる。
一人は長髪を腰まで伸ばし、もう一人は肩の辺りで綺麗に揃えている。
似通った顔の姉妹。
その二人に、大神と加山は確かに見覚えがあった。


『げっ、あの時の短気年増じゃねぇか・・・おい、加山。向こう見るんじゃねぇ。背中見せとけ』


素早く背中を見せ、顔を隠す大神。
加山は二人を見て、おずおずと声をかける。


『お、おい、大神よぅ・・・』

『あ?早くしろって!あんな年増に因縁つけられたんじゃあ折角の気分転換も台無しじゃねぇか!』

『だ、だからな?聞いてくれ、大神・・・ぐえっ』

『あ?んだよったく・・・』

『あら・・・さっきから年増年増って・・・くびり殺されたいのかしら・・・?』

『ってげっ!!!』


大神がふいに後ろを見てみれば、件の女性が加山の首を片手で掴み、大神を凝視していたのだ。
思わず後ずさる大神。


『私、こう見えてまだ20歳なんだけど・・・?ねぇ、ボウズ君?キミ、合気道の技受けたことあるかしら・・・?私に任せてくれれば、一捻りで昇天できるわよ・・・?試してみる?』

『・・・ちっ、この地獄耳年増、爺ぃと同じ気配を感じるな・・・(ボソッ)』

『何ですって!?』

『や、何でもねーです。独り言です』

『くっ・・・』


泡吹く加山をよそに、お互いガン見する二人。
妹らしき女性は、二人に視線を行ったり来たりさせておどおどしている。


『ね、姉さん・・・?せっかく再会したんだし、もう少し仲良くしましょう?その方が楽しいわよ、きっと』

『おっ、あんたぁこの・・・と違って話せるね』

『ねぇ、今のその間に何を思ったの?!私を侮辱したわよね、絶対!?』

『やれやれ、被害妄想の激しいお方で・・・あ、お姉さんなの?大変ですね~』

『こんな腹が立つのは久しぶりかも・・・かえで、行くわよ?この二人と一緒にいたらいつ手を出すか分からないから』

『あ、ちょっと姉さん・・・あの、すいません、度々姉が・・・』


加山を開放し、背を向けて歩き出すのを見て慌てながら大神達に謝罪するかえで。


『あぁ、別に気にしてないですよ。こっちもこの大神が悪いんだし。あ、オレ加山、こっち大神って言います』

『ありがとう。あ、私は藤枝かえで、姉はあやめっていいます。・・・また機会がありましたらその時に』

『はい、楽しみにしてますね』


今更ながらに名前を教えあう加山とかえで。
もちろん、あやめと大神は聞いちゃいないのだが。

手を振りながら遠ざかっていく姉妹に、二人はようやく息を吐く。
知らない内に緊張していたみたいだ。

大神は訝しげに眉を寄せて考え込んでいる。


『・・・加山』

『ん?何だ、大神』

『あの、年増の方・・・藤枝っつったっけ?姉の方だ。妙な気配を内側に感じてな・・・気のせいだといいんだが』


真剣な表情で語る大神に、加山はため息をついてニヤけながら


『そんな気になるならよ、同行すればいいじゃないか。大神ともあろう者が、ウジウジ考えてたんじゃあ格好つかないぞ?』

『ばっか、別にそんなんじゃねぇよ・・・あー、くそ。分ぁったよ、行けばいいんだろ、行けば』

『うんうん、それでこそ大神だなぁ』


大神と加山は空の入れ物をゴミ箱に捨て、行動を開始したのであった。









・・・い・・・れい・・・副司令?」

「・・・ん・・・?」


目蓋を開ける。
いつの間にか、意識が落ちてしまっていたらしい。
眼前には、かすみの心配そうな表情があった。


「・・・あら、かすみ。どうしたの?」

「申し訳ありません、このような所で眠られたら風邪でも引くかと思いまして」

「そう、ありがとう」


椅子から体を起こし、立ち上がって伸びをするあやめ。
かすみは、机の上の決裁された書類をまとめ、それを鞄に収めている。


「かすみ、今日は上がっていいわよ?私も今日は上がらせてもらうわ・・・」

「あ、はい。分かりました。それでは副司令、お先に失礼します」

「ええ、ご苦労様」


パタン・・・


作戦室の扉が閉められ、再び一人になるあやめ。
軽く首を振り、肩を回して眠気をどうにか振り払う。


「さて・・・久しぶりに昔のことを思い出したことだし、部屋に戻ってゆっくりしましょうか」


ひとりごち、最低限の電源を残して消灯し、1階へ上がっていくあやめ。


(ジジジッ・・・)


作戦室の大型蒸気画面に、若かりし時の4人の姿が一瞬映り、すぐに消えたことに気づくことは無かった。









あとがき:8話をどんだけ延ばすんだよ!って声が聞こえてきそうです・・・申し訳ありません、ストックと仕事、更新できる日時を考えたらどうしてもこうなってしまいます・・・

ストックについては、1のシナリオが2通りのエンディング、2のシナリオの料亭までは進んではいますが推敲が全然できていない状態です・・・

何とか夏の休暇までには1を仕上げたいところです。


今回は、あやめさんの回想を前・後に分けています。毎度のことながら文章が少ないのと、起承転結がはっきりしない文章力の無さが浮かんでいますね^^;

感想でもいただきましたとおり、1話から全然成長していない作者ですが、頑張って勉強していきますので、これからもお付き合いの程よろしくお願いします。



[16303] 40000PV記念ネタ的SS
Name: く~が◆9b59c775 ID:04487084
Date: 2010/03/12 11:04
※これはネタです。本作とまったく関係の無い話ですので読み流してください^^;


「え~、注目、ちゅうも~~く!!いいかぁ、てめぇら!!オレ達鐘の音学園学生代表!!
今から帝国劇場に寸劇見物に突入する。おめぇら、気合入ってんか、あ?」

「そ、総長~~!!ついに・・・ついにオレ達にも春がきたっしょ~!!ぐふふ、
さくらちゃんにマリア様・・・そしてすみれ様のエロい衣装・・・最高~~!!」

「バッチグーの言うとおりでごわす!アイリスちゃん・・・おいどんロリでごわすから、
アイリスちゃんしか見ないでごわす」

「おーおーおー、バッチグーも天神も少しは落ち着きなって。ここはこの一番星様が
ナンパの手本を見せてあげるからさぁ~・・・ふむ、『オンナの口説き方傑作100選』に
よると・・・おぉ、これだ!!迷ったふりをして運命的な出会いを演出する・・・
うんうん、やっぱこういう偶然こそがすみれ嬢を落とすのに最適だな」

「てめぇら~!!鐘の音の男子ともあろう者が下品なツラしてんじゃねぇ!!ぅ愛情~~!!!」

バキャァッ!!ドガァッ!!ガスゥッ!!ゲシッ!!!


「あいたぁ!そ、総長、何でオレまで!?」

「たぁかぁさぁきぃ?お前があいつら抑えなくてどうすんだコラ?やんのか?あ?
やぁってやんよ~!!鐘の音学園学生総長、堀田健一にケンカ売るとは、い~~ぃい
度胸じゃねぇか?」

「ご、誤解ですぅ~!!」

「問答無用!!ぅあ~~~いじょ~~う!!!」

「ぎええええええええ・・・」




「・・・なんだあいつら・・・入るんならさっさと入りやがれってんだちくしょうが。
オレがモギリしてるからってなめてんじゃねぇのかあのガキ共・・・」


おかしな5人組がどつきあいを繰り広げているのは、帝国劇場前の大通り。

そして見慣れない格好をしている。

一人は赤い髪を上に上げ、そして余った前髪を前方できっちり固めている。
二人は長い髪を中央で分け、むさいくらいにねっとりとしている。
一人は、短い髪を野獣のように立てており、どことなく野生くさい。
そして最後の一人が、普通の髪型、普通の体形。どうやらあの集団の押さえ役みたいだ。


そしてバッチグーと呼ばれた、小太りの眼鏡をかけた少年が先頭に立ち、音頭を取り始める。


「それじゃあ皆さんご一緒に。劇場で道に迷う!偶然出会い、胸高鳴る!!」

「「「劇場で道に迷う!偶然出会い、胸高鳴る!!」」」

「デートに誘う!!股、完っ全に開く!!」

「「「デートに誘う!!股、完っ全に開く!!」」」

「ハプニングあ~~~んど」

「「「「セ~~~~~ッ○ス!!!!!」」」」


「だめだ、こりゃ・・・」


「だぁあああ!!!いい加減にしやがれってんだこのクソッタレ共がぁ!!
入るのか入らないのか、どっちかはっきりしやがれ!!」


大神がいい加減に罵声を浴びせたとき、瞬時に5人が動く。
そして一糸乱れぬ動きで大神に入場券を差し出す。


「「「「「これ、お願いします」」」」」

「お、おう・・・」


大神にしては珍しく、二の句が告げないまま入場券をモギるのであった。









【大神】

ちっ、今日は変な客が来やがったな。
確か、鐘の音学園、と言ったか?学園というからには何かしらを修めるところには
間違いねぇ。

工作員というのも捨てられねぇが、あいにく、あいつら見てたら思春期のクソガキ共だ。
この推論は却下だ。

だとしたら何が目的だ?
あんなに劇場の前で騒がれたら客足が遠のくのは間違い無ぇ。

!ま、まさか、どこかの芝居小屋の刺客か!?
だとしたら面白ぇ。
自慢じゃねぇが、ここの芝居は大日本帝国探しても見付からないくらいの錬度を誇る。
興味無かったオレが見とれちまったんだから間違い無ぇ。


・・・っと、これでモギリは最後か。
ようやく最後の客が通りすぎ、オレの仕事は一旦終了だ。
あとは終演の時に客の整理するぐれぇか。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・気になるな。

あのガキ共に何もできるわけ無ぇとは思うが何故か気になる。
ちょいと客席を覗いてみるか。

さすがに1階の扉を開けちまったらせっかくの照明演出が無駄になる。
2階のところにある、オレ達しか覗けねぇ側扉から覗いてみるか。


・・・ん?
おかしい。

あいつらの内、普通そうに見える奴しかいねぇ。
どこかに潜みやがったが?


くそっ、こいつぁあいつらを通しちまったオレの責任だ。

オレが何としても探し出し、尋問をしてやる。
軍隊あがりの尋問術・・・ナメんなよ?


さぁ、捜索開始だぁ!









「ぐはははは、こ、これが衣裳部屋・・・まさに壮観っしょ!!」
「ぶふぅ・・・お、おいどん鼻血が出そうでごわす」
「ふひひひひひひ・・・これが良いかな?それともこっち?」


鐘の音3バカ(双葉銘)が居るのは舞台裏にある衣裳部屋。

そこにはもう誰もが着替え終えたのか、誰も居なかった。
というよりここまで来るのに誰ともすれ違わなかったからまさに奇跡と言っても過言ではないだろう。

おもむろに深呼吸をし、充満している女性特有の匂いを精一杯嗅ぐ。
特に、天神は深呼吸のし過ぎで過呼吸になるくらいの勢いだ。


「「「スンカスンカスンカスンカ・・・」」」


たっぷり3分は堪能しただろうか。
思いの他堪能した3人は、次に着替えの物色を始める。


「開演まであと15分っしょ。てことは、今日の出演者は全員着替え終わってることになるっしょ!」
「くけけっ、すみれ嬢の着物・・・ハァハァ」
「アイリスちゃん・・・幼女の匂いがたまらんでごわす」」
「聞いてる?キミタチ・・・」


だが、妄想に入っている一番星と天神に気づき、ここは単独行動をしようとバッチグーは
そろりそろりと奥へと侵入を開始する。

だが。

ガシィッ!!


「バッチグー、おいどん達を置いていくのは許さんでごわすよ」
「そうだぞ~?ったく相変わらず出し抜こうとするのが悪い癖だぞ~?」


妄想から帰ってきた二人に肩を掴まれる。


「ば・・・ばっかだな~。オレが先に行って当りをつけようとしているんじゃないか」
「信じられんでごわす」
「右に同じだ、バッチグー」
「うぅ・・・」


ばさりと親友二人に斬り捨てられ、さめざめと涙を流すバッチグー。

ここで3人の注意は完全に背後を抑えていなかった。





ガシィッ!


「「「ヒィッ!?」」」

「よう、おめぇら・・・見つけたぞおい・・・このオレに探しまわさせるなんざぁいい度胸してんじゃねぇか・・・あ?」


3人を捕まえる屈強な腕。
3人が恐る恐る振り向けば、額に青筋浮いた大神の姿があった。
「「「げっ、モギリのおっさん!?」」」

「誰がおっさんだコラァ!?オレぁまだハタチだ!」


大神は、消えた4人を探す為一度アイリスのところに寄り、今度の休日のお出かけを条件に探してもらったのだ。
あいにく、3人と1人に別れて行動しているのが分かり、大神は1人の方をあやめに任せ、
自分自身は3人を抑える為に行動した。
そしてその場所は、控え室からそう離れていない衣裳部屋。

思春期特有の暴走が起きる前に何としても抑えるべく、大神は猛ダッシュして来たのだ。


「さ~て・・・お前ぇ達には色々聞きたいことがあるんだが・・・嘘ついたら何の保証もできねぇぞ・・・?あ?」


鐘の音学園総長、堀田健一を遥かに凌ぐプレッシャー。
青筋浮かべてにこやかに喋る大神。

その人間離れした雰囲気に、3人は激しく首を縦に振る。


「よ~し・・・なら質問だ・・・おい、そこのデブ。お前から順番に答えろ。名前は?」

「い、伊集院忠智っしょ」

「一番星光です」

「天神泰三でこわす」


天神が答えたときに、大神の眉がピクッと動くが次の質問をする。


「どこから来たんだ?」

「か、鐘の音学園っしょ。オレ達の母校、伝統ある学校っしょ」

「あ?学校・・・?聞いたことねぇな・・・まぁいい。お前ぇらのここに来た目的はぁ?」


最後に、一番聞きたかった事を質問する。


「え・・・えっと、オレ達帝都観光に来たっしょ。それで観光気分で今流行りの劇場でお芝居を見てみたかったっしょ」

「・・・・・・」


バッチグーが喋ることを聞きながら、目線を逸らさずに覗き込むようにして鋭い眼光を向ける。

そしてそれが数分続いただろうか。


「・・・ふぅ。どうやら本当みたいだな・・・そうか、ならば怖ぇ思いさせて悪かったな。
いろいろあってこっちもピリピリしてんだ。許せ」

「め、滅相も無いでごわす!できるならアイリスちゃんの匂いをかいでみたいでごわすが」

「「ば、バカ天神!!」」

「あぁ?幼女の匂いだぁ?」


天神の正直な一言。それに表情を一変させる大神。


「んだぁ?あ~・・・天神とかいったか、お前ぇらそんなにあいつらのふぁんなのか?」

「も、もちろんでごわす!!お人形さんみたいなアイリスちゃん・・・おいどんの心臓は
はちきれんばかりでごわすよ~!!」

「お、オレも同じっしょ!!すみれ嬢からキツイ言葉を浴びせてもらいたいっしょ・・・
それさえあればご飯何杯もいけるっしょ~!!」

「あ~、オレはやっぱりマリア様だな~。変態を見るような目で見られた日には・・・ヒッヒッヒ」

「(こ・・・こいつら・・・放っておいたらやばくね?だがこのまま放り出したら・・・)」


悩んだ末、大神は3人に提案する。


「よし、分かった。お前ぇらの要望には応えてやれねぇが会わせるだけなら会わせてやらぁ」
「「「本当っすか(でごわすか)!?」」」

「お、おう。だが面会時間は5分だ。あいつらにも舞台があんだからよ。終わったら大人しく
席に戻ってもらうぜ。いいか?」

「「「はい!!」」」









一方、赤いリーゼントの禁煙パイポを加えた目つきの悪い少年が地下への階段を下っていた。


「あぁ?なんだぁここは?あ~・・・ここは、劇場だよな?おげ、おげおげおげ(OKの意味)。んでもってだ、この地下へと続く階段・・・くせぇ。くっせぇな~?パンピーの
目は誤魔化せても、この堀田の目は誤魔化されね~ぞ、あ?」


誰に向かって話しているか分からないが、どこぞに向かってメンチを切る堀田。

そして。


「・・・ゴクッ。こ、ここは秘密基地なんか?あ?大発見だぜ、よっしゃ!バッチグーに
この事を教えてや「あら、それはダメよ?」おぉ!?オンナだオンナ!へっへ、オレにも
は~る~がやってきたぜコラ」

「・・・聞いてる?」


堀田の前に現れたのは帝国華撃団副指令、藤枝あやめ。
端麗な容姿を私服に包み、堀田に微笑み、話しかける。

が、堀田があまりにもテンションを上げ過ぎて一人で挙動不審な行動を取り始める。


誰も居ない方向にメンチ切る。
くるりと回れ右して照れ始める。
90度右を向いてリーゼントを整え始める。

終いには


「何でこんなところに美女がいんだボケ!あの、つかぬことを聞きますが、胸、揉んでもいいですか?」

「はぁ?」


何とも対応に困る発言をしてくる。
聞き間違いでなければ、何の躊躇いも無く自分の胸を揉んでもいいかと聞いてきたのだ。
あやめの表情に殺意が浮かぶが、すぐにその殺気を収める。
まさか少年を張り倒すわけにも行かず、仕方なくポケットからあるものを取り出す。


「え、あの、美人さんに質問があるんスけど、その、赤色の、注射器は、何なんですか?」


いちいち言葉を切り、妙な迫力を乗せてくる堀田に再度ため息を吐き、あやめは堀田の首筋に
その注射を打ち込む。


「ぐへぇっ?!」

パタッ


妙な悲鳴を上げ、堀田は気を失い地面に倒れた。


「ふぅ・・・まさか民間人にここを見付かるとはね・・・少し劇場を改装する必要があるかしら」


そうつぶやき、音も無く現れたゴツい軍人に堀田の身を渡す。


皮肉にも、これを機に地下へ降りる階段が徹底的に秘匿され、それによって後に帝劇が
襲撃された際、時間稼ぎとして役に立つ時がくるのだが、それはまだ先の話・・・









「天国っしょ!天国っしょ!!生きててよかったっしょ~!!!」

「うんうん、これもみんな、あの大神さんというモギリの人のお陰だなぁ」

「ぐふふふふ・・・アイリスちゃん、そんなに脅えないで欲しいでごわすよ」


一方、控え室では例の3人が自らの下心を隠そうとせず、ひたすら花組メンバーに話しかけていた。

特に酷いのが天神。


「うぅ・・・このゴリラさん、言ってることと思ってることが殆どいっしょ・・・」


アイリスが脅えるのも当然であろう。
カンナと同じくらいの背の高さ。柔道をやってガッチリとした体躯。
そして見え隠れどころではない、見え100%の下心。


「くらぁっ!ウチの踊り子を脅えさせんじゃねぇ!」ゴツゥッ!

「い、痛いでごわす~!!」


だが、大神の鉄拳により排除。そのまま天神は面会から外された。


「おろろ~・・・酷いでごわすよ大神どん・・・」

「てめぇにんな名前で呼ばれる覚えは無ぇっ!」バタン


外で何やら騒がしいが、すぐに静かになる。
おそらく警護で雇った軍人が連れ出したのだろう。


「・・・オレがダメだと判断したらすぐにあいつのように退室してもらうことになる・・・
よく考えて動けよ?」

「「わ、分かりました(っしょ)!!」

「天神、お前の仇は取ってやるからな!?」
「くへへへへへ・・・まぁまぁバッチグー、オレ達はオレ達で皆さんとの会話を楽しもうぜ?」


「油断ならねぇ」









楽しくもあり、そして夢のような5分間を過ごした二人。
その顔は晴れ晴れとしており、まるで憑き物が取れたかのような表情だ。


「大神さん、今日は本当にありがとうっしょ」
「帝都に来た良い記念になります」

「おぉ、楽しんでもらったんならオレは劇場の関係者としてこんなに嬉しいこたぁ無ぇ。
また機会があったら見にこいよ」

「「はい、必ず」」


演目が終わり、バッチグーと一番星は5人を代表して大神のところに来ていた。
それに対し、普段では見せないような笑顔を見せる大神。


「あの~・・・つかぬ事をお聞きしますが」

「あ?」

「祐介はいるから良いとして、天神と総長はどこに行ったのか知りませんか?」


そう、あの圧倒的な存在感を誇る2人がいないのだ。


「あぁ、あいつらなら先に帰ってったぞ。何やら用事ができたらしくてな」









「ぎええええええ・・・も、もう止めて欲しいでごわす~」

「てめぇら・・・オレを差し置いて会いに行くとはいい度胸してんじゃねぇか・・・あ?
天神、お前をオレが3人分まとめてシめる!!ぅあ~~いじょ~~~う~~!!!」


バキィッ・・・!!ドコォッ・・・!!ガスッ・・・!!


「ぐへええぇぇぇぇぇぇ・・・」
「あいじょう~~~・・・」
「おいどん本当に死んじゃうでごわす」
「!まだ口きけたんか?おらぁっ!!」
「あいじょおおお・・・」









あとがき:本当にネタです。40000PV記念SSがこんなんで良いのかと思いもしましたが、更新ですw
えっと、知る人ぞ知るエロゲからのクロスです。分からない人には少しつまらないかもしれませんが^^;


『2』に向けての伏線があると言えばあるのですが、正直使うかどうかは微妙です^^;
只でさえこの『1』も終わるかどうかが微妙になってきましたし。


ですがこうやって見てみると、1話に対し、延べ3600人の方が見てくださっている事実に、
素人SS書きとして此れほど嬉しいことはありません。
誤字報告、そしてこうしたほうが良いのではという意見も頂き、本当に感謝です。

またキリのいい所までPVが伸びましたらまた、ネタ的なSSを更新致しますので、何か
リクエストがございましたらご意見ください。知っているネタでしたら弄って更新いたします^^



最後に、このSSの時代背景の矛盾のツッコミは無しでお願いしますw



[16303] 80000PV記念ネタ的SS
Name: く~が◆9b59c775 ID:217c2d27
Date: 2010/11/20 22:36
ビィ~~~~ッ・・・ビィ~~~~ッ・・・

帝国劇場地下にある、作戦室の大型蒸気画面に映る地図。
そこには、追尾君から送られてきた敵の出現箇所が光っていた。

それを厳しい表情で見つめるのは、帝国華撃団副司令の藤枝あやめ。


(また、悪い時機に現れたものね・・・)


あやめがこう考えるのも無理は無い。
今日は大神達が一丸になって取り組んできた、大神が脚本・演出を描いた演劇の初日であったのだ。

帝国劇場副支配人として、そして帝国華撃団副司令として彼らと接してきたあやめの表情に陰が差す。


(どうするべきなの・・・?今や帝都の危機・・・でも、でも!!)


あやめは、地下から1階に上がる途中でも考え込む。
どうするのが最適なのか。
どうすれば演劇を止めずに敵を殲滅できるのか。


結論は『できるわけがない』。

今日この時ほど、あやめが帝国華撃団の少数精鋭を恨めしく思ったことは無かった。


(もし・・・もし私達の他に戦力がいたなら・・・!)


そう考えるが、それも詮無きこと。
今の状況を一番最適な形で終わらせるには・・・やはり演劇の中止しか無いだろう。


そう考え、あやめが向かったのは警報装置の前。


「・・・ッ!」


一瞬躊躇するが、警報装置に指を伸ばそうとする・・・が。


ガシッ


「えっ・・」

「・・・・・・」


掴まれた指。
肌を刺す臨戦態勢の霊気。


軍服を纏った、大神の姿があった。









【大神】

へっ、まさかオレが劇の脚本と演出を出すことになるとはよ・・・
あの真宮寺の、そして花組全員の熱望となっちゃあオレも無碍には出来ねぇ。

かあっ、本当にオレも丸くなったもんだ。
ここに来た時は敵地潜入のつもりだったんだがよ・・・

今じゃあオレの奥の手を見せ、奴らを守る場面も珍しく無ぇ。


これも・・・ここにいる奴らの、絶望的なまでのお人よしさにオレが染められたってこった。


ま、脚本とか書くのは初めてだったし、書き上げるのに1週間以上もかかったが・・・なんとか形になり、米田のおっさんの許可も取り付けた。
藤枝の年増に至っては、脚本を見るなり恍惚としてたが・・・ありゃあ何を考えてたんだ?
まあ、下手に聞いちゃあ藪突いて熊出すようなもんだしな、こいつは考えない方が良さそうだ。


そして全員で衣装を作ったり、奴らが脚本読んでる間はオレが雑用全部やっておいたり・・・
あまりにもの量にちいっとばかり飽き飽きしたがよ、やはり日に日に仕上がっていく道具・衣装や奴らの演技。

あれを見るだけでやる気が沸くってもんだな。
脚本書いて、初めて高揚感を感じた瞬間だった。


そして紆余曲折を経て・・・今日、新劇初日にこぎつけることが出来た。


これも、米田のおっさんを始めとして、裏方に徹してくれた風組の奴ら、道具の買出しとかを手伝ってくれた加山、そして花組・・・
誰一人欠けても、ここまで仕上がることは無かっただろうよ。


全員が、今日という日に向け努力し・・・そしてそれを披露する日がやってきた。
今日から3日間、忙しくなるぜぇ・・・



ん・・・?


なんだ、藤枝の年増が焦った顔して何してやがる・・・?
しかも軍服まで着込んで・・・

こいつぁちょいと、緊急を要する感じだな。


花組には知らせないほうが良い、あいつらにはあいつらしか出来ないことがある。
裏方なら・・・オレが出るぜ!!


そう考え、オレはようやく慣れてきた自動着替進入路に身を滑らせた。



※※※



へっ、やはり危惧が当たったってことだな。
今まさに、緊急警報を作動させようとしてやがる。


バカが!んなことしたらあいつらが気づいちまうだろうが!


「お、大神君!?」

「よう・・・何コソコソしてやがる?」

「じ、実は・・・」


なるほど、敵出現ってか?
嫌な時機に来てくれるじゃねぇか。上等。

あいつらの演劇の邪魔するやつぁ・・・オレが叩きのめす!!

Side out









某所。
そこには、過去最大級の数を誇る脇侍・大筒が満を持して待ち構えていた。

そしてその現場に。


「くっくっくっくっく・・・待ち伏せたぁ上等じゃねぇか・・・今まで書き物しかしていなかったこの鬱憤・・・存分に晴らしてやろうじゃねぇか!!」


大神が操る、白銀の光武がただ単騎、突撃を開始した。



「あやめ君!何を考えているんだ!?」

帝国劇場・舞台脇近くの空き部屋。
そこで私服の米田と、軍服のあやめが討論を続けていた。
いや、言い争いに近い。


「何のための特殊部隊だ!?敵が攻めてきた今のような時の為に、我々は存在するんだぞ!?」

「分かって・・・分かっています!しかし・・・あの子達は必死になって今日まで、今日と言う日の為に一生懸命にがんばってきました!」

「分かってる、それは分かってるがよぅ・・・」

「大神君は、あの子達の為に、一人で・・・向かってくれたんです・・・『あいつらにはあいつらしかできねぇ仕事がある・・・これは軍人の仕事だ。それによ・・・こういう時にこその、遊撃隊だぜ?』こう言って・・・私だって止めたかった!ですが・・・!」

「うぅ~~・・・大神が懸念していたことが起きた、ということか・・・これほど、自分の無力さに腹が立ったことは無いぞ・・・」


「「「・・・・・・」」」


そして、その言い争いを黙って聞いている人影が3つ。


「銀ちゃん、どうするネ?私達道に迷ってとんでもないところに出くわしたアル」

「ん~・・・でもあの二人が言ってる敵ってよ、カラクリのことだよな?それがわんさかいるとなると、よろずや全員で行ってもちぃっとばかり無理があるんじゃね?まあジャンプ的にはおいしいと思うがよ」

「銀さん、助けてあげましょうよ~。たった一人で誰にも知らせずに戦いに行った男・・・銀さんの好きな酔狂な人ですよ?」

「ん~、でもねぇ~、その男って妙にモテそうな気がするんだよね~?銀さん的にはそんな男はいっぺん死ねっつ~かさ~」
「っておいいいいいぃぃぃ!?あんたそれだけで見捨てる気かよ!?それで良くジャンプの主人公なんてやってるよ!?」

「うるさいアル、めがね。迷惑アル」ガスゥッ
「ひげっ!?」


大声で怒鳴りあう3人。
最早陰行も台無しである。


「「誰(だ)!?」」

「ほら、新八が騒ぐから見付かっちまっただろうが」
「本当アル。メガネ死ねば良いのに」
「それボクのせい?ねぇ、ボクのせい!?」


「「・・・・・・」」


緊張感すら無い3人に、二人は呆気に取られるしかなかった。









【米田】

はぁ~、只でさえ切羽詰った状況だってぇのに、この上なく怪しい3人組まで・・・

あの、死んだ魚のような目の腰に木刀を提げた男・・・
傘を持ち歩き、妙な言葉を使う少女・・・
オレと同じ、メガネをかけた明らかに二人に振り回されている少年・・・

何をどうすればこんな団体が出来上がんだ?


まぁこいつらのことは後で良い。

今はただ単騎向かった大神の援護だが・・・


今まさに始まろうとしている演劇。

この様子でさくら達に声をかけちゃあ大神の男気が廃るってもんだ。
そんなまねしやがったらあの大神のことだ、途轍もなく怒りだすだろう。


「あのよぉ~、考えてこんじゃってるところ申し訳ないんすけど」


ん?あの白髪の兄ちゃんが喋りかけてきやがったぜ。


「・・・あぁ、すまねぇ。今はちぃっとばかり緊急事態なんでな、それをどう処理するか考ぇていたところだ」

「それはさっき言い合ってた敵のことアル?」

「っ!」

「おっと、そんな怖い顔するんじゃねぇよ。銀さんチビっちまうだろうが」


鼻くそほじくりながら言われても全然説得力が無ぇぜ?


「銀さん、どうするんですか?ボク達ものっそい疑われてるんですけど!?」

「黙るアルよメガネ」

「って神楽ちゃああああぁん!?さっきからボクのこと名前で呼んでないよね!?明らかにボクの唯一の特徴だけあげつらってるよね!?」

「はぁ・・・」


あやめ君と目を合わせるが、返ってくる反応はおいらと一緒、か・・・


この混乱に紛れて忍び込んだ敵かと思ったがその可能性は限りなく低い。


「困ってるんならよ、オレ達『よろずや銀ちゃん』が相談に乗るぜ?もちろん有料」


よろずや、か・・・この帝都にあるなんて聞いたこと無ぇが、こいつらが秘めている戦闘力はなかなかのもんだと勘が騒いでやがる。
事は緊急を要するからな、話してみるとするか。


※※※


「話は大体分かったぜ、やっぱオレ達だけじゃあ手に余る。助っ人を呼んで来っからよ」

「助っ人?」


確かに、脇侍等の集団に生身で突っ込んでいくのは死にに行くようなもんだ。
こいつらには、ウチの帝撃みてぇな集団と馴染みがあるってぇのか!?


「それじゃあオレ達は拠点に戻る。何かあったときは・・・おぉい、定春~?」
『わん』
「この定春に言ってくれや」

「っておいぃぃ~~!?銀さん何こんな部屋に定春連れてきてんの?一緒にいたけど気づかなかったよ畜生!?」

「定春、メガネ黙らすアル」
『わん』かぷっ

「ぎぃぃやああああぁぁぁぁぁ!!??」


・・・頭痛くなってきたぜ、こいつらの相手すんのはこの老体にゃあキツイもんがあるぜ。
あやめ君・・・何故目を逸らす?

Side out









「うおりゃあああああ!!」

ザシュウッ!
ザンッ!
ズガァッ!

「くそったれ、数が多すぎるぜ!?」


たった1機で立ち向かう大神。
だが、転送装置で出現してくる脇侍の数は、その撃破数を上回り始めた。
ここで一撃滅殺型の必殺技でも出せば、かなり楽になる。
が、大神は自前の考えを崩そうとはしなかった。


いついかなる時にも力は秘するべし。


今や帝撃の霊気遮断結界を敷いていない状況では使えるはずが無い。


「転送装置は・・・あそこか」


大神は2刀を交差させ、前向きに重心を傾ける。


ゴォッ!!!


霊気を噴射剤として吐き出し、白銀の光武が凄まじい速度で駆け始めた。
転送装置に向けての突撃である。


「邪魔だぁあああ!!!どけぇええ!!」


ガガガガガガガガガガガガガガガガ!!


立ちふさがる脇侍を弾き、大筒が飛ばす砲弾を回避する。

が。


ドンッ!!ズザザザーーーー!!


時機を見計らっていた脇侍数体が、側面から大神機に飛びつく。

4体に纏わりつかれ、地面に伏す白銀の光武。


ズシャッ


その正面に、刀をふりかぶった脇侍が突っ込んでくる。
大神機に向け、突進の力を利用して攻撃力を倍増させ、取り押さえている味方の脇侍ごと斬って捨てそうな勢い。


(くそったれ、『力』を出すしかねぇか!?)


大神が決断をしようとした瞬間。


「今じゃ、三郎!ロケットパンチじゃ!」

『御意』


ズガァッ!


横合いからの攻撃に、脇侍はひとたまりも無く吹っ飛んだ。


「くっ、邪魔だあ!!」
グォッ!

霊気を一瞬だけ最大開放。
取り押さえていた脇侍を吹き飛ばし。


「さっきまでの礼だ・・・受け取ってくれや」

ザシュッ  ザンッ  ゴカァッ

機体を回転させながらの斬撃。


ドオオオオン・・・


3体の脇侍は爆散、大神は窮地を脱する。


「やれやれ・・・どうにか助かったか・・・って・・・え゛」


大神が助けてくれた謎の人物(?)に向き直る。

が。


「ふふふ、危ないところじゃったな、若いの」
『御意』

「・・・・・・」


変な眼鏡をつけた爺ぃ。
つぶらな瞳を有し、兜鎧直垂を完備した謎のからくり。

かぶき町にその人ありと言われた平賀源外とその従順なる(?)僕、三郎の姿があった。


「誰だお前ぇえええ!?」


大神の絶叫が戦場に響き渡る。
無駄に霊力を消費し、音響となって戦場を駆け巡り、蒸気機関によって動いている脇侍の行動を制限した。
それだけではない。


『ぎぎぎギギぎぎぎょい、ぎょい!?ギョイぎょい御意』

「さ、三郎ぉ~!?」


あろうことか、三郎の脳内すら沸騰させた。









【大神】

ちっ、オレとしたことが取り乱したぜ。
それも無理はないと思うがよ、あんな得体の知れねぇ爺さんとからくりがオレの窮地を救ってくれたんだ。
それに叫んだとき何らかの作用があったらしい、脇侍共やあのからくり動きがおかしくなっちまった。

あいつらにゃあ悪いが、今が殲滅の好機!


光武を高速機動(通常)。
あえいでいる脇侍をすり抜け、転送装置に接近し


「手間かけさせてくれたな・・・こいつで終わりだぁ!」

ザンッ ザンッ バシュッ

左斬撃、右斬撃、両交差斬撃。
よっしゃ、一つは破壊した。
あとはもう一つ!


「さ、三郎!?何してるんじゃ、奴らを倒さねぇかこのポンコツ!『ガン!』ってぐはっ」


あ、あいつら何やってやがる?
あの爺さんがあのからくりの操縦者(?)だよな?自分を殴らせるとはそういう気質なのか?


ガツンガツンガツン「さ、三郎やめブッ」ガツン


・・・さすがに見てて哀れになってきた。
っ!

ビュオッ!


くそったれ、戦場でボーッとしてるのは自殺行為ってぇのによ、まさかオレがしちまうとは!
あの爺さん達、最初以外オレの邪魔しに来たんか?


『ギィッ!?』

「ちっ」


また正常に戻った脇侍共が襲ってきやがった。
霊力展開。
刃に染み渡らせ、斬れ味を水増しする。


「うおりゃああああ!!」
ザシュウッ!

とりあえずこれでオレの周りから脇侍はいなくなった。

あたりを見回す。
あの爺さんが自虐行為をしている以外はオレの予想通りだな。
そろそろ何らかの動きがあってもいいはずだが・・・

!異様な妖気反応!?どこだ?


『クックックック・・・ハァッハッハッハッハ・・・おい、そこの爺ぃ!我が名は葵 叉丹!!我が機体と貴様の機体、どちらが上か尋常に勝負しろ!』


ぶっ

あ、あいつは加山から聞いた敵の科学者、なのか?
なるほど、佐藤みてぇなぶっ飛んだ思考を持ってるみたいだな。

まさか機体比べで出てくるとは・・・


何か間違えてねぇか?

Side out









「「ぶっ」」


吹いたのは大神だけでは無かった。
作戦室にて追尾君からの映像を見ていた米田とあやめも同様であった。

大神の窮地に、花組出動を決断しかけていたところに謎の援護。
そしてその人物に挑みかかるようにして出てきた敵組織の幹部。

突っ込みどころ満載なのだが、先ほどまでよろずや達の痴態を見ていた二人にとっては然程衝撃は無かった。それでも吹いたのだが。


「な、なぁ、あやめ君」

「・・・なんでしょう、米田司令」

「これ・・・放っといて良いんじゃねぇかって思うのはやはり問題あるよな・・・?」

「・・・私からは何も言えませんわ」

「・・・そうか」

「・・・はい」


二人の煤けた後ろ姿。


それは決して他人が見ることはない、最初で最後の恥部だった。


※※※


「三郎ぉ、ワシに対する挑戦してきたバカがいるぞ!あいつらに攻撃じゃ!」
『御意』

『ハッハッハッハ、この私にそのような稚拙な攻撃が効くと思ってるのか!』

『御意』

『ぐはぁっ!?ば、バカな!?この私の美しい機体が傷ついただと!?』

『御意』

『ぬぅう、さっきから同じ言葉を使いよって!この私を愚弄するか!?』

『御意』

『おのれ!』


「・・・・・・」


二つの機体がぶつかり合う。
お互いがお互いを好敵手とみなし、全力をもって攻撃していく。
まさにからくり大戦。
三郎の兜に源外が着座というかしがみついているが、それすら華麗にスルーし叉丹は容赦ない攻撃をしかける。
だが三郎も侮れない。自らを作り出した主人を守るように頭への攻撃を捌くか回避し、誘導式ロケットパンチを巧みに扱い叉丹を翻弄する。


それを遠い眼で見つめるのは、脇侍大筒転送装置を破壊しつくした大神であった。
なんだろうか、この締まらなさ。
うん、実に締まらない。


今回大神は、花組の仮の姿である劇場公演を裏から支えようとただ一人、戦場にやってきた。
それは遊撃としての役割を米田に知らしめる機会でもあったからだ。
何も幼女から少女までの女性達が、常に戦場にいる必要も無い。
今回の場合は特に顕著な例なのだ。

そう考え、刺し違えてでも・・・と覚悟を決めてやってきた戦場。


結果的には任務は達成した。
脇侍や転送装置を破壊し、敵戦力を殲滅せしめたことでそう言っても過言でないだろう。

が、大神の目の前で繰り広げられている二機の戦闘。


叉丹の攻撃!三郎は回避した!
三郎の『御意』!叉丹は激昂した!
叉丹の攻撃!三郎は受け流した!
三郎の『御意』!叉丹は激昂した!
叉丹の攻撃!三郎は・・・


まさに終わり知らず。
色々と突っ込みたいが、すでに大神の気力はゼロ。


「・・・こちら大神だ・・・米田のおっさん、あいつらこのままにしとこうぜ・・・簡易結界だけ張って、どちらかが倒れた時にオレがまた出撃する・・・頼む、引き上げさせてくれ」

『・・・許可する。ご苦労だったな、大神・・・』

「・・・ああ」


ますますヒートアップする二機の戦闘を背に、大神操る光武は肩をおとして戦場を後にするのであった。









結局、二機の戦闘は三日三晩続き、最終的な勝者の叉丹の機体は、マリア率いる帝国華撃団に集中攻撃を受ける。
いたくショックを受けた叉丹は、地底に引きこもって更なる機体を作り出し数ヶ月後に源外の住むかぶき町に侵攻するのであるが・・・それはまた別の話である。









あとがき:80000PV記念SSです。今や90000PVを超え、遅かった感が大きいのですがスルーしようと思います^^;

今回は私の好きな、かのジャンプマンガとのクロスです。
源外の言葉使いはうろ覚えですのでイマイチ自信が無いのですが、少しでもあの名作を表現できれば、と思って作りました。

起承転結のバランスがおかしいのは分かっていますが、皆様方からのアドバイスを元に修正していきたいと思いますので、忌憚の無い意見をお願いします。


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