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[16049] 【習作】 混沌幸運物語
Name: 榊燕◆972593f7 ID:f1eae2c8
Date: 2010/01/31 23:48
始めましての方は始めまして。
お久しぶりの方はお久しぶりです。
以前少しこちらで色々と書かせていただいております榊燕です。
今回また新しく物語を書かせていただいたので投稿させていただきます。
もし少しでも興味を持ってくださる方がいらっしゃいましたら是非一度読んでやってください。
良くある冒険者たちの物語です。
是非宜しくお願いします。



[16049] プロローグ
Name: 榊燕◆972593f7 ID:f1eae2c8
Date: 2010/01/31 05:18





          【プロローグ】





 何故、何故こんな事になってしまったのだろうか。
 いや、勿論後悔は無いし、嫌な所なんてほとんどない。
 多少はあるけどな。
 仲間達を見渡しながら溜息をついた。
 本当に何故こんなメンバーになったんだろう。
 右を向けば〇〇〇が一人。
 左を向けば〇〇〇が一人。
 後ろには〇〇〇〇野郎が一人。

  「お兄さん、ファイトですよ!」

 そして唯一の癒しの少女。
 少女以外の仲間をもう一度見渡して溜息をついた。
 何故こんな連中があつまったんだ?
 皆が皆良い奴で、俺にとって大事な仲間な事には変わりない。
 だが、もう少しこう、普通の仲間は来ないのだろうか?
 周りからの視線が色々と痛い気がするのは気のせいなのか?
 気のせいだと良いな。
 まぁだからと言って仲間が馬鹿にされたら許せんけどな。
 そしてそんな事を考えながら俺は周りに流され今日もまたいつもと同じ騒がしい日々を送り始める。





  「お、お兄さんごめんなさい! 隠すつもりじゃなかったんですけど言いだせなくて」

 ただ、唯一の癒しすら、癒しである事は変わらない物の普通とは言い難い、むしろこの中で一番凄い人物だった事に今はまだ気づいていなかった。



[16049] 第一話~流されて旅団~
Name: 榊燕◆972593f7 ID:f1eae2c8
Date: 2010/02/11 23:53



          【第一話~流されて旅団~】





 俺がこの世界に生まれ落ち早20年。
 とうとう俺の伝説が幕を開けるのだ!
 何て思っていた時期がありました。
 俺は一人酒場で酒をちびちびと飲みながら溜息をついた。
 仲間がみつからない。
 俺は20歳になると同時に旅団申請を出し、俺がリーダーの旅団を作ることにした。
 周りに呆れられ、嘲笑を受けた。
 何故ならば俺には実績という物が何一つないからだ。
 モンスターがはびこり、未発掘の遺跡、ダンジョンが幾らあるか解らないこの世界で俺は今まで戦闘や発掘、探索とは無縁の生活を送っていた。
 雑貨屋でアルバイト、酒場でアルバイト、引っ越し手伝いのアルバイト等々、本当に全くと言ってい良い程そういう世界とは無関係な場所にいたのだ。
 だが心の内は違った。
 俺は常にその世界で俺がリーダーの旅団を作る事を考えていた。
 だからこそそのお金を貯める為にアルバイトに精を出し、必死に金を溜めこみ今日やっとその夢が叶ったのだ。
 そんな俺の胸元には白いカードが一枚ぶら下がっている。
 冒険者としての俺の経歴や今現在のレベルやランク等が書かれている代物だ。
 其処に書かれているのはレベル1という最低レベルのレベルと、ランクEという最低レベルのランクだった。
 最低レベルで最低ランクのリーダー。
 そんな場所に誰が来ると言うのか?
 今までそんな事は一切考えていなかった。
 実際俺でも厭だ。
 こんな不安が有り余るやつのところに入るなんて。
 まぁ何より俺は誰かの下で冒険をしたりするのが一番厭だからそれ以前の問題だが。

  「はぁ」

 俺はまた溜息を吐いて酒を呑みこんだ。
 二時間ほど酒場でちびちびと酒を飲み落ち込んだ俺はとぼとぼと自分の宿屋まで肩を落として歩いていた。
 肩を落とし、地面を見ながら歩いていた俺に宿屋に入る直前で声が掛けられた。

  「お兄さんこんばんわ! あの、今日はどうしたんですか? いつものお仕事先にいないようでしたけど、それに何か凄く元気がないみたいですよ」

 お兄さん、その一言で誰かが解った。
 俺が良くやるアルバイト、通称何でも屋。
 職員は俺一人。
 だからこそ自由に辞めたりしても問題がなかったのだ。
 俺はいつも町の広場の噴水前で一人暖簾を出して仕事を探していた。
 このお兄さんと呼んでくれる少女、名前をルルと言うのだが、彼女はどうやらあの近くに住んでいるらしく良く俺に話しかけてくれる優しい娘だ。
 時々差し入れまでくれる出来た娘でもある。
 初めて出会った切っ掛けは、俺自身呆れるほど本気でかと思ったが不良連中に絡まれているところを助けた事からだった。
 ルルは結構な箱入りで育てられたらしく世間の事で知らない事が多すぎた。
 その日もまた厭な事があってプチ家出に近い感覚で外に出たらしい。
 そして追ってくる家の人から逃げている間に路地裏に入り不良に絡まれていたという。
 幸い俺はこの町の事なら端から端まで知っている。
 この手の仕事をしていたのだ、危ない人達にも知り合いが何人かいるのでそっち界隈の情報も少しは手に入る。
 その不良達は幸いにも俺の知っているそっち系の人より立場が弱い人だったらしくその名前を出したらすぐに引っ込んでくれた。
 ルルとはそれが切っ掛けで良く話すようになったのだ。
 今日は、いつもの場所に俺がいなかったから心配して宿屋まで様子を見に来てくれたらしい。
 ルルはいつもそうだ。
 仕事でその日は其処にいなかったりした時は大概こうして宿屋前で俺を待っていてくれ、仕事だと解れば安心したように笑ってくれるのだ。
 本当に良い娘だよなぁ。
 此処までしてくれるなら俺の事が好きなのかも?
 とか思ったけどないよな。
 こんな良い娘が俺の事好きとか夢見過ぎだって突っ込まれるか。
 いつもなら俺の様子とかを見て安心したような表情で「お疲れ様です! お帰りなさい」とか言ってくれるのだが、今日は俺が落ち込んでいたせいか心配そうに俺を見つめている。
 ルルは身長が150センチ程の小さな少女だ。
 最初見た時は正直12歳から14歳くらいだと思った。
 実際聞いてみると17歳だという。
 非常に驚いた。
 流石にそのときはルルに拗ねられ、機嫌を直してもらうのに少し時間がかかったものだった。
 綺麗な腰下近くまでの緑掛かった黒いストレートの髪。
 それと同じ色の垂れ目がちの優しい瞳。
 顔立ちは俺が最初其れほどまでに幼く見える程童顔で可愛らしい。
 俺はルルに何でもないよと伝えながらお礼を言って宿屋に入った。
 だがルルはそんな俺の言葉が信じられなかったらしく俺に続いて宿屋に入ってきた。
 初めてじゃないので宿屋のおじさんもルルを見て「いらっしゃい」と優しい笑顔で迎えてくれる。
 そして俺はそんな宿屋のおじさんにまで「大丈夫かい? 何かあったのかい?」と心配された。
 ああ、申し訳ない。
 皆優しい良い人ばかりだ。
 俺はあいまいに何でもないですと答えながら部屋に戻った。
 部屋の中でルルと二人になる。
 無言でじぃっと俺を見つめてくるルル。
 ああ、無理。
 そんな可愛らしく心配そうな目で見られたら黙っている事なんて出来るわけがありません。

  「本当に何でもない事なんだ。 前に話しただろう? 俺が旅団を作ってリーダとなるのが夢だって。 今日やっとその資金が貯まったから旅団を作る事に成功したんだ。 だけど全く考えてなかった。 俺自身が最低レベルで最低ランクの冒険者として始めるという事に。 そりゃそうだよな、そんな奴の所に誰が好き好んで来るのかって話さ。 結局誰一人来るところか笑われて、蔑まれてそのまま帰ってきたんだ。 本当に馬鹿だよなぁ俺」

 俺がそう言うとルルは少し悲しそうな表情をした後「そんな事は無いです!」と話し始めた。

  「お兄さんは良い人です! そんな馬鹿にする人達の事気にする事ないですよ! 確かにお兄さんは冒険者になったばかりで何も実績がないかもしれません。 それでも誰もがそれで馬鹿にする人達ばかりじゃないと思います。 諦めずに探せばきっと仲間だって見つかります! 絶対です、お兄さんに仲間がみつからない何て絶対ありません、神様だってそう言います! だからせっかく叶えた夢なんです、諦めたりしないで頑張ってください!」

 何処までも真っ直ぐに真剣に俺を目を見ながらそう言ってくれるルル。
 正直な話、諦めかけていた俺にはとても嬉しい言葉だった。
 同情から言っている言葉、そういうのではなくルルは本気でそう思ってくれている、それはルルを見れば解る。
 一人でも、そう思ってくれる人がいるだけで今の俺は救われた気分だった。
 何より、気づけばいつの間にか泣いていたらしくルルがあわあわと慌てながらどうしたものかと混乱している姿に自然と笑みがこぼれた。
 そうだよな、こんな事くらいでせっかく叶った夢を諦める何てそれこそ馬鹿だよな。

  「ルル、ありがとう。 本当にありがとうな。 ルルの言葉凄く嬉しかった」

 正直セクハラになるかもと思ったが、この時の俺はその行動を抑える事が出来なかった。
 気づけばルルを抱きしめながらそう言っていた。

  「はぅぁ! ひ!ひえ! わらしのほうこそうれひいでふ!」

 正直俺には何て言っているか聞こえなかったが拒否されなかった事にほっとした。
 真っ赤になりながら今にも湯気が出そうなルルにまた笑いが漏れた。
 あまりにも男性慣れしていないみたいだ。
 いきなり抱きつかれれば普通は怒って殴られてもおかしくない。
 拒否されず受け入れられても普通此処まで赤くなったりはしないだろう。
 俺はそんなルルを見つめながらもう一度ありがとうと礼を言って頭をなでた。
 最初の頃は頭をなでたりするのは失礼かと思っていたのだが、前に一度あまりにもちょうどよい場所に頭があり、その行動から我慢できずになでてしまった事があった。
 その時厭がるところか少し嬉しそうに表情をほころばせてくれたから、それ以来何かと結構頭をなでたりすることが多くなった。
 俺はその日、ルルのおかげで新たに決意を固める事が出来、明日からもまた頑張ろうと決めたのだった。









 お兄さんがいない。
 私はいつものように教会から抜け出していつもお兄さんが暖簾を立てている広場まで歩いてきた。
 だというのに今日はお兄さんがいない。
 仕事中かな?
 そう考えた私はお兄さんに会えなかった事にがっかりしながら教会に戻る事にした。
 お兄さんがいないのならばわざわざ教会から抜け出す必要等ないのだから。
 とりあえず今日もいつものように頑張って、その後お兄さんを宿屋の前で待っていよう。
 私はそう考えて教会に戻って行った。


 夜、私は宿屋の前でお兄さんを待っていた。
 いつもより全然遅い時間。
 少し心配になってきた。
 何かあったのだろうか?
 お兄さんは結構危ない事をする事がある。
 今なら解るが、初めて私を助けてくれた時もかなり危険な状態だった。
 私を囲んだ五人の危ない人達は皆魔力持ちの上、剣まで持っていた。
 つまりかなりのレベルの冒険者か傭兵だ。
 だというのにお兄さんはさっと私とその危ない人達の間に体を割り込ませて話し始めた。
 偶然お兄さんが知っていた人がその人達より立場が上の人だから良かったものの、一歩間違えればお兄さんはあの時死んでいた。
 この世界、死ぬなんて事は珍しくも何もない。
 些細なケンカ一つで死ぬ可能性だってあるのだ。
 ましてやそれが魔力持ちや冒険者、傭兵ならばなおさらだ。
 その時の私はそんな事を知らなかった。
 それでも颯爽と助けてくれたお兄さんがカッコ良いと思った。
 それ以来だろう、私がお兄さんにたびたび会いに行くようになったのは。
 最初は助けてくれたお礼と、お兄さんが絵本とかで読んだヒーローに近い感覚があったからだった。
 でもそれがだんだんと好きという感情に変わるのに時間はかからなかった。
 私は教会から抜け出しているせいかよくよく厄介事に絡まれる事が多い。
 そのたびにお兄さんが私を助けてくれた。
 不良達にかまれる事も何度もあったし、教会からの追手に追われて捕まりそうになったことも何度もあった。
 正直お兄さんにとって私は厄介事でしかなかったと思う。
 だというのに時には仕事中にも関わらず私の事をいつも助けてくれたのだ。
 私が自業自得でそんな目にあっているというのに、終わった後はいつも笑いながら「怖かっただろう? もう大丈夫だ」と言って私の頭をなでたりしてくれた。
 凄く安心して、思わず泣いてしまった事だって何度もある。
 ああ、正直恥ずかしい思い出だけど凄く良い思い出でもある。
 だからこそ何かに巻き込まれたのじゃないかと心配になるのだ。
 仕事で見かけない日はいつも心配で仕方ない。
 だからいつも宿屋前でいつも通り帰ってくるお兄さんを見るまで安心できないのだ。
 今日はそんないつもより一段と帰りが遅いようだ。
 中の宿屋のおじさんに聞いてみてもまだ帰ってきていない楊で、宿屋のおじさんも少し心配しているようだった。
 私がいよいよ何かあったのかと考え始めた時、お兄さんがひどく肩を落として地面を見ながら帰ってきたのが見えた。
 どうしたのだろうか?
 見た感じで怪我等は無いようだけど、いつもと違うのは解る。
 何せ私がすぐ横にいるのに気付かずに宿屋に入ろうとしたのだ。
 普段ならかなり距離があるところから私がいる事に気づいて急いで近寄ってきてくれる。
 いつもなら「ごめんね、今日も待っていてくれたんだ、ありがとう」と言ってほほ笑んでくれる。
 だというのに今日のお兄さんは今にも死にそうなほど落ち込んだ様子で宿に入ろうとしていた。
 だから今日は私から声をかけたのだ。
 夜だからこんばんわ。
 其れから話し始めたのだが、お兄さんはやっぱり元気がない。
 いつもみたいにありがとうとは言ってくれたが、いつもみたいに少し雑談したりすることもなくそのまま宿屋の中に入ってしまった。
 本当に何があったんだろう?
 私は心配でたまらなくなり、思わずお兄さんに続いて宿屋の中に入って行った。
 宿屋のおじさんもお兄さんの様子を見てひどく心配したように声をかけたが、やはりお兄さんは何でもないですと言って部屋に戻ってしまった。
 私は宿屋のおじさんに頷いてお兄さんに続いて部屋に入った。
 しばらくの間、お兄さんは黙ったまま俯いていたが、少ししてからぽつぽつと事情を話してくれた。
 お兄さんが仲良くなってからいつも話していた夢。
 旅団を作ってリーダーになる。
 一週間に三回はいつも言っていたお兄さんの夢。
 その夢を話している時のお兄さんは一段と良い笑顔を浮かべて話すのでその旅に顔を赤くしたものだ。
 そんなお兄さんの夢が叶ったらしい。
 正直なところ旅団なんて危ない物にはなって欲しくなかった。
 お兄さんが落ち込んで諦め掛かっているのは私には良く解る。
 というよりも誰でも解るだろう。
 諦めてもらうなら今がチャンスだった。
 だけど私にはそれは出来なかった。
 お兄さんが今まで話していて本当にこの旅団を作りたがっていたのを知っているから。
 こんな悲しい表情をしているのを見ていたくなかったからだ。
 何よりお兄さんを馬鹿にするなんて許せない。
 そいつらには絶対に神の裁きが下るだろう。
 むしろ私が下す。
 お兄さんを此処までした報いをウケサセテヤル。
 ……いけない、今はお兄さんが元気になってくれるように私が頑張らないと!
 ただ、どうしたらお兄さんが元気になってくれるか解らなかったのでとにかく私の思った事をそのまま言う事にした。
 そしたら嬉しそうに「ありがとう」と言ってその後泣き出してしまった。
 え!
 え?
 えぇぇぇぇ!?
 ど、どうしたらよいのこれ!?
 何でお兄さん泣いちゃったの?
 私何か悪い事したの?
 どうしよう、どうしようどうしようどうしよう。
 私が混乱しながらあたふたとしていると、お兄さんがクスリと笑ってもう一度「ありがとう」と言ってくれた。
 ほっとしたのもつかの間で、気づけばお兄さんに抱きつかれていた。
 あsdfghjkl!?
 な、な、なぁぁぁぁぁ!
 お兄さん意外と良い匂い。
 暖かいし見た目より逞しい。
 って、ふぁあぁぁぁぁぁ!
 だ、だきつかれて、抱きつかれてる!?
 それより私いま何を考えていたの!?
 ふぁ、ふぁ、嬉しい、どうしよう。
 そんな感じでおそらく今まで生きていて一番嬉しくて動揺しているときにお兄さんがぽつりと私の耳元でつぶやいた。

  「ルル、ありがとう。 本当にありがとうな。 ルルの言葉凄く嬉しかった」

 きゃぁぁぁぁぁ!?
 そんな耳元でお兄さんの声を聞いたら私がおかしくなります。
 むしろ私の方が嬉しいです。
 もうこのまま死んでも良いです!
 そんな調子で言葉にならない言葉をお兄さんに返したが多分聞こえていない。
 だって私自身何ていったか聞き取れないほどふぁふぁした言葉だったから。
 少ししてお兄さんが離れていくのが解り、思わず離れたくないと思った。
 だけどこれ以上は本当に私の理性が飛びそうだったので我慢してそのまま離れる事になった。
 これでも教会では色々と抱きしめたりすることが多々あるのだ。
 慣れているつもりだったが、相手がお兄さんになるだけで此処までとは、流石お兄さん。
 私は顔が真っ赤なまま俯いているとお兄さんがまた笑った。
 思わず少しほほを膨らませてお兄さんを睨んだが、本当に嬉しそうに笑っているお兄さんを見て気づけばお兄さんと一緒に私も笑っていた。
 そんな傍ら一つの事を胸に誓った。
 私がお兄さんの夢の手助けになってみせる、そう誓ったのだ。
 お兄さんが仲間が出来ないというのであれば私が一番の仲間になって見せよう。
 全ては明日。
 明日手続きをしなくては何も始まりはしない。
 今そんな事を言ったところでお兄さんは信じてくれないだろう。
 だから全て手続きをしてお兄さんを驚かしてやろう。
 楽しみに待っていてほしいです、お兄さん。
 私がお兄さんの夢の手助けを絶対にしますから。
 そうすれば私はお兄さんと離れ離れにならなくても良くなります。
 一生一緒にいられますよお兄さん。
 そう、一生一緒に、ふふふふふふ。
 楽しみですねお兄さん。



[16049] 第二話~PTメンバーは少女と〇〇〇!?~
Name: 榊燕◆972593f7 ID:f1eae2c8
Date: 2010/02/11 23:56




          【第二話~PTメンバーは少女と〇〇〇!?~】





 ルルに元気とやる気を分けて貰ってから一週間、いつものようにギルドに仲間募集の為に行くと、ひどくざわざわと騒がしい空気になっていた。
 俺は何事かとも思ったが、まずは第一にギルドの親父に募集をかけていた仲間が誰か来ていないかを尋ねてみる事にした。

  「お、おお。 お前さんようやく来たか! もう聞いたか? あの聖少女様が冒険者登録したんだぞ!」

 俺が話を振る前にギルドの親父は勝手に話し始めた。
 毎日毎日押し掛けているせいか顔見知りになり、意外と気があったので仲良くなったのだ。
 いつも何気に馬鹿にしたような事を言いながらも俺の事を心配してくれるような良い親父だ。
 にしても聖少女。
 教会の秘蔵娘だ。
 この世界、聖の名前を貰えるものは全部で三人。
 一人は聖イレード。
 教会の一番上の立場にいる齢200歳を超える爺さんだ。
 二人目が聖ドルート。
 元は教会の一員だったのだが一人の女性に惚れ込みそのままそいつのもとで今も暮らしているらしい。
 今現在の消息は不明。
 そして三人目が聖少女だ。
 聖少女、何故三人目のこの娘だけが名前じゃないのかというと、この少女が聖の称号を得たのが齢14歳の頃だったからだ。
 伝説の聖の称号の初代聖女が12歳でその名を得たのに続き歴代二番目に低い年齢でその称号を得たおかげで聖女繋がりで聖少女と呼ばれるようになったのだ。
 因みに聖の称号をもらうには甦生の魔法であるリバイブが使える事が条件になる。
 勿論それだけではなく、僧侶としての技量が一定以上であることが認められてその上でようやく認められる称号なのだ。
 未だかつてこの聖の称号を持った冒険者はギルドが出来てから二人、この聖少女で三人目だ。
 成程。
 それならあのざわつきも頷けるというものだ。
 まぁ俺には全く関係のない事なんだけどな。

  「そりゃすげぇ。 でもまぁ今の俺にとって一番大事なのは仲間の募集に変化があったかどうかなんだよな。 それでどうだ?」

 俺が尋ねると親父は呆れたように笑いながら「まぁお前さんにとっちゃそっちの方が大事か」と言われた後「残念ながら変わらずだ」と言われた。
 俺は溜息をつきながら「そうか」と答えてちらっとざわめいてる奴らの方を見た後に親父に「また明日くるわ」と伝えてギルドを後にした。
 聖少女かぁ。
 そんな娘がもし旅団とか作れば俺みたいな悩みはないんだろうな。
 羨ましい、気がしないでもないが正直勘弁したいな俺には。
 下手したら変な連中が仲間になるかも知れない可能性なんて俺には我慢できん。
 ある意味有名過ぎるのも考えものなのかねぇ。
 俺は一人そんな事を考えながら歩いていると、パタパタと俺に向かって走ってくる足音が聞こえた。
 何事かと思い振り返ると、僧侶用の装備に身を固めたルルが俺に向かって走ってきていた。

  「おにいさ~ん! 待って、待ってください~!」

 俺がルルに気づいた事にルルも気づいたらしくそう大声を出してきた。
 だが俺はそんな事よりルルの格好が気になっていた。
 僧侶用装備。
 つまり冒険者が着る装備品だ。
 一般人が間違っても着るようなものではない。
 という事はルルが冒険者登録をした?
 どういう事だ?

  「はぁはぁはぁはぁ。 ようやく見つけました! あっ、お兄さんこんにちわ!」

 ルルはいつものように可愛らしい笑みを浮かべながらそう言って俺に挨拶をしてきた。

  「あ、ああ、こんにちわ。 えっと、ルルその格好」

 俺がそう尋ねると嬉しそうに微笑みながら「似合ってますか?」と聞いてきた。
 俺が素直に頷くと嬉しそうに「良かったです!」と笑い「私も冒険者として登録したんです!」と言い出した。
 予想はしていたがそれでも驚いた。
 思わず何故かを聞くと前々から外の世界に興味があったからだと答えた。
 興味があったけど一人だと怖いし、外に出る勇気もなかったけど今回俺が旅団を作った事を切っ掛けに自分も頑張ってみようと思ったらしい。

  「そ、それでお兄さん。 あ、あのですね、相談なんですけど。 本当に、本当にもし良かったらで良いんですけど私をお兄さんの旅団のメンバーに加えてもらえませんか!」

 俺が一人ルルの冒険者登録の現実を認めようとしている時にいきなりそんな事を言われた。
 え?
 なんだって?
 ルルが俺の旅団に入りたい?

  「あ、あの。 やっぱり駄目でしょうか?」

 泣きそうになりながら俺を見つめる。

  「ま、まさか駄目なんて言う訳ないだろう! ルルなら大歓迎だよ!」

 と気づけばそう答えていた。
 いや、だって良く考えてもらいたい。
 可愛らしい少女と見まごう娘に涙目で見つめられて迫られたら断れるわけがないだろう?
 答えた後やっちまったと思ったのは気のせいだ。

  「あ、ありがとうございます! 私精一杯がんばります!」

 嬉しそうに俺に笑いかけてくるルルを見て、悪くないと思ってしまった時点でもう駄目だ。
 俺の中で完璧にルルも仲間のポジションに迎える準備が出来てしまったらしい。
 初めての仲間が出来ました。
 見た目14歳くらいの少女です。
 こ、後悔なんてないさ!
 何て、実際問題初めての仲間だ。
 じわじわとその事を実感してくると嬉しさがこみあげてくる。

  「ルル。 俺みたいな新米冒険者がリーダーだと迷惑ばかりかもしれないが、一緒に頑張ろうな! これから宜しく頼むな!」

 俺もそう言ってルルに笑いかける。
 その後二人で少し遅めの昼食を食べに広間まで行くと、其処でギルドの騒ぎ以上の騒ぎが起きていた。
 俺とルルは何事かと思ってその騒ぎの中心に向かって歩いて行った。

  「あらん? 私がオカマだからって何か問題があるのかしら?」

 小柄な少女チックな男がそんな事を言い出した。
 俺とルルは思わず顔を見合わせてそのオカマ発言をした男を見た。
 見た目本当にただの少女にしか見えない。
 顔立ちはルルより大人びているが小顔で整っている。
 目は釣り目で青色の眼をしている。
 髪型もまた黒い髪のポニーテールで身長が155センチ程だろう。
 体系はルルより一回り大きくした感じだが、ルルが小さすぎる感じなので本当に普通の少女と変わりない程度だ。
 後ろから見ても前から見ても言われなければオカマだと気付かないだろう。

  「あるに決まってんだろうが! 俺はお前が女だと思ったから声をかけたんだよ! だってのによりによってオカマかよ! 畜生。 オカマなんてこの世に存在する価値なんてねぇんだよ!」

 どうやらもう一人の男がナンパ目的であのオカマに声をかけたらしい。
 だが実際話してみて相手がオカマだという事に気づき逆切れしているという事か。
 周りの連中もそれに気がついたのか少しずつ馬鹿らしいという感じで離れて行った。
 オカマは相も変わらず余裕そうに微笑んでる。
 本当にオカマなのか?
 そう疑問に思うほど少女にしか見えなかった。

  「貴方から声をかけてきたのに私が怒られる意味が解らないわ。 結局私にどうしてほしいのかしら?」

 オカマはそう言ってナンパしてきたらしい男を見つめる。
 男は「うるせぇうるせぇうるせぇ!」と叫ぶといきなり剣を抜きだした。
 思わず俺は「はぁ?」と声を出していた。
 あいつは馬鹿か?
 勝手に勘違いして逆切れしてその挙句に剣まで出しやがったぞ。
 胸元のカードを見る限り冒険者であるのは間違いないが完璧にキチガイだろうあれは。
 にしても目の前でこんな現状になっているのにそのまま黙っている訳にもいかねぇよなぁ。
 本当に厄介事ってのは何でなくならないもんなのかねぇ。

  「おいおい、たかがナンパ失敗したくらいで剣なんてだすんじゃねぇよ屑野郎」

 あれ?
 俺今相手を刺激してますか?
 おいおい、幾ら苛立ってたからってもう少し穏便に対処しようぜ俺。

  「あん? 何だ手前ぇ! そのオカマの仲間かよ!」

 そうだとも違うとも答える前に男が剣で斬りかかってきた。

  「あっぶねぇなこら!」

 なんとか躱す事に成功したが危なかった。
 後ろのオカマに視線を向けると少し驚いたように俺を見ている。

  「あんたも今のうちに逃げろって。 俺だっていつまでもつか解らんし、明らかに俺よりレベル上だから早くな」

 俺はそういうと男に向かってまた馬鹿にしたような発言をしてオカマから離れる。
 男は完璧に頭に血が上っているらしくオカマの事等忘れたように俺に向かって斬りかかってくる。
 周りではざわざわとまた騒ぎになっているのでもう少しすれば警備員か冒険者が来て抑え込んでくれるだろう。
 俺はそれまで必死に避けていれば良いだけだ。
 と思っていたのもつかの間で男はいきなり剣を振るのをやめると魔法の詠唱を始めた。
 おいおい、本気かよ!
 あいつ魔力持ちなのかよ!
 聞いてねぇ、見た目完璧に剣士なんだから剣だけ振ってろよ!

  「あーもう、何であんたもまだ逃げてないんだよ! ルル!」

 ルルは最初にいた場所から動かず、無表情で今も詠唱をしている男を見つめている。
 ルルの無表情なんて初めて見たが、何か底知れぬ恐怖を感じるぞ。
 って、そんな事を考えている場合じゃねぇ!
 何に驚いて固まっているのか解らないオカマとルルを抱きしめ、庇うように覆いかぶさる。
 次の瞬間俺の背後で炎が上がった。

  「ぐぅぅぅ!?」

 俺の背中を焼く炎。
 痛てぇ。
 滅茶苦茶痛てぇ。
 でも未だなんとか生きているところをみると相手の魔法はかなりレベルの低い物らしい。
 にわか仕込みの魔法って所だろう。
 だが、レベル1の俺には致命傷だ。
 もうすでに身動きが取れないどころか今にも意識が飛びそうだ。
 炎がおさまったのを確認するまでは何とか意識を保っていられたが俺の限界はそれまでだった。
 最後に泣きそうな表情で俺を見つめるルルと驚いた表情で固まったままのオカマの表情を見て、二人に怪我がない事を確認してから意識を失った。









 ユルサナイ。
 私のお兄さんに傷を負わせたあいつはユルサナイ。

  「癒せ、すべての傷を。 一片の負傷もなく完璧に!」

 私のその言葉と共にお兄さんの背中が光に包まれる。
 白いその光は癒しの光。
 フルヒール。
 ダメージを全て完治させる治癒魔法だ。
 お兄さんの背中の火傷は予想以上にひどい。
 お兄さんのレベルが1だからだ。
 相手のレベルは少なくとも10以上はあるだろう。
 炎の魔法の中級を会得していることから20はあってもおかしくない。
 だが威力があまりにも低いことから適性は低いのだろう。
 それでもレベル1のお兄さんにとっちゃ致命傷、下手したら死んでいてもおかしくない。
 ユルサナイ。
 私がゆらりと立ち上がると、気づけばお兄さんが庇ったオカマの男の人も立ち上がっていた。
 その人はお兄さんの事を驚いたような表情で見つめた後、嬉しそうに笑ってきっっと男の方を睨みつけた。

  「貴方、よくもまぁ無関係なこの人みたいな良い男を気づ付けたわね。 許さないわよ?」

 この人見る目はありますね。
 お兄さんの事を良い男何て、本当に良く解っています。

  「私のお兄さんを傷つけた報い、簡単に死ねるオモウナヨ」

 少し理性が抑えきれないがお兄さんは気を失っているし問題ないよね?
 隣のオカマの男の人が少し驚いたように私を見ているがお兄さんに気づかれなければ問題ない。

  「う、うるせぇ! オカマと餓鬼が何粋がってやがる、死にやがれ!」

 それと共に先ほどと同じ詠唱を唱え始める。

  「我が望みし相手に苦痛を」

 私は小さな声でそれだけを唱える。
 私が唱えたのは受けるダメージが三倍になるウィーク。
 続いて反射するリフレクトを唱えようとしたところで隣のオカマの男が詠唱している事に気がついた。

  「炎よ我が手に」

 それだけの詠唱で相手の男がはなってきた炎の魔法がオカマの男の目の前でたち消えた。

  「なっ!?」

 男は驚愕の表情でその様子を見つめている。
 私も少なからず驚いた。
 オカマの男が行ったのは魔法の強制解除。
 余程の実力差があっても早々出来るような事ではない。
 ましてや弱めるだけではなく完璧に消し去るなんてどれだけの腕前なのか想像すらできないレベルだ。
 その上、このオカマの男はそれを一息の詠唱で行ってしまっているのだから驚きもひと押しだろう。

  「燃えなさい、死なない程度に」

 その言葉と共に男の体が炎に包まれる。
 二階建ての建物よりさらに高い炎の柱。
 上級炎の魔法のブレイズ。
 私の魔法の効果と合わせて完璧に致命傷の攻撃なはずなのに男はそれでも生きていた。
 全身やけどで生きているの不思議な状態でもそれでもまだ生きている。
 私のウィークを織り込んだ上でこのオカマの男はぎりぎり男が生きられる範囲で威力を抑えたのだろう。
 本気でこのオカマの男がどんな存在なのか解らなくなってきた。

  「お嬢ちゃん、お嬢ちゃんの大事な人を傷つけちゃってごめんなさいね。 でもあんな屑を殺したところで私にもお嬢ちゃんにも其処の良い男にも傷がつくだけよ。 あれで十分。 もぅ二度とまともに話す事も出来ないかもしれないけどね」

 オカマの男はそう言って私に微笑んだ。
 その後お兄さんを背中に担いで私についてくるように言って歩き始めた。
 向かった先はギルド。

  「親父さん、少し二階の部屋をお借りしても良いかしら?」

 オカマの男はギルドに入ると、ギルドのマスターにそう声をかけて階段を上って行った。
 お兄さんは何気にギルドのマスターとも知り合いだったらしく、気絶しているお兄さんを見てギルドのマスターも心配そうに声をかけてきたが、私が直しましたと言うと安心したように「そうか」とだけ答えて許可をくれました。
 二階の部屋のベッドにお兄さんを寝かせるとオカマの男が「本当に良い男ねぇ」とつぶやいて私を見つめた。

  「はい! お兄さんは本当に良い人です。 だから貴方がどれだけ強くても渡しませんよ」

 私はそう言ってお兄さんの前に立ちふさがる。
 オカマの男の目を見れば、正直少しお兄さんの事が気になっているのが解ったからだ。

  「ふふふ。 大丈夫、お嬢ちゃんの良い人をとったりはしないわ。 私はねぇ見ているだけで良いの。 私が好きだと思える人が幸せになるのをね。 にしても、オカマと知った上で助けてもらったのは初めてだったわ。 案外こういうの嬉しいものね」

 そう言って微笑んだ。
 その雰囲気からこの人は本当にそういう人なんだろうという事を感じた。
 何故だか私はこの人の事が気にいってしまった。
 何よりお兄さんを私の良い人と言ってくれた事が高得点だ。
 良い目をしている。
 私のお兄さんに手を出さないと言うし、それを何故か信じられる。
 気づけば私は警戒していたのが嘘のようにそのオカマの男と話していた。

  「あっ! すいません、いまさら何ですが私はルル。 ルル=エリシャです」

 しばらく話していて未だ自己紹介をしていない事に気付いた私は慌ててそう言った。
 オカマの男も「そういえばまだだったわね」と言って続いてくれた。

  「私はココール=ノイスよ。 よろしくね」

 私達はお互いによろしくと挨拶しあいながら話を続けた。
 そろそろお兄さんが目を覚ましそうだと感じた頃、私は思い切ってココールさんに旅団に所属しているのかを尋ねてみた。

  「私は何処にも所属してないわよ。 何故かオカマと解ると敬遠されて結局ね。 それに私自身好きでもない人の所にいるなんて事が嫌いなのよ」

 ココールさんの返答を聞いてとりあえずホッと安心の一息が洩れた。
 そして改めてココールさんを見つめながらお願いをしてみた。

  「あの! もしよかったらお兄さんの旅団に入ってもらえませんか? 今私とお兄さんの二人しかいないんです。 お兄さんはさっきのを見て解ったと思いますが低レベルの冒険者です。 というよりもついこの間冒険者になったばかりで旅団もつい最近たち上げたばかりなんです。 ココールさんみたいな冒険者に頼むのは」

 私は此処まで言ってココールさんに止められた。

  「ルルちゃん。 其処まで卑下した言い方をする必要はないわよ。 それに私なんて其れほど大した冒険者じゃないわ。 少しだけ運が良かっただけよ。 それに私はルルちゃんもそれにこの良い男の事も凄く気に入っているの。 だからもし誘ってくれるなら喜んで入らせてもらうわ」

 そう言って微笑んでくれた。

  「でもまずはこの良い男の許可がないとどうしようもないでしょう?」

 と言ってきたので私は自信を持って「大丈夫です!」と言い切った。
 だってお兄さんだから。

  「お兄さんは絶対に断ったりなんてしないですよ。 オカマとかそういう事で差別したりする人じゃないです! 何よりきっとココールさんみたいな強い人が仲間になって凄く喜んでくれます!」

 私がそういうと、ココールさんは私とお兄さんを見つめて「信頼しているのね」と言ってきた。
 私は「勿論です!」と胸を張って答えた。
 その後、私のお兄さんとの出会いや、お兄さんがどういう人なのかを話しているうちにお兄さんが目を覚ました。
 説明すると突然の事で驚いていたようだが、やはり私の思った通りでお兄さんはココールさんが仲間に入る事を喜んでくれた。
 うん。
 やっぱり私のお兄さんは良い人だよね!









 目が覚めると其処には先ほど助けたオカマの男とルルが楽しそうにおしゃべりをしていた。
 そしてそのオカマの男ココールと言うらしいが旅団に入ってくれるという。
 あまりにも突然の事で驚いてしまったが仲間が増えるのは嬉しい事だ。
 オカマだろうがなんだろうが正直関係ない。
 俺に襲いかかってこないのであれば関係ない。
 だから万事OKだろう。
 何よりココールは高レベルの冒険者だった。
 レベルが95と滅茶苦茶高い上、ランクがSの冒険者でもある。
 そんな人が仲間になってくれるのだ嬉しくないわけがない。
 俺が仲間が増えた事を喜ぶと、ココールは嬉しそうに笑いながら「これから宜しくね」と言った後ルルを見て「言ったとおりだったわね」と言っていた。
 ルルもまた「勿論ですよ!」と嬉しそうに微笑んでいた。
 どういうことだろうか?
 でも、二人とも嬉しそうに微笑んでいることから悪い事ではないだろう。
 ならば良い。
 とにかく今は新しい仲間が増えた事を喜ぼう。
 俺は改めて二人によろしく頼むと言ってこれからの事を話し始めた。



[16049] 第三話~オカマの次は〇〇〇!?~
Name: 榊燕◆972593f7 ID:f1eae2c8
Date: 2010/02/11 23:50





          【第三話~オカマの次は〇〇〇!?~】





 ルルとココールが旅団のメンバーに加わってくれた事で最低限ギルドの依頼を受けられるようになった。
 ギルドランクがB以上にならなければ基本的に一人での依頼は受けられず、三人以上でないと駄目なのだ。
 ルルとココールを迎えた翌日、俺たちは三人でギルドに来ていた。
 因みにココールの宿が幸いにも俺の泊まっている近くの宿だったため待ち合わせが楽だった。

  「おう! 昨日は散々だったな。 だがまぁ仲間が見つかったみたいで良かったな!」

 ギルドの親父がそう言って俺に話しかけてきてくれた。
 俺はそれに素直に頷きながら一応確認のために募集の事を聞いてみた。
 三人は最低限の人数で、出来ればもっと数が欲しい。
 後は前衛とバックパッカー系の能力があるやつがいると大概の所に行けて良いのだが其処まで都合よく見つかるものかどうか。
 案の定ギルドの親父からは「募集にはやっぱり反応はねぇよ」という答えしか返ってこない。
 解っていた事なのであまり落ち込まず「そうか」とだけ返事をした。
 まぁ今回はルルとココールという仲間が二人もいたおかげもある。
 とりあえず俺たちはギルドの依頼が貼られている掲示板の前に行ってどんな依頼が良いかを話し合った。

  「ん~マスターはまだレベルも1だし、ランクだって1何だから確実にこなせるような簡単な依頼からにした方が良いわよ」

 一番の経験者であるココールがそう助言をしてくれたので、俺達は街はずれに農家のモンスターからの護衛の依頼を引き受けた。
 モンスターとの戦闘がある可能性があるので難易度が其処まで低いのかと思われがちだが、実際あそこに出現するモンスターと言えばスライムが大半であり、時折ちらちらとコボルトが出る程度だ。
 コボルトといっても低レベルのコボルトであり、実際は子コボルトと呼ばれる奴らだ。
 身長も50センチくらいの小ささで武器も持っていない。
 満足に二足歩行もできないので、ぶっちゃけ下手をしたら犬と勘違いしてもおかしくは無い。
 ギルドランクはEの依頼だ。
 報酬は一日10L。
 冒険者の報酬としては高くはないが、一般的な報酬にして見れば高額な方だ。
 何せ一日一人暮らすのに掛かる基本金額は1L。
 節約すれば半分の50M程度で済む。
 10Lあれば場所によっては宿屋で一カ月の契約を結ぶ事だって出来るのだ。
 因みに100L、つまり1Pで豪華な最高級の宿に一カ月止まる事が出来る。
 100Pあれば小さな家が建てられる。
 因みに1000P貯めれば1G、詰まるところの金の延べ棒と交換してもらえる。
 一種のステータスになる為必死に貯めてそれを手元に置きたがる奴は多い。
 何であんな重たくて盗まれやすそうな小さな物に変えたがるかは俺には解らない。
 まぁそんな感じでその依頼を受けた俺たちはさっそくその農家の場所まで行く事にした。
 農家のおじさんとおばさんは良い人っぽい人達でギルドの仕事で来たというのに来た事にわざわざ礼まで言ってくれた上食事などまで出してくれた。
 ほんわかと暖かい気持ちにさせてもらいながらの仕事は意外と楽で、実際出てきたのはスライムが15匹程度だった。
 因みにスライムなら一般的な青年であれば武器さえあれば始末可能なモンスターだ。
 ただし少し年がいって体力がなかったり、小さな子供の場合は危険がある為、その時は周りに頼んだ方が良いのだ。
 何せ動きが鈍く弱いくせに繁殖能力が高いので、倒すのに時間がかかればいつまでも増え続けて終わらないからだ。
 倒した後さらにお礼を言われ、逆に恐縮しながらその日の依頼を終えた。
 流石にあれだけで10Lも貰うのは気がひけたので半分の5Lだけ貰って帰ってきた。
 帰りに食事まで貰ったのだ、それくらいで丁度良いところか多いくらいだろう。
 そして今回のこの依頼は一週間の契約で結ばれているので後六日もあるのだ。
 正直ココールにとっては退屈な依頼で申し訳ないとも思ったが、ココールはそんなそぶりを一切見せず、それどころかこういう依頼は好きだと言って笑ってくれた。
 本当に良い奴だ。
 未だに少女に間違えそうになる事以外問題は無い。
 俺たちは貰った5Lを一人1Lずつ配り、残り2Lを何かあった時の緊急の為の費用にするために貯める事にした。
 勿論個人で持っていては勝手に使ってしまう心配もあるのでギルドの金庫に預ける。
 ギルドの金庫は個人個人での物と旅団纏めての物があるので、今回は旅団の方にだ。
 そして俺たちは一週間何事もなく農家の護衛を達成出来た。
 と言いたかったのだが、最後の日に何故か問題が起こった。
 ルルに「お兄さんの才能は本当に凄いですね」と言われ、ココールに「本当にマスターはトラブルホイホイねぇ」と言われた。
 俺のせいなのか?
 確かに何かトラブルに巻き込まれる可能性は高いが、俺は意図していないぞ?
 まぁ意図して引いていたら大問題なんだけどな。
 とりあえず、最後の日に起きた問題とはコボルトの集団の来襲だった。

  「マスター! 下がって!」

 一番早くに気がついたのはやはりココール。
 まだ姿も見えないうちにそう言われ、俺は良く解らないがすぐにココールの後ろまで下がった。
 声にいつもの余裕がなかったので緊急事態だと判断したからだ。
 俺が何事かと声をかける前に何故そう言われたのかが解った。
 少し離れた森の中から土煙を上げながら数え切れないほどのコボルトがこちらに向かって走ってきているのだ。

  「守護の盾、我が仲間の身を守れ」

 ルルがそういうとルルと俺とココールの体が白い光に包まれた。

  「ふふ、ありがとう」

  「助かる!」

 俺とココールはそう言ってルルに声をかける。
 ルルが唱えてくれた魔法はボディーシールド。
 武器や防具には効果がないが、全身に掛けられる防御魔法だ。
 それもルルの話によるとオーガの一撃位なら防げるというのだから物凄い。
 もしかしてルルってかなりの実力の持ち主なのか?
 カードも何故か見せてくれないし……まさかなぁ。
 とりあえず俺はとにかく邪魔にならないような位置に行き、ココールがコボルトを殲滅する姿を見ていた。

  「燃えなさい!」

 その一言で横幅10Mはありそうな炎の壁がコボルト達の目の前に現れ、最初の方を走っていたかなりの数のコボルトが燃え尽きた。
 コボルトは燃えているというのに地面の草や他の木々は一切燃えていない。
 どういう事なんだ?

  「ふふ、対象をコボルトだけにしているだけよ」

 魔法ってすげぇ。
 そんなことも出来るのか。
 俺がそんな事に感激しているとコボルト達が後ろから来る何かに怯えたように我先に左右に走って逃げだした。
 ん?
 逃げ出した?
 ってことはこの農家への襲撃が目的じゃなかったのか?
 どういう事なのかと思い様子を見ていると、森の中から一人の少女が大剣を振り回しながらコボルトを斬り倒していた。

  「っっ! す、すいません! 其処の人達逃げてください!」

 少女はこちらが最初のコボルトを焼いたところを見ていなかったらしく焦ったようにそう声をかけてきた。
 どうやらこのコボルトの集団はあの少女が追い立てた結果らしい。
 だがはたして一人の剣士だけであの数のコボルトを森から追い立てる事が出来るのか?

  「お兄さんあの人一人っきりですよ。 仲間に見捨てられたみたいですね」

 やはりそうか。
 明らかにあの数を追い立てるには魔法を使える奴が必要だし、その後にも援護するために最低限二人は必要だろう。
 おそらくあまりの数の多さにあの少女を置いて逃げてしまったのだろう。
 あくまで予想だが、そうだというのであればあまりにもあまりな話だ。

  「お願いします! 私ひとりじゃ全部をフォローする事が出来ないんです! 逃げてください!」

 それだというのに少女は一人必死に被害を少なくしようと頑張っているのだろう。
 もうすでに予測と言っていながら俺の中ではそうだと決めつけていた。

  「ルル、ココール大変だと思うが」

  「解っているわ、むしろ此処で見捨てるなんて言っていたら怒ったわよ」

  「お兄さんならそうするって解ってました。 大丈夫です!」

 俺が言いきる前に二人は笑いながらそう言ってくれた。
 ああ、畜生、なんか恥ずかしい。

  「とにかく助けるぞ!」

  「ええ!」

  「はい!」

 俺たちはそう気合を入れると即座に動き始めた。

  「風よ逃すな、土よ阻め!」

 ココールがそう声を上げると左右に逃げたコボルト達に風が襲いかかりその足を止め、その眼前に土の壁が現れ行く手を遮った。

  「癒し活力を! 頑張ってください、私達がフォローします!」

 ルルはコボルトの後ろから来た少女にヒールとフォースの魔法を唱えた。

  「っ! ありがとうございます!」

 少女はそう言いながらも凄い勢いでコボルトを殲滅していく。
 一振りで少なくとも五匹。
 多い時では十匹近くを一撃で葬っているのだ。
 数でいえばダントツでココールだ。
 一度の攻撃で数十から百数十匹を倒している。
 一体どれだけのコボルトがいるんだ?
 明らかにあの森のコボルトの巣があったのだろう。
 それにしても多い。
 俺はコボルトの後ろから追いかけてきていた少女の直ぐ傍まで近寄り声をかけた。

  「大丈夫か? とりあえずこれを」

 俺はそう言って一つの腕輪を渡す。
 これはココールに渡された通常攻撃を範囲攻撃に帰る腕輪だ。
 剣による攻撃であれば振った剣から衝撃波が出るらしい。
 拳であっても範囲が短いが同じ衝撃波が出ると言っていた。
 俺が使うより明らかにこの少女が使った方が良いだろう。

  「!? なっ! い、いつから其処にいたんですか!?」

 それは酷い。
 俺は其処まで存在感がないですか?
 俺ががっくりとしているのを見た瞬間急いで謝ってきてその腕輪を受け取ってくれた。

  「すいません、ありがとうございます! 少しお借りします!」

 そう言って腕輪を付けた少女の活躍はまたすごい物があった。
 腕輪の効果は使用者の力量で変わるらしく、俺が使った時は1M先までしか衝撃波が出なかった。
 少女が使うと5M程度先までその衝撃波が届いている。
 俺の五倍、全く俺とはレベルが違うのが良く解る。
 にしても、俺は本気で存在感がないのか?
 少女に近づくまでコボルトの横等をすり抜けたというのに一匹として俺に見向きもしなかった。
 というよりも、ルルもココールも俺の存在を忘れているっぽい。
 いや、ルルに関しては忘れているというよりも俺が何処にいるのか解っていないらしい。

  「お、お兄さん何処ですか! まさか、そんな筈は! お、お兄さん!?」

 酷く慌ててそんな声をあげている。
 いや、ルルよ、少し距離は離れているがはっきりと見える位置に俺はいるぞ?
 何故気づかないんだ。
 大量のコボルトとの戦闘で視野が狭くなっているのか?

  「マスター? 一体どこに」

 ってココールまで俺の存在に気づかない?
 どういう事だ。
 俺とココールは実際2Mくらいしか離れていないぞ?

  「ココール此処だ。 俺は此処にいるって」

 俺がそう声をかけると酷く驚いた表情で俺の方に振り返った。

  「いつから其処にいたのかしら?」

 おいおい、戦闘に集中しすぎて気づかなかったのかよ。

  「いや、いつも何も、ルルが騒ぎ始める少し前からずっと此処にいるぞ」

 やべぇ、これいじめかと思うくらい俺の存在が無視されている気がした。

  「……もしかしたら。 それは後で考えましょう。 今は先にコボルトの殲滅ね」

 最後にルルに安心するように伝えるように言われ、ココールはコボルトの殲滅に戻った。
 俺は言われた通りルルの近くまで注意しながら進んだ。
 コボルトから攻撃を受ければ躱せるように。
 今の俺であればこの通常のコボルトには攻撃したところで大したダメージが与えられない。
 ならば邪魔にならないように逃げるのが一番だ。
 俺はまたもやコボルトに一切見向きもされずすぐ横を通りながらルルの直ぐ傍まで近づいて声をかけた。

  「ルル俺は此処にいるから大丈夫だって。 だから落ち着いて」

 俺がそう声をかけると体をビクッと震わせて俺に視線を合わせ始めた。
 ちょいまってくれ。
 俺はいま目の前、ルルの目の前に立っているんだぞ?
 なのに何だその反応。
 今気づいたみたいな反応だったぞ。

  「お、お兄さん!? えっ! い、いつから目の前にいたんですか!?」

 やっぱり気づいてないのか。
 俺、存在感そんなになかったんだな。
 がっくりと肩を落としながら「比較的真っ直ぐ前に進んできたからさっきからルルの前の方にはいたよ」とだけ答えた。
 俺がそんな風に肩を落としている間に戦闘は終わっていた。
 あれだけいたコボルトが全滅している。
 ココールが後始末でコボルトの死骸をその場で埋葬している姿が見えた。
 全てが終わると先ほどの少女と俺達三人は合流して挨拶を交わしていた。

  「本当にすいませんでした。 私達のミスでご迷惑をおかけしました。 そしてありがとうございました!」

 少女が言うには森にできたコボルトの巣の討伐依頼を受けてここに来たらしい。
 今回新しく入った旅団での初めての戦闘だったので頑張っていたらしいが、コボルトの数が予想以上に多い事に気付いた他のメンバーが一目散に逃げ出してしまったという。
 かといって暴れだしたコボルトを放っておける訳もないので一人奮闘していたという。
 予想通りだった。
 俺は憤りを隠さずに「ありえねぇ!」とだけつぶやいていた。
 ココールは少し考えた後、その少女に一つの話を持ちかけた。

  「ねぇ、もしよかったら貴方マスターの旅団に来ないかしら? マスターのレベルや旅団のレベルは低いけど絶対に仲間を見捨てたりするようなことは無いわよ。 マスターも嫌何て言わないわ」

 そう言って少女を見た後ちらっと俺を見る。
 俺は勿論だと言わんばかりに頷いた。

  「えっ? で、でも、今入っている旅団が」

  「仲間を一人見捨てて逃げるような人達の所にいる意味あるんですか? ないですよね。 ええないです。 そんな人達に義理立てする必要はありません。 ですので本当に嫌だと思わないのでしたら是非私達の旅団に入ってくれませんか?」

 俺が何か言う前に怒ったような表情のルルがそう言っていた。
 俺も同じ気持ちだったのでその後に頷いた。

  「えっと、嫌何て事は無いです。 さっきの戦いとか見ててもお互いを本当に大事にしているのは解りました。 正直羨ましいなぁって感じたりもしたくらいです。 だから入れて貰えるなら是非入らせてもらいたいです」

 少女がそう言ったので俺がそれに言葉を返した。

  「勿論歓迎するよ。 まぁとりあえずギルドに戻って旅団の退団申請をしてからになるけどな。 まぁ気持ちで俺達の仲間になってくれるって言ってくれたんだ、もうすでに君も……えっと」

  「あっ! すいません、私はマイ=レイニーって言います。 よろしくお願いします!」

  「私はルル=エリシャです。 これからどうぞよろしくお願いします!」

  「私はココール=ノイスよ。 宜しくねぇ」

 と各自自己紹介を済ませ、俺は言葉をつづけた。

  「うん、全員の自己紹介も終わった事だしマイも俺達の仲間だ。 旅団申請で何かいざこざがあると困るから一緒に行こう」

 俺がそういうとルルとココールも頷いてくれた。
 マイはありがとうございますという言葉と共に嬉しそうに微笑んだ。
 とりあえず俺たちは農家のおじさんとおばさんに話をして、最後の日の依頼を終えた。
 ついでに三人分とマイの分までお弁当を作ってくれた。
 本当に良い人達だった。
 そして俺たちはそのままギルドに戻り、其処には丁度タイミング良くマイを見捨てて逃げた旅団のメンバー達がいた。
 マイの帰還を驚いた後に心配した等という言葉を吐いているのに本気でイラついたが、その後マイが抜けたいと言った後、旅団の誰もが引きとめはしなかった。
 表情には気まずさが浮かんでいたので、マイから言い出さなくても近いうちに旅団から退団させられていた可能性がある。
 こんな奴らの所にいるくらいなら絶対に俺達の旅団の方が良いと断言できる!
 いやまぁ、確かにレベルとかは低いけど、仲間を見捨てたり等は絶対にしないと断言できる。
 こうして新しい仲間が加わった。

  「改めて宜しくお願いします!」

 マイがそう言って微笑むのと同時に俺達も互いによろしくと声を掛け合った。









 私は非常に焦っていた。
 気づけばお兄さんがいないのだ。
 ついさっきまで私の直ぐ傍にいたはずなのにいない。
 どういう事!
 私は必死に声を上げお兄さんを呼んだ。
 もしかして、いや、そんな筈はない!
 あっていい訳がない!
 お兄さん、お兄さん何処にいるの!?

  「ルル俺は此処にいるから大丈夫だって。 だから落ち着いて」

 私が一人慌てていると突然目の前にお兄さんが現れた。
 そう突然目の前にお兄さんが現れたのだ。
 つい今までいなかった筈なのに急にだ。
 どういう事! 
 でも、そんな事よりお兄さんが無事でよかった!
 お兄さんは存在感が無いのかとかつぶやきながら落ち込んでいたけど、後で慰めてあげれば良いよね。
 とにかく無事だった事が嬉しい。
 本当に良かった。
 そんな感じでホッとしていると戦闘は終わっていた。
 本当に流石としか言いようがない。
 ココールさんの力が凄まじい事は知っていたけど此処までとは思いもしなかった。
 魔法の同時詠唱にあの範囲の広さ。
 本当に凄い。
 凄いと言えばあの女の人も凄い。
 一人であれだけのコボルトを殲滅したにもかかわらずまともな傷一つ負っていなかった。
 私が掛けたヒールも多少の疲労回復程度の効果しか与えていないだろう。
 そんな事を考えている間に私達は合流を済ませ、ココールさんの提案で女の人も仲間に入るという話になった。
 女の人は義理がたい人で、人が良いようだ。
 見捨てて逃げた仲間なんかをまだ気にしているのだから。
 だから思わず言ってしまった。
 だけど私の素直な思いなので後悔は無いし、本心からそう思っている。
 お兄さんだって頷いているから私は間違っていない。
 なんだかんだで女の人マイさんも仲間になってくれる事になった。
 だけど一つだけ釘をさしておかないと駄目だよね。

  「マイさん、あの一つだけこの旅団でやってはいけない事があります」

 私がそう声をかけると不思議そうに私を見つめて「何ですか?」と尋ねてきた。

  「お兄さんの事です。 お兄さんは私のお兄さんなんです。 だから絶対に手を出すのは許しません」

 私がそういうと驚いたような表情の後笑われました。
 あれ?
 どうして笑われるのかなぁと思っていると驚きの発言が飛び出てきました。

  「あはは、大丈夫ですよ。 私の恋愛対象は20歳以上の素敵な女性だけですから」

 あ、あはは、そうなんですか!
 ああ、良かった!
 それなら安心です。
 私もまだ17歳だから範囲外ですし安全ですね!
 まぁお兄さんに手を出さないのであれば本当に何も問題はありません。
 これから宜しくお願いしますねマイさん。









 ルルちゃんが大声でマスターがいない事に混乱している声が聞こえ、私も周りを確認してみた。
 これでもある程度経験を積んだと言えるだけの場数は踏んでいるし、その手の感覚だって其れなりに自信がある。
 だというのに感覚だけではなく、しっかりと目でも確認したというのにマスターの存在が確認できなかった。
 そんな、まさか!
 私にそんな考えが浮かび思わず言葉が漏れるとすぐ近くからマスターの声が聞こえた。
 慌てて振り向くと其処には若干物悲しそうな表情のマスターが普通に傷一つなく立っていた。
 私のいつからいたのかという質問にルルちゃんが騒ぎだす前からいたという。
 全く気がつかなかった。
 ありえない。
 この距離だ。
 この距離で存在に気づかないわけがないし、私自身しっかりとつい今しがた確認したばかりだ。
 だというのにマスターは其処にずっといたという。
 どういうことだ?
 と考えている時にふと思い浮かぶ事があった。
 もしかして、特殊技能?
 特殊技能とは基本的にその人が元々持っている技能の事だ。
 これは才能というか、生まれついての物が大半なので後から自力で取得したりするのはほとんど無理に近い物がある。
 マスターの事に気がつかなかったのもマスターの特殊技能のせいかもしれない、そう考えたが今はとりあえずモンスターを殲滅する事を優先しなければいけない。
 先程からモンスターを追いかけてきた女の子は一騎当千の勢いで頑張っているのだから私だって負けていられない。
 それに少しくらいマスターとルルちゃんに良いところも見せたいしね。
 さて、もうひと頑張りだわ。
 頑張りましょうか!



[16049] 第四話~落ち着いた頃に〇〇〇〇〇!?
Name: 榊燕◆972593f7 ID:f1eae2c8
Date: 2010/02/25 00:01




          【第四話~落ち着いた頃に〇〇〇〇〇!?】





 旅団の仲間が俺を含め四人になってから特に大きな事件もなく三カ月が経った。
 まぁ大きな事件は無くてもこまごまとした問題が結構浮き彫りになってきたんだけどな。
 まず第一に旅団の住処。
 つまり家だ。
 特定の宿とかでも良いのだが、やはりある程度形を作る為に小さくても専用の家が欲しい。
 小さいと言っても旅団が使う家の割合での話になり、普通の家と比べればかなりの大きさになる。
 最低限の仲間の部屋と広間、倉庫や台所、後は風呂に最低限体を動かせる程度の庭が必要になる。
 それだけの物がそろっている物件となると流石に100P程度じゃ買える訳もなく、旨く安い物件があったとしても300Pから500P程度は覚悟しなければいけない。
 それに装備。
 俺の装備は正直最低レベルの物なので問題ないのだが、ココールやルル、マイの装備品はかなり良質の物だ。
 中には一品物まである為修復や整備をするだけでもかなりの金が動く。
 そして俺のレベルとランク。
 三か月ちまちま頑張ってなんとかランクも上がり旅団のランクはCまで上がった。
 だが三カ月でCだと普通に考えても遅すぎる。
 まぁ俺が受けていた依頼が大体最初にやった農家の護衛とかそのレベルの依頼ばかりで、ほんのたまにモンスター討伐の依頼を受けていた程度なので仕方ない事なんだけどな。
 とにかく、問題として上がった家と装備、共に金が足りないという事が今一番の問題なのだ。
 因みに装備品の修復や整備は勿論旅団内の蓄えから行っている。
 新しい装備品とかの購入に関しては個人的にやってもらっている。
 そんなこんなで今日もまた俺たちは新しい依頼が無いかを探しにギルドにやってきた。

  「いい加減少しは危険でも割の良い依頼をこなさないと危なくなってきたな」

  「う~ん。 マスターが望んでいるような拠点を手に入れるなら確かに今のままでは駄目ねぇ。 日々の生活と申し訳ないけど私達の装備品の修繕だけでほとんど貯まらないからね」

 ココールが俺の言葉に頷くように苦笑を洩らした。
 続いてマイとルルも同じような表情で続いた。

  「お兄さん、私達の事そんなに気にしなくて良いんですよ。 今の宿でだって問題なくこうして行動出来ているんですから。 確かに拠点があれば便利だとは思いますけど」

  「そうですよ。 無理して危ない事をするより安全にコツコツ言った方が良いですよ。 拠点が欲しくないわけではないんですけどね」

 何だかんだと言ってやはり拠点は欲しいらしい。
 無理をしないでコツコツと。
 俺のレベルだと難しい問題だ。
 ココールとマイの二人なら旨くすれば直ぐにとは言わなくても比較的早い段階で稼ぐ事が出来るかもしれないが、二人頼りで依頼を受けるのは流石に俺には出来ないしなぁ。
 因みにココールはレベルが96に上がり、マイのレベルも87と滅茶苦茶高レベルでランクもAAだった。
 ルルだけは何故か未だにカードを見せてくれないのでランクもレベルも解らない。
 ルル曰く。

  「あ、あはは。 お兄さんと同じぐらいのレベルとランクですよ~」

 という事なのだが、あの隠しようと実力から言ってかなり怪しい。
 まぁ其処まで危険な依頼を受けるわけでもないので深く追求する必要もないんだけどな。

  「おっ! お前さんも拠点の話なんてするようになったのか! まぁ早い気もしないでもないがメンバーがメンバーだ持っていてもおかしくはないわな! それなら丁度今おいしい依頼があるんだが乗ってみないか? 通常ならランクAクラスの依頼だがお前さん達なら問題ないと思うからやるなら特別に紹介してやるぜ」

 俺達の話を聞いていたらしくギルドの親父ががははと笑いながらそう話を振ってきた。
 何故かメンバーがメンバーといったところでルルが少し慌てていた気がするが、今は気にしても仕方がないだろう。
 結局教えてもらえないんだろうしな。
 とりあえずそのおいしい依頼という物を聞いてみるとしよう。

  「興味があるか。 そりゃ良かった! 何ただのモンスター討伐何だがモンスターが少し問題でな。 強さ的にはぶっちゃけDランクでもおかしくないんだが厄介な事に一切の物理攻撃が効かないんだわ。 その上スライム並みに繁殖能力があるんで、攻撃を受けるとダメージを受ける受けない関係なく増えちまう。 魔法の攻撃にしたって早々一撃で倒せる訳でもねぇからな、次の魔法をうつ前に増えちまう事が多いんだ。 だから結構嫌われててな、其処らの冒険者連中からも依頼を振っても断られちまう事が多いんだよ。 その点お前さん達ならココールがいるだろう? 高レベルの魔法使いがよ。 ぶっちゃけ高レベルの魔法使いがいれば簡単過ぎる依頼なんだよこれは。 普通なら貼った瞬間に高レベル魔法使いがいる冒険者が直ぐにかっさらって言っちまうんだが、話を聞いてたのも何かの縁だしな、もしよかったらと思った訳だ」

 話を聞く分には成程と思わなくもない。
 その話が本当で、ココールの魔法一発ないし、それに近い回数で倒せるなら其れほど楽な物は無いだろう。
 だがココール一人に頼むようなこの依頼を受けて良い物なのだろうか。
 俺がそんな事を考えているココールが俺の肩を叩いた。

  「もぅ、マスターは相変わらず考えすぎね。 私達は仲間なのよ? 仲間の力でその依頼が可能だというのであれば受けるのに何の問題もないでしょう? 頼りきりになるのと頼りにしているのでは全然話が違うのよ。 マスターも何でもかんでも全員で出来る事じゃなくて、仲間が出来る依頼で物事を決めても問題ないわ。 流石にそれに頼りきりじゃ私達も口はだしちゃうかもしれないけどね。 今回みたいに」

 そう言って微笑まれた。
 そう言う物なのだろうか?
 ルルやマイを見るとココールの意見に賛成なようで頷いていた。
 頼りきりにならない程度で頼りにする。
 なんだか難しいが、なんとかしていくしかないか。
 俺は苦笑を洩らしながら親父にその依頼について詳しく聞く事にした。

  「おう! こいつはヒュルームってモンスターでな、全長で二メートル程度のナメクジみたいな大きさのモンスターだ。 ココールやマイなら知っているかも知れねぇけどな。 厄介な事にさっき言った通り攻撃、いや、衝撃を与えただけで分裂して増えちまうんだよ。 それもどれだけ増えるのか解らない程延々と増え続けるから魔法で一瞬で殲滅出来る奴以外だとまず間違いなく討伐不可能なモンスターだ。 この依頼のたっせ金額は1500Lでモンスター事態に報奨金が掛かっているからそいつを合わせれば全部で1800L程度になるぜ! Aランクの依頼にしちゃ安い方だが高レベル魔法使いに関しちゃ簡単な依頼だからなこの額になっちまった。 お前さん達になら2ランク上位依頼になるからこれを受けて達成しただけでもランクが一つ上がるぜ」

 Aランクの依頼の相場は大体が2000Lから5000Lだ。
 それと比べると確かに安いが、話を聞く分には納得できる。
 これが間違えて高レベルの魔法使いがいないとなればまた値段が跳ね上がるんだろうが比較的ココール程じゃないけど高レベルの魔法使い入るものが。
 因みにレベル50を超えた魔法使いが高レベル魔法使いと呼ばれる。
 中にはレベルが低くても魔法の威力が高い者も特別に高レベル魔法使いと呼ばれる事がある。

  「親父さん、その依頼是非受けさせてもらうよ」

 俺がそう言うと親父は「おう!」と言ってその依頼の紙を渡してくれた。
 その紙を受け取り、とりあえず場所等を確認してからどれくらいの荷物が必要かを皆で話し合う。

  「町から一週間程度の場所みたいですから多く見積もって三週間分程度の食糧等を持っていけばいいんじゃないですか?」

 マイが少し余裕をもった意見を伝えてくれる。
 今までの経験から何処でどんな予測不可能な事が起こるか解らない、だから少しでもその手の事に対応できるように多過ぎない程度で余分に物を持って行った方が良いとマイが前に言っていた。
 他にこまごまとした事を決めた後、各自自分達の用意を済ませる為に一度解散することにした。
 出発は明日。
 朝一で出発する事に決め、集合場所はいつものように宿の前にした。
 俺もとりあえず荷物をそろえる為に先ずは雑貨屋に向かう事にした。
 そして俺は酷く油断をしていた。
 此処しばらく平穏無事にトラブルという感じの物が大々的に俺に襲いかかってきていなかったから。
 雑貨屋に入る少し前の道。
 其処で俺はトラブルと出会った。


 俺が雑貨屋が見える所まで来たところで言い争いが聞こえてきた。
 女三人の声と男一人の声。
 ああこれはあれか?
 またココールの時のようなナンパか?
 と思い溜息をつきながらその声のする方に歩いて行った。
 するとそこでは予想はあっていたのだが、何ともなぁとまた溜息をつくような光景が繰り広げられていた。

  「私達が何のために貴方を仲間に加えたと、私の、私の気持ちを!」

  「そうよ! 彼女が貴方の事を好きだから、それで貴方もそれにまんざらじゃなさそうだから誘ってあげたっていうのに!」

  「その上何その言い方! 彼女に全く興味がないですって!」

 女三人が男一人を囲って修羅場ってました。
 ってかどうも女三人の一人が男の方に好意を抱き、仲良くなる為に旅団にさそったんだろうな。
 男はそれに気づいてか気づいてないのか一度旅団に入ったものの結局彼女の気持ちに答えなかったからこうなったのかねぇ。
 やだやだ、ああいう男女の縺れは嫌なもんだ。
 何より男がイケメンなのが気に食わない。
 何あの金髪で長身。
 切れ長の目にニヒルな笑みが似合うその雰囲気、本気で死ねば良いのに。
 結局あの男が女を騙してたみたいな結果何だろうよっけ。

  「僕は僕にしか興味がないと言っただけですよ? 何故僕みたいな完璧な者以下の人とお付き合いをしなければいけないのですか? といっても僕以上の完璧な人何ている訳もないんでしょうけどね!」

 その後に鏡を見て「やっぱり僕が一番だ」とほざいていた。
 思わず唖然。
 な、ナルシストかよ。
 それも極度のだろうあれは。
 騙す云々以前に自分以外に一切の興味をそういう意味で抱叶い感じの究極のナルシストっぽいぞ。 
 その後も女達は色々と男に詰め寄るが男は変わらず自分大好き発言しかしていない。
 言い訳なのかあれは?
 いや、言い訳というよりも本気で何故か解ってないタイプだなあれは。
 それに女達の方から最初から男があんな感じだったって言う事をさっき行っていたところから、結局女達が反場無理やり誘って入れた感じなんだろう。
 それであの言いぐさかぁ。
 女って生き物は怖いもんだ。
 イケメンは敵で、女大好きナルシストなイケメンも敵だが自分大好き女どうでも良い感じのナルシストならどうでもよい。
 まぁ知らずにああいう感じで女を連れていくのはむかっと来るが、ああいう女が寄ってくる事を考えると少し同情したくもなる。
 結局女達は言いたい事を言いだけ行った後泣きながらその場を去って行った。

  「誰も僕の完璧さを理解しないんだね」

 そんな事を呟きながらも表情がどこか本当に悲しそうだった。
 だからだろう、思わず声をかけてしまったのは。

  「まぁ落ち込むなってナルシスト。 ああいうのを自己中って言うんだから気にしてたらきりがねぇよ」

 そんな感じで。
 突然話しかけてきた俺に驚いたような表情を浮かべ俺に問い返してくる。

  「ナルシストって言うのは僕の事かな?」

  「ってかお前しかいないだろう? ってナルシストだよな?」

 本人に言う事じゃないかもしれないが言っちまったもんはしょうがない。
 馬鹿にしているようにも聞こえるかもしれないが俺にその気は全くないぞ。

  「……まぁ否定はしないさ。 僕は僕が一番完璧だと思っているからね!」

 このナルシストは人が出来ているのかどうか良く解らないが俺の言葉に怒ることなくそう返事を返してきた。

  「まぁ自分が良けりゃそれで良いだろうさ。 とにかく元気出せよ。 じゃあな」

 俺はそれだけ言うとその場から離れようとした。

  「ちょっと待ってくれないか? 君は僕がナルシストだと解って慰めてくれていたのかね?」

 離れようとした時にいきなりそんな事を聞いてきた。

  「ナルシストってのがそれに関係あるのか? 意味が解んねぇよ。 ついだよつい。 何となく声をかけちまっただけだ、まぁ元気みたいだし良かったな。 じゃあな」

 今度こそ俺はその場から離れた。
 とりあえず今は明日の荷物を買いに行かなければいけないのだ。
 俺はすぐ近くの雑貨屋に入り、その後に武器と防具の点検をしてもらいにそれぞれの店に行ってから、帰りにもう一度紹介してくれた親父に礼を言おうと思ってギルドに行った。
 其処には新しい仲間が待っていた。

  「おう! 今丁度お前さんの旅団員募集に応募があったぜ!」

 そう言う親父の横には先ほど話しかけたナルシストがカッコつけながら立っていた。
 何と、何故だ?









 いやはや参ったね。
 最初から僕は言っていた筈なのだが彼女達は何故こんなに怒っているのだろうか?

  「私の気持ちはどうしてくれるのよ!?」

 そんな事を言われても、僕は最初に言っていただろう?
 僕は僕以外の者に興味がないとね。
 確かに人づきあい程度で気になる人物とかはいるけど、恋愛感情を含んだそういう物で自分以上の物がいるとは思えないからね。
 僕が完璧すぎるのがいけないんだね、ふぅ。

  「最初に言っていたじゃないか。 僕は僕以外に興味がないと」

 僕がそう言うと彼女達はそれでも僕が悪いと責め立てる。
 何故こんな事になってしまったのだろうか。
 彼女達が是非にと頼むから僕は旅団に入る事にした。
 一週間、彼女達の旅団に入ってから一週間。
 何かと彼女は僕に色々と近づいてきたがその旅に君に興味がないと言い続けていた。
 そして今日それが爆発したかのようにこんな感じだ。
 はぁ。
 毎度毎度人から頼まれて入って良い事があった試しが一度もない。
 それもすべてこの僕が完璧すぎて他の人に恋愛感情を持てないのがいけないのか。
 ああ、僕の完璧さは何て罪深い。
 いい加減言い飽きたのか彼女達は泣きながらこの場を去って行った。
 はぁ。
 僕は悪くない。
 僕は悪くない筈なんだが、それでも罵倒されてこういう感じになるのは嫌な物だ。
 何より傷つけるつもりはなかったがそれでも彼女たちを傷つけてしまったのも申し訳ない。
 それでもやはり僕は僕以上に完璧な者以外に恋愛感情は浮かばないだろう。
 そして僕は知っている。
 僕以上に完璧な者は存在しないと。
 そんな感じで僕が少し落ち込んでいると突然声が掛けられた。
 突然のことだったので驚いてそちらを見ると一人の青年?
 一応青年と呼べる感じの男が立っていた。
 よくよく思い返してみると掛けられた声はどうも僕を慰めようとしているらしい事に気がついた。
 最初、僕が接近に気がつけなかった事に困惑していたが、それ以上にその言葉の意味を知るとなおさら困惑した。
 僕は何て言うか自分でも解るナルシストという物だ。
 これに関しては僕を知る者全てが自他共に認めている。
 この男も最初から僕の事をナルシストと呼んで話しかけてきた。
 だが男の口調や雰囲気からいつもの周りから呼ばれている感じの嫌味ったらしい感じや、嫌な雰囲気を感じなかった。
 一言二言話すと男はそのまま雑貨屋の方に向かって歩いていこうとした。
 思わず声をかけて止めていた。
 一つだけ聞きたい事があったからだ。
 その返答は僕にとって酷く驚くべきものだった。

  「ナルシストってのがそれに関係あるのか? 意味が解んねぇよ。 ついだよつい。 何となく声をかけちまっただけだ、まぁ元気みたいだし良かったな。 じゃあな」

 男はそれだけ言うと本当に何でもな事のようにその場から去って行った。
 初めてだった。
 普通ナルシストだと解った瞬間大概の人が嫌な顔をする。
 関わりあいたくない、気持ち悪い。
 そんな感じの雰囲気だ。
 僕は完璧だ、だからこそ女性はそれにつられて寄ってくることもあるが、男でナルシストだと解っていて普通に話しかけてもらったのも、ましてや心配までしてくれたのは本当に初めてだった。
 僕はその男に関して興味がわいた。
 勿論恋愛云々じゃない。
 完璧な僕でも一人はやはり寂しいものだし、仲間が入ればそれに越した事は無い。
 男みたいな所の旅団ならばさぞかし過ごしやすいだろうそう思ったのだ。
 其処まで思ってはっと我に返った。
 男が旅団を組んでいる可能性もなければ、男が旅団のただのメンバーの可能性もあるからだ。
 組んでいなければどうしようもないし、ただのメンバーであれば上がどうかで今までと同じだろう。
 男は雑貨屋から大量の旅道具を持って出て行ったあと武器防具の店の方に歩いて行った。
 どうやらこれから長期の旅に出るようだ。
 それならもしかしたらギルドで依頼を受けているだろう。
 男の首からカードが垂れているのは確認したので間違いなく冒険者だというのは解る。
 僕はとりあえずギルドに言って男の事を聞いてみる事にした。
 すると驚くほど速くギルドの親父は男の事を教えてくれた。

  「あいつの事か。 ってあいつがまた何かしたのか? あいつは天然のトラブルほいほいだからなぁ」

 と言って笑っていた。
 僕はその男の事についてどういう人物なのかを聞いてみるとギルドの親父は面白い者を見るような眼で僕を見た後色々と話をしてくれた。
 つい最近、三か月ほど前に旅団を組んだばかりの新米冒険者。
 それも旅団を組んだのが冒険者になったのと同時だという変わり者。
 仲間が見つからず色々とやっている間に面白いメンツが集まって仲間になった事。
 僕が先ず驚いたのは男の仲間についてだ。
 凄い仲間がそろっている、正直間違っても男の旅団に喧嘩だけは売りたくない。
 そして話を聞いているうちにギルドの親父が面白そうな顔をして僕を見ていた。

  「お前もあいつに引き寄せられた口かい?」

 そう言って笑った。
 成程、ギルドの親父さんもそうなんですね。
 そしてさっきの話を聞く限りは仲間の三人もそんな感じだろう。
 僕は苦笑を洩らしながら「完璧な僕でも人は恋しいんですよ」とだけ答えた。
 ギルドの親父は面白そうに笑いながら「相変わらずあいつの周りにゃおかしな奴ばかり集まりやがる」と言って一枚の紙を手渡してくれた。
 それは男の旅団の募集をしているという紙だ。
 僕は驚いてギルドの親父を見ると「募集してるみたいだぜ」と言われた。
 僕は笑いながら「それなら応募しても良いですか?」というと「おう!」という返事が返ってきた。
 男はこれから片道一週間程度のモンスター討伐に行くらしい、という事は早くても二週間、遅くても大体三週間はあれば戻ってこれるだろうから、それからの紹介になるのか。
 今度こそ良い旅団だと良いな。
 僕はそんな事を考えながら募集の受付を終了するとタイミング良くというか、タイミングを見計らったかのような時に男がギルドに入ってきた。
 ギルドの親父はひどく面白そうに「おう! 今丁度お前さんの旅団員募集に応募があったぜ!」と言って笑っていた。
 僕も同じように笑いながら男に挨拶をし、どうだろうかと尋ねるとすんなりと「宜しく頼むな」という言葉が返ってきた。
 思わず僕が本当に良いのかと確認すると「仲間の他の皆も嫌だって言わねぇだろうし、見た感じ明らかに俺よりレベルが高いのは解るからな、問題なんてないだろうさ」と言って軽く答えられた。
 何ともまぁ、僕が内心受け入れてもらえなければどうしようと思っていたのが馬鹿らしくなるほどすんなり受け入れられた。
 その後男、リーダーから明日からさっそく依頼があるけど一緒に来るかどうかを聞かれたので勿論と答えておいた。
 それならと明日の朝一で出発しその時に皆に紹介すると言われ、明日リーダーの宿の前で待ち合わせになった。

  「面白い奴だろう?」

 リーダーがギルドから出て行ったあとギルドの親父が面白そうに笑いながらそう言ってきた。
 僕も思わず「そうですね、本当に楽しみです」と答えていた。
 次の日リーダーの言うとおり宿の前で他の旅団のメンバーと落ち合うと、其処でも拍子抜けするほどすんなり受け入れられた。
 皆が皆「宜しくお願いします」「宜しくねぇ」「よろしくです!」と何一つ文句どころか疑問もなく受け入れてくれた。
 此処でも思わず僕から「何も聞かずに受けれてい貰って良いんですかね?」と聞いていた。
 三人は顔を見合わせた後それぞれ笑いながらこんな答えを返してきた。

  「お兄さんが決めた事ですからね、問題ありません。 お兄さんの人を見る目に間違いがある訳ありません」

  「ふふふ、マスターが認めた人なんでしょう? 問題は全くないわよ」

  「私も入ったばっかりですけど、団長は良い人ですから問題ないんです!」

 三人が三人ともリーダーの事を完璧に信頼していないと返って来ない返答だった。
 これは本当に良い旅団だ。
 僕はそんなことを感じながら改めて「宜しく頼みますね」とあいさつを交わした。
 ただ一つ、リーダーに言いたい事があるんです。

  「こいつがナルシストのリク=デイラーだ。 今日からというか昨日から旅団に入る事になったから皆宜しく頼むな」

 という紹介の仕方はどうなんだろうか?
 それで何一つ違和感なく受け入れられたのも凄いと思ったが、仲間の皆の趣味を聞いて類は友を呼ぶという言葉が思い浮かんだ。
 本当にここでなら楽しく過ごしていけそうだ。



[16049] 第五話~ルルの正体判明~
Name: 榊燕◆972593f7 ID:f1eae2c8
Date: 2010/02/24 23:57





          【第五話~ルルの正体判明~】





 新しい仲間を迎えてから三カ月ほどが経った。
 俺達の旅団のランクが漸くBに上がり、紹介される依頼も増えてきた。
 それにしても本当に漸くといった感じだ。
 ルルやココール、マイにリクであれば実際問題ランクA以上なのが当たり前なのだ。
 それを俺が脚を引っ張っているせいで未だにランクがB。
 情けないものだ。
 それでも最近はギルドの親父が時々紹介してくれる割の良い上のランクの依頼を受けているおかげで前よりは成長できていると思う。
 実際問題前回Cに上がるのに三カ月掛かり、今回のBに上がるまでも三カ月でこれたというのはこの上の依頼を受けられた事が大きい。
 Cに上がるまでとCからBに上がるまででは難易度が全然違う。
 俺がCに上がるまでに受けた依頼は全部ランクD以下の物であり、その場合上のランクに上がるにはそれ相応の信頼と実績が必要になる。
 D以下の依頼達成の数100が最低条件になるのだ。
 そしてCからBに上がる時に同じ要領でやり続けるとなるとC以下の依頼達成の数1000が最低条件になり、ギルドからの戦力評価も受けなければいけない。
 今回俺達はギルドの親父の紹介でランクAの依頼やBの依頼を何度か受けさせてもらったおかげで比較的早くここまでこれたのだ。
 そして戦力評価は実際問題ココール、マイ、リクの三人だけで実質AAランクの評価を貰っている。
 俺は普通に受けてぎりぎりCランク、ルルは教えてもらえなかった。
 そう教えてもらえなかったのだ。
 何度聞いても俺と同じくらいという返事しか返ってこない上に、周りの仲間に聞いても困ったように笑われて本人が言わないのに言えないとはぐらかされてしまう。
 と言っても、ルルに無理やり問い詰めるような真似をしたくもなければ、其処までして知りたい訳でもない。
 何となく気になると言った程度だ。
 ただ、何となくというよりもこれだけ依頼を受け、共に戦場をくぐり抜けてきたのだ、ルルが明らかに俺より強いのは解っている。
 ルル自身はどうにか其れを隠そうとしているようだが、隠しようが無いほど俺と差がありすぎる。
 ほぼ間違いない感じでココールやマイ、リクと同程度の実力はありそうだ。
 今まで実際問題冒険者として生活をしていなかった筈のルルが何故それほどまでに強いのかは解らないが、今現在一番弱く足手まといになっているのは間違いなく俺だ。
 ああ、改めて考えると切なくなってきた。
 頑張らないと。
 本当に頑張らないと。
 皆に失望されないように、皆が他の奴らに笑われないように。
 とりあえず、周りから一つのしっかりとした旅団と認めてもらえるように拠点を手に入れるのを第一目標にしてきたのだが、それがもう少しで叶いそうなのは良い事だ。
 資金がもう少したまれば目星をつけている物件があるので其処を手に入れたい。
 一応前金を渡して予約だけはしているのだが、いかんせん時間をかけ過ぎればそれも意味がなくなってしまうだろう。
 後一カ月以内になんとかしなければいけない。
 俺が目星を付けた拠点は大きさはそれほどでもない。
 と言っても普通の家とかと比べれば全然大きいのだが。
 ただ、作りがしっかりとしていて中も良い感じであるから値段は予想していた金額よりも高い物になっている。
 場所が場所だけにそれでもその作りや中身にしては値段が下がっているがそれでも850Pもの価格になっていた。
 今現在の旅団で貯めているお金は780P。
 こまごまとした物や、最低限必要なアイテムをそろえる事を考えると最低限の70Pの他に50Pは余裕を持って欲しいところだ。
 とりあえず最低限必要な残りの70Pを稼ぐ事が第一優先なのは当たり前だが。
 そんな事もあり、今回は最初からギルドの親父に金額の良い依頼が無いかを聞いているのだ。

  「ん~あるっちゃあるが、ランクAAAの物になっちまうんだよな。 この依頼を達成できれば3ランクオーバーの依頼達成という事でランクAに上がる依頼必要数が一気に半分になるし、この依頼達成の報酬金額は150Pだ。 でもな、何というかん~少し譲ちゃんと話しさせてもらってもよいか?」

 ギルドの親父はそう言うとルルを連れて奥の部屋に言ってしまった。

  「ルルに話って何なんだか、解る?」

 俺が三人に尋ねると三人は「あー何となく予想はつく」といった感じの返答だった。
 どうやら解らないのは俺だけらしい。
 少し疎外感を感じる。
 少ししてギルドの親父とルルが帰ってきた。
 ルルは少し困ったような表情で何か決めたような感じで俺に近づいてきた。

  「お、お兄さん! 少し、少し良いですか、大事なって訳でもないんですけど、今回の依頼を受けるのにあたって話しておかないといけない事があるんです」

 最初俺に挑むように声をかけてきたが直ぐに恥ずかしそうに小さな声で俺だけを呼ぶ。
 三人をチラッと視線を向けるとなにやら漸くかといったような感じの表情でルルを見ていた。
 何なんだ?
 とりあえず俺はルルに頷いた。

  「今日の夜お兄さんのお部屋にお邪魔しますね」

 そう言ってギルドの親父にその依頼を受ける胸を伝えに行った。
 あれ?
 俺一言も受けるなんて言ってないんだけど、もう何かきまっちゃってるよね。
 いや、まぁ報酬を聞いた時点で受けられるなら受けたいと思っていたけど普通俺が受けると言いに行くべきじゃないのか?
 ギルドの親父も慣れた手つきでそのまま受領しちまうし、ああもういいや。
 どっちにしても受けるんだし。
 とりあえず今はルルからの話の方が気になるしな。
 今回の依頼はとある小さな村付近の洞窟に住み着いたモンスター退治とその村の負傷者の治療プラスアルファーと書いてあった。
 プラスアルファーが何なのか気になるが、その事も含めて夜俺に話をすると言うのでその時まで待とう。
 依頼を受けた俺達はとりあえず出発が三日後の朝になるのでそれまでにそれぞれ準備を済ませる為にばらばらになった。
 それぞれ修理の為に預けてある装備品や足りないアイテムを買いに行ったり、受け取りにいったりしている。
 俺もとりあえず足りなくなった回復アイテムを補充するために雑貨屋に向かう。
 装備類は明日出来上がるので明日の夕方にでも取りに行こう。
 俺は必要な物を買い宿屋でルルが来るのを一人待つ事にした。





  「お兄さん、これが私のカードです、見てください」

 そして差し出されたカードに書かれているのを見て俺は心底ぶったまげた。
 いや、レベルや強さは解っていた。
 というか、ココール達に近いくらい強いのは何となく予想していた。
 だがこれは予想外だ。
 こんな事があるとは一切想像すらしていなかった。
 カードに普通なら表記されない称号名が記されていたのだ。
 称号名とはいわば周りの者達から認められ、その上でギルドにまで認められた上で付けられる称号だ。
 二つ名と良く呼ばれる。
 例えばココール。
 ココールも実は称号を持っている、称号名『神秘』だ。
 ココールを知る者は、彼を神秘のココールと呼ぶ。
 因みにマイとリクも称号を持っている。
 マイは『鬼人』、リクは『疾視』という称号だ。
 勿論俺は持っていない。
 俺だけ称号を持っていない。
 というより普通は持てない物だ。
 持っている方が凄いだけで持ってないのが悪いわけではない。
 でも情けない気がしないでもない。
 あー話がそれたが、ルルにもその称号があり、その称号名に俺は心底驚いた訳だ。
 称号『聖』。
 つまり、つまりだ。
 噂の聖少女というのはルルだったという事だ。
 あっはっは。
 本気でかー。
 本気でびっくりした。
 俺が一人呆然と驚いているとルルが酷く慌てながらあたふたと俺に言葉を掛けてくる。

  「お、お兄さんごめんなさい! 隠すつもりじゃなかったんですけど言いだせなくて」

 まぁそう簡単に言える事じゃないよな。
 というよりも先ず、俺がルルの事を知らない事が大問題だったのではなかろうか?
 大概の奴らは直ぐにルルが聖少女だという事が解ったらしい。
 というのも冒険者の多くは大きなけがを負う事があり、その場合教会に治療を頼むのだが、その時にルルに治療を受けた奴が結構いたらしい。
 そういう奴らから情報が流れに流れてルルが聖少女というのは比較的早い段階で知れ渡ったらしい。
 どうして俺がそれを知らなかったかというと、俺自身其処まで大きな傷を負った事がなく、教会のお世話にならなかった事と、ルルがなるべく俺にそういう話題を近づけないようにしていたからだ。
 とりあえず必死に謝るルルの頭をなでながら「まぁ驚いたけど、謝る事じゃないだろう?」と言って落ち着かせた。
 実際問題、酷く驚いたものだがそれだけだ。
 ルルが噂の聖少女だからと言って今更態度を変える気もなければ、だからと言って仲間から外す気もない。
 聖少女だろうが無かろうがルルはルルであり、俺の大事な仲間なのだ。
 それさえ履き違えなければ問題ないだろう。
 うん問題ない。
 俺だけ齢の何てきっと問題ないさ。
 その後少し話をした後に依頼の事を確認した。
 今回受けた依頼は村人たちの傷の手当ての他に、死んだ者達を天に送る作業も入っているらしい。
 だからこそ、ある程度知名度があり、その知名度で納得できる人でなければ相手方も受け入れられなかったらしい。
 なんともまぁな話だ。
 とりあえず俺はその話が終わった後、気づけばなくなっていた飲み物のお代わりを取りに行き、戻ってきてみればルルはスースーという寝息を立てて寝てしまっていた。
 俺が考えている以上にルルにとってこの話をするのは緊張したんだろう。
 あんまり目立ちたがりの娘じゃないからな。
 なのにわざわざ俺に打ち明けてくれたのだから嬉しい物だ。
 その気持ちに答えないとな。
 俺は少しだけ笑うとルルを抱きかかえ俺のベッドに寝かしつける。

  「ルル、ありがとうな」

 俺はそれだけ言って最後にルルの頭をなでると宿屋のおじさんに毛布だけ借りて床で寝る事にした。
 色々驚く事はあったけどやる事に変わりは無い。
 明日からまた頑張らないとな。
 俺はそう考えながら眠りに落ちた。









 ギルドの親父さんに呼ばれて奥の部屋に入った後聞いた話は予想した通りの物だった。

  「譲ちゃんがあいつに秘密にしておきたがっているのは解るんだが、今回の依頼を受けるならどうやっても譲ちゃんの正体があいつに解っちまう。 それでも良いかと思ってな、先に譲ちゃんに確認しとこうと思った訳だ」

 私は小さく溜息をつきながら仕方のない事だと思っていた。
 いつまでも隠しておけるわけでもないし、隠しておきたい訳でもない。
 お兄さんに知られてそれで今までと違う態度を取られたり、旅団から外されたりするかもしれないのが怖いのだ。
 勿論お兄さんに限ってそんな事は無いと思う。
 無いと思うけどそれでも怖いのだ。

  「どうする?」

 ギルドの親父さんが改めて効いてくる。
 この人も良い人だ。
 本当なら私にこんな事確認しないでそのまま渡せば良いだけだというのに、私に気を使ってこうまでしてくれているのだ。
 出来る事なら知られたくない。
 それでも今回のこの依頼の報酬があればお兄さんが必要だと言っていたお金が全部足りる。
 お兄さんの喜ぶ姿を想像してしまった時点で私の答えはきまってしまった。

  「しょうが、ないですよね。 実際いつまでも隠しておける訳じゃないですし、何よりこれでお兄さんが喜んでくれると考えると私は拒否する事出来ないですよ」

 私が苦笑しながらそう言うとギルドの親父さんは「あいつもまぁなんというかなぁ」と同じように苦笑を洩らした。
 その後私はお兄さん達の所に戻りお兄さんに話があると切り出した。
 何だかんだで気づけば夜お兄さんの部屋に行く事になってしまった。
 緊張していてあまり深く考えていなかったけど夜にお兄さんの部屋に行くのだ。
 どうしよう。
 そ、そうだ、まずは準備しないと。
 新品の下着、かわいいのを用意して、しっかりお風呂に入っていかないと。
 そういえばココールさんが良い匂いのする香水を持っていた筈、何処で売っているのか聞いておかないといけないよね。
 って、私は一体何の準備をするつもりなの!?
 ああ、でもこれくらいは最低限何かあっても困らないように準備だけは大事だよね?
 うん、これはおかしい事じゃない、当たり前のことの筈。
 お兄さんの部屋に行くのだ、これくらいは当たり前よね。
 出来れば雰囲気の良くなる香なんかあればって、だから私は一体何を考えているの!
 こ、今回はお兄さんに私の事を話しに行くだけなんだからそんな事ある訳ない。
 無い筈。
 だからそんな準備は必要ないの!
 ……でもまぁ、準備だけはしておいて損は無いし、急いで買い物に行かないといけないかな。
 先ずは服屋さんからだ、夜まであんまり時間ないし急がないとね!





 夜私はお兄さんの部屋の中でかちんこちんに固まっていた。
 は、話をしないと。
 でも私の目線にはお兄さんがいつも使っているであろうベッドに、脱ぎ捨てられた普段着。
 ああ、お兄さんの服。
 お兄さんが飲み物を取りに行ったすきに思わず近づいて手に取っていた。
 少し汗で湿っている。
 お兄さん私が来る前に着替えたのかな?
 少しだけ匂いを嗅いでみるとお兄さんの匂いがした。
 ベッドからもお兄さんの匂いがしてくるみたいでああ、どうしよう。
 私が一人そんな事をしていると廊下から足音が聞こえてきた。
 お兄さんが戻ってきちゃった!
 あわあわとしながら急いで服を元あった場所に戻し、私も座っていた場所に座りなおす。

  「ごめんな、遅くなった。 とりあえずお茶を貰ってきたから、ついでにこれも」

 そう言ってお兄さんはお茶とお菓子を私に出してくれた。
 ああ、でも私の鼻にはまださっきのお兄さんの匂いが残っている。
 手にもお兄さんの衣服の感覚が残って、まだそれをなくしたくない。

  「あ、ありがとうございます」

 それだけ言ってとりあえずはお兄さんのさっきの感覚をまだ味わい続けた。
 しばらくそのまま黙っていたのだがお兄さんが「それで話って?」と言ってきたので我に返った。
 そうだった、私はお兄さんに話をしないといけなかったんだった。
 思い出した私は違う意味でやはりかちんこちんになってしまった。
 それでも話さなければいけないので少し時間がかかってしまったが、胸元からカードを取り出しお兄さんに差し出した。

  「お、お兄さん! これ、これを見てください!」

 私が震える手で其れを差し出した。
 お兄さんが不思議そうにそれを見つめる。

  「お兄さん、これが私のカードです、見てください」

 もう一度そう言った。
 お兄さんが私の手からそのカードを受け取り中を確認する。
 次の瞬間お兄さんが今度は固まってしまった。
 ああ、やっぱり。
 今まで隠していた聖の称号にやっぱり驚いてます。
 どうしようどうしようどうしよう。
 話してしまった。
 お兄さんに避けられたらどうしよう。
 嫌われたらどうしよう。
 もうそんな事になったらイキテイケナイ。
 ああ、お兄さん、おにいさんおにいさんおにいさん!
 私はその後自分で何を言っているか解らない程何でもかんでも言い訳をしたと思う。
 その後すぐにお兄さんは私を抱きしめながら頭をなでてくれた。
 お兄さんに頭をなでられるのは大好き。
 凄く気持ちが良い。
 何よりお兄さんに抱きしめられている。
 さっきお兄さんの衣服よりより強いお兄さんの匂いとぬくもりが私を包む。
 ああ、今なら死んでも良い。
 でも死にたくない。
 お兄さん。
 私がそんな幸せを感じながら呆然としているとお兄さんがゆっくりと私がどんな人物であっても私は私であってお兄さんにとっての私は変わらないと言ってくれた。
 嬉しかった。
 それから私はお兄さんと色々とお話をした。
 何故隠していたのかとか、やっぱり強かったんだという事等。
 お兄さんはうすうす私のレベルが低くない事に気づいていたらしい。
 それを聞いた時は私も驚いた。
 なんとか隠し通せてると思っていたのに隠せていなかったのだ。
 私もお兄さん関係になるとまるで駄目駄目みたいだ。
 そのあとひと段落ついてから依頼について説明を始めた。
 今回の依頼はモンスター退治の他に村人たちの傷の治療、それに死者の鎮魂をしないといけない。
 死者の鎮魂は高レベルの神聖魔法のレクイエムが使える者にしかできない。
 それも今回は死者が百人を超えているらしく、短時間で全ての者達にレクイエムを掛けないといけないのだ。
 教会でも私の知る限り其れが出来るのは十数人程度しかいなかった。
 ましてや冒険者の中にいる人で出来る人がどれだけいるのか疑問に思った。
 とりあえず私であれば五百人程度までであれば一度でレクイエムを掛ける事が出来るのでその点は問題ない。
 そして今回の依頼者はその村の長老らしいのだが、村人たちを納得させるためにある程度知名度のある人物じゃないといけないということらしい。
 その分依頼の金額に上乗せしたという事だ。
 これでも聖の称号を持つ私は一応有名人だと思う。
 だからギルドの親父さんもこの仕事を紹介してくれたのだろう。
 その事をお兄さんに話したら成程と納得してくれた。
 その後少し何でもないような事を話していると、お兄さんが飲み物やお菓子が無くなっている事に気づいて取りに言ってくれた。
 私が行くと言ったけど今回は私がお客さんだからという事でお兄さんが取りに行ってくれた。
 やっぱりお兄さんは優しくて素敵な人だな。
 私はほぅと改めてお兄さんの事を好きになっていると、ちらっとお兄さんが普段使っているであろうタオルが目に付いた。
 思わず手にとってまた匂いを嗅いでみた。
 やっぱりお兄さんの匂いがする。
 私はそれを顔に抱きしめるような感じでいるとだんだん眠くなってきた。
 お兄さんに抱かれているような気分で凄く居心地が良い。
 ああ、お兄さん。
 お兄さん、お兄さんいい匂い。
 お兄さん、大好きです。
 そのまま気づけば私は寝てしまっていた。









          【ステータス】

 ・主人公
  レベル15
  冒険者ランクC
  旅団ランクB

 ・ルル
  レベル87
  冒険者ランクS(聖の称号がある為AAAから始まり、この六カ月でワンランク上昇)
  旅団ランクB

 ・ココール
  レベル96
  冒険者ランクS
  旅団ランクB

 ・マイ
  レベル83
  冒険者ランクAAA
  旅団ランクB

 ・リク
  レベル92
  冒険者ランクAA
  旅団ランクB


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