「…さて、準備は万端。士気も上々。あと必要なのはマテリアル…もとい、聖王陛下のみ、だね」
闇の中、馬鹿な男の声が響く。それをどこか心地よいと感じるわたしも馬鹿なのか
「君はどうだい?どうしたいのか、何がしたいのか、決まったかい?」
わたしがしたいこと?
…なんだっけ?
したいことなんかなかった
かあさまととうさまに従ってただけ
かあさまととうさまはわたしの遺伝子提供者。愛情を注いでくれることはなかった
だから愛されたくて、彼らの言うことを聞き続けた
…だからわたしは愛されたい
のかな?
分からない
ドクターは分かる?
「…愛されたい、という欲求は誰にでもある、というのは分かるよ」
そうなんだ
ドクターも?
「…ああ。私も愛されたい。愛したい。…無限の欲望だからね。ちょっとした欲望…愛しい者たちと共にありたいという望みにすら、妥協は出来ないのさ」
よくわからない
けど、なんとなく分かった
「何がだね?」
愛されたい人は、愛したい人なんだ
だからあの子はがんばるんだね
「…がんばりすぎ、だがね」
不屈の心と試作品
例えば綺麗な月の下で
煌々と夜空に輝く月は、2つ
赤と青の月は、星の海の中で輝いていた
「…わざわざ呼び出して、何の用ですか?」
見渡す限りの草原。草と大地、空と月、きらきらと輝く星しかない世界で、ドクターはいつもの胡散臭い笑みを浮かべて微笑する
「いやなに、計画も最終段階だからね。前祝いを、と思ってね」
そう言うドクターの手には、高級品だと一目で分かるワイン。…また評議会からこっそり盗ってきたのですか?
「…前祝いならナンバーズやティーダも呼びましょうよ」
なんとなく呼ばなかった理由を察しながらも、ついつい憎まれ口を叩く。…ドクターに対しては、いつもこんなもんです
…わたしは、既にクアットロに洗脳されたことに気付いている。気付いている、というよりは、ドクターが気付かせた。そしてその洗脳も解かれている
クアットロは気付いてないようですが、ドクターはクアットロを信用していない。というか、自分にそっくりな考え方をしているクアットロを「仕方ないなぁ」と言わんばかりの目で見ている。だから、彼女が行った処理――例えばわたしの洗脳、ルーテシアに行われた暴走処理など――をこっそり解除している
理由を聞いてみれば
「娘が暴走して人様に迷惑かけないよう、不器用な父親らしく先回りしてフォローしているのさ」
などと似合わない答えが返ってきた
けれど、それが本心なのだろう
なんてことはない
無限の欲望――彼は、頭が良いだけの普通の人間だったのだから
ほんの少し、外道の道に足を踏み込んでしまったけれど
彼は、人間だから
「…いや、たまには男同士で飲みたいじゃないか」
家族を求め、
友人を求め、
向上を求め、
そのために自分を錬磨する
ただ、幸せを求めるから
それが、無限の欲望
でもそれって…
普通の人間と、どこが違うのでしょうか?
「…ったく、仕方ないですね」
大袈裟に溜め息を吐いて草原に腰を下ろす。ドクターもまた隣に座り、グラスを渡してきた
「…わたし、ザルですよ?」
戦闘機人にアルコール効きません。普通の薬も効きません。機械部品のせいでアルコールが体に回りきらないのです
並々と注がれる深紅の液体。豊潤な葡萄の香りにくらくらする。これは高い。かなり高い。間違いなく
「安心したまえ。君(戦闘機人)でも酔える特別製さ。ちなみに私が飲むのは普通の酒だよ」
もう一本の瓶から自分の分を注ぐドクター。…ってかよく考えたらわたし未成年(多分)…。まぁ、飲酒なんて初めてだから初犯ってことで許してもらいましょう
「「乾杯」」
ちん、とグラスが鳴る。思いきって口に運べば、熱さが喉を滑り落ちる。匂いが鼻から抜け、胃の真ん中が熱くなる
「…ん、中々美味い」
「…わたしも、これ好きかもです」
お酒の美味しさを知る19歳。悪くないです
「だが余り飲むと身長が伸びなくなるぞ」
「…どーせ!どーせ!160センチまで伸びませんでしたよ!」
154,3センチですよ!せめてあと0,2センチあれば四捨五入で160センチだったのに!0,2センチ大事です!
「ちなみに…君の妹さん…高町教導隊員は164センチはあるようだ」
「うわぁああああああんっ!なのはの馬鹿ー!嫌い嫌い嫌いー!!」
昔はあんなにちっちゃかったのにー!
「も、もう酔ったのかね?早くないかい?」
「ぅー…?テンションの維持が出来ません…。脳内物質の分泌が止まらないです」
「…すまない、ちょっと効きすぎたみたいだね」
苦笑いするドクター
そこからはしばし無言。お互いにただただグラスを傾ける
不意に、ドクターはぽつりと呟いた
「…この計画はね」
わたしは無言でその言葉に耳を傾ける
「元から、失敗する予定なんだ」
ナンバーズには聞かせられない話
ドクターがたった一人で抱え続けた話
だから黙って話を聞く
「たった12人…。その内純粋な戦闘者は8人。しかも皆若く、経験が浅い。Aランクの実力はあっても、突発的なことには弱い。いくらガジェットがあった所で、ゆりかごがあった所で…管理局と聖王教会、2つを同時に敵に回せば勝てるはずもない」
解っていたこと
当たり前なこと
けれど、それにナンバーズの誰もが気付かなかったのは…仲が、良すぎたから
姉妹全員が力を合わせれば、出来ないことなんか何もない
そんな根拠もない自信
けれどドクターは気付いていた
というか、最初から分かった上でやっていたのだ
この盛大な茶番劇を
「管理局にはSランク魔導師がいる。如何に私の娘たちが優れていても、永遠に戦い続けられる訳ではない。疲弊した所を広域殲滅魔法で狙われたら終わりだ。ゆりかご?街への被害を考えずにアルカンシェルで吹き飛ばされたら意味は無い。聖王のマテリアル?掟やぶりの質量兵器を持ち出されたら瞬殺だ」
淡々と告げられる事実。ぱりん、と軽い音。ドクターの手の中でグラスが砕けた音
「…ただ、知ってほしかったんだ。のうのうと平和な顔で暮らしてる人間たちに。少しでも同情してほしかったんだ。私たちのように、【大人】の都合で作られたり捨てられたりする存在に。復讐したかったんだ。私たちを道具としか見ていない【大人】たちに」
弱音。
無限の欲望の名に隠したジェイル・スカリエッティの本心
クーデターを起こせればそれでいい。世間が自分達の、管理局の闇を知ってくれればそれでいい
そんな当たり前の欲望によって計画された今回の計画
「…だが」
そう、それは変わってしまった
無限の欲望を…ただの人間に変えてしまったから
ナンバーズ/家族 が、
ティーダやルーテシア/友人 が
そして…わたしが、
彼は、弱くなった
狂気の仮面を、着けられなくなった
でも、だからこそ
「成功、させたいんだ」
その言葉は、力強く
「幸せになりたい」
ぽつりぽつりと呟かれる言葉
「ティーダと酒を飲みたい。彼の妹が今度新しい部隊に引き抜かれるらしいんだ。ルーテシアくんと対戦ゲームをするのもいい。新しいゲームを作ったんだ。ウーノの料理が食べたい。最近ウーノは和食に凝っているんだ。ドゥーエを一度叱らなければ。たまにはウーノではなく私に連絡を入れてほしい。トーレに女性らしさを教えたい。あのままでは将来が不安だ。将来が不安というばクアットロもだな。性格を矯正しないと私が持たない。チンクは…幸せになってほしいな。私が口を出すことじゃないだろう。セインはミッション系の学校にでもいれようか。少しは大人しくなるだろう。セッテは最近ウーノに料理を習っていてね。差し入れのお菓子がまた美味しいんだ。また食べたいね。オットーは絵を描くのが好きらしい。今度ここに連れてこよう。ノーヴェはもうちょっと素直になってくれないものかな?照れ隠しに殴るんだよ。ディエチはあれで意外と甘えん坊でね。最近になってようやく私に甘えてくれるようになった。ウェンディには妙に避けられてしまう。やはり年頃の娘は難しいね。ディードは君にべったりだし。もっと私に甘えてほしいよ。ああ、それから騎士ゼストとアギトくんともっと打ち解けたいなぁ」
ああ、それから…
「…君に、お父さんと呼ばれたい、かな」
…無言
わたしも。ドクターも
「…わたしの父は…高町士郎です」
「そう、か…」
感情を込めずに呟かれた声。けれど、ドクターの表情は…泣きそうだった
「…けど」
くい、と瓶ごと傾ける。中身を飲み干し、゙酔っ払ったせい゙で火照る顔を隠しながら言う
「…ジェイルのことも…親戚のおじさんくらいには…思ってないこともないです…」
…無言。
振り返れば、ジェイルは寝ていた
酒瓶を抱えて、それそれは気持ち良さそうに
「…ばーか」
でっかい溜め息。ったく、このあほドクターは…。風邪引いても知りませんよ?
「…成功、させましょう」
必ず。
幸せになるために
幸せにするために
…でもわたしは
心のどこかで
なのはに□□て貰えることを望んでいることに
気付いてしまっていた
______
(作者)
書いてる内にプロトの性別が分からなくなった件
プロトはおーとーこー…!
ジェイル×プロトとか冗談じゃねぇ
以下感想返し
>6番の料理
この時間ではまだ料理に目覚めてません
多分セインは他にやってくれる人がいれば際限なくだらけるタイプ。公式では協会側に付いたのは6以外は8と12だけだし、あの娘たちが人間味を手に入れるまで6が頑張ってたから料理上手になったんだろう、と勝手に推測しました
>なのはとフェイト
正式にエンディングはなのはEDになると決まりました
今は浮気してるように見えますが、sts入ればまた徐々に2人がらぶらぶして行くんじゃないかなぁ?と期待してもいいのかな?
フェイトはノーコメント。正直噛ませ犬になりそうな嫌な予感
>あなたをロリコンです
大丈夫。リアルにハァハァしなけりゃまだセーフ(?)
チンクとルーテシアは残念ながら空白期限定ヒロイン
stsでは空気かもかも
>どっちが姉でどっちが妹?
見た目だけなら姉→プロト。妹→チンク
行動見てるともしかしたら双子?
でもそこにティーダが加わると
ティーダ→妹さんにちょっかいかけるギャルゲ主人公
チンク→攻略キャラ。妹を心配するロリ姉
プロト→攻略キャラ。主人公になつく貧乳妹
にみえる不思議。…ってかその内番外編で【ギャルゲティーダ】とか書いてみたい。攻略キャラはナンバーズたちで
>SシアとMシア
なん…だと…!?
が、がんばるんだぜ…!
でもとりあえずしばらくは無理です
代わりにXXX更新するから許しておくれ…?
プロトTSものだお!
需要ないね!
次回からはsts?その前に原作との相違点&キャラ現状まとめ表が先かな?
では、また次回!