<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[16022] 不屈の心と試作品(リリカルなのは・オリ主・微最強モノ)
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/06/15 18:14
ただいまなのです、人春どえす。







携帯からなので不定期投稿になると思われ

オリジナル主人公に活躍して頂きます。

処女作なので確実に修正がたくさん入るでしょう。

最強モノであり、独自解釈、独自設定、とんでも設定てんこもりです

そして最強モノなのに主人公弱点だらけです

ややグロくなるかと。主に主人公が

感想、指摘。アドバイス、アイデア提供。いくらでも受け付けてます。

多少厳しいくらいが丁度よいです。


ついにチラシ裏から脱出

完結まで頑張っていきます



それでは、不屈の心と試作品。始まります。


――――――――――――
1/31
指摘によりカウントダウン・3を申し訳程度に修正

2/04
指摘により第2話を色々修正。
恥ずかしい!中学レベルの英語を間違えたわたし恥ずかしい!

2/12
指摘により第7話(上)を修正。
ご都合主義な魔法は出ましたが、改訂前よりは違和感が少ない…と、いいな。

2/22
第10話(上)のプロトのセリフを修正
…すまない、素で間違えた
ちなみにプロトはロボットアニメ好き。



3/29
とらハ板に移転

心機一転頑張ります

4/02
A's〜の誤字修正(?)
漢字が出なかったため平仮名に
誰か読み方を教えてくれ…

4/06

現実は悪夢の誤字修正
チンクさんが空気読めない娘に…

4/13
第三話の致命的なミスを修正
ご指摘ありがとうございました



[16022] 人物紹介
Name: 人春◆45d3e50a ID:ec8f6a96
Date: 2010/03/03 22:03


プロト・グレイランド→プロト・グレイランド・高町

正式名称プロジェクトE・D型試験体試作13号。巨大鋏型インテリジェントデバイス『グレイランド』を所有。稼働時間は無印開始時で約10年


バリアジャケットはエリオのコートを灰色にして丈を地面すれすれまで長く、中身をワイシャツ、ネクタイ、ぴっちりスパッツに変えたモノを想像してくれれば分かりやすい。

魔力光もダークグレー。ただしくすんだ印象。華がねぇ

斬撃特化。放出系の技は一切使えない。頑張ればアークセイバーみたいな魔力刃を飛ばす魔法は使えるけど、操作が出来ないのであまり意味がない。直進するだけなら子供でも避けるわー

多少の怪我で戦闘不可能に持っていかれるのを嫌った制作者は『傷を自動治癒する』魔法生物を血液中に無数に放った。実はプロトの心臓に『巣』があり、いくつか死んでも勝手に新しいのが産まれる。エサはプロトの魔力と体力。
お陰で肉体は常に正常で一番『健康』な状態に保たれる。…が、酒には弱い。魔法生物もアルコールには弱い。宿主も中のモノもおねんね。

稀少技能は『魔力変換機』
半径3メートル以内の魔力――正確には『魔法』として行使された魔力――を純物質化できる。
ただし、物質化した魔力を魔力に戻すことは出来ない。燃費悪し
副次効果…というか本来ならこっちがメインなんだが、『他人の魔力変換資質のコピー』が可能。ただし相手のパーソナルデータ…血や体液、髪の毛などから情報を取り入れなきゃいけない。
一度コピーしてしまえばいつでも使えるけど、結局放出系の魔法は使えない。実はそもそも適性がなかった!というオチ。プロトは落ち込んだ。
魔力変換資質のコピーが出来ても魔法の才能をコピーできるわけではないのだ


現在取得したパーソナルデータ→『高町なのは』のみ。魔力変換資質なし。つまり意味なし


ちなみに同時使用は出来ません。仮にフェイトの魔力変換資質をコピーして、魔力刃を雷に変えられるようになったところで、『雷の魔力刃』を『物質化』するのは無理。なので『雷』の攻撃を『物質化』するのも出来ない。ちょっと毛色の違う、使い勝手が凄く悪いAMFと思ってもらえれば。

実はこっそり『御神の剣士』の技を使えないか修行中。だが才能がない。10年はえぇ


成長するスピードが常人より遅い。
故に
見た目→7歳くらい
中身→12〜13歳くらい
戸籍(士郎が偽造)→9歳。
というややこしい事態に。ちなみに誕生日はなのはと3日違い。勿論遅い方に


ちなみにミッド出身(外国人)が無印開始時のプロトを見たら、間違いなく5歳前後と勘違いするほど幼い容姿。

髪は足首くらいまであるダークグレーのストレート。さらっさら。なのははこの髪に絡まるのが好き。良い匂いがするとか

瞳は透き通るようなグレー。だが眠そうな半開き。ダウナーです。甘いものを前にすると輝く。

凄く華奢。さらに白い。そしてちっちゃい

いつかは合法ロリの仲間入り?いや無いわ



性格は甘えん坊の寂しがりや。だがちっちゃいプライドや自身の産まれた境遇のせいか素直になれない。これは…ツンデレか?いやデレデレやん

本当は家族になりたい。けれど迷惑がかかるし――でもやっぱり(以下無限大)

そんなジレンマ

実はネガティブ。だが能天気?というよりは自暴自棄。基本的に自分はどうなっても構わない

物事を深く考え、しっかりと大人な行動が取れる――はずもなく。10歳前後の子供らしく、『大人な考えをしようとして精一杯背伸びしてる子供』である。だからよく迷走して暴走

だだっ子。泣き虫。一回スイッチ入ると止まらないっす

『男』と『女』の違いがよく分かってない。性別の境界線が曖昧。

知識や常識を『知って』いても、『理解』は出来てない。だから女の子の服も薦められたら着ちゃう。
「だって桃子が似合うって言ったから…」とか
それが恥ずかしいことだと『知って』はいるが、「なんで日本では男はスカートダメなのですか?どっかの国では正式な制服なのに…」とか思ってる

わりと重度の天然。

しかもシスコン。無防備。だけど隙がない。

実はお馬鹿。漢字が書けない。読めるけど。難しいの以外は。

料理好き。食べるのも作るのも。だがそれ以外の家事の才能はない。プロトは落(ry


ロボットアニメや特撮好き。日曜朝は朝から高町家のテレビにかじりつく。男のろまんは熱いのです

最近ちょっぴり心境の変化

『家族』に素直になれました

なのはに着々と刷り込まれていく…



一度恩を受けたら忘れない。恩は百倍返しが基本スタンス。怨みは万倍返しやけど

懐いた人にはとことん懐く。わんこ。なのに気まぐれにゃーにゃー

友達に何か頼られたら文句いいながら全力で手伝ってくれるタイプ。ツンデレかや?いやデレデレ。


男女の違いがよく分かってないせいか、恋愛感情とかよく分からない。
友情あるいは家族愛が一番な子。

大事なモノと大好きなモノは『温かくて真っ直ぐな人間』

嫌いなモノは『汚い大人』や『小悪党』、『セイギのミカタ』や『管理局』

宝物は『大好きな人と一緒にいられる時間』


中身は結構乙女思考。


Mなのはシリーズではひたすらに被害者。哀れ(笑)



[16022] カウントダウン・3
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/01/31 07:46
こぽこぽと
まぶたの裏を泡がくすぐる。
目を開けば、泡が緑色の液体の中を上っていく。なんとも言えずそれが滑稽で、己の唇に笑みが浮かぶ。

「…また笑ってますよ」

「Dー13は特別製だヨ?笑いくらいするんじゃない?」

緑色の液体に満たされたカプセルの中、己はガラス越しに己の制作者を見つめ、微笑む。
ああ、己を見てくれている。
オーナーが、己を、己だけを見てくれている!
己はなんて幸せなんだろう!

『ぉ…ナー…』

声を絞り出す。水に溶けてしまったけれど。それでも己の声を聞いて、オーナーは表情を変える。変えてくれたっ!

「…ちっ」

メガネの奥で憎々しげに目元を歪める。己はオーナーを不愉快にさせたものが許せなくなる。
でも、それは己だ。
だから己は、己が嫌いだ。声を出してはいけなかったのだろうかと不安になる。不安定になる。

「…この計画はもうおしまいかなー」

「あら、何故です?一応試作とはいえ完成品の目処は立ったのに」

オーナーとその隣、セカンドオーナーが話をしている。
…残念だ。もうオーナーは己を見てくれない。淋しい。

「試作品〜?こんなん失敗作だヨ?アンミリテッド・デザイア…奴の作った戦闘機人には全くかなわない」

「あら、レアスキルが上手く制御出来るようになればわかりませんわよ?」

レアスキル…オーナーが己に埋め込んだ機構は、まだ上手く使うことが出来ない。もう少し肉体が成長すれば耐えられるかもしれないが、今の己の矮躯が怨めしい。

「無理だよ。僕は天才だけど本物じゃない。こいつは僕が研究してるかぎり永遠に未完成だ」

「…いっそデザイアにあげましょうか」

「その方が楽かもねぇ…。でも気に入らない。僕が考えっ!僕が研究してきたこいつが他人の手に渡るだなんて許せないっ!」

オーナーの激昂に身をすくませる。

オーナー、オーナー。

己を見てください。

デバイスだって使いこなしてみせます。

体術も練習しました。

矮小な身体はこれからでも鍛えてみせます

オーナーの期待に応えてみせます。

己はオーナーの敵に負けません。

戦闘機人だって殺してみせます。

「だから廃棄処分して」

―だから己を■てないで。

「よろしいので?」

「いーよ。デバイスもなんもかんも捨てて。最終調整も停止」

待って。背中を向けないで。

もっと頑張りますから

戦闘訓練も頑張りますから、知識吸収も手を抜いたりしません。

「…っというかこの研究所ごと破棄するから」

「…はぁ。勿体無い」

待って。

お願いします。

もう一度己を見てください。

願いが通じたのだろうか。
オーナーの目が己を捉える。期待に胸が高鳴り、思わず己はカプセルに張り付く。

――けれどオーナーは、嘲笑を浮かべていた。

「じゃーな試作品。お前のせいで一杯お金を無駄にしたヨ」

だったら己がお金を集めますっ!

だから、だから己を――

「ってわけだから、二度と会いたくないな。消えてネ」

――目の前が、真っ暗になる。

精神的にも、肉体的にも。

生命維持装置が停止。がぼっ!と音を立て肺に供給されていた酸素が消える。

苦しい。

苦しい。

■にたくない。

そんな思いに任せて、厚いカプセルのガラスを叩き割る。無意識にベルカ式の身体能力強化魔法を発動させていた拳は、容易くガラスを突き破った。水音と共に流れ出た身体が床に投げ出され、叩きつけられる。

「ま…っ!オーナーっ!」

伸ばした手は届かない。セカンドオーナーと共に、オーナーは行ってしまった。

追おうにも、調整が中途半端なせいでまともに動けない。声を出し、手を伸ばすのが精一杯だ。

「一人に…しないで…!」

行ってしまったオーナーに言う。

想いは届かない。

言葉は繋がらない。

誰もいない研究所で、己はしばし涙を流し続ける。

〈…マスター〉

声が聞こえた。

振り替えれば、灰色の十字架が目に入る。

「…グレイランド」

彼の名前はグレイランド。

己のパートナー。アームドデバイスに限りなく近いインテリジェントデバイス。

〈私を起動してください。バリアジャケットで身体を覆った上で強化、制御すれば通常の動作は可能なはずです〉

それで、どうしろと?

今さら、オーナーを追えと?

〈最終調整を完了しましょう。その後は、ミッドチルダ、あるいは管理局の管理外世界に向かいましょう〉

「だからっ!その後どうしろというんだっ!?もう己には何もないのにっ!」

〈生きましょう〉

生きて、何になるというんだ…。

怒る労力すら無駄に感じて、己は床を這ってグレイランドを手に取る。

もう、何も考えたくない。

言われるがままに行動して、何が悪い。

呪文は省略。デバイスに任せだ。

「…セットアップ」

グレイランドのコアが光輝く。今さらだが、己が裸だったことに気が付いた。もっとも、誰もいないのだから関係無い。

ダークグレーの魔力が吹き出て、バリアジャケットが展開される。グレイランドが本来の姿を取り戻す。

己の身の丈ほどの長さの、灰色の柄を持つ巨大な鋏。刃の部分は短く、本来であればここから魔力刃が伸びる。

バリアジャケットは白衣のようなダークグレーのロングコート。下には黒のネクタイに白いワイシャツ。両手両足には魔力光と同色、ダークグレーのハンドダスターとロングブーツ。動きやすい黒のスパッツ。

セカンドオーナーをイメージしたバリアジャケットに、また目元に涙が浮かぶ。

〈マスター〉

「…大丈夫。操作はいつも見てた」

言葉通り、生命維持装置を起動。予備のカプセルの状態を確認。使用可能。状態を確認。メディカルチェック、最適化、欠損部品の修復、リンカーコア最適化を設定。

〈…研究所はもってあと5時間です。作業の効率化を〉

「了解」

5時間で何が起こるのだろう。よく分からないが、どうでもいい。

ああ、これがやけくそということか

無性におかしくなり、己は…いや、わたし(失敗作)は、笑った。

「…人造魔導師かぁ…」

ただし試作品。しかも失敗作。
そんなわたしは、どうやって生きればいいんだろう?

〈マスター?〉

「なんでもない」

なんだか無性におかしくて、笑いながら、涙をこぼしながらわたしは作業を終わらせる。

バリアジャケットを解除し、グレイランドを持ったまま予備のカプセルに入る。

ああ、何も考えずしばらく眠ろう。

そして目が覚めたなら、どこかに行こう。

誰もわたしを知らない、誰もわたしに関わらない世界へ。




不屈の心と試作品。
カウントダウン・3




…そう思ってた時期も確かにあったんですけどねー。

〈マスターはグレてしまいました〉

「だからなんだと?」

けっ、と自分を嘲笑い、わたしは身体を起こす。ぽかぽかとした陽光を感じながら、う〜ん…と思い切り伸びをする。背中がぼきぼきと鳴った。

「にしても懐かしい夢ですねー。あーくっだらないくっだらない。なぁにがオーナーですか。なぁにがオーナーのためなら何でもしちゃう(はぁと)ですか。数ヶ月前の自分に会えたら迷わずバックドロップですね」

捨てられて1ヶ月。わたしはすっかりやさぐれていた。くすんだ灰色の髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。ああ、無駄に長くて邪魔。寝る時も展開させっぱなしのバリアジャケットの背中をぽんぽん叩いて砂を払う。

〈マスター。おはようございます〉

あーはいおはようございます。とチェーンで繋げたグレイランドに返事し、わたしは欠伸を噛み殺す。

ここは第97管理外世界。別名地球。さらに絞るなら海鳴市というらしいのです。その海浜公園の林の中。太陽の光できらきら輝く海がとっても綺麗で良い眺めなのですよー。

絶賛野宿中ですが何か?

仕方ないでしょう。わたしの外見年齢は5才前後。お金を稼ぐこともできません。捨て子です。しかもこの世界に頼れる人間は一人もいませんし。となれば野宿しかないでしょう?幸い海が近くて自然一杯海鳴市には野生動物も食べられる野草も一杯です。あと二ヶ月くらいならあのふぁっきんオーナーズに鍛えられたサバイバル技術とカプセル内でたっぷりインプットされた知識でなんとかなりそーですし。ま、ダメならダメでとっとと犯罪者になるなりヤクザの用心棒になるなりすればよいです。後者は無理でしょう分かってます。どうもあのくそったれどもがわたしに与えた知識には偏りがありますねー。

「グレイランド」

〈現在時刻10時27分。活動可能時刻までは潜伏を推奨。また補導されますよマスター〉

「…まじウゼーです」

ため息を吐く。

なぁんであのふぁっきんオーナーズはわざわざこんな世界に研究所作ったんですかねー。管理局の目は届かないでしょーが、文明レベルが中途半端で動きにくくてしょーがねーです。

「…お腹減りましたね」

〈デバイスである私は食事を必要としません、ですが定期メンテナンスを希望したいです〉

「工具ねーです諦めなー」

〈…世知辛いですね〉

どっから仕入れたですかそんな言葉。

まぁ、逆にいえば工具を揃えられればA級デバイスマイスタークラスの知識はインプットされてるので可能なのですがねー。

「あー、だるい。めんどい。働きたくない」

ごろごろと芝生の上を転がる。人に見られたら自殺モノですがここにいるのはわたしとグレイランドだけなんで関係無いのですよー。

〈マスター。接近警報。距離300〉

「む」

起き上がる。こんな人気のない林に近づいてくる人間がいる?そいつはおかしな話なのです。まさかとは思いますがオーナーズなんてことは…

そんなことを考えながら顔を上げれば――

「「…」」

わたしと(とりあえず外見年齢は)同年代くらいの少女と目があった。

〈ちなみに単位はcmです〉

それって3メートルですねー。


……
………

「こんっのバカデバイスがぁぁああああああああぁああああぁああああ!!!」

一切の躊躇もなくわたしはグレイランドを地面に叩き付け踏みにじる。

ぐぅりぐぅりと。

目の前で少女がぽかーんとアホ面さらしてるけど知ったこっちゃねーですよ。わたしは!このバカデバイスが!泣くまで!踏むのをやめないっ!

「…って、うん?」

バカデバイスの折檻と突然の第1種接近遭遇のせいで呆気に取られましたが、この少女…いえもうぶっちゃけ幼女ですね幼女。その頬に涙の跡があるのに気付きました。



[16022] カウントダウン・2
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/01/30 19:10
…っつーかんなのどうでもいいのでちょっとたんま。恥ずかしいんですけど!?さっきも言ったけど自殺死体!じゃなくて恥ずかしさのあまり自殺したいっ!ゴロゴロだけじゃなくて『バカへの愛の鞭』まで見られてわたしは今全力で『この子はちょっと頭の可哀想な子供。暖かく見守ってあげましょう』ルートまっしぐらですかそんなんごめんじゃーっ!

「ぇ、えっと…」

「…む」

少女は 会話 を 試みた!
仕方ない。恥ずかしさは無理やり堪えて乗ってやるのです。

「何ですか幼女」

「幼女!?初対面でそれは失礼だと思うの!」

「…語尾ウゼー」

「いじめなの!?初対面でいじめなの!?」

リアクションでけー。突っ込みの度にその『子供だから出来る髪型!変形ツインテールショートver』といわんばかりの髪がぷらぷら揺れる。

…やべー、じゃれてぇ

「目が危険なの!」

慌てたように距離を取る幼女。どーでもいいですけどなんかこいつ妙に魔力多いですね。さっきからグレイランドがちっかちかしてますよ。解析魔法使っときますかねー。

こっそりプログラムを組んで発動。わたしは砲撃も射撃も出来ませんが解析とか物体に魔力を通すことには秀でてるのですよ。…だから試作品の材料にされたのでしょうか。まぁどーでもいいですけど。さて結果は…魔力が多いことを除けば普通の幼女…いや、美幼女。将来は美人になるでしょうね。当然デバイスもなし。あれ?ちょっと予想外でびっくり。

「うるさい幼女ですねー。何の用ですか?」

「幼女じゃないの!なのはには高町なのはっていう名前があるの!」

なにっ!?高町なのは…だとぉっ!?

「誰?」

「だからなのははなのはなの!」

「なのはは菜の花の?え、妖精?菜の花の?」

「ボケがわかりにくいのーっ!」

…む、やるなぁ。まさかここまで突っ込んでくるとは…。侮ってました。何を?最近の幼女のツッコミレベルを。




不屈の心と試作品
カウントダウン・2




「で、何の用ですか?」

「あぅ…」

呻き、視線を逸らす。なんなんですかこの幼女。行動原理がいまいちわかんねー。
わたしは大きくため息を吐き、わたしの横の芝生をぽんぽんと叩く。首を傾げる幼女。

「座れって言ってんですよ。立ち話もなんですし」

「あ、うん。…わかったの」

…やっぱ語尾ウゼー。まぁ、言われた通り座ったからよし。ただ妙に素直ですねこの幼女。怪しいおぢさんに素直に着いていっちゃいそうな危うさを感じますよ?もっと人を疑えっ!

膝を抱えて隣に座る幼女。ちらちらと視線を送ってくる。あれですか。自分から話を持ちかける気はゼロですか。気まずいんですが。
わたしはため息を吐いてにやりと笑う。幼女を横目で見ながら。

「何しに来たか、当ててあげます」

幼女は驚いたようにわたしを見つめ返す。だからわたしは、その目を見返しながら答える。

「泣きにきたんでしょう」

応えると、幼女の表情が変わった。図星?ですよねー

「ち、違うのっ!」

あわてて否定するし。そーゆう態度が肯定してるってなんで気付かないんですかねー。あ、幼女だからか。もとい子供だからか。認めたくないものですね、若さ(ていうか幼さ)故の過ちというのはっ!

「否定する必要ないですよー、わたしも泣くときは誰にも見られたくなかったですし」

だからカプセルの中でこっそり泣いてたんですよねー。緑の液体のお陰で涙が見えなかったんですよ。まぁ、わたしが泣いてようが笑ってようがあのくそったれどもはどーでもよかったようですが。ケッ。

「…違うもん。なのはは良い子だから泣いたりしないもん…。良い子にしてれば、お母さんもお父さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんもほめてくれるもん…」

はい? なに言ってんですかこの幼女。

「バカですか貴方は」

「ここでまたいじめなのっ!?ちょっとひどすぎるのっ!」

過剰に反応する幼女の頭をぐりぐり撫でる。撫でながら、睨む。首をもぎ取らんばかりの力でぐりぐり撫でながら。

「良い子だろーが悪い子だろーが泣けばいいじゃないですか。親は子供が泣いてくれないと甘やかす加減も厳しくする加減も分からないんですよ。ただただ親の希望に沿って動いてるだけだけ、親の期待に応えて頑張ってるだけ、そんなのを続けてくと…」

「ど、どうなるの?」

怯えた視線の幼女ににやりと笑う。

「捨てられます」

わたしのように。

「…」

幼女は絶句する。「経験則だから間違いないですよー」とにっこり笑う。すると見る見る内にその目に涙が溜まっていく。うつむき、静かに身を震わせ、涙を流すのを堪える幼女にでっかいため息を吐く。

やーですねー…。この幼女、なんかわたしに似てますよ…。

頭を撫でていた手で頭を掴み、ぐいっと引き寄せる。驚いたような気配がしたが無視。うつ伏せに膝枕するような体勢で、ぽんぽんっとその背中を叩く。

「事情はよく分かりませんが、あなたは多分まだ間に合うでしょう?わたしと違って捨てられたわけじゃないんですから。今すぐ親に泣きついて、もっと構え!って顔面に頭突き噛ましてやりなさいな。子供は遊ぶのとワガママ言うのが仕事なんですよー」

ひっくひっくとしゃくりあげる幼女。ったく、なんでわたしがこんなことやってんですかねー。本当ならわたしが慰めてほしい気分なんですが。

「で、でも…おとう、さん…死んじゃいそうで…おうち、ばらばらで…なのはは何も出来なくて…」

…あー、成る程ですねー。
どうにもこの幼女が無理してると思ったら、本当に無理しなきゃいけない状態だったわけですか。わたしが言うのもなんですが、可哀想ですねぇ…。

『…マスター』

頭の中に響くグレイランドの咎めるような声。分かってますよ。これからやろうとしてることがルール違反なのも、下手をすれば管理局に目を付けられかねないことも。

だからなんだと?

ただの感傷だってことは分かってます。

わたしとこの幼女の境遇を重ねているだけというのも理解してます。

だけど、それが伸ばしかけた手を引っ込める理由になりますか?

『単刀直入に聞きます。可能ですか?』

グレイランドが返すのは沈黙。何事か考えているような間は数秒。やがて聞こえてきたのは、ため息を吐くような諦めを含む呆れたような声。

『…可能です。対象が怪我人なら副作用もないでしょう。病人でもしばしの延命にはなります』

『それだけでも充分でしょう』

頷き、幼女の身体を起こす。ぽろぽろ涙を溢しながら、首を傾げてわたしを見る幼女。可愛らしい仕草に自然と笑みが浮かぶ。

「お父さん、助けたいですか?」

きょとん、とわたしを見る幼女。なんだかむず痒い。キャラじゃないのくらい分かってますよ!でもちょっとくらいかっこつけても良いじゃないですか。

「…うん。助けたい」

やがて、幼女はこくりと頷いた。わたしはそれに満足。自然と緩む唇を意識して引き締めながら、幼女を立たせる。幼女は困ったような目でわたしを見ている。

「なら助けにいきましょう」

「…どうして?」

「はい?」

まだ涙の跡が残る頬を袖で拭いてやる。くすぐったそうに目を細める幼女。

「どうしてそこまでしてくれるの?」

涙目で聞いてくる。…そこはどうやって?じゃないですかねー。普通はわたしみたいな子供に何が出来る?と思うべきなんですが。

ま、素直なのは良いことです。理由は…素直に言うのはちょっとこの幼女の将来が心配になる的な意味で却下。カッコイイこと言って煙にまきましょう。

「おや、知らないのですか?常識ですよ?」

にっこりと笑い、幼女の頭をくしゃくしゃと…今度はやさしく撫でる。
なんだか親の気分ですねー。見た目同じ年くらいなんですが。実年齢多分年下なんすが。あーややこしい。

「えっと、それは…」

うわ、わたしが考えてるセリフめちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。
…でも言わなきゃねー。あーくそ。ホントに恥ずかしい。絶対ヒーローの必須科目に『恥ずかしいセリフを恥ずかしがらずに叫ぶ練習』とかありますよ。多分。
恥ずかしさを振り切り、笑顔で口を開く。こりゃーさっきのゴロゴロ見られた恥ずかしさの比じゃないですねっ!

「良い子が泣いてれば、魔法使いが助けに来てくれるもんなんですよ」

そう言うと、幼女はきょとん、として――小さく、可憐な花のような笑みを浮かべてくれた。

ん、この笑顔が見れただけでも恥ずかしさを我慢した甲斐がありってもんです。

「さ、案内してくださいな。健気な良い子の家庭不和、通りすがりの魔導師が救ってあげようじゃありませんか」

わたしはそう言い――にやりと笑う。
どこか嬉しそうな雰囲気を漂わせるグレイランドを拾い上げ、幼女に手を引かれて歩き出した。

――――――――――
(作者)

というわけで、主人公となのはの初邂逅です。
そもそも主人公にはなのはの闇の救済をしてもらうつもりだったのです。
なので物語は原作開始数年前から始まりました。
これから少しずつ時間をかけて原作に向かってく…と思ったら大間違いです。
巻きでいきます。
残りのカウントダウン2つ、あっちゅー間に進んでいきます。

…早くフェイト書きたいので。

以下、感想返しを

>れーうぇん・ふっくさま
…最初はわたしもそんな風なのもありかなーっと思ってたんですがねー…
なんでグレてすれちゃったのかorz
まぁ、こっちのキャラの方が当初予定していたよりも愛着が持てるのでよし、です(笑)
応援超感謝です。
がんばる気がもりもり湧いてきます^^


>areさま
まじっすか
読んだことないけどオーフェンといえば人気作…それっぽい雰囲気を漂わせているということは人気作の予感ですかっ!?(笑)


指摘、感想、ばんばん受付中です。
がんばりますのでよろしくお願いしますm(__)m



[16022] カウントダウン・1
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/01/31 08:01
まぁ結論から言いましょう。幼女の父親――高町士郎はいつ死んでもおかしくない状態でしたが、なんとか生き返りました。
普通の魔導師の使う回復魔法じゃ意味なさそうなほどの重傷だったので、少々無茶をしましたが。

具体的には、わたしの血液を飲ませました。

わたしはかなり変わった趣旨に特化した作りの人造魔導師なので、血液の中には肉体に常時治癒力向上の魔法をかける魔法生物が住んでます。こいつらは宿主の魔力と生命力を糧に生きているので、宿主であるわたしに死なれると困るのですよ。なのでわたしは魔力と生命力がある限り治癒し続ける化け物チックな魔導師なのです。
…ほぼ人間やめてますねー。でもこれでも勝てない戦闘機人ってどれくらい強いんでしょう。考えるのもいや。

まぁそれはともかく。

この状況、なんなんですかねぇ…。




不屈の心と試作品
カウントダウン・1




「でねでねっ!今日新しい友達が出来たの!アリサちゃんとすずかちゃんって言ってね!」

にこにこ笑顔で身振り手振りを交えて話すなのは。それに苦笑い。

「はいはい。友達作るの苦手な癖にがんばったですねー」

「えへへー、ほめてほめてー」

にこにこ笑顔で頭を出してきたので、ぐしゃぐしゃ髪の毛をメチャクチャにしてみた。それでも嬉しそうななのは。何故?

「なのは。ちょっといいかい?」

その後ろから奇妙な迫力のある笑顔を浮かべた士郎が続く。

「あー、またですか?いー加減諦めてくださいよ」

うんざりですよー。

「そうもいかないさ。今日こそプロト君の首を縦に振らせてみせるよ」

にやりと人の悪い笑みを浮かべる士郎。

そう。わたし――プロト・グレイランド(勿論偽名ですが。名前の由来は試作品から。なんという自虐ネタでしょう)は何故かなのはに懐かれ、士郎に養子にされかけてるのですよー。

…何故かなー…?プロトちゃんわっかんなーい。…うぇ。自分でやって気持ち悪くなった…

『推測でよろしければ』

『グレイランド、発言を許可します』

頭に響いた相棒に返事する。この一年で随分とグレイランドのAIも成長したものです。まぁわたしには劣りますが!…元々わたしもグレイランドもある程度の知識はふぁっきんズにインプットされてたんだから当然っちゃ当然ですが。

『有り難き幸せ。まずなのはさま。なのはさまは単純に家庭崩壊の危機を救い、士郎さまの傷を3日とかけずに完全に回復させたマスターに憧憬の念を抱いているのでしょう。誘導次第では幼馴染みフラグktkr』

『グレイランド、最近あなたが遠いです』

ネット環境に無理やり適応させたのを恨んでるのですか?どっから変な知識を拾ってくるのでしょう。あ、ネットからか。

『そして士郎さま。こちらはなのはさまより簡単です』

『ほう、言ってみなさい』

『ペ○なんですね。わかります』

『グレイランド。お前もう喋るな』

言うにことかいて○ドですか。しかもわかるのですか。

…ペ○じゃないよね士郎。桃子っていう美人な奥さんいるもんね…。

じっと士郎を見つめると、士郎は首を傾げた。…うん。違うと思う。違うもん。違うよね?信じてるよ士郎。

「それで?今日はどんな勝負にするですか?」

そう、これは士郎とわたしの勝負。

勝った方が負けた方にどんな命令でも出せる、というもの。

士郎はわたしを養子に。

わたしは毎回いろいろ。

士郎が意識を取り戻し、家族皆を連れてわたしにお礼を言いに来てから毎日一回続いている勝負。どうもわたしの境遇(親…でいいよね?親に捨てられ天涯孤独。頼れる者もいないので野宿、サバイバル生活、というもの)を不憫に思ったらしい。士郎の養子になってくれ、命を救ってもらったお礼だから遠慮しなくていい、という言い分でわたしを強引に『高町・G・プロト』にしようとしてるのですよ。

わたしはそんなのゴメンなので断ってますが。

今でさえわたしにべったりのなのはがこれ以上わたしに懐いたらどうするのですか。しかも高町家の誰一人として反対しないし。

…受け入れられて、いいんですかねー。

わたし、人間やめてるんですけど…。

それは『何だかよく分からない薬』で自分の、あるいは家族の命を助けられた高町家が一番分かってるでしょうに…。

お陰でわたし、結構高町家に入り浸って甘えさせて貰ってるんです。たまに桃子のご飯食べて、士郎の誘いを断って、恭也をからかって、美由紀と喫茶店を手伝って、なのはの面倒を見て――そんな、小さな幸せを分けて貰えれば、わたしは充分なんですがね…。

…ほんと、高町家はお人好しばっかなのです。

「――っという訳で、今回の勝負は…どうした?プロトくん」

士郎が不思議そうな顔でわたしに問いかける。わたしは自然と緩む頬を意識して引き締めて答える。

「いえ。…わたしが勝ったら晩御飯奢りなさい」

「私が勝ったら毎日家で三食保証するが?」

「のーせんきゅーです。施しはうけねーです」

そうかい、と苦笑する士郎。放置されたのが気に入らなかったのか背中になのはがくっついてくる。なんですか鬱陶しい。幼女に抱きつかれても嬉しくねーんですけど。

「プロトちゃんお父さんとばっかり話してる…」

はいはい、甘えん坊のなのはは父親を取られて不満ですか…。…なんかムカついたので背中から引き摺り倒してさば折り!

「きゃーっ!」

あれ?なんで痛そうなのに嬉しそうなんですか?…なのは、えむ?…確かに自分を痛め付けたりするの好きみたいですが…。

…妹のように可愛がってる娘の知ったらいけない部分を知ってしまいましたよー…。

「…なんだか誤解を解かないと大変なことになる気がするの」

「大丈夫。わたしは性癖で人を差別しないです」

「性癖っ!?どんな誤解をしてるの!?」

「はっはっはっ、仲良いね君たち。…その勢いで私の子供にならないかね?」

「どんな勢いですか」

最近こいつら遠慮とか躊躇とかさっぱりありませんね。どんな手を使ってでもわたしのこと養子にしてやる!っていう気合いが見え隠れしてますよ。

…わたしとしてはこの山の中にある物置小屋に住まわせて貰ってるだけでも申し訳ないのに。頑固なお人好しです。知ってましたが。

「というわけで今日の勝負…今からここに恭也か美由紀が私たちを迎えに来る。どちらが迎えに来るか当てられたらプロトくんの勝ち、外れたら私の勝ちだ。どうだね?」

「おっけーです」

如何にも自信満々の士郎。…ふむ、何か策を張りましたか。とか考えながら解析魔法をはつどー。範囲をどんどん広げてく。ついでにエリアサーチ。…あ、見っけ。…ってちょっと待てこらおっさん。

「二人で来るとか反則でしょう」

「なっ…!?馬鹿なっ!?完全に気配は消させたはずっ!?」

驚く士郎にでっかいため息を吐くですよ。なんでそこまでしてわたしに拘るですか。

「もー、お父さん負けちゃったね」

「くっ…今回こそは勝てると思ったのに…」

「甘い甘い。桃子の作るシュークリームみたいに甘いです」

がっかりするなのはと、うちひしがれる士郎。それを見下し、去年よりも伸びた髪をかき上げる。…身長はほとんど伸びないのに髪だけは伸びるの早いっていうのはこの体の特性なんですかね?地面すれすれまで届く髪は邪魔ですよー。
…でも切ろうとすると桃子も美由紀もなのはも「そんな綺麗な髪を切るなんてもったいない!」とか言うし。本人からすりゃ邪魔なのですよ。マジで。

「迎えに来たぞ父さんっ!」

「今日こそプロトちゃんに勝って…あ、負けたんだ」

美由紀の言葉に「はぅっ!?」と胸を押さえて踞る士郎。いー加減正攻法ではわたしに勝てないと学ぶですよ。

「ま、いーです。なのは、今日の晩御飯は何ですか?」

「お母さんはハンバーグにしようかなって言ってたよ?」

「ほう、ハンバーグ…。楽しみですね」

なのはの手を引き、士郎を放置して歩き出す。さりげなくシスコンの恭也となのはが手を繋ぐように位置を操りながら、美由紀と手を繋ぐ。嬉しそうな美由紀。計画通りなのはと手を繋ぎ、デレデレな恭也。…恭也、ペ○じゃないよね?…やばい、信じきれねーです。

「おいおい、一家の大黒柱を置いていく気かい?」

「じゃ、お父さん私と繋ごっか」

美由紀が士郎と手を繋ぐ。

…ああ、周りから見たら、わたしもこの家族の一員に見えるのでしょうか。

…だとしたら、嬉しい。

…そして、照れる。

「…家族って、いいですね」

ぽつりとした呟き。誰にも聞かれないように、小さく小さく、本音を溢す。

「うん?プロトちゃん、何か言った?」

「いえ…何も」

顔を覗き込んでくるなのに微笑み返す。

ああ、わたしはオーナー達に捨てられて、幸せだ。

わたしは人間じゃないから、この家族に迷惑をかけるかもしれないけれど。

ほんの少し、幸せの欠片を分けてください。

神様、わたしからこの幸せの欠片を奪わないでください。

夕方になり、紅い日に5つの影が伸びていく。

それを後ろ目に見ながら、わたしはそんなことを思った。



おまけ

桃「プロトちゃん」

プ「うん?なんですか?」

桃「髪の毛、なのはとお揃いにしてみない?プロトちゃん可愛いからきっと似合うわ」

プ「…あの桃子?ケンカ売ってるですか?」

皆「?」

プ「…男が可愛い言われて嬉しいとでも?」

皆「…え?」

プ「あー…もしかして勘違いしてましたか?わたしは男ですよ」

皆「…」

プ「…なんですか?その疑いの目は。なんなら士郎か恭也、一緒にお風呂に入りますか?」

高町家、大絶叫

プ「何年の付き合いですかわたしたち!?」

な「ずっと女の子だと思ってたのっ!」

士「髪は長いし美少女だし一人称はわたしじゃないかっ!」

美「ちょ、え、うそっ!?可愛すぎでしょ!?」

グ〈こんな可愛い娘が女の子のはずがないですね分かります〉

恭「今の誰だっ!?…というか…ということはなのはが、なのはと…何度も抱きつき!?許さんっ!」

桃「あらあら、息子が一人増えるのね。嬉しいわー」

…あー、その日から恭也がなんか遠くなりました。

…グレイランドはもうわたしには追い付けない場所に行ってしまったようです。



―――――――――
(作者)

グレイランドが止まらないっ! 止められないっ!


>reriaruさま
応援超感謝
その声援でがんばれます

>PONさま
ご指摘ありがとうございます
ほんの僅かにですが修正させて頂きました、
また何か気づいたことがあったらお願いしますm(__)m



[16022] カウントダウン・0
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/03/03 22:17
静かな、お互いの吐息の音しか聞こえない道場で、わたしは恭也と見つめあいます。
今、この場にはわたしと恭也の2人きり。邪魔は入りませんし、入らせません。

「…プロト」

「言わないでください。もう耐えられません。限界なんです」

恭也の静かな戸惑い。それを封じる。わたしはゆっくりと、距離を詰める。
恭也は、動かない。動かせない。じっと目を見て、少しずつ距離を詰める。

「ずっと思ってました。…思えばあの日からもう二年でしょうか?わたしもよく耐えたものです。誉めてください」

にっこり笑う。だが、恭也は前髪で目を隠し、うつむいている。けれどその目だけはギラギラと輝いて、わたしを見ている。

その視線に込められた感情に、わたしはぶるりと身体を震わせる。

お腹の奥が熱くなる。身体が興奮する。頭も興奮する。けれど思考だけはクールに。少しずつ、少しずつ恭也との距離を詰める。

「だ、だが俺は…俺には…」

「ええ分かってます。恭也の言いたいことは、考えてることは、よくわかってます」

恭也が絶対にわたしを受け入れないことは分かっている。わたしもその気持ちはわかる。
けれど止められないし、止める気もない。
動きを一気に早める。なまじゆっくりと間合いを詰められていた恭也の反応が遅れる。その隙を逃さず、わたしは跳ぶ。
そしてわたしは、ついに恭也との距離をゼロにする。

ともすれば抱きつけるような距離、そこからわたしは彼の顔を見上げ、むしろゆっくりとした動作で――

「死ねこらこのシスコンやろぉおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!」

雄叫びを上げ、全力で拳を叩き込んだ。




不屈の心と試作品
カウントダウン・0




「やっぱり認められるかぁっ!貴様がなのはと同じ部屋で寝るなど!」

けれど必殺のタイミングの拳は恭也の頬をかすって空振りする。1つ舌打ちし、空中で回転、恭也の胸を蹴って離脱。

「わたしじゃなくてなのはに言えです!わたしが男だと分かってからぐちぐちぐちぐち…いー加減堪忍袋の緒が切れたです!やっかましいんじゃボケェ!」

追撃に繰り出された小太刀の一閃をかわす。速い、恭也のやつ、剣はまだ成長期ですか。厄介です。

「なのはに言って俺がなのはに嫌われたらどうするぅぅぅううううううっっっ!!」

「知ったことかぁああああああああああああっっっ!!」

かなり女々しいことを叫びながら、二刀を振るい突進してくる恭也と距離を取る。速い、そして小回りも利き、わたしよりもパワーがある。なんて厄介な敵でしょう。
けれど久しぶりの戦闘に身体が熱くなる。悦びの声を上げる。ギアをトップに移行。身体に身体能力強化の魔法をかける。ドーピング上等。勝てばいいのです。

「貴様が断ればよかっただろう!」

「断っても桃子がわたしの布団をなのはの部屋に敷くんだから仕方ないじゃないですかっ!」

「それをどうにかするのが貴様の仕事だぁあああああああっっっ!!」

「意味分からんわぁあああっっっ!!」

胴薙ぎを転がって避ける。そこへ降ってきたもう片方の小太刀。その側面に拳を打ち込んで軌道を剃らす。頭から僅か一センチ横に突き刺さる小太刀に冷や汗を流し、体勢を立て直す。
再び距離を取って一息。また何度目になるかもわからない見つめあい…というか睨みあい。

「どうした、息が上がってるぞ」

「9歳児に何を求めてるですか」

にやりと不適に笑う恭也に呆れの声をかける。

…はぁ。なんで高町家に泊まりに来る度にこうなるですか。
このシスコン野郎は美人の彼女さんがいるくせに愛妹のなのはに近づく異性が許せねーのです。だから一緒の部屋に寝るなど言語道断。手を繋ぐ?ダメダメ。2人きりで遊ぶのも俺の監視付でのみ許可。という感じなのです。

お陰でなのはとわたしの中の恭也の株は大暴落。なんぞこいつ?と白い目で見られるですよ。なのはに。いい気味です。にはは。

「…というかどうした?動きが鈍いぞ」

「…最近変な夢のせいで寝つきが悪いんですよ。仕事も忙しいですし」

青い宝石が空から振る夢、とはなんともなんとも。どんだけわたしは金に飢えてんだと。
ちなみに仕事というのは翠屋の給治なのです。時にメイド服、時に執事服で媚びるのですよ。きゃぴきゃぴ。…金払いがいいし、士郎や桃子に恩返し出来るのは嬉しいですが、プライドの切り売りというか、男として大事なモノをドブに捨ててる感じは否定出来ません。

「だから早く寝たいんですが」

「早くなのはと寝たいだと!?破廉恥小僧が!成敗してくれる!」

なーぜそーなーるぅー…
大体破廉恥といえば恭也のほうがこないだ忍の家で…おっと自重自重。たまに自分が9歳だというのが信じられませんね。

「むぅー…」

しっかし恭也しつこいですねー…。いい加減飽きてきましたし、終わらせるとしますか。

「よっ」

「むっ!?」

身体を振り、回し蹴り。身体能力が強化された蹴りは容易く道場の壁くらいなら蹴り破ります。恭也は小太刀を交差させてそれを防ぎ、さらに自分から後ろに飛び衝撃を殺す。…上手い。初めて食らった時はモロに入って気絶したのに。

吹き飛ばされた恭也はそのまま道場の壁に゙着地゙する。あ、不味い。

「はぁっ!」

そのまま壁を蹴って恭也が消える。…『神足』だ。勘だけを頼りに頭を引っ込め、後ろを見もせずに踵で蹴り上げる。
びゅんっ!という風切り音。髪の毛が小太刀に巻き込まれて棚引く。蹴り上げた足にはわずかにかすった布――胴着の感触。捉えられたことへの動揺か、それとも単に恭也の未熟故か――恭也の『神足』の精度が落ち、その姿が一瞬見える。そこへ、迷わず拳を叩き込んだ。

「ぐぅっ!?」

脇腹にめり込む拳。みしぃ…!ときしむ骨。いくら鍛えても、脇腹の防御力は上がりずらいのです。完全に真芯を捕らえた打撃に、膝を着く恭也。

「わたしの勝ちです。…また、わたしに得物を使わせることすら出来ませんでしたね」

ちらり、と背中に視線を移す。そこには、大きな木製のハサミ。グレイランドを展開した時と同じサイズで、当然刃の部分も木製です。わたしのために士郎がわざわざ手作りしてくれた、わたし専用の訓練用木刀。

…う、うれしくなんかありませんよ?本当ですよ?こんなものがあるせいで恭也とわざわざ何度も模擬戦しなければいけませんから。あー面倒です。本当に。

「ぐ…ま、まだだ。まだ、負けん…!なのはの為にも!」

…かっこいいこと言いながら立ち上がる恭也ですが、なのはがこの間、「…最近お兄ちゃん鬱陶しいの。早く忍さんの婿養子に行っちゃえばいいのに」と言っていたことを思い出す。
そう考えるとちょっと哀れ。自業自得ですが。

ちなみになのは『悪い子』計画の賜物です。なのはは素直過ぎるのでもっと士郎たちを困らせるために、少々危険思想を刻んでいるのです。初めて会った時からずっと。
…そのせいで小学校に上がって早々クラスメイトの少女に殴りかかったと聞いた時には流石に肝を冷やしましたが。(結果的に殴られた少女――アリサ・バニングスと親友になれたのだから結果オーライ。肉体言語って偉大です)

はぁ、と大きな溜め息を吐いた瞬間、道場のドアが開く音。

「プロトちゃーん!…と、お兄ちゃん。いたんだ」

…すっげぇ温度差を感じます。だが鈍感恭也は気付いてませんね。アホです。
満面の笑顔で入ってきたなのはがわたしに抱き付く。お風呂上がりで湿った髪からシャンプーのいい香りがします。
バキッ!…何の音?恭也が木刀を握り潰した音。…えー、マジデー?

「な、なのは。男に抱き付くのは感心しないな。離れなさい?」

「いーの。私が抱き付いたりするのプロトちゃんだけだもん。それにプロトちゃんいい匂いがするんだもーん」

嬉しそうにわたしの髪に顔を寄せるなのは。…なんかキャラ違くないですか?というかわたしを抱き枕かなにかと勘違いしてません?
身長差があるせいで丁度いいサイズですし。わたしの身体はどうやら成長が遅いらしく、数年前まで殆ど差がなかったのに今ではなのはの方が、頭一つ分くらい大きいのです。お陰で二人で遊んでると姉弟に間違えられます。断じて姉妹ではありませんよ?断じてっ!
むしろなのはの面倒見てるのはわたしの方だというのに…『うっかりの姉としっかりの弟』なんてゴメンです。

「それで?プロトちゃんいつ私の弟になるの?」

「士郎がわたしに勝ったらです。あとなるとしたら兄です」

「えー、わたし弟が欲しいよー」

恭也を無視してわたしと会話するなのは。…この子も大分黒くなりましたね。うん。わたし、子育て向いてるかも。
…あ、恭也が泣きそう。仕方ありません。恭也に話を振ってあげましょう

「でしたら恭也に頼みなさい。弟ではないですが、甥が出来ますよ」

「ぷぷぷぷぷろとぉおおおおおおおおおっっっ!!??」

「どうしてお兄ちゃん?どういう意味?」

「いえね、この間恭也の忘れ物を届けに月村家に行ったら真っ昼間から」

「さーせんプロトさんっ!俺が悪かった!だからなのはにそういう話題を振るのはやめてくれぇぇええええええっっっ!!」

むぅ、せっかく善意で恭也に話を振ったのに。
まぁいいです。そこまで言うならやめておきましょう。

「この話はあと…そうですね。3年後に。それではわたしはお風呂に入ってきます」

「もうっ!私と一緒に入れば良かったのにー」

「お風呂は1人でゆっくり入るのが好きなんですよ」

「むぅ〜!早くシャワー浴びたらお部屋に来てね!ベッドで待ってるから」

若干不機嫌そうに、けれどこれから一緒に寝れるのが嬉しくて堪らない、といった様子で駆け出していくなのは。それを見送り、うちひしがれている恭也を見下ろす。
そして携帯(士郎のプレゼント。料金も士郎持ち。…嬉しくなんかないですよ?)を取り出し

「その時の動画が」

「やめてくれぇぇええええええええええっ!!」

御神の剣士が何を情けない。遂には泣き出してしまった恭也にちょっとやり過ぎたと反省。とっととお風呂に向かう。
高町家のお風呂は広くて気持ちいいんですよねー。いつもはドラム風呂か水浴びだけなので地味に好きなんですよ。

<…なんという殺し文句!なのはさま、恐ろしい子…!マスター!ここは是非迎撃のためにもあのスケスケのネグリジェを>

「着ませんよー?」

<…ならば裸え>

「着ませんよー?」

<…スクみ>

「着ませんよー?」

<…ぶる>

「着ませんよー?」

<…しょぼーん>

口(?)で言うな。
最近すっかり現代社会に毒されているデバイスを振り回しながら、わたしはお風呂へと向かった。

そしてその晩、舞台の幕が上がる――

青き願いを叶える宝玉の飛来と共に

―――――――――――
次回、グレイランドの紹介をしようと思います。

感想返しは次回にまとめてやります。



[16022] 不屈の心と試作品 プロローグ
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/02/02 07:07
『助けて…』

脳裏に響く声

『僕の声が聞こえている人、助けてください』

青い宝石。金髪の少年。巨大な黒い何か

『どうかお願いします。助けてください…』

だが断る。




不屈の心と試作品
プロローグ




「…妙な夢です」

忘れましょう。布団から身体を引き摺りだす。いくら春先と言っても、まだ早朝は寒いのです。ふるふると身体を震わせながらトレーニングウェアに着替える。

「お先にーですよー」

まだ眠っているなのはを起こさないように部屋を出る。階下に向かえば、既に桃子の姿はない。どうやらもう翠屋の方へ行ったようですねー。

「おはよーです」

やっぱり。桃子の姿はありません。その代わり、と言わんばかりに士郎が笑顔で挨拶を返してくれます。

「ああ、おはよう。これからトレーニングかい?だったら一緒に…」

「やーですよ。…寒いので軽くにするんです」

答えると、苦笑する。
仕方ないじゃないですか。まだ子供なんですから。寒いのは苦手なんですよ。

ちょっぴり憮然としながら高町家を出て、準備運動もそこそこに走り出す。ギアを一気にトップへ。景色がぐんぐん後ろに流れていく。…うん、調子悪い。スピードを上げる。
そのまま軽く10キロほど走り、近くにある山の中へ。
人払いの結界を張り、一通りの柔軟や筋トレ、型の練習を終わらせると、グレイランドを取り出す。

「グレイランド」

<行きますか。魔法少年変身シーン>

…なんか釈然としませんが。キーワードを口にする。

「我、科学の恩恵を受けし忌み子
今、裁き断つ裁断の時
今、罪を断つ断罪の時
刃は手に、使い手はここに
全ての堕ちし科学に裁きの刃を!
グレイランド、セットアップ!」

<了解>

キーワードの解放と共に身に纏うはバリアジャケット。デザインは変わってない。だが、わたしの成長に合わせてほんの少しだけ大きくなったサイズ。
背中からグレイランドを抜き、剣のように構える。ダークグレーの魔力刃が伸びる。稀少技能をあえてOFFにする。

「仮想敵構築」

<了解。レベルは?>

「わたしより3倍速く重く固く、、5倍リーチがあり、奥の手をいくつも持っている、わたしよりも数十倍強い恭也」

<無理です。…仮想敵構築。ドラゴンタイプで、それ以外はマスターの要望通りに>

上等です。
ぼんやりとしか見えない幻影のドラゴン。それが完全に構築されると同時、わたしは駆け出す。

『ギャオオオっ!!』

聞こえないはずの雄叫び。足が二本、両の手はなく、巨大な翼。尖った鋭角的なフォルムと長いトゲの生えた尻尾。…なんか恭也のやってたゲームにこんな敵いませんでしたっけ?…確か、リオ…レジャネイロ?

「ととっ、グレイランド!」

<ソニックライド>

高機動魔法を発動。慌てて距離を取れば、さっきまでいた空間を含めて尻尾で薙ぎ倒されていた。…勘に従って正解でした。

「もう一回!」

<ソニックライド>

今度は同速で接近。魔力刃を仮想敵の尻尾に叩きつける。…駄目だ、あまり効いてない。

「グレイランド!」

<魔力刃強化。モード・ダブルに変更>

ハサミの持ち手、その二つを手に持ち、グレイランドを二つに分ける。結合部分に填まっていたデバイスコアが右側の刃に移動し、双剣となる。強化された魔力刃を再び尻尾に叩きつける。

『ギャアっ!!』

浅い…が、傷は付けた!この出力があれば倒せる!

<ソニックライド>

飛行魔法を同時に発動。空へと舞い上がる。目標を一瞬失った仮想敵が首を振る。そして、その目がわたしを捉えると同時にわたしは接近。

『ギャオ!!』

っ!?火を吹いたっ!!

<トライシールド>

グレイランドが張った防御陣の上で火の粉を散らす火炎球。それに冷や汗を流しながら爆炎を突っ切る。そして口を開いたままの仮想敵の口に飛び込み、柔らかい口の中からその脳に当たる部分に刃を突き立て――

「あ」

<負けですね>

たが、敵の脳ミソが予想以上に小さかった。そのままばくりと飲み込まれてしまう。…わたしの敗けだ。

「解析魔法を使う暇があれば勝てたですよ」

敵の身体の構造を把握できなかったのが敗因です。一撃で脳を破壊出来ていれば…。

<…一応スペックだけならオーヴァーSランクのドラゴンを仮想敵として用意したんですが>

「攻撃パターンが単調ですから、実際にはAAA+レベルですよ」

土埃を払い、バリアジャケットを解除。汗をタオルで拭き、人払いの結界を解除。再び10キロの道のりを走って高町家に向かう。…決して帰る、じゃないです。まだ養子になってませんので。

<まだ、養子になってませんので、ですか…>

「っ!?いい間違いです!養子になる気はありませんので!」

グレイランドが言いたい事が分かってしまい、赤面する。

「…魔改造してやるです!」

<構いませんよ。その方がキャラが立つので>

まさかの魔改造肯定派!?この相棒、底が知れません…。戦慄していると、見知った車を見付けた。なのはが通う聖洋小学校のスクールバスなのです。…もうそんな時間でしたか。ということは二時間もトレーニングしてたと。…変な夢見たせいですかねー。

「た…ただいまー…です」

なんだかさっきの会話のせいで妙に恥ずかしいです…。

「おかえり、プロトちゃん」

笑顔で出迎えてくれる桃子。帰ってきてる、と言うことはあっちの開店準備は万端ということですか。…むぅ、意識するなというほうが無理ですよ。

『マスターはツンデレですからね』

『黙るですよ。ツンデレはアリサで十分です』

ミス・ツンデレの座は彼女の物ですからね。キャラが被ったらゴメンです。

「プロトくん。どこに行っていたんだね?鍛練なら一緒に行こうといつも言ってるじゃないか」

桃子の後ろから現れた士郎が咎めるような口調で言う。わたしがいつも以上に気合い入った訓練してたのには気付いてるようですねぇ。仕方ないので肩をすくめることで応える。

「士郎相手ならともかく、恭也じゃ相手にならねーです。自主鍛練のが強くなれるです。早くあの未熟者を一人前にするですよ」

「これは手厳しい」

苦笑いの士郎。…ぶっちゃけソニックライドなしでは士郎に勝てる気はしませんが。…恭也もせめて『薙旋』を完成させてればまだ相手になるんですがねぇ…。

「そう言えば、子供たちはどうしたです?」

「皆学校に行ったよ。なのはが淋しがってたよ?勝手にいなくなっちゃってー!だってさ」

「どーでもいいですが士郎、キモいです。40前のおっさんが何してるのですか」

「…本当に手厳しい」

笑顔がひきつってますよしろー。

「まぁいいです。今日は朝から手伝うですよ」

「あら本当に?助かるわ。今日は…うん、メイド服の日ね」

…凄い幸せそうな笑みなんですが桃子、ちょっと待つですよ。

「…あの桃子?メイド服着る割合が少しずつ増えてません?」

昔は週に執事が5、メイドが2だったのに…少しずつ4:3になり今では2:5。…洗脳とか侵食とかの比ではありません。もっと恐ろしいモノの片鱗を味わってます。現在進行形で。

っとゆーかいつから翠屋はコスプレ喫茶になったですか。

「似合うんだからいいじゃなーい」

なら桃子が着なさい。似合いますから。

「あらあら、こんなおばちゃんに何を言っているのよ」

嬉しそうに言う桃子(40前)。どう見ても20代前半です本当にありがとうございました。

「…いーですよ。着ますよ。着ればよいのでしょう。ばーか。士郎死ね」

「なんでそこで私なのかなっ!?」

桃子に悪口なんて言えるわけないでしょうに。

桃子特製の朝食を食べ、三人で翠屋へと向かう。…両手で二人の手を握って。周りから見れば連行される宇宙人か…あ、あるいは、仲良し親子…のように映るのでしょうか…。

「…ふふっ」

『マスターの照れ笑い画像、しっかりばっちり記憶しましたー!』

このバカデバイスまじウゼーです。

翠屋に到着。士郎と桃子はケーキやシュークリーム、コーヒーなどの準備、わたしは更衣室で着替えです。

<男の娘の生着替え一丁はいりまーす!>

「お前もう黙ってろ」

グレイランドをマナーモードに移行。これでマナーモードを解除するまで喋れません。念話も着信拒否。

トレーニングウェアを脱ぎ、…メイド服に袖を通す。無駄に縫製も布地もしっかりしてる上に、ぴったりサイズだから動き安い。…手作りなんですよねー。
嬉しいような、悲しいような、切ないような…複雑な気分です…。

着替えを終わらせ、お店に出る。…相変わらず準備早すぎです。甘い匂いとコーヒーのいい香りが店内に満ちてるです。

「手伝うですよー」

「あらあら、ありがとう」

桃子が作るシュークリームやケーキをショーケースに運び、並べていく。

さ、今日も一日がんばりますかっ!

…この日のことを、わたしはたまに思い出す。

もう少し早く家に帰っていれば

あるいはなのはが起きるまで部屋で待っていてやれば

あるいは夢の中での呼び掛けに、素直に応えていれば

…大事な妹分が、わたしたち側に巻き込まれることなんかなかったのに、と

不屈の心と試作品
はじまります。


――――――――――
キャラ紹介
グレイランド

インテリジェントデバイスだが、展開時のフレームの頑丈さは折紙付き。アームドデバイスのコアを無理矢理インテリジェントデバイスにしたような魔改造デバイス。セカンド・オーナーの作品。

デフォルトが『シザー・モード』、連結部を分離させることで双剣『ダブル・モード』に変形可能

プロトのレアスキルの都合上、砲撃、射撃系の魔法はインプットされていないが、近代ベルカとミッド式の魔法を両方インストールされている。
お陰で魔方陣が三角に丸を重ねたような歪な形に。

性格は…壊れ。
昔はまともだったがすっかり現代日本に毒されあんな感じに。どこで道を間違えさせてしまったのかプロトは後悔中。だが、グレイランド本人はほぼ人間と変わらない自分に超満足。私TUEEEEEEEE!!

基本的にはマスター第一。だが『美味しい展開』のためなら少しくらいの苦労は我慢です。男なら耐えるのですマスター。萌えのために。

最近プロトにお仕置きされるのが楽しみになりつつある。肉体がないことだけが唯一の悩み。

プロトはグレイランドの存在を隠しているのだが、士郎と桃子はグレイランドの存在を知っている。というかグレイランドからバラした。今では親バカ同盟。
念話で話すのは自分の子供自慢。なのははこんなとこが可愛い。いえいえうちのマスターは萌え萌えデスヨ?どうせ両方私の子供になるじゃない?

待機状態は灰色の十字架。それに合う服を選ぶためプロトの服はちょいパンク気味。基本的に桃子が買い与えるので女物ばっかり。気付かずに着てますが。





高町なのは

基本的には原作と変わらず。

ただし、唯一の違いは『弱音を吐く場所がある』こと。

兄のような弟のようなプロトが大好き。恋愛感情じゃありませんし、依存でもありません。これから先どう変わっていくかはわかりませんが。

ただ、他人に頼ってもいい、ということを知っただけ。

泣きたくなったらプロトに泣き付きます。逆にプロトに泣いてもらいたい。私の胸で。

あと恭也をウザイと思っている。年頃の娘だから仕方ない。それでも嫌いになれないお兄ちゃん。困ったお兄ちゃんでもお兄ちゃんだもんね。

そして黒い。

プロトによる『悪い子』計画のお陰か天真爛漫さの中に策略や腹黒さを重ね揃えたロリばばぁに。いえ実年齢は幼女ですが。

全力全開! …は、相手が疲弊しきったときにやるから意味があるんだよっ♪という黒い娘。魔王化が早まったか。



キャラクター紹介入れると文字数制限的な問題から感想返しが出来ないことに気付いた。

次回を待ってください。

感想全部読んでます。

メチャクチャやる気が湧きます。ありがとう。皆超愛してる




[16022] 不屈の心と試作品 第一話
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/02/03 07:24
「ふわぁ…ぁ…」

欠伸を噛み殺す。ランチタイムも終わって今はアイドルタイム。お客さんは一人だけ。士郎も桃子も食材買いに出てしまいましたし…ぶっちゃけ暇ですねぇ。

「あぅー…疲れましたー」

カウンターの奥でぐだーと伸びていると、一人でケーキを食べてたおぢさんがレジへ向かう。「ありがとございましたですよー。また来るですー」手をぶんぶん振ってお見送り。笑顔で手を振り返してくるおぢさん。…早く仕事に戻れです。

しかしこれで本当に暇になってしまいましたねー…。どうしましょうか。ああ、そういえば桃子がおやつ用にショートケーキを用意してくれてましたね。桃子のケーキは美味しいのですよー。自然と口が緩むのは仕方ないことです。

「にぁ?」

プルルル、とベルを鳴らす電話。何故でしょう。誰でしょう?…なんだか嫌な予感がしますねぇ。それはともかく、受話器を手に取る。

「はい、お待たせしました翠屋ですー。シュークリームは売り切れですよー」

『あれ?プロトちゃん?』

相手はなのはでしたか。なんの用でしょう。

「どーしたですか?」

『あ、うん…。あのね、ちょっと帰り遅れそうなの。…そこにお父さんかお母さんいる?』

「両方買い物にいきましたよ。今頃デート気分ですよあのバカップル夫婦」

『にゃはは…』

電話の向こうで苦笑する気配。それはともかく、なんなんでしょう?

「何か用があるのなら伝言しますよー」

『あ、ううん。…やっぱり直接話したいから、いいの。あ、これから翠屋に行くねー』

ぷつっ、と切れる。…え、今から来るですか?…わたしメイドなんですけどー。…まぁ何度も見られてるので今さらですが。その度にスカート捲られるのは勘弁ですが。

「…でもなのはが来るなら、おやつはお預けですねー」

甘いものは一人で食べるよりも誰かと食べたほうがおいしーのです。まぁ、甘いものに限りませんが。誰かと一緒に食べれるならそっちのほうが幸せです。

「…そういえば、学校帰りなんでしたっけ」

となるとすずかとアリサが一緒な可能性高いですねぇ。ケーキは…ナイス桃子。残り5つ。ぴったりです。わたしが2つ食べることを考えたらばっちりです。

紅茶を淹れ、それをゆっくりと蒸らしながらなのは達の帰りを待つことにします。




不屈の心と試作品
第一話




「ふわぁ…」

ああ、欠伸を噛み殺しきれませんでした。なんだかぽかぽかして眠くなるですよー…。春ですからねぇ。春眠暁を覚えずです。…でもなのはにおかえりなさい言う前に眠るわけにはー。あの娘は寂しがり屋さんの甘えん坊さんだからちゃんとおかえりなさいって言わないとダメなのですよー。

「ただいまー」

「お邪魔しまーす」

「入るわよー」

おぅ、ギリギリセーフ。…寝てないですよ?セーフでしたから。

「おかえりでーす。ケーキと紅茶を用意して…なんですかアリサ」

アホ面でわたしを見て。なんでプルプル震えながらわたしを指差してるんですか。…うん?すずかも表情が固まってますね。

「な、なんつー格好してんのアンタは!?」

「桃子手製のメイド服ですが…なにかおかしいです?」

そう言えば2人にこの姿見せるのは初めてでしたねー。その場でくるりと回って背中側を見る。うーん、わたし自身、メイド服に明るくないのでよく分かりませんが、随分上物だと思うんですが。

「はぅ…っ!?」

アリサは何故か胸を押さえてうずくまる。何ですか。病気ですか。

『ある意味病気ですね…。不治の』

『…どうやってマナーモード解除したですか』

『気合いで』

…グレイランドはデバイスとして超えてはいけない部分を超えてしまったのではないでしょうか。そのあたりかなりグレーゾーンです。

『それはともかく、マスター。お客様です。いつものようにどうぞ』

えー、相手はアリサたちですよー?…まぁ、お客様だからやれと言われればやりますが。

満面の作り笑いでポージング。にぱっ☆と笑い、頭を下げる。

「翠屋へようこそっ♪お席にご案内しまぁーすっ」

ぶふぅ!

「アリサちゃんとすずかちゃんが乙女にあるまじきリアクションなのーっ!?」
口から謎の液体を吹き出す友人に絶叫するなのは。

「…そ、そこまでドン引きしなくてもよいじゃないですか…」

恥ずかしい…。桃子にやれって言われたから頑張ったのに…。顔が真っ赤になるのがわかります。ええい、見るなですグレイランド。トレーで顔を隠す。

『これを天然でやるとは…。マスターは素晴らしい。マスターは最高です』

…何言ってんでしょうこいつ…。呆れ100%の視線を胸元に落としていたら、がしっと両肩を捕まれました。…速い、速すぎる。対応出来ませんでした。このわたしがっ!
そして顔をうつ向かせて状態から、目だけ血走らせてわたしを睨み付ける。…恐い。かつてない恐怖なんですが!

「「今の、禁止でっ!!」」

「は、はい…」

な、何故でしょう。頷かなかったら大変な目にあっていたような気がします…。鼻を押さえてる理由もわかりませんし

『ヤンデレ誘拐監禁凌辱調教女装美少年ですねわかりますマニアック!』

「わたしには分かりませんっ!」

「ど、どうしたのプロトちゃんっ!?」

「い、いえ毒電波が…」

「毒っ!?しかも電波っ!?」

驚き身を振るわせるなのは。どこか恍惚とした表情でふらふらと席に付くアリすずコンビ。そして未だに意味の分からない(けど確実に教育によくない)セリフを垂れ流すグレイランド。

…状況変化がいきなりすぎです。

わたしはこーゆうのには慣れてないですよー。と内心で呟きながらカウンター席にまだぶつぶつ言っていたなのはを案内。アリすずは勝手知ったる他人の家とばかりに自然とカウンターに座ってるです。

わたしは奥からケーキと紅茶を持ってきて、三人の前に並べる。わたしもなのはの隣に座る。ようやく食べれるのですー。焦らしてくれたもんですねぇ。

そこからは他愛もない雑談タイム。なのはがケーキを分けてくれたり、そしたらすずかも分けてくれたり、何故か顔を真っ赤にしたアリサが何度も机をばんばん叩いたりしていましたが、概ねいつもとあまり変わりありません。

「あ、そう言えばさっき珍しい動物拾ったんだよ」

「はい?…珍しい動物、ですか?」

なのはの言葉に首を傾げる。この海鳴で珍しい、となると…。

「たぬき?」

何故か頭に浮かぶのは関西弁。そして車椅子。まだ早いでー。そんな声が聞こえた気がします。

「違うわよ。なんて言ったかしら。あの、長くて茶色でふさふさしたヤツ」

「フェレット、だよ」

物凄いアバウトな説明をするアリサに苦笑いしながら捕捉するすずか。

「フェレットですか…。イタチ系の肉はクセが強くてあまり美味しくありませんよ」

「プロトちゃーん?愛玩動物だよー?」

…なのは、最近笑顔が恐いです。突っ込みが(雰囲気だけは)ヘビィですよ。

「っていうかプロト。アンタイタチ食べたことあるの?」

「はい。食べられるモノなら何でも食べないと生き残れませんでしたから」

「あ…、…ごめん」

アリサとすずかはわたしの境遇を知っています。今でこそわたしは幸せですが、昔の生活を想像したのでしょう、表情を曇らせます。

「お気になさらず。気に病むくらいならケーキを少し分けてくださいな」

にっこり笑っていう。実際口で言うほど不幸でもありませんでしたしね。

「ん…。ほら口開きなさい」

「あ〜ん♪」

口の中に入れられる柔らかいスポンジとクリームの感触。甘さが口の中でとろけるのですよ〜

「美味しい?プロトちゃん」

「おいひーでふよ?」

何当たり前のこと聞いてるですか。そんな視線を込めてなのはを見れば、何故かとろけるような笑みを浮かべたなのはが抱き付いてきた。

「なんですか?」

「にゃはは、プロトちゃんがあんまりにも可愛くてつい」

意味が分かりません。だがアリサとすずかは分かったらしく、うんうん頷いてます。

「それで?何でフェレットなんか見つけたですか?」

抱き締められながら聞けば、何でも『助けて』という声が聞こえて、そこに向かったら傷だらけのフェレットがいたらしい。どんなファンタジーですか。

「でもびっくりしたんだよ、なのはちゃん、いきなり声が聞こえたって走り出しちゃうんだもん」

「それこそ毒電波にやられたかと思ったわよ」

けらけら笑うアリすず。…ということは2人にはその『声』とやらは聞こえなかったですか。

…広域念話、でしょうか。でもだったらわたしにも届いたはず。判断は保留。

救援要請を出していた、ということは仮に魔法関係者であってもわたしとは関係無い可能性が高いです。何者かと交戦してケガしたわけでしょうし。

…明日辺り、確認しておかなければ。

わたしを抱き締めるなのはを見上げる。

守ってみせる。

わたしに幸せを分けてくれたこの少女は、絶対に傷つけさせない。

それが例え、オーナー達であっても。

なのは達、高町家。そして彼女の友人。皆が暮らす海鳴市。

それを守るためならこの手を血に汚すことも厭わない。

だったらわたしのような化け物は早くこの町から出ていけばいい、というのは分かっている。

未だ士郎の誘いを断り続け、なのに高町家に甘えているのはわたしの下らない感傷だというのは理解している。

たが、一度手に入れたぬくもりを手放すには、それはあまりにも重いモノだった。

ならばせめて、わたしが守ろう。

例え、刺し違えてでも。

「どうかしたの?プロトちゃん」

気が付けば、なのはが至近距離でわたしの顔を覗き込んでいた。それに苦笑する。

「いえ、士郎たち遅いな、と思いまして」

「あ、そういえばそうだね。お父さんたち、どうかしたのかな?」

「ついでにデートしてるみたいですねー」

途端に桃色な話題を始める少女たち。やれやれ、小さい女が三人集まって姦しい、ですか。

その温かい光景を見ながら、わたしは胸の内に宿る黒い炎を自覚した。

――――
(作者)

>zako-humanさま
はい、仕様です(笑)
意表を付けたならラッキーです
いっそのこと魔法名にしましょうか「グレイランド!」<マインドレンデル>みたいな?(笑)
魔法→『なんか凄い力』でバレてます。なのはのも。でも黙認。そもそも士郎たちも普通じゃありませんから(笑)じゃないと小学生の夜間外出を黙認する理由がないですしー。

>東方の使者さま
…そのアイデア、貰ったぁ!!(笑)
期待を良い意味で裏切れるようがんばります

>オヤジ3さま
空気フラグどころか死亡フラグですね。登場人物的な意味で

>なばばさま
いつまでこのポジションを維持できることやらです(笑)

>織さま
恭也くんの毎日枕を濡らす日々です(笑)

>アホウドリさま
…その発想はなかった(作者もデバイスのメンテどうしてるのか気になってた←オイ)
そして恭也と仲良くしてる忍を写真に納める、と
みWikiさんは出れるかなー?努力はします

>白兎さま
…ど、努力しますっ!
違和感なくしとMなのはさん!

>良さま
まだまだ恭也の受難は続きます(笑)
がんばらせていただきますです。

>PONさま
実は彼の口調イメージはネギまのゆえ吉です。それにアレンジを加えました

>スライムLV8さま
吹いたwww
言われてみればそっくり(笑)
やべぇ、翠と蒼の娘にしか見えなくなってきました(笑)

>ryoさま
…このペースで行くとフェイトちゃんに直撃コースかなー?(汗)


>freeさま
>IINONNさま

がんばりますっ! …出来るだけ(笑)

>ラムネさま
お目汚し失礼しました。
次回から楽しんでいただけるよう尽力します



[16022] 不屈の心と試作品 第2話
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/02/04 20:47
かぽーん…
夜の高町家。そのお風呂場なのです。白い湯気が天井に上がってくのです…。

既に体はふやけ、熱にやられた頭は思考を止めつつあるですよー…。

「か、考えましたね士郎…」

わたしはお風呂の反対側。風呂桶の縁に手をかけニヒルな笑みを浮かべている士郎に戦慄します。

「ふ、私はもう手段を選ばんよ」

うぅ…大人げない…。
今回の勝負は『長くお風呂に入っていた方の勝ち』です。子供のわたしと大人でお風呂好きな士郎じゃ話にならないじゃないですかー。グレイランドは最近色々恐いので脱衣場置きっぱなしですし。

「ひょ、氷結系の魔法も使えないですよぅー」

「ふむ、ギブアップしても構わないよ?…その場合、恭也が『神速』で養子縁組みの書類を役所に提出しに行くがね」

なんという布陣でしょう。
ま、負けてしまいそうです。

でもわたしの事情に高町家を巻き込む訳にはー…はっ!そうですっ!

「に、肉を切らせて、骨を断つのです…!」

「むぅ…」

わたしはお風呂の設定温度を上げる。知ってるのですよー、士郎はぬるま湯にじっくり浸かりたい派だということは!

「…やるね、プロトくん」

「わた、わたひはまら養子になるわけには〜…」

あ、あら〜?天井がぐるぐるですよぉ〜?

「ちょ、プロトくんっ!?か、母さん!母さーんっ!」




不屈の心と試作品
第二話




あぅー…のぼせたですよー…。

「もうっ!お父さんってばプロトに無理させちゃダメじゃないっ!」

「…すまん」

士郎が美由希に怒られてます。仕方ない、助け船出してやるとしましょう。

「美由希ー、わたしが無理したのが悪いですから、士郎を怒っちゃダメですよー」

「…うーん、プロトがそう言うなら良いけど」

まだ言い足らない、といった様子でわたしを膝の上に伸せる美由希。士郎と目で会話。「ケーキ」「了解。母さんに頼んどく」交渉成立です。

「プロト…髪さらさらだね。ドライヤーしてあげる」

わたしの湿った無駄に長い髪を撫でながら感心したように言う美由希。魔法生物のおかげです。宿主の体内を常に最適の状態に保ってくれるのです。寄生虫万歳。にはは。

「どーでもいーですよこんなの。やりたければどうぞー」

「ん、勝手させてもらうねー」

美由希がにこにこ笑顔でわたしの髪をかき混ぜる。ドライヤーの温風がきもちいい…。顔が緩むー。それにそれ以外にも後頭部がきもちいいですし。

「美由希ぃー」

「んー?」

「意外と胸あるですね」

「マセガキめ」

苦笑しながらこつん、と小さな痛み。それにおどけた笑みを返しながら首を振り――あれ?

「なのはは?」

「あれ?…お母さん知ってる?」

台所から顔を出した桃子が答える。

「なんだかさっき話してたフェレットが気になる、とかで20分くらい前に出掛けたわよ?」

…む。
フェレット…ということは魔法関係者の可能性があるアレですか。それに会いに行った、と。

…あまり良い状況じゃありませんね。確認しに行きますか。

「ならわたし、迎えに行くですよー」

「お前がか?俺が行くぞ?」

恭也が言いますが、わたしは首を振ります。

「強い方が行くべきでしょう。悔しかったらわたしに勝ってみなさい」

…実は最近素手だと勝率五分五分なんですがね。それでも一応恭也は納得したのかしてないのか…渋々、引き下がる。

「じゃあ行ってくるで」

「はい少し待って。お風呂上がりに薄着で出たら湯冷めしちゃうわ。上着着ていきなさい」

すよー、と繋げようとしたら、桃子に止められる。いや、はや、なんとも。なんというか…。
こういうちょっとした気遣いが、未だに凄く嬉しいわたしは変なんですかねー…。

「い、行ってくるですっ!」

「はい、行ってらっしゃい」

紅くなった頬を隠し、長い髪をたなびかせながら走る。少し家から離れた所で、グレイランドを首にかける。

「グレイランド、エリアサーチ。対象は巨大な魔力保持者」

<素直になのはさまだと言えばいいじゃないですかこのデレデレ。…山の方ですね>

…なんだか聞き捨てならない部分があった気もしますが、今は不問にしてあげましょう。
しかし山、ですか。動物病院に預けたんじゃありませんでしたっけ?だとしたら反応がちがっ…!?

「グレイランド!?」

<はい、巨大な魔力反応及びロストロギア反応を感知。…なのはさまの魔力反応とほぼ同位置です>

ちっ! 後手に回った!
しかもロストロギアですって!?一体何が起こってるですかっ!

「我、科学の恩恵を受けし忌み子
今、裁き断つ裁断の時
今、罪を断つ断罪の時
刃は手に、使い手はここに
全ての堕ちし科学に裁きの刃を!
グレイランド、セットアップ!」

<了解>

バリアジャケットを展開。同時に飛行魔法を発動。機動力強化、速度強化。肉体負荷は完全無視!どうせ治癒しますっ!

「エリアサーチ。サーチャー射出。チェーンバインド待機(セット)。稀少技能OFF」

<了解>

見る見る間に夜の海鳴市が遠ざかり、巨大な魔力反応を有する場所が近付いてくる。代わりにバリアジャケットの保護を超える空圧に全身の骨がみしみしと軋む。内蔵が歪み、嘔吐感が込み上げる。強烈なGに目を閉じそうになる。

だからどうした。

気力で目を開き、サーチャーから送られてくる映像をマルチタスクで確認。…いない。いない。焦りが身を震わせる。なんでいないですかっ!

<マスター、落ち着いてください。封時結界の発動を確認>

「っ!そっちかっ!」

方向を変換。世界が色を変えるその中心へ向かって突撃。

「はぁっ!」

魔力刃を振るい、結界に穴を開ける。お願いですなのは。無事でいて――

「…へ?」

祈りと共に突進し、わたしは桜色の魔力の奔流に目を奪われた。

その中心に立つのは――聖洋小学校の制服に酷似したバリアジャケットを纏い、金色のフレームに赤い宝玉を嵌めたデバイスを構えたなのは。

「リリカル・マジカル!ジュエルシード、シリアルXXI!封印!」

凛とした声と共に、青い宝石にデバイスを叩きつける(!?)なのは。青い宝石はデバイスに吸い込まれ、巨大な魔力とロストロギア反応が霧散する。

え、えーと…

どういう状況…?

「なのは気をつけて!魔導師が近くに…!上だ!」

なのはの肩に乗った長細いネズミが声を上げる。

…おーけーわかったです。

わからない事はたくさんあるですよ?なのはがなんでデバイス持ってるの?とかさっきのロストロギア反応はなに?とかあの謎生物なによ?とか。

でも、一つだけ確かなたった一つの真実は見抜きましたです。

「お前が原因かぁああああああああああっっっ!!」

魔力刃を抜いて長細いネズミに切りかかる!「ひいっ!?」何がひいっ!?ですか殺すKILL!

<落ち着いてくださいマスター>

だが、グレイランドのそんな声と共に両腕に巻き付くチェーンバインド。はなせ!離すですよグレイランド!

「お、落ち着いてプロトちゃん!ユーノくんは良い子だよ!」

なのはもユーノ(これが長細いナマモノの名前なんでしょう)を背中に庇う。僅かに見えたユーノの顔には恐怖が刻まれていた。だから?

「グレイランド離すですよ!なのはどいてそいつ殺せない!殺す殺すすりつぶす!」

「「すりつぶっ!?」」

恐怖と驚愕、ユーノとなのはの異口同音。

「そもそもなんでなのはがデバイス持ってるですかっ!?」

<…mynameis>

「日本語で喋れ!」

<…私の名前はレイジングハートです。デバイス呼ばわりは失礼です>

「…黙ってろ」

<…YES>

チカチカ光っていた宝玉を睨み付ける。急に輝きを鈍くさせるレイジングハートにユーノが「裏切られたっ!?」と悲鳴を上げる。

「お、落ち着いてプロトちゃん!ほら飴あるよー?甘いよー?美味しいよー?」

「そんなもので誤魔化されむぐっ…ると思ってるですかなのは」

…ミルク味です。新商品でしょうか。…おいしいです。

「私もよく状況が分かってないの。これから帰ってユーノくんに説明してもらうから、とりあえず一緒に帰ろう?」

なのはが笑顔で言う。…ところで何故その笑顔が引きつってるのですか。ユーノはユーノでなんだか呆気に取られた表情ですし。…フェレットの癖に表情を作るとか器用ですね。

<…まさか本当に飴で落ち着くとは。さすがに私も予想外ですマスター>

「にゃはは…。私もちょっと予想外」

「何を言ってるですか。早くバインドを解除するです」

チェーンバインドが解かれる。ようやく解放されて地面に着地するわたし。なんでなのはは苦笑いなんでしょう。

「そう、ですね。帰りましょうか。皆心配していました」

「ほんとに!?うぅ、怒られるかも…」

しょぼん、と力無く肩を落とすなのはに苦笑し、背伸びしてその頭を撫でる。嬉しそうにするなのはの背中を押して歩き出した。

「ほれほれ、帰るですよー。ユーノから事情聞かねばならんのですから」

「わわ、押さないでよー」

ああ、でもその前にユーノに確認取って置かなければ。念話のチャンネルを開き、目の前のフェレットに繋げる。

『嘘偽りなく答えなさい。会話の中で虚偽に気付いた場合、切り捨てます』

ユーノはわたしの言葉を聞いて真剣な顔になる。…顔だけ。身体の方はほとんどなのはの身体に隠れてるです。情けない。

『プロジェクトE、この名前に聞き覚えは?』

『…ありません』

しばしの間ののち、ユーノのはっきりした返答。わたしはそれに安堵する。

よかった。わたしの客じゃない。

だがまだ完全に安心は出来ない。既にわたしもなのはも巻き込まれつつある。

油断すれば死ぬかもしれない世界でも、わたしは必ずなのはを守り抜いてみせる。

決意を新たに、わたしは歩き出したなのはの背中を押して歩き出した。




――――――――――
(作者)

感想返しをばー

>PONさま
基本的なスタンスが『近寄りたいのに近寄れない。近寄っちゃいけない』な癖に家族大好きなプロトくんですからねぇ
もし高町家の誰かが傷つけられたら…うん、暴走でしょうね



[16022] 不屈の心と試作品 第3話※修正
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/04/13 17:09
さて、お家に着きました。現在なのはは怒られている真っ最中。わたしは恭也と美由紀に一声かけ、寝床――なのはの部屋に入る。

「ここが君の部屋?」

「なのはの部屋です。わたしはこの家の子供じゃありません。…というかそもそも」『人間じゃありません』

後半は念話に切り替える。驚きの視線がわたしに向けられる。

『魔力保持量の少ない人間でも高ランク魔導師と戦える方法を模索した計画、プロジェクトE。その中の一つ…人造リンカーコアを搭載した一般人。その試作品です。人間とは呼べません』

もっとも、わたしはそこからさらに分岐した、低ランクのリンカーコアの保持者を人の手によって強化改造し、たった1つの目的にのみ特化された存在なのですが…。そこまで説明する必要はないでしょう。

『…ごめん、聞いちゃいけないことだった』

『構いません』

事実は現実であり、否定することなど不可能ですから。

『まず自己紹介を。わたしはプロト。相棒はグレイランド。近接戦闘特化の人造魔導師です』

『二人でプログレっ!というわけです』

がらっ(窓を開ける音)

ぽいっ(何かを捨てる音)

ぴしゃんっ!(窓を閉める音)

<ぶっちゃけありえないです>

何か聞こえる気がしますが気のせいでしょう。

『貴方は?』

『…突っ込まないぞっ!僕は突っ込まないぞっ!』

ユーノが錯乱していますね。




不屈の心と試作品
第3話




と、なのはが来たようですね。

「ごめんね、お待たせ」

「罰として空気椅子で話を聞きなさい」

「無理だよっ!体力持たないよ!」

さすがに冗談ですよ。
なのはが合流し、ユーノ…ユーノ・スクライアの身の上話が始まった。

魔法を使う、魔導師という存在。スクライア一族。ジュエルシードの発掘。輸送船への襲撃。責任を感じて飛び出したこと。この町についてからのこと。ジュエルシードが暴走していること。ジュエルシードの封印には巨大な魔力が必要なこと。

そして…ユーノ自身がケガしていて、これ以上の封印が難しく、なのはとわたしに協力してほしいこと。

「なのはは分かりますが、わたしもですか」

わたしは外に出せる魔力は少ないんですが。魔法生物が食べちゃいますから。

「ええ。…少なくとも攻撃魔法が使えない僕よりは、貴方の方が強い。それに短い時間でしたが、貴方がなのはを大切に思っていることはよく分かりましたから」

「む」

…言われなくてもなのはが手伝うなら手伝うつもりでしたが、こう面と向かって言われると照れますね。…なのはも照れたような笑みを浮かべてますし。

「プロトちゃんも、魔導師…なんだよね」

「ええ。一応」

正確には人造魔導師ですが、そこまで話す必要はないでしょう。9才の女の子が知るべきではない内容ですし。…知ってほしくない、知られたくない、が正しいのでしょうが。

そっか…となのは頷き、やがて、何か決意を秘めたような目でユーノを見る。

「ユーノくん。私、手伝ってもいいんだけど…」

にこにこ…いえ、にまにまと、いやらしい笑みを浮かべるなのは。これはわたしが教えた『悪巧みな笑み』ですね。

「本当に!?」

「ただしっ!」

にっこりと、笑顔のなのははユーノに手を差し出す。首を傾げるユーノ。

「その代わり、わたしをプロトちゃんより強くして」

「「…はい?」」

謀らずもハモるユーノとわたし。知ってました?ハモるってハーモニーから来てる造語なんですよ。はい無駄知識です。何故こんな知識があるですかっ!?

「プロトちゃんを守れるくらい強くなりたいの!プロトちゃん、手伝ってくれるよねっ!?」

「えーと、突っ込みどころを1つ1つ上げていきますよ?本人の前で言うたら意味ないやろー。わたしの方がユーノより強いわーい。なんでわたしに頼んどんねーん。なのはに守られるほど落ちぶれとらんわーい。ちょっと落ち着くといいですよー。の5つでした」

「あと、なのはのディバインバスター食らったら大抵の魔導師はKOだよ」

ああ、あの馬鹿魔力の奔流、何かと思ったらなのはの砲撃魔法だったんですか。聞けば、アレを感覚で組み上げたとか。…でっかい魔力持ってるなーとは思ってましたが、まさが天災クラスの天才魔導師゙だったとは…。どんな皮肉ですか。わたしが守る必要とかさっぱりないじゃないですか。

<守られてるだけは嫌やわっ!ウチも守りたいっ!ってことですね>

…ウゼー。わたしの相棒まじウゼー。なんで死なないですか。

だが、予想外にもなのははグレイランドの言葉に頷く。わたしはユーノと顔を見合わせ、大きな溜め息を吐いた。

「…諦めるつもりは?」

本音を言えば今すぐユーノを放り出して眠りたいのですが。なのはをわざわざ戦いの場に引き摺りだしたくなんてないですし。

「ないよ」

「…ですよねー」

即答、ですか。まったく、根が良い子のなのはに困ってる人を見逃せというのが土台無理な話でしたね。

「…びしびし行きますよ?」

ならば、身を守れる程度の力は手に入れてもらわなければ。

「大丈夫!プロトちゃんにやられるなら、耐えてみせるよ!」

にこにこ笑顔でガッツポーズななのは。…スパルタを自分から希望するなんて、やっぱりえむな人だったですねなのは…。

となると、教える先生を決めねばなりませんね。

「ユーノ、貴方の得意魔法は?」

「僕は結界魔導師だよ。攻撃魔法は使えないけど、防御には自信がある。簡単な治癒魔法も使えるしね」

ん、なら決まりですね。

「わたしが近接格闘、ユーノが防御魔法、レイジングハートに射撃、砲撃系をならいなさい」

「はぁーい」

元気に返事するなのは。とりあえずレイジングハートに頼んでなのはに魔法の基礎知識を教えてもらう。

さて、わたしは…と。

「とりあえずユーノ。わたしも協力します。その代わり、常になのはの側にいてあげてください。なのはが傷1つ負わないよう、守ってあげてください」

お願いします、と頭を下げる。慌てたのはユーノの方だった。

「や、やめてよっ!元はといえば関係ないことに巻き込んだ僕が悪いんだ!頭を下げられる理由なんて――」

「それもそうですね」

ずしゃあっ!ユーノがヘッドスライディングをかます。なんですか。やかましい。

「…君は凄くマイペースだね」

「そうですか?」

むしろわたしほど周囲に気を使ってるのもあんまりいないと思うですが。

「では、まずやるべきは戦力の確認ですね」

「と言ってもなのははデバイスを手に入れたばかりだよ?僕は僕で攻撃魔法使えないし」

…戦力はわたしだけ、ということですか。ジュエルシード…というかロストロギアの暴走体がどれくらい強いかわかりませんが、近接戦闘しかできないわたしだけ、あるいは砲撃魔法しかもたないなのはと二人のみ、というのも厳しいですね…。何よりユーノの実力が未知数ですし。

「ならば実力の底上げが第一ですね。なのはは誘導弾の使い方を重点的に学びなさい。砲撃よりも使うのはそっちですよ、普通は。わたしは街中にサーチャーを飛ばしてジュエルシードの探索を優先します。ユーノ、ジュエルシードを特定できる魔力パターンなどはありますか?」

「それが…。ジュエルシードって発動するまではただの綺麗な石と変わりないんだよ」

「…なんとまぁ」

厄介極まりないですね。

「一応、視覚リンクでしらみ潰しに探してみますが、期待は出来ませんね。何より、綺麗な石というだけで持って帰ってしまいそうな頭お花畑な子供がいっぱいなんですよ、この町」

「あ、あはは…」

「にゃはは…」

苦笑いの二人。と、そう言えば…。

「わたしが現れたとき、やたら魔導師に警戒してましたが…アレは何故です?」

「…輸送船の事故は謎の魔導師に襲われて起きたものなんだ。しかも、その魔導師はどうもジュエルシードを狙ってたらしくて…。もしかしたらここまで追ってきたんじゃないかと思って。…ごめんね、勘違いして」

「いえ、そういう事情ならば」

…実力、目的、共に未確認の謎の魔導師ですか。心配ごとがどんどん増えていくです。溜め息を1つ。
明日から鍛練、ハードに行かなきゃですねぇ。

ぎりり、とどこからか音がなる。なんの音かと思ったら、わたしの歯が軋んだ音でした。…ダメですね。わたしは

「プロトちゃん?」

なのはが心配そうにわたしを見ている。「なんでもないですよ」と頭を撫で、思考を切り替える。

そう、過去はどうでもいいのです。今必要なのは未来、これからです。無事に全てを終わらせ、平和な日常に帰ること。それが一番大事な優先事項。

「なのは、無理にわたしが言ったような戦いかたをする必要はありません。貴女が自分でやりやすい戦術を考えなさい。レイジングハートと共に」

なのはの馬鹿魔力なら長距離砲撃連射でも相当な威力でしょうからね。好きに戦わせてあげましょう。

「うんっ!頑張るよ!よろしくねっ、レイジングハートっ!」

<はい、マスター。勝ちに行きましょう。プロトさまに>

「「プロト(ちゃん)に勝ってどうするのっ!?」」

おや、レイジングハートに嫌われてしまったようですね。どうでもいいので気にしませんが。

「良いのですよ。真面目で堅物で正しい意味でまともなデバイスに好かれる性格だとは思っていませんでしたから」

<…グレイランドさんはまともなデバイスではない、という意味に聞こえますが>

<HAHAHA。私ほど人間に近いデバイスを超えたデバイスなんてあまりいないでしょう>

いつの間にかわたしの首にかかっていたバカがチカチカ光りながら答える。ああ、頭痛くなってきた。

「どうやって戻ってきたですか…」

<気合いで転移魔法を発動しました>

既にデバイスなのか疑わしいレベルですね。…あまりレイジングハートに近付けない方がいいかもしれませんね。教育に悪いです。

「そうそう、ユーノ。レイジングハートの以前の持ち主は?どんな魔法を使っていたのですか?もしかしたらなのはが使える魔法が入ってるかもしれませんよ?」

「あぁー…それなんだけど」

ばつの悪そうなユーノに変わって、答えたのはレイジングハート。

<私のデータは全て消去されています。先ほどのディバインバスターも完全にマスターが一から組み上げた物です。また、マスターに起動されるまで私は待機状態にあったため、シーリングした魔法はプロトさまの『ソニックライド』のみです>

…役にたたねーです。

「…ソニックライドって?」

首を傾げるなのは。

「…サイボー○009の加速装置ですよ。運動音痴のなのはが使ったら音速で壁にぶつかるでしょうから使ったらメッです」

「にゃはは…。うん、使わない」

壁にめり込む自分を想像したのか、額に汗して頷く。

結局この日は、作戦会議だけで終わることになる。

…こっそりとわたしがなのはのディバインバスターをラーリングしたのは秘密です。
…いーじゃないですか。使えないのは分かってても、男としてでっかいビームには憧れるんですよ。



―――――――――
(作者)

今回は説明の回。
実は読まなくても次の回に行ける件。


>Bastedさま
心配感謝です。
これからもよろしくお願いします。

>白兎さま
ですよねー
駄目だ、Mなのはさん書こうとするとstsな魔王さまが頭の中で天地魔闘します…
だからって諦めませんがっ!
更新は出来る限りはこのスピードで頑張ります。駄目だったら即泣き言いいますのでご心配なく(笑)


>葉月さま
自分で書いてびっくり
あながち間違ってないww


>PONさま
>幽さま
ご指摘感謝です。
…今回やたら修正点が多い件



[16022] 不屈の心と試作品 第4話
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/02/06 14:49
「リリカル・マジカル!ジュエルシード、シリアルVI!封印!」

ん、お見事。
にしてもとんでもない成長速度ですね。この2週間、スパルタで特訓したとはいえ3つまでなら誘導弾を完全にコントロールしますか…。やはり天才中の天才というのは恐ろしいものです。

「3つ目の封印終わったよー」

にこにこ笑顔で飛んでくる――そう、飛行魔法まで習得してるのだ――なのはにサムズアップ。…まぁ、笑顔が引きつってしまうのは仕方ないでしょう。ユーノも引きつってますし。

…わたしですら防ぎきれるかどうか、微妙なラインの極大砲撃魔法。設置型と射出型、バリエーションが効くコントロールも良い誘導弾。ユーノという良い師に恵まれたお陰か、Aランクのドラゴンタイプなみに堅牢な防御魔法。…さすがに格闘技は習得出来ませんでしたが、十分過ぎます。

…戦ったら、勝てるかどうか。稀少技能全開で互角か、わたしが有利ってとこでしょうか。

「どうかしたの?プロトちゃん」

「いえ…。なのはさんの成長速度に感服してるだけです」

「なのはさんっ!?凄い他人行儀なのっ!」

ぎゃーぎゃーウゼーです。
…はぁ。自信なくなりますねー…。わたし、必要なかったんでしょうか…。




不屈の心と試作品
第4話




「ふんふ〜ん♪」

ご機嫌な士郎に手を引かれ、歩くわたし。最近の士郎はいつもこんなもんです。…ま、理由は分かってるのですが。

あー、どーもこんにちわ。高町・G・プロトでぇーす。

えぇ、負けましたよ!
ぷよ○よで勝負の真っ最中にジュエルシードが暴走したのでねっ!不戦勝で士郎の勝ちですよ!
わたしの27連鎖ーっ!!
魔導師であるわたしにぷ○ぷよで勝つなんて普通に考えたら無理なのに!運を味方に付けたものの勝ちだということですかっ!?

「うぅー…し、士郎」

「はっはっはー、違うだろうプロト?」

ぐぁっ!? 生意気してたツケが今まさにわたしにのし掛かりますよ!? うわーん!昔のわたしのバカーッ!

「ぉ…」

顔が真っ赤になるのが分かる。見るな、見るなですよ士郎!グレイランドもにやにやするなーっ!いや顔は見えませんけど!

「ぉとぅ、さん…」

「はぅんっ!?」

『ハートブレイクショット入りましたーっ!』

あぅーっ!

「もう、諦めたらいいのに」

後ろでくすくすと笑うなのは。首に下げたレイジングハートが太陽光を反射してきらきら輝いてます。

「うるさいですよなのはっ!」

「じゃなくておねーちゃんでしょっ♪」

「誰がっ!なんで!そんな風に呼ぶですかーっ!!」

…戸籍が無かったわたしに士郎が昔のツテとやらを使って用意した戸籍。戸籍上の年齢は9歳。なのはと同じ年ですが…誕生日が、なのはより遅いのですよ。
なのでなのははわたしに姉と呼べと強要してくるのです。これはもうパワハラですよっ!?

『…君も大変だね』

『よく考えたらペットよかマシですね』

『あっさり復活したなぁっ!?』

なのはの肩の上で絶叫するユーノ。人間並の知能があるのにペットとして扱われるよりマシだと思ったら、なんだか気分が楽になりましたねー。
うん、士郎たちをお…父親呼ばわりしなきゃいけないことを除けば、対して変化ありませんしね。

「それで今日はどこに行くです?」

毎日毎日色んなところに連れていかれてもうくたくたですよ。…なんかわたしまで小学校に通わされそうな勢いですし。制服買いに行ったときにナチュラルに女生徒用のを薦められたのは記憶に新しいです。
…そんなに女の子に見えるでしょうか。見えるんでしょうねぇ…。はぁ…

「今日はサッカークラブの応援だよ」

はい? …サッカー?

「…帰る」

「「まぁまぁ」」

「なのはまで!?なんか嫌な予感がするです!ぽんぽん痛いからわたし帰るー!」

『ああマスター…。すっかり力関係が逆転して…。イジられるマスターの愛らしいこと可愛らしいこと』

後で削る!



…で、結局。

「な、何故チアガール…!?」

「なんであたしまで…」

「…サイズがぴったりなのが恐いよ」

上からわたし、アリサ、すずかの順です。なんでも二人は応援に来たらいきなりなのはに衣装を渡されたとか。…まぁ二人は高レベルの美少女だからまだ良いでしょうが。

「わたしは犯罪でしょう…」

男なのにぃ…。涙が出ちゃいます。

「プロトちゃんかわいーっ!」

嬉しそうにわたしに頬擦りするなのは。当然なのはも同じ格好ですが…羞恥心ゼロですかそうですか。

「にゃ?恥ずかしい格好見られるとドキドキしない?」

「なのはのセリフにドキドキですよっ!?正気に戻って!あの頃の純真なおねーちゃんに戻って!」

わたし子育て失敗してたーっ!?なんで露出癖入ってるですかなのはーっ!

「わーいおねーちゃんって呼んでくれたー!」

「おねーちゃんって呼ぶだけでなのはが正気に戻るならいくらでも呼びますから!そっちに行ったらダメです戻ってきてーっ!」

『…変身シーンで毎回全裸になるから羞恥心麻痺してくるんじゃないですか?』

「ユーノのせいかぁあああああああああっっっ!!!」

お前がなのはにデバイスなんかやるからぁあああっ!!

『今更ぁぁぁあああっ!?絶対これは君の影響でしょっ!?』

「はっはっはっ、皆かわいいぞー」

「見るなですおっさん。目が変質者ですよ」

手に持ってたデジカメを奪い、投げ捨てる。…が、投げた方向に出現してキャッチする士郎。…『神速』使いやがった。なんという奥義の無駄遣い。

「ほら、皆応援してあげなさい。皆頑張ってるんだから」

「…どうみてもこっちに見とれてるですが」

鼻の下伸ばしやがって…。思春期入りたての高学年の生徒も多いせいか、ピンクの視線がぐさぐさ突き刺さりますよ。平気な顔してるのはなのはくらいで、わたしもアリサもすずかも顔が真っ赤です。

「さぁ皆元気に応援だっ!」

高らかに言う士郎。だったらてめぇもこの衣装着ろよ。じゃなかった着るですよ。…まぁ、応援はしますが。

「が、がんばりなさーい…」

「が、がんばってー」

「…ここまで恥ずかしい思いさせたんです。絶対勝つですよー」

「ふぁいとー!!」

ポンポン(正式名称なんて知りませんよ)振って応援する美少女三人と色物一体の声援を受け、翠屋JFCが活気付く。代わりに相手チームは…殺気付く。こわっ

「「「「あ」」」」

図らずも声が重なる。相手チームが無理に攻めたせいで翠屋JFCのディフェンスが派手に転ぶ。救急箱を持ってってやらねば。

「士郎、行くですよ」

「ああ。だがそのジャージは置いていこうか。まだ試合は終わってない。応援も終わってないから」

…ちっ。どさまぎで着替えようと思ってたのに。こらアリサすずか、そんな「裏切者!」的な視線で見るなですよ。

試合場に降りて、ベンチに戻ってきた少年の傷を見る。んー、大怪我、ではないですが派手に切りましたね。運動したら大量出血の危険あり、です。

「これ以上試合は無理ですね。でもまぁ、舐めときゃ治りますよ」

「そ、そうか。ありがとう」

顔を紅くしてしどろもどろに返事する少年。どうかしたんでしょうか?まったくこっちを見てくれませんね。

「…舐めてあげましょうか?」

「!?いやいいよ!いいよっ!やめてくれ!」

ぜ、全力で拒否ですか…。ちょっと傷付くものですね…。確かにわたしもチアガール姿の男に傷口舐められるなんて嫌ですけど…。
わたしの唾液や体液には治癒力を向上させる力があるのですよ。魔法生物を体内に飼ってるおまけ効果的なモノですが…。善意の押し売りは迷惑にしかならないということですか…。上手くいかないですね。

とりあえず普通に消毒して普通に絆創膏を貼る。その間少年はまったくわたしと視線を合わせてくれませんでした。…そんなに見苦しいですかわたし。

「いや、困ったな」

「どしたですか士郎?」

「お父さんだ」

睨みあうわたしたち。…視線を逸らしたのはわたしでした。くそぅ

「実は控えのメンバーがいないんだよ。だから、これはもう没収試合かな、と」

ああ、成る程。今の点数は1ー1の同点。後半戦がほとんど丸々残ってる、と。確かにこんな状況で没収試合にしたら不満たらたらになってしまいますね。

「ならわたしが出ますよ」

「ん?いいのかい?」

「この服を着替えるためなら構わないです。まさか士郎もスカートでサッカーやれ、とは言いませんよね?」

わたしの言葉に苦笑いで返事をする士郎。
おし、そうと決まればチアガール服の上からジャージを着る。髪をポニーテールに纏め、少年から予備の靴を借りる。

わたしが試合場に出た途端、視線が集中するのが分かります。そりゃー初対面でチームプレーしろとか言われたら困りますよね。

「どこのポジションに付けばいいです?」

近くにいた少年に問い掛ける。

「あ、ああ。ディフェンスが空いてるけど…ケガしたら心配だし、フォワードに…」

「心配ご無用。安心するです。もうキーパーまで奴らは辿り着きません」

にやりと笑って見せれば、少年は顔を紅くして――何故?――頷いた。

さぁ、遊びの時間です。


ここからはダイジェストでお送りするです。


「わっ」

「ご、ごめんっ!大丈夫かっ!?」

「いえ、…というかボール放置していいですか?」



「…あの」

「な、なにっ!?」

「…歩くようなスピードのドリブルなのになんでカットしないです?」



「やー」

「わー、入れられちゃったー」

「せめて取る努力をしろですキーパー」


「あっ…すいませんです。大丈夫ですか?」

「い、いや大丈夫!」

「…鼻血出てますけど」



…なんかわたしが入った途端、まともな試合にならないんですが。

こらなのは、爆笑するなです。なんでアリサもすずかも呆れた顔なんですか。

結果、わたしが入れた一点のお陰で2-1で勝利…なんですが、なんでしょう。この釈然としない感じ。…僅かに熱い男のバトル的な展開を期待していたわたしはアホなんでしょうか…。

「…あー、まぁ、勝ちは勝ちだ!これから私の家で祝勝会だーっ!」

『わーいっ!』

ああ、士郎、ごめんなさい。

なんかもうあらゆる意味で台無しです。

…なのはは笑いすぎで過呼吸になってますし。

…後でお仕置きですね。


――――――――――
(作者)

原作よりやや強いなのはさん。でも全体的に強くなってるのであまり差はありませんよー


>トトさま
YES、あの断罪分離さんから名前を借りました。
ネーミングセンスがないので、ハサミ型デバイス(これだけは決まってた)の名前を決めるのに悩むこと数分…ふと本棚を見れば『断罪分離のクライムエッジ』
…これだぁ!と。
さすがにクライムエッジはねーな。とクライムエッジ・オリジナルの名前を頂きました( ̄▽ ̄;)



[16022] 不屈の心と試作品 第5話(上)
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/02/08 12:36
…戦慄した。

正直に言いましょう。舐めていた、と。最近の小学生は化け物かっ!? それともわたしにインプットされた知識が古いのですかっ!?

『…まさか小学生で彼女持ちがいるとは』

『…何で君、そんなに殺気だってるのさ』

羨ましいんですよ、男的に




不屈の心と試作品
第5話(上)




場所は翠屋。右見ても左見ても小学生。ほぼ男子。なんだか視線が恐いのでなのは、アリサ、すずか、わたし、ユーノはカウンター席です。…もちろんもう私服に着替えてます。あんな服をいつまでも着ているわけないでしょう。

「…気まずい、わね」

「うぅ…なんだか恐いよ」

「にゃはは…。皆お兄ちゃんみたいな目してるの」

何だかちらちらと伺うような視線のせいでやりにくくて仕方ないです。わたしとしてはあの小学生カップル(キーパーとマネージャーさんです)を観察したいのですが…。…というかいたのですかマネージャー。ケガした少年の治療、わざわざわたしがでしゃばる必要ありませんでしたね。

「プロトちゃん、キーパーさんが気になるの?」

なのはの問い掛けに、店内の空気が凍りつく。…何なんですか、一体。

「いえ。…小学生のカップルがどんなことするのか気になってるだけです」

小学生的にどこまでアリなんでしょう?キス?手を繋ぐ?まさかとは思いますが表記を○学生にする必要がある行為はしてませんよね?

「実際、自分達が話題にされているのにさっぱり気がつかないほど桃色オーラを発している二人が二人っきりになったらどこまで行くのかなー、と」

おや、何を想像したですかすずか。顔が真っ赤ですよ?この耳年増めっ!

「んー、やっぱりキスくらいはいくんじゃない?」

ジュー、とオレンジジュースを啜りながら平然と答えるアリサ。やっぱりアメリカ人だけあってオープンですね。

「…キス、かぁ」

なのははなのはで夢見る乙女な表情で空中を見て――ん?何故ちらっとわたしを見たですか?「にゃはは、いやいや落ち着こう私」…顔を真っ赤にして頭を振る。…何してるのですか。難しいお年頃ですね。

「その程度ですか。最近の子供は進んでいるて聞いてましたが…」

「なに年寄りみたいなこと言ってんのよ。あんたも最近の子供の一人でしょ?」

「アリサと同レベル…ですとっ!?」

「そのケンカ買うわよ」

臨戦態勢のアリサ。相変わらず単純ですね。

「…ふと思ったですが」

「?。何?」

首を傾げるすずか。わたしはケーキを切り分けながらずっと疑問だったことを聞く。

「三人とも凄い美少女なのに、なんで彼氏作らないです?」

正直に言えば、あのマネージャーの娘なんかじゃ勝負にならなそうな程の美少女なのに。…ん?また店内の空気が代わりましたね。

「男なんてバカばっかりじゃない」

はんっ。と鼻を鳴らすアリサ。まぁ確かに、アリサは普通の小学生と比べたら精神年齢がずっと高いですし、同年代の少年は子供に見えてしまいますか。

「私は…あんまり、男の子って得意じゃないから」

困ったように笑うすずか。…ま、この娘ならこういう反応でしょうね。接する機会のある男性がわたしか姉の彼氏の恭也しかいないのですから。

「うーん、今はプロトちゃんやアリサちゃん、すずかちゃん達と遊ぶ方が楽しいからかなー」

なのはは色気より食い気、あるいは恋愛より友情ですか。…んー?ユーノが何だかわたしに何か言いたげな目でわたしを見てますね。視線をずらす。

「うぇっ!?」

ちょっ、そこのバカップル?それはもしかしてジュエルシードですか!?

『ユーノっ!』

『うん?君が男の子に興味ない理由でも教えてくれるの?』

『なに馬鹿言ってるですかっ!』

真面目な話です!

『あれはジュエルシードじゃないんですか?』

『え…?あっ!!本当だ!なのはっ!』

『にゃっ!?』

くっ、まさか本当に綺麗な石だからって拾って、しかも彼女にプレゼントするアホがいるだなんて…! 予定外にもほどがありますよ!

『だったらすぐ回収に…!』

『アホですかユーノは。普通に考えて恋人からのプレゼントを強奪されたらあの女の子が怒るでしょう。…どーにかしてどさくさ紛れで回収するしかないです』

…かといってアイデアがあるわけではありませんが。

『…なのはは?何か考えはありますか?』

思春期の少女を傷付けず、ジュエルシードも暴走させずに回収する。そんな夢のようなプランを思い付くですよなのはさん!

『…いくらくらいで譲ってもらえるかな』

『恋人からの贈り物をお金で渡す小学生女児なんていやですーっ!』

そんな夢もへったくれもない!男の子の夢を壊さないでください!年齢関係なく女は女ということですかーっ!?

『よく考えたらそんなにお金ないし…。誘導弾ぶつけて気絶させるとかは?』

『き・ず・つ・け・る・なっ!です!』

本当に…本当に育て方を間違えました…。もっと純粋で純真な良い子だったはずですのに…。

『んー…。プロトちゃんが小首傾げて可愛い顔と声で「おねーちゃんそれちょーだいっ(はぁと)」って言えば、くれると思うよ?』

『…何言ってるですか。まじで』

もうわたし挫けそう…。あ、こら、『そんな目で見ないでよー』って目を逸らすなです。現実を見るですよなのは。

『…とりあえず様子を見よう。最悪の場合、一人になった時に催眠魔法で眠らせる』

『…それが一番妥当ですね』

もうわたしの味方はユーノだけです…。

「…あんたたちどうかしたの?さっきからあの二人見つめて」

「恋人欲しいな、と思いまして」

「ふぅん…ってえぇえっ!?」

驚きの声を上げるアリサ。その手をそっと握り、上目使いで見つめる。

「アリサ…財産目当てですが、付き合ってください」

「んなこと正直に言われて付き合うバカがいるかーっ!」

あいたーっ!?鋭いチョップが頭に突き刺さる。うぅ、軽い冗談でしたのに…。

「にゃはは、痛いの痛いの飛んでけー…すずかちゃんに」

「なのはちゃんっ!?お願いだから私を巻き込まないで!」

…わー、素敵な全力拒否。いい度胸ですすずか。

『…何やってんのさ。あの子達、動くみたいだよ』

む、アリサを構うのをやめて席を立つ。いつの間にかバカップルはテーブルから離れ、店を出ようとしていた。…やっぱり彼女持ちは他の男子とは違うということですか。

「ん?どこか行くのかい?」

士郎の声。…さて、どんな理由がいいやら。ふと、なのはの肩の上のユーノに目が止まる。あ、これですね。

「よく考えたら飲食店に動物を持ち込むのはどうかと。なのは、ユーノを一旦家に置いてきましょう」

「あ、うん。そうだね」

なのはもこちらの意図を理解し、席を立つ。士郎も特に違和感は感じなかったのか、「そう、車に気を付けてね」と声を残して少年たちの元へ向かう。

「ならあたしらも行こうか?」

「うん、そうだね。…男の子の中に二人で残されるのも困るし」

それは不味い。付いてこられたら困るのですよ。

「アリサ、すずか…えぇと、出来れば来ないで貰えると助かります」

「はぁ?何言ってんのよ?」

一瞬で不機嫌になるアリサ。うぅ、だから唐突な状況変化は嫌いなんですよ。

「なのはと2人きりがいいんです。その、理由は…言えませんが」

「…へぇ」

にやり、そんな形容詞の付く笑みを浮かべるアリサ。…何故微笑ましいモノを見る目でわたしを見るですかすずか。何故頬を紅くするですかなのは。

「そういうことなら仕方ないわね。ね、すずか」

「うん、私、応援するよ」

「ご、誤解だよーっ!プロトちゃんは天然さんだからー!」

失礼なことを言われてる気がします。

「と、とにかく行くですよなのは」

「うー…二人に会いに行きづらいよー」

何故?まぁ疑問は側溝に投げ捨て、今はジュエルシードです。翠屋から出て、認識阻害の魔法を使う。そして小学生カップルを尾行する。…なにやってんでしょう、わたし…。

「自分に疑問を持っちゃダメだよ。心が挫けるから」

「…なんでそんな慣れてるんですか」

自分を誤魔化すことに

「…色々あったんだよ。高町家で」

ペット扱いされてただけでしょうに。フェレットなんだから仕方ないでしょう。

夕焼けが綺麗な遊歩道を手を繋いで歩くカップル。顔が紅いのは夕日のせいでしょうか。それとも、隣にいる人物のせいでしょうか。

「…なのは」

「なに?」

「切りかかっていいですか?」

「いいけどバレないようにね」

「ダメだからねっ!?リリカル的にダメだからねっ!?」

うっさいフェレットです。

「…なに話してるんだろ」

「んー…よく分からないですが、ジュエルシードのことを話してるっほいです」

女の子の手の中のジュエルシードを二人で覗き込んでますね。


「…れ、願いが…」
「…ぁ、俺は…」
「私は…に…」


…とりあえず甘酸っぱい会話してるっぽいから殺していいですか?

「っ!プロト!」

「えっ!?許可してくれるですかっ!?」

よーしグレイランド、セットアッ…

「違う!あの二人がジュエルシードを発動させようとしてるっ!」

「「なっ!?」」

ユーノの叫びと共に、ジュエルシードが光り輝く…!しまった!出遅れた!

封時結界を展開。世界が色を変えるなか、青い宝石から溢れる魔力に少年と少女が飲み込まれる…!くそ、暴走した!

「なのは!」

「うん!」

声をかけるだけでなのはレイジングハートを、わたしはグレイランドを抜く。

キーワードの省略は二人とも完璧ですっ!

「「セットアップ!」」

そして、色を変えた世界の真ん中で、わたしはなのはと共にジュエルシードと対峙した。




――――――
(作者)

アリサとすずか。桃色妄想中


>葉月さま
自重自重。パンツじゃないから恥ずかしくないとか言いませんよ?


>東方の使者さま
ふむ…。指摘ありがとうございました。
そこらへん踏まえてその内短編を書いてみます。
プロトちゃんの歪み(笑)の原因を解き明かしましょう。

>パウルさま
自重自重。ついでに自嘲
どうでもいいですがsts時の変身シーンの卑猥さは異常。
舐め回すようなカメラワークとか揺れとかたゆんとか



[16022] 不屈の心と試作品 第5話(下)
Name: 人春◆45d3e50a ID:ec8f6a96
Date: 2010/02/09 12:47
不屈の心と試作品
第5話(下)



うぞうぞと伸びる黒い森。その中心には光輝く透明な球体に包まれたカップル。手を繋ぎ、胎児のように丸くなって目を閉じている。
それを確認しながら飛行魔法を発動させ、空へと舞い上がるわたしたち。

「願いはずっと一緒にいたい、というところでしょうか」

「それじゃこの森の説明が付かないよ?」

…眠れる森の美女、じゃないですかねぇ?発動させたのは女の子の方でしたし。

「とりあえずユーノはもしもの時のためになのはと一緒に。なのは、砲撃で魔力を吹き飛ばしてください」

「オッケー!レイジングハート!」

<了解です。シューティングモードへ移行します>

レイジングハートの内部から音叉状の部品が飛び出て、がしょがしょんと変形。…いいなぁ、ああいうの。グレイランドでも出来ないかなぁ。

「ディバイィィィィン――」

桜色の魔方陣が展開。きゅいんきゅいんと音を立てて膨れ上がる魔力。その先端が魔力塊、ジュエルシードの暴走体へと向いて――ってちょっと待つですなのはっ!

「なのはっ!ストッ――」
「バスタァァアアアアッッッ!」

ぎゅどんっ!凄まじい音と共に吹き荒れる魔力。ああ、終わった…。

「あんなん食らったらあのカップル死ぬですぅぅぅぅぅ!!」

「<…あ>」

レイジングハートまで!?
だが、結果だけ見ればその心配は杞憂に終わる。
ぎゃんっ!という音とともに、漆黒の魔方陣が防御魔法を発動。ディバインバスターはジュエルシードの暴走体へ突き刺さることなく、桜色の粒子になって消滅する。

「防御魔法っ!?しかも極めて強力なっ!?」

「うそっ!?全力で撃ったのにっ!?」

…そうですね。被害者の安全も考えずに撃った全力砲撃でしたね。

ジト目で見るとなのはは額に汗をかきながら視線を逸らした。…この頭お花畑娘は…!

「お助けユーノくん。分析お願いします」

「そこで僕に振るっ!?いいけどさ。…多分、誰にも邪魔されずに二人っきりでずっと一緒にいたい、ってことじゃないかな?周りの木の一本一本が防御魔法を同時に発動してる。正直に言って、なのはの砲撃は破壊力は凄いけど貫通力に欠けるから…」

「防御魔法の表面で拡散してしまったわけですね」

「むぅー…。何だかこのジュエルシード、妙に強いよ」

それはわたしも思いました。今までのジュエルシードだったら先程の砲撃で霧散していたはずなのに…。

「推測だけど、ジュエルシードの特性が関係してると思う」

「というと?」

振り向けば、フェレットのくせに難しい顔で眉間に皺を寄せて考え込むユーノ。…やばい、笑いそうです。

「ジュエルシードは願いを叶えるロストロギアだ。今までのジュエルシード暴走体は確固たる願い…目的がなかった。けれど、あれは違う。意識のある生命体が、願いを叶えるためにジュエルシードを使い、暴走させた。莫大な魔力がきちんと指向性を持って使われてるんだ。そう考えれば、あれだけの暴走も納得できる」

…成る程。
となれば、あれを破るのはますます困難ってことですかねぇ。他人の恋路/願いの邪魔をしてるってことですから。

「ちょっと試してみます」

<ソニックライド>

返事は聞かず、森に向かって突進。グレイランドを抜き、魔力刃で木々を切る。…植木屋の気分です。あるいは男装美少女ドール。

「っと」

黒い枝葉こっちに向かって伸びてくる。それを薙ぎ払い、再びソニックライドを発動して距離を取る。…切ったところが再生していた。近接戦も意味なし、ですか。

「無理ですね。ジュエルシードにたどり着く前に木に捕まります」

捕まったらどうなることやら…。眠れる森の美女ならミイラになるまで放置なんですがね。

「なら、私が砲撃で…!」

「結果は同じでしょう」

「僕がバインドで…」

「何するんですか」

…打つ手なし、ですか。仕方ありませんね。出し惜しみしてる場合じゃないでしょうし。

「2人とも。稀少技能を使います。危ないかもしれないので離れてください」

「れあすきる?」

首を傾げるなのは。ユーノは驚きに目を見開く。

「君、今までレアスキル使ってなかったの!?」

「あれ?説明してませんでしたか?」

記憶を検索。…うん、話してないです。こいつは失敬。

「わたしのレアスキルは…そうですね。説明するより見せた方が早いです。なのは、誘導弾をセットしてください」

「あ、うん。レイジングハート」

<ディバインシューター>

なのはの回りに浮かぶ三つの誘導弾。わたしはそれに込められた魔力に呆れながら、グレイランドに命じる。

「稀少技能ON」

<了解。稀少技能『魔力変換機(マジックコンデンサー)』を起動します>

「わぁっ!?」

「ぐぅ!?」

途端、悲鳴を上げるなのはとユーノ。特にユーノは苦しそうだ。
落下しそうになったなのはの手を取って支える。

「何が変わったか、分かりますか?」

「な、なんだかアクセルフィンに違和感が…」

「ぼ、僕は身体中が締め付けられてるみたいな…」

それはそうでしょうね。わたしは、なのはが展開したディバインシューターを゙掴み取る゙

「「えぇっ!?」」

驚きの声。うん、ちょっときもちいい。

「わたしは、例えそれが他人の魔力でも、魔力をあらゆるモノに変換することが可能です。残念ながら今はこうやって物質にすることしかできません」

ちなみに、炎熱変換資質の持ち主のパーソナルデータ――髪の毛や血など――を手に入れればそのパーソナルデータの持ち主の炎熱変換資質をコピー出来たりますが。

わたしは桜色の結晶になったディバインシューターを手の内で弾ませながら説明を続ける。

「範囲は皮膚から約3メートル。硬度は込められた魔力によって変わります。そして、一度物質化した魔力を元の魔力弾に戻すことは出来ません」

ついでに言うなら、わたしが射撃魔法や砲撃魔法を使えない理由がコレです。物質化した魔力弾は推進力がないので発射出来ないのだ。稀少技能をOFFにすると、魔力が上手く集中出来ないので牽制にも使えない威力になってしまいますし。

「…ちなみに、物質化すると誘導弾の誘導性もなくなります。ですが、慣性の法則により直進だけはし続けますので当たるとメチャクチャいたいです」

なので攻撃の回避はしっかりと。ただでさえわたしのバリアジャケットは装甲が薄いのですから。

「…確かに凄いレアなスキルだけど…意味がないね」

言うなです。自覚はありますよ。ですが、ある意味凄いのですよ?アクセルフィンに違和感を感じるのも、物質化→再構成を繰り返してるからですし。敵の機動力を落とし、魔力消費を激しくさせる。チーム戦には向きませんが、多対一に強い作りなのです。

そしてなにより、わたしの開発思想にはこの稀少技能はぴったりなんです。

「ユーノ、なのは、ごめんなさい」

「「え?」」

急に謝られ、呆けるユーノとなのはに不適に笑うわたし。

「わたし、本当は近接特化の魔導師ではないんです」

笑う、嘲う。
グレイランドに念話で命じる。モードダブル。魔力刃形成。

「゙斬撃゙特化の魔導師なんです」

伸びる魔力刃。その先端から結晶化していく。わたしの今ある魔力を片っ端から注ぎ込んでいく。

通常、魔力刃を長く伸ばすことに意味はない。
長くなれば長くなるだけ、霧散する魔力が多くなるからだ。当然先端は威力が落ちる。どんなに優秀な魔導師でも、長い魔力刃なんか形成してもなまくらになってしまう。

だが、わたしは違う。

物質化した魔力は霧散しない。威力は落ちない。そして切れ味も落ちなければ重さもないから素早くかつ高威力の攻撃が可能。

これが、わたしの真骨頂。
当然非殺傷設定なんかないので模擬戦で使うなんて無理ですがね。

既に魔力刃の長さは10メートル近いだろうか。岩から直接切り出した水晶のような無骨な灰色の刃。

あまりの異様に言葉を失うユーノ。わたしはそれに苦笑しながらなのはに言う。

「道は切り開きます。とどめはなのはが」

「――うんっ!任せて!」

ん、いい返事です。
ならばわたしはわたしの仕事をすると致しましょう。

なのはの射線上から離れ、黒い森のすぐ近くの地面に降りる。木々が少しずつわたしに近付いてきた。…どうやら邪魔者として認識されているようですね。

「魔を断て閃光―――」

刃を振りかぶる。二本の水晶の剣が重なり、擦れ、きゃりきゃりと小さな音を立てる。

「セイクリッド――」

<スレイヤー>

振り下ろす。瞬間的に魔力を込め、更に刃を伸ばす。薙ぎ払う。黒い木々が紙切れのように切り飛ばされる。

たった一回の薙ぎ払い。鬱蒼と繁っていた黒い森は切り株だらけとなり、中心で眠る少年と少女が見える。本来なら、残るもう一本の剣を叩きつける技なのですが…

道は開きました。あとはわたしの出番はありません。

『今度は手加減するですよ?』

茶化してみれば、なのはにっこりと極上の笑みを返してくれた。

うん、これなら安心――

『やだ』

…はい?

『私もプロトちゃんみたいに派手に決めたいもんっ!』

そんな子供みたいな…っ!?あ、子供かっ!小学生ですもんねっ!

「ディバィィィィィィン――」

ちょっ!なんでさっきより魔力が高まって――

「バァスタァァァァァァァァァァァァッッッ!!」

あ、アホかぁぁぁぁぁぁッッッ!
被害者殺してどーするですかっ!?

そして、全てが桜色の奔流に飲み込まれて――

わたしは、被害者の二人が無事だったことを神に、ジュエルシードに感謝した。

「ありがとう、ありがとうジュエルシード…こんなになってまであの二人を守ってくれて…」

焼け焦げたジュエルシードを前に涙が溢れそうにる。非殺傷設定で焼け焦げるんですよ?ロストロギアが。生身の小学生が食らったらどうなるかなんて想像したくもないです。

「や、やりすぎた…かな?」

「「どう考えてもそうです(だよ)!」」

この娘魔法の危険性をさっぱり分かってなかった…。

「いいですかなのは。貴女は今、人を殺そうとしました。レイジングハートを人殺しの道具にしようとしました」

ようやく自分のしたことに気が付いたのか、僅かに目に恐怖を過らせるなのは。わたしは言葉を繋げる。

「魔法はお伽噺に出てくるようなファンタジーではありません。ただの力です。使い方を間違えれば、ただの暴力です」

「あ…ちが…私は…」

わたしは大きな溜め息を吐いた。似合わない、シリアスなんてわたしには合いません。

「この言葉の意味、よぅく考えてください。…返答次第では、なのはにはジュエルシード集めをやめてもらいます」

「っ!」

唇を噛み締め、うつむくなのは。なのはの肩の上から飛び降り、ユーノも続く。

「…ごめん、僕からは何も言えない。ただ、魔法は暴力でもある、けれど、それだけじゃない…。それを考えてみて」

…ユーノがわたしの肩まで駆け上がる。なのはは何も言わない。

…当然でしょうね。なのはは良くも悪くも普通の娘だったんです。それを無理矢理、戦いの中へ引き摺り込んだのはわたしたち。

いえ、むしろわたしです。

わたしが魔導師でも、人間でなくとも…なのはも魔導師なら拒否されない。わたしを否定されない。拒絶されない。そんな打算をどこかに含んでいた自分に、がっかりする。

結果なのはは無自覚に巨大な力を手に入れ…そのことにも気付かず、普通の女の子のままだった。わたしはそれにうっすらと気付きながら、黙認していた。

゙本物゙の魔導師になったなのはが、わたしを拒絶する、という可能性に気付いたから。わたしのような異端を嫌うのでは、と思ったから。

…なんとも愚かで、滑稽です。

その結果が…なのはの殺人未遂。子供だから、なんて理由では済まされない、立派な罪です。

わたしたちは、無言で家路に付く。空は真っ暗で、まるでわたしの未来のように、何も見えなかった。



―――
(作者)

街への被害
攻撃>暴走

感想返しは次回にまとめて



[16022] 不屈の心と試作品 第6話
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/02/10 12:19
…はぁ。
溜め息を吐く。もう何度目になるかもわからない。

なんであんなこと言ってしまったんでしょう。良く考えれば、あれくらいの年の子供がでかくて派手な力を手に入れたら少しくらい調子に乗るのが当然。しかもわたしがその前にでっかいの一発打ってますしね。張り合いたくなるのも当然なのに…もう少し言い方を考えればよかったです。

つまり何が言いたいのかと言うと…

…気まずいんですよ。なのはと




不屈の心と試作品
第6話




今、わたしは当てもなく放浪した後、海鳴海浜公園で休憩中です。なのははすずかの家に出掛けたので家にいても良かったですが、いつ帰ってくるかもわからないなのはに怯えるよりは、最初から別行動の方がマシです。

「はぁ…」

上手く行きませんね…。こういうとき、わたしはまだ子供だというのを実感します。何をやっても、どんなことをしても上手くいかな――カット。ネガティブ思考はよくありません。

「「はぁ…」」

…ん? 今、溜め息が重なったような…
視線をずらせば、無表情の金髪の少女。ツインテールに纏められた髪はつやつやでさらさらです。

「「…」」

見つめあい、どちらからともなく視線を逸らす。…な、なんでしょうこの空気…。凄い居心地悪いです。

…あれですか? 海鳴海浜公園には女の子と出会う電波的なモノがあるですか?なのはと初めて会ったのもここだったんですけど。

…き、気まずいです。初対面の女の子が少し離れたベンチに座っているだけで、何か話さなければと思うのは何故でしょう。

「「…」」

間ぁーがぁーもぉーたぁーなぁーいぃー…
ど、どうすればいいんでしょう。

『とりあえず話しかけてみては?』

恥ずかしいじゃないですか。却下です。っというか話かけてどうするですか。

『Let's ナンパですマスター』

久々だけどウゼー
こいつまじウゼー。

と、その時。

ぐぅうう〜…

音に振り向く。さっと顔を逸らす金髪の少女。耳まで真っ赤です。お腹押さえてますし…。無表情かと思えば、意外と表情豊かですね。

「「…」」

無言、無言ですよわたしたち。なのはとはまた違った意味で気まずい!

『とりあえずお腹減ってらっしゃるようですし、食事に誘ってみては?』

…だからどうして貴方はわたしにナンパをさせたがるですか。

『折角のフラグをみすみす逃してなるものですか。とりあえず声をかけましょうハリーハリーハリー!』

…ウッザ!
でもまぁ、お腹減らした女の子を放置、というのも男としてどうかと思いますね…。

「あの、お腹すいてるですか?」

カアアアアっと音を立てて真っ赤な顔を更に紅くする。

「す、すいてないで」

ぐぅ〜

「す…ぅう…」

…泣きそうになってるです。
溜め息を1つ、強引に手を取り、近くにあった屋台へ。「あ、あの!」うるさいです。
たい焼きですか。まぁ、アリというばアリですね。

「クリームとあんこならどっちが好きです?」

「え、え、え?」

「じゃ両方1つずつくれですよー」

焼き上がるのを待つ中、金髪少女がわたしをじっと見下ろしている。…なんだか凄い屈辱感。

「あ、あの…私、お金無いです」

「おごります」

「…私より小さな女の子に買ってもらうわけには」

…ちっとばかり聞き捨てならないんですが。

「貴女、年齢は?」

「…ぇと、8…じゃなくて、9才です」

「同い年です。そしてわたしは男です」

「「ぅええっ!?」」

うん、今日一番のリアクションをありがとう。屋台のおっちゃんまで。

「…まじですよ。何なら確認しますか?」

「いいいいいえ!いらないですっ!」

顔を真っ赤にして首をぶんぶん振る少女。動きにあわせてツインテールがぐいんぐいん揺れる。

「これで遠慮する理由はないですね」

「そう…なのかなぁ?違うような…」

「美少女は男に貢がせても心を痛めなくていーですよ。役得とでも思っていなさい」

「…それ、凄く性格悪い人だと思います…」

困ったように眉根を寄せる少女。

「ほい嬢ちゃ…んじゃねぇんだったな。坊主。熱いから火傷すんなよ」

と、タイミングよくたい焼きを差し出してくるおっちゃん。良い仕事です。代金を払い、少女の手を引いて歩き出す。うん、香ばしいいい匂い。

「あ、あの…私、人を待ってて…」

「なら持ってけです」

袋ごと押し付ける。困ったように袋とわたしを交互に見る少女。

「…待ってる間に食べればいーじゃないですか。お腹減ってるのでしょう?」

「…いただきます」

恐る恐る、といった感じでちまちまとたい焼きを頬張る「…あつっ」ああもう、おっちゃんが気を付けろと言っていたでしょうに。

「どーぞ」

「あ…ありがとう」

ペットボトルのお茶を渡す。小さな口でくぴくぴとお茶を飲む。なんかこの娘一々仕草が小動物っぽくて可愛いですね。

「…おいしい」

わずかに綻ぶ口元。うん、やっぱり可愛い。この子は絶対将来美人になりますね。今も十分美少女ですが。
「それは良かった。お気に入りのお店なのですよ」

「うん。こんなに美味しいんだもん、お気に入りになるのも分かるよ」


それっきり、再び沈黙。…やり辛いですねぇ。もう少し騒がしい…それこそなのはみたいな子だったらからかいがいがあるんですが…。
ああ、なのは。なのはです。…楽しんでいれてますかねぇ?わたしのせいで落ち込んでたりしないといーんですが…。

「…あの」

「なんですか?」

少女は眉を八の字にしてわたしを見ている。なんでしょう?

「…なんでそんなに、泣きそうなんですか?」

「―――は?」

泣きそう?わたしが?

「何を馬鹿な…」

「…」

少女は無言で、ハンカチを取り出す。…何に使えと?困惑していると、少女はわたしの頬にハンカチを当てる。水分を吸ったハンカチが湿っていく。

え?頬に触れる。ぴちゃりと水の感触。ぼんやりと歪む視界。

「…わ、わたし…泣いてますか?」

「はい」

…あ、あはは。そんな、子供みたいな…。あ、わたし子供でしたね…。

「み、見ず知らずの貴女に、慰められるなんて…」

言葉が上手く出てこない。けれど彼女はふんわりと小さく…儚く、笑う。

「私にはよく分からない。けど、がんばって」

「は、はは…」

もう笑うしかない。なのはのことを思い出しただけで号泣してしまうなんて。

少女に借りたハンカチに、わたしはただただ涙を染み込ませていく。ははっ、泣いたのなんて久々です。しかも理由が女の子だなんて…なんて情けない。

「…ぁ」

少女がぽつりと声を漏らす。視線は虚空へ。どうかしたのでしょうか。

「ごめんね。呼ばれてるから、私、行かなきゃ」

「…はい。ありがとうございました」

少女が踵を返し、走りだそうとする。わたしは衝動的に、その背中に声をかけた。

「あのっ!」

「…?」

首を傾げる少女。わたしは、声を張り上げる。

「わたし、プロトですっ!貴女は!?」

「…フェイト。フェイト・テスタロッサ」

フェイト。…名前を、口の中で転がす。ああ、凄く、似合う。綺麗な響きの名前。

「今度、ハンカチを返します!」

フェイトは少し驚いたような顔で…けれど、少しだけ微笑んでくれた。

「…うん、またね」

そう言って、わたしたちは別れた。

「…おや?」

魔力反応とロストロギア反応…。ですが、すぐ近くになのはとユーノがいますね。…顔を合わせる勇気はまだ無いですし、今会ったら泣いたのバレちゃうです。二人に任せましょう。

それにしても、なんだかフェイトと話する前の気持ちが嘘のようです。涙と一緒にネガティブ思考がどっかに流れていったのでしょうか。

「フェイトのおかげですね」

今度、会えたらもっと美味しいものをご馳走しよう。

そんな気持ちと共に、家路に付いて…



「プロトちゃん、わたしを強くして」

なんだか決意を秘めた目をしたなのはに捕まりました。

…ぇーと、すずかの家で何があったですか。

「強くならなきゃいけないと思ったの。魔法はただの力だって分かったから。それを使う私が強くならなきゃいけない。…じゃないと」

あの子のことを助けられない。小さく呟かれた言葉が耳に届く。

「…それは…」

本格的にこちらの世界に足を踏み入れるということだ。そうしたらもう、戻れない。今までみたいに片足だけ突っ込んで、あっちとこっちを行き来する訳にはいかない。

それが分かってて、言っているのですか?

「うん。…私ね。正直遊び半分だった。ユーノくんと…レイジングハートと出会って、初めて魔法に触れて…凄いと思ったの。まるで、プロトちゃんみたいだって」

実際プロトちゃん、魔導師だったし。と苦笑いするなのは。わたしは先を促す。

「お父さんの傷をあっという間に治したプロトちゃんを見て、ずっとプロトちゃんみたいになりたい。プロトちゃんの隣に立ってみたい、そう思ってた」

…だから、ですか。昨日の砲撃は。

わたしとの差を見せられて、焦って、暴走して…仕方ない、で済ましていいのかわかりませんが。

「でもね、私ね…。今日、魔導師の女の子と戦ったの」

「…ユーノの言ってた謎の魔導師、ですか」

ここに来ての登場…。裏がありそうです。

「その娘…凄い、悲しそうな目をしてた。まるで、昔のプロトちゃんみたいに」

「…わたし、ですか?」

「うん。だから、助けてあげたい。私の゙魔法゙であの娘が助けられるかは分からないけど、昔プロトちゃんが私を助けてくれたみたいに、私はあの娘を助けてあげたい」

だから、強くなりたい…。ですか。

まったく、この娘は…。

ぼりぼりと頭を掻き、思考をリセット。余計な思考はカットカット。

「分かりました。協力しましょう。ですが、その前にやらないといけないことがあります」

首を傾げるなのはに、わたしは深々と頭を下げる。慌てたなのはの声に笑みか溢れそうになる。

「言い過ぎました。ごめんなさい、なのは」

「う、うん…。わ、私も言うこと聞かなくてごめんなさい」

少し頬を紅くしながら、なのはも頭を下げる。
そして、どちらからともなく笑いだした。

もう、わたしたちの間に奇妙な気まずさはなかった。

…というわけで

「指示を無視したお仕置きですね」

「にゃっ!?そ、そのチカチカしてるグレイランドさんとノートパソコンは何なのっ!?」

「バリアジャケットの形状を一時的にグレイランド好みの物にさせていただきます」

<燃えろ俺の小宇宙ォォォォっ!!なのはさまに似合う衣装を銀河の果てから電波でお届けっ!>

「い、いやぁぁあああああっ!!お嫁にいけなくなるぅぅぅぅぅっ!」

「そしたらわたしが貰ったげますよー」

<…あああ、私が、私が、侵食されていきます。わ、わ、わ、…ワタシは真面目なデバイスを止めるぞマスタァァァアアっ!!>

「もう止めろっ!レイハさんのリソースはもう限界だよっ!」

<まだまだぁッ!ネットの海からなのはさまに似合う衣装を探しまくりますよふひゃっはーっ!>

「…ぇと、プロトちゃん、本気?」

「デバイスマイスターで食べていけますから、ミッドチルダに行けば老後まで安泰ですよー」

「そ、そうなんだ…」

「てめーら甘酸っぱい雰囲気作ってんじゃねーよっ!僕は空気かっ!?僕ヘイトかっ!?」

やっぱりシリアスよりはこっちの方が性にあいますね。

わたしは緩む口元を自覚しながら、レイジングハートの魔改造(ソフト面)に熱を上げた。

――――
(作者)

前回の話は実はどっきどきでした。
なのははこんなことしねー!的な意見があるのでは、と。
でもこのなのはは良くも悪くも『普通の良い子(黒)』なのでやっちまいました。

意外と好意的で一安心

ちなみに私の作品では非殺傷でも魔力ダメージはある→一般人食らったら無傷の死体になる設定です

感想返しですが…文字容量がまた足りません

次回、第6話(裏)で纏めて。
(裏)はなのはside。なのはの決意の理由を明かします。



[16022] 不屈の心と試作品 第6話(裏)
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/02/11 12:49
不屈の心と試作品
第6話(裏)

side:なのは

魔法はファンタジーじゃない。

使い方を変えればただの暴力

そんな言葉が頭の中をぐるぐる回る。

アリサちゃんとすずかちゃんが心配して何度も「大丈夫?」って聞いてくれたけど、私はそれに曖昧な笑みを返すことしか出来なかった。

胸元で鈍く光るレイジングハート。私はこの子で、あの二人を殺してしまうかもしれなかった。

そう考えると体が震える。恐くなる。

そもそも何で私は魔法を使えるようになったんだっけ?

ユーノくんが『助けて』って言ったから。

ちらりと猫に追い掛けられてるユーノくんを見る。頭の中に『助けてっ!助けてなのは!食べられちゃうよっ!?』って聞こえてくるけど、大丈夫。すずかちゃんのお家の猫さんはいい子だからかじられるくらいだよ。

…ううん、何か違う気がする。

そして、思い出す。



『良い子が泣いてたら、魔法使いが助けに来てくれるもんなんですよ』



寂しそうな、けど明るい笑顔。

わりと沸点が低くて、大人びてるのに子供っぽい。

凄く可愛いのに、中身は年相応の男の子みたいなところもある。

お兄ちゃんみたいに振る舞うくせに、甘えん坊で寂しがり屋な照れ屋さん。

寂しい時、ずっと側にいてくれた。

悲しい時、その胸で泣かせてくれた。

けど、今にもふらっとどこかへ消えてしまいそうなほど、不安定で儚い。

そんなプロトちゃんの目線に立ってみたくて…魔法に触れたんだ。

お父さんを救ってくれた不思議な薬、あれも魔法

私が、あの子達を傷付けそうになった砲撃、あれも魔法。

だったら私は、人を傷付ける魔法じゃなくて、誰かを救える魔法を使いたい。

私は、プロトちゃんみたいな『魔導師』になりたい。
そうしたらプロトちゃんのこと、もっと分かるかもしれない。

「…なのは?」

アリサちゃんとすずかちゃんが私を見てる。
心配かけさせちゃったかな?

「ごめんねっ!でも大丈夫!結論出たからっ!」

笑顔で答える。二人は顔を見合せ、肩をすくめて笑いあう。

「ったく、友達甲斐がないわねー。勝手に一人で悩んで勝手に結論出しちゃって」

「少しくらい相談してくれても良かったのに」

「にゃはは、ごめんねー。プロトちゃんの秘密に関わることだったから…」

プロトちゃんの名前を出した途端、二人の目がキラキラ輝く。…え?なに?私なにか言ったかな?

「…その秘密って?」

「実はプロトちゃん、女の子だったりとか?」

「いやいやどっかの誰かさんと付き合って…みたいなじゃないの?」

「あー、とある喫茶店の末娘さんとお付き合いしてる…とか?」

「にゃっ!?」

な、なんでそうなるのかなっ!?

「ち、違うよーっ!私とプロトちゃん、そういう関係じゃないってばーっ!」

あわてて否定するが、逆に二人のにやにやは加速する。なんでぇ!?

『なのはっ!ジュエルシードの反応!』

ナイスジュエルシード。逃げる理由をありがとう。

『ユーノくん、先に行って!私が逃げたユーノくんを追い掛けるから!』

『わかった!』

ユーノくんが走り出す。私は白々しいなぁと思いながら二人に声をかける。

「ゆ、ユーノくんっ!ごめん二人ともっ!私捕まえてくる!」

「あっ、こら待てーっ!白状してけぇー!」

後ろからアリサちゃんの声が聞こえるけど、ジュエルシードがリアルにピンチだから無視してもしょうがないよね。私は悪くないもん。

『なのはっ!こっち!』

前を行くユーノくんを追い掛ける。…意外に近い?最近理解出来るようになったばかりの魔力の流れを感じる。

そして、すずかちゃんのお屋敷の裏庭の林、そこで暢気にアクビする大きな子猫と出会った。

…いや意味わからないけど本当なの。

「…願いは大きくなりたい、ってとこかな?」

「大きすぎるよ…」

こんなに大きかったらユーノくんどころか私も一口でペロリだよ…。

「とりあえず、いつものように魔力を霧散させよう」

「うん。…レイジングハート、セットアップ!」

<了解。バリアジャケット展開>

バリアジャケットが展開される。…そういえば、プロトちゃんに叱られてからなんとなくずっと日本語使ってもらってるけど、レイジングハートはそれでいいのかな…?今度それとなく聞いてみよう。

「じゃあ行くよ!」

プログラムを起動。魔力を通す。展開される魔法陣。使う魔法はもちろん…

「ディバィィィィィン…」

魔力が膨れ上がり、きゅいんきゅいんと音を立てる。私はレイジングハートをしっかりと固定し、ジュエルシード暴走体――猫さんに砲口を向ける。

「バス」

魔力を解放しようてした瞬間、それは頭に響いた。

『ごめんね』

知らない声。念話?誰?「危ないなのは!」展開される緑の魔法陣。ユーノくんの防御魔法。驚きでディバインバスターがキャンセルされる。何?

『フォトンランサー』

<マルチショット>

『ファイアっ!』

視界の端に写ったのは金色の弾丸。緑の魔法陣の上で弾かれたけれど、当たったら…凄く、痛いと思う。

…魔法は暴力でもある。

少しは分かったつもりだったのに、それでも、恐くなる。

恐怖を振り払って視線を向ければ、黒い影が猫さんに向かって何かを振りかぶっているところだった。


金色の魔力刃がデバイスから伸び、猫さんを一閃する。悲鳴をあげる間もなく猫さんは気絶し、その子はデバイスを飛び出てきたジュエルシードに向けた。

『ジュエルシード、シリアルXⅡ。封印』

デバイスに吸い込まれて消えるジュエルシード。

そしてその娘は…私へ、振り向いた。

ほとんど感情が見えない、能面みたいな顔。

けれどその瞳だけは寂しそうで…

私は、あの子と目の前の女の子を重ねてしまう。

「あ、あなた誰?いきなり攻撃してくるなんて危ないよ!」

『…ジュエルシードを渡して』

頭に響いてくる声に唇を噛む。もうっ!なんでこんなことに!?

「…ところでなのは。僕は凄く、気になることがある」

「…なにかな?ユーノくん」

…空気読んでね?

「…何故あの魔導師は口元にあんこを付けているんだ」

「…ユーノくん」

「うん?」

「…少し頭、冷そうか」

<ディバインシューター>

空気読んでって言ったよね?ほらあの子も顔真っ赤にしちゃったじゃない!バリアジャケットのマントで慌てて口元拭いてるし!

「ぐはぁっ!?」

ユーノくんに防御魔法を使わせる間もなく着弾する誘導弾。空気を読まなかった罰だよ!

『…と、とにかく、ジュエルシードを渡してください』

まだ顔が紅いけど、出来るだけ元の空気に戻そうとしてるあの子の努力が涙ぐましい。

「…ところでなんでさっきからずっと念話なんだい?」

女の子と一緒にいた大きな犬さんが不思議そうに聞く。…あの犬さんもユーノくんみたいに空気読めないのかな?頭冷やしてあげないとだめかな?

『…急いでたい焼き食べたら、口の中やけどしちゃって…』

…答えないでよー!
緊迫感が台無しだよー!しかもたい焼き食べてたの!?戦いの直前に!?

『こほんっ。…ジュエルシードを渡してくれないなら…奪い取る!』

<サイスフォーム>

デバイスから金色の魔力刃が伸びる。

っ…!レイジングハートっ!

<プロテクション>

展開された桜色のバリアと金色の魔力刃が激しくぶつかり合い、閃光を散らす。…速い!それにプロトちゃんより魔力刃が強い…!

『フォトンランサー』

<マルチショット>

『ファイア!』

この距離からっ!?

「っう!?」

誘導弾が背後から着弾。全方位防御だったから大丈夫だったけど、均衡が崩れる。あっさりとプロテクションが魔力刃に押し負け、弾き飛ばされる。

「なのはっ!チェーンバインド!」

弾き飛ばされ、木にぶつかる瞬間にユーノくんのチェーンバインドが私の体を固定する。…危なかった。あのスピードで木にぶつかったら…と思うとぞっとしない。

『…戦う気がないなら、大人しくしていてください』

「ま、待って!なんで!?なんでジュエルシードを集めてるの!?」

冷たく言い捨てるあの子を、そのままにしておけなくて…気が付けば、声を出していた。

『…話しても意味はない』

それに、と言葉が続く。

『戦う覚悟も出来てない人に、話す必要はない』

――見抜かれてる。
私が、人に魔法の力をぶつけることに躊躇しているのを。

「…その割りにはツッコミに使うけどね」

ユーノくん、空気読もうか。今真面目なシーンだから、また頭冷やされたい?

『ジュエルシードからはもう手を引いてください。傷付きたくないのなら。傷付けたくないのなら』

そう言い残し、その子は飛び立って行った。

…何も出来なかった。

追い掛けることも、戦うことも、話をすることすら出来なかった。

…でも、どうしてもあの子の瞳が気になった。

それに、最初の誘導弾の時に聞こえた言葉。

『ごめんね』

もしかしたら、あの子も戦いたくなんてないのかもしれない。

希望的な観測かもしれないけれど、私は、あの子のことを信じてみたい。

お話、してみたい。

だったら、戦ってみせる。

あの子の言う通り、戦う覚悟を決めてみせる。

あの子の言ってたこと、逆手に取れば 戦う覚悟を決めた人とならお話してくれるってことだもんねっ!

「よしっ!」

そうと決まればうじうじしてるのもうおしまいっ!

とにかくあの子に力ずくでもお話聞いてもらえるよう、強くならなきゃ!

「高町なのは、全力全開でがんばりますっ!」

ユーノくんが驚いたように私を見ていたけど、気にしない!

…なんだか凄く、プロトちゃんに会いたくなっちゃったな。

私は、上機嫌ですずかちゃんのお屋敷に戻る。

魔法は、私にとってはただの力。

でも、この力で人を助けてみせる。

まずは特に、プロトちゃんと同じ瞳のあの子を助けてみせるのっ!


―――――
(作者)

レイハさん、3日ほど正気に戻らずURYYYYY(レイハさん的な黒歴史)


べ、別にスペルが分からないからデバイスに日本語使わせてるわけじゃないんだから!


…きめぇww


宣言通り感想返しを!

>東方の使者さま
>白兎さま
お気に召したら嬉しいです。だけどあんまり悩みません。鬱展開になったら僕が凹んで書けなくなっちまいますので(苦笑)
これで成長できるかなー?
PS>白兎さま
小学生でそれはデンジャラスです。stsまで耐えてください


>PONさま
ご安心を、女装を全面に出せるのは無印だけのようですガッデム(ぇ)

そして展開はずっと疑問だったので
小学生ならきっと撃つ。理由がなくともぶっぱなす。それが普通の小学生…の、はず

ちなみにフェイトは魔力には気付いたものの、プロトは一般人にもたまにいるくらいの魔力(独自設定。B-ってどれくらい?)しかないため見逃しました。プロトはうっかり。


>takさま
>レンさま
>葉月さま
>A0192さま
一般人なら死ぬ。それでいいジャマイカ(ォイ)
わざわざ考えてくださってありがとうございました。
あんま設定詳しく考えずに適当に書いてるツケが回ってきましたね( ̄▽ ̄;)




PS>葉月さま+PONさま

フェイト餌付け。それは俺のジャスティス。
プロトフラグが立ちました。フェイトに




>PPさま
多分そのお爺ちゃん私の親友です(待て)
たまにはこんな色物主人公でもいいジャマイカ
一気読みお疲れさま&ありがとうございました。




>ルーさま
三日後に部屋の隅っこで落ち込むレイハさん。
真っ青になってたそうです(カラーリング的な意味で)



>Nagyさま

読んでいただいてありがとうございました
へこたれません。多分。完結させるまでは。完結させたいなぁ



[16022] 不屈の心と試作品 第7話(上) 修正
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/02/15 12:14
長かった4月が終わり、5月になりました。

色んな出会いを経て、少しだけ大人になったなのは。

決意を固め、戦う意思を固めたなのはのことを、わたしは守りきれるのか少し心配だけど

わたしは死力を尽くして、がんばろうと思う。




不屈の心と試作品。
第7話。(上)

はじまるです。…あれ?作文?




「…で、温泉ですか」

5月の連休を利用した高町家、月村家合同の温泉旅行(金髪ツンデレ娘付き)です。
車の中、恭也の隣でぼそっと呟いた言葉に、うん?と恭也は首を傾げた。

「どうしたプロト。元気がないな」

「…恭也と一緒にお風呂に入るなんて…と思ったら元気もなくなるです」

「…どういう意味だそれは」

憮然とした恭也ににっこり笑顔で言う。

「中学生やら見た目幼い女の子やら節操なしにフラグ立てる恭也と一緒にお風呂なんて入ったら攻略可能キャラと思われそうじゃないですか」

「…晶もレンもただの友人だ」

苦い顔で言うなですこの一級フラグ建築士が。

「というかなぜあっちの車に乗らなかったんだ?てっきり子供組と一緒にだと思ったが」

「たまには男だけの空間がいいですよー。やっぱり女の子ばっかの空間じゃ羽根が伸ばせません」

ちなみに編成はわたしは忍を加えた高町家の車と、なのはアリサすずかの小学生トリオに美由紀を加えた月村家の車。わたしはなのはの誘いを断ってこっちに乗ったのですよ。

「…そのセリフ、お前が言うとすごい違和感だな」

『見た目美少女ですからね。あ、美幼女か』

黙れですグレイランド。

「しかし温泉ですか…。初体験です」

「毎年誘っても来なかったのはお前だろうが」

「ですから恭也と」

「天丼はいらん」

詳しいですね恭也。

「忍、プレーヤー借りますよー」

「ん〜?はい、どうぞ」

鞄からMP3プレーヤーを借り、イヤホンを耳に填めて目を閉じる。折角ですから、眠らせてもらうといたしましょう。

「…ところで恭也。さっきの話、どういう意味なの?」

「!?た、多分お前は誤解してるぞっ!」

「ならなんでプロトちゃん、恭也と一緒に温泉ってだけであんなに嫌がったのかな?」

「俺が知るか!」

「…温泉、付いたら話があるから」

「…了解した」

なんだかケンカが始まったようですが、夫婦喧嘩は犬も食わないといいますし、放っておきましょう。


…で、目が覚めたら温泉到着、と。

気が付けば部屋に一人。どうやら士郎か恭也が運んでくれたようですね。

『グレイランド、皆は?』

『さっそく温泉に入るそうです。ユーノさんもなのはさんに連行されました。マスターも温泉に行きましょう』

…こいつの考えてることが手に取るように分かるようになった自分が嫌です。誰がサービスシーンなんてやりますか。

『ところでマスター。先程この近くで探査魔法が行使されました。とりあえず報告はしたので温泉へ。温泉入ってから術者を探しに行きましょう』

『却下。今すぐ行きます』

『えー…』

デバイスが思いっきり不満そうな声を出すなです。

『魔力パターンは?』

『未登録パターンです。恐らく敵対している魔導師でしょう』

何故温泉に?いや、探査魔法を使ったというところから推測するに…この近くにジュエルシードが…いやいやそんな都合が良いわけないですよね。

とりあえず、敵対魔導師にはまだわたしの存在はバレていないはず。奇襲をかけることも可能、と。

『グレイランド。探査魔法…いや、サーチャーを飛ばしてください。ちゃんと偽装するですよ?で、敵対魔導師の位置を確認…あとついでにジュエルシードがあるかどうか確認するです』

『了解』

鳥に偽装したサーチャーを飛ばす。操作はグレイランドに任せましょう。…そういえば敵対魔導師は隠蔽結界を張らずに魔法を使ったのですね…。
なのは相手なら勝てるという油断か、それとも…経験不足か。しまった、なのはから敵対魔導師の特徴を聞いておくんでした。

いや、今からでもいいですね。

『なのは、ユーノ』

『あれ?起きたのプロトちゃん』

『君も温泉来たら?いいお湯だよー』

一緒に入ってるですか。この温泉宿、心広いです。ペットおーけーの温泉なんてあまりないですよ。

『それは後で、です。敵対魔導師の特徴を教えてください』

しばし考えてるような沈黙。そして

『『なんかえちぃ格好だった』の』

…それはそれは

『他には?』

『『金髪でバリアジャケットがえっちだった』の』

…なんというか、手に負えねー。

『……年は、どれくらいでした?』

『『なのは(私)と同じくらいなのに、凄くえろい格好だった』の』

…親はどんな教育をしたんでしょう。一度文句を言ってあげないとです。

『………とりあえず、理解はしました。散歩してから温泉行くので、のぼせるまで待ってたりしないように』

『『はぁ〜い』』

というかなのはともかく、桃子が女湯にいるなら温泉なんて行けません。無理矢理女湯に連れ込まれかねませんからね。流石に9才の少年は色々ギリギリです。アリサはともかくすずかが気にしそうですし。

『さて、行きますかグレイランド』

『ああ…温泉…大事な所は必ず隠す高性能な湯気、覗きする男性に見せつけるように必ず立ち上がる女性たち、そしてなにより湯上がりで色っぽいマスターが見れると期待してたのに…』

…バカですかバカですねこのデバイス。一回ぷち殺した方が良いかもしれません。ぷち殺しってなんだって?ぷちっと殺すことDEATHよ?

『どーでも良いですがグレイランド。現実を見ろです』

『なんて身も蓋もない。私は、夢を諦めません』

…温泉入るときはこいつ置いていこう。うん、どうせ転移魔法でいつの間にか戻ってくるでしょうし。

「さ、そうと決まれば行きますか」

『サーチャーを破壊されました。気付かれたようです。最後の位置は北西400メートル地点に大きな魔力反応が2つ、北東250メートル地点にジュエルシードの可能性がある物体を1つ発見』

…なんというご都合主義でしょう。たまたまやって来た温泉宿のすぐ近くにジュエルシードがあるなんて…。

「グレイランド、セットアップ。幻術を」

<了解。ミストレス発動>

体から大量の魔力が抜けていく。認識をずらし、肉眼で姿を捕らえられなくなる幻術…ミストレスは魔力消費が激しいのです。特に稀少技能OFFにした状態だと制御が大変ですし。その分【相手に認識されない】というでっかいアドバンテージがありますが。…もっともこれを制御しながら戦闘なんて不可能ですが。

どうせ姿は見られませんし、旅館の窓から直接現場に向かって飛ぶ。…向かうべきはジュエルシードですね。出来れば敵対魔導師を潰しておきたいのですが、どうもなのはが気になってるようですし…わたしがしゃしゃり出て怒られるなんてゴメンですね。
敵対魔導師についてはなのはと相談しながらにしましょう。

今はジュエルシードです。

数分も飛べば目的地についた。周りは木々ばっかりですね。その真ん中にぽつりと転がるジュエルシード。恐らく願いを持つ意識体も生物もいなかったお陰で発動しなかったのでしょう。

…さて問題です。

魔力ランクの低いわたしはどうやってこれを封印すればいいのでしょう。

<無理ですね>

「ですよねー」

仕方ないのでなのはに渡して封印してもらいましょう。…とりあえずグレイランドで拾い上げる。ハサミ型ってこーゆう時便利ですねー。

「……そ……から!」

「……ても……ない」

うん?聞き覚えのある声ですね。

声の方に向かえば、目を疑う光景が広がっていた。

なのはが、臨戦態勢で怒鳴っていた。

あの日、公園で会った金髪の少女…フェイトに。

「…は、はは」

まったく、まったくまったく。

あり得ない。どんな展開ですかコレは。

海鳴海浜公園は魔法少女量産公園ですか?増えましたよ、魔法少女。

にしても…フェイトのバリアジャケット、確かにえっちです。

思わず頬か紅くなる。

真っ昼間から結界も張らずにあんな格好して…。恥ずかしくないんですかね?それともアレですか?フェイトも羞恥心麻痺してる娘ですか?

…じゃなくてっ!

<マスター。フェイトさんの魔力パターン、先程の探査魔法と一致します。ついでに言うならサーチャーを破壊した魔力パターンとも>

確定。フェイトが敵対魔導師です。

「…あれ?大きな魔力反応は2つあるのでは…?」

疑問は一瞬。背後から聞こえた叫び声に霧散される。

「大変だよ!ジュエルシードが消えちまった!」

「え、ええ!?」

困惑するフェイトの隣まで飛んでいく、犬の耳が生えた巨乳のおねーさん。ユーノが喜びそうですね。大艦巨砲主義ですからねあいつ。

「ど、どういうこと!?」

「分からないよ!さっきまで上から見えてたのに、ついさっき消えちまったのさ」

…ちらりとグレイランドに挟まれたジュエルシードに目をやる。…えーと、普通にありますよー、目に見えてないだけで。魔力の流れをじっくり確認されたら一発でバレるです。

…しかし失策ですねぇ。まさか相手に使い魔がいるなんて…。なのははともかく、ユーノはちゃんと報告するですよ。後でお仕置きです。
こんなことにならここに来る間に魔力探査するなり、捕縛魔法を待機させてておくなりするべきでした。グレイランドは一度に使える魔法があまり多くないのが弱点ですねぇ。

<というか普通は幻術と飛行魔法を同時発動なんてしません>

ごもっとも。幻術は動きながら使うもんじゃないですよね。飛行魔法だけでもギリギリなのに

「な、なんだか良く分からないけど…、ジュエルシードがないなら丁度いいよ!私としっかりお話しよう!?」

「…さっきから言ってる。話しても意味はない。話すこともない」

「そんなことない!話してくれなきゃ分かりあえないもん!」

青春ですねぇ。でもなのは?話をしようと言ってるのにレイジングハートがシューティングモードで砲口がフェイトに向いてるのはどうかと思いますよ?

『…ト、プロト!?』

にぁ!?い、いきなり大音量で念話はやめるですよっ!この声はユーノですね。なんでしょうか?

『なんですかっ!やかましいですね』

『君は今どこにいるんだっ!?なのはと敵の魔導師が戦う寸前だよ!』

わたしの目の前でねー。

『あー、すぐ向かいます。っというか向かってます。いざとなったら奇襲をかけますのでご心配なく』

『…分かった。任せる』

念話が途切れる。というかユーノ、一体どこにいるですか?あ、なのはのバリアジャケット内から顔出した。…巨乳の犬耳おねーさんを睨んでますね。獣対決ですか?

<よろしいので?>

「…わたしじゃなく、なのはの出番でしょう?なのはが自分でフェイトを助けたい、とかなんとか言ってましたし」

それになにより、その為の力は与えました。

さて、なのはの力、見せてもらうですよ。




――――――――
(作者)

その頃桃子×士郎、忍×恭也いちゃつき中

余り者は落ち込み中。特に美由紀



>パウルさま
おお、わたしの英語力が役に立つことがあるとは。
1を付けられた生徒はこの時代貴重だと思う


>葉月さま
ふぇいとはじゃすてぃすです。ギャグでも萌えます。もうなんでも良いです。ふぇいとかわいいよふぇいと

>PONさま
わたしの作品はギャグ8シリアス1シュール1を目標に作られています。
…あるぇー?シリアス多いよー?
で、今からなのはWiki読んできます(待て


>られるさま
ご指摘感謝です。
期待に添えるようがんばります。



…ってか、この作品チラ裏脱出してもやってけますかね?

どうなんでしょう?



[16022] 不屈の心と試作品 第7話(下)
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/02/15 12:16
不屈の心と試作品
第7話。(下)




2人が動く、という瞬間。巨乳のおねーさんが強制転移魔法と封時結界を発動する。運良く範囲内にいたわたしも一緒に転移。…バレないか心配でしたが、戦いの方に集中してるおかげで気付いてないですね。助かったです。

舞台は橋の上へ。世界は色を変え、今この時だけこの場は世界から切り離される。

「話し合うだけじゃ…言葉を交わすだけじゃ何も変わらない。伝わらない」

<サイスフォーム>

デバイスを変形させ、鎌のような魔力刃を発生させなのはに切りかかるフェイト。早い。

直撃する瞬間、なのはは真上に向かって飛び上がる。

「でも!だからって!」

なのはは誘導弾を3つ展開。言ってることとやってることが違うのは仕様です。どんな状態でも戦えるように鍛えたのですから。

「賭けて。あなたの持ってるジュエルシード」

「…分かった!いいよ!その代わり、私が勝ったらお話聞いてもらうから!」

「それはイヤ」

「ずるい!というかひどいよ!?」

言いながらも金色の誘導弾を3つ展開するフェイト。なのはが放ったディバインシューターは空中で撃ち落とされる。…フェイトの方が戦闘慣れしてますね。正規の戦闘訓練を受けているようです。

「バルディッシュ!」

<ブリッツアクション>

フェイトの姿が消える。デバイスの形から考えるに、高機動の接近戦を得意としてる魔導師だったんですね。ただし、わたしと違って誘導弾などの中遠距離技も使える、と。

厄介ですね。わたしとの相性はいいですけど。

<マスター?助けに入らなくて良いので?>

「…ぶっちゃけフェイトには恩がありますし、戦いたくないです」

それに何より、なのはなら…いや、何考えてるんですかね。わたしは【ナニ】に期待しているのやら。

「そもそもわたしは主役張れるキャラじゃありませんしね」

<そうですね。裏方は裏方として結果を出しましょう>

と、そんな話をしていたらなのはが押されてますね。

「っぅ〜!!レイジングハート!」

<ディバインシューター>

誘導弾を展開し、三方向から攻撃を仕掛けるなのは。だけど、フェイトは空を飛べる。たった3つの誘導弾じゃ封殺なんて出来ません。高速移動魔法――ブリッツアクションでしたか?――を使い、離脱。そして、動きが止まっているなのはに向けて雷の誘導弾――フォトンランサー、でしたね――を射出する。防御はなんとか間に合っているものの、その度に何度も足を止めるなのは。

「…ちっ」

やはり、わたしとの訓練では遠距離攻撃への対策が出来ませんか。…経験の差が出ましたね。

「もう怒ったよ!起死回生のディバイィィィィィン――」

あ、それは悪手です。

<マスター、危険です>

「にゃっ!?」

背後から迫っていた誘導弾をギリギリで避ける。だが、避けたところに魔力刃の斬撃が迫る。慌ててプロテクションを発動したけれど、何を思ったのか近距離で誘導弾を爆発させる。うわぁ…痛そう。

「…考えたね」

フェイトがぼそっと呟く。フェイトも爆発の余波をくらい、少しだけ表情を歪めている。

「ま、前と同じ終わり方なんて嫌だもん!」

叫ぶなのは。ですが自分の攻撃でぼろぼろです。…ユーノは何してるのですか。なのはには傷1つ付けないという約束したですのに…。あ、犬耳おねーさんと戦ってましたか。防戦一方ですが。

「…でも、これで終わらせる」

フェイトがデバイスを振りかぶる。…やばい、必殺の構え、ですか。

「こっちだって…!」

なのはがレイジングハートを構える。…だから砲撃は隙が大きいですよ…。しかも撃ち合う気満々ですか…。これだから子供は…。

「グレイランド、ソニックライド待機(セット)」

<了解>

いつでも飛び出せるように準備だけしておく。幻術解除。魔力刃形成。強化、稀少技能ON。

「バルディッシュ、行くよ。撃ち抜け剛雷…サンダー…!」

<スマッシャー>

なっ!?砲撃まで使えるですかっ!?なんていう万能型…。やっぱり相手にしたくないですね。

「ディバイィィィィィン――」

目の前まで迫る金色の雷鳴に、りんっ…と軽やかな音と共に展開される魔法陣。

「バスタァァァアアアアアアッッッ!!!」

吹き出る魔力。桜色の奔流が金色の雷流と一瞬拮抗する。…あ、やばいです。

「アーク…」

砲撃魔法は囮ですよー。既にその場にフェイトの姿はなく、なのはの真上にいる。なのはは気付いてないですね…。アレは不味いです。ソニックライドを発動。射線上へ割り込む。

「セイバーっ!」

「えっ!?」

声に気付き、ようやく上を向くなのは。…これは鍛え直してあげなければ。

回転する魔力刃を飛ばす攻撃。それを稀少技能で物質化させ、全力で砕く。ばぎぃん!と金属音を響かせて砕け散るフェイトの魔力刃。

「「…え?」」

なのはとフェイトの声が重なる。まぁ、急に割り込んできた謎の人物っていったら驚きですよね。

まぁ、それはともかく。

「なのは、貴女の負けです。…なので」

グレイランドに挟んでいたジュエルシードをフェイトに向けて投げ渡す。慌ててそれをデバイスで封印するフェイト。

「それはあげますよ」

「ぇ、えっと…」

ん?なんでしょうか。

「…魔導師…だったの?」

「はい。っつーわけなので、これから何度か戦うことになると思います。…なので」

懐からハンカチを取り出す。フェイトの元まで飛んでいくと、少し警戒されたけれど…なんとか、ハンカチを返せた。

「これはお返しします。ありがとうございました」

「…ぁ、うん」

どこか遠い目でわたしを見るフェイト。そこに、なのはが加わる。わたしのすぐ隣まで飛んできて、口を開く。

「…今回は負けちゃったけど、次は負けないよ」

「…」

フェイトは答えない。困惑したような目でわたしとなのはを交互に見る。

「仲間なんです。…でもまあ、なのははともかくわたしは貴女と戦うつもりはありませんよ」

「「え?」」

なのはとフェイト、2人の視線がわたしを貫く。

「わたしは恩人に刃を向けるつもりはありませんよ。それに、どうせなのはは一対一で決着着けたいのでしょう?」

「う、うんっ!…っていうかプロトちゃん、聞きたいことが…」

なのはの言葉を無視してフェイトに向き直る。

「っというわけなのでわたしはノータッチで行きます。それでは」

「え、あ…うん。それじゃあ」

手を振りながらフェイトと別れ――ぐぇっ!?

「な、なのはっ!?」

一体何するですか!?いきなり襟元掴むだなんて何を考えて「プロトちゃん」…へ?

「あとでちょっと…お話があるから」

「…YES、sir」

な、なんでそんなに怒ってるですか!?わたしよりもフェイトでしょう!なんか色々話したいことがあったんじゃないんですか!?

するとなのはは片手でわたしを猫かなにかのように持ったまま、フェイトへと向き直る。…ほら、フェイトが驚いてるじゃないですか…。

「…私、高町なのは。あなたは?」

「…フェイト。フェイト・テスタロッサ」

…敵に素直に名前を教えるとは…。いえ、なのはにとって彼女はもう敵ではないのですね。

「ん、ならフェイトちゃん。フェイトちゃんは何でジュエルシードを集めてるの?」

「教える必要がない」

取り付く島もない、というかなんというか。無表情で淡々と話すフェイトに笑顔を引き吊らせるなのは。

「なら今度は私が勝って教えてもらうから!」

「あなたじゃ私に勝てない。…プロトなら、分からないけれど」

ちらり、と向いた視線には刺々しい警戒心。

…わたしはそれに感動した。

「ですよね!変な力を持つ敵かもしれない相手には警戒するのが普通ですよね!」

「ぇ、ぇ〜と…」

フェイトが困ったように眉尻を下げてなのはを見る。なのはは苦笑いして肩を竦めた。なんですかその反応は。

「最近わたしの中の常識が壊れかけてて!高町家とか士郎とか桃子とかなのはのせいで!「私も!?」ったりめーですよ!昔は無警戒にわたしにべたべた懐いてくるあなたにどれだけ頭を悩ませたことか!もうちょっと他人を疑いなさい!今は肉親だって子供を見捨てる時代で」

「そんなことないっ!」

――突然のフェイトの怒鳴り声に、わたしの口が止まる。フェイトは自分で自分が怒鳴ったことに愕然としたのか、目を見開いて口元を触っている。

「…フェ、フェイトちゃん…?」

「っ!」

何故か顔を真っ青にしながら、フェイトは凄いスピードで飛んでいく。少し遅れて転移魔法の発動を感知。…どうやら巨乳のおねーさんも逃げたようですね。

「なのは!無事だった!?」

と、そこへフェレットが飛んでくる。…役立たずですねまじでこいつ。

「うん、大丈夫だよユーノくん。ユーノくんこそ大丈夫だった?」

「防御だけならね。…力任せに突っ込んでくるだけだったからプロトよりよっぽど楽だったし」

失礼な。誤解されそうなことを言わないでほしいです。

「…さて、皆揃ったところで」

ぞくり、と背筋が震える。何故ですか?目の前にいるのはなのはなのに…なのはだと思えない。気のせいか周囲の温度が二、三度下がった気がします。

「お話…しようか、プロトちゃん…?」

凄まじい恐怖に、わたしの唇が勝手に言葉を紡ぐ。

「あ、悪魔です…」

「悪魔でいいよ…。…悪魔らしいやり方で、お話聞かせてもらうから」

あたしのセリフを取るんじゃねぇー!ってか早いだろっ!恐怖のあまり幻聴が…聞こえます。聞こえたような気がします。

とりあえず、フェイトと出会った時のことを説明。何故か「何で私に言わないの」とか「もう少し自覚を持って」とか「天然もいい加減にして」とか説教されながら宿に帰った。

…そして宴会に巻き込まれ、結局わたしは温泉に入れなかった。

少し、残念です。

…にしてもフェイトのあの反応…気になりますね。

少し、根深いかもしれませんね。警戒が必要です。


―――――――――
(作者)

フェイト温泉入れなくてorz

皆さん暖かくも厳しい意見ありがとうございました。

チラ裏脱出を目標に入れ、これから少しずつ精進していこうと思います。

自信が着いたら脱出するよっ!(何故?)

以下個別返信

>PONさま。
スピードだけが私の取り柄(苦笑)
誉められててれりこてれりこ。
努力します


>葉月さま
エロが嫌いな男子なんていませんっ!!


>おにぎりさま
ほのぼのが正義です。基本ギャグですからっ!
ってかプロトTS…面白いっすね。よし、書くっす(ォィ
応援感謝です。
リンク切れ修正しました。

>Nagyさま

…深い。感動したっ!

というか確かに私の作品勢いだけですね。ギャグだし。



皆さんの温かい言葉を胸に頑張ります


…また中学英語間違えたorz



[16022] 不屈の心と試作品 第8話(上)
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/02/16 12:30
というわけで特訓です

「どういう訳なの!?」

うるさいですフェイトに勝てるようにしてほしいと言ったのはなのはでしょうに。ぶっちゃけ、なのは運動神経なさすぎ。トロすぎ。遅すぎ

「酷すぎるの!乙女のハートは壊れやすいんだからもっとオブラートに包んでほしいの!」

…なのはは壊滅的に運動が苦手さんで、足もちょっと他人より凄く遅くて、色々なところがぞうさんみたいに鈍いのです

「…ごめんなさい。普通にしていいです」

分かればよろしい。で、解決策ですが

「ですが?」

相手が早いなら、自分はそれより速くなれば良いのです

「…分かりやすいけど、無理だよ」

いえいえ、こーゆう術式があってですねぇ――




不屈の心と試作品。
第8話。(上)




さてさて、温泉から帰ってきてしばらくたち、ジュエルシードは見つけやすいところにあるのは大概見つけた感じですねぇ。

わたしは翠屋でお仕事中。今日は執事服の日。

「プロトちゃーん、レジおねがーい」

「はーい、今行くですよー」

ぱたぱたと足音を鳴らしながら精算。お釣りを渡してにっこり笑顔。「また来るですよー」。ほらほら次は注文取ってー、ああ忙しい。

「執事ちゃーん、こっち向いてー」

「ヤですよ。忙しいんだから静かにしてろです」

べー、と舌を出す。身悶えするお姉さまたち。ってかOLども仕事サボって何してるのですか。

「こらプロトちゃん、お客様に失礼なこと言わないの」

そんなことしてたら桃子に注意されてしまい。違うのですよ。悪いのはアイツらです

「桃子、あいつら客じゃないのです。友達です」

「でもダメ。あとお母さんって呼ぶこと」

理不尽です。美由紀もおねえちゃんを強要してきますし。呼び方を変えなくていいと言ったのは恭也くらいですよ。

閑話休題、ケーキセットを運ぶ。おばさんの集まりに運ぶと、頭を撫でられました。

「こんなにちっちゃいのにお家の手伝いして偉いわねー」

「お金のためです」

「あらあら」

くすくすと小さく笑うおばさん。…なんなんですか、一体。

「すいませーん、注文お願いしまーす」

「今行くですよー」

トレーを片手にぱたぱた走り回る。にしても忙しい。なんなんでしょう、この忙しさは。

[…ほら、あれがあのチアガールの…][男の子?女の子?][女の子だろ][だが男の子でもアリな][ちっ、店内撮影禁止だよ][…いや、良く見ろ。メニューの中に『店員の写真:要予約制』って書いてある][買うっきゃねぇな!]

…。
……。
………駄目だ日本。早くなんとかしないと…!

いやわたしごときが日本を変えるなんて無理ですけどね。

それはともかく、次は3番テーブルに――

「プロト、休憩してきていいよ」

にこやかな笑顔の士郎の言葉。思わず憮然として睨んでしまう。

「…なに言ってんですか。メチャクチャ忙しいのに」
反眼で睨み付けると士郎は困ったように笑う。

「なぁに、プロトが手伝ってくれるようになるまでは二人でやってたんだ。大丈夫だよ。それより朝から手伝ってもらってるんだ、疲れただろう?」

…いや、わたしの体力が並じゃないのは知ってるでしょうに。

でもまぁ、休ませてくれるんならお言葉に甘えて――

『マスター、ロストロギアっていうかジュエルシードの反応です』

…くれないんですねー。ったく、タイミング良すぎです。うぜー

『なのはさんとユーノさんはもう向かっているようです。恐らくはフェイトさんも』

『ですよねー』

あ、でもだったら――

「士郎、休憩ついでになんですが…」

「ん、どうかしたのか?」
首を傾げる士郎に笑みを浮かべて言う。少し気恥ずかしいですが、たまには良いでしょう。

「友達と会うので、シュークリームを5つくださいな」








シュークリームの箱を抱え、ゆるゆると空を飛ぶ。…しかしおかしいですね。なのはとフェイトが向かっているのに、一向にジュエルシードが封印される気配がありません。二人に何かあったのですかね?いや、見習いとはいえ魔導師であるなのはやフェイトに何かあるわけないですよねー。

『プロト!なのはとフェイトが戦ってる!今どこにいるの!?』

頭に響くユーノの声。うるさいですー。

『あと1分もかかりませんよ。というか何をそんなに焦ってるですか?』

『…一対一で戦うってなのはが聞かなくて…せめて君がいればアドバイスくらいは、と思ったんだけど…』

…成る程。封印そっちのけどガチンコバトル始めた、と。

…あれほど。
……あれっほど。
………あれっほど!!

優先順位を間違えるな、と言ったんですがね…。

『…ユーノ』

『はいっ!?え、なにちょっとプロト雰囲気がおかしいよ!?』

くすくす笑う。なにをそんなにおどろいているのですか?

『10秒でいきます。…逃げないよう、見張っててください』

『〜っっっ!なのはっ!逃げてーっ!!』

念話を強制遮断。うふふふ、なのはさん、その首洗って待っててくださいね?

「グレイランド」

<ラジャー。ソニックライドを使用します>

あらあらどうしたんですかグレイランド。いつものようにボケても構いませんよ?なんでそんなに機械的な返答なんですか?

「…殺すKILL!」

<稀少技能OFF。加減はしてあげてくださいマスター>

宣言通り10秒で到着。びくりと体を震わせるユーノと、胡散臭そうにわたしを見た巨乳おねーさんの顔が真っ青に染まる。

「…なのはと、フェイトは?」

無言で上を指差す2人。そこには桃色の魔力光と金色の魔力光が縦横無尽に暴れまわっています。

「ジュエルシードは?」

「あそこに…」

ユーノが指差す先には光を放つジュエルシード。…本当に封印もなにもしていないのですね。

「…ユーノ、あれ封印出来ますか?」

「ちょっと待ちな!あれはあのおちびさんとフェイトが戦って勝った方が封印するって決めてんだ!勝手なことするんじゃないよ!」

…めんどうくさいルールです。じゃんけんで決めたらいいのに…。

「いいですよ。わたしはジュエルシードとか戦闘のために来た訳じゃなく、なのはを叱りに来たのですから」

くつくつと小さく笑う。…何故そんな恐ろしいものを見る目でわたしを見るですか。

「…一応伝えておくけど、発動寸前だからかなりジュエルシードは不安定になってる。僕の魔力程度じゃ分の悪い賭けになるし、何よりレイジングハートがないと難しいよ」

…むぅ、ならば魔力物質化で魔力を…。いや、そんなことすれば物質化した魔力でジュエルシードが閉じ込められちゃいますね。さながら虫入り琥珀みたいになってしまいます。それでは封印すら出来なくなるでしょう。…一応他にも方法はありますが、痛いの嫌なので却下。

仕方ない、今はなのはに任せておきますか…。

そうと決まれば戦いの観戦といきますか。

「ユーノ、巨乳のおねーさん。シュークリーム食べますか?」

「あ、うん貰う」

「巨乳て…あたしゃアルフだよ。とりあえずおくれ」

シュークリームを食べながら上空で繰り広げられる激闘を観戦。ふむふむ、なのはに教えたあの魔法、なんとか使いこなせているようで。

その名もフラッシュムーヴ。ソニックライドと比べるとスピードは少し落ちますが、操作も制御も楽な魔法です。ソニックライドのスピードだと壁や地面に突っ込みそうな運動音痴ななのはでも、直線移動のみなら使用できる素敵魔法。

接近されてはフラッシュムーヴ。距離を取って誘導弾、という戦法を繰り返しているおかげか、なんとか勝負の形式を保ててます。フェイトも遠距離技を持っているとはいえ、本領は近接なのでしょう。決め手にかける形です。

「撃ち抜け剛雷――サンダー…」

<スマッシャー>

焦れたフェイトが砲撃魔法を放つ。だが、なのはは撃たず、代わりにフラッシュムーヴを発動。砲撃のすぐ下をくぐり抜け、フェイトに肉薄する。

「この距離からなら…!」

展開される桜色の魔方陣。…決まりましたか?

「…させないっ!」

<サイスフォーム>

慌てて魔力刃を形成し、なのはにデバイスを振りかぶるフェイト。

「ディバィィィィン――」

だが、既になのははトリガーを引くだけでフェイトを墜とせる。それは破れかぶれの特攻でしか…。

「うぁ!?」「きゃあ!?」

っ!?
バカですかなのは!?何故レイジングハートでフェイトのデバイスを受け止め――









一瞬意識を失っていた。思考が止まる。吹き荒れる魔力流に吹き飛ばされる。どうにか体勢を整えるも、吹き荒れる魔力のせいで不安定にふらふらとした飛行になる。

「っぅ―――…なにがっ!?」

「ジュエルシードが2人の魔力に吊られて暴走した!…不味い!次元震が発生しかけてる!」

なぁっ…!?最悪です!

「なのはっ!撤退!フェイトを連れて逃げるです!」

次元震なんつー厄介なもんが何故!?ジュエルシードはアホな形で願いを叶えるだけのロストロギアじゃ無かったんですか!?

「あ、待ってフェイトちゃん!」

なのはの声に視線を移す。ば、バカですっ!大量の魔力を放出し、次元震すら発生させているジュエルシードに向かっていくフェイト。

「なんでそこまで―――!?」

ジュエルシードを集めようとするのですか!

疑問は放置し、フェイトの元へ…もとい、ジュエルシードに向かってわたしも飛ぶ。

「止まって…!お願い止まって…!」

ジュエルシードを抱き締めるように、両手で包んで祈りを捧げるかのように言うフェイトに、わたしの頭の中でナニカが切れた。

「この――」

すぐ目の前で拳を握り、振り上げる。それでもわたしを目に映すことすらないフェイトに怒りが吹き出る。

「馬鹿が!死にたいのですか!?」

怒鳴り、フェイトを殴り飛ばす。

「あぐ…!?」

予想もしなかっただろう突然の衝撃に、吹き飛ぶフェイト。それを尻目に、わたしはジュエルシードを左手に握り込んだ。吹き出る魔力に左手が吹き飛びそうになる。熱い、手のひらが焼けるように痛い。




でも、ここでわたしがやらなければフェイトはもっと無茶をする。






「グレイランドッ!」

<マジックコンデンサー起動。ジュエルシードの魔力を物質化。…痛いですよ>

覚悟の上です!

左手が凍りつく。吹き出る魔力が次々と結晶化していく。だが、魔力量が多すぎて一瞬じゃ物質化させられない。左手は魔力に焼かれ、焦がされ、感覚が無くなっていく。

表面が物質化しただけでは中で吹き荒れる魔力は変わらない。肉が、皮が、焦げた何かが魔力に吹かれ、剥がされていく。

『プロトちゃん!?なにやってるの!?』

頭の中でなのはの声が響く。だが、それに答えている余裕がない。魔力が完全に物質化したのを確認し、わたしは叫ぶ。

「ブレイクッ!」

<バースト>

瞬間的に魔力を流し、内圧を高める。どんっ!と花火のような音を立てて弾け飛ぶ魔力結晶。破片が次々と全身に突き刺さり、灰色のバリアジャケットを朱に染める。


そして…五指を失っだ手だったもの゙と、その上で輝く魔力を四散させた青い宝石だけが残った。




第8話(下)に続く

―――――――
(作者)

ほのぼの系から一気にこんなことに…書いたプロットの暗さに改めてドン引き。自分に
だがようやくプロトが本格的に動いてくれて満足。


とりあえず実験的に書き方を少しだけ変えてみた。この調子で少しずつ変えていこうと思う。

でもってこれから個別感想返信ではなく、まとめて返そうと思います。

・フェイトの性格
盲目的過ぎる、と思ったのです。助言者/アルフもいますし、今、フェイトは時の庭園の外にいます。普通の親子関係を見て、【母さんは何故私に冷たいの?】と思わなきゃおかしい、と思ったのでこの作品では少し人間味を出しました。
賛否両論は覚悟の上。

・会話文
ノリのいいボケ突っ込みのために妥協。いいんだ、趣味だから

チラ裏脱出を目指して精進

プロトくん。女の子を全力で殴った件。



[16022] 不屈の心と試作品 第8話(下)
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/02/18 12:21
「あんた!よくもフェイ…トを…」

アルフが駆けてきましたが、わたしの左手を見て絶句する。ちっ、と舌打ちし、わたしは地面に降りる。

「…フェイト」

フェイトの前に立つ。後ろになのはの気配を感じたので、背後から左手が見えないように隠す。…あまり、子供に見せていい代物ではありません。

けれど、フェイトには見せる。

もしかしたら、お前の手がこうなっていたのかもしれないんだぞ。という見せしめに。

「…ほら、手を出しなさい。欲しかったのでしょう?ジュエルシード」

焼け焦げ、今も鮮血を滴らせる左手を差し出す。フェイトを言葉を失ったまま、真っ青な顔で…手を出す。表面が焼け、真っ赤になった手を。

…本当に、何故ここまでして

「…なぜ、そこまで」

「…え?」

声に出てしまっていたらしい。首を振り、血塗れのジュエルシードをその手に乗せる。…わたしの血を、わざとフェイトの手にかけるようにして。

「…お願いだから、わたしの前で死に急ぐような真似はしないでください」

「わ、私は…」

絶句し、動揺しながらフェイトは首を振る。

「フェイトが何を考えてるのかなんてわたしには分かりません。フェイトがなんのためにそこまでしてジュエルシードを集めているのかもわかりません。…でも、それでもわたしは」

貴方が…フェイトが傷付くところなんて、見たくない。

それはなのはも一緒だ。

もしかしたら今回のジュエルシードの暴走は誰かが死んでいたかもしれなかった。

魔法戦闘なら、ダメージは食らう、とてつもなく痛い、だけど【死なない】。だから【大丈夫】。だからなのはもこちら側にいてくれる。そんな風に自分に言い訳してきたツケが回ってきた。

今回は運が良かった。わたしが壊れる前に次元震の発生は食い止められたし、魔力を霧散させることもできた。

だが、もう一度同じことが出来るかと聞かれれば分からない。

…わたしのミスですね。ジュエルシードは腐ってもロストロギアだということを失念してました。まさか次元震を発生させられるほどの物だなんて夢にも思いませんでしたし。

「…ジュエルシードから、手を引きなさい。アレが特一級危険物だということはよく分かったでしょう」

「だ、ダメ…。だって、アレがないと母さんが…」

母さん…?

と、その時。

「このぉ!!」

左からの衝撃。防御が出来なかったせいでもろに直撃する。「プロトちゃんっ!?」心配する暇があったら構えるですよなのは。

「アルフっ!?」

「逃げるよフェイト!あんなヤツの話を聞く必要なんてない!悩む必要なんてないんだ!」

「で、でもプロトが…」

視界の端に、アルフに手を引かれて飛んでいくフェイトが映り、体がゴロゴロと転がっていく。なのはが慌ててレイジングハートを構えるが、顔をわたしの方に向けていては意味がないです。

逃げられた…。いえ、逃がした、の間違いでしょうか。

倒れたまま、左手を体の下敷きにしてグレイランドに指示を出す。

「グレイランド、バリアジャケット変化形成」

<了解>

左手を被う籠手を作る。…三日も密封して置けば治るでしょうか。流石に指が全部ぶっ飛んだのは初めてなので分かりませんね。

…一度研究所に戻って生体ポッドで調整出来れば、二時間程度で回復できるんですがね。…もっともあの施設がまだ生きてるのか激しく疑問ですが。

「ぷ、プロトちゃん大丈夫!?」

結局追撃よりわたしを優先したなのはが駆け寄ってくる。…ったく、心配性なことです。

「大丈夫ですよ。ダメージはないです」

左手をひらひらと振って見せる。それでようやく安堵したのか、ほっと一息付くなのは。…尋常じゃないほど痛いですが、男の子は泣いちゃいけないらしいですよ。

「…そんな格好で何を言ってるのかなプロトちゃんは」

あ、あれ?さっきまで心配してただけだったのに、なんでそんな怒ってるのですか?

「血塗れでダメージないとか明らかに嘘でしょー!ちょっと脱いで見せて!酷いようなら病院行かなきゃ!」

ちょ、脱がすなですよなのは!バリアジャケットを貫いて体に刺さったままだった魔力結晶の破片が一斉に抜ける。ぐぁ!血が吹き出る吹き出る吹きます!

「ひ、ひどい…!すぐに病院行かなきゃ!」

「回復魔法使いますって…ほら」

灰色の魔力が全身を覆い、痛みが徐々に引いていく。普通ならかすり傷を治せる程度の魔法ですが、わたしの場合は違います。魔法生物との相乗作用で遥かに強力な回復魔法になるのです。

貫通創がみるみる内に塞がっていく。血液がごぼりごぼりと穴から吹き出る。筋繊維の一本一本が繋がり、真新しいピンクの筋肉へと変わり、その上を白い皮膚が覆う。…見ようによってはというかどう考えてもグロテスクな光景にドン引きするなのは。

…ですが、さすがに骨ごと再生しなきゃいけない左手は致命的ですね。魔力がどんどん持ってかれてます。

…まぁそれはともかく。

「…なのは。寒いです」

5月のまだ肌寒い季節に服を剥かれるのは厳しいものがあります。
バリアジャケットのお陰で本当に寒いわけじゃありませんが、なんかこう…精神的にキツイものが。

「…へ?あああごごごめん!」

慌てて距離を取るなのは。はぁ…、助かるといえば助かりますけど、シリアスになれないのは少し困りますね。

「なのは。少し、真面目な話をしましょうか」

結界を解除する。わたしはバリアジャケットを解くわけにもいきませんが、なのはには解除させる。魔法少女と一緒に街を歩くなんて無理ですよ。わたし?血塗れの灰衣(灰色の白衣)ですがナニカ?なのはが気にしなきゃいいのです。

「なのは。ジュエルシードから手を引きなさい」

「な、なんで!?いきなりどうしたの!?」

慌てるなのはの目を真っ直ぐに見る。…今回ばかりは、なぁなぁで済ませるわけにはいきませんからね。

「今回のことで、ジュエルシード探索には命の危険があることが分かりました。これから先は【わたしたち】の出番です」

「で、でも今までは私が…!」

「状況が変わりました。命懸けの戦いに【一般人】を巻き込むわけにはいきません」

息を呑むなのは。…ちらりとその胸元を見ると、赤い宝玉には深いヒビが入っている。…うん、これならもうセットアップは出来ないでしょう。

「さようなら、です。なのは」

「ちょ、ちょっと待ってよプロトちゃん!それじゃまるでお別れみたいな…」

みたいな、ではなく。お別れなのです。

ぎしり、と胸の内で何かが軋む。

「…言ったでしょう。わたしたちのことに巻き込むわけにはいかない、と」

「そ、そんな!そうだ、ジュエルシードはおっきい魔力がないと封印出来ないんでしょ!?だったら私は…」

「手はいくらでもあります。実際に今、目の前でやって見せたでしょう」

ブレイクバースト…。魔力で作った射撃魔法や砲撃魔法を破裂させる、本来であればそれだけの技。だが、物質化した魔力を破裂させれば、手榴弾の如く破片を飛ばすことができる。…もう質量兵器と変わりませんね。当然非殺傷設定も術者の安全も考慮されませんが…威力は、魔力を込めれば込めるほど強くなる。

今まではなのはと共に封印してたから使う必要はありませんでしたが、これを使えば魔力を一度霧散させることで、魔力量が少ないわたしでも封印可能なくらいジュエルシードを弱まらせることが可能でしょう。

「…というわけですから、なのは。貴女はもう必要ありません」

…痛い、妙に心臓の辺りが痛い。魔力を使い過ぎてリンカーコアがダメージを受けているのでしょうか。

「用済みです。もう家にも行きません。士郎たちによろしく言っておいてください」

背を向け、歩き出す。…何故でしょう。妙に体が重い…。足が、動かしづらい。

「ま…待ってよプロトちゃん!」

肩に手がかかる。その温かさに、何故か視界が滲む。…分からない。振り向けない。今、振り向いたらこのまま行けなくなる気がする。

「なんで!?なんでそんなこと言うの!?私何か失敗した!?どうしてそんな悲しいこと言うの!?」

…血が足らない。だからでしょう。頭が全く動かないのは。

「貴女はよくやりました。ですが、ここで終わりです。…日常に帰りなさい」

ジュエルシードのことは、ほんの短い間の夢として。

わたしのことは、忘れてください。

「ダメだよそんなの!」

「…チェーンバインド」

バインドを発動。驚き、動きを止めるなのは。その片足にチェーンを巻き付ける。…これでしばらくは時間が稼げるでしょう。デバイスが使えないなのはじゃそのバインドを壊すのに苦労するでしょうし。

「ま、待ってよ!お願いプロトちゃんっ!行っちゃやだよ!」

…聞かない。聞こえない。
耳も心も閉ざしてただ一心不乱に足を動かす。

「プロトちゃん!どこ行くの!?なんで行っちゃうの!?待ってよ!お願いだから行かないで!」

…気絶し、転がっていたユーノを拾い、背後に投げる。「うぁ!?」衝撃に目を覚ましたユーノに向けて告げる。

「ジュエルシードはわたしが全て集めます。…残り全て集めたら渡しに来ます。それでは、さようなら」

わたしは背後に向かって言い捨てると、飛び立つ。後ろからなのはの叫びが聞こえます。…その度に軋む身体。…早急な回復と休息が必要です。

…まずは左手の回復。そして隠れ家の探索。高町家の誰かに見つかったら連れ戻されかねないですし、少し離れたところに隠蔽結界を張っておくべきでしょう。

わたしは方針を決めると、頭の中を全てジュエルシードの捜索に向ける。

…そうでもしなければ、わたしは何か大変なことをしてしまいそうだったから。

「…巻き込まない。守り通す。…そんなことを言いながらも、これですか」

さすが失敗作。何も出来ませんね。

<マスター…>

自嘲に笑うわたしを、ずっと視線が追っていた。

…それが胸元のグレイランドのものなのか、既に米粒のように小さくなった少女のものなのかは分からなかった。




―――――――
(作者)

…まさかの展開にorz

書いてる間にプロトが勝手に動いていく…

最初のプロットとプロトの性格が違うせいでしょうか…。本来ならこの回はわりとさらっと行く予定だったのに…。

プロット書き直さなきゃ…

完結ハッピーエンド目標にがんばります


・プロト高町家入り
第3話〜第4話の間ですね

ちなみにこんな感じで決まった。
『ふぁいあー、あいすすとーむ、らいあんけーと、ばえよんばえよん』
「ぐぁあああ!?馬鹿な!?このタイミングでだとぉ!?」
「弱い、弱いのですよ士郎。サタンに勝ってから出直してくるですっ!」
『ふぃーばぁー!!』
「…プロトちゃん、ジュエルシード暴走したって。早く行こう?」
「…う?ちょ、ちょっと待つですよなのは。通信対戦だとポーズが出来な…」
「いーくーよー」
「あ、あぁぁ〜…わたしの連鎖〜…」
「…」
「…不戦勝で私の勝ちだな。うん。恭也、神速ダッシュ」
「…まぁ、いいがな。行ってくる」
これによりプロト→弄られキャラに。


・落ち込みフラグ
あって困ることはない。
皆落ち込め!ヘタレろ!
幼女の泣き顔に萌える人はきっと多いはず


・フェイトの性格改変
本編を待て


・妙な面白さ/プロトに萌えた件
あなたはもう引き返せない
男の娘に溺れて溺死しろ


・プロト肉塊
それはきっとBADEND
ミニゲームに失敗したのですね



…修正考えておきます



[16022] 不屈の心と試作品 第9話
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/02/19 12:27
不屈の心と試作品
第9話




side:なのは

「ちょっと…あんたどうしたの?」

バスに乗り込んだ瞬間、驚いたような顔でアリサちゃんが言う。すずかちゃんも心配そうな顔で私を見ていた。

「ん…大丈夫。なんでもないの」

言って、笑ってみせる。ちゃんと笑えていたのか不安だった。

そしたら案の定、アリサちゃんが怒った顔をする。私、やっぱり笑えてなかったのかな。

「んな大丈夫じゃありませんって顔してなに言ってんのよ。話せないようなことなの?」

相変わらず、アリサちゃんは鋭いなぁ。苦笑いが浮かんでしまう。

「ん…ちょっとね」

「プロトちゃんのこと?」

作った笑顔が軋む音がした。私はすずかちゃんにも笑う。

「…違うよ?なんで?」

「…なのはちゃんがそんなになるなんて、プロトちゃん関係しかないじゃない」

苦笑いするような雰囲気。茶化しているようだけど、それの言葉には確信があって…私は、気が付いたら言葉をこぼしていた。

「プロトちゃんがお家、出ていっちゃったの」

「…理由は?」

難しい顔でアリサちゃんは聞いてくる。誤魔化すために笑みを浮かべる。

「…話せない」

はぁ、と大きなため息。

「…で?それだけじゃないんでしょ?」

「…私のせいなの。プロトちゃんが出ていったの」

「…何があったの?」

「…話せない」

視界が滲んでいく。スカートを握り締めた手が真っ白になってる。

「…あと、友達…ううん、友達になりたい子と、お話も出来ない。それに、プロトちゃんに危ないことに首を突っ込むな…って」

自分で言っててよく分からない。
なんとか魔法のことはぼやかせるだけの理性が残っているのに安堵しつつも、勝手に喋る口にどうにかなってほしい思う。

「…ま、正論だわね。あいつの事だからなのはをその危ないこととやらから遠ざけつつ、自分で解決しようとしてるんでしょ?…はぁ、バカな子よねぇ…」

「私が…もっとちゃんとヤれてたら、危なくないくらい上手く出来てたら、プロトちゃん…家を出ていく、なんて言わなかったのかな…」

思い出すのは、昨日の家族の表情。

プロトちゃんがどこかに行ってしまった。もう帰らないと言っていた。そう告げたとき

怒っているような、悲しそうな、それでいて後悔しているような

そんな、見たこともない表情をしていた。

もしかしたら、皆はいつかこんな日が来るのを分かっていたんじゃないだろうか。

私だけがプロトちゃんのことを理解出来ていなかったんじゃないだろうかと不安になる。

だから私は――

「てりゃ」

「あたっ!?」

すずかちゃんにでこぴんされる、…え?すずかちゃんに?アリサちゃんじゃなくて?

「おりゃっ」

「にゃっ!?」

ちょ、チョップ!?しかも鋭い角度で綺麗に入ったよ!?

「うじうじ考えんじゃないわよ。ネガ思考に囚われがちなのはあんたの悪い癖よ」

「うん、元気ななのはちゃんのほうが、私は好きだな」

二人は得意気に笑う。…え?え?どういうこと?

「悩んでも意味ないでしょうが。あんたはあんたのやりたいことをやりなさい。んで、強情っぱりのアイツをひっぱたいて連れてきたらいいじゃない」

「プロトちゃん、頑固だから自分から帰ってくるとは思えないよ。がんばって、なのはちゃん」

にっこり笑う二人。

自分の、やりたいことをやる…。

ジュエルシードを集めたい。ユーノくんの手助けをしたい。

もっとフェイトちゃんとお話したい。友達になりたい。

…それに







プロトちゃんと、ずっと一緒にいたい







「ちょっとはいい顔になったじゃない」

「それでいいんだよ、なのはちゃん」

…ありがとう。2人とも

「――うんっ!私、がんばる!やりたいこと、貫いてみせるよ!」

――これが後の【管理局の白い悪魔】【真魔王】【絶対王者】【っていうかあの人まじえげつない。どんな魔法でも防壁突破できないんですけど】と言われる少女を産み出すことになるとは、その時の二人には思いもよらなかった。


side out






side フェイト


頭から離れない。

焼け焦げた手が、指が無くなった黒焦げのソレが。

朱に染まったバリアジャケットが。

そしてなにより、私を射抜く悲しげな瞳が。

私を庇って傷付いた少年の言葉が、頭の中でぐるぐると回る。

『どうしてそんなに――』

母さんのため。

母さんの欲しがっているジュエルシードを集めるためだった。

…でも、それで誰かを傷付けるなんて嫌だった。

誰だって痛い思いはしたくないと思う。悲しい思いはしたくないと思う。

だから、誰にも迷惑をかけないように頑張った。

手の中で光る、3つのジュエルシード。

内2つは、あの少年に譲ってもらったようなものだ。
初めて会った時…理由は分からないけど、泣きそうだった。


次に出会った時は敵だったけど…笑いかけてくれた。

…そして、私のせいで傷付いた。

痛い、胸が痛い。

出来ることなら謝りたい。でも、私にはそんな資格はない。

面と向かって謝ることが出来ないから、せめて心の中で呟く。

ごめんなさい。ごめんなさい。痛かったね。私のせいだよね。ごめんなさい。

「フェイト…。手、包帯替えなきゃ」

どこか申し訳なさそうに言うアルフに、私は身体をベットから起こした。…そういえば、私もケガしていたんだ。忘れていた。

アルフにされるがまま、包帯を解く。…全然痛くないから忘れてたけど、それなりに酷い傷だった気がする。

「「…え?」」

包帯が解かれると、そこには傷一つ無かった。ただ、白い真新しい皮膚に包まれた小さな手がある。

「フェイト、回復魔法使えたのかい?」

「…使えないよ」

ならば、何故?分からない。

「ま、まぁ傷が無いのはいいことさっ!フェイト、何か食べる?」

「ううん、いらない」

もう一度ベットに倒れこむ。しばらくアルフが何か言いたげに私を見ていたけれど、それに何か返す余裕は無かった。

…でも、どんなことがあっても私は止まるわけにはいかない。

母さんのために、ジュエルシードを集めなきゃ。

…それが全て終わったら、あの少年…プロトに謝りに行こう。許してもらえないだろうけれど、それでも構わない。


――心に残るしこりに気付かず、少女は微睡みの中に落ちていく。





side out






side プロト




―――何も考えたくない。

全思考カット。






久々に野宿したせいで身体中が痛いです。場所は毎度お馴染み海鳴海浜公園。ここ野宿しやすいんですよ、まじで。

「うぁー…」

痛い、激烈に痛い。体っていうか左手が痛い。でもバリアジャケット解いたらグロテスクなことになってるだろうから解除できない。痛いっていうか熱くて痒い。

「グレイランド…修復状況確認」

<骨と重要な血管、最低限必要な筋繊維のみです。炭化した肉片まるっと剥がしました>

…こわっ

こりゃ3日じゃ足りないかもしれませんね…。寝ますか。寝れば回復早くなります。

結界は…別にいりませんよね。今真っ昼間ですし、万が一にも高町家の誰かに会わなくて済むでしょう。今は少しでも魔力を温存して回復に努めたいです。

「寝ます。永久に」

<…構いませんが、接近警報。距離400>

「…突っ込まないですか」

なんだか高町家と別れてからグレイランドが冷たいです…。

「むぅー、面倒です…」

身体を起こし、顔を上げ…なんだか前にもこんなことが会ったような…

「「…」」

車椅子に乗った少女とこんにちわー。

『ちなみに距離はcm』

…天丼、ですか…。そのネタは三回までですよー。っていうかわたしに何か恨みでもあるですか?最近はアナタも楽しんでたじゃないですかグレイランド。

「う、海鳴海浜公園は…魔の土地です…」

「いきなりなんなんっ!?」

おぉ、いい突っ込み。口調からして関西人ですか。

「…わたしがここに来ると80%の確率で知らない女の子に会うですよ」

「…それは…難儀な主人公体質やね」

哀れみの目ですか。

「…あれ?っちゅうことは私も攻略されてまうん?いやーん照れるわー。病院帰りのかるぅい散歩でフラグ立てられるやなんてー」

「寝言は寝てから言え貧乳」

「貧乳ちゃうわ!9歳なんやからしゃあないやん!ちゃんと未来あるっちゅーねん!」

…何故ですかなー?そんな未来があるとは思えませんよー?

「…で、こないなとこで何してるん?」

「自分探しの旅を」

「中二厨乙!ってなにやらせんねん!」

…なんというテンポのいい突っ込み。さすが漫才のサラブレッド関西人。

「なんか関西人にすっごい偏見もたれとる気がする…。一応言うとくけどおじょーちゃん、私はちっさいころ関西に住んでて、海鳴に引っ越してきただけやから厳密には関西人ちゃうで」

「パチモンですか」

「誰がパチモンやーっ!」

怒ってるのに楽しそうな少女。…何なんですかね?やたら嬉しそうですけど。

「はー、久々に良いボケやったわ。友達おらんから新鮮やわー」

「悲しいことをさらっと言いますね。ちなみにわたしも友達いません。片手で数えられる程度です」

「なら友達になろっ!」

「いやですっ!」

「可愛い笑顔で断られたー!?しかも爽やかに!なんでなんっ!?」

「旅の途中です。…わたしに関わると、爪が一年で20センチ伸びるようになります」

「地味にこわっ!?どんな奇妙な冒険やねん!」

「ちなみにわたしは男なのでおじょーちゃんとは違うです」

「今日一番のびっくり発言なんやけど!?ってか訂正遅っ!!」

はいはい、その反応にも慣れましたよ。

「では、サラダバー」

「…最後までボケるんやね。私は、八神はやて。もし旅の途中でまた会えたら今度こそ友達になってやー」

「…気が向いたら、ですね」

まぁ有り得ませんが。ジュエルシードの件を片付けたら他の次元世界に行くつもりですし。

「では。わたしはプロトです。忘れなさい」

いつまでもにこやかに手を振り続ける車椅子の少女を微笑ましく思いながら、わたしは手の中でグレイランドを握り潰しにかかる。

「…弁明は?」

『これであの娘が魔法少女だったら海鳴海浜公園は魔窟に決定ですよね』

わたしもそう思って内心ひやひやでしたよ。こっそり解析魔法使ってまで。…幸い魔力もほぼない一般人でしたので安心でしたが。

…まぁ、それはともかく。

「飛んでけバカヤロおーーーーーーーーー!!」

『私はこの位では挫けんぞぉおーーー!!』

…真性のバカですね。

ああ、それにしても…わたし、なにやってんですかね。

何か考えなきゃいけないことがあったような気がしたのですが。





side out

――――――――
(作者)

プロト。グレイランドを投げたせいでバリアジャケット解除。痛みに悶絶



・暴走フラグ
YES、なのはさんにはフラストレーション溜めてもらってます。エンディングのために。
プロトのセリフも勿論このため。原作よかマシですがそれでもなのはにゃ大ダメージ。この怒りとやるせなさと乙女の心の痛みをパワーに変えてもらいます。


・アルフ
憎まれ役です
でも好きだよアルフ。フェイトのために頑張ってるよ。
ごめんね、アルフ


・ピップロ(フュージョンプロト×ピッコロ)

出来ます。
出来ますが、魔力が枯渇するので出来ません。
魔力消費がハンパないの


・リアルつまんね
オレモダヨ
二次元ニ転生シタイヨ
スグ死ニソウダケド


!プロトの女装の件
番外編書くまで時間かかりそうなので軽く。

プロトは男女の違いがよく分かってません。
知識として男の服、女の服、っていうのは分かっているので恥ずかしがりはしますが、感情がそれに付いてきていません。
場合によっては全裸でも構わない子です。
成長過程に問題があるためですが、桃子の洗脳により余計に性差の壁が薄いです



今回のサブタイは、『それぞれの気持ち』



[16022] 不屈の心と試作品 第10話(上)
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/02/22 14:51
魔法生物のお陰で左手が治った



自動修復機能のお陰でレイジングハート/バルディッシュが直った



万が一にも大事な人たちを傷付けない為に。



何があろうと自分の意思を貫くために。



例えそれが犯罪でも大事な母親の願いのために。



わたしは



私は



私は



ジュエルシードを集めよう。





不屈の心と試作品
第10話




…来ましたね。
遠くでジュエルシードの発動する気配。

「セットアップ」

バリアジャケットを展開。左手の動きはまだ鈍いので籠手はそのままに。再生したてで上手く動かせないのです。リハビリが必要ですね。

「行きますよ」

<西南に500mです。…フェイトさんの魔力を感知。近くになのはさんとユーノさんの反応もあります>

「…?」

おかしいですね。あそこまで壊れてたらセットアップなんて…。あっ

「自動修復機能搭載デバイスだったですか…?」

さすが【魔導師の杖】レイジングハート。普及デバイスより高級品なんですね…。しかしだとしたら迂闊。自動修復機能を壊しておくのでした。

「…ま、今からでも遅くないですね」

背中からグレイランドを抜く。じゃきん、と刃が鳴る。うん、今日のわたしはヤル気満々。手加減するつもりはさっぱりありません。

やってることは悪役ですねぇ。と苦笑い。飛行魔法を発動してジュエルシードの暴走体の魔力を感じる方向に飛ぶ。

「む」

遠くで桜色と金色の魔力光が明滅している。出遅れたです。

「…ま、関係ないですが」

とりあえずなのはを不意討ちで眠らせ、レイジングハートを壊して二度とジュエルシードに関われないようにする、多少の怪我は許容範囲。命を落とすよりマシですよねー
フェイトは適当にフルボッコにして、ジュエルシードを諦めさせる。

この方針で行くとしましょう。

「グレイランド、魔力刃強化形成。…一撃で決めます」

<殺すつもりですか?強化は必要ありませんよ>

そうですか?なのはの防壁破るには必要だと思ったのですが。

近付いてみれば、前回と同じように全力で戦っている白黒魔導師二人の姿。足下でユーノとアルフが戦っている。…前回の失敗から何も学んでませんね。戦う前に封印しろです。

「…?」

っというか、おかしい。フェイトの動きが鈍い、鈍すぎる。得意のスピードは精彩さに欠け、攻撃には迷いが見える。対してなのはは積極的に誘導弾を放ち牽制→一撃必殺の砲撃、というパターンを繰り返している。フェイトは砲撃を辛くも避けるですが、その度に残っていた誘導弾を体のどこかにかすらせている。

…怪我が完治していないのでしょうか。でしたら無理するなです。

「…まぁ、いいです」

フェイトしか見えてないなのはでしたら奇襲は簡単、わたしはグレイランドを握り直し、その持ち手を開く。がぱっ、と口を開く巨大ハサミ。








…ここでボケれと声が聞こえた気がしたです






「…ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ…」

<マスター?>

グレイランドが「あんた何やってんの?」って目(?)で見てますが無視。

「ウィィィィタァァァァッッ!!」

突然の叫び声に驚き、こちらを見るなのは。グレイランドを構えてソニックライド。一気に距離を詰める。

「ぷ、プロトちゃ」<プロテクション>

「ヘル!」

何か言おうとしたなのは。レイジングハートが自動で張った防壁をグレイランドで挟む。鋏ってのは恐ろしいことに、刃の鋭さに関係なく対象を切断出来るのですよ。

「あぁんど!」

力を込めると、ばきりとプロテクションにヒビが入る。目を見開くなのはに構わず、ヒビの入った防壁に―――

「ヘヴンっ!!」

拳を、叩きつけた。
ばきぃん…と澄んだ音を立てて砕け散る防壁。驚き呆然としていたなのはの体に蹴りを――

「フォトンランサー!」

っと、動作を切り替えて脱出。防壁を失ったなのはの体をかすり、フォトンランサーは虚空に消えていく。ていうか奇襲失敗。

「…ちっ」

「プロトちゃんっ!?なんで私に攻撃したのっ!?」

なのはが戸惑いを浮かべて私に問う。…やはりなのははこちら側に来ていい存在じゃありませんね。攻撃してきた【敵】に武器を構えないなんて…優しすぎます。

「プロト…」

フェイトはフェイトで、デバイスこそ構えているものの戦意がまったくない。どちらかというとアレは、わたしの身を案じているような目だ。これではまともに戦えないでしょう。

「わたしの邪魔をするなら…恥ずかしい過去を軒並み叫びます。なのはの」

駅前で。大声で。全力で。

「な、ななな何言ってるの!?プロトちゃんわたしのこと嫌いだったの!?」

「あ、わたしツンデレなので好きな子には意地悪しなきゃいけないんです。物語的に」

「意味分からないしツンデレはアリサちゃんだけで十分だよ!?」




いつも通りだった。





わたし自身呆れるほどにいつも通りのやり取りです。わたしが、なのはと別れてから、まったく変わってません。

その事に頬が緩むのを感じながら、わたしはグレイランドをがちょんがちょん開閉させて二人の魔法少女に向き直る。

「もう首を突っ込むな、と、ジュエルシードを諦めろ、ともわたしは忠告しました。それでもこの場にいるということは…」

ばちん、と刃を閉じ、鋭い切っ先を2人へと向ける。…生意気にもにらみ返してくるなのは。いじめますよ。

「お仕置きをしてほしい、ということですか」

「「っ!?」」

言い終わると同時にソニックライドを発動。一瞬遅れてそれぞれフラッシュムーヴとブリッツアクションを発動させる二人。だが、甘い。

「チェーンバインド」

チェーンバインドを無数に伸ばす。空中で絡み合い、網目状になったバインド。。フェイトはギリギリかわしましたが、高速移動にまだ慣れていないなのははまだ直線の移動しかできない。あっさり捕獲し、全身を鎖でぐるぐる巻きにする。

「なのは巻き一丁上がりです!」

「な、なにそれぇ!?」

抗議の声を上げるなのは。黙っておきなさい、舌噛みたくないなら。

「防壁張っとかないと危ないですよ」

「へ?」

きょとん、とするなのはに構わず、わたしはチェーンバインドでぐるぐる巻きになったなのはをぐるんぐるん゙振り回ず。ジャイアントなスイング風に

「えぇえええ〜っ!?」

「必殺!なのハンマー!」

断末魔(?)の悲鳴をあげるなのはをそのままフェイトに叩き付ける。<プロテクション>よし、ないすですレイジングハート。これで威力アップです。

「…くっ」

<ディフェンサー>

逃げ切れないと悟ったのか、反転して防壁を張る。なのはの防壁とぶつかり合い、火花を散らすフェイトの防壁。

「うりゃっ!」

なのはを捕まえていたバインドを放し、接近して蹴りを放つ。ただの蹴りですが、防御魔法ごとフェイトを吹っ飛ばす。

「魔を断て閃光――」

稀少技能はOFFに。威力は落ちますが…気絶させることなら出来るでしょう。

「セイクリッ――っ!?」

見慣れない色の魔力光。両手両足にかかるバインド。援軍?くそ、油断したです!

「稀少技能ON!」

<了解>

きぃん…と澄んだ音を立てて結晶化するバインド。こうなってしまえば捕縛性は失い、ただの手枷にしかならない。強引にそれを砕き、グレイランドを構えて周囲を確認し

「ストップだ」

――首元に冷たい感触。
ちらりと視線だけ向ければ、黒髪の少年がわたしの首にデバイスを突き付けていた。

「時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。此処での戦闘行為は危険すぎる。執務官権限により戦闘行為の停止を命じる。全員デバイスを収め速やかに投降を「ていりゃ」もどばっ!?」

体を反転させ、肘鉄を執務官の顎に叩き込む。ついでにグレイランドでその首を挟む。

…振り向けば、呆然としているフェイト。わたしは溜め息を吐き、睨み付けながら言う。

「フェイト、逃げなさい。…今は見逃してあげます」

「なっ…!?君は何を言って」

「しゃーべーるーなーでーすー」

少しずつ首にめり込んでいく刃に顔を紅くしたり青くしたりする執務官。

「…っ…ぅ」

ちらりとこちらを見ると、目に迷いを浮かべながらもジュエルシードを封印し、飛び去っていくフェイト。

ふむ、無事逃げられると良いのですが。

あとはこの執務官を適当にフルボッコにしてなのはから逃げれば…

『…さて、説明してもらうよ?』

――全身にチェーンバインドが巻き付いた。緑の。
…この魔力光は…ユーノ?不味いですね。チェーンバインドは物質化しても鎖と同じだから逃げられないんですよね。壊すのは簡単ですが。

その隙に脱出し、わたしに分かりやすい敵意を見せる執務官。

「協力感謝する!公務執行妨害により拘束する!」

ぐるぐるとその上から巻き付くチェーンバインドは先程と同じ見慣れない色のモノ。やはりこの執務官でしたか。

「…プロトちゃん」

声に首だけで振り向いて…ぇーと、シューティングモードのレイジングハートを構えたなのはさんがいらっしゃるです。自力でバインド外せるくらい実力付けたですか。相変わらずすごい成長速度です。

「…とりあえず、連行する。君たちもついてきてくれるかい?」

何故か呆れたような視線でわたしを見る執務官。…なんですか。やるんですか。相手になるですよ。管理局嫌いですし

「「そこでプロト(ちゃん)と【お話】できるなら」」

…お話とかいて肉体言語系な予感がするですが。もやしっぽい執務官相手ならともかく、なのはと?やーですよ。

わたしは溜め息を吐くと、大人しく連行されることにする

そして、もう1つ――全てを終わらせる覚悟を決めることにした。







―――――
(作者)

今回の没ネタ

「お仕置きをしてほしい、ということですか」

「うんっ!」

…あるぇ〜?嬉しそうダヨ?

「…痛いですよ?凄く!」

「臨むところだよ!」

「…あなた、正気ですか?」

「あなたじゃなくてなのは!高町なのは!」

「…まぁ、お望みならやりますが」

「まずは硬いバインドからお願いね!」

この日を契機に高町さんちの末娘が本格的にソッチの道に入るとは誰も思わなスター!




没ネタ。②

「<チェーンバインド>」

なのはが引っ掛かりましたが…引っ掛かりましたが!

「な、なんであんな縛り方に!?」

<菱縄縛りですか。通ですね>

「ぷ、プロトちゃん…こんな昼間から…大胆っ」

「赤面するなですぅーっ!ってか深夜ならいいのですかっ!?」

「…ぇと、ジュエルシード貰って行きますね」

「待ってです!このドMとわたしを二人きりにしないでー!」

「あぅ…ぷ、プロトちゃん…鎖が食い込んで…」

この日を(ry



つい…やっちまった!
後悔はしたくねぇ。


・魔法少女ニアミスの件

はやての魔法的資質は全て闇の書の中にある、という設定と、ユーノの広域念話にすら気づかなかったことこら推測した結果、はやては今、リンカーコアが休止状態でさっぱり魔法が使えない状況にある、と考えました。
さらにプロトの使える解析魔法はそんなに精度がよくありません。なので、弱ったリンカーコアを見つけることが出来ず、【はやて=not魔法少女】と結論付けたらしいです


・なのはがやりたい放題

ご都合主義乙!
深く考えたら負け。俺が。

バグキャラにだってなるさ。人間だもの

多分なのはは、原作より強く…というか凶悪になる。

・ユーノ視点
空気の視点ってどう書くの?(待て



[16022] 不屈の心と試作品 第10話(中)
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/02/23 11:46
無理やり連れてこられた時空航空艦アースラ。ちなみにわたしは両手両足をバインドで固定されています。

「逃げたりしないですからバインド解きません?」

「だったらバリアジャケットを解除してデバイスを渡したまえ」

…それが出来れば苦労はしないのですがー。

「プロトちゃん、どーしたの?なんだからしくないよ?」

どこか心配そうな目で見てくるなのは。手が動かせれば頬をぽりぽりかいてる所ですね。




不屈の心と試作品
第10話(中)




…はぁ、仕方ありませんね。これ以上ごねたらなのはが泣きそうです。

「執務官さん、包帯くらい寄越せですよ」

「君は何を言って――」

執務官の返事を聞かず、バリアジャケットを解除する。「ひぃっ!?」ああ、やっぱり恐がらせてしまいましたか。

「ぷぷぷプロトちゃんその手!?」

「皮膚が再生しきれてないだけです。もう治ってますよ」

皮膚が薄皮一枚しか無いために、真っ赤な左手をぷらぷら揺らす。
何故か顔を真っ青にしている執務官にグレイランドを押し付け、

「どーぞ。どーせ中身見るんでしょう?大人しくするですよグレイランド」

<善処はしますが確約はしません>

しろよ。

「じゃなくて!いつそんなケガしたの!?」

なのはが涙目で駆け寄ってくる。んー…正直に答えたらまた凹むの目に見えてるですねぇ。

「熊に襲われて」

「本当に!?」

嘘ですが何か?…こらなのは。何をうつむいてぶつぶつ呟いてるですか。

「私のプロトちゃん…キズモノ…殺傷モードで…美味しく…」

…聞かなかったことにしましょう。哀れ熊。強く生きれです。ちなみに春先の熊はあんまり美味しくないですよなのはー。

「…本当に大丈夫なのか?」

「あんたに心配される覚えはねーですよ管理局の犬」

わたし管理局嫌いです。だが、暴言を吐かれたのに執務官はわたしを心配そうに見てます。…なんですかこのお人好し。

「…だが君みたいな少女が体に傷を残すのは…」

…毎回ですねー。もう慣れたですが。

わたしはこつん、と小さく執務官の頭を叩く。睨まれましたが、すまして答える。

「ご心配なく。男ですから」

「「なぁにぃ!?」」

…ぅ?ユーノまで?

「き、君は男性なのかっ!?」

「嘘だぁっ!絶対嘘だぁっ!」

…失礼ですねこの馬鹿どもは

「分かりました。脱ぎます」

「「脱がんでいいっ!いや脱がないでくれ!」」

…何なんですかこの理不尽は。

「一応言っておくけど、プロトちゃん本当に男の子だよ?」

なのはのフォローが入る。まぁ、なのはは何度かわたしの裸見てますからね。…一緒に風呂に入ったわけじゃねーですよ?着替え中になのはが突撃してきただけです。

「…そう、なのか」

執務官がまじまじとわたしを見る。気持ち悪い。視線がエロいんですよむっつりが。

「まぁ、いい。それよりもユーノ・スクライアくん。いつまでもその姿でいる必要はないぞ?」

「あ、そっか。…じゃあ、よっと」

なのはの肩に乗ってたユーノが床に飛び下り――光る。そして現れる金髪の少年…は?

「ふぅ、この姿では久しb」

「「に、人間だったの!?」ですか!?」

「マジで!?本当にただのフェレットだと思ってたの!?」

思ってましたとも!

「っていうか私ユーノくんと一緒にお風呂入っちゃったよ!?」

「あ、ぁ〜…それは、なんというか…ごちそうさま?」

「「なにが!?」」

兄(的なポジション)のわたしを差し置いて恋人持ちですか…。羨ましい。

「まさかユーノ、なのはの裸体を見て責任を取らないなんてないですよね?」

「裸体て…。ていうか、責任なんてどう取れば…」

「結婚です」

「嫌だよ!私が!」

「傷付いた!激しい拒否に僕の繊細なハートがブロウクンファントムだよっ!?」

「ぁー…君達の間で…というか僕も含めて…見解の相違があったようだが、とりあえず艦長のところに行かないか?実はさっきから催促の連絡がな…」

困ったように頬をかく執務官。…なんだかなぁ。緊迫感がゼロですよ。結構いま、わたしピンチなんですがねぇ。

わたしの存在は、管理局にとってグレーゾーンです。
実はわたしを作った人間…オーナーは一時期管理局の研究者だったのです。さらに、非公式とはいえ管理局がから発足したプロジェクトEで産み出された人造魔導師の試作品…の、失敗作。表沙汰になれば管理局のイメージダウンになりますし、何より一応とはいえ産み出した命を簡単に管理外世界に捨てる研究者がいる組織。
…わたしとしては、あんまり関わり会いたくないですね。なにより、そんな人間たちばっかりだと思ったら、嫌悪感が先に立ちます。

…さて、相手は艦長。かなりの権力持ってるでしょうし、どこまで張り合えるやら…。とりあえず最悪なのはは無事に帰せるようにしなくては。ユーノ?男なんてどーでもいーです。

「クロノ・ハラオウン執務官です。入ります」

ぱしゃっ、と軽い音と共に開く扉。広がる風景はSFアニメの世界に迷い込んだような近未来的なブリッジ。…むぅ、ちっと燃えるものがありますね。ヤ○トです。イスカ○ダルに向かいましょう。

「すごぉ〜い…グラビティ・ブラストが撃てそうだね」

「そっちですか」

世代的にはアークエ○ジェルかと思ったのですが…。あ、劇場版ですかね?

「ディバインバスターで我慢するですよ。で、そこの艦長さん、何の用ですか?」

明らかに1人だけ抜きん出た強大な魔力の持ち主に向かって言う。執務官はやや驚いたようですが、艦長は逆ににっこりと微笑んだ。

「はじめまして。私がアースラの艦長、リンディ・ハラオウンよ。あなたは?」

…狸、いえ女狐ですね。これはやりにくくて仕方ないです。

「残念ながらわたしにちゃんとした名前はありません。便宜上プロト・グレイランドと名乗ってます。こちらは一般人の高町なのはとその愉快な下僕です」

「誰が愉快な下僕だよ!?」

「プロトちゃん、偽名だったの!?」

あれ?言って…ないですね。そもそもこの名前も適当に付けたものでしたし。

「ふふっ…面白い子達ね。こっちへいらっしゃい。こんな所で話するのもなんだから」

…ちっ、逃げにくくなりそうですね。ブリッジから程近い部屋に入る。だがこの部屋から出るためには一度ブリッジに戻らなきゃいけません。グレイランドも取り上げられたまま、執務官は武装したまま…ったく、何のつもりですかねぇ。

通された部屋はなんというか…自称日本通の外国人が無茶しました、と言わんばかりの部屋でした。だがこの残念さはちょっと燃えるです。

「そちらは?」

先に部屋にいた女性に問う。彼女は人懐っこい笑みを浮かべ、手を振ってきた。

「私はこの艦の通信主任兼執務官補佐兼クロノくんいじり係りのエイミィ・リミエッタだよ。気軽にエイミィってよんでねっ!」

「では色気ゼロと呼びます」

「ナチュラルに失礼だね!」

顔がひきつってますよエイミィ。

「で、チビと年増。早く要件をいいやがれです」

「ち、チビ…!?」「と、年増…!?」

硬直する艦長と執務官。なんだかリアクションがそっくりです。…ん?ハラオウン?

「ああ、二人は親子なんだよ」

ああ、成る程。…にしては艦長が若いですが、これが年増の若作りクオリティですか。恐ろしいですね。

「なんだかすっごく失礼なこと考えてる気がするわ!」

「んなわきゃないです」

何故いつもバレるのです?

「しかし若いですね。とてもわたしたちと同い年の息子がいるようには見えないです」

んなこと言ったら桃子も大概ですが。…おや?執務官が妙に仏頂面してますね。

「…僕は14歳だ。君より年上だろう?」

…あ、成る程。だからエイミィがくすくす笑ってるわけですか。

「ごめんなさい」

「「「「え?」」」」

皆が驚いた声をあげる。…酷くないですか?なのはとユーノまで。

「人の身体的欠点をあげるのは嫌いです。先程のチビ発言は撤回します」

14でその身長は哀れすぎてネタに出来ないと言うのが本音ですが。

「あ、ああ…構わない。気にしていない」

「そうですか。どうも」

年増は撤回しませんが。

「…なんだか釈然としないけれど。お茶どうぞ、ミルクと砂糖は?」

「頂きます。なのはのも」

「…いいけどね」

苦笑いのなのは。なのはは紅茶はストレート派なので問題ないのです。

「はい、どうぞ?」

わたしとなのは、ユーノの前に湯飲みが置かれる。…え?湯飲み?

恐る恐る中身を覗けば…緑色の液体。青汁にあらず。

「「…」」

なのはと二人、執務官とエイミィを見つめる。…肩を竦めてため息を吐かれた。…え?諦めムード?…ってかわたしミルクと砂糖二人分?なのはが微妙にほっとした目でわたしを見てます。回避不可能!?

「どうかした?」

首を傾げる艦長。…普通に緑茶にミルクと砂糖入れてます。…え、まじで?

「…ごくっ」

生唾を飲み込む音が大きく響く。…そんな期待した目でわたしを見ないで!お願いですからっ!ああでもそんな目で見られたら…!…震えを抑えて砂糖とミルクを緑茶に入れる。

恐る恐る、死刑台に昇る死刑囚の気持ちでくるくるとティースプーンを回す。緑茶の独特な渋い香りが…とても高級茶です…なのにミルクと砂糖入れちゃったです…もったいないですぅ…。

「プロト、飲まなくていいの?」

―――っ!? ユーノ!?

にやにや笑ってるユーノ。
くそ、まだわたしのこと恨んでましたかふぁっく!
こんなことで復讐されるなんて…!ですが、わたしも男です。ここまで来たらとっとと覚悟決めてやりますよ!

しっかり混ざり、黄緑というより複雑な…うぐいす餡のような色になった緑茶を一気に口に流しこ

「…あつっ!」

「慌てて飲むからよ」

くすくすと笑う艦長さん。
あぅう…他のやつまで微笑ましいモノを見る目でわたしを見てます。…恥ずかしい。

「き、気を取り直して…」

ごくり、と鳴ったのは誰の喉だったのでしょうか。

わたしの口内に、熱くて変な色の奇妙な液体が流れ込み―――















「…あ、甘くて美味しいです」

艦長以外がずっこけた。





―――――
(作者)

ユーノ、こけた拍子にお茶被る。


・フェイトを逃がした理由

基本的プロトは管理局は嫌いです。さらに、人との繋がりに餓えてる子なので少しでも気に入った相手は見捨てられません。
管理局に捕まえさせるくらいなら逃がします。
そして逃がした管理局員をぼっこぼこにして嘲笑います。


・プロトの偽名

それいいなぁ…
無印編終了後に番外編で書こう。うん、面白い


・ガオ!ガイ!ガー!

プロトはロボットアニメ大好きです。その影響でなのはもちょっぴり詳しくなってます。

っていうか俺が好きだ。スパロボシリーズ。携帯ゲームのしかやったことないが。AとMXとWとKだけ。


・なのはの管理局入り。

大丈夫。プロットは出来ている。
プロット通りに進めばプロトは管理局入りしないがなのはとある事情により管理局入りするようだ。


・なのはの恥ずかしい過去
はいはい構いませんよ。
例えば小学2年生のころってあれなんか桜色の光が(ちゅどんっ!)


・ちょっとだけ…全力全開!

なのはさんは倒せません。プロトにも。落とせるけど。桃色な意味で


・没ネタ。②の使用について

縛って振り回すとかそれなんてハードプレ(ry


・没ネタ

予想以上の大反響にびびった。
これからも本編書いてる途中に思い付いた【Mなのは】ネタは載せていこうと思う。

っていうか皆Mなのはに理解ありすぎww



気づけば20話近く…
完結までの道のりは遠い
だが無印編の終わりは見えてきたぜ



[16022] 不屈の心と試作品 第10話(下)
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/02/25 11:57


不屈の心と試作品
第10話(下)


というわけで漫才を一通り終わらせたところで艦長のターン。

時空管理局のこと、ロストロギアのこと、執務官の役割、アースラの存在意義やこの間発生した次元震を感知してこの世界に来たこと、など様々な事が説明される。

まぁわたしからすれば知ってる知識なので今さらですが、なのはには一応の説明しかしていなかったので、感心したように聞き入ってるです。

…で、今度はわたしたちの番。

ユーノが怪我してなのはが助け、ジュエルシード集めを手伝っていたらフェイトが出現。競争になったこと。その競争中、二人の勝負の魔力に反応して次元震が発生したことなど。

そこまで話すと、じろりと執務官がわたしを睨む。なんですか。

「…その説明の中には君自身のことが1つも入ってないぞ。何故管理外世界に魔導師がいる?」

はいはい、後で説明しますから。

そして競争相手…フェイト・テスタロッサにはなんらかの事情があり、その事情には彼女の母親が関わっているらしいこと。

「可能性1としては母親が何者かに囚われており、その人質解放条件がジュエルシードの収集、可能性2としては母親自身がジュエルシードを必要としている、可能性3としては母親が大病を患い、その治療にジュエルシードを使おうとしている、あたりかと」

ジュエルシードの願いを叶える、という特性上、可能性が高いのは3辺りですかね。

「…成る程ね。テスタロッサというファミリーネームから洗ってみましょう。エイミィ?」

「りょうかーい。やっときまーす」

気の抜けた返事と共に手に持った端末にメモをしていくエイミィ。

艦長はそれに頷き、わたしを見る。

「情報提供に感謝します。これより、ロストロギア【ジュエルシード】の回収については私達時空管理局が全権を持ちます。ついては…」

「わたしの事情、でしょう?あまり子供に聞かせていい話でもないので、なのはとユーノは…」

「やだ」

…何をワガママな事を

そう思いながらなのはを見ると、いつになく真剣な表情のなのはと、わたしを睨んでいるユーノがいた。…え、なぜです?

「プロトちゃんのことちゃんと知りたい。私、プロトちゃんのこと何も知らないから。ちゃんと向き合うから、全部話して」

「もちろん、僕にもね。ここまで来て適当に済まそうとしないでよ」

…はぁ。とため息を吐く。いいですけどね。どうせこの話をしたらわたしは時空管理局に捕まるでしょうし。

「…勝手にしなさい」

なのは達が深く頷いたのを見て、内心で溜め息を吐く。…これで、終わり、ですか。仕方ないとはいえ、あまり良い気分じゃないですね

「プロジェクトexecute。魔力を持たない一般人、あるいはクローン体に人造リンカーコアを移植し、人工的な後天的才能を持つ魔導師を作る計画。わたしはそこから更に分化したプロジェクトE、D型試験体…その13番目の失敗作です」

驚きに目を見開く管理局員。なのははしっくり来ないのか、首を傾げている。ユーノにはここまでは話したことあるので沈痛な表情ですね。

「D型試験体にはリンカーコアを体内に有する…魔導師としての才能を有する素体を用いて、ある特定の攻撃方法に特化させていたようです。例えば、わたしの前に廃棄されたDー11型は精密射撃に特化されていました。魔力総量はユーノほどでしたね。恐らくクローン体かと。Dー10とDー11は同じ顔でしたから」

ちなみにDー10は砲撃特化であり、リンカーコアを酷使したせいで壊れました。と捕捉しつつ。

「わたしは多分、管理外世界から誘拐されてきたらしく、稀少技能を持っていたお陰で一際素晴らしい調整がなされたようです。…ですが、魔導師1体に対して金がかかりすぎたのでしょうね。プロジェクトEの本筋が倒れると同時に衰退、自然消滅。唯一残った試作品たるわたしも、廃棄されたのですが…気合で生き残ったです」

微妙な表情ですね。やはり最後はもうちょっとまともな〆にするべきでしたか。

「で、研究所はそのまま廃屋に。わたしは次元転移する気にもなれず、たまたま出会った高町家のお人好しを利用して約4年間、潜伏させていただいたのです。…そしたらユーノが来たのですよ」

で、今に至る、と。

話終わる頃には、艦長の顔は暗く、エイミィと執務官はわたしに同情を多分に含む視線を送っていました。…なのはは、俯いているせいで表情が見えませんね。

「ちなみにわたしはわたしの製作者の本名を知らないです。なので違法研究していたことで摘発しようにも無理ですよ」

何よりその証拠らしい証拠がわたしの存在くらいしかないですしね。それだって他の人間が作ったと言い張れば逃げられます。

「…そう、だったの」

艦長は暗い顔色のまま、わたしに手を伸ばし…

「…は?」

警戒したわたしを意に介することなく、自然な動作で抱き寄せた。

…ぇーっと
どーゆう状況です?

「辛かったでしょうに…こんなに小さいのに…ぐすっ」

…泣いてるですか?なんで?え、なんですかこの状況?

「ごめんねっ!ごめんねプロトちゃんっ!」

なのはが背中から抱き着いてくる。えー…なにこれ…?

「私、ずっと傍にいたのに、寂しかったよね…ごめんね、ごめんねプロトちゃん…」

な、なんで謝ってるですか?なんで泣いてるですか?
教えてグレイランドって今いなかったですねちくしょうっ!

あーもうどーでもいーです。艦長の大きな胸の柔らかさを堪能しましょう。やわらけーです、あったけーです。大きな胸には男の夢が詰まってるって言ってました。恭也が。

「…あの、わたしはそれなりに楽しく暮らしてましたのでご心配なく。それよりも、これで魔導師であるわたしがこの世界にいた理由は納得しましたか?」

「…納得していない、とは言わない。だが、それを証明する方法が…」

執務官は暗い顔のまま、それでも冷静に返す。ん、良い心掛けです。

「グレイランドの記憶を見てもらえば分かりますが…。この左手、三日前にロストロギアの暴走で指が全部ぶっ飛んだですよー」

「「「「「なっ…!?」」」」」

絶句する皆の前で左手をぷらぷら揺らしつつ

「この回復力もわたしが改造された故のものなので…ってあれ?」

なんかすっごく恐い顔で艦長がわたしを見下ろしてるです。なんだか凄く怒ってるときの桃子に似てるです。

「エイミィ、医療班!」

「手配済みです!」

「なのはさんっ!」

「任せてください逃がしません!」

ぎゅうっとなのはがわたしを抱き締める力が増す。え?え?











…で、強制的に医務室に担ぎ込まれること数時間。精密検査を受け、医療魔法をたっぷりと掛けられて左手は完治。最近酷使していた魔法生物もたっぷり魔力を吸って大分元気になりましたね。

「プロトちゃんのバカ。プロトちゃんのアホ。プロトちゃんのボケ。プロトちゃんのマゾ」

…聞き捨てならねーですね。マゾはなのはでしょうに。抱き着いたまま涙目でわたしを見上げながら言うなのは。…なんだかなぁですね。ホントに、どーしてこんなに…





…離れるのが、今更になって恐くなってきてしまいましたね…。






内心で嘆息していると、艦長と執務官が医務室に入ってきました。

「デバイスは返却するわ。…それと、内容を見せてもらった上で、あなたは時空管理局の保護下に置くことが決まりました」

「…随分優しい処置ですね」

強制連行で捕縛→鉄格子付の研究施設を覚悟していただけに、真っ当な扱いに驚く。
艦長はため息を吐いた。

「時空管理局は人道的な組織です。…なのはさん。聞いていたから分かったと思うけどプロトさんは…」

「嫌です」

なのははわたしに抱き着いたまま、艦長を睨む。

「プロトちゃんは渡しません」

…いやいやいや。そういう問題じゃないですよなのはー。

「でもね、プロトさんの力は危険なの」

「魔法だって危険です。そういう意味ではきっと、私だってプロトちゃんと同じくらい危険なはずです」

その言葉に、艦長は驚く。勿論、わたしも。なのは…自分の馬鹿魔力がどれくらいヤバいものなのか、一応自覚していたのですね。

「…はぁ。気持ちは分かるけど、ね…。家族と引き離されるんだから」

…何を言ってるですか、艦長。わたしとなのはは家族なんかじゃありません。どこまで行ってもわたしは化け物で、人間じゃなくて、化け物で…あんな温かい家族の中に入るなんて…。

わたしが口を開こうとしたとき、なのはがわたしを強く抱き締めた。

なのはの顔を見れば…笑っていた。






凄く、綺麗で優しい笑顔で。





「私、大事な大事な家族を黙って連れていかれるなんて、許せません」

そう言って…なのはは、艦長を睨む。

…なのは。

話を、聞いていたのですか?

わたしは人間じゃないのに。

全部、ちゃんと話したのに。

回復力が人間じゃないのだって分かったじゃないですか。

左手見て、恐がってたじゃないですか。

なのに…

なんでわたしを、家族なんて呼ぶんですか…。


わたしが呆然としている間に、艦長はもう一度ため息を吐き、仕方ない、というような表情で微笑した。

「…まぁ、いいわ。プロトさんなら滅多なことにはならないでしょうしね。とりあえず、ジュエルシードのことは私達に任せて、あなたたちは一旦家に帰りなさい?その後のことは、また今度話しましょう。なにより…」

ちらり、とわたしを見る。わたしは思考が止まっていて、その視線の意味が理解出来ない。

「家族同士…何か話さないといけないこともあるでしょう?」

そう言って笑う、艦長…いや、リンディ。どこか子供のような、悪戯っぽい笑み。

気が付けば、わたしはこくりと頷いていた。

「プロトちゃん…」

ぎゅう、と更に抱き締める力が増す。痛いくらいです。でもその温かさに、まるでわたしを引き留めようとするような力に、わたしは更に思考を乱される。

「お家…一緒に帰ってくれるよね…?」

すがるような、懇願するような…けれど、何故か首を横に振ることは許されない。そんな問い掛けにわたしは一切の思考を挟まずに…気が付けば、こくりとうなずいていた。

このときのわたしは、完全に思考が止まっていた。

なにも考える事ができなかった。

わたしは、わたしの正体が知られれば全てを失うと思っていた。

離れていく、失うと思っていた温かさ。

それが…まだ、すぐ近くにある。

手を伸ばせば、その手を掴んでくれる。



…何故か、涙が一筋頬を伝った。




―――――――――
(作者)

今回のNGシーン


「たまたま出会った高町家を利用して…」

「もっと利用してっ!」

…えー…。いきなりですかー…?

「利用して利用して利用し尽くして、ボロ雑巾みたいになってから容赦なく捨てて!最後に優しい嘘も吐かないで!」

「それは自分から言っちゃダメですよ!?」

「いいの!私は愛と言う名のギアスの虜なの!」

「キャラが違うです!というか愛じゃなくて快楽でしょうに!」

このドMが!



シリアスシーンなので没。というか収集つかん。


・Mなのは

それはきっと平行世界。
でも葉月さん【その】なのは絶対ヴォルケンズ瞬殺だよネ


・プロトちゃんの暴露

基本的にプロトは自分の正体隠しません。ある意味諦めてます。
「管理局に捕まったら捕まったで仕方ないです。おとなしく死ぬですよー。一応出来る限りの抵抗はするですが」
って感じです。

・クロノの【く】は空気読めないの【く】

いくらクロノでも(見た目は)美少女が(見た目は)大怪我してたら心配するよね?ってかしろ。

・ リンディ茶

意外と美味かった
だが人を選ぶだろう。

・【真】・リンディ茶

ギリギリ飲めた
だが人によっては美味しく頂けるだろう
あれはすでに緑色の液体砂糖

・エイミィ

自己紹介でしか輝けない。輝かない。



[16022] 不屈の心と試作品 第11話
Name: 人春◆45d3e50a ID:ec8f6a96
Date: 2010/02/26 11:37

不屈の心と試作品
第11話



side:ユーノ


僕はいま、とんでもない光景を見ているのかもしれない。

場所は高町家。その玄関の前。僕はフェレットモードでなのはの肩に乗っている。

「ほ、ほらプロトちゃん。大丈夫だからお家入ろう?」

「…ヤ、です」

困ったように笑うなのは。その服の裾を握り、俯いたまま首をふるふると力無く振るプロト。…可愛らしい仕草だけど、男の子なんだよな…。凄く、複雑だ。

「何で嫌なの?私も一緒に謝ってあげるから、なにも心配することないよ?」

「…」

無言でふるふる首を振る。無意識なんだろうけど、顔を真っ赤にして、僅かに唇を尖らせるプロト。…可愛いんだよなぁ。僕も昔からよく女の子に間違えられるけど、プロトは女の子にしか見えない。

…はっ!それが目的かっ!見た目で油断させるわけだね!…いや違うか。

「…だって、わたしは…」

「高町家の次男、だよ。…他の事は関係ないよ」

優しく笑い、プロトを抱き締めるなのは。…抱き締められながら、ぽつりぽつりとプロトは話し出す。

「わたし…人間じゃ、ありません…。だから、ずっと恐かったです…。近づきすぎたら、離れられなくなる…。いつか、わたしが人間じゃないのがバレたら…嫌われる…嫌われても…離れられなかったら…わたしは…痛く、なるです。…想像しただけで、痛いのですよ…?わたしは…痛いのも恐いのも嫌いです…戦うために作られたんだとしても…わたしは…」

「…うん。分かるよ。戦うのは、痛いし、恐いよね」

ぽつり、と呟くなのは。その瞳に映っているのは…多分、あの悲しげな瞳をした少女。

「でも、わたしが戦わなかったせいでなのはが…士郎が、桃子が恭也が美由紀、アリサやすずか…あんな優しい…わたしを、化け物のわたしを受け入れてくれたあなたたちが傷付くのは…絶対に嫌だったんです…。それに」

プロトの身体が、震える。がたがたと。なのはがより強く、プロトのことを抱き締めた。

「…戦うために作られたわたしが…戦わなかったら、なんのためにわたしは…わたしの存在意義が…分からなくなってしまうです…。戦えないわたしに、価値はなかったんです…!」

「…うん」

否定したいんだろう。なのはは唇を噛み締めている。けれど、今はプロトの言葉を聞くために自分を抑えている。

「恐いんですよ…!わたしが、わたしじゃなくなるのが…!恐いんですよ…信じて、尽くして、頑張って…!また捨てられるんじゃないかって!でも信じたくなっちゃうんですよ!?なのは達なら…なのは達なら大丈夫って!でももしかしたらって思うのですよ!拒絶されたら、捨てられたら!今度はわたしが耐えられない!」

「…」

なのは喋らない。プロトは、いつの間にか泣いていた。ボロボロと涙を溢しながら、プロトはずっと胸に秘めていたのだろう、心中を吐露する。

「だったら…だから…もう、終わらせる予定だったんです…。魔法も、ジュエルシード集めも…わたしのことも」

それは…懺悔だったのだろうか。管理局に捕らわれる前に、なのはに攻撃したことへの。

「レイジングハートを壊して…ジュエルシードを全部ユーノに渡して…わたしは、あなたたちが二度と関わらなくて済む世界に消える予定だったのです…」

沈黙が、降りる。

「そう、だったんだ…」

なのはが、プロトから一歩離れた。プロトはぐしぐしと涙を溢しながら、ぺたん、とその場にへたり込んでしまう。

「ねぇ、プロトちゃん」

…あ、あれ?なんでなのは、そんな綺麗な笑顔で…?












「目、覚まそっか」











ばぎっ!

…顔面に拳を食らったプロトが吹っ飛んだ。


――後にプロトは語る。「本当に運動音痴なのか疑いたくなるほど、体重の乗った見事な一撃でした…」と。


「そうだな。頭冷やせ」

いつの間にか現れたなのはのお兄さん吹っ飛んだプロトをキャッチ。ジャイアントスイングでもう一度ぶん投げた。

「うんうん、正気に戻れ」

そこに出現するお姉さん飛んできたプロトを蹴り上げる。…そしてそこには、小太刀を両手に持ったお父さん。

「これでトドメだ」

ごぎんっ!と凄まじい音。プロトは悲鳴一つ上げること無く地面に叩き付けられた。

…あの、ぴくりとも動かないっていうか痙攣してるよ?それよりもナニソノ運動能力。っつかトドメさしたら駄目でしょ?あんたらなにやってんの?あ、プロトが起きた

「…な、なにを…」

真っ赤な顔、真っ赤な目。土埃に汚れたプロトがふらふらと身を起こす。

「馬鹿な事を言うからだ。…いい事を教えてやろう、プロト」

恭也さんはプロトを見下しながら言う。

「俺は、化け物だ」

「…は?」

ぽかん、とした表情のプロト。珍しい。

「化け物とか言われるのに、慣れている。御神の剣士はどこ行っても化け物扱いだ」

「人間レベルの業じゃないもんねー、あたしたちの体術とか」

「私なんて若い頃、一仕事する度に敵からも依頼人からも化け物扱いだ」

はっはっはっと朗らかに笑う化け物家族。…なにこの血筋。なのはの魔法の才能って血か?血なのか?

「だから、ね?」

いつの間にか現れたなのはのお母さんが、そっとプロトを抱き起こした。痛みに顔をしかめるプロトに、優しく笑いかける。

「あなたは、ここにいていいのよ。あなたも私の息子なのだから…」

「…っぁ」

また、プロトの目から涙がボロボロと溢れた。桃子さんが、そっとプロトを抱き締める。

「…良いの…ですか…?」

ぽつり、と呟かれる言葉。

「化け物で、良いの…ですか…?寂しいんです…悲しいんです…でも恐かったんです…痛いのも嫌だったんです…裏切られるのが怖くて…深入りするのが恐くて…悲しい思いをするくらいなら…って…」

でも、と繋げる。

「名前を呼んで貰えるのが嬉しくて…優しさに触れる度、涙が溢れそうになって…一人になるたびに寂しくなって、耐えられなくなって…傷ついてほしくなくて…」

「関係ないよ」

なのはが、プロトに近付く。

「この際だから言うけど、プロトちゃんの意見とか考えとかどうでもいいの」

にっこり笑うなのはに、愕然とするプロト。ショックを受けたような顔に、笑いそうになる。

「私が側にいてほしい。だから、お願いプロトちゃん。私とずっと一緒にいてください」

そう言い、手を伸ばす。

プロトはしばしその手と、なのはの顔を交互に見つめて…くすり、と笑った

「なんだか…プロポーズみたいです…」

「この間プロポーズしてくれたのはプロトちゃんだったから。今度は私の番なの」

「当番制だったですか。驚きです」

くすくすと、涙の跡が残る顔で微笑むプロト。なのはもまた、笑みで返す。

「…わたしなんかを傍に置いてくれて、ありがとう」

「プロトちゃんだから、傍にいてほしいの」

二人は、手を握り合う。

それは、凄く綺麗な光景だった。

…僕のすぐ後ろで、なのはとプロトがプロポーズ云々話始めた途端に飛び出しかけた恭也さんがぼこぼこにされていなければ。


sideout





side:プロト

散々泣き、しっかり怒られ、すっきりしました。

まぁ、それくらいでわたしのネガティブ思考は直らないのでいずれここは出ていく予定ですが…二度と関わり合いにならない、なぁんてつまらない意地を張るのはやめることにしました。

…かなり恥ずかしいこと言ったりやったり暴れたり自棄になってなのはやフェイトに八つ当たり戦闘かましたのは黒歴史に葬るとして。

「…何だか、凄く疲れました」

でも、妙に身体が軽い。ずっと胸につっかえてたモノがなくなったのは大分大きいですね。わたしは、わたしの生まれや魔法のこと、なのはと一緒に色々巻き込まれている現状を全て皆に話しました。

最初は混乱していたようですが、皆なのはのバリアジャケット姿やレイジングハートと話してなんとか受け入れてもらえたのです。(その際にグレイランドとちょっと揉めましたが、割愛。この馬鹿士郎と桃子に気付かれてたのですよ)

「プロトちゃん。まだ起きてる?」

「起きてるですよー」

部屋に入ってくるなのはとユーノ。真剣な表情です。…ま、話す内容など分かりきってるですが。

「…あのね、プロトちゃん」

「ジュエルシードはまだ半分以上ありますが、時空管理局が関わってきている以上、勝手に集めて回るのは危険です」

「…へ?」

ぽかん、とわたしを見るなのは。さっきは一杯驚かされたですが、今度はわたしが驚かせる番ですね

「フェイトが気になるのでしょう?途中で放り出すのが嫌なんでしょう?でしたら、」

わたしは、にやりと笑う。

「わたしを使いなさい。わたしの知恵も力も何もかも全て、あなたに貸してあげます。あなたがしたいことを貫くために、わたしはあなたの邪魔をする全てを切り払います」

わたしは、わたしの胸を叩く。

「相応しい相手を見つけたら、全てを賭して尽くします。それが、今の【わたし】の生き方です」

【己】の時のように盲目的にではなく、なのはを思い、なのはの為に戦おう。

「受け入れて、くれますか?」

「…うん。プロトちゃん」

なのはは頷き、にこやかに笑う。

「私に力を貸してください。フェイトちゃんはきっと今、何かに苦しんでいる。」

「承りました。…では、計画を練るですよ」

にやり、と二人で笑い合う。ユーノが青い顔でわたしを見ていましたが、なんなんでしょう?

「まず、時空管理局が絡んできた以上、単独でジュエルシード集めは不可能です。最悪時空犯罪者として逮捕されちゃいます」

実は今日、わたしが執務官に歯向かったのも不味かったのですよ。下手を踏めば逮捕です。お人好しだったからわたしの身の上話聞いて忘れてしまったようでしたが。
それを聞き、複雑な表情で苦笑いするなのは。

「なので一番は管理局の協力者としてジュエルシード集めに参加し、その間に出会うはずのフェイトと話し…あわよくば懐柔してこちら側に引き込むですよ」

「なるほど…」

いや、そこで納得されると不安ですけどね!貴女の将来的な意味で。

「なので次回からはわたしも戦闘に出ます。明日から訓練でフォーメーションを…」




道は決めました。

なのははきっとなにを言っても無茶をするし、無理をするはずです。それこそ、命をかけて。

これはわたしが何を言ったところで直らないでしょう

ならばわたしは、なのはの行く手を塞ぐ全てを切り裂きましょう。

化け物でもいいと言ってくれた彼女達のために。

化け物らしく、化け物の力を振るうとしましょう。



――――――
(作者)

なのはルートに入りました

…実はなのはから離れてる間にフェイトルートに入るプロットもあったですが、やっぱり無印はなのはでしょう。

選択肢で言うならここが分岐点

→なのはを攻撃
フェイトを攻撃
ユーノとアルフを潰しとく

まさかのルート判別


皆さんお待ちかね。

今回のMなのは

「戦えないわたしに、価値なんてなかったんです…!」

「…そんなことないよ」

そう言って、なのははそっと…プロトにソレを握らせた。

…黒塗りの乗馬鞭を。

「…」

無言で睨むプロト。なのはは妙に爽やかな優しい笑顔で

「プロトちゃんは私をいぢめてくれればそれでいいの。絶対絶対幸せにしてあげる。だから、プロトちゃんは――」

びしぃ!

セリフの途中で、プロトがなのはを鞭で打った。

「はぅんっ」

嬉しそうな顔で倒れるなのはを冷たい目で見下ろすプロト。

「…もう、ゴールしてもいいですよね…?」

不屈の心と試作品 完!


・グレイランド
実は憑依者とかいう設定が昔はあった。消したけど。

・フェイト
むしろ
「私が負けたらジュエルシードごとプロトに貰ってもらう」ですね
Sフェイトもあるけど…見たい人いるのかなぁ?フェイトMじゃね?

・プロトの回復力
夜の一族より回復は早い。だが肉体は脆いので死にやすい。あのグラフで丁度良いかな?



[16022] 不屈の心と試作品 第12話
Name: 人春◆45d3e50a ID:ec8f6a96
Date: 2010/03/01 12:15
さて、協力者になることを決めたものの、このままだとただ働きになってしまうのです。なのははわざわざ学校休んでまで手伝っているですし、わたしは手伝っている間翠屋でバイトすることもできないのです。そこは少し融通を利かしてもらいましょう。

「という訳でお小遣いください」

「どういう訳かちゃんと説明してみろ」

額に青筋を浮かべた執務官。わたしはにっこり笑顔で答える。

「わたしたちを好き放題に使って自分の目的を果たそうとしてるんですから、せめてお金払えですよエロ大将」

「なんで僕が払わなきゃいけないんだっていうかエロ大将ってなんだ!?」

真面目そうなヤツはムッツリ助平という決まりがあるのです。




不屈の心と試作品 第12話



「執務官じゃ埒があかないので提督に直談判して日当二万を勝ち取りました」

いぇーい。危険手当てを考えたら妥当ですよ。何故呆れた目でわたしを見るですかなのは。

「…こっちから協力させてっていったのに…」

「別にいいでしょう?リンディ提督のポケットマネーだそうですし」

それでもぉ…と渋るなのは。…むう、実は日当3万で二人の分ちょろまかしてることがバレたら怒られそうですね。うん、バレる前に2万に値下げしてあげましょう。きっと喜ぶですよリンディ提督。

ちなみに現在地はアースラの一室。ジュエルシード集めに協力するためにアースラに泊まり込みです。高町家…というか恭也になのはと2人で外泊することに許可を得るという困難を越えた今、わたしに不可能はあんまりないのです。ちなみに説得は桃子に手伝ってもらいました。桃子最強です。学校やアリサ&すずかにも適当に誤魔化しておくよう頼みましたし、なにも問題なしなのです。

「にしてもなのはと同じ部屋ですか。一杯部屋あるでしょうに…ケチです」

わざわざ同室にしたのは監視しやすいようにですかね?なのははともかく、わたしは微妙に敵視されているのか視線が突き刺さるのですよ。

「あ…それは私から頼んだの。最近プロトちゃんと一緒に寝れてないし」

…まじでー?なのはもう9歳ですよねー?

「…ま、良いですが。ユーノも一緒で良いのですか?あれでも一応同い歳の男ですよ」

遠回しにわたしも同じ年頃の男ですよー。意識するですよーと伝える。なのははにゃははと苦笑いし。

「ユーノくんはフェレットモードの印象強すぎて、男の子と思えなくて…」

…やばい。激しく同意です。

<ボキィ!ユーノフラグが砕けましたっ!>

グレイランドー?少し黙れですよー?ってかなんですかフラグって。

「…私達、同い歳の男の子をペットにしてたんだね…」

「言うなですよ。わたしも気にしないようにしてたんですから」

これも1つの黒歴史ですかね。わたしの?いいえユーノのです

と、そこへパシャッとSFチックな音を立てて扉が開かれ、ユーノが参上。話をすれば影、いま噂のペット少年です。

「なんだか失礼なこと考えてたみたいだけど…。ジュエルシード見つけたみたい。今、出れる?」

「「りょうかーい」」

なのはと二人、まったり返事する。実はわざわざわたしたちが出なくても執務官がいればギリギリ封印は可能らしいのです。勿論そうなったら執務官の負担が大きすぎるので過労死するでしょうが。

「じゃあ今日はプランXの特訓です」

ついでにわたし達はフォーメーションの練習をしているのです。相手は仮想敵なんかよりもずっと歯応えのあるジュエルシード暴走体。訓練っていうか実戦ですが、お陰でなのははメキメキと実力を付けてます。

「うんっ!行くよ、レイジングハート」

<勝ちに行きましょう。瞬殺です>

レイジングハートも大分染まってきましたねー。真面目なデバイスに戻ってほしいと思う反面、今のレイジングハートの方が面白いんですよね。

「「セットアップ」」

変身シーン略。グレイランドを背中から抜き、モードダブルへ変形。レイジングハートは最初っからシューティングモード。

「最初っから最後までクライマックスで行くですよー」

「疲れそうだね」

なんて身も蓋もない。なのははもっと仮面○イダーを見るべきです。苦笑いしながら言うなのはを睨む。意味が分からなかったのか首を傾げるなのは。

「じゃあ、行くよ」

苦笑を含んだユーノの声と共に広がる緑色の魔法陣。視界がぐにゃぐにゃと歪み、襲ってくる酩酊感。そして視界がまともになると同時、展開される封時結界。

今回の暴走体は鳥っぽいナニカ。羽が4枚あり、大きさは軽自動車ほど。鉤爪の付いた足が3本あるのが特徴的。どんな願いを持った鳥だったのでしょうか。

一度なのはと目配せする。なのはがしっかりと頷いたのを確認し、ユーノを下がらせる。ユーノはもしもの時のなのはの盾です。

わたしはグレイランドを構え、暴走体と対峙する。

「プランX、スタート」

「行くよ!」







side:フェイト


私がジュエルシードの反応に気付き、現場に来たときにはもう全てが終わっていた。

目を回しているのか、気絶してぐったりと動かない小鳥と、僅かに残る戦いの残留魔力。

「フェイト…」

後ろからアルフの心配するような声。私はそれに大丈夫と返しながら拳を握り締める。

「…」

考えるのは、灰色の髪の少年。

残留魔力のパターンは二種類ある。片方はあの白い魔導師の女の子だと考えても、もう一方は?

プロトか、あの黒い執務官か。

後者の方ならまだ良い。管理局は敵だ。母さんの目的の邪魔になる以上、倒すことに躊躇いはない。

だが、プロトは違う。

プロトは何を目的にしているのかさっぱり分からない。戦わないと言ったり、共闘していた白い魔導師に襲い掛かったり、執務官に攻撃したり。


そしてなによりも――何度も、私を助ける。


大ケガを負っても、自分の立場が不利になっても、何故かプロトは私を助ける。

その理由が、分からない。

分からない事が、もどかしい。

白い魔導師の娘もそうだ。

何故、私に何度も話を持ち掛けるのか。

攻撃しても、お互いに傷付けあっても、彼女は諦めずに私に話かける。

何が目的なのか、分からない。

「…フェイト?」

物思いに耽っていたら、アルフが心配そうに私を見つめていた。

「…ごめんね、アルフ。心配かけたね」

いけない。こんなんじゃご主人さま失格だ。

悩んでも仕方がない。

私は母さんの言う通り、ジュエルシードを集めれば良い。

そうすれば、母さんは昔の温かい家庭に戻れると言っていた。

だから、母さんを信じよう。

…今は恐いけれど、いつか、きっと、ジュエルシードを全て集めれば、母さんは元の母さんに戻ってくれる。

なら私は、母さんのために…そして私のために、ジュエルシードを集めなきゃ。

「アルフ、広域探査、やるね。ジャミングお願い」

アルフは俯いて、悲しそうな顔をしていた。…何故?

「フェイト、少し休もうよ。まともに食べてないだろ?今日は帰ってご飯食べて、しっかり休まなきゃ…」

「…大丈夫」

食事している間にジュエルシードを奪われたら困るし、眠っている間に暴走なんかされたらもっと困る。

だから、頑張れる。

「私は、大丈夫。だからアルフ、やるよ」

「…フェイトがそう言うなら」

どこか不貞腐れたようなアルフの態度に首を傾げる。どうして不機嫌になったんだろう。

「でもフェイト、これが終わったら一旦時の庭園に帰らないかい?」

「…え?」

なんで?まだジュエルシードは4つしか集めてないのに。

「ほら、とりあえず4つは集まったってあのクソバ…おばさ…えぇと、あいつに報告しようよ。4つも集めたんだからきっと誉めてもらえるよ」

…そう、かな?

昔のように、頭を撫でて貰えるかな?

笑顔を向けてもらえるかな?

名前を呼んで――名前…?

「…っあ」


思考にノイズが走る。痛い。頭が痛い。アルフが慌てて駆け寄ってくる。ごめんね、アルフ。大丈夫、すぐ落ち着くから。私は大丈夫だから。声に出ない言葉。口がパクパクと動き、意味のない空気を吐き出す。

「フェイトっ!?フェイト大丈夫かい!?い、今治癒魔法で…!」

大丈夫。大丈夫だから。

頭を抑えて立ち上がる。

「フェイトっ!?今日はもうやっぱり帰ろうよ!そんな状態じゃ戦いになったときに戦えないよ」

「…そう、だね」

まだずきずきと頭が痛む。何故だろう。何を考えていたんだっけ…?

そうだ、ジュエルシードを母さんに届けるんだ。

「…仕方ない、よね。今日は帰ろう…」

「うん。でも、少し休んでなよ。治癒魔法は一応使ったけど、あたしはあんま治癒魔法にゃ適正ないからね。すぐ動いたらどうなるか分からないよ」

なんか飲み物買ってくる。と走り出すアルフ。…お金、持っていったのかな?

<…>

「なに?バルディッシュ」

珍しい。バルディッシュが何か言いたそうだ。あまり自分からは喋らない子だから驚いた。もっとも、デバイスがお喋り好きなわけないのだけれど。

<…いえ、なにも>

「そう」

何か言いたげではあったけれど、追及はしない。

私は、膝を抱えて、閉じた膝に額を押し付けるようにして目を閉じた。

少しだけ、頭痛が収まったような気がした。







side:????

面白いことになってきた。
モニターに映る人形に、自然笑みが浮かぶ。

偶然?必然?どうでもいい。結果的にボクはここにいて、この寸劇を見る観客の座を手に入れた。

堕ちたとはいえ相手はあの天才。条件付きとはいえSSランクの魔導師だ。万が一にも戦いになったらボクは一瞬で殺される。

だからこそ、ただ見ている。

面白い方向に動くことを信じてもいない神に祈っていたが、意外や意外。あの人形、予想以上に堕ちた天才への忠誠心が高い。

それに面白いキャストだ。

実験材料としたら最高レベルの魔導師の卵。あれを使えばもっと素晴らしい作品が出来ただろうに…この世界の文明レベルは地味に厄介だ。秘密裏に誘拐なんて出来っこない。もともとあの小娘を手に入れるためにこの世界に研究所を作ったというのに…。

まぁ、いい。最悪死体からでも似たようなモノは作れる。

…にしても、もう1つ意外なモノに再会した。

てっきりもう腐っていると思ったが…面倒くさがらす、研究所の廃棄が決まった時に一緒に爆破すべきだったか。

それくらいでボクの最高傑作になる予定だったモノが壊れるとは思えないが。いや、失敗作だから充分壊せるか。

「さぁ…どんな風にボクを楽しませてくれるのか。期待してるヨ」

くつくつと、暗い部屋の中でボクは笑った。




―――――
(作者)

今回のNGシーン。というか撮影後。

「…フェイト」
「え?なに?」
「その格好で体育座りとか勇気あるですね」
「…あ///」



・だだっ子プロト
我慢の限界を越えたようですww

・士郎のDV
効果音から察してくれぃ
自分の筆力の無さが泣けるぜ

・高町家vs管理局
面白そうと思ったのは俺だけか?

・プロトフルボッコ
一回本気で怒ってほしかったんだ。
皆が本気で怒りでもしないとこの子鬱展開突き進んじゃうから…

・何故、ユーノ?
第三者視点で書きたかったのよぅ
シリアス続くのもヤだったし
なにより空気なユーノが哀れだったし…最初で最後のユーノ視点。


・Mなのはシリーズ特別番外編

シリアス続くと暴走する作者がついやっちまったー…
予想外の大反響だけど、これは普通に載せるのは無理と思うんだ…

見たい人が三人以上いたみたいだから、また土曜日の深夜に再掲載の予定。時間は多分土曜日21時〜日曜9時


…て・か・ね・?


もういっそMなのははMなのはで別に書いたほうがいいんじゃないだろうか

なぁんかシリアス書いてると壊レ書きたくなるから、もしかしたら続くかもしれないし

予定では紅の鉄騎改めMの鉄騎とか、オレンジ髪のツンデレドMみたいなのもあるが…

下手を踏めばXXXになっちまう

特にMの鉄騎

自重しろですよ俺ー…



[16022] 不屈の心と試作品 第13話
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/03/04 11:51
不屈の心と試作品
第13話




深夜、アースラの食堂。なのはとユーノはもうおねむな時間帯。わたしはハラオウン親子とまったり待機していた。

「あと、6つ…なのよね…」

難しい顔で湯飲みを口に運ぶリンディ提督。わたしもオレンジジュースをじゅるじゅる啜りながら首を傾げる。

「何がですか?」

「ジュエルシードに決まってるでしょう?」

苦笑いで答えるリンディ提督。…ぅ?え〜と、なのはと一緒に集めたのが3つ、フェイトが持っていったのが4つ、ユーノが自力で集めたのが1つ、アースラに来てから集めたの7つ…。おお。

「本当に残り6つですね」

「ああ。君たちが協力してくれたお陰で予想以上に早く集められたよ」

神妙な顔で頷き、ブラックコーヒーを口に運び、顔をしかめるクロノ執務官。苦いのヤならわたしみたいにジュースにすれば良かったでしょうに。

しかし、かなりのハイペースですね。わたしたちが半月かけて3つしか集められなかったジュエルシードが、わずか10日で7つも集まったのですから。…いやまぁ見つけた半分以上をフェイトに奪われたので、数を集められなかったのは仕方ないですが…。

「けど困ったことにね?残りの6つが見つからないのよ。プロトさんが調べた所以外…主に排水溝や下水、森の木に引っ掛かっていたジュエルシードは見付けられたのだけど…他にもう探してない場所がないのよね…」

目の前にウィンドウが開き、海鳴市の地図が広げられる。…ほとんどの場所に×印がついているのです。

「んー…誰かが拾って帰ったのですかね?」

「いや、その可能性は低い。もしそうだったらすぐに暴走してしまっているはずだ」

んー…だったら…ぅ?

「海…は、ほとんど手付かずです」

「…範囲が広すぎるのよ。2、3日丸々かけて調べないといけないから後回しにしちゃって…」

…まぁ、小さな宝石を海の中から拾い上げるなんて正気じゃ出来ないですよね。

「でしたら調べなきゃですよ。わたしも手伝うですから、がんばるです」

「あら、ありがとう」

くすくすと笑いながらわたしの頭を撫でるリンディ提督。わたしがそれを振り払っても、むしろ笑みは深くなる。むぅ…なんとなく不愉快だったのでクロノ執務官の足を蹴る。

「いたっ…いきなり何するんだ」

「黙れですマザコン」

「マザコ…っ!?」

硬直するクロノ執務官にべー、と舌を出し、とっととあてがわれた部屋に引っ込む。…ちなみにこの部屋のベット、キングサイズなんですよ…。だからなに?って感じなんですが、なんかこう…変な邪推してしまいそうです。ここでクロノ執務官が仕込まれたんじゃ…いや自重自重。

ともかく、わたしたち3人で一緒に寝なくちゃならない辺りヤな感じです。1人はフェレットだから構いませんが。

「んぅ…?プロトちゃん…?」

むくりと身を起こし、目をこするなのは。ちょっと驚く。いつもは9時には寝る娘なのに。

「おや、起こしてしまったですか?」

いけないいけない。子供には厳しい時間帯だというのを忘れてました。わたし?色々規格外だから子供扱いする人はアホです。

「んーん…。プロトちゃん来るまで待ってようと思ってたから…」

…今度からわたしも早めに寝ましょう。なのはの体調が心配です。

「まったくもう…。眠いならとっとと寝るです。わたしなんか待ってたって良いことなんてないですよー」

ベットの端に座り、眠そうななのはの頭をくしゃくしゃと撫でる。ふにゃあ、と気持ち良さそうな声を上げて目を細める。猫みたいです。

「そんなことないよー、プロトちゃん、いい匂いがするし、柔らかいし、気持ちいいし、あったかいから、抱き着いて眠るとぐっすり眠れるの」

…その言葉まるまるそっくり返すですよ。なのはと一緒に寝ると凄く気持ちよいのですよまじで。

「あれ?プロトちゃん顔真っ赤だよ?大丈夫?」

誰のせいだと思ってるのですか。まったくもう

「ユーノ…は、寝てるですか」

フェレットモードで枕元に丸まって寝ているユーノにため息。こいつ1人だけ平和です。諸悪の根源のくせに。

「ん〜…」

ぽふ、と軽い音。わたしの膝の上になのはの頭が降ってきた。…なんでー?

「どしたですかなのは?今日は妙に甘ったれですが」

「…お仕置き、するの忘れてたなぁって」

お仕置き?なんかやりましたかねわたし?

「…昔、プロトちゃんが言ったんだからね?子供は遠慮しないで、家族に迷惑一杯かければいい。って」

「…ぇーと…あ、」

思い出しました。そう言えば、言いましたね。ちょっとした黒歴史です。

「だからプロトちゃんも…もっと私に頼って。甘えて。迷惑かけて。…力になるから」

ははっ、と笑いが漏れてしまう。わたしってば愛されてるー。…照れるのですよ。

「プロトちゃんを見返そうと思って、凄い魔法思いついんだよ…?」

眠いせいか話に脈絡ないですねー。話ながらうとうとと船を漕ぎはじめるなのは。それに苦笑しながら、わたしはくしゃくしゃと単調なリズムを刻みながら頭を撫でる。

「それは楽しみですねぇ…。是非ともフェイトに食らわしてやりなさい。そしてあのワガママっ娘に話を聞いてもらうのですよー」

「う、ん…がんば…る…」

やがて、なのはの口から規則正しい寝息が漏れ始める。わたしもそろそろ眠らないと、戦闘に支障をきたすかもしれないのですが…。

「もう少し…。もう少しだけ、このままで…」

なのはの暖かい体温を心地よく思いながら、わたしはしばし、なのはの髪を撫で続けた。







大音量のアラームで強制的に目を覚まされたのです。
当然わたしは不機嫌MAX。まだ寝惚け眼できょろきょろ周りを確認しているなのはと、大音量に顔をしかめているフェレットを連れてブリッジに駆け込みます。

「何ですか騒々しい!?」

わたしの目に飛び込んできたのは大きなウィンドウに映る、竜巻と雷に荒らされる海上の映像。

「これは?」

「残り6つのジュエルシードは海に沈んでいたらしい。そこへ敵対魔導師…フェイト・テスタロッサが魔力流を撃ち込み、強制的に励起させたようだ」

…くそっ、予想外ですね。わたしたちが先手を打って集めてしまえばフェイトが無茶することはないと思ってたのですが…まさかこんな方法が残っているとは。

いえ、今は後悔している場合ではありませんね。もたもたしてたらフェイトがピンチです。

「では、すぐに封印に向かうです。なのは」

モニターの中では竜巻に追われながらも砲撃や射撃を駆使して雷を迎撃するフェイトと、その後ろで防御魔法を展開するアルフの姿。…持久戦では勝ち目なんかないでしょうに。よくがんばりますね。

「うん!レイジングハート」

セットアップしようとした瞬間、耳に飛び込む言葉。

「その必要はない」

…なん、ですって?

信じられない、あるいは信じたくない。そんな気持ちを込めてクロノ執務官を見る。

彼は、冷静に――なんの感情も見せずに、腕を組んでモニターを注視していた。

「個人で封印出来る魔力量はとっくに越えている。放っておけば自滅するんだ。捕縛はそれからでも遅くない」

冷静――いや、むしろ冷徹な声でクロノ執務官は言い、捕獲準備の命令を出す。

「ごめんなさいね?でも、私たち管理局員は常に最善の策を選ばなければならないの」

リンディ提督が、申し訳なさそうに…けれど、迷いも見せずにそれを容認する。

「そ、そんな…」

なのはが顔を真っ青にして、泣きそうな顔でモニターの中――傷付き、戦い続けるフェイトを見る。




…ああ、やっぱり。







管理局員は、管理局員、なのですか…?






落胆、失望。そんな気持ちを込めてわたしは溜め息を吐き――

「セットアップ」

グレイランドを起動した。

「…なんの真似だ?」

クロノ執務官がわたしを睨む。わたしはその質問に答える。

「放置した場合、次元震が発動する恐れがあります。とっとと早急にあれの停止、そして敵対魔導師の捕獲に向かいます、という建前ですが、何か?」

クロノ執務官もまた、デバイス――S2Uを起動する。なのはとユーノが慌ててわたしたちの間に割り込む。

「こ、こんな所で君たちが争ってどうするんだ!?リンディ提督っ!ジュエルシードをあのまま放置すれば余計に危険です!今すぐ回収を――」

ユーノがわたしを睨みながら言う。面倒を起こすな、ということですか?ゴメンです。でももう、止まりませんし止まる気もありません。

「セットアップ」

対してなのはは、わたしと同じようにレイジングハートを起動する

「ごめんなさい。私とプロトちゃんを行かせてください」

と、頭を下げる。困ったような表情のリンディ提督が口を開く。

「それは、その言葉の意味を知っていて言っているのよね?」

「――はい」

神妙に頷くなのは。わたしもそれに続く。

「リンディ提督。人間の手は2本しか無いのですよ」

首を傾げるリンディ提督に、続けて言う。

「わたしの手は、既に塞がってるのです。片方は武器を握ると決めたのです。もう片方は、なのはの為に使うのです」

けれど、と繋げる。

「背中には、罪を背負わなければならないのです。わたしは、この場でフェイトを見殺しにしたら、その罪を背負わなければなりません。わたしは、そんなのゴメンです」

わたしが背負った罪で、なのはまで巻き込んで転ぶわけにはいきません。

なのはがわたしに手を伸ばした時、いつでもその手を取れるようにしておかなければならないのです。

「ですから、右手で振り払える火の粉は先に振り払っとかなければならないのですよ」

その為ならば、邪魔なモノは切り捨てる。

管理局だろうが、ロストロギアだろうが

言葉の裏に「これ以上押し問答するくらいなら、押し通る」という覚悟を決めて。

しばしのにらみ合い。

やがてリンディ提督は、大きな溜め息を吐き、

「はぁ…エイミィ、転送準備開始」

「母さ…提督っ!?」

驚き、狼狽するクロノ執務官とは対照的に、どこか嬉しそうに、困ったように笑うリンディ提督。

「これ以上は無駄よ。だったら早いとこ事態の沈静化のために動いてもらったほうが建設的ね」

よく分かってらっしゃる。にやりと笑えば、リンディ提督も微笑む。




――良かった。
この人たちを、本当に嫌わなくてすんで。




「転送準備完了!なのはちゃん、プロトちゃん、準備おっけ?」

エイミィの元気の良い声に頷く。

「いつでもどうぞ」

「私も!」

「ああもう!僕も!僕も行くからね!」

元気の良いなのはと自棄っぱちのユーノにエイミィはにっこりと笑い、コンソールを叩く。

「おっけ!じゃあ行くよ!転送ー!」

慣れたくもない気持ちの悪い感覚と共に、わたしたちは海上に落とされた。




――――――
(作者)

今回のNGシーン

「セットアップ」

なのはは、わたしと同じようにレイジングハートを起動し――その砲口を足下…というか床に向けた。

「ごめんなさい。私とプロトちゃんを行かせてください」

と、頭を下げる。困ったような表情のリンディ提督が口を開こうとした、その瞬間

なのはの言葉に背筋が凍る




「じゃないと…暴発しちゃうかもしれないの」






ぼ、暴発…?

「うっかり、制御をミスッちゃうかも…なの」

くすくすと笑うなのは。展開される桜色の魔法陣。

なのはの目が…目が、暗い。そして、黒い。漆黒の闇に塗りつぶされたような瞳に、冷や汗が止まらない。

余談ですが、ブリッジの真下は…エンジンルームです

…なのは、なんでこんな娘になってしまったのですか?心強いですけど。頼もしいですけど!





それ以上に恐いです!




超一流のMは一流のSでもある件

中の人は某腹黒巫女だし、大丈夫大丈夫(なにが?)




・プロトの稀少技能

他人の魔力変換資質の同時使用は…可能です。
冷たい炎とかは無理ですが、炎と雷の二刀流は出来ます



[16022] 不屈の心と試作品 第14話
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/03/05 11:58
不屈の心と試作品
第14話





side:フェイト


見通しが甘かった。ジュエルシード6つを同時に相手にするなんてさすがに無理だった。

でも、今さら引く訳にはいかない。アルフの言葉を無視して始めたんだから、泣き言を言っている暇はない。

今はとにかく、ジュエルシードを封印すること。それだけに集中。

けれど竜巻が、雷が、暴風がそれをさせない。

痛みと疲労に集中力が乱され、焦りから放たれた攻撃は外れ、無駄に魔力と体力を消費する。

「ぎゃんっ!?」

っ――アルフっ!?
雷の直撃に悲鳴を上げるアルフ。私の防御のために自分の防御を止めたんだ、と気付き、後悔の念が浮かぶ。

また、私のせいで他の人が傷付いた。

「っ…」

唇を噛み締め、バルディッシュを構える。

もう止めたい。止めたいけど、母さんのためだから頑張らなきゃ。頑張って誉められるんだ。母さんに笑ってもらうんだ。母さんに名前を呼んでもらうんだ。

「っ!?」

また、小さな頭痛。脳の奥で何かが警鐘を上げる。なんで?なんで?痛い、痛くて思考が止まる。

「フェイトっ!後ろーっ!!」

アルフの声。頭痛を堪えて振り向けば、雷を纏った巨大な竜巻が迫っていた。

回避?不可能。近すぎる。迎撃?不可能。今から使える魔法じゃ通じない。防御?不可能。そもそも強力な防御魔法なんて持ってない。

せめて威力を軽減しようと、精一杯の魔力を込めた防御魔法を発動する。

竜巻が、展開された防御魔法に接触し――容易く打ち破った。

「ぁ…」

駄目だ。

――――私は、ここで









死ぬ








眼前一杯に竜巻が広がり―――

「ごめんなさい…」

呟き。

それは母さんに対してでも、アルフに対してでもなかった。

謝れなかった。傷付けたのに、謝れなかった。

だからごめんなさい。

謝れなくて、ごめんなさい。

「プロト…」

諦めと、後悔。そんな感情と共に、目を閉じようとした刹那。

「ディバイン!」「セイクリッド!」

私の前に、2つの影が割って入った

「バスター!」「スレイヤー!」

巨大な桜色の魔力光が竜巻を撃ち抜き、荒れ狂っていた雷が切り裂かれる。

竜巻が消え去り、攻撃の余剰魔力が一拍遅れて私に届く。

くるり、と振り向き、私を見て安堵したように微笑を浮かべる2人には、見覚えがあった。

「無事で良かったです。ギリギリでしたね」

「うん、かなり危なかったの。大丈夫だった?フェイトちゃん」

にっこりと笑う、白い魔導師の少女。周りを見渡しながら私に向かって近寄ってくる少女…じゃなくて、少年。

「プロト…に、高町、なのは…」

何故ここに?そんな疑問が顔に出ていたのだろう。2人は一度顔を見合わせ、にっこりと笑った。

「「助けにきたの」です」




side out





side プロト





本当に危なかったのです。あと一瞬でも遅ければ、フェイトはあっという間にミンチでしたね。

「皆、大丈夫だった?」

一人だけ高速移動魔法が使えないせいで遅れてきたユーノが合流。

「ユーノ、時間稼ぎに結界を」

「分かった。5分が限界だよ」

緑色の球体を形成し、魔力を送り続けるユーノ。それに頷き、フェイトに視線を映す。

「手酷くやられたですねぇ…」

あまりにも酷い。バリアジャケットは分解寸前。ただでさえ露出部分が多いバリアジャケットは、所々破れて素肌か覗いている。血が滲み、水飛沫や埃を被ったせいか薄汚れていて、とてもじゃないが女の子のしていい格好じゃないのです。

わたしは溜め息を吐き、指先に魔力刃を突き刺す。深く、戦闘に支障がない程度に血が溢れるように。

「「「ぷ、プロト!?」」ちゃん!?」

三人の慌てた声。いい加減慣れるですよ皆。わたしの環境適応能力を見習ってほしいものです。

「な、なにをむぐっ!?」

慌てた様子でわたしに飛び寄ってきたフェイトの口に指を突っ込む。

「ん、んむ…!!」

ぬめった舌がわたしの指を押しだそうと蠢く。頭を引いて抜こうとしたので、その頭を掴んで引き寄せ、指で舌をかき混ぜる。

「んぁ…んぐ…はぅ…!」

顔を真っ赤にして喘ぐフェイト。いやいやと首を振ろうとするので、抱き寄せるようにして固定。こくり、とフェイトの喉が動く。でも足りない。もう少し飲ませ――「なにやってるのー!!」あいたーっ!?

「ちょ、いきなり何するですか!?」

ちゅぷ、と音を立ててフェイトの口から指が抜ける。顔を真っ赤にしたフェイトが俯き、へたりこみそうになるのを慌てて抱き抱える。なんで空中で力抜くのですか。落ちるですよ?

「な、なにをする…は、こっちのせりふだよぉ…」

フェイトが涙目でわたしを睨む。わー、可愛い。じゃなくて、なんでそんな怒ってるのですかなのはー!?

「いきなりなんでフェイトちゃんにえっちなことしてるの!?怒るよ!?殴るよ!?」

「もう怒ってるし殴ってるのですーっ!」

それにえっちなことなんてしてないです!

「薬ですよぅー。昔士郎にも同じことしたじゃないですか…」

「く、薬って…え、お父さん…?え、えぇー!?アレ、プロトちゃんの血だったのー!?」

あれ?言ってなかったですか?…ぁー、そういえばあの時はちっちゃな小瓶に先に入れてから飲ませたんですね。忘れてたのです。

「ま、まぁとにかくフェイト。回復力があがるので2、3日で傷は治るはずですよ」

その分魔力消費するですが。ちなみに士郎の時は魔力0、体力もギリギリだったのでわたしが外から魔力を送り続けたのです。

「…じゃあ、この間の手のケガも…」

…あー、まぁ、そういうことですが…。

なんとなく気恥ずかしくて頬を掻く。…って、なんでそんな膨れっ面ですかなのはー?

「…あのさ、ラブコメってる所悪いんだけどさ…。そろそろ僕限界っぽい」

額に脂汗を浮かべて言うユーノ。…もう少しがんばるですよ男の子。ヘタレです。

仕方ない、わたしがどうにか――

「スティンガーブレイド」

響く声。視線を移せば、黒いトゲトゲ付きのバリアジャケットをまとった黒髪の少年と――その周りに浮かぶ無数の剣。

「エクスキューションシフト!!」

声と共に放たれた剣が、竜巻に突き刺さる。無数の剣に穿たれ、動きを止める竜巻。…ったく、粋な登場ですねぇ。

「クロノ執務官…」

飛び寄ってきたクロノ執務官に声をかける。クロノ執務官はどこかバツが悪そうな表情で、頬を掻く。

「…君達だけにこの状況を任せるわけにはいかない。管理局の執務官として」

「ぐだぐだ言ってねーでとっとと終わらせるですよ。さ、さっさと指示をくれです」

「…まぁ、良いがな」

はぁ、と大きな溜め息を吐くクロノ執務官。彼はフェイトを一瞥し

「すまないが緊急事態だ。敵意がないなら協力してもらうぞ」

「ぇ、あ…はぃ…」

ぼけっとしたままで返事をするフェイト。…まぁ、なんとかなるでしょう。

「わたしとクロノが2つずつ、あなた達が1つずつ魔力を吹き飛ばすので、なのはとフェイトですぐさま封印するのです。ユーノは離れてるですよ、時間稼ぎご苦労様でした」

ぽん、と軽くユーノの頭を叩く。わたしの顔をじっと見るユーノ。…なんですか。

「…いや、いいけどさ。君が天然の人たらしだってことはよく分かってたから」

はぁ、と大きな溜め息。…えー、なんですかそれ。なんでなのははそんなにうんうん頷いているのですか。フェイトまで頷いているのです。

「それはともかく…。行くぞ。――作戦開始!」

作戦なんか伝えられてねーですがね。苦笑いしながら全員から距離を取る。稀少技能ON。僅かにスピードが落ち、形成した魔力刃が結晶化する。他の人がわたしの稀少技能の範囲内から完全に出たのを確認しながら、一番遠くの竜巻に突撃する。

「魔を断て閃光――」

今日2回目のセイクリッドスレイヤー。…あまり何度も撃てる技じゃないですからね、この一撃で決めなければ

「セイクリッドスレイヤーっ!!」

範囲内に入った竜巻の表面が結晶化していく。…うげぇ、あれぶつかったら即死ですね。

結晶化した灰色の魔力刃と同じく結晶化した黒い竜巻が真っ向からぶつかり合う。

<ブレイク>

グレイランドの声に合わせて魔力を流し込む。魔力刃が一瞬膨張し――

「バーストっ!」

破裂する。散弾のように飛び散る魔力刃が竜巻とぶつかり合い、その表面にヒビを入れる。

「ダンガー!」

ヒビの中心――もっとも傷が低い所へと向かい、シザー・モードへとグレイランドを変形。魔力刃は形成しないまま、その切っ先を叩き込む。

<アンカー>

切っ先が深く突き刺さったまま魔力刃を伸ばす。それは楔のようにヒビの中へと潜り、ヒビを深くし――竜巻を構成する結晶化した魔力そのものを砕く。

きらきらと黒い結晶が粉々になって散るなか、その中心で青い光を放っていたジュエルシードを掴み――じゃなくて、グレイランドで挟み取る。

「よしっ!次!」

――へと視線を向ければ、金色と桜色の魔力光が3つの竜巻を同時に消し飛ばしていた。なんですかあの馬力は。クロノ執務官も同時に2つの竜巻を消し飛ばしてますし…。

え?なに?わたしいらない子です?役たたず?一人だけ火力足りないですか?

視線を再びなのは達に戻せば、ジュエルシードを間に向かい合う2人。どうやら2人で何か話し込んでいる。あまりにも距離が離れているので何を言っているのか分からないですが…どうせなのはのことだから、「友達になりたいの」とかそんな感じですかね?あ、ほら握手しようとしてるですし。

フェイトは伸ばされた腕を呆然と見つめ、ゆっくりと手を伸ば――


――瞬間、天空から雷が降る。気付いた時にはソニックライドを発動させ、雷と2人の間に割り込んでいた。

「――トライシールド!4重展開(クワドロプル)!」

目の前に展開される4枚重ねの三角形の盾。っぅ――…無理ですね。わたしの防御魔法じゃ防ぎきれないです。稀少技能によって結晶化した三角形の盾は次々と雷撃に貫通される。

「プロテクション!」

後ろからなのはの声。桜色の半円のドームが結晶化し、その表面を雷撃が削る。…助かった、のでしょうか。確認する余裕がない。視界の端に金色の髪が崩れ落ちるような光景が見えた気がした。防ぎきれなかった!?

「フェイトの邪魔をするなぁぁぁああああああっ!!」

――っ!?またあなたですか!!

唐突に海から飛び上がってきたアルフがジュエルシードを握り締める。クロノ執務官が慌ててアルフに向けて攻撃しますが、それよりも早くアルフはぐったりとしたフェイトの体を抱え、転移魔法を発動する。――ちっ、逃げられた!

やがて雷撃が止む。なのはのプロテクションもまたヒビが入り、わたしの盾は三つは貫通、4つ目もほとんど砕け、余波で片手に軽くない火傷を負っていた。

「…逃げられたです」

しかも、5つもジュエルシードを奪われて。

唇を噛み締め、悔しさに耐える。そんなわたしをなのはが心配そうに見つめている。わかってます、すぐに気を取り直して――

『皆、大丈夫!?』

唐突に目の前に開かれるウィンドウ。映っているのはリンディ提督。

『とりあえず、皆、帰ってきなさい。…もしかしたらこの事件、凄く厄介なことになるかもしれないわ』

大きな溜め息を吐きながら、リンディ提督はやっかいなことを呟いた。




―――
(作者)

新魔法について
・ダンガーアンカー
密着状態から貫通能力に優れた杭のような魔力刃を形成する。
それだけ。例によって例の如くクロスレンジ技。
アンカーの名の通り、結晶化した魔力刃は消えないのでテント張りには重宝する。んなことで使うな。
シザー・モードでのみ仕様可能。刃を開いた状態で、真ん中から生える。



Mなのはシリーズの人気にビビる。
さすがに今回は思い付かなかったし…


あと、希望者が多い場合は特別番外編を昼間に載せることを辞さない覚悟です。


…怒られたらどうしよう。



[16022] 不屈の心と試作品 第15話
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/03/07 12:01
不屈の心と試作品
第15話





アースラに戻ってきたわたしたちを出迎えたのは、沈痛な表情のクルー達でした。

「何かあったのですか?」

問い掛ければ、エイミィが困ったような笑みを浮かべて答える。

「さっきの雷撃さぁ…。オーバーSランクの攻撃だったんだよねぇ…。つまりさ、相手にはオーバーSランクの魔導師がいて、ジュエルシードは半分くらい奪われちゃったっていう最悪に近い状況なんだよね…」

…なんとまぁ。
頭を抱えたくなる。フェイトも魔導師としてAAAランクはあるでしょうに、その上オーバーSランクの魔導師ですって?どれだけの戦力を持ってるんですか。

だが、疑問も残る。オーバーSランクの魔導師が最初から動いていれば、わたしたちが集める暇もなく全てのジュエルシードを集めることが出来たはずです。なのに何故わざわざフェイトに集めさせたのでしょう?

「今魔力パターンを解析しているところだから、犯人は分かると思う…っていうか、ほとんどもう分かってるんだよね」

ふぇ?と首を傾げるわたしたち。エイミィは苦笑いしながら空中にモニターを開く。

「…この人は?」

長い黒髪の暗い表情の女性。凄く陰気な感じで、夜道にあったら間違いなく悲鳴上げたくなるような見た目の方です。

「名前はプレシア・テスタロッサ。ミッド式の魔導師で、26年前まで中央技術研究所に勤めていた人。凄く有能な天才さんだったみたいだけど、当時彼女が研究していた時空航空エネルギー駆動炉【ヒュードラ】の開発実験で事故を起こして一人娘を失い、その数年後に行方不明。今は魔力パターンを確認中…っと、結果出た。うん、やっぱり一致してる」

…プレシア・【テスタロッサ】ですか。十中八九、フェイトの言う【母さん】とはこのプレシアのことですね。

「…それから先は?」

「行方不明、さらに消息不明。ついでに言うなら生死不明。今回のことがなければ生きてることすら疑問視されてただろうね」

そんな人間が何故ジュエルシードを?…あれ、ちょっと待つですよ?

「…あの、プレシアさんって管理局に勤めてたときいくつだったですか?」

「え?んーと…さぁ。20後半くらいかな?」

…それから26年経っててフェイトが9歳…って。がんばりすぎでしょう。40いくつで産んだのですか?凄い根性です。

「あのね、プロトちゃん」

うん?首を傾げながら振り向けば、なんだか泣きそうな顔をしたなのは。

「フェイトちゃん…なんだか凄く怖がってた気がするの。その、お母さんの話をしたとき」

アレ、気付いていたのですか。

まぁ、それはともかく、母親を怖がる…ですか。

「…虐待、かな」

ぽつりと呟かれる言葉。ユーノの推測は恐らく当たっているのでしょう。

母親に虐待されていて、ジュエルシードを集めることを強要されている。そう考えれば、あそこまで必死になって戦う理由も頷け…る?少し引っ掛かるものはあるですが…

「…クロノ執務官」

「…もしそれが本当ならば、フェイト・テスタロッサ嬢の犯した罪には情状酌量の余地がある、とだけ言っておこう」

ん、言質は取りました。仮に違ったとしてもでっち上げれば最悪の場合、フェイトのことだけは助けられるです。フェイトさえ助けられるなら、会ったこともないフェイトの母親なんてどうでもいいです。…一応助けられる準備だけはしておくですが。といっても何をどう準備すればどんな風に助けられるのかさっぱりですね。

「やはり、もう一度フェイトに会って話をしてみないことにはどうにもならないですね」

「うん…。大丈夫かな、フェイトちゃん…」

眉根を寄せ、視線を遠くにやるなのは。…やはりフェイトが雷に撃たれたと思ったのは間違いじゃなかったのですね。それをなのははすぐ近距離で見てしまったのですね…

なのはの頭を撫でて励ましつつ、エイミィに視線を戻す。

「可能な限りプレシア・テスタロッサの情報を取り入れてほしいです。家族構成や送ってきた人生、趣味嗜好に至るまでの全てを」

「んー…艦長にもクロノくんにも言われてるからもうやってはみてるけど、本局に問い合わせになるからかなり時間かかると思うんだけど…」

「構いません。お願いするです」

暢気に返事するエイミィに頷きを返しつつ、わたしはリンディ提督のとこに向かう。

「ただいまーです」

「違うだろっ!まずは謝れ!」

あいたっ!後ろからクロノ執務官の突っ込みが入る。何を言うですか。挨拶は基本中の基本なのです。

「まぁ、仕方ないわね。それで皆さん、怪我はないのよね?」

くすくすと小さく笑うリンディ提督。おー、さすが人妻は包容力が違うのです。桃子?人妻というより極妻の迫力があるですよ?

「それはともかく、あなたたち、これからどうする?ジュエルシードの所在はしっかりしたから、これからは私達だけでも…」

「そんなのダメなの!」

リンディ提督の言葉を遮って、なのはが声を上げる。

「私、まだフェイトちゃんとちゃんとお話出来てない!こんなところで終わりなんてダメなの!」

…ったく、子供の理屈ですねぇ。と苦笑い。なのはのこうゆうところ、嫌いじゃないのですけどね。

「…そう言うと思ったわ」

微笑を浮かべるリンディ提督。ま、なのはは単純ですからね、思考を読むのはそんなに難しいことじゃなかったでしょう。

「でも、今は一旦家に帰りなさい。フェイトさんやプレシア・テスタロッサのことが少しでも分かったらすぐに連絡するから」

「絶対ですよ。約束破ったらクロノ執務官はシークレットブーツ愛用者だって噂を流すです」

「だからなんで君はそんなに僕を陥れようとするんだっ!?」

クロノ執務官が少し泣きそうな顔でわたしに詰め寄ってくる。弄り甲斐のある自分の容姿と性格を恨むのです。

「で、どうするですかなのは?一旦帰るです?」

「うん…。そうだね。お母さんたちにこれから帰るって電話してくるね」

ぱたぱたと足音を響かせて去っていくなのは。

わたしはその背中を見つめながら、嘆息する。

…またなんか悩んでますねぇ

わたしが力になれることなら良いのですが…。





side アルフ




「あっ…!っぅ…!」

ぎりり、と奥歯を噛み締める。必死で飛びかかりたい衝動を抑えて、けれど精一杯の抵抗にクソババアを睨む。

自分の主人を傷付けられているのに、何もできないのが堪らなく辛い。

「足りないのよ。たったの9つじゃあ…!」

「ひぎっ…!?――くぅぅ…」

クソババアがムチを振るい、酷くゆっくりと言葉を紡ぐ。何度も今すぐその顔面に拳を叩き込んでやりたいのに、フェイトの命令…いや、お願いがそれを許さない。

主の為に何もできないのが悔しくて仕方ない。

乾いた音が何度も響き、フェイトの押し殺した苦鳴が続く。…口の中に鉄臭さが広がる。なんだ?…噛み締めた唇が破れ、口の端から血が伝っていた。それを拭いもせず、目の前の光景を目に焼き付ける。

やがて、ぴくりとも動かなくなったフェイトに満足したのか。クソババアは荒い息を整えながらフェイトを見下ろし、口を開く。

「最低でもあと4つ…いいえ、全てのジュエルシードを集めてきなさい」

「…」

フェイトは無言だったけど…愛する母親の命令に、小さく頷き――気を失う

「フェイトっ!」

精神リンクが途切れたフェイトに駆け寄る。

「…っ…ぅぁ」

…酷い。ぼろぼろになったフェイトの姿に、涙が滲む。


なんで…


なんで親なのに、こんな酷いことが出来るんだ…!?

「…ちくしょう」

勝手にこぼれ落ちる涙を拭い、触るのも躊躇するような傷を全身に負ったフェイトを抱き上げる。

ポロポロと溢れる涙がフェイトの体に落ちていく。ちくしょう、なんで、なんでフェイトばっかりこんなに苦労しなきゃならないんだよ…!

フェイトに宛がわれている部屋。そのベットにフェイトを寝せ、ないよりはマシという程度の治癒魔法をかける。

何度かそれを繰り返すと、フェイトの傷が徐々に消え始める。

「…?」

こんなに効く魔法だったっけ…?疑問は残るけれど、傷が治る分には困らない。何度もかける。魔力を全て使い果たすつもりでかけ続けると、何度も鞭で打たれて真っ赤になっていた肌が元の白い肌に戻る。

それに安堵の溜め息を吐いて――

あたしは、何の迷いも躊躇も無しに部屋を飛び出した。

「もう、許さない!」

何度もあたしのご主人さまを傷付けた報い、受けてもらう!

向かうべきはクソババアの部屋。匂いをたどって走り、部屋の扉を蹴り開けた。破片が散り、轟音が城中に響いた気すらする。

「クソババァああああああッッ!!」

部屋の真ん中で背中を向けて立っていたクソババアが音に気付き、振り向いたところへ全力で拳を叩き込む。

手加減なんかしない!お前はここで死ね!

首を引きちぎるつもりで繰り出した拳は、けれどクソババアに届く事はなかった。

―――ガァンッ!

分厚い金属の板を殴ったような衝撃。痛みをこらえてクソババアを睨めば、クソババアを覆うように半円状の防壁が展開されていた。迷わずバリアブレイクを発動。物理障壁しか張っていなかったクソババアの防壁を破壊し、その襟首を掴みあげる。

「あんた母親だろっ!?なんであんたフェイトにあんな酷いことができんだっ!?」

あらんかぎりの感情を込めて怒鳴る。だが、クソババアはそんなあたしを嘲笑うかのように唇の端を吊り上げて笑った。

「…所詮人形が作る使い魔なんて失敗作、ということね…」

「話聞いてたのかい!?あんたは――」

そっ、と

酷く優しく、あたしの腹にぞっとするほど冷たい手が添えられる。

「しまっ――がっ!?」

強烈な殺傷設定の魔力弾が放たれ、内蔵を直接かき混ぜられたような痛みと衝撃が走る。あたしはそのまま吹っ飛び、壁に叩きつけられて「かはっ!」血を吐いた。

「あの子、使い魔作るの下手ね。余計な感情を持たせすぎなのよ」

はぁ、っ大きな溜め息を吐くクソババアにまた腹の内から憤怒が沸いてでる。気付いた時には、あたしは血を吐きながら叫んでいた。

「あの子は…フェイトは、あんたに笑ってほしくて、優しいあんたに戻ってほしくて頑張ってんだろうが!?なのに何であんたがフェイトを否定するんだよ!?」

感情に任せて立ち上がり、ふらふらと頼りない足を叱咤しながらクソババアに向かって、もう一度拳を――

「邪魔よ。消えなさい」

放たれる光、衝撃。

意識が吹っ飛びそうになる。けれど今、ここで意識を失えば二度と目覚められないのが分かる。

駄目だ。

今のあたしじゃ、フェイトを助けられない。

だから、だから尺だけど。

何度もフェイトを助けてくれたアイツなら

何度もフェイトに話しかけてたアイツなら

何度もフェイトを救おうとしてくれたアイツ達なら。

転移魔法を発動する。あたしに興味はないのか、クソババアはそれに何の反応も示さなかった。

「頼む…高町なのは…プロト…」

フェイトを助けるのに、力を貸してくれ


僅かな願いに賭けて、あたしはあの街に転移した。



――――
(作者)



番外編の人気にビビる

ざっふぃはロリーに落ちました。stsのあるふはろりろりだしね。
しかも重度のM。ざっふぃは病気です

えりおは大丈夫、まだ精通してないから。なにがとは言わんが大丈夫

ゆーのも病気だ。放置ぷれいかまされて悦んでるんだ。くろのも

うわぁ、stsは変態ばっかりじゃないか(待て

病気なのは作者だ

だが自重する気はあんまりない

一応、XXXを1個書いてみたんだが、見たい人挙手ー

ってか本編よりあっち書いてた方が楽しかったって何?

でもさすがに本編にあのノリは持ってけないしなぁ…


悩むぜ

あと、あくまでIFなのでプロトの魔導師としての云々も本編にゃ関係ないっす


多分本編ではバリバリ魔導師やってんじゃないかな?



[16022] 不屈の心と試作品 第16話
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/03/08 09:37
不屈の心と試作品
第16話






…疲れたです。

ぼふっと音を立ててベッドに倒れ込む。

なのはは当然のようにわたしも一緒に帰るものだと思っていたらしく、その説得に時間がかかったのです。
前に一回帰してもらったのも本当なら不味かったのですよー?わたしの身柄は、リンディ提督が預かってることになってるのですから、いくら家族に会うためと言っても帰らせてはいけないのです。独房にでもいれて監視するのが普通なのですから。

それを聞いたなのははわたしを引き摺って帰ろうとするわ泣き落としにかかるわ最終的にセットアップまでして脅迫するわで大変だったのです。誰ですかあの娘をあんな風にしたのは。わたしか…?

まぁ、なんとか説得して渋々転送されたなのはを見送り、わたしはここ数日間ですっかり馴染んだベッドに倒れこんでいるわけです。

…しかし

「…なのはの匂いがする」

ベッドから香る甘い香り。少し照れる。…ってあれ?わたしが使ってた枕がないです…。なのはが間違えて持ってったですか?何のために?

「プロト、入るぞ」

声と共に開かれる扉。わたしはなんとなくなのはの香りがする枕を抱き締めながら体を起こす。入ってきたのはクロノ執務官でした。

「…なんていう格好してるんだ」

呆れたように言うクロノ執務官。なんでしょう?おかしいですかね、このTシャツ。武装局員の男性に借りたものなのでかなり大きいのですが。

<Tシャツ一枚しか来てないように見えるんですよムッツリ>

「下にスパッツ履いてるですよ?」

<逆に破壊力アップですムッツリ>

なんですかその語尾は。…うん?何故クロノ執務官はデバイスを構えてるですか?

「…僕に何か言いたいことがあるようだなグレイランド。聞いてやろう」

<ム〜ッツぅーリスーケーベ〜♪>

「何故歌う!?」

仲良いですね2人とも。

「そんなことより何か用事があったのではないのですか?」

話が進まないので本筋に戻してみる。今にも攻撃魔法を使いそうだったクロノ執務官が慌ててデバイスを待機状態に戻し、コホン、と咳払い。

「提督が呼んでいる。何か君と僕に大切な話があるらしい」

…真面目な話ですかね?勤務時間外なのにマザコンのクロノ執務官がリンディ提督を提督って呼んでますし。

とりあえず言われた通りに部屋を出ようと――なんですかクロノ。なんで止めるですか。着替え?…分かりましたよ。

ラフなシャツと半ズボン。クロノからの借り物ですがサイズは大分大きい。…むぅ。なんか屈辱。とにかく着替え、リンディ提督の部屋に向かう。

「来てやったですよー」

部屋に入れば、制服姿のリンディ提督とエイミィの姿。…はて?なにかやらかしましたかね?

んー…クロノ執務官のツケで食堂のデザート全部食べたのがいけなかったのですかね?

「ああ…待ってたわ…」

どことなく疲れたような表情のリンディ提督。ったく、働きすぎなんですよ。年考えて隠居しろです。

「…また失礼なこと考えてるわねー?」

リンディ提督がジト目で見つめてきたので視線を逸らす。合わせなければ喧嘩にならないので逸らしたほうも負けないのです。何言ってんですかねわたし。

「ぇえと…。何から話せばいいやら…」

頭を抱えるリンディ提督。すると、首を傾げているわたしの前に、何故か黒いロングコートを着たエイミィが立ち――










「君は――今日初めて会った知らないお姉さんと管理局。引き取られるならどっちがいい?」










…とかのたまった。

とりあえず殴っておいた。クロノ執務官を。

「何故僕を殴る!?」

「彼女の罪は彼氏が背負うんです」

「え、エイミィと僕はそんな関係じゃ…!」

真っ赤な顔で言っても説得力皆無です。エイミィはくすくすと笑い、

「ようするに、このままだと君の体、色々問題があるから管理局の特別保護施設で隔離されることになっちゃうんだよね」

「エイミィ!」

リンディ提督が怒りを顕に怒鳴る。

「子供に直接的に教える必要はなっ…いと思うわ。もう少し、オブラートに包みなさい」

…ほんと、お人好しです。我知らず、口元に笑みが浮かぶ。

「…お気遣いなく。まだまだ子供ですが、見なければいけない現実があることくらいは理解してるです。ついては、詳しい説明を要求するですよ」

わたしがそう言えば、リンディ提督はモゴモゴと口を動かし、大きな溜め息を吐く。

「…アナタの精密検査の結果、アナタの危険度がかなり高いことと…その、その体に使われている技術は素晴らしい、と言うことが分かったのよ。だから一部の…本当に一部よ?マッドな人たちが勝手に騒いでるだけで、管理局全体がそう言ってる訳じゃないのよ?…その、一部の人たちが、アナタを…」

「研究材料に差し出せ、そう言ってきた、と」

わたしの言葉に頷くリンディ提督。申し訳なさそうに、悲しそうに、わたしに同情するかのように。

少しだけ、笑みが漏れる。

「だけど、私はそんなことさせたくないわ。だからアナタを引き取り、後見人として…アナタを監視する、という名目で進めたいの」

「…少なくとも、提督と執務官、この2人が常に傍で監視する、という名目があれば君が特別隔離地区に送られることはない。流石にパーソナルデータの提供などは断れないが…連中がいきなり手を出してくる、という事態は防げる」

クロノ執務官も協力しているのですか。くくっ、と堪えきれない笑みが溢れた。クロノ執務官が訝しげにわたしを見ている。

「どうした?」

「…いえ、なんでも」

…まったく

本当に、どうしてこんなに



世界はこんなにも、優しいのですかねぇ





「仕方ありませんね。三食昼寝付きなら引き取られてやらないこともなふぎゃっ!?」

な、殴られた!グーで!クロノ執務官なんかに!

「調子に乗るな!これでもギリギリの綱渡りなんだぞっ!」

うぅ、場を和ませようと思っただけですよぅ…。だがリンディ提督はそれをちゃんと分かってくれたのか、妙に爽やかな笑みを浮かべて

「保護観察期間をしっかりと終えれば、高町さんの家に帰らせてあげることも出来なくはない…と思うわ。本当なら執務官にでもなってもらえれば、もっと楽なんだけど…」

「管理局は嫌いです」

「そうよねぇ」

苦笑いのリンディ提督。クロノ執務官は仏頂面で

「よく管理局員の前でどうどうとそんなことが言えるな?」

うん?何をアホなことを。

「確かにわたしは管理局は嫌いですよ?だから執務官も提督も嫌いです。でも…」

なんだかちょっと落ち込んでるリンディ提督に笑みを見せつつ、

「【クロノ】や【リンディ】、【エイミィ】やアースラクルーは嫌いじゃないですよ。ちょっと皆頭固いですけどね」

「プロトさん…っ!」

抱き締められた。むぅ…相変わらずでっかいです。お裾分けできるもんならしてあげたいですね。士郎に。

「離すですよー」

身体強化の魔法を使わなければわたしの膂力は一般的な小学生より少し上、程度です。この身体、筋肉が付き辛いんですよね。魔法生物が筋肉を鍛えようとしてもすぐに治してしまうのです。まぁ、体捌きや筋肉の効率運用を突き詰めていけばこのぷにぷにボディでも大抵の敵に負けることなどなくなるですが。

話が逸れたです。とにかくわたしが言いたいのは、リンディ提督に抱き付かれても振りほどけねーって話です。

「せめてここにいる間は、私のことを母だと思って甘えてくれて構わないわ!今ならクロノっていうお兄ちゃんも付いてくるわよ!」

クロノ執務官はおまけ扱いですか?呆れたような目でこっちを見ながら頭抱えてるですよ?

「はぁ、それは構わないですが、ちゃんと士郎や桃子に説明はするですよ?じゃないと化け物家族がミッドに襲来するです」

下手な魔導師より強いですよアイツら。桃子には何故か勝てる気がしないですし。

「ええ、分かってるわ!そうだわ!なんならお母さんって呼んで!私、娘が欲しかったの」

「わたし男ですぅー」

「対した問題じゃないわっ!」

いやでっかい問題ですよね?

駄目だこいつ…早くなんとかしないと…って気分でポリポリ頬を掻いていたら、急に満面の笑みを浮かべたリンディ提督が立ち上がった。わたしを抱き締めたまま。

「そうだわ!皆でお風呂に入りましょう!」

何故そうなるですか。

「地球には裸の付き合いっていう習慣があるんでしょう?だったら、お風呂が一番じゃないっ!」

嬉しそうな笑みを浮かべるリンディ提督。わたしはでっかい溜め息を吐く。今のリンディ提督は暴走してるときの桃子にそっくりです。つまり、誰にも止められない、と。

ならばせめて、道連れを…っ!

「と、当然クロノ執務官も一緒にですよね?」

「プロト!?」

「あら、当たり前じゃない」

「母さんっ!?」

狼狽するクロノ執務官。リンディは語尾に音符やらハートやらが付いていそうな調子で満面の笑み。

「エイミィも…っていないですっ!?」

これじゃあクロノ執務官へのダメージが半減するです!ん?そんなに睨むなですよクロノ執務官。悪いのは母親の教育を間違えたアナタなのですから。

そして――――






まぁ割愛。

クロノ執務官が顔を真っ赤にしてまったくわたしに視線を向けなかったり、お風呂に入ってる間はずっとリンディ提督に抱き着かれてたり、身体中すみずみまで洗われてちょっぴりお婿にいけない気分だったりしますが割愛。恥ずか死にます。

…思い出したくないからですよ。文句あるですか?

「…忘れよう、忘れるんだプロト」

「そうですね。14にもなってお母さんと一緒にお風呂に入った事実は忘れるがいいのです」

「思い出させるなー!!」





――――
(作者)

プロトは前にも言ったが気にいった人を見捨てられません。さらに、良くも悪くも【真っ直ぐ】な良い奴が好きです。
あーぁ、高町家とのお別れフラグが立っちゃったよ…

仕方ないんだけどね
なのは攻略したから、次はフェイトルートなんだから

プロトはルート決め打ち派。同時に攻略なんて出来ません。

まぁ、完結時に誰とくっついてるかは分からないんだけどさ。
とりあえず用意してるのは六課EDとなのはED。
stsまで行くの、大変そうだがね

今回のは【そのころなのは】

「ただいまー!」

「おかえり、なのは。…ところでその枕は?」

「プロトちゃんの香り(持ち帰り用)なの。最近、プロトちゃんの匂いがないと安眠できなくて…」

「そ、そう…(なのはの将来、大丈夫かしら?もうプロトちゃんにお嫁に貰ってもらわないと、確実に嫁き遅れるんじゃ…)」

「もう、ユーノくんだめなのー。プロトちゃんの匂いが獣臭で薄れちゃう」

「きゅうっ!?(ひどくねっ!?僕の扱いひどくねっ!?)」




とりあえずXXX板に特別番外編他をぅp。
楽しんで頂けたら幸い

あっちは貼りっぱなしなのでこっちで見逃した人はあっちでどうぞー




・プロトの血液

治癒魔法を【かけられた方】のブースト効果があります。【かける方】に飲ませても意味はありません



[16022] 不屈の心と試作品 第17話
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/03/09 10:38
「…は?」

わたしは呆然としながら声を漏らした。

自分の眼を信じられなくて。

ここ数日、リンディ提督の部屋で主に後見人になるための書類に目を通したり、ミッド語の勉強などをしていたのです。わたし、地球にある研究所で生まれたからミッド語使ったことないんですよ。知識にはありますが、勉強したから使えるという訳じゃないですから

とにかく、そのまま眠ってしまい、ちょっぴり恥ずかしい思いをしながらブリッジに向かってみれば――

モニターの中でなのはとフェイトが、向かい合ってデバイスを構えていたのです。

…え?わたし仲間外れ?っていうかわたしやっぱりいらない子?





不屈の心と試作品
第17話






「く、クロノクロノクロノー!!??」

全員集合しているブリッジ。とりあえず一番近くにいたクロノに声をかける。動揺のあまり執務官付けるの忘れたですっ!?

「…なんだ」

無茶苦茶不機嫌そうに返事するクロノにちょっぴりびびりつつ

「どうしてあの2人が戦ってるのですかっ!?」

「僕が知るかっ!!」

そんな怒鳴らなくてもいいじゃないですかっ!

「負傷したフェイト・テスタロッサの使い魔を保護し、その報告等のためにアースラに来てもらおうと迎えに行ったら戦っていたんだ。プレシア・テスタロッサを逮捕するのが決まったと思ったのに、何故戦っているのかなんて僕には分からない」

こんなことになるならフェイト・テスタロッサのことを一任するんじゃなかった…と呟くクロノ。っていうか何ですかそれっ!?

「わ、わたしそんなこと聞いていないですよっ!?」

「僕が知るかっ!母さんに伝えるように頼んだはずだ!」

「あ…ご、ごめんなさい。忘れてたわ…」

リンディィィイイイッッ!?ああもう!わたしたちがケンカしてる場合じゃなかったですっ!

「クロノ執務官、転送許可を!」

「っ、わかった。執務官権限により転送魔法の使用を許可する!無理はするな。あの2人の戦いに巻き込まれたらどうなるかわからんぞ!」

「死亡フラグ立てるなですぅ!エイミィ、転送を!」

頷き、コンソールを叩くエイミィを横目にモニターを見つめる。画面の中では、2人が海上を飛び回り、お互いの誘導弾を弾き、かわし、撃ち落としていた。

「間に合って!転送開始!」

わたしの足下に展開される魔法陣。あの2人を本気で戦わせたらいけないですっ!

主に周りへの被害的な意味で!

転送魔法が発動し、視界がぐんにゃりと歪む。

「プロト、戦いになるならなるべく長引かせるんだ。その間にフェイト・テスタロッサの帰艦先を割り出す。とにかく時間をかけろ」

「…っ、貸し1つですからね!」

最後に聞こえたクロノの声に内心で舌打ち。…なんで今更になってフェイトと戦わなきゃならなくなったのですかなのはっ!



体がずぶりと魔法陣に呑み込まれ――視界が元に戻ると同時に飛び上がる。一刻も早くなのはに加勢して――

『なのは、今加勢しま――』

『プロトちゃん、ダメッ!』

頭に響いた声に動きを止める。なのは?何故止めるのですか?

数百メートル先では金色と桜色の魔力光が縦横無尽に駆け巡り、お互いに疲弊し、傷だらけになった2人が、それでも足を止めずに魔法を撃ち合っている。

『――プロトちゃん、ごめんね。でもね、ここは私がやらなきゃいけないの。私がフェイトちゃんに思いをぶつけなきゃ、何も伝わらない。時にはぶつかり合うことも大切なの。…だからっ!』

なのはの放った誘導弾がフェイトに向かって突き刺さる。だが、巨大な処刑鎌状の魔力刃でそれを切り裂き、高機動魔法で距離を詰めるフェイト。

『だから、それは私がやらなきゃ!フェイトちゃんの思いを受け止めてあげなきゃいけないのっ!』

間一髪、バリアジャケットの一部を切り裂かれながらも斬撃をかわし、誘導弾に撃たれながらも再び距離を取るなのは。

なんで…

拳を握りしめる。皮膚が避け、血が滲む。ぎりりと噛み締めた奥歯から、鉄錆の味がした

「ひどい、ひどいですよなのは…!」

戦っているアナタをただ見てろだなんて、どんな拷問なんですか…!

確かにフェイトと戦いたくなんてないです!でも、それでも…!

『ごめんね。プロトちゃん…。今、フェイトちゃんすごく追い詰められてるみたいなの。プロトちゃんがいるってことにも、多分気が付いてないよ』

『だったら尚更わたしが助けに入った方が…』

『ううん、駄目。…私がやらなきゃ意味がないの。…プロトちゃんは悔しいだろうけど、我慢して』

命令口調。だけど、悪いと思ってはいるのでしょう。戦いながらも、なのはの口元に浮かぶのは苦笑。

『…ごめんね?』

『本当にです…!帰ったらいぢめてやります…!だから…!』

『…うん』

『帰ってこなかったら、覚悟しなさい…!!』

『任せて!約束は守るためにあるんだよ!』

なのはの勢いが増す。
それに焦りを覚えたのかフェイトを中心に巨大な魔法陣が展開、なのはの回りで金色の魔法陣がいくつも明滅する。なのははどれに対処すればいいのかわからないのでしょう。落ち着きなくキョロキョロと周りを見回して――

「っぅ――なのはっ!」

わたしの掛け声とほぼ同時に、なのはの手にばちばちと放電するバインドが――っ!

反射的に助けに入ろうとしたわたし。それを、グレイランドが止める。飛行魔法が勝手に解除され、落下するわたし。

「アルカス・クルタス・エイギアス――疾風なりし天神、今、導きの元撃ちかかれ――バルエル・ザルエル・ブラウゼル」

フェイトを中心としていくつもの魔力弾が生まれる。あんなの食らったらただじゃすみませんよ!今すぐ助けに行かなければ!

「詠唱魔法っ!?不味いです!何故止めるのですかグレイランドっ!」

〈信じなさい、あなたの信じる人を。そうすれば――〉

「フォトンランサー・ファランクスシフト――打ち砕け!ファイア!」

フェイトの声と共に放たれる魔力弾。それは次々となのはに突き刺さり――爆発する。

「なのはぁぁぁああああああッッ!!」

絶叫するわたしに、けれどグレイランドは落ち着いた声で告げる。飛行魔法を今更になって再発動させる。

〈奇跡は、起こせるものです〉

煙が晴れたところには、満身創痍で、ぼろぼろになりながらも――不適な笑みを浮かべる、なのはがいた。

「バインドも解けたし…次はこっちの番だよ!ディバィィィン…」

仕留めたと思っていたのだろう。フェイトの表情には驚愕が見て取れる。

「バスタァーーーっっっ!!」

桜色の奔流が吹き荒れ、慌ててフェイトが放った魔力弾が飲み込まれる。展開される防御魔法。桜色の奔流が直撃し、徐々にフェイトのバリアジャケットは弾け飛んでいく。なのはの砲撃を受け止めるなんて、自殺行為です!

「受けてみて!ディバインバスターのバリエーション!」

ディバインバスターが途切れた瞬間、なのははフェイトの上空を取る。慌てて回避行動に移ろうとしたフェイト。――その両手足に出現する、桜色のリングバインド

「今ので…バインドの術式を覚えたですか…?」

〈何度もマスターに食らったお陰もあるでしょうが…。なのはさまは天才ですから〉

グレイランドの呟き。わたしはそれに頷くことしかできない。なんていう、才能。あえて攻撃をくらい、バインドを解除する度胸…あれが、つい先月まで一般人だった少女なのですか…?

「これが私の全力全開っ!――スターライトォ…」

見たこともないほど巨大な魔法陣。なのはの周囲に漂っていた余剰魔力がその中心へと集まっていく。

「収束砲っ!?身体への負担がでかすぎです!」

――口ではそう言いつつも、頭の中では分かっている。

痛くても、苦しくても、それでもなのはは撃つだろう。

だってなのはは、きっと怒ってるから。

フェイトと、フェイトと戦うことになった元凶に

「ブレイカァーーーっっっ!!」

放たれる極太の魔力流。全てを飲み込む煌めきは、真っ直ぐに――フェイトを飲み込み、大海へと突き刺さる。

水飛沫が舞い、余剰魔力が暴れ狂う。距離はかなりあるのに、暴風がわたしのところまで届いた

「…喰らいたく、ないですね」

〈マスターが喰らったら骨も残らないのでは…?〉

…うん、そんな気がするです。

なのはが自分で撃墜したフェイトを追い掛ける。海に落ちたフェイトを抱き上げ、再び海上へ。

フェイトをお姫様だっこで抱えながら、にこやかに話をする2人。フェイトのデバイスから、9つのジュエルシードが吐き出される。

…さて、今までのプレシア・テスタロッサの行動から推測するならば

〈気合いは?〉

グレイランドの声。1つ1つに頷いて答える。

「十分」

〈魔力は?〉

「満タン。」

〈怒りは?〉

「煮えたぎるほどに!」

予想通り、空からプレシア・テスタロッサの攻撃が降る。それはフェイトのジュエルシードを飲み込むと、物質転移を発動。

「逆探知!」

〈既に。座標、割り出しました〉

「では、転移を」

許可を得てない転移魔法。また怒られてしまいそうですね。

もっとも、怒られたくらいで止まれるはずもありませんが。

フェイトを虐待して無理矢理言うことを聞かせ

わたしの大事な家族を危険にさらし

あんな良い娘たちを戦わせた

その罪、万死に値するですよプレシア・テスタロッサ!

「グレイランドっ!」

〈ラジャー〉

展開される転移用の魔法陣に飛び込む。

さぁ!これからがクライマックスですよっ!




――――
(作者)

もうすぐ無印終了!
さすがにMなのははお休みで













…なんて言うと思ったか?









バインドに捕らわれるなのは。わたしはそれを、大きなため息を吐いて見ていた。

〈…わざと捕まりましたね、バインドに〉

「わざと喰らう気がするですよ?次の攻撃も」

案の定、フェイトの全力攻撃を甘んじて受けるなのは。防壁?アレが張ると思うのですか?

「はぁぁああああんっ…!あ…ふぅ…ん…♪」

煙が晴れれば、悦に入ってぴくんぴくんと身体を跳ねさせるなのは。

「…イキましたね」

〈余程気持ちよかったのですね。雷撃〉

…あとでお仕置きは決まりですね

「こ…これは…フェイトちゃんにもお礼してあげなきゃ…」

口の端からよだれを溢しながら、赤い顔でレイジングハートを構え直すなのは

「…フェイトも目覚めるようなことにならなければ良いのですが」

〈無理ですね。なのはさまとガチバトルした人はMに目覚めやすくなるようですし〉

…ヤな事実を知ってしまったです。

…フェイト。アナタはわたしが真人間に戻して見せますからね…

誓い胸にするプロトを余所に、スターライトブレイカーがフェイトを飲み込み、無事…もとい、やっぱり彼女も開眼した。

元からMだったという意見は聞かないことにしたという。








・プロト枕

理性よりも貞操が心配
襲うのはなのはだねっ!(何)


・高町vsハラオウン

ゴ○ラvsガ○ラ並の怪獣決戦やね


・鈍感プロト

恭也じゃあるまいしww


・>はるかさん

ぅおいおい
展開読むなよww
まぁそうなる可能性もなくはないです(ニヤリ

・>PONさん
>ぺんたさん

まぁ、ぶっちゃけ隠す理由もなかったので隠させませんでした
スカさんは早めに出てきます。多分
下手すりゃヴォルケンズより早く出てきます


・エイミィヤ・キリツグさん

切っ掛けは聞き間違いです

友「エイミィやっちゅーとるやん」
我「エミヤ?」
友「エミヤ?なんで?」
我「エミヤやろ?」
友「いやエイミィやって」
姉「お前ら標準語で喋れ」

みたいな(笑)

使えるかな〜っと思ったら暴走した(笑)




XXXは亀更新
フラストレーション溜まるのを待ってくださいなー



[16022] 不屈の心と試作品 第18話
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/03/15 12:13


…暗い。陰気な雰囲気が漂っている。どこかの城ですかね?ろくな明かりがない廊下で、わたしはゆっくりと歩き出す

かつん、かつん、と足音を立てながら探索魔法を発動。…生体反応が一体。分かりやすくて良いですね

凶悪な笑みを浮かべながら考えるのは、フェイトとアルフのこと

悲しそうに苦しそうに、けれど懸命に戦った彼女

そんな主のことを心配し、ただ主のために圧倒的な戦力を持つ管理局にすら牙を向いた気高き使い魔

ああ、死なせるには惜しい。本音を言えば、管理局なんかに捕まえさせたくない。逃がしてしまおうかとすら思っている

でも、その為には

全てを終わらせなければいけない

フェイトは母親を好いている。もしかしたら怨まれるかもしれない

わたしがこれから行おうとしていることは犯罪だ。間違いなく二度となのは達に会えなくなるでしょう。管理局は言うほど甘い組織ではない

でも、それでもわたしは

わたしは、許せない

【家族】を、たった1人の愛娘を傷付けることができるプレシア・テスタロッサが許せない

かつん、と大きな扉の前に立つ

それは、ゆっくりと開く





不屈の心と試作品
第18話





長い黒髪の陰気な女が、血走った目でわたしを捉える。ぴくりとその眉が脈打つ。

「はじめましてプレシア・テスタロッサ」

「…誰?」

知る必要はありませんが、仕方ないので教えてあげます

「良い子が泣いてる時に現れるバカな魔法使いです」

セットアップ。同時にソニックライドを発動。距離を詰め、グレイランドを振るう。

「…ふっ」

だが、それを鼻で笑うプレシア。眼前に展開される障壁。あっさりと防がれた斬撃。舌打ちしながら飛び退く。プレシアはわたしの稀少技能で結晶化した障壁を少しだけ興味深そうに見つめ、わたしを嘲笑う。

「何の用かしら?悪いのだけど、わたしには時間がないのよ」

「それはすいません」

再びの接近。プレシアは大きな溜め息を吐いて、空中にフォトンランサーを待機させ――驚愕する。

空中に生まれた途端、ごとりと床に落ちた誘導弾。慌ててデバイスを召喚し、障壁を張る姿はいっそ滑稽だった。

「はぁっ!」

展開された障壁。結晶化した部分にグレイランドを叩き込む。…ヒビすら入らない。ならば、これで!

「ダンガーアンカー+!」

障壁貫通能力を追加した杭を障壁に打ち込む。再び驚愕し、新たな魔法陣を展開するプレシア。だが遅い!

「死になさいっ!」

一切の躊躇なく振り抜かれた魔力刃。けれど空振り。刃が届くより一瞬早く転移魔法を発動しやがりましたか。

さすが歴戦の魔導師。SSランクは伊達じゃないということですか。

振り向き様にトライシールドを展開。斜めに立て掛けたそれの表面で砕け散る中途半端に結晶化した誘導弾。

「ふぅん…中々面倒ね」

「褒め言葉ですか?」

「まさか」

プレシアはにやりと口の端を持ち上げると、その強大な魔力を収縮させ、ヴァリアブルショットを4つ、作り出す。背中を冷たい汗が伝う。

アレは、不味い。わたしの防御魔法じゃ防ぐどころか方向をずらすことも出来ない。さらに魔力密度が高すぎて結晶化がすぐにはできない。例え出来ても核の魔力弾が残っているから誘導性が落とせない。

こんな短時間でわたしの稀少技能の特性と対策を考え付くなんて…さすが、天才・プレシア・テスタロッサ。

額に伝う汗を意識しながらグレイランドを構え直す。…術式を待機。まだです、機を逃せば一瞬で殺される。確実に

『そこまでですっ!』

と、そこへモニターが開かれる。険しい表情のリンディが、プレシアと…わたしを睨み付ける。

『時空管理局です!プレシア・テスタロッサ、貴女を逮捕しますっ!あとプロトくんを拘束!』

リンディの言葉と共に王座の間に雪崩れ込んでくる武装局員たち。プレシアはそれをぞっとするほど冷たい目で見据え――

「逃げろです!」「消えなさい」

ほぼ同時に響く声。見知った顔の武装局員たちにソニックライドで接近。蹴り飛ばし、グレイランドを勘で振るう。ぎょりんっ!と不愉快な音を立て、何とか方向を逸らす。

あと3発!

モードダブルへ変形。未だかつてない速度で変形させたものの、間に合わない、半ば腕ごと叩きつけるようにして2発を撃ち落とす。両腕が砕ける鈍い音がした。

けど…あと一発がかわせない!

せめて致命傷を避けるために身体を反転。背中からの攻撃は致命傷になりにくいのです

だが、その攻撃がわたしに届くことはなかった

「――アリシアに触るなっ!」

怒鳴り声。悲鳴。最後の一発がわたしではなく、1人の武装局員の腕を破壊する。血飛沫を上げ、悲鳴を漏らしながら崩れ落ちる武装局員。

そして――

わたしは、ナツカシイものをミタ

生体ポッド

緑色の液体

その中に浮かぶ

フェイトそっくりの少女

「うぐ…!」

―――込み上げてきた吐き気に、わたしは膝を付く。砕けた腕で口を押さえる。

プレシアが、口を開く。

「―――ない―――シードで―――ザー――いけど」

何故、今更になって?
視界が涙で滲み、喉の奥から吐瀉物がせりあがってきた。押さえきれずに手の隙間から溢れる内容物。

「―――もういい――――終わりに―――――――身代わり―――――娘―――――――フェイトっ!」

意識が急に浮上する。そうだった。こんなところでヘコタれてる場合じゃないんだった。

「フェイト…貴女はやっぱりアリシアの偽物よ。せっかく与えた記憶もダメだったみたいね」

記憶…?偽物…?
いや、そんなことはどうでもいい。とにかくこの目の前のババアの口をぶん殴ってでも閉じなければならないのです。

『…プレシアは26年前の事故で実の娘、アリシア・テスタロッサを失っているの。そして、彼女が最後にしていた研究は人造生命の開発。…死者の、蘇生。その開発コードが…』

「そう、そうよフェイト。プロジェクトF・A・T・E。よく調べたわね。私の目的はアリシアの蘇生。ただそれだけよ」

…じゃあ、フェイトは










わたしと同じ、作られた命…?








あまりと言えば、あんまりな事実に、わたしはしばし、腕の痛みすら忘れて呆然とする。

「だけどダメね…。所詮は偽物。アリシアの代わりにはならない」

生体ポッドにすがり付きながら、プレシアはモニターを見る。その目に宿るのは、明らかな嫌悪。その視線を浴びるのは、呆然とするフェイト。

「アリシアはもっと優しく笑ってくれた。ワガママも言ったけれど、私の言うことはよく聞いてくれた」

『…やめて』

ぽつり、となのはの声。

もう少し。もう少しで腕が治る。

「フェイト、貴女はアリシアが蘇るまでの間、私が慰みに使うだけのお人形」

『やめてよっ!』

なのはの声。わたしはそれを聞きながら、腕に魔力を流す。今だけはこの身体に感謝する。早く早く早く治れ!

「だけどもういらないわ。どこへなりと消えなさい!」

骨が、繋がる。

「あぁ、そうそう」

グレイランド

「私、あなたのことが」

フルドライブ・イグニッション

「だいきっ」

プレシアの声が唐突に途切れる。

プレシアは、水平に数メートル飛び、壁を破壊して土煙の向こうに消えた。

「―もう、喋るなですよ」

がぢゃん、とグレイランドが口を開く。

チェーンソーのような魔力刃を持つハサミは、ぎゃりぎゃりと耳障りな音を立てながら産声を上げる。

灰衣は全身に巻き付き、身体にぴっちりとフィットするボディースーツとなり、灰色の髪が顔に手に足に巻き付き関節部を残して硬質化し、わたしの体で露出している部分は皆無になる。

〈ジャジメントモード。リミットリリース。コード〉

「…ファントムキラー」

グレイランドの言葉に頷き、わたしは一歩前に出る。

身を起こした大魔導師が、憎らしげにわたしを見ていた。

「フェイトがクローン…ね。それを聞いたからには、わたしば先輩゙としてやらにゃあならんことが出来ちまいましてねぇ」

魔力刃がぎゃりぎゃりと回る。わたしにもグレイランドにも負担がかかるフルドライブ。今の肉体では、精々100秒が限界ですね。

その貴重な時間を使ってでも、やらなきゃならないことがある。

言わなきゃいけないことがことがある。

「だからどうしたぁっ!?」

わたしの怒声に、モニターの中でフェイトが身を震わせる。

「わたしは確かに作られた命ですっ!だからなんですか!?母親の腹から産まれたのがそんなに偉いんですかっ!?そんなに自分の娘と違うのが許せませんかっ!?」

憎々しげにわたしを見ていた大魔導師が、口を開く。

「そんなの――」

「喋るなぁっ!!」

グレイランドを振るう。咄嗟に障壁を張った大魔導師。けれど、その障壁は結晶となり、ぎゃりぎゃりと削られていく。

「関係無い!関係無いんですよそんなの!だってわたしはプロト・グレイランドで!彼女はフェイト・テスタロッサだからっ!アリシア・テスタロッサなんかじゃないからっ!」

自慢の障壁が削られていくその様子を、驚愕も顕に見つめる大魔導師。

そこに、さらに力を込める。

「あんたの思い出の中にしか存在しないアリシア・テスタロッサなんかとは比べ物にならない程に!彼女は強かったから!」

その言葉に、大魔導師の目に狂気が宿る。至近距離で爆発する魔力弾。わたしは勿論、大魔導師も吹っ飛び、血を吐く。

「アリシアを…馬鹿にするなぁぁぁああああっっ!!」

視界一杯に広がる無数の誘導弾。避ける間なんかない。

けれど、避ける必要もない

身体中に突き刺さる雷の弾丸。神経を焼き、肉を焼き、皮膚を焼き、激痛を産む。

けれどそれは、回復する。

わたしのフルドライブ…ジャジメントモードは攻撃特化。

防御を捨て、ただひたすらに敵を斬り倒すための形態。

バリアジャケットはわたしの【外殻】としてわたしを動かす。グレイランドは魔力刃を形成し続ける。この状態で使えるのは高速機動魔法と飛行魔法だけ。

【中身】がどれだけぐしゃぐしゃになっても、身体は動く。【外殻】が動かしてくれる。

そして、放っておけば治る。

ならばヤることはただ1つ

「懺悔の時間です、プレシア・テスタロッサ!」

グレイランドを構え、わたしは大魔導師へと接近した。


―――
(作者)

Mシリーズ
〜趣向を変えて〜

「アナタではアリシアの代わりにはならない」

プレシアが生体ポッドにもたれかかりながら、フェイトを見る。その目に宿るのは――落胆

「アリシアはもっと蔑んだ目で私を見た。たまに加減を間違えたけれど、それでもいつも的確な攻めをしてくれた」

…ん?方向性がおかしくないですか…?

『…え?な、なにこの記憶…な、なんで鞭?私?なんで私に渡すの?私が母さんをぶつの?え?え?なんで、嫌だよ…』

モニターの中でフェイトが動揺してる。

「そうっ!アリシアは旦那以上に私を満たしてくれた!私のご主人さまはアリシアしかいないの!貴女は私と同じ゙M゙だから!」

プレシアはフェイトを見ながら心底残念そうに叫び――ガラスの中のアリシアにすがり付いた

と、その時

「――寄るな、おばさん」

い、生き返ったぁぁあああっ!?

ガラスの中から汚物を見るような目で母を見るアリシア。ただそれだけでびくんびくんと身体を震わせるプレシア。

「キモッ。なにその格好?年考えれば?何考えての?なんで私裸なの?ねぇ正気?ううん馬鹿なの?死ぬの?死ねば?」

「アリシアが言うなら死にます!」

「何呼び捨てにしてんの?」

「ごめんなさいご主人さま!」

「あーもうヤダ。あたし虚数空間消えるわ」

「私も着いていきます!」

「…死ねばいいのに」

「はぁん…♪」

…虚数空間が開き、彼女たちが飲み込まれていった

「帰るですか…皆…」

《…おう》

後に残ったジュエルシードを拾い、わたしはアースラに帰った







なんだこれ…ほんともう、なんだこれ…?



[16022] 不屈の心と試作品 第19話
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/03/15 12:22
不屈の心と試作品
第19話




side:フェイト


戦っている。

モニターの向こうで、プロトが戦っている。

母さんと。

止めたかった。母さんに説明したかった

プロトはいい子だって。何度も助けてくれたって。

だから、母さんと戦う必要なんかないって

けれどそれは――意味が無かった。

母さんの口から語られた言葉。

私はアリシアのクローンで…偽物で。母さんにとって、ただのお人形で。

目の前が、真っ暗になった

いっそ意識を飛ばしてしまおうかとも思った

けれど、母さんの言葉を最後まで聞きたくて。

もしかしたら、最後の最後で笑いかけて、【冗談】で済ましてくれるんじゃないかと、馬鹿な期待にすがって――

「私、あなたのこと…」

やめて

聞きたくない。言わないでお願いします

「だいき」

母さんが、吹き飛ばされる。

信じられない光景に思考が止まる。そんな中に、その言葉はすとん、と落ちてきた

「だからどうしたぁっ!?」

プロトの怒声。

「わたしは確かに作られた命ですっ!」

そんな、と思った。

プロトも、私と同じなのだろうか。

隣からぽつりぽつりと声が聞こえる。

「プロトちゃんね…?科学者さんに自分は戦うために作られたんだって泣いてたの」

温かさが、私を包む。顔を向ければ、抱き締められていた。

「だから…【自分】が無いことが、凄く恐い…って言ってた。存在価値がないって、がたがた震えながら、凄く恐がってた」

そうだ。

恐い。母さんに見捨てられるのが恐い。私は、母さんのために頑張ってたから。それ以外、どうしていいのか分からなかったから

「でもね…?」

僅かに、身体を離す。彼女の瞳が、とても優しい輝きを宿していた。

「そんなの、関係無いの。フェイトちゃんはフェイトちゃんだから」

にっこり、と暖かい微笑み

気が付けば、頬を涙が伝っていた

モニターの中では、プロトが戦っている。

「関係無い!関係無いんですよそんなの!だってわたしはプロト・グレイランドで!彼女はフェイト・テスタロッサだからっ!アリシア・テスタロッサなんかじゃないからっ!」

目の前の彼女と同じことを口にしながら、プロトよりもずっと強い母さんに向かっていく。




胸に、熱さが宿った。




私は、フェイト・テスタロッサでいいのだろうか

ううん、いいんだ

だって、彼女は…彼女とプロトは…少なくとも今、私を、【フェイト・テスタロッサ】を見てくれている。

現実から目を逸らしても駄目だから、自分自身を捨てても駄目だから、現実から逃げても駄目だから

はじめよう

母さんの言う通り、人形だった私は終わらせて

今から私は【私】をはじめよう


でも、だったら、だからこそ

「…止めなきゃ」

母さんとプロトの戦いを、止めなきゃいけない

明日が見たいから

母さんに認めてもらって、プロトや彼女と一緒に笑える、そんな明日が見たいから

「…バルディッシュ」



彼女との戦いで傷付き、ひび割れたバルディッシュ。それが、急速に修復されていく。

「…っ!?ま、待ちたまえ!君は重要参考人で…」

黒い執務官が慌てて口を開く。だが、その隣に立っていた偉そうな人がそれより早く指示を出す。

「クロノ執務官。なのはさんとフェイトさん、ユーノくんの護衛として時の庭園に潜入。武装隊は下がらせなさい」

「なっ…!?」

驚愕する執務官に、偉そうな女の人は首を振る。

「…時の庭園内にランクA以上の魔力反応を多数感知したわ。武装隊の魔導師ランクはA-〜B-程度。無駄に命を散らせるわけにはいかないわ。かといってこのままプロトさんだけにプレシア・テスタロッサの確保を任せるわけにもいかないわ。…それになにより」

女の人は、唇を噛み締め、悔しそうな顔で言う

「――武装隊に、あの戦いに混ざれと言うには酷すぎるわ」

モニターの映像は既に途切れている。母さんの攻撃で中継機が壊れてしまったようだ。

だが、それまでに映っていた光景は現実離れしすぎていた。

荒れ狂う暴風のような剣撃に、轟音と共に放たれる雷鳴。それをかわし、避け、時に弾きながらプロトは母さんに接近していった

「フェイトさん…協力してください。酷なことだとは思うけれど…AAAランクが3人と、Aランクの結界魔導師がいれば、プレシア・テスタロッサを無事逮捕できるはずだわ」

頭を下げる偉い人。…正直に言うなら、嫌だ

管理局に母さんを逮捕なんてさせたくない

けれど、それしか母さんと話をする方法がないなら――やるしかない

「――はい。私は何をすればいいですか?」

バルディッシュを握り締め、私は頷いた。


side out





side プロト


あーもー頭ががんがん痛い。マルチタスクの使いすぎで焼け焦げた脳内神経を魔力を集めて治癒する。

胸に痛みが走り、口の端から血が溢れた。リンカーコアを酷使してる反動だ。まだフルドライブしてから50秒も経ってないのに…

「…ったく、どんなチートですか…」

苦笑いしながら全方位から襲ってくる誘導弾、その中から致命傷になりそうなものだけを双剣で薙ぎ払う、あとは被弾した。魔力がもうほとんど無い。治癒に使いすぎです。

「…はっ…はっ…はぁ…」

肩で息をするプレシア。魔法の使いすぎですね。よくよく見れば、あいつも口の端から血を溢していた。ざまぁ

「どーしたですかぁ…?」

ふらふらとしながら状況確認。…武装局員の姿が見えない。さっきまで「邪魔だから帰れ!」と言ったら凄い顔でプレシアに射撃魔法撃ちまくってたのに、今はいない…。いや、いた。半分くらい倒れている。どうやらプレシアの攻撃の余波で気絶したらしい。残ったヤツもそいつらを助けるために続々と転移魔法を使っている。うん、いい考えです

「…ぺっ」

口の中に溜まった血涎を吐き、グレイランドを握り直す。…あ、…不味い、両足の感覚が無い。…飛べばいいですか

「さぁて…もっかい行くですよぉ――」

高速機動魔法を発動しながらグレイランドをシザーモードに戻す。ぎゃりんぎゃりん回転するチェーンブレードが噛み合わさり、不快な音を立てながらプレシアが張りっぱなしの魔法障壁の表面を削る。かってぇー

だが何度も叩き付ける、そろそろかな?予想通り背後から飛んできた二重殻の誘導弾を適当に飛んで回避。プレシアの魔法障壁に直撃する誘導弾。苦痛に顔を歪めたプレシアにさらに接近して斬撃斬撃。誘導弾がいつまでも操れると思うなよですー

もっともさっきから何度も喰らってタイミング覚えたから出来るのですが。

既にプレシアを覆う全方位魔法障壁は完全に結晶化し、プレシアが逃げることは不可能だ。だがアレを破らなければプレシアは逮捕出来ない。プレシア自身は障壁を維持しながら障壁の外にヴァリアブルショットを生み出すという天才的な技でこちらに攻撃出来る。

あの障壁を破り、プレシアを倒せたらこっちの勝ち。

それ以外はプレシアの勝ち。唯一の例外は【アリシアを馬鹿にしたわたしを殺せなかった】ら引き分けですかね。わたしが死んだらプレシアの完全勝利ですね。

「…ってか、強すぎ…ですって!」

〈いまさらいまさら。っと、フルドライブ持続可能時間残り27秒〉

みじかっ!

舌打ちを1つ。表面に亀裂が入り始めたプレシアの障壁にグレイランドを叩き付け、削り斬る。バチバチと魔力が火花へと変わり、障壁の代わりに砕けて折れて欠けていく魔力刃を再構成。痛い痛い痛いです!!リンカーコアがめちゃくちゃに痛いです!

でも負けない!男の子ですから!

〈…意外と余裕あります?〉

やせ我慢ですがなにかー?

「くっ…この…!」

プレシアが焦りからか、一瞬砲撃魔法を展開しかける。が、自分の後ろにある物体を思い出したのか、舌打ちして誘導弾を産み出す。ははっ、ミッド式はもっと体を鍛えなさい!

「ごぽっ…ジに゙なざい゙!」

血液混じりの叫びと共に放たれる誘導弾。それに左腕を叩きつけて迎撃しながら、さらに右手に握ったグレイランドへ力を込める。

GYALYYYYYYYYYYYYY!と凄まじい音。飛び散る火花。誘導弾を迎撃した左腕が致命的なダメージを訴える。一時間は使えないですね。…や、魔力がほぼ残ってないのでこの戦闘中にはもう使えませんね

だから、ここで決める。

幸い、フルドライブの残り時間が5秒を切った。



わたしの体に絡み付いていた灰色の髪が――血を吸って斑に紅くなった髪が――ぱさり、とほどける



それを見たプレシアの顔が醜く歪む。にたりと裂けた唇。顔面に拳を叩き込んでやる、と改めて決意



外殻がなくなり、急速に身体から力が抜けていく。ったく…殺傷設定で好き放題やられたお陰でぼろぼろです



プレシアの手の中には、直接触れて効果を出す近接用雷撃の魔法。ばちばちと放電するそれに今のわたしが触れたらショック死にますね



うん、だから触れたくない
予定外だったけど、障壁は破れなかったけど。

全ての準備は万端だ



「死にな――」

喜色満面。プレシアがわたしの体へと放電する手を伸ばし――








「アンカーシュート!」






ダンガーアンカーを射出する魔法に撃たれ、驚愕した。

「なっ…武装局員は全員…っ!?」

驚愕したプレシアの視線の先にいたのは…わたし。

王座の間で、プレシアを囲む一面の【わたし】

フルドライブはただの準備

今、王座の間には砕け散り、細かな結晶になったわたしの魔力刃の欠片が溢れている

それは小さいながらも高純度の魔力結晶。しかも、わたしの魔力で構成された

それを核として起動させた【フェイクシルエット】。当然、普通に使うよりも、ずっと存在感のある幻影と変わる

だから今、王座の間にはわたしが溢れている。その1人1人がグレイランドの切っ先をプレシアに向けて

所詮は幻影。高威力の技は使えない。

けれど…幻影でも、ただ武器を構えて走ることは出来る。

次々と走り出す幻影達。それはわたしの稀少技能の範囲に入ると同時に結晶化し、プレシアの障壁に突き刺さる。当然、僅かに障壁を削って砕け散る。だからそれを核に再び幻影を産み出す。

「こ、こんな…!?」

プレシアの慌てる声に笑みが浮かぶ。なけなしの魔力を振り絞り、笑みを浮かべてわたしは言う

「抜け出てみなさい…【ファントムキラー】から…」

幽霊殺しではなく、幽霊が殺す

誘導弾を放ち、幻影へと向けるプレシア。核となった魔力結晶が砕け、砕けた分だけ幻影が増える。

くはっ…と笑みが漏れる。血も一緒に吐いたが、無問題

少しずつ、少しずつだけど…プレシアの障壁が削れていく。再構成も間に合わない。それより早く雨のように鋭い切っ先が迫る

「そ、そんな…あり得ない!この私が…この私が…!」

ごぽりと血を口から溢しながらわたしに誘導弾を向けるプレシア。わたしはもうまともに戦う気がないのでさくっと避ける。…あんたはもう、こうなった時点で負けてるんですよ

ただひたすらプレシアの放つ誘導弾を避けて、幻影の維持に意識を割く。それだけで、もう終わる。…アリシアがいるお陰で高範囲の殲滅魔法が使えないプレシアに、この処刑台から降りる術は無い。

じわじわと削れていく障壁に、プレシアの顔に狂気が浮かぶ。

「こんな所で…終わるわけには行かないのよっ!」

っ…なにを…?

プレシアの周りを漂っていたジュエルシード

それが、一斉に輝いた



―――
(作者)

一気に二話投稿!

俺。がんばった!





・Mシアさん

書いててむちゃくちや楽しかった。特に言うことなし

・Mなのは

この法則はこれからも生きていくでしょう
なのはさん輝いてるー


・決闘するとき報告なしなん?

だってクロノが許すと思えなかったんだもん
だからなのはさんの暴走


・結界ねーじゃん

その日の漁師
「うはww大漁www」


・リンディさん

管理局の黒いところは知ってるが闇は知らん



[16022] 不屈の心と試作品 第20話
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/03/16 12:17
不屈の心と試作品
第20話




吹っ飛ばされた。

魔力も体力もほとんどすっからかん。そんな状況でジュエルシードの暴走の余波を喰らい、一瞬意識が吹っ飛びそうになった。体は吹っ飛ばされたけど。

「もう貴様ごときに構っている時間はないわ…!私は行くのよ!アリシアと共に!忘れられた都、アルハザードへ!」

プレシアの叫び。

どんっ!背中から壁に着地。血と酸素が口から溢れた。視界が揺れ、意識が揺れる。…魔力放射だけでシルエットがほとんど消えた。さらに意識が消えかけているせいで魔法がほとんど使えない

…手詰まり、ですか。ここでジュエルシードを励起させるなんて…予想外にもほどがありますね

格上相手に頑張ったんですがね、と苦笑い。胃液と血液と涎を口から溢しながら、わたしは震える足を叱咤する。…ああ、いつの間にかバリアジャケットが破られていた

「…行かせは…しません…貴女は…フェイトに…まだ、謝ってない…です…」

真っ暗になったり真っ赤になったりする視界。そんな中で、ヤツが嘲笑を浮かべた

「…何故、謝る必要があるのかしら?さっぱり分からないわね。…ねぇ、あなたもそう思うでしょう…?フェイト」

プレシアが視線を横にずらす。――そこにはデバイスを片手に持ったフェイトが悲しそうな目をして立っていた。

「…フェ、イト…」

自分のことをぶん殴ってやりたい。母親が大好きな彼女のことだ。プレシアが戦っていたら助けにくるに決まっている。何故、それまでに間に合わなかったのですか!

「…母さん」

…?フェイトの様子がおかしい

「貴女に言いたいことがあって来ました」

「私には無いわ。消えなさい」

フェイトの顔が一瞬歪む。だが、すぐに引き締め、彼女はプレシアを見据える

「…私はアリシア・テスタロッサにはなれません。私はフェイトだから。フェイト・テスタロッサだから。確かに貴女が造った人形だったかもしれません。でも、今の私は違います」

しっかりと、プレシアの目を見ながらフェイトは言う

「貴女に命を与えられ、貴女に育ててもらい、プロトやあの娘に出会い…私は変わりました。だけど、貴女の娘だということに変わりはありません」

「…だからなに?今更あなたを娘だと思えと?」

「…貴女がそれを望むなら」

フェイトは一度目を伏せると、デバイスを構える

「それを望むなら、私は世界中の誰からでも、どんな出来事からも貴女を守る。私が貴女の娘だからじゃない!貴女が私の母さんだからっ!」

凛とした横顔。金色の髪。まだダメージも疲労も抜けきっていないだろうに、凛々しい彼女は…とても、美しかった

けれどプレシアは――肩をすくめ、溜め息を吐いた

「くだらないわ」

一瞬、頭に血が昇りかける。フェイトの悲しそうな表情に、痛みで動かない体に力が籠る。

「私の娘はアリシアだけよ。貴女なんかと一緒にしないで。私は必ずアリシアを取り戻すのよ!」

独白と共に、ジュエルシードの魔力が収束される。…次元震。しかも、前に起きたのよりずっと大きい。当然だ。一個ですら私の左腕を吹っ飛ばすくらいの威力があったのだ。それが9個。想像したくもない威力になっているのは間違いないです

そして、その魔力塊をフェイトに向けるプレシア。体が動かない。まさかこのタイミングで攻撃するなんて…!フェイトも体が動かないのか、呆然とそれを見つめている。

だが、それを止めたのは意外な人物だった。

どんっ!と爆音を響かせてて崩れる壁。…そこに立っていたのは、額から鮮血を流すクロノだった。

「…世界はいつだってこんなはずじゃないことばっかりだ!」

ははっ、全くですね。

私は苦笑いを浮かべながら、俯いて静かに肩を震わせるフェイトの隣に立つ。

「…フェイト」

「…っ」

ぴくり、と反応したものの、俯いたままのフェイト。わたしは、その頭を撫でようとして…やめる。フェイトの綺麗な金色の髪を血で汚すのは躊躇われた

「あのバカ女の顔、ひっぱたいて正気に戻しますよ。…それが娘の役目です」

「…っ…うんっ、分かった!」

良い返事です。…だからすいません。

後でしっかり怒られますから、今だけ勘弁してください

「フェイト」

「え?」

首を傾げたフェイトの顔をこっちに向ける。白い頬にわたしの血が付いてしまったけれど、許してください

そして、わたしはフェイトに

「んゅっ!?」

―――柔らかい。暖かい。それを、舌で、なめとった

〈…パーソナルデータ【フェイト】取得。…登録完了しました〉

ゆっくりと唇を離した。真っ赤な顔のフェイト。

「ぷ、プロトっ?いいいいいいま、いま、ななななな何を!?」

慌てふためく姿にに苦笑いしつつ、わたしは魔力刃を形成。これでもう、魔力は空っぽです。かろうじて魔法生物の生命維持することしかできないです

〈稀少技能ON、モード【フェイト】〉

灰色の魔力刃が雷へと変わる。ばちばちと放電するそれを凝縮し、アンカーを作る

「終わらせますよ、フェイト」

「…っ!うん!」

デバイスを構える。まだ顔は紅いですが、それでもフェイトの戦意は十分です

「『クロノ、リンディ…後は頼みます』」

「…よ、よく分からんが、任せておけ」

『…分かったわ。直ぐにそこに転移するわ』

…何で顔が紅いですかクロノ。返事と共に展開される魔法陣。すぐ後ろに気配。リンディの到着ですね

「…それで?茶番は終わりかしら?」

プレシアの言葉に気を引き締めた。ヤツの障壁は既にない。ただ一撃当てて意識を奪えばいい。…懸案事項はジュエルシードのみ。プレシアの意識を奪い、コントロールを離れた所でクロノとリンディが強制封印。…上手く行けば良いのですがね

頬を伝う冷たい汗。プレシアは既にわたしを見てはいない。むしろわたしの後ろで次元震を制御しようとしているリンディを忌々しげに見ている

「フェイト、陽動を」

「分かった!」

返事と共に駆け出すフェイト。その狙いは――ジュエルシード!

「目を冷まして、母さん!」

「人形風情が邪魔をするなぁっ!」

プレシアが魔力弾を放つ、が、フェイトのスピードの前ではかすりもしない。フェイトはプレシア周りをくるくると回転するジュエルシードのみを狙い、ブリッツアクションを駆使して魔力刃を振るう

…やっぱりだ

プレシアは、フェイトを狙うときに僅かに狙いが甘くなる。命中しても致命傷にならないところしか狙わないし、当たっても意識を失う程度の威力しか込めていない

…アリシアと同じ顔をしたフェイトを撃つことが恐い…ということでしょうが

それでもわたしは、プレシアが【フェイト】を傷付けるのを戸惑っている、ということにしたかった


「さぁて…わたしは、わたしの仕事をしますか」

〈電熱変換資質の制御…初めてでぶっつけ本番。失敗するわけにはいきませんよ〉

分かってるですよ

グレイランドを構え、気配を消して走る。もうソニックライドを使うこともできません。一歩進むごとに腹に響く激痛。それでも進み――目的地に辿り着く

「貴様っ!?」「プロトっ!?」

プレシアとフェイトの声。それに構わずわたしは――アリシアが入った生体ポッドにグレイランドを向けた

「や、やめろぉぉおおおおおおおおっ!!!」

プレシアの叫びを聞きながら、わたしはそれを生体ポッドの根本に突き刺す

「ライトニングアンカー!!」

ばちばちと放電するソレの直撃を食らい生体ポッドの機能が止まる。――アリシアの命を繋ぎ止めていた生命維持装置ごと

わたしはそのまま…その生体ポッドを、プレシア自身が産み出した次元震の中に叩き込んだ

「きっさまぁあああああああああっ!!」

次元震、その中心に開いた奇妙な赤黒い空間の中に落ちていく生体ポッド。プレシアはそれを見ながら、狂気もあらわに激怒し、ジュエルシードの魔力を収縮し、わたしへと向け――

「がぼっ…!?」

口元から、鮮血が溢れ、膝を付く。

「母さんっ!?」

慌てて駆け寄るフェイトを邪険に振り払い、プレシアは濃密な殺気をわたしに向ける

――例え、ジュエルシードの魔力に身体が耐えられなくても

大事な娘を思い、そこまで出来る彼女が

彼女にそこまで愛されていたアリシアが

少しだけ、羨ましかった

「ゆるさ…ないっ!貴様だけは!貴様だけは…!!」

止めなく血を吐きながら、彼女はデバイスを構える。――が、その両腕にバインドが出現。…プレシアの動きを完全に止められるなんて、この場ではリンディしかできないでしょう

「プレシア・テスタロッサ!次元航空法に基づき、貴女を特一級危険遺失物不法所持及び違法実験、あと幼児虐待の罪により逮捕しますっ!」

リンディの高らかな声。自分がもう、何もできなくなったことに気付いていないのか、殺気を迸らせながら暴れるプレシア。

…ってか次元航空法に幼児虐待の項目なんてあるのですか…と思いながら

目の前が、暗くなっていく

クロノとリンディがプレシアを捕縛し、ジュエルシードを強制封印していく中。

わたしは、少しだけすっきりした気分で――気を失った。

最後の最後に

白い服の少女と、金色の髪が――泣きながらわたしに駆け寄ってくるのを見た気がした

―――
(作者)

やっとここまで来た!

次回、エピローグ!

ただしエピローグは2つ!

やー…長かった…

・チート対チート

大魔王からは逃げられないのと同じように、プロトじゃプレシアには勝てません

実はチート能力全開でもstsなのはに勝てません。SLBで空間ごと幻影を薙ぎ倒されて一瞬で意識刈り取られて終わりなので

天敵ははやて

ぶっちゃけプロトはミッド式で広範囲殲滅魔法、あるいは大威力砲撃魔法が使えない相手にしか俺TUEEEできません

ようするに本編じゃほぼ役に立たないプロト

…今はね、今は

プロトはこれから強くなります、多分



・Mシリーズ

人気出過ぎたwww

こりゃもうMシアさんの番外編書くしかねぇーなwww



[16022] 不屈の心と試作品 エピローグ
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/03/18 12:03
ゆっくりと意識が浮上する

目を開いてぼんやりする頭で清潔感に溢れた天井を見て、一言

「医務室の天井です…」

アースラのね。

〈…あくまでセオリーを無視しますか、我が主は〉

呆れたような声に振り返れば、新品のようにキラキラと輝くグレイランド

〈っというかマスター、目が覚めたなら身体が動かなくても今すぐ起きなさい。今すぐ動かないと後悔しますよ!〉

え、あ、はい。わかりました
わたしは、病院着のままグレイランドを首にかけてベッドから降りた




不屈の心と試作品
エピローグ





きょときょとと周りを見渡しながらアースラの中を歩く。誰にも会わなかったのが少し不思議です

途中、グレイランドからあの後何があったのか聞くことにした




プレシアは逮捕され、フェイトは保護された。

プレシアは逮捕された時点で呆然自失。魔力リミッターもかけられ、廃人同様になってしまって、生きる気力もない、といった風情だったらしい。
そこへきて、取り調べ最中に病気の発作。

そのまま、泣きじゃくるフェイトに抱かれて帰らぬ人へ。…後味の悪い話です

ですが、最後の最後にフェイトはプレシアに頭を撫でられたらしい。

それが、死の間際でアリシアとフェイトを間違えての行動だったのか、最後くらいは母親として行動したのか…まぁ、あのババぁだから前者なのでしょうが、その時のフェイトはとても綺麗な笑顔を浮かべていたそうなので…良かったのでしょう

フェイトはプレシアの命令ですべて行動していたので、無罪…とまでは行かなくても、ほとんど罪は問われないらしいです。一応、これからミッドに向かって裁判は受けるそうですが…司法取引がどうとか言っていたので大丈夫なのでしょう

プレシア・テスロッサ事件――あるいはジュエルシード事件と呼ばれる事件は幕を閉じた。


主犯格のプレシア・テスロッサは逮捕後の獄中死。その実行犯たるフェイト・テスロッサは情状酌量の余地ありとして、これから裁判。…フェイトがやるとは思えませんが、リンディやクロノが相手が死んでいるのを良いことにプレシアにほとんどの罪をきせるつもりのようです


次は、アースラ

なんでもプレシアが中規模次元震を起こしたせいで次元転移が出来ず、半月近くこの辺りの時空を漂って…って、


「わ、わたし半月近く寝てたのですかっ!?」

〈はい、魔力は枯渇寸前。気力、体力共に空っぽ。体内の血液を4分の1以上流し、骨折が12箇所、裂傷が27箇所、内臓破裂、全身打撲です。いくらマスターでも死ぬときは死ぬのですから二度とやるなよ〉

「ためぐち!?」

〈それくらい心配したんですよ!マスターが死んだらどうしようって容態が安定するまでなのはさまもフェイトさまもほとんど毎日1日中そばにいたんですからね!面会謝絶の時でもずっと扉の前で!辛そうに涙を堪えて!〉

「ぅ…」

だ、だって…あそこは男の子が頑張らなきゃいけないところだったじゃないですか…

こほん、とにかく。

アースラはしばらくこの時空にいて、明日、遂にミッドに向けて出向するらしい

「なんとものんびりした話ですねぇ…」

〈全くです。あ、そうそう。ユーノさまですが、高町家にしばらく滞在することになったらしいですよ?〉

「…は?なんで?」

〈しばらくスクライアに帰れないんですよ。そこでお人好しのなのはさまが「家に住めばいいよ!お父さんたちも魔法のこと知ってるし、前よりずっと楽なはずだよ!」と。あとごり押し。ユーノさまは最初は断っていたのですが、泣き落とされました〉

…無駄にそっくりでしたね今の物真似。しかしユーノ…今から尻に敷かれているのですか…。妹分の未来の夫婦生活が不安でいっぱいです

〈…まぁ、恐らくマスターがいなくなるので寂しさからペットを飼うような気分なのでしょうが〉

…また少年をペットにする気ですかなのは…。…もしかして、なのははユーノが人間だって忘れてるんじゃないですかねぇ…。ありえますよ?だってなのはですもん

…でも、そっか、そういえば、そうなのですよね…

「お別れ…ですか…」

〈またすぐ会えますよ。なんなら管理局の魔導師になってしまったらどうです?喧しい規則はありますが、個人よりも遥かに次元転移の許可は出やすいですよ?〉

「ヤッ!です」

管理局の「俺最強!俺強い!だから俺正義!」っていう考え方が嫌いですもん

そうですか、と苦笑するような気配。…人間臭すぎですよこのデバイス。マジでデバイスなんですかね?

〈ああそうそう、今回の無理のせいでマスターにかけられてたリミッターが一個外れました〉

「…は?」

リミッター?なんですかそれ?

問い詰めようとしたが、それはやんわりと止められた

〈それは後で。…今は、彼女たちのことに集中してあげてください〉

…へ? 転送ポート? 座標は既に入力されている

首を傾げながら転送され…太陽の眩しさに顔をしかめた。

「「「「「「プロトっ!?」」」」ちゃんっ!?」」

うひゃあ!?大音量!?

眩しさに慣れた目に映ったのは…栗色と金色の弾丸

「「プロト(ちゃん)プロト(ちゃん)プロト(ちゃん)ーーーーーっっ!!」」

「うぼぁっ!!」

プレシアとの戦いを思い出す衝撃。口から21gはありそうな何かが出ていきそうな気分です。

吹っ飛ばされ、押し倒され、馬乗りになられる。…なのはとフェイトの2人に

そして

「ばかーーーーっっっ!!なんであんな無茶したのーっっ!!もう少しで死んじゃう所だったんだよ!」

「ごめんねごめんね私のせいで大怪我させてごめんねっっ!!でもありがとう!プロトのお陰で母さんが頭を撫でてくれたんだ!」

ああもう何言ってんだか分からない。耳が痛くなるほどの大音量に顔をしかめ、涙目で怒る2人に言う。

「と、とりあえず…まだ本調子じゃないので上からどいてくれると嬉しいですぅ…」

痛くてこっちが涙目になりそうです…。

「「ご、ごめんなさいっ!!」」

慌ててわたしの上から降りる2人。痛みを我慢しながら立とうとしたら、クロノが立たせてくれた

「全く…ようやく終われると思ったのだがな…。来るなら来るで早く来い」

…?

「セリフの割には嬉しそうですよ?何かあったのですか?」

〈マスターが無事で喜んでいるのですよ。なんだかんだ言いながらクロぴーも毎日お見舞いに来てくれましたしね〉

「誰がクロぴーだ!」

…お見舞いのことは否定しないのですね。顔が真っ赤ですよクロノ

「ふふっ…ご心配おかけしました。元気になったですよー」

とガッツポーズ…した瞬間両腕に激痛。〜〜っっ、き、筋肉痛ですかね…?

「…無理するな。君の身体がまだボロボロなのは分かってるんだ」

クロノ、肩を支えてくれるのは嬉しいですが近いです。あ、ほら、なんかなのはが睨んでるですよ?あれ?フェイトも心なしか視線がキツいような…?

「…ってあれ、そのリボン…」

2人のツインテールを纏めたリボンが、違うです。
色違い?と首を傾げていたら、2人は顔を見合せ…ん?なんですかその悪戯っ子な笑みは

「「プ・ロ・トっ」ちゃんっ」

なんだか凄く楽しそうな2人が、わたしの両脇に回る。身体が痛くて動かないのでぼけっとしていたら、わたしもツインテール…ただし後頭部で二股に分ける、2人と違う形のそれにされた。

白と黒のリボンで

「…なんだか不恰好じゃありません?」

「ぜぇ〜んぜん!凄くかわいいの!」

「う、うん…かわいい」

満面の笑みで返された。…なんなんですかねぇ、一体

「微笑ましい光景に水を差して悪いのだけど…」

本当に申し訳なさそうなリンディ。…ああ、そうですよね。

「リンディ、高町家にはもう?」

「…一応、ね。ご家族も相当ご立腹で…」

生きた心地がしなかったわ…と首を振るリンディ。…なんというか…お疲れ様です。

ふむ、ならば…わたしがすることは1つですね

「なのは、レイジングハートを貸してください」

「え?う、うん…はい」

渡されたレイジングハートに、グレイランドを直結。さくっと文章を作り、レイジングハートに伝言を頼む

「これ、帰ってから皆で見てください。…今は、メッ、です。絶対わたしがいないところで再生してください」

「う、うん…分かった」

若干わたしの勢いに押されたように頷くなのは。その頭をくしゃくしゃと撫でる。なのはの方が背が高いから、背伸びして。

「あ、あのプロトちゃん…。や、やっぱり行っちゃうの…?」

泣きそうななのはに苦笑い

「ええ。電話…は無理ですが、手紙は書きます。あ、いえ、やっぱりビデオメールします」

漢字苦手なので

「ふふっ、プロトちゃんお勉強苦手だもんねっ」

「ええ、まぁ…お恥ずかしい限りで」

ぽりぽり頬をかく…ええいもう!微笑ましいモノを見る目はやめろです!

「んと…それじゃあ、なのは」

にっこりと、笑顔を作る

「゙いってきまず」

言葉に、なのははきょとん、と目を丸くしてわたしを見る

そして…目尻に涙を浮かべながらも、やんわりと微笑んだ

「うん…゙いってらっしゃい゙」

きゅ…とわたしを抱き締めて

「早く、帰ってきてね?」

「勿論です。いろいろお土産話持って帰ります」


「うん」

きゅう、と抱き締める力が強まる。だから、わたしも強く抱き締め返した

「…プロトちゃん、大好き」

「わたしもです。なのは、大好きです」

だから、今は笑顔で別れます

いってきます、なのは




゙やほー、立体映像で失礼するです。元気ですかー?わたしはボロボロですーいやまじで

とりあえず傷の治療とか色々あるので、しばらく魔法の国に行ってきます

ですが心配すんなですよぅー。あなたたち並のお人好しを上手いこと使って乗りきってみせるのです。にはは

…ぇと、なんというか…

し、しばらく寂しい思いをさせるでしょうが、ご心配なく!

わ、わたしの家は【高町家】ですからっ!

今はちょっぴり男の子が冒険したいというかなんというか…そんな感じなので!
…ぇ、えぇと…

お…おとーさんっ!
また大怪我なんてしないでくださいね!?わたしがいないから治せません。喫茶店のオーナーとして大人しくしてること!無茶すんなです!

…おかーさん
少しは休むのです、働きすぎはいけないのですよ。たまにはゆっくりと休むのも大切です

おにーちゃん
忍とお幸せに。…出来ればわたしが帰るまで結婚式は待ってくれるとうれしーです。剣の修行も、せめてわたしに勝てるように頑張ってほしいです

おねーちゃん
少しはブラコン直して他の男に目を向けるです。素材はいーんだから、あとはやる気です。ふぁいとっ!

…なのは。
おねーちゃんなんて呼びませんよ?

…でも、大好き

みんな、大好きです

必ず帰ります。だから待っててください

…また、ビデオメールでも送ります

高町・グレイランド・プロトより

大好きな家族たちべ



「…?プロト?どうしたの?顔、真っ赤だよ?」

「い、今頃あの恥ずかしい文章を皆が聞いていると思ったら恥ずかしくて死にそうです…!」

だから地獄行き仲間を増やしたのです


゙追伸

フェレットのユーノは、魔法で姿を変えたなのはと同い年の男の子です

なのはと一緒に温泉入ってましたが゙


「「ユーノぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」」

「きゅーっ!?」

「お、お父さんお兄ちゃん落ち着いてー!」

「「ぐすっ…プロトちゃん…」」

「お母さんたちも止めてよー!もー、プロトちゃんのばかーーーっっ!」


―――
(作者)

無印・終了!

長かったー…

エピローグもう一個挟んで、番外編

アホなノリが続きますとも


・フェイトと○○したん?

それは皆さんの妄想の中に
気になって夜も眠れん!って人がいない限り書きまへん

妄想して楽しんでー


…してたらプロトもフェイトもSLBやね

・アリシアポイ捨て

黙認されますた
プロトもやっぱ子供



[16022] 不屈の心と試作品 エピローグ・Ⅱ とある武装局員の独白
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/03/19 12:13

声が聞こえてきた

独房…とは名ばかりで、実質武装局員の部屋よりも立派な部屋の中から

中にいるのは、つい先日…PT事件の実行犯。フェイト・テスタロッサ

だが、彼女は被害者でもある

だから、かもしれない

その、悲しそうな泣き声がどうにも気になったのは

それが、熟睡しているはずの幼い少女が、眠りながら泣いていると知っているからこそ、余計に





不屈の心と試作品
エピローグ・Ⅱ





かつん、かつん、と足音。が聞こえる。振り向けば、灰色の長髪の、全身に包帯を巻いた少女…のような少年。

痛みからか、顔を歪めて俺を見ていた

「…ろりこん?」

断じて違う。管理局の名に誓って

「…じゃあとっとと行けです。女の子の泣き声聞くのは趣味が悪いのです」

…君は?

「…ふふっ」

苦笑いしながら、口元に人差し指を当てる。

「これは秘密ですが…わたし、魔法使いなんですよ」

…俺も魔導師だが?

「魔導師ではなく、魔法使いです。女の子の涙を止める魔法しか使えませんがね」

…随分可愛いことを言うな、君は

「冗談ではじめたんですが、高町家のお人好しが移ったらしいのですよー。なんか泣いている子見ると慰めて甘やかしてあげたくなるのです。それが知り合いなら何でもしちゃうです」

…確かに君はお人好しだろうな。…入って良いぞ

「…あんたもお人好しですね。独房なのですから、ちゃんと見張りするですよ」

してるさ。してたが、気付かなかったんだ

「屁理屈です…。礼は言いませんよ。ありがとです」

言ってるじゃねぇか


中から声が聞こえてくる

「フェイトー、夜這いに来たですよー。起きるですー」

…あの子はどんな保護者に育てられたんだ?

「…ぅ?…ぁぅ…?ぷろ…と…?」

「ああ、夢ですからご心配なく」

「…そっか…。ゆめかぁ…」

…純粋過ぎないか?まぁ、ある意味箱入り娘だったんだから仕方ないか…

「ちょ、抱き付くなです…まぁいいかぁ…。それで?なんで泣いてたですか?」

「…母さんが…最後に頭を撫でてくれたんだ…」

「…ああ、そう言ってましたねぇ」

「…私、母さんに撫でてもらったの初めてで…凄くうれしかった…。けど…私、母さんが病気だってことにも気付けなかったんだ…あんなに近くにいたのに…」

「…プレシアが隠していたのですから、仕方ないのです」

「…それでも、だよ。私、駄目な娘だ…こんなだから、母さんも私のこと、好きになってくれなかったんじゃないかな…って…」

「…でも、わたしは好きです」

「…え?」

「フェイトの意思の強いところも、家族思いのところも、がんばり屋さんなところも、頑固なところも、焦ったときのかわいい反応も、すぐ真っ赤になるところも、照れ屋なところも引っ込み思案なところも頭が足らずに無茶苦茶やるところも、かっこいいところもかわいいところもアホな娘な所も全部含めて、わたしは、フェイト・テスタロッサが大好きです」

「…ぅ〜…誉めて…るの?」

「もちろん。だから…」

ごそごそと布ずれの音

「今は泣きなさい。そして、いっぱいいっぱい泣いて…悲しみを全部洗い流してしまうのです。涙は悲しみを拭うためのモノなのです」

「…ぅ…っ…」

「生憎とわたしはケガのせいで意識が朦朧としてるのですよー。だから誰かが大声で泣こうが、胸元がびしょびしょになろうが気付かないのですー」

「…ふぅっ…っぅ…な、泣いて…いいのかな…?私、母さんのために…泣いていいのかな…?母さんが死んじゃったとき…悲しくて、苦しくて、寂しくて…たくさん泣いたんだ…、でもそれは…私、私のために、泣いてただけで…ただ自分が悲しくて泣いてただけで…母さんのために泣いてたわけじゃないんだ…!」

「…いいのですよ」

とても優しい声。まるで、母が愛し子に微笑みながら発しているようなソレに、俺は思わず目元に手を当てた

「泣きなさい。いくらでも。…そして、綺麗で可愛い、フェイト・テスタロッサの満面の笑みを…わたしに見せてください」

「…ふっ…ぅああああああんっ!母さん!かぁさん!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ああああああーーーっ!」

泣き声。でもその泣き声に…いつもの圧し殺した泣き声のような悲壮感はなかった

「…涙の別れ…ってやつかねぇ」

涙無くして別れなし

決別に涙は付き物ってやつか

…無性にタバコが吸いたくなったんだ。だからここを離れる。仕方ない、仕方ないことだよっと


…翌日。

目元を真っ赤にしながらも、少しだけすっきりした顔の金髪の少女と

二度も勝手に医務室を抜け出した(あの坊主重症だぜ、重症。並の魔導師なら死んでてもおかしくねぇ傷だぜ。なんか痛みに耐性があるとか抜かしてたらしいが)罪で医務官に正座で説教されてる坊主の姿があった


…しっかし俺の気のせいかね?

どう見ても金髪の嬢ちゃん、あの灰色の坊主に惚れちまったように見えるんだがなぁ…

ま、弱ってる所に優しくされたら仕方ねぇか、と苦笑いしながらタバコを揉み消した

さぁて、今日もお仕事がんばりま「…おい、そこの君」…クロノ執務官?

「…昨日、フェイト・テスタロッサの監視の件について話がある…」



「…」

…減給っすか?

「それは確実にな。それから反省文を20枚提出だ」

…わぉ

俺はもう一度タバコに火を付け――ぼそっと呟いた

世界はいつだってこんなはずじゃないことばっかりだ…

「10枚追加。計30枚だ」

ちょ、勘弁











おまけ

シリアス&しんみりをぶっこわせ!

皆の期待/不安に応えるぜ!

MシアさんとSシアさま






「ああ…このうぞうぞする感覚がキモチイイ…!」

「…心底キモい」

なんか虚数空間に適応したMシアさん!ドン引きするSシア様!




さすがの虚数空間もMシアさんにドン引き!彼女らをぺいっと外に弾き出す!

「あら?ここは?」

「か、母さん!?それにアリ…姉さん!?」

「フェイト?なんか巨乳…もとい大きくなってる?」

なんと辿り着いたのは正史の世界!しかもstsよりちょっと前!




「あらフェイト久しぶりね。元気してた?」

「ふ、フレンドリー!?母さんが凄い私にフレンドリーだよ!?」

別にフェイトが嫌いなわけじゃなかったMシアさん!



「当然でしょ?貴女は私の娘よ?」

「…っ!」

なんか感動するフェイト・T・ハラオウンさん19歳!



「ついでに言うなら私の妹ね。…もっとも私はこんな豚を母親だなんて認めてないけど!」

「姉さん!?」

「ああ!もっと言ってくださいアリシアさまー!」

「母さん!?」

感動はぶっ飛んだ!





「あ、そうそうフェイトー」

「…な、なに?母さん」

ちょっぴりびくびくしながらMシアさんに近付くフェイトさん



「私、死にそうだからごぱぁ」

「母さーんっ!?」

母親の吐血を顔面に浴び、全力で真っ青になるフェイトさん。勿論返り(?)血で真っ赤だけどね★




「びょ、病院!病院行かなきゃ!」

「フェイトちゃん?さっきから何騒いでー―管理局に電話!ハラオウン執務官がご乱心!」

「ち、違うよなのは!違ううんだよ!」

もうなんか泣きたくなってきたけしからんフェイトさん!



そしてミッドの医療技術は世界いちぃぃぃぃぃ!!

「治療したら幼女になっちゃっちゃ☆」

「もう訳が分からないよ!」

幼女化したMシアさんと泣き出したフェイトさん!




「だ、誰の子だ…?」

「…え?お兄ちゃん?」

「いつ、誰との間にこんな大きな子供を作った!?しかも双子か!?片方はフェイトそっくりで可愛いな!もう片方は悔しいがお祖母ちゃん似だなって違う!とにかく相手は誰だデストローイ!」

「…あら、私がフェイトの母だけど?」

「私は姉」

「いいんだ!意味がわからないことを言うな!分かった!言いづらい相手なんだなよしフェイトに近付く男皆凹にしてくる!」

走り出す提督(既婚者)!




そして反転する運命!

「…っ!?わ、私が管理局のお局様候補No.1…!?」

色んな理由でそうなりました!





そして始まるJS事件!

「次元跳躍雷落としー」

「…なにしてるの?かあさん」

「いえね、私の完成させた技術で頑張ってる子がいるみたいだから、ちょっと激励に気持ちよくしてあげようかと思って」

「テメーみてぇな豚を基準に考えてんじゃねぇわよ。普通の人間は痛いことされたら嫌だっつってんのがわかんねーのかこの×××!クサレ×××××がっ!」

「や、やめて!やめてよアリシア姉さん!私と同じ声でえっちぃセリフ言うの止めてよ!」

もうなんか苦労が10倍のえっちぃ体の執務官さん!






そして某ゆりかごでは!?

「ぎゃああああああっ!?」←スカさん

「ドクター!?だ、駄目です!衛生兵!衛生兵を呼べ!」←1番なスカさんの嫁

「戦闘機人に衛生兵なんかいないぞ!?」←5番なロリ

「…あ、心停止しちゃいました〜」←4番なマッドめがね


JS事件終了のお知らせ!




そして始まる機動六課!


「私がアナタたちの゙的゙!プレシア・テスタロッサ(ピー)歳!未亡人よ!」

「「「「攻撃できるかーっっ!!(できませーんっ!!)」」」」

幼女に攻撃出来ないフォワード陣!



「あ、あかん…どうやりくりしてもリミッターが…リミッターがっ!なんでSSランクもあんねん!っちゅうかなんでちょっと前まで騒ぎまくってたガジェット連中がいきなり動かなくなんねや!?機動六課設立の意味ないやん!」

「お、落ち着くですはやてちゃーん!」

敏腕主婦でも使いこなせないMシアさん!



そのころアリシアさんはっ!?

「…私さ、生きてたら今年で41歳なんだよね」

「…気持ちは分かるぞ。あたしもだしな」

アリシアさん(見た目は6歳!)の言葉に涙するヴィータさん



「…まぁアレだ。強く生きようぜ!」

エタロリ同盟結成!




「まぁ私は成長するからいいけど」

「よし、表出ろ。アイゼンの頑固な汚れにしちゃる」

エタロリ同盟崩壊!




「ちなみにフェイトはあのナイスバディで14歳」

「フェイトーっっ!!」

「姉さん!私まで巻き込まないで!…ってはやて!?なのはっ!?なんでバインド!?」

「女として許せへんねん」

「…あのね、私も…オハナシしたいな…」

明かされた衝撃の真実!







「攻撃しないなら…勝手に自爆するわよ!?アナタたちを巻き込んで!次元震起こしてやるぅぅぅー!!」

「「「「洒落になってなーいっっ!!??(ないですーーっっ!!??)」」」」

そして地獄を見るフォワード陣!






「…母さんが生きててくれて、私は幸せ…姉さんがいてくれて、私は幸せ…例え毎日隣の部屋から猫の泣き声と鞭の音が聞こえても…怪しいお店から通販が届いても…最近、私の世間体が変態一家の1人になってても…わたしはしあわせ、シアワセなんだ…だから…泣くな…泣いちゃだめ…そうでしょ…?ばるでぃっしゅぅ…」

<…ファイトです、マスター>

間違いない…アナタは一番の苦労人です…

早くお金貯めて、誰もいない管理外世界で隠居しよう

そう心に決めた、フェイト・T・ハラオウン。1きゅ…14歳


結論

Mシアさんは何をした所でフェイトが切ないことになる





―――
(あとがき)


うん、俺頑張った

無印はこれで完結


…さて、次はA's編
質問にもあった通り、ヴォルケンズです

…実は、


なんと…






不屈の心と試作品では、A's編は存在しません!






…やめて!石投げないで!
ヴォルケンズ戦では勝負にならないのですよ、プロトじゃ

そんなわけで許してくださいなーm(__)m


ってわけで次回からはミッド(アースラ)編

新キャラぞくぞくです


PS
次回はクロ×プロの回!
このカプは嫌いじゃない(笑)


デレプロト?最初からやんw



[16022] 不屈の心と試作品 幕間 くろのくんのすとれすめーたー
Name: 人春◆45d3e50a ID:ec8f6a96
Date: 2010/03/24 12:31


※多重クロス(笑)注意!


不屈の心と試作品
くろのくんのすとれすめーた 30%(デフォルト)





地球から旅立って数日後。わたしはあの後すぐに医務室に運び込まれて精密検査。更に勝手に動きまわったから数日は絶対安静と言われ、ようやくまともに動くことを許可されました

久々に良い気分で食堂でジュースを飲んでいたら、向こうから見覚えのある金髪が

当然フェイトですね

「ね、ねぇプロト…。あ、あのね…」

「んー?なんですかー?」

顔を真っ赤にしながらもじもじと側に寄ってきたフェイトの頭をくしゃくしゃ撫でる。気持ち良さそうに目を細めるフェイトが可愛らしい

「な、なんで撫でるの…?」

「フェイトがかわいいからですよー」

「そ、そうなんだ…」

俯いてしまいました。…むー、やっぱり髪の毛撫でるのは止めた方が良かったですかね?間違いなくわたしとの戦いのせいでプレシアは病状が悪化したのでしょうし

そんなわたしに頭を撫でられても嬉しいわけありませんね、と内心嘆息しながら手を下ろす

「ぁぅ…」

?。何故残念そうにわたしの手を見るのですか?

「…ったく、なにやってんだい」

「おやアルフにクロノ。おひさー」

苦笑いしながら現れたアルフと、仏頂面のクロノ。んー?なんかあったんですかね

「プロト」

「はい?」

やけに真面目な顔をしたクロノが、一枚の書類を渡してくる。

「ぇ〜と…なになに?【治療費請求書】…ってえええええっ!?」

金取るですか!?管理局が!?

「ああ。慈善事業じゃないんだ。当然だろう?…というわけで、君に渡すはずだった報酬から治療費を抜いた金額…地球の物価で5千円だな。確かに払ったぞ」

わ、わたしの十数日間の苦労が…思わず膝まずき、項垂れてしまう

<見事なorz!マスター、恐ろしい子!>

グレイランドうぜー

「だ、大丈夫?プロト…」

フェイトが背中を撫でてくれましたが、ちょっと衝撃が大きすぎました…。立ち直れません

「更に、こちらの命令を無視してプレシアの根城…時の庭園に乗り込んだ罰としてD級ロストロギア管理封印倉庫の清掃整理を命じる」

「貴方は悪魔ですか!?」

「管理局の執務官だ」

「か、管理局の黒い悪魔だとでも言うのですか!?羨ましいです!」

クロノ、行きまーす!とか言うのですね!?ちょっと見たい!かなり見たい!かっこいい羨ましいです!

「何を言ってるんだ君は…」

心底呆れたような口調のクロノが憎らしい

<マスターは今、なのはさまと離れ離れになったせいで情緒不安定なんですよ。優しくしてあげてください>

「飛んでっけーっ!」

流星散らしてデート!吹っ飛んでったグレイランドに満足しながら振り返れば、妙に優しい笑顔×3がこんにちわ

「べ、別に寂しくないですよーだ!ばぁかばぁかクロノの思春期ー!」

「どういう罵倒だ!?ちゃんと倉庫整理やっておけよ!あとで母さんが確認しに行くからなー!」

クロノの叫びを背中に受けながら、わたしは真っ直ぐに倉庫に向かう。これでも根は真面目なので早目にとりかかることにしたのです

<マスター、管理用のデータの受信完了しました>

「…いつの間に」

<いつでもどこでもマスターの胸が私の居場所です>

…なんだか卑猥なセリフですねぇ。わたしが女の子ならアウトですよ

<ご心配なく。私のAIは女性型なので>

「ふぅん…え゙…?」

マジで!?

<嘘です>

嘘ですか!?意味のない嘘吐かないでくださいよ!

あー、びっくりしたー…

と、そんな無駄話してたら倉庫の前に到着、ドアの隣にあるロックにグレイランドをかざし、鍵を解除

いくらロストロギアと言ったところでD級。あのジュエルシードがA級危険遺失物だということを考えても、それほどの危険性はありません。むしろロストロギアの中にはとんでもなくアホな力しかないモノの方が多いですしね。

ちなみにロストロギアとは何か、という質問にはこう答えることができます

ずばり、オーパーツ

管理局が調べても、どうやって作ったのか、誰が作ったのか分からないもの、それがロストロギアです

だから、中には何の力もないただのガラクタもあります

地球で言うところの【アトランティスの遺産】や【ナスカの地上絵】みたいなもので、中に何らかのエネルギーを感じたらロストロギア認定。効果を調べて、ヤバい効果だったらB級以上、それほどでもなかったらC級。意味がわからなかったらD級、となるようです

で、ここはD級倉庫

封印作業こそしっかりしてあるようですが、あんまりまともな扱いはされてないようで、ぐっちゃぐちゃに適当にガラクタが積み重なってるです

「これは…」

<キツイ戦いになりそうですねぇ>

仕方ない。とっととやりましょう!

とりあえず近くにあった変なメガネを手に取ってみる

<D級ロストロギア【魔眼封じ】。度の入ってないただのメガネですが、何らかのエネルギーを感じるようです。鼻とヒゲを付ける計画があるようです>

…突っ込まない方がよさそうですね

次。…これは…?釘バット?いえ、金棒ですかね?

<【えくすかりぼるぐ】。重くて持ち上がらないのでD級。ただし振り回しながら呪文を唱えれば死人が甦るらしいです。誰も出来た人間はいませんが>

「…ちょっ、肉体強化してもびくとも…!」

つ、次!

<【空飛ぶトランク】。本来なら中身の人形の方がロストロギアに当たるのですが、生体ロストロギアだったので人形の所有者との交渉の結果、トランクの方だけ頂きました>

…なんだかわたしが入ったらしっくり来そうで嫌です

次。これは…カード?デバイスですか?

<【ペルソナ】用途不明。詳細不明。ある日、1人の管理局員が目覚めた力です>

「レアスキルですか?」

<いえ、力です。なのでロストロギア認定です。本人しか使えないのでD級です>

…はぁ、なんだか納得いきませんねぇ

んー? …何だかまともなモノがないですねぇ…

とりあえずグレイランドに確認しながらチェックし、並べていく。埃をかぶっているモノもあるで、雑巾を借りてきて1つ1つ綺麗にしていく。魔法は万能じゃないのです。掃除はマメにしましょうってことですね

「いた…」

トゲトゲしい物体Xのせいで指を切ってしまう。結構深く切ったのか、血が溢れ出す

<大丈夫ですか?>

「もちろんです。早く終わらせるですよ」

切った指から流れ出る血を舐めつつ、次のロストロギアを手にとる

<ぇー…【赤いあめ玉、青いあめ玉年齢詐称薬・オリジナル】。とある別世界の魔導師が使っていたアイテムですね>

へー、管理外世界にも魔導師っていたのですね。ずいぶんと術式体系が違うみたいですが

「これは?」

<【アポトキシン4866】ですね。若返りの薬です>

……若返り

「桃子とかリンディ、これ使ってるんじゃ…」

<…今度、調べてみますか>

是非、お願いするです。次は…手鏡?いえ、コンパクトですか?

<【テクマクマザコン】正しく呪文を唱えると、自由に変身魔法が使えるようになるようです>

「今更ですね」

<まったくです>

しかし…意外と管理外世界の魔導師の使うアイテムがロストロギア認定されているようですねぇ。もっとも、直接的な戦闘能力は皆無なようですが。

…いえ、【えくすかりぼるぐ】の持ち主は例外ですが。アレ、重すぎて転がすことも出来ずに未だに入り口あたりに転がってるのです

「んー、これも管理外世界の魔導師のアイテムですか?」

パステルピンクで、先端に星の形と羽根飾りが付いた、低年齢層向け少女アニメの魔女っ娘が持つようなステッキに手を伸ばす

<あ、はい。それは――ちょ、マスター!すとっぷ!それは【華麗・DO・素敵】といってさりげなく危険な…!!>

「へ?」

珍しく慌てたグレイランドの声が響くと同時、倉庫のドアが開く

「プロトー、手伝いに来たよ…ってきゃあっ!?」

入り口辺りに置いてあった【えくすかりぼるぐ】に転んだフェイトが、ガラクタの山に突っ込み

《血液げぇ〜っと!ついでに貴方はプロトさんですね!?名前もげぇ〜っと!》

手に持った妙なステッキから変な声が聞こえ

「だ、大丈夫かいフェイトがっ!」

フェイトの後ろから現れたアルフがガラクタの山を掘り返し

[どんっ!]

うっかりガラクタの中のどれかが誤作動したのか、質量兵器のような――っていうかぶっちゃけ質量兵器そのものなミサイルがわたしに向かって発射され――


《いっきますよー!ひっさびさの魔法少…女?あれなんか誤作動?ま、いっか!強引にでも合意なしでもコンタクト・フルオープン!》

なんだか上手いこと言いながらステッキが叫び――

ミサイルの着弾と同時に――









わたしの視界は、閃光に包まれた









…あれ? 死んだ?

恐る恐る目を開けたら、ぽかん…とした表情でわたしを見ているフェイトとアルフ

「…?」

ってことは…生きてる?

「よ…よかったぁ〜」

そんな安堵と共に胸を撫で下ろし――


むにょん


冷や汗が吹き出た

「…っ」

恐る恐る目を下に向ければ…小さくもなく、大きくもないが…確かに、脂肪の塊がある

<ま、まままままマスター!?>

グレイランドの動揺した声。だがわたしの動揺も半端じゃない。むにょむにょと胸を――そう、胸だ。おっぱいです。脂肪をもみもみする。

「は…んっ…!?」

妙な声が漏れたですよなんで!?

たまらず股間に手を伸ばし…すかっ

すかっ

すかっ

…ない。何度確認しても、ない

「お…」

自分でも信じられなくて、呆然と呟く。いやいやいや、いくら魔法文明でもこれはないでしょい。あり得ない。あっはっはー…

「女の子に…なっちゃった…?」

《あらー…予想以上に面白いことになりましたねー》

とりあえずわたしの右手で妙な事をほざいたステッキを、床に叩きつけた。




ピッ

くろのくんのすとれすめーたー

30%→60%


――――
(作者)

やっちゃったぜ☆

前にリクエスト(?)があったプロト女体化!

つっても続かないよ?

プロトにはなのはに幸せにしてもらう義務があるからね

する、ではなくしてもらう、なのがポイントである


ロストロギア(笑)の名前がちょっち違ったりするのは仕様です



・MシアさんとSシアさん

あまりの人気にビビる。チビる

やべー、輝いてるよあの人たち

続かない


・フェイト

救われたかは分からない

けど、原作より少しだけ明るくなったかも

ただし、依存度は確かにヤバい

プロトが死んだらヤンデレるね。多分

なのはもだけど


・フェイトの年齢

気付いたのは俺の弟

俺は吹いた

なのはさん、よ…○歳の女の子にSLBかましたのかよ

そりゃ魔王だわ


・第二期

ヤバイッス

ヴォルケンズの出番がない

あってもシグナムシャマルがちょろっとやー

ロリも犬も不幸娘も破壊神も出ねぇー

しかも第二期→原作空白期やわ…


・外伝?

ギャグオンリーですが何か!?






お知らせ



次回の更新からとらハ板に移りたい

無印完結したし…大丈夫ダヨネ?(・ω・`)



[16022] 不屈の心と試作品 幕間 くろのくんのすとれすめーたーⅡ
Name: 人春◆45d3e50a ID:ec8f6a96
Date: 2010/03/24 15:28
同じ話を投稿しちまったのが悔しかったので修正として続き投稿










目の前でげんなりとしてる人物には、かなり見覚えがある

灰色の髪にも、眠そうな目にも、面影がある

けれど、すらりと伸びた――といっても小柄だが――身長に、特筆するべきところはなくともメリハリの効いたスタイル。サイズが小さい服を着ているせいでボディラインがはっきりと分かるそれは、本来ならその人物にあってはいけないものだった

プロト・グレイランド・高町 9歳

15歳くらいの女の子になっちゃいました




不屈の心と試作品
くろのくんのすとれすめーたー 30%




「…つまり、人格内包型世界侵入系ロストロギア【華麗・DO・素敵】と因果干渉系ロストロギア【10年ランチャー】の同時使用により、暴走、気付いたらその姿になっていた、と…」

「…はい」

情けなくて涙が出てしまう。頭を抱えるクロノに今は純粋に申し訳なく思う

【華麗・DO・素敵】の効果は平行世界(次元世界とは違うものらしい。詳しくは知りません)から、その状況に最も適した人格を検索し、召喚するロストロギア

【10年ランチャー】は10分間だけ10年後の未来の自分と入れ替われるロストロギアだそうです

さすが、ロストロギア、何でもありです

それがどういう因果を経たら女の子になるのかさっぱり分かりませんが…

なんでも平行世界から召喚するはずだった人格の肉体を魔力によって構成してしまい、それが10年ランチャーのせいで10年後の姿に再構成されたとかなんとか?
意味わかんねーのです

「…ぇと、るびぃさん。直る方法は…」

右手に持った【華麗・DO・素敵】の管制人格、るびぃさんに聞けば、彼女は楽しそうに言う

《ようするに変に世界が混じっちゃってるだけなので、2、3日もすれば世界の修正力のお陰で直りますよー?っていうか変にイジったら大変なことになりますぅ。せっかくなので女の子ライフを楽しんでみてはい・か・が?》

となんとも頼もしい返事が返ってきた。…はぁ、ため息を吐くのは許していただきたい

《せぇっかくプロトさまがノリノリで魔法少女出来るように、平行世界から魔法少女でふぁんきーでキチガ…ユーモラスな人格を喚ぶつもりでしたのにぃ…》

…?なんだかとっても助かった気がするのは何故ですかね?

「…まぁ、直ると言っているんだ。君には申し訳なく思うが、我慢してくれ。そっちのロストロギアは再封印しておこう。…どうやら事故の原因は単純な勘違いのようだ」

「勘違い?」

首を傾げる。どうやったら勘違いでこんな事態に?

「封印班が【10年ランチャー】は外側…ランチャーの方に封印処理をしていたんだ。中身のミサイルが問題のロストロギアだったのに、な。そっちの方は…本来ならB級ロストロギアなんだが、管理者が聞き間違いでD級倉庫に入れてしまったらしい。しかもその管制人格が封印を自力で破ったようだ」

《てへっ☆》

いや可愛くもなんともないですよるびぃさん

「…はぁ。運が悪いですねぇ、わたしも…」

でっかいため息。その度に揺れる乳房が重い。そんなに大きいわけではないのですが、やっぱり重りも何もない男の身体と違ってでっかい違和感があります。バランス悪くて歩きづらいですし

「あーもうこれ邪魔です!クロノ、貰ってください!」

「い、いるかそんなもの!」

顔を真っ赤にしながら怒鳴るクロノ。えー、でもクロノおっぱいあってもおかしくなさそうですけどねー。普通に女の子と言われれば信じてしまいそうです

むにむに胸を揉みながら、嘆息。

「動きづらくて仕方ないのですよー」

「…胸を揉むな!っというか、母さんに言ってあるから早く着替えを貰ってこい!」

はぁい、分かりましたですよーだ。…あれ?フェイトはどこに行ったのですか…?

「あ、プロト見つけたっ!」

「ふぇ?」

噂をすれば影、とでも言うのでしょうか。妙に焦った様子のフェイトが駆け寄ってきた

「だ、大丈夫!?元に戻れる!?どこか身体おかしかったりしないっ!?」

「大丈夫ですよぅー。胸が重いのと歩きにくいのを除けばですが」

「…そ、そうなんだ」

フェイトが顔を赤くしてわたしを見つめ…フェイト?なんでそんな「私、がんばります!」みたいな顔してるですかって

「ふにゃあっ!?」

ち、乳をわし掴まれたです!

「お、重いなら私が支えるね!」

「や、ちょっ、指…動かしちゃ…ゃん…」

ぴりぴりと弱い電気を流されるような感覚に、頬が熱くなる。さ、支えるっていうか揉んでます!下から上に持ち上げるようにして念入りに!

今の私はフェイトより頭半分くらい身長が高いので、ちょっと腕を伸ばせば丁度いい位置にあるのでしょうってうにゃぁ!?腰がびくってしたぁ!?

「な…何をしてるんだ君たちは!?」

べりぃ!と引き剥がされる。腰が抜けてそのままヘタリ込んでしまうわたし

「プロトっ!?」

慌てて駆け寄ってきてくれたフェイトが、わたしの身体を支えながらクロノを睨む。…いや、ヤったのあなたですからねフェイト?

「ぅう…女の体って不便です…」

しかもいきなり手足が伸びたせいでバランスが取りづらくて取りづらくて…はぁ、仕方ないのです

「クロノー、肩貸してください」

「なっ…!?何故僕が!?」

妙に動揺するクロノに首を傾げつつ

「いえ、非力なフェイトに頼むわけにもいかないでしょうが…」

「あ、アルフがいるだろう!」

「アルフならいないよ?さっき遺失物保管庫で暴れたからって武装隊の人に引っ張られていったから。今お説教されてるって」

フェイトの言葉に酸欠の金魚みたいに口をぱくぱくと開閉するクロノ

「クぅ〜ロぉ〜ノぉ〜、はぁーやーくぅー」

手を伸ばしてみる。しばらく頭を抱えていたクロノでしたが、小さく「世界はいつだってこんなはずじゃないことばっかりだ…」と呟き、わたしの手を取る

「「わっ」」「あーっ!」

勢い余って抱き着いてしまう。胸の間にクロノの頭が挟まり、その熱さと熱い吐息にびっくりする。…?

「…クロノ、まさかとは思いますが…発情してませんよね?」

「なっ、ばっ!馬鹿を言うな!そんなことあるわけがないだろう!」

真っ赤な顔で否定するクロノ。…まぁ、そりゃそうですよね。いくらクロノが思春期とはいえ、年下の同姓を相手に発情するなんてあり得ませんね

クロノの手を借りてリンディの自室まで行き、散々からかわれたり遊ばれたり着せ替え人形にされたりしつつ(途中、服を脱いだら顔を真っ赤にしたクロノが慌てて部屋を出ていったのが不思議です。今の体はともかく、同姓なのに…)

「プロトっ!次これ着よう!きっと可愛い!」

「フェイトが着るなら」

「あらお揃い?いいわねぇ、エイミィ、記録媒体」

「ばっちりです提督!アースラのメモリに直結してるから永久保存出来ますよ!」

すんなです



ピッ

くろのくんのすとれすめーたー


60%→90%



そんなことをしていたら夜になってしまったです(宇宙なのであまり関係ないですが)

お風呂の時間なんですが…

ちょっと迷い中です

…どっちに入るべきでしょうか?男湯と女湯…

まぁ、男湯ですよね

暖簾(リンディの趣味でしょう。また変な所で和風です…)を潜り、脱衣場へ。幸い誰もいなかったので、借りた妙にフリフリしたブラウスとスカートを脱ぎ、下着も脱ぐ。なんかエイミィがサイズがどうとか形がどうとか大きさがどうとか騒いでましたが、まぁどうでもいいことです

<素肌が…!むにっと柔らかい感触がつるつるで…!もう私ぁ、辛抱たまらん…!>

「…グレイランド?」

しばらく静かにしてたと思ったら何を言ってるですか?

<いやぁ…女の子っていいですねぇ…。でもマスターは男の子で。じゃないと商品価値が下がります>

「意味わかんねーんですよっと!」

意味もなく風呂場に向かってグレイランドを投げ入れた「いたっ!?」へっ!?

「す、すみません人がいたですかっ!?」

着替えが無かったから油断してました。慌てて中に入れば、頭を押さえて振り向いた黒髪の少年が

「…ぷ、ろと…?」

「クロノ?」

どこに行ったのかと思ったら、風呂に入ってたのですか。…しかしクロノ、年の割にはいい身体してますね。かなり鍛え上げられてます。筋肉が凄い。…思わず自分の身体を見下ろす。…女の子の身体。でも元の身体もあんまり大差ないくらいぷにぷにでしたねぇ

とか考えてたら、顔と言わず首から足先まで真っ赤になったクロノが震えながらわたしを指差す。人を指差すなです

「な…ななな…こ、ここは、おとこゆで…!」

「?」

分かってますよ?

「はぅ…」

頭から湯気を出しながら倒れるクロノ…。ってえぇっ!?

「ちょっ、大丈夫ですか!?」

慌てて駆け寄ったら、倒れた拍子にどこかにぶつけたのか、鼻血を吹いていた

「ぇぇと…医務室!ああでも着替えないと…グレイランドっ、セットアップ!」

<だが断る!>

なんでですかー!?

仕方なく身体にバスタオルを巻き、緊急コールで医療班へ連絡。ついでにリンディとエイミィにも

「どうしたの?」

「クロノがのぼせて倒れたですっ!」

「…え?」

リンディが首を傾げる。わたしはモニターの位置を操作して、目玉をぐるぐる回しているクロノを映す

「…あー、なるほど」

するとエイミィ、なんだか「仕方ないなぁ」と言わんばかりの表情で

「思春期だねぇ…」

しみじみと言う。どういう意味でしょう?確かにクロノは14歳。間違いなく思春期ですが…

「…いやまぁ、いいよ。なんならそのままで。医療班には連絡…したみたいだね。じゃあ、戻っておいで〜。あと身体が元に戻るまでお風呂禁止ね」

「?、よくわかりませんが、とりあえず分かりました」

しかしお風呂入れないのはイタいですねぇ。海鳴市で過ごして数年間、毎日お風呂には入ってましたからねぇ…

「あ、だったら私が体、拭いてあげるよ」

いつのまにか通信を繋げていたフェイトが、挙手する

「おや、いいのですかフェイト?」

「うん、アルフがお風呂嫌いで慣れてるし」

でしたらお願いしましょうかねー



…そんなこんなで、私が元の身体に戻るまで約3日

色んなこと(トイレとか服の着方とかお風呂とか)をフェイトに手伝ってもらいながら過ごしました

…その間、まったくクロノが私に近寄ってこなかったのですが…なんだったのでしょう?





ピッ


くろのくんのすとれすめーたー

90%→MAX!

わーりんぐ





執務官。部屋にて




ちがうちがうちがうんだドキドキなんかしていない僕はノーマルだいやノーマルだからドキドキするんだろうか何であんなに良い匂いがするんだいやまて落ち着け僕、そうだアイツと一緒にお風呂に入ったとき確認したじゃないかアイツ付いてたよ駄目だお風呂やめろ裸思い出すな白くてやめろ桜色が落ち着け華奢なカットカットカット!


「あっは、クロノくぅ〜ん元気〜?」

「…」

「…え?ちょ、な、その目は何?なんでそんな餓えたケモノみたいな目で私を…」

「エイミィ」

「は、はいっ!?」

「…僕は」

僕は…ノーマルなんだ

だから…生粋の女の子が好きなんだ…

出来れば僕と違って明るくて気遣いの出来る優しい娘が良い…

…あれ…?

…少し性格が愉快だが…

いるじゃないか…

目の前に

「…エイミィ」

「え?え?ええ!?ちょ、どんな展開ってや、だめーーっ!!」




3日後、某執務官さんと某通信士さんが仲睦まじく艦内を歩いていたという




―――
(作者)

そのころなのは

「…はっ!(きゅぴりーん!)」

「なのは?どうしたの?」

「す、凄く勿体無いことしたような気がするの!わ、私アースラに行かなきゃ!」

「いいから寝なよ」

「…ユーノくん、冷たい」




2人の結婚にはこんな裏事情があったんですねわかりません

俺自重



[16022] 不屈の心と試作品 幕間 リンディさんの平和な日常
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/03/29 12:40
不屈の心と試作品
リンディさんの平和な日常



1ヶ月に及ぶ航海が終わり、ミッドに着いてから数日…リンディ・ハラオウンは今幸せだった

今日も通常より一時間も早く目を覚まし、ぼーっとする頭を押さえながら身支度を整える

そして向かうのはキッチン…では、ない。当然のように

とある管理外世界から【お預かり】している少年と、とある事件により保護した少女の眠る部屋

少女の方はともかく、少年は不穏な気配に非常に敏感なため、完全に気配を殺す。これで高ランク魔導師。これくらいは造作も無い

…最も、せっかくの高等技術をこんなくだらない用途に使っているというのは、彼女にこの技術を教えた教官に同情してしまうが

一切物音を立てず部屋に侵入すると、ベッドで眠る2人を至福の表情で見つめる

『…またかい?』

頭に響いた念話に視線を向ければ、獣姿の少女の使い魔が、片目だけ開いてリンディを見ていた

『もちろんっ。もうコレが無いと1日が始まらないわっ!』

断言するリンディに、アルフははぁ…とでっかい溜め息を吐き、再び目を閉じる。彼女は匂いでリンディの侵入に気付いて、毎日毎日早朝に起こされる哀れな被害者だった

『はぁ〜可愛いわ〜…養子の話受け入れてくれないかしら?プロトさんはともかく、フェイトさんなら…』

『…どーでもいいけど起こすんじゃないよ。フェイト、昨日は遅くまで眠れなかったんだ』

『あら、どうして?』

と、アルフ、苦虫を噛み潰したような顔で(獣姿なのに器用なモノである)

『…プロトと一緒じゃないと眠れないのに、プロトと一緒だとドキドキして眠れないんだと』

『あらあらまぁまぁ』

嬉しそうに笑うリンディ。事件のせいで心に傷を負ったフェイトがそこまで…と思ったら嬉しくて仕方ないらしい

そのまま一時間ほど2人の寝顔を堪能し、にこにこ笑顔で部屋を出て、朝食の支度

朝食が出来上がる頃、愛息子ことクロノが起きてくる

「おはよう、クロノ」

「…おはよう、母さん」

目元を擦りながらも、クロノは身支度を済ませており、寝癖すらない。それを立派なだと思いつつも、寂しく思うリンディ。まだまだ息子を可愛がりたい年頃なのだ

「…ぅぁょぅごじゃいまひゅ…」

と、そこへプロトが姿を表す。ぱたぱたと足音もしたが、恐らくフェイトが洗面所に行ったのだろう。さすが女の子

プロトは身支度などに無頓着で、まだ寝間着――クロノが数年前に使っていたモノだ――のまま、目を擦りながら椅子に座る。当然、眉間にシワを寄せるクロノ

「おい、顔も洗わないで…っというか君は朝は得意なんじゃなかったのか?」

「…きのーはバルディッシュの中身見せて貰って…つい…」

「夜更かし、か。子供は早めに寝るモノだ。…寝癖、凄いぞ」

クロノが苦笑いしながらどこからともなく櫛を取りだし、プロトの長い灰色の髪を整える。それに気持ち良さそうに目を細めながら、プロトはリンディが用意したミルクをちびちびと舐め始めた

「…ぁ、おはよう、ございます…」

小さく、呟くような声で挨拶しながらフェイトが姿を表す。無言で手を差し出したプロトの手にクロノが櫛を渡し、プロトが椅子に座ったフェイトの髪を整える。ここ最近のお決まりのパターンだ

プロトは自分の髪をいじったりしない。高町家にいたころは、適当に寝癖を直したらそのままストレートにしていたらしい。それを見かねた高町家の長女…ミユキさん?が毎日彼の髪を結うようになり、それが最近はなのはさんの仕事になりつつあった…らしい

さらにフェイトは自分で髪を結うモノの、ソレはいつも自分で適当に纏めるだけ。一応サマになってはいるものの、髪にダメージを与える結い方だったり、後ろから見ればイマイチ不格好に見えたりと…まったくフェイトのことに無頓着だったプレシアに同じ母親として殺意を抱くようなモノだった

故に、これではいかんと思ったリンディがクロノを巻き込んで彼らの髪を結うことにした。するとどうだろう、プロトはフェイトの髪を結うようになった。なんでもなのはの髪をよくいじっていたらしく、久々にいじりたくなった、と言っていた

…本当は人見知りで、イマイチまだリンディやクロノに慣れていないフェイトを思ってのことだと分かっているだけに、リンディはそんな彼らが微笑ましくて仕方なかった

顔を真っ赤にして髪を結われているフェイトを見ながら、リンディはクロノと一緒に料理を並べ始める。

「フェイトの髪は綺麗ですねぇ」

「あ、ありがとう…プロトのも綺麗だよ?…あ、次、プロトの番」

はいはい、とフェイトに櫛を渡すプロト。手早くプロトの髪を結う。最近お馴染みとなった変形ポニーテールのようなツインテール

「2人とも?ご飯よ」

「「はぁ〜い」」

どこか間の抜けた返事をしてから、しまった!と言わんばかりに表情を変えるフェイト。それに苦笑いするプロト。…いい加減慣れてほしいものね…と内心で溜め息を吐きながらも、笑顔を絶やさないリンディ

それから和やかに…ほんの少しだけぎこちなく…始まる食事

「フェイト、あ〜ん」

「あ、あ〜…ん」

…どうもプロトはフェイトの少食が気に入らないらしく、度々こうやって無理矢理フェイトにご飯を食べさせる。アルフもこの時ばかりはフェイトの敵である。何故ならば彼女もまた、己の主の少食が気に入らないのだ

「フェイト、こっちも!あ〜ん!」

「う、うん。あ〜…ん」

…ちなみにこのあと、フェイトが涙目で「もうお腹いっぱいだよ…」と言うのは既にお決まりのパターンであり、逃れられない運命である

「…まったく、朝食くらい落ち着いて食べろ」

口調こそ不機嫌だが、口元を僅かに綻ばせて言うクロノに、リンディは微笑する

リンディは知っている。クロノが弟と妹が一辺に出来たようなこの状況を楽しんでいることを

リンディは知っている。クロノが毎日仕事帰りにフェイトとプロトにお土産にお菓子を買ってきていること

リンディは知っている。クロノがこっそりエイミィに教えてもらいながら髪をとかす練習をしていることを

リンディは知っている。クロノが実はフェイトの髪もとかしてやりたいと思っていることも!

そんな不器用な息子が可愛くて可愛くて仕方がないリンディだった

「おや、2人ともいいのですか?そろそろ出ないと不味いですよ?」

時計を見れば、思いの外時間が経っていたらしい。クロノと顔を見合わせ、頷き合う

「それじゃ2人とも。留守の間、よろしくね。フェイトさん、午後1時くらいに迎えに来るから、準備だけしておいてちょうだいね?」

今日もフェイトは裁判の準備だ。しっかりフェイトが頷いたのを確認し、リンディとクロノは席を立つ

「「いってきます」」

笑顔で手を振るリンディと、僅かに口元を緩めながら言うクロノ

「「「いってらっしゃい」」」

対して、多少ぎこちなくはあるものの…皆、笑顔で手を振って見送る子供たち


リンディ・ハラオウンは今、幸せだった







おまけ

リンディさんvs高町家


ぴんぽーん…と、テンプレートなチャイムの音。リンディはそれに、重い胸の内を吐き出すかのように溜め息を吐く

ああ、気が重い

あんなに小さな子供を、家族から引き離さなければならないなんて…そう思うと、リンディは無意識に溜め息を吐いてしまう

「はぁ〜い…あ、リンディさん」

出てきたのは、今回の事件の協力者…なのはさんだった

「あ、なのはさん…。その、前にも言った…プロトさんのことなんだけど…?」

…? リンディは知らず首を傾げる。プロトの名前を出した途端、目の前の小さな少女の雰囲気が変わった気がしたのだ

「――そうですか、どうぞ?」

なのはは笑顔でリンディを家に招き入れる。リンディは事前に調べておいた知識通り、靴を脱いで廊下に《ガチャ》…

「な、なのはさん?何故鍵を閉めたのかしら?」

「最近物騒なの」

にこにこ笑いながら、さらにチェーンをかけるなのは。…何故かその笑顔に、冷や汗が止まらないリンディ

「あ、こっちですよ」

なのはに手を引かれ、リビングに通される。…果たしてそこには、妙齢の女性がいた

…全身に漆黒のオーラを纏って

(こ、これは不味い!一度出直して…!)

引きつった笑みを浮かべながら後退しようとしたリンディ。けれど、背中に軽い衝撃

恐る恐る振り向けば、変わった衣装の壮年の男性と、同じような格好の青年と少女がいた。

…皆、その両手に小太刀を握って

(あ、あれ?私、ここで死ぬ?)

思わずそんなことを考えたリンディ。けれど壮年の男性はにこにこと満面の笑顔

「やぁ、稽古が終わって間もないのでこんな格好で失礼しますよ」(なぁに、武装していることに意味なんかないさ。…ただ、稽古が終わった直後だから、だ。心配するな)

「そんな所で立っていないで、どうぞ座ってください」(逃がすと思うか?いや、逃げられると思うか?)

「あ、わたしお茶用意するね」(安心していいですよ、薬なんて入れないので)

…皆、終始笑顔だていうのに…副音声が隠せていない。いや隠す気がないのだろうか

「…あ、そうだ。魔法の練習しなきゃ」

棒読みでなのはがそう言うと、展開されたのは結界。しかも、念話妨害と転移不能の術式が付与されている

(た、退路を絶たれた!?救援まで封じられた!?)

なのはの才能に戦慄するよりも、今の自分が絶対絶命のピンチだと言うことに恐怖を覚えるリンディ

そこへ、妙齢の女性…タカマチ・モモコさんが、にっこりと極上の笑みで

「さ、゙オハナジしましょうか…?時間はたっぷりありますし」

…トドメを、さす

「あ、あはは…お、お手柔らかに…」

これでもリンディは提督である。修羅場だって何度も潜ってきた。命のやり取りをしたことだってある

…だが、これほどまでに濃密な゙死゙に直面したことは無かった

リンディはその日、遺書を用意していなかったことを後悔しながら高町家との対談を済ませたという





―――
(作者)


クロノが可愛くて仕方ない


・華麗・DO(ry

後悔も反省もない


・クロノTS

君はあれかね?

禁断のKYルートを爆走しろと言うのかね?

書けないこともないよ?(嘘)


・残念なのはなのは

血涙ですね


・リア充クロノ

もげろ

腐れ

書いてて羨ましかったぞ




・ひとたらし?女たらし?

保護欲を掻き立てます

某鉈女に遭遇したら間違いなくお持ち帰りでしょう


・プロトのお風呂

桃子しゃんに調教されてます

男湯でも女湯でも危険な容姿なーのでー



・フェイトの年齢

明記されてないのでこの世界では5歳時→0歳(仮)とさせていただきました
ギャグなので見逃してくださいm(__)m


・ロストロギア(笑)

仕様です(笑)





クロノは見方を変えればきっと愛くるしいキャラだと思うんだ



[16022] 不屈の心と試作品 幕間 出会いは別レ
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/03/30 12:21
不屈の心と試作品
出会いは別レ





…ムカつく

「だからうーだこーだ」「いやそれはあーだこーだ」「危険性はほにゃらら」「まだ小さいからほいさっさ」「子供とはいえうんにゃらほいほい」

意味のない会議をしている大人たちを前に、わたしは大きな溜め息を吐いた

会議の内容はずばり、わたしの処遇に対して

まだ研究材料にするのを諦めきれないみたいなんですよね

…フェイトは大丈夫ですかねー。裁判の準備してるらしいですが、昨日も不安で恐いとか言ってわたしのベットに潜り込んでくるくらいでしたし…リンディとクロノが付いていったので大丈夫だとは思うですが

ああ、ちなみにわたしもフェイトもリンディの保護下に置かれています。リンディも一応提督ですから偉いのです。フェイトもアースラでミッドに向かう途中、次元犯罪者の逮捕に協力したりしていたのでほとんど罪らしい罪は残らないでしょう。なんと言ってもAAAランクの魔導師を逮捕して終わりにするくらいなら嘱託にして働かせようとするのが管理局ですし

…でもまぁ、その気になれば一般の武装局員を魔導師ランクに関係なく強化出来るわたしの体に使われている技術は見逃せないらしく、今、絶賛会議中です

しかも便宜上、わたしの保護者であるリンディを抜きにして会議しているっていう出来レース。やっぱり管理局は腐っている人間がいっぱいですね

特にアレ、メタボ腹のヒゲのおじさん…ゲイズ少将?がウザい。ウザすぎる。わたしが子供だから戦場に出すな…って…戦場じゃなく、研究施設なら良いとでも言うつもりですか?そもそも勘違いしているの悪いんですが、わたしは管理局に就職するつもりなんかありませんよ?何を勝手に管理局の戦力として考えてるですか。そりゃフェイトやリンディの手伝いするために次元犯罪者の検挙に協力しましたが、管理局自体はわたしだいっきらい!なんですからね?

はぁ、ともう一度大きな溜め息

…もう適当に誤魔化してこっそり帰っちゃおうかなー…シルエット使えばバレないかも…なんて考えていた矢先

「いい加減サァ…建設的な話をしようヨー…ボク飽きてきちゃっタ」

幼い少女の声に視線を向ければ、わたしよりも幾分か年上くらいの、肩口辺りで切り揃えた白に近い灰色の髪の少女が不機嫌そうな顔で棒付キャンディーを舐めていた

…あの娘も管理局員なんですかね?

「何を言っているんだ!事の次第が分かって」

「分かってっから言ってんだヨヴォケ。こいつに使われている技術はワン・オフ・モデル。そもそも魔力ランクがAAはないとまともな戦闘はできねーんダヨ。例えAAAランクの魔導師にこいつと同じ処置をした所で、ランクはA-まで落ちちまうジャン。こいつはレアスキルのお陰で大量の魔力消費を抑えられるから何とかなってんだヨ。しかもミッド式だと魔力を体内の治癒に消費しすぎるから、砲撃魔法はおろか射撃魔法もまともに使えないポンコツ魔導師になっちまうゾ」

「…むぅ」

うなる局員のお偉いさん。…どうやら彼女は技術者のようですね

「ついでに言うならそいつの体内に使われている技術は既にそれで【完成形】ダヨ。これ以上研究したところで治癒能力のバリエーションが増えるダケ。魔力消費量は変わらねーだろうカラ、一撃食らったら治癒しか出来ねーナ。…使えるとしたらそいつから血液貰って魔法生物を養殖、治癒魔法の効果向上の薬にでもするしかネーナ。だろ?ジュエル」

少女が隣にいた人物…紫色の髪の青年に問い掛ければ、彼もまた、にやりと酷薄な笑みを浮かべて頷いた

「だろうね。…だが個人的な興味は尽きない。君さえ良ければ君の体に使われている技術の解明に協力はしてほしいのだが」

…分かってますよ。拒否は許されないのでしょう?

「こんなくだらない話し合いに参加しなくて住むのなら構いません。構いませんが、メスで切られたり実験に付き合ったりはしないですよ。精々検査とデータ取りが限界です」

「結構。…私、ジュエル・スカリィが君の全てを見通してやろう」

にやりと笑うジュエルさん。…やだなぁ、この人マッドの匂いがするです。忍と同じ人種ですよ、間違いなく

「っつーわけで会議は終了だヨ。おら帰レ帰レー!こいつの体は後で調べたことレポートにまとめて皆さんに送ってやんヨ。っちゅーわけでかいさーん」

がたがたと大きな音を立てて席を立つ少女…?あの娘、隻腕ですね。しかも義足です

「オラ、こっち来いヨ。これから検査ダゾ」

ちょいちょいとわたしに向かって手招きする。…なぁんかヤァな感じですねぇ。出来れば遠慮したいのですが

「ま、待て!まだ話は終わっては…!」

いいぞいいぞ偉そうなおっさん。この偉そうな娘を凹ませるのです

「っるーせぇナァ。あんまり騒ぐと三脳…もとい最高評議会に報告すっとォ?」

「…ぐぅ」

ああ、弱い!弱いですよおっさん!もうちょっと頑張ってほしいのです!

…ってか最高評議会ってなんでしたっけ?

「くくく…」

いつの間にか紫髪のイケメン…ジュエルさんが、わたしに向かってニヤニヤと嫌らしい笑みを向けながら隣に立っていた


むぅ、いつの間に…

「…何ですか?」

出来るだけ不機嫌そうに、嫌そうに言ったら、ますます笑みが深くなる。だけど目が笑ってないから気持ちわりぃです

「いや、興味深くてね。…君のような境遇の少年が、そんなにも活き活きと輝いている…それが不思議で、興味深いのだよ」

「…しょたこん」

「ははは、そっちの気はないさ。…もっとも、科学者たるものあらゆる分野に興味は惹かれるがね」

「…しょたこんっつうより変態。科学者っつうよりマッドですね」

「否定はしないさ」

爽やかかつ大胆な変態ですねぇ…。激しく友達にしたくないタイプです

「とにかくこいつは貰ってくゼ。詳しい情報が知りたきゃ最高評議会に書類出して来いヨ。っつーかブッチャケ、この会議は最初から意味ねーッス。本日12:00を持ってプロト・G・タカマチ…以下この者を協力者と呼ぶ、を特別隔離研究施設の預かりとし、最高評議会の名を持って協力者に対する如何なる干渉を禁ずる。尚、協力者の身柄は時空航空艦アースラ艦長、リンディ・ハラオウン提督の預かりとし、協力者が何らかの問題を起こした場合、責任の処遇はリンディ・ハラオウン提督が負う。また、万が一特別隔離研究施設内で協力者を原因とする事故事件が起きた場合、特別隔離研究施設の職員全員がその責を負う…以上ダ。反論等がある場合、一度最高評議会に嘆願書等を提出し、最高評議会から許可を得、承認を得てから行うこと。これは決定事項であり拒否、抗議等は認められない。でもって…」

ちらり、と少女は壁に視線を移す。壁に埋め込まれたモニターに映る数字は、今丁度…12時を指していた

つまり、彼女が言った【正式な命令】がたったいま、施行されたのだ

「時間ダ」

ぽかん、と未だに事態をしっかりと認識出来ていない偉そうなおっさん達を尻目に、彼女はぱきんっ、と飴を噛み砕き、立ち上がる。

「あとは任せるゼ。行くか、ジュエルにプロト・タカマチ」

「ふぅ…仕方ないね、まったく」

苦笑いするジュエルさん。わたしにも声をかけたくせに、わたしが動かなくてもふらふらと体を揺らしながら先頭を歩く少女の後を追い、歩き出す

…なぁんだかまた面倒なことに巻き込まれる気がするのですよー

「…あァそうそウ、お前、今日から1ヶ月は帰レネェから」

「はぃぃ!?」

ちょ、いきなり過ぎませんか!?

「しゃーねーベ。精密検査にデータ取り、体内の修復にリンカーコアチェック、体内器官検査に稀少技能申請並びに稀少技能の確認検査、戦闘技能の確認にあとついでにパーソナルデータの確認もしなきゃなんねーンダカラ」

「だからって聞いてないですよ!?」

リンディに電話…もとい念話で伝え…ああ駄目です本局内で私用の長距離念話は原則禁止で…

「ちなみにこれは上からの命令でね。従ってもらうよ」

「…ぅ〜」

ヤですけど。すっごいヤですけど!ここで断ったりしたらリンディが迷惑でしょうし…

「…条件が1つ…いえ、2つ」

「ン〜?まァ言ってみナ。聞くかどうかは知らんゾー」

首を傾げる少女にわたしは告げる

「最高評議会…でしたか?そこに掛け合って、フェイトを確実に無罪にしてください」

「オっケ」

…軽っ!?

ジュエルさんはくくく…と悪役のように笑い

「元から彼女は無罪のようなものだろう?少しの細工で十分さ」

…管理局員が真っ白じゃない、といういい見本ですね。最悪な気分です

「2つ目はナンダ?金ならネーナ。ボクのカラダを好き放題したいっつーなら勘弁ダゼ。コイツにクレテヤルことになってるかラナ」

「…ペド野郎!」

ジュエルから全力で距離を取る。フェイト逃げてェー!

「…誤解だ。冤罪だ。あとそういう意味じゃない。死体を提供する、という話だ。科学者同士、色々興味は尽きないのだよ」

…信じきれねーです。明らかに変態っぽい顔ですし

「…まぁ、わたしの2つ目の要求は簡単、わたしを人間扱いしろっつーことですよ。研究材料扱いされたら迷わず管理局ぶっ壊してでも逃げるですよ」

実際、あんな思いを二度とするのはゴメンですしね

「…へェ」「成程、な」

そう言うと、2人はにやにやとなんだか妙な目でわたしを見つめてくる。…なんか変なこと言いましたかね?

「まァいいヤァ。よろしくナ、プロト・タカマチ」

「…しっかりした名前はプロト・グレイランド・タカマチなんですがね」

苦笑い。ちなみにグレイランドは今スリープモード。デバイスの使用を禁じられてるのです

「そうカ、ボクはキュイル。キュイル・バレンシュタインだ」

…?

…バレンシュタイン…?

どこかで聞いたことがあるような…?

「私がジュエル・スカリィ。偽名だが、気にしないでくれ」

「…偽名って言われたら気になりますよ」

なんですかね、この2人

なんだか凄く嫌な匂いというか…邪悪な感じがしたのです…

まぁ、それはともかく

…1ヶ月も留守にするなんて…リンディやクロノやフェイトにお説教されそうです…

「しっかりリンディ達へ連絡しておいてくださいね」

「それは私の部下がやっておこう」

…なら任せるとしましょうかね

あー…

面倒なのです…




―――
(作者)

その夜フェイト

「…ぇ?プロトが…しばらく留守にする…んですか?」

「…そうらしいの。話を聞く限りなら一応信頼出来る人らしいけれど…」

「そ、そんなことはどうでもいいです!ど、どどどどうしようアルフ!」

「…どうしたの?フェイトさんは」

「…あの坊主がいないと最近安眠できないんだと」

「…使い魔って大変そうね」

「いいんだ、慣れたし。何よりフェイトが笑っててくれてるしね」

「そ、そうだ!匂い、匂いがあれば少しはマシ…あったかさと柔らかさはアルフで代用…出来るかなぁ?」

「…聞いてないわね。しかも貴女全否定されてるわよ?」

「いいさ。それでフェイトが笑顔でいられるなら」

「…無駄にカッコいいわね」





さてさて、こっからしばらくはシリアスのターン

…そしてフラストレーションがチャージされたMなのはは凄い/酷いことになりそうだ



・P×F姉妹

らぶらぶですね
もしかしてあるいは【お姉様】ルート?


・リア充クロノの努力

クロノ可愛いよクロノ

作者の愛を一身に受けてます


・甘党艦長変態疑惑

手遅れです。変態です

・ロストロギア(笑)

【えくすかりぼるぐ】を使おうとして某テスタロッサさんはぎっくり腰になったそうです

ぴぴる【ごきっ!】ぴぴるぴぴぴるぴる〜♪

・高町家

高町家は魔窟よ!
なんの覚悟もなく足を踏み入れたら生きて帰れないわ!by甘党艦長







オリキャラ・キュイルは重要キャラクターですが出番がほぼありません

皆、彼女のこと忘れないであげてぇー



[16022] 不屈の心と試作品 幕間 変な名前
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/04/01 12:23
…で、どうダヨ?

「中々悪くはない。面白い。…だが、つまらない」

どっちダヨてめぇ、っつかどういう意味ダ?パパの最高傑作予定だったモンを馬鹿にすると許さねぇゾ

「この程度なら、私なら3年もあれば作れた」

…だろうナ。ボクごときじゃてめぇの足下にも及ばネェヨ

「…人格の統合が不完全のようだな。調整してやろうか?」

結構ダヨ。これ以上イジッタラさすがに壊れルっつの

「だろうな。…コレ自体は大したことはない。だが、彼は…どこまでも、゙人間゙だ」

ああ?

「彼は自分が゙化け物゙であると苦悩している。だが、嫌悪しているはずのその力を振るうことに悦びを得ている。実に矛盾している。実に人間をしている!たかだか人形に過ぎなかった彼が!ただの駒に過ぎなかった彼が!彼がどういうプロセスを経てそこまでに至ったのか!それを私は知りたい!解明したい!」

…はんっ、そんなモン…

「事実彼は!絶対に勝てないはずのプレシア・テスタロッサに挑み、勝利しそうになった!あの時彼女がジュエルシードを所持してなかったらどうなっただろう!?何がそこまで彼を駆り立てたのだろう!?」

…確かニな。パパとママ…いやボクらカナ?ボクらが作るはずだった試験体なラ、そもそも戦おうとすらしなかっただろウヨ

「なんて素晴らしい可能性だろう…!もし、彼と同じように私の娘たちが゙人間゙になったのなら…!あの荒々しくも美しい、いっそ神秘的とも言っていいあの戦いを模倣出来たなら…!」

…ちっ

「ふは、ふはは、ふははははははははっっ!!はーはっはっはっはっ!!素晴らしい!素晴らしいよ!実に良い仕事だ!君は私に素晴らしい゙研究テーマ゙を与えてくれた!感謝しよう!さあ、見返りは何が良い!?答えたまえ、選びたまえ!」

…なら、ヨォ

「なんだね?」

…アイツ、完成さセロ。…ボクラじゃ…パパとママじゃ出来なかった、アイツの究極形…ボクラに見せてミロ

「くくっ、君の科学者としての心構えも素晴らしい。…何が君をそこまでさせたのか、調べてみたいモノだ」

ああ?ンナの決まってンジャン

自分が死にたくねーから、自分の娘を変わりに殺した。ソントキに色々壊れちまってナ。ボクも、ボクの中のパパも、もう何が何だかよくワカンネェのヨ。どっかオカシイかヨ?

「頭がオカシイね。…自分の娘に自分の人格データと夫婦の知識、経験を移植、か。私でもやろうと思わないね」

ボクの勝手ジャン

まぁ、娘からすりゃ溜まったモンじゃなかったロウケドネ

でも死ぬのは嫌ダッタンだ。仕方ない

「外道だね」

お前モナ

くっくっく…

「はっはっはっ…」




不屈の心と試作品
変な名前




見渡す限りの茶色。緑は一切存在せず、茶色の土と岩のみが存在する荒野に、転々と転がる青色

「今日も今日とてデータ取り〜」

ソニックライドで接近し、青いカプセルみたいな形の機械にグレイランドを振るう。この3ヶ月ですっかり慣れた――慣れてしまった――行動に、溜め息が出る。1ヶ月とか言いつつ既に3ヵ月ですよ

「モード・F」

〈モード・F。展開します〉

バリアジャケットの形が微妙に変わる。髪がツインテールに纏められ、コートがマントへと。グレイランドの遊びで始めたことですが、稀少技能の変化を分かりやすく実感出来るので悪くないです

「魔を断て、雷光――」

バチバチと放電する魔力刃を伸ばす。セイクリッドよりも消費魔力は大きいし、射程も短い。けれど非殺傷設定が可能で威力もこっちのが高いのです

「ライトニングスレイヤー!」

雷光が駆け抜け、10機以上の機械兵器を巻き込んで破裂する。…AMFとかいうのを積んでるらしいですが、わたし相手には意味ないですねぇ

『よし、次、リミットブレイク』

頭の中に響くジュエルの声に頷き、頭の中でリミッターを解除

目の前に現れた、先ほどの機械兵器の5倍はありそうな完全な球体の機械兵器。そいつが伸ばしてきたマニュピレーターを切り払い、距離を取る。…あいつのAMF、かなり強力ですね

「グレイランド!モードF停止。リミットブレイク!」

<ラジャー。モードFOFF。リミットブレイク>

途端、感覚が消える

視界がモノクロへと変わり、匂いが消える。試したことはないけれど、味覚も消えているのだろう

「インパクトブレードっ!」

<了解、インパクトブレード展開>

リミットブレイクの効果は凄く分かりやすい

五感の疑似遮断

リミットブレイク中は味覚聴覚視覚嗅覚触覚が消え、疑似神経に接続することで、必要最低限のデータのみが脳に送られるようになる

これにより恩恵は、2つ

1つはマルチタスクのリソースが増える。肉体の情報を処理していた部分を戦闘思考に割り振ることで、戦闘中の選択肢を増やすのだ

そして2つ目
この状態のわたしは、【痛覚】を感じない

…故に、簡単に【人間】を超えられる

ぶちぶちと筋肉が千切れていく感覚。それに吐き気を覚えながら、全力で魔力刃を振るう

インパクトブレードは通常の魔力刃とは異なり、対象を切断するのではなく、命中した瞬間に破裂する特殊な魔力刃

「ってわけでぶっとべぇ!」

インパクトブレードが巨大な機械兵器にぶつかった瞬間、爆発。それと同時に稀少技能ON。散弾のように魔力結晶が機械兵器に降り注ぎ、その装甲を削り取る

「うっらぁあああああ!!」

更に左足を機械兵器に叩き込む。薄くなっていた装甲は吹き飛び、中身に突き刺さる左足。…当然、左足はぐっちゃぐちゃ。あー…やるんじゃなかったです

機械兵器が爆発する前に脱出。魔力を足に集中して治癒力促進。…ジュエルの渡す薬を飲むようになってから、魔力量が少し増え、回復力が上がりました。…嬉しくないです

左足からはみ出た白い何かをぶちゅっと中に押し込み、ぱっくり割れた黒い断面を手で押さえる。しばらくそうしていたら、骨が繋がった感覚。痛みはまだ凄そうなので、リミットブレイクは継続

…あー、お腹減った

『ご苦労様です、プロトさま』

『ぅ?アインさんですか?』

珍しい。

アインさんはあの変態科学者ジュエルの助手の、紫色の髪の綺麗な女性です。どことなく母親っぽい人で、どうやらジュエルに恋心を抱いているようです。…あの変態のどこがいいのですか

それはともかく、彼女はジュエルの私設研究施設にいることの方が多いらしく、あまりこっちに関わることはないはずなのですが…

『ジュエルのアホになんか用ですか?』

『いえ、私の妹が戦闘訓練を始めたので、そのついでにプロトさまと模擬戦を行うという予定だったのですが…ドクターから聞いていませんか?』

…初耳ですよ

ってか模擬戦やらせるならリミットブレイク使わせんなです。死んだらどーする!?

『んー…まぁ、大丈夫だとは思いますよ。所詮模擬戦ですし。クールダウンにもなるでしょう』

さっきの口振りから考えるに戦闘訓練初めて間もないようですし、単純体術でもいなせるはずです

『そうですか?…では、今から妹を転送します』

空中に展開されるミッド式の魔法陣。そこからすたっと地面に降り立ったのは、わたしより幾分年上くらいの少女だった。

白い髪と金色の瞳。体のラインがピッチリ出るボディ・スーツに黒い外套

「フィフス・デザイアだ。よろしく頼む」

名乗り、軽く頭を下げる少女…フィフス

「プロト・G・高町です。早速模擬戦と行きたい所ですが…その前に1つ、質問が」

「なんだ?」

首を傾げるフィフスに、真剣な表情を作って問う

「…その格好は…」

「?。ドクターの用意したモノだ。何か問題でもあるのか?」

首を傾げるフィフスさん

「ふ、ふふふ…」

そうか、そうですか。成る程。くくく

「…プロト殿?どうかしたのか?」

若干心配そうにわたしに聞いてくるフィフスさん。

「…模擬戦は、中止です」

「っ!?な、何故だ!?」

理由は分かりませんが動揺するフィフスさんの手を握る。反射的に手を振り払おうてしたフィフスさんに、同情してしまう

「あんな変態に弄ばれて……っっっ!!」

「『…………』」

無言になるアインさんとフィフスさん。それに構わず、わたしはぎしりとグレイランドが軋む程の力を込めて柄を握る

「分かってますねグレイランド!負けられない戦いがここにはあるのです!」

<ラジャーマスター!YESロリータNOタッチ!ジュエル、アンタは俺を怒らせた…!地獄に行って後悔しながら全国の大きなお友達に誠心誠意謝罪しなぁ!>

グレイランドと共に時空転移!目指すは勿論ろりこん(及びしょたこん疑惑)の元へ!

その日、とある天才科学者の悲鳴が響いたという




「…姉上」

「なにかしら」

「…この格好は…おかしいのだろうか…」

「…いいえ?ちっとも?」

「目を合わせてくれ、頼むから。…あと、これだけは言わせてくれ」

「…なに?」

「私は!断じて!ロリータではないっ!!」

(…いいえ、貴女の年齢設定…ロリータなのよ…?悲しいけれど、それが現実なのよね…)

「…何故だろう。姉上の無言の優しい微笑が、この上なく痛いんだ…」







おまけ

その日のハラオウン家。通信中

「…というわけで、フィフスさんって娘と仲良くなり、変態科学者を凹にしました」

「…(むっすぅ〜)」

「…?。どしたですか、フェイト」

「…可愛かった?フィフスさんって」

「ええ。お人形さんみたいで可愛らしかったですよ?」

「…そうなんだ」

「ええ。フェイト並に美少女でした」

「…(赤)」

(…やるな、プロト)

(クロノにもこれくらいの甲斐性があればいいのだけれどねぇ」

「「…母さん(リンディ)。声に出てる」です」

「…あはっ」

「んなのどうでもいいけどさぁ〜、フェイトを再起動してよぉ」




おまけのおまけ

「…………」

「す、すずか。あんたが話かけなさいよ…!」

「む、無理だよ…!プロトちゃん欠乏症の発作が出てるなのはちゃんに話しかけたら頭冷やされちゃうよ…!?それにそういうのはアリサちゃんの役目じゃない…!」

「あ、あたしまだ死にたくないよぅ…!」

「わ、私だってやだよぅ…!」

「……………………………………………ユーノくん(魔法、練習しようか)」

「きゅ………きゅ、ぅ…(駄目だ…死ぬ!このままだと僕が死ぬ!?桜色の光が!光が!?プロト!早く帰ってきてくれぇーーーっっ!!)」





――――
(作者)


というわけでキュイルさんの正体どんっ☆

この辺り、ほんとは10話くらいかけて実験施設での日常書こうかとも思った…ていうか書いたのですが

うっかり消しちまいましたorz

なのではしょり。実際重要度は低いしね。下ネタ多かったし


俺の中のスカさん→変態。→下ネタ要員だったから

毎話金的食らってたしね

なんだかんだでキュイルとイチャイチャするだけだったしね

だから話を進めます



感想返し



・プロト・G・高町

凄くかきずらい

変換がね、めんどくさいの

・リンディさんの明るい家族計画

フェイトを養子にして結婚させて、を狙ってる

どうでもいいがタイトルが18禁同人誌のようだ


・キュイルー

本人でありながら関係者

意表は付けたと思う

ちなみに純粋な妊娠出産で生まれた後、プロジェクトFを骨子に調整。記憶、人格の転写をされました


調整の際に隻腕隻脚に

怨んではいない。というか自分でやったことでもあるので複雑

人格は別れたり1つになったり

脳ミソが一部壊れてるから一方通行喋り


・フェイト

着実に堅実に好感度を上げるプロトに脱帽



次回急展開

次の次から第二部スタートやね



[16022] 不屈の心と試作品 幕間 終わりが始まり
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/04/02 11:51

ジュエルの変態を締め上げ、フィフスさんにまともな服を与えさせてから数日後。とある管理外世界でわたしとフィフスさんの模擬戦が改めて行われることになった

フィフスさんと向き合い、己の手の内をある程度説明する。模擬戦ですから、無駄に怪我をするわけにもいかないですからね

というわけでお互いの稀少技能の説明

わたしの稀少技能のことを聞くと、何か考え込むかのようにフィフスさんは沈黙し、次はフィフスさんの説明の番

「…らんぶるでとねいたー?」

「ああ。金属を爆弾に変えられる。もっとも、代わりに非殺傷設定は使えないが」

変わった稀少技能ですね。非殺傷が出来ない辺りに親近感が湧きます。というか稀少技能持ち多いですね

『では、始めたまえ』

モニター内のジュエルに頷き、わたしとフィフスさんは同時に走り出した





不屈の心と試作品
終わりが始まり





飛んできたナイフを弾き飛ばす。一瞬遅れて爆発したナイフ。その爆風に乗り、フィフスさんから距離を取る

「アンカーシュート!」

わたしが唯一使える中距離射撃魔法。フィフスさんはそれを黒い外套で防ぎ(!?)足下を爆発。爆風に乗って一歩でせっかく稼いだ距離を詰める

「格闘戦とはいい度胸です!」

「あまり誉めるな!」

突き出された拳を半身捻って避ける。体勢を低く、足下に向かって横薙ぎにグレイランドを振るう。

飛んで避けると思いきや、わたしの顔に向かって振り下ろされるナイフ。舌打ちしながらグレイランドをそのナイフの迎撃に軌道変更。がぎんっ!と金属音が鳴り響き、爆発。こんな至近距離で!?

慌ててバリアジャケットのコートで爆風を防ぐ。が、衝撃までは殺しきれず吹っ飛ばされる

「スティンガー!」

「っ…モードダブル!」

飛行魔法を発動して体勢を整え、無数に飛んでくるナイフを弾きながら高度を上げる

「モードF!」

グレイランドが無言で稀少技能制御。バチバチと放電する双剣の、左手側…デバイスコアの填まっていない方を、飛来するナイフの雨に向かって投げる

「サンダーバレル!」

瞬間、剣が爆発したかのように雷が溢れ出す。実際、高出力の魔力刃をオーバーロードさせて破裂させているだけなのでそのまんまですがね

雷はスティンガーの雨を飲み込み、その大半を撃ち落とす。グレイランドが遠隔操作で剣を呼び戻したと同時にソニックライドを発動。距離を取った方がじり貧になるです!

「やるな!」

「フィフスさんも!」

ってか強すぎです!

空中から落下の勢いを込めた高速の刺突。クリーンヒットしたはずのそれは、外套の防御力に阻まれ、フィフスさんを大きく吹っ飛ばす。まず――

「IS…ランブルデトネイター!!」

足下が爆発。――どうやら地雷のように地面に金属片を埋めていたようですね。爆風と土砂に吹き飛ばされ、地面に堕ちる。が、すぐに起き上がってトライシールドを展開。予測通り、ナイフが飛んできた

…にしてもフィフスさんの稀少技能強すぎです!威力は高いわ連射は出来るわ攻撃範囲は広いわ弾切れはないわってどんなチートですか!?わたしの稀少技能唯一の利点、【敵の魔力弾への耐性】がまったく活かせません!

実際まったく魔法を使ってきませんしね!舐められてますかわたし!?

「一泡吹かせてやるです…!」

〈ラジャー、フルドライブとリミットブレイクならどちらにします?〉

どっちも使わねーですよ。どんだけわたし大人気ないんですか

やっぱりここは――

「チェーン・リング・ストラグル・バインド!」

「なっ!?」

各種のバインドが一辺にフィフスさんの周りに展開。いくつかは避けれたものの、両腕を固定されるフィフスさん。よし、今です!


「タルテ・トール・アルカーズ、連なれ雷光、雷神の怒り、天を焦がせ!イルク・トーラス・ヴィアレンテ!」

詠唱魔法。今、わたしが使える中では間違いなく最強にして最速の一撃!

魔力刃が天を突かんばかりに成長し、無数の雷を生む。それを更に凝縮収束威力強化!

「…むっ」

眉間にシワを寄せ、冷や汗を流すフィフスさんににやりと笑う

「喰らって眠れ!ライジングエレジーっ!」

散々収束しても20mはありそうな魔力刃を振り下ろす。その速度は、正に光速。

「――〜〜〜ぁああああっ!」

ドンッ!と凄まじい轟音――落雷の音と音速を越えた音――が鼓膜を揺らし、三半規管を無茶苦茶にする。自分へのダメージがある必殺技って…意味ないです

雷を何倍にも凝縮したような一撃を食らい、フィフスさんが声にならない悲鳴を上げて――倒れる

体中から黒煙を吹きながら

「…やり過ぎましたか?」

首を傾げる。つーっと頬をでっかい汗が伝っていたのは気のせいです

「だ、大丈夫ですかー…?」

フィフスさんを抱き起こしながら、治癒魔法をかける。…ライジングエレジーのせいであまり魔力に余裕がないので、気休め程度ですがね。威力は高いですが消費魔力と詠唱時間がかかりすぎですね。格上相手に使うには改良が必要です

『…ふむ、ご苦労。戻ってきたまえ。次は限定条件下で――』

唐突に、ぷつりとジュエルのセリフが途切れた。それに首を傾げた瞬間、グレイランドが叫ぶ

〈マスター!?結界が発動しましたっ!〉

「なっ!?」

慌てて念話をジュエルとキュイルに繋げる。だが、ジャミングされているのか繋がらない。そうする間に世界が色を変える。

「…?」

封時結界…じゃない?これは…ベルカ式?でも術式が…?

〈マスター。今はフィフスさまを〉

「っ、そうでしたね」

気を失っているフィフスさんを背負う。…転移魔法を待機。魔力が足らないから、精々転送ポートにフィフスさんを送るのが精一杯ですね。それにこの結界を張った人物の足止めもしなければ…

そんなことを考えていたら、目の前に黒い影が落ちる。視線を上げれば、ピンク髪のポニーテールの女性

…手には一目で分かるアームドデバイス。…どれくらいかは分かりませんが、かなりの手練れですね

「…許してくれ、とは言わん」

ちゃき、と刀型のデバイスを構える女性。背中に冷たい汗が伝う

「だが…我らが主のため、お前たち2人のリンカーコア、貰い受ける!」

「グレイランド!」

〈転送開始!〉

女性の叫びと同時にフィフスさんを転送ポートに送る。荷物を背負って戦える相手じゃありません!

「レヴァンティン!」

〈エクスプロージョン!〉

がしょん!と刀から薬莢が排出される。――カートリッジシステムっ!?あんなピーキーなもん積んでる魔導師がいるなんて!!

「一撃で決めるっ!紫電――」

紫色の炎が刀を包む。女性はそれを大上段に振りかぶり――

「一閃!」

振り下ろす!

紫炎の斬撃が迫る。――無駄な魔力は使えない。ここはグレイランドの頑丈さに賭ける!

「モード・ダブル!稀少技能ON!」

グレイランドの頑丈さはアームドデバイス並み。耐えれさえすれば勝機はある!左手の剣を斬撃に向けて投げつけた〈了か――了解!〉爆炎に包まれ、グレイランドが僅かに辛そうにフリーズする。ですが、よく耐えましたグレイランド!

「ソニックライドっ!」

途中、グレイランドの半身を回収しながら女性に迫る。女性は僅かに目を見開き、にやりと笑った

「モード・シザー!」

一撃の威力ならダブルよりシザーの方が高い!巨大鋏を叩き付ければ、彼女はそれを一瞬で引き戻した刀で受け――衝撃と共に意識が一瞬刈り取られる。見れば、女性が白い鞘を振り抜いた体勢でわたしを面白そうに見ていた。鞘で殴り飛ばされた、と気付くまでそう時間はかからない

「――っアンカーシュート!」

「ほう…!」

あっさりと切り払われるアンカー。だが、その結晶は残る。それを核にシルエットを生む

「…ベルカ式かと思えば、ミッド式も使えるのか」

シルエットに距離を取らせ、アンカーを撃たせる。女性はそれを見もせずに切り払い、わたしへ向かって走る

「はぁっ!」

「…くぅ…!?」

この馬鹿力…!?開いた鋏で刀を絡めとる――駄目です。鞘で殴られる前に飛行魔法で空へ上がる

「ここです!」

「むっ!?」

シルエットが女性に向かって走り出す。範囲内に入り、結晶化したシルエットの切っ先が女性に向かって走り――

「がぁっ!?」

――わたしの胸に、強烈な痛みが走る

どくん、

と、心臓が大きく鳴る

ぼそり、と耳元で聞こえた言葉

「――ごめんなさい」

どくんどくんどくん

・・・
と心臓ではないナニカが大きく悲鳴を上げる

「―――――あっ」

やめて

やめて

・・
ソレをされたら、わたしは――

警鐘が頭の中で鳴り響く。けれど、今のわたしに出来ることは無い

わたしの胸から、細い指先が出てくる

それが、妙にゆっくりに感じた











…ふと、もう10年以上前に



オーナー達が、稼働したてのわたしの前で話していた内容を思い出す





ロストロギア・闇の書




その守護騎士、ヴォルケンリッター



「コイツはお前の天敵だヨ」


いつもにやにやと笑っていたオーナーが、その時だけは妙に真面目な顔で


「コイツの守護騎士に会ったらすぐ逃げろ。今回の事件でしばらくは大人しくしてるだろうが、もしかしたら戦うことになるかもしれない。もし戦うことになったらすぐに逃げろヨ」


わたしがその理由が分からず首を傾げれば、オーナーは仏頂面でその答えを言う

「いいか?お前の稀少技能は――」











リンカーコアさえ、結晶化させる














「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっ」

「な、なに!?」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイagjtpmajmwtpgj!!!!!!!

「ど―――ルッ!?」


「わか―――がみ――わっ!!」

ああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっ!!!!

〈マスター〉

痛い!痛い!痛いよぅ!助けてっ!助けてっ!助けてっ!

〈意識、強制遮断〉

胸が、痛い…!

助けて助けて助けてっ…っ!士郎、桃子、恭也美由希リンディクロノエイミィユーノアルフ…!!お願い、助けて…!

「な…のは…フェイ…ト…」

お願い、助けて

あの温かさを、わたしにください

からだが、すごくさむいんです…





――――
(作者)

バトルばっかな回

さぁてここからどうなることやら


これを読んだ後におまけを読むと切ないことになるやろう

あっちはギャグばっかやし


にしても対人戦はむつかしい

上手く描写出来たか不安であるまる




・薄幸属性ヴィータ

おまけのMなのはな感じになります


・アリサすずか

彼女らも薄幸属性

…っつかユーノは!?
スルーですかぃmomoさまー!?


・なのはさん=星光

ならないとは言い切れないww

ヤンデレヤンデレ


・タチ悪いプロト

仕様です

幼いころからこつこつフラグ立てるプロト

なでポもにこポも使わない堅実派


・ガ○ーさんなプロト

…実は、ある。

というか、ストックの中で似たような技を使ってるよこの子


・魔王・なのは

sts始まる頃には冥王やね

そしてヴィヴィオをフルボッコ






幕間で出てきた新魔法

第二部では全部使えないという罠



[16022] 番外編 A'sがあればぜひやりたかったネタ集 ※誤字修正完了
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/04/05 12:26
番外編
A'sがあったらやりたかったネタ&A's編のMなのは



・初戦闘

「大変!なのはちゃんが襲われてるっ!」

「なんですって!?」

アースラのブリッジでフェイトで遊んでたらいきなりでした

「プロトさん、フェイトさん、援護を!」

「「はいっ!」」

フェイトと2人、元気に返事して転送ポートへ

「あ、い、急いで2人とも!なのはちゃんが脱がされた!(バリアジャケットを)」

「「ぇえええええ!?」」

相手は変態さんですかー!?

と、とにかく救助を!

で、転送されると同時に高速移動。今にもハンマーを振り下ろさんとする赤幼女と、バリアジャケットを解除されたなのはの間に入り込む。…良かった、まだ服は着てる

「仲間か!?」

「…友達だ」

「あと兄です」

距離を取る赤幼女の後を追う。なのはのことはユーノに任せるとして、今は一言言ってやらねば!

「待ちやがれですろりこんガチレズゴスロリむすめー!!」

「人聞きの悪いこと言ってんじゃねーっ!?ってか誰がロリコンで誰がガチレズだ!?」

怒り心頭、そんな顔でこっちを見る赤幼女

そして増援

「なっ!?ろりこんでガチレズなゴスロリ娘の次は、ろりこんでガチレズなおっぱいですか!?」

「誰がガチレズで誰がロリコンで誰がおっぱいだー!」

顔を真っ赤にして切りかかってきた

この後プロトもバリアジャケットをボロボロにされて、シグナムにはしょたこんも加わる



・なにょはさん

「高町なにょ、…にゃの…だぁぁぁ言い辛ぇ!」

「そ、そんなことないもん!」

「というか隙だらけです!行くですよにゃのは!」

…時が止まった

涙目でわたしを見つめるなのは。にやにやした笑みでなのはを見つめる赤幼女

「…こほん」

仕切り直して、と

「行くですよにゃにょにゃ!」

「噛み噛みだよプロトちゃん!?」

「やっぱり言い辛ぇんじゃねぇーかっ!」

ちが、違うのですー!移っただけなのですー!




・ギル・グレアム

「…おじーちゃんは誰ですか?」

「バカ!プロト、この人は…グレアム提督?」

クロノの視線の先には、頬を赤く染め、どこか遠い世界を見つめているグレアム提督の姿

「…答えは得た。俺は頑張っていくよ、はやて」

「「誰ですか!?」」

二重の意味で

はやてって誰?ってかこの人誰?

「はっ!す、すまない。つい中の人的に彼女しか良い人選が…」

「「中の人などいないっ!」」

二重の意味で




・グレイラーンドー


「…グレイランドにはカートリッジシステムを積まなかったのか」

クロノが少し驚いたような顔で言う

積まなかったのではなく積めなかったのですよ

<カートリッジなんて付けたら止まれなくなりますからね。エロい意味で>

「…」

無言。無言です

<同人誌的な意味でカートリッジロードしまくりです>

「…」

スルーも突っ込み!スルーも突っ込み!





・睨んでねーです


病室の中には、守護騎士がいっぱいいた

…なんという、カオス

視線に気が付き、振り向けば、ドギツイ視線に晒された

「…」

ま、負けません!

男の子の意地で睨み返す。男の子は女の子にケンカで負けてはいけないのです

「ヴィ、ヴィータちゃん、そんなに睨まないで…?」

「…グレイランド、貴様、何故睨む」

なのはとシグナムが同時に言う。む、このままだとなのはに迷惑ですね

「「睨んでねーです」」

…むっ!?

「「こういう目付きなんですっ!」」

は、ハモりまくり!?

「「真似すんな!」です!」

「…なんか仲えぇなぁ2人」

「あ、あはは…」





・薄幸属性


「なぁなぁ、私のこと覚えとる?」

へ?首を傾げる。

ぇぇと…車椅子。関西弁。サラブレッド…あっ!

「やがみ…」

「そうそう!覚えててくれて――」

嬉しそうに笑う――

「ライトさん」

「――ないんかい!?新世界の神になるつもりも死神のノート手に入れる予定もないわ!」

おお!この突っ込み、思い出しました!

「冗談ですよ、はやて」

「せや、良かったわー冗談で」

「ところで一億とんで八千万の借金の返済は如何ですか?」

「私の名字は八神や!綾崎と違う!」

「は、はやて!うちって借金なんかあったのか!?」

「な、なんだと!?シャ、シャマル!今すぐ賞金首でも狩って――」

「借金なんてあらへん…わ…?」

急に黙り込むはやて

「…どしたですか?」

「…今、援助してもろてるお金、いつか返すとしたら…いくらくらいになるんやろ…」

あ、借金です





・ボエ子戦

「闇の書と主を切り放せば――」

…聞きましたか?グレイランド

<ラジャーマスター。いつでも準備万端です>

ならば行きましょう!

「このプロト・グレイランド・高町と」

<そのデバイスにして相棒。グレイランドに>

「<斬れぬモノなどあんまりない!>」

『…魔力ダメージ限定で当ててね。中のはやてちゃん怪我したら大変だから』

……

…魔力ダメージ与えられる技、あんまないんですけどー…?







こっからはMなのはのターン!





鉄槌の騎士・ヴィータは驚愕した

「な、なんだ…テメェ…」

相手は魔力こそ馬鹿みたいに高いモノの、立ち振舞いは素人同然。デバイスだって貧弱なミッド式。自分が負けるはずがない。そんな戦いのはずだった

ならば…

「なんで、素手でアイゼン受け止められるんだよ…!?」

何故、ヤツは片手で我が最高の一撃を受け止めている!?

何故、ヤツは呆れたように、あるいは落胆したかのように溜め息を吐いている!?

何故、あたしは無様にビルの屋上に叩きつけられている!?

「…プロトちゃんが行っちゃって、半年」

ぽつり、とヤツは呟いた。プロト?誰だ?誰がどこに行ったってんだ?

「久々に、良い感じの攻撃だったけど…まだ、駄目」

はぁ、と肩をすくめ、あたしから奪い取ったアイゼンをぺいっと後ろに捨てる

「威力は凄かったよ?想いも篭ってた。私にじゃないけど、愛情だって感じた。覚悟も秘めてた。好きな人のために戦っている、そんなとってもイイ一撃だった」

じゃり、と一歩、ヤツは近付いてくる。気が付けば、あたしは無様に尻餅を付いていた

・・
「でも」

ヤツは、その杖をあたしに向ける

「足りないの。全然。プロトちゃんがいない今、その程度じゃ我慢出来ない」

<オールライト。ウィップモード>

杖が縮み、先端の赤い宝玉か桜色の魔力刃が形成される。けれどそれは力無くだらりと垂れ下がる

「だから」

ぴしっ!と屋上の床と、とてつもない魔力が込められた鞭が音を鳴らす

「教えてあげる。本当に痛い/キモチイイ一撃を」

気付けば、体が勝手に動いていた

「ぅ、ぅああああああああああっっっ!?」

逃げた

誇り高きベルカの騎士が、敵に背を向けて逃げる

だが、

それでも逃げた

ヤツは、敵なんかじゃない

ヤツは…

ヤツは…!

調教士だ…!!

「逃がすと思うの?」

「ひぃっ!?」

足に、桜色の鞭が絡まる。強制的に引き寄せられ、いっそ優しく、屋上に引き摺り下ろされた

「大丈夫」

にっこりと、ヤツは、可憐な笑みを浮かべる。同性のあたしすら見とれてしまうような、綺麗な微笑だった

小さな唇が、音を紡ぐ

「痛いのは、最初だけなの」

ユーノくんも、最近慣れてきたみたいだし

そして、その手が、霞む

「ひぃっ!?」

避けた。避けれた!スピードだけならシグナムの連結刃以上。威力は分からないが、それ以上にヤバい感じがする一撃をかわせた事に安堵する

けれど

「駄目だよ、避けちゃ」

バインドが、四肢を拘束する

なんていう術式の構築速度!?アイゼンを最初に奪われたのが痛い。アイゼンさえいれば、バインドくらい…!

思わず、口から悪態が漏れる

「あ、悪魔め…!」

ヤツは、きょとん、とあたしを見て

「悪魔じゃないよ?大丈夫、慣れたら天国に行けるから。…そういう意味では天使かな?」

くすくすと笑う

「さて」

また、極上の笑みを浮かべながら、ヤツはデバイスを構える

「そろそろ、逝かせてあげる」

…ごめん

ごめん、はやて

シグナム、シャマル、ザフィーラ

…あたし、ここで終わるみてぇーだ

…最後に、はやてに頭撫でて貰いたかった、な…

そんな思いと共に、迫り来る桜色の鞭を前に目を閉じた



……
………?

痛みが無いことに気付く。目を開けば――視界に広がるのは金色。ソイツが、鞭を右手で絡め取っていた

「仲間…か…?」

ソイツはちらりと肩越しにあたしを見ると、そのまま視線でヤツを捉える

「友達だ」

ならば、何故?

何故、あたしを助ける?

「…フェイトちゃん、どうしちゃったのかな…?危ないよ、そんなことしたら…」

「…友達だから、止める。今、なのはは…私たち/マゾヒストの風上にも置けないことをしようとしてる」

そこはマゾヒストじゃなくて魔導師っていれようぜ

「だから止める」

デバイスを構える。ヤツも同じようにデバイスを構えた。…ぇ?てか…え?どういう状況?

「…あと個人的に鞭で打たれるのは私の特権だと思うし」

「ズルい!」

「ず、ズルくないよ!」

…ぇーと、こいつらは何の話をしてんだ?

「…あ、ども。プロトです。今、バインド解くですよー」

いきなり現れた変なの…プロト、だな。プロトが、バインドを解いてくれる。ついでと言わんばかりに、アイゼンも渡してくれた

「早く帰った方がいいのですよ?下手したら次はあの2人同時なので」

上空で鞭やら鎌やらチェーンバインドやらを駆使して戦い…いや戦いというより傷付けあい?している高ランク魔導師2人

…蒐集とか、どうでもよくなった

「…うん、あたし帰るわ。はやてと一緒にお風呂に入って温かい布団で寝るんだ…」

「そうしてください、今日のことは悪い夢だったのです」

…うん、ソダナ

…アイツラの蒐集はシグナムたちに任せよう、そうしよう

部下の責任取るのは上司の仕事だしな

てわけで任せたぜ、烈火の将










…後日、シグナムがヤツの毒牙にかかり、目覚めた




―――
(作者)

次回から第二部だから、アホなネタはここらでやっておく

第二部はシリアスなんだよー

原作空白期だしね


第二部のテーマは

原点回帰

新しい仲間

苦悩と戦い

人間対人外の戦い



です


長くは続かない



[16022] 不屈の心と試作品 第二部 闇に降る雪
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/04/05 12:21

連続する魔導師襲撃事件。それの調査のために、嘱託魔導師となったフェイトと共に地球に向けて航海していたアースラ



その報告を聞いた時、リンディたちは目の前が真っ暗になった

管理局の研究施設、そこで行われている研究に゙好意で゙協力してくれていたプロト

彼の体に使われている技術を医療用に使うために、彼に協力を要請し――彼は、それに快く協力してくれたという

ほんの少しの間とはいえ、離れ離れになることに不安を覚えないわけはなかったが…上から正式な辞令も来ていたし、彼の直筆の協力受諾書もあった

だから、寂しさはあったものの…彼は、ハラオウン家から出て行くことを容認した

その後、彼は研究施設で一月を過ごし…陸士訓練校に入りたいと言い、寮に入ったそうだ

「私は皆を守れるような人物になりたいんです」

そう言う彼を信じることにしたのだ

それでも毎日連絡は取っていたし、高町家にも毎週ビデオレターを送っていたらしい

少し疲れているらしく、いつも様子が少しおかしかったけれど、楽しくやっているという話を聞いて安心していた

その彼が…




テロに巻き込まれて死亡した





不屈の心と試作品
闇に降る雪





リンディ・ハラオウンは提督の権限をフル活用し、その事件を洗い直した

偶然にもその報せが届いた時、彼女に限らずアースラクルーは【闇の書事件】の解決直後で、疲労困憊。

その快復ための短期休暇が本局から出されていたために、時間があった

高町家にも連絡を入れ、彼らと共にミッドへと向かい、何日もかけて調査した

…そして、その゙結果゙は出た

最悪の形で

プロト・グレイランド・高町は帰ってきた


長い灰色の髪と、右腕の一部分だけで


事件の内容は、何一つ分からずに



それからは、酷かった


高町家はミッドに移住し、喫茶店を営みながら【灰色の髪の少年】の捜索を細々と続けた

士郎と桃子は彼が帰ってくるのを待っている

恭也は、忍との間に子供を設けたが…籍をいれてはいない。大事な弟との【約束】が果たされるのを待っている。忍もそれに同意してくれた

美由希は地球に残り、家を守ることにした。行き違いになっては可哀想だから、と


リンディは管理局を辞職し、表面上は穏やかに過ごしている。…毎日、少年を見知らぬ他人に預けた自分を責めながら


クロノは執務官として働きながら、あらゆる管理世界を飛び回り、1人の少年を探し続けている

ユーノもまた、無限書庫に送られてくる無数の資料の中に万が一にも灰色の髪の少年の情報がないかと探し続け…何度か体を壊して入院した

そして、そんな彼らを心配しながら、それに協力し続けたのは八神はやて

…件の少年の可能性のある人物を蒐集したシグナム、シャマルの両名はその中でも鬼気迫る勢いで協力し続けた

ヴィータ、ザフィーラの両名も、世界を廻る度に【彼】の姿を探す





そして、高町なのは。フェイト・T・ハラオウンは


2人とも、管理局に入局した

志願して入局した訳ではない

無許可での次元転移、管理外世界での魔法行使。管理局員に対する敵対行為により、管理局への無償奉仕が決まったのだ

そうなると2人は危険度が高いが、その分貢献度が著しく高い任務への協力をし、管理外世界での任務に積極的に参加し、その出張先で毎回姿を消す、という問題行動を起こし続けた

それさえ無ければなのははかなり優秀な局員になれただろうし、近接格闘の心得もあり、オールマイティーに戦えるフェイトは執務官になれていたかもしれない

それも全て、彼のためだった



プロト・グレイランド・高町

誰1人として、彼が死んだことを信じる者はいなかった








…そんな日々が、2年も続いた







…もう、我慢が出来なかった

゙わたじなんかのせいで、彼女たちが苦労するのが…見ていられなかった

だから、ここで終わらせる

悲しみは、ここに置いていこう

わたしはもう、化け物どころか…゙まとも゙ですらないのだから


雪が、降っていた

彼女の回りには、数人の局員と、赤い騎士甲冑の少女

…なのは、あんなにやつれて…

もう大丈夫

わたしが楽にしてあげるから

「…゙ISロード゙」

視界が切り替わる。ターゲットサイトが局員に向けられる。右手を向ければ、それは手首から先が内側に入り込み、細い砲身と化す

「プロト・バレル!」

灰色の光が吹き出る。それは魔法ではない、純粋な破壊エネルギーの奔流。

「う、ぅあああああああっ!?」

落ちていく局員たち。わたしはそれを酷く冷めた思考で見下ろしながら、次の標的へと砲身を向ける

「なっ…敵か!」

赤い少女がハンマーを手に一瞬こちらに視線を向ける。…鋭いですね

「ISロード…プロト・カーテン」

灰色のコートがたなびき、わたしの姿を隠す。…相手の認識をずらすIS。便利過ぎて話になりません

「っ…!?どこだ!?」

きょろきょろと回りを見回す少女。それを尻目に、わたしはゆっくりと彼女の背後に回る

「ISロード…プロト・インパルス」

両腕の肘の辺りと額からから展開される10cmほどの灰色の刃。わたしはそれで、空気抵抗を切り裂きながら赤髪に突進。右腕の刃を叩き付ける。一瞬早く反応した少女は、ハンマーの柄で刃を受け止め、わたしを弾き飛ばす…馬鹿力ですね

「…っぅ…!アイゼン!」

〈エクスプロージョン!〉

…カートリッジですか。がしゅんっ!と排出される薬莢。ぐるんぐるんとその場で回転しはじめる少女。…わたしはその隙に、近くで射撃魔法を撃とうとしていた局員に接近。障壁を砕き、一撃で意識を借りとる

「ISロード。プロト・ライアーズ」

そして、その人物に゙わたしの顔゙を張り付け、少女に向けて投げる

「ラケーテン・ハンマーっ!」

雄叫びと共に繰り出される打撃が、局員の体を打ちのめす。

「ISロード、プロト・インパルス」

再びのISの発現。打撃の衝撃でライアーズの効果が解け、苦痛に顔を歪める局員。そして、自分が仲間に攻撃を加えたことに驚愕する少女に接近

「ヴィータちゃん!」

…確か前にも、こんなことがあった

今度は、貴方が助けるのですね

ブレードで桜色の魔力弾を切り払い、わたしは彼女に視線を向ける

「時空管理局の嘱託魔導師、高町なのはです!どうして戦うの!?理由教えて!」

…2年半。あれから時間が経った

それでも、貴女は変わらないのですね

「…ISロード。プロト・ライアーズ」

他人の顔を張り付ける。…万が一にも動揺されては、話にならない

「…はじめまして、高町なのはさん」

空中で、ゆっくりと振り返る。レイジングハートを構えたなのはが、わたしを睨んでいる。…少しだけ、胸が痛んだ

「そこ、危ないですよ」

「…ぇ?」

空中から溶けでるように姿を表す鉄屑。もとはゆりかごの警備兵だったらしいですが、今となってはわたしたちの従順な僕

そいつが、なのはの体を地面に向けて叩きつけた

「きゃあああっ!?」

反射的に飛び出したくなる衝動を堪え、念話通信

『クアットロ。鉄屑の制御は任します』

『りょうか〜い。どうするぅ?ISリンクしに一回戻るぅ?』

『必要ないです』

ばっさりど姉゙の言葉を切り捨てる。そして向かってきた4つの誘導弾を叩き落とした

「…てめぇ、なにもんだ。なんで魔法陣が出ねぇんだ?」

ギラギラと輝く蒼い瞳。ハンマーを正眼に構えた少女…ヴィータでしたか?がわたしに殺気を向ける

「…理由は簡単。ISロード…プロト・デトネイター」

指の間に召喚したナイフを弄びながら、にやりと口の端を持ち上げる

「戦闘機人、ナンバーズ・プロトだから!」

4つのナイフを放つ。チンクのそれとは違い、完全に制御することが出来ない【スレイヤー】は直線的な軌道でヴィータに迫る。ヴィータは予想通り、それをハンマーで叩き落とそうとする

「ここだ!」

「なぁっ!?」

インパクトの瞬間、爆発するスレイヤー。破片と爆風に吹き飛ばされるヴィータに向けて、右腕を向ける

「ISロード…プロト・バレル!」

レーザーのような灰色の光がヴィータの障壁ごとその体を貫く。出力の関係から本来の破壊力はありませんが、その分貫通力を強化している。咄嗟の障壁で防げるほどの攻撃じゃありません

「ディバインバスター!」

っと、真下からの砲撃を飛んで避ける。余波だけでも莫大な魔力が練られたソレに冷や汗を流す。…なんであんとき以上に強力なんですか

「っぅ〜!もう怒った!謝っても許さないの!倒してからお話聞かせてもらうよ!」

それなんて肉体言語ー?

「ディバイぃぃぃぃン―――」

「ISロード…」

右腕と杖が視線と共に交わり、共に魔力と破壊エネルギーの奔流を放つ

「バスタぁぁぁあああああっっっ!!」

「プロト・バレル!ブレイクシュート!!」

極太の桜色の光線。対してわたしが放ったの砲撃は、糸のように細い。それが真っ正面からぶつかり合い――容易に桜色の砲撃を貫いた

「ぇえ!?」

驚愕しつつもフラッシュムーヴを使って避ける。…砲撃を強制中断して高速機動魔法なんて…また無茶をする娘です

「…ISロード、プロト・ストーム」

10個の誘導弾を生み出し、なのはに向けて放つ。なのはは苦悶の表情を浮かべながらプロテクションで防ぐ。その隙に接近。再び誘導弾を生み出し、収束させる

「れ、レイジングハートっ!」

〈ワイドプロテクション〉

「…そんなもので防げるとでも?」

収束した誘導弾を至近距離で爆発させる。衝撃に顔を歪ませるなのは。その障壁に向けて、バリアブレイクの術式を付与した拳を叩き付ける

なのはの障壁パターンはよく知っている。一秒もかからずに障壁を破られ、目を見開くなのは

「…さよなら、なのは」

わたしは、その腹部に手を当てる

バリアジャケットなんて関係ない

この距離からなら――














「ぷろと、ちゃん…?」














動きが、止まる

それも一瞬

二度と彼女が飛べないように

二度とわたしなんかのために戦わなくて済むように

彼女の腹部に当てた手に、力を込める

「…プロト・グレイランドはわたしが殺した」

その力をオーバーロード。臨海点を越えたエネルギーが爆発を起こす瞬間

「だからわたしを恨め。彼は死んだ」

「プロトちゃ」

爆発

バリアジャケットが弾けとび、全身ぼろぼろになったなのはが墜ちていく

その目は、ひたすらにわたしを見つめていた

「だからもう…プロト・グレイランドを探す意味は、ない」

なのはが、墜ちていく

どしゃりとそのまま雪の中に沈むなのは

…雪が、降っていた

黒煙が立ち上る中、ただただ白い雪が、眼下に墜ちていった



―――
(作者)


さてさて、暗い感じになってしまいました


ちなみに高町家&ハラオウン家に届いていた連絡&ビデオレターはメガ姉の作品

機械を騙すISならそれくらい余裕…な、はず


次回は現在のプロトのステータス&フラグ表

ちょいちょい暗い話が続いちゃうよ…




感想返し


・プロト可愛いよプロト

このSSの四割はプロトの可愛らしさで出来ています

残り四割はMなのは

その他二割


・募集?蒐集?

お陰さまで修正出来ましたー
指摘してくださった皆様、答えをくれたおにぎりさま、ありがとうございました

・Mシリーズ

第二部ではお休み

第3部を待て


・魔導師襲撃事件

すでに終わっている罠


・ヴィータ

見た目エタロリ同士が居酒屋で愚痴る…それなんてカオスww

なのはやフェイトがいなければ結婚していたかもしれないカップル


・魔王の制裁

こんな会話

「私が彼を襲ったかもしれな」

ばきぃ!(烈火、殴られる)

「そんなことはどうでもいいの。今はどこにプロトちゃんがいるかが重要なの。シグナムさんたちが何かしてたとして、それを裁くのプロトちゃんだよ」

以上



[16022] 不屈の心と試作品 現実は悪夢 ※誤字修正
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/04/06 14:50
暗い通路に足音を響かせながら歩いていく。

なのはを墜とした

その事実が重くのし掛かる。胸元でちゃらりと揺れる銀十字が、わたしを責めているかのようだった

「…分かってますよ、グレイランド…。わたしはもう、止まれない…」

胸元の相棒は答えない。当然だ。リンカーコアを失ったわたしでは、もうデバイスを起動できない。そしてわたしにしか使えないようにプロテクトのかけられたグレイランドは、外部からの魔力供給で動くことが出来ない

「…次は、フェイト…。それから、クロノ…リンディに…エイミィ…。士朗と、桃子も…恭也…美由紀…ユーノ…」

胸に埋め込まれたレリック・コアが熱を持ったようにずきずきと痛む

結晶化したリンカーコアをレリックの中に埋め込み、擬似的な魔力を産み出す魔力炉と化した心臓

そしてソレが産み出すエネルギーを戦闘用に使う技術IS(インヒューレント・スキル)。

わたしはドクターの手によって、12種類のIS、その全ての改良版、改悪版、実験機、試作品を与えられた

ドクターの悪趣味で




不屈の心と試作品
現実は悪夢






「やぁ、帰ったかい?」

「…えぇ、お陰様で」

にやりと笑うジュエル・スカリィ。真の名は、ジェイル・スカリエッティ。広域次元犯罪者として有名な違法研究者

魔力を募集される際に、己の稀少技能のせいでリンカーコアを結晶化させてしまったわたしは、重度の魔力枯渇と体内の魔法生物の暴走に激痛と共に緩やかな死を迎えつつあった

わたしの体に潜んでいた魔法生物は、魔力を供給されなくなったことで、わたしの体を内側から食らい、破壊していく

激痛に意識を失ったわたしはすぐさまドクターのラボに搬送され、そこで…結晶化したリンカーコアとレリック・コアを埋め込まれた

幸い拒否反応等はなく、初めこそ適合率は低かったものの、【魔力変換器】の稀少技能のお陰か、レリックとの適合率は徐々に上昇していき…やがて、完全にわたしに適合した

これはドクターも予想外だったらしい

わたしの体はドクターですら分からないことが多いのだそうだ

…唯一全てを知っていたキュイルは、もういない

わたしの体を゙創る゙ために、パーツ単位で゙解体゙された

今でもアイン…いえ、ウーノがその脳を調べて情報を取り出しているそうですが…わたしには関係ない

今更、だ

「いや、そうでもないぞ?新しい情報が出た」

「…どうでもいいです」

ドクターの言葉を切り捨てる。「つれないねぇ」と薄く笑う。おぞけが走ります

「君の遺伝子は300年以上前…聖王時代のモノだよ。さらに君の稀少技能から考えるに…君は【聖王の棺】と言われる血族の遺伝子を使った人造魔導師だと推測できる」

「…聖王の棺?」

聞いたことがない。というか、知っていたらおかしい

「そもそもレリックとはなにか、知っているかね?」

「知るわけないでしょうボケ」

くつくつと笑うジェイルを睨み付ける

「…これは私の推論だが、レリックとは…死亡する直前の聖王のリンカーコアを取り出し、君の血族に代々伝わる稀少技能によって結晶化させたものだと思われる」

「…ふぅん」

興味がない。わたしはドクターのラボを適当に漁る。…ふむ、ブーメランブレードですか…試作品ですが、長々使えるかもしれません。双剣ですし。…これとISナンバーⅩⅡ…【プロト・ブレイズ】を併用したら中々面白いことになるのでは…

「自分のルーツが気にならないのかね?これが真実であれば、君は間違いなく古代ベルカの重鎮だ。聖王の棺と呼ばれる血族のことで、記録に残っていることはほとんどない。聖王教会に行けば、手厚く保護してもらえると思うがね」

「…」

今度は答えずに、適当に使えそうなモノを貰っていく。…まだ目覚めていない゙妹゙の武装を勝手に使うのには戸惑いを覚えますが、後でボケに作り直させたらいいのです

「くくっ…かなしいねぇ。愛しい息子からまったく反応がないとは」

「…わたしの父は…」

高町士朗だけ、という言葉を呑み込んだ。どこまで本気なのか冗談なのか知りませんが、こいつはわたしの゙父゙であることに妙に拘りを持っていますから…下手に士朗の名前なんか出したら、士朗に何をするか分かりません

「くっ、まぁいい。ようするに、君はレリックに深い関わりがある血筋である可能性があるんだよ。君の適合率が徐々に上昇していったのも理解出来る。数少ない聖王の棺の記録に、僅かだが聖王の血が混じっているといるという記録もある。レリックが聖王のリンカーコアだと考えれば辻褄があうんだよ」

「だからなんだと?わたしが貴方に改造されたこととわたしの身体が、どう関係してくるのですか?」

「関係はないさ。なに、研究者の性分だよ。新しい事実を見つけたら、それを誰かに話したくて仕方なくなるのさ」

…不愉快です

「そうそう…」

なんでもないことのようにあっさりと口を開くドクター

「いとしい少女を墜とした気分はどうだい?」

ザグッ!

気が付けば、振り向き様にブーメランブレードをドクターの腹に叩き込んでいた

「…まったく、危ないねぇ」

にやりと笑ったドクターの姿が消える。ブレードはドクターが腰掛けていた椅子に深々と突き刺さり、貫通している

「クアットロがいなかったら、死んでいたかもしれないよ?」

わたしの真後ろから空間を割って現れるドクターと、くつくつと静かに不気味な笑みを浮かべるクアットロ

「…シルバーカーテン、ですか」

ラボに入ったときから、わたしは幻影に話しかけていたのですか

「まぁ、そういうことよん。残念だったわねぇプロトちゃぁん?」

にまにまと悪役の笑みを浮かべるクアットロ。…こいつは一番ドクターに似てるから、少し苦手です

「それで?どんな気分だったのかね?」

にまにまと笑うドクター。…肉体のほぼ6割が機械であるわたしにとって、機械を騙すISは天敵。ここでこれ以上の戦闘は不利

ひどく機械的な思考にヘドを吐きながら、ドクターに向けて吐き捨てた

「…最悪ですよ」

そのまま踵を返してラボを出る。一応報告は済んだんだ。これ以上顔を合わせていたら…殺し合いになる

わたしはドクターを許せない

最高評議会と組んで、わたしの幸せを奪い…こんな肉体に改造したドクターを許せるわけがない

いつか、殺してやる

だが、まだだ

今殺しては意味がない

管理局の最高評議会…あそこも一緒に潰さない限り、いずれ第二、第三の【ジェイル・スカリエッティ】が産まれる

それでは意味がない

幸いドクターは管理局の破滅を望んでいるようだ

ならば今はその手下として動き、管理局の闇を全部出さなくてはならない

これ以上、わたしのような人間が産まれないように

今は耐える

最高評議会を潰し、ドクターを殺し、管理局の闇を全て白日のモノに晒し、破滅させて――


破滅させて…それからわたしは、どうすればいいのだろう


こんな身体では、あの人たちの元には戻れない


…ならば、わたしは…?

グレイランドに生きろと言われたから生きた

なのはに側にいてほしいと言われたから、側に居続ける決意をした

…グレイランドは死んだ。二度と戻れない

…なのはを傷付けたわたしなんかに、彼女の側に居続ける資格なんかあるわけがない

「わたしは…どうすれば…?」

誰も、答えはくれない

「プロト、こんな所にいたのか」

声に振り向けば、白髪の少女が呆れたような顔でわたしを見ている

「チン、ク…?」

「ああ。チンクだ。…どうした?酷い顔色だ。…まさかとは思うが、負けたのか?」

心配そうに聞いてくるチンクに苦笑いが漏れる

「いえ…。少し、精神的なモノです。気にしないでください」

わたしがそう言えば、チンクは露骨に顔をしかめた

「いいから話せ。姉はそんなに不甲斐ないか?お前の悩みくらい一緒に背負ってやる」

「…っ」

どの口が…!そんなことを…!?

いや、落ち着け

チンクは悪くない、彼女は計画の中心にまったく関わっていない。ただ製作者の言うことを聞いて行動しただけ

それでも、思ってしまう

命令に従うことしか出来ない人形風情が、わたしの姉を名乗るなと

力になると言うのなら、いますぐわたしを高町家に帰してくれと

思ってしまう

彼女たちは…少なくとも、チンクはとても良い娘なのに

心の底からわたしを心配してくれていると分かっているのに

戦闘機人は人形なんかじゃなく、れっきとした人間だと分かっているのに

自分の中にたまってドロドロに発酵した腐った感情が、激情のままに攻撃衝動へと変換される

「プロト?」

首を傾げるチンク。…わたしはそこではっとする。いつの間にか伸びていた手が、彼女の首に伸びていた。あと数秒声をかけられるのが遅ければ、わたしはこの細い首をどうしていたのでしょうか?

「は、はは…」

もう、笑うしかない

わたしは化け物だ

人殺しだ

あんまりな現実に気付いて、わたしはゆっくりとかぶりふる

「だ、大丈夫か?」

急に奇行を始めたわたしを心配して、チンクはおろおろと動揺する。こんなときにどうすればいいのか分からないらしい。当然だ。わたしにも分からない

「いえ…はい、大丈夫です」

頭を小さく振りながらもわたしは頷く。もう逃げられないし、止まれない

「…そうか、大丈夫そうなら良いのだが…。今夜、少し大きな戦いがある。出来ればプロトにも協力してほしい」

「…了解」

拒否権なんかない。しかし、チンクが大きな戦いと認めるなんて…そんな凄い人間がいるのですかね?

「…敵は、こちらの研究施設を狙ってきたようだ。姉だけでもイけないことはないが…。少々厄介でな、AAランク越えが合計3人もいるんだ」

「…ほう」

なんとまぁ。高々違法研究所の摘発くらいで…随分と思い切った布陣ですね

「構いませんよ。メンバーは?」

「ウーノ姉様とドゥーエ姉様以外の稼働しているナンバーズ全員だ」

「…クアットロまでですか?」

こくりと頷く。…フルバックのクアットロまでとは、ドクターも本気で迎撃するつもりなのですかね?

「ああ。出来ればそのAAランク以上の魔導師を生かしたまま捕らえてほしい。生きてさえいればいいそうだ。実験に使うらしい」

「…そう、ですか」

少し、返答が硬くなる

わたしは、見知らぬ他人がわたしのようになることを割り切れない

…甘え、ですね

まともじゃないくせに、甘さだけが残っているなんて…兵器として、失敗作です

「…そういえば、試作品で失敗作でしたっけ、わたし」

「…プロト?」

自嘲に歪むわたしの顔を、金色の瞳が見ていた




―――
(作者)

シリアス「まだ俺のバトルフェイズは終わってないぜ!」

ギャグ「ひょ?」

シリアス「魔法カード【ネガティブソウル】!登場人物がネガティブな限り、ずっと俺のターン!」

みたいな?

ってかやべぇな

このままじゃナンバーズフラグがヤバイことに…


感想返し


・なのはなら気付く。愛で

気付きはしましたが、偽物という発想はなかった
デレプロト継続中?とか軽く考えてた

・高町家&ハラオウン家&シグナム

不幸継続中
高町&ハラオウンはお通夜
一番可哀想なのは忍

シグナムは切腹しようとした。なのはに殴られてやめたけど
だから頑張ってプロトを探す。殴ってもらうために。やはりMナムさん

・エロジェイル

それなんてエロゲ?ww

ちなみにジェイルがプロトを【闇の書事件】の被害者にしなかったのは、余計な探りをいれられるのが面倒だったから

さすがにギル&リンディコンビの相手はめんどいようだ


・機人化&敵対ルート

読まれてた?
意外と多いよね
一応成長はします


・キング・クリムゾン

連発します
10年も細かく書いてられねーッス
ほぼ一話ごとに2年は飛ぶ



次は予告のプロトのステータス



[16022] プロトのステータス&フラグ表
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/04/06 12:18
プロト・グレイランド・高町→ナンバーズ・プロト


肉体年齢→10歳前後まで調整。以後、定期的な調整により普通に加齢することに

髪→膝裏まで届くロング。色はダークグレー。2年でここまで伸びた。ちなみに機人化当初は肩口で切り揃えたセミロング

目→右 金 左 灰色


ボディスーツ→下半身はオットーのモノの色違い。上着はチンクのコートを灰色にしたもの



能力↓



複数のISと固有武装を持つ

ISロード

ISを発動するトリガー・ワード
単独でも使用可能



ISリンク

ISを強化するトリガー・ワード
半径30m以内ににオリジナルISを持つナンバーズが存在する間のみ、お互いのレリックコアを共鳴させ、ISの出力、能力を強化させられる

ただし、トリガー・ワードと共に対象のナンバーズとの肉体的接触が必要

一度肉体的接触を経て発動させれば、どちらかが範囲外に出るか、もう一度に肉体的接触を経て、お互いに解除しない限りは解除されない


ISマルチリンク

プロトを中継地点とし、ナンバーズ全員が全員のISを使用できるようになり、思考が一体化する

3人〜13人が同時に肉体的接触を得る必要がある





ISⅠ
プロト・セクレタリー

オリジナルとは違い、ステルス機能はない。しかし、マルチタスクより高度な高速思考が可能

常時展開型


ISⅡ
プロト・ライアーズ

オリジナルとは違い、体型はコピー出来ず、衣装も変わらない。
更に変化できる時間は10分限定
代わりに他人にも【顔】を張り付けることが可能


ISⅢ
プロト・インパルス

ソニックライドと同程度のスピードでの戦闘が可能
ただし、限界がないため、あまりスピードを上げすぎると肉体が自壊する
このISの発動中は固有武装【インパルスライナー】のみ使用可能


ISⅣ
プロト・カーテン

自分の存在のみを周囲に認識させなくすることが出来る
ただし、この能力発動中に攻撃行動は取れない

ISⅤ
プロト・デトネイター

固有武装【スレイヤー】を爆弾に変えることが可能
また、スレイヤーの制御にもこの能力が必要
一度スレイヤーを爆弾に変えた後なら、他のISと爆弾ナイフの同時使用も可能

ISⅥ(試作品)
プロト・ダイバー

実験機。固有武装【ダイバーズ・ドリル】の制御用能力
自分の肉体は透過出来ない

ISⅦ(試作品)
プロト・アームズ

実験機。固有武装【ブーメラン・アーム】の制御用能力
捕獲に特化

ISⅧ(試作品)
プロト・ストーム

実験機。掌から灰色の光弾を生み出す。一度に使える最大数は20。20発使う度に首筋に備え付けられたカートリッジシステムに酷似した機構でエネルギーをリロードしなければならない。
カートリッジの装弾数はは10発。リロードの際、数秒間無防備になる
尚、一発の威力、速度はなのはのアクセルシューターと同程度


ISⅨ(試作品)
プロト・ライナー

実験機。固有武装【インパルスライナー】と同時併用。打撃と同時に対象に魔力ダメージを与える。尚、戦闘はプロト独自の格闘術にて行う


ISⅩ(試作品)
プロト・バレル

実験機。右腕に内臓された固有武装【ライトカノン】から破壊エネルギーを打ち出す。貫通力に優れ、破壊力に乏しい
両目のターゲットサイトとリンクし、半自動でターゲットロックする

ISⅩⅠ(試作品)
プロト・レイヴ

実験機。選択した対象の重力干渉を解除する

ISⅩⅡ(試作品)
プロト・ブレイズ

実験機。エネルギーブレードや固有武装のオーバーロードを制御する。灼熱したエネルギーブレードは赤く染まり、高温になる。
他のISとの同時使用が基本


固有武装

固有武装1
【インパルスライナー】

両肘と両膝に埋め込まれた非人格型デバイスに酷似した武装

展開しなくても虫の羽根のようなエネルギーブレード【インパルスブレード】を発現可能

展開時は籠手とブースター付きのローラーブーツになり、【プロト・ライナー】の専用の固有武装となる。

固有武装2
【シェル・ケープ】

AMFとステルス機能を搭載した灰色のコート。【プロト・カーテン】の使用には必要不可欠
内側に転移魔法陣が組み込まれており、他の固有武装はここから取り出す

固有武装3
【スレイヤー】

金属製の10cmの両刃のナイフ。【プロト・デトネイター】専用固有武装。だが、用途は広い

固有武装4
【ダイバーズ・ドリル】

5cm〜3mまで伸縮自在のドリル。開発中の【ナンバーズⅥ】に使わせる予定で制作したが、戦闘能力を考慮した結果、奇襲〜撹乱用としてプロトに使われることになった
内部に仕込まれたカメラ、スピーカー、盗聴機により情報収集にも使われる
男のロマン


固有武装5
【ブーメラン・アーム】

籠手の形をしたマニュピレーター。対象の四肢に絡み付き、電撃により無効化する
戦闘能力は皆無。同時使用は2つが限界
膂力は成人男性程度

固有武装6
【ライトカノン】

右腕に内蔵された大砲
1日に打てる数は3発
尚、移動しながらの発射は不可能



リミットブレイク機能搭載

5感の疑似遮断により性能限界の突破
尚、生身だったころより遥かに耐久性が上がっているためリミットブレイク状態での長時間戦闘が可能
最長で5時間




フルドライブ機能搭載

プロトはこれを知らない
リンカーコアの強制励起させることで魔力生成が可能となる
運が良ければ生きている
ようするにレリックコアとリンカーコアを同時に暴走させる
コレを使用した後はリンカーコアは死滅する。

結果としては、
・グレイランドを使えるようになる
・魔法とISの同時使用が可能
・どうせ死ぬから捨て身
・リミットブレイクとの併用により痛みすら感じない完全な【兵器】に
・レリックコアに刻まれた【聖王の鎧】の劣化コピーの取得





性格

ヤサグレ自暴自棄

グレイランドも家族も友達も失い不安定に

自分でも自分が何がしたいのかわからないだけにすぐに行動がぶれる

肉体年齢は10歳前後まで成長したが、むしろ情緒不安定のため幼児退行気味



稀少技能はまだ活きている
だが、魔法は使えないので意味はあまり無い。誘導弾対策に使えるかどうか



体内の魔法生物はジェイルによって心臓ごと除去された

魔力を生成出来なくなった体には毒でしかない

ただし、うなじに備え付けられた高出力の魔力カートリッジと共に体内に注射されることで戦闘機人の体でさえ修理するナノマシンの原型となった

この修理用カートリッジシステムは後に全ナンバーズに積まれることになる

尚、スカリエッティはプロトが遠距離武装を使いたがっていることを承知の上で、遠距離武装に力を入れた

ヤサグレているプロトは気付かなかったが、彼なりの親愛の証なのだ、と数年後に気付く


ちなみにプロトのISはエネルギー消費が激しいため、通常のナンバーズに扱いきれない

レリックとの親和性が98%を越えるプロトか、あるいはヴィヴィオのような聖王グローンでないと使えない…という設定






皆の気持ちー
&現在のフラグ表




スカside


キュイル・バレンシュタイン

現在脳ミソ

最終回間際まで出番なし

プロトフラグ成立中
死亡フラグ成立中
ジェイルフラグ成立中



グレイランド

現在休眠中

最終回間際まで出番なし

空気フラグ確定
プロトフラグ成立中
死亡フラグ確定(?)


ジェイル・スカリエッティ

初めての息子が可愛くて仕方ない

でも歪んでる

死亡フラグ成立中
家族フラグ(?)未確認


ウーノ

初めての弟が可愛くて仕方ない

でもどうすればいいのか分からない


家族フラグ(?)成立?



ドゥーエ

弟ができたことすら知らない

男を落ーとーすー

空気フラグ成立中



トーレ

自分より可愛い弟が可愛くて仕方ない

でも厳しく接する。ムチ


兄貴フラグ成立中



クアットロ

初めての弟がバカで困る

人間なんかやめちゃえばぁ?

死亡フラグ成立中



チンク

初めての弟が心配でたまらない。アメ

姉としてしっかりしなければ

メインヒロインフラグ成立中
プロトフラグ成立中





ヒロインS


高町なのは

墜ちた。落とされた
でも負けない
プロトちゃんが生きてるのは分かったから、ちゃんとOHANASHIするの
まずはリハビリ
原作とは違い、無理せずじっくりしっかりリハビリ中。復帰まで一年
プロトちゃんが生きてるのは分かったし、焦らなくてもいいよねー
とりあえずこのままじゃプロトちゃんに勝てないのでパワーUPのために教導隊で修行予定

魔王フラグ成立中
死亡フラグ成立中(プロトが)
冥王フラグ成立中
プロトフラグ成立中



フェイト・T・ハラオウン

プロトが生きてたと聞いて歓喜
でもなんでなのはと戦うことに?
これはなのは流でOHANASHIしないと…
リンディの養子になった
クロノ並みに動き回るために、執務官になる勉強中
なのはより強いプロトに勝つために、クロノに戦い方を習う。あと執務官の勉強も
あと、なのはを傷付けたプロトにはOHANASHIとは別としてお仕置き予定

死亡フラグ成立中(プロトに)
プロトフラグ成立中
ショタコンフラグ成立未定
ロリコンフラグ成立未定






他、魔法面


リンディ→プロトが生きてたと聞き、歓喜。全ての権限を使いなのはとフェイト、はやてをバックアップ

空気フラグ確定
家族フラグブレイク


クロノ→プロトが生きてたと聞き、安堵しながら倒れる。入院中、看病してくれたエイミィに深い愛情を抱き、結婚を考え始める

死亡フラグ確定(人生の墓場的な意味で)
プロトフラグブレイク



エイミィ→プロトが生きててくれたことに喜んだが、それ以上に倒れたクロノを心配。「私がいないと駄目なんだから…」と心は新妻

死亡フラグ確定(人生の墓場的な意味で)




ユーノ→プロトの生還を一番喜ぶ。これでもう無限書庫にいる必要ない、と。しかし向こうから逆指名され、強制就職。彼は泣いた

空気フラグ確定
プロトフラグブレイク



はやて&ザフィーラ→元気になった友人たちに安堵。しかし魔法陣が出ない戦い方?…少し気になる。調べよう

空気フラグ成立中


ヴィータ→あれがなのはの大切なやつ?…関係ねぇ。あいつを傷付けた以上、きっちり落とし前付けてやる…!

敵対フラグ成立中


シグナム&シャマル→何故あの少年が敵に?やはり自分たちのせいなのでは…。どうにかして話を聞かなければ

贖罪フラグ成立中
プロトフラグ未確認





日常面

高町家→なのはの怪我がプロトによるモノだと聞き、複雑な気分
生きてたのは嬉しいが…何故敵に?

男性陣は頭ひっぱたいて目を冷まさせてやる…!と思っていたが、女性陣がなのはに任せよう、と説得
あと美由紀に任せていた海鳴市の翠屋が潰れそうだったため、海鳴に帰る
「なのはー!あとは任せたぞー!」みたいな

家族フラグ成立中
空気フラグ確定



アリサ→…え?プロト、生きてたんだ…そっかぁ…ぐすっ、よかったぁ…

友情フラグ確定
空気フラグ確定



すずか→な、泣かないでよアリサちゃん、わ、私が頑張って抑えてたのに…

友情フラグ確定
空気フラグ確定



以上

そう、こっからが微【最強】モノだー!!


こうご期待



レリックの設定は独自のモノです。
王の証ってくらいだし、こんな設定あってもいいはず

…やめろ落ち着けその右手の石を捨てるんうわやめろ何をす(ぐちゃ)



[16022] 不屈の心と試作品 強くない、わたし
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/04/09 18:12
不屈の心と試作品
強くない、わたし




暗い研究所の通路を音も立てずに歩いていく

わたしの肩の上辺りを浮遊する【ブーメラン・アームズ】を操り、人影を発見すると同時に口を塞ぎ、電流を流す。零距離から放たれる高圧電流は、バリアジャケットを貫通して意識を刈り取っていく

「…これで5人」

気絶した男性の手足を縛り、転送する。行き先は最高評議会の私設研究所。ジェイルが貰う予定のAAランク3人の他の隊員は、どこか知らない研究所に送られるそうだ

使いにくい部下は殉職ないしMIAにして、新しい技術の開発…か。本当に腐ってるですね

「…謝りは、しませんよ」

わたしには、謝る資格すら、ないのだから

「っ」

殺気を感じ、真後ろに跳躍。一瞬後に、わたしがいた空間の真上の天井が爆発した

「外したっ!?っていうか子供!?メガーヌ!」

「分かってるわ!ガリュー!」

2人の女性の声。同時に真後ろに感じる魔力反応。転送…いや、召喚魔法

「…ISロード」

屋内空間、しかも狭い通路。遠距離?既に間合いに入り込まれている。中距離?わたしのISⅤは爆発の方向を選べない。ならば近距離。しかし高速機動は使えない。狭すぎる。ならば

「プロト・ライナー。インパルスライナー展開!」

両手両足に構成されるダークグレーの装甲。足に付いているブースターからエネルギーを噴射し、強引に前に出る。後ろから風切り音。視線を向ければ、暗殺者チックな虫のような人のような召喚…虫?が空振りした体勢でわたしを見ていた

「うそっ!?なら…お姉さんが相手よ!」

前からは大きなリボンを着けた青い髪の女性。後ろからは黒い暗殺者。…さらに黒い暗殺者を召喚した存在。中々の脅威です

だが、甘い

わたしの外見で油断している。最初の奇襲こそ見事でしたが、わたしの姿を見た途端、彼女たちから殺気が薄れている

その程度の覚悟では、無理です


わたしを□□□ことなど

…?

思考に一瞬の空白。…まぁ、問題は無いです

「リヴォルバー…シュート!」

間合いに完全に入る前に放たれる直射型の射撃魔法。速度や誘導性よりも、威力と範囲に比重を置いた魔法で――っ!?

「なんちゃって」

にやりと笑った女性は、射撃魔法をその場に待機したまま、その横を通り過ぎてわたしに拳を向ける。油断した、とは言わない。それに合わせて拳を振るう。女性の右ストレートとわたしの左フックがぶつかり合い、火花を散らす。どうにか方向をずらし、懐に潜り込んで腹に膝を叩き込む。が、女性は間一髪、体とわたしの膝の間に足を挟み、衝撃を緩和する。…人間の反応速度ですか?今の

ですが…今のダメージ、かなりデカイですね

「…」

女性とほとんど同時に無言で突っ込んで来た召喚虫。勘を頼りにその腕を避ける。よく見れば杭のような刃が腕の先から伸びている。毒は…あったら不味いですね

「やぁっ!」

空中に跳び上がって右足のブースターを全開。ぐるぐるとその場で回転し、鞭のようにしなる足が暗殺者の右腕…右前足?を破壊する

「…!」

僅かに驚いた気配を感じさせる暗殺者。距離を取ろうとしたので、追撃をかける。相手の砕けた右腕にめり込んだ足から、直接魔力ダメージを叩き込む。

「…!?」

びぐん!と一度身体を跳ねさせ、力無く崩れ落ちる。外殻は固いようですが、中身の耐久力はそうでもなかったですね

「ガリュー!?」

穴の空いた天井から顔を覗かせる紫髪の女性。わたしは稀少技能を使い、青髪の女性の待機させた魔力塊を結晶化する

「…!?メガーヌ!避け」

させるとでも?

わたしは結晶化した魔力塊に思い切り拳を叩き付ける。易々と砕けた結晶は細かい破片となり、メガーヌとやらに向かって突き進む

「なっ!?ら、ラウンドシールド!」

防御魔法を展開するメガーヌさん。それに舌打ちし、わたしに向かって突貫しようとする青髪の女性。

「させないっ!」

両手のデバイスのシリンダーをぎゅいんぎゅいん回転させ、カートリッジを1、2、3…4発ロードする

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!」

「品が無いです」

わたしは足下に転がっていた暗殺者を、思い切り青髪の女性に投げ付け、メガーヌさんに向けて跳ぶ

どしゃあっ!と眼下で衝突。頭に血が昇っていたらしい女性は硬い外殻を持つ暗殺者と正面衝突。それを尻目に、咄嗟に防御魔法を張ってしまったが故に身動きが取れないメガーヌさんに向かって前蹴りを叩き込んだ

「っぅ…!なんて重さ…!?」

「お褒めに預かり光栄です」

軽口を叩きつつ、防がれた足を引き戻し、ブースターを吹かす。ぐるん、と視界が反転し、もう片方の足は防御魔法…ではなく、メガーヌさんの足下の床に突き刺さる

「なっ!?」

足場を崩され、体勢が揺らぐ。防御の穴に向けて右拳を叩き込み――

「――ブレイク」

拳から魔力ダメージを放射。悲鳴すら上げずに吹き飛ぶメガーヌさん。ぐしゃっ!と痛そうな音と共に壁にぶつかる。口の端から赤い液体が溢れる…が、死んではいないようですね

――というか、今更気付きましたがこの人たちですね。AAランク以上の魔導師たちって。3人中2人と遭遇とは…運がいいのか悪いのか

「メガーヌ!?っ、よくも…!」

額から血を流しながら、足下のローラーで壁を駆け上がってくる女性――データ確認――クイント・ナカジマ

「ISロード…」

インパルスライナーを待機状態へ移行。一瞬こちらを訝しげに見たクイントさんは、それでも壁を、天井を複雑な軌道で走り、迫ってくる。故に、わたしのにわか格闘術では相手が出来ないと判断

「プロト・ダイバー」

コートの内側から取り出した小さな円錐形。それをクイントさんに向けて投げつける

「そんなもの!」

怒声と共に左の拳でそれを弾く。円錐は簡単に弾かれ、壁へと突き刺さる

「喰らいなさいっ!インパクト・ZERO!」

気付けば目の前に存在する拳。硬い籠手状のデバイスが腹部に突き刺さる。

「がっ…」

口から血が溢れた。戦闘機人であるわたしがこれだけのダメージを受ける――しかも多分非殺傷設定――攻撃。普通の人間なら内臓破裂で死ぬんじゃないでしょうか

そのまま吹っ飛び、壁を破壊してまだ吹っ飛び、部屋の中でも吹っ飛び、壁をもう一度ぶっ壊して、隣の廊下の壁にぶつかってようやく止まる。…人間技じゃないんですけど

「っぅ〜…!苦労させてくれたなぁ…!」

痛そうに顔をしかめ、右手をぷらぷら揺らしながら廊下の向こうから現れるクイントさん。

「とにかく、話を聞かせてもらうよ?大丈夫、悪いようにはしな――」

クイントさんの表情が変わる。驚愕へと

先程わたしが放った円錐形――無機物を透過する固有武装、ダイバーズ・ドリルが床から無音で飛び出し、彼女の左足に突き刺さったのだ

「あぐっ!?」

そのまま貫通するドリルに、堪らず悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちるクイントさん。重要な血管を避け、筋肉と筋だけを粉々に破壊するのは骨が折れました。…多分肋骨が2本くらい

「…慢心は身を滅ぼすって習いませんでしたか?」

やれやれ、と肩をすくめて立ち上がる。ダメージはそこそこ大きいけれど、動けないほどじゃない。それを見て、クイントさんは顔を青くする

「う、嘘…あ、アレ…威力だけならニアS…」

…んなもん人間に向けんじゃねーです。あ、わたし人間じゃないからいいのか

「…さて、終わらせ」

どんっ!!

離れた場所からの爆発音。

…チンクですかね?こんなせめぇーとこでランブルデトネイター使うんじゃねーです

どんっ!どどどんっ!とリズム良く鳴り響く爆発音。漂ってくる焦げ臭さ。…どうせ廃棄する研究所だからいいですが、もうちょい考えて戦えです

「…まぁ、いっか」

まだ爆発音は続いている。ランブルデトネイターをこれだけ使っても倒しきれない相手だということだ。早いとここの2人…メガーヌとクイントを確保して加勢にいかなければ

「…だから終わらせますよ。ISロード、プロト・アームズ」

捕獲用ISを起動し、クイントさんへと向け――

「ま…」

クイントさんが、動く

壊れた左足から血を流しながら、

右足だけで身体を伸ばし、右の拳をわたしに――

「負けるかぁぁあああああああああああああああっっっっ!!!」

その遅すぎる拳を、わたしに向けて放つ

「―――…見事です」

その意思は、認めます

だけど――

「わたしは、もう止まれないんです」

だから、容赦は出来ません

スレイヤーを召喚。ただのナイフでしかないそれを、クイントさんの右肩に突き刺した

「が…ぁ…」

悲痛なうめき声を漏らすクイントさん。だが、自分の身体に突き刺さるナイフにも頓着せず、彼女は突き進み…わたしの頬に、拳をぶつける。ぱすっ…と軽い衝撃。それを見届けると同時に、その身体はぐらりと崩れ落ちた

「…はぁ」

溜め息を吐く。…何やってんでしょう、わたしは

焔が回ってきた。煙が充満し、少し息苦しい。早いとこラボに戻らないとせっかく手に入れた高ランク魔導師が死んでしまうかもしれない

「…帰りますか」

さっきから爆発音が途絶えている。頭に組み込まれたセンサーにはチンクの反応があるので、勝利したのでしょう

ならばわたしはこの2人を持ち帰るだけ

メガーヌさんを肩にかけて荷物のように持つ。…一応確認してみる…ん、大丈夫。ちょっと骨が砕けてるくらいですね

次は、クイントさん

どうやらまだ意識があったらしく、焦点の合わない瞳がわたしに向けられている

その口が、不意に開いた


「―――めん、ね」

「…?」

首を傾げ、言葉をよく聞こうと耳を澄ます

そして、だった














「ごめんね…?ギンガ、スバル…おかあさん、ここで終わりみたい…」















ぎしり、と軋む音がした

ジェイルから聞いたことがあった

戦闘機人タイプゼロ

今の名前は、ギンガ、スバル。ナカジマ家に引き取られ、幸せに暮らす生体兵器

一度、見たことがあった

モニター越しにだけれど

笑っていた

姉妹は、楽しそうに、嬉しそうに、緑溢れる公園の中を駆け回っていた



「…あの笑顔を、わたしが…奪う…?」

腕が震える。思考にエラーエラー。レリックコアにノイズ発生。肉体制御不能、リンカーコア臨界点突破

嫌だ

嫌だっ!

わたしがどうにかなるなら構わない

けれど何故…

何故、幸せになってはいけない!?

生体兵器が幸せを望んではいけないのですか!?

何故わたしがわたしと同じか、それ以上に不幸な少女の【家族】を奪わなければならないっ!?

気が付けば、わたしはそれをしていた

「起きろっ!」

クイントさんの意識を強制的に戻す。目を白黒させるクイントさんに怒鳴りつける

「家族が大事なら、戦場に出ないでください!何であの娘たちを幸せにしてあげられなかったのですか!?平和で平穏な日常が、大切で愛しい家族がいれば、゙わたしば他に何も望まないのに!」

「な、何を――」

口を開くクイントさんを睨みながら、転送ポートを開く。座標は…ミッドチルダ!管理局本局の正面玄関!

センサーに反応。早い…トーレですか。頭の中に通信が入りまくっている。だがそれを無視してクイントさんを転送ポートに叩き込む

「ま、待って!なんで君は――」

「いいから行けぇ!」

ごちゃごちゃ言ってる暇は無いんですよ!

狼狽しているクイントさんがわたしの視界から消えると同時に、

「『――さて、話をしよう』か」

紫色の刃をわたしの首に当てるトーレと、にやにやと嫌らしく笑うジェイルが現れる。片方は通信ですが

わたしは、2人に向けて言う

にやりと笑い、舌を出し

「ざまぁ」

瞬間、わたしの意識は強制的に落とされた


―――
(作者)

なげぇ!

対人戦は大変だ!疲れる!


長すぎて容量が足りなくなったので、感想返しは次回

次回も長そうダケド



[16022] 不屈の心と試作品 決意/贖罪/決別
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/04/12 12:38
不屈の心と試作品
決意/贖罪/決別





目を覚ますと同時に、思い切り足を蹴り上げる。予想通りのガラスの砕ける音と共に、体が生体ポットの外に流れ出す

「やれやれ。生体ポットも無料じゃないんだが」

呆れた口調のジェイル。わたしは口の中に溜まった液体を吐き出し、睨み付ける

「これ以上…弄られてたまりますか…!」

「君は一応、それで完成だよ。これから改良していくことはあっても、君が不安に思っているほど改造はしないさ」

そういう問題じゃないでしょうに…

「…洗脳やら面倒なチップやら自爆装置やらを積まれたら話にならないので」

「はっはっはっ、そんな無粋なことはしないさ。…せっかくの君の魅力を損なわせるような真似を、私がすると思うかね?」

…ちくしょう、変態め

「ああ、君が改造してくれ、というのなら構わないよ?」

「頭の中洗浄してもらえです」

吐き捨て、シェル・ケープだけを羽織ってラボを出る。肋骨が折れたはずなのに…痛みが軽い。治癒用のポットでしたか

「君の憎悪、殺意、憤怒…その全てを私は受け止めよう。君がその輝きを失わない限りは…ね。君がより強く輝くためならば、私は全ての知識を提供しよう」

「…大きなお世話です」

背中にかかる声に吐き捨てる。怪我をしたせいか、それとも他の理由か、身体が熱を持っている

「プロト」

振り返る。長身に均整の取れた鍛え上げられた肉体を持つ美女…トーレが立っていた

「傷は?ドクターはあと2日ほどかかると言っていたが…」

「…目が覚めたので、強引に。…あの、あの後は」

クイントさん…というか、タイプゼロの2人は、泣かずに済んだのですか?

トーレは呆れを多分に含んだ視線をわたしに向ける

「…ドクターは貴様の意思を基本的に尊重する。貴様が何を考えてヤツを逃がしたのかは知らんが…見逃すことにしたらしい」

その言葉に胸を撫で下ろす。…恐らく最高評議会に送った魔導師の中にだって子供のいる人はいただろうし、それでなくても両親はいただろう。でも、それでも思ってしまう

生体兵器/わたしと同じ存在 である少女たちから家族を奪わずに済んで良かった、と

勝手な言い分だとは分かっている

意味の無い行為だとも理解している

それでも、わたしがわたしであるが故に、わたしはクイント・ナカジマを見殺しにすることが出来なかった

「幸い、貴様のダイバーズ・ドリルに付着していた血液からクイント・ナカジマのパーソナルデータは採取できたからな。ドクターならばタイプゼロを超える妹を作れるだろう」

「…そう、ですか」

声が震えたのを上手く隠せた自信が無い。…まったく、自分の幼稚さが心底嫌になりますね。いっそジェイルもわたしから完全に感情を排除してくれれば…

いや、せめてここ数年の記憶を削除してくれれば…

わたしは己に戻れたのに

「…プロト、一応言っておくぞ」

いつの間にか、立ち止まったトーレがわたしを見下ろしていた。わたしは長身のトーレを真っ直ぐに見返しながら首を傾げる

「貴様の居場所は外の世界には無い。貴様がドクターに身体を弄られた【ナンバーズ・プロト】である限り、貴様が受け入れられることはない。どこへ逃げようと管理局に終われることになり、いずれは捕まり、最高評議会の指示の元に永久に出れぬ幽閉の身となる」

「…何が、言いたいのですか?」

あまり無駄なことを喋らないトーレにしては珍しい。今日はヤケに饒舌ですね

「自棄を起こすな。貴様は既にこちら側。管理局を滅亡させるその時まで、我等は日の下に出れぬ身なのだ」

…分かっていますよ、そんなこと

分かっているからこそ□□□欲しいのではありませんか

「…おおきな、お世話です」

「…そうか」

…無言。気まずい。思わず視線を逸らす

「…」

ぽふ、と頭に軽い感触

驚いてトーレを見れば、どこか悲しそうな目でわたしを見下ろしながら、わたしの頭を撫でる彼女

――その目が、恭也に重なって見えた

「…っぁ」

溢れ落ちそうになった涙を手で拭い、目元を隠しながら駆け出す。後ろから視線を感じたけれど、わたしはそれを無視して走り去る

まだ使われていない部屋に入り込み、声を殺して溢れ落ちる涙を拭う

「っ…ちくしょぅ…ちくしょう…なんで…!」

意味もない言葉を紡ぐ。怪我は無いのに、胸にズキズキと幻痛が走る

扉が開く。顔を隠す暇もなく、強引に顎を捕まれ、引き上げられる

「なにんぐ…!?」

唇を、奪われた

視界一杯に広がるのは、栗色の髪とどこか楽しげな笑みを浮かべたクアットロの顔。引き剥がそうと腕に力を込めたが、強く抱き締められ、いつの間にか両手を壁に押し付けられていた

更に、唇を割って冷たい舌が伸びてくる。ぐねぐねと動き回ってわたしの舌を絡めとらんとする舌。クアットロの唾液が口内に流れ込み、それが妙に熱くて

「ん…がぅ!」

「っ!」

舌を、思い切り噛んだ

流石に唇を離すクアットロ。わたしはその腹に蹴りを叩き込み、さらに距離を取る

「なんのつもりですか!?」

インパルスブレードを展開。殺意を込めてクアットロを睨めば、クアットロは唇の端から血を溢しながらやれやれ、と肩をすくめる

「べぇつにぃ?」

独特の甘ったるい口調にさらに怒りが沸く。ここで殺してやろうか…!

「落ち着かせようと思っただけじゃなぁい。どう?クアットロお姉さま特性のトランキライザー。私達にも効果があるように調合するの、大変だったのよぉ?」

それにまともに飲ませようとしても毒がどうとか言って飲まないじゃなぁーい。と言うクアットロ。…確かにこいつの作った薬なんて飲むわけありませんが、だからって…!

唇をごしごしと擦る。…ちくしょう、悔しいことに確かにわたしは落ち着けてる。トランキライザー…精神安定剤。悔しいくらいに即効性で効果がある。それが余計に腹ただしい

「っていうかねぇ〜?べっつにドクターから指示貰ったわけじゃないんだけどぉ、プロトちゃんがやった事の゙結果゙はちゃんと見なきゃいけないと思うのよねぇ」

立ち上がり、埃を払いながらにやにやと笑みを浮かべるクアットロ

「…結果?」

視線は固定したまま。インパルスブレードも解除していない。けれど、クアットロはにっこりと柔らかい笑みを浮かべ「着いてきてねぇ〜?」と背を向ける

…何だか負けた気分でインパルスブレードを解除。ごしごしと唇を拭いながら後を追う

「そぉんなにクアットロお姉さまとのキスは嫌だったぁ?」

「…カエルにキスしたほうがまだマシですね」

「失礼しちゃうわぁ。傷付いちゃった」

どうだか。にやにやした笑みがさっぱり隠せてないですよ

無言で通路を歩いていく。…しまった。ボディスーツも着ておくべきでした。シェル・ケープだけだと寒いです。機械部品の所が冷えるから、生体部品の所が余計に寒く感じます

人知れず寒さに耐えながら歩いていく。やがて足が止まった。ここは…クアットロのラボ?

「はぁい、ここよぉ?」

妙にキラキラした笑みを浮かべたクアットロが電源を入れる。薄暗かった部屋が明かりに包まれ、少し目が痛い。…ようやく目が慣れてきた

「っ!?」

そして…わたしは見る

生体ポッドに入れられた、裸の女性。紫色の髪は、体感時間ではついさっきまで戦っていた彼女特有のモノだった

「メガーヌ…さん…?」

なんで?だって、見逃すって…!?

「クイント・ナカジマはねぇ?でも貴重なモルモットを全部見逃すわけないじゃなぁい?そ・れ・とっ」

重要なのは…その隣でしょぉ?

にやにやとした笑み。耳元で聞こえる声

「…やだ」

ぷかぷかと、メガーヌさんが入ったポッドの隣の生体ポッドの中に浮かぶ

紫色の髪を持つ、小さな赤ん坊

「…やだ…っ」

その額には、改造されたことを示すかのような赤い紋様

「…やだ…っ!」

彼女は…

「貴方がメガーヌ・アルビーノをこんな風にしたせいで、彼女の娘…ルーテシア・アルビーノは管理局に引き取られて…人造魔導師の適正があったから、ここに来たの」

分かるぅ?

耳元の声に、また涙が溢れ出す

「あなたのせいで、幸せに笑えるはずだったこの娘ば貴方なんがと同じ存在になっちゃったのよぉ?」

――その言葉で

何かが、切れた

「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!」

泣きながらポッドにすがり付く。目を閉じ、安らかに眠る赤ん坊に向かって懺悔する

「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!わたしが!わたしのせいで!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!」

「あっはっはっはっ!あーはっはっはっはっ!!あはははははははははは!!」

クアットロの哄笑に何かを返す余裕も無い








…どれだけそうしていただろうか

「…めん、なさい…」

涙が枯れるまで泣き続け

「…ご…げほっ…なさい…」

喉が潰れるまで謝り続け

「ごぇん…あざい…」

意識が朦朧としてきたころ、笑い転げていたクアットロの声が聞こえた

「…その娘、明るい世界に帰してあげたい?」

こくりと頷く

「だったら帰してあげればいいじゃない?」

それが、出来れば…出来るなら

「出来るじゃない










管理局さえいなければ」





その言葉は

いっそ奇妙なほど、すとんと胸の底に落ちてきた

「貴方が全力を出せば管理局だって潰せるじゃない?勿論1人じゃ無理でしょうけど…」

私達姉妹は、アナタに協力してあげてもいいわよぉ?

声を、詰まらせる

けれど、冷静な部分が警鐘をあげる

「…ぁ、アナタたちに…メリットが…」

「あるわよん?私達は管理局の滅亡そのものが目的、プロトちゃんは管理局のいなくなった世界が目的、だったら手を組んで一緒に動いたほうが早いじゃなぁい?」

…確か、に

鈍った思考をそれでも回転させる。こいつらと手を組めば――

「それともなぁにぃ?」

けれどクアットロは、その思考さえも許さない

「アナタ、ルーお嬢様を見捨てるのぉ?可哀想なルーお嬢様。どこかの誰かに母親を奪われ、生体兵器に改造されて、二度と日の当たる世界に出ることは出来ない、そんな可哀想な女の子を見捨てるのぉ?」

「――――――」

出来、ない。

そんなこと、わたしには出来ない

恨まれてもいい、殺されてもいい

だけど、せめて日の当たる世界に生きて欲しい

…その、ためなら


「…がい、します」

「ん〜?」

にやり、と笑うクアットロ

「お願いします!管理局を潰させてください!わたしは、わたしは、彼女に謝りたい!綺麗な世界で暮らして欲しい!」

そのためなら、なんだってやる!

「…いいわよん」

にこにこと、笑顔のクアットロが手を差し出してくる

わたしは、それを握った

「これで本当に、【ナンバーズ・プロト】…ね」

「…それで構いません」

ごめんなさい

ごめんなさい

士郎桃子恭也美由紀アリサすずかユーノクロノリンディエイミィアルフ

貴方たちには、二度と会いません。会えません

なのはとフェイト…フェイトはまだ墜としていませんが…

もし会えるなら、戦場でしょう

もし会えたなら、わたしはアナタたちを墜とすでしょう

でも、止まりません

管理局を潰し、明るい世界にルーテシアとメガーヌさんを帰す日が来るまでは


だからわたしを、嫌ってください




―――――
(作者)

ダーク&シリアス

メガ姉は悪役。洗脳役

ってかずっとメガ姉のターン



・かっこいいプロト

鬱期で輝く主人公て( ̄▽ ̄;)

・気絶の理由

トーレの一撃です


・チンク

しばらく出番はない
というかラブコメを書いていい雰囲気じゃない


・高町家

戦いになったら飛べない高町家は邪魔だとなのはがしっかりちゃっかりみっちり【お話】して帰らせました

・フラグ

フラグはあるがどうなるか分からん


・シグシグ

可哀想なことになります



[16022] 不屈の心と試作品 あるいは幸せ?
Name: 人春◆45d3e50a ID:ec8f6a96
Date: 2010/04/15 12:46
不屈の心と試作品
あるいは幸せ?






管理局を潰す、そう決めた日からさらに2年が経過した

13歳になり、身長も大分伸び、全体的に男らしく…

「なってないな」

「放っておいてください!」

華奢で悪いですか!?ドクターのせいでしょうに!もっと筋肉寄越せです!

呆れた目でわたしを見るチンクに涙目で怒鳴る

「ぅぅ、ゼストぉ〜!」

「…俺に言うな」

そっと視線を逸らすゼスト。…彼もあの時、わたしのせいでこちら側に引き込まれた被害者。わたしが絶対に光の当たる世界に返さなければいけない人間

レリック・コアを埋め込む直前、命の危険があったそうですが…保存してあったわたしの治癒用魔法生物や、現在開発中の修理用ナノマシンの治験をしたところ、無事に健康体に。その後レリック・ウェポンに改造したそうなので、命に別状はないそうです

…何故、そんな面倒なことをしてから改造したのかをドクターに聞いたことがある

「あの時の君が、人間の命を背負ったら潰れて壊れてしまっていただろう?」

…わたしを心配したかのようなそのセリフに、複雑な思いをしたのは忘れられない

「とは言っても、潰れてしまったら潰れてしまったで構わなかったんだがね。潰れて壊れた君を私の思い通りにするというのも、悪くない」

もっとも、その後に続いた変態なセリフで台無しだったが

「だって!ゼストは筋肉ムキムキじゃないですか!少しくらい分けてくれたって…「任せた」ってにゃあ!」

いきなり暖かく、柔らかいモノを渡される

ゼストの腕の中ですやすやと眠っていたルーテシアだ。ようやく4歳になった彼女は、普通に加齢…というか、成長している。レリックは埋め込まれたものの、肉体の機械化はされてないからだ。というか、体が6割機械なのに成長は続いているわたしの方がおかしい。とは言っても、20代前半で成長は止まるようですが。わたしはどこのヤサイ人ですか

「起こすなよ」

それだけ言うと、ゼストはとっとと歩き去ってしまう。チンクの前だからか、どことなく冷たいです。まだナンバーズ相手には心を許していないのですね。…わたし?わたしはゼストと一度死ぬ直前まで゙喧嘩゙してますから。それからはそれなりに仲良いですよ?こうしてルーテシアを預けてくれるくらいには

「むぅ…いってらっしゃいです」

「どうでも良いが、夫婦みたいだぞ、お前ら」

わたしはチンクの言葉を無視してゼストを見送り、溜め息を吐く。…恐らく、ナンバーXⅠのレリックを探しに行くのでしょう

XⅠのレリックは、メガーヌさんの蘇生に必要なもの

わたしとゼストが交互に任務に出ながら探しているものの、その成果は無い。ルーテシアの面倒も見なければいけないので、効率が悪いことこの上ないのだ

…ナンバーズにルーテシアを預けるのは不安ですしね。ウーノはともかく、チンクやトーレは子育てとかメチャクチャ苦手そうですし、クアットロは問題外。ドクターは子供の教育に悪いことです

「…こうなると子育てが得意なナンバーズとか作って欲しいですねぇ」

「…育児機人、か?」

どこか楽しげに言うチンクをじと目で睨む。あ、目を逸らした。自分でも面白くない自覚はあったのですね

「そ、そうだ。私は温水洗浄に行かなければ」

逃げた

かと思えば、くるりと振り返る

「…一緒に入らないか?」

「…まだシャンプー1人で出来ないのですか…」

呆れる。姉とかなんとか大人ぶってるくせに、肝心なところで子供っぽさが残ってるってのはどうなんでしょう?

「んー…まぁ、良いですけど…」

「本当かっ?」

僅かだが、喜色を滲ませるチンクに苦笑する。…ころころ変わる表情といい、些細なことで喜ぶところといい、彼女は普通に゙人間゙している。それこそ、見た目相応の少女のように

「えぇ、…っととと」

「んむ…ぉにぃちゃん…?」

抱き上げていたルーテシアがもぞもぞと身動ぎする。その柔らかい髪を撫でながら、チンクに苦笑いで返す

「…とりあえず、ルーテシアを寝かせてからなら」

「…そうだな。準備して待っている。早く来てくれ」

柔らかい笑みでルーテシアの寝顔を見てから、踵を返すチンク。わたしも早いとこルーテシアの部屋に向かう。といっても、わたしの部屋であり、ゼストの部屋でもあるのですが

ベッドにルーテシアを寝かせ、部屋を出る。さて、温水洗浄に…

『プロト、少しいいかな?』

「…うげぇ」

気持ち悪いモノを見てえづく

『…流石に失礼じゃないかな?』

モニターの中で僅かに表情を引き吊らせるドクター

「いきなり醜悪なモノ見せないでください」

『ああ、普通に失礼だね』

わざとですが?

「で、何の用ですか?これからチンクと温水洗浄なんですが」

『…君は…いや。なんでもない。…そうなるとチンクは母体候補からは外して…』

ぶつぶつ呟きだしたドクター。なんですかねー、一体。チンクを待たせてるんですから早くしろです

『ああ失礼。…それはともかく、悪いが行ってほしい任務がある』

…聞いてましたかー?これから温水洗浄ですってば

『すまないね。チンクには私が謝っておこう。で、行ってくれるね?』

拒否権無しですか?別に良いですけどね

『任務は簡単。ロストロギアの回収だ。A級ロストロギア【ナイトメア】。対象が最も恐れている現実を疑似体験させる精神干渉系ロストロギアだ』

モニターがもう1つ浮かび上がり、ガラス細工のようなソフトボール大の水晶が浮かぶ。中には黒いモヤみたいなものが浮かんでいて、゙いかにも゙な感じです

『見ての通り、壊れ物でね。チンクのIS相手には向いていない。初めはトーレに行ってもらおうと思っていたのだが…優先順位の違い、というものでね。更に言うなら、ナイトメアの現在の所有者…まぁ、下っ端の小悪党な次元犯罪者なんだが、下手を踏めば数日中に管理局に捕らえられてしまいそうなんだよ。流石にA級ロストロギアを内密に横流しするのは無理らしくてね。管理局より早めに確保したいのだよ』

「…ふむ」

現在の所有者は一応、AAランクの魔導師ですか。…丁度いい。試してみたい技があったのです

…にしても

「なんでこんなギリギリなんですか?」

するとドクターはにやりと悪党な笑みを浮かべ

『正直に言えば、あったら嬉しいが無くても困らないので忘れていた』

そもそもクアットロの固有武装の強化に使いたいだけだったんでね

と続ける。ぅーわーぁー。てきとーにも程があるですぅー

「…拒否権は…?」

『君なら理解していると思うが?』

…嫌な信用ですねぇ。と苦笑い

「ま、いいですよ。行くとしましょうか」

そして、わたしは転送ポートに向かう










そして…











「ぁ〜ぁ…やっちまったぜ…」

黒髪の青年がぼりぼりと頭を掻く。その前に倒れているのはオレンジ色の髪の青年。そして、バインドを解除しようともがく次元犯罪者

「ったく、この歳でミスショットかよ…。陸のヤツがでしゃばるからよぉ…。どうすっかなぁ…」

…口振りからすると、倒れているオレンジ頭の青年がこいつに撃たれたようですね。しかも、同じ管理局員

「…っ、そうだ。てめぇがヤったんだよな、コレ」

…なんですって?

青年の言葉に、犯罪者が目の色を変える

「じょ、冗談じゃねぇ!俺はコレで幻覚見せて逃げようとしただけじゃねぇか!?んな余計な罪まで背負らされてたまるがぁ!?」

魔力弾が、犯罪者の喉を抉る。見た所、完全に声帯が潰れていた。…これで彼はもう喋れない、という訳ですか

「お前どっち利き腕だっけ?筆談とかされたら面倒だからよぉ」

杖型のデバイスを構える青年

…ぁぁ、もういいや

プロト・カーテン解除

「ISロード。プロト・ライナー」

展開される幾何学模様の魔法陣。インパルスライナーをセットアップ。驚き、振り返る青年の拳に、固めたエネルギーを拳圧と共に飛ばす。いつか見た、リヴォルバーシュートのように

「うぉ!?」

慌ててシールドを展開した青年に近寄り、後ろに回る。ブースターを全開にした鋼鉄の爪先が、隙だらけな青年のテンプルに突き刺さる。さらに魔力ダメージを解放。ぐちゃ、と生々しい音が響き、青年の耳から鮮血が吹き出した

…殺しては、いない

ただ、一生首から下が動かなくなるような障害が残るだけ

糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた青年を無視して、口の端から鮮血を垂らす犯罪者の下に近寄る。ヤツは、わたしをぽかん…と見ていた

「大丈夫ですか?…今、バインドを解くです」

空中に張り付けにされていた彼を引き摺り下ろす。彼は安堵の溜め息を吐く

念話が繋がる。…ぅぅ、レリック・エネルギーを疑似魔力に変換するのむつかしいです

『すまねぇ、助かった。この恩は忘れねぇ』

「出来れば今返してください。そのロストロギアでいいので」

『あ?これか?…コレ、対象が1人しか選べねぇポンコツだぞ?』

不思議そうな顔をする犯罪者。わたしはそれに笑いかける

「いいのですよ、わたしはそれが欲しくて貴方を助けたのですから」

『変わってんな。まぁいいや。何かあったらKL25468HU4254698で連絡くれ。俺は犯罪者だが、受けた恩は忘れねぇぞ。変わった格好の嬢ちゃん』

そう言い、ナイトメアを残して彼は去っていく。…いや、わたし男…まぁいいか。そんなことより…

「むぅ…」

この人はどうしましょう…?

浅く小さく呼吸するオレンジ頭の青年。あと5分も放っておけば死んでしまうでしょうし…

「…仕方ない、しばらぐ行方不明゙になってもらいますか」

見捨てるのは余りにも目覚めが悪い。…しかもさっきから走馬灯でも見てるのか、女の名前を呼んでます。恋人ですかね?「ティア」さんって

「よいしょ…と」

見た目にそぐわないパワー、とでも言うのでしょうか。戦闘機人として当然ですが…まぁ、端から見たら異様な光景ですよね

10代前半の少年が、自分より明らかに大きな20代前半の青年を肩に担いで歩く、というのは

わたしは、知らなかった

後々、この軽い気持ちで行っだ人助げが

悲劇を引き起こすことなんて

考えすらも、しなかったのです




―――
(作者)


オレンジ頭の青年(笑)生存ルート

stsでやりたかったことの1つが、ランスターvsランスターだから

全てを撃ち抜く弾丸vs全てを撃ち抜く弾丸

…ってかやばいなぁ

このまま予定通りに進むと、スカさんチームが無双する

六課の戦力とか余裕で超える

どこかで修正しなきゃなぁ…


以下感想返し


・メガ姉

ツンデレかな?かな?

一応きれいなメガ姉ルートもあった

だが需要がなさそうなのでこっちにした


・プロト

ちょっと持ち直したようデス

だがグレイランドがいないからネタが使えん

もっとボケろー

鬱期とか早く終われー


…次回はめいいっぱいまで書くことになりそうなので多分感想返しできません

下書きの段階で9998バイト…

ってかこのままだとチンクじゃなくてルールーがメインヒロインになりそうじゃね?と書いてて思った



[16022] 不屈の心と試作品 協力/尽力
Name: 人春◆45d3e50a ID:ec8f6a96
Date: 2010/04/20 12:23
不屈の心と試作品
協力/尽力





side・ティーダ


ティーダ・ランスターが目覚めた時、視界に飛び込んできたのは鮮烈なまでの薄紫色だった

思わず動きを止める。すると薄紫色が動き、真紅の瞳と視線が混じり合う

「起きた」

「は、はい。起きました」

自分でも訳が分からないが、敬語になってしまう。まだ幼稚園児くらいの小さな少女相手に何をやってるんだ、と思わなくは無い

「…おにぃちゃん、呼んでくる」

ぴょん、と見た目以上に身軽らしい彼女は自分が寝かされていたベッドから飛び降り、てとてとと小さな足音を立てて行ってしまう

ここはどこ?今、何時だ?そもそも僕はなんでこんなところにいる?いや、僕は一体何を――

「っ、しまった!」

思い出す、次元犯罪者の追跡中だったんだ!そこで次元犯罪者から正体不明の攻撃を受けて――

「そうだ!ティアは!?」

そう、そうだ!

ティアが撃たれたんだ!いや、僕が撃った!どこからともなく次元犯罪者が連れてきたティアが盾にされて――僕の魔力弾が命中した!

「僕か、僕がティアを…!?」

吐き気が込み上げてくる。ベッドからずり落ち、床に投げ出される。冷たい床の感触が、奇妙なほどに遠く感じる

「――ご心配なく。それは幻術ですから」

僕の頭を暖かくも、冷たい柔らかさが包み込んだ


side out



錯乱した彼の頭を抱き締める。心音を聞かせながら、ゆっくりとオレンジ色の髪をかき混ぜる。ルーテシアがぐずったり、魔力を暴走させそうになった時によくやる行動

悔しいが、これは落ち着く。よくやってもらったわたしだからこそよく分かる

「ちょ、なっ!?」

動揺し、狼狽する青年…ティーダ・ランスターの頭を撫でながら、苦いものを飲み下す

彼をドクターが廃棄した研究所の1つに連れ込んで、治療してから1月近くが経過している

いつまで経っても彼の捜索が始まらないのを不審に思い、調べてみたところ…

彼は、死亡扱いになっていた

死亡届けを出したのは、わたしがあの時、一生後遺症が残るように傷付けた青年――フュリエ・イリツァーノ執務官

自分がこんなになるほどの犯罪者と交戦し、生き残っている訳がない。遺体がどうなったのかは分からないが、きっと次元犯罪者が持ち去ったのだろう

とは、今や一生寝たきり生活が確定しているフュリエ執務官の弁だ

本来ならば彼のミスショットのせいで死亡していたかもしれないというのに、イイ気なものである

…それはそれとして、と

「あ、あの!もう大丈夫だから!」

今にも暴れだしそうなティーダを解放する。顔が真っ赤になっている。酸欠にでもなったんですかね?

「…そう、ですか。申し遅れました。わたしはナンバーズ・プロトです」

「は、はぁ。僕はティーダ・ランスター一等陸士。管理局の」

「知ってますから、結構です。そんなことより説明しなければならないことがあるので、付いてきてください」

彼の体にもうなんの障害も残っていないことは理解しているので、強引に立たせて、手を引っ張って歩き出す

「おにぃちゃん、私も」

「ん、どぞ」

ルーテシアの伸ばす手を握り返す。僅かに口元を綻ばせるルーテシアに表情を緩ませながら向かう先は…モニター室

「こ、ここは…」

きょろきょろ周りを見回すティーダさん。年上の割には子供くさい人なのです

コンソールを操作し、モニターに映す

『やぁ、はじめましてかな?ティーダ・ランスターくん』

「広域次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティ!?」

驚愕するティーダさん。慌てて手を腰に伸ばして――デバイスは回収してないのですよ

『ははは、そう警戒しなくても構わないよ。…そこにいるプロトが君と敵対しない限り、私は君に手出しはしない』

「何を…!?」

デバイスが無いことに驚きつつも、わたしとルーテシアから距離を取る。…ここまで劇的に態度を変えられると少し傷付きます

「おにぃちゃん、元気出して」

「ありがとですよー、ルーテシアー」

抱き上げて頭を撫でる。「ん…」と気持ち良さそうに目を細めるルーテシア

「…で、次元犯罪者が僕に何の用だ?僕は下っぱだから人質にしても意味は無いぞ?」

激しく悲しい事を言いますね貴方は

『そんなことに興味はないさ。私とて、ただプロトに呼び出されただけだからね』

「なに…?」

ティーダはようやくわたしに視線を戻す。良かった、まずは話を聞いて貰えないことには始まりませんから

「単刀直入に言います。ジェイル、わたしは彼にわたしの仲間になってほしいです」

「なっ!?」

『ほぅ…』

驚愕するティーダ、感心したように吐息を漏らすドクター

「ば、馬鹿を言うな!僕は管理局員だ!犯罪者の仲間になんて…!」

わたしを…いえ、わたしの向こうにいるジェイルを睨みながら言うティーダ。わたしはそれに内心で悲しみながら

「…判断は、これらを見てから言ってほしいです」

コンソールを更に操作。映すのはティーダ・ランスターの葬式

「なっ!?ぼ、僕は生きている!」

「社会的には殺されました」

憤慨するティーダ。わたしはフュリエ執務官の語った内容と共に、それを流していく

愕然とするティーダ。だが、葬式の映像で表情を変える

モニターの中では、オレンジ色の髪の少女が泣いていた

「ティア…」

それを見て、ぽつりと呟くティーダ。…恋人かと思っていましたが…

「…妹さんですか?」

こくり、と頷くティーダ。その目には、悲壮が溢れている

画面の中では、彼の上司と思われる人達が彼に…いや、彼の妹に向かって、侮蔑の言葉を吐く

「は、はは…冗談、キツイぜ…」

目元を押さえ、力無く笑い、その場に座り込むティーダ

「…どうせ死ぬなら逮捕してから死ね…ですか…」

「…僕が言われるならともかく、これをティアに言うのかよ…」

項垂れるティーダにプロトは続ける

「管理局は今、腐ってます」

「…耳が痛いね」

苦笑いを浮かべるティーダ。わたしはあえてそれを無視し、管理局の不正、闇、違法実験、そして現在の最高評議会の姿を映していく

「…」

既に言葉もないティーダ。わたしは腕の中のルーテシアの小さな身体を抱き締める

「…ルーテシアは、管理局によって半強制的に誘拐、改造されました。改造したのはスカリエッティですし、それを庇うつもりはありません。わたしたちは正真正銘の犯罪者です」

息を呑むティーダ。胸の中のルーテシアもまた、心配そうにわたしを見上げる

わたしは違法実験こそしてませんが、何人も殺している。それでなくとも、傷害だって十分犯罪です

だけど、こんなところで止まることは許されないから

「管理局さえ潰せれば、罪は償います。だから今は、黙って力を貸してくれませんか?ティーダ・ランスター」

ティーダは、しばらくわたしをじっと見て…ドクターを見て、ルーテシアを見て…

首を、小さく横に振る

「…すまん、少し…考える時間をくれ」

ティーダの辛そうな表情。わたしは頷き、無言でモニター室を出る。ドクターも珍しく気を利かせたのか、通信を切っていた

「ままならないモノですねぇ」

溜め息を吐く。すると、ルーテシアがわたしの頬をぺちりと叩いた

「おにぃちゃん、下ろして」

「?、どうぞ」

ルーテシアを下ろして、わたしは頭を掻きながら自室を目指す

今のティーダに管理局に引き渡したくなんてなかった

このままだと、消されてしまうのが理解出来たから

彼の正義感は、今の管理局にとって毒だ。フュリエ執務官のような人間に増援を頼んだのも、きっとそういう思惑あってのことだろう

出来れば、死んでほしくはない

ティーダのような、優しい人間には


side ティーダ

今まで信じて働いてきた管理局。その真実を知って、頭が真っ白になった

犯罪者の仲間になれと言われて、迷っている僕がいることにショックだった

今までの僕ならば、即答で断っていたはずだ。デバイスさえあれば…いや、例えデバイスが無くとも、彼――彼、だよな?お兄ちゃんと呼ばれていたし――の身柄を確保しようとなんとか努力していたはずだ

でも、どうすればいいのか分からない

管理局の正義に従うならば、彼を捕らえるべきだ

けれど僕…【ティーダ・ランスター】の正義に従うのなら…

従うのなら、管理局の悪を、闇を世界に見せるべきだ

だが、その後どうなる?悪を捕まえるべき管理局が悪だと言うのなら、僕はどうすればいいんだ?

「ねぇ」

いきなり声をかけられ、飛び退く。振り返れば、小さな少女。…ルーテシア、という名前だったはずだ

「…教えてほしい?」

端的な言葉。意味も分からず首を傾げる。ルーテシアは僕の様子に構わず言の葉を紡ぐ

「…世界には、優しい人がいるんだって」

やはり意味が分からない。…いや、幼稚園児くらいの少女にまともな話を期待していた自分の方がおかしいのだ、と内心で嘆息する

「…87管理外世界には、綺麗な花畑があって、1196管理外世界には気持ちいい温泉があって、24管理外世界の海はびっくりするほど澄んでる…」

でも、と彼女は言葉を紡ぐ

「私は、そんなの見たことない」

…息を、呑む

さっきの、プロトの言葉を思い出す

彼女は人造魔導師。しかも赤ん坊の頃に改造された

それならば…そんな、当たり前のことすら知らなくてもおかしくない。むしろ、知っているはずがない

「…おにぃちゃんが、おかあさんと、ゼストと襲ったせいで、私は、改造されたんだって」

「なっ!?」

どんなプロセスがあったのかは知らないが、ならば、何故彼は、彼女はあんな風に接しあえる!?

「…でも」

ルーテシアは、小さく唇の端を持ち上げる。それが控えめな笑みだと気付くのに、少し時間がかかった

「おにぃちゃんは、私に【優しい世界】を見せてくれるんだって」

彼女は、笑みを浮かべ、恋する乙女のような表情で兄を語る

「管理局さえいなければ、私達人造魔導師でも光が当たる世界に生きられる。おかあさんとおにぃちゃんとゼストやナンバーズ、ドクターと一緒に、幸せに生活出来るって」

ぎゅっ、と小さな手が、拳を作る

「だから私は、管理局を潰す。そのために、がんばる。強くなる。幸せになりたいから」

…それは、犯罪だ

やろうとしていることは、ただのテロだ

でも、それでも

僕には、幸せになりたいという少女の思いを否定することは出来ない

「ティーダは?」

「…ぇ?」

深紅の瞳が、僕を映す

「ティーダは、何のために戦うの?」

「ぼ、くは…」

何のために?

――ティアの、ためだった

ティアが傷つかないように、ティアが悲しむようなことがないように、そんな世界を作る礎になりたかった

でも、その実態は――

管理局の闇を知ってしまった以上、僕はもう一度あの組織に入ることは出来ない

それに僕の葬式で見た、ティアの目

あの目は、何も諦めていなかった。悲しみを乗り越えて、何かを決意したような目だった

なら、それなら僕は――

「――協力、しよう」

『本当かね?』

唐突に開かれるモニター。…こいつ覗いてやがった。やっぱり犯罪者だ

「その代わり、条件がある」

『ふむ、言ってみたまえ』

ならば、僕がすべきことは1つ

「今の管理局は潰す。そして、新しい、本当の意味で゙正義゙を行う組織を作る。それに協力しろ」

スカリエッティは、僕ににやりと笑う

――この時、初めてジェイル・スカリエッティは【ティーダ・ランスター】という男を見た

『――いいだろう。歓迎するよ、ティーダ』

「…あと僕はお前が嫌いだ」

…待っててくれ、ティア

ティアが輝ける舞台は、僕が作る

それが、死んだ人間として…兄として、お前に出来る全てだ

…この時の僕は、想像すらしなかった

その世界よりも、正義よりも大切に思うティアが、僕と銃口を交わすことになるなんて


―――
(作者)

ティーダはstsで言うヴァイスな立ち位置

がんばれ



[16022] 不屈の心と試作品 ぶっちゃけ規模が違いすぎる
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/06/11 18:19

「はぁっ!」

ティーダはライフル型デバイス【ラインファントム】の銃口からオレンジ色の魔力刃を発生させながら、ゼストに向けて走り、鋭い突きを繰り出す。長い銃身の割には小さな魔力刃は、それが槍であることを示すかのようだ

「ふんっ!」

ゼストはその鋭い切っ先を己の槍でいなし、ティーダの懐に潜り込むと、その豪腕を水月に叩き込む。通常であればバリアジャケットに吸収されてしまうだろう一撃。けれど、ティーダは真上に吹っ飛んだ

「ぐ…クロスファイア!」

口の端から血を溢しながら、空中でカートリッジロード。二発の薬莢が排出され、ラインファントムがその銃口に5つの魔力弾を産む

「む…」

僅かに眉を潜めるゼスト。ティーダの魔力弾は訓練弾でも当たると痛い。もしかしたら射撃魔法はSランクくらいあるかもしれない

で、も

「訓練でカートリッジ使ってどーすんですか」

プロト・インパルスで接近。宙に浮かぶティーダの足を掴み、地面に叩き付けた

「ふぎゃ!?」

潰れたカエルみたいな悲鳴を上げるティーダに苦笑い。すぐさま立ち上がってもう抗議してくるティーダ

「無茶苦茶言うな!僕なんかがSランクオーバーの騎士ゼストに勝つにはカートリッジ使うしかないだろ!?」

「訓練なんだから別に勝利に拘る必要はないでしょうに…」

呆れた視線で見てやれば、ティーダはぐ、と言葉を詰まらせる

「…そう言ってやるな。ティーダとて、負けたくないから使ってしまっただけだろう」

ゼストもまた、口に小さく笑みを浮かべながら言う。…どうもゼストはティーダに甘い。息子か出来の悪い弟のように見ている気がするです

「ティーダ。先程の槍捌き、中々だったぞ。精進したな」

「っ!はい!騎士ゼストのご指導のお陰です!」

キラキラ目を輝かせるティーダ。…ちょっと羨ましい。ティーダが、ゼストに稽古を付けて貰うようになって早1年。才能もあり、努力も惜しまないティーダは、ミッド式でありながら並の騎士なら相手にならない程の槍術をモノにしていた。最近、純粋体術だけの模擬戦だとひやりとすることも多い。さらに射撃魔法のセンスも上々。…ぶっちゃけ良い拾い物でした

…ティーダは前衛もイケる中距離の射撃型。ゼストは完全な前衛。わたしはどこでもイケますし。さらに完全な後衛のルーテシア

大分パーティーとしては安定してきましたし…

「…そろそろいいかもしれませんね」

「ん?何がだ?」

首を傾げるティーダ。わたしはそれにニヤリと笑みで返す

「ルーテシアの召喚蟲、探しに行きましょう」

もちろん、ポ○モン方式で






不屈の心と試作品
ぶっちゃけ規模が違いすぎる







という訳でやってきたのは第09管理外世界。まだまだ弱肉強食な世界で、大型の魔獣が数多く存在する世界です

けれどそれは対した問題ではなく、それよりも危険なのはこの世界には、他の世界では大型の魔獣に分類される魔獣を補食する超大型の魔蟲が存在することです

「ルーテシア、どうですか?」

「ん…」

ルーテシアは目を閉じ、インゼクト――小型の召喚蟲で、情報収集などに使われる集団で存在する蟲です――から送られてくる情報に集中している

「っかし驚いたなぁ…。まさかルーちゃんが召喚師だったなんて…」

ぽりぽりと頭を掻くティーダ。まぁ、教えてませんでしたし、ルーテシアの修行は地味でしたしね

それには、理由があって、話すと無駄に長いのですが…。まぁ、簡単に説明しましょう

ルーテシアには既に2種類の召喚蟲がいる

一体は黒い暗殺者、ガリュー。元はメガーヌさんの召喚蟲でしたが、ルーテシアと再契約した(させた)人型の蟲で、忠誠心が高く、白兵戦が得意です。
これが理由の1つで、彼には常にルーテシアの傍で警護をして貰っているため、ルーテシアは体術を覚える必要がなかった

2体目はインゼクト。先程言った通りの存在なので、ルーテシアは彼らから送られてくる情報を処理出来るようになって貰わなければいけなかった

そのためルーテシアの修行は精神力の強化、術式の構築速度の強化、魔力の効率運用、高速思考、並行処理が主になっていたため、ただボーッとしているように見えていたのだ

まぁ、ルーテシアの見た目ならおかしくはないし、むしろ微笑ましかったのでティーダが気付かなくても無理はなかったのですが…まぁ余談

「ちなみにその修行の結果、召喚師の実力をランクに当てれば…SSランクくらい?」

「げっ!?」

表情を引き吊らせるティーダ。しかしゼストが追い討ちをかける

「いや、SS+は行くだろう」

「…あの、ルーちゃんて…」

「「今年で5歳」」

しばらく無言

そして男3人。同時に溜め息を吐く。末恐ろしいとはまさにこのことなのです

「…見つけた」

おっ、良さそうなのが見つかったようですね

「どの辺ですか?」

「…向かってくる」

ほぅ、それはそれは

「俺が前、プロトはルーテシアの傍に、ティーダは少し離れて付いてこい」

「「アイ・サー」」

ゼストの指示の通りに動く

「…一応言っておきますが、2人ともフルドライブ使っちゃダメですよ」

すると

「…分かっているさ」

と微苦笑を浮かべるゼスト

「心配してくれてるのか?プロトも可愛いところあるじゃないか」

と逆にわたしをからかうティーダ。…お前は使え。使って反動で苦しめです。ってか男に可愛いとか言って気持ち悪くならないのですかこの天然め


「…来た」

ルーテシアの呟きと共に、森が割れる。現れたのは、巨大な猪。…猪?蟲じゃないのですか?それともこう見えて蟲とか?

「行くですよ!適度にボコって捕獲で――【ぐちゃ】――す?」

目の前で、巨大な猪が、潰されたですよ?

猪を潰した大樹のような巨大な柱は、潰した猪の骸をゆっくりと持ち上げる

「…おにぃちゃん」

ルーテシアがくいくい、とわたしのコートの裾を引っ張った

「…あっち」

既に嫌な予感全開のわたしは、額と言わず全身に嫌な汗をかきながら振り向く

「…あの子が、この星で一番強い」

レベル上げは堅実に!いきなり最強に挑むのはダメですぅー!

巨大ロボを思わせる、純白の外殻を持つ人型の蟲がそこにいた

「…あの子と契約出来れば、この星の子のほとんどは力を貸してくれる」

…でしょうねー。間違いなく最強ですもん。どっかの世界なら神様とか言われてもおかしくないサイズですもん

「と、とにかく行くぞ!」

「マジで!?」

ゼストの言葉に狼狽えるティーダ。わたしも動揺したのは言うまでもないです

「ベルカの騎士に負けは許されん!」

「「ベルカの騎士めんどくさっ!」」

でも行くしか無いなら行くのです!






―――



…あれ?



3日くらい…


記憶が飛んでるですよ?





―――

「クロスファイア…シュート…!」

額からっていうかむしろ頭全体から血を流しながらティーダが放つクロスファイア。それはむしろ緩やかな軌跡を描いて蟲の王へと突き刺さり、体勢を崩す

「喰らえ!虎竜…瞬閃!」

カートリッジを3発ロード。魔力がバチバチと弾ける槍を振りかぶり――巨大な蟲の王の額に向けて振り降ろす!


―――〜〜〜〜〜〜っっ!!


声にならない悲鳴が大気を揺らし、脳へ痛みとして届ける。それに耐えながら、ずっと温存していたそれを解き放つ

「ISロード。プロト・バレル」

右腕の先に、光球が生まれる。それはどんどん大きさを増し、やがてわたしよりも巨大なテンプレートへと変わる

「チャージ・ショットォ!」

灰色の光線が一直線に伸びる。…なのはのディバインバスター以上の威力はありますね。SLBには全然届きませんが

――――…〜…〜…〜〜…!!??

ボロボロの体にコレは流石にダメージがでかかったらしく、どぅん…と重苦しい地響きを立てて膝を付く蟲の王

その足下に、ルーテシアが近付いていく

「い、今更…なんだけど、さ…」

息も絶え絶えなティーダが、その光景を見ながら言う

「る、ルーちゃんに…ブーストしてもらえば、楽だったん、じゃないか…?」

「…いや、それだと…契約後の、ルーテシアが危険だ…」

わたしは喋る余裕なんてないので、ぐったりと倒れさせて貰ってます。息をするのも辛いですー

召喚契約交渉中のルーテシアを指差しながら、ゼストは続ける

「…あそこで襲われたら、どうなる?」

「あー…」

納得いったように声を漏らすティーダ

「…まぁ、それよりおっきぃ理由として、ルーテシアに徹夜させるわけにはいきませんから」

子供はしっかり寝るモノです。この三日間、近くに隔離結界張って快適に過ごして貰っていましたとも

「一気に家庭の問題チックになったなオイ」

じと目で見てくるティーダはスルー

声無き交渉を続けていたルーテシアが、くるりと振り返った

「…ぶい」

…終わったのですかね?成功したようですし

「白天王。この子の名前。あと、この子の従僕も力を貸してくれるって」

ルーテシアが召喚陣を開けば、金色のカブトムシが中から現れる。…でかっ

「地雷王。この子達の名前。一杯いるから、いっぱい使っていいって」

それはそれは

しかしルーテシアのスキルには驚かされる。地雷王でしたか?こいつは一体だけでもAランクはあるでしょうし、蟲の王…じゃなくて白天王は完全にSSSランクの超巨大蟲。それを完全に制御出来るのですか

「…あと、白天王がね」

ぐったりと膝を付き、複数の複眼でわたしたちを見ている白天王。…一体なんでしょう?

「…いつか勝つ。だって」



…負けず嫌い?

思わずティーダ、ゼストと顔を見合わせる

そして

「「勘弁してください」」

「…むぅ」

土下座せんばかりの勢いで謝った

もっかい白天王と戦うなんかごめんですー!今度こそ死ぬですよ!?

「大丈夫、おにぃちゃんたちなら負けない」

「その信頼が恐いですー!」

お願いだからルーテシア、ハードル上げないでくれですぅー!




―――
(作者)



ただいまっ!


忙しくて更新してませんでしたー

所詮言い訳デスが

とりあえずこっからは2週間に一回は最低でも更新します


心配してくださった沙羅さま、ぷるさま。他更新を楽しみにしていただいてた読者さまがたに深い感謝を






…ちなみにゼストの技は適当

虎竜→近接

竜虎→中、遠距離

瞬閃→強撃。単発

連閃→中威力。連撃

これの組み合わせのみです


ティーダのデバイス【ラインファントム】

実はプロトの手作り。材料提供はスカリん

名前はクロスミラージュと似てるようで似てない感じに

モード変換はなし。ライフル型で銃口に槍のように魔力刃を形成できる槍銃型デバイス

人格はないが何気に高性能

ティーダ、何気にプロト以下ナンバーズのフラグを立てる男


ってか多分また次回からほのぼのメインになるなぁ…

ダーク系の素質は拙者にはないでござる

でもSTSはそれなりに暗いなぁ…


では、また次回



[16022] 不屈の心と試作品 平和で平素で優しい日
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/06/15 18:14

今日は久々にチンクとチームです

ここ最近、ティーダが本当に強くなってきたので(それでもまだルーテシアの方が強いのは内緒ですが)、ルーテシアのお守りを任せられるようになり、ゼストとわたしは個人で動けるようになりました

ゼストは管理局の違法研究所潰し、わたしはレリック集めです

「その…久々だな、プロト。元気にしていたか?」

ちらちらとわたしの顔を伺うように見るチンク。…そう言えば、なんだかんだで会うのは半年ぶりくらいでしょうか?

「ええ。チンクもお変わりないようですね」

「失礼なことを言うな!これでも成長している!稼働開始時より0、2mm身長伸びたしな!誰が永遠の幼児体型だ!」

落ち着けですよ自称姉





不屈の心と試作品
平和で平素で優しい日





「すまん取り乱した」

ほんとにですね。キャラが完全に壊れてるですよー?

…というか0、2mmって誤差の範囲…いえ、何も言わないでおくです。身長の伸びない悲しみは知ってるですし

「まぁアレです。時間は有限。とっとと気を取り直してがんがん行きましょう」

「…そうだな。ふふっ、プロトは優しいな」

…何か無駄に好感度上がってません?なんかやたらチンクに可愛がられてるんですけど

んー…?わたし何かしましたかねー?

ってか背伸びしてまで頭撫でるなです




side チンク


ここ数年で30センチ近く身長が伸びた弟の頭を撫でる。少し、妬ましい

だが、それ以上に嬉しかった

触れれば壊れてしまいそうな、そんな儚く、脆い存在だったプロトが、ここまで明るくなってくれたことが

今にも息絶えそうな程に弱々しく、けれど戦意だけは失わない。そんな傷付いた獣のようだったプロトが、今は、楽しそうに笑っている

…ドクターに頼み込んで、プロトの世話係になったのは間違いではなかった、と思う

同時に、結構万能なプロトに世話されてる自分に情けなくも思うが

…男は家事出来ないものなのではないのか?ゼストもティーダも出来ないぞ?何故プロトはできるんだ?

いかん、思考が脱線した

プロトは、いつも悲しそうな、寂しそうな顔をしていた

私は戦闘機人だが、それでも家族から引き離される恐怖は分かる。ドクターや姉妹たちを失うくらいならば、死を選ぶ…かもしれない。引き離されずにすむよう、その原因の排除にかかる可能性の方が高いが

だから、思ったのだ

私が゙姉゙として、プロトの側にいてやらねば、と

私のお陰でプロトが元気になった、等と自惚れるつもりはない

だが、プロトは今の表情の方が良い

悲しそうな顔よりも、輝いて見える

拗ねたような顔で私を見るプロトを見つめれば、機械で出来た身体が少しだけ、熱を持つ

「…背伸びしてまで撫でんな、です」

「…してない」

無理などしてない。足がぷるぷる震えてなどいない

プロトははぁ、と大きな溜め息を吐くと、手を差し出してくる

「ほら、行くですよ」

「ああ、行くか」

差し出されて手を強く握る。胸の奥のレリックに火が灯る。テンプレートが展開され、無色の光が私たちを照らす

「「ISリンク…」」

見えないはずの右目に視界が現れる。プロトとの視覚リンク。全身に熱が回り、力が溢れてくる

「「ランブルデトネイター!」」

トリガー・ワードを叫びながら走る。緑溢れる管理世界、その樹海の奥深くに存在する、聖王時代の遺跡。そこに眠るレリックの確保。それが今回の任務だ

遺跡内には未だに大量のトラップが残っており、鉄屑どもの侵入を防ぐのだ。ガーディアンもまだ生きているらしく、トラップを潜り抜けた鉄屑もガーディアンに破壊される。更には遺跡内は高濃度のAMFが展開されており、転移魔法を発動することもできないのだ

だからこその正面突破。プロトと私が組めば、ほとんどの困難は意味を無くす

「行きます」

「了解だ」

一言。これで足りる

一歩遺跡の中に進んだだけで壁から飛び出してくる、巨大な石槍。それが先行するプロトに突き刺さるより早く、スティンガーを投げ付けて爆破。プロトはそれに見向きもしない

プロトが攻撃、私が防御兼迎撃。たったそれだけのコンビネーション

ただ通常と違うのは、プロトは攻撃…というより、突撃以外はなにもしない

一撃貰ったら死ぬような戦いの最中だろうが、私がその攻撃を撃ち落とすと信じ、ただただ前に進む無謀な突進

…だからこそ、少しだけ嬉しい

私としか、プロトはコンビネーションを使わない

トーレはおろか、ゼストとも、ティーダともしない

私だけだ

特別扱いされているようで…胸が暖かくなる

弟に信頼されている実感が沸く

やる気が、出る

そのまま狭い通路をひたすらに直進していく。…やがて、少し広い空間に出る。丸い部屋で、私たちが入ってきた道以外に進む道は無い。…軽く見た所、罠も無いようだ

「…索敵します」

「分かった」

プロトがダイバーズ・ドリルを取り出すのを見て、プロトを守るように前に出る。…とは言っても、敵の気配は感じない。それにレリックの反応はある。ならば、ここから先に行く道は間違いなくある

「ISロー…する必要もなさそうですね」

「む?」

はぁ、と大きな溜め息を吐くプロトに疑問を覚え、振り返る。プロトは、無言で真上を指差した

私は天井を見上げ…絶句した

「…」

なんというか…触手?の大量に生えた黒い目玉?のような魔法生物。恐らくこの遺跡のガーディアン。だが、なんとも言えない醜悪な外見。…特に触手が男性の性器に酷似している辺りに激しく嫌悪感を覚える

触手、うねうねと動く、触手。アレに酷似した、醜悪な触手

絶句するのは当然だ

そして、その触手から…緑色の液体が、ぽたりと落ちた

私の頬に

「ぅ、うあああああっ!!」

「ちょ、チンク!?」

プロトが何か言ってるがキコエナイ

スティンガーを3本指に挟み、巨大な眼球に向けて投擲。狙い違わずその瞳に突き刺さったナイフを、間髪入れずに爆破。轟音と共に遺跡は揺れ、ガーディアンの苦しげな呻き声が響く

「殺った!」

ナイスだ私!よくやった私!

「アホですかぁぁぁぁ!?遺跡が崩れたらどーするです!?」

…ぁ

案の定、ゴゴゴゴ…と腹に響く重低音と共に遺跡が揺れる。というかよく考えたら、私のISって遺跡みたいな密閉空間で使うのって危険じゃないだろうか?

がごん

と音がして

私たちが立っていた床が、抜けた

「「…は?」」

ぽかん、とした表情のプロトと目があった

恐らく私と同じことを考えているのだろう

ナニコレ?どういう展開?

「「うあああああぁぁぁぁ……」」

私たちは仲良く、瓦礫と共に闇に向かって落ちていった






「…っ」

気を失っていたらしい。戦闘機人である私が気を失うとは…どれだけの高所から落下したのだろう?肉体へのダメージは…とそこまで考えて、自分の身体が揺れている事に気付いた

「…ようやくお目覚めですか?」

呆れたような声。意識が急速に覚醒する。…視界一杯に広がる灰色の髪、冷たくも暖かく、柔らかくも頼もしい背中。…背負われている?

「す、すまん!もう目が覚めた、下ろして…」

「いえ。レリックももう確保しましたし、チンクも損傷しているようですから、このまま運ぶです」

損傷?…肉体動作チェック。僅かだが、肉体フレーム…右足へのダメージを確認。高所からの落下によるものだと推測。…衝撃への対策が必要だな。ドクターに報告しよう

…じゃなくて!

「いや!その…重いだろう!?」

「いえ?」

不思議そうに首を傾げるプロトに二の句が告げなくなる

いやいやいや重くないということはないだろう私は戦闘機人だし?普通の少女と比べれば絶対に確実に重いわけでいやそれよりもなんだ私今日良いところ全然ないじゃないかいかんこのままでは姉としての威厳がいや威厳なんてあっただろうかいやあるはずだあってくれしかしプロトの背中は暖かいし居心地がいいし思わず頬擦りしたくなるって馬鹿か私は正気に戻れこのままではプロトに呆れられ

「――チンクは」

「っなんだ!?」

頭の悪い思考を延々続けていた頭を切り替える。耳元で大声を出されたせいか、少しだけプロトは顔を歪めて…薄く、笑う

「意外と可愛いところあるんですね」

「――――くっ!」

顔が真紅に染まったのが分かる。熱くなった頭を振り振り、ぽかりとプロトの頭を叩く

「まさかあんなキモいの相手に悲鳴を上げて取り乱すなんて…。戦闘機人が聞いて呆れるです」

くすくす笑いながら紡がれる言葉に、羞恥に頭がオーバーヒートしそうになる

「し、仕方ないだろう!?わ、私とて女性体なのだ!あんな醜悪なモノを見たら取り乱す!」

…昔ならばともかく、今は

と、その先は飲み込む。プロトはくすくす笑いながら、私の繰り出す拳を甘んじて受ける

…そして、プロトはぽつりと、私にもギリギリ聞こえるか聞こえないかくらいの音量で呟きを漏らす

「…もっと貴女が機械のようだったら…わたしも…」

…私は、あえて何も言わずにその頭を叩いた






side out





普通の少女のように笑い

普通の少女のように心配し

普通の少女のように傷付く

姉妹のことが大好きで

いつの間にかわたしの姉のようになっていて

気が付けば、傍にいてくれて

辛いときは、抱き締めてくれて

泣きたいときは、ただ傍にいてくれて

痛くて痛くてどうしようもないとき、何も言わないでくれた

守りたい、と思った

あの娘たちと同じように

少しだけ、わたしはわたしを取り戻した

頑張ろう、と思った

彼女にも優しい世界を見せたくて

少しだけ、わたしは戦う理由を増やした


「――チンク」

「なんだ?」

クシャリ、と彼女の小さな手がわたしの髪をかき混ぜる

「貴女も…日の当たる世界に出たいですか…?」

…その言葉に、しばしの間チンクは沈黙した。ぴくり、と彼女が震え、緊張したのが分かる

だが、返答は拳だった

ぽこっ、とさっきより強い拳が頭に振る

「…私は、日陰でも構わない」

…そう、ですか

若干沈む気持ち。だが、それは彼女の言葉に浮上する

「…ドクターや、姉妹たち…あと、お前がいれば、充分だ」

くすり、と笑みが漏れた




どんな口説き文句ですか





―――
(作者)


2人とも乙女だよ…?


プロトはおーとーこー…!

なんか手遅れな気がするよ


で、質問

sts編なのですが…

なのはsideから見る本編完全リメイク



プロトsideから見るオリジナルストーリーを含めたモノ

どっちのがいいんでしょう?

ご意見待ってます



以下感想返し



・ベルカの騎士めんどくさっ!

そこから生きて帰れるからこそベルカの騎士なのです


・ポケ○ン

キャロの如く卵から育てるとかも考えたが虫の卵を抱える幼女ってどうよ?
ポケ○ンってかテ○ルズのク○ースさんとかし○なじゃね?と書いてから思ったのは内緒


・ほのぼの

ほのぼのってか甘い…のかな?今回は


・ティーダ魔改造

彼にはストライカー級になってもらわんと
じゃないとランスターvsランスターが…!






!考察してくださった霧丸さまへ!

非常に分かりやすい説明ありがとうございました
筆者はなんかこんな感じーっとあんまり深く考えずに書いておりますので、ここまで深く考えて頂けたことがびっくりでドキドキです。そしてちょっぴりワクワク

プロト強化案ありがとうございます
問題はプロトが意外とめんどくさがりなとこですな。…ぜってー修行とかしねーこいつ。

ただプロトのロボット好きの影響をナンバーズ&ドクターが受けているのは間違いないです(ニヤソ)



[16022] 不屈の心と試作品 入院なのは / ファミリープレイ ※誤字修正
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/07/06 22:33
番外編

入院なのは



sideユーノ


どうも、ユーノ・スクライアです

久々の休みが取れたので、この間の任務で謎の魔導師(笑)に襲撃されて大怪我を負ったなのはのお見舞いに来てるんだけど…

「あれー?ユーノくん、どうしたの?お仕事は?」

全身包帯だらけの痛々しい姿なのに、妙に嬉しそうななのはがハンドグリップ(握力を鍛える器具のことである)をぎっちょぎっちょやりながら迎えてくれた

「な、なのは!?何してるの!?安静にしてなきゃ!」

「うん。だから上半身からリハビリー。下半身はほとんど動かないの」

にゃはは、と苦笑するなのは。でもやっぱり嬉しそうで、強がりとか虚勢とかいうわけではないのは一目で分かる

「まぁ、歩けなくてもなのはは飛びますが」

「誰かこの人に自分の容態説明してあげてー!」

重症患者が変なこと言ってるー!

「なのは、もっと強いバネのヤツ買ってきたよ。…あれ、ユーノも来てたんだ」

と、そこに現れるフェイト。そうだ、彼女なら止めて…ってわざわざ筋トレ道具買ってきてあげてる辺り無理だ!

「ありがとーフェイトちゃん。いくらだった?」

「ううん、お金はいいよ。なのはをマッチョにするためだから」

―――――キィ…ン

僕は空気が凍る音を聞いた

「…どういう、意味かな?」

目が全く笑ってないなのはがレイジングハートを片手で弄びながら酷くぎこちない声で言う

対してフェイトは爽やかな笑みで返す

「プロトは流石に、マッチョな女の子は嫌いだと思う」

――――原因は君か!プロト!?

ってかフェイト。君意外と真っ黒だな!?バリアジャケットが真っ黒なのってそれが理由か!?

「そんなことないよ。プロトちゃんはなのはのことならどんなことでもうけいれてくれるはずだよ」

「それは有り得ないと思うな。プロトはあんなにかわいいんだよ?可愛いプロトの隣に筋肉質な女の子は似合わないと思うんだ。プロトの隣にマッチョは駄目だよ。プロトの隣にいていいのは可愛い系じゃなくて綺麗系…例えば金髪で赤目でスタイル抜群の女の子だと思うな」

…うん、まぁ確かに君は年の割にはスタイルいいとは思うけどね?

「あはは、フェイトちゃんおもしろいね。…ちょっと模擬戦しようか。全力全開で」

「うん、いいよなのは。やろうか。…今回は負けないよ。私が私でいるためにも」

「ちょっと待てぇぇええええええっっっ!!!っていうか落ち着けー!!」

怒りのせいか声に抑揚のなくなるなのはもにっこり笑いながら氷みたいな雰囲気を出すフェイトも恐すぎるから!

「プロトが生きてたんだから素直に喜ぼうよ!ね!?プロトも君たちがまたケンカしてたら悲しむと思うな!」

よし、僕にしてはナイスな説得だ!

2人も渋々デバイスをしまう。あ、危なかった…

「というか2人は親友でしょ?なのになんで…」

「「恋と友情は別」なの」

…女って

「よくあるハーレム展開って有り得ないと思うの」

「うん。女の子を馬鹿にしてるよね」

「女の子に夢を見すぎなの。女の子はそんなに心の広い存在じゃないの。好きな子は独占したいのが当たり前なの」

「…私は3年越しの恋なんだから譲ってくれてもいいのに」

「わ、私は7年近くずっとプロトちゃんが好きなんだもん!」

「…恋心だって理解したのはつい最近なくせに」

「ゔ」

…そう、そうなのだ。

なのはは、プロトとこの間再会したらしい

彼に何があったか知らないけれど、彼はなのはを墜とし…そのまま去っていった

なのはは去っていく彼の後ろ姿を激痛の中にありながらずっと追って、追って、追い続けて…

それほどまでに自分が彼のことを思っていることに気付いて…

そしてそれが恋愛感情だと気付いて…

僕は失恋したらしい

まぁ、望み薄だったし。不思議とあまりショックはないんだけどさ

まぁ、フェイトは早熟というかなんというか…プロトが姿を消すその時からずっとプロトを男性として意識していたらしいし、それが会えない間に愛に変わっていてもおかしくない、ということなのかな

まぁ、そんなことはどうでもよくて

問題は…

「ち、違うもん!元から好きだったもん!プロトちゃんとお風呂に入った時なんかハァハァしてたもん!」

「当時の歳でそれは駄目だよなのは!?」

「そ、そういうフェイトちゃんだってプロトちゃんのうなじにハァハァしてなかったといったら嘘に決まってるの!」

「それは確かにそうだけど!」

うーわー

2人のファンに聞かせてー

ちなみにこの2人、管理局では大人気の2人だ

いい意味ではその容姿と高い魔力資質

悪い意味では犯罪者として

2人とも無駄に世界間転移しまくったり管理局員とマジケンカしてたりしてたからなぁ…

お陰で一応今では2人とも正式に管理局員として働いてるけど、出世とは無縁らしい

なのはなんかAAAランクなのに平隊員扱いだし

フェイトは執務官資格は持ってるのにさっぱりまともに仕事させてもらえてなかったり。いつの間にか事務仕事やってることのほうが多いとか

ある意味伝説になりそうだ。勿論悪い意味で

「違うもん違うもん!たまに見せてくれた柔らかくて可愛い微笑みが一番だもん!」

「違うよ!照れて顔を赤くした所をグレイランドにからかわれて更に真っ赤になって涙目になった所が一番可愛いんだよ!」

もう既に思い出の中のプロトの一番可愛かった表情に付いて語り合ってるお馬鹿な友人たちに呆れつつ、僕はガラス越しに空を臨む

…プロト、早く帰って来てよ。君が帰って来るのを、この子達はずっと待ってるんだぞ

出来れば、この声がプロトに届くように

と僕は祈った






……決して現実逃避してたわけではない
















ファミリープレイinマッド




「…ウーノ。これは危険だ」

「そのようですね。…まさか我々がこんなにも簡単に無力化されてしまうだなんて…」

「…でも片付ける気がさぁっぱり沸かないのは何故かしらぁ?」

炬燵でまったりしてるマッド共にでっかいため息を吐きながら、それぞれの前にお茶を並べる。籠に山になったみかんに手を伸ばすクアットロ

「…しかし不味いねぇ。何もやる気が起きないよ」

たれジェイル。需要はどこにもありません

「ドクターがだらだらしてるのは平和だから良いですけどね」


「いやぁん、そんなドクターはドクターじゃありませんよぉ」

「…それはどういう意味なのか、聞きたいような聞きたくないような気分だよ…」

まったりしすぎですよあなたたち。悪の科学者と戦闘機人の名が泣くですよ?

「ドクター、空戦シムの改良点を…と、どうかしたのですか?」

そこへ現れるトーレ。わたしは彼女の疑問に苦笑しながら答える

「炬燵でまったりしてるだけなのですよ?トーレも入ってみれば分かるです」

「…ふむ。百聞は一見にしかず、というモノか」

頷き、そろそろと足を炬燵の中に入れるトーレ。その目が、くわっ、と見開かれる

「…ドクター」

ぽつり、とトーレは呟いた

「これは危け「その件はもう終わったよ」…そうですか」

若干気落ちした様子のトーレ。わたしはやっぱり苦笑しながら彼女の前にお茶を置く。…そういえば前に悪戯でリンディ茶にして出したらマジギレされたんですよね。トーレ恐い。冷静そうに見えて意外と沸点低いです

「…あらぁ?もしかしてプロトちゃんが入るところないんじゃなぁ〜い?」

ん…。今回買った炬燵はそこまで大きい物じゃありませんからねぇ。精々大人4人が入れる程度です。わたしとチンクなら一辺に2人まてめて入れるでしょうが…ま、仕方ないですね

「ご心配なく。調整も終わりましたし、わたしは帰りますから」

「そんなこと言わずに、暖まって行ったらいいじゃないですかプロトさん」

…いやウーノ。場所がないのにどうやって暖まれと?

「ああ、それなら問題ありません。どうぞ?」

…体と炬燵の間に空間を作り、あまつさえ自分の膝をぽんぽん叩いてなんのつもりですかねこの女は

「はっはっはっ、膝に乗れということですね分かりません」

ってかリアルな話恥ずかしいんですけど

「「…」」

にこにこ笑顔で膝を叩くウーノ。乾いた笑みでじりじりと距離を取るわたし

やがて、ウーノが焦れた

「トーレ」

「…はぁ。ライドインパルス」

ため息を吐きながら高速接近してきたトーレが、わたしが抵抗するより早くわたしの襟首を引っ掴み、ウーノに向けてぽいっと投げる。ウーノはがしっとわたしをキャッチし、流れるような動作で膝の上にわたしを乗せる

この間、約0.2秒

「…帰りたい」

しくしくすんすん顔を覆って涙を流すわたし。だがウーノは嬉しそうにわたしの頭を撫でる。気持ちいいのが悔しい

「ってかウーノ恥ずかしくないのですか?普通に後頭部に胸が当たってるんですけど。無駄にでかい乳が」

「いいえ別に?あと無駄ではありません。わたしの胸には愛と勇気が詰まってるんです」

また古いネタを使いますねー

「それにドクターは私の胸を気に入ってくれてますから」

「「「「ぶっふぅ!!」」」」

わたしも含めてウーノ以外が一斉にお茶を吹く

口からだばだばお茶をこぼしながらクアットロがドクターに詰め寄る

「ドドドドドクターっ!?あ、あああああなたウーノお姉様になななんて破廉恥なことを…!!」

「まま待つんだクアットロ!わ、私は何もしてな…してないよね!?うんしてないよ!?」

「その言葉に嘘偽りはないなドクター?返答次第によっては我等が父と言えど…いやむしろ我等が父だからこそこの手で引導を…」

「してないと言っているだろう!?」

「そんなドクター…あの夜の言葉は嘘だったのですか…?」

「そんな傷付いた少女の顔でわたしを見ないでくれウーノっ!」

…あー、なんか思い出したです。徹夜続きでまともに思考が回ってなかったドクターがウーノにもたれ掛かっておっぱい枕で寝てたことがありましたねー。「ウーノの身体は気持ちいいね…」とか言って。わたしがポッドの中にいるのに桃色の空気出しまくるからわざと忘れるようにしてたのですが…

ウーノの柔らかい身体と炬燵のぬくぬくさに挟まれながら、まったくまったり出来ないなー。とか思いながら、わたしはでっかいため息を吐く

これって悪の組織として正しい姿なのですかねぇー、とか呟きながら




―――――
(作者)


こういうの書いてる方が会うのだよ、私は

っつかこの糞暑くなりはじめたころに炬燵ネタって…

仕方ないんだ。こないだの粗大ごみの日に炬燵が捨てられてたのを見て浮かんでしまったのだから







100ー0
でプロトsideに決まりました。
勝負にならねぇ

とりあえず今回の回は実験を含む

ちょくちょく閑話でなのはsideって感じになると思うので、一番いい形を模索中

今回みたいになのはside(本編/ほのぼの)とプロトside(100%ほのぼの)の合作…って感じになる可能性高いです





以下感想返し

・他の姉妹話
人数が多すぎる…
そしてナンバーズと絡むと裏ヒロインのルールーが…ルールーが絡むと正ヒロインのチンクが…

真・ヒロインのなのフェイの出番も…むぅ、困った

ちなみにうちの八番は女の子


・電童!
とりあえずノーヴェ無双はあるね
FAは…使い所が難しい…
だが使おう。あえて自分を追い込む。使うと宣言しよう電童ネタ


・プロト強化案

……あれやね

プロト1人で六課落とせるねこれ

ってかヴィヴィオ?ゆりかご?なにそれおいしいの?になるね

プロトはあくまで倒せるオリ主です


…けど使うと思います。かーなーりー、劣化しますが

特に遠距離系。




・ティーダ魔改造

…しぃー、しぃーっ!
だ、誰も聞いてないよね?聞かせちゃ駄目デスヨ?

べ、別に展開読まれて焦ってるわけじゃないんだからね!


・なのはの気持ち

ハッピーエンドを目指します



[16022] 不屈の心と試作品 アホですか?
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/07/06 22:35

あの日から、5年と少し

記憶に残る彼女の姿は朧気で

ただ悲哀と覚悟を持って、わたしを睨む瞳だけが残っている

そんな彼女を見て、わたしは思った




ああ、この人は―――








馬鹿なんだ





不屈の心と試作品
アホですか?





カプセル型の鉄屑達が遺跡を襲撃しているのを見ながら欠伸を噛み殺し、モニター越しにそれを興味深そうに見ている2人に捕捉をいれる

「いーですか?セイン、ディエチ。あのように魔力の持たない人間相手には鉄屑は強いです。それに魔導師ランクがA以下の魔導師には基本的に無敵です」

『『うんうん』』

大人しく講義を受ける妹達。つい先日ロールアウトしたばかりの娘たちなので、本当なら実戦経験を積ませたかったのですが、下手に戦わせて壊れたらチンクに殺されます。なので離れたところから座学です

「ですが、やり方によってはランクがBくらいの魔導師でも倒せます」

『はい!にーさん質問!』

元気よく手を上げるセイン

『AMFがある鉄屑達で囲めば大抵の魔導師なら楽勝だと思います!』

ん、確かに

「ですね、普通はそうです。しかしゼストのようにアームドデバイスを使い、力任せにぶっ壊すような騎士や、AMFの外から純粋な魔力ではない攻撃…例えば雷や焔を生み出したりする攻撃を使えば楽に壊せてしまうです。更に言うなら、ガジェットの周りの崖や大岩、建物の中なら建物ごと壊せば瓦礫や石片で間接的な破壊が可能です」

『『おぉ〜…』』

尊敬の目で見てくる2人に少し照れる。…そんなことをしている間にレリックを確保したようですね

「更に言うのならば、鉄屑は何を言った所で機械です。動きが単純になりがちですので、リソースがあるなら出来るだけ有人操縦にしましょう。その際は、魔導師の使う魔法の種類に要チェックです」

『はい!』『…ん』

素直な妹達に笑顔で返し、状況確認。…む、1つは既に管理局に渡されてしまったようですね。今から行っても間に合うといいのですが…いや、間に合わせなければ。あれが目的のレリックの可能性もありますし

「では今日の授業はここまで。帰ったら戦闘訓練です」

『げ』『分かった』

セインは嫌そうに、ディエチは嬉しそうに頷く。基本的にISが戦闘向きじゃないセインはあまり戦闘訓練が好きではないようです。逆にディエチはちょいトリガーハッピー気味な戦闘訓練好き。同時稼働なのになんでここまで性格に差があるのやら…

「ISロード、プロト・インパルス」

高速機動でレリックの反応を追う。…む、魔力反応あり。Sランクが2つにオーバーSランクが1つ…はい?

レリック1つにどんだけ人員割いてるんですか?管理局はいつからそんなに余裕が出来たのやら…

とりあえず思考リンクで鉄屑を操作。確保した1つはドクターのラボへ、残る1つの確保にも向かわせる。…まぁ十中八九破壊されるでしょうし、時間稼ぎに役立てばいいほうですね

やがて空を舞う3つの影が見え始める。…一応、偽装しておきますか

「ISロード。プロト・カーテン」

姿を消し、鉄屑を操作。遥か遠くに見える影に向かって飛ぶ鉄屑達――が、横から飛んできた鉄球にぶち抜かれた

「む」

半物質化誘導弾ですか。鉄屑のAMFじゃ無効化出来ないギリギリのレベル。…おかしいですね、今の管理局にこんな魔法を使える魔導師はほとんどいないはずですが

「ぶっち抜けぇぇええええええ!!!」

と、視界の端から赤い魔力光を輝かせ、雄叫びを上げながら飛んできた赤い服の幼女が鉄屑を粉砕する

…ああ、あの時なのはと一緒にいた幼女じゃありませんか。まさかまた会うことになるとは…世界は狭いですね

「飛竜…一閃!」

更に現れたピンク髪の女性が鉄屑を切り裂いていく。…んー?あの人もどっかで見覚えがあるような…

いや、そんな思考は一端置いておいて、今はレリックの確保ですね

となれば…後ろから襲撃されては面倒ですし、先にこっちの女性と幼女を潰しますか

鉄屑を引かせる。ステルスモードの無人操作にし、レリックの反応を追わせる。急に鉄屑が引いたことに不思議そうな顔をする女性と幼女。その前に飛び、わたしはISを解除する

「っ!テメェは!?」

驚き、即座にハンマー型のデバイスを構える幼女

「っ…!!」

驚き…けれど剣を構えず、わたしを凝視する女性

「こんにちわ。…すいませんが邪魔されたくないので、ここで墜ちて貰うですよ」

インパルスブレードを構え、対峙する。2人同時に相手するのは面倒そうですが、見た所二人とも中、近距離型。いざとなればプロト・バレルもありますし、一端逃げて狙撃で片を付ければいいのです

「誰が墜ちてやるかよ!行くぜシグナム!」

ハンマーを構え、怒鳴る幼女。わたしも身構えますが、幼女は女性からの返事がないことに怪訝そうな顔をする

「シグナム?」

「…すまん、ヴィータ。少し、待ってくれ」

苦痛に顔を歪めているような、苦虫を噛み潰しているかのような…そんな表情の女性――シグナムに、幼女が驚きの表情を作る

そして、シグナムは一歩分、前に出る。デバイスを構えすらせずに

「…貴様…いや、お前は…」

「?」

首を傾げる。けれどシグナムは、辛そうにその言葉を口にした

「…プロト・グレイランド・高町。…で、間違いないのか?」

…その言葉で、思い出した

こいつ、わたしを襲った魔導師です

「…はんっ」

鼻で笑う。何を言い出すかと思えば、今更そんなことですか

「残念ながら違うです。わたしは管理局の滅亡を望む、ただのナンバーズ・プロトですから」

「…それは」

シグナムの瞳が、悲しげに揺れる。不安、でしょうか。あるいは悲哀?

「…私の、せいだな?私が、お前を蒐集したから…お前は、我々…いや、高町達の敵となっているのか…?」

弱々しく紡がれた言葉に、動揺を顕にするヴィータ。けれど敵意は薄れず、わたしを睨み付ける瞳に迷いは無い。…ん、良い騎士です

「貴女に蒐集されたことが切っ掛けになったのは間違いないことですが、わたしは今、わたしの意思で行動しています。…そろそろ無駄話してないで始めませんか?」

空を行く3つの魔力反応とレリックの反応は、凄いスピードで離れていっている。このままじゃレリックの確保が出来ない。そう思ったわたしが構えを取っても、シグナムの剣は力無くその切っ先を下ろしたまま

「どうしたシグナム!?やるんだろ!?何迷ってんだよ!?」

幼女が怒声をあげるが、シグナムは剣を下ろしたままで…ついには、デバイスを待機状態にする

「な…なにやってんだシグナム!?敵の前で武器を下げてんじゃねぇよ!テメェそれでもベルカの騎士か!?」

「すまないヴィータ。…少し、黙っていてくれ」

シグナムはぽつりとそう呟くと…ゆっくりと、頭を下げた

ポニーテールが垂れ下がり、幼女――ヴィータが絶句する

「…許してくれ、とは言わん。だが、謝罪させてほしい」

「…」

わたしは無言。空中で頭を深々と下げる騎士を前にして、心がどんどん冷えていく

「…私に出来ることがあるならば如何なることでもしよう。私の事が憎いのならばその憎しみ、嘆き、怒り、全て私にぶつけてくれて構わない。死ねと言われれば大人しく腹を切ろう」

だから、と言葉を繋げる

「他のヴォルケンリッターや主はやてに罪はないのだ。だから見逃してやってほしい。そして、高町やテスタロッサの友として、投降しては貰えないだろうか?」

…我知らず、口元が吊り上がる

「…わたしがなのはを墜としたことを知っていて、言っているのですか?」

「…ああ」

シグナムは頭を下げたまま答える

「それでも高町はお前を探すのを諦めていない。…実を言えば、今、レリックを運んでいるのも高町とテスタロッサ。そして主はやてだ。…あの方たちはお前を諦めん。お前の憎悪は全て私が引き受ける。だから、彼女等の為にも投降してほしい」

…やけに大きな魔力反応だと思ったら、なのは達が…

「…そっか」

冷たい心が、少しだけ暖かくなる

「…あの娘たち、そんなに強くなったんですか…」

口元に浮かぶ笑みを隠し、頬を伝う涙を自覚する。はて?何故わたしは泣いてるのでしょう?

「お、お前…」

ヴィータがわたしを見ながら絶句している

「…そうですか、ならば、わたしがやることは1つですね」

わたしは、口元に笑みを浮かべながらシグナムに近寄る

どこか安堵したような表情のシグナムの前に立てば、複雑そうな顔をしたヴィータと目が合った

だからわたしは、言う













「アホですか?」













シグナムの手から待機状態のデバイスを奪い、もう片方の手でその胸ぐらを掴み、ヴィータに向けて投げ付ける

「「がぁっ!?」」

2人が衝撃で悲鳴を上げる

「知らないですよそんなこと!わたしは止まらないし止まれない!憎悪をぶつける?自惚れるな!わたしはお前なんかになんの感情も抱いていない!怨みも憎しみも興味すらない!死にたきゃ勝手に死になさい!」

ISロード、プロト・バレル

「もしあんたがそれに納得出来ないならば!アンタに出来ることはたった1つ!」

付加効果:バリアブレイク

「何もせず、何も考えずに!」

チャージ・ショット

「苦しみ続けなさい!」

灰色の閃光が、咄嗟にヴィータの張ったシールドをぶち破り、シグナムとヴィータを飲み込んだ

「アンタには、罰する価値すら無い!」

シグナムに向けて吐き捨てる。爆炎に包まれた2人を尻目に、わたしはレリックの反応を追う

「…ちっ」

駄目だ。転移された。もう追えない

わたしは反論すらせず、煙りに包まれた騎士達を一瞥し、その場から逃げるように転移を発動する

…ぐんにょりと世界が歪む感覚。再び目が見えるようになり、暗い通路に設置された転送ポートの上で崩れ落ちる。世界が、視界が滲む

駄目だ、泣くな

もう泣かないって決めたじゃないですか

管理局を叩き潰すまで、泣かないって

でもその管理局に、なのはもフェイトもいるんです

また、なのはを墜とさなきゃいけないんです

フェイトも墜とさなきゃいけないんです

それが辛くて悲しくて

でもこんな姿見られたくなくて

うずくまったまま涙を堪える

――しばらくそうしていたら、チンクがいつの間にか隣にいた

「…姉の胸で泣け、と言いたいところだが、どうせプロトは涙を堪えるのだろう?ならば、泣き言くらい聞いてやるぞ」

顔を赤くして言うチンクに、少しだけ笑った

そして、願った

なのは、フェイト

そのまま強くなってください

管理局の闇に負けないくらい強くなって

そして――








いつかわたしを、




□□てください







―――
(作者)

暗い暗い

レヴァ剣退場の回

後々に響く

騎士の誇りを失ったシグシグはどうなることやら

ちなみにプロトがレヴァ剣を持って帰った理由は無い。つい、持ってきちゃっただけ


以下感想返し

>色んな曲
…勿体無いほどありがたい
本当にありがとうございましたm(__)m

>マッチョなのは
最終的に某ゲジマユ並の重りを付けて日常生活を…

>鬱反対
今回は微鬱…に、なるのかなぁ?

>ユーノ
まぁ、彼は総受けだから(ぇ


>キャラ魔改造
面白い…のですが使い処が難しい…!!
機会があれば使います

>五・七・五
このリズムが好きなんですよね。偶然だけど

>たれジェイル
たれているのにいきなり「そうだ、管理局潰そう」とかやり始めるので飼育が難しいです
主食は銘菓あるはざぁど

>炬燵で鍋
戦闘機人の食事に付いていけなくてジェイル涙目

>ハーレム反対
男なら1人の女の子だけを幸せにしましょう
ただし二次元に限り嫁は無限



[16022] 不屈の心と試作品 『――ワタシの願いは』
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/07/07 23:54




不屈の心と試作品
『――ワタシの願いは』








星空を見上げる。運が良いのか、悪いのか。美しい夜空に光る星は雲に遮られることなく輝いている

だから見つめていたのだけど…ミッドの空は地球の空とは全然違う。それがほんの少しだけ淋しくて、悲しい

「…何してるの?」

ふと、後ろから聞こえた声に振り返れば、不思議そうに首を傾げたルーテシアの姿

「星を、見てたのです」

「星?」

首を傾げるルーテシア。手招きすれば何の警戒も無しに近づいてきて、何の迷いもなくあぐらを書いたわたしの足の上に腰を下ろす

何となくそのまま頭を撫でてみると、嬉しそうに後頭部をわたしの胸に擦り付けてくる

「――地球の…まぁ、風習というか、儀式というか…。今日は七夕と言って、星に願いを叶えてもらえる日なのですよ」

もっとも、わたしもよくは知らないのですが。桃子に教えてもらっただけですからね。…あれ?星に願うんでしたっけ?なんか…植物…樟?だかなんかそんな感じのに飾り付けをしてお札を張るのは…アレは違うのでしたっけ?

「星は星。願いは自分で叶えるもの」

夢の無いルーテシアに苦笑い。なんとはなしにあごの下を擽ってみる。気持ち良さそうに目を細めるルーテシア

「…まぁ、アレですよ。星に向かって願いを言うことで、自分自身に誓いを立てるんでしょう。必ず叶えてやるぞーっていう」

「…成程」

こくり、と頷くルーテシア

その口元が、小さく動く

「『――』」

…聞こえた言葉は聞かなかったことにする。こういうのはマナー違反ですから

しばらくの無言の時間。膝の上のルーテシアの髪を撫でながら、ルーテシアの体温を感じる。子供特有の暖かい身体は、機械が混じった冷たいわたしの身体と違い、柔らかくて気持ちよい

「…ん」

ルーテシアが身体を半回転させる。わたしの腕の中で横抱きにしてるような体制だ。そんな状態からわたしの首に手を回し、すりすりと身体を擦り付けてくる。まるで猫がマーキングしてるかのように

――そこへ、後ろから視線。振り返れば、眉根にシワを寄せたティーダ

「…ロリコンは犯罪だぜ。プロト」

「眼科に行けです」

遠隔操作が可能なブーメラン・アームズで目潰しすれば、某大佐みたいな悲鳴をあげるティーダ。それを虫…というより雨に濡れた汚ならしい獣を見るかのような目で見つめるルーテシア。ルーテシアちなみにルーテシアの中では虫>>超えられぬ壁>>獣>>絶対に超えられぬ壁>>>>>>ティーダっぽい

「おー、いてぇ…。っとと、それはそうとルーちゃん。ゼストさんが呼んでたよ?」

「…ちっ」

え?舌打ち?

「良いところだったのに…」

めっちゃくちゃ名残惜しそうにわたしの腕の中から抜け出ていくルーテシア。その背中に手を振りつつ、視線はティーダに

「で、背中に何隠してんですか?」

「おっ、分かる?」

へへっ、と笑うティーダ

「じゃんっ!」

嬉しそうに取り出されたのは、お酒。ちなみにミッドの飲酒解禁年齢は15歳。つまりつい先日15歳になったわたしもオッケーと

「高かったんだぜー?」

嬉しそうにいいながらグラスを取り出すティーダ。ちなみに2つ。

…つまりこれは

「わたしにも飲め、と」

「ん、ゼストさん下戸でさー。俺ザルだし。少し付き合えよ」

…ま、構いませんけどね

「わたしは酔えませんからね」

戦闘機人の強化された免疫系が、アルコールすら除去してしまう。わたしを酔わせたいなら、それこそ免疫系を完全に破壊するような度の強い酒を持ってくるしかありません

「じゃあ雰囲気だけでも楽しんでくれ」

にかっと笑うティーダに深々と溜め息。グラスを受けとると、琥珀色の液体が並々と注がれる

「何に乾杯します?」

「――美しい星空に」

「…ぷっ」

気障なセリフに吹き出す。ティーダも笑い、かちん、とグラスを合わせる

一気にグラスの中身を飲み干せば、深い苦味と独特な臭気が胃から昇る。…少し、くらっとキタ。もしかして、結構…度、強い?

「さて俺の酒はこっち、っと」

「ちょっと待つですよコラ」

ビンを奪って見てみれば、わたしの飲んだ酒はアルコール度数97%…ってこれほとんど原液じゃないですか!こんなん常人が飲んだらぶっ倒れますよ!?

ティーダは慌てるわたしをけらけら笑いながら普通の酒を啜る。わたしの手には、とんでもなく度数の高い酒と空のグラス。…仕方ないので、飲む。捨てるのは勿体無いですしね。別に気に入ったわけではないですが

「――で、お前は何願ったんだ?」

「…盗み聞きは趣味悪いですよ」

「俺じゃないさ。ラインファントムだよ」

…戯れに搭載した偵察用集音レコーダーを悪用した、と。ムカついたので鼻を掴んで引っ張った

「いででで…うらっ、とそう怒るなよ。で、何願ったんだ」

「…別に、たいしたことじゃないです」

でっかい溜め息を吐きながら、ぼそっと言う

「『――』ですもん」

「ちなみに俺ば妹が幸せになれますように゙、だ」

「聞いてないです」

「ついでに゙妹が一生結婚しませんように゙ど妹に男が近寄りませんように゙も願っといた」

「聞けです」

ちなみに後日、訓練校に入ったらしい妹さんに゙彼女゙らしき人物がいることを知り、激しくorzするティーダの姿があったりした
















「なのは、書けた?」

うん、勿論。と頷き、笑いを返しながら天の川を見上げる。場所は地球、月村家。すずかちゃんが用意してくれたおっきな笹に、皆で短冊を飾るとこ

「よっしゃ!私が一番に飾ったる!一番上は貰うでー!」

「ふんっ!甘いわよはやて!ヴィータ!」

「ごめんはやて!最高級アイスが待ってんだ!」

「き、騎士があっさり買収されるんやなーい!」

「とかなんとかやってる内に一番最初に私が飾る、と」

「…すずかお嬢様ー。ヴィータちゃんに譲ってあげましょうよー…」

「くっ…!シャマルさんがいればあたしの勝利は揺るがなかったのに…!」

「すまねぇアリサ…。でも仕事はしたからアイス貰うぜ!短冊なんざ書かなくても願いは叶うな!」

きゃいきゃいはしゃぐ友人たちに微笑が漏れる。隣を見れば、フェイトちゃんも同じだった

「…エリオたちも連れてきたかったなー」

「管理外世界だからねぇ。それに今日はガールズイベントだから、エリオはだぁーめ」

「ぁぅ…」

女の子だけで集まって、きゃいきゃい騒ぐ。それだけのためにはやてちゃんは随分苦労したらしい。暇人な私やフェイトちゃんとは各が違う

ちなみに私は空曹だけど、それはランクが高いから、って理由で貰った名前だけの役職。フェイトちゃんは執務官だけど部署の人たちにハブられてるとか。だからひまひま。あまり管理局好きじゃないから、構わないけど

あー、でも特別捜査官とかになっちゃったはやてちゃんのお手伝いするなら、もう少し階級あげなきゃなー。今だと人前じゃはやてちゃんに敬語使わなきゃいけないんだよ?あのはやてちゃんに。七夕の短冊に゙レジアス・ゲイズ死亡願゙とか書いちゃう娘に

ああはなりたくないなー、と思わなくはないの

「…なんて書いたの?」

微笑を浮かべて、わかっているくせに聞いてくるフェイトちゃん。私もそれに微笑で返す

「わかってるんでしょ?」

「分かんないなー」

語尾に音符でも付いてそうな調子でよく言う、と苦笑い

せーの、と頷き合い

『幸せになる』

そう書かれた短冊を、お互いの目の前に突き出した

「「――やっぱり」」

綺麗に重なった声に更に笑いを漏らす

「「その為にも、まずは――」」

プロトちゃんを、捕まえる

プロトちゃんが傍にいてくれなきゃ、幸せになんかなれないから

逃げるなら、追い掛ける

戦うことになったら、まずは倒す。そして話を聞く

それでも駄目なら…

「「無理やりにでも、ってね」」



「「…ぷっ」」

どちらからともなく――ううん、完全に同時に

「「あははははははっ!」」

笑い出す。それに気付いた皆が駆け寄ってくる

それを尻目に、ライバルに告げる

「負けないよ」

「私だって。今度は負けない」

ジュエルシードも最終的に私が全部貰ったんだもん。今度だって負けられない。フェイトちゃんは逆に今度こそは、と思ってるみたいだけど、私はそんなに甘くない

そう、甘くない

甘くないから

「――いつまでも逃げてられるだなんて…思ってちゃ嫌だよ?」

ばんっ、と夜空にイメージしたプロトちゃんの顔に向けて、魔力弾を撃つイメージ

引き金は、酷く軽かった

『幸せになる』――高町なのは。フェイト・T・ハラオウン

『家族皆一緒に』――八神はやて

『あいつを倒す。みんな守る』――八神ヴィータ

『あのバカが早く帰ってきますように』――アリサ・バニングス

『皆が元気になれますように』――月村すずか


願いが叶うかは、星空のみが知る――







――――
(作者)


ギリギリ間に合った!

七夕に浮かれて書いてみた

やっつけだぜ!

ちなみにシグナムは凹み中、シャマルはそのカウンセリング


以下感想返し

・シグナム殴っ血KILL
stsで重要な役割が…
しかし僕に好かれたキャラは扱いが悪い。
この分だとティアナが大変だ
作者は不幸萌え


・シグニート
引きこもりシグナム。キノコ生えてます

・ヤンデレ
いません。いませんったらいません。
…多分ww

・シグナムのデバイス
ちょい悩み中。魔改造デバイスを与えたら暴走しそうでヤ


・BGM
…ちょ、ちょいとかっこよすぎません?( ̄▽ ̄;)










!以下重大(?)なネタバレ。ってか警告?NTR苦手な人の為!











ありえません

チンクはルートはあるけどED用意してないので
ってか用意してるのなのはEDとフェイトEDだけです

ってかリリカルなのはにおいて第二部でヒロインやった人は第三部で影が薄くなる法則が…



[16022] 不屈の心と試作品 幼女誘拐
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/07/16 00:32
不屈の心と試作品
幼女誘拐





「…ぅん?」

視界の端をこそこそと移動する2つのでっかい人影

「どうしたプロト?」

「いえ…」

隣を歩いていたチンクに適当に返せば、チンクは眉根に皺を寄せる

「ゼストにティーダか?」

「…ええ」

怪しい。怪しすぎる

「チンク、訓練は中止で。ちょっとあの2人、気になるです」

あれはいつだったか、捨て猫を拾ってきたなのはの態度そっくりだった

「付き合おう」

チンクも不穏な気配を感じ取ったらしく、顔をしかめて追走してくる

こそこそと隠れるように部屋に向かうティーダとゼスト。…これ以上近付いたらバレるですね

「ISロード。プロト・カーテン」

「…そこまでするのか」

苦笑いを浮かべるチンクの手を握り、チンクごと気配を消す。姿も見えないから堂々と後を追う

そしてわたしたちは――ちょっと信じられない光景を見ることになる

身長30cmくらいの物理的に小さな、裸同然の格好をした小さな、女の子

それを囲むようにして腕を組み、難しい顔で考え込む2人の男

女の子のほうは茫然自失といった風で、目元に涙が浮かんでいる

「「…」」

ああ、これがアレですかぁ

「「…ゼスト。ティーダ」」

わたしとチンクの声が重なる。小さな呟きのような声に、けれどゼストとティーダは弾かれたかのように顔を上げる

「「プロトっ!?チンクっ!?」」

わたしたちの姿を確認した途端、ガタガタと震え出す2人に、くすくすと小さな笑いが漏れた

チンクもわたしも長い前髪で目元を隠し、俯き加減で口元だけで笑う

「ああ、大丈夫だ。問題ない。今、管理局に通報する」

「国家権力は止めろ!」

「そうですね。管理局なんて生温いですね」

「お前らは俺達をどうするつもりなのかな!?」

「「斬刑に――」」

「「それは危険だから止めろ!」」

まったく同時に動いたゼストとティーダがわたしとチンクの口を塞ぐ。見事なコンビプレーですが、それが疑いに拍車をかける

戦闘機人の力で思いっきり2人を殴り飛ばし、チンクと共に距離を取る

「このロリコン共め!」

「私達は確かに犯罪者だが、やっていいことと悪いことがあるだろう!」

「「誤解だ!」」

泣きそうな顔で言う二人ですが、わたしは小さな女の子を胸に抱えてインパルブレードを展開、チンクもスティンガーを構える

「お、おい…」

胸元から聞こえる声。…くっ、しまった…!

「チンク!アナタはこの娘を連れて逃げるです!」

「なっ…!?馬鹿を言うな!私が(女の)敵に背を向けるとでも思ったか!?」

「そういう問題ではありません!相手はロリコンです!つまりこの娘さんが、ルーテシアが、チンクが危ない!」

「誰がロリータだ!?」

拳が飛んできた

「というか俺は、ロリコンじゃないっ!」

「そうだ!俺はロリコンじゃなくてシスコンだ!」

「「「お前は黙ってろ!」」」

3つの拳がティーダに突き刺さる

ティーダの身体が崩れ落ちる。

それを見て、くすりと小さな笑い声が胸元から聞こえた

「…お前ら、変なヤツだな」

けらけらと妙に無邪気に笑う少女に、毒気を抜かれた

「何の騒ぎ?」

そこに姿を表すルーテシア。なんというベストタイミングでしょうか。正直さっきまでのカオスに参加されてたら困ったので助かりましたよ

そのルーテシアが、わたしの胸元にいる少女に視線を向ける。何故か少しだけ不機嫌そうに、けれどどこか目を輝かせて歩み寄ってくる

「…アナタは?」

「れ、烈火の剣精だ。名前はねぇけど…。その、そっちの旦那と兄ちゃんに」

「誘拐されてきたようです」

「違うっ!」

「…」

ゼストの必死の否定。にも関わらずすすす…っとゼストから距離を取るルーテシア。勿論手の中に烈火の剣精と名乗った少女を抱いて

ゼストは泣いた。見事な男泣きだった。具体的には思春期の娘に距離を置かれた父親の泣き方

「…まぁ冗談はともかく、何があったのですか?」

「今更か!?」

泣きながら抗議してくるゼストを無視して烈火の剣精さんに言葉を促す

…やはりというか、なんというか。彼女も犠牲者の1人らしい

管理局の違法研究所で行われていた古代ベルカの融合騎の研究。その唯一にして最高のサンプル。正真正銘本物の古代ベルカの融合騎

度重なる人権を無視した苦痛を伴う実験に、身も心も壊されそうになっていた時、ゼストとティーダが彼女に実験を施していた研究所を襲撃。ぶっ潰した

ゼストはその場に置いていって管理局に保護されることを薦めたようですが、ティーダはそれに反対。管理局の中にも腐った連中はたくさん。上手いこと正義側の管理局員に当たる補償は無い、ならば自分達が保護したほうが彼女のためになる、との考えらしいです

…そんなに力説するなんて…やっぱりティーダはロリコンなんじゃ…いや、仲間を疑うのは駄目ですね

…まぁ、ティアナと重ねてしまったのでしょう。ティーダは年下の女の子には妙に優しいのです。…あれ?やっぱロリコンです?

しかし古代ベルカの融合騎ですか…

「…」

「…」

さっきから無言でずっと見つめあってるルーテシアと烈火の剣精さん…ってか長いですね

「烈火の剣精さんに、あだ名を着けましょう」

『…はぁ?』

怪訝そうな声。ルーテシアはむしろキラキラ目を輝かせて既に名前を考え始めているようですが、他の皆は「何を言ってんだコイツ?」と言わんばかりの目です。…烈火の剣精さんまで

「…いえ、だってデバイスに取って名前は大切なモノじゃないですか。だから正式な名前というわけにも行きませんし、かといって毎回毎回烈火の剣精とか言うのもめんど…もとい失礼でしょう」

「今明らかにメンドクサイとか言おうとしてなかったか!?」

うるせーですよ烈火(仮)さん

「だがまぁ、悪いことではないな。…ふむ、トレディチ、なんてどうだ?」

「戦闘機人じゃないので却下」

にべもない却下に涙目になるチンクはスルー。

今度は復活したティーダが口を開く

「ティアナ…もといティアラ」

「シスコンは黙ってろです」

次にゼストに促すと、眉間に深い皺を刻んで答える

「…ポチ」

「「ペットか!!」」

わたしと烈火(仮)さんの声が重なる。というかなんで第97管理外世界のポピュラーな名前?そしてそれを何故知ってるですか烈火(仮)さん

最後に烈火(仮)さんと視線で会話していたルーテシアに視線を向ける

彼女は少し考え込み…口を開く

「タマ」

「「天丼!?」」

…本当に詳しいですね烈火(仮)さん。まさか専門用語で突っ込みを入れるとは…

その後、ひたすら数字を名前っぽくしたあだ名を上げるチンクや

自分や妹の名前をもじってつけようとするティーダやら

クロ、シロ、タロー、エリザベス(!?)といった微妙な名前ばかりあげるゼストやら

それに乗っかってネタ的な名前を挙げ続けるルーテシアに突っ込みつつ

どうにかこうにか3つまで選択肢を絞った

「1つ目。サティ。命名チンク!」

「13番目の妹だからな」

満足げに頷くチンク。だから懲りろと。反省しろよと

「二つ目!アギト。命名ゼスト」

「…俺の名と響きを似せただけだかな」

照れ臭いのか、頬を赤く染めるおっさん。やめろです。かわいくねーです

「3つ目!…その、ルーテシア命名」

「紅剣王」

ネタですかー?ブイサインしてるのは可愛いですが、女の子の名前ですよー?

「か、かっけー…」

何故紅剣王に食い付くですか烈火(仮)さーん!?

「あ、あたしが紅剣王…い、いや待て、ロードをうっちゃって王とか名乗るのは…」

しかも悩むとこそこですか!?

「…まぁ、順当に考えてアギトじゃないか?」

ティーダが苦笑いしながら烈火(仮)の頭を撫でる。彼女も「ガキ扱いすんな!」と口では嫌がりましたが、大人しくされるがままに…というかむしろ気持ち良さそうに受け入れている

「…紅剣王は駄目か?」

「駄目じゃないけど…可愛い名前の方がいくない?」

「…ん、まぁ」

…なんか2人の雰囲気がおかしいので、こっそり距離を取る。横を向けば微笑するゼストがいた

「…ティーダ騎士化計画?」

「…なんのことだ?」

ふぃっと目を逸らす。ゼストはティーダ大好きですねー。あ、弟とか息子的な意味でですよ?だから喜ぶなです

まぁ、烈火(仮)さん改めアギト。…さん付けしたほうがいいですかね?古代ベルカの融合騎ってことは最低でも300歳でしょうし

「ってうわっ!?」

とか考えてたら炎が飛んできた。何故!?

「今なんかお前変なこと考えたろ!?焼くぞこらっ!」

迫る炎をインパルブレードで切り裂く。それに怒りを募らせたアギトが炎を放つ。悪循環の鬼ごっこが始まりました












「酷い目にあったのです…」

ぷすぷすと黒煙を上げる焼け焦げた髪を切り落としていく。マンガとかならともかく、現実で焦げた髪は治らないのです

「あはは…。悪いな、貧乏クジ引いてもらって」

すっかり苦笑いが顔に張り付いたティーダが現れた。それに気にしてません、と微笑み返しながら、無駄に長い髪を切り落としていく。切りすぎると放熱用の面積が足らなくなってプロト・バレルが撃てなくなるので、ほどほどに

ティーダが隣に腰を下ろす。…無言の時間。沈黙だけど、居心地が良い沈黙

「…酷い目に、あってたんだよ」

言わなくても分かる。アギトのことでしょう

「…俺じゃあ、耐えられないくらい、酷い目に」

「…そうですか」

融合騎なんてロストロギア紛いの物は、高価です。歴史的にも、金銭的にも

管理局に保護してもらっても、まともな未来を歩めるかは分からない。それこそ、その後一生管理局または聖王教会から一歩も出れなくなってしまうかもしれない

そんなことは、させない

アギトはルーテシアの周りをふよふよと浮きながら、おっかなびっくり、ラボにある色んな機械を見ている。極々普通の機械でも、研究所に監禁されていた彼女から見れば、未知の技術なのだろう

「…頑張ろう、な」

ティーダの静かな決意に、深く頷く

「はい。勿論です」

管理局の横暴を、許さない

「ティーダー!プロトー!ルールーが大変だ!」

ルーテシアが自分で召喚した地雷王に潰されたのを見て、慌てて飛んできたアギトに苦笑する

願わくは、彼女にも幸せな未来を







―――
(作者)


アギト好感度表
ゼスト+7
ティーダ+8
ルーテシア+10
プロト+5
チンク+5

あとちょっとでstsに入れる…




以下感想返し


>るーるールート
このロリコンどもめ!
るーるーは…というかナンバーズがプロトに向ける好意は基本親愛です
クアットロは別
あれは性欲

>妹に彼女が出来て悩む兄
どうでもいいがこのタイトル、なんかの掲示板のスレのようだ
具体的には
「お、俺が願掛けしたせいでティアナが道を踏み外したーっ!!」
みたいな

>クイント
生きてます
バタフライ・エフェクトはstsにて

>プロトBADend
鬱エンドは無いのです
ハッピーエンドを以下同文
>シグナム男性化
ざっふぃーのを千切って装着するんですね分かります
っというか『剣』失って【剣】生えるとかそれどんな皮肉www



[16022] 不屈の心と試作品 無限の欲望
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/07/30 12:41



ノーヴェとウェンディが機動し、あともう少しで戦力が揃う。だから、あと1年もあれば管理局に総攻撃をかけられる――そんな時期だった

わたしは、ドクターに呼び出され、彼のラボを訪れていた




不屈の心と試作品
無限の欲望




薄暗いラボ。ぷかぷかと浮かぶ生体ポッドの中には、まだ調整中のセッテ、オットー、ディード

裸体を晒す彼女たちを前に、空間ディスプレイを浮かべてデータをチェックしているドクター

「…何しているのですか?というか、何の用事ですか」

少し不機嫌な声になるのは仕方ない。本来ならば今頃は違法研究所で暴れまわっている時間なのだから

「ああ、来てくれたのか。今、お茶でも淹れさせよう」

「結構です」

ってか自分で淹れろです。ウーノは貴方の召し使いじゃないのですよ

「出来れば簡潔に話してくれませんか?」

「…分かった。座ってくれ」

ドクターに促され、その隣に座る。ドクターは顔を未だ産まれてすらいない娘たちに向けながら言う

「彼女たちは戦闘機人ナンバーⅦ、Ⅷ、ⅩⅡだ。クアットロに調整を任していたのだがね…。どうやらクアットロは完全なる戦闘機人たる兵器を目指したらしくてね。今からでは彼女に人格データのインストールが不可能なんだ」

…僅かに眉間に皺が寄るのは隠せない。…わたしがそういう人体実験を大嫌いだと解っていて言うのだから、こいつは本当に性格が悪いのです

「だから私は、彼女たちを君に預けたい」

「…はぁ?」

何言ってんですかこいつは?

思わず口に出してそう言いそうになって…絶句する

ドクターはまるで、父親のような目で…優しい視線を、生体ポッドに向けていた

「何故だろうね?君に出会う前ならばそれも面白いだろうと思っていたのだろうがね…。今の私には、それが堪らなくつまらなく感じるんだよ。特に、ノーヴェやウェンディが機動してからは特にね。全く、あの娘たちは騒がしくて敵わない。創造主である私よりも君になついているしね」

そう言うドクターは…いっそ不気味なほどに、幸せそうだった

「だから最低限の下地だけは用意しておくから…私の娘たちに、感情というものを教えてやってほしいんだ」

ふっ、と小さく笑うドクター。以前のような狂気も狂喜も凶気もないその表情に…少し、胸が痛くなる

「引き受けてくれるだろう?」

「断定系ですか…」

苦笑い。でも、仕方ありませんね。なんだかんだでコイツには借りがありますし

「分かりましたよ。ただし、パパとか呼んでもらえなくなっても知りませんよ?」

冗談混じりにそう言えば、ドクターはきょとん…と、間の抜けた顔でわたしを見ていた

「な、なんですか?」

わたし、何か変なこと言いましたか?

「…何故、そこで父親なんて呼称が出てくるのだね?」

「…いやあんた、自分でナンバーズのこと我が娘たちがどーのとか言ってたでしょ」

何言っちゃってるんですか?

「…ぷっ」

ドクターは…いや、ジェイルは

「あっはっはっはっはっ!そうか、そうだね!パパか!ははははっ!ナンバーズから見れば確かに私は父親だからね!パパか!ははははっ!この私がパパか!あっはっはっはっはっ!」

本当に、おかしそうに…目尻に涙すら浮かべて、笑った

呆気に取られるわたし

けれどそんなのお構い無しとばかりに、ジェイルは笑い声を上げる

「…ドクターが、あんなにも幸せそうに笑ってらっしゃる…」「何の騒ぎだ?」「もー、何時だと思ってるのよん?」「む、プロト…か?…しまった、姉は寝間着だ着替えてくる」「いやいやいや、チンク姉かわんないって」「むしろボディスーツのが恥ずかしいと思うぜ?」「…ライン、出るしね?」「っつか何であんなドクター楽しそうに笑ってるんスか?」

ああもう飴にたかる蟻みたいに沸いて出るし。ちなみにセリフはナンバー順です。2、7、8、12は飛ばしましたが

「ははははっ!いやなに!それよりも我が娘たちよ!」

くるっ、と振り返り、大きく手を広げながら、一言

「パパだよ!さぁ、私の胸に飛び込んできたまえ!」

…あ、空気凍った

ナンバーズ全員が一斉にスクラムを組む。一糸乱れぬ見事なチームワークで

「や、やはり最近のスケジュールが原因かしら?」「元から…という可能性が無いわけではないが」「でもでもでもぉ〜、流石にこのまま放置するわけにはいかないわよねぇ?」「…すまん、姉の処理限界は超えている」「ぶっちゃけあたし逃げたい。ディープダイバーで世界の果てまで」「セイン、1人だけ逃げるとか許さねぇーからな?っつうかマジあたしには無理だ。ウェンディ、お前どうにかしろ」「…叩けば直る、かも」「あ、あたしっスか!?あたしがドクター叩く方向で決まりっスか!?」

待つですよウェンディ。ライディングボードで殴られたら常人は死ぬです。あー、でもジェイルならあっさり生き残るかもですね。ギャグ漫画体質ですし

「くくく、我が娘たちよ。これから私のことはドクターではなくパパと」

「落ち着けですよミスタ・変態」

だからわたしが殴り飛ばしても大丈夫。10メートルくらい水平に飛んで機材に激突しても大丈夫

「いや兄貴、それ大丈夫じゃねぇから」

ノーヴェ。すっかり突っ込み体質になった貴女が大好きです

ドクター大好きⅠ番Ⅲ番Ⅳ番が慌ててもうもうと埃を散らす瓦礫の山へ駆け寄っていく

「…だが、これで直ったかもしれないぞ?」

「あ、駄目だよチンク姉」

チンクの言葉にセインがあちゃーと頭を抱える。首を傾げるチンクに、悲しそうにふるふると首を振るディエチは言う

「それは、復活フラグ」

「その通りだね」

一瞬にしてウェンディの背後に移動したジェイルが、ウェンディのことを強く、強く情熱的に抱き締める

「ひ…ぃ…!?」

ウェンディは恐怖の感情をありありと表情に浮かべながら硬直する。ああ悲しいかな彼女は戦闘機人。ジェイルの狂行を殴って止めることなど出来ないのです

「嗚呼!我が愛しき娘よ!父は悲しいぞ父を殴ろうとするだなんて!」

「殴ったのは兄ちゃんッスー!あたしは関係ないっスー!」

じたばた暴れるウェンディ。今日は踏んだり蹴ったりですね貴女。哀れです

「息子はいいのだよ。息子は父親と拳で会話するものらしいからね!」

「理不尽っス!助けて!Help me!SOS!」

涙目のウェンディがウーノに向けて手を伸ばすが、ウーノは嫉妬混じりの微笑みを浮かべる。トーレやチンクの武闘派コンビは無言で目を逸らし、他のナンバーズは自分が標的になるのを恐れて距離を取っている

「薄情者ー!い、妹を見捨てるつもりっスか!?」

「ウェンディ、ウェンディ」

ジェイルに頬擦りされているウェンディに声を掛ければ、彼女はぱぁっと顔を輝かせる。まるで迷子が親を見つけたときのように

その表情にちょっぴり微笑ましい思いを抱きながら、告げる

「末っ子は溺愛されるものです。ふぁいと!」

「最後の希望すら無いんスか!?」

「おーいぇーす」

「にこやかに肯定されたっス!?ってか何でそんな兄ちゃんやる気ないんスか!?」

だってシリアスな空気だったのですよ?久しぶりにシリアスだったのですよ?それがあっという間にコメディですよ。なんですかこのギャグ漫画

「もういーです。わたし、ジェイル、殺す。おーけー?」

「それはダメっスー!!つーかノーヴェ!何サボってるんスか!?突っ込みはあんたの役目ってぎゃあああああドクターおっぱい揉むの止め」

ばがんっ!

ジェイルが、真上に吹っ飛んだ

…そして先程までジェイルとウェンディが乳繰りあってた場所には、髪をメデューサの如くわさわささせるウーノ

「ドクター…」

天井に頭をめり込ませたジェイルの身体が、その言葉にぷらん、ぷらん、と力無く揺れる。

そしてトーレが叫ぶ

「―――総員、」

ウーノはぷらぷらと揺れるジェイルの足をがっし!と力強く掴み

「――退避!」

トーレの号令一下、わたしを含めてウーノ以外のナンバーズが全員一斉に出口へと殺到する。当然わたしはウーノ/夜叉を目前にしてがたがたと恐怖に怯えていたウェンディを拾うのは忘れない。お姫様抱っこでプロト・インパルス

「――少し頭を…冷やしましょうか…?」

そんな言葉と共に…背後でラボの扉が閉まった

ゆっくりと周りを見回す

冷や汗を顔中に浮かべているトーレ

顔を真っ青にしているクアットロ

何故かさっきのウーノみたいな目でわたしとわたしの腕の中のウェンディを見ているチンク

地面から顔だけ出してがたがた震えているセイン

チンクとわたしの顔を交互に見ながら呆れたような表情のノーヴェ

無表情ながらも顔全体が引きつっているディエチ

そして泣きべそかいてわたしの胸ですんすん泣くウェンディ

「み、んな…無事でしたか…」

かくゆうわたしも喉がからからです。あれは鬼です。夜叉です。無音のラボの中で今何が行われているかなんてさっぱり知りたくありま「ぐぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

…悲鳴?

…あのドクターが?

ジェイル・スカリエッティが悲鳴を上げた!?

「…」×8

…痛々しい沈黙

表情を引き吊らせた全員が顔を見合せ…

「…さて、空戦シムの時間か」

「お供しますわ、トーレ姉さま」

「プロト、食事の支度を手伝ってくれ」

「あ、チンク姉。ならあたしも手伝うよ。兄貴、行こうぜ?」

「ディエチー、ゲームやろうよ。こないだ買ったやつ」

「いいよ。ルーお嬢様も誘おう」

「あ、あたしも…行ぐっス…早くあの恐怖を忘れたいっス…!」

一斉に、動き出す。

はぁ、とわたしは溜め息を吐いて

少しだけ、複雑な思いで

それでも、この家族の助けになりたいと思う

とりあえず、まずはあの恐ろしい長女の映像を頭から抹消する方向で





―――
(作者)

また間が空いちゃった…

ちょっとスランプ気味のわたし

ってかリアルが忙しい…

盆前だから納期が…納期がー!


感想返し


>シュールルーたん

制御がまだ甘いようです

ってか4期のキャラが違い過ぎてビビった


>管理局の甘さ、ヴォルケンズの罪

同意です
アニメだから許されてますけどねー
まぁヴォルケンズははやてが闇の書の主になってからは人間は殺してないみたいですケド



[16022] 不屈の心と試作品 DOLL or …?
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/08/13 20:23

ツイン・ブレイズの灼熱した刃が獲物の腹を切り裂き、溢れ出した臓腑を感情を宿さぬ目に映す

ブーメラン・ブレードが宙を舞い、対象を細切れに変えていく。それを行うセッテはどことなく不満そうだが、それでも無感情にただただ刃を振るう

オットーは手に持ったハンマーでひたすらに肉を叩く。無表情で振り下ろす。振り続ける。潰れた肉に刻まれた殴打の跡。それでも尚肉を打つ音だけが響く

……

………

「チンク、たすけて」

「無理を言うな」

チンクに慰められながら、さめざめと涙を流す

「「「…なんか違う」」」

ぽつりと漏らす無表情な妹たちがかわいくて仕方なかった





不屈の心と試作品
DOLL or …?





「兄様、なんか違います」

「お二人はもっと鮮やかでした」

「先程2人が使ってた武装を使いたい」

武装て。ただのエプロンと包丁ですから。ってか料理で固有武装使ってんじゃねーです

「…ディード。魚を捌くときはもっと手早く。それから内臓はしっかり取り除け。苦いからな。セッテは距離を取りすぎだ。ちゃんと近付いて包丁を使え。…これではおでんにしか出来ん。こう、短冊切り、というのだがな?味噌汁にはこれくらいが丁度いい。オットー、肉を柔らかくするために叩くとは言ったが、そこまで叩く必要はない。…どうして豚カツ用の肉がベーコン並みの薄さになるまで叩き続けた…」

チンクの小さな体がキッチンを行ったり来たり。起動したての無表情3人娘の情操教育兼花嫁修行に始めた料理教室ですが…前途多難です

余談ですが、わたしたちの中で料理が出来るのは、ウーノ、わたし、チンク、そして意外なことにノーヴェ。もっとも彼女はわたしとチンクを手伝ってくれてる内に覚えただけですが。未確認ながらⅡ番…ドゥーエも出来るそうです。さすが一人暮らし歴が長いだけあるですね

さて、ここで問題です

わたしは基本的にゼスト、ルーテシア、ティーダにアギト…ようするにスカリ家ではない人たちと行動しています

基本的にウーノがいるとはいえ、彼女も忙しい身。家事ばかりやるわけにはいきません。更にチンクは能力が高いのでよく任務に出掛けます。ノーヴェは簡単なものならともかく凝った料理は作れません

こんなとき、大食漢を4人ほど抱えるスカリ家の食事風景はどうなるでしょう?



A、戦争です



宙を舞う皿、奪われる料理、吹っ飛ばされるドクター、時に血を、時にマジギレするⅢ番目の姉を、時に涙しながら力尽きるⅩ番の妹を、時にさりげなく漁夫の利をかっさらっていくⅣ番な姉やそれをこっそりと奪うⅥ番な妹を、そしてクロスなカウンターで力尽きるⅨ番とⅩⅠ番を見ることになるのです

…特にⅢとⅥとⅨとⅩⅠがヤバイのですよ。滅茶苦茶食うですから。ゼストより食うですから。え、これ漫画?ってくらい食うですから。大事なことなので3回言ったです

その癖彼女らは自分が゙戦闘゙機人ってことを言い訳にして厨房には入らない、と言うのです。あ、ノーヴェは別です。ノーヴェは可愛い可愛い妹ですから

特にⅢ番。アホです。姉のくせに。実はこっそり夜中に練習しては失敗して、失敗しては落ち込んでしばらくやらない→その間に反省点忘れるという無限ループを完成させてる辺り完璧なアホです。あれならまだ「あたしら食い専だから!」と開き直ってるⅥとⅩⅠのが可愛げあるです

まぁ、そんなわけで打開策として素直で可愛い生まれたての妹たちに料理を覚えて貰おうと思ったのですが…

「こ、こらオットー!フライパンにレイストーム叩き込んでどうするっ!?熱する時はコンロを使え!ディード!まな板どころかシンクを切るな!セッテは…え、ぁ、いや。姉は怒ってるわけではないんだ。そんな悲しそうな顔をしないでくれ…」

…逃げちゃおうかなー、なんて思わなくもないです

と、その時

ドンッ!と腹に響く重低音。どことなく聞き覚えのあるそれは、破裂音

バッ!と愛らしいエプロンを脱ぎ捨てて武器を構え、わたしとチンクの盾になるように動く3人。でもですねー、違うのですよー?

「兄様、チンク姉様。下がってください。爆弾が仕掛けられていたようです」

「…いつの間にラボに侵入したんだろう。新しく警戒網広げるようにドクターに言わなくちゃ」

「オットーは兄様達の護衛を。私とセッテが出ます」

…わーい、生まれたてどもが生意気言ってるですー

チンクと2人、溜め息を吐きながら3人の後ろ頭にどすっどすっがっ!(防がれた)とチョップを落とす。生意気にも防御したセッテのほっぺをぐにぐに引っ張りながら

「…卵をレンジに入れんなです。あんたらはトーレですか」

「ふぉーええーひゃま?」

首を傾げる3人を代表して疑問を口にするセッテ。何故ぐにぐにされてるあんたが喋るのですか

…ってかヤバイですね。柔らかいし手触りがいいしぐにぐにされてるセッテが妙に可愛いしで癖になりそうです

「ん〜…と…卵にとってレンジは金属に対するチンクみたいな存在なのです」

「…いや、その例えでは分からんだろ」

苦笑いするチンク

「まぁ、アレだ。姉も詳しい原理は知らないが、そういうモノだと覚えておけ。卵や猫…というか生物をレンジに入れてはいけません、ということだ。マニュアルにも書いてあるんだぞ?」

…猫は都市伝説ですよー?アメリカで実際にあった事件らしいですが

マニュアルを受け取り、熟読しはじめた3人。それを尻目に、わたしたちはちょっと休憩。っていうか休憩でもしないとやってらんねーです

「どぞ。3つですよね?」

紅茶に砂糖を3つ添える。ミルクは無し。チンクのお決まりのパターン

「ああ。アレは出すか?」

「んー…アレはいいでしょ。皆揃った時で」

「そうか。なら前に作ったアレが残ってたはずだが?」

「セインとウェンデイに見つかったのです」

「だと思って小分けして隠してある。倉庫の隅の食材入れに入って…」

視線を感じて振り返る。きょとん、と目を丸くしてわたしたちを見ている6つの目

「…何故【アレ】で通じるの?」

「「…は?」」

オットーの言葉に首を傾げる。え、なに?どういうこと?

「主語がないのにお2人はどうやって会話を成立させているのかが分からないんです」

「「…へ?」」

主語?…え、さっきの会話のことですか?

「ぇっと…熟練夫婦とか、そんな感じのレベルで親密になれば案外通じるものですよ?ほら、ツーカーの仲とかって言うじゃないですか」

「「「何故ツーカー?」」」

あー…。基本的に地球で言う欧米の文化が色濃いミッドを基本とした知識をインストールされてるこの娘たちには日本語特有の表現は通じませんか…

んー…

「チンク、パス。分かりやすく説明してください」

チンクは姉キャラですしね。面倒なことは任せちゃいましょう

「…」

が、チンクはぽーっと中空を見つめ、頬を赤くして口元を緩ませてる。…ぇ、なんでですか?

「…チンク?」

顔の前で手を振る。チンクの瞳がわたしを映し、にへら、とその顔が緩む

「なんだ?…だんなさま…?」

…………

いや、とろけた口調でそんなこと言われても

「…熟練夫婦だなんて、そんな…ほら、なんというかだな。私達はまだパートナーというか、相棒というかだな?せめてその…恋のABCの順番はしっかりと踏みたいというかだな…」

「…」

恋のABCってなんですか?とか思いつつ

真っ赤な顔でとろけた笑みを浮かべながらいやんいやんと身をくねらせる姉を放置して、無垢で純粋な妹たちの教育に悪そうなことを口から垂れ流し始めた馬鹿から距離を取る。不思議そうな顔で「恋のABCとはなんですか?」「データにはないよ」「検索しましょう」とか話してる3人。…手遅れですかね?いやまだ間に合うはず

「検索完了。Aが接吻、Bがまさぐり合い、Cが乳繰り合いですね」

「女の子がそんなこと言ったら駄目ですーっ!」

チンクはっ!チンクはまともだと思ってたのにー!チンクがピンクで教育に悪いですー!

アホなこと言い出したディードのほっぺをぐんにょり引っ張る。無表情なこの娘たちの顔を変形させるのってちょっと楽しい

「にいひゃま、ひゃへえまへん」

「アホなことを言うくらいならしゃべらなくて結構です」

…セッテに勝るとも劣らない触り心地…。柔らかさではディードが上ですが手触りではセッテが上ですか。…オットーはどうでしょう。…試したい、かも。試したいです

「こらこらプロト、むす…妹をいじめてどうする」

「今なんて言おうとしました?」

娘?娘って言おうとしたですか?わたしまだ18ですよ?そのわたしがこんな大きな娘ですか?


…悪くないかなー…なんて…

「その場合、父親がドクターと兄さんの2人になっちゃうね」

「却下で」

あり得ない。怖気が走る。ディードたちの父親になるのは構いませんがあのふぁっきんドクターと同列に扱われるのが我慢ならないです

あと酷いこと言ったオットーはお仕置き。ほっぺぐにーって。…む、伸ばすよりも突っついた方が気持ちよいですね。双子なのにこんなにも感触が違うとは…少し驚きです

「…というか、ふと思ったのですが…」

ぽつり、とセッテが呟く

「…私達がこんなことしていていいのでしょうか…?」

「…は?」

いきなりなんですか?

「戦闘機人である我々が…こんな緩い日々を送ってて良いのでしょうか…?」

……ぇーっと

「いいんじゃないですか?別に」

日本刀でだって料理出来るし、バットでだって人殺しできる。本来の使用目的以外に使ったって問題なんざありませんよ

「もしかしたら世の中にゃ撲殺するのに使われたい消火器やら、人名救助に使われたいダイナマイトやらあるかもしれないですよ?幸いあなたたちには何でもできる手足と考えることができる頭があるんですから、自由に生きれば良いのです」

「…そういう…ものですか」

ええ、そんなもんです

「…では、私は料理が上手くなりたいです」

「僕も。あと医療用カートリッジの改良したい。あれ、使うとき痛いよ」

「…私は…とりあえず兄様と熟練夫婦になりたいです」

「それは駄目だ!それは姉だけのとっけ…むぐ!?」

はいはい、可愛い妹の細やかな望みを邪魔するような心の狭いお姉ちゃんにはならないでくださいねー

「…ま、時間はいくらでもあるんです。ゆっくりと生きて行きましょう」

にっこり微笑みながら言えば、妹たちは

「「「はい」」」

と、微かなぎこちない笑みを浮かべて返してくれる

それがなんとも言えず、心地よかった



______
(作者)


緩いー

緩いよー

stsに早く入りたいよー

でもフラグはある程度回収しなきゃだしー

stsに入ればハイスピード&バトルに戻れるです

がんばろー…



感想返し

>吹いた、爆笑した

ウチのスカリ家

ウーノ>>越えれぬ壁>>スカリん>>プロト≧その他ナンバーズ

ウーノ無双だよ!


>レヴァ剣

ぉkです。むしろ一点特化デバイスの方が使い良いです
情報提供感謝します


>兵器か兵士か

仕えるのが兵士、使われるのが兵器

かな?と思ってます



[16022] 不屈の心と試作品 例えば綺麗な月の下で
Name: 人春◆45d3e50a ID:6b87a2f4
Date: 2010/08/28 12:13

「…さて、準備は万端。士気も上々。あと必要なのはマテリアル…もとい、聖王陛下のみ、だね」

闇の中、馬鹿な男の声が響く。それをどこか心地よいと感じるわたしも馬鹿なのか

「君はどうだい?どうしたいのか、何がしたいのか、決まったかい?」

わたしがしたいこと?

…なんだっけ?

したいことなんかなかった

かあさまととうさまに従ってただけ

かあさまととうさまはわたしの遺伝子提供者。愛情を注いでくれることはなかった

だから愛されたくて、彼らの言うことを聞き続けた

…だからわたしは愛されたい

のかな?

分からない

ドクターは分かる?

「…愛されたい、という欲求は誰にでもある、というのは分かるよ」

そうなんだ

ドクターも?

「…ああ。私も愛されたい。愛したい。…無限の欲望だからね。ちょっとした欲望…愛しい者たちと共にありたいという望みにすら、妥協は出来ないのさ」

よくわからない

けど、なんとなく分かった

「何がだね?」

愛されたい人は、愛したい人なんだ

だからあの子はがんばるんだね

「…がんばりすぎ、だがね」







不屈の心と試作品
例えば綺麗な月の下で








煌々と夜空に輝く月は、2つ

赤と青の月は、星の海の中で輝いていた

「…わざわざ呼び出して、何の用ですか?」

見渡す限りの草原。草と大地、空と月、きらきらと輝く星しかない世界で、ドクターはいつもの胡散臭い笑みを浮かべて微笑する

「いやなに、計画も最終段階だからね。前祝いを、と思ってね」

そう言うドクターの手には、高級品だと一目で分かるワイン。…また評議会からこっそり盗ってきたのですか?

「…前祝いならナンバーズやティーダも呼びましょうよ」

なんとなく呼ばなかった理由を察しながらも、ついつい憎まれ口を叩く。…ドクターに対しては、いつもこんなもんです

…わたしは、既にクアットロに洗脳されたことに気付いている。気付いている、というよりは、ドクターが気付かせた。そしてその洗脳も解かれている
クアットロは気付いてないようですが、ドクターはクアットロを信用していない。というか、自分にそっくりな考え方をしているクアットロを「仕方ないなぁ」と言わんばかりの目で見ている。だから、彼女が行った処理――例えばわたしの洗脳、ルーテシアに行われた暴走処理など――をこっそり解除している

理由を聞いてみれば

「娘が暴走して人様に迷惑かけないよう、不器用な父親らしく先回りしてフォローしているのさ」

などと似合わない答えが返ってきた

けれど、それが本心なのだろう

なんてことはない

無限の欲望――彼は、頭が良いだけの普通の人間だったのだから

ほんの少し、外道の道に足を踏み込んでしまったけれど

彼は、人間だから

「…いや、たまには男同士で飲みたいじゃないか」

家族を求め、

友人を求め、

向上を求め、

そのために自分を錬磨する

ただ、幸せを求めるから

それが、無限の欲望

でもそれって…

普通の人間と、どこが違うのでしょうか?

「…ったく、仕方ないですね」

大袈裟に溜め息を吐いて草原に腰を下ろす。ドクターもまた隣に座り、グラスを渡してきた

「…わたし、ザルですよ?」

戦闘機人にアルコール効きません。普通の薬も効きません。機械部品のせいでアルコールが体に回りきらないのです

並々と注がれる深紅の液体。豊潤な葡萄の香りにくらくらする。これは高い。かなり高い。間違いなく

「安心したまえ。君(戦闘機人)でも酔える特別製さ。ちなみに私が飲むのは普通の酒だよ」

もう一本の瓶から自分の分を注ぐドクター。…ってかよく考えたらわたし未成年(多分)…。まぁ、飲酒なんて初めてだから初犯ってことで許してもらいましょう

「「乾杯」」

ちん、とグラスが鳴る。思いきって口に運べば、熱さが喉を滑り落ちる。匂いが鼻から抜け、胃の真ん中が熱くなる

「…ん、中々美味い」

「…わたしも、これ好きかもです」

お酒の美味しさを知る19歳。悪くないです

「だが余り飲むと身長が伸びなくなるぞ」

「…どーせ!どーせ!160センチまで伸びませんでしたよ!」

154,3センチですよ!せめてあと0,2センチあれば四捨五入で160センチだったのに!0,2センチ大事です!

「ちなみに…君の妹さん…高町教導隊員は164センチはあるようだ」

「うわぁああああああんっ!なのはの馬鹿ー!嫌い嫌い嫌いー!!」

昔はあんなにちっちゃかったのにー!

「も、もう酔ったのかね?早くないかい?」

「ぅー…?テンションの維持が出来ません…。脳内物質の分泌が止まらないです」

「…すまない、ちょっと効きすぎたみたいだね」

苦笑いするドクター

そこからはしばし無言。お互いにただただグラスを傾ける

不意に、ドクターはぽつりと呟いた

「…この計画はね」

わたしは無言でその言葉に耳を傾ける

「元から、失敗する予定なんだ」

ナンバーズには聞かせられない話

ドクターがたった一人で抱え続けた話

だから黙って話を聞く

「たった12人…。その内純粋な戦闘者は8人。しかも皆若く、経験が浅い。Aランクの実力はあっても、突発的なことには弱い。いくらガジェットがあった所で、ゆりかごがあった所で…管理局と聖王教会、2つを同時に敵に回せば勝てるはずもない」

解っていたこと

当たり前なこと

けれど、それにナンバーズの誰もが気付かなかったのは…仲が、良すぎたから

姉妹全員が力を合わせれば、出来ないことなんか何もない

そんな根拠もない自信

けれどドクターは気付いていた

というか、最初から分かった上でやっていたのだ

この盛大な茶番劇を

「管理局にはSランク魔導師がいる。如何に私の娘たちが優れていても、永遠に戦い続けられる訳ではない。疲弊した所を広域殲滅魔法で狙われたら終わりだ。ゆりかご?街への被害を考えずにアルカンシェルで吹き飛ばされたら意味は無い。聖王のマテリアル?掟やぶりの質量兵器を持ち出されたら瞬殺だ」

淡々と告げられる事実。ぱりん、と軽い音。ドクターの手の中でグラスが砕けた音

「…ただ、知ってほしかったんだ。のうのうと平和な顔で暮らしてる人間たちに。少しでも同情してほしかったんだ。私たちのように、【大人】の都合で作られたり捨てられたりする存在に。復讐したかったんだ。私たちを道具としか見ていない【大人】たちに」

弱音。

無限の欲望の名に隠したジェイル・スカリエッティの本心

クーデターを起こせればそれでいい。世間が自分達の、管理局の闇を知ってくれればそれでいい

そんな当たり前の欲望によって計画された今回の計画

「…だが」

そう、それは変わってしまった

無限の欲望を…ただの人間に変えてしまったから


ナンバーズ/家族 が、

ティーダやルーテシア/友人 が

そして…わたしが、

彼は、弱くなった

狂気の仮面を、着けられなくなった

でも、だからこそ

「成功、させたいんだ」

その言葉は、力強く

「幸せになりたい」

ぽつりぽつりと呟かれる言葉

「ティーダと酒を飲みたい。彼の妹が今度新しい部隊に引き抜かれるらしいんだ。ルーテシアくんと対戦ゲームをするのもいい。新しいゲームを作ったんだ。ウーノの料理が食べたい。最近ウーノは和食に凝っているんだ。ドゥーエを一度叱らなければ。たまにはウーノではなく私に連絡を入れてほしい。トーレに女性らしさを教えたい。あのままでは将来が不安だ。将来が不安というばクアットロもだな。性格を矯正しないと私が持たない。チンクは…幸せになってほしいな。私が口を出すことじゃないだろう。セインはミッション系の学校にでもいれようか。少しは大人しくなるだろう。セッテは最近ウーノに料理を習っていてね。差し入れのお菓子がまた美味しいんだ。また食べたいね。オットーは絵を描くのが好きらしい。今度ここに連れてこよう。ノーヴェはもうちょっと素直になってくれないものかな?照れ隠しに殴るんだよ。ディエチはあれで意外と甘えん坊でね。最近になってようやく私に甘えてくれるようになった。ウェンディには妙に避けられてしまう。やはり年頃の娘は難しいね。ディードは君にべったりだし。もっと私に甘えてほしいよ。ああ、それから騎士ゼストとアギトくんともっと打ち解けたいなぁ」

ああ、それから…

「…君に、お父さんと呼ばれたい、かな」

…無言

わたしも。ドクターも

「…わたしの父は…高町士郎です」

「そう、か…」

感情を込めずに呟かれた声。けれど、ドクターの表情は…泣きそうだった

「…けど」

くい、と瓶ごと傾ける。中身を飲み干し、゙酔っ払ったせい゙で火照る顔を隠しながら言う

「…ジェイルのことも…親戚のおじさんくらいには…思ってないこともないです…」

…無言。

振り返れば、ジェイルは寝ていた

酒瓶を抱えて、それそれは気持ち良さそうに

「…ばーか」

でっかい溜め息。ったく、このあほドクターは…。風邪引いても知りませんよ?

「…成功、させましょう」

必ず。

幸せになるために

幸せにするために







…でもわたしは








心のどこかで








なのはに□□て貰えることを望んでいることに








気付いてしまっていた






______
(作者)

書いてる内にプロトの性別が分からなくなった件

プロトはおーとーこー…!

ジェイル×プロトとか冗談じゃねぇ




以下感想返し


>6番の料理

この時間ではまだ料理に目覚めてません
多分セインは他にやってくれる人がいれば際限なくだらけるタイプ。公式では協会側に付いたのは6以外は8と12だけだし、あの娘たちが人間味を手に入れるまで6が頑張ってたから料理上手になったんだろう、と勝手に推測しました


>なのはとフェイト

正式にエンディングはなのはEDになると決まりました
今は浮気してるように見えますが、sts入ればまた徐々に2人がらぶらぶして行くんじゃないかなぁ?と期待してもいいのかな?
フェイトはノーコメント。正直噛ませ犬になりそうな嫌な予感



>あなたをロリコンです

大丈夫。リアルにハァハァしなけりゃまだセーフ(?)
チンクとルーテシアは残念ながら空白期限定ヒロイン
stsでは空気かもかも


>どっちが姉でどっちが妹?

見た目だけなら姉→プロト。妹→チンク
行動見てるともしかしたら双子?
でもそこにティーダが加わると
ティーダ→妹さんにちょっかいかけるギャルゲ主人公
チンク→攻略キャラ。妹を心配するロリ姉
プロト→攻略キャラ。主人公になつく貧乳妹

にみえる不思議。…ってかその内番外編で【ギャルゲティーダ】とか書いてみたい。攻略キャラはナンバーズたちで


>SシアとMシア

なん…だと…!?

が、がんばるんだぜ…!

でもとりあえずしばらくは無理です

代わりにXXX更新するから許しておくれ…?

プロトTSものだお!

需要ないね!




次回からはsts?その前に原作との相違点&キャラ現状まとめ表が先かな?

では、また次回!



[16022] キャラシート A~s〜sts
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/09/13 18:46

stsに入るに至ってのキャラシート





・プロト=ナンバーズ

ちょっとガチでやる気になってきた。ただし、なのは、フェイトのことが気になって仕方ない。ただし向ける感情は親愛、執着。恋慕ではない

ナンバーズチームは5番以降へは兄妹愛。
チンクには友情兼親愛。
クアットロには警戒心混じりの敵意をトッピングした友情(?)。
トーレへは友情。
ウーノには親愛。
ドクターには友情

ゼストチームには全員親愛。ルーテシアにのみ愛。親が子供に向ける愛デスヨ?



・ナンバーズ

クアットロ以外は意外と良い娘になった。クアットロ暗躍中。
ちょっと…や、かなり強化
ウーノ→時々夜叉
ドゥーエ→どうしてこうなった
トーレ→兄っぷりが凄い
クアットロ→なんかドロ○ジョさまな予感
チンク→色ボケ
セイン→貧乳コンプレックス
セッテ→素直クール
オットー→天然クール。乙女
ノーヴェ→ヤンデレ。ヤンキー的な意味で
ディエチ→姉っぷりが凄い。足りないのは胸だけ
ウェンディ→隠れ熱血。ティーダが気になる
ディード→天然クールエロス。作者のお気に入り



・ゼストチーム

望みは管理局の乗っ取り。新しい゙真っ白゙な組織を作りたい

キャラ壊れが酷い

ゼスト→ツンデレ親父
ルーテシア→微妙にvivid入っている
ティーダ→はっちゃけてる。シスコン
アギト→苦労のせいか自慢の赤髪に白髪が混じる。ティーダが気になる

その分戦力強化
・ゼストが健康
・ルーテシアが殺る気満々
・そもそもティーダがおる…
・アギトがデレッてる
・アギトは全員とユニゾン可能。
相性順
ゼスト>ティーダ>ルーテシア>プロト(シグナムには全員劣る。因みに戦闘スタイル的には一番相性がいいのはプロト)


・機動六課

八神はやて部隊長は変わらず、キャラ壊れ二名を抱えて頑張る
ロングアーチ、ハンマーレッド、ガードウルフの三隊に加えた交代部隊で構成さるた突貫部隊


なのは
ハンマーレッド隊の副隊長。はやてはなのはを隊長にしたかったが、問題行動が多いので副隊長が限界だったり。
教導隊で修行し、ますますチートに磨きがかかる。近接戦も平均レベルを超えた魔王。防壁は通常ですでにAAAランクの攻撃すら防ぐ。リミッター付きでもAクラスの攻撃を防ぐ。どこのヘラクレス?
ブラスターは持ってない。変わりの切り札はあるけれど
階級は三尉。問題行動は多いがその戦力は管理局でもトップクラス。フェイトとチームを組めばヴォルケンズ全員相手にだって勝てるんだぜ

フェイト
ガードウルフ隊の副隊長。なのはと同じく問題行動が多いため副隊長に。
隙がない。精神的な弱さはプロトへの執着で上書き。一歩間違えたら…間違えなくてもヤンデレ。しかも彼女の゙デレ゙の矛先は時にエリオやキャロにも牙を向く…。
真ソニックは持っていない。プロト意外に肌を見せるなんてプレイ以外じゃ嫌!性的な意味でも隙がない。真ソニックの変わりの切り札はあるけれど
階級は執務官。実績ない。ほんとにない

はやて
がんばった。超がんばった。
嫌がる幼なじみ2人に無理矢理リミッターつけたり、ごり押しして設立してみたり。でもなのはとフェイトの引き抜きはわりとあっさり。というか問題児引き取ってくれるならまぁ、いっか。みたいな
苦労性。しかもトラブルの種を身内に抱き込んだから多分もっと苦労する。自業自得だけどねー
階級は一佐。ニート侍の分まで頑張ったら上がってた


シグナム
ある意味一番の被害者
新デバイスはあるけれど、一度も起動したことはない。レヴァ剣を失って以降、ニート侍。機動六課設立に辺り、男子寮の寮母として就職。以後、文官的な役割をしながらはやてのサポート
戦闘訓練は毎日欠かさないが、剣を抜くことができない。PTSD持ち
活躍の予定は…ある…(?)

ヴィータ
紅の鉄騎。リーダーを゙あんな゙にしたプロトに強い怒りと憎悪を抱く。
ハンマーレッド隊の隊長。面倒見はいいが頭脳労働はあまり得意じゃない(苦手でもない。平均)ので実は凄い不安なはやて。なのはのフォローに期待
階級は三佐

ザフィーラ
盾の守護獣。実は転生者。俺のわんわんニート生活が…!と凹む。尚、嘘である。信じるな。ちょっとしたお茶目だ
最初っから人型。最後まで人型。だけど影の薄さは変わらないだろう。ちなみにマッチョな獣っ漢ってことでティアナはドン引き。ガードウルフ隊への配属にならなくて良かった、と安堵。
僅かながらミッド式の射撃魔法を覚える。そのために首輪型のストレージデバイスを購入。やっぱドン引きティアナ
階級は執務官。フェイトより敏腕。所属は海。

シャマル
特に変化なし。ただし旅の鏡を人間相手に使うことにPTSDを持つ。影の薄さはNO,1
階級はなし。医務官。階級にすれば一尉

リインⅡ
思考がちょっぴりバイオレンス。生まれた時から周りに危険人物が一杯だったんだから仕方ない。仕方ないったら仕方ない。だって砲撃魔とか白い魔王とかバグキャラとかヤンデレとかけしからんとか金色の死神とかから可愛がられて育ったんだもん
階級は曹長

ティアナ
目標が少し変化
兄が生きているという僅かな望みを頼りに、【執務官になって兄を探す】が目標。そのため極端な力への執着はないが、貪欲。使えないなら捨てるが、少しでも使えそうならすがりついて貪り尽くして全てを自分の力にしようてする。全ては兄のために。ツンデレを拗らせたヤンデレ
スバルには友情を感じている。感じているが、同時に自分の出世のための道具として見ていないわけでもない。
実力はAランクレベル。ただし入念に罠を張る時間があれば。突発的な事態に弱い。適正こそ低いが近接から治癒、ブーストまでこなせるオールラウンダー。魔導師としてのレベルは原作より高いが、乙女レベルがすっげぇ低い。
その上器用貧乏。他の訓練と同時進行したため原作より射撃系の練度が低い。だが幻術のレベルは僅かに高くなってる…ような気がする
作者はティアナ萌えでもあるから多分一番苦労する
階級は二等陸士


スバル
クイントが生存しているため、彼女にシューティングアーツを習う。そのため原作より強い。原作開始時で既にA-ランク程度の実力はあるだろう
だが同時に戦闘機人である、ということへのコンプレックスも強化
母親を傷付けたのも戦闘機人、私も戦闘機人…というアレ。一度鬱に入るとしばらく続く。メンタル面が極端に弱い
ティアナは無二の親友。自分が戦闘機人であることを知って尚、自分から離れていかなかったティアナに依存に近い感情を抱く
階級は二等陸士

エリオ
フェイトの力に成ろうと頑張ったため、原作より強い。これはフェイトが『エリオが望むなら、戦い方くらい教えてあげなくちゃ』と思ったため。そのためエリオはわりと幼いころから『クロノ式戦闘訓練』を教わる。B+程度の実力
階級は二等陸士。これは未所属のころからちょくちょく民間協力者として動いていたため


キャロ
一番原作から解離がない娘。でも公式がチート
階級は三等陸士。

ギンガ
別名二代目クイント
母親そのものの戦いが可能。しかも強い。鬼強い。零距離戦闘ならAAAランク相手に相討ちまで持ち込めるぜ!でも砲撃戦は勘弁な!
だがメンタルは弱い。既に呪いレベルか
戦闘機人には複雑な感情。多分、戦えないだろう。という自覚はある





その他



クイント
右腕の肘から先が麻痺。左足神経断裂。リンカーコア酷使による魔力循環不全により前線から引退。以後、リハビリに数年、回復後は近くのストライクアーツ教室にてインストラクターとして働く。ダイエット目的程度の運動ならともかく、二度と高ランク魔法戦闘は出来ないだろう、と言われたためである。こっそり安堵したゲンヤ
アイナさんと一緒に女子寮の寮母さんやってます


ゲンヤ
毎日定時で帰りたい人。数年前まで情緒不安定。妻のリハビリに心配かける娘にキッツイ仕事。お陰で原作よりも見事な白髪頭。しかもよく見ると生え際が…
はやての師匠だが、はやてとの師弟関係は情緒不安定なときだったため、僅かにはやてに苦手意識を持つ
というか少し申し訳なく思っている。その為色々親身に。そして慕われる。浮気一歩手前じゃねー?
非番の日はクイントが帰ってくるまで1人きり。寂しい。らぶらぶ夫婦

レジアス
最近ちらちら入る報告に槍持った謎の襲撃者【力の2号】の姿が。いやいやまさかまさか。あり得んあり得ん

オーリス
最近ちらちら噂の管理局の施設を襲う謎の怪人チーム【技の1号】【力の2号】に興味津々。いやでもこの2号って…。いやいやないないあっはっはっー


カリム
老けた

ヴェロッサ
肝臓がヤバい

クロノ
家に帰れないストレスでやけ酒。ヴェロッサも呼び出してやけ酒。顔色がヤバい

ユーノ
未来がヤバい。
恋愛的な意味でも
健康的な意味でも




高町家
旅行準備中
目標は温泉。あと長女の婿探し

月村家
恭也、色々ぴんち
ぴんくな意味で
ちょっと実家に帰らせてもらいたい


ハラオウン家
隠居済み
出来れば早くフェイトの子供が見たい
プロト早く帰ってこーい。そして孕ませろー

すずか&アリサ
寂しい
出番欲しい
彼氏も欲しい
だが出番は無い



他、機動六課の面々
原作から変化なし
ただし苦労と心労から極一部を除いて皆元気がない
願わくは幸おうからんことをー。ってか魔王自重しろ








こんな感じでsts、はじまります










その前に感想返しを


>プロトTS
うん?それはもとやれと?
続きがよみたくばわっふる(略
書くかどうかは知らんケド
あとカップリングは僕の趣味だ。好きなんだ、彼が。彼の影の薄さが


>きれいなジェイル
キャラ崩壊スマン


>プロト×ジェイル

読みたいならわっふる(略
実は最初はこっちだった
でもコレだとウーノが泣くから止めたのですよ
…あ、ドクターハーレムにすればよかったのかな?
無論ゼストとティーダもハーレムメンバーさっ!


>プロト×チンク
読みたいならわっふ…あ、もう書いてた
続きかー…考えてはいるけど、どうしても3(ピー)とかになっちゃう
他のナンバーズとの絡みも希望されてるし、ありっちゃあり?
書くかは知らんケド


>プロトの身長
154,3+0.2で154.5→155.0
これを更に倍プッシュ…!
で、160
あっはっは、無いわ
自分で書いててなんだけど
正解者のるーさんには次のXXXのカップリング指名権をプレゼントしてみたり
期待に添えるかは知らんケド


>原作スカさん
確かそうだったはず

で、ストレス溜めすぎてどかーんしたのでは?



[16022] 不屈の心と試作品 sts 設立・機動六課
Name: 人春◆45d3e50a ID:cc32c781
Date: 2010/10/04 17:53

10年

短いようで長い時間

小さな小さな少女は見目麗しい美女になり

小さな小さな少年は己の在り方を見失ってしまった

それでも、2人がまた出会うために

ゆっくりと、歯車は回り始める









不屈の心と試作品 sts
設立・機動六課









「…」

無言で見つめる。一方的な再開。花咲くような笑顔で新しい部下たちに声をかける彼女を


『じゃあ、早速訓練に入るよー!っというわけで脱いで!』
『はいっ…ってええ!?』×4
『無駄に緊張してると駄目だよー。まぁ、どうせ最初は座学だから大丈夫だけどね』
『座学…ですか?』
『そっ、魔法はただの暴力でしかないからね?その危険性をしっかり自覚してもらわないとね。…ここだけの話、私は昔それを自覚してなくて殺人未遂したことがあるから』




…しっかり覚えてくれてるのですね。と僅かに口元が綻ぶ

「…貴女は貴女の道を行くのですよ…?」

幸いなことに彼女はわたしたちの敵に回った。わたしは彼女の敵になった。だから彼女はわたしと戦う理由がある。ならば彼女はわたしを倒すことに迷いはないだろう。それに安堵し、胸を撫で下ろす

もうわたしなんか忘れて
幸せになってくださいね?

祈りと共にダイバーズ・ドリルを回収。近くの森林に潜みながら、ダイバーズ・ドリルで調べた機動六課の見取り図をデータに起こしていく

これから先、確実にわたしたちの最大の障害になるのはこの機動六課だ

遺失物対策課…レリックに深い関わりがある彼らは、確実にわたしたちの行く手に立ち塞がる。勿論遺失物対策課は機動六課だけどはないけれど、いっそ過剰戦力といっても過言ではない…っていうか明らかに『陸』とかに喧嘩打ってるくらいな過剰戦力です。更にⅡ番さんが調べてくれたデータによれば、機動六課の最大の目標はレリック。つまり、対我々用の部隊なのです

「…むぅ」

向こうの新人4人はまだ敵じゃない。だが、こっちの新人…チンク以下のナンバーズはまだまだ練度が低く、向こうの主力相手には厳しい。ゼストとティーダが出てくれれば…いや、無理ですね。ティーダはともかくゼストは無理です。

…ティーダ単身では精々フェイトの足止めが出来るくらいですね。フェイトの実力がデータ通りで、空を飛べない密閉空間なら、という条件付きですが

「にーちゃん、爆弾設置してきたよ」

足下から顔を出すセイン。その頭をくしゃくしゃと撫でつつ、踵を返す。もしもの時のための保険。対機動六課用の爆弾。…出来れば使いたくないですね

「…人殺しはしたくないなー。一応人体に無害な魔力反発式爆弾だけど、建物崩れたらいっぱい死んじゃうよね…」

どこか暗い表情のセイン。もう一度、しっかりと優しくその頭を撫でてやりながら機動六課の隊舎を後にする。Ⅱ番さんに頼んで内部分裂狙っても良いのですが、Ⅱ番さんはもしもの時の保険にも使いたいらしいですし…。くそ、人数がやっぱり足りません

「いっそプロジェクトFで101人セインさん計画とかどうかな!?」

「きもちわるい」

「普通に傷つくんだけどにーちゃん!?」

いやだってこんなアホの子が一杯いたらメチャクチャきもちわるいですよ

「同じ顔が大量に並んでたら気持ち悪いですよ」

「そっかなー?にーちゃんがいっぱいいても困らないと思うよ?チンク姉とノーヴェとディード的な意味で」

「1人に1人ずつわたしをプレゼントですか?」

またアホな事を言い出しますねこの娘は

「で、オリジナルのにーちゃんはセインさんが華麗に頂くって寸法さっ!」

「漁夫の利ですね。アホの子の癖に生意気です」

変なことに頭を使うくらいだったら勉強してください

「ギョフのりってなに?」

…あー、勉強しなさい。あと食べ物じゃないですから。なにそれおいしいの?って顔やめてほしいです

「次なにやるんだっけ?」

「ぇーっと…陸士46部隊の指揮官の身辺調査ですね」

強きに媚を売り、弱きを挫く、そんな信条を生き甲斐にしていると言っても過言ではないフィレッツ・マクガイフィン部隊長。こいつばかりか、その部下まで腐っていることで有名な46部隊。だけどなんでか幹部候補。うん、分かりきってますががっつり不正。必要なのは証拠。なんて考えながらセインと手を繋いで46部隊に向かおうとしていたら…

『…すまん、そこに行く必要はなくなった』

と、表情を引き吊らせながら苦笑いを浮かべるトーレから映像通信が入る

その時点でなんとなく何があったのか察したわたしとセインは顔を見合わせ、肩をすくめた

「…で?今度は何をやらかしたのですか?」

そう問えば、ぽりぽりと頬を掻きながらトーレがスクリーンを動かす。…どうやらどこかの隊舎の会議室…いえ、部隊長室のようですね

その真ん中で、陸士隊の制服を着たセッテが無言で肉の塊っぽい人間だったものを蹴りまくっていた

げしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしげしっと

…ってか止めろですよトーレ

『…止めた。が、聞いてくれなかった』

「…トーレ」

なんとなく哀愁漂うその声に、自分で言ったのにトーレが哀れになってしまう。ってかトーレが泣きそうです

「…セインさん的には聞きたくない。というか関わりたくないんだけど、溢れんばかりの姉妹愛で聞いてあげる。何があったの?」

『…少し目を離した隙に、あのエロ親父がセッテの尻を撫でたのだ』

あらまあ

「…お尻を触られて、セッテが?」

多分いまわたし凄く間抜けな顔をしているはずです。トーレが目を丸くしてますし

『あ、ああ。…いきなりこう、鋭い回し蹴りをあのヒヒ爺の顔面に』

「…あらあらまぁまぁ」

ってわたしはどこのおばさんですか

「…にーちゃんなんで嬉しそうなの?」

「んー?べっつに嬉しそうになんかしてないですよ〜?」

…なんで2人とも劇画タッチで「嘘だっ!」とか言いそうな顔をするのですか

「羞恥心とか嫌悪感とか怒りとか報復とか。そういう感情すらほとんど無かったセッテの変化が嬉しいな〜っなんて思ってないのですよ〜」

「『…』」

わぁ、じと目なのに優しい笑顔とかとっても素敵ですね2人とも

まぁ、それはともかく

「セッテ〜、セッテちゃーん。こっち向くですよー」

ぴくり、とげしげしやり続けてたセッテがわたしたちへ視線を向ける。…幻なんでしょうが犬っぽい耳と尻尾が見える不思議

『兄様、7時間47分振りです。セッテは良い子にしてました』

…褒めるべきか、ドン引きするべきか。ここで何を言うかで色々決まるような

まぁ褒めるのですが

「よしよし、偉い偉い。後で思う存分甘えていいですよ。トーレに」

『おいっ!?』

『ありがとうございますっ!』

『セッテっ!?』

お姉ちゃんっ子のセッテ。だけど素直じゃないし不器用な娘なのでこういう甘えられる理由を作ってあげないとわたしは愚か面倒見のいいチンクにすら甘えられないのです。トーレも姉としての自覚が少ないですし、良い薬でしょう。…ってかトーレは姉っていうより兄ですからね。おっとこまえー

「それはそうと、真面目な話。情報ありましたか?」

無言で首を振る2人に内心で舌打ち

集めている情報。それはたった1つ――聖王のマテリアルの現在地

数年前に教会から聖遺物をパチくり、遺伝子データを手に入れたは良いものの、脳味噌になったせいか痴呆が思いっきり進んで正真正銘阿呆になった最高評議会の馬鹿どもが子飼いの研究員たちに研究を任せたせいで、我々の手元には遺伝子データがないのですよ

最悪僅かながら聖王家の血が流れているわたしでもゆりかごを動かせないことはないのですが、その場合ゆりかごがちゃんと安定高度まで浮上する前にわたしが死にます。無駄死にはヤです

というわけで聖王の遺伝子データ…あるいはそれによって作られた存在は計画のためには絶対に必要。何はなくとも手に入れねばなりません

だから怪しいヤツは片っ端から見敵必殺(サーチアンドデストロイ)。洗いざらい情報を頂いてⅡ番さんにお任せコースです。Ⅱ番さんは管理局の高官としての顔も持ってるので、邪魔になった部下を゙チョッキン゙するくらいは楽勝なんだそうですよ?

『…聖王陛下自身に付いてのデータはない。だが、プロジェクトFの残滓が出てきた』

「へぇ…」

聖王のマテリアルはプロジェクトFの技術を用いて産み出されるはず、というのはドクターの推測ですが、間違いないでしょう。まともなクローニング技術では使い物になるようになるまで5年はかかります。急速成長させても知識を吸収させ、それに経験を踏まえてしっかりど体験゙しなければまともに役に立ちませんからね。だったらプロジェクトFのデータを流用して最初から使えるようにして作ったほうが良い、ということですか

「…しかし、管理局の研究者ではプロジェクトFを完成させることは出来なかったのでは?」

そうじゃないならプレシア・テスタロッサは独自で研究なんかしないはずですし

『…ある意味貴様の責任だ。プレシア・テスタロッサの死体と、時の庭園に保管されていた研究資料。…その2つとも、管理局が…最高評議会が、保管している』

…そしてそれが10年という年月をかけて、というわけですか

…既に死んだ人間まで引っ張ってくるだなんて…

『…プロト、鏡を見てみろ』

…いけませんね。ついつい感情が出てしまいました。セインが心配そうにそれを見ているので微笑で返す

「では、詳しい話はラボに戻ってから。こちらは機動六課のデータはほぼ完璧です」

…まぁ、あの新人たちのデータは毎日更新する必要があるかもしれませんが

…なのはは教導隊とか言う部隊で【鬼】でした。平隊員の癖に上司にピンクの閃光叩き込むは同期に向かってSLB撃ち込むは挙げ句の果てに教官の指導を生温いとか言って他の隊員巻き込んでデスマーチ始めるは。昔の可愛くて素直ななのははどこに行ってしまったのでしょう?ってか多分戦闘機人に改造されてなかったらわたし負けてますよ。勝てるわけないじゃないですか。勝てるわけないじゃないですかっ!大事なことは二度言いましょう!

しかもそれで本当に同期も含めて強くなっちゃったのが厄介。教官としでば優秀なようです。鬼ですが。生徒としてはペケ3つ

そんななのはに鍛えられる新人さんたち…。強くはなれるでしょうが可哀想に。南無

『ふむ。…なら一度ラボに集合だ。ドクターは?』

「3脳のご機嫌取りです。しばらくドクターに3脳の気を引いてもらって、その間にこっそりマテリアルを回収します」

『『「…」』』

あ、あれ!?なんか凄く冷たい目で見られてます!?

「…陛下保護したらマテリアルとか言うの禁止ね」

『聖王陛下は女性、しかも恐らく年若い少女だ。もっと気を使え。だからお前は駄目なんだ』

『兄様が駄目駄目です』

フルボッコ!?なんでこんなにいきなりいじめられなきゃいけないのですかー!?



――――
(作者)

導入は緩やかに

アクションが増えたら一気に行くぜ!


以下感想返し

>シグナム

正直、扱いに困ります
嫌いなキャラじゃないのですがねぇ…
活躍させるかさせないかは悩み中です


>ジェイル

彼は悪人ではないと思うんですよねー…
幸せになれるかどうかはまだ分かりませんが、彼の幸せを祈りましょう

…とか、宣伝してみる。読者さまが離れていかないように


>六課がストレスでマッハ

皆頭がプッツンしとります

一番の苦労人はグリフィス。フォワード陣は精神はともかく肉体はボロボロ

二次創作の無限書庫並に寿命を縮める職場です



[16022] 不屈の心と試作品 sts 潜入・出会い
Name: 人春◆45d3e50a ID:ec8f6a96
Date: 2010/10/23 12:58
不屈の心と試作品 sts
潜入・出会い



「よ…っと」

プロト・カーテンを起動しながら通気ダクトから通路へと降りる。漫画やアニメにはよくある行動ですが、まさか自分がやることになるとは…

「クアットロ、こちらプロト。A-14地点に到着。指示を」

声に出す必要はないが、合えて口にする。魔法でもなく、電波通信でもないナンバーズ間の意識共有。故に、傍受される心配はないのです

『はいは〜い。…監視網は完全掌握したわよん?ただし自立駆動してる警備用の傀儡兵は対象外だから、その巡回ルートにだけは気をつけてねん?』

「了解です」

まぁ、傀儡兵くらいならば数秒で片付け…あ、ダメなんですね。片付けたりしては。今はわたしの存在に気取られるわけにはいかないのでした

プロト・カーテンはあくまで相手がわたしを認識することが出来なくなるIS。わたしという存在を感知し、記録する機械相手には通じません。…オリジナルのシルバー・カーテンは機械相手に無敵なのに、わたしのプロト・カーテンは機械相手に無力とは…。わたしに幻術の才能が無いせいなのでしょうか?

がしょん、がしょんという足音に気が付き、天井に貼りつく。…と、いうよりは、天井にインパルスブレードを突き刺して体を固定する。ちょっぴりロマンを感じるデザインの傀儡兵が通りすぎて行くのを確認し、飛行魔法を併用して音もなく床に着地、再び歩き出す

なんだか伝説の工作兵にでもなった気分です。ダンボールを持ってきた方が良かったですかね?

「…B-16地点到達。傀儡兵の巡回ルートが変わっているようですが?」

『…データが古いのねぇ。ここ最近派手に動いてたから、そのせいかしら?』

恐らくそうでしょうね。この研究所に至るまでに3つは似たような研究所潰してるですから。警備体制が変更になったようで

まぁ、それはともかく

厳重な警備を抜けて付いた先、やたら高性能な電子ロック付きの扉。内側からは複数の人の気配。…ただし、動いている人間は1人です

「…目標地点到達。殺しますか?」

『殺しなさい。…と、言いたいところなんだけどねぇ?今から外に誘き出すから、好きにしなさい?』

…好きに、ですか。考え込んでる間に扉が開く。びくりと身体が震えるのは仕方ない。…プロト・カーテンの効果で相手はわたしに気付かなかったとはいえ、視線がわたしを捉えたように思えてしまうと、僅かに身体が強張る。

…相手が白衣を着ていなければ、まだどうにかなるんですけどねぇ…

「まぁ、それはともかく」

ぶつぶつ口の中で何事か呟きつつ、手元の資料に目を落としながら歩く研究者の姿はかなり不気味でしたが、早々に脳内メモリから削除する。文字通りの意味で

開きっぱなしのドアから部屋に入れば、独特の匂いが強化された嗅覚に全力でぶん殴られたような衝撃。薬品の匂いに吐瀉物のような酸っぱい匂い、かと思えばミルクのような甘い香りも混じり、子供特有の乳臭さや、血液の鉄錆び臭さが混じる

ようするに吐き気のするような臭いに頭痛がした

「こんな空間で作業してたら、そりゃああんな不気味にもなるはずですね」

換気扇を回しながら改めて脳内メモリを消去。消去しきれてなかったから思い出すんですよ。あんな幼子が見たらトラウマになりそうな光景はさっさとデリートするに限ります

部屋は広く、真ん中に手術台と拘束具があり、壁全体を囲むように薬品棚が設置され、床の踏み場も無いほどに無数の器具が転がっている

「…ちっ」

注射器や開口器、そして何のために使うのか分かってしまう胸糞悪い道具達を踏みつけ、奥の部屋に向かう。足下のぬるりとした感触は凝固しかけた血液だろうか?いっそ全て焼き尽くしてしまおうかという欲求が鎌首もたげるが、それを意思の力で抑え込む

そしてそのまま奥へと進む。薬品棚の影に隠れるように設置された隠し扉。…パスワードタイプの電子ロックがあるけれど、今は関係ないのです。今、この研究者のセキリティシステムは完全にクアットロによって掌握済み。この手のロックに限らず、電子制御は意味を成しません

「クアットロ」

『はいはぁ〜い』

ピ、と軽い音がして扉が開く

そして、予想通りの光景に言葉を失った

無数に乱立する生体ポット

その中に浮かぶ幾人かの子供たち

まともな人の形をしているモノは少なく、けれど彼女たちは生きていた

「…彼らは聖王をなんだと思ってるんでしょうね…」

生体ポットの1つ、中に四肢を失った幼子が浮いているそれに触れながら呟いてみる。返事が帰ってくるはずもなく、ぷかぷかと浮かぶ金髪の少女は何の反応も示さない

居並ぶ彼女たちを横目に見ながら移動する。四肢が無いくらいならばまだマシで、2人の少女が゙くっついでいたり、逆に1人の少女が゙2人゙に分けられていたり。およそ人を人とも思わぬようなその所業に、更なる怒りと殺意を募らせる

そして、広い、けれど狭い部屋の一番奥

無数の生体ポットとは別、1つだけやたらと丁寧に安置された生体ポットの中で

五体満足の彼女は、悠然と髪を揺らしながら眠っていた

「…っ」

我知らず、頬に水滴が伝う

肉体に、遺伝子に、魂に刻まれた記憶が、叫びを上げる

彼女こそが自分の仕えるべき主人だと

彼女こそが我等を統べる王だと言うことを

わたしは、肉体の震えから理解する

聖王

オリヴィエ・ゼーゲブレヒト

最後の聖王が、そこにいた

「…ぁ、くぁあ…」

『プロトちゃぁん?どうしたのぉ?』

頭に響く声なんか関係ない。何一つ彼女に関することなど覚えていないけれど、でも、それでも、彼女が、聖王が、生き返った、それを理解すれば、理解しただけ、脳の動きが止まる。思考が空回りし、歓喜が爆発する。

「…っ聖王、さまぁ」

ぼろぼろと溢れる涙もそのままに、ゆっくりと手を伸ばして――










衝撃








トラックに撥ね飛ばされたみたいな痛みと共に、身体が吹き飛ばされる。壁にぶつかり、跳ね返り、中に小さな脳ミソしか入ってなかった生体ポットに突っ込んで、ようやく止まる。

「やれやれ、どんな鼠が入り込んだと思いきや、予想外だな。まだ若い小娘の癖に、中々どうして」

響いた声はどこかで聞いたことのあるような可愛らしい声

「油断は禁物です。話かけるのは殺した後に」

冷静な声が頭上から響き、冷や汗を流しながら全力で待避、数瞬前までわたしが倒れ込んでいた場所に突き刺さったのは、とてつもない魔力量を誇る゙ピンク色゙の砲撃

「…なっ!?」

魔力光の色は変えられるものではない。それに何より、今の声は―――!?

「ボクを無視するなー!」

ぞくり、と背中に悪寒が走る。直感で飛び上がり、防御姿勢を取る。足下に突き刺さる金色の魔弾と、両腕に走る鋭い痛み

「はっはーっ!どうだ!ボクは強いだろう!」

金色の魔力刃の伸びる鎌を手に、大胆不敵に笑う少女。その表情も言動も、何一つ似付かないけれど――彼女はそっくりだった

「雷刃の、避けなさい」

「え?うわわわわっ!」

がしゅん!とカートリッジがロードされる音。目の前にいた少女はわたしが瞬きをする間に大きく距離を取り、わたしが体勢を崩したところに――

「ブラスト…ファイアー!」

ピンク色の砲撃が突き刺さる

「が…ぁ…!?」

非殺傷設定なことに疑問を抱きながら、激痛に耐える。けれど簡単に吹き飛ばされた肉体は中々思うように動いてはくれず、わたしは再び生体ポットの群れの中に叩き込まれた

今度は複数のポットが割れ、人口羊水と中途半端に人の形をした肉片がわたしの体に降りかかる。ガラスの破片が頬に突き刺さり、貫通していた。口の中に広がる血の味に顔をしかめる

「くっ…!」

がしょん、と首筋の医療用カートリッジが爆発する。壊れかけた肉体を強制的に治す激痛が全身を駆け巡り、意識が数瞬途切れる。――その代わり、ほんの数秒で身体は戦闘可能な領域まで回復されていた

「ほう、中々どうして面白いではないか。見ろ、傷が治ったぞ」

「闇王、私にはどこが面白いのか甚だ疑問です。…が、その戦闘に挑もうとする心意気だけは認めましょう」

「じゃなくて星光!さっきボクまで一緒に狙わなかった!?お前の砲撃当たるとすっごく痛いんだぞ!?」

姦しく話す少女たちの外見は、わたしにとても馴染み深いモノだった

「なのはにフェイト…。そして、八神はやての…」

にやり、と笑う銀髪の八神はやて。年齢は10歳前後でしょうか?戦闘スタイルが八神はやてと同じなら後方指揮型。潰すならコイツから

「そう、Fチャイルドだ。ジェイル=スカリエッティがどうにも怪しい動きをしているようでな、最高評議会の方々はもしもの時のために保険を用意したのだよ」

次に口を開いたのは…髪が少し短いけれど、わたしの最後の記憶に残るなのはの生き写し。目の色以外はなのはと変わらない少女。…この娘をどうにかしないと八神はやての偽物は倒せません。中距離殲滅型

「管理局の実力者のクローンに特別な教育を施し、忠実な管理局の駒とする。…今のところ成功例は私たち3名のみですが…」

最後に口を開くのは、髪が青いことを除けばやはりフェイトにそっくりな少女。高機動前衛タイプ。あまり頭が良く無さそうなので搦め手で潰せるでしょう

「その力は最強!最高!絶対無敵!ボクらFチャイルドに敗けはないよ!」

びしっ!とわたしを指指すフェイトの偽物。

…わたしはそれに、

「…はっ」

嘲笑で返す

「偽物風情が、偉そうに」

ぴしり、とFチャイルド達の表情にヒビが入る

「…取り消せ」

絶対零度の声に、背筋が震える。濃密な殺気に、身体が熱を持った

「今の言葉、取り消せ!」

殺意に燃える瞳が、わたしを貫き

直後に叩き込まれたピンクの砲撃が、戦闘開始の合図になった






――――
(感想)


ヤッチマッタイ

プレシアの研究資料と死体回収されてたら、これくらいは有り得る、と思いました

彼女たちは闇の書とは一切関係ありません

以下感想返し

>セッテ

人気過ぎて困った

俺の嫁だぞーっ!セッテとディードは俺がお持ち帰りするんだーっ!

プロト?ああどうぞどうぞ

>ワンピース

面白いですよね
…あれ?ここにリアクションするべきじゃない?
ちなみに私はアニメ派

>プロト×ナンバーズ

…さて、今の状況を見てMなのはさん一言

「どういうことなの…?」

あれちょ星光破壊光線はかんべ(じゅっ


>プロト

作者も彼の性別が解らなくなりつつある件

でもいるよねっ!乙女男!

姉っぷりがヤバいのに妹(男!)キャラとかもうね、自分でも「ちょwwおまww」ってね?



・プロトは皆の嫁?

で、そこんとこどうなのよ

ナンバーズ→「むしろお母さん?」×7

ウーノさん涙目

チンク×プロト(リバなし)がナンバーズのジャスティス



ではまた次回っ!



[16022] 不屈の心と試作品 sts シアニー
Name: 人春◆45d3e50a ID:ec8f6a96
Date: 2010/11/19 18:22

避ける、避ける避ける避ける避ける避ける避ける避ける

「くっそー!いい加減当たれよー!」

「やれやれだな雷刃、貴様の狙いが甘いせいで我の攻撃も当たらんわ」

ファランクスシフトとブラッディ・ダガーの混成絨毯爆撃を、足のバーニアを全力で動かし続けることで避け続ける。攻撃はおろか近付くことすら出来ない程の猛攻に、唇を噛む

「闇王、貴女の狙いが甘いのです。…ほら、このようにすれば当たる…いえ、中るではありませんか」

パイロシューター。小さく口の中でなのはの偽物――星光が呟けば、顔の目の前に1つだけ現れる光球、反射的に動きを止めた瞬間、金の魔弾と紅い短剣が迫る

「くっ…ISロード!プロト・ダイバー!」

召喚したドリルを最大サイズに巨大化、その影に隠れることで攻撃をやり過ごす

そしてそのまま三角垂の底面に右腕を突っ込み、固定。ロマンとかなんとかで戯れに付けたドリルアームモードが役に立つとは思ってもいませんでした

「喰らいなさい!」

けたたましい唸り声を上げるドリルを構え、全力で前進。僅かに驚いたような気配

「アロンダイト!」「ブラストファイア!」

二種類の砲撃。けれどそれはドリルによって切り裂かれる。僅かに余波でシェル・ケープが破損しましたが、予想範囲!

だが…

「光翼斬!」

「なっ!?」

瞬時に天井付近まで飛び上がったフェイトの偽物…雷刃が、魔力刃を飛ばす。腕がネジ切れそうな痛みに耐えてドリルを振り回し、どうにかその魔力刃は叩き落とす。けれどそれは――

「ルベライト」

次の攻撃のための、呼び水――!?

「…絶望に宿せ」

にやりと笑う闇王、その足下に展開される魔法陣

「エクスカリバー!」

放たれる三条の光線。両足には強固なバインド。既に避けられるスピードではない

普通ならば、ですが

「稀少技能ON!」

リング系の空間固定型バインドはわたしには通用しない。力を失ったバインドを振り切り、ドリルを縮小化、僅かに後ろに下がり――

「ISロード!プロト・レイヴ!」

対象の重力干渉を操るIS。プログラム通りにしか使えない魔法は、゙重力を受けている状態で直進する゙、という条件の元に発生している、ならばその重力干渉を解除すれば…!

「なにっ!?我が宝剣が!」

明後日の方向に飛んでいく!

「ぇっ!?ちょ、なんでボク!?」

しかも運良くエクスカリバーが向かった先には雷刃がいる。慌てて回避行動を取る雷刃

「ISロード!プロト・インパルス!」

――に、肉薄し、インパルスブレードを振るう。正確に首を狙った刃は、吸い込まれるように彼女の首に――

一瞬、雷刃の顔に彼女の姿が重なる

僅かに速度が落ちる刃。けれど迷いは振り切り、雷刃の首を落とさんと――

「ダメ」

ぼそりと耳元で聞こえた声。聞き覚えのない声に、驚愕する暇すらなく。

わたしの右腕は切断され、雷刃の首を狙った攻撃は空を切った

「なっ…!?」

驚愕、混乱、絶句。けれど再び時は動く。右腕がずるりとズレ、床に向かって落ちる。視界の端に黒い髪。背中から回された柔らかな手が顔当てられ――

「がああああああっ!?」

雷が迸る。機械部品が大量にショートし、エラーが乱立する。視界が一瞬で真紅に染まり、焦げ臭い匂いが辺りに漂う

「あなたはありしあ?いるの?ちがうの?ありしあはいるの?どこに?わたしはどこにいくの?いくの?あなたはここにいるの?」

矢継ぎ早に繰り返される質問。舌ったらずに響くその声に含まれた狂気。ぞっとするほどの濃密な感情に恐怖し、痺れが走る体で背後にいる誰かを蹴り飛ばす

ぐしゅ…!とやたら水っぽい音と共に、存外簡単に背後からの襲撃者は吹き飛び、生体ポットの中に突っ込む。驚いたような顔をした雷刃が、わたしを睨み付けてから慌てて蹴り飛ばされた人の救援に向かう

「なっ!貴様!」

「無事ですか?」

意外なことに闇王、星光の2人も襲撃者の救出に向かったようですね。ぐしゃり、と背中から床に叩きつけられながらも思考だけはフル回転。クアットロに連絡…駄目ですね。いつのまにか張られていた結界のせいか通じません

…ならば第2案、わたしからの定時連絡が途絶えた場合、3分でセインが救出に来てくれる予定になっています。ならば、至急聖王陛下の生体ポットを確保し、セインと共に脱出。これが今のところ一番です。その為にも結界破壊だけはしなくては

「しっかりしろシアニー!傷は浅いぞ!」

「星光、お薬!シアニーにお薬持ってきてー!!」

「既に投与済みです。これ以上の薬物投与は成長に悪影響が…」

…隙だらけ、ですね

倒せるなら倒しておくべきでしょう。…プロト・バレルは右腕が切断されてしまったせいで使用不可能。ならば…

「ISロード…プロト・ストーム」

20発の輝く光弾。それを間髪入れずに射出。同時に体内のカートリッジをロード。次弾の準備は済ませておく

「む…!」「くっ!」「ぼ、ボクは防御は薄いんだってば!」

闇王、星光が二人がかりで防御魔法を使い、黒い髪の少女を抱き上げた雷刃がその背中に隠れる――よし、ここまでは予想通り

「くっ、貴様!我等が母に牙を向いた報い、受けてもらうぞ!」

「塵も残さず消して差し上げましょう」

「よく分からないけど…シアニーを傷付けた報い、受けてもらうよ!」

黒髪の少女を背中に守りながら、彼女たちは一斉にデバイスを構える

「絶望に宿せ!」

「集え赤星…全てを焼き消す炎となれ…!」

「雷刃!滅殺!」

振り上げられるデバイス。…わたしは背中に聖王陛下を背負う形ですが、彼女が聖王であるという確信を得た今、なんの心配もする必要はない。むしろどうやって目の前に迫る、この部屋全体を残さず焼き尽くさんとする魔力の塊を避けるかに腐心しなければ…万がかすっただけでも手足の一本や二本吹き飛びそうな威力でしょうからね

「ISロード!ブレイズ・ライナー!」

プロト・ブレイズとプロト・ライナーの合成IS。ブレイズ・ライナー

展開したインパルスライナーの左脚甲に真紅のエネルギーが集まり、赤熱する。ノーヴェならばこのエネルギーを更に変化させられるのでしょうが、わたしはエネルギーを集めて破壊力を強化するのが精一杯

「エクスカリバー!」

「ルシフェリオン!ブレイカー!」

「極光斬!」

放たれる3つの膨大な魔力。それが妙にゆっくりに感じられる。よくよく見れば彼女たちが手加減していることが分かる。さっきから非殺傷設定なのは恐らくわたしの背後の聖王陛下や、そこら辺に大量に転がってる聖王陛下の部品を下手に壊さないように配慮しているのだろう。まぁ、わたしには対して関係ありませんが

「はぁっ!」

気合いの声と共に左足を床に叩き付ける。酷くあっさりと特殊合金製の床は破壊される。震脚の勢いそのままに、わたしは床下に落下。頭上を強大な魔力の塊が通り過ぎていく

『―――やっと繋がった!プロトちゃん、無事?』

――そして当然、その馬鹿みたいな魔力によって結界は破壊される。頭の中に響くクアットロのキンキン声に顔をしかめながら、苦笑いで返す

「右腕損失、体内の機械部品の7割がショート、医療用カートリッジシステム一本使用、並びにレリック・コアのシンクロ率が70%を切ってます。有り体に言えば満身創痍です」

――まぁ、だからこそ

敵は逃がしてくれないのですが

目の前に転移魔法陣が埋まれ、そのなかから這い出るように黒髪の少女が現れる。年は10歳前後、瞳孔が完全に開いた虚ろな目と、黒いローブのようなバリアジャケット、手に持ったデバイスは見た目こそ管理局員なら誰でも持ってる支給品ですが、全身にのし掛かる圧迫感は最上級

『…あと30秒、持つかしら?』

『持たせます』

こんなところで死んでられませんしね。わたしが死んだら死体からジェイルのことがバレてしまうですし

緊張感に汗が伝う。左手だけで構えをとれば、頭をふらふらと揺らしながら黒髪の少女――シアニーは口を開く

「しあ?しあにー?しあにーはわたし?あなたは?あたしはだれ?わたしはあなた?あなたがありしあ?わたしはありしあ?ありしあ?ありしあってだれ?」

「…意味わかんねーんですが」

口の端からごぽごぽと血を流しながらも意に介さず喋り続けるシアニー。…しかし、アリシア?

その名前に痛みを伴う記憶が蘇る。あの後味が苦すぎた事件が

「そう、貴女の想像している通りです」

「シアニーはプレシア・テスタロッサをオリジナルとしたFチャイルド」

「プレシア・テスタロッサの死体を管理局に提供されたからこそシアニーは産まれることが出来た」

そしてそれは、彼女たちも同じ

高町なのはをオリジナルとした、砲撃特化のFチャイルド

「ネーム、【星光の殲滅者】。…挨拶が遅れて申し訳ありません」

八神はやてをオリジナルとした、後方指揮型にして補助能力も高いFチャイルド

「ネーム【闇統べる王】。この名を持って闇に沈むが良い。貴様には過ぎた栄誉だろう?」

フェイト・テスタロッサ・ハラオウンをオリジナルとする、高機動前衛型のFチャイルド

「ネーム、【雷刃の襲撃者】っ!どうだ、かっこいーだろ!?」

…そして

「我等が母にして万能の天才」

「高威力殲滅万能型、」

「ネーム【大魔導師】」

『シアニー・アンミリテッドデザイア』

けたけたと狂ったように笑うシアニーに、3人の少女が寄り添う

「…はっ、残念過ぎて何も言えねーです」

腐ってる腐ってるとは思ってましたが、まさかここまでとは

「…ほぅ、追い詰められて尚憎まれ口を叩くとは。中々見所があるな、貴様。どうだ、我が部下にならぬか?なるならば命のみは助けてやるぞ?」

「闇王、勝手なことを言わないでください」

「そーだよ!どこの組織の手のヤツかは分かんないけど、聖王のマテリアルを見られたからには殺さなきゃ!」

途端、あーぁ、言わなきゃ分かんなかったのに、と言わんばかりの視線が雷刃に突き刺さる。雷刃は首を傾げる。とりあえず頭は悪いらしい

「…まぁ、なんとなく想像は付くから構いませんけどね。プロト・グレイランド(♂)さん」

…(♂)に激しく突っ込みたいんですが

「…確証を取るためにも、死なない程度に痛め付けて捕獲します」

ちゃき、とシアニー以外がデバイスを構える

けれど、それは、

「無理ですね」

わたしが口を開いた瞬間、地面から伸びた手がわたしの足首を掴む。わたしは抵抗することなく、そのまま床の中に沈み込んだ

「なっ!?」

驚愕しながらも射撃魔法を射出する3人。けれどもう遅い。耳元で「ごめん、遅くなった」と小さな声。わたしはセインに抱えられたまま、無機物の中を泳ぐ

『貴女たちの主に伝えなさい。変わりは用意した。逆らうならば容赦はしない、と』

頭の中に響く念話。代わりとはシアニーで、主とは…くそっ

『そして聖王のマテリアルは渡さない、と』

…残念ながら、既に諦められる領域じゃないんですよね

心中で大きな溜め息を吐きながら、わたしはゆっくりと目を閉じた



―――
(作者)

久しぶりの更新

待たせてしまって申し訳ない

アホやってました

出来れば年内に終わらせたかったが…無理っぽいです

以下感想返し


・何故に魔力光が同じ色?

クローンだからです
ぶっちゃけ半分適当です
プロトに揺さぶりかけたかっただけです(キパッ


・最高評議会

嫌われてるに決まってます(キパッ
予算は大量に持ってくはなんか裏でこそこそしてるわ…

嫌ってないのは同類だけでしょう


・ナンバーズジャスティス

生暖かく見守ってあげましょう



[16022] 不屈の心 side:N
Name: 人春◆45d3e50a ID:870f574a
Date: 2010/12/22 01:36

side:Nはナンバーズ

side:Kは機動六課と見てください

ちなみに同じ場面は書きません。この回はナンバーズ側から、あるいは機動六課側から、あるいはプロト側から、という書き方をします

ぶっちゃけ実験です

ご了承ください












side:N

「おー、案外なんとかなるもんッスねー」

「そうだな」

ウェンディの言葉にこくりと頷くノーヴェ。がたん、ごとんと規則正しく揺れるモノレールの天井で、けれど2人はなんの問題もなく直立している

「固有武装が未完成だから不安だったッスけど、存外このデバイス使えるッスよ?」

かちゃかちゃと片手で持った機械的なデザインの小さな洋弓を弄る。絃に当たる部分がないために、ぱっと見ると一風変わったデザインのハンガーに見えないこともない。持ち手には【アグニ】と小さく掘られている

「わざわざ言われなくても分かってんよ。ほとんど同じの使ってんだから」

はぁ、と溜め息を吐くノーヴェの手には、小振りな片刃のナイフ。腰にベルトと鞘があることから見て取るに、デバイスではあるが待機形態は無いのだろう。刀身の腹には【イグニス】と掘られている

「いやいや、同じってことはないッス!何よりノーヴェのは兄ちゃんが直々にカスタムした特別製じゃないッスか!愛されてるッスねー」

にやにやしながらツンツンノーヴェの脇をつつくウェンディに、ノーヴェの顔に朱が混じる。事実、ナンバーズ全員に与えられた新デバイス―――【イグニス】と【アグニ】、その中でプロトがカスタマイズしたのはチンクとノーヴェのソレだけだった

ちなみにプロトは全員分カスタマイズするつもりはあったが、動作データが集まっているのがよく模擬戦をするチンクとノーヴェ、そしてトーレだけだったのだ。スカリエッティのラボではトーレのイグニスをカスタマイズ途中で放置されていたり

「あたしのどうもしっくり来ないんスよねー、いつも誘導弾なのに、コレで撃てんのが直射弾オンリーってのもあるんスけど」

「知らねーよ…」

そりゃあたしが近接戦闘しか出来ねーこと知ってての当て付けかよ…。と小さく呟く。

「…ん?」

ノーヴェが首を傾げる。ウェンディもまた不快そうに眉根に皺を寄せ、虚空を見上げる

「来たッスね、機動六課」

「だな、あっつー間にガジェットが潰された」

陽動の為にそれなりの数を確保してきたガジェットが潰された。だがモノレールの制御権はまだ残っていることから考えれば、これから主力部隊がモノレールに乗り込んでくるのだろう、と推測。…いや、主力でガジェットを殲滅し、後詰めでモノレールを制圧するつもりか?と首を傾げる。どちらにしてもこれから戦闘になるのは間違いないだろう

「セインに迎えを頼むか?」

「2人は同時はキツくないッスか?一番いいのは返り討ちなんスけど」

…それもいいかもしれない。ただし、固有武装があったら、の話だが。ノーヴェは内心で嘆息。プロトとチンクがたっぷり愛情(笑)を注いでくれたおかげか、タイプゼロの2人に対するコンプレックスは、ほとんどない。だが、僅かに残った胸のしこりが疼く

だがその考えを振り払い、ノーヴェは言う

「安全策を取ってわりぃこたぁねぇよ。無駄に戦う必要もねぇし、適当に叩いて逃げるぞ。ディード達に転送準備させとけ」

りょうかーい、と軽く答え、仲間に連絡を取るウェンディ。その耳に、爆発音が響く。断続的に続くその音は、モノレールの最後尾から続いているようだ

「…はえぇーな」

「そッスね。…画像受信完了ッス。赤毛のショタっ子と…タイプゼロ・セカンドッスね。後続は2人、どちらもニアAランクってとこスかね?」

内心で舌打ちしながらノーヴェはイグニスを抜く。自動的に左手を内側から装甲が覆い、籠手へと変わる

「下がってろウェンディ。援護は任せた」

「了解ッス」

ガジェットⅢ型を召喚し、その影に隠れるウェンディ。爆発音はすぐそこまで迫っていた

「IS――ブレイクライナー」

出現する黄色い空への道。螺旋を描くようにモノレール全体を包み込むように伸びるエアライナー。これだけはプロトにすらコピー出来ない先天技能。…もっとも、タイプゼロの2人は使えるはずだが

「なっ…!?ウィングロードっ!?」

扉の向こう側から驚愕したような気配と共に聞こえる声

「…」

左手に装着された籠手にイグニスを嵌め込む。途端、産まれた焔が左手を包み、身体に力が籠る。イグニスの力は身体強化と簡易な炎の操作能力。もともと身体能力が高い戦闘機人の身体に、更なる熱が灯る

「おっ…ラァアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」

扉ごと拳を叩き付ける。棒立ちになっていたタイプゼロ――スバルはなすすべもなく拳の直撃を受け、苦痛に顔を歪ませながら吹き飛んだ

「スバルさんっ!?くっ…このっ!」

即座に反応したエリオがストラーダを構え、紫電を纏う。体格に見合わぬ長槍を振る――おうとして、足下に突き刺さった焔の矢に飛び退く

「ウェンディ、お前下手になってねぇ?」

『んなっ!?あ、当てないようにしたんスよっ!』

アグニはエネルギーを焔の矢に変えて打ち出すことに特化したデバイス。威力よりも貫通力に比重を置いた矢は、生半可な防壁くらいならば簡単に貫く――のだが、当たらなければ意味は無い

『いきなり殺したら不味いじゃないスか。現状、明確に゙白゙で独立した組織なんざ、機動六課くらいしかないんスよ?』

ちっ、と小さく舌打ちする。視界の端で立ち上がるスバルの姿に、いっそ最初の一撃で決めておけば良かったぜ…と思ったり思わなかったり

「くっ…まさか、戦闘機人…!?」

「だからなんだよ、タイプゼロ・セカンド」

「っ!?」

スバルの体に動揺が走る。その隙にノーヴェは足下を爆発させ、瞬時に距離を詰める。

がんっ!っと甲高い音が響き、ノーヴェは面白いモノを見て笑みを浮かべる

「やるじゃん」

「…っぅ…スバルさんに手を出すなっ!」

ストラーダの細い柄でノーヴェの重い拳を受け止めたエリオ。バチバチと弾ける雷撃が身を撃つ前にノーヴェは身を引き、追撃をかけようとしたエリオはその身に迫る焔の矢に顔を歪める

「スバルさん!援護を!」

「ぇ…ぁ、うんっ!」

呆然としていたスバルだったが、エリオの言葉に慌てて構えを取る。まだ動揺が抜けきってはいないようだったが、それでも目には戦意が宿る。身体からは蒸気のように魔力が漏れだし、リボルバーナックルが回転する

対してノーヴェは表情を歪める。流石にウェンディの援護があってもエリオとスバルを同時に倒すのは難しい。…特に殺さずにいなすのが難しい

「ちっ、めんどくせぇ…」

ぽりぽりと頬を掻きながら、改めて構えを取る。

「来いよタイプゼロ・セカンド。…潰してやる」

「…つっ!」

表情を歪め、マッハキャリバーで走り出すスバル。突然の行動に驚いたエリオが慌ててフォローに入ろうとするが、動き出した瞬間に視界に飛んできた焔の矢に動きを止められる

「はっ!動きだけは速いなぁっ!」

リボルバーナックルと炎の拳がぶつかり合い、火の粉を散らす。ほぼ同時に身体を反転させ、似た動作で放たれる回し蹴りがぶつかり合う。硬質な音とともにスバルは理解する。目の前の少女は自分と同じ存在で、自分と同じ技を使い、自分と根元を同じくする者だと

だからこそ、スバルの思考が真っ赤に染まる

「こん…のぉおおおおおおっっっ!!!」

「おおおおおおおおおおおっっっ!!!」

突き出される拳を弾き、蹴りを放ち、体当たりするように肩からノーヴェの身体に突っ込む。だが、ノーヴェは腰を落とし、同じく肩を突き出すようにして体当たりを受け止める

『ノーヴェ!やばいっ!離れてるっスっ!』

「ああっ!?ってうぉ!?」

間近に迫った光線とオレンジ色の弾丸に驚愕し、スバルの身体を蹴って距離を取る。

「スバルっ!エリオっ!無事っ!?先行しすぎだって言ったじゃないっ!」

両手にクロスミラージュを構えたティアナが、成体のフリードに乗って飛び込んでくる。その背には涙目のキャロがいて、キャロは全力でティアナのブーストをしていた

「フリードっ!?でかっ!?」

「キャロ、やったんだねっ!」

フリードの大きさに驚くスバルと、ついにフリードの制御に成功したらしいキャロの姿に喜びを顕にするエリオ

「ぅ、ぅん…。ティアナさんのお陰で…」

なんとなく歯切れの悪いキャロに首を傾げつつ、エリオが口を開く

「時空管理局遺失物対策課機動六課、ガードウルフ分隊エリオ=モンディアルです。今すぐ抵抗を止め、投降していただければ危害は加えません」

凛としたエリオの横顔に、スバルが「わ、私より局員っぽい…!?」と驚愕し、ティアナは「へぇ…」と好意的な視線を向ける。キャロはなんとなく熱っぽい目でティアナを見ている。あれ?

「…ちっ」

ノーヴェは舌打ちし、イグニスを籠手から外す。エリオとスバルがどこか安堵したような気配を発する中、ティアナは油断なくクロスミラージュの銃口をノーヴェへと向ける。やりにくい相手だな、と渋面を作るノーヴェ

「ウェンディっ!」

「あいよぅ!」

イグニスをモノレールの床に向けて投げつけながら、妹の名を呼ぶ。空からガジェットに乗って現れたウェンディがノーヴェの身体をかっさらい、飛び去る。慌てて追おうとしたティアナだったが、目の前に現れた焔の壁に阻まれる。焔の壁は、床に突き刺さったイグニスから発生していた

「くそっ…逃げられた」

苦虫を噛み潰したような表情で言うティアナ。すでに遠い空の黒点でしかない2人を、全員が視線だけで追いかける


これが、歴史上はじめてとなる戦闘機人との邂逅だった











おまけ


「スバルっ!?エリオっ!?応答しなさいっ!」

「どうかしたんですかっ?」

必死で走りながら隣を走るティアナに問いかけるキャロ

「2人を先行させたのが仇になったわ…。正体不明の敵を確認、戦闘に入ったらしくて念話通じない」

「えっ…!?」

驚きのせいか、動きが止まる。ティアナもまた、難しい顔でキャロを見た

「キャロ…。竜魂召喚、行けるわね?」

「っ!?」

なぜそれをっ!?驚きと恐怖に後ずさるキャロに、厳しい表情のティアナは言う

「悪いとは思ったけど、パーソナルデータを見せてもらったわ。…制御が出来ないのよね?」

「…」

こくり、と頷くキャロ。ティアナはそんなキャロの肩に手を置き、真摯にその目を覗き込みながら言う

「貴女なら、出来る」

「な、なんで…?」

何でなんの根拠も無しにそんなことが言えるのか。それが不思議で、怖くて、キャロは震えながらティアナから目を逸らす

けれどティアナは、ふっと優しい目で微笑みながら

「私たちと一緒にあの訓練を…あの地獄の訓練を突破してきたキャロ・ル・ルシェに、出来ないはずがないじゃない」

「…ティアナさんっ!」

脳裏に浮かぶのはピンクの砲撃。吹っ飛ばされる仲間たち。隠れようとしても壁をぶっこわし、逃げようてしてもバインドが追い掛けてきて、模擬戦の度に医務室送りになる地獄の日々

確かに、あの地獄の中で魔力制御の特訓をした私なら、私たちなら―――

「やりますっ!やってみせます!」

「んっ、良い返事!行くわよキャロっ!」

「はいっ!ティアナさんっ!」

こうしてキャロ・ル・ルシェはトラウマを乗り越えた

その影には、バグキャラのような鬼の教官と、天然タラシな少女の姿があった






――――
(作者)



今回はそこまで時間かかってないよね…?

かっこいエリオとティアを書きたかったか

後悔はしていない






感想返し


>>やばいよシアニーさんっ!

次回はプロトsideに戻って、シアニーさんの狂いっぷりの説明会だったり

うん、ようするに投稿する順番間違えたんだ( ̄▽ ̄;)


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.34964799880981