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[15824] 久瀬の野望 将星録 ユーノ&なのはvs範馬勇次郎編【ネタをネタだと見抜けないと難しいSS part77】
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:acfa1651
Date: 2011/03/13 17:09
【ネタをネタだと見抜ける人でないと難しい】


よしわかった、説明しよう
これは糞SSだ
ネオアミバが創り出したSSの一つ。いや、台本か
人類が決して辿り着く事の出来ないバカの境地として、ネオアミバが読者に与えたいらない物だ
昔U-1が起こした大きな流行の時にな。あの時はホント…まいったよ

さっ、まずは読んでみるか

フーンフッフッフッ…♪

見ての通り、笑いどころすら分からないくだらないSSだろ?
懐かしいなぁ…私も(昔の作品を)見るのは久しぶりなんだ
一体どんな素材で出来ているのか調べればわかるだろうが、すまない、私には興味がないんでね

詳しいことはまた読者達にでも聞いてみるんだな、誰か知ってるんじゃないか?

ネオアミバはこれを真面目に書いていると噂を聞いたことがある。私はそんなところは見た事ないがね(全部手抜きだから)。



おっと、驚かせてしまったようだな

これは人の言うギャグでも壊れでもない、いわばネオアミバのみが創り出せる糞SSだ。
ただパクるだけでなく、釣りも形成出来る。例えばこの無数の感想レス
気をつけろっ、触れると一瞬でファビョってしまうぞ?
ファビョるとは何かだって?(笑い声)それは昨日言っただろ

あっ・・・すまない、読者にとっては『明日』の出来事か

いやもっと先だったかもしれないなぁ
その日が来たらまた説明しよう。









以上の内容は全部ジョークです。悪ノリして書いたものなので、テキトーに流してください。決して真面目に捉えないでください。マジレスされても何の責任も取れません。

ちなみに誤解を招かないように断り書きをいたしますと、「つまらない」など、不愉快に思うとの書き込み自体に、私、作者と致しましては不都合なことは一切ございません。ってか、どんどん書いていただいても「私は一向に構わん!!」

また、自意識過剰かもしれませんが、某掲示板でクソミソに言うのも一向に構いません。そこから生まれるネタもありますし…

…そういうわけで、感想を書き込まれる方は、これからもご指南のほどよろしくお願いいたします。(捨て台詞は勘弁してください。ガチでヘコみますので……)






*改めて注意書き

私への注意、悪口、誹謗中傷等を感想掲示板に書くのは、私は一向に構わん!…のですが、まったく関係ない方に対してそういうのを書くのはなるべく控えてくださるよう、どうかよろしくお願いします。



はじめに…
このSSはKanonの駄作SSのつもりでしたが、だんだん黒猫みたいないろいろごっちゃ混ぜの糞クロスオーバーSSになってしまったわけでありますが……
っていうか、もはやなんのSSだかわからない……



そんなに真面目に書いているSSでもなく、思い付きと他読者の意見のみで構成されている糞SSです。
よそに投稿しろといわれれば、まあ、そうかもしれませんが、仕事帰りにちゃちゃっと暇つぶし的にネタを書きたいだけなので……
……ってか、今更HP作ったり他所に掲載するのがかったりぃ……わけでございます。



とりあえず、本編の簡単なストーリー紹介と主要キャラの紹介。



ストーリー(まあ、本編のネタバレ…)

Kanon本編ALLEND後…
祐一があゆとイチャライチャラしている傍ら、久瀬は今までどおり最低の生徒会長を続けていた。
その最低の生徒会長は、どこから調べ上げたのか『えいえんの世界』の存在を突き止め、それを悪用しようとしていた。
その一方で、舞の事件のことも調べ上げていくうちに、もうひとりの舞である『ちびまい』が、ある目的のために『みずか』とは異なるえいえんの世界を作り上げていた。
彼女はある目的を達成するため、えいえんの世界を研究している…かつての舞の敵であった久瀬を呼び寄せたわけで……



久瀬
代表作…Kanon 初登場…第一話
ジョブ…外道 アビリティ…ほくとしんけん・ジャム

最低の外道で『ジャム仮面』により北斗神拳とザ・ジャムを継承する。
Kanon本編では、川澄舞の非行(尾崎)行為を利用し倉田佐祐理を生徒会に引き込もうとした小物。結局、相沢祐一と舞の友を思う心が勝り、久瀬の謀略は失敗する。
その後(Kanon本編ALLEND後)の話が『久瀬の野望 Kanonの系譜』へと繋がっていくわけである。
久瀬はどこかで『えいえんの世界』の存在を知り、それを我が物にしよういう小物に不相応な野望を抱いた。しかし、まいと知り合い『えいえんの盟約』を結ぶことにより、逆にえいえんの世界に取り込まれていくこととなる。
えいえんの世界の中で、まいが匿っていた翼人『神奈』と出会い、彼女にかけられた呪いと1000年の哀しみを知る。そして久瀬は、神奈をその哀しみから救うことを決意する。
現実世界で元カノである美坂香里、部下の天野美汐を欺きながら神奈の呪いを解くための実験を繰り返す中、同じくえいえんの世界を狙う男、『氷上シュン』と対立。数多の人を巻き込む大激戦となったが、相沢祐一、月宮あゆの愛の力でそれを倒す。
その後、元カノの香里に見送られながらえいえんの世界に行き、自らに対する記憶を全て消去した上で『AIR』のシナリオに介入。国崎往人、神尾観鈴を導き神奈の魂を救い、1000年の哀しみに終止符を打った。



まい
代表作…Kanon 初登場…第一話

哀しい過去により川澄舞の片割れとなったちびまい。
見えない『魔物』として夜の校舎において舞と戦い続けていたが、相沢祐一と邂逅し、祐一、舞と和解し姿を消した。
1000年の悲しみを繰り返す、翼を持つ少女『神奈』をえいえんの世界に匿っており、それを救うために久瀬をえいえんの世界へと導き『えいえんの盟約』を結んだ。
父親がいない環境で育ったせいかファザコンっ気があり、久瀬に対しては過度の信頼を寄せている。



天野美汐
代表作…Kanon 初登場…第一話

生徒会役員で久瀬の後輩。沢渡真琴の真実を知る数少ない人間で、自分も過去に『人間に化けた妖狐』を失い傷ついていた(けっして獣姦趣味ではない)。
いつも久瀬の貧乏くじを引かされるが、徐々にえいえんの世界へと取り込まれていく久瀬を心配しつづける健気な一面もある。
でも、友達いない……



美坂香里
代表作…Kanon 初登場…第二十九話

久瀬の元恋人で現在宿敵のシスコン。北斗琉拳を極めている。
妹の美坂栞に何よりも愛情を注いでいたが、その栞の生死の境で絶望し、愛深き故にその愛を捨てた。
「こんなに苦しいのなら!こんなに哀しいのなら!愛などいらぬ!!」
その愛への渇望から久瀬への愛に固執するも、久瀬はそんな香里に辟易しており倉田佐祐理を追いかけていた。
久瀬がえいえんの世界へ取り込まれる中、唯一久瀬の記憶が消えなかった人物であり、力ずくで久瀬のえいえん行きを阻止していた。
かねてより久瀬との決着を望んでいたが、氷上シュンとの最終決戦後、久瀬は翼人にかけられた呪いにより蝕まれており、結局、決着をつけることなくえいえんの世界へ行く久瀬を見送り、最終的には北川潤と結ばれた。



このSSは、人任せのテキトーSSであります。
ゆえに、まあ、感想なんかでどうすればいい、こうすればいいという意見は随時受け付けております。
自由度の高い駄作ではありますが、どうかよろしくお願いします。
尚、感想掲示板にて、文末の選択肢の答えの番号を書いていただければ幸いでございます。

また、感想掲示板ではパーティ選びも募集しております。久瀬以外の二人のメンバーを選んでいただければ幸いです。






























追伸
このSSは差別的表現は含まれておりませんので、学○員及びΩ信者等の宗教関係者、竹島を独島と言い張る非常識人、左翼団体関係者も安心してお読みください。



[15824] 仲間キャラ大図鑑(追加のたびに更新します)
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2011/01/24 19:11
春原陽平
代表作…CLANNAD 初登場…第三話
ジョブ…エセ不良 アビリティ…かくれる・すてごま

岡崎朋也の悪友にて完全なる三枚目。バカ・アホ・マヌケ・ヘタレの四重苦で、普段ろくなことを考えないからろくな結果にならない。
基本的に悪人ぶってはいるが、これでもいいお兄さんである。無論、昨今のマンガでありきたりのシスコンのキモイ近親相姦野郎ではなく、リアルにいいお兄さんであるので、その辺はまだ救いがある。
一応、サッカーがうまいのだが、このSSでそんなスキルが役に立たないことはいうまでもない。
このSSでは主にボケ役でありつつ、久瀬の外道行為に一番振り回される人物でもあるが、半分は自業自得なのであまり同情の声は上がらない。たぶん……
基本低ステータスであるが、HPと運のよさだけは異常に高い。



ロックマン
代表作…ロックマンシリーズ 初登場…第八話
ジョブ…ロボット アビリティ…バスター

ライト博士の作った家事用ロボだったが、Drワイリーの世界征服の野望を止めるため戦闘兵器に成り下がった悲しき玩具。十数回もワイリーの野望を阻止した功績はお見事。
人間以上にまともな性格であり、人間以上に性格の悪い面々ぞろいのこのパーティではもっとも気苦労の耐えない人物であろう。
ロボなので防御力は高いがHPが低いため一撃でティウンティウンになる可能性も高い。しかし、このSSではあらゆる属性の敵が出てくると予測されるため、ロックマンのバスターはあらゆる場面で活躍できる。まさに初心者向けのキャラである。



古手梨花
代表作…ひぐらしのなく頃に 初登場…第十一話
ジョブ…時を駆ける幼女 アビリティ…L5

雛見沢症候群の根源。100年の魔女であり、古手神社の一人娘で発育不全がコンプレックスの『梨花ちゃま』であるが、まあ、今日日のペドどもにはもてはやされることであろう。
100年も自分が死ぬ歴史を繰り返すのは拷問に近いものがあり、神奈やディアボロ(ジョジョ第五部)とはいい勝負である。もっとも羽生にも言われたことではあるが『自身』で問題を解決する努力をしないようではどうしようもないのではあるが。
ちなみにワインが好きらしいが、未成年として扱うべきか100歳以上として扱うべきかの判断は難しいところ。法的には完全に未成年であるのだが……
HP・攻撃・防御は低いが知性に特化しておりステ異常には強い。しかし追い詰められると弱いなど精神的にもろいところもあり、上級者向けのキャラであるといえよう。



バンデット・キース
代表作…遊☆戯☆王 初登場…第十五話
ジョブ…デュエリスト アビリティ…デュエル・せいれい

かつて全米一のカードプロフェッサーだったが、トムに負けて没落…トムの勝ちデース!
目的・勝利の為なら手段を選ばない『アメリカヤンキーのクソ商売根性』そのまんまの人物ではあるが、凡骨相手にイカサマした挙句に敗北。ペガサスに自分の指を拳銃代わりに強制自殺させられる。ナンマイダブ。
『遊☆戯☆王R』では天馬夜行の計画の実験体として蘇生。邪神イレイザーを使うも再び凡骨に敗れる……ここまで来ると笑うしかない。
ステータスは平凡であるが、カードを使って召喚されるモンスターは強力である。
リビングデッドの呼び声の効果で蘇生させた『煉華(烈火の炎)』を新たにカードとして加え使用可能となった。その能力は、墓地に送られた機械族モンスターを自らの炎として扱うというものであるが、紅麗の紛い物であることは言うまでもない。



涼宮ハルヒ
代表作…涼宮ハルヒシリーズ 初登場…第十八話
ジョブ…SOS団団長 アビリティ…せかいこうちく

黄色いリボンカチューシャがトレードマークの一見美少女。だが、その正体はキチガイな厨二病である。
その上、本人は無自覚ながら「どんな非常識なことでも思ったことを実現させる」能力を持っているため、タチの悪さでは範馬勇次郎にも匹敵するといえる。もっとも、その根底に常識思考があるあたり、真性キチの学会員やΩ信者、南朝鮮人らと比較すればまだ生ぬるい。
また、「恋愛感情は一時の気の迷いで精神病の一種」という持論を持つが、そんなものは童貞がSEXを語るようなものであり、非常に滑稽である。
身体能力が高いためか、攻撃、素早さは非常に優秀。アビリティの使いづらさを除けばかなり優秀なキャラである。



キョン
代表作…涼宮ハルヒシリーズ 初登場…第十八話
ジョブ…SOS団団員 アビリティ…ガイアドライブ

本名不祥……なんだかクロマティ高校の北斗の子分を髣髴させる。理屈っぽく事なかれ主義であり妙に故事成語に精通している。しかし、ハルヒの度が過ぎるキチガイ行為や仲間の危機に啖呵を切るなど熱い面を持ち合わせている。
ハルヒに対しての恋愛感情は不明ではあるが、ハルヒの能力を開眼させるきっかけを作った諸悪の根源であることは確かである。
みくるに対する態度を考えるに、彼が「おっぱい星人」であることは疑いようのない事実である。
ステータスは基本的に低いほうだがHPと精神は優秀であり、持久戦で能力を発揮すると思われる。
新たにアビリティとして仮面ライダーへの変身も可能となったため、戦力としても活用できるようになった。



斉藤一
代表作…Kanon 初登場…第三十一話
ジョブ…南斗水鳥拳伝承者 アビリティ…なんとせいけん

久瀬の学校の生徒会副会長で、いつも久瀬に振り回されている。Kanonでは本来モブなしのキャラで、苗字のみの登場。ちなみに名前は「かず」と読み「はじめ」ではない。
とかく義に篤い男であり、特に彼女である水瀬名雪に対しては命さえ投げ出せる、ある意味アブない……
見た目は美人な女性なのだが、彼は男でありそれがコンプレックスとなっている。
素早さがケタ違いに高い反面、HP、攻撃、防御が低い。しかし、アビリティの南斗聖拳は防御無視でダメージを与えられるため、敵の攻撃にさえ当たらなければ安定した戦闘要因となれる。



中野梓
代表作…けいおん!! 初登場…第三十四話
ジョブ…軽音部部員 アビリティ…うたう・トランス

桜ヶ丘高校軽音部部員にて、唯一の後輩。両親がジャズバンドをやっていた影響か、演奏技術は非常に高い。
澪のことを慕っている一方、唯に対しては他のどの先輩に対してよりも率直に物を言う。
しかし、まともなことを言っている割にその意見を聞き入れてもらえるわけでもなく、唯に「あずにゃん」と呼ばれあまつさえネコ耳をつけられいじられるあたり、クロマティ高校の前田を髣髴させる。
ステータスは素早さ以外は低いものの、アビリティのうたうは戦闘補助で役立ち、トランスはテンぱってネコ耳装備し、ステータスを各段的に上げるほか、うたうの効率も上げる。上級者向けのキャラである。



四十宮綴子
代表作…殻ノ少女 初登場…第四十三話
ジョブ…改造人間 アビリティ…きかい

櫻羽女学院の生徒で時坂紫の親友。明るく活発な性格で文学にも通じている。作家デビューする予定ではあったが、その好奇心につけこまれて憧れの『葛城シン』先生にホイホイついていった挙句に意識があるまま惨殺される。いや、いくら大先生とはいえ少しは警戒しろよ……
普段は標準語であるが、感情的になると博多弁に戻る。「トジ子ってゆーな!!」
このSSでは死亡寸前のところを久瀬に発見され、改造されサイボーグとして復活するも、生前同様首を突っ込む性分はなんら変わっていない。
ステータスは、精神は若干低いものの機械だけに防御が高く、壁として使える。アビリティのきかいもロックマンのバスター同様没用性が高く、使い勝手は非常にいい。



初音ミク
代表作…CVシリーズ 初登場…第四十五話
ジョブ…ボーカロイド アビリティ…うたう

インターネットで大人気のお下げのクソ長いボーカロイド。
『金福子におまかせ』で紹介されたことは夙に有名。新幹線の名前にもされかけたが、いや、それはないだろ……
さらにいえば後継者のほうが遥かに優sy…いや、なんでもありません。
このSSでは『ワイリーナンバーズ』の一人として登場したが、作者の都合により戦闘を割愛、そのままワイリーに見捨てられたところをロックに説得され仲間になった。ちょっとFF6チック。
防御、素早さはそこそこだが、それ以外が劣悪。うたうも『中野梓』が所持している分そっちを優先されがち。ロックミク派はぜひ彼女を使ってください。



ランス
代表作…ランスシリーズ 初登場…第五十話
ジョブ…鬼畜剣士 アビリティ…ランスアタック・わるくち

キースギルド所属の戦士で冒険家。いつも奴隷のシィルを連れている。
英雄の資質を持ちながらも、将来の目標は世界中の美女を集めて大ハーレムを築き、おもしろおかしく人生を過ごすことであり、その冒険譚も、いわゆるお姫様から村娘、はたまた敵対勢力の美女まで性的な意味で喰いまくるモノばかりである。(ただし、リア姫からは一方的にストーカーまがいの求婚をされたりなど、苦労は耐えない模様)
しかし、それでもシィルだけは特別扱いのようであり、今回の戦いの目的の一つとして、氷漬けになったシャルを元に戻す方法を探している。
美女は大好きなのだが、ブス女、イケメン、女に持てる男、オカマ、女をいじめる男は大嫌い。久瀬のことも大嫌いだが、女の子がカワイイことと上記のこともあり、鳴滝から離反している。
いわゆる典型的な戦士であり、攻撃、防御、HPは非常に優秀な一方、知性、精神は非常に低い。ランスアタックは安定した必殺技として使えるので、相手が美女でない限りは非常に戦力になるだろう。



イカ娘
代表作…侵略!イカ娘 初登場…第五十三話
ジョブ…海からの使者 アビリティ…しょくしゅ・すみ

頭にイカの形のかぶりものをした海からの使者。語尾に「ゲソ」とつく。
精神年齢はタケル(小学生)より低いと思われる。ただし栄子(高校生)よりは頭はいい。人間の法律がどこまで適用されるかは現在審議中。
海を汚した人間への報復のため人類侵略を図るものの、人類の総数も戦力の下調べもしていないなど、その計画はかなり杜撰なものであった。
結局、千鶴に半ば脅される形で海の家「れもん」で働かされる羽目になる。
頭からは青い触手が10本生えており、割と器用。また、口からイカ墨を吐くことができる。
ステータスはHP以外は低く、アビリティも際立って優れているわけでもない。おそらく非常sy(ry



[15824] 敵キャラ大図鑑(追加のたびに更新します)
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2011/02/20 21:31
ガッツタンク
代表作…ロックマン2 初登場…第七話

ロックマンに出てきたガッツマンをベースに開発された超大型戦車。はっきり言ってあまりカッコよくはない。
エネルギー弾での攻撃の他、ネオメットールを射出してくる。体積を多く占めるのは積んである燃料である。
久瀬の『ゲドープラチナ・ザ・ジャム』による時間停止攻撃にも耐性のある強敵だったが、ロックマンの不意打ちのバスターを受け大破した。



Dr.ワイリー
代表作…ロックマンシリーズ 初登場…第八話

本名はアルバート・W・ワイリー。57歳。
目立ちたがり屋でプライドが高く、ライト博士に次ぐ実力はあったものの及ばず、それがコンプレックスとなり世界征服を企むようになった。
自身もワイリーマシンを操って毎回ロックマンに挑んでいるが、その度に敗北している。その度見せる『ジャンピング土下座』はもはやお約束である。
なんとなく、バック・トゥ・ザ・フューチャーのドクに似てる。
本作でも『諸悪の根源』と手を組みワイリーマシンを駆使して久瀬に挑んだり、核爆発の中を生き延びたり、『諸悪の根源』より預かった美少女ロボットを『ワイリーナンバーズ』として操ったりと、相変わらずの活躍(?)を見せている。



小此木
代表作…ひぐらしのなく頃に 初登場…第十話

興宮在住の造園業社社長ではあるが、その正体は入江機関付、鷹野直属の防諜部隊『山狗』の隊長で階級は二尉。
叩き上げの武闘派であり、金で買収され鷹野三四に全面協力するも、現場を知らない彼女を内心見下している。
しかし、重要任務を任されているにも拘らず『タイマン』に持ち込むんだり、自らの保身のために司法取引を目的に事情徴収に応じたりと、隊長としての器量は非常に疑わしい。
本作ではさしたる見せ場もなく久瀬に翻弄され敗れている。



魔竜王ガーヴ
代表作…スレイヤーズNEXT 初登場…第二十一話

シャブラニグドゥの5人の腹心の1人。象牙色のコートを着た野生的な印象のある赤い長髪の男性で、性格は好戦的で感情的。自分の部下を連れ魔族から離反するも冥王フィブリゾの罠に嵌り、計画の全てを潰された挙句滅ぼされた。
『魔竜烈火咆(ガーヴ・フレア)』という強力な魔法を操るほか、剣術にも長ける。実はセーラー服姿もお披露目しており、一見の価値は……あまりない。
草陰茂によりアンデッドとして蘇り久瀬たちを襲ったが、実力ではハルヒを圧倒していたものの、久瀬の姑息な罠にかかりハルヒの火炎放射でアンデッドの弱点を突かれ敗北した。



ノイトラ・ジルガ
代表作…BLEACH 初登場…第三十三話

第5十刃であり、自身を十刃最強と自負するなど己の力に絶対的な自信を持っている。戦いの中で死ぬことを目的としている戦闘狂。情けをかけることもかけられることも嫌う。更木剣八との死闘の末絶命した。
出っ歯とその顔の時点で最初から『かませ』だったのだろう。最近のジャンプのイケメン偏重の傾向ではよくあること。
本作では鳴滝に召喚され斉藤一と戦う。全十刃最強の防御力も外部より突き入れ全てを切り裂く『南斗聖拳』の前には役に立たず、卍解状態にも関わらず斉藤に一撃で倒され、鳴滝により次元の狭間へ連れ戻された。



鳴滝
代表作…仮面ライダーディケイド 初登場…第三十三話

『預言者』を自称する壮年の男で、眼鏡にフェルト帽が特徴。
自ら『平行世界』を往来でき、門谷士の行く先々の世界で、ディケイドを悪魔だの破壊者だの流言したり、別世界から召喚したライダーを刺客として差し向けたりなどの妨害を行う。しかし、その動機、真意は不明である。
プリキュア好きとの噂から、ロリコン疑惑あり。
本作でも『諸悪の根源』と手を組み次元を超え、久瀬の仲間に対しノイトラを仕向けたり、久瀬の助っ人にランスを差し向けるなど暗躍している。



メフィラス星人
代表作…ウルトラマン 初登場…第四十九話

別名「悪質宇宙人」。武力によらない地球征服にこだわる。知能も高くIQは10000以上とされている。基本的に紳士的ではあるが、自分の思い通りにならないと激昂する。
ウルトラマンとほぼ互角の戦闘能力ではあったが、「宇宙人同士の争いは無意味」であるとともに、地球人の心に負けたことを認め、自ら退き地球を去っていった。ウルトラマンタロウに出てきたメフィラスはダメなヤツ。メビウスに出てきたときはエンペラー星人四天王の筆頭として登場している。
今作でも、久瀬や『諸悪の根源』と敵対する『第三勢力』として現れ、一旦は地球征服に成功するも、久瀬とランスの言い争いに呆れ、戦いの虚しさを悟り母星に帰っていった。



ギルガメッシュ
代表作…Fateシリーズ 初登場…第五十九話

黄金色の魂を持つ、存在するはずのない8人目のサーヴァントでランクは『アーチャー』。『王』を自称し、この世の全ては自分の所有物だと言って憚らないその言動は、まさに袁術…もとい、傍若無人の一言につきる。
その所有物は宝具『王の財宝』に収納されそれらを雨霰と射出し、また、自身の最強の宝具『天地乖離す開闢の星(エヌマエリシュ)』はエクスカリバーを凌ぐ威力であり、まさにナベツネ巨人軍のような戦い方を見せる。
しかし、所詮は原始的な武器であり、サイボーグ綴子の近代兵器を前には手も足も出ず退散する。
でも、たぶん再登場するであろう。



チルノ
代表作…東方シリーズ 初登場…第六十六話

氷の妖精であり、妖怪雪んこ。自称「あたいって最強!」
無鉄砲で喧嘩っ早いが、いつの間にか『バカ』キャラが定着していた。
ちなみに『冷気を操る程度の能力』の持ち主であり、妖精の中では強い部類に入るが、同じ氷妖怪の凍矢よりはたぶん強くはないであろう。しかし、たぶん青龍よりは強いからD級妖怪なのであろうか?情報求む。
本編におけるヤラレざまはNiceBoat―――




代表作…東方シリーズ 初登場…第七十一話

人型の化け猫妖怪で八雲藍の式神で、『妖力を操る程度の能力』の持ち主。
藍がまだまだ未熟なのか、言葉遣いも舌足らずで、主人と違い計算も出来ない。
戦闘力は決して低くはないはずなのだが、未知の戦術による罠カード『激流葬』を喰らい出番はほとんどなかった。
まあ、『あんな目』に遭わされたチルノとどっちがマシなのかは読者の判断によるところだろう。



八雲藍
代表作…東方シリーズ 初登場…第七十一話

九尾の狐で油揚げ好き。『式神を操る程度の能力』の持ち主だが、自身も八雲紫の式神である。
おそらくはA級妖怪クラスの実力はある……と思う。違うと言う方がいましたら訂正します。
穏やかで男口調。八雲紫への忠誠度は多分高いが、橙を溺愛しているかどうかは不明。
キメラテック・オーバー・ドラゴンとも渡り合う弾幕を誇るが、頭脳もかなりのものであり、久瀬ともおそらくは互角以上の戦いは可能だったであろう。



土の草陰茂(冥王ゴルゴナ)
代表作…絶望-青い果実の散華- 初登場…第二十一話

聖セリーヌ学園旧校舎に住み着いていた浮浪者で、事故で植物状態になっていたところを古手川によって紳一の仮の体として確保される。彼自身もゆがんだ性欲の持ち主で、過去に少女を旧校舎に連れ込んで乱暴していることから同情の余地はまったくない。
勝沼紳一の謀略により、32人の少女を誘拐、拉致監禁、旧校舎に放火し心中を謀った犯人として扱われる。
その後も火達磨の霊魂となり、「面白そう」という理由で紳一たちについていき陵辱の限りを尽くす心底のクズ。
本作では『勝沼紳一四天王』の一人として登場。
『冥王ゴルゴナ』の肉体を乗っ取り、アンデッド軍団を駆使して久瀬たちを倒そうとする。また、魔竜王ガーヴを使い久瀬たちの戦いを解析したり、事前に炎術師である煉華の躯を体内に取り込むことでアンデッドの弱点である炎への耐性をつけるなど戦略的な面も見せる。
しかし、結局キースにその煉華を奪還、逆利用され、その上ハルヒの能力で冥界の力も使うことができず、最後はその煉華の炎により消滅した。



水の木戸大門(桃地再不斬)
代表作…悪夢・絶望シリーズ 初登場…第三十五話

紳一の側近。容姿、性格共にヤクザの様な男。病弱な紳一に代わり、会社の経営を任されていた。
バスジャック事件では23人の女子生徒を拉致監禁・陵辱した。
逮捕後に脱走したものの失敗して射殺され生涯を閉じたか思われたが、亡霊として復活。 ヤクザの風体とは異なり、頭部を横に引き伸ばした怪しげな紳士の風体で現れる。
力技の強引な陵辱に加え、変態的な奉仕をさせたり相手の体を愛でたりなどゆがんだ性癖の持ち主で、勝沼紳一を主犯とする32人の少女の拉致監禁・陵辱・放火心中事件の一役を担った。
本作では『勝沼紳一四天王』の一人として登場。
『桃地再不斬』の肉体を乗っ取り、水の忍術を駆使して斉藤たちを苦しめる。しかし、久瀬に不意打ちの『天破活殺』を受けチャクラを封じられ、その霊魂は唯&律&ムギ&久瀬の『レッツゴー陰陽師』により消滅させたれた。



[15824] 第一話 …さっそく人任せかよ!!!
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:acfa1651
Date: 2010/12/07 17:53
ここは、Kanonの舞台でもある学校の生徒会室。
生徒会長である久瀬は、後輩の天野美汐とともに生徒会の仕事をしていた。



「さあ、友達のいない天野君。今日は第二次補正予算案をまとめておいてくれ」

この久瀬という生徒会長は、常に一言多い。
しかもそれのほとんどがワザとであり、クソ野郎っぷりを露呈している。

「友達がいないは余計です」

この久瀬の秘書的後輩、天野美汐は即座に反論する。

「まあまあ、そう怒らないで欲しいものだ。本当のことだし」
「……その一言が余計なんです」

さらにこの久瀬、相手の嫌がることをピンポイントで言ってくるためタチの悪い。





……と、まあ、ここまではいつもどおりの日常。



しかし、この日は何かが違っていた。



「では、僕はミルクティーを淹れてくるのでこの場を離れる」
「はあ……」


席を立ち、生徒会室のドアに手をかける久瀬。
そのままドアを開けると、そこは真っ青な世界が永遠に広がっていた。



「………」



思わず絶句する久瀬。
久瀬は一瞬、自分のの見間違えか何かだろうと思い、一度生徒会室のドアを閉め、今度はゆっくりとそのドアを開けた。



「………」

再び絶句する久瀬。
……やはり真っ青な世界が永遠に広がっていた。



「………」



「どうしたのですか?」

ドアを開けたとたん電池が切れたおもちゃように動きを止める久瀬を、不審に思う天野。
どうやら彼女には、この青の世界は見えていないらしかった。

「……いや……なんでもない。君はもう帰る支度していいから」
「はぁ……」

ワケがわからないながら、この日は帰宅をする天野。



天野が帰ったのを見計らいながら、一歩、青き世界に足を踏み入れる久瀬。
久瀬にはその青き世界が何を意味するのかはわかっていた。

「また…えいえんか……」

久瀬は躊躇することなく、その青き世界…『えいえんの世界』へと足を踏み入れたのだった。
無論、久瀬がえいえんの世界へ消えている間は、現実での久瀬への記憶はすべて消失することになるが、久瀬にとってそんなものは知ったこっちゃなかった。













その何もなき青き世界には、ウサギ耳のカチューシャをつけ黄色のワンピースを纏った5歳くらいの幼女がいた。






「まいいいいいいいい!!!」



久瀬のその娘への開口一番がこれであった。

「やっと会えたね」

怒気含む声でまいの名を呼ぶ久瀬とは対照的に、何事もなかったかのように久瀬との再会を喜ぶちびまい。

「『やっと会えたね』ではない!!なぜ生徒会室を出ようとしたら永遠の世界が辺り一面に広がっているのだ!?」
「大丈夫。『えいえんの世界』は久瀬にしか見えてないから」
「そういう問題ではない!!」

久瀬にしてみれば、生徒会室のドアを開ければえいえんの世界など、まさに青天の霹靂である。



「だって……」

しかし、所詮は子供。
久瀬の怒りを含む声にまいは泣きそうになる。

「うっ……」

さすがにマズイと思ったのか、久瀬は泣きそうになるまいを宥めた。



「それより、このようなことをしてまで僕を呼ぶなど、一体なんの用だね?」

まいを一通り宥めた後、ようやく話の本題に入る久瀬。

「ただ会いたかっただけじゃ……ダメ?」
「どこで覚えてきたのだ、そのセリフ……」
「冗談だよ」
「まったく……」

なんと言う安っぽいセリフだろうと内心思いながら、まいの話を聞き続ける。

「ホントのことを言うと、『えいえんの世界』を行き来できる久瀬じゃなきゃ頼めない出来事が出来ちゃったから……」

「……なるほど。一応、話だけでも聞こう……」

こういうときは、大概ろくな用件ではない。
久瀬はまた『そのワケのわからない超展開系の話か…』と諦めの気持ちになった。



「どの時間軸かわからないけど、すべてのギャルゲー、エロゲー、SSのシナリオを無に帰そうとする悪い人が出てきたから、久瀬に何とかしてほしいの」



「!!?い、いや…そんな唐突に言われてもだな……」

予想通りのトンデモ超展開。
しかも何をどうしていいのか、そのヒントすらもないクセに、やたら話だけは大きい。
もう久瀬は、半ばどうでもいい気持ちであった。




「ねえ、お願い!力を貸して!」





久瀬の呆れ果てた気持ちとは逆に、まいにとっては本気の願いのようであった。
ただ、ひたすら久瀬に懇願するまい。

久瀬はそんなまいのお願いに対し……



1・「子どもの頼みなら仕方がない。わかったから、いい子にしてるんだぞ」
2・「だが断る!この久瀬の好きなことは、自分で思い通りになると思い込んでいるやつに『NO』と言ってやることだ!!」



[15824] 第二話 …よくあるパターン
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:acfa1651
Date: 2010/12/07 17:54
2・「だが断る!この久瀬の好きなことは、自分で思い通りになると思い込んでいるやつに『NO』と言ってやることだ!!」



しかし、まいに至っては本気のようで、ただ、ひたすら久瀬に懇願するだけだった。
久瀬はそんなまいのお願いに対し……



「だが断る!この久瀬の好きなことは、自分で思い通りになると思い込んでいるやつに『NO』と言ってやることだ!!」

と、そのお願いを突っぱねたのだった。
子ども相手に、なんとも大人気ない発言をする男なのだろう。



「……そう……」

まいの方もこれ以上無理強いをすることなく、嘆息するのみだった。



「…まあ、今のは言い過ぎであるが、まあ、そんな引きこもりみたいな者など、わざわざ僕が手を下すまでもない。秋になるまでほっといたら自然に枯れるであろう」
「そんな、雑草じゃないんだから……」

沈むまいを見て、さすがに良心の呵責に苛まれたのか、一応フォローをする久瀬。

「大体、どの時間軸にいるのかわからない敵なぞ、どうやって『何とか』するのかい?」

そして、フォローの後にも正論は忘れない。
久瀬の疑問は至極もっともであった。



「その問題なら心配ないよ」
「え?」

しかし、そんな久瀬の疑問を解決できる手段はあったようだった。
よくよく考えてみれば、ある程度の目処も立たずにただただ『お願い』をするまいではない。
民主党とは違う。



すると、タイミングを見計らったかのように、えいえんの世界に謎の女性が出現する。



「…って、ミス・ブルーこと蒼崎先生!?」
「久しぶりね、久瀬君。でも、『ミス・ブルー』って呼ぶのは感心しないな」

それは久瀬の見知った顔であった。

蒼崎青子―――
魔法家系『蒼崎』の後継者で第五魔法『魔法・青』の継承者。
魔術師としてのレベルは非常に低いものの、こと『攻撃魔術』に関しては他の魔術師の追随を許さない。
久瀬と彼女は今のところは協力関係にある。


「まあ、あなたほどの人間ならえいえんの世界に簡単に出入りもしそうですけど……」
「それは買いかぶりすぎ。私はこの『まいちゃん』に招待されてこの世界に入ってきただけよ」

しかしながら、この蒼崎青子の力量であればまんざらえいえんの世界の介入も不可能でないと思わせるのも、彼女の女傑っぷりを物語っている。



「はぁ…。しかし、なんでまた……?」

そのあまりの疾風怒濤の展開に、さすがの久瀬も疑問は深まるばかりである。

「答えは簡単♪」
「???」



●デション



「あ~れ~………」



蒼崎青子の答えは至極簡単なものだった。
久瀬は彼女の魔術により、次元の狭間へ消し飛ばされた。



「ごめんね~。姉が『盗んだ金返せ』ってあんまりにもシツコク迫るもんだから、えいえんの世界にしばらく引き篭もらせて貰う代わりに、あなたを魔術でどっか別次元へ飛ばせって頼まれちゃったのよ。縁があったらまた会いましょう」
「……本当に、ごめんね……」

そして、ほとんど悪びれた様子のない青子と、久瀬を巻き込んだことを本当は心苦しく思っているまいの姿がえいえんの世界に取り残された。













「……って、こんなのありなのか!?おのれい!蒼崎青子ッ!!!」

見知らぬ時間にデジョンで飛ばされ怒り心頭に達する久瀬。

「今度会ったら『マホトーン銃』で魔力封じてから、あんなことこんなこといっぱいしてあげよう!!!フハハハハハ!!!」

そう激昂するも、ここからどう動いていいかわからず久瀬は途方に暮れる。

さしあたって情報収集をしてみるにあたり、どうやらこの世界は、久瀬が存在する世界とは異なる時間であることがわかってきた。
さしもの久瀬もここは怒りを沈め、とりあえずまいの言うとおり諸悪の権化を探すことにした。



「……うーむ……どうやらここは、僕が住んでいる時間とはまた違う時間みたいだが……。周囲の環境から察するに、ここはどうやら―――」



1・「―――過去のようだ」
2・「―――未来のようだ」



[15824] 第三話 …春原くん悶絶ス
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:acfa1651
Date: 2010/12/07 17:55
1・「―――過去のようだ」



さしあたって情報収集をしてみるにあたり、どうやらこの世界は、久瀬が存在する世界とは異なる時間であることがわかってきた。
さしもの久瀬もここは怒りを沈め、とりあえずまいの言うとおり諸悪の権化を探すことにした。



「……うーむ……どうやらここは、僕が住んでいる時間とはまた違う時間みたいだが……。周囲の環境から察するに、ここはどうやら過去のようだ」



そう…
久瀬が辿り着いたのは、1999年以前の時間であった。
しかしながら、この時代の情報のほとんどが久瀬が数年前に耳にした情報ばかりであり、その時間にはおおよその見当がついた。

「…周囲を見るに、何十年とかそこまで古い時間というわけでもなさそうではある……。むしろ、つい最近…といった感じのほうが強いような……」

久瀬がその時代を特定するのにそう時間はかからなかった。

時は1997年4月…
場所は光坂市の高等学校校舎内……

ここが次元の狭間より久瀬が辿り着いた先であった。



「なんだ?見慣れないやつだな」
「む?」

校舎内の廊下にて久瀬になれなれしく話しかける、金髪の男。
我々は知っている!
そう、このあほな少年を!!!

「僕、春原っていうんだけどさあ。この辺じゃあちょっと知れた名前なんだよねえ」
「宇宙の果てを知らないようにそんな名前しらねー」
「なっ!!?」

初対面の男に対しても挑発的な態度を取る久瀬。

「…と、言うより、初対面の人間に対してずいぶんと無礼な男だな。その口ぶりから察するに、まあ、おそらく自分が不良であることを僕に伝えたいらしいのであろうが……」

自分の態度は差し置いて相手の非を責める、なんとも図々しい男である。
その上で、相手のイタイところを平気で抉ってくるため非常に悪質である。

「へ、へぇー……ず、ずいぶんと言ってくれるじゃないのっ」
「僕は君と不良の喧嘩ごっこしている暇はないのだよ」

久瀬はこの春原という男を完全に見下していた。

「ふーん…そんなこと言っちゃっていいのかなー?」



刹那―――

「……へ?か…体が動かないッッッ!!?」
「秘孔を突いて君の両手両腕の自由を封じた。君の両手はただ肉の棒をしごくのみ―――」






―――しばらくおまちください―――






「あ…あんた、お、鬼ですか………」
「木っ端微塵にされないだけありがたいと思え」

何をされたのかは詳細に出来ないが、とにかくひどい目にあった春原。
久瀬は相変わらず傲慢不遜な態度である。



「そ…そんな……あっ!!!おっ、岡崎―――ッッッ!!!」

そんなくだらないやり取りをしているうちに、春原の友人らしき人物が通りかかる。
思わず春原はその『岡崎』という男に助けを求める。



「知り合いか?」

久瀬は岡崎という男に問うと、春原はすがる様な目で岡崎を見た。

「校舎内で○○○○するやつなんか、俺の知り合いにいないが…」
「そうか。すまなかったな」
「いや、じゃあな」

しかし、その対応は非常に淡白なものであった。



「…って、完全に他人扱いですかッッッ!!?」

「他人だろ」
「そんな、あーんまりだーーー!!!」

…と、まあ、この二人の平常のやりとりが繰り返された。
ある意味、この二人が友人同士であるという証明ではある。



「どうしたんですか、岡崎さん、春原さん」

するとこんどはもう一人、内気そうな女子生徒が現れた。

「ああ、古河か。その……春原が、この人(久瀬)となんかもめてたっぽいんだが……」

岡崎は古川と呼ばれた少女に、これまでの簡単な経緯を説明した。



「は…はあ……。どうもはじめまして。私、古河渚といいます」
「ああ、いや。こちらこそはじめまして」

とりあえず自己紹介も兼ねた挨拶をする古河に、挨拶を返す久瀬。
どうやら非常に真面目な少女であるようだ。

「あ…あの……春原さんが、なにかしましたでしょうか…?」
「いや、特には……」
「む、むしろ被害者は僕―――」

ゴツ

「お前は少し黙れ」

話に介入しようとする春原に、岡崎はツッコミ(?)一発で黙らせる。
久瀬はなんとなく、この三人の関係性がわかったようだった。


「……(…っていうか、そもそもなぜ僕が、このワケのわからない時間に飛ばされたのだ!?)」

久瀬がそう思うのも無理もない。
するとえいえんの世界より、ちびまいの声が久瀬の心に語りかけてきた。

「(それは、多分、青子さんが諸悪の根源について少し調べてくれて、その諸悪の根源を『何とか』できる可能性のある人物が、この時間にいるからじゃないかな……?)」

つまり、この時代には有力な仲間がいるというから仲間にしろ…ということである。

「(はあ……。で、それは一体誰なのだね?)」
「(……そこまではわからない……)」
「(………)」

なんとも当てになるのかならないのか分からない話であった。



久瀬がまいと心の会話を広げている間にも、春原たちのほうで話は進んでいるわけで……



「で、結局この人は誰なんだ?制服からしてウチの生徒じゃなさそうなんだが……」
「春原さんのお友達さんですか?」
「僕の友達にこんな物騒な奴はいないッ」
「お前も違う意味で物騒な奴だけどな」



まいとの通信を終えたところで、この三人の喧騒をしばし観察する久瀬。

「(……なるほど。もしかすると、この中にその『諸悪の根源』を『何とか』できる可能性のある人物がいるかもしれないと……。……かといって、全員にいちいち事情を説明したとして、一体誰がこんな話を信じるというのだろうか……?……うーむ……ここはいっそ、誰か一人に絞って仲間を増やすのが得策かも知れないが……)」



とりあえず久瀬は―――



1・春原にすべてを説明することにした。
2・岡崎にすべてを説明することにした。
3・古河にすべてを説明することにした。
4・こいつらからは小宇宙の『こ』の字も感じられないので、他をあたることにした。



[15824] 第四話 …必ず最後に金は勝つ
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/07 17:58
1・春原にすべてを説明することにした。



「(……なるほど。もしかすると、この中にその『諸悪の根源』を『何とか』できる可能性のある人物がいるかもしれないと……。……かといって、全員にいちいち事情を説明したとして、一体誰がこんな話を信じるというのだろうか……?……うーむ……ここはいっそ、誰か一人に絞って仲間を増やすのが得策かも知れないが……)」



とりあえず久瀬は春原にすべてを説明することにした。

「(……まあ、こいつなら少し煽てれば鉄砲玉ぐらいにはなるだろうし……、なにより、自分より惨めな奴が一人いると思って励みになるだろうからな)」

相変わらず、考えることがサイテーな久瀬であった。



「ちょっとそこの金髪君」

とりあえず、春原、岡崎、古河の三人の会話に割って入り、久瀬は春原に声をかける。

「僕は春原だっ!」
「春原だか野薔薇だかそんなのはどっちでもいい。とりあえずだな……すこし顔を貸してくれないかね?」

「ああいいぞ」

春原が答えるより早く、勝手に返答する岡崎。

「…って、なんでアンタに選択権があるんですかっ!?」

「了承した」

春原の反論を聞く耳持たずに勝手に了承する久瀬。
久瀬と岡崎、この二人は意外と気は会うのかもしれない。

「ちょ、僕の権利は―――」
「「あるわけないだろ」」

そして、有無を言わせぬ否定だった。



「あ…あの……それはあまりにも―――」

さすがにこの光景に同情を禁じえない古河。

「古河……お前はなーんにも気にしなくていいんだ」
「は、はぁ……」



その古河を口八丁で宥める岡崎。
久瀬はその隙に、問答無用で春原を拉致ることにした。







ところ変わってここは資料室。
久瀬は、とある女子生徒に注いでもらったミルクティーを飲みながら、明らかに不服そうな春原と席を対にしている。

「よもや資料室が喫茶もどきになっているとは…」
「あっそう……で、僕に用って何さ」
「まあ、実はかくかくじかじかで―――」



久瀬は春原に、『すべてのギャルゲー、エロゲー、SSのシナリオを無に帰そうとする諸悪の根源』の話を説明した。



「あははははは!!!アンタ頭おかしーんじゃないの?」

言うまでもなく、春原は本気にしなかった。
と、いうより、こんな話を初対面に人に話され信じろというほうが無理な話である。

久瀬は内心そう思いながらも、意に介さぬように話を続ける。

「……信じる、信じないは君の自由ではある……が、もし、諸悪の根源の打倒に成功したら、それなりの報酬を用意しよう」
「はあ?どーせはした金だろ?」
「そうかそうか」

久瀬は鼻で笑いながら、大き目のアタッシュケースを開ける。
中には一万円の札束がぎっしりと敷き詰められていた。
その重さは、ゆうに30㎏は超えていた。

「!!!!!」

そして、先ほどまで完全に「話は聞きませーん」という態度全開だった春原の顔が、一気に驚愕へと変貌を遂げた。

「まあ、3億円ほど入ってはいるが……そうか、はした金なら仕方がない」
「やらせていただきますッ!!!!!」

春原の目が$になっていたことは言うまでもなかった。

金の力は、その人の概念そのものを捻じ曲げる……
さっきまで春原の概念に存在しなかった『諸悪の根源』は、その3億円を介して存在を認められたのである。



「(さて、捨て駒……もとい仲間が一人増えたところで、この後どうするべきか……)」



1・この時代にとどまり、もう少し仲間を増やす。
2・まいに別の時代へ移動させるよう頼む。
3・とりあえず、資料室にいる女子生徒を口説く。



[15824] 第五話 …丁重にお断り申し上げます
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:acfa1651
Date: 2010/12/07 18:00
3・とりあえず、資料室にいる女子生徒を口説く。



「(さて、捨て駒……もとい仲間が一人増えたところで、この後どうするべきか……)」



久瀬はとりあえず、資料室にいる女子生徒を口説くことにした。

「(……そうだなぁ。この女子生徒、倉田さんにどことなく似ているところもあるし……、いいかも知れないな)」



時を越えて不埒な行為に及ぼうとする男、久瀬。
そしていまだに倉田佐祐理の面影を追い続ける様は、未練がましいとしか言いようがなかった。



「君、名前はなんと言うのかね?」
「私ですか?宮下有紀寧と言います」

初対面の男に名前を問われ、この有紀寧という少女はやんわりとした口調で自分の名を教える。
おそらく彼女は誰にでもこういう対応をするのであろう。

「ふむ。宮下有紀寧さんか。いい名前だな」
「ありがとうございます」
「まったく、春原君も人が悪い。このような美人な生徒がいるのであれば、初めに教えてくれればいいものを……」
「い、いや、僕も岡崎に連れられて初めて知ったから……。でも、ホントーにカワイイね」
「そこまでほめられると、かえって恐縮です」
「いいじゃん、本当のことだって」

その後も調子に乗って有紀寧を褒めまくる春原と、その有紀寧のほんわかとした受け答えや雰囲気を楽しむ久瀬。
おそらく久瀬は、この時代に飛ばされた趣旨を完全に忘れている。



「有紀寧ちゃん本当にカワイイし、僕たちお似合いだと思うんだ!ねえねえ、これからさあ、僕と付き合わない?」

一方の春原は、ついには久瀬をも出し抜いて、そのまま告白までしてしまう。
お調子者とは彼のためにあるような言葉である。



「あはは。春原さんには、私よりもっとふさわしい方がそのうち現れますよ」

そして、ごくごくありがちなフラグクラッシュを受ける春原だった。

「今のって、かんっぜんにフラレモードっすよね……」

あえなく玉砕、涙モードの春原。
当然の結果である。



「(……やはりこの手のタイプか……ッ。捨て駒(春原)が勝手に自爆しなければ、僕も同じ目に遭っていたというところか……)」

ある意味、春原は仕事を果たしたともいえる。



久瀬がそのような不埒な考え事をしているうち、有紀寧は一冊の本を取り出して机の上に置いていた。

「ところで、せっかくこうして知り合えたのも何かの縁です。ここに『とっておきのおまじない百科』というものがあるんですけど……」
「ほぅ……」
「よろしければやってみますか?」

といいつつ、久瀬の返事を待たずに勝手にページを開く有紀寧。
よっぽどおまじないが好きなのであろう。



「(……うーむ、僕はこの手のものは一切信用しない主義なのではあるが―――)」



1・「彼女の好感度を上げるためにも、一つくらいは付き合うとするか」
2・「そのような時間はない。早く別の時代に移動しなければ!」
3・「いや、そんなことより経絡秘孔を突いて、あんなことこんなこといっぱい楽しもう」



[15824] 第六話 …やっぱ戦闘モノじゃねぇともりあがらねぇ!!
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:acfa1651
Date: 2010/12/07 18:00
3・「いや、そんなことより経絡秘孔を突いて、あんなことこんなこといっぱい楽しもう」



「(……うーむ、僕はこの手のものは一切信用しない主義なのではあるが………。いや、そんなことより経絡秘孔を突いて、あんなことこんなこといっぱい楽しもう)」



もはや完全に目的を忘れ、私利私欲で北斗神拳を使おうとする最低男、久瀬。
そんな久瀬の不埒な考えはお構いなしにとおまじないの本を広げていく有紀寧。

「ねえねえ、僕をモテモテにできちゃうおまじないってないのー?」
「ちょっと待っててくださいね。えーっと……」

そんな久瀬の考えなど露知らず、おまじないにのめり込む春原と有紀寧。



「(僕の腕なら秘孔を突こうとも、そのことを相手は認識することはできないッッ!!!フハハハハハハハ!!!)」

もはや隙だらけの有紀寧の秘孔が突かれるのも、もはや時間の問題であった。



●デジョン



「え?」
「へ?」

刹那、久瀬と春原の足元に、突如次元の渦が発生する。



「「あーれー」」

そして二人はその次元の渦に飲まれ、この時代から姿を消した。



「あ…あはは………」

次元の狭間に強制的に落とされた久瀬と春原を前に、残された有紀寧はただ苦笑いをするしかなかった。













「後一歩のところで……なんてことをしてくれるのだ!!まい!!!」

別の時間軸に強制移動され、真っ先にまいに怒る久瀬。
ただしこの男、自分のとろうとした行動に対しては何一つ反省はしていない。

「べっつにー……」

そんな据え膳お預け状態を食らった久瀬に対して、つんとした態度を取るまい。

新たに飛ばされた地は、また違う時間の世界のようだった。
久瀬はどことでもなく虚空に向かい激昂するも、虚空より聞こえたのはまいのそっけない返事だけだった。



「……って、なんで僕まで巻き添えなんですかーッッ!!!」

そのあまりの急展開にまったく対応できない春原。
ある意味当たり前といえば当たり前の反応ではある。

「いや、君には報酬を支払うのだから、それ相応の働きをしてもらわなくてはな」
「そんなぁー!あんまりだー!」

勝手に春原を仲間にしておいて、なんともない言い草の久瀬。
それでもちゃんと報酬を払おうとするあたりは、さすがはブルジョワといったところである。



はたして、久瀬と春原は何時の時代に飛ばされたのか!?
そして、この地で何が起こるのだろうか!!!













……ここは、久瀬が存在する時間とはまた異なる時間の世界……

そこには一人、ただならぬ魔力を感じさせる……おそらく、諸悪の根源と呼ぶべき人物が存在していた。

「そうか……えいえんの世界がついに動いたか。……しかし、いかなる存在も私を止めることは出来ない。時間圧縮の支配の中で、永遠など無意味であることを教えてやろう……」



「まずは私に任せていただこうか」

その諸悪の根源の前に現れたのは、冷笑をたたえた美青年であった。



「ほう……貴様が……。かつて修学旅行バスジャック事件を起こし少女たちを誘拐、陵辱、殺害と悪行三昧を繰り返し、処刑されたあとも亡霊として現世に復活を果たし、再び数多の少女たちを陵辱した貴様が動くのか……。それは楽しみだな」

「クックックッ……。まあ、見ててください。三度蘇ったこの現世を悪夢と絶望と暗黒に満ちた世界へと変えて見せよう」

この男もまた、傲慢不遜な態度そのものである。



青年が諸悪の根源の前を離れると、年齢の異なる四人の配下が青年の周りに現れる。
世界が時間圧縮の影響によるものなのか、その様相を表現するにはあまりにも情報が少なすぎた。
唯一つ分かっていることは、この青年はこの戦いそのものをゲームとして楽しんでいることであろう。

「爺か…。いよいよ、時を超えた狩りの時間がやってきたな」

「ふぉふぉふぉ。よもや三度現世に戻りこのような機会があるとは思いませんでしたよ、ぼっちゃま」

この爺と呼ばれた男もまた、この青年と同じくこの戦いを楽しもうとするものである。

「い…いよいよ、俺の出番か…なあああああ」
「しかし、再び少女たちを犯しまくることが出来るなんて、なんとも待ち遠しいですぜ」

さらに二人、類は友を呼ぶとはよく言ったものであるが、まさに彼らはこの青年を主と仰ぐ変態どもの集まりであった。

「それはいいのだが……、…我々は、何ゆえに再び蘇り、彼の者の命に従わねばならないのか……まったく理解が出来ていない」

そして最後の一人、彼もまた同じく卑劣漢には違いないだろうが、主と仰ぐ青年に対しての忠誠は本物であり、諸悪の根源に対し疑念を抱いていた。



「フッ……今のところは命令どおりに動く。だが、我々が再興を果たしたあかつきには、ヤツの世界さえ我々の思うがままに操ろうではないか!!」

しかし、この青年は初めから諸悪の根源の思い通りに動くタマではなかった。
あくまで己が私利私欲を満たすために、諸悪の根源を利用しているに過ぎなかったのだ。

「そのとおりじゃのう。我々が忠誠を尽くすのは、ぼっちゃまただ一人でございます」

そして、そんな青年こそ我が主とばかりに、爺と呼ばれる人物は忠誠を尽くす。

「決まりだな。では行こう。まず最初のターゲットは雛見沢村とかいう過疎地だ」
「「「御意に!!」」」













場面は戻り、久瀬たちの存在する世界。

「……ってか、僕たちどうすればいいんですかッッ!!?」

案の定、途方に暮れる春原。

「うろたえるな!!周囲の環境から察するに、ここはどうやら―――」



1・「―――過去のようだな」
2・「―――未来のようだな」



[15824] 第七話 …初めて買ったエロゲーの届いた先は実家
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:acfa1651
Date: 2010/12/07 18:01
2・「―――未来のようだな」



「うろたえるな!!周囲の環境から察するに、ここはどうやら未来のようだな」

黒煙と機械油のにおいにまみれた機械だらけの世界。
そう、久瀬たちがいる世界はあからさまな未来の世界だった。

春原「それがわかったからどうなんですかァァァ!!!」

そのあまりの現実から乖離した現象に、春原はただパニックを起こすだけである。

「ああ神様ァ!他のものはどうなってもかまいません!どうか僕だけは元の世界に戻してくださいィィィ」
「……最低だな、君」

どっちもどっちである。



とはいえ、このままただ突っ立っているわけにもいかず、とりあえず、久瀬と春原はこの機械だらけの世界を歩き出したわけで。



「それにしても、やたら穴とか段差が多いトコっすね…」
「油断するなよ。落ちたら一発でアウトだ」

久瀬たちが歩いている地形といえば、アクションゲームのステージを髣髴させる穴、穴、階段、段差の連続であった。
稀にビーム砲が飛んできたりもあったが、そこは久瀬がうまく防ぎ、なんとか進んでいっているわけで。



「ヒィィィィ……なんなんだよォォォ!この世界はァァァ……」

春原の口からついには泣き言が漏れるが、これも致し方のないことであろう。



「うむ…。かなり『荒廃した未来』の世界か……もしくは、『あえてそのように作られている場所』なのであろうか……」

久瀬はこの世界がどのようなものであるかを考えながら、歩みを進めていく。

「その……最初に言った『荒廃した未来』ってのもイヤなんだけどさあ……」

不安げに、恐る恐る久瀬に訊ねる春原。

「もし、その、アンタが後に言った『あえてそのように作られた場所』だとしたら、なんでこんなモノ作ったワケ?」
「うーむ……それは……やはり何かのアジトか、もしくは重要な機密があるのであろうな」

おおよそこれらの仕掛けや構造は、侵入者を排除するためのものだろうとばかりに久瀬は言う。






「そのとおりだぜッッッ!!!」



「!!!」
「ヒィィィィッ!!!」

その刹那に、久瀬たちの進路方向から待ち構えていたとばかりに声が聞こえてきた。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



そして、威勢のよい声とともに現れた威圧感は、実に巨大な戦車であった。
前方部には大きな顔があり、その荷台には燃料タンクが何本も積載されている。


「ここはDrワイリー様の秘密基地!この先はこのガッツタンク様が通さないぜ!!!」

このガッツタンクは、案の定ここの番人…否、警備ロボであった。

「いや…っていうか、ガッツマンだろ、君……」
「な…なんだとお!!!オ、オレはあんな弱っちいロボじゃねえ!!ガッツマンに改良に改良を重ね戦闘用戦車として生まれ変わったのだ!!!」
「フッ……、所詮はガッツマンもどき。恐るに値しない」

こんな状況でも相手を挑発する久瀬。

「な、ななな…なんでアンタは冷静なんですかッッ!!?」
「…君は少しビビりすぎなのだよ……。あの間抜け面ごときに……」

なんとも両極端な二人であった。



「二人まとめてぶっ潰してやるぜ!!!」

そんな二人などお構いなしと、啖呵を切り久瀬と春原に突撃を仕掛ける超大型戦車ガッツタンク。

「で…ど、どーするんですかァァァ」
「……よければいいだけの話であろう」

自らの方向に向かってくるガッツタンクに慌てふためく春原に、しれっと返す久瀬。

「よけたあとはッッ!?」
「見たところ、あの巨体の大半以上をヤツの燃料タンクが占めている。そこを引火させれば一発ドカン!!!…というわけさ」
「な、なるほど……」

久瀬の余裕の態度は、常に戦況の主導権を握る戦略から来ている。
そして真に恐るべきは、その戦略に乗っ取った戦術が瞬時に出てくることであった。

「ところで君、不良なのだろう。ライターか何かもってないのかね?」

久瀬はさも当然のように春原にライターを要求する。

「んなもんないよ」

しかし、春原はライターを持っていなかった。

「何ィィィ!!?不良といえばタバコであろう!!!」
「僕はタバコを吸わない不良なのッ!!」
「今日日不良でなくともタバコは吸うというのに」

久瀬の知り合いである美坂香里と北川潤は、高校生にあるまじき愛煙家だった。

「…エセ不良に期待した僕が愚かだった」

期待はずれとばかりに吐き捨てる久瀬。

「悪かったね!!そういうアンタこそ、そんだけの案浮かんどいてなんかないのッッッ!!?」
「よしなに」



そうこう言い争っている間にも、二人めがけて突っ込んでくるガッツタンク。
そのとき―――



1・ハンサム久瀬は突如反撃のアイデアがひらめく。
2・仲間がきて助けてくれる。
3・かわせない。現実は非情である。



[15824] 第八話 …ロックマンのボスにタイムストッパーが通用しないのはもはや常識!
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:acfa1651
Date: 2010/12/07 18:02
1・ハンサム久瀬は突如反撃のアイデアがひらめく。



久瀬たちに向かって怒涛の勢いで向かってくる重戦車ガッツタンク―――



「『ゲドープラチナ・ザ・ジャム!』時は止まる!!」







久瀬の背景にオレンジ色のスタープラチナみないなビジョンが現れるとともに、世界の時間は静止した。

説明しよう!!
『ゲドープラチナ・ザ・ジャム』とは、水瀬秋子の得意とする『ザ・ジャム』と同様、数秒間時を止めることが出来る技である!!
ただし、秋子さんが9秒間時を止められるのに対し、久瀬はまだ未熟であるため3~4秒時を止めるのが限界である!!

…まあ、ようするにザ・ワールドであることはいうまでもない。



「ふぅ……あとは燃料タンクを破壊するだけ……」

静止した時間の世界を、余裕の表情で動く久瀬。



ゴゴゴゴゴゴ―――



「ヒャッハー」
「!!?」

しかし、世の中は甘くなかった。
時が止まっているにもかかわらず、ガッツタンクは平然と久瀬の方に向かって突進してきたのだ!!

「バ、バカな!?まさかこんな間抜け面ロボが時の世界に入門してきたというのか!?ええいッ!時は動き出す…ッッ」







世界の時間は再び動き始めた。

「ヒィィ!久瀬と戦車が瞬間移動したあああ!!?」

無論、春原にとって時の止まっている世界は、見えもせず感じもしない。
久瀬とガッツタンクが急にワープしたように見えるのも必然であろう。
まさにヤムチャ視点!!!



「ハハハハハ!!このまま押しつぶしてくれる!!!」

もはや勝利を確信したとばかりに突進するガッツタンク。

「答え…3…3…3……」
「なにワケわかんないこと言ってるんすか!!!……ああ…死ぬ前に一回でいいから女の子とデートしたかったあああ……」



今にもガッツタンクが久瀬と春原を轢き殺そうかとするその刹那―――



バシュゥゥゥウウウ!!!



「なっ!!?なあにいいいいいいィィィ!!?」



遠方からの光弾がガッツタンクを直撃する!!!



ティウンティウンティウン……



ガッツタンクはその場で爆破したわけで……



「……って、僕らも巻き添えなのか……」
「……それでも生きてるって素晴らしいっすね……」

爆破跡からは、ガッツタンクの爆発に巻き込まれて煤塗れになった久瀬と春原が姿を現した。


その爆破に久瀬たちが巻き込まれたことなど露知らず、光弾を発射した『青ヘルメットの男』は、そのままガッツタンクの爆破跡に近づいてきたわけで……



「これで『ワイリー』の所まで後もう少し……って、なんで『ワイリーの基地』に一般人がいるんですかぁぁぁ!?」

この時点で『青ヘルメットの男』はようやく久瀬たちの存在に気づいた。



「……危ないところをどうもありがとう。まあ、こっちはいろいろとワケありでね……」

ここであえて『青ヘルメットの男』に文句を言わないあたりが久瀬の大人の対応である。

「それよりここを『Dr.ワイリーの基地』と君は言っていたが、『Dr.ワイリー』とは何者なのかね?」
「…ってか、アンタは何者なのさ?」

そして、ここぞとばかりに情報を聞き出そうとする久瀬たち。

「僕はロック。元はライト博士に家庭用お手伝いロボとして造られたんだけど、ワイリーの野望を止めるために戦闘用に改造してもらったんだ」

丁寧にも久瀬たちに自己紹介をし、今の現状を説明する『ロックマン』。
どうやら相当真面目な性格のロボットのようだ。

「で、そのワイリーとは?」

質問を続ける久瀬。

「ロボットを操り世界征服をしようとしてる悪い科学者です」
「……SF映画に出てくる典型的な悪役っすね……」

その久瀬の問いにロックが答えると、その答えに春原は毒づく。

「しかし、来栖川エレクトロニクスでようやく数体開発している人型ロボをこうも量産できているとは……どうやらここは相当『未来の時代』らしいな……」

ロックの答えを聞き、久瀬は改めて自分の時代と未来の時代を比較し、未来の技術力に感心する。



「『未来の時代』……って……あ、あなた方は……」

一方、久瀬の『未来の時代』という言葉に引っかかりを感じ、逆に久瀬に質問をするロック。

「実はかくかくじかじかで……」



「よくきたな!!ロックマン!!!」

久瀬がロックにいきさつを説明しようとした瞬間、突如青い円盤とともに猛々しい老人の声が聞こえてきた!!

「なんだあれは?『ブルーレット置くだけ』か?」

その青き円盤は久瀬が形容したように、確かに『ブルーレット置くだけ』にそっくりだった。

「ワ、ワイリー!?な、なぜここに!!?」
「フフフ……新たに出来たワイリーマシンを貴様に披露したくてな」

一方、急に登場した宿敵に驚きを隠せないロック。
その様子を見たDr.ワイリーは、さらに余裕の表情を見せていた。



「あれが厨二病科学者ワイリーか……。おまけに目立ちたがり屋かつ自信過剰……。おおよそ、ロックマン君を造ったライト博士に対するルサンチマンな部分もあっての世界征服なのだろうか。発想がまるで子供だな」

そんなロックとは逆に、久瀬はこれでもかというくらいワイリーを侮辱し始めた。、

「な…なんだと!!?このガキ……」

痛いところを突かれに突かれ激昂するワイリー。
しかし、ワイリーは久瀬の顔に見覚えがあった。


「…ん?貴様、どこかで見たことがあるぞ……!そうか!『あの御方』が言っていた男とは貴様のことか!!久瀬!!!」

そう、久瀬が『諸悪の根源』を打倒しようとしている情報は、すでに知れ渡っていたのだ。
おそらくはあらゆる時間軸に、久瀬を返り討ちにするよう刺客を送っており、ワイリーはその一人であろうコトは言うまでもない。

「……ほう!やはり『諸悪の根源』には僕の正体が割れていたか……」

しかし、久瀬はこのような事態も想定していたのか、特に驚く様相は見せなかった。

「久瀬?あ…あなたは一体……?」

その展開がまったく読めず、かえってロックの方が驚く始末である。

「あ…あの~……僕は無関係なんで帰っていいですかね~……?」

一方の春原は完全に弱腰で、この戦場から一刻も早く脱したい気持ちでいっぱいであった。



「たわけッッ!!『あの御方』に逆らうもの!そしてワシの世界征服の邪魔をするものはこの『ワイリーマシンRX』で皆殺しじゃあああ!!!」

無論、そのような春原のわがままがまかり通るわけもなかった。
髑髏ヘッドの『パワプロ君』みたいなロボが出現し、『青い円盤』はそのヘッドにパイルダーオンする。

「センスのかけらもないネーミングだな……」
「黙れ黙れ黙れ!!!『あの御方』の力によりパワーアップしたワシの『RX』の力!思い知らせてくれるッッッ!!!」

久瀬の挑発により、怒りを助長されるワイリー。

「お前の好きになんかさせないぞ!ワイリー!!!」

ロックは状況こそ読めないものの、ここでワイリーを倒し世界の平和を取り戻そうという決意の元、バスターを構えた。



「まあ、別に世界征服などはどーでもいいが、『諸悪の根源』が関わっているとなれば黙殺するわけにはいかないな」
「僕はもう帰りたい……」

久瀬もまた、まいに託された使命のため、臨戦態勢を取りワイリーと対峙する。
春原のやる気は最初からなかった。



ブルーレット……もとい青い円盤の背後に現れる謎の巨大ロボ……
それに敢然と立ち向かうロックマン!!!

そして久瀬は―――



1・ロックマンに任せて高みの見物をした。
2・とりあえず自分も臨戦態勢をとった。
3・春原を投げつけた。



[15824] 第九話 …まさか、本当に答えくれる人がいるとは思わなかった。たとえ冷やかしだとしても最高に感謝したいです。
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:acfa1651
Date: 2010/12/07 18:17
3・春原を投げつけた。



ブルーレット……もとい青い円盤の背後に現れる謎の巨大ロボ……
それに敢然と立ち向かうロックマン!!!

そして久瀬は春原を投げつけた。



「ぬわぁぁぁんどぅぇですかぁぁぁぁぁぁ!!!?――――――」


時速130キロの速度でパワプロ君型の『ワイリーマシンRX』に突っ込んでいく春原。



「……い…いいんですか……?」
「使えるものはバカでも使えってことだ」

しれっとした態度の久瀬に、ロックは本気で引いていた。



一方、投げつけられた春原はというと……

「あ~れ~」

絶叫しながらワイリーマシンの胸元に突っ込んでいた。

「猪口才な!!ワシのワイリーマシンを舐めるでないぞ!!」

毎度おなじみ、ドクロをモチーフとした巨大ロボのアームにはバットのようなものが装備されており、春原を打ち返そうと落合張りにバットを構えていた。



「そぉぉんなぁぁぁ!!あぁぁんまりだぁぁぁ!!!」
「ファハハ!!ホームランじゃあああああ!!!」

ワイリーマシンの懇親のフルスイング!!!



スカッ…



「な!なにぃ!!?」
「ドギャス」

無情にも春原の軌道は変化し、バットから逃げるように真下へ落ちていった。
ワイリーマシンのバッドは空を切り…
重力に引かれ地面に叩きつけられた春原は、そのままワイリーマシンの足元に這い蹲る形になっていた。



「フッ…『フォークボール』だ」

してやったりとばかりにどや顔の久瀬。

「って、ワイリーに当てなければ意味ないじゃないですかッ!!?……こんなこというのも非人道的ですけど……」

ロックの突っ込みは至極正論であった。

「愚か者が……春原君を直撃させたところで、あんな巨大ロボ倒せるわけないだろう。あれはあくまでも囮だ」
「(こ…この人、ある意味ワイリーより最低かも……)」

しかし、久瀬の作戦にはまださらに先があるようであり、その人を人と思わぬ扱いっぷりにロックは素で引いていた。



久瀬はワイリーマシンの足元で伸びている春原を完全に無視し、今度はワイリーの前に立ちはだかった。



「フン、人間を投げつけるという不意打ちには少し驚いたが、当たらなければ意味はないぞ!!もっとも、当てたところでこの『ワイリーマシンRX』はビクともしないがのう!!!」

一方のワイリーは、久瀬に勝ったとばかりに余裕の講釈を弁じる。

「相変わらず、目先のものしか見ることのできない、なんとも視野の狭いご老人だ。だから貴様はライト博士に常に遅れをとっているのだ」
「な、何ィ!!?」

しかし、久瀬にとっては全てが作戦通り。
ここぞとばかりに勝ち誇ったワイリーを扱き下ろし、その怒りを買う。



「春原君を投げつけた足元……よぉく見てみるのだな」
「ぬ!!」


久瀬の言葉通り、ワイリーマシンの足元にいる春原を見てみるワイリー。
すると春原の体には、謎の黒い箱のような物体とコードが巻きつかれていた。

「春原君…君の犠牲は無駄にしない」
「…へ?」

ポチっとな―――









!!!!!!!!!






謎の爆発とともに、ワイリー基地は消し飛んだ………



















「……と、まあ、普通に核を使ったのでは、ワイリーに簡単に阻止されただろうからな。見事に不意打ちは成功したわけだ」

ここはさらに別の時代。

その爆発から逃れた……
否、他の何者かの力によって核爆発からの脱出に成功した久瀬、春原、ロックマン……
すべては久瀬の計算の上で行われていた出来事であった。

「もっとも、超小型核はこういうときのためにいくつか常備してあるが……」

久瀬はさも自慢げに春原、ロックに自分の作戦を解説する。



「か…核を使うなんて……ワイリーすらやらなかった非道行為を平然とやってのける………」
「そこにシビレル!!憧れるゥ!!……ってか?」

ロックは先の春原への扱いやいとも簡単に核を使う行為に、先ほどにもまして引いている。

「んなわけないだろ!!!一歩間違えれば僕たち全員消し飛んだんだからね!!!」

春原の言葉通り、一歩間違えれば全員が爆死。
彼らには、爆破と同時に何者かが別の時代に避難させてくれる保障などどこにもなかったのだ。

「そういうなよ。僕の読みどおり、青子先生が『デジョン』で別次元へ飛ばしてくれたではないか」

…ただ一人、久瀬はこの事態を確信していた。
してやったりとばかりに、どや顔で話す久瀬。



…そして、虚空より聞こえる天の声……

「相変わらず、ロクでもない戦法……。もし、青子さんが久瀬の考えに気づかずにデジョン使わなかったらどうするつもりだったの……?」

この声はえいえんの世界より聞こえてくる、まいの声だった。
どうやら久瀬たちを別の時代に飛ばしてくれたのは、久瀬たちのピンチを察してデジョンを使った青子先生のようだ。

「あの高名な魔法使い大先生が、僕のごとき浅はかな企みなど見抜けないはずはないだろう。それに、君らの目的を果たさないうちは、ここで僕を失う選択などという暴挙に出るはずもないだろうからな。フハハハハハハ」

しかし、それさえも久瀬の計算どおり。
久瀬にしてみれば、『諸悪の根源』を打倒するため青子が自分らを、こんなところでワイリーなどと刺し違えさせはしないだろうという考えは当然であったのだ。
なんとも傲慢不遜な男である。

「まったく、デジョンの魔石は高いのよっ。あとであなたの家に請求書送り付けとくからね♪」
「僕は一向に構わんさ」

冗談めかした口調のやり取りの青子と久瀬。
特に青子は、この作戦に対してはなんの引っかかりもないようであり、故に人格は多少破綻している。






「……つまり、あなたたちはそのワイリーを操っていた『諸悪の根源』を倒すために、過去の世界からやってきたと……」

これまでの経緯より、事態を理解したロック。

「そのとおり。そして、ここまで僕らに関わった以上、君にも『諸悪の根源』を倒すため仲間になっていただこう」

言うまでもなく、ここは仲間フラグである。

「……そ、それは構わないんですけど……その諸悪の根源をどうやって倒すのですか?」

仲間となり『諸悪の根源』を打倒することには異論はないものの、肝心の手段がわからないロック。

「まあ、様々な時代をめぐり、『諸悪の根源の存在する時間軸』を探し当てるほかはあるまい。先のワイリーのように、ヤツの手下に遭遇することも可能だろうしな」
「ひどく行き当たりばったりな作戦っすね……」

ただ、この肝心な手段について言えば久瀬さえも実は皆目見当はついていない。
春原は毒づくものの、今のところは久瀬の言うとおり、地道に探していくほかはないのが現状であった。

「でも、話を聞いていると、今はこうして久瀬さんのいうとおりやっていくしかないみたいですね」



かくして、ワイリーがどうなったのかは不明ではあるが、『諸悪の根源』が様々な時代に干渉してきていることはわかった。
そして、次なる敵を倒すため、久瀬たちはまた新たな時間軸へと飛ばされていくわけで……
その先にあるものは―――



1・女ばかり存在する幻想の世界だった!
2・カードゲームがひたすら流行している公園だった!
3・歌うロボが大人気な電気街だった!
4・昭和58年の古い仕来りに縛られし村だった!



[15824] 第十話 …忘れた頃に更新するタチの悪いSS
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/07 20:10
4・昭和58年の古い仕来りに縛られし村だった!



かくして、ワイリーがどうなったのかは不明ではあるが、『諸悪の根源』が様々な時代に干渉してきていることはわかった。
そして、次なる敵を倒すため、久瀬たちはまた新たな時間軸へと飛ばされていくわけで……
その先にあるものは昭和58年の古い仕来りに縛られし村だった!



「おそらくは岐阜県の山奥の田舎村のようだ…」

久瀬が言うように、彼らが辿り着いたのは、田舎村からも離れた山奥であった。
木々が生い茂る、非常に気味の悪い森の中を散策しはじめる久瀬。

「…なんで県名まで分かるんだよ…」
「それを君に一から説明しなければならないのかね?」
「……い、いえ、結構です……」

久瀬に食って掛かった春原だったが、その有無を言わせない反論に押し黙るほかなかった。



「…………」

久瀬と春原がくだらないやり取りをしている一方、まったく見たこともない自然あふれる昭和テイストに、圧倒され無言になるロックマン。



「もっとも、この村は、昭和後期辺りにダム建設反対運動が盛んだったからな。その際、毎年のように変死体が発見されていたという話だ。当然興味を持つさ」
「(……そりゃああんただけだっての)」

一応、先の春原の問いに答える久瀬。
その際にも薀蓄を加えて説明するあたりがなんともうざったく、春原も表立ってはいえないながらも、その心の中で毒づいていた。

「しかし、そのタネ(元凶)も、知ってしまえばどうでもよくなる。僕はいたずらに歴史を変えるつもりはない。同志を見つけしだい早く別の時代に移る心づもりだ」
「あるいは、ワイリーのようにその『諸悪の根源』に自分を売った者も出てくるかもしれないですしね」

久瀬にしてみればどうでもいい時代であっても、平和を愛するロックにとって見ればワイリーの二の舞はぜひとも避けたい。
出来る限り『諸悪の根源』に唆された人たちを救いたい気持ちでいっぱいなのであろう


「……(フッ…当たらずとも遠からずか………。諸悪の根源、ないしその手下が、高野一二三氏の研究成果を嗅ぎ付け悪用する可能性は十分にある)」

そして久瀬は、ロックの言葉からこの時代に存在する『諸悪の根源』に加担する可能性の高い人物を推測する。

「(周囲の状況から推測するに、僕らが飛んだ時間は幸いなことに、彼女らが決行するはずであった終末作戦以前の可能性が高い。……敵が接触する前に彼女……『鷹野三四』に接触する必要がありそうだ……)」




「動くな!!!」




「ヒィィ!!!」

突然銃口を向けられ情けない声を上げる春原。
久瀬が次の計画を立てているさなかにも、いかにもな兵隊に発見されてしまったようだ。

「こんなところで何をしている!」

いかにも不審な久瀬たちを、嗜虐めいた目で見ながら尋問しようとする兵隊。

「いや、『野村』の命令で、雛見沢の監査をしているものだ」

しかし、久瀬は動じることなくいけしゃあしゃあと嘘をつく。



「はっ!!それは失礼しました!!!」

久瀬はどこからその情報を入手したのかは定かではないが、『野村』という名は彼らにとっては非常に効力が働くらしい。
その名を出すだけで、先の兵隊の態度は180度豹変した。

「『失礼しました』だとぉ!?僕らは『野村』直属の特命部隊で、極秘で現地に赴いているのだよ?それをその一言で済むと思っているのかね?」
「ヒ、ヒイイ」

さらに調子に乗り、逆に兵隊を恫喝し始める久瀬。

「本来なら上官への反逆とのことで粛清モノではあるが、大事の前でありことを荒げたくはない。とりあえず大地に頭をこすりつけ僕を拝め!そして靴をなめろ!それで許してやらぬこともない」
「ハ…ハイッ!!!ただいまやらせていただきますッ!!!」

その光景はまさに外道そのものであり、春原もロックも素で引いていたことは言うまでもない……



見るに耐えないので描写はカットします―――


「の…『野村』って誰ですか…?」

久瀬の非道な虐めが一通り終わった後、ロックは恐る恐る『野村』について訊ねてみた。

「こいつらの上司といったところだ(そして『鷹野三四』に終末作戦を示唆した黒幕でもある)。まあ、僕の時代にはすでに逮捕され無期懲役となっているがな」
「……で、それで平然と上官ぶる……アンタ、本当に恐ろしいっすね……」

久瀬の情報認識力もさることながら、その演技力に春原はただただ感嘆するほかなかった。




「な!!!お、お前、なにやってるんだ?」

そんな最中にも、先の兵隊の上官らしき人物があらわれ、この無様な光景に遭遇する。
この上官にしてみれば、自分の部下の兵隊が見ず知らずの人間たちに屈辱を与えられている光景は、自分の沽券にも関わる。
故に、非常に怒り高ぶった口調で兵隊に状況を問い詰めていた。

「お、小此木隊長!!も、申し訳ありません!!!実は特命部隊にとんだ無礼を……」
「特命部隊ィ!?そんな話聞いてないぞ!!」

弁明する兵隊の話を聞き、『小此木隊長』はこの状況を把握する。



「や、やば……」

一方の春原は、小此木隊長が来た以上、久瀬の嘘がこれ以上通じないことを悟り慌てふためいた。



「て、てめえら何者だッッ!!?」

そして、小此木隊長からはごくごく当たり前のセリフが久瀬たちに放たれていた。



「フッ………」

それでも不敵な笑みを浮かべる久瀬は、笑みとともに、突如、目にも留まらぬ速さで大きな木の枝に立ち、グレートサイヤマンばりのワケの分からないポーズを取りはじめる。



「世のため正義のため金のため!!この世にはびこる悪を!生皮剥いだ挙句市中引き回しの上脳漿ぶちまけ家族親戚もろとも皆殺し!!正義のヒーロー!その名も『オヤシロマン』様だ!!!」

久瀬は、そう決め台詞を吐くと、こんどは木から飛び降りこれまたワケの分からないポーズを取り、どや顔を見せていた。

「だ…ださい……」
「その前に、正義のヒーローのやることじゃない……」

春原とロックの感想はもっともであった。



「キ、キチガイだ……」

そんな久瀬の様子を見て、その得体の知れなさにただただ怯える歴戦の兵たち。



「え、ええい!!ひるむな!!全員でかかれ!!!」

そんな兵たちに檄を飛ばし、面子を潰されまいと持てる全ての力を用いて久瀬の抹殺にかかったのであった。



―――!!!



飛び交う銃弾の雨嵐……
数多の兵隊が銃を撃ちながら、久瀬らを攻め立てる!!!



「ば、バカな!!!仲間を盾に!!?」

硝煙により視界が晴れぬものの、久瀬の取った最大の防御策に小此木隊長は唖然としていた。

「愚か者が!!!ロックマンはロボット!!!貴様らの銃撃など効かぬわ!!!」

鉛玉の弾かれる金属の摩擦音が木々に響き渡る。
なんと久瀬は、ロックを機動隊の盾さながら弾除けにしていたのだ!!!

「ロックマンを盾に全速前進DA!!!」
「い、いや、その、痛いんですけど……」

痛がるロックを介さぬ久瀬は、外道以外の何者でもなかった。



「クソッ!!!大事な作戦の前に!!!こんなところで足止めなど食らってられるかッ!!!バズーカだ!!!バズーカを用意しろ!!!」

このままでは部下の前での面目は丸つぶれ、おまけに大事な作戦を潰すA級戦犯とも成り下がってしまう。
小此木はここで起死回生をと、焦りを含む怒声を部下に浴びせバズーカを用意させる。



「ハッハッハッ!!!こいつは対戦車用のバズーカだ!!!いくらロボットとはいえひとたまりもあるまい!!!」

確かに小此木の言うとおり、いくらロックマンといえど、バズーカ相手ではひとたまりもない。
小此木の声からは焦りも苛立ちも消え、逆に余裕の意さえ含まれていた。



「ヒエエエエエ!!!こ、今度こそヤバいっすよおおお!!!降参しよう!!ねえ!!?」

今度は一転、春原の声に恐怖と動揺が入り混じりする。

「うろたえるな。策はまだまだある」

しかし、それでも久瀬にはまだ余裕があった。



「何をくっちゃべってるんだ?まあいい。よぉし、撃てえ!!!」

もはや勝ったとばかりに砲撃命令を出す小此木。







「ゲドープラチナ・ザ・ジャム!!!時は止まった」

砲撃の直後ッッ!
久瀬のゲドープラチナ・ザ。ジャムにより、世界の時間は静止した。



久瀬は止まった世界の中を悠然と歩き、兵士たちの撃ったバズーカの弾の軌道を逆向きにする。

「…フッ、これはおまけだ!」

そして、小此木隊長の秘孔を突く。

「秘孔戦ようを突いた。貴様は動くことは出来ない。そして時は動き出す」







「え?た、隊長!!弾がこっちにィィィィィ!!?」

世界の時間が再始動したとき、バズーカの砲弾は小此木たちの方向へ向かってきた。

「か、身体が動かねえェェェェェェ!!?」

おまけに逃げようにも、小此木の身体は自由が効かず逃げることが出来ない。



チュドォォォォォォン!!!



「フフフフフフ…フフフ…フハハハハハァ―――ッハハハ!!!」

着弾音とともに高笑いを揚げる最悪の男、久瀬。
かくして、彼らが図らずとも山狗は全滅してしまったわけで。



「い、いくらなんでもやりすぎじゃあ……」

そのあまりの非道な行為に、ついには非難をし始めるロック。

「フン、どんな手を使おうとも勝てばよかろうなのだ!!!」

しかし、結果を重視する久瀬にとっては、ロックの正義論など詭弁に過ぎないのであろう。意に介す様子はまったくなかった。

「さ…最低だ……最低すぎる」
「なあに、時空の平和のための礎ともなれば、彼らも本望であろう」

春原の非難も介さない自己中心的な発言。
あまりにも主人公にふさわしくない、最低の行為も平気で行う男、久瀬であった。

「まあ、邪魔者を片付けたところで、まずは『鷹野三四』という女性と接触したいのだが……とりあえず―――」



1・「入江診療所に向かうとしよう」
2・「雛見沢分校に向かうとしよう」
3・「古手神社に向かうとしよう」
4・「鬼ヶ淵沼に向かうとしよう」



[15824] 第十一話 …部活レベルです
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/07 20:56
2・「雛見沢分校に向かうとしよう」



「まあ、邪魔者を片付けたところで、まずは『鷹野三四』という女性と接触したいのだが……とりあえず雛見沢分校に向かうとしよう」

久瀬の鶴の一声により、一行は森を進み、田舎村の小さな学校を目指すことにした。



日の暮れた頃にようやく村の学校に辿り着く久瀬たち。
その老朽化した木造校舎は、あたかも忘れられた昭和の風景そのものであった。
しかし、そのようなノスタルジーに浸っているまもなく、久瀬たちには信じられない場面が待ち受けていた!!



「レナ!!」
「これですべて失敗か。宇宙人と必死に戦ってきたのに…これで人類が滅んじゃったら、圭一くんのせいだからね」
「は?宇宙人?そんなのイマドキ誰が信じるっつうの!」

なんとオンボロ校舎の屋上で、金属バットを持った男…圭一と、鉈を持った女…レナが対峙していた!!



「なんだ、ただの痴話げんかか。無視しよう」

しかし、そのような光景にも動じない、というか、興味がない久瀬。

「で、でも、バットとか鉈とか、ブッソーすぎるんっすけど……」
「ハハハ。元気があっていいではないか」

春原の常識的な同様とは裏腹に、あくまでスルー、どこぞの政治家のごとき無責任な発言をする久瀬。
いくら不良が武闘派だった時代とはいえ、このような殺し合いなどあるものではない。
ましてや痴話げんかになど到底見えるものではない。



キィィィン



そんな久瀬たちをまったく介せず、圭一とレナは激闘を始めていた。

「な、なんとかしないと」

平和を愛するロックは、このような人間同士の殺し合いを見て放っておけるわけがなかった。



「まあ……偶然、カワイイ女の子が雁首そろえている。とりあえず、事情を聞くとしよう」

女の子に目がくらんだのか、それともロックの正義感に絆されたのか、とりあえず重い腰を上げる久瀬。

「まってくだすゎい!カワイイ子なら、この僕が話を…」

しかし、女の子に飢えているのはこのエセ不良も同じ。
久瀬よりも早く、女子たちの元へ行く春原。
揃いも揃って浅ましい男どもである。



「あ、あんたたち、こんな時期に観光客!?」

春原がナンパまがいな情報収集をしようとする間にも、逆に胸の大きい女の人から声をかけられる。

「うぉっ!こりゃあ智代ちゃん並にあるかもっ」
「はぁ?」

この状況での春原の不謹慎な発言に、心底あきれた声を出す、おっぱいの大きい女。



「この緊張感堪らねぇぜ!決着がつくことすら興ざめするくらいにな!」
「あっはは!!負けても恨まないでね!?」


屋上で激闘を繰り広げる圭一とレナ。



「お、お願いします!!二人を止めてくださいっ!ホントはみんな仲良しで、でも、なんか知らないけどこんな風になっちゃってッ!!!」

そんなやり取りの中でも、ショートカットのカチューシャをつけた女の子が、喧嘩を止めてと春原に懇願する。

「む…」

そして、久瀬はその女の子に若干の見覚えがあった。

「(この娘はたしか…雛見沢村ダム推進派の北条の娘だったな。もっとも、それが原因で北条家は村八分にされてしまっていたが……。負けず嫌いでめげない性格の人間だと聞いてはいたが……、今回の件は相当参っているらしいな。……と、なると、あっちのおっぱいの大きい娘は園崎の娘……魅音か詩音のどちらか……)」

徐々にこの状況が読めてきた久瀬。

「……そして、もう一人の小さな子は………)」



「……あなた、どこまでボクたちのこと知ってるの?」
「!!?」

久瀬がもう一人の、髪の長い小学生のような娘に注目したとたん、その娘は久瀬にだけ聞こえるよう、小さな声で話しかけてきた

「……!!(……そう!この子は古手梨花!!彼女もまた、えいえんを知る数少ない人間の一人!!!)」

のちに彼女…古手梨花は、久瀬にとってえいえんの世界を知るキーパーソンの一人となる。

「…あなた、この時代に人じゃないのです…。多分未来人……その中でもかなりの特殊な部類に入る人間なのです」

そして、えいえんを知るが故、梨花もまた久瀬の正体を当たらずとも遠くない推察をすることが出来ていた。

「(……さすがは、100年の間歴史を繰り返し見てきただけのことはある)」

久瀬にしては珍しく、ただ、彼女の特異的な境遇に感心していた。

「でも、いまはそんなことよりあの二人を止めてくださいっ!ボクからもお願いなの!!!」

しかし、梨花の言葉通り、えいえんなど今の現状にとっては些細な出来事に過ぎなかった。
今度ははっきりと久瀬に聞こえるように梨花は懇願し、みぃみぃと泣き始める。

「あ、あなたたちが何者かはさておき、私からもお願い!!」

そして、先ほどの胸の大きい女の子も、久瀬に喧嘩を止めるようお願いをする。



「ふーむ……(勝手に歴史を捻じ曲げるのもなぁ……しかし、ここで恩を売っておけば、この先彼女らは強力な戦力になりえそうだし―――)」



1・仕方がない、ここは僕が何とかしよう。
2・だが、所詮は痴話げんか。ほっとけば勝手に収まるだろう。
3・この戦いに、ソレスタル・ビーイングが介入する!!



[15824] 第十二話 …僕も大きくなったらお父さんみたいに竜騎士になるんだ!
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/07 21:31
2・だが、所詮は痴話げんか。ほっとけば勝手に収まるだろう。



「ふーむ……(勝手に歴史を捻じ曲げるのもなぁ……しかし、ここで恩を売っておけば、この先彼女らは強力な戦力になりえそうだし……だが、所詮は痴話げんか。ほっとけば勝手に収まるだろう)」

この世界の歴史を知る久瀬にとって見れば、ネタバレしたドラマを見るようなもの。
バッドと鉈を持った人間の殺し合いも、もはや痴話げんかに過ぎなかった。

「ねえ、聞いてるの!!あなたなら圭ちゃんもレナも止めれるんでしょ!!」

園崎の娘の声色に、徐々に焦りと苛立ちが強くなっていくのがはっきりと分かる。

「まあまあ、僕の読みが正しければ、この喧嘩は些細なもので終わるであろうし……(おそらくは僕らが知る雛見沢の時間軸とは異なる……『罪滅し編』であろう。ならばこの後二人は和解し、翌日に山狗部隊に全滅させられているはずだ。……もっとも、山狗はさっき『間違って』全滅させてしまったわけだが……。しかし、それが歴史を変えたとは到底思えぬわけだし……)」

そんな彼女を宥め、事の顛末を傍観する久瀬。

「久瀬という男の存在……そして、彼なら、圭一なら、出口なき惨劇の迷路を打ち破れるかもしれない……」

梨花は久瀬を見て、誰にも聞こえぬようそう呟いたのであった。







……



………



久瀬の読みは当たっていた。
そして、圭一とレナはこの戦いを楽しく思っていた。

それを見る、警察や生徒達。

圭一は自分が勝ったら、レナにメイドになってもらうことを約束する。

「可愛い服じゃないと嫌だよ?」
「そこは任せろ。監督の完全監視の元、ちゃんと取り揃えてやるぜ」
「凄い凄い。負ける気はさらさらないけど、何だか楽しそう」

少しずつ毒気が抜かれていくかのよう、屈託のない純粋なレナに戻っていく。

「私も圭一君と同じご褒美がいいな。朝、私におはようって言って、夜は私におやすみって言って欲しい。いっぱい私に優しくして、いっぱい私を楽しくさせて欲しい」

この時、レナはもう元のレナに戻りつつあった…



「な、なんだか楽しそうですわ…」

楽しそうに戦う圭一とレナを見て、羨ましささえ覚える沙都子。

「フフフ……すべては計算どおり。おそらく次の一撃で決まるであろう」

そして久瀬は、余裕の笑みを浮かべながらも二人の決着は近いと宣言する。

「なっ!!そんな冷静に言わないでよっ!!」

その決着の意味を『死』と定義してしまった園崎は、久瀬に掴みかかる。

「勘違いするな。決まるのはお互いの心だ。まあ、その後の未来については僕も予測できないがな(山狗は全滅したし……)」

しかし久瀬はうろたえることなく、静かに久瀬を掴む園崎の手を放し宥めた。



そうこうしているうちに、圭一とレナの決着はついていた。
レナの前に倒れる圭一……
どうやらこの戦いの勝敗は、レナの鉈を持つ腕に握られていた。



「もう決着ついたんだよね?」
「まだついてねぇ…そいつを振り下ろすまでは、まだ……」
「いやだ…いやだよ。いやだ!!……私は皆を信じていたはずなのに。どこで信じられなくなっちゃったんだろう」
「お前、やっぱりすげぇよ!お前は自分自身の間違いに気づけたんだよ!さすがだ、さすがだよ、レナ!」

レナを圭一は抱きしめる。

「簡単なことだったんだ。誰でも思いつくとても簡単なことをすれば良かったんだ!何かヤバかったり、疑いそうになったり、辛いことがあったときはな。仲間に、仲間に相談するんだよ!」
「そう、だよね。そうだよね!」

圭一の言葉に納得し、また泣き出すレナ。



………



……







―――となるはずであった。



「……おかしいな」
「おかしいな…じゃないでしょ!!!レナ!!!正気に戻って!!!」

久瀬の読みは完全に外れていたようだった。
あくまですっとぼける久瀬と、ただただ叫ぶしかない園崎。

「あ…ありのまま、今、起こった事を話すぜ。『レナがジャンプを連発するせいで圭一の攻撃はまったく当たらなかった』。な…何を言っているのかわからねーと思うが、僕も何があったのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…『罪滅し編』だとか『カケラ紡ぎ』だとかそんなチャチなものでは断じてない!」
「そんなこと言ってる場合ですかっ!!!」

梨花の言うとおり、久瀬は状況を説明している場合ではない。



屋上では久瀬の説明どおり、圭一は明らかにレナに圧倒されていた!!



「なぜだ!レナっ!」
「問答無用だよっ!」
「一体何があったんだ!?」
「うるさいっ、黙れ!圭一くん!とどめだっ」

圭一の説得むなしく、レナは攻撃を止めようとはしない。
そのレナの様相は、まさに狂気そのものであった。

そのとき久瀬に電流奔る!!

「(まさか、レナも『諸悪の根源』に!)」



「今、楽にしてあげる!」

久瀬の予感は的中しているであろう。
ついには倒れる圭一に、トドメとばかりに鉈を振り上げるレナ。

「そうはさせないっ!!」
「く、久瀬さんっ!!?」

ロックの静止の声むなしく、久瀬がレナに先ほど山狗から奪った拳銃を構える。
そのとき……


「やめてーッ!」



「ええいっ!!」

「魅ぃちゃん!!」

園崎魅音の叫び声が校舎に響き、久瀬はレナを撃つのを、レナは圭一に止めを刺すのをためらった。




「何を血迷っているのだ、竜宮レナ……」



その静止したワンシーンを壊すべく、虚空より聞こえる男の声……

「…貴様が諸悪の根源か!」

なんと言う陳腐なセリフであろう…
そう思いながらも、久瀬は虚空より聞こえてくる男の声にそういわざるを得なかった。

「お前が久瀬か。会えたばかりで残念だが、これが俺の挨拶だ!レナ…遊びはその辺にして、止めを刺すのだ」
「うんッ!」

男の声は、そのままレナに圭一の抹殺を命令する。

「やめろレナ!」
「!」

それでも圭一の目はあきらめていない。
必死でレナを説得しようとする圭一に、レナの攻撃の手も次第に鈍る。

「下がって、圭ちゃん!」

その状況も危ないとばかりに、園崎は圭一に逃げるよう叫ぶ。
しかし、園崎の悲痛な願いもむなしく、圭一の周りには魔力の渦が発生していた。

「ほう、そんなにこの男が大事か。ならば この男は預って行こう。お前とは是非、また会いたい。その約束の証としてな」
行くぞレナ!」
「命拾いしたね。魅ぃちゃん!」
「待っ…て!」


園崎が跡を追おうとするも時既に遅し…
レナと圭一と謎の声の気配が完全に消えてしまった。



「くッ…」

悔しさをかみ締める園崎。
そして残ったのは、完全に意気消沈のメンバーたち。

「だ、大丈夫ですかっ…」

ようやく沙都子が園崎に一言声をかけたのが精一杯だった。



「あの圭一って人、さらわれちゃったな」

春原もとりあえず、こともなげに言う。

「(あの声……どこかで聞いたような……)」

久瀬は、先ほど虚空より聞こえてきた声に聞き覚えがあった。
その声の正体を思い出そうとしばし思考にふける。

「圭ちゃん……」

ただ圭一のみを案ずる園崎。



「しっかりして、みんな! 圭一は、きっと無事ですわ!!」

そして、このまま沈んでいても仕方がないとばかりに、ここで立ち上がるよう発破をかけたのは沙都子だった。

「…そうだね!」
「どのみち、『諸悪の根源』を倒すのが目的だ。野郎一人助けるぐらいついでだからやってしまおう」

春原も久瀬も沙都子の激に応じ、力を貸すことを決めたようだ。

「ありがとう…」

そして、久瀬たちに感謝の言葉を呟く園崎。



レナは諸悪の根源の手下に成り下がり、圭一は彼らに囚われてしまった!!
そして、改めて諸悪の根源の打倒を誓う久瀬一行!!!

「(しかし、相手の力が計りしれない以上、彼女ら全員を連れて行くのは危険だな。捨て駒は春原君一人で十分……と、なると―――」



1・彼女のトラップは戦いに大きく役に立つだろう。北条沙都子に決まりだ。
2・古手梨花の知識や経験は、時空を操る諸悪の根源を解析できるかもしれない!
3・やっぱり色気が欲しいから、おっぱいの大きい魅音だな。
4・いっそ、詩音を探してパーティに加えたらどうだろうか?おっぱい大きいし…



[15824] 第十三話 …私にとってすべての感想がまともな感想だす。でも、ありがとうございます
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/07 21:43
2・古手梨花の知識や経験は、時空を操る諸悪の根源を解析できるかもしれない!



「(しかし、相手の力が計りしれない以上、彼女ら全員を連れて行くのは危険だな。捨て駒は春原君一人で十分……と、なると古手梨花の知識や経験は、時空を操る諸悪の根源を解析できるかもしれない!)よし!ここは古手梨花君のみを連れて行こう」

久瀬は古手梨花を仲間にすることに決めたようだ。

「もしかして、ロリコンですか?」

そんな久瀬にロリコンの疑念を抱く沙都子。

「断じて違う。というか、君が言うな」

沙都子も梨花も、体系はさほど変わりあるまい。
久瀬の反論はもっともである。

「それはさておいて、やっぱりここはみんなで行動したほうが―――」
「(…この旅は非常に危険なのだ。君は何度もこの雛見沢の時空をループしており、その君の知識と経験こそがすべての鍵を握っている。君とて前原君ら『部活メンバー』を危険に巻き込みたくはあるまい…)」
「(…わ…わかったの……)」

集団での行動を希望する梨花であったが、久瀬は梨花のみぞ知る知識を用いてそれをなんとか説得する。



「でも、私のせいで圭ちゃんが連れてかれたわけだし、やっぱり私が…」

そして、魅音は心底圭一とレナのことが心配のようであった。
置いてけぼりを食らうことが一番納得できないのは、おそらく彼女であろう。
しかし、久瀬としては『個人の感情』ほど戦略に扱いづらいものはない。
そこで……

「…君の気持ちは痛いほど分かる。君にとってその二人はよほど大切な人物なのだろう」
「………」
「……だからこそ、ここは僕たちに任せて欲しい」
「で、でも……」
「今、君がやるべきことは、一悶着あった前原君と竜宮君とみなの仲を仲裁し、元の鞘に戻すこと。そして、その居場所を確保することなのだ。もし、君が我々とともに戦いに来れば、一体誰が彼らを迎える準備をするのかね?」

久瀬は得意の口八丁で園崎を誤魔化す作戦に出た。

「それはワタクシが―――モゴモゴ―――」
「ちょっとごめんねー」

沙都子が口を挟もうとしたが、その口ふさぎ阻止する春原。
意外と彼らの連携は取れているのかもしれない。

そして……



「それは君以外には誰も成しえない。ここは我々に任せ、君は圭一君とレナ君の居場所を確保して欲しい……」



「わ…わかったわ……」



こうして舌先三寸で魅音を丸め込んだ久瀬。
その後、沙都子も似たような手段で丸め込み、4人で別の時代へと移動する。

「(本来なら鷹野三四に会うことが目的だったが……『罪滅し編』の末期ともなればすでに始末されている可能性が高い。これ以上この時代に留まるのは徒労だな……)」

当初の久瀬の目的とはだいぶ逸れてしまったが、それでも結果的には仲間を増やし、『諸悪の根源』の正体にも一歩近づくことが出来た。
久瀬にはもはやこの時代にとどまる理由はなかった。



「じゃあ、次は未来の時代に飛ばすわね」
「うむ、わかった」

●デジョン

こうして青子とコンタクトを取った久瀬は、デジョンにて別時代へ飛ばしてもらうことにしたのであった。













……ここはえいえんの世界……



「…ここは……」

見慣れた世界への到達に驚いたのは梨花であった。

「な、なぜに!?未来へと飛ばすのではなかったのかね?」

他の時間軸へ飛ぶはずの久瀬らは、なぜかえいえんの世界へと到達していた。
当然、久瀬にとっても青天の霹靂の出来事である。

「うーん……おかしいわねぇ」

どうやら青子先生にもまったく覚えがないようであり、これは完全な事故のようであった。







「違う時間を生きる者が、4人以上で時空のゆがみに入ると、次元の力場がねじれてしまう……。『諸悪の根源』が時間全体に影響を及ぼしているからかもしれない……」

とりあえず、この現象の原因を分析…説明をするまい。

「ってことは、誰か一人えいえんの世界に残ってたほうが安全ってことなの」

梨花もさすがにえいえんの世界を知った口である。
すぐさまに状況を理解、対応策を見つけ出す。

「えぇえ!?こんなとこおいてけぼりぃ!?」
「えいえんはあるよ。ここにあるよ……」

一方、こんな辺鄙なところへの置いてけぼりなどゴメンだという風に、あからさまに嫌そうな態度を見せる春原。

「いやだあああ!!僕はもっと現実世界で女の子といっぱいあーんなことこーんなことしたいんだああああああ!!!」

「黙れ」

…あまりに春原がうるさかったので、ついには久瀬は春原の秘孔を突き気絶させる。

「…ここはすべての時につながってるから……久瀬が願えばいつでも仲間を呼び出せる。でも時の旅は不安定。3人で行動したほうがいい」

まいの説明は、思いっきり『クロノトリガー』そのものであった。



「とりあえず、次は『海馬コーポレーション』を目標にするわ。まあ、久瀬君はいなければいけないとして、まずはパーティを組む必要があるわね」

青子は次の目的を設定し、久瀬を中心としたパーティを組み立てるよう指示する。

「そうだな、ならば『海馬コーポレーション』戦に臨み、次のパーティは……」



1・久瀬・春原・ロック
2・久瀬・春原・梨花
3・久瀬・ロック・梨花



[15824] 第十四話 …ソリッドビジョン
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/08 01:32
3・久瀬・ロック・梨花



「とりあえず、次は『海馬コーポレーション』を目標にするわ。まあ、久瀬君はいなければいけないとして、まずはパーティを組む必要があるわね」

青子は次の目的を設定し、久瀬を中心としたパーティを組み立てるよう指示する。

「そうだな、ならば『海馬コーポレーション』戦に臨み、次のパーティは僕とロックマンと古手梨花君に決まりだ」

そして久瀬は、海馬KCビル攻略に向け、着々とパーティ編成を進めていく。



「えええ!?僕はおいてけぼりですかあああ!?」

明らかに不平不満たらたらの春原。
それもそのはず、時間の概念もなければ何の面白みもないえいえんの世界など、好き好んでいたいのは吉良吉影くらいなものである。

「……あのなあ、春原君……」
「へ?」

しかし、このまま春原に駄々をこねさせるわけにも行かず、久瀬は離れた場所に春原を連れ出しそっと耳打ちをする。

「ここはえいえんの世界。時間は永遠にあるわけだ」
「だぁかぁらぁ、んなとこにいられるかっての!!!」
「まあ、聞け。君は青子先生をどう思うかね?」

久瀬はこっそりと、春原に青子を見るように促す。

「え?そりゃあ、まあ、美人だと思うけど……」

春原でなくとも、10人いれば9人は青子のことを美女だと思うであろう。

「君はその美人と永遠の時間を過ごせるのだ。男は君しかいない永遠の時間。青子先生といえども欲求不満に陥り何か間違いがあるかも―――」

「はぁぁぁい!!!留守番やらせていただきまぁぁぁす!!!」

久瀬が全てを言い終えぬうちに、留守を志願する春原。

「(バカだ…)」

自らが舌先三寸で凋落したとはいえ、こうも単純に引っかかると哀れみさえ覚えてくる。



「決まりだね」

まいはコトの経緯には特に関心はなく話を進める

「(この人(春原)に莫迦姉のパンツ売りつけようっと♪)」

一方の青子は、なにやら不埒な商売を考えているようだった。
再び姉との殺し合いにならないことを、ただただ祈るのみである。

「……本当に大丈夫なんでしょうか……」
「…………」

そして、春原に留守を任せることに不安のロックと、はたまた何を考えているのか分からない梨花。

こうして春原をだまくらかしパーティが決まった。







「ところで、どうして次の目的は海馬コーポレーションなんですか?」

次の目的地に行く前に、ロックは疑問に思うことを青子に聞く。

「そうねぇ……今回の敵、もしかすると『亡霊』なんじゃないのかなぁって」
「ぼう…れい……?」

青子の『亡霊』という単語に、ロボットのロックは今ひとつピンと来ない様子であった。

「海馬コーポレーションには、なんでも『亡霊』を実体化する技術があるらしいから、その技術を使えば『亡霊』を実体化させて倒すことが出来る………そうでしょ、久瀬君」

青子は一通り言い終えた後、事を確認するかのように久瀬に話を振る。

「…さすが青子先生。すべてお見通しでしたか」

そう、久瀬もまた、今回の敵は亡霊であるという確信があった。

「実は、先ほどの雛見沢村で聞いた声に聞き覚えがありまして……あの声、僕の記憶に間違えがなければ『勝沼紳一』ではないかと……」

「か…勝沼紳一……って!!!」

『勝沼紳一』……
春原でさえ聞き覚えのある男の名前である。

「あの勝沼財閥の御曹司で、『聖エクセレント女学園』の修学旅行中に手下とともにバスジャックして『24人』の女子を拉致監禁、陵辱の限りを尽くしたものの逮捕されて死刑になった史上最悪のレイプ魔のぉぉぉお!!?」

春原は『勝沼紳一』について知っていることを説明しつつも、死刑になったはずの男が亡霊となって再び暗躍していることに懐疑的ではあった。

その春原に続けるように、今度は久瀬が説明をし始める。

「……話はそれだけではない。僕らの時代で起こった事件で、青子先生は知っていると思うのだが……32人の女性を拉致監禁し陵辱した挙句、彼女らを道連れに焼身自殺を図った史上最悪の犯罪者『草陰茂』……しかし、彼は操られていたに過ぎない!彼を操っていたのは他でもない!!その『勝沼紳一』とその手下たちなのだ!!!」

そう、この勝沼紳一には、亡霊の姿と成り果てた後も悪行三昧を繰り返していたという前科がある。
そして、同じ上流階級において、久瀬は何度か勝沼紳一とは交流があったのであろう。久瀬にとって聞き覚えのある声なわけであった。

「(…そして、通常では知りえない情報を意図も簡単に入手している久瀬君も相当だけどね……)」

先のバスジャック事件はともかく、亡霊になって悪行を働くという事実など通常走り得っこない。
青子は改めて、久瀬の情報収集能力に感心していた。

「……さ…最低すぎる……まさか、そんな人物が『諸悪の根源』だって言うんですかっ!!?」

そして案の定、正義感の強いロックは、外道な行為の枚挙に暇のない勝沼紳一が許せなかった。そして、彼が諸悪の根源であるならば、一刻も早く止めなければならないと決意する。

「……それは分からない……。しかし、もし『諸悪の根源』が彼だとしたら、竜宮レナ君も無事である可能性は低いであろう……」
「そ…そんな…!!!そんなの嘘なのですっ!!!」

久瀬の推察はもっともであるが、そのような最悪の行為が行われる可能性を、梨花は認めたくはなかった。

「……そうだな……。とにかく、すべての真相を確かめるためにも、その『勝沼紳一』を実体化させ霊体を完全に封印する必要がある!!!故に、今回は海馬KCビルに向かうのだ!!!」

そして、改めて次の目的を確認し、出陣することとなった。







そして出陣前のこと……
梨花は久瀬を呼び出していた。


「ところで、久瀬は未来から来たのですよね」

分かっていることではあるが、改めて久瀬に問いかける梨花。

「まあ、君の時代からすれば……な」

その梨花の問いに答え、軽く微笑む久瀬。
梨花は少し押し黙った後、わずかに口を開く…

「……未来で……雛見沢村は……」


何か聞きた気な……しかし真実を知りたくはないような顔を見せる梨花。
そのとき、久瀬は梨花が何を知りたがっているのか、何を恐れているのか、そしてどのような答えを欲しているか即座に見抜いていた。

「……未来は君らが築くものだ。僕があれこれ歴史に干渉することは出来ない」

しかし、久瀬は答えを言わない。

「……そう……ですか……」

分かっていたことではあるが、答えを言わない久瀬に対し、若干沈んだ表情を見せる梨花。
さすがにかわいそうになったのか、久瀬はさらに言葉を続ける。

「しかし、これだけはあえて言おう。僕のいた未来……歴史の道しるべが用意した未来では君の村は滅びてはいない。後何回雛見沢村が滅ぼされるのか…後何回君らが殺されるのかは分からないが………必ず、君の仲間たちがすべてを解決し、最も幸福な未来を掴み取る!…そういうことになっている!!……だから、きっと前原君もレナ君も無事なのだよ」

梨花の求める本筋の答えではなかったが、とりあえず今の梨花を納得させる答え。

「………そう……ですねっ」

真意のほどは不明ではあるが、『にぱっ!』と笑う梨花であった。



「まあ、そのためにも一刻も早く『勝沼紳一』を倒し、前原君とレナ君を救うことだな」
「はいっ!なのですっ!」

こうして、新たに打倒『勝沼紳一』と、圭一、レナの救出を決意する久瀬と梨花であった。






時空移動を済ませた久瀬一行は―――



1・とりあえずカード屋に向かった。
2・海馬コーポレーションの頂上へ向かった。
3・なんとなく女子高へ向かった。



[15824] 第十五話 …単純に不法侵入及び強盗です
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/08 11:54
2・海馬コーポレーションの頂上へ向かった。



こうして時空移動を済ませた久瀬一行は海馬コーポレーションの頂上へ向かった。



「ここがKC(海馬コーポレーション)ビルか。入り口の像のセンスが悪いな」

久瀬は青眼の白龍の像を虚仮下ろした後、メンバーを引き連れビルに潜入する。



海馬コーポレーション!!

社長はかの有名な(究極嫁が負けフラグの)海馬瀬人である。
元は海馬剛三郎の経営する軍事企業であったが、海馬瀬人の代で軍事企業から玩具・ゲームの開発・販売へと転換。
デュエルモンスターズの日本販売もこの会社が行っており、デュエルに使用されるソリッド・ビジョン・システムはこの会社で開発された。



ビルの中に潜入した久瀬たちであったが、そのビルの中はガランとしており人の姿は見当たらなかった。

「明らかに不法侵入したというのに、警備員一人見えませんね」
「それどころか、社員さん一人見えないですの」

ロックも梨花も、さすがにこの異様な雰囲気を不審に感じている。

「……おそらくこちらの方でもなにかのっぴきならない事態に陥っているのだろう。かえって好都合だ」

久瀬は状況を察しながらも、あくまで前向きに進む。

「ふぁいと、おー!」

梨花の激励とともに、こうして歩みを進めていく久瀬一行。



…上の階に上がっていくにつれ、徐々に人の姿が見えてくる。
彼らはみな、敗戦後の兵そのものの表情で下階の出口を目指していく。

「……しかし何でこいつら腕に変な板みたいなのつけてるんだ?」
「これが今流行のファッションか何かなのですかね?」

久瀬と梨花が扱き下ろした変な板こそ、例のソリッド・ビジョン・システムを搭載していた『デュエル・ディスク』である。

「とりあえず何があったのか聞いて見ましょう。情報を知っているのかもしれません」
「そうだな」

このビルで起こった出来事を聞くことを提案するロックに、久瀬は動く。



ピキーン!



なんと久瀬は、問答無用で通りすがりの『ロボ顔の男』の秘孔を突いていた!

「解亜門天聴を突いた。貴様は口を割るしかない。さあ、このビルで何があったのか白状しろ」

「(なんで普通に聞けないんだろう…)」

何回ドン引きしたのかわからないが、この場面でも久瀬の外道行為に引くロック。



「な…!?口が勝手に……」

一方、ロボ顔の男の意思とは無関係に、その口は自動的に動く。

「ちなみに抵抗すれば全身から血を吹いて死ぬから、全部ゲロったほうが身のためだぞ」

その久瀬の嗜虐的な口ぶりは、まさに外道である。

「…ぼ…僕の名前はシーダー・ミール……」

まもなくロボ顔の男…シーダー・ミールの口から次々と情報が漏れてくる。

「僕らは『キース・ハワード』に召集されたカードプロフェッサーという賞金稼ぎで……武藤遊戯を倒せば10万ドル貰えるということで……」
「…貴様のことはどうでもいい。このビルで何が起こっているのだ?」

しかし、この情報は久瀬の欲しい情報ではない。
もう一度、必要な情報を割らせるよう久瀬は質問を直す。

「……ぼ…僕もよくわかんないんだけど…I2社の『天馬夜行』という人が、海馬コーポレーションの技術で『ペガサス・J・クロフォード』を蘇らせようとしてるんだよ……そのR・A計画のために真崎杏子を連れ去って……」

ペガサス・J・クロフォード…
『デュエルモンスターズ』を生み出した天才ゲームデザイナーにして、アメリカに拠点を置くゲーム産業企業『インダストリアル・イリュージョン』の名誉会長である。
海馬不在で投資家達の信頼を失い経営が悪化した海馬コーポレーションに目をつけ、企業買収を計画したが、『武藤遊戯』に敗れたことで計画は失敗する。
しかし、企業家としては元より決闘者としての評価は著しく高く、久瀬は元より彼の名を知らないものはこの時代では存在しないであろう…


「なるほど……ペガサスとは…これまた随分な大物を蘇らせようとしてる……。僕の眼に間違いはなかった!!狙うはKCビルのサーバールームだ!!」
「了解なのです!!」

聞きたい情報は揃った久瀬は、他のものに目もくれずサーバールームへと走り出す。
久瀬の指示に返事をする梨花もそれに続き、ロックもあわてて後を追う。



「……ぼ…僕は……?」

そして、情報を絞れるだけ搾り取られたシーダー・ミールだけがこの場に取り残されたわけで……







その後も数人のカードプロフェッサーを見かけるも、全員すでに戦意喪失のようであった。

「おそらくは武藤遊戯ご一行に敗れたのだろうな」

久瀬の予想通り、彼らはみな、遊戯とのデュエルに敗れ去った兵であった。



……さらに上へと進んでいくと、今度は一人のグラサンをかけた米国ヤンキーが座り込んでおり、一人の不良っぽい凡骨がそれを見下ろしていた。

「こいつはテメーに返すぜ…このカードで純粋にデュエルを楽しんでいた頃の心を取り戻して来いよ!復讐鬼じゃなく決闘者としてオレの前に現れたときは…いつでも闘ってやるぜ!」

そう言って一枚のカードを米国ヤンキーに投げた後、凡骨はエレベーターのほうへ走り去っていった。



凡骨が去ったのを確認した後、米国ヤンキーに近づく久瀬たち。

「……おそらくこいつが『キース・ハワード』ってやつだな。通称『バンデット・キース』らしいが……」

久瀬は先のシーダー・ミールからの情報で、この米国ヤンキーの正体を看破する。

「……多分、今走っていった人にやられたんでしょうね」
「まあ、なんてかわいそーなの」

ロックの状況分析に対し、上から目線の慰めの言葉をかける梨花。



「こんなアメリカヤンキーの糞商売根性など捨ておけい」
「そんな、せめて介抱くらいはしてあげましょうよ」
「時間の無駄だ」

久瀬はバンデット・キースになど初めから興味はなく、そのままサーバールームに急ごうとするも、ロックはそれを制止する。



…とかなんとかやっているうちに、気を取り戻すバンデット・キース……

「…クソ……城之内は……どこだ……!お…オレと闘え……」

しかし、その目は虚ろであり、言語不明瞭、動作も緩慢であった。

「完全に狂ってるな。かわいそうだから止めを刺してあげよう」
「どうしてそんな発想になるんですかっ!!!」

あくまでキースなど眼中にないう久瀬と、捨て置けないロック。

「…うーむ、仕方ない。あたぁ!!!」

仕方なく折れた久瀬は、キースの秘孔を突き正気を取り戻させた。



「チィ……クソが……!」

数分後に目が覚めたバンデット・キースの第一声である。

「助けてもらってその第一声がそれか」

そのキースの悪態にヤレヤレという表情の久瀬。

「ウルセェ!!誰が頼んだ!!クソ……あの城之内!!今度こそ倒してやる!!」

悪態はさらにまし、おそらく先ほどキースがデュエルをした相手なのであろう、凡骨…もとい城之内への復讐の心を胸に激昂するキース。

「もう一度黙らせたほうがよいと思うのです」
「うむ」

しかし、助けてもらって感謝も何もなく悪態をつかれたのであれば、こちらとしても面白くはない。
梨花に黙らせたほうがいいといわれ、久瀬も完全にその気になっていた。

「なっ!!」

無論、キースとしては再び地獄へ落とされるのは御免こうむる。

「み、みなさん冷静に!!!」

ロックはなんとか久瀬と梨花を抑え、話を本筋に戻す。



「……とりあえず、蘇っていきなり頼むのもなんですけど、サーバー室まで案内してもらえませんか?僕たちには今どうしてもそのKCの技術が必要なんです!!」
「……な…なんでオレがそんなこと……」

ロックは改めてキースに頼みごとをするが、目が覚めたばかりのキースにとってはまさに青天の霹靂、っていうか、元より利己的な彼にとってみれば、久瀬たちの事情など知ったコトではなかった。

「やっぱりもう一度なのです……」
「うむ」

再び、地獄へ突き落とそうとする梨花と久瀬。

「わ、わかった!案内すりゃあいいんだろ!!クソ!!」

結局キースは久瀬の脅しに屈し、半ば自棄の状態で久瀬たちをサーバールームへ案内することにした。














「……どういうことだ……!!!」

久瀬がサーバー室に辿り着いたときには時すでに遅し。
サーバー室前のビル窓から見えた光景は、KCビル正面玄関から嬉々として出て行く遊戯ご一行とカードプロフェッサーたち、そして天馬兄弟の姿であった。

さすがの久瀬も状況がさっぱり理解できないようだった。

「あー…まぁ…その、あれだ。多分、遊戯が天馬のヤローを倒したんだろーな……」

唖然とする久瀬に、とりあえずキースはフォローする。

「チィ……しょうがない!!あの海馬社長に直接交渉してくる!!!」

無論、このまま引き下がったのではただの無駄足である。
久瀬は今度は海馬瀬人と交渉しようと社長室に駆け出そうとするが……



「あ、そういえばさっき、センスのカケラもない龍みたいな飛行機が飛んで行きましたのです」

そう言う梨花の指す方向には、一機の『青眼の白龍』を模した戦闘機が徐々にKCビルを離れていくのが見えた。

「何ィ!!?それは紛れもなく海馬社長専用飛行機ではないか!!!」

こうして社長との直談判も失敗。
かくなる上の久瀬がとった行動とは……

「クソ!!!こうなったらサーバー室ごと盗むぞ!!!」

「「(さ…サイテーの発想だ……)」」

ロックとキースが毒づくとおり、まさに最低の発想だった。



そのままロックとキースを捨て置き、サーバールームの機械を取り外しにかかる久瀬と梨花であったが……



「こ、こらー!!何をしている!!!」

案の定、警備員に見つかってしまった。

「チィ!!面倒なことになる前に逃げるぞ!!!」
「おー」
「わわわわわ」
「な、なんでオレまで……!?」

久瀬と梨花は脱兎のごとく逃亡し、あわてるロックと巻き込まれただけのキースもその後に続いた。







「ええい!まだだ!まだ終わらんよ!!!」

なんとか海馬コーポレーションを脱出するも、海馬コーポレーションの技術を得ることに失敗したわけで……
KCビル正門前には久瀬の負け犬の遠吠えだけが響き渡っていた。

「……ってか、オレも一緒に行動しなきゃいけねーのかよ!!!」

なんだかんだで一緒に逃げてきたものの、勝手に仲間に加えられたキースは不満たらたらである。

「まあまあ、命があるだけでもめでたいことですの」

梨花はキースをフォローするが、実はあまりフォローになっていない。



「『勝沼紳一』の魂を捕らえる技術はまだあるはずだ!!僕が新たに入手した情報だと―――」



1・県立北高校にはキチガイなクラブがあるらしい!!
2・私立桜ヶ丘高校には軽音部があるらしい!!
3・CREW GUYS JAPANにはメテオールという謎の技術があるらしい!!







と、いうわけで再びパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬以外の二人のメンバーを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『バンデッド・キース』の4人です。



[15824] 第十六話 …わーれーらーがー四天王!!
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/08 12:38
1・県立北高校にはキチガイなクラブがあるらしい!!

パーティ…久瀬・春原・キース



「『勝沼紳一』の魂を捕らえる技術はまだあるはずだ!!僕が新たに入手した情報だと県立北高校にはキチガイなクラブがあるらしい!!」

なんとも信憑性のない…というか、一体なんの役に立つのか分からない情報を引っさげる久瀬。

「…あぁん?それで?そんな仲良しクラブなんかがなんの役に立つっつうんだよ」

キースの言うことももっともである。
一部活動が『諸悪の根源』の打倒、及び世界を救う役に立つなど、普通であればとても考えられるわけがない。

「まあ、なんでも『SOS団』とか言って、宇宙人やら超能力者やら未来人やらと遊ぶことが目的らしいからな(…と、HPに書いてあった)。なんらかしらの情報があるかもしれないだろ?」

だからなんだ…とキースは言いたげだったが、久瀬があまりに自信満々に言うものだから、触らぬ神にたたりなしといわんばかりに押し黙ることにした。

「『部活動』……ねぇ……。僕はあんまし興味ないね」

一方、春原は今回は特にノリ気ではないようだった。

「ほぉ…なんだかやけに不機嫌そうだな」
「べっつにー……ただ、なんか真面目に部活動なんかやってるやつの気が知れなくてね」

春原は部活動が嫌いである。
彼はサッカーのスポーツ推薦で光坂高校に入学したが、サッカー部の先輩との折り合いが悪く不仲を起こし、追放同然に退部することとなった。
彼にとって見れば部活動など、一生懸命やることなど馬鹿馬鹿しい以外の何ものでもないと同時に、本来の自分が在りたかった姿を重ねての羨望の対象でもあった。

「……今の話の内容を聞いて、どこが真面目な部活動だと思ったんだ…?明らかにフザけてるだろ」

一方、キースは『SOS団』にはあくまで懐疑的であった。
というより、キースの言葉通り、このような話の内容を聞かされて真面目な部活動だと考えられるほうが無理な話であろう。

「ま、『SOS団』がどこまでの力になるかは分からないが、ただでさえ雲を掴むような話なのだ。当てになる情報は一つでも検証していったほうがいい」

それでも前向きな久瀬は、一行を引き連れ県立北高校に向かうことにしたのだった。












……ここは、久瀬が存在する時間とはまた異なる時間の世界……
そこに『勝沼紳一』、そしてもう一人『闇の衣に包まれた巨大な蜘蛛』が存在した。

「来い、『草陰茂!』」
「へっ!『土の草陰茂』、今来ましたぜ」

そう、この巨大な蜘蛛男こそ『草陰茂』!!
32人の少女を拉致監禁し強姦した上、自身の立てこもる旧校舎を放火し、すべてを焔の中へ葬った男である!!
彼は勝沼紳一に操られていたに過ぎないが、彼自身、操られる以前にも旧校舎を根城とし強姦を繰り返していた邪悪な男には変わりなかった。
そして肉体が滅びた後に、勝沼紳一の傘下と加わったわけであるが……

「あの久瀬という男は侮れん。今のうち、手を打っておいた方がよさそうだ。幸い、奴は俺らを完全に葬る力は持っていない。お前の『今の肉体』の率いるアンデッドたちには、その拳も鈍ろうというもの。だが奴は、俺たちを葬る力を得ようと北高校に向かっている」
「…そりゃマズくないですかい?」
「そうなる前に始末するのがお前の役目だ」

勝沼紳一もまた、情報を得るのが早い人間であった。
久瀬たちの動向を察知し、彼らが力を得る前に始末しようと『草陰茂』に指令を出す。

「…心配ありませんよ。ついでにいい女がいたら、喰っちまっても構いませんかね?」

そして、自分らの本来の領分を忘れないのが彼らの美学であり、下衆な部分である。

「まあ、いいだろう。ただし!『涼宮ハルヒ』、『朝比奈みくる』、『長門有希』はこの俺が犯すからここに連れて来い。いいな」

それでも主君の命令は絶対である。
勝沼紳一は誰よりも少女を犯すことに渇望しておりその機を待っている。
ましてや彼は美少女にしか興味のない男なのだ。

「わ、わかりました……」

こうして勝沼紳一の命を受けた『巨大な蜘蛛』…その肉体を借りた『草陰茂』は姿を消した。



「面白くなったな。竜宮レナ!」

草陰茂と入れ替わりで入ってくるレナ。

「うん…。でも、梨花ちゃんたちは油断したら…」
「かつての友を敬う気持ちも分るが…だからこそ、『草陰茂』を差し向けた。ヤツも四天王の一人。楽しませてくれるはず。なあ前原圭一!」

あくまで部活メンバーの実力を知り、それを警戒するレナであったが、勝沼紳一はそれでも余裕とばかりに人質の圭一に声をかける。

「部活メンバーはレナが…!」

しかし、レナにも拘りはある。
自分の知り合いは、自分の手で決着をつける…それがレナの望みであったのだが…

「この間のような失態を見せておいて、何を言う!お前は前原圭一の見張りをしてろ」
「…はい……」

勝沼紳一に一喝され、あとは押し黙るしかなかった。

「気をつけろ……梨花……」

囚われの身でありながらも、梨花の安否を気遣う圭一。



「(クソ……『ヤツ』の命令がなければ前原圭一など殺して、こんな女などとっくにヤリまくってるってのに!)」

一方の勝沼紳一は、目の前の美少女を犯すことの出来ない縛りに焦燥を覚えていた。
そう、勝沼紳一の上にいる『諸悪の根源』は、なぜか勝沼紳一の陵辱の気を抑えている。
それが彼にとって見れば余計に歯がゆく、もどかしいものとなっていた。

「(……まあいい、ヤツを超える力を手に入れたときが最期よ!最後に笑うのはこの俺だ!!ウワーハハハ!!!)」













場面は戻り、童実野町の公園。
北高校へ場所移動をしようとする久瀬の前に、一人の髪のクソ長い外人が歩いてきた。

「Hay!お久しぶりデース」

「そ、その声はミスター・ペガサス!?」
「て、てめぇ!!死んだんじゃ!?」

…そう、そこに現れたのは死んだはずのペガサス・J・クロフォードであった!
そのあまりにありえない現象に、ありきたりな驚きのセリフを禁じえない久瀬とキース。

「ま、まさか、天馬夜行の『R・A計画』は成功したとでも……!?」

当然、久瀬が連想するのは、あの死者の魂を実体化する計画『R・A計画』であったのだが…

「NonNon!そもそもワタシは死んでなどいまセーン!『遊戯王GX』でも普通に出てきマース!」

そのペガサスの口から出たのは、実に見当違いの完全にフザけたセリフであった。

「I2社はワタシがいない間に、天馬兄弟が立て直したようで安心シマシタ。ワタシの眼に狂いはありませんデシタネ。さらにここでミスター久瀬とビジネスの話が出来るとナレバ鬼に金棒、『サウザンドアイズに月読命』デスネー!!」
「うむ、確かにあなたほどの男とのビジネスの話は興味あります。しかし今は……」

その上、この機を逃さずに久瀬にビジネスの話に持ち込むなど、さすがは大物である。
さしもの久瀬もこの対応には多少の困惑を見せていた。
ちなみに『サウザンドアイズサクリファイス』も『月読命』も、現デュエルモンスターズの環境では禁止カードに指定されている。



「んなこたぁどーでもいい!!」

そんな久瀬とペガサスの間に割ってはいるかのよう一喝するキース。

「……クックックッ!!こうしてテメェに復讐する機会が出来たんだ!!!今!ここでデュエルしろ!!!」

そう、彼は一度、このペガサスに罰ゲームで殺された身であった。
これがどういう状況でどうしてこうなったのかなど、今のキースにとっては問題ではない。
彼の復讐のマインドは次第に増幅していくのが、周囲の目から見ても明らかにわかる。

ペガサスも「ヤレヤレ」とばかりに、欧米らしく両手を『W』に広げため息をつく。

「それとも、オレ様が怖くてケツまくって逃げるのか、オカマ野郎!!」

さらにペガサスが逃げないよう、しきりに挑発を繰り返すバンデット・キース。



「………(今はこんなことしている場合ではないと思うのだが―――)」



1・最優先は『SOS団』との接触である!キースを黙らせてでも先を急がねば!
2・ここでバンデット・キースの実力を確かめるのも一興だ。好きにさせよう。
3・その隙に、誰か女の子を誘ってイイコトをしよう。



[15824] 第十七話 …トムの勝ちデース
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/08 18:18
3・その隙に、誰か女の子を誘ってイイコトをしよう。



「………(今はこんなことしている場合ではないと思うのだがその隙に、誰か女の子を誘ってイイコトをしよう。どーせそう簡単に決着はつくまいし……)」

キースがペガサスに因縁つけている中、なんとも呑気かつ緊張感のない男、久瀬。



「まさか逃げたりしねェよなぁ!オカマ野郎」

一方のキースは、ここで恨みはらさでおくべきかとばかりに、執拗にペガサスを挑発する。

「……ワカリマシタ」

そのあまりのしつこさに、ヤレヤレとばかりに折れるペガサス。
しかし、このエンターテイナーはただでは譲らない。
今度は春原の元へ行き、デュエルディスクを勝手に装着させ…

「アナタがこのエセ金髪ボーイに勝つことが出来マシタラ、リベンジに応じまショウ」

勝手に春原を巻き込んでの戦いに持ち込むのであった。



「「な、なにい!?」」

当然、驚く春原とキース。

「ぼ、僕、やり方なんてぜんぜんわかんないんだけど……」

そう、本人が言うとおり、春原は遊戯王デュエルモンスターズなどやったことがなかった。
しかし、それでもペガサスは余裕の笑みで…

「大丈夫デース!この紙に書いてあるとおりに闘えば、絶対に勝てマース」

と、春原に一枚の紙を渡すのであった。



かくして、久瀬がどっか行こうとしている間に、キースのリベンジ前哨戦が始まったわけで……







キースと春原、お互いにデュエルディスクを装備し対峙する。

キースLP4000 春原LP4000

「オレのターン!!」

まずはキースが先行。
デュエルディスクよりカードを一枚ドローする。

「まずは『メカ・ハンター』を召喚!!」

メカ・ハンター レベル4/闇属性/機械族/攻1850/守 800

「げええ!!カードが実体化してるぅぅぅ!!?」

これぞソリッド・ビジョンの技術。
実体化するカードのモンスターを前に、ただただ驚く春原。
しかし、キースのターンはまだまだ終わらない。

「次に魔法カード!『未来融合フューチャーフュージョン』を発動!!デッキから『リボルバードラゴン』、『ブローバックドラゴン』を墓地に送り2ターン後に『ガドリングドラゴン』を特殊召喚……ただし!オレはさらに『オーバーロード・フュージョン』を発動し、墓地より『リボルバードラゴン』、『ブローバックドラゴン』を除外!!HAHAHA!『ガドリングドラゴン』を特殊召喚!!カードを二枚伏せてターンエンド!!!」

いかにも強そうなモンスター『ガドリングドラゴン』も実体化する。
この2体の機械族モンスターの放つ威圧感は、まさに現実そのものである。

ガドリングドラゴン レベル8/闇属性/機械族/攻2600/守1200
コイントスを3回行う。表が出た数だけ、フィールド上のモンスターを破壊する。
この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。

「(リバースカードは『リミッター解除』と『リビングデッドの呼び声』……攻撃した瞬間、攻撃力二倍の機械モンスターで返り討ち……さらに次のターン『リビングデッドの呼び声』で蘇ったガドリングドラゴンでトドメよ……クックックッ………!!!)」

さすがは全米元チャンプ。
万が一ガドリングドラゴンを上回るモンスターが出てきたとしても、その戦略、戦術はさすがである。



一方の春原も、ペガサスから渡された紙を見ながら応戦をする。

「え…えっと……そのカードが出てきたら、LP800を払って『洗脳ブレインコントロール』を発動してガドリングドラゴンのコントロールを得て……」
「な!?」

キースの召還したガドリングドラゴンは、春原のものとなってしまう。

「さらにLP1000払って魔法カード『トゥーンワールド』を発動……ガドリングドラゴンをリリースして『トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール』を召喚……」

今度は非常にかわいらしい、デフォルメされた『ブラック・マジシャン・ガース』が召還される。

トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール レベル6/闇属性/魔法使い族/攻2000/守1700
場に自分の「トゥーン・ワールド」がないと特殊召喚不可。
「トゥーン・ワールド」が破壊された時このカードも破壊。
相手がトゥーンをコントロールしていない場合このカードは相手を直接攻撃できるが、コントロールしている場合は相手のトゥーンを攻撃対象に選ぶ。
また、自分と相手の墓地にある「ブラック・マジシャン」「マジシャン・オブ・ブラックカオス」の数だけ、攻撃力が300ポイントアップ。



春原LP2200

春原「えっと……さらに装備魔法『巨大化』を装備して攻撃力2倍にして直接攻撃……」
キース「え!?」

巨大化したブラック・マジシャン・ガールの踏みつけ一撃でキースは潰され……

キースLP0



「エセ金髪ボーイの勝ちデース!!!」

ペガサスの歓声とともにワンターンキルは成立、春原の勝利となった。

「バ…バカな!!!その紙を見せてみろ!!!」
「ぐえ……」

当然、こんなばかげた結末など認められないキースは、春原の胸倉を掴みから紙を取り上げる。
そしてキースがその紙を見ると、たしかに、春原はペガサスの書いた紙どおりに行動していただけだった!!

「―――ッッ!!?」

一度ならず二度までも同じ戦術に破れ、もはや言葉にならないバンデット・キース。

「例え『千年眼』がなくても、心理戦はワタシの得意技デース!復讐心にマインドを支配されたユーの行動はすべて手に取るようにワカりマース!今のユーでは、まだまだワタシに勝てまセーン」

そしてペガサスは事も無げに、キースがまだ自分には勝てないことを言い放つのであった。



結局、久瀬が少し場を離れただけでデュエルは終了。

「なんだと!!僕がカワイイ娘を探すまもなく終わっているではないか!!!まったく!全米一の賞金稼ぎが聞いてあきれる!!」

可愛い子に声をかける間もなかったことに怒る久瀬は、あまりのキースのだらしなさにさらに憤慨、罵倒する。



「……ま……まだだ……もう一度…だぜェ…もう一度オレと…闘え……!」

一方のキースは、先の城之内に敗れたときのような、何かに憑かれたような廃人へと逆戻りしていた。

「こんなヤツ用済みだ…ミスターペガサス。あなたが代わりに仲間にならないかね?」
「What?」

久瀬は完全にキースを見限ると、今度はペガサスを仲間にすべくすべての事情を話した……



「事情はワカりマシタ」

さすがはペガサス。
久瀬のわずかな説明で、『諸悪の根源』及び『勝沼紳一』の事情は全て理解したようだった。

「しかし、ワタシはユー達と行動するより、ミスター海馬と協力し、その『勝沼紳一』を捕らえる技術を完成させたいと思いマス」
「それは残念ですね」

ペガサスはあくまで前線には出ず、ソリッド・ビジョンを用いて『勝沼紳一』を倒すための手助けをするとのこと。

「それより、ワタシもその県立北高校の『SOS団』の噂は聞いたことがアリマス。ユー達はそこに向かい『SOS団』と接触すべきデショウ」
「…貴方ほどの男がそこまで言うのですから、間違いはないでしょう」

そして、久瀬の『SOS団』の情報を肯定し接触を勧める。



「ついでに、この男(キース)の根性も叩き直して真っ当なデュエリストに戻してやってくだサーイ」



「……え?」

そういって、ペガサスは勝手にキースを久瀬たちに押し付け帰っていった……



「(……とりあえず『SOS団』との接触は必要として……次は誰を連れて行くか………)」







と、いうわけで再びパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬以外の二人のメンバーを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『バンデッド・キース』の4人です



[15824] 第十八話 …愛すクレーマー
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/08 18:34
久瀬「(……とりあえず『SOS団』との接触は必要として……次は誰を連れて行くか………)」



パーティ…久瀬・春原・ロック







…ここは県立北高校。

そう!
我々はこの学校を知っているッ!!
この学校に存在するキチガイ……もとい何とも奇妙奇天烈なクラブを……!!!






*ここからはとある人物の語り口調で物語りは進行します






「みくるー!お茶ー!!」
「は、はいっ!!ただいまっ……!!」

今日もハルヒは朝比奈さんをこき使っている。
もっとも、これがある意味『SOS団』の日常ではあるのだが…

「あーあ……もうも平凡な日常が続くとなんか退屈ね」

…あれだけの事件が起こって間もないのに、よくそんな口を叩けたものだ。
喉元過ぎれば暑さを忘れる…ともいうが、ようやく世界が超常現象とは無縁の平凡な日常に変わってしまったことに、少しはありがたみを感じるべきだろう。

「ちょっと!バカキョン!!なんか面白いことないわけ!?」

今日も、またいつものハルヒの我侭が始まる……
そうそうハルヒの求める『面白いこと』など起こってたまるか。
宇宙人に殺されかけたり『機関』とかかわりを持ったり…そんな日常は二度とごめんだ。
俺でなくても、10人が10人、誰もがそんなものに関わりあいたくはないと思う。

「やれやれ……」

……しかし、あの女がああ『我侭』を言う以上は、きっと何かが起こるのだろう……

そう思いながら、俺はアンニュイな気持ちでいつものように自分の席に座っていた。







パリィィィン!!!



「ゲフウウウウ!!!」
「なっ!!?」

やはり俺たちに平和な日常などやってはこない。
突如、窓ガラスより金髪の男が飛び込んできた!!
男からは硝煙が出ており、おそらく人間大砲でもやっていたのであろうか…

まあ、とにかく、このなんとも突発的な状況にこの女は……

「ちょっと!これ!何かあるんじゃないの!!もしかして元KGBの奇襲!?ネオナチ!?それとも創価学会の嫌がらせ!?」

なんとも嬉々とした表情で俺に話しかけてくる。
そもそも、元KGBやネオナチ、創価学会が何の得があってこんなところを襲うのだろうか?
…いや、プーチンなら長門や古泉の情報を握っていてもおかしくはないかもしれないが……



「いやあ、すまない。偶然『南斗人間砲弾』が失敗して、偶然君達の部室にはいってきて申し訳ない。いやあ、本当に偶然だね。フハハハハ」
「そんな!いくらなんでも無茶苦茶です!!いや、皆さん申し訳ありません」

…そしてノックもせずに教室に上がりこんできたのは、やたら『偶然』を連呼する白衣の男と、先の件で謝っている青いヘルメットをかぶった少年であった。

ちなみに、こう『偶然』を連呼される場合、大抵が偶然ではないことは言うまでもないであろう。

すると、今度はこちらが何も聞いていないにも拘らず、この大胆不敵、傲慢不遜な白衣の男は勝手に自己紹介を始めてきた。

「僕の名前は『久瀬』。年齢は17歳。結婚はしていない。とある学校の生徒会長で毎日遅くとも夜8時には帰宅する。タバコは吸わない、酒はたしなむ程度。夜11時には床につき必ず8時間は睡眠をとるようにしている…。寝る前にあたたかいミルクティーを飲み、2時間ほどのSEXで体をほぐしてから床につくとほとんど朝まで熟睡さ…赤ん坊のように疲労やストレスを残さずに、朝目を覚ませるんだ…健康診断でも異常無しと言われたよ」

…こいつはどこぞの手首フェチの殺人鬼か……!



「はわわわわわ!一体何事なんですかあああ!?」

お茶を汲みに行っていた朝比奈さんが、事の異変に気づき姿を現す。
顔を出しても絶対ろくなことにならないのに、なんともけなげだと思う。

「なんだおっぱい奴隷か」

朝比奈さんを見るや否や、なんとも失礼な…というか、セクハラをいう久瀬という男。

「よくわかったわね」
「ち、ちがいますううう!!!」

それを肯定する、久瀬という男に負けず劣らずの傲慢不遜な女、ハルヒ。
朝比奈さんは即座に否定をするが、その否定をするしぐさも非常に可愛いものがあった。

「この金髪の砲弾(春原)もあんたの奴隷なワケ?」

先ほど打ち込まれた金髪の男を指差し、完全に人間扱いをしないハルヒ。

「いや、捨て駒だ。まあ、春原君にしては今回は頑張ったほうだろう」
「アンタは毎回毎回……」

この男もまた、それをまったく否定はしない。
すると、大砲の弾として扱われたこの春原という男はすばらしい生命力で立ち上がり、久瀬に対し怒りをあらわにした。

…それにしてもこの女…すでにこの状況に溶け込んでやがる……

「……はぁ……本当に申し訳ありません……」

この申し訳なさそうに頭を下げる青いヘルメット男……
この人はまだまともであることに、救いを感じずにはいられない。



「で、偶然大砲でここに入ってきたとして、なんでそんなことしたわけ?」

まあ、当然のことではあるが、ハルヒは久瀬にどうしてこのようなことをしたのかを問う。

「……まあ、実はだな―――」

そして久瀬は、なぜこのような砲撃?を行ったのか、理由を話始めたわけで―――



1・非常に不本意ではあるが、ハルヒと話を聞くことにした。
2・俺は興味がないので部室から出ることにした。



[15824] 第十九話 …God Unknows…
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/08 19:03
2・俺は興味がないので部室から出ることにした。



「で、偶然大砲でここに入ってきたとして、なんでそんなことしたわけ?」

まあ、当然のことではあるが、ハルヒは久瀬にどうしてこのようなことをしたのかを問う。

「……まあ、実はだな―――」

そして久瀬は、なぜこのような砲撃?を行ったのか、理由を話始めたわけで俺は興味がないので部室から出ることにした。



「……おかしい」
「は?」

廊下に出た瞬間、まるで俺を待ち伏せでもしてたかのように、『情報統合思念体』である長門が現れ俺に呟いた。

「……あの男……『久瀬』はどうデータを照合しても普通の人間……。あなた同様、涼宮ハルヒの力に影響を与えるイレギュラーの可能性かと思ったけど……それも皆無……」

長門が言うには、久瀬は至って普通の人間であり、俺のようにハルヒの力を左右する存在ではないとのことだ。

「……じゃあ、それで別にいいんじゃないのか?」

そう、それだけなら別に、何もおかしいことも引っかかることも特にはないはずである。
そんな俺の意に介すことなく、長門は話を続ける。

「……状況から推測すると、涼宮ハルヒが望む非日常が具現化し、且つ、『久瀬』は『ある目的』を達成するため涼宮ハルヒの力を利用しようとしている……お互いの目的が一致したケースということになる………」

…俺には長門が何を言いたいのかさっぱり分からなかった。
今までのパターンから考えれば、今回の出来事はハルヒの望んだ現象……ただそれだけなんじゃないのか?

「……でも問題はそこじゃない……」

俺の考えを先読みし、それを否定する長門。

「あの男…『久瀬』らは何らかの手段により時間遡行をしここに来た……『時間断層』が生じ3年前からの時空移動が不可能になったにも拘らず、それもTPDDなしで……」

……なるほど……
久瀬の存在は、どちらかといえば朝比奈さんに近いもの。
たしかに、『時間断層』が生じているにも拘らず、時空移動をしてきたとなるとそれはおかしい。

「……つ、つまり……『久瀬』って男は普通の人間でありながら、ハルヒの望んだ厄介なモノを満たすなにかを持っているってこと……か?」

俺の嫌な予感は、言葉を放つとともに増幅してくる……

「しかも、お前ら以上にありえない方法で時間移動してきて……」

……それにしても、俺がよもやそこまで推察することが出来るようになるとは……
水は方円の器に従うとはよく言ったものだ……

「……しかし、事態は『情報統合思念体』すら解析できないことに陥っている―――」

…つまり、長門ですらまったく把握できない、久瀬はある意味では真のイレギュラーなのだろう。



「そして、我々『機関』も非常に興味深い話なのですが、どう介入していいのか困ったものなんですよ。なにせ『閉鎖空間』ではなく『現実』に起きる出来事ですから」

いきなり俺の背後に現れたくっついてくる古泉……
……ってか、顔が近すぎる……



「……今明らかな情報は、時空を超越する『諸悪の根源』が時間圧縮を行い全てを無に返そうとしている……それを『久瀬』は『現時点』では阻止するために涼宮ハルヒを利用しようとしている。……ただ、それだけ」

……なるほど……
分かりやすく考えると、久瀬は世界の平和を守るために悪と戦っている。
そして、その相手がなんでもありでやってくるから、久瀬もこっちもなんでもありのハルヒで対抗するという。
まさに毒を持って毒を制す…ってやつか……



「…って、納得できるかッッ!!」

考えるより、先に言葉が出てしまう。

「長門の話が『仮に』本当だとして、そんなワケのわかんないことのために巻き込まれなきゃならないんだ!?」
「涼宮ハルヒが巻き込まれるということは、高確率で貴方が巻き込まれるということ」

たしかにそうかもしれない。
しかし、問題はそこじゃないんだ!!

「いくらハルヒにそういう『力』があるからって、それを『利用する』って……どっからどうみても(あくまで外見だけだが)普通の女子高生を、ワケのわからない戦いに狩り出すなんて、一体どれだけ非情なヤツなんだ……!?」

そう、久瀬にどんな大義名分があるとはいえ、俺は久瀬の手段を認めるわけにはいかなかった。



「……フフ……ずいぶんな言われようだな」



何時の間に……
それこそ古泉の時とは違う……
まるで時を止められたかの感覚で、本当に何時の間に俺の目の前に、この白衣の男…『久瀬』は存在した……!!!

「……それに僕は『利用する』つもりはない。あくまで『協力してもらう』のだよ」

久瀬は俺たちの話を聞いていたのか、いけしゃあしゃあと弁明を始める。

「まあ、話は聞いたけど、面白そうジャン!!こういう、本当の非現実な……まさに『第三次時空大戦』みたいなのを望んでたのよ!!!」

……そしてこの女、ハルヒは今ひとつ事の重大さに気づいていない……

「君は何をしていても構わない。ただ、その戦いの場を感じ取ってくればそれでいい。それでも、それが今後のSOS団の活動に大いに貢献する出来事になると思うよ」
「そうねえ!時間を支配する敵に、それを倒すため時を越え仲間を集める男……熱い展開じゃない!断られても絶対に行くわよッ!!」
「それでこそSOS団団長だ」

…ハルヒと久瀬の会話に、もはや言葉もない。
……ハルヒがただただ単純なのか、あるいはこの『久瀬』という男の交渉術がすごいのか…まるで見当もつかない……



「(ちなみに、長門君や古泉君、朝比奈君の情報は一切伏せているから、そこは安心したまえ)」
「………!!!」

再び、いつの間に近づいてきたのか……
今度は俺にだけ聞こえるように、小声で俺にささやく久瀬。
この男は妖術師の類か何かなのだろうか……?

否、今はそんなことは問題ではない。
久瀬のその言葉を聞いた俺は、まさに青天の霹靂であった。



…そして、我に返ったときに当然思うこと。
なんでこの男は『長門』『古泉』『朝比奈さん』のこと知っているんだ!?

「(彼女が長門君らの情報を得たところで、この世界には不利益しかもたらさないからな。極力情報は伏せておくのが得策というものだ)」

いや、この男がなんでこちらの情報を握っているのかはこの際どうでもいい。
……この調子だとおそらくこの男は、この戦いがいかに危険であるかとか、そういった肝心な情報は一切伏せ、ハルヒの喜びそうな情報だけを与え懐柔したに違いない。

そんなヤツが世界のために戦う…だと!?



…俺はこの久瀬という男を―――



1・一発殴らなければ気がすまなかった…
2・意地でも止めようと思った…



[15824] 第二十話 …糞SS=下劣×不精×根性悪
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/08 19:34
1・一発殴らなければ気がすまなかった…



いや、この男がなんでこちらの情報を握っているのかはこの際どうでもいい。
……この調子だとおそらくこの男は、この戦いがいかに危険であるかとか、そういった肝心な情報は一切伏せ、ハルヒの喜びそうな情報だけを与え懐柔したに違いない。

そんなヤツが世界のために戦う…だと!?



…俺はこの久瀬という男を一発殴らなければ気がすまなかった…






予想もしなかったことだが、かわされると思っていた俺の拳は難なく『久瀬』という男の左頬を貫いていた。

「…これが…若さか……」
「……ッッ」

……というより、なんだかわざと殴られた感さえ感じられる。
俺が殴ることさえもこの男の想定にあるとすれば、古泉並にタチの悪い男だ。

「ちょっと!キョン!アンタいきなり―――」
「……いや、なに構わんよ」

俺がイキナリ久瀬を殴ったことを怒るハルヒに対し、案の定、何もなかったかのよう話を続けようとする久瀬。

「なんだったらもっとやっても……」

春原という男は、久瀬に普段からろくな目にあっていないのだろう。
ここぞとばかりに調子に乗り、俺に追撃を促してきた。

「古泉君、この男を永久に『閉鎖空間』に封印してくれないかね?」
「あまり私用で能力は使いたくないんですがねぇ」
「な、なんだかよく分からないけど、いや、マジすんません」

しかし、その小兵の反乱は恫喝一閃によりあえなく鎮火した。



「……フフ……君は似ている」
「は?」

今度は突然何を言い出すんだ…?
この久瀬という男、本当に得体が知れない男である。

「……かの闇のフィクサー『銀王・平井銀二』は言っていたよ。『巨悪を征するのはそれより大きな巨悪』…と」
「……なッッ!?」


平井銀二!!
「銀王」の異名をとる裏社会のフィクサーであり、あらゆる面で卓越した能力と、独自の人生哲学を持つ。
悪魔じみた思考で弱者や悪党から金を搾り取るが、「巨悪を征するのはそれより大きな巨悪」という思想を持ち、伊沢を始めとする有力な政治家を使って国の経済界を支配することを最大の野望としている。

「悪を倒すのは正義などではない。暴力にはより強い暴力で、権力や金にはそれ以上の権力や金で屈服させなければならないのだよ」
「………」

……久瀬の口から放たれる言葉に、俺は開いた口が塞がらなかった。



「(……データによると、この男『久瀬』は以前も同じことをしている)」
「え?」

今度は長門が、俺にだけ聞こえるようにそっと話す。

「(以前、彼は自分の通う学校で『川澄舞』という人物に手刀を寸止めされた時も微動だにしなかった)」
「(…それってただ単にケンカに弱い…ってだけじゃ……)」
「(……それなら初めからこのような戦いはしない。……この男は自分の善悪に忠実な究極のエゴイスト。己の悪も理解しその業を背負おうとする……極めて不合理な有機生命体―――)」



「アンタたち、さっきから何をウダウダ言ってるのよ!」

人が長門と重要な話をしているときに、この女はずけずけと間に入ってくる。
こっちとしては、一応、お前の身を案じているつもりではあるが、それを少しでも理解しているのであろうか…?



「ほら!みくる!戦闘服に着替えなさい!!」
「…だからって、なんでこんなピチピチでやたら露出の多い服なんですかぁぁぁっ!!?」

そんな俺の考えなど露知らず、ハルヒは無理やり朝比奈さんに、やたらキツ目のハイレグ水着のようなものを着せていた。
……っていうか、特に胸元がきわどすぎて……とてもじゃないが直視できん!!!

「SF映画のヒロインの服ってみんなそういうもんでしょ」
「うんうん!すんごくいいっす!!」

たしかに……
朝比奈さんなら何を着ても似合うが、こういうフィフス・エレメントに出てくるような非常にセクシーな衣装なら、これぞ文句なしの眼の保養になる。
あの金髪不良男のオーバーなアクションも妥当といったところだろう。



……って、そんなこと考えてる場合じゃない!!



「……あのなあ……ハルヒ。事がどれだけ重大か分かってんのか?」

俺は朝比奈さんのきわどい格好に見惚れていたことを悟られぬようにしながら、ハルヒに忠告をする。

「もちろんよ。世界の危機が懸かってるんでしょ。だからってガチガチに構えていても何も始まんないわよ」
「……はぁ……」

…しかし、これ以上俺の忠告は聞く気もなく、本人は完全にこの『時空戦争』を楽しむつもりでいっぱいであった。



「(……おそらく長門さんは静観の立場を取るでしょうけど……万が一の時には、僕が久瀬さんを始末しなければならないかもしれませんね……)」

そんな俺たちのよう様子を見て、何かを考えている古泉の姿がなんとなく印象に残った……







視点は第三者に戻る―――







「(折原浩平君…相沢祐一君…国崎往人君…岡崎朋也君……キョン君は彼らと極めて似たタイプだ。これらのタイプの人間は、なぜか予測の出来ない『奇跡』を引き起こすモノを持っている。もしかしたら彼は、涼宮ハルヒ君の『世界を操作する力』以上に収穫かもしれない…フフ……)」

久瀬はキョンという男に、かつてのさまざまな困難を乗り越えてきた男たちの姿をダブらせていた。
そして、キョンの成長に大いに期待をかけていた。

「……あの、どう見ても彼ら普通の高校生なんですけど、どう考えてもこんな戦いに狩り出すのは非人道的じゃ……」

何も知らないロックは、その久瀬のあまりの人事に意見をする。
それもそのはず、朝比奈みくる、長門有希、古泉一樹のデータを握っているのはあくまで久瀬のみであり、春原、ロック、キースは当然知りえない情報である。
ただし、梨花、蒼崎青子、まいはあるいは知っているのかもしれない。

それはさておき、故に、ロックの意見は至極まともな意見であった。



……しかし、久瀬はその意に介さない。



「(戦いはすでに始まっている。情報戦ではまずはこちらがリード…勝沼紳一が涼宮ハルヒ君に手を出す前に接触、仲間にすることは出来た。問題はこの後……!勝沼紳一は間違いなくこの場所に現れ僕らと対峙するであろう。彼を倒すには涼宮ハルヒ君の能力が不可欠ではあるが、彼女の能力は今のところ極めて不安定かつ不確定要素が強い。……だとすると、彼女の能力をバックアップする仲間が一人くらいは欲しいところだが―――)」



1・やはり涼宮ハルヒ君に対し影響力が強く、相沢君のような『奇跡』を体現する可能性もあるキョン君だろう。
2・情報統合思念体の超越した英知と蓄積された情報をもつチート、長門有希君だな。
3・ヤプールばりに閉鎖空間に行き来できる超能力者、古泉一樹君だろうか……
4・やはりアイドルは欠かせない!おっぱい最高な未来人朝比奈みくる君に決定ッッッ!!!



[15824] 第二十一話 …外道の手下は外道
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/08 22:24
1・やはり涼宮ハルヒ君に対し影響力が強く、相沢君のような『奇跡』を体現する可能性もあるキョン君だろう。



「(戦いはすでに始まっている。情報戦ではまずはこちらがリード…勝沼紳一が涼宮ハルヒ君に手を出す前に接触、仲間にすることは出来た。問題はこの後……!勝沼紳一は間違いなくこの場所に現れ僕らと対峙するであろう。彼を倒すには涼宮ハルヒ君の能力が不可欠ではあるが、彼女の能力は今のところ極めて不安定かつ不確定要素が強い。……だとすると、彼女の能力をバックアップする仲間が一人くらいは欲しいところだが……やはり涼宮ハルヒ君に対し影響力が強く、相沢君のような『奇跡』を体現する可能性もあるキョン君だろう)」

折原浩平、相沢祐一、国崎往人、岡崎朋也…
キョンは彼らに通じるものがあると感じた久瀬。
やはり久瀬は、キョンの潜在的な力を買っているようだった。


「ってわけで、キョン!あんたも同行するのよ!!」
「……へ?」

無論、ハルヒもキョンの同行を反対するわけもなかった。
というより、半ば強制連行のような形であり、キョンも間抜けな声を上げる。

「が、がんばってくださいっ!!」
「あ、はい……(って、そんなギリギリのSF衣装で迫らないでくださいっ……)」

キワドイ衣装のみくるに応援されては、いまさら嫌だとはいえないキョン。
まだ若い証拠ではある。



一方、その光景を見守りつつも、こっそりと話を進める古泉と長門。

「……(キョン君なら、まあ、大丈夫でしょう。僕としては影ながらサポートしたいのですが……。今回、貴方と僕の利害は一致するはずですから、一緒に動きませんかねぇ)」
「(……異論はない)」

古泉と長門は、直接的な関与はしないながらも、あくまでハルヒのために動く心積もりではあるようだった。



「……無論、君達のバックアップは想定の範囲内だ。特に長門君。君には至る場面でご助力をお願いしたい」

そして、これは久瀬の想定内でもあった。
久瀬は長門、古泉二人に近づき、改めて協力を申し出る。

「……構わないけど……情報統合思念体は、貴方達のような有機生命体が解析、理解するには容量が大きすぎる……。それは久瀬君……貴方とて例外ではない」

長門はその久瀬の真意を見抜いてはいるのであろう。
久瀬との協力を承諾しながらも、久瀬に対する警戒はしているようだ。

「無論、そのようなおこがましいことは考えてもいない……フフ……。ただ、その君の能力の一部を貸していただくに過ぎない。最も、君も涼宮ハルヒ君の監視も出来てお互いの利益は一致するのではないのかね?」

あくまで不敵に、真意の見えぬ発言を繰り返す久瀬。
長門は一切表情を変えず、ただ、久瀬の意見に唯唯諾諾と従うのみであった。

「それは僕とて同じ立場なんですけど、なぜ彼女なんです?」
「男より女の子の方がいいに決まっている」
「あらら」

久瀬に対し軽い冗談をいう古泉ではあったが、言うまでもなく古泉も久瀬を信用しているわけではなかった。



そんな会話の中でも長門は久瀬の意思にアクセスしようと試みているのだが……

「(……何という強靭なエゴ……!情報の書き換えはおろか、こちらからの介入を一切許さないなんて……)」

……無論、そんな長門の介入を、久瀬の自我はそれを許さなかった。



「(長門有希……否、情報統合思念体……か。僕の持っている不都合な情報を削除しようとするとは、やはり完全に僕を信用してはいないらしい。……フフ……)」











ここは北高前……
ついに現れた闇の衣に包まれし蜘蛛……!
否、その身体を操る邪悪な魂『草陰茂』!!!



「グ…グフフ……なんていい身体なんだ……!こいつの能力なら、誰が相手であろうとも……いや、軍が相手であろうと負けやしねぇ……!グフフフフフフ!!」

男は身体の記憶にあるルーンの文字を校庭に描き、呪文を唱え始めた!!



「天に燃ゆる金蠍宮の火の心臓よ……我が従僕に仮初の命を与えるべし……」



草陰茂が呪文を唱えると、描かれたルーンの魔方陣より肉体がトマトソースのごとくグチャリとしたものが姿を現す……!

「グオオオオオ!!痛イ…!痛イ…!ナゼ安息ノ眠りヲ妨ゲル……ッッ!!」

その肉はただれ、神経はむき出しの状態。
その身は微風が吹くだけで、身体が灼熱で焼かれるような激痛に苛まれるであろう。

「うっ、うるせぇな!こ、この俺様が再び現世に蘇らせてやったんだ!ありがたく思えよな。ヒッヒッ……」

そのような痛みなど皆目見当もつかない草陰茂は、痛みを訴え叫ぶケロイドに対し、ただただ罵声と悪態をつくだけであった。

「お…俺を……!俺を『魔竜王ガーヴ』と知ってのことか……!」

魔竜王ガーヴ!!
赤眼の魔王『シャブラニグドゥ』の五腹心の一人であり、五人の中ではもっとも獰猛で好戦的。
異世界の『降魔戦争』において『水竜王』を滅ぼすが、その代償として人間の内に封じ込められてしまう。
幾度の転生を経る内、魔王軍より離反。最終的には冥王フィブリゾの策にはまり消滅してしまった、哀れ極まりない魔王である!!



「し、知らねえよ!お、俺はただ、勝沼様から与えられた身体の能力でアンタを『アンデッド』として蘇らせただけだ」
「グアアアアアア!!!」

しかし、草陰茂にとっては異世界の魔王など知ったこっちゃない。
ただただ痛みに悶える『魔竜王』を観察していた。

「わ、我ながらひでぇ能力だぜぇ……。皮膚のない痛覚神経剥き出しで蘇生させちまったんだからなぁ……!こんなんじゃ女を蘇生させて犯そうにも気が削がれちまうぜ……」

自分の肉体…アンデッドを蘇らせる特殊能力に感嘆しつつも、その興味はやはり女を犯すところにあった。



「紅蓮の炎に眠りし暗黒の竜よ、その咆哮をもて、わが敵を焼き―――ミギャアアアアア!!!」

ついにはガーヴは主たる草陰茂を、自らの最強呪文『魔竜烈火咆(ガーヴ・フレア)』で焼き払おうとするも、呪文詠唱さえもその蜘蛛の指が刺さるだけで封じられてしまう。

「わ、悪ぃな…、アンタ、もう俺の従僕なんだからさ……、俺に逆らおうとすれば、もっと苦しくなるだけだぜ…。そ、それに、久瀬たちを倒して北高の女を犯しまくれば、お、お前にもおこぼれくらいはやるぜ……!」
「い、いらん……グアアアア!!!」

聡明な方は気づいたであろう。
草陰茂の操るこの身体は『冥王ゴルゴナ』のものであった!!
生前も死後も『冥王』に弄ばれる魔竜王ガーブの様はまさに皮肉でしかない。

「ま、まあ、とりあえず久瀬たちを倒せば、もう一度安息の眠りを与えるぜ……グヒッ…」
「ほ…本当……だな……」
「あ、ああ……本当だぜ」

こうして主人・勝沼紳一ばりの口八丁で魔竜王ガーヴを操り、久瀬の抹殺及び涼宮ハルヒの奪還を狙う草陰茂。
久瀬たちの運命やいかに―――!!!







と、いうわけで再びパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬以外の二人のメンバーを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『バンデッド・キース』『涼宮ハルヒ』『キョン』の6人です。



[15824] 第二十二話 …勝てばよかろうなのだァ!!!
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/09 19:51
こうして主人・勝沼紳一ばりの口八丁で魔竜王ガーヴを操り、久瀬の抹殺及び涼宮ハルヒの奪還を狙う草陰茂。
久瀬たちの運命やいかに―――!!!



パーティ…久瀬・キース・ハルヒ







アンデッドと化した魔竜王ガーヴ……
その牙がついにSOS団、そして久瀬へと向けられる!!!



ここはSOS団部室…

「紅蓮の炎に眠りし暗黒の竜よ、その咆哮をもて、わが敵を焼き尽くせ。魔竜烈火咆!!!」



「罠発動!!八式対魔法多重結界!!手札から魔法カードを一枚捨てることで発動は無効になる!!!」

その部室の扉より、ほぼ不意打ちのような形で『ガーヴ・フレア』が発動されようとしたが、キースの『罠カード』により魔法は無効化されてしまった。



「なっ……!!!」

無論、不意打ちにかけたつもり防がれてしまい、唖然とする他はないガーヴ。

「残念だったな。先ほどの君と…姿こそ違えど『草陰茂』の一連のやり取りは見せてもらったよ。『ガーヴ・フレア』か……フフ…手の内は二度も見せるものではない。……切り札は最期まで取っておく……これは勝負の鉄則なのだよ」
「お…おのれい!!!」

やはり全てはこの男、久瀬の策であった。
先のガーヴのやり取りから、『ガーヴ・フレア』を解析。
それが魔力であると知るや否や、キースのカードに対抗できうるものがあるかどうかを確認、今回の策に移ったのだ。


「こちらは三人…果たして今のような大呪文、僕らを相手に唱える暇があるものかね?」

状況は、俄然久瀬たちの有利であろう。
先の呪文は、比類なき威力である代わりに、詠唱時間を必要とする。
ましてや痛覚神経むき出しのこの肉体でその大呪文を扱うには、ガーヴにはあまりにもリスクが大きすぎた。

「ふーん…そいつが魔竜王?なんだかたいしたことなさそうね」

相手が魔王であっても、ハルヒの大胆不敵な態度は変わらない。
ハルヒにとって見れば、魔王ですら格下の存在に過ぎないという凄まじいエゴがあった。

「な…舐めやがって!!だが、俺は魔法だけじゃねえぜ!!!」
「その崩れかかった身体で肉弾戦?バッカじゃない?」

無論、魔竜王の称号を持つガーヴにしてみれば、女子供からこのような挑発を受けるなど屈辱以外の何者でもない。
たとえこの身が朽ち果てていたとしても、このままで終わるのは非常に不本意なものがある。
ガーヴは今度は剣を持ち、ハルヒに襲い掛かろうとする。

「そのようなこと……僕のデータにないとでも思ったのか愚か者が。確かに貴様は剣の達人ではあろうが……ホレ、涼宮君」

久瀬はそういうと、ハルヒに一本の剣を渡した。

「果たして、貴様にこの女子高生を倒すことが出来るかなァァァ……?」

そしてさらに魔竜王を挑発する久瀬。

「ふーん……剣道ねぇ。実践でやってみるのも面白そうだわ」

剣の握りを確かめながらも、それでも余裕の表情を崩さないハルヒ。
文字通り真剣での勝負だというのに、なんとも大物である。

「ま…マジで舐めやがって!!」

刹那!魔竜王ガーヴの剣撃がハルヒに襲い掛かった!
しかし、さすがは天性の運動神経をもつ女、涼宮ハルヒ…
その剣撃を見事刃で受け止めた!!!

「やるなっ!!だが、パワーがダンチだぜ!!!」

……しかしその力の差は歴然としており、ガーブの剣が徐々にハルヒの刃の盾を圧してきている……!

「ハン……さすがにセンスはあるかもしれんが地力が違うんだよ!!!」

そしてトドメとばかりに、柄を握る手に力の入るガーヴ。



「そうかしらッ!」

ゴッ!!!

その一瞬!
ハルヒの剣の腹より炎の渦が発生しガーヴを包み込む!!!



「ぐああああああああ!!!」

そのむき出しになった肉体は焼かれ、さすがのガーヴも悶え苦しむ。


「さすがは久瀬ね。まさか剣の中に発火装置を仕掛けているなんて」
「なあに、君ならすぐに気づくと思ったさ」

なんと、久瀬がハルヒに渡した剣には、あらかじめ簡易的な火炎放射装置が取り付けられていたのだ。
おそらくは柄のところに、一回分の燃料が詰まっているのであろう。
どこかにあるトリガーを引くことにより、剣の腹にある小さな発射口より瞬時ながらも火炎が放射される仕組みである。

「魔竜王といっても所詮はアンデッド……おまけに痛覚神経が剥き出しでは、この炎攻撃はひとたまりもあるまい」
「き、汚ねえ……!!剣の勝負じゃなかったのか―――ッッ!?」

剣での勝負においての、不意打ちともいえる火炎放射。
ガーヴはその久瀬の卑劣さを罵る。

「何ィ?聞こえんなァァァ!!…そもそも、誰が剣で勝負するといったのかね?」

しかし、久瀬にとってはそのような罵声など聞く耳持たない。
この男、初めから真剣勝負などするつもりはなく、端からガーヴを罠にはめ火達磨にする気でいたのだ。

「ホント、魔竜王なんていうからどんなものかと思えばただのバカじゃない!まだキョンのほうがマシってもんよ」
「――――――ッッ!!」

さらにハルヒの辛辣なセリフが魔竜王のプライドをズタズタにする。
……まさに最悪の外道コンビである。

「……もういいわ、さらに追撃行くわよ」
「うむ」

さすがに飽きたのか、そろそろ結着をつけるため、今度は本物の火炎放射器を久瀬とハルヒが手にする。
そして二人はボンベについてあるホースの口をガーヴに向け…

「「汚物は消毒だーッッ!!!」」

ゴゴゴオオオオオオ!!!

「ウガッ!!ギャアアアアア!!!」

決め台詞(?)とともにトリガーを引き、休むことを知らない火炎をガーヴに浴びせたのだった。
紅蓮の炎に焼かれ、悶え、苦しみ、しこたまのた打ち回る魔竜王ガーヴ……



「(こ、こいつらなんと言うコンビプレー……っつーか、キチガイじみてるぜ……!!)」

そして、この圧倒的残虐な状況についていけずドン引きするキースであった。



「とにかく、こんな雑魚倒してもアンデッド増やされちゃたまったもんじゃないわ」

完全に炭と化したガーヴを捨て置き、次の段階へ進もうとするハルヒと久瀬。

「うむ、となると次の一手は―――」



1・当然、敵の親玉『草陰茂』を始末しに行くことだな。
2・再び罠を張り、より戦いを優位に進めよう。



[15824] 第二十三話 …ヒロイン=非処女でファビョるのってただのギャグだろ
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/09 21:02
1・当然、敵の親玉『草陰茂』を始末しに行くことだな。



「とにかく、こんな雑魚倒してもアンデッド増やされちゃたまったもんじゃないわ」

完全に炭と化したガーヴを捨て置き、次の段階へ進もうとするハルヒと久瀬。

「うむ、となると次の一手は当然、敵の親玉『草陰茂』を始末しに行くことだな」

このままアンデッドを倒し続けても、おそらくは無限に増えていくであろう。
そうなれば埒が明かない…
そう考えた久瀬は、そのアンデッドの生みの親である『草陰茂』を倒すことを提案する。

「そうね!このまま消耗戦に持ち込めば、手下がほぼ無限に作れる敵のほうが有利…!だったら敵本体に奇襲攻撃を仕掛けるのが得策ッ!!」

無論、ハルヒも無駄に戦いを長引かせることの不利は理解している。
ハルヒは久瀬の提案に賛同し、奇襲攻撃を仕掛けることを考えていた。



「(こ…こいつら本当にただの高校生か!?地力のみならあのハルヒって女は魔竜王に絶対ェ勝てなかったハズだ!!……それを俺のカードを使ったとはいえ、敵の奇襲を破ることで心理的優位に立ちッ!すかさずブラフで敵に剣のみの勝負を挑ませたところを罠に嵌め、後は反撃も赦さねェ徹底した攻撃……ッッ!!……ククッ……まさかオレ以上の悪党がここにいるとは……。久瀬ッ…テメェは最低最悪のペテン野郎だぜ……ッッ)」

そして、闇の世界では名の知れていたキースではあったが、そんな彼も久瀬とハルヒの心理戦、駆け引きの強さ、そしてダーティさに脱帽していたのだった。








部室から校舎に出るまでの間…
バイオハザードを髣髴させるアンデッドの群れが久瀬たちに襲いかかってくる。
そのアンデッドの親玉『草陰茂』との直接決戦に備え、最低限、邪魔な有象無象のアンデッドを蹴散らしつつ、校庭に出る久瀬とハルヒ……







激戦の中を、最小限の戦闘で切り抜けてきた久瀬とハルヒは、玄関を出たところでようやく一息をついた。



「フシュルルル……」



「何か言った?」
「いや、なにも」

ハルヒに微かに聞こえてきた、謎の呼吸音。
しかし、この段階では久瀬もハルヒも特に警戒はしていない。

「フシュルルル……」

「邪悪な気配が!?」

ようやく、その呼吸音がはっきり聞こえてきたところで、ハルヒはその音の聞こえてきた方向に振り返る。



「嬉しい……嬉しいぞ……お前らを葬ることが出来て……」

「何者だ!?」

久瀬もその謎の声の主、巨大な蜘蛛の気配に気づき、臨戦態勢を取る。


「お、俺は……死の水先案内人……勝沼紳一様の四天王……土の草陰茂」
「フシュルルル……」
「フシュルシュル……」

ついに対峙した!勝沼紳一の手下の一人、『草陰茂』!!!
今はかの『冥王ゴルゴナ』の蜘蛛の肉体と能力を操り、数十体のアンデッドを引きつれ久瀬たちとの決戦に臨んでいた!!!



「俺の可愛いアンデッド達の……餌のじか―――」



「可変機獣ガンナードラゴンをリリースなしで召喚!!撃ち殺せッッ!!!」

ドッ!!!

なんと言う不意打ち!!
草陰茂が全てを言い終える前に、あらかじめ背後に回っていたキースの召喚したモンスターが、背後より草陰茂を狙い撃っていた!!!

「ミギャアアアア!!!」

機獣の背中から放たれるカノン砲の砲撃は、止まることなく草陰茂を撃ち続ける。

「フハハハハ!!!さしもの冥王の肉体とはいえ、この不意打ちは効果ありだろう!!!クククッ!!!」

これもまた、久瀬の計算どおり。
自分とハルヒに目を向けさせているうちに、こっそりとキースの妥協召還した『可変機獣ガンナードラゴン』で砲撃するという、なんとも大胆不敵な作戦。

そしてこの、相手の神経に障る久瀬の高笑いである。



「おっ!おのれェェェ!!!こっ!この俺にィィィ!!!」

RPGでイベント戦闘のセリフ中でも攻撃をするのが久瀬である。
自分の話を中断され攻撃を受けることほど屈辱的なものはなく、草陰茂は受けた屈辱を返そうと、腸煮えくり返っていることであろう。

「まだだ…!まだ僕のターンは終わらんよ!!!」
「火炎放射攻撃ィィィ!!!あんたのかわいいアンデッドごと焼き払ってくれるわッッ!!!」

そう、負け犬をドブに沈めるのは久瀬の流儀。
久瀬とハルヒは、アンデッド退治に使用した火炎放射器を草陰茂、及びアンデッドに向け、その地獄の火炎を浴びせる。



ゴゴゴオオオオオオ!!!



「アアアアアア―――」
「!!!!!!!!!」

悶え、苦しみ、逃げ惑うアンデッドの数々……
ハルヒと久瀬の放たれた火炎放射器の紅蓮の炎は、見事なまでに草陰茂及び数十体のアンデッドを包み込んでいた!!!



ゴゴゴオオオオオオ!!!



「勝負ありね…!」
「ハン!!この『ゴースト骨塚もどき』よりテメェらのほうがよっぽど怖ェぜ」

草陰茂を中心に、大炎上しているアンデッドを見て勝利を確信するハルヒとキース。
アンデッドを使用することから草陰茂を『ゴースト骨塚』呼ばわりし、その程度のやつらよりは、久瀬のペテンとハルヒの行動力の方が恐ろしいと、キースは揶揄する。



「(……おかしい……!あの勝沼紳一の直属の部下にしてはあっけなすぎる!!そもそも魔竜王ガーヴと違い、草陰茂自身の肉体は完全なものであるはず……!!いくらアンデッドが火に弱いとはいえ、こんな火炎放射ごときで倒せるものなのか……ッッ!?)」

しかし、あまりにも事が順調に行き過ぎているのか、久瀬は今ひとつ、この戦況にしっくりとこなかった。
こういうときには必ず落とし穴があるもの…久瀬がそう考えていた刹那だった……






「こ……光葬魔雲……!!!」



火柱の中から草陰茂の小さな声が聞こえるとともに…
炎は闇に吸い込まれ、今度は久瀬たちの周辺に黒き雲が渦を巻き、徐々に覆い始めた!!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

「ぐああああ!!!」
「な…なんでなのッ!?アンデッドは火に弱いはずじゃ……!!!」

暗黒の雲の瘴気はキース、ハルヒを蝕み続ける。
アンデッドは炎に弱いはずではあるが、草陰茂はほとんどダメージを負った様子は見られない。
涼宮ハルヒの疑問は、瘴気による激痛とともに言葉として吐き出された。

「あ、甘く見たなバカめ!!」

今度は逆に、こっちがハメてやったとばかりに勝ち誇る草陰茂。

「き、貴様らが俺と魔竜王ガーヴの一連を見ていたように、俺も手下のアンデッドにさっきの戦いを監視させてたんだ!火の弱点はとうに克服しているんだぜッ!!!」

そう、草陰茂もただ徒にアンデッドを差し向けていたわけではなかった。
久瀬たちの戦闘パターンを見破り、その対抗策を立てた上で久瀬たちとの戦いに望んでいたのだ。
……しかし、草陰茂はどうやってアンデッドの弱点である火を克服したのか……?

「……グッ!!(…お…思ったとおり!す、すでに炎に対する耐性をつけるべく………!!!))」

久瀬には、その火への耐性に思い当たる節があった。

「……と、取り込んだな!!貴様!!その冥王の背中に……炎術師を……ぐあああああ!!!」

炎術師!!
火影忍者の一族が持つ炎を生みだす力のある人間である。
基本的に各代に一人しか生まれない凄まじい能力であるが、その炎術士がすべて火影忍軍の党首になるわけではない!
器ではないとして身を引いたものや、危険人物として殺された炎術士もいる。

「ほぅ……察しが着いたか……。さすがは久瀬。あの勝沼紳一様や『あのお方』が警戒するだけのことはある。そうよ!取り込んだのよ!!炎術師とやらの死体をアンデッドとして蘇生させ冥王の身体にな!!!」

久瀬の読みは当たったが、それでもこちらの優位は変わらないとばかりに、嬉々として種明かしをする草陰茂。
その言葉通り、彼は炎術師をアンデッドとして蘇生、それを冥王ゴルゴナの体内へ取り込むことで炎に対する耐性をつけたのである!!!



「ど…どういうことなの!?」

状況がまったく理解できないハルヒは、思わず久瀬に尋ねる。

「……『冥王ゴルゴナ』とは、冥王の体内に取り込んだ7人の人物のリーダー格の名前に過ぎない……!草陰茂はあくまで冥王の肉体を操り、炎術師を蘇生し体内へと引き入れたのだ!!」
「そ、そいつァ初耳だぜッッ」

間抜けなことを口にするキースであったが、初耳も何も、そんな情報を知っているのはごく僅かである。
しかし、久瀬の解説まだ続いている。

「……グッ……ぜ、前例がないわけではないッッ!!『森光蘭』という男がその義理の息子『紅麗』の『炎術』に対抗すべく、紅麗の遺伝子を持つゴスロリ少女『煉華』を作り出したのだがッ!その煉華が敗走するや否や森光蘭は煉華を『喰らい』炎術の抗体としたのだ!!!」

草陰茂は、勝沼紳一に肉体を乗っ取られる以前にも、浮浪者として警察に捕まることなく何人もの女を強姦してきた非常に狡猾な男である。
…むしろ、ここまでの情報を知りながらも、草陰茂がそこまでしまいと甘く見すぎていた久瀬に落ち度はあった。

「ひ…ひでぇことしやがるぜッッ……」

しかし、草陰茂のあまりにもの残酷さに、久瀬の作戦云々よりも『森光蘭』の外道さにガラにもなく苦言を呈するキース。



「そのとーり!いやぁ……どうせ煉華って女はしょ…『処女』だったんだろうから……まともに蘇生できれば真っ先に犯したかったんだけどなぁ……ヒッヒヒヒ……」

どうやらこの草陰茂という男は、先の久瀬の話に出てきた『煉華』という少女の遺体をアンデッドとして蘇らせ、その体内に取り込んだようだった。
その少女への拘りっぷりが、外見、中身とともに彼の醜悪さを際立たせている。

「さ…サイテーね……」

さすがのハルヒも、そういわざるを得ないであろう。
それほどまでに歪みきった男、草陰茂。



「所詮は処女厨か……。穴に入れればなんだって同じだろうに……」
「テメェも大概サイテーだな……」

久瀬も草陰茂に対して苦言を呈するものの、同じく最低な男であるが故に失言をして、逆にキースに苦言を呈される。

「え?そういうもんじゃないの?」
「オメーも同類かよ!!!」

ハルヒは、久瀬の失言についてはどうも思わなかったようである。
所詮、愛もへったくれもない久瀬とハルヒであった。



「な…なんだかわからんが、まあいい!トドメを刺してやる!!!」

その漫才みたいなやり取りに半ば絶句しつつも、ここで決めにかかろうとする草陰茂。

「フフ……」

しかし、こんな圧倒的不利の状況でも、久瀬はまたしても大胆不敵の笑みを漏らす。
そして……

「どうやら貴様はペラペラしゃべりすぎたようだ!」

まるで形勢は逆転したとばかりに、久瀬は声高らかに言う。

「何ィ!?」
「先ほどの要らない一言で、貴様への攻略方法が見つかったのだよ!!」

そして、まるで敵がマヌケとばかりに言葉を続ける久瀬。

「ヒャッハハハ!!!ほ、炎の効かないアンデッド相手をどう倒すっつーんだぁぁぁ!?まさか聖属性の技を使えるやつがいるわけじゃあるまいし、殴り合いならすでに大ダメージを負っている貴様らの方が圧倒的に不利なんだゼェェェ!!!」

しかし、この圧倒的な戦況の中で、どうして己が不利を信じることが出来ようか。
そういわんばかりに、久瀬の言葉を否定し笑う草陰茂。
たしかに、アンデッドの弱点は火と聖属性と相場は決まっているが、草陰茂は火への耐性があり、その上、久瀬たちの中に聖属性を使えるものは存在しない。
かといって、ここで肉弾戦に持ち込んだとしても、ダメージを負っている久瀬たちでは所詮『蜘蛛の化け物』に敵うわけがない。
……少なくとも、草陰茂はそう考えていた。

「フフ……滅び行く貴様に一つ大ヒントを与えてやろう!!貴様を攻略する切り札は―――」



1・この僕だッッ!!
2・涼宮ハルヒ君だッッ!!
3・バンデッド・キース君だッッ!!



[15824] 第二十四話 …劣化の炎
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/11 22:35
3・バンデッド・キース君だッッ!!



しかし、この圧倒的な戦況の中で、どうして己が不利を信じることが出来ようか。
そういわんばかりに、久瀬の言葉を否定し笑う草陰茂。
たしかに、アンデッドの弱点は火と聖属性と相場は決まっているが、草陰茂は火への耐性があり、その上、久瀬たちの中に聖属性を使えるものは存在しない。
かといって、ここで肉弾戦に持ち込んだとしても、ダメージを負っている久瀬たちでは所詮『蜘蛛の化け物』に敵うわけがない。
……少なくとも、草陰茂はそう考えていた。

「フフ……滅び行く貴様に一つ大ヒントを与えてやろう!!貴様を攻略する切り札はバンデッド・キース君だッッ!!」
「え!?オレ!?」

突然の久瀬の指名に虚を突かれたバンデット・キース。
彼は草陰茂の外道ぶりに嫌悪感を抱きつつも、その心のどこかで「勝てるわけがない」と思っていた。
そんな自分に、なんの示し合わせもなく久瀬は『切り札』と言ってのけたのだ。
キースでなくともこの状況、まさに青天の霹靂であろう。

「フフ…君の持っている2枚のキーカードがヤツを倒す切り札となるのだよ」

そんなキースの思惑をまったく無視し、久瀬は言葉を続ける。

「ハ!?んなこといったって、キーカードがなんなのかオレさえも知らねェ……」
「君はデュエリストなのだろう。そのくらい察したまえ」
「て、テメ……」

キースは即座に久瀬に反論しようとしたが、有無を言わさぬ久瀬の押しに、次の言葉が出ない。



「ヒッヒヒ……作戦会議は終わったかい?」

一方、作戦など無駄だといわんばかりに、草陰茂は余裕綽々の態度である。

「ええい!!!破れかぶれだ!!!」

もはや考えても無駄……ならば当たって砕けるまで……
…まさにジャパニーズカミカゼ…と心の中で皮肉りながらも、キースは自分のデュエリストの直感に頼りカードをドローする。

「『カードガンナー』を召喚!!オレのデッキからカードを三枚墓地に送り攻撃力は1900までアップ!!」

キースの召喚したモンスター、カードガンナーの銃口が草陰茂に向けられる。

「撃ち殺せ!!!」

カードガンナーの両腕からの連続砲撃が草陰茂を襲う!!

「そんなもの、この冥王の身体に効くかよッ!」

しかし草陰茂の言葉通り、案の定、カードガンナーの弾は冥王の黒い瘴気によってあっけなく阻まれた。

「チィィ!!!カードを2枚伏せターンエンドだッッ……」

攻撃力を上げても尚も追いつかぬ草陰茂の闇の衣に、思わずキースは舌打ちをする。

キースの攻撃はここにて終わった。
土の草陰茂相手に、もはやなす術はないのであろうか……!?

「ヒャハハハ!!何が切り札だ!!やはり久瀬お得意の『ブラフ』だったようだな!!トドメだ!!!光葬魔雲!!!」

完全に勝ちを確信した草陰茂は、久瀬たちの周りに再び闇の雲を発生させた……!!



「今だ!!!」
「ヘッ!こうもあんたの筋書き通りに行くとは恐れ入ったぜ!!!罠発動!!『武装解除』!!!」
「何ッ!!?」

久瀬の掛け声とともに、キースの伏せカードがオープン!!

「貴様の装備している『煉華』の骸は解除される!!!」

武装解除…
通常罠カードであり、相手モンスターの全ての装備を解除させる!!

「…なっ!!?」

このカードの効果により、草陰茂が取り込んでいた『煉華』は取り除かれ、ただの骸と化した。

「だ、だがもう遅いぞ!!今更炎の耐性がなくなったところで、この攻撃で貴様らはお終いなんだからなァァァ!!!へっへっへっ」

それでも、自分の勝ちは揺るがないと一気に決めにかかる草陰茂。

しかし…!!
キースのターンはまだまだ終わらない!!!

「全米元ナンバー1をナメんなよ!!永続罠発動!!『リビングデッドの呼び声』!!!」

リビングデッドの呼び声!!
墓地からカードを一枚選択し、攻撃表示で特殊召還する効果を持つ!!

「さっきテメェから分離した『煉華』の骸を攻撃表示で特殊召喚だァァァ!!!」

キースのカードの効果により、煉華が地獄より蘇った!!!

「このままあの『骨塚もどき』を返り討ちだァ!!!」
「ヒィィ……!!」

煉華は炎術師…すなわち、アンデッドの苦手な炎である。
キースはこの機を逃すまいと攻撃宣言をし、草陰茂は思わず恐れおののく…



「………」



……しかし、煉華は一向に攻撃しようとはしなかった。

「……?ど、どういうことだ?」

命令を聞かず攻撃をしない煉華に、キースは不審を感じざるを得ない。



「パパァ……どうしてぇ……どうして皆煉華をいじめるのぉ……?怖いよぉぉぉ………」
「!!!!!」

攻撃をしないかと思うと、煉華は今度は泣きじゃくる始末である。
その光景に、生前の活気あふれる無邪気な姿はどこにもなく、今の彼女にはただ、裏切りと死に対する恐怖でいっぱいであった…!

「な、なんだぁ!?コイツ!?」

そんな彼女の事情など知る由もないキースは、ただその光景を見て唖然とすることしか出来なかった。

「……おそらく、生前の死の間際の恐怖の記憶なのだろう。大丈夫だ。ここには君を裏切るパパもいなければ怖いお兄ちゃんもいない。安心したまえ」

…一応、煉華の素性をある程度知っている久瀬は、普段の外道っぷりとは打って変わり、優しい笑顔で彼女と接する。

「う…嘘だぁぁぁ……苦しいよぉぉぉ……」
「う…うーむ……」

しかし、煉華のトラウマは想像以上に強く、優しさだけでは救えないのが現実である。
煉華の生前の情報を『なぜか』握っている久瀬は、これ以上彼女を説得する術を知らなかった。

「ええい!!泣くな泣くな!!!だからガキは嫌いなんだ!!!オラ!とっとと得意の『炎術』でテメェを喰らったあのムナ糞悪ィ蜘蛛野郎を焼き払っちまえ!!!」

それでも、キースにとって煉華の生前の記憶など知ったこっちゃなかった。
キースはあくまで煉華をカードとして扱い、草陰茂に対し反撃を試みさせる。

「うっ…うっ……」

すると、煉華は泣きながらも全身より紅蓮の炎を練成し始めた。
その炎は徐々に何かを模り始め……

「あ、アレはカードガンナーの効果で墓地に送った『デモニック・モーターΩ』と、さっきのヤツの攻撃で破壊された『可変機銃ガンナードラゴン』!!?」

そう!
煉華の炎術により発生した炎は、キースの墓地に送られたモンスターを錬成したたのだ!!!

「フフ……彼女(煉華)のコピー元である『紅麗』は死者を自身の炎として蘇らせる能力を持っていた。……ならば、彼女にも同じことは不可能ではあるまい。……もっとも、紅麗が『人間の炎』なのに対し煉華が『人造(機械族)の炎』であるのはなんと言う皮肉であろうか……フフ……」

これさえも計算どおりと不敵に笑う久瀬。

「(こ…こいつ!!ここまで計算して!!?こいつぁぺ、ペガサス以上にオレや相手の心を見透かしてやがんのか!!?)」

そしてキースは、その久瀬の頭脳に恐れを抱かずにはいられなかった。



「……ユルサナイ………!!!」

その炎は、あるいは自らを糧とした父・森光蘭と、それと同じ事をした草陰茂への、煉華の怒りの象徴なのであろうか…
徐々に熱を上げていく煉華の炎!!!


デモニック・モーターΩ 攻撃力2800
可変機獣ガンナードラゴン 攻撃力2800



「な!!!ちょ!ちょっとま―――」
「みんな……みんな燃えちゃえ!!!」



ゴゴゴゴオオオオオオオオオ!!!


草陰茂の命乞いの言葉もかき消す煉華の炎!!!
炎と化したデモニックモーターΩとガンナードラゴンの一撃が茂の身体を焼き尽くした!!!
しかも効果は抜群だ!!!



「あんぎゃあああああ!!!身体が崩れていくぅぅぅ……」

アンデッドの身体は徐々に炎に蝕まれていき、もはや炭同然の身体となった草陰茂。



「よぉしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし!とってもイイ子だ!!!」

そのあまりの炎の威力と、期待通りの結果を出してくれた煉華に、久瀬は頭をなでて褒めまくる。

「おもいっきりジョジョじゃない」

そのチョコラータやグェス並に褒めまくる久瀬に、思わず突っ込むハルヒ。

「……イイ子?……ホントにイイ子?……もう苛めない?」

しかし精神はあくまで子供の煉華は、徐々に久瀬に心を開く。

「ああ。本当だとも。僕は君のパパ『森光蘭』とは違うのだよ」
「ハン!どうだか。コイツもソートーのペテンだからな」

白々しくも、自分は外道とは違うと謳う久瀬に、こちらも突っ込まざるを得ないキース。

「キャハハハハハ。オジさんたちおもしろーい!!」

そして、まるで素人漫才を見てるかのように笑う煉華。



「本当にあんたたちといると、非日常すぎて面白いったらありゃしないわね」

ハルヒの感想は的を得てるのか得てないのかは分からないが、久瀬が非日常の元凶といえる存在であることは確かであろう。

なにはともあれ、こうして、キースによる煉華マシーンコンボにより草陰茂を倒した。



―――そう思われた。



……しかし!



「フシュルルル……」

炭と化したはずの土から、再び腐った呼吸音が聞こえ……!!!

「よくぞ俺を殺してくれた。死して尚、恐ろしい土の草陰茂の強さ……ゆっくり味わいながら、死ねえ!」

なんと、煉華に燃やされたはずの草陰茂が、煉獄より蘇ってきたのだった!!!



「ハン……そのような五体不満足の消し炭寸前の状態で何が出来るってのよ!!!」

たしかにハルヒの言うとおり、今の草陰茂は半死状態。
先の黒き雲を呼ぶ力もほとんど残されてはいないであろう。

…しかし、彼にはまだ、最後の切り札が残されていたのだ!!!

「グフフ……!そ、そういえば、この肉体はとある場所で真の力を発揮できるんだったなあ」

さも思い出したかのように語る草陰茂。
しかし、その余裕のある口調は、その真の力に対する圧倒的な信頼から来ているものである……

「たしか、その場所は……『冥界』ッッ!!!」
「め、冥界ッッ!?」

草陰茂の放つ『冥界』という言葉に反応し、再び青ざめる煉華。

「……い、いやだよおおお!!怖いよおおおおお!!もう死にたくないよおおおおお!!!」

そして、ついに恐怖や絶望が蘇り、それが入り混じるかのように取り乱す。

「黙れ役立たず!!!肉便器以下!!!再び骸になりやがれえええ!!!」

そんな煉華に冷たく吐き捨てる草陰茂…



………

……





気がついたときには、草陰茂を中心に周囲が暗黒に包まれた!!!
そう、ついに訪れたのは『冥界』!!!
死者の哭く声は四方八方から響き渡り、それは生者の精神を蝕んでいく。

その絶望感に、煉華のみでなく、キースもハルヒも心を引き裂かれそうになるのだが……



「……ほぉ……まだ僕らを『冥界』に引きずり込む力があったとは……」

あくまで、表面上だけでも平静を保つ男、久瀬。
この男、あくまでペテン師である。

「よ、余裕ぶっていられるのも今のうちだ。そ、それとも今度こそ正真正銘の『ブラフ』かい?」

一方の草陰茂は、今度こそこの圧倒的な世界の力により勝利を確信し、久瀬の余裕の態度を一蹴した。
無論、久瀬のこの余裕の態度は―――



1・更なる切り札が用意されているが故のものである!!
2・完全なるブラフ!すでに久瀬の策は尽きていた!!



[15824] 第二十五話 …鋼入りの変人
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/11 23:25
2・完全なるブラフ!すでに久瀬の策は尽きていた!!



「……ほぉ……まだ僕らを『冥界』に引きずり込む力があったとは……」

あくまで、表面上だけでも平静を保つ男、久瀬。
この男、あくまでペテン師である。

「よ、余裕ぶっていられるのも今のうちだ。そ、それとも今度こそ正真正銘の『ブラフ』かい?」

一方の草陰茂は、今度こそこの圧倒的な世界の力により勝利を確信し、久瀬の余裕の態度を一蹴した。
無論、久瀬のこの余裕の態度は完全なるブラフ!すでに久瀬の策は尽きていた!!



「(……ここまできたら策などない……!いまはただ、一つの可能性に『賭け』るのみ……だな!!!)」

表立っては余裕の表情の久瀬ではあったが、その内心は冷や汗の津波に押し寄せられていた。
考えても見ればこの久瀬は、常に自分の能力を駆使し、必勝の策をぶら下げ『勝利の保証』の上で戦ってきた男である。
上辺は真剣勝負をしている『フリ』をして、周りが勝つために不安ながらも必死になっているを見ながら、自分だけはを必勝の確信を持ち、または完全な傍観者で『安全であることを愉悦』してきた。
そんな久瀬が、久々に自分の能力、策の及ばぬ『対等』なギャンブルを強いられたのだ。

そして万策尽きた久瀬とは対照的に、一転して余裕綽々の草陰茂。

「さぁて……こっちのハルヒとかいう女は紳一様に与えなくてはいけないからなぁ……!アンデッドだが仕方ねぇ……煉華の穴でもいただくとするかなぁ…グヘヘヘヘ……!」

もはや自分の勝ちは何があろうとも揺るがないと確信し、ついには戦後の…醜悪で淫猥なプランまで立てていた。

「うーん……あの巨乳の女の子…朝比奈みくるちゃんだっけか……そいつは内緒で喰っちまうのもイイかもなぁ……ウヒッ…涎が止まらねぇぜ!!!」

「うわっキモ!亡霊になってもまだ女とヤルことしか考えられないなんて、ド低脳もイイトコね」

そのあまりにも下卑た妄想に、ハルヒは恐怖よりも相手を罵倒する心が先立つ。

「どーせ生前もモテなくてレイプくらいしか出来なかったんでしょ」
「アンタなんか燃えちゃええええ!!!」

ハルヒの辛辣な罵詈雑言はとどまるところを知らず、ついには煉華までもがハルヒに続く。



「グヘヘヘ!いいたいことはそれだけかぁ?」

それでもこの男、草陰茂にはあまりに無意味!!
彼にとっては美少女の罵りなど、劣情を掻き立てるスパイスにしかならないのだ!!!






「それはこちらのセリフなのだよ」

…しかし、ギャンブルに持ち込まれたところでこのペテン師が黙っているわけがなかった!!!
草陰茂とハルヒの罵詈雑言の応酬の中に割って入る久瀬。

「フヒヒ……焦るなって。お前ら男はまとめて細切れにして黄泉比良塚に捨ててやるからよぉぉぉ」

それでも、もはや勝ったも同然顔で久瀬を見下す草陰茂であったが……



「では、その黄泉比良塚はどこにあるのだ?」

久瀬は介さずに言葉を続ける。
しかし、その久瀬のあまりの見当はずれの言葉に、思わず草陰茂は失笑した。

そして、あえて久瀬の言葉に答える。

「そりゃあ、この冥界に―――」



なかった。







「―――って!?ここはどこだ!!?」



…草陰茂が驚くのも無理もない。
つい先ほど、全てを冥界に引きずり込んだはずが、黄泉比良塚もはおろか、死者の声も暗黒の世界もどこにも存在しない……

そして久瀬は、あえて草陰茂の問いに答える。

「北高の校庭だ」

そう、久瀬の言葉どおり冥界などどこにもなく、何時の間にやら久瀬たちは見慣れた北高の校庭へと戻ってきていたのだ!!!






「……まさに貴方の『策』通りですね」

まるでタイミングを見計らったかのように、どことなく現れた超能力者古泉。
そして、全ては久瀬の思惑通りだったと悟り、それを皮肉るかのように『策』という言葉を久瀬にあてつける。

「…言ったであろう。もはや『策』ではなく『賭け』であるとな」

久瀬はあえて、『策』を『賭け』と訂正したが……

「……世界に風変わりになるのを望む一方、常識を優先しているという涼宮さんのジレンマ……さしずめ、貴方は涼宮さんの『ジレンマ』と『力』を利用したのでしょう。まったく恐ろしいお方です」
「何度も言わせないでくれ。あくまで賭けであると」

古泉にしてみれば、これが策であろうと賭けであろうといずれもハルヒの『能力』を利用されたことに変わりはなかった。

「……しかし、この程度の力を発動できないようでは、この先とてもではないが『勝沼紳一』及び『諸悪の根源』を倒せそうにはない」
「試したんですね」
「……人聞きの悪いな」

久瀬はばつが悪そうに言うものの、古泉の言葉には間違いはない。

『ハルヒの能力の発動』で『冥界』をかき消すという、久瀬の裏の裏をかいたギャンブルは見事に的中した。
あるいは、この世界は新たに構築された世界なのかもしれないが……
確かなのは、ハルヒの『世界を変える力』により、冥界は完全になくなったことである。



久瀬と古泉の不毛とも言える会話はさておき一方……



「ひ…ヒィィ!!?」

もはや冥界という切り札も失い、年貢の納め時となった草陰茂。
彼に残された行動は唯一つ、逃げるという行為のみであった。

「アンタ、さっきから散々下劣なこと言ってくれたわねぇ」

冥王の大蜘蛛の姿さえ維持できず、本体である霊魂の姿となった草陰茂。
本来なら霊魂は人の目には見えないはずなのだが、ハルヒのそのあまりに草陰茂を嫌悪するゆえか、『彼女の望むとおり』草陰茂の姿は、この場にいる全てのものにさらされることとなった。

「キャハハハハ!!こうなったらアンタ、ただの火達磨のお化けだもんねぇ」

実体化した霊魂は煉華の罵る通り、醜い火達磨の霊であった。

「ヒイイィィィイーッ!ゆっゆっゆっ」

必死に後ずさりし逃げようとする草陰茂は……

ガバァッ

「ゆるしてくださあぁーいッハルヒ様―――ッ」

恥も外聞もなく土下座して謝る。

「俺の負けですッ!改心します。ひれ伏します。靴もなめます。悪い事しました。ヒイィーッ」

ついには泣きながら命乞いをする。

「いくら殴ってもいいッ!ブッてください!蹴ってください!でも!」
「(いや、霊魂なんだから殴りよーねぇだろ……)」

ハルヒの足にしがみついて謝る草陰茂に対し、心の中で突っ込むキース。

「命だけは助けてくださいイイイイイイィいいいい~ハルヒ様~~~~~~~~」
「(いや、テメェ死んでるし……)」

ペロペロ

ハルヒの靴をなめる草陰茂。
それを冷たい顔で見下ろすハルヒ。
その光景を見ているキースは、心の中で再び突っ込みを入れた。

ギロッ

それでも、俯いた草陰茂の目つきが変わり……

「(もうすぐだ!もうすぐで俺のアンデッドどもが蘇生する!このハルヒのアホタレは今そのことを知らない。今度はてめーのオ○ンコからア○ルに挿入してやるッ!久瀬は数メートルも遠くにいる。見てろ~~~~死ぬほどの苦しみを味わわせてやるぜ~~~~)」

心の中で不埒なことをつぶやいていた。






「どーでもいいけど、冥王だかの身体切り離して、どーやってアンデッドを蘇生させるワケ?」
「へ?……」

まるで心の中を見透かしたような言葉を放つハルヒに、草陰茂は思わず声を出す。
そして、冷静に考え直し……

「あ!!!しまっ―――わっ………ゆるしてくださ----いッ」

再び土下座して許しを請う始末だった。

そう!!!
アンデッドの蘇生能力など所詮は『冥王の能力』に過ぎない!!
その肉体を失った草陰茂るなど、所詮は憑依能力を持っただけの霊なのだ!!!



「許しはアンタがレイプした女に乞えば……?あたしたちははじめっからアンタを許す気はないわよ」

もはやハルヒに慈悲の心はなかった。
じわり…じわりと、草陰茂との距離を縮めていくハルヒと煉華…

「し、紳一様から女のおこぼれもらったらあげるからさ……ね、そこの金髪のイケてる兄さんさぁ、こいつら説得してくれよぉ……」

草陰茂はハルヒを諦め、今度はキースに懇願する。


「胸糞悪ィ……」

しかし、キースはただ一言吐き捨て…

「煉華、ダイレクトアタックだ」
「はーい。じゃあ『煉獄』」



ゴオオオオオオ!!!

キースの命令どおりに煉華が禍々しい炎の塊を放つと、その炎は刹那にして茂の霊魂を包み込んだ。



「おのれ……この俺がきさまら如きに……!グ……パァ―――!」



………

……





こうして、スティーリー・ダンの再来とも呼べる情けない敗北を喫し、霊魂ごと燃え尽きた四天王の一人、土の草陰茂。
その生前の肉体と同じく炎によって滅びるとは、なんと言う皮肉であろうか。

かくして北高校の攻防は久瀬たちの勝利に終わったのであった。







と、いうわけで再びパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬以外の二人のメンバーを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『バンデッド・キース』『涼宮ハルヒ』『キョン』の6人です。



[15824] 第二十六話 …デュエルアカデミアの就職率=代々木アニメーション学園の就職率
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/12 00:14
こうして、スティーリー・ダンの再来とも呼べる情けない敗北を喫し、霊魂ごと燃え尽きた四天王の一人、土の草陰茂。
その生前の肉体と同じく炎によって滅びるとは、なんと言う皮肉であろうか。

かくして北高校の攻防は久瀬たちの勝利に終わったのであった。



*パーティ編成の前に……



ここはえいえんの世界……



この青き世界の中を、久瀬とまい、青子、梨花が会話をしていた。

「……久瀬の策も尽きて奇跡頼みになるなんて、厳しい戦いだったね」

久瀬が対等の位置に引き摺り下ろされた戦いに、まいはねぎらいの言葉を付け加える。

「まあ…それがあと少なくとも3人、そして『勝沼紳一』と『諸悪の根源』までいるのね」
「……フフ……あの程度の奇跡さえ起こせぬようでは、とてもではないが今後の戦いでは勝つことはできない」

一方の青子は敵の戦力を分析、苦戦を強いられた『草陰茂』以上の敵がまだまだいることに思わずため息をつく。
それでも久瀬は、あくまで今回の戦いで得た『収穫』を、ポジティブに捉えていた。

「……そう。まして雛見沢を救うなんてできやしない。でも、あの涼宮ハルヒの力に久瀬の知略があれば、歴史は変えられるかも……」

えいえんの世界から戦いを眺めていた梨花もまた、ハルヒの力と久瀬の知略には驚愕しており、少しずつ希望を見出す。

「フフ……何度も言わせないでくれ。僕らの未来では君らの村では『雛見沢大災害(もとい終末作戦)』など起こっていないのだよ」
「それも今なら信じれる」
「よしよし。梨花はいい子だ」

久瀬は梨花に優しい言葉をかけ、その頭をなでる。

「……ふ~~~ん………ま、それはいいけど。今後の久瀬の計算に、その不確定な『奇跡』は入ってるワケ」
「…いや、まあ……それは今後の涼宮君次第かなぁ……って」
「…あ、そ…」

その光景を見てムッとしたのか、少し『つーん』とした態度で今後の話を進めるまい。
さしもの久瀬も、少しばかり気圧されているようである。

「(久瀬君が梨花ちゃんを可愛がるとつーんとしちゃって。無表情かと思いきや、案外可愛いトコあるのね)」

そして青子は、その光景を非常にほほえましく眺めていたのであった。



こちらは、春原、ロック、ハルヒの三人……

「しっかし、ゾンビに冥界に異次元に……ほんっとうに超常現象って身近にあったものね。あんたもロボットっていうし……」

ハルヒは今回の戦いを振り返り、改めて自分が現実外の体験をしていることを実感し、興奮冷めやまぬ様子で語り始めている。

「あ、いやあ……まあ、逆に僕の時代でもゾンビや冥界、異次元なんてのは存在しませんからね……」

一方、ロックも『未来のロボット』であるが故、ゾンビの類といった『オカルト』は非現実は未体験であり、ハルヒの興奮も半分は理解できている。

「…ってことは、そこの男もなにか普通じゃないのあるんでしょ?」

このあまりの『普通でない』光景に、ハルヒはついつい関わるもの全てが『普通でない』ことに期待してしまい、今度は春原に対しムチャ振りをする。

「えっ!?ボクっ!?いやいや!ボクはただ久瀬って男に無理やり連れてこられただけで……」

無論、突然振られた春原は、ごくごく普通の反応をするしかなかったわけで。

「なぁーんだ。ただの普通の人か。つっまんないの」

そのあまりに期待はずれに心底ガッカリするハルヒ。

「なんとっ!!いやいや、ボクがあなたの彼女になったらぜんっぜん楽しいコトしますって!!」

自分が及び出ないと宣言された屈辱からか、春原はムキになり反論する。

「悪いけど、あたし凡人にはキョーミないの」
「がびーん!」

しかし、それさえも軽くいなされショックを受ける春原であった。



「(そ、そのわりには『キョン』って人、結構普通の人のような気が……)」

その一方で、ロックの考えは実に正論であり、実にハルヒの望むものであった。



また、こちらはキョン、長門、古泉の三人。

「……あの久瀬って人、涼宮さんにとって僕が思っていた以上に危険かも知れませんね」

いつもとは打って変わり、神妙な顔で考え込む古泉。
彼は心の底から、久瀬とハルヒの接触はあまり好ましく思っていないようである。

「そんなのはわかりきってることじゃないか!久瀬って男は、明らかにハルヒを危険に巻き込もうとしてるって……」
「……そして、その力を実験している節さえある……」

無論、キョンも『実はハルヒは普通を求めている』ということを『識っている』わけであり、久瀬との接触はハルヒにとっては『有害』以外の何者でもないと捉えていた。
そんなキョンの心を見透かすかのように、古泉は言葉を続ける。

「もしその『久瀬の実験』が誤った場合、そのときこそ『諸悪の根源』が手を下さずとも、世界は終末を迎えるかもしれませんね」

これが古泉の結論であった。
もう一方の『傍観者』…長門は久瀬のことを考えているのであろうか…?

「長門!お前はそれでもまだ傍観しているつもりなのか?」

言うまでもなく、キョンは長門に問い詰める。

「……今のところは想定の範囲内の動き。……ただ……久瀬の目的は涼宮ハルヒの力の利用以上を求めている可能性が高い……」

意外にも、長門にとって見れば久瀬の行動は『情報統合思念体』の想定内の動きであったらしい。
そして、久瀬の秘めたる野望に警戒をしていた。
長門の回答を得た古泉も、「やはり…」とばかりに頷く。

「そ、それ以上のモノって……ほ、本当に久瀬って何者なんだ……!?」

その長門の回答により、久瀬の脅威をより強く感じるキョン。

「………普通のヒューマノイド……」
「は、はぁ……」

それでも長門の普遍な答えに、キョンもそう答えるのが精一杯であった。



そして、こちらはキースとなぜかついてきた煉華ともう一人……

「OH!ついにユーも精霊のカードを手に入れマシタか」

ペガサスは、キースが精霊のカード(煉華)を手に入れたことを賞賛していた。

「わぁ!髪のなっがーい人ぉ……」
「て、テメェはペガサス!!な、なんでここに!!?」

煉華の無邪気な回答とは対照的に、キースはペガサスがえいえんの世界にいることに驚きを隠せない。

「ワタシはミスまいの案内でこの世界に来マシタ」

まあ、当然といえば当然の答えではあるが、それでもこの男が言うと、どこと啼く胡散臭さを感じる。
そんな心中のキースをよそに言葉を続けるペガサス。

「それにしても、十代ボーイ、ミスター万丈目、ミスターヨハン・アンデルセンなど数人しか見エナイ精霊のカードを、まさかユーが所持することになるとは……」
「……?」
「な、なんだぁ!?その精霊のカードってのはぁ!?」

感慨深く語るペガサスではあったが、煉華もキースも意味が分からなかった。

「それはユーがこれからのデュエルのなかで理解ることデス」
「チッ……」

その豪く抽象的な答えに、つい舌打ちをするキース。

「オニィちゃん、ムツカシイ顔してるね」

険しい表情のキースに、かまってちゃんの煉華はついつい声をかけてしまう。

「じゃかましい!クソガキは大人しくデッキん中で眠ってろ」

触らぬ神はなんとやら…
キースはつい、大人気なく怒鳴り散らしてしまう。

「うわーん!オニイちゃんがいじめるー。久瀬のおじちゃんに言いつけてやるー」

案の定泣き喚く、精神が子供の煉華。
このまま泣きつかれるのもウザったく、かといって外道の久瀬に告げ口されては自分の身も危ない。

「あぁ…わかったわかった……。チョコでもやるから大人しくしてろ」

結局、キースは仕方なく自分から折れることにした。

「わーい。オニイちゃんだぁい好き」
「クソ……とんだ『精霊サマ』だぜ……」

甘える煉華に毒づきながらも、ヤレヤレといった感じのキースであった。



「………(かつては絶望と復讐に支配されていたユーのマインドが、徐々に変わっていくのがワタシにはわかりマス……。ミスター久瀬……アナタは彼が『煉華』を蘇生させたときから、こうなることまで計算していたのでしょうか……)」

そしてペガサスは、そのキースの成長と久瀬の知略に対し、改めて賞賛をするのであった。







そして再び、久瀬たちの作戦会議…

「……とりあえず、涼宮君を仲間にすることができたところで、作戦の第一フェイズは終了……。さて、次はどうするかな……」

久瀬は次の段階を考えていた。

「とりあえず涼宮ハルヒさんの力に匹敵して、且つ敵が悪用しそうな『モノ』のトコにいけば、案外敵にバッタリ会うかもね」

一方の青子は、『諸悪の根源』に関わる敵を倒すことで、徐々に諸悪の根源に近づけるという考えのようである。

「……ただ、そうなった場合、今回のように偶然に頼り切るにはあまりにも危険すぎる……」

ただし、まいはその作戦を危惧している。
今回の草陰茂との戦いでは、『たまたま』久瀬の賭けが的中し打倒に成功したが、そんな危険な戦い方を繰り返すのはあまり推奨できない行為であった。

「ソリッド・ビジョンの技術はミスター海馬の協力もあり完成までアトわずかデスガ、先のバトルのように肉体と魂を分離させなければ、『魂の実体化』は不可能デショウ」

ペガサスもソリッド・ビジョンの実践技術の完成までは待ったほうがいいと考えており、また、その肉体と魂を分離させなければ無意味であることを説明していた。



「……ならば、当面の目標は残る四天王を追い詰める力を見つけることだな……」

久瀬はみんなの意見を統括し、まず目的を『四天王を追い詰める力』を得ること方向に決める。
久瀬もたしかに今回のような『ギャンブル』を繰り返すのは危険であり、確実に敵を仕留める方法で戦わなければならないと考えていた。
いまだに『ハルヒの能力』の発動が不確定である以上、それと同等の力を確実に発揮できる人物、ないし武器が欲しいところであった。

「アテはあるの?」

まいは元より、それは誰もが気になるところである。

「……そうだな。とりあえず---」



1・幻想郷の世界には妖怪が住むと聞いた。
2・月の世界には想像以上の技術があると聞いた。
3・桜高校には軽音部があると聞いた。
4・テキトーに動いていれば、いつかステキな女性に巡り合えるだろう。







と、いうわけで再びパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬以外の二人のメンバーを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『バンデット・キース』『涼宮ハルヒ』『キョン』の6人です。



[15824] 第二十七話 …糞SS見た瞬間ブラウザヴバック余裕だろう?誰だってそーする。おれもそーする。
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/12 01:38
4・テキトーに動いていれば、いつかステキな女性に巡り合えるだろう。



久瀬はみんなの意見を統括し、まず目的を『四天王を追い詰める力』を得ること方向に決める。
久瀬もたしかに今回のような『ギャンブル』を繰り返すのは危険であり、確実に敵を仕留める方法で戦わなければならないと考えていた。
いまだに『ハルヒの能力』の発動が不確定である以上、それと同等の力を確実に発揮できる人物、ないし武器が欲しいところであった。

「アテはあるの?」

まいは元より、それは誰もが気になるところである。

「……そうだな。とりあえずテキトーに動いていれば、いつかステキな女性に巡り合えるだろう。それで―――」



バギィ



瞬間、まいの振り落としたハンマーが久瀬の脳天をカチ割った。

「それで…?」
「すんません、真面目にやります……」

冷たく言い放つまいに、久瀬はただ謝るのみであった。







しかし、これ以上他に何か考えがあるわけでもない。
かといって、こんなところ(えいえんの世界)でじっとしているわけにもいかず、仕方なく久瀬たちは、雲を掴むような思いで元の時代(久瀬たちの時代)にタイムワープしたのであった。



パーティ…久瀬・春原・梨花







ここは光坂市の商店街。
多少町外れの方に出たらしく、近くには建造中の建物が見える。

「…って、ここ、僕の学校があった街じゃん!?」
「うむ。そのようだな」

見慣れた光景に思わず声を上げる春原と、冷静に返す久瀬。

「ボクたちの村よりはだいぶ都会のようですね」

その郊外ですら都会に思える、昭和の村落出身の梨花。
まあ、当然といえば当然の答えであろう。

「……いや、それでもここは田舎だろう。ようやく大型病院が造られる…ってところだな」

そんな梨花の答えをよそに、久瀬は建造中の建物を指して、建造物の未来を予想して言う。

「……ふぅん……別に好きじゃなかった街だけど、こうも変わっていくとなると、なんだか複雑だねぇ」

一方、建造中の建物に象徴される、変わり行く『青春時代を過ごした街』を眺めながらノスタルジーに浸る春原。
なんだかんだいっても、やはり春原は三年間の学校生活は嫌いではないようだった。



「アレ?春原じゃないか!?」

そんなノスタルジーに浸っている春原に話しかける、一人の男。
そう、われわれは知ってい(ry

「お、岡崎ぃ!?」
「久しぶりだな」

そう、この男こそ、かの同級生だった岡崎朋也の未来の姿だった。
おそらくは休日中なのであろう、この日の朋也はチェックのジャケットにGパンの私服姿であった。

「お前、東北の故郷で仕事中じゃなかったのか!?しかも金髪に戻して……」

驚く春原をよそに、朋也は話を続ける。
その話しぶりだと、春原はこの時代では、地元で真面目になんらかの仕事をしているらしかった。

「あ、いやあ……。今は休暇中でね、ひ、久しぶりにこの街に来てみたんだよぉ……」

なんとか、しどろもどろながらも話を合わせる春原。

「(どうやら春原君は故郷で就職しているらしいな)」
「(こんな人でも就職ってできるのですね)」

心の中で毒づく久瀬と梨花。

「なんだ、てっきり会社クビになって、また不良もどきに戻ったのかと思ったぜ」
「んなわけないだろ!!」

朋也の冗談も、あながちありえなくもない未来ではあるが、春原ははっきりと否定をする。



すると、こんどはショートヘアの女性が二人の方に走り近づいてくる。
そう、我々は知っ(ry

「朋也くん!おまたせしましたっ!……って、春原さんっ!!?」

この白のシャツに黒のワンピースのややゴシック寄りのファッションの少女は、かの古河渚であった。

「あ、いや、俺も今来たところだ。それよりあんまし無理するなよ、渚」
「は、はい、すみません」

渚を気遣う朋也と、気を使わせてしまったことを謝る渚。
その一瞬ではあるのだが、どことなく空気に違和感を感じた久瀬たち。

「でも、春原さん、どうしてここに!?ま、まさか会社を……」
「な、渚ちゃんまで……」

そんな久瀬たちをよそに、渚は、朋也とは違い真面目に春原の現状を案じる。



とりあえず、最低限の誤解は解いておく春原。
それとともに、まあ、大体の予想はついているのだが、それでも聞かざるを得ない質問をする。

「と、ところで岡崎と渚ちゃんは……なんで……」

「あ、ああ、今日は俺も仕事休みだし、渚もバイトが午前だけだから久しぶりに夫婦水入らずでデートしようか…って」

さらっと出る、朋也の爆弾発言。

「ふ、夫婦ぅぅぅ!!?デートぉぉぉ!!?」
「?……あれ、春原さん、知りませんでしたっけ?」

夫婦…デート…
そのあまりに突っ込むところが多すぎて、言葉にならない驚きをする春原。
驚く春原をよそに、渚はしれっという。
先ほど春原らが感じた違和感の正体は、ラブラブのカップルのみが醸し出すことの出来る固有結界であった。

もっとも、『現在の春原』はこのことを知っているかもしれないのだが、『高校時代の春原』がそんなことなど知る由もなく…
その自分の友人である二人が『デキてしまった』という事実を知ってしまったという『現実』は、筆舌にしがたいものがある。

大学に進学するために上京し、里帰りしたら自分の友人同士が結婚していた……という場面に遭遇したら、誰もがショックを受けるであろう。

今の春原は、おりしもそういう状態であった。


「まあ、そういうわけだ。悪いが今日はお前と遊んでいる暇はないんだ」
「そんな、せっかく遠くから来ているのに、春原さんに悪いです」

呆然としている春原をよそに、勝手に話を進めていく岡崎夫妻。

「あ、ああ……(いやいや!せっかくの渚とのデート、こいつに邪魔されてたまるか)」

純粋な渚は、『友遠方より来るあり』的な感じで春原を迎え入れようとするが、普段仕事で忙しく、妻とのデートを一日千秋の思いで待っていた朋也にとっては迷惑以外の何者でもない。



そんな朋也の助け舟を出すかのごとく、久瀬と梨花が動く。

「あ、いや、こちらの方は気にしないでくれ。今日は彼を強制連行中なのでな」
「ご迷惑をおかけしましたの」

ご丁寧にお辞儀をする梨花。

「はぁ!ちょ、ちょっ……」

春原が何か言いたげだったが、それより早く梨花が春原の口をガムテープでふさぐ。

「ムガムガ―――」

「まあ、こちらも仕事の一環で行っているのでな。君たちは気にせず夫婦水入らずで楽しみたまえ」

口を塞がれた春原を完全に無視し、久瀬はこの辺で朋也と渚を解放する。

「は、はあ」
「仕事なら仕方ないですね……」

そのあまりの急展開に、内心ほっとしながらも苦笑いの朋也に対し、お花畑の渚は残念そうである。
一方で、久瀬は話を続ける。

「僕たちはそろそろ行くが、お子さんにもよろしく伝えてくれ」

「…へ?」
「あ、あのお、俺たち、まだ子供できてないですけど……」

久瀬の言葉に呆気に取られる渚と朋也。
それもそのはず。
朋也の言葉通り、朋也と渚は結婚こそしているものの、まだ子供はできていなかった。

「近い未来の話だ」

久瀬は介さず、さらに話を続ける。

「そして岡崎君」
「はぁ?」
「君は時を同じくして『最大の分岐点』を迎えると思うが……、その時は、どんなことがあっても『渚君と出会ったことを後悔する』選択肢は選ぶな。彼女の後ろ姿を見かけることがあったら『必ず渚君を呼び止める』のだ。わかったかね?」
「は、はぁ……」

久瀬の言葉はひどく抽象的過ぎて、『今の』朋也には理解できなかった。

「まあ、今はわからなくてもいい。しかし、このことは忘れないでほしい」

無論、久瀬はそれも承知であったが、それでもこの言葉だけは朋也の来るべき『最大の分岐点』の時に覚えて欲しいという、珍しくも久瀬の親切心から出た言葉だった



「あ、ああ……」

理解は出来ないながらも、返事はする朋也。



こうして久瀬たちは、抵抗する春原を引きずりながら場所を変えた。







辿り着いた先は、春原が『通っていた』学校の裏側。

「ううっ……なんで僕が世界平和のために頑張ってるのに、その傍らで岡崎は渚ちゃんとイチャついてんだよぉ!しかも結婚までして……世の中不公平でしょーが!!!―――モガモガ―――」

不平不満をたらたらと述べる春原。
その気持ちは分からなくもないが、それが余りにもウザったく、再び梨花はガムテープで春原の口を塞ぐ。

春原はしばらく放っておいて、久瀬と梨花はしばらくその周辺を散歩していた。



「みぃ……」
「どうしたのかね?」

何か言いたげな梨花に、久瀬はとりあえず尋ねてみる。

「こうして久瀬は、CLANNADの主人公をトゥルーエンドに導いたんだね」
「僕はヒントを与えたに過ぎない。選択肢を選ぶのは岡崎君自身だ」
「みぃ……」

まだ、なにか言いたげな梨花。

「今度はどうしたのかね…?」
「ボクたちの未来……雛見沢村、本当にこの時代にあるのかな……?」

久瀬が再び尋ねると、今度は具体的に久瀬に聞きたいことを聞く梨花。
否、彼女が求めているのは『安心』『生存』の解答である……!!

「(ああ、なるほど。古手梨花君は未来の確証が欲しいのだな。……無論、それは教えてあげることもできるのではあるが―――)」



1・とりあえず、本当のことを教えて安心させよう。
2・しかし、未来は自分の手で紡ぐもの!安易な確証で梨花君の未来を決定づけてはいけないだろう。
3・未来はヒビノ・ミライに聞け!と教えよう。



[15824] 第二十八話 …404 新しい敵は見つかりません
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/12 01:40
2・しかし、未来は自分の手で紡ぐもの!安易な確証で梨花君の未来を決定づけてはいけないだろう。



「(ああ、なるほど。古手梨花君は未来の確証が欲しいのだな。……無論、それは教えてあげることもできるのではあるが……しかし、未来は自分の手で紡ぐもの!安易な確証で梨花君の未来を決定づけてはいけないだろう」

梨花が求めているのは『安心』『生存』の未来に直結するものであったのだが…
これは久瀬にとって見れば至極当然な解答である。

この男、我侭につき自分の思惑通りに物事が動かないことが嫌いな男である。
そしてタチの悪いことに、この男は自分の好まぬところで自分以外の何かの思惑通りに物事が動くことを嫌うジャイアニズムの塊でもある。
故に、『ひぐらし』はもとより、望まぬ悲劇の犠牲となるキャラクタを生み出す『歴史の道しるべ』的な存在を最も嫌っている。

しかし、『ひぐらし』にはグッドエンドというものが存在する。
そのグッドエンドが用意されている以上、そこに辿り着くのはそのゲームのキャラクタでなくてはいけない……久瀬は自分が介入してはいけないと思っている。

久瀬がそこに介入するということは、結局は自分の嫌いとする『歴史の道しるべ』とやっていることは変わらないということだから。


「…みぃ……やっぱしダメですか……」

無言の久瀬からなんとなく空気を察したが、それでも梨花は、残念そうな感情を抑えきれなかった。

「未来は君が紡がねばならない」

子供に甘い久瀬にしては、珍しく厳しい口調で言い放つ。
そして……

「それに、どうせハッピーエンドを迎えるのであれば、僕にネタバレされるよりは、前原君、園崎君、レナ君、沙都子君と作って行ったほうが、よりハッピーエンドを迎えたときの幸福は大きい……だろ?」

最後は梨花に、優しく諭すように言う久瀬であった。
その言葉で梨花は納得したかどうかはわからないが、とりあえず、これ以上は久瀬に未来のことを質問することはなくなった。






「……で、これからどうするわけ?」

春原の質問はもっともである。
話を本筋に戻し、しばらく街を歩く三人であったが、その後も特に変わったことも起こらず、無為に時間だけが過ぎていった。

「まあ、元の時代に戻ってきたのも、特に意味のあることではないしな……」
「むしろ、手当たり次第ってカンジなの」

梨花の言葉通り、特にアテもなくやってきた時代。
そうそう、偶発的に進展があるわけではない。



なにをするでもなく途方に暮れる三人……



「なんか都合よく、敵のほうから出てくる……なーんてことないかな?」

そういう不吉な発言も、春原ならではである。

「……あまり余計なフラグを立てるなよ……」

こいういフラグが立ったときは、大概ろくなことが起こらない。
いうまでもなく久瀬はそれを熟知していた。

「へぇー…久瀬にも怖いものってあるんですかー?」
「……ああ……」

梨花は意外にも、久瀬がフラグが立つことを恐れているところに食いつく。
大概のことには(表面上は)動じない久瀬でも、立てられれば困るフラグ。

「それって誰なの?ボクに教えてくださーい」

それは聞いてはいけないことだと思っていても、子供心にふつふつと興味がわいてくる(けして100年生きていることは突っ込んではならない)。

「うーむ……」

辟易しつつも子供の頼みを無碍にできないところが、凡そ外道な心しか持たない久瀬の唯一の良心なのだろう。
そこをまいにつけ込まれるあたりが、三流悪役たる所以なのだろう。

「…ええい…仕方ないな。実は―――」



1・元カノの美坂君なのだよ。
2・部下の天野君なのだよ。
3・川澄さん……と言ったところか。
4・いろんな意味で倉田さん…か。



[15824] 第二十九話 …エンカウント=即死
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/12 02:15
1・元カノの美坂君なのだよ。



「うーむ……」

辟易しつつも子供の頼みを無碍にできないところが、凡そ外道な心しか持たない久瀬の唯一の良心なのだろう。
そこをまいにつけ込まれるあたりが、三流悪役たる所以なのだろう。

「…ええい…仕方ないな。実は元カノの美坂君なのだよ」

久瀬の曝露に興味深深で話を聞く、梨花と春原。

「凶悪な戦闘力を誇る戦闘民族の上に非常に嫉妬深い。僕が他の女の子と仲良くしようものなら問答無用で抹殺される。その上極度のシスコンで妹以外はどうなろうとしったこっちゃない…妹のためなら世界を滅ぼしかねない―――」
「あ、その…後ろ………」

忌まわしげに話を続ける久瀬であったが、その話を中断するかのように、春原が久瀬の背後を指摘する。
その春原の表情たるや、この世の破滅を目撃するようだったと、後に梨花は語る。

「!!?」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

久瀬が気づいたときには時既に遅し。
その背後で燃え上がる暗黒闘気……

「……あなた、そんなに死にたいのかしら?」

その圧倒的なプレッシャーを久瀬に感じさせることの出来る人間は、彼女を置いて他には考えられない……!!!



「み…美坂君ッッ!!?」



そう!
このウェーブ掛かった髪形が特徴の女子高生こそ、Kanonのヒロインの一人、『美坂栞』の姉にして、愛深きゆえに愛を失った漢女!!『美坂香里』であった!!!



「み、美坂君はなぜそこにいるのだい……?」

つい先ほどまで言いたい放題言っていた後ろめたさと恐怖に、久瀬はめったに見せることの出来ない脂汗を、これほどまでかという風に滲ませる。

「さぁ?なんでかしらねぇ……」

一方、穏やかな口調とは裏腹に、目は完全に笑っていない香里。
しかしながら、黒き炎は勢いを増すばかりであり、それが久瀬たちへのプレッシャーを一層強く感じさせる。






―――しばらくお待ちください―――






「と、ところで美坂…さん?」
「あら、なにかしら?」

闇の炎で黒こげとなった哀れな久瀬をなかったことにし、梨花は香里に尋ねる。
その梨花の判断は至極当然であり、誰も彼女を責めることはできまい。

「ど、どうしてこんなトコにきたのですか?」

当然といえば当然の質問であった。

「ま、久瀬君がまたなんか悪巧みしてそうな気がして…ね」
「ひゃあ……なんて健気なんすか……」

その抽象的な香里の回答に、空気の読めないお花畑の春原が香里を賞賛する。
久瀬は放っておけば悪巧みをするから、元カノとはいえ、それは自分が保護しなければいけない……
つまり、別れた身でありながらも未だに久瀬を案じる元カノであると、春原は香里のことを感心していたのだ。

「勘違いはよくないわね。あなたも消し炭になりたい?」

しかし、その春原の言葉を完全否定。
それどころか、笑いながらも恫喝する美坂香里。
いうまでもなく春原は、怒涛の勢いで首を横に振る。
まあ、春原でなくとも10人が10人、このような状況においては彼女に従わざるを得ない。

それでも春原の推察は、実はあながち間違ってはいないのではあるが……



「……相変わらず、都合の悪いことは実力行使なのだな……」

いつの間に復活していた久瀬は、そんな香里のやり方を真っ向から批判する。
このあたりがさすがは元カップルといったところ、ある意味、別れて至極当然ではあるのだが……

そして、次の瞬間には香里の顔からは笑みすらも消えていた。



「……ま、あなたが何を企んでるのかは知らないけど……『諸悪の根源』による『時間圧縮』を食い止めたいんだったら大笑いよ」

「「!!!」」

その香里の口から出た意外な言葉に、驚きの色を隠せない久瀬と梨花。

そう、香里は既に久瀬の目的を知っていた。
そして、香里は『諸悪の根源』を打倒しようとしている久瀬を止めにきたのだ!!

しかし、その彼女の情報入手の方法はいったい何なのであろうか……

「まあ、校舎内を怪しい少女がコソコソ何かを調べてたもんだから、とっ捕まえてちょっと『脅したら』、その娘は時空管理局の人間だったらしくて、なにもかもゲロったわよ」

香里の顔には再び余裕の笑みが戻り(無論、目は笑っていない)、事も無げに情報入手の経緯をしゃべる。
その方法たるや、あまりの強引さに三人とも言葉を失う。

それはさておきこの事件、『時間』が舞台となっている以上時空管理局の介入は当然といえば当然である。
おそらく『諸悪の根源』が存在していることは、時空管理局もとっくに突き止めているであろう。
その恫喝された少女…すなわち時空管理局の人間は、同じく『諸悪の根源』の件に関わっている久瀬の足跡を調査しているところを香里に捕まり、凄まじく『脅された』とみて間違いない。

…しかし、久瀬にとって重要なのは、香里が何故その情報を掴んだか…ではなかった。



「……なぜ、そこまで知っていて僕を止めようとするのだ」

そう、久瀬が一番知りたかったのは、今更香里が自分たちのやろうとしていることに介入する理由だった。
久瀬には、どうして香里が自分を止めにきたのか一切理解できなかった。

「当然じゃない!なんで無関係のあなたがそんなことするわけ?理解に苦しむわよ。そんなの時空管理局の仕事じゃない!バカじゃないの」

笑みも何も消え、感情的になり久瀬に言葉をぶつける香里。
香里の言うことも正論であり、確かにこのような世界、及び全時空を巻き込む『大事件』は時空管理局の管轄であり、あくまで一個人の久瀬らが手をだす範疇を大きく超えている。

「……時空管理局のことは僕も知っている。だが、アレでは『諸悪の根源』を突き止めることはできない」

しかし、久瀬は逆に時空管理局では役不足であり、自分らでなければこの『大事件』は解決できないと踏んでいた。
なんという自意識過剰ではあるのだが、久瀬はある意味では『大きな力』というものには失望している。
舞(まい)の悲劇、えいえんの世界の存在、ひぐらしのシナリオ、悪夢&絶望のエンディング……
その例の枚挙には暇がなかった。



「大丈夫よ。時空管理局はそこまで無能じゃないわ」

しかし、そんな久瀬の心を否定するかのように、あくまで自信満々の香里。
その自信たるや、ある意味では似たもの同士の二人であろう。

「なぜそう言いきれる?」

この久瀬の問いは至極当然であろう。
対する香里の答えは―――






「だって、あたしが乗っ取ったから」






―――まさに青天の霹靂であった。

「の…乗っ取った……って……」

さしもの久瀬も、まったくもって信じられんという表情だった。
しかし、そんなものでは終わらないとばかりに、香里の話はまだまだつづく。

「まあ、パチンコで勝ったお金でねっ」



「「(パ、パチンコ……!!?)」」

春原、梨花ももはや絶句であることは言うまでもない。
そのあまりのバカげた発言に、眩暈さえ覚える久瀬。

……しかし、半分冷静の頭ではこう考える。

パチンコで勝ったところで、そんな一組織を買収できるような大金など稼げるわけがない。
そもそも香里はそこまでギャンブルは強くはない。
大概が熱くなりすぎて、引き際を誤りボロ負けのパターンがほとんどである。
っていうか、そもそも高校生がパチンコはダメだろ……



久瀬がそう考えている途中に、香里はこう付け加える……



「ま、そのパチンコで勝ったお金『2,000円』をもって、『ミッドチルダ首都地上本部』の門を堂々とくぐったわ。ま、多少うるさい蟲がいたようだけど、みーんな『おねんね』しちゃったしね」

直訳すると、障壁は堂々と破壊突破し、行動を邪魔する敵はすべて屠った…というところであろう。
久瀬は眩暈どころか、意識が一気に宇宙まで飛んでいきそうな感覚だった。

「ま、あとは『評議会』とやらのモニター越しに『脳みそみたいなの』を壊そうとするだけで簡単。交渉はいとも簡単に成立したわよ」

「……それを人は『恫喝』というのだよ……」

なんとか意識を取り戻し、平静を装い久瀬は言う。
……そんなことを平然とやる人間は、この女を除けば『範馬親子』ぐらいしかいない。



「でも、あなたのまどろっこしい『権謀術数』とやらよりはシンプルで確実だと思うけど?」
「……はぁ……僕は頭が痛い……」

お互い高い能力を持ちながらも、手段は真逆の二人。
その香里のあまりにもの強引過ぎる手段に、もはや完全にお手上げ、頭を抱え込む久瀬であった。

「(……は、初めて見たよ…。あの久瀬があんなに翻弄されてるの……)」
「(……あんな彼女じゃ、ほんとーにかわいそーなの……)」

そのめったに見られない久瀬のうろたえっぷりに、同情はするが決して助けない春原と梨花。
……それもまあ、いた仕方のないことであろう。



その後香里は、「とにかく、後は時空管理局がなんとかするから後は全員元の世界へ返しなさい」といい残し、自分は街へ帰っていった。

「かわいそーかわいそーなの」
「あ、あのねぇ……」

とりあえず久瀬を慰める梨花ではあるが、久瀬としては心境複雑である。



そして……

「ま、まあ、ねえ、ほらあの(おっかない)元カノも言ってるんだし、あとはその『じくーかんりきょく』とかに任せようよ」

まるで触らぬ神にたたりなしといわんばかりに、ここは退いて『時空管理局』に全てを委ねようと提案する春原。

「ダメなのです!あんな後から割り込んできて、ズーズーしいったらありゃしないのっ!負けちゃダメなの!ふぁいっ!おー!なのです!!」

一方、こちらから先に『諸悪の根源』による『大事件』を特定したというのに、あとから割り込みのように入ってくる『美坂香里』及び『時空管理局』に不快な態度を示す梨花。

意見は完全に真っ二つに割れたのであった。
久瀬は結局―――



1・全てを時空管理局に任せ、えいえんの世界へ帰ることにした。
2・まいを信じ、そのまま手がかりを探しに向かった。



[15824] 第三十話 …檻の中のグリズリーを怖がる子供はいますか?
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/12 10:12
2・まいを信じ、そのまま手がかりを探しに向かった。



「ま、まあ、ねえ、ほらあの(おっかない)元カノも言ってるんだし、あとはその『じくーかんりきょく』とかに任せようよ」

まるで触らぬ神にたたりなしといわんばかりに、ここは退いて『時空管理局』に全てを委ねようと提案する春原。

「ダメなのです!あんな後から割り込んできて、ズーズーしいったらありゃしないのっ!負けちゃダメなの!ふぁいっ!おー!なのです!!」

一方、こちらから先に『諸悪の根源』による『大事件』を特定したというのに、あとから割り込みのように入ってくる『美坂香里』及び『時空管理局』に不快な態度を示す梨花。

意見は完全に真っ二つに割れたのであった。
久瀬は結局まいを信じ、そのまま手がかりを探しに向かった。







光坂市を去ることしばらくしての道中…
建物も何もなく、ただ大きなバイパス沿いをひたすら歩く久瀬たち。

「やっぱり無茶だって。なーんのヒントもなく闇雲に探して、なにもあるわけねえっつーの」

当然のごとく春原が音を上げ始める。
それもそのはず、久瀬たちは特に作戦もなにもなく、行き当たりバッタリでこの時代にきたにすぎない。
まさに暗中模索とはこのことであり、春原の意見は至極もっともといえよう。

「まあ、確かに一理はある」
「!?……で、でしょ!」

珍しくも久瀬は春原の意見に同調する。

「僕も美坂君の手前、少し大人気なく冷静さを欠いていたようだった」
「……久瀬でも冷静さを欠くのですか」

そして、先ほどの香里の宣戦布告にて、多少躍起になっていたことを反省する。
梨花も冗談半分で久瀬を仄めかす。

「…春原君の言うとおり、ここは一旦体勢を立て直す必要がありそうだ」
「じゃ、じゃあ……」

そして久瀬は、ここにてもう一度、指針を変えることを提案する。
その久瀬の柔軟さに安堵したのは春原であった。
春原の希望は、当然、この危険かつ途方もない旅の終焉である。
もとより、そこまで世界に対し責任感も覚悟もない彼であったのだから、当然といえば当然であろうが……



「先んずればすなわち人を制す……か」
「は?」

しかし、そんな春原の期待とは裏腹に久瀬の口から出たのは、如何とも理解しがたい言葉だった。

「まあ言葉通り、敵より先に事を行えば、その敵を倒すことが出来る。…そうは思わないかい?」
「そ、それって意味わかんないんですけど」

久瀬の言葉はますます意味が分からず、頭がこんがらがる春原。


「『勝沼紳一』及びその手下の特徴は何だね?」

わけのわからない春原を置いてけぼりに、久瀬は謎掛けを続ける。



「うーん、鬼畜強姦魔かつ処女フェチ…ってところですか?」

とても外見からは創造できないような言葉を口にする少女、梨花。
伊達に100年は生きていない。

「Yeeees!!!よーしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし!!梨花ちゃまは賢い娘だ!!!」

久瀬は梨花の答えに満足し、正解とばかりにやたらめったら褒めまくる。
思いっきり梨花をなでなでする久瀬は、もはや変態の領域に近い。

「~~~~~~」
「おっとすまない。まあ、梨花君の言うとおり、『勝沼紳一』らは美女の強姦を趣味としている。しかし……永遠に誰にも『自分の本性』を隠したまま、一生をすごせるものだろうか?い な ァ ァ ァ ~ ~ い ッ !」

久瀬の変態染みた行為に、赤面しながらもへろへろ状態の梨花。
久瀬はやりすぎたとばかりに梨花を解放し、その謎掛けの解答をし始める。
……なんで吉良吉影とシュトロハイムが混ざっているのかはこの際おいておく。

「……つまり、やつらがいずれ我慢できなくなり『狩り』を始めた時!!その時を狙うのだ!!!」



ドッギャアアアアアアン!!



なんともまあ自信満々に作戦を提示する久瀬だが、実はたいしたことはあまり言っていない。
要するに、敵が優秀な人材を得る以前に優秀な人材を得てしまえばこっちのもんだという、極めて単純な作戦である。



「……で、その『狩り』はどこで行われるのさ……」

この春原の疑問は至極妥当であった。
しかし久瀬は、その問いを待っていましたとばかりに嬉々として語る。

「よくぞ聞いてくれました!……まあ、美少女かつ処女臭の群がるようなところとすれば、後はおのずと見当がつくだろう」
「!!!!!!」

行き着く場所はやはりそこだった。
次の目的地が美女だらけのハーレムであることを察した春原は、一転して俄然やる気満々になった。



「ふーん……でも、まいが聞いたら怒るかもしれないのですし、そもそもそんなところに『涼宮ハルヒ』と同等の力を持つ人物がいるかどうかも疑わしいの」

一方、さっきまで梨花を褒めまくっていた男はどこへやらといった感じに、梨花はこの立案には反対する。
まいをだしには使っているが、かくいう梨花も多少は不機嫌になっている。

「なあに、これは『勝沼紳一』を、ひいては『諸悪の根源』を倒すため作戦なのだ!ここは納得してもらうしかないであろう」

モノは言いようである。
そもそも理論の前提段階で破綻はしているのだが、いくら考えてもこれ以上の妙案が出るわけでもなく、梨花も渋々その案に承諾せざるを得なかった。
もっとも、この作戦の裏には、厭戦的になっていた春原の戦意を高揚させるという久瀬の考えもあったわけなのだが、あえてそれは口には出さなかった。



「そういうわけで、次の目的地は―――」



1・桜ヶ丘高校軽音部だ!!!
2・陸桜学園高校だ!!!
3・十羽野高校だ!!!
4・幻想郷だ!!!







と、いうわけで再びパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬以外の二人のメンバーを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『バンデット・キース』『涼宮ハルヒ』『キョン』の6人です。



[15824] 第三十一話 …男の娘とこのことを(回文)
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/12 10:55
1・桜高軽音部だ!!!



「なあに、これは『勝沼紳一』を、ひいては『諸悪の根源』を倒すため作戦なのだ!ここは納得してもらうしかないであろう」

モノは言いようである。
そもそも理論の前提段階で破綻はしているのだが、いくら考えてもこれ以上の妙案が出るわけでもなく、梨花も渋々その案に承諾せざるを得なかった。
もっとも、この作戦の裏には、厭戦的になっていた春原の戦意を高揚させるという久瀬の考えもあったわけなのだが、あえてそれは口には出さなかった。



「そういうわけで、次の目的地は桜ヶ丘高校軽音部だ!!!」



パーティ…久瀬・春原・キョン







結局まいも渋々ながら承諾し、青子先生のデジョンにより時空移動。

やってきました花の女子高!!!
めまぐるしく動く女子高生の新鮮なこと、これで喚起せぬものは男に非ずとばかりに、久瀬たちのテンションは否応なしに上がる。



「『どこかの紳士』の言葉ではあるが、紳士たるもの少女には休息が必要とのことだ。ま、よきに計らいたまえ」

ほとんど作戦のことを忘れているのではないかと疑いたくもあるが、それでもこの休息は、久瀬にとっては実は非常に意味のあることであった。

*『どこかの紳士』さんのコメを勝手に引用させていただきました。すみません。



「ヒャッホー!!女子高サイコー!!!」
「…確かにそうかもしれないが、それでも久瀬が言うと詭弁き聞こえる…」

ここぞとばかりにはしゃぎまくる男、春原。
一方、春原とは対照的に、キョンはあまり乗り気ではなかった。



「おおっ!!学び舎からはまだ男も知らない清純な女子の匂いがプンプンしますよー!!YO!ボンバヘッ!!」

よほど女に飢えていたのであろうか…
これほどまで生き生きとした春原を、久瀬たちは見たことがなかった。

もう止められない止まらないエロオヤジモード全開の春原は、すぐさまに校門をくぐろうとするが……



「ちょっと待った」

瞬間、久瀬は春原の襟裏を掴み、その行動を制止する。

「グエ……」

そのまま慣性の法則に従い重心は移動。
首はそのまま襟に掛かり、「グギ」という鈍い音を立て春原はダウンする。
久瀬は介することなく言葉を続ける。

「君たち。ま さ か 女子高にそのまま入ろう…っていう魂胆じゃあないだろうな?」
「な、なにを突然……!?」

いかにも悪巧みしてますよ的な口調で、一旦仲間を集める久瀬。

「女子ばかりの中に男が三人もいたら、不審者扱いされて即追放が関の山だろう」
「そ、そりゃあ、そうだけど……」

久瀬の言葉は正論ではあるのだが、その不敵な笑みに不安を感じずにはいられないキョン。
しかし久瀬は介せずにさらに言葉を続ける。

「まあ、こういうときのために『潜入のスペシャリスト』を用意した。カモン!」



「は?」



…この台詞だけで誰が出てくるか予測できれば、末期の読者であろう。

久瀬が指を「パチン」と鳴らすとともに次元の狭間より現れたのは、一人の『美しい女子高生』であった。
伏せがちな瞳は細長い睫に縁取られ、慎ましやかに手元の生徒手帳を見下ろしており、その長き髪は流水のごとく肩までしっとりと垂れ下がっていた。
おそらく、未だかつてこれほどまでに美しい女性は存在しなかっただろう。
着ている桜ヶ丘高校の制服も、女性の美しさの中に隠れた可愛さをより一層際立たせている。

「………」

「「ひゃあ……」」

その潤んだ唇から、今まさに言葉が放たれようとしているが、その動作にさえ、春原、キョンはつい固唾を呑んでしまう。



そして……



「……どういうつもりだ!」

「「へ?」」

……美しき女性からの予想だにしない怒り篭った一言に、別の意味で戸惑う二人。



「どうもこうもない。そのまま女子高に潜入し、レイプ魔を殺せばいいだけの話だよ『斉藤君』。……あ、声聞いてもわかんないと思うけど、一応、男だから」

「「お…男ぉぉぉ!!?」」


その凛々しさの中に可憐さが垣間見える外見から、彼が男であることをまったく想像が出来ない春原とキョンは、嘘だろとばかりに大きな声をあげ驚く。
一方の久瀬は、やっぱりなと心の中で分かっていつつも、ついつい笑いが止まらない。

そう!この男こそ久瀬の盟友にして『南斗水鳥拳』の使い手、『斉藤一』である!!!

「……その話は聞いた!!しかし、『女装』しての潜入など聞いてないぞ!!!大体こいつらは誰だ!!!」
「「………」」

斉藤は怒り収まらず、久瀬だけでなく二人にまで怒りをぶつける。
おおよそ生真面目な斉藤は、久瀬お得意のペテンに簡単に騙されてここまで来たのであろう。

しかし、斉藤の容姿は無論のこと……
彼の透き通るような声を聞き余計に理解できず、久瀬の『こいつは男』の発言すらも疑わしく感じさせる。
とにかくいろんなことがごっちゃになり、春原もキョンも、斉藤の問いに答えることができない。

だからこそ、先の斉藤の『女装』発言など、当然耳には入っていなかった。



しかし、次の久瀬の一言が、さらにこの二人を絶句させる。

「ああ、彼らも君と同様の潜入部隊。これから彼らも『女装』し、三人でこの女子高に潜入するのだ」

「「!!!!!!」」

久瀬が春原とキョンを指差しそう言った事で、改めて事態を把握。
しかし、時既に遅し、まさに青天の霹靂、寝耳に水…
さまざまなショックな情報が非常に短時間で行き来してしまい、春原、キョンは絶句どころか意識があらぬ世界へ飛んでいったのであった。



しばらく時が止まった後、何とか自分を取り戻したキョンが久瀬に言葉を返す。

「お、オレたちも初耳だぞ!!だいたい、アンタはどうすんだよ!!!」

たしかに、時空の歪みの安定性を考えれば、4人パーティはあまり望ましくはない。
ここで斉藤を加え、また、先ほどの久瀬の言葉から、春原、キョンも潜入させるとの事であれば、パーティのメンバーはもはや確定である。

しかし、次に久瀬は、さらに信じられないことを口にする。

「今回の戦いには参加しない」
「!!!!!!」

ここまで自分勝手な主人公は前代未聞である。



「貴様いい加減に―――」

そのあまりの身勝手な久瀬の振る舞いに、斉藤は怒りを通り越し呆れるのを通り越し怒りが頂点に達する。
しかし、もはやブチ切れ寸前の斉藤に、久瀬はこう反論する。

「まあ、考えても見たまえ。僕やキース君の女装は『明らかに』不自然すぎるだろ?ロック君はロボットだし……」

「うっ……」

その久瀬のあまりの正論に、キョンは反論できない。

「それに相手は鬼畜レイプ魔である。万が一のことを考え、涼宮ハルヒ君、梨花君といった女性メンバーを入れるわけにもいくまい」

「そ…それは……」

斉藤はフェミニストというわけではないが、それでも、不用意に女性を変態の前にさらすことなどは出来ない人間である。
結局、キョン、斉藤、ともに沈黙。

久瀬はさらに言葉を続ける。

「ま、君らの場合は最悪、掘られて『アッ―――!!!』な展開になるかもしれないが、そこは不慮の事故だと思ってあきらめてくれ」

「「思えるか―――ッッ!!!」」

さっきまでの正論はどこへやら、その久瀬のぞんざいな扱いに、つい言葉を荒げるキョンと斉藤。
しかし、いくら不平不満を言ったところで久瀬の意見を覆すだけの妙案はない。
その後、春原を無理やり起こした後、結局三人は女装することとなったわけで……







「ほう、キョン君に春原君。君らもなかなかに似合っているではないか」

斉藤に習い、桜ヶ丘高校の制服に着替えたキョンと春原。
久瀬が評価するように、二人の女装にはほとんど違和感はなかった。
おそらく誰がどう見ても、普通の女子高生にしか見えないだろう。

「そ、そう?ま、僕の場合モトがいいからねっ」

ほめられてすぐ調子に乗る男、春原。
ある意味、羨ましい性格ではある。

「……なんか、すんごくイヤだ……」

一方のキョンは、斉藤同様ひどく不服そうである。

「ま、さしずめ『春原陽子』に『キョン子』といったところか」
「テメェ……本当に悪趣味だな……」

そんな二人の心境などお構いなく、妙な名前をつけては悪笑いをする久瀬に、斉藤は毒づかざるを得なかった。



そういうわけで主人公の久瀬は自分勝手にもパーティをはずれ、斉藤一が仲間になった。



パーティ…キョン・春原・斉藤



「チッ……こうなれば自棄だ。早急にメンバーを探して四天王のレイプ魔とやらを抹殺して、いち早く元に戻るぞ!!」

一刻も早く人材を見つけ、その上で四天王を倒し、こんなばかげた格好とはオサラバしたい斉藤。

「ああ、そうだな。(ってか、こんな姿をハルヒに見られたら格好のネタだぞ……)」

思いはキョンも同じであり、また、そのままハルヒに女装姿を弄られるかと思うと非常に寒気を覚えていた。



「でも女子高だし、やっぱ百合展開ってあるよね!?」

一方、空気をまったく読まずに不謹慎な発言をする春原。
彼の頭の中には、自分が女装姿でありながらも、桜ヶ丘高校の生徒とイチャイチャしている姿しかないのであろう。

直後、斉藤とキョンの鉄拳が飛んだことは言うまでもない……



なんとか女子高に潜入することに成功した三人。
女子高生の嬉々とした喧騒の中を潜り抜けてはいるが、やはり見た目に不自然さがないためか、三人とも怪しまれる気配はまったくない。



「それはそれで悲しいものがあるな……」

そのあまりの自然な順応っぷりに、斉藤は自分のコンプレックスを再確認し落ち込んでしまう。

「…それは言わないでくれ……。まあ、まずはありきたりだが情報収集といくか。……とりあえずは―――」



1・あのデコの広い子に聞いてみよう。
2・あのおかっぱでロングの子に聞いてみよう。
3・あのほんわりとしたお嬢様っぽい子に聞いてみよう。
4・あのなんだかアホ毛の子に聞いてみよう。



[15824] 第三十二話 …すべての感想に価値があります。これからも遠慮なく提案、意見、非難をお願いします。
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/12 11:20
3・あのほんわりとしたお嬢様っぽい子に聞いてみよう。


なんとか女子高に潜入することに成功した三人。
女子高生の嬉々とした喧騒の中を潜り抜けてはいるが、やはり見た目に不自然さがないためか、三人とも怪しまれる気配はまったくない。



「それはそれで悲しいものがあるな……」

そのあまりの自然な順応っぷりに、斉藤は自分のコンプレックスを再確認し落ち込んでしまう。

「…それは言わないでくれ……。まあ、まずはありきたりだが情報収集といくか。……とりあえずは、あのほんわりとしたお嬢様っぽい子に聞いてみよう」



キョンはおそるおそる、おっとりとした感じの女の子に話しかける。

「あ、あのー……すいません……」
「あら、なんでしょうか?」

その外見にたがわず声もおっとりとしており、キョンは朝比奈みくるを連想し思わず心が弛緩する。

「最近この学校で、なんか不審な男を見なかった……あ、いや、見ませんでした?」

ついつい男言葉に戻ってしまい、あわてて修正をするキョン。
今はあくまで女子高への潜入中であり、油断は禁物である。

「うーん……ここは女子高ですから……そういう人はいないんじゃないでしょうか……?」

しかし、案の定、『勝沼紳一』一味らしき不審な人物は知らないという答え。

「(……あるいは、女子生徒に化けている可能性もあるかもな。久瀬さんの話によれば、敵はある程度媒体の精神が衰弱していれば、なんにでも憑依できるらしいとのことだ……)」

その少女の答えに斉藤は推察を始める。

そう。敵もバカではない。
実質何にでも憑依できる以上、あえて男の姿で女子高に潜入することは普通では考えにくいことである。

斉藤はそのことをそっとキョンに耳打ちをする。

「(…そうかもしれませんね。もう少し周囲を警戒しながらも、よく観察をして―――)」

二人が今後の行動を考えているちょうどその時だった。



「ねえねえ、それよりさあ!君、彼氏いるの?ねえ?」
「……?」



ズサァァァッ!!


「「………」」

真面目に敵の捜索をしている最中にも、先ほどのおっとりとした少女をナンパする春原。
そもそも、こんなやつ連れてきた時点で、この作戦は失敗だったのかもしれない……

「んー……女の子に興味はないわけじゃあないんですけど、でも、あなたにはもっといい人が見つかりますよぉ」
「かんっぜんなフラレパターンっすね……」

多少意味ありげな言葉を含ませつつも、春原…完全に撃沈ッ……!

「(……っていうか、今のこの子の発言を鑑みるに、ちょっと百合っ気もあるのか……?)」
「(……知るか)」

ついつい邪推をするキョンではあったが、斉藤にとっては唾棄すべき出来事であった。



そんなこんなで馬鹿なことをやっているうちに、今度は髪をアップにしおでこを出した子とおかっぱでロングの子の二人の少女が、キョンたちのほうに近づいてくる。



「ムギー!何してんのー?あれ、この子たちだれだれー!?転校生!?チョー美人と可愛い子っ!!ウチ、軽音部やってんだけど入部しない!?」
「あっ、澪ちゃんと律ちゃん」
「よっ!」

髪をアップにした少女がおっとりとした少女を『ムギ』と呼び、軽く挨拶をすると、今度は斉藤たちに興味を示し部活動に勧誘する。
先のムギと呼ばれた少女の言葉から、どうやらこの活発な少女は、『律』という名前らしい。

「律ったら!初対面の人にイキナリ……あっ、ごめんなさい。なんだか唐突で……」

『澪』と呼ばれた多少男口調の少女は、律の行為をはしたなく思い、それを御そうとする。
凸凹コンビながらも、なんだかんだで非常に中がよさそうであり、おっとりとした少女…ムギこと『紬』も、その光景を微笑ましく眺めていた。

「あ、いえ、こちらこそ忙しい中申し訳ありません」

先の澪の礼には礼で答えるのが斉藤である。
斉藤が頭を垂らすと、澪もこくりと会釈をする。



「と、ところで君たち軽音って…バンドやってんの?」

一方、春原のほうも澪の男口調ながらもその可愛さに、非常に興味津々のようである。
もっとも、春原でなくとも、男と在らば彼女に興味がない人間の方がマイノリティではあるのだが。

「え、ええ……まあ、一応『放課後ティータイム』ってバンドでやってるけど……」

その春原の積極さに多少引きながらも、律儀に答える澪。

「ぼ…あ、いや、わ、わたしも音楽をやってるのよ。ボンバヘッ…って」

空気を読まない春原は、この機を逃すまいと一気呵成に攻め立てるのだが……

「あ、いや、そっち系とまた違うから…その、ゴメン」
「ぐあ……」

春原…再度撃沈ッ……!



「ま、そーいうわけで触りだけでもいいから覗いてってよ。悪いよーにはしないからさー」
「声が怪しいぞ、律……」

一方律は、そんな春原のやり取りを別に斉藤たちを勧誘し続ける。
あわよくば、三人の女の子(男だが)を軽音部に引き込もうとしているのであろう。
そんな律に、澪は突っ込みを入れざるを得ない苦労症である。



「いきましょ!いきましょーよー!!」

そしてこの男、春原は、確実にぼったくりバーの客引きに捕まるタイプであろう。



「ど、どうするか?」

完全に乗り気の春原とは対照的に、斉藤としてはこんなところで足止めを食らっている暇などなく、一刻も早く人材を見つけ敵を倒し、女装姿から解放されたいのである。
しかし、もしかしたら、彼女らの中に人材がいるかもしれないし、敵もそれを狙ってくるかもしれない…
決断の迫られる斉藤とキョンであった。

「そ、そうだな……何か新しい発見があるかもしれないけど……」

とりあえずキョンたちは軽音部の部室に―――



1・向かってみた。
2・向かう前に、もう少し探索をしてみた。



[15824] 第三十三話 …このSSがおかしいのも全部ディケイドのせいです。
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/12 12:15
2・向かう前に、もう少し探索をしてみた。



「ど、どうするか?」

完全に乗り気の春原とは対照的に、斉藤としてはこんなところで足止めを食らっている暇などなく、一刻も早く人材を見つけ敵を倒し、女装姿から解放されたいのである。
しかし、もしかしたら、彼女らの中に人材がいるかもしれないし、敵もそれを狙ってくるかもしれない…
決断の迫られる斉藤とキョンであった。

「そ、そうだな……何か新しい発見があるかもしれないけど……」

とりあえずキョンたちは軽音部の部室に向かう前に、もう少し探索をしてみた。







そういうわけで、キョンたちは律、澪、紬に「後で行く」と答え、軽音部の部室の場所だけを教えてもらい、しばらく校内の探索を続けることにした。



「春原…とかいったな」
「あん?」

斉藤は周囲に悟られないよう、それでも怒りを含めた声で春原の名を呼ぶ。

「さっきはたまたまよかったものの、もうナンパはするなよ……」

そして斉藤は、先ほどの春原のあまりの軽率な行為をと咎める。

「どうしてさ?」

しかし、斉藤に咎められる理由が今ひとつ理解できない春原。



「男だってバレるだろーが!!!」
「さ、斉藤も落ち着いて……」

その春原のあまりの無自覚さに、つい言葉を荒げる斉藤。
キョンはそれをなんとか制止するものの、……こんな感じで本当に大丈夫なのであろうかと心中は不安たらたらであった。







しばらく校舎を探索している傍らで……
人気のまったくない空き教室に空間の歪みが生じていた。
すると、その次元の歪みより男のヴィジョンが現れる!
その男…背格好はチューリップハットにコート、眼鏡をかけている小太りな男性であった。

そして、空間の歪みより現れた男は、不気味な独り言をつぶやいていた。

「ディケイド……じゃなかった……『久瀬』、オマエはこの世界にあってはならん……」

男がそういった後に手をかざすと再び時限の歪みが発生し、そこから今度は謎の女性が現れたのであった。







校舎を探索中のキョンたち……
相も変わらず女装姿がバレる気配はないのだが、それでも、春原以外は一刻も早く状況を進展させたかった。

人気のない廊下を歩いている中、一人の女子生徒が現れる。

「あ…あの……、私、軽音部の澪ファンクラブなんですけど、これから部室に向かうんでしたら私もついて行ってもいいでしょうか?」

どうやら彼女は先ほど会った『澪』のファンであるらしいのだが、一人では恥ずかしいらしく、みなで同行したいとのことだった。
先ほど軽音部員と会ったばかりであり、どうにも不自然な偶然だと斉藤、キョンは思っていたが……

「もっちろん!!一緒に行こう! 君がいてくれれば、サイコーさ!」
「はいっ!」

この男、春原は二つ返事でOKしてしまう。
結局、謎の女子生徒が仲間になったわけで。



「そんな怖い顔してどうしたの、キョン?」

「臭うんだ」
「魔物の臭いだな……」

そう、キョン、斉藤はすでに敵の気配を感じていた!

「ど…どこ!?」

先ほど仲間にした女子高生も、思わず辺りを見回すのであったのだが……。

「臭いんだよ!」
「お芝居をするならもう少しうまくやってもらいたいものだな」

キョン、斉藤は厳しい口調で女子高生を問い詰めていく。

「ヒィッ!こ、この子も『諸悪の根源』とやらの手下なのぉ!?」

先ほどまで女子高生に色気を出しまくっていた春原も、ここにきてようやく彼女が敵であることに気づき動揺を隠せなかった。

「やめて頂きたいですね、そんな言い方は……あの方は、素晴らしいものを俺に下さったのだ。こんなに素敵な力をなッ!」

一方で、女子生徒の体が見る見る崩れていき……
なんと女子生徒の正体は、襟の後ろが大きく丸く伸びている長身で長い黒髪の男だった!!!
左目は隻眼なのであろうか、不気味な眼帯をしている……

「ヒィィ!出っ歯アアア!!!」

思わずマヌケな叫び声を上げる春原。

「いや、そこビビるとこじゃないだろ……」

一方、斉藤は冷静に敵を見据えている。
そんな中、敵はすでに臨戦態勢に入っており、その非常に重そうな『三日月を8の字型に二つくっつけた形の鎌』を軽々と振り回していた。
鎌の先端からは心なしか風を帯びているようにも感じられ、それが彼の戦闘力を大いに物語っていた。

「名は何だ女ァァァ!!!」

古風にも、男は戦闘前に斉藤の名を尋ねる。
今まで斉藤が経験した戦いでは、まずありえない出来事である。
しかし、そんな彼も斉藤が男であると見抜けていないようだった。

「斉藤一……ってか、俺は男だ」

その古風な敵に従い、斉藤も自己紹介をし、さらに自分が『男』であると即座に訂正する。

「第5十刃『ノイトラ・ジルガ』だ!!!」

名乗りを上げるや否や、そのノイトラという男は更なる変身をし……
頭に左右非対称の三日月のような角が生え、腕が節足動物のような装甲で覆われ4本に増え、その4本の腕に大きな鎌を持つ姿に変わり、腹部を囲む様に角のようなものがいくつも形成された。

「いまだかつてこの『卍解』をかわしたやつはいない!!」

どうやら彼は、戦士として全力を持って斉藤を倒しに掛かるつもりであった。
こと戦闘狂ともいえる彼は実力を見極める力もあり、その相手の実力が『倒す価値のある者』とみるや、そこにいかなる実力差があれど全力を尽くす。
それが彼の流儀であった。

「フッ…では俺がその最初の男になってやろう」

しかし、斉藤は尚も余裕の表情でノイトラを迎え撃つ。

「ほざけ!!」


ブォッ!!



ノイトラは大鎌をブン回し、瞬時に斉藤に突撃してくる。
あんな如何にも重そうな攻撃……どっからどう見ても華奢な斉藤が受けたら一撃でお陀仏であろう。
無論、ヤムチャ視点の春原、キョンには何が起こったかまったく理解できていない!!呆然とする時間すら存在しない!!

しかし斉藤はその攻撃を瞬時に見切り回避、心配は杞憂に終わる。



「ん!?な!!」

その攻撃がかわされたことに、少なからずショックを受けるノイトラ。

「おい忘れもんだ!!」

しかし、彼の受けるショックはこんなもんではなかった。
斉藤はすれ違いざまに分割したノイトラの両腕を、本人に投返したのだ。

「ヒェッ!!なあああ!!」

鋼皮の硬度に関しても歴代全十刃中最高を誇るノイトラにとっては、まったくの未曾有!理解不能の出来事!!
もはやなにがおこったのか理解できない、理解することを拒否した脳は、ただただノイトラから意識を現実と乖離させようとしていた。

「俺の動きは人間では捉えることは出来ん!!」
「え?いや、俺、人間じゃないし……」

それでも、さすがは十刃であり、なんとか意識を回復させ斉藤に突っ込みを入れるノイトラであった。







「ちっ、誰を狙ってる」

一方、影から自身の召喚したノイトラの戦いを隠れ見ている、先の謎の人物。
どうやら彼は久瀬を狙っていたらしいが、完全に出現場所を間違えたらしい……

「………」

男は再び、虚空に向かい手をかざすと……



「え?」
「!!」

斉藤とノイトラの間に再び次元の歪みが発生し、ノイトラはそれに飲み込まれていった……!

「で、出番これだけえええ!!?」

ノイトラの言葉は空間からフェードアウトし、次元の歪みは完全に姿を消した。



「久瀬、これが『始まり』だ!」

そして男はそう宣戦布告をし、自身も次元の彼方へ帰っていったのであった。







「な、なんだったんだ……?」
「さ…さあ………」

その目の前で行われるイリュージョンを前に、斉藤、キョンは、ともに呆気に取られるしかなかった。
そのまま突っ立っているわけにも行かず、ひとまず三人は―――



1・今度こそ部室に向かった。
2・一旦体制を整えることにした。



[15824] 第三十四話 …HTTとHTNは関係ありません
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/12 12:51
1・今度こそ部室に向かった。



「な、なんだったんだ……?」
「さ…さあ………」

その目の前で行われるイリュージョンを前に、斉藤、キョンは、ともに呆気に取られるしかなかった。
そのまま突っ立っているわけにも行かず、ひとまず三人は今度こそ部室に向かった。







そして軽音部部室。
まだ練習前なのであろうか、演奏している様子は一切見られない。
それどころか、部員で談笑しながらケーキを食べているという、なんとも体たらくな有様である。

しかし、そんなことはもはやキョンたちにはどうでもいいこと。
…ここで三人はまったく持って信じられないものを目にしたであった。



「フフ…さすが僕の予想通り、5人が5人とも可愛い子揃いだ。これは鬼畜レイプ魔が狙う可能性は大いにあるだろう」

このいかにも傲慢甚だしい口調…

「えー!でも、その『諸悪の根源』の話って本当なのー?」
「たしかににわかには信じがたいが……」

その男の話を、律は興味本位で、澪は神妙な面で聞いている。

「フフ……まあ、信じがたいのも無理はない。だが、一名は信じてくれているようだ。そうだろう『平沢唯』君」

その男は、今度はどや顔で『平沢唯』の方を向き、いかにも『君ならば分かる』というニュアンスで優しく語る。

「うー……『勝沼紳一』は女性の敵ですっ!そうだよね、あずにゃん」

そのペテン師の言葉を完全に鵜呑みにし、唯は意気軒昂に『あずにゃん』に同意を求める。

「センパイ……絶対にインチキ商法や新興宗教に騙されるタイプですね……」

しかし、そんな話を信じろというほうがどだい無理な話であり、『あずにゃん』と呼ばれた少女…『中野梓』はそんなセンパイを半ば呆れ顔で見ていた。

「みなさーん。お茶がはいりましたよー」

そして、我関与せずといわんばかりにその光景を傍観し、あまつさえティーポットに紅茶まで入れてくる紬。



…そう、我々は知っている!
軽音部部員5人と仲良くおしゃべりしている、傲慢不遜な白衣の男を!!!






「久瀬さん………てめぇ何をしている!!!」

次の瞬間、斉藤の透き通る怒声が部室中に響き渡ったのは言うまでもなかった。



「見てのとおり、ちょっとお茶をな。これが本当の『放課後ティータイム』ってやつかな」

しかし、この男は斉藤の怒りすらも意に介さずに、あまつさえ、淹れてもらったミルクティーを飲みながら、ケーキまで食べている。
そう、キョン、春原、斉藤を女装させてこの女子高に潜入させておきながら、いけしゃあしゃあと部室で座談している男は久瀬であった。

「…それに君ら三人とも説明するが下手だからと思い、わざわざ僕が出向いたわけなのだよ。少しは感謝したまえ」

その上、久瀬は軽音部員5人に、今まで起こったすべてのことを話していたのである!!



…しかし、そうなるとキョンには、ひとつだけ腑に落ちないことがあった。

「じゃ、じゃあ、アンタはどうやって入ってきたんだ……?」

たしかに、久瀬はキョンたちを『女装』させてこの女子高に潜入させていた。
しかしこの男、久瀬は女装している気配など何一つなく、いつもどおりの白衣姿である。
一瞬、女装して着替えたのかとも思ったが、自身が女装することの愚を作戦前に述べていた久瀬がそんなことをするとは思えない。



「北斗神拳は暗殺拳。潜入はお手の物だ」

久瀬の解答は、至ってシンプルであった。

「……そういや、そんな設定もあったな」
「……っていうか、もはやどうでもいい……」

そんな久瀬にもはや呆れ果て、「だったら最初からお前がやれ!!」という突っ込む気すらすらおきないキョンと斉藤。



「もっとも、君らが『敵』を引き付けてくれたおかげで、すんなりと潜入できたわけなのだが……」

さらに続けざまに久瀬は、得意げにほくそ笑んだ後、再びミルクティーを一口頂く。

「「………」」

この男、どこまで人の神経を逆なでするのであろうか…?
どうやら久瀬は、キョンたちを最初から囮のつもりで使っていたようだった。
もはや呆れ果ててものも言えないキョンたちであった。
その顔は「ひどく疲れているようだった」と、後にあずにゃんは語る……



「それにしても、アンタたちすんごく女装似合ってるよね」

ズサァァァッ!!

なぜ彼女が『女装』のことを知っているのだ!?
この律の唐突の一言に、キョンと斉藤は思わずずっこける。
どうやらこの二人には、放心させてもらえる時間すらないらしい……

「ああ、いい忘れていたが、君らが『女装』してここに潜入していることも彼女らに既に話してあるから安心したまえ」

…種を明かせば至極簡単。
この最低のペテン師が、すでに曝露済みだっただけのようだ。

「あ…アンタって人は―――ッッ」

もはや怒りを通り越して呆れたのも通り越して怒り心頭の斉藤。
久瀬は「ハイハイ」とばかりに涼しげな顔でミルクティーを口にしていた。

一方、その傍らでは…



「ま、モトがいいからいけてるでしょ。男に戻った僕はもっとイケメンだからさぁ、僕とデートしてくださいッ!!」

完全に乗り気の春原が、軽音部員をナンパしていた。

「あ、タイプじゃない」
「……わ、私も断る!!」
「春原さんにはもっといい人が見つかりますよー」
「き、気持ちはう、うれしいのですがっ、ご、ごめんなさいっ!」
「……私も、ごめんなさい」

「ぐあ……」

律、澪、紬、唯、梓の順に断られていく春原。
春原……屈服!屈服せざるを得ない!!!



「それにしても、春原はともかく斉藤さんは美人だし、キョン君はその…可愛い…って感じがするな」
「僕だけ呼びすてっすか……」

春原はともかく、斉藤、キョンのことは高く評価している様子の澪。
もはや春原の扱いが哀れでならない……

「可愛い…っていわれても、あんましうれしくない」
「右に同じだ」

しかし、男であるキョンと斉藤は、可愛いといわれることには不服のようである。
ある意味二人の扱いも哀れでならない……

「しつもーん!!お二人に彼女はいるんですかーっ!!」
「…僕には聞かないのね……」

間髪いれずに律は、『男である』斉藤、キョンに質問タイムを始める
律の眼中には、完っ全に春原の姿はなかった。

「ああ(……まあ、やはり名雪が一番だな……)」
「…オレも、一応……(っていうか、下手な選択肢選んでハルヒの逆鱗に触れて世界崩壊したくないし……)」

惚気男の斉藤は当然、『水瀬名雪』という彼女がおり、ひねくれラブコメ男キョンはハルヒの逆鱗に触れることを恐れ、それぞれ彼女がいると答える。

「ちぇっ、ざんねーん♪」
「ざんねーん……じゃないだろ」

イケメン二人に彼氏がいることに、少し残念がる律。
その律の軽さに思わず澪は苦言を呈す。

「ちなみに、澪はどっちがタイプ~~~?」
「わ、私に振るなッッ」

しかし、逆に律の逆襲にあいしどろもどろになる澪。
まあ、なんにしても女子高生らしい、なんとも賑やかな時間ではあった。



とまあ、色恋沙汰で話が盛り上がる一方……



「へぇ~……久瀬さんとムギちゃんって、知り合いなんだ~」
「ま…マジで……!?」

久瀬と紬はどうやら知り合いだったようで、唯と梓はその事実を知り驚いていた。
この時代において、久瀬の名は世界に知れ渡っているらしく、唯と梓とてその存在くらいは知っていた。
そのような大物が自分の友人と知り合いと会っては、驚かないほうが無理というものであろう。

「ええ。昔から財界のパーティで何度かご一緒になったことはあります。ねえ、『総帥』さん?」

紬は久瀬のことを『総帥』と呼んでいることから、どうやらこの時代においても紬と久瀬は交友があるようだった。

「うむ……。(っていうか、未来の自分を知るのは『禁忌』ではあるが、なぜ『総帥』なのだろうか……)」

しかし、タイムパラドックスを恐れてか、あまり自分の未来を知ることを好ましく思わない久瀬。

「な、なんだか改めて、紬センパイがすごい人に見えますっ!」

一方の梓は、純粋に久瀬と紬をとても偉い人のように感じ、尊敬のまなざしを送る。

「そんなことないですよ。私なんかより、総帥さんの方がもっとすごいんですからっ」
「わたしも、一度でいいからセレブな生活がしたいなー」

謙遜する紬ではあったが、唯にしてみればどちらもとてつもないセレブであることには変わりはない。

「あ、あまり『僕の未来の姿』のヒントは与えないでくれよ……」
「はいっ!」
「はは……」

これ以上自分の未来を知ってはまずいと、とりあえずうろたえる素振りを見せる久瀬に、唯は素直に返事をする。
しかし久瀬は心の中で、同時にこのようなことも考えていた……

「(なるほど……『平沢唯』。なかなか素直な娘だ。聞けば、軽音楽部に入部するまでは楽譜も読めず、楽器経験もほとんどない素人だったというではないか。しかし、自力で『ウィンドミル奏法』を編み出すほどの音感……!!そして、優柔不断ながらも意外なところで勘も鋭いと聞く……)」

そして、久瀬はひとつの仮説を立てる!!



1・彼女は天才ギタリストかもしれない!
2・彼女は天然かもしれない!
3・彼女はニュータイプかもしれない!



[15824] 第三十五話 …一人だけ贔屓して怒られませんかねぇ
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/12 19:50
3・彼女はニュータイプかもしれない!



「(なるほど……『平沢唯』。なかなか素直な娘だ。聞けば、軽音楽部に入部するまでは楽譜も読めず、楽器経験もほとんどない素人だったというではないか。しかし、自力で『ウィンドミル奏法』を編み出すほどの音感……!!そして、優柔不断ながらも意外なところで勘も鋭いと聞く……)」

そして、久瀬はひとつの仮説を立てる!!
彼女はニュータイプかもしれない!……と。



その時……!!

ガラガラッ…と教室の扉を開ける音が聞こえ……
すると、そこには一人の眼鏡をかけた大人の女性が立っていた。

「さわちゃん!?」

唯は部室に入ってきた女性に向かい、そう言った。
そう、彼女こそ軽音部顧問にして元DEATH DEVILの山中さわ子である!!

さわ子先生は、教室にはいるや否や唯に近づく。

「そう、唯ちゃんはニュータイプの感性を持ってたの。だがな、いかんぞニュータイプは」

しかし、そのさわ子先生の雰囲気にはどことなく違和感を覚える。
軽音部員……とくに唯は『さわ子先生』に対し強い警戒心を抱いていた。

「さわ…ちゃん?……いや、さわ子先生ッ!!」

ついには強い口調でさわ子先生を呼ぶ唯。
するとさわ子先生は、笑いをこらえるかのように肩を小さく震わせていた。

「さわ子先生?クカカカカ……誰だそいつは?おおそうか、思い出した。確か『この娘たち』は渡さんなどと言っていた、愚かな女か。そいつになりすましていたんだっけなあ、俺は……ヒャアッヒャッヒャッ!」

落ち着いた女性の声は、徐々にイカツく太い声へと変化を遂げていく。
その声は、もはやさわ子先生とはまるで別人であった。

「あ、アンタ、さわちゃんを……!!」

その異様な光景に、外見だけのさわ子先生に向かい、律は感情的になる。
そして考えるのは、さわ子先生の安否である。

「会いたいか?さわ子先生に会いたいか?俺は、草陰茂のように無様なことはせんぞお。何しろあいつは、四天王になれたのが不思議なくらい弱っちい奴だったからなあ。グヘヘヘヘ!」
「…やはり貴様も……!」

そう、この女…否、この男は断じてさわ子先生ではなかったッッ!!!
草陰茂の名が出てきたとき、久瀬はもしやと思ったが、その予想は的中する。

「いかにも!勝沼四天王、『水の木戸大門』ッ!!」

さわ子先生の姿を借りた男は『勝沼紳一』古参の部下、木戸大門であった!!
彼は、かつてはヤクザのごとき風体で、力技の強引な陵辱を繰り返したり、加えて変態的な奉仕をさせたりしていた凶悪な男である。



「シャオッ!!!」
「!!?」

―――刹那、斉藤の南斗水鳥拳が木戸をすり抜け……
次に斉藤の姿が見えたときには、木戸は17の部品に分割されていた……!

「……女に手を出す外道が……!!だが、俺の南斗聖拳に切れぬ物質は存在しないッッ!!!」

断末魔の暇すら与えない、美しくもまさに冷酷無比の拳である。
この瞬間、久瀬以外の誰もが斉藤の勝利を確信し、特に春原、キョンは戦わずにすんだと「ほっ」と胸をなでおろしていた。



しかし―――!!

「……物質……はな」
「なっ!!!」

……斉藤の背後より木戸の声が聞こえ、直後に巨大な大刀『首斬り包丁』が襲い掛かる!!!
斉藤はそれを瞬時にかわそうとするも、右肩に掠った様な切り傷を負う!!

「……水か……」

斉藤は、両手から滴り落ちる透明な水をみてそう呟く。
そう、斉藤が切り刻んだのはさわ子先生そっくりの『水人形』だった!!!

「……忍法…水分身……だっけか。なかなか便利な技をもってやがるぜ。この体はよぉ!!」
「……!!!」

斉藤の目の前に現れた敵の姿は、口を包帯で覆っている、残忍な表情の忍者であった!!!

「ほぅ……その姿は、元霧隠れの忍で霧隠れの鬼人…『無音殺人術』の達人にて忍者学校の卒業試験で同期の生徒を皆殺しにした過去をもつ、霧の忍刀七人衆の一人『桃地再不斬』か」

またしても異世界の異形。
久瀬は知っているデータを脳内で照合し、彼の乗っ取っている『桃地再不斬』の詳細を言い当てた。

「さすが紳一様が警戒するだけあってなかなかの知識と慧眼だな。だが、だからといってこの俺を倒せるはずがあるまい!!!」

たしかに木戸の言うとおり、たとえ『桃地再不斬』のデータがあったとしても、それを倒すすべがなければそれは役立たずの知識でしかない。

「ぼ、僕たちじゃ倒せない…」
「よな……」

一方、春原とキョンは、敵の圧倒的な戦力を前に戦意喪失していた。

「……貴様ら…何しに来たんだ……?」

斉藤は二人を見て呆れ果てるものの、よくよく考えれば無理のない話である。
ここは一瞬にして変わり果てた戦場……!!!
この空間に、先の和気藹々とした部活の雰囲気は一切存在しないのだ。

軽音部員たちもみな、この現実では到底味わうことのできない空気に声を発することもできなかった!!



……一名を除いては……!!!



「忍法!霧隠れの術!!!」

木戸が印を結ぶと、その周囲からは深い霧に包まれ、ついには教室内すべての視界が遮られる!!!

「わああああああ!!!前が見えなあああい!!!」
「騒ぐなッ!!敵の音、気配も感じられなくなる!!!」

視界を遮られ完全に慌てふためく春原に、斉藤は落ち着くよう一喝する。
しかし、急に視界を遮られ、騒ぐなというほうが土台無理では在るのだが。



「(ヘヘ…無駄よぉ!!この身体、よっぽどの鍛錬を積んでいたのか気配も音も完全に消せる!!!まずは久瀬の首を一発で寸断してやるぜ!!!)」

一方、相手の視界を断ったところで完全に優位に立った木戸。
木戸はそのまま、一旦は久瀬の後ろに回りこむが……



「……フフ……」

なぜか余裕の笑みを崩さない久瀬に、攻撃を躊躇する。
……この男、何か策でもあるのだろうか……!!

「(……そ、そういえばこの男、なぜか勘がいいからな。もしかすると罠を張ってるかもしれねぇ!!」

久瀬はペテン師であるが故、当然罠を警戒する。

「だが…どうせなら女は犯してから殺してえし……。…だとすれば、殺るのはあの春原かキョンって男からだが、春原程度ならいつでも殺せる!よって、まずはキョンだ!!!死ねェェェ!!!)」

その下卑た発想により、木戸はキョンの背後に回り、ついにその大刀を振りかざす!!!



「キョ、キョン君後ろ!?」
「え?」

唯の声に即座に反応、右によけたキョンの脇には、床を見事に割った亀裂が走っていた。

「なっ!!!」

木戸の縦に振り下ろした大刀の一撃は、キョンに間一髪で回避され、さすがに木戸も動揺の色を隠せなかった。

「あっ…危っぶねえ……!!!」

寸分の距離で一命を取り留めたキョンは、冷や汗が止まらなかった。

「う、うそ!ホントに後ろだったんだ!!!」
「ち、違ってたらキョンは真っ二つ……!?」

唯の声がなければ、春原の言葉通りにキョンは真っ二つにされたであろう。
しかし、唯はまったくの勘で声を発していたのだ!!!

「ゆ、唯センパイッ!!し、真剣に考えてくださいッッ!!!」
「ごっ、ごめん…」

やっと声を振り絞ることのできた梓の叱責に、唯はあやまる。
人の命が関わっているときに勘で答えるなど、それほど無責任な行為もないであろう。
しかし、それでも久瀬は決して唯を責めはしない。

「いや、結果オーライだ。よくやった唯君」
「は、ハイッ!!!」

なぜなら、すべては久瀬の計算どおりに行われていたことだから……



「な、なぜわかったァァァ!!!」

気配も完全に絶っており、確実な安稗を斬ったはず。
…木戸はまったく持って納得がいかなかった。

そして久瀬は、さも自分の計算どおりとばかりに木戸の前に現れご高説をのたまう。

「まあ、貴様の考えていることをズバリ当ててやろう。まず、貴様は僕を狙っていたが、僕の余裕の笑みを見るや否やそこに罠があると睨む。次に殺る対象を変えるわけだが……まあ、貴様らの性格のことだ。女はとりあえず犯すことしか考えてないだろうから軽音部員、及び斉藤君はターゲットから外れる」

「オイ!!!」

何気に女扱いされていることに思わず突っ込む斉藤であったが、意に介さず久瀬は続ける。

「そして、次に春原君かキョン君を選ぶわけだが、春原君程度なら苦もなく殺せると考え、まずはキョン君を始末しようとした。違うかね?」

「ぐうううう!!!」

その久瀬のご高説全てが、木戸の考えていたことと寸分変わりなく当てはまっており、何も言い返すことが出来ない木戸は屈辱で腸が煮えくり返る。
したり顔で敵の思考を解説する久瀬は、最後に唯の方を向き自分の説明が正しいかどうかの確認をする。

「??????」

しかし、唯は久瀬が何を言っているのか一切わからなかった。
無論、これも久瀬の計算どおり。

「(……やはり!!唯君は『まったくの勘』でキョン君の危険を察知したのだ!!このまま唯君を戦場で使っていけば、彼女は僕をもはるかに超える『ニュータイプ』として開花していくであろう)」

久瀬は唯に対に、より一層の期待を寄せるのであった。



「な、なんにしてもすごいじゃん!唯!!!」
「えへへ…そうかなぁ……」

その唯の勘を褒める律に、唯もまんざらではないようだった。

「ゆ、油断するなッ!!まだ終わってないぞ!!!」

「お…おのれ……!!!」

しかし、戦いはまだ始まったばかり。
澪が警戒するように、木戸の実力はこんなものではないのだ!!!

「(……本当は斉藤君をお目付け役にして、春原君とキョン君を『レベル上げ』して何とか戦力にすることが目的だったが、これは予想外の収穫だな……)」

先の囮作戦も、いわば春原とキョンのレベル上げであったのだが…
しかし、久瀬自身、もはや戦い云々より唯の成長の方を気にかけていた。
もはや久瀬の眼中には木戸など、唯の覚醒のための微々たる存在でしかないのだ。

そして久瀬は―――



1・自らも戦いに参戦し、一気に決着をつけることにした!!
2・この戦闘を唯に委ね、自らは傍観することにした!!
3・この戦闘を唯に委ね、自らは他の部員とティータイムを過ごすことにした!!



[15824] 第三十六話 …今一瞬の命を!
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/14 22:44
3・この戦闘を唯に委ね、自らは他の部員とティータイムを過ごすことにした!!



「(……本当は斉藤君をお目付け役にして、春原君とキョン君を『レベル上げ』して何とか戦力にすることが目的だったが、これは予想外の収穫だな……)」

先の囮作戦も、いわば春原とキョンのレベル上げであったのだが…
しかし、久瀬自身、もはや戦い云々より唯の成長の方を気にかけていた。
もはや久瀬の眼中には木戸など、唯の覚醒のための微々たる存在でしかないのだ。

そして久瀬はこの戦闘を唯に委ね、自らは他の部員とティータイムを過ごすことにした!!



「ま、そういうわけで僕はティータイムを過ごすから、テキトーに頑張ってくれ」
「ケーキもいかがですかー?」

早速、部室の机でミルクティーを頂く久瀬。
紬もそれに合わせてケーキを持ってくるわけで。
かくして唯の才覚に戦いを委ねた久瀬は、同じブルジョワの紬と優雅なティータイムを楽しむことにしたのだった。




「て、テメェ……!!!」
「む、ムギも真面目にやれ!!!」

案の定、クソ真面目組の斉藤、澪は久瀬と紬に対して怒りをあらわにするも、二人とも意に介することなく談笑している。

「…まったく持ってブルジョワの考えていることはよくわからん…」

一方のキョンは、半ば諦めの気持ちで木戸との戦いに臨む。



「ハッハッハッ!!久瀬抜きで戦うだとぉ!!この俺を舐めているのか!?」

そして木戸は、一番厄介な久瀬が戦いに参加しないことで、一転して余裕の構えを見せたのであった。



「まあ、仕方がないだろう。それに、貴様の忍術は所詮は水に隠れて攻撃するだけの……図体に似合わぬ小賢しい技ばかり……。貴様が攻撃する瞬間の実体を斬ればいいだけのこと……」
「ぬうう……!」

しかし、さすがは百戦錬磨の斉藤。
ニュータイプではないにせよ、経験による洞察で、すでに敵の特性、心理を見抜いていた。
久瀬の十八番である心理戦で優位に立ち、一気に決着をつけるべく、斉藤は相手の図星を突き揺さぶりをかける。

「さっすが斉藤!頼りになるっ!!」
「……やはり、あの久瀬が信頼を寄せるわけだ」

その斉藤の余裕ぶりに、春原、キョンも賞賛せざるを得ない。

「へぇー…あの美人さん、そんなに強いのかー……彼女がうらやましいなー」

律は男としてはあまりにも完璧な斉藤を見て、その斉藤に思われる彼女が羨ましく思えた。

「カッコよくて強くて彼女もち……それが、なんであんな男の下で……?」

そして梓は、そんな男としては完璧な斉藤が、なんであんな最低最悪のペテン師の久瀬の下に甘んじているのか、不思議でならなかった。

その梓が扱き下ろす久瀬はというと……



「…いやあ、紬君はお茶を入れるのがうまいな。このミルクティーは僕が淹れてもらった中でも一二を争うほどだ」
「そうですか。総帥さんにそこまで褒めていただくと、かえって恐縮です~」
「もしこの時代の僕が独身なら、今すぐにでも君と婚姻を申し出るところだ」
「ほんとうですか?うふふふふっ」

相も変わらず、紬と上流階級のお茶会を満喫していたのであった。



そいつらは完全に無視するとして、戦闘は続行。
木戸と斉藤はお互い間合いを取り、じわりじわりと牽制し合う。

ざわ…ざわ…

…先に動いたのは木戸の方だった。
木戸はなにやら不思議な印を結び始めると……

「水遁・水龍弾の術ッッ!!!」

そこから巨大な水の龍が召還され、斉藤たちに襲い掛かる!!!

その迫り来る龍はまさに実物のクオリティそのものであり、見るものを圧巻する!!
春原、キョンらもその技を見るや否や、己と敵の格の違いを改めて思い知ることになった。



「フ…つまらん芸だ。そんな大道芸でこの俺と闘う気か!」

しかし、その荒ぶる水の龍を目の当たりにして尚、『大道芸』と切り捨てる斉藤。

「なあにを~~~!!!」

その挑発に、木戸は減らず口をとばかりに眉間にしわを寄せる。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



斉藤に迫り来る水の龍は、いまにもその目の前の生贄を噛み砕こうとしていた!
寸前、斉藤は跳躍し、その水龍の遥か上を華麗に宙返りする。

「南斗水鳥拳の鋭い手刀は大気の中に真空波を生む」

―――その動きは人間に見切れるものではなかったのだが…
斉藤が水龍を飛び越え軽やかに着地するや否や、その水龍はの身体は真空波で細やかに切り刻まれ、攪拌されて見事なまで細やかな飛沫と化す。
その飛沫は太陽の光を乱反射し、より斉藤の美しさを際立たせた。

「き…キレイ……」
「か、カッコイイ……」

斉藤の凛々しいルックスはもとより、その南斗聖拳の技のキレの美しさに、澪も梓も思わず見とれてしまう。



自慢の水の龍がいとも簡単に倒されてしまい、焦る木戸は再び印を結び始める。

「お、おのれ!!これならどうだ!!!水遁・大瀑布の術!!!」

木戸が印を結び終えると、今度は教室内にも拘らず大津波が発生!!!
今度はその自慢の南斗聖拳で切り刻めまいとばかりにニヤリとわらう木戸。
その原理はよく分からないが、木戸に召還された津波は、ついには斉藤たちを飲み込もうと堂々と前進してきた!!!



「ちょ!こ、こんなのアリですかァァァ!!?」
「も、もうダメだぁぁぁ……」

そのあまりの現実離れしすぎた事象に、思わず叫ぶ律。
対照的に澪は、今度こそ終わったと床にへたり込んだ。



「に、逃げろおおおおおお!!!」
「お、オレたちが逃げてどうすんだ!!!そしたら誰がこの子たちを守るんだよ!!!」

そして、我先にと逃げようとする春原。
一方のキョンは、男の意地にもかけて軽音部員を守ろうとする意地はあるらしく、そんな春原を一喝して引きとめる。

「……ひょえええ!!!どーせなら水不足の国でやってくださーい!!!」
「こんなときになに言ってんですかッッ!!!」

さすがに久瀬の見込んだ少女、唯は一味違い、こんな状況下においてもワケのわからないボケをしていた。
梓も緊急時であることを忘れ、思わず突っ込まざるを得なかった。



そんな中でも、久瀬と紬は優雅なティータイムを楽しんでいたことはいうまでもない。
まったくもってブルジョワとは意味不明なものである。



「どうだ!!!これでも大道芸か!?フン!!!これだけの力があれば、『あんな女』なんかに従わなくても、すぐに坊ちゃんに天下を取らせることができますぜ!!!」

木戸はこの技で決まったとばかりに、先ほど水の龍を『大道芸』と見下した斉藤に向かい吼える。
そして自分の能力を過信し、この力さえあれば『諸悪の根源』を打倒し、主君である勝沼財閥を復興させることができると意気を見せる。



「言ったそばからすぐ油断か。馬鹿は死ななきゃ治らない…」

しかし、襲い掛かる大津波を前にしても、尚も斉藤の口から出る不敵な発言。

「なっ!!?」

木戸が驚いたのもつかの間…
斉藤は、今度は一直線に襲い掛かる津波に向かって突入する!!
そして水の壁を突き破り、尚も勢い衰えず全速で直進!
そのまま木戸との間合いを詰め、彼の喉元に拳の刃をつきたてる……!!

「フッ…」

この一撃で勝負は決したかに思われた……!!!



……が!?



次の瞬間、誰もがその光景に眼を疑った……!!!

「な、なにやってるのかず君!?」

斉藤が喉元に手刀を突きつけていたのは、なんと斉藤の彼女、名雪であった!!!

「なっ…名雪!!?」

斉藤はいとしい彼女を目の前にして、信じられぬとばかりに手刀を突くことも納めることもできず、そのまま硬直する。



ずでーん!!!



斉藤、及びブルジョワ以外のすべてがコケた。

「フハハ…変化の術がこんなところで役に立つとはな……!!」

なんと木戸は、忍術により斉藤の彼女である『名雪』に化けていたのだ!!!



「――――――ッッ!」

斉藤は木戸の首筋まで刃を突き立てておきながら、後一歩が踏み出せない…
木戸の…名雪の首を切ることができない!!!

ジレンマに苛まれた斉藤は、そのまま肩を小刻みに震わせ……



「た…たとえ偽りの姿であろうと、俺に『名雪』を斬ることはできない……」

……ついには敵の間合いすら離れ、がくっと肩を落とし膝から崩れ落ちる。
斉藤…戦闘を完全に放棄ッッ!!



「ふ、ふざけるなあああ!!!あんたが闘わなきゃ誰が闘うんだよおおお!!!」
「いや、少なくともアナタに怒る権利はないと思う……」

そんなやる気の失せた斉藤に怒りをあらわにする春原であったが、梓の突っ込むとおり、春原には斉藤を責める資格はない。
否、ここまで木戸を追い詰めることが出来るのは、斉藤を置いてほかにはなく、誰も斉藤を責めることは出来なかった…。



「し、仕方ない……」

すると、今度はキョンが重い腰を上げる。
もっとも、キョンは最初から闘う気はないわけではなかったのだが、敵の得体の知れない強さに震えていたのも事実!!
しかし、彼には男としての最低限のプライドは持ち合わせていた。

「……さ、刺し違えるくらいのことは……しねえとな……!」

斉藤が男を見せ戦い、男として戦いを退いた今、力不足であろうと自分が立ち上がらなければならない!!
いつまでも斉藤だけを頼りに戦うわけには行かなかった!!!

「お、おい!大丈夫なのか!?」
「大丈夫…なワケないけど、ここでやらなきゃ部長サマに怒られるんでなッッ!!!」

相手は化け物…それに対し、キョンはどこにでもいる普通の人間である。
澪はキョンの身を案じ声をかけるも、ハルヒを出し合いに、戦いを決意。

そのまま真正面から、何のアテもなく敵に突っ込むキョン。
しかし、そのような玉砕精神で勝てるほど甘い敵ではない!!

「水遁・水龍弾の術ッッ」

再び、キョンに襲い掛かる水龍!!

「!!!!!!」

斉藤だから『大道芸』と一笑できるものの、キョンにとっては紛れもない『化け物』であり、さすがに心の中では折れそうになる。





瞬間、唯に電流奔る!

「右ッ?」
「!」

唯のとっさの声に、思わず指示通り右によけると、今まさに龍は、キョンの避けた反対の方で空を噛み砕いていた。

「何ッ!?」

驚く木戸であったが、キョンは他の何にも目もくれず直進!
次の術の印を結ぶ間も与えず、一気に木戸との間合いを詰める!!



「(いいぞ!ここまでは筋書き通りだ!このまま唯君の感性が磨かれていけば……ッッ!!!)」

ミルクティーを飲み談笑しながらも、久瀬はきちんとこの戦況を把握していた。
そして自分の狙い通り、キョンのレベルアップと唯のニュータイプの覚醒が達成しようとしていることにほくそ笑んでいた。



しかし!!

「!!!」

木戸との間合いを詰めたのもつかの間…
キョンの眼前に立ちふさがったのは、巨大な首切り包丁であった!!

「ククク…水の技をかいくぐってきたのは褒めてやるが、肉弾戦ともなれば俺のほうが圧倒的に有利だ!!!死ねッッ!!!」
「し…しまっ―――」

気づいたときには時既に遅し!
木戸が上段に構えた包丁は、キョンの反応を待たずしてその頭上に振り下ろされていた……!!



1・しかし!その包丁は宙で砕け散った!!
2・仕方なく久瀬は重い腰を上げる。
3・誰もその一撃を止めることはできなかった……



[15824] 第三十七話 …one and only
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/15 19:56
1・しかし!その包丁は宙で砕け散った!!



気づいたときには時既に遅し!
木戸が上段に構えた包丁は、キョンの反応を待たずしてその頭上に振り下ろされていた……!!

しかし!その包丁は宙で砕け散った!!



「………!?」

自分の最期を覚悟し目を瞑ったキョンは、何が起こったのかわからずにおそるおそる目を開けてみる…

「…なっ!?」

そのキョンの目に映ったものは、砕け散ってゆく刀の破片と、それを信じられぬとばかりに砕け散る包丁を見つめる木戸の姿であった。



「俺の南斗聖拳に斬れぬ物質はない。たとえ俺に名雪を斬れすとも、そのバカでかい大刀ぐらい、瞬時にバラバラにできる……」

そう言い放ち、ニヒルな笑みを浮かべる斉藤。
大津波を斉藤が突撃し、木戸にトドメ一歩直前に来たときには既に、その首切り包丁は斉藤が切り刻んでいたのだ!!!

しかし、それも所詮はキョンの死を免れさせたに過ぎない。

「だ、だが、だからといって徒手空拳でこの肉体がこんな一般人に劣っていることはあるまい!!!」
「くっ……」

全てはこの木戸の言葉通り、首切り包丁がなくなったことでキョンと木戸の戦力の差が埋まったかといえば、答えはNOである。
木戸の肉体はあの霧隠れ七人衆の一人『桃地再不斬』である!
対してキョンは実戦経験はおろか、肉体の鍛錬もほとんど行っていない。
その差は誰がどう考えても明らかであり、このキョンの行動は無謀以外の何ものでもなかった……!

「ちょ…春原!アンタも闘いなさいよ!!」
「んなこといったって、勝てるワケないだろ!」
「何逆切れしてんのよッ!信じらんないッ!」

そのあまりの戦力の不公平さに、律は春原に応戦するように促すも、春原には既に戦意はなかった。
しかし、春原の考えは間違っておらず、仮に二人掛かりで戦ったところで恐竜には勝てないのである。
春原でなくとも、自殺願望のある人間以外、誰も好き好んで恐竜などとは戦いたくはあるまい。
しかし、それでも春原はこの状況を黙ってみていられるほど冷酷でもない……
本当はどうにかしたい、しかし、自分には力がないのだ!!

律はその春原の心を知ってか知らずか、ただその不甲斐なさに憤りを感じていた。



「くっ……!せ、せめてヤツの姿が『名雪』でなければあの程度の敵、一撃で仕留めれるものを……!!」

唯一の戦力ともいえる斉藤も、相手が自分の最愛の人間の姿であれば戦うことが出来ない。
あまりに純粋で盲目過ぎる斉藤の愛は、戦いにおいては弱点以外の何ものでもなかった。

「よしっ!澪がその『名雪』を忘れさせるくらい斉藤さんを萌えさせるんだ!!さあ!このフリフリのメイド服に着替えて……」
「できるかッ!!!」

律のくだらない提案に対し、澪は即却下する。
こんなくだらないいい争いをしている暇はないのではあるが……



「こ、こうなったらダメでもともとッ!!!」

もはや戦えるのは自分しかいない!
意を決したキョンは、ただ我武者羅に木戸に胴タックルを仕掛ける。

「返り討ちにしてやるぜ!!!」
「キャオラアアアアアア!!!」

キョンは負けフラグ満載の掛け声とともに無謀にも木戸に殴りにかかるものの、それは意図も簡単にかわされる。
そして、逆にキョンの肉体は、鍛え上げられた肉体に殴られ蹴られ甚振られる!!

「………ッッ………」

もはやうめき声も発することの出来ないキョンではあったが、木戸はすぐに止めを刺すこともせず、その痛がり悶える様をも楽しんでいるようだ。



「……………」



ついには意識さえも失ったキョンを、まるで動かなくなったおもちゃのように見つめ、唾を吐く木戸。


「も、もう見てられない……」

こんな残虐ショーはもう見たくないとばかりに、梓は両手で顔を覆う。

「し、仕方ない!アタシはいくよっ!!ドラムで鍛えたスナップの力、みせつけてやんだからっ!!」

さすがに女子といえども、律は黙ってはいられなかった。
武者震いする足を制し、袖をまくりそのまま木戸の元へと向かっていく。

「り、律が行くなら私もいくッ!!い、いないよりはマシだろッ!!」

最大の友人である律を一人で行かせられるわけがないとばかりに、澪が律の後に続く。

「だったらわたしも行くよッ!!こういうときくらい役に立たないとっ!」
「だ、だったら私だって行きますよッ!!センパイたちがイタイ目あって、なんで後輩の私が黙ってみてられるんですかッ!!」

唯、梓も完全に腹をくくったようだ。
心の通じ合った部員みんなで立ち向かえば、まったく勝ち目のない戦いでも、なぜか勇気がわいてくるのだ。



そして一人取り残された春原。

「お、お前ら、いったい誰のためにさ……ッッ!!一生懸命にやったってバカ見るだけじゃん!!」

それでも春原は立ち上がろうとしない。
だが、その心は焦燥感にさいなまれているようで、言葉には苛立ちを隠しきれていない。

「クソッ……!!」

『一生懸命にやったってバカ見るだけじゃん!!』…
これは彼女たちだけでなく、自身に向けても言った言葉であろうか……?

この男、春原はサッカーが得意で、昔からその得意なサッカーだけは何よりも一生懸命にやってきた。
その結果、サッカーの推薦で高校に進学することが出来たのである。
当然春原は、高校生になっても一生懸命サッカーを続けていた……
しかし、先輩との折り合いも悪く、結果として退部となり、一生懸命やってきたサッカーを放棄せざるを得なくなった。
そのとき、一生懸命やってきたことに対する虚しさを覚えてしまったのだろう。
後はただ、無為に日々を面白おかしく過ごししきた。
自ら大きな責任を負う事もなく逃げ、ちょっとした不良としてテキトーに生きてきたのだ。

彼にとって『大切な存在』も、『普通の存在』になってしまうほどに……



一方、ブルジョワ組のほうもなにやら動きが出てきたようだ。

「私も、お手伝いにいきますね」

同じく軽音部の紬も、やはり部員と運命を共にする覚悟はできているようだった。
席を立ち、木戸の元へ向かおうとする……



「その必要はない」

しかし、久瀬は紬に対し制止の声をかける。

「ほえ?」
「フフ……あと一歩…あと一歩で第2フェイズは終了する」

久瀬の視線は、ジレンマに苦しんでいる春原に注がれていた。
そして紬に向かい、不敵な笑みを浮かべる。

「ああ、この展開、もしかして完全に総帥さんの想定の範囲内だったんですね?」
「そういうことだ」

さすがの紬は、この『茶番』は全て久瀬の計算のもとで行われていたことを知る。
よくよく考えてみれば、久瀬の目的は『ハルヒと同等の力を持つ仲間を得ること』の他に『春原とキョンのレベル上げ』も含まれていた。
久瀬にとってはこの春原のジレンマこそが、目的達成への鍵であったのだ。

「さあて、仕上げと行くか。その前にケーキを頂くとしよう」

久瀬はケーキを食べ、ミルクティーを飲み干した後―――



1・人質をとり恫喝という暴挙に出た。
2・春原にアイテムを投げつけた。
3・自ら参戦することにした。



[15824] 第三十八話 …釣りなのかマジなのかわかりましぇん
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/15 21:01
1・人質をとり恫喝という暴挙に出た。



さすがの紬は、この『茶番』は全て久瀬の計算のもとで行われていたことを知る。
よくよく考えてみれば、久瀬の目的は『ハルヒと同等の力を持つ仲間を得ること』の他に『春原とキョンのレベル上げ』も含まれていた。
久瀬にとってはこの春原のジレンマこそが、目的達成への鍵であったのだ。

「さあて、仕上げと行くか。その前にケーキを頂くとしよう」

久瀬はケーキを食べ、ミルクティーを飲み干した後、人質をとり恫喝という暴挙に出た。



「フフ……君の大事な妹さんがどうなってもいいのかな?」

今まさに、木戸に立ち向かわんとする軽音部員たちを制止し、大きな声を教室内に響かせる久瀬。
その久瀬が取ったのは、相手の妹を人質にとるという、なんとも卑劣な作戦であった。

「ひ、人質ですかあああ!?」
「な、なんて外道な……」
「この人、勝つためなら本当に何でもアリですね……」

その久瀬のダーティっぷりに驚く律と、見下げ果てる斉藤と梓だった。





「…は?」

一方の木戸は、キョトンとした表情で久瀬を見ていた。
それもそのはず、木戸には妹などいなかったのだ!!

それでも久瀬の不敵な笑みは消えはしない。
なぜなら、それは敵に対しての人質ではなかったからだ。
もとより、このような凶悪な悪党に人質作戦などは無意味なのである。

ならば、この久瀬の人質の意味はいったい何なのであろうか……?



「……いい加減に目を覚ましたまえ、春原君!」
「……!!!」

久瀬は、今度は春原の方を向き一喝する。
そう、久瀬の人質作戦の対象は、味方である春原であった!!

「……ハ、ハン!さすがは久瀬サマ。芽衣にまで手が回っているとはね」

そう言って久瀬を唾棄する春原。
芽衣とは春原の妹であり、かつては苛められた芽衣のためなら勝てない喧嘩も辞さないほど、大切な存在であった。
しかし、彼が変わってしまった後は、春原にとっての『大切な存在』は、普通の…ただの口うるさい妹でしかなくなっていた。

「そうだな。僕が直接手篭めにするのも面白いかもしれない……」
「なッッ!!!」

そんな春原を挑発するかのように、妹に手を出すことを宣言する久瀬。
久瀬は不敵な笑みを浮かべながら、今度は春原に携帯電話を投げる。
春原がそれをキャッチすると、そこには彼の久々に聞く、『大切だった存在』の声が聞こえてきた。

「お兄ちゃん」
「め、芽衣!?」

この電話、どういう原理かは知らないが、とにかく春原の元々いた時代に繋がっていた。
そして、その電話の先にいたのは間違いなく、春原の妹、『芽衣』であった。
驚く春原を見て、悪趣味に笑う久瀬。

「お兄ちゃん、いま久瀬さんって人となんだか『世界を救う旅』に出てるんでしょ?」
「あ、ああ……」

呆けるしかない春原をよそに、話をすすめていく芽衣。

「最初はまったく信じられなかったけど、どうやら本当みたいだし、わたしは応援しかできないけど、とにかく頑張って、それで……絶対無事に帰ってきてねっ」
「あ、ああ……」

春原がろくな返答もできないうちに、芽衣との会話は終わり電話は切れた。

「可愛い妹さんではないか」
「て、てめえ!!どーゆうつもりだよッ!!!」

今の春原にしてみれば、久瀬の行為はあてつけ以外の何ものでもない。
春原は久瀬の胸倉を掴むが、久瀬は一切動じる様子はない。

「一つだけ言えることは、僕が手を下さずとも、この戦いでヤツらが勝てば全世界、いや、全時空の女は奴らに犯されるということだな」

そして久瀬は、さらに冷たく言い放つ。

「…まあ、君の妹も当然木戸らに犯されるだろうがな」
「!!!」

胸倉を掴む力も失せ、言葉も失い愕然とする春原。

「君の妹に彼氏がいるのかどうかは知らないが……妹が、自分が好きでもなんでもないこんなゲス野郎どもに犯されるのは……兄としてはどういう気分かね?」

「――――――ッッ」

久瀬の言葉は、一つ一つが春原の心を抉っていた。
それとともに無力感とそれに伴うジレンマは徐々に肥大化していき、春原の精神を追い詰めていく。






「ほぉ……このヘタレには妹もいたのか。クックックッ……これは坊ちゃんにいい土産ができそうだ。そうだ!このヘタレ兄の前で坊ちゃんに犯してもらうのも一興だ。いや、その前に俺が妹を犯してそのビデオを坊ちゃんに献上するのもいいかもな……」

一方、久瀬たちの会話を聞いていた木戸は、案の定ゲスな発想を口にする。



「クッ―――」

瞬間、春原は思いつめた表情をみせ……



直後!!!



「ソォォォォォッッ!!!芽衣に手を出すなああああああ!!!」

「!?」

「!!」
「!!」
「!!」
「!!」
「!!」
「あー」
「フフ…」

久瀬以外、誰もが予想だにしなかった……春原、必死の特攻!!!
涙も鼻水も、意地も何もかもかなぐり捨て、ただひたすら、芽衣だけは失いたくないという兄の気持ちを木戸にぶつけに行く!!!



しかし!!

「へっ!だからなんだっつうんだ」

無力!!あまりにも無力!!!

「ッ……」

木戸の一撃は、春原を軽々と教室の壁にたたきつける。
その一撃で、呼吸も身動きもままならなくなる。



「――――――ッッ」

何とか最後の力を振り絞って床を這いずり回り、やっとの思いで久瀬の元へと辿り着く。
そして、嗚咽交じりの声で久瀬に言う。

「ど、どうすればいいんだよ……どうすれば、アイツに勝てるんだよ……」

それは春原の、本当の心からの願いだった。

「……フフ……」

そんな春原に対し久瀬は笑みを浮かべた。
しかし、それはいつもの悪意の笑みではなく、優しげな笑みであった。
そして、そのまま優しげな、落ち着いた口調で久瀬は言う。

「腹をくくれ……それだけさ。確かにどんなに一生懸命頑張っても、実力差など一朝一夕で埋まるものではない。しかし、だからといって最初から戦いの土俵に上がることもせずに諦めているようでは、まぐれの勝利すら望めないだろう。……しかし、今、君は初めて戦いの土俵に上がったのだ。……まあ、後は僕がなんとかしよう。君は安心して休んでいたまえ」
「………!!」

その久瀬の意外な答えに、春原はなんと言っていいかわからず、ただ呆然するだけだった。
そして久瀬は、ついに自ら重い腰を上げ、木戸と正面から対峙した。



「や、やっと親玉の登場か!ようやく楽しめそうだぜ」

一番厄介な男の満を持しての登場に、木戸の胸は否応なしに高鳴る。



次の瞬間!!

「なっ!!」

木戸の自らの意思に反し、名雪への変化の術は解けてしまっていた!!
何が起こったのかさっぱり理解できず、自らの身体に触りしきりに辺りを見渡すも、それでも何が起こったのか理解できない。

「フフ…これほど水瀬君の姿が相応しくない男も珍しい。あまりにも見苦しいのでそのチャクラを封印させてもらったよ。『天破活殺』をもってな」
「き…貴様…!!!」

天破活殺とは!!!
その極意は「相手に触れることなく闘気を指先から放出して相手の秘孔に命中させる」という、北斗神拳の奥義である。
久瀬はその奥義を用いて木戸の秘孔を突き、チャクラを封じたのだ!!!

この男、相手を言葉巧みで撹乱させ、その隙に隠れた不意打ちを行う。
戦う前に戦いを始めるという、最悪のペテン師である。



「さあて、君にはキョン君と春原君を戦闘不能にした礼をたっぷりとしないといけないな。なあ、斉藤君」

チャクラを封じられた木戸など、もはやただの鍛えられた人間でしかない。
余裕の表情で、じわりじわりと木戸に近づく久瀬は、まるで借りを返せとばかりに斉藤に声をかける。

「ああ。名雪の姿でない貴様など、俺一人で十分!それに今日は貴様を殺したくて仕方がない」

無論、さっきまで何もさせてもらえなかった斉藤の怒りは凄まじいものがある。
ましてや自分の愛する女に化けるなど、その行為自体が万死に値するとばかりに、斉藤の闘気が熱を帯びる。
そう、久瀬の野望最強コンビの復活である!!

「な、舐めやがって!!!」

しかし、木戸もただで引き下がるつもりはさらさらない。
勝沼紳一四天王の意地にかけ、最後の抵抗をしようとしていた。







パーティをあと一人選んでください。

1・ニュータイプの資質に目覚めそうな唯
2・みんなのムードメーカー部長律
3・萌え萌え引っ込み思案の澪
4・久瀬の未来を知るお嬢様紬
5・まともな常識思考を持つ猫あずにゃん



[15824] 第三十九話 …忠告感謝いたします。いっそ、本編もこっちに移すのもアリですかね?
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/16 19:49
5・まともな常識思考を持つ猫あずにゃん



パーティをあと一人選んでください。

まともな常識思考を持つ猫あずにゃん…



「え!?私ですかぁ!?」

突然の久瀬の指名に驚く梓。

「ああ。君だとも」

一方の久瀬は、あくまでもしれっとした態度で梓を仲間に引き込もうとする。

「あれ?さっきまであんなに唯ちゃんにご執心でしたのに」
「フフ…気が変わったのだ」

紬は久瀬を茶化すように言うものの、久瀬は自らの気まぐれと返す。
とはいえ、突然の指名に梓が驚くのも分からなくもない。
紬の言うとおり、久瀬は先ほどまで唯のニュータイプの資質に惚れていた。
そして、その資質は開花されるべきものと考えていた。

久瀬は己が行為を反省していた。

「(…危なかった…。たしかに、唯君はニュータイプとしての資質はある。しかし、ニュータイプは戦争の道具ではないのだ。唯君を僕らの戦いに巻き込んだところで、悲劇を繰り返すだけなのだ!…僕としたことが、先人と同じ過ちを繰り返すところだった……)」

ニュータイプは戦争の道具にあらず。
久瀬は唯にニュータイプの資質を道具として扱うのではなく、学生生活の平常の中で育成すべきであると考えたのだった。



「…まあ、久瀬さんがどう動こうと関係ない。こうなればあとは俺一人で充分だ」
「クッ……」

一方、斉藤は久瀬の考えていることなど知る由もなく、ただ目の前の敵を倒すことのみであった。

そはいえ、今の木戸は久瀬の北斗神拳によりチャクラを封じられ、忍術が使えない。
こうなれば木戸など、所詮はただの身体能力のずば抜けた人間でしかない。
斉藤一人でも充分すぎるほどの敵であった。

「まあまあ、斉藤君もそう急ぐこともあるまい」

しかし、一刻も早く決着をつけようという斉藤を、久瀬は制止する。
そして…

「せっかく仲間が増えたのだから、ここは彼女の実力を試すべきではないのか?」
「「へ?」」

なんと久瀬は梓に木戸と戦わせる心積もりでいたのだ。
その考えに意表を突かれた斉藤と梓。
とくに梓にしてみれば、まさに寝耳に水の発言である。

「そ、そんな!イキナリ私一人だなんてムチャすぎるじゃないですかッ!!!」

梓の声が大きくなるのも無理はない。
男のキョンや春原ですら圧倒、瞬殺した敵に対し一騎打ちなど、無理無謀すぎる。

「大丈夫。先輩方も応援はしてくれているさ」

どうしていいのかわからない梓をよそに、久瀬はさわやかな顔で先輩方の方を指す。
すると……



「が」
「ん」
「ば」
「れっ!」

律、澪、紬、唯の順に、実にシンプルな梓の応援メッセージが送られていた。

「………」

もはや完全に気が滅入り、絶句する他なかった梓であった。






……そんなバカなことやっているうちに……



「ぎにゃあああああ!!!」

いつの間に響き渡る、木戸の断末魔…

「…さすがに女に殺らせるワケにいかない……。久瀬さんには申し訳ないが、勝手にケリをつけさせてもらった……」

そう、久瀬たちが茶番を繰り広げている間に、斉藤は瞬時に木戸の乗っ取っていた『桃地再不斬』の肉体を、綺麗なまでに分割されていた。

「さ、さすが斉藤さん……」
「ほ、ほんとにカッコイイですね……」

その手際のよさとクールさに、ルックスも相まって改めて惚れ惚れする、澪と梓。
しかし、それですべて終わったわけではない!!



「……あ、あのな……!敵はあくまで肉体を乗っ取っているに過ぎないのだ。敵の霊体を捕縛、消滅させて始めて勝利なのだよッ!!」
「な、何ィ!?」

久瀬の発言に、、意外とばかりに驚く斉藤。
それもそのはず、斉藤は先の草陰茂の戦いを知らない。
ゆえに、草陰茂戦同様、木戸の霊体がまだこの空間を漂っていることなど知る由もなかった。








「このー!!」

一方、久瀬の発言による沈黙を破るかのように、教室に近づいてくるけたたましい声。
その声が消え終わるとともに教室の戸は開けられ、そこには初めに木戸が化けていた、眼鏡をかけた美人の女性が立っていた。

「さ、さわ子先生!!?」
「さ、さわちゃん!!?」

「よくも あんなカビ臭い所に閉じ込めおって! ブチのめしたるわい!」

澪と唯がその女性の名を呼ぶが、その女は彼女らの声を聞いてか聞かずか木戸への怒りをあらわにし、けたたましく吼える。
そう!この女こそ、先ほど木戸の化けていた女性にして、軽音学部顧問山中さわ子先生であった!!

「あ、あらやだ、おほほ……」

その大人とも思えぬ言動を、冷ややかな目で見る久瀬と斉藤。
さわ子はいまさら体裁を取り取り繕うがもう遅い。



「ひゃあ…ウチの学校にもこんなセンセイ欲しいッ!!」
「…まったくだ」

しかし、それでも外見の可愛さは何たるかな…
年頃の…若い女教師にあこがれる、戦闘不能の悲しい男二名…春原とキョンには、それでも充分すぎるものがあった。


「あら、ありがと。モテる女教師って辛いわねぇ」
「ゼッタイ違うと思う……」

そして、男運のまったくない女教師の勘違いに、呆れながらも突っ込む律であった。



…しかし、久瀬はまだ戦闘態勢を解いてはいない!!

「色話は後にしたまえ。先も行ったが、今はまだ敵の肉体を倒したに過ぎない!敵の霊体を完全に消滅させるまでは……」

久瀬が忠告した直後!!
この部屋のどこからか声が聞こえてきた……!!



「クカカカ……この俺を倒すとはなあ。だが、俺は寂しがり屋でな。クカカカ……死して尚凄まじい、この水の木戸大門の恐ろしさ、とくと味わいながら死ねえ!」

空虚より聞こえる男の声…
木戸大門は正体をあらわした!!
久瀬たちには見ることが出来ないものの、その姿は、ゆがんだ顔面に厳つい肉体のヤクザの風体の男の姿であった!!



「(……しかしこの霊体……!草陰茂のときは涼宮ハルヒ君のおかげでなんとかなったが、今のパーティでは厳しいものがある……!こうなったら―――)」



1・梓君の力に期待するしかない!
2・今からでもパーティを変えるか!?



[15824] 第四十話 …ぷよぷよするな!!
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/16 20:16
1・梓君の力に期待するしかない!



「(……しかしこの霊体……!草陰茂のときは涼宮ハルヒ君のおかげでなんとかなったが、今のパーティでは厳しいものがある……!こうなったら梓君の力に期待するしかない!)」

久瀬は今一度自分の眼力とニュータイプの勘を信じ、梓の秘めたるアビリティで木戸を打倒しようと考えていた。



「クックックッ…さて、次は誰の身体に乗り移るとするかな……」

そんな久瀬のたくらみなど露知らず、木戸は誰にも見えぬ霊体にて、次に乗り移る身体を物色していた。

「(とはいえ、この久瀬だけは要注意だ。こいつに乗り移った瞬間、なにか罠でも仕掛けていそうだ……!となると……)」

木戸もバカではなく、霊体になった今でもうかつに久瀬に乗り移るのは危険と考えていた。
実は何の備えもないのかもしれないが、それを相手に考えさせないのが久瀬のブラフの恐ろしいところである。



ダダダダダダ!!!



「!!!?」

木戸が目移りしている中……!
教室内に響き渡ったのは激しいドラム音!!!

「なあに!霊体だったらコイツが効くぜい!!」

そう!そのドラムを奏でていたのは律であった。

「わかった!『アレ』をやるんだねッ!」
「りょーかいですっ」

そのドラム音だけで、律が何を奏るのかわかった唯と紬。
二人ともその曲を体現するため、それぞれギターの『ギー太』とシンセサイザーを準備する。

「ま、まさか『アレ』をやるのか……?」
「わ、私も嫌な予感しかしない……」

一方、何をやるのか分かった上で、あからさまに嫌な顔をする澪と梓。

「梓ッ!今度こーゆー敵が出てきたら、今度はオマエがこの曲を歌って久瀬さんたちを助けるんだ!!!」

律はこの熱い演奏を梓に伝え、それで久瀬たちを助けるよう咆哮する。



「ほぅ……なるほど。『アレ』をやるのか。微力ながら僕も助太刀するよ」

久瀬にも律たちが何をやろうとしたのか理解し、自分も参加をしようと白衣を脱ぎ捨てる。
言うまでもなく、斉藤、キョン、春原はこの事象がなんであるのか、まったく理解が出来ない。



「せ、セッティングなんか始めて、なにをやるつもりなんだ!?」

そして木戸も何が起こるのか理解できず、ここは様子見であった。



まもなくしてセッティングは終了。
『放課後ティータイム(唯&律&紬)with久瀬』のショータイムがついに始まった……!
律と紬はそれぞれアレンジされたイントロを演奏して行き……



そして久瀬は、なぜかパラパラを踊り始めた。







「悪霊退散悪霊退散 怨霊 物の怪 困った時は ど~まんせ~まん ど~まんせ~まん すぐに呼びましょ 陰陽師」



「人の世に~生~まれし~悪を~闇にへと~葬れや~~~~」



「ぶるぁぁぁぁぁぁ!!!」


久瀬が矢部野彦麿のパートを…
唯が琴姫のパートを歌い始める…

なんということでしょう!
木戸の霊体は見る見るうちに崩れ去っていくではありませんか。




「ぐああああああ!!!バ、バカな!!身体が!!霊魂が消滅してゆく!!?」

音楽と時として凄まじいエネルギーを発する。
それは個人を動かし…大衆を沸かせ…そして、神さえも凌駕する!!!
それにしても、いつの間にこんな技を会得していたのだろうか・・・?
久瀬と唯、律、紬の『レッツゴー陰陽師』により木戸は消滅してしまったのであった。



「「成仏しろよ」」

決まった…とばかりにどや顔の久瀬と唯。
全てをやりきったとばかりの笑みを浮かべる律と紬。

「あの子たち…あんなに成長しちゃって……」

一人勝手に感動している教師…

「……お前らがやりたがらない理由、分かった気がする……」
「さすが斉藤さん…理解が早くて助かります……」
「……ってか、律センパイが言ったように、今後またこういう敵が出てくるたびに私がやんなきゃならないんですかね……」

そして常識人三人の斉藤、澪、梓は、そんな久瀬たちを冷ややかな目で見ていたことはいうまでもなかった。



梓は『レッツゴー陰陽師』を覚えた!!!







かくして、二人目の四天王を倒した久瀬たちは、再びえいえんの世界へと向かい次のフェイズへと移行するのであった!!!

「…ってか、俺ら最後なんだったんだ?」
「…さあ?ま、レベルも少しは上がったみたいだし、いいんじゃないの?」

それにしても、最後まで哀愁の漂うキョンと春原であった。
彼らの次回の活躍に期待しよう!!!







と、いうわけで再びパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬以外の二人のメンバーを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『バンデット・キース』『涼宮ハルヒ』『キョン』『中野梓』の7人です。



[15824] 第四十一話 …ヤックルがくる価値もないSS
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/19 11:41
かくして、二人目の四天王を倒した久瀬たちは、再びえいえんの世界へと向かい次のフェイズへと移行するのであった!!!

「…ってか、俺ら最後なんだったんだ?」
「…さあ?ま、レベルも少しは上がったみたいだし、いいんじゃないの?」

それにしても、最後まで哀愁の漂うキョンと春原であった。
彼らの次回の活躍に期待しよう!!!



*パーティ編成の前に……



ここはえいえんの世界…

「わっ……なんもない……」

初めて目にした真っ青な世界に、梓はただただ驚くばかりである。

「この世界にきた人間は現実世界から忘れられ、戻ってきた途端思い出される。忘れるまでの日数はどれだけその人を思っていたかによって異なるらしいが……、そのへんは余談であろう」

青を眺めたまま呆けている梓に、久瀬はこの世界の概要を簡潔に説明する。

「え!?そんな世界だったのっ!!?」
「オレも初耳だぞ!!」

先の久瀬の説明を聞き、そんなの知らなかったとばかりに驚く春原とキース。
しかし久瀬は…

「あ、いや、すまない。説明し忘れた」

…と、一言謝るのみであり、まったく意に介していなかった。
どうやらこの男、本気で忘れていたらしい。



「へー…いっそパパ(森光蘭)もこの世界にブチ込めばよかったのに…」
「ここは収容所かっ!!!」

その久瀬の話を聞いていたのか、キースのデッキから勝手に出てきてノーテンキに毒づく煉華。
その蓮華の発言に、一応、えいえんの世界とかかわりの深い久瀬は、思わず突っ込む。

「ってか、喰われたことまだ根に持ってんだな……」

キースはその煉華の言葉を聞き、呆れるとともに、改めて復讐の心を持ったもの同士のシンパシーを感じていたのだった。



「で、このあとはどうするの?」

まいは、今後の展開について久瀬に尋ねた。
たしかに、久瀬の目論みは今のところは全て順調である。
キョン、春原のレベルも上がり、ハルヒの力に匹敵する『音楽の力』も手に入れた。

もっとも、今の梓では四天王を完全に成仏させる『レッツゴー陰陽師』は難しく、しばらくはレベル上げに努めることになるだろう。



「うーむ……、なんか女の子がみんな子供ばかりだから、ひとまずおっぱいの大きいお姉さんキャラがほしいところだが……」

しかし、久瀬はまったく別のことを考えていた。
直後、久瀬の頭に二つのハンマーが振り下ろされたことは言うまでもなかった。



「―――っ」
「莫迦なこといってないで、真面目に考えるの!」
「まったく…だから佐祐理に相手にされないんだよ!」

痛がる久瀬に対しても、容赦も何もない梨花とまい。
ある意味、気が合う二人ではある。



こんなアホなやり取りをしている一方で……

「………」

久瀬を見ながら何かを考えるしぐさを見せる長門。

「意外でしたね」

長門の不意を突くかのように、後ろから話しかける古泉。
その言葉には、久瀬が人を思いやるような戦略に出たことへの予想外の意味が込められていた。

「…そうでもない……」

しかし、長門はそれを否定。
あくまで統合情報思念体の予想の範疇で動いていると言いたげであった。

「…僕はいまだに信じられませんよ。あの久瀬が『平沢唯』のニュータイプの力を利用しようと考えなかったなんて……」

それでも古泉は、最悪のペテン師である久瀬の『唯を思いやっての行動』に、疑念を感じざるを得なかった。
それほどまでに、古泉の久瀬に対する疑心は強いものがあった。

「ヒューマノイドは時として理解のできない感情で動く。久瀬も例外じゃない……」
「『気まぐれ』…ですか」

それでも長門は、久瀬は人間である以上、当たり前の行動であると言い放ち、古泉はそれを『気まぐれ』であるとせせら笑った。



そして、もう一方では、ロックマンがバスターの修理をしていた。
青の世界にはロックを中心にさまざまなパーツが散らばっている。

「へぇ~…新しいバスターねぇ」

ロックの修理している様を見ながら、ハルヒはロックに話しかけてきた。
その初めて見る本格的なロボットの、しかも自らチューンナップを行っている様子にハルヒは興味津々であり、時たま、散らばっているパーツを手にとって見たりもしている。


「ええ。あらゆる属性の敵に対応できるように、今度は『3』仕様に……」

よくよく見ると、そのパーツの中にはロケットパンチらしきものや手裏剣やらが置いてある。
全ては新たなバスターなのであろう。

「ロボットも大変そうだな……」

キョンはそのメンテナンス、バージョンアップの手間を考えた末、しみじみと言う。

「ねぇ、この戦いが終わったらSOS団に入らない?」
「き、気持ちはうれしいのですが、お断りします……」

どさくさに紛れロックをSOS団に勧誘するハルヒであったが、ロックはそれを丁重にお断りした。



…そんなこんなで次の目的地を決めるべく、久瀬は自分の立てた仮説の是非を問うため、この場で仲間全員を集めた。

「…これはあくまで仮説に過ぎないのだが……今回の敵は、僕たちの次元の敵ではなく、『平行世界』からの敵ではないのかと思ってな……」

それはあまりにも飛躍しすぎた仮説であった。
たしかに『平行世界』はSFで用いられるだけでなく、一部、物理学の世界でも理論的な可能性が語られている。
量子力学の多世界解釈、宇宙論の「ベビーユニバース」仮説、理論的根拠を超弦理論の複数あるヴァージョンの一つ一つに求める考え方も生まれてきている。
しかし、なぜ今更平行世界なのであろうか…?

「どうして…?」

その久瀬の突拍子のない仮説に、まいの疑問はもっともであった。
久瀬はまいの疑問に答えるべく言葉を続ける。

「……草陰茂は『冥王ゴルゴナ』、木戸大門は『桃地再不斬』の肉体と力を使っていた。……しかし、それらはいずれも僕らの歴史、時間軸に存在しない」

そう、久瀬は以前にも彼らの肉体を『異世界のもの』と切り捨てていた。
そのときからある程度、この仮説は頭にあったのかもしれない。

「つまり、『諸悪の根源』は『別世界』の敵ってこと?」
「うむ……」

梨花は久瀬の言いたいことを要約すると、久瀬はその答えに満足し軽く首をうなずく。

「で、久瀬の仮説が正しいとして、これからどうするの?」

まいは次に質問を久瀬にぶつける。

「常に敵に先手を取られる状況は避けたい。故にこちらからその『平行世界』に攻め込みたいのだが、今度はその手段を探さなければいけない。それこそ、科学とかそういった力でなく何か『術的なもの』かもしれないが……」

久瀬の答えは、先手必勝であった。
たしかに、今の久瀬たちの状態は闇夜の町をスナイパーに囲まれて歩いているも同然であり、常に対応が後手後手に回っていた。
しかし、敵の居場所さえ分かればこちらから攻撃は可能。
もとより久瀬の性質上、敵のペースで動くより自分のペースに持ち込み、あくまで自分らの有利な土俵で、圧倒的戦力を以って、敵を完膚なきまでに叩きのめす戦い方であった。。

今回も久瀬の本質は変わらず、なんとか敵の『世界』へ侵略する方法を見つけ、奇襲を仕掛けたかった。
そのためには『魔術』だろうと『オカルト』だろうと、手段に是非を問わない。

「ある意味、未来よりは過去の世界を探ったほうがいるかもしれない」

その梨花の意見を聞いて方針が固まった久瀬。

「うむ、そうだな。よし!次の目的地は……」



1・戦後の日本だ!
2・明治の日本だ!
3・いっそ1000年前の日本に移動しよう!
4・やっぱり未来の科学力に頼ろう!







と、いうわけで再びパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬以外の二人のメンバーを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『バンデット・キース』『涼宮ハルヒ』『キョン』『中野梓』の7人です。



[15824] 第四十二話 …ネアニスの卵かけご飯食べたい
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/19 12:07
1・戦後の日本だ!



今回も久瀬の本質は変わらず、なんとか敵の『世界』へ侵略する方法を見つけ、奇襲を仕掛けたかった。
そのためには『魔術』だろうと『オカルト』だろうと、手段に是非を問わない。

「ある意味、未来よりは過去の世界を探ったほうがいるかもしれない」

その梨花の意見を聞いて方針が固まった久瀬。

「うむ、そうだな。よし!次の目的地は戦後の日本だ!」



「「「………」」」」



どや顔でいう久瀬であったが、この場の全員黙り込んだ。






「……あ、あのな…なんで戦後日本なんだ……?」

しばらく無言の時間が続いたところで、付き合いの長い斉藤が久瀬に聞き返す。

「フフ…もしかしたら七三一部隊の隠れた技術なんてものがあるかもしれないではないか」

さも当然のごとく言う久瀬に、みなの表情はより唖然とするばかりである。
そもそも、そんな技術を開発する器量があれば、日本は戦争には負けてないのではないだろうか…?



…とはいえ、他にアテがあるわけでもなく、結局久瀬の意見がまかり通り、仲間を引き連れ戦後日本に旅立って行く。

「まあ、メンバーは『雛見沢大災害(終末作戦)』に関わることであろうから、古手梨花君と……ある意味この時代とは対照的なロック君でいいか……」

「はぁ…」
「ま、まあ、いいですけど……」

そして、淡々とメンバーを決める久瀬に渋々了承する梨花とロックであった。



パーティ…久瀬・ロック・梨花







昭和三十一年四月……

亜空間から現れた先は、暗い空間であった。
文字通り暗中模索、視界は完全に闇に遮られ何も見えない。
その闇の中から唯一伝わってくる情報はドギツイ腐敗臭のみであり、視界が封じられ嗅覚が研ぎ澄まされているのか、その腐敗臭は鼻腔を幾度も暴れ回っていた。

「……(死臭……か!?まあ、GHQの占領が終了したとはいえ、戦後間もない世界だ。死体の一つや二つあってもおかしくはないが……)ロック君!」
「は、はいっ!!!」

久瀬はこの状況を洞察した上で、ロックに指示を出す。
ロックは久瀬の簡略すぎる指示にもツーカーな対応を見せ、早速、新バスター『フラッシュバスター』を起動させる。
そのフラッシュバスターは強力な光を発し、周囲の闇をなぎ払った!!



「!!!」
「見るなッ!!!」

―――刹那に、久瀬は後ろから梨花の目を両手でふさいだ!!!

先の闇の世界とは打って変わった白色の空間。
その白の世界に存在したのは、まさに凄惨な光景としかいいようのないものだった!!!

「ひ…ひどい……どうしたらこんなことが出来るんだ!!!」
「……とんだアルティスト気取りの『変態』だな……しかもこの『創造主』は相当の『ナルシスト』と見たが……」

久瀬らが見たものは、白色の段差の上にオブジェのように飾られていた、女性『3体』……!
しかもそれらはみな、四肢を失い、全身を石膏か何かで固められている上、巨大な黒い卵の殻の下半部に包まれ飾られていた。
その姿はまさに『殻ノ少女』の模倣そのものであった……

「……人の死んだ臭い……」

さすがに100年も惨劇を繰り返し観てきた梨花は、この修羅場にも慣れているようだった。
梨花は久瀬の手を押し退け、自らその地獄絵図を確認していた。
その様子に多少は驚きを見せた久瀬ではあったが、特に梨花を止めることもなく、状況の推察を続けていた。

「なるほど……この死体の状況を見るに、あの悪名高い『六識~間宮猟奇殺人事件』といったところか……」

そして、この状況と自分のデータを照合し、それに該当しそうな事件を忌まわしげに口にする。

「知ってるんですかっ!!」
「ぼ、ボクも知ってるの!!この事件と『上野連続猟奇殺人事件』はとっても有名なのっ!!」

遥か未来の世界から来たロックは知る由もなかったが、梨花はこの事件を知っているようだった。
おそらく、それほどまでに通で有名な事件だったのであろう。



六識~間宮猟奇殺人事件!!!

もぐりの外科医『六識命』という男が、6人の妊婦を惨殺した非道極まりない事件である!!
この事件の六年後、彼の患者である二人の男が『女性』を次々と惨殺していった。
一人…『日下達彦』は自らが殺した妹を生き返らせるという妄想から、『間宮心爾』の小説『ネアニスの卵』に準え女性を殺害し…
もう一人…『間宮心爾』も自ら殺めた母…『殻ノ少女』を求め、それを作製するために生きたまま4人の少女の四肢をそぎ落とし、殺害していった。



「……うち、『六識命』及び『日下達彦』は逮捕された。しかし、この似非『殻ノ少女』を創り上げた『間宮心爾』は結局逃亡し、そのまま行方が知れなくなったという。しかもタチの悪いことに、『六識命』及び『日下達彦』も結局殺人の動機を語ることなく裁判にて死刑の判決が下り、異例のスピードで刑が執行されたのだ。……真相は闇の中に葬られた…というわけさ」

久瀬は六識~間宮猟奇殺人事件について説明をする。
その事件の顛末には納得できていないのか、淡々と語る久瀬の表情もどことなく険しく感じられる。

「……ど、どんな理由があっても……こんなこと許されるわけッ……」

無論、正義感の強いロックはこのような事件は許しがたいものがあった。
人間とロボットでさえ共存して生きている世界で育ったロックにとっては、人間同士でこのような残虐な行為が平然と行われていることなど理解できないとともに、深い憤りを覚えていた。

「……もっとも、いまだに三人目……ということは、これからあと一人殺され似非『殻ノ少女』が創造されるわけではあるが―――」

「―――ッッ」

久瀬は険しい表情を続けながら、それでも今の状況を見て推察し、新たに『芸術品=死体』を増えることを示唆する。
そして、ロボットながらもロックはジレンマに苛まれていた。
確実にやってくる、最後の『殺人』。
それがくることは分かっているのに、それを止めることはできない……

それを止めることは結局はただの自己満足でしかなく、それは『諸悪の根源』のやっていることと変わらなくなるからだ!!!

「…みぃ……」

そういう意味では、救いのある未来の可能性が残されている梨花は、まだマシなのかもしれない……



ドクン……



「…む!」

しかし、このような状況においても動じることなく冷静に状況分析ができるのがこの男……!
普通の人では絶対に聞き逃すであろう鼓動を、その研ぎ澄まされた感覚で感じ取る!!



「これは―――」



1・気のせいだった
2・まだ生きているのです。これが定説です



[15824] 第四十三話 …人間の原料は400円程度らしい
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/19 12:49
2・まだ生きているのです。これが定説です



「…む!」

しかし、このような状況においても動じることなく冷静に状況分析ができるのがこの男……!
普通の人では絶対に聞き逃すであろう鼓動を、その研ぎ澄まされた感覚で感じ取る!!



「これはまだ生きているのです。これが定説です」

「「???」」

久瀬はライフスペース代表グル高橋の物まねをしたのだが、時代の違うロック、梨花に理解できるわけがなかった。



「…などといっている場合ではない!!!彼女!まだ生きている!!!」
「「!!!!!!」」

白けた場の中、久瀬の今度は真面目な発言に、ロック、梨花は驚きを隠せなかった。

彼らが驚いている時間にも、久瀬は一切の躊躇もなく『殻ノ少女』の一つの胸の部分に指を突き刺す!!!
……正確に言えば、久瀬の指した少女は四肢をそがれ絶命の一歩寸前……かろうじて心臓がわずかに動いているだけであった!!!

久瀬は芸術品と化した少女に一人を、心音のようなものが聞こえただけで何のためらいもなく生きていると判断!!
そのまま南斗聖拳の要領で右手を彼女の左胸に侵入させ、スタープラチナのごとく、彼女の心臓を潰さぬように鷲掴みにする。

そのあまりの堂々とした、いとも簡単に行われるえげつない行為に、ロックマンも梨花も言葉を失う。


「……ええい!!!まさか人の心臓を素手で動かすことになろうとは夢にも思わなかった!!!」

久瀬は忌まわしげに言うが、普通は誰も思わないであろう…

「……血液…いや、そのようなものはないから…ここは施術して最低限の血液で命が保つようにして……!!ロック君!!!」
「は、はいッ!!!」
「僕は『彼女』を仮死状態にするから、その間にえいえんの世界に戻り、君のスペアパーツ全てをくれ!!!」
「わっ…わかりましたっ!!!」
「梨花君も急いでえいえんの世界に戻り、炭素、酸素、水素、カリウム、ナトリウム、鉄、ヨウ素を用意してくれ!!!」
「わ、わかったの!!!」

久瀬はその処置も一瞬で計画立て、ロック、梨花に指示を出しえいえんの世界へ向かわせる。
その口調は、久瀬にしてはひどく荒々しく、それだけで作戦は一刻を争う状況を物語っていた。

「(あとは、コイツの『創造主』が帰ってくる前に全てを終わらせねばな……)」







ロック、梨花を一旦えいえんの世界から戻ってきて、各々が必要なものを持ってきたところで久瀬の手術が始まった。













数時間後……
奇跡的にも『創造主』は帰ってくることなく、久瀬の手術は無事に終了した…!
少女の四肢は機械と化し、その心臓はたしかに鼓動を奏でていた。
頭部より造られた長き髪を外せば、そこは短いながらも女性を思わせる髪がそこにあり、久瀬は何も言わずに黒縁の眼鏡を彼女にかけると、それは生前の彼女の容姿をはっきりと表していた。

「……なんとか持ち直したか……」

せめてもの情けとばかりに、久瀬は彼女の身体に白い布を纏わせ、その蒼き裸体を包み隠すと、敵地にいるにもかかわらず、大手術が終わったことでほっと一息を入れる。

「………」

ロックは何か言いたげであったが、それに介することもなく、久瀬は呑気にも携帯していたポットでミルクティーを淹れる始末であった。
しかし、その実額から流れる汗を隠すことは出来ず、久瀬はこの手術で相当の神経を浪費したことが伺える。



「みぃ…これって、歴史を改竄したことにならないの……?」
「………!」

そんな中、ロックがあえて聞かなかったことを、梨花が久瀬に問いただす。
たしかに、自分の偽善的な都合で歴史を変えたのであれば、それは『諸悪の根源』とやっていることは変わらない。
そのことに関するロックの懸念、ジレンマはずっと存在していたのだが、久瀬は何のためらいもなくそれを行った。

…ロックの心中をよそに、久瀬の返事は意外なものだった。



「……目の前の命が助けられるかどうかの瀬戸際に、そのような時空倫理のことを考えている余裕などあるわけないだろ」



「………」
「………」

その久瀬の発言は、梨花もロックも『非常に』意外なことで驚きを隠せなかった。
普段の久瀬からは考えにくいあまりにも人間染みた返答に、言葉を失いつつもどことなくほっとした表情を見せる二人だった。



そして、続けざまに久瀬は言う。



「……まあ、さらに言えば梨花君に先の材料を持ってこさせたことにより、彼女の『偽りの死体』も作ることができたわけだし、結果的には歴史の改竄には至らないであろう。……フフ……。もっとも、これらは明治の時代、『外印』とかいう芸術家が同じ手法を用い偽りの死体をもって警察の捜査を欺いたという記録が残っていたが(そいつは御庭番スタイルにより始末されたわけだが……)…。…まあ、この戦後の時代、ロクなDNA捜査もできはしまい。指紋や歯型など、外見上をそっくりに創り上げてしまえば、誰も『死体がすり替わった』などと思いもしまい。…そして、ロック君のパーツを用いてあえて彼女を『サイボーグ化』することにより、彼女はこれから充分な戦力として活躍できるであろう。フハハハハハ!!!」

「なッ!!?」
「!!!!!」

今度は正真正銘久瀬らしい発言に、不意打ちを受けたかのようにやっぱり驚くロックと梨花。
やはり、ただの美談で終わらせないのがこの男。
久瀬は勝ち誇ったかのように悪笑いをしながら、先に助けた少女とまったくそっくりの『殻ノ少女』を元の位置に戻す。

そして二人は思う!!!

……久瀬の真の恐ろしさは、その戦闘力でもなければ卓越された頭脳でもなく……!!
重大な分岐点にて、ほんの一瞬で先の先まで自らの有利に事を進めることができる、その悪魔のごとき決断力にあるのだということを……!!!



「まあ、いつ創造主の変態が帰ってくるとも限らん。早く彼女を連れここを脱出するぞ」
「……は、はいっ……」

ロック、梨花が呆けている間にも、久瀬は脱出の準備をしていたようだ。
久瀬は『殻の少女だった少女』を背負い、ロックたちに脱出を促す。
こうして間宮心爾の隠れアジトを脱出し、人目につかぬよう林道を下った
久瀬たちであった。







さすがに街中を一人の(しかも公式で死んだことになっている)少女を背負って歩くのは体裁が悪いと思い、久瀬たちは今度は山道へと入り様子を伺うことにした。

「……で、彼女はいつ目を覚ますんですか?」

少女が助かったとはいえ、未だにその瞳は深く閉じられていた。
となれば、ロックの心配は当然といえば当然のことである。

「……今はまだショック状態で意識は失っているが……、まあ、いずれ目を覚ますであろう」

久瀬はロックの問いに答えたあと、淡々と言葉を続ける。

「ある意味、『生きたまま』手足をそぎ落とされ、あえてトドメを刺されなかったことが幸いした現象とも言える。もっとも、その時間中は彼女にとっては生き地獄以外の何者でもなかったと思うがな……」
「………」

その想像を、脳内でなんどもリフレインさせる梨花。
実際に何度も殺されている梨花にとって、その悲痛はまさに現実の経験として、彼女への同情を余儀なくされた。



まあ、どんな過程にせよ、目の前の命を救えた結果に安堵する三人。
ここまでくれば安全だろうと一段楽したところで、久瀬は助けた少女を背中から下ろし草むらに寝かせる。
そして彼女を見ながら久瀬は、何かのメモを読んでいた。

「……おそらく彼女は三人目の犠牲者だな……」

「(そ…それって、警察の捜査メモなのッ!!)」
「(こ…この人、なんでそんなものをもってるんだろう…?)」

本当にこの男は底が知れない…
梨花、ロックは改めて心の中でそう思った。
久瀬は介することなく、メモを見ながらむしろ、少女の名前が分からないことにしきりに首をかしげていた。



「……たしかこの記録によると、名前は……えっと……『シジュウミヤトジコ』……?」






「トジ子ってゆーな!!!!!」



!!!!!



「!!?」
「わっ…!」

森林に少女の声が響き渡る!!!

久瀬の目の前で横になっていた少女は、いつの間に目を覚ますどころか立ち上がっており、久瀬を指差し一喝していた!!!
いくら一命を取り留めたといえども、本来なら彼女は、いつ目が覚めるか分からない様態である。

ロック、梨花はもとより、無論、久瀬にとってもこの少女…『トジ子』の覚醒は想定外であり、さすがに驚きを隠せなかった。

「ま…まさか、こんなにも早く目を覚ますとは……!」




「……って、ここ、どこやろ?」

そんな久瀬の意に介さず、目を覚ました少女『トジ子』は呆けながらも辺りを見渡す。

「……ま、まさか目覚めとともに一喝されるとは思わなかったぞ……」

とりあえず、久瀬の口からはこのような言葉しか出てこなかった。

「……なんか意識がもーろーっちゅーか、なんか身体中ばノコで切り刻まれたような……なんか悪ぅ夢ば見とったと……」

どうやら勢いで目を覚ましたものの、自分のみに何が起こったのかはまったく理解できていないらしい。
おまけに博多弁である……



「(……と、とりあえず、トジ子君に起こったこと、全て説明すべきだろうか……?)」



久瀬は『トジ子』に起こったことを―――



1・説明することにした。
2・説明しないことにした。



[15824] 第四十四話 …マトモな精神の持ち主は殺人をしない
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/19 13:11
1・説明することにした。



「(……と、とりあえず、トジ子君に起こったこと、全て説明すべきだろうか……?)」



久瀬は『トジ子』に起こったことを説明することにした。



「と、ところで、あたしなんでこんなところにいるの?」

急に標準語に戻り、状況を尋ねるトジ子。

「たしか…『葛城シン』先生に偶然会って、そこで家に招待されて……」

トジ子はその自分の記憶を、徐々に辿っていく。
ちなみに『葛城シン』とは、六識~間宮猟奇殺人事件の最後の殺人犯である『間宮心爾』のペンネームである。

「えー…その、トジ子君……」
「トジ子ってゆーな!!!」

久瀬はバツが悪そうにトジ子に説明をしようとするが、『トジ子』って呼ばれただけで怒りをあらわにするトジ子。
どうやら『トジ子』という名前はお気に召さないようだ。

「いや、だってこの調書には『シジュウミヤトジコ』と……」
「『四十宮綴子(ヨソミヤツヅリコ)』ばいっ!!!」

興奮したのか博多弁に再び戻るトジ子…もとい綴子。
どうやら久瀬は、ただ名前を読み間違えていただけのようであった。

「まあ、どちらでもいい……」
「よくなかとー!!!」

久瀬は綴子の文句を無視し、そのまま説明を続ける。

「……とにかく、今まで君にあったこと、全てを話す。多少辛いことを思い出させるかもしれないが、そこはあえて耐えてもらう……」

久瀬は自らの知識で知っている、彼女に降りかかった災厄、時間圧縮を用いて全てを支配しようという『諸悪の根源』の存在、そして自分らはそれを倒すために時空を超えた旅をしていることをすべて説明した。






「えええっ!!!じゃあ、あの卵事件の犯人は『葛城シン先生』…もとい『間宮心爾』だったの!!!はやく先生に教えなきゃ!!!」
「「………」」

真実を知り、動揺するか、あるいは自ら味わった生き地獄を思い出し発狂するかと思ったが、自分の信頼する探偵『時坂玲人(六識~間宮猟奇殺人事件を解決した探偵)』に真実を教えることを優先する綴子。
彼女は案外肝の据わった女性なのかもしれない。

ちなみに卵入り事件とは、卵の殻の中にご丁寧にも人肉を詰めるという、これまた常識からは考えにくい変態事件である。この事件の被害者こそ、先の『殻ノ少女』となった二人であり、その詰められた肉は『間宮心爾』が必要としなかった手足の部分である。

なんともな残虐な事件である。
人はどうすればそこまで残酷に慣れるのか、ロボットのロックはまったくもって理解に苦しんでいた。

「……ちょ、ちょっとまて……。君は一応『死亡扱い』なのだ。そこでひょこひょこ顔を出してみろ。お化け騒ぎになるか、歴史が狂うかのどちらかしかないのだ」
「あっ……」

一方の久瀬は、そのまま勢いで『時坂玲人』の元へ向かおうとする綴子を制止する。

「そ、それじゃ、犯人を知っててどーすることもできないワケ!?」

綴子は、一旦は止まり久瀬の方を向き、知っていてどうにも出来ないジレンマを久瀬にぶつける。

「……まあ、その件に関しては君の知り合いの探偵、『時坂玲人』が全てを解決するから安心したまえ」

久瀬はあくまで好意的に捉えた歴史の結末を綴子に教え安心させようとする。
ただし、もう二人犠牲者が出る事は、これ以上の暴走を止めるためにもあえて伏せておいた。

「………」

無言で考え込む綴子に、さすがにそれでは納得はしないかと別に彼女をごまかす方法を考える久瀬であったが…



「さっすが先生ッ!ゆかりんのお兄さんなだけのことあるっ」
「(…単純でよかった……)」

綴子が単純なのか、はたまたそこまで『時坂玲人』が信用置ける人物なのか…
なにはともあれ、これ以上首を突っ込もうとせずに歴史に身を任せる綴子に、久瀬はホッと胸をなでおろした。







「へぇ……あたしの手足、機械になっちゃったんだ。でも、普通の手足みたいな感覚だし……さっすが『未来の技術』ってとこね。こんな技術があれば日本は勝ってたかも知れないね」

楽観的に現実を受け入れた綴子は、改造された自分の手足を動かし、未来の技術力をしみじみと実感する。

「いや、未来では米国はさらにこの上をいっている」
「ふーん……」

久瀬の言葉に対し、綴子は特に関心はなさそうに返事をし、初めて与えられた玩具のように義手を動かし感触を確かめる。



「まあ、とにかくだな……」
「それであたしが新しく授かった使命は『時間の平和を守ること』ッッ!!よっしゃあ!!先生!!ゆかりん!!もう二人に会うことはないけど、この時代の平和はあたしが守るからねッッ!!」
「………」

とりあえず久瀬はこれからの心構えを説明しようとしたのだが、綴子は話も聞かずに勝手にヤマに首を突っ込み使命感に燃える。
喉元過ぎれば熱さを忘れるとはいうが、彼女はその好奇心が致命傷となり自らの命を落としていることはすっかり忘れている。
さしもの久瀬も、その綴子のバイタリティには絶句せざるを得なかった。


「(しかし……僕の仲間になる女の子に、まともなヤツはいないのか……)」
「何か失礼なこと考えてるの」

久瀬は心の中で毒づき、梨花はその心中を言い当てるが、所詮、類は友を呼ぶ…である。
……なお、あずにゃんの名誉のために言っておくが、一応、彼女はマトモである。



「まあ、こうして、トジ子が仲間になった」
「トジ子ってゆーな!!!」

四十宮綴子が仲間に加わった!!!







と、いうわけで再びパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬以外の二人のメンバーを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『バンデット・キース』『涼宮ハルヒ』『キョン』『斉藤一』『中野梓』『四十宮綴子』の8人です。



[15824] 第四十五話 …GHQは雛見沢症候群に興味を示したようです
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/19 13:58
「ま、こうして、トジ子が仲間になった」
「トジ子ってゆーな!!!」

四十宮綴子が仲間に加わった!!!



パーティ…久瀬・ロック・綴子



「まあ、だいぶ話は脱線してしまったわけだが、話を本筋に戻そう」

久瀬はそういうと、三人で作戦会議を始める。
そう、久瀬は別に綴子をサイボーグ化させるために戦後の日本に来たわけではない。
久瀬はあくまで、『諸悪の根源』を倒すため『平行世界』へ行く方法を探しているのだ。

「…しかし、その方法が分からない以上、違う視点で探してみるということで、ロストテクノロジーを求めこの時代に来たわけなのだが……」

久瀬は『平行世界』へ行くためのロストテクノロジーを求めてこの時代にやってきたわけであるのだが…

「そんなスバラシイ技術があったら日本負けてないと思うけど……」

誰も突っ込まなかったが、よく考えてみれば当然のことを綴子に指摘される。

「……甘いな。この時代、軍部に採用されなかっただけで、731部隊における非公式な研究はいくつもあったのだ」

しかし、一応、久瀬にもなにかアテはあったらしく、知っている情報を得意げに語り始める。

「たとえば『高野一二三(鷹野三四の祖父)』という人物が発見したウィルス(雛見沢症候群の元凶)を731部隊は生物兵器として用いようと研究していたこともあった。…まあ、仮に完成、成功したところで戦況をひっくり返すまでには至らなかっただろうがな」
「そんなの、ぜんぜん知らなかった…」

当時の日本は情報封鎖に余念がなかったゆえ、綴子が知らなかったのも無理もない話である。
むしろ、そんなことを知っている久瀬の方がかえって不気味である。

「(まあ、鷹野一二三はそれを軍事利用する目的などさらさらなかったようだし、逆にそのウィルスに犯された雛見沢症候群患者を救うための研究をしていたのだが……。……まさか、その彼の研究が後に孫娘である鷹野三四を狂わせ、『雛見沢大災害』という悲劇を起こさせようとしていたとは思うまい)」

久瀬にしてみれば、その真実はまさに皮肉としか言いようのないことであった。
親の心、子知らずである。

「…つまり、その731部隊の研究の中に、もしかしたら……」
「まあ、可能性は低いと思うが、当たってみるのも悪くはない」

ロックは久瀬の希望的観測を理解したところで、久瀬は可能性が低いながらもゼロではないという考えのもと、この時代の探索を続けることとした。



かくして漠然ながら次の目的を決めた久瀬たち。
ひとまずこの時代を探索するため森の中を抜けようとするのだが……







「フフフ……久しぶりじゃなロックマン!久瀬!」



そうは問屋がおろさないようだった。

空が割れたと思えば、次元の歪より現れる青い円盤。
そこから聞こえてきたのは、まさに聞き覚えのあるなんとも老獪な声。

「お、お前は!!!」

その声の主に特に因縁の深いロックは、思わずありきたりな言葉を発する。

我々は知っている!!
その、ドク似の老科学者を!!!
あの空飛ぶ『ブルーレット置くだけ』を!!!


「Dr.ワイリーッッ!!!」

そう!この青い円盤に乗った老人こそ、かつて核爆発で倒したはずのDr.ワイリーそのものであった!!!

「フハハハハ!!!まさかこんな『原始時代』で貴様らと相見えようとは、まさに『あのお方』の言ったとおりじゃ!」

ワイリーは戦後日本を『原始時代』と揶揄し、上空より三人を見下ろす。
久瀬とロックは再び現れた敵に対し、躊躇もなく即座に臨戦態勢を取った。
本来なら、ワイリーが核爆発の中で生きていたことをもっと驚くべきなのだろうが、倒したはずのワイリーが生きていることなど『いつものこと』なので誰も突っ込まない。



「……な、なに、このいかにもなお爺さんは……?」

一方の綴子は、空飛ぶ青の円盤や、それに乗る科学者の老人に驚きを隠せない。
それもそのはず、綴子にとって見ればそれらはまさに想像すらつかないSFの世界であり、声高らかに笑うワイリーに素で引いていた。



「フン……頼みの綱である四天王も二人も倒され、老体に鞭打って出陣とはご苦労なことだな」

一方の久瀬は、敵の核ともいえる四天王も半分と化し、わざわざ一度倒した敵が再び現れることに、敵の戦力は低下していると判断。
そして相も変わらずの挑発に出る。

しかし…

「ん?四天王……?なんじゃそれは?」

「!!」

ワイリーの口から出たのは、意外な言葉であった。
なんとワイリーは、四天王の存在など知らないと口にしたのだ。

「(……こ、この男、本気で四天王の存在を知らないのか……!?)」

さすがの久瀬も、にわかには信じられないとばかりにワイリーを見る。



「しらばっくれるなっ!!あの勝沼紳一と手を組んで、世界を牛耳ろうとしているんだろッ!!!」

一方のロックは、ワイリーが完全に嘘をついていると思ったらしく、果敢に言及する。

「何の話じゃ?確かにワシは『あのお方』と共に集められた同志とともに、各々の野望を果たそうとしておるが、『カツヌマシンイチ』なぞ聞いたこともないわい……」

そのロックマンの言及にも、まったく身に覚えがないとばかりにワイリーは言葉を返す。

「ん?わかったぞい!久瀬お得意の心理作戦というヤツじゃろ?こうしてワシら組織内に不信感を募らせ、内部分裂を誘おうとする作戦じゃろ?フン、そんな浅知恵、このDr.ワイリー様の頭脳に通用するかっ!!!」

仕舞いには、勝手に久瀬の策と勘違いし、それを看破したと思い込み一人勝ち誇る始末である。
この様相から察するに、どうやらワイリーは本当に四天王のことを知らないようであった。


「(……あるいは第三勢力の存在も考えられるが、しかし、勝沼紳一とDr.ワイリー、他にも斉藤君たちが戦った謎の敵がいずれも時間移動していることから、これらは『諸悪の根源』による同一の組織であると可能性のほうが遥かに高い。……だとすると、何故『諸悪の根源』は同志が互いに顔も知らぬような、暗部だらけの組織を作ったのだろうか……?)」

それでは、なぜワイリーは四天王の存在を知らないのか。
久瀬はありとあらゆる可能性を思考してみるのだが、いずれも不確定な推測のみであり自然と長考となってしまう。



「フフン…策が見破られ新たな策を考えているようじゃが、ワシの頭脳の前には無駄よぉ……!!」

その久瀬の長考にさえ、楽観的な勘違いをするワイリー。
あるいは、久瀬が何を考えているかなんて分からないほうが幸せなのかもしれない……



「まあ、考えていても仕方がない。まずは貴様を倒させてもらい、それから考えるとするか」
「なにぃ!!?」

考えても仕方ないことを考えるより、そのままワイリーを倒したほうが得られる情報は多い。
そう判断した久瀬は、ワイリーの不意を突くかのように戦闘態勢にはいる。

「ロック君!!トジ子君!!戦闘準備だッッ!!!」
「は、はいっ!!」
「了解……ってトジ子ってゆーな!!!」

久瀬の指示通り、ロック、綴子はワイリーの迎撃態勢へと移行する。

「ちょっと待った!!そっちが三人なのにこっちがワシ一人とは卑怯じゃないか」
「戦争に卑怯もラッキョウもあるものか」

ワイリーはヒーロー物の悪役にあるまじき、1対複数の卑劣さを説くが、久瀬は某メフィラス星人のごとき最低のセリフを吐き、まったく意に介さない。



「フン!そういうと思ったわい!ならばワシも新たな『ワイリーナンバー』を使わせてもらうッッ!!!」
「な、なにッッ!!!」

まあ、久瀬のその発言はワイリーも想定していたのだろう。
あらかじめ、手下のロボットは準備してきていたようだった。
ロックマンシリーズではおなじみの出来事なのだが、それでも驚きの声を上げるロック。

「(とはいえ、『あのお方』が各時代より集めたロボットを改造しただけじゃが……)」
「どうせ、『あのお方』からもらったロボットを改造しただけだろ。所詮は貧乏科学者といったところか」

どうやらワイリーは『諸悪の根源』に提供されたロボットに手を加えただけのようであり、内心、あまり快くは思っていなかった。
久瀬はそんなワイリーの内心を見抜き、資金繰りに苦しんでいるというイタイ部分も平気で抉ってくる。

「(な、なぜわかった!!?)……ふ、ふん!強がっていられるのも今のうちじゃ!!!いでよ!!『ワイリーナンバーズ』!!!」

すると地面より謎のカプセルが現れ……
その中から現れたのは『女子高生の服を着たメイドロボ』『金髪ポニテの諜報ロボ』『フリフリの服着た鋼鉄天使』『おさげのクソ長いボーカロイド』『トンファーみたいな銃を持ったロボ』『おかっぱで鳴滝のようなカッコしたロボ』『おさげが隠し腕みたいになってるロボ』『パソコンから人間系になったロボ』の8体だった。

「なんだそれは?まさか貴様専用『ダッチワイフ』のご紹介か?」
「知るかっ!!いずれも『あのお方』から『兵器にしろ』という命令で引き受けたものじゃ!!!ワシならもっとセンスのいいロボットを作るわい!!!」

これらはみな、『諸悪の根源』があらゆる時代からかき集めワイリーに提供したロボットたちであった。
久瀬はワイリーを見下して入るが、提供された他の技術を自分なりに解析し改造を施すワイリーは、間違いなく天才の分類に入る人間であった。

ちなみに、ウッドマンやガッツマンのどこにセンスがあるのかは甚だ疑問である。



「(……ぼ、僕にロボットとはいえ女の子を『撃て』るのか?……し、しかし……)」

…一応、その女の子の容姿のロボットは、ロックマンの動揺を誘うことには成功していた。

「(……もしキース君がいれば、全員『キメラテックフォートレスドラゴン』の融合素材にできたというのに……。あるいは魔法カード『酸の嵐』で一網打尽という手もあるが……)」

…一方、久瀬はえげつないことを考えていた。

「(……っていうか、あたし改造してもらって言うのもなんだけど、どこに兵器があるわけ……?)」

そして綴子は今更ながら、何の予備知識もないまま戦いに臨むわけで……



「(ひとまずは―――)」



1・面倒くさいからワイリーだけを狙おう。
2・仕方ない、『ワイリーナンバーズ』から順番に倒していこう。
3・ワイリーもワイリーナンバーズも一網打尽にしよう。



[15824] 第四十六話 …実は今回、ロボ娘たちのネタが一切思いつかなかった
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/19 14:27
3・ワイリーもワイリーナンバーズも一網打尽にしよう。



「(ひとまずはワイリーもワイリーナンバーズも一網打尽にしよう)」

久瀬と言えば、各個撃破などまどろっこしいことは考えない。
如何に最小の戦力で最大の兵力を叩くか…それが兵法の妙技であると久瀬は思っているのだ。

「9対3で勝てると思っているのか愚か者がアアア!!!」

しかし、ワイリーもバカではない。
久瀬は一挙殲滅を図るも、そういう作戦でくるであろう事は読んでいた。



「フフ…9対3どころか、トジ子君一人で充分なのだよ」
「な、なにィ!!?」

久瀬はそんな強気のワイリーに対しても、さらに挑発するかのようにトジ子…もとい綴子を指名。
ワイリーナンバーズ程度など、綴子だけで充分と言い切ったのだった。

「え!?あ、あたしィ!!?」

その突然の指名に、名前のツッコミをも忘れ驚く綴子。

「ぶぁかにするな若造があああ!!!行け!!ワイリーナンバーズ!!全員であの憎たらしい『眼鏡で白衣の男』を八つ裂きにしろおおお!!!」

怒り心頭に達するワイリーは、そのまま美少女ロボ8体に久瀬への攻撃命令を出す。
ワイリーの指示に忠実に従った8体の美少女ロボットが、久瀬たちに襲い掛かる。



「かかったなアホが!!『最終兵器ばってんトジ子』君の真の力、見せ付けてやるわ!!!」
「そぎゃん異名いらなか!!!…で、でも、なんとなく『仕様』がわかったわ!!!」

久瀬は罠に掛かったばかりに、綴子に変な異名を付け攻撃命令を出す。
綴子は突っ込みながらも、この場面での武器の使い方が分かったらしく、固まって襲い掛かる8体のロボに対し、右手を指し、全ての指の第一関節を折る。
そこからは各々の指に銃口が備えてあり、即座にサイコガンダムを髣髴させるような光線が放たれた。


ブラスター10



!!!!!!!!!



なんと、その光線を浴びた『女子高生の服を着たメイドロボ』『金髪ポニテの諜報ロボ』『フリフリの服着た鋼鉄天使』『おさげのクソ長いボーカロイド』『トンファーみたいな銃を持ったロボ』『おかっぱで鳴滝のようなカッコしたロボ』『おさげが隠し腕みたいになってるロボ』『パソコンから人間系になったロボ』全員がマヒしてしまった!!



「ば、バカな…!わ、ワシのワイリーナンバーズが……」
「破壊されないだけマシだと思え」

その光景を信じられぬとばかりに、動かなくなった8体のロボを見て愕然とするワイリー。
それを見て久瀬は大変ご満悦のようであった。

「ひゃああああ……右指がら変な光線出たと思ったら、とんでもない武器じゃない!」
「そ、それもすごいけど……こうなることを予測していた久瀬さんって……」

そして、自分に内蔵された武器の威力に驚く綴子と、この事態すら想定して武器を組み込んでいた久瀬に舌を巻くロックであった。

ブラスターとは!!
FF2にてクアールが使用する敵専用の特殊攻撃である。
味方全体をマヒさせる効果があり、無属性なのでリボンを装備しても防御できない。
その効果を防ぐ方法は、回避と魔法防御を上げておくことのみッッ!!



「お、おのれっ……」
「ククク……僕を狙い打とうと敵を密集させたのがアダになったな。まんまと僕の挑発に乗り、強気といえば聞こえはいいが、その実、天才的頭脳とは思えぬ単純かつお粗末な攻撃で、挙句が綴子君の『ブラスター』で全滅とは……。それではライト博士に及ばぬわけだ」

悔しがるワイリーに対し、更なる挑発で敵の憤怒を助長しようとする久瀬。
まさにこの男、悪魔である。



「クッ……今日のところは勘弁してやる!!!」

しかし、ワイリーは久瀬の挑発には乗らず、自分の乗機の円盤(ブルーレット置くだけ)よりUFOキャッチャーのような『マシンハンド』が八本出てきて、各々がワイリーナンバーズを回収していく。

「意外にも冷静だな……」
「たわけっ!そう何度も挑発に乗ってられるかっ!!今度はステータス異常にも念頭を置き、改良して貴様らの前に立ってやるわっ!!!」

そしてワイリーは、そのまま遥か上空に発生した『次元の歪』に逃げ込もうとする……
久瀬としてはこの場でワイリーを徹底的に叩いておきたかったが、上空へ逃げる以上は追撃もままならない。



「させるかっ!!!」

ギュイイイイン!!!

「!!!」

しかし、そのワイリーの逃亡を潔しとしないロックの右腕より『メタルブレード』を発射される。
そのカッターはワイリーの円盤には届かなかったが、その『マシンハンド』を一本だけ切断には成功した!!

「チィィ!!!ま、まあ、たかが『ボーカロイド』1体くらいくれてやるわ!!!さらばだロックマン!!久瀬ッ!!」

ワイリーは落ちていくロボットを介さずに、そのままワイリーナンバーズとともに次元の歪へ消えていった。



そして……







「空からお下げのクソ長い女の子が降ってきた!!!」



1・助ける
2・助けない



[15824] 第四十七話 …ロックミクにしてやんよー
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/19 14:51
2・助けない



「空からお下げのクソ長い女の子が降ってきた!!!」



次元の歪の存在した遥か上空より、仰向けの状態で落ちてくる『お下げのクソ長いボーカロイド』。
その身体は、一秒一秒、徐々に大地に近づいてくる。



「まあ、どうせ敵のロボットだしほっとこう」

外道にも、久瀬はそのまま捨て置き先を急ごうとするが…



「!!!!!」



その久瀬の反応よりも早くロックが動き、『お下げのクソ長いボーカロイド』の落下地点へと猛ダッシュする。

「(間に合え!!間に合ええええッッ!!!)」

己が限界速度を省みず、ただ目の前の女の子を助けたい一心で駆け出すロック。
本当に彼はロボットなのか、甚だ疑問ではある。



そんなロックをしたり顔で見つめる久瀬。
その後ろから綴子が久瀬に話しかける。

「もしかして、ロック君が助ける…ってわかっててワザと見捨てようとしたでしょ」
「…フフ……仮にロック君が助けに行かなくても、君が助けに行ったと思うが……」

端から久瀬は、二人の正義感を信頼(?)していた。
そんな久瀬にヤレヤレとばかりに小さく笑む綴子であった。



一方、今にも彼女が落ちてきそうな森の中では……

「―――ッッ」

!!!

ロックは落下してきた『ボーカロイド』を、間一髪のところで抱きとめる。
日中にも拘らず森林に囲まれ暗い場所ではあったが、ロックとそのボーカロイドの場所だけが、スポットライトを照らしているかのごとく光が差し込んでいた。



「だ、大丈夫ですかッ!!」
「………」

ロックはそのままお姫様抱っこの状態で、必死に彼女の肩をゆすり声をかけるも、システムがダウンしているのか『ボーカロイド』は一向に目を覚まさない。



ロックがさらに必死に『ボーカロイド』の肩をゆすると、システムが再起動したのか、ゆっくりと、その大きな瞳を開ける。

「ん?気がついたのか?」
「わたし……助かったの……?」

『ボーカロイド』は徐々にプログラムを起動させながら、自分に起こったことを確認していく。
そしてロックは、ゆっくりとボーカロイドの少女を地面に降ろし、彼女が再起動したことにほっと胸をなでおろす。

「あなたは…」
「ロックです。『諸悪の根源』による次元圧縮を止めるべく戦っています」

相手の名を問う『ボーカロイド』に、ロックは自分の名と、その今の現状を簡潔に彼女に話す。

「そうですか…私はワイリーナンバーズ『初音ミク』…でした……。今はただの役立たずです…うっうっ……」

自分がワイリーに見捨てられたとばかりに落ち込む『初音ミク』。
ロックはそんな彼女を見て、それでも、そのままワイリーナンバーズに戻すよりはと決断をする。



「行きましょう!」

ロックは落ち込むミクの手をとり、一緒に久瀬のところへ向かおうとする。
ロックは敵であったミクを受け入れ、ミクに共に戦うことを促す。

「!?……わたしを連れてですかっ?でも、無理です。戦闘機能も何もついてないんです。ありがとう…でも、仮にあなたがわたしを連れ出しても守れないと思います。それならばいさぎよくジャンクになった方が……うっうっ……」

しかし、先ほどワイリーが言ったように、ミクは所詮は『ボーカロイド』である。
戦闘機能も何もなく、はっきり言えば役立たず以外の何者でもない。
もしこの場に久瀬がいたなら「なぜ『諸悪の根源』は彼女をワイリーに提供したのだ?」と疑問に思ったかもしれない。(既に思っている可能性はあり)
彼女自身、自分でも役立たずと感じており、一度は共に戦うことを拒絶するが……



「守る!僕が守ってみせる!行くぞ!」
「!!!」

ロックの強い決意の元、ミクは目を大きく見開き「ハイ」と元気よく答えた。
こうしてロックはミクをつれ、久瀬たちの元へ向かったのだった。







「だめだ」

開口一番の久瀬セリフは、初音ミクのパーティ入りを拒絶するセリフであった。

「待ってください!ミクはもうワイリーナンバーズを出て僕たちに協力する事を約束してくれたんだ」

そのミクをかばうように、二人の間に割って入るロック。

「しかし…」

久瀬は口ごもり、何かを言おうとしたが…

「僕はこの娘を守ると約束した。僕は一度守るといった女の子を、けっして見捨てたりはしない!!」
「………」

ロックの熱い心に、久瀬は言葉を返すことが出来なかった。
そしてミクは、何故ロックは自分のためにこんなに必死になるのだろうと思いながらも、その存在を非常に頼もしく思っていた。



「たしかに『諸悪の根源』は悪だけど……、そこにいた全てが悪とは限らないんじゃなくて」

そんなロックとミクに助け舟を出す綴子。



「……仕方がない。今回は『ばってんトジ子』君に免じて許してやろう」
「トジ子ってゆーな!!!」

結局は久瀬が折れることとなり、FF6みたいな流れで初音ミクが仲間になった。







その後、この時代を散策してみたものの、特にめぼしい手がかりは見つからなかった。



「ええい!!誰だ!!!戦後の日本に『平行世界』に行く技術があるかもしれないなどとほざいたのはあああ!!!」
「完全にあなたでしょうが!!!」

完全に行き詰まり、尚早と苛立ちをあらわにする久瀬に、思わず突っ込むロック。
まあ、ロックの言うとおり言いだしっぺは完全に久瀬であり、こんなもの、初めから失策以外の何者でもなかった。

「あきらめて他の時代に行ったほうがよくない?」
「そうですね…」

綴子の提案に賛同するミク。

「ええい!!仕方がない……次の目的地は―――」



1・明治の日本だ!
2・いっそ1000年前の日本に移動しよう!
3・やっぱり未来の科学力に頼ろう!
4・一旦現代に戻ってみよう!






と、いうわけで再びパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬以外の二人のメンバーを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『バンデット・キース』『涼宮ハルヒ』『キョン』『斉藤一』『中野梓』『四十宮綴子』『初音ミク』の9人です。



[15824] 第四十八話 …全員黒だとたけふどみたいだ
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/19 16:11
4・一旦現代に戻ってみよう!



「あきらめて他の時代に行ったほうがよくない?」
「そうですね…」

綴子の提案に賛同するミク。

「ええい!!仕方がない……次の目的地は一旦現代に戻ってみよう」

たしかに、このままこの時代にいても得るものはない。
ならば、ここは一旦もとの時代に戻って体勢を立て直したほうがいいのではないだろうか。

かくして久瀬たちは戦後の日本を離れ、現代日本へと戻ることになった。



*パーティ…久瀬・ハルヒ・梓



こうして戻ってきた現代日本ではあったが…

「!!?」

この現代の街に久瀬は違和感を覚えた。
そして久瀬たちは現代において信じられない光景を目の当たりにする!!!

街を歩く人々の服装は全て『黒』に統一され……
子供たちは奇怪な宇宙人のソフビ人形をヒーローとし…
あるいは、その宇宙人の格好をしてヒーローごっこをしていた。

その『ヒーロー』の敵役として子供たちに虐げられているのは、元来我々がヒーローと仰いでいたものであったのだ。



「なんなの?ここって現代の日本じゃないの!?」
「わ、わかりませんっ!でも、なんだかおかしいです」

ハルヒ、梓もこの変わり果てた元の時代に困惑せざるを得ない。
一見平和そうに見える世界。
しかし、その不自然に統一された『黒』のカラーリングの人々が、『さっきまで』違う世界に存在した彼らに違和感を抱かせずにはいられなかった。

「……もしかして、ここは私たちの時代じゃないんじゃ……」
「それはないわ。ここは確かにあなたの時代よ。変わっているのは『人の格好』と『流行』だけで、建物やそのほか文化的なものの変化は感じられないもの」

梓は自分たちはまったく違う時間軸に来てしまったのではないかと思ったが、ハルヒはそれを否定。
むしろ、現代の概念そのものが変わってしまったという。

「…僕らが他時代に行っている間、何者かがこの時間に干渉し、『世界を征服した』としか思えん。おそらくは『諸悪の根源』が……」

そして久瀬は、その概念を変えてしまったものは『諸悪の根源』ではないかと推理してみるが……






「それは違うぞ、破壊者…久瀬よ」

!!!

突如謎の男があらわれ、うろたえる久瀬たちの背後から話しかける。
そう、我々は知っている!
眼鏡にフェルト帽の男を知っている!!!

「ほう…確か貴様、斉藤君たちが戦ったという…」

久瀬はこの男とは会ったことはなかったが、かつてこの男は桜ヶ丘高校にてノイトラを召還し、斉藤たちと戦わせていた。
三人は振り向きざまに謎の男と対峙する。

「……この世界、この時間で会うのは初めてかな?」
「はぁ…?アンタ、もしかして……」

男の声に、ハルヒは聞き入った情報ではあるが、この男が何者であるかの推測が出来たようであった。

「そうだ、私が預言者『鳴滝』だ。久瀬が世界の破壊者だという警鐘を鳴らすための」

そういえばこの男、以前にも久瀬のことを破壊者と言っていた。
その言葉が何を意味するのか今のところは不明ではあるし、久瀬も特には興味はないようだった。

「あの…久瀬さんって、『諸悪の根源』の時間圧縮から『世界を救う』ために戦ってるんじゃないんですか……?」

胡散臭そうな男の言葉を信じることのできない梓は、そう鳴滝に問い返す。

「……久瀬は危険だ、君を死なせる訳にはいかない。私なら今すぐキミを自由にできる。久瀬はこの時間戦争の中で必ず悪魔に目覚める」
「どっちかっていったら、その『諸悪の根源』に加担してるアンタのほうが危険じゃないそんなのアンタの妄想でしょ」

久瀬が危険だという鳴滝の言葉をあくまで否定するハルヒ。
しかし、梓の場合は別段久瀬を信用しているわけではなく、鳴滝の言葉が抽象的過ぎて信頼するに値しないだけのことではあるが……

「僕のことはどうでもいい。貴様は何故、今回の事件に『諸悪の根源』が関わっていないと断言できるのだ。『諸悪の根源』の手下である貴様が弁解しても、説得力のかけらもないというものだ」

無論、久瀬からしてみれば『諸悪の根源』の手下である鳴滝の言葉など、信用できるわけもない。
そんなもの、戦争を起こしている国が「自分の国では貴方の国は攻撃しません」と謳っているくらいの説得力でしかない。

しかし、それでも鳴滝は即座に反論する。

「愚かな……。時間圧縮を目論む我々が、地球を支配して何になる。ましてや貴様らのいない世界を攻撃することに、『あのお方』の何の得がある」
「ううむ…」

その鳴滝の反論には、久瀬も押し黙るしかなかった。
たしかに、『時間圧縮』により全ての時間を支配下に入れようとする『諸悪の根源』にとって、地球という『単体』を支配することに何の意味もない。

「…まあ、一理はある……。続けろ」

久瀬はそのまま鳴滝に話を続けさせる。

「正直、我々もその『侵略者』には困っている。奴は宇宙より地球の支配を目論む『宇宙人』だ。その存在は我々の目的の達成の邪魔でしかない」

「!!!」

どうやら『諸悪の根源』にとっても今回の『侵略者』は邪魔以外の何者でもないようだった。
しかしハルヒはそんなことは眼中になく、ただ鳴滝の『宇宙人』という言葉に、目が輝かせていた。

「……なるほど。それで貴様は『諸悪の根源』に、その『侵略者』の討伐を命じられたのだな」

そんなハルヒをよそに、久瀬は鳴滝の事情を察した。

「それもある。しかし……」
「……む?」

鳴滝の言葉は続き、いよいよその真意が語られようとしている。
久瀬たちは無言のまま、ただ次の鳴滝の言葉を待っていた。

「………」












「このまま『黒』の時代が来てしまえば、『プリキュア』のメンバーの色が全員『黒』になってしまうではないか!!!それだけは避けなければならん!!!」



全員こけた。



「く、くだらない……ですね……」

梓はストレートに、鳴滝の真意をくだらないと一蹴した。
っていうか、そんなプリキュアの色など何色でもいいだろ。というのが本音であろう。

「ば、バッカじゃないの」
「……次元の歪に消えろ愚か者が」

そして悉く罵声を浴びせるハルヒと久瀬。

「やはり貴様は破壊者だ!久瀬によってプリキュアの世界も破壊されるだろう」
「僕じゃなくて、この『侵略者』のせいであろう」
「黙れ!………」


そんな久瀬たちの心無い反応に、鳴滝は仕舞いには逆切れする。
鳴滝は久瀬を一喝したあと、何かを考え込んだ。
そして……



「そうだ。一つ取引をしよう。私が『次元の狭間』より『戦士』を一人貸してやろう。その代わり、この世界の『侵略者』を討伐して欲しい……」

意外ッッ!それは意外な取引だった!!
決して相容れることのないと思っていた『諸悪の根源』一派より、一時的とはいえ共闘を依頼されたのだ!!!

「……あ、明らかに条件が不平等なんですけど……」

その鳴滝の一方的な条件の申し出に、賛成しかねる梓。
しかし……

「いいじゃないっ!この目で『宇宙人』を見られるんだったら!不平等でも何でもOKよ!!!」

毎日宇宙人(長門)と顔を合わせているこの女は、大変乗り気だった。
ある意味、真相は知らないほうが幸せなのかもしれない。



「(……たしかに、『侵略者』の存在は非常に気になるところがある。おそらくお互いがお互いを邪魔としていそうだし……うまく利用すれば『諸悪の根源』と『侵略者』の二虎競食での漁夫の利を謀れるかもしれん)」

そして、謀略めくりめく久瀬の脳内。
ここでうまく両者共倒れしてくれるのが、久瀬としては非常に理想的なパターンではある。
久瀬は鳴滝との共闘を―――



1・了承した。
2・拒否した。



[15824] 第四十九話 …禁じられた言葉
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/19 16:50
1・了承した。



「(……たしかに、『侵略者』の存在は非常に気になるところがある。おそらくお互いがお互いを邪魔としていそうだし……うまく利用すれば『諸悪の根源』と『侵略者』の二虎競食での漁夫の利を謀れるかもしれん)」

そして、謀略めくりめく久瀬の脳内。
ここでうまく両者共倒れしてくれるのが、久瀬としては非常に理想的なパターンではある。
久瀬は鳴滝との共闘を了承した。







かくして、鳴滝は後に異世界より戦士を派遣するとして、一旦この世界を去っていった。

黒に染まった街…
久瀬たちはその『侵略者』の拠点を攻めるべく方法を考えていた。

「なんかうまく騙された気がしないでもないんですけど…」

梓はあまりにもうますぎる話に、多少の疑念を抱いていた。

「フフ…はじめから『戦士』なぞアテにしておらん。ただ、その侵略者のほうに興味があっただけさ」

しかし、久瀬は鳴滝が契約を反故にするのも想定の範囲内だという。
そんな久瀬を梓は「律センパイとムギセンパイを足して2で割った感じの人」と評した。

「……で、どうやってその『侵略者』を叩くんですか…?そもそも敵の居場所さえ分からないというのに……」
「は?…そんなの決まってるじゃない」

この梓の疑問に対し、さも当然のごとく答えるハルヒ。
そして「そういうことだ」といわんばかりににやりと笑う久瀬に、梓は不安な心を拭いきれなかった。







「おほほほほ!!あたしの名を言ってみろおおお!!!」
「このお方こそ、この地球の救世主『メフィラス』様だああ!!!」

鉄仮面をつけ黒マントで身体を覆った格好で、黒に染まった街のど真ん中を我が物顔でバイクを運転するハルヒと、それに付き従い行軍する久瀬の姿がそこにはあった。
この二人の行進に街の住民たちは、ただひたすらドン引きしていた。

「……北斗神拳で市民に『侵略者』の正体を割らせ、あたかもその人に成りすまし傍若無人に振舞う……サイテーです……」

さらにその後ろを恥ずかしそうについてくるあずにゃん。

そう、久瀬の計画としては、まずは『侵略者』に洗脳された市民を一人拉致り『解亞門天聴』を突き、『侵略者』の正体の口を割らせる。
あとは『侵略者』に成りすまして派手に暴れまわることで、『侵略者』に対し誘い引きをかけたのである。
とはいえあまりにも非道な作戦に、梓も久瀬たちにドン引きしていたのは言うまでもない。



「このお方の名を言ってみろおおお!!!」
「ひいい!!お助けえええ!!」
「『メフィラス』様だ愚か者が!!!」

メメタァ!!!

久瀬の問答無用での市民に対しての暴行…

「その耳が『キョン』に似ている!!」
「ぎゃあああああ!!!」
「あははははは!!!」

ハルヒもとても演技には見えないくらい、市民を次々と虐げていく。

「ああ、やっぱりメフィラス星人は地球の救世主じゃなかったんだ!ただの人殺しだ!!」
「この世に救世主などおらんのじゃあ!!!」

久瀬らの偽計効果はあった模様で、もはや市民は『侵略者』に対しての信用を失っていた。

「なにぃ!!もう一度言ってみろおおお!!!」

そして、完全に悪ノリをしている二人であった。







「あ!き、消えた!!?」
「た、たすかったあああ!!!」

瞬間、突如この街から姿を消した久瀬たち。
言うまでもなく、先ほどまで虐げられてきた市民たちは、久瀬たちがこの街から消えたことに歓喜する。
彼らはいったいどこへ行ったのであろうか……?







ここは、謎のルーム。
あたりには地球には存在しないような、奇妙奇怪な機械が存在している。

その部屋には、久瀬ともう一人…
黒と銀で纏められた謎の人物が対峙している。
その青い瞳は、久瀬をあざ笑うかのように光を照らしていた。

「ようこそ、久瀬君。ここは私の宇宙船の中だ。私がこの星の救世主であることを利用し、あえて私の名を騙り暴虐に振舞うことで私をおびき寄せる罠。その智謀とそれを実行に移せる行動力を、まずは褒めておきましょう」

その者は、ゆっくりとした慇懃無礼な態度で久瀬と接する。
どうやら久瀬の偽計を見切った上で、あえて久瀬を宇宙船に招待したらしい。

「……フフ……あえて僕の策にかかったという感じだな」
「…いかにも。既に知っていると思うが、私は『メフィラス星人』の一人。この地球を支配下に治めたものだ」
「…フン。そんなことはどうでもいい。涼宮君と梓君はどこへ連れて行った?」

まさに一触即発といった感じの、久瀬とメフィラス星人との会話。
どちらも上から目線で物を言っているところが、この空間の危険具合を物語っている。

「それはご安心を。君の大事な仲間たちは、別室で待機してもらっています」
「…まあ、幽閉されたかといって涼宮君が簡単に音を上げるとも思えんし、僕に人質は無意味だ」

この外道行為に定評のある久瀬。
「人質は無意味」という言葉にこれほど説得力のある男も珍しい。

「僕が興味があるのは二点。一つは、どうやってこの地球を支配したかだ」
「ファファファ…貴方のことです。半分は見当がついているのではありませんか?」

メフィラス星人は、あくまで慇懃無礼に久瀬の問いに答える。

「…街の形跡や民衆の態度を見るからに、武力で攻め入ったとは到底思えない。…地球人の心から攻めていった……と、いったところか」
「さすがですね。ならばお教えしましょう。どうやって私がこの星を支配したかを……!!!」

その久瀬の答えに満足したとばかりに、メフィラス星人は事の真相を誇らしげに久瀬に語った。






*(回想シーン)






同じく宇宙船内。
メフィラス星人は一人の少年と対峙していた。

「ユキオ君。さあ、元気を出して。立ちなさい。」

メフィラス星人はユキオ少年に自己紹介をしたあと、本題へと移る。

「さて、ユキオ君。私は自分の星からこの地球を見ているうちに、地球とユキオ君がどうしても欲しくなったんだよ。でも、私は暴力は嫌いでね。私の星でも紳士というのは礼儀正しいものだ。力ずくで地球を奪うのは私のルールに反するんだ。そこで地球人であるユキオ君に了解をもらいたいと思うんだ。ユキオ君は素晴らしい地球人だ。どうだね、この私にたった一言、『地球をあなたにあげましょう』と言ってくれないかね」

「メフィラス星人の移転先は『最低でも県外』の方向で積極的に行動したい」

「(え?)…そ、そうだろうね。誰だって故郷は捨てたくないもんだ。でも…、これをご覧」

メフィラス星人はユキオの心に語りかける。

「宇宙は無限に広くしかも素晴らしい。地球のように戦争もなく、交通事故もなく、何百年何千年と生きていける天国のような星がいくつもある。どうだねユキオ君、地球なんかサラリと捨てて、そういう星の人間になりたくはないかね」

「ここで申し上げる話ではない、今日はいい天気です!」

「聞き分けのない子だ(というか、日本語わかってるのか?)。なぜ『地球をあなたにあげます』と言えないんだ。私は君が好きだ。私の星で永遠の命を与えようというんだぞ」

「子供のころからメフィラス星にはあこがれていました。地球は地球人の所有物じゃない。トラストミー」






*(回想終了)






「こうして、地球人が地球を私たちに売り渡したことで、この星は私たちのものとなったのだ!ファファファ!」

表情は良く分からないが、とかく勝ち誇ったかのように高笑いするメフィラス星人。
その人の心を見抜く力は何とやら。
そしてユキオ少年のルーピーっぷりに久瀬は嘆息しつつも……

「フハハハハハ!!!」

メフィラス星人に負けずに、久瀬は悪人のようないつもの高笑いする。
そして挑発とばかりに言葉を続ける。

「メフィラス、とんだ見当違いだったな。こんなルーピーの心を屈服させたところで地球の支配ができたと思うとはな!!……あえて言おう!!『貴様はすでに死んでいる!!』おそらく『この時代の僕』があえて貴様を潰さないのは、ここで僕に消されるのがわかっているからなのだ!!!」

そう、久瀬が言うとおり、当然この時代にも久瀬は存在するのだが、彼の性格上、この時点でメフィラス星人に対してなんら行動を起こしていないのは不自然である。
おそらく『この時代の久瀬』は既に何が起こるのかを理解しており、『過去の久瀬』が全てを解決するであろうことを分かっていたからなのだ。

「うぅ~ん、黙れ久瀬!貴様は破壊者なのか、救世主なのか!」

メフィラスは究極の問いを久瀬にぶつける。
久瀬は時間に革命を起こしたいのか、それともただ救いたいだけなのか……

「僕は世直しなど考えてはいない。貴様のような時間の掟を破る奴と戦うために生まれてきたのだ」

無論、現時点での久瀬の答えは当然後者であった。

「ほざくなっ!この手で必ずこの美しい星を手に入れてみせるぞ!」

その久瀬の返答に満足せず、メフィラス星人は思わず激昂する。
こうしてメフィラス星人との決戦に突入しようかという久瀬!!



1・一騎撃ちだ!!この程度、僕一人で充分だ!!
2・まずは涼宮君、梓君を助けるのが先決だ!!
3・鳴滝の召喚する『戦士』と協力しヤツと戦おう!!



[15824] 第五十話 …いつの間に復活してたんですね
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/21 01:21
3・鳴滝の召喚する『戦士』と協力しヤツと戦おう!!



「ほざくなっ!この手で必ずこの美しい星を手に入れてみせるぞ!」

その久瀬の返答に満足せず、メフィラス星人は思わず激昂する。
こうしてメフィラス星人との決戦に突入しようかという久瀬!!



「鳴滝の召喚する『戦士』と協力しヤツと戦おう!!」

久瀬がそう決断したときであった!
ちょうどいいタイミングで空が割れ、歪んだ空間より一人の人間が現れた。

「いったー!!!」

否…投げ込まれた…のほうが正確なのであろうか…
その男、基本的にハンサムだが、口が大きく悪人面。
その風貌は兜こそ着けてないものの、西洋風の鎧、剣を身にまとい、歴戦の英雄を物語っていた。

「クッソー!!!用心棒はもっと丁寧に扱いやがれ!!!」
「うるさい黙れ!魔王に滅ぼされかけたのをわざわざ使ってやったのだ!!」

その男は、亜空間より鳴滝に文句を言われたあげく、空間は閉ざされて音信不通となってしまった。
おそらくこの男が鳴滝の言う『戦士』なのであろうが…
このコントみたいなやり取りに、久瀬は一抹の不安を感じざるをえなかった。

「…貴様が鳴滝の言う『戦士』とやらか……」
「チッ……男なんかの手助けなんかしたくはないが、これも仕事だ、仕方がない……」

一応、久瀬は男に尋ねてみるものの、返って来たのは不貞腐れた暴言であった。
久瀬はその男の暴言を聞いてか聞かずか、その様相を一通り見て、挑発するようにつぶやく。

「まあ、まんざら『役立たず』というわけでもなさそうだが…」
「なんだと!!この『ランス』様を捕まえて役立たずとは、どうやらその目は節穴のようだな!!!」

久瀬の『役立たず』発言に憤るランス様。
すっかり挑発に乗ってしまっている様を見ると、頭は大していいほうではないようだ。

「……前口上はいい。はやくあの『メフィラス星人』を始末しろ」

カチン

「随分えらそうだな!確かに手助けしろとはいわれたが、貴様に命令される筋合いなんかねえ!!!」

あくまで命令口調、上から目線の久瀬に完全にランスはキレる。

「…そういうと思った。所詮、その剣もただの『お飾り』…。鳴滝もとんだ口先だけの役立たずを捕まえてきたものだ」
「こっ…このやろー……!!」

久瀬の挑発はとどまるところを知らず、ランスとはまさに一触即発の状態であった。

「(……なんだこいつら……)」

そして、そんな久瀬とランスの浅ましい喧嘩を、冷ややかな目で見ているメフィラス。
宇宙人と地球人と平行世界人の三つ巴となってしまうのか、ここまで性格の合わない人間も相当に珍しい。

「ち、地球人と平行世界人よ……。君たちはもう少し落ち着いて話をしたらどうかね……?」

ついにはメフィラス星人に仲介される始末であった。

「…んだと!?」
「…僕は冷静だが、このチキン君はメフィラス星人の戦闘力に恐れをなしてね……」
「てっ…てめぇ!!!」

反発するランスに対し、久瀬はあくまで挑発行為を止めようとはしない。

「いや、久瀬君……あなたのそのものの言い方がですね……」

これではまるで2ちゃんねらーのネトウヨとブサヨの醜い争いそのまんまであり、メフィラス星人はただひたすらフォローするのみであった。







つまらない小競り合いから小一時間後……



「よそう……宇宙人と平行世界人と地球人が争っても仕方がない……(っていうか、付き合ってられん!!!)」

ついには自分から幕を引くメフィラス星人。
この小一時間、おそらく相当くだらない口げんかが繰り広げられたのであろう。

「…フン、ならば世界は元に戻すというのだな」
「……世界が君たちの影響下のなくなったときに、再び侵略したほうが効率がいいと思ったまでです」
「賢明な判断だな……」

ランスの言うとおり、このメフィラス星人の決断は、あるいは英断と呼べるものなのかもしれない。



「…それでは、地球人、平行世界人、再び君たちと戦えるときを楽しみにしています」

メフィラス星人はそういい残し、ついには宇宙船とともに去っていったのだった…







そして、黒の消えた元の街…
人々のファッション、文化などは全て元通りに戻っていた。
久瀬たちはその町のはずれの公園に降ろされていた。



「……で、どうすりゃいいんだ?」

二人取り残された状態でランスがつぶやく。
そもそもランスは、鳴滝により次元の狭間から強制的につれてこられただけであり、この先本当にいくアテはなかった。

「どうするもこうするも、僕の手足となって働くしかないだろう」
「なんでそうなるっ!!!」

さも当然のごとく言う久瀬に、ランスは反論する。

「……なら聞くが、貴様はどうやって元の世界に帰るつもりなのだ?」
「…そ、そりゃあ、さっきの鳴滝ってオッサンが……」

おそらくランスは、一応は鳴滝が連れ戻しに来るのを期待しているらしかった。
しかし、久瀬は先ほどのランスに対する鳴滝の仕打ちを見逃してはいない。

「見たところ、君はそこまで義理堅い人間でもあるまい。こっちの軍についたほうが君の『探し物』も見つけやすいであろう」
「ど、どういう意味だ!?」

『探し物』…久瀬がどこでそういう情報を得たのかは不明であるが、たしかにランスには『探し物』は存在した。
そして、先の鳴滝とランスのやり取りで、この二人に信頼関係などほとんどないことを判断、久瀬はこの『探し物』という情報を餌にランスを『諸悪の根源』から離反させることとした。

シィル・プライン…
彼女はランスの専属の奴隷でありながら、実質、特別な存在でもある女性である(ランスはこれを認めようとはしない)。
平行世界の『JAPAN』という国において、ランスは魔王になりかけの美樹の攻撃を受けるも、咄嗟にシィルがランスの身代わりとなって、代わりに氷漬けにされてしまった。
ランスの探し物とは『シィルの永久氷を解く秘術』であり、彼はそれを探して旅に出ている途中に鳴滝に拾われたのであった。

ランスは何故久瀬がそのことを知っているのか分からず問い詰める。
しかし、久瀬は含み笑いを浮かべるだけで、質問に答えようとはしなかった。

あまり『探し物』の情報を与えすぎるのも良くはない。
ここはあくまで鍵を握っているという素振りだけ見せ、ランスの心にそれを焼き付けたところで話題を変えることにした。

「……先の喧嘩で君という人物を分析してみたが、貴様には『英雄の相』がある。僕の言うとおりに動けば、君はこの世界だけではなく、君の世界でも全ての時間軸における英雄となれるだろう」
「興味ないな」

英雄の話には興味がないとばかりにランスはせせら笑う。
しかし、久瀬のランスの評価はあながち間違っているわけでもなく、あわよくばランスを手駒として加えたいと思っていた。

「…まあ、『英雄』になれば、千差万別の女がより取り見取りだとおもうのだが……」

ピクッ…

ランスの耳が少しだけ反応するが、このまま久瀬のペースに話を持っていかれるのも、ランスとしては面白くない。

「へっ…今の俺だって、女の子はより取り見取りなんだぜ」

このランスの強がりは嘘ではない。
無論、そのことを知らないわけではない久瀬は、更なる搦め手を仕掛ける。

「…しかし、この世界の女はまだ知らないであろう。僕の軍にはもしかしたら、君好みの女の子もいるかもしれない…フフ……」
「うーん……」

搦め手は効果があったのか、ランスが少し考えているうちに……



「まったく、無重力空間に閉じ込められたと思ったら、今度は変なトコに瞬間移動させられて……」
「まあまあ……」

時を同じくしてメフィラス星人の幽閉から解き放たれたハルヒと梓が、ようやく久瀬たちのいる公園の方へ姿を現した。
ハルヒは興奮冷め止まぬ様子であり、それを梓が必死にフォローしているが…

「なんってサイコーの体験なのッッ!!!」
「(そういやこの人こんなんだっけ……)」

実は別に怒っていたわけでもなく、なんともハツラツとした表情のハルヒと、心底疲れたような表情の梓が久瀬たちと合流すた。

「(おっ!!二人ともすんごいカワイイ娘じゃないか!!!)」

その二人の美少女を見たランスの第一印象がこれである。

「な、なんなんですか、この悪そうな人……」

梓はというと、ランスの悪人顔プラススケベ笑いに完全に引き気味だった。

「…なあ、この世界の人間って、美的感覚オカシイんじゃないのか?」
「至って君の世界のと変わらん」

ランスは梓の反応にひどく遺憾に思っていたが、これは致し方のないことである。
まあ、ランスの世界の人間も、ランスの外見よりは内面を見て好意を寄せる女性が多いのは、揺るぎようのない事実であろう。

「へぇ……異世界人か。面白そうね」

一方、ハルヒのほうは、若干ランスに興味があるようである。
無論、それはあくまでUMA的観点なものであり、恋愛対象としての興味はまったく持ってなかった。

「おっ!この娘はちょっと脈アリかもな。隙あらば…ムフフフフ……♪」

ああ、なんと言う悲しき勘違いであろうか。
しかし、この楽観的な勘違いこそがランスの強さであり、バイタリティでもある。
もっとも、「彼女をレイプしようとしたところで、強制力が働いてできやしまい」というのが久瀬の考えではあるのだが。



かくかくじかじかでランスが仲間になった!!!







「(……しかし、これだけの個性派ぞろいの所帯ともなれば、僕一人で統率するのも一苦労だ。せめて一人くらいは参謀役が欲しいところではあるが―――)」



1・やはり天野(美汐)君をおいて我が参謀を務めれるものはいないだろう。
2・メイドがいいから、鷺澤美咲君から頼子君を借りよう。
3・天才・一ノ瀬ことみ君なら確実かな。
4・……ウケ狙いで風子君……かぁ……。
5・いや、もっと違う人材を探してみよう!!



[15824] 第五十一話 …真・戦国無能
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/21 01:23
5・いや、もっと違う人材を探してみよう!!


「(……しかし、これだけの個性派ぞろいの所帯ともなれば、僕一人で統率するのも一苦労だ。せめて一人くらいは参謀役が欲しいところではあるが…いや、もっと違う人材を探してみよう!!)」

未来の展開を憂いてか、パートナー選びは聊か慎重になる久瀬であった。







ここはえいえんの世界。
相変わらずの青のみの何もない世界である。

「…まあ、秘書はひとまず保留にしておくか…」
「当たり前!むしろ秘書に足を引っ張られるのがオチだよ」

補佐のない現状に苦心する久瀬に、まいは冷たく言い放つ。
彼女としてはなんとなく、心の支えである久瀬が誰かに取られる可能性の芽を、少しでも潰しておきたいところであろう。
このような男が心の支えでは、なんとなく哀れな気がしないでもないが。



「それより、この世界ってイイ女ばっかりじゃないか!!」

一方、大体の人間は想像がついたと思うが、このえいえんの世界に初めて来るなり久瀬の仲間の女を見て興奮に猛るランス。
まあ、ハルヒをはじめ、梓、梨花、ミク、青子とこの世界に揃う少女はまさに『精鋭揃い』といったところであろうことから無理もない話であろうが。
もっとも、多少は年齢が幼すぎる気がしないでもない…。

「あら、どうもありがと」

大半以上がランスのスケベ心丸出しの行動にドン引きの中、さすが青子先生は大人の対応を見せていた。
一方のランスは、ここぞとばかりにエロパワーを前面に押し出し女性メンバーに全力でアピールをし始めた。

「無理やりというのも悪くないが、ここは俺の印象を良くして何度もしたいから、ぜひ和姦だな。…というわけで、俺とヤれ」

「嫌です」
「じょ、冗談やなか」
「…異世界の人間とはいえ、やはりこの世界と思考パターンは同一……」

梓、綴子、長門と順にランスの求愛を拒絶する。

「………」

当然ランスは多少はへこたれるわけではあるが、一応、救済措置はないわけではない。

「なんなら一人紹介してあげよっか?眼鏡かけたいかにも『教育ママ』ってカンジの人だけど」

その救済措置を出してきたのは、やはり大人の女性代表、蒼崎青子先生であった。
ちなみに彼女の紹介する女性とは、無論、姉(燈子)のことである。
よって、青子の提案は救済措置というよりは、ただの押し付け&姉に対する嫌がらせ以外の何者でもなかった。

「お断りいたしますの」

ちなみに、特にランスのお眼鏡にかなったわけではないが、梨花もランスを拒絶したことをここに追記しておく。

「(いや、アンタは見た目が幼すぎるからダメだろ……)」

ランスは一応、そういう倫理観はないわけでもないが、それでもこの男は幼少にさえ手を出す鬼畜ペドでもあることを忘れてはならない。

まあ、言うまでもなくこの世界の女は久瀬の『類は友を呼ぶ』面々であり、たとえこれまでに幽霊、妖怪、宇宙人、天使、悪魔、使徒、魔人、魔王とのSEXを経験してきたランスであろうとも、一筋縄ではいかないであろう。
ちなみに相沢祐一は幽霊や狐とSEXしているということは、あまり関係のない話である。

「なんかイヤなヤツが入ってきたね……」
「こいつも久瀬と同類だろ」
「なかなか面白い事態ですね」

明らかに不快な態度を見せる春原と、冷静に分析するキョン、あくまで傍観者の古泉。
なんにせよ、キョンの分析はたぶん間違っていないであろう。



「おっ!!こんなところにとびっきりの美女が!!!」

そんな男性陣の心中など露知らず、このえいえんの世界の中でも飛び切りの美女を捕まえ、劣情を最高潮まで高めるランス。
しかし、このSSの読者であればこのオチは容易に想像はついたであろう。



「……!!!っざけるなッ!!!」

声もほぼ女性っぽくはあったが、ランスが声をかけたのは確かに男。
……斉藤一であった。
無論、こういう展開はお約束である。

「何ィ!!!男だとおおお!!!」

当然、斉藤の声を聞いたところで男であるとは信じることは出来ない。
久瀬の懇意丁寧な説明の末、10分後にようやく、ランスは斉藤が男であるということが分かった。

「男の癖に女みたいな容姿や声したヤツは大ッ嫌いなんだよ!!!」

勝手に男だと思い込んだことは棚に上げ、ランスは斉藤に全ての怒りをぶつける。

「っざけるな!!!俺のほうこそ、貴様のような不真面目かつ不誠実な人間は反吐が出るッ!!!」

当然、斉藤も勝手に勘違いしておいて逆切れするランスに憤りを感じないわけがない。
しかも、自分がもっとも嫌いとする女扱いをしておいて…である。
もっともこの二人はまるで水と油。
生来生真面目で純愛の男斉藤と、生来不真面目でヤリまくりランスでは相性がいいはずもなかった。

「オイオイ、内部分裂はやめてくれよ」

そういいながらも久瀬は、二人の喧嘩を止める様子は一切なかった。



そんな時、事件は起きた!!!









ゴッバオオオォォォン!!!






「きゃっ!!」
「な、なにがおこったの!!?」

まい、梨花の付近のえいえんの青の一部が窓ガラスのごとく割れ、亀裂からは暗黒の炎が吹き荒れた!!!
その衝撃は無の世界にすら闇に染めるような…それほどまでに凄まじい一撃であった。

「す、すげぇ穴……」

春原は、そのえいえんの世界にぽっかりと開いた暗闇の穴にただただ驚愕するばかりである。

「加えて『邪神』を髣髴させるくれェ禍々しいオーラも感じるぜ……」

かつては邪神の闇を体験したキースが畏怖するように、火柱が消えた後も穴の縁を燃やし続ける黒炎。
こんなことが出来る人間など『この女』をおいて他はない!!!



「美坂君か……」

そう、この暗黒の主こそ、久瀬の元カノにして時空管理局を『2000円』で買収した女、美坂香里(シスコン)であった。
力技で虚数空間を発生させ、そこからえいえんの世界へと無理やり介入する様は、まさに戦慄以外の何者でもない。

「まったく!!!あなたたちの言う『諸悪の根源』とやらにしてやられたわ!!!」
「お、落ち着きたまえ……なにがあったのだ……」

勝手に侵入してきた挙句の凄まじい剣幕の香里に、久瀬はただただ圧されるのみである。
そして周りの面々は、あくまで自分たちにとばっちりが来ないように、遠巻きに久瀬と香里のやり取りを傍観するのみであった。



「ひゃあ…リア女王に匹敵するプレッシャー……。ゼッタイに手を出してはいけない女の部類だな……(だが、それもいい)」

無論、さまざまな女性遍歴を持つランスは、このようなタイプの女性とも関わりはあるであろう。
対処法は充分に熟知していた。

「あの久瀬さんを、ここまで有無を言わせないのは過去にも未来にも彼女だけだと思います…」
「そ…そうなんですか……」

一方ロックは、その香里の凄まじさをミクに説明をしておく。
久瀬が傲慢不遜なことはミクも充分に熟知してはいるが、その久瀬に反論も許さない女を目の前にし、改めて驚嘆するのみであった。


「あの人コッワーイ♪」
「…テメェも別な意味で怖ェよ…」

カードから勝手に出てきて、香里の恐怖を楽しげに見る煉華であったが、キースは触らぬ神にたたりなしとばかりに煉華に毒づく。
まったくもって外野はなんとも呑気なものである。



そんな外野をまったくもって無視し、香里は先ほどまでに起こった出来事の『愚痴』を久瀬にぶつける。

「『諸悪の根源』とかいうヤツらかどうかは知らないけど、つい先日、『ノンマルト』って種族があたしたちの世界を『侵略』しようとしていたのよ!!」
「…うむ」

言葉を荒げる香里に対し、それを大人しく聞く久瀬。
香里の話はまだまだ続く。

「そこであたしは『世界の平和を守るため』、機動六課部隊を動員して時空管理局の戦艦一隻で偵察に行かせたわけ」
「…(随分と人員の無駄遣いを…)」

久瀬は心の中で毒づきながらも、あえて相槌を打ち香里の話を続けさせる。

「そうしたら、ヤツら突然『銛』で攻撃してきて、ウチの隊員二名が『殉職』したワケ!!!」
「…それは…随分とかわいそうに……」
「それで今度は『世界防衛』の危機意識を高めるために情報公開しようとしたんだけど、あのコチコチのクソ石頭の持ち主たち(最高評議会)!!事前に政府やマスコミに根回しして、情報の隠蔽に奔ったのよ!!!」
「……まあ、その事実が知れれば、時空管理局の権威はガタ落ちだろうからな……」

自分の話により胸を熱くしたのか、香里の息は荒くなる一方である。
要約すると、ノンマルトの『世界侵略』の行為に対し香里は時空管理局に『偵察』に向かわせたものの、ノンマルトの反撃に遭い隊員二名の命を失った。
香里はその情報公開に出ようとしたものの、権威が地に落ちることを恐れた最高評議会は、その情報公開の一切を禁止したという話である。

息を荒げる香里の話はまだまだその話は続く。

「それよりなにより一番許せないのは!!!あたしのたった一人の大切な妹『栞』が、その情報を『ネット』で流したり『DVD』に焼いてワザと街に置いたのを、『機密漏洩』だのなんだのワケわかんないこと抜かして『逮捕』しようとしてんのよ!!!」

「……(というか、栞君のことで怒っているのではないのかね……)」

…香里の怒りとは対極的に、久瀬の考えは至極もっともであり的を得ていた。
そして久瀬は、ただ冷静にノンマルトと時空管理局と香里に呆れ果てていたのだった。



「とにかく!!!『ノンマルト』は間違いなくその『諸悪の根源』とグル!!!確定ッ!!!」

それもまた極論な話であるが、妹を国賊扱いされたシスコン香里には、既に冷静に物事を考えるだけのゆとりは持ち合わせていなかった。

「まずは『ノンマルト』の攻略と、無能な『時空管理局』の解体、そして栞は無罪!!異論はないわね!!!」

そして、全てを勝手に結論付けた香里は、有無を言わさず行動に移ろうとする。



「……(まあ、確かにノンマルトの動向は気になるが―――)」



1・ならば、美坂君とともに『ノンマルト』攻略に向かおう!
2・まずは栞君を保護してからだな。
3・当面の敵は『諸悪の根源』!無駄な時間は割いていられない!







と、いうわけで再びパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬以外の二人のメンバーを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『バンデット・キース』『涼宮ハルヒ』『キョン』『中野梓』『四十宮綴子』『初音ミク』『ランス』の10人です。



[15824] 第五十二話 …言峰の悪は時として暴走する
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/21 12:57
2・まずは栞君を保護してからだな。



「とにかく!!!『ノンマルト』は間違いなくその『諸悪の根源』とグル!!!確定ッ!!!」

それもまた極論な話であるが、妹を国賊扱いされたシスコン香里には、既に冷静に物事を考えるだけのゆとりは持ち合わせていなかった。

「まずは『ノンマルト』の攻略と、無能な『時空管理局』の解体、そして栞は無罪!!異論はないわね!!!」

そして、全てを勝手に結論付けた香里は、有無を言わさず行動に移ろうとする。



「……(まあ、確かにノンマルトの動向は気になるが、まずは栞君を保護してからだな)」



*パーティ…久瀬・キース・綴子






そういうわけで、香里の妹、詩織を保護するためにやってきたのは久瀬のいた元の時代(1999年)。
ここは美坂家の前である。
季節は北国の夏らしく、なぜか妙に蒸し暑い感があった。

「しっかし、あの美坂とかいう女のシスコンっぷりはビョーキだぜ…」
「まあ、今に始まったことではない……」

その香里のシスコンっぷりに、キースはドン引きし毒を吐く。
対する久瀬の言葉は、まるで「僕はそれを毎日見てきたのだよ」と言わんばかりである。

「私の知ってる探偵だと、逆に『妹が病気』の人もいるけど…」

綴子の知っている探偵とは、『上野連続猟奇殺人事件』を解決したことで有名となった探偵、『高城秋吾』のことである。
彼はこの事件の後、相棒であり依頼人であった女優、『高城(旧姓・上月)和菜』と結婚した。
これだけを聞けば大変羨ましい限りではあるのだが、彼は上記の事件で死に掛けたり冤罪による拷問を受けたりと散々だった挙句、六識~間宮猟奇殺人事件にも巻き込まれるという不幸っぷりも見せている。
もっとも、この事件の後に和菜との間に一子を授かることとなったのだが。

閑話休題、綴子の言う『病気な妹』とは無論、高城秋吾(カルタグラ)の妹『高城七七』のことである。
彼女はいわゆる天才型であり、上野連続猟奇殺人事件の核となる部分を実質解決したのは彼女といっても過言はない。
しかし高城七七はブラコンを超越した『ド変態』であり、自分の興味のためなら倫理観など歯に詰まったクラッカーのカスほどにすら思っていない。
既婚者の兄に自分のヌード写真を送りつけたりもするが、このようなことなど序の口であり、それがより高城秋吾の不幸っぷりに拍車をかけていた。

「まあ…彼女(高城七七)は有名人物だからな…。ぜひとも仲間にしたいという気持ちがあるが、同時に興味本位で状況を悪化させかねない危険性もある……」
「アンタがそういうってこたぁ、相当なんだろうな…」

まあ、高城七七は、ある意味では久瀬と同類であり、天才と変態は紙一重であるともいえよう。
久瀬も一応はその危険性は熟知しており、キースは久瀬のその言葉だけで、高城七七が相当の『ド変態』であることを理解したのであった。



「わたしは?私はっ?」

一方、キースのカードから勝手に出てきて話しに混ざるカードの精霊、煉華。
そういえば、彼女も一応は、紅麗の妹(厳密に言えばクローン)ではあった。
…ただし、こちらの場合は近親憎悪やら殺意やら父への独占欲やらが目立ち、こちらも常軌を逸した関係ではあった。

「ああ、ここにもイカレた『イモウト』がいたな」
「ひっどーい!!オジちゃーん!!オニイちゃんがいじめるー」

キースはげんなりとしながらも一応は構ってやる。
それでも毒づかれた煉華は、頬を膨らませながら久瀬に助けを求める。

「まったく!こんなに可愛い子をいじめるとは、不届きなアメリカヤンキーだ」
「オレが悪いのかよ!!!」

煉華に泣きつかれキースを責める久瀬に、仕方なくキースは折れるしかなかった。
というより、久瀬は全般的に子供には甘い。

「友達のゆかりん(時坂紫)はすごく出来た妹なんだけどね」
「違う意味で彼女も仲間にしてみたいものだ」

そして久瀬は、女にもてないくせに色を好むため救いようはない。
所詮はランスと同類の人間であった。







コントのようなやり取りはさておき、ようやく美坂家に入る三人。

美坂栞!!
彼女は久瀬より一つ年下の女の子であり、ショートボブが特徴のどこか幼さを残す少女である。
栞は幼い頃から体が弱く、控えめで目立たないが意志は強い。趣味でスケッチをするが、人物画は苦手であり、また、もぐら叩きをやっても一回も叩けないなど反応速度が非常に鈍いなど、典型的な運動音痴であることも夙に有名である。

そしてここは栞の部屋。
漫画本やらポテトの空き袋やらアイスの空き容器やらスケッチやら画材やらスクリーントーンが部屋中に散らかっており、なんとも引きこもりを髣髴させるような部屋であった。

「あ、久瀬さん!お久しぶりです」

その部屋の真ん中で栞は久瀬に挨拶をする。
しかしその様相は、炬燵に当たりながらバニラアイスを食べるという、なんとも贅沢かつズボラな出迎えであった。

「…こ、これがいわゆる『ジャパニーズ・フ・ジョシ』ってやつか…」
「戦後日本も50年以上経てばこうもなるのね……」

その栞を見るや否や、唖然とする米国人キースと戦後の昭和人綴子。
キースは噂では聞いていた『腐女子』を見ての『大和撫子』の相違にカルチャーショックを受け…
綴子は、未来の日本の女性がこのようになってしまっていることに、ショックを隠せないようだった。

「そんなこという人嫌いです」

栞はそうつぶやくと、重い腰を上げ炬燵から出てきて久瀬ら方に近づいてきた。
その服装は、ほとんど寝巻き同然の格好であり、それがより、彼女の『腐女子』感を漂わせていた。

「…まあ、久瀬さんがここに着たってことは、たぶん私を保護しにきたんですよね?」
「ああ、そのとおりだ」

しかし、さすがは聡明な栞である。
彼女は芸術及び運動音痴ではあるが、その頭脳は姉の香里に匹敵するものがあり、ことの全ての事情は察知済みであった。

「でも、お姉ちゃんも『バカ』ですよねえ」

そして、その事情を理解した上で、姉の行動を批判する栞に「…その上クレイジーだがな」とキースは心の中で毒づく。

「ノンマルトの武力による攻略、時空管理局の解体なんて、そんなの一時しのぎに過ぎないと思います」
「君はさすがに頭がいいな。まあ、確かにその通りなのだよ」

栞の考えと久瀬の考えは一致していた。
仮にここでノンマルトの攻略及び時空管理局の解体が出来たとして、それが次のステップに繋がるかといえば答えはNOである。
これで『諸悪の根源』の脅威が消えるというわけではないし、時空管理局に代わる監視者を作り出すまでに、再びノンマルトのような第三勢力が生まれないとも限らない。

「もっと、使えるものは使える……久瀬さんはそう考えていると思うのですが…」

栞は久瀬の考えを代弁するかのように、その解答を述べる。

「無論…。時空管理局は解体はしない。あの権威があるだけである程度の時空犯罪は防げているのも事実だからな。まあ、手は既に打ってある…」

「「手ェ……!?」」

そう、久瀬は時空管理局はあくまで抑止力として、自分の手駒として利用するつもりでいた。
そして、香里が動く前にすでに次のフェイズへ移行していたのである。
無論、そのことをまったく聞かされていない綴子、キースはただただ驚くのみであり、その様子を見て栞はほくそ笑んでいたのだった。











…ここは数年後の日本。

ここはいずことも知れぬ部屋。
しかし、その空気はどの世界よりも凍てついており、空間の重圧は計り知れないものがあった。

テーブルには3人の…この部屋の威圧感に相当する人間の顔ぶれがあった。



「それでは、ワタシはこの完成したソリッドビジョンの技術で、ミスター久瀬、ミスター海馬とともに『四天王』追撃に当たりマス」

男の一人は、我々の知っている男、ペガサス・J・クロフォードであった。
彼は今は、完全に久瀬サイドの人間であり、あくまで時空の平和のために動いていた。

「ああ、そうしてくれ」

神父風の男がそう声をかけると、ペガサスは押し黙り、少し何かを考える素振りを見せる。

「どうしたの?ミスターペガサス君」
「イエ……少し考え事を……」
「…そう」

その様子を多少不審に思った、警察官僚服を着た岸辺一徳風の男はペガサスに声をかける。
するとペガサスは、神妙な顔つきで答えたあとこの空間を去った。



そして、彼の気配が完全に消えた後、神父風の男は小さな笑みを浮かべた。

「しかし、ミスターペガサスの動きには気をつけたほうがいいかもしれませんね、『小野田官房長』」

そう、彼の対談の相手こそ、警察庁長官官房室長『小野田公顕』である。

「そうね。なんったって、彼に心理戦で勝てる人間はそうはいない。でも、あるいは善悪の感情が飛んでいる君なら勝てるかもしれない。『言峰君』」

そしてもう一人の神父風の男こそ、第五次聖杯戦争の監督者であり黒幕と呼ばれるべき男、『言峰綺礼』であった。

「フフ…私でも勝てるかどうか……」

綺礼は謙遜しながらもうすら笑っていた。



「それはそうと、あの久瀬君が、随分と面白い提案をしてきましたよ」

小野田官房室長は久瀬たちの同行を監視しているようであり、そこで得た情報を綺礼に教える。

「久瀬……あの埋葬機関でも悪名高い『蒼崎青子』と繋がっている男ですか。彼の資料を読ませていただきましたが、実に興味深い男だ」

久瀬という男は、協会、埋葬機関でも危険因子として、蒼崎青子とともにマークされているようであり、その『危険さ』が悪を美徳とする破綻者、綺礼の興味をそそっていた。

「…で、その彼が、どのような『面白い提案』をしてきたのですかね?」
「ま、一言で言えば『時空管理局の粛清』…かな」
「それは随分と『面白い』」

綺礼が質問すると、小野田はそれを至極簡潔に説明する。
その答えを聞き綺麗は、ますます興味を抱かずにはいられないようであった。

「今、世界では『ノンマルトの侵略行為』とその『機密漏洩』に対して、すごい問題になってるでしょ?しかも、時空管理局及び政府はその事実を隠すことに躍起になって、そのノンマルトの侵略行為は一切咎めず、機密漏洩…いや、『内部告発』の方が正しいのかもね…その犯人探しと制裁に明け暮れる始末。とんだ『おばかさん』でしょ?」

対する小野田は、彼もまた時空管理局や政府の対応を好ましく思っておらず、それを無能呼ばわりしせせら笑う。

「随分と不純な悪意に満ち溢れている…か」

綺礼はというと、この保身のための悪意を潔しと思っているのかいないのか、事も無げにつぶやいていた。

「…そんな『おばかさん』たち、僕たちならほっとくんだけどね。でも、久瀬君は『評議会』を粛清して、時空管理局を立て直そうとしているわけ」
「…まあ、人は権威には自然とひれ伏す。その存在だけでも時空管理局には価値があると思ったのでしょう」
「ま、それでも本気でメスを入れたがるのは、あの男か『杉下』くらいだろうね。でも、手段を選ばないのが久瀬君と杉下の違うところかしら。久瀬君、どうやら次元犯罪者『スカリエッティ』に評議会を『粛清』するよう吹き込んだらしいね。二虎共食の計ってヤツかな」

小野田は、久瀬の打った『手』を次々と綺礼に語る。
そして……

「でも、それだけだと不十分だと思わない?」

その久瀬の取った強硬手段ですら、『不十分』と豪語する。

「この作戦、少しでも情報が漏れたら全部パァ。それじゃ、まったく意味がないじゃない。僕の読みでは、おそらく『スカリエッティ』は最も信頼を置いているナンバーズ『ドゥーエ』に託すだろうけど……」

綺礼はこれから騙られるであろう小野田のえげつない作戦を、ただただ無言で聞いていた。

「ドゥーエは評議会抹殺後にミッド主義者の『レジアス』も暗殺。その後に『ゼスト』との戦いで彼女は殉職。当然、犯罪者のスカリエッティは逮捕されるの。でも、その頭脳は惜しいから、しばらくは生かしておいてあげるようにね」

しかし小野田は、それさえも、久瀬の心の裏で『考えていた最も効率のいい手段』であったと述べる。
そして綺礼は、それを自ら手を下せない久瀬を偽善であると定義した。

「僕はその後に少しだけシナリオを加えたんだけど、このあと『ユーノ』って人(いや、動物かなぁ)を引っ張ってきてさあ、脳内フォーマット化の後に地球の本棚にシンクロさせてみようと思うんだ。これで地球圏の平和は時空管理局によって安泰というわけ。『ノンマルト』にも『諸悪の根源』にも手出しをさせない。面白そうでしょ?」
「……ええ。非常に……」

小野田官房長の善とも悪とも取れないその作戦に、一言、感嘆の意を伝える綺礼。
しかし彼は、同時に別のことを考えていた。



「(……この『ノンマルト攻略』の後、久瀬君は偽善を捨て、『純粋な正義』に覚醒して欲しいものだ。誰もが直視できぬ光のような……汚れなき正義……。それこそが新たなる『アンリ・マユ』の誕生となるかもしれない……ははははっ!!!)」













場面は戻り、ここは栞の部屋。

「…まあ、内乱の後に時空管理局は、魔導至上主義の廃絶、階級制度の厳正化により、犯罪検挙率の上昇、裁判の公平性、案件対応能力の強化などの方向に向かうであろう」

久瀬は三人に、時空管理局の粛清の結果、得られるであろう果実を得意げに述べていた。

「で、でも、そのために人が死ぬのって……、それじゃああの『葛城シン』先生と変わらないんじゃ……」

しかし、その粛清で何人もの人間が犠牲になるのであろうか…
綴子は久瀬のその行動を、かつて自己満足のために多くの人間を殺め、自分もその犠牲とした『間宮心璽』と重ねてしまい、あまり奨励は出来なかった。

「そのとおりさ。軽蔑してくれてもかまわない」
「………」

しかし、久瀬はその謗りすらも受け入れる覚悟を見せる。
誰かが汚名をかぶらなければ、この時空の改革は実現できないのだ。
その久瀬の毅然とした態度に反論できない綴子。



「とりあえず、私はどうすればいいんでしょうか?」

沈黙の空間の中、栞はあえてそれを壊すよう割って入ってくる。
その平静な態度から見て、栞は久瀬の行為には一定の理解は示しているようだった。

「まあ、君はしばらくはえいえんの世界で匿うことにする。(そして、その後は時空管理局のある男が、『自分が流出した』と名乗り出て、事情聴取を受けることになっている)」
「わかりました」

その久瀬の内心を見透かしているのかいないのか、躊躇いなく返事すると、栞はすぐに旅支度を始める。
しかし、その旅行カバンの中に薬はともかく、漫画本、お菓子を大量に入れようとするあたり、どことなく緊張感にも欠けていた。



「しっかし、そんな作戦本当に成功するのか?相手はペンタゴンに匹敵するような組織だろ?奇跡でも起きねえ限り……」

キースはあまりにも大きすぎる国家レベルの作戦に、一抹の不安を隠し切れない。
いくら久瀬といえども、相手が巨大組織ではどうしようもないのではないかと考えていた。

「知ってますか?奇跡って起きるから奇跡っていうんですよ」

それでも栞は、半信半疑のキースに希望ある言葉をかけていた。
病床に伏せていたころの栞からは考えられない、非常に前向きな姿がそこにはあった。



「僕らはそのまま『諸悪の根源』を倒すため、平行世界へ行くための『ロストテクノロジー』を探しに行くが…、その一方でノンマルト攻略、時空管理局の監視が必要だ。ノンマルト攻略はキョン君、時空管理局の監視はランス君を中心にパーティを編成しよう」

そして久瀬は次のフェイズに移行、パーティを三つに分割する作戦に出た。

「あのランスと組む女、『ヤラれちまう』んじゃないのか?」
「元気があっていいではないか」

キースは下世話な心配をするが、久瀬はなんとも無責任な発言をする。
そのような状況に綴子は「私、こっちのパーティでよかった……」と本心で思っていたのであった。







と、いうわけでキョンとランスのパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬・キース・綴子以外の二つのパーティを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『涼宮ハルヒ』『斉藤一』『中野梓』『初音ミク』の7人です。



[15824] 第五十三話 …侵略!ノンマルト
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/21 17:25
「僕らはそのまま『諸悪の根源』を倒すため、平行世界へ行くための『ロストテクノロジー』を探しに行くが…、その一方でノンマルト攻略、時空管理局の監視が必要だ。ノンマルト攻略はキョン君、時空管理局の監視はランス君を中心にパーティを編成しよう」

そして久瀬は次のフェイズに移行、パーティを三つに分割する作戦に出た。

「あのランスと組む女、『ヤラれちまう』んじゃないのか?」
「元気があっていいではないか」

キースは下世話な心配をするが、久瀬はなんとも無責任な発言をする。
そのような状況に綴子は「私、こっちのパーティでよかった……」と本心で思っていたのであった。







ノンマルト攻略ルート

パーティ…キョン・ハルヒ・梓







ここはどこぞかの海。
太陽は飽くことなく大地を照らし続け、これでもかというくらい夏を主張する暑さ。
本日はまさに、ちょうどいい海水浴日和だった。



「キョン、オイル塗って」

こと彼女…ハルヒはノンマルト攻略のことを忘れてるのではないかと思うくらい、リゾートを満喫。
ビーチパラソルを翳し、アウトドアチェアに寝そべり、そして豊満なスタイルを主張するビキニの水着姿でリラックスしていた。

「…本当に、これから戦う気があるんでしょうか」
「……た、たぶんあるんじゃないのか……?」

梓ちゃんは不安げに、俺に意見を求めるも、正直、自信はない。

そんな彼女はハルヒと違い水着姿にもならず(あるいは、スタイルにコンプレックスでもあるのだろうか?)、至って真面目に海を凝視し警戒をしていた。
なんとも真面目で仕事熱心であろうか。
どこぞのハルヒに爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいものである。



そんなグダグダなときに限り、事件は起きるものである。



「許さないでゲソ…許すまじ人類…私がお前たちの腐った地上を侵略してやるでゲソ!」

イキナリ俺らの背後から…
正確に言えば、海の家『れもん』方面から来たような…
とにかく、白い服、白い頭巾(?)、触手のような髪の小さな女の子が、俺たちに…というか全世界に物騒な宣戦布告をしてきた。






「死ね!ノンマルト!!!」



ゴッバオオオオオン!!!



「ギャアアアア!!!」

瞬間、アウトドアベッドでくつろいでいたはずのハルヒがどこから持ってきたのか(おそらくは久瀬から提供されたと思われる)出会い頭の『バズーカ』を少女に向けてブッ放してきた!!!
…い、いくらなんでも唐突過ぎというか、問答無用というか、とにかく少女にとってはあんまりすぎる不意打ちであった。



!!!!!!



なんとか少女は間一髪、紙一重でよけたものの、弾は爆音と共に海の家に直撃していた。

「な、なにをするでゲソ!!!」

少女は激昂してハルヒに攻め寄る。
まあ、命もろとも吹っ飛ばされそうになったのだから、その気持ちは分からなくもない。



「えいえんの世界全員に告ぐ!ノンマルトの海上基地は完全に粉砕した。我々の勝利だ!海底も我々のものだ!」

一方、激昂する少女など意に介さず、ハルヒはまさに勝利の咆哮を揚げる。
問答無用とはまさにこのこと…あまりにもヒドすぎる……



「な、なんなのよ!!!また『イカ娘』の仕業か!!!」

ちょうどそのとき…
廃墟と化した海の家から、やけに強気なショートカットの少女がすごい剣幕で少女のところへ向かっていった。

「おい!『イカ娘!!!』」

そしてその少女は、怒りをこめた声でその少女の名(?)を呼んだのであった。

「ち、違うでゲソ栄子!!大体、私がこんな兵器なんて持ってるわけないじゃなイカ!!」

イカ娘と呼ばれる女は、ショートヘアの女、栄子に対し必死に弁明をする。

「ん…い、言われてみれば確かに……」
「こいつらがやったでゲソ!!!」

そして、なんとか誤解を解いたところで俺たちを指差し、怒りをあらわにした。



「え?あ、その……」
「実は……」

完全にしどろもどろの俺と梓。
とてもではないが、この状況に弁解の余地などない。
そして、当の本人であるハルヒはというと……



「そうよ。私『たち』がバズーカ撃ち込んだのよ」

完全に俺たちを巻き込んでの、清清しいまでの宣戦布告をする。
大胆不敵かつ傲慢不遜…まさに今のハルヒを表すには、充分すぎる言葉であった。

「お、おい…イカ娘」
「栄子は手出し無用!!愚かな人間どもは、私が粛清するでゲソ!!!」

強気な少女…栄子がイカ娘に話しかけるも、彼女はそれを抑え急激に髪の毛を伸ばしてきた…

「きゃああああ!!」
「…って、本当に触手か!!?」

触手のような髪は、本当に触手であった。

「面白いじゃない!!!」

そのイカ娘の異様な光景を見て完全に怯む梓と、あくまで好戦的な態度を一切崩さないハルヒ。
尚、梓のために弁明しておくが、一般女性の対応としては、梓のほうが正しいと思う……たぶん……



閑話休題…
ハルヒはまたどっから持ってきたのかアサルトライフルを構え、一方のイカ娘は触手を無数に伸ばし臨戦態勢を取っていた。



刹那だった…



「あら、イカ娘ちゃん、新しいお友達かしら?」

「!!!」

今度は、おっとりとした黒髪セミロング、それでもって細目の女性が現れる。
すると、さっきまでハルヒを倒そうかと激昂していたイカ娘の身体が、急に「ビクゥ」と震え硬くなっていた。

「ち、違うんでゲソ!!悪いのはあいつらで、私は何もしてないでゲソ!!!」

そして今度はその女性に対し弁明をし始める。
口調も早口となり、相当にイカ娘は彼女を恐れているらしい。
そんなイカ娘の弁明を聞いているのかいないのか、彼女は徐々にそのイカ娘の方に近づいていく。

「ヒィィ…」
「あ、姉貴!!どうやらイカ娘のいってることは本当で……」
「……」

栄子がイカ娘のフォローをするも、『姉貴』といわれた人物は、それすらも介さない。

「わわわわわ!!違うんでゲソー……って、あれ?」

しかし、その『姉貴』と呼ばれた人物は、イカ娘に微笑んだだけで、それも通過して今度は『張本人』であるハルヒのところに来ていた。

「え?」

この堂々とした行動に、さすがのハルヒも呆気にとられる。
そして……


「あら、これはフランス軍の『FAMAS F1』じゃない」
「そ、そうだけど…」

そうライフルの名前を言い当て手に取った瞬間……



「!!!」
「…さっきのバズーカといい、ちょっと物騒すぎるかしら」

まったく見えなかったが…
この姉貴という人物が右手を振り下ろしたとき、すでに!!!
ハルヒのライフルはすでに真っ二つになり地に落ちていた。

一瞬、彼女の細目が開いたと思うが、それは見なかったことにしたい……

「な、何者……!?」

さすがのハルヒも、今の出来事には驚かざるを得ない。

「あら、自己紹介が遅れたわ。私は相沢千鶴です。こっちは妹の栄子ちゃん。この子はバイトのイカ娘ちゃん―――」
「はぁ……」

しかし、彼女…千鶴さんはそれさえもまったくおっとりとした態度を変えず、その上、悠長に自己紹介までする始末だった。
さすがのハルヒもこれには呆然とするしかない。



「でも、本当にこの『イカ娘』って娘、ノンマルトなのでしょうか…?」

そういえばさっきまでの出来事で忘れてはいたが、今俺たちは、ノンマルト攻略のためにここに来ていたのであった。

「さあな?まあ、雰囲気からはとてもそうは思えないが……」

梓ちゃんの問いに、俺はとりあえずはイカ娘がノンマルトであることは否定してみた。
しかし、冒頭にイカ娘のいったセリフ…

「許さないでゲソ…許すまじ人類…私がお前たちの腐った地上を侵略してやるでゲソ!」

…もしかしたら、イカ娘は本当にノンマルトの使者として、この世界を侵略しようとしているのかもしれない。
だとすると、時空管理局偵察船に衝突をし、あまつさえ『銛』を突きつけたのもこの『イカ娘』の仕業なのだろうか!!?



1・時空管理局を攻撃したのはイカ娘だろう。
2・否、結論付けるのはまだ早い!!!



[15824] 第五十四話 …涼宮ハルヒはクールに去るぜ
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/21 17:43
2・否、結論付けるのはまだ早い!!!



…もしかしたら、イカ娘は本当にノンマルトの使者として、この世界を侵略しようとしているのかもしれない。
だとすると、時空管理局偵察船に衝突をし、あまつさえ『銛』を突きつけたのもこの『イカ娘』の仕業なのだろうか!!?

否、結論付けるのはまだ早い!!!

そもそも、見た目13歳くらいの女の子に、果たしてそんなことが思いつくのだろうか?



「まあ、そもそもコイツ、地球侵略だのなんだの謳ってる割に、人類の総数も近代兵器の保有もしらなかったんだぜ。時空管理局の存在なんてなおさら知らないと思うけど」

俺がそんなことを考えている間に、今度は栄子がイカ娘がノンマルトであることを否定する。
…たしかに、その発言には大変な説得力があった。
っていうか、そんな下調べもなしに地球を侵略するなど、随分ずさんかつ無謀な侵略計画であろう。

「そうそう。それにイカ娘ちゃんがウチの店を壊したことだって、バイトしてコツコツと弁済してるし」

そして千鶴さんは、イカ娘は自分の海の家でバイトをしている話をし始める。
しかし、それを彼女の口から聞くと、なんだか強制労働させられているという気がしないでもない。

「あ、そういえばあなたたち、この店をバズーカで破壊したんだっけ…」
「「……!!!」」

その千鶴さんの思い出したような言葉に、俺と梓はビクリとする。
彼女の口調は相変わらずおっとりではあるが、細目がまったく笑っていなかった。

「(し、しらねっと)」
「(さ、触らぬ鯨にたたりなしでゲソ)」

一方、栄子とイカ娘は、触らぬ神にたたりなしとばかりに、完全に遠巻きでこちらの経過を見ているだけだった。



「そ、そういえば主犯のハルヒはっ!!?」

俺はふと、バズーカで海の家「れもん」を爆撃した張本人のハルヒの姿が消えたことに気づく。

「そういえばいませんねっ!?」

梓ちゃんも今し方気づいたようだったが、時、既に遅し。
ハルヒの姿はどこにもなかった。



「千鶴ねえちゃーん!なんか椅子にメモがあるよー!!」

すると、今度は一人の小学生くらいの少年が、先ほどまでハルヒがいたアウトドアチェアのところで大きな声でこちらを呼んだ。

「た、タケルかっ!!?」

なんと『タケル』と呼ばれた少年は、アウトドアチェアの上に一枚のメモがあることを発見していた。
俺と梓ちゃん、千鶴さんと栄子でアウトドアチェアのところにいき、そのメモを読みはじめる。



『そもそもこんなところにノンマルトがいるわけないから、先にノンマルト基地に向かうわ。バカキョンも新しいメンバー連れてあたしの後に続きなさい!!以上!!!』



*涼宮ハルヒがパーティから外れた。



「何が『以上だ』ああああああ!!!」

思わず絶叫してしまった。
自分で海の家を破壊しておいて、悪びれもなく(むしろ逃亡)、なんという手前勝手甚だしい文面だ。
栄子も「なんという命知らず」という顔つきで、そのメモと千鶴さんの顔を交互に見ている。

「うーん……困ったわねえ」

そして、口調は相変わらずではあるが、千鶴さんのプレッシャーが徐々に増しているのが俺にも分かる。
……これはまずい!!!



「ご、ゴメンなさいっ!!」

何とかこれ以上空気を悪化させないよう、梓ちゃんが頭を下げ謝罪していた。
この謙虚さと素直さを、どこぞのゴーマンチキ団長に見習って欲しいものだ。

「……その、あなたたちの海の家を壊してしまったのは、私たちが全面的に悪かったですっ!本当にごめんなさいっ!」
「……なにか、ワケがありそうねぇ」

梓ちゃんの真摯な謝罪が通じたのか、千鶴さんは相変わらずおっとりとしながらも、こちらの事情を察して、話を聞いてくれるようであった。

「し、信じてもらえないかもしれませんが、実は―――」



俺は、これまで起こったこと全てを千鶴さんに説明した。



「あらあら、それは大変ね」
「信じてくださるのですかっ!?」

意外にも、俺たちの話を千鶴さんは信じてくれるようであった。
これは思ったよりいい展開である。
もしかしたら弁償を避けられるかもしれない……というのは高望みかもしれないが、今しばらく弁済の猶予をくれるかもしれないし、もしかしたら何かの協力があるかもしれない。

「ええ。こんな有事、私たちに手伝えることといったら、貴方たちの旅に同行するくらいですけど……」
「え?」

いや、仲間になるとは聞いてはいない。
無論、この千鶴さんが仲間になれば、久瀬は戦闘要員がまた一人増えたと大喜びするではあろうが……

「私はここの建て直しをしなくちゃいけないし、タケルはまだ子供だから……イカ娘ちゃんか栄子ちゃんのどっちかを連れてくってのはどうかしら?」

「「えええええ!!?」」

しかし、世の中そんなに甘くはなかった。
俺と梓ちゃん、イカ娘の三人はこの千鶴さんの発言に驚かざるを得なかった。

「ちょっと姉貴!!!」
「それに、時間旅行なんてそうめったに出来る体験じゃないから」

反論しようとする栄子の意見など解さずに、しれっという千鶴さん。
方や栄子とイカ娘は、これ以上反論に出さないものの「そういう問題じゃない」オーラを漂わせていることは言うまでもない。

よりによって最大級の戦力を仲間に出来ず、俺と同じ『一般人』or『あまり役にたたなそうなイカ』のどちらかを仲間にしなければならないとは……

「…ハァ……覚悟を決めるか……」
「(…まてよ!こいつらの戦力を得ることが出来れば、地球侵略はあっという間にできるんじゃなイカ?)」

覚悟を決めた栄子と、これを機になんだか良からぬことを企んでいそうなイカ娘…
ある意味究極の取捨選択ではあるが―――



1・イカ娘を仲間にする。
2・栄子を仲間にする。
3・どっちも仲間にしない。



[15824] 第五十五話 …この七人以外で時間圧縮に耐え切れる人はいるのか?
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/22 00:03
1・イカ娘を仲間にする。



よりによって最大級の戦力を仲間に出来ず、俺と同じ『一般人』or『あまり役にたたなそうなイカ』のどちらかを仲間にしなければならないとは……

「…ハァ……覚悟を決めるか……」
「(…まてよ!こいつらの戦力を得ることが出来れば、地球侵略はあっという間にできるんじゃなイカ?)」

覚悟を決めた栄子と、これを機になんだか良からぬことを企んでいそうなイカ娘…
ある意味究極の取捨選択ではあるがイカ娘を仲間にする。



「え?いいの!?」

よっぽど行きたくはなかったのだろうか、栄子は俺たちの選択を聞き、喜びの意を含めた驚きを見せる。

「(よし!後はいかにこいつらを我が軍門に治めるかでゲソ)」

一方、イカ娘は何か良からぬことを考えていそうではある。
しかし、俺がイカ娘を選んだのは、そういうバイタリティが良い方向に向かうかもしれないという、当てになるのかならないのか分からない考えからである。

「ほ、本当にいいんですか…?」

とはいえ、あまりに不確定要素は大きく、さすがに梓ちゃんは不安の色を隠せない。

「うーん、少し不安かもしれないけど…」
「大丈夫!任せるでゲソ!!」

さすがに千鶴さんも心配そうではあったが、完全に乗り気のイカ娘はその不安を払拭するかのように、元気よく大丈夫と言い張る。

「そう…じゃあ、頑張って地球の平和を守ってくださいね」
「気をつけるんだぞ!イカ姉ちゃん!!」

「(愚か者め…!逆に侵略されるのは貴様ら地球人でゲソ!)」

そして、旅出を応援する千鶴さんとタケルをよそに、イカ娘はおそらくは世界侵略などとくだらないことを考えているのであろう。

「あ、ある意味、久瀬さんが気に入りそうな逸材ではありますね…」

そう、梓ちゃんが言うように、たしかにこのイカ娘は、久瀬が気に入りそうな人材ではあった。

「そうだな…。ニュータイプとかなんとか、ああいうのはやたらエコひいきするからな、あの人は……」

俺は半ばいい加減に答えたのだが、そのとき、俺は自分の選択がとんでもないことを引き起こす前兆だということに早く気づくべきだった…。



「まあ、こうしていても仕方がない。なんとかハルヒと合流するか…」

とりあえず、行動を起こさなければ何も始まらない。
まずはノンマルト基地に向かったハルヒと合流し、そこからどうするか決めなければ……

「でも、ノンマルト基地ってどこにあるんでしょうか…?」

…その梓ちゃんの当たり前の疑問で出鼻をくじかれる。
たしかに俺たちは、ノンマルトの基地の場所など知る由もない。
そもそもハルヒがそれを知っているのかどうかも疑わしいものがある。

「そういえば、昔、ウルトラ警備隊の『キリヤマ』とかいう男が、海底開発のために海底に住む民族を滅ぼしたと聞いたことがあるでゲソ」

すると、何かを思い出したかのように、イカ娘が俺たちの話の間に入ってくる。

「知ってるのか!イカ娘!」

俺は藁にも縋る思いでイカ娘を問い詰める。

「…たしか、その一族は『ノンマルト』だったんじゃなイカ?」



「「それだ―――ッッ!!!」」
「わわわっ!!!」

まさに瓢箪から駒…
俺と梓はそのあまりにも『ピンポイントな有力情報』に思わず声が大きくなる。
まさかのイカ娘の有力な情報により、俺と梓、イカ娘はノンマルトの基地へ向かいハルヒと合流することにしたのだった。



イカ娘が仲間になった!













そして、再び闇に包まれた謎の部屋。
会談しているのはやはり、綺礼神父と小野田官房長だった。



「…どうやら、彼らはノンマルト攻略に移ったらしいですね」

相変わらず久瀬たちの行動の監視は続いているのであろう。
綺礼は現状況を小野田に報告する。

「まあ、これでノンマルトが駆逐できれば、また一つ脅威が減るね」

どうやらキョンたちが起こした出来事も、予定調和の一つであったらしい。
ここでノンマルトが滅ぶことは、小野田たちにとっては願ったり叶ったりであった。

「それより、今回の『諸悪の根源』の起こす時間圧縮……こっちの方はどうなるのかな?」

むしろ、今の小野田たちの脅威も『諸悪の根源』による時間圧縮であり、もし久瀬たちがそれを阻止することが出来ないのであれば、自分たちでそれを阻止する必要があった。
…あるいは、久瀬たちさえも手駒として扱い、用が済めば『諸悪の根源』もろとも葬るつもりなのかもしれないが。

「とりあえず、『使い』を一人出しておきました。まあ、信頼できる者なので、こちらの有利になるように動いてくれることでしょう」
「君がいうならそのとおりでしょう」
「信頼を寄せていただき感謝しています。フフ…」

小野田と綺礼…
彼らがどこまでの信頼関係があるかはわからないが、お互い能力は認めている模様であり、綺礼が使いを出したということで、とりあえずは小野田の憂いが一つ消えたようだった。


「ところで、この時間圧縮が起きたとして、無に帰ることなく耐え切れる生物…どのくらいいると思う?」

再び、突如出てくる小野田の問いかけ。

「…さあ…そのような生物、皆目見当もつきませんが」

無論、綺礼でなくともそのような人物、探し出すほうが難しいであろう。
しかし、この小野田の問いかけは、明らかに答えを知っていますよ的なものであり、綺礼の返事を聞きその口元がニヤリと笑う。

「僕の知っている限りだと七人……まずは男塾塾長『江田島平八』、次に地上最強の生物『範馬勇次郎』、ゴルゴ13『デューク東郷』、真祖『アルクェイド・ブリュンスタッド』、狂った教頭『不堂影獅』、ロシア首相『ウラジーミル・プーチン』、そして、邪夢のカリスマ『水瀬秋子』…ってとこかしら」

そして小野田は淡々と、しかし得意げに語る。
これらの人物は、逆に知る人にとっては有名すぎて、かえって綺礼の頭にはパッとでてこなかったのであろう。

「聞きしに勝る豪傑たちだ。確かに彼らなら時間圧縮を耐え切るのも『造作もない』だろう」

これが、小野田の挙げる7人に対する綺礼の率直な感想であった。
しかし、なおも小野田の話は続く。

「彼らを味方にさえつけることが出来れば、時間圧縮を止めることも『造作もない』ことだと思わない?」
「…それは面白い…。しかし、それは果たして可能なことなのか?江田島やオーガ、プーチンがこちらにつくとは思えないし、アルクェイドは今はこっち側についたとしても、所詮は久瀬君側の人間。水瀬秋子は完全に中立を保っている……」

たしかに小野田の発想は一見して理想的展開ではある。
しかし、そのために切れるカードはあまりにも少なすぎる。
綺礼にとっては、すでに3枚のカードは当てにできず、1枚は完全に久瀬サイド、そして1枚はどう転ぶか分からず安心しては使えないカードである。

「でも、『不動影獅』は既に政府側の人間。ゴルゴ13は以来交渉中だし、二人つけば充分でしょ」

それでも小野田は残りの2枚のカードがあれば、戦況はひっくり返ると断言。
彼はそのまま、諸悪の根源と久瀬、両方を葬り去るつもりなのだろうか……?



「(所詮は俗物……か。時間圧縮の世界…何とか見てみたいものではあるが……。そういえば、時空管理局のほうは、ランスという男が監視に向かっていたが……、そちらに『使い』を送ってみるのも一興だな……)」

そして綺礼の心中もまた、誰にも計り知れないものがあった…。










と、いうわけでランスのパーティ選びです。
感想掲示板にて、久瀬・キース・綴子・ハルヒ・キョン・梓・イカ娘以外のパーティを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『斉藤一』『初音ミク』の5人です。



[15824] 第五十六話 …涼宮ハルヒは野球選手がお好き?
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/22 00:35
ここは久瀬たちの時代の栞の部屋。
久瀬は別時代にいるハルヒと、亜空間よりつながる携帯電話(以前、春原とその妹を会話させたようなもの)で連絡を取り合っていた。

「まあ、そういうわけで、『ダルさん』とノンマルト攻略に向かってるわ」

どうやらハルヒは道中で知り合った男と一緒らしく、既に二人でノンマルトに進行中であるらしい。
ちなみに『ダルさん』が誰であるのかは、野球音痴の久瀬は良く分かってはいなかった。

「わかった。しかし、あまり深追いはするなよ。あと、パパラッチとライフライナーズの追撃にも気をつけるように……」

一応、久瀬はハルヒのことを気遣い、ノンマルトのほかにも注意すべき敵がいることを忠告する。

「わかったわ!」
「それでは、楽しいデートタイムを」

心配無用とばかりに言い切るハルヒに、久瀬は紳士的な言葉をかけて電話を切った。

そしてコンタクトを終え、ミルクティーを一口飲む久瀬。

「まあ、これでキョン君が嫉妬の力で覚醒すれば面白い展開ではあるのだが……」

どうやら久瀬は、人の色恋沙汰ですら、己が力に利用しようとしている。
まさにこの男、非道極まりない。

「でも、あのキョンが嫉妬なんてするか?逆ならありえるけどよ」

しかし、キースの疑問はもっともである。
たしかにキョンは、よっぽど切羽詰った状況でない限り、無理してでも平静を保とうとする。
そんな男が自分の中にある嫉妬という感情を、認めようとするであろうか?

「…しかし、涼宮君が『キョン君の嫉妬』を望むのであれば、どう転ぶかは分からない……フフ……」

それでも久瀬は、この場合におけるハルヒの能力の発動率を確信し、ほくそ笑むのであった。



「でも、この『ダルさん』って、すんごく格好いいじゃない!!こういうお兄ちゃん欲しかったなあ……」

一方、綴子はどこから持ってきたのか、プロ野球名鑑をみて『ダルさん』のイケメンっぷりを高く評価する。
まあ、戦後の日本人にとってのハーフ人は、特に見慣れた日本人から乖離してかっこよく見えるのであろう。

「私はTDNの方が好きですけどね」

一方の栞は、完全に趣味がぶっ飛んでいた。
さすがは腐女子である。

「…変な趣味」
「そんなこという人訴訟も辞さないです」

さすがの綴子も、栞の趣味に毒づくが、栞はそれに対してはネタとも取れる反論をするのであった。







閑話休題、時空管理局監視ルート

パーティ…ランス・ロック・ミク







…ここは次元の狭間……

クロノトリガーにでも出てきそうな青と黒の渦の中、鉄屑と化した戦艦が一隻と、それを眺めているランス、ロック、ミクの姿がそこにはあった。



「久瀬に監視を頼まれたとたん、この有様かよ……やるきなくした」

指令を与えられてやってきたとたん、目の前はただのスクラップである。
まあ、普通に意気揚々と乗り込んできたのであれば、まさに青天の霹靂、やる気もなくすであろう。
ただしこの男、ランスにやる気など最初からなかったことは言うまでもない。

「じ、時空管理局の主力級が……い、一体……!?」
「ひ…ひどすぎます……」

一方のロックとミクは、自分たちが監視すべき対象の、その凄惨たる光景に驚いていた。

「ま、まさかDrワイリーが……」

ミクは一瞬、かつては自分らを操り久瀬たちを倒そうとしていた、ワイリーの仕業を想像したのだが……



「そ…それは違いますっ!!」



ミクの考察を否定するかのようなタイミングで現れた謎の少女。
満身創痍ながらも白を基調とした服を身に纏っており、ロッドのようなものを片手にしていたその姿は、確かに魔法少女を髣髴させていた。

「だ、大丈夫ですかっ!!?」

なんにせよ、満身創痍の女の子を目の前にして、この男、ロックが平成でいられるわけがなかった。
真っ先に駆け出し、その少女の身体を支える。

「……わ、私は……大丈夫です……。それより……な、仲間を……」

謎の魔法少女はそういい残すと意識を失い、重力のないこの宙に身を漂わせた。

「まずは彼女の手当てが先だ!!」
「分かりましたっ!!」

ロックはミクに、彼女の手当てを要請する。

「……せっかくの上玉だ!ここで殺すわけにはいかねえしな」

ランスも女の子相手だとやはり張り切るようで、彼女を助ける気は大アリであった。

とりあえずロックたちは、最低限の介抱だけでもと、心もとないながらも血止めの包帯を巻き、ベッド代わりにとラッシュ(ロックマンのサポートロボット)を変形させ、そこに彼女を休ませることにした。

とはいえ、このパーティでは治療できるメンバーがいない。
久瀬もいないのでえいえんの世界との移動はおろか、コンタクトも不能である。

「ロックさんの『E缶』でなんとかなりませんか?」

E缶とは、ロボットのエネルギーを一気に満タンにするアイテムである。
ミクはそれを使って謎の少女を回復させるよう進言するが…

「それで回復するのはお前とミクだけだ。クソ…こんなときにシィルがいてくれれば……!」

ランスはそれを否定しつつ、自分が心のそこでは助けたいと思っている奴隷、シィルのことを思っていた。






「…おそらく、あの少女もあの戦艦を攻略したヤツらにやられたんだろうな……」

そして、そのことを一旦は忘れようと、ランスは鉄の塊と化した戦艦を見ながら状況を推察する。

「よくよく見ると、鋭利な刃物で開けられたような穴がたくさんあります……。これは一体……」

ロックは戦艦に近づき観察、その外壁には、外側から空けられたような穴が複数あるのを発見した。



そしてランスは、有名な元警視監に準え、次のように犯人をプロファイリングしてみた。

「…まあ、敵は20~30代もしくは40~50代の犯行。この世界の人間である可能性も否定できないかもしれないということを念頭に入れておきたい。そして男性、もしくは女性、中年、あるいは高齢者と思われる。だが若年の可能性も否定しない方が賢明であるといわざるを得ない。犯人の体型は、筋肉質でありやせ型、時々中肉中背~肥満型で、着痩せや、着太りして見える見える場合もあるということも考慮しておかなければならない。身長は140~160cm代もしくは、170~180cm代でほぼ間違いないと思われるが、140cm以下の可能性もあると考えて臨戦態勢を取るのが基本だな」

「真面目に考えてください!!!」

そのいい加減すぎるプロファイリングに怒るミク。
まあ、当たり前といえば当たり前ではあるのだが。

「どこぞのプロファイリングのプロを参考にしてみたんだがなあ」

今回のランスの場合は、参考にした相手が悪いといっても過言ではない。
しかし、いつの間に別世界の元警察OBの情報を得たのか、甚だ疑問ではある。

「でも、これだけの破壊跡があって単独の戦闘行為はあまり考えられない……。それに、不可解なのは、これだけ刃物の形跡があるのに、外部からの焼け跡が一切ない……、ビームや銃器類、魔法で攻撃を受けてないとすると……」

今度はロックが的確な犯人像を推理する。
このロックの推理を聴き、ランスは今度は真面目に犯人像が想像できた。

「つまり―――」



1・犯人は複数の騎士軍団!
2・犯人は単独の騎士!
3・ここで魔法少女を犯せと!



[15824] 猛将伝 …戦場のメリークリスマス
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/24 02:08
ここはえいえんの世界。
何か重大な話でもあるのだろうか、青に染まる無限の世界にて、久瀬の仲間たちが一箇所に集っていた。
しかし、久瀬の仲間が全員、この場所にいるわけではない。

この日は予定のある人にとっては非常に特別な日であり、この場にいるのはそのような特別な日に何も予定を入れることも出来なかった、さびしい方々だけなのである!!



そう、この日は現実世界ではクリスマス・イヴなのであった。



「全く嘆かわしい!!全時空の危機だというのに、特別な日だとのたまってラブラブこくなど言語道断!」

その寂しい人の代表格でもある男、久瀬。
サイテーすぎる人間性により、元カノの美坂香里以外マトモに相手にしてくれないのが現実であり、そんな男がクリスマスに予定が入るなど、核の雨が降ろうともありえないことである。

「……そんなこといってるから何の予定も入らないんだよ」
「カワイソーだから、ボクたちと一緒に『ボンバーマン』をやるのです」
「なんだこれは!すごく面白いではなイカ!!久瀬もやるでゲソ!!」

そんなダメな大人、久瀬に追い討ちをかけるのが、まいと梨花とイカ娘である。
サンタも信じないようなお子様たちは、しれっとした態度で久瀬にクリスマスを諦めるよう促す。

「ええい!何が悲しくてクリスマスにお子ちゃまと『ボンバーマン』などやらねばならぬのだ!!!」

子供相手にこのようなことをしているようでは、彼女など到底出来るわけがない。



「…そうだ!綴子君!君はどうせヒマであろう!君にはこれから現代の男女交際とやらを―――」

「わー!これがテレビってヤツ!?ねえねえ、お姉さんにも見せてくれないっ!!」
「いいですの」

「………」

久瀬はおそらく一人身であろう、綴子をデートに誘おうとしたのだが、戦後人の彼女はその前にまったく未知の技術である『テレビ』に興奮、感動し、そのゲーム画面にのめりこんでいた。
その光景をただ見ているだけだった久瀬の背中は、どことなく寂しげであったことはいうまでもなかった。






「ちっくしょー!!!僕もクリスマスにイチャイチャしたいー!!!」

しかし、久瀬の同類はここにいたわけで。

この男、春原もまたモテナイ男である。
彼はルックスは悪くはないのだが、如何せん、ヘタレかつ不誠実さがアダとなり恋愛戦線敗北記録をもれなく更新中であった。

「あーあ!僕も梓ちゃんたち『けいおん部』とクリスマス会したいよー!!!」

しかし、そんな夢など叶うわけもない。
久瀬たちの仲間である梓は、この春原の言葉通り『クリスマス会』にて『軽音部』の仲間たちとパーティを楽しんでいる最中である。
あわよくば誘ってもらえたのかもしれないが、プライドが邪魔をして誘われるのを待つあたりが、彼らのモテナイ原因なのであろう。



「Hey!これだからジャップはしみったれてんだよ。オレはこれからリバティーで女たちとスパンクパーティだぜ」

一方、この生粋のリア充のアメリカヤンキー、バンデット・キースは、このクリスマスはオールナイトで大人の遊びをする予定であった。
そのテンションは、日ごろ鬱憤がたまっていたからなのであろうか、普段のキースからは考えられないほどに高揚していた。

「ふん、せいぜいクラミジアに気をつけるのだな」
「おっ、お前なんか全ッ然うらやましくなんかないぞ!!!」

久瀬と春原の文句など、もはや負け犬の遠吠え以外の何者でもない。
そんな声などいくら聞いても、キースの精神的優位は絶対に変わらないのが現実である。

「HAHAHA!!なんならおこぼれの一つや二つ、くれてやっても―――」



ゴオオオオオオ!!!



瞬間、キースのデッキからは火が吹きあふれ、彼の顔面を焼き払った。

「GYAAAAAA!!!」
「オニイちゃんは、クリスマスはあたしと遊ぶの!!!」

そういってキースのデッキから勝手に出てきたのは、カードの精霊、煉華である。
彼女の額には青筋が立っており、「何が何でもゼッタイに行かせない」という炎のオーラまで漂わせている。
それにしても、なんの躊躇もなくキースを焼き払うあたり、精霊というよりは悪霊のように思えるのは、おそらくは気のせいであろう。



「それでも僕は羨ましいィィィ!!!」

この光景を見てこんなことが言える春原は、本当に病院に行ったほうがいいのかもしれない。

「……そもそも、君にはリアルな妹がいるであろう」
「ハァ!?あんなヤツただ口うるさいだけだっつーの」

妹のいない久瀬には理解は出来ないが、まあ、現実の妹なんてのはそんなものである。



「あーあ、どうせ岡崎は渚ちゃんとイチャイチャしてるんだろうし…」
「斉藤君は斉藤君で、水瀬君とデートだと。相沢君と月宮君などこれ見よがしなバカップル……僕の周りにはロクなやつがおらんではないか!!!」

ついにはワケのわからない八つ当たりをする春原と久瀬であった。



「だいたい、ロック君とミク君など、ロボットなのだからクリスマスなど関係ないではないか!!!」

久瀬の怒りの矛先は、今度はロックとミクに向けられる。
まあ、事の発端は、どこから情報を仕入れたのか、ミクはクリスマスのことを知りロックとその話をしたのが始まりだった。
別にこいつらはカップルというわけでもないが、ただ単にクリスマスの催し物自体に興味があったのであろう。
ほぼお遊び感覚でこのロボット2体はえいえんの世界より現実世界の街へ繰り出したのであった。

「…その上、涼宮君とキョン君…及びSOS団は知り合いの山小屋だか別荘だかに行くと……遭難するがよい」

彼らがいつも行事ごとにつるむのは、もはやお約束とも言える。
しかし久瀬も、ここまで卑屈だとかえって清々しいものである。



「馬鹿馬鹿しい…女など、いなければ作ればいいのだ!!!」

そんな久瀬たちに対し、自分はさもモテモテだと言わんばかりに突っかかるランス。
事実、彼はその気になれば相手などいくらでも探せるわけであり、こういうイベントにはめっぽう強い。
ただし、ランスのいた平行世界にクリスマスなる行事があるのかどうか、聊か不明である。



ゴッバオオオン!!!

「ギャアアアム」

直後、久瀬の右手から放たれた、蒼き闘気砲…『北斗剛掌波』がランスに直撃していた。

「貴様など、ランス・ヴァンス・ダンスでも踊っているがよかろう」

その一撃でランスはKO…
彼のクリスマスハーレム計画は、あっけない形で頓挫することとなった。
この男…あまりに醜すぎる。



と、まあ、こんな感じでえいえんの世界にいる久瀬パーティのロンリー組は、久瀬、春原のみとなった。
まあ、一応子供や昭和人たち(まい・梨花・イカ娘・綴子)と一緒に『ボンバーマン』を楽しむというのも一つの過ごし方ではあるのだが、それも今更というもの。

そんなこんなで彼らが取った行動とは……












「今や日本は歴史的転換期に直面し、八紘一宇の顕現を国是とするネオカノンは、一億一心全能力を挙げてネオカノンに帰一し奉り、物心一如の国家体制を確立し、以て光輝あるエロゲー界の道義的指導者たらんとす!ネオカノンは、互助相誡、皇国臣民たるの自覚に徴し、率先して国民の推進力となり、つねに基督の誕生日如きに人心を惑わされることなく、バカップルの粛清を図り、以て高度国防、国家体制の実現に努む!左にその実践要綱を提唱す!」

声の張りに勢いの感じられる、凄まじい久瀬の演説。
…どうやら予想通りの最低行動、バカップルの粛清を行おうとしているようだった。

そして……



「あの…どうして私がいるのでしょうか…?」

なんとも物腰の落ち着いたような声で不平不満を言う女性…
その雰囲気は、なんとも『おばちゃん臭さ』をそこはかとなくかもし出していた。

「フン…どうせ友達もいない君のことだ。予定など何もないのだろう『天野君』」

…そう、彼女の名前は『天野美汐』、久瀬公認の手下(?)であった。
無論、久瀬が強制的につれてきたことは言うまでもない。

ちなみに彼女に友達は、まったくいないわけではないのだが……
しかしその友達は、たとえどんなに人間の外見をして人語をしゃべれて人間と同等の知能があろうとも、所詮は『狐』であって人間ではない。
なんとも悲しい女子高生生活であった。

「勝手に決め付けないでください!!!……いえ…まあ、予定はなかったですけど……」

天野は最初こそはっきりと久瀬を否定したのだが、最後の方は、ほとんどうつむき加減で小声になる始末。
そこが彼女の限界であった。

「ならば決まりだ。行くぞ!!!」

そういうや否や、強引に天野の手を握り引っ張る久瀬。

「行くってどこへですかぁ!?」
「決まっているではないか!!バカップルどもの粛清だ!!!まずは我々メンバーがクソ忙しい中、平然とデートをしている斉藤君と水瀬君!!ロボットの分際でクリスマスを満喫しているロック君とミク君も同罪だ!!次に奇跡にかこつけイチャつく相沢君と月宮君!!あと、幼馴染にかこつけ三流ラブコメこいてるやつらもみな極刑に処す!!主に折原浩平君と長森瑞佳君、藤田浩之君と神岸あかり(+マルチ)…他にも、吸血鬼の分際でクリスマスを祝うなど言語道断!!よってアルクェイド君と遠野志貴君も有罪!!あと、経営不振の癖にイチャついてる柏木耕一君と千鶴さんもだな…鶴来屋にいくら投資したと思っているのだ!!朝倉純一君、音夢君など近親相姦極まりない!!……とかくバカップルの枚挙に暇などないが、全員粛清する!!!」
「そんな、ほぼ言いがかりでは……」
「つべこべ言うな!!出陣の準備じゃあ!!!」
「そんな酷なことはないでしょう……」

非常に不毛なやり取りをしながら、えいえんの世界から姿を消していく久瀬と天野。
おそらくはバカップルの粛清のため、クリスマスに彩られる街を暴れ回るのであろう。



「……あ、あの…僕は……?」

そして、一人えいえんの世界に取り残された春原であった。


























おまけ……

赤、緑、白などに染まったクリスマスの街は、灰色と土色のバラードへと変わっており、そこにカップルが愉しんでいたような形跡など微塵もなかった。
そして、その廃墟と化した街に響き渡るのは、大胆不敵、傲慢不遜な久瀬の演説である。

「我が忠勇なるカノン軍兵士達よ、今やバカップルの半数が我が『質量兵器』(盗品)によって崩壊した。この輝きこそ我等日本の正義の証しである。決定的打撃を受けたバカップルどもに如何ほどの愛が残っていようとも、それは既に形骸である。敢えて言おう、カスであると!それら軟弱の集団が、この日本を支えることは出来ないと僕は断言する。日本国は我等選ばれた優良種たる日本国国民が三綱五目を旨とし、初めて永久に生き延びることが出来る。これ以上バカップルをのさばらせては日本国そのものの危機である。バカップルの無能なる者どもに思い知らせてやらねばならない。今こそ日本は明日の未来に向かって立たねばならぬ時であると!ジーク・カノン!」

「「「ジーク・カノン!ジーク・カノン!」」」

久瀬の演説に続き、世のモテナイ独り者たちが久瀬を賛美、崇拝し「ジーク・カノン!!」と叫び続ける。



この様子を見て、天野は心底「私は久瀬さんに一生こき使われるのでしょうか…」と嘆息するのであった。



[15824] 第五十七話 …マリア生まれつき器用になれない
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/25 22:54
2・犯人は単独の騎士!



でも、これだけの破壊跡があって単独の戦闘行為はあまり考えられない……。それに、不可解なのは、これだけ刃物の形跡があるのに、外部からの焼け跡が一切ない……、ビームや銃器類、魔法で攻撃を受けてないとすると……」

今度はロックが的確な犯人像を推理する。
このロックの推理を聴き、ランスは今度は真面目に犯人像が想像できた。

「つまり犯人は単独の騎士!」

これがランスの推理する犯人像であった。

「どうしてですか?さっきロックさん、『単独の戦闘行為はあまり考えられない』っていってたのに」
「…まあ、なんとなくだ」

そのロックの推理とかけ離れるランスの推理に、ミクは思わず質問するも、そのランスの口から出たのはなんとも根拠の乏しい回答であった。



…しかし、それを侮るなかれ。
ランスには幾多もの戦いをこなしてきた、経験による勘というものがある。
もちろん、それが『単独犯説』における根拠に乏しいことには変わりはないのだが、それでもランスに働きかける勘は、『敵は単独』であることを何度も伝えていた。

「とりあえず、中に入ってみましょう」

ロックの鶴の一声で、パーティは廃墟と化した戦艦へと潜入することにしたわけで。







ここは廃墟と化した戦艦の内部。
さすがに中では壮絶な争いが起こっていたのか、おそらくは時空管理局の兵隊たちが放ったのであろう、魔術による焦げ跡や、敵の武器による疵は四方八方につけられていた。

それでも何故か人の気配は一切なく、死臭すら漂っていない。
これほどの凄惨な爪跡を残しながら、負傷者は愚か、いくら探索しても死体すら見つからない。
それこそ、最初からここに人などいなかったかのように……

「な、なんか不気味ですね……」

ロックの腕を掴みながら、ミクは不安を隠せずにいた。
一方のロックは、いつ敵が出てきてもいいよう、常にバスターをチャージ状態にしておく。

「時空管理局は美少女だらけだって聞いてたのに、これじゃ台無しだぜ」

随分と呑気なことを言っているランスではあったが、その実、気などは一切抜いてなく、いつ如何なるときでも剣を抜けるようにしてある。



「…クケケ」
「やはりあのお方の言ったとおりだ」

案の定、いかにも三下的なレッドアリーマーもどきの敵が数体、この戦艦内に潜んでいた。

バシュウウウウ!!!

「ランスアターック!!!」

そして、これまた案の定、ロックのバスターとランスの剣の一閃で一撃で決まる。
まあ、所詮はかませ犬であり、断末魔をあげることなくKOされた。



「…しかし、彼らはこの戦艦が攻略された後に派遣されたっぽいですね」
「…ああ。そもそもこの程度のやつらにやられたんじゃ、時空管理局なんて成立しないだろうし……」

その敵を見て、さらに考察を広げるロックとランス。

「あ…あの……私、何をすればいいのでしょうか……?」

そして、こと戦闘に関して言えば何も出来ないミクは、おどおどしながら二人に問いかける。

「俺とセッ―――」
「―――黙っててください」

ミクの問いに、ランスはなにやらよからぬことを言おうとしたが、すぐにロックが言葉をかぶせそれを阻止する。

「たしかに、今は役に立たないって自分で思ってるかもしれないけど、それでも、その声を聞くだけで………す、すごく励みになるよっ」

ミクの声は癒し系……誰が言ったかは知らないが、まあ、ロックはたぶん声フェチではないと思う。
そういえば、某4コマ漫画にて、アニメ声がコンプレックスの後輩とダミ声でDQNな先輩のラブコメがあったわけだが、それはこの話にはあまり関係はない。

「あ、あああ、ありがとうございますっ!!」

閑話休題、そのロックの言葉を受け、思わぬ不意打ちを受けたかのように、ミクはあわてながらもロックに礼を言う。
何はともあれロックの言葉でミクは立ち直ったわけであった。
けっしてミクのCPUが単純だとは言ってはいけない。



「………」

そして、そんな二人を見てランスは、どことなく疎外感を感じずにはいられなかった。



「まあ、ベタな展開はここまでにしておいて、次の通路を―――」


1・右へ行こう
2・左へ行こう
3・真っ直ぐ行こう



[15824] 第五十八話 …イスラム圏内でのアイドル崇拝は禁止です
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/28 21:14
3・真っ直ぐ行こう



「まあ、ベタな展開はここまでにしておいて、次の通路を真っ直ぐ行こう」

ランスの提案でこの十字路は真っ直ぐ行くことにする。
機械の身体で多少の耐久力のあるロックが先行し、伏兵がいないことを確認してそのまま前進。
以後、それを繰り返し、パーティはロック・ランス・ミクの順に、いつの間にドラクエのような進軍となっていた。

そしてランスは、後方のミクに向かい話しかける。

「ロックもいろいろと過去をもつ男だ。さっき君を庇ったのを、愛情だとかん違いして惚れちゃいけないぜ」

まさにそれは、モテ男ならではの意見であろう。
優しげな男は、得てして誰にでも優しいものであり、それを恋愛感情と勘違いする女性も多い。
また、それは昨今におけるラブコメ主人公の特徴の一つであり、ある意味インフレ状態とも言えるわけである。

「わ、私とてボーカロイドの端くれです。そう簡単に心を動かしたりはしないですよ」
「そのセリフ、しびれるねぇ」

一方のミクは、みんなのアイドルボーカロイドである。
特に昨今のオタクの傾向にあるものは、二次元、三次元問わず『清純派の神格化』であり、過去に男性経験のある女性キャラは『ビッチ』だの『ヤリマン』だの不名誉な蔑称を得ることが多い(ラブプラスの某キャラやかんなぎの某キャラなど)。
おそらくば、大学生ブームから女子高生ブーム、さらに今日日のロリコンの多発は『清純派の神格化』ゆえの悲劇なのかもしれない。

閑話休題、ボーカロイドは一種の偶像(アイドル)であり、特定の恋愛対象が出来ることなど誰も望んではいないだろう。
一応、ミクには自分はボーカロイドだという自覚はあるようだった。



ロックはその会話を聞いているのかいないのか分からないが、介することなく先行する。
その様子を見て、ミクは「少しロックさんを傷つけてしまったのかも」と、少し自意識過剰なまでの心配をする。
まあ、ロックはまったく気にはしていないので、杞憂というべきであろう。

その後も、数匹の雑魚を発見してはバスターで駆逐していくのだが…



「…しかし、本当に生存者はいないのか?」

敵以外なにも出てこない環境に、いい加減にランスは痺れを切らす。

「…ここまで来ると、本当にこの船に乗組員がいたか疑わしくなりますね」

ランスだけではなく、ミクまでもがこの異様な雰囲気に不安を覚えてくる。
無論、ロックもこの状況は非常に不可解に感じている。
しかし、だからといって生存者ゼロという最悪の結末の可能性を残したくはなかった。
故にロックは戦艦内の探索を諦め切れなかった。



そういう焦燥感がピークに達したときであった……



プシュゥゥウウウ―――



「―――!!?」

船内にて突如発生する白色のガス。
それはロックらの視界を遮り、また、それは人間であるランスには非常に有害なものであった。

「グッ―――」

不意打ちのように浴びせられた化学兵器を前に、ランスはついには昏倒してしまった。

「み、ミクッ!!ランスさんっ!!!」

一方のロックは、ミクとランスの声が途切れたことで、彼の無事を確かめるよう声を大きくする。
視界が完全に遮られてしまった今では、聴覚のみが頼りであった。

―――そして……



「ロックさんッッ!!!」

ようやく視界が晴れてロックが目にした光景は、彼の予想を覆すものだった。
なんとミクは宙に浮いた状態で、謎の黒いエネルギーのようなもので作られた輪に縛られていたのだ。

「ミクッ!!!今助けるッッ!!!」

ロックはミクの名を呼びその黒い縄に触れるも、その縄はまるでプラズマかなにかのようであり、実体こそないものの触れればそれだけで、普通の人間であれば焼け焦がれる代物であった。



「無駄な抵抗は止めなさい」

「!!!」

いずことなく聞こえる、どこか誇り高い女性の声に、ロックは警戒し辺りを見渡す。
しかし、どこを見ても女性の姿を確認することは出来なかった。
おそらくその声の主こそ、先の化学兵器を用いた奇襲を仕掛け、今まさにミクを人質に取った張本人なのであろう。
姿を見せないところから見ると、このミクを縛り上げているものは魔術か何かであり、遠隔よりまったく安全な場所でロックたちを監視しているのだ。
一方、ランスの姿は確認することは出来なかったが、おそらくは別の部屋にでも隔離されているのであろう。
まあ、あの男はそう簡単に死ぬような人物ではないし、その辺はまだ安心は出来た。



「ミクを離せッッ!!!」

ロックは相手に自分の声が届いていることを前提に、どことなく向かいミクを解放するように声を張り上げる。

「それは出来ない。だって、彼女は大切な人質だから。ここでロックさん、ミクさんには人質になってもらうわ」
「…ら、ランスさんは!?」

ロックは先の女性の言葉に、パーティの一人である『ランス』の名前がないことに気づき、その処遇を問う。

「ランス…。ああ、あの男は、時間のアルゴリズムの中にはまったく必要ない人物。明日にでも処刑するわ」
「そ…そんな……」

その処遇は、非常に冷酷なものであった。
彼女はなぜかランスは処刑したがっている模様であり、その尊厳高き言葉の中には若干私怨のような意味合いも感じられた。
そしてロックはその彼女の冷酷な死刑宣告を聞き、更なる予感を抱く。

「ま、まさか、貴方がここの船の人たちを…!!」
「…彼女たちは全員人質にとらせていただきました。私は『勝沼紳一』及びその手下たちとは違いますので、その辺は安心してください」

普通であれば、敵のそのような言葉など信用に値しないものであったが、ロックはなぜかその彼女の言葉を信じた。
彼女の言葉の裏には、何か哀しみが含まれているように感じたからである。

「大丈夫、守るっていっただろ。君は僕が助ける!」
「ろ、ロックさん……」

ロックはこの女の言葉を信じ、どうやってランスの処刑を考えつつ、一旦はこの女性に捕らわれることとなったのであった。













一方、ここはえいえんの世界。
蒼の広がる空間にて、なぜか置いてあるベッドに横たわっていたのは、先ほどロックたちが解放した魔法少女であった。

「しかし…一体何歳までが魔法少女なのだろうな……」
「20歳過ぎて少女は、世間体が厳しいと思いますからね」

その少女を見ながら、あまり宜しくはない会話をしている久瀬と栞。
どうやらこの魔法少女は、久瀬たちに拾われえいえんの世界につれてこられたらしかった。

「それより、ロック君たちピンチだけどどうするの?ランス君はなんだか処刑されちゃうっぽいし」

次元の歪みを監視していた青子は、当然ロックたちの状況も把握しており、ついには敵に囚われの身となったロックたちを一応は案じる。

「ふむ…。まあ、ランス君ならそう簡単にくたばりはしないだろうが―――」

1・一応、応援くらいは用意しておこうか。
2・仕方ない、僕がじきじきに出向くか。
3・この魔法少女を無理やり起こして、馬車馬のごとくこき使うか。



[15824] 第五十九話 …殻ノ少女『2』って意味あるの?
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/29 00:44
1・一応、応援くらいは用意しておこうか。



「それより、ロック君たちピンチだけどどうするの?ランス君はなんだか処刑されちゃうっぽいし」

次元の歪みを監視していた青子は、当然ロックたちの状況も把握しており、ついには敵に囚われの身となったロックたちを一応は案じる。

「ふむ…。まあ、ランス君ならそう簡単にくたばりはしないだろうが、一応、応援くらいは用意しておこうか」

そして久瀬の出した決断は、彼にしては至極まともなものであった。







時は再び次元の狭間…
ここは廃墟と化した戦艦の内部。
その堅固に戸を施錠された一室にロック、ミク、ランスは幽閉されていた。

そして、彼らが幽閉されている部屋の前にいたのは、一人の金髪の戦士であった。
彼の纏う鎧も黄金に包まれており、その風貌もどことなく王者の風を漂わせていた。

その黄金の騎士は、亜空間より聞こえし女性の声…おそらく、先ほどロックたちをその強大な魔力によって幽閉した女性と交信をしていた。

「ギルガメッシュ」
「はっ!」
「彼らを見張ってください。頼りにしてますよ」

彼女は黄金の騎士にロックたちの見張りを命令した後に、完全に気配を消したようだった。

ギルガメッシュ!!
彼は『アーチャー』のサーヴァントであり、第五次聖杯戦争において、存在しないはずの8体目のサーヴァントとして姿を現す。
黄金の甲冑を纏い、全てを見下した態度の男性であるが、その実、世界の全てを手中に収めた英雄王である。
世界の全てを手中に収めた彼は『王の財宝』からそれを自由に呼び出し扱っており、さらには切り札と呼ぶべき宝具『天地乖離す開闢の星』の一撃は、通常のサーヴァントの宝具を遥かにしのぐ威力を持っている。

…しかし、彼のマスターはかの神父『言峰綺礼』であり、そのサーヴァントがなぜこの地にいて他の主君に仕えているのか……?
もしこの場に久瀬がいたなら、まずはその解答を追及していたことであろう。



「フン……我とあろうものが女ごときに酷使されるなど……!だが、道化を演じるのもまた一興か。あの男の動向にも興味はあるしな……」

女の下で働くのは王としては不本意ではあるが、自分はあえて『同盟相手』の命令で一時的に手下を演じていると合理化し、その自尊心を保っていた。
ギルガメッシュそう独り言をつぶやいた、ほんの一瞬の隙であった。



!!!!!!



凶悪なまでの鉛玉の弾幕がギルガメッシュに向かい襲撃してくる。
その数……千や万の類でなく、それらを全弾回避するのは至難の業。

判断は早かった。
ギルガメッシュはその宝具である『王の財宝』を解禁、無数の宝具を持ち出し、圧倒的な火力を以って鉛玉の雨霰を迎撃する。



「誰だ!!?」

そうギルガメッシュが一喝すると、その通路の角より人の影のみが姿を現している。

「……我の宝具をもってして迎撃が手一杯だとは……!!只者ではあるまい!!!」

彼がそういい終えた後、ついにその影の主が角より姿を現し―――










「ウチたち久瀬の科学力は世界一ィィィィィ!!!できんことはなか――――――ッ!!!」

なぜか博多弁で、それでもって傲慢ともいえる堂々とした声を張り上げていた。

そう、彼女は久瀬により改造された戦後の女子高生、『四十宮綴子(故)』である。
彼女は久瀬の指令を受け、単騎駆けでこの次元の狭間、時空管理局戦艦跡に乗り込んだのだった。

しかし、そんなことはギルガメッシュにとってはもはやどうでもよかった。
王であるはずの自分が、どこの馬の骨かも分からぬ、しかも女に圧されている。
その現実が何よりも気に食わなかった。




「こんな体になったあたしを気の毒だなんて思わないで。あたしの体はァァアアアアアアア――ッ!!ウチが博多民族の最高知能の結晶であり誇りであるゥゥゥ!!だけんどいでんがの人間ば越えたのだァアアアアアア!!くらえ!ギルガメッシュ!一分間に600発の鉄甲弾ば発射可能!30㎜の鉄板ば貫通できる重機関砲よ!!一発一発の弾丸がおまえの体ばけずりとるのだ!!」

そう咆哮すると綴子は、その左手の全ての指をギルガメッシュに向ける。
すると、全ての指の第一関節は折れ曲がり、そこには人間の手にはありえない、機関銃の銃口が姿を現したのだ。
先ほどの弾丸の雨嵐は、どうやら彼女の左手五本指より放たれていたものであった。

「チッ!!!」

対するギルガメッシュも、その機関銃×5に対抗するために『王の財宝』をフル稼働するも、所詮は人間業。
投擲vs機関銃では端から相手になるわけがなかった。
おまけにこの機関銃の鉄鋼弾はただの鉛弾ではない。
ペガサスらのソリッドビジョンのテクノロジーを使用したため、実体のない敵…さしあたって、サーヴァントや勝沼紳一ら『亡霊』に対しても非常に有効な兵器である。(そのため一発一発のコストはバカにはならないが)

ギルガメッシュの剣、槍など、全ては綴子に向かい攻撃を仕掛けるも、無数の鉛玉の襲撃にその身を削られ、地面に叩き落され、あるいは砕け散る。
もはやギルガメッシュの蓄えた財産は、その身を守る盾でしかなかった。



そんなギルガメッシュが最後にとった策は……

「く、くそっ!きょ、今日のところは、これくらいにしといてやる!おぼえときな!ぺっ!」

…と、三下のセリフを吐いての逃亡でしかなかった。



「別に、久瀬には『ロック君たちを助けろ』っていわれただけで、ギルガメッシュを倒せだなんて言われてないもんね」

そして綴子は、あえてギルガメッシュの追撃をせずに、ロックらの救出を優先。
目の前にある、ギルガメッシュが守っていた扉と対峙したのであった。

「さあて、じゃあ、この扉を―――」



1・機関銃で鍵を壊す。
2・ピッキングツールでこじ開ける。
3・小型核で破壊する。



[15824] 第六十話 …好奇心はロボをも殺す
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2010/12/30 03:00
3・小型核で破壊する。



「別に、久瀬には『ロック君たちを助けろ』っていわれただけで、ギルガメッシュを倒せだなんて言われてないもんね」

そして綴子は、あえてギルガメッシュの追撃をせずに、ロックらの救出を優先。
目の前にある、ギルガメッシュが守っていた扉と対峙したのであった。

「さあて、じゃあ、この扉を小型核で破壊するかな…」

その頑強な魔力に守られし扉を見て、なにやら物騒なことをつぶやく綴子。
考えても見れば、綴子は戦後の人間である。
日本の敗戦を決定付けたとも言うべき核兵器の威力を、自身が試すことが出来るという絶好の機会。
もとより好奇心旺盛な綴子が、その大東亜戦争最大最悪の兵器である核兵器に、興味を持たないわけなどなかった。
もっとも、それがトラウマになるならまだしも、威力に興味を持つあたりがさすがというべきかなんというべきか……
というか、この女、ロックたちを助けることなどすっかり忘れているのではないだろうか?

綴子が左手の掌を前に翳すと、そこから青白い霧状のようなものが噴出され、盾の形を作り上げる。
おそらくこれは、核爆発より綴子を熱、及び放射能から守るためのビームシールドのようなものであろう。
そして、今度は右手の拳を前にかざし手首を折ると、その折れた箇所には砲門が備えてあった。
おそらくここから超小型核ミサイルが、一発だけ内蔵されているのであろう。

「……ま、使うなって言われてないし……ね」

たしかに核は装備されていても、久瀬からそれを使うなとの指令はまったくなかった。
しかし、仮にここに久瀬がいたとすれば、『救出ごときに核を使うな!!』と怒ったであろうが、その久瀬はここにはいない。



「リベンジ・オブ・ナガサキ…ってところかしらん。ヒロシマでも可、かな」

…『ところかしらん』などといっている場合ではない。















!!!!!!!!!!!!!!




















……瞬間、戦艦の残骸は、文字通り跡形もなく消し飛んだ。



「こりゃ、日本が負けるわけだわ……」

自身の核兵器の威力に綴子は、呆れるほどに驚く。
そして、ようやく我に返ったときには時既に遅し……

「あ、しまった!!ロック君!ミクちゃん!ランスさん!!」

今更焦って声を張り上げたところで、戦艦も何もかも塵と化した次元の歪では無意味というもの。






「ひゃあ……すごい爆発だなぁ……」
「ほ、ほんとよね」

いずこかから聞こえてくる、飄々とした男の声。
本来聞こえるはずもない声ではあるのだが、あまりにも自然に話しかけられたため、綴子もつい自然に返してしまう。

「……って、ランスさんッッ!!?」
「よぉ」

なんと、ランスは勝手に脱出、及び脱走しており、今回の件は高みの見物をしていたのだ!!!

「ど、どうやって脱出したの!!?」
「がはははははは。主人公のみに許されている特権だ。悔しかったらヒロインになる事だな!!」

その綴子の問いもはぐらかしバカ笑いをするランス。

「ま、あえていうなら、毒ガス攻撃など食らったフリをして、敵の一瞬の隙を突いて脱出。あのまま『女』を追おうとしたのはいいが、ワープしやがったのかまったく見つからないでやんの。気づかないうちに戦艦からだいぶ離れてたみたいで、とんでもない爆音が聞こえて振り返ったら、なーんもないってわけ」

…ある意味、彼の男としての『習性』が、今回は被爆を免れたのであった。



「で、でも、ロック君とミクちゃんが……」

しかし、それでもロックとミクは姿を見せない。
次第に強くなっていく、綴子の自責の念。

「メソメソするのも勝手だが……そんなんで戦場で死なれたら、たまらん。死んだ奴は、帰ってこないんだ。さっさと元気になっちまえ」

日頃は元気活発ではある綴子の落ち込む様を見かねたのか、ランスは柄にもなく綴子を慰めるのであった。



…しかし、大魔王バーンが言うように、奇跡とは何度も起きるものである。

「「!!!」」

それは彼の諦めないという心が起こしたものであろうか。
綴子とランス、二人が活目したその先には、木の葉が舞っていた。
その黄金比率の木の葉…『リーフシールド』が全エネルギーを持って繰り出す高速回転は、限界ギリギリのところで核爆発から身を守っていたのだ!!
無論、核爆発から身を守るのに、単体エネルギーでは持つはずもなく、断続的にE缶を4つも使用したのである!!



―――そして…



「ロックさん!!ロックさん!!!」

綴子とランスが見たものは、ミクを抱きかかえながらも全エネルギーを使い果たし立ち往生した、ロックの姿であった。
ロックの名をひたすら呼ぶ、ミクの悲痛の叫びだけが次元の歪に吸い込まれていく。

「…ミクちゃん……」

最後の最後まで足手まといとなり、ロックを活動停止にまで追い込んだ自分の無力さを呪うミクに、綴子はかける言葉もなかった。
まあ、そもそもロックがこのような目にあったのは、この綴子が安易な気持ちで核爆発を起こしたことに他ならないのであるが。

「いつまでも気にしてても仕方ないだろ。こんなこというのも癪だが、まあ、えいえんの世界に戻れば久瀬がなんとか直すだろう」

このままミクを放っておけば、いつまでもロックの身を案じていそうなので、ひとまずはこの場を動くため、ランスは方便とも言える言葉をミクにかける。
ランスのその言葉により多少の希望が出てきたのか、ミクは自分より若干サイズの大きいロックを何とか背負い、帰り支度をする。



「とりあえず久瀬さんが言うには、次元の歪での時空移動は難しく所定の位置でしか出来ないらしいよ。それで、次元の歪の中にある大きな橋を渡った先にその地点があるから、そこで青子先生の『デジョン』でえいえんの世界に帰還するって作戦とのこと」

綴子は、ここに救援に来る前に久瀬に言われた指示を説明。
まあ、ちなみに青子先生はあくまで得意分野は『攻撃魔術』であり、デジョンなどの魔術は得意ではない。
ゆえに、デジョンの正確なコントロールが出来ないだけなのかもしれない。

まあ、何はともあれ全員が納得行くや否や、次元の歪に存在する大きな橋に向かおうとしていた。



「ロックさんは必ず助けます!!だからこの橋は―――」



1・強行突破で最短距離を進みます!!
2・敵を迎撃しながら確実に進みます!!



[15824] 猛将伝 …新年早々糞野郎でございます
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2011/01/01 15:28
ここは蒼一面に広がるえいえんの世界。
世間一般では既に正月であり、時間概念のないこの世界でも、久瀬ご一行は実家への帰宅ラッシュであり、正月の概念もないはずのロックとミクは、人間の『初詣』の風習を愉しもうと、昭和人綴子も平成の『初売り』を愉しもうと、ランスは『振袖女性』を愉しもうと、それぞれ現実社会へ降りていた。
尚、帰る場所があるにも拘らずのうのうと炬燵で白玉ぜんざいを食べている久瀬がえいえんの世界に残っていた。

……そして……



「…で、なんで私がこんなことしなきゃならないんですか!?」

そのえいえんの世界には似つかわしくない、所帯じみたおばさん…否、女子高生が一人。
彼女の名は天野美汐、久瀬の生徒会の部下である。

「そりゃあ、僕が白玉ぜんざいが食べたくなったからだ。どうせ一緒に初詣に行く友達もいないのだし、いいではないか」
「そんなのあんまりです!」

さも当然のように久瀬は言う。
そんなことのために天野を呼んだ久瀬は最低ではあるが、それで連れて来られる天野も不運としか言いようがない。
ちなみに天野の唯一といってもいい友人の『沢渡真琴』は、水瀬家で一緒に初詣である。
それにしてもこの女、久瀬がいる限りは毎年厄年のようなものであろう。

「あ、でも本当においしい」
「そうであろう。この甘い物好きの僕が認めるのだ。まいもいっぱい食べたまえ」
「はーい」

新年早々、うさぎのカチューシャをつけているまいは、久瀬と向かい合って食べる白玉ぜんざいに、大変ご満悦のようであった。

「ほんと、貴方たちを見てると親子のようですね」

天野は久瀬には文句を言いつつも、この久瀬とまいのやり取りだけを見れば、大変微笑ましく思っていた。



「でも、さすがに白玉ぜんざいに『ミルクティー』はあわないと思う」

方やまいは緑茶をすすりながら、2杯目のミルクティーを淹れる久瀬に苦言を呈する。

「そうかね?」
「え!?私ですか!!?」

久瀬は自分は正しいとばかりに、天野の方を向き意見を求める。

「わ、私はほうじ茶のほうがいいですけど、まあ、好みは人それぞれですし……」

とりあえず天野は無難な意見を述べる。

「でも、甘いものに甘いものだよ」
「僕は甘いものが好きだからいいのだよ」
「そんなに甘いものばっかり食べてると『とーにょーびょー』になるよ」

久瀬とまい、もはやどっちが子供だか分からない状態である。
そのやり取りを見て、天野にも少し思うところがあるようだった。

「たしかに久瀬さんの不摂生は目に余るものがあります。結構好き嫌いも激しいですし、その好き嫌いで多少なりとも周囲に迷惑をかけていることも否めません」
「む!?僕がいつを迷惑をかけたのだね!?少なくとも、僕の学校では給食はないのだから、お残しなどという粗末な真似はしていないはずだが」

天野の苦言に対し、久瀬は即座に反論する。
しかし、天野も負けじと久瀬に言い返す。

「…では、述べさせていただきますが……いつかは美坂(栞)さんと、金に飽かせて学食と購買のスイーツを買い占めましたし……」

ちなみに久瀬と栞がそのようなことをしたばかりに、斉藤の恋人である名雪が、「ないよー!ないよー!Aランチのイチゴムースがないんだよー!!」と暴走してしまったことは記憶に新しい。
そのときの斉藤の苦労は筆舌にしがたいものがあったことだけ、ここに追記しておく。

「…あと、自分が食べるわけでもないのに『肉は嫌いだ』とかいって、学食中の肉を『大豆』に勝手に摩り替えたましたし……」
「ああ。みんな泣いて喜んでいたな」
「そんなわけないでしょう!!!」
「…まあ、川澄さんがまだ学校にいたら、半殺しにされてたかもな…ハハ…」

笑い事ではない。
そのほかにも天野は、久瀬の悪事を漏らさずに述べていく。
久瀬はそんな天野に「なんでそこまで覚えているのだろう」と、若干偏執狂の疑いを持ちながらも粛々と話を聞いているフリをしていた。
ちなみにまいは、天野の話があまりにも長いため、そのまま炬燵で寝てしまったことは言うまでもない。



「とにかく!!私が言いたいのは『好き嫌いをなくしなさい!!』ということです」
「その主要部分を言うのに『小一時間』も僕の説教をしていたわけか……」

ある意味、天野は本当に近所のおばさん状態である。
久瀬は「何故新年早々こんな目に遭わなければいけないのか」と、半ば呆れながら思っていた。
しかし、そもそもその天野を連れてきたのは久瀬であり、ほぼ自業自得であろう事はいうまでもない。



[15824] 第六十一話 …ビッグブリッヂの死闘
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:15af120d
Date: 2011/01/02 16:11
1・強行突破で最短距離を進みます!!



まあ、何はともあれ全員が納得行くや否や、次元の歪に存在する大きな橋に向かおうとしていた。



「ロックさんは必ず助けます!!だからこの橋は強行突破で最短距離を進みます!!」

ミクは即断し、そのままロックを背負い始める。
もとよりミクはただのボーカロイドであり、運搬用ロボではない。
ロックを背負うことでミクの積載量の限界をとうに超えていたのだが、それでもミクは、それを介することなく橋まで駆け出したのだ。
ランス、綴子はその鬼気迫る空気に一瞬たじろぐも、すぐにミクの後を追った。



そしてついに大きなアーチ型の橋に到着した。
この橋の先に、青子が用意した『デジョンゲート』が存在する。
ミクらは立ち止まることなく、そのまま橋に突入。
途中、レッドアリーマーもどきやりくぐんやモルポルみたいなものが出てくるも、それらを全て無視し2.7キロ程駆けたところで、ついには大きな門のところまで来ていた。

「こういうパターンだと、たいてい敵が出てくるものだけどな」

このランスの予言は現実のものとなる。
その門は自動的に開かれると、そこには見覚えのある黄金の英雄王がいた。

「この扉の裏でずっと待っていたぞ! 来なかったらどうしようかと不安になっていたところだ!いくぞ!!」

そして、この黄金の英雄王『ギルガメッシュ』は『王の財宝』を発動!!
問答無用で襲い掛かってきた!!

「バカね!あんたのその武器は、アタシには通じないってコト、もう忘れたの」

しかし、一度対処している相手だけに、綴子にとっては余裕の相手であった。
綴子の5本指から放たれる『対零体用機関銃』は火力、リロード、弾速、全てにおいてギルガメッシュの『王の財宝』による宝具の乱射を上回っている。

「す…すげえな、アンタ……」

弾幕はパワーとはまさにこのこと。
さしものランスも、この改造された綴子の火力には唖然としていた。

「我が悪かった……」

エルメスのくつ(○ヘイスト)

すると、ギルガメッシュにしては珍しく、神妙の顔つきでうなだれ始めた。

「4人でこられちゃ……」

プロテスドリンク(○プロテス)

「手も足も出ない……」

つめたがい(○シェル)



「……と言うのは嘘だがな!!」

ジャンプ

なんと、ギルガメッシュは降参するフリをしておきながら、アイテムで自身の能力を強化!!
そのまま次元の遥か上へと飛び立った!!!



「フン!所詮は雑種!この空からの距離なら貴様のその『機関銃』とやらの射程ではない!!しかし、我の『宝具』はこの上空から重力に乗って貴様らに雨霰となって襲い掛かる!!!」



「!!!!!!」

そのギルガメッシュの言葉に嘘偽りはなく、ギルガメッシュは綴子の機関銃からは完全に射程外であり、逆に相手の頭上を取ったギルガメッシュは完全に有利な形となった。



「チックショー!!卑怯だぞ!!降りてきやがれ!!!」

さらにいうならランスは剣士タイプであり、完全に射程圏外。
至近距離の白兵戦ならまだギルガメッシュと互角に戦えたであろうが、中・遠距離となればまったくの問題外である。

「フン、うるさい雑種だ。貴様から始末してやろう」

ギルガメッシュの『宝具』らの標的はランスとなった。
いかにランスが凄腕の剣士と言えども、その無数の『宝具』を叩き落せる道理などない。
それは綴子も同様である。
綴子ならその『宝具』を機関銃で駆逐は出来るであろう。
しかし、それが『弾』である以上は、当然弾切れという事象が発生する。
相手に制空権を渡した時点で、綴子もまた不利な状況へと誘われていったのだ。



しかし、武器と言うのは目に見えるものとは限らない。




――――――♪

――♪

――――――――――♪


「!!?」

どことなく聞こえてくるBGMに、一瞬たじろぐギルガメッシュ。
すると、機関銃とはまた違う、凄まじい音の弾幕がギルガメッシュに襲い掛かった!!!


「「「みっくみっくにしってやんよー♪」」」

なんと、ミクは「みくみくにしてあげる」を歌い始めた!!



――――――――♪

―――♪

――♪

「な!!なんだ!!!物理的ダメージは一切ないが……な、なんなのだ!!?」

その弾幕は『2,000,000』を凌駕する!!
ミクの歌の勢い、その背後にあるプレッシャーにギルガメッシュはまったく太刀打ちが出来ない!!



「な…なんだか力が抜ける……な」
「へ、平成の世ではこんな歌が持て囃されてるの…?」

無論、それは『音』であるがゆえに、ランス、綴子にも当然影響は出てくる。
ちなみにボーカロイドは、あくまで『ネット上で』持て囃されているわけであって、綴子はまた一つ、平成の世に対し誤解を持ってしまったようだ。



そして、結局ミクの音に対し対抗手段を持ち得なかったギルガメッシュは…

「うっ!急用を思いだしたようだ!!必ず戻って来るからなっ!」

…と言って、戦略的撤退を余儀なくされたのであった。



かくして、ミクたちは次元の歪よりの脱出に成功。
青子のデジョンによりえいえんの世界へと帰還した。
時空管理局の監視の任務は失敗に終わってしまったが、新たな敵『ギルガメッシュ』『謎の女』とも遭遇し、事態は急展開を迎えるのであった!!!







と、いうわけで久瀬のパーティ選びです。
感想掲示板にて、ハルヒ・キョン・梓・イカ娘以外の二つのパーティを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『キース』『斉藤一』『初音ミク』『ランス』の7人です。



[15824] 第六十二話 …ツイッターでつぶやくほどのことではない
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/01/06 21:24
ここはえいえんの世界。
青に染まる世界の中、久瀬はロックを修理していた。
その周辺には金属の部品などが散乱しており、珍しくも久瀬の額に汗が流れていることから、この修理がいかに難しいかが分かる。

「…しかし、このロック君を作った『ライト博士』は本当に天才だな。遥か未来の人型ロボットとはいえ、来栖川の技術が全く以って適応外とは……」

「ロ、ロックさんは本当に元に戻るんですか!!?」

その久瀬の気難しそうな顔を見て、申し訳ないことはわかっていつつも、ロックの安否を聞かずにはいられないミク。

「心配ご無用。僕は天才だ」

そんなミクにも久瀬は余裕の表情で返し、高級そうなカップに注がれたミルクティーを一口飲む。

「まあ、ほぼ死んだも当然のアタシをここまで修復したんだから、大丈夫じゃないの?」
「……そもそも最終兵器ばってんトジ子君が『核』をぶっ放さなければこんなことにはならなかったであろうに」

あっけらかんと言う綴子に対し、久瀬はミクへの態度とは打って変わって嫌味たらたらで言い返す。

「トジ子ってゆーな!!!」







「そういえば、あの『魔法少女』はどうするの?」

ロックの修理を無事終え、ソファーにだれながら団子を食べていた久瀬にそう聴いてきたのはまいであった。
ちなみにその『魔法少女』はベッドで寝ており、一向に目を覚ます気配はない。

「まあ、よほどの激戦だったのだろう。秘孔を突いて無理やり起こすのもかわいそうだし、しばらくは様子見だな」

久瀬はヤレヤレを言った感じで言葉を続ける。

「それより、先ほどのミク君とランス君の報告を受けるに、時空管理局を襲撃したのは先の『ギルガメッシュ』の単独で間違いないであろう。まあ、おそらくは『言峰綺礼』の差し金で『諸悪の根源』にしたがっている……まあ、『キルバーン』みたいなものであろう」

「たとえが分かりにくすぎるよ…」

まいのツッコミに介さず、久瀬はさらに言葉を続ける。

「不可解なのは、そこにいた『謎の女』…僕の推測が正しければ、彼女こそ『諸悪の根源』なのではないかと思うのだが……」
「ど、どうして……?」
「そうだとすれば、『勝沼紳一』に陵辱行為をさせない理由もなんとなくわかる。さらにその『ギルガメッシュ』にマスター以外で指示ができる存在……となれば、おのずと推測は出来るであろう」

もっとも、そうなれば『言峰綺礼』は『諸悪の根源』以上にタチが悪い存在なのかもしれないが…と、久瀬はせせら笑いながらミルクティーを口にした。

「(…と、なると、何故ワイリーらが勝沼紳一の存在を知らなかったのか……。もしかすると――――――かもしれないな)」







ノンマルト攻略ルートB

パーティ…久瀬・春原・梨花







ここは現代の海。
その海は青と緑に彩られ、太陽の光と相まって宝石のように輝いている。
その海に侵略者『ノンマルト』がいようとは、だれが信じるであろうか。

「ってか、本当にここであってるの?」

半信半疑で春原は久瀬に問いかける。

「ああ、先行してノンマルト基地に潜入した『キョン君』の話だとな」

先に侵入した『キョン・梓・イカ娘』は、現在順調に捜査を進めているとのこと。

「ちなみに、涼宮ハルヒはどうなったの?」

梨花の質問はもっともであり、キョンらよりもさらに前にハルヒは、『ダルさん』とデートしながらノンマルト基地を潜入していたはずであった。

「ああ……まあ、涼宮君は、『ダルさん』が進展しない離婚調停でパーティを離れたあと、『タクシー』に乗ってノンマルト基地周辺に行こうとしたところ、運転手が『道を間違えて』しまったらしく、それを『拉致』だの『監禁』だの大騒ぎしている最中とのこと……」

半分やさぐれた感じで久瀬は言い放った。

「それって……そんなに大騒ぎすることなの?」

梨花の言葉は至極当然のことであり、フォローするにもフォローできない久瀬は、「もうこれ以上言わないでくれ」といわんばかりの視線を梨花にぶつける。
さしもの梨花も空気を察したのか、これ以上問い詰めることはしなかった。



何はともあれ、久瀬たちもこれからノンマルト基地に侵攻するため行動に移る。

「まずは―――」



1・船を強奪してこよう。
2・魔法少女を起こして仲間にしよう。
3・ばくはしましょう。



[15824] 第六十三話 …三十六計逃げるが勝ち
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/01/13 22:42
1・船を強奪してこよう。



何はともあれ、久瀬たちもこれからノンマルト基地に侵攻するため行動に移る。

「まずは船を強奪してこよう」

そのための久瀬の口から出た戦術は、相変わらず最低なものであった。

「ってことは、僕たち海賊になるワケ!?」
「まあ、平たく言えばそういうことになる」

一応驚く春原であったが、曲がりなりにも不良かぶれであるこの男は、この『海賊』という響きに興奮を覚えていた。
なんとも精神年齢の低い男である。

「たしかに、大事の前の小事を気にしている場合じゃないの」

そして梨花もまた、目的のための手段はあまり選ばない傾向にあった。

「決まりだな」
「ああ!『海賊王』に僕はなるっ!!」
「とりあえず、おいしいワインがつんであるような船を捜しましょう」

かくして、まったくもって常識のない三人の意見は一致し、久瀬たちは船の強奪のため近くの港に向かった。







一方、ここはノンマルト基地内部。
海底神殿を髣髴させるような、古代的な石柱、石壁は一種の芸術性さえも感じさせる。
一応、海面から海底へと階層が下がっていく迷宮の中でも、水の浸入を一切許さない造りは、作り手の技術なのか魔力によるものなのかは定かではないが、いずれにしても初めて内部に入るものを圧巻するものがあった。

そして先行したキョン、梓、イカ娘のパーティはこの海底神殿の中で……



「わーっ!!また敵ですっ!!」
「い、イカ娘!!墨だ!!」
「も、もう疲れたでゲソ~~~~~~」



とまあ、イカ娘のイカスミを存分に利用し、サメ人間だのイカ人間だのといった敵から逃げ回っている始末であった。

そして、逃げ回った挙句の石壁に囲まれたワンフロアにキョンたちは逃げ込んでいた。
先ほどからよほど必死で逃げてきたのであろうか、部屋にはいるや否や、息も絶え絶えで石壁にもたれ込み、そのままぐだぐだと座り込んでいた。

「よ、よくよく考えてみたら、このパーティって戦闘要員いないんだよな……」

キョンのつぶやいたこのセリフは、至極正論であった。
キョンも梓も戦闘アビリティなどないに等しく、新加入のイカ娘はレベルが低すぎて話にならない。
加えて、このノンマルト基地の敵の戦闘力は割かし高く、物理攻撃に優れている魚人や魔術による攻撃を得意とする妖精など、現実からおおよそ考えられないような世界がここにはあった。

「な…なんかこれでは、『アリアハンからいきなりバラモス城にそのままやってきた勇者一行』じゃなイカ……」

最近ゲームを覚えたイカ娘は、なんだかワケのわからないことを言っているが、おおよそ間違った表現ではない。

「と、とにかくここにいつまでも隠れているわけには行きませんけど、どうしますか?」
「どうします……って言われてもなあ……」

梓の問いかけにも、キョンはどうしていいのかわからず脳内は右往左往している。
よしんば、ボスのところに辿り着いたとして、キョンたちに勝ち目があるかというとその可能性はほぼゼロに近い。
まったくもって何しに来たかといえばそれまでであるが、それでもあの久瀬が無策でキョンたちをここに置くわけがない……
そう考えるほか救いはないわけである。



「悔しいが、戦闘能力においては確かに俺はないに等しいかもしれないが―――」



1・久瀬たちが来るまでここで待機していよう。
2・頭脳役としてなら久瀬の代わりが出来るはずだ!!
3・ここは玉砕覚悟で先に進もう!!
4・もしかしたら話し合いで何とかなるかもしれない。



[15824] 第六十四話 …ビギンズナイト
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/01/16 18:21
5・変形ガイア鳥が飛来



梓の問いかけにも、キョンはどうしていいのかわからず脳内は右往左往している。
よしんば、ボスのところに辿り着いたとして、キョンたちに勝ち目があるかというとその可能性はほぼゼロに近い。
まったくもって何しに来たかといえばそれまでであるが、それでもあの久瀬が無策でキョンたちをここに置くわけがない……
そう考えるほか救いはないわけである。



「悔しいが、戦闘能力においては確かに俺はないに等しいかもしれないが―――」

と、キョンが次の策を打ち出そうとしていたときであった…



ギュオオオオン…という効果音と共に現れたのは、謎の黒い機械の鳥であった。

「な!?なんだこれは!!?」

キョンが驚くのは当然のこと。
世の中には隠れ選択肢というものがいくつか存在する。
時には神々の見えざる手により歴史が操られることもしばしばである。(士の苔色クワガタ虫さん、申し訳アリマセンが再びネタを使わせていただきます)








ここは例によって謎の会議室。
黒いシルエット、もとい小野田官房室長と言峰綺礼が再びこの闇に包まれた部屋で、無意味な威圧感を放ちつつ会話をしていた。

「どうやら、時空管理局襲撃はうまくいったみたいだね。さすがは最強の王『ギルガメッシュ』といったところかしら」
「…まあ、『アーチャー』を『諸悪の根源』の魔力により奪われたのは大きな痛手でしたが……」

やはり、先のギルガメッシュはこの言峰綺礼の差し金であり、あえて『諸悪の根源』の元で活動をしていた。
しかし、その『諸悪の根源』の魔力は予想に反して強大であり、『令呪』をそのまま諸悪の根源に奪われたような形となってしまったのである。

「その割には、そんなに深刻そうではないね」

それさえも計画通りだろうとばかりに、小野田はしれっとした態度で綺礼に話しかける。

「ええ。時空管理局壊滅によって、次の手は打ちやすくなった。案の定、貴方は早速混乱に乗じて『ユーノ』を捕縛、『脳内をフォーマット』させて『地球の本棚』にシンクロさせることに成功した…」

つまるところ、ギルガメッシュは時空管理局さえ解体できればあとはどうとでもなるというのが綺礼の見解である。
小野田にとって利用価値があるのは『時空管理局』の形と『ユーノ』のみであり、他の戦闘員及び職員など知ったことではなかった。
常人であれば、女性キャラが『勝沼紳一』に陵辱されていないことを祈るのみであろう。

「彼らは『地球の記憶』を内蔵したメモリを使って『ドーパント』とかいう怪物を作り出したじゃない。『地球の本棚』の活用は『ノンマルト』だってやってることだし…『おあいこ』ってこと」

そして、さも当然のように小野田は言う。
彼が言うには、先ほどキョンたちを襲撃した敵である『魚人』『妖精』の類は、『ノンマルト』が地球の記憶を内包させたガイアメモリのプログラムを生物に注入することで作られた、超人を超えた能力を持つ怪人『ドーパント』であるとのこと。

「まあ、何はともあれ、時空管理局再生の第二段階は終了。ここまでは久瀬君の計画通りだけど、ここからは久瀬君の好きにはさせないよ」

そして、余裕の表情で高層ビルの窓から地上を見下ろす小野田。
その際に闇を切り開くかのように差し込んだ光が、より、小野田の闇を深く強調した。

「…なるほど、だからフォーマットしたユーノをキョンの元へ送ったのか……。ご丁寧に『変形ガイア鳥』とスロットが2つ付いたベルトとUSBメモリも付けて……」

小野田の一連の行動を理解して尚、その平静さを保つ綺礼。
あるいはこの男も『更なる一手』を持っているとも限らない。
そして、小野田はさらに言葉を続ける。

「僕はね、この時空管理局を立て直した暁には、『神戸尊』を時空管理局主任運用官に、『杉下右京』を時空管理局主任捜査官に抜擢しようと思うんだ。その上で、『亀山』クンや『キョン』クンのような捜査官がいれば、久瀬君を以ってしてもお手上げの最高の組織として成り立つと思うんだけど…どう?」

まさにそれこそが理想とばかりに小野田は言う。
久瀬がキョンに価値を見出していたように、小野田もまたキョンに価値を見出していたのであった。
それに対し綺礼は……

「(たしかに、それは理想ではあるが、『杉下右京』の性格上、それを引き受けることは100%ありえないだろう)」

と、心の中で分析するのであった。







場面は変わってノンマルト基地。
状況が読めぬとばかりに驚き、絶句する梓とイカ娘。
それを無視するかのように、変形ガイア鳥とともに現れた謎のフェレット…『ユーノ』は、スロットが二つ付いたベルトとUSBメモリをキョンに見せ問いかける。


「悪魔と相乗りする勇気…あるかな?」



1・「考えているヒマはない!使えるものなら何でも使う!」
2・「よく分からんが、こんな得体が知れないものは無視だ!」
3・「動物がしゃべった!?」
4・「…これも久瀬の策なのか!?」



[15824] 第六十五話 …魔術協会も驚きのユーノのスペック
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/01/20 19:44
3・「動物がしゃべった!?」



場面は変わってノンマルト基地。
状況が読めぬとばかりに驚き、絶句する梓とイカ娘。
それを無視するかのように、変形ガイア鳥とともに現れた謎のフェレット…『ユーノ』は、スロットが二つ付いたベルトとUSBメモリをキョンに見せ問いかける。


「悪魔と相乗りする勇気…あるかな?」
「動物がしゃべった!?」

そのフェレットもどきの問いかけに、当然のごとく驚くキョン。
ちなみに近くにいるイカ娘は『イカ』であることを忘れてはならない。

「失礼だな。僕は人間だけど、今は魔法の力で『動物』になっているだけだよ。こっちの方が魔力の消費が少ないから」
「そうなんでゲソか。人間も大変でゲソ」

しかし、このイカ娘よりは戦力になりそうなのは確かである。



その後、フェレットもどきの姿であったユーノは人間の姿へと戻る。

「ふぅ…」
「……な、なんか……何もかもが信じられないんですけど……」

そのユーノの変身解除の様相を見て、一層、世界が信じられなくなった『普通人』中野梓。
それもそのはず、キョンはハルヒ、みくる、長門などの非常識と日々向き合ってきた。
イカ娘などは存在自体が非常識である。
その面々に比べたら、梓は久瀬の仲間の中でも誰よりも『非日常』に遠い存在であることは明らかである。



「…と、いっても、今の僕は記憶を全部消されて、存在するのは『地球の記憶』と『魔法』のみ……なんだ」

梓の信じられない現実はさらに続くかのような、ユーノの独白。
言ってみればユーノは、小野田官房室長を初めとする『国家の権力者』の駒としての改造を余儀なくされた。
無論、必要なスキル以外は全て消去され、ましてや彼の行動を左右し、時として作戦失敗をも呼び起こす感情を生み出す『記憶』はもってのほかである。

はたして、ここはガイアメモリを使い、ユーノと融合すべきか否か……
キョンの判断の分かれ目でもあった。







一方、ここはノンマルト基地の別ルート。
久瀬、春原、梨花は水族館のような水中のアーチの中を一目散に駆け抜け、邪魔する敵は指先一つでダウンしてきた。

「チックショー!!こんな妖精なんかにー!!!」

無論、ドーパントと化した妖精の戦闘力もかなりのものであり、キョンたちと同様、春原のレベルではかなり厳しいものがあった。

「…なるほど。魚や妖精などにガイアメモリを接続し、ドーパントを作り出したのか……」
「なにかわかったのですか?」

一方の久瀬と梨花は、戦う敵からノンマルトの正体を推察、その答えは徐々に近づいてきていた。

「どうやら敵は、『平行世界ではない』異世界のものらしい」
「え?」

久瀬の答えは、梨花にはあまりピンとはこないようであった。
しかし久瀬はそんな梨花に介することなく、お得意のご高説を始めていた。

「まあ、平たく言えば僕らの世界に存在する『魔界』といったところだ。そして、こんな妖精など引き連れてくるものなど、その魔界出身の『妖怪』以外の何者でもない」
「そ、そんな!!」

100年以上生きた梨花にとっても、久瀬の言葉は何の真実味のない、信憑性にかけるものであった。
それでも久瀬は言葉を続ける。

「…今より昔、『人間界』と『魔界』と『霊界』でなんらかのイザコザがおこり、蟲寄市にある『魔界トンネル』は開通してしまい、そのことにより人間界には多くの妖怪が住み着くようになった。まあ、それでも魔界三巨頭を初め、人間界を支配しようなどという奇特な妖怪などほとんどなく、現在に至るまでさしたる問題も起こさずにいたのだが……」

久瀬の説明は非常に長いものであるが、要するに、今の久瀬たちの世界には妖怪はさほど人間に対して敵愾心を持っているわけではなく、大体の妖怪は、さも観光気分で人間界にいるのだという。

「もっとも、魔界三巨頭が台頭するよりも遥か昔…1000年ほど前だったかに月に侵攻しようとした妖怪もいたことは確かだ。そして、今回のノンマルトは、おそらくはその類の妖怪が『人間界の支配』を目的に侵攻してきてるとみているのだが、いかがかな?」

久瀬はこれでほぼ正解だろうといわんばかりに、小さく笑いながら梨花に問いかける。

「……100年生きていても分からないこともあるんですの……」

無論、そんな久瀬のぶっ飛んだ理論など、梨花に分かるはずもなかった。

「…まあ、一度に多数の『妖精』を引き連れていることから、おそらくば魔界の一部、『幻想郷』出身の『次元を操る妖怪』であると思うのだが。……そいつは『闇撫での樹』クラスのレアな妖怪であることは確かだな」

「(それにしてもこの男、そのデータはどっからくるの?)」

得意げに語りを止めない久瀬とは裏腹に、春原の疑問は至極もっともであった。



「まあ、そんなノンマルト…否、妖怪退治も重要だが、それ以上の緊急事態に今は陥っている」

さっきまでの空気は一変、とたんに真顔になり二人に話しかける久瀬。
そのあまりの豹変っぷりに、梨花も春原も思わず気圧され黙り込む。

「…先ほど、黒い機械の鳥がフェレットとともに飛んでいくのを見た。あのフェレットは『ユーノ』君であろう」

久瀬は先のギルガメッシュによる時空管理局戦艦襲撃の際に、混乱に乗じユーノは捕らわれたこと、そしてここまでは久瀬の計画通りであったことだけを話す。

「その後、僕は彼を軸に時空管理局を立て直そうとは考えていたが……おそらく『国家権力』(小野田官房室長)は何か一計を案じていると見た」

そして、その一計は己らが保身のための、非常に低俗なものであると久瀬は唾棄する。

「べっつになんか問題でもあんの?」

焦燥の色さえ見え隠れする久瀬とは逆に、呑気そうに「何の問題ですか?」とばかりに問いかける春原。

「バカモノ―――ッッ!!!」

直後、「バギィ」という音と共に、久瀬の右拳が春原の左頬にヒットする。

「い…いたひ……」

殴られた頬を押さえながら、涙目の春原。
しかし、久瀬は介せずに言葉を続ける。

「…ユーノ君は僕が新生時空管理局の『切り札』として使おうとしていた人間なのだ!あの『白い魔法少女』をえいえんの世界にて介抱したのはいざという時の『人質』とするためよ!!!」

梨花と春原の心の中では「サイテー」という声がリフレインする。

「ましてや、キョン君は涼宮君の制御は愚か、『諸悪の根源』討伐には必要不可欠な人間と見ている。その彼の秘めたる可能性を『国家権力』に潰されるわけにはいかない!!!」

意外ッッ!
意外にも彼は、キョンの将来性を非常に高く買っていた。
そして、『ニュータイプ』への革新に最も近いモデルなのであろう。

その可能性を、一部の権力者のエゴのために潰されるわけにはいかない!!
久瀬のこの言葉は本当の本心であった。

「…とにかく、このままキョン君とユーノ君を邂逅させるわけにはいかない!!急ぐぞ!春原君!梨花君!」



長い水中回廊を突き進む久瀬たち…



「ふふーん!!最強のアタイが相手よ!!!」

その久瀬たちの前に立ちふさがるのは、青き氷の妖精であった。



1・無視して通り過ぎる。
2・邪魔するヤツは指先一つでダウンさ!!
3・ちょうどいい、彼女を人質にしよう。



[15824] 第六十六話 …久瀬で東方を汚すな!!
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/01/20 20:35
2・邪魔するヤツは指先一つでダウンさ!!



「…とにかく、このままキョン君とユーノ君を邂逅させるわけにはいかない!!急ぐぞ!春原君!梨花君!」



長い水中回廊を突き進む久瀬たち…



「ふふーん!!最強のアタイが相手よ!!!」

その久瀬たちの前に立ちふさがるのは、青き氷の妖精であった。

「邪魔するヤツは指先一つでダウンさ!!」
「「え………?」」

対峙した刹那、久瀬の取った行動は早かった。

「9+0=?」
「え!?9+0―――?」
「ほぉぉ…あぁたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!!!ほぉあったぁーっ!!!」

なんということでしょう!
久瀬はチルノに『算数の問題』を出し、そこにチルノが隙を作った刹那、生物の目には捉えきれない光速拳が、瞬時に青の妖精に叩き込まれた!!!
その問答無用っぷりに、梨花も春原も、完全に開いた口がふさがらなかった。



「北斗百裂拳!!!」

久瀬が決め台詞を言うとともに、その青の妖精は宙を舞い、重力に沿って放物線を描き海底神殿の床に叩きつけられる。

しかし―――!!!



「なぁーんて!アンタの拳、ぜんぜん痛くもかゆくもないわよッ!!!ここからが氷の妖精『チルノ』の反撃よ!!!」

なんとこの青い妖精は、ほぼノーダメージの状態で起き上がり、その小さき羽を羽ばたかせて宙を浮いた。
どうやらこの妖精の名前は『チルノ』という名前らしかった。
そしてチルノが力をこめたと同時に、周囲の空気は一気に凍てつき始める―――

しかし、そんなことは久瀬にとってはもはやどうでもいいことだった。



「北斗神拳の奥義、醒鋭孔の一つ『性感帯』を突いた……」
「え……?~~~~~~~~~~~~~~ッッ?」

時間差でチルノの顔は高潮し、身体の震えも止まらなくなる。
そして―――



「お前はもうイッている」









Niceboat―――
















ノンマルト基地、海底神殿の奥を黙々と進んで行く久瀬たち。
こころなしか春原が『ずっと前かがみ』なのは、あえて無視の方向で話を進める。
ただ、梨花が一言…

「サイテーなの」

と吐き捨て、チルノの冷気を遥かに凌駕する冷たい視線が久瀬に突き刺さったことはいうまでもない。

「ま、まあ、勝てば官軍なのだからいいではないか。…もっとも、最初はこの妖精を人質にしようと思ったのだが、こんな妖精など人質の価値はあまりないだろうし……。これで相手が男なら『爆殺』モノだから、逆に感謝してもらわないとな。フハハハハハハ」

一応、久瀬的には配慮はしていたようだが、その言葉回しはやはり最低だった。

「まあ、相手が『バカ』だからこのような不意打ちが通用したわけで、さすがにこの先のボスクラスはこうはいかないだろう」

その上相手をこき下ろしながらも、久瀬に油断は一切なく、出てくる伏兵ドーパントを爆殺しながら先へと進む。
その久瀬の冷徹さには、さしもの梨花も黙るほかなかったわけで。



「まあ、とかくユーノ君とキョン君の邂逅は阻止せねば!!このまま『国家権力』に悪用などさせん!!!」

さっきの氷の妖精チルノはなかったことにしなんと…もとい、まるでなかったかのように話を戻す久瀬。

「でも、そのための具体的な策はあるのですか?」

梨花の質問はもっともであり、たしかにこのまま闇雲に進んでいてもキョンと合流できるかどうかは怪しいものであり、ましてや変形ガイア鳥に追いつけるわけもない。
しかし、それでも久瀬は冷静さを一切崩さない。

「無論―――」



1・例の魔法少女を人質にするのだ。
2・先にノンマルトのボスを倒すのだ。
3・ばくはしましょう!



[15824] 第六十七話 …主人公は二人で一人
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/01/25 21:28
1・例の魔法少女を人質にするのだ



「でも、そのための具体的な策はあるのですか?」

梨花の質問はもっともであり、たしかにこのまま闇雲に進んでいてもキョンと合流できるかどうかは怪しいものであり、ましてや変形ガイア鳥に追いつけるわけもない。
しかし、それでも久瀬は冷静さを一切崩さない。

「無論、例の魔法少女を人質にするのだ」

そして久瀬の口から出た言葉は、予想通りの最低発言であった。







一方、こちらはキョンらのグループ。
ノンマルト基地の一室にて、キョンは記憶を失ったユーノに、ガイアドライバーとガイアメモリを手渡される。

「……やるしか…ないのか…?」

キョンは葛藤していた。
たしかに今の自分ではほとんど戦力になっていない…
このままでは、仲間である梓やイカ娘も守りきることは出来ない。
……そして、ハルヒを守ることも……

しかし、こういう力の手に入れ方は本当にいいのか?
久瀬は安易に手に入れる力の恐ろしさを危惧した上で、自分らを地道にレベルアップさせようとしていたのではないか…?

キョンは返事を出来かねていた。



しかし……!!!



「あおーい空ひろーい海……こんなにいい気分にひたっている我を邪魔するのは……だれだ―――!!」

なんと、あの黄金の英雄王ギルガメッシュがノンマルト基地に潜入、あまつさえ、キョンたちのいる部屋に入ってきたのだ!!

威嚇し睨みつけるキョンに対し、余裕綽々の表情で、ゆっくりと歩み寄ってくるギルガメッシュ。
たとえ『諸悪の根源』と『ノンマルト』が敵対関係にあろうとも、ここでギルガメッシュと遭遇していいわけがないのは事実。
ましてや今のキョンたちに勝てる相手であるはずがない。

「あわわ……絶体絶命です」
「あ、あの金ぴか…そんなに強いんでゲソか?」

状況が切羽詰っていることを知り恐怖する梓に対し、イカ娘はギルガメッシュの戦闘能力をいまいち把握していなかった。

「…まあ、某掲示板で『型月厨』と『なのは厨』どっちが強いかの議論の際に必ずと言っていいほど名前が挙がるキャラだから、相当強いと思うよ」

さすがはユーノ。
地球の本棚とリンクしてあるだけあって、なんでも検索できる。

………

もはやキョンには考える余地などなかった。
そして、謀ったかのようなタイミングで、ユーノはもう一度同じ質問をキョンにする。

「悪魔と相乗りする勇気…君にあるかな?」
「……ああ」

キョンが緑のメモリを、ユーノが黒のUSBメモリをそれぞれ手に取る。
そして、ガイアドライバーはベルトのバックルのようにキョンの腰に装着される。
そのガイアドライバーには、先のUSBメモリのスロットが2つ備えてあった。

『ジョーカー!!』『サイクロン!!』

ユーノが自分のガイアドライバーのスロットにUSBメモリを差し込むと、魂を吸い取られたかのように、意識不明となりその場に倒れこむ。

「おお……」

梓は思わずマヌケな声を出す。
ユーノの差し込まれた緑のUSBメモリは姿を消し、キョンの右のスロットに転送される。
そしてキョンは、自分の左のスロットに黒いUSBメモリを差し込んだ。

『サイクロンジョーカー!!』

キョンは突如姿を変え、右が緑の、左が黒の仮面ライダーへと変身を遂げたのであった。

「ち、地球人って…変身するゲソか~~~?」

そしてこの変身は、またしてもイカ娘に地球人に対する偏見を持たせることとなったのは言うまでもない。

閑話休題、変身したキョンを中心とした周囲に非常に強いサイクロンが巻き起こる。

「わぁっ…何何?えっ……私聞いてませんよっ!キョンさーん!!」

無論、常識人である梓は、この状況に驚き慌てふためくのは当然といえる。
ちなみにサイクロンが発生したからと言ってパンチラを期待してはいけない。

そして変身したキョン&ユーノ…ここではあえて仮面ライダーと呼ばせていただくが、その仮面ライダーは左手でギルガメッシュを指差しこういった。



「「さあ、お前の罪を数えろ」」







一方、キョンとユーノが既に邂逅、融合さえしてしまったことも知らず、魔法少女を人質に取ろうと画策する久瀬であったが……

「…とりあえず、魔法少女を連れてくるついでにパーティチェンジだ。『境界を操る妖怪』戦プラス万が一、魔法少女が敵対した場合に備えたメンバーがいいのだが……」







と、いうわけで久瀬のパーティ選びです。
感想掲示板にて、ハルヒ・キョン・梓・イカ娘以外の二つのパーティを選んでいただければ幸いです。
ちなみに現在の仲間は『春原陽平』『ロックマン』『古手梨花』『キース』『斉藤一』『初音ミク』『ランス』の7人です。



[15824] 第六十八話 …乖離剣エアはグランドソードを思い出させる
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/02/04 20:07
一方、キョンとユーノが既に邂逅、融合さえしてしまったことも知らず、魔法少女を人質に取ろうと画策する久瀬であったが……

「…とりあえず、魔法少女を連れてくるついでにパーティチェンジだ。『境界を操る妖怪』戦プラス万が一、魔法少女が敵対した場合に備えたメンバーがいいのだが……」



パーティ…久瀬・キース・綴子







一方、右が緑で左が黒の仮面ライダーとギルガメッシュの死闘は始まっていた。
黄金の英雄王ギルガメッシュは『王の財宝』を発動し、相手に一切の接近を許さない宝具の雨嵐を仮面ライダーにぶつける。

仮面ライダーはそれをサイクロンで防御するのが精一杯のようである。

ギルガメッシュはさも余裕の表情で、自らの手を一切下すことなく次々と宝具を引き出し仮面ライダーに休む間も与えない。

「チィィ!!!」
「そういうときは……」

敵の息つく間もない攻撃に仮面ライダーの左半分が舌打ちをする中、右半分は今度は黄色のガイアメモリーを取り出し、それを新たにガイアドライバーに差し込む。

『ルナジョーカー!!』

すると、仮面ライダーの右半分が黄色に変わっていた。
黄色の右腕は関節などはじめからなかったかのような、非常に長い腕となりそれを鞭の如く撓らせる。

「何ィ!!?」

その鞭のごとき右腕は、あれよあれよと襲い掛かる宝具を薙ぎ払っていった。

「おいユーノ、勝手にメモリ変えるなよ」

左半分の方がそう悪態をつくが、反撃は止まらない。
今度は伸びた右手でギルガメッシュの頭を掴み、吸い寄せられるかのように接近すると、今度は長く伸びた右足による踵落しがギルガメッシュに襲い掛かる。

「グッ!!」

その変幻自在の動きはまさに予測不能!!
戦いはこのまま仮面ライダーの有利のまま終わるのであろうか!?







答えは否である。

ちょうど、仮面ライダーとギルガメッシュが戦っている最中、それを遠巻きに見える距離にまで近づくことが出来た久瀬パーティ。
無論、久瀬は人質である白い魔法少女を引き連れている。

「……遅かったか」

融合してしまった仮面ライダーを目の前にして、ヤレヤレといった感じでつぶやく久瀬。

「本当に、ユーノ君、記憶をなくしちゃったんですか!?」

仕方ないとばかりに嘆息する久瀬に、焦燥感むき出しで久瀬に問い詰める、病み上がりの魔法少女。

「…ああ。おそらくは時空管理局を牛耳ろうと目論んでいる権力者の都合のいい傀儡として扱うため、記憶を消去したのであろう」

久瀬は特に感情もなくそう言い放つ。
その久瀬の話を聞いた魔法少女の顔色は、時間を置くことなく絶望に染まっていくのが周囲にも感じ取られた。

「…しかし、キョン君とユーノ君……。今でこそ有利な状況を作り出してはいるが、ギルガメッシュの力はこんなものではないはず。彼にはもう一つの宝具『天地乖離す開闢の星』が存在する」

『天地乖離す開闢の星!!』
かつて混沌とした世界から天地を分けた究極の一撃。
無銘にして究極の剣は空間をも切断、その風の断層は擬似的な時空断層までも生み出す厨二病要素満載の宝具である。
ギルガメッシュ曰く、「生命の記憶の原初であり、この星の最古の姿、地獄の再現」とのこと。

「…彼は絶対的な王の余裕ゆえに全力を出して戦うことはほとんどないが……、油断して接近戦に持ち込んだところでその宝具を使われれば、一撃でお陀仏だろうな」
「そ、そんな……」

ギルガメッシュの方が上手と分かっていつつも、かくも冷静に言い放つ久瀬に対し、魔法少女の絶望の色はさらに濃くなっていく。

「もっとも、ユーノ君にもまだ切り札は残されている。『変形ガイア鳥』からのエクストリームがな……。しかし、それで『乖離剣エア』と互角に戦えるかどうか……」

しかし、無論久瀬は何も考えていないわけではない。

「まあ、とりあえずは―――」



1・魔法少女の『ディバインバスター』による不意打ちだろう。
2・綴子君の右手五本指の『重機関銃』による不意打ちだろう。
3・キース君の『サイバードラゴン』による不意打ちだろう。
4・サイクロンジョーカーエクストリームの実力を拝見しよう。



[15824] 第六十九話 …最愛に比べれば最強なんて
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/02/04 20:07
1・魔法少女の『ディバインバスター』による不意打ちだろう。



「もっとも、ユーノ君にもまだ切り札は残されている。『変形ガイア鳥』からのエクストリームがな……。しかし、それで『乖離剣エア』と互角に戦えるかどうか……」

しかし、無論久瀬は何も考えていないわけではない。

「まあ、とりあえずは魔法少女の『ディバインバスター』による不意打ちだろう。できるかね、『なのは』君?」
「え!?」

久瀬は事も無げに、魔法少女『なのは』に問いかけた。

『高町なのは』!!!
彼女は航空戦技教導隊不屈のエースと評される、トップクラスの魔導戦士である。
中距離~遠距離を得意とする魔道師ではあるのだが、接近戦においても柔軟な戦法を使いこなす優秀な『Sランク魔道師』である。
特に長距離砲撃などで見られる魔力の一斉放出においては特筆すべきものを持ちながらも、接近戦においても大きな成長を見せているあたり、万能な戦士であることは言うまでもない。

無論、このような有能な人材を久瀬は放置するはずもなかった。

「今なら誰も僕たちの存在に気づいていない。そこで上手くギルガメッシュ『だけ』を狙うのだ」
「そ、そんな!!」

言うまでもなくなのはは病み上がりの身体であり、そのような人物に精密な狙いをつけた不意打ちなど、無謀以外の何者でもない。
当然、なのはは困惑する。

「テメェ…大体しくじったら、キョンとあの『ユーノ』だっけか……あいつらまで巻き添えになるだろうがよォ!!」

柄にもなく、久瀬のこの非情な作戦に待ったをかけるキース。
しかし、久瀬の次に発せられた言葉は、さらに非情なものであった。

「…そうなれば、所詮キョン君もそれまでの人間だったということだ。その程度の『運』ではこの先の戦いを生き抜くことは出来まい……」

なんと久瀬は、この期に及んで味方の能力の査定を行おうとしていた。
そして、それが自分にとって有益でないものならば慈悲もなく捨て去る。
それが久瀬クオリティであった。

「ちょっと!!だったら最初から私に不意打ちさせればいいじゃないの!!」

その久瀬の決断に、キースだけでなく綴子までもが憤りを感じざるを得ない!

「…まあ、先ほども話したとおり、ユーノ君は記憶を失い、いまや『小野田官房室長』の傀儡と化している。それを救えるのはなのは君、君を持ってしかいないだろう。その君に、仮面ライダーと化したユーノ君の運命を託した僕の考えは間違っているかね?」

よくよく聞いてみれば、何の理由にもなっていない御託を久瀬は述べる。
しかし、このまま何もしないよりはマシ。
このままキョン&ユーノが仮面ライダーの力でギルガメッシュに勝ったところで、所詮は小野田官房室長の傀儡であることには代わりはないのだ。
そう考えたなのはは、赤の宝玉のついたロッドを構えギルガメッシュに向けたのであった。



「(ククク……。それでいい。あとはなのは君とギルガメッシュ君をぶつけ、その隙にノンマルトのボス『すきま妖怪』を始末する)」

久瀬はまさに外道な主人公であった。
この男、決して弱くはないが、戦闘力はその実たいしたことはない。
この男の恐ろしいところは、勝つためにはどのような卑劣なことも辞さない、その決断力にある。
久瀬は別に、本気でキョンとユーノがなのはの魔術の巻き添えになるとは考えていない。
なのはの力量、ひいてはその想いを信じ、確実にギルガメッシュを撃ち抜くことが出来ると信じていた。



「ディバインバスター!!!」

なのはのロッド、『レイジングハート』を4つの環状魔法陣が取り巻く。
この環状魔法陣が魔力の増大・加速を行っているのだ。
そして、強化された膨大な魔力はそのまま直接ギルガメッシュに向け放出されたのであった。

これが通常の戦闘であれば、ギルガメッシュの『王の財宝』の中にある盾で防がれてしまうかもしれない。
しかし、今回は完全な不意打ち!!
その上、ギルガメッシュ自身の対魔力はEランクであり、決まれば一発でお陀仏である。



1・ディバインバスターは見事、ギルガメッシュに直撃していた。
2・しかし!なぜかギルガメッシュは全くの無傷ッッ!!



[15824] 猛将伝 …走れエロス (伏字に関しては感想掲示板の『にもき』さんの感想より察してください)
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/02/07 22:14
ここは例によってえいえんの世界。
蒼のみが広がる無の空間。
そこに、栞を中心とした女性メンバー……
綴子、梓、ハルヒがそこにいた。

尚、まい及び梨花は『コンボイの謎』で遊んでおり、また、ミクは例によってロックとどこかに出かけており、この会話に参加する気は毛頭ないようであった。

それでも、栞は特に意に介す様子はなく、女性メンバーが集まったところで第一声を放つ。

「貴方たちは、『走れメロス』の話を知っていますか?」
「知らない」

間髪いれずに答えたのは、戦後の女子高生、綴子であった。

「ごめんなさい、知ってはいるんですけど、よく読んでないんです」

そうしおらしく答えたのは、このえいえんの世界で唯一と言っていいほどの真人間、梓。

「ああ、友情だかなんだかを手前勝手に解釈して自己満足に浸っている男たちの話でしょ」

さすがハルヒは内容を理解した上で辛辣な言葉を述べる。
さらに続けざまに太宰作品を非難する暴挙は、まさにハルヒならではであろう。
なんとも傲慢不遜な人間である。

「そもそも、人間失格にしたって、まず金持ちのボンボンで女にモテている時点で失格でもなんでもないわけだし……」
「全員不正解です」

そのハルヒの言葉をシャットアウトするかのように、栞は全員に『不正解』の烙印を押す。

「走れメロスは『BL』なんです!!!」

圧倒的ッッ!!
圧倒的…腐女子妄想!!
そして、自分の腐女子妄想爆発の発言をおおっぴらにするのが栞クオリティである。

「もうイケメン漫画でBLなんて時代は古いんです!!ただでさえ昨今の漫画事情は、『萌え漫画』で可愛いキャラだけを出せば売れるのと同じように、『BL漫画』でもイケメンだしときゃ売れるだろうという魂胆が丸見えなんです!!!」

「「「………」」」

こいつ、突然何を言い出すんだろう……
そんな目で栞を見る三人。

「本当のBLは、もっと身近な存在から探し出すべきなんです。たとえば綴子さん!!」
「ハイィ!?」

突然の栞の使命に、つい博多のイントネーションに戻ってしまう綴子。

「古来、戦争において女性を連れて行くことの出来なかった戦場において、男色は当然であったと聞いています。あなたは戦後間もない人間ですけど、その戦場の最前線ではBLがあってもおかしくないんです!!お尻の穴にダイナマイト突っ込んで『小早川大尉どの…愛しておりました』なんて言っていてもおかしくはないんです!!!」

……だめだ、コイツ終わっている……
三人の視線は、完全に冷ややかなものへと変わっていた。
しかし、栞の妄想はノンストップである。


「セリヌンティウス」
メロスは眼に涙を浮べて言った。

「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君がもし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ」

セリヌンティウスは、すべてを察した様子でうなずき、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。
殴ってから優しく微笑み「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生まれて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない」
メロスは腕に唸りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。

「ありがとう、友よ」

二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにヴォーヴォー(棒読み)声を放って泣き合った。
群衆の中からも、歔欷の声が聞えた。
暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様をまじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめてこう言った。

「何やってんだお前ら、俺も仲間に入れてくれよ~(名演技)」

俺も掘られながら奴の○○ポしゃぶったらこいつのもでかいのなんの。
セリヌンティウスの奴の程ではないけど、18くらいあって超硬い。そうこうしてたら、ディオニスの兄貴が俺のチ○○にオイルをぬりたくって「メロスがビンビンでいらっしゃる。咥えて差し上げろ(名言)」って言う。俺ここ走って来る前に三便飲んできたから掘られてても○○ポビンビンなんだよね。俺の○ン○がディオニスの○ツ○ン○に生で入った瞬間すげーやばいくらい感じた。
ラッシュガンガンに吸って「すげーすげー!」1時間くらい三人つながったままで盛り合ってたら、俺を掘ってるセリヌンティウスの奴が「やべーイキそう」って言って俺のケツ○○コにドクドク種付けした。
そしたら俺もやばくなってディオニスの○○マ○コん中にぶっぱなした。
ディオニスの奴はトコロテンしやがって「こんどは俺が真ん中やるよ」て言って交代で交尾し合った。
「またこういう交尾してー!」」

―――
――



栞の妄想はイツダッテStand and Fight!
無論、立ちはだかるものなど誰もいない。
……ってか、そんな妄言に付き合いきれずに皆帰っていった。



しかし、そんな栞を初めとする腐女子どもを、某団体が放っておくわけもなかった。







ここは東京都の都庁。
都庁の椅子にふんぞり返って座る男、シンタローが神父らしき男…否、神父の格好をした女性と話しをしていた。

「埋葬機関第七位の代行者『シエル』さん。正直、あなた方の考えはぁよくわかんねぇけど、あなた方の頼みとあっては仕方がねぇ」
「それでは頼みました。元・埋葬機関第二位の代行者……『シンタロー』。貴方の固有結界『青少年健全育成条例』の力で、俗物を全て駆逐してください」
「ま、アンタの好きな作戦じゃねぇってことくらいは分かるけど、教会には随分と力になってもらったし、ここは一つ恩でも売っておくか……」







栞らの邪な妄想は、教会にとっては都合が悪い。
ダンテの神曲によれば、神および自然の業(三次元)を蔑んだ者、男色者に、火の雨が降りかかるとされている。
つまり彼女らはキリストに対する冒涜以外の何者でもないのだ!

……もっとも、本音は教会と都の『利権がらみ』なのであろうが『建前』は必要である。

なんにせよ元埋葬機関の男『シンタロー』は、最強の固有結界『青少年健全育成条例』を用いてオタク、及び腐女子に牙をむいた!!

『栞&ヲタ vs シンタロー&教会』

俺たちの戦いはこれからだ!!!!!(完)



[15824] 第七十話 …設定なんてくだらねえぜ!!
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/02/08 23:33
2・しかし!なぜかギルガメッシュは全くの無傷ッッ!!



「ディバインバスター!!!」

なのはのロッド、『レイジングハート』を4つの環状魔法陣が取り巻く。
この環状魔法陣が魔力の増大・加速を行っているのだ。
そして、強化された膨大な魔力はそのまま直接ギルガメッシュに向け放出されたのであった。

これが通常の戦闘であれば、ギルガメッシュの『王の財宝』の中にある盾で防がれてしまうかもしれない。
しかし、今回は完全な不意打ち!!
その上、ギルガメッシュ自身の対魔力はEランクであり、決まれば一発でお陀仏である。

しかし!なぜかギルガメッシュは全くの無傷ッッ!!



「!!?」

無論、驚いたのはなのはである。
先も述べたとおり、完全の不意打ちでのディバインバスターを受け、ギルガメッシュが無傷で存在できるはずがない!!

「おそかったなぁ!!」

そう、現れたのは乱れたロングの黒髪に半裸、褐色の肌…
その身体に天の鎖を纏いし男…
ギルガメッシュの盟友『エルキドゥ』であった。

おそらくエルキドゥが宝具『天の鎖』で新体操のリボンのごとく渦を描き、その神性と崇められる魔力を防いだのであろう。
『天の鎖』は敵の神性が高ければ高いほど効果を発揮する。
皮肉にもなのはの『ディバインバスター』は、『型月厨となのは厨の争い』に語り継がれるほど、ファンの間では神格化されすぎてしまい、それがアダとなってしまったのだ!!



しかし、この男がその読みを誤るわけがなかった。



「かかったなアホが」
「博多の科学力ば世界一ィィィイイイ!!!」

なのはの凶悪なまでの魔力すら囮に過ぎない。
『ディバインバスター』は防ぐことは出来ても、その魔力に影に隠れた、綴子の弾丸までも防ぎきることは出来ない。
神性は防げる天の鎖も、ただの鉛玉からすれば頑丈な鎖でしかない。

「!!!!!!」

いうまでもなくエルキドゥは全身を蜂の巣にされ、セリフもなしにお役御免。
そんなことに気づかないギルガメッシュは「エルキドゥ!後はお前に任せたぜ!」などとマヌケなことを口にする。

当然、どこを見てもエルキドゥの姿はどこにもない。

「む!?エルキドゥ……我をおいていくのはなしではないか!?」

その隙が命取りである。
現在、彼はなのはのあまりに強大な『不意打ちに見せかけた囮』に気を取られ、本来戦闘中だった敵の存在を、一瞬でも目をそらしてしまった。
無論、その隙を逃す仮面ライダーではなかった。

仮面ライダーの周囲に強力な風が巻き起こるや否や、まるでその風に乗るかのように仮面ライダーは宙へと浮き上がる。

「ジョーカーエクストリーム!!」

そのままの態勢で腰を軸に斜になり、黒の半身がスライド、緑の半身よりずり落ちたような形になり、そのままミサイルのごとくギルガメッシュに突貫していく!!



「まあ、これで少しはキョン君らに有利にことが運ぶであろう。とりあえず―――」



1・予定通りここはキョン君、綴子君、なのは君にまかせ、『すきま妖怪』を倒しに行こう。
2・予定を変更し、ここで完全にギルガメッシュを始末しておくか。



[15824] 第七十一話 …激流葬三枚積みは基本
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/02/13 07:35
1・予定通りここはキョン君、綴子君、なのは君にまかせ、『すきま妖怪』を倒しに行こう。



「ジョーカーエクストリーム!!」

そのままの態勢で腰を軸に斜になり、黒の半身がスライド、緑の半身よりずり落ちたような形になり、そのままミサイルのごとくギルガメッシュに突貫していく!!



「まあ、これで少しはキョン君らに有利にことが運ぶであろう。とりあえず予定通りここはキョン君、綴子君、なのは君にまかせ、『すきま妖怪』を倒しに行こう。

こうして連れてきたなのはを当て馬に使った久瀬、キース、梓、イカ娘は『すきま妖怪』討伐へと向かっていった。
某掲示板では型月となのはどっちが強いかは議論されているッぽいが、そんなものはこの作品では知ったこっちゃないことを追記しておく。







あらゆる敵をちぎっては投げちぎっては投げ、そして、ついに来たのは最深部である。
この重い扉の向こうに、ノンマルト(ドーパント)を作りだし地上侵略を目論んだ『すきま妖怪』が存在する。

「貴様ら、『紫』様に何のようだい?」

まあ、RPGのボス戦前といえば、門番がいるのはお約束である。
そこにいたのは九尾と和服と金色の髪が特徴の女の子であった。

「…『紫』様ときたか。ならば貴様は式神使いの九尾『八雲藍』であるな」

しかし、久瀬はその外見にも油断は一切ない。
さすがに戦闘力以上に戦略家である久瀬は、与えられた少ない情報から相手の正体を分析する。

九尾の狐とは数々の伝説にあるようにそれ自体がトップクラスの力を持つ強力な妖怪であり(中には『蔵馬』といったS級妖怪も存在する)、真に恐るべしは、それすらも式神として扱える『八雲紫』であろう。

「…同じ妖狐である『沢渡真琴』君とはレベルは違う…ってところかな」
「な、なんで妖怪が人間界にいるんですかァァッッ!?」

最近はほぼ富樫(驚き役)と化している梓。
残念ながら、あまりにも続くこの非日常において、君は正常すぎた。

「知らなかったのか?今人間界には人間の姿をした妖怪などたくさんいるのだよ。日本人の中に日本国籍を持たぬ某国民がいるようにね」

久瀬はげにもなく言い放つと、「まあ、それでも妖怪が人を殺すケースなんてのは、人が人を殺す何千分の一なのだがな」と付け加える。

「おしゃべりはここまでだ!いくぞ!橙!!」
「はいっ、藍さま!!」

すると今度は『舌足らず』の言葉遣いと八重歯が特徴の、化け猫の式神が召喚される。



「罠発動!『激流葬』ッッ!!」



「わああああああ!!らんしゃまああああああ!!」
「チェェェェェェン!!?」

なんということでしょう。
召喚された橙は、それにチェーンして発動されたキースの罠カード『激流葬』によって退治されてしまった。
別に『ちぇん』と『チェーン』を掛けているわけではない。

「…さっきの無駄話は、オレに罠カードを張るための時間稼ぎというわけかい、大将?」

若干ふてくされた様子のキース。
この男の性格上、どうも人に従うというのは好きではないようだ。

「フフ…あとはこの化け狐をどう倒すかだが……」

あくまで自分がこの戦いの主導権を握っている素振りを見せる久瀬。
戦闘力でも頭脳でも、決して彼らに劣っていないであろう藍であったが、幻想郷での戦いとは又違う戦術を使う久瀬たちを前に、戦いのペースをつかめずにいた。

「何か作戦でもあるでゲソか?」
「そうだな…―――」



1・肉まんで誘い出して総攻撃だな。
2・油揚げで誘い出して総攻撃だな。
3・海老で誘い出して総攻撃だな。



[15824] 猛将伝 …モテナイ主人公のバレンタインSS
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/02/14 19:51
この日は久瀬のもっとも嫌いな日であるバレンタインデーである。

「………」

如何せん、この男はモテナイ!モテる要素がない!
そのくせ甘いものが大好きであり、チョコレートは好物中の好物である。

「チョコほしーならあげよっか?」
「バレンタインなのにモテなくてかわいそーなの」

一応、まい、梨花といったお子様勢は久瀬に気を使うも、所詮は子供。
買ってくるものといえば、コアラのマーチかチョコビスケットである。

「……あ、ありがとう……」

一応、お礼をいいもらったお菓子を口に入れる久瀬。
しかし、子供に同情されてもらうチョコなど、惨め以外の何者でもないだろう。



一方の他の面々はというと……

「ロックさん!人間ってこの日は好きな人にチョコレートをあげるって聞いたんですけど……」
「え?ああ、そうみたいだね」
「それで、一応、板チョコ型の『E缶』をライト博士に造ってもらったんですけど……」

ミクは健気にも、青子先生にデジョンで未来まで飛ばしてもらい、ライト博士にその特注のE缶を造ってもらっていた。

「す、すごくうれしいよ。ありがとう、ミク」



その光景を見ていた久瀬は、「やってられるか!」という気持ちになっていたとかなっていないとか。

「そういえば、私が小さいときは『ギブミーチョコレート!』なんてみんなでGHQからチョコ恵んでもらってたっけ」

その傍らでしみじみと思い出を語る、バレンタインに縁のない女、綴子。
まあ、彼女の時代ではそこまでバレンタインは普及していなかったし、それもいた仕方ないのかもしれない。



「熊のぬいぐるみがほしーなー」

さらに一方で、キースにぬいぐるみをねだっていたのは、カードの精霊と化した煉華である。

「だああ!なんでカードの分際で品物ねだってんだ!!」
「だってー、アメリカではバレンタインに男の人から女の人にプレゼントするんでしょ。買ってよおにーちゃーん」
「余計なことばっかり覚えやがって……。だいたいオレは、女からモノもらうこたァあっても、オレからプレゼントなんてしたこたァ一度もねェ!!!」

特にえばるようなことでもない。

「もー!!オニィちゃんなんて大嫌い!!!」
「ウルセェなぁ!!チョコでも食って大人しくしてろ!!!」

仕方なしに、ポケットに入ってたミルクチョコを煉華に渡すと、まあ、所詮は子供でありたいそう喜んだとか。

そのほかにも、バレンタインの慣習のないはずのランスは、いろんな娘からチョコをもらっては大喜びであり、キョンもみくる、長門(まあ、彼女の場合は人間の行事への興味本位でだが)、ハルヒからチョコをもらっている。
斉藤にいたっては、自分でチョコレートを作り、それを彼女の名雪と交換し合う始末である。







「……どいつもコイツも!!!たるんでおるわ!!!」
「ホントだね!!だいたい、チョコもらったからなんだってのさ!!」
「エロゲー及びSSのモテモテの主人公は全員死ぬが良い!!!」

結局、久瀬と春原だけがこの季節に取り残されたわけで。
しかしながら、こんなことをいくら叫んでいても所詮は負け犬の遠吠えであり、ただただ虚しいだけである。

「そもそも、バレンタインデーなどただの教皇の命日ではないか!!本来ならこの日は喪に服すべきなのではないのかね!?」



こうして、久瀬のわがままにより喪服とKKKみたいな覆面をかぶった謎の集団が結成された。







ここは久瀬たちの町の商店街。
どんな田舎町であろうともバレンタインはバレンタインであり、例に漏れずこの商店街もバカップルどもで賑わっていた。

「はい、祐一くん。チョコレートだよ」
「また炭か?」
「うぐぅ……炭じゃないもん」
「冗談だって」

こんなバカップルのやり取りを見て切なくなる男性も多いはず!!!
そこで彼らの出番である!!!

「ナンマイダーブーナーミョーホーレンゲーキョー」
「天に召します我らの神よアーメン」

なんだかいろんな呪詛が四方八方より聞こえてくる。
そして、その呪詛の主であるKKKの覆面と喪服の集団が、この街の商店街を包囲していた。

「「「喪に服せー!喪に服せー!」」」

「ゆ、祐一くん、こわいよー!!!」
「だ、大丈夫だ、あゆ……ってか、なんなんだ!?」

「なんなんだとは心外な!僕らは貴様らのように『人の命日』にイチャつくバカップルどもに、『喪に服させる』ために現れたバレンタインの使者だ!!!」

ついでに久瀬もKKKの覆面と喪服を着ていた。

「お前久瀬だろ」
「な、何故ばれた!?」
「その傲慢不遜な口調、そしてなによりこんな馬鹿なことをするのはお前しかいない」

祐一の推理はもっともであった。

「ぬうう!しかし、貴様らが間違っていることにはかわりはない!!さあ、速やかに喪に服すのだ!!」
「……ってか、ただの僻みだろ」

っていうか、それ以外の何者でもない。

「ええい!ロリコンの分際でなにをほざく!!」
「誰がロリコンだ!!あゆあゆは小学生に見えるだけだ!!」
「それをロリコンだというのだ愚か者が!!アグネスに通報されているが良い!!」
「年齢は同じだから問題ないだろ!!この陰険眼鏡野郎!!」
「黙れペドフィリア!!」
「人間の屑!!」
「児ポ法違反!!」

仕舞いには小学生クラスの口げんかに発展する始末である。



「…っていうか、二人ともボクにすんごく失礼だと思うよ……」

その光景を見て、ただただあゆは拗ねていた。







「あ、俺、見たいアニメあるから帰ろ」
「俺も、ラブプラスが彼女だからいいか」

まあ、所詮は烏合の衆であり、その久瀬と祐一のくだらないやり取りを見てやる気が失せたのか、その結束の脆さたるや、見る見るうちに仲間は帰っていき、最終的に残ったのは久瀬と春原だけであった。



「ぼ、僕も帰っていいんでしょうか……?」

久瀬は現在祐一との低レベルな抗争中であり、春原は一人蚊帳の外である。



「そうした方がいいと思います。あの方にまともに付き合っていてもバカをみるだけですから」

そう春原に話しかけたのは、地味女、天野美汐であった。

「あ、あんたは……あの……」
「……まったく、公衆の面前で何を騒いでいるのかと思えば……」

そういうや否や、介さずに天野は抗争の中に入り込み……

「久瀬さん!いつまでバカなことしてるんですか!帰りますよ!」

…と、久瀬に向かって一喝した。

「む!?天野君か!!!」
「天野君じゃありません!!まったく!!そんなに甘いものが食べたければ、おはぎでもぜんざいでも好きなだけ作りますから!帰りますよ!!」
「あ…ああ……。そういうことなら仕方がないな」

さすがは久瀬の部下、天野。
発想こそ年寄り臭いものの、甘味好きの久瀬のつぼを良く抑えている。

「そういうわけで、だいぶ迷惑をおかけしました」

「あ、いや、別に……」
「そ、そうだよ。天野さんが別に悪いわけじゃないし…」

改めて天野が謝ったので、かえって恐縮する祐一とあゆ。
こうして天野は久瀬を上手く宥め、白玉ぜんざいとおはぎをご馳走する羽目になったことは言うまでもない。
バレンタインに縁がないどころか、とんだ貧乏くじを引いた天野であった。









「で、結局僕はどうすればいいの?」

そして一人だけ取り残され、久瀬もいないのでえいえんの世界にすら戻れない春原であった。



[15824] 第七十二話 …八雲紫って何級妖怪なんでしょうか?
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/02/19 21:21
3・海老で誘い出して総攻撃だな。



「フフ…あとはこの化け狐をどう倒すかだが……」

あくまで自分がこの戦いの主導権を握っている素振りを見せる久瀬。
戦闘力でも頭脳でも、決して彼らに劣っていないであろう藍であったが、幻想郷での戦いとは又違う戦術を使う久瀬たちを前に、戦いのペースをつかめずにいた。

「何か作戦でもあるでゲソか?」
「そうだな…海老で誘い出して総攻撃だな」

イカ娘の問いに、眉間に人差し指を刺し考える素振りを見せながら答える久瀬。

「え…エビ!?」

その久瀬の答えの中のキーワード『海老』に、過剰なまでの反応を示すイカ娘。

「そ、それなら敵を誘い出すのに非常で有効でゲソ!!は、早く用意するでゲソ!!」

もはやイカ娘が完全に誘い出されているという現実である。

「フフ…そうだな。まあ、そういうわけで海老を捕獲してくるから、君達はテキトーに時間稼ぎしておいてくれ」



そういって、久瀬は勝手に戦線を離脱してしまった。
こんな主人公は前代未聞である。

「……いっちゃいましたね……」
「……しゃーねぇ……時間稼ぎするか……」

久瀬の独断専行に、キースと梓は半分諦めムードである。
そしてイカ娘はというと、久瀬の捕獲してくるであろう海老を妄想し、一人トリップしていた。



「……三流コントは終わったのかい?」

一応、待ってあげる辺りが八雲藍の優しさであろうか…?
久瀬が完全に去ったのを見計らってのタイミングで、スペルカードを手に取る。

そして……



「速攻魔法!!『手札断殺』!!オレとテメェの手持ちのカード4枚を捨てさせてもらうゼ!!」
「何!?」

持っていたスペルカード4枚が墓地送りとなったことに、八雲藍は驚きを隠せない。

「(ま、まさかスペルカードに直接影響を与えるとは……!あいつ、何者だ!?)」

ただの落ちぶれた決闘者(デュエリスト)である。

「だが!!スペルカードはまだまだある!!」

そういって、藍は新たなスペルカードを取り出し発動する。



「式神『仙狐思念』!!!」



球体が発射され、それがキースたちに襲い掛かると思いきや、球体は爆裂、拡散し強力なエネルギーが発生する!!

「グッ……!!!」

その爆破エネルギーはキースのLP(ライフポイント)を着実に減らしていく。

「き、キースさん……!」
「テメェは失せろ!!どうせ足手まといにしかなんねぇんだからよォ!!」
「………ッッ」

心配してキースの元に駆け寄ろうとする梓であったが、キースはそれを邪険に扱い場を離れさせる。
久瀬に劣らぬ極悪非道で知られるキースであったが、彼も随分とヤキが回ったものである。

「所詮、久瀬のいないお前らなどこの程度!!橙を苛めた償いはたっぷりとさせて貰うからな!!」

それにしてもさすがは妖狐。
その火力、妖力ともに他の追随を許さないものがある。
真に恐るべしは、その八雲藍さえも式神として操る『八雲紫』であろうか……?

「な…舐めんな!!オレのターン!ドロー!!」

しかし、このまま引き下がっていてはバンデットの名が廃るというもの。
キースはデッキよりカードをドロー。
そのカードを見るや否や、つい口元が緩む。

「ククク……!次のターンでお陀仏にさせてやるぜ!!儀式魔法カード『高等儀式術』!!メカハンターと魔貨物車両ボコイチ二枚を墓地に送り、『ゼラ』を召喚!!!」

キースが召喚したのは、レベル8の儀式モンスターであり、ガーゴイルのような悪魔であった。
その大きな体から繰り出されるカギ爪は、このモンスターの凶悪なまでの攻撃力を見事に表している。

「ワハハハハ!!!この悪魔王の攻撃!!受けきれるかッッ!!!」



―――!!!



ゼラの巨躯を生かした爪の攻撃が藍に襲い掛かる!!

「そんな虚仮脅しで勝ったつもりか!!!」

藍の手よりもう一枚のスペルカード、式輝「プリンセス・天狐が発動される!!
ゼラを中心に魔方陣が描かれるや否や、それは再び強力なエネルギーを拡散し、凶悪なまでの弾幕と化する!!

「!!!!!!」

苦労して召喚された割に、ゼラはあっけなく破壊されその余波でキースは再びLPを削られる。

「クッ……」

キースの攻撃は全てが後手後手となってしまい、この悪循環を断ち切ることは出来ない。
まさにその妖狐の実力は、A級妖怪にさえ肩を並べるものではないだろうか!



「キースさん……」

その戦いを見ている梓は―――



1・キースを信じて戦いを見守ることにした。
2・久瀬の策を信じて戦いを見守ることにした。
3・足手まといを覚悟で戦いに参加することにした。



[15824] 第七十三話 …勝利をリスペクト!!
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/02/20 21:21
2・久瀬の策を信じて戦いを見守ることにした。



キースの攻撃は全てが後手後手となってしまい、この悪循環を断ち切ることは出来ない。
まさにその妖狐の実力は、A級妖怪にさえ肩を並べるものではないだろうか!



「キースさん……」

その戦いを見ている梓は久瀬の策を信じて戦いを見守ることにした。



「オレのターン!!オーバーロードフュージョンを発動!!墓地のサイバードラゴンとメカハンター、ボコイチ2体、スフィアボム、デモニックモーターΩを融合し、『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!!を召喚!!」



!!!!!!



キースは先ほどの魔法カード『手札断殺』と『高等儀式術』で既にサイバードラゴン及び機械族モンスターを墓地に送っており、墓地融合により6つのサイバードラゴンの頭を持つ白銀の機械竜が召喚された。

「キメラテック・オーバー・ドラゴンの攻撃!!『エボリューションリザルトバースト』ッッッ!!!」

キースの攻撃宣言と共に、おぞましい機械竜の6つの口から凄まじい勢いで光線が発射される!!

「面白い!!受けて立とう!!」

対する藍は、切り札のスペルカード・幻神『飯綱権現降臨』にて迎撃を図る。
蘭を中心に、大き目の光弾が螺旋状に凶悪なまでの弾幕を貼る。
それはキメラテック・オーバー・ドラゴンの攻撃を防ぐだけでなく、その上の追撃も可能となる、まさに最強最悪のスペルカードであろう!

「ククク!!!コイツぁ融合素材にしたモンスターの数だけ攻撃することが出来る!しかもコイツの攻撃力は4800だ!!テメェの弾幕で防ぎきれるかなァァ!!!エボリューションリサルトバースト!!グォレンダァァァ!!!」


―――

――――――


―――――――――





!!!!!!!!!!!!!!!






なんと言う壮絶な幕切れであろう……

藍の飯綱権現降臨とキースのレボリューションリサルトバーストは限界の力を持って相殺……
場に残っているのは再び、藍とキース、そしてそのバトルを見守る梓とトリップしているイカ娘だけとなった。

そして……



「いやぁ……なんと言うすさまじい威力だ。ノンマルト基地ごとフッ飛ばすつもりかね?」

いけしゃあしゃあと場に戻ってきた久瀬。
呑気にも片手にはティーカップを持っており、ミルクティーを一口だけすすり、これでもかというほどのドヤ顔を見せる。



「おお!!久瀬!!エビは!?エビは!?」

久瀬が戻ってきたことにより、イカ娘も『あっちの世界』より戻ってくる。
しかし、目は爛々とし口からは涎もたらしており、余計にやばくなった気もする。

「ああ。大量に獲ってきたから、たらふく食べるといい」
「わあーい!!」

甘やかしモード全開の久瀬。

「オイ!テメェ!!あの狐を誘い出すためにシュリンプ獲ってくんじゃなかったのかよ!!!」
「そうだったっけ?」

鬼気迫る表情のキースに対し、久瀬は明らかにすっとぼけている。

「……す、少しでも久瀬さんを信じた私がバカでした……」

さすがに梓も呆れざるを得ない。

「……フン、怖気づいて逃げたのかと思えば、再び戻ってくるとはな」
「フフ……貴様には用はない。君の『ご主人様』を早く出すのだな」
「なっ!!!」

一方、久瀬を挑発に掛かる藍に対し、久瀬は全く眼中にないと言った様子で主人『八雲紫』とのタイマンを要求する。

「な、ならば私を倒してみろ!!!」

今度は久瀬に対しスペルカードを発動させようとする蘭であったが……



「おやめなさい!!!」



門の奥……
否、次元の奥より落ち着いた感じの女性の声が聞こえてくる。

「どうやら久瀬は、私との一騎打ちが所望のようね。いいでしょう……受けて立ちます」
「ゆ…紫さま!!?」

そしてついに、堅く重き門が開かれ久瀬たちを迎え入れる。



「あ…相手は境界を操りあの妖狐すら式神にするほどの妖怪です……。勝ち目はあるのですか……?」
「無論、―――」



1・ある
2・あるわけないだろう



[15824] 第七十四話 …八百長
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/02/27 19:48
1・ある



「あ…相手は境界を操りあの妖狐すら式神にするほどの妖怪です……。勝ち目はあるのですか……?」
「無論、ある」

梓の心配とは裏腹に、至極自信満々に答える久瀬。
すきま妖怪も甘く見られたものである。

「ゆ、紫様!!あんな人間ごときにあんなこと言わせていいのですか!?」

そのたかが人間に『楽勝宣言』をされ、怒り心頭に達する藍。
しかし、すきま妖怪『八雲紫』の表情は依然変わらず。
そんな彼女を見た梓は「なんか久瀬さんに似ている」という印象を受けた。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!



ついに対峙した『外道会長久瀬』と『幻想郷の主・八雲紫』!
二人の間にはまさにニュータイプ間に発生するプレッシャーのような、なにやら強い波動を感じられる。
この二人の間には何者も侵入を許さない、圧倒的…威圧感がそこにあった。

「き、キースさん……」
「クソ……!!あの『邪神』以上のプレッシャーだぜ…!!このオレが身動きすらとれねえ」
「に、人間って恐ろしいでゲソ…!!」

梓、キース、イカ娘とも、このプレッシャーを前に動くという選択が許されない。

「フン…!紫様の実力はこんなものではないぞ」

そして、この戦いの結末は主人の圧勝とばかり、息巻く藍。






「さあ、どこからでもかかってきなさい」
「フン…いいだろう。手合わせ願おうか」



そして、ついに久瀬と紫、二人の巨星が激突した!!!













「「はっけよーい!!のこったーのこったー!!」」



「「「え!!?」」」

全員が絶句…!!
それもそのはず、久瀬と紫はなぜか『相撲』を取り始めたのだ!



「うわ~~~や~ら~れ~た~」
「フハハハハ!!!僕の勝ちだ!!!」

そして、全員がポカンとしている間に、紫は地面に手を着き、久瀬の勝利は決定したのであった。



「……って、フザけんな!!!なんで『スモウ・レスリング』で決着なんだよ!!!」
「紫様も、こんなんでいいんですかっ!!!」

当然こんな結末に納得いかないのは、さっきまで死闘を演じていた藍とキースである。

「藍……負けは負けよ。私たちは大人しく引き下がるわ」
「そ、そんな、紫様!!?」

この紫の敗北宣言が、どうしても納得できない藍。
一方……

「ん?なんでゲソか?」

「あっ!!?」

イカ娘の触手は、久瀬のポケットの携帯電話を掴み取った。
久瀬はそれを取り返そうとしたが、一足遅くそれはイカ娘らの手に渡った。
さっそく、その携帯電話のメールを閲覧する一行。
そのメールをみて全員は愕然とした。



『立ち合いは強く当たってあとは流れでお願いします』
『了解しました!それでは少し踏ん張ります!』



「八百長じゃないですか!!!!!」

「……ばれたか」
「……ばれましたね」

この八百長相撲に対し、完全にブチ切れの藍だが、久瀬と紫は悪びれる様子は一切ない。
本当に、さっきまでのガチ死合が残念でならない。

「十万円で白星を買ったわけなのだが…」

さらに久瀬の口から続くサイテー発言。
おそらくは、先ほどは『エビ』を捕獲しに行くフリをして、八雲紫と連絡を取れるものを『恐喝』して、なんとか交渉まで辿り着いたのであろう。
本当にこの男、裏工作を好む。



「…正直納得いきません。お互いに密約を結んだのであれば、別に『和平』という形でもよかったはずです。でも、今回の八百長騒動はあきらかに不自然すぎます」

しかし、そこに突っ込んだのは意外にも梓であった。
さすがは久瀬の見込んだ平沢唯の後輩なだけのことはある。
何故ここまでして決着と言う形が必要だったのか……?



「…無論、我々とノンマルトの戦いは『監視』されているからだ」

久瀬は全員を寄せ集め、小声で説明を始めた。
続けざまに紫が事の発端を説明する。

どうやら紫は1000年前のリベンジのため、再び月面世界を侵攻すべく力を蓄えており、地球を制圧したのちにその技術力で月を侵攻しようという作戦に躍り出た。
そこまでは久瀬の予測どおり。
しかし、時空管理局及び久瀬ら『えいえんの世界軍』はそれを見逃すはずもなく、ここで総戦力を動員した戦いとなる。

「つまり、僕らは上手く誘導され、ノンマルト…もとい『幻想郷』と戦うこととなってしまった。僕としたことが、大きなミスを犯してしまったようだ」
「……ここまで説明すれば分かったかしら?『監視者』の目的は、『幻想郷』と『えいえんの世界』の共倒れでしょう。……いえ、正確に言えば『私』と『久瀬君』を排除しよう…ってことね」

全員が押し黙り、久瀬と紫の話を聞いていた。

「そこで、僕は一計を紫君に提案したのだ。『ここは八百長試合で決着が着いたことにし、監視者が漁夫の利を狙ってきたところを二人で返り討ちにしよう』とな。フハハハハハハハ!!!」
「条件として、10万円と、月面侵攻の技術のバックアップを約束したのよ」
「僕は『諸悪の根源』と『世界政府』の打倒以外興味ないからな」

そして誰もが思う。
監視者の最大の失敗は、久瀬と八雲紫…この二人を敵に回してしまったことである…と!!

「……って、さっきから『監視者』って言ってますけど、その久瀬さんと八雲紫さんの共倒れを謀った監視者って、一体誰なんですかっ!!」
「なんだ梓君。君ならとっくに感づいてると思ったのだがな」

梓の当然の疑問に対し、久瀬は含みを込めた言葉で返す。

「ま…まさか……!?」
「そう、『監視者』の正体……それは―――」



1・ギルガメッシュだ!
2・ユーノ君だ!
3・ギルガメッシュとユーノ君、二人いたのだよ!
4・意外にも美坂香里君だ!
5・…真に信じられないが…涼宮ハルヒ君なのだよ!



[15824] 第七十五話 …魔女
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/03/07 12:35
5・…真に信じられないが…涼宮ハルヒ君なのだよ!



「……って、さっきから『監視者』って言ってますけど、その久瀬さんと八雲紫さんの共倒れを謀った監視者って、一体誰なんですかっ!!」
「なんだ梓君。君ならとっくに感づいてると思ったのだがな」

梓の当然の疑問に対し、久瀬は含みを込めた言葉で返す。

「ま…まさか……!?」
「そう、『監視者』の正体……それは…真に信じられないが…涼宮ハルヒ君なのだよ!」

「「「!!!」」」

パーティ全員、この久瀬の言葉に驚愕した。
それもそのはず、ハルヒは久瀬の仲間として今日まで『諸悪の根源』と戦ってきたのだ。
それが何故今更久瀬と八雲紫の監視などしなければいけないのか…
彼らの疑問に答えるかのように、久瀬は言葉を続ける。



「正確に言えば、『諸悪の根源』は涼宮ハルヒ君にジャンクションしたと言うべきか……」

ジャンクション!!
『エルオーネ』の能力であり『接続』とも呼ばれている。
能力者が介在することで、生体同士のジャクションを可能にする。
能力が発動すると、意識を飛ばされる方の人は昏睡状態へと陥り、接続される方の人は頭の中に何かが介入するような感覚に襲われる。
意識を飛ばされた人は接続された人の状況を把握することが可能になり、接続された人は意識を飛ばされた人がジャンクションしていたアビリティや召喚魔法、魔法、アイテムを使用できるようになる。

「まあ、『ダルさん』と付き合ってみたり、『恋愛話』してライフライナー発狂させたのも、涼宮君というよりは『諸悪の根源』の仕業であったのだろうな……」

さらに久瀬は、『特定ファン層』というのは、個人の恋愛の自由さえも認められないほど器の小さいものなのかね?…と嘲笑いながら付け加えていた。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!



「よくぞ、ここまで突き止めました…。さすがは久瀬。ご苦労様でした」

すると、扉の向こうよりハルヒ…もとい『諸悪の懇願』が姿を現した!
しかし、ハルヒの顔で敬語を話されるのも、なにか違和感があるのだが…

「諸悪の根源か。…こうして対面するのは初めてだな」

ラスボスを前にしても、あくまで余裕ぶる久瀬。

「そういえば、梨花君との約束もあったな。『前原君』は無事かね?」
「無論、無事です」
「ならば『レナ君』ともども返して頂こう」
「なんのことですか?」

そういうや否である。

久瀬は不意打ちによりハルヒの秘孔を突こうとした刹那……
久瀬とあろうものが、魔女の力…『魔法』を甘く見すぎてしまっていたのだ!!

●ファイガ

「なっ!!?」

そのあまりにも短い詠唱速度から繰り出される魔力の炎が、久瀬の身体を包み込んだ。

「く、久瀬さん!!?」
「チィ……」
「助太刀するでゲソ!!」

梓、キース、イカ娘がそれぞれ応戦しようとするが…

●バイオ

凶悪なまでの毒々しい緑色の泡が、梓たちを包み込んだ。

「きゃああ!!!」

梓の叫び声が室内に響きわたる。
しかし、ハルヒの攻撃はまだまだ終わらない!!

●サンダガ
●ブリザガ

反撃に出ようとする久瀬を一瞬の雷で、そして瀕死のその他メンバーに対してはブリザガで氷漬けにする。



「クソ……魔法というものを甘く見すぎていた……!キース君のマジックジャマーで封じれば何とかなると思っていたが、こうまで連発できるとは……!!」

後悔時すでに遅しである。
そもそも久瀬の戦いの優位性というものは、まずは情報戦を制するところにあるといってもいい。
しかし、今回の戦いにおいて久瀬は『魔法』の情報を完全に見誤っていた。

久瀬の知る限り、魔法を使える人物というのは『青子先生』と『遠坂凛』くらいなものである。
そもそも魔法というものは、現人間界においては『魔術』とは異なる神秘であり、その時代の文明の力では実現不可能な『結果』をもたらすものを指して魔法と呼ばれている。
人類が未熟な時代には数多くの魔法があったが、それらは文明の発達にともなって、殆どが魔術へと格下げされたともいえる。

だからこその『慢心』!!
異世界と人間界における『魔力学』の知識の差が、久瀬に付け入る隙を与えてしまったのだ。



「(…だが、切り札はまだこっちが持っている……!!―――)」



1・それはキョン君だ!!
2・それはなのは君だ!!



[15824] 第七十六話 …恋愛は人間の権利です
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/03/07 17:52
1・それはキョン君だ!!



「(…だが、切り札はまだこっちが持っている……!!それはキョン君だ!!)」

そう、久瀬にとっての切り札は『キョン』であった。
久瀬がキョンを仲間にした理由の一つに、ハルヒの暴走の制御というものがある。
また、ハルヒとキョンの間にどのような感情があるのかは分からないが、キョンは幾多ものハルヒによる世界再構築の危機を回避してきた。
キョンならばハルヒを元に戻せるだろう……
久瀬はそう踏んでいた。







「ハルヒッッ!!久瀬ッッ!!!どうしたんだ一体!!?」

案の定、彼らはギルガメッシュを倒してきたのか、第二パーティ(キョン・綴子)が『諸悪の根源ハルヒ』の下へ辿り着く。

「見ての通りだ!涼宮君が『諸悪の根源』とジャンクションしてしまった」
「なんだって!!!」

融合解除したユーノとなのはの姿が見えないのは、おそらくは地球の記憶とジャンクションしてしまったユーノの『記憶』を戻すためなのだろう。
もとよりなのははユーノをこちらの陣営に引き入れるためにつれてきたようなものでもあるし、このままユーノの記憶を取り戻し『世界政府』から引き離させようとする分には一向に構わなかった。

ちなみに、いつの間に幻想郷の八雲紫一派もこの空間から消えていたが、それは今は捨て置くことにする。

「まあ、パーティから離れたときは、散々好き勝手なことをしていたらしいからな」

どうやら久瀬が『海老の捕獲』とかいって一旦戦闘から離脱した理由は、『八雲紫』との八百長メールのほかに、ハルヒに関する情報収集も兼ねていたらしい。
久瀬が聞いた噂といえば、『ダルさん騒動』『ライフライナー騒動』『タクシー暴走騒動』『脱税疑惑騒動』『トイレ消灯騒動』と、いずれもろくなものではなかった。

「まあ、いつもやってることと大して変わんない気はするけど……」

それがジャンクション中にハルヒの取った行動に対する、キョンの率直な感想であった。

「…とにかく、あの桁違いの魔力は僕の想定外だった……。おそらくは涼宮君の元より持っていた『世界構築』のアビリティが『諸悪の根源』の魔力と相性が非常に良かったのだろう。……そして、彼女をとめることができるのは、君しかいない」
「………ッッ」

キョンはなにかロードローラーで押しつぶされるような、ものすごい重圧を感じていた。
あの傲慢不遜、唯我独尊の久瀬が、こうも弱気な発言をするなど今まであったであろうか!?
まして、味方を利用することはあっても、味方を信頼し全てを託すなど……



「さ、さすがにやっつける……ってわけにはいかない……よね……」

非常に言いづらそうに、それでも綴子は万が一のことを考え、久瀬に聞かざるを得なかった。

「……キョン君の説得が失敗すれば……止むを得ない……が……」

しかし、仮に『やっつける』にしても、久瀬、綴子、キョンでどこまで戦えるのかには疑問符がつく。
あるいは、なのはの魔力なら『諸悪の根源』と撃ち合うことが出来たであろうか……?



「……この状況では、久瀬お得意の『不意打ち』も使えず、まともに戦ったところであなた方にどれほどの勝機がありますのやら……」

一方の諸悪の根源は、まさに負ける要素はゼロとばかりに、余裕の言葉を久瀬らに浴びせる。

「は、ハルヒが敬語しゃべってる……!!?」

ハルヒが敬語で話すことで、キョンは改めてハルヒが諸悪の根源にジャンクションされていることを実感する。
しかし、その感情は至って冷徹、ハルヒらしい勝気ながらも天真爛漫なものは一切除外されていた。
まあ、何はともあれキョンがハルヒの潜在意識を戻さなければ話は始まらない。
しかし、一体どうすれば……!!?

「―――」



1・お前らしくないぞハルヒ!!!
2・俺を愛しているといえ!!!
3・さぁ、お前の罪を数えろ!!!



[15824] 第七十七話 …こんな非常時に当直は死ねた
Name: ネオアミバ◆59608fce ID:9d5980fc
Date: 2011/03/13 17:21
1・お前らしくないぞハルヒ!!!



まあ、何はともあれキョンがハルヒの潜在意識を戻さなければ話は始まらない。
しかし、一体どうすれば……!!?

「お前らしくないぞハルヒ!!!」



なんともありきたりな、キョンの叫びであった。

「……なんだ。もっと『愛してる』とか、そういう告白の類じゃないのね」

こんなときに残念そうに呟く綴子は、『上田謙介』並に不謹慎すぎるであろう。

「……しかし、もはやキョン君以外に『諸悪の根源』がジャンクションした涼宮君を止めれるものはいない……」

それでも満身創痍の久瀬が賭ける最後の希望は、まさにキョンであった。
無論、諸悪の根源がそんな隙を与えるワケもなく、次の攻撃魔法を詠唱し始めた。



●クエイク



!!!!!!!!!!!!!!







「じ、地震ッッ!!?」

なのはは不意に声を上げる。
八雲紫のいた部屋を中心に、海底神殿は『魔女ハルヒ』の黒魔法クエイクにより、大規模な地震が発生する。

「……ば、バカな!!海底神殿ごと破壊する気なんですかッッ!!?」

たとえ記憶が消えようとも、ユーノはユーノである。
このような危機に相反したとき、一番役に立つものは経験を置いてほかにはない。
ユーノはとっさの防御魔法で、今にも落ちてきそうな海底神殿からわが身と『なのは』を守るべく防御呪文を詠唱する。

「ゆ、ユーノ君!!?」

なのはも広域的な魔法を駆使し、なんとか周囲の防御を果たす。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!



しかし、事態はいつでも予測不能の事態に陥るもの。
このプレッシャーを感じるものなら、まさに相する前に逃げ出すであろう。
あるいは、逃げ切ることの出来なかったドーパントは!?
あるものは侵入者に頭をつかまれ、少し揺らされただけで『昏倒』し…
あるものは侵入者にデコピンで熨されてしまっていた。

…ついには刃向うことを諦め、しかし、戦わないという『選択』さえ許してもらうことは不可能な状況ッ……!!!

そのときの状況をユーノは次のように語った。



「突然 ドーパント同士が殴り合い始めたんです。彼―――黒服の男の見てる前でッッ。残った一匹も止めるどころか、殴りだしたんですよ。自分を」

ユーノが何を言っているのか分からないが、言っているユーノも我が目を疑う光景だったのであろう。

そのあまりの超展開に、ユーノもなのはも絶句するほかなかった。

歯が跳んでも、身体が千切れ飛んでも、意識を失うまでドーパントたちは殴りあうことをやめない。
しかし、そんなドーパントたちもこの男の一言で、パントマイムでもやっているかのように、一斉に動きを止める。

「大統領命令ですよ、あれじゃ。止まりましたもん、ピタって」

すると、その黒服の男は口が裂けるのではないかと思うくらい、ニィと邪悪な笑みを浮かべた。

「闘おうともせず―――一匹でも逃走だしたなら、その場で屠り去っていた」

その男は非情であった。
一人でも臆病者がいたら皆殺しにデモするつもりだったのであろう。
そして、それをやり遂げるだけの戦闘能力をこの男は明らかに保有していた。

「かと言って俺に向かってきても同じ運命。ならば苦肉の策。自らを殺傷し合う………自らを殺傷する。それでいい。それがいい。『許してやろう』」

なんだか全くワケのわからない理論で話は進んでいくわけであるが。



次の瞬間!!!
さらに我が目を疑う出来事がユーノたちを襲う!!!



「ッチエリアアアァァッ」

!!!!!!!!!!!!!!!!!!

なんとその拳一つで、『諸悪の根源』の発生させた地震を止めてしまったのだ!!!
無論、実際この男の拳で地震が止まったのかは不明である。

「しかし!自分のパンチで地震を止めたという、なんと言うエゴッッ!!?」

無論、地球の本棚とリンクしているユーノが、この男の存在を知らないわけがない。
小野田と綺礼から挙げられている『諸悪の根源』を倒しうる7人の一人にも挙げられている、地上最強の生物―――!!!

「お、オーガ……ッッ!!!」

そう、この男こそ、地上最強の生物『範馬勇次郎』であった!!!



「クックックッ……考古学者のユーノに、時空管理局のなのは……面白い顔が並んでいる……」

男の眼は、まさに獲物を刈る獣の眼そのものである。
その危機をとっさに判断したユーノは、その自身の持ちうる全ての魔力を防御壁に当てたのだった。
ちょうどその防御壁は、勇次郎とユーノ、なのはの境界を築いていた。

「ゆ、ユーノ君!!?」
「なのはには手を出すな!!!」

ユーノは精一杯の力で勇次郎に叫ぶも、それを聞いているのかいないのか、ただただ笑いながら勇次郎は二人へ近づいてくる。

もうこれ以上信じられない出来事は起こるまいと思っていたが、まだまだ信じられない出来事は連鎖するものである。

「入るぜ」

そう勇次郎が言った瞬間、そのまま顔面を防御壁に押しつけるッ!
まるでこんな防御など手を使うまでもないと……
否!こんなもの、扉の空いた部屋に入るに等しい行為といわんばかりに!!!

顔がムニぃぃッと押しつけられて、面白い顔となっている。
その顔はまるで『オバケのQ太郎』を連想させるような、しかし得体の知れない恐怖のみがユーノとなのはに襲い掛かった。



もう勇次郎との対決は避けられないのであろうか!!?

なのはは―――



1・スターライトブレイカーexを放った!!
2・ユーノとともに逃げ出した!!
3・とりあえずユーノを殴った!!


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