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[13641]  なぜか“ネギま”で、なぜかTS 【ネタ】
Name: arc◆9ba4ad2b ID:07537280
Date: 2010/12/27 21:34
ナナ・スプリングフィールド、これが今の私の名前。

今年で40のおば……お姉さんとあえてそう言わせてもらう。外見まだ若いし

性別は女

容姿、金髪碧眼、稀に金髪赤眼、メロンありのボンッキュッボンッ……ナイスバディよ

家族構成

両親 死亡
弟 ナギ・スプリンフィールド 行方不明
娘 ネカネ・スプリングフィールド 健康
甥 ネギ・スプリングフィールド 健康
義妹 アリカ……長いので略 行方不明

そして夫、いや精子提供者兼強姦、言い方を変えるなら酒を飲んで間違いをやってしまった相手……秘密、娘すら知らない。紅き翼のメンバーは全員知ってるけどね。


近日の予定ってか今日甥のネギが魔法学校を卒業する。

そして、原作が始まる。



 なぜか“ネギま”で、なぜかTS



「お母さん」

自室で作業をするナナは女の子から声掛けられた。

「ネカネ、どうしたの?」

「どうしたの? じゃないです。ネギの卒業式が始まりますよ」

振り向いたナナの言葉に、ネカネは溜息をしてナナに近寄る。

「そう、よかったわね」

「……お母さん、みんな待ってるんだから行きましょう」

「そうね。愚弟の息子だけど、仕方ないわね」

愚弟、英雄とされるナギにそう言うのはこの人を除いていないだろう。バカというのは何人かいるだろうけど、それも愛情である。

それからナナはネカネに引っ張られながら歩くことになる。手を放した瞬間逃げようと機会をうかがうナナだったが、さすが娘である。絶対に手を放すことはなかった。



「ネギ・スプリングフィールド」

「はい」

もう式は始っていたが、ちょうどお目当ての番だったようだ。そして、少年は校長らしい老人に卒業証書を渡され、ありがたい言葉をいくつか聞かされた。

「おめでとう」

「ありがとうございます」

と最後に言葉を交わし、少年はほかの学生がいる位置まで戻る。

「じゃ、帰るわよ」

それを確認すると、ナナはもう用はないとばかりに来た道を戻ろうとする。

「ちょっ、お母さん!?」

「冗談よ……あと、ネカネ」

ネカネがあわてて大きめな声を出して止める。ナナは素直に言うことを聞いた。だが

「式の最中に大声を出すのはやめた方がいいわよ」

「ふぇ?」

ナナが微笑を浮かべながらネカネにそう言うと、ネカネが周囲を見渡す。すると、うるさいんだけどという目が自分に集まっていることに気づく。

「ごめんなさい」

(ふふふ、まだまだね)



そして、一応無事に卒業式は終了した。




 ~あとがき~

テストからチラシの裏に移動しました。

次を表示するではいけないと思いますので、お手数ですが、ページの上の方にある 『にわにはにわにわとりが……二羽』 をクリックしていただけると助かります。




[13641] にわにはにわにわとりが……二羽
Name: arc◆9ba4ad2b ID:25b285fc
Date: 2011/10/20 12:06
卒業式が終わって、ようやく魔法使い……まだ見習いだけど……となったまだまだお子ちゃまたちは、家族のもとに向かうものもいれば、お世話になった教師にお礼を言うものもいる。私の甥はというと、幼馴染で一緒に卒業したアーニャちゃんとネカネと一緒に笑っている。ネカネったら終わると同時にネギを祝いに行くなんて、よほど嬉しかったのかしらね。

そんなことを考えながらナナは三人の傍にゆったりと歩いていく。だが、ナナがただ歩いただけなのに周囲は騒がしくなった。

はぁ、だから嫌なのよ。関係者がたくさん集まる場所は……スプリングフィールドはパンダやペンギン、イルカやオオワシじゃないのよ。少し(かなりかもしれないけど)魔力が高くて、肉体の強度が高い血筋なだけよ。

表情には出さないが、心では色々なことを思う。その周りの変化にネギとアーニャもナナが着ていることに気付いた。

「おばさん」

ネギは元気良く、はっきりとそう言った。ナナの外見はまだ若く、二十代中ごろから後半と言っても誰も疑わないほどである。それに対して、おばさんといったネギ……

「ネギったら……未婚の女性に対して、しかも外見二十代の私に対して、たとえ愚弟の息子だったとしても、せめてさん付けかお姉ちゃんでしょ。女に対して失恋と年齢を感じさせる話題は禁句よ。わかったかな?」

無詠唱で肉体強化の魔法を使用し、一瞬でネギの前まで詰め寄り、さらにはアイアンクローをしてネギを持ち上げていた。子供の体重が軽いとはいえ、女性が細い片腕で持ち上げるのはなかなか迫力があった。

「ごめんなさい。ナナさん」

「うんうん謝ることは大事なことだよ」

いい子だねネギはというような雰囲気なのだが、ナナはネギを放さずにむしろ先ほどより強く頭を締めていく。

「でもね。ネギ……これで何回目かな?」

「じ、十回ぐらい、ですか?」

「ちがうわよ。百は超えてるわ」

周囲は沈黙、ネカネとアーニャはネギを可哀想な目で見ているだけで止めようとしなかった。自分で十回ぐらいというくらいなら、学習しろよというのが皆の心だった。

「はぁ……今日は卒業式だからこれぐらいにしてあげる」

ナナの溜息と同時にネギが床に下ろされる。

愚弟もだけど、ネギもかなり無礼よね。魔法だけじゃなく、もう少し一般常識というものを知ってほしいわ。興味あることに専念するのは子供の特権だけど、一応保護者としてはまともに育ってほしいな。

「ん? 場所を移すわよ」

周囲に注目されていることに気付き、ナナは人気のない場所に向かって歩き出した。ネカネ、ネギ、そしてアーニャはナナに着いていく。





人目を避け数分歩く四人、たどり着いたのは

「校長室?」

「そうよ。爺さんが一人二人いるだけの静かな場所よ」

そう言ってナナはノックもなしで校長室の扉を開ける。

「お久しぶりね」

「なんじゃ、悪ガキの姉の方か」

「そういうな。最近は顔を見せなかったが、また引き篭もっておったのか?」

「英雄になると外を歩くのが面倒でね。まあ、お金はあるしネットにゲーム、料理に研究と自由にやってたわよ。スタンさん、爺さんも元気そうで何よりね」

昔からの知り合いである三人はやや棘のあるが、優しさが感じられる会話をする。

「それとスタンさん、卒業式にいなかったけど見なくて良かったの?」

「卒業式ぐらい何十回も見とるわい」

いかにも魔法使いらしい格好のお爺さんが真昼間から酒をやっているのか、顔を赤くしている。

相変わらずね。にしても、昼間から酒? しかも一人で……ずるいわね。

「む、やらんぞ」

「爺さん、私にも酒」

羨ましい眼差しで見られていることにスタンが気付きナナからお酒を隠す。ナナはそんなスタンを無視し、校長に対して酒を要求した。

「ここは校長室なんじゃがのう」

「いいからお・さ・け」

「仕方ないのう」

校長の仕事用の机からなぜかボトルが出てくる。それもたくさん……その中の一本をナナは自分で選んで勝手に飲みだした。グラスに注ぎすらしないで……

「な!? ナナ、それは一番高い酒じゃぞ」

「爺さんの健康のためにも、涙を呑んで私が処分してあげるから」

驚く校長。涙ではなく酒を飲んでいるナナ。

「ワシの……」

「ぷはぁ、美味しかった」

もう一本のみ終わったのか、ナナは空になったボトルだけを校長に返す。鬼である。



そんなダメ大人を無視しつつ、子供たちはこれからの進路について話していた。進路といってもまだ見習い魔法使いであるため、修行先のことである。

「私はロンドンで占い師をやるみたいね」

「へえ、近くでよかったわね。アーニャちゃん」

「はい。でも、他の国にも行ってみたかったな~」

アーニャの修行先にネカネは心から喜んでいるようだった。アーニャは他の国でもと思っていたが、別にロンドンが嫌という訳ではなさそうだ。

「「ネギは?」」

そして、二人がネギの修行先を聞いた。

「日本で先生をやること」











「ああっ」

ネカネは倒れた。

「お姉ちゃん」「ネカネさん」

それを二人が支える。

「ありがとう、二人とも……校長、先生ってどういうことですか?」

「う~む」

「何かの間違いではないのですか? 十歳で先生など無理です」

「そうよ。ネギったら、ただでさえチビでボケで……」

ネカネの言うことはわかるけど、アーニャ……チビでもボケでも先生をやっている人はいるわよ。ネギほど小さくないでしょうけど

ネカネとアーニャが校長に猛反対だが、ナナは気にせず次のボトルを手にしている。

「しかし卒業証書にそうかいてあるなら、決まったことじゃ。立派な魔法使いになるためには、がんばって修行してくるしかないのう」

校長の言葉にネカネはまた倒れそうになった。

「でも爺さんが考えたのよね。その卒業証書」

そこにナナが言葉を発した。

「そ、そんなことはないぞ。そ、そうじゃせ、精霊が考えてくれるのじゃ……本当じゃぞ」

言葉が上手く出てこなかったのか、嘘だという事を全員が理解した。呆れられた目で見られるが、それでも校長はそれで通そうとした。

「でも十歳……いえ、まだ九歳の子供に先生をさせるのは学校、生徒並びに保護者に無礼かつ馬鹿にしているわよ」

「むう」

「それに日本っていっても、どうせ麻帆良でしょ?」

「うむ」

「麻帆良で修行させたいんだったら、わざわざ先生じゃなくても生徒として編入させればいいじゃない。そうした方が自由時間が多くていいと思うわよ。先生って色々とストレスとかあって、休みがない職業だし」

「おお、そうするかのう」

「そうしろ」

ナナは校長を説得なのかわからないが、先生から生徒に変更させた。校長はそれもそうかと思い直し、何処からか出した紙に色々書いていく。

「ではネギよ。修行の変更じゃ」

「はい」

その内容は

日本で生徒をやること。あと保護者としてナナ・スプリングフィールドの同行を許可する。てか連れて行き、ネギの代わりに先生をさせること。
PS ナナの就職が決まってよかったのう。ワシって優しいじゃろ。感謝するんじゃぞ。 By ジジ

だった。先ほど酒を飲まれたことの恨みも付け加えられている気がするが、それが本当のことかは校長にしかわからない。


「爺さん、棺桶の注文するけど……どこに埋めてほしい?」


「ふぉっふぉっふぉ、ワシに勝てるつもりかのう」


次の瞬間、二つの魔力の奔流が部屋に溢れる。

「 白き 」「 紅き 」

「 雷 」 「 焔 」

閃光、爆発、そして壁の一面が大きな音とともに崩れた。




「超高齢社会は若者に負担なだけなのよ」

「ふぉふぉふぉ、今まで育ててやった恩を返すべきではないかね」

「最後まで次世代のためになる選択をしろ」

「今の世を作った爺に、ちと酷いぞ」

「こんな世にした責任をとれ」

「むう、お主碌な死に方せんぞ」

「結構」

金髪魔女と老白髪鬼の戦いは激しさを増し、校舎の約三割を破壊し、森の大半を焼け野原に変えた。

勝負の決着はというと、スタンとネカネを始めとする魔法使いによって無効試合となった。

「ちっ、あと数分あれば勝てたのに」

「ふぉっふぉっふぉ」(さすがはナナじゃ。もう少しで死ぬところじゃったぞ……やはりスタミナが持たんのう)




最終的には……

「ここが日本……」

二人は飛行機という文明の利器に乗って、日本の大地に足を踏み入れた。

クソジジイめ、面倒なことを押し付けてくれる。まあ、自宅でニー……主婦やっているより退屈しないけど、本当に面倒だわ。

「ナナさん、行きましょ」

「はいはい、子供は元気ね」

二人は母子のように手を繋いで歩き出す。





 おまけ


「ここって空港と変わらないなー」

「空港だからね」

「??」

(はあ、一般常識も教えないとダメね)






[13641] サンサンと輝き続けるSUNのように……三羽
Name: arc◆9ba4ad2b ID:25b285fc
Date: 2011/10/20 12:15
「うわ~、日本って人がいっぱいだ~」

ネギ、田舎育ちとはいえイギリスも人はいっぱいいるわよ。

「ナナさん?」

「ん、どうした?」

「どうして女の人がこんなにいっぱいいるの?」

現在電車で移動中のネギとナナだが、ネギ以外に男性も男の子も車内にはいない。

「どうしてって、女子中が目的地だからよ」

「ふ~ん」

仮にネギだけで乗っていたらすぐに迷子として扱われていたであろう。

“ふ~ん”って、ネギから聞いてきたのにそれはないでしょうに……それにして、若い子は元気ね~。平和っていいわ~。

周囲の女の子たちは和気藹々としており、元気満々であった。それに比べて四十のナナは少し羨ましそうに、しかし微笑ましく思った。

(親子かな?)(姉弟じゃないの)(どっちにも見えるから、逆に困るね)(男の子は十歳ぐらいだとして)(女の人は二十代かな?)(十歳以上も歳の離れた姉弟?)(う~ん、二十後半だとして二十前後で産んだとか?)

女の子たちはそんなことを考えていたり、小声で話しているがナナは気付いていない。本当は四十歳で十七歳の娘がいると知ったらどうなるのか楽しみである。

『 まもなく 麻帆良学園中央駅 まもなく 麻帆良学園中央駅です 遅刻しないように さっさと降りろよ~ 遅刻したら ワイも怒られるんだからな~ 』

なかなか面白みのあるアナウンスであった。ナナはネギに降りる準備をさせ、自分も大きめの旅行ケースとバックを手にする。

「はぐれないようにね」

「うん、ナナさん」

電車が緩やかに停車する。ドアが開かれると、女の子たちが一斉に外に飛び出していく。それと一緒にナナとネギも降り、歩き出した。

「あれ、ネギ?」

一分と経たずにナナの近くにネギの姿はなかった。並んで歩いていたはずになぜかいない。

……はあ、どうしてこうなるかな……

その疑問には誰も答えてくれない。けれども、ナナはネギを探し始めた。





一方、少年は走っていた。

「僕たちも遅刻しないようにしなくちゃ」

ネギは遅刻という単語に少し焦りを覚え、走っている。

「ナナさん、急ぎましょう」

自分の後ろにナナが付いてきていると思って話しかける。いないので当然返答はない。

「緊張するなー。友達できるかなー」

しかし、ネギはそんなことに気付かずに走り続ける。親(ナナ)の心、子(ネギ)知らず、だった。しばらく走っているとネギと女の子二人が並走しながら面白いことやっていた。いや面白いことをやっているのは、二人のうちの片方だった。だが、やらせているのはもう一人である。具体的には

「好きな人の名前を十回言って“ワン”と鳴くと効果ありやて」

「高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、高畑先生、ワンッ!!」

とか

「え~と、次は逆立ちして開脚した上に五十メートルを全力疾走して“ニャー”と鳴く」

「おりゃ~~~~~~~~~~~~、くぅ~~~~~~~~~、ニャァァァァッ!!!」

とか

「前方宙返り、空中でひねりを加えてクルクルと回転し、見事に着地してから“好きな人の名前 LOVE”と叫ぶ」

「難しいわね。でも私の愛に限界はないわ! とりゃ、はっ、むんっ、高畑先生~っ! LOVE!!」

などやっていた。周囲の人は二人から半径数十メートル以内に近寄らない。何も知らないネギは人ごみを避けた結果としてすぐ横にいたのだ。

「あのー、あなた」

「え、何よあんた?」

「失恋の相が出てますよ。かなりドギツい」

ネギ・スプリングフィールドと身体能力が高いオレンジの髪に蒼と翠の瞳を持つ女の子の最悪の初対面だった。

「何だとこんガキャーーッ!!」

当然女の子は怒る。

「すみません、占いの話をしてたみたいだったんで」

ネギは驚きながらも謝る。

「純情乙女にテキトーなこと言うんじゃないわよ!」

「いえ、本当にドギツい失恋の相が」

「ちょっと~~~」

「アスナ、相手は子供やろー。少し落ち着きー」

もう一人の黒髪の女の子がオレンジの子――アスナ――を止めようとする。

「あたしはガキは大っ嫌いなのよ!」

「うわわ、いつもと同じことに~」

いつもと同じこと、ネギはナナにではなくアスナにアイアンクローをされて、宙吊りで頭を締め付けられる。

「しかも、何でガキがこんなところまで来てんのよ!」

「それもそーやな。ボク、何しに来たん?」

「それはですね「どうでもいいわよ! じゃあねボク!! ガキは失せなさい!!」あうう」

(日本の女性は清楚で親切かつ優しいって聞いていたのにー。おばさんと同じぐらい乱暴な人なんだ」

「乱暴な人って、このガキん「ネェギィッ!!」ひゃ、今度はな、に……よ」

アスナが低く重い声の聞こえた方向を見ると、金髪美女が金髪般若になった感じの存在が走って向かってきていた。

「お、ばさん」

ネギは酷く怯えた様子につぶやく。

「おばさんじゃないっていったでしょ。それにこの子達に失礼なことしてないわね?」

「あの、その」

その反応じゃ、なにかやったわね。

「二人とも家のが何か無礼なことをしましたか?」

「まあ、少し」

問いにアスナが答えると、ナナの表情は少し暗くなる。

「本当に申し訳ありません」

手に持っている荷物を地面に放り、ナナは深々と頭を下げる。

「い、いえ」

「世間知らずに天然とボケを合わせてドジで乗じた上に血統からバカという子でして」

「「「……」」」

ネギはガクッと顔を伏せ、二人はそんなネギに対して同情の眼差しを向けた。そしてナナは頭を下げ続けている。

「ナナさ~ん、ネギく~ん」

そんな重苦しい空間を打ち破ったのは男性の声だった。

「高畑先生!」「おはよーございまーす」「タカミチ、久しぶり~」「なんだ、タカミチか」

四人の言葉がほぼ同時に出た。ヒゲ、メガネ、タバコの男性――高畑・T・タカミチ――は走りながら四人のところまでやってきた。急ぐことなのか、わざわざ走っている。

「あまり時間がないから、すぐに学園長のところに行くよ……アスナ君とこのか君も一緒に来てほしいそうだ」

「はい、高畑先生」「わかったえー」

タカミチは老けたわね。それにこの子達、黒髪の子が詠春の娘のこのかで……そして、大きくなったね。アスナちゃん……

その後、五人は学園長室に向かった。途中お互いに自己紹介し、ネギはナナから拳骨と説教をされた。




うん、この爺さん本当に日本人なのか疑問ね。頭も異常だけど、耳も普通じゃないわね。このかは将来こうなるのか? ならないでほしいな。てか、どこかの民族のように子供のころから頭に何かつけてないとあんな頭にならないわよね普通……生まれつきでも、あそこまではないよね。

「長旅お疲れ様じゃな。ワシは学園長の近衛近右衛門じゃ」

「はじめまして近衛学園長、ナナ・スプリングフィールドです」

「ネギ・スプリングフィールドです」

三人が互いに挨拶を交わす。学園長に対しての非人間説はネギの頭の中でも考えられているが、ネギは世界って広いんだなー、で思考をやめている。

「ナナ殿には教師として、ネギ君には生徒としてじゃったな。ネギ君、期間を短くするも長くするも君次第じゃが、友達を作って楽しく励みなさい」

「はい、学園長先生」

「うむ……して、ナナ殿」

「呼び捨ては好きじゃないですが、それ以外でしたらどう呼んでくれても構いませんよ」

「そうか、ではナナ先生は一応副担任という形じゃが、高畑先生は多忙でのう。担任の役割になってしまうが、頼むぞい」

「わかりました。出来うる限り頑張ります」

うんうんと学園長が頷く。タカミチはよろしくねと歓迎と感謝をしている。

「そうそう、もう一つあるんじゃが……教員の寮が一杯での、ちょうど空いておるこのかとアスナちゃんの隣の部屋に住んでもらえんかのう」

「構いませんが」

「すまぬのう。という訳で二人とも案内を頼むぞい」

「えーよ」「わかりました……けど」

このかはすぐ了承したが、アスナの方は何か気になることがあるようだ。

「けど……何じゃ?」

「ここって女子中ですし、女子寮に男子を入れて大丈夫なんですか?」

アスナは当然のことを質問した。誰も気にしていなかったので、少し自身のない声になっている。

「ふぉっふぉっふぉ、保護者のナナ先生もいるしのう。第一、ネギ君は十歳にもなっておらん子供じゃ。心配なかろう」

「はあ」

学園長にそう言われ、アスナは一応納得する。そうしていると、学園長室に女性が入ってくる。その女性、源しずなに時間が押していると言われ、一同教室に向かうことになった。何を思ったのか学園長も一緒に行こうとしたが、部屋に残らされた。ナナとネギは学園長室横の空き部屋で、私服からスーツと制服に着替えた。ナナは黒のパンツスーツ、ネギはアスナやこのかが着ている制服の男子用にされた感じのだった。上着の色と同じズボンに、女子と違いネクタイだったのがネギには似合っていた。

「ナナさん、似合ってますか?」

「ええ、格好良いわよ」

「えへへ~」

この会話は何回もしているのだが、ネギは繰り返しナナに聞き、ナナも何度も褒めてあげる。

ナギも、アリカもネギの近くにいてあげられたら、ネギの制服姿も見れたでしょうに……

「ナナさん、ナギさん達にも見せてあげたいですね」

「……そうね」

タカミチとナナの小声でのやりとりは、子供達には聞こえなかった。途中、予鈴がなりアスナとこのかはナナ達と別れ、走って教室に向かう。遅刻にはならないが、遅れるのは嫌なようだ。
それから、魔法の関係者しかいないので周囲に気を配りながら色々なことを話すことになる。主にネギについてで、タカミチは成長したと聞くと喜び、変わっていないところもあるとこれからの成長に期待するといった感じで、楽しそうに微笑んでいる。

「着いたよ。ここが2-Aの教室だよ」

「うう~、友達できるかな?」

「小さな勇気が最高の魔法である。知ってると思うけど爺さんの言葉よ。友達がほしいなら下を向いてないで、前を見なさい。立ち止まらずに、歩きなさい」

「うんっ!」

三人は教室のドアの前までやってくる。

「それで、誰が最初に入る? 私? ネギ? それとも、タカミチを犠牲にする?」

ドアには明らかに罠がある。黒板消しが戸に挟まれているので、バレバレだった。それに罠がこれだけじゃないとナナの勘は言っていた。

「ナナさんからどうぞ」「二人のための罠だから僕は最後に入るよ」

ネギはナナを生贄にする選択をとった。タカミチは断固として一番に入室する気はないようだ。ナナは溜息を一つしてから歩き出す。

「行くわよ」

一気にドアを開け、落ちてくる黒板消し(チョークでカラフルになっている)をキャッチして黒板に置く。そのまま何事もなく前に進むと、床から十数センチのところにワイヤーや縄があったが全て踏み千切っていく。飛来するおもちゃの矢を片手の指の間で掴み取り、降ってきた水入りのバケツを空いたもう一方の手で掴んだ。最後に持っているものを教卓に置き、三十一名の生徒達に天使のような笑顔を見せた。

「本日から2-Aの副担任となりました、ナナ・スプリングフィールドです。よろしくね」

魔法業界では英雄でもある彼女にたかが中学生が用意した罠は完全に無力化され、大人の余裕を見せ付けられるという結果に終わってしまった。



―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―



つづく






[13641] さいきんヨンというたんごがきらい、だってシじゅうだから……四羽
Name: arc◆9ba4ad2b ID:25b285fc
Date: 2011/10/20 12:24
甘い甘い、この程度のトラップなんて事ないのよ。魔法の罠ならまだしも、子供のお遊び程度じゃね。見渡してみる限り、犯人は赤毛のスポーツできそうな子と双子なのかな? その子達は後で楽しみね……それにしても女子三十人か、日本人じゃなさそうなのが何人かいるわね。個性のありそうなメンバーだけど問題児がいないことを願うわ。

「……」

ん? 一部尊敬だけど、殆どは驚きなどが入り混じった目で見てくるだけで反応無しなのはつまらないんですけど……というより、反応無いと私が辛い。誰か何か言え。

クラスの皆から何の反応もない。ナナも挨拶はしたが、それ以後は黙っている。ナナとしては生徒の行動を待っているつもりなのだが

(美空~、双子~、早く謝れ~)

(無理です。私には無理。だって、あの人の事、聞いた事ある。親から教えられた“赤き翼”の紅一点“ナナ・スプリングフィールド”っすよ! 何でこんなとこにいるんすか!?)

(お姉ちゃ~ん、どうしよ~。怖いよ~)

(これはボクも予想外だった。高畑先生より、怖い)

生徒側からは怒っている様にしか見えなかった。特に三人は恐怖で縮こまっている。生徒からはナナとは、新人の金髪美人の外人先生で、いきなりイタズラをされて怒っているんですけど、犯人早く出しなさい。という般若にしか見えないのである。一部はそんなことは気にしないで、尊敬の眼差しを向けている。

「あの、皆さん?」

「「「ヒッ」」」

“ヒッ”だって、傷付くな~。私って怖い? 優しく笑ってるつもりなんだけど、怖いの?

そして、再び沈黙する教室だった。



教室の外では

「静かになったけど、ボクはまだ入っちゃダメなのかな?」

「もう少し待ってみよう」(ナナさん、貴女にそのつもりはないんでしょうけど、生徒からしたら怖いですよ。たぶん……)

ネギは状況を理解できない。タカミチは先生をやって長いので、生徒の気持ちをある程度理解できていた。だが、こんなときにどう対応すればよいか困っていた。



タカミチは助けてくれそうにないし、生徒は何故か黙っている。まだ、私の自己紹介しかしていないのに……それより、なぜ“ヒッ”だったのか考えてみるかな。私が怖い、外人だから……タカミチも日本人には見えないし、このクラスに外人は少なからずいるから違うわね。女だからも違う。う~ん、何で? せっかく格好良く入室できたと……ちょっと、やりすぎたってこと? しかも、私って怒っている様に見られて……だから、あの三人が震えている。だとすると

「このトラップを仕掛けた人に言いたい事があるわ」

ナナの言葉に三人がビクッと体を強張らせ、冷や汗を流す。

「縄とワイヤーの強度、矢の狙いと数、バケツの中身、色々と甘かったわ。付け加えると、足を引っ掛けるのと上からの攻撃しかなかったから、地雷式のものや前後左右からの罠を増やすと面白そうね……だけど、次の罠を連続的に発動させる予測とセンスは良かったと思うわよ。それに短時間で仕掛けた割には、出来が良かったわ」

ナナはトラップの評価をする。生徒は唖然、教室の外では誰かが転倒した音が聞こえる。

「ん~、言葉は文化なのよ。言葉を交える事で会話になるの。それとも、私の言葉が伝わってない? 私の日本語は下手ですか?」

「いえ、お上手ですわ」

「そう良かった。え~と、悪いけどお名前教えてくれる?」

「雪広あやかです。このクラスの代表をしております」

「じゃあ、委員長さんってことね?」

「そうですわ」

微笑むナナとあやか、あやかの容姿はナナと同じく金髪だが目の色は翡翠色と異なっている。名前から日本人とわかるが髪と瞳の色、さらには肌は白であるため、見ただけでは留学生と間違わされそうである。

良い子だね~。クラスの雰囲気も良くなったし、みんな笑顔になってるし、一時はどうなるかと思ったわ。

「先生、私たちも自己紹介したほうが宜しいでしょうか?」

「ちょっと待ってね。こっちの紹介がまだあるから」

ナナがそう言うと教室の戸が開き、赤毛の少年が入室する。顔を少し赤らめ、動きが硬く、手と足の同じ側が同時に出るという歩き方をしてナナの位置まで歩く。生徒からは男の子だよね? と見られている。

「ネギ・スプリングフィールドです。不束者ですがよろしくお願いします」

ネギはぺこりと頭を下げた。タカミチはアハハハと乾いた笑いを浮かべ、ナナは頭を抱えた。

「「「「かわいい~~!!」」」」

生徒たちはセリフ後半は気にしないで、お子ちゃまに近寄り可愛がる。ネギはもみくちゃにされたことに驚き逃げようとするが、全方向から囲まれ質問を次々と聞いてくるため逃げられない。

「ナナさん助けて」

母親代わりの伯母に助けを求めた。しかし……

「ネギは良いわね。歓迎されて……どうせ、私はオバサンですよ……世代が違いますよ……けっ……」

体育座りをして、床にのの字をひたすら書いている。哀愁漂うその姿にかつての力強さと美しさはなく、タカミチは引きつった顔をする事しか出来なかった。

その後十数分もの間、大人二人は役に立たなかった。子供は自由に自己紹介などをしていたのだった。




「じゃあ、気を取り直して授業に入るわよ。言い忘れたけど担当授業は英語だから、よろしくね」

色々あったが授業を開始する。ネギも席についている。場所は一番後ろの廊下から二番目である。横の席の少女はかなり不機嫌な様子だが、あえて無視する。


 ~~以後約三十分間は英語の授業が続く~~


「今日はここまでです。委員長さん」

「起立、気を付け、礼、着席」

「んじゃ、またホームルームの時間にでも会いましょう……ネギ、しっかりね」

「うん、ナナさん」

ナナはにこやかな顔のまま教室を後にした。

「それじゃ、ボクも戻る事にするよ」

タカミチも続いて去っていく。




「はあ、疲れる~」

「お疲れ様です。どうです? やっていけそうですか?」

ナナとタカミチは廊下を一緒に歩く。

「まあ、子供に勉強を教えるのは初めてじゃないからね。大丈夫よ」

「ネカネ君とネギ君ですか」

ナナの言葉にタカミチが思いつく名前を言う。

「ナギに、アーニャちゃん……それにタカミチも教え子のようなものだけどね。他にももう少し教えた事があるわよ」

教えたのはタカミチと出会ってすぐの頃だったかな。もう二十年と少し前の事だね。今や私は四十、タカミチは三十だっけ? 一番最初が最も悪ガキだったから、後の子に教える時は非常に楽だったわ。ナギほど滅茶苦茶で予想の斜め上のさらに上を行くんだから……今度会ったら殴ろう。そうする権利は当然あるはずよ。

「ナギの教育のついでに一緒に甚振られましたね」

昔の事を思い出したのか、タカミチは遠くを見るような目をして口元を緩める。少し不機嫌になったナナには気付いていない。

「ふふふ、そうね」

「懐かしいですね」

二人とも笑いながら歩いていくが、ナナとタカミチの笑顔は対照的だった。




そして、放課後となり……

「ナナ先生とネギ君、麻帆良学園にようこそ。騒がしいクラスですが、これからよろしくお願いします。このクラスは」

「委員長~固いよ~」

「はやく乾杯しよ~」

歓迎会をしていた。そして、委員長であるあやかの開催の挨拶は、もう待ちきれないというクラスメイトに邪魔される。

「そうですわね。それでは皆さん、乾杯」

「「「「乾杯~!!」」」」

まともに挨拶も出来なかったあやかだが、それも予想の範疇だった。グラスを高らかに掲げ歓迎会の開始を告げた。その言葉である者はあやかと同じく乾杯と言い、ある者はクラッカーによる祝砲をあげた。

「日本のお酒もなかなかね~~」

そして、一人酒を飲むナナ……ここは学校だが、そんなことお構い無しだった。辞めさせられたら自宅に帰るだけ、ネギが一人ここで頑張るだけである。ナナにとって何も問題はない。もしかしたら自分より保護者に向いているネカネが代わりにくるかもしれないので、そっちの方がナナは良いと思っている。

「ナナさん、一応学校なんですから」

「私の仕事時間は終わっているわよ」

まだ仕事の終わっていないタカミチはスーツ姿だが、ナナはもう私服に着替えている。とはいっても上はワイシャツ、下はジーンズと上着を脱いで下を着替えただけだ。生徒たちは特に気にせずジュースを飲み、つまみというには贅沢な料理を食べている。

「それでも学校なんですから、子供たちの見ている前でお酒を飲むのは」

タカミチはさすがに学校でお酒はダメだと教師として、大人としてナナを止めようとする。しかし、ナナは全く止める素振りを見せない。

「それもそうね。タカミチ」

「は、はい」

ナナは酒を飲むのは止め、タカミチの方を向く。タカミチはようやくわかってくれたと安堵する。

「昔はそんな事気にしないで、私の胸を凝視していたのにね。お姉ちゃん、悲しいぞ」

ナナは元から外していた第一ボタンに続き第二、第三と外していく。そうして胸を両腕で寄せて谷間を強調してタカミチに見せ付けた。瞬間、タカミチの顔は赤くなり、生徒の何人かは噴出し、一人はスクープだ! と騒いだ。

「ナナさん!!」

「ここで問題です。私の胸を見て真っ赤になってしまったタカミチはこれからどうなるでしょうか?」

ナナの言葉にハッと思い周囲を見渡す。笑っている者、驚いている者が殆どだ。そんな中、タカミチに憧れを持っている少女はショックを受けていた。そして教師仲間として呼ばれていて、タカミチの隣に座っている女性は目が怖い、汚物を見るような目でタカミチを見ている。その女性は源しずな、タカミチと友達以上の関係を持つ女性だった。

「アスナ君? しずなさん?」

焦るタカミチ。

「高畑先生、ナナ先生とはそういう関係なんですか?」「タカミチ君、私が好きっていうのは金髪で、胸があったから?」

修羅場一直線になりそうである。

そういえば、この二人親しげだったわね。でも、面白くなりそう。それとしずな先生、金髪巨乳は男の夢だよ。タカミチも男なんだから、仕方ないでしょう。元男の私が言うんだから間違いないわ。

ナナはそれを酒のつまみとばかりにお酒を飲み始める。

「いや、ナナさんは僕の憧れの人のお姉さんで、昔からの仲間でもあって、まあ好みのタイプはナナさんが基盤になっているかもしれないが、それとは関係なくしずなさんのことが好きですよ」

必死なタカミチは余計な事も口走った。それを聞いたアスナは愕然とし、しずなは少し顔を赤らめていた。

見せ付けやがって……けっ……というのは表情にも出さないけど、タカミチに春が来たか。誰かに教えないとね。日本だから暇を見て京都にいる詠春に教えてあげよう。他のメンバーはジャックが新世界ってのはわかってるだけで、行方がわかんないからね。それに賭けは私の勝ちよ。お金を回収に行きましょうか。

「あの、ナナ先生、質問いいですか?」

不気味なオーラを放つナナだったが、マイクを片手に赤毛の女の子はそれを気にも留めないで近くに来ていた。腕には報道部という腕章があり、今にもマイクを突きつけてきそうな感じである。

「え~と」

「出席番号2番の朝倉和美、報道部に所属しています」

「ふ~ん、それで何を聞きたいの?」

近くでタカミチ、アスナ、しずなが話し合っているが、それを無視して質疑応答が開始された。

「ネギ君にもまだ質問してないんですけど、ネギ君との関係は親子なんですか?」
「いえ、私の弟の息子、伯母と甥よ」

「では、次にナナ先生の家族構成はどうなってるんですか?」
「弟が一人、娘が一人、甥……ネギのことね。だけよ。両親はいないわ。夫もね」

結婚してないから夫じゃないわよ。

「趣味は?」
「お酒とゲーム」

などなど続き、質問数は十はもう超えている。

「好みのタイプは?」
「従順な娘」

「……“コ”がムスメという言葉に聞こえたんですけど」
「女の子の方が好きよ」

「……え~と」
「安心しなさい、獲って喰ったりしないわよ」

「……最後にお年は?」
「四十」

(マジ!?)

「ありがとうございました」
「いえいえ」

ナナはやっと和美の様々な質問から開放された。和美はナナと別れると、今度はネギに質問をするために移動する。そうしてネギへの質問が終わり少し経つと歓迎会もお開きとなった。その後仲良く皆お片づけをする。片付けは程なくして終わりクラスの殆どの人が寮に帰るので一緒に寮に向かう事になった。



「ナナ先生、ネギ君、ここが二人の部屋になりますえ~」

「ありがとう、このかちゃん」

「いえいえ」

「皆もありがとうね。荷物を持たせちゃって」

ナナも荷物を持っているが、その量の多さからこのかを始めクラスメイトの何人かが荷物の大半を持っている。ネギとアスナもこの場にいるのだが……

「うぅん、ナナさん~」

ネギはナナの背中で寝ている。寮まで道でふらつき、ナナに支えられると同時に寝てしまった。そのため、ナナにおんぶされて寮まで連れて来られたのである。

「……」

一方、アスナはタカミチにふられた。正確には告白もしてないし、付き合ってもいないので夢のまま終わってしまったといった方が正しいだろう。本人には失恋という事に変わりないので、ショックで歓迎会後半からフヌケとなっている。

生徒たちが部屋の中まで荷物を運ぶと、各々別れの挨拶をして自分の部屋に戻っていく。ちなみに、殆どが同じ階だったりするので、会おうと思えばすぐに会える。




「光る風を~~♪」

ナナは歌を歌いながら荷物の整理を始める。部屋はLDKで、二人暮らす分には問題ない。しかもお風呂もちゃんと着いている。キッチンなどもちゃんとしているためナナとしては文句はないようである。

「あ、食材がないわね……買い物に行きますか」

ふと、明日のご飯の材料がないことに気付く。引越ししたばかりなので、何もないのが当たり前だ。

「ネギは……寝てるわね」

ベッドで寝ているネギをそのままにして、一人外出する。机には『買い物に行ってくる。右隣はアスナちゃんとこのかちゃんの部屋だから、何かあったらそこに行くのよ』と書置きを残していった。



~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



つづく






[13641] ゴーゴーといきおいにまかせてみる……五羽
Name: arc◆9ba4ad2b ID:db97e447
Date: 2011/09/03 14:01
朝五時、ナナとネギの部屋には動く影があった。ネギはあれから起きる事はなく、ナナにパジャマに着替えさせられてベッドで熟睡している。ということで動く影の正体はナナである。何をやっているのかというと……

「ん~、朝からシャワーは気持ち良いわ~」

朝風呂

「さ~て、朝ごはん何にしようかな~」

朝ごはんの準備

「うん、後はネギを起こしてからでいいわね」

あとは焼くか温めるだけらしい、時間は五時半を回ったところ。ご飯のスイッチは先ほど入れた。

「じゃ、お楽しみの……うふふ」

朝からゲーム……さすがにお酒は飲まない。

「やっぱりケヴィン、ホークアイ、アンジェラよね」

なぜかスーパーファミコンをしている。それも聖剣伝説3だった。近くにはマリオカートやFF5、DQ5、ファイアーエムブレム聖戦の系譜、ロマンシング・サ・ガ3、テイルズオブファンタジアなどがある。この時代にもPS2などがあるのだが、あえてSFCをやっている。まあ、ゲーム界での最盛期の一つでもあり、遠い記憶に合ったゲームだからだろう。

「クラスチェンジは闇に、闇に、闇と」

そう言ってゲームを進めていく。最初のクラスチェンジで光と闇の選択肢があり、迷うことなく三人とも闇にする。現在、レベル18、場所は風のマナストーンの前だったりする。わからない人がいると思うが、普通ここでクラスチェンジのレベルにはならない。レベル上げをしてまでここでクラスチェンジさせた。ということで、この後ナナにはとある試練が待っている。

「あ、そろそろ時間ね」

そう言ってゲームを止めて片付ける。ただ今六時半、ご飯は炊けており。清々しい気分で朝食の準備を

「その前にネギを起こさないと……ネギ、朝よ。起きなさい」

始める前にネギを起こす事にする。軽く揺すって優しく声をかけるが、反応はない。しばらくの間そうやって起こそうとするが、全く起きる気配がない。

「いつものことだけど……仕方ないわね」

ナナが右手を空に掲げると空間が歪む。歪みが消えるとナナの手には金属製の杖が握られていた。杖は十字架にその周りを六角形が囲うデザインで、物語などで神官や賢者が持っていそうなものだった。金に蒼のラインが入った十字架と柄の純白は清らかさが感じられる。

「……遮音結界発動……」

杖を一回転させると空中に魔方陣が浮かび上がり、ナナの意図した結界を創る。

「これで周りに被害はないわね。さあ、起きようか……秘技・死者の目覚め!!」

手にはフライパンとおたま、ナナの腕の振りに合わせて激しい金属がぶつかり合う音が響き渡る……杖は床に置いてある。

「うわっ「アーッハッハッハ!!」起きたから「ソレッソレッソレッ!!」」

狂ったようにフライパンにおたまを打ち続ける。ネギはもう起きているが、気にせず続けている。朝からテンションが高いナナでした。

「ナナさん!!」

「あ、もう起きたの? じゃあ、顔洗ってきなさい。それと、おはよ」

「うん、おはよう」

起こす事が目的の行動だったはずだが、脱線してしまったらしい。ネギに止められナナはフライパンとおたまを持ってキッチンに向かう。

「起きない僕も悪いのかもしれないけど、朝からこうだと心臓に悪いよ……それに毎朝やってて疲れないのかな?」

ネギは顔を洗いに洗面所に行く。ウェールズでの朝を紹介するとナナは早起き、ネカネはナナより遅いが六時起きが基本、ネギは今と同様にナナに叩き起こされていた。

全くネギは何時まで経っても一人で起きれないのね。ナギもだったけど、どこぞの親子でもあるまいし、ちゃんとしてほしいわ。

ナナはそう思いながら、熱せられたフライパンに卵を落とし、味噌汁を温める。冷蔵庫から野菜を出し水洗いをする。食器はウェールズから持ってきた物を使用、数は少ないが特に問題はない。

「ナナさん、顔洗ってきたよ」

「ん、よろしい」

ネギが椅子に座りぽけっと待つ。しばらく経つと料理が完成し、テーブルに並べられる。

「「いただきます」」

ほぼ無言の食事をする。

「ねえ、ナナさん」

「なに?」

「明日はご飯よりパンが良いな」

「はいはい、一日ごとにそうするつもりよ……週一でパスタも入れるけど、それでいい?」

「うん、ご飯が嫌いって訳じゃないし……それとラーメンだっけ、あとソバも食べてみたいな」

「いいわよ。ちゃんと作ってあげる」

再び無言で食べていく。

「「ごちそうさま」」

その後はニュースを見て、新聞はないのでニュースをず~っと見て、学校に行く身支度をする。

「ネギ、忘れ物はないでしょうね」

「うん」

時間より少し早いが、家を出て

「「いってきます」」

そう言い鍵を掛ける。今回はナナが錠を掛けたが、ネギも鍵を持たされている。





隣の部屋では……

「アスナ~、朝や~~、起きんとあかんよ~~~」

「う~ん、今日は休む~」

アスナは一度起き新聞配りのバイトを行っており、今寝ているのは二度寝である。失恋のショックの真っ最中だが、バイトで学費を稼ぐ苦学生はバイトを休む事はなかった。しかし、その学費を払っている学校を欠席しようとしていた。

「失恋して高畑先生と会いたくないから言うてもダメやー」

「でも……だって……」

「高畑先生以上の男性だって探せばおるはずやから、部屋で腐ったらあかんよ」

ルームメイトで友達の近衛このかに元気付けられ、着替えを始める。着替えが終わると重い足取りながらも自分でカバンを持ち部屋を出た。

「いってきまーす」「……逝ってきます……」

アスナのテンションを少しでも上げるために、このかは明るく爽やかに家を出る。だが、アスナの重っ苦しい状態に変化はなかった。



そして、何故か一緒に登校する四人だった……



暗いわね。そんなにタカミチが好きだったのかしら? 他の男と比べたら優しいし、ダンディで性格はまともだからわからなくもないけど……タカミチだからね~。無茶するし、タバコに、金髪好きで、ある程度胸ないとダメな男でしょうに……私、アリカ、マクギネスさんなどなど、そしてしずなさん、金髪巨乳にばかり見ているのよ。アスナちゃんじゃ難しいわ。それより、好き好き言っててもタカミチの事をわかってないわね。好きなら相手の事をわかってあげないと、付き合ってもすぐ終わるわよ。たぶん……ん、マクギネスさんは巨乳じゃなかったか? まあ、金髪美女なことには変わりないけどね。委員長さんとかならまだしも、アスナちゃんにはね……

横でアスナが虚ろな目をしながら歩いているのに、ナナはそんなことを考えている。

「あ、そうだ。ナナさん、僕の占いって当たる確立そんなに高くないのに見事に当たったんですよね」

何を思ったのかネギが原爆を落とした。

「そ、そうね」

ナナは引きつった顔でそういうことしか出来なかった。アスナの方を見ると体にエクスカリバーが突き刺さっているように見える。

「あと、タカミチって金髪の美人さんのことが好きなのかな? ナナさんやマクギネスさん、他にも金髪で綺麗な人によく目がいってる気がするんだけど」

子供とは疑問に思ったことを保護者に聞く事が多い。それも唐突に……アスナに第二のエクスカリバー、そしてガラドボルグに、グラムなど聖剣、魔剣が突き刺さっていく。もちろん幻想なのだが、アスナが絶望的な顔になっ
ていることは幻でも夢でもない。

「大人になれば、ネギもわかるようになるわよ」

「僕はこのかさんみたいな大和撫子だっけ? そんな女性が良いな」

さらに続けるネギの言葉にこのかはややわ~と言いながらもほんのり顔を朱に染める。アスナは……グッサリと真っ赤なゲイボルグを心臓を射られている。大和撫子、おしとやかな日本の女性のことである。おしとやかさ、アスナとは正反対な属性である。

ネギの好みはそうなのね……それよりアスナちゃんて、不幸の星の下に産まれた子なのかしら……え~と、産まれてから黄昏の姫巫女として魔力無効化のパーツの一部、大戦後しばらく封印されて、その後にナギたちと世界を回った。と思えば心を許したナギやガトウと別れることに、そして記憶を封じタカミチと日本に来て、そのタカミチには振られて……アスナちゃん、ごめんね。不幸すぎる。今のアスナちゃんに昔の記憶はないけど不幸すぎる。といより何でこうなったの? あははは、どうしよ……普通の女の子として暮らすなら失恋は普通のことだから、まだいいとしても……事情知ってると対応に困るね。頑張るのよアスナちゃん、今度ご飯食べに連れて行ってあげるからね。

先ほどまで、金髪美女はなんとかと考えていたナナだが、可哀想なアスナを哀れに思った。少し涙ぐんでいる。

「うえ~~ん」

限界に達したのかアスナが泣き出してしまった。

「どうせふられたわよ。金髪巨乳でもなければ、大和撫子でもないわよ!! 文句あんの!? あんたに迷惑かけた!?」

泣きながら怒っている。ネギは怯えてナナの陰に隠れる。

ネギ、自分が泣かせた女ぐらい自分で何とかしなさい。と言いたいけど、私も要因の一つなのよね。はあ、どうしたもんか……

「アスナちゃん、ちょっといい?」

「なんなのよ!? あんたたちが「落ち着きなさい」っ!?」

アスナがナナにも牙を向けようとすると、ナナは一瞬にも満たない時間、アスナに向けて魔力を開放する。アスナは突然起きた風と先ほどのナナにはなかった威圧感に呆気に取られる。

「少しは落ち着いた?」

「うう……まあ」

「ごめんなさい」

「え?」

「アスナちゃんがタカミチのこと好きだと気付いてたのにあんな事をして」

頭を下げるナナにネギ、このかは驚く。アスナは状況を理解出来ないでいた。

「……」

「あ、えっと、ナナ先生、その」

数秒経つとアスナはナナが頭を下げ続けていることを理解する。そのことに戸惑い、言葉が思い付かずにただおろおろとし始めた。

「……」

「あの、もういいですから……どうせ片思いだったし、年も離れてて、どうせ無理だったと思うし……」

「アスナちゃん……」

「あははは」

明らかに見せかけの笑いをするアスナだった。

一発ぐらい殴られるつもりだったんだけどね。はあ、恋愛のアドバイスとか出来るほど恋愛してないし、どうしようかな。それに、このかちゃんにはまだしも、ネギには絶対に聞かせたくないし。

「ネギとこのかちゃんは先に行っててくれない?」

「え、でも「行け」了解しました!」

ナナの口調が一瞬変わると、ネギはこのかの手を引っ張りほぼ無理やりな形で走り去った。

「ふう……ねえ、アスナちゃん」

「は、はい」

「今日、学校サボっちゃおうか」

「はい?」

アスナはナナの教師失格なセリフに自分の耳を疑った。

「よし、ゲーセンにでも行こう」

「ちょ!?」

有無を言わさずに連れて行く。文句を言っても無視、抵抗しようと力の差で無理やり連れて行った。

「先生なのに、生徒をサボらせて良いと思ってんの~~」

無視……あ、そうだ。連絡入れないと不味いかな。ピポパっと

ナナは携帯から電話をかける。

『麻帆良学園中等部です』

「あ、ナナ・スプリングフィールドですけど、学園長に繋いでもらえますか?」

『わかりました。少々お待ちください』

……

『なんじゃ「今日、サボるから」はっ?』

「だから、サボるの。仕事はタカミチにでもやらせておいて」

『ナナ先生、まだ二日目「ああ、そうだ。アスナちゃんも連れて行くから、後をよろしくね~」ワシの話を』

ブツリと電話を切る。そして電源を落とし、ポケットにしまい込んだ。

「学園長が許可してくれたから、ゆっくり遊べるわよ」

誰が何時許可をしたのだろう。かつての仲間がいたらこう言っただろう「ナギはよく自分勝手に行動してたけど、ナナもいい加減な行動があったな……そして、その時のナナを止めるな。巻き添えを喰うぞ」と……そのため学園長がナナの奇行を止めようとするかもしれないが、タカミチが何とかするだろう。基本、紅き翼での立場が最低だったタカミチは、紅き翼の最上位ともいえるナナの意見に逆らえなかったりする。



なんだかんだで、アスナはナナの勢いに流されてしまう。ゲーセンがまだ早いのでコンビニで雑誌や飲み物、お菓子を買ってテキトーに遊ぶ。時間になるとゲーセンに行き、思う存分遊ぶ。お金はナナが全額払っている。ゲームに飽きるころちょうどお昼時で、なぜか焼肉。食後はカラオケに突撃し、永遠と歌い続けた。気付けば夕方となり、途中コンビニにまた寄って色々購入してから部屋に戻る。

「んじゃ、飲むわよ」

「私、未成年だから」

「気にしない、気にしない」

未成年にお酒を勧めることや飲ませる事は犯罪です。

「あ、意外と美味しいかも」

「私の飲む酒に不味い物はない」

結局、アスナは飲んでいる。

「あのナナ先生」

「別に、先生って呼ばなくて良いわよ。生徒に酒を勧める教師はいないでしょ」

「じゃあ、ナナさんの旦那さんてどんな人だったんですか?」

酔った勢いだが、アスナはナナにそんな質問をする。

「旦那なんていないわよ。結婚してないし」

「え、でも、娘がいるって」

「ちゃんと血は繋がってるけど、酒飲み過ぎて酔った勢いで出来ちゃったの。まあ、仲間だったからまだ良いんだけどね」

「そうなんですか……じゃあ、初恋は?」

「……記憶にないわね。確か女子だったと思うわ」

「……」「……」

少し沈黙があったが、すぐに別の話題に移る。そうして騒ぎながら飲んでいる二人だったが、乱入者が現れた。

「「ナナさん!」」「お酒臭いなー」

「あ、ネギに、タカミチに、このかちゃん……あと、人間かどうか不明な学園長じゃない。どうしたの?」

「あはは~、タカミチやこのかが何人もいる~」

ナナはまだしもアスナは酔っている。しかも昔のように名前を呼び捨てにするほどである。

「どうしたの、じゃないですよ。アスナ君と学校サボって何してたんですか!?」

「なにって、遊んでたけど」

タカミチが怒りながら言うが、ナナはだからどうしたという感じに答える。タカミチは頭を抱え、まったくこの人は、と呆れた。

「ナナ先生、いやナナ殿」

「なによ。学園長」

「教師としての自覚が足らんぞ。昨日は教室で飲酒、今日は生徒に酒を飲ませるとは、大人としても問題じゃ」

珍しく学園長が怒っている。

「はっきり言うとね。私って教師に向いていないと思うのよ。出来てせいぜい家庭教師程度なの。教員免許とかも取ってないし」

首にしたいのなら、どうぞご自由に……別に教師したいと思ってないし、お金にも困ってないから……まあ、クラスの子たちには悪い事したかな。

ナナに反省という考えは殆どなかった。

「あ、そうそう、アスナちゃんは私が無理やり連れ回したから、アスナちゃんに責任はないわよ」

「うむ、そうじゃのう」(向こうの校長に聞いたとおり、ナナ殿はいい性格をしとるわい。しかし、今回はアスナちゃんを失恋から立ち直らせようと行動したらしいからのう。それにアスナちゃんはもう元気のようじゃし……あと、怒らせると恐そうじゃから困るわい)

学園長は損得計算と人情、事情など色々と分析する。

「ナナ殿……今回は一応不問とする。そのかわり、後で辞令を出すので責任を持ってそれを果たすのじゃ」

クワッと目を見開き学園長が格好良く決めた。


「めんど」


「「「「……」」」」

部屋全体が静寂に包まれる。聞こえるのは時計の秒針が動く音と、ナナが缶ビールを飲む音だった。

「学園長、ナナさんは誠心誠意頑張るそうです。恥ずかしくてそう言わなかっただけです」

タカミチが助けを出す。明らかにナナは「めんど」と言ったのだが、この場を治めるために頑張るタカミチだった。イヤだとも言ってないので、面倒臭いが一応やってみるとも聞こえなくもない。前向きな考えの人にだが……

「う、うむ、そういうことにしておくわい」

「はいはい、私に出来る範囲で微力を尽くします」

「では、しっかり頼むぞ」

学園長は気付いていないのか、ナナが言ったのは微力、誠心誠意や尽力するとかではなかった。ほんの少しの力を尽くすだけ、しかも出来る範囲で……ようは最低限しかしないつもりである。気付かない学園長は部屋を去っていく、タカミチは心底疲れたように学園長の後ろを付いていった。

「よし、うるさいのがいなくなったところで飲み直しますか」

「え、ナナさん、さすがに」

ネギたちが止めようとする。しかし、そんなことで止まるナナではなかった。

「何言ってんの。ネギはさすがにダメだけど、アスナちゃんやこのかちゃんも飲むのよ」

最終的にネギ以外はお酒を飲んだ。夜遅くまで騒ぎながら飲み続けた。しかし、苦情は一切来ない。なぜなら遮音結界を発動しているから……

 キョロ甘なのよ

翌日、アスナは初めて二日酔いを経験する。なぜかこのかは平気だった。

詠春もお酒は強かったからね。遺伝かな。

ナナは当然のようにいつも通りである。ネギは……

「眠い」

寝不足になっていた。


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


今年もあと少しですね。

来年もよろしくお願いします。





[13641] ムムムっと悩んでも、やることは変わらない……六羽
Name: arc◆9ba4ad2b ID:db97e447
Date: 2011/10/20 12:36
この麻帆良学園に来てもう五日目……来たのは月曜日、今日は金曜なのよ。花の金曜日……くっくっくっ

(ねえ、今日のナナ先生怖いんだけど)

(あの笑いは危険な予感がするです)

(ワタシも怖いヨ)

(ナナ先生が魔女に見えるアル)

(なんやー、何時もより危ないなー)

金曜の一時限目の英語の時間のことである。

(くだらん……隣のボウヤも気に入らんし、サボるか)

一番後ろの廊下側の席にいる金髪の少女は気付かれないように教室から出て行こうとする。隣の席のネギは授業に集中しているのか気が付かない。ナナは黒板にチョークで英文を書いている。

(屋上にでも行って、寝るとしよう)

少女がそう考えながらドアを静かに開けようと手を伸ばす。瞬間、ドア横の壁に何かが高速で撃ち込まれた。そして、何かが破裂したような音が教室中に響く。

「……」

少女は固まる。他の子達は音の発生源を見る。脱け出そうとしていた少女が見つかることになる。

「マクダウェルさん、お手洗いなら先生に言ってからにして下さいね。他に用がないなら授業中に席を立たないように」

「あ、ああ」

撃ち込まれたのはチョーク、壁には砕けたチョークが残っていた。少女、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルはサボる事を止めて席に着いた。

エヴァンジェリンなのよね。愚弟に呪いかけられた吸血鬼……十五年ぐらい前のことだから殆ど記憶してなかったけど、まだ中学生してるのね。ナギめ、忘れてるのかしら? いえ、覚えてもいないのかな。その話をした後、ナギのバカはアリカにブチ切れられてたわね。王家なんだから一夫多妻ぐらい普通なのに、ストーカーされたナギをよくもまあ半殺しにしてたわ。普通、エヴァンジェリンの方を殺しに行くと思うんだけど……まあ、嫉妬だからね。気にしないことにしておこう……

授業は誰一人かけることなく進行されていく。残念ながら封印状態のエヴァンジェリンで、さらに何の準備もない状態ではどう足掻いてもナナには勝てない。そのためナナに逆らう事も出来なかった。



そうして午前の授業が終わり、お昼の休み時間となる。昼ごはんは学食、購買、弁当と人それぞれ自由である。ナナはというと……

「ネギ~、ご飯にしよ~」

お弁当を両手に一つずつ、計二つ持って教室に現れた。朝ゲームの合間に作ったものだったりする。

「ナナ先生、私たちと一緒にいかがですか?」

「いいわよ」

いつものメンバーとなりつつあるのは、あやか、千鶴、夏見、アスナ、このか、まき絵、祐奈、亜子、アキラなどである。まだ数日だが他のクラスメイトも一緒に食べる事もある。あやかはネギを目当てに、千鶴と夏見はそれの付き添い。アスナはあやかの邪魔をしに、このかはその付き添い。アスナはショタコンを認めないらしい。早速お互いを睨み、牽制を開始する。運動部の四人は一名を除いて前からそのメンバー食べていたからという理由である。一人理由が異なるのはピンクの天真爛漫少女だった。

「ネギく~ん、あ~ん」

「ま、まき絵さん!?」

横では早くもお弁当を出したまき絵がネギにタコさんウインナーを食べさせようとしている。

「ちょ、まき絵さん! 抜け駆けは禁止ですわ!!」

「えへへ~、おいし~?」

「あ、はい」

あやかを無視し、まき絵はネギに餌付けすることに成功している。このクラスで一番四葉五月、二番超鈴音、それに続くのはこのかと言う者もいれば、明石祐菜、那波千鶴と言う者もいる。しかし、まき絵も負けてない。というより一位二位には負けてはいるが、他の者には勝っているといえるだろう。普段、おバカのピンクというイメージが強すぎて誰も気が付いていないというだけで……

ネギ、モテモテね~。二、三人分けてくれないかな~。

「ナナ先生、おかず交換しよ~」

「私のはレートが高いわよ」

「え~、ナナ先生~」
「美味しいから逆らえないよ~」

なぜか美味しいナナのおかずは生徒のおかずと交換されていく。ゲームしながら、またはその途中で作っているのに美味しい。そのことは生徒には話さない、秘密は女をよりなんたらということである。

「うん、今日も総入れ替えになったわね」

全部入れ替えになった上に量も増えたけど……私の料理ってそんなにレベル高いの?

(これでナナ先生の様に綺麗になれるかな~)

料理は美味しいがプロ以下ではある。ただ、四十歳なのに二十代後半の外見からナナと同じ物を食べれば少しは綺麗になれるかも、という考えから人気になっている。他に、新任教師とのコミュニケーションやネギの好み研究の要素も含まれている。まあ、美味しいんだけどね。

「「「「ごちそうさま~」」」」

そして皆で手を合わせて食事を終える。

「じゃあ、バレーに行くよ~」

「「「おぅ~~~」」」

運動部四人は早々に外に駆け出す。残ったナナ達はなぜかUNOだった。

「ウノ」

「はや!」

「ストップ」

……勝者、ナナ

「ウノ、ストップ」

「マジ!?」

……勝者、ナナ

「ウノ、ストップ」

「……」

……勝者、ナナ

「これでどうよ! ドロー!!」
アスナからナナへ

「ドロー」
ナナは次のネギにまわす

「あ、僕もあります」
再びドロー

「ウチもー」
またドロー

「あら、私もありますわ」
続いてあやか

「あはは~」
美砂もあったようだ

「あらあら」
千鶴も出した

「アスナ、ごめん」
夏見も……

「……なーんてね。ドローフォー」
勝った。アスナの顔にはそう語っている。

「なんと、ドローフォー」「ナナさん酷い、ドローフォー」「ごめんなー、ドローフォー」

全部まとめて三十二枚があやかに渡されることになった。

「アスナさん!!」

「……ごめん」

皆グルになってナナに勝とうとしたのに無理だったようだ。ネギとこのかはもしもの時の保険である。

ふっ、まだまだね。

結局、ナナが勝者。ビリはアスナとあやかのどちらかになる確率が高かった。

「ナナ先生~~!!」

教室の戸が壊れるのではないかというぐらい激しく開けられ、まき絵が飛び込んできた。

「どうしたの?」

「校内で暴力が~」

突然だが生徒はナナに教師として殆ど信頼していない。だが、友達としてや保護者のような立場として信頼している。生徒に酒を飲ませるという教師失格なところが前部分、アスナを失恋から一日で復活させた事とネギへの優しさ、教育方針などが後部分という感じがナナの評価となっている。という訳でナナはお姉さんとして助けを求められた。

「どこであったの?」

お昼休みだけど仕方ないかな。

少しは教師として行動するようになったようだ。

友達だからね。

訂正、教師としてではなく、友達になったかららしい。



ナナの他にネギ、アスナ、あやかなども一緒に問題のあった校庭に着く。目の前では助けを求めに来たまき絵以外の三人が中等部の生徒ではないが、麻帆良の制服を着た女子達に一方的にボールをぶつけられていた。

いじめかな?

「あんたたち中等部なんて高等部に比べてお子ちゃまなのよ! わかったら、どいたどいた」

年上だったら譲ってやりなさいよ。小娘共が……

「いや~ん、私たちが先なのに~~」

「お子ちゃまは年上の言う事に従えばいいのよ」

抵抗する祐奈に対して、引きずってまでその場から退けようとする。

「え~、そこの高等部なのかもしれないけど、中身お子ちゃまな小娘達に告げます」

大声というわけではないが、よく通る声を発する。

「あんた誰よ?」「おばさんがなんでいるのよ」

お、おば……殺されたいのかしら?

ナナは思っても口にしない。だが、高等部の生徒たちはビクッと怯える。少し殺気がもれたようだ。

「仲良く遊ばない場合、実力で排zy……黙らs……教育する事になるから、皆仲良くするのよ」

排除、黙らせると聞こえる者には聞こえただろう。

「子供の喧嘩に大人が口出ししないでよ」「そうだそうだ」

最近のガキはこれだから……うちのクラスの方が素直な分、大分マシなのかな~

「自分で稼げるようになるまでは大人の言う事を聞きなさい……それにもう昼休みも少ないんだから、今日はどっちも教室に戻るように」

え~っと文句が出るが、時間もないので高等部の女子達は渋々ながら校舎に戻っていく。

「あなた達、大丈夫?」

「ありがとー、ナナ先生ー」「助かりました」

「はいはい、早く教室に戻るのよ」

「は~い」

頭をよしよし撫で、バイバイと手を振る。

(僕達出番ないね……特に僕)

(ナナ先生って、先生らしくはないけど頼りになるのね)

(お姉様~、格好良いにゃ~)

ネギ、アスナ、最後は祐奈だったりする。



はあ~、体育教師が休みってどういうことよ。四十でジャージ……る~るる~……

目から涙、足取りは重い。しかも着替えをしていたため授業に少し遅れている。

屋上運動場にいるんだっけ~、どこよそこ……

迷っているため、さらに遅れている。とりあえず屋上に向かっている。

騒がしいからここかな?

ナナは扉を開ける。みんなでドッジボールをしていた。

見なかった事にしていいかな? さっきのとまた喧嘩してるし……

「我等、ドッジボール関東大会優勝チーム、麻帆良ドッジ部『黒百合』!!」

……名前の事は何か言える立場じゃないけど、高校生が中学生相手に得意な種目で勝負するってどうなのよ。

トライアングルアタックなど楽しく一方的に高等部の生徒達が次々に2-Aの人数を減らしていく。そして人数が2-Aが運動部四人とネギ、そして中国からの留学生であるクーフェイの六人となり。年増は八人いる。

「楽しくやってる~?」

とりあえず状況判断が出来たので、声をかけてみた。2-Aの生徒からは「楽しくないわよ~」や「ナナ先生、ヘルプ~」という声が上がる。

「ナナ先生でしたっけ、何か文句あります~?」

高等部の生徒の一人が挑発するように言ってくる。

「どんな汚い手を使っても勝つ。それが『黒百合』のポリシーなんです~」

「別に文句ないけど……私も参加していい?」

で、なぜかナナも参戦。

「まず、年増からやるわよ」「「おおー」」

ナナに対してトライアングルアタック。

「で?」

死角から投げられたボールを難なく受け止める。

「おりゃっ!!」

手加減を一応しているだろうが100は出ているであろう速度でボールが投げられた。そして人が飛んだ。






皆、無言である。言い忘れたが単位はマイル、1マイル=1.6キロメートル……ドッジボールなのにね。

「ぐえっ!!」

飛んだのはリーダー的な人で、今のは落下したことにより出た声だった。

「いい? 勝負の世界は厳しいのは当たり前、社会に出れば油断した人から消えていくの。たとえ年上だろうと諦めない。そして、勝負は絶対に手加減しちゃダメよ。相手に無礼だからね♪」

ニヤッと笑うナナは、まるで魔女のようだった。そこからはナナに怯えた高等部の生徒の動きが悪くなり、ナナが特に何もしなくても2-Aの勝利に終わった。特にクーフェイが頑張ったようです。手加減無しで……

私の場合、死なないように手は抜くけどね。本当に全力でやったら、間違って逝っちゃうかもしれないし……

(ワタシは間違てたアル!! それに、ナナ老師は出来るネ。今度、勝負したいアル!!)

高等部の生徒の追い出しに成功した後は、皆で楽しく授業をした。種目はバレー、一部本気だったが怪我人は出なかった。




「はあ、今日も疲れたわね~」

ナナは部屋でまったりゲーム中、ネギも一緒にゲーム。なぜかマリオカート、しかもSFCのである。ネギはピーチ、ナナはキノピオ……負けるつもりはないのか、ナナの圧勝だった。日毎に勝負するゲームは違うのだが、ネギがナナに勝利する事は万に一つもない。億か兆やって一度勝てるかどうかである。今まで負けたことがないので、さらに確立が低くなるかもしれない。

「ん? ネギ、ちゃんとお風呂に入ってないわね?」

その最中に、ナナはネギが汗臭いことに気付いた。

「そ、そんなことないよ。毎日入ってるから」

「ちゃんとじゃないでしょ。水浴びただけなんじゃないの?」

「う、それは」

「さあ、逝こうか」

「いや~~」

部屋に付属している風呂だったのが唯一の救いだっただろう。

「おちんちん、まだ小さかったわね~」

「ナナさんのバカ~~~」

「そうだ、次臭かったら……大浴場ね」

「ふうぇ~~ん」

ベッドに逃げ込むネギだった。



~~おまけ~~


「あれ? ロードできない?」

ナナは聖剣伝説3をやろうとして、動きが止まった。セーブポイントは幽霊船……ご愁傷様でした。

「バグなのね……別にセーブしていてよかった~」

勘がいいのか、別のデータをロードする。当然、少し前に戻るのだが、ナナは気にしない。

「あ、朝ごはんとお弁当どうするかな?」

しばらくゲームを進めていくと、このステージが終わらないと学校に行けないことに気付いた。

「フライパンよ。おたまよ。包丁よ。キッチン用手袋よ……踊りなさい」

ゲームの手を休める事なく呪文を唱える。文字通り踊り始めた台所用品はナナの意思に従い冷蔵庫を開け、食材を調理し始める。その間、ナナはゲームに集中している。

「よしクリア。私に不可能はない」

魔法で料理しているがゲームの一ステージを終わらせたようだ。

「さて、ネギを起こすかな」

ネギが起きてからも魔法は続いており、ネギは感想を一言言った。

「マスターハンドみたい」


~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


ネギまの疑問

学校ある日のお昼ってどうしてるの?



つづく



今年もよろしくお願いします。

のほほ~んと進んでいくと思いますが、お楽しみいただけたら幸いです。







[13641] ナナ話だけどナナがあまり活躍しない……七羽
Name: arc◆9ba4ad2b ID:db97e447
Date: 2011/10/20 12:53
今回は僕がメインでいくそうです。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

麻帆良に来てもう一週間が経ち、今日は学園長先生に呼び出されました。おばさ……ナナさんも一緒にです。ナナさんは僕の伯母さん、つまり僕のお父さんのお姉さんなんです。ネカネお姉ちゃんのお母さんなのに、凄くテキトーで出鱈目な人です。お父さんと一緒に世界を救ったと大人から聞かされたんですけど……昔、一度だけ会った時の記憶にあるお父さんとナナさんを知っている僕としては、どこをどう見て考えて英雄なのか教えてほしいです。スタンおじいちゃんが言うように悪ガキだったという方が真実味が在ります。強い事はよくわかってます。けど、性格から英雄と思えません。

「学園長、ナナです……失礼します」「失礼します」

ネギはナナの後に続いて入室する。

「うむ、よく来たの」

「で、何のようなの?」

ナナさん、単刀直入すぎますよー。

「ふぉっふぉっふぉ、ネギ君に課題を出そうと思っての」

「へ、課題ですか?」

あ、そうでした。僕って修行中でした。忙しくて忘れてました。あははは……でも、なんだろ? ナナさんと別の部屋で暮らして自立しろとか、ナナさんを倒せとか、ナナさんから攻撃魔法を教えてもらえとか……は、自立以外無理なので、そうじゃない事を祈ります。

「これじゃ~~!!」

学園長から指令書のようなもの渡される。

「え~と……

二-Aの期末試験で、最下位を脱出させること。
マジで頼むぞい。せめてワースト二位で……
ほんの0.1点でも構わんから上回るように By学園長

……冗談ですか?」

え、無理でしょ。席が隣の人からサボりの常習犯ですし、クラスの人の話だと、アスナさんを始め五人が学年で最下位争いしているとか……でも、学年トップ10に三人いるとも言ってた様な……

だが、ネギもバカではない。3-5=-2である。それ以外も褒められる成績の人数よりも、そうではない人数の方が多い事も笑い話のような感じで知っている。

「頼むぞい」

「無理のような……てか、これって修行じゃないと思います!?」

うん、そうだよ。魔法使いの修行ってドラゴン退治とか、魔法習得とか、ナナさん撃退とか!!

最後のはネギ自身も無理だとは思っているが、魔法使いとして強くなりたいということでは良いと思っている。

「ナナさんもそう思いますよね!?」

ネギ、なかなかに必死である。

「……私の修行って教会でシスターだったわね」

「「……」」

え、どう間違ったらシスターやらされることになったんですか? 神様信じる人じゃないでしょ!

(性格修正のためじゃったりしてのぅ)

ナナは転生時に神様に会っているので存在することは知っていたりする。杖はシスターやっていた時のものである。ただ、知っている者は数少ない。クラスに似たようなのがいるのだが、クラスメイトで知る者は少ない。

「あ、ネギの話だったわね。マギステル・マギを目指すなら、勉強を教えられるようになるのも役立つのよ。ネギだって大人になるんだから、将来的には弟子がいるかもしれないし。何事も経験よ」

う~ん、そう言われるとそんな気がするなー。

「ネギ君、失敗したからといって修行中止とはならん。あまり肩に力を入れずに頑張るのじゃ」

「はいっ!」

無理かもしれないけど、やれるだけやってみる……でも、どうしようかな。まだ、二週はあるから、皆で勉強するとか?

ネギはやる気になったが、結局はどうすればよいのか悩みだす。

「それとじゃ」

学園長がまだ何かあるのか、もう一枚指令書を取り出した。そして、ナナに手渡した。

「私に? え~と、何々……

図書館島の地下に行き、変人と会うこと。
途中、ドラゴンとかいるから注意するように
ナナ殿には楽勝じゃろ  By学園長

……変人って誰?」

変人? 変な人ってことだよね。なんで、図書館島にいるの?

「ふぉっふぉっふぉ、会えば解るじゃろぅて」

(変人……会えば解るって……アル?)

「あと、ネギ君の手伝いもよろしくの」

「私なりに頑張ります」

……本当に頑張るのかな? いやいや、僕は僕の出来る事からやっていこう。

ネギは大人二人の話を聞きながら、そう心に決めた。




結局どうしよう……

僕の事だから、皆に事情を話すわけにもいかないし。やっぱり、それとなく勉強に誘うしか方法がないのかな。僕も高得点取れる様にするのも、平均点は上がるよね。

よし、とりあえず隣のエヴァンジェリンさんを誘ってみよう!!

休み時間でもあったので、思い立ったら即行動だった。

「エヴァンジェリンさん、期末テストも近いので一緒に勉強しませんか?」

「……はっ?」

前の席にいる緑髪の機械的な少女、実際アンドロイドの女版、ガイノイドである絡繰茶々丸は以下のように思った。

(マスターのこんな顔を初めて見ました)

目を丸くし、何を言っているのか理解するまで数十秒という時間が経過した。

「ダメですか?」

ネギはウルウルと小動物のような目でエヴァを見つめる。

「うっ……」

(こいつはアイツの息子だ。だけど、何だこの可愛さわ!! 本当にアレの血を引いているのか!?)

エヴァンジェリンは混乱している。ナギとネギの違いに戸惑っているようだ。絶好の機会にもなりそうなのだが、そこまで頭が回らないようだ。

「エヴァンジェリンさん……ダメ?」

「わかったから、そんな瞳で見るな」

「ありがとうございます」

こんどは花のように明るい笑顔だった。

(これだからスプリングフィールドの血統は嫌いだ~!)

言うに言えないので心の中で叫びました。




最終的にどうなったかというと……

「アスナさん、せっかくネギ君が誘ってくれたんですから、もっと真剣におやりなさい!」

「うっさいわねー。少しでもやってるんだからいいでしょ!」

あやかとアスナが喧嘩しながら勉強している。

「ネギ君、バカでごめんねー」

「まき絵、頑張らないと永遠のバカレンジャーだよ」

「ウチも頑張らな」

「にゃ~」

運動部四人、上からまき絵、アキラ、亜子、祐奈である。

「なぜ、私がこんなことを」

「マスターが約束されたからです」

エヴァンジェリンと茶々丸がなぜかいる。

「なんで、この部屋なのよ」

「ナナさんに教えてもらおうという案もあって」

ナナとネギもいる。というより寮の二人の部屋で勉強している。あれから、ネギが何人か誘い放課後に集まって勉強する事になった。

(ゲーム出来ないんだけど……それに、なんでエヴァンジェリンもいるのよ)

ナナの不満と疑問をよそに皆は勉強していく。

これで上手くいくかな?

ネギは一緒に勉強することで、勉強をしないよりは成績が上がると思っているのだが、少し不安があるようだ。

「はあ、ちょっと買い物に行ってくるけど、夕飯とオヤツに食べたい物ある?」

「ステ~キ~」「ジュ~ス~」「野菜~」「ケ~キ~」

ナナが出かけようとすると、各々が要望を言う。

「ちょっとあなた達、遠慮なさい」

あやかが止めに入る。部屋にお邪魔して、さらにご飯をいただくというのは迷惑をかけすぎると思ったのだろう。

「はいはい、ちゃんと勉強するのよ」

しかし、ナナは別に構わないといった様子で買い物に出かけた。自分なりのやり方でネギに協力しているのかもしれない。ナナがいなくなった部屋だが、少し騒ぎながらも勉強を続けていく。



「ねえ、ネギ……あの写真って、ナナさんの昔の写真?」

ふと、集中力が切れたアスナが飾ってある写真に興味を持った。

「そうですよ。二十年ぐらい前のって聞きました」

「「「へ~、二十年前ね~」」」

皆も勉強を一時中断して写真を見る。

写真に写っているのは十一人いた。金髪の美人に分類されるのが二人、ネギと同じ赤毛の少年、金髪の少年が二人、白髪の男性と少年、金髪色黒の男性、黒髪で日本人のようなのが一人、同じく黒髪だが肌は白目の男性、最後にオレンジ色の髪にオッドアイの少女の計十一人である。

生徒は見覚えや似たような人がいることに気付く。しかし、それより気になる事が一つあった。

「ナナさんって二十年前から殆ど変化ないんだけど」

化け物なんじゃとも、アスナは続けて言う。皆は渇いた笑いをするしかなかった。

僕も昔からそう思ってます。物心付いた頃の記憶から変化ないんです。

「それで、名前はわかるの?」

「本名が長くて名前しか教えてくれなかった人もいますけど」

ネギは一息置いて、写真を指差しながら続けた。

「まず、ナナさん、もう一人の金髪がアリカさんでナナさんの友達らしいです。二人の間に挟まれている赤毛が僕のお父さんのナギ・スプリングフィールド、金髪の無表情の感じなのがゼクトさんでお父さんの先生だそうです。笑っているのがタカミチの親友でクルトさん、白髪でタカミチに似ているのがタカミチの師匠でもあるガトーさんと言って、僕もあったことがあります。それで子供の方がタカミチ本人で「ええ~!!」「アスナ五月蝿い!!」つ、続けますよ。髪が黒くてローブ姿のが変態のアルさん、もう一人の黒髪の人が詠春さんと言います。京都にいると言っていたので、長い休みに行こうと思ってます。色黒なのがジャック・ラカンさんでエロな方面で変態だそうです」

「あんな、詠春さんって苗字わからんへん?」

ネギが一息置くとこのかが一つの疑問を口にした。

「確か青山だったと思います」

「似てる思ったら、お父様本人やない」

同姓同名の可能性もあるが、面影があって本人に間違いないとこのかは確信した。それに昔外国を旅した事を稀に聞かされていた。皆も驚いている。ネギは少し感動していた。

「じゃあ、最後の無愛想の子は?」

アスナがそう聞いた。写真のメンバーが聞いたら笑っただろう。

「お姫様と呼ばれていて、アスナって言うそうです」

「へ~、アスナね~……」

「「「「……」」」」

やっぱり、同じ名前なんですよね。でも、名前だけだし……二十年前にアスナさんが生まれているのも、ありえないことだから……うん、同名なだけだよね。

「アスナの親戚だったりするん?」

「高畑先生に子供の頃から面倒みてもらってたから、そうなのかも」

悩むが答えは出ない。当事者に聞かないと答えは出ないだろう。

「あとですね。僕のお姉ちゃん、従姉でナナさんの子供なんですけど、そのお姉ちゃんのお父さんがこの中の誰かなんです」

心は一つ「ナナさんの夫はきっと苦労したわね」だった。結婚してないんだけどね。

そして、こういうことが好きな年頃でもあったため、勉強のことを忘れて誰が旦那さんなのかという意見が飛び交う。

「高畑先生とその友達は違うわね」
「ウチのお父様は選択肢にはないなー」
「弟のネギ君のお父さんもないかな」
「お父さんの先生も小さいしね」

となると

「アルさん、ガトーさん、最後にジャックさん」

変態二人とオッサン一人だった。変態はネギがナナから聞いた情報だが、ナナ本人がそう言っている。三人の内誰であっても、ナナは変態かオッサンと愛し合ったのである。

「うん、考えない事にしよう」

アスナの一言で勉強を再開する。深く考えたくはなかったようだ。アスナとしてはオッサンはセーフなのだが、対抗が変態の事からあまり考えたくない様子だった。

(なかなかいい趣味だな。それにこの女がネギの母親、そしてナギの……いや、可能性だ……が、覚えておこう……それに、見るたびに思うが異常なメンバーだな)

エヴァンジェリンは情報を手に入れられて少し得をした。




おまけ


「ステーキに、お菓子に、野菜に、ジュース……てか一通り買うしかないわね」

スーパーで買い物中

「ん? 何か誤解されたような……気のせい?」





~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


あとがき


秘密が七つあるから、ナナなのだ。

ということはないです。何者かは“紅き翼”のメンバーやネカネ、ネギとのイベントで解ると思います。

ネギは……時々活躍します。存在価値がない方がいい人もいるのか?

ネカネの父親についてですが、最初から決まっています。誰かはその時まで秘密にしたいと思います。




ネギまのお昼についてもですが、感想をいただきまして、ありがとうございます。






[13641] ハーッハッハッハ、初戦闘だけど、短い……八羽
Name: arc◆9ba4ad2b ID:3727ef7a
Date: 2010/12/27 20:45


毎日のように生徒たちが部屋に来て、毎日のように勉強を教えて……ご飯を作って食べてもらうのはまだ良いとして、他の先生のところにも聞きに行ってほしい。私って英語教師なのよ。国語はまだ理解できる。数学も理科もまだ何とかなる。歴史と地理は無理なのよ。

「ナナさん~」

「アスナちゃん、無理よ。無双でも、桃鉄でも貸してあげるから、それで何とかして」

頼りにならない時は頼りにならないナナだった。

「ああ~、学年末テストに間に合わない~~」

アスナは今までのつけが回ってきた状態になっている。しかし、諦めるという事はしなかった。やると決めたらやる子なのである。

「ネギ君~、わからないよ~」

「ここは、この公式を応用してですね」

主にネギと勉強して仲良くなろうとしていたまき絵は、今となっては勉強が主でこの部屋に来ている。アスナはナナが、まき絵はネギがよく勉強を教えている。

つらく厳しい、しかしご飯は美味しい勉強会は毎日放課後行われ、バカレンジャー筆頭であるバカレッドとバカピンクの汚名を返上できそうなぐらい勉強している。実に一週間半という期間、学校を除いた生活は勉強ばかりだった。まだテストは終わっていないが頑張った、と褒められている。

しかし、事件が起きた。




「湯汲恵腐女医?」

「合っておるが間違っとるわい。行方不明じゃ、行方不明。しかも、2-Aの生徒じゃ」

ナナは夜中に突然学園長に呼び出された。五日後の来週の頭にはテストがあり、今日も勉強を教えなくてはならない。聞き間違いかと冗談も交え聞き返すが、学園長は真剣な表情でそう告げた。

「テスト近いから逃げたって訳じゃないのね。学園内にいないの?」

無事なんでしょうね。ケガとかしてない良いのだけど……それに、いったい誰がいなくなったのよ?

まだ数週間だが、教え子が行方不明になったことに内心は焦りがある。

「いる場所は予測がつくのじゃ」

「問題があると?」

「うむ、図書館島の奥の方、一般人には行くのも危険な場所でのぅ……早目に連れ戻さねば、ドラゴンが出る地区に迷い込む可能性もあるのじゃ」

「ドラゴンね~。昔金儲け……地域住民のために退治したことがあったわね……って、いてたまるかっ!! 魔法世界ならともかく、こっちのしかも日本に何でいるのよ!?」

ナナは珍しく突っ込んだ。流石に竜種は不味いと思ったようだ。

「ふぉっふぉっふぉ、昔ナギとその仲間が連れてきたのじゃよ」

ナギと誰かしらね。神の雷でも落としてあげようかしら……

「ふふふ」

(ワシは何も知らん。見とらんぞ)

この時のナナの表情は非常に怖かった。学園長はナギとその仲間に対して心の中で(すまぬ、老いぼれには止められん)と呟いた。

「それで、結局のところ誰が行方不明なの?」

「綾瀬夕映、クーフェイ、長瀬楓、そして孫のこのか、計四人じゃ」

……どうやって、そのメンバーになったのか疑問ね。夕映ちゃんを接点にバカレンジャーと友達だけど、図書館島なんて場所に本以外に何かあるの?……う~ん、情報が足りないわね

「魔法の本を探していたのじゃろ」

「魔法の本? 本なんだから図書館島にあっても不思議じゃないけど、その四人って一応一般人のはずでしょ。なんで、魔法の本の存在を知っているのよ?」

ナナノコトバニ、ジジイハチンモクシタ。ナナは怪しいと思い、学園長を睨みつける。さっさと白状しろと

「ふぉっふぉっふぉ、最初ネギ君が教師をやることになっておったじゃろ。そこで試練の一つとしてのぅ……」

耐えきれなかったのか学園長は自白した。つまり、仕込みをしていたが必要なくなってしまった。しかし、処分するのを忘れていた。そのため、仕込み通りになった。ということらしい。

「では、よろしく頼むぞ」

「了解」

学園長に了承の返事をすると、部屋を出て行こうとする。

「あ、そうだ。教師以外の仕事だから、特別手当を用意しておいてね」

「ちょ「じゃ~ね~」……頼む相手を間違えたかのぅ?」

言うだけ言ってナナは学園長の言葉を聞かずに出て行った。

「……む、近道を教えておらんような……まあ、何とかなるじゃろう」




地図とかもらってなかったわね。とりあえず、図書館島に着いたけど、どうしようかな? 地図はなし、場所もわかんないし、壁貫はさすがにダメだろうし、最悪の場合は感で地下に向かっていくしか方法ないわね……

ナナは図書館島にはすぐ着いたが、それからどうしようか悩んでいる。入口は目の前にあり、他に入れそうな所は窓ぐらいしかないようだ。

「先生~~」

意を決して突入するナナに制止の声がかかった。

声からして女の子、聞き覚えがある声だけど、夜中に出歩くのはいただけないわね……

「ナナ先生、助けて下さい!!」

大人しく、本を読むのが好きで日頃から本を持ち歩いていることから本屋ちゃんとも呼ばれている宮崎のどかは、普段と違いかなり慌てていた。

「たぶん、その用事でここに来たんだけど……一応聞くけど、どういった要件なの?」

「夕映たちが図書館島で音信不通になってしまって、その、あの」

「お願いします」

のどかの他に一人いて、二本の触角と長い黒髪、眼鏡が特徴の女の子――早乙女ハルナ――も必死にお願いしてくる。

助けてと言われれば助けるけど、この子達も相当焦ってるわね。

「くわしい事は後で聞くけど……罰は後からちゃんとあるから、覚悟しなさいよ」

「は、はい……そ、それと、夕映たちと連絡がとれなくなった場所なんですけど」

「早く教えなさい」

のどかから地図で行方不明になったと思われる場所を教えてもらうことになったナナだった。

「なんで、こんなに複雑なのよ」

しかし、数階までは、まだ一般人でも大丈夫そうなのだが、それ以降は迷宮のように単純ではなく、罠も多数あるらしい。

「まあ、なんとかなるわね……じゃあ、あなたたちは寮に戻って反省と勉強をしてなさい。テストの成績によっては罰を考慮してあげるわ」

「「……はい」」

ナナが帰りなさいと言い、二人は渋々ながらもこの場を離れていく。行方不明者が心配なのか何度か振り返るが、寮に帰っていった。

一応、素直に帰ったようね。一緒に行くとか言って駄々をこねると思ったのに……信用されている? 足手まといになると気付いていた? ……いえ、それより助けに行かないといけないわね。え~と、消えた位置はこの地点あたり……う~~ん、それじゃ、行きますか。

「……ゲート……」

その呟きと同時にナナの身体が放電し始め、発光と雷鳴と共にその場から消えた。





同時刻、別の場所で同様の現象が発生し……

「……転移成功……」

ナナが現れた。そして、周囲を見渡す。右も左も無数の本、それを納める本棚の列、誰が何時読むのかもわからない本の保管所である。その本棚の上に立っている。

……こんなに本があって意味あるのかしら? というより、管理されていないと何処に何があるのかわからないと思うんだけど……あ、本の山が崩れた……この図書館大丈夫? ……それにしては、建物に劣化や汚れが殆どないわね。全体的に魔法で管理されてる可能性もありそう……

色々と考えながら、ナナは慎重に歩き始めた。時折足を止めて、トラップを確認する。

人探しって意外と大変よね……うん、この大きめの魔力って、このかちゃんのよね。う~ん、落とし穴とか見つからないわ。それに矢とかタライとか、よく準備しているっていうか、誰が設置しているのよ。

床や壁を叩いたりするのだが、下に行けそうな道や罠を発見することはできなかった。代わりに矢が飛んできたり、煙が出てきたりしているがナナには無意味だった。

あれ、何か重要な事を……そうだ、このかちゃんの魔力を辿って跳べば……

「……ゲート……」

再び転移魔法を使用し、距離の離れた場所まで空間を跳躍した。





一方、行方不明となった近衛このか、綾瀬夕映、長瀬楓、クーフェイの四人はというと

「ひゃ~~」
「トカゲです。空を飛ぶトカゲです。火を吹くトカゲです。手が翼となっているので、鳥と爬虫類の中間的存在です。私は何を言っているのでしょう。そんな生物に追いかけられて逃げ惑う現状はきっと夢です。息が切れ話しにくいと思いながらも、こんなに話せているので夢に違いないのです。楓さんが分身するのも、夢です。クーフェイさんも身体能力が高く、気のような光を発しているのも夢なのです。根本から考えて、学園の地下にこのような大空間が存在し、のどかが好むファンタジー系の生物が生息しているなどありえないです。さらには、きっと肉食であろうあの生物は、食物連鎖の最上位に位置する存在でもあり、この場に餌となりえる生物がいるとは考えにくく……はっ、私たちのような罠にかかった生徒も食しているというならまだ生息できると思えるですが、その場合学園のニュースにもなるので違うですね。しかし、あのトカゲ(仮)が雑食で肉を捕食する必要が絶対ではない場合、まだ存在を維持させることは可能です。そして私たちは久しぶりのステーキ、豪華なご飯ということに……夢でなければ死ぬところですが、例え夢であったとしてもトカゲ(仮)に捕食される事態は一女子学生として全力で回避すべきだと愚考するです。いえ、人間として夢であったとしてもトカゲ(仮)に捕食を許すことはあってはならないのです。人間とは本能を理性によって抑える地球上の唯一の生物と言っても過言ではない生物です。されど、生物である以上は死が近づいているこの状況を諦めるということは生物として失格です。生きることを諦めないという本能は人間といえども理性によって抑圧することは人が生物ではなくなり、人の形をしたタンパク質になり下がるということです。ゆえに、たとえ現実のような夢の世界であっても、生きることに貪欲でなければならないのです~~~~!!」
「むむむ、クナイが効かぬでござる」
「アイヤ~、鱗が固いヨ。体術は不利アルよ~」

二人は全力で逃げている。二人は攻撃を仕掛けている。一匹は火を吹きながら四人を追いかけている。

「もう無理や~~」
「以上の理由から必死に走るです。このかもっと足を動かすです。楓さん、クーフェイさん夢の中なのですから、特大手裏剣とか、気弾とか、質量保存とエネルギー保存の法則を無視して超越した必殺技でなんとかならないですか!?」
「西洋竜も東洋龍も竜種は生態系の最上位でござるからな。修行中の拙者らでは勝てそうにないでござるよ」
「色々試してみたアルが、レベルが違いすぎるアルよ~」

爆走する四人、追いかけるトカゲ(仮)の構図は続く。

「なー、走るの少し楽なったんよー」
「こ、このかが光ってるです。どうやってやったんですか!?」
「気でござるか」
「すこし違う気するが、凄いアルよ」

何かに目覚め始めるこのか、驚きながらも羨ましがる夕映、感心する楓とクー、そして追いかけてくるトカゲ(仮)。ちなみ時速40キロメートルくらいで走っています。そんな四人と一匹(?)の鬼ごっこならぬ、竜ごっこの少し離れた位置に放電現象が起こり、一人の女性が立っていた。

……翼竜かな、ナギとよく狩ったわね。売ると高いのよ。一応、竜種だから……

「……面白そうなことやってるわね……」

女性はナナであり、状況を理解していてもそう思ってしまった。皆が必死なのはわかっているのだが、過去のことを思い出して顔には笑みを浮かべていた。

と一分ほど観察しているナナだった。その間に追いかけっこしている四人と一匹はナナがいることに気づかずに、元気よく青春していた。

さてと、そろそろ助けようかな。

手には十字架の杖を持ち、いつもの優しいような、悪戯しそうな目が獲物を狩るときの強者のそれに変わる。

“リ・スペル・ルン・アタラクシア 敵を射よ 三つの光よ”

ナナの周囲に三つの光の玉が発生する。ナナはそれを翼竜に照準を合わせる。だが、翼竜がナナの魔力に気が付いたのか、四人を追いかけるのをやめて、ナナの方を向いて方向転換してきた。

「好都合よ……“デルタレイ”」

光弾が勢いよく放たれ翼竜に直撃する。

「何が起こったんー?」
「トカゲ(仮)がやられたですか!?」
「むむ、ナナ先生でござるか?」
「アイヤー、凄いアルヨー」

生徒たちから驚きのような声が出る。続いて安堵の時になるかと思いきや、翼竜が先ほどよりも怒りが深まった状態でナナに突撃していく。口からは火が漏れ、目が血走り、非常に機嫌が悪そうだった。

「ふっ“追撃の雷よ トリニティスパーク”」

そんな翼竜に対して、ナナは待ってましたとばかりに追加の魔法である無数の雷を撃ち出した。雷は翼竜の胴体に着弾し、翼竜は痛みからか咆哮を上げて速度を落とした。

「まさか、これぐらいで倒れたりしないでしょうね“降り注げ 輝く光達 プリズムフラッシャー”」

ナナのさらなる追撃、高い位置に光が集まり、それが翼竜に降り注ぎ翼竜に何をさせるでもなくただ地面に下す。

「思ったより弱かったわね」

翼竜ってこんなんだったかしら? 大きさの割に、実力が伴ってなっていないなんて……温室育ちだったとか?

正確には地下育ち。半分飼われている状態だろう。ナナの楽勝、完全勝利となった今回の戦いとも呼べない一方的な虐めは、ナナほどの実力者だからできたことだということを哀れな翼竜のためにいっておく。一応一般人だが、それなりの実力者な長瀬楓とクーフェイが傷一つ(ダメージはゼロではないだろうが)与えられなかったというのは(足手まといがいたとしても)事実で、あの翼竜が生態系上で上に位置しているのも事実である。ただ、竜の中では翼竜は中の下クラスで、竜の中でも最上位に位置する龍樹などの最強種と互角か、それ以上に渡り合えるナナにとっては雑魚だったというだけだ。

一応は生きてるから、竜種としては平均ぐらいかな? 生徒たちも無事だしね。

ナナは竜を杖で突いて気絶しているのを確認する。しばらく起きないだろうと判断し、四人の生徒たちの方に視線を向けて安否を確かめた。

「ナナ先生、助かったわー」
「ナナ先生、今のは一体、そのトカゲについても説明してほしいです」

ナナが四人の方に歩いて行くと、このかがお礼を、夕映が非現実的な出来事について説明を求めてきた。楓とクーは翼竜をあっさりと倒したナナに対して警戒している。クーの方は尊敬する眼差しも混じっている。

「そうね……」

この四人、魔法関係者じゃなかったわね。このかちゃんに私が教えると詠春が怒りそうだし、綾瀬夕映ちゃんはどっちでもいいとして……長瀬楓さんはタカミチ情報通り忍者らしいわね。まだまだ未熟だけど……そしてクーフェイちゃんは中国武道家だったかな、こちらも長瀬さんぐらいか少し下の実力ね……結論から、まだ教えるべき時期じゃなさそうね。

ナナが考えている最中、四人は黙って待っていた。自分たちは非現実に足を突っ込んでいると認識し、副担任であるナナが何者で、さっきのは魔法なのかという疑問を十秒もかからずに頭に浮かんできていた。

「……これは、夢よ。非現実の、貴方達の創造の世界よ」

ナナが今はまだ秘密にするために、真顔で嘘付く。夕映が何か、嘘です的なことを言おうとするが、その瞬間にナナがその場から姿を消した。

「おやすみ」

ナナが現れたのはこのかと夕映の背後、言葉と同時に二人の頭部を杖で殴打する。何が起きたのか殆ど理解できない状況で二人は意識を刈り取られ、地面に倒れる。次いで、楓とクーにも杖で気絶させようとする。

「クー!!」
「わかてる!!」

金属同士の音質の高い衝突音が響く。楓がクナイでナナの杖の一撃を防いだ。次に、乾いた音が響く。クーがナナの腹に目掛けてほぼ全力で殴りかかる。だが、ナナの杖を持っていない空いた手で受け止められた。

(手が痺れるでござる。防ごうと構えた途端に、杖を振る速度が跳ね上げるとは、容赦ないでござるな)
(ナナ老師の攻撃とほぼ同時を狙たアルのに、完全に防がれたアルよ)

「ん~、とりあえず、オヤスミ?」

“白き雷”

空中に二つの同一の魔法陣が浮かび上がり、文字通りの白い雷が二人を襲った。二人は悲鳴を上げずに気で耐えようとしたが、耐えきれずに意識を手放して倒れた。

「二人は合格かな……二人は記憶を軽く封印してっと……あとは治癒でも使えば」

ナナは寝ている四人に対して、魔法を唱えていく。ただ、面白いモノを見つけたと嬉しそうに微笑みながら作業していた。四人の手当てなどが一段落して、四人並べて寝かせる。穏やかに寝息を立てていることから、概ね問題なさそうだ。

「それで……何時まで、黙って見ているつもりなの?」

寝ている四人とナナ、そして竜が一頭伸されている以外にこの空間に人影などはない。いや、なかった。ナナが四人に背を向けて、ある一点を見ているとその場所が歪み、ローブを着てフードを深めに被った怪しそうな人が一人現れた。

「ふふふ、お久しぶりですね。ナナ」

「久しぶりね。元気にしてた? アル」

ローブの人物はフードを上げて、その素顔を晒す。黒毛黒目の痩せ形の男性はナナと微笑みながら挨拶を交わす。

「あなたが麻帆良に来ているのは知っていましたが、まさかこんなに早く会えるとは思ってませんでしたね」

「そう、一体何時ぐらいから此処に居たのよ? それと詠春以外は連絡一切無しなんだけど、誰かの居場所知ってる?」

「大戦の後、皆さんと別れて少し旅をして、それからは此処で十数年間ほど本を漁っていますね。そして、“紅き翼”のメンバーですが……私よりナナの方が知っているのでは? ここから動いていないので、タカミチ君以外はくわしくはわかりませんよ」

この男は“紅き翼”の一員で、二十年前の大戦前からのナナの仲間の一人。ネギの父親であるナギが設立したチームの初期メンバーの一人である。

十数年本を漁ってたとは……ナギとジャック、ガトウ、クルトは魔法世界で各自でやってるのはわかってるんだけど、居場所は流石に無理か……詠春とタカミチ、アルは日本にいて。う~ん……

「何か用事でもできたんですか?」

「ええ、タカミチを使った賭け、覚えてる?」

「……タカミチ君がどんなタイプの女性に発情するか、という内容のアレですか?」

「それよ、それ。でさ、タカミチが付き合っている女性が金髪巨乳だったのよ。という訳で……」

「はあ、持ち合わせがないので、それなりに高価な魔法書や魔法具を送っておきますよ」

「よろしく♪」

その後、世間話をしばらくして、ナナは生徒四人を連れて地上に戻った。アルは再び地下に戻っていく。





麻帆良学園、学年末試験まで四日ぐらい……ネギ達は勉強中であった。





あとがき

お久しぶりです。初めまして。

更新が不規則かつ遅すぎますが、読んでくれている人たちに感謝を……






[13641] クゥ~と、クるしみながらの進キュウ……九羽
Name: arc◆9ba4ad2b ID:1441416b
Date: 2011/03/20 08:58
前回、現実逃避かつ卑怯な手段で頭を良くしようとした愚か者四名をバッタバッタとなぎ倒し。“紅き翼”の変態担当、アルビレオ・イマと再会を果たした主人公兼ヒロインなのか、疑問と秘密が多すぎるナナは、お眠な四人を寮まで連れて帰った。しかし深夜ということもあったため、お仕置きは後日、てか日が昇ってきているので今日行われる予定だ。罪人は六名、近衛このか、綾瀬夕映、長瀬楓、クーフェイ、それ以外に協力者として宮崎のどか、早乙女ハルナの計六名である。刑の執行者は言わずと知れたナナ・スプリングフィールド四十歳の鬼婆……観客としてネギをはじめとするお勉強仲間など……はたしてこの六名の命運はどうなるのか……会場は独裁国家スプリングフィールド帝国、その領土の一つナナとネギの部屋、その居間で行われる。

「では……判決を下します」

ナナの言葉に唾をのみ静寂を守る。一応事情聴取をして、皆で話し合いをして決めた判決だ。裁判員制度という訳ではないが、ナナ一人の決定でもない。クラス代表の雪広あやか、バカレンジャー筆頭のバカレッドの神楽坂アスナなどしっかりと罰を与えるべき、それは厳しすぎるなどの様々な意見、弁護の元で審議されている。最終決定はナナだが……(審議は三十分ほどで終わった)

どうしようか。体罰って最近は禁止されてるのよね。四人はもう殴ったけど……テスト前だから勉強させるのは罰にならないし、この時間ですら無意味なのよ。審議では、お尻ペンペン各々百回(双子案)と石の上で正座重り付き(ナナ案)が一番きつくて、軽いのが徹夜テスト勉強七十点以上で無罪(あやか案)か心配させたクラスメイトに六人皆で食券一枚ずつ(まき絵案)だったかな……ふむ、お金がかからないので、すぐ終わるのとして、拳骨一発(アスナ案)にするかな

「簡単な体罰のみとします。以上」

そして、ゴツンと気持ち良い音が六連続で部屋に響いた。頭を抱えて痛がる六人の生徒達、皆同じように痛がっている。

「ふふふ、人殴るのって、やっぱり気持ちいいわね」

沈黙、皆さん引いています。慣れているネギは乾いた笑いをしている。ちなみに、楓とクーは一応気が使えるので他の四人より強く打っている。また、他の四人には差別なく例え非力であったとしても、同じぐらいの力を込めて拳を振りおろしていた。

「今日も学校はあるんだから、各自朝ごはんを食べて登校するように……遅刻したら、わかるわね?」

わかってないなら、一人一発以上だけど

みんなは頭を上下する。その光景は恐怖政治のようだった。



その後、学校はいつも通りにあり、2-Aの生徒達も全員で授業を受けている。副担任であるナナはちょうど授業がなく、学園長のところにいた。

特別手当はしっかり回収しないとね。

「という訳で現金生々で、用意できてる?」

「流石に早過ぎるぞ。昨日の今日では、ワシの手持ちもないんじゃよ」

学園長は態々財布の中を見せて、札がない事をアピールする。それに対してナナは学園長に聞こえるように舌打ちをした。不穏な空気が流れる。殺してもいいよね、とナナの目は語っている。ふぉふぉふぉ、ないものは仕方ないじゃろ、と唇を緩ませているのは学園長だ。

「払わないわけではないのじゃ、特別手当は後で必ず渡すぞ。今日は他に用があるように思うのじゃが、どうかしたかの?」

「近衛このかのことよ」

ナナの言葉を聞き、学園長は片目を開いてお気楽な雰囲気を改める。

「私の勘違いじゃなければ、魔力が目覚めつつあるわよ。現に、地下にいるドラゴンから逃げているとき、不完全ながらも肉体に魔力供給できていたみたい。目に見えるほどの魔力量でね」

学園長は渋い顔をして、どうするのかを考える。遠見の魔法で自分自身確認していたため、ナナに言われなくても何かするつもりではあったが、どうするべきか困っていた。

「詠春の方針では、このかちゃんには魔法関係に関わらせたくないんでしょ?」

「うむ、婿殿の強い希望での。関西にいると利用される可能性が高いといって、麻帆良に入学させたんじゃ」

詠春も自分の近くで育てたかったでしょうに……それでも、このかちゃんを関わらせたくなかった。当然のことね。親が子を守ろうとしたというだけのこと。私とは立場が違うから、色々と複雑なのよね……

「今回はとりあえず記憶をぼかして、夢のように思わせたんだけど……一度だけとはいえ自力で魔力を引き出したのだから、何かあると魔力が解放される可能性が高いわよ。それに、前は関係者でも普通の人より少し高い魔力を持っている程度にしか感じなかったと思うけど、今は魔力が勝手に身体を循環していてこのかちゃんの魔力が高いとそれなりの魔法使いなら気付けるようになってるわよ」

今までも魔力がこのかの身体に循環していたのだが、その量が多くなったのだ。魔力が多く流れている方が身体的には良くなると肉体が認識し、一度魔力を纏ったことでそれを日常でもやろうと本能的にやっているのだろう。ネギの身体能力が通常時でも大人並にあるというのも、無意識で魔力供給しているためで、今のこのかの状態と似ている。ただネギと比べて、このかの方が効率が悪く、上昇量も小さいので気付く人しか気付けないレベルである。

「それで、封印するならすぐ封印する。しないのなら、それなりの保険が必要ね」

「そうじゃの。しかし、専門の術者でなければこのかの魔力を抑えられんし、保険は護衛を増やす以外にできそうにないのじゃ。それも厳しいんじゃが」

多量の魔力を抑える封印には高度な技術がいる。そして、いざという時、即座に解除できる必要がある。それには、難易度の高い術式か、解除できる人が近くにいなければならない。本人が自力で解除するという手もあるのだが、魔法を教えないのを前提に置いているので無理である。次に、護衛だが、人件費以外にもこのかのプライバシーなどを気にかけ、さらに魔法と護衛ということをばれない様にし、最後にそれなりの実力が必要だ。

(今も護衛は二人おるんじゃが、二人ともまだ若いからのぅ。それに魔法先生達も注意してはくれとるが、他に大勢の生徒達の安全も守らねばならんし……魔法先生、魔法使いの人数不足はずっと続いておるしな)

「私ならどっちもできるけど」

「……強いのは大戦時のうわさやタカミチ君からで聞いとるが……封印もできるとはのぅ。戦闘か治癒特化型の魔法使いじゃと思っていたんじゃが」

「間違いではないけど、正確には魔方陣特化とでも名付けるべき魔法使いよ。杖を回しては魔方陣を描き、魔法を撃ち込めば魔方陣を描き、移動しながら魔方陣を描く……詠唱破棄と罠に嵌めること、迎撃に向いていてね」

ナナが魔法の使用時に杖を回しているのは、そういうことである。

「それだけ聞くと便利そうじゃが、魔方陣を戦闘中に描くのは高等技術と前衛並の速さが必須じゃろ? 本来、拠点防御や補助向きの魔方陣を移動しながら使うのだからの」

「……まあね。私と古い友の一人しかできないからね」

(友達……いたんじゃな)

いい加減な性格のナナに友達がいたことに、学園長は反応する。紅き翼のメンバーかもしれないが、そうなら名前で言うだろうと思い、他にもそんな実力のある者が友達にいるのかと考えた。

(ナナ殿の経歴には謎が多いからのぅ……教会というのも胡散臭いわい)

「依頼料じゃが」

「いらないわ。詠春の娘だもの、無料でいいわよ」

戦友から金を取るほど、心も財布もさびしくないしね。

「それは助かるの……代わりにワシの秘蔵の酒でも持っていくか?」

学園長の大きな机の中からお酒が大量に出てくる。校長や学園長の机には酒が入っているものなのだろうか。

「じゃ、日本酒でも貰うわよ。あと、日時はテストの後、春休みぐらいに行うわ」

「うむ、助かったぞ。ナナ殿」

ナナは片手を振って学園長室を後にする。




そして、いよいよテスト当日となった。生徒は日夜、昼は学校、夜は寮で、テストのために勉強をした。ネギと勉強をしていた。つまりはナナと勉強していた者たちは

下校、勉強、夕飯、勉強、悲鳴、勉強、失心、体罰、覚醒、勉強、苦痛、間食、勉強、睡眠、学習、覚醒、勉強、登校。

という放課後から朝までのサイクルを忠実に、毎日行った。日数にして、三日ほどを学校の後はそのサイクルで過ごした。

現在、クラスでは最後の足掻きをしている生徒が真剣に自分のノートを見直している。特に勉強を頑張っていたアスナとまき絵は手が震え、汗が頬をつたわるという、かなり緊張している様子だ。勉強したからこそ、自分の苦手なところがはっきりわかり、できないこともわかっているのだろう。ノートに書かれていることがわかるのだが、いざテストでその問題を解けない、覚えられるはずなのだが覚える時間が足りない、どうしよう、そんな状態である。

「では、テストを配ります。ノートや教科書はカバンに入れるように……机の上は筆記用具、定規、他にティッシュやハンカチ以外は置かないように」

いよいよテスト開始の鐘が鳴り、ナナがテストを配り始める。

「カンニングなどの不正行為を行った者はテストの点数がゼロ点となるので、そのような行為と勘違いされる行動はとらないように」

一列ごとテストを先頭の人に手渡していく。

「全員にいきわたったらテストを一斉に開始します」

テストが前から後ろにわたっていく。

「最後に、私はこのクラスの全員が時間の限りテストに挑むと信じてます。諦めないで、一度は習ったこととその応用しかテストの問題にありません」

全員の机にテストが配られた。

「問題を解き始めて下さい。皆さんのご健闘をお祈りします」

一斉に生徒たちが鉛筆やシャープを掴み、テストと向き合った。

















結果は

   クラス皆が笑い合っていた

               とお知らせします。














   ネギ・スプリングフィールド

     第一回 修行結果


        合格


   クラス平均点 71.3 点

   クラスの順位  22 位

   学友との交流 まだまだ交流が足りない

   

  先生からの評価 

     授業態度 良好

     試験成績 優秀 ( 平均 92.2点 )



  修行担当からのメッセージ

 今回の修行の結果は合格じゃ。
 二カ月程度の期間でクラスに馴染み、勉強会を開いてクラスの成績を上げた事は評価できる。
 だが、一部の生徒との交流ばかりが目立ち、話を殆どした事がない生徒もいる。
 しかし、麻帆良に来てからの期間を考慮すると、良い人間関係を築いていると考えられ、非常によくやっている。
 また、魔法という手段に頼らなかったことは、一般人と関わりを持つ魔法使いとしての義務を果たしており、一般人と魔法使いの間に立てる素質があると現状では思われる。
 
 ネギ君には、高畑先生のような魔法先生になる才能もあるようじゃ。
 今すぐに進路を考えろとは言わんが、この麻帆良学園で多くを学び、立派な人間となることを期待するぞ。
 最後に、春休みは学業はお休みになるが、魔法使いとしての顔合わせをしたいと思っておる。
 あまり忙しくはならんと思うので、新学期に向けてゆっくり準備しておくようにの。

 以上じゃ。良い休みを過ごすのじゃぞ。   by 学園長 近衛近衛門









あとがきのようなもの

更新が不定期かつ遅い事について、まことに申し訳ありません。

昨今の原作ネギまのパワーバランスと、キャラの増え具合に戸惑っています。

この二次創作では戦闘シーンが殆どないかもしれませんがこれからもよろしくお願いします。

また、お読み下さったこと、感想をいただいたこと、まことに感謝しています。



感想について

話数が“話”ではなく“羽”となっているのは、わざとです。
誤字は、報告いただき感謝です。

雷はキリスト教的観念からすると悪……キリスト教をあまり詳しく知らないので、キリスト教的には悪かもしれないのですが、ギリシア神話の主神であるゼウスから“ゼウスの雷”、北欧神話に登場するトールの“ミョルニル”または“トールハンマー”とも呼ばれる雷鎚があることから、作者としてはそちら側の神話で神の雷のイメージが強いので、正義や聖、善のイメージがあると考えてます。まあ、神話の神々の方が人間を殺してるような、虐めてるような気もしない訳ではないのであまり強くは言えないのですが……結局は私のイメージです。

原作キャラの安否について、ガトウ生存ルートか。という感想や、生きてるのか。と思った人がいそうなので、隅々まで読めばわかると思いますが、生きてます。次にナギですが、生きていますが詳細は秘密です。そして、スタン爺さん、会話が少なく、空気のような感じでしたが、無事に生きてます。

アスナとゼクト(そしてクルト)が同じ写真にいることについて……秘密です。

アスナの年齢について……えーと、原作ではエヴァが600歳ぐらい、そのエヴァよりは年下だと思います。そして、主観年齢では14ぐらいかもしれません。ただ、生まれた年から現在までは明らかに二十を超えてます。最低でもタカミチとクルトと同じ世代だと考えられます。もしかすると、ナギと同じ年代の可能性もあるかもしれません。この二次創作では、アスナの年齢が何歳でも、あまり気にしないで行こうと思っています。










[13641] 過去編 一話 転生者は……
Name: arc◆9ba4ad2b ID:3727ef7a
Date: 2010/08/14 03:14



スプリングフィールド家に生を受けて、早三年……

前世の記憶持ちという私は普通の子供のように生きていない。親は天才というが、私の異常さのためか愛着はあまりないようだ。一応は家族だから飯を食わせているという感じである。一人称がオレから私に直された以外に親は私に文句を言わず、何をしても許容している。

そして家系的に魔法使いという、ファンタジー家系だったため魔法は教えられた。ただ、基本の魔法、精霊との契約、子供にでもできる戦闘術などは教えられたが、それ以後は放置だった。教科書を渡されて、後は独学で頑張れとのことだ。他の子供は親や兄、姉などの家族に魔法を教えられているのに対して、私は放置だった。

私は他の子供たちと遊ぶことは殆どない。テンションについていけないのもあるが、話が殆ど合わない。アニメの話なら子供向けのを見ているので問題はない。鬼ごっこのような遊びもまだいい。しかし、ままごとは無理……生まれ変わって女の子になったが、拒否したい。

特に問題なくこの年になったが、魔法の才能は神の恩恵なのか……実際神(本物かどうかは不明だが)にあったんだが……神童と呼ばれるほど呑み込みが早かった。得意属性も雷と光という正義や聖、善をイメージさせる属性で、まだ魔法を覚えたての他の子供たちに羨ましがられた。

その後、魔法学校というのに通わされることになった。まだ年齢が三歳なので早いと思ったのだが、天才なのだからと問答無用で入学させられた。



 過去編 一話 転生者は……



そして、何事もなく卒業した。たった二年間で……そして弟が生まれたらしいのだが、連絡はなかった。私はいらない子になっているようだ。

周りの大人は知っているのだが、私だけ知らない。さらに誰も気にしない。修業先も勝手に決められた。修業先は一応イギリス国内なのだが、教会だった。子供を捨てる親が教会に預けるかのような修業先に、私は両親と周囲の大人たちに最高の嫌悪感を覚えた。まあ、ただ一人校長の爺さんだけは、普通の子供に接するように私に接してくれた。弟のことを教えてくれたのも爺さんだった。私は弟に特別な才能がないことを祈る。私のように捨てられたような事にならないように……

五歳年下の弟の名前はナギというらしい、その名前からこの世界がどういった世界なのかわかった。




重要事項の一つである修業のことだが……リアルにHELLSINGやエンジェルハートっぽいことをやってる……

「暴力を振るって良いのは悪い悪魔や異教徒、吸血鬼や化物に対してのみです。わかりましたか?」

神父さんはそう言いました。

「それらには銀の銃弾を撃ち込み、銃剣を突き立て、心の臓に杭を打ち込むのです」

神父さんはそう言いました。

……ちなみに、弟子は私しかいなかったりする。他は孤児院の子供たちで、修業するためにここにいるのは私だけだ。日々、銃の扱い方、魔法の習得、戦闘全般の勉強を寝る時と飯を食う時以外の時間をそれに費やしている。


修業風景その一

「さあ、化け物を殺すのです!!」

捕獲されたと思われる腐った死体や悪魔に銀の弾丸を撃っていく。いかに効率的に殺せるかを学ぶ。


修業風景その二

「悪魔を還すのではなく、消滅させる魔法を覚えましょう」

そのままの効果の魔法を覚え、捕獲した悪魔などで……


修業風景その三

「そんなことでは異教徒に勝てんぞ!! 剣を取れ!! 銃を構えろ!! 死ぬその瞬間まで足掻いて人間として戦え!!」

スパルタに血と汗と涙と小水と固形物を流しながら、ただ只管に訓練をする。“強くなっている”や“強くなりたい”、というよりは“強くならないと死ねる”環境で、そんな状況だった。


修業風景その四

「制限時間は10分だ。それまでに組み上げて見せろ」

拳銃の組み立てである。なぜか銃を突き付けられながらの作業である。しかも、段々と制限時間が短くなっていくし、ライフルやショットガンなどもやらされるようになった。


修業風景その五

「料理の基本は“切る”“焼く”“煮る”だ!! さあ、作って、創って、造れ!!!」

食材と教科書を渡され、料理する。不味かったら、修業が厳しくなるので必死に調理した。


ふう、これって何の修業なのかわかんないんだけど……一応、シスターという扱いになっている。けど、聖書を一度も読まされないのは何故? ここって教会だよね? そうそう、少しずつだが男から女に近づいてきたのか言葉が変になってきている。混ざっているといた表現が正しいだろう。




そんなこんなの執行者または代行者の修業を始めて早三年の月日が経過した。いや両方だったけど……この世界に転生して八年が経っているのだが、濃過ぎて早かった。まったりと日々を過ごす暇など三歳ぐらいまでで、それ以後は孤立した子供、学校では孤独の優等生、有無を言わさずの修業、八歳という年齢で天誅という名の殺人と悪魔祓いなどの仕事の付き添い、そして実戦……はあ、久しぶりに実家に帰れと言われてもね。名ばかり家族なんだからどうしろってのよ。しかも、絶対命令なんて言葉を使ってまでなんて……何故、こんな急に私を家に帰したいんだろうか……

現在ナナは故郷の村に足を踏み入れ、実家を歩いて目指している。

 身に纏うのは漆黒である執行者の正装と外套

 腰に下げている祝福儀礼を施された銃剣

 手には術式の書かれた手袋

 腕に魔法発動体でもある銀細工の腕輪

 首から下げるのは銀のロザリオ

なぜか実家に帰るのに仕事服のナナだった。日差しが強く、外見的に暑そうなのだが、ナナは気にせず歩く。

「殆ど変わってないな」

一言そうつぶやく。景色も家も変わりはない。

「お前、何者だ!?」

ん? なんだこの赤毛の小さいの?

実家までもう数十メートルのところで、ナナは後ろから声をかけられた。そこには赤い髪の少年がいた。年齢は三歳ぐらいで、とても元気そうな男の子だった。

「全身真っ黒で、黙ってるなんて怪しい奴だぜ!!」

誤解されてる?

赤毛の少年はナナに向かって走り出し、大きく腕を振りかぶる。

「死ね~~!!」

少年の拳は光が漏れ出したかのように、淡く輝いていた。

この子供、私より低いけどかなりの魔力を持ってるな。天性の才能なのか、簡易版の魔力供給もできてるし……まあ、本能のまま殴りに来てるから

「神父と比べるとね」

簡単に避けられたが、あえて手に同程度の魔力を込めて少年の拳を受ける。

「なっ!? このアマ!! ブス!! 悪趣味!!」

ナナは少年の拳を受け止めた後、そのまま離さないように掴んでいたのだが、少年は力づくでナナの手から逃れた。しかも、暴言を連続で口にするという、悪ガキっぷりでだった。

「口が悪い」

「っつぅ! 痛いだろうが、クソあっくぅ!! なにしやがっきゃん!!! オレ様っぶふ!!!! しかたねえ、家来っぎゃ!!!!!」

……赤毛の少年が汚い言葉を言う度に、ナナの拳をその頭に打ち込まれていく。

「ゴメンナサイ、ワタクシメがワルカッタデス」

最終的に少年の頭には五段アイスのようなものが複数出来上がっていた。そして、その頭を深々と下げてナナに屈服している。

「それで、君よりは年上だけど、まだ女の子の分類に入る私に殴りかかってきた理由はなんなの?」

「だって、外見からして怪しいじゃねーか」

……う~ん、怪しいと言ったら怪しいわね。この服……

「それに、この先はオレの家があるんだ。怪しい奴が来たら困る」

「君の家ね……」

ん、この先って私の実家だけだったと思うけど……赤毛、父親もそうだったけど……

少年の言葉にナナが一つの可能性に気付く。

「もしかして、ナギ?」

「なんでオレの名前を知ってんだ!?」

予想が当たったのか、少年は教えてもいない自分の名前をいきなり呼ばれて驚く。

「名乗っていなかったな。私はナナ・スプリングフィールド……たぶん、君の姉だ」

「あ、姉? 親父やお袋、おっさん達が言ってた。天才で、可愛いくて、格好良くて、異常で、男っぽいところがあって、友達のいない?」

どんな風に教えてもらったんだ……否定できないけど、友達がいないって教えなくてもいいだろ

「たぶん、その姉で合ってる。とりあえず、初めまして」

「おう、よろしくな……姉ちゃんでいいのか?」

「ああ、私はナギと呼ぶぞ」

二人は握手する。お互いを見つめ合い。お互いを血の繋がった姉弟だと確認し合う。

私と違ってバカっぽいわね。絶対理的には育たないガキね。

(強いけど、怖いなこの姉ちゃん。絶対結婚が遅いな)

お互いに相手をそんな評価する。数秒の握手を終えて、姉弟揃って家に歩き出した。

「そういやさ」

「なんだ?」

もう目と鼻の先に家がある時にナナが口を開く。

「両親はどうしてる?」

「……親父は一月前に死んだ。お袋もそろそろ死にそうだ」

そうか……まだ、死ぬような歳じゃないだろうに……

「病気?」

「いや、魔物にやられたらしい……昔、封印されてたのが蘇って……くそっ!!」

幼いながらも、ナギは自分の無力さを悔いる。まだ三歳の男の子のため、力がない事は仕方のない事だ。それでも、ナギはそれを言い訳にしたくないようだった。

偉いなナギは……それに比べて、私は何も感じないとは……育ててもらっただけだからな。五年の期間は“も”なのか“しか”なのか、育ててくれたことには感謝してるけど、それだけの感情しか持てないな。

そして、二人は家に入る。家は木造平屋の古い家だった。玄関、居間、その奥にあるいくつかの部屋があり、その一室に一人の女性がベッドに横になっていた。

「久しぶりね。ナナ」

「そうね」

沈黙が十数秒続く。ナナともナギとも異なる茶色の髪の女性、年齢は見た目では二十代だろうか。実際にはナナが八歳で、母親の彼女は三十前後なのだが、見た目は歳よりも若かった。しかし、左腕がなく、掛け布団の盛り上がり方から左足もない。服で大部分は隠れているが、包帯が胴に巻いてある。血色も良いとは言えなかった。

「あなたに頼みたいことがあるの」

「……」

「母親らしいことを何一つしていない。それでも、頼れる人がナナしかいないのよ」

「魔法学校の爺さんや、魔法使いの知り合いもいると思うけど」

「……そうね。でも、この事はあなたに頼みたい」

母と娘の会話にしては、温かみが感じられないものだった。女性はナナに視線を向けて話しかけるが、ナナの方は今更母親をしたいのかと言った目で一睨みしてからは、感情のない顔で話を聞いている。

「私はもうすぐ死ぬと思います。今、一番心配なことはあなたとナギの事です。ナナは一人でも大丈夫だと思うのだけど、ナギはまだ三歳です」

その割には私は放置されていた気がするんだけど……心配された記憶がない。むしろ、異質な者のように扱われた気がするんだけど

「あなたに、ナギの事を頼みたいのです」

「……勝手すぎると思わない?」

「ええ、でも同じスプリングフィールドの血縁、姉であるナナにナギの近くにいてほしい……お願いします」

ナギをね……今日初めて会ったけど、三歳の弟を放置するのは私の誇り、いや価値観、世間体、何か違うけど何かが許したくない。この親と同じになる気がする。だが、この人の言うがままってのは気に入らない。

「条件があるわ。私の勝手にナギを育ててもいいの?」

「……構いません。ナギのためになるならですが……」

かなり、不満そうね。別に獲って食うわけでも、虐待するつもりもないんだから、もっと気持ち良く送り出してほしいものだ。



それから、一月もせずに二人母親である女性はこの世から去った。



そして

ナナ・スプリングフィールド、八歳

  と

ナギ・スプリングフィールド、三歳の新生活が始まった。










……不思議なことが一つ……

……ナギって三歳なんだよね。

何故、クソガキ一直線な口調や行動をしてるんだ?

それゆえにナギなのかな……


「なあ、姉ちゃん! オレに修行つけてくれねーか!?」


……はぁ……でも、元気過ぎる。








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