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[32048] エヴァちーと【チート・ハーレム・アンチ・多重クロス】
Name: 主城◆ce8e3040 ID:08b1074e
Date: 2013/12/29 22:27
エヴァンゲリオン2次小説『エヴァちーと』を投稿しています。

碇シンジ君が『ちーと』を手に入れました。 チートを使って幸せになります。





『更新履歴』
3月15日にじファンにて『ネギ魔』禁止。移転。プロローグ・第壱話Aパート投稿。
以降、友人がにじファン爆死にショックを受け、第六話のプロット途中で中断。投稿休止。
11月25日『Q』を鑑賞。公式による原作アンチ&ヘイト展開にショックを受ける。
11月27日『Q』公開記念ということで第壱話Bパート/Cパートを投稿。原作への遠慮を止める。
11月28日第弐話Aパート投稿。
11月29日第弐話Bパート投稿。
11月30日第参話Aパート投稿。
12月01日第参話Bパート投稿。
12月02日プロローグ~第参話の誤字・脱字を修正。
12月04日第四話投稿。
12月04日第伍話Aパート投稿。
12月06日第伍話Bパート投稿。
12月07日第六話Aパート投稿。
12月09日第六話Bパート投稿。
12月11日第六話Cパート投稿。
12月13日第七話投稿。
12月15日プロローグ~第七話の誤字・脱字を修正。
12月19日第八話Aパート投稿。
12月31日第八話Bパート投稿。よいお年を。
01月20日第八話Cパート(未完成)投稿。中断。
12月29日ちょっと更新。来年より再開します。


『お知らせ』
オリジナル完結したよーどんどんパフパフ。
ようやくこっちも更新できるな(にやり)
もう1年もほったらかしかぁ。来年は完結させないとなぁ。


『はじめに』
◎この小説はちーたー氏が生み出した『チートシステム』の劣化コピーを使用しています。
 実際のチートシステムとは比べ物にならないほど酷いです。ごめんなさい。
◎みんながにこにこ、心もほんわりできる小説を目指しています。
◎感想返しはずいぶんと先にネタを仕込んであるのでそれまで返しません。
 全部読んでいますので、気にせずどんどん書いてください。
 クレーム、罵詈雑言、炎上OKです。それだけシンジ君が美味しくなるので。
◎段落、三点リーダー、!?の半角開けなどはしてません。
 オリ作品なら校正もしますが、こんなオ○ニーSSにするだけ無駄というものですよね。
◎ほんのちょっとだけおかしな展開があるので、心優しい人は読まないでくださいね^^





『登場人物(『ネタばれ』注意)』

主人公
碇シンジ・・・神様からチートをもらった少年。徐々に原作からかけ離れていく。

ヒロイン
惣流・アスカ・ラングレー・・・××アスカ。セカンドチルドレン。メインヒロイン。
綾波レイ・・・ファーストチルドレン。メインヒロインっぽい。
霧島マナ・・・シンジの副官。『黒百合』のサブパイロット。

ハーレムメンバー(第七話終了時)
袁術(美羽)・・・神様お気に入り幼女。仲帝国は第三新東京市にも現れるか!
張勲(七乃)・・・大将軍。加速度的に出番が減る腹黒バスガイド。
雪広あやか・・・シンジの婚約者(偽)にして後ろ盾。魔改造『アヤカ』。
イザベラ・ド・ガリア・・・諜報部隊隊長。おでこ。
碇ユイ・・・別世界のユイ。ヒゲ夫を翻弄する。
惣流・キョウコ・ツェッペリン・・・別世界のキョウコ。Zzz。
イリーナ・ピアティフ・・・香月夕呼の代わりとして呼ばれるが途方にくれる。
神代 巽 巴 雪乃 戎 美凪・・・3バカ。テストパイロットを務める。
香月夕呼・・・チート天才科学者。主に戦術機の開発を任されるが・・・。
那波千鶴・・・婚約者(偽)その2、みんなの支柱。
村上夏美・・・主演女優にしてこのSSのトリックスター。
エリナ・キンジョウ・ウォン・・・シンジ会長の秘書室長。
忍足あずみ・・・シンジ専属戦闘メイド。周囲をビビらせまくる狂犬。
×××××・・・別世界の×××。親衛隊副隊長。
食蜂操祈・・・友人の今一番お気に入りの嫁。神は実はよく知らない(汗
社霞・・・夕呼の弟子。夕呼不在時は長崎での開発責任者。
神宮司まりも・・・狂犬その2。夕呼の護衛を務める。
葉加瀬聡美・・・ネギ魔における神の嫁?。出番が終わってしまった。
榊千鶴・・・親が必要になり召喚された。委員長その2。まゆ毛。
珠瀬壬姫・・・親が必要になり召喚された。無乳その2。へるぷみ~。
煌武院悠陽・・・本人が必要になり召喚された。妹恋しい将軍様。
×××××・・・別世界の×××。作戦課長代理。
姫路瑞希、島田美波、木下秀吉、霧島翔子、工藤愛子、木下優子、清水美春、
玉野美紀、島田葉月、姫路瑞穂・・・バカテス勢。大人買いされる。雑用係。
シャルロット・デュノア・・・婚約者(偽)その3。友人はシャル党です。



[32048] プロローグ
Name: 主城◆ce8e3040 ID:08b1074e
Date: 2012/12/15 11:32
エヴァちーと プロローグ[改訂版]


~~~序・始~~~


ーーーーーーーーブッ・・・

唐突にS-DATプレイヤーから供給されていたクラシックミュージックが途切れた。
(ん・・・電池切れかな・・・今朝交換したばかりだったのに)

はて、もしかしたら使い古しの電池を間違えていれたのかしらん。
シンジは閉じていた瞼を開き、ため息を一つ吐いてゆっくりと顔を上げた。

目線の先、電車の窓からは地平線に沈もうとしている大きな夕日が見えた。

「え・・・降り損ねた?・・・」

シンジは今朝、第三新東京市行きのロマンスカーに乗ったのだ。
目的地はだいたい2時間ほどであり、昼前には到着する予定だった。
つまり今の時間が夕方だとすると、かなりの距離を乗り過ごしたことになる。
あの父の愛人と思われる写真の女性との待ち合わせもすっぽかしてしまった。

「どっ・・・どうしよう・・・」

「心配することはないよ。碇シンジ君」

シンジはいきなり目の前から放たれた声に驚愕した。
先ほど窓の外を見たときには誰も前の席にはいなかったにも関わらず、今目の前には『誰か』が確かに座っているのだ。

大きな夕日の光が後光のように声の主にあたり、そのため顔の部分が影に覆われていて、声の主の顔を見ることができない。

「君は乗り過ごしてなどいないよ。そもそも終点が第三新東京市なんだから」

「そっそうですね・・・ええと、あなたはどなたでしょうか?」

シンジは現状に混乱していたが、不思議と心は落ち着いていた。

「そうだね、この世界より一つ上の次元に住む庶民に過ぎない存在さ。まあ、それでもこの世界に干渉することは好きにできるから・・・いわゆる『神』という存在だと思ってもらって結構だよ」

「『神』・・・ですか」

「うん。それで早速本題に入っていいかな。君もさっさとこの夢から覚めたいだろう?」
シンジはとりあえずその言葉に頷いておいた。
相手が神?で夢?ということなら今自分にできることはないと考えたからだ。

「まずね、シンジ君。君はこれからお父さんに呼ばれて第三新東京市に行くわけだけど、今日早速そこで使徒と呼ばれる怪物とロボットに乗って戦うことになるんだ。負けたら人類が滅亡するから責任重大だよね!!っとここまでは理解できるかい?」

「・・・・・・えーと、僕をからかっているんでしょうか・・・」

「残念ながら事実だよ。まあ、別に私を信じてくれなくても後数時間で嫌でもわかることだ。怪物は電車から降りて迎えを待っている間に見れるから楽しみにしてくれ」

神はクヒヒヒと低く笑った。いや嗤ったといった感じだった。

「でね。さらに君には信じてもらえないかと思うのだけど、今日からの君の戦いの物語は私たちの世界、所謂『天の国』で大ヒットしていてね。原典はもちろんのこと様々な詩編が生まれているんだ。ちなみにこの世界もその一つの欠片、紡がれ始めた序章なんだよ」

「・・・・・・つまり、あなた方にとって僕は物語の中の人物だと言うのですか」

「そう、その通り。私たちの世界から見ればその通りだ。しかし、君はこうして現実に存在し生きている、この世界もまた現実の世界なのは間違いない。そして付け足して言えば、この世界とほぼ同じな平行世界がたくさんあり、その平行世界すべてに君が存在していて主人公として物語を紡いでいるんだ。私たちの世界はその平行世界群を干渉、観察できる立場にあるわけだよ。だからさっき言っただろう『一つ上の次元』だと」

「難しいですけど・・・とりあえず置いておきます。それで『神』であるあなたは僕に何の用事なのでしょうか?」

「いいね。君は賢い。それでは話すけど、このまま私がこの世界に干渉しない場合、最終的には君以外の人間はすべて消えてしまい、君はひとりぼっちになってしまうんだよ。ああ、詳しいことは言えないけどね。つまりはこの物語はバッドエンドなのさ。本当に救いようが無い話なんだよ。それに納得できない私の仲間たちは様々な介入をしてこのバッドエンドを回避しようとしている。例えばシンジ君、君にものすごい力を与えて怪物との戦いを有利にしたりだ。ただね、せっかく介入しているのに、いまひとつ君がどの世界でも幸せになってない。もっともっと『君は幸せになるべき』だと思っているんだ。最近ではこの世界も飽きられて詩編の数も減っているし、監視者も減っている。だからこそやりたい放題の所謂「チート」を使って幸せになって欲しいのさ!!」

「ちーと??」

「そうチートだ。偉大なる神の一柱「ちーたー」氏がうみだした「チートシステム」これを私は君に授けようと思う。これを使い使徒戦はもちろん、対ネルフ、対戦自などの人間相手にも優位に戦ってもらいたい」

「・・・えっと『ネルフ』ってなんです??それとなんで僕が『戦自』と戦う羽目になるんですか!!嫌ですよそんなの!!」

「まあまあ、その辺の情報はチートシステムを使えば閲覧できるようにしておくから、気になるところは自分で調べなさい。さて、シンジ君、申し訳ないが少しいまここを覗いている『監視者の皆さん』に説明をするので待っていてくれないか」

神はそう言うと咳払いを一つし、天井を見上げながら語り出した。

「さて、ご覧いただいております監視者の皆様、はじめまして。この物語はGMである私とシンジ役である「EVAの知識がほぼゼロ」の友人がTRPGの要領で先述のチートシステムを使いながら物語の途中まで麦酒をお供にプレイした記録を元に小説に起こしたものです。しかし、友人は「にじふぁん」という投稿サイトの爆死にショックを受け、小説を書くのを一旦止めてしまったので、二人で協力した部分は残し、不完全な部分は私が補完するという形を取っています。なのでこのシンジ君は時に突拍子も無い行動をしたり、ネタに走ったり、スパシンじみた力を有したりしていますがご了承お願いいたします。また運の要素も入れたかったのでサイコロ、アミダなども使用してます。それとこのシンジ君はめちゃスケベです。R-17.9です。咥えさせます。まったく最低の外道の糞やろ」

「・・・あの・・・もういいでしょうか・・・」

「はっ!ごめんごめん、少し取り乱した。待たせたね。では、これを受け取りたまえ」

シンジの目の前に光の玉が現れ、そしてその中から何かが飛び出てきた。
シンジは慌ててそれが顔に当たる前に受け取った。

「これは・・・時計?でいいのかな・・・」

その時計は紫色をしておりかなり丈夫そうな時計だった。そして見るからに高そうだ。

「それはカ○オのGショ○ク、ガイ○ックスストア限定の初号機カラーモデルだ。ぜひ君に使って欲しい。おそらくだが気に入ってもらえると思う。私とお揃いだ」

「・・・すこし派手ですけど。でもありがとうございます。なんだかどこかで見たような気もしますし、とても気に入りました」

「そうだろうそうだろう。さて早速だが左下のモードボタンを押してみてくれ」

「はい、ってうわ!!なんですかこれ!!」

シンジがモードボタンを一回押すと時計から四角い画面が飛び出してきた。
画面は水色の半透明で、そして画面上には様々な項目が並んでいた。

「まずは初期設定だ。これを済ませばいよいよ第三新東京市!開幕のブザーが鳴るんだ」

「初期設定?ですか・・・ええと順々に選んでいけばいいのでしょうか?」

「さて?もうここからは君が自分で考えなくてはダメなんだ。とりあえずここまでちゃんと静かに聞いてくれたからボーナスとして追加で5万ポイントあげよう。様式美だ」

「はぁ、、、ありがとうございます。・・・うーんと・・・」

シンジはとりあえず画面を慎重に見ていくことにした。

現状は怪しいことこの上ないが、夢にしてはやたらと現実味がある上、『神』の存在感のすごさを鑑みるに彼は嘘を言っていないのではないかと感じたのだ。好意で自分を助けてくれようとしているようにも思えた。ならば自分で考えろと言ったからには真面目に取り組んだほうが絶対に良い。

(まず、現在の所有ポイントは15万か・・・これが多いのか少ないのかわからないけど、、、第一画面は『身体強化』か戦闘技能、操縦技能・・・不老不死まである!!って不老不死は一億ポイントだから選べないのか、というか別になりたくもないな。たしかロボットに乗って戦うとか言ってたから操縦技能は上げておくのが良いのかな??とりあえず次の画面を見てみよう。第二画面は『施設整備』だ。プラント建設、プラントのレベルアップ、EVA関連、JA関連、トライデント関連・・・だめだなんのことなのかさっぱりわからない。プラントを作ればロボットが開発できるのかな?いや違う、『本体の生産』はどこにも無い、あるのは本体のアップグレードと装備の生産だけのようだ。しかも装備の欄は空欄になっていて選べない。それと戦術機開発?エステバリス開発?うーん・・・置いとこう。他には食堂?司令室??今のところどうしようもなさそうだね。よし次、えーと第三画面は『美少女召喚』・・・は??」

「おお、第三画面まで進んだのかい。これは補足してあげよう。美少女召還とはこことは違う世界の美少女たちを召喚することができる画面だ。この世界の平行世界ではなく、全くの『異世界の少女たち』だ。美少女といっても三十(笑)を超えている人物もいたり、600歳を超えている吸血鬼もいたりするのだが・・・とにかくこのキャラは嫁!っていう女性キャラは全て選べるようにしてあるよ」

「(吸血鬼?嫁??)えっと、女の子を呼んでそれで何になるのですか?」

「彼女たちはただの女の子たちでは無い。君にもわかりやすく言うと『アニメや漫画』のキャラクター達と解釈したまえ(まあ、お前もそうだが)。もちろん普通の少女に過ぎない人物もいるが、たった一人でこの世界を簡単に救えてしまう人物もいる。そういう人物はポイントを高く設定させてもらうからおいそれ呼べないがね。また呼ぶことができる世界は最初10個に限らせてもらう。あらかじめ『リリカルなのは』『ハイスクールD×D』『真・恋姫†無双 』『ゼロの使い魔』『とある魔術の禁書目録(+とある科学の超電磁砲)』『マブラヴ・オルタ』『IS インフィニット・ストラトス』『真剣に私に恋しなさい!!』『機動戦艦ナデシコ』『碇シンジ育成計画』に決めさせてもらう。なぜかというと監視者の方々がググることなく安易に監視してもらうためだ。これ以外の別世界を足したい場合はその世界に応じて私の決めたポイントを追加で払ってもらおう」

「(僕の育成計画??)・・・さっぱり意味不明なんですが」

「いいんだ、別に君は気にすることは無い、忘れてもらっていい。ちなみに追加する世界だが、例えばガ○ダムシリーズの場合は数百万から数千万ポイント請求する。逆にサザエさんなら1000ポイントで良い。ドラえもんは1億ポイントだ。美少女召喚なのでドラえもん自体は呼べないが妹のドラミちゃんは呼べるからな、というか兄より優秀になっている。サザエさんの場合はワカメちゃんや花沢さんたちが呼べるぞ(呼びたいかはともかく)。私の知らない作品の場合はググって調べてのち決定する。スマ○ルプリ○ュア?もちろん可能だ。ちなみに追加した世界から一人呼ぶ場合も当然ポイントが必要だから注意するように。これも一人一人私がポイントを設定するのでその都度画面を確認して欲しい。
このあたりも説明が必要だな。我慢して聞いてくれ。そうだな・・・例えば『リリカルなのは』の世界の女の子を呼ぶ場合だが、アニメ版なのはは『無印』、『As』、『Sts』と3期に分かれているから、呼ぶ際は具体的にどの時点の人物を呼ぶのかを指定してもらいたい。
例えば高町なのは→無印(9歳)→レイジングハート所有ならば30万ポイントだ。
レイジングハートなしなら3000ポイントでいい。それで役に立つかは解らないが愛でることはできるぞ。高町なのは→Sts(19歳)→レイジングハート・エクセリオン所有の場合は300万ポイントだ。管理局での10年の戦闘経験を加味させてもらい10倍とする。
またオプションについても説明しよう。先ほどの『レイジングハート』の部分だ。
これも例えばなのはの友人のアリサ・バニングスで説明するとアリサ・バニングス→無印(9歳)→バニングス財閥令嬢で20万ポイント請求する。バニングス財閥なしならば2000ポイントで良い。これは『バニングス財閥』をこの世界に出現させるための追加分だ。アリサを通して財閥を利用できるようになるわけだ。ただ、この場合アリサは9歳児に過ぎないので実際はたいしたことはできないだろう。ポイントがもったいないかもな。
しかしアリサ・バニングス→Sts(19歳)→バニングス財閥後継者を選択するのは200万ポイントになる。この頃のアリサは後継者としてかなり財閥内でも発言権が強い。そのためなのはと同じく10倍の設定をさせてもらった。世界の危機ならば十分な協力が得られるだろう。これは他の作品でも同様に適用される。『ネギ魔』の雪広財閥でも『真剣に~』の九鬼財閥でも同じような立場であればそれなりにポイントは高く設定されるということだ。気をつけるように。また必要ポイントは作品によって『基準』が違う。ネギまなら『キャラクター人気投票』も加味されているので能力の割に必要ポイントが高かったり、能力が高いのにポイントが低い子もいる。このあたりはぜひプロフィールを熟読してあれこれ楽しんでハーレムを築いてもらいたい。おまけでプロフィール開示は一人につき1000Pだ」

「・・・・・・お話は終わりましたでしょうか・・・・・・」

完全に置いてけぼりのシンジ君であった。

「ああさらに一つ付け足すと、誰を呼んだとしても元の世界には影響はない。ここに呼ばれるのは本人では無く『コピー』だからね。まあ、この世界では現実の人間になるがね。それと彼女たちは『神の洗脳済み』なのでよほどのことが無い限り君に従うし、×××もちゃんと君が口説けば応じてくれる(というか普通でもちゃんと口説けばできるけどな笑)。君には彼女たちを呼んだ手前、ちゃんと養ったり守ったりする責任が出てくるわけだが・・・それも心配ない、それこそ誰を呼んでも彼女たちは自分で自活できる自立した女性たちだ。役割を終えて君がもう必要ないと言えば、君の元を去り、それぞれ考えてこの世界で生活をするだろうさ。まあ、私としてはできれば全員と楽しいハーレム生活をしてもらいたい(こいつがなのは9歳を呼んだ場合はどうしようか汗)」

「・・・とっ・・・とりあえず、つっ次の画面を見てみます!」

(知らない女の子を自分の都合で呼ぶなんて絶対無理だよ!何様だよ!そんなこと僕にはできない!だからこの画面はもう見ないようにしよう。それで第四画面は『技術開発』?これって第二画面と同じじゃないの?F型装備(装甲)、F型インパクトボルト、F型プログナイフ、デュアルソー、AW.マスチマ??JA改ってなに??ううんさっぱりわからないけど、おそらく先に技術開発をしないとプラントで生産できないのかな??リストの最後の方にある量産型エヴァ(S2機関なし)やS2機関とかは数千万ポイント必要とかですごいポイント数が要求されるようだけど・・・。とりあえず最後まで見てみよう!最後第五画面は『情報』・・・か。これもどれもポイントが高いなぁ。灰色になってて選べないのもあるし。なんだよこの人類保管計画全容とか5千万ポイントって何さ、裏・死海文書(日本語訳)も3千万ポイントだし・・・。お父さん・・・碇ゲンドウの情報で5百万ポイント、あの写真の女性の葛城ミサトさんでも300万ポイント・・・。あっお母さんもある!!でも・・・6百万ポイント必要とか・・・これ、初期ポイントの15万じゃどれも選べないじゃないか。本当にこれを選べる日が今後くるのだろうか泣)

シンジはとりあえず最後までこのチートシステムを見てみた。
わかったことはほぼちんぷんかんぷんということだ。なんだか悲しくなってしまった。

(いや・・・いまはこれらを『選べない』ということが『わかった』ということだ。つまりは将来選べるようになるということなんだよね)

「その通り!私は君にこの物語を『可愛い女の子たちとキャッキャと楽しく無双してもらいたい』のだ。今選べないということはいずれ選べるようになる。心配ご無用だよ。それに情報に関しては君が独自に調べたことについてはポイントが棒引きされるから安心したまえ。さあ、そろそろ前に進もう。数少ない監視者たちが早くしろとせっついているよ」

「ええと、ではとりあえず身体強化を・・・」

「おっと待った。シンジ君・・・本来は口を出すべきでは無いのだが、これだけは提供者として言わせてもらおう。君は女の子を呼ばない心算だね。それは『ダメ』だ。君には絶対に女の子を呼んでもらう。まず最初に呼ぶ女の子を決めてから他を選び給え」

「でっ・・・でも、僕に『女の子の世話をする』なんて無理です!!」

「君が『世話を受ける』の間違いじゃないかな??とにかくダメだ。どうしても君が呼ぶのを否定するならば今回のこの話はなかったことにしてもらう。そしてもうこの世界に存在の意味は無い。ここで君を殺し、この世界はサードインパクトを起こしてさっさと滅んでもらおう。14年後の世界に飛んでみんなに白い目で見られてもいいのかい?」

「(14年後??)そっそんないくらなんでも横暴です!」

「それが『神』ということさ、まあ、確かに君は彼女たちの世界の原典(元ネタ)を知らないし、誰を何の基準で選べばいいかなんて急には言われてもわからないだろう。ふむ、時間も残り少ない。そういうことなら最初の召喚は私のサービスでオススメの娘を選んで呼んであげよう。ちなみに今後もオススメの女の子は画面に表示しておくようにする。もちろん誰を選ぶかは君次第だけどね」

神はそう言うと「誰にしようかなー♪」と楽しそうに呟いている。

「うーん、さすがに高ポイントの能力が優秀な子は面白くないよなぁ。とりあえず作品をアミダで決めるか・・・っと『恋姫』ね。一番ポイントが低いのは張勲(+袁術)、公孫サン、張三姉妹とかだけど・・・。この中で面白そうなのは張勲かな腹黒いし。よし君に決めた!ポイントは『おまけの袁術』を含めて3万ポイントだけど言ったとおり彼女たちは私の特別サービスだ。この世界から抜けたらすぐに会えるからお楽しみに♪♪」

シンジは目の前の画面のカーソルが勝手に操作されていく様子をただ呆然と見ていた。
なんというか神の勝手な行為(好意)に反論する気がなんでか起きなかった。

「ほら、シンジ君。身体強化をするんだろう。早くしたまえ」

「・・・あっはい・・・えーと、まず肉体強化をレベル1から4へ(-3000P)、戦闘技能はレベル3へ(-2000P)、操縦技能レベルを一気にレベル5へ(-4000P)、精神力アップをレベル3へ(-2000P)、知力アップをレベル3へ(-2000P)、魅力アップをレベル3へ(-2000P)・・・」

「もっとドーンとレベルを上げたらどうだい。まだたった15000ポイントしか使ってないよ?レベルの上限は100なんだから、そんなチマチマ上げても効果は薄いよ」

「あの・・・このポイントは使わずに貯めておけないのですか?」

「あのね、シンジ君。君、命がかかっているのわかってる?ケチったら死んじゃうよ」

「だからこそ、いざという時に必要な力にポイントを振りたいと思いまして・・・」

「うーん(いざという時にのんきに画面を開いて振る余裕があるのかね?)まあいいか、シンジ君の好きにしなさい」

「はい、すいません」

シンジはとりあえずかなりのポイントを残して画面を閉じた。
性格的にというか、彼はいままでの人生の中でめったに小遣いを叔父達からもらえなかったので、必要なときに困らないよう貯め込む癖がついていた。
なのでポイントとはいえ全部をすぐに使ってしまうようなシンジ君ではなかったのだ。

ちなみに神も失念していたのだが、この時点でシンジは国体出場選手並の運動能力、大卒並の知力、ジャ○ーズのアイドル並の魅力(オーラ)などを得ており、かなりのレベルアップを果たしていた。レベルを一つ上げると一段階上のステージになるという設定をすっかり忘れており、ポイントを一桁低く設定していたのだ。後日、そのことに気がつき神は大爆笑することになる(ちなみに必要ポイント数は直さなかった。神に二言は無いのだ)。

つまりは、実際には15万ポイントを消費しており、シンジ君は十分チートになっていた。しかし、シンジ君も神(笑)もそんなことは知らず、別れの挨拶を交わしていた。

「では、シンジ君。これで私の役割は終えた。もう会うこともない。大変だろうが頑張ってくれたまえ。最後に・・・いいかいシンジ君、このチートシステムは『我慢とは無縁』だ。好きにどんどん使っていいんだよ。君は真面目だから女の子をモノのように召喚したり、努力もせずに強くなったり賢くなったりするのを嫌うかもしれない。しかし、それは全くの間違いなんだ。君がこれから置かれる立場は本当に本当にヒドイものなんだよ。それに打ち勝つには『チート』しかない!と思う。あと数時間で君は大人達の醜さを知るだろう。そしてそれでさえまだまだ甘いものなんだ。誰もが君のことなんか駒にしか思わず、人生をむちゃくちゃにし、苦しめ、最後には独りぼっちにさせられる。別の展開の14年後の世界なんか酷すぎて引いたよ。私には君をそんなふうに扱う大人達が許せない!乳臭いと言われてもね。だから、私はこのチートシステムを君に渡したんだ。シンジ君、いいね。ハーレムを築いて幸せになるんだよ」

「・・・ハーレムのところはわかりませんが、わかりました。僕もそんな未来は嫌です。神様がせっかく僕に与えてくれたのですから、十全に使いたいと思います」

シンジのその言葉に神は頷いた。顔は見えなかったが十分に満足したようだった。
そしてゆっくりとその姿が薄くなり、まもなく消えてしまった。
消えたのと同時に窓の外は青空に変わり、さらにガタンゴトンと電車の音が復活した。

シンジは左手首にはめた時計、チートシステムに目を落とす。

(夢じゃない・・・そう、夢じゃなかったんだ。そして僕はこれからとんでもないことに巻き込まれる。でもこのチートシステムがあればきっと乗り越えられる。頑張ろう・・・。ああ、そうだ・・・この時計の色は昔好きだったあの『おもちゃのロボット』と同じ色なんだ・・・)

チートによって知力がアップしているシンジはすっかり忘れていたそんな過去のことも思い出していた。
そういえば母さんは・・・などと考えていると、今度は真横から声が聞こえてきた。

「のう、シンジ・・・まだ着かんのかえ、妾は蜂蜜水が飲みたいのじゃぁーーー」

「美羽様、ご主人様を困らせちゃダメですよ。着いたら買ってもらいましょうね♪」

・・・・・・え??


第壱話 使徒、襲来 Aパートに続く




[32048] 第壱話 使徒、襲来 Aパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:08b1074e
Date: 2012/12/15 11:37
エヴァちーと 第壱話 使徒、襲来 Aパート[改訂版]


<<本日12時30分。東海地方を中心とした関東・中部全域に非常事態宣言が発令されました。住民の皆様は、速やかに指定のシェルターへの避難をお願いします。繰り返しお伝えします・・・・・・>>

シンジはプラットフォームのスピーカーから繰り返し発せられるアナウンスを呆然と聞いていた。そして、いよいよこれからとんでもない自体が自分の身にふりかかるのだと思うと諤々と足が震えてきた。

「大丈夫ですかー?ご主人様。うわ、手がこんなに冷たい~」

「む?おお、ほんとじゃ、シンジぃ大丈夫かえ?」

ただただ立ち尽くしていたシンジの手を二人の女の子が握った。

この二人こそ先ほどチートシステム(神の操作)によって召喚された袁術と張勲の主従コンビである。

「あっ・・・ありがとう。美羽、七乃さん・・・」

シンジは自己紹介の際に二人から『真名』を預かっていた。

真名とは家族や親友など自分が信頼できると思えた人物にその証として預けるとても神聖な名前であり、それこそ他人が勝手に呼べば殺されても文句は言えないものだそうだ。

シンジはそれを聞いたとき「まだ自分がそんな大切な物を預かるのは早いのでは無いか」と焦ったのだが、『神の洗脳(笑)』を受けている二人からしてみればシンジはこの世の『誰よりも敬愛する唯一の主人(おとこ)』であるのでまったく問題にしなかった。

そして、非常事態宣言が発令されて電車が最寄り駅に止まるまでの十数分、シンジは二人からの過剰なアプローチに戸惑いまくっていたのだった。

美羽はシンジの膝上に座りご機嫌であったし、七乃はシンジのすぐ隣に密着して座り、肩に頭を乗せてみたり、いたずらにシンジの耳に息を吹きかけてみたり、シンジの手を自分の太ももの上に持っていって「あー、ご主人様のス・ケ・ベ♪」とシンジの顔を真っ赤にさせ、14歳の純情をおちょくって遊んでみたりしていた。

チートによって『精神力がアップ』していなければ逃げ出していたことだろう。
シンジは顔を真っ赤にしながらも、しっかりと手で七乃をFSS※1していたのだった。

「のう、シンジ。あの鉄のカゴ(電車)中もここもなんで誰もおらんのじゃろう?」

「なんでだろうね・・・・・・みんなシェルターに行っちゃったのかな」

「しぇるた??妾達もそのしぇるたとやらに行くのかえ?シンジ、妾は喉が渇いたのじゃ・・・行く前に蜂蜜水が欲しいのじゃー」

「えーと、、、迎えの人がいるんだよ・・・。ここは待ち合わせの駅の二駅前なんだけどね。とりあえず電話してここ・・・えっと『強羅駅』にいるのを連絡しようと思う。それと蜂蜜水ね・・・ここに売ってるかな?・・・」

「とりあえず外に出て見ませんか?状況を確認することは大事ですよ」

七乃は以前蜀との戦いの時、斥候を出し忘れ大敗、敗走した過去があり、さすがに2度同じ失敗をするほど愚かではなかった。彼女は普通に優秀な『腹黒』バスガイドさんなのである。

「そうだね、とりあえず改札を出ようか・・・あ・・・これでいいかな?」

シンジはプラットフォームに置いてある自動販売機に「はちみつレモン」が売っているのを見つけた。とりあえず一つ買い、プルタグを開けてあげ美羽に渡す。

「はい、これは蜂蜜水じゃないんだけど」

「蜂蜜水じゃないのなら嫌なのじゃけど・・・っておおおおおぉ!!なんじゃこのさわやかな喉ごしは!!とっても美味しいのじゃ!!」

「えー?美羽様ずるいー、ご主人様、私も飲みたいなー」

七乃がシンジにおねだりする。さすがのシンジでも缶ジュース一本くらいの甲斐性は持っており、すぐに買ってあげた。

「わー♪確かに美味しいですねー。それとお金があればここに人がいなくても物が買えるというのは便利ですね。・・・庶民たちの仕事が無くなりそうですけど」

「人がいなくても買えるのはコレくらいのものだよ。それも自動販売機が多いのは日本、この国だけだそうだし・・・。って・・・早く外に出よう」

シンジはにこにこジュースを飲んでいる二人を促しながら改札を通った。
非常事態だからか改札は解放されており、チケットの回収などなかった。

この後、美羽と七乃にはベンチに座って待っていてもらい、自分は駅の周囲を見て回った。やはり人が誰もおらず、そして駅に併設されていた避難シェルターの扉は固く閉ざされ、叩いて見ても大声で呼んでも中からの反応はなかった。インターフォンらしきものも無いのはなんでだろうか??

公衆電話を見つけたので、手紙に同封されていた女性の写真の裏に書かれている電話番号にかけてみたが、残念ながら電話は繋がらなかった。

仕方なく二人の元に戻ると、『厠』へ行きたいというので構内のトイレを案内した。
すると七乃がシンジの元にすぐ戻ってきて、便器の使い方がわからないので教えて欲しいと言ってくる。さすがに女子トイレに入りたくはなかったが、七乃に無理矢理引っ張られ教えることに・・・。というか七乃さん冗談でもいきなりスカート捲らないで下さい(汗

美羽は水洗トイレに感動し、七乃はトイレットペーパーの便利さと柔らかさの感動をシンジに具体的に説明し、再びシンジの顔を赤くさせていた。もちろんわざとである。

そして今度はおなかがすいたと言い出したので、シンジは駅内のキヨスク(店員が慌てて避難したのか店じまいせずそのままだった)にて、お金をちゃんと小銭トレーの中に入れ、パンとお茶を3人分頂き、それぞれ二人に渡した。

「このメロンパンというのも美味しいのじゃ、ここは天国じゃの~♪七乃!!」

「ですね~美羽様。洛陽にもこのような「ぱん」なるものを売っている店があるとかないとか聞いてましたが、、、この「かれーぱん」ほどのものがあったでしょうかね」

シンジはとりあえず二人が喜んでくれているようで一安心した。

美少女召喚というだけあり、美羽はまるでお姫様(爆)のように愛らしく、七乃はなぜかバスガイドのような格好をしているが、しかしそれがやけに似合っており、無論彼女も美人である。背の高さは美羽がシンジより頭一つ分小さく、七乃が頭一つ分高かった。

そして思春期まっただ中のシンジにとって七乃のミニスカ姿は目の毒だったが、
その毒に食事をしながらもチラチラ目がいってしまうのは男の性であり許して欲しい。
精神力が高まっているシンジにとって太ももガン見くらいはお手の物なのだ※2。

とはいえ、少なくとも成人女性である七乃がいることの安心感、そして明らかに年下であり守らなければならないと思う美羽がいることは、シンジの精神安定に貢献しており、先ほどまであった『怯え』はいつのまにか消えていた。

食事が終わると美羽は眠たくなったのじゃーとシンジの膝を枕にしてお昼寝を始めた。

現状、電話も通じず、シェルターにも入れないため、シンジ達は(来るかどうかもわからない)迎えを待つほかすることが無かった。

シンジは暇つぶしも兼ねてチートシステムを起動した。

電車と同じようにシンジの隣に密着して座っている七乃も興味シンシンと画面を覗いている。どうやらこのチートシステムは第三者にも見ることができるようだった(※3)。

(七乃さんは身内だからいいけど、他の人に見られたら不味いだろうなぁ・・・人前ではコレは起動しない方が良さそうだね)

「ご主人様・・・少しよろしいですか」

七乃がシンジに声をかけてきた。シンジが顔を向けると、七乃が真剣な表情でこちらを見ていた。シンジは七乃が大事な話をしようとしているのだと理解し、背筋を伸ばして七乃の顔を見返す。

「今、その画面に私と美羽様を呼ぶ際に必要なぽっ、ぽいんと?が掲示されていたのですが、私と美羽様が二人で3万ポイントなんですよね・・・でも他の人たちはもっとぽいんとが高いです・・・」

たしかに、恋姫世界の女の子達の中では七乃(+美羽)はポイントがもっとも低かった。

一番近い公孫サンで5万、張三姉妹は3人セットで30万、顔良と文醜コンビで15万というポイント数だった。

「こういう事を話すのは本当はいけないことだし、私にとって悔しいことなのですが、ご主人様には話しておかなくてはなりません。それは私にとって美羽様は力を与えてくれる大事な方ですが、それと同時に私の『枷』にもなっているからです。美羽様大事のあまり視野が狭くなったり、美羽様を優先するあまり本来の仕事が疎かになり内政を停滞・・・いいえ悪化させてしまいました。最後は配下にしていた『孫呉』の人たちに反乱を起こされ、私と美羽様は国を追われてしまったのです。恐らくですがそのような経歴のためぽいんとが他の方々より低いのだと思います。もちろん、この世界に呼ばれて美羽様は袁家の後継者という縛りから解放され、私も美羽様を守るために袁家に巣くっていた醜悪な輩達と裏で謀争せずによくなりほっとしています。なので、元の世界よりは多少は私もマシになれると思うのですが、それでも自分の力不足は痛感しています。ご主人様には私よりももっと優秀な側近達が必要だと献策させていただきます。美羽様に私しかいなかったというのは不幸だっと思います。ご主人様には私たちの愚を繰り返して欲しくありません」

シンジは七乃の言葉を聞き、そして恥じた。シンジは実はこの二人以外、というか自分では女の子を召喚するのを止めようと思っていたのだ。二人に関しても心のどこかでは『神が勝手に召喚した』存在だと責任転嫁していたところがあった。

しかし七乃はシンジのことを真剣に考えて、『自分では力不足』なので別の人物を召喚して側近とするようにと言ってくれたのである。それは『神』ですら予想してなかった。

「七乃さん・・・「七乃!」・・・美羽起きてたのか・・・」

「七乃、妾は七乃が側にいてくれて幸せだったのじゃ!決して不幸だなんぞ思ったことはない!七乃はあそこで唯一、妾のためだけにいてくれた人じゃ。他の連中は妾を利用して欲を満たそうとするゲスな連中だけじゃった。あんなところ妾はもう戻りとうはない、シンジと七乃と一緒に暮らせれば、、、それとはちみつレモンがあれば十分じゃ!」

「!!っ、あ、、、ありがとうございます」

「それにだいたいあの孫策め!孫堅が死んだ後、孫呉がバラバラになろうとしているのを七乃が救ってあげ、『袁家のゴミ共に対抗させる』ため一党全員に給金を払ったり、黄巾賊討伐のために兵を集めるのを手助けしたりといろいろ裏から支援してあげていたのに、妾と七乃に感謝をするどころかろくに仕事もせずフラフラ城下で遊んで、最後は反乱して、まるで妾達が全ての元凶のように刃を向けてきた馬鹿の乳だけ女なのじゃ!!」

「・・・美羽様・・・」

「だいたいあの周瑜が密かに七乃が支援していることに気がつかぬ訳が無い!自分たちの給金がそれこそ『高い税で苦しんでいる民達』から出ておるのを知っておったし、妾達を諫めてそれを止めようとはしなかったからの。結局は自分たちだけが成り上がれればいいと、都合の悪いことは無視したのじゃ。だから金と支援は黙って受け取っておいて、妾達をゴミクズごと悪として攻めたのじゃ。ふん、結局そのような連中では天下を統一するなんぞ戯れ言、到底無理なことじゃろうがな・・・悲しいかな結局は妾達の負け犬の遠吠えにに過ぎぬのが悔しいのじゃ・・・」

七乃は美羽が全て・・・ではないが、大まかには理解していたことに驚いた。
驚いたと同時にさすがは袁逢様の子であったと感じた。

「いいえ、美羽様。まだ『負け』ではないです。結果としてあのゴミどもを粛正できましたし、私たちはご主人様とこうして別の生きる道を示されているのです。これから一緒に幸せになりましょう!」

「ふむ!そうじゃな七乃!過去の話はもうやめじゃ、妾の怒濤の快進撃はここから始まるのじゃー」

「いよ、美羽様!格好いいぞこのこのー」

シンジを挟んで二人の主従が少し涙ぐみながらも笑い合った。

シンジにとってはよくわからない所もあったが、美羽と七乃が見た目幼女とバスガイドというだけではなく、二人ともとても頭が良く優秀な人物なんだと理解した※4。
そしてこの二人と供にこれから頑張っていくぞ!と心に誓ったのである。

シンジは再びチートシステムの画面に目を向けた。

リストには美羽が『馬鹿の乳だけ女』と評した孫策もあり、彼女のポイント数はなんと500万だ。シンジはこのシステムのポイント割り振りに少し疑問を感じたのだった。

二人の話を聞く限り、この孫策という人物は仕事もあまりしないようだし、七乃が密かに孫策達を支援していたことにも全く気がついていなかったようだ。そのような人物がこんなにも七乃たちとポイントが離れていているのはどういうことなのだろう??

シンジが頭をひねっていると七乃が「孫策さんは私が十人束になってもかないません」と言った。そして「私でだいたい一般の兵士十人くらいなら負けません」と説明してくれた。単純計算で孫策は一般の兵士百人を同時に相手しても負けないくらい強いということだった。七乃に確認したところその通りと頷いた。・・・・・・ありえない強さだ(汗)

ちなみにポイントが5000万の呂布は噂では3万の黄巾賊に一人で勝ったらしい。

それに孫策は人を引きつける魅力(カリスマ)があり、彼女の元には優秀な人材が集まっていたそうだ。容姿も非常に優れており、悔しいかな自分は彼女より少し劣って※5いるとのこと。それこそ胸の大きさは七乃の倍(!)以上はあるとのことだ。

シンジはその言葉に七乃の胸を凝視してしまった。そう言う七乃だってとても立派な双胸を持っていたからである。というかこれの倍って・・・逆にそれは怖くないだろうか。

「んーご主人様、私の胸が気になりますかぁ♪どうぞ触ってくださいねー」

「うん、、、ってしないよ!」

シンジは慌てて目線を画面に戻した。
まだ「じゃあ一つ揉ませてもらおうか」と言うほど精神力は高くない。

すると、突然画面になにか新たな窓(ウインドウ)が浮かび上がってきた。


<<分岐その1 ミサトの車(ルノー)に乗る?乗らない?>>
『これより1時間後、君を葛城ミサトが車にて迎えにくる。その車に乗り父親の元に行くのか、それとも彼女の迎えを待たず、別の方法で向かうか否か選択してもらいたい。なお、彼女の車に乗らない場合は原典破壊ボーナスとして300万ポイント進呈する』


・・・はい??

シンジは突然現れた画面に目を丸くした。

迎えの車?葛城ミサトは確かあの写真の女性で・・・たしか神様が悪く言っていた人だったような?ええと、後1時間でここに来てくれるのか・・・ってもう待ち合わせ時間から1時間以上たってるよね・・・いくら僕が非常事態で二駅前で降ろされたからって、時間かかりすぎじゃない??

「ご主人様?すみませんが、私たちにも見せてくれませんか?」

「ああ、ごめんね。はい」

七乃と美羽は画面を覗き込んだ。ちなみに後から聞いた話だとちゃんと漢文に訳されているらしい。神様特製は伊達じゃない。

「なるほどー・・・それでご主人様はどうするつもりですかー?」

「え・・・そりゃ、待ち合わせしてるんだから待つつもりだけど・・・」

「シンジ~~それはいくらなんでもダメダメなのじゃぁ・・・」

「ですねー美羽様。ダメダメですー」

「うっ・・・なんで??」

「それはですね。ご主人様には神様からその『ちーとしすてむ』をもらったわけですよね。それによって私たちが召喚されてここにいます」

「うん」

「つまり神様はシンジさん、ご主人様を助けたいからでしょう?そんな神様がなんの意味もなくこのような重要な分岐をわざわざ教えてくるわけないじゃないですか?恐らく葛城ミサトという女性と一緒に向かえばなにか酷い目に遭うのだと思います。彼女を待たずここから移動した場合、300万ぽいんと?もらえるというのも、こっちを選んでくれと言っているようなものじゃないですか?※6」

「あの・・・逆に困難な道だからポイントをくれるのだとは考えられない?」

「あーー確かにそれはそうかもしれませんが、もう一度繰り返しますがご主人様を助けてくれる神様が300万ぽいんともくれるということは、そのぽいんとで十分乗り越えることができるということも考えられますよ。まあ、そもそもその葛城ミサトさんに私たちのことをどうやって説明するんですか?できないでしょう??ここで置いていかれても困りますよーー」

確かに、七乃や美羽はことは説明できないし、彼女達をおいていくこともできない。
彼女たちは当然ながら戸籍もないし、下手に追求されたら大事になってしまう。

シンジは約束をすっぽかし(実際はミサトが2時間半遅刻するので自業自得)してしまうのを申し訳なく思ったが、とりあえず二人のこともあるので分岐は『車に乗らない』を選択した。画面上で『乗らない』を押したところ、ガラスが割れたような音がしてその画面は閉じた。

システム自体も消えてしまったので、再びチートシステムを起動して画面を確認したところ、残ポイントが313500Pになっていた。これだけあればなんとかいけそうなきがする。

シンジはシステムを閉じ、二人にここから移動する旨伝える。ここでのんびりしていたら件の葛城さんが迎えに来てしまう!!

駅から出ると美羽が「うーーー暑いのじゃぁぁぁ」と力なく叫んだ。

確かに美羽は着物?ような服を幾重にも重ねて着ており冷房の効いていない外ではかなり暑いようだった。とはいえ、今町は誰一人歩いておらず、ましてや替えの服を買うなんてできそうもない。いや・・・チートシステムを探せばあるのかもしれないが・・・。

ちなみに高貴な生まれの躾なのか、美羽は暑い暑い言いながらも服は一枚も脱がなかった。

駅から坂を少し下ったところに小さな公園があったので、奥の木陰になっているベンチに一旦座ることにした。これからどうするかみんなで知恵を出し合わないといけない。

シンジは再びチートシステムを起動するのだった。


<<補足:ここで友人はリアルに1時間の長考をすることに。エヴァ知識ほぼゼロのくせにミサトの車に乗らないという選択をネタで行ったため、一体これからどういう展開になるのかがよくわからず、マジで困っていましたw。一応この先の展開は教えましたが、このシンジ君『ネルフ』すらよく知らないわけでwどうせーちゅうんじゃ!・・・では、その長考の結果をご覧ください>>


「まずご主人様、先ほども言ったのですが、私たち以外の人を呼ぶべきです」

七乃が最初にそう切り出した。さすがのシンジももう呼ぶことに躊躇はなかった。

「でも・・・一体誰を呼んだらいいのかな・・・リストには名前と必要ポイント数しか書かれていないんだ。二人と同じ世界の人なら七乃さんでどういう人かわかりますか?」

「ええと・・・孫呉の人だったらだいたい・・・あともちろん麗羽(袁紹)様、斗詩(顔良)ちゃん、猪々子(文醜)ちゃんは嫌なくらい知ってますし・・・あと・・・そうですねー曹操さんが優秀なのはご主人様も知ってますよね?」

「え?ああ、うん。僕が知っている曹操は男だから少し違うと思うけど・・・多分すごい人なんだろうね。というか、劉備、関羽、張飛、孔明ってどうなの?僕の知る限りではこの中で一番有名な人たちなんだけど・・・」

「・・・そうですね・・・私も彼女たちの軍に敗れてますから、優秀なんだろうとは思いますが、、、私の個人的な見解ではまず主君の劉備は愚か者、関羽は視野狭窄、張飛はお子様、孔明はすごい才を見せていましたが・・・でも孫家の周瑜さんには劣ると思います。・・・ご主人様、どちらにしても今回呼ぶ人は私たちの世界の人は避けた方がいいと思いますよ」

「へ?なんで??」

「この世界と私たちの世界では時代が違いすぎます。ご主人様が自己紹介の時に教えてくれた際に私たちの世界は今よりもはるか昔の時代だとおっしゃってましたよね。ですから見るモノ聞くモノすべて私たちの知らないモノばかりです。しばらくして慣れてくれば大丈夫ですけど、今の火急の事態には不適だと思います」

「たっ・・・確かにね」

シンジは七乃の鋭い指摘に思わず声を失った※7。

「じゃ・・・じゃあ、どうしよう・・・」

「のうシンジ、この一覧の者達の『履歴』は見れないのかえ?人材を登用するとき七乃はまずその者が過去にどのような学問・武術を納め、以前はどこに仕官していたかというものが書かれた竹簡を山と積んで読んでいたのじゃ。履歴がわからなければ選びようにも選べないのじゃ」

「美羽様~なんて賢い献策でしょう♪エライエライ(なでなで)」

七乃が美羽の頭をこれでもかというくらい撫でている。
美羽もえっへんとばかりふんぞり返っていた。

確かに美羽の言う通りであり、シンジは早速『情報』の画面を開いてみた。

(確か一人1000Pでプロフィールが開示できるんだっけ・・・あっ一括で開示もできる!!って50万ポイントもいるの!!どうしよう・・・)

シンジは七乃にまた意見を聞こうかと思ったが、さすがになんでもかんでも頼るのは情けないので、今回は自分で考えてみた。結局情報がわからなければどうにもならないということで50万Pを使い女の子達全員のプロフィールを開示した。

「へぇーすごい。一人一人画像も出るんだ・・・学歴、職歴、身長、体重、スリーサイズ、趣味、好きな食べ物、性癖・・・って情報細か!!」

「おおーこの桜咲刹那という剣士かっこいいのじゃー♪背中に翼が生えておるぞ!!」

「でも胸も腰も細すぎですねー、案山子です。これじゃ夜伽はかなり頑張らないとご主人様に飽きられちゃいますよ。今後に期待というところですかー」

ちなみに、ネギまのリストは『人気投票順』に並んでおり、桜咲刹那が1番にリストされていた。2番目がヒロインの明日菜、3番目に木乃香後は亜子、のどかと続いている。

シンジはとりあえず不必要な所は飛ばして読んでいった。
しかし、あまりに情報量が多くすべての人物を読んで選ぶのは難しすぎた。

すると横から画面を覗いていた美羽が「シンジ、名前の前に変な形の印があるのじゃが、何じゃろう?」と言うので見てみると、確かに何人かの名前の先頭に『ハートマーク』が付けられてあった。

「そうだ!確か神様が次に誰を呼んだらいいのかオススメを教えてくれるって言っていたような・・・。とりあえずこのマークのある人からプロフィールを読んでみよう※8」

この『ネギま』のリストでのオススメは次の3名。雪広あやか、超鈴音、葉加瀬聡美。

(えーと雪広さんはお金持ちの娘さんで・・・超さんは未来人!?タイムマシンをオプションで付けれるのか・・・ってそんなのアリなの?、それと葉加瀬さんも凄い!プラントで『人型ロボット(ガイノイド)』が生産できるってオプションがある!・・・ちょっと待った。確かに凄いけど今必要かと言えばそうじゃない。今僕に必要なのは悲しいかなお金と二人を任せられる保護者だよね。父さんが美羽や七乃を受け入れてくれるかどうか・・・こんな話を信じる分けがないし・・・よし!この3人の中なら雪広さんで決まりだ!それでお金目的で心が痛いけどオプションの『雪広財閥当主の次女』を付けさせてもらって・・・ん?仮契約カード『花盛りのブルジョワ』の有無?『どんな人物にでもアポなしで面会できる能力』?えーと役に立つのかよくわからないけど、この人の持ち物なら付けてあげた方がいいよね!全部でうわ290万Pだ。うう、こんなに一気にポイントを使うなんてドキドキするよー・・・せーの、えい!!)

シンジは雪広あやかを選択し召喚した。しかし、特に何も起こらなかった。
てっきり時計と同じように目の前に光とともに現れるのかと身構えていたのだが・・・。

「あれ・・・来ない?ここで待っていれば大丈夫なのかな??

「・・・・・・私たちが二人で3万・・・彼女一人で290万か・・・・・・」

七乃がその悲しい現実を空に向かって愚痴っていた。いや確かに3万は低いかも。

「七乃元気を出すのじゃぁ、それだけ妾達はお買い得だということじゃぞ!」

美羽の意味不明な励ましに七乃は「美羽様~」と感動の涙を流していた。

「そうですよ七乃さん、このポイントって僕はかなり恣意的な印象を受けました。そもそも神様の主観で決めているみたいだし、必ずしもポイントが高いから有能ってわけでもないと思います。だって一番の桜咲さんなんて500万ポイントですけど、羽があって空が飛べるものすごく強い剣士だけって感じです。2番目の神楽坂さんの『完全魔法無効化能力』もすごいと思いますけど、そもそもこの世界には『魔法が無い(?)』わけですから、ほとんど役に立たないですよ。それでいて480万ポイント・・・ほらやっぱりおかしいでしょう」

「・・・何気に彼女の特技欄に咸卦法(魔力と気の融合)習得とか凄いこと書いてますけど・・・それにあーてぃふぁくとの欄の「ハマノツルギ」とか説明を読むと尋常じゃ無いくらい強い武器を持ってるみたいですよ・・・(ジト目)」

七乃の武器は一般の兵士が持っている武器よりちょい良いくらいの剣だった。その剣もどうやら召喚時にオプションを神様がつけ忘れたのか所持していなかったのだ。

「ええと、オプションは後から追加もできるんで七乃さんの武器召喚しましょうか?ちょっと待ってください。この『袁術親衛隊正式採用鋼剣』ですよね。ポイントは10Pですからすぐにでも!※9」

「ご主人様やめてください!これ以上私を落とさないで!!」

結局七乃に止められ、七乃の剣は召喚しなかった。まあ、実際そんなもの持ち歩いていたら警察に銃刀法違反で逮捕されてしまうのだが(コスプレと思われるかな?)。

そんなやりとりをしていると、一台の黒塗りリムジンが公園の入り口に止まった。

そして運転手が先に出てきて、後方のドアを開ける。
車からは綺麗な金髪ストレートの長い髪を持った長身でスタイル抜群の美少女が降りてきた。それは先ほどチートシステムの画面で見た『雪広あやか』当人であった。

あやかはシンジを目視すると座っているベンチまで小走りで近づいてきた。

「お待たせしましたわ、シンジ様。私はあなた様の力となるべくこの世界に召喚されました。容姿端麗、頭脳明晰、全てに優れた完璧超人ことこの雪広あやかがこれから誠心誠意お仕えさせていただきますわ!!ほーほっほっほ!!」

あやかは顔を紅潮させシンジに自己紹介した。最後の高笑いは多少照れ隠しも混ざっていたが。『神の洗脳』により彼女のネギ先生(ショタ)への愛情はシンジ(年下の婚約者(フィアンセ))に変換されていたため、すでにシンジへの好感度はMAXに達していた。

「・・・のう七乃・・・どことなく麗羽のことを思い出したのじゃが・・・」

「美羽様・・・さすがにアレよりはマシだと思いますよ」

美羽・七乃主従がアヤカをジト目で評している間に、シンジは自分たちが置かれている現状をアヤカに説明した。アヤカも召喚の際にある程度神より情報を脳にインプットされているので、一通りシンジから説明を受ければほぼ把握したようだった。

「わかりましたわ、シンジ様。現在第三新東京市には非常事態宣言が発令されていまして、このまま外でウロウロするのは危険です。ここには雪広家の別邸がありますし、そこに個人シェルターも完備されていますのでまずそちらへ移動しましょう。その後のことはそれから考えるのが良いと思います」

シンジがあやか召喚の際に『雪広財閥当主の次女』のオプションを付けているので、この世界(日本)には雪広財閥が存在している。雪広財閥は、あやかの高祖父が創立した雪広商会を基盤に、政府の保護を得て海運業を独占。造船業・鉱業・貿易などあらゆる分野に進出し莫大な富を築いた。現在雪広商事、雪広化学、雪広重工業、雪広マテリアルなど様々な会社を経営している。セカンドインパクトの混乱の際にグループ上場企業の株式の大半を雪広家が自社株買いしており、一時期力が落ちていた創業家の支配が復活していた。無論、白人至上主義のゼーレなどに雪広家は加わってはいない※10。

また当然ながら雪広家が存在しているので、あやかはこの世界に戸籍を持っている。

あやかに促されシンジ達はベンチから立ち上がり、黒塗りリムジンに乗り込んだ。
革張りのシートにキラキラの小さいシャンデリアなどとてつもなく豪華な内装だった。

お姫様である美羽や七乃は「綺麗じゃのー」「綺麗ですねー」くらいの感想であるが、叔父の家の庭のバラック小屋で一人貧しい自炊生活をしていたシンジからすると、別世界の光景であった。

細長いリムジンの車内は運転席、助手席を除いてもまだ10名程度乗れるのではないかという広さでだったが、あやかたち三人はシンジに密着するかたちで後ろに座っていた。
右隣にあやか、左隣に七乃、膝上に美羽である。

「あっ・・・あの・・・」

シンジは美人二人に挟まれてドキマギしていたのだが、あやかと七乃は互いに笑顔を顔に張り付かせたまま見えない火花を散らしていた。シンジには早急に『恋愛原子核』にポイントを使うことをオススメする。このまま女の子を召喚し続けると刺されるぞ※11。

4人もいて、なぜか静かな車内に居心地の悪さを感じていたシンジは火花を散らし続ける二人から視線をそらすように窓の外に目を向けた。窓の外には怒り肩の緑の巨大な化け物が悠然と街中を歩いていた。

「うわーー!!ちょっちょっとみんなアレを見て!!」

シンジは驚愕して化け物へ指をさした。その声ににらみ合っていたあやかと七乃も驚いてシンジの指した窓の外を見る。

「おおーなんじゃあの化け物わーーー!!」

真っ先にジンジの膝上から飛び降りた美羽が窓ガラスに顔を貼り付けて見ている。
あやかと七乃は驚きのあまり声も出ないようだった。

「あれが『使徒(?)』・・・僕が戦う相手か・・・」

「おお??なにか飛んで来たのじゃ!っと思ったらすぐ落ちたのじゃ・・・弱いのぅ」

国連軍の戦闘機が両翼からミサイルを発射したものの、使徒には通用せず、そのまま戦闘機は何か(ATフィールド)にぶつかり落ちていった。戦闘機は先ほどまでシンジ達がいた強羅駅の方へ落ちていったようだが・・・

「とにかく別邸まで急ぎましょう、瀬婆須(ドライバー)!飛ばして!!」

「了解しましたお嬢(あやか)様」

リムジンがアクセル全開で走り出した。・・・というか早すぎない?曲がれるのコレ?

シンジは使徒よりもこの車が事故らないかの方が心配になった。
美羽や七乃はのんきに「すごい早いのじゃー」「わー早いですねー」と言っていたが。

ドライバーさんの運転のおかげ?で、あれから十分ほどで雪広の別邸に到着した。
別邸といっても一軒家では無く、7階建ての中規模なビルディングで一見普通のオフィスビルのようだった。そしてなぜかそのビルだけがポツンと一棟だけ建っていた。

リムジンはビルの地下の駐車場に入り、エントランスの前でゆっくりと停車した。

シンジが車が普通のビルの中に入ったことを不思議に思っていると、

「もちろん普通の屋敷も麻帆良の他、各地にあるのですが、ここ第三新東京市では非常事態宣言発令時には中心部の建物がジオフロント、つまりこの下の地下空間に収納されるようになっているのです。そのため雪広家でも別邸をビルディングの形にして非常時はビルごと地下に避難できるようにしてあるのですわ」

「でも、今発令中なのにまだ収納されてなかったよね?なんでなの??」

「それはもちろんシンジ様をここへ案内するからに決まっていますわ!一度収納されていたのを、このビルだけ上に戻して、車でお迎えに行ったのです」

それはそれはシステムを管理しているネルフにとってははた迷惑な話だっただろう。しかし雪広財閥はここ第三新東京市においてネルフの有力なスポンサーの一つであり、ゼーレの影響の薄い極東の地では彼らの傘下の企業だけではこのような巨大プロジェクトを開発できなかったのだ。無論ジオフロント内は身内だけで工事を行ったのではあるが。

ガガガ・・・とビル全体から地鳴りのような音が聞こえてきた。
あやかによるとビルが再度地下に下がりジオフロント内に収納されたのだそうだ。

ビルが地下に下がり終えたと同時にどこか遠くの方で爆発音がした気がするが、その音に反応して顔を向けたのはシンジだけだった。

(あれ気のせいかな?)

シンジがうむむと首をひねっている間に3人はさっさとエントランスからロビー内に入っていったようだ。

「あら?シンジ様いかがなさいましたか?早くいらっしゃって下さいませ。美羽さん、七乃さん。お疲れでしょう。とりあえずお茶に致しませんか。今家のものに情報を集めさせています。それに『あちら側』もすぐ動いて来ると思いますし・・・」

シンジは慌てて3人の元へ向かった。
地下のロビーだからかロビー内はそれほど広くなく、少し大きなエレベーターが一基正面に設置されていた。エレベーターに乗り最上階の7階へ、扉が開くと左右両脇にメイドさんたちが整列して「いらっしゃいませシンジ様、おかえりなさいませお嬢様」と言って揃っておじぎをしてくれた。

シンジはその光景にあっけに取られていたが、それが城では普通だった美羽は「うむ、ご苦労様なのじゃ」とご機嫌であった。誰も美羽に対して頭を下げていたわけでは無かったが、小さな女の子がえばって歩く姿は微笑ましかったので問題にはならなかった。

シンジは恐縮しながら『メイドの道』を歩きアヤカの家の玄関をくぐるのであった。

(うう緊張する・・・これからあの『使徒』をどうしたらいいのだろう??・・・)


さて、シンジ達が雪広の別邸でお茶を飲んでほっと一息ついている頃、件の写真の女『葛城ミサト』はもの凄く焦っていた。今日は自ら志願してサードチルドレンを迎えに行くことになっていたのだが2時間寝坊し、慌てて新車のルノーを激走させて第三新東京市駅へ、シンジがいない(というか人っ子一人としていない)ことにさらに慌ててネルフ本部にいる部下の日向に電話をしたところ、非常事態宣言が発令されていてシンジの電車は二駅前の強羅駅で止まったことが伝えられる。再びルノーを爆走させて強羅駅に滑り込んだところに戦闘機が墜落、それは間一髪逃れたが強羅駅にもシンジはいない・・・。駅内を探し回ってもどこにもおらず、顔を真っ青にして再度日向に電話、さずがの日向も慌てて後ろを振り向く・・・が、現在発令所には国連軍の将官達が指示を出しており、いくらなんでも「葛城一尉がサードチルドレンを待ち合わせの時間から2時間半以上遅れて迎えに行ったところ、接触できませんでした」などと報告することはできない。そんなことを言えばネルフは馬鹿の集まりかと勘違いされる。

日向は冷や汗を流しながら顔を正面に戻した。

(マズイですよ~葛城さん・・・とっとりあえずサードチルドレン・・・シンジ君が今どこに居るのかマギで検索を・・・ってマヤちゃんにばれるかな・・・)

日向は隣の隣の席で真剣な表情でモニターを見つめる童顔の同僚をチラリと見る。

現在、強羅防衛戦を『使徒』が突破、第三新東京市へ向かって進行している。国連軍の将官達はN2爆雷の投下の準備を指示、先ほど爆撃機が厚木基地を飛び立ったという大変緊迫した状況であった※12。

とはいえ、ネルフの作戦部である日向には今特に仕事は無く、そんでもって上司も不在・・・。同僚達に申し訳なく思いながら愛する上司の尻ぬぐいのため(貴重な)マギのシステムを使ってシンジの検索を行った。

結果としてはすぐに見つかった。

強羅駅の監視カメラにシンジ君とバスガイドの格好をした女性、着物?を着たお姫様のような女の子の3人が電車を降り、シンジ君が二人にジュースを買って上げたり、その後電話(ミサトの携帯電話だった)をしたり、シェルターに入ろうと奮闘したり、結局できずに駅に戻って3人で昼食を食べたり、その後駅の近くの公園へ移動し、(日向の見たところ)彼らは途方に暮れていたようだったが、そこに黒塗りのリムジンが現れ、そのリムジンから美少女が出てきてシンジ達と何かを話したかと思ったら、一緒にリムジンに乗って走り出した。車のナンバーから車の所有者が『雪広家』であることが判明。そして車は雪広家が所有する第三新東京市のビルの中へと入っていったのだった。

(そういえばなぜか雪広家が自分たちのビルを外に出すよう言ってきてたっけ・・・青葉が「このくそ忙しいのになんで金持ちの我が儘を通さなきゃいけないの」って愚痴ってたっけ。あれってまさか『シンジ君』を迎えに行くため??なのかな。それってサードチルドレンの情報が外部に漏れてた!?ってことかも・・・これって)

「やばいですよ~葛城さん・・・シンジ君1時間は強羅駅で待ってましたから、、、」

「ん?日向、葛城一尉がどうかしたのか?」

隣の席の青葉がこちらを向いて声をかけてくる。

「いっいや、なんでもない・・・こともないが、、、今はマズイ、後で話すよ」

「・・・そうか。それならいいが・・・そろそろ国連軍の攻撃も佳境のようだぞ」

「ああ(とりあえずN2落として貰って使徒が死んだら笑い話?で済むかな)」

そんなネルフの存在意義を無くすようなことを考えながら日向は正面の巨大モニターに視線を向けた。何十億もする最新型のビジョンであり、発令所のどこからでも見ることができる。そこには悠々とこちらへ向かって歩いている使徒の姿が映っていた。


「十五年ぶりだな」

「ああ、間違いない・・・・・・使徒だ」

すでに何時間も前から使徒の姿は確認できていたし、だからこそ国連軍が懸命に防衛活動をしているのだが、なぜか今になってこのような台詞を吐いている司令(ヒゲ)と副司令(ろうじん)である。

『目標は依然健在です!第三新東京市に向かい進行しています!!』

『航空隊の戦力では、足止めが出来ません!!』

「総力戦だ。厚美、入間の航空隊も全部あげろ!!」

「出し惜しみは無しだ!! 何としてでも目標を潰すんだ!!」

国連軍の将官達がオペレーターからの報告に顔真っ赤にして指示を怒鳴る。
しかし、悲しいかな緑の化け物に対して有効なダメージは全く与えられていなかった。

「やはり、ATフィールドか?」

「ああ、使徒に対して、通常兵器では役に立たんよ」

司令(ヒゲ)と副司令(ろうじん)のコンビはのんきにそう囁きあっていた。

いまから自分たちも当初のストーリーから大幅に外れた、とんでもない自体に巻き込まれることになるわけだが、神では無い彼らにそんなことがわかるわけは無い※13。

「もういい!!航空隊、地上の戦車部隊も後方に下げろ!上空で待機している爆撃機にN2投下を指示しろ!!」

国連軍の将官はとうとう自分たちの切り札である『N2爆雷』の使用を決断した。

戦闘機や戦闘ヘリ、戦車、装甲車たちが慌てて使徒から離れていく。

『N2投下しました!!!!』

使徒上空の爆撃機からN2爆雷が投下された。

使徒に着弾した瞬間、画面は光で真っ白になり、そして何も映らなくなった。

「碇君見たかね?これが我々の切り札、N2爆雷の威力だ!」

「これで君の所の新兵器の出番は無くなったな」

後ろに座っているヒゲに国連軍の将官達は勝利を確信して言い放った。

『爆心地中央にエネルギー反応!!目標健在です!!』

オペレーターから悲鳴のような報告が伝えられる。

「馬鹿な・・・N2が効かないとは・・・」

「化け物め・・・・・・」

国連軍の将官達はがっくりと肩を落とした。
中には床に崩れ落ちてしまうほど落ち込んだものもいた。

「予想通り自己修復か」

「・・・・・・ああ、そうでなければ単独兵器として役に立たんよ」

「完全な個体。自己完結型の生命体か」

ヒゲと老人が哀れな将官達を見ながら囁きあう。
そもそもこの二人には将官達の存在すら眼中に無かったのかもしれない。

正面の画面が復旧し、使徒の様子を伝えていたが、いきなり使徒からの攻撃で映像を映していたへりが撃墜され、画面は再びブラックアウトしてしまった。

「ほう・・・大したものだ。機能が増幅したようだぞ」

「確かに、それに知恵もついたようだ。修復が終われば来るぞ」


「は・・・・・・しかし、、、いえ、了解しました。はい、、、それでは」

国連軍の将官のもとに一本の電話が入った。

そして将官は不服なのを隠そうともせずヒゲに対して、

「碇君、総司令部より通達だ。只今をもって指揮権をネルフへ移す。お手並み拝見させて貰おう」

「我々の所有する兵器が目標に対して有効な手を持ち得なかったことは認めよう。しかし、君たちならあの化け物に勝てるのかね?」

ヒゲいやネルフ司令碇ゲンドウは立ち上がり、薄笑いを浮かべ、サングラスを手で直しながら「そのためのネルフです」と答えた。内心ちょっといい気になっていた。

「まあ、がんばりたまえ」

なんとなくヒゲにむかついた将官達はそそくさと発令所を出て行った。

「さて、碇。予定どおり指揮権がこちらに来たわけだがどうする?」

老人だ、副司令だ、いや冬月コウゾウだ!も心持ち気合いを入れた様子でゲンドウに問いかけてきた。いよいよ計画が始動ということもありテンションが上がっているようだ。

「初号期を起動させる」

「初号期か?パイロットがいないぞ」

「問題ない。間もなく予備が届く」

日向は伝えるなら今しかないと席から立ち上がり後ろを向いた。

「報告いたします。サードチルドレンの件ですが、葛城一尉が彼を迎えに行くことになっており、実際に迎えに(2時間半後)行ったのですが、サードチルドレンと接触ができませんでした。現在サードチルドレンは市中心部の雪広家所有のビル内にいるものと思われます。雪広へ彼を引き渡すよう連絡してもよろしいでしょうか!」

日向のその報告にゲンドウと冬月はあっけに取られたようにポカンと聞いていた。

「・・・なぜサードチルドレンが『あの』雪広の所に保護されているのだ?」

冬月のあまりに当然なその疑問に日向は言葉が詰まる。しかし、上官に対し嘘をつくわけにもいかない。愛する上司の不手際を話すのは心が痛いが話さないと自分が罰せられる。

「えーと、そう、まず非常事態宣言が発令されましてサードチルドレンが乗っていた電車が待ち合わせの駅の二駅前の強羅駅で止まったのです」

「それは何時かね?」

「・・・12時38分です」

「ふむ、葛城一尉が強羅駅に到着したのは何時かね?」

「・・・・・・15時16分です」

見つめ合う日向と冬月。その瞬間好きだと気付いてしまいそうな勢いである。

「・・・葛城一尉のことはいまはいい!それでなぜサードチルドレンが雪広の所にいるのかを報告したまえ!」

「はっはい!サードチルドレンは強羅駅にておそらく電車内で知り合ったと思われる女性と少女の三人で1時間ほど待っていたようです」

日向は正面の画面に先ほど検索しておいた監視カメラの画像を表示させた。

発令所に居た職員全員が(なぜバスガイドとお姫様?が一緒にいるの?)と思ったが世界を救うという高い志をもった職員たちの鉄の精神力でそれをつっこむ声は抑えられた。

「サードチルドレンは葛城一尉の携帯に連絡したり、駅に併設されているシェルターに入ろうとしたりしていましたができず、その後3人で昼食を取ったあと近くの公園へ移動しました。その30分後公園へリムジンが到着、リムジンから出てきた少女と接触後、全員リムジンへ乗り雪広家が所有するビルへ向かいました。車のナンバーから雪広家の個人用の車のようです。それと出てきた少女は雪広家当主の次女の雪広あやか嬢と確認が取れています。・・・えーと以上です」

「・・・報告を聞く限りでは非常事態が発令されているのに外にいたサードチルドレン達を好意で保護したように見えるが・・・んっそういえば先ほど妙な話が合ったな?」

「はい・・・発令後地下に収まっていた自社ビルを急いで外に出すよう雪広家から連絡がありまして、副司令に確認をとりました。了解を得ましたのでそのビルだけ上にだしましたが・・・」

青葉が冬月の疑問に答えた。

「車ですが、先ほど調べたところまっすぐにサードチルドレンがいた公園に向かっています。まるでそこにサードチルドレンがいるのがわかっていて、わざわざ迎えに行ったように見えます。それと現在はそのビルは再び地下へ待避完了しているようです・・・」

「雪広家へ連絡。サードチルドレンを引き渡すように言え」

黙って聞いていたゲンドウが口を開き、そう日向に指示をだした。

「碇いいのか?この雪広の動きはなにか裏がありそうだぞ?先に事情を調べた方が良いのでは無いか?今雪広財閥と関係をこじらせるのはマイナスにしかならん。それにもし拒否でもされたらどうするのだ?」

「問題ない。雪広がこちらの何をつかんでいるのかわからんが、今のシンジは何も知らん。父親である私が保護者として引き渡しを言うのを拒否をすれば逆にあちら側が立場が悪くなる。だから拒否はしないでしょう」

「うむむ、そうだな。とはいえ雪広について諜報部を動かすのはいいだろな」

「それは任せる」

冬月は早速電話を取り雪広を調べるように諜報部に指示を出した。

ゲンドウはいまだ正面のモニターに映っているシンジの姿をジッと睨んでいた。
そしてあの無能の葛城一尉の処分は減棒何ヶ月にしようかと考えていた。


Bパートへ続く


※1 FSS=太ももスリスリ 友人は乳より太ももが大好きです。
※2 友人は以下略。精神力(げんき)があればセクハラもできる!セクハラ王に俺はなる!
※3 実際はシンジと召喚された女の子のみ見ることができます。
※4 友人の逆襲(笑)どこかのSSでこういう話を読んだらしい。
   周瑜からすると『そんなん知らんがな』ばりのいいがかりだけど(爆)
※5 少し・・・
※6 いいえ、全くの適当、思いつきです。
※7 これは私が指摘しました。友人はなぜか恋姫から選ぼうとしてたので^^;
※8 友人のあまりの長考に仕方なく再度アドバイスをしました。
※9 七乃って武器にこだわりがなかったんですね。大将軍(笑)なのに。
※10 雪広財閥出現のため、某○菱グループが消滅しています。
   この設定はニコニコ鉄道様より参考にさせていただきました<(_ _)>
※11 後でシンジ君には夢の中で教えておきます。
※12 作品によってはここには戦自の将官がいることになってますが、
   ネルフは国連の組織なのでそれはおかしいと思い国連軍にしました。
※13 僕はアンチは嫌いです。本当だよ。でも友人がこいつが・・・・・・w




[32048] 第壱話 使徒、襲来 Bパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/15 11:44
エヴァちーと 第壱話 使徒、襲来 Bパート[改訂版]


「私は負けませんわ!完結までどんな苦難に遭おうとも!ブルジョワのスルー能力を甘く見ないで欲しいですわね!どうぞ皆様感想板でたこ殴りにしてくださいまし!!」

「・・・あやかぇ・・・お主、いきなり立ち上がって何を叫んでおるのじゃぁ??」

「ダメです美羽様、あやかさん(某サイトのネギま禁止)のせいで追い出されてしまったなんて言ってはいけません。この小説は理想郷住人の方々が大嫌いなジャンルの作品です、無茶苦茶肩身が狭い思いを神様とご主人様がしているというのも指摘してはいけませんよ(ニコリ)」

「・・・恋姫は『なろう』でもセーフじゃったんじゃがのぅ・・・・・・」

「ですねー、書き直しをしようにもこの作品は『友人さんが話を進めた通り』に書き起こしていくのがテーマなので、あやかさんをアリサさんや揚羽さんに代えるわけにもいきませんし、そもそもポイントが全然足りませんしね・・・」

「なんとも残念なのじゃー」

「残念ですねー(これであやかさんの株は大幅値下がり~♪)」

まあ、そもそも後にエヴァも禁止になったので削除は避けられなかったのだが(神)。
さらに言うと理想郷のエヴァ板は閑散としているので迷惑もたいしたことなかろう(おい

シンジは賑やかにしている彼女たちを見ながらのんびりとお茶を楽しんでいた。

(美味しいなぁこの紅茶・・・いろいろごたごたしてるけど、自分たちのできることをやっていくしかないよね・・・。アヤカさんが悪いんじゃ無い、悪いのは僕だ・・・※1)

「お嬢(あやか)様、ネルフよりシンジ様を引き取りたいと連絡がありました」

壁際に控えていたメイドさんが一歩前に出てアヤカに伝えた。
メイドさん他屋敷で働く人達にはインカムが支給されており迅速に情報を共有化することができるのだとか。

「きましたか・・・思ったよりも早かったですね。さすがはマギということですか」

「アヤカさん、ネルフって・・・」

「ええと私が説明してもよいのですが・・・いえ私もそれほど詳しい情報は持っておりませんし正しいかどうかも疑わしいですわ、シンジ様そのチートシステムを使ってはいかがでしょうか?確か様々情報が取得できると神様の記憶にあるのですが」

アヤカはシンジの左手首にあるチートシステム(Gショック)に目をやった。

「そうだね・・・。じゃあ早速起動してみるよ」

シンジはチートシステムを起動し『情報』画面へと移動させた。

「あれ?電車の時に見たときよりもポイントが下がってる・・・」

「おそらくこれまでにシンジ様がいろいろ見たり聞いたりしたことで情報価値が下がっているのでしょう。それがポイントに反映されているのではないですか?」

「なるほどね・・・それでもネルフだけで2万ポイント、えっとマギで5000ポイントか、ん?第三使徒サキエル?これは前に見たときは無かったような・・・使徒ってことは外の化け物のことだよね。なんで第三なんだろう・・・」

「・・・大方一と二はアダムとイヴですのような安易な決め方なのではないですか」

アヤカは鋭い指摘をしたのだが、聖書に詳しくないシンジはちんぷんかんぷんだった。

「シンジ様、とりあえずその第三使徒が外にいる化け物のことだと思いますわ」

「うっうん。そうか、そうだね。ありがとう」

「どういたしまして」

「む・・・」

とてつもない失態を犯したアヤカだったが、少しでも挽回しようと一生懸命だった。
黙って見ているほか無い七乃は少々面白くないが、召喚時に15年この世界で生きて来た知識を付与されたアヤカに勝てるわけもなく、じっと雌伏しているのだった。

美羽はのんきに蜂蜜水(雪広特製)をおかわりしてご機嫌であった。

「じゃあ、ネルフとマギと第三使徒の情報を得ます。全部で5万5千ポイント、残りは8万ポイント・・・だいぶ減っちゃったなぁ・・・」

シンジが画面でそれぞれ選択すると、新たに3つ画面が飛び出してきた。

「なになに・・・国際連合直属非公開組織『特務機関NERV』、使徒殲滅を主要任務とする国連直属の超法規的組織で・・・長い・・・父さんが司令なんだね。ここの地下に本部があって・・・E計画とアダム計画、人類補完計画の3つのプロジェクトを進めていると・・・」

シンジの知力はチートによって高まっているが、未だ大卒レベル。大卒レベルと言っても知らないことは知らないので勉強しないと『知識』は高まらない。つまりは情報を読んでも先ほどと同じようにちんぷんかんぷんなわけである。

「でも・・・この人類補完計画って情報を知るのに、まだものすごいポイントが必要のようだし、他の二つはそれの半分くらいだけど・・・とりあえずわかるところはネルフはあの使徒と戦うために存在している組織ということかな??」

「そうですわね。それも一つ・・・しかし、『それだけではない』ということですわね」

「じゃあ、マギも・・・赤木ナオコ博士が作ったスーパーコンピューター・・・市政にも利用されてるってあるけどいいのかなコレ・・・なるほど監視カメラなどは全て掌握されているから僕たちの動きもネルフには筒抜けになっているわけか・・・便利だね」

「のんきすぎますよーご主人様。ということはご主人様がシステムを使っているのばれてるんじゃないですか?」

「うっ・・・そうだね・・・でも何をしているかまではわからないと思うけど(汗」

「それでも、シンジ様がそのような謎のハイテクを所有しているのはおかしいですから不審に思われているかもしれません・・・」

「・・・とりあえず最後の第三使徒サキエルを・・・ふむふむ・・・長距離攻撃と・・・えっ光線まで使えるの!それに自爆攻撃!?うーん」

シンジは戦闘についての知識がなかったので七乃の意見を求めた。

「そうですねー近距離の攻撃が苦手のようですから、間合いを詰めてその『こあ』ですか?その弱点を刃物で・・・短い短剣が良いと思いますが、それで突いて、自爆攻撃が怖いのですぐに離れるというのが良いと思います」

「ヒット&アウェイですわね」

「・・・なるほど・・・というかさ、さっきのネルフの情報に使徒と戦う兵器『エヴァンゲリオン』を作っていて、それに乗って僕が戦うみたいなんだけど・・・なんで僕なんだろう??今日きていきなり乗って戦うなんて無茶すぎると思うんだけど・・・司令の子供だからかな?」

「・・・それはわからないです・・・申し訳ないですわ」

「あっごめん、アヤカさんに聞いたわけじゃないよ。独り言!というわけでネルフに行かなきゃだめだよね。向こうで聞いてみるよ」

「行かなきゃだめということはありませんが・・・」

「ご主人様があの化け物を倒さないといけませんからねー頑張れ男の子ですよ!」

すでにシンジはあの化け物と戦うということから逃げるつもりは無かった。

もし自分一人だったら逃げ出していたかもしれないが、今ここには美羽、七乃、アヤカの自らが召喚した少女達がおり、この3人はもはやシンジの家族同然なのである。

物心ついて以来、半ば一人暮らしを強制されていたシンジは人一倍愛に飢えており、無条件で好意を寄せてくれる彼女たちに強く依存し始めていた。

思春期男子特有の英雄願望(厨二病)も発症し始めており、使徒に勝つことができたら七乃やアヤカと×××できるかも・・・と心のどこかで思ったりもしていたのだ。

それが最低だと言うだろうか!いや、それが普通であり、正しい。
可愛い女の子の太ももをスリスリ、おっぱいモミモミは青少年の憧れなのだ。

七乃とアヤカはそういうシンジの心中をあっさり見透かしていたが、美羽にはそういう男の子の心はまだまだわからないようだった※2。

「それで、とりあえず残った8万ポイントだけど・・・これは全部使いたいと思うんだ」

「それは良いと思いますわ。それでどのように使うのですか?」

「みんなの意見を聞いて特に無いようなら僕の強化に使おうと思うけど・・・」

シンジがそう言うと七乃がばっと手を上げた。
ちなみに美羽だがずいぶん前の段階からソファの上でうたた寝中である。

「ご主人様、軍師を一人呼んで欲しいです」

「軍師??」

「はい、ご主人様はその『ねるふ』にお一人で向かうことになるのでしょう?私たちもただただ待っているだけということはできません。実際に外に出てというのは難しいかもしれませんが、今後のことを考えたり、なにか火急のことがあればすぐ行動がとれるようにしておきたいと思います。それに必要なのが軍師なのです」

「なるほど・・・3人寄れば文殊の知恵ともいいますし・・・あとお一人いても良いかもしれませんね」

アヤカも同意する。さりげなく美羽を除外しているが。

「わかったよ・・・でも8万ポイントだから・・・

恋姫 陳宮(音々音)・・・呂布軍軍師、政務能力はある(らしい) 3万ポイント

   呂蒙(亞莎)・・・呉軍軍師見習い 眼鏡無しVer そこそこ強い 5万ポイント

   公孫サン(白蓮)・・・白馬長史 普通になんでもできる 5万ポイント

バカテス 霧島 翔子・・・Aクラス代表 召喚獣無し 5千ポイント

     姫路 瑞希・・・Fクラス(Aクラス2位) 召喚獣無し 5千ポイント

ゼロ魔 イザベラ・・・北花壇騎士団団長 諜報部隊指揮 6万ポイント

この6人が一応神様からピックアップされているよ※3」

「霧島さんと姫路さんは普通の高校生?のようですわね・・・ハーレムの一員として愛でるのにはいいでしょうが、現状ではどこまで役に立つでしょうか・・・」

自分が年下の中学生であることを棚に上げてアヤカがそう意見する。

「陳宮さんなら私の方が優れていると思います。呂蒙?さんは聞いたことがないです。戦場で軍を指揮した経験は無いのではないでしょうか?公孫サンさんは・・・太守としてそつなく治めてましたし、戦場でも武将として頑張っていましたが、、、今必要かと言えばそうではないと思います」

「となると、残るはイザベラさんか・・・プロフィールを見る限り昔はちょっと悪かったみたいだけど反省して頑張っているみたいだよ。どうだろう??」

「良いと思いますよ(また女の子が増える~~仕方が無いとはいえ複雑です)」

「良いと思いますわ(どんぞこまで落ちた私には這い上がるしかありません)」

二人の同意を得て、早速『召喚』画面でイザベラを選択する。

すると、今度はシンジの目の前に大きな扉が現れ、ゆっくりと開く。

扉からは広いおでこを露わにし、腰ほどまである蒼いロングの髪を揺らす、多少目つきが鋭い凛とした美少女がゆっくりと中から出てきた。

「はじめまして、シンジ。私はイザベラ・ド・ガリア、以前はガリア王国の王女だったんだけど、今の肩書きは北花壇騎士団団長っていうもののみさ。といってもここではそれも意味ないんだけどさ。できる限り力を尽くすから、まあ期待しておいてよ」

「うん。よろしく」

シンジはまたタイプの違う美少女の登場に胸を高まらせていた。
イザベラをじーーーっと見つめるシンジに他の少女達はやきもきしている。

「えっとじゃあ、僕は残りの2万ポイントで自分の強化をしてるから、みんなはそれぞれ自己紹介しててよ」

「ちょっと待ちなよシンジ。その前にさらに召喚すれば力になる人物を探さないかい」

「えっ・・・でも2万ポイントじゃ七乃さん以下の人たちになっちゃうよ?」

「ご主人様の私の評価がよくわかりました(怒」

「ちっ違うよ。ポイントの話だよ(汗、そっそうだね低いポイントでも優秀な人ってたくさんいるよね!早速調べてみようよ(大汗」

というわけで、再度シンジは召喚画面を開いた。
美羽を除く3人がシンジに密着して座り、画面を覗き込む。

(うう、3人とも近いよ・・・)

「じゃあ、2万ポイント以内で召喚できる人を検索で絞ってみよう!」

画面上で検索条件を操作してみると、思ったよりもたくさんの人たちが表示された。

「無能力者『佐天涙子』・・・メイド『シエスタ』・・・えっ!!!」

「どうしましたシンジ様?」

「い・・・碇ユイ・・・かっ・・・母さんが表示されてる・・・」

シンジは慌ててリスト内の碇ユイを選択した。すると碇ユイの詳しいプロフィールが表示される。

「ええと・・・『碇シンジ育成計画』・・・という世界の人で、碇シンジの母親で人口進化研究所の副所長・・・ふぅ・・・」

シンジは力なくため息をついた。書かれている情報は所謂『別世界』の話で、この碇ユイは自分では無く『碇シンジ育成計画』の中の『シンジ』の母親なのだ。

「これじゃ別人じゃないか・・・」

「なにが問題なんだい?シンジが呼べばその人物はこの世界の住人になる。というか、この世界に『碇ユイ』という人物が存在していたというなら好都合じゃないか!」

「そうですわね、この世界の碇ユイ博士は若くしてお亡くなりになったという話ですが、真相は隠されています。ここで全くの別人だとしても『碇ユイ』が存在しているというのは強力なカードです。少なくとも今のシンジ様の『保護者』として大いに役立ちます」

「保護者・・・そうか、今は父さんしかいないから、父さんが僕を引き取りたいと言ったら断れないけど、母さんが実は存命ということになれば断ることも可能なんだ!!」

「それはいいですねー。ご主人様のお母様にはぜひお会いしたいです」

シンジはみんなの同意に力を得て、碇ユイを召喚することに決めた。

「よし!じゃあ母さんを呼ぼう。えーと、オプションは・・・?って、あれ??」

「どうしたんですかご主人様?」

「えっと・・・注意書きがあってS○Xは禁止、解除は1000万ポイントだって」

「・・・・・・当たり前ですよねーいくら別世界でも母と子には違いがないですし」

「かっ・・・解除出来る方が問題ですわ!!」

「いいじゃないか、神はシンジが好きなように楽しんでくれればいいんだからさ」

「しないよ!母さんとそんなこと!!」

シンジは顔を真っ赤にして叫んだ。そして照れ隠しにさっさと召喚ボタンを押した。

すると今回は天井付近に光の輪が現れ、一人の女性が輪の中からふよふよと降りてきた。

「・・・碇ユイです・・・。シンジ・・・もう大丈夫よ。あなたが置かれている状況は把握しました。これからはお母さんがしっかり守ってあげるわ」

「お・・・お母さん」

もちろん、この碇ユイは本当の母親ではない。しかし、これまで母親の姿は写真すら残っておらず、母の愛に飢えていたシンジにとってもはや関係ないことだった。

シンジはユイに抱きつき泣いた。その直後いきなりファンファーレが鳴り響いた。


<<原典破壊特別ボーナス(隠し)>>
『おめでとう。君は今見事に原典を破壊した。その行為を讃え1000万ポイントを進呈する。今後もどんどん破壊してくれたまえ※4』


・・・え?



「なあ日向、雪広側からどうやってシンジ君を迎えに来るのか問い合わせが来てるぞ」

青葉は隣の席で上司からの電話の応対をしているメガネに問いかけた。

「はい、葛城さん・・・え?バッテリーは盗んじゃマズイですよ・・・はい、わかってますマギの監視は外しておきます・・・ん?なんだ青葉?」

「だから、どうやって迎えに来るんだと言ってる。ビルはジオフロントに格納されているだろ。上に出そうにも使徒がうろついてるし危険じゃないか」

「葛城一尉が車でビルの近くにいるみたいだ。出すしかないんじゃないか?」

「おいおい、ビルの中には雪広のお嬢様もいるんだぞ・・・そりゃ無理だ」

「じゃあ・・・ジオフロント内からヘリで飛んで迎えに行くとか」

「・・・それしかないか・・・副司令、かまいませんでしょうか?」

青葉は上の段に立つ冬月に許可を得る。どうでもいいが、いちいち振り返りながら上を見上げるので首が痛い。あんな上にいる必要があるのだろうかと小一時間・・・。

「ああ、そうだな。そうしてくれ。それと葛城一尉は早く戻るように伝えろ」

「「了解」」



ポイントがゼロになったと思ったら、1000万ポイントに増えた件について

「・・・とりあえず、まだ迎えがこないみたいだから、このポイントの使い道を考えようか?なんかこんなことばっかりやってるけど」

「飽きられてないといいのじゃがなぁ・・・※5」

うたた寝から復活した美羽がユイの膝の上でそう呟いた。シンジのお母さんということで早くも懐いたようである。ユイの方も可愛い美羽を抱けて嬉しそうである。
隣に座る七乃が若干寂しそうにしているが、さすがに主人の母親には文句は言わない。

現在、イザベラとアヤカがシンジより画面の操作を委託されていろいろ検討しているようだ。まあ、このあたりは軍師のイザベラとこの世界に詳しいアヤカのコンビに任せるのが良いだろう。七乃は美羽を通じてユイと親しくなることにしたようである。

(美羽様が抱けないのは残念ですが、将を討つにはまず馬からといいます。本来の母親とはユイさんは違うとはいえ、すでにご主人様はユイさんを母親として扱うようですし・・・ふふふ。ユイさんを味方に引き入れてあの二人に差をつけちゃいますよー)

まあ、人生経験豊富であるユイはそんな七乃の策略は容易く見破っていたが。

(ふふ、可愛いわね・・・それにしてもこちらもあちらもシンちゃんはもてるわねぇ・・・この世界にもレイやアスカちゃんはいるのでしょうけど、どうしてるのかしら?)


「お嬢様・・・10分後にネルフよりヘリにて迎えを送るとの連絡がありました」

「そう。ありがとう・・・イザベラさん決めまして?」

「ああ、といっても正直内容がちんぷんかんぷんなんだよ。ただ、いつの時代も戦争は数だよ。ネルフは使徒に対してシンジが操る巨大人形で対抗するみたいだけどさ、私たちもそういう兵器が必要さ。それと諜報員だね。北花壇騎士団じゃないけど情報を制するものが戦争を征する。だから諜報員が欲しい。もちろん戦闘員も不可欠だ」

「・・・では・・・」

「ああ、まずプラント建設、兵器研究、諜報・戦闘部隊の3つをお願いしたいよ」

イザベラはそういうとシンジにシステムの操作を戻した。

いや、そんなこと言われてもシンジにはこれからどうすれば良いのかわからないが。

するとアヤカがシンジの横に座り直した。

「シンジ様、まずプラントですが、生産画面の雪広重工業を開いて下さい」

「え?そんなのあったっけ・・・本当だいつの間に・・・これを選択すればいいんだね」

「はい。その中の長崎造船所を選択して下さい。はい、そうです。次にそこに研究所を作って下さい。次に何を研究するかを選んで下さい。さすがにEVA関連は無理がありすぎますから、別の機種にしましょう。現代の科学水準で無理のない範囲ですと『戦術歩行戦闘機/戦術機』はどうでしょうか?では、これで、次に開発機種ですが一番最初の『77式戦術歩行戦闘機/撃震』を選んで下さい。生産ラインは後回しですね」

アヤカの言うがままに画面を操作していく、研究所作成に100万、戦術期開発で300万ポイントを消費した。相変わらずポイントの量は恣意的な印象を受ける。

「次に開発を加速させる人材を登用・・・召喚しましょう。検索画面で『戦術機開発』で絞れば・・・え??香月夕呼さんは800万??しまった・・・ポイントが足りませんね。なんでこんなにポイントが高いんでしょう・・・ではかなり少ないですが次点のイリーナ・ピアティフさんにしましょうか・・・一応技術士官みたいですし・・・彼女は3万ポイントですから・・・あとはパイロットですが・・・困りましたねみんな高い(汗・・・とりあえずテストパイロットは一人でいいので、ポイントが低めの神代巽さんをって・・・えっ?この人他の2人と3人セットなの(汗・・・じゃあ、それで15万ポイントを使って呼び出しましょう。とりあえず4人は長崎の研究所に待機ということで・・・※6」

「・・・お嬢様、ネルフの迎えが来ておりますが・・・」

「今忙しいのです!!待たせておきなさい!!」

微かに外からプロペラ音が聞こえてくる。その場に待機って結構ヘリって難しいんじゃないかな?

「さあ、シンジ様まだまだやりますよ!次は諜報・戦闘部隊です。美少女召喚で私の欄を呼び出して下さい。そしてオプション画面へ、雪広財閥の項目の+ボタンを押して下さい」

すると雪広財閥のグループ会社がずらずらと出てくる。

「その中の雪広セキュリティサービスを選択して下さい。そこの諜報部門の予算をお願いします。とりあえず10億あればいいです。ポイントでは10万ポイントですね。次にSP部門の予算は5億でいいです。あと、雪広第二東京銀行にシンジ様の口座を作って下さい。そこに・・・そうですね1億振り込んでおきますか。私の口座もお願いします。こちらには百億お願いします。もちろんすべてシンジ様のために使うことを誓いますわ」

・・・いままで数十、数百円で苦労してきたシンジにとっては考えられない丼勘定なのだが、セレブであるアヤカにとってはそこまで大きな買い物では無いようである。
まあ、今のシンジに出現させた研究所の人員の給料だの、経費だのを采配できるわけがないので、アヤカが代わりにやってくれるのであればありがたいの一言である。

ちなみに、とりあえずシンジ自身の強化もちょっとだけやった。変にたくさんポイントを使って強化してマッチョになったりするのも怖かったのでレベル3ずつUPだ。
(ちなみに残り486万ポイントのうち1万8千ポイントしか使っていない・・・)

「ねぇシンちゃん。私の仲間達は呼び出せたりするかしら?」

様子を見ていたユイからそう言われ早速確かめたが、残念ながら『碇シンジ育成計画』の中のリストの女の子達は名前が灰色で選ぶことができなかった。

「・・・そう」

「ごめん」

「いいのよ。多分、この世界に同じ人物が存在しているんでしょうね」

「・・・っとちょっと待って、選べるよ!惣流・キョウコ・ツェッペリンさんだって」

「本当!!彼女も優秀よ!!できれば呼んで欲しいわ。彼女が大丈夫なら赤木ナオコ博士はどうかしら・・・」

「・・・・・・残念だけど名前が載ってないよ・・・・・・」

「そう、・・・まあ、ナオコ博士じゃさすがに美少女でも嫁!って感じでもないから仕方ないわよね・・・私や惣流博士が呼べるというのは喜ぶべきなのか・・・」

「お母様はお若いですし、十分資格(エロい)があると思いますよー」

「ありがとう、七乃ちゃん。じゃあシンちゃん、惣流博士をお願いね」

「うん、2万ポイント消費で惣流・キョウコ・ツェッペリンさん召喚!!」

ユイの時と同じように光の輪から白衣を着た金髪の女性がふよふよと降りてきた。
なぜかその女性はぐっすりと寝ており、そのまま床の上で横になってしまった。

シンジが心配したが、ユイはこれで問題ないとメイドから渡されたタオルケットを彼女にかけてあげていた。

「シンジ様、さすがにそろそろ行かないとマズイです。シンジ様が向かったあとは私たちは早速動き出そうと思います。いろいろ工作も必要になりますし・・・」

「そうだね、本来であればもっと準備して使徒ともネルフとも相対したいんだけど、とにかく今回は時間が無い。悔しいけどネルフの兵器でこの使徒は倒すしかないよ・・・シャルロットをシンジに付けれたらいいんだけどね」

「ガンバですご主人様!!美羽様といっしょにここで応援してます!!」

「うむ、がんばるのじゃぞシンジ」

「シンちゃん・・・」

「Zzzzzzzzzzzzzzz」

ユイは胸が張り裂けんばかりであるが、今はシンジを信じるほかないのだ。
キョウコもきっと夢の中でシンジを応援しているに違いない※7

「大丈夫だよ!怖いけど・・・僕、頑張って来るよ!!」



「・・・青葉三尉・・・サードチルドレンはまだ出てこないのかね」

「はい・・・まだ・・・のようです」

ネルフの迎えのヘリはジオフロント天井部に収納されている雪広ビルの周りをクルクルともう二〇分以上飛び続けていた。その様子を第一司令部では上の使徒の状況とともに画面に映し出されており、司令、副司令、オペレーター達はぼーっとその様子を眺めていたのだ。

「あっようやく出てきたようです。・・・確認が取れました。サードチルドレンに間違いありません」

「ふぅ、ようやくか。着き次第ケージへ案内しろ」

「・・・冬月・・・ここは頼む」

ゲンドウは冬月にそう言うと立ち上がり司令部を後にした。

「ああ、・・・三年ぶりの再会か・・・。そういえば葛城一尉は到着したのか??」

「はい、先ほど・・・三〇分前に・・・なんでここに来ないんですかねぇ・・・」

「知らん!アナウンスで直接ケージへ向かうように連絡しろ!!」

「はい!!了解しました!!」

日向は慌てて愛する上司に連絡をする。愛する上司は大変不機嫌であったが、なんとかケージへと向かうように伝えることができた。

(まさか、ケージにはちゃんと遅刻しないでいけますよね・・・葛城さん・・・)



シンジを載せたヘリはジオフロント内、ネルフ本部(ピラミッド)のヘリポートに到着、シンジはそのまま保安部の人たちに連行されるように地下の第一ケージ前に連れて行かれた。そこには金髪で黒眉、水着に白衣という怪しげなオバさんが彼を出迎えた。

「赤木リツコよ。よろしく、碇シンジ君」

「はい、よろしくお願いします・・・ええと赤木さん」

「リツコで結構よ。私もシンジ君と呼ばせてもらうわ」

「はい、リツコさん(しかしスゴイ格好だなぁ)」

精神力が強化されているシンジはリツコの格好をしげしげと眺めた。
リツコもシンジを観察するように見ていたのでお互い様なのだが、シンジの遠慮の無い視線に年甲斐も無く少し頬を染めてしまった。

(この子・・・シンジ君よね・・・ずいぶん報告書より図太そうだけど・・・やっぱり報告書と実物じゃ違ってくるものなのね、当てにできないわね)

リツコのなかでシンジを監視していた連中の評価が下がったが、致し方なかった。

「さあ、シンジ君ついてきて」

リツコがシンジを伴ってケージの中を進む。

「ここよ」

リツコが合図をすると暗かったケージに照明が一斉に点いた。

「顔・・・これがエう゛ぁじゃなくて(汗、きょ巨大ロボット!!」

シンジはつい情報画面で名前が出ていたエヴァンゲリオンの名を言いそうになったが、なんとか踏みとどまった。リツコもシンジが動揺している様子に満足したのか、特に気付くことなく不審には思っていないようである。

(危ない、危ない。今回は僕一人で頑張らないといけないんだがら気をつけないと)

『久しぶりだな。シンジ』

ケージを見下ろす管制室、そのガラス板の前に一人のヒゲ親父が登場した。

「(逆光でよく見えないや)父さん(だよね)・・・」

『ふっ、出撃』

シーンと静まりかえるケージ内・・・。

「えっと父さん・・・それは誰に言った言葉なの?リツコさん?リツコさんが出撃するの??※8」

「わっ私じゃ無いわよ!!シンジ君、そう、シンジ君が乗るのよ」

「何に乗るんですか?」

「これ、エヴァンゲリオン初号機に!!それで上の化け物を倒すのよ」

リツコが指で初号機を指す。つまりシンジがコレにのって出撃し、化け物、使徒を倒せということらしい。

「えっと、それはかまいませんが、なんで僕が乗るんです?他にパイロットがいないのですか?軍人さんとか、そもそも子供ですよ僕??その上ケンカもまともしたことがないのに化け物と戦えるとか思えないのですが??」

『早くしろシンジ!!乗らないのであれば帰れ!!』

ヒゲがわけのわからないことを怒鳴る。

「・・・いや、別に乗らないなんて言ってないじゃないか・・・理由を聞いているだけで・・・まあ、いいや、どのみち乗らないと話が進まないんだろうし(ボソっ)、リツコさんそれじゃ操作方法のレクチャーをお願いします」

「ええ、こっちよ」

シンジはリツコの後に従って初号機に近づいていく。

(うーん、なんで僕なんだろう??神様もこういう運命になってるって言ってたけど、理由は絶対あるはずだよね・・・自分で見聞きすれば情報のポイントが下がるし、できるだけ頑張って情報は集めていきたいんだけど・・・)

逞しいシンジ君はリツコにあれやこれやとエヴァのことについて質問していく。
元来説明好きなリツコはもちろん隠すところは隠すが、喜々としていろいろ教えた。

こうして初号機の発信準備が着々と整っている頃、未だ某作戦課長はケージを目指してネルフ内を彷徨っていたのだった。


※1 悪いのは神です。あっという間に半年が過ぎましたね(泣
※2 美羽は一八歳です。
※3 これはちょっと余計だったかな・・・。
※4 改訂部分の一番大きな所です。もはや別物(汗
※5 それを言ったらおしまいよ。
※6 「え?私たちの出番ここでおしまいなの??」
※7 間違いない(長井)
※8 リツコが乗ったSSってあるんですかねぇ。

追伸:シンジがあやかをアヤカと呼んでますが、それは彼女が魔改造『あやか』だからです。今後どんどんかけ離れていきます(爆)




[32048] 第壱話 使徒、襲来 Cパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/15 11:51
エヴァちーと 第壱話 使徒、襲来 Cパート[改訂版]


葛城ミサトは苛立っていた。
自分から言い出したサードチルドレンの出迎えを寝坊によって遅刻したのは不可抗力で仕方がないとしても、国連軍によるN2爆雷に巻き込まれたせいで買ったばかりの愛車がベコベコになり涙したのも自己犠牲の精神で我慢しよう・・・。

しかし、今こうして自分が必死にケージに向かっているにも関わらず、そんな自分(迷子)を差し置いて初号機の発進準備がアナウンスされているのには我慢ならない!!

「作戦課長である私がまだ何の指示もしてないのに、誰がやっているのよ!!」

無論、出撃を指示したのは司令(ヒゲ)であり、準備は技術部長(金髪黒眉)の手によって滞りなく行われている。

わかってはいる。葛城ミサト29歳独身、ズボラだが馬鹿(?)ではない。
わかってはいるが、自分がのけ者にされているのは許されざる事態なのだ。

とある展開の14年後であれば、彼女も大いに成長(?)しているのであるが、現時点ではまだまだ人間として未成熟な部分も多々あるのである※1。

激しく苛立ちながらも、少しずつ少しずつケージへと近づいていく。

ケージからは第一発令所への直通エレベーターがあるのを知っているので、発令所に戻るにしても結局はケージへ向かったほうが近いのである。

「日向君も連絡が取れないし・・・って、あら・・・なんでこんなとこに居るの?」

奇跡的なのか当然なのかようやくたどり着いたケージの入り口に、1台のストレッチャーが置かれていた。
ストレッチャーには先日の零号機の起動試験の際に大けがをして病院に入院しているはずのファーストチルドレン『綾波レイ』が寝ていた。

「レイ?あんたここで何してるの?」

「・・・・・・司令から待機するように命令がきています・・・・・・」

蒼い髪、紅い眼のアルビノ少女はミサトの質問にか細い声で答えた。
全身包帯が巻かれ、所々血も滲んでおり痛々しい姿だった。
というかよくこの子はプラグスーツに着替えることができたものである。

「??えっだってサードチルドレンの子は到着して、もうエヴァに勝手に乗ってるんでしょ??発進準備までしてるし・・・もうあんたがここで待機する必要はないんじゃない??」

「・・・・・・わかりません・・・・・・」

「・・・まあ、わかったわ、上に昇ったら司令に聞いとくわ」

とりあえず、ミサトはレイのことは置いてケージの中に入っていった。

ケージ内では初号機の発進準備が進んでおり、整備員たちが忙しそうに走り回っていた。
誰もが作戦課長であるミサトが入ってきたことに気がつかず無視していた。
ミサトは口をへの字にして、初号機をひと睨みすると彼らの横を抜けていき管制所下の発令所行きエレベーターに乗り込んだ。


「遅いわよ!あなた今まで何してたの!!」

ミサトが発令所に到着すると長年の親友であるリツコから叱りの声が飛んだ。

「ゴミン、迷っちゃってて。次から気をつけるわ・・・。それで状況は?」

「次があればいいけどね・・・。ふぅ、まぁいいわ、現在サードチルドレン碇シンジ君が初号機にエントリーされたわ。シンクロ率は68%、ハーモニクスすべて正常値。起動も問題なし、現在は使途の状況などを『作戦課』の日向君が伝えているわ。発進はいつでも大丈夫よ」

「へーすごいわね。もうそこまで準備が進んでるの」

「ええ、彼一度言ったことはすぐ理解するし覚えてしまうわ・・・頭が良いのね。おかげでスムーズに準備が整ったのよ。シンジ君様々ね。ま、あなたが来るのをみんなで待ってあげていたと言ってもいいでしょうね」

「わかったわ。ありがとう」

もちろんリツコの『皮肉』に気がつくことなどなく、ミサトはシンジにあれこれ情報提供している部下の日向の元へ向かった。

「・・・うん。残念なことに現状武器はプログ・ナイフのみなんだ。だから接近戦に持ち込むしかない。しかし相手は光線を放つ能力があることが確認されている。問題はいかに接近するか・・・だから初号機を使徒の真後ろに出すからそこから不意をついて接近、相手が気付いて正面を向いたら弱点であるコアを狙って一刺しという感じで・・・」

『『『はじめまして碇シンジ君!!『作戦課長』の葛城ミサトです!!!』』』

日向がシンジに作戦をアドバイスしている横からミサトが大声で割って入る。
いかに精神を強化しているシンジとはいえ、この不意打ちには驚き悲鳴をあげてしまった。日向は鼓膜が破れたんじゃないかと思うくらい右耳がウワンウワンしており頭を抱えて悶絶している。

「いい、シンジ君。私の指揮にちゃんと従うのよ。いいわね!!」

「(このオバさんあの写真の人か・・・写真より老けてるような)・・・はい・・・」

シンジはジト目でミサトを見つめた。リツコの話では駅での待ち合わせ時間に2時間以上遅れた挙句、ケージでの出迎えにも本部内で迷って遅れている遅刻魔ということなので、ミサトの評価はかなり低かったのだが、この大声でさらに一段階下げることにした。

「じゃあ、リツコ発進オーケーなのね?」

「・・・ええ、大丈夫よ」

「よし・・・では・・・よろしいですね」

ミサトは後ろを振り返り、上司であるヒゲ司令に確認を取る。

「無論だ。使徒を倒さぬ限り我々に未来はない」

「エヴァ初号機発進!!」

いよいよネルフの初陣、そしてシンジの長い戦いが始まった!!


「おおっ出てきた!出てきたのじゃ!!」

美羽が部屋に設置された61インチの巨大な液晶テレビに映し出されてた紫の巨人に歓声をあげる。雪広ビルに残ったハーレムの面々はそれぞれ動き始めていた。

アヤカは父親に事情を説明して協力を仰いだり(シンジのことについては誰もが協力的)、イザベラはセキュリティサービスの諜報部に連絡を取って、早急に第三新東京市に置ける体制構築について指揮していた。この上の騒ぎが終わればネルフは雪広に対して諜報活動を強化してくるのは疑いようがない。防諜もそうだが、こちらからの攻撃も必要なのだ。

ユイとようやく目が覚めたキョウコはネットを繋ぎ、この世界の情報収集を始めた。
無論、第3市東京市のネット環境はマギの管轄化にあるため当たり障りのない内容に留めている。
ちなみにTV電話に関しては雪広が打ち上げている衛星を介しているので一応は大丈夫であると思う。このあたりはチートシステムを使って補う必要があるようだ。

美羽と七乃はテレビ観戦である。
外の様子を雪広が各所に設置してあるカメラを切り替えながら、使徒の様子を伺っていたのである。決して二人に仕事がないわけではない※2。

美羽の声に全員手を止めてテレビの前に集まってくる。

「いよいよだね。ぞくぞくするじゃないか」

「ええ、でもシンジ様であればあっさり倒してくれますわ!」

「当たり前じゃ!妾の主さまじゃぞ」

「ですよねー楽勝余裕ですよ」


ガシャン!!

長いトンネルを抜け、ようやく初号機が外に出てくる。

「使徒の真正面!!日向さん話が違うじゃないですか!!」

『エヴァンゲリオン初号機リフトオフ』

「いい、シンジ君。まずは歩くことだけを考えて」

シンジの非難の声はスルーされ、ミサトからは敵が真正面に控えているのにも関わらず前に歩けとののんきな指示が出された。まあ、今日初めてエヴァに乗る少年なのだし、そもそも初号機自体初めて動いているのだ。この指示もあながち的外れではない。

「は!?歩く!?って危ない!!」

使徒から初号機目掛けて光線が飛んできた。慌てて右にローリングして避け、兵装ビルの影にしゃがんで隠れる。その動きはスムーズで洗練されていた。

そんな初号機の動きをあっけにとられて見ている発令所の面々。
歩くことができるかどうかという赤ちゃんがいきなり華麗にローリングしたのだから驚愕しても無理はない。無理は無いが今は戦闘中なのだ。思考停止している暇など無い。

「葛城さん!これからどう動くんですか?指示をください」

「えーーーーっと・・・。接近してやっつけて!!」

「は!?それは『願望』であって『指示』じゃないでしょ。どういう援護があって、どのルートを通ってあの化け物に接近するのか『作戦』を教えてくださいよ(汗」

ごもっともなシンジの意見であったが、どうやら作戦課長様には感心をよばなかったらしい。最初の指示を無視し、さらには新たな指示に反抗する生意気なパイロットに大いに苛立ったのである。

「ごちゃごちゃ言ってないでやっつけなさい!男の子でしょ(怒!!」

「・・・まじか・・・」

ここに至ってシンジはミサトを見限った。
まあ、まともな作戦を何一つ指示してこないのだから、これ以上彼女を気にしても仕方がない。先ほど少しだけ動いたが、驚くほど滑らかに動かすことができた。
操縦スキルのレベルを上げておいたおかげだと思う。

(とりあえず、あの光線に注意して当たらなければ戦えそうだ。とにかく回り込んでいくしかない・・・しかし、この尻尾みたいなケーブル邪魔だな・・・これのせいでかなりルートが限られるし・・・って・・・ん!?あれは!!)

二つ先のブロックのビル影にどういうわけか女の子が座り込んでいた。
カメラでズームすると将来、具体的に14年後あたりに可愛く成長しているのではないかと思われる幼女だった。シンジにはその姿がはっきりと脳裏に浮かんでいる。

(あの子を助けないと!!絶対あの子に恩を売っておかないと将来後悔しそうな気配がプンプンする。なんだろう・・・ガチでエヴァに乗るなとか怒られそうな気配が・・・)

シンジのニュータイプを超えた(?)レベルまで強化された感覚が、あの子は絶対助けないとやばいと言う警報を鳴らしていた。神もいままで書いたSSで結構不遇な扱いをしていた(怪我をするのは止められない、コアになるのも止めれない等)ので映画館での彼女の怒鳴りに大いに落ち込んだ一人である。マジで凹みちょっと泣いてしまった。おかげで続きをまともに見れなかったくらいだ。そのため同じ日にもう一回観るはめになったのである。17年の積み重ねは恐ろしいものだね。しみじみ。

シンジは幼女の側へすばやくエヴァを移動させると、エントリープラグを射出させ急いで外に出る。そして、ワイヤーで降り蹲っている幼女を抱きかかえると、またワイヤーで戻ってプラグ内に入った。

シェルターに入り損ねうろうろしていた幼女は目の前に化け物が現れ腰を抜かしていたのに、今度は巨大なロボットが現れて、あっという間、電光石火にそのパイロットに拉致られてしまったのである。茫然自失とはまさにこのことであろう。しかし、さらにはいきなりLCLのなかに入れられ溺れさせられた時にはさすがに目が覚めた。

「ぶふぁーけほけほ、兄ちゃん酷いわ!いきなりなにすんの」

「ごめん、『サクラちゃん』。息大丈夫?気持ち悪いと思うけど、でもあのまま外にいたらよくて片足骨折、悪くて脊髄損傷でどちらにしてもろくでもない目にあっていたと思うから慌てて助けにいったんだよ」

「それでもびっくりしたわ・・・って兄ちゃんなんでうちの名前知ってんの??」

シンジもそれについては答えられないしわからない、大いなる意思(神)がこの子を助けろと命じていたからとしかいえないが、都合よく正面の画面に彼女の『ID』と『名前』が表示されていた。どうやらマギが自動で認識し表示してくれていたようだ。

シンジは画面を指さして、

「ああ、このロボットのコンピューターでわかるんだよ。所謂『ハイテク』だよ」

「へぇーそうなんかー。うちも『ハイテク』はすごいっちゅうのは知ってるよ」

「うん、『ハイテク』はスゴイよね。Foxconn製かな?」

「兄ちゃんそれはあかんで」


「・・・あの子何やってるの・・・」

シンジの幼女救出の様子は発令所でもライブで流れていた。
いきなり、シンジが外に飛び出したときは、誰しもがこれで「終わった」と思ったが、信じられない早業で幼女を担いでエントリープラグに戻ってきたのも驚いた。

「しかも・・・異物を入れてもシンクロ率が落ちてないわね・・・というより2%くらい上がっているわ・・・すごい・・・彼、本当に興味深いわね」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!シンジ君何を勝手に民間人を助けてエヴァの中に入れてるの!!そんな行為許されることじゃないわよ!!」


「なー兄ちゃん、この姉さんなんか騒いどるけど大丈夫なん??」

「よくやったって褒めてるんだよ。まさか女の子が戦場に迷い込んでいたのに見殺しにしろだとか国連の軍人さん達が言ったりはしないよ。そもそもネルフに志願している人たちは自分の命を犠牲にしてでも人類を守りたいという使命を持った『高潔な人たち』だよ。作戦中とはいえ人命を優先した僕の行動を非難するなんていう恥知らずなことは彼らは言ったりしないよ」

「そーやんなー。立派な人たちやで」

シンジはプラグ内のスピーカーを幼女を助ける際に偶然を装って蹴りで壊していた。

とりあえず指示が聞こえなかったということにしておけば、作戦無視の言い訳くらいにはなるかなと思ったことと、幼女に大人達の汚い言葉を聞かせたくなかったという紳士の心である。
この幼女はただの幼女ではない。14年後くらいに美少女になるいい幼女だ。そんな幼女をなによりも優先するのはクマ吉君じゃなかったシンジ君にとって正義なのである※3。

それにしても、この化け物、使徒はずいぶんのんびりとしている。

昼にここにやってきて、夜になっているにも関わらずこの町をフラフラしているだけだ。ジオフロントに降りるところを探しているのかもしれないが、シンジやネルフにとってはありがたかった。

「さて、サクラちゃん。本当は一旦戻りたいところだけど、敵はそれを許してくれない。怖いと思うけどあいつをやっつけちゃうから我慢して座っててね。しっかり掴まっているんだよ」

「わかっとる。兄ちゃんに任せるで!ばしっとやっつけてや!!」

シンジはエヴァをビル影に屈ませながら、ゆっくりと前進する。
幸先よく使徒は現在エヴァに背を見せていた。しかしケーブルはすでに限界まで引っ張っており、一か八かケーブルを外して内蔵バッテリーだけで戦うしかない。

シンジはすぐに決断すると、ケーブルを切断。一気に距離を詰めた。

「おおおおおおおおおおおぉーーいけーーーーっ!!」

「いけー!」

抜群のタイミングで駆け出し、プログ・ナイフを使徒に突き出す。
使徒はその動きに気がつき振りかえるが、隙だらけの体をさらしていた。

ナイフが使徒に到達するかの際に八角形のバリアが現れ、ナイフを止めてしまう。
さすがのシンジもこれは予想しておらず、慌ててバリアに衝突しないように体を崩しすり抜けてローリング、膝をつきながらも再びナイフを構えて使徒に相対する。


「ATフィールド!!あれがある限りエヴァの攻撃は使徒には届かないわ」

「シンジくんには教えてあるの!?」

どうやらプラグ内のスピーカーが破損したらしいことは、まだ生きているプラグ内のマイクによって発令所内には伝わっていた。若干ミサトが先ほどのシンジの言葉に顔を赤くしていたが、言っていることはごもっともなことなので、とりあえず今は不問ということになっている。

「いえ、彼には操縦のことくらいしか教えてないわ・・・時間もなかったし」

これは嘘である。ゲンドウたちはこの戦いでシンジを苦戦させ、初号機の中にいる母親の(この世界の)ユイを刺激し、目覚めさせ『暴走』によって勝利を得ようと計画していたのである。これはゲンドウのシナリオで重要な初号機の暴走と使徒戦での勝利の一石二鳥を狙った考え抜かれたナイスなアイデアだったのである※4。

「そんな!!じゃあどうすれば・・・そうだ!よし!!シンジ君『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』『えーてーふぃーるど』!!!」

ミサトはシンジが見ているであろう発令所のカメラに向かって、大きな口を開けて口の動きで伝わるように大声でATフィールドと連呼し始めた。

「ミサト・・・名称を言ったって彼にはわけがわからないわよ・・・」

そんなリツコの呟きもミサトには聞こえていなかった。ミサトは一生懸命『えーてーふぃーるど』と連呼し続ける。なぜか日向も立ち上がらせられ一緒に言わされていた。

「・・・碇・・・止めなくていいのか(うるさい)・・・」

「・・・問題無い(うるさい)・・・」


しかし、こういうお馬鹿な行為も意外と役に立つもので・・・。

「なー兄ちゃん、さっきからこの姉さん、同じことずっと叫んどるんやけど」

「えっ?・・・『えーてーふぃーるど』??ああ!!ATフィールドね!!」

(『通じた!!』)

発令所ではシンジの言葉を受けてお祭り騒ぎである※5。

(そうそう、使徒はATフィールドを使うって情報にあったね。忘れてたというか、そもそもATフィールドがどんな作用なのかがわからなかったから気付くわけないけど。たしか、このエヴァでもATフィールドが使えるとかなんとか書いてあったようななかったような・・・えーと)

とりあえず、エヴァにATフィールドを出してと念じてみる。あっさりと初号機の前面に八角形のバリアが出現した。さすがスキルを高めているだけのことはあるなとシンジは感心しきりであった。


「そ・・・そんな!いきなりATフィールドを発現させるなんて!!」

リツコは初号機がATフィールドをあっさり出したことに絶句していた。

「よーし、シンジ君!!いけるわ!!リツコ、この先はどうしたらいいの?」

「え・・・ATフィールド同士をぶつけ合えば中和できるわ(多分)、そうすればナイフをコアに届かせることができるのよ(多分)」

「わかった、よーし『ちゅうーわ』『ちゅうーわ』『ちゅうーわ』『ちゅうーわ』『ちゅうーわ』!」

ミサト(+日向)は今度も同じように大声で連呼を始めた。


「兄ちゃん今度は『ちゅうーわー』って言っとるで」

「中和ね。なるほど・・・重ね合わせれば消えるのかな?じゃあやってみよう」


発令所ではマヤが「なんて頭がいい子なのかしら」と感心していたが、リツコはさすがにシンジに対して疑念を持ち始めていた。

(頭が良すぎる・・・報告書では学校の成績は下の中くらいで酷いものだった。でも実際は操縦についても説明を即座に理解し、今も戦闘中にも関わらず的確に行動し、少しのヒントであっさり解答を導き出している・・・初号機が動いているということは彼が本人で間違いないのでしょうけど・・・そうか!雪広か・・・もしかしたら雪広がシンジ君に相当前から接触して仕込んでいたのかもしれないわね・・・普段の姿は擬態だったということも考えられるわ・・・まったく監視していた連中はなにやっていたのよ・・・買収でもされていたのかしら※6)

リツコはさらに監視の連中の評価を下げ、果てには裏切り者扱いをし始めていた。
眼前のミサト(+日向)は今度は『刺ーせ、刺ーせ』と大合唱している。
それは別に伝えなくてもいいんじゃないかと思うが、リツコはとりあえず戦況を見守ることにした。


シンジの操る初号機はATフィールドを使徒のATフィールドに重ね合わせていく。
ほどなく中和、侵食していき使徒のATフィールドが徐々に消えていく。

「よーし!いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

プログ・ナイフが使徒のコアに突き刺さる。
哀れのんびり使徒さんはギャースと叫び声をあげて暴れ始める。

(たしか自爆攻撃があるんだよね!!)

シンジはナイフをコアに突き刺したまま、使徒を上空に思い切り蹴り上げ全力でATフィールドを張った。瞬間、使徒は遙か上空で大爆発を起こす。発令所のモニターは真っ白になりなにも見えなくなったが、しばらくして映った画面には使徒はおらず、ただ紫の巨人が佇んでいるのみであった。


<<使徒破壊+原典破壊ボーナス>>
『おめでとう。君は見事第3使徒を撃破した。かつ碇ゲンドウのシナリオを狂わせた。その行為に敬意を表し3000万ポイント+100万ポイントを進呈する。』


「・・・勝った?・・・」

「勝った・・・勝ちましたよ!葛城さん!!」

日向の声を受け発令所で歓声が爆発する。

「・・・碇・・・これはシナリオと違うぞ・・・」

「・・・問題無い・・・とりあえずは使徒に勝ったのだ。使徒戦は始まったばかり、まだいくらでもチャンスはある・・・」

「そうだが・・・見た限りシンジ君がユイ君に依存してエヴァを暴走させるとは思えないのだが・・・」

「なに、子供だ、いくらでも追い込みようがある」

ヒゲは内心シナリオ通りにいかず怒り狂っていたが、それを表に出すことはなかった。


「なー兄ちゃん。これからどないするん?」

「地下のケージ、このロボットを作ってる秘密基地があるんだけど、そこへ戻る・・・しかないよね・・・今は」

これがシンジ一人であればさっさと逃げたのだが、さすがにこの子を一人おいて逃げるわけにもいかない。まあ、先ほどなんか信じられないくらいのポイントが貰えたようなので、自身の強化に使えば力ずくでも逃げ出すことが可能だろう。

「うう、うちめっちゃ怒られるんとちゃう・・・おとんもネルフで働いとるし」

「ああ、そうなんだ・・・でも大丈夫だよ」

「なんでなん??」

「涙目で『ふぇぇ・・・』って言っておけば許してもらえるさ」

「・・・兄ちゃんってけっこうアレな人やんな。見た目とずいぶん違うんやね」

幼女からの評価が下がった。おかしいな魅力スキルもずいぶん高まっているはずなんだけど。


「おお、やっぱり、あっさり勝ってしもうたのじゃ」

「まあ、そうじゃないと困るけどね。じゃ、アヤカ、そろそろネルフに爆弾を放り込もうか・・・このままだとシンジがここに帰って来れなくなっちゃうしさ」

「ええ、そうですわね。それではユイさん、それとキョウコさん、こちらにお願いしますわ」

「わかりました。イザベラさんとアヤカさんのシナリオ通りに頑張ります!」

「わたしは後ろに見切れていればいいのね~♪」

ユイは多少緊張しつつTV電話の前に座り、キョウコはその後ろにニコニコと立つ。


「ん??副司令!雪広より司令宛に連絡が取りたいと来ていますが・・・」

「何??今は忙しい。後にしろと断ってくれ」

「わかりました・・・えっ・・・お母様ですか??はぁわかりました・・・副司令!シンジ君のお母様から直だそうです。父親である司令に連絡が取りたいと・・・」

「なっ!何を君は馬鹿なことを!!」

「冬月・・・かまわん、画面に映せ。どうせ養母の叔母を担ぎだしたのだろう。あの夫婦は金に目が無い愚か者だ・・・雪広に買収されていてもおかしくはない」

「なるほど・・・そうだな。よし、繋げ!!」

しばらくして発令所の画面に一人の女性が映し出される。

「「「「「ユイ!!!!!」」」」」

ヒゲはその女性の姿を見たとたん叫び声を上げて椅子から立ち上がった。
思わずサングラスを取り、目を見開いてわなわなと震えている。

「へーこの人が司令の奥さんなの・・・ずいぶん若いのねーうらやましいわ」

絶句している親友(リツコ)の横でミサトは人ごとのように評している。
残念ながらズボラな彼女はシンジの調査書など読んでいないのである。

そもそも碇ユイが実験で死んでいる(という)ことを知っているメンバーはヒゲ、ろうじん、金髪黒眉の3人で、他のオペレーター陣も今日来たばかりのサードチルドレンの履歴をまだ詳しく見ていなかったのである。マヤは気がつきそうなものだがポケーっと眺めている。「シンジ君はお母さん似でよかったーっ将来期待できるわ」とのんきに思っていた。

「久しぶりね・・・えっ?げ、、、ゲンドウさん(ニコリ)」

「ユイ・・・本当にユイなのか・・・」

「ええ、実は長い間記憶を喪失していたのだけれど、今日シンジに会うことが出来て、それであなたのこともほんの少しだけ思い出したの・・・」

「き・・・記憶喪失だと・・・」

ヒゲは混乱の極地にいた。愛する妻は初号機に取り込まれ消えてしまったはず・・・。
にもかかわらず、こうして目の前にあの頃より少し老けたが相変わらず美人な妻の姿があるのである。一体全体どういうことなのかわからなかった。

「そ・・・そうか・・・ナオコ君!ナオコ君が君を隠したのか!!」

冬月がいきなりそう叫ぶ。下の階ではリツコがビクッと震えた。

「(ナオコ・・・赤木博士ね。これは使えそうね)ええ、わたしは赤木博士に雪広の研究所へ連れて行かれたのです。そこで研究者として雇ってもらい、ずっとお世話になっていたのですわ・・・」

故赤木ナオコがヒゲに並々ならぬ思いを抱いていたのは、ずっと側にいた冬月、そして娘のリツコも気がついていた。あのナオコであれば、実はユイをサルベージ出来ていたとしても、さらにそれが完全では無く、都合良く記憶を無くしていたのであればヒゲ達に気付かれぬよう他所に運んで隠していてもおかしくない。

「ゲンドウさん。私はシンジと二人で暮らしたいの。あの子には十年以上寂しい思いをさせたのだから・・・・・・」

「わかった。もちろんだ・・・ユイ、これから3人で暮らそう・・・」

下の階では某技術部長がボールペンをへし折る音が鳴り響いた。
マヤが驚いて振り向いたがリツコはクールにペンをゴミ箱に捨てていた。

「それはだめ・・・あなたが夫であることは思いだしたけど、正直心の整理がついていないの、しばらくは離れて暮らしたいわ。それに私は雪広の主任研究員だし、あなたはネルフの司令。お互い守秘義務もあるし・・・あなたのお仕事は『いちパイロット』と比べても計り知れないほどでしょう・・・。だからたまに会って、もう一度最初からやり直しましょう。お願い・・・」

「ユイ・・・・・・わかった・・・(がっくり)」

「ユイ君!冬月だ!」

「あら、冬月先生もおかわりなく」

「いや・・・さすがに老けたと思うが・・・雪広にいるのであればすでに知っていると思うが、現在我々人類は使徒と呼称する化け物と戦っている。使徒にはエヴァでなくては勝てない。ATフィールドがあるからだ。そしてそのエヴァを動かせるのは現在シンジ君だけなんだ!すまないがシンジ君をネルフのパイロットにすることには同意して欲しい」

「はい、それは理解しています。子供を戦わせるのは辛いですが、、、ただし条件面については後ほど交渉させてもらいます。それと住むところですがこの雪広のビルでお願いします。私はここで仕事をすることになりましたから・・・」

「そうか・・・仕事・・・仕事ってユイ君は何の仕事をしているのかね?」

「すみません先生。それは内緒ですわ」

「そう・・・だな。いやーそれはすまなかった。はは」

「いえ、それでは。私はお伺いできないのですが、私の娘がそちらにお伺い致しますので、どうぞよろしくお願いします」

ユイはそう言って頭を下げると画面はブラックアウトした。

発令所内は静まりかえっていたが、いち早く動揺から抜け出したリツコが使徒戦の後始末の指示を矢継ぎ早に行うとにわかに活気が戻ってきた。
ちなみにミサトはシンジを出迎えにユイと司令の話しの最中にケージへと向かっていた。
彼女は別に夫婦の会話などさほど興味はなかったのである。


(母さん・・・とんでもない爆弾を残していたのね・・・やられたわ・・・)


「ナオコ君にやられたな・・・ユイ君の記憶、精神の一部が初号機に残っていたから我々は気がつけなかったが、まさかサルベージを不完全ながら成功させていたとは・・・」

「・・・ああ・・・」

「恐ろしきは女の妄執か・・・雪広もよくこれまで隠し通したものだ・・・まあ、さすがにこちらが探してもいないのだから仕方がないのだが・・・それにユイ君は所謂お前の人質として十分に価値がある。さらに保護者としても・・・シンジ君の親権を裁判所に訴えられたら勝ち目はないだろうな・・・それにユイ君は記憶を失っても優秀な研究者だ。なにを研究させているのやら・・・まったく一石二鳥どころか三鳥、四鳥の隠し球だよ・・・※7」

「・・・・・・・・・・・・(ユイ)」


「ふぅ・・・」

「ご苦労様でしたユイさん」

「ええ、それにしてもシンジの学校の先生達があちらにいてびっくりしましたわ。ゲンドウさんのことよりもそっちが気になってしまいました」

「へー世界が違うとそんな所も変わるんですねぇ」

「まっ、これでとりあえずネルフに一発ガツンとやったわけさ。これであちらさんには大いに牽制になった。諜報に関してはさらにさらに強化してくると思うけどね。それはこっちも望むところさ」


ケージでは鈴原父娘の親子げんか&感動感涙ショーが繰り広げられていた。

サクラの父親はネルフで整備課長を勤めており、初号機がケージに到着したときは真っ先に出迎えに来ていたのである。

見事初陣を勝利で飾ったシンジに整備員達は拍手喝采であり、鈴原親子のショーの横ではシンジの胴上げもまき起こっていた。

シンジを命令違反で叱りにやってきたミサトも、さすがにこの雰囲気の中ででシンジに何かを言うことはできなかったのだった。まあ、後で叱ってわからせればいいかと思っていたが、程なく副司令よりシンジに対しては接触するなと命令が出てしぶしぶ引き下がることとなる。


「・・・・・・・・・・・・・・・」

盛り上がるケージの外の廊下では、忘れ去られたアルビノ少女が静かに待機し続けていた。


第弐話 見知らぬ、天井 に続く


※1 まあ、アレも相当酷いと思うが・・・
※2 本当だよ(震え声)
※3 可愛いは正義!YESロリータYESタッチ(え
※4 ナイスwww
※5 一体何が幸いするかわかりませんね。
※6 全て雪広のせいなのよ(キリっ
※7 全て雪広のせいなんだ(キリっ

追伸:友人との共同執筆はここまです。後は5話までのプロットを残すのみです。




[32048] 第弐話 見知らぬ、天井 Aパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/15 11:58
エヴァちーと 第弐話 見知らぬ、天井 Aパート[改訂版]


ドイツネルフ支部、特務機関ネルフの欧州における開発・活動拠点である。
米国の第一・第二支部と同じく『支部』と呼称されながらも本部の影響力はほとんど無い。
表向きはヒゲ司令の命令を聞いてはいるが、内実は好き勝手に運営されていた。
もちろん本物の飼い主であるゼーレの命令には従順であったわけだが。

そんなドイツ支部のとある空き部屋にヨレヨレのシャツに無精ヒゲ、ネルフの特殊監査部の職員にして日本の内務省のスパイ、さらにはゼーレの飼い犬の三足のわらじを履いている加持リョウジという男が片耳にイヤフォンを付けパイプ椅子に座っていた。

(第三への使徒の襲来・・・あらら随分と慌てているようで・・・)

目の前の机に置かれたノートパソコンの画面にはドイツ支部上層部の連中が、昨日第三新東京市に現れた使徒と、本部のエヴァ初号機との戦いの記録画像を観ている様子が写しだれていた。彼はここで所謂盗撮・盗聴を行っているのである。

(それにしても初号機、いやサードチルドレンだな凄いのは・・・このスムーズな動き・・・頭のキレ・・・とてもこの日初めて乗った子供の動きじゃぁ無い・・・これも司令のシナリオなのか??・・・ま、これでここの連中も目が覚めるだろう)

今まで実際に起動し実戦に耐えうる機体は弐号機しかなかった・・・本部には零号機、初号機の2機が配備されていたが、起動すらできていない現状をドイツ支部の者達は笑い、所詮は黄色いサル共かと本部を下に見ていたのである。それがいきなり何段階も飛び越えて初号機が使徒を撃破するという成果を挙げたのである。

(アスカには・・・この映像は見せないだろうな。この初号機の動き・・・アスカと弐号機の動きに匹敵している。シンクロ率も当初は68%、その後助けた子供を入れても70%、最後は80%近くに達している。アスカのベストにはまだ届いていて無いが・・・いや、サードチルドレンは訓練をしていない上にプラグスーツも着てないんだ・・・これは早晩抜かれると見た方が良いだろうな・・・やれやれ日本に行ったら荒れるな)

加持が現在護衛任務に着いている少女の今後のことを考えていると、会議室では使徒戦の模様は映像が終わったらしく、次になにやら発令所の様子が写し出されていた。

(ん、なんだ??・・・何?碇ユイだと!!!!)

これにはさすがの加持も思わず叫び声をあげるところだった。
間一髪我慢できたが慌てて画面を食い入るように見る。

(・・・間違いない。『碇ユイ』だ。東方の新三賢者、悲劇の天才。エヴァ初号機の開発責任者にして若くしてゼーレに強い影響力を有していた女性だ・・・。初号機の実験で死んだということだったが・・・これは司令も知らなかったのか??何、雪広だと??確か麻帆良に本社を置く大企業だが・・・わけがわからん。赤木ナオコ博士??なんで赤木博士が碇ユイをサルベージしたら隠すことになるんだ??副司令は何を知っている??これはどうやら深い理由があるな・・・ともかく)

「使徒の襲来と共に様々な勢力がいよいよ動きだしたと見るべきだな・・・雪広とゼーレが繋がっているという線もあるし・・・そうだな、この線で探ってみるか・・・そうだとしたら司令はゼーレに人質を取られたというわけだ・・・さてどうするのやら」

画面上ではドイツ支部の上層部が先ほどから碇ユイの画像を何度もリピートしたり一時停止したりして騒いでいる。

(ん??こいつら何をそんなに騒いでるんだ??確かに碇ユイの存命は大ニュースだが・・・違うな・・・なにやらその後ろに見切れている人物を指さしているようだが・・・あれは・・・惣流博士??)

「「「馬鹿な!!!」」」

今度はさすがの加持も叫ぶことを止められなかった。

「惣流・キョウコ・ツェッペリンだと馬鹿な!!彼女は自殺したはずだぞ!!」

弐号機パイロット、惣流・アスカ・ラングレーの母親にして、その弐号機の開発に加わっていた人物だ。ドイツ支部が碇ユイに対抗して見いだした英才である。しかし、彼女もユイと同じ実験の事故で発狂し後に自殺したはずだった・・・。

(酔わせたアスカから俺は直接母親の死については聞いてるぞ・・・彼女が第一発見者だったそうだ。もちろん裏も取ったし、遺体だって墓地に埋葬されているはず・・・それが・・・こんな芸当ができる所は限られている。ますますゼーレと雪広が繋がっている線が深まったな・・・おっ?あれはアスカの父親のラングレー氏か・・・何?確実に殺したはずだと!!なるほど彼女の死は自殺ですら無かったというわけか・・・目的は再婚とアスカのマインドコントロールだな。やれやれ仕事とはいえ因果なことだな)

「ともかく死んだとされていた二人の天才・・・この二人の存命は本部とここに強烈な一撃を与えたわけだ。アスカに母親が実は生きているなんて知らせるわけが無いし・・・俺が知らせるというわけにもな・・・すまん。可愛そうだがしばらくは彼女に道化でいてもらうしかないな」

加持はそう呟くと再び喧々諤々と不毛な議論を続けている連中の監視を再開したのであった。
それはあまりにも愚かで無様な狂乱劇だった。


「『知らない天井だ・・・』というか天蓋だけどさ・・・」

シンジは千紫万紅、百花繚乱、豪華絢爛な色とりどりの花が描かれた天蓋を見つめる。
シンジの寝ている天蓋付きベッドは数百万円の豪華なベッドだったが、小市民である彼にとっては『ものすごく寝やすい高そうなベッド』としか思えないものだった。

ふと、横を見ると、昨日一緒に寝た美羽がまだ幸せそうに涎を垂らして眠っていた。彼の名誉のために言うが手は出していない。さすがにまだ幼女?にタッチするほど精神は強化されていない。というか元値が低すぎてMAXまであげても無理かもしれないが。

昨日、ケージでの胴上げ祭りの後、シャワーを浴び元の服に着替えて・・・ということしていたら、アヤカがネルフ(の入門ゲート)まで迎えに来てくれたのだ。

そして、そのまま一緒にリムジンに乗って帰ってきたのである。
それはエヴァから降りて1時間も経っていなかった。

リツコさんはシンジの検査をしたそうであったが、副司令から待ったがかかり、今日改めて伺って検査を受けるということで納得してもらった。

帰ってきたら皆で夕食を食べて、そのまま寝室に案内されてすぐに爆睡である。
おねむになっていた美羽を七乃さんから託され、一緒に寝たわけなのだが、まあ、美羽はシンジにとって妹のような子であるし、特に意識するということはなかった。

もちろん、その他のハーレムメンバー、とくにアヤカ、イザベラの二人はほぼ徹夜で仕事に当たっていた。彼女たちの戦いは使徒戦後からが本番だったのである。

ボーっと天蓋の花びらたちを見つめていたら、寝室のドアが開き七乃が入ってきた。

「おはようございます、ご主人様」

「おはよう、七乃さん」

「ああ、いいですよ。まだそのままで、まだ朝食の準備もできてませんし・・・それに・・・朝のお勤めが済んでませんからね♪」

七乃はそう言うとニヤニヤしながらシンジ達が寝ているベッドに近づく、そしてシーツの中に潜り込み彼の真上にまで移動してくる。

「な・・・七乃・・・さん・・・何をしてらっしゃるのでございますか・・・(汗」

「むふふふー『ナニ』に決まってるじゃないですかぁ。ご主人様も期待してたクセにーこのこのーまぁまぁそのままで楽に横になっていてくださいな」

期待していた・・・まあ、それは否定しない。というか何も無かったらがっかりしていたことだろう。本来のシンジ君であれば大騒ぎして逃げ出していただろうし、そもそも女性に免疫の無いチェリー君だ。これまで女子の友達すらいたことがなかったのだ。

実際ははるか以前に旧ネルフ、ゲヒルンの研究所で幼いアスカとも遊んだことがあるし、当時は髪を染めていなかったリツコとも遊んでもらったことがあるのだが、二歳の頃のことなどもちろん覚えていない。学生だったリツコですら忘れているようなことである。

シンジは逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!と呟きながら、というかまったく逃げるつもりなど端から無いのだが、七乃のお口のご奉仕をほるほると受けることとなったのである。


さて、シンジ君が自身の息子を起動させている頃、長崎では一人の女性が途方に暮れていた。

それはシンジによって召喚されたイリーナ・ピアティフ女史である。
彼女は確かに横浜の国連基地において香月博士の秘書官として働いていた。
しかし、当然ながら彼女は『戦術機』の開発などしたことなど無いのである。

「これ・・・どうしよう・・・もう、無茶苦茶だよ・・・」

目の前には横浜基地で香月副司令が使っていたパソコンがある。
というか、この研究所は自分が働いていた横浜基地そのものである・・・この部屋だけ。

雪広重工業、長崎造船所、その埠頭の端っこにポツンとコンクリートで作られた豆腐建造物があった。シンジが出現させた『戦術機を開発する研究所(香月博士の部屋)』である。
無論『それしか無い』・・・ケージも無ければ、寝るところも食堂も無い、何にも無いのである。

今、とりあえず一緒にこの世界に呼ばれた三バカ達が食料を求めて外に旅立っている。
昨日、4人で腹ぺこ状態のままここで雑魚寝していたのだ。
いくらセカンドインパクトの影響でずっと季節が夏だとはいえ、こんな目の前が海の埠頭に置かれてしまうと気温も下がるし、波の音はうるさいし死ぬかと思った。

これは昨日ネルフに行くため急いでいてよく確認をしなかったシンジとアヤカのミスであったが、まさかそこまで細かく設定しないといけないとは二人も思わなかったのだ。

「お腹も空いたけど、戦術機の開発もやらないと・・・うう・・・そうはいっても私にそれを求めるって明らかに役不足(誤用)ですよー。そりゃお手伝いくらいはできますよ。お手伝いはできますけど、いちから撃震のCADを引いて、OSを作るなんて酷すぎません??無理無理無理・・・あーどうしよう・・・博士のパソコンのパスワードもわからないし!」

「・・・中尉・・・なに変な踊りを踊っているんです?」

「3バカさん・・・」

「・・・中尉、それは別世界の私たちの話です。ってメタなことは止めましょう。それよりどうしたんですか?とりあえず造船所の入り口の守衛さんに弁当を買ってもらえましたから食べませんか?」

「はい・・・そうですねって!!これ合成食じゃない!!本物じゃないですか!!美味しい!!生きてて良かった(泣」

「はい、、、どうやらこの世界では合成食ではないご飯が食べれるようです・・・これだけでもシンジ様に呼ばれて良かったって思いました」

そう言うと3バカ達は互いにうんうんと頷いていた。
彼女たちは守衛さんから10人分のお弁当を買って貰っていたのだが、すでに2つずつ食べていたのである。現在彼女たちが食べているお弁当は3つ目だ。
3つ目でもお弁当の美味しさは変わらない。イリーナは一つだけだが心は痛まない。

「私では戦術機を開発できないんです・・・シンジ様のお役に立てません・・・」

「・・・まあ、それは仕方がないでしょう。私たちも戦術機がなければ正直、護衛くらいしかできませんし・・・シンジ様に連絡を取ってみてはいかがですか?」

「・・・えーと、電話番号がわからないんだよね」

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

「で、では・・・守衛さんに話して連絡してもらいましょう・・・」

結局、守衛さんではどこに連絡していいのかわからず、結局社員さんたちが出社してくるのをポケーっと守衛室で待つことになる4人なのであった。


「おはようございますシン、シンジ様」

「あっうん、おはよううう、アヤカ」

無事発射を終えたシンジは用意されていたいつもの白のカッターシャツと学生ズボンを履いて寝室から出てきた。七乃は洗面所にて後始末、美羽はすやすやと未だ夢の中である。

アヤカは七乃のお勤めについてはもちろん知っていたが、とりあえず素知らぬ振りをした。「七乃さんのお口はいかがでしたか?」とはさすがに淑女が聞くわけにはいかない。
昨日の夜に下の世話についてはハーレムメンバー内で話し合いが行われており、とりあえずは呼び出された順番に勤めること、本番は禁止(ユイによる強権)ということになっていた。

強化された精神を持つシンジだったが、さすがに人生初のフ○ラの後である。
彼は目に見えてキョドっているわけだが、リビングにいた女性陣(母含む)は生暖かい目でこの愛する少年を見守っていたのだった。

シンジはゴホンゴホンとわざとらしく咳をすると、空いているソファーに座る。

「朝食は食堂に準備できていますわ、ですが、先に今日の予定をお話してもよろしいでしょうか?この後すぐにイザベラさんが出かけてしまいますので」

「うっうん。もちろんだよ!」

「では、朝食後10時にネルフが運営する病院に私と一緒に向かいます。そこで健康診断を受けるようです。その後ネルフ本部にて上層部・・・お父様達と会食、それとパイロットの契約交渉を行います。それが終わりましたら今後の訓練スケジュールなどの話があると思います。その後帰宅となります。交渉時はユイさんもTV電話で参加してくれるのでご安心下さい。ユイさんとキョウコさんは朝食後に別の場所へ移動します。そうしないと、ここが襲撃されたときにユイさん達を守れなくなりますからね。またイザベラさんは第二東京の雪広セキュリティサービスにて諜報部の方々と面通しをします。イザベラさんはしばらくは第三には戻ってこれないそうなので、後でキスくらいはしてあげてくださいね」

「うっうん」

「なんだよアヤカ恥ずかしいじゃないか(///∇///)」

「そういった一つ一つの積み重ねが大事だと思いますわ。さて、七乃さんと美羽さんにはこのビルの警備(自宅警備)をお願いしています。それとシンジ様、早急にシステムを使用する必要が出てきました、本当に申し訳ないのですが、朝食後出発前にお時間をお願いします」

というわけで、早速朝食を食べに食堂へ向かう。
途中でイザベラが別れるため、シンジはドキマギとしながらもイザベラのおでこにキスをしてあげた。イザベラは「なんだよおでこか・・・」とちょっと不服そうである。

豪華な朝食を楽しんだ後(七乃もちゃんと合流した)、母たちと別れ再びリビングに戻ってくる。

「ではシステムの起動をお願いします」

「うん、ええと、まず何をしたらいいのかな。ポイントは4000万ポイント近くあるからこれならなんでもできそうだけど・・・」

「・・・確かにすごいポイント量なのですが・・・ネルフに対抗するにはまだまだ足りません。昨日頂いた百億もすでに予算を組み終えて無くなってしまいましたし・・・」

「えっ百億円をもう全部使っちゃったの??」

「はい・・・。シンジ様、ネルフの予算っていくらぐらいがご存じですか?」

「ネルフの予算??えっとどれくらいなんだろう??」

「ネルフは予算の開示を一切していないのですが、国連の拠出金でだいたいわかります。1年間の予算は数兆円規模といったところでしょうか・・・」

「ちょ・・・兆!!!ネルフってそんなにお金使っているの!!」

「はい、さらには追加予算で数千億円を請求するのも珍しくありません。ネルフへの拠出金の分担金を払うために自国民が飢えに苦しんでいるという国もあるのですわ」

「な・・・なんで国民をそんなにしてまで・・・」

「サードインパクトを防ぐ、人類を守る、それがネルフだからですわ・・・確かに今回の使徒戦ではネルフの開発したエヴァが撃破したのです・・・そのお題目は嘘ではなかったということになるでしょう。今後も予算が減ることはありませんわ」

「なるほど・・・そういうことなら百億円でネルフに対抗するなんて全然無理なわけだね・・・」

「ええ、、、戦術機を作ろうにも、生産ラインや資源などはシステムを使って大量に作れても、機体の維持、整備、運搬・・・他にお金のかかることはいくらでもあります。諜報活動も人件費はもちろんですが、拠点のマンションを借りたり、車を用意したり、買収して情報を取ったりするのにもお金がかかります・・・。その他にもこのビルを強化したり、通信インフラを独自に引いたり・・・。ですから4000万ポイントというのはそこまで大きなポイントではないのです。とはいえ、チートであるのは間違いないのですが」

「うん。それはそうだよね。じゃあ、ポイントをお金に変えてしまえばいいの?」

「いいえ、まず、先ほど長崎から連絡がありまして、イリーナさん達が途方に暮れているそうです。まず長崎の研究所の整備を行いましょう」

「長崎??研究所で戦術機の開発をしてるんじゃないの?」

「ええ、イリーナさんからとても自分ではできないとSOSが・・・それに食堂も無ければ寝るところも無いため辛いと・・・」

「・・・ああ・・・本当だ。個別に設定が必要なのか・・・これは悪いコトしたな。よし、じゃあ、一気に1000万ポイントを使って長崎造船所をマブラブ・オルタの国連横浜基地にアップグレードしよう。もちろん造船もそのままできるようにしておかないとね。ドックも強化しちゃおう。それと香月夕呼さんを今回は召喚しよう、えーと800万ポイントだったっけ。あと生産ラインも一つ作って100万ポイント、資源もとりあえず100万ポイント分用意して・・・全部で2000万ポイントだね」

「はい、到底2000億では作れない施設、得がたい人材です。スピードも全然違いますし、やはりお金よりもシステムを利用して整備した方がお得のようですね」

「後はどうするの??あっそういえば昨日見た夢で『恋愛原子核』を取得するようにって神様に言われたような・・・先にそれを取っておこう。たった10万ポイントだし・・・。はい、オーケーだよ」

「本来であれば情報も得たい所ですが、せっかく諜報部を動かすのですし、もう少し様子を見ましょうか・・・あら?シンジ様、シンジ様の強化があとちょっとで完了するようです、先にポイントを全て振ってはいかがでしょうか」

「え?あれ?本当だ・・・。スキルの上限って10レベルなんだ・・・神様は100だって言っていたような気がするけど・・・なるほど、これ以上にあげる場合は『超人』もしくは『真祖』『人修羅』・・・とか人間を止める必要があるんだね・・・いや、もちろん止めるつもりはないよ。僕は人間で十分。じゃあ、全部の項目を10まで上げておくね」

「ええ、なんだかシンジ様がより逞しく魅力的に見えてきましたわ」

アヤカは頬を染めてシンジをうっとりと見ている。とうとう英雄レベルの魅力まで高まったようだ。今の彼は豊臣秀吉レベルの人誑し(劣化)、ナポレオンレベルのカリスマ(劣化)を得ている。まあ、それをシーザーにしてもよいし、アレキサンダー大王に変えてもよいのだが。


「おおっなんじゃ!曹操のやつが現れたかと思ったぞ」

ようやく起き出してきた美羽が魅力マックスのシンジを見て驚いた。
・・・というか華琳はチート級の魅力・カリスマ持ちだったのか・・・。

美羽達にわかりやすく現在のシンジ君の強さを表記するとこんな感じだ。

知力80(元が-20) 武力70(-30) 魅力90(-10) 精神70(-30)

・・・お前元が酷すぎるだろ!とは言ってはいけない。
あの能力値は歴史に名を残した『武将』『文官』が基準なのだ、一般人のさらにその中でもかなり劣っていたシンジ君なのである。これを読んでいる監視者の皆様だってさほど変わらない数値だと思いますよ(煽り)。

それを考えると北郷一刀君は偉かったんだなぁ・・・。
よく考えてみれば剣道部のエース(っぽい)、イケメン(らしい)なのだ。
こいつは神の敵だ。カッとなってアンチ北郷のSSを書いてしまうのも許して欲しい。

「でもこれなら、曹操さんを呼び出してもバカにはされないと思いますよー」

七乃がそう付け加える。確かに今まで呼び出している女の子達はシンジと比べて圧倒的に強者という人物はいない。美羽は幼女、アヤカはセレブの中学生、イザベラは頭は良いがチビで魔法が全く使えない上に人間関係は破綻気味、ユイとキョウコは親世代なので置くとして最大戦力が実は七乃であり、その七乃でさえ、恋姫世界では『最弱の武将』である。

それを考えるとさすがに、そろそろ能力の高い人たちを呼び出しても良い頃である。
昨日までのシンジであれば例えばいきなり曹操を呼ぶ、呂布を呼ぶ、川神百代を呼ぶ・・・それで果たして扱い切れただろうか・・・いくら神の洗脳があったとして気後れしたのは間違いない。今であればこういう人物を呼び出しても十分対応できるだろう。

「問題は私たちが『みそっかす』になっちゃいそうですけどー・・・」

「いえ、すでに800万ポイントの香月博士が出現していますから遅いですわ」

「その人は長崎なんでしょう?『side長崎』だったら敵じゃないですよー」

「七乃さんは『全員性描写がある』というのを忘れているようですわね」

「そうだったー!」

「・・・あのさ・・・昨日も同じことしゃべったけどこの後ネルフに行くんだよね、まだポイントは半分弱残ってるし、早く何に使うか検討しないとダメだと思うんだけど」

「ええ、そうでした。申し訳ありませんわ・・・そうですわね、とりあえず1000億を私の口座へお願いします。それで当面の予算は十分ですわ。財閥の資産も人的資源もありますし・・・あと、これは私の意見ですが私のクラスメイトの那波千鶴さんを召喚してください。彼女は『那波重工』という会社の娘で、召喚の際にオプションを付ければ会社もこの世界に現れるはずですわ。雪広財閥だけでネルフと戦うのは無謀・・・少しでも仲間の企業を増やしたいですわ」

「うん、もちろんいいよ。えーと那波さん那波さん・・・19位・・・アヤカさんの一つ下か・・・190万ポイントだね。オプションで会社とアーティファクトを付けて240万ポイント。よし、設定完了。いくよ、召喚!!」

・・・・・・何も起こらない。

(そういえばアヤカさんをこの世界に召喚したときもそうだったけ・・・)

どうやら『ネギ魔』世界の人たちは直接この世界に登場しているようだ。
つまり、シンジの元にくるのには通常の交通手段が必要ということなのだろう。


<<警告 村上夏美を24時間以内に召喚しない場合、那波千鶴の能力特大ダウン>>


突然システムから警告音が鳴り響く。
驚いて画面を見ると、『ネギ魔』美少女リストの中の村上夏美の名前が点滅している。

「え??これは何??」

「シンジ様、とにかくヘルプを開いて警告内容を確認してくださいませ」

「うっうん。というかヘルプなんかあったのか・・・えーとなになに・・・」


<<美少女召喚・補足1>>
『美少女達はそれぞれの世界で様々な人間関係を構築している。しかし、この世界に召喚された彼女達にはその繋がりを途切れさせてしまう。それは彼女たちにとって多大なストレスであり、神の力ではいかんともしがたい。故に特に繋がりの深い親友同士は一緒にいるべきである。早急に相手を召喚し一緒に愛でてあげるように』

<<美少女召喚・補足2>>
『魂が繋がるほどの深い関係、片方だけでは存在が許されない子達は個別に呼ぶことが出来ない(例:美羽&七乃・3バカ)』


「な・・・なるほど、確かに親友と離ればなれは辛いよね・・・」

「私と美羽様はセットでしたし、イザベラさんは友達がいなさそうだし(おい、そういえば昨日ユイさんも同じ世界の人を呼びたがってましたよね。それでキョウコさんを呼んだわけですし・・・あやかさんは大丈夫なのですか??」

「・・・そう考えると、ルームメイトである千鶴さんを呼ぶように私が提案したのも、もちろん戦略的な部分がありましたが、本当は寂しかったからかもしれませんね・・・」

本来は親友である明日菜を呼びたいアヤカであったが、明日菜はポイントが高く、さらに明日菜を呼ぶと次にまた高ポイントであるこのかを呼ぶことになってしまう。
そうなっては、ネルフとの戦いでポイントが足りなくなる恐れがあるためグッと我慢する必要があるのだ。。
あやかは知らないがこのかを呼ぶと次は刹那を呼ぶ必要があり、人気ベスト3を全員呼ぶはめになるのである。
ちなみに刹那を最初に呼んでも、このか、明日菜の順で呼ぶ必要がある。

これは他の世界でも同じで、その世界で主要な位置を占める『ヒロイン』はその他のヒロイン達とも親友であったり依存したりしていることが多いため、今後もシンジの頭を悩ませることになるルールなのであった。

「じゃあ、さっさと村上夏美さんも呼んじゃおう。えっとポイントは26位だから6万ポイント・・・えっアーティファクトが100万ポイント!!こっこれは・・・いや、ちゃんと付けてあげよう。差別無し!!よし、召喚!!」

とはいえ、ここに彼女が現れるわけではないので、ちょっと寂しいシンジだった。
しかしアヤカの様子をみると、とても嬉しそうだ。やっぱり一人は寂しかったらしい。

(確認すると、つまりはあまり考え無しに女の子を呼んじゃうのはダメってことだよね。今回はポイントが余っていたから良かったけど、ポイントが高い女の子の親友もポイントが高かったら、しばらく呼ぶことができなくなっちゃうってことだし・・・落ち込んでいる女の子は見たくないし。プロフィールはよく読んでおかないと・・・)

「シンジ様、少し細かい部分の操作を委託していただいてよろしいでしょうか?」

「もちろんいいよ。はい」

その後、アヤカはビルの強化、通信インフラの整備、グループ企業への予算援助、那波重工への資金拠出などなど、様々な業務を行っていった。所謂内政というものである。
とはいえ、実はアヤカも結局は中学生であるので本格的な事務方の必要性を感じていた。

「つまり文官、内政家さんですねー」

「そこまで大げさでなくてもいいのですが、やはり細かい調整となると私では・・・。システムの操作もそうですが、各所との調整もありますし・・・シンジ様まだ500万ポイント残ってますから、事務作業の出来る方を探してもいいでしょうか?」

「うん、アヤカさんに任せるよ」

「では・・・研究所に配置したイリーナさんような秘書経験のある方がいいですわね。それで検索を・・・うーん、そうですね『エリナ・キンジョウ・ウォン』さんがオススメのようです。ネルガル重工の社長秘書、少し性格的にエリート志向でヒステリーとありますが、そのあたりは(神の洗脳で)大丈夫でしょう。ポイントも4万ポイントと低目ですし・・・。このポイントの値って何が基準なんでしょうか・・・」

「それは僕もさっぱりだよ・・・。じゃあ、エリナさんを呼ぶね!召喚!!」

シンジがアヤカより操作を戻して貰ったシステムの召喚ボタンを押すと、突如として目の前に光の渦が現れ黒髪おかっぱ(?)のやや目つきが鋭い女性がその中から出てきた。

「・・・エリナ・キンジョウ・ウォンです。シンジ会長、よろしくお願いします」

「はい。こちらこそ。ええとなんですか?その会長っていうのは(汗」

「ふふ、私にとって目上の方をそう呼ぶのが自然なので。それにあながち間違ってもいないのでしょう?」

「ええ、そうですわ。シンジ様はいずれは雪広を・・・いえ『碇財閥』を率いるお方。何も問題はありませんわ」

「それではシンジ様、私はさっそくシンジ様直属の秘書室を作ります。アヤカさん、ここの下の階を頂いてもかまいませんね」

「結構ですわ、今のところ最上階のここ(住居スペース)以外は使っていませんから、程なく目眩ましにグループ会社の支社などのオフィスなどを入れる予定ですが、最上層の5階は立ち入り禁止。私たちだけで運営したいと考えています」

ちなみにこのビルは30階建ての第三新東京市で最も高い高層ビルである。
第三新東京市ではジオフロントへの収納の関係上、高層ビルの規格が決まっており、この30階建てがもっとも高いビルになるのである。

「では会長、早速秘書室を作るので予算をお願いします」

「えーと何億必要なのかな・・・」

「・・・会長、秘書室を作るのに億は必要ないです。とりあえず1000万ほどあれば十分です」

「あーうん、そうだね。さっきから何百何千億のお金を動かしてたから感覚がマヒしていたよ・・・」

「・・・はい、結構です。ついでに会長室も一緒に手配しておきますね。夜に一度ご報告に上がって参ります。では、失礼します」

エリナはシンジに一礼すると颯爽と部屋から出て行った。まさにデキる女である。


「お嬢様、那波様と村上様がいらっしゃっています」

メイドの一人がアヤカに報告する。

「わかりました。ご案内するように・・・といってももうあと30分もありませんね・・・。玄関で待ってもらって下さい。千鶴さんには私たちと一緒にネルフへ行って貰いたいですし・・・」

「ちょっと待って下さい。いくらご主人様が強いと言っても、アヤカさんと千鶴さんの二人を守るのは難しいですよー。護衛が必要なんじゃないですかぁ??」

七乃が慌てて指摘する。無論、自分が護衛に付くということは言い出さない。まあ、美羽を置いて彼女が別行動をとるなどありえないことであったが。

「そうだよ。危ないよ・・・どうしても連れて行くなら、誰か信頼できる人を護衛につけよう!!今日は召喚しまくりだけど(汗、まだまだポイントは余っているんだし、よし、ちょっと待ってね」

「シンジ様それならば、できれば二十歳以上の『大人』で武に秀でていて、ネルフの人たちを威圧できるような『恐さ』を持った方がいいですわ!」

「うーん、そんなスゴイ人が残りのポイントで呼べるかなぁ・・・検索してみようか・・・織斑千冬さんは・・・5000万ポイント、クラリッサ・ハルフォーフさんは呼べるけど・・・だめだラウラさんを24時間以内に呼ばないといけない・・・ラウラさんがIS付きで8000万だから到底不可能・・・。IS無しだと、ラウラさんの能力特大ダウン・鬱って書いてあるし・・・。というかこの世界は基本ISが必要みたいだから無し、次の世界は・・・ん?この忍足あずみさんはどうかな・・・29歳で大人だし、でも若いし・・・性格にはいろいろ問題がある人みたいだけど、凄く優秀だよ。よしあずみさんに決めた!!300万ポイントを消費して召喚!!」

「とう!」

シンジの召喚の声に反応して、突然天井からメイド服を着たショートカットの女性が飛び降りてきた。華麗に一回転して着地すると膝をついて頭を下げる。

「シンジ様のお呼びに応じて、忍足あずみここに見参!!以後よろしくお願いします」

「(びっくりした!)うん、よろしく。早速だけどこれからネルフへ向かうからアヤカ達の護衛を任せるね」

「はい。どうぞご安心下さい、シンジ様(ニコリ)」

一生懸命シンジに対して自らの本性を隠し仕えるあずみ・・・しかし、シンジはシステムのプロフィールで「メイドモード」と「通常モード」があることを知っているのであまり意味はない。まあ、そこを指摘するのは武士の情けである。
とりあえず、『メイドモード』がアヤカ達も対象にしてくれるようなので助かった。

というわけで、美羽と七乃をリビングに残し玄関へと移動する。
そこには静かにシンジ達が来るのを待っていた千鶴と所在なげにしていた夏美がいた。

「初めましてシンジくん。那波千鶴です。今日からお世話になります。それとあやかさんも頑張っているようね。お疲れ様。私も負けないように頑張るわ」

長身で爆乳、一見女子大生のような容姿であり母性あふれる美少女、那波千鶴である。

「えええと、なんかついでに呼ばれたみたいで恐縮です~。村上夏美です。あわわわ私もその頑張ります。いっ一応アーティファクトは結構レアだそうですから、ぜひお使いくださいませ~」

対照的に子供っぽい外見、そばかすがチャームポイントなのかどうかはわからないが、それでも十分に美少女(実はシンジはこういう素朴な子がタイプなのである)の村上夏美である。
残念ながらこのSSならともかく、普通に原作通り書いたら夏美のタイプには絶対シンジはならないと思うが、まあ、そんなことを言ったら全員そうかもしれない(爆)ので置いておこう。

「夏美ちゃん。アーティファクトは本人しか使えないわよ。でも大丈夫、夏美ちゃんは可愛いからアーティファクト抜きでも十分シンジくんに愛してもらえるわよ」

「ああああああああああ愛いあい(///∇///)」

「夏美さん、確かあなたのアーティファクト『孤独な黒子(アディウトル・ソリタリウス)』は『誰にも認識されなくなる』という強力なものでしたわね。・・・ちょうどいいですわ、今日はそれを使って私たちの後を着いてきて下さいな。もしなにか不測の自体が起こったときは全員で手を繋いで姿を消して逃げてきましょう、いかがでしょうかシンジ様」

「うん!それはいいね。そうしよう。というか夏美ちゃんが一緒にいたらネルフ本部のどこにだっていけるんだよね・・・あとでイザベラさんに教えて上げないと・・・」

「そうですわね・・・まあ、姿が見えないだけでセキュリティを突破することができるわけではないので、使いよう・・・という感じですが」

「そうだね。さあ、そろそろ行こう!確か最初は病院だったね。出発進行!」

「「「「わかりました(わ)(です)(はいぃーー)」」」


「・・・のう七乃、この「いないいないばぁ」は面白いのう・・・先ほどの「おかあさんといっしょ」もなかなか良かったが・・・ふむ、次は「えいごであそぼ」か・・・えいごとはなんじゃろう・・・んっはろー?ふぁいんさんきゅーじゃー」

(ふふ一生懸命絵に向かって手を振る美羽様・・・なんて愛らしいの・・・ああ鼻血が・・・)

今日もこの主従は絶好調のようである。


Bパートに続く




[32048] 第弐話 見知らぬ、天井 Bパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/15 12:06
エヴァちーと 第弐話 見知らぬ、天井 Bパート[改訂版]


照明が落とされたヒゲの司令室に6体の巨大なモノリスが浮かび上がる。
モノリスに刻まれた文字や紋章が次々に朱く鮮やかに光り輝いた。

『碇君、とりあえずはご苦労だったと言っておこう』

『しかし、もう少し上手く戦えないものかね?エヴァと都市の修繕費・・・国が傾くよ。それになにやらあのオモチャは君の息子に与えたそうではないか』

「・・・今回の戦いで初号機はほぼ無傷、都市への被害はありません・・・。都市を破壊したのは国連軍のN2のせいです。ネルフに落ち度はありません。追加予算は速やかに執行願います」

『私が言ったのは君が大事にしている『零号機』のことだよ。まあ、確かに都市への被害についてはそうかもしれんな。まったく無能な連中だ』

『しかしこれで日本の国連軍の幕僚長の首がすげ替えれる。かえって都合が良かったかもしれんぞ』

『そんな些事より、君の妻のことは一体どういうことだね?!』

『左様、これはあまりにもシナリオから逸脱している。この修正は容易ではないぞ』

「問題ありません。初号機には今も『彼女の精神の一部』が有り、サードチルドレンは高いシンクロ率を保持できています。使徒戦に関しては心配いらないでしょう」

『使徒戦のことなどどうでもよい。我々にとって重要なのは『人類補完計画』の遂行だ!碇ユイが存命ではサードチルドレンを依り代にできんではないか!!』

「まだ弐号機パイロットがいます」

『君は寝ぼけているのかね!弐号機パイロットの母親、惣流博士も生きている可能性があるのだよ!!おかげでこちらでは大騒ぎだ』

「まだユイも含めて本人との確認は取れていません・・・それに弐号機パイロットには徹底的に情報を隠せば良いだけです。日本に移送した後も本部から外に出さず、また職員には一切の接触を禁じて情報から遮断します。最終手段としては使徒戦にも出さず、精神を追い詰め続けて、儀式の際に依り代として使えばいいのです」

『・・・しかし・・・それでは死海文書の記述と矛盾してしまう』

『そうだ。第三の使徒が襲来しゼロチルドレンの指揮の元、初号機で倒した・・・。この事実だけは死海文書の記述通り・・・やはり可能な限り死海文書の記述には従うべきだ』

『うむ、第六の以降の使徒戦では弐号機も使って倒す・・・これは譲れんよ』

『何にせよシナリオの修正は我々が行う・・・碇君、君は使徒戦を粛々と行い給え』

『補完計画の遅延は許されん。追加予算については一考しよう・・・以上だ』


モノリスが消え司令室に再び照明が戻る。
話合いが終わるのを待っていたのだろう、副司令のろうじんが部屋に入って来た。

「どうだった?」

「随分と焦っているようだな、委員会ではなくゼーレのメンバーが出てきた」

「ふむ・・・やはりユイ君の事か・・・後、惣流博士もだな・・・」

「ああ」

「ドイツの惣流博士の墓地が何者かによって掘り返されていたらしい・・・ドイツ支部の連中が慌てて確かめに行ったら遺体はすでに持ち去られた後だったそうだ・・・しかし、ゼーレが焦るとは?・・・すっかりゼーレの策なのかと思ったが・・・」

「いや、ゼーレだろう・・・。ユイはともかく、惣流博士の件はゼーレの手の者以外は実行は不可能だ・・・」

「そうだな・・・それこそ魔法でも使わん限りはな」

「恐らく、精神が壊れていた惣流博士自体が『偽物』だったのだろう・・・もともと惣流博士の出自自体謎が多い。ゼーレがユイに対抗してドイツ支部に連れてきた人物だからな・・・ユイのように学生の時から優れた論文を発表し注目を受けていたのとは別に、惣流博士は全くの無名だ。それがいきなりドイツのエヴァの開発主任に抜擢された。当時も随分この人事は疑ったものだが・・・最初からすり替え目的で『替え玉』を用意していたとしても驚かん」

「ふむ・・・となると、ゼーレは起動実験が失敗することを予め知っていたということになるが・・・それにナオコ君がユイ君を隠したのもゼーレに唆されていたと見るべきだな・・・その後自殺したのは・・・。碇、しかしそれならば別にゼーレが焦ることはないのではないか?計画通りに進んでいるではないか??」

「『ゼーレも一枚岩では無い』・・・ということだろう。議長にとっては今日の会合は私のことよりもこの話題を出してメンバー内の反応を見ていたのだろうな」

「ん?議長が出し抜かれたとお前は考えるのか?」

「それはわからん。そもそも誰がこの件を主導したユダなのかが不明だ」

「しかし・・・どちらにしても『ゼーレの誰か』と『雪広』が繋がっていることはほぼ間違いないわけだ。うーむ、シンジ君の処遇についてはやりにくいな」

「シンジなどどうでもいい。問題はユイだ」

「いや・・・まあ、そうだが。碇、計画はどうするのだ?ユイ君の記憶が無いのではユイ君の計画を進めても仕方ないのではないか・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「記憶を完全に取り戻させる・・・ということは、ユイ君を再度初号機に乗せて取り込ませ一つにしサルベージするか、コアを破壊して自然と欠けたモノがユイ君に還るかに賭けるか・・・どちらにせよあまりにも分が悪い・・・。別段君のことは夫として理解しているようだし、私のことも思い出しているようだ。これで十分だと思うのだがね」

「補完計画はどうする」

「・・・さて、私にとっては計画自体はどうでもいいな。そもそもユイ君の志を継いだお前の行く末を見届けるというのが私の目的だ・・・さして興味は無い」

「・・・・・・・・・・・・」

「だいたい、碇、お前が心配するのは、これまでシンジ君を散々放置し辛い目に遭わせてきたことをユイ君が知ったらどうなるか?ということだろう。果たしてお前を今後も夫として扱ってくれるのかどうか・・・」

「それはズルイぞ冬月!シンジの境遇はシナリオ遂行のために必要なことではないか」

「今のユイ君はシナリオなんぞ知らんよ。全部説明するかね。したら離婚は確定だな」

「く・・・、とはいえ使徒は倒さねばならん。まだ使徒戦は始まったばかりなのだ。今ここでゼーレに反逆するわけにはいかん」

「・・・ふぅ・・・確かに・・・たとえユイ君に嫌われても使徒は倒さんとな・・・さすがに今ここでこの責任から逃れることは許されんか・・・」

「ああ、我々に逃げることは許されん。補完計画については使徒戦を続けながら経過を注視していくほかあるまい。どうなるか見極めて後、我らの行動を決めよう」

「ゼーレの『ユダ』が補完計画を失敗させようとしているのか、成功させようとしているかでユイ君達の扱いが決まるな。失敗ならいいが、成功させるためならばここぞという効果的なタイミングでユイ君達を殺すという蛮行をする可能性があるぞ」

「わかっている。最終的にシナリオを元に戻す手段なのだろう・・・セカンド、サードチルドレンの心を壊し儀式の依り代にするにはそれしか手が無い。だが、まだ私に使い道がある内は殺さんだろう。実行するにしても使徒戦が全て終わってからだな。・・・できれば、その前にこちらでユイを保護したいが・・・」

「それは難しいぞ・・・雪広のバックには麻帆良がついている。あそこはなぜかゼーレも手出しできん聖域だ・・・。我らにも一切関わるなと命令が来ている。つまりはただの学園都市では無い・・・詳しくはわからんがな・・・。第三の雪広ビルも市内のど真ん中、襲撃騒ぎなどもってのほかだ・・・。そもそもユイ君達が本当にあそこにいるのかもわからんのだからな。・・・早急に何か手を考える必要あるな」

「麻帆良か・・・」


『麻帆良か・・・』

『左様、我々の計画があの魔法使い共にいつからか知れていたのやも知れません』

『うむ、考えられる。というより『雪広』が出てきた以上それしか有り得ぬわ!』

『あやつら魔法使いは魔法を使えぬ我らを『マグル』と侮り、馬鹿にしているらしい。ふざけたやつらだ』

『しかし・・・あやつらとは不可侵協定を結んでいる。我らの事には関わらぬと』

『さすがに補完計画は見過ごせなかった・・・ということだろうよ』

『ESP部隊を麻帆良に送るか?ウェールズ、ジョンソン、イスタンブールにもだ!』

『待て、あやつらは少なくとも世界各地に800万はいるのだぞ、使徒戦、補完計画の前に魔法使い共と全面衝突になりかねん。それはさすがに金がかかりすぎる』

『補完計画の遅延は看過できん。残念だが全面戦争は避けるべきだな』

『それにあやつらは魔法世界にいつでも逃げ出せますからな・・・意味が無い』

『もう一つの学園都市を使っては?』

『アレイスターか・・・あやつもなかなか侮れんぞ・・・』

『藪を突いて蛇を出すという言葉がある。あやつはあそこに引きこもっているだけよ。外の世界に興味を持たない者をわざわざ出す必要は無い。セカンドインパクト時も結局己の都市を守ることしかしなかったのだからな・・・』

『しかし、極東の島国には我らの頭を悩ます輩が盛りだくさんですな』

『まだ川神院も海鳴もあるぞ。まったく化け物は使徒だけにして欲しいものだ』

『たしかにたしかに』

『管理局は手出しできまい。そもそもここは『管理外世界』だそうだからな』

『偉そうなことだ。だが我らの邪魔をしないのであればそれでいい』

『諸君・・・ともあれ死海文書の記述通り使徒は来た。まだまだシナリオも序章が終わったに過ぎぬ。今後も事態を注視しつつ修正を図っていこうと思う』

つまりは何も決まってないけど後は議長に委任(お任せ)ということである。

『『『異議無し』』』

『全てはゼーレのシナリオ通りに』

『『『全てはゼーレのシナリオ通りに』』』


「ありえないわ・・・」

リツコは自身の執務室で初号機のコアの解析結果を見てそう呟いた。
解析結果ではコアの内部に間違いなく碇ユイがおり、決して魂の一部が残っているなどという話ではないのである。人間まるまる一人分、確かにコアの中に存在している。

リツコがE計画の責任者に就任して以来、数多くの母親達をコアにインストールしてきた。それは全て予備のチルドレンを作るための行為であったわけだが、その長年のデータの蓄積は揺るぎの無いものでもあったのだ。
そのデータを元にすれば初号機のコアには確かにユイの魂がちゃんと存在しているのである。というより、そうでなければあれほど高いシンクロ率が出せるわけがない。

(サルベージの際に存在そのものがコピーされた??ある種レイのように??不可能だわ。あのユイさんには多少の記憶の欠落が見られるけど、個性も知性も感じられた。あれほどまでに完成度の高いコピーなど作りようが無い。そもそもユイさんはレイと違って『ただの人間』なのよ)

「ありえないわ・・・」

科学者としてほぼ敗北宣言ともとれる呟きを再度繰り返した。
ユイの件もそうだが惣流博士の件はもっとわけがわからなかった。
弐号機のコアの中の『精神だけの彼女』、精神が破壊された『肉体だけの彼女』、この二つはパターンを重ね合わせればピッタリと一人の人間で合致している。つまりはキョウコの存在はこの二つの他にはあり得ないのだ。中途半端にサルベージされている分、誤魔化し様がない。しかし、ユイと同じように元気な姿を見せていたキョウコ・・・。

(ありえないわ・・・ありえないのよ・・・この二人がこうして現実に存在していることが、いままでのどのデータで検証してもありえない。マギも全会一致で否定している。どのような条件付けをしても全て否定・・・。考えられるのは前提として入力してあるデータに間違いがあるということだけど??どこに間違いがあるの??今までのシュミレーションでは少なくともコアに関しては問題が出ていなかったのよ。だとしたらエヴァなんて危険なモノの運用なんて夢のまた夢じゃ無い。でも実際には初号機はちゃんとシンクロして問題なく動いている・・・)

リツコは再度データの洗い出しを始めた。昨日から一睡もしていないが、これを止めるわけにもいかない・・・。都合よく初号機はほぼ無傷であるし、零号機の修理についてはまだ予算が下りていない。しかし仕事はいくらでもある。今日の病院でのシンジの検査もマヤに押しつけているのだ。会食にも出なくてはならない。もうあと数時間しか余裕は無いだ。しかし、しかし止めるわけにはいかないのだ。

後日、結局科学者として屈辱の『原因不明・継続調査』という報告を愛する司令に上げることとなる。リツコにとってこのことは大いに凹むこととなり、暫く荒れるのだった。


(ふぇぇぇん、先輩ぃーーーこの人恐すぎですよーーー)

マヤは目の前に立つメイド服を着た狂犬にびびりまくっていた。

リツコに頼まれシンジの身体検査を任されたのは、美少年好きのマヤにとって嬉しいお仕事であった。(魅力が高まっている)シンジはマヤの目にはキラキラ輝いて見える、ドキがムネムネする理想の少年だったからである。それに頭だって良い(らしい)。最高だ。

このまま14年経つと男嫌いの百合三十路まっしぐらだったマヤにとって、シンジはまさに白馬に乗った王子様のように思えた。実際は紫の巨人に乗った鬼畜野郎だが。
ランランと鼻歌混じりで病院にやってきたマヤだったが、そこに恐ろしい狂犬が待ち構えていたのである。

最初は和やかな雰囲気だった。
シンジ君と同じ年の頃の女の子ひとりと自分と同い年くらいの女性とメイドの女性ふたり合わせて4人で病院にやってきたのだ。
雪広あやかに関しては昨日のシンジ君の迎えに来ていたので知っている。あとの二人は彼女の秘書さんとメイドさんなのだろうと思った。
軽く挨拶して、「じゃあ、シンジ君。中でお医者さんの診察を受けて下さいね」と彼を一人診察室に入れた瞬間に女性達の態度がガラッと変わったのである。

雪広あやかは診察室前の長いすに座り、眉をキュッと顰めて真剣な表情に変わると、携帯を取り出してどこぞへと電話をかけると、矢継ぎ早に誰かに指示を飛ばし始めたのだ。無論、ネルフ職員の前なので重要な指示では無いが、彼女が手配しなくてはならない仕事は一般的な事柄にしても山のようにあるのである。

同じように那波千鶴もアヤカの隣に長く綺麗な脚を優雅に組むと、アヤカと同じように電話を始めた。アヤカと違い顔つきは柔らかだが『私の邪魔をするなオーラ』はひしひしと伝わってくる。その変わり様にマヤは度肝を抜かれてしまった。

しかし、この二人はまだいい。別にマヤに被害があるわけではない。
問題なのは診察室の扉のすぐ横に佇むメイドさんである。

シンジ君が診察室に入った瞬間から、その愛らしい笑顔が豹変、目尻は釣り上がり、口元もひん曲がり、同一人物とは思えないような凶悪な顔つきに変わったのである。そしてなにより先ほどからその恐ろしい顔でマヤを睨みつけてきているのである。

(わ・・・私が一体何をしたと言うのよぅカタカタカタ(((;゚;Д;゚;)))カタカタカタ)

涙目のマヤであるが、別段あずみはマヤに含むものなど何も無い。
そもそもマヤごとき1秒もかからず首をへし折れるのだし、そのような女性にいちいち警戒することなどないのである。彼女はただたんに『メイドモード』から『通常モード』に切り替えただけである。

マヤだけではなく、アーティファクトでこの場に隠れている夏美もあずみの豹変にガタガタ震えているのはご愛敬である。

「おい、おめーさっきからなにこっち見てんだよ・・・剥ぐぞ」

「ひぃーーー見てません、見てません、ごめんなさい、ごめんなさい。剥がないで!」

「どうしたの?あずみさん」

「なにもございません、シンジ様(ニコリ)」

シンジが診察を終え、診察室から出てきた。もちろんあずみはコンマ0秒で『メイドモード』に切り替わっていた。先ほどまでの殺気は霧散している。

ちなみに、アヤカと千鶴も何事も無かったかのように椅子から立ち上がって彼の側に来て微笑んでいる。忙しく働いている様をわざわざシンジに見せるような下品な真似はしないのだ。

「どうしたんです伊吹さん??次の検査はどこで行うのですか??」

「は・・・はいっ、えーと、れれれっレントゲン、そうレントゲンです。その後は心電図を取りますね!では、こちらです」

マヤはなんとか立ち直りシンジの案内を続けることができた。
本当はもっといろいろシンジとお話がしたかったのであるが、結局この後も何一つまともに話すことは出来なかったのだった。


病院での検査を無事終え、一行はネルフ本部へと向かうこととなった。
マヤもシンジの好意で一緒にリムジンに乗っていけることになったのだが、シンジがマヤに笑いかける度に向かいに座るあずみが殺気をマヤに放つので、生きた心地がしなかった。

「えーと、ゲートからはネルフ関係者以外は入れないのですが・・・」

車は入門ゲートに到着したが、シンジ以外は当然ながらネルフよりIDカードなど発行されておらず、ここから先には入れない。

「問題ありませんわ。この雪広あやか、いついかなる時でも、誰とでも会うことができます。さあ、皆様参りましょう」

アヤカはそう言うと千鶴とあずみの手を取り、駅改札風のゲートに進んで行く。
するとなんとゲートは彼女たちを待っていたかのようにあっさりと開いた。

「嘘・・・」

マヤが茫然としていると、シンジもその後に続いた。もちろん彼はちゃんとIDカードをゲートに通して中に入った。

「ほら、伊吹さん早く行きましょう。僕お腹が空きましたよ」

「はっ・・・はい。そうですね」

再起動したマヤも慌ててIDカードを通して中に入っていく。

鈍くさくも一緒に入り損ねた夏美は、うんしょうんしょとゲートを乗り越えていった。


さて、いよいよ本日のメインイベント『会食&契約交渉』である。

シンジ達一行はネルフ本部最上階、司令室隣の空き部屋に急遽作られた会食会場に案内されていた。ガラス張りでジオフロントの様子がよく見ることができ、その眺めはなかなかのものだった。

ただ、昼食の準備はシンジの分しか用意していなかったので、とりあえずリツコとミサトの分をアヤカと千鶴に回すことになった。久しぶりにご馳走が食べれる!と喜んでいたミサトは急転直下、大変不機嫌なご様子であった。

ちなみに、なぜアヤカ以下女性陣がネルフ内に入れたのか、これは後ほどリツコが問題に気がつきちょっとした騒ぎになるのだが、現時点ではアヤカのアーティファクト『花盛りのブルジョワ』が効果を発揮しており、誰も不思議に思うようなことはない。

「雪広とまさか那波重工のお嬢さんまでご一緒とは・・・これは驚いたね」

引きつった笑みを浮かべた冬月が最初にそう切り出した。

「当然ですわ、シンジ様は私の婚約者(フィアンセ)、千鶴さんも同じ立場・・・未来の夫の一大事に妻である私たちが同行するのは当然のことですわ」

「ええ、その通りです」

「・・・婚約者・・・かね・・・」

「ええ、もちろんちゃんと私たちの両親とシンジ様のお母様、碇ユイさんとの間で合意したものです。どちらが正妻かは決まってませんが・・・。残念ながらシンジ様のお父様とはご連絡が取れなかったので事後承諾となりましたが、とはいえお父様がシンジ様を預けていた養父母である叔父夫婦様方にはお話は通してあります。お二人とも大変喜んでくれましたわ、今頃は海でダイビングでもして別世界を楽しんでいることでしょう」

「そ・・・そうかね」

実は冬月はリツコからの進言で、買収の疑いがある叔父夫婦や監視役の者達の調査を命じていたのだ。結果は叔父夫婦は今朝の時点で行方不明。監視役の者達は全員捕縛して自白剤を打ち尋問中だが、彼らも実は真面目にシンジの監視をやっていたわけではなかったようで、実のある情報は何も得られなかった。監視役の彼らも明日には海でダイビングを楽しむことになるだろう。

ピーンと張り詰めた雰囲気の中、会食は静かに進んで行く。

(うーん、空気が重いなぁ。なにか楽しい話題はないものだろうか・・・昨日第三新東京市に着いたときは父さんと何か話せれば・・・なんて考えてたんだけど・・・あっそうだ!)

「父さん」

「・・・なんだ・・・」

「そこの葛城ミサトさんは父さんの愛人なの??」

ブーっ!!

リツコとミサトが同時に水を吹いた。

「何の話だ(汗」

「父さんからの手紙に・・・よかった後ろのポケットにまだ入ってて・・・そうそう、この写真が同封されていたんだよ。ほら」

シンジはヒゲにミサトの『ここに注目』水着写真を渡した。

「・・・これは!・・・シンジ、ユイはこれを見てないだろうな・・・」

「え?母さん??・・・見てないよ」

「そうか・・・葛城一尉・・・」

「はっ」

「減棒30%だ」

「えっ・・・でも昨日遅刻で減棒20%3ヶ月って言われたんですが」

「なら合わせて50%にしよう。キリが良い」

「足しちゃった!!ローンが・・・えびちゅが・・・(泣」

「シンジ、それは間違いだ。ユイには絶対に変な事を言わないように」

「うっうん・・・わかったよ。じゃあさ、父さんには今お付き合いしている女性はいないんだね」

「・・・当然だ・・・」

バキっ!!

ミサトが音に驚いて横を向くと、親友の技術部長がコップにヒビをを入れていた。
彼女は何事も無かったかのようにクールに割れたコップを机の下に放り捨てた。

「そうなんだ・・・よかったね、母さん」

『ええ、もし浮気していたらヒゲも髪も剃ってもらおうかと思っていたわ』

突然アヤカの方からユイの声が聞こえてきた。
アヤカはポケットから自分の携帯を取り出し、机の上に置いた。
実はアヤカは会食前からユイに繋いで置いたのである。

「ユイ・・・」

『ユイ君、君は今どこにいるんだね?あのビルに残っているのかい?』

「いえ、冬月先生。今日は今までの仕事の引き継ぎでキョウコさんと一緒に別の場所で作業をしていますわ」

「そうかね・・・(まあ、そんな所だろうと思ったが)」

「さて、そろそろ食事も終わったようですし、交渉と参りましょうか」

アヤカがそう言うと、後ろに控えていたあずみは数枚の書類をアヤカの鞄から取り出し、ネルフのメンバーに配る。

「これは昨日ユイさんがお父様にお願いしたい条項が書かれているものです。内容はたいしたものではありません。ほとんどが当たり前のことばかりですわ」

1.碇シンジを中学校に通わせること。学業はできる限り優先させること。
2.訓練・テストは放課後行うこと、夜8時には帰宅させること。
3.日曜日は休日とすること。土曜日は必要を認められれば拘束できる。
4.使徒出現時は上記の項目には縛られないが、体調面の配慮をすること。
5.母親である碇ユイと一緒に暮らすこと。
6.住居は碇ユイが用意する。碇ユイの現住所である第三新東京市雪広ビルとする。
7.碇シンジがパイロットとしてエヴァンゲリオンに乗り込み、敵(呼称:使徒)と戦闘をネルフ指揮の元行った場合、その被害の一切を免責すること。
8.被害(人的・物損)が出た場合、ネルフが責任をもって謝罪・弁済すること。
9.ネルフの行う全ての作戦行動について、その費用はネルフが支払うこと。
10.碇シンジの地位は公的な地位を関係部局に申請すること。
11.給金を規定どおり支給すること。手当等も他のパイロットと同等にすること。
12.雪広・那波両企業グループの仕事が入った場合はこちらを優先すること。

「・・・最後の項目以外はこちらが用意している契約書ともほぼ変わりがないので飲んでも良いのだが・・・」

「技術部長として意見させてもらいますと、我々が行うテストは事前準備が必要なものが多く、例えばエヴァのシンクロテストで最低でも3日かかります。起動テストとなるとそれ以上。にもかかわらずもし当日シンジ君が来られないというのは困ります」

「では、何日前に通告すれば大丈夫なのですか?」

「・・・一週間前ならかまいません」

「・・・パーティなどは問題ありませんが、シンジ様の決済が必要な事案もありますから・・・そうですね、ではネルフ内にシンジ様の個室を要求します。そこに人を常駐させることを許可して下さい。その者を通じて連絡を取り指示を仰ぎますわ」

「子供が何を決済するって言うのよ、偉そうに」

「失礼ですが、シンジ様は正真正銘の私たちの婚約者です。それは将来両企業グループを率いる存在ということ。すでにシンジ様はいくつかの大きなプロジェクトで陣頭指揮を執って頂いております。早晩それはあなた方にもわかると思いますが、シンジ様はなにかと忙しい身の上なのですわ。昨日散々遅刻して迷惑をかけた、時間のありがたみを知らないどこぞのズボラなおひとにはわからないことでしょうが」

「なにおぅ!ってひいぃ!」

ミサトはアヤカの挑発にのって立ち上がり、何か文句を言ってやろうとしたところ、いきなりもの凄い殺気がミサトに放たれた。
慌ててその殺気の元を見ると、先ほどまで静かにしていたメイドが信じられないほどの凶悪な表情でミサトを睨んでいる。
なまじ格闘技をかじっている一応軍人のミサトである。野生の勘がこのメイドのヤバさ、とてもではないが自分とは桁が違う強さを感じ取ることができたのである。
というか、今までミサトが戦自で出向先のドイツで見てきた誰よりもこのメイドは大きく見えたのである。まさに化け物である。使徒なんかより強いんじゃないかとさえ思えた。

「いかがしましたか?」

「イエ・・・ナンデモゴザイマセン・・・」

「・・・うっうむ。もちろんパイロットの控え室は用意しよう・・・。しかしだね、ネルフも国連組織、やはり関係者以外を常駐させるというのは・・・」

「では・・・ネルフの関係者の方でもかまいません。パイロット専属の事務員を一人用意して下さい。その人に私たちからの連絡を取らせるようにしていただければ結構ですわ。ただし、ここにいるメイドのあずみさんはシンジ様直属のメイドです。この方だけは一緒にネルフについて行き奉仕させることは認めて頂きますわ。そうでなければこの話お受けできません。ですよねお母様」

『ええ、あずみさん(?)であれば安心ね(アヤカさんを信じるわ)』

アヤカの提案はかなりの譲歩のように思える。

(どういうことだ??別にそれならば外部のやりとりをそのメイドにさせればいいじゃないか・・・そうか!・・・わざわざシンジ君のネルフ内での外部接触を我々に開示することでこちらの動きを多少なりとも操ろうとしているのだな・・・しかし、我らの方も彼らの情報を得ることができる。彼女は我々に情報戦を仕掛けてきているのか・・・)

「どうする、碇」

「かまわん。問題ない」

「あの、一つだけいいですか?」

今までずっと黙っていたシンジが手を上げる。

「ああ・・・なんだね、シンジ君」

「パイロット専属の事務員さんですが、『若い女性』でお願いします。今日案内してくれた伊吹さんみたいな・・・『可愛い』人がいいな!目の保養になるし、やる気も出るし」

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」


さて、アヤカ達が交渉をしている最中、隣の司令室には姿を隠した夏美がいた。

「よいしょっと、これで全部かな。あー疲れた」

夏美はアヤカがイザベラに頼まれていた盗聴器を司令室に仕掛けていたのである。
イザベラからすればもし可能であれば・・・というくらいであり、危ない場合は無理しなくて良いとも言われていたのだが、都合良く夏美がこの世界に召喚されたため、ならばと彼女に任せたのである。盗聴器は使い捨てで2~3ヶ月で切れる薄いカード型で両面テープで貼り付けるどこでも売っているものだ。別にすぐ発見されてもかまわない。

今のところ地下に下りるケーブルカーの座席の下、会食会場に昇って来る前に寄った女子トイレ、そしてこの司令室である。通常であれば司令室にはカードが無ければ入れないのだが、ヒゲが出てくる際、夏美しては奇跡的に素早く動き見事中に入れたのである。

「それにしても、こんなに広い部屋なのにデスクしかないとか・・・。応接セットくらい置けばいいのに・・・ってどうやってこの部屋からでようかなー。廊下には黒服着た恐い人がいっぱいいるし・・・まあ、あずみさんの方が数十倍恐かったけど・・・まっいいか♪」

夏美は特に気にしないことにしてさっさと部屋の外に出る。

部屋の外で警備していたSP達はいきなり誰もいないのに扉が開いたので驚いたが、中を調べても特に異常はなかったため、やれやれ扉の誤動作だろうと判断した。もちろんその報告はヒゲやろうじんにはしなかった。


「はー終わった!とりあえず、これで明日から正式にネルフのパイロットだね」

「ええ、階級も特務三尉でそうですし、国連の尉官であればいろいろと使えそうです」

ネルフとの契約交渉が終わり、シンジ達一行はネルフを出ることとなった。

早速、作戦課長であるミサトがミーティングをしようと言ってきたが、飽きて帰りたくなっていたあずみが死ぬほど(文字通り)睨んで黙らせた。彼女も今朝召喚されたばかり、病院とネルフ本部では一応真剣に護衛していたので少し、ほんの少し、疲れていたのだ。

「しかし・・・シンジ君。どうしてネルフの事務員さんを若い女性で頼んだの?目の保養って言っていたけど・・・実は目的は別にあるのでしょう?」

千鶴がシンジに問いかける。いやそう言われても、本当に若くて可愛い女性だったら『テンション上がるな』と思って言っただけなのである。しかし、なにかそのままそう答えるのは間違いなのだろう。それくらいはわかる。

「・・・・・・えっと、本当は伊吹さんに来てもらいたかったんだ。あの人ならなんだかわかりやすそうな人だし・・・僕にも興味を持っていたようだったから、後々なにかの役に立つかなーと・・・でも、リツコさんの副官ってことでダメになったけどね」

「・・・そうですね。あの人、あんな感じですけどかなり深いところまで足を突っ込んでいるみたいです・・・。確かチートシステムの召喚画面、別世界のリストに彼女の名前が入っていたと思います・・・。そう思って途中ユイさんにも聞いてみたのですが・・・。とにかくリストに名前が出ているということは、この世界においてもかなりの重要ポジションに彼女がいるということは間違いないでしょう。さすがシンジ様ですわ」

「いやーそれほどでも(よかったばれなかった)」

((ばればれだけど、そんなところも可愛い(わ)(ですわ)))

(へーさすがシンジ君!すごいなー)

(はいはい、あー腹減った。ちっ、煙草吸いてぇー)


「七乃!!このピタゴラスイッチを見てたもれ、すごいのじゃー。パッコンパッコン玉が落ちるぞ!おお、次は紙芝居が始まったのじゃ!!『おじゃるまる』じゃとーーこのものはどこの名家のものじゃー!!」

(ああ、美羽様・・・今日は一日中この『てれび』を見て遊んでばかり、このだめだめっぷりが本当に可愛いですーああ、また鼻血が・・・)

いや、あなたが一番ダメダメでしょと、一足早く仕事を終えてお茶を飲んでいたエリナがテレビ前のお馬鹿主従を見つめながらため息をついた。


第参話 鳴らない、電話 Aパートへ続く


<チートシステム補足『コンボ』について>
プロローグでなのは(19歳)を300万ポイントと書いてます。
前話のラウラ+ISが8000万ポイントなのになのは低すぎじゃね??
と思われたかと思います。これは作中では今後も書かないので補足しますと、
前話で出た『ヒロイン達の人間関係』、所謂『コンボ』システムが関係しています。
では実際になのは(19歳)を召喚するとします。
となると、わかると思いますが即座にフェイト(19歳)を召喚する必要があります。
フェイトが召喚された場合、ほどなくキャロも召喚することになるでしょう。
次になのは・フェイト二人の友人であるはやても近いうちに召喚することををせがまれることになります・・・。
はやてを召喚するとヴォルケンリッターのシグナム、シャマル、ヴィータそしてリインフォースIIも同時に召喚することとなります。
なのはは自立しているので高町桃子、高町美由希は呼ばなくてもギリOKとしても、アリサ・バニングス、月村すずかは早晩呼ぶ必要がでてくるでしょう・・・。
つまり、シンジ君がなのはを呼んだ場合、リリカルなのはの主要な人物をほとんど呼ばなくてはならないという仕組みになっているのです。
ざて、今あげた人物だけで計算すると『3800万ポイント』です。
序盤ではポイントが足りませんし、今後もなかなか容易には出せないポイント量です。
(わざわざプロローグで出したのは当時友人を引っかける罠のつもりでした)
??あれ、こんだけ呼んでもラウラの方が高いじゃねーかコラ!と思われるでしょう。
彼女の場合は『IS』が高いのです。というかこのISって設定では地球上のどの兵器より強いんですよ(汗
ISだけでもしかしたらゼーレに勝ててしまうかも(震え声)
(ISを纏った戦士より生身の織斑千冬の方が強いかもとか・・・千冬ぇ)
なので彼女達の出番はもう少し後となります。ゆっくりお待ち下さい・・・。

『コンボ例』
ネギ魔 明日菜、このか、刹那コンボ
恋姫 華琳、柱花、春蘭、秋蘭コンボ
真剣 桃代、一子コンボ・クリス、マルさんコンボ
バカテス 瑞希、美波コンボ
などです。ISは一夏ハーレムで女性陣通しの繋がりが弱いので必要なし?
ゼロ魔のヒロイン、ルイズはキュルケ・・・だが必要ないような気もする。
とある科学では美琴単独であれば不要、黒子を先に呼んだ場合は美琴が必要です。




[32048] 第参話 鳴らない、電話 Aパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/15 12:14
エヴァちーと 第参話 鳴らない、電話 Aパート[改訂版]


「ノゾミおはよう・・・今日はとてもいい天気よ。洗濯日和・・・だから3日分まとめて洗濯機回しちゃった。最近家事サボってたからなぁ、へへ・・・そうだ、今日はノゾミが好きなハンバーグ作ろうか!・・・・・・ねぇノゾミ・・・だから早く起きて・・・お姉ちゃんに笑って見せてよぅ・・・」

ピッピッピッ、、、と人工呼吸器の規則的な作動音が静穏な病室に響く。
病室のほぼ真ん中に置かれたベッドには小学校低学年程の幼女が全身包帯に巻かれ、痛々しい姿で眠っていた。
10日ほど前のあの日、崩れた瓦礫の下敷きになり重傷を負った彼女は、未だ意識不明の重態であった。

幼女・・・洞木ノゾミの姉である洞木ヒカリは目に涙を溜め、唇を噛みしめた。
なぜ、妹がこんな酷い目に遭わなくてはならないのか・・・。
どうして、あの日、自分はノゾミの所へ助けに行かなかったのか・・・。

もちろんヒカリに罪など無い。彼女はクラスの委員長として立派にクラスメイト達を学校付属のシェルターに誘導し、警戒警報が解除されるまで大人しくジッとしていただけだ。
そして警報が解除された後、シェルターから出て帰宅した。しかし、妹のノゾミがいつになっても家に帰ってこない。心配で姉のコダマと一緒に一晩中町を探し回ったのである。

行方不明の妹の所在が判明したのは次の日の昼過ぎ、父からの電話だった。
姉と一緒に急いで病院に駆けつけ見たものは、変わり果てた妹の姿だったのである。
ノゾミは国連軍のN2爆雷に巻き込まれたのだ。

といっても、ノゾミが逃げることになっていたシェルターが破壊されたわけでは無い。
彼女はシェルターにクラスメイト達と避難をする際、友人だった鈴原サクラがいないことに気がつき、担任の先生の制止を振り切ってサクラを探しに出てしまったのである。
そして巻き込まれた。

件のサクラは後に無傷で助かったのだが、ノゾミはこの有様となってしまったのだった。
今回の件、誰が悪いわけでも無い。かわいそうだが、一番悪いのはノゾミだ。
もしくは先生だろうか・・・。しかし、先日お見舞いに来てくれた担任の先生は憔悴しきっており、土下座でヒカリ達に謝ったのだ・・・。いくらなんでもその上で責めるのは無理だった。

父が勤めているネルフからも見舞いがあり、司令部の青葉さんというロン毛の人と鈴原整備部長・・・サクラの父親が来てくれた。入院・治療費は全額ネルフが出してくれるそうだ、まさかそこまで対応してくれるとは思ってもみなかった。

「学校・・・行かないとね・・・さすがにクラスの委員長がこれ以上休んじゃダメだよね・・・ふふ、ノゾミに叱られちゃうな・・・いつも口うるさく休まず学校に行けって言ってるんだし・・・」


シンジは己の情けなさをつくづくと感じていた。
彼は第三新東京市第壱中学校、2-Aの教室、自分のデスクで思い悩んでいた。

(ああ、ああ、どうして僕はこんなにもヘタレなんだ・・・)

シンジが第三新東京市に来て1週間が経つ。
来た日の翌日の朝に七乃からお口のご奉仕を受けて以来、その日の夜はアヤカ(水着着用)と一緒にお風呂に入って洗ってもらったり、次の日のネルフ初日の夜は千鶴さんにマッサージをしてもらったり、夏美ちゃんに耳掃除してもらったり、さらに翌日はエリナさんの大人な誘惑(目覚めのキス)を受けたり、あずみさんに甲斐甲斐しく朝食を食べさせてもらったりしていた(口移し有り)。

しかし、悲しいかな。精神力がこれでもか!と高まっているシンジでも地の性格は直らないのか、自ら彼女達に起こす行動は『FSS(太ももスリスリ)』が限界なのである。彼は完全に受け専だったのだ。

女性達に自ら近づいて来てもらい、あれやこれやしてもらうのは良くても、自分から何かをヤルとなると途端に手が止まってしまう。彼女達に嫌われるわけがない、大丈夫!胸を揉め!と頭の中の神様が囁くのだが、できないものはできないのだ。これが草食系男子(オレラ)の悲しみというものか・・・。

こういう場合は「とりあえずソープに行け」というのが俺たちの北方謙三先生の言葉なのだが、シンジ君のソープ通いを彼女達が許すはずが無く、そもそも彼はまだ14歳だ。だから、別に無理してこの年齢で背伸びする必要などもないのである。

ちなみに、シンジに性的な行為をしているのは七乃だけだった。
彼女は所謂『18禁ゲーム』原作の世界の住人であり、そのへんの基準が緩かったのだ。
アヤカ以下その他の女性達は『一般向け』原作世界のヒロイン達であり、七乃(フ○ラ)=夏美(耳掃除)で実は彼女達に取って同じくらいのご奉仕水準だったのである。

七乃がそう言う行為をしていることを、他の女性達がたとえ知っていたとしても、そう簡単にあれこれとエッチな行為が出来るわけが無いのだ。しかし、最初の七乃が基準になっているシンジからすると、他の女性達が今ひとつソフトなのは自分が情けないから・・・と凹んでしまうのである。まあ、さすがにアヤカ達もシンジのそんなくだらない悩みがわかるわけがない。


さて、そんな青い性春の悩みを頭を抱えてうんうん唸っているシンジを、クラスメイト達は様々な視線で見つめていた。

先週転校してきたばかりのイケメン転校生。これだけなら彼は女子からは好奇心を、男子からは敵愾心を持って、とりあえずは受け入れられただろう。だが、この転校生はただの転校生では無かったのである。

まず、その登場が凄かった。メイド姿の女性に豪華な御輿を人力車のように引かせて登校してきたのである。その後ろをリムジンが後走し、そしてそのリムジンからは3人の美少女が出てきたのである。そして御輿から降りたシンジの右腕をアヤカが、左腕を千鶴が、その豊満な胸を当てるようにして組み、一緒に校舎の中へと入ってきたのである。
(夏美はその後ろを隠れるようにして歩いていたが)

こうして一挙に4人の転校生を受け入れた第壱中学であったが、一体転校生達は何者なのか?という疑問が学校中に溢れた。ほどなく金髪のハーフ系美少女が雪広財閥の娘であり、明るい茶髪のスタイル抜群大和撫子が那波重工の娘、そばかす・赤毛・クセっ毛の少女が一般庶民であることがわかった。

そして、そんな彼女達を侍らしている少年が彼女達の婚約者であり、さらにはネルフのパイロットであることもあっさり知れ渡ってしまったのだった。学校中大騒ぎである。

さらに酷いのは「こんな可愛い子達を独占しやがってふざけんなー」と上級生の男子生徒が廊下を歩いていたシンジに掴みかかるという事件が起きたのだが、彼のメイドが窓から現れ、あっという間に男子生徒を何処かへ連れ去っていった。

放課後、その男子生徒は全裸に剥かれ、校庭の鉄棒に逆さ吊りされていたのが発見され、以降男子生徒の誰ひとりとしてシンジに近づく者はいなくなってしまったのである。

まあ、休み時間の度にあずみが教卓の中や天井、隣の綾波レイ(不在)のデスクの下から現れてお茶を淹れてくれたり、3年の教室からアヤカたちが頻繁に遊びに来てくれたりしているので寂しくはなかった。まあ、班分け授業とか、体育の時間とかにボッチにされてしまっているのだが、悲しいかなこういう目に遭うのは以前の学校で慣れている。

というかクラスメイトから無視されているというのは彼にとっていつものことであり、逆に他人と話さなくていいのは気楽だなと思っていた。彼は自分の家族(ハーレム)とだけ仲良く、楽しく生活できればそれで満足していたのだ。しかし、それは彼にとって都合の良い人間関係でしか無く、全員がYESマン、優しい女性達しかいなかった・・・それでは彼の人間的な成長を阻害してしまうのも事実であった。

アヤカ達はその弊害に気付いてはいたが、特に現状問題は無く、それを正そうとも思わない。
彼女達は『神の洗脳』を受けており、シンジのことは全て肯定的に行動することが定められていた。つまりはシンジの事をいくらでも甘やかしてしまうのだ。

シンジの心が成長すれば、彼女達もまた変わることが出来るのだが(といっても好意的・彼に服従するという事は変わらないが)、今はまだそのような段階ではなかったのだ。

さらにマズイのがチートシステムで自身のレベルを簡単に上げていることだ。

精神レベルを上げたことで『他人の気持ちをよく考えない自己中』な未熟な精神が、それを基準にレベルアップしていったため、他人にいくら批判をされようと、煽られようと全く気にしないという『訓練されたvippar』のような精神構造になっていた。

今、例えば14年後のアスカがここにいたとして、シンジ君に酷い罵詈雑言を言ったとしよう。しかしこのシンジ君では「ふーん」の一言で終わりである。彼女の言葉の意味を考えようともしないし、反省もしない。ましてや堪えることもないのだ。

つらつらと何が言いたいのかと言うと、今から学校にやってくる少女にとってその態度は許せないものとなるのである。


「・・・おはよう」

「おはよう、洞木さん」

約一週間ぶりに洞木ヒカリが3時間目の休み時間から登校してきた。

「おぅ・・・おはようさん、いいんちょ・・・」

「鈴原・・・うん、おはよう・・・」

「ああ・・・あの・・・今回のことはスマンかったな・・・」

「・・・ううん、妹さんが悪いわけじゃないわ・・・」

「・・・」

トウジは複雑だった。視線の先にはメイドにお茶を淹れてもらい優雅に休憩している『ネルフのロボット』のパイロットがいる。
彼は自分の妹を助けてくれた命の恩人である。シェルターに入り損ねた妹を彼は己の危険を顧みず、さらには上の命令に逆らって助けてくれたのだ。まさに男の中の漢だった。

しかし、運悪く目の前の少女の妹は瓦礫の下敷きになり怪我をしてしまった。

それを思うとシンジにもっと上手く戦えんかったのか!!と怒鳴り散らしたくなる。
だから、シンジが転校してきてこの一週間、トウジは複雑な思いを抱え、シンジに礼を言うこと無く一切の接触をしていなかったのである。

「・・・あの・・・メイド(?)さんがいる人って転校生??」

ヒカリがようやく最前列のシンジ達に気がつきトウジに尋ねる。

「ああ、そうだよ。先週転校してきたんだ。あのロボットのパイロットなんだってさ」

トウジの横の机で戦闘機の模型で遊んでいた相田ケンスケがトウジの代わりに答えた。

「パイロット・・・って、あの戦いの時の?」

ヒカリの目つきがやや険しくなる。彼女からすれば化け物も国連軍のN2もネルフのロボットもこの町で暴れた迷惑な連中ということには変わりがないのだ。そして、ヒカリは彼がトウジの妹を助けた人物だとは知らなかった。

「ああ、そうだよ。いいよなぁ・・・俺もパイロットなりたいよ・・・」

ケンスケはシンジと是非お近づきになりたかった。あのネルフのロボットの情報も欲しかったし、彼の婚約者達の写真も撮って売りたかったからだ。しかし、転校初日にあのメイドに小便を漏らすほどの殺気をぶつけられて以降近づくのを諦めていた。あずみからすれば「勝手に写真を撮るなこの童貞野郎」くらいの軽い睨みだったのだが、命のやりとりなどしたことも無いカメラ小僧には少々お灸が過ぎたようである。

「そう・・・」

ヒカリはそう心なく呟くと自分の席に戻っていった。
トウジはその様子をただ見つめることしかできなかった。彼はヒカリとシンジとの板挟みで勝手に苦しんでいたのである。別段そのどちらもトウジの苦しみなど知るよしもなかったのだが・・・。

「しかし・・・恩人とは言え、ちゃらっちゃらした奴やのう・・・」

「ああ、パイロットっていう人種はいつ死んでもおかしくない・・・だから、あんな『刹那的』な生活を好むんだよ。例えば女に溺れたり、金遣いが荒かったりとかね・・・くぅ格好いいなー!!」

「・・・さよか・・・そうやな・・・いつ死んでもおかしゅうないか・・・」

トウジはケンスケに気のない返事を返したあと、再度ヒカリの方へ視線を移動させる。
彼女は普段人付き合いが良く、周りの席の女子達と笑って話しているのだが、今日はただジッとデスクに座っているだけだった。トウジには彼女が必死に何かに耐えているように見えた。


昼休み、ヒカリはシンジの元へ向かった。

「碇君・・・でいいんだよね」

ポケーッと未だにどうやってアヤカ達とエッチなことをするか考えていたシンジは声をかけられたことで漸く現実に戻ってきた。

「へ?ああ・・・うん。そうだよ。碇シンジ。君は?」

「私は洞木ヒカリ・・・このクラスの委員長をしてるの」

「洞木ヒカリ??」

シンジはどこかで見たような聞いたような気がした。はて何でそう思ったのかしらんと己の記憶を探る。

(ああ、そういえば、母さんの世界のリストを眺めていたとき『洞木ヒカリ』の名前があったんだっけ・・・伊吹さんのときにアヤカさんが言ったように、この世界の重要人物は母さんの世界でも同じくらいの重さがあるんじゃないかってことで見るようにしてたんだよな・・・。じゃあ、この子も何らかの重要な役割をもった女の子ということになるのかな??)

はて、こんなただの中学生がこれから使徒戦のような物騒なコトに関わってくるのだろうか?隣の席の綾波さんは同じパイロットだから仕方が無いにしても・・・。

(名前が灰色になってて詳しいプロフィールが読めないのが辛いところだよね)

「??何??碇君、ボーッとして・・・。あの、、、申し訳ないけど一緒に屋上に来てもらえないかな。君に話があるの」

「え?ああ、いいけど・・・。あずみさん、僕は大丈夫だからアヤカさん達に後で屋上に来るよう伝えてください」

「・・・了解しました(ペコリ)」

シンジとヒカリは屋上へ向かう。その様子を見ていたトウジ(+ケンスケ)もヒカリが心配になり二人の後を追った。


パチン

二人で屋上に来てすぐ、ヒカリはシンジの頬を張った。

シンジは屋上に上がって来るまでの道のりで、さすがにヒカリの様子が尋常では無いことに気がついていたので、空気を読み甘んじて彼女の平手打ちを受けた。

「ごめんなさい。碇君が悪いのでは無いと頭ではわかっているわ。でもどうしても我慢ができなかったの!!どうしても許せないのよ!!」

「・・・その理由を教えてくれない?」

「妹が・・・私の妹があの日瓦礫の下敷きになって大けがをして入院しているの。まだ意識不明で目を覚まさないし・・・あんなに元気だったのに・・・」

「(何のことだ?僕が戦った時、辺りには『さくらちゃん』しかいなかったと思ったけど・・・ビルだって壊してないし・・・というかこれ言いがかりじゃない?あー叩かれて損したなぁ・・・)それで、その瓦礫って何が原因で落ちてきたの?」

「・・・国連軍の爆弾だってお父さんが・・・」

「(はい、言いがかり乙、なんだネルフですらないじゃないか。まあ、一応僕はネルフの特務三尉だから国連軍に関係があると言ったらそうだけどさ)・・・シェルターには入ってなかったの?」

「あの子・・・友達を探すためシェルターに入らなかったの・・・」

「(はぁ??シェルターにすら入ってないのかよ!気の毒だけどそれ自業自得だよね。妹さんの年齢にもよるけど・・・その場合悪いのはその場の責任者だよね。学校の先生とかさ・・・。それも気の毒だけどね・・・)ふーん・・・」

シンジの顔はまさに( ´_ゝ`)であった。

もちろんヒカリの妹に関してかわいそうだとは思うし、同情する。
しかし、自分が戦った際に巻き込まれて怪我をしたのだったら謝罪もするが、それ以前に別のところが落とした爆弾で怪我をしたのを自分に当たられても筋違いである。

ヒカリがもうちょっと美少女であれば多少は心も動いたかもしれないが、すでに『ソバカス素朴美少女』は夏美がいるためシンジの心の触手はさほど動かなかったのだ。

シンジからすれば地味な少女がヒステリーで突っかかってきているに過ぎず、迷惑この上なかった。

ヒカリを庇うと、彼女はこの10日間ろくに食事をとらず、睡眠不足で目の下にクマを作り、家と病院の往復で憔悴していた。普段の明るく元気な彼女の魅力が消えてしまっているのである。

「おい!碇!!なんやその顔は!!」

そんな二人の様子を覗き見ていたトウジは我慢できず、飛び出してきた。

「鈴原!」

「・・・(誰?)」

「碇!お前には感謝しとる。お前がわいの妹を助けてくれた男の中の漢(おとこ)やっちゅうのもよーくわかっとる。今いいんちょが碇に言うとることも言いがかりやろうと思う。思うけんどな・・・碇の器(うつわ)やったらいいんちょの悲しみを受け止めてあげられるんちゃうやろか!」

「・・・・・・(え?誰の妹だって?ああ・・・サクラちゃんのことか。そういや鈴原って言ってたもんな・・・。というか何で僕?先週転校してきたばかりの僕に何を求めてるんだよ。これが言いがかりだってわかってるんなら、こいつはお前が受け止めろよ、友達なんだろ。僕に迷惑かけるなよ、地味子と糞ジャージのくせにふざけんな」

「・・・碇・・・声に出てるよ」

トウジの後ろに着いてきていたケンスケが呆れて指摘する。

「もういい、私が馬鹿だった。碇君、迷惑かけてごめんね、じゃあ」

ヒカリはシンジに背を向けると屋上から走り去って行った。
どうやらヒカリは泣いていたようだった。

「おんしゃーふざけやがって!!」

「おわっ危な!」

どうしたことかいきなりトウジが殴りかかってきたため、慌ててシンジはその拳を受け流し、足を引っかけて転ばせる。そしてまだ起き上がって反撃してきそうだったので、彼の後頭部をサッカーボールキックで打ち抜き昏倒させた。

「びっくりした・・・これがキレる十代ってやつか」

「・・・いや、まあ、そうなのかもしれないけど・・・碇は容赦ないな」

「そうかな??・・・あずみさんだったらアキレス腱を切るか、首の骨を折るくらいのことしそうだけど・・・」

「首を折ったら死んじゃうよ・・・でも、あの人ならやりかねないな・・・ああ、僕は相田ケンスケ、知っているかどうかわからないけどクラスメイトだ」

「ああ、うん。見たことはあるよ。よろしく」

「ああ、よろしく・・・。俺、将来戦自に入るか戦場カメラマンになりたいんだよ。だから碇にもいろいろ話が聞きたいんだけど・・・いいかな。俺は委員長やトウジの件に関しては碇の方が気の毒だと思うし・・・いちいち民間人に謝ってたら戦士は戦えないしさ」

「そう言ってもらえるとありがたいよ」

「うん、ああ、まあ、こいつは俺が保健室に運んでおくよ。だからさ、すまないけど、あそこで俺を睨んでいるメイドさんを落ち着けてくれないかな。また小便チビリそうなんだ・・・」

ふと見ると、アヤカ達が屋上の入り口に勢揃いしていた。

「ああ、ごめんごめん。あずみさん!もう大丈夫だから『メイドモード』に戻って!」

シンジがヒカリを泣かせ、トウジを蹴りで昏倒させたことはすぐクラスに広まった。
人望が高く世話になった人も多かったヒカリとスポーツが出来、それなりに人気者だったトウジの二人に非道(笑)を働いたことは許されざることであり、こうして、シンジは転校一週間目にしてクラスの中で完全に孤立(ケンスケ除く)することになったのである。


<<原典破壊(小)ボーナス>>
『君はトウジ君ではなくヒカリちゃんにビンタされた。所謂神の悪戯である。めんごめんご。お詫びに30万ポイント進呈する。』


「鈴原・・・」

「・・・いいんちょか・・・」

放課後、ヒカリはノゾミの入院している病院に行く前に、シンジによって昏倒させられ保健室で寝ていたトウジを訪ねた。

「大丈夫?」

「おう・・・あの阿呆、ひとのあたまかち割る勢いで蹴りよってからに・・・おかげでどでかいたんこぶができたわ・・・でも、大丈夫や。丈夫なのがわいのとりえやからな」

トウジはヒカリの前で強がってみせる。

「・・・ありがとう」

「なんで、いいんちょに礼を言われんといかんのや」

「怒ってくれたんでしょ・・・私のことで・・・何で?」

「・・・碇にむかついたんは・・・いいんちょがあいつに馬鹿にされたからやな・・・でもケンスケに言われたわ。碇の言い方は問題あるけんど、やっぱりこっちが悪いってな。いいんちょの妹が怪我したんは碇のせいやない。そもそも碇が所属してるネルフがやったわけでもない・・・あいつはもし目の前に助けられる奴がいたら、わいの妹を助けたように、いいんちょの妹があの日もし目の前にいたら助けてくれた奴やってな・・・いいんちょやわいがあいつに当たるんは間違いや、こっちが全面的に悪い・・・いや・・・結局はわいがわるかったんやろな・・・」

「なんで鈴原が悪いの・・・一番悪いのは私でしょう」

「違うんや・・・碇も言うとったやろう・・・先週転校してきたばかりの奴に・・・そもそもいいんちょは碇に今日初めておうたんやろ、そんな奴をいいんちょの悲しみのはけ口にするんは間違いなんや。ほんとなら今まで一緒にやってきたわいたちクラスメイトが・・・さらに言うたら、事情を知っとったわいがいいんちょの器(うつわ)にならんといかんかったや・・・ごめんなぁ」

トウジはヒカリに頭を下げた。ヒカリはトウジのこの言葉に戸惑った様子だったが、、、

「・・・ごめんね、鈴原・・・私、自分勝手だったね・・・いくら妹が怪我したからって関係ない人に当たったりして・・・鈴原にケガまでさせて・・・私こそごめんなさい・・・うぅ・・・」

ヒカリは泣き出した。トウジは頭を上げると優しくヒカリを抱き寄せ胸を貸した。
壱中の鈍感王トウジもこうして立派に男を見せることができたのである。

(・・・ま、二人が立ち直るのならなんでもいいけどさ・・・碇にしちゃ迷惑な話だよ。これじゃ二人の当て馬もいいとこじゃないか。まあいいや、今日はさっさと帰るとするかな・・・)

トウジの様子を見に来たケンスケは二人に気付かれないよう、静かにその場を離れたのだった。


放課後、シンジはあずみの御輿に引かれてネルフ本部へ通うのが日課となっていた。

最初の日、ゲートまで出迎えに来ていたミサトは、御輿に乗ってやってきたシンジにドン引きしたのだが、メイドのあずみ恐さで「へぇーなかなかコセイ的な乗り物ね」くらいしか言えなかった。

ミサト率いる作戦課では、まずシンジの身体能力を試すことにした。
彼の過去の調査書では運動は苦手、平均より相当低いとの見解だったのだが、すでにこの調査書はなんの宛てにもならないと評価されており、改めて調査することになったのである。

その結果、それまでいくらレベルを上げてもあまり使う機会がなかったシンジも心底驚くほどの身体能力だった。100メートルを10秒代で走り、5kmの持久走を10分代で走る。それもほとんど疲れを見せず流して走ってだ。ネルフ本部の周回コースを一緒に走ったミサトだったが周回遅れの無様な姿を見せるに終わった。
実際にシンジの記録はジュニア記録並だったのである。

格闘技に関しては、もちろんシンジは空手も柔道も習ったことなど無い。
なので、この分野に関してはミサトにも一日の長があった。しかしそれも最初うちで、次第にミサトの動きに慣れてくると、今度はミサトが綺麗に投げられる始末である。

拗ねたミサトが訓練を保安部の男達に任せ、リツコの執務室へ愚痴りに行ったが、リツコもコアの解析の件で機嫌が悪かったので、早々に追い出されることになった。

結局、たった1週間ほどで素晴らしい上達を見せ、シンジの才能に惚れこんだ保安部の部長さんがウチの娘を嫁にどうだ?と言い出す始末だった。

日向が担当した座学でも、シンジは卓越した才能を見せた。
知力が高まっているシンジにとって、教本など一度読んだら全て理解してしまう。
作戦課が用意した戦闘・戦術の教本を1日で読み理解してしまうと、早々に彼の仕事が無くなってしまった。
本来は1年以上かけて行う予定の講義であり、日向の報告を受けたミサトはそれが信じられず、ならばと人事課に頼んでネルフの採用試験をシンジに受けさせた。

人事部から日向の持ってきた教本以外のテキストも貰い2日間勉強(といっても読んだだけ)してテストに臨み、見事満点の成績をたたき出したのである。これには人事部長さんがウチの姪を嫁にどうだ?と言い出す始末だった。


「・・・それで・・・私に何を言いたいわけ?」

「生意気にもシンジ君が凄すぎて、もう教えることが無いのよ!!」

「いいじゃない・・・そんなに優秀なら・・・彼を技術部で借りたいわ、こっちは猫の手も借りたいくらい忙しいの。作戦課で彼の訓練の必要がないなら、こっちのテストを前倒しにするしね・・・。そういうことで手配しとくわよ」

「えーーー!せっかく、レイやアスカの訓練を見直して、『碇シンジ育成計画』を作ったのに・・・」

「作ったのはあんたじゃなくて日向君以下作戦課でしょうが・・・」

「でも・・・スゴイですよね・・・今やってる戦闘シミュレーションでもレイどころかドイツのセカンドチルドレンの成績をも超えてますよ!シンジ君ってまさにエヴァに乗るために生まれてきた!って感じですね」

マヤが頬を染めて嬉しそうにシンジのシミュレーションの様子を眺めている。
その成績はとても今週初めて訓練に臨んでいるとは思えないものだ。

「・・・まあね・・・彼が喜んでエヴァに乗ってるなら結構なコトよ」

「器用なのね・・・生きるのが・・・」


最近、綾波レイは一人でいることが多かった。

もとより、彼女は他人に興味が無く、一人でも平気だったのだが、それでもヒゲ司令との絆だけは大事にしていたし、彼に深く依存していたのだ。

しかし、使徒襲来後、サードチルドレンがネルフに来て以来、ヒゲが彼女の元を訪れることはなかった。ヒゲもユイが生きていることが判明し、己のシナリオの遂行を中断させると、今はレイに興味を失ってしまったのである。

もちろん、だからといってレイを殺そうだとかどうこうしようとは思っていない。
ただ、ファーストチルドレンとして使徒撃退に頑張ってくれたらそれでよかったのだ。
実の息子であるシンジすら好きこのんで会いに行かないヒゲである、興味を失ったレイにわざわざ時間を割いて、『釣った魚に餌をやりに行く』ほど人間は出来ていない。
そもそもそんなポンコツな男だからこそ、こんな有様になっているのである。

レイは司令部付きのチルドレンなので、シンジがやっている(というより、もう終わってしまった)作戦課の訓練をしていない。零号機はまだ起動実験まで一ヶ月以上もあり、シンクロテストも予定されていない。レイにはやることが何も無かった。なら家にさっさと帰ればいいのだが、本部にいればもしかしたらヒゲに呼ばれるかもしれないという小さな思いと、もう一つ、最近出来た新しい絆のため、こうして連日パイロット控え室で控えている次第なのである。

パイロット控え室ではあずみがソファに横になってぐーぐーと寝ている。
この2週間、毎日あずみとこうして過ごしているのだが会話はただの一回も無い。
レイはもとより、あずみも人付き合いが苦手・・・というか好きでは無い。
仲間であるアヤカ達であればそれなりに話すが、それ以外の有象無象と仕事以外で会話をする気などさらさらなかったのだ。

可愛そうなのはシンジとの契約交渉でパイロット専属の事務官に抜擢された、司令部付で青葉と同じろうじん副司令の部下だった阿賀野カエデである。

彼女は発令所でサブオペレーターとして大井サツキや最上アオイなどと共に勤めていたのだが、この度移動を命じられ、このパイロット控え室が新たな仕事場となったのである。

パイロット控え室は所謂ロッカールームなどではない。

ちゃんとオフィスになっており、シンジの机はもちろん、レイの机、今はここにいないがセカンドチルドレンの机、カエデの机に、予備の机の5台が置かれ、さらにはあずみが占有している応接セットも置かれている。発令所からのホットライン電話、発令所の様子や外の様子などを見ることができる液晶テレビも3台壁に設置されていた。簡単な給湯設備に冷蔵庫、電子レンジ、電気ポット・・・お菓子だって経費で認められているのだ。

直接の上司はパイロット達であり、実質シンジである。シンジはカエデに無体な命令はしないし、勤務はシンジ達が帰る夜8時まで、家に帰るのは少し遅くなるが、その分出勤時間は昼過ぎからであり、残業も少なく、さらには日曜日が常にお休みというまさに天国のような部署だった。

しかし・・・ここに配置になって2週間・・・カエデは胃薬が手放せない・・・。

まず、シンジ直属のメイドのあずみだ・・・この子が恐い!

別に彼女はカエデになにか危害を加えるということはない。シンジが訓練中は今のように応接セットのソファに寝転んで寝ているからだ。
ただ、外からシンジ宛ての電話があった際、その用件を聞き、まず最初に伝えなくてはならないのがこのメイドさんなのである。

カエデがメモを持ってあずみの元に行き「あの・・・」と声をかけたら、思わずひぃと声を上げてしまうくらい機嫌の悪そうな悪魔のような目つきで睨むのである。

その後彼女からメモをひったくると手をヒラヒラさせてあっちへいけとジェスチャーをする。もちろん、そんなことをされなくてもダッシュで自分のデスクに戻る。

そして、もう一人がファーストチルドレンである綾波レイだ。この子が不気味だ!

彼女は毎日控え室にやってくる。が、特に彼女は今何のスケジュールも入っていない。

というより、ケガがまだ治っていない、頭に包帯をぐるぐる巻いた少女になんの訓練があるというのか・・・。
さっさと家に帰って養生をしていて欲しいものだが、しかし彼女は毎日部屋へやってきては自分のデスクに座ってじっと本を読んでいる。それも何も飲まず、トイレにもいかず、微動だにもせず、同じ体制でずーーーーと本を黙って読んでいるのだ。

そして、この二人が互いに一切しゃべらない。だからカエデもしゃべらない。

この場に人間が3人もいるにも関わらず、シンジが部屋にいないときはただただお通夜のように沈黙しているのである・・・。
これは普通のメンタルを持つカエデにはことのほかきつかった。

(はあ、最初聞いたときは楽な仕事だーと思ったんだけど・・・そんな甘い話ないよね・・・というかさこの二人『変人』すぎるよ。協調性ゼロ。社会性もゼロ。シンジくんは格好良くて素敵なんだけどなーってさすがに一回り下の男の子はアウトだけどね・・・でも、マヤあたりは本気で彼のこと狙ってそうなんだよなぁ・・・あの子もあれでかなりズレてるし・・・。ショタコン?だっけ。百合もありそうだけど・・・あーあ・・・)

そうこうカエデが悩んでいると、救世主であるシンジが控え室に戻ってきた。

というよりシンジが部屋に近づいてくると、あずみが急にソファから飛び起き、ドアの方へ歩いて行くと、深々と頭を下げる。それと同時にシンジがドアを開けて部屋に入ってくるのである。

「お疲れさまー」

「お疲れさまですぅぅぅシンジ様!!さあ、どうぞこちらへおかけになって下さいませ、私がソファを暖めておきましたぁ!!すぐにお茶をおいれ致します!!」

「うん。ありがとう」

このあずみの『通常モード』から『メイドモード』への変わりようにカエデは顔を引きつらせる。これは何度見ても見慣れることは無い。というより、これを見てなお素知らぬ顔で本を読み続けるレイになにか敬意を表したくなってくるから不思議だ。

「あずみ、綾波さんとカエデさんにも淹れてあげてよ」

(シンジ君、君は何をおっしゃっているのですか・・・配るとき睨むんですよ!彼女!)

「はい、わかりましたぁー!」

あずみは天使のスマイルでお茶を淹れに行く。

(ああ、でも「いいですぅ」って断っても睨むんだよなー。ご主人の優しさを台無しにしやがってって・・・。どのみち睨まれるんならお茶を貰った方がいいよね)

そんな葛藤を続けているカエデを他所にシンジはレイの側へと行った。

母親であるユイの話によると、別世界では彼女とは遠い親戚関係でとても『仲が良かった』そうである。現在の彼女の様子を伝えると、いろいろ思い当たるふしがあるらしく、シンジにレイを大事に扱うようにとお願いしていた。

シンジもヒカリのように暴力を振るわれるのは勘弁だが、あれこれと世話を焼くのはどんとこいである。レイは大人しいし、従順だし、ようやく最近女の子に慣れてきたシンジにとって彼女は良い練習台になっていた。

シンジはレイの側に行くと、座っている椅子をずらし、ひょいと本を読んでいるレイを椅子から持ち上げる。
所謂お姫様だっこしたままソファへと連れていくのである。

これは当初シンジがレイに声をかけても無視され続けたので、面倒になって思わずこうしたら、とくに彼女から文句も出なかっためシンジが味をしめて行っている行為だった。

レイをソファに連れてくると自分の隣に座らせて、あずみの淹れたお茶を飲ませる。
今のところシンジがレイにできるのはこれだけだ。

「綾波さんは父さんに今日は会えたかい?」

「・・・いいえ・・・」

シンジの問いかけにレイは悲しそうに首を振る。

「そっか、まあ、僕も2週間前に会って以来見てないしなぁ・・・。司令ともなったら、いろいろ忙しいだろうし・・・そもそも本部にいるのかなぁ?カエデさんは知っていますか?」

「え!!碇司令ですか・・・少し待って下さい、マギで確認します。・・・えーと、一昨日から海外に出張中のようですね」

「だってさ・・・そりゃいないんだから会えないよね」

「・・・ええ・・・」

「どうするの?明日もここに来る?」

「・・・・・・碇君も来るの?・・・」

「僕?うん、明日はシンクロテストだってさ。いい加減、本部に来るの週3日くらいでいいんじゃないかな・・・綾波も父さんがいないんだったら本部に来てもしょうがないでしょ」

シンジがそう言うとレイは首を振って、

「・・・碇君が来るなら来る・・・」

「熱心だなぁ(感心、そういえば母さんが綾波さんを一度連れてこいって言ってたっけ」

「碇君のお母さん?・・・碇司令の奥さん・・・お母さん・・・」

「まあ、綾波さんとは親戚(?)だそうだし、身内だよね。遠慮はいらないよ、次の日曜日においで、迎えに行くから」

「・・・・・・・・・・・・わかったわ(ドキドキ)」

「そういえば、明後日から学校にも来るんでしょ?」

「ええ、明日の検診で問題なければ・・・」

「ごめんね」

「?」

「いや、僕のせいでクラスの雰囲気最悪なんだよね。きっとレイも同じ目で見られるかも」

「大丈夫、気にしないわ」

「だよねー」

シンジはよしよしとレイの頭を撫でる。レイはくすぐったそうに目を細めた。

ついでに自分の頭も撫でてもらおうとあずみが膝をついて、シンジに頭を出してきたので、もちろん一緒に撫でてあげた。カエデはグッと我慢して自重した。ここで彼女が席を立ちあずみと同じように膝をついて頭を出せば、実はあずみはカエデを同士認定し、多少は優しくなるのであるが、残念ながら彼女はその機会をみすみす逃したのであった。


Bパートに続く




[32048] 第参話 鳴らない、電話 Bパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/15 12:25
エヴァちーと 第参話 鳴らない、電話 Bパート[改訂版]


第三新東京市第壱中学校3年A組の教室は、かつて無いほどのギスギス感が張り詰めていた。その原因は先週初めに転校してきた2人(+1人)の可憐な美少女達にある。

現在、この第壱中学では2年A組の転校生『碇シンジ』によるクラスメイトの女子を泣かせ、男子に暴力を振るった事件が問題となっており、犯人(笑)と親しい付き合いをしているアヤカ達もシンジと同じようにクラスで村八分にされてしまっているのである。

また、都合の悪いことに学校にとって『碇シンジ』一派はネルフから特別扱いをするように要請という名の命令、脅迫を受けており、今回の件も先生達は『何も問題は無かった』というスタンスを貫いていた。今回の話を聞いた心ある生徒達が先生に相談に行っても「今は忙しい」とか「すまん、先生は今日耳が聞こえないんだ」とか「じゃあ、なんだ?代わりにお前を退学にすればいいのか?その方が簡単なんだよ」とか「尾○ママにでも電話してろw」と言われる有様だった。

そのため、生徒達の間では先生達への信頼が崩壊、有志の最上級生達が校長室を占拠して事件の真相究明を求める徹底抗戦、所謂立て籠もりを始める始末であった。まあ、先生方はそれを完全無視、彼たちの保護者も自分の子供達の行動に驚き困ったものの、そのほとんどがネルフ関係者であり、『碇シンジ』がどれほど大切な存在なのかもこれでもか!ってほど理解していた。鈴原整備部長の娘さんを助けた恩人でもあり、結局は自分の子供達の方がシンジの事を誤解していると判断した。まあ、弁当くらい届けてやるから気が済んだら家に帰ってこいと、彼らを半ば放置していたのだった。

立て籠もっている生徒達ほど過激ではないが、気持ちとしては第壱中学の全生徒が『碇シンジ』憎しで一致している感じだった。そもそも男子達からすればアヤカ達のような美少女を侍らせているだけでムカつく上に、本人は弱そうなくせに、やたらと物騒なメイドを側に置いて守ってもらっている『卑怯者』にしか見えなかったのである。
女子達もシンジに恋心を抱く生徒は多かったが、それでも第壱中学の『良心』ともいうべき存在の洞木ヒカリをいじめて泣かせたことに関しては許せなかった。

またシンジとは別にアヤカ達も、これまでクラスメイト達とほとんど交流を取ってこなかったのも事態に拍車をかけた。実はアヤカと千鶴は授業そっちのけで内職、つまりお仕事に励んでいて、さらには授業中にいきなり廊下に出て電話をし出すなど態度が悪かった。休み時間にはシンジの教室に行くため、クラスメイト達と交流もない。唯一、夏美だけは普通に授業を受けていたのだが、かわいそうにシンジ達一派に入っていたため、クラスメイトと険悪な感じになると、居づらくなったのか、アーティファクトを使って存在を消し、図書室で授業をサボるようになってしまった。

アヤカ達からすれば、こっちはネルフと生きるか死ぬかの抗争を指揮しているのである。未熟なガキどもにいちいちかかわっている暇などないし、彼らが邪魔をしてこないだけマシだった。そもそも今回の件で悪いのはヒカリとトウジであり、愛するシンジ君は何も悪くはないのだから。


まあ、ともあれ、そんな学級崩壊ならぬ、学校崩壊が巻き起こっている第壱中学に綾波レイは数週間ぶりに戻って来たのである。

「・・・・・・」

レイが教室の中に入ると、クラスメイト達の会話が止まり、一斉にレイを見る。

まあ、クラスメイトの女の子が頭に包帯グルグル巻きで登校してきたら驚くのは仕方が無いのだが、それ以外にもなにやら含むものがあるようなキツイ視線だった。

レイはそんな視線をいつものように一切無視して、自分のデスクに座る。まだシンジは登校してきていないようだった。

するとほどなく「はいはーい、どいてどいてー」とあずみが邪魔な生徒達を押しのけて教室に入ってきた。その後を続いてシンジが中に入ってくる。

「おはよう、綾波さん」

「・・・おはよう、碇君・・・(ポッ)」

クラス分け以来、いままで誰とも挨拶すらしてこなかった綾波レイが、少し頬を赤く染めてシンジに挨拶をした・・・。クラスメイト達は驚愕するとともに「やはり綾波も碇一派だったか・・・」と確信した。

綾波レイはネルフの関係者では無いか?という疑念は以前からあった。

彼女はたびたび学校を早退する、というより長期間休むこともしばしば、体育の授業はいつも見学、でもそれで補修を受けてるような様子も無い。そして先生は彼女に何も言わず特別扱い・・・。

今回、碇シンジが特別扱いを受けるのも『ネルフのパイロット』だからということもあり、ならば同じように特別扱いを受ける綾波レイも『ネルフの関係者』なのではないかと予想されていたのだ。まあ、その予想はまったくもって正しいわけだが。

(あーあー、みんな睨んじゃって・・・困ったなーこんな騒ぎになるとは・・・トウジ達は一体ナニをやってるんだよ・・・)

ケンスケはクラス内の殺気立った雰囲気にげっそりしていた。
ちょっとした冗談でクラスメイトにシンジがヒカリを泣かせ、トウジを昏倒させたんだよ!としゃべったのだが、それが瞬く間に広がり大騒ぎになってしまったのである。

事件の当事者であるトウジとヒカリが昨日休んだことで、真相はヒカリのヒステリーであり、殴りかかったのはトウジの方が先だということを伝える者がいなかったのである。

もちろん、ケンスケが伝えても良いのだが、だいたいコイツはそこまで人間ができていない。シンジに対し暗い劣等感も抱えており、まあいいか、これはこれで面白いし!と黙っていたのだ。さすがに立て籠もり騒ぎが起きたのは予想外だったけれども。

「おはよう・・・」

「おはようさん・・・」

今回の騒動の主役であるトウジとヒカリが二人してコソコソと教室に入ってきた。
二人に注目するクラスメイト達の視線を逃れるようにケンスケの元へ来る。

「おい、ケンスケ・・・なんやこの学校の雰囲気は??」

「うん、一体どうしちゃったの??」

「・・・え?どうしたって、トウジと委員長のせいじゃないか」

「わいたちのせい?どういうこっちゃ?」

「だから、碇に委員長が泣かされて、トウジが暴力を受けてケガをしたことが拗れちゃっているんだよ。昨日なんか一日中大騒ぎだったんだぜ・・・。今でも校長室に上級生の有志が立て籠もっているしさ・・・というか、昨日二人は何やってたんだよ!」

「おおおお・・・そうやったんか・・・べべべべ別にナニもやってないで」

「そそそそ・・・そうなの!わわわわ私たちはナニもへんなことはしてないわ」

「・・・・・・そう・・・・・・」

どう見てもこのできたてほやほやのカップルがナニかをしたのは間違いないようであるが、それを突っ込んで聞くのは童貞カメラ小僧である自分にダメージしかなさそうなので、突っ込んで聞くのは止めた。人の幸せトークなどゴミほどの価値しか無い。そんなものは速攻でゴミ箱に捨てたい。

「で?どうすんのコレ?今から実は自分たちが悪かったんですーって言うのかい」

「・・・いや、まあ、それはそうせんとあかんやろけど・・・」

「・・・うん。でも、まずは先生に話してみようと思うわ。碇君には悪いけど」

「碇は大丈夫だよ・・・毛ほども気にしてない。昨日も何人かの男子が碇をボコりにきたんだけど、あのメイドさんが全員返り討ちにして病院送りにしたしさ・・・」

「ああ、そういや昨日ノゾミちゃんの見舞いに行ったとき、なんや随分救急車が来るなーとは思ったわ・・・あれ、うちの生徒やったんか・・・」

「・・・『睾丸破裂で緊急手術!』とか叫んでいたような・・・」

「ボコリにきた男子と一緒に来てた女子たちもあのメイドに全裸に剥かれてM字開脚で椅子に縛られて校庭に放置されてたし・・・なんかさ、もう、二人が「実は私たちが悪かったんですよね、はは」とか言ってもエライことにしかならないと思うよ」

「・・・いや、それはあのメイドさんがダメなんやないか!」

「そうよ・・・いくらなんでもやりすぎよ・・・」

「・・・信じられないことに、アレでかなり手加減したみたいだったよ・・・碇に言われて渋々「これで許してやるかー」って言ってたし・・・」

「さよか・・・」

トウジとヒカリはもし互いがそのような目にあったとしたら耐えられないと震えた。

まあ、ケンスケ個人としては昨日はなかなかに面白い被写体がたくさん撮れたので、大変有意義な一日だったりしたわけなのだが。

結局トウジとヒカリがこの事態をどうしようかと悩んでいるうちに授業が始まり、あっという間に昼休みになってしまった。そして、昼休みに入ってすぐ、シンジとレイにネルフから緊急招集の連絡が入ったのである。


『総員、第一種戦闘配置』

『了解。対地迎撃準備、用意よし。照準はマギに移管します』

『国連軍より要請があり次第、目標への攻撃を開始する』


「司令が不在の時に第四の使徒襲来か・・・。意外と早かったわね」

「前は15年、今回はたったの2週間とちょと・・・ですからね・・・」

「こちらの都合はお構いなし・・・女性に嫌われるタイプね」

「モテる男は女性に自分の都合を合わさせますからねぇ」

日向はミサトのつぶやきにそう答えた。誰のことかというとシンジのことである。
この2週間、シンジと付き合って、ほとほと彼のプレイボーイぶりには呆れを通り越して尊敬の念を覚えるほどである。

同僚である伊吹マヤが彼に熱を上げてるのはともかく、ネルフに勤めている女性職員のだれもかれもがシンジに夢中であった。パイロット控え室には連日ラブレターや手作りお菓子が届き、担当のカエデがその処理に四苦八苦している有様である。

さらに皆を驚かせたのが、あの『ファーストチルドレン』がシンジに懐き、毎日のように控え室にやってきてはシンジが訓練から戻ってくるのを待っているということだった。

唯一、我が愛する上司であるミサトと技術部長のリツコはシンジと距離を取っていた。
日向ももしミサトが他の女性職員のようにシンジに熱を上げていたら、サードインパクトが起こるのを覚悟の上で、シンジの戦死を願ったかもしれない。

しかし、実のところ男性職員の中でもシンジの評判は案外良かった。

鈴原整備部長を筆頭に保安部長、人事部長の要職3人がシンジを高く評価していたし、保安部の職員達はシンジの類い希なる格闘センスに敬意を持っていた。自分たちの手で世界最強の戦士を作ってやろうと様々な格闘技をシンジに教えていたりしていた。

だいたい、いくらネルフの女性職員が彼に熱をあげたとしても、彼女達は最年少でも22歳、8歳以上も下の未成年の少年に本気になってお付き合いをしたい!などと考える不届き者はいなかったのである(マヤを除く)。あくまでアイドルに熱をあげるミーハー的なものであり、そもそもシンジには雪広と那波という婚約者がいるのである。

それに司令の息子でもあり、高嶺の花。みんなして愛でているだけということである。
男性職員たちもそれはわかっていたので、シンジに嫉妬するという愚かな行為は青葉のような一部を除いては存在しなかったのである。まあ、その一部はすでにとあるメイドさんによって制裁を受けていたわけなのではあるが。

ちらりと日向は隣のロン毛を見た。本人は髪型を変え前髪で隠しているが、綺麗に眉が剃られている。だから、シンジ君に「伊吹には近づかないでくれ」なんて言いに行くんじゃないって止めたのに・・・。そもそも言うんだったらマヤに「目を覚ませ」と言うべきである。


「税金の無駄使いだな・・・」

発令所の正面モニターでは現在、国連軍が使徒に対しミサイル攻撃を続けていた。
無論、使徒にはなんの効果的な影響を及ぼしていないのは明らかであった。

「統合幕僚本部より攻撃の全権をネルフに委任するとの連絡がありました」

「委員会よりエヴァの出撃要請が来ています」

「うるさい奴らね・・・言われなくても出撃させるわよ。リツコ準備できてるわよね」

「ええ、とっくにね」

「ならばよし、エヴァンゲリオン初号機発進!!」


というわけで、ガコン!!と再び長いトンネルを抜けて初号機は射出された。

(・・・また敵の正面に出したよ、あいつ・・・馬鹿なんじゃないのか?いや馬鹿決定だろ?!なんで作戦課長なんてやってるんだ・・・。作戦課のミーティングにも全然出てこないし・・・せっかく、作戦課の人たちといろんな作戦考えたんだけどなぁ・・・今回のようなイカ?みたいな使徒はさすがに考えつかなかったけど、似たようなヤツならあったしさ・・・よし、進言してみるか!)

「ミサトさん、作戦課の作戦ファイルS-18項を開いて下さい。今回の使徒戦における作戦のいい叩き台になるはずです。なんとか時間を稼ぎますので作戦の細部を応変して指示して下さい」

『いいこと、シンジ君?訓練どおり、パレットガンの一斉射よ!』

ガコンと近くの武器保管ビルからパレットガンが飛び出してくる。

(あれ?聞こえてないのかな?なんか前もスルーされた記憶があるんだけど・・・)

「日向さん!S-18です。一緒に考えたじゃないですか!僕が初号機で接近して使徒のATフィールドを中和しますから、Cブロックの兵装ビルから使徒のコア目がけて貫通ミサイルを一斉に撃って下さい!!それでコアが破壊されれば良し、ダメの場合はプログ・ナイフで怯んだ使徒へトドメを刺します!!周辺への影響はなんとか僕のATフィールドで防ぎますから心配いりません。タイミングは任せますよ!!」

「・・・・・・(すまん・・・シンジ君)」

「さぁ!って・・・・・・・・・・・・え??」

「シンジ君!なにをわけのわからない事を言ってるの!早く撃ちなさい!命令違反をするつもりなの!!」

「おい!こら!!使徒のATフィールドをまだ中和もしてねーのに撃ったって劣化ウラン弾のゴミ(放射能)をまき散らすだけだろーが!アホかあんたは!!」

「撃ちなさいシンジ君!!今ならその暴言は聞かなかったことにしてあげます」

「・・・まじか・・・」

前回はここでミサトを見限ったわけなのだが、今回は自分もネルフの特務三尉様なのだ。さすがに上官であるミサトの命令を簡単に無視するわけにもいかない。

シンジは渋々パレットガンを構え、使徒に向かい三点バーストでの集中と分散を交互に組み合わせながら放っていく。

しかし、当然ながら使徒のATフィールドに阻まれ、目標に対してはかばかしい成果は得られなかった。そして、劣化ウラン弾がATフィールドに着弾したことで発生した煙で使徒が見えなくなってしまった。

『バカ!煙で使徒が見えないでしょ!』

「バカはお前だ!もういい、副司令!!」

『ああ・・・、なんだね』

「葛城一尉を拘束してください。先ほどからの支離滅裂な言動は気が狂っているのか、利敵行為をしているのか、いずれにしても危険です。早急に発令所から排除してください」

『なにおぅ!ふざけたこと言ってんじゃないわよ!この糞ガキ!!ガキはガキらしく大人の命令にしたがってりゃいいのよ。優しくしてやったらつけあがって!!』

「副司令!」

『むむむ・・・(困ったな、ゼーレのシナリオではゼロチルドレンが使徒戦を指揮しなくちゃならんのだ・・・さらに彼女がこうも無能なのは、あえて苦戦させることでチルドレン達を精神的に追い詰めるという策なのだし・・・すまん、シンジ君)・・・シンジ君、すまないが葛城一尉に従い給え』

シンジはろうじんのその言葉に一瞬カッとするも、すぐに冷静になり考え込んだ。

(ん?なんだ、なんで今副司令は謝ったんだ?副司令にはあのバカを解任する権限が無いのか?父さんが不在の中、ネルフの最高権力者は副司令じゃ無いのか?もしかして父さんですらあのバカを解任する権限を持っていないのか??おかしいと思っていたんだ・・・。作戦課長という要職にあるにも関わらず、副官に仕事を押しつけてろくに働かない。戦術に関しても底が浅く、そもそも検討会にすら出席しない・・・。会食の時に否定されたけどやっぱり父さんの『愛人』なんじゃないかなんて思ったけど、その様子も無い・・・。つまり、あのバカを作戦課長という職につけていないと都合の悪い連中がいるんだ。それはネルフよりも上位の機関ということになる・・・委員会か??だとしたらその理由は・・・次のポイントが溜まったら『情報』にも使わないとなぁ・・・)

シンジがそんなことを考えていると、イカ使徒さんが触手を初号機に伸ばしてくる。

「うわっ!しまった!」

触手は初号機の片足に巻き付くと、とてつもない力で初号機を投げ飛ばした!!


さて、ここで時間は少し遡る。

警報が発令され、ここ第壱中学校にも生徒をシェルターへ避難させるようにとの命令が出された。つまりは自分たちの『責任問題』になる事態である。教師達は慌てて立て籠もっている校長室のドアを破壊、反抗する生徒達にビンタを食らわせて、ガムテープで拘束するとシェルターの中に放り込んだ。他の生徒達も目を血走らせて金属バットを構える体育教師に怯え、粛々とシェルターの中に入っていった。まあ、事の問題である碇一派はこの場に誰一人いなかったので、揉めるようなことも無かったのだが。

すでにアヤカ達はシンジと一緒に学校を出ていて、雪広ビルに避難していたのである。


「ちぇ、やっぱりだめだ。・・・なあ、外に出て見たいと思わないか?」

ケンスケは報道規制によって避難指示をする文字だけの携帯テレビの電源を落とすと、親友にそう呟いた。

「おのれはなにを言ってんのや、外なんかでたら死んでまうぞ」

「それはここに居たって同じ事だよ・・・死ぬ前に一度、本物の戦闘を見てみたいんだ」

「だめよ、相田君!委員長として絶対に許すことはできないわ!」

「そうや、ネルフのロボットに任せとけ。そのためにアレはあるんやろ」

「そのネルフのパイロットに殴りかかったのは誰だよ。なあ、トウジ。お前の頭を蹴り飛ばしたせいで、碇が満足に戦えなかったらどうするんだよ」

「なんでわいの頭蹴り飛ばしたことであいつが戦えんようになるんや!」

「なあ、委員長。碇を平手打ちした委員長はあいつの戦いを見届ける義務があるんじゃないのか?」

「・・・義務・・・」

「そう、義務さ・・・義務義務、ということで一緒に行ってあげるから見に行こう」

「お前は・・・ほんま自分の欲望に忠実なやっちゃのう・・・」

「・・・わかったわ・・・でも・・・危なくなったらすぐに戻るからね」

「うん、それでいいよ」

「ちょっと待たんかい・・・わかった、わかったから、わいも一緒にいくで!ヒカリを守るって昨日誓ったさかいにな」

「トウジ君・・・ありがとう」

「ええ、当然や」

「はいはい、メロドラマはいいから、早く行こう。終わっちゃたらどうすんだよ」

ということで、3人はシェルターから外に出るため行動を開始した。

「でもどないするんや?入り口は閉じとるんやで」

「こっちだよ。このシェルター、まだ一部工事中で、こっちのダクトを伝っていけば学校の裏山の出口に通じてるんだ。そこだったら二人いれば扉は開くよ」

「・・・なんで相田君はそんなことを知っているの?」

「まあ紳士の嗜みってやつさ」

「ほんもんの紳士やったらこんなことせんやろうけどな」

3人はそうこうしつつ、無事シェルターを抜け出ることに成功した。


「おお!見える見える!!すげーーー本物のロボットだーーーー!!」

ケンスケは歓声をあげると、もっとよく見るため裏山の頂上へ向けて走り出した。

「おっおい、ちょっと待たんか!」

一人駆けだしたケンスケを止めようとトウジは慌てて彼を追いかける。

「ちょっと!あまり扉から離れたらだめでしょ!」

「すまん、ヒカリ。ちょっとそこで待っててくれ。あいつを連れ戻してくるわ」

トウジは振り返りヒカリにそう言うと、すでに頂上でロボットにカメラを向けてパシャパシャやっているケンスケの所へ駆けだした。

トウジはケンスケの元に追いつくと片手でケンスケの肩を押さえた。

「こら、ケンスケ!危ないやろが!早く扉の所まで戻るぞ!あそこでも十分見えるやろが!」

「うわ!ってトウジ、揺らすなよ、ブレちゃうだろ!わかったよ、わかったから。このフィルムを使い切ったら降りるからさ・・・って!!!」

「うおーーーーーーこっちに来るぅーーーーー!!」


ドーン!!


ピンポン、ピンポン、ピンポン・・・

「ん??なんだぁーうるせぇーなー」

ネルフ本部、パイロット控え室。
愛する主人が出撃しているにもかかわらず、いつものようにソファに横になって寝ていたあずみをなにやらチャイム音が起こした。音の方を見てみるとあずみがシンジから委託を受け預かっている『チートシステム』の時計だった。

シンジは自分がシステムを操作できないときは、アヤカ達にチートシステムを委託していた。つまりネルフ本部ではあずみに渡していたのだ。そうでないと、訓練中にもし外で操作が必要なことがあったときに対応できないからだ。今回もいつものようにあずみに渡していたのである。

「えーと・・・おい、カエデ。お前ちょっと廊下に出てろ」

「へっ?なんでですかって、わかりました。わかりましたからそんなに睨まないで!」

カエデは逃げるように控え室を出て行った。部屋にはもう一人レイがいて、シンジの戦闘の様子を液晶テレビで鑑賞していたのだが、レイはシンジが『家族の一人』にしようとしている女の子だったので、あずみは特に彼女には出て行くように言わなかった。
まあ、言ったところで彼女はその言葉を聞いたりはしないだろうが。

あずみは、先ほどのチャイム音の原因を確認しようとチートシステムを起動した。

「んーなになに・・・」


<<原典破壊ボーナス(特大)>>
『洞木ヒカリが死亡した。彼女の死はこの世界のシナリオに多大な影響を与える。その影響を鑑みて君にボーナス1000万を進呈する』


<<システムからのお知らせ>>
『原典においての主要キャスト『洞木ヒカリ』が死亡しました。彼女が死亡したため、美少女召喚『碇シンジ育成計画』洞木ヒカリが解除されました』


「・・・あー、あの女か・・・ふん、死んじゃったのか。・・・で?・・・」

あずみはそのシステムのメッセージを受けて、さあてどうしようかと悩んだ。
別にどうでも良いような気がするが、この『主要キャスト』というのが気にかかる。また『多大な影響』とも書いてある。ということはこれを放っておくのはシンジになにやら悪いことになるかもしれない・・・。

「・・・誰が死んだの?・・・」

あずみの呟きを聞いたレイが珍しく彼女に問いかけてきた。

「あん?ああ、シンジ様のクラスの委員長様だよ。シンジ様を引っぱたいた糞女」

「・・・洞木さんが・・・そう・・・」

「なあ、あんたあの女に詳しい?だろ、どうしたらいいと思う」

「・・・わからないわ・・・でも・・・」

「でも?」

「彼女がいないとクラスがバラバラになってしまうと思うわ・・・」

「今でも十分酷い有様だと思うけどな。まっいないと一応困るヤツなんだな?」

「ええ」

「本当はシンジ様に確認が必要なんだが・・・仕方ない。その『影響』ってやつが悪い方へ出ちゃったら困るし・・・えーと召喚ってどうやるんだ・・・ああ、これね・・・洞木ヒカリ、洞木ヒカリっとよし、なんだ7000ポイントぽっちしかいらねーのか。悩んで損した。ほい、召喚っと」

あずみはあっさり『洞木ヒカリ』を召喚した。
しかし、もちろんここで何が起こるわけでは無い・・・。

「・・・・・・何をしているの?・・・・・・」

「ああん?おめーは気にしなくていいんだよ!さて寝直すかねー」

あずみはレイの疑問の解消よりも、自身の睡眠欲の解消を優先した。
レイはしばらく小首を傾げていたが、ちょうど使徒戦の様子が最終盤にさしかかっており、結局はそちらを見ることの方を優先した。


「あーびっくりしたー。戦闘中に考え事はしてちゃダメだね。失敗、失敗」

シンジはとりあえずミサトの件は後で考えるとして、目の前の使徒戦に集中することにした。

イカ使徒はゆっくりゆっくりとこちらに向かって近づいてきている。
シンジは初号機を起こすと、ナイフを構えなおした。

「あれ、あーしまったなぁ・・・『シェルターの扉を潰しちゃった』よ・・・まあ、戦闘中に扉のそばにいるような人はいないだろうけど・・・ってなんだ??」

シンジはなにやら初号機の足下で騒いでる人間を見つけた。『ハイテク』なマギはその人間が彼のクラスメイトの鈴原トウジ、相田ケンスケであることを表示していた。

「なにやってんだコイツら・・・まさか戦闘を見物するため、シェルターから出てきたのか(-_-;」

シンジは心底呆れ果てた。今までは何もわかっていないガキだから大目にみてあげていたが、さすがにこの行動はダメだ・・・。踏みつぶしてもいいのだが、さすがに人殺しはさすがにシンジも躊躇してしまう。仕方が無いので発令所に対応を聞いてみることにした。

「すみませーん。この民間人の少年達はどうしたらいいですかね?」

発令所でもシンジのクラスメイトが突然現れたことで混乱していた。

『シンジ君、プラグ内に入れなさい』

『ミサト、あなた何を言っているの!そんなこと許可できないわ!』

『私が許可します(キリッ』

「あのー、僕も拒否します。異物をプラグ内に入れてシンクロ率が下がったら、エヴァが動かなくなります。そうなると使徒との戦闘を継続出来ません」

『あんた前の戦いで勝手に入れてたじゃない(怒』

「あの子は幼女、こいつら少年(ガキ)、もうこんなに成長してると影響も大きいです。なんでわざわざチルドレンの最適年齢を13~16歳にしてると思ってるんですか、この年齢くらいの子供が一番エヴァにシンクロし易いからでしょうが!僕と同い年の子供を二人も入れたら間違いなくシンクロに影響ありますよ。それでもいいんですか!作戦課長!!エヴァが戦えなくなって敗退したらどうするんですか!ネルフにはまだ隠し球があるんですか!!」

『ないわ、まだ零号機は動かせない・・・使徒に有効な武器もない・・・人類滅亡ね』

ミサトに代わってリツコがシンジに答える。

「だったら、さっさと保安部に二人を連れて行くように連絡しろよ!無能!!その時間はなんとか稼ぎますから!」

シンジはそう怒鳴ると、足下でうろついている二人にもスピーカーで怒鳴る。

『おい、お前ら、ここを早く離れろ!保安部にさっさと保護してもらえ!邪魔だ!』

「うるさい!!おまえのせいでヒカリが!!ヒカリが!!」

シンジの操るロボットが彼の愛する女性をシェルターの入り口もろとも押しつぶしたと思っている(事実だが)トウジは、その辺に落ちている木の棒で初号機の足を叩いていた。

ケンスケはトウジを連れてなんとか逃げだそうと、彼のジャージを引っ張っている。

「ヒカリ???委員長か??ああ、こいつ本当にバカだな。シェルターの入り口が潰れてもシェルターが潰れたわけじゃ無いんだよ・・・。錯乱しているのか・・・仕方ない・・・少しケガをするかもしれないけど・・・」

シンジは二人の説得を諦めると、初号機の足をスコップのように使い、二人を土ごとすくい上げると、全力でこちらに向かってきている保安部の人たちの方へ蹴り捨てた。

それは抜群の力加減とコントロールであり二人は見事、保安部の面々の目の前に土砂と一緒に落ちてきた。・・・多少の打撲、骨折は目を瞑って欲しい。まあ、生きてはいるようだし。

「よし、邪魔者は消えた・・・。問題はここからだよな・・・兵装ビルの支援は受けれないし(?)、武器はナイフのみ・・・どうする?前回と同じようにケーブルを切断して接近、ATフィールドで中和後、コアを突き刺すか・・・。しかし、あの触手がやっかいだな・・・あれをどうにかしないと近づけない・・・」

シンジはしばし考える。

「決めた。触手は伸ばしてきたら切ろう・・・保安部の人たちと最近ナイフ教練もやってるし・・・いけるだろう。一か八かだけどね・・・」

『ちょっとシンジ君!一旦撤退を・・・』

スピーカーからは相変わらず寝たぼけた指示が小うるさく聞こえてきている。

「撤退・・・無理です。撤退してどうします?次はジオフロント内で戦うんですか?ジオフロント内には対空設備が無い、兵装ビルも無い。つまりはエヴァ単独で接近戦をするしかない、ならば今ここでやったほうがいい・・・。少なくとも障害物があるぶん勝機がありますからね」

シンジはそう答えると、使徒に向かって走り出した。途中ケーブルが最大限伸びるが、その瞬間に切断、内部電源に切り替える。

イカ使徒は初号機に向かって触手を伸ばす。

初号機はATフィールドをナイフに纏わせるように展開、瞬時に触手のATフィールドを打ち消すと、見事触手を切り落とした。

『そんな!ATフィールドをナイフに纏わせるなんて!!』

リツコの叫びを他所に、初号機はイカ使徒に接近成功、コアにナイフを突き刺す。

『痛いでゲソー!!』とイカ使徒は暴れるが、初号機にしっかりと体をつかまれているため逃げることができず、程なくしてコアはその光を失った・・・。


<<使徒破壊ボーナス>>
『おめでとう。君は見事第4使徒を撃破した。その行為に敬意を表し4000万ポイントを進呈する。これからも頑張ってくれたまえ』


『目標、活動を停止!!パターンブルー消失!!』

『初号機、至急外部電源の場所を指示するようにとのことです。Dブロックの電源ソケットを指示しました』

『少年達ですが保安部が保護しましたが・・・重傷です。このまま病院へ移送します』

発令所では使徒戦が無事勝利に終わり、早速後処理の仕事に取りかかっていた。

そんな中ミサトは激憤を隠しきれない様子で、肩を震わせながら正面モニターを睨んでいた。

「葛城一尉」

ろうじん副司令が上からミサトに声をかけた。

「はっ」

「サードチルドレンはよくやってくれた。多少言葉の行き過ぎがあったようだが、パイロットとはああいう人種だ。おおむね彼が言っていることに間違いはない。今回は全て不問とするように」

「しかし!彼は私の命令に従っていません!!」

「はて?彼はちゃんと従っていたではないか。君の言うようにパレットガンは撃ったし・・・。あの少年達をプラグ内に入れるのは問題外だ。赤木『三佐』も反対していただろう。撤退云々に関しても、撤退して外の防衛はどうするのかね?市街に被害が増えるだけではないか・・・。とにかく、今回は君のことも不問にしてやるから、それで納得したまえ。いいな!」

「・・・わかりました・・・」

さすがにこれ以上副司令に逆らい、減給50%がさらに増えても困る・・・。
自らの矜持と現実の問題(ローン・えびちゅ)を天秤にかけ、ミサトは現実を取った。

とはいえ、彼女は後でシンジにはガツンと言ってやらねば!と思っていた。しかし、その機会はこの後、彼女に降り掛かる騒動によって永遠になくなるわけなのであった。


シンジがケージに戻ると、今回も鈴原整備部長が彼を出迎えた。
そして彼はシンジに土下座し、息子のあまりにも愚かな行為を謝罪した。

「鈴原さん、もういいですよ、頭を上げて下さい。確かにシェルターを勝手に出ていたのは悪いことですが・・・どうやら僕がシェルターの入り口を使徒に投げられた際に潰したことで、友達が死んでしまったと誤解して錯乱していたようですから・・・ってシェルターは本当に大丈夫でしたよね(汗」

すると、整備部長と一緒に来ていた保安部長が頷き、

「ああ、大丈夫だ。誰一人けが人は出ていない。鈴原君の息子さんが言っていた『洞木ヒカリ』さんも『シェルター内にいる』ことは確認が取れている。息子さんはなにやら彼女と一緒に外に出たとか言っているようなのだが・・・」

「そうですか?うーん・・・あの時、二人しかいなかったと思ったんですが・・・とにもかくにも全員無事で良かったです。鈴原整備部長、息子さんをケガさせてすみませんでした(ペコリ)」

「いえ・・・とんでもない。命があっただけ幸運です。私から厳しく叱っておきます。後ほど謝罪にも行かせますので・・・」

「え?・・・まあ、僕は別に気にしてないですが、はは・・・では」


こうして、2回目の使徒戦をシンジは乗り切った。

パイロット控え室に戻るとなぜかカエデが部屋の外でうずくまっていた。理由はわからないが、そんなカエデを優しく立たせてあげると一緒に部屋の中に入った。部屋の中ではレイとあずみが彼を出迎えてくれた。

しばらくして、カエデがあずみによって再び外に出されると、ヒカリの件がシンジに報告される。

「・・・そっか・・・彼女死んじゃってたのか・・・あのジャージが言ってたことは正しかったんだね」

「はい。それと出過ぎたことを致しましたが『洞木ヒカリ』を召喚しました。指示も仰がず申し訳ございません」

「いや、それは助かったよ。おかげで保安部の目をごまかせたしね。それに彼女が死んじゃってたら僕になにか責任を被せられても困るし・・・。でも困ったね。ヒカリさんってクラスの委員長だからなにかと人付き合いも多いし・・・。母さんのようにこの世界の母さんと全然別人だったら、さすがに怪しまれるよねぇ・・・家族もいるんだし」

「それは・・・」

「よし、とりあえず、一度帰ってみんなで相談してみよう」

シンジはそう言うと、大人しく待っていたレイの頭をよしよしと撫でてあげ、さっさと家に帰ったのであった。


そして、ビルに着くと件の洞木ヒカリがすでにここに来ておりシンジを出迎えた。

「碇君。初めまして洞木ヒカリです。状況は・・・だいたい理解してるけど、随分と酷いことになっているみたいね」

「うん、初めましてだね・・・ヒカリちゃん。早速だけどどうだろう?こっちで暮らすのは大丈夫かな?とくに家族とか学校とか??」

「うん!それは全然大丈夫。別に私はあっちの世界でも碇君達のお仕事に関わっているわけじゃないし、友達とかまったく同じってわけじゃないみたいだけど、ほとんど生活自体は変わらないわ・・・でも・・・」

「でも??」

「今のあの学校崩壊しちゃっているのは、私一人の力だけじゃ・・・」

「だよねー。まあ、なんやかんやで5000万ポイント入ったし・・・どうにかできそうな人を呼んでみようかな?さすがにあの状況は改善しないとマズイよ。楽しくないし」

「はい!シンジ様。私が以前リストを見てた時、こういう状況にうってつけの人物がおりましたのでメモしてありますわ。今後のことを考えてもぜひお仲間の一人に加えたいですわ!」

アヤカが懐から手帳を出して、シンジにそのオススメの人物の名前を見せる。
シンジにはその名前が正直読めなかったのだが、プロフィール画面を開き、彼女の可憐な容姿を見て大満足だった。その能力も破格であり、しかも同い年なのが良い!!

「うんうん、いままでで最大のポイント量だけど・・・匹敵するほどの価値があるよね!!よーし!!では『食蜂操祈(しょくほうみさき)』を2000万ポイントで召喚!!」


トウジとケンスケが学校に戻ることができたのは、案外早かった。
全身骨折の重傷と最初診断されたのだが、次の日にはなぜかただの全身打撲になっていたのである。それは千鶴がヒカリに頼まれて、妹のノゾミをアーティファクト『天体観測者』で治療するために病院を訪れた際、シンジからこの二人の治療もお願いされたからだ。

千鶴は心底自分のネギ(杖)を少年達に突き刺すのは嫌だったのだが、この世界のヒカリを殺してしまってゴメンねというシンジの謝罪が含まれていたので、渋々、渋々治療してあげたのである。

ということで、翌日には退院できた二人はそのまま保安部の黒服さんたちにネルフ本部へ連行され、彼らの父親を交えての大説教大会が繰り広げられたのだった。

トウジはヒカリがシンジによって潰されて死んだことを強弁したが、大人達からヒカリはシェルター内で無事が確認されており、今も普通に元気に学校へ通っていると言われあっけに取られた・・・。そしてよかったぁよかったぁと泣きじゃくったのである。

そしてさらに翌日、トウジとケンスケは第壱中学にいつものように登校したのである。


「・・・トウジ・・・どうしたんだよ。そのひっかき傷・・・」

「サクラのヤツにな「兄ちゃんなんか死んでまえ」って怒鳴られて引っかかれた・・・」

「ああ、そう、そりゃ仕方ないね」

「そやなぁ・・・って・・・なんやあのでかい横断幕・・・」

「え?・・・『碇シンジ君街を守ってくれてありがとう!』・・・だってさ」

二人は学校の屋上から垂らされた巨大な横断幕をポケーっと見上げる。

「・・・ま・・・まあ、これは事実やしな・・・おかしなことあらへん」

「ああ・・・。機密の問題とかどうなってるのかな?とは思うけど・・・」

二人は横断幕に驚きながらも自分たちの教室を目指す。

廊下には『碇シンジ君の偉業を讃えよう!』とか『碇シンジファンクラブ会員募集中』とか、よく意味がわからないが『シンジ様と操祈様を囲む会明日16時開始』などのポスターが至る所、そこら中に貼りまくられていた。

「・・・なんなんやこれ?」

「さあ?」

困惑し首を傾げながら二人が教室に入ると、クラスメイト全員がシンジに向かって土下座していた。唯一していないのはシンジ本人と綾波レイ、謎の金髪の巨乳美女、そして洞木ヒカリだった。

「ねえ、操祈・・・これはやり過ぎだよ・・・」

「あら、シンジ様に逆らっていたんだから、これくらい当然でしょ」

「いや、過ごしにくいでしょ・・・逆に・・・」

「そうかしら、これくらい当たり前だと思うけどな」

食蜂操祈の能力『心理掌握(メンタルアウト)』読心、洗脳、記憶の操作・・・などなど精神を操ることにかけては最高の能力であり、彼女は所謂超能力者であった。

操祈は能力を使い、学校を瞬く間に掌握、生徒全員をシンジの下僕にしたのである。
それが、先ほどの巨大横断幕であり、ポスターであり、このクラスメイト達の土下座であった。

さすがにシンジとしてはこれはやり過ぎと感じており、翌日には多少は緩和されるのであるが。

「ひ・・・ヒカリぃ!!!!」

トウジはシンジの横で元気そうにしているヒカリに向かって叫んだ。

「へっ?ああ、鈴原君、相田君、おはよう」

「えっ??鈴原君って・・・ヒカリ、一体どうしたんや?」

「え??鈴原君は鈴原君でしょ。というよりなんで私のこと名前で呼んでるの??少し気持ち悪いんだけど・・・。ちょっと何、そんなに近づいてこないでよ」

ヒカリはトウジが自分に急に近づいて来たので、慌ててシンジの後ろに隠れた。
当然、このヒカリは別世界のヒカリであり、シンジラブのヒカリである。

この世界のトウジへの長年の想いが叶ったヒカリでは無いため、トウジに対してはただのクラスメイト、それ以上でもそれ以下でも無い関係なのである。

「ヒカリ・・・」

「鈴原君も相田君も勝手にシェルターから外に出て碇君に迷惑をかけたんだから、しばらくは大人しくしていなさい。ほら、SHRが始まるから席につく!・・・あの操祈さん、他の人たちも座らせてあげてね」

「はーい。ほら、あなたたち、さっさと席につきなさい。あっそれとあの二人がヒカリさんに変なことしないように守ってあげるのよ。ヒカリさんもシンジ様の大事な女の子なんだからね♪」

「「「「はい!操祈様」」」」

操祈は下僕(クラスメイト)達の返事に満足すると、シンジの後ろの自分の席に座った。

ほどなくして、担任の教師が入ってくると彼はまずシンジに深々と一礼し、そしてみんなに挨拶するといつも通りのホームルームが始まった。

「えー最後に今週の標語が決まりました『碇シンジ様おめでとう』です。みんなで唱和しましょう」

教師がそう言うと生徒達は立ち上がり、大きな声でその言葉を唱和した。

『『『碇シンジ様おめでとう』』』

すると他の教室からも同じ言葉が聞こえてくる。

『『『碇シンジ様おめでとう』』』

『『『碇シンジ様おめでとう』』』

『『『碇シンジ様おめでとう』』』

『『『おめでとう』』』

『『『おめでとう』』』

『『『おめでとう』』』

『『『おめでとう』』』

『『『おめでとう』』』

シンジはそのみんなからの言葉を受け恥ずかしそうにハニカミながら、

「みんなありがとう」

と答えた。

ジャージとカメラ小僧だけがただただそのあまりにも非現実的な光景に茫然自失していた。

「んな・・・あほな・・・こんなのありえんわ・・・」

「トウジ、『ありえない』なんて事はありえないだぜ」


第四話 雨、逃げ出した後 Aパートへ続く




[32048] 第四話 雨、逃げ出した後
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/15 12:40
エヴァちーと 第四話 雨、逃げ出した後[改訂版]


「ミサト?いるの?いるんだったら返事くらいしなさい!」

特務機関ネルフ、技術部長にして現在第四使徒戦の死骸(サンプル)の後処理作業に忙殺されていた彼女は、このとてつもなくくだらない懸案の処理に頭を痛めていた。

「ミサト!!・・・はぁ、もう!仕方ないわね・・・」

リツコは自分のIDカードをミサトの部屋のカードキーにスライドさせる。。
実はここに来る前に、念のため保安部で自分のIDでもミサトの部屋に入れるよう手続きをしていたのだ。開いた扉の中を見ると、そこはまさに腐海。玄関はもちろんのこと、廊下もゴミだらけだった・・・。

「やっぱり・・・酷い有様ね・・・。それにこの臭い・・・ああ、入りたくないわ」

とはいえ、(一応)親友の安否は確認せねばならない。もし死んでいたりしていれば火葬場くらいには放り込んでおかないとこのマンションに申し訳がない。

(葬式は・・・どうせいつか合同の葬儀があるでしょうからその時に一緒でいいわよね・・・一応『戦死』扱いくらいにはしてあげるし・・・そうなると二階級昇進でニ佐か・・・身分不相応も甚だしいわね)

そんなことを考えながらも、リツコは意を決して中に入る。
そして、以前に来たときに確認していたミサトの寝室へ行き襖を開けた。
しかし、部屋の中は缶ビールの空き缶とゴミ以外は何も存在していなかった。

一応他の部屋も確認する。浴室にペンギンの干からびた死骸がある以外はとくに問題は無くミサトの姿は見当たらなかった。

「く・・・・・・くぅぇ・・・」

「わっびっくりした!・・・まさかコレまだ生きているの?スゴイ生命力ね・・・興味深いわ・・・」

リツコは虫の息のペンギンに感心しつつ、それは一旦置いてリビングに戻るとリビングの机になにやら書き置きらしきチラシの裏が残っているのを発見した。
リツコはその書き置きを一読して、深い深いため息をついた。

「・・・30にもなろうかという大人が、現実から逃げて家出・・・。呆れて何も言えないわね・・・」

作戦(一)課長葛城ミサト一尉ロスト・・・捜索の必要・・・無し。外は快晴である。


事の発端は第四使徒戦でのミサトのシンジへの指示だった。

あの場では知っての通りいろいろ諍いがあったわけなのだが、ろうじんの仲裁で両者不問となり決着していた。しかしそれでは納得が出来ない勢力があったのである。

それはシンジ達ではない。ミサトに反旗を翻したのは日向を除く『作戦課』の職員達である。彼らからしてみれば、エヴァのパイロットと一緒に戦術検討会で使徒戦へ向けての作戦を練り上げ、勝利をより確実にする努力を続けていたのである。
それは作戦課として当然の職務であり、無論この検討会に課長であるミサトも出席するようにと彼らは要請を続けていたのだが、生来の面倒くさがりでマイウェイ、トップダウン志向でもある彼女は『パイロットは戦闘中、私の命令に従っていればよい』という持論であるため、結局一度たりともその検討会に出ることはなかった。

一応代わりに副官の日向は出席しており、もしいざとなれば日向がミサトを説得するのだろうと皆思っていた。というか、シンジですらもそう思っていたのだ。

シンジはミサトとは初日の体力テストや格闘訓練などで顔を合わしていたが、実戦形式の組み手でミサトを投げ飛ばした後、マニュアル通りに彼女の腹を蹴り失神させると、翌日からは来なくなってしまった。そのためシンジはミサトのことをよく知る機会が無かったのである。ちなみにこのことを日向から注意されるとシンジは「態々アゴじゃなく腹にしたのに・・・」と首を傾げた。「いや、アゴを蹴り抜いたら昇天しちゃうよ」と言われ「えっ・・・でもあずみさんは昨日青葉さんにそうしてましたけど・・・」とさらに不思議がっていた。

補足するとあずみは青葉のアゴを軽く滑らせるように蹴って脳を揺らし、昏倒させただけであり、シンジのように力任せに蹴っているわけではない。彼女だってTPOは弁えている。さすがにそんな簡単に殺したりはしない。気絶させて眉を剃っただけである。

まあ、そんな微笑ましいこともあったが、今回の戦闘前までは不安はありつつも、シンジも職員達もいくらなんでも作戦課が正式に作成してある作戦書(もちろんミサトに提出されている)は読むくらいはしているだろう、実戦時はこれを元に適切に作戦を執るだろう、また何かの時は副官の日向がフォローをするだろう・・・。という根拠の無いことを考えていたのだ。

まさか国連の特務機関が『無能』を作戦課長にはしていないだろうとも思ったのだ。

しかし現実は非情である。

発令所でも騒ぎになっていたが、あの時ケンカをしていたのはシンジとミサトのみ。
一部リツコがミサトに反対意見を出したりしたが、司令部の青葉や技術部のマヤは発言権が無いし、サブオペレーター達もそんな越権行為は出来ない。
唯一ミサトの上位者の副司令がミサトを擁護したため、あれくらいで済んでいたのだ。

だが、戦闘の様子をモニターしていた作戦課の面々にしてみれば堪らない。自分たちが提出した作戦が使われない上、パイロットが進言しても黙殺、さらには副官の日向もミサトに何も言わず追従するのみ。
さらには、ミサトの指示はATフィールドを張った使徒に対して中和もせず、パレットガンをただ撃たせるというお粗末なものだった。シェルターから出ていた民間人をエントリープラグに入れさせようとする、なんの次善の策も無いのに地上での戦闘を放棄して、撤退を指示する。果ては敵をむざむざジオフロント内へ引き入れようとする・・・。

堪りかねた作戦課の職員達はミサトに抗議するため発令所に押しかけた。そして発令所の警備をしている保安部の職員達と大乱闘となっていたのである。保安部も明確にシンジ寄りなため、ほとほと困ったのだが、戦闘中の発令所は認められた者以外出入り禁止という規則があり、彼らはそれを無視するわけにもいかないため、苦渋の決断で彼らを押し留めていたのである。

戦闘後この騒動を知った副司令は、作戦課の職員達を規則違反で全員営倉に入れたわけだが、ミサトには先ほどおのれ自身で今回の件を不問にしてしまったため、しょうが無いので代わりに日向を彼らと一緒に放り込んでおいた。

営倉内で哀れ日向は彼らにリンチにされ、翌日早々にも営倉から出ることは出来たが病院に直行、即入院という有様になってしまった。

3日間の営倉入りを終えた彼らは副司令に全員分の辞表を持って、ミサトの解任を迫った。しかし、ゼーレに逆らえずミサトを解任できないろうじんはそれを拒否。とはいえ彼ら職員を辞めさせるわけにもいかないので、なだめるのに苦心した。

なんとか作戦課の職員をネルフに留まらせることには成功したものの、結局全員が配置転換を希望した。ろうじんは苦肉の策として新たに『作戦二課』を作り、課長をなんと碇シンジに抜擢したのである。
というのも、彼らがシンジの元で働きたいと『パイロット控え室』への移動願いを出したため、それは現実問題として無理!と言うことでこうなった次第なのである。
ろうじんからしてみればシンジへのお詫びにもなるし、職員達も満足する。ミサトも首にならず、ゼーレの指示にも背かない。まさに素晴らしい采配だと自画自賛したのだった。

こうしてネルフに作戦一課と作戦二課が出来たわけなのである。
当然一課はミサトと日向のみというかなり寂しいことになったわけだが、早速弊害が出た。

日向は謎の怪我で入院してしまったため、ミサトが事務仕事をやらなくてはならなくなったのだが、自分の部下が誰もいなくなってしまったため、首が回らなくなったのである。

ミサトが元部下に「あなたたち仕事を手伝いなさい」と言いに行っても、「はあ?我々は二課だ。上司は碇三尉でありあなたではない。なぜ一課の仕事を我々がするのだ。してやってもいいがその場合は作戦立案は全て我々で行わせてもらう。戦闘指揮もだ!」と言われ、頭に血が上ったミサトは「誰があんたたちなんかに頼るか!この包茎野郎!!」と言い返して万事休すである。当然仕事は出来ない。というより日増しに書類はどんどん溜まる・・・。


「・・・それで、(書類)仕事が嫌になって逃げ出したと・・・」

「ええ・・・無様にね・・・」

「はあ、、、まあ良いですよ。最近は僕も手が空いてきてますから・・・」

リツコはシンジにミサトが出勤せず行方不明になり、さらに副官の日向も入院していることから作戦一課は誰もいなくなってしまったので、二課に全ての権限を代行してもらい、書類仕事をやってもらうよう要請した。

30歳の大人が出勤拒否で家出、その代わりを14歳の中学生に頼むのである。
これほど、これほど情けない話があるだろうか?ここは『国連の特務機関』である。

「本当に申し訳ないけど・・・」

「いえ・・・リツコさんも寝てないんでしょう?アレ(死骸)の調査もまだ始まってないし・・・。さすがに腐っちゃいますよ。作戦課のことは全部任せて下さい。もしこちらが早く終わったらリツコさんも手伝いますよ。マヤさんにも会えるしね♪」

「ほんと!助かるわ!マヤならいくらでも好きにしていいわ。そうだ!マヤを下着姿で勤務させてあげましょうか?なんなら全裸でもいいわよ!」

「え・・・それはちょっと引くなー」

「・・・・・・も・・・もちろん冗談よ・・・はは」

「ですよねー」


シンジとリツコがそんな話をしている頃、遠く長崎の地では一人の女性が苛立っていた。

「いつまで私をここに缶詰にしておくつもりなのかしら!これじゃ私を全く生かしきれてないじゃない!」

ここは長崎造船所を改め雪広重工『Nagasaki Arsenal(ナガサキ アーセナル)』である。
アーセナルとは工廠(こうしょう)つまり兵器工場という意味であり、つまりはここで戦術機を開発、生産をしますよということである。
もちろん未だ極秘であり、この名称を知っている者はまだ少数に限られていた。

ちなみにイギリスのサッカークラブで有名なアーセナルも地元に兵器工場があったことからこの名が付けられている。

そんな中、香月夕呼はいろんな思いを抱え焦っていたのである。

「雪広はよくやっている、それは認めるわ。が、いつまでも彼女を司令塔にして采配させるのは危険よ。彼女は立場はあれどまだ14歳の小娘に過ぎないわ。・・・どうにかして私をここから自由にしてもらわないとね・・・」

「ふーん。随分あんたは自信があるんだねぇ」

「当然よ。これでもこの年齢で国連の第三計画の責任者になったのよ。横浜基地では副司令の地位にだってついていた。政治家達との争いなら負けるつもりはないわ」

香月夕呼は学者であったが権謀術数に優れ、その力量から『魔女』と異名をつけられるくらいだった。
彼女にとってここに引きこもり開発だけをやっているなどというのは、役不足も甚だしいことなのである。またとっくに撃震の開発も完了しており仕事もなかった。

「私のコンピューターのロックが外れているんだから・・・だれか代わりの人を呼んでもらえれば不知火くらいまでなら余裕で開発できるわよ・・・ピアティフ一人だとさすがに難しいだろうけど・・・そうね霞がいれば二人でなんとかなるでしょう・・・」

「確かにアヤカに政治的な活動をこれ以上させるのは難しいだろうね・・・ユイさんやキョーコさんも表舞台には『まだ』出られないしさ。まっ今夜の会議でシンジに話してみるしかないね。シンジなら大丈夫さ。ただ千鶴が予算(ポイント)を狙ってるみたいだ」

「・・・わかってるわよ。那波の所も工場を稼動させたいんでしょう。でも何とか予算(ポイント)はもぎ取ってみせるわ。で?イザベラ、あなたはこれからどうするの?」

「ドイツへ。ここから『ニューシャンハイ』に渡って『ワルシャワ』まで空路、そこからは陸路でドイツに入るよ・・・。なんとかネルフのドイツ支部に潜り込みたいけどね。さて一応ここの視察はできたから私はもう行くよ」

イザベラはそう言い、おでこをキランと光らせると部屋を出て行った。
まあ、彼女の外見であれば欧州の方がかえって動きやすいのかもしれない。

「あれ?イザベラさんもう行っちゃったんですか?」

彼女のコーヒーを淹れて戻ってきたイリーナが残念そうに呟く。

「ピアティフ、それ冷める前に私に頂戴」

この世界はもちろん合成食などはないため、コーヒーも美味しく飲むことが出来た。
もちろんセカンドインパクトの影響で物価は高いのだが、雪広の財力であれば世界中からどんな種類の豆も手に入れることが出来たのである。プロフィールで夕呼がコーヒー好きということをシンジは知っていたので、アヤカにコーヒー豆を贈るよう指示していたのだ。夕呼からすればこれだけで『いくらでもシンジに股くらい開いてあげてもいい』と思うほど感謝していたのである。

「3バカの様子は?」

「はい、シミュレーターで撃震の操縦を習熟しているようです。彼女達は武御雷(たけみかづち)の操者でしたから、大幅にグレードダウンした撃震に苦労してるみたいです」

「・・・どういうわけか碇がシステムで『XM3』をポイントを使って開発しないと、OSが機体にインストール出来ないのよね・・・。他の機種を生産ラインに指定することもできないし・・・」

「ですねぇ、現在は旧OSですから・・・新OSに慣れていると戻すのが大変です」

「それに、なんであの娘たちなのかしら?・・・A-01の連中なら良かったのに・・・」

「召喚するポイントが高かったんじゃないですか?」

「伊隅や早瀬なら考えられるけど・・・高原とか麻倉とかならあいつらより安いんじゃないの?」

「・・・下の名前がわからなかったから表示されてなかったとか」

「ピアティフ・・・私は真面目に話してるのよ!」

「すっ・・・すみません・・・」

「とにかく、今日の会議で予算(ポイント)を勝ち取るわよ!」

「はい!!」


さて、神の視点は再び第三新東京市に戻る。

ヒカリにフラれた?トウジはケンスケを伴いゲームセンターに来ていた。

というのも、あの日以来ヒカリにしつこく迫っていたトウジだったのだが、さすがにやり過ぎたのか洞木家から鈴原家へ抗議の電話が入ったのである。
これを受けたトウジの父、鈴原整備部長がトウジをたこ殴りにし、最後には「もう、これ以上父ちゃんを困らせないでくれ!」と泣かれてしまった。さらには妹のサクラにまで「兄ちゃん!ノゾミちゃんからも兄ちゃんをどないかしてって言われて超恥ずかしかったわ。兄ちゃん、もう二度とヒカリさんには近づかんといて『ほんま堪忍しといてや』」と言われてさすがに、さすがに彼も諦めた。

「ヒカリ・・・いや、いいんちょは記憶でも喪失したんかな・・・」

「そうなんじゃないの?いつまでもくよくよするなよ、トウジ。夢だったと思えば気も楽になるさ。だいたいクラスで委員長に「わいとS○Xしたやないか!」って大声で怒鳴るバカがいるかよ。あれじゃたとえ記憶を持っていたとしても喪失したくなるよ」

「せやな・・・あれは確かにわいが悪かった」

「ドン引きってああいうのを言うんだね。勉強になったよ」

「・・・そやな・・・ガチでグ-パンされたしな。ええパンチやったで・・・」

「ああ、腰の入ったいいパンチだった。さっ俺たちもゲームでストレス解消しようぜ」

二人がそんなことを話していると、ゲーセンの中で一人の女性がゾンビを撃ち殺すガンシューティングゲームをやっていた。
その表情は鬼気迫っており、ちゃんと狙って撃つというよりも、とにかく銃を連射してはリロードを繰り返すというプレイをしていた。それでもちゃんと最終面まで進んでいるようで、二人はその女性のプレイを暇つぶしに見学することにした。

女性は無事ゲームをクリアすると多少はストレスが解消されたのか、少し表情を和らげて彼らの方を振り向いた。

「あら?あんたたちってどっかで見たような?」

「へ?わいたちですか?いえ初対面ですけんど」

「そう?・・・いや、でも・・・ああ!思い出した!あの時の民間人の少年達ね!!」

「えーと・・・申し訳ないですけどお姉さんはどちら様なんでしょうか?」

「私?私はネルフの作戦(一)課長、葛城ミサトよ。二人ともよろしくね」

「はぁ??それは・・・よろしゅう」

「さっ・・・作戦課長!!すごい!!こんなに若いのにそんな要職についてるなんて!!ぼっぼく相田ケンスケです!!よろしくお願いします!!」

ケンスケは大興奮でミサトの手を取って握手した。そして、敬礼をすると横のトウジをこづいて自分と同じように敬礼させる。

二人のこの様子にボロボロになっていたミサトのプライドも多少持ち直したようだ。

(そうよ!コレよ。『普通』の子供はネルフの作戦課長にはこういう態度を取るものなのよ!やっぱりあの生意気な糞ガキのほうがおかしかったのよね!!)

「元気な子達ね!子供はこうでなくっちゃ!よし、お姉さんが奢ってあげるからご飯でも食べに行きましょう!」

最近ついてないことが多かったトウジやケンスケにとっても、綺麗なお姉さんからの食事のお誘いは地獄から天国へ急浮上したようなものである。もともと年上好きだったトウジはヒカリのことなどあっさりと頭から消えていたし、ケンスケももし作戦課長に認められればシンジと同じようにロボットのパイロットになれるかもしれない!という淡い希望(妄想)を持ち始めハイテンションになっていた。

両者の意見が一致し、3人は早速ファミレスへ向かうのであった。

「振り返ればこれが地獄の日々の始まりだった・・・」と後に鈴原トウジ死刑囚は裁判で語っている。

後日とある人々はこの日の出会いを『歴史上もっともくだらない出会い』と評した。
とある新聞社は『この出会いがあったからこそ人類が救われたとも言える』と擁護したが、「お前らバカか?捏造記事出してんじゃねーぞ!このア○ヒが!」「何だとこのネトウヨ!俺たちエリートに勝てると思ってんのかにだ!」「ニダってw」と不毛な争いが起きたのであった。

ファミレスに着いた3人は早速ドリンクバーを頼むとそのまま長時間居座り続けた。
トウジとケンスケは腹が減っていたが、ミサトが「私、今お腹空いてないのよね」という言葉を受け、結局ご飯にはありついていなかった。

しかし、ミサトがシンジへの愚痴を言い出すと、トウジもそれに乗り二人して大愚痴大会へと発展した。作戦課長であるミサトが自分の言うことを聞かないシンジに手を焼いていることがわかったケンスケは「ならば僕をパイロットにして下さい!」と立候補。トウジも「わいもミサトさんのためやったらいくらでも一肌脱ぎます」と応じた。それを聞いて「そうよ、これよ!私が望んでいたチルドレンはこういう子たちよ!」と感涙し、結局ドリンクバーだけで5時間粘った後、3人はネルフ本部へと向かうのであった。

トウジとケンスケのIDカードなど当然あるはずもないが、ミサトは借りている日向の車に二人を潜ませてカートレインに乗り、そのままネルフ内に侵入を果たすと、まず二人を連れて食堂へと向かった。ミサトが堂々としていたこともあり、保安部の面々もまさか彼らが不法侵入しているとは思わず、3人が呼び止められることはなかった。

さらに間が悪かったのはこの少年二人は先日の使徒戦でネルフに多大な迷惑をかけた少年たちであり、顔を知られていたことがある。また身内の子息でもあるし、大方始末書の提出にでも来たのだろうと勘違いしてしまったのである。

「悪かったわね。お腹空いたでしょう。ここならなんでも食べて良いわよ!」

「おお!すいません。ミサトさん。もうわいらお腹ぺこぺこで・・・」

「ゴミンゴミン。さあ遠慮しないでじゃんじゃん食べて!」

すでに夜9時を過ぎており食堂は人が疎らだったが、ネルフの食堂は24時間営業なので彼らの食欲を遮るものは何も無かった。

ミサトは彼らと自分の分の食券を『日向のIDカード』で決済すると、ガツガツと食べ始めたのだった。

ケンスケは夢だったネルフ本部へ入ることができ大満足である。さすがに写真は撮ることはミサトに止められていたが、こっそりハンディカメラは回していたりする。
先日保安部に連行されたときは手錠に目隠し猿轡である。あれでは何も楽しめない。

「よし!次にあんたたちの登録を頼みにいくわよ!」

ミサトたち3人は技術部長執務室、リツエモンの所に向かったのであった。


「リツコ、この子達をチルドレンに登録して!作戦一課で訓練をさせるわ!!」

またバカが何か言いだした・・・。思わずリツコは痛みはじめたこめかみを押さえる。

「あのね、ミサト・・・。チルドレンはマルドゥック機関が選定して送り込んでくるのよ・・・。あなたがチルドレンにしたいって言ってなれるものじゃないの・・・」

「なら候補生なら?エヴァの実験に一般の子供を使えるのはリツコにだって多少は意味があるでしょう?・・・いいじゃない戦自にだって少年兵がいるんだし。3士なら佐官のあなたなら任命し放題じゃないの!!」

「・・・候補生ねぇ・・・」

リツコは少し考え込んだ。実はミサトが連れてきたこの二人はあの『2-Aの生徒』であり、ネルフが密かに用意している『予備のチルドレン』達なのである。生徒達の母親は全員コアにインストールされており、セントラルドグマの一室に保管されている。そう考えれば『候補生』といえば現状でも彼らはすでに『候補生』だと言えなくもない。

それに、いずれ予備が必要になる可能性もある。こちらでこの二人を囲っておけばいちいち予備が必要になる度に学校へ勧誘に行く手間も省けるし、しかもそれは自分がどうせ行くのだろうから未来の仕事削減には一応なる。

なんにせよ、子分が出来ることでミサトが立ち直るのであれば安いものだろう。

(どうせエヴァはコアを変えない限り彼らには動かせないのだから、せいぜいミサトのご機嫌取りをしてくれたら御の字ね。確かに保険にもなるし・・・。こうしてみるとなかなか良いアイデアね。ミサトの案なのが癪だけど・・・)

「わかったわ、ミサト。あなたがちゃんとこの二人を責任をもって世話するなら、副司令に掛け合ってあげる。ただし、彼らの給料は一課で出しなさいよ。現状あなたの仕事を全部二課がやっている以上、当分は一課の経費は認められないけど・・・」

「さすがリツコ!話がわかるわ。大丈夫。今回の騒動の責任を取って日向君を無期限減給20%にするわ、そのお金を10%ずつ彼らのお給料にしてあげて・・・。それで1人5万円程度にはなるでしょ。小遣いには十分よ」

「・・・・・・哀れね」

「大丈夫よ。さすがに最近ちょっちやり過ぎてるから少しは私も(体で)払うわ」

「・・・・・・哀れね・・・・・・恋愛はロジックじゃないのね(ボソっ)」

「え、何か言ったリツコ??」

「いえ、日向君がそれで満足なら何も言うことは無いわ。彼も大人ですもの」

「言っておきますけどね。私も不本意、渋々だからね。絶対内緒にしといてよ」

(女の汚い所よね。まあ、世の女性のほとんどがそうなわけなんだけど・・・。マヤが聞いたら軽蔑するでしょうね・・・でもねマヤ・・・『二十歳過ぎて処女のほうがマイノリティ』で、『女性の大半はたいして好きでもない男と一晩ヤったくらいの経験をしているほうがマジョリティ』なの。まあ、私もあなたと似たようなモノだから偉そうなことは言えないけど・・・)

実際、神も姉の携帯を何気なく見たとき5股くらいしてて笑った(引いた)。
それが今では2児の母でごく普通の家庭を築いている。これはなにも姉がおかしいわけじゃない。それが『現実』であり、ごく『普通』のことなのだ。アイドルがIS○Aに寝取られてもそれは不思議なことではないのである。普通の女の子ならイケメンと付き合い、股を開いてキャッキャウフフしているのが当たり前なのである。そもそもそういう女の子じゃなければアイドルになろうなんて派手なこと考えるわけがないではないか。あそこに並んでいる『偶像』達はもれなく非処女であり中には彼氏がいる娘だっているんだ!『目を覚ませ』『目を覚ますんだ』友よ・・・。

だいたいアダルトビデオに出てる女の子、風俗で働いている風俗嬢、キャバクラで働いているキャバ嬢・・・お前はこんな非処女の彼女達に優しくしてもらって楽しく過ごしているではないか。お前の書いたつまらない小説の話をしたってちゃんと聞いてくれているのだろう??にも関わらず俺は『処女派』なんだよねとか・・・舐めとんのか!!
そもそも素人童貞のお前が処女なんぞ相手にしたら黒歴史決定的だぞ。女の子の処女は手馴れたイケメンたちに任せておくんだ。そのほうが互いにとってプラスなんだ!!

たしかに彼女たちにはお金がたくさん必要だが、結婚したってお金はいるんだ!!

神の嫁さんなんか結婚したらろくにエッチしてくれないし(爆)というか子供が出来たらセックスレスだぞ。嫁さんは飯は食うし、服は買うし、子供が出来たらさらに金がかかるし、あれやこれやであっという間に貯金がなくなったわ!!火の車じゃい!!

お前は独身貴族で風俗嬢と遊び、キャバ嬢と遊び、さらにはアイドルなんぞにはまりやがって!それもリアル(AKB)と二次元(モバマス)の両方で!!一体お前は何をやっているんだ!!

何が『恋姫×モバマスSS』だ!ちくしょーめ!なんかそっちの方がこんな糞SSより断然面白そーじゃねーか(爆)投稿楽しみにしてるぜ友よ!!

すまない、少し取り乱した。神も三十路のおっさんなんでなストレスが溜まってるんだ。

と、神様が文字数稼ぎを行ったところで、脇に置かれていた鈴原トウジ、相田ケンスケの2人はめでたくチルドレン候補生、3士として登録された。
彼らは作戦一課に配属され以後チルドレンとして訓練を重ねていくこととなる。


「なに(↑)この露骨な稼ぎ・・・そんなに書くことがないの??」

「シンジ様、仕方がないですわ。そもそもこの第四話・・・原典でも第三話の後日談扱いで、その大半をシンジ君が街を彷徨ったり、風景を映したり、ラストで1分近く沈黙させたり・・・正直あまり中身が無いお話なのです。だいたいこのSSではシンジ様は逃げ出してもいませんし・・・プロット段階でもなんと10行しかありません・・・。他の話に合わせて1話分文字を埋めるだけでも一苦労ですわ」

「うん、そうだね。って僕たちもその稼ぎに加わっちゃだめだよ・・・。さあ、それでは会議を始めようよ!」

今回雪広ビルにて行われる会議の議題は、残り3000万ポイント強をいかにして効果的に使うか?ということを決めることである。今後の展開を左右する大事な会議だった。

「操祈に2000万先に使っちゃったから、僕としては残りはみんなの希望で使いたいと思ってる。忌憚のない意見を出し合ってね」

シンジがそう言うと、まず先にナガサキ・アーセナルの夕呼が発言を求めた。

その内容とは自分は研究者としても優秀であるが政治家との交渉事も得意であること。なので自分をナガサキにおくだけではなく第二東京や海外の政治勢力ともやり合わせて欲しい。戦術機の開発は自分の弟子を追加召喚してくれれば大丈夫。それと自分の護衛に幼なじみを一人召喚して欲しい・・・とのことだった。

これにはアヤカが賛成したが、千鶴が「那波重工はどうしますか?まだなにもシステム上強化を行っていないのでどのカンパニー(部門)も民生用と戦自のヘリくらいしか生産をしていない状況です。シンジ様に資金とポイントを入れて頂き、役に立てて頂きたいです」と意見を述べた。

次にエリナが深刻な人員不足を訴える。

「秘書の人員ですが・・・集まりません。面接に来た人たちを1人ずつとりあえず自白剤を投与してチェックしているのですが・・・。結局全員がなんらかの所のスパイです。食蜂さんが来てくれましたので、何人かは精神を操ってもらって2重スパイになってもらっていますが、正直その人達は恐い(汗というか、不気味(汗というか・・・。どうにかして絶対安心の人材を確保できないものでしょうか?」

『それはナガサキでも要望したいわ。雪広の従業員達では戦場に出せないもの。いくら戦術機や輸送艦、輸送トラックを作っても動かす人がいなくてはどうにもならないわよ』

ちなみに他のメンバー達、美羽はユイの膝の上でお休み中。その横でキョウコもお休み中である。七乃はその反対側で美羽の涎を拭いてあげたりしてポワポワしている。特に要望などは無いようだった。

「・・・しかし・・・運転資金も必要です・・・一日数億単位で経費がかかってますから・・・このままではあと一ヶ月ほどで資金ショートしてしまいますわ」

アヤカが悔しそうにそう漏らす。

「そっ・・・そんなにお金がかかるの!!」

「ええ・・・本当にいろいろと・・・とりあえずまた1000億ほどあれば・・・」

シンジは驚愕した。子供であるシンジにはわからなかったが、ナガサキ・アーセナルも造船所を『横浜国連基地』に置き換えたので規模が数倍になっているのである。となれば維持費もそれ相応にかかる。電気代など光熱費ももちろんだが、現実的に齟齬が起こらないようになっているため、しっかり固定資産税も事業所税も法人税も住民税も・・・etc・・・かかるのである。それだけで年間十数億円にものぼるのだ。
これ以外に裏工作にも多額の費用がかかっており、お金はいくらあっても足りないのだ。

「お金に関しては我に策あり!なんだけどな。ねっ夏美ちゃん♪」

「へ?あー、あの話ですか」

「どういうこと操祈ちゃん?」

「夏美ちゃんのアーティファクトで一緒に金持ちの所へ忍び込んで、私が能力で操って雪広にお金を出資させればいいのよ。雪広の賛同者も増える、お金も増える。一挙両得♪」

「えげつないですねー」

「ポイントをお金にするのはもうヤメ!もったいないよ。ポイントはチートシステムじゃ無きゃ出来ないことをするべき。現実に手に入るモノは私たちのコンビにお任せ♪」

「お・・・お任せですっ!」

操祈と夏美が二人してダブルピースする。

「ならば・・・私と夕呼さんで相談して標的を決めましょうか・・・さすがにいくらなんでもいろんな人物が急におかしくなったら怪しまれますし・・・」

『そんな能力が使えるなら楽勝ね・・・少々歯ごたえがなさ過ぎてつまらないけど』

「いえ、さすがに使いすぎは戒めるべきです。夕呼さんのご協力は心強いですわ」

「じゃあ・・・お金と政治的な問題はお任せということで。というわけで、えーと夕呼さん、それで誰を呼んだらいいの?」

『社霞と神宮司まりもの2人よ』

「(やっぱり・・・この2人とも夕呼さんと関係が深いみたい・・・システムの制約上どうあれ呼ぶことにはなっていたのかもね)では社霞(200万)ちゃんと神宮司まりも(100万)さん、合わせて300万ポイント消費してナガサキへ召喚!!」

するとナガサキのモニターに人の形をした光の影が二つ現れ、うさぎ耳ツインテールの女の子となかなかに凛々しい女性士官が現れた。

『あがー』『夕呼!!』

どうやら無事に呼べたようである。女の子が夕呼さんに抱きついているようだ。

「では次に・・・えーと那波重工だったね。とりあえず工場を強化しようか?」

「あっあの!!」

「わっ、どうしたの夏美ちゃん?」

「さっき人が集まらないってエリナさんが言ってたんですが、聡美ちゃんならなんとかできるかもしれません」

「聡美ちゃん??」

「葉加瀬聡美ちゃんです。茶々丸さんっていうガイノイドを作っていたんです」

「でも夏美さん茶々丸さんは超さんやエヴァさんの2人もいたから茶々丸さんが生まれたんじゃなかったかしら??」

「うん。でも千鶴姉ぇ、聡美ちゃんって茶々丸さん以外にもいろいろロボットを作っていたじゃない。だから聡美ちゃんだけでもかなりのことが出来ると思うんだ。シンジ君どうかな?」

「・・・葉加瀬聡美さんね・・・確か以前に神様にオススメされたような・・・。えーと最下位(悲で1万ポイントだから、全然いいよ。じゃあ、葉加瀬聡美さん召喚!!」

もちろん彼女は『ネギ魔』キャラなので、この場に現れることは無い。

「プロフィールの確認もしておこう・・・。えーと『ガイノイド』は・・・開発すれば作れるんだね。それほどのポイント数でも無いし・・・では100万ポイントで開発!その他付随の技術もついでに取っておこう。これも一つ一つは数百から数千くらいだから・・・合わせて26万5千ポイント。よし設定完了。ガイノイド工場は雪広ビル21階から24階の3階が空いてるからついでに設定しちゃうね。よし、これでOK!これで人材確保も上手くいくんじゃないかな??」

「ありがとうございます。シンジ会長(ペコリ)」

「では那波重工の強化を始めるよ。神戸工場で戦術機母艦の建造を始めよう!大隅級戦術機揚陸艦を一隻、崇潮級強襲潜水艦も一隻。えーとナガサキで海神(わだつみ)81式強襲歩行攻撃機を開発しないとね。開発完了次第生産は撃震と同じ3機でいいかな?余裕があったら増やそう。それと僕が乗る陽炎の開発を始めないとね。陽炎は1機でいいや。あと他の雪広と那波の工場で87式自走整備支援担架と支援輸送車両、補給車両を製造してもらおう。開発はナガサキで、開発完了次第5台ずつ作ろう。そろそろ第三新東京市に近いところに『基地』が必要になるね・・・」

「はい・・・一応横須賀を考えてますが。でも国連の太平洋艦隊も使用しているので、どれほどのスペースが確保できるかはまだわかりません・・・」

「ねえ、シンジ君『初島』はどうかな?昔家族で行ったことがあるよ!」

「初島??」

「熱海から遊覧船で行くんだよ。すごく大きいプールがあるんだよ!」

夏美の進言を受けシンジはアヤカに早速『初島』を検索してもらう。

「なるほど・・・この世界じゃセカンドインパクトのあおりで全て破壊されて無人島になっているのか・・・ここなら良さそうだねぇ」

「そうですわね。第三新東京市の喉元にありますし・・・海に囲まれているのも機密を維持するのに最適です。よく言ってくれましたわ夏美さん」

「へへーそれほどでも」

「いや、今日は大活躍だよ!!じゃあ『初島』に関しては正式に取得してからシステムを使うとして・・・えーと工場強化に500万、輸送艦と潜水母艦の開発と生産で850万、海神、陽炎の開発生産で200万、その他車両などに・・・これは安いね20万だ・・・。あっこれはチート生産できないからか・・・なるほど。残りが1142.5万ポイントだね」

「シンジ様、申し訳ないのですが、その端数の142.5億円をいただいてもよろしいでしょうか?それで当座間に合わせますので・・・」

「うん!もちろん!じゃあ残りはちょうど1000万ポイントだね。これはとりあえず残しておこう。初島の開発もあるし・・・使徒戦も油断できないしね」

「「「異議無し(ですわ)(ですー)(よ)」」」


「やれやれ、なんとか文字が埋まったよ」

「なによりですわ・・・」

「そもそもみんなとイチャラブするのを自重してるのがダメなんだよ!次はヤリまくるよ」

「シンジ様。次は多分大丈夫ですわ」

(T。T )


第伍話 レイ、心のむこうに Aパートに続く




[32048] 第伍話 レイ、心のむこうに Aパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/15 12:54
エヴァちーと 第伍話 レイ、心のむこうに Aパート[改訂版]


「なんじゃと!ユートピアコロニーが壊滅したじゃと!」

『麻帆良学園』学園長室に驚愕の声が響いた。

「はい・・・今朝のメガロセンブリアからの連絡では、ボレアリス海峡以北、龍山山脈のあたりに謎のエイリアンが突然現れ始め、あっという間に周辺を制圧すると、南下しユートピアコロニーを襲撃しました。コロニーは壊滅状態だそうです。現在連合、帝国、アリアドネーの3国が合同で大規模結界を張り巡らせ、エイリアンの侵入を阻止しようとしているようですが、間に合わず、連合内の数カ国が酷い状況だと・・・。現在はテンペテルラまで敵に押し込まれているそうで、必死の防衛戦をしているようです・・・」

「なんということじゃ・・・」

魔法世界(ムンドゥス・マギクス)は火星にある。これは地球のマグル(魔法の使えない人)達には内緒なのだが、魔法使い達はこの火星にある魔法世界を故郷としているのである。実際には移相をずらした幻想世界なのだが、直接火星行き入り込めば魔法世界に入ることは可能なのである。無論今のところマグルが火星に人を送るすべはないのであるが。

しかしセカンドインパクトの混乱の際、魔法使い達は当然魔法世界へ逃れたのだが、その時マグル達もこの世界へ大勢逃れてきた。これは顔見知りのマグルを捨て置いていくのは忍びないというもので、数万人のマグルの人々が魔法世界にゲートを通って移住したのである。

そんな彼らが作った町が『ユートピアコロニー』だった。オスティアのさらに海を越えた北に位置する島に作られ、連合の援助を得て生活をしていたのである。学園長の友人達も数多く暮らしていたのだが・・・。

「・・・その化け物の正体はわかっておるのか・・・」

「いえ・・・ただ、誰が名付けたのかはわかりませんが『BETA』と呼称しているようです・・・。現在第三新東京市に襲来している『使徒』との関連は不明です」

「元老院はどう動くかのう・・・。あの連中が素直に地球のマグルに対して救援を頼むなんぞありえんじゃろうが・・・。セカンドインパクト時、マグルの難民の受け入れすら渋っておったからのう・・・」

「はい・・・今のところ何も・・・」

「た?・・・デスメガネ君はどうするのじゃ。魔法世界へ行くかね?」

「いえ、学園長・・・。現在麻帆良には様々な勢力が侵入を試みています。私がいなくなれば戦力が下がり子供達の安全も脅かされます・・・。残念ですが私を含め魔法先生たちはここを動くことはできません」

「そうじゃな・・・しかし、君もまだ名前を思い出せんのかね?」

「はい・・・学園長もですか・・・」

「うむ・・・なぜか『ぬらりひょん』という名前しか浮かばん。不思議なことにこの名前で書類を決済しても問題なく通る。さらには銀行で金すら引ける・・・。なんらかの魔法(?)が働いておるようなのじゃが・・・原因不明じゃ」

「はい・・・。私の名前が書いてあっただろう全てのモノに『デスメガネ』と書き直されていました。それに記憶にも欠損が多々あります。とはいえ、それが不快というわけではないのです・・・」

「そうじゃな・・・。朝から申し訳なかったの・・・」

「いえ・・・」

「しかし・・・火星が滅べば次は地球・・・。今行われておるサードインパクトを防ぐための使徒戦を勝利してもまた次の脅威がやってくるか・・・。神はなぜにこうまで人に試練を与えるのかの」

麻帆良のぬらりひょんとデスメガネが己の名前を取り戻すのは、まだしばしの時が必要であった。また元老院が地球に救援を求めるのにもまだ数ヶ月の時が必要である。


「戦自を解体させるですと!!田中大臣、突然何を言い出すんですか!!」

ドン!!と軍服を着た白髪の老人が机を拳で叩く。

「落ち着いてください、沖田海将。なにもすぐ全てを無くしてしまうというわけじゃない。まずは私の話をじっくり聞いてはくれないか」

「しかし・・・ふぅ・・・わかりました。では、最後まで聞きましょう」

「ありがとう。実はね、現在政府内では『新たな軍』の創設を準備しているんだ」

「新たな軍ですか?現在でも3つの、いや細かく言えば4つも軍事組織を抱えている我が国にこれ以上何を作ろうと?」

現在日本には防衛庁が管轄する『自衛隊(陸・海・空)』がある。しかしこの部隊の大半は『国連軍』の傘下に入っており、一般的には彼らは『国連軍』という扱いである。

日本に駐留する国連軍の大半は自衛隊だが、『太平洋艦隊』はアメリカ軍を中心とした艦隊であるため、日本の国連軍には二つの勢力が一緒に存在していると言ってよい。

2003年に起きた南沙諸島を巡る中国とベトナムの衝突を受け、日本も『独自』の戦力確保が必要となり、新たに国防省が作られ『戦略自衛隊』が創設された。

戦略自衛隊の規模は日本の国連軍の四分の一程度だったが、政府直属なためいちいち国連を通さなければ出動を依頼できない国連軍と違い扱いやすかった。なので装備は優先的に最新鋭のものが彼らには配備されており、またつくばの理化学研究所を組み入れ『戦略自衛隊技術研究所(戦自研)』に変えると多額の予算を出して新兵器を研究し、この数の不利を覆そうと試みていた。

また、さらに日本には『特務機関ネルフ』も存在している。

ネルフの情報は秘匿されており、内情は窺い知れないのだが、サードインパクトを防ぐため『使徒』と呼ばれる化け物を撃破するロボットを所有しており、軽視できない存在であった。

使徒には既存の兵器が役に立たないことは最初の使徒戦で国連軍が証明しており、戦自も開発中である陸上軽巡洋艦『トライデント級』では歯が立たないと結論付けられていた。唯一、戦自研では『陽電子砲』が試作されており、これをトライデント級に搭載できればもしかするのではないかと期待を集めていた。とはいえ、トライデント級の完成は6年後を目指しており、今はただの欠陥兵器でしかない。

それとネルフは『使徒戦のみに特化している組織』であり軍事的脅威にはなりえない。ただ国家の予算を湯水の如く浪費する『金食い虫』であり、その煽りを戦自が受けているため国連軍よりも彼らの恨みは深かった。

「雪広重工と那波重工の提携話は聞いているかね?」

「ええ・・・どちらの会社とも戦自と関係は深いので・・・」

「なぜ今までライバル関係だった両社が急接近したか・・・その訳はこれだ」

そういうと田中は封筒から十数枚の書類と写真を取りだし沖田に見せる。

「・・・これは?ロボット?!まさか!!」

「『戦術機』と言うらしい。すでに開発は完了し、現在3機がテストの最終段階だそうだ・・・。ビデオもあるよ、見てみるかね?・・・信じられん性能だよ・・・」

そう言うと田中は机の上に置いてあるテレビのリモコンを操作した。
その映像には戦術機と呼ばれる機体が滑らかな動きで広大な訓練場を走り、遠くの的に正確な射撃を行っているものだった。それは沖田に衝撃を与えた。

「戦術機は雪広重工が開発した・・・。信じられんことにいままでこのことは全く露見していなかった。あの内調も驚いたそうだよ。那波重工はすでに戦術機を輸送する輸送艦と潜水母艦の製造に入っているらしい。この海神(わだつみ)という機体は水中を動けるんだそうだ、信じられないだろう?もちろん政府は一切この開発に金を出していない。完全に彼らの金だけでここまでこぎ着けたというわけだ。最初に話を聞いたときは「ありえん、なんの笑い話だ」と思ったが・・・どうやら本当のようだ。鈴木次官が直接長崎に見にも行っている。私も機会があれば視察に行きたいものだが」

「・・・それで、彼らはこれを政府に売りつけに?」

「いや、買ってもらう必要は無いと・・・。建前としては、これは『使徒』との戦いでネルフが敗れたときの『保険』として作っているだけだそうだよ」

「そんな馬鹿な!!これだけの兵器をどこにも売るつもりが無いだと!!少なくとも数千億、いや数兆の金が無ければこのような開発は無理ですよ!!」

「・・・可能なんだそうだよ・・・所謂『天才』の力があればね」

「天才?」

「碇ユイという名を知っているかね」

「碇ユイ??いえ・・・いや、そういえばネルフの司令が碇という名前でしたな」

「ああ、現在ネルフの使徒戦で使われているロボットの開発主任だった女性だ。学術分野の世界ではセカンドインパクト前から天才として有名だったそうだよ。ネルフの碇司令は彼女の夫だ。今は別居しているそうだが」

「それで?」

「実は彼女は10年前に事故で死亡したと思われていたのだ。しかし、実際は雪広が彼女を匿っていたらしい。詳しい理由はよくわからないのだが・・・。また彼女は事故の影響で記憶喪失なのだそうだ。だが天才は天才・・・。雪広は極秘に碇ユイを使ってネルフのロボットに対抗できる機体、つまりこの『戦術機』を研究開発をしていたのだ。そして完成とほぼ時を同じくして使徒もやってきた。・・・もはやこのことを隠す必要もなくなったということだろう」

「・・・」

「偶然か必然かはわからんが、現在使徒を2体撃破しているネルフのパイロットは彼女の息子だそうだよ。つまりはネルフの司令が夫、雪広の新兵器の開発責任者が妻、ネルフのロボットのパイロットが息子というわけだな・・・。この息子もとんでもない。戦術機のOSは彼が作ったらしい。そのビデオには映っていないが『陽炎』という別の機体は彼の設計だとか・・・。蛙の子は蛙なのだな。補足するとこの息子は雪広の娘と婚約しているそうだよ・・・。いつのまにやら日本は雪広と碇家に乗っ取られ寸前という状況だ・・・」

「それは・・・不味いですな」

「しかし、確かに不味くはあるがこれは大チャンスでもある。雪広・那波を取り込み、碇ユイをも取り込めば国力の大幅な増強になる。雪広によると戦術機以外の革新的な技術も開発されているらしい・・・。ということで・・・」

「まさかそれで戦自を解体して雪広にそっくり渡すとか言うわけではないでしょうな」

「そこまでは言わんよ。しかし、新たな組織を立ち上げるチャンスでもある」

「ふむ・・・。それが『新たな軍』ですか。まあ、戦自は規模も数万人と小さいですから・・・。しかし、彼らをどうやって取り込むおつもりです?大臣」

「最近雪広からのエージェントが各省庁、そして様々な政治家と面会している。私ももちろん話したが・・・これがまだ若い極上の美女でな・・・しかし相当なやり手だ。あれほどの手腕は私が秘書時代に世話になった元総理くらいだな・・・。彼女の話では『将軍家』を復活させ『斯衛(このえ)軍』を創設する計画なのだ。この軍に戦自と雪広の私兵を合流、再編して作り上げるそうなのだよ」

「・・・すみません。もう一度言ってもらっても?」

「将軍家を再興するんだそうだ」

「・・・はぁ」

沖田は田中大臣は頭が狂っているのではないかと正気を疑った。

(将軍家だと??一体全体なんのことなんだ・・・)

「大臣。要約しますが、雪広・那波両財閥は天才碇ユイの力で極秘に戦術機と呼ばれる機体の開発に成功。目的は使徒戦と言っていますが、実際はその力を持って将軍家を再興、斯衛軍を創設する。大臣はそれに乗って国力を増強するため、戦自を解体してその斯衛軍に合流させ影響力を有しようと思っている。でよいのですか?」

「そうだ」

「夢物語ですな・・・荒唐無稽ですよ」

「だが・・・すでに根回しがほぼ済んでいる。戦自の土方陸将も昨日賛成してくれたよ。防衛庁は蚊帳の外だが、その他の各省庁間では事務次官級の協議がもう始まっている・・・。そもそも総理以下主要閣僚が推しているんだ。さらには国連事務次官まで軍承認の準備が出来ているそうだよ・・・。これは本当に本当に内緒だが陛下も乗り気だ」

「つまりは外堀も内堀も本丸も埋まっているわけですか・・・それで私が最後ということですか?」

「まあ、そういうことだ。君には不快に思わないで欲しいのだが、これはたった一ヶ月ほどで急にまとまった話なんだ・・・。先日就任したばかりの統合幕僚長は必死に反対していたんだが・・・どういう説得を受けたのやら・・・翌日には手のひらを返してこの件の推進派になっていたよ。・・・資金もかなり集まっているようだ。まさに魔法だよ」

「それで将軍家ですが『徳川家』を担ぎ出すのですか?」

「いや、なんでも『煌武院』という家の若い娘だそうだが・・・」

「・・・・・・・・・・・・誰ですそれ?」

「わからん・・・。私だって聞いたことがない。なにやら皇家に連なる家柄だとか・・・。しかし、宮内省によると確かに『煌武院』という名家は存在しているし、陛下に近い高貴なお方であるのは間違いないそうだ」

「大丈夫なのですか?彼女は御神輿ではなく実権もあるのでしょう?」

「うむ・・・。無論その辺りは君たちの力が必要となるだろう。ぜひ協力してあげて欲しい。斯衛軍は所謂『ロイヤルガード』だ。今の戦自よりも格式は高いし、自衛隊への命令権も有させるつもりだ。あのネルフへの対抗という意味もある。そして周辺諸国への抑止力にもなってもらいたい」

「戦術機はどれくらい配備ができるのですか?予算とかは・・・」

「・・・予算は人員の人件費だけで結構だそうだ。その他の経費は雪広、那波、碇の3家と煌武院家を含めた名家、皇族、さらには個人、企業からの寄付金で賄うそうだ。すでに戦術機は今年中に200機以上、CP車両や輸送車、補給車など1000車以上を配備するそうだ。その費用はすでに集めたので日本政府にこの分は出してもらわなくて良いとのことだ。現在ナガサキに戦術機の基地も出来ていてパイロットの訓練も行えるそうだ。とりあえず実戦配備は2ヶ月後ということになっている」

「・・・え・・・なにそれこわい」

「私もこわいよ。この話は一ヶ月前に突然出てきたが・・・いつのまにやら陛下にまで根回しをしているんだ。実際は相当前から話は進んでいたのだろう。我々が馬鹿な国民を嘘の公約で騙して政権交代を果たした時、前政権からこの件の引き継ぎを受けなかったから知ることができなかったのではないかと思っている。まあ、別段問題は無い」

「問題しか無いと思いますが・・・それでこの件の発表は?」

「今日の18時に首相が発表する手はずだ」

「・・・・・・本当に私が最後だったのですね」

「心配するな防衛庁の奴らも知らんよ。あいつらは国連軍に近すぎて海外に情報を漏洩してしまうからな。それとネルフもな。いやーあいつらの驚く顔が直に見れないのが残念で仕方ないよ」

「確かに・・・」

「おお、忘れていたが戦自では少年兵を飼っていたな」

「はい。トライデント級のパイロットとしてですが。まあ、戦術機が世に出た以上研究は中止でしょうが」

「別に研究を止めろとまでは私は言われていないが、、、そこに女の子はいるかね?」

「・・・ええ、何人かはいるでしょう」

「年は14歳で容姿の良い女児を1人用意してくれ」

「なぜです?」

「碇ユイ博士の息子にあてがうのだよ。彼は将来の雪広・那波両財閥を統合した碇財閥の初代会長になることが決まっているらしい。パイロットとしても優秀だが研究者としても碇博士を超える才能があるらしいのだ。とにかくスゴイそうなのだよ!さらに英雄色を好むというのか女好きでもあるらしい。無論スパイ目的で彼に近づけるほど甘くはないが、それでもとりあえず送り込んでおくだけでも価値がある」

「なるほど・・・確かに・・・。わかりました、スパイ云々は無しにして碇博士の息子に1人あてがいましょう。後々、なにで役に立つやらわかりませんからな」

「ああ、まあ、同じようなことを考えている所は他にあるだろうがな・・・」

「そう思うと彼も大変ですな。ハニートラップ盛りだくさんだ。羨ましいやら・・・」

「そうだな。少年兵の女児に某国の女だけは彼に近づけさせないよう言っておいてくれたまえ。彼が愚かなハニートラップにかからないよう注意させることだ」

「ええ、それだけでも重要な任務ですな」


その日の夕方、首相官邸より緊急の発表が行われた。

マスコミ各社は首相はとうとう退陣を決断か?いや内閣改造だ!と囁きあっていたが、実際はもっととんでもないものであった。

内閣総理大臣『榊是親』より発表された内容は以下の通り。

『戦略自衛隊を解体、新たに創設される『斯衛軍』に統合。斯衛軍を率いるのは陛下に新たに任じられた政威大将軍『煌武院悠陽』。彼女には日本国国務全権代行の地位も与えるが、当分の間政務は引き続き内閣が行うものとする』

『必要な憲法・法律改正を明日の通常国会で行う。すでに主な野党との調整は完了』

『斯衛軍(ロイヤルガード)は自衛隊の上位組織で有り、その命令権を有する』

『国連事務次官『珠瀬玄丞斎』より斯衛軍を国連が承認。天皇直属の軍隊として認定する。いかなる勢力からもその『独立権』は犯されない。いかなる機関の超法規的処置の対象外とする。但し委員会、ネルフ、国連軍などからの要請には適時応じる』

『雪広重工業により次期主力兵器『戦術機』の開発・量産に成功。斯衛軍に今年中に200機配備する。これにともない、生産力強化のため那波重工業と業務提携。将来の統合を目指す』

『雪広重工業・那波重工業の両社は斯衛軍を通じて国連軍に正当な価格での戦術機の納入義務を課す。但し国連軍以外の第三国への販売はこれを認めない』

『『戦術機』開発総責任者『碇ユイ』を斯衛軍技術二佐に任命する。『戦術機』OS開発責任社『碇シンジ』国連軍三尉を斯衛軍一尉に任命する。併せて国連軍一尉に昇進させるよう申請する。引き続き碇シンジ一尉は現在所属している部署にて作戦行動を取る事』

『斯衛軍の発足は9月1日。また戦術機の発表会を防衛庁が後援し日本重化学工業が旧東京にて開催を予定している『JA』の発表会と併せて行う。マスコミ諸君は防衛庁に取材の申請を行うこと。テレビ中継もこれを認める』

『詳しい内容については会場外に冊子を用意したのでそれを読むこと』

この首相の発表を聞いていたほとんどの記者はポカーンだった。
一体なにから突っ込んでいいのかわからないまま、首相はさっさと壇上を降りて会場から去ってしまった。しばらくして再起動した記者達は一斉に会見場を走り出たのである。


<<原典破壊ボーナス(極大)>>
『戦略自衛隊が解体された。そして斯衛軍が設立された。これにより原典における『戦自によるネルフ侵攻』が無くなった。但し、ネルフ侵攻のフラグが折れたわけでは無い。注意したまえ。ボーナスとして5000万ポイントを進呈する』


「いやー大騒ぎになってるね」

シンジはまるで人ごとのように、国営放送のニュース番組を眺めながら言った。

「騒ぎというより、これからどうなるのかわからなくて混乱してるんでしょう」

「でも~よかったです。パパがシンジ君のお役にたって」

シンジの左右に座っている女性は、先日呼び出した『榊千鶴』と『珠瀬壬姫』である。

2人は夕呼からの要請で残っていた1000万ポイントの内、200万ずつ、併せて400万で召喚した。彼女たちの能力というよりも彼女達の『親』が必要になったのだ。

榊千鶴の父親は『総理大臣』、珠瀬壬姫の父親は『国連事務次官』なのである。

オプションで指定し召喚すれば彼女達の父親もこの世界の該当人物と入れ替わって出現するのである。もちろん、召喚せずに操祈を使って総理などを操っても良かったのであるが、操祈の力も万能では無く、言われたことしかできない上、ふとしたことで元に戻ることもあるため、このような処置が取られた。この2人を使って周りを説得していき、どうしても反対する人物のみ洗脳したのだ。まあ、そうした人物はたったの数十人程度であり、大半の政治家、官僚、軍人達は説得できた。副次的な効果として様々な勢力に買収されている人物を発見することができ、諜報部は大喜びである。

呼び出された榊千鶴と珠瀬壬姫の両名はナガサキには行かず、第二東京で父親達の仕事を手伝ったり、家事をしたりしていたのだが、今回の発表を受けシンジの所に戻ってきていたのである。
不満を持ったどこぞの過激な輩が彼女達に危害を加えないとも限らない。情勢が少し落ち着くまではここに避難していた方が安全だからである。

そしてシンジも可愛い女の子を二人こうして侍らせることが出来て大満足なのだ。

といっても、現在部屋には美羽、七乃、あやか、千鶴(那波)、夏美、エリナ、あずみ、ユイ、キョウコ、操祈に聡美もおり、総勢13人のハーレムが形成されていた。

それともう一人『煌武院悠陽』という女の子も500万ポイントで召喚している。彼女は現在も第二東京におり、側には夕呼とまりもが付いていた。


シンジは先ほどから千鶴(榊)のその豊満なおっぱいを手で揉んで楽しんでいた。

とうとうシンジ君が『FSS(太ももスリスリ)』から『OMM(おっぱいモミモミ)』に進化したのである。これは実はこの場に今はいないがレイの協力の賜である。

シンジに従順なレイは都合の良い人形であり、ダッチワイフ状態な女の子なのだが、そのおかげでシンジにとってセクハラし放題の女の子でもあった。まあ、一般的な知識が欠落した、心が育っていない少女をセクハラしまくるとかお前『鬼畜ヘタレ』過ぎるだろと頭の中の神が囁いたが、それでもシンジにとってレイは女の子に馴れるのに最適な子だったのだ。

レイもシンジにかまってもらうのは嬉しいらしく、ヒゲのことは忘れ、シンジに深く依存していった。まあ、ほどなくそれに気がついたユイにバレ、シンジがレイにセクハラをするのは控えさせられるようになる。レイもユイからいろいろと教わることになった。

ユイに怒られたシンジだったが、レイで馴れたOMMをまず鬼畜にも美羽で試し、次に七乃に頼んで揉ませて貰い・・・アヤカに頼んで揉ませて貰い・・・と1人1人順番に頼んで揉ませて貰い、ようやくOMM初心者を脱したのである。無論まだまだ中級者へのランクアップは遠い訳だが。


ただ、ヒカリだけはちょっと揉めた。それはもちろんおっぱいだけの事ではない。
頭が少しおかしくなっていたシンジは、こともあろうに教室でヒカリの胸を揉んだのである。別にそれ事体はよかったのだが、一部始終をトウジに見られ殴りかかられたのだ。
無論、あずみによってトウジはあえなく成敗されたのだが、この頃トウジはどういうわけか『チルドレン候補生』になっており、ネルフ内でちょっとだけ問題になったのだ。

そのせいでリツコから『教室で女子生徒のおっぱいは揉んじゃだめよ』と注意される始末だった。マヤは『うう、不潔だけど・・・シンジ君なら許せるかも・・・』と悩んでいた。どうやら彼女は今日も順調のようである。

「じゃあ、どこで揉んだらいいんですか!こんなことでいちいちリツコさんに怒られてたら、僕もう控え室とか家でしかおっぱい揉めないじゃないですか!僕はただ、女の子のおっぱいを揉んだら、何か興奮することに気がついただけなんだ!」

そんなシンジの主張はリツコには響かなかったらしく、彼は保安部の面々によって連れて行かれた。あの強いシンジが大人しく連行されたことで保安部の面目は大きく躍如されたのである。別段シンジ君は『様式美』に従っただけであるが。

始末書を書かされたシンジは仕方が無いので控え室と家だけでOMMすることにした。

一応控え室のカエデにOMMしていいかと聞いたら快く応じてくれたので、勇気は出して見るものなんだなーと感動した。愛と勇気だけが友達のとあるパン男ならどれだけのことができるのだろうか・・・そう思うとなんだか胸が熱くなるシンジだった。

しかし、おっぱいというものは奥が深い。もちろん太ももだって人によって違う訳なのだが、おっぱいの奥深さには勝てないと思う。巨乳も良し、ちょうど良い美乳も良し、微乳だって揉み甲斐がある。美羽や壬姫のような無乳だって微笑ましくてシンジは好きだ。しかし、ただ欲望のままにOMMしていたシンジだったのだが、ある日はっと気付いた。

「だめだ!こんな独りよがりのOMMじゃ!女の子をただの『道具』にしか思っていないじゃないか!!ああ、なんて僕はだめなヤツなんだ。これじゃただの変態だ!僕は変態じゃない!仮に変態だとしても変態という名の紳士なんだ!!」

この日からシンジはOMMを一時封印した。

ハーレムメンバー達は「何か悪いものでも食べたんだろうか?」と心配したが、シンジは控え室や家で座禅を組み瞑想にふけるようになっていた。

しばらくして、ようやくなにかに気がついたのか、立ち上がると外へ買い物に出かけていった。

次の日、シンジは大きな三角定規でヒカリのスカートを持ち上げパンツを覗こうとしていた。別にそれ事体は問題無く、ヒカリはたいした抵抗もせずにパンツを見せてくれたのだが、再びトウジがシンジに殴りかかった・・・。それ以降はテンプレ通りである。

「教室でスカートめくり・・・小学生じゃないんだから。シンジ君、なんでこんなことをしたの?」

「僕もまた大きい三角定規におどらされただけの犠牲者の一人にすぎないってことさ」

「連れて行きなさい」

シンジは再び保安部に連れて行かれた。「いやスカートめくりくらいいいじゃないか」、「殴りかかった候補生の方が悪いだろ・・・」という擁護の声も出たが、シンジはきっちり始末書を書いたのであった。


「やれやれ、『生きるのって難しいね』」

「シンジ様・・・さすがにAGEキャラは止めましょう。収拾がつかなくなります」

「え?うん・・・。よく意味がわからないけどそうするよ」

「でもなんでシンジ様はスカートめくりを?パンツくらい毎日見てるではないですか」

「うん、反省して初心に返ろうと思ったんだ。でもよく考えたら僕ってクラスで孤立してたし、小学校時代に女子にスカートめくりなんてとてもじゃないけど出来なかったから・・・。だからスカートめくりから始まって徐々に『DQN』は成長していくのかなって考えると、僕もとりあえずめくることから始めてみようかと・・・」

「シンジ様は今でも十分『DQN』ですから大丈夫です。というよりシンジ様は『DQN』になりたかったんですか??」

「え?そりゃあ、あの横暴さがあれば人生楽しいかなって思わない?六○木で『関東○合』とか名乗りたいじゃないか」

「そんな危ないことをしてはだめです!シンジ様。私たちであればいくらでもFSSでもOMMでもスカートめくりでも何でもしていいです。だから誤った道には進まないで下さい。私たちでその『ク○吉道』とやらを極めてもらえれば良いと思います」

「アヤカ・・・ありがとう。こんな僕のために・・・(ノд・。) グスン 」

「え・・・ええ・・・もう、今更なんでも結構ですわ・・・」

こうして、シンジはハーレムメンバーに対し再びエッチなことをはじめたのであるが、その一方で今までより優しくFSS、OMMをするようになった。メンバーが止めるように言えば素直に止めるようにもなった。もちろんすぐに別のメンバーの所に行くのだが。

まあ、長々と何が言いたかったかというとおっぱいは至高だということである。
まだシンジが『お尻』のよさに気がつくまではしばしの時が必要になるのである。

ちなみにさすがのシンジ君も母親であるユイの胸は揉みませんでしたとさ。


「それにしても大きいわねぇ」

ミサトはトウジとケンスケを伴い第四使徒の回収・処理作業を見学に来た。
本人はさほどというか全く興味が無かったのだが、ケンスケにどうしてもとせがまれやって来たのである。早速使徒の死骸を見に行った2人を放って、ミサトはリツコが作業をしているプレハブに入った。

「ふー冷房が効いてて気持ちいい。エアコンは人類史上最高の文明の利器よね」

「なに?邪魔しに来たの?」

「冷たいこといわないでよー。『敵を知れば百戦危うからず』って言うでしょ。使徒を実際見に来ることは意義があるでしょ」

「敵を知って『己も知らなくちゃ』ダメなのよそれ・・・」

「そんな細かいことはいいのよ。で、何かわかった?」

「よくわからないことが『わかった』わ。使徒の肉体は粒子と波の二つの性質を持っていること、それと固有波形パターンは人間のDNAと99.89%一致していることよ」

「使徒って人間なの?」

「いいえ、でもチンパンジーなどの猿類よりも人間に近いわね・・・」

「それって」

『どういう意味?』とミサトが聞こうとしたところで、なにやら外が騒々しい。

ミサトはプレハブの窓から騒ぎの声が聞こえた方を見る。

視線の先には青色の軍服を着ている女性とヒゲ司令が使徒の死骸を見ながら話をしているようだ。
隣には同じ青色の軍服を着たシンジがいる。あの凶悪メイドは黒色の軍服を着て側に控えていた。それ以外にもミサトは誰かわからないが千鶴(榊)と壬姫が赤色の軍服を着てここに来ていた。あずみも望めば赤が着れたのだが、別に普段はメイド服なので着ないし、そもそも目立たない方が護衛がし易いということで黒を着ている。

「誰アレ?」

「碇ユイ二佐ほか斯衛軍の人たちよ。シンジ君もネルフと斯衛の両方に所属してるから・・・今日は斯衛の立場でここに来たのでしょうね」

「いいの?部外者をここに入れて」

「碇司令が許可してるんだからいいのよ」

リツコは不機嫌な表情でそう答えた。

「ふーん・・・それって、もしかして『公私混同』じゃないわよね」

「・・・ええ、あちらからの要請に応えただけなんだから。そうなんじゃないの」

「なんでリツコが機嫌悪いのよ。まあ、調査が邪魔されるのは仕方ないけどさ」

「別に機嫌は悪くなんかないわ。ただムカついているだけよ!」

「・・・・・・(これは触らぬ神になんちゃらなしかな)」


「これが使徒・・・」

ユイはおそるおそる使徒の表面を触る。別世界のユイは確かに優れた研究者であったが、兵器の研究者ではなく脳科学者であり、この2ヶ月ほどの猛勉強でなんとかこの世界の成り立ちなどを覚え、さらには兵器について、そして自分が開発したことになっている『戦術機』について勉強していたのである。しかし、百聞は一見にしかず。実際に使徒を間近で見て触れてみて今更ながらにその存在を実感したというのが正直な感想だった。

「ああ、人類の敵だ」

隣でヒゲがユイと同じように使徒に触る。
その際ヒゲが手袋を外したため、その手のひらの火傷痕がユイの目に入った。

「ゲンドウさん・・・その火傷・・・どうなさったんです?」

「ん?これか・・・これは、数ヶ月前にレイの乗る零号機の起動実験があったのだが、その際に事故があってな・・・その時のケガだ・・・」

「後遺症などないの?」

「ああ、問題ない」

ユイはヒゲの手を取ると火傷痕を見た。別段このヒゲは本物の夫ではないので、とくに彼に愛情があるわけではないのだが、一応姿形は自分の夫なのだし、心優しいユイは心配してケガの状態を見たのである。別に他意はない。

ヒゲからすれば内心してやったりであった。もちろんユイにケガをわざと見せるために手袋を脱いだのである。ケガを見せて嫁さんに心配してもらいたいというしょぼい計画が見事成功し大喜びであった。今回の視察の申し出もユイに会えるというので、この件を補完委員会に諮りもせずに許可を出したくらいである。

そんな彼らの様子をプレハブから見ていたリツコはまるで鬼だったとマヤは語った。

シンジはぺたぺたと使徒を触っているレイの後ろで「使徒に触るくらいなら、レイのおっぱいに触りたいなー」とのんきに考えていた。

初めて見る斯衛軍の軍服に興奮したケンスケが無断で千鶴達の写真を撮り、トウジとともにあずみにボコボコにされたのは余談であり、どうでもいい話である。


Bパートに続く




[32048] 第伍話 レイ、心のむこうに Bパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/15 13:01
エヴァちーと 第伍話 レイ、心のむこうに Bパート[改訂版]


「「おじゃまします!!」」

「どうぞー!遠慮せず入って入ってー!」

トウジとケンスケ、そしてリツコの3人はミサトに夕食へと誘われた。
リツコは絶対に行きたくない!と拒否したのであるが、ふと、あの時のペンギンはどうなっただろう?という疑問と少年達2人がミサトの料理を食べてどういう反応をするのか見たくなり、その好奇心を抑えられずやって来ていた。

「うわ・・・なかなかに豪快なお部屋で・・・」

トウジはゴミが散乱した腐海に絶句した。
憧れのお姉さんの残念すぎる有様に現実を思い知らされガックリしてしまった。
ケンスケはそれでもめげずに何かお宝(ミリタリー物や下着類)をゴミの中から探しているようであったが。

「ちょっち散らかってるけど、気にしないで」

「これを気にしない人類はあなただけよミサト!」

「なら、私は夕食のカレーを作るからさ、部屋が気になる人は片付けてよ。それでみんな幸せでしょ」

「わいらが一方的に不幸なような・・・いえ、なんでもないです・・・おい、ケンスケ!ちゃっちゃと掃除をはじめようやないか」

「ああ」

こうして、ミサトがカレーを作り、トウジとケンスケはゴミ拾い、リツコは最初の目的であるペンギンを確認するため先日見かけた風呂場へと向かった。

しかし、風呂場にはあの死にかけていたペンギンの姿が無く、何処かへと消え去ってしまっていた。
リツコは訝しんでミサトに「ここで死にかけてたペンギンはどこへ行ったの?」と聞くと「え?ペンギン?・・・そういえばペンペンの姿をしばらく見てないような(汗」という素晴らしい返事が返ってきた。

リツコはペンギンを求めて捜索を再開する。

(どこへ行ったのかしら・・・あの様子じゃそう動けるとは思えないけど・・・)

リツコが脱衣場をキョロキョロと見回すと、部屋の隅になにやら黒い物体があった。
リツコはそれをおそるおそる掴み広げて見ると、それは何かの抜け殻のようであった。

「まさか・・・まさか・・・ペンギンが『脱皮』したの!!」

マジマジと見てみればそれはやはりペンギンの皮(?)だった。そして背中の部分が縦に真っ二つに裂けている。

「・・・・・・脱皮して、ここから逃げ出した?・・・まさかこの過酷な環境で進化が促進されたのかしら・・・興味深いわ・・・」

リツコはそのペンギンの抜け殻を持ってリビングに戻る。

「リツコ、カレーが出来たわよって何それ?!」

「ペンギンの抜け殻」

「ペンペン!!」

ミサトはリツコから抜け殻をひったくるとそれを抱きしめた。

「ああ、ペンペン・・・こんな姿になっちゃって・・・一体誰がこんな酷いことを」

「あんたでしょ、あんた」

「ミサトさん、一応ゴミは拾い終わりましたけんど」

「ああ、ありがとう。ゴミン!ついでにコレも捨てといて」

ミサトはトウジにペンペンの抜け殻を投げ渡した。
トウジは不気味そうにそれを受け取ると、さっさとゴミ袋の中に捨てた。
リツコは抜け殻を少しサンプルとして欲しかったが、まあ、いいかととくに何も言わなかった。

「辛いけど私たちは悲しみを乗り越えて生きていかなくちゃならないの。さあ、夕食にしましょう!」

ミサトはそう言うとニコニコしながらキッチンからカレーの入った鍋を持ってきた。

「おお、美味しそうでんな!」

「当然。極上よ!!」

ちょうどそこになにやらホクホク顔のケンスケが戻ってきた。

ケンスケはミサトの家中を探し回り、果てはミサトのノートパソコンを起動させてネルフの極秘資料や様々なデータをカメラのメモリーカードにダウンロードしていた。
ほぼ丸々データをゲットすると、散らかっていた書類、ミサトが以前付けていた階級章、戦自時代の軍服、モノホンの拳銃などなどをケンスケはゴミ袋に捨てるフリをしてパクったのである。
どうせ押し入れでぐちゃぐちゃになっていたのだ、ミサトの過去の遺物に全く執着しない性格を見抜いて「捨てるのなら全部頂こう」というわけである。
まあ、後にこれによって大騒動となるわけなのだが。

「なんだ、まだ僕が掃除してたのに・・・もう食べ始めちゃってたの?」

「おうケンスケ、お疲れさん。なに今カレーが来たところや!じゃあミサトさん早速頂かせてもらいます」

「どうぞどうぞ、あまりの美味しさにひっくり返るわよ」

トウジとケンスケは「いただきます」と言って、一口ミサトのカレーを口に運んだ。

そのカレーは口に入れるまで気がつかなかったが、クサヤのように臭く、味は酷く苦かった・・・。そう、それはまさに『う○こ』味のカレーであったのだ。

トウジとケンスケは瞬く間に顔を真っ青にするとトイレへと駆けだしていった。

リツコは冷静に持ってきていた試験管にそのカレーを一匙サンプルとして取ると、厳重に封をした後バックに仕舞った。市販のルーでう○こを作るその成分に興味があった。

ミサトは周りの様子など我関せずであり、カップラーメンにドバドバとう○こカレーをかけるとそれを美味しそうに食べていた。
リツコはミサトの食いっぷりに少し気分が悪くなったので、ベランダへ行き夜風に当たって気持ちを落ち着けた。

結局、その後もミサト以外はそのカレーを食べることは無く、夕食は終了した。

ケンスケは未だ吐き気が収まらずトイレの主になっていたが、トウジはなんとか持ち直してリビングに戻ってきた。

「ああ、そうだトウジ君。すまないけど明日、学校でレイに新しく更新されたIDカードを渡しておいてくれないかしら。今日つい渡しそびれちゃったのよね」

「はぁ・・・なんでワシなんです?こういうのは碇の奴に頼みそうなものですけんど」

「彼、明日から第二東京に母親の付き添いで出張するから不在なのよ。明日はレイの零号機の再起動実験なのにね・・・。まあ、仕事なら仕方が無いけど」

「あいつも忙しいことでええこっちゃです。わかりました、コレ渡しときます」

「ええ、頼むわね」

「ふーん。まあ、レイもあのガキにいつもベッタリだし、作戦(一)課長としては良くないことだと思ってるのよね。トウジ君、せっかくオヒシャルの用件でレイと話せるんだから仲良くなるチャンスじゃないの。頑張りなさいね!」

「はあ」

トウジはリツコから渡されたIDカードをしげしげと見る。そこには、いつもの無表情では無く満面の笑みでダブルピースしている『誰コレ?』顔写真が使われていた。
これは撮影の際にそばにいたシンジ達に指導(ちょっかい)を受けて無理やり撮らされたものである。ちょっとだけ胸キュンしたトウジであった。


ミサトの家を辞したトウジとケンスケはミサトから「ついでにゴミ袋を下のゴミ捨て場に捨てといて」と頼まれ、ゴミ袋を両手に何個も持ってエレベーターに乗った。

「ケンスケ・・・気分大丈夫か?」

「・・・ああ・・・うっぷ、だめだ・・・また吐きそう・・・」

2人はゴミ袋をゴミ捨て場に捨てると、ケンスケはトウジに肩を貸りて家路へとついた。
ケンスケはう○こカレーのあまりの衝撃に、ミサトの部屋から集めたお宝の入ったゴミ袋も一緒に間違えてゴミ捨て場に捨ててしまったのだった。

そんな様子を隠れ見ていた一つの影・・・。影は素早く動くとゴミ捨て場に捨てられたゴミ袋を素早く回収していく。
先ほど餓死寸前の少女を助け保護したり、このゴミ袋を持ち去ったりしている怪しい人影こそ、雪広セキュリティサービス諜報部の人たちである。

現在ミサトは保安部と冷戦状態であり、通常であれば行われる要人警備も全く行われていなかった。彼女が現在作戦課長としての実権を失っていたということもあったが。

家に帰ったケンスケはお宝を捨ててしまったことに気がつき、慌ててミサトのマンションへ取りに戻ったのであるが、その時にはなぜか自分が集めたお宝のゴミ袋だけが無く、途方にくれたのである。
もちろん、その捨ててあるゴミ袋は諜報部の人たちが中身を検めて、不要な袋を怪しまれないよう再びゴミ捨て場に捨てたのである。

ケンスケはミサトの部屋に袋を忘れてきたのかとガッカリした。それでもノートパソコンからダウンロードしたデータはポケットに入れてあったため「とりあえずはこれで今日のところは満足しよう。貴重なデータもあるだろうし」と自分を慰めた。
そんな呟きが聞かれているとも知らず、ケンスケは尾行されているのも気付かぬまま家に戻ると、早速自分のパソコンに盗んだデータを移しはじめた。

「うへーあるある。マギのセキュリティレベル2までの情報がごろごろ♪僕たちはネルフの端末に触れることすら許されてないからなぁ。それしてもミサトさんって士官としてはこれ以上無いくらいダメな人だよねぇ。パソコンにロックすらかけてないし・・・。だいたい自分のパソコンにデータを入れて家に持って帰ってきてる時点で規則違反だし・・・。ま、そのおかげで僕はこうして機密に触れれるんだけどね」

もちろんネルフもミサトに情報を渡すのは危険で有り、彼女には高いセキュリティ権限は与えていない。
それでも一般職員よりは高いレベルであるし、それこそスパイにとっては垂涎物の情報を得ることが出来たのである。

ちなみに最高レベルの7がヒゲとろうじんであり、6がリツコ、4がマヤ、3が部長クラス、2が課長クラス、1が一般職員である。

ケンスケは喜々としてデータを閲覧していく、彼の家の下では諜報員達が彼の無線LANに密かにハッッキングを仕掛け侵入し、彼と同じようにそのデータを見ていた。
まさか、子供を通してこのような重要な機密を得ることができるとは・・・。さすがに諜報員達もこの杜撰さに呆れ果てたのであるが、それはそれとしてケンスケが得たデータを丸々彼らも頂いていったのだった。

この日以降、ケンスケは自分が知り得た情報を次々に己のパソコンに入力していくのだが、諜報員達はときどきここを訪れては情報を盗っていった。
彼らはケンスケのことを『leak boy(リーク・ボーイ)』『ダダ漏れ少年』と異名を付けとても感謝していたと言う。


翌日、トウジとケンスケはいつものように学校へと向かった。一時のあのおかしな雰囲気は影を潜め、あの巨大横断幕も今はない。

ただ、未だにシンジを讃えるポスターはあちこちに貼ってあるし、彼の親衛隊(旧ファンクラブ)もとうとう学校の女子全員が所属し、『碇シンジ親衛隊(SS)』という腕章を付けていた。
トウジには認めたくない現実だったが、いいんちょこと洞木ヒカリはこの親衛隊の副隊長であり、隊長である操祈は学校を洗脳の仕事で休むことも多かったので、事実上親衛隊の指導者として日夜活躍していたのである。

元々彼女には人望もあったのだが、皆の前で胸を揉まれたり、スカートをめくられたりとシンジにとても愛されているのもわかるため、その威光は留まるところを知らない。

ちなみに男子は『碇シンジ突撃隊(SA)』を結成しており、隊長はシンジ本人である。
これには男子の半分あまりが参加している。なぜ全員では無いかというと、シンジが「そんなに男子がいっぱいいても正直ムサいだけだ」と嫌がったためである。
なので受験のある3年生とクラブ活動で頑張っている男子は忙しいだろうからと参加を辞退してもらっていたのだ。
女子に関してはシンジは何も言わなかったのはまさに鬼畜の所業であろう。

ただ、生来の真面目者であるヒカリは親衛隊の活動のせいで皆の学力が落ちては大変だと、放課後全員参加の補習を行うようにしていた。
もっぱらシンジがネルフに行く日(行かない日はみんなで遊ぶ)に行われ、やるからには徹底的にと成績順にクラス分けし、落ちこぼれは人並みに、出来るものはより出来るように・・・と厳しい授業を先生達に行ってもらった。

それはもし彼女たちが洗脳を受けていなかったら、ほとんどの女の子はノイローゼになったか、その前に逃げ出したか、果てはリストカットしたか、首を吊ったかという厳しさであった。
シンジに怒られるので肌に傷をつける体罰などは無かったが、成績の悪い者は『シンジに近づくことを禁ず、操祈様の茶会に出席禁止、最悪腕章を取り上げ』という彼女達に取っては親が死ぬよりもつらい罰があったのである。

そのため全員が必死に勉強した。若干ヒカリもやり過ぎたか・・・と引いてしまったのだが、もう止められないと結局開き直り、今日も親衛隊(女子)達は血反吐を吐きながらドリルをこなすのである。
ちなみにこのおかげで、先日の大手予備校の全国模試で第壱中学の女子がトップ10に7人入るという快挙を達成し、全国の学校や塾から注目を受けることになる。

彼女達、親衛隊メンバーは後に『最初の大隊』と呼ばれ、シンジの手足として帝国の至る所でその実力を発揮することとなる。

余談だが、女子の面々はシンジに好かれようとヒカリの指導のもと健康的な生活、適度な運動、野菜中心の食生活をしており、朝の登校もホームルーム開始の1時間前に校庭に集合し、それぞれおもいおもいの朝の運動を日課としていた。
これにはレイも参加しておりヒカリと共にストレッチとランニングを行っている。
そのおかげか、第壱中学の女子達は皆それなりにキレイになり、シンジも大満足であった。
やはり健康的で闊達な女の子達とキャッキャと遊べるというのは喜ばしいことらしい。

トウジとケンスケはそんな校庭で朝の運動をしている女子達を尻目に教室へと向かっていった。
教室には男子達が2人に挨拶してくる。彼らも一時2人を総シカトしていたのだが、徐々に以前のように接してくれるようになった。
とはいえ、先日ヒカリに無体な事を働いたシンジにトウジが殴りかかった際は、あずみに返り討ちにされた彼をさらに追い打ちをかけてボコボコにしたのは彼らである。

「・・・ああ、おはようさん」

トウジはそんな彼らをまったく信用していなかったので、返事もおざなりである。

さて、ホームルームが始まり、授業が始まるとあっという間に昼休みになった。

トウジはレイになんとか近づきIDカードを渡そうと思っていたのだが、今日はシンジがいないこともあり、操祈やヒカリさらにはレイを守るため親衛隊の女子達が代わる代わる教室に来ては彼女達を取り囲んでいた。
さらにその周りを突撃隊の男子が警備しており、周りに睨みを効かしている。

無論3-A組でもアヤカ達の周りは同じようになっていた。一般庶民の夏美はあまりに彼女彼ら達がうっとうしいのでアーティファクトを使って存在を消していたのだが。

そういったわけで、なかなかトウジはレイに近づけなかった。

別に普通に「綾波!リツコさんから新しいIDカード渡してくれって頼まれてとるんや」と本人に聞こえるように言えば、他の面々もそれを渡すのを妨げたりなどしない。
しかし、ミサトからレイと仲良くしろという命令が出ているし、せっかく女の子に話しかける機会を得ているのに、なんかそれではもったいないという欲もあった。

とはいえ、やはり彼女に近づく機会は無くとうとう放課後になってしまった。

トウジとケンスケはさっさと教室を出て行くレイを慌てて追っかけた。
ヒカリ達は今日は補習を行うので、誰もレイに着いてはいかない。
もちろん、校舎を出ればネルフ保安部がつかず離れずでチルドレンをガードしているので、レイの安全に問題は無かったのだ。

2人はどうやらネルフ本部へ直接向かうレイの後ろをストーカーの如く着いていく。

そんな輩のことなど知らぬレイはネルフへと向かいながら昨日のことを思い出していた。

最近ハーレムも人が増えてきたので暫定的な秘書室があった29階を全面改装し、ハーレムメンバー達の部屋(風呂・トイレ付)を作ったのである。
ワンフロアに50室。一部屋一部屋かなり広めに作られている。
正直、この部屋数でもシンジの今の召喚ペースでは足りない恐れがあったため、28階も同じように改装する予定である。
27階に秘書室、会長室が移動し、事務所や会議室や応接室など今後必要となるであろう施設も作った。
またエステやサウナ、カラオケ、トレーニングジム等も希望が出たため併設した。
26階は葉加瀬聡美の『ガイノイド』を製造している研究所になっており、現在すでに5体のガイノイドがビル内で稼働している。
25階は受付が置かれている他は、倉庫等として使用されている。
屋敷で働いているメイドさん達の休憩所(ロッカールーム)や仮眠室、食堂もこの階に置かれていた。
諜報部の事務所も入り口は隠されているがこの階に存在している。
24階から6階までは雪広財閥各社の第三新東京市支社が入っている。
1階から5階までは雪広財閥系のデパートが開店した。
警備の面で問題もあるが、買い物に便利だし・・・ということでシンジが望んだのである。
1階には規模は小さいが雪広東京ISB銀行の支店も入っており、24時間いつでもお金を引き出すことができるのである。
ちなみにこのISBであるが『碇シンジ万歳』の略である。

第三新東京市駅の至近にできたこのデパートは、市民達にとって最新のスポットであり、週末となるとたくさんのお客さんが押しかけていた。
そのため警備部の職員たちは日々大変なお仕事をしているわけである。
だが、最近は先述の『ガイノイド』の警備員が導入され、不審な人物は即座に探知できるようになったので随分と楽になった。
メイド服を着たロボット(?)が警備をしているなんて、さすがは雪広!と大評判である。

そんなわけで、レイもあの廃墟の部屋から雪広ビルに与えられた自分の部屋(ユイの部屋の隣)に引っ越してきたのである。
といっても自分の部屋には寝るのに戻るくらいで、ほとんどの時間を上の階でシンジ達と過ごしていた。
昨日はシンジが「レイと一緒にお風呂に入りたい」と言いだし、一緒に入ることになったのだ。明日からシンジはユイ達と第二東京へ出張に行かなくてはならず、予定では暫く会えなくなる。
レイもそれを寂しく思っていたので、いつもならいい顔をしないユイも「シンジが変なことをしないなら」と認めてあげたのだった。

二人で洗いっこし、二人で浴槽に入って抱きしめ合い、そして口づけを交わす。
レイの心はポカポカし、暖かくなり、それはこの上ない『幸せ』を感じた。
そして、最終的に頭に血が上り、のぼせ、鼻血を出して失神してしまったのだった。

レイが目を覚ますと彼女はユイに膝枕をしてもらい、オデコに冷ピタを貼られ、団扇で扇がれていた。
ユイに「ごめんなさいね」と謝られたが、レイにはユイが一体何について謝っているのか理解できなかった。
その後シンジにも謝られたが、レイはそれをすぐに許した。
後で操祈から「シンジ君にお詫びに一緒に寝てもらえば良かったのに♪」と言われると、なるほどそういうのもありなのかとレイはまた一つ賢くなったのである。

それと以前よりもシンジの周りにはたくさんの女の子達がいる。
しかし、どういうわけかそのほとんどの人たちが『レイにも』優しくしてくれるのだ。
レイには最初どうして自分に優しくしてくれるのか理解できなかったのだが、ユイに聞くと「家族だから当たり前、レイも家族の一員ならば、同じようにレイも他の人たちに優しくしてあげてね」と言われ深く、深く納得したのである。
それ以降はレイもシンジだけでは無く、ヒカリと一緒に勉強したり、美羽と遊んだり、ユイと一緒に料理を作ったりと順調に心を成長させていっていた。

レイがそんなことを考えつつ歩いていると、あっという間にネルフのゲートに到着した。
いつものようにIDカードをスライドさせるがなぜかゲートは開かなかった。
レイがカードを見つめ不思議に思っていると、いきなり後ろから顔は知っているが名前がわからないジャージ男が彼女に声をかけた。

「ほい、綾波の新しいIDカードや。昨日リツコさんに渡すよう頼まれてん」

レイはジャージ男に差し出されたIDカードを受け取ると、先ほどと同じようにゲートに通すと今度は無事ゲートは開いた。

「ありがとう」

レイはジャージ男にお礼を言う。ユイの教育の賜である。

「おお」

「じゃあ、私行くから」

レイはジャージ男ともう一人の知らない人を残し、さっさと中へ進んでしまった。

「あっ・・・おい・・・ケンスケはよう追いかけるぞ!」

「へ?ああ、わかったよ」

二人は慌てて自分のIDカードをゲートに通してレイの後ろを追いかける。
程なくして、レイに追いついた二人だが、なかなか声をかけるきっかけがつかめず黙ってレイの後ろをついていった。

エントランスに着くと、次にとてつもない長さのエスカレーターに乗る。
ケーブルカーを待つよりもこちらのほうが早く本部に着くのである。なので大きな荷物を持たない職員はもっぱらエスカレーターを利用していた。
そこでようやくトウジが意を決してレイに話しかけた。

「なあ、今日これから再起動の実験やな。今度はうまくいくとええな」

「・・・・・・・・・・・・」

「綾波は怖くないんか?またあのけったいなロボットに乗るのが」

「・・・どうして?」

「前の実験で大怪我したって聞いたさかい平気なんかと思ってな」

「あなた碇君の友達でしょ」

「は?全然ちゃうで」

「信じられないの?シンジ君の仕事が」

「当たり前やろ!誰があないなヤツなんか!!」

レイはトウジの方を振り向き、拳を構えると上半身を振り、自分の体が戻ってくる反動を利用して左右の連打をトウジの顔面に容赦なく叩き込んだ。

へぶっ!!

クリーンヒットしたトウジは鼻血をまき散らしながら倒れた。
そしてエスカレータの階段の角に後頭部を打ち付けると悲鳴をあげて悶絶した。

レイは、軽く両手を振ると彼ら二人を無視してさっさとエスカレーターを走って下り降りてしまった。

「あれは伝説のヘビー級ボクサー『ジャック・デンプシー』の『デンプシー・ロール』・・・。まさかあの技の使い手が第三新東京市にいたとは・・・。さすがファーストチルドレン綾波レイ・・・ネルフのチルドレンは化け物か・・・」

「ふがふが」

トウジはようやく頭を抱えて起き上がる。まだ頭はクラクラしており、ケンスケの姿が2重に見えた。
二人は長い長いエスカレータが下に到着すると、昨日とは反対にケンスケがトウジに肩を貸して治療室に向かうのであった。


「これより零号機の再起動実験を行います。第一次接続開始」

リツコの声により零号機の再起動実験がスタートした。

前回はヒゲ司令もとある目的のためこの場にいたのだが、彼はすでにレイに興味を失っているため、この場にいない。
彼は司令室でろうじんと将棋をしながらいかに次またユイに会うかを相談していたのである。昨日は痛恨にも次の約束を取り付けることが彼には出来なかったのである。
「戦術機の発表会か?」「しかしアレの招待状は技術者であるリツコくん宛てだぞ!相手に呼ばれてもいないお前が行ったら怪しまれる」「問題ない」「大ありだ馬鹿者」「なら二人で行こう」「お前・・・まだリツコくんと関係を解消してないのだろう・・・いつか彼女に刺されるぞ」「問題ない」「大ありだ馬鹿者」「問題ない」「大ありだ・・・と不毛な議論を繰り返していたのだった。

『主電源コンタクト』

『稼動電圧臨界点を突破』

「了解、フォーマットフェーズ2に以降!」

『パイロット零号機と接続開始』

『回線を開きます』

『パルス及びハーモニクス全て正常値』

『シンクロ問題無し』

『オールナーブリンク終了。中枢神経素子に異常なし』

『再計算、誤差修正なし』

『チェック2590までリストクリア』

『絶対境界線まで後、1.0、0.8、0.6、0.5、0.4、0.3・・・』

『0.2、0.1、突破。ボーダーラインクリア!』

『零号機起動しました!』

リツコはふぅと安堵のため息をついた。
今回の再起動実験はリツコ、マヤ、そしてシンジの3名で準備してきたのである。

『レイ大事』のシンジがマヤの太ももをFSSしながら再起動に必要なプログラミングを手伝ったのである。
チートシステムでプログラミングスキルを一気にレベル10(キラ・ヤマトレベル)にしたため、二人が驚くほどのタイピングテクを見せることができたのである。

これは一応シンジが『戦術機』のOSの開発責任者となっているので、その設定の肉付けのためスキルを取得しておいたのである。
一から苦労して猛勉強したユイやキョウコと比べると酷いチートであるが、まあ、それがチートシステムなのだがら仕方が無い。

そのテクのおかげでマヤのシンジに対する思いは揺るぎないものとなり、リツコの執務室で3人だけで作業するときは自発的に下着姿になったくらいである。
別にシンジはあまりストリップには興味がなかったのだが、そのマヤの好意の行動については深く感謝の意を示し、万札を彼女のパンツの中に入れてあげたものである。
その様子を見ていたリツコも「万札くれるのなら私も脱ごうかしら」と呟いていた。

さて、無事零号機は起動したので次の連動実験に移ろうとした時、緊急のアラートが実験場に鳴り響いた。

『現在、未確認飛行物体が接近中!総員第一種警戒態勢!!』

「もう!こんなときに・・・レイ、あなたはそのまま待機してなさい。シンジ君がこの場に間に合わなかったら零号機で出るわよ!大丈夫、実験はできてないけど、零号機の調整はシンジ君の自動調整プログラム(AAP・Automatic adjustment program)を作動させておくわ。これはあなたがこのまま乗っているだけで、自動で零号機の調整をしてくれるのよ。ぶっつけ本番になるけど、シミュレーションでは問題なかったわ」

「はい。私は大丈夫です。シンジ君・・・碇一尉を信じます」

「結構。では私は発令所に行くわ。マヤ!着いてきて!」

リツコとマヤは急いで発令所に向かった。
発令所ではミサトが正面モニターに映る使徒を仁王立ちで睨んでいた。

「遅いわよリツコ!」

「え?そうかしら・・・。まだ発令から数分しか経ってないと思うけど・・・」

「私は発令前から待機していたわ」

「それただあんたに仕事が無いだけでしょ!」

「もういいわ、それよりもアレが第五の使徒。あの形・・・もうなんでもありね」

「・・・そうね。正八面体の形状・・・どういう攻撃手段があるのか・・・」

「日向君!初号機を発進させるわ!急いで!!」

「ミサト??シンジ君はもう本部に帰って来ていたの??」

「いいえ、サードチルドレンはここにはいません。零号機もまだ実戦は無理でしょう・・・。ならば今こそチルドレン候補生の彼らを出す時です。あの二人をエントリープラグへ入れて準備させてちょうだい!!」

「ちょ・・・ちょっとミサト!あなた何を言っているの!いきなり彼らを乗せて動かせるわけがないでしょう!!」

「あのガキ・・・サードチルドレンは何の訓練も無しにちゃんと動かしていたじゃないの!彼に出来て彼らにできない道理は無し、人類を守るため私たちは戦うしか無いのよ!!」

「だから、動かないって言ってるでしょ!少なくともコアのパターンを書き換えないと!これじゃただの案山子だわ。零号機はまもなく大丈夫だから・・・」

「チルドレン候補生搭乗完了しました!プラグエントリー完了。発信準備OKです!」

「よし、日向君。初号機発信!!」

ミサトは焦っていた。実は彼女が直接命令ができるチルドレンはトウジとケンスケの候補生二人だけなのである。
そして、ミサトが作戦を指揮できるのもこの二人だけだったのだ。

都合の良いことに今日シンジは出張で不在、つまりは作戦二課長がいないため、指揮が一課長であるミサトに権限があったのである。。
そして零号機はまだ動かせないと(勝手に)判断していたため、ならば一か八か初号機にこの二人を放り込んで、どちらかにシンクロしてくれれば!という賭けに出たのである。

リツコの制止を聞かぬフリをし、ミサトは拳を握りしめ彼らの健闘を心から祈った。


トウジとケンスケはジャージと学生服のままプラグに入れられ、まさに緊張の最中にいた。

「よーし!僕はやるぞ!!いよいよ僕の出番だ!!」

「うう、LCLが傷に染みるわ・・・」

ハイテンションのケンスケにレイに殴られた傷が痛むトウジ、二人はこれから何が起こるのか知らず、初陣に鼓動を高めていた。

初号機は日向の操作により、三度使徒の真正面の射出口へ発進していった。


『初号機シンクロ率0%』

『初号機起動出来ません』

「あきらめないで!あきらめたらそこで試合終了よ!!」

「そんなこと言われても・・・先輩・・・」

「マヤ、とりあえずやれることはやりましょう・・・酷いことになりそうだけど」

「目標内部に高エネルギー反応!」

青葉が顔を引きつらせてミサトに報告する。

「なんですって!」

「円周部を加速、収束していきます!!ああ、これは!!」

「ダメ、避けて!!!!」


「「へ??」」

トウジとケンスケがミサトの声に反応し、間抜けな返事をした瞬間、使徒より極太のビームが発射された。ビームは初号機を正確に撃ち抜いた。


『『うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!』』


発令所に二人の叫び声が響き渡る。

「頑張って二人とも!男の子でしょ!根性見せなさい!!」

「ミサト!バカ言ってないで早く下げなさい!!」

「まだ慌てるような時間じゃ無いわ!!そうよ!ATフィールドよ!!早く展開して防がないとあんたたち死ぬわよ!!」

「シンクロ率0%でできるわけないでしょうが!!日向君早く降ろしなさい!!」

「はっはいーーっ!」

初号機が漸くゆっくりと降ろされる。
ミサトは悔しそうに歯ぎしりすると、「日向君、作戦を立て直すわよ!」と言って、日向を伴い発令所から出て行ってしまった。

沈黙する発令所。

「プラグ内の様子は?」

リツコの声に漸く動き始めた発令所内、マヤが慌てて二人の候補生の状態をチェックする。

「二人とも心音停止・・・。えーと彼らはプラグスーツを着ていないので電気ショックも与えられませんので、ここまま死亡するかと・・・」

「ミサトじゃないけどあきらめちゃだめよ。LCLに直接電気を流しなさい、そのショックで動き出すかもしれないわ」

「はい、わかりました。LCLに電気を流します」

プラグ内のモニターには無残な姿でプカプカ浮かんでいる二人の少年の遺体があった。
マヤが電気を流すとその体がビクンと震えた。それを何度か繰り返すと奇跡的に二人の心音が復活した。

「先輩!!」

「LCLを急速冷却。救護班をケージに待機させなさい!病院に手術の準備を・・・。まあ、ネルフの施設があれば生きてさえいればなんとかなるわよ・・・多分」

「はい、了解しました」

モニターには全身大火傷、電気ショックのせいで頭髪が爆発、さらには白目を剥いてだらしなく口を開いている・・・とても生きているようには見えない少年達の姿が映し出されていた。

「まあ、レイがこうならなくて逆に良かったわ・・・。レイが酷い目にあっていたらシンジ君に私達殺されていたかもしれないし・・・ミサトの暴走も結果オーライね・・・」

「そうですね・・・可愛そうですけど」

「マナ、潔癖症は辛いわよ・・・。人間って所詮汚い生き物なんだから」

「へ?コレとソレとは関係なくないですか?確かにコレ汚いですけど・・・」

マヤは小首を傾げて唸っている。

ともあれネルフは緒戦で初号機を大破させ、最大のピンチを迎えたのであった。


第六話 決戦、第3新東京市 Aパートに続く




[32048] 第六話 決戦、第3新東京市 Aパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/15 13:13
エヴァちーと 第六話 決戦、第3新東京市 Aパート


「ここは・・・ドコ?」

シンジは第二東京でユイ達とともに戦自のお偉いさん方と会議をしていたはずだった。
しかし、ふと気がつくと壁に巨大な振り子時計が掛けられている不気味な部屋にポツンと独り佇んでいたのだった。
すると、影になっていてよく見えないが振り子時計の下に誰かが椅子に座っていた。
そしてその人影は懐かしい声でシンジに語りかけた。

「やあ、シンジ君。久しぶりだね」

「あなたは・・・もしかして神様??」

「ああ、そうだよ。驚かせて悪かったね。今日はねシンジ君、君に一つプレゼントをあげたいと思って、急なことだけど呼び出させてもらったんだ」

「へ?『プレゼント』ですか?それは一体・・・」

「内輪の話で申し訳ないんだが、ここから先、君がどのような物語を紡いでいくのかまったくの未定なんだよ。なにせ稀代wのストーリーテラーさんがいなくなってしまったからね」

「確か神様の友人さんのことですね・・・。あの時はチンプンカンプンでしたが」

「ああ、よく覚えていたね。神である私と悪魔である友。君がこれまで紡いできた道筋はその悪魔によって定められていたわけなのさ。ただし、ここからはまったくの白紙。シンジ君自身が全てを己で決めていかなくちゃならないんだ」

「僕は今までも自分で全てを決めてきたと思ってますが・・・」

「はて?そうだったかね?まあ、そう君が思っているのならそれでもいいさ。ならこれからも引き続き頑張って幸せになるといい。さて、プレゼントの件だがこれも以前話していた美少女召喚できる世界を『追加』する権利を一つ与えるというものだ。なぜかと言うと、友がいなくなってしまった状況ではこの追加する世界を言い出す輩がいなくなってしまったからだ。このままじゃ設定倒れだし、そのための緊急の処置として『サイコロ』でその世界を決定しようと思う。もちろん監視者の皆さんが楽しめるよう、今回もよくSSの題材になっている世界を選んだ。君が振りたまえ」

「・・・・・・」

<サイコロの目>
1.『めだかボックス』 2.『ハイスクールD&D』 3.『GS美神極楽大作戦』 4.『ハンターハンター』 5.『Fate/stay night』 6.『東方Project』

「神様・・・」

「なんだい??君が大好きな銀英伝は無理だよ。あの作品だとフレデリカとヒルダとシェーンコップの娘さんくらいしか女の子がいないし・・・地球が地球教化しちゃうし」

「全部」

「うん?」

「これ全部ください!!!!」

「・・・・・・は??」

「神様は僕を『幸せ』にすることが目的なんですよね。なら全部選ばせてください!」

「・・・いや、君ね。一応こんな糞SSでもルールってやつがあるんだよ?」

「でも安西先生、僕はもっともっと可愛い女の子とエロエロなことがしたいです!」

「誰が安西先生だよ!そんなことを認めてたら物語の収拾がつかなくなるでしょ!」

「ずっと待ち焦がれてたんだろ、こんな展開を!荒らしがやってくるまでの場つなぎじゃねえ!管理人が登場するまでの時間稼ぎじゃねえ!他の何者でもなく!他の何物でもなく! テメエのその手で、たった一人の少年(シンジ)幸せにしてみせるって誓ったんじゃねえのかよ!ずっとずっと神様(笑)になりたかったんだろ!アニメみてえに映画みてえに、命を賭けてたった一人の少年(シンジ)を守る、そんな神様(笑)になりたかったんだろ!だったらそれは全然終わってねえ!! 始まってすらいねえ!!ちっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねえよ!!手を伸ばせば届くんだ。いい加減に始めようぜ、神様(笑)!! 」

「シンジ君・・・」

「神様が何でも思い通りに出来るってなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!」

「とりあえずネタを入れれば文字数が稼げると思っている幻想をまず止めなさい」

「サーセン」

「性格変わりすぎでしょ、君。まあ、いいか。じゃあ好きにしたらいいよ」

「マジで!!さすが神様、話がわかる!」

「ただし・・・ただしね、実は君がチートシステムを使うことでこの世界の様々所に弊害というか何と言うか悪いところもたくさん出てきちゃっているんだよねー」

「はい?」

「たとえば今中国で黄色い布を頭に巻いた山賊が増え始めていたり、火星にエイリアンが襲来していたり、そのせいでコロニーが一つ壊滅してたり、川神市で変なドラッグが蔓延し始めてたり、このままでは大陸が空に浮かんでしまい人類滅亡したりとか・・・ね」

「・・・なにそれこわい」

「君が召喚システムで女の子を呼べば呼ぶほど、もともとの彼女達の世界にある『危機』も少しずつこの世界に侵食してきているんだよ。今一番進行してるのが10人召喚されてる『マブラブ・オルタ』の世界だね。彼女達一人呼ぶ度に、侵攻を受けている火星にハイブが一つ追加されているんだよ。その次が『ネギ魔』で4人だから、そのせいで火星の魔法世界がえらいことになっているみたいだ。この二つは連動しているみたいだね。ごめんねぇー説明が遅くなって♪」

「・・・・・・え?それって、マジ??」

「マジマジ。でも全然問題ないよ。だって『チートシステム』はそんな危機くらいどうだって乗り切れる『チート』なんだからさ。まあ、君の物語(エヴァ)が終わる前にこの全ての危機を君が解決させないといけないという縛りもあるんだけど・・・。まあ、楽勝だよね」

「・・・ちなみに最後の使徒(?)はいつ頃来るんでしょうか?」

「それは情報をポイントで買いたまえ・・・ってOKOK、その振り上げた拳は戻すんだ。わかったよ、教えるよ・・・。えーと時期は君の行動で前後するけど来年のはじめあたりかな?」

「あと7ヶ月ちょっとでその全ての危機を解決しなきゃだめなの!?そんなの無茶ぶりすぎるよ!!」

「・・・でもシンジくん。今の調子で使徒戦をやっていてもネタ切れで監視者の皆さんは飽きちゃうよ?もうミサトさんやトウジくん達を使って安易に笑いを取りに走るのは止めないかい?」

「うっ・・・痛いところを。あーあ、やっぱりそんな甘い話はなかったのか・・・」

「このシステムがあるだけ『大甘』だと思うけど。とにかく世界の危機についてはチートシステムの情報画面に表示させておくからね。それぞれの危機に関しては『期限』が設定されている。その期限を越えると取り返しのつかないことになるから必ず守るように」

「・・・さっきの追加した世界の女の子達を呼んだ場合も、やっぱりその世界の危機がこの世界にやって来るんですか?」

「そりゃ当たり前でしょ。まっ話がわかったところで、そろそろ帰っていいかな?」

「・・・はい・・・というか、そうなると美少女召喚の『コンボ』ってかなり凶悪じゃありません?!なのはちゃんを1発目に召喚してたら(震え声)」

「さて?世界中にジュエルシードがばらまかれて大騒ぎか、闇の書が暴走してるか、スカさんが楽しく暗躍しているかくらいなんじゃない?その展開も用意してあったよ」

「オーノー!!危なかったぁーーーーー!!使徒どころじゃねぇーーーーー!!」

「元気を出しなよ。まったく、また以前のネガティブシンジ君に逆戻りかい?チートシステムを信じれば大丈夫だよ。主人公が負けるはずがないだろう?僕は君に爽快に無双して欲しいんだがら。ほらあれだよ『人類爽快化計画』だよ!!」

「わかりましたよ。あれでしょ?女の子でキャッキャ楽しむんだったらそれなりの苦労をしろってことでしょ!!」

「そういうこと。それに君自身のレベル上げも『人類最強レベル』で止まってるしさ。早く使徒化するとか念に目覚めるとか所謂『スパシン』になって欲しいわけなのに、せっかくのチートがもったいないよ。あと、これはまだ作成中だけど『パワーアップキット』もいずれつけてあげるね。お楽しみに。ではそろそろお暇させてもらうからね、じゃーねー♪」

「はい・・・また・・・(神様だってキャラ変わってるじゃん)」


「碇殿・・・、第三新東京市に使徒が現れたとか・・・」

「うわ!びっくりした!!」

精神世界で神様と別れ、現実世界に戻ってきたシンジにいきなり白髪の交じった髪をオールバックにキメているダンディなおじさんが声をかけた。

「どうなさいました?少し考え込んでおられたようだったが?」

「いえ、大丈夫です(そうそう、今会議中だったんだっけ)問題ない(キリっ」

戦略自衛隊陸将『土方歳造』は自分の孫ほどの少年のカリスマに圧倒されていた。
当初は子供に一尉の階級はやり過ぎじゃないか?と思っていたが、今はそんな疑問はキレイに払拭されている。

(なるほど・・・首相や大臣連中がべた褒めするはずだ。将来が楽しみだな・・・)

本日、第二東京の旧松代城跡に建てられた『戦略自衛隊総本部』にて第1回目の斯衛軍発足準備会合が開かれていた。

『松代城』といえば、歴史好きの人たちからすると『海津城』と言う名の方が馴染みがありよく知られているだろう。武田家と上杉家が争った川中島の合戦にて重要な戦略拠点で有り、かの山本勘助によって築城されたとも言われている。江戸時代に改名された後、真田氏の居城として明治の時代まで使われた。

セカンドインパクト後、松代を含むこの地域に東京が移転してくると、幹線道路沿いで高速道路のICにも近いこの場所が戦略自衛隊総本部として作り替えられたのである。
もちろん、現存していてこの城跡の顔でもある『太鼓門』は引き続き総本部の正門として使用されているし、できる限り残せる史跡は残すよう配慮されていた。

現在、この会議室には碇シンジ一尉、碇ユイニ佐、榊千鶴三尉、珠瀬壬姫三尉、雪広のエージェントである香月夕呼博士が席に座っており、彼らの護衛の神宮司まりも一曹、忍足あずみ一曹両名も後ろに控えている。そして、戦自からは陸将の土方、海将の沖田、空将の永倉の3名が主に出席していた。それ以外にも副官数名が同席している。

しかし戦自トップの統合幕僚長芹沢の姿はここに無かった。彼は戦自解体が決まった後、戦自が今まで抱えていた諸問題の全ての責任を取るとして辞意を表明していたのだ。

芹沢は当初この斯衛軍には猛反発していたのだが、その後説得(洗脳)を受け賛成に回ると賛成派の旗振り役を務めていた。そしてなんと退職金を含めた全財産を斯衛軍に寄付するとまで言ったのであった。さらには自分の孫達を少年兵として軍に放り込みさえしたのである。

芹沢は決して評判の良い男ではなく、政治家との黒い噂が絶えない人物であったため、戦自内でも嫌われていたのだが、今回の彼の行動はその評判を大きく覆す潔い、まさに見事な引き際であった。

ちなみに彼を幕僚長に据えていたゼーレのメンバーもこの報告書を読んだときは思わず報告書を二度見したほどの驚きであった。

そして、さらにもう一人、上座には政威大将軍に任命された煌武院悠陽が座っている。

彼女はシンジに先日召喚されていたのだが、夕呼の側に直接召喚されていたため、シンジに会ったのは今日が初めてである。本人はシンジと話したくて仕方がなかったのだが、表面上は威厳溢れるまさに政威大将軍にふさわしい風格を見せていた。

当初戦自の幹部達は悠陽を不安視していたが、この何日かで彼女はオジさん達の心をギュッと掴んでいた。まあ、心配せずとも不満分子はすでに洗脳によって粛正されているので彼女の支配権は揺るぎないものであったのだが。

彼女は現在この総本部内で暮らしており、目下御殿を本部隣の二の丸に建築中である。
もちろん建築は雪広建設が施工していて、費用は全て雪広の寄付である。
また、この総本部周辺も併せて拡張工事を行っている。
こちらは那波建設が施工し、戦術機を配備できるよう様々な施設を急ピッチで工事していた。費用はもちろん那波の寄付である。

「まだ詳しいことはわかりませんが、僕が乗っている初号機が大破したそうです。幸いにもコアは無事だったそうですが、機体は数週間の修理が必要だそうです。残念ながら今回の使徒戦には使用できそうにありません。零号機は再起動実験が成功しているので出せますが、実戦経験の無いファーストチルドレンを無策に出撃させても彼女を殺すだけです。僕の命令があるまでは絶対に出さないように言ってあります」

「それで時間の猶予はどれくらいあるのかね?」

「明日の2400(ふたよんまるまる)が期限のようです。それ以降は使徒がジオフロントに到達、程なく光線を放たれてネルフは消滅、サードインパクト発生、人類滅亡となるでしょう」

「あと32時間弱といったところか・・・。それでどうするのかね、碇一尉。君はネルフの作戦二課長でもあるのだろう?ネルフのロボット1機で使徒に勝てるのかね」

「ネルフでは無理です。ファーストチルドレンはシンクロ率が25%前後と起動ギリギリです。そんな状態で出たとしても使徒の光線が避けれず倒されるでしょう。今回の使徒は遠距離攻撃に特化しています。残念ながら兵装ビルも役立ちません。また、防御力もかなり高いという威力偵察の第一報もありましたし、この防御を打ち破る兵器は現在ネルフにはありません。なので、まあ、何が言いたいかというとネルフに勝つ見込みはほとんど無いということです」

「しかし、シンジ殿はそれほど絶望しているように見えません。策があるのですね?」

悠陽が期待を込めたまなざしでシンジを見る。シンジは彼女に力強く頷いた。

「はい。ネルフ作戦二課長として斯衛と防衛庁に協力を求めます」

「我々と防衛庁?にかね。しかし・・・」

「まあまあ永倉さん、最後まで碇一尉の話を聞きましょう」

「ああ、そうだな。すまん」

「現在ナガサキに置いてある僕の『陽炎』を使います。この陽炎ですが、発表会の時に驚かせようと大改造を行っていたのですが、明日の朝までにこれを完成させて第三新東京市に運びます。全身への追加装甲と高機動ブースターを装着させてますので、単独で現場に向かうことが出来ます。皆さんに頼みたいことは戦自研の陽電子砲を第三新東京市まで運んで欲しいのです」

「ああ、それは問題無いし望む所だが・・・。陽電子砲は使徒に通用するのかね?」

「たとえしなくとも使徒に隙は必ず作れると思います。陽炎では多分使徒のATフィールドが破れないので、まず陽電子砲で隙を作り、続いて零号機で使徒のATフィールドを中和、陽炎でトドメを刺すという三段構えで戦いたいと思います」

「陽電子砲の電力はどうするのかね?かなりの電力が必要になるが・・・。まさか全国から集めるとか無体な事は言い出さないだろうね」

「いえ、それでは停電による事故などの恐れがあります。病院や介護施設などでも長時間の停電は困ってしまうでしょう。なので電力は『JA』を使います」

「JA?来月の『戦術機』の発表会の時に一緒にお披露目予定の日重のロボットかね?」

「はい。資料によるとあのロボットは外燃機関にリアクター、つまり小型の原子炉を持っています。それをフル稼働させればかなりの出力になるでしょう。それを陽電子砲に繋いで使用します。まあ、恐らくは日重側もそれを見越してのリアクター内蔵なんだと思いますから繋ぐのも容易いでしょう。さすがに発表会間近なのでJAも動くことはできるでしょうし・・・。陽電子砲をJAに取り付けて移動砲台にできれば一番ありがたいのですが。というわけでJAを第三新東京市に持ってくるよう防衛庁と日重に要請してください」

「ふむ・・・なるほど・・・。防衛庁と日重が好き勝手にしているのかと思っていたが、意外とちゃんとしたものを作っていたのか・・・。これは盲点だったな。了解した。悠陽様に要請書を書いてもらいましょう。首相の署名もあれば文句はでないだろう」

「わざわざ実績を作らせてあげるのだ。喜んでやって来るさ」

「・・・しかし、いくらこちらで準備ができても、ネルフの司令がうんと言わないと共同作戦が取れませんぞ。使徒戦の優先権はネルフにあるのですからな」

「大丈夫です。少しでも賢いなら自分たちではどうしようもない状況だということはわかるでしょうし・・・。作戦二課として作戦を司令部に上申もします。それに母さん、ユイ二佐を本部に向かわせて司令を説得すれば大丈夫です」

「そうなのかね?ではそちらは任せよう。その他には必要なことはあるかね?」

「せっかくですからテレビ中継を行いましょう。国民に使徒戦を見せるべきです。今のままでは国民達は自分たちの危機を知らぬまま暮らすことになります。斯衛軍がなぜ作られたのか、戦術機やJAがなぜ必要なのかを知ってもらう必要があるでしょう。我々の力で使徒は撃破できることがわかれば安心するでしょうし、支持を受けることも出来ます」

「うむ。それは賛成だ。こんな大事をいつまでも隠しきれるものでは無い」

「現在上り調子の内閣支持率をさらに上げることができる。政府もはりきって対応してくれるだろう」

「しかし・・・榊首相は素晴らしい方なのに、なぜあんなにも以前は支持率が低くかったのだろうな?」

「わからん・・・今までとは『人が変わった』ようにしか思えんよ」

こうして斯衛軍の発足準備会合は一旦中断、後日改めて行うということで、出席者達は慌ただしく使徒戦への対応始めることとなった。


シンジがハーレムメンバー達とともに会議室から出てくると、部屋の外には会議前に戦自のお偉いさんから彼の副官として与えられていた霧島マナ三曹が待っていた。

「碇一尉!」

「ん?ああ確か霧島三曹だったっけ?僕はこれから急いでナガサキに向かう仕事ができたんだ。明日の使徒戦の準備をするためにね。ちょうど良いからマナちゃんも一緒においで。それで明日の朝『一緒に』第三新東京市に戻るから」

「はい!了解です!!」

マナは会議の内容を聞いていないため、シンジの言うことにいくつか疑問を感じたが、それは表には出さずに元気よく返事をした。どちらにせよ彼女には『是』の返事しか許されていないのである。

「シンジ」

「あっ母さん・・・。えーと父さんの説得をお願いするね。今回の作戦内容は二課を通じて司令部に提出するよう指示しておくから。あと、カエデさんにゲートまで迎えに行かせるよ。あとレイを絶対に不用意に出撃させないよう目を光らせて!あの葛城一尉はなにをしでかすかわからないから危険だよ」

「わかっているわ、任せなさい。世界が変わってもゲンドウさんはゲンドウさんよ、あれで可愛いところもあるんだから・・・。上手く操ってみせるわ」

「そっそう?・・・うん、じゃあ頼んだね。それと・・・」

シンジはユイに頷くと後ろに控えていたあずみとまりもの二人を手招きした。

「「なんでしょうかシンジ様?」」

「あずみさん、まりもさん・・・葛城一尉の件ですが、彼女がもしレイを殺そうとしたり危険に晒そうとする行動を取ったときは彼女を殺して下さい。副官の日向二尉もです。許可は後で悠陽からもらっておきます。チルドレン候補生は緒戦の戦いで負傷入院しているので心配ないと思いますが、もしなにかあれば彼らも同じです。殺してください。目標を殺した後は母さんとレイを連れて本部から脱出して下さい。その際は戦自の皆さんの協力が得られるように手配しておきます」

「「わかりました」」

あずみとまりもは少し顔を強ばらせて返事をするとシンジに敬礼した。

「千鶴と壬姫は母さんについてサポートをお願いするよ。夕呼さんは悠陽の側で・・・人手が足りないな・・・誰か呼ぼうか?本当は事情があって召喚は慎重に行いたいけど」

「大丈夫よ。この総本部内なら滅多のこともないし・・・。下手に悠陽様の側近が増える方が怪しいわ。碇、早く行きなさい。時間は貴重よ」

「わかった。では行ってくる」

シンジは夕呼に頷くと、母親達に敬礼しマナを伴ってナガサキへと向かうのだった。
シンジを見送ったユイ達も第三新東京市に戻るため自らの移動を開始した。


「シンジ殿は行かれましたか・・・」

悠陽が会議室から出てきた。彼女は会議室に残ってシンジ達から頼まれた書類を早速作成していたのである。彼女の後ろからその作成された書類を持った戦自の幹部達も出てくると、悠陽に敬礼し急ぎ足で関係部署へと向かって行った。

「申し訳ありません。せっかく今日の夕食はお二人でと準備していたのですが」

「いいえ、この火急の時に彼がのんびりと食事をとれるような立場では無いことは承知しています。それに私も明日の作戦開始までできる限りのことはしたいのです。香月殿、もちろん私にも仕事はあるのでしょう?」

悠陽のその言葉に夕呼はニヤリと笑って「当然です」と答えたのだった。
二人は微笑みあうと早速自室に向かい、今後に向けた様々な政治工作をスタートさせたのであった。もちろんそれはシンジの勝利を前提としてである。


長崎へは第二東京空港(旧松本空港)から飛行機に乗り長崎空港へ向かうことになる。
空港には3バカの一角、神代 巽が車で迎えにくるとのことだった。
旧長崎造船所、現ナガサキ・アーセナルは長崎市の湾沿いにあるため、空港からは車でだいたい1時間程度の距離と見れば良い。

まさか自分が行くことになるのであれば、もっと近いところに作れば良かったとシンジは後悔したが、さすがに第二や第三新東京市に近いところに巨大施設がいきなり現れていたら、さすがにネルフや内調にもっと早く『戦術機』のことがバレていただろう。

さて、そんな小忙しいシンジ君であるが、空港に向かう車内で早速新たに自分の副官になったマナの太ももをFSSし始めた。

しかし、シンジ君は重要なコトをうっかり忘れている。

彼女は別にシンジに召喚されたわけでも、操祈に洗脳を受けている訳でも無い・・・昨日まで少年兵として、そしてトライデント級のパイロットとして訓練を受けていた戦自の女の子なのである。

(ちょ!ちょっと!!碇一尉、一体いきなり何をはじめやがるのですかぁ!!!)

今回彼女は上司から重大な任務を受け、なんと三士から3階級も昇進し三曹として彼の副官としてやってきているのである。これはつまり2度と元の部隊には戻ってくるなという意味でもあった。三曹の自分があそこに再び舞い戻っても何の仕事も無いからである。

ちなみにその任務とは『碇一尉の副官(小間使い)』『彼を某国のハニートラップから守る』『孕め』の3つである。

さすがに最後の命令は酷くないかと思ったし、少し泣いてしまったが、もともと深く悩む性格でもなかったのですぐ立ち直り、じゃあどうやって彼の子を『孕め』ば良いのかと、この14年間色恋沙汰に接してこなかった彼女にはよくわからなかったのである。

もちろんナニをすればいいかは、さすがにマナも知っているのでそのような意味では無い。
どうやってシンジを誘惑してその気にさせるのか?というのが問題だったのだ。
彼女の上司は無責任に『大丈夫、ヤレばデキる』とアドバイスをしたのみだった。

しかし、まさか今日配属され会ったばかりの自分に、彼は平然とスカートの中に手を入れて太ももを触るというセクハラをナチュラルに行ってきたのである。
これにはさすがのマナも吃驚仰天であった。

(碇一尉は女好きとは資料に書いてあったけど・・・。これは女好きというより変態さんなのでは??それにいくら何でも初日にこれはダメでしょ。「セクハラです!」って言った方がいいのかな?でもそれでクビになるのもやだし・・・)

そんな動揺するマナを無視して、シンジは彼女をFSSをしながら携帯電話でネルフ本部の作戦二課の職員達と至極真面目な会話を繰り広げていた。
その表情は真剣そのものであるし、とてもなんとか指を彼女の股の間に入れようと奮闘している変態だとは見えなかった。

「ふぅ・・・とりあえずこれでよし。しかし、シンクロ率0%で出撃させるとは」

シンジは彼女の太ももから手を引いた。それにホッとしたマヤだった。
すると、シンジはマナに真剣な表情で顔を向ける。その顔にマナはドキッとした。

「ねぇ霧島三曹・・・。君がエライ人に何を言われて僕の傍に来ているのかはわからないけど、僕は自重しない男だから君の太ももに触るし、おっぱいも触るし、キスもするし、一緒にお風呂も入るし、一緒に寝るし、エッチもするよ。最終的に戦いが終わったらメンバー全員に僕の子供を作ってもらって大家族になったら『痛快!ビッグシンジィ』って番組をやりたいと思ってる。だからそれが嫌だったら副官は辞めてもらってかまわないからね、明日は一緒に陽炎(改)にも乗って敵に特攻するしさ」

「ちょっと待って下さい!突っ込みどころ満載で困ります!まず碇一尉、セクハラは自重して下さい。一尉の思い描く副官像は間違いです!どこのエロゲですか!!それと日本は一夫一妻制なんですから不特定多数の女性とそんなコトをしてはダメです。えーと番組は今は置くとして、明日の『特攻』って何ですか!聞いてませんよ、そんなこと!!」

「え?やだよ。何で君みたいに可愛い女の子に自重しなくちゃダメなの?そんなのは楽しくないし、何より『幸せ』じゃ無い・・・。僕は世界の危機を救うことと引き替えに自重することを止めたんだ。絶対に拒否する!今、車から降りなかったら君にキスするよ!一夫多妻は問題無い、いずれ法律を改正させるから!特攻については人手が足りないんだから仕方ないでしょ!大丈夫。君が死んでも変わりは(別世界に)いるから!!」

「死ぬのが前提?!」

マナはうきゃーと頭を抱え蹲ったが、シンジによってあえなく押し倒され、抵抗むなしくファーストキスを彼に奪われた。その後、空港に着くまで彼女はFSS、OMMなどのセクハラ三昧を受け続けるのであった。


「ごめん、ちょっとやり過ぎたね」

「・・・・・・・・・・・・」

シンジはジト目で彼を睨むマナに平謝りしていた。さすがにアレはなかった。
空港に着いたときにはマナは半裸に剥かれてシンジにペロペロされていたのである。
運転手さんが雪広の身内じゃなかったら、シンジはこのスキャンダルで彼の命運は終わっていたことだろう。いくら自重しないといってもやり過ぎである。

「ついカッとなってやった。今は反省している」

「それって本当に反省しているんですか?はぁ・・・もういいです。私も上司から碇一尉の子供を孕めーなんていう無茶な命令も受けてましたし・・・。遅かれ早かれこうなっていたでしょう。というか一尉、本気でハニートラップに注意してくださいね(ギロリ)」

「うんうん、ごめん。これからよろしくお願いします(ペコリ)」

「・・・はい、わかりました。今後も誠心誠意お仕えさせて頂きます」

「ありがとう。僕のことはシンジでいいからね、マナちゃん」

「わかりました。シンジ君・・・でいいかな?というかいいよね」

「うん」

こうして二人は仲直りした。まあ、マナには彼を許すほか生きる道がないのだが。

(はぁー驚いたけど、ちょっとした弱みも握れたし結果オーライかな?)

彼と名前で呼び合えるようにもなったしと、なかなかに逞しいマナであった。


二人は雪広家が所有する自家用ジェットに乗って、長崎へ向け飛び立つ。
さすが、雪広家、内装は豪華絢爛で今まで少年兵として貧しい暮らしをしていたマナにとっては夢のような一時であった。それはシンジにとってもさして変わらない。
二人は美味しい夕食を楽しんだ後、少し仮眠を取ると今後のことについて話した。

「私が一緒に乗るって言ってましたけど・・・どういう意味ですか?」

「ああ、陽炎(改)は複座型管制ユニット搭載なんだよ。サブウェポンの火器管制やナビゲーションをマナにやってもらうことで、僕の負担を軽減して欲しいのさ」

「そんな責任重大なことを、いきなり私がやっても良いのですか??」

「大丈夫だよ。マナも今まで戦自でパイロットの訓練を受けてきたんでしょ?陽炎は僕がOSをかなり弄ってあるから、初めてのマナでも十分扱えると思うよ」

「・・・私、実は訓練で内蔵を痛めててパイロット失格なんですけど・・・」

「そうなの?でも多分大丈夫だよ。戦術機のパイロットは全員『強化装備』を着て乗るから体への負担はかなり軽減されているんだ。明日の朝に一度テスト飛行をするから、その時にもし体が耐えられないようなら言って欲しい。その時は3バカさんの誰かに代わりを頼むから」

「うっ・・・こんなチャンスをみすみす逃したくはありませんが、その際はお願いします。でも、できればパイロットになるのは夢だったし・・・シンジ君のお役にも立ちたいので頑張ります」

マナは拳を握りしめてシンジに自らの決意を示すのであった。

シンジは空気を読まず相変わらずマナをFSSしていたが、彼女は無視していた。
だんだんと彼女もシンジに順応してきたようである。よかったよかった。

ちなみにどうせ自家用ジェットなんだから律儀に空港になんぞいかず、直接基地に向かえばよかったとシンジが気がついたのは空港到着後のことであった。


さて、シンジ達が長崎へ到着し迎えの車に乗り込んだ頃、旧東京にある日本重化学工業のJA開発チームの研究施設では大騒ぎになっていた。

開発チームの時田シロウの元に内務省の万田長官から直接連絡があったのである。

はて?一体何の用件だろうか?まさかJAを発表前に関わらず没にしてしまうのだろうか?と彼は酷く怯えていたのであるが、長官の話した内容は驚愕するものであった。

ほどなく、FAXで以下のような命令書が彼らの元に送られてきた。

『政威大将軍、煌武院悠陽の名において命ずる。日本重化学工業は自衛隊の協力を得てJAを第三新東京市に運び、斯衛軍(戦自)とネルフの共同作戦に参画すること』

時田はその命令書に面食らい、一体全体これはなんなのかと最初理解ができなかったが、その後防衛庁や本社から次々と詳しい連絡が入ってくると、どうやらJAをあの使徒との戦いに使うようだと考えが至ってきた。

時田は内調から前回、前々回のネルフによる使徒戦の報告書を極秘に見せてもらっていたのである。それは彼らが開発しているJAが使徒戦を想定したものだったからだ。

「JAに戦自研が試作している陽電子砲を搭載して使徒にぶっ放す・・・。確かに可能だろうが・・・」

「規格が合いますかね・・・取り付けも調整も大変ですよ」

「確かにJAに陽電子砲を取り付けるなんて想定もしていなかったな・・・」

「しかも明日の二四時までとか・・・無茶すぎる・・・」

チームのメンバー達は悲観的な発言を繰り返していたが、時田はカッとなって目の前の机を蹴り飛ばした。

「馬鹿もん!!お前らは何を言っているんだ!!雪広の戦術機に大きく水を開けられ、本社からも発表会以降のJA開発は凍結も示唆されているんだぞ!!これは天がくれた大チャンスではないか!!戦自の陽電子砲を搭載できれば、それはすなわち今後斯衛軍や国連軍にJAが配備される可能性が高まる!!受注へ向けての最後の機会だろうが!!」

「しかし・・・」

「しかしも案山子もあるか!とにかくJAを急いで起動させて倉庫からトレーラーに載せろ。本社や他の工場の技術者も全員第三新東京市に来させるんだ!とにかく時間が無い!死んでも絶対にJAに陽電子砲を搭載させて使徒に一撃を加えさせようじゃないか!化け物を我々の作ったロボットで倒す。それは子供の頃からの夢だっただろう!!今こそそれを叶える時だ。皆、JAを信じるんだ。必ずJAは答えてくれる!!」

「その通りですチーフ!おい、みんな行こう!俺たちのJAでネルフや戦自の奴らに目に物見せてやろうじゃ無いか!!」

「そうだな!よし行こう」

時田の檄によりJA開発チームは気勢をあげ全員が一丸となって動き始めた。

シンジはJAをただの電源の代わりくらいにしか思っておらず、自走できるならありがたいなぁくらいの期待だったのだが、彼らはその期待を上回る成果を見せるのである。
こうして、戦術機に並ぶ日本の守護神『JA』の伝説が今ここに始まったのであった。


ジャカジャカジャカジャン!ジャカジャン!!

ついに動き出した第五使徒!、JAに迫る閃光。その強力な破壊光線を封じ、葬り去るには、ポジトロンライフルの力を用いるしかない。だが、その力を使えば彼の体に重大な危機が・・・!!

次回、勇者ジェットアローン最終回『輝け!不死身のジェットアローン』にフェード・イン!


Bパートに続く




[32048] 第六話 決戦、第3新東京市 Bパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/15 13:21
エヴァちーと 第六話 決戦、第3新東京市 Bパート


「私は・・・私は一体何をしてるの!!」

葛城ミサトはネルフ本部内、女性士官用ロッカールームに併設されているシャワールームでシャワーを浴びていた。
シャワーの温度はかなり低く、ほとんど真水に近かった。自分の逆上せた頭を無理矢理にでも冷まそうとしていたのだ。
そうして10分以上浴び続けた後、漸くミサトはシャワールームから出てきた。

ロッカールームに備え付けられている姿見に自分の姿が映ると、彼女は眉を顰め顔を背けた。彼女の胸から鳩尾にかけて残る大きな傷跡を今は見たくなかったのだ。
ミサトはバスタオルを巻くと、着替えることも無くロッカールームのベンチに座った。

(初号機を大破させてしまった。これで残る手段は未だ戦うのも覚束ない零号機のみ・・・。どうして私はあんな馬鹿げた作戦を執ってしまったんだろう・・・)

ミサトは先ほどの使徒戦を深く後悔していた。トウジ達の容体を確認するのが恐くて、つい発令所から日向と共に逃げ出してしまったことも後悔している。
第三使徒戦、第四使徒戦についても、よくよく考えれば自分の指揮は的外れで有り、そのために皆から非難されるというのも感情はともかくとして理解していたのだ。
本当ならはとっくの昔にネルフを放逐されていてもおかしくない失態続きなのである。

(でも・・・でも・・・まだ私はクビになっていない。今だって司令や副司令に呼ばれて叱責すらも受けていない。私はまだ上層部には見放されていない・・・大丈夫。大丈夫よ葛城ミサト!次こそ素晴らしい作戦を立てて使徒を・・・使徒のヤツを殺してやる!)

爪が刺さり血が出るほど拳を握り、歯が折れんばかりにギリギリと歯ぎしりをしてミサトは使徒に対する恨みを爆発させた。


葛城ミサトと使徒との因縁は彼女が14歳の頃まで遡る。
ミサトの父は研究者で『スーパーソレノイド理論』の提唱者だった。
もっとも彼女には全く理解の及ばない研究であり、そのために家庭を顧みない父を恨んでさえいたのである。
彼女には父の姿はただ『家族から逃げている』としか思えなかったのであった。

そんな父と母の離婚が決まり、ミサトはその事を喜んでいたのだが、どういうわけかその嫌いな父と南極へと行くことになったのだ。
いまだにその辺の記憶が曖昧で、なんでそんなことになったのかさっぱり覚えていない。
もしかしたら、家庭を犠牲にしてまで没頭していた父の仕事に多少の興味が沸いたのかもしれない。
ともかく、ミサトは父とそして父の研究者仲間達と南極へ向かったのである。

そして、そこであの『セカンドインパクト』が起こった・・・。

ミサトが覚えていることは脱出用カプセルに乗せてくれた父の最後の姿と暫くしてカプセルが開き見ることが出来た白い巨人、所謂『使徒』の姿だけであった。

ミサトは救出後ショックで失語症になり、2年後に漸く回復することができたのだが、そんな彼女にわき上がった思いはただ一つ『父の仇を!使徒に復讐がしたい!』という復讐心だけだったのである。

彼女は大学進学後戦自に入り、念願叶ってネルフに出向、そして遂に作戦課長の地位を得たのである。だからこそ今のこの現状は彼女にとって大いに不満であったのだ。


しかし、シンジはミサトの情報を600万ポイント使ってさらに詳しい情報を得ていた。
まず彼女の記憶はゼーレという組織によって操作されていること。都合の悪いところは消去され、さらには偽の記憶を与えられているのである。

まず父ととも南極に行った件だが、これは彼女の父『葛城博士』による拉致なのである。
彼女は父親に母親の元から連れ去れた後、眠らされそのまま南極まで連れてこられたのであった。
なぜそんなことが必要であったか?それは南極の白い月(ジオフロント)に眠るアダムを調査するため、彼女を使ってアダムをコントロールしようとしたからである。

発見されたアダムの動力源(コア)が当時葛城博士が提唱していたS2理論でしか説明ができないため、ゼーレによって葛城博士が招聘され調査チームが組まれたのである。

学会から不遇の扱いを受けていた葛城博士は突如としてゼーレに理論を認められると、国連の直轄組織である『人口進化研究所』の初代所長に抜擢され、まさに学者人生の前途は洋々だったのであった。
離婚を決めたのもこの頃で、彼からすれば邪魔な者を切り捨てるくらいの感じだったのだろう。

彼は南極へ出向く前にアダムとは人を介して『意思疎通』が出来るのではないか?という碇ユイというまだ研究者になりたての女性から意見を受けた。
彼女は学生時代からいくつもの論文を学会に提出し、注目を受けていた若き天才であり、彼を招聘した国連の上層部からも手厚く保護されていた。

葛城博士も彼女は自分の専門分野とは畑違いであるため、とくに嫉妬をすることもなく、彼女の意見を取り入れアダムとのコンタクトを試みることになったのである。

碇ユイからアダムと接触させるには12~16歳くらいの子供がもっとも適合しているという報告を受け、彼は自分の娘を人身御供にすることをあっさりと決めたのである。

彼は自分の娘を拉致すると南極へ連れて行き、さらに薬を使って催眠状態にしなんでも自分の言うことを聞くように操り人形にした。

そしていよいよ実験当日、彼は娘を使ってアダムとの接触、コントロールに臨んだのである。そして実験は失敗、彼は娘や仲間達とともに爆発に巻き込まれ死亡したのである。

この失敗は予め仕組まれていたものだった。碇ユイが解読に成功しゼーレに提出していた『死海文書』にセカンドインパクトが南極にて起こるという記述が有り、その記述通りにセカンドインパクトを起こすためユイによってプログラムにエラーが仕込まれていたのである。

彼女の夫になる予定の六分儀ゲンドウが実験の前日に持てるだけの調査資料を持ってさっさと逃げ出していたのも、最初から失敗が仕組まれていたためである。

セカンドインパクト後、葛城ミサトはただ一人南極からの生還者『ゼロチルドレン』としてゼーレによって保護された。彼女もまた死海文書の記述に登場するためである。

『ゼロチルドレンの指揮によって使徒戦が行われる』

ただ一つのこの記述のためだけに、ミサトはゼーレによって記憶を操作され、使徒への深い憎しみを植え付けられたのであった。

ミサトが覚えている最後の父の姿も白い巨人も全て作られた『嘘の記憶』なのである。
そしてその洗脳のキーとなっているものこそ、彼女がいつもぶら下げていて『父の形見』だと思い込んでいるあの『十字架』であった。

そもそも少女だった彼女が『使徒』などという存在の呼称を知るはずもなければ、セカンドインパクトを起こしたのが『使徒』であるなどわかるはずもないのであるが、彼女はそのことを疑問に思うようなことは無かった。

唯一、その矛盾に気がついたのはとある目的を持って彼女に近づいた加持リョウジただ一人である。

ミサトはゼーレの操った通りに大学から戦自へと進むと、ゼーレは彼女をネルフへと出向させ作戦課長の地位を与えたのである。まさに全てが『計画通り』だったのである。

さて、南極で死んだはずの『葛城ミサト』が、なぜ今こうして生きているのか??
その続きを知りたい場合は追加でさらに3000万ポイントが必要になる・・・。

「ふざけんな!ここまで読むのにもう400万ポイント追加で出しとんじゃい!!」

シンジはここで一旦読むのを止めたのであった。まあ、すでに原作者も説明を放棄しているところなので(爆)、これ以上はただの蛇足になるのかもしれない・・・。
というか新劇場版ではこの辺りのことを全て無かったことにされているため、神はふざけるなと唾棄したい気持ちで一杯ある。ふん!

ミサトがゼーレによって操られていることを知ったシンジは、だからこそあの時あずみとまりもにミサトを万一の時は『殺す』許可を与えたというわけである。


なにはともあれ、葛城ミサトは気持ちを新たに服を着替えると作戦一課へ向かった。
作戦一課には副官の日向がなにやら画面を凝視していた。

「どうしたの?日向君」

「あっ葛城さん。いえ、現在二課が使徒に対して威力偵察を行っていまして、その様子を見ていたんです」

「ほんと!あいつら何を勝手に・・・。私にも見せなさい!!」

ミサトは日向を押しのけてモニターを見る。画面上では12式自走臼砲が使徒によって打ち抜かれ消滅する様子を映していた。

「これまでに二課が採取したデータによりますと、目標は一定距離内の外敵を自動排除するものと推測されます」

日向は二課から一応こちらへも送られてきている分析結果のデータを読む。

「エリア侵入と同時に過粒子砲で100%狙い撃ち、エヴァによる近接戦闘は、危険すぎますね・・・」

「ATフィールドはどう?」

「健在です。相転移空間を肉眼で目視できるほど、強力なものが展開されています。誘導火砲、爆撃などの生半可な攻撃では、泣きを見るだけですね」

「攻守ともにほぼパー璧。まさに空中要塞ね」

「それと、使徒の下部からドリルが出てきてまして、我々の直上、第三新東京市、ゼロ・エリアに侵攻中です。直径17.5メートルの巨大ドリルが、ジオフロント内、ネルフ本部に向かい、穿孔中・・・とのことです」

「なるほど・・・。直接ここにあの光線を撃ち込もうってわけね・・・」

「ええ」

「しゃらくさい。で、到達予想時刻は?」

「はい、明後日の午前0時06分54秒、その時刻には、22層全ての装甲防御を貫通して、ネルフ本部へ到達するものと思われます」

「あと30時間ってとこね・・・初号機は?」

「だめです。コアはかろうじて無事だったんですが、もうボロボロでとてもじゃないですが出撃は無理でしょう。ただ零号機は現在も調整を続けていまして、先ほど一旦ジオフロント内で実際に稼働させるテストも行っていたようです。あの様子だと出撃は大丈夫そうですね」

「そう、それはいいニュースね」

「ただ、零号機は作戦二課長、シンジ君が自分の命令以外での出撃を禁じる上申を司令に上げてまして、司令もそれを許可していますから、我々では出すことは難しいです」

「ふん、まぁ初号機をあんなにしたんだから、言われなくとも司令の命令が無い限り出すつもりはないわよ。どちらにせよ私の作った作戦を司令部が認めればいいんだから!」

「はい・・・。そうですね。僕は白旗ですが、葛城さんはなにか腹案がありますか?」

「そうね・・・ちょっち、やってみたいことはあるわね」


数時間後、ミサトは司令室を訪ねた。現在時刻は〇時を回っているが、この喫緊の事態の中ネルフ内で寝ているような不心得者など誰一人存在していない。

司令室にはいつものヒゲ司令、ろうじん副司令の2人の他に、いつもは置いていない応接セットのソファに司令の妻である碇ユイとその他斯衛の制服を着た女性4名、そしてパイロット控え室『室長補佐』である阿賀野カエデの6名がいた。

ミサトは部外者達の存在に鼻白んだが、彼女達を無視して気を取り直すとヒゲに対し作戦の上申に来た旨を告げる。ろうじんに促されるとミサトは己の作戦の説明を始めた。

「目標のレンジ外、超長距離からの直接射撃か」

「そうです。目標のATフィールドを中和せず、高エネルギー集束体による一点突破しかこの使徒に勝つ方法はありません!」

「一応聞くがマギはどう言っていた」

「スーパーコンピューターマギによる回答は、反対2、条件付賛成が1でした」

「話にならんな・・・。勝算は8.7%か・・・」

「最も高い数値です」

「何に対して最も高い数値なのか知らんが・・・。その高エネルギー集束体とは具体的に何を指しているのかね。ウチのポジトロンライフルでは出力が足りんと思うが」

「戦自研の開発した陽電子砲を徴発します。そして日本中から電力を集めて使徒に向けて放つつもりです。引き金は私が指令車両から引きます。ご安心下さい」

「君はバカかね?何がご安心下さいだ!!戦自は現在斯衛軍との統合を行っている。斯衛軍には『独立権』があり、いかなる組織の干渉を受けないことを国連で定められているのだ。その引き替えにあの戦術機を国連軍にも配備することを彼らは認めさせられているんだからな。君の言う徴発などできんよ。それに日本中から電力を集めるだと?それでどれだけの被害が出るのかわかっているのかね?病人だけでも相当数にのぼるぞ!!」

「ならば要請します。使徒を倒さねば人類は滅びます。それは斯衛もわかっているはずです。協力を要請しましょう!電力についても特務権限を使えば政府の了承は得られるはずです」

ミサトのこの言葉にろうじん副司令は深いため息を吐いた。

「葛城君・・・。君はあそこに斯衛の方々が座っているのが見えんかったのかね?もうとっくに斯衛軍の方からネルフに協力を申し出てくれているよ・・・」

「冬月」

「ん?どうした碇?」

「もういい、いつまでもユイをこの部屋で待たすわけにはいかん。これから夕食を食べるのだからな。私は失礼させてもらうぞ」

「おっおい!私も一緒のはずだろう。ズルイぞ碇。ああ、阿賀野君!君が葛城君に作戦の説明をしといてくれたまえ」

「へ?はっはい!!」

席を立ちユイの方へ歩いて行くヒゲを、ろうじんも慌ててその後を追う。

実はユイは今回の作戦に「うん」とヒゲが言ったら、これから夕食を皆で一緒に食べようという交渉を行っていたのである。
これにヒゲもあっさりと陥落し、先日隣に作った会食会場に夕食の準備をさせていたのだ。まあ、すでに夕食と言うより夜食になってしまったが。

迷惑なのがヒゲ行きつけのレストランのシェフ達である。彼らはこの深夜にネルフ本部に態々呼びつけられディナーの調理をさせられていたのだから・・・。

斯衛の面々とヒゲとろうじんはミサトとカエデを置いてさっさと部屋を出て行ってしまった。一人残されたカエデはかなり居心地が悪かった。

「あの、葛城一尉・・・。発令所で他の皆様方にも説明をしたいので、申し訳ないのですがそこまでご足労願えますでしょうか?」

そんなカエデをギロリを睨むミサト。カエデは思わずヒッっと声を上げた。

二人は沈黙したまま発令所へと向かった。


発令所には事前に連絡を受けていたリツコやマヤ、青葉の姿もあった。日向ももちろんここに来ているし、その他にも各部長クラスの面々が集まっていた。

「なぜ作戦を説明するのに発令所なの?ブリーフィングルームでいいじゃない?」

「すみません。実は皆さんには二課長自ら作戦を説明したいとのことでしたので・・・。マヤちゃん、これを使ってナガサキに繋いでもらえますか?」

カエデはマヤにカードキーを1枚渡すと、マヤはそれを自分の席に先日シンジによって取り付けられていたカードスロットにスライドさせる。

このカードキーはナガサキ・アーセナルに繋ぐための暗号キーになっており、これを使うことによって簡単に繋げることが可能なのである。
もちろん、今から繋がるところは一般には開放されていないところである。

ほどなく発令所の画面に金髪の白人女性が映った。

「はい、こちら雪広重工業『ナガサキ・アーセナル』イリーナ・ピアティフ技術二尉です。そちらは?」

「初めまして、国連特務機関ネルフ、伊吹マヤ技術二尉です。阿賀野カエデ三尉より碇シンジ一尉に繋ぐよう依頼されました」

「了解しました。・・・はい、大丈夫です。それでは碇一尉に繋ぎます」

ピアティフがそう言うと画面が切り替わり、本部地下のケージのような場所が映った。

「これは・・・『戦術機』のケージですかね?だとするとアレが・・・」

鈴原整備部長が興味深そうに画面を見つめている。画面奥には2機ほどロボットが格納されており、その周りではたくさんの整備員が忙しそうに働いている。

「すいません。お待たせしました。碇です」

薄汚れたツナギを着ているシンジが画面に入ってきた。

「皆さんお集まりですか?僕がこうして呼ばれたということは父さん、碇司令は二課の作戦と斯衛からの要請を受諾したんですね。カエデさん日重の方はどうでしたか?」

「はい!現在こちらに向けて『JA』を運んでいるところです。明朝六時には到着の予定です」

「よし。ではこれで作戦の前提条件は全て整ったわけですね」

カエデの報告を聞き、シンジは少し顔を綻ばせた。

「シンジ君。そろそろ、その作戦を説明してくれないかしら?一応あなたの要請通り『零号機』の稼働テストは行ったわよ。今のところ特に問題は出てないわ」

シンジはリツコのその問いに大きく頷いた。

「はい。ご苦労様でした、リツコさん。でもまだまだお世話になります。今回の作戦ですが、戦自研の陽電子砲を『初撃』に使います。電力は日重が開発した『JA』を使います。JAはリアクターを内蔵しており、いわば小型の原子炉を持っています。このJAに陽電子砲を繋いで使徒にぶっ放そうという計画です」

「ちょっとまって、いくらそのJAが小型の原子炉を持っていても使徒のATフィールドは突破するには出力が足りないでしょ?!作戦ミスなんじゃないの!!」

ミサトがすかさずシンジに作戦の不備を突っ込んだ。

「ええ。多分足りないでしょう。この辺りは日重の技術者と戦自の技術者、そしてリツコさんをはじめとするネルフの皆さんのがんばり次第でどうなるかわかりませんが・・・。とはいえ僕もどんなに出力を上げてもJAと陽電子砲では使徒のATフィールドは破壊出来ないと思います」

「そらみなさい。ならさっさと作戦を取り下げることね」

「破壊は出来ませんが、使徒に隙を作ることは出来ます。使徒は攻撃と防御を一緒には出来ないようです。当初は零号機で使徒が攻撃をしている最中にATフィールドを中和させて、逆方向から僕が乗る『戦術機』で高速突撃、コアを破壊するつもりでした。しかし威力偵察の最終の結果を見るに零号機は必要ないかもしれません。しかし、不測の事態も考えられますから、零号機にはプログ・ナイフを槍のようにして持たせて使徒に対して攻撃できるよう待機させようと思います。それに万が一使徒のATフィールドを中和させる必要だってあるかもしれませんしね」

「ネルフとしては・・・零号機でトドメを刺したいところだけど・・・」

リツコがそう呟くとシンジはクビを振った。

「その気持ちはわかりますが、エヴァは空を飛べません。僕の戦術機は長時間の飛行が可能ですから、上空に待機して超スピードで使徒のコアが狙えます。速度を比べたらウサギとカメほど違うでしょう・・・。僕は使徒を倒すために万全の策を使いたいのです。それは皆さんも使徒を倒しサードインパクトを防ぐという高い志を持ってネルフに来られているのですからわかって頂けると思います。大丈夫です。エヴァの価値は落ちません。ATフィールドを展開出来るのはエヴァだけなのですから。今回は譲ってください」

「・・・ふぅ・・・そうね。シンジ君の言う通りよ。それで私たちへの指示は?」

「技術部には零号機の準備を、先ほどの槍もですね。それと戦自と日重の技術者達との協力もお願いします。確かポジトロンライフルを作っているんですよね?その技術の提供を是非お願いします」

「了解したわ」

「整備部の皆さんもお願いします」

「ああ、もちろんだとも。全力を尽くすよ」

「市民の避難指示も余裕を持ってお願いします。とくに作戦域周辺には絶対人を立ち入らせないでください。JAは原子炉を積んでいます。万が一使徒に破壊されたときは大惨事になるので、JAの配置に関しては十分注意してください」

「そうね・・・第三新東京市内で爆発されたら酷いことになるわ・・・。配置に関してはこちらに任せておいて・・・。そうなるとそのJAを守る盾も必要かしら?それもなにか考えてみるわ」

「よろしくお願いします。僕はこっちの整備にかかり切りになるので、その辺の采配はリツコさんに頼みます。・・・それでは失礼します」

通信画面からこちらに敬礼をしたシンジの姿が消える。
それを合図にネルフの面々は早速各々の仕事に取りかかり始めた。

ミサトただ独りそのままの体勢でジッとシンジの消えた画面を見つめていた。
彼女の顔にはなんの感情も浮かんでおらず、ただ無表情にジッと佇んでいたのである。


発令所を出たリツコであったが、クールな表情とは裏腹に内心では焦りまくっていた。
実はこれはまだ斯衛軍の発足発表以前の話だったのだが、ヒゲ司令より日重が開発しているJAについて『妨害工作』を仕掛けるようにとの命令があったのだ。

もちろんJAなどエヴァからすれば取るに足らぬ玩具であるし、使徒戦で運用するなど夢のまた夢、ゴミ同然の代物であった。

JAはゴミでも作っている大本の日本重化学工業は日本の三大重工の一角で有り、雪広と那波が接近していたことから、ネルフ、というよりゼーレがJAの発表会で事故を起こし、それによって下がった日重の株式を買い占め、その傘下に収めようと考えたのである。

ネルフにとってもエヴァに関する全ての部品を単独で賄えるはずも無く、海外からの輸入ではスピードに欠ける。外部に作らせてもかまわないものに関しては日重に生産をさせるというのは全くもって理にかなっている事だったのである。

というわけで、リツコはマギを使い日重のJA開発チームのスパコンに侵入、暴走させるウイルスプログラムをJA内部に仕込んだのである。

無論、それがいつ暴発するのかはある程度リツコによって操作できるので、問題ないと言えば問題ないのであるが、これからJAには陽電子砲を付けることで様々な改造が施されることになる。

となると基幹プログラムにも様々な変更が加えられるし、新たに足されるものもあるだろう。
そうなるともうリツコには仕込んだウイルスのコントロールができなくなる恐れもあるのだ。
また、マギを使ってウイルスを事前に取り除こうにも、そんな下手を皆の前で打ってネルフを窮地に追いやることもできないし、もちろん自分も捕まりたくない。

(・・・まあ、できる限りスキを見つけてウイルスを取り除くならそうする・・・。出来なければ運に任せるしか無いわね・・・。まあ、零号機で中和してシンジ君の戦術機でトドメを刺せばJAに万が一があっても大丈夫よね・・・多分)

リツコは何事もポジティブに考える楽観主義者などではないが、この問題についてはそう考えないと崩れ落ちそうなくらい動揺していたため、無理矢理頭の中から不安を追い出したのだった。


「ふー。とりあえず一段落だね」

ネルフの人たちに説明を終えたシンジはやれやれと一息つくと、再び己の戦術機の調整に向かって行った。

「ご苦労様です、シンジ様。あと少しで追加装甲の取り付けができそうです」

陽炎(改)の足下にいた巴雪乃がシンジに気付くと敬礼しつつ状況を報告した。

「うん。マナはまだユニットの中にいるの?」

「はい。でも彼女スゴイですね!初めて乗ったシミュレーターで吐きもせずに動かしてましたし・・・。抜群の適正ですよ」

「マナはずっと戦自でパイロットの訓練を積んでるし、それで体を壊したって言っていたから、恐らく戦術機よりも相当酷かったんじゃないのかな?そのトライデント級って。だから、僕はマナは絶対大丈夫だと思っていたよ」

「うー。私たちも負けていられませんね。私たちももう何年も戦術機には乗っているんですから・・・。それではシンジ様、私たちは今から第三新東京市へ出発します。到着まで15時間ほどかかりますので、明日の夕方五時頃になると思います」

「うん。僕もその頃にはそっちへ行くよ」

「空が飛べるっていいですよね・・・。まあ、私たちはトレーラー内で寝ていくのでそれほどたいしたことではありませんが」

「初島の基地もこの使徒戦が終わったら早速整備するよ。この基地に戻ってくることは無いと思う。やっぱりここは遠すぎるしね。雪乃達の私物とかあったら忘れずに持っていくようにね」

「はい。了解しました!それでは失礼します」

雪乃は再びシンジに敬礼すると、足早にケージを出て行った。

シンジは彼女を見送るとタラップを登って陽炎のユニットへ向かった。
複座型ユニットの後方、サブパイロット席にマナが真剣な表情で手元の資料を見ながら画面を操作していた。

「どう、マナ?いけそう」

「あっシンジ君!うん、大丈夫・・・だと思う。ええと、メインウエポンのハンドカノンはシンジ君の操作だからいいとして、私はこのチェーンガンと小型VLS6基の操作、あとナビゲーションを担当すればいいんだよね?」

「うん・・・まあ、実のところかなり無茶苦茶に武装はくっつけちゃったんだよね・・・。上手く動くとは思うけど。それに今回は多分ハンドカノンすら使用しないと思うよ。コアに向かってプログ・ナイフを一差しだと思うし。ナイフは向こうで借りるんだけど」

「それならナビだけだし全然問題ないよ。明日の飛行テストで私のナビのわかりにくいところとか教えてくれたらって思うけど」

「そうだね・・・。マナ、そろそろ今日は休んでよ。明日は本番だし、マナにとっては初陣だからね。十分に休息を取って欲しい」

「うん、わかった。じゃあ、お言葉に甘えて・・・。シンジ君はどうするの?」

「僕は徹夜だねー、残念ながら。マナと一緒に寝たいんだけど」

「あはは、それは終わってからのお楽しみということで。じゃあ行くね」

マナはシンジに敬礼しユニットから降りて行った。


「しかし・・・いくらチートシステムとはいえ、こんな無茶が通るとは・・・」

シンジはメインコクピットに座ると、早速機体の調整を始めた。

この機体は元々『陽炎』という戦術機の機体だった。『撃震』を第一世代とすると『陽炎』は第二世代。その性能は全て『撃震』を凌駕しているモノだった。

シンジはまず斯衛軍には一般衛士に『撃震』を、精鋭部隊に『陽炎』を配備するつもりだったのである。

しかし、その後第二東京で夕呼に会い、彼女にチートシステムを見せると彼女は戦術機以外の機種に着目したのである。最初は『IS』に関して興味を示していたのだが、残念ながら『IS』は必要ポイント数が高い上に、開発には篠ノ之束という人物が必要だった。開発者いるのでは夕呼は手出しが出来なくなるので却下され、次に『エステバリス』について検討し始めた。そして見つけたのが『ブラックサレナ』という機種だったのである。

とはいえ、ブラックサレナはエステバリス用の追加装甲・高機動ブースターである。現在戦術機を全面に押し出しているのに、いきなり全くの別の機種を出すのは不自然だし、技術的にも時代がかけ離れ過ぎているのである。
戦術機は実は現代の科学力でも頑張れば生産できるというレベルの機体だったためだ。

そこで夕呼は「なら戦術機に取り付ければいいじゃない。それができてこそのチートでしょ?」という一言で、神様もその言葉に応えたのか、チートシステムで戦術機用のブラックサレナの開発が出来るようになっていたのである。

調子に乗ったシンジはブラックサレナにいくつか重量制限ギリギリで武装を追加し、ここに魔改造『陽炎(改)+追加装甲・高機動ブースター仕様』通称『黒百合』が爆誕したのである。といってもシステムでは開発できるだけなので、実際に作り上げるのは大変だったと生産責任者である霞とピアティフはシンジに愚痴ったものである。

模型でも作り方の書いた取説と材料があっても、それを上手に組み立てられるか?といえば人の力次第になるのである。チートシステムも取説と材料は生み出せても本体そのものは生産ラインで雪広重工の皆さんに頑張って作り上げてもらう必要があるのだ。
この辺、妙にリアルなためシンジも多少面食らっている所であった。

とはいえ、すでに20機以上組み上がっている『撃震』はかなりのスピードで生産できており、今も24時間フル稼働で生産を続けている。まあ、その割にパイロットは全然なので、毎日3バカ達はできあがった機体のテストに明け暮れていたわけである。
おかげで、彼女達も『撃震』に馴れもう熟練パイロット並である。

この『陽炎』と『黒百合』も最初の機体だったため苦戦したが、次回からもう少し楽に組み上げることが出来ると思う・・・多分。

(無茶苦茶でも、なんとか間に合ったね・・・。今回の戦いは使徒戦をネルフだけのものじゃなく斯衛やその他の勢力を巻き込んだ形にしたかったんだ。とくに僕の『影響力』を大きくしないととてもじゃないけどその他の危機になんか対応できないもの・・・)

シンジはシステムを起動させて『危機』について確認する。

(火星の状況については今はどうしようもない・・・。魔法世界も可愛そうだけど火星に行くための宇宙船なんていくらなんでもまだ開発できないし・・・。まあ、別に火星なんかなくなったって僕はかまわないんだけどね。火星が滅んだ後に地球に来ちゃうのが困るだけで・・・。中国の黄巾賊に関しては・・・これもぶっちゃけ他の国だし。中国人も人口多すぎるんだから少しくらい死んでもらってもいいでしょ、まだまだいっぱいいるんだしさ。最終的には核でも撃ち込んでおけばオーケーだよね、あはは。川神の薬物騒ぎは・・・イザベラ達に頼んで売人達を皆殺しでいいよね。下手に『真剣で・・・」の人たちを呼んで大事になっちゃ困るから(汗、まず先に潰しておいてから呼ぶようにしよう。あと大陸が浮かんじゃうのは(大汗、風石が原因らしいんだけどそんなのどうやって採掘するんだよ??見当もつかないや。このあたりはその世界の住人だったイザベラに相談するしかないよね・・・。彼女ドイツからいつ帰ってくるのかな?雪広ビルでデコチューして以来もう随分会ってないけど・・・)

シンジはしばし目を瞑りイザベラの光輝くおでこを懐かしむのであった。


JAを載せたトレーラーは直接第三新東京市には入らず、少し離れた陸上自衛隊『富士演習場』に到着した。これは当然ながらJAを起き上がらせ、稼働させるような広い場所が第三新東京市にはなかったためである。

それに、使徒は現在芦ノ湖東、鷹巣山北5kmの所に位置しており使徒の攻撃範囲を考えると、この辺りが準備を行うのには最適だったからである。

JA開発チームチーフの時田シロウは早速JAを改造する準備を始めた。
研究所にあった様々な機械や部品を持てるだけ持ってきたが、果たしてこれで陽電子砲が取り付けられるのか不安であったのも事実である。

「申し訳ありませんが、時田博士ですかな?」

少し考え込んでいた時田はその声にはっと顔を上げた。そこには戦自の制服を着た初老の男性が立っていた。

「はい、そうですが・・・。失礼ですがあなたは」

「これは失礼しました。私は戦自研の所長をしております斎藤と申します。陽電子砲一式をこちらにお持ちしました」

「はっ、これは大変失礼しました。JA開発チームのチーフをしております時田です。早速ですが今回の案件は我々にとって大いなる挑戦であります。ぜひご指導の程お願いします」

「いやいや、もちろんです。一緒にあの使徒に一撃を食らわせましょう。時田さんはもう見ましたかな使徒は?」

「はい・・・ここに来る途中で・・・。しかし私が思い描いていた化け物の姿とは全く違いました。信じられない姿です・・・」

「うん、だがあと17時間程でネルフ本部にあいつの下から出てるドリルが到達、ネルフ本部が破壊されるとどういう理由だか知らんがサードインパクトが起きるらしい・・・。まあ、ああして使徒が続々とあそこにやってくるのだからそうなんだろうさ。とにかく時間が無い。早速仕事にとりかかろうじゃないか!」

「はい!」

時田が頷くと斎藤は片手を上げて大きく振る。すると戦自のトレーラーがこちらに向けて動き始めた。どうやらあれに乗っているのが陽電磁砲のようである。

「失礼します。時田博士でよろしくて?」

すると今度は金髪黒眉の若い女性が、さらに若い童顔の女性を連れて彼の元にやって来た。さすがの時田も彼女のことはよく知っている。
マギのシステムアップを行い、あの使徒と戦っているネルフのエヴァンゲリオンと呼ばれるロボットの開発責任者である赤木リツコ博士だ。

スーパーコンピューターマギ、現時点において世界最高、最強のスパコンである。
開発者はリツコの母親の赤木ナオコであるが、システムアップしたのはリツコである。
本人は謙遜しているがこの世界において研究開発段階のシステムを実用段階までシステムアップさせることは、実は研究開発した人物よりも大きく評価されるものなのである。
リツコはマギをネルフだけに留まらず第三新東京市のありとあらゆるシステムに組み入れ活用することに成功しており、その成果は時田もリツコの実力を嫌でも認めざるを得ないのであった。
科学というものは研究だけでよいモノではない。現実に使えなくては意味が無いのだ。

これは時田が開発したJAにも言える。これが使い物にならなければ今までの苦労も何一つ評価をされないのである。
つまりはあの赤木ナオコも娘のリツコがマギを実用化しなければただの一学者で終わり、そのままその名前は埋もれていってしまったのである。
ノーベル賞で一つの研究に複数の学者が同時に受賞するのもこれが一つの理由である。

「ご高名は常々聞いております赤木博士・・・。開発チーフの時田です。どうぞお力をお貸し下さい」

時田はリツコに素直に頭を下げる。JAが日の目を見るならこんな頭いくらでも下げる。

「時田博士、顔を上げて下さい。協力を受けて助かっているのは我々ネルフの方ですわ。ネルフでもポジトロンスナイパーライフルを開発しています。実物とシステム両方持ってまいりましたわ。戦自研からもたくさんの技術者がきているようですし、きっと上手くいきますわ」

「はい!ありがとうございます。よろしくお願いします」

こうして日重、戦自研、ネルフの技術者は陽電子砲をJAに取り付けるべく、長いようで短い戦いを始めることとなる。


「ん・・・ここは・・・」

トウジはゆっくりと目を開いた。目に入ったのは無機質な天井だけだった。
ふと隣を見ると全身、顔まで包帯だらけの男が寝ていた。よく見るとケンスケのようだ。

「そうか・・・わいらは初号機で使徒に戦いを挑んだんやったな・・・。情けないのう、何にも出来ず負けてしもうた」

「そうね・・・情けなかったわね・・・」

トウジはその声に驚き、声の方に顔を向ける。しかし痛みによって結局は首は元の位置に戻った。

「ミサトさんでっか・・・。あの使徒はどうなったんです?」

「未だ健在よ・・・。今日の夜には再び使徒戦を行うわ」

「わいらは・・・無理として、今度は綾波がいくんでっか?」

「ええ、レイも戦うわ。今回は斯衛軍・・・戦自の連中と協同作戦になるわ・・・」

「はあ」

「だから、あなたたちに出番はないから、ゆっくり休みなさい」

「はいな・・・そうさせてもらいます。それでミサトさんはどうするんで?」

病室を出ようとしていたミサトはそのトウジの言葉に動きを止めた。

「わからないわ・・・でも、このまま役立たずで終わるつもりはないわよ」

そう言うとミサトは今度こそ病室を出て行った。

トウジはなにやらミサトの思い詰めた様子に嫌な胸騒ぎを覚えたのだった。


Cパートに続く




[32048] 第六話 決戦、第3新東京市 Cパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/15 13:39
エヴァちーと 第六話 決戦、第3新東京市 Cパート


「それじゃ行ってくるよ!霞もイリーナも初島の基地が完成したら一度呼ぶからね!」

シンジは見送りに来てくれた霞とピアティフにビシッと少し格好付けて敬礼する。

シンジとマナはこれより『黒百合(ブラックサレナ)』で第三新東京市に向かうのである。周りには見送りの二人以外にアーセナルの社員、整備員達も総出で集まっている。

「うん・・・待ってる・・・。頑張ってね・・・」

「シンジさん、ここは私たちに任せてください。ご武運を!」

二人はそう言ってシンジに敬礼を返した。シンジは二人に頷くと颯爽と『黒百合』に乗り込む。ユニットではすでにマナが発進準備を整えている。

「お待たせ、マナ。じゃあ早速だけど出発するよ」

「うん。準備は万端だよ。全システムオールグリーン、発進準備オーケー!!」

「よし『黒百合(ブラックサレナ)』発進!!」

漆黒の機体が上空へゆっくりと浮上すると、高機動ブースターが点火、黒百合は瞬く間に南の空の彼方へと飛び去っていく。

黒百合の発進を見ていた雪広重工の整備員達がその勇姿に歓声をあげる。
歓声の中、霞とピアティフの二人は静かに目を閉じ、手を合わせてシンジの戦勝を祈願するのだった。


一方その頃、『JA』に陽電子砲を取り付ける作業を続けていた富士演習場では3人の技術者が仮設プレハブに集まって頭を抱えていた。予想はしていたが作業は難航を極めていたのである。

「陽電子砲の基幹部分を取り外し、ネルフのポジトロンスナイパーライフルに取り付け、JAの背中にライフルを背負わせる・・・。ここまではどうにか間に合いそうですな」

「はい。背負わせたライフルとJAのリアクターとを繋げて電力を供給するのも問題ありません・・・いえ、無いわけではありませんが、なんとか間に合うかと・・・」

「問題は射撃の制御プログラムですね。JAが外部制御なのはリアクター内蔵なのを考えれば妥当なのですが、ミリ単位の射撃の制御を行うには力不足と言わざるを得ません。ライフルのシステムとの完全な統合が必要になります」

つまりネルフのポジトロンスナイパーライフルとJAとでは全く別のシステムで稼働している。無論ネルフと日重では別組織なので当たり前なのだが、JAでライフルの正確な射撃を行うには、この二つのシステムを連動させる必要があったのだ。それには両システムの統合が必要なのだが、今はその統合作業を行う時間が圧倒的に足りなかったのである。

これはネルフのポジトロンスナイパーライフルがエヴァのシステムと連動しており、目標に対して自動で照準を合わせるという極めて高度な制御プログラムが組まれていることに原因がある。今回はこのライフルの高い性能が裏目に出たわけなのであった。

「システムプログラムの統合と言っても・・・Reプログラムにどれだけ時間がかかるか、少なくとも数時間なんて言う話じゃない・・・数ヶ月単位の話だ・・・」

時田はリツコの言葉に絶句した。いまさらJAのブラックボックスを外部に開示することはなんらかまわないし、ネルフ側もライフルのプログラムをこちらと同様に開示するわけだから、そのことについては問題はない。とはいえ技術的にまったく違う体系のプログラムを連動させるというのは至難の業なのである。それをあと数時間で行うなど・・・。

「現在の時刻が16時、残り時間は8時間。とはいえ、戦闘配置までJAを移動させるのに少なくとも3時間は必要だとして、あと5時間・・・。ライフルの取り付けは出来てもプログラムまでは・・・とても手が出ない」

「しかし、いくらライフルを取り付けても陽電子砲を使徒に命中させなければ意味が無い。使徒の弱点であるコアを正確に狙わず、隙を作るだけに徹したとしても、使徒の体に当てるくらいの精度は必要だよ」

「最後の手段としては誰かが直にJAに乗り込んで、照準と射撃を行えば解決するわ」

「しかし、それは・・・もし使徒の反撃があったら・・・」

自殺行為だ。と時田が言おうとした時、一人の赤いジャケットを着た女性がプレハブの中に入ってきた。

「誰かがあのロボットに乗り込めばいいのね?」

「ミサト?!あなた何を言っているの!馬鹿なことを言い出さないで!!」

ミサトはリツコの声を意に介さず、ツカツカと時田の目の前まで歩いて来る。

「私はネルフの作戦課長、葛城ミサトです。JAには私が乗り込みます」

「日重の時田です。しかし・・・危険ですぞ、葛城さん」

「危険なのは百も承知です。とはいえ、この使徒戦に我々が敗北すればサードインパクトが起こります。そう考えれば安全な場所などどこにもありません。私は使徒と戦うためにネルフに志願して入りました。こんな時に命を賭けないでなにが人類の防波堤か!心配ご無用です。命を賭ける覚悟はとうにできています」

ミサトの言葉と迫力に時田はたじろいだ。確かに彼女にJAに乗り込んでもらえれば、技術的な問題はほぼクリアになる。すでに残り時間も少なく決断の時だった。

「わかりました。この時田、その覚悟に感服致しました。斎藤さんも結構ですね?」

「ああ、そもそも使徒戦の優先権はネルフにある。そのネルフの作戦課長殿が率先して乗り込み戦うのであれば反対などあるはずも無い。頑張ってくれ給え」

リツコはただ沈黙していた。この馬鹿な親友は一度言い出したことは決して覆さない頑固者なのだ。だから無駄な労力を使って貴重な時間を浪費する暇は今は無かった。

(ライフルの引き金をネルフの人間が引くのはこちらの立場的に悪い話じゃ無いわ。命だって賭けているし、対面的にも御の字ね。ミサトの万一の時は・・・骨は木っ端微塵だから拾えないとして、まあ、英霊として祭ってあげればいいでしょう。発令所に神棚を作ればいいのかしら?日向君に管理させてあげれば彼も喜ぶでしょうし)

案外冷たい親友だった。まあ女の友情などこんなものである。

とにもかくにもミサトがJAに乗り込むことが決まり作業は最終局面を迎えるのだった。


作戦開始6時間前、富士演習場にナガサキより戦術機と3バカ達を載せたトレーラーが到着した。3バカ達は早速トレーラーから『撃震』を降ろしていく。

初めて直に見る戦術機の姿にJA開発チーム、戦自研、ネルフ技術者達は興味津々にその様子を眺めていた。エヴァを見慣れているネルフの技術者達はそれほどの驚きは無かったものの、その他の者達はまるでテレビアニメから出てきたかのようなロボットの勇姿に大興奮であった。

「これを見せられると、我らがJAのデザインがもっさりとしているのが悲しいな」

「そう言うなよ、これはこれで俺は愛着があるんだから。でも戦術機は格好いいな!」

「ああ、いずれ模型がボー○スから発売されたら絶対に買うぞ」

『お前ら!遊んでないで手を動かせ!あと3時間しかないんだぞ!!』

時田は自身も本当は戦術機の見学に走って行きたい衝動を堪えつつ、取り付け作業が停滞しないようチームの連中に目を光らせた。
ちなみにすでに陽電磁砲のライフルへの取り付けが完了している戦自研の連中や、JA開発チームにそのライフルを引き渡したネルフの連中は全員戦術機の方へ見に行っている。
もちろん斎藤やリツコもここにはいない。

(くぅ・・・うらやましい。いや、私は何を考えている。戦術機はJAの敵?ではないか!しかし、素晴らしいデザインだ。次期JA開発の際は参考にさせてもらおうかな・・・)

時田がそんなことを熟々と考えていると、周りの技術者達がなにやら西の空を指さして騒いでいる。

「ん?どうした」

「チーフ、あれを見てください!!」

そう言われた時田がその指を指した方向を見てみると、一つの黒い点がこちらに向かって飛んできていた。

「なっ!なんだあれは?!」

黒い点は瞬く間にどんどん大きくなり、その姿が徐々に鮮明になってくる。
爆音を響かせて近づくその機体?は演習場上空で急制動をかけるとピタッと止まり、そのままの姿勢でゆっくりと降りてきた。

その謎の機体は『漆黒』の『異形』の姿をしており、先ほど到着した戦術機よりも一回りは大きい巨大なロボットであった。

漆黒のロボットは戦術機が待機しているすぐ近くに着陸すると、白い煙を出して排気を行った後静かに停止した。

そして、なにやら機体内部で稼働音がした後、ハッチが開き外で待機していた整備員達が機体にタラップを取り付けると、少年と少女の二人がそれを使って降りてきた。
時田は「あんな子供が操縦していたのか!」と驚いたが、そこではっと気がついた。

「彼が碇シンジ一尉・・・。今回の作戦の立案者であり総責任者か・・・」


シンジが演習場に到着した後、しばらくして時田の元に集合の連絡が届いた。

先ほどリツコ達と相談をしていたプレハブに時田が赴くと、すでに今回の作戦の主立ったメンバーが勢揃いしているようだった。また、いくつかモニターも用意されていて、それはどうやらネルフ本部と戦自の総本部に繋がっているようである。

「皆さん集まったようですね。では作業の進捗状況を確認してもいいでしょうか?」

シンジがそう切り出すと、まず最初にリツコが手を挙げた。

「シンジ君、その前に申し訳ないけどシンジ君が乗ってきた機体の説明が欲しいわ。気になって仕事どころじゃ無いもの。それとナガサキから来た戦術機はどうするのかも聞かせて欲しいのだけど」

「ああ、驚かせてすみません。僕の乗ってきたロボットは『黒百合(ブラックサレナ)』という機体です。といっても本体は『陽炎』といって、今日持ってきた『撃震』の上位機種になります。その陽炎に追加装甲と高速ブースターを取り付けたのが黒百合です。黒百合は高速ブースターによって長時間の飛行が可能になっています。また防御面も堅いため突撃性能に優れています。また追加の武装、サブウェポンも限界ギリギリまで装備されていることで戦闘能力も上げています。複座ユニットでメインパイロットが操縦とメインウェポンを担当、サブパイロットがサブウェポンの火器管制とナビゲーションを担当します。ご覧の通りコストが高いので量産は難しいでしょうね。おそらくは生産しても数機程度に留まると思いますし、パイロットの育成も難しいです」

「長時間飛行してきたみたいだけど・・・燃料はどうなってるの?」

「謎技術です」

「え?」

「謎技術です」

「・・・そう(汗。まあ、なんでもかんでも教えてはくれないわよね。ごめんなさい」

「いえ・・・(実際燃費とかおかしいんだよな・・・ご都合主義万歳)」

「それでは長崎から運んできた戦術機をどう扱うのかをお願いします」

「はい。といっても特にこれといって役目はありません。後詰めとして待機させるつもりです。パイロット達に戦場を経験させたかったことと、念のための処置です」

「なるほど・・・(実際に戦術機を複数晒すことで斯衛軍の力を誇示したいわけね)。それでは進捗状況を一尉に報告します。現在JAに陽電子砲を取り付ける作業はほぼ完了しているわ。ただ一つ問題があって照準を合わせるのが外部制御では正確にできなかったの。なので葛城一尉がJAに直に乗り込んで引き金を引くことになりました」

シンジは思わずミサトを見た。ミサトはシンジから一番遠い壁際に静かに立っていた。
シンジはミサトの様子に違和感を感じたが、とりあえず今は置くことにした。

「そうですか・・・(まあ、人一倍使徒に恨みを持たされている人だからおかしくはないか)。わかりました。葛城一尉どうぞよろしくお願いします(ペコリ)」

シンジの言葉にミサトは僅かに頷くだけだった。

「JAは2時間後に移動を開始。戦闘配置は下二子山の山頂、ここから狙撃します。指令車は万が一に備えて同所ではなく駒ヶ岳山頂に配置します」

「了解です。なら僕は北の強羅側に待機ですね。戦術機は下二子山南の海岸沿いに配置しましょう・・・。レイの、零号機の状態はどうですか?」

「問題無いわ。それと光線対策にJAの前方に配置する盾を零号機にも装備させます。盾と槍を持たせて零号機も強羅側に待機させましょう。いいわねレイ」

『はい・・・了解しました』

「ネルフ本部の状況はどうですか?」

『現在第10装甲板まで侵攻を受けています。到達予測時間に変わりはありません』

「総本部、マスコミ対応は?」

『主要メディアの取材を許可した。もちろん危険を考慮してメディアセンターを総本部内に用意、状況は戦自のヘリの空撮と地点カメラを使って情報提供する予定だ。無論不法に現地に乗り込もうとする輩には発砲許可を出してあるので大丈夫だろう』

「作戦遂行問題無しと判断します。それでは、移動開始を予定通り21時、作戦開始を明朝0時とします。皆さん絶対に使徒を仕留めましょう!!」

『『『応!!!』』』

結局ミサトは一言も発しないまま、ブリーフィングは終了した。
こうしていよいよ第5使徒戦(作戦名特になし)が最終準備段階に入ったのである。


「ミサト」

リツコはJAの側で放射能防護服を着込むミサトに声をかけた。

「何?」

「何じゃ無いわよ、こんな無茶して。死ぬつもりなの?」

「誰かがやらなきゃダメなんでしょ。だったら私がやるのが一番適任よ。それに死ぬつもりなんか無いわ、私は最後の使徒を倒すまで死んでなんかいれないわよ」

「・・・はぁ。まあ、ここまできて翻意させようとは思ってないけど・・・」

「さすがに日向君をこれに乗せるのは可愛そうだしね。一緒に乗るのもキモイし。直接この手で使徒を撃てるチャンスをみすみす逃す訳にもいかないわ。必ずやり遂げてみせるわよ」

そう話し合う二人の所に時田がやって来た。

「葛城一尉」

「時田さん?あの、何かご用でしょうか??」

「『希望』・・・JAの緊急停止パスワードです。もし万が一の際はご使用ください。上層部に許可は得ていませんが、今回は喫緊の事態ですのであなたにお教えします」

時田のその言葉にミサトは背筋を伸ばして敬礼する。

「ご協力感謝します、時田博士。任務は必ずや遂行いたします」

「はい・・・ご武運を。葛城一尉、JAを頼みます」

時田は頭を下げる。ミサトは頷くとJAに乗り込むために取り付けられたタラップに向かって行った。リツコは再度ため息をつくと「処置無しね」と呟きプレハブに戻った。


「敵シールド、第7装甲板を突破しました!」

発令所に青葉の言葉が響く。

「あと2時間・・・といったところか・・・。上手くいくといいが」

ろうじん副司令がその言葉に反応して呟いた。すると、ヒゲ指令の隣の席に座り正面モニターを眺めていたユイがろうじんの方を振り向いた。

「冬月先生、大丈夫ですわ。シンジを信じてあげてください」

「ん?もっ、もちろんだとも(汗。作戦に心配などしていないさ」

現在、ユイを含めた斯衛軍の面々はヒゲ指令達と共に、発令所の一番上の階で戦況を見ていた。といってもつい先ほどまで昨日と同じように夕食を共に食べていたのだが。

今日は一日ヒゲの案内でのんびりネルフ本部の見学をしていた。さすがにセントラル・ドグマには下りなかったが、かなりの部分を斯衛の者達に内部を見せることとなった。
これはユイがヒゲを上手く誘導したこともあるが、ヒゲも別段ユイと長時間一緒に居られれば秘匿の件もそれほど気にしなかったのである。それと理由がもう一つ。

「ユイ・・・記憶の方はどうだ・・・。今日いろいろ見て何か思い出したか?」

ヒゲの問いにユイは軽く目を閉じた。

「そうですね・・・。具体的なところまでは思い出せませんが『セカンドインパクト』前後のいきさつについては朧気に思い出しています」

「そうか・・・。ならば『死海文書』の記述はどうだ・・・」

これはヒゲにとってかなりの賭だったが、ユイが記述について思い出しているかどうかは今後のヒゲ達の行動に深く関わることなので思い切って聞いてみたのである。
もちろん念のため『裏』というフレーズは抜いていたが。

「・・・・・・南極のこと、葛城さんのこと、使徒のこと辺りまでは・・・」

ユイはシンジから教えられている範囲で答えた。今はまだそれだけしかわからない。
ヒゲはユイの返答に少し考え込むと、改めて問いかけた。

「・・・それで、ユイは今何を目指す?」

「今はシンジとレイちゃんと・・・二人の行く末を側で見守りますわ。それにまだ私は全ての記憶が戻っているわけではないですから・・・。確か記述では来年早々の予定でしたわね、あれは・・・」

ユイには何の予定なのかわからないが、シンジが使徒戦終了後にゼーレとネルフが何かを企んでいる所までは推察しており、ユイはそのことをぼやかしてヒゲに答えたのだ。

「そこまで戻っているのか・・・ならばいい。今は使徒戦の最中だ・・・使徒戦の間はゼーレもそう派手には動くまい。ただゼーレはユイの動向を気にしている。儀式になんらかの悪影響を与えるのではないかとな。記憶がそこまで戻っていることは伏せることだ」

「(儀式?)ええ、それでゲンドウさんはどうしますの?」

「私か?私は・・・ネルフの指令だ。今は使徒戦を行うだけだ。それにゼーレの命令にも従わんとな。今、彼らに反旗を翻しても待つのは死のみだ。ユイがユイのシナリオを遂行しないというのならば私がそれを行う意味も無い」

「(私のシナリオ?)そう・・・。わかりました。私たちは夫婦なのです。たまに二人で会って情報交換できればと思いますわ」

「そっそうだな・・・(ドキドキ)」

「雪広ビルの最上階の屋敷の一部、今までメイドさん達従業員の控え室などがあったところを改装して『展望レストラン』にするのです。もちろんそこを利用できるのは限られた人だけですけど・・・」

そう言ってユイは胸ポケットから一枚のカードを出し、ヒゲに手渡した。

「このカードがあれば25階のエントランスからエレベーターを乗り替えてレストランまで来られますわ。私が本部に出向くよりも、ゲンドウさんにこちらに来てもらった方が安全でしょう?もちろんお連れの方と一緒に来て頂いてもかまいませんわ。赤木博士とか(ニコリ)」

ヒゲはユイの言葉に思わず椅子から立ち上がる。そしてろうじんをキッと睨んだ。

「な!碇。私は知らん。私じゃ無いぞ!!」

「そう、やっぱり・・・。浮気してらっしゃるのね・・・ゲンドウさん(怒」

ろうじんはそのユイの言葉にしまったという顔をした。かまをかけられたようだ。

実際は夏美によって司令室に仕掛けられていた盗聴器によってバレていたのだ。
ユイにとってこのヒゲは自分の夫とは別人とはいえ、一応は妻として振る舞っている以上ヒゲの浮気を簡単に許すわけにはいかない。というかなんかムカツク。

「ちっ違うんだユイ・・・。実はこれはシナリオ上必要なことであってだな・・・」

「今は使徒戦中ですわ、ゲンドウさん。このような些事は使徒戦が終わったら、ゆっくりと三人でお話ししましょう。赤木博士をちゃんとエスコートして連れてきて下さいね」

ユイは笑顔を顔に張り付かせたまま、狼狽するヒゲに無言のプレッシャーをかける。

「わ・・・わかった。赤木三佐と一緒に行こう・・・問題ない・・・」

「冬月先生もお時間のあります時にいらっしゃってください。これをどうぞ」

ユイはヒゲが椅子に座り直し手を組んでいつものポーズで硬直しているのを無視して、カードをろうじんに渡した。

「ありがとう。是非行かせてもらうよ」

ろうじんはカードを大事に胸ポケットに入れた。今日は大安吉日だっただろうか。

「(ウチの上層部はこの非常事態に一体何をしているのやら)はあ・・・」

発令所で一人だけ真剣に仕事をしているのが少しだけ阿保らしくなった青葉であった。

ちなみにマヤはリツコの手伝いで不在だが、日向もなぜかミサトについて演習場の方へ行っているためオペレーターが自分一人しかいないのである。
もちろんサブにカエデが一時復帰して手伝ってくれているので、問題はないのだが。


その日向は零号機の発進準備の手伝いをしていた。
実はミサトと一緒に演習場に来ていたのだが、ミサトがJAに乗り込むこととなり、先ほど彼女はJAと共に配置場所の下二子山の方へ向かってしまったため、彼は一人取り残されたのである。

というわけで、根が真面目な日向は他の整備員たちと共に演習場から強羅防衛線、零号機の待機場まで移動して来たわけである。
彼は一応発令所のオペレーターで有り、技能は高いので意外にもちゃんと役立っていた。
彼は上司に恵まれて(?)いないが実力はあるのである。

彼はふと零号機とそのすぐ横に待機している巨大な漆黒の機体『黒百合』の方を見る。
機体の側にはパイロットである3人の少年と少女達が、緊張も見せずに楽しそうに話しをしていた。


「これで、死ぬかもしれないね。・・・ミサトさんは」

「どうしてそういうことを言うの?まだわからないわ・・・まだ死んでないもの」

「・・・・・・そうだね。僕たちだって死ぬ可能性もあるんだしね」

「シンジ君は死なないわ、・・・私が守るもの。葛城一尉は守らないけど」

「意外とレイちゃんって言うよね・・・。レイちゃんは、何故コレに乗るの??」

「・・・絆だから」

「絆??」

「そう絆」

「シンジくんとの?」

「シンジ君とみんなとの」

「強いなぁ、レイちゃんは」

「私にとってみんなとの絆、シンジ君との繋がりは何よりも大切なモノ・・・。まだみんなと温泉にも海にも遊園地にもピクニックにも行ってないわ。お母様にお料理もまだまだたくさん教えてもらいたい。シンジ君に食べてもらいたい・・・。だから死ねないわ」

「そっかー。そういや私も孤児でその上少年兵なんてやってたから、そういうのやったことないなぁー。これからは私もいろいろ経験したいな!それに、シンジ君の子供も孕まないといけないし・・・。うん!死んでなんかいらんないね!!」

「孕む??霧島さん孕むって何??」

「え??それを具体的に聞かれると困っちゃうんだけど(汗、えっとね、シンジ君のおちん○んをレイのおまん・・・」

「ストーーーーープ!!マナはバカなの??なにをレイに説明してるの?!そんなのは使徒戦が終わってからにしてよ!恥ずかしいでしょ!!というかもうちょっとオブラートに包め!!」

「・・・孕む・・・それは恥ずかしいこと・・・」

「いや別に孕むのは恥ずかしくないけど、それに至るまでの行為が恥ずかしい・・・オーケーオーケー碇一尉、わかりました。口を閉じますからその振り上げた拳は降ろしてください」

「はぁ、ほら、時間だよ。出発出発!!」

「あいあいさー(あんなにセクハラするくせに変なとこで純情だなぁ)」

「・・・・・・(コクっ)」


『ただ今より、0時、0分、0秒をお知らせします』

「作戦スタートです」

ネルフ本部から下二子山麓まで運んできた14式大型移動指揮車内でマヤが作戦開始を宣言する。
いよいよ第5使徒戦のリベンジマッチが始まったのである。

「JAのリアクター起動、出力を上昇させます」

「リアクターの冷却システム出力最大!電子凝縮システム正常です」

「補助変圧器も正常作動中・・・。ライフルに陽電子流入、順調です!」

「強制集束器作動!先輩どうぞ!!」

「最終安全装置、解除。・・・時田さん号令をお願いします」

本来一研究者の時田に号令をかける資格はないのだが、今回はこの作戦への日重の協力に敬意を払い、リツコは時田に号令を譲ったのである。

「はい。では・・・撃鉄を起こせ!!」

「ミサト、誤差調整は大丈夫そう?タイミングは任せるわよ」

『・・・大丈夫よ。心配しなさんな』

「陽電子送信管、集束を開始!全エネルギー、ポジトロンライフルへ注入!!」

『5、4、3、』

「目標に高エネルギー反応!!」

「何ですって!!」

『2、1、発射!!』

前屈みになってライフルを構えるJAから光線が発射された。それと同時に八角形使徒のコアからもJAに向かい光線が放たれる。
二つの閃光は干渉し合い、それぞれ明後日の方向にに着弾する。

「よし、特攻!!!」

「あいあいさぁーーーー!!」

使徒がJAに対し光線を発射したと同時に、シンジの駆る黒百合が全速力で使徒に接近し弱点のコアを狙う。
しかし、あとちょっとというところで使徒のATフィールドにナイフは阻まれてしまった。

シンジは冷静に使徒から素早く距離を取ると、黒百合を使徒の上空に飛ばす。
使徒からは黒百合を狙って破壊光線が放たれるが、障害物の無い空であればシンジの操縦技術を持ってすれば避けるのは容易である。

「初撃失敗、フェイズ2へ以降、JAは第2射準備!零号機は敵使徒のATフィールドを中和するため接近を開始して下さい!!」

「使徒が黒百合に対し光線を乱射していますが、問題なく避けているようです。零号機は盾を構えて前進開始!!」

「ん?なんだ?!緊急報告!!JAが使徒に向かって突然走り始めました!!」

「どういうことだ?!いきなりJAの制御が効かなくなったぞ!!」

「JA暴走!!JA暴走しています!!葛城一尉大丈夫ですか?!」

『問題なし・・・って言いたいところだけど、これじゃあ第2射が放てないわね。空に向かって撃ってもしょうがないし』

「何のんきなこと言っているの!早く緊急停止コードを打ち込みなさい!!」

『・・・そんなのもうとっくにやってるわよ!でも停止コードを受け付けないの!!』

「そんなバカな・・・」

時田は信じられないと顔面蒼白である。
ウイルスを仕込んだリツコからしてみればそれは当然のことなのだが。

(最悪のタイミングでウイルスが動き始めたわね・・・。というよりも想定していたタイミングかしら?はぁ・・・今日は厄日ね。ここからじゃどうしようも無いし・・・)

リツコのウイルスプログラムが正常に動作すれば数十分ほどで止まるはずだ。
まあ、そこまで使徒が待ってくれると到底思えないが、止まるまで使徒がJAに光線を撃たなければミサトは助かる。

「使徒は相変わらず黒百合に対し攻撃を継続しています」

「多分、この3者のなかで黒百合を最大戦力と見ているようね・・・。あんな形の使徒にも知恵があるのかしら?・・・興味深いわ。後で検証してみないと・・・」

リツコはすでにミサトの安否をあっさりと諦め、自身の知的欲求の解消を優先した。

「JAが使徒に接触!使徒に覆い被さっていきます」

JAが八角形使徒を抱きかかえるようにぶつかる。どうやら使徒が黒百合に光線を放った瞬間に接触したらしく、使徒のATフィールドの干渉を受けなかったようだ。

「・・・なぜ使徒はJAを撃たないんだ?」

「わかりません・・・。もしかしたらあの使徒はああやって密着されると、光線を放った際に自分自身もダメージを負うのかもしれません。つまり零距離射撃はできないのでしょう。であればあの体勢で光線を放つのは使徒にとって自殺行為ですわ」

「零号機到達、ATフィールドの中和を開始します。黒百合突貫!!!」

使徒の側に到着した零号機によって中和された使徒のATフィールドの間隙を、黒百合の持つプログ・ナイフが縫って使徒のコアを突き刺す。

使徒は特に叫び声もあげず、静かに下に墜落していった。それと同時にネルフ本部に侵攻していたドリルの回転も止まった。

「・・・パターンブルー消失!使徒活動を停止しました!!」

この報告に作戦車内はホッとした空気に包まれる。

「JAのリアクター圧力上昇が止まりません!!このままでは爆発します!!」

その叫ぶような報告に作戦車内は再び緊張と沈黙が支配する。

「使徒とぶつかって止まっていたJAが再び動き始めました!このまま東に向かわれては市内に突入してしまいます!!」

「まだ止まらないの?!」

リツコは大いに焦っていた。
もし第三新東京市内で爆発などすれば、さすがにリツコの責任も大っぴらには問われなくとも、裏の事情を知るヒゲやゼーレからは問われることになってしまう。
それはつまり『死』ということである。

リツコが目に見えて狼狽えていると、シンジから連絡が入った。

『リツコさん!黒百合でJAを沖まで運んでそこで爆発させます!!』

「そんな!!いつ爆発するかわからないのよ!!」

『ここで爆発させるわけにはいきませんよ。JAを使うと言った責任はとります』


シンジは一つ大きいため息を吐くと後ろのコクピットへ振り向いた。

「ゴメンねマナ、死ぬかもしれないけど最後まで付き合ってもらうよ」

「なんの!シンジ君!死ぬ覚悟なんか戦自でトライデントのテストパイロットになったときからとっくにしてます!私のことはおきになさらず♪さぁ行きましょう!」

「うん、ありがとう。よし行くぞ!!」

黒百合はJAに後ろから抱きつくと、暴れるJAを持ち抱えてフルスロットルで上昇、海を目指す。

「シンジ君!!」

レイはこの状況について行けず、ただJAを抱えた黒百合を見送ることしかできなかった。

『シンジ君・・・あなた正気なの!!爆発するわ!もうおしまいよ、なにもかも!』

JAに乗っているミサトからの通信がシンジの耳に入ってくる。

「ふざけるな!たかがロボット一つ、ブラックサレナで押し出してやる」

『無理よ、こんなスピードで・・・もう今にも爆発しそうなのに!終わりよ!!』

「あなたほど急ぎすぎもしなければ、僕は絶望もしちゃいない。ブラックサレナは伊達じゃない」

『何も知らないくせに!あんたが現れてからなにもかも上手くいかなくなったわ!!この疫病神!!ちくしょう!!ちくしょう!!殺してやる!!』

「本性を現したか、愚かなヒトだ。これ以上お前が生きていても害悪しか生まない。ここで死ね」

その時、下二子山南、海岸沿いに配置されていた3バカの駆る撃震3機がブースト全開で黒百合に近づいてきた。そして黒百合の背中を掴むとバーニア噴かせて助勢する。

「私たちだっていることを忘れないでください!!」

「そうです、すぐ落ちちゃいますけどね!!」

「いけーーーーー!!」

撃震3機のおかげで黒百合はなんとか海岸線を抜け海に出ることができた。

「うぉーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

シンジはJAを全力全開で沖に放り捨てる。それと同時にJAのリアクターがとうとう限界を迎えJAは爆発した。


<<原典破壊ボーナス(特大)>>
『葛城ミサトが死亡した。彼女の死はこの世界のシナリオに多大な影響を与える。その影響を鑑みて君にボーナス5000万を進呈する』


<<システムからのお知らせ>>
『原典においての主要キャスト『葛城ミサト』が死亡しました。彼女が死亡したため、美少女召喚『碇シンジ育成計画』葛城ミサトが解除されました』


<<原典破壊ボーナス(中)>>
『JAが破壊された。JAの破壊はこの世界のシナリオに多少の影響を与える。その影響を鑑みて君にボーナス800万を進呈する』


<<使徒破壊ボーナス>>
『おめでとう。君は見事第5使徒を撃破した。その行為に敬意を表し5000万ポイントを進呈する。これからも頑張ってくれたまえ』


黒百合は爆発を見届けるとゆっくりと砂浜に着地する。黒百合の『不可思議』燃料はまだまだ健在なのだが、ブースターやシステムのあちこちにエラーが出まくっている。
暫くエンジンを冷ます必要があるようだ。

「はー、まぁなんとかなったね・・・」

「うん・・・はぁー、死ぬかと思った」

シンジとマナは黒百合から降りると、砂浜に腰を下ろす。

ドシンドシンドシンドシン・・・。

暫くするとなんと零号機がやってきた。
アンビリカルケーブルをパージしているところを見ると、無謀にも内部電源だけで走ってきたようだ。
零号機は限界に達したのか、崩れ落ちるように砂浜に倒れ込む。

そして、エントリープラグがイジェクトされるとレイがこちらへ走ってやってきた。

「はぁはぁ、シンジ君、私をおいていかないで!一人にしないで!」

レイが涙をポロポロとこぼしながらシンジに抱きつく。
シンジはレイをしっかりと抱き留めると、少し照れたような表情を浮かべた。

「ごめんね・・・レイ。こういうとき、どんな顔をすればいいのか、分からないや」

シンジがそう言うと、レイは顔上げシンジに向かって微笑んだ。そして・・・。

「笑ってよ、シンジ君」

そう言って再びシンジの胸に顔を埋めたのだった。


第七話 人の造りしものに続く




[32048] 第七話 人の造りしもの
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/17 13:13
エヴァちーと 第七話 人の造りしもの


「ぷはっーーー!!やっぱ人生、この時の為に生きているようなもんよねぇ♪」

綾波レイは第三新東京市『雪広ビル』最上階、シンジの屋敷のリビングで美味しそうにビールを飲むミサトを訝しげに眺めていた。

先日の使徒戦で、葛城ミサトはJAと共に爆散して死んだのではなかったのか??
しかし、今こうしてレイの目の前で彼女は、ユイ達大人の面々と一緒にビールを飲んで喜んでいるのである。
この人物は間違いなく『葛城ミサト』であり、しかもこのミサトは以前のミサトとはまるで別人のようだった。

(葛城一尉にも代わりがいたのかしら?人間じゃない?・・・わからないわ・・・)

レイは小首を傾げてうんうんと唸った。
このレイの悩みはもちろん皆わかっているのだが、まだレイに『チートシステム』のことを教える訳にはいかない。レイは未だネルフの最深部に関わる重要人物なのだから。

シンジがレイとマナ二人の目を盗んでミサトを召喚したのは、使徒戦の直後のことである。
呼びたてのミサトに「すまないけど、今から海に飛び込んで。僕がその後泳いで助けに行くからさ」とアリバイ工作を行ったのである。ミサト当人は至極嫌そうだったのだが。

その後、葛城ミサトはJA爆発前に『脱出』し、シンジによって奇跡的に救助されたと報告しこの入れ替わりは成功したのである。ヒカリの時と同様に元の死体は自動的に消えるようだ。

とはいえ、この葛城ミサトはこの世界のミサトとは殆ど別人である。

彼女はセカンドインパクトも経験してなければ、そもそも軍人の経験すらも無いただの『中学校の先生』なのである。

研究者だったユイやただの中学生であるヒカリと違い、今のミサトにとってこの世界の自分に成り代わるのは相当な苦労を必要とした。
助かったのはこの世界の自分も仕事嫌いでズボラな性格は一緒だったので、たとえ彼女が上手く仕事が出来なくても誰も変に思わなかったことである。

そして何一つわからず困ったミサトを助けたのは、『忠犬』日向であった。

彼はミサトが奇跡的に助かったと聞くとすぐさまやって来て、あれやこれやと世話を焼いてくれたのである。

彼はミサトの病院の検査に付き添い、終わると自宅まで送ってくれ、次の日は迎えにも来てくれて本部まで運転してくれた。
発令所の場所も「どこだっけ?」と聞けば普通なら何かおかしい?と思いそうなものだが彼はちゃんと案内してくれる。
執務室、ロッカールーム、全部「どこだっけ?」の一言で済んでしまったのだった。

仕事に関しても「あー、ゴミンだけど全部教えて?難しいのは代わりにやって」と言えば親身になって喜々として教えてくれるし、難しい仕事もやってくれるのである。

(よっぽどこの世界の私ってバカだったのかしら(汗・・・。軽く引くわね)

至れり尽くせりで教えてくれるのはいいのだが、この世界の日向は一体どんだけこの世界の自分をバカだと思っていたのか問い詰めたい気分になるミサトであった。

そんな理不尽な思いを抱かれているとは思ってもいない日向は、ようやく葛城さんが少しは真面目になってくれたと喜んでいたし、そもそも大好きな上司に頼られるのは彼にとって何よりのご褒美なのである。

さて、無事入れ替わったミサトであるが、彼女ももちろん『神の洗脳』済みでありシンジLOVEになっている。
無論、29歳と14歳であり、さすがに恋愛関係はシンジが望まない限りなることはないが、一応はお姉さんとしてシンジ優先で動くことになる。

そうなると今のネルフでの対立している現状は大いに困るわけで、ミサトはさっさと作戦一課長を辞職する旨をヒゲに伝えた。
ヒゲとしても彼女は失態続きであったし、内部の引き締めのためにもその申し出はありがたかった。

しかし、ゼーレの意向では彼女は使徒戦に関わり続けなくてはならないため、一度だけ慰留した後、二つに分かれた作戦課を再び一つに戻し、シンジを課長にミサトを課長代理に任命したのだった。二課の面々はシンジ不在時の指揮をミサトが執ることに難色を示したが、シンジの説得とミサトがJAに乗り込み、命を賭けて使徒と戦ったことが評価されてようやくまとまったのである。

まあ、それでもミサトに対する不審は根深かったが、何度も言うが彼女は全くの別人であり、サボり癖はあるものの、一応は中学校でのお仕事はちゃんとやっていた彼女は作戦課のお仕事もそれなりに真面目に取り組んでいた(難しいのは日向任せだが)。

一週間もすると「どうやら葛城一尉は心を入れ替えたらしい」となり、作戦課の職員達も疑心暗鬼ながらもミサトを認め始めたのである。

他のネルフの職員達が驚いたのはシンジとミサトの和解である。

一触即発、会えば罵り合うような関係の二人が手を繋いで発令所に出勤してきた時は、リツコもコーヒーを噴き出し、マヤは動揺し過ぎてもう少しで本部の自爆をマギに申請するところだった。お口あんぐりとはこのことである。

これが表面上仲良くしているわけでは無く、ガチで仲良くしているわけで「これはいったいどういうことなの?!」とリツコがミサトに問い詰めることとなった。
というのもミサトは住んでいるマンションを引き払い、雪広ビルに引っ越したことも判明したからだ。

まあ、ミサトもそう問い詰められても返答に困ってしまうので、とりあえずシンジは命の恩人だからと答えたが「あんた達はあの時爆発の瞬間まで言い争っていたでしょうが!」と言われると、「人ってロジックじゃ無いのよ」とミサトが言い返すとリツコも口惜しそうに黙った。

マヤは「私もシンジ君のお家に引っ越したいな」とシンジにおねだりしていたが、残念ながら却下されて凹んでいた。
シンジだってマヤならウエルカムなのだが、雪広ビルは機密も多いので下手に呼び寄せることは出来ないのである。洗脳するのも可愛そうだし。

そんなわけで『雨降って地固まる』という言葉があるように、一連の作戦課を巡るゴタゴタはこうして解決したのであった。


レイと同じくここで暮らし始めたマナの二人が部屋に戻ると、ハーレムメンバーの面々は27階の会議室に集合した。
それはお寝むの美羽もであり、七乃に抱かれてやって来ている。

千鶴(榊)、壬姫、3バカの5人は富士演習場で行われることになった戦術機の発表会の準備のため不在である。
まりもは夕呼の元に戻り二人は引き続き悠陽のサポートをしている。この3人も夜が遅いためこの場に出ていない。なかなか戦自総本部では隠れて通信行うのが難しいのである。代わりに夕呼は用件をピアティフらに伝えているようだ。
あとキョウコもすでに寝てしまい起こしても起きなかったのでそのまま欠席である。

「すっかり遅くなったけど、今から皆で今回のポイントの使い道について会議をしたいと思う」

この会議室にはシンジの指示で大きな円卓が置かれており、皆それぞれ好きな場所に座っている。会議に出れないナガサキの二人はテレビ電話での参加である。

「悠陽達の召喚や『黒百合』の開発とかで、余っていたポイントもほとんど使っちゃってたんだけど、今回の戦いで一億ポイント以上入ったからいよいよ『初島』の開発を行いたいと思うんだけど」

シンジがそう議題を切り出すと、ハーレムメンバーの面々は嬉しそうに微笑んだ。

「よ・・・ようやく台詞が回って来ましたわ。ここ最近マブラブ勢以外のメンバーは空気でしたから(ホロリ)」

「それでもアヤカさんはいいですよー。私なんて何話ぶりなんですか!!第二話でご主人様の逸物を咥えて以来ですよ!!」

「・・・それでも七乃さん達は『オチ』に使われていたではないですか。私なんてこれが初めての台詞です。あっ初めまして『科学に魂を売った乙女』にして『でも魂なんて非科学的なものは信じない!』葉加瀬聡美です。よろしくお願いします」

「あ、どうもよろしく」

頭を下げる聡美にシンジも律儀に頭を下げた。
ごめんね、忘れてて。でももうこれで君の出番は(多分)終わりなんだ・・・。

「はいはい、メタなことは置いといてさっさと進めようよ。この第七話は1話分しか書くつもりないんだから」

「JAなくなっちゃいましたもんねー。発表会(笑)も」

「というわけで、話を戻すよ。ポイントの使用についてご意見どうぞー」

「失礼ですが、まず先にシンジ様は『初島』以外にはなにか希望はありますか?」

「そうだねぇ・・・。女の子を呼んじゃうと『危機』が増える!っていうのは困るんだけど。だからといってそれで召喚を自重しちゃうのはもったいないから、今まで通り呼ぶつもりだよ」

「さすがご主人様!私たちに出来ないことを平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!」

「七乃・・・最近ジョジョのアニメにはまっていることを晒すでない。恥ずかしい」

「すみません、美羽様。つい使いたくなって」

「・・・というわけで誰を呼ぼうかな?って、その前に必要なことにポイントを使おうか。でも・・・島の開発って何から手をつけたらいいのかな??」

「それでは初島の開発ですが私たちで『雛形』を作っておきました」

アヤカが丸めていた紙をシンジの前に広げて見せる。初島の白地図に細かくいろいろな施設などが書き込まれている。

「セカンドインパクト以前にホテルやプールなどレジャー施設があった島の南側は同じように再建したいと思います。というのも、いつもビルに籠もっていたり仕事をしていたりではストレスが溜まりますし、シンジ様もレイ様たちと遊びたいとおっしゃっていましたので作るべきと考えます。もちろん私たちもご一緒したいですわ。安全面を考えても初島に作ってしまうのが一番です」

「うん。それは面白そうだね!」

「ホテルに関しては以前存在していたホテルの2倍の規模で建てます。というのも、このホテルを初島の軍事施設としても利用しますので、ホテルと言うより基地と言った方がいいかもしれません。シェルターも整備します。周りには屋外プールや海泉浴場、アジアンガーデンなどを整備します。詳しくはググって下さい」

「うん、あとでググっておくよ(良い所だからみんなも行ってみてね!)」

「島の中央部には滑走路を一本通します。その北側に戦術機を格納するケージを六棟建てます。生産工場はさすがに作れないので、漁港を拡張して輸送艦が入港できる港を作ります。そして地下ですが、基本的には倉庫として使用しますが、潜水艦ドックは作りたいと思います。海神(わだつみ)と潜水母艦用ですね。あと細かいところもありますが、これだけ開発してだいたい・・・えーと・・・2700万ポイントくらいです。軍事的に関係ない施設は安めの設定ですし、初島はナガサキの十分の一ほどの大きさなので、いろいろ改造を施してもこれくらいで済みそうです」

「これくらいといっても・・・最初から考えたら凄いポイント量だけどね。なにげにナガサキより高いし。じゃあ、アヤカ早速やっちゃってよ」

「わかりました」

シンジはアヤカにチートシステムを委託した。こういった操作はやり慣れているアヤカの方が早いのである。

「じゃあ、この間に他にはどうかな?」

『戦術機の『兵装開発』を行いたいです。現在、突撃銃と長刀くらいしかないので』

壁に取り付けられているモニターからイリーナが発言する。

「ああ、そうだね。アヤカ、ついでにやっておいて。多分そんなにポイント数は必要ないと思うから。あー、あとついでに資源の追加もしておこうかな?」

「・・・はい、了解しました。ん?シンジ様、今気がついたのですが資源の欄に『使徒』というのがあるんですが・・・」

「へ?何それ?ヘルプを押して調べてみてよ」

「はい・・・えーと、使徒の死骸を専用の施設で回収すると重さに応じて新たに資源が得られるそうです・・・」

「マジで!!いままで資源は全部ポイントで買ってたのに・・・。これは大至急ネルフと交渉しないと!!えーと誰に言えばいいのかな?」

「たしか赤木先生・・・リツコが使徒の死骸の処理が大変だわーとか言ってたような・・・。多分リツコの担当だと思います」

ミサトがはーいと手を上げてシンジの問いに答える。

「それなら、回収施設を近場に作ってネルフから死骸をもらおうよ!」

「ええ、早速明日にでもネルフと交渉を始めますわ」

「うん、資源の問題が解決すれば戦術機をいくらでも作れるしね」

『でもパイロットがいませんよ。現状でも3バカさんたちがいなくてテストができてませんし・・・』

「何人かは新たにいずれ呼ぶつもりだけど、戦自の人たち、それにマナで実証されたけど少年兵の子供たちも優秀みたいだからどんどん活用したいと思うよ。シミュレーターを増やして対応しよう。もちろん初島でも訓練できるように整備しなくちゃね」

『あとそれと、香月博士から伝言です。「生産はまだ先だけど、『武御雷』『不知火』を開発するために『瑞鶴』を開発して生産する必要があるわ。性能としては陽炎とどっこいどっこいだけどね。完成までに最低でも一ヶ月はかかるから早めに取り組んだ方がいいわよ」とのことです』

「なるほど・・・先を見据えてだね。その意見も採用します。これで基地と戦術機と資源については大丈夫かな?あと残りが・・・約6000万ポイントか・・・多いようで少ないよね」

「まあ、どんどん事業規模が大きくなってますから、とはいえ、雪広財閥も今回の件で日重を傘下に収めることができましたし、かなりお金が回るようになってきました。日本の景気も上向きですし、資金に関しては潤沢になってきましたわ」

実は日重の買収工作を仕掛けていたのはゼーレの傘下企業が先だったのだが、その計画は発表会翌日の株価下落を見込んでの予定だったため、今回の急な動きに出遅れてしまったのである。

これは最近日本のゼーレの支持者の中で裏切り者が続出しており、統制に混乱をきたしていたという事情もあった。
さらに雪広が日重の買収を政府を通して申し込んだことも大きく、政府が保証してくれるのであれば日重側も買収を受け入れるのも吝かではなかったからである。
その保障とは斯衛軍からの『発注』であり相当額の契約を日重側にチラつかせたのである。
おかげで日本の三大重工は一つにまとまり、生産量が増え、生産コストは大幅に下がったのであった。

「そうだね。操祈と夏美ちゃんにたくさん頑張ってもらったね」

「当然です!これからも任せてくださいね」

「いえいえそんな恥ずかしい(//∇//)」

「戦術機を国連に売ればさらに儲かりますわ!1機300億で納入予定ですw」

「経費は組み立て費用だけだもんね。ボロ儲けだ」

「はい、しっかり性能は落としてますし・・・自爆装置もこちらで作動させることができますから万が一敵対することになっても安心ですわ」

「酷いのぅ」

「ですねー」

ちなみに実際アメリカが日本や韓国に売っている戦闘機も同じような仕組みになっています。敵対した場合アメリカ側の操作でコクピットが飛んでいくとかいかないとかw
性能を落としてあるのは公式でも認めています。でも日本はアメリカ軍より高値で買わされています。本当に情けない話ですね。


「というわけで、それじゃいよいよ美少女召喚の時間だよ!今回は追加された世界もあるから選択肢はかなりあるよね!!」

「・・・でも追加された世界ってどれもこれもヤバくありませんか?悪魔だとかお化けだとか英霊だとか・・・。私たちじゃどれも対処できないものばかりですよ!!唯一めだかボックスの世界は操祈さんの世界によく似ているようですけど・・・」

「この安心院さんを呼んだらこの話終わっちゃうんじゃないですか??」

「心配しなくても彼女は1京2858兆519億6763万3867ポイントだから選べないけどね」

「なーんだ・・・それは残念。彼女のせいでどれだけの中二病作者が悔しさで壁ドンしたのかというのに・・・」

「一生懸命考えたスキルが3つほど被っていたときの神様(作者)の荒れようったらありませんでしたものね。ジャンプを床に叩きつけてましたよ」

「しかも、その時書いてた作品はオリジナルで、それもすでにかなりの量を書いてて懸賞にも投稿する気満々だったとか・・・」

「どうせ黒歴史になるだけだから逆によかったんですよね。ゴミを読まされる審査員さん達も可愛そうです」

「このSSとは比べものにならないくらい頑張ってたんですけどねぇ・・・」

「態々鎌倉まで現地取材まで行ったのにm9(^Д^)プギャー」

「しかももったいなくて『なろう』に出したらポイント2桁しかもらえないとか(笑)」

「やめろ!やめるんだ!みんな!!もう神様のライフは0だよ!!」

シンジは泣きながらみんなを止めた。シンジはわかっている。安心院さんが悪いんじゃない、くだらない作品を書いた神様が悪いんだと・・・。
でもいくらなんでもあんな捨てるようなスキルの使い方しなくたっていいじゃないか、あれは禁じ手だろうと思ったのは確かだ・・・。

いいんだよ、神は今後も好きなようにオ○ニー小説を世の中に垂れ流せればそれで満足なんだから!!これからもいろんなSSをいっぱい書くぞー!!

「というわけで、今回は追加された世界からは召喚は無しというわけで」

『『『『賛成ー!』』』

シンジは改めてチートシステムの召喚画面を開き眺めて見た。

「前から気になっていたんだけど、このバカテスの世界の人たちってみんなポイント低いよね・・・。主要な人たちを全員呼んでもたいしたことないし。危機もこの文月学園を買収してサーバー破壊すれば終わりみたいだから、この人達を呼んじゃおうか?」

「そうですねぇ・・・。召喚獣?付きなら結構強いみたいですし」

「秘書室も相変わらず人手不足なので人が増えるのは助かります。一日中無表情のガイノイドたちと過ごすのも辛かったんです」

エリナが悲しそうに呟く。そういえば秘書室に補充された人員はガイノイドだけだったね(汗。

「よーし、なら今回は使徒撃破記念だ。ばばっと呼んじゃうよ!!姫路瑞希、島田美波、木下秀吉、霧島翔子、工藤愛子、木下優子、清水美春、玉野美紀、島田葉月・・・えーと姫路瑞穂さんも瑞希さんのコンボで必要みたいだから一緒に召喚!!これだけ呼んでも10万ポイント未満とか!!」

シンジが操作すると会議室の円卓の上にドサドサッと女の子達が現れた。
さすがに10人も一度に現れると壮観な眺めである。パンツも何人か見えるた。

「ちょ!呼び方が雑い!!もっとこの娘にしようかなーって悩んでから選んでよ!」

ショートカットのボーイッシュな女の子がシンジに抗議する。

「ごめんね。でも皆ポイントが数千ポイント単位だったもんで。一番高いポイントの霧島さんたちで5000ポイントなんだし・・・。6000万ポイントある現状、つい大人買いしちゃうのも仕方ないよね(テヘペロ)」

ちなみに一番安いのが葉月ちゃんの1000であり、高いのが秀吉の1万である。
いや別にこのポイントに意味は無い。能力と人気が反映されてるのかな?かな??

「でもみんな可愛くて最高だよ!これからよろしくね(ニコリ)」

「「「はわわわわ、こちらこそ(//∇//(//∇//(//∇//) テレテレ」」」

「・・・なぜワシがこの場に呼ばれておるんじゃ・・・。ワシ男なのに・・・」

「く・・・私にはお姉さまがいるのに・・・なぜこんなにも男にトキメクの・・・」

一人の美少女がうむむと首を傾げ、もう一人の縦ロールツインテール少女はぐぬぬと唸った。
秀吉、君を外すなんてとんでもない。美春お前は『神の洗脳』をさっさと受け入れろ。

「みんなには秘書とかメイドさんとか縁の下の力持ちになってもらいたい。よろしくね」

「・・・一言で言えば雑用係なんだよね(ジト目)」

「うん。あとエッチ要員かな」

「ヒドイ!!なんというぶっちゃけ!!」

「冗談だよ。エッチなことも雑用もしてもらうけど、大切な仲間だよ」

「・・・なんか学校で苛められてる子がよくいじめっ子に言われてることのような?」

「気のせい気のせい。さて、ポイントは全然減ってないけどこの後どうしようか??」

シンジがそう言うとユイが珍しく手を上げた。

「愛でる女の子はこれだけいればしばらく十分でしょう?さすがに母親として、あまり女の子を消費物のように扱うのはダメだと思うわ。もちろん人が増えなければ使徒戦や危機に立ち向かえないのもわかってる。だから今度は6000万ポイントで選べるもっともポイントの高い人を呼んでみたら?」

「・・・結局呼ぶんじゃないですか、ユイさん」

「でもまあ、理にかなっているかも。しかし今一番活躍してるのがアヤカさんだとすると結構難しい問題ですよね?」

「いえ、私の場合は『財閥』に追加でポイントを出してもらってますから・・・合計すれば億単位になってますわ。結局の所ポイント量は正しいのではないかと思います。」

シンジは召喚画面にて高ポイント順にソートしてみた。安心院さんは除外だ。

「最もポイントが高い人は川神百代さんの1億ポイントなんだけど・・・。特質としてはどのような敵が出現しても『最強という存在が揺るがない』らしい。ただし、必ずしも『最高』で『最適』かはわからないみたいだよ」

「ということは負けることもあるということですね・・・。必ずしも勝負事は最強が勝つわけではありませんから・・・」

「あー川神百代ねー・・・。アタイじゃなかった、私が知っている限り確かに『最強』ですよ。マシンガンで撃っても蹴りで全部止めてましたし」

あずみがそう答えた。そういえばこの世界はあずみさんしかまだ召喚してなかったな。

「どちらにしてもポイントが足りず呼べませんね。次はどなたですか?」

「更識楯無さんで9000万ポイント、これはIS付きでね。前のラウラさんが8000万ポイントだったからさらに高くなっているね・・・。IS世界で6000万ポイント以下なのは・・・あれ?結構居るんだね。どうも楯無さんはロシアの代表で暗部用暗部「更識家」の当主ということ、ラウラさんは代表候補生なんだけど現役の『軍人』さんなのが評価されてるみたい・・・。他にも理由があるみたいだけど『原作でまだ明かされていない(泣』って書いてあるね。というかこれ百代さんより楯無さんの方が価値があるような気がするね(汗」

「そのお二人も残念ながら呼べませんが、それ以外の方は呼べるのですか?」

「えーと、そうだね。呼べるよ。箒さんという人は7000万だから無理だけど、セシリア、鈴、シャルロットさんが6000万、前に出た織斑千冬さんが5000万・・・でもこの人はISを持ってないんだね(汗、楯無さんの妹さんの更識簪さんが4000万なんだけど、ISは『開発中』なので完了まで協力が必要なんだって。あとシャルロットさんはデュノア社が出現するけど妾の子だから実権はないそうだよ。それとISの性能が他の人たちより若干落ちるみたいだ」

「・・・逆にそれは面白いかもしれませんわ・・・」

アヤカがなにかピンときたのかふむふむと考え始める。

「いずれISを出現させることは確定事項です。ISは戦術機を圧倒できる性能を秘めていますし、シンジ様の危機に対抗するにも重要な武器となるでしょう。そういえばISの開発者の篠ノ之束さんは何ポイントなのですか?」

「えーと、束さんは1000万かな。でもコンボで千冬さん箒さんの二人を呼ぶ必要があるから、併せて一億3000万ポイント必要だよ・・・。そっか、コンボなんてのもあるからただ単純に一人のポイント数で比べても仕方ないのかもしれない・・・」

「そうですわね・・・。束さんを召喚すればいくらでもISを作れますから・・・そんな甘いことにはならないようになっているようですね。わかりましたわ!ならばシャルロットさんを呼びましょう!!そして操祈さん夏美さんのお二人にフランスへ飛んで貰い、ドイツのイザベラさん達諜報部の人たちの協力を得てデュノア社の社長を洗脳しましょう。その後、雪広の金を使いデュノア社を買収します。それでシャルロットさんを次期社長にしてシンジ様の嫁にしましょう。研究開発もデュノア社のISに限られますがこれで出来ますしね」

「・・・ISコアは束さんしか作れないから、デュノア社にはそんなにコアは保有して無いんじゃないかな?」

「まあ、あの設定はそもそも可笑しすぎますから(汗、当初の設定したコアの数が少なすぎたのでしょう・・・。だいたいコア数が467個って・・・。アメリカでも戦闘機を4500機、中国でも1500機、ロシアで1000機、韓国で600機・・・と数を持っているのに少なすぎなのです。大方日本の保有数が250機ほどなのでそれを元に作ったんでしょうが・・・。白騎士一機で既存の兵器に圧勝したなんていう設定もありましたし。しかし、白騎士は千冬さんという生身でも相当に強いある種百代さんのようなバグキャラありきです。小説の内容を見ていると、主人公やヒロイン達、通常の兵士さん達は通常のミサイルやマシンガンの攻撃に晒されると恐怖心を覚えたり、ストレスを感じたりするようです。これでは長時間の戦闘はできません。それに絶対防御も絶対ではなくシールドバリアが無くなればそれでおしまい。永遠に稼働し続ける不可思議燃料をISが持っているわけでもありません。正直既存の兵器でも攻撃を続ければほとんどのISに勝てますし、ISパイロットのいる基地を隙をついて核爆弾で攻撃すればあっさり倒せてしまいます。だって一国に多くても十数機しかいないんですから・・・。それで国土を守れるんですか?それにたったそれだけの個数しかないのに候補生が多すぎですし、候補生にもなれない学生は学ぶ必要あるんですかね?なにがIS学園ですか??卒業生の数人しか職がない欠陥学園しかないじゃないですか。ISを製造しているメーカーも無茶苦茶です。開発に多額の金がかかるって描写されているのに、もし開発に成功しても最大で467機分しか売れないんですよ!!実際は各国に製造企業があるようですから、だいたい数十機程度しか売れません。一機の価格を戦闘機の倍としても2~300億円です。たとえば10機売れても2~3000億ですよ。コレぽっちの売り上げ規模じゃ吹けば飛ぶような会社じゃないですか!売れてない売れてないと言われるソニーでも年間6兆円以上の売り上げがあるんですよ。戦闘機を作るボーイング社も通常でも6800億円売り上げがあるんです。軍の大型受注が決まればこの何倍も売り上げがあるんですよ。はっきり言って何年も研究してお金を使ってこれくらいしか売り上げがないんじゃやっていけません。軍需産業舐めんなと言いたいです。雇用問題もどうなっているんですか?一機のISを作るのに1万人くらい雇用してるんですか?アメリカの軍需産業で働いている人の数を調べたのかと。アメリカ一国で約360万人です。それだけの人々がISによって意味がなくなった既存の兵器の製造に関わっているんです。エヴァにだってエヴァンゲリオンの製造がゼーレの傘下企業しか恩得が得られないから失業対策にならなくて不満を持っているんだよって言っていたじゃないですか!ISなんかエヴァの比じゃない影響ですよ!!どれだけの問題が巻き起こったんですか!!ありえない。マジ設定がありえないと大事なことなので2度言わせてもらいます」

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

「ふぅ・・・まあ、設定に文句を言ってもデュノア社の保有コアが増えるわけでは無いと思いますが、それでも3個以上は持っているでしょう。買収の価値はあると思います」

「うん・・・わかった。わかったから落ち着いてね」

確かに神も第一巻を読んだ時点で「これ大丈夫なのか?」と心配になったのだが、案の定作者さんも困り果てて、実は束が裏でいっぱい作っていて公表されてないコアがあるんだよー。ちゃんといろんな国に渡してもいるもんね♪とか実はコアがコピーされちゃったもんね♪ということにしたようである。最初からコア技術は提供したことにして、特別な進化するスーパー(笑)なコアは束しか作れないようにしとけばよかったのに。結局尻切れトンボで作品は終わり残念である。続き・・・あるのかな?かな??

「お気楽ハーレム小説にそこまで要求してはと思いますけどねー」

「そうそう、プロに偉そうに文句言ってんじゃーねーよって美波お姉様も言ってます」

「えっ美春!うちはそんなこと言って無いよ(汗」

「美波ちゃん・・・」

「言って無いって!ああもう、そのシャルロットさんを呼ぶなら早く呼びなさいよ!」

シンジは死んだミサトさんに代わり、新たな弄れる人材を見つけたことに深い喜びを感じていた。美春と目を合わせるとしばし美春はシンジを睨んだが、その後目元を僅かに緩ませた。

「なるほど・・・同士なのですね・・・」

「うん、美春ちゃん・・・これからもよろしく。僕は美春ちゃんにも興味あるけど」

「よろしくお願いします。お姉様と一緒ならかまいませんよ?あと私攻めですから」

「わかった、一緒に愛でるよ。二人で攻めようね」

シンジと美春は固い握手を交わした。というかようやく美春も洗脳を受け入れたようだった。美波は「いや美春とはしたく無いんやけど・・・」と冷静に突っ込んでいた。

「さてと、じゃあ、残りのポイントの大半を使ってシャルロットさんを呼ぶね。6000万ポイントを使用してシャルロット・デュノア召喚!!」

すると円卓の上に幾筋もの幾何学模様が浮かび上がり、その模様の一つ一つが光輝くと一人の金髪のスリムな女の子がゆっくりと出現した。その娘は閉じていた瞼をゆっくり開くとシンジに向かって微笑んだ。

「シャルロット・デュノアです。シンジ君よろしく。シャルって呼んでもらえたら嬉しいな」

「うん、こちらこそよろしく!」

バカテス勢は「なんか私たちの時と比べて召喚の演出が違い過ぎないか?」と愚痴っていたが、君達と6000万ポイントの彼女と比べるのはどうかと思う。
いや女の子の価値に上も下もないんだけどね。ブスと美人は明確な区別はあるけれども。

まあ、男よりも女のほうがブ男とイケメンの区別が悲しいくらい明確なのである。
忘れているかもしれないがシンジ君はイケメンだからセクハラもパワハラも許されているのだ。
イケメンは何をしても許される。これはこの世の摂理なのである。え?違います??

「初めまして、シャルロットさん。私は雪広あやかですわ。早速ですがお話が・・・夏美さんと操祈さんもこちらへお願いしますわ。明日の朝にはお二人には出て頂きたいですから」

「はっはい!」

「うわー。朝一でフランスに行くの?飛行機はファーストクラスでお願いね」

「えっフランス!!お買い物とか出来るかなぁ千鶴姉?」

「私はついていけないけど・・・、少しは出来ると思うわよ。お土産よろしくね」

「うん!みんなの分買ってくるよ!!」

「・・・夏美さん。お仕事が優先ですからね!」

「もっもちろんわかっていますとも(汗」

こうして、今回のポイントの使用は全て終了した。まだ数百万ポイント残っていたが、これは今後の保険のために取っておくことにした。本当は『情報』も買いたかったのだが、情報は日を追うごとにポイント数が下がっているので、もう少し待ってみようと思う。

「えっと、じゃあ美波ちゃん達、自己紹介と懇親を兼ねてお風呂に行こう!やっぱり日本人はフロニケーションが大事だよね!」

「え?シンジ君と一緒に入るってこと??」

「そう。異議は許さないから。あっ水着は着ても着なくてもいいからね♪」

「着ない人っているんですか・・・私あまりスタイルに自信がないんですが」

「瑞希ちゃん、そのプロポーションで自信がなかったら世の中の女性の相当数を敵にまわすよ。そうだね・・・最近は誰も着なくなったね。慣れちゃったのかな。あはは」

「あははって・・・。うーんうちはあんまり胸大きくないから見られるのが恥ずかしいなぁ」

「大丈夫だって。そうだマナも呼んでくるよ。仲間がいれば心強いよね!」

美波は当初シンジのこの言葉の意味を図りかねていたが、シンジが連れてきた(すでに寝ていた)マナのマナ板を見て無言でシンジにグーパンしたのであった。
ちなみにマナもシンジに同じようにグーパンした。その理由は推して知るべしである。
とはいえ、みんなで楽しくお風呂に入れてシンジはご満悦であった。シンジもげろ。


「初号機の胸部生体部品はどう?」

「大破ですから・・・新作になります。頭部も両腕部もです。追加予算の枠オーバーですね。大丈夫でしょうか?」

現在ネルフ本部では初号機の修理作業が行われていた。先の使徒戦で大破した初号機の修理に技術部、整備部共に頭を悩ましていたのである。

シンジには『黒百合』があるといっても、あれはネルフではなく斯衛の機体である。実際はまだ斯衛軍は正式に発足していないので、雪広の私物扱いなのであるが。

「とはいえ、初号機は私達の最大戦力だし、使徒戦はネルフの最優先事項。どの予算よりも優先させなきゃね。これでドイツから弐号機が届けば少しは楽になるのかしら?」

「逆かもしれませんよ。地上でやってる使徒の処理もタダじゃ無いんでしょう?」

「それが雪広が使徒の処理を請け負いたいって申し出てくれたのよ。まあ、大方サンプル目的なんでしょうけど・・・。必要な部分の回収出来たから、その他の部分は全て任せたわ。これで随分と助かったのよ」

実際、使徒の死骸の処理を雪広が破格の値段で請け負ってくれたことは、天からの恵みに他ならない。
S2機関やコアなどを渡す訳にはいかないが、それ以外の死骸にはなんの価値もないのである。それをあちらは喜々としてタダ同然で回収してくれているのだ。
しかも、今後の処分に関しても請け負いたいとのことだったので、リツコは大喜びで契約を結んだのである。もちろん司令の許可も得ている。

「それでも初号機の修理費には雀の涙・・・ですか」

「ほーんと、お金に関してはセコい所ねー。人類の命運をかけてるんでしょ?ここ」

ミサトが他人事のようにそう言うとリツコはミサトをキッと睨んだ。

「あんたが大破させたんでしょうが!あんたが!・・・・・・まあ、もうそれは済んだ事ね。仕方ないわよ。人はエヴァのみで生きるにあらず。生き残った人たちが生きていくにはお金がかかるのよ」

「予算ねぇ・・・。じゃああの司令さんはお金を集めてるわけなんだ」

「(司令さん?)ええ、今は機上の人よ。随分慌てて使徒戦の後出張に出かけてたけど」

「司令が留守だと、ここも静かでいいですね。あのヒゲずら鬱陶しいですもん。」

「マヤ、その言葉査定に響くこと覚悟しておきなさいね」

「しまった!つい本音が・・・(泣」

ちなみに、ヒゲはユイとリツコと自分の3者面談に臨む勇気が出ず、出張を言い訳に逃げただけである。もちろん未だリツコに浮気がユイにバレた件は話していない。
こういうことは時間をおけばおくほど事態が悪化するのだが、ヒゲにはそれはわからなかった。

ちなみにシンジとレイの進路相談には当然ながらユイが来たし、戦術機の発表会も無事開催することが出来ました。一番人気は参考展示の『黒百合』だったそうです。

そして、いよいよ物語は中盤戦へと入るのである。


「僕は、まだ登り始めたばかりなんだ。この果てしない男坂を・・・」


~~~序・終~~~


第八話 アスカ、来日 Aパートに続く




[32048] 第八話 アスカ、来日 Aパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/20 09:44
エヴァちーと 第八話 アスカ、来日 Aパート


~~~破・始~~~


「もうすぐアイツがミサトとここにやって来るわね・・・バカシンジ・・・」

アスカは薄暗い船室でポツリとそう呟いた。

本日の太平洋はべた凪で、船は揺れもしなければ波の音さえしなかった。
と言っても、彼女が乗船している船は巨大な空母であり、多少の波くらいでは小揺るぎもしないし、窓の防音ガラスは艦載機の離発着の音すらも通さないのであるが。

今彼女がいる場所は彼女にとって因縁の空母である『オーヴァー・ザ・レインボー』で、ここは彼女に与えられた士官用控え室なのであった。

「それにしても、なんで弐号機をドイツからわざわざ海路で運んでいるんだろ?いい加減この部屋に籠もっているのも飽きてきたわ」

アスカは自身二度目のこの退屈極まりない航海に辟易していた。

退屈するのは前回の経験でわかっていたので、いろいろな暇つぶし道具を持参して来てはいたのだが、それも早々と大西洋を南下している最中で終わってしまった。
いや・・・まだ『漢字ドリル』は残っている・・・。だが今はそれをやりたくはない。

「自分の才能が憎いわ・・・。せっかく持ってきた携帯ゲームをあっさりクリアしてしまうなんて・・・。前回は加持さんとおしゃべりしてりゃ暇が潰せてたんだけどなー」

もちろん、時間のかかるRPGなどのやり込み系ソフトを持ってくればよかったのだが、彼女の好きなジャンルがアクション系やシューティング、FPS系に偏っており、元来好きなモノにしか興味の無い彼女は全てそれらで揃えてしまったのだった。

また一度やり始めたらムキになる性格なため、暇つぶしに持ってきているのに一日中、それこそ寝食を忘れるくらいハマってゲームをしていたのである。
おかげで大西洋を出る前に全てのソフトをコンプリートしてしまう有様である。
これにはさすがのアスカも己の性格にほんの少しだけ反省したのであった。

この他持参していた雑誌や映画のDVDなども、一度観たらもう一度観ようなどとは思わなかった。これもまた彼女の性格の問題なのだろう。

「それにしても、こうやって海路で態々行くというのも、やっぱり事情があるのよね」

恐らくは以前戦ったあの使徒をおびき寄せる『餌』だったのではないか?と思えるのだが、使徒はどちらにせよ第三新東京市に必ずやって来るのだから、次の使徒が海洋生物系の使徒だとネルフ上層部が知っていたのであれば、第三新東京市の沖に罠を張り巡らせて使徒を狩ればもっと楽に倒すことが出来たのではないだろうか??
別に使徒戦で態々苦戦する必要などどこにもないのだから。

「やっぱり知らなかったのかな?だとしても空路を選ばなかったのはなぜかしら?」

一応ドイツでもアスカは「なぜ空路で日本へ行かないのか!」と不平をドイツ支部上層部にぶつけたのだが、頑として海路で行くことは覆らなかったのだ。

以前は太平洋艦隊(シンガポールでインド洋艦隊から引き継いだ)の人たちとはほとんど付き合わず、というよりも非常に険悪な関係だったため、今回は多少態度を改めてアスカはネルフの制服を常に着用し、挨拶を明るく元気よく行うようにしていた。

うろうろと艦内を歩き回ったりもせず、ましてや甲板で日向ぼっこなどするはずもなく、至極大人しく自分の控え室で過ごしていたのである。

時にはあの提督にさえ廊下で会えば礼儀正しく接しており、実は彼女は今回クルー達からなかなかの高評価を得ていたのであった。

まあそれも加持のあのダラけた態度で全てが台無しであり、何度かそのせいで揉め事も起きていて、前回よりも雰囲気が改善しているとは残念ながら言えなかったのであった。
こいつは人の苦労を何だと思っているのかとガチでグーパンしたいアスカである。

「でも、本当に戻って来たのね・・・。そしてあの街に再び行くことになる・・・」

あの白い不気味なエヴァ擬きとの戦いで敗北した後、アスカはふと気がついたらなぜか時間が巻き戻ってドイツ支部で弐号機のシミュレーション訓練をしていた。

しばらくの間ぼーっとしてしまい、懐かしい無能だった教官に怒られてしまった。
訓練が終わった後、大慌てで情報を集めると、彼女は何故か『1年前』のドイツに戻ってしまっていたのである。所謂アスカは時を『逆行』していたのであった。

アスカは大いに混乱し、動揺し、2日ほど仮病で訓練を休んで部屋に引き籠もると泣くわ喚くわの大騒ぎをし、漸く落ち着くと「やり直せるのであれば今度は失敗しない!」と決意し立ち直ったのである。

彼女はまず己自身の行動を戒めることから始めた。

アスカの明晰な頭脳で己の行動を客観的に所謂『私は自分自身を客観的に見ることはできるんです。あなたとは違うんです』ばりに一つ一つ見つめ直してみた。

あの先を見通す目で自分の過去を思い返すと、なんと自分は酷い生き方をしていただろうと反省しきりである。いくら母の事があってトラウマを抱えていたにせよ酷すぎる。

アスカはまず自信過剰だったプライドを改め、視野狭窄に陥らず、柔軟な考えをするように心がけた。

もちろん一気に全てを治すのは無理であるが、すでに母が弐号機にいることも知っているし、加持に依存しているわけでもない。態度を改めるのはそれほど難しくはなかった。

また、すでに行われている第三新東京市での使徒戦についても以前はろくに調べもしていなかったが、今回は積極的に情報収集をすることにした。

第三使徒戦・・・初号機で撃破。特に変わり無し。第四使徒戦・・・初号機で撃破。特に変わり無し。どうやら使徒戦はアスカの知っている通りに推移しているようだった。

第五使徒戦は残念ながらアスカは海上の人になっているため知ることができないが、まあ、この様子であれば変わるようなことはないのだろう。

さて、アスカにとって『シンジ』とどう付き合うか?が今の最重要課題である。

あの線の細い惰弱な愚か者・・・。しかし、シンジには何度も命を助けられているのも事実であり、以前の自分はそれが許せず彼に辛く当たってしまったのである。

今振り返ればシンジも気弱すぎるし情けなかったが、自分も酷すぎる。いくらなんでも未熟にも程があるだろう。

シンジへの『恋心』をちゃんと『自覚』し行動しないと、今回もあの悲惨な結末の二の舞になってしまう。
今更ながら自分とシンジがちゃんと話し合って理解し合い、支え合って協力すればあの困難も乗り越えていけたはずだと思うのである。

今回はこの先出てくる使徒のこともある程度わかっているし、弐号機のシンクロも問題ない。性格も・・・多少はマシになっていると思う・・・多分。

彼の足手まといにはならないし、まさか一人で全部倒してやろうとも思っていない。
シンジとついでにレイの3人で協力し合えば上手く乗り切っていける自信があった。

「あと・・・まーこちらが100歩、いえ1000歩譲ってバカシンジと付き合ってあげてもいいけどね!いっ一応キスだってしてるわけだし!ってダメダメそんなんじゃ!今のシンジは私を知らないんだからキスはノーカンなのよ!というかその前にシンジに私を惚れさせないとダメじゃない!!以前の私のあの有様でも結構良い感じだったし・・・。今の私なら絶対大丈夫だと思うけど・・・。問題はアイツよね」

そう、アスカ最大のライバルは『ファーストチルドレン』綾波レイだ。
あの子もあの子で相当変な奴だったが、間違いなくシンジはレイにも惹かれていた。
というか悔しいことにシンジは自分よりもレイの方に天秤が傾いていた気がする。

(一体あの蒼髪のアルビノ少女のどこがよかったんだろう・・・。正直恐いと思うけど)

とにかくレイをどうにかしないとなーとアスカが考えていると部屋の扉がノックされた。

「おいアスカ、少しいいか?」

「あっはい、加持さん」

アスカは以前、彼のことを『加持先輩』と呼んでいたのだが、あの時の恋心は加持がミサトと復縁した際に木っ端微塵に砕かれているので、今は特にそういう思いは無く冷めていた。
というか、実りもしない恋をいつまで引きずる暇は思春期の乙女には無いのである。

アスカが扉を開けると、いつものボサボサヒゲずらのだらしない男が立っていた。

(今思うと私はなんで加持さんに恋をしたんだろ?大人の男性に憧れていたのかな?)

正直、以前の私は趣味が悪いなと思う。どう見てもダメンズではないか。
まあ、シンジが付き合う男性として趣味が良いのか悪いのかはわからないが、彼は家事も出来るし助けてもくれたし、アスカとしては一応及第点を与えてあげたい。
これもまたいつか「趣味が悪かったなー」と感じるのであろうか??

「ん?何ぼーっとしてるんだ。ほら、最新の使徒戦の報告書だ。アスカが知りたがっていただろう」

加持から先日起きた第五使徒戦の戦闘詳報がアスカに渡された。
これは使徒戦を聞きつけたアスカが加持に、もし手に入るならと頼んでいたのである。

「ダンケ!加持さん。もう加持さんは全部読んだの?」

「ああ・・・、なにやらわけのわからん展開だったようだが・・・」

「へ?そう??じゃあ、とりあえず今から読むね。ありがとう!」

アスカは加持に礼を言って扉を閉めると、備え付けのデスクに座って読み始める。
しばらく詳報を読み進めていくと、アスカは目を見開きカタカタと手を震わせた。

「な・・・何よこれ??ネルフと戦自が共同で使徒作戦を行って、ミサトがジェットアローンとかいうロボットに乗って使徒を狙撃、零号機が使徒のATフィールドを中和して、シンジが乗る戦自のロボットがトドメを刺したぁ?!はぁ??」

アスカは思わず立ち上がった。
以前と違う使徒戦の展開にアスカは激しく動揺していたが、頭に血が上ったまま行動しても碌なことにならないのは学習していたので、無理矢理深呼吸を数回行い心を落ち着ける。

そしてある程度落ち着くと、戦闘詳報を掴んで部屋を出た。
向かう先は加持の控え室で、部屋に着いたアスカはノックもせずに扉を開ける。
まだ動揺が完全に収まっているわけではなかった。


「加持さん!!」

「うぉ!なんだアスカか・・・びっくりするじゃないか!」

「ごめんなさい!でも加持さんこれってどういうことなの??」

「え?どういうことって何だ?読んだままじゃないか、何かおかしかったか??」

「はぁ?読んだままって!!あっ!・・・えーと・・・」

(そうだ・・・この詳報がおかしいって感じるのは私だけなんだった。どうしよ(汗)

「えーとね・・・。そう!なんでネルフと戦自が『共同作戦』なんてしてるの?」

「あっああ・・・、実は緒戦で葛城の奴が無策にも初号機を使徒の真正面に出しちまってな。それで使徒の攻撃を防ぐ間も無く無防備で食らっちまって大破したんだよ。それで残る戦力が起動実験を行ったばかりの零号機だけになって・・・。それで戦力不足から共同作戦を執ることにしたみたいだな」

「大破?!・・・シ、サードチルドレンは大丈夫だったの?怪我とか」

「ん?まあ、その辺は書いてないからわからないが・・・。その後の戦いで普通に出撃してるんだから大丈夫だったんじゃないか?」

「あ・・・そうか・・・。あとなんで戦自なの?普通『国連軍』でしょ??」

「それは戦自研というところで開発してた『陽電子砲』が必要だったんだろうなぁ」

「・・・そういやそんな話を聞いたことあったわね。ヤシマ作戦だっけ(ボソっ)」

「まあ、戦自と書いてはいるが・・・実は9月から戦自は『斯衛軍』に編入されるんだ。斯衛軍は『独立権』を有しているから、ネルフの徴発権限の対象外なんだよ。これは今の戦自にも拡大適用される。だから共同作戦という形を取ったんだろう。それに共同作戦を行って雪広が新たに開発した『戦術機』を見てみたいというのもあったのかな?あのジェットアローンが意外な形で役に立ったわけだが・・・」

「・・・え?何それ?」

「ん?ジェットアローンか?こいつは日重という会社が作ってた対使徒用のロボットで・・・」

「それもちょっと気になったけど、まず『斯衛軍』よ!!そんな組織今まで聞いたこと無いわよ!!」

「ああ、先月の終わり頃に突然発表になったんだよ・・・。雪広という会社が戦術機という新しいロボットを開発しててな、それが凄く高性能だったんで、その戦術機を主力にした新しい軍隊を作るということになったんだ。その軍隊に戦自を組み入れたわけだ」

「そのロボットになんでシンジ・・・じゃなくてサードチルドレンが乗ってるのよ!」

「ん?なんだ『サードチルドレン』を知っているのか?アスカ」

「えーと・・・名前くらいは知ってるだけよ(ドキドキ)。じゃなくて何でか教えて!」

「そのシンジ君が斯衛軍所属の一尉様でもあるからさ。母親の碇ユイ博士と共に戦術機を開発したんだそうだよ」

「はぁ??母親??何よそれ!!」

「碇ユイ博士・・・。死んだと言われてたんだが生きていたらしいな。高名な学者さんだよ。昔はネルフの前身の『ゲヒルン』にいたんだが、行方不明の後、雪広の所で研究者をしていたらしい」

アスカは思わず「母親が生きてたら初号機が動くはずないでしょうが!」と怒鳴りそうになったが、危うく寸前で踏みとどまった。

「しかし彼も階級が一尉だから俺と同格か・・・。先任だから頭を下げんでいいのは助かるが・・・。アスカはちゃんと敬礼しろよ。アスカはまだ准尉なんだからな」

エヴァのパイロットは等しく特務三尉なのだが、アスカはまだ正式に実戦配備されていないので訓練生扱いの准尉なのである。
年齢を考えれば今後しばらくは昇進はないだろう。
以前のあの使徒戦で何度も戦果を上げた時でさえ昇進などなかったのである。

「えーそれってずっとサードチルドレンが上司ってこと?!」

「そりゃそうだ。彼はそもそも『作戦課長』なんだから」

加持のさらなる爆弾発言にアスカは驚きすぎて声が出なかった。

「さっ作戦課長って・・・ミサトはどうしちゃったの?」

「葛城は課長代理、失態続きで降格させられたそうだ。というか本来はクビか、もしかしたら銃殺もあり得たらしいがな。今は落ち着いているらしい・・・酷いモノだよ」

「銃殺って何やったのよ(汗・・・まあ、だいたい想像つかなくはないけど・・・」

「ご想像通り使徒戦時に暴走したんだとさ、それも3回も。命がけでジェットアローンに乗って特攻してなけりゃもうこの世で会うこともなかったかもしれんな」

「はぁ・・・」


アスカは加持の部屋を出ると、まっすぐ部屋に戻らず甲板に出た。
いつもは作業の邪魔になるので出ないようにしているが、今は風に当たりたかった。

「・・・歴史が変わってる?というかアレは変わりすぎでしょ(呆。まさかシンジも私と同じように逆行してきているのかしら?それにしては話がおかしいし・・・。やっぱり直に会って話さないと何もわからないわね」

そう!なんにせよもうすぐシンジとは会えるのだから!!

アスカはとりあえず問題を棚上げにしようとしたが、ふと「こんなに歴史が変わっているのに、そもそもシンジやミサトはちゃんとここにくるのかしら?」と気がつきは激しく頭を悩ませるのだった。

というか『電源ソケット』を使徒戦までに持ってきてもらわないと、アスカと弐号機は太平洋艦隊もろとも海の藻屑となってしまう。

(ちょ!それはマズイ!!大丈夫よね!!シンジは来てくれるわよね!!)

アスカは以前では祈ることがなかった神に心から祈った。神などいないというのに。


「セカンドチルドレンを出迎えに行く?」

シンジが訓練終わりにパイロット控え室でレイとテレビゲームで遊んでいたところ、ミサトが部屋にやって来て「セカンドチルドレンの出迎えに行かないか?」と言ったのだ。

「ええ、理由はよくわからないんだけど『電源ソケット』をドイツ支部が積み忘れちゃったらしくて、それを届けに行けって。ついでにセカンドチルドレンと顔合わせしたらどうかってあのヒゲが」

「・・・別にミサトさんや僕が態々出向く必要なんかないんじゃ?」

「私もそう思って、日向君を代わりに行かせてもいいか聞いたらダメだって」

「ふーん。ということは、父さんはミサトさんと僕を電源ソケットと一緒に絶対出迎えに行かせたいわけか・・・。つまりは使徒が出るのかな?」

「へ?あーなるほど。私が使徒戦の指揮を執らなきゃダメとか云々の件?」

「そう。僕についてはよくわからないけどね。パイロットの予備だとしても弐号機は動かないだろうし。それに使徒が来ることがわかってるとして、なんで態々海の上で戦おうとするのかな?どう考えても不利だと思うんだけど・・・。まあ、この辺も『記述』とやら関与しているのかもね。ミサトさんのように」

シンジはミサトにそう答えるとカエデの方を向いた。

「カエデさん、リツコさんにエヴァが海でも戦える装備があるのなら電源ソケットと一緒に持っていきたいって伝えておいて。どうせドイツ支部はそんなのも一緒に送ってないんでしょ。ソケットすら一緒に送らないんだから」

「はい、了解しました。すぐ連絡します。」

「・・・シンジ君、私も行きたい・・・」

レイはシンジにグッと近づき上目遣いでおねだりする。この技は最近操祈に教えてもらった技である。
シンジはそのレイの攻撃にあっさり敗北しそうであったが、ここはぐっと堪えた。

「ごめんね。もし使徒が僕不在の時にこっちに来ちゃったら大変だから、レイには本部で待機してて欲しいんだ。この詫びはいつかするから」

「・・・デート1回で手を打つ・・・」

「わかった・・・。ねぇ、レイ。それって誰に教えてもらったの?教えてくれるかな」

「・・・内緒・・・」

レイはそう言うと頬を染めてシンジから顔をそらした。
レイのあまりの可愛さにシンジはレイをギュッと抱き寄せてクンカクンカ・・・。

「・・・あの、シンジ君。もうひとついいかしら」

ミサトが呆れたように言った。

「ああ、すみませんミサトさん・・・つい。それで追加でなんでしょうか?」

「あのさ、トウジ君とケンスケ君も連れて行っていいかしら?」

「はぁ?!なんでですか??」

「いやー、なんかさ。ずっと放っといたら拗ねちゃって・・・。今更候補生をクビにも出来なさそうだし、まあ、その・・・お詫びにね」

ミサトがチルドレン候補生の二人の存在を知ったのは昨日のことである。

忠犬日向に「そういえば葛城さん、あの子たちの処遇はどうします?」と聞かれたからだ。ミサトが「何のこと?」と訪ねると、日向は訝しむこともなく丁寧に教えてくれた。

日向曰くミサトが連れてきた少年達で、ミサトがチルドレン候補生に抜擢し、先日の使徒戦の緒戦でミサトの指示で初号機に乗せて出撃させ大けがをさせた子供達らしい。

それを聞いたミサトは吃驚仰天して慌てて彼らの病室にお見舞いに向かったのである。

というかそんな彼らの事を忘れているミサトに対し、何一つ疑問に思わない日向について、やはり彼は一度自分を一体何だと思っているのかを問い詰めなければ!と思った。

ミサトが病室に赴くと全身火傷で包帯をグルグル巻きにされた二人の少年がいた。

彼らはこのテレビも無い、漫画も小説も無い、音楽すら無い無機質な病室の中で2週間以上放って置かれたのである。それは退屈の極みで有り精神が歪んでも致し方なかった。

父親である鈴原整備部長や相田広報課長はたまに来ていたのだが、彼らも忙しい身で有りなかなか時間が取れなかった。
トウジの妹のサクラはそもそもネルフ本部内に入って来れない上に今はヒカリの家でやっかいになっており、楽しい日々を過ごしていたのだ。

サクラはヒカリ達姉妹と共に雪広ビルに遊びにいったり、シンジやレイ、そしてハーレムメンバーの面々と休日は芦ノ湖にピクニックに出かけたりしていた。

親友のノゾミと毎日遊べるのも嬉しいが、たくさんの優しいお姉さんたちと知り合い、いろいろなお話をするのも楽しかった。サクラはとても充実した毎日を過ごしている。
はたして今彼女の脳裏に『兄』のことが残っているのかは甚だ疑問であった。

さらにシンジが彼らの状況を知っていれば、再度千鶴に頼みアーティファクトで治してもらってもよかったのだが、知らないのだからそのようなことが出来ようも無い。

そんなこんなでようやく彼らの元に元凶であるミサトがやって来たのであった。

流石に二人はミサトを口汚く罵りはしないものの、いくらなんでもこんなに放って置かれるのはあんまりだと大いに非難されることになるのである。

これが以前のミサトならば「うるさいわね。我慢しなさい、男の子でしょ!」の一言で済むのだが、今のミサトは(一応)教師を志した世話焼きの優しいミサトである。

例えモノホンの自分でなくとも、自分の指示でケガまでさせて、さらには2週間も放って置いたのだから、その非難は当然と二人に素直に頭を下げて謝ったのである。

「それで・・・なんで彼らを連れて行くことに?」

「いやーちょうどヒゲに太平洋艦隊に行けって言われたばかりだったから、お詫びにデート代わりに一緒に行かない?って話したらケンスケ君がめちゃ乗り気でさぁ。トウジ君もそれに引きずられる形で行きたいって言い出して・・・。まあ、その、あまり深く考えなくてゴミンだけど・・・お願いできないかな?」

「・・・まあ、僕はいいですけど・・・危険ですよ」

「大丈夫よ。別に彼らが死んでも代わりはいるでしょ?」

「・・・僕のチートは女の子限定なんで・・・」

「そうじゃなくて世の中によ。社会の歯車的な意味で。中国の労働者みたいなもんでしょ」

「ああ、確かにそうですね。あはは」

こうして、トウジとケンスケの同行はあっさりと決まったのであった。


「おにーちゃん、明日海に行くの?」

その日の夜、シンジがいつものようにリビングで女の子達と戯れていると、シンジの元に葉月がやって来た。

「へ?あーミサトさんから聞いたの?」

「うん!!大きなお船に乗るって言ってた。葉月も見てみたいなぁ」

「うーん・・・。でも使徒が(多分)来るんだよねー。危ないから連れて行くのは難しいなぁ」

「そっかぁ・・・」

葉月は残念そうにうつむいた。するとシンジの隣でOMM(おっぱいモミモミ)されていた翔子が顔を寄せ上目遣いでシンジを見る。

「・・・シンジ、私も行きたい・・・」

「・・・くっ。レイもやってたけど、その攻撃をするのはやめて!!」

「でもさー。シンジ君のチートがあればなんとかなりそうだけど?どうかな」

翔子の反対側に座りFSS(太ももスリスリ)されていた愛子が翔子をフォローする。

というか、シンジお前・・・。右手で翔子のおっぱいを揉み、左手で愛子の太ももを摩っていたのか・・・なんというハーレム。正に男の夢だな。死んでしまえ。

「チートねぇ。潜水艦は一隻あるんだけど戦術機の輸送艦ってだけだから・・・。使徒との戦いに巻き込まれたら絶対安全ってわけじゃないし・・・」

「それなら新しく船を作ったりは出来ないのかな?」

「ファクトリーで生産をしないでってこと?まあ、ポイントを追加で払えば『即時生産』も出来なくはないよ。使徒の死骸のおかげで資源には余裕があるし・・・。でも船と言っても何を出せばいいのやら」

シンジはチートシステムを起動し、生産の項目で『船』を検索してみた。

「ナデシコの世界にいろいろ戦艦があるんだけど・・・。全部『宇宙戦艦』なんだよね。夢が溢れるんだけど、さすがにこれを生産するのはヤバイんじゃないかと思うんだ」

「えー今更じゃないの?戦術機だってビデオで見たエヴァだって、私たちからすれば未来に突っ走ってるしさ。戦艦だって空を飛んでるのをリアルで見せちゃえば、最初は驚いても次第に馴れちゃうと思うよ?」

「そうかなぁ・・・」

「そうだよ」

「そうかなぁ・・・」

「そうだよ」

「そうかぁ、なら出しちゃおうか宇宙戦艦!」

シンジは愛子に上手く誘導されているような気がしながらも、どうせ『危機』に対処するために火星に行く場合は戦艦が必要なんだし、やっちゃうか!という気になった。

「よし!なら今1000万ポイントあるから、これで初島に即時生産で出現させよう。というかこの『ナデシコ』級以外なら案外ポイント低いんだよね。ディストーションフィールドとグラヴィティブラストに無力なシリーズらしいけど・・・。まだナデシコの世界はエリナさんしか召喚してないし、危機も顕在化していないから大丈夫だよね。このリアトリス級戦艦『リアトリス』を生産するよ。開発に100万ポイント、資源はすでにあるからいいとして、即時生産で250万×2で500万、600万ポイントで生産!!」

というか・・・安すぎない?これ宇宙戦艦だよね??ヘルプヘルプ!!

(ヘルプ:必要ポイントは世界ごと、その世界の『重要度』によって決定している)

なるほど・・・。つまりナデシコの世界ではこの戦艦は『オワコン化』してるというわけか。マブラブ・オルタの世界の戦術機は撃震でさえ『現役』だもんね・・・。ということは、あれ?このナデシコの世界のオワコン兵器ってポイントが低いのにチートじゃね?これこの世界で旧型戦艦を量産したら世界制覇できるだろ!!

シンジは速攻で那波重工の神戸造船所に戦艦用のドックを追加し、戦艦の建造を行えるようにシステムを操作した。
即時生産しない場合は建造に2~3ヶ月かかるみたいだが、今回のアリバイ作りのためにやったのである。

「よし!これでみんなで行っても大丈夫だね。というかこの船に電源ソケットも海用装備も積んじゃおうか・・・。ミサトさんに後で伝えておこう・・・」

「・・・嬉しい・・・葉月ちゃん一緒に行けるわ・・・」

「うん!やった!美羽ちゃんにも教えてあげないと!!」

「煽った私が言うのもなんだけど、空飛ぶ戦艦が海を行く戦艦の出迎え・・・。シュールだなぁ」


「あらあらシンジ君、明日アスカちゃんのお迎えにいくの?」

明日の話を聞きつけたキョウコもシンジの元にやってきた。

「あっキョウコさんも一緒に行きますか?」

「ええ、アスカちゃんに会うのも久しぶりだわぁ。この世界のアスカちゃんはどんな娘かしらぁ」

「そーですねぇ。可愛い女の子ならいいですね」

「それは心配ないわ。アスカちゃんならシンジ君もきっと気に入ってもらえると思うわぁ」

「それは楽しみだなぁ」

「・・・よくもまあ、両隣に女の子侍らして別の女の子のこと話せるよね。委員長こんな男子をどう思う?」

「・・・・・・ぽっ」

「そんな態度だからオ○ニーSSだって言われるんだと思うな。その通りだけど」

愛子は呆れたようにため息をつくと体をシンジに寄りかからせた。
シンジの手はナチュラルに愛子のブラの中に入っている。彼はとうとうOMMからTTTの連携技を体得したようであった。
ちなみにTTTは乳首ツンツンの略である。いよいよヤバイ領域に到達しそうだった。


そんなわけで翌日シンジ達は雪広ビルからヘリで初島へと向かった。
今日は都合よく土曜日なのでマナやアヤカ達も一緒である。

ミサトは自分に代わって日向にトウジやケンスケ達と一緒にヘリで艦隊へ向かうように連絡していた。
よくよく考えたら『部外者』である二人をリアトリスに乗せられるわけがない。

電源ソケットなどの荷物も同じであり、結局はヘリで持っていく必要があったので、日向に代役を押しつけたのである。ミサトだって戦艦に乗っていきたのだ。

シンジ達は皆でのんびり朝食を食べた後、初島へ向かい、地下のドックに出現していたリアトリスの巨大な姿に驚いたり感動したりしながら出発の準備をしていた。

一応ナデシコの副操舵士であったエリナがハンドルを握るが、さすがに一人で戦艦を動かすのは難しい。

また今後整備などは人間の手で行う必要があるため、千鶴が会社に手配をして那波重工の整備員さん達を急遽揃えさせ、短い時間ながらもいろいろと見てもらっていた。
彼らはこの戦艦専属の整備員となり、猛勉強をしてもらうことになる。

シンジはプログラミング技術(キラ・ヤマト級)の力を使って船のOSを改善していく。とりあえず今日のところは発進して無事ここまで戻ってこれれば良いのだ。
試験飛行を問題なく行えるくらいの準備で早速出発することにした。

まあ、チートシステムの力によって即時生産ではバグや不都合も一切無い。
故障などもまず起こらないのでシンジも楽観的に考えていた。

使徒戦があるかも知れないことはこの際置いておこう。どうせ空からビームを放ったら太平洋艦隊が余波で全滅してしまうのだから・・・。


「それじゃあエリナさん行けますね?」

「はい、大丈夫です。会長のおかげで私が知っているよりも操作し易くなってますよ」

「まだまだ改善したいけどね。じゃあ他のみんなも急なことで馴れないと思うけど『オペレーター』よろしくね!!」

「「「はい」」」

ブリッジクルーは操舵士エリナ、副操舵士七乃、通信士千鶴(那波)、火器管制シャル、索敵・航海士(ナビゲート)マナ、副長操祈、艦長夏美、副提督アヤカ、提督シンジ、整備班聡美の陣容である。

「ってなんで私が艦長なんですか!これ副長と艦長が逆じゃありません?キャラ的に」

夏美がブルブル震えながらシンジに訴える。

「夏美いいじゃない。あなた脇役な人生が嫌なんでしょ。バカテス勢はクルー(雑用)として走り回って忙しいし、みんなそれぞれ仕事があるの。夏美が一番用が無いんだから大人しく艦長をやりなさいな。面倒そうだし(ボソっ)」

「え?なんか今酷いことさらっと言われたような・・・」

「大丈夫よ夏美ちゃん。みんながいるんだから自信をもって・・・ね♪」

「千鶴姉・・・わかったよ。やればいいんでしょ!やれば!!」

夏美は涙目になりながらもしぶしぶ艦長席につく。
パンっ!と手のひらで頬を打つと、舞台に上がった時のように気持ちを切り替えた。

「ふー・・・よし!総員発進準備最終確認!!」

『整備部準備ヨシ』『アナウンス完了!準備ヨシ』『ブリッジ準備ヨシ』

「太平洋艦隊は現在三宅島西10kmを航行中。到着時間は約10分です」

「それは短すぎるよ・・・。日向さん達が到着する時間に合わせて到着するように進路を取ってくれない?」

シンジがマナに指示する。マナは落ち着いた様子で手慣れたように航路を修正した。
その修正された航路はメイン画面に表示される。

「では、グルッと小笠原諸島の方を回って行きましょう。それでも40分くらいだけどね・・・。ネルフの人たちも1時間前に出発してるからこれが限界かな」

「うん、それでいいよ。帰りに時間があれば大回りして帰ってもいいし・・・。ゴメン夏美ちゃん邪魔したね」

「いえいえ、ではこの修正された航路で航行します。発進準備全てヨシと認めます。戦艦リアトリス発進!!」

「了解。リアトリス発進します!」

夏美の号令にエリナが復唱しハンドルを引き上げた。

『メインエンジン点火!出航します。』

ゆっくりとリアトリスがドックから離れた。
その後注水ブロックを抜けると海中から海上、そして空へと浮上していく。

「「「おーーー!!」」」」

ブリッジ上の展望所にいるバカテス勢+美羽+ミサト+キョウコは浮かび上がったリアトリスに大興奮である。

「スゴイのう!こんな大きな鉄の船が空に浮かぶとは!!」

「スゴイねぇ美羽ちゃん!!」

美羽と葉月のお子様コンビ(※美羽は18歳です)はガラス窓に顔をはり付けてキャッキャと喜んでいた。


「緊急連絡!!初島付近にて何らかの飛行物体が出現しました!!」

その一報を受けたネルフ発令所では新たな使徒の出現が疑われる事態に緊迫していた。

「正面モニターに画像でます!!ってえーーーーーーーー!!!」

青葉は柄にも無く大声で叫んだ。発令所のメインモニターには巨大な戦艦が悠々と空を飛行している姿が映し出されていたのである。

そのありえない様子に発令所の面々はあっけにとられた。たまたま発令所に来ていたリツコもお口あんぐりである。

「えー通信が入りました。碇一尉の識別ナンバーです。えっと・・・出します」

メインの画面が切り替わりネルフの制服を着たシンジの姿が映し出される。
シンジが敬礼しているので、慌てて発令所の面々も敬礼した。

「あー驚かせて申し訳ありません。使徒ではありませんのご安心下さい」

「・・・えーと、シンジ君・・・じゃなくて碇一尉、その船は一体・・・」

「この船は那波重工で建造された『機動戦艦リアトリス』です。リアトリス級一番艦になりまして、今日が初めての飛行になります。もちろん斯衛軍に配属される予定です。この船は惣流・キョウコ・ツェッペリン博士が設計、僕がシステム開発を行いました。詳しい仕様書はリツコさんのメール宛てに送っておきますから後で読んで見て下さい。ネルフでも一隻購入してくれたら嬉しいなぁって思います」

「嬉しいなぁって・・・」

リツコは絶句している・・・。先日の使徒戦で見た戦術機にも度肝を抜かれたが、あれはまだ理解できる。エヴァだって戦術機に機動性では負けていないのだから・・・。

しかし、いくら何でもこれは酷い・・・。まさかまだこんな隠し球を持っていたとは。

「ちなみにリアトリス級で1兆を切る特別価格9800億円です。確かに原子力空母一隻の価格の2~3倍しますけど、でもその価値はあると思うけどなぁ」

「・・・高いわ・・・」

エヴァ数体製造できる価格である・・・。いくらネルフの年間予算が数兆あるといってもそれは総額であり、本部技術部がエヴァの開発に使えるのはその内2~3割で残りは本部の運営費用、支部への割り当て、第三新東京市の整備費用などにお金が使われているのだ。それでもエヴァが相当な金食い虫であるのは間違いないのだが・・・。

「えーーー。残念だなぁ・・・」

シンジは少しだけガッカリした。ぜひ使徒戦でも戦艦を使いたかったのである。使徒戦の優先権はネルフにあるのでネルフでも是非購入して欲しかった。もちろん自爆装置付きだが。

ちなみに発令所の面々も至極残念そうである。誰だって空飛ぶ戦艦に一度は乗りたい。

「・・・だからミサトが日向君達を別にヘリで行かせたのね・・・許しがたいわ!」

リツコは親友に本気で殺意を抱いた。もしこのことを知ってたらシンジに土下座してでも、何なら尻を突き出してでも乗せてもらっただろう・・・。
マヤでよければ路上で裸踊りをさせてもよかったくらいだ。

「あれ?リツコさんも乗りたかったですか?」

「!!ええもちろんよ!!」

「うーん。まあ斯衛軍発足後は無理でしょうけど、来月いっぱいは大丈夫かな。一応は那波重工の持ち物になるし・・・?」

「シンジ君、この船は惣流博士とシンジ君の共同所有にしているわ。その代わりテストに協力すること、開発に関する成功報酬についてこれで支払いとすることにしているわ」

千鶴がシンジをフォローする。もちろん、そんなことは今決めたことである。

ちなみに戦術機に使われている技術の特許は碇ユイ、碇シンジの両名で全て申請済みである。戦艦に関してもキョウコとシンジで特許を申請する予定であった。

せっかく戦術機について猛勉強したキョウコであったが、今度は戦艦について猛勉強することになる。もちろんユイもそれに付き合うこととなるのだが。

ちなみにリツコもこの技術については勉強しなくてはならず、日々の仕事もある中で心労、疲労、ストレスがガンガン蓄積されていくのであった・・・。

「そう?まあ、個人じゃとても維持できないから、結局は斯衛に寄付すると思うけど・・・。なら来月に時間があったら予定を組んで下さい」

「すぐ組むわ!!本当にありがとうシンジ君!!」

リツコ即答である。

「うっうん・・・。喜んでくれて何よりだよ」

まあ、それまでに隠すところは全部隠しちゃわないといけないし、エンジンなどの中枢部には案内しないのであるが。

こうして、戦艦リアトリスは様々な混乱を巻き起こしながら太平洋を南下、アスカ嬢の元へと向かうのであった。


Bパートに続く




[32048] 第八話 アスカ、来日 Bパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e
Date: 2012/12/31 23:26
エヴァちーと 第八話 アスカ、来日 Bパート


「葛城・・・葛城じゃないか!」

「・・・・・・加持君・・・・・・」

朝食を終えた加持が自室に戻ると、鍵のかかっていた部屋のベッドにミサトが一人腰掛けていた。ミサトはいつもの赤いジャケット姿だった。

「・・・なんだ?、もう到着してたのか??随分早かったなぁ」

「・・・・・・」

加持は沈黙しているミサトから視線を外し、気取られぬよう『荷物』の確認に向かう。
この荷物は今はまだミサトの目に触れさせるわけには行かない。
彼女に触られていないかどうか確認をしたかった。

「よく鍵を開けれたな。でも勝手に入るのは止めて欲しいんだが・・・」

「・・・・・・加持君・・・・・・もうすぐなのよ」

「え?何がもうすぐなんだ?」

「・・・・・・終わりが・・・・・・」

終わりって?と加持が聞こうと視線をミサトに向けると、その先にミサトの姿はどこにも見当たらなかった。

「なに!!」

加持は驚愕し慌てて部屋の中を見回す。やはり部屋にミサトの姿は無い。
急いで部屋の外に出ると、シンジ達の出迎えに向かう正装したアスカとバッタリと出会った。
今日はいつも被っていない青いベレー帽もキチンと被っている。

「わっびっくりした!どうしたの加持さん、そんなに慌てて?」

「おお、スマン!アスカか。なぁ葛城の奴はどっち行ったかわかるか?」

「はぁ?ミサトぉ??もうここに来てるの??私は会わなかったけど」

「・・・そうか・・・。いや・・・俺の気のせいだったかもしれん」

「へ?そう・・・。じゃあ、私は出迎えに行くね。加持さんは・・・来ないか」

「ああ、後で顔を出すよ」

加持はそう言うと部屋に戻った。

「・・・白昼夢ってやつかな。俺もまだ呆けちゃいないと思うんだがなぁ」

加持は『荷物』の確認をする。アタッシュケースを開くとそこには怪しく蠢く『アダム』の幼体があった。アダムの目は加持をジッと見つめているようだった。

加持はなにやら背筋が寒くなるのを感じながら、ケースを閉じダイヤル式の鍵を再びかけるのだった。

「こいつが俺に何かを伝えたかったのかね・・・その『終わり』とやらを・・・」

そうであればもったいぶらずに具体的な話を聞かせて欲しかったものだと加持は渋面で呟くのだった。


現在、文月学園は悲惨な『戦争』の舞台となっていた。

寝耳に水の買収劇、召喚獣をコントロールするサーバーの暴走、そして戦闘メイド達による襲撃、飛び交うゴム弾にほんの少しの実弾。

学園長藤堂カヲルが指揮を執る学園長室にはガラスの割れる音や生徒達の泣き叫ぶ声、爆発音に破裂音が聞こえてくる・・・。正に悪夢だった。

「学園長・・・福原先生が拘束されたようです」

学園長室にて統制を任されている布施が悲痛な声で伝えてくる。

「そうかい・・・西村先生はどうだい?」

「健在です。ですが、旧校舎は落ちました。残すは本校舎・・・ここのみです」

「・・・・・・どうしようもないね」

文月学園が碇財団に買収されたのは昨日の事である。

今まで文月学園を支えてくれたスポンサー達が皆一斉に手のひらを返し碇財団側についたのだった。
学園長である藤堂はサーバーをわざと暴走させ、自分たちでこの事態を解決し有能さをアピールし、自分達の影響力を残す、所謂マッチポンプを企んだのだ。
だが碇財団は混乱を押さえるとして戦闘部隊を投入してきたのである・・・。生徒達を巻き込んで・・・。
どういうわけか、女子生徒は今日登校してきておらず、いるのは男子達のみなのだが。

投入されている戦闘メイド達はその男子生徒に躊躇無くゴム弾をぶっ放している。
また、生徒や校舎を防衛をしている先生たちも同様に酷い目にあっていた。

「酷い・・・こんなこと人間のやることじゃない・・・」

布施が悔しそうに呟く。まあ戦闘メイドはガイノイドなので人間じゃないのは正しい。

いよいよ戦闘音が近づいてくる。すると学園長室の扉が慌ただしく開かれた。

「学園長!!」

「西村先生かい・・・いよいよここまで来たか・・・」

「はい・・・申し訳ありません。私には躊躇なく奴らは実弾を撃ってくるので対処が難しく・・・」

「・・・・・・わざとサーバーを暴走させたのが失敗だったね・・・」

おかげで召喚獣がバグってしまいまともに動かすことが出来ない。
藤堂がそう呟くと同時に戦闘メイド達が突入してくる。

『目標確認しました。オーダー、サーチアンドデストロイ!抹殺します』

「ちょっと待ちな!あんたたち問答無用かい!!」

『一斉射撃』

戦闘メイド達の持つマシンガンから銃弾が一斉に発射される。
しばし激しい銃声音が轟いた後、音がやみ、学園長室は静寂に包まれた。

『目標殲滅。サーバーを破壊します。その後文月学園の解体作業に移ります』

戦闘メイド達は粛々と仕事を続ける。

この日、召喚獣システムという画期的な学習法を取り入れられた文月学園はこの世界から消えた。

生き残った先生や男子生徒達は洗脳後アフリカへ送られ、生涯帰国すること無くボランティア活動に人生を捧げることになる。
彼らの中で寿命を全うした者は少なかったが、後に彼らは『東洋の聖者たち』と呼ばれ、彼らを派遣した『碇財団』はノーベル平和賞を受賞することになるのだった。

女子生徒達は碇財団が新たに第三新東京市に開校した『碇学園』に移ることになる。

碇学園はシンジが三分の二、斯衛軍が三分の一を出資した軍学校であり、士官や衛士、整備士、オペレーターなどの者達を育てる世界有数の教育機関になる。

入学するともれなく洗脳されるため、ほんと立派な兵士がいっぱいできました(ハート)


<<危機回避ボーナス(バカテス)>>
『君は文月学園に巻き起こる危機を見事回避した。本当は解決して欲しかったのだが、評価すべきは結果で有り課程では無い。何も問題ない。なのでボーナスとして3000万ポイント進呈する』


「・・・ドイツから帰ってきていきなりこれかい・・・まあ、いいけどさ。さて次は川神か・・・ほんとシンジはコキつかうねぇ・・・」

おでこをキラリと光らせる元王女様は跡形も無く崩れ落ちる文月学園の姿にため息を一つついたのだった。


パラパラパラパラ・・・・

ネルフのマークの付いたヘリがゆっくりと空母の甲板に着陸する。
アスカはそれを緊張した面持ちで見つめていた。
いよいよシンジとの対面の時である。

(ふー。落ち着けー落ち着けーわたし。大丈夫。シミュレーションはバッチリよ!)

アスカは今日を迎えるに当たり、いくつか作戦を考えてきたのだ。

まず一つにネルフの正装をして堂々と出迎えることだ。
こうすることでシンジが前回の記憶持ちであれば、以前と違う自分の様子に必ず戸惑うはずである。
シンジがそうでない場合は自分をデキル女だと印象付けることにもなるし、前回のようなパンツを皆にご開帳するような失態をせずに済む。

もう一つになんとかシンジと二人きりになること。
これは前回も弐号機がある輸送艦オルセーに一緒に行ったので、記憶持ちなら従うだろうし、そうでない場合は同じパイロット同士なので親交を深めたいとでも言えば大丈夫だろう。

というか、少なくともアスカだけでもオルセーにいかないと使徒を迎撃できないため、できればさっさと二人で移動したいと思っていた。

(そもそもブリッジにシンジが行く必要もないし・・・。休むのもオルセーで二人でお茶すりゃいいんだし・・・。昨日のうちに部屋も一室借りてあるし・・・えへへへ)

アスカはじゅるりと舌なめずりをする。だらしなく緩んだこの顔を甲板のクルー達に誰にも見られず彼女は幸いであった。もし見られていたら今までの彼女の高評価はだだ下がりだっただろう。

ヘリのドアが開き、なにやらはしゃいで写真を撮るメガネミイラと飛ばされた帽子を追うジャージミイラ、そして地味メガネの3人が降りてきた。

アスカの足下にその帽子が飛んできたので、思わず踏みつけようかと思ったが、そういえばこんなこともあったような・・・と瞬時に思い出し、彼女はちゃんと膝を曲げて拾ってあげた。

「はい、どうぞ」

「ああ、えろうすんません」

アスカの元にやって来たミイラジャージが頭を下げて受け取る。

(こいつって黒ジャージ?えーと名前なんだったっけ?)

「えーと、あの・・・その怪我どうしたんですか?」

アスカが至極当然な疑問をトウジに聞くと、トウジは恥ずかしそうに頬をかいた。

「いや・・・先日の使徒戦で出撃したときに怪我をしたんです。全身火傷だったんやけど、今はおかげさまでほとんど直ってますわ。ネルフの医療技術はスゴイで」

「ああ、あなた達が初号機で出たんでしたね」

「そうです!あれ?なんで知ってるんです??」

「戦闘詳報読みましたから」

「そうですかぁ、なんやら恥ずかしいな」

そうこうしていると、地味メガネがメガネをつれてこちらにやって来た。
一応アスカは地味メガネに対して敬礼をする。地味メガネも慌てて返礼をした。

「セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレー准尉です」

「これはご丁寧に。僕は作戦課の日向です」

「えーと・・・葛城一尉とサードチルドレンはどうしたんですか?」

「ああ、実は二人は別行動なんだ。でも、もうすぐ到着すると思うよ」

アスカは前回と違うこの展開に多少面食らっていたが、とにかくここに二人が来ることは間違いないようなので少しだけホッとして表情を緩めた。

「うひょースゴイ可愛い!ね、写真一枚いいかなぁ」

メガネミイラが醜い笑みを浮かべカメラをアスカに向ける。

「すみませんが軍務中ですので撮影はご遠慮下さい。それと無許可で空母内の写真は撮らないようにお願いします。どうせ後で没収されますよ」

それにコイツは女の子の写真を裏で売っている真性の変態だったはず・・・。
そんなやつに写真を態々撮らせるほどアスカは人間ができていない。

「えー没収ぅ!!でも大丈夫。最終的にコピーしたメディアは肛門に・・・」

変態メガネがなにやらブツブツ呟いている。まったく気色悪いことこのうえない。

「ふぅ・・・。それではブリッジに案内しますか?」

アスカは本当はシンジ達をこのまま待ちたいのだが、日向達をこのまま置いておくこともできない。加持はまだやってこないし、この面子の場合彼は出てこない可能性もある。

「うん、頼むよ。というか護衛の加持一尉はどこに・・・ってあれは!!!」

日向が大声でアスカの頭上後方を指さした。

いきなり間近で大声で喚かれたのでアスカは日向を殴りつけたかったのだが、我慢して日向の指さす方向を振り向いた。

視線の先には巨大な戦艦が空を悠々と飛んでいた。

「・・・・・・なにこれ??」

アスカはゆっくりと空母上空に飛来し停止した戦艦に口をあんぐりと開けて呆けたのだった。


『こちら日本国斯衛軍所属(予定)の機動戦艦リアトリスです。飛行艇を一機降ろしますので着陸許可を願います』

『・・・はい・・・えー、識別ナンバー確認しました。オーヴァー・ザ・レインボーへの着陸を許可します』

どうやら、無事に許可が出たようでシンジは安堵した。

実は艦隊に近づく前にこちらから連絡を取ったのだが、あちらが大騒ぎで説明するのが大変だったのである。まあ、いきなり空飛ぶ戦艦が現れたらそれは驚くだろうけど。

「では、ミサトさん行きましょう。ヒゲの指示から考えてここに使徒が現れる可能性は大です。マナ、レーダーを最大限で索敵お願いするね。他のみんなも油断無いようにね」

「うん、異常を発見次第シンジ君と空母のブリッジに連絡するよ」

「ねぇーシンジ君、私はいっちゃダメかしら~」

「うーん。やっぱり危ないのですよ、キョウコさん。テレビ電話で話が出来るようにしますから、もうちょっと我慢して下さい。なんだったら帰りはアスカちゃんをここに連れてきてもいいですしね」

「残念ねぇ・・・」

シンジに説得されキョウコは渋々同行を諦めた。

シンジとミサトは飛行艇に乗って空母へと降りていく。飛行艇と言ってもスペースシャトルのような姿で垂直降下ができる優れた機体である。

空母の甲板には大勢のクルー達が出てきていて空に浮かぶリアトリスを見上げていた。
そんな中を飛行艇はゆっくりと着陸すると、シンジとミサトは外に出る。

すると、ネルフの正装を着ているなかなかに可愛いハーフっぽい女の子がこちらに駆け寄ってくる。どうやらあれが噂のアスカちゃんのようだ。

「Hallo, vielen Dank fur Pick-up heute.(やあ、お出迎えご苦労さん)」

「へ?Gern geschehen(どういたしまして)・・・」

「Ich mochte einen Leitfaden zur Brucke.(じゃ、ブリッジに案内してちょ)」

「Nun bemerkt(了解)ってシンジ!じゃなかった碇一尉、私は日本語が喋れますのでドイツ語で話さなくても大丈夫よ!じゃなくて・・・です!」

「あ、そうなの?せっかく美波ちゃんに習ってきたのになー」

「美波?」

「ああ、ドイツからの帰国子女さんなんだよ。ハーレム?メイド?・・・うーん、ウチのスタッフ(雑用係)の1人なんだ」

「はあ・・・(そんな人ネルフにいたかしら?)」

「まあ、上に来てるから後で紹介するよ。ほらミサトさんも挨拶して」

「ええ、久しぶりねアスカ!」

「そうね・・・半年ぶりくらい?かしら。あっ加持さんもここに来てるわよ」

「加持さん?あー加持先生ねー・・・。そりゃ(この世界にも)いるわよねぇ」

「加持先生?ミサトって加持さんが一緒に来てたの知ってたの?」

「え?それは知らなかったわよ。そんな事ヒゲから聞いてないし」

「・・・そう・・・でもヒゲって(呆)」

「まあいいじゃない、ヒゲはヒゲなんだし。それで僕は惣流准尉って君を呼べばいいのかな?」

「へ?アスカでいいわよ、じゃなくて・・・いいです」

「そう?じゃあアスカって呼ぶね。アスカも別に口調を無理しなくてもいいよ。同僚だし、その上同い年だしね!堅苦しいのは無し!!」

「うん。じゃあ・・・えーと、私もシンジって呼ぶわね。もちろんTPOは弁えるから」

「オーケーオーケー。キョウコさんの言うとおりアスカがいい娘みたいでよかったよ」

「・・・え??」

「じゃあ、ブリッジに行こう!すっかり艦隊の人たちを待たせちゃっているしね。上の戦艦の説明も少しはしてあげないといけないし」

「えーと・・・確かにそれも気になるけど・・・その前のキョウコって誰のこと?、ああ!考えがまとまらないわ、とりあえずブリッジに案内します。こちらです」

アスカは一旦全てを棚上げにしてシンジとミサトをブリッジに案内する。
日向達もこちらへと来たが、アスカは彼らを無視してスタスタ歩いて行く。彼女も余裕がなかったのである。

(シンジの記憶がどうこう以前に、これは一体なんなのよ。シンジ変わりすぎでしょ!なにあれ格好良すぎるわよ!オーラが半端ないわ。胸がドキドキして止まらないし、ぬっ濡れたし・・・。こんな感じだったかしら?思い出補正??ミサトもどこかおかしいわ、ミサトが加持さんを気にしないなんておかしすぎる!・・・それよりあの戦艦はなんなのよ!どこのアニメから飛び出してんの!!)

表面上アスカはクールに一行を案内していたが、頭の中は大パニックである。

ケンスケがなんとかアスカのパンツを撮ろうとローアングルでビデオカメラを回しているのにすら気がついていなかった。
シンジはケンスケに後でそれをもらおうと思っているので見逃してあげていた。
どうせ、帰ったら諜報部がケンスケのコンピューターに侵入して動画を奪った後に消すのだから。

ミサトもそれに気がついていながら注意しないのも良い案配でシンジに毒されている。


ブリッジでは提督以下艦隊上層部の面々が緊張した面持ちで彼らを待っていた。

「失礼します!特務機関ネルフの碇一尉、葛城一尉、日向二尉、その他2名を案内致しました」

アスカが提督に敬礼して報告する。
後ろのシンジとミサトも同様に彼に対して敬礼する。日向達も慌てて敬礼をした。

彼らのこの上官を敬う態度にブリッジの人たちも緊張を緩めたようだ。
ネルフは国連軍の組織ではあるが、人類保管委員会直轄であり、今までも国連軍の人たちと度々トラブルを起こしていたのである。
だから、ネルフに対してあまりよくない印象を皆抱いていたのであった。

わかりやすく説明するとネルフは『ティターンズ』のような存在なのである。
だからブライトが少佐にも関わらずティターンズの尉官に殴られてもお咎め無しだったのだ。・・・え?Zガンダムを知らない?そんな馬鹿な。

しかしアスカがシンガポールで弐号機の輸送を太平洋艦隊に引き継がれて以降、我が儘も言わず、邪魔もせず、真面目で立派な態度で務めていたので、提督達のネルフに対する評価も少し上方修正していたのが功を奏した。

また、シンジの(劣化)アレキサンダー大王級のカリスマオーラに彼らは圧倒されていた。それはもう一種の洗脳なのではないかと言っていい。

「うっうむ。貴君らの乗艦を許可する。君が碇一尉だったね」

「はい。乗艦許可ありがとうございます。僕が碇です。驚かせてしまったようで申し訳ありません。機動戦艦リアトリスの初飛行を兼ねて出迎えに参上させて頂きました」

「まさか空飛ぶ戦艦とはね・・・流石日本の科学力は侮れん・・・。先だっての戦術機にも驚いたのだが、これには度肝を抜かれたよ・・・委員会が期待するわけだ」

「国連軍にもいずれ配備されることになるでしょう。かなり価格は高いですが・・・。海軍に配属されるのか、空軍になるのか、新たに新設されるのかはわかりませんが」

「ワシが生きている間にそうなればいいがね・・・。まあ、これで私が望んでいた新規の空母や戦艦は作られないだろうなぁ・・・。海の男としては寂しい限りだよ・・・」

「そうでしたか・・・。どうでしょう、後ほど時間が許せば招待いたしますが。国連軍の方であれば特に問題ありません。あの船はネルフの船で無く今は僕の個人所有なので」

「ふむ!そうかね。なんだか他のクルーからあとで大いにブーイングを受けそうだが、ぜひ訪問させてもらいたい。しかし、機密とかは大丈夫なのかね」

「大丈夫です。一応撮影はNGですが艦内を見てもらう分には問題ないです。提督によく見てもらって国連軍の方々に伝えて欲しいです。私の妻になる女性の実家の会社で作ってますので、売れれば儲かりますし。人数は飛行艇の定員が30名なので25人程度でお願いします」

「ははは、なるほど。では後ほどリストを作って伝えさせてもらおう」

提督はちらりと隣の副提督の方を向くと、目で作業にかかるように伝えた。
ただの見学では意味が無い。ちゃんと評価をできる人材が行かないといけないのだ。
もちろん、行きたいと言えば全員が行きたいだろうが。

「日向二尉、電源ソケットの準備をクルーの方々と協力して行うように。提督、日本近海では使徒の出現の恐れがあります。念のためエヴァの電源ソケットの準備を行わせてください」

「そうだな・・・。だからこそ君たちが出迎えに来たのだろうし・・・」

「ラングレー准尉は何年も搭乗訓練している優秀なパイロットです。使徒のATフィールドを無効化できるのはエヴァだけですので、エヴァを使って使途のフィールドを無効化し、パトリオットや魚雷など現有戦力を使って目標を殲滅できればと思っていますが・・・。こればかりは実際に使徒が来てみないとわからないので・・・。不利な海での戦いはできるだけ避けたいのが僕の本音です」

「確かに。ラングレー准尉については私も信頼している。使徒戦に関してはネルフの優先事項だが指揮はどうするのかね?」

「こちらの葛城一尉を作戦課長代理としてブリッジに常駐させます。上の戦艦との連絡も彼女ができますし、僕とも連絡できますので。葛城一尉、ここで待機お願いします」

「わかりました。皆さんお世話になります」

「ははは、ボーイスカウトの引率の女性なのかと思ったが、どうやら違うようですな。失礼した」

「似たようなものです。若輩者ですのでご指導のほどよろしくお願いします」

ミサトはそう言って再び敬礼をした。

それを真後ろで聞いてるアスカは顔を引きつらせていた。

(一体このミサトは誰なのよ・・・はぁ、こりゃ別人だわ・・・)

「では日向さん、早速作業お願いしますね」

「はっはい!では作業に取りかかります」

日向は慌てて電源ソケットの仕様書を持っってブリッジを出ていった。


その後シンジ達はミサトをブリッジに一人残し、下の食堂へと降りていった。

「えっと、君たちはこの辺で好きにしててくれ」

「ふん、お前に言われんでも好きにするわい」

後ろで大人しくしていたトウジとケンスケはシンジにそう言って食堂から出て行った。

「出ていくのならもっと早く別れたらいいのに、相変わらず気が利かないなぁ」

「シンジはあの2人組と友達じゃないの?」

「へっあいつらと??ないない。あいつらのせいで使徒戦でも苦労したし、初号機は破壊されちゃうし邪魔ばかりだよ。一度あのジャージには殴りかかられたこともあるし」

「そう・・・(やっぱり歴史が変わっているのね)」

そんなこんなでシンジとアスカは二人きりになってしまった。
それはアスカが待ちに待ったことでもあった。

「ねぇシンジ!弐号機を積んでるオルセーに行かない?私オルセーに部屋を借りてあるから、そこでゆっくりお話ししようよ」

「おっいいねー。僕もアスカなら大歓迎だよ!」

というわけで、二人はヘリに乗ってオルセーへと移動したのだった。


「・・・・・・いよう、葛城・・・相変わらず凛々しいねぇ」

「加持先生・・・じゃなくて加持一尉、ブリッジに許可の無いものは立ち入り禁止です。早く下に降りなさい!!」

ミサトが加持に厳しく注意する。先ほどアスカがブリッジから出る際に加持がここに来るかもしれないので、きたら注意しておけと言われたのでそうしたのである。

この世界のミサトも別世界のミサトも加持に惹かれているのは同じなのであるが、このミサトは『神の洗脳』済みなので、シンジ以外の男性には異性としての興味を抱かないようになっているため、いくら加持であろうともミサト的にはどうでもいい人物なのである。

「おっおい・・・わかった。わかったから拳銃は抜くんじゃ無い!危ないだろ」

加持は両手を挙げてブリッジを後にした。
ミサトに自分の部屋に来たのかどうかを確かめたかったが、今は無理そうだ。

加持はサードチルドレンにも興味があったので探したのだが、一向に姿が見当たらず艦内を彷徨うこととなる。


シンジとアスカの二人はオルセーに着くと、予めアスカが借りていた部屋で寛いでいた。
アスカはシンジに様々な質問をした。シンジはなにやらアスカが自分を探っていることを感じながらも丁寧に返答をしていた。

一通り話をしてアスカはいくつか確信したことがある。

(まずこのシンジは私のように時を遡ってきた存在じゃない。でも、私の知っているシンジでもない。まったく違う世界のシンジと考える必要があるわ。と考えればこの世界がいろいろおかしいのも『パラレルワールド』と考えれば納得がいく。ドイツの人たち、それに加持さんの様子からすっかり前の世界だと勘違いしていたんだわ。そもそも、よく考えれば私はドイツの連中とそこまで深く関わってなかったから、本当は違っていたのかもね・・・。さてこれからどうしようかしら)

アスカはふぅと一息つくと美味しそうにコーヒーを啜るシンジをじっと見る。

(格好いいわ・・・。そう、私があのシンジにこうなって欲しい!って思ってたシンジなのよ。男らしいし、頭も良さそうだし、包容力もあって・・・。ちょっとスケベなのが玉に瑕かな・・・。まあ、以前のシンジも毎晩私で抜いてたし・・・。私が美人なのがいけないのかもね。ふふふ)

シンジはアスカのスカートの中をガン見している。いくらなんでももうちょっと遠慮して見たらどうかと思うのだが、この辺りは精神レベルマックスの所以である。

シンジもアスカの容姿は大いに気に入っている。
『smart』だったらちんカメに出てオシャレなヌードを披露してくれていそうである。神は速攻で二月号を確保しましたよ。

「ねぇアスカ、ちょっとこっちに来て横に座ってくれないかな」

「へ?ええと・・・いいけど」

アスカは少しドギマギしつつも、シンジの座っているソファの元へ行き隣に座った。

シンジは胸ポケットからスマホ(ハカセ特製)を取り出すと、上空の戦艦へと回線を繋いだ。

「もしもし、シンジだけど。キョウコさんを出してくれるかな」

「はい。ずーっと待ってました。キョウコさーん。アスカさんですよー」

アスカはシンジのスマホを覗き込んだ。すると画面に金髪の懐かしい姿が映る。

「あらーアスカちゃん。お久しぶりぃ~」

「・・・・・・」

アスカは硬直し目を見開いて画面を見つめている。
反応の無い娘の様子にキョウコは少しクビを傾げて「あら?アスカちゃん、どうしたのかしらー?」とのんきに喋っている。

「ママ?」

「そうよ~、ママよ。どうしたのアスカちゃん?」

「どうしたのって・・・。なんでママがそこにいるの?ママって死んだんじゃ・・・」

「あらあら。ママを勝手に殺さないで。ちゃんと生きてここにいるわよ~」

「嘘・・・」

「本当だよアスカ、ずっと記憶を無くしていたんだけど、最近思い出したんだ。・・・おかしいなドイツ支部にもこの情報は伝わっているはずなんだけど・・・」

アスカは堪えきれず泣き始めた。その様子に驚いたシンジがアスカを抱きしめてあげる。

「ママ、ごめんなさい・・・私・・・」

「なんで謝るの?アスカちゃん。謝らなきゃならないのは私の方よ。いままで寂しい思いをさせてごめんなさいね。これからは一緒に暮らしましょうね」

「本当!ママと一緒に暮らせるの!!嬉しい・・・あっでも・・・」

アスカは不意にこれではシンジと一緒に暮らせなくなると思い、口をつぐんだ。

「えっと・・・できればシンジ、碇一尉と一緒に暮らしたいんだけど・・・」

アスカ一世一代の大告白である。
今日初めて会った男の子と一緒に暮らしたいと母親に言うのである。普通であれば考えられない。
しかしこれだけは今後のことを考えても譲れない一線なのである。

「大丈夫よ、シンジくんとは一緒のビルの中に住んでいるから。レイちゃんもユイさんとお隣さんで暮らしているし・・・。その辺の差はないわよ。うふふ」

「えっレイも同じマンション(だと思っている)に住んでるの?あーそういえばシンジのお母さんも生きてたんだっけ・・・。そうよね。そうだったらママが生きていてもおかしくないのよね・・・。そこまでは頭が回らなかったわ(ボソッ)」

「うんうん、じゃあ、後で一緒に帰りましょう。シンジ君をよろしくね」

「うん、ママ。後で・・・」

通信が切れる。シンジはハンカチでアスカの涙を拭ってあげた。

「今日からよろしくねアスカ!」

「ええ、よろしくシンジ。なんだか全てが夢みたいだわ」

アスカが夢見心地でいると、シンジにギュッと再度抱きしめられる。
アスカはワタワタと焦ったが、優しく頭を撫でられるとそのまま体をシンジに預けた。

シンジの手がゆっくりとアスカの制服を脱がせていく。アスカは少し驚いたが、どうせパラレルワールドなんだからこういう展開もアリよね?とシンジに任せることにする。

レイはもう処女をシンジにあげちゃったのかしら?などと考えている内に妙に手慣れたシンジによってアスカは脱がされていく。
制服ってかなり脱がしずらいと思うのだが、あれよあれよという間に下着姿にまでされてしまった。

「アスカ、キスするね」

「えっ・・・うん。なんだか展開が早すぎのような気がするけど・・・。まあ、いいか。優しくしてね、シンジ」

「うん。えへへへ」

「むぅ、なにそのシンジのスケベな顔・・・んっ・・・あ・・・」

アスカはシンジのとても初めてとは思えないテクにすっかりうっとりである。

シンジはまったく自重せずにアスカの体に溺れるのだった。
これほどまでシンジが興奮し燃えた相手はアスカが初めてであった。

波長が合うというか、ハーフはエロイとか、このSSがLASだからとか、いろいろ理由はあるのだろうが、とにかくシンジとアスカは相思相愛なのである。

こうして二人はこれから使徒がやってくるのをすっかり忘れイチャイチャしだしたのであった。


Cパートに続く




[32048] 第八話 アスカ、来日 Cパート(書きかけ)
Name: 主城◆2628c897 ID:2dd45e78
Date: 2013/12/29 22:25
エヴァちーと 第八話 アスカ、来日 Cパート


シンジはアスカに夢中だった。

元々ハーフ好き(アスカはクォーターだが)ということもあったのだが、今まで何人もの女の子をシンジは召喚してきたが、これほどまでに興奮したことはなかった。
魂の共鳴とでも言おうか、運命の相手とでも言おうか、とにかくシンジはアスカをとてもとても気に入っていた。
それは『一目惚れ』などという言葉では言い表せないほどの情熱であったのだ。

たとえハーフは劣化が早いとか、ベッ○ーや加○ローサの劣化ワロスだとか、スザンヌはどうだとか、いやあれは違うだろとかそんなの関係ないのだ!!

アスカも今のシンジは自分がシンジにこうであって欲しいと思い描いていたその姿であり、最初は戸惑っていたが、母親の生存や初めてのキスなどのイベントを怒濤の如く消化すると、彼女のフラグはビンビンと立った。それはまるで風林火山の旗の如くである。

シンジのアスカへの愛撫はそれこそ『疾きこと風の如く、徐かなること林の如し、侵略すること火の如く、動かざること山の如し』である。
シンジの手は風のように素早く動き、時に優しく緩急をつけ、責めるときには激しく動かし、息子は山の如くガチガチである。

シンジの性技はチートによって高まっており、性の伝道師『加藤鷹』レベルに達している。
そのゴールドフィンガーは今まではFSS、OMMなどソフトタッチな行為にしか使用されていなかったのだが、とうとうその真価がここで発揮されているのである。

無論、そのような高度な技術を処女であり、性の経験がほとんどないアスカにはかなり激しいものであったため、彼女はただただその奔流に流されるのみである。
ただ、アスカも幼い頃からエヴァのパイロットとしてトレーニングを重ねており、同世代の女の子達とは比べものにならないくらい体は鍛えられている。
そのため、かろうじてシンジのゴールドフィンガーを受け止めていられたのであった。

本来、シンジのこの行為はタカさんが聞いたら、シンジに拳骨を食らわせるだろう。
女の子の体に負担をかけるような愛撫は性の道を志すものにとってタブーなのだ。
英霊の座でタカさんがシンジの姿を見て首を振っているのが見えるようである。

とはいえ、シンジも本番行為は初めてなのだから許してあげて欲しい。

そもそも童貞と処女の初エッチなどだいたいは失敗することが当たり前なのだから。
神だって『To Heart』の神岸あかりとの初エッチの如く、いざ入れようと思ったら緊張で立たなくなるという失態を演じている。いやマジで。

話は逸れるが、もしこういう事態になったとき言い訳するのだけはみっともないから止めよう。女の子はこういうこともあることをちゃんと知っていたりするのだ。
今日は調子が悪いとか、いつもは立つのにとか言わないように・・・無様だから。

神は言い訳しまくって、彼女に生暖かい目で宥められたのが深い傷になっているのだ。
(ちなみにその時の神の彼女は処女じゃないのであしからず・・・)

童貞君はできるならばソープなどに言って女神さんたちに童貞を捨てさせて貰った方がいいと思う。昔だって村のお姉さんが筆おろしとかして男の子を教育していたのだし。

とはいえ、神も風俗では相当遊んでこの失態だったので、いかに解決したかを書かなければ無責任であろう。まあ、簡単な解決方法なのでぜひ試して欲しい。
それは彼女に手で息子を触ってもらって立たせてもらえばいいのである。

ぶっちゃけフェラ、手コキとか幻想だかんな!あんなのAVと風俗にしかないからな!
ああいうのではなくて、ただ触ってもらうだけでちゃんと息子は立ち上がるのである。
生命の神秘なのか、『女が立たせる』とへたらず最後までできるんだわ。不思議だね。
処女の場合マグロなのがほとんどなので、失敗確率が高まるんだと思うのだ。

これがさらに不思議なことにたいして好きでもない、タイプじゃない女の子で、自分では全然息子が立たないシーンでも、そいつが触るとちゃんと出来るようになるんだ。

いや、まあ確かに昔は自由恋愛なんてなかったから、好きでもない男女が親に無理矢理結婚させられるのが普通だし、好き同士でなけりゃセックスできないなんてことはない。
どんな男だろうと息子を女に触られたら息子は立ってヤレるのであります。
女も同じでどんな男だろうとデキちゃうんですよ。こうして人類は存続したのだから。

あと、これは忠告だが処女はイケメンにちゃんと処理してもらってから付き合うこと。
イケメンは女性経験が豊富だからちゃんと上手に女の子を大人にしてくれているんだ。
日本は一夫一妻、イケメンでも嫁に出来るのはただ一人、日本は平等な社会なのだよ。
よく処女じゃないと嫌だとか言う神の友人のような奴がいるが、イケメンにスルーされている処女なんかろくなの残っていない。良き伴侶は非処女にいると知って欲しい。

というかイケメンも結構忙しいのよ、勉強に部活に恋愛に。だからいちいちブスにかまっている暇なんかないわけね。だからイケメンは可愛い子をキャッチしてはリリースして人生を謳歌しているんだ。そのおこぼれを非イケメンはありがたく頂けばいいのである。良質な女の子を下処理して市場に出荷してくれているんだと思えば腹が立たないでしょう。
神なんぞはどうしても付き合いたい女の子がいたんだが、イケメンDQNに取られてしまったのだ。でもどうせすぐ別れるだろうと諦めず、彼女がリリースされるその日を待ってゲットしたからね!オタクブサメンの神でもちゃんとできたんだからみんなできるさ。

ここまで書いたらどうやって告白したかも書いておく。これも簡単でラブレター書いて直接手渡した。ぐちゃぐちゃ書かずストレートに付き合って欲しい旨とアドレスだけ書いた手紙でね。あと、一人の時を狙って渡すのは実はNGだと思う。恐いし。
社会人だったらしょうが無いけど、学生だったら女友達と一緒の時に渡すべきだ。

これはイケメンだったら女友達は付き合うのを反対するんだが、ブサメンの場合は賛成してくれるという女の心理を突くんだ。これはなんかの漫画で読んだマメ知識だけど。

実際上手くいったんだからやってみる価値はあるんじゃないだろうか。
あと、身だしなみは整えろよ。髪は美容室で切って、服はビームスでも行ってマネキン買えばいい。(今時ビームスって・・・年がバレるなぁ・・・恥)
デブは痩せる努力をしろ。俺は100kgだったが、告白時は77kgまで減らしたぞ。
それでダメなら諦めて別の女を捜せばいい。ソープへ行って慰めてもらえば良い。
というか努力してここまで来てたら人間的に相当成長していると思うぞ。
それだけでも十分価値があるじゃないか。

友人は神のことをせせら笑っている。中古になに熱あげてんの?『ハナテン』かよと。
確かにこんな糞SSを読んでいる監視者の皆様の大半は処女厨の童貞・・・。キモオタの皆様であろうと思う。アンチ、チート、ハーレムのタグのついたSSを読もうと思った時点でキモイし恋愛については諦めている人たちであると思う・・・。

だがしかし、今一度己を顧みて考えて欲しい。このままでいいのかと。
食事を作る母親の背中を見て欲しい。テレビを見ている父親の背中を見て欲しい。
『老いて』はいないだろうか・・・。将来、両親が死んだら自分はどうなるのだろう。

そんなときふと新聞紙にホームセンターのチラシが・・・。

「・・・コーナンには首つり用のロープ売ってんじゃね?つか練炭売ってんじゃね?」

そう思うときが来るだろう。その時は迷わず買いに走って欲しい。
そして、リア充がはびこる格差社会に絶望して悲しく命を絶ってくれ。
神はその時君にこの言葉を贈りたいと思う。

『 m9(^Д^)プギャー 』


「あのさシンジ・・・さっきから天井からブツブツ変な声が聞こえてくるんだけど」

「気のせいだよ、気のせい・・・。じゃあアスカ・・・そろそろ入れるね」

「う・・・うん。えーとその・・・優しくしてね」

「もち(ドゴーン)って!!あっ!!」

「痛たたたたたたーーーーぃ!!」

シンジがいよいよアスカに息子を入れようと狙いを定めた時、輸送艦オルセーが激しく揺れた。その揺れのためシンジの息子は一気にアスカの中に侵入、ブチブチブチっとめでたくアスカは大人になったのでした。

Pi!Pi!Pi!

シンジのスマホが激しく点滅し音を鳴らす。
シンジはとりあえず息子をアスカの中に納めたまま、スマホを取った。

「シンジ君!なんかいきなり艦隊の真下に化け物が現れたの!!」

「・・・」

「???どうしたのシンジ君。もしかして怪我したの!?」

「・・・いや僕は怪我をしてないけど、アスカは出血してるね・・・」

「えええっ!?大丈夫なの!!」

「えーと(ちらっ)・・・大丈夫だと思う・・・。多分・・・」

アスカは涙目で、とりあえず動くと痛いのか大人しく硬直しているようだった。

「それと・・・さっきの使徒の攻撃でエヴァ弐号機が海に落ちちゃったんだけど・・・」
「はぁ??弐号機が海に落ちた!!」

「ええ!!ちょっとそれどういうことよ!!っていたたたた」

シンジの叫びにアスカも思わず起き上がった。

「どういうことって言っても見たまま落ちたとしか・・・。シンジ君どうするの?」

「とりあえず回収はすぐには無理だよね。となると戦術機を出すしかないけど・・・。初島の基地にスクランブルをかけて!黒百合を持ってこさせて欲しい。3バカ達にも海神で出るように!」

「わかりましたー。ネルフにはどう伝えるの?」

「・・・そのまましかないよね。弐号機ロストって。零号機は装備が貧弱で海中戦なんて出来ないし・・・一応ヒゲにどうするのか聞いておいて。なにか他に策があるならそれでもいいし・・・。まぁ無いだろうけど」

「了解!リアトリスの行動はどうしますか?」

「とにかく、僕とアスカは一旦そっちへ行くよ!ここにいたんじゃ死にかねない。・・・そうだシャルにISを展開して僕達を迎えに来させて!ISはまだ出したくなかったけど仕方ないね」

「了解です。ってもうシャルちゃん走って出て行っちゃったから1分くらいで迎えに行けると思います」

「了解。甲板に出るよ!」

シンジはアスカを抱き寄せると駅弁スタイルで外に走り出した。

「ちょっとシンジ!服!服を着させて!!」

「ここは戦場!ぼやぼやしてたら死んじゃうよ!急いで甲板に行かないと」

「そんな!!って痛い、痛いよシンジ!!」

シンジが走る衝撃が息子を通じてアスカにダイレクトに伝わり無茶苦茶痛い。

「ごめん!抜いている暇がないんだ!」

「そんなわけあるかーーー!!」

アスカの絶叫などシンジは気にもせず、ひょいひょいと器用に階段を駆け上がる。
オルセーは現在大きく傾いており、とても走っていけるような状況では無いのだが、そこはさすがのシンジといったところである。

シンジとアスカが甲板に到着すると、シャルがISを展開して待っていた。

「シンジ君!ってキャァ!!君たちは一体なにをやってるんだよ!!」

「いや、ナニをやってる最中だったもので申し訳ない」

「もう!使徒が来るかもって言ってたのシンジ君でしょ!そんなの後でいくらでもできたでしょに!さぁ早く脱出するよ!!」

シャルは心底呆れていたが、グズグズしていると船が沈む恐れがあるためシンジと未だ繋がっているアスカを抱きかかえると一目散にリアトリスへと駆け上っていった。

アスカは初めて見るISに目を丸くしていたが、パラレルワールドであると信じ込んでいるアスカは「こんなのもあるんだ」くらいで受け止めていた。
彼女にとってISなんかより、シンジの息子の処理をどうしたらいいのかということのほうが大問題である。

少し冷静に考えると、そういえば避妊をしていないことを思い出したのである。
下をチラリと見ればシンジの息子さんはゴムの帽子を被っていないし、いまだアスカの中で寛いでいるのである。

(ええと生理って何日前だったけ?今日が土曜?だから・・・2週間前だわ・・・ってヤバイ!危険日真っ直中じゃない!!)

「えっとシンジ」

「大丈夫。使徒のことはなんとかするよ。心配しないで」

「だからそうじゃなくて、そろそろ抜いて欲しいんだけど」

「え?ああ・・・そうだね。そろそろ僕も抜きたかったんだ」

「ほっ、よかった」

「じゃあ、シャル。ゴメンだけどこのまま格納庫の隅に置いてくれるかな。あと二人分の服を持ってきて」

「はいはい。わかったよ。その子に先を越されたのは複雑だけど、さすがにその初体験には同情を禁じ得ないし・・・仕方ないね」

3人はリアトリスの格納庫に到着すると、シャルは二人の服を取りに出ていった。

「じゃあアスカ。抜くね。」

「へ?抜くって、いやそうじゃなくて」

シンジは豪快にも駅弁スタイルのままストロークを再開、程なく果てましたとさ。
英雄の座のタカさんはシンジのこの行為に大いに怒り、後日夢枕に立つとシンジに説教をしましたとさ。タカさんの後を継ぐ者として許せなかったようだ。


一方、オヴァーザレインボウのブリッジでは使徒戦の真っ最中である。
使徒の初撃でエヴァ弐号機が沈没、使徒のATフィールドを中和する方策が無くなり万事休すの状態であるが、とにかく魚雷を撃ちまくり、空母からは艦載機を出してミサイルを撃ち込むなど打てる手は全て打っていた。

「とはいえジリ貧だな」

提督はため息混じりにそう呟く。シンジやミサトが言うとおり既存兵器は使徒には通用しないのである。肝心要の弐号機を失ったことはあまりに痛い。

「提督、巡洋カンタスの魚雷が尽きたようです!」

「駆逐艦荒波も同様の連絡が!!」

オペレーター達からの報告に提督の眉間はますます深くなる。

「提督、空中の戦艦より入電、ミサイル攻撃を試みたいので、目標から至急離れて欲しいとのことです」

「む・・・・・・いや、ダメだ。今回の任務は我が太平洋艦隊が国連より命令された事案だ。日本のロイヤルガードに任せてすごすご逃げだすわけにはいかん・・・。まだ万策尽きたわけではない」

「はっ!直ちに返答いたします」

(とは言ったものの・・・どうするか・・・虎の子のN2弾頭を使うしかないが、しかし確実にあの化け物の弱点に当てなければ意味が無いのは先日証明されている)

提督の脳裏に先日第3新東京市を襲った使徒なる化け物の戦闘記録が蘇る。
国連軍のN2は使徒を足止め程度にしか効果がなかったのである。

(ATフィールド・・・だったか。あれを抜けるのは悔しいがネルフのロボットとロイヤルガードのロボットの2種だけ・・・その内ネルフのロボットは海底に沈んでしまった。ロイヤルガードの援助の申し出は今断った。まったく愚かなことだ。我ながら度し難い)

提督は艦隊を相手に暴れ回る化け物をジッと凝視した。
使徒は執拗に彼の艦隊に攻撃を加えていたのである。

ここで、彼になぜエヴァが海底に沈んだのに使徒がそちらに向かわず、こちらを攻撃し続けているのか疑問が浮かんだらたいしたものだが、残念ながら考え付いていない。
事前の話ではエヴァを狙って使徒が来るかもと言う話だったのだ。
にもかかわらず、エヴァを失っても使徒はこちらを攻撃してくる。なぜだ!!!


「・・・勘弁してくださいよ司令・・・使徒が来るなんて聞いてませんよ・・・ええ、はい。わかりました。それでは」

加持は携帯を切り、アタッシュケースを取ると自室を出た。

「かっ加持先生!!!」

加持が部屋を出ると、ちょうどそこに酷くうろたえているミサトと出くわした。

「(マズイ)おお、葛城ぃ・・・なんだ?ブリッジに行かないのか?」

「へ?ブリッジ?なんで?私なんか居ても邪魔になるだけでしょ。素人なのよ」

「いや、素人って・・・。そりゃ海戦の経験は無いだろうが、使徒戦の優先はネルフにあるんだから、お前がブリッジに行って指示を出さないとダメだろう」

「無理無理無理!んなのできるわけないでしょ!ああ、シンジくん!どこへ行っちゃったのよー」

「とっとりあえずだな、俺は行くとこがあるから失礼するな。うん」

「ちょっと加持先生!置いてかないでよ」

「その先生ってなんなんだよ。こら葛城シャツを掴むな!放せっておい!」

「嫌、放して欲しかったら安全な場所に案内してちょうだい!!」

「・・・え?」

「・・・何?」

「いや・・・葛城、お前使徒と戦わなくていいのか?」

「あー・・・まあ、立場的にそうなるかもしれないけどさ・・・シンちゃんと離れ離れだし、指示も特に無いし・・・別に逃げちゃってもいいかなーって」

「そっそうか・・・まあ、お前がそれでいいのなら俺はかまわないが。よし!時間も無いことだし二人で逃げるぞ!」

「素敵!さすが加持先生。いよっこの無精ヒゲ!受動喫煙の申し子!ハレンチ体育教師!」

「なあ、葛城。とりあえず一発殴ってもいいか」

ミサトの挙動不審を今はとりあえず棚にあげ、加持は彼女を連れて前部エレベーターへと向かう。前部エレベーターとは戦闘機を飛行甲板に格納庫から運ぶエレベーターのことである。今まさにYak-38改(VTOL機)が甲板に運ばれようとしていた。

「ストップ!ストップ!その戦闘機止まれ!!これは国連の緊急時徴収の命令書だ。俺は戦闘時にネルフの重要人物の護送任務を受けている。その戦闘機を使用するので乗せてくれないか!」

加持は英文で書かれた書類を掲げる。いきなり現れた加持にクルー達は迷惑そうにしつつも命令書は本物のようで、国連軍の彼らとしてはそれに従わざるを得なかった。

「しかし・・・この機体は二人乗りですので・・・」

「かまわん。葛城一尉、失礼ですが私の膝の上に乗ってください」

「え?・・・それはいいけど乗れるの?」

「ああ、まぁ大丈夫だろ。おい、君、ちょっとこのアタッシュケースを持っていてくれ」

加持はアタッシュケースを近くにクルーに預け、戦闘機の後部座席に乗り込む。

「よし葛城来い」

「ええ」

ミサトは生まれて初めて乗る戦闘機におっかなびっくりながらも、クルー達の支えもあってなんとか加持の膝の上に乗り込む。
名かはとても狭く、脚は体育座り状態の寿司づめである。

「よし、じゃあそのアタッシュケースを(ドカーン)えっ?」

船体が激しく横揺れする。どうやら使徒の体当たりを食らったらしかった。

「きゃーーーーー早く!早く出発して!!」

「はっはい!!よしエレベーターを上げろ!!」

ミサトの指示でパイロットがキャノピー(窓ガラスのことね)を下ろすと同時にエレベーターが動き出し機体を甲板へ上げていった。

「おっおい!俺のアタッシュケース!!!」

「何よ加持先生!命よりもかばんが大事なの!!さっさと逃げましょうよ!!」

「いやお前、仮にも作戦部のトップが逃げるって・・・、おい、下に戻れないか!!」

「無理です。もう離陸します。行きます!!」

加持の願いは叶えられずYak-38改はオーバーザレインボウを飛び立っていった。

(おいおいおい。こりゃ俺死んだかな・・・はは)

(凄いG・・・やばい吐きそう!!)

絶体絶命の加持、あと数分後更なる危機が迫っていることを彼は知らない。


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