祖父母の家は、住む人のいなくなったためか酷く荒れていた。外壁にはつる草がのび軒にはハチが巣を作っていた。引き戸を開け靴を脱いで上がる。玄関には埃をかぶったクマの木彫りが置いてあった。両親の新婚旅行のお土産らしい。いとこ達と集まって遊んだ時の賑やかさは微塵もない。

奥からの物音に居間への引き戸を開け、さらに奥の襖を開ける。音の発生源はここではない。父の部屋だった所だ。ドアの曇りガラスはオレンジ色だ。ドアを開ける動きに浮き上がった埃が西日に照らされた。そこには古い子供部屋の光景があった。本棚やタンス勉強机そして分厚いテレビがあった。テレビ台の下に古いゲーム機とカセットが仕舞われている。音を出すような物は特にない。気のせいだったかと背を向けた。「ー遊ぼう」女の声がした。

少し黄みがかった白い髪それと同色の狐の耳と尻尾、ゆらゆらぱたぱたと袂を揺らして近づいてくる狐娘。「ふふ、お主一人か…懐かしいのぉ」「誰？」そういうのが精一杯だったがどこか言うとおりに懐かしさを感じる。