※このお話は『忍たま乱太郎』・『落第忍者乱太郎』の二次です。
このお話の前にあたる『幼少期編』は『チラ裏』に置いてあります。
『忍たま』『落乱』の双方がミックスされ、さらに作者の脳内設定(という名のご都合主義)を足してシャッフルされています。
学年が上がるごとに制服の色が変わる設定です。(さすがにあのガラで上級生は可哀相な気がして。一年だけガラ入りで色は同じ、というのも考えましたが)
この頃見始め、中途半端にしか知識がないので・・・・あまり、原作と比べないで下さい・・・・・。
アニメと漫画で名前が混乱している事があるかもしれません。
一人称がおかしいかもしれません。
性格がおかしい、あるいは壊れたキャラが存在するかもしれません。
あとがき・感想のお返事は感想掲示板にておこないます。
春爛漫。
桜が舞い散る季節が来た。
赤茶色の髪に眼鏡をかけた子供は、自分の左右にいる同い年の子供を見た。
ふくふくと丸みをおびた体つきの子供と、髪質の所為でちょんまげが結えない自分とは違い綺麗な黒髪を頭の後ろで結んでいる子供。どちらもさっき出会ったばかりだ。
牛車の牛にどつかれ、小銭に埋められるという衝撃的な出会いだったが、この学園で初めて出会った同級生。縁を感じる。
「これからよろしくね」
赤毛の子供が微笑みながらそういうと、他の二人も年相応の笑顔を見せた。
「ああ、おれたち三人、なかよくやろうぜ」
「うんっ」
+++
「あれ? きみ、さっきの」
「あ。同室だったんだね、よろしく」
どんぐり眼で今日から自分の部屋となる場所を眺めていた子供は、少し遅れて入ってきた同年代の子供に首を傾げた。
先ほど、入学金を支払う時に一緒になった子だ。
「・・・ああ、そうか。ついた順番で部屋割りするんだね」
「・・・・・・・・・きみ、冷静だね」
「よくいわれるよ」
+++
「うおーーーっ ここが教室かぁ!」
「畳がある!」
バタバタと足音も高らかに教室に駆け込んできた二人の子供は、物珍しそうにあちこちをキョロキョロと見渡した後、窓に嵌っている障子を開けて下を見下ろした。
「すっげぇたかい! 3階だもんなぁ」
「おおぉ、むこうまで見える!」
興奮してぎゃいぎゃいと騒ぐ子供のうち、袖をまくって肩まで出していた子供が隣の子供を突きながら校庭の一部を指差した。
壁際に等間隔で一列に並んだ物体。
「なあ。あれ、なんだとおもう?」
「え? ――あ! あれ射撃のマトだよっ! うっわぁ! 近くでみたい~!!」
「へえ。
・・・―――それより馬小屋どっかにないかなぁ」
+++
「あれ? 先客がいる」
「でもなんで私服なの?」
開けっぱなしの教室の扉から顔を出した二人の子供は先に中に入っていた同級生を見つけ、首を傾げた。
その言葉に先刻まで騒いでいた子供達も振り返る。
「お。同じクラスか?」
「そうみたいだね。一年は組」
前髪を同じ長さで切りそろえている子供が肩をすくめると、その隣にいた子供が笑顔のまま二人を指差した。
「なんで制服にきがえないの? 部屋においてあったでしょ?」
「「え?」」
私服組ははて?、と言いたげに動きを止めた。
その様子に笑顔の子供はさらに首を傾げる。
「もしかして最初にココに来た? まず部屋に荷物をおいてからって受付でいわれたよね?」
「「あーーーーーーっ!!」」
私服で教室に乗り込んでいた二人はようやくその事を思い出したのか同時に大声を出して焦ったように部屋を飛び出していく。
その場に残された二人の子供はその後姿を入り口から呆れたように眺めていた。
「あいつら、バカだな」
「アハハ」
+++
「なぁ、本当にこっちであってるんだよな?」
木々に囲まれた細い道のりの途中。
確認の言葉とは裏腹に疑わしげに見つめてきた子供に、隣を歩いていた子供はこくりとひとつ頷いた。
二人とも同じ顔をしている、いわゆる双子というものだった。
ただ、顔は同じだが雰囲気は正反対。その上着ている着物も男物と女物、という事で二人を見間違える人はいないだろう。
「おれもさぁ。おまえが地図を読み間違えるとはおもってないけどさ、本ッッ当にこんな人気のない山奥でいいのか? 人のすむ建物がある?」
「地図ではそうなっている」
「・・・・・・まぁ、忍者の修行する場所がオープンってのもどうかとおもうけど」
ぶちぶちと口の中で呟きながら歩みを進めていた男の子の横で、ふいに女の子がその足を止めた。
遅れて足を止めた男の子の方も、隣の子供が何に気をとられたのかに気付く。
「・・・・・・忍者・・?」
視線の先には左右を見渡す人影。大人にしては小さなその影は山葵色の忍び装束に身を包んでいた。
記憶に引っかかるその色は、昔、双子の兄が家で洗い物として母に渡していたものと同じ色だ。
「・・・・・・忍術学園の生徒かな?」
「だとおもうが」
それならば学園までの道を聞こう、と思う間に、相手は凄いスピードで向こう側へと走り去って行った。
「・・あ」
「でも近くにあるという事はわかっただろう」
呼び止めようと出しかけた手をフリーズさせた男の子に、女の子がボソリと呟く。
なるほど。
自分の片割れの言葉にふむ、と頷いて手を下ろし、足を踏み出した――瞬間。
「あっちだーーーーっ!」
ドップラー効果がありそうな大声とともに先ほどの少年が駆け戻ってきて二人の脇を通り過ぎ、二人が歩いて来た道の方へと走り去っていった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
とりあえず見なかったことにして二人はもう一度歩き始める。
が。
ガサッ
「こっちだーーーっ!」
何故か横の藪から飛び出してきた先ほどの少年がまた後ろへと駆けていく。
音がした瞬間に思わず足を止めた二人の子供は、その一部始終を見送った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あっちだーーーっ!」
と思うや少年は後方からみるみる内に迫ってきて、前方へと走り去る。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・なんだとおもう?」
「走りこみだろう」
先ほどから少年の巻き起こす風とともにまともに浴びてしまった砂埃を叩き落し、二人は顔を見合わせた。不可解な少年の行動に一応理由をつけ、止まっていた歩みをもう一度再開する。
「・・・・・・次きたら、道をきいてみる?」
「止まるとはおもえないが」
「だよなぁ。・・・・・・いや、でも一応」
いるんだから聞いてみたら・・・、と続ける前に、再び前方から少年が走ってくるのが見えた。
「あの――」
「あっちだーーーっ!」
男の子が声をかけるより先に少年は風と砂埃だけを残して後方へと去っていった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
イラッ
後に残された男の子の眉毛がひくりと動く。
仏頂面で後方を振り返った男の子の目に、また戻ってくる少年が映った。
「こっち――」
再び真横を駆け去ろうとした瞬間、今まで動かなかった女の子の右腕が閃き、いつの間にか握り締めていた一尺(約三十センチ)程の棍棒が少年の顔の高さで繰り出された。
寸前でハッとそれに気付いた少年が身を屈めたが、その足元を時間差で動いていた女の子の足がなぎ払う。
ズシャァッ!
音を立てて顔面から地面に滑り込んだ少年を見送ってからようやく我に返った男の子が自分の相方の方を振り返った。
「な、なに危ないことしてんだ――ッ!!」
「いや・・・・・こう、さっきから胸がザワザワするというか、腹部がムカムカするというか・・・おもわず」
「・・・・・・・おまえ・・・実はいらだってたのか・・?」
無表情で首を傾げ、胸を押さえる女の子に引きつりつつ男の子は棒を持った手をそっと下ろさせる。
「とにかく、短棒なんかだすな。危ないだろう(相手が)」
わかったな?と念を押すと女の子は護身用に、と母が持たせた短棒を即座にしまいこんだ。
両親が突然叩き込んできた武芸を難なく吸収した女の子にとって、短棒の扱いも慣れたものなのだろう。
「ぅ・・・いったたぁ・・なんだあ?」
「あっ だいじょうぶですか?」
擦った顔面を押さえつつ起き上がった少年に慌てて駆け寄ると男の子は即座にその前面にまわりこみ、ペコリと頭を下げた。
「すみません、どうも足がひっかかっちゃったみたいで」
「ん? 攻撃されたような気がするんだが・・」
「そんな、気のせいですよ。それより道をおたずねしたんですが」
納得がいかず首をひねる少年に畳み掛けるようにそういうと、男の子はにっこりと笑顔を浮かべた。
「忍術学園に行きたいんですけど、どこら辺ですか?」
「なんだ、君たち新入生かっ」
「はい」
「忍術学園はあっちだっ! まっすぐ行けば着くぞ!
じゃ、ぼくは今、校外実習の途中なんでなっ」
少年はビシッ、と左斜め前の藪を指差すとすぐに後方へと走り去っていった。
それを見送り、同時に顔を見合わせた後、二人は少年の指差した方を眺めてもう一度視線を合わせる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・近道、かな?」
どう見ても道じゃない場所に首を傾げながら、それでも男の子は少年の言葉を信じてそこに割って入っていった。
その場に取り残された女の子は親に手渡された地図と右側を交互に見て首を傾げ、けれど何も言わずに男の子の後を追う。
ガサガサと二人が藪を掻き分ける音がしばらくその場に響いていた。
+++
そしてその頃。
「あんの方向音痴どもーーーーっ!!
左門ー! 三之助ーーーっ! どぉこ行きやがったあ~~~~~っ!!!」
一人の少年の雄叫びが森の中に響いていた。